衆議院

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第11号 平成18年4月17日(月曜日)

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平成十八年四月十七日(月曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 伊吹 文明君

   理事 今津  寛君 理事 園田 博之君

   理事 谷  公一君 理事 谷川 弥一君

   理事 山本 有二君 理事 大島  敦君

   理事 北橋 健治君 理事 桝屋 敬悟君

      あかま二郎君    秋葉 賢也君

      井上 喜一君    稲田 朋美君

      小野寺五典君    大野 功統君

      加藤 勝信君    小杉  隆君

      坂井  学君    菅原 一秀君

      鈴木 淳司君    薗浦健太郎君

      並木 正芳君    西銘恒三郎君

      西本 勝子君    葉梨 康弘君

      林   潤君    広津 素子君

      福岡 資麿君    松本 洋平君

      三ッ矢憲生君    水野 賢一君

      矢野 隆司君    安井潤一郎君

      若宮 健嗣君    大串 博志君

      神風 英男君    高山 智司君

      武正 公一君    鉢呂 吉雄君

      馬淵 澄夫君    渡辺  周君

      石井 啓一君    谷口 和史君

      塩川 鉄也君    菅野 哲雄君

      滝   実君

    …………………………………

   参考人

   (中央大学法学部教授)  富田 俊基君

   参考人

   (日本労働組合総連合会副事務局長)        逢見 直人君

   参考人

   (東京大学大学院経済学研究科教授)        井堀 利宏君

   参考人

   (株式会社希望社代表取締役社長)         桑原 耕司君

   参考人

   (財団法人公益法人協会理事長)          太田 達男君

   参考人

   (全日本自治団体労働組合副中央執行委員長)    君島 一宇君

   参考人

   (全国商工会連合会会長) 清家  孝君

   参考人

   (日本大学商学部教授)  永山 利和君

   衆議院調査局行政改革に関する特別調査室長     大竹 顕一君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十七日

 辞任         補欠選任

  秋葉 賢也君     坂井  学君

  衛藤征士郎君     若宮 健嗣君

  岡本 芳郎君     西銘恒三郎君

  加藤 勝信君     あかま二郎君

  佐藤  錬君     矢野 隆司君

  菅原 一秀君     福岡 資麿君

  薗浦健太郎君     稲田 朋美君

  西本 勝子君     安井潤一郎君

  近藤 洋介君     神風 英男君

同日

 辞任         補欠選任

  あかま二郎君     加藤 勝信君

  稲田 朋美君     井上 信治君

  坂井  学君     秋葉 賢也君

  西銘恒三郎君     岡本 芳郎君

  福岡 資麿君     菅原 一秀君

  矢野 隆司君     佐藤  錬君

  安井潤一郎君     林   潤君

  若宮 健嗣君     衛藤征士郎君

  神風 英男君     高山 智司君

同日

 辞任         補欠選任

  林   潤君     西本 勝子君

  高山 智司君     近藤 洋介君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律案(内閣提出第七四号)

 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律案(内閣提出第七一号)

 公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律案(内閣提出第七二号)

 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第七三号)

 競争の導入による公共サービスの改革に関する法律案(内閣提出第三四号)


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     ――――◇―――――

伊吹委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律案、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律案、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律案、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案及び競争の導入による公共サービスの改革に関する法律案の各案を一括して議題といたします。

 本日は、各案審査のため、午前の参考人として、中央大学法学部教授富田俊基君、日本労働組合総連合会副事務局長逢見直人君、東京大学大学院経済学研究科教授井堀利宏君、株式会社希望社代表取締役社長桑原耕司君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、委員長より参考人の先生方に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用のところにもかかわりませず本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。それぞれのお立場からどうぞ忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしく御協力のほどをお願いいたします。どうぞよろしくお願いします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、参考人の方々から御意見をそれぞれ十五分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、発言する際は委員長の許可を受けることになっておりますので、御了解をお願いいたします。また、参考人は委員に対し質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず富田参考人にお願いいたします。

富田参考人 参考人の御指名をいただきました中央大学の富田俊基です。行政改革推進法案について意見を申し述べさせていただきます。お手元に二種類、一枚ずつ資料を用意しておりますので、御参照ください。

 我が国の経済は、バブル崩壊後の設備、雇用、債務の三つの過剰を克服し、順調な拡大を続けております。民間部門が、需要の減少する部門から需要の増大する部門へと資源をシフトさせ、生産性の向上を図ってきた結果と言えます。

 二十一世紀のグローバル時代の企業は、情報通信技術を駆使し、徹底したコスト削減と飛躍的なサービスの質向上とを同時に達成し、多様化し高度化した消費者のニーズに対応を進めております。

 一方、公的部門にはこうした自律的な資源配分のダイナミズムは作用しないので、国民のニーズに対応できないばかりか、行政コストは増大の傾向をたどってきました。

 行政サービスのコスト削減、生産性向上には、財政事情のいかんにかかわらず、政治のリーダーシップによる行政改革が不可欠であります。このことから、今後の行政改革のよるべき規範を定める本法案の意義は極めて重要であります。特に、我が国財政が、第二次世界大戦末期を除いて明治以降の我が国の歴史において最悪の状態で、しかも、人口が減少し始め、急速な高齢化が進展する中で、簡素で効率的な政府に対する国民の期待には非常に大きいものがあります。まず官が身を切り、無駄を徹底的に省くことを国民は強く求めています。

 簡素で効率的な政府の実現には、国だけではなく、地方自治体や独立行政法人などを含めた公的部門全体の見直しが必要です。本法案も、総人件費改革、特別会計改革、独立行政法人改革、政策金融改革、資産・負債改革と、官全体をカバーしています。

 そこで、企業会計原則に準拠して作成された国の財務書類をごらんいただきながら、本法案についての私見をお聞きいただきたく存じます。

 まず総人件費改革ですが、国の行政機関定員の五%以上純減は、官の中心である政府自身が身を切ることによって、行政改革に対する政府の断固たる取り組み姿勢を国民に示すという象徴的な課題です。官僚の強い抵抗にめげることなく、絶対に実現する必要があります。定員削減は、省庁一律ではなく、行政ニーズの変化を織り込み、事業の主体について仕分けを行い、農林統計、北海道開発関係などで大胆な整理を行うこととされています。

 この国の定員純減を、財務書類の業務費用計算書で見ることにしましょう。

 国の人件費と退職給与引当金を合わせて十五年度決算で五兆六千億円、国の業務費用の四・六%相当です。このため、五%の定員削減と給与制度改革による人件費の削減額は年間数百億円程度にすぎません。また、業務を担う主体が国家公務員から独立行政法人の職員に移るだけでは、連結ベースの人件費の削減は、国民が期待するようには進みません。また、民間への単純なアウトソーシングでは、人件費が減った分、委託費がふえてしまいます。

 こうした抜け穴がないようにと、この法案は、独立行政法人等に対しても五年間で五%以上の総人件費削減への取り組みを定めています。その際、特に、中期目標期間が終了する独立行政法人については、国の歳出削減と自己収入の増加を図るという観点から、業務の廃止、縮小、重点化など、徹底した見直しを進めるべきであります。

 さらに、本法案は、地方公共団体に対しても厳格な職員数の管理を要請しています。職員数が三百万人を超え、給与が二十八・九兆円と巨額ですので、地方の総人件費改革の効果は大きく、地方財政の健全化と同時に、国の業務経費である地方交付税などの削減につながります。過去大幅にふえてきた地方公務員については、四・六%以上の純減確保と同時に、給与については、地域地域の民間給与の反映と、不適切な諸手当の廃止が求められます。

 次に、特別会計の改革についてです。

 三十一すべての特別会計について、それぞれの制度趣旨、事業の必要性にまでさかのぼり、個別論の検討を積み重ね、各特別会計の見直しの方針が定められました。もとより数合わせのための改革ではないのですが、この法案によって、特別会計の数は現行の二分の一から三分の一程度へと、明治二十三年の制度発足以来、最少の数となる見込みです。

 さらに、特別会計の会計情報を統一的に開示するとともに、五年ごとに設置の要否を見直すことも定められました。そして、平成十九年をめどに、各特別会計の改革を具体的に盛り込み、各特別会計法に定められた例外的な規定の整理のための法制上の措置が講じられることとなっています。

 特別会計の歳出規模は、グロスでは四百兆円を上回り、重複分を除いても二百兆円を超えているので大規模なスリム化が可能との指摘がしばしば見られますが、企業会計基準では、百兆円の国債の償還費は業務費用ではありませんし、その削減は日本国債のデフォルトを意味します。

 このため、左の表でごらんのように、一般会計と特別会計とを純計した国の業務費用は、十五年度決算で百二十三兆円です。このうち、施設費と事務費を除き直接国民に給付される五十兆円の社会保障給付や、地方交付税十九兆円、そして財政融資資金二十七兆円が極めて大きなウエートを占めていますが、これらは、行政改革の課題というよりも、社会保障制度改革、地方交付税制度改革そして財投改革として取り組まれるべき課題であります。

 本法案には、特別会計の廃止及び統合の推進に加えて、財政健全化への大きな寄与という点では、道路特定財源について一般財源化を図るという見直しの方向性が定められ、雇用三事業については廃止を含めた見直しが行われることなどが含まれていることに大きな意義があると思います。

 さらに、本法案には、将来の国民負担増の抑制に向けて、特別会計の資産、負債並びに剰余金、積立金の縮減によって、今後五年間で二十兆円程度の寄与を行うという目標が明記されております。

 政策金融改革では、その機能が明確に限定され、貸出残高も平成二十年度までにGDP比で半減することが明記されました。そして、政策金融機関は一つに統合され、日本政策投資銀行と商工組合中央金庫は完全民営化、公営企業金融公庫は廃止を定めています。新政策金融機関については、改革の趣旨を踏まえて、政策の的確な遂行、国の関与のあり方、効率的な事業運営などについての制度設計が今後検討されねばなりません。

 完全民営化される機関については、これまでの経営資源を最大限活用した、持続可能な民間金融機関としてのビジネスモデルを確立し、企業価値を維持向上することによって、政府出資の売却収入に大きく寄与することが期待されます。

 次に、資産・債務改革について、お手元の貸借対照表で御確認ください。

 一般会計と特別会計で、十五年度末六百九十六兆円の資産があります。このうち、外為会計と年金運用資金そして公共用財産を除いた四百三十兆円について、十年間でGDP比を半減させるという長期的な目安を念頭に置きながら資産売却を促進することとされています。

 このため、資産としては二百九十兆円の貸付金が大きなウエートを占めておりますが、このうち財投残高は、既に財投改革によってピーク比で三〇%も減少しており、今後も、本法案を受けた政策金融改革の推進とともに貸付金は減少していくことが期待できます。

 また、貸付金の証券化の適否を検討することとされています。民間銀行は、自己資本比率規制をクリアしたり銀行本体よりも低い金利で資金を調達するために、証券化の手法を活用してきました。国も、財政健全化に資するものがあれば証券化の手法を用いるべきです。ただし、貸付金は、日本国内で最も信用力の高い財投債、つまり国債で調達されたものですので、証券化の適否については慎重な検討が必要です。

 次に、有形固定資産については、国民に行政サービスを供給することを目的に保有している道路、河川、港湾などの公共用財産百三十一兆円や防衛施設などの国有財産は、行政サービスを廃止しない限り売却することはできませんが、物納財産などの未利用国有地については売却可能な資産を徹底して売却し、さらに、一般庁舎、宿舎については効率的な活用を促進し、不用となる不動産の売却や、国以外の者に貸し付けることとされています。

 政府の資産として出資金が三十六兆円ありますが、このうち、日本郵政に加えて、本法案にある日本政策投資銀行、商工組合中央金庫を初め民営化法人や民営化が決定している法人への出資の売却収入は、国庫、つまり国民に返納すべきです。これらの資産売却収入などで普通国債残高を削減することによって、将来にわたる利払い費を抑制することができます。

 また、本法案は、地方公共団体に対して、資産、債務の実態把握と改革の推進を要請しています。

 このように、本法案は、国だけではなく公共部門全体について、フローだけではなくストックをも対象とした広範に及ぶ行政改革の確実な履行を担保するという重要な意味を持っています。とはいえ、行政改革で、社会保障制度を初めとする財政の持続可能性を確保できるものではありません。それには、行政改革と同時に歳出入一体改革を進めねばなりません。歳出入一体改革についての国民の理解を得るためにも、本法案を成立させ、行政改革をしっかりと推進すべきであります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

伊吹委員長 富田参考人、ありがとうございました。

 次に、逢見参考人にお願いいたします。

逢見参考人 おはようございます。連合で副事務局長をしております逢見です。よろしくお願いいたします。

 本日は、政府が提出いたしました行革推進法案並びに市場化テスト法案につきまして意見を申し述べさせていただきたいと思います。

 最初に、公共サービスのあり方について意見を申し述べたいと思います。

 核家族化や雇用就労形態の多様化、地域コミュニティーの弱まりなどによって個人のリスクが高まっており、将来不安が蔓延しております。こうした時代であるからこそ、公共、パブリックの機能は重要性を増しており、公共サービスの果たす役割を明確にし、機能させることが必要であると考えております。

 公共サービスは、国民の生活の質を確保し、企業が有効に活動するための基盤でもありますから、社会的インフラと社会的セーフティーネットの確立によって、国民に安心と安全を提供できるものでなければなりません。ただし、公共サービスは、すべて官が行うというものとは考えておりません。国、地方自治体、公益法人やNPO、民間企業など、多様な提供主体によるベストミックスによって、ニーズに応じた豊かなサービスが効率的に提供される必要があります。

 政府が提出している行革推進法案は、削減数値目標ありきという印象が免れないと感じております。政府が言う簡素で効率的な政府というのが何を指標としているのか、明らかではありません。国民に安心、安全な社会を提供するための公共とは何か、これを再定義して、それをいかに効率的に提供できるかを考えるべきではないかと思います。

 市場万能主義あるいはリスク対応の個人化という流れの中で、さまざまな格差が拡大しており、国民の不安感が増しております。にもかかわらず、法案第二条では、国民生活の安全については配慮という表現がなされておりますが、これは配慮ではなく、安全の確保であるべきだと思います。国民、利用者にとってのサービスの質という数値化できない重要な観点について抜け落ちていることについても問題であると考えております。

 これらを踏まえまして、歳出の削減、改革については、まず、国民に安心、安全、信頼を保障する政府と公共サービスを確立することを基本目的に置くべきであります。その上で、それを実現するために、硬直的な予算配分を抜本的に見直し、特別会計の改革、政策、事業に関する厳格な検証と政策評価、不要不急の事業や不適正な支出の見直しを通じて歳出改革を行い、無駄があれば着実に削減していく、このことが必要だと思います。これは、最初に削減目標ありきというものとは手法が全く異なるものであると考えております。

 次に、法案の個別課題について何点か意見を申し述べたいと思います。

 最初に、独立行政法人の見直しについてであります。

 独立行政法人につきましては、財務内容を含めた情報公開や経営責任の明確化を徹底し、加えて、公正取引や労働法制を遵守しつつ、経費の透明化と事務の効率化を進めることが基本であると思います。

 法案では非特定独立行政法人の人件費についても五%削減義務づけの対象となっておりますが、非特定独立行政法人の制度設計の基本に照らし、労使交渉による賃金制度、水準、定員改廃の決定を最大限尊重すべきだと思います。

 独立行政法人等の融資業務の見直しに当たっては、特に教育、雇用、中小企業などに関する分野については、その効果や、廃止を行った際の影響に関し、定量的な判断だけではなく、特にそうした社会的なセーフティーネットを必要とする低所得者や中小企業事業者への影響を十分踏まえた上で、慎重に検討すべきだと考えます。

 次に、特別会計改革でございます。

 特別会計の改革に当たっては、第一に、仕組みを簡素化してわかりやすい構造にすること、第二に、毎年見直しを行ってその財務活動を国民にわかりやすく明示すること、第三に、原則として時限立法化し、役割を終えた特別会計は原則として廃止あるいは縮小を促すこと、この三つを前提に行うべきと考えます。

 特別会計は多岐にわたりますが、ここでは特に労働保険特別会計の見直しについて意見を申し上げたいと思います。

 雇用保険制度は、雇用面におけるセーフティーネットの中核を担っております。憲法二十七条は勤労権を規定しているわけですが、これを保障するものとして雇用保険制度があるというふうに私どもは考えております。雇用保険制度の国庫負担は、そういった国民に対する政府の雇用保障責任を具体化、具現化するものであり、単に財政面からのみ論じられるべきものではないと思います。

 雇用保険三事業が我が国の雇用対策の中心的な役割を担っているという現状からすれば、これを一般会計に移すことによって、果たして我が国の雇用対策全部を行うことができるのか、非常に不安であります。雇用対策には、働く人とその家族の生活がかかっており、景気の動向に対応した機動性が求められるものでありますので、特別会計で扱うべきと思います。

 労働福祉事業につきましては、廃止も含めた徹底的な見直しを行うとしております。確かに箱物など見直しが必要なものもありますが、労働福祉事業は、労働災害の被災労働者の円滑な社会復帰の促進や遺族の援護事業、最近問題になっておりますアスベスト対策、過労死・メンタルヘルス対策など、労働災害の防止事業も行っております。

 さらに、未払い賃金立てかえ払い制度も労働福祉事業として運営しておりますが、これは、企業が倒産した際に、賃金や退職金が未払いの状態にある労働者に対するセーフティーネットとなっております。これらの事業は労働者にとって必要不可欠なものであって、単にコストの感覚だけで廃止または見直しの対象とすべきものではないと思います。

 しかし、三事業については、政策効果が不明確なものあるいは無駄なものもありますので、個々の事業に関する調整や効率的な事業運営が十分になされていない点で問題があると考えております。その意味で、外部評価などチェック機能を強化し、抜本的な見直しを進めていくべきであると思います。

 次に、規制改革についてであります。

 規制行政や許認可行政については、認可に当たっての行政の裁量の余地が大きいなどの問題があり、不明確かつ不透明な許認可基準や参入規制など、裁量型行政を抜本的に見直していくことは当然であります。また、先端技術など、競争力強化や新たな雇用、産業の機会創出につながる分野についての規制緩和は積極的に行うべきであると考えます。

 しかし、現在、国民生活の安心、安全が問われていることを踏まえれば、国民、消費者の安全と健康の確保、環境保全、公正労働基準の維持など、社会の質にかかわる規制はむしろ強化すべきであると思います。

 この間、市場開放や自由化中心の規制改革が進む一方で、それらに伴う負の側面を回避、解消する社会的規制の検討が放置され、その結果、不安定で低賃金の労働が拡大してまいりました。社会の安定のベースである雇用労働の基盤が揺らいでしまっている。さらに、市民、国民の財産生命を脅かすような事件、事故も起こっており、事後チェック体制の甘さなどが社会的問題になっていることを軽視すべきではないと思います。このような規制改革がもたらした影の部分を重視し、規制改革された結果に対する検証システムが必要であると考えます。

 次に、市場化テスト法についてであります。

 市場化テスト法案については、公共サービスの質を確保した上で、より効率化を図る必要があります。その観点からいえば、サービス、事業のあり方や評価の仕方など、本質的な議論が行われていないことは極めて残念であります。

 最近、一部の雑誌等において、この間の行革・規制改革論議に着目し、盛んに、官業開放で生まれるビジネスチャンスをあおる論調が見られます。あらゆる公共サービスを営利目的の事業に変質させるための手段としての市場化テストであってはならないと思います。このことを基本的な視点に据えないと、結果として、参入したがっている事業者のための改革となってしまって国民のための行政改革にならないという、本来の意義に反することになりかねないと思います。

 このようなことから、市場化テストに当たっては、良質な公共サービスの安定的な供給と確保、ユーザー、国民によるコントロールが担保されるための制度、そして、公共サービスに従事する者がひとしく仕事に誇りが持てる雇用労働条件の担保の三つの原則を最低維持すべきであります。

 次に、総人件費改革についてであります。

 私ども連合は、歳出構造全体を抜本的に改革するのであれば、公務員の総人件費についても課題とならざるを得ないと認識しております。しかし、中長期的視点に立って、政府、自治体は、どのような政策、事務事業に重点を置くべきか、そのもとで公共サービスの水準や質を確保できる適正な公務員総額人件費とはどのようなものであるかという観点が必要なのではないかと思います。

 特に、政府、自治体が行う事務事業の中には、国民の安全に直接かかわるようなものが多いことに注意しなければなりません。食や住の安全、環境に対する国民の関心は極めて高いものがあります。一方、民間参入が進行、拡大する中で、ルールが適正に守られているのか、事後チェックがどうなっているのかなどが問われているような事件も起こっております。

 そのため、現在国民が求めるのは、安心、安全、信頼を国民に保障する行政と公共サービスであると認識すべきであり、事務事業の見直しに当たってはこのことを基本的視点に置くことが必要であります。

 また、労働組合としては、公務労働者であろうと民間労働者であろうと、雇用不安が惹起するような事態は避けなければならないと思います。連合は、当該の公務労働者がこの問題で強い不安感を持ち、士気にも影響しかねない状況にあることを指摘し、政府には万全の対策をとるよう強く要請したいと思います。

 政府は、総人件費改革に当たって、配置転換等その他の方法により雇用を確保するとの見解を表明しております。当該の職員が納得し、また、職場の士気低下につながらないような方策を確立し、当該組合と十分な交渉協議をしていただくよう要請したいと思います。

 次に、公務員制度改革であります。

 連合と傘下の公務組合は、新たな社会のニーズに適切にこたえる公務部門の改革と、そのもとでの公務員制度の抜本改革は、避けて通れない課題であると認識しております。折しも防衛施設庁における官製談合問題がまたもや再発し、天下りと深く結びついた政官業癒着の構造が改めて問われております。今こそ、公務部門、公務員制度の抜本改革を行うべきときであります。

 今必要なことは、公務員の働きがいやモラールを向上させ、多様な公共サービスの需要にこたえるための公務員制度をいかに構築するかであります。職員をサービスや事務事業の決定過程の各段階に参加させ、全体としてサービスの豊富化と効率化を図り、公正で公平な公共サービスの実現を図らなければなりません。そのためにも、公務に対する労働基本権の付与は必要であります。

 また、民間では、団体交渉とは別に労使協議制が普及、定着しており、公務分野においても、労使がパートナーとして話し合う労使協議制を導入することが求められています。これにより、労使が決定した事項については、双方が納税者と社会に対して説明責任を果たす体制を確立することが必要だと思います。

 公務員制度には、そのほかにも改革すべきことがたくさんあります。例えば、職階制を廃止して、仕事の種類、職務内容と責任範囲を明確化した新たな職務給制度を確立すること、公正、公平、透明で納得性のある新たな評価制度を確立すること、また、複線型人事システムを活用しながら定年まで勤務できるシステムを整備した上で、天下りに関する規制を強化、透明化することなど、さまざまな改革が必要です。

 一方、国連の国際労働機関であるILOの理事会が、三月二十九日に、日本の公務員案件に対し三回目の勧告を出しました。勧告は、公務員法制に関する改正が関係者間の協議を通じて早急に合意されるよう、関係者のさらなる努力を督励しております。政府が国際社会からの勧告を重く受けとめて、労働基本権の付与を明確にした改革を断行すべきと考えます。

 この間、連合は、政府と公務員制度改革に関する政労協議を続けており、既に、労働基本権を付与する公務員の範囲について検討を行う場を設置することについて合意しております。連合は、この間の政府の対応を評価し、合意内容について前進であると受けとめており、引き続き誠意を持って協議を続けていきたいと考えております。

 この検討の場については、何らか法律において設置を明記していただくことを強く要望し、私の参考人としての意見表明とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

伊吹委員長 逢見参考人、ありがとうございました。

 次に、井堀参考人にお願いいたします。

井堀参考人 おはようございます。東京大学の井堀です。よろしくお願いします。

 私のきょうお話しするテーマは、事務局の方から特別会計改革についてというテーマで何かしゃべれと言われていましたので、その点に限定してお話しさせていただきたいと思います。それで、皆様のお手元に簡単なレジュメがあると思いますが、それに従って始めます。

 特別会計、御存じのように、基本的に三つの分類が行われているわけですけれども、国が行う特定の事業を経理する会計、これは社会保険とか公共事業関係の特別会計ですね。それから、特定の資金の管理運用の会計、これは財政融資あるいは外国為替の会計等です。それから三番目が、特定の収支を区分して経理する会計、これは交付税の会計とか、それから国債整理基金のようなものです。

 幾つか性格が分かれているわけですが、特別会計の改革が、今度の政府案でも、それから民主党の方でも法案を出されたようですけれども、問題になっているのは、一般的に予算の議論というのが一般会計を中心に行われていて、歳出の効率化の圧力が特別会計に向けられていないのではないか、そういう疑問とか、あるいは、特別会計であるがゆえに、固有の財源で、必ずしも必要でない事業が自己増殖的に行われているのではないか、そういう懸念があるんだろうと思います。

 そこで、そもそも特別会計に本来どういうメリット、意義があるのかという点からお話しさせていただきたいと思います。

 一般会計とのこれは比較になるわけです。つまり、特別会計に何らかの問題点があったとしても、それを、特別会計をやめてすべて一般会計にしてしまうと完全に問題が解決するかというと、では、一般会計が、国民の選好、国民のニーズを完璧に的確に反映した一〇〇%十分な予算が常にできているかというと必ずしもそうでない面がありますので、これは、どちらの会計を用いることが相対的に有利かどうかという問題だろうと思います。

 それで、すべての経費を一般会計でまとめて計上すると、経費の性質によっては、効率性の面から見ても、あるいは情報開示の面から見ても有益でないものもあるので、その場合には特別会計を使って別勘定で計上する方が資金の流れがより明確に開示されて、結果として国民にもプラスになる。

 その一つの大きな点というのは、予算の中で、税金や、保険料あるいはその他の使用料等の料金などの収入と、それから実際の歳出活動あるいは政府の公共的な活動との間に一定の対応関係、リンクが実際にある場合には、それを会計情報として開示する方が、国民にとっては、こういった形の負担が直接こういった形のサービスに使われている、そういうことが実際に行われている場合には、それを会計情報として開示する方が望ましい。

 これは特定財源等の場合も出てくるわけですし、あるいは社会保険のように、保険料は社会保険として一定のサービスに充てるという場合には特別会計としてやる方が一般会計でやるよりは資金の流れはより明確になる。その結果として受益と負担の関係がより国民に明確に開示されるので、国民としてもそれが納得いくものかどうかに関して監視が働きやすくなって、結果として、効率的な運営をする圧力としてうまく機能するということです。

 それから、国債整理基金とかそれ以外の会計にしても、別勘定で資金の流れを明確に開示することができるとすれば、それによって予算の中身が国民にとってより明確になれば、それがどういう形で行われるべきかに関する監視も強くなる。その意味では、ある程度受益と負担に一定のリンクがあるのか、あるいは、資金としてそれなりの性質を持っているものについては特別会計でした方がいいんじゃないか、こういう議論はそれなりに意味があるんだろうと思うんですね。

 特に、最後ですけれども、一つ例として道路特定財源を挙げていますけれども、仮に一般会計にしないであえて特別会計なら、受益と負担のリンクで縛るということは、逆に言いますと、政策の選択の幅をあらかじめ縛っているわけですね。要するに、ガソリン税で上がってきたものは必ず道路の整備にしか上げないということですから、道路以外のものに使えないということで選択の幅を縛っているわけですけれども、縛るということはそれだけ自由度が狭くなりますから、完全に一般会計で最適に予算編成ができるというのが一つの反対側の基準とすれば、それに比べればセカンドベストにならざるを得ないので問題なんですけれども。

 問題は、特別会計をやめて一般会計にして完全に自由に財源を使えるときに、道路整備よりももっと国民にとって望ましくないサービスにも使われる可能性はあるわけですね。自由度があるということは、逆に言うと悪い方に使われる可能性もあるので、そこはどの程度政治がきちんと一般会計で予算をコントロールできるか、そこにかかってきているので、そこに対する有権者なり納税者の不信感がある程度ある場合には、特定財源というのはそれなりに有権者から見ると安心できる。逆に、政治の場が、一般財源でも予算を編成してちゃんとやっています、社会経済環境が変わったときにきちんと既得権にかかわる見直しができていますということであれば、これは一般財源にした方がいい。程度問題だろうと思います。その後どうしたらいいかというのはケース・バイ・ケースだと思います。

 その意味では、特別会計の問題点、特に最近これが出てきたというのは、やはり特別会計の数が、過去の経緯もあってたくさん設置されてきたことで、予算全体の仕組みが複雑でわかりにくくなった。会計が分立することで全体の効率性が損なわれるではないか、そういう点があるのだろうと思います。

