衆議院

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第3号 平成21年4月2日(木曜日)

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平成二十一年四月二日(木曜日)

    午後二時開議

 出席委員

   委員長 前原 誠司君

   理事 井上 信治君 理事 嘉数 知賢君

   理事 小島 敏男君 理事 仲村 正治君

   理事 西野あきら君 理事 松木 謙公君

   理事 三井 辨雄君 理事 江田 康幸君

      安次富 修君    飯島 夕雁君

      岸田 文雄君    清水清一朗君

      中根 一幸君    西村 明宏君

      橋本  岳君    平口  洋君

      馬渡 龍治君    山崎  拓君

      若宮 健嗣君    市村浩一郎君

      加藤 公一君    仲野 博子君

      丸谷 佳織君    赤嶺 政賢君

    …………………………………

   外務大臣         中曽根弘文君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当) 佐藤  勉君

   内閣府副大臣       宮澤 洋一君

   外務副大臣        伊藤信太郎君

   内閣府大臣政務官     岡本 芳郎君

   国土交通大臣政務官    西銘恒三郎君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   原田 正司君

   政府参考人

   (内閣府沖縄振興局長)  清水  治君

   政府参考人

   (内閣府北方対策本部審議官)           藤本 一郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   河相 周夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 兼原 信克君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           前川 喜平君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           久保 公人君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           小川 富由君

   政府参考人

   (国土交通省航空局次長) 関口 幸一君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  高見澤將林君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  徳地 秀士君

   衆議院調査局第一特別調査室長           大和田幸一君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 沖縄及び北方問題に関する件


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     ――――◇―――――

前原委員長 これより会議を開きます。

 沖縄及び北方問題に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官原田正司君、内閣府沖縄振興局長清水治君、内閣府北方対策本部審議官藤本一郎君、外務省大臣官房長河相周夫君、外務省大臣官房参事官兼原信克君、文部科学省大臣官房審議官前川喜平君、文部科学省大臣官房審議官久保公人君、国土交通省大臣官房審議官小川富由君、国土交通省航空局次長関口幸一君、防衛省防衛政策局長高見澤將林君及び防衛省運用企画局長徳地秀士君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

前原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

前原委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。仲村正治君。

仲村委員 私は、まず最初に、質問通告はしておりませんけれども、我が国の国家国民の安全にとって極めて差し迫った問題でありますので、中曽根外務大臣に質問をさせていただきます。

 北朝鮮は、明後日の四日に、人工衛星か弾道ミサイルかはわかりませんが、北朝鮮の東南方向、いわゆる我が国の方向に向けて発射すると発表しています。これについて、我が国として万全な態勢でその危険から国家国民を守らなければならないと思います。

 中曽根外務大臣は、一昨日の三月三十一日、オランダのハーグでこの問題についてアメリカのクリントン国務長官及び韓国の柳明桓外交通商相との会談を行い、北朝鮮が人工衛星の名目でミサイル発射をした場合、国連安全保障理事会の決議も視野に入れて協力する方針で一致したと報道されておりますが、そのことについて中曽根外務大臣から御説明をお願いいたします。

中曽根国務大臣 今委員がお話しされましたように、三月三十一日ですか、ハーグで開催されましたアフガニスタン支援に関する会合に出席をしてまいりました。そこで韓国の柳明桓外交通商部長官、ヒラリー・クリントン米国国務長官等々、またそのほかの国の要人とも会談したわけでありますが、今差し迫った大変な事態になるかもしれないこの北朝鮮の問題について話し合いが行われたところでございます。

 いつも申し上げておりますけれども、何よりも発射をさせない努力をぎりぎりまでするということ。これは当然のことでありまして、これにつきましては、北朝鮮に対して、直接、あるいは各国と連携をとって行っているところでございます。

 米国の国務長官との会談におきまして、私どもとしては、発射というのは地域の平和と安定を損なうものであって、これは安保理決議に違反するものであるということ、そして、万が一発射された場合には、これは安保理におきましてこの問題を取り上げて、特に決議の可能性も念頭に置きながら安保理でこの問題を議論する、かつ、関係国とも緊密に連絡をとりながらこの問題を取り上げる、そして強いメッセージを発信することが非常に重要であるということで、クリントン長官とは一致したところでございます。

 そういうことで、今大変緊迫した状態といいますか、そういう北朝鮮の発射問題は非常に微妙な時期に来ておりますが、ぎりぎりまで発射をさせないということ、そして、万が一発射をした場合には安保理でしっかりと議論をするということを確認してきたところでございます。

仲村委員 もしも実際に発射された場合には、我が国としては、防衛省はもちろん、国家挙げてその防衛態勢がとれるようにしなければなりません。これはそんなに悠長な話ではありません。明後日のことですから、直ちに国の各省庁挙げてやるべきことだと思いますが、その点について中曽根大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

中曽根国務大臣 委員がおっしゃいますように、しっかりとした態勢を整えることは大変重要でありまして、これは政府一体とした取り組みを行っているところでございます。

 外務省におきましても、対策を、そういうような態勢をとっておるところでございまして、関係省庁とよく連絡をとりながら、情報収集はもとより、今後のいろいろなあらゆる事態を想定してしっかりとした対応をとっていきたい、そういうふうに思っております。

仲村委員 ぜひ国を挙げて、実際に打ち上げられた場合に我が国あるいは国民に危険が及ばないように万全の態勢をとっていただきたい、このように思っております。

 ことしは、沖縄県が、二十七年間の米軍占領統治を県民が一丸となって打ち破り、祖国復帰をかち取ってから三十七年目を迎えました。復帰後、政府は、沖縄県のすべてが占領統治下で戦後の荒廃した状態のまま放置されていた、道路、港湾、空港、漁港、学校、そして農地整備等々の社会資本整備に四回の振興開発計画で多額の予算を投じ、今日では本土との格差もほぼ是正されました。私たち県民は、政府が誠意を持って沖縄県民の戦中戦後、そして米軍占領統治のもとでこうむった苦難にこたえたことには正しく評価をし、感謝の念を強く持っているものでございます。

 そして、私はここで、戦後六十四年間、かつ復帰後三十七年間も未解決のまま放置されてきた、戦争末期に日本軍が強制接収した土地が、米国民政府の不当に押しつけた布告三十六号によって国有地化されてしまった土地に対する補償問題が、那覇市の鏡水と宮古島市の富名腰、七原、腰原の四カ所が、特定地域特別振興事業費として平成二十一年度予算で予算措置されましたことに、長年の懸案であり宿願であった戦後処理がようやく実現できたという感慨無量の思いを強くするものであります。

 しかし、この種の戦後処理問題は、那覇空港の西側地域の大嶺とか伊江島飛行場などが未解決のまま残されていますので、引き続きこの沖縄特別振興対策事業の解決に誠意を持って取り組んでほしいと思いますが、佐藤大臣の御決意をお聞きしたいと思います。

佐藤国務大臣 お答えを申し上げたいと思います。

 今先生からお話にございました旧軍飛行場用地問題につきましては、たびたびこれまで先生から御指摘を賜っているところというふうに伺っております。

 内閣府といたしましては、この問題の重要性を認識いたしまして、沖縄県の要請を踏まえまして、平成二十一年度予算におきまして、特定の地域において特別の地域振興の事業を行う新たな枠組みの創設を行ったところでございます。先生がおっしゃられたように、具体的には、那覇市の鏡水及び宮古島市において多目的コミュニティーセンターの整備を行うことといたしました。

 他方、その他の地域の要望につきましては、現在、沖縄県において関係市町村や地主との間で調整、取りまとめを行っているというふうに伺っておりまして、内閣府におきましては、今後、沖縄県から示される振興策の具体的な事業の要望を踏まえた上で、所要の検討を行いたいというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、内閣府といたしましては、用地の問題につきまして重要な課題と認識しておりますし、今後とも、その解決に向け、県と連携をいたしまして鋭意取り組んでまいりたいというふうに思っております。

仲村委員 今まで、この問題についての要望に対して国有地になっているからできないというようなことでございました。しかし、戦争末期の十八年前半までは曲がりなりにも土地代を払っておりますが、戦争末期の昭和十八年の後半以降は、そこのけそこのけで土地代を払わずに接収したんです。その分について、ことし皆さんが措置をしていただいたような形でぜひ引き続きやっていただきたい、こういうことでございます。

 私たちはこの問題を目の当たりに見てきておりますので、これをそのまま放置するわけにいかないということで、私が強く皆様方に要望いたしましたことがようやく予算措置されまして、本当に感無量というところでございます。

 私は、きょうの質問の冒頭、政府が沖縄県民の戦中戦後の苦難と占領統治下での荒廃した社会の復興に真摯に取り組んできたことに感謝の念を申し上げましたが、政府としては、沖縄の持つ可能性について、これからも引き続き積極的に沖縄の振興開発に取り組んでいかれることを強く要望するものでございます。その件について、佐藤大臣の御決意をお聞きしたいと思います。

佐藤国務大臣 今先生からお示しをいただきましたこと等々を真摯に受けとめさせていただきまして、先生の御意向のように、また検討、打ち合わせをさせていただきながら頑張ってまいりたいというふうに思っております。

仲村委員 沖縄の持つ可能性でありますが、それは、第一に、沖縄県は全国唯一の温暖な亜熱帯性気候の地域であり、農業、漁業、畜産業等々の食料生産の可能性の高い地域であります。

 二つ目には、沖縄県は、東西一千キロ、南北四百キロの広い海域に、青い海、青い空で象徴される白砂青松の多くの島々からできた地域で、観光地として、また国民の健康管理のいやしの場所としても極めて価値の高い場所であります。

 さらに三点目に、沖縄県はアジア太平洋地域の中央に位置する場所でありますので、国際交流の拠点として、また国際コンベンション開催の場所として最適なところであります。

 今私が申し上げました沖縄県の持つ特性というか優位性というか、それをフルに生かすためには、今後とも政府が積極的に沖縄の振興開発に手を緩めることなく取り組むべきだと思います。

 今まで四次の振興開発計画で先ほど申し上げましたように誠意を持って政府は取り組んでいただきましたけれども、私は、この沖縄の持つ優位性を生かすためにも、さらに引き続き沖縄の振興開発について御努力されることを希望しますが、その点について佐藤大臣の御決意をお聞きしたいと思います。

佐藤国務大臣 今先生がおっしゃられましたように、沖縄の亜熱帯地域に位置するという特性を生かしまして、国内におきましては、甘味資源や冬や春の時期を中心とした農産物の供給の産地として発展が期待されているところでもございます。また、先生がおっしゃられますように、観光・リゾート産業ということから考えれば、これは沖縄の経済を牽引するリーディング産業であるというふうに私どもは理解をさせていただいております。

 したがいまして、こうした中で、沖縄の、特に離島につきましては、マングローブ等々の豊かな自然、島ごとに異なる独自の文化等々を踏まえましても、観光客の誘致を図ったり、沖縄の観光振興、離島振興の双方を推進する観点から重要な課題だというふうに私は感じているところでもございまして、こういう優位性を生かした沖縄の特徴ある産業というものをもっともっと生かしていかなければいけないという観点で頑張ってまいりたいというふうに思っております。

仲村委員 ぜひそのような気持ちで引き続き沖縄の振興開発、優位性を生かされるような政策を続けていただきたい、このように希望するものであります。

 平成十二年七月二十一日から二十三日まで沖縄でG8の二〇〇〇年サミットが行われ、県民の総力を挙げての協力で大きな成果をおさめました。その国際的大イベントがきっかけとなって、その後、国際会議や太平洋・島サミットなど数多くの会議や行事が行われるようになりました。これはまさに沖縄の地理的位置の優位性がもたらしたことだと思っていますので、政府としては、今後とも沖縄県の国際交流拠点としての優位性を活用するために努力すべきだと考えますが、この点について中曽根外務大臣の御所見をお伺いいたしたいと思います。

中曽根国務大臣 今委員がお話しになられましたように、二〇〇〇年でしたか、沖縄におきまして九州・沖縄サミットが開かれまして、その後、二回にわたる太平洋・島サミットが沖縄で開催をされたわけでございます。そのほか、数々の国際会議も開催をされておりまして、平成十八年度が十三件、十九年度が十二件、昨年度はまだ集計中でございますが、おっしゃいますように沖縄振興という観点から、または国際交流の拠点として政府としても位置づけを行い、平成十二年の六月には閣議了解を行いまして振興を御支援しようということになっております。

 そういう意味では、国際会議等を開催するということは大変意義があることでございますので、外務省といたしましても、各種国際会議の沖縄への誘致につきましては積極的に取り組んでいきたいと思っております。

仲村委員 この二〇〇〇年サミットが行われた会議場は万国津梁館といって、新しくつくったんです。その後、政府としても、いろいろな国際会議などはぜひ沖縄のこの万国津梁館を利用してほしいというようなことで、一時はいろいろな会議や催し物がそこで行われていたんですが、最近、少しこの会議が疎んじられているような感じがいたしますので、今外務大臣がおっしゃったような形で、ぜひいろいろな国際会議が沖縄で行われるようにお願いをしたい、このように思っております。

 次に、観光産業は沖縄にとって最大のリーディング産業として、今後、その振興、発展のために最善の政策を着実に推進していかなければならない課題であります。

 現在、沖縄の観光客の入域客数はおおよそ六百万人に達しています。そのように毎年二〇%程度の伸び率で増加を続けている中で、仲井眞知事は、二〇一六年までに入域客数一千万人を達成する目標を立てて、あらゆる角度からその目標達成に向けての条件整備に努めているところであります。

 佐藤大臣として、沖縄の観光産業発展についてどのようなお考えをお持ちか、御意見をお聞きしたいと思います。

佐藤国務大臣 お答え申し上げます。

 観光・リゾート産業は沖縄の経済を牽引するリーディング産業でございますし、先生おっしゃられたとおりだというふうに思います。そして、自立型経済の構築のためにはその振興は必ず必要だというふうに私どもも思っておりまして、沖縄の観光客数、今、六年連続で最高記録を更新いたしまして、順調に推移しております。その一方で、観光客の平均滞在日数や観光消費額というところになりますと伸び悩んでいるなどの課題がございます。通年滞在型の質の高い観光の実現に向けた取り組みを進めていく必要があるというふうに考えております。

 内閣府としては、沖縄県、関係省庁と連携しつつ、空港や道路などのインフラの整備のほか、観光振興施策として、例えばでございますけれども、国際的な海洋性リゾート地である沖縄の魅力をさらに高めるために、観光の人材の育成、国際観光戦略モデルの構築、文化資源活用型観光戦略モデルの構築、そして自然環境等の保全や景観に配慮した観光振興等の施策に取り組む所存でございます。

仲村委員 先に述べたように、沖縄がアジア太平洋地域の中心に位置する観点から、那覇空港がこの地域のハブ空港としての位置づけは年々高まってまいりました。特に、沖縄のリーディング産業としての観光産業を発展させていくためにも、那覇空港の機能を高めていく必要性については論をまたないところであります。

 現在、那覇空港は、三千メーターの滑走路一本であります。那覇空港は、二十四時間離着陸運航できる全国でも数少ない重要な拠点空港であります。

 那覇空港の現状と将来予測についてでありますが、現在のところ、航空機の一日の離着陸回数は三百八十七回で、通過旅客数は年間千四百三十万人であります。そして、現在の状況からいたしまして、二〇二〇年には、離着陸回数は一日四百六十三回、通過旅客数は一年間で千八百五十万人に達する予想がなされているところであります。

 現在、国土交通省航空局では、那覇空港の第二滑走路増設に向けての計画が順調に進展をしていると思います。先般の説明では、沖合展開に向けて、平成二十二年度の調査費として一億七千万円を予定しているという説明をお聞きいたしました。いよいよ長年の夢が実現するなと思っているところであります。

 ただしかし、今の滑走路が三千メーターであるのに対して、なぜ新滑走路は二千七百メーターなのかという気がいたします。この点を含めて、第二滑走路が完成するのはいつになるのか、お答えをいただきたいと思います。

関口政府参考人 お答え申し上げます。

 那覇空港の整備でございますけれども、今先生御指摘のとおり、将来の需要増に対応いたしまして、那覇空港の滑走路の増設を実現したいということで、私どもも現在検討を進めておるところでございます。

 平成二十年度三月までの検討では、パブリックインボルブメントと称しておりますけれども、地域の方々の御意見を聞きながら、いわゆる構想段階の検討を行ってまいったところでございまして、先月末、三月二十七日でございますけれども、那覇空港構想・施設計画検討協議会におきまして、増設滑走路の場所を現行の滑走路から千三百十メートル離した案ということで選定をさせていただいたところでございます。

 今後、平成二十一年度におきましては、管制塔の位置あるいは誘導路の位置など具体的な施設の配置につきまして、また引き続き地域の方々の御意見を聞きながら検討を進めてまいりたいというふうに思っております。

 今先生御指摘の滑走路の長さでございますけれども、現在、新しい滑走路につきましては二千七百メートルということで考えておりまして、これにつきましては、先ほど申し上げました構想段階における検討におきまして、将来離着陸可能性のある機材をいろいろ検討いたしましたが、その中で、現在見込まれます一番長い滑走路を必要とする機材、これは具体的にはボーイング767―300Fという貨物機でございますけれども、これが想定されるわけでございますが、この機材が離着陸に必要な長さが二千七百メートルで、またそれで足りるというふうに考えておりまして、現在、二千七百メートルということで検討を進めておるところでございます。

 いずれにいたしましても、今後、この施設整備の具体的な計画を進めてまいりまして、早急にこの構想の実現に努めてまいりたいと思っております。

仲村委員 私は、今の質問の中で、来年から予算計上もしている段階に来ているわけでありますけれども、大体完成するのはいつごろ、何年度を予定しているのかということをお聞きいたしましたので、ぜひその点についてもお答えをいただきたいと思います。

関口政府参考人 失礼いたしました。お答え申し上げます。

 いつ完成するかということでございますけれども、これにつきましては、先ほど申し上げましたとおり、今年度、施設計画の具体的な案を詰めてまいりまして、その後、必要な事業採択を行います。一般論でございますけれども、事業採択を行いますと、当然、埋立工事等ございますので、必要な環境アセスメントに通常三、四年程度要するかと思います。また、その後、必要な工事が、一般論でございますが、六、七年というふうに見込んでおりますけれども、順調に行きますれば、そういった期間を経れば、その後供用の開始に持っていけるのではないかというふうに考えております。

仲村委員 私が先ほど申し上げましたように、一日の離着陸回数、そして通過客を考えますと、今、非常に無理な状態が続いているのであります。私たちが行き来するときに、最終の着陸態勢に入りましたと言ってアナウンスがあった後から、また空港の周辺を旋回するんです。空港が込んで、おりられないんですよ。

 そういう状態でありますので、先ほど佐藤大臣にお願いをしましたように、観光産業を振興していく上でもこんな状態では困るわけでありますので、いつになるかはまだ答えられないということでなしに、とにかく最善を尽くして、早急にこれができるように頑張っていただきたい、こういうふうに思っているところであります。

 次に、那覇空港の航空管制は嘉手納の米軍基地と統合一元化するというかねての話は最近全く音さたがなくなりましたが、その問題は一体どうなっているのか、御説明をお願いいたします。

関口政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいまお尋ねの件は、いわゆる嘉手納ラプコンと称されておりまして、沖縄におきます空港への進入管制業務の問題でございますけれども、今先生御指摘のとおり、この管制業務の米軍から日本側への移管は長年の懸案でございます。

 これにつきましては、先生御案内のとおり、平成十二年の三月に、米側から日本側へ、必要な運用上の所要が満たされるということが前提ではございますけれども、日本側に返還するということが表明されたところでございます。

 その後、米側と私どもでいろいろと事務的な調整をやってまいっておりまして、平成十六年の十二月に、日米合同委員会におきまして、進入管制業務の日本への移管に関する具体的な計画が承認をされたところでございまして、これに基づきまして、今、日本側の管制官の訓練をずっと実施してまいっております。当然、日本側の管制官が今後この進入管制業務を行わなければいけませんので、必要な訓練を行っておるわけでございます。

 これは、昨年の、平成二十年の一月でございますけれども、日米合同委員会におきまして、この具体的な移管の時期につきまして、平成二十一年度末までに移管を完了する、来年の三月末でございますけれども、それを完了するということと、運用所要が満たされることを前提にさらに早期の移管に向けて努力を継続するということについて改めて合意がなされたところでございます。

 これを受けまして、現在、移管に向けて米側及び関係省庁とも調整をいたしながら、要員の訓練及び必要な機器の整備を行っておるところでございまして、引き続きこの移管に向けた努力を続けてまいりたいと思っております。

仲村委員 これはぜひ早急に一元化をして、那覇空港の方が優先的に管制ができるようにしなければならないと思います。

 那覇空港の場合は、冬は北向きに飛んでいくんです。夏は南向きに飛んでいくんです。そういう感じで、北向きで飛んでいくときに、ずっと三百メーター高度で沖縄本島を通り過ぎるまで行くものですから、非常に怖いんです。大丈夫かねという気持ちをいつも持っておりますので、これはぜひ那覇空港優先に考えていかなければならない課題だというふうに思っておりますので、早く米軍との調整を済ませて管制一元化を図っていただきたい、こういうふうに思っているところでございます。

 次に、那覇空港の貨物ターミナル計画は、本当に夢のある、雇用や経済効果の高い事業で、現在、その進捗状況を見て、私たちは非常に頼もしく思っているところであります。それはいつ完成するのか。また、その貨物ターミナルは、ANAの外国からの貨物を那覇空港から日本各地に分配輸送の拠点空港にすると聞いておりますけれども、これはANAのほかに、JALとかアメリカのフェデックスとか、そういう貨物も同様な取り扱いになるのか。その点についてお尋ねをしたいと思います。

関口政府参考人 お答えいたします。

 今お尋ねのありました那覇空港の貨物ターミナルでございますけれども、今御指摘のとおり、現在、その移転整備を進めております。

 現在の貨物ターミナルのスペースでございますけれども、現在一万一千平米でございますけれども、これが新たな整備によりまして約四万四千平米ということで、約四倍のスペースが確保されることになります。

 その中で、全日空が貨物基地としてこれから那覇空港を積極的に使いたいという意向がございまして、そのうち三万五千平米ほどは全日空が使用するということで今考えておりまして、その残りのスペースは、今先生から御指摘のありました、その他の航空運送事業者あるいは取扱事業者などが使用するということで現在検討を進めております。

 施設の整備につきましては、一応、来年の一月くらいには施設自体は大体でき上がるのではないかというふうに見込んでおりますけれども、現在整備を進めております大栄空輸という、空港内で貨物を取り扱っております事業者でございますけれども、こちらの方で具体的な整備を進めておりまして、今後、全日空を初め、その他の関係事業者も十分利用ができるのではないかというふうに考えております。

仲村委員 今の説明を聞いておりましても、新しい貨物ターミナル、四万平米ぐらいの新貨物ターミナルができるということでありますけれども、そのうち三万平米をANAが使う、残りはほかの航空会社が使う。どうもこれは、これでいいのかな、公平性の面でどんなかねという感じを持っておりますが、その点はどうですか。

 例えば、さっきもお聞きしましたように、JALとかアメリカのフェデックスとか、もう頻繁に荷物を運んでくるんです。だから、そういう航空会社はANAが使う残りしか使えないということになるのか、その点についてお答えいただきたいと思います。

関口政府参考人 お答えいたします。

 確かに、今先生御指摘のとおり、一応、全日空がスペースを確保するということで大きなスペースを考えておりますけれども、当然、現在の貨物のスペースの整備につきましては、関係の事業者の意見をよく聞きながら進めておりますので、当面これで対応ができると思っておりますけれども、貨物の需要が変動いたしますので、そういったことにあわせて、当初整備した事業者がその他の事業者に貸しますとか、そういった融通は十分可能かと考えております。

仲村委員 ぜひ各会社が公平に業務ができるように取り計らっていただくことが大事だと思っておりますので、この点は指摘をしておきたいと思います。

 次に、新石垣空港の工事の進捗状況についてであります。

 これは、石垣空港といえば、恐らく二十年ぐらい、ああでもない、こうでもない、こっちでもだめだ、あっちでもだめだということで、ようやく今の場所に決定をされたわけでありますが、そこに一坪反対地主がいるんですね。これはまた、たまたま県内の人でもないんです。何名かの反対地主がいるんですが、その土地の買収状況がどうなっているのか、そして、何年をめどにその新石垣空港が完成する予定であるのか、この点についてお答えをいただきたいと思います。

関口政府参考人 お答えいたします。

 新石垣空港の整備でございますけれども、今先生御指摘のとおり、沖縄県が設置管理しております新石垣空港、石垣空港の新空港でございますけれども、これは平成十八年度に現地着工いたしまして、現在、環境保全にかかわる措置などを講じながら用地造成等を進めておるところでございます。

 今御指摘のありましたとおり、空港に必要な用地でございますけれども、現在の取得率は九八・四%ということでございまして、残り一・六%がまだ取得できていない状況でございますけれども、これにつきましては、共有地権者の所有する用地等の取得のため、土地収用法に基づく手続を現在実施しておるところでございます。

 また、開港予定につきましては、県の方では、現在、平成二十四年度の供用を目標としているというふうに私どもは承知しておるところでございます。

仲村委員 この一坪反対地主、これは本当に邪魔をするためにそこに土地を買ったような感じでありますので、早目に法的措置をもって買収ができるようにお願いをしたい、このように思っているところでございます。

 最後に、国の出先機関の事務権限の見直しについて、新分権一括法案を平成二十一年度中にできるだけ速やかに国会に提出すると言われております。その中で、内閣府沖縄総合事務局は、平成二十三年度で終了する沖縄振興特別措置法の見直しの時期に、大幅に事務や権限等が見直されるようなことが言われております。

 さきにも申し上げたように、復帰三十七年間で政府の格別な施策によって本土との格差はおおむね是正されたとはいえ、戦後六十四年の今日、沖縄は全国のわずか〇・六%の県土面積に在日米軍基地の七五%がいまだに存在し、県民生活やすべての社会活動に大きな制約を受けている状況にかんがみましても、沖縄総合事務局の果たしている現在の役割、これは実に重要な仕事をやっているところであります。

 したがって、沖縄総合事務局の現在担っている役割の事務権限を見直されることのないようにすべきだと思うのでありますけれども、私はむしろ現在よりもその役割は強化すべきだというふうに思っておりますが、そういったものが縮小されることのないように沖縄担当部局としても気を配っていくべきだとぜひお願いをしたいと思いますので、佐藤大臣の御決意をお聞かせいただきたいと思います。

佐藤国務大臣 沖縄総合事務局でございますけれども、沖縄のこれまでの歴史、先生がおっしゃられたような歴史、そして現在置かれている状況など特殊な事情にかんがみますと、国の責任において諸事業を実施するという使命と役割があるというふうに考えております。

 昨年末に地方分権委員会から出された第二次勧告においても存続することとされたところでございまして、そのあり方については、年内の改革大綱の取りまとめに向けまして、沖縄の特殊事情に十分配慮しつつ、適切に対応してまいりたいというふうに思っております。

仲村委員 よろしくお願いいたします。

 時間が来ましたので、これで終わりたいと思います。ありがとうございました。

前原委員長 次に、丸谷佳織君。

丸谷委員 公明党の丸谷佳織でございます。

 北方問題について質問をさせていただきます。

 二月の十八日、サハリン州のユジノサハリンスクで麻生総理とメドベージェフ大統領の首脳会談が行われました。この中で、北方領土問題につきまして、メドベージェフ大統領の方からは、新たな、独創的で、型にはまらないアプローチのもとで作業をしていくことが確認をされまして、麻生総理の方からは、従来の日本の主張でございます四島の帰属の問題というのが一番肝心であるという方針を改めてロシア側に主張した上で、北方領土問題をきちんと解決したいとあなた自身がおっしゃるのであれば、御自分で政治的決断をしてもらう以外ほかに方法はないと申し入れたというふうにお伺いをしております。

 この日ロ首脳会談自体で北方領土問題が大きく一歩前進したということにはならないかもしれませんけれども、ロシア側の方からは新たなアプローチでやっていきましょうという提案がされ、日本側からは、それはいいけれども、まず四島の帰属の問題を解決し、ロシア側の答えを次に会うときに示してほしいといったようなやりとりがなされたということは、近年、領土問題自体が硬直状態にあったことを考えますと、評価できる会談であったというふうに考えております。

 しかしながら、この新たな、独創的で、型にはまらないアプローチというものはどういうものなのか、これを政府はどのように認識して交渉していくのか、この点からまずお伺いをさせていただきたいと思います。

中曽根国務大臣 二月の十八日にサハリンで行われました日ロ首脳会談では、麻生総理とメドベージェフ大統領の間で領土問題につきまして突っ込んだ意見交換が行われたわけでございます。その結果、両首脳は、一つは、この問題を我々の世代で解決するということ、それから、これまでに達成された諸合意及び諸文書に基づいて作業を行うということ、そして、今委員がお話しされました、メドベージェフ大統領が指示を出しました、新たな、独創的で、型にはまらないアプローチのもとで作業していくということ、そして、四点目でございますが、四島の帰属の問題の最終的な解決につながるよう作業を加速するために追加的に指示を出すことということが両首脳の間で合意されたわけでございます。

 このうち、委員御指摘の、新たな、独創的で、型にはまらないアプローチとは、メドベージェフ大統領が指示を出したものでございますが、これは具体的な提案という性格のものではなくて、領土問題の最終的な解決に向けました同大統領の取り組みの姿勢を述べたものと理解をしております。これは、領土問題に対しまして真摯に取り組もうとするメドベージェフ大統領の姿勢のあらわれというふうに認識をしております。

 日本側といたしましては、このアプローチがロシア側が従来述べているような意味での五六年宣言に基づく解決と異なるアプローチを意味しているのであれば、これは平和条約交渉に新たな方向性を与える可能性があるというふうに受けとめておりまして、今後の交渉におけるロシア側の対応に注目をしているところでございます。

丸谷委員 今外務大臣のお話をお伺いした中で、メドベージェフ大統領が、御自分が大統領につかれて、しっかりと北方四島の問題について強いリーダーシップのもと解決をするために努力をしていくという決意がこの提案の形につながったんだという理解をさせていただくわけでございますけれども、日本側からは、麻生総理が次に会うときまでにはある程度の形をまた出してほしいと言って、球を投げたということがございました。

 今回、四月二日にロンドンで金融サミットが行われている、そのときに日ロ首脳会談が行われ、また何らかの前進あるいはロシア側からの回答があるものというふうに非常に期待をしていたところでございますけれども、残念ながら今回は日ロ首脳会談は開かれなかったという状況でございます。

 今回、日本側が次に会うときまでにはお返事をと言ったことが足かせになったというような議論は、余り建設的ではなく、私はするべきではないと思います。

 領土問題を解決させるために、前進するための会談の準備というのが日ロ両国にとっては必要であることは言うまでもございません。しかしながら、それは余り長い時間をかけるものでもないというふうに考える次第でございますが、次回の首脳会談、時期的には、五月のプーチン首相の来日の準備もあると思いますし、七月のG8サミットということもあるかと思いますが、今の見通し、あるいは準備状況というのはいかがでしょうか。

中曽根国務大臣 まず、先ほど申し上げましたけれども、さきのサハリンでの首脳会談におきましては、麻生総理の方から、メドベージェフ大統領に対しまして、ロシア側に平和条約問題について具体的な進展を図る用意がないのであれば、これはパートナー関係を構築することにはならない旨をお伝えいたしまして、そして、北方四島の帰属の問題の最終的解決に向けましたロシア側の取り組みの姿勢を問いかけたところでございます。