 特に、特別会計で、一般会計とは違って受益と負担の関係にリンクをつけたとすると、問題は、道路でいいますと、ガソリン税の税率が高どまっているとか、あるいは保険料なり料金収入がある程度あって、ところが歳出の方は、社会的な需要が落ちて減ってしまって剰余金が出てしまった。その場合は、収入があるから特別会計をつくらざるを得ないという形で、結果として無駄なものもできやすいわけですね。そのときに、当然、特別会計なり特定財源の場合であっても、それに対応する税率を下げたり保険料を下げたりしていけばそれで対応ができるんですけれども、そこがなかなか難しいときにはそういう問題が起きる。

 その意味では、特別会計で政府の行動がどのぐらいまで効率的になるかというのは、ある程度社会経済環境が変化したときにどの程度見直しを柔軟にできるのかという、そこの問題になると思うんです。

 ただ、従来は、硬直的な予算編成が、特に特別会計の場合は、一般会計に比べるとそこを見直すのが難しい、各省庁の既得権益化の一つの温床になっている、こういう問題がありますので、その意味では、特別会計というのを抜本的に見直すいい機会だろうと思います。

 それで、政府案ですけれども、特別会計の数を、富田参考人の方からも御紹介ありましたけれども、二分の一から三分の一程度に削減するということ、それから、今後五年間において合計二十兆程度、これは一般会計の方へ財政健全化の貢献を目指す、それから、十八年度予算においては一三・八兆円活用するという点で、小さいのがいいのかどうかは別にして、確かに、無駄を省いて効率的な政府を目指すという意味での第一歩としては評価できる案だと思います。

 ただ、これで十分かどうかというのは、もちろん今後の課題です。大胆に特別会計の問題点を見直すところは見直す必要はあるんだろうと思います。

 特に、剰余金等が出ているということは見直しをする場合のシグナルとしては意味があって、剰余金が発生しているということは、今まで特別会計が想定したことが、社会経済環境が変わってうまくそれが処理し切れていないということですね。そういうシグナルを出しているわけですから、それがどういうものかというのを精査して、必要なものだけを取り込む。

 特に歳出の削減に関して言いますと、特別会計を一般会計化することが歳出の削減に特効薬になるかどうかというのは、それぞれの性質によって必ずしも明確ではないと思いますが、一般会計にするにしても特別会計でやるにしても、いずれにしても、政府がどこまで本来の公的なサービスにきちんとコミットするのか、民間なり政府との役割分担をまず明確にするということが必要で、そのもとで、特別会計で仮にやるとした場合にどういった形でやるのがよりその事業の効率化に必要かという観点から見直しを今後とも進めていただきたいと思います。

 最後ですけれども、今後の課題として三つほど私見を入れておきましたが、一つは交付税特別会計、御存じのように、五十兆の借入金を抱えています。これは今は多少落ちついているわけですけれども、要するに、特別会計で借金がじゃんじゃんできてしまった、こういうシステムは非常に問題が多いと思います。今後も特別会計で借金をできるということになりますと、ややソフトな予算制約の問題が出てきますので、ここは見直していただきたい。

 それから、社会保険関係は国庫補助という形で税金を入れているわけですけれども、御存じのように、基礎年金の国庫補助が三分の一から二分の一に上がるわけですが、本当に社会保険関係に税金をどんどんつぎ込むのがいいのかどうかという問題です。

 保険料で給付を賄うというのが社会保険の基本的な性質ですので、このようにじゃんじゃん税金を入れるというのは、ある意味では、税金を入れるといいながら、一般会計では結果として財政赤字で対応しているわけですから、これは先送りの不安があり得ると思います。

 それから、最後ですけれども、剰余金、積立金は常に一般会計に活用するのが望ましいかというと、これは必ずしもそうではないだろう。原則としては、剰余金なり積立金が余っていれば、特別会計に入る収入を抑えて特別会計自体をスリム化するのが本筋だろうと思うんですね。要するに、特別会計の剰余金というのは一般会計の財源調達としてそもそも設立したわけじゃないですから、財源調達は基幹税でやるのが筋であって、もちろん、余ってどこにも使い道がないんだったら国債の償還に充てるのが今はいいと思いますけれども、本筋は、やはり特別会計自体も業務をスリム化して、それに見合って収入サイドをきちんと見直すというのが必要だろうと思います。

 そういった形で、財政への貢献というのは、本当に中長期的に特別会計の中でお金が余って、ほかに使い道がないという場合に限定されるときも、一時的なギフトとして考えるぐらいにしておいた方が望ましいのかなと思います。

 時間が来ましたので、以上で私の説明を終わらせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。(拍手)

伊吹委員長 井堀参考人、まことにありがとうございました。

 次に、桑原参考人にお願いいたします。

桑原参考人 おはようございます。私は、希望社という会社の社長であります。中小企業のおやじであります。

 私は、行政改革にとって、公共工事の発注や工事監理、そういう内容を改革していくことがとても重要だと考えておりますが、この改革を押しとどめているものが、建設業者ではなくて行政職員、すなわち官僚である、この点を強くきょうは皆さんに御報告しながら、わずかな提案をさせてもらう、そんなつもりで来ております。

 公共工事の改革の視点は、よいものを安くつくることであります。安くという、これがとても重要なことでありますが、今これが社会の風潮として、悪くというふうに読みかえられている面があります。もう一度繰り返します。公共工事改革の視点は、よいものを安くつくることであります。

 しかし、行政職員は、それに反した対策を継続して実施し続けています。この事実を、私は、会社経営者としての体験をもとに御報告することにします。ここでは岐阜市の問題を取り上げますが、全国各地で同様な実態がありますので、岐阜市の問題というふうにとらえずに、これを全国的な問題という視点でお聞きいただいたらありがたいと思っています。

 お手元にわずかなレジュメをお渡ししてあります。急なことで何にも準備ができませんでした。そのレジュメに沿って少し話をさせていただきますが、「公共工事の談合問題について」というレジュメであります。この表紙の写真は当社の本社であります。正面の垂れ幕には「談合しない。」それから左下のパネルには「建築費は二割前後安くなる」こういうふうな表示がされています。これは宣伝のためのものではありません。これが私たちの真意であります。

 この談合をしない真意を表明している会社が岐阜市の公共工事に参画しようとするとどんな処置がとられてきたか、これを報告します。

 当社は、平成十三年度から、建築工事の指名願を市に提出してきました。その経過を見てみますと、平成十三年から今日に至るまで五年の間に、四十件以上の指名を受けている会社は三十五社前後あります。ところが、当社は、いまだかつて一度も指名を受けておりません。指名がないので指名競争入札には参加できないわけですので、公共工事を競争的にする役割を負えません。

 したがいまして、当社は、一般競争入札それから公募型指名入札にまた参加せざるを得ないんですが、そのような行為を起こしていくときにどのようなことがなされてきたのか、それを少し話したいと思います。

 レジュメをめくってください。「談合しない建設会社の岐阜市公共工事における実態」というふうに書いてあります。この報告は、一般競争入札と公募型指名入札に限ったものです。

 平成十三年に岐阜市に指名願を出しました。それから指名は一度も来ない。そして、平成十五年五月に一般競争入札が、北東部コミュニティーセンター建築主体工事というのが発注されました。当社と丸泰というJVで落札しました。十六年四月になると、西郷小学校及び則武小学校という工事の発注がありまして、その際に、入札応募資格及び条件というものが示されました。今までなかったわけですが、その中に、岐阜市発注の請負金額四千五百万円以上の建築工事を受注し、今施工している会社はこの入札から外すというふうに初めてうたわれました。これによって受注のチャンスを失っております。それがその下の内容であります。

 平成十六年五月に、今の西郷小学校増築工事と則武小学校、それで失っております。それから、十七年五月になると、七郷小学校増築工事というのが発注されました。これは私どもが今工事をしておりませんので、公募型で参加する資格を持っておりまして、入札に参加しました。そして、当社と村瀬建築というJVで落札しております。その後に芥見健康増進施設というのが一般競争入札で発注されましたが、同じように、四千五百万円以上の工事を施工中ということで、この入札には参加できませんでした。

 平成十八年、ことしであります、四月一日から岐阜市の入札契約制度が改定されました。これは品質確保のための業者選定方式の確立として、総合評価方式が導入された。ここでは一般競争入札と公募型指名入札に限るわけですが、過去二年の工事の成績評価の平均点が六十五点を切った者は入札参加させないという仕組みであります。

 私どもは、この三月に竣工した七郷小学校で、この評価点を、五十四点という今までだれも得たことのない低い点数をいただいておりまして、これによって、二年間、入札のチャンスを今失っております。

 それから、五年間一貫して、きょうに至るまで、まだ指名入札のチャンスは得ていません。これについてちょっとだけ補足します。

 工事成績が五十四点については、これはどういう根拠によって五十四点をつけたのか、今、市にその回答を求めています。岐阜市に本社を置く指定工事会社は百二十社ほどありますが、当社はその中で経審の点数では十番以内に入る位置にありまして、こんなひどい仕事をする会社ではないというふうに自負しております。それから同時に、私どもと二回JVを組んだ会社は、私たちと組むたびに、後の指名がされないという状態が今あります。

 こういうふうな今のやり方がどんな行政姿勢に結びついているのか。次のページをお開きください。

 これは、平成十三年度以降の岐阜市建築工事の一般競争入札と公募型の結果であります。とても指名競争入札が多いのは事実でありまして、この左側を見ていただきますと、平成十五年と十七年に当社が落札した、これは青字で記入してありますが、落札率が七六・二八と八三・三一であります。当社を外してやった結果の落札率は赤で記入されておりまして、この落札率の平均値は九七・一%であります。このことが、現状の談合を行政自身が維持しながら進めているやり方であります。

 右のページは、当社が入札した際の数字であります。平成十五年の北東部コミュニティーセンターでは、二番手にある会社が業界の代表選手で、私たちに競争を挑んだ結果が出ております。七六・二八%と七九・三六であります。その右は十七年度で、二年たったときのやり方です。二番手は私どもに競争を挑みません。単独で当社だけが安い数字を入れるというような結果になってしまっております。

 このような状況から判断して、今、談合しない会社を排除しなければ、公共工事に依存して存在している建設業が成り立たないのは事実であります。事実であります。その業界要求をもとに、官民が一体になって、談合しない会社の参入を押しとどめる、こういう形で今の行政がなされております。この点については、立法権限を持つ議員諸氏の意思と判断がこの問題を決めていくことになろう、こう思っております。行政職員には行政改革をする資格はありません。

 時間がなくなりましたので、あと要点だけ話します。

 まず、改革の要点でありますが、圧倒的に多い指名競争入札を縮小して一般競争入札を限りなく拡大することだ。

 それから、入札参加対象地域がとても狭い中でやっております、これを拡大すべきだ。

 それから、入札制限につながっている共同企業体の編成をやめさせるべきだ。

 それから、現在とても問題になっているのが総合評価制度の導入であります。総合評価制度というのは、従来、金額が安いだけで落札して、いい仕事をしない、あるいは、優良な仕事をする人がはみ出してしまう、これを制限する仕組みで議論がなされてきました。それならいいんですが、今、国交省の見解を聞いていますと、安い金額で入札した会社には、要するにいろいろの制限を加えて、それが悪いように扱う方針が示されてきております。この点については緊急な再考が必要だと思っております。

 わけのわからぬ話を中小企業のおやじがやりました。ぜひ立法の参考にしていただけたらありがたいと思っております。

 それから、皆さんにお配りするだけなかったものですから、各会派に一部ずつ、私どもが繰り返し公共工事の改革を訴えておる「飛翔」という冊子をお渡ししてありますから、興味のある方はぜひお読みいただきたい。

 期待するのは先生方であります。よろしくお願いします。

 ありがとうございました。(拍手)

伊吹委員長 桑原参考人、まことにありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

伊吹委員長 これより各参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許可します。菅原一秀君。

    〔委員長退席、今津委員長代理着席〕

菅原委員 おはようございます。自由民主党の菅原一秀でございます。

 五十時間以上にわたりますこの行革推進法案の審議、一般質疑、集中審議を経て、いよいよ本日の参考人質疑に至ったわけでございますが、本日おいでの四名の参考人の皆様におかれましては、新年度何かと御煩多の中、お運びをいただき、ただいまは大変行革に関しての重要な御意見を御開陳賜りましたことに心から感謝を申し上げたいと思います。

 今日、我が国は、世界的に見ても、大変スピードあふれる高齢化、あわせて少子化、この人口減少社会に突入をしているわけでありまして、少子化対策は、国家の社会保障三本柱とあわせて喫緊の課題であります。

 しかし、最もその根底として重要なことは、財政再建、財政の健全化を力強くなし遂げていくこと。国、地方の長期債務残高は、言うまでもなく、七百七十五兆円、国民一人当たり六百十六万円にも及ぶ額に上っているわけでありまして、GDP比も一五〇%、まさに先進国最悪の状況にあるわけであります。また、国債の国際金融市場における信用につきましても大変懸念が高まっているわけでありまして、この財政再建、健全化のためには、まずは経済の成長力強化で税の自然増、そして徹底した歳出の削減で政府部門をスリム化していく、そしてその上で国民に行政サービスのカットあるいは負担増を選択していただく、これが自然の流れであると思っております。

 こうした中での簡素で効率的な政府を目指す今回の行革推進法、総人件費の改革、政策金融の改革、特別会計の改革、そして独立行政法人の改革、さらには政府の資産、債務の改革、この五本柱から成っているわけでありまして、これまで議論を重ねてきたところであります。

 そこで、まず富田参考人に、富田参考人は国債の専門家でもございますので、この国債の危機的状況と、行革のいわば一番の本丸といいますかプライオリティー、これをまずお示しいただきたい、こう思うわけでございます。

富田参考人 ただいま菅原先生御指摘のように、日本の国、地方を合わせました、税金で将来、将来というのは長い先も含めてでありますけれども、償還しなければならない政府債務残高は、経済規模の一・五倍にも達しております。他の先進国におきましては、やはり財政の、そして社会制度の持続可能性という観点から、およそ大体六割、経済規模の六割前後で推移しているわけですけれども、非常に政府債務残高は大きい。

 そういう中で、やはり日本国債の信用というのも、日本国内にいては気がつかないことなんですけれども、国際金融市場では、菅原先生御指摘のように、若干信用が揺らいだ状態が九八年の夏以降続いておるという状態でございます。しかも、これから我が国の人口も減少する、急速な高齢化が進むという中におきまして、国民も、社会保障制度を初めセーフティーネットの持続可能性を非常に心配しておるわけであります。

 したがいまして、私は、今回の行政改革の法案によりまして、まず官がみずからの身を切るということが、これからの大きな、国民が期待するところの改革を行っていく上で非常に重要であるというふうに存じます。

菅原委員 今御答弁がございましたように、官がみずから身を切る、まさにそのとおりでありまして、徹底した無駄を省くということは万般にわたって遂行していかなければいけない、こう思っております。

 そこで、富田参考人に、総人件費改革についてお尋ねをいたします。

 今回の行革推進法案においては、国家公務員五年で五%、そして地方公務員四・六%純減ということを数値目標にしておりまして、かつ、これから十年間で国家公務員の総人件費をGDP比二分の一に近づけていくという目安も設定しているわけであります。

 こうして目標を持ちながら、今回、農林統計関係あるいは食糧管理関係など、行政ニーズが変化しているところについては大胆に見直しをする、一方で、出入国管理あるいは行刑施設といった国民の安心、安全のための部門については残す、あるいはややふやしていくといった、いわゆるめり張りのついた改革が求められているわけでございます。

 そこで、富田参考人は、行政減量・効率化有識者会議で人件費改革の先頭に立っておられるわけでございますが、先般の有識者会議からの各省庁へのヒアリングを見ておりましても、一部省庁においてはゼロ回答、合わせると六千八百名ぐらいの数値しか上がってきていない。

 目標としては、実数で一万六千六百人を目標にしているにもかかわらず、ある意味では半分にも及んでいない。全くもって、先ほどおっしゃったように、官僚の抵抗、あるまじき、言語道断の状況があると思っていますが、この点について、先ほどは、地方公務員の削減をすれば、ひいては、それが地方交付税の削減にもつながって、全体の効率をよくしていくというお話もございました。

 改めて、この五%、四・六%についての御見解と、今後の、当然これは政治のリーダーシップにかかわってくると思いますが、この点についての御見解をお示しいただきたいと思います。

富田参考人 国家公務員の定員につきましては、昭和四十年代からずっと抑制されてきておりまして、そういう中でさらに五%ということでもって、官僚の抵抗というのも非常に強いことも先生御指摘のとおり事実でございます。

 しかし、先生御指摘のように、社会のニーズの大きな変化というもの、そして民間企業では情報通信技術の大きな発展を利用して非常に効率的な運営がなされている、そういうものをやはり行政にも持ち込む必要があろうということであります。そうした技術を活用するとともに、業務のそれぞれを、本当に国家公務員が担うべきものかどうか。定型的な業務であれば、それを民間に委託するという方法も考えられるわけでありますし、また、独立行政法人が効率的に業務を行うということも現在の仕組みにおいて可能なわけです。

 したがいまして、業務の性格にまで踏み込んで行政減量有識者会議におきまして検討させていただいております。御指摘のように、ゼロ回答のところが多かったわけですけれども、法務省、財務省におきましては具体的な数字で回答をいただいております。

 やはり、これは先生方の強い御意思がありませんと、有識者会議というところだけでできるものではなくて、国民の強い支持を背景に遂行すべきことだと存じます。

菅原委員 ありがとうございます。

 いずれにしても、五%、四・六%、なし遂げなければいけない、こう思っております。

 逢見参考人にお尋ねをしたいと思います。

 この法案に対して、先般、民主党さんも対案を出されました。その対案、総人件費改革については人件費を三年間で二〇%削減する、こう銘打っているわけでございますが、この実現可能性について、労働組合の立場から御所見をお伺いしたいと思います。

逢見参考人 民主党の考え方についてのコメントでございますが、これは現行のシステムの延長線上で考えると、なかなか、この三年二割というのは非常に難しい数字だと思います。民主党の場合は、それを大胆な分権ということで、国から地方に移すという中で考えておられるんだろうと思います。そういうふうに理解をしております。

 私も富田先生と一緒に有識者会議の中で今ヒアリングをやっておりますけれども、なかなか五%という数字も、達成することは非常に難しいなと。まして、その中でも国民の負託ということでその努力をしなければならないと思っておりますが、そういったことを考えますと、現行のシステムの延長線上では非常に厳しい数字だというふうに思っております。

菅原委員 五%もなかなか難しい、ましてや三年で二〇%は厳しい、そういう御見解でございました。

 時間がないので次の質問に入りますが、いずれにしましても、今の総人件費に関しては、一億二千万人我が国に人口がいて、公務員が国、地方合わせて約四百万人、人口でいえば三・三%。国民感情とか国民感覚、国民の判断基準というのは、やはりある意味では九割以上の一般の民間人になるのではないかなと。

 例えば、三菱自動車は三年間で二三%リストラをしました。日産自動車も三年間で一四%、神戸製鋼一七%、東芝、NECに関してはそれぞれ一〇%、大手の銀行十五行に関しても四年間で一四%人員をカットしてきたわけでありまして、もちろん民と官の単純比較は難しいと思いますが、いずれにしても、国民感覚というものはそこら辺にあるのではないかということで、これは官民一体、官のための官による改革ではなくて、私ども政治のリーダーシップはもちろん必要でありますが、ともに歩んでいかなければいけない、こう思っております。

 次に、特別会計の改革につきまして、井堀参考人にお伺いをしたいと思います。

 井堀参考人は財政審の特会小委のメンバーでもございまして、ただいまるる御説明をいただきました。特会は事業ごとの受益と負担の関係や収支を明確にするというメリットが当然そこにあるわけでございますが、しかし、その特会が年々肥大化をして、複雑化して、国民から見たら大変見づらくなっている、こういう現状にあるわけでございます。したがって、昨今、あるいはもうかねてから、省庁の財布であるとか、あるいは利権の温床や天下りの受け皿機関としての指摘ということも免れないわけであります。今日、平成十八年度予算、三十一特会の歳出総額は全体で約四百六十兆円、大変な額に及ぶわけでありまして、特会間の重複部分を除けば二百二十五兆円と、それでも一般会計の倍以上のボリュームになっているわけであります。

 今回の行革推進法案の中では、三十一特会を二分の一から三分の一に減らして、特会にある資産、負債並びに剰余金や積立金を縮減することで財政健全化に目標値として約二十兆円を役立てよう、こういう政策目標を立てたわけでありまして、既に十八年度予算では十三・八兆円、財政融資資金十二兆、外為資金一・六兆、産業投資、電源特会あるいは農業基盤特会等々、合わせて十三・八兆円の措置をとったわけであります。ところが、実際問題、特会の大部分は、国債の償還、ここに百十六兆円、あるいは社会保障四十九・九兆円、地方交付税十九・二兆円を占めているわけでありまして、言ってみれば、意外と無駄を削減する部分というのは小さいわけであります。

 こうなりますと、やはり特会のスリム化ということを考えますと、先ほど来御説明にもございましたように、社会保障関係あるいは地方財政関係、この改革なくして、あるいはこの改革と同時に進めていかなければいけない。当然のことであると思うんですが、この点、どのあたりに改革を切り込んでいくことがまさにベターなのか、井堀参考人にお示しをいただきたいと思います。

井堀参考人 今非常に重要な御質問をいただきましたけれども、特別会計の会計制度を改革することでどのくらい行政改革につながるのか、あるいはそれが結果として財政の健全化、具体的に言いますと財政赤字を縮小する方向に行くのかというのは、今御指摘いただいたようになかなか難しいところがあります。

 要するに、特別会計というのはいろいろなものがまじっていますから、国債整理基金をスリム化するといっても財政的にそこでお金が出てくるわけではありませんので、その意味では、本来特別会計がやっている事業のところをターゲットにして改革をするというのが今回の政府案で、そこですと、十二・三兆の中をどれだけ事務効率化のところで効率化するかということと、それから、今まで特別会計にたまっている剰余金をどこまで一般会計の方に持っていくことができるかという、そこが一つのターゲットになっているわけですけれども、それはそれで第一歩として当然やるべきことだろうと思います。

 本来特別会計として計上してきたものの中で余っているもの、あるいは積立金が、将来それが特別会計の中で使われる可能性が少ないものは当然一般会計の方に繰り入れて財政健全化の方に使うのが望ましいわけですし、それから、特別会計の中の事業を徹底的に見直してスリム化して、そこで事業の効率化をするというのも必要なわけですけれども、ただ、金額からいいますと、今御指摘いただいたように、年金とかを含めた社会保険、あるいは地方交付税等国と地方のいわゆる三位一体改革、それから、国債整理基金の場合には国債のトータルな管理政策をどういうぐあいに行うか。

 これは、特別会計改革とはある意味で次元の異なる地方財政なり社会保障なり国債の管理政策の問題なんですけれども、実はそういったところをより徹底的に進めることが、結果として、特別会計自体が今複雑になっているわけですけれども、そこをより透明にして、さらに全体として日本の財政再建にも役立つという意味では非常に重要な点ですので、今回、特別会計改革ということで、ある意味で、特別会計の全体像がどういった形で絡み合っているのか、あるいはどこが複雑でどこが入り組んでいるのかということが、ある程度国民の目にもいろいろな形でその情報が開示されたというのは、いいきっかけになったと思うんですね。

 これを一つのきっかけにして、特別会計本体の改革ももちろん必要ですけれども、同時に、特別会計と一般会計との絡みであるところの地方交付税の改革であるとか、それから少子高齢化を迎えたところの社会保障、特に保険料と税のあり方をどういうぐあいにするのか、このあたりはぜひ徹底的に、この場で議論するべきかどうかは別にしても、徹底的に国会あるいは政府の場で議論していただいて、本当に必要な、官がやるべきところがどの程度必要なのかということを本当にゼロベースから見直して議論していただければと思います。

菅原委員 どうもありがとうございました。

 最後に、富田参考人に国の資産・債務改革についてお尋ねをしたいと思います。

 これまで議論してきましたように、大変深刻な財政状況、先ほども御説明あったように、やはり国の資産については売却可能なものは積極的に売却をして、財政再建に最大限役立てていくということは極めて重要だと思います。

 平成十五年度の国の状況では資産約七百兆円、こう言われておりますが、資産圧縮の対象外となっている外為資金、あるいは年金資金運用基金への預託金、あるいは道路、河川などの公共用財産を除くと、よく四百三十兆ということが言われるわけでありますが、これも大変議論の分かれるところであります。

 それはそれといたしまして、先般、経済財政諮問会議で、谷垣財務大臣から売却可能な資産十一・五兆円分の提示がなされました。一方で、我が自民党の財政改革研究会においては百十二兆円の圧縮案を提示したわけでございますが、国有財産として庁舎、官舎あるいは未利用地などの売却等について約十二兆円、一方で、百兆円については貸付金の証券化の案が盛り込まれているわけでありまして、このこともいろいろな場面で議論になってきていることは御案内のとおりであります。

 こうした中で、その論議の中で、どうしても普通国債と財投債は償還財源が異なりますから、仮に売却して証券化したとしても、国の財政状況の改善にはつながらない、こういう意見もある。あるいは一方で、いやいや、見合いの負債である財投債が結局減る、落ちるわけですから、国全体で見れば利払いの低減につながるから、これは重要なことだ、こういう意見もあるわけでございます。

 この法案の六十条には、「国の貸付金については、幅広い観点からその証券化の適否を検討する」、こう銘打っているわけでございまして、今日、貸付金約二百九十兆、このほとんどを占める財政融資資金の貸付金、これを証券化することについて、あるいはその他の分野においても証券化することによって財政再建に資していく、この点の御所見、御見解をいただければと思います。

富田参考人 貸付金の証券化について、その適否を検討するということが法案にございまして、今菅原先生お尋ねの件でありますけれども、これまで企業、銀行におきましては、自分自身の本体で借金をするよりも、証券化をして、いい資産だけ切り出して、それを担保にして借金をするとより低い金利でお金を借りることができるというのが証券化のメリットでございました。これを国の場合に適用いたしますと、非常に難しい問題に遭遇いたします。

 と申しますのも、我が国は国際的には国債の信用力がやや揺らいでいるということがあるにいたしましても、国は日本国内においては最も信用力が高いわけであります。そういう意味で、民間企業そして銀行のようにその証券化をしていくということの意味があるのかどうかということについては、さらに検討をする必要がございます。

 菅原議員御指摘のとおり、国債には、種類なんですけれども、普通国債と財投債がある。それで、普通国債については将来のプライマリー黒字でもって返済していくということなんですけれども、財投債につきましては、貸出先からの回収金、これは政策金融を行っているところあるいは事業機関からの回収金でもって返済する。利子についても、政策金融機関の利子収入、そして事業機関の料金収入等でもって返済されるという形になっているわけでして、貸付金を証券化してそれで財投債が減ったといたしましても、国民負担に直接関係するかどうかということもあるわけなんです。

 したがいまして、貸付金の証券化につきましては、財政の健全化に資する、つまり普通国債の償還に寄与するかどうかという観点より検討することが非常に重要であり、いろいろな角度から広く慎重に検討する必要があるんですけれども、やはり大事なことは、国民の負担が抑制されるという観点を最優先で重視すべきであるというふうに存じます。

今津委員長代理 菅原君、時間ですから終えてください。

菅原委員 はい。

 景気の回復が拡大をしておりますが、景気は循環するもので、いつか下降線に至ることもあるわけでありますから、まさに不健全な財政はさらに悪化して景気後退を助長してしまいますから、この景気が好況のときにこそ、国家百年の計に立って行革推進をしっかりやっていくことが重要だと思います。

 以上です。

今津委員長代理 これにて菅原君の質疑は終了いたしました。

 次に、谷口和史君。

谷口(和)委員 公明党の谷口和史でございます。

 まず、お忙しい中、本日の参考人質疑においでいただきまして、御礼を申し上げます。大変ありがとうございます。

 私の方から、富田先生に何点かお伺いをしたいというふうに思います。

 冒頭のお話の中で、官がまず身を切ることが必要である、無駄を徹底的に省くことを国民は求めている、こういうお話がありました。我が党としては、無駄をゼロにしていこうということで事業仕分けという手法をずっと強く求めているわけでありますけれども、まず、ちょっと総括的に、行政減量・効率化有識者会議において、この事業仕分け、つまり要らない業務の洗い出し、こういった議論はどういった議論が行われているのか、お伺いをしたいと思います。

富田参考人 ただいま谷口先生御指摘のように、行政減量有識者会議におきましては、個々の事業を、現在国家公務員が担っているものについて、それを国家公務員がこれからも担っていく必要があるのかどうか、定型的なものであれば民間にアウトソースしたらどうか、そしてまた独立行政法人に効率的な仕事をやらすということはどうかということで、個別の事務事業を、先生まさにおっしゃいましたような形に区分け、仕分けしながら検討することによって国家公務員の減量ということに結びつけようとしております。

 例えばでございますけれども、例えば農林統計について、国家公務員が直接農家に出向かれていろいろ庭先調査をやられたりヒアリングをされている。その一方で、国勢調査につきましては、その時期にやはり民間の調査員にゆだねるといったことをやり、そして、その集計については地方公共団体が行っている。そういうさまざまな事業の事務フローを分析しながら、いかなる主体が担うことが一番効率的、つまり国民負担を最小化できるかという観点を非常に重視して、まさに事業の区分けという観点を踏まえながらいろいろと議論を進めております。