 政府といたしましては、次回の首脳会談を含めまして、今後の交渉でのロシア側の対応に注目をしているところであります。そしてまた、政府といたしましては、先ほどからお話ありますけれども、北方四島の帰属の問題を解決して、平和条約を締結する、そういう基本方針のもとに、今後の一連の会談を通じて領土問題の最終的な解決に向けて引き続いて強い意思を持って交渉を進めていきたいと思っておりますが、今回ロンドンで行われております金融・世界経済に関する首脳会議の際には、大変残念ながら、双方の日程の調整がつかず、首脳会談は行われない見通しでございます。

 次回首脳会談につきましては、今委員もお話しされましたけれども、七月にイタリアでのG8サミットがございますが、そういうサミットの際などに会談を行う方向で調整することになっております。

丸谷委員 では、続きまして、ビザなし交流について質問をさせていただきます。

 北方領土問題の解決に向けた環境整備の一環としてビザなし交流を実施してまいりましたけれども、ことしに入りまして、出入国カードの提出を要求されるようになって、十七年間の歴史を持つビザなし交流が突如としてストップをしております。原因は、二〇〇二年に改正されましたロシア連邦法によって、これまでロシア側であいまいに扱われてきたビザなし交流に対して、出入国を管理する内務省の移民局が法律を厳格に適用したということにあります。

 現在は墓参事業も人道支援事業もストップして、サハリンの日ロ首脳会談で近いうちの実施が確認されたばかりでありますけれども、オホーツク海の生態系保全プログラムという日ロ共同調査さえも実施のめどは立っておりません。これこそ、事務レベルでの解決は難しい問題でございまして、首相や外務大臣が首脳レベルで解決に当たっていくべき問題であると思います。

 ビザなし交流ということに関しましては、単に出入国のロシア側の国内法だけの問題ではなく、外交問題であることを十二分にロシア側に理解させるということが必要であると思いますけれども、現在、このビザなし交流の再開に向けましてロシア側にどのようなレベルで働きかけを行っているのか、また、再開の見通しについてお伺いをさせていただきます。

兼原政府参考人 お答えいたします。

 いわゆる出入国カード問題につきましては、本年一月にこの問題が発生しまして以降、ロシア側との間で、東京及びモスクワにおきまして、さまざまなレベルでこの問題の解決に向けた協議を鋭意行ってまいりました。

 二月の十八日にサハリンで行われました日ロ首脳会談におきましても、この問題について話し合いが行われております。両首脳は、四島交流等は信頼醸成の観点から重要であり、お互いに継続していく意向であることを確認し、その上で、友好的かつ建設的にこの問題を解決させるべく事務方に至急作業させることで一致をいたしました。

 このような首脳間の合意も踏まえ、本年五月から四島交流事業等が予定どおり行われるように早期に調整を了すべく、現在、ロシア側との間で鋭意協議を行っているところでございます。

丸谷委員 本当に手続だけの問題でもないですし、各国の国内法だけの問題でもないということを両国がしっかりと踏まえ、また、戦後六十四年という先ほど仲村議員のお話もありましたけれども、島を追われ、島の返還を悲願として闘っている皆さんに対して、本当にこれは失礼な結果を招いていることだと思います。ぜひ外交レベルで、またより高いレベルで、一日も早い交流の再開を目指して努力をしていただきたいと思います。

 続きまして、北方領土問題に関する特別世論調査についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 昨年、内閣府が、北方領土問題に関する特別調査を行いました。全国二十歳以上を対象にしまして、有効回収数が千八百二十六人という数の結果でございましたけれども、これをじっくり私も読ませていただきました。これを読んだ結果、非常に私自身はショックな結果だったと思っております。国内における教育、そして啓発活動を早急に見直さなければいけないのではないか、今のままではこの北方領土の問題というのが下火になってしまう、人々の意識から薄れていってしまうという危惧を抱いた次第でございます。

 北方領土問題について、約八割の人が何らかの形で認知はしているものの、何で知りましたかという問いかけに関しては、その多くが新聞あるいはテレビという媒体でございまして、学校の授業で知りましたという数は二九・六%しかございません。また、返還運動について、約五割の人が、聞いたことはあるが内容は知らない、または聞いたことがないということになっています。

 さまざまほかにも調査結果はありますけれども、担当大臣、この調査結果を見て率直にどのようにお感じになったのか、まず感想をお聞かせ願いたいと思います。

佐藤国務大臣 調査の結果によりますと、先生のおっしゃいますように、北方領土問題についてという言葉についてはほとんどの人が認知をしている、北方領土問題自体の内容についても八割近くの人に一定の理解が得られているという結果が一応出たわけでございますが、ここまでは関係の皆様の御尽力のたまものだというふうに感謝を申し上げたいと思います。

 一方、調査から課題も見えてきておりまして、先生おっしゃられるように、理解度をさらに高めていくことも重要な課題というふうに思います。若い世代ほど理解度が相当に低い傾向にあるということから、今後、若い世代への広報啓発活動、北方領土教育の取り組みを充実していく必要があるというふうに私自身は思っております。

丸谷委員 担当大臣、非常に謙虚に今おっしゃっていただいたような気がします。なぜならば、問題について聞いたことがあって、内容も、ある程度までは知っているという方が調査の結果約八割に上ったということをもって、関係者の皆様の努力のたまもので敬意を表するといった御答弁をいただいたわけなんです。

 確かに、関係者の皆さんはすごく頑張っていらっしゃるんですね。ただ、これは、関係者の頑張りだけでは、やはりこの啓発活動の継続というのは非常に難しい状況になっておりまして、領土の問題ですから、国としてどのようにこれを徹底し、継続をし、認知を高め、返還まで持っていくのかということを、国全体としてもっともっとかかわっていかなければ、とてもじゃないですけれども関係者の皆さんの努力だけでは続かないというのが、皆さん高齢者にもなっておりますし、現状ではないかと私は考えます。

 その中で、学校教育で知りましたという、この数の低さですね。この三割という数をどう見るかということも、意見は分かれるのかもしれませんけれども、三割の人しか学校で習った覚えがないというのは、私は余りにも低過ぎるのではないかというふうに思います。

 領土問題について国民の認知度を一〇〇%にしていくということを国は目指すべきだと思いますが、今後の学校教育の取り組みについて、文部省はこの結果をもってどのように考えていくのかというのをお聞かせ願いたいと思います。

前川政府参考人 学習指導要領に北方領土につきまして明記いたしましたのが、平成元年の改訂以降でございます。中学校の社会科地理的分野におきまして、領域の特色と変化について扱うと。その中で、北方領土が我が国の固有の領土であることなど、我が国の領域をめぐる問題にも着目させるということとされております。このような学習指導要領の記述を受けまして、現行のすべての中学校地理の教科書には、北方領土問題について記載されているというところでございます。

 学習指導要領に記載したということは、これは必ず学校で教えなさいということでございますので、これを各学校の教員にきちんと授業の中で取り扱ってもらわなければならないわけでございます。昨年の三月にまた改めて学習指導要領の改訂を行いましたけれども、北方領土等につきましての記述はそのまま生かされているわけでございますが、この改訂を機にいたしまして、教員一人一人に学習指導要領の趣旨を徹底するために、その学習指導要領の冊子を配付いたしまして、各種説明会等を開催いたしまして、その趣旨の周知徹底に努めているところでございます。

 また、独立行政法人北方領土問題対策協会等が行います北方領土問題に関する研修事業への教員等の参加につきましても、配慮が得られますように、平成十九年度以降、都道府県教育委員会等に対しまして通知を発出して促しているところでございます。

 文部科学省といたしましては、内閣府あるいは外務省等の関係府省あるいは関係機関と連携協力をいたしまして、これからの我が国を担います児童生徒が日本の領土につきまして正しく理解できますよう、各学校における北方領土に関する教育の充実にさらに努めてまいりたいと思っているところでございます。

丸谷委員 今いただいた答弁は、従来どおり、過去に衆参の沖縄北方特別委員会の方でこういった同様の質問がなされたときに答弁をされているままでございまして、それであれば私は答弁は要らないというふうに事前に言っておいたはずでございます。

 では、その結果をもって、教科書には書いてあるんだけれども、この北方領土問題に対してだけ三割しか徹底されていないと見るのか、それとも日本人の子供たちの学力が落ちて非常に理解度が低いという教育全体の問題なのか、これについてはどうですか。答弁しづらいかもしれませんが。

前川政府参考人 確かに、今回の特別世論調査の結果で見ますと、学校の授業でしたという方々が全体の約三割ということでございますが、先ほど申し上げましたとおり、この学習指導要領で明記いたしましたのが平成元年の改訂以降でございますので、学校で必ず習うことになったのがそれ以降でございます。したがって、学校で習ったはずであるという世代は二十代から下の世代でございまして、この世論調査自体は各世代にわたっているということで、二十代だけをとってみますと、六割近くの人たちが学校で習ったと言っているわけでございます。

 ただ、これが決して高いわけではございませんので、これを一〇〇%にすべくさらに努力をしてまいりたいと思うわけでございます。

丸谷委員 今後の世論調査で数字が上がってくることを大変期待するところでございますけれども、学校の現場もあるんでしょうし、教員の皆様への徹底ですとかいろいろな面があると思いますので、文部科学省、内閣府は協力して、認知度を上げるためにぜひ今後も努力をしていただきたいと思います。

 では、最後でございますけれども、学校教育だけでは認知度は上がっていかないという現実もあります。この結果を見ると、三二・五%の人が、返還運動に機会があれば参加したいというふうに前向きなお答えをしていただいています。これは、どんな問題かはわかっていないんだけれども、三二・五%の人は、返還運動があるのであれば参加したいという非常にうれしい結果ではなかったかと思います。この三二・五%の声を非常に重要視して政府は取り組むべきでありまして、しかしながら、返還運動の取り組みというのが、今までと同じではなく、若い世代に直接訴えることができるような、インターネットを用いた広報啓発活動というのを充実させていくべきなのではないかというふうに考えております。

 ただ、このインターネットを用いた方法を模索するに当たっても、従来の、私たち世代ですとかもうちょっと上の世代、あるいは霞が関の皆さんのお考えの中では、若い世代に直接訴えるような方法というのが出てこない可能性もあることを考えて、今までにない形で、若い世代の皆さんが直接その方法を考えるのにかかわれるような方法を考えていくべきだというふうに思いますけれども、担当大臣のお考えをお伺いさせていただきます。

佐藤国務大臣 お答えを申し上げます。

 北方領土問題の広報啓発に係るインターネットを活用した情報発信については、例えばでございますけれども、北方対策本部のホームページの携帯電話の専用ページを新設するなど、若い世代に効果的に働きかけるためのさまざまな工夫をしているところでございますが、なかなかヒットしないんだというふうに思います。したがって、若い方が見たいという意識を持てるようなホームページにつくり変えたり等々、考えていきたいというふうに思います。

 また、若い世代が主体的に参加することが重要であると思いますし、私、先日、都内の佃中学校というところに行かせていただいて、授業参観をさせていただきました。そのときに、中央大学の杉並高校の方々が、修学旅行とリンクして北方領土に隣接する地域を訪れた際によく勉強をしていただいて、元島民の方々のお話を聞いて、それを基本として佃中学校の生徒たちに授業をしている姿を目の当たりにいたしまして、何かできないかなということを感じさせていただきました。

 北方担当の私のところでやるにしても予算がございませんから、この辺は各省庁にお願いして、例えば、修学旅行に補助金を出していただくなりして、北方領土に隣接する地域を訪れた際に、帰ってきたときには必ず中学校に行ってそういう授業をしていただくなんという、マニュアルをつくって広報啓発をすればじわりじわりと広がっていくのではないかなという思いがしたところでもございまして、そんなアイデアも含めて頑張ってまいりたいというふうに思っております。

丸谷委員 以上で終わります。どうもありがとうございました。

前原委員長 次に、三井辨雄君。

三井委員 前原委員長、御就任おめでとうございます。前原委員長のもとで質問させていただく、大変光栄に思っておるところでございます。

 今まさに丸谷佳織委員の質問と重複するかもしれませんが、二十一年の北方領土返還要求全国大会が二月七日に九段会館で開かれました。中曽根大臣、佐藤大臣とともに、私も民主党を代表してごあいさつをさせていただきました。

 本年は、終戦直後に旧ソ連軍に不法占拠されてから既にもう六十四年、大変な月日がたったわけでございます。そしてまた、北方領土の日が制定されて二十八年目を迎えました。終戦時に約一万七千人だった元島民の皆様は、御存じのとおり既に半数以上の方が他界され、また、お元気な方も平均年齢は七十五歳、まさに後期高齢者という状況になっております。もはや本当に一刻の猶予も許されない状況であると思います。

 先日の二月七日の大会アピールの中にも、「何故、問題解決がこのように長引くのか強い怒りを禁じえません。」「これ以上歳月をかけることは断じて許すわけにはいきません。」という強いお訴えがありました。また、「じいちゃんの故郷」と題した元島民三世の小学生の朗読や、新堀さんという御家族のふるさとへの思い、これまでの運動の積み上げ一つ一つを実際にお聞きして、私は大きく心動かされたわけでございます。

 当然、佐藤大臣、中曽根大臣もお聞きになったと思いますけれども、元島民の皆様のお話をやはり直接聞くことがまさにどれだけ大切なことかということを実感されたと思います。当日、九段会館の約一千四百名の参加者の中から、いつまで待たせるのか、そしてまた政治は何をしているのかという大変厳しい御批判の声もありましたが、佐藤大臣、また中曽根大臣がこの大会に御出席されましてどうお感じになったか、お答え願いたいと思います。

佐藤国務大臣 お答えを申し上げたいと思います。

 二月七日、北方領土の日に開催されました北方領土返還要求全国大会において、先生も御出席をされ、私も、正直、初めて出席をさせていただきました。

 大会では、おっしゃられるように、元島民を初めとする返還要求運動関係者の皆様方の声、そして、特に今おっしゃられました、初めて自由訪問で元島民のお孫さんとして島を訪問された小学三年生のお子さんやそのおじいさんの思いを直接聞かせていただくなど、北方領土に向けて一致した願いと強い意思、決意を心強く感じたところでございます。

 政府といたしまして、返還の実現に向け具体的な進展が図られるよう引き続き強い意思を持って外交交渉を進めておりまして、内閣府といたしましても、北方領土問題に対する国民一人一人の理解と認識がさらに深まるよう広報啓発活動に取り組み、関係団体等と連携をしながら一層の発展を図りたいというふうに思いますし、外交交渉を後押ししてまいりたいと思います。

 そこで、先生がおっしゃられたあそこの雰囲気というものは、私もひしひしと感じさせていただきました。おっしゃられるように、何でこれまでかかっているのだという意識もあの空気の中で十分に感じさせていただいたつもりでございますので、そういう意識をしっかりと持って、担当大臣としてこれからも頑張ってまいりたいというふうに思っております。

中曽根国務大臣 私も、委員からお話がありましたように、二月七日の北方領土返還要求全国大会に出席をさせていただき、ごあいさつもさせていただきました。

 元島民の方々、それから北方領土返還要求運動をしている皆さんからの北方領土の返還に向けた大変熱い思いというものも私は感じまして、そして、この早期返還が一日も早く実現するように努力しなければならないと、私自身も決意を新たにしたところでございます。

 小学生の方の朗読、また、今お話にありましたけれども、元島民の方々の年齢が高齢化してくるということ等を考えますと、もう戦後六十四年になるわけでありますけれども、とにかく、引き続いて、北方四島の帰属の問題というものを解決して平和条約を締結する、そういう基本方針のもとに強い意思を持って交渉を進めていかなければならないというふうに思っておりまして、また御指導をいただきながら全力で取り組んでいきたいと思っております。

三井委員 ありがとうございました。

 先般の十二月の委員会でも私は佐藤大臣に質問させていただきましたが、内閣府の調査が三十九年ぶりというのは、まさに戦後不法占拠されてから六十四年たっている、あるいは今申し上げましたように北方領土の日が制定されて二十八年、三十九年ぶりというのはまさに驚きですね。その世論調査の結果は先ほど丸谷委員からもお話がございましたけれども、まさにこれから国を挙げて、そして政治決着をつけなきゃならないというときが、もう遅いぐらいのときが来ているのじゃないかということを一つ申し上げたいと思います。

 次に、先般、麻生総理が日ロ首脳会談の記者会見で、向こうは二島、こっちは四島では進展しない、政治家で決断する以外に方法はないと語ったことが報道されました。総理は大統領の意欲にこたえたつもりかもしれませんけれども、私たち日本国民は四島返還が共通の願いであります。日本の基本的な主張を変更するようにも受け取られかねない乱暴な発言だ。領土問題を混乱させるものではないでしょうか。

 なぜこの件を確認質問するかと申し上げますと、麻生総理は二〇〇六年の安倍内閣の外務大臣のときに、私は大変驚いたんですが、間をとって三島返還というのは一つのアイデアとして考えられる、こういうことをおっしゃっているんですね。元島民を初め、もちろん日本国民の皆さんが、大変気持ちを逆なでされたということでお怒りになったことがあります。

 私も当然、この間をとって三島返還なんというのはとんでもない話でありまして、四島は日本固有の領土だということを我々は言い続けてきたわけですから、麻生総理が外務大臣のときにこのようにおっしゃっているということで、中曽根大臣に、総理大臣の発言ですから、しっかりと四島返還ということを確認しておきたいと思います。

中曽根国務大臣 政府といたしましては、北方四島の帰属の問題をまず解決して、そしてロシアとの間で平和条約を締結する、そういう従来からの基本方針のもと、北方四島の返還を実現していく考えでございます。また同時に、四島の我が国への帰属が確認されれば、実際の返還の時期とか、あるいはその態様、やり方については柔軟に対応する考え、これが現在の政府の方針でございます。委員御承知のとおりでございます。

 御指摘の麻生総理の御発言でございますけれども、これは従来の日本側の立場を述べたものでございまして、総理は、両方の首脳がリーダーシップを発揮して何とかこの問題を解決するように努力をしなければならない、そういう趣旨を強調したものである、私はそういうふうに理解をしておるところでございます。

 政府といたしましては、先ほど申し上げましたような基本方針のもとに四島返還の実現をするという立場に変更はございません。今後も引き続いて、そういう強い意思を持って、かつリーダーシップを持って交渉に臨んでいきたい、そういうふうに思っておるところでございます。

三井委員 ありがとうございました。外務大臣、ぶれることなく、四島返還ということは私たちがずっと主張してきたことでありますから、間違っても、三島返還だって一つのアイデアだとか、こういうことをおっしゃられるというのはとんでもない話でございますので、ぜひ四島ということでお進めいただきたいと思います。

 次に、先ほどと重複するかもしれませんが、北方四島に入域をする日本人に出入国カードの提出を求めている問題でございます。

 早期に建設的、友好的な解決を図ることを確認したと報道されておりますけれども、この出入国カード問題は、ロシア側の領土交渉を担当する外務省と出入国管理を担当する連邦保安局、移民局というんですか、解釈の仕方だと思いますけれども、とのあつれきが一因しているということも聞いております。ロシアの国内法、国内事情を根拠に日本側に強いるのは全く理不尽なことであると私は思っております。

 こうした情報の判断や分析について、日本の外務省の対応に緩みはなかったのか、あるいは事前にロシア国内の事情をどのように把握していたのか、お答え願いたいと思います。

 また、四島に対して行っている人道支援も、ロシア人島民の要望にこたえて注射器だとかの医療器具の人道物資を提供してきているわけでございます。元島民や民間の方々に委託してやっていただいている大変立派な事業でもありますから、一日も早い解決をしていただきたい。

 また、ビザなし交流が始まるのは五月からでありますから、それまでにこの出入国カード問題を決着させることが相互信頼に基づく領土交渉につながると考えますが、どのように進展しているのでしょうか、お伺いしたいと思います。

兼原政府参考人 お答えいたします。

 ロシアを訪問する外国人に対する出入国カードの提出につきましては、二〇〇六年七月に、ロシア国内法の改正に伴い義務づけられたものと承知をしております。

 北方四島への訪問につきましては、一九九一年十月十四日付の日ソ外相間往復書簡等に基づいて、「いずれの一方の側の法的立場をも害するものとみなしてはならない。」という前提のもとで設けられた枠組みに従って行われてまいりました。

 二〇〇七年、二〇〇八年におきましては、日本代表団がこれらの枠組みのもとで北方四島を訪問した際に、ロシア側から出入国カードの提出を求められることはございませんでした。しかしながら、ことし一月の人道支援物資供与事業のための北方四島への訪問の際に、直前になって、日本側代表団の四島への訪問のためには出入国カードが必要である、その旨のロシア側政府による立場の変更が表明されたものでございます。

 二月にサハリンで行われました日ロ首脳会談におきまして、両首脳が、四島交流等は信頼醸成の観点から重要であって、お互いに継続していく意向であることを確認し、その上で、友好的かつ建設的にこの問題を解決させるべく事務方に至急作業させることで一致をいたしました。

 現在、このような首脳間の合意も踏まえまして、委員御指摘のとおり本年五月から四島交流等が予定されておりますので、予定どおり行えるように、早期に調整を了すべくロシア側との間で鋭意協議を行っているところでございます。

三井委員 この出入国カードというのは、まさに北方四島がロシアの領土であるということを認めることになってしまうんですね。ですから、このことについては、先ほど冒頭に申し上げましたように、ロシア側の国内においてのあつれきはあるかもしれませんが、粘り強く交渉していただいて、せっかくここまでこの支援事業をしてきたことが頓挫してしまうということはお互いに残念なことでありますので、しっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 次に、北方領土の元島民でつくる千島歯舞諸島居住者連盟の小泉理事長と萬屋副理事長らの皆さんが、三月二十三日から二十五日までの三日間、モスクワを訪問されたということで、先日、私のところに萬屋副理事長が参りました。

 直接状況をお聞きしたところでございますけれども、一行は、ロシアの外務省や、日本では衆議院に当たるロシア国家院の議会関係者、また研究機関、イタル・タス通信などの報道機関に足を運んで、北方領土を語る会を開催してきた。かつての四島での暮らしぶりを説明し、領土の早期返還を訴えてこられました。今まで日本各地で北方領土を語る会を実施してきましたけれども、ロシアで開催したのは初めてということだそうであります。色丹島出身の小泉理事長、そしてまた多楽島出身の萬屋副理事長が引き揚げのときの苦労話を語ったほか、北方領土へのビザなし渡航の障害になっている出入国カード問題についても早期解決を求めたいということをロシア側と話してきたそうでございます。また、ロシア側から、元島民から直接、しかも初めて聞く話も多い、こうした民間交流を続けてほしいという声が寄せられたということであります。

 私も冒頭申し上げましたように、やはり元島民の声をしっかり聞いて、そしてそれを反映させることがとても大切なことだと思います。こうした北方領土を語る会の民間交流について、政府の後押しは継続して行っていただきたいと思うわけでございます。

 毎年度の北方領土を語る会を収録した冊子も外務省で出しているようですが、ほとんど知られておりません。私もこれを初めて見せていただきましたけれども、せっかくこういういい冊子があるわけですから、どんどん広報活動なり啓発活動に使っていただきたい。中身も大変よくできていますから、ぜひそういうことで積極的におやりになっていただきたいと思います。

 民間交流の支援についてお聞きしたいと思います。

中曽根国務大臣 大切なことは、国内世論を高め、結集を図っていくことだと思います。

 その一環といたしまして、外務省は、平成二年度から、国内におきまして、元島民による北方領土を語る会、こういう事業を実施しておるところでございます。そして、北方四島の元島民の方々に全国各地へ出向いていただいて、当時の状況などについて講演をしていただいております。

 今委員がおっしゃいました語る会は、国外で行う初めての試みとして、ことしの三月二十二日から二十五日までの間、元島民の方々から構成されます千島歯舞諸島居住者連盟の関係者の方々にモスクワを訪問していただきまして、小泉理事長などでございますけれども、ロシア側に元島民の方々の思いを直接伝える、そういう事業を実施したところでございます。

 今回、元島民の方々が、ロシア政府の関係者、それからロシアの国会議員、マスメディアに対してそれぞれの思いを直接伝えられたことによりまして、ロシアの国内における北方領土問題への理解それから関心を高めることができたのではないか、そういうふうに思っております。

 外務省といたしましては、今回訪問した語る会のそういう成果も踏まえまして、元島民の方々の御協力を得ながら、引き続いて、北方領土問題に関する啓発事業を実施していく考えでございます。

 それから、今委員が御紹介になりましたあのようなパンフレット等も有効に活用することが大切だと思っておりまして、そういう点につきましても努力していきたいと思います。

三井委員 ありがとうございます。中曽根外務大臣に期待しておりますので、ぜひ、民間のこういう支援に対して協力をお願いしたいと思います。

 次に、小泉理事長それから萬屋副理事長が今回いらしたときに、イタル・タス通信も訪問してきた。そのときに、クチコ副社長から、五月にプーチン首相が日本に来ますが、そのときにぜひ直接会って要望してください、こういう助言をいただいたそうであります。ロシア政府の首脳に北方領土返還の認識を深めていただくには絶好の機会だと私も思います。儀礼的なミッションばかりでは本質的な実態、実感はなかなか伝わってまいりませんので、私からもぜひ実現していただきたいことを強く要望申し上げますと同時に、御英断を求めます。

中曽根国務大臣 今お話ありましたように、先般、千島歯舞諸島居住者連盟の皆さんがイタル・タス通信社を訪問した際に、先方から、副社長さんからですか、委員が御紹介ありましたようなお話がございました。つまり、個人的な考えではあるが、五月のプーチン首相訪日の際に、元島民との懇談の場を設けることが意義があるのではないか、そういうお話があったということでございます。これはロシア政府の提案ということではありませんけれども、あちら側のマスコミの方がそういうことをおっしゃったということは、また意味のあることだと私は思っております。

 プーチン首相の訪日の日程につきましては、五月に行うということで既に日ロ双方で一致はしておりますけれども、具体的な日程については現在調整中でございます。今後、日程が確定いたしました段階で訪日のプログラムの内容を検討していくことになるわけでございますが、私といたしましては、実際、今委員が御指摘のようなそういう機会が実現できるのであれば、元島民の方々がそういう思いをプーチン首相に直接ぶつけるといいますか、訴える、そういうことができるいいチャンスになるというふうに思って、望ましいものだと思っております。

 ただ、プーチン首相の訪日時にこういう懇談の機会を設けることの適否等につきましては、また他の行事との関係もあるわけでございまして、今後訪日の日程等が決まってまいりましたらば、今のお話を受けまして対応していきたいと思っております。

三井委員 先ほど丸谷委員からも質問がございましたけれども、私も、四月二日ロンドンにおいて日ロ会談が行われるものと楽しみにしていたんです。ところが、残念ながら、それは外交ですからいろいろな事情があるかもしれません。しかし、せっかく今回はプーチン首相がいらっしゃるわけですから、外務大臣、この小泉さんそれから萬屋さんとぜひお会いさせていただきたい、このように再度お願い申し上げます。

 次に、予算についてお伺いしたいと思います。

 前回の質疑のときにも、北方対策予算についてお尋ねさせていただきました。北方領土返還要求運動の期待が高まるためにも、やはり先立つものが必要だと思います。具体的な行動に移せないのが本音ともとれますが、しかし、予算が大事だということを先日予算説明で宮澤副大臣から御説明いただきました。

 内閣府北方対策本部の今年度予算総額は十億三千七百万円、このうち北方対策本部に係る経費は二億八百万円。元島民後継者対策、国民の意識分析の経費が、昨年三十九年ぶりに行った先ほどの調査でありますけれども、まさか予算がなくて今まで三十九年もできなかったのか、こういうことだったのかなと。まさかこういうことはないということを信じたいと思いますけれども、先ほど佐藤大臣がおっしゃいましたように、例えば学校教育の中でも、やはりこの予算では到底、あらゆる広報啓発活動をする中でも絶対額が足りないんじゃないか、私はこういうぐあいに見るわけでございます。

 また、先般も質問させていただきましたけれども、後継船舶もいつできるのか、あるいはどういう予算で新しい後継船舶がつくられるのか、そのめどについてもわかれば教えていただきたいと思います。

 いずれにしましても、この予算では到底、いい啓発事業あるいはもっともっと国民的な運動を展開する上でもぜひ予算を多くつけていただきたいと思いますけれども、大臣、御答弁をお願いします。

佐藤国務大臣 先生おっしゃられますように、内閣府の北方対策本部の平成二十一年度の予算につきましては、総額で十億三千七百万円となっておりまして、前年度よりも若干下回ってしまったという現状がございます。

 厳しい財政状況のもと、必要な予算の確保に努めたいと思いますし、先ほど申し上げましたように、ここだけの予算でこの北方の啓発をするということでもなくて、各省庁連携をすれば、いろいろ知恵を出して何かできるのではないかなということも考えつつ、国民世論の啓発、四島交流等事業、元住民に対する援護措置等の施策を実施していく必要な経費というふうに思っておりまして、今後努力をしてまいりたいと思っております。

 なお、四島交流等に使用する後継船舶の用船に係る予算につきましては、実際に用船を行う平成二十四年度以降において発生する予算でございまして、平成二十四年度に向けて必要な予算の確保に努めてまいりたいというふうに思っております。

三井委員 ありがとうございました。

 次に、先般二月七日の北方領土返還要求全国大会のときに、超党派の議連から、事務局長の宮腰先生がごあいさつされました。昭和五十七年にできた北方領土問題の解決促進に関する特別措置法の改正を行いたいと言っておられました。目的の一つとして返還運動の再構築、二番目といたしまして交流事業に関する国の役割の明確化、三番目に北方領土隣接地域の振興ということで、私も御案内いただいておりますが、来週にも議連の会合が開かれるようであります。

 法的な裏づけ、あるいは予算の裏づけを持って北方領土返還運動の再構築を図ることが、先ほどから私が申し上げていますように、今最も政治に求められていると考えます。新年度を迎えたばかりでございますが、北方対策担当大臣として今後の御奮闘を私も期待するところでございますけれども、お考えをお聞かせ願いたいと思います。

佐藤国務大臣 お答え申し上げます。

 北特法改正に関する地元からの要望を踏まえた議員立法の動きがあるということは承知をしております。今後の北特法改正議論の推移を見守りつつ、関係省庁ともよく相談してまいりたいと思いますし、私個人といたしまして、議員の一人として一生懸命先生方とともに頑張りたいというふうに思っております。

 また、運動につきましては、おっしゃられたように、これからもしっかりと頑張っていきたいというふうに思いますし、先ほど予算のお話にもございましたが、先生方に御心配をいただかないような予算措置等々も自分なりには頑張ってまいりたいというふうに思っておりますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。

三井委員 しつこいようでありますけれども、先般の二月七日の大会にありましたように、私もあの場で、やはり政治的な決着をつけなければ、これはいつまでたったって、百年たったって解決しないなということもしみじみ思って帰ってまいりました。

 そこで、ロシア・サハリン沖の大規模資源開発事業のサハリン2から、三月二十九日、ようやくLNGの日本向け出荷が始まりました。サハリン2プロジェクトの確実な履行に向けた政府の支援や、貿易経済日ロ政府間委員会の活用について、たしか前回も委員会で質問させていただいたと思いますけれども、まさに二十九日からようやく出荷が始まったということで、感慨深いものがございます。