谷口(和)委員 ありがとうございます。

 続いて、富田参考人に引き続きお伺いしたいと思います。

 次は、政策金融改革の中の商工中金についてでありますけれども、商工中金につきましては、平成十年ごろの貸し渋り、貸しはがしという中で、そういうあらしが吹く中でセーフティーネット貸し付けなどを積極的に行って中小企業を救った大切な金融機関であります。今後も、完全民営化されるわけですけれども、この中小企業に対する役割の中では非常に大きな役割を担っていくというふうに思っております。

 それで、完全民営化ということになるわけですけれども、自己資本比率を見ますと、十七年の三月現在で七・七八%、それから年間利益が九十二億円ですか、百億円に満たないということで、財政基盤としては非常に弱いというのが現状かと思います。今後、財政基盤をやはり強固なものにしていかなければならないと思いますし、党としても、政府が四千億円の出資金を出しているわけですけれども、このかなりの部分を準備金化してしっかりと財務基盤を確保していってほしいという申し入れも行っているところではありますが、今後、財政基盤を強化していく上で準備金化ということも考えられるのではないかと思うんですが、富田参考人の御意見をお伺いしたいと思います。

富田参考人 谷口先生御指摘のように、中小企業金融ということは、これからの我が国の政策においても大きな重要性を持ったものだというふうに存じます。

 その意味で、この法案におきましては、国民生活金融公庫、中小企業金融公庫につきましては、新しく一つに統合されます政策金融機関において、業務の一部を廃止しながらも引き続き政策金融機関として事業を行っていくということとなっております。

 極めて具体的に商工中金のことをお尋ねになられたんですけれども、民営化される金融機関の新体制は平成二十年度に発足するわけですけれども、さらにその先、五年から七年かけて完全民営化されるということが法案の中に入っております。

 その際、完全民営化されたときの、お尋ねの商工中金でありますけれども、どういうビジネスモデルを構築していくべきかということを多分これからも検討しなくてはならないと思うんですけれども、やはりこれまでの、組合組織を通じ、また全国のネットワークというふうなことで培われてきた金融のノウハウということを最大限生かす形で企業価値を高めていくということだろうと思うんです。企業価値を高めるということは、完全民営化によって売却収入が国民に還元されるわけですので、やはり企業価値を高めるということが重要な方策だろうと思います。

 財務基盤の安定化という、谷口先生重要なことを御指摘になられたんですけれども、これまで商工中金は、国の機関として暗黙の政府保証があったので、非常に低い金利で資金を調達することができたわけです。これから完全民営化ということになりますと、自分自身のバランスシートで資金を調達しなければならないということになるわけでして、今谷口先生御指摘のようなことも含めて、これから民間金融機関とのイコールフッティングという面も重要でしょうし、さまざまな側面からこの詳細設計を検討する必要があろうというふうに存じます。

谷口(和)委員 ありがとうございます。

 引き続き富田参考人にお伺いしたいんですが、今、資金調達のお話がありましたけれども、現在の貸付原資の資金調達につきましては、そのほとんどが今金融債によるものになっております。今後の円滑な調達という面におきましても、預金による原資の確保には限度があるのではないかというふうに思われます。党の方としても、先ほど申しました申し入れの中で、金融債の発行が資金調達のかなめであることを踏まえ、必要な期間、金融債が発行できるよう措置することというふうに申し入れをさせていただいております。

 現状を考えると、民営化後も当分の間はこの金融債を中心とした資金調達を続ける以外に道はないのではないか、こういうふうに考えるわけですけれども、富田参考人のお考えをお伺いしたいと思います。

富田参考人 これまでの商工中金で培われてきましたさまざまなノウハウというものを生かしつつ、完全民営化後は、民間金融機関と競争し、持続可能なビジネスモデルを構築するという観点が非常に必要でありますので、多面的な検討が必要というふうに思います。

 預金による調達の方がコストが安いのか、金融債の方が低いのか、そうしたものを多面的に検討し、組合組織を中心とした中小企業金融というものから、それも含めた新たな民間業態への転換ということを安定的に行っていくということの詳細な制度設計について、多面的な検討が必要であろうというふうに思います。

谷口(和)委員 ありがとうございます。

 あともう少しですので、最後に、特別会計について井堀先生にお伺いをしたいと思います。

 先ほど、特別会計のメリットという中で、すべての経費を一般会計でまとめて計上するのは、予算編成上の効率性から見ても、情報公開の視点から見ても必ずしも有益ではない、また、国民の監視が特別会計は働きやすくなるというメリットもあるというお話がありました。一方、国民は、特別会計をできれば少なくして、なくして、国民の監視の目が入りやすいようにしてほしいという意見も多いかと思います。

 そこで、私自身は、やはり特別会計の改革の中で大事なポイントの一つは透明性を高めるということだというふうに思っておりますけれども、今後、特別会計の改革の中で透明性を向上させていくにはどういった工夫が必要なのか、御意見をお伺いしたいと思います。

井堀参考人 一つは、会計上の制度といいますか、予算上のいろいろな現状を前提にして、予算が、特別会計と一般会計の間で補助を入れたり、やりとりがありますから、そういったものを前提にして、その情報をよりわかりやすく国民に開示するというのはいろいろなやり方があると思います。

 今でも、一般会計の予算と特別会計の予算のほかに、それを統合したいろいろな形の情報を財務省等で出していますので、現状の予算制度のもとで、いろいろな会計上の仕組みを省としてわかりやすく国民に開示するための、情報の透明性のためのいろいろな情報公開のツールというのは、いろいろな視点から資金の重複関係を統合して、結果としてサービスの受益と負担がどうなっているか、そういった形の情報開示をやるというのが一つの方法ですね。

 それからもう一つは、やはり複雑な会計上の仕組み自体をより簡素化する方向でやるというのが実態的に国民にとってわかりやすくする方法で、つまり、一般会計から入ってきたものを特別会計の方にやって、結果としてそれが本当に必要でないとすれば一般会計のままでやった方がいいわけですよね。逆に、保険料として入ってきたものと税金として入ってきたものを同じような形で社会保障に使うのであれば、では税金と保険料を最初から一本にした方がいいとか、やりくり上のいろいろな問題自体を変えるという二本立てがあると思います。

 その後者の方は、これはやりくり自体を変えるんじゃなくて、ともに、例えば社会保障の制度の中での受益と負担をどうするか、あるいは国と地方の間の交付税を通じたやりとりをどうするかとか、いろいろな形の制度自体の改革とセットでやらないとなかなか難しいと思うんですが、前者の方の情報開示に関しては、最近、かなり財務省等も含めていろいろな形で進んでいると思いますので、より工夫をしてわかりやすい形でやれば、ある程度、今の複雑な制度を前提にしても、それなりに国民にはよりわかりやすい形で開示はできるんじゃないか、その方向で今後とも進めてやっていただきたいと思います。

谷口(和)委員 ありがとうございます。

 時間が参りましたので、これで終わります。ありがとうございました。

今津委員長代理 これにて谷口君の質疑は終了いたしました。

 次に、北橋健治君。

北橋委員 民主党の北橋健治でございます。

 これまで、本会議を入れますと五十時間以上の国会質疑を行ってまいりました。この行革によりまして、今後、国民生活には大変大きな影響があります。そういった意味で、民主党といたしましては、地方公聴会を含めまして各界の御意見を承りたい、そのように与野党の折衝で申し上げてまいりましたが、残念ながら、地方公聴会の開催で合意に至っておりません。そういった意味におきましては、本日、参考人質疑の形で有識者の皆様から大変貴重な御提言をいただいたことに心から感謝を申し上げたいと思います。

 私は、限られた時間でございますので、連合の逢見参考人に、重要な諸点についてさらに御意見を敷衍してお答えいただければと思っております。

 まず第一に、行政改革と地方分権の関係ということでございます。

 総理のお言葉では、官から民へ、国から地方へということで、官全体を減らすということがあるわけでございますが、先ほどの、三年で二割、総人件費改革でも意見が出ておりましたが、今のようにちょこちょこっとシステムをいじるぐらいでは、国民の期待するような改革には到底ならない。民主党としましては、これは補完性の原理に立って、つまり地域住民の英知を信ずる。明治以来、国が地方に対して、許認可、補助金、情報、そういった観点でいろいろと統制をしてきた社会を根本的に変えない限り、この国の官業のあり方を変えることはできないという意味におきまして、民主党は、補完性の原理に基づく分権改革こそがこの行革の最大の視点になるのではないか、それによって初めて新たな地平が開けると考えて、対案を提出したところでございます。

 そこで、連合としてはこの補完性の原理に基づく分権改革の重要性についてどのようにお考えか、御意見を賜れればと思います。

逢見参考人 補完性の原理に基づく分権改革という考え方については、私ども連合としても基本的に一致するものがございます。先ほどの参考人意見のところで、私は、国民生活の安心、安全を公共サービスが責任を持って担うべきだということを申し上げましたけれども、それには、国がやるべきものと、そして地方にゆだねるべきものを明確に分けた上で、特に国民生活に密接にかかわる部分は地方公共団体が公共サービスとして担っているところもあるわけですし、また、それをベストミックスでやろうとすれば、NPOとか、あるいは公益法人とか、そして民間企業とか、そういうものが担い手となるべき分野はむしろ地方において多いのではないかと思います。そういった意味では、分権を積極的に進める必要があると思います。

 私ども連合としては、国がやるべき役割というのは、防災、災害救助、外交、防衛あるいは国民の生命財産を守るサービス、そういった分野、そして公権力を伴うサービス、行政、こういったものについては国がやるべきものがあると思いますが、しかし、それ以外の分野においては大胆に地方に分権すべきというふうに考えております。

北橋委員 大変ありがとうございました。

 今のお話の中で官と民のベストミックスについても言及があったわけでございます。最初の御発言の中にも、このベストミックスに応じて国民のための行革を進めるべきだという御視点がございました。その中で、国が担うべきものあるいは地方が担うべきものというお話がありましたが、官と民という視点で、具体的に、今後、官業、官が担うべき役割、サービスというのはどういうものになると考えておられるでしょうか。もし、つけ加える点があれば。

逢見参考人 先ほどのお答えにもう少し補足をしたいと思いますが、公権力行使を伴うものは基本的に官が行うべきだと思います。そして、サービスの供給主体が複数ある場合に、それを全体調整するコーディネート機能というのが、これは公共の役割としてあると思います。

 例えば、交通システムなどは、提供主体は、民がやるものもあるし、それから地方公共団体が独自の事業として行うものもあると思います。しかし、それが整合性のとれる、住民にとって利便性のあるサービスであるための調整機能というものは、地方自治体が役割として担わなければ、いわゆる官の役割としてあると思います。

 また、サービスの供給過多を防ぐという必要もあると思います。参入を自由にするということは、競争を促すという意味で有効ではありますけれども、しかし他方で、過剰競争に陥って、それがサービスの質の低下を招いたり、あるいは労働条件を悪化させる、そうした懸念もあるわけです。そうした問題について、やはり官が調整機能を担うべきであると思います。

 そしてもう一つ、セーフティーネットについては、これは採算という観点のみで考えるべきものではないと思います。民間が参入する場合は採算性ということを考えて参入するわけですが、しかし、セーフティーネットとなるべきサービスは、その観点だけではかるべきではない。そういった意味では、これについても官が行うべきものではないかというふうに思います。

北橋委員 ありがとうございました。

 さて、逢見参考人の陳述の中で規制改革にお触れになったところがございました。今も御指摘がございましたけれども、規制緩和というのは、総論において反対する者はいないわけでございますが、やり方によっては大変負の部分が、影の部分が生まれてきていることも事実だろうと思います。

 そういった意味で、先ほど規制改革の問題点に触れられた中で、規制改革、これまで現実に行われてきておりますその結果が幾つか出てきておりますが、それに対する検証のシステム、これが必要であるという御指摘がありました。まことに私もそのとおりだと思っておりますが、この点について、御意見がございましたらよろしくお願いいたします。

逢見参考人 規制改革について、負の問題点と申しますか、時間も限られておりますので二つほど事例を申し上げたいと思います。

 一つは、タクシー、トラック等において参入規制の緩和が大幅に行われました。その結果、確かにタクシー料金が安くなった、あるいはトラック運賃も安くなったという部分が一方でありますけれども、他方、影の問題として、タクシー運転手の最低賃金が法基準以下である。これは、北海道で業界が自主的に調査したところ、そこに最低賃金違反が見られたということで、今業界としてその是正に努めておりますが、北海道に限らず全国的に恐らくかなりあるんだろう。そして、長時間労働。特にこれは、トラック等において長時間労働、それが働き過ぎにつながるという問題がございます。こうした過重労働の問題など、公正労働基準という点で、大幅な参入規制がもたらした負の側面というのがあるのではないか。

 こういった問題について、本来であれば労働基準監督行政がその役割を担わなければならないわけですけれども、しかし、その監督行政が、人数的にいってもすべてを監督できるわけではないということで、実際にいろいろ問題が出てきているんだろうと思います。

 もう一つ、最近問題になった耐震偽装建築の問題があります。

 これは、ユーザーである住宅を購入した人にとっては、全くその情報が与えられていない、売り主を信頼してマンションを買うしかないわけでありまして、それが実は偽装だったと気がついたときに補償を求めたとしても、非常に時間もかかるし、そして金もかかる、しかしそこに住むことはできないという状況に置かれるわけです。

 そういった意味では、安心、安全が担保されている、保障されているということを前提にして成り立っている社会で、後から実はそれが違っていましたということは、大変国民を不安と混乱に陥れることだと思います。

 これは、市場の中で悪徳な業者は淘汰されるからよいではないかという議論があるわけですけれども、確かにそういった人たちは市場から淘汰されていくのかもしれませんが、しかし結果として、偽装された建築物が残り、そしてそこに住んでいる人たちはそこから立ち退かなければならないという問題について、どのように解決をするのか。そういった意味では、安心を保障し得るチェック機能というものが重要であるというふうに考えております。

北橋委員 ありがとうございました。

 民主党といたしましても、やりっ放しではなくて、政府の方もフォローアップという形でいろいろなレポートは出てくるわけでございますけれども、この規制改革を今後進めるに当たりましては、今逢見参考人が指摘をされた、社会全体の観点からそれをしっかりと検証していくシステムの必要性については、共感するところ、まことに大であります。

 さて、特別会計の改革につきまして御指摘がございました。

 今回の法案におきましては、政策金融あるいは特別会計全般の大きな見直しの方向性が示されているわけでございますが、その中で、民主党内の議論におきましても、例えば商工中金や中小企業金融公庫など、中小企業者やあるいは農林漁業者や地域にとって非常に重要な役割を果たしてきた、その公益的機能というのは率直に評価をすべきである、したがって、今後スリムになっていく過程において、大幅な統廃合を民主党も主張しているわけでございますが、特別会計におきましても重要な公益的な機能の認識というものは決して忘れるべきではないと考えております。

 そういう観点から、先ほど参考人は、特別会計の中で、特に労働保険特別会計の見直しについて御意見を述べられました。私ども、雇用におけるセーフティーネットの果たしてきた役割は非常に重要だと考えるものでございますが、連合としては、現在の特別会計という現行の枠組み、その必要性について、もう一度、そのお考え方を敷衍してお聞かせ願えればと思います。

逢見参考人 雇用環境につきましては、最近は、完全失業率も四%そこそこ、あるいは有効求人倍率も好転しているということで、いわば雇用の危機というのは去ったかのように思われております。しかしながら、地域間の格差がございまして、まだまだ北海道、東北といったところでは失業が深刻なところがございます。

 また、これがのど元過ぎて熱さを忘れるということになってはいけないと思います。私ども、失業率が五%を超えた時点がたしか平成十二年ごろにあったと思いますが、このときに、ヨーロッパで見られるような高失業社会に日本が陥ってはいけないということに対して大変強い危機感を持ちました。そういったときに、雇用保険というのは非常に重要な役割を果たします。

 雇用保険は特別会計で積立金があるわけですが、一時、その積立金が底をつくような状況になりまして、そこで、雇用保険料率の見直しなど、そして給付の見直しなどを行って、セーフティーネットとしての雇用保険が破綻しないように、機能がこういうときこそ果たせるようにということで、その改革に当たって、私ども連合としても真剣に検討し、政府に対してもいろいろな要望を申し上げて、その内容も一部実現されました。

 そういった意味では、この雇用問題というのは、市場経済である以上、常に失業の不安というのは発生するわけであって、そうした問題について機動的に政策が発動できる必要があると思います。そういった意味では、一般会計にはなかなかなじみにくいところがありまして、特別会計として行うべきであると思います。

 もう一つ、私は、企業の倒産、合理化といった問題について、これも平成十二年から十五年ぐらいまでにかけて企業が随分倒産した時期がありまして、その問題にも直面してまいりました。中小企業では、破産宣告を受けた際に即解雇となるわけですけれども、そのときに、給料が未払いであったとか、あるいは約束された退職金がもらえなかったとかという問題が発生します。

 そうしたときに、未払い賃金の立てかえ払い制度があることによって、当座、そうした人たちが生活に困らないようにする給付が受けられる。その上で、立てかえ払いした後の請求権は、国が倒産した事業主に対して請求するということで、この立てかえ払い制度によって大変中小企業の労働者の人たちが助かったという部分があります。

 こうした労働保険特別会計の機能は、今後とも残す必要があると思っております。

北橋委員 ありがとうございました。

 あと四分でございますが、あと一点、今回、競争の導入、官から民へということで、市場化テスト法案というのが提出されております。

 先ほど逢見参考人の御意見の中にも、最近の一部雑誌に見られる盛んにビジネスチャンスをあおるような発言、これは、国民の立場から見ると、一部の業者が飯を食えるというような、何かそんな感じの話に見えてしまうわけで、国民の観点に立った行革なのかどうか、こういう視点が大事だという御指摘、全く同感でございます。

 その中で、参考人は、今後市場化テストを進めるに当たりまして、三つの原則というものを最低限明確にすべきだという御指摘がございました。良質な公共サービスの安定的な供給と確保、二に、ユーザーによるコントロールが担保されるための制度、そして三番目に、公共サービス従事者がひとしく仕事に誇りが持てる雇用労働条件の担保という三つの原則を指摘されたわけでございます。

 この三番目の原則でございますが、これは、当委員会におきましても大変議論が行われたところでございますが、市場化テストによりまして職を失うようなケース、そういった公務員のことを念頭に置かれた問題提起なのでしょうか。その点についての御見解をお伺いしたいと思います。

逢見参考人 官に限らず民に限らず、あすの雇用が不安な人に対して一生懸命働けといっても、なかなか士気は上がらないと思います。

 そういった意味で、市場化テストの中で官民が競争入札をするというときに、その立場に置かれた人たちというのは、ひょっとすると入札の結果自分たちの職場が失われるかもしれないという不安が非常に高まっている。こうした状況の中で一生懸命働けといっても、なかなか、不安が先に立って、本来あるべき良質な公共サービス、仕事も手につかないという懸念があるのではないかと思います。

 こうした官民競争入札のところで、もし官が落札できなかったということになると、そこは人員が余剰になるということになるわけですが、これをどのような形で吸収するのか、その責任主体はだれなのかということが非常に重要な論点だと思います。

 そういった意味では、私は非常にまだ不安感がありまして、政府の方はこれを、生首は切らないという約束をしておりますけれども、現実に余剰人員が発生し、そして、配置転換するのであっても、しかし、定員という枠の中でなかなか配置転換が果たしてうまくいくのだろうか。それから、省を超えた雇用吸収ということができるのだろうか。そして、一たん民に移った方が官の方に戻るというときの保障ができているのだろうか。特に、公務員は雇用保険に加入していないわけでございますので、そういう人たちを失業者として外にほうり出すことは絶対にあってはならないと思います。

 そういった意味で、官民入札にかかわる雇用の問題について、よりきめ細かな対策が必要ではないかというふうに思っております。

北橋委員 ありがとうございました。

 時間が参りましたので、終わります。

今津委員長代理 これにて北橋君の質疑は終了いたしました。

 次に、大島敦君。

大島(敦)委員 おはようございます。民主党の大島です。

 きょうは、参考人の方に何点か質問をさせてください。

 まず、桑原参考人、きょうは朝早くから、岐阜からこちら東京までおいでいただきまして、まことにありがとうございます。

 先ほどお話を伺っておりますと、地元の市の受注をされている仕事について、一回受注した後に、後から行政がルールを変えるというお話がございました。どうしてそのようなことが行われるのか。やはりそこには結構根深い問題を含んでいるのかなと思いまして、まず、その点についてお話を伺わせてください。

桑原参考人 公共工事が談合状態にあって実際競争がないということは、多くの方がわかっていることだと思っております。

 地方議会でも、首長は、談合が発覚しない限り談合はない、要するに、公平に公正に競争的になされているような回答がなされています。実態は、一貫して、競争の入らない仕組みが今の自治体の発注する公共工事の中にあるということです。

 私どもは、会社をつくったときから、談合はしない、こういう考え方を示してやってきていますので、私どもが採用されることは、現在、各地で官と民との間で協議して高どまりする形を維持することができなくなるわけですので、その点から我々の参入を制限する。

 それはだれがしているかというと、議会の議員さんたちがしているわけでもありませんし、市民がしているわけでもありません。よくわからないんですが、岐阜でいうならば、二助役、六部長、一室長から成る請負業者選定委員会という機関がありまして、ここが方向性を示しているように言われております。そこの議事録、内容を公開するように何回も求めていますけれども、それが一回も開示されない。こんなことがこの問題をそのままにとめている理由だと思っています。

大島(敦)委員 ありがとうございました。

 これまで当委員会におきまして、例えば公益法人改革の法案について議論をしておりまして、公益法人改革というのは、これまでの財団法人とか社団法人が、この法律が通りますと、今後五年間に、一般社団という登記すればすぐ資格が取れる社団と、公益社団といって、県ですと知事が、任命した人たちが公益性が認められるよと認めれば公益社団法人、公益財団法人となりまして、企業の損金算入が認められるような社団ができるようになるわけです。

 そうすると、公益性を判断するのに、だれを、どの委員を指名した方がいいかとか、これも知事が持っていまして、あるいは議会も、要はそれに対するチェック、監視をしなければいけないという業務を持っているんですけれども、例えば、すべてがオール与党化しているところですとなかなかそのように公平な判断ができないかもしれないというおそれがあります。今、桑原参考人から申していただきました選定委員会がすべて行政側の立場の人ですとなかなか公平な判断ができないことがあるのかなと思っておりまして、これは国でも、公益法人改革の中で、事務局のメンバーの方たちを役所の方の出身者で構成すると、中立的に仕事をしてもらおうと思っても場合によっては中立的じゃない観点もあるかと思いますので、やはりサービスを受ける側の立場の方たちもその委員会の中にいればいいのかなと思いました。

 もう一つ、これは桑原参考人が知っていたら教えてほしいんですけれども、これまで当委員会での議論の中で、私どもの政党の渡辺委員の方から、これは国なんですけれども、建設弘済会というのが各地方局ごとに、整備局ごとにございまして、建設弘済会が、役所の方がそこに入り、そして、そこの職員の方は民間の建設会社からの出向者で、事務的なものは担っていただいて、それで、役所の仕事をその弘済会が行って民間の方に発注しているような、そんな事例も御紹介がございまして、大臣からも前向きな答弁をいただいております。

 ですから、桑原参考人が、これまでの御経験の中で、そのような業界団体あるいは役所とのつながりの深いところがあったのかどうかということ、もしも存じていらっしゃればお話ししていただければ幸いと思います。

桑原参考人 今御指摘の組織のことは私は存じておりません。

 ただ、今の御指摘いただいた内容に関連してちょっと述べますと、建築行政をもちろん公共職員が中心になってやるわけですが、実際は、県なら県に建築事務所協会とかそういう組織がありまして、そこを通して行政指導をしたり、あるいは、特に耐震補強問題の設計とか工事とか、こういうものはそこから仕切られて出ていく、こんな仕組みは残っております。

 私どもも、岐阜においてはそれなりの規模の建築事務所をやってきておりますので、その事務所協会への加入を申し込んだ際に、談合しないということを掲げていますので、入会を拒否されてしまって、今、国会では、そういう組織に入って今の偽装問題などが起きないようなことが議論されているようでありますが、そういうことが今の事実であります。そんなことがいろいろなところにあると思っています。

    〔今津委員長代理退席、委員長着席〕

大島(敦)委員 今の御指摘ですと、役所の下にある公益の社団法人の協会が、桑原社長の会社が入会を申し込んだところ拒否をされてしまったというその事実なんですけれども、協会の方から理由について桑原社長は伺ったケースはありますでしょうか。

桑原参考人 定かな形では聞いておりません。

 ただし、事務所協会に加入する場合は、岐阜の本部以外に地域に支部がありまして、そこの支部で二社以上の推薦があって加盟が審議される、そこから、通ったものが本部に上がって承認されるというような仕組みを持っているようです。その中で、漏れ聞くところによりますと、協調的でないというか、ルールの中にきちんとおさまらない会社というものを入れてはまずいというようなことが中心のようであります。

 ただ、今いろいろな動きが出ていますので、今年度は、岐阜県の発注した設計を私どもが一つ受注しました。そんなことをやってみると、当社だけが、やはり金額的なことがわからないでとても安い数字で入れて、あとの五社ほどは二万円、三万円刻みの入札がなされて、当社との間に差がありまして、初めて県庁の改修の一部を受注したというようなことにもつながっております。そんなふうなことが今でもあるということです。

大島(敦)委員 ありがとうございます。

 今の御指摘も、社団法人とか財団法人、その協会のあり方について、今後の議論の中で、公益性の認定の観点のときに、メンバーを拒否するようなところはなかなか公益性が判断できないということも考えられるのかなということを気づかさせていただきまして、まことにありがとうございます。

 続きまして、連合の逢見参考人に、何点か意見を伺わせてください。

 まず、政府提案の行革推進法について、私たち民主党としては地方分権の観点が非常に必要だと思っております。地方分権を徹底的に行うことによって、中央の政府は相当改革できるかなと考えております。

 今回の行政改革の推進法案について、逢見参考人としてはどのような評価を総合的に下しているのか、御意見を伺わせていただければ幸いと存じます。

逢見参考人 総合的な評価というお尋ねでございますが、冒頭の陳述で申しましたとおり、私どもは、初めに削減目標ありきということではなくて、公共というのはいかにあるべきか、その中で、国が担わなければならないものは何か、地方に移管すべきものは何か、そして、官だけではなくて民やNPOができるものは何かという、総体としての公共サービスを、担い手をどのように分けていくかという観点で、そこに漏れがないような形で、全体として国民の安心、安全をカバーできる、そして、それが効率的に提供できるという姿が望ましいというふうに考えております。

 そういった点でいうと、政府提案というのは、初めに五%という削減目標があって、その中で、それをどのように達成するかという中での事業の仕分けというのが行われておりまして、そういう意味では、私どもが描く姿とはちょっと違っているというところがあります。

 また、国と地方との仕分けという点について、これは別のところでは議論しているんでしょうけれども、今回の行革推進法案の中で、地方に移管すべきものは何かということについて、明確な方向が示されていないというところがあると思います。そういった点で問題があるというふうに考えております。

大島(敦)委員 引き続き、逢見参考人に御意見を伺いたいんですけれども、公務員制度改革を論じるときに、人事院勧告の制度についての議論が出てきます。人事院勧告の制度がありますから労働基本権が制約をされているという議論も当委員会であったかと思います。戦後これまで続いてきました人事院勧告制度につきまして、今後どういう姿が望ましいのか。私は、人事院勧告制度があることによって、労使ともに、お互いに切磋琢磨するというところが欠けたのかなとも考えておりまして、その点につきまして、逢見参考人の御意見を伺わせていただければありがたいです。

逢見参考人 人事院勧告制度についてのお尋ねでございますが、これは、公務員に労働基本権を与えないことの代償として人事院勧告制度というものがあります。その公務員に労働基本権を与えないというのは、国際的に見ますと非常に日本は特殊な位置にありまして、主要先進国では労働基本権が付与された中で運営されております。

 もちろん、公務という性質上、基本権の中でも、スト権とかそういったものについて制限されているところがあります。それは、私どもも、基本権を与えるからすべてそれが行使されなきゃいけないということではないと思っております。そういった意味で、基本権を付与する必要がある。

 これは、付与しない理由として、公務という労働の特殊性ということが強調されているわけですが、しかし、今日、公共という分野でありながら、今まで公務が担っていたものが民間に委託されるとか、あるいは独立行政法人、非公務員化されるとか、あるいは、さらには今度の市場化テストの中で官民が競争入札をする、あるいはPFIという中で民間が事業をやっているというものもあって、今まで公務がやっていたものを民間がやった場合には当然労働基本権があるわけであって、公務という仕事の特殊性で与えないという理屈は成り立たなくなっているんじゃないか。