 とりわけ、極東地域に隣接する北海道は、地方分権の観点からも、地方分権というのは、私は常々、国内だけの問題でなくて、やはり隣国との経済交流というのは、何より活性化するだろう、こういうぐあいに思っているわけでございます。そういう観点からも、国内市場だけでなくて極東市場を開拓しようという意欲的な企業はまだ北海道にはたくさんございます。

 まず、こういう企業をこれからもしっかりと育てていかなければならないと思いますし、待ったなしで進む民間の経済活動、まさに今厳しい環境にございますけれども、極東ビジネスへの進出にこれからも政府のバックアップ、支援をお願い申し上げたいと思うんですが、これについてお答え願いたいと思います。

兼原政府参考人 お答えいたします。

 ロシアが極東・東シベリア地域の経済発展及びアジア太平洋地域への統合に真剣に取り組む、そういう姿勢を示していることを受けまして、政府といたしましては、二〇〇七年六月に、首脳レベルで極東・東シベリア地域における日ロ間協力強化に関するイニシアチブを提示いたしました。両国の民間同士の互恵的協力を促進していく用意を表明したところでございます。これを受けまして、日ロ間では、貿易経済日ロ政府間委員会の枠組み等を通じて、同イニシアチブに沿った互恵的協力のためのプロジェクトの発掘に向けた作業、協力を進めているところでございます。

 昨年には、日ロ間が海底光ファイバーケーブルでつながりました。本年に入りまして、二〇一二年にウラジオストクで開催されるAPECの会場となるルースキー島の橋の建設に日本企業が技術協力を行うことになりました。さらに、最近では、委員御指摘のとおり、日本企業が参加するサハリン2プロジェクトから、日本を含むアジア太平洋向けの天然ガスの供給が開始されました。本年二月の日ロ首脳会談では、官民一体となって具体的プロジェクトの形成に取り組んでいくということが両首脳により確認をされております。

 政府としては、今後とも、貿易経済政府間委員会等の枠組みを通じまして、日ロ両国間の民間同士の互恵的な協力の拡大を支援していく考えでございます。

三井委員 今、大変官僚的な御答弁をいただきましたけれども、もっと心のこもった、絶対これで支援していくということを力強く欲しかったなと思いますけれども、いずれにしても、これからの支援事業に対して、また経済活動に対しても、ぜひ国を挙げてお願い申し上げたいと思います。

 ちょうど時間が来ました。きょうは大変有意義な御答弁をいただきましたので、今後ともよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。

前原委員長 次に、松木謙公君。

松木委員 民主党の松木謙公でございます。

 いろいろと聞こうと思っていたら聞かれちゃったこともあったんですけれども、これから質問させていただきます。

 北方領土問題というのは、もちろん日本全体の問題で、元島民の人たちが憂えてそれでいいというわけじゃありません。六十四年前に、ある日突然侵攻してきた敵の軍隊、そして住民は島から追い出されたわけです。自分たちの生活の場であり、先祖代々いろいろな伝統や文化がはぐくまれてきた土地、それを奪われて、島外へと逃げ延びたわけでございます。

 現在私たちが享受をしている平和と繁栄の礎は、さきの大戦、全部とは言いませんけれども、ある意味でこういう不幸に彩られた、そういうものであるというふうに認識しております。それを特に忘れてはいけないんじゃないかなというふうに思うわけですけれども、昨年、世論調査を三十九年ぶりに再開していただいた、本当にありがとうございます。

 これは、去年の四月の同じ本委員会で私が質問させていただきました。初め、世論調査の結果が余りにも悪かったら大変だなという話もありまして、実は私、聞かないでおこうと思ったのを、間違って聞いちゃったんです。それでその結果が、実は結構意識が高かったというのが出たというのはほっとしているところなんですけれども。

 この中で、今いろいろな話があったんですが、若い人たちの意識はちょっと低いんじゃないかというのを言っている方が多かったんですけれども、この北方領土問題に関する特別世論調査ではそれが若干読み取れないような気がするんです。私も何となくそう思っていたんですよ、若い人たちの意識は低いんじゃないかと思っていました。でも、考えてみたら、何をもってそういうふうに思っていたのかなというのが、ひょっと考えたらわからないんです。これはだれでもいいからちょっと答弁してください。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 実は、昨年させていただきました特別世論調査の中で、細かな集計がその後最終的に出ていまして、年齢別の調査結果が出ております。

 先ほど、北方領土問題について、聞いたことはあるが内容は知らないというのが全体で二割弱ということで、一八・八%という数字がありますけれども、それを年齢別に見ますと、二十代が二六・二%、三十代が二一・〇%ということで、相対的にそういう若い層で、聞いたことはあるが知らない人がいる。一方、年齢が増すに従いましてその比率が低い、例えば六十代ですと一八・五%とか、そういったような数字がございます。

松木委員 なるほど、そういうところから読み取れるということですね。

 この世論調査のやり方なんですけれども、これは面接でやったということなんですか。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 内閣府の政府広報室の方で調査されておるんですけれども、基本的には面接で調査をしたというふうに聞いております。

松木委員 有効回収率が六〇・九%となっているんですけれども、私もちょっと世論調査のやり方というのはよくわからないんだけれども、あと四〇%ぐらいの人たちはどうなっているんですか。要するに、三千人までやるとかというやり方じゃなかったのか、どういうふうにやったのか。

藤本政府参考人 お答えします。

 私どもがちょっと聞いておりましたのは、基本的には、調査対象者を無作為抽出させていただきまして、そこにまず照会して、残念ながら対応していただけないという方がいらっしゃったということなんだろうと思います。

松木委員 やはり四割ぐらい対応してもらえないものなんですか。それは結構厳しいですね。

 しかし、三十九年ぶりにこういう世論調査をやったというのは、私としては、これは大変大きな一歩だった、そんな気がしますので、ぜひこのことをまた続けていただきたいと思います。

 では、質問させていただきますけれども、調査では、若い人たちがどうのこうのというのは、一応ある程度の結果が出て、若い人たちの意識が低いということですね。そういうことが出ているんですね。

 であれば、もちろん学校教育の中の、さっきの、授業で知ったというのは二九・六%と非常に少ないということになるんですけれども、これは、平成元年から学校教育で始めたと聞いていましたので、それをちゃんと直すと、六〇%ぐらいは授業で覚えたという人がいるということなんですね。それは間違いないですか。

前川政府参考人 御指摘のとおりでございまして、このたびの特別世論調査によりますと、北方領土問題を何で知ったかという質問につきまして、全体では学校の授業と答えたのは二九・六%だったわけでございますが、学校で必ず教えるようにということで学習指導要領の改訂をいたしましたのが平成元年でございまして、それが実施されましたのは平成四年からでございます。これに当たります世代といいますとやはり二十代でございますけれども、二十代だけをとってみますと、五八・六%の方々が学校の授業で知ったと答えているということでございます。

松木委員 大体六割の人が授業で知ったということなんですね。

 しかし、それでもやはりテレビ、ラジオだとか新聞の方が多いんですね。取り組みがまだちょっと少ないような気がするんですけれども、そこら辺はどうなんですか。

前川政府参考人 学習指導要領に規定したということは、必ず学校で扱えということでございますので、これは確かに御指摘のとおり、すべての生徒が学校で習ったという意識を持っていなければならないはずでございますので、私ども、それを目指してさらに一層指導に努めてまいりたいと思います。

松木委員 すべての人たちが習ったはずなのが六割というのは、ちょっと低過ぎるような気がしますので。

 それで、ちょこっと聞いた話なんですけれども、学校の先生個人個人で随分やり方が違うんだよということを巷間言われているような部分もあるんですね。そこら辺の調査というのはしたことはありますか。もうちょっと細かく言うと、要するに、先生によって、それを非常に丁重にやる人、そしてほとんど何もしないで流していっちゃう先生、こういうのがかなりいるという、うわさの域かもしれないけれども、こういう話を聞いたことはありますか。

前川政府参考人 具体的な授業のやり方は確かに現場に任せるしかない部分がございますけれども、学習指導要領につきましては、その解説書もあわせてつくりまして、どのように教えるべきかということを指導しております。

 私ども、指導要領及びその解説書に基づきまして、指導要領が改訂されるたびに、指導方法につきましてもあわせて研修などの機会をつくりまして徹底するように努めておるところでございます。昨年の三月にまた指導要領の改訂がございましたけれども、その際にも、このたびは一人一人の教員に指導要領及び解説書が行き届くようにいたしまして、その徹底に努めたところでございます。

松木委員 なるほど。では、これから少し上がるんじゃないかなという感じはしますけれども。

 結構北方領土の問題というのは大切だと思うんですね。ですから、そこまでやって、やれるものなのか、やれないものなのかという問題はあるけれども、学校に、何月にこういう勉強をしたんですかとかいうことをちゃんととるようなことはできないんですか。そこまではできないの。

前川政府参考人 一つ一つの学校での授業で、結局それは一つ一つの教室の中で、具体的に何をどのように扱ったかということまで全国的に調査するのは非常に難しいんじゃないかというふうに思っておりますけれども、今後とも、私どもとしては、必要性につきましては指導してまいりたいと考えております。

松木委員 難しいですか。ちゃんとあっちの方からレポートを出してもらえばできないことはないんじゃないかなという気がするんですけれども、そこまで国がぎゃあぎゃあ言うと怒られますか。

前川政府参考人 確かに、北方領土についてきちんと指導するということは大事なことでございます。

 ただ、今、学校は多忙化ということも一方で言われておりまして、教員の勤務の実態を調べますと、国あるいは教育委員会からのいろいろな調査票に記入するというようなことに時間をとられて授業になかなか時間が割けないというようなことにもなっているという実態がございますので、私ども、国から行う調査は厳選して、軽減する方向で取り組んでいるところでございまして、なかなか新しい調査を始めるということが難しい状況でございます。

松木委員 なるほど、なかなか大変な現場だというのがよくわかりますけれども、しかし、厳選する中でも、この北方領土の問題というのは僕は大切だと思うんですよ。そして、右寄りの考え、左寄りの考えだとか、いろいろな話があるけれども、領土の問題というのはそういうことには関係ないと思うんです。

 ですから、これはやはり最優先でやっていった方がずっといいと私は思いますので、ぜひそういうことでお取り組みをしていっていただきたいなというふうに思っているんです。ぜひお願いします。

 そして、この調査の中で、運動に参加したくないと回答する声が実は六割ぐらいあったんですね。しかし、参加したくない理由というのは、活動内容がわからない人が三六%、時間や労力の負担が大きいというのが四〇%です。また、返還運動の認知度については、取り組みの内容を知らない、取り組みについて聞いたことがない人を合わせると五二%おりました。

 このようなことから言えることは、返還運動の中身がわからないという問題と、運動への参加は何となく負担感ばかりで余り楽しめないなというふうに印象としてあるようでございますけれども、内閣府としては、せっかく世論調査もやったんですから、どういうふうにこれから反映させていこうと思っているのか、教えていただきたいと思います。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 先ほど委員の方から御指摘がございましたように、今回の調査結果によりますと、参加を阻害する要因というのはいろいろございますけれども、一方で、返還要求運動への参加意欲につきまして、機会があれば参加したいという人が全体で三分の一いるということもございます。

 それで、御指摘のように、参加の阻害要因としては、時間や労力の負担が大きいこと、あと内容がわからないといったことを挙げる人が多いという結果でございました。

 したがいまして、三分の一のせっかく潜在的に意欲のある人たちに積極的に参加してもらうためにそういう阻害要因を緩和するようなことをやっていくことが重要だということで、より幅広い国民の理解と参加を得られるように、取り組みに関する情報提供や多くの人が参加しやすい機会づくりなどに、これから関係機関、団体とも連携しながら努力していきたいというふうに思っております。

松木委員 よくわかりましたけれども、何かやはり工夫が要るんじゃないですか、イベントだとかそういうものにも。何となく北方領土の返還運動といったら、右と左と分かれたら何か右みたいな雰囲気が、そんなことは僕は全然ないと思っているんだけれども、そんなふうになって、ちょっと一般の人が入り込めなくなっているような気も実はしているんですね。だれが悪いとは言いませんよ、だれが悪いとは言いませんけれども、そういうふうに私は思っていますので、ぜひそこら辺を創意工夫もしていただきたいなと思っております。

 また、今後、今回のような世論調査、これは定期的に行っていくつもりなのかどうか、大臣、お答えください。

佐藤国務大臣 今先生からいろいろお話を伺いまして、先生の御提案で四十年ぶりに世論調査を行ったということもございまして、本年度については、昨年度の調査結果を踏まえまして、多くの人が参加しやすい機会づくりや取り組みに関する情報提供など、今後取り組むべき課題について、より具体的に国民の意識分析を行うための調査を実施する予定でございます。

 したがって、今後定期的な調査という御提案もございましたので、改めて考えてまいりたいというふうに思っております。

松木委員 ぜひ、これは定期的に調査していった方がいいんじゃないかな。そして、例えば今回六〇%の人が答えてくれて、わずか二%弱の人、知らないという人もいましたね。しかし、これは計算してみると三十六人とかだと思うんですけれども、これをもってこの人たちも知ったことになりますので、世論調査をやるということも一つのプラス要因じゃないかな、それだけでもプラス要因。まあ三十六人ですからね、どうということないといえばどうということはないんですけれども、そういうことも私は大切だなというふうに思います。

 そしてもう一つ、これは私の提案なんですけれども、例えば小中高と、一年に一遍、北方領土に対してのアンケートみたいなのをとってみたらどうですか。そういうことをすることはできないんでしょうか。

前川政府参考人 私ども、全国の児童生徒に対して、国語と算数についての学力調査というのはやっております。しかし、ほかの教科については今後の課題になっておりますので、将来的に社会科を学力調査の中に入れるということがあった場合、それは検討すべき課題に入ってくるかもしれませんけれども、当面、現時点では国語と算数の学力調査ということでやっております。

 先生がおっしゃっているアンケート調査とちょっと話がずれるかもしれませんけれども、教科の中で学習すべき内容についてそれが定着しているかどうかという観点からいきますと、一種の学力調査のようなものになるのではないかと思いますので、当面は私どもとしてはそのようなものは考えていないということでございます。

松木委員 字が書ける、歯舞、色丹とか、そういうのを書けるかという学力調査というわけじゃなくて、要するに、小中高とこういうことをちゃんとやっておけば、少なくとも三回やったら、学校の勉強でするというのもわかるけれども、三回、あるいはもっと言うと大学でもやってみるとか、そういうことを定期的にやっていったら、みんな覚えると思うんですよ、どんな人でも絶対忘れないと思うので、そういう意味で、やってみる必要があるんじゃないかなというふうに思っているんですけれども、これを答えるとしたらどこなんだ、内閣府になるんですか。大臣。

佐藤国務大臣 先生のおっしゃる趣旨はよくわかりましたので、関係機関とよく相談をさせていただいて、学力テストがどうのこうのということではなくて、おっしゃられるアンケート等々ができるかできないかということも含めて検討したいというふうに思っております。

松木委員 大臣、ありがとうございます。

 というのは、結局、世論調査みたいな形で、アンケート調査でも何でもいい、すれば、見るじゃないですか。そうしたら、ああ、こういうことがあるんだ、おれは知らなかった、私は知らなかった、私は知っていた、何でもいいんですよ、それでしっかり覚えるというふうに私は思っております。こういうことをやるのは決してこの日本にとってマイナスじゃないなというふうに思いますので、ぜひやっていただきたいと思います。

 それでは、また質問させていただきますと、去年の四月の本委員会で、岸田大臣が私に、外務省や各自治体と連携をとって運動の盛り上げ方を具体的に考えたいという答弁をされておるんですけれども、この大臣答弁を受けて、どんなようなことを一応やったのか、あるいは外務省もどのような協力をしたのか、そこら辺を、簡単でいいですけれども、お答えいただきたいと思います。

佐藤国務大臣 予算につきまして、先生がおっしゃっておられる方向には若干向かなかったかなというふうな思い……(松木委員「いや、予算のことは聞いていないです。どんな盛り上げ方を具体的に考えたのかという答弁」と呼ぶ)去年の岸田先生の事業に対してということですか。

 ちょっと事務局から答えさせていただきます。

藤本政府参考人 各省と連携してということですか。

 一つは、新しい取り組みという観点では、先ほどもちょっとお話ございましたけれども、一般の方々により関心を持っていただくということで、立教大学と連携してシンポジウムを開催するとか、そういう形で、歴史とか文化なんかをテーマにしながら、北方領土の問題について、しかも四島交流という形で現地に行った方々に参加してもらって話を聞くといったようなこと、あるいは意見交換するようなことを新しい取り組みとしてはさせていただいております。

 それと、各省との連携ということでは、先ほども話が出ておりますけれども、北方教育に関して、文部科学省と連携して進めていきたいという一環といたしまして、今全国三十三県で教育者会議というのが立ち上がってきておりますけれども、そういう現場での取り組みを促進していくということで、実際に研修とかいうようなところの場に教職員の方々が参加しやすいように文科省にも働きかけていただいて、参加を促進するような通知を出していただくようなことをさせていただいております。

松木委員 何ぼか新しい取り組みをやってきたということですね。それは結構なことでございます。

 そして、今、何か補正予算をまた出すような話がありますね。大臣、さっき、一生懸命頑張ったけれどもお金がなかなかうまくとれなかったというお話もされました。それはこういう時代ですからしようがないと思います。

 しかし、やはり人柄のいい大臣ですから、もう一度補正予算の中で何かうまく、前年度以上になるように、タフネゴシエーターをうんと発揮していただいて頑張っていただきたい、増額をとっていただきたいと思いますけれども、どうですか。

佐藤国務大臣 頑張らせていただきたいというふうに冒頭申し上げさせていただきたいと思います。

 先ほど三井先生にも申し上げたんですけれども、学校の取り組み等々、私どもの予算でなくても、学校側に文科省側が予算を使えばできる事業、広報啓発、また修学旅行に行っていただいて生で北方領土を見ていただくなんという事業は当然できるわけでありますから、ちょっと知恵と工夫を凝らして、もちろん予算も頑張らせていただきたいというふうに思っておりますが、省庁連携して啓発、啓蒙ができるように頑張ってみたいと思っております。

松木委員 何でも金だけつけばいいというものでもないですから、大臣、またいろいろな工夫もしていただきたいというふうに思います。

 それでは次に、これを質問させていただきます。

 昨年の七月の洞爺湖サミット、この際に、福田前首相とメドベージェフ大統領との首脳会談が行われて、前総理は、日ロ関係を高い次元に引き上げるためには、北方領土問題を解決し、国民のわだかまりを取り除く必要があるというふうに述べました。これに対してメドベージェフ大統領が、領土問題が解決されれば日ロ関係が最高水準に引き上げられることに疑いがないと答えて、領土問題を最終的に解決して、平和条約を結ぶための交渉を引き続き継続することで日ロが一致した。

 北方領土交渉を少しでも前進させるためには、あらゆる機会をとらえて外交努力をするということが必要だというふうに私考えましたので、昨年の本委員会で、サミットのような場で北方領土問題も主張できないのか、こういう話を提案させていただきました。当時の高村外務大臣は、領土交渉というのはやはり二国間の問題だということで、サミットでは取り上げるということにはならないだろうというお話をされておりました。

 しかし、その一方で、領土問題について基本的に内外に啓発することは重要で、サミットのときにどのように啓発していくのがよいか考えてみたい、こういうふうにも答えられておるんですね。

 この発言はその後どういうふうになったのか、高村大臣の個人的な見解ということであったのか、そうでなくて、外務省も具体的な取り組みを検討したのか、ちょっとお伺いをしたい。そして、検討の具体的内容についてお答えをいただきたいというふうに思います。

兼原政府参考人 お答えいたします。

 昨年七月の北海道洞爺湖サミットに際しての北方領土問題についての啓発につきまして、委員の御指摘を受けまして、外務省として、ロシアとの間の平和条約交渉の前進に貢献するものとするべく、十分な検討と工夫を施して、北海道とも連携をしつつ、取り組みを行ってまいりました。

 具体的には、北方領土問題を啓発する日本語及び英語のパンフレットを作成して配布しました。日本とロシアとの間の青年交流の枠組みで、ジャーナリストを含むロシア青年使節団の訪日を二度招請し、北方四島の元島民との懇談会等を通じて北方領土問題について考えてもらう機会を設けました。また、当時の福田総理は、ロシア通信社を含むG8通信社の共同インタビューを受けて、アジア太平洋地域での日ロ協力の意義と領土問題解決の重要性を訴えられました。また、在ロシア大使館におきましては、齋藤大使を初めとしまして、館員がロシアの新聞、テレビからのインタビューに積極的に応じ、我が国の主張を伝えるということをやってまいりました。

 以上でございます。

松木委員 そこそこやったということですね。

 この北方領土のパンフレットというのは、どのぐらいつくって、どういうところにまいたの。

兼原政府参考人 お答えします。

 当時、五千部つくりました。サミットの会場でもまきましたし、それ以外のところでもまいておりました。

松木委員 わかりました。

 ロシアのメドベージェフ大統領は、昨年七月の洞爺湖サミットのときの発言、十一月にペルーのリマで行われたAPECの首脳会議の際の日ロ首脳会談、そしてことし二月にサハリンで行われた日ロ首脳会談、これなどで、領土問題について我々の世代で解決するために作業を加速するといった強い意欲を示しております。これが日ロ首脳会談の単なるリップサービスということに終わらないように期待したいところですけれども。

 さて、こうした首脳会談を受けて、北方領土問題の解決に向け、外務大臣としてどのような前向きな行動をこれからおとりになるのか、あるいは、現在こういうことをやっているんだということがあれば、ここでお聞かせをいただきたいと思います。

中曽根国務大臣 今委員から、メドベージェフ大統領の発言等につきましてお述べになられましたけれども、簡単にこの一年間の整理をさせていただいて、御報告したいと思います。

 昨年七月の北海道洞爺湖サミットの際の日ロ首脳会談におきましては、メドベージェフ大統領は、当時の福田総理との間で、平和条約交渉に関する現段階での共通の認識を確認する中で、平和条約が存在しないことが日ロ関係の支障となっている、そういうふうにお話をし、領土問題の最終的な解決に向けて前進する決意を表明したところでございます。

 それから、APECでございますが、昨年十一月、APECの首脳会議の際の日ロ首脳会談におきましては、メドベージェフ大統領が、この問題の解決を次世代にゆだねることは考えていない旨述べられました。

 また、その後、メドベージェフ大統領が領土問題に関しまして、ロシア側の、あちら側の事務方に対して、新たな、独創的で、型にはまらないアプローチで取り組むことを指示したもの、そういうふうに承知をいたしております。これは、ロシア側において真摯に領土問題に取り組もうとする姿勢のあらわれであると私どもは受けとめておりますけれども、具体的な提案という性格のものではございません。

 また、さきのサハリンでの首脳会談におきまして、麻生総理からメドベージェフ大統領に対しまして、ロシア側に平和条約問題について具体的な進展を図る用意がないのであればパートナー関係を構築することにならない旨伝えまして、四島の帰属の問題の最終的解決に向けたロシア側の取り組みの姿勢を強く問いかけたところでございます。

 私も、昨年の十一月にラブロフ外務大臣と会談をいたしました際に、領土交渉につきましても経済分野などに見られる質的な進展に見合うような進展が図られなければならないと強く申し入れをしたところでございます。

 こうした一連の会談を踏まえまして、今後の交渉でのロシア側の対応に注目しておるところでございますが、最終的な解決に向けて、強い意思を持って交渉を進めていきたいと思っております。

 戦後、大変長い時間がかかっておりまして、先ほどからの質疑で、元島民の方々が高齢化されて、大変なお気持ちであることは私どもも十分承知しておりまして、そういう意味では、政府としても、一日も早い解決のためにいろいろな手段といいますか知恵を絞って、また粘り強い交渉をしていかなければならないと思っているところでございます。

松木委員 ありがとうございました。

 時間になりましたのでこれで終わりますけれども、外交交渉というのは、やはりタフネゴシエーターでなきゃいけませんね。とにかく力強く、そして粘り強く、中曽根外務大臣そして佐藤大臣であれば私は十分にできると思っていますので、ぜひ頑張ってください。

 以上です。

前原委員長 次に、市村浩一郎君。

市村委員 民主党の市村でございます。

 前原委員長のもとで、こうして質問させていただくのは大変光栄でございます。ありがとうございます。

 さて、中曽根外相、今の続きでお願いいたします。

 まさに今、外相から、ロシア側の対応に注目し、粘り強い交渉を進めていくというお言葉がありました。それはぜひとも必要だと思いますし、もっと具体化をしていくべき時期だと思います。もう大分議論がありましたので、繰り返しはしません。

 それで、今、出入国カードを求められているわけでありますけれども、毎年、ビザなし渡航をやっています。私も一昨年の九月に行かせていただきました。ことしは、もちろん計画されていると思いますが、このときに先方はやはり出入国カードを求めてくるという状況にあるのでしょうか。教えていただきたいと思います。

兼原政府参考人 お答えいたします。

 北方四島への訪問につきましては、一九九一年十月十四日付の日ソ外相間往復書簡等に基づきまして、「いずれの一方の側の法的立場をも害するものとみなしてはならない。」そういう前提のもとで設けられた枠組みに従って行われてまいりました。

 二〇〇八年までの間、日本側代表団がこれらの枠組みのもとで北方四島を訪問した際に、ロシア側から出入国カードの提出を求められることはございませんでした。しかしながら、本年一月の人道支援物資供与事業のための北方四島への訪問の際に、直前になって、日本側代表団の四島への訪問のために出入国カードの提出が必要である、そういう旨のロシア政府による立場の変更が表明されたわけでございます。

 その後、ロシア側と鋭意協議を続けておりまして、この協議がなるべく早く終わるべく鋭意協議している最中でございます。

市村委員 たしか、あれは五月ぐらいから始まりますよね。第何次、第何次とありまして、五月というと来月ですが、行く人というのは、ことしはもう決まっているんでしょうか。そのときに、例えば向こうは一月に言ったとおり出入国カードを書かない限りは上陸を認めないという具体的ケースになった場合、どうするのかということをお尋ねしたいわけでございます。

兼原政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、本年五月から四島交流等が予定されておりますので、予定どおり行えるようにということで、今ロシア側と調整を了すべく鋭意作業を行っております。

 二月のサハリンでの両首脳の会談におきましても、両首脳が、四島交流等は信頼醸成の観点から重要であって、お互いに継続していく意向であるということを確認して、その上で、友好的かつ建設的にこの問題を解決するよう事務方に至急作業させるよう一致をしたところでございます。

 その両首脳の指示を受けて、今作業をしているところでございます。

中曽根国務大臣 今、政府参考人がお答えしたとおりなんでありますけれども、同じ発言になりますけれども、先方も四島交流の重要性というものは認識しているわけでありまして、ただ、あちらの法律が変わって、手続的にあちらの立場で主張してきたわけでありますが、私どもとしては、過去二年間は法律が変わっても問題なくやれた、それから、この重要性、時期的な問題も踏まえて、五月ですか、ぜひこれが再開できるように、訪問できるようにということで、今まさに先方と折衝中というところでございますので、御理解いただきたいと思います。

市村委員 もちろん、私が理解して済む問題ではなくて、結局、これは私たちからすれば、あそこは私たちの領土だということであって、我が国に行くのになぜ出入国カードを書かなきゃいけないのかと。単純な話というか、非常に素直な話はそういうことです。

 ですから、一般論として、一九九一年に書簡を交わして決めたことを、国内法が変わったからいいんだと。例えば、日本も諸外国と条約とか結んでいて、それをある種否定するような、それをだめだというような法律をつくって、次から次に、いや、もう国内法が変わりましたからだめなんですと言い始めたときに、我が国が一体どのような評価を受けるかと考えれば、当然、ロシアの主張というのは受け入れられるものではないと私は思っておりますが、外務大臣の御見解を聞かせていただきたいと思います。

中曽根国務大臣 まさに今委員がおっしゃったとおりでありまして、我が国の方針というのは一貫したものでありまして、変わるものではございません。

 一九九一年の日ソ外相間の往復書簡等に基づいて、「いずれの一方の側の法的立場をも害するものとみなしてはならない。」そういう前提で行われている枠組みでありますから、その枠組みの中で今後訪問できるように、今交渉中、交渉と言うとおかしいんですけれども、再開に向けて努力中でございます。

市村委員 先ほどからあるように、平和条約を結ぼうという、もっと大きな観点で話をしようとしているのに、なぜかもっと手前に引き戻されたような感じがしてならないんですね、この話は。ある種、こういうやり方というのは、外交上、私は大変失礼な話だと思いますし、これはロシアの国内問題なのかもしれませんが、やはり日本としての立場ははっきりとしていくべきだと思います。そうしないと、こういう状況では平和条約どころじゃない。

 せっかくビザなし渡航もこれだけ進んできて、両国の交流も進み、私も一昨年行かせていただいて、現地の皆さんともいろいろ話をさせていただく機会もありましたし、家庭訪問もさせていただきました。そして、やはり日本に対する期待、それから日本に対する感謝ですね、どっちかというと日本に近いわけですから、医療の面でも、いろいろな食料の面でも、日本の皆さんには大変感謝しているということを現地の方もおっしゃっているわけでありまして、そういう素朴な住民交流といいますか、それをせっかく進めてきているところに、しかも人道支援で行った船が戻らざるを得ないと。これは残念な状況であると思わざるを得ません。

 これはなかなか政府同士では言いづらいかもしれませんが、これは国会としてもはっきりとこうした議論を通じて、我が国の意思というのはいろいろなチャンネルを通して伝えていかなくちゃならないと私は思います。

 ビザなし渡航が例年どおり友好ムードの中で、しかも、平和条約締結という、まさに次世代に先送りしないという大統領と我が国の首相が交わした言葉があるわけですから、こういうムードの中で行われるビザなし渡航であれば、さらにもっと歓迎ムードというか友好ムードがあって当然だと思います。五月からのビザなし渡航が一月のようにならないように、ぜひとも外相にはしっかりと交渉していただきたいと思うわけであります。

 次に、サハリンといいますか、日本で言えば樺太というんでしょうか、この問題になります。

 私が小さいころ、地図を見詰めながら大変注目した場所がありまして、それがまさに樺太、サハリンなのであります。何でこの半分だけ白なんだろうと。ほかのところは色分けされているんですね。あのときは小学校の低学年だったか忘れましたが、何でここだけ白なんだろうなと。ひょっとしたら、千島列島も白だったかもしれませんが、余り覚えはありません。少なくとも樺太の半分だけ白だということだけは非常に印象に残っていたこともあります。長じて、いろいろな歴史的な背景も、もちろん多少学ばせていただきました。

 平和条約締結に当たりまして、いろいろ経緯があったわけでありますけれども、今私たちは北方四島の問題だけを言っておりますけれども、本当はこうした樺太の問題も含めて話をすべきではないのかなと。ひょっとしたら、それはなかなか政府は言えないのかもしれませんが、私は一人の国民として、幼きころからいろいろ考えていく中で、いろいろ経緯はあったとしても、やはり樺太の問題も含めて私たちは議論すべきじゃないか。

 そのときに一番の問題は何かといいますと、我が国がさきの戦争をきちっと総括していないのが問題だと思うわけであります。

 やはり、日ソ中立条約を破って入ってきた。それがまさに北方四島の問題の根幹にかかわっているところでありますが、その後、あの樺太はどうだったのか、サハリンはどうだったのか。

 私は、決して、今全部日本のものにしろというような発想で言っているわけじゃありません。私は、今後のロシアと日本の関係というのは、二十一世紀、大変重要な協力関係を結ぶべき二国だと思っているんです。そこがぎくしゃくするようじゃいけないと。