 もう一つ、民間では、団体交渉という制度だけではなくて、労使協議制という中で、これは労働組合のある企業では八五%ぐらいが労使協議制を持っておりますが、その中でいかにして生産性を上げるかということについて労使で真剣に協議して、そしてその成果を配分として受けるということをやっております。

 公務の労使関係を考えてみますと、こうした、労使が率直に話し合いをして、自分たちの職場環境をいかによくするか、生産性を上げるか、そして効率よく働くためにどのような工夫を凝らすべきかということが直接当事者同士で余り話し合われていないのではないかという感じがいたします。

 そういった意味でも、労働基本権を付与することによって、民間で培われてきた成熟した労使関係を公務の場においても築くことが、結果的には効率的な行政サービスを提供することにつながるというふうに考えております。

 人事院は、その意味で、今のような代償措置としての人事院勧告ではなくて、真に民間準拠した場合の賃金水準はいかなるべきかという機能はあると思いますし、そして公務全体としての人事管理をする機能は必要だと思いますので、そういうところに変化すべきではないかというふうに思っております。

大島(敦)委員 ありがとうございます。

 民間の会社ですと、特に労使関係が成熟しているところでは、会社の生産性を上げるために、労働組合のメンバーである従業員の方も一丸となって各種生産性の向上運動、JK活動とかQCあるいはTPMというような生産性活動をして、会社と一体となって会社の利益を上げるために頑張っていらっしゃる。会社側も、良好な労使関係があることがよりよい生産効率を上げることにつながってくるということで、昔の厳しい時代を経て今は良好な労使関係があると理解をしておりまして、公務におきましても、やはり一定の労使関係の緊張と、そして一つには成熟が必要なのかなと考えております。

 ですから、逢見参考人にちょっとお伺いさせていただきたいのは、公務員の労働条件において政治が介入することに、政治が意見を述べることについて私どもはどのように理解をすればいいのか、その点につきまして御見解を伺わせていただければ助かります。

逢見参考人 現在は、公務については、行政職の公務員について申しますと、団結権はあります。そして、協議はできますが、協約締結権がありません。したがって、協議してもそれは言いっ放し、聞きっ放しという中での労使関係。これではやはり正常なあるべき姿の労使関係に立ち至らないのではないか。協約締結権を与え、必要によっては争議権も与える、しかし、その行使については、公共サービスの提供に支障がないような形をとらなければならないと思います。

 政治の役割というのは、これは、勤務条件法定主義、そして財政法定主義というのは決まっておりますから、当然、協約締結したとしても、それは国会での予算の承認を受けなければいけないし、地方議会においても承認を受けなきゃいけないわけです。そこでのチェック機能が当然働くわけでありまして、こうした労働基本権の付与と勤務条件法定主義あるいは財政法定主義とは矛盾しないというふうに考えております。

大島(敦)委員 きょうはどうもありがとうございました。

伊吹委員長 大島君の質疑は以上をもって終了いたしました。

 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。

 参考人の皆様には、貴重な御意見をいただき、ありがとうございます。

 私の方からは、最初に桑原参考人に何点か、公共工事の発注改革に関連してお尋ねをしたいと思っております。

 桑原参考人も公共工事の発注の改革の必要性を訴えておられました。そういう中で、最近、大手ゼネコンなどによる入札談合事件の摘発が相次いでおります。その背景として、改正独占禁止法、罰則の強化ですとか、あるいは課徴金の減免制度、リーニエンシーのような、こういう制度が功を奏しているのではないかということもお聞きするんですが、この間の入札談合事件の摘発の一つの理由として、改正独禁法の機能が発揮をされているということについては、参考人はどのようにお考えでしょうか。

桑原参考人 公取委なんかを含めまして、そういう法的な変化が今の談合を制限する、そういう役割が強くなっているというふうには思っております。

 ただ、私の持論を言いますと、実際に建設総投資額が限りなく縮小していく中で、業界そのものも、談合をしているということに価値を見出せないような背景もそれに一体になっているというふうに思っております。

塩川委員 重ねてお伺いしますが、先ほどの冒頭のお話の中で、総合評価方式のこともちょっとお触れになりました。

 おととしの秋ですか、公共工事品質確保法、品確法が成立をいたしまして、それに基づいて総合評価方式などを推進するということが決められたわけですけれども、私の承知している範囲では、簡易型とか標準型とか高度技術提案型とか、こういうのがあった中で、特にこの高度技術提案型では、設計と施工を一括して発注する設計・施工一括発注方式が多くなるわけであります。

 高度技術提案型に関する国土交通省の案が三月段階で出されたと聞いておりますけれども、その中身では、これまで発注官庁が独自に積算をしていた予定価格でさえ、ゼネコンの提案をもとにつくるとされていると承知をしております。

 談合をやめたとしても、いわば技術力にまさる大手ゼネコンが、これまでどおり価格まで設定するような形で高値で受注できるような仕組みに、こういうのを使って現実になりはしないかという懸念を抱くんですけれども、現場でお感じになっておられることをお聞かせいただけないでしょうか。

桑原参考人 国交省がいろいろ方針を具体化してきています。私は、三年ほど前から長野県の公共工事の仕組みを変える委員会の委員を仰せつかって、三年やっております。そういう意味では、今国交省が出しているさまざまな方針の前を長野県で実験してきた人間です。

 その中で今のような御指摘があるわけですが、今の総合評価方式は、本来ならば、指名でだれも仕事がとれないときはよかったわけですが、それを広げていきましたから、限りなく安い金額で受注する会社は、今までとれなかった会社がとるようになってしまったという経過があります。それは、技術力だとかその会社の固定費にかかわる、そういう本来の総合的な優良企業であるかどうかは別として、固定費のかからない会社がとっていく、そのことが実際の工事に悪い影響を与えるというようなことが議論されまして、だから今、安い工事でとるのが悪いというのではなくて、安い工事でとった場合、それ以外の評価の項目と尺度を使って、高いところでも受注ができる仕組みをつくってきたのがこの経過だと思っています。

 ただ、ちょっと先ほど触れたのは、今国交省が、低額入札したところに、おとついの新聞にも出ていますけれども、現場にカメラをつけて監視をするとか、いろいろの制限を今加えようとしています。そういうことは今、建築工事費を安くするということを高い状態にしてしまうことにつながってしまうという、そういう危惧を僕は持っておりまして、だから、そういうやり方ではなくて、違った評価の項目と尺度で、評価されたところが安いだけでなくて受注できるような仕組みが今求められているのではないか、こんなふうに思っています。

塩川委員 その点で、参考人が長野の事例を紹介されました。

 ちょうどいただいた情報誌、〇四年三月の方を拝見しますと、長野県の公共工事改革の例が紹介をされておられます。確かに、一時、指名競争入札をやめたりJVでの入札をやめるということで大きく価格が下がるということがありましたけれども、ダンピングじゃないか、安かろう悪かろうじゃないかという批判もあって、その後いろいろ、具体的に質を保証する取り組みということで、改革の努力をされたということを聞いております。ここでも、工事の内容や目的に応じた多様な発注手法の採用ですとか、価格だけでない評価項目を加えるとかということがあります。

 その点で、参考人が長野で発注技術等検討委員会の委員をされておられるというふうにここにはあるんですけれども、そういう中で、長野の実例として、具体的にこういう改善の努力があると参考人が評価されている点を御紹介いただけないでしょうか。

桑原参考人 長野では、指名競争入札を基本的にはやめました。希望型と称していますけれども、すべてを競争入札に付する、これが原則になっています。それから、長野の土木事務所が九地区に分かれて九地区で細かく発注していたものを、四ブロックに拡大して入札する業者数がふえることをやっています。それから三つ目は、基本的にJVを廃止しています。JVを認めない。四つ目は、全国に先駆けて今の総合評価方式を導入してきたことです。

 いずれにしても、九三%か四%だったものが七〇%を切るようなところまで下がってしまって、これでは建設業者が成り立たないのも事実ですので、それから、ダンピングをどうやったら制限できるかというようなことを含めて、いろいろの議論を今重ねております。そして、最低の制限価格を、限りなく下がるのでなくて、あるところでとまるような仕組みにしています。八〇%前後で落札がなされている。

 こんなことが今やられていることです。

塩川委員 ありがとうございます。参考にさせていただきます。

 次に、逢見参考人にお伺いいたします。

 きょうの場でもお話もいただきましたし、衆議院の予算委員会の公聴会での逢見参考人からの意見陳述も拝見をいたしました。その中で、「小さな政府の名のもとに、一方的な負担増、給付削減の財政改革を進め、また市場原理に基づく自己責任原則のもとで個人へリスクを転嫁しようとする方向に政策のかじ取りが行われている」と、今の政府の方向についての指摘があります。その立場から、今回の法案をどういうふうに評価されておられるのか、政府にとってこの法案がどういう位置づけなのかというのを、このお立場からお示しいただけないでしょうか。

逢見参考人 冒頭の参考人陳述でも申し上げましたけれども、今国民にとって、安心、安全な社会をつくってほしい、政府はそのためにその役割と責任を果たしてほしいというのが多くの期待だと思います。

 そういった意味で、公共のサービスというのは、今個人のリスク負担が増している中で、非常にその役割はふえていると思います。それのサービスが、良好なサービスが安定的に供給できるということが必要なわけでして、サービスの質ということが維持されなければならない。これは、法案にもそのことの部分は書いてありますけれども、しかし、それがどのような形で維持されるのかということについて、政府の行革推進法案を見ますと、やや不安なところがあります。

 そういった意味で、サービスの質が低下しないような措置がどのようにとられるのかということについて、より明確な対応が必要ではないかというふうに思っております。

塩川委員 ありがとうございます。

 それでは、富田参考人と井堀参考人に、同じ質問で恐縮ですけれども、お聞かせいただきたいと思っています。

 小さな政府、大きな政府という議論がございます。これは経済財政白書の中でも、日本そのものは比較的小さな政府だという指摘もあります。そういう中で、やはり公共投資、公共事業の比重は大きいという指摘は同時にあるわけであります。そういう点で、やはり国際的に見てもいまだに大きい公共事業についてどういうメスを入れていくことが必要なのか、この点について、富田参考人、井堀参考人、それぞれお示しいただければと思っております。

富田参考人 お尋ねの、まず大きな政府、小さな政府ということですが、国民の税負担の面では小さな政府ですが、支出を見ればかなり、国際比較で見たら、中程度の制度であろう。

 そういう中で、公共事業でありますけれども、九八年と比較いたしますと、公共事業費は半減という形に大幅に縮小されてきております。それでもなおかつ、経済規模との対比で見ますと主要先進国よりもまだ高い水準にあるわけでして、これからは、これまで整備が進められてきました社会資本のストックを有効活用しつつ、そしてやはり公共事業は真に必要なものだけに限定するということで、引き続き、抑制、重点化の方向というのが望ましい方向であろうかと思います。

井堀参考人 公共事業につきましては、国際的にもGDP比で高い水準ですから、小泉政権になって相対的には下がっていますけれども、まだ切り込む余地はあると思います。

 きょうも桑原参考人が言ってきたように、公共事業の調達費用は、まだまだ入札方法等を見直せば相当程度下がると思いますし、あと問題は、公共事業の中身を時代に合ったものに変えていって、本当に必要な公共事業はあるんですけれども、どうも無駄な公共事業が相当まだ残っていますから、中身の改革とそれから調達費用の効率化をすれば、公共事業の総額を引き下げても、それなりに国民にとって必要なものは提供できるのではないかと思います。

塩川委員 終わります。ありがとうございました。

伊吹委員長 これにて塩川君の質疑は終了いたしました。

 次に、菅野哲雄君。

菅野委員 社民党の菅野哲雄でございます。

 参考人の方々から貴重な意見をお聞かせいただきまして、心から感謝を申し上げる次第でございます。

 最初に、逢見参考人からお伺いいたします。

 行政改革推進法の第一条では、この法案の目的が、簡素で効率的な政府を実現することにあるとされておりますが、公務員数、政府支出に占める公務員の人件費、どちらをとっても先進国中最も小さな政府になっていることは、政府も認めております。

 行革推進法案並びに市場化テスト法案は、公務員の削減と公共サービスの民間開放が先にありきと、先ほども意見を述べておられましたが、行政の本来あるべき姿、将来像を国民に全く示していないと私は考えるものでありますが、逢見参考人の御意見を改めてお聞きしたいと思います。

逢見参考人 平成十七年度版の経済財政白書において、政府支出の規模や国民負担の大きさという観点から見た場合、日本は比較的小さな政府であるというふうに述べています。これは具体的には、政府支出はOECD諸国三十カ国中のうち下から六番目、国民負担については下から四番目。また、総務省の出した資料によりますと、人口千人当たりの公務員数は日本は三十五人ということで、ドイツ、イギリス、アメリカ、フランスと比べても少ない。そういった意味では、比較的小さな政府であるということが言えると思います。

 したがって、簡素で効率的な政府といったときに、小さければ小さいほどいいという立場に私は立つべきではないと思います。やはり、必要な公共サービスというのはあるわけだし、国民はそれを期待しているわけですから、それがきちんと提供される体制をつくることが必要である。

 もちろん、無駄があっていいというわけではありませんので、絶えず見直しをしながら、不要な仕事についてそれをなくし、そして必要なところに人を配置していくという努力は必要だと思います。そういった意味では、簡素、効率という言葉の定義、そして、そのメルクマール、指標というものをきちんと示して、何を目標にしていくかということがより明確に示され、そうしたことについてのコンセンサスが必要だと思います。

菅野委員 どうもありがとうございました。

 次に、富田参考人、逢見参考人、お二方からお聞きしたいと思います。

 耐震構造設計偽装事件、ライブドアの証券取引法違反、米国産牛肉の危険部位混入問題、あるいは防衛施設庁の官製談合事件を見るまでもなく、今、国民が行政に最も望んでいることは、安全で安心できる公共サービスであると私は考えております。そのために、格差是正に真剣に取り組み、政官業癒着構造にもしっかりとメスを入れていくことが大事だと考えているものであります。

 今回の行政改革関連法案が成立した暁に、安心、安全の公共サービス、格差是正、あるいは政官業癒着の根絶が実現できると考えておられますか、率直な意見をお聞きしたいと思います。

富田参考人 菅野先生から非常に難しい御質問を賜ったわけでございますけれども、安全、安心、国民が非常に大事だと思っていることでございます。

 安全、安心を長期にわたって持続可能な形で国民により効率的に提供するということがやはり求められておるわけでございまして、その点からいたしますと、行政改革推進法案で、やはり、効率的に、そしてそれによって持続可能な形で国民に行政サービスを提供するという観点も本法案には含まれており、担保されているというふうに存じます。

 もちろん、これだけで国民に安全、安心、そしてセーフティーネットを供給することはできませんわけですので、より持続可能な形にこの社会保障制度が維持できるように、そうした面からの改革も今後必要というふうに存じます。

逢見参考人 市場競争が有効に機能していくためには、市場のルールということがきちんと定められて、そのチェックということが働かなければいけないと思います。

 これまでの行政改革の議論では、行政の裁量行政的なものを改めて、公正、透明なルールをつくり、そして事後チェックをしていこうというのが行政改革の流れだったと思います。その流れは基本的には私は正しいと思うんです。しかし、御指摘がありましたいろいろな昨今の問題、その中でチェック機能がきちんと働いていたのか、あるいはルールがきちんとつくられていたのか、その点について、国民の側からすると非常に大きな問題を突きつけているんじゃないかと思います。

 そういった意味で、改めて市場のルールをどのようにつくっていくか、そして、そのチェック体制をどのようにしていくかということの検証は必要だというふうに思います。

菅野委員 ありがとうございました。

 次の質問に移りますが、富田参考人、逢見参考人にまたお聞きいたしたいと思います。改革に当たって、国民、利用者の関与について、ここをどう考えるのかお聞きしたいと思います。

 行政改革推進法案や公共サービス改革法案では、国や地方自治体の事務事業全般について整理や仕分けを行い、引き続き官が行う業務、民間にゆだねる業務、廃止する業務などを選定していくとされております。

 本来であれば、公共サービスの必要性の有無や個々のサービスの問題点などは、利用者である国民のニーズを最も尊重すべきであると考えるものであります。ところが、行革推進法案や市場化テスト法案の双方に、どのようなサービスが廃止され、どのようなサービスが民間に委託されるのか、その過程において住民や利用者が関与できる仕組みにはなっていないと私は考えておりますが、住民のニーズとかけ離れたところで行われる事業の改廃が国民の望む改革と言えるのかどうか、また、国民の意見やニーズを踏まえるためにどのような制度設計が必要とお考えなのか。

 逢見参考人は、良質な公共サービスの確保、ユーザーの立場に立った公共サービス、雇用、労働条件の確保が大切と先ほど意見陳述をされておりますが、これらも踏まえて、御所見をお聞きしたいと思います。

逢見参考人 冒頭の陳述でも申し上げましたが、公共サービスの受け手というのは、ユーザー、国民であります。とりわけ弱い立場の人たちが公共サービスを必要としている、セーフティーネットを必要としている。そうした人たちのニーズ、声というものがやはり提供者に反映される仕組みがないといけない。

 特に、これからサービスの質が維持できるのかということについての疑問があるわけですから、そのことについてユーザーからの声を聞く、そして、問題点があれば直ちにそれを直していくという対応が必要だというふうに思っております。

富田参考人 先生御指摘のように、まさに国民のニーズ、利用者のニーズというものが非常に重要でございます。

 今回の行政改革推進法案では、業務のやり方の改善、より納税者、国民にとって利用がしやすいように、より効率的な業務が行えるようにということでの業務の流れの改善、より安いコストで行う、少ない国民負担で、納税者の負担でサービスを提供するということが主眼でございまして、事業の改廃、事業そのものをやめてしまうというものはごくごく少数であります。

 したがいまして、単に業務の効率化を行う行政改革推進ということと同時に、やはり納税者にとって、セーフティーネットを長期にわたって持続的に供給するという意味におきましては、財政構造改革というものを今後同時に進めていくことが重要ではないかと存じます。

菅野委員 最後になりますが、富田参考人にお聞きいたします。

 国債の債務残高が今日の状況は非常に厳しいということは共通認識と、私もそう思っておりますし、先ほどの意見陳述でも述べておられます。今日の状況は、公務員の数が多いからとか人件費が高いとか言われておりますが、私は、そのことが原因ではないと考えております。これまでの流れの中で政治がつくってきたことであると考えておるのであります。

 参考人は、今日の状況に至った大きな要素をどのようにとらえておられるのか、また、先ほどの委員の質問に対して、官がみずから身を切ることがこれからの改革に重要だと言われておりますけれども、このこれからの改革というのはどういう方向を示すと考えておられるんだろうかな、その中に税制改革も含まれているのではないかと私は考えているんですが、富田参考人の意見をお聞かせ願いたいと思います。

富田参考人 新しい二十一世紀に入ってからの我が国の財政の状況を見てみますと、社会保障関係費が高齢化とともに増加をしてきたわけですけれども、それを賄いますために、他のあらゆる経費を削減することによって賄ってきたというのが実態かと思います。

 財政の、国債残高の悪化の原因ということについていろいろ分析してみますと、やはりこれは、高齢化の急速な進展による部分というのが非常に大きいわけでして、また、九〇年代の景気悪化の中で、大規模な減税を繰り返してきたということも税収減の原因となり、歴史的に高水準の国債残高を抱えてしまっているというのが現状であるというふうに認識いたしております。

 そして、今後なんですけれども、やはりかつてのように、経済成長ができて、それで、いろいろなところに財政資金を、財政支出を配分すればいいということは到底考えることのできる時代ではございませんし、また、人口減、そして社会を支える生産年齢人口の減少というのがずっと続いてきているわけでございます。

 そういう意味において、今回、この行政改革法案で、やはり公務員数、確かに諸外国に比べて少ないんですけれども、まずそこから改革を行うということによりまして将来にわたって国民がセーフティーネットを維持できるような改革を、歳出入一体の改革をするということがこれから必要であるというふうに存じます。

菅野委員 どうもありがとうございました。終わります。

伊吹委員長 菅野君の質疑はこれをもって終了いたしました。

 次に、滝実君。

滝委員 四人の参考人には、大変ありがとうございます。私は、新党日本の滝実でございます。

 新党グループを代表して、質問をさせていただきたいと思います。限られた時間でございますけれども、四人の先生方に一通りはやはり意見を伺いたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 まず、富田参考人にお願いをいたしたいと思います。

 公的部門においては自律的な資源配分のメカニズムが働きにくい、こういうようなことを御指摘になりました。私は、それがやはり基本だろうというふうにも思いますし、そういう中で、過去、昭和三十九年以来、何度か行政改革が行われてきましたけれども、やはり戦後に飛躍的に伸びた、例えば経済行政を中心とした部分、生産量の確保でありますとか、それを支える外貨の割り当てとか、そういうような観点からの分野がいまだに痕跡として残っている。そういうことを見るにつけても、何とかしなければいけないということは国民一様にみんな思っていると思うんですけれども、この問題と、五年間五%の総人員の削減の問題、その辺の結びつきをどういう格好で議論をされてきているのか、その辺のところのさわりの部分だけでもお聞かせいただきたいと思います。

富田参考人 滝先生の御質問でございますが、これまで国家公務員につきましては、長い間、総定員法でもって定員が抑制されてまいりました。しかも、国際的に見れば、千人当たりの公務員数というのも相対的に少ない。それでも、やはり民間の勤労者から見ればまだまだ余裕があるのではないかというのも、これまた、国民からする行政改革への強いニーズの背景となっておると思います。

 そういう中で、見直しに当たりましては、やはり社会構造の大きな変化に対して行政機構が適正な経営資源の配分で対応しているかどうかということについての検証ということから始めることが重要との観点より、農業の統計とか食糧管理とか、そういった問題、あるいは北海道開発庁等、そういう観点から、五%以上の純減を目指しますために、社会的ニーズが相対的に低下したところをより大きく削減せざるを得ない。その一方で、安心、安全にかかわります部分については、効率化を求めながら改革を行っていくということが重要であるというふうに考えております。

滝委員 ありがとうございました。大変短い時間でございますけれども、要領よく情勢をお聞かせいただきました。

 次に、逢見参考人にお願いを申し上げたいと思います。

 先ほどの最初のお話の中で、職階制は廃止して新たな能率制度というものを考えなければいけない、こういうような御指摘があったと思うのでございますけれども、具体的に、新たな能率制度というのは、これは議論すれば議論するほど難しさが出てくるわけでございますけれども、その辺のところを連合の中ではどういうような議論をされていらっしゃるのか、お聞かせいただきたいと思います。

逢見参考人 現在の公務員制度というのは、戦後の占領期につくられたもの、それが骨格になっていると思いますが、これは、職階制のもとでそれぞれの職務要件がすべて決められていて、そしてそのもとで定員が決められているという形になっております。これは、分業体制をつくっていくという意味では意味があるんでしょうけれども、しかし、そこで人材を、能力を高めて、そしてその人たちが能力を発揮してより高いレベルに持っていくという意味では、非常に硬直的なところがあります。そういう意味では、公務に働く人たちが自分たちの能力を仕事を通じて高めていって、そしてそれが評価され、処遇に生かされるという仕組みが必要ではないかと思っております。

 そしてもう一つは、専門能力を持つ人については、これを期間を限定して雇うというやり方があってもいいと思います。そういった多様な採用形態をしていくことが、結果的には公務の質を高めることになっていくと思います。そういった人事制度に改革していくべきだというのが私どもの考え方でございます。

滝委員 御指摘のように、職階制は、確かに戦後新しく取り入れられましたけれども、基本的に、本格的に実施されたことが一番ない。したがって、今の、少数の国家公務員、地方公務員で行政が運用されているというような結果にもなっている面があるだろうと思うんですね。おっしゃるように、職階制を厳格にやったら、これは何人職員がおっても足りないという問題が必ず出てくるわけでございますから、その中で、新たな能率主義、制度というのは、これはなかなか難しい点があろうかと思いますけれども、ぜひ連合の方で新しいものを打ち出していただきたいと思います。

 次に、井堀参考人にお伺いをいたしたいと思います。

 特会の制度改正の中で、特会制度をつぶすと、それのまた経理内容がわからなくなるという御指摘は、私もそのとおりだと思います。その中で、新しい特会制度の整理統合をする際に、幾つかの会計では収入を特会に直入しているような部分がございます。そういった点について井堀参考人は、どういうようなことをこれから考えていったらいいのかお伺いしたいと思います。

井堀参考人 特別会計制度、受益と負担のリンクが明確なものについて、それを国民に情報を開示して、それが本当に適切なものかどうかというのをチェックするという観点から考えますと、一般会計との繰り入れが余りなくて、会計に直接お金が入ってきてそこから出ていくようなものについては、特別会計として残すのか、あるいはそれをもう少し独法化してやるかはともかくとして、そういった仕組みが必要かどうかについては国民に問いやすいと思うんですね。問題は、それではなくて、入り組んでいるようなところについては、かなり一般会計に依存するようなところについては、一般会計に整理統合する方がいいだろうと思います。

 その意味で、直で入っているところについてはそれが本当に特別会計でいいのかどうか、その大きさについて国民に情報開示して議論していただくというのが望ましいと思います。

滝委員 ありがとうございました。

 最後に、桑原参考人にお尋ねをしたいと思います。

 いろいろいただきました資料では、岐阜市の問題とか佐賀市の問題とか長野県の問題とか、多彩な御経験を積んでおられますようでございます。特に長野県の場合、基本的に、希望入札と申しますか希望参加は、いわば一般競争入札の変形ということでずっとおやりになっていらっしゃいますけれども、これに伴う事務の手間ですね、一般競争入札の場合は、一番議論されるのはダンピングの問題と事務の煩瑣、手間の問題だと思いますけれども、こういった問題については、具体的に経験された中でどういうふうにお考えになっていらっしゃるんでしょうか。

桑原参考人 一般競争入札で事務がふえるというふうなことは聞いていません。

 長野県で細かく言いますと、A、B、C、D、Eかな、D、E業者という、数百万の金額で契約する、今まで一回も指名を受けたことのない人たちに指名競争入札制度を今残しておりまして、それが事務担当者の煩雑さを今残してしまっておるというふうに聞いております。

滝委員 大変短い時間でございましたけれども、四人の参考人の先生方には、それぞれ御意見を拝聴することができました。心から御礼を申し上げまして、終わります。

 ありがとうございました。

伊吹委員長 これにて滝君の質疑は終了いたしました。

 以上で午前の参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、委員一同を代表し、委員長より参考人の皆様に一言ごあいさつを申し上げます。

 参考人の先生方には、本日は御多忙の中わざわざ御出席を賜り、貴重な御意見をいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して、御礼といたします。ありがとうございました。(拍手)

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

伊吹委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、各案審査のため、参考人として、財団法人公益法人協会理事長太田達男君、全日本自治団体労働組合副中央執行委員長君島一宇君、全国商工会連合会会長清家孝君、日本大学商学部教授永山利和君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、委員各位を代表いたしまして、委員長から一言参考人の先生方にごあいさつを申し上げます。

 本日は、公私ともまことに御多忙の中にもかかわりませず、本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。それぞれのお立場からどうぞ忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にさせていただきたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、各参考人の皆様から御意見をそれぞれ十五分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、発言をされる際は委員長の許可を受けることになっておりますので、御了解ください。また、参考人は委員に対し質疑をすることはできないことになっておりますので、御承知おきをお願いいたしたいと存じます。

 それでは、まず太田参考人にお願いを申し上げます。

太田参考人 ただいま御紹介いただきました財団法人公益法人協会理事長の太田でございます。どうかよろしくお願いいたします。

 まず、本日の法案御審議に当たりまして、参考人といたしまして意見を述べる機会をお与えいただきましたこと、深く御礼申し上げます。

 以下、お手元の私どものレジュメに従いまして意見を述べさせていただきます。

 最初に、財団法人公益法人協会というものにつきまして、若干自己紹介をさせていただきたいと思います。

 当協会は、昭和四十七年、一人の民間人が私財を出捐し設立しました財団法人でございまして、公益法人の健全なる育成発展に貢献し、もって公共の福祉に寄与することを目的といたしております。具体的には、非営利公益組織に関する相談、出版、研修など支援事業、海外事情を含む調査研究事業、あるいは政策提言活動などの事業を行っております。公益法人制度改革につきましても、当初から今日に至るまで節目節目でいろいろな提言をさせていただいております。これらに関する資料は、お配りいたしました茶色い私どもの封筒の中に一式入れておりますので、後ほどごらんいただければ大変幸甚に存じます。

 次に、公益法人制度改革に関する私どもの従来からの主張をかいつまんでお話ししたいと思います。

 まず、本改革の理念と目的でございますが、本来、公益法人というものは、民間による、民間の、民間のための組織であります。従来の制度は、官庁による介入支配が余りにも強く、民間による自由な活動が制約されておりました。今回の改革の目的は、市民の先見性のある創造的で自由闊達な公益活動が今後の日本社会にとって極めて重要であり、これを支援し、奨励することが目的であり、また改革の理念でなければならないということを私どもは常に主張してまいりました。

 次に、主務官庁制度でございますが、現在の制度は、主務官庁が法人の設立を許可し、設立後も引き続き指導監督するという、他の私法人にはほとんど類例のないほど官僚支配色の強い制度であります。明治憲法による、まさにお上と下々の関係のもとにつくられた制度と言ってよいのではないかと思っております。

 このような制度を役所が濫用した結果、官製談合、天下り、不当利得の蓄積、不要不急の補助金支出など数々の弊害が出てまいりましたことは、多くの皆様が御指摘になるところであります。

 しかし、ここで一つ、ぜひ皆様方に誤解のないようにお願いをしたいわけでございますが、そのような官製法人と一般の民間公益法人とは全く違うわけでありまして、二万六千の公益法人の多くは、民間の知恵、民間の資金、民間の活力でもって日夜活動をしている法人でございまして、一部の利権癒着的な目ですべての公益法人をごらんいただくということについては、私どもは大変残念に思っております。

 また一方で、公益法人を市民がつくろうといたしますと、何年もの実績が必要だとか、何億円以上必要だとか、この分野では既に他の公益法人があるから重複するのでだめだとか、定款の案につきまして枝葉末節について指摘を、しかも小出しにされまして、それも省庁あるいは局、課によりまして指導の中身が違うという、まことに善良なる市民といたしましては、疲れ果てまして、もう設立はあきらめてしまう、こういう事例は枚挙にいとまがございません。

 このような主務官庁制度は、私は百害あって一利なしと考えておりますので、なるべく早く撤廃していただきたいというふうにずっと主張をしてまいりました。

 続きまして、廃止いたしました場合には、その主務官庁にかわりまして、英国におきまするチャリティーコミッションのような、民間有識者から成る独立した中立的な公益認定機関をつくるようにも提言してまいりました。その認定基準は、明瞭かつ具体的に法令で規定し、市民が容易に理解できる、市民の予見可能性の高い、そういう明確な基準にしていただきたいということを主張してまいりました。

 さらに、認定、不認定、取り消しなどにつきましては、理由を付してこれを国民に公開するなど、極めて透明性のある、公平性のある、そういった制度の仕組みを私どもは提案してまいりました。

 一方、新しくできる公益法人側にも、私どもはいろいろと新しい考え方を提案してきております。

 新しくできる公益法人制度は、基本的には、団体自治が尊重され、自己責任のもとで自立的な運営ができるような仕組みでなければならないということは申すまでもないと思います。

 さはさりながら、一方で、寄附者、ボランティア、受益者、そして納税者でもある市民一般の方々から信頼される組織でなければなりません。すなわち、あのような立派な団体だから寄附をしよう、あるいはボランティアで協力をしよう、そして、あのような団体だったら税制支援も当然だ、こういうふうに市民の方々が思っていただくような、透明性のある、立派なガバナンスのきいた運営というものが私は必要だというふうに思っております。つまり、市民に対する受託者としての社会的な責任を全うできるような組織でなければ、やはり公益法人としての資格はないのではないかというふうに思います。

 また、市民の信頼を裏切るような行為があった場合には、認定取り消しなど、厳正な処置を機敏に対処できるシステムというものも必要だと思っております。

 次に、税制でありますが、そもそも民間公益活動は、他人を愛するいわゆる利他主義と、何の代償も求めない奉仕の精神がその基本にあります。その活動は、福祉、環境保全、青少年教育、学術振興、人権擁護、国際協力、文化芸術など、およそ人々が必要とする社会の多岐にわたる各分野にわたっております。

 このような民間が担う公益の活動には、税制による国の支援が不可欠であると信じております。特に、寄附税制について言えば、公益活動における先進諸国はできるだけ市民に寄附してもらおうという税制であるのに対し、日本はなるべく市民に寄附させないようにつくられている税制なのではないかと疑いたくなる場合がございます。

 米国の寄附金優遇公益団体百万、個人の年間寄附金が二十三兆円に対しまして、我が国の公益法人二万五千のうち、特定公益増進法人制度の指定を受けているものはわずか九百団体、NPOも、二万五千のうちわずか四十団体しか税制優遇、寄附金優遇が与えられておりません。そして、寄附金の総額も、多目に見ましても大体二千億円程度ということで、余りにも、アメリカと日本との差にため息をつくばかりでございます。

 私どもは、このような実情にかんがみまして、公益法人に対する抜本的な税制支援を検討していただきたいと主張してまいりました。そこで、このような主張をしてまいりました公益法人協会といたしまして、本法案、ただいま御審議をいただいておりますこの法案に対して、どのように評価をしておるかということを申し上げたいと思っております。

 本法案、特に、公益法人にとりまして中核となる公益社団法人・財団法人の認定等に関する法律は、主務官庁による法人設立の許可制と設立後の指導監督といういわゆる主務官庁制度を廃止する点では、現行制度に比べて大きな前進であるというふうに評価をいたしております。ただ、新公益法人のガバナンス等運営のルールや認定機関と認定要件の設定については、市民の団体自治を極力尊重し、民間公益活動を活性化させようとする視点からはなお問題点や不十分な点があり、詳細についてのさらなる解決策が必要ではないかというふうに考えております。

 それでは、どのような問題点をどのように解決していけばいいのかということを最後に申し上げます。

 まず、税制でございます。

 本来、新しい制度をつくりますときに、その税制がどのようになるのかということがわかりませんと、その制度の総合的な良否を判断することは困難であります。本委員会でも税制に関する質疑が繰り返し出ており、政府答弁にもありますように、まず制度ができて、それにふさわしい税制を検討することが事の順序であるというお考えはそれなりには理解できますが、私ども、現に民間公益活動に携わる者として、あるいはこれから携わろうとする方々にとりましては、その税制がどうなっているのかというのは最大の関心事でございます。

 今後の日本社会におきまして、非営利公益セクターが果たす役割は極めて重要でございます。心豊かで美しい、そして品格のある日本をつくっていく、そういう一翼を担う組織といたしまして、新しい公益法人に対する期待は大変大きいと思います。

 公益認定等委員会が、真に民が担う公益活動に専心する法人であり、かつ、しっかりした規律を備えているということを認定される以上、寄附金による民間の資金、民間の知恵、民間の活力が十分社会において生かされるよう、国としても法人税制並びに寄附税制両面から力強く支援することをぜひお願いしたいと思います。

 幸い、昨年の六月に、政府税制調査会の基礎問題小委員会は、寄附税制について立派な報告書を発表されております。

 第三者機関が認定した公益性のある非営利法人は原則非課税、これに対する寄附金は寄附金控除、損金算入の対象とする、相続財産寄附についても同様の方向で考える、有価証券など現物にかかわるみなし譲渡所得も見直すという、どうかこの基本方針に沿って今後なるべく早く詳細を御決定いただきたいと思います。

 次に、公益認定等委員会でありますが、何といっても新制度の柱になるものはこの委員会でございます。

 この委員会の委員は、当然、公益活動に十分見識のある民間の有識者から起用されるものと理解いたしておりますが、事務局も大変重要な問題であります。この事務局が現主務官庁からの出向者で構成される寄り合い世帯では、何のことはない、主務官庁制が形を変えて温存されるという結果になりかねません。少なくとも、事務局の主要幹部は民間人を登用し、認定委員会委員長を初め委員が名実ともに事務局の指揮命令権を持ち、民間の公益活動を発展させるという視点に立って透明性の高い運営がされるような制度設計をお願いしたいと思います。

 なお、中央だけではなく地方も、大変重要な委員会であります。同じように、地方についての御配慮もお願いをしたいと思います。

 それから、政省令でございますが、新制度の組織要件や運営ルールが、新会社法の影響を受けましてか、余りにも過重で重装備と言える部分がございます。例えば、一般社団・財団法では、設立時の役員の選解任や設立時役員の責任、また諸機関の運営ルールなど、事細かに決めており、一般市民にとっては到底理解不可能と思われる部分がございます。

 公益法人と一口に申しましても、大きな法人もございますが、総務省の公益法人白書によりますと、常勤役職員が三名以下の小規模法人が全体の半分でございます。こういうような小規模の法人が余りにも負担の大きい煩瑣な手続を強いられるということになりますと、肝心の公益活動ができなくなるということになりますので、そこの点の御配慮をぜひお願いしたいと思っております。

 また、公益認定要件や財務的基準の中にも、一部、機械的に適用いたしますと大変問題のある規定がございます。例えば、公益目的事業比率、遊休財産額の算定、収入が適正な費用を上回ってはならないとする収支相等の原則等でございますが、こういったことにつきましては、大部分、政省令に委任されております。政省令に委任されております箇所が何と二百カ所以上ございますが、この政省令を今後内閣並びに各省庁におきましておつくりになります場合に、どうか、実際の実務を行っております公益法人界など民間非営利団体と意思疎通を十分にされまして立案に当たっていただくように、ぜひお願いいたします。

 以上の三点を本委員会が御配慮され、附帯決議により確認し、さらに一定期間後の見直しを図る措置をぜひとも御検討いただくようにお願いしたいと思います。

 私ども非営利公益セクターに身を置く者といたしましては、百十年ぶりに現行制度が改正され、新しい制度が発足するこの機会に、改めて身と心を引き締め、この法律の目的にありますように、民間の団体が自発的に行う公益を目的とする事業に専念する所存でございますので、どうか引き続き今後の御支援、御指導を心よりお願い申し上げる次第でございます。

 これで私の意見陳述を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)

伊吹委員長 太田参考人、まことにありがとうございました。

 次に、君島参考人にお願いいたします。

君島参考人 自治労副委員長の君島一宇でございます。よろしくお願い申し上げたいと思います。

 本日は、私ども自治労の考え方を述べる機会をいただきまして、ありがとうございます。

 委員長の御助言にもございましたように、私は、自治体の現場で起きている実態をあるがままにお話し申し上げて、各委員の皆さん方の議論に供させていただきたいと思っております。

 私は、いわゆる行革推進法そして市場化テスト法、この二つの法案を中心に意見を述べさせていただきます。

 まず、簡素で効率的な政府を実現するための行政改革推進に関する法律案についてであります。

 本法案は、昨年十二月二十四日閣議決定されたものでありまして、総人件費改革の実行計画を含む行政改革の重要方針に基づくもので、特に地方公務員の定員関係基準の見直しは、過去三十年間の推移において行政ニーズに基づき増員されてきた教育、警察、消防、そして福祉関係の地方公務員について、いわば一方的、一律的に定員削減を強制するもので、地方分権に逆行するものである、こういう認識のもとで、容認できるものではない、このように考えております。

 町村合併特例法によります合併は御案内のように急速に進んでおりまして、本年、二〇〇六年四月一日現在の基礎自治体数は千八百二十一と、七年前の一九九九年四月一日の三千二百三十二から、何と千四百十一自治体が姿を消したことになります。

 地方公務員の数は、総務省の公表数字で見てみますと、一九九五年から二〇〇五年までの十一年間純減が続いておりまして、その総数は二十四万三百七十人と公表されております。特にこの三年間での純減数は、十万二千二百一人と突出しております。これを部門別に見てみますと、警察がプラス四・五%、消防がプラス〇・九%であるのに対して、教育、公営企業、一般行政は、それぞれマイナス三・五%、マイナス五・一%、マイナス四・七%と著しく減少しておりまして、その合計は十一万五千四百一人となっているわけであります。

 このような状況は、一方で、臨時、非常勤、パートの不安定雇用の自治体あるいは自治体関連労働者を大量に生み出しておりまして、その数は自治体直接雇用だけで四十万にならんとし、社協、公社、公団など自治体関連を含めますと、何と百万人を超える非正規労働者を生み出しているわけであります。

 合併による業務量の増大と職員減による労働の強化は深化をしておりまして、職員総数の純減が続いている中にありまして公務災害認定件数は減っておらず、毎年三万件を超えているわけであります。したがって、職員千人当たりの公務災害認定件数率はふえている、このように言えると思います。中でも、痛ましい自殺が後を絶ちませんで、私の出身の長野県内自治体で、一般行政職で過去二年間に自殺件数は十三件発生しておりまして、これは県内自治体職員の現職死亡の一八%を占める、こういう状況にございます。

 このような現場での状況からして、画一的に向こう五年間で四・六%の純減を求めるということは、地域住民に提供する安心、安全、信頼を保障する公共サービスが極めて不安定なものにならざるを得ないのではないか、そういう危険性が大いにあるのではないか、このように考えるわけであります。

 政府の進める小さな政府及び構造改革路線は、国民の間に御案内のような格差の拡大と固定化をもたらし、さらに、社会的セーフティーネットを一層劣化させるもので、国民全体の生活レベルを底上げするものではなく、この法案には私どもは賛成しかねる、このように申し上げておきたいと思います。

 二つ目に、競争の導入による公共サービスの改革に関する法律案についてであります。

 本法案は、官から民への合い言葉だけが先行し、国民が享受する公共サービスの質と量はどうあるべきか、また、国と地方自治体の役割分担などの本質的な議論が欠如していると同時に、見直しを通じて国、地方自治体の事務事業として実施する必要のないものは廃止をするとしています。つまり、公共サービスからの撤退を促すものになっているわけであります。このことは国民生活の安心、安全、安定にどのように作用するのかを真剣に考えなければならないと思います。建物、乗り物、食品などの安全と信頼、そして子供、老人、障害者の日々の暮らし、そして何より基本である雇用の安定が、中央、地方の政府に今日求められているのではないか、このように考えるわけであります。

 その上で、私は、いわゆるパブリック・イコール・ガバメントでなければならない、そうは考えておりません。政府が提案する公共サービスが、マーケットテスト方式で本当に良質かつ安定的な供給がなされるのか、ここのところを十分に委員の先生方に御議論をいただきたいと思っております。

 そういう観点から、以下、何点かにわたり問題点を述べてみたいと思います。

 その一つは、公共サービスは、官が行うにしろ民にゆだねるにしろ、提供する責任は最終的には国及び地方自治体、つまり中央、地方政府にあることを、その具体的内容も含めて明確にする必要があると思います。また、この法案は、良質な公共サービスを利用する国民の権利を充足するための法律である旨を基本理念に規定すべきであるとも考えるわけであります。

 二つ目に、廃止の対象とする公共サービスについて、その決定は主権者、すなわちサービス利用者である国民にゆだねられるべきものであって、サービス提供者が一方的に決めるべきものではない、このように考えます。

 三つ目に、法第四条の国の関与その他の規制の多くは、公共サービスについて国民の安心と信頼を確保するために設けられているものでありまして、これを必要最小限のものとするということは、安心、信頼の放棄につながりかねない。このため、徹底した情報開示を制度的に保障すべきである、このように考えます。

 四点目に、法案には、官民競争入札の対象とする事業の決定、サービスの質の向上や廃止の対象とする公共サービスの決定に、主権者、サービス利用者である国民の参画は一切うたわれておりません。公共サービスに従事する労働者の知恵を改革に生かす視点も欠落していると言わざるを得ません。私は、国民のニーズと時代の変化に対応した公共サービスの改革を求めるものですが、これには、サービス利用者の尊重と参画、サービス提供に従事する労働者の雇用安定、生活賃金確保など、労働の尊厳の確保、すなわちディーセントワークが不可欠であると考えます。

 五点目に、官民競争入札の結果、民間事業者が落札した場合の雇用問題については、政府は配置転換と新規採用の抑制による対応が基本としているものの、本法案上は、行政組織の改廃による過員発生に伴う分限免職の可能性は否定されていないのであります。また、現場で公共サービス提供に従事する多くの臨時、非常勤等職員の雇用については、全く認識が欠落していると言わざるを得ません。公共サービス事業を流動化するにもかかわらず、政府は雇用の流動化への根本的な対処を怠っており、法案は、雇用の二極化をさらに拡大再生産し、社会の安心の基盤を揺るがしかねない、このように考えるわけであります。

 以上申し上げ、今後の国会審議に当たって委員会の先生方の重点的な審議をお願い申し上げたいと思います。

 それは、六点でございます。

 その一つは、良質な公共サービスを安定的に確保、供給するため、中央、地方政府の責務を重視することを明記すること。二つ目に、公共サービスの利用者となる国民、住民の意見を聴取する仕組みをつくること。三つ目に、公共サービスに働く労働者が誇りを持って働ける労働条件を確保すること。また、ILO九十四号条約の批准を進めていただきたいこと。四つ目に、官と民の公正な競争条件を確保すること。五つ目に、人材の質や水準を重視し、公共サービスの質の維持向上に向けた措置を講ずること。六つ目に、労働者に守秘義務を課す必要がある場合、どのような措置を講ずるのか明確にすることが必要である。

 以上六点について、当委員会での十分な御審議をお願い申し上げたいと思います。

 最後に、公務員制度のあり方について述べるわけですが、時間の関係もありまして、午前中の連合の意見と私どもは全く同様でございますので、詳細は省略をさせていただきたいと思います。その上で、一般職の公務員には、三たびに及ぶILO勧告に基づき、労働基本権を保障する法制度を確立していただきたい。

 以上のことを申し上げて、私の意見といたします。ありがとうございました。(拍手)

伊吹委員長 君島参考人、まことにありがとうございました。

 次に、清家参考人にお願いいたします。

清家参考人 ただいま紹介をいただきました全国商工会連合会長の清家でございます。本日は、発言の機会を与えていただき、まことにありがとうございます。

 まず、本題に入る前に、手短に私どもの組織と小規模事業者の景況について説明をさせていただきます。

 私ども商工会は、昭和三十五年に成立した商工会法に基づき、主として町村の地域に設立した経済団体でございます。全国で二千三百四十二の商工会が設立をされており、会員事業者数は約百万、組織率は約六二%となっており、小規模事業者だけの組織率を見ると、実に七割近くの組織率となっております。

 国、県等の支援を受け、地域の小規模事業者の経営相談、金融あっせん、税務指導を初め、町づくりやイベントを通じた町おこし、幅広い事業に積極的に取り組んでいるところでございます。

 御参考までに申し上げますと、平成十六年度に全国の商工会の約五千人の経営指導員等が行いました指導、相談件数は、約三百四十七万件でございます。一年間で、経営指導員一人当たり約七百件の指導等を行っております。

 次に、小規模事業者の景況についてでございますが、私ども毎月実施しております小規模企業景況調査によりますと、依然一進一退の足踏み状況ながらも改善の方向に向かっております。しかしながら、地方からは、原油価格の上昇等により影響を受けている企業が多く、売り上げは変化しないが利益が低下している、一部の業種に景気回復の兆しは見受けられるものの、業種間格差、企業間格差が広がってきているといった声が聞かれますので、まだまだ景気の回復を実感できる状況には至っておりません。

 したがいまして、地方の中小企業の景況がこれ以上後退することのないよう、慎重な政策運営が行われるよう十分御配慮をお願いしたいと存じます。

 時間が限られておりますので、早速、本題であります政府系金融機関の見直しにつきまして、ユーザー側の立場から意見、要望を述べさせていただきたいと思います。

 まず、商工中金の民営化についてでございます。

 我々中小企業者は、バブル崩壊後、民間金融機関から、たった一夜にして手のひらを返すような仕打ちを受け、民間金融機関に対する不信感をどうしても払拭できるようにはありません。そのときに我々に手を差し伸べてくれたのが、商工中金などの中小企業向け政府系金融機関であります。民間金融機関から融資を断られ途方に暮れていた多くの中小企業者が、商工中金があったから、商工中金が成長性等を見込んで融資をしてくれたからこそであります。あの危機的状況を乗り越えることができたことを感じております。まさに商工中金は、最後のよりどころとして我々を支えてくれたと考えております。

 当連合会のところには、全国の中小企業の方々から、民営化後も商工中金のこれまでの中小企業のための金融機能を継続してほしい、あるいは、商工中金が利益第一主義になってしまい、我々中小企業者が切り捨てられるのではないかといった不安の声が多く寄せられております。これから詳細な制度の設計を検討していくことになりますが、全国の中小企業者は、完全民営化後も、商工中金がユーザーたる中小企業者のための金融機関であり続けるよう見守っているところでございます。今回御列席の各先生におかれましては、ぜひ、こうした中小企業の声を酌み取っていただき、その不安を取り除いていただきたいと考えております。

 しかし、中小企業のための金融機関であり続けるといっても、財政基盤の確保にもしっかりとした取り組みをしなければならないと考えております。行革推進法案の中でも、業務の円滑な運営のために必要な財政基盤の確保のために、必要な措置を講じるとされております。財務基盤の整備につきまして、民営化を行ってしまえば、当然商工中金の調達金利が上昇し、結果として、商工中金の財務体質の悪化、これは目に見えているわけでございます。調達金利の上昇は、言いかえれば、貸出金利の上昇に伴って、借り手たる中小企業者が結果としてそのコストを背負うことになりかねないわけでございます。

 また、資金調達でございますが、こちらも大きな問題と思われます。現在の商工中金の資金調達構造を踏まえ、今後も安定した資金調達を行えるよう取り組んでいただきたいと考えております。

 次に、新政策金融機関関係の統合について御意見を述べさせていただきます。

 昨年末に、国民公庫や中小公庫など八つの政府系金融機関を民営化、廃止を含め一つに統合する行政改革重要方針が取りまとめられました。同方針では、中小零細企業、個人の資金調達が政策金融の主要な一つとして重要視されており、我々といたしましては一安心している状況でございます。また、組織の具体的な設計に当たっては、中小零細、個人専門の窓口の設置、または人材育成など、専門性の活用や強化に取り組むこととされております。

 我々ユーザーの立場から申し上げれば、今まで長いつき合いがあり、我々の長所や短所を知り尽くしている担当者との人的な信頼関係の構築こそが最も重要なことであります。これがあったからこそ、中小企業者が、幾度となく襲ってきたあらしを乗り越えることができたと考えております。こうした点が継続されますよう、マル経を初めとする中小零細企業、個人向け小口無担保無保証制度は今後も維持拡大していただきたいと考えております。

 具体的なあり方は、今後詳細な制度設計の中で決定されることとされておりますが、この人的信頼関係が今後も継続されますよう、取り組んでいただきたいと考えております。また、中小企業向け金融機能を新政策金融機関の中心として、その機能を質的にも量的にも十分なものとするよう、ぜひ御検討をお願いいたしたいと思います。

 最後に、危機対応についてでございますが、貸し渋り、貸しはがしが横行していたとき、災害が発生していたときなど、商工中金など政府系金融機関が非常に大きな役割を担ってまいりました。先ほど申し上げましたように、貸し渋りや貸しはがしが行われたときに、商工中金や中小公庫、国民公庫等の政府系金融機関が、我々中小企業に対して円滑かつ敏速に資金供給を行い、多くの中小企業を苦境から救ってきたことは記憶に新しいところでございます。

 今回、行政改革法案の中で、新政策金融機関や商工中金等の機関を活用するとの規定が明記されております。今後の詳細な制度設計の中で決定されることですが、特に、中小企業の短期的な資金繰りを支援するための商工中金の積極的な活用をぜひ考えていただきたいと考えております。政府系金融機関についても、中小企業のニーズに応じ、貸出枠を大幅に増加させるなど、いざというときに役に立つ、中小企業に手を差し伸べていただくよう、制度をぜひ整備していただきたいと考えております。

 今回の政策金融改革におきまして、小泉内閣の行政改革の流れの中で、政府系金融機関の統廃合が必要なことは十分に理解をしております。行政改革推進法案でも、中小零細、個人への融資機能は今後も維持されることとなっております。今後、詳細な制度設計に向けて検討を行うということでございますので、我々ユーザー側の意見が、民営化後の商工中金、統合後の政策金融機関の運営に反映されるよう、ユーザー側の立場に立った制度設計を行っていただきますよう切にお願いを申し上げます。

 以上をもちまして、私からの意見、要望を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

伊吹委員長 清家参考人、ありがとうございました。

 最後になりましたが、永山参考人にお願いいたします。

永山参考人 私は、学校を代表して意見を述べるわけではなくて、自分の研究の領域から、きょうの委員会にかかっております案件につきまして意見を申したいと思っております。このような機会を与えていただいたことを感謝申し上げます。

 私の意見は、主に、本委員会に付託されております五本の法案のうち、行政改革推進に関する法案及び競争導入による公共サービスの改革に関する法案の二本を中心に意見を申し上げたいと思います。

 今回の二つのこの法案も含めまして、これらの関係領域というものの大きな問題の一つは、公共あるいは行政サービス、これが大きな転換をするのではないかという気がいたします。もしこうした法案が今後実行に移されてまいりますと、行政領域に、公行政と私企業あるいは私営事業者による私行政というような新しい構造が定着するというふうに考えていかなければならない状況が生まれます。そのように行政サービスあるいは公行政のあり方が多様化するという状況に対してどのような問題が発生するかということを、推測も含めて検討してみなければならないと考えております。

 その際、法案の趣旨は、いわゆる民営化、あるいは企業による行政サービスの運営代行等々が中心的な眼目になっていることを考え、かつ、それらの供給主体の変化というものが、国民やあるいは公務労働に携わってきた労働者にとってどのような意味があるか、こういったことを中心に検討をさせていただきたいと思っております。

 現在のところ部分的ではありますけれども、公行政あるいは公務の枠組みといいますのは、基本的には、憲法及び各関連法と、その所管官庁の中でそれぞれの定められた公務というものの遂行が行われるわけでありますけれども、まず基本的な問題は、ここに一定の行政の関与を薄めていったり、あるいは私企業によって担うという構造になりますと、そもそも、憲法や、それに従って成立し、また実施されてきたこれまでの公行政や公務のあり方に新しい関係、すなわち、国家と企業の関係あるいは企業と国民の関係、国民と国家の関係がそれぞれ変化を生ずることになります。

 それぞれの公務の種類によりまして変動の内容はさまざま予想されますけれども、国民にとって非常に危惧を感じますところは、一つの事例を申し上げますと、先般の十一月に発生いたしましたヒューザーあるいは木村建設、姉歯によります構造計算書偽造問題と言われる中身の中に、こうした関係の変化がもたらすさまざまな新しい問題領域というものの登場を予想しないわけにはいかないわけであります。

 当然、公務あるいは公行政を執行する担当の公務員にとりましては、その職務や業務内容に関する専門的な知識、コンプライアンスはもちろんのことでありますけれども、その行政遂行に当たっての知識や経験、そういったものの自律的な遂行能力、すなわち一言で言えば専門性が求められるわけであります。こうした専門性が新たな構造の私行政というようなところで十分に担保できるような、そうした可能性を今回の改正法の中でどこに見出すことができるかということに、若干の危惧を覚えるわけであります。とりわけ、国民にとりましては、公務あるいは公行政のサービスの内容の転換というものが質的に向上するのか否か、こういった点の問題を説明していただかなければならない、そうした気がいたします。

 特に、公行政あるいは公務のコストの問題は、否定すべくもなく、常に効率的、能率的に実施するというものもこれまで公務労働の原則として法的にもうたわれてきているところでありますけれども、今回の改正がもし行われるようになりますと、そこには改めて、これらの公行政、公務のコストの問題に加えて、そのコスト問題に取り組む企業的な運営の導入というものが行われるわけであります。

 企業は、当然、言うまでもなく、利潤が企業活動の基本的なインセンティブになってまいりますから、それに対応するところの事業の能率というものが果たされない場合に、これらの領域はどのように処遇されていくのか、処理されていくのか、こういう問題が考えられるわけであります。

 加えて、しばしば国民の中には、本意によってではなくて、所得あるいは貨幣の収入が十分でない、あるいは、そうした判断ができない幼少の人間や高齢者というようなものが存在いたします。こうした人々が、独自に新しい形態の公行政あるいは公務のサービスのあり方に適切に対応するには、どのような条件が整えられていこうとするのか。市場また行政サービスの圏外に置かれた者にとっては、貨幣的なものに加えまして、より精神的あるいは社会的なさまざまな多くの苦痛が生じないであろうか。

 こういう点が、さまざまの領域で、例えば労働保険でありますとか、あるいは社会保険関係の領域に既にその事例を多々見るわけでありますが、健康保険等の事業運営の中でも現場に多くの摩擦が生じていることは先生方もよく御存じのとおりだろうと思いますし、それらが継続、拡大してまいりますと、問題になっております格差が拡大する危険がございます。そうした格差の拡大のメカニズムに、こうした新しい政策、制度のあり方がどのような作用を及ぼすかを吟味しなければならないと思います。

 三つ目は、今回の改正の中で、財政危機等の背景もございまして、低廉なサービスの供給というものがとりわけ大きな課題になっております。それはまた常に追求されるべき課題とは思いますけれども、今回の改革は、企業というものを主としてこの領域に参画させる方向を強めることによって、とりわけ公行政あるいは公務サービスに携わる労働者の賃金水準や雇用形態、あるいは雇用の長期継続性や専門性の確保というものが可能になるような、そういう問題に限界は来ないであろうか。