 そのときに、やはり歴史をしっかり踏まえて、さきの大戦のこともしっかりと認識を一にして、合意できるものは合意していく、その上で平和条約を締結していく。そして、協力して二十一世紀の、この東アジア、まあ、極東を含めて、ロシアで言う極東ですね、いわゆるシベリアを含めたところも、しっかりと我々がエネルギー資源の共同開発とかを進めていく、我が国の技術と資金を提供していく、そして、ともに開発したものは我が国もしっかりと恩恵をいただく。こうした二国間関係もしくは多国間関係、この地域関係を築いていくべきだと私は思っています。

 そのときに、このサハリンの問題については慎重でなきゃならないと私は思っておりました。ところが、この間、麻生総理がサハリン2の天然ガス液化施設稼働の記念式典に行かれた。それはメドベージェフ大統領からお誘いもあったということでありますが、やはりここは慎重でなくてはならなかったのではないかと私は思います。

 実際、私もテレビの報道で、ロシア側ではこれをもっていわゆる樺太、サハリンの南側については日本も認めたというような報道もされているかのように日本国内の報道で知るところとなりました。それについて外相の御意見もお伺いしたいと思います。

中曽根国務大臣 今委員が御発言になられましたロシア側の報道、見解について、私は承知しておりませんけれども、国内において、麻生総理のサハリン訪問につきましては、委員のようなお考えを述べられた方があったということも事実でございます。

 少し整理させていただきますが、サンフランシスコ平和条約によりまして、もう委員十分御承知のことと存じますが、我が国はこの南樺太に対するすべての権利、権原、そして請求権を放棄しておりまして、その帰属について見解を述べる立場にはないわけでございます。また、この条約は、南樺太の最終的な帰属先について規定をしておりません。政府といたしましては、その最終的な帰属先は未定であるという立場であります。

 けれども、南樺太は、かつてはソ連、現在はロシアが現実に支配をしてきておるわけでございまして、また、ロシア以外の国は領有権を主張していない、そういうふうに承知をしているところでございます。

 そういう点を前提といたしまして、先ほどの総理のサハリン訪問に関することでございますけれども、サハリンを麻生総理が訪問したということは、南樺太の法的地位に影響を及ぼすものではなく、また当該地位に関する我が国の立場と矛盾するものではない、そういうふうに考えているところでございます。

市村委員 それでは、具体的にお聞きしますが、麻生総理はロシアに行ったという認識ではないということでよろしいでしょうか。

兼原政府参考人 お答え申し上げます。

 麻生総理はサハリンを訪問されましたけれども、このサハリンに関する法的な立場ということを正確に申し上げる必要があるんだろうと思います。

 法的には、サンフランシスコ条約の二条(c)項がございます。「日本国が千九百五年九月五日のポーツマス条約の結果として主権を獲得した樺太の一部及びこれに近接する諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。」こういう規定がございます。このサンフランシスコ平和条約によりまして、南樺太に対するすべての権利、権原、請求権を放棄しておりまして、その帰属について見解を述べる立場にございませんというのが日本政府の立場でございます。

 したがいまして、帰属先でございますけれども、この条約上は、南樺太の最終的な帰属先については規定がないということになるわけでございます。政府としては、その最終的な帰属先は未定であるという立場は変わりません。

 ただ、もう一つ申し上げますと、南樺太はソ連及びロシアが現実に支配をしております。ロシア以外の国はこの南樺太に対して領有権を主張していないという事実があるということでございます。

 したがいまして、麻生総理のサハリン訪問は、南樺太の法的地位に関する日本政府の立場に何ら影響を及ぼさないということを御説明申し上げました。

市村委員 それは、今外相がおっしゃったことと全く同じであります。

 だから、簡単に言ってほしいんですね。つまり、麻生総理はロシアに行ったという認識ではない、まだ帰属がはっきりしていないサハリンという土地、または日本からすれば樺太という土地に行かれたという認識でよろしいわけですね。それだけはっきりさせてください。

兼原政府参考人 麻生総理の行かれた南樺太の法的地位の御質問というふうに承っております。

 これに関しましては、南樺太の権利をすべて放棄しております関係上、それについて我が国として、ロシアがそこを現実に占有しておりますけれども、これを積極的に認める立場にも、また異議を唱える立場にもないということを御理解いただきたいと思います。

市村委員 これ以上言うといろいろあるのかということをおもんぱかりながら、これ以上は言いません。

 しかし、これからロシアとの関係は、先ほど申し上げたように、私は大切な二国間関係になるという思いなんです。特に、日本の場合、これからエネルギー戦略等々を考えたときに、あそこの液化天然ガスを、液化してわざわざ持ってきているんですけれども、生ガスで引くことはできないのかということですね。わざわざなぜ液化しなくちゃいけないかというのもありますので、そういうことも含めてこれからしっかりと考えていかなくちゃいけないわけですね。そのとき、協力しましょうという立場に立つとか。

 過去の歴史も、はっきり言って我が国が一番悪いんですよ、戦争を総括しないんですから。しかし、それをしっかりともう一遍、戦争の世代、きょうは大先輩方も多くいらっしゃいますけれども、我々戦後世代からすれば、もう少し落ちついた議論ができると。今はロシアの方もリーダーたちは四十代とかに下がってきている。各国も四十代に下がってきている。オバマさんも四十七です。そういったところで、これからの二十一世紀の関係を考える際には、しっかりと歴史認識も踏まえて考えなくちゃいけないと思っているということでありますので、これはまた議論を続けさせていただきたいと思います。

 北方についてはこれで終わります。

 それから、今度は沖縄の方に参ります。

 きょうは、沖縄の科学技術大学院大学、今度は学園となるようでありますけれども、まだ法律はかかっていませんし、今国会なのかいつなのかわかりませんから、今の段階では機構と言うべきなのでしょうか。この独法の機構について少し議論をさせていただきたいと思います。

 佐藤大臣、これはいろいろ議論があります。三年前に我が党もこれについては賛成をしておりますので、これをとめるということはないと思いますが、しかし、本当にこれが沖縄のために役立つのかという観点からは、やはりもっといろいろ考えなきゃいかぬことはたくさんあるだろう、こういう思いであります。その立場に立って私は議論したいと思います。

 仮に、今これを続けても十年後に、十年間はいいけれども十一年後に破綻するかもしれないというようなものをやるのがいいのかどうか。しかし、今、勇気を持ってやめた方がいいという議論もあるのですね。仮にやめたとして、これまでにかかったお金が幾らで、やめるとすればこれから幾らかかるのかということを教えていただけたらと思います。

佐藤国務大臣 科学技術大学院大学は、沖縄の自立的発展と世界の科学技術の向上に資することを目的としてということになっております。平成十四年度の沖縄振興特別措置法、そして沖縄振興計画の主要施策の一つとして位置づけられておりまして、もう御存じのとおりでございますけれども、ノーベル賞受賞者を中心とした内外の著名な科学者により検討が行われ、その準備が進められてきたところでございます。

 この実現のために、平成十七年度には独立行政法人沖縄科学技術研究基盤整備機構が設立をされまして、恩納キャンパスにおいて施設整備を進めることのみならず、大学院大学の開学を前提に既に内外から百五十人を超える研究者を採用しております。先行的に研究実施を開始しているところでございます。

 仮にでございますけれども、現時点までに着手している工事のみで建設をとめた場合、二十四年度の大学院大学の開学は極めて困難ということになりまして、科学技術を担う人材育成について振興計画で定めたことに伴う沖縄県との信頼関係や現地に赴任している内外の研究者との信頼関係、そして、この構想の実現に向けて五年以上の期間にわたりまして精力的に協力していただいたノーベル賞受賞者等の内外の著名な科学者の方々との信頼関係を大きく損なうおそれがございます。御承知のとおりだと思います。

 これは金銭にはかえがたいというふうに私は考えておりまして、現在、それでなくても欧米諸国並びに中国や韓国、アジア諸国も国の源泉として科学技術力の強化に努めているというふうに伺っておりまして、ここでやめるなんということになりますと、国際的にもその信頼を失ってしまうので、お金で換算するというのは、ちょっと今、私としてはしかねるということであります。

市村委員 大臣、私はやめるという立場じゃないということを冒頭に申し上げているんです。

 ただ、議論があって、仮にやめるとした場合、これまで幾らかかって、やめた場合、例えば契約違反で賠償金を払わなくちゃいけないのかもしれませんから、その分がどうかということを具体的に教えていただければいいので、ちょっと教えてください。

清水政府参考人 構想の推進主体となっております沖縄科学技術研究基盤整備機構に交付しております、これは平成十七年九月の設立でございますが、管理棟、研究棟などの施設整備費につきましては、平成二十一年度予算までに約二百九十億円でございます。また、機構に交付しております一般管理費、研究事業費等の運営費及び研究設備の整備費につきましては、平成二十一年度予算までに約二百十三億円となってございます。

市村委員 二十一年度までは予算が決まったので使うことになると思いますが、結局、今、五百億近いお金が今年度までに出ていくということになります。これをやめるとなると、今までの分が無駄。無駄というか、なくなる。これを崩したりするのも、またお金もかかるでしょうし、できないだろうなと思うわけであります。

 であれば、中身は必ずしもないんですね、ハードはつくっちゃった。これはどこかの公共事業によくある話なんですね、もうできちゃったものをどうするんだという話になるんですよ。しかし、崩せない、今さら引き戻せないとなれば、やはり本当に沖縄のためになるようにどう使っていくかという発想に立たなくちゃいけないだろう。

 そういう中で、今のありよう、今度法律も出てくる予定である、学園とされるもののありようをしっかり議論していくことになると思います。法律が出てくればもっと具体的に議論できると思いますが、そのときに、私も造成地、造成中の場所に行きました、とても那覇の市内から遠いんですね。

 私は、三年前のときも議論した覚えがあるんですが、学校というのは、ああいうところにぽつんとつくって、何かいかにもよさげなんですね。人もいないというか、非常に環境はいいというか、一見静かに学問をするにはよさそうだというふうに見てとれるんですが、日本だけじゃなく諸外国の例を見ても、学園とか学校というものは、どこで発展するかというと、やはり人の中で発展していくんだと私は思います。

 我が党の参議院の谷岡先生も、この間、我が党の部会の中で、大学というのは都市的存在だというふうに話をされていましたけれども、私もそう思っています。前回、三年前のときもそういう議論をした覚えがあるんですね。私は、あのときに、もし沖縄にこうした世界最先端の、世界最高水準の大学をつくるのであれば、何で那覇市内につくらないんですかと。

 那覇市内に置いておいて、研究面を例えば恩納村とかに置くということであればまだわかるんですけれども、恩納村にぽんとすばらしい建物を建てて、さあ、そこでやってくださいといって、本当に世界最高水準の学問がここで生まれてくるのか、学問というか学問の場になり得るのか、そこからいい研究が生まれてくるのか、私は非常に甚だ疑問であります。結果として、それが沖縄振興に役立つのかというと、これも疑問であります。

 結局、五百億を入れます。まあ、お金を入れないよりはいい、沖縄の振興のために。しかし、これは結局、これまで日本は、ある意味では、ちょっと下世話な言葉で土建国家というのがありますよね、要するに道路よりも道路工事が必要だという議論をしてきています。それと同じような感覚で、学校という名をかりて、とにかく公共工事をやって沖縄振興に、少しでも地元の業者が潤えばいいという発想でやってしまったのかなと。こういうふうになってしまうんですね。

 そうじゃなくて、せっかくやるんだったらば、やはり仏つくって魂を入れずではだめですから、魂を入れるためには、あるべき姿に持っていくためには、大学というのはどういうものか、学園というのはどういうものかという原点に返ってこれから議論をしていかなければいかぬと思います。

 そのときに、大学は都市的存在であるということであれば、私は、施設のアイデアとしては、メーンキャンパスは例えば那覇市内とかの都市部に置いて、今の恩納村のところを研究棟として活用していくとか、当然、琉球大学との連携というのは今でもやられているそうですけれども、そういう形で学際的な、しかも大学間交流も含めた、そうした施設にしていくことが望ましい、こう思っております。かつ、せっかくつくるのであれば、学生たちにもっと門戸を開放する。この施設は、日本の学生には自由に使っていいぞというぐらいの開放的雰囲気を持った学園にしていくということもアイデアだと思います。

 大臣のお考えを聞かせていただきたいと思います。

佐藤国務大臣 先生のおっしゃる趣旨は、よくわかります、理解させていただきます。

 すぐれた研究者や大学院生が他の研究分野を含めて総合的に刺激し合える環境を求める傾向というのがございまして、大学院大学においては、そのような環境を提供することが重要であるという観点に立っています。このために、琉球大学を初めとする他の大学との連携やワークショップの開催等により外部研究者との交流を促すこととしております。

 さらに、学生にとって、実験を行う研究施設で過ごす時間が当然多くなるわけでありますから、そういう生活が中心となります。その設計上も、学生間で議論ができる空間を配置したり、研究グループ間の仕切りを設けないなどの工夫がされているというふうに伺っておりまして、先生の御意見も含め、研究学生にとってよい刺激が得られる環境を十分検討してまいりたいというふうに思います。

 私も先日行かせていただいて、ある程度立ち上がった建物を拝見させていただきました。率直に言わせていただいて、先生と同じような感覚になった。初めて見た者としてはそう思いましたが、長い目で見たときに、何が起きてくるかというのはこれからの話だと思いますし、一番期待したいのは文化だというふうに思います。

 世界の一流の方々が来て、何の交流もない人はいないわけでありますから、例えば音楽に興味のある方々がいろいろなコンサートを開催したりなんということを期待できる、そういう刺激を与えていただくような施設を改めて設けるなんということも含めて考えるべきではないかなというふうに私は思います。

 交通のお話もございましたが、とはいえ、那覇から一時間も乗れば恩納村に行くわけでございまして、私は、交通の手段的にはそう心配は要らないのではないかなと。後々よく考えてみますと、そんなことにもつながって、若干マツクイムシの松が気になりましたけれども、必ずいい施設になるのではないかなというふうに確信をしております。

市村委員 またぜひともやらせてください。人と離れては何事も成り立たないと思います。特に学問はそうだと思いますので、またぜひとも議論させていただきたいと思います。

 ありがとうございました。終わります。

前原委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 きょうは、まず最初に、改正建築基準法の問題について伺います。

 改正建築基準法の施行後、沖縄県では、指定確認機関や設計者などの現場では確認申請の手続、審査をめぐって今なお混乱が続いております。これは、建築主などや消費者への周知徹底不足、施行に当たっての条件整備がなされないままに実施されたことが大きな要因であります。

 その沖縄では、戸建て住宅を含めて鉄筋コンクリートづくりの建物が大半を占め、また、ピロティー形式、つまり一階が壁のない構造形式ですが、ピロティー形式の建物が多いために他の地域と比較して高度な構造計算が必要で、構造計算適合性判定、いわゆるピアチェックですね、この対象となる建物の割合が高くなっているわけです。特に問題になっているのが三階建て以下の個人住宅についてです。そのために、建築確認審査手続が大幅におくれ、審査期間が長期化して建築工事が進められない状況にありますが、政府はどのように考えておりますか。

西銘大臣政務官 先生御案内のように、姉歯事件の後、構造計算書偽装問題の再発防止のため、高度な構造計算を行った建築物を対象に構造計算適合性判定制度を導入し、また建築確認手続の厳格化を柱とする改正建築基準法が平成十九年の六月に施行されました。

 その直後、改正内容の事前の周知が十分でなかったことから建築確認手続が停滞をし、全国で住宅着工が大幅に減少いたしました。このため、きめ細かな情報提供や技術支援など、建築確認手続の円滑化に取り組み、昨年の一月以降九月ころまでは年率の換算で百十万戸まで回復をしておりましたが、沖縄県では回復が非常におくれておりました。