 例えば、一時的に企業がサービスを肩がわりした、事業を実施したとなりましても、その貨幣的効果が十分に出ない場合には、さらに新しい事業者ないしは旧来の公務運営方式に回帰するのかどうか。こういう点をもって見ますと、必ずしもそういう方向が選択的に明示されていないように思います。

 そういう点で、もしこれらが放置されるというような事態になりますと、当然、公行政や公務が不十分なために生ずるさまざまなリスク、これらの拡大を大きくしてしまわないであろうか。とりわけ、大きな事例となっておりますチッソ水俣のケースや、あるいは先般生じましたJR西日本脱線事故等にかかわる民営化の結果などを見ますと、民間企業もしばしば大きな誤り、あるいは事業運営のための問題というものを発生させることは十分認識しておくべき課題ではないかと思います。

 かといって、それでは行政依存でよろしいかとなりますと、例えば建築材料のアスベストの使用、こういう問題を見ますと、これは必ずしも企業のみの責任とは言い切れない部分がございますし、国家やあるいは行政の失敗という範疇でくくられる問題を含んでいるものと思われます。

 また、私も強い関心を抱いてこの間若干検討をしてまいりましたトンネルじん肺事故などに際しましても、民間企業が問題があるというだけではなくて、公共事業、とりわけトンネルを建設するに当たっての、これまでの労働の態様を決定する基準づくりというものに大きなマイナスがあり、このマイナスがもたらしたリスクが、実はトンネルじん肺患者の企業による補償及び国家補償が求められているという状況を生んだものと考えられますが、今回の行政改革あるいは市場化テスト法の中で、こうした過去の失敗というものを評価した改善策あるいは検討がなされることを期待したいと考えております。

 そして、これまで、既に第三セクターや民営化の方向が多様な形で法として追認されることが行われてまいりました。つまり、公行政と私行政、そういうものを共存させた状態の公務サービスが拡大してきたわけでありますが、このような場合に、それらのサービスを有料または無料で受ける国民の側の、サービスの受け手のさまざまな意見や工夫や改善の要望というものを企業という組織が十分に受けとめられるのかどうか、こういう点の問題を感じないわけにはいかないわけであります。

 とりわけ、こうした領域は、単に直接サービスを受ける人たちの意見が直接反映されにくい場合もございます。例えば保育行政などになりますと、サービスを直接受けている子供は、そのサービスの提供者あるいはその管理を行っている行政に対して自分の意見を申し述べることができない場合、これらが考えられます。そうした自己表現に限界がある場合に、サービスという一種の市場化、マーケットの中で取引されている関係の中で、いわば主権者として、あるいは消費者として対応し切れないようなサービスに対して、民間企業が介在した場合にどのような回復あるいは苦情を申し述べるルートが設定できるのか、こういうことも事前に準備されなければならないように感じます。

 過去に民営化されたりした事業の幾つかを拝見いたしますと、それらの改善あるいは問題が発生する仕組みについて、説明が十分でないばかりか、企業秘密というものを壁にしてそれらの内容が説明されないというケースもあるように思いますし、また、従事する十分な専門性や訓練を受けていない労働者がこれに携わるというケースになりますと、そのもたらす問題の解決をどのようにしていくのかというルートも、企業任せにゆだねていいかどうかということが不安として見通さなければならないだろうと思います。

 また、何よりも、もし収益が上がらない場合に、必要な公共サービス、公行政が消えてしまわないかということが考えられますし、とりわけ、行政サービスの改革法案の中では行政の仕分けということが言われておりますが、この仕分けの物差しというものがどのようなものになるのか。民間ではできないかどうか、そのできるという内容の問題が必ずしも自明ではないというふうに思われます。

 こうした幾つかの不安な問題につきまして、ぜひ御審議をいただくことを希望いたしますと同時に、特に今回の行政改革法案の中では、いわゆる解決の方向というか改善の方向がプログラム化されて、これから審議する、こういう法の趣旨になっているようでございますけれども、それは果たして国会というものの機能が十分立法機能として果たせていくのかどうかということも気になります。もちろん、これは先生方がいらっしゃいますから、そういう心配は要らないということだと思いますけれども、杞憂であればもちろんよろしいわけですが、そうした問題を感ずる次第です。

 したがいまして、これらにつきましても、行政とあるいは国会との関係というものが、やはり三権分立の仕組みの中で有効に機能していくことを改めて念じたい次第です。

 以上が問題の幾つかでございますけれども、そのほかたくさんのこうした領域を全部検討するのは大変だということも改めて自分でも実感いたしました。本委員会が有効な審議を十分尽くすことを念じまして、私の意見とさせていただきます。(拍手)

伊吹委員長 ありがとうございました。

 以上で四人の参考人の方々の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

伊吹委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鈴木淳司君。

鈴木(淳)委員 自由民主党の鈴木淳司でございます。

 参考人の皆様におかれましては、大変御多用の中、本委員会にお出かけをいただきまして、また先ほど来、それぞれ御専門の見地から貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございます。

 時間も限られておりますので、早速質問に入りたいところでありますが、その前にまず、この一連の行政改革推進関連法案並びに今我々が迎えている今日の課題というものは何か、それについて自分なりの理解を冒頭少し述べさせていただきたいと思います。

 小泉政権が誕生して約五年になります。この間、三位一体の改革、年金制度改革、そして昨年の郵政民営化等さまざまな制度改革に取り組んでまいりました。御案内のように、昨年初めて我が国は人口が純減に転じました。加えて、世界で最も高齢化の進行が速いわけでありますから、これはもはや明白であります。人口の年齢構成が大きく変化をする、必然的に負担と給付の関係の見直しをせざるを得ない。また、今日の危機的状況にある我が国財政、これを一日も早く財政構造の改革を進めて、それぞれ持続可能な社会保障制度並びに持続可能な財政構造に転換をしていかなければなりません。

 そうした中で今回の一連の法案の審議がなされております。プログラム法で具体性に欠けるという批判も一部ありますけれども、それゆえに基本理念の確認が今重要であると思います。小泉改革の象徴として、官から民、中央から地方、民間にできることは民間にという言葉がよく挙げられます。今我々が取り組んでいるのは、官と民という対立概念ではなくて、官と民、さらにはその中間的な存在も含めて、官民挙げて、公、いわゆる公というものをいかに構築していくのか、そうした挑戦であろうかというふうに思うわけであります。公という領域を、官民挙げていかに、そしてまた国民挙げていかに構築をしていくのか、その観点から、以下質問をさせていただきたいと思います。

 まず、太田参考人に伺います。

 本日、大変詳細な資料もちょうだいしましたが、太田参考人は、これまで公益法人協会の理事長として、長年公益法人の健全な発展や円滑な運営のための指導並びに広報啓発活動について大変努めてこられました。その理事長の御経験から、今回の公益法人改革の意義について、まずどのように受けとめておられるのか。多くの公益法人が懸命にその目的遂行に向かって努力をされているものと承知しますが、残念ながら、KSD事件を初めとして、公益法人には幾多の不祥事があったのも事実であります。それでは、それらは現行の公益法人制度のどこにその原因があったからとお考えでありましょうか。現行の公益法人制度における問題点、そして今回の制度改革の意義について、確認の意味で改めて太田参考人の御意見を賜りたいと思います。

伊吹委員長 太田参考人、簡潔に、要点をお願いいたします。

太田参考人 鈴木先生、どうもありがとうございました。

 大変重要な問題を御指摘いただきまして、とっさのことでございまして、私はどのようにお答えしていいのか、やや戸惑うわけでございますが、まず、最初の御質問かと思いますが、今回の公益法人制度改革の意義、理念、趣旨というのは一体どこにあるのかということでございます。

 これは、私、鈴木先生がおっしゃることと全く同感でございまして、やはり、民が担う公共といいましょうか、公共というのは決して官の独占物ではなくて、民間が担う領域が必ずあるはずである、むしろ民間が担った方が国民経済的には効率的であるという分野が必ずあると思うんです。

 それから、先生の御表現の中で、官とそれから民、それからその中間的なもの、こういうふうにおっしゃいましたが、実はその中間的なものが、私は非営利の公益セクターだと思います。世の中というのはやはり、政府、公共部門の第一セクターと、それからいわゆる営利部門、プロフィットの世界である市場部門である第二セクターと、それから非営利の公益のセクター、第三セクター、この三つがうまく回転し、協力し、あるときには対立することも必要だと思いますが、それぞれ分担し合いながら、お互いにそれぞれ特徴がございますから、それを補っていくことが必要だろうというふうに思っております。

 それから、KSD事件に見られるような不祥事がなぜ起こったのか、どこに一番問題があったのかということでございますが、これは、何といいましても、ガバナンスとかディスクロージャーとか、その辺の規定が旧民法では非常に少なかった。もともとそういうコンプライアンスとかディスクロージャーとかガバナンスとかということについての概念が明治憲法下、明治時代にはなかったということもございましょうから、非常に規定が薄い。したがいまして、規定が薄いということと、もう一つは、やはりそこに携わる方々の意識の問題ということもあったんじゃないかと思うんですね。

 それから、官庁がみずから許可をし、指導監督をいたしますから、何か不祥事が、事件があってもなかなか取り消さない。取り消しますと、指導監督しているじゃないか、許可をしたじゃないかという自分たちの責任になる。そういったことがいろいろ複合的に原因いたしましてそういう問題が発生したんだろうと思いますが、今回の新しい改革ではそのあたりを根本的に解決していただきたい、このように考えます。

鈴木(淳)委員 現行の公益法人は約二万六千あると言われておりますが、新制度への移管に伴って、果たしてどの程度の法人が公益社団、公益財団法人への認定を求めるとお考えでございましょうか。また、公益性の判断というのが、これまで所管官庁から有識者で組織される公益認定等委員会にゆだねられまして、その運用が今回の制度改革の成否を分ける、まさにその根幹であると思いますが、その人選並びに事務局等の運用上の留意点についてお聞かせいただければありがたいです。

太田参考人 鈴木委員の次の御質問でございますが、二万六千の現存する公益法人のうち、新しい制度になってどれくらい認定が受けられるのかという極めて難しい質問でございまして、私が二万六千の中身を全部承知しておりますとここで正確に答えられるのでございましょうが、これは、何とも言えないということしかここでは言えないかと思います。

 私は、ただ一つだけここで鈴木先生初め皆様方に申し上げたいと思うんですが、従来どうであったかということは今回は問わないでいただきたいと思うんです。やはり一番問題なのは、従来いろいろ共益的なことをやっている、あるいは営利企業的なことをやっている、ガバナンスが非常に問題だという企業というかそういう団体であっても、今後、新しくできる公益認定要件、十八要件ございますが、それに照らして立派な公益法人に生まれ変わっていただければ、ぜひそれは合格させてあげたいと思うんですね。過去がおまえは落第生みたいだったからというんじゃ、いつまでたっても、勉強しても合格できないわけでございますから、一生懸命勉強すれば合格できるようなことにしていただきたいというふうに思っております。

 それから、委員会の、何といいましょうか、運営が制度の成否を握っているということは、まことにおっしゃるとおりでございます。これは、私も先ほどの冒頭の御説明でも申し上げましたように、委員は当然でございますが、事務局の主要なメンバーは民間人から登用するという、民間色豊かな委員会にしていただくことが私はぜひとも必要である、主務官庁からの出向の寄り合い世帯では旧主務官庁制度の温存になるというふうに言わざるを得ません。

 以上でございます。

鈴木(淳)委員 それでは、太田参考人に税制について伺います。

 公益法人の活動の活性化は、何といっても、寄附文化の醸成を促す税制、その他活動支援のための税制措置が不可欠と考えられます。今回の改正では、その部分の詳細設計は先送りの感がありますけれども、果たして、今後どのような具体的な措置が必要と考えられますでしょうか。昨年の政府税調に盛り込まれた、公益性の認定を受けた全法人を寄附金控除の対象にする方針についてどのような感想をお持ちか、望ましい税制のあり方についてお答えをいただければありがたいです。

太田参考人 鈴木先生の三番目の御質問でございます税制でございます。

 税制につきまして、今回、ワンセットでこの委員会で御審議していただけないというのは大変残念に思っております。しかしながら、法律の中にもそういう支援する税制を今後考えるということも書いていただいておりますので、ぜひ、その方向で実現を図っていただきたいと思っております。何といいましても、公益法人にかかわる法人税の原則非課税、これは最低、ぜひお願いをしたいというふうに思います。

 それで、収益事業につきましては、本体にかかわる収益事業をどうするかというところが今後十分検討される必要があろうかと思います。収益事業であるからといって、本来、公益目的にかかわる収益事業まで課税にしていいのかどうかという点について、私は非常に疑問を抱いております。

 それから、いわゆる財団法人にとりまして基本財産の運用ということは、これはもう死活問題でございまして、それに対する源泉徴収税の非課税ということは、従来の方針を御継続いただきたいと思っております。

 それから、寄附税制でございますが、この寄附税制が一番日本の税制にとりまして公益先進国から比べておくれている部分でございます。ぜひ寄附税制を充実していただきたい。これは、いわゆる生前の寄附だけではなくて、遺贈とか、それから相続財産からの寄附とか、あるいは中小企業等々のオーナーがみずからの株式を寄附するとか、こういったことについても一定の支援税制を構築していただきたい、寄附文化の豊かな日本にぜひしていただきたいというふうに思っております。

鈴木(淳)委員 それでは続いて、清家参考人にお伺いしたいと思います。

 先ほどの陳述では、これまで政府系金融機関が中小企業、零細企業を支えて、その資金調達の円滑化に大変大きな役割を果たした、そういう評価があったかと思いますが、今回の行革推進法案では、政策金融機関を再編して新たに一つの新政策金融機関を設ける中で、中小零細企業の資金調達を支援する機能が承継されることとなりました。

 一方、先日提出されました民主党法案におきましては、新政策金融機関には、これまでの直接貸し付けをやめて、原則として債務保証や利子補給に限定すべきであるということになりましたけれども、債務保証のみで資金調達が賄えるとお考えでありましょうか。

清家参考人 ただいまの質問にお答えいたします。

 全くそういう機能は果たされぬというふうに考えておりますので、よろしくお願いします。

鈴木(淳)委員 民営化される商工中金についてお尋ねをしたいと思いますが、今回の行革推進法案第六条におきましては、商工中金は完全民営化される、こういうことにされましたけれども、その第三項に明記されましたように、民営化に当たって、円滑な運営のための財政基盤確保と、機能の根幹を維持するための必要な措置をとるとされています。

 商工中金の自己資本比率は現在七・八%程度、民間の大手都銀は約一一・二%、地銀は約一〇%と言われておりますけれども、それよりも低い水準でありまして、それは、ある面で、中小企業を身を削って支えてきた、そういう証左であるかもしれませんけれども、そういう水準であります。本来、商工中金の民営化に当たって内部留保を高めて自己資本比率を強化していかなければならない、そういう段階にあると思います。

 平成十六年度末における資本金五千百七十二億円のうち、政府出資が四千五十三億円、組合出資が千百十八億円あり、もしこの政府出資を全部売却するとすれば、その配当負担だけでも大変になるはずでありますので、税引き後の利益をすべて配当に充ててもなお不足をする、そういう状況になるように思われます。

 これでは民営化の実現が事実上不可能であるというふうに言わざるを得ないと思いますが、それにつきまして、政府出資の約四千億円のうちでかなりの部分については、出資金ではなくて、配当を要しないで自己資本に算入できる例えば準備金のような形で商工中金に残すことが必要ではないかという考えがありますけれども、ユーザーたる中小企業の代表として清家参考人はいかにお考えなのか、その御所見を伺えればと思います。

清家参考人 それではお答えいたします。

 財務基盤につきましては、政府出資をどうするかが大きな問題と考えております。現在、政府出資が約四千億円ございますが、これをもし全部売却してしまうと、配当負担が経営に大きくのしかかってまいります。それでは全部引き揚げてしまえばという意見もあるように思われますが、自己資本率が今おっしゃられたように大変低いわけでございますので、金融機関としての立ち行きがならなくなってしまいますので、そうなってしまえば、借り手である我々中小企業に大きな被害をもたらすことになっております。

 自分の経営者としての経験に基づいて申し上げれば、例えば政府出資のかなりの部分を準備金化するなど、配当負担を抑えるいろいろな工夫の仕方があると考えております。とにかく、商工中金に一定ある約四千億円を今後とも活用できるように、後顧の憂いのない、商工中金が我々中小企業者の融資に邁進できるようにお願いしていただきたいと考えております。

鈴木(淳)委員 ありがとうございました。

 それでは、君島参考人にお尋ねをしたいと思います。

 今回、公務員の総人件費改革、国家公務員五年間で約五%以上純減、地方公務員で四・六%以上の純減、給与制度の見直しによる人件費の削減というものが打ち出されました。公務員の人件費改革について、まず、君島参考人に基本的な御認識をお伺いしたいと思うのでありますが、労働組合ではよく労使協議、労使交渉という言葉が使われますけれども、公務員、公務労働者の場合の労使の使というのは、一体だれだとお考えでございましょうか。

君島参考人 公務員の世界では、国家公務員もございますし、地方公務員もございます。私ども自治労に関係する地方自治体でいきますとそれぞれの基礎自治体の首長、あるいは公営企業でいきますと管理者、そういう立場におられる方々が使を代表するというふうに考えております。

鈴木(淳)委員 形式上は私もそうだと思います。しかし、実際は本当にどうなのかというと、私は、地方自治体でいえばそれは本当は市民であり、国家公務員であれば国民ではないかというふうに思うんですね。したがって、いわゆる公の場で議論をする中で市民が納得をすればその待遇はいいでしょうし、国民が納得をすればそれもいいかもしれませんけれども、大変厳しい民間経済を反映して、公務員の待遇には大変厳しい批判があるのも事実であります。市民が納得をすればいいのでありますが、そうでないとすれば、これは改善をしなければいけないということになろうかと思います。

 公僕、公のしもべという言葉があります。実際は、ほとんどの公務員は本当にまじめに公務の遂行に当たっておられるものと思います。しかし、残念ながら、大阪市の事例にあるように、多くの市民、国民が、公務員の待遇については民間では考えられないような手当や厚遇があるということで、怨嗟に近い感情を抱いているのもまた事実であります。

 したがって、この辺を厳しく踏まえて対応しなければいけないのかな、こう思うわけでありますが、公務員の側からの行政改革の努力というものは一体どのようなものだというふうにお考えでございましょうか。恐らく行革の必要性は否定をされないと思いますので、公務員の側からの行革努力についてお考えをお聞かせくださいませ。

君島参考人 意見陳述の折にも、国民のあるいは市民、住民のニーズに基づいて、また時代の変化に対応した行政の改革は必要である、こういうことを申し上げました。

 私は、公務の場においても労働組合と使用者との間で話し合いが行われ、そして合意した内容については基本的に尊重されるべきものである、こういうふうに考えます。ただその際、その合意した内容について、市民、住民を代表する議会の承諾を得て、そして実行されていくべきものであろう、このようにも考えております。

 先生の御指摘の公務員の側から、働く側からどのような行政改革が必要なのかということについては、これは私どもも、まあ自治労という労働組合もそうでありますけれども、自治体改革をどのように進めていけばいいのかということなどについて、およそこの十年間、内部で大きな議論をしてまいりました。これは、福祉にしろ、医療にしろ、あるいは農政、土木、建設というそれぞれの事業部の職場において、日々の労働を通じて、ここはこのように改革した方がいいぞということは、労働組合といえども理事者側に提案していこうではないか、そしてその地域が、本当にこの地域に住んでよかった、あるいは長生きしてよかった、そう言われるような行政のサービスでありたい、こういうことをこの間も労使の間の話し合いで提案してきた、そういう活動をしております。

鈴木(淳)委員 ありがとうございました。

 永山参考人にお伺いしたいと思います。先ほどの君島参考人もそうでありましたが、いわゆる市場化テストについては大変厳しい御評価であったのかな、こういうふうに思うわけでありますが、行政に効率性の観点を導入することはそもそも悪でございましょうか。

永山参考人 公務員法の中にも効率ある職務遂行という趣旨が書き込まれておりますし、当然各労働者もそのように自覚しておられると思いますけれども、すべてがそうだというふうには言えない場合もあるかもしれません。

 やはり現場のさまざまな意見を伺いますと、例えば建設や土木の関係の領域ですと、年度ごとの予算執行の時間的な波というのがございまして、工事の種類によりまして、早目に発注できるものから、年が明けて工事にかからなければならないというような場合に、その山と山の間の谷間というようなもの、業務の不規則性というもの、これをどのように処理するか等、現実にはさまざまな要因によって能率あるいは効率というものが規定されている面があると思います。

 すべての波を前提にして雇用関係、コスト関係というものをつくろうとすれば、これは公務員の生活が成り立たないという事態も起きますので、この辺の間をどのようにとるかということは労使ともども考えていかなければならないことでして、今後も予算制度その他の改善を通してこういった問題の解決を双方で図っていかなければならない、そういう課題はあろうかと思います。

鈴木(淳)委員 永山参考人は、先ほど、過去のいろいろな失敗の事例から学んで、それを改革を進める上で具体的に盛り込んでいかなければいけないという御指摘があったと思いますけれども、それを具体的な形で言うならばどんなことなのか、ぜひそれをお示しいただきたいと思います。

 最後に、先ほど私が申し上げましたけれども、これからいわゆる公というものをどうつくるかという今議論をしておるわけでありますので、公というものをつくるに当たって、いわゆる官の側の努力あるいは官の、公務員の側の努力というものについてはいかがあるべきとお考えか、お聞かせいただければと思います。

伊吹委員長 永山参考人、簡潔に答えてください。

永山参考人 官の側の努力あるいは公の側の努力、この中身を具体的にということでございますが、今回のこの法案の中で非常に議論していただきたいと考えておりますことは、やはりサービスの受け手の意見というものをうまく吸い上げる組織といいますか機構といいますか、そういうものを通して、その財政の運営のあり方から業務の進め方、あるいはそこにある無駄や無理というものをいかに発見し改善するか、そういうことをサービスの受け手の側からの意見もぜひ聞けるような、そういう関係をつくっていただくように希望しております。

鈴木(淳)委員 時間が参りました。これで終わります。ありがとうございました。

伊吹委員長 以上をもちまして鈴木君の質疑は終了いたしました。

 次に、桝屋敬悟君。

桝屋委員 公明党の桝屋敬悟でございます。

 きょうは、四人の参考人の皆さん、本当にありがとうございます。御苦労さまでございます。

 きょうは、私も、時間が短いので端的にお伺いをしたいと思いますが、全員に御質問できるかどうかわかりません。最初に、太田参考人にお伺いをしたいと思います。

 太田参考人には、きょうは本当にありがとうございます。実は、この行革推進法案あるいは公益法人制度の改革法案、今日この場を私はここ二、三年ずっと想定しながら作業してまいりました。公益法人協会の理事長が恐らく参考人でお出になるだろう、その席で、私は反対である、こんな法律はやめてもらいたい、こう言われたらどうしよう、そうあってはならぬなと思いながら、ずっとこの二、三年作業してきたわけでありますが、先ほどの参考人の陳述内容を聞いておりまして、合格点はなかなか与えていただけないようでありますが、しかし、まあ一歩前進の法律であるというふうに御評価いただいたのではないかと思っておりまして、実はほっとしているわけであります。

 理事長は、全国の財団法人の公益法人協会理事長におなりになったのが平成十二年というふうに理解しておりますが、あの年にKSDの事件があり、そして与党もいろいろ動いて、十四年の閣議決定に至り、公益法人制度の抜本改革をやるということになった。まさにその渦中ずっと理事長として、一万二千の加入されるそれぞれの団体の皆さんとともに意見をおまとめになられた。敬意を表したいと思います。

 あれは二〇〇二年でしたか、平成十四年のシンポジウム、「二十一世紀市民社会と公益法人」、こういうテーマでシンポジウム等を行っていただいて、本当に大きな意見の盛り上がりを見せたなと私は思っております。参加させていただいて、あのときに、まさに国家管理の官製公益法人、この世界を何とか変えようという皆さんの思いも私はひしひしと感じたわけであります。

 一歩前進の法律ができたと私も思っている一人であります。ただ、あのシンポジウムで、私は、今でも覚えておりますが、もう理事長の顔を見ると必ず思い出すんですが、夢にも出る話なんですが、中間法人を含むかどうかというところで、あのとき私はあのシンポジウムに出て、中間法人を含む非営利の枠組みをつくると、フレームワークの話ですね、これはなかなか国民に理解されないんじゃないかという意見を申し上げた一人として、今回はまさに一階部分、一般の社団、財団法人制度は中間法人を含んでいるわけであります。ここは随分今日まで議論があったわけでありまして、そこを今回、もうそこは余り議論しませんが、制度論としては含む、こういうことになったわけであります。

 そうした場合に、原則課税とか非課税の議論もありましたが、私は、ぜひ理事長に伺いたいのは、先ほどは、二万六千のうちどれぐらいが公益認定されるでしょうか、こういうお話もありました。逆に、私がお伺いしたいのは、一般の社団あるいは財団法人も、このスキームの中で、仕組みの中で大きな役割を果たすだろうと私は思っておりまして、現行二万六千ある公益法人のうち、むしろ一般の社団、財団として頑張っていきたい、むしろそっちを選択されるという、そういう方もあるのではないか。そこの部分の意義といいましょうか、存在というものについて御意見を伺いたい。

 あわせて、そこが実は一階部分の税制の問題にも絡むわけでありまして、昨年六月のワーキングチームのお話もいただきましたけれども、そのあたりからまた、これからの議論でありますが、税の御意見もいただきたいと思います。

太田参考人 どうも、桝屋先生から大変いろいろ難しい御質問をちょうだいいたしまして、ありがとうございました。

 今先生おっしゃっていただきましたように、私ども公益法人協会は、先生には五年ほど前からいろいろなことで御厄介になっておりまして、時にはいろいろ論争もさせていただきまして、しかし、きょう、正式に新しい制度ができるということでここでお目にかかるというのは、私自身も大変感無量でございます。

 幾つか質問がおありになったかと思いますが、一つ、中間法人でございますね。私どもが平成十四年に行いました市民社会と新しい公益法人制度というシンポジウムのときにいろいろな議論が出まして、確かに、中間法人は含むべきではないというお考え、実は、私ども公益法人協会もそういう考え方でございました。新しい法人法、新しい法人類型としては、非営利公益法人と非営利共益法人、この二つの法律を分けるべきであるということを申し上げておりまして、これは従来から申し上げておりましたが、今でも実は変わっておりません。

 しかし、今回の法律のフレームワークがそれらを全部一体化されたということで、ここでその土台を崩すことは大変難しいであろうという大局的判断から、今回の法案については、主務官庁制を廃止したというその一点で、私は、大評価を、大前進であるというふうに考えているわけであります。

 ところで、一般社団、財団の社会的な意義とか理念は一体何なんだろうかという御質問もございました。実は、ここが非常に難しいんですね。

 確かに、一般社団・一般財団法人法というのは非営利ではございますけれども、それじゃ一体何を目的とする法人なのかということが全く明確ではないんですね。つまり、そういうことが特に規定されていないわけであります。

 それから、目的とかあるいは事業について何ら制限がございません。もし私の法律解釈の間違いでございましたら御指摘いただきたいと思いますが、例えば、風俗営業をやっても構わない、あるいはパチンコのような遊技業をやっても構わない。つまり、何でもできるという、何でもありの法人が、一般社団、一般財団でございます。

 そういたしますと、それじゃ株式会社と一体どこが違うのか。株式会社であれば風俗営業も何でもできるわけでありますけれども、どこが違うのかといいますと、剰余金を毎回毎回の決算期において配当しないという、そこだけなんですね。しかし、残余財産は、解散すれば社員で分配ができるわけであります。社員というのは、そのメンバーですね。仲間内で分配してしまうことができる。

 そうなりますと、剰余金の非分配ということはほとんど意味のないことでありまして、役員報酬を高くすれば利益は出ませんから。そして、事業は何でもやれるということになりますと、私はいつも言っているのでございますが、この一般社団・一般財団法に基づく法人は、恐らく日本の社会におきまして法人のるつぼになるであろうというふうに私は考えております。いろいろな法人が出てまいると思います。

 中間法人法ができて約四年でございます。その間に二千近くの法人ができておりますが、営利法人まがいのものも随分ございます、もちろん非常に公益に近いものもございますが。そういう意味では、一般社団、財団の使い方というもの、これをどういうふうに我々として考えていくべきかということ、そこが非常に大きな問題じゃないかなというふうに私は考えております。

桝屋委員 ありがとうございます。

 テーマとして、私に与えられた時間、少し足らないテーマを差し上げたような気がいたしまして、今おっしゃったことについて私も実は申し上げたいこともあるのでありますが、もう五分しかありません。

 今理事長がいみじくもおっしゃった、一般あるいは社団、確かに何でもできるということでありますが、その使い方をどう考えていくかということが、私、理事長にぜひまたお願いをしたい一点であります。

 あわせて、今から税制の議論をいたしますが、ぜひ、この場を使いまして、私も与党の一員として、昨年の六月のあの政府税調のワーキングチームの意見もしっかり参考にしながら、私どもこれから年末に向けて取り組んでいきたいという決意を申し上げておきたいと思います。

 もう本当に時間がなくなりましたが、もうお一方、清家参考人にお伺いをしたいと思います。

 きょうは、大分から、本当に御苦労さまでございます。先ほどのお話を伺いまして、よく理解をいたしました。今回の改革法案の中では、政策金融、本当に皆様方に大変御心配をかけておりますが、幸い、先ほど陳述の中で、改革の方向は理解をしておる、こうおっしゃっていただいて、なお、その上でさまざまなお話をいただきました。もうおっしゃったとおりでありまして、私ども、やはり零細、中小企業に対する資金調達の機能は何としても残していきたい、こういう思いでおりまして、御指摘のありました、議論のありました財政基盤の確保についても、我々も頑張っていきたい、これから詳細設計があるものですから。

 一点だけお伺いしたいのは、やはり商工中金のセーフティーネット対応でございます。

 お話がありましたけれども、やはり商工中金、短期の調達機能という、手形割引を含めた短期の融資も行っている。そうしたものが災害の発生などで迅速な対応ができたということがあるんですが、今回統合される新政策金融機関、ここが機能としてないような気もするわけで、そこら辺の仕組みをどうするかということを今からしっかり制度設計しなきゃいかぬのですが、最後にもう一回御意見をいただきたいと思います。

清家参考人 大変ありがたい御意見をいただきまして、ありがとうございます。

 セーフティーネット対応でございますけれども、貸し渋り、貸しはがし時は、商工中金が最後まで面倒を見ていただきました。本当にありがとうございました。完全民営化後の商工中金のセーフティーネット対応について、引き続き重要な役割を担っていただけるような体制づくりをしっかり設計していただきたいと考えております。よろしくお願いします。

桝屋委員 ありがとうございます。

 いずれにしても、「必要な措置を講ずる」と法律にされておりまして、これから我々も与党の一員として作業をしなきゃいかぬものですから、きょうの意見をしっかり参考にさせていただきたいと思います。

 私、あと二分持ち時間があるんですが、君島参考人に一点だけ伺いたいと思います。

 私もかつて自治労の一員でありまして、十七年八カ月、二十年に満たずにやめたわけであります。

 三千二百の市町村が千八百になりました、まあ、千八百二十ぐらいあるでしょうが。平成の大合併という大変なときを今迎えております。ここは、我々は、合併は決してゴールではない、むしろスタートであるというふうに思っておりまして、基礎的自治体として財政の安定ということを我々考えてこの時代を今迎えているわけであります。

 これは、地方行革の観点から、この合併について、当然ながら、三千二百が千八百になるわけでありますから、四・六%という目標値が見えておりますけれども、私は、まさにこれから五年ぐらい、地方行革の大きな山だと思っているわけでありますが、君島参考人の御意見を伺いたいと思います。

君島参考人 この合併が、国の指導のもとにといいますか、助言もございまして、急速に進んだわけでありますけれども、危惧するところは、自治体の量の拡大、すなわち、自治体が面積が大きくなりました、人口が大きくなりました、量の拡大、そして、それに伴う質の変化がどのように変わるのか。この量と質の関係について、これから私どももしっかり注視をしていきたい、こう思っております。

 日々、地方自治体においても、私は、申し上げましたように、国民のニーズと時代の変化に応じて改革は必要である、そういう立場で取り組んでいきたいと思っております。

桝屋委員 ありがとうございました。

 以上で終わります。

伊吹委員長 桝屋君の質疑はこれにて終了いたしました。

 次は、武正公一君。

武正委員 民主党の武正でございます。

 各参考人におかれましては、本日は、まことにありがとうございます。

 それでは、順次お伺いをさせていただきます。

 まず、太田参考人におかれましては、先ほど来、今国会に提出の社団、財団の見直し法案、主務官庁が撤廃される、このことを大変評価されているわけなんですけれども、ただ、公益法人の白書を見ますと、現在、国所管六千八百九十四、都道府県所管一万八千八百三、このそれぞれの公益法人に、国の場合は、三三%、二千三百、それから、都道府県については三〇%の四千九百七十一、公務員出身の理事がいる。しかも、そのほとんどが所管省庁。これがやはり問題の根源だという認識でお話しになられたと思うんですが、ただしかし、現状、これだけ所管省庁の理事がいるわけですね。

 この法案が通って主務官庁は撤廃されても、現状、いる。しかもまた、お金の流れが、それぞれ今までの所管省庁からさまざまな委託あるいは随意契約などでお金の流れもできている。それが今現状残ったままで主務官庁だけ外して、果たして、例えば、理事ががらっと大幅にメンバーが、構成が変わるのかということがやはり危惧をされるわけですが、この点についてはどのようにお考えでしょうか。

太田参考人 先生、どうもありがとうございました。なかなかこれもまた難しい問題でございます。

 いわゆる主務官庁なるものが公益法人にいろいろ介入をする、あるいはそこにいろいろな権益、利便を求めるという問題と、公益法人制度というシステムの問題とは、そもそも、いわば本質的な関係というものは私はないと思っております。いわゆる天下りの問題あるいは官製談合の問題、あるいは随意契約で太らせて不当利得を蓄積する、こういう問題は、制度があるからそれをやるということではなくて、むしろお役人の、我々民間人から考えれば到底非常識な倫理観とか、いわゆる規律のなさとか、非常識な行動が原因だと思うんですね。したがいまして、公益法人というものがやりやすいようにできているからするんだとか、ある法人類型はやりにくい類型だからそれをしないとかということではないと思うんです。

 したがいまして、天下りの問題とかなんとかというもの、あるいは官製談合にしましても、決して、いわゆる許可、監督権を持っている公益法人だけではなくて、株式会社に対してもそれがあるわけでございますから、したがいまして、制度問題と官庁のそういった問題とを混同はしないでいただきたいなと。それはむしろ、そういう不祥事件を起こすような問題については厳しく別途対処していただくということでお願いをしたいというふうに考えております。

武正委員 今のやりとりをちょっと深めたいんですが、モラルの問題であるというお話なんですが、実は、本委員会では、環境省の本省発注全契約の、五百万円以上、九三%が随意契約であって、しかも一〇〇%相みつをとっていないことがわかりました。そして、これを財務省、厚労省、農水省に伺うと、いずれもやはり随契は一〇〇%相みつをとっていない。財務大臣に聞きますと、ほかに競争相手がいないから相みつのとりようがないんだ、こういうお答えだったんですが、ただ、予決令を見ていくと、九十九条に随契によることができる場合がたくさん書いてあるわけなんですね。その中に、これは九十九条の一項の十六なんですが、公益法人から物件を買い入れるに関しては随意契約ができる、こういう政令があるんですね。

 私は、先ほどの環境省でいうと、その随契の半分以上が公益法人とのやりとりでございますので、やはりここがお金の不透明な流れになっていく、制度設計としてのこの予決令、ここが問題ではないかなというふうに考えておりまして、モラルもさることながら、制度で、やはりこの公益法人改革、今回法案は出されておりますが、まだまださまざまな点で不備があるのではないかなと思うんです。

 この随意契約に絞って、この予決令の改正がやはり私は必要ではないかなと思うんですが、この点について、公益法人に随意契約を認めるというこの予決令、これはどのようにお考えでしょうか。

太田参考人 大変難しい難問が矢のごとくいろいろ飛んでまいりまして、私も困惑いたしております。

 私、ちょっと先ほど言葉足らずでございましたので訂正させていただきたいと思いますが、決してモラルだけの問題と言っているのではなくて、公益法人制度の問題、法律の、リーガルフレームワーク、それとは関係がないということを申し上げているわけでございます。したがいまして、例えば今おっしゃいました予決令のように、随意契約については公益法人はその例外であるというようなものが果たしてあるのかないのかということも私は存じませんし、それからさらに、それがやはり弊害のもとであるというふうに皆様が認識されれば、むしろそういうものをお変えになるということが必要だろうとは思います。

 したがいまして、これと公益法人制度改革の問題とはぜひ絡めないでいただきたい。そういう随意契約、癒着問題、不要不急の補助金支給問題とかいろいろございますが、それは厳正に、それに関連する制度を改正していただいて、あるいはつくっていただいて、そういうことが二度と起こらないようにしていただければいいんじゃないかというふうに私は思います。

武正委員 ありがとうございました。

 ただ、先ほどこの委員会の委員も指摘しましたように、やはり国民の目線というのがどうしても公益法人にもついて回りますので、国民の生活の中での常識というものがどうも公益法人で通じない、こういった疑念がどうしても強いものですから、やはり私は制度での補完がまだまだ必要だろうということを申し上げたところでございます。

 そこで、君島参考人にお伺いをしたいのですが、民主党も今回、行革法案への対案を既に提出しておりまして、あしたからは本委員会でも民主党案に対する質疑も始まるわけなんですが、その中で、補完性の原則、これは民主党が一つこの法案の骨子にもしているところでございます。

 この行革法案では、第五条の国と地方の役割分担の見直しの基本方針に備えているものでございまして、政府案が官から民へ、こういうことをしきりに言っておられるところなんですけれども、もう申すまでもありませんが、補完性の原則は、もともと地域のコミュニティーなりあるいは基礎自治体なりができないものを、都道府県なりあるいは国なりがやっていく。まずはコミュニティーなりあるいは地域の株式会社なり、そこでできるところをやっていく、これが補完性の原則でありますので、政府案と民主党案はこの点がある面対立軸というふうになってこようかと思うんですが、この補完性の原則について参考人はどのようにお考えでしょうか。

君島参考人 民主党さんが出されました対案について、正式に民主党さんからレクチャーを受けた経過は私はございませんので、詳細についてお答えすることはできませんけれども、今先生がおっしゃった補完性の原則を民主党さんが主張されるということについては、私は十分に理解できるというふうに考えております。

 私どもも、今先生がおっしゃったように、基礎自治体で行えない仕事、それから都道府県で行えないもの、そういうものを最終的に国が行う、つまり国と地方自治体の役割の分担をきちっと議論すべきではないのか、こういうことをこの間も強く申し上げてきた経過がございますので、補完性の原則については理解できるという立場に立っております。

 以上です。

武正委員 同じく、永山参考人にお伺いをしたいんですが、永山参考人は、この補完性の原則についてのお考えはどのようなものか。特に、これは先ほど来、午前中も例が出ましたが、イギリスのさまざまな制度が今回の行革法案の実は底流にある。それは、独法がエージェンシーであり、あるいは、いわゆる市場化テストなどもそうしたイギリスで既に行われているということもありますが、このバリュー・フォー・マネー、効率性にはやはりこれが欠かせないと思うんですが、なかなかバリュー・フォー・マネーの考えが政府案から、効率性の言葉はあっても感じられないというところもあるわけです。

 補完性の原則、そしてバリュー・フォー・マネー、要は質ですね、公共サービスの質、それがお金に対してしっかりと価値があるのかどうか、ここの二点についてのお考えを伺えればと思います。

永山参考人 さまざま議論があるところだと思いますけれども、国と地方の補完関係、あるいはコミュニティーと地方政府との補完関係、あるいは企業と地方政府ないしは国との補完関係、あるいはNPO、NGO等との補完関係、さまざまな補完関係、すなわち、官がすべて独占というわけにいかないということと同時に、深くそれぞれが関係し合っているわけですから、これらの関係性をどうつくるかということの重要性が今日ますます高まっているということは間違いないと思います。

 ただ、この法律でいいますと、仕分けあるいは線引きとこれまで議論されてきたような、そういうものとこの補完関係というものをどうつなぐか、この辺が今議論が必要な分野になっているのではないかというふうに思われます。例えば、救急車の搬送等に関してどこまでは民間が可能なのか、こういう議論も、詰めていけば分担関係ができるかもしれない。

 ただ、先ほど、イギリスの事例が午前中議論されたということでございますけれども、私はイギリスの研究を深くしているものではないんですが、日本の議論とイギリスの議論が非常に違いますのは、その補完の関係を議論する枠組みというものが、例えば予算は行政はこれだけ用意している、サービスや事業の運営についてどういう工夫があるのか、そういうことについて、例えば医療分野でいいますと、医師あるいは看護師、さらには行政、さらには医療サービスを受ける側のさまざまな意見、そういうものを吸引できるような、そういう関係をつくった上で補完をするというものと、最初から政府やあるいは内閣府が設置した協議会、そういうものが直接これを判断する、あるいは、それを評価する委員会を行政の側が設けるというようなことになりますと、これはさまざま意見の偏りといいますか、意見の集約の仕方の不十分さというものを残してしまうおそれがあって、本来の補完性原理を十分機能させるようなシステムの構築というものが当然これに伴っていなければならないというふうに思います。

 例えば、一つの学校建築をするにいたしましても、PFIとこうした補完性原理とを組み合わせて、小中学校あるいは高等学校の中にパブを設けて、夜遅くまで大人がそこに出入りする。そういうような建物とその運用の工夫をするようなことは、やはり現在のような補完性原理の議論では私は不十分で、イギリスの補完性原理のコミュニティーが協力をするというだけに終始するようなことになっては、せっかくの補完性も単なるサービスの価格を下げるというだけの結果に終わってしまうおそれもないとは言えない。そういう点も考慮して、やはりそうした制度設計がなされた上での補完性原理を活用するということが非常に重要な論議の点ではないかというふうに私は見ております。

 それからもう一点、済みません、二番目の御質問……(武正委員「バリュー・フォー・マネー」と呼ぶ)そういう関係の中で、予算に対するベネフィット、あるいは効果的な財政の運用や不足する予算をできるだけ利用者等々から負担していく、こういう関係も、以上のようなシステム、つまり、サービスの質とそれに見合うだけのコストあるいは負担関係、そういうものが議論された上であるならば、これは極めて有効なシステムとなっていくだろうというふうに考えられますので、ぜひそのような組織のシステムの創出をしていくということについては、これらを十分議論していただくことが有効な道ではないかというふうに考えております。

武正委員 また、太田参考人にちょっと一点お伺いしたいんですが、先ほど、これから民間人が中心で新しい財団、社団の役員なり、あるいは公益性を判断する第三者委員会も民間人がと、こういったお話があったんですが、この民間人の定義が私と政府と違うもので、この間何度も議論をしているので、ぜひ参考人の御意見を伺いたいんですね。

 公益法人の長の出身が退職公務員かどうかということで、政府の退職公務員の定義に、国立大学に入られた大学教授、あるいは、国立大学に入られて、その後文部省に移られてさまざまな研究所に行かれたような所長さん、こういった方々を文部省の出身というふうに仕分けを政府はされないものですから、私の仕分けとどうも食い違ってしまうんですね。

 いや、研究職だから、この方々は、国家公務員出身として、文科省とのつながりがある云々、この対象からは外れるんだ、こういうふうに政府は言われるんですが、先ほどの国民の素朴な疑問からすると、文科省と国立大学の先生、非常に密接なつながりがあるわけですので、私は、民間ということからすると、やはり民間ではないというふうに思わざるを得ないんです。

 これから特に、公益性を判断する第三者委員会などに大変重要な決定あるいは大きな権限が与えられますので、私は、ここのメンバーというものは大変大事になってくる、そのときに、太田参考人が言われた、何が民間で何が民間でないかというのは大変大きなところになると思うんです。先ほどの私の、例えば国立大学に就職をして国立大学の教授として退職をされた方、あるいは国立大学に就職をして途中から文部科学省の本省に行った方、あるいは国立大学の途中から政府のさまざまな研究所の所長になられたような方、こういった方々はやはり民間ではないなというふうに思うんですが、参考人としての率直な御意見を伺えればと思います。

    〔委員長退席、山本(有)委員長代理着席〕

太田参考人 これもまたなかなか難しい御質問でございまして、この種の質問は、私、例えばお役所の定義が、役所をやめてから十年たてばこれは役人じゃない、これはもう民間になるんだ、こういう定義があるようにも聞いておりますが、そういう定義については、私はまことに噴飯物だと思っております。やはり何年たとうが民間ではないという定義で、そのような委員会をつくる場合には考えていただきたいというふうに思っております。

 それから、今の国立大学の研究者、教授なんかが、これは一体お役人なのかどうなのかということは、例えば名古屋大学の教授をやっておられた野依さんがノーベル賞をもらわれてどこかの財団の理事長になったときに、これを天下りとはちょっと私は考えないですね。むしろ、科学技術の研究を目的とする、あるいは科学技術の助成をする財団があって、そこの理事長に例えば野依さんのような方をお迎えしたときに、これを天下りとかあるいは民間人でないとかというふうに一刀両断にしてしまうのはどうかなと。

 したがいまして、研究職の場合は人によるということじゃないでしょうか。しかし、行政職といいましょうか実際に行政に携わっておられた方は、これは全く排除するという考え方なんじゃないかなというふうに、私はとっさに今考えました。

武正委員 時間が参りました。清家参考人にはちょっと伺えませんでしたが、お許しをいただきたいと思います。以上で終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

山本(有)委員長代理 これにて武正君の質疑は終了いたしました。

 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 民主党の渡辺でございます。引き続きまして質問をさせていただきます。

 まず初めに、清家参考人にお尋ねをしたいと思います。

 清家参考人は、これまでも、衆議院あるいは参議院の経済産業委員会でも二度ほど参考人としてお見えになっております。私も昨年、経済産業委員会におりましたときに、私は質問には立ちませんでしたけれども、委員会で拝聴をさせていただきました。

 その中で、過去の御発言等をいろいろ読ませていただきました。特にまちづくりのこと等につきましては大変な御見識で、これまでも御発言されておりますが、本日は、今回の行政改革に伴ういわゆる政府系金融の統合の中でぜひ御意見を伺いたいと思いますのが、これは、あるインタビューに答えられた中でございます。例えば、一応政府系機関は支援機能を継続する形で明記しているから一安心だが、発足してみないとわからない、十分なサービスができるよう、今ある出先はそのまま残してもらわないとというふうにございました。

 例えば、今、商工会の中で、今回のこの法案の審議のさなか、それぞれ商工会の会員等々の方々が今どういうことでそれぞれの不安といいますか、思いを持っていらっしゃるか、その点につきまして簡潔に述べていただけますでしょうか。

清家参考人 大変御心配をかけますが、今度の金融改革によりまして政府系金融機関が民営化されるということで大変不安があったわけでございますけれども、先生も御存じのとおり、六年前に金融危機がありまして、貸しはがし、貸し渋りがありまして、大変中小企業は窮地に追い込まれたわけでございます。そのときに政府系金融機関が手を差し伸べて、現在のような形に立ち直ってきたというふうに考えておりますので、でき得る限り政府系金融機関をそのまま存続していただきたいというのが中小企業者の生の声でございます。

 今度の改革につきましては、こういうありがたい考え方で、金融機関を統合して二つの金融機関にしようというような形でございますので、ぜひセーフティーネットをきちっとしたものにして、我々の意見を十分配慮していただきまして対応していただきたいというふうに考えておりますので、よろしくお願いします。

渡辺(周)委員 昨年の三月十五日に経済産業委員会にお越しをいただきましたときに、これはテーマは中小企業問題での参考人質疑でございました。

 この中でこういうこともおっしゃっていらっしゃいます。商工会員の大多数が小規模事業者であり、経営資源も限られていることから、個々の企業だけではさまざまな課題を解決していくというのは非常に難しいのが実態でありというふうに真情を吐露されまして、その後にも、零細企業におきましては、無担保無保証以外に借りる要素がないわけであります、このようなことも述べられました。そして、三位一体改革で税源移譲がされた場合には、各県の財政事情によって中小企業に対する補助金の制度が随分変わってくるだろうというようなことを述べていらっしゃるわけであります。

 その中で特に気になりますのが、御発言をされました、零細企業においては無担保無保証以外に借りる要素がないという現状。まさにこれは、我々もずっと取り組んでまいりました。今は景気が回復しておりますけれども、この先どういうふうになっていくかわからない。あのバブル経済のときも、設備投資をしろ、金をどんどん借りてくれと、銀行さんの方からとにかく言ってきたぐらいだ。どれぐらい貸し付けたかということが営業マンのバロメーターになったなんという時代から、その後はもう手のひらを返したような、景気の悪化に伴って、バブルのいわゆる後始末によって本当に引き倒されるようなことが次々に起きたわけでございます。

 この無担保無保証というところはいまだに、地方の中小零細企業に行きますとなかなか改善はされないわけでありまして、その中で、これも参考人の御発言ですが、国民生活金融公庫は、商工会指導員の目ききによって、ある程度先の見通しがあれば無担保無保証で貸してくれる、この制度だけは外してはいけない。商工会の指導員が目ききすることによって、無担保無保証であるけれども、いわゆる金融機関と違った視点で将来性なり事業の発展性なりを考えて、それを何とかしてくることができた、この制度だけは外してはいけないということでありますが、この点について再度、これから大きな改革、変革が起きる中で、率直な御意見、お考えがございましたら聞かせていただきたいと思います。

清家参考人 大変ありがたい御意見でございますけれども、今言われたように、中零細企業におきましては、資産もなければ何にもないわけです。保証もないわけです。それが、今政府が進めております新規創業支援とかそういう形のものをやって、一生懸命、今零細企業の立ち上げをやっております。

 事業を起こす場合、無担保無保証じゃなかったらどうにもならぬわけで、金は一般の市中金融では全く借りられないという状況なんです。それをどういうふうなカバーをするのかというのが商工会の役目でありまして、経営指導員が経営の内容、先行きを十分吟味して、見て、これだったら大丈夫というところに無担保無保証で金融をしていただくという形で、随分の零細企業が今立ち上がっておるというのが現況でございます。

 ぜひこの問題については継続してやっていただくような法案にしていただきたいというふうに考えておりますので、よろしくお願いします。

渡辺(周)委員 清家参考人、ありがとうございました。

 続きまして、太田参考人にお尋ねをしたいと思います。

 先ほどから同僚委員からも質問が出ておりますけれども、公益法人のこれまでの国家公益独占主義から、ある意味では民間の手によって公益性が判断されるようになってくる。ただ、そうした中で、この公益という言葉のなかなか難しい部分をどのように判断するかという問題がこれまでも議論をされてまいりました。

 ちょっと考えてみますと、これは、構想日本の加藤秀樹さんと参考人が笹川財団の機関誌か何かで対談されたところの資料でありますけれども、公益信託のお仕事をしていらっしゃったときに、九十歳ぐらいのお金持ちのお客さんが来られて、子供がいないから信託にしたいと。それで、でん粉の研究をすることに役立ててほしいと言われたけれども、当時の農水省は、これについて申請に行ったけれども、回答が来なかったというようなことがございます。

 この方にとってみて大変これは公益的な、地球規模によっては公益ではあるんだけれども、日本の国の国益からすると公益ではない。その後の加藤さんがおもしろいことを言っているのは、京都議定書も、アメリカの現政府にとっては国益に反するものでしょうねと。つまり、地球レベルで見た場合には公益であっても、アメリカから見るとこれは国益に反するものというようなことを言われているんです。

 この公益というものを判断する組織、認定等委員会、これをどうするかということにつきまして、今まで繰り返し言われていますけれども、どういう方がそのメンバーとして入ったら望ましいかということです。

 先ほど、官庁出身の方々が寄り合い世帯みたいに入っているのはもうやめた方がいいと。では、公益を本当に判断できる方は例えばどういう方、職種でも結構でございますし、あるいはどういう経験を持たれた方でも結構ですが、具体的にイメージしていらっしゃるのか。公益という、見方によっては、どちらから見たらどう公益になるかという非常に難しい問題につきまして、どのような方が望ましいとお考えか、ぜひ御意見がございましたらお聞かせください。

太田参考人 今の御質問もなかなか難しい質問なんでございますが、およそ今回法律が予定しております七人の委員で、森羅万象すべての公益は何か、あるいはこれは公益でないということをみずから判断するということはなかなか難しいと私は思うんです。したがいまして、これは法律にはまだ書いておりませんが、今後、公益認定等委員会を設置する詳細設計において、専門委員会、専門部会のようなものの創設がぜひ必要であろうというふうに思います。

 例えば食品安全委員会にいたしましても七人ぐらいの委員がいらっしゃるわけでございましょうけれども、いろいろ食の安全の種類に応じた専門部会があるわけでございまして、そこで一義的な審査といいましょうか議論をしていただくということで委員会に上がってくる、委員に上がってくる、こういうようなスタイルをとらざるを得ないんじゃないかと思うんですね。やはり、文化芸術の問題それから地球環境の問題あるいは人権擁護の問題あるいはお年寄りの介護の問題、すべて公益は公益なんだけれども、はざまの問題があるわけでございまして、そこのところは、そういう専門委員会の助けをかりながら公正な判断をしていくことになるかと思います。

 そういたしますと、専門委員会のところはかなり専門家という人がそれぞれいるわけでございますから、地球環境にしても芸術にしましても社会福祉にしても。そういうところのメンバーが大体浮かんでくるわけでございます。それで、委員会そのものは、もう少し大所高所から、大きな大局観を持って判断ができるような方が委員に就任されるというようなことになるのではないかなというふうに思っております。

渡辺(周)委員 これは決して無理難題を聞くつもりはございません。私もいろいろ考えていて、難しいなと。

 公益という中には、例えばですけれども、歴史であるとか戦争の戦後補償の問題であるとか、そういう問題が出てくると、これは確かに公益ではあるんだけれども、そのお立場お立場によっては、いや、それは史実と違う、事実と違うというような問題も出てくるわけですね。例えば、福祉でありますとかあるいは文化とか芸術だという場合にはさほどそんなに方向性は違わないんでしょうけれども、こういう歴史の検証のような問題とか戦後補償とか、今、人権の問題も出てきますと、これは非常に難しい問題というのがあろうかと思います。

 私どもも、そういう問題にぶち当たった、直面したときには、では果たして本当に、その公益性をどう認定するんだろうかということについて恐らく悩むだろうなというふうに思うんですが、そういう点について何か御意見がございましたらお答えいただきたいと思います。

 それともう一つは、公益性について、やはり対談の中にございます。これは衆議院の法務委員会で参考人として出られたときの御発言を引用されましたけれども、公益法人はアメリカの大学型にしてほしい、入るのは易しいけれども試験や卒業は大変に難しい、許可した後のモニタリングがルーズだからKSD事件などのようなことが起きるんだというようなことを御発言されたということですが、この質の担保といいますか、将来的に、たくさんの法人がある中で、これは本当にちゃんとした法人として存続しているかどうか。途中から政治性を帯びてきたり、何か非常に当初の方向と違ってきたんではないかというようなこと、あるいは、例えば若干そこには反社会的なにおいがしてきたとか、非常に営利のようなものが感じられるというように、変質してきたというようなことになった場合、どのように検証していくかということについてはどうしていったらよろしいのか。何かお考えございましたら、あわせてお聞かせいただきたいと思います。

太田参考人 まず、二つ御質問があったかと思います。

 例えば歴史問題の検証とか戦後の補償問題とか、こういったことをテーマにした公益法人というものが申請してきた場合にどうするか、こういうようなことですね。

 これは大変私も難しいと思います。ですから、そのときそのときでやはり判断していかざるを得ないんじゃないかと思うんですね。それを、今までは主務官庁制度でございましたから、いわゆる国益とか省益、官益、こういう観点からだけで判断をしてきたわけでございますけれども、今後はいわゆる民間の視点からそういう判断をするということになりますので、確かに難しいけれども、これは乗り越えなきゃいけない試練だというふうに思います。

 イギリスも四百年のチャリティーの歴史があって、いろいろな判例法の積み重ねで公益か非公益かということを判定してきているわけでございますが、日本の場合もいろいろな議論を積み重ねながらそういうボーダーラインのところを詰めていかなきゃならないんじゃないかなというふうに思います。

 それから、確かにアメリカの大学型のように、入るのは易しいけれども、卒業試験とか毎期の学期の試験はかなり難しくて落後者も出てくる、これはもう私はやむを得ないと思うんですね。やはり、そういう当初の目的事業を全然行っていないとか、あるいはいろいろな財務上の問題点が出てきているということは、これはディスクロージャーを今回は徹底してやるということが前提になっておりますから、その中からつかんで、公益認定等委員会が、それについてのまずは是正勧告というところから始まると思います。それから命令、それでも言うことを聞かない場合には認定の取り消しと進む一連の事後チェックでこれは厳しく対処していただきたいというふうに考えております。

渡辺(周)委員 この点につきましては、実際、また、運用が始まりましたら、いろいろな形でお知恵をいただきたいというふうに思います。

 では、時間もなくなりました。最後に、君島参考人にお尋ねをしたいと思います。

 例えば、ペーパーバックスで、「不滅の「役人天国」」なんという本があります。読んでみますと、北は北海道から九州までずっと、わざわざどこかの役所へ行って、お役人の方々が、すばらしき公務員生活とやゆされまして、みんな、ベンチで寝ていたり、横たわっていたりするような写真ばかり撮ってあるんですね。