 この理由は、先生御指摘のように、一戸建て住宅を含め沖縄では鉄筋コンクリート造の建物がほとんどであること、また、一階部分が壁のない構造、駐車場のスペースをとるためピロティー形式の建物が多いことから、他府県と比較して適合性判定が必要な高度の構造計算が必要な建物が極めて多いこと、さらに、県内では構造技術者が不足していること、以上の理由から、改正建築基準法の影響を非常に大きく受けたものと認識をしております。

 このため、沖縄県において、それまでの対策に加えて、昨年の十月に建築設計サポートセンターを設置し、県外から構造技術者を配置し、構造設計の相談に対応しながら、地元の構造技術者の育成にも取り組んでおります。国交省としても、その設置、運営を支援しているところであります。

 さらに、沖縄県における構造計算適合性判定の円滑化を図るため、県内の実情を踏まえまして、ことしの五月から、先生御指摘の三階建て以下かつ五百平米以下の小規模住宅の構造計算適合性判定を、沖縄県建築士事務所協会の協力を得て、沖縄県が直接集約的に実施することとしております。

 こうした取り組みの成果をきめ細かく把握しながら、沖縄県における建築確認の円滑化が図られるように引き続き努めていきたいと考えております。

 以上です。

赤嶺委員 私、この前、国土交通省からいろいろ聞いてみたんです。今のは運用改善ですよね。運用改善で果たして効果が出るかということなんですよ。住宅にいわゆるピアチェックが適用される、その事態には変わりないわけですが、結局、今の運用改善をやる。

 例えば、法が改正された後にピアチェックを適用されていた住宅、これは何件ですか。住宅、回復していますよね、その中でピアチェックを受けていた住宅は何件ですか。

小川政府参考人 お答えをいたします。

 全国的に見ますと、ピアチェックの対象となっておりますのは二千件ほどでございます。

 沖縄の場合、現在のところ、月に大体三十件程度の実施があるという状況……(赤嶺委員「小規模住宅について聞いているんですよ、今。運用改善をする小規模住宅について」と呼ぶ)失礼いたしました。

 沖縄の場合、いわゆる四号建築という形の小規模建築物ではなくて、小規模であっても……

赤嶺委員 ちょっと質問の趣旨を理解していないようですから。

 今、小規模住宅について運用改善するんですよね。西銘政務官、そうですよね。では、今まで、小規模住宅についてピアチェックを法改正後受けていたのは何件ありますか、このことを聞いているんです。

前原委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

前原委員長 では、速記を起こしてください。

 小川審議官。

小川政府参考人 小規模なものということで計算をいたしますと、合計で十五件ということになっています。

赤嶺委員 十五件なんですよ。わずかなんですね。何でか。それは、小規模住宅を申請してピアチェックを受けるようになったら、申請が非常に長期化して住宅が建てられない。それよりは、ピアチェックを受けないような仕組み、つまり、壁の多い建物を使う。

 西銘政務官はよく御存じかもしれないけれども、沖縄では土地が狭いために一階は駐車場にしてというピロティー形式を使っているからピアチェックの対象になるわけです。ならないことを県民みずからが避けて、壁の多い建物に逃げていっているわけですね。

 しかし、それは、かなりの建築費の負担を県民に押しつけているんですよ。さっき、小規模住宅はピアチェックを適用しても運用改善でよくなると言いますが、事態はもうそうでなくなっているんです。ですから、地元の設計士や建築家は、まず沖縄だけ何で住宅がピアチェックの適用になるんだ、本土は木造住宅ですからほとんど受けない、適用除外にすべきだ、こういうことを強く要求しているわけです。これは西銘政務官はよく御存じだと思いますよ。

 運用改善で十五件ぐらいの効果しか上がらない。そうであれば、沖縄の住宅については今の皆さんの運用改善では効果が上がらないわけですから、さらなる改善が必要だ、政務官はそう思いませんか。

西銘大臣政務官 ですから、県が直接、建築士事務所協会、これは五月の末ごろを想定しておりますけれども、ここの協力を得て、県の責任で判定ができるように、この制度を実施して、運用を見ながら、また努力をしてまいりたいと考えております。

赤嶺委員 これは検証が必要です。運用改善したからもう大丈夫だというものではありません。まだ沖縄側の要求と大分かけ離れて、そごもありますので、ぜひその改善を強く求めていきたいと思います。

 次に、那覇空港の滑走路増設案の問題について、今度は、先ほどと少し違う立場からいろいろお伺いしたいと思います。

 那覇空港は、現在のままでは二〇一五年には夏季の旅客需要の増加に対応できなくなるおそれがあるとして、既存の滑走路から千三百十メートル沖合に二千七百メートルの滑走路を増設する案がまとめられました。国土交通省や総合事務局、沖縄県などで構成している那覇空港調査連絡調整会議が、二〇〇七年八月に滑走路増設必要性の需要予測を示しております。

 その中で示した経済成長予測、これは、構造改革が進展した場合の成長率、つまり最もうまく経済が成長した場合の成長率のケースと、最悪の、バブル経済が崩壊した一九九〇年代初頭からの十年間のリスクケースのそれぞれを想定して、どんなケースをとってみても二〇一五年度ごろには航空旅客需要の増加に対応できなくなるおそれがある、このように予測しているわけです。ところが、今、アメリカ発の金融危機が世界全体を襲っている中で、需要予測の際のGDPは既に破綻しているわけですね。

 二〇一五年度には航空旅客需要の増加に那覇空港は対応できなくなる、そういう認識は変わりませんか。

関口政府参考人 お答え申し上げます。

 那覇空港の整備につきましては、今先生御指摘のとおり、現在検討を進めておるわけでございますけれども、空港の整備に当たりましては、需要の予測は当然不可欠でございます。

 現在の計画におきましても一定の需要予測を行っておりますけれども、空港整備に当たりましては、当然必要な整備期間がございます。また、その供用開始後に当たりましても、長期間にわたって使用されるということで、かなり中長期的な観点から考えていく必要があるというふうに考えております。

 今先生御指摘のとおり、現在、直下の世界経済につきましては大変厳しい状況であることは間違いございませんけれども、今後の経済の動向については私どもも十分注意して見ていかなければいけないというふうには考えております。

 ただ、今先生御指摘のとおり、この需要の予測に当たりましては私ども幾つかのケースを想定して行っておりまして、需要の伸びが大きいケース、また非常に小さいケースということで考えておりますけれども、現在の構想段階における調査におきましては、いずれにいたしましても、今後の那覇空港の需要は一定の伸びが見込まれるということで考えておるところでございます。

赤嶺委員 最悪のケースだとしたリスクケースをもはるかに上回る経済の悪化が今起こっているわけですね。にもかかわらずということで、今のままの需要予測でいくのかというのが一つなんです。

 それで、今度は、景気悪化の影響を受けて、好調だった沖縄観光が今減少しております。ことし二月の入域観光客は、前年同月比一四・五%減少しました。昨年十一月から四カ月連続です。三月以降も減少傾向が長期化するとの見方が強く、底が見えない、こういう懸念が広がっております。本当に、観光はリーディング産業であっただけに、今危機的な状況です。

 ところが、予測では、このまま利用者が増加するとピーク時は予約がとれなくなったり変更ができなくなる、こういう需要の逼迫というのは、ピーク時に希望する予約がとれなくなる、変更できなくなるということなんですが、今でもなお、利用者は増加する、こういう認識ですか。

関口政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げましたとおり、航空の需要予測につきましては、空港整備に当たって行われる際、やはり中長期的な観点から基礎的な需要を把握するということで行っておりまして、短期的な情勢変化においてその都度見直すというような性格のものではございません。

 今回の経済的な混乱がこの中長期的な観点からの需要予測に影響を与えるべき経済社会情勢の変化に該当するか否かということにつきましては、引き続き情勢の把握を行っていく必要があるものというふうに考えております。

赤嶺委員 経済の需要予測なんか考えておれるか、もう一たん手がけたんだという雰囲気の答弁ですけれども。

 実は、政府のことし一月十九日の閣議決定で、経済財政の中長期方針、これについてまとめておられますね。この中で、今後、我が国経済については、外需面に加え、国内需要も停滞し、景気の下降局面が長期化して深刻化するおそれが高まっている、今、中長期計画を手がけるのはリスクがある、このように政府が述べているんですよ、政府が述べている。なのに、あなた方は、今そういう情勢なのかどうか検討すると。これはちょっと納得できない話だなと思うんです。ちょっとどころではないんですが。

 それで、客がふえるといっても、エアライン、航空路線がふえないと、それはお客さんはふえないですよね。ところが、日本航空も全日空も今路線の縮小再編を行っているわけです。だから、那覇空港の場合では、仙台線、福島線、花巻線、札幌線、関西線、これは休止したり、減便を余儀なくされているわけです。

 ところが、皆さんがつくった需要予測では、今後、静岡にも空港ができる、百里にも空港ができる、そこからのお客さんもふえていく、路線も拡大すると予測の中に書いております。最悪の場合でも現状維持だ、このように言っておりました。ところが、現実は全く違うわけです。これについてはどのように考えますか。

関口政府参考人 お答えいたします。

 今先生御指摘のとおり、確かに、昨年の秋以降大変な経済の悪化がございまして、航空会社におきましても不採算路線の減便あるいは廃止というようなことが起きていることは事実でございます。

 ただ、先ほど来申し上げておりますように、空港の整備といいますのは、かなり中長期的な観点から今後の需要を把握して、長期的な視野のもとに進めていかなければいけない事業でございますので、今の足元の状況のみで今後のことを一概に判断はしかねるものというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、今後の経済の状況をよく把握しながら、私どもとしても検討を深めたいと思っております。

赤嶺委員 今の足元の状況は長期にわたって悪化すると言っているんですよ、政府が。その辺を私は強く認識していただきたいと思うんです。

 ところで、沖縄の県知事は、沖合の滑走路を千三百メートル離れた場所に建設することは、同時離陸、同時着陸の可能なオープンパラレルにする上で必要だと主張しました。百年先を見据えた空港のあり方が求められる、このように言っておりますが、オープンパラレルは、千三百メートル沖合につくることによって、現在の案で可能なんですか。

関口政府参考人 お答えいたします。

 那覇空港の構想段階の検討におきましては、今先生御指摘のとおり、増設案は現行の滑走路から千三百十メートル離したところに整備するということで先月の委員会で選定されておりますけれども、これにつきましては、現在一時間当たりの処理容量が三十三回、これが四十二回にふえるというような結果になっております。

 この処理容量の算定に当たりましては、現滑走路を離陸用、また増設する新しい滑走路を着陸用ということで想定しておりまして、オープンパラレル運用を前提としたものではございません。

赤嶺委員 ですから、沖縄の知事はオープンパラレルを求めているわけですが、実行は可能ですかと聞いているんです。

関口政府参考人 お答えいたします。

 この那覇空港の構想段階における滑走路処理容量の算定につきましては、現状の那覇空港の状況を踏まえた飛行経路を前提として検討しておりまして、オープンパラレルの運用を行うに当たりましては、周辺の航空機の飛行経路あるいは周辺の地形、市街地の状況など、騒音問題等もございますので、こういった事柄を満足することが必要だというふうに考えておりまして、現在の那覇空港の構想段階の検討におきましては、このオープンパラレルの運用を想定していないところでございます。

赤嶺委員 いや、あなた方が想定していないことは計画書を読めばわかるんです。しかし、県知事はオープンパラレルを強く求めている、沖縄の発展のためにはと言っている。

 今、周辺の航空状況と言っておりましたが、もっとはっきり言えば、米軍の訓練空域が近くにあり、嘉手納基地の進入路の関係でオープンパラレルというようなのは非常に困難だということではありませんか。それがあっても大丈夫なんですか。

関口政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘のとおり、この構想段階のレポートにもございますように、嘉手納飛行場の進入経路との関係によりまして、現在の那覇空港におきましては高度制限があるというようなこと、また、騒音の影響の関係から市街地上空に飛行経路を設定できないというようなことから、現在ではオープンパラレルの条件が満足できない状況でございます。

赤嶺委員 確認ですが、訓練空域も近くにあることもオープンパラレルの困難な要因になっているわけですね。

関口政府参考人 お答えいたします。

 訓練空域につきましても、やはり飛行経路の設定には影響が出てくると考えております。

赤嶺委員 つまり、非常に軍事基地の多い島で、かなり滑走路の容量の大きいものをつくっても、運用には限界があるということだろうと思うんです。

 自衛隊と共同使用になっておりますが、那覇空港の滑走路は、民間機と自衛隊の割合はどうなっていますか。

関口政府参考人 お答えいたします。

 現在の那覇空港の利用状況でございますけれども、年間の離着陸回数は、民間機が約十一万五千回、それから自衛隊機が約二万回、一万九千回程度ということでございます。

赤嶺委員 約二割は自衛隊の航空機であるわけですね。ですから、そもそも向こうは、民間専用空港として約束された空港でありますから、自衛隊機がいなくなれば余力は現行滑走路でも十分にあるわけです。

 それで、仮に滑走路が増設された場合に、自衛隊の発着回数、これは現状維持のままいくのですか、それともふやすこともあるのですか。これは国土交通省です。

関口政府参考人 お答えいたします。

 那覇空港の整備の検討に当たりましては、自衛隊機の発着回数につきましては現状の利用状況が今後も続くという前提で一応考えております。

赤嶺委員 今後、ふえないんですね。

関口政府参考人 これは、私ども国土交通省といたしましては民間航空機の運用を行っておりますけれども、自衛隊機の運用につきましては、防衛省あるいは自衛隊の判断かと思います。

赤嶺委員 防衛省、いかがですか。

徳地政府参考人 お答えをいたします。

 今、那覇空港におきましては、陸上自衛隊の第一〇一飛行隊、あるいは海上自衛隊の第五航空群、それから航空自衛隊の第八十三航空隊等がこれを利用しております。そして、訓練のみならず、対領空侵犯措置でありますとか警戒監視もございますし、それから災害派遣等の任務もございます。

 このため、こうした実任務あるいは教育訓練の所要を満たすための発着というものは必要であるというふうに考えておりますけれども、それでは今後、自衛隊機の発着回数がどうなるかということにつきましては、まさにこうした任務でありますとか訓練の所要によりますので、現時点において確たることを申し上げることは困難かと考えております。

赤嶺委員 現時点において、ふえるかふえないか、それは言えないと言う。現状のままで推移するという国土交通省の計算は、非常に不安定なわけですよ。

 最後に沖縄担当大臣に伺いますが、先ほど市村先生の方からも、沖縄振興開発に本当になるのかという御意見がありました。今、皆さん政府の「経済財政の中長期方針と十年展望」という文書の中に、「根拠のない展望や戦略は突破力を生まず、むしろ将来に歪みをもたらす」、こう言っているんです。

 私は、那覇空港の滑走路増設の需要予測は非常に過大に計算されており、現状でいろいろな工夫ができると思います。民間の航空機は今後ふえるという見通しはないが自衛隊の訓練はふえるかもしれないというような、軍事利用の価値は強まっている。これでは沖縄振興にならないと思います。

 まず、政府自身が、根拠のない展望、これについて、将来にゆがみをもたらす、こういう開発や振興というようなのは見直すべきだと思いますが、大臣、いかがですか。

前原委員長 時間が来ておりますので、簡潔に答弁をお願いします。

佐藤国務大臣 今先生がおっしゃられた点等々も含めまして検討をしたいと思いますけれども、いつまでも不景気が続くということでもないですし、それを脱却するために政府一丸となって頑張っているというところもございますので、そういうことも踏まえまして、今後よく検討してまいりたいというふうに思っております。

赤嶺委員 脱却するためには、根拠のない展望はむしろ将来にゆがみをもたらすと政府が言っていますから、そのことを強く受けとめて検証していっていただきたいということを申し上げて、質問を終わります。

前原委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時五分散会


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