 こういうのを見ると、本当にけしからぬというふうに見た人は思うんですが、でも、実際我々がそれぞれ知っている方々は、この霞が関の方もそうです、私の地元にある市役所や町役場の方もそうなんですけれども、大方の人は、住民環視のもとで一生懸命仕事をしているのが実情だと思います。

 人間ですから、昼休みにベンチで寝ているところを写真に撮られて、何をしているのかと言われて、あらぬレッテルを張られることもあると思うんですが、反面で、やはり公務員に対する厳しい視線というのはこれまでもあったことでございます。大体、昔から親方日の丸という言葉もあれば、お役所というところは仕事を余りせぬでも九時―五時でいられるというような、何となくそういうふうな、一部はそうなのかもしれませんが、それがすべてであるように言われて今日のようなことになっているわけであります。

 そこで、ぜひお尋ねしたいんですが、これは自治労というよりも、公務員の組合でもありながら、やはり地方の自治体を構成している方々でもある立場から、例えば先ほども指摘がありました大阪の市役所の問題にしましても、あるいは東京の区役所でもスーツや靴が支給されていたとか、いろいろな問題があります。

 これは、確かに今までの組合活動の中でかち得てきたいろいろな手当なんだ、権利だというふうな主張もあるでしょうけれども、ただ、やはり実態に即してこれは変えていかなきゃならないという点において、組合側から、いろいろな今の中で改善すべき問題ということにこれから能動的にどう取り組んでいかれるのか。

 それから、この委員会でもずっと取り上げてきました随意契約をめぐる問題。例えば、内部から見て、どうしてこの入札はこういう制度になっているのか、なぜこんなことも随意契約なのかというような点も、これは恐らく働いている方々は中で見聞きしてきたとは思いますけれども、そういう点の改善も含めまして、今後自治労の皆さんとしてどうされるか、それを最後にお尋ねして、質問を終わりたいと思います。

君島参考人 私は、今先生がお示しされた本はまだ読んでございませんけれども、意見陳述のときにも少し、今自治体の職場で何が起きているかということを申し上げさせていただきましたが、しかし、それは部分的であれ一部のことであれ、世の中から指摘をされるようなことは厳に慎むべきである。

 その上で、言われるところのコンプライアンスというものは十分認識をして、そして、労使の間で合意したことについて、これは市民が納得する範疇なのかどうかということを含め、内部で検討しながら、情報開示をして、そして説明責任を果たすということが私はこれから大事なことになってくるのではないかというふうに考えております。

渡辺(周)委員 以上で終わります。ありがとうございました。

 永山参考人、質問できませんで残念です。済みません。

山本(有)委員長代理 これにて渡辺君の質疑は終了いたしました。

 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。貴重な御意見、本当にありがとうございます。

 最初に、永山参考人に何問かお伺いをしたいと思っております。

 今、この国会におきましても格差拡大の問題が随分議論になりまして、特に雇用の分野での非正規雇用の拡大というのがその大きな要因、背景としてあるのではないか、この点が随分議論をされました。ですから、今、労働分野での規制緩和というのが民間での非正規雇用を大きく拡大しているという実態があると思っております。

 その点で、今回の市場化テストの法案というのが、労働分野の規制緩和を公務労働に本格的に導入していく、そういう転機になるものではないか。現状、既に、公務の現場ではパートや臨時職員なども現にあります、あるいは、実際の人件費が物件費名目で使われるようなものもありますけれども、それを追認、拡大するような方向で働くのではないか、そういう懸念を覚えるわけですけれども、労働分野の規制緩和が公務労働に本格的に踏み込まれるような事態、この法案で懸念するという点について参考人の御意見を伺いたいと思います。

永山参考人 この法案が議論される以前から、自治体あるいは公務労働には、さまざまな不安定雇用あるいは非正規雇用、それから雇用という予算項目ではない雇用、そういうものが存在しているということは伺っておりますし、それから、そういうところの現場のお話も伺う機会もございました。

 この法律ができて、市場化テスト法で、特に今後さまざまな公務分野が民間企業の仕事として運営されていくようになりますと、当然これは、コストの削減と同時に利益の拡大を図ろうとすれば、さまざまな雇用形態や、特にサービスということになりますと賃金の占めるウエートが非常に大きくなりますから、そういう意味では、できるだけ安い賃金労働者、あるいは、そういう低い条件でも働きたい人を活用するというインセンティブが強くなっていくことは間違いないだろうと思います。

 一番問題は、そうしたところで働く人々の問題とあわせまして、これらのサービスを受ける側の問題も同時に大きくなっていくように感じております。さまざまな福祉や医療、教育の現場、そういうところで行われているこうした非正規雇用の拡大というものは、労働者の労働条件や賃金の低さという問題に加えまして、サービスの内容の劣化と申しましょうか粗悪化、こういう問題が発生しやすくなる条件を強めるだろうというふうに思います。

塩川委員 ありがとうございます。労働条件の悪化が、同時に国民、住民へのサービスの低下にもつながるという点だと思います。

 その点に関連しまして、先ほど永山参考人の陳述の中でも触れておられました、民間に公共サービスをゆだねることが、いわば企業秘密を理由に具体的な情報開示が行われないという問題が出てくるのではないかという御指摘がありました。

 民間開放、公務などの民営化、市場化の流れが、公務、公共性が強い分野において、実際に企業秘密をてこに、ふさわしい情報が提供されないというお話だったと思うんですが、保育の話などで関連してでしょうか、具体的な事例として御承知の点ございましたら御紹介いただければと思っております。

永山参考人 私が見たり聞いたりしたものとしましては、三鷹市における保育の民営化に伴う現場の父母からのさまざまな意見に対する回答にそうしたケースがあったということを読んだり聞いたりしております。そのほか、今正確にここだというものは言えないものもございますけれども、しかし、医療や介護、そういう領域におきましても、やはり同様な問題というのが起きていると思います。

 なお、今回の建築関係の問題につきましても、そうした問題性というものが深く検討されるべき内容を含んでいるものと理解しておりますので、これは別の委員会かもしれませんけれども、ここのテーマともまた深くかかわっているものがあるというふうに思っております。

塩川委員 ありがとうございます。

 次に、君島参考人にお伺いいたします。

 私も当委員会で取り上げたんですが、地方公務員の削減に当たりまして、国が定めた配置基準を見直すということがございます。実際、三百万人の地方公務員のうちの二百万人が、何らか国が定めた配置基準が設けられた分野にあります。そこの基準の見直しというのは当然削減の方向で働くわけですから、実際にこの配置基準が住民の皆さんの最低限のサービスを保障するものとなっている関係からいっても、この配置基準の見直しというのが公共サービスの大きな後退につながるのではないか、この懸念を覚えるわけですが、現場の実態を踏まえて、お感じの点、お示しいただければと思っております。

君島参考人 国の配置基準の詳細はここには資料を持ち合わせておりませんけれども、現場の実態として、例えばケースワーカーであるとかあるいは児童福祉に携わる方々であるとか、そういう職場において国の配置基準を十分に満たし切れていないということは言えると思っております。これはごく一部かもしれませんが、そういう国の配置基準でさえ十分に満たされていない現状で一律的に削減をするということになると、これはサービスの向上には決してつながらないのではないか。

 さらに、基礎自治体の体力といいますか、そういうものによっても、配置したいけれどもなかなか人材が集まらないんだ、特に過疎地などにおいてはそういう悩みを持っておられる自治体もないわけではありませんけれども、そういうところにも十分な手だてができるような国としての対応が求められるのではないか、私はこういうふうに思っております。

塩川委員 市場化テスト法案に関連してですけれども、既に地方自治体におきましては、さまざまなアウトソーシングの手法というのが先行して実行に移され、活用されてまいりました。PFIの問題ですとか、あるいは指定管理者制度の問題があります。特にこの間、指定管理者制度におきまして、民間にゆだねられる公共サービスというのが、実態としてふさわしいサービスが提供されないという問題が地方において現に起こっているということもよく耳にするものであります。

 その点で、君島参考人がお話をお聞きしている、あるいは実感をされている問題で、現行、行われている指定管理者制度を活用して住民のサービスの後退に結果としてつながってしまったような事例というものがございましたら御紹介いただけないでしょうか。

君島参考人 委員御指摘のように、指定管理者制度が導入されて、はや二年半ぐらいたちます。ことしの九月一日までの時限立法というふうに承知をしておりますが、この間、総務省は、指定管理者制度がどのくらい進行しているかという数字を一昨年の十二月に一度公表しておりますけれども、その後は、私ども、承知をしておりません。

 ただ、民間の調査機関などが調査している情報などを見ますと、公の施設の指定管理者制度は、おおよそ五千カ所以上はもう既に指定管理者制度に移行しているというふうに見ております。ただ、そのうち、従来からの管理運営を任されている三セクといいますか、公社、公団などが相当数そのまま指定管理者になっているというふうに思っておりますが、このサイクルが三年ないし五年でありますので、これがワンサイクル終わった次の指定管理者をどこにするかというのが私は大きな問題になってくるのかなという認識を持っております。

 お尋ねの、指定管理者に出したことによってサービスが低下しているという事例は、細切れには幾つか持っておりますけれども、国会の中で明らかにするのがいいかどうかちゅうちょするわけです。一件だけ申し上げれば、奈良県における公の施設、これは宿泊施設でありましたけれども、民間企業が、指定されてわずか十カ月で撤退をする、こういう事例も発生しておりますので、類似の案件というのはあちこちで散見されるような気がいたします。

 以上であります。

塩川委員 ありがとうございます。

 それでは、清家参考人にお伺いいたします。

 政策金融の場合、中小企業のかかわる政府系金融機関、商工中金、中小公庫、国民公庫がありますけれども、同じ中小企業向けというふうにいかない、やはりそれぞれクラスといいますか、機能、役割を持っておられると思います。

 今回の場合、国民公庫と中小公庫等が統合されるわけであります。私も現場で商工会や商工会議所の方のお話を伺う中で、一緒になる、その機能は維持されると言うんだけれども、収益性ということを考えると、どちらかというと中小公庫寄りの、中堅、中小の方に顔が向くんじゃないのか。現場で、今までは国民公庫の方がいらっしゃっていろいろ窓口の対応もされている、経営指導員の方と一緒に経営の実態を見て支援してくれるというのがあったのが、人員の面でもそういうところが減らされるんじゃないかという強い懸念を覚えるということを何度もお聞きいたしました。

 そういう点で、国民公庫がそもそもどういう役割を果たしているのか、どういう機能を果たしているのか、中小公庫や商工中金とも違う独自の役割は何なのかということをはっきり示すことも大事だと思っております。清家参考人がお感じになっておられる国民公庫独自の機能、役割というのはどういうものなのか、その点を御紹介いただけないでしょうか。

清家参考人 今先生からお話がありました国民生活金融公庫の件でございますけれども、言われたとおりでございまして、零細企業のための国民生活金融公庫であります。無担保無保証という制度がありまして、担保もなければ保証人もないのに、先見性を見て融資をするという形に基本的になっております。

 それがために、商工会、商工会議所の指導員が、目ききで一生懸命事業の内容を見ながら、その制度を継続して、貸していただきたいということでやってきておるわけでございますので、今度の統合した場合に、そういう分野についてもセーフティーネットできちっとした形をとっていただきたいというふうに今お願いをしておるのが現状でございます。よろしくお願いします。

塩川委員 それと、国民公庫の場合、教育の貸し付けの制度があります。大変ニーズが高い。一方で、いろいろな意見としては民間でできるじゃないかという話もあるんですけれども、実際には公庫における教育貸し付けについての需要というのは大変強い。それを維持してほしいというのも現場の皆さんの声だと思うんですが、その点についてはどのようにお考えでしょうか。

清家参考人 今の件でございますけれども、今言われたように、民間金融機関におきましては、担保とかいろいろな資産価値を見ながら融資するという形でございますから、教育ローンにつきましてもなかなか難しい貸し付けになるというような形で、なかなか借りられない。その点は、国民生活金融公庫であれば、実態をよく把握した上で教育ローンとして貸し付けをしていただけるということで、ぜひこれは継続してやっていただきたいというふうに考えております。

塩川委員 時間が参りました。太田参考人、失礼いたしました。

 ありがとうございました。

山本(有)委員長代理 これにて塩川君の質疑は終了いたしました。

 次に、菅野哲雄君。

菅野委員 参考人の方々から貴重な意見をお聞かせいただきまして、本当にありがとうございました。社民党の菅野哲雄でございます。

 まず最初に、冒頭、太田参考人にお聞きしたいと思います。

 公益法人改革に当たっては、本当に公益認定等委員会の独立的運営が大切、そのためにも透明性、公平性の確保が大事だとおっしゃっておりましたが、そのためには、事務局の主要幹部を民間人から登用することで確保されるとおっしゃっておりました。私もそのとおりだというふうに思うんですが、実は食品安全委員会においては、独立性の確保というものにおいてはいささか疑問を挟む余地も生じていると私は承知しているんです。独立性の確保は非常に私は難しいという思いもありますが、独立的運営のあり方について再度御所見をお聞きしたいと思います。

 先ほど食品安全委員会の例を出して、専門部会みたいなものが必要だとか、それから、このことは乗り越えなければならない試練だとまでおっしゃっておりました。理事長は関係者の一人として声を大にして対処していただきたいということを申し添えたいと思うのでありますが、決意のほども含めて再度答弁願いたいと思います。

太田参考人 菅野先生、ありがとうございました。

 もともと私どもといたしましては、今回の公益認定等委員会を、いわゆる国家行政組織法の八条委員会ではなく三条委員会として、より独立的な一つの行政機関というふうにした方がいいのじゃないか、全く独立的な感じでというふうにも考えた時期はございました。一方で、このような審議会にして、それで、委員はもちろんでございますが、その幹部等の事務職員についてもオール民間人という形で民間色豊かに運営した方がかえっていいのではないかなというふうにも思っている次第でございます。

 食品安全委員会が独立性の維持にいろいろ難航しておられるということもお伺いいたしておりますけれども、その轍を踏まないように、幸いまだ詳細設計はこれからでございますから、基本的なことだけは法律に書いておりますけれども、多くの部分、政省令にゆだねられておりますので、今後の詳細設計において、そのような形にならない委員会構成、事務局構成をぜひお願いしたいと思っております。

 私ども公益法人協会の理事長としての決意をということでございますが、私、最初の意見表明でも述べましたように、この百十年ぶりの公益法人制度改革というものは、日本の市民社会にとりまして大きな出来事だと私は思っております。日本の民間公益活動というものがますます大きくなることが今後の社会にとって大変必要でございますが、そういうような役割を担っているんだということを公益法人の方々が自覚していただいて、この制度改革を機会に大いに頑張っていただくということを私どもとしては期待したいし、また私としてもそういう啓蒙活動を行っていきたい、このように考えております。

菅野委員 ぜひこれからの取り組みに期待しておきたいというふうに思います。

 次に、君島参考人にお聞きいたします。建築確認申請の問題でございます。

 建築確認申請の審査事務が民間審査機関でも行えるような仕組みになって、私は耐震構造設計偽装事件が起こったというふうに考えております。地方自治体の審査においても偽装を見抜けなかった事実も存在しておりますが、地方における建築主事の実態はどのようになっているのか、知っておれば説明願いたいというふうに思います。

 また、住に対する安心、安全の立場からも、実態に基づいて、私は充実させるべきは充実させるべきと考えるものでありますが、参考人の意見をお聞かせ願いたいと思います。

君島参考人 私ども自治労組織の中に政令市の集まりがございまして、これは大都市共闘というふうに言っておりますけれども、この中に建設部会というのがございまして、またその建設部会の中に建築専門委員会という専門家だけの集まり、グループがあります。その中でこの耐震偽造の問題について議論されておりまして、その中を少し御紹介申し上げますと、例えば、大阪市、名古屋市、札幌市は、いずれも構造担当は四人体制、極めて少数であります。あの事件があったことによって、減らす予定だったけれども現状維持に変えたとか、そういう報告もされておりますし、構造のプロを育てるにはどんなに短くとも二年かかるとか、あるいは、民間から報告書が上がってくるが、減員されていて十分なチェックが不可能である、現実は手続処理だけに追われているとか、悲鳴を上げるような実態が聞こえてくるような気がいたします。

 したがって、確認をする建築主事の配置は、私は、お金はかかっても、住民の安全ということを考えればきちっと行うべき人事配置ではないか、このように思っております。

菅野委員 次の質問に移るんですが、行政改革推進法の総人件費改革では、十年後に国家公務員の人件費を対GDP比で半減させる、国家公務員数を五年で五%純減させる、そして地方公務員も五年で四・六%削減させるよう要請するなどの数値目標を設定しております。これらの数字にどのような根拠があるのか、審議の中で私もただしてきましたが、必ずしも明確な根拠や理由があるとは思えません。ましてや、公務員数や人件費の削減が自己目的化されている嫌いがあるように思えてなりません。

 本来であれば、どのようなサービスが必要か、どのようなサービスを充実させるべきかなど、公共サービスのあり方の検討が先にあって、その上で定員数の見直しなどがなされるべきだと考えるんですが、君島参考人の御意見を拝聴したいと思います。よろしくお願いします。

君島参考人 委員おっしゃるとおり、本法案は、地方においては、四・六%の純減という数値目標が先にありき、こういう受けとめ方をしておりますので、私は、地方がやること、国がやることということを、公共サービスをどこが分担してやるのかということをきちっと議論した上で、その上で数値の議論をすべきだ、このように考えております。

菅野委員 もう一点、総人件費改革といって、既に八分野の事業が国においては特定されております。農業や国有林野事業など、環境保護や治山治水という公益性を維持する観点から、他国では公務員が業務を担っている分野での人員削減や独立行政法人化、あるいはILO八十八号条約で国家公務員が担うべきとされている無料職業紹介事業の包括的な民間委託までも含まれております。また、刑務所などの行刑施設関係の業務を民間委託する。これらは、公権力の行使の関係から多くの意見があると承知しております。

 君島参考人は、どのような分野、どのような事業は民間にゆだねるべきなのか、また、民間にゆだねるか官の側が行うべきかを判断する基準をどう考えているのか、御意見をお聞かせいただきたいと思います。

君島参考人 ILOの八十八号条約は我が国日本は批准をしておりますので、無料職業紹介所を民間にすべて出すということは、私は現行法体制の中では考えられない、このように思っております。

 また、公共サービスの区分けの問題でありますけれども、私どもは、例えば教育であるとか医療であるとか福祉であるとか、こういう日々の生活に直結するものはやはり地方自治体できちっと責任を持つ。また、警察であるとか消防であるとか、そういう社会的安定が求められる、あるいは災害に対する対応が求められるものについても、私は自治体の中できちっと責任を持つべきではないか、このように考えております。

菅野委員 最後になりますが、永山参考人、君島参考人、お二人にお聞きしたいと思います。

 この導入される市場化テストでは、どうしてもコスト削減競争、人件費削減競争になるのではないかという懸念が私はつきまとっているというふうに思います。先ほどの意見陳述でもそのことが指摘されました。

 このときに、民間事業者が市場拡大を目的に、極端に安い入札価格を提示する、あるいは落札した事業を下請、孫請のような形で再委託していくことも十分想定されると思います。このようなことを防止するために、公共サービス改革法案では入札に参加する民間事業者の資格などを厳格に定めるべきと考えておりますが、法案は、逆に、民間事業者の入札参加資格を「必要かつ最小限のものとしなければならない。」としております。このようなことで、入札に付される公共サービスの質が維持されるとお考えなのか、両参考人の意見をお聞きいたします。

永山参考人 今後起こり得るこうした事態に対する認識は議員と同じ立場であります。それとともに、それをいかに防止するかという際には、今回の法律の用語で言いますと、サービスの質というものを個々の業務についてどのようにしっかり規定するか。つまり、一種の、商品の品質をきちんと担保しておく。そして、そういうものを実施する上で必要なさまざまな職務遂行要件、また、それを担うべき人々の社会的な賃金あるいは社会保障費等々の水準、そういうものを一応きちんと算定して、そして、しかるべく、どこにどのように変化させていくのかという業務の主体を考えていく必要があると思います。その際、重要なことは、入札制度だけではなくて、その業務移管あるいは入札の条件の設定、つまり、設計図をきちんとつくり、その実現が可能かどうかの検証ができるようなシステムを導入しなければ、下請、再下請、孫請というような事態が当たり前の社会になっておりますが、これは非常に労働条件の設定においては異様なことと考える必要があるわけで、そういったことを過度に競争化させていくことは、結局サービスそのものの劣化を招き、あるいは、それで困る場合はより高いコストを払う別の機関に求めなきゃならない、そういう格差を生み出す要因になりかねないということを危惧するわけであります。

君島参考人 委員御指摘のように、入札参加資格を緩やかにするということはおっしゃられたような事態が想定されるということは、私も認識は同様でございます。その上で、先ほど指定管理者制度の問題を、御質問がございましてお答えしましたように、余りにも安価な価格で指定管理者に指定されたために撤退せざるを得ない、こういう事例が発生していることは申し上げましたけれども、この市場化テスト法についても私は同様のことが言えるのではないかというふうに考えております。

 私は、民間企業が業務を落札した場合に、それに従事している公務員が民間に、両者が合意して移った場合も、移った公務員の意に反して、落札企業がその落札業務をもうやめるとか、あるいは下請に出すとか、あるいは倒産するとか、そういう本人の意にかなわぬ事態が発生したときは、本人が希望する場合はきちっと公務員に戻すべきだ、そういう制度にすべきだというふうに考えております。

菅野委員 時間が来ましたので終わります。どうもありがとうございました。

山本(有)委員長代理 これにて菅野君の質疑は終了いたしました。

 次に、滝実君。

滝委員 国民新党・日本・無所属の会の滝実でございます。

 四人の参考人の先生方には、大変遅くまでありがとうございます。四人の参考人すべての先生に御意見を賜りたいと思いますので、ひとつよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 まず、太田参考人にお願いをいたします。

 今までの公益法人、申請するにも時間がかかる、それからまたNPO法人でもしかり。そうすると、今度の社団法人、財団法人は、そういう意味では法律準拠主義ですから、大変速やかに法人の登録ができる、こういうことになるんですね。そうすると、その反面でいろいろな団体がたくさん出てくるというのは、先ほど参考人がおっしゃったとおりだと思います。

 そこで、せっかくそういう、何か団体をつくっていろいろな活動をしたいということであれば、それをどこかでもう一遍受け皿として受けて、公益的なあるいは非収益的な事業をやっていくということがあってもいいんじゃないだろうか。

 これは参考人もどこかに書かれていたと思いますけれども、大阪コミュニティ財団でございます。私は、ああいうのを、せっかくこの社団法人、財団法人、準拠主義でおやりになるならば、そういうもののエネルギーを何かまとめていくようなものがあった方が、社会的、国家的にはすばらしいんじゃないだろうかなと。

 なぜそういうことを言うかといいますと、私も実は、いろいろな募金運動をやったときに、小さなお金をどこへやったってしようがないものですから、実は大阪コミュニティ財団に登録していまして、そこへ申し込んでいるんですよ。それで全体として使ってもらうということの方がはるかに意味があるかなと思って、そういうことを前からやっているのでございますけれども、ひとつその辺のところの展開について何か御意見があれば承っておきたいと思います。

太田参考人 先生、ありがとうございました。

 大阪コミュニティ財団のような一つの受け皿、そういうファンドといいましょうか団体というのは、先生おっしゃいますように、私は、これから日本の社会でも非常に必要だと思います。

 アメリカではそういうコミュニティー財団というものが大体六百ぐらいございまして、大変なお金を集めているわけです。そして、大きなロットになりますと、自分自身の財団をつくったり自分自身のNPOをつくったりするわけでございますが、ロットにならない金額等につきましてはそういうコミュニティー財団に委託をしまして、そこが寄附者の意向を十分にそんたくして、より効率的に、より効果的な活動をそこでやっていただく。

 そういう、エージェントと言うとちょっと表現はおかしいんですが、そういう仕組みというものは、これから、私、特に寄附税制が拡充していけば、必ず日本でも必要になってくると思います。そういう点で、先生の御指摘のとおりだと思います。

滝委員 ありがとうございました。その前提としては、やはり寄附税制というものがついて回るという御指摘でございまして、それは十分念頭に置いてやっていかなければいけない問題だろうと思います。

 次に、君島参考人にお願いを申し上げたいと思います。

 奈良県の自治労県本部は、NPO活動を、市町村職員、県職員問わず展開していこう、こういう運動をしているんですね。これは今の段階で、ただ単に呼びかけをしているだけですから、うまくいくはずはというか、そんなに大きな実績としては上がっていないと思いますけれども、こういうことをやるということは、これからの地方団体の職員にとって必要じゃないだろうか。

 要するに、市役所、町役場あるいは県庁の外から見て地域に入り込む、そういうようなことを通じていろいろなニーズを自分なりに体験していくということで、相当な意味があるんだろうと思うんですけれども、自治労の東京の本部はどういうふうな感触でしょうか。

君島参考人 私ども自治労本部も、NPO法人、エファジャパンというんですけれども、立ち上げております。これは、私ども本部の役職員あるいは地方の役職員がお金を出し合ってつくっているもので、今さまざまな活動をしております。

 委員おっしゃるとおり、地方においても、NPO法人を立ち上げて地域活動をすることは私どもも望んでいるところでございまして、活動方針上もそのようなことを求めております。

 ただ、一つだけ危惧するところは、NPO法人は行政の下請であってはならない。これは対等な立場で、情報公開をして、そして地域住民のために活動するものでなければならない、このように認識しております。

滝委員 ありがとうございました。

 次に、清家参考人にお願いを申し上げたいと思います。

 政策金融機関の統廃合の問題がある一方で、地方団体の方は相変わらず制度融資ということを道具にしてというか、それを活用して中小企業対策を展開するということでございます。こういうような国の政策金融が変化してまいりますと、地方の制度金融も当然いろいろな格好で制度改正というか改革をしていかなきゃならぬ、こういうふうに思っているのでございますけれども、全国商工会連合会としては、そういう点についてどういう議論をされているんでしょうか。

清家参考人 今お話のありました件につきましては両方とも必要でありますので、国の方とまた地方の方と両方で考えて採用していくという形が一番大事じゃなかろうかと思いますので、よろしくお願いします。

滝委員 かつて外形標準課税の際に、全国の商工団体は、地方団体の財源は心配しなくてもいい、こういうふうな観点から反対運動をされたように思うのでございます。その辺のところをどういうふうにお考えになっているかなと思って私はお聞きしたのでございますけれども、ひとつよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 次に、永山参考人にお尋ねをいたしたいと思います。

 永山参考人の御心配の中で、市場化テストによって、いわば官の事業を民がおやりになる、そうすると、いろいろな意見が言えなくなる、あるいは不満の持っていきようがない、こういうようなことの御指摘がございました。私はそのとおりだろうと思います。

 要するに、委託された経営者としては、都合の悪いことは、これはもう施主の市町村の決まりだからといって逃げるわけですね。恐らく、片や市町村に持っていくと、それはよく相談してください、こうなると思うのでございますけれども、こういういわば責任の転嫁方式を解消する良薬というのは何かないんでしょうか。

永山参考人 非常に、コストや利益、あるいはサービスの受け手あるいは行政、それぞれの立場が違っているものがこういう問題に対応しようとしますと、解決の仕方、これでやれば三方うまくおさまるということはなかなか難しいと思います。

 そこで、通常、市場化ということになりますと、サービスの与え手と受け手との関係、話し合い、価格設定、そういうものになっていくのが普通でありますけれども、こうした公務あるいは公の行政というものを挟んでいる場合には、やはり、サービスの与え手と受け手と、それから例えば市場化テストで落札した民間企業、そういったものの双方及び第三者的な機関を含む、こうした事業に関する運営組織をきちんと整備する必要があるというふうに考えます。

 その際、現行のような協議体を首相府あるいは内閣府に置いて一括判断するというのには、少々、運営上、情報等のギャップが生じやすくなりはしないか。したがって、できるだけ事業分野ごと、地域ごとにそうした機関を設けて、そして、サービスの受け手も与え手もそれぞれ意見交換が十分できるような関係づくりなしには、そうした問題の処理が難しい局面に出ていってしまうんじゃないか。そういうふうに考えますので、ぜひそうした運営体制の整備というものもあわせて御論議いただければというふうに願っている次第です。

滝委員 ありがとうございました。十分間という短い時間でございましたけれども、四人の参考人の皆さん方にそれぞれ意見をお聞かせいただきました。まことにありがとうございました。

 終わります。

山本(有)委員長代理 これにて滝君の質疑は終了いたしました。

 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の皆様に一言ごあいさつを申し上げます。

 長時間にわたりまして貴重な御意見を御開陳いただきましたこと、厚く御礼を申し上げます。当委員会を代表いたしまして御礼を申し上げる次第でございます。どうもありがとうございました。(拍手)

 次回は、明十八日火曜日正午理事会、午後一時二十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時四分散会


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