衆議院

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第2号 平成14年2月28日(木曜日)

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平成十四年二月二十八日(木曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 津島 雄二君
   理事 伊藤 公介君 理事 木村 義雄君
   理事 北村 直人君 理事 小林 興起君
   理事 藤井 孝男君 理事 枝野 幸男君
   理事 城島 正光君 理事 原口 一博君
   理事 井上 義久君
      伊吹 文明君    衛藤征士郎君
      小渕 優子君    奥野 誠亮君
      亀井 善之君    小島 敏男君
      高鳥  修君    谷田 武彦君
      中山 正暉君    野田 聖子君
      萩野 浩基君    林 省之介君
      細田 博之君    三塚  博君
      宮本 一三君    持永 和見君
      八代 英太君    山口 泰明君
      赤松 広隆君    五十嵐文彦君
      池田 元久君    岩國 哲人君
      筒井 信隆君    中沢 健次君
      永田 寿康君    野田 佳彦君
      松野 頼久君    松本 剛明君
      青山 二三君    丸谷 佳織君
      達増 拓也君    中井  洽君
      中塚 一宏君    佐々木憲昭君
      瀬古由起子君    辻元 清美君
      横光 克彦君    井上 喜一君
    …………………………………
   公述人
   (一橋大学大学院商学研究
   科教授)         小川 英治君
   公述人
   (日本労働組合総連合会総
   合政策局長)       成川 秀明君
   公述人
   (東京大学大学院工学系研
   究科助教授)       竹内佐和子君
   公述人
   (評論家)        佐高  信君
   厚生労働副大臣      狩野  安君
   経済産業副大臣      大島 慶久君
   環境大臣政務官      奥谷  通君
   予算委員会専門員     大西  勉君
    ―――――――――――――
委員の異動
二月二十八日
 辞任         補欠選任
  大原 一三君     小渕 優子君
  栗原 博久君     林 省之介君
  河村たかし君     永田 寿康君
  赤松 正雄君     丸谷 佳織君
  山口 富男君     瀬古由起子君
  井上 喜一君     西川太一郎君
同日
 辞任         補欠選任
  小渕 優子君     谷田 武彦君
  林 省之介君     栗原 博久君
  永田 寿康君     河村たかし君
  丸谷 佳織君     赤松 正雄君
  瀬古由起子君     山口 富男君
  西川太一郎君     井上 喜一君
同日
 辞任         補欠選任
  谷田 武彦君     大原 一三君
    ―――――――――――――
本日の公聴会で意見を聞いた案件
 平成十四年度一般会計予算
 平成十四年度特別会計予算
 平成十四年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――
津島委員長 これより会議を開きます。
 平成十四年度一般会計予算、平成十四年度特別会計予算、平成十四年度政府関係機関予算、以上三案について公聴会を開きます。
 この際、公述人の皆様に一言ごあいさつ申し上げます。
 公述人の皆様におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席いただきまして、ありがとうございました。平成十四年度総予算に対する御意見を拝聴いたしまして、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますように、よろしくお願い申し上げます。
 御意見を承る順序といたしましては、まず小川公述人、次に成川公述人、次に竹内公述人、次に佐高公述人の順序で、お一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
 それでは、小川公述人にお願いいたします。
小川公述人 一橋大学の小川と申します。よろしくお願いいたします。
 公述人として、平成十四年度の総予算について、私の意見を述べさせていただきたいと思います。
 私からは、三つの視点から述べさせていただきます。一つは、長期的視野に立って今回の総予算をどう見るかということ。もう一つは、私の専門が国際金融、国際経済ですので、そちらの観点から総予算をどう見るか。それから最後に、目下問題になっておりますデフレ対策に関連して私の意見を述べさせていただきたいと思います。
 お手元に資料があるかと思いますが、そちらに沿って意見を述べさせていただきたいと思います。
 まず、一枚目の下の方にあります、スライドの二と書いてある「高齢化少子化経済にとっての経済成長の重要性」というところを見ていただきたいと思います。
 平成十四年度の予算につきましては、公共投資を七分野に重点化して配分するというのが一つの大きな特徴かと思います。その七つの分野というのは、環境問題、少子高齢化、地方の個性ある活性化、都市の再生、科学技術の振興、人材育成・教育・文化、そして世界最先端のIT国家の実現という七分野に重点化するということだと思います。この重点化は予算制約のもとで重点化するということですので、その予算制約のもとで重点化するというところが最大のポイントかと思います。この重点化するところが、いかに今後の日本経済の経済成長に貢献するのかという観点から、まず長期的視野に立って意見を述べさせていただきます。
 まず、日本の長期的な問題としましては、高齢化、少子化の問題があるかと思います。これに対して、直接的な対策として、先ほどの七分野の中で少子高齢化への対応ということで具体的に挙がっています。そこでは、社会保障制度あるいは介護、保育サービスあるいは保育所の待機児童ゼロ作戦など、具体的にいろいろな案が出ております。これについては私は専門ではありませんので、この高齢化、少子化の直接的な対策は所与としておきまして、私からは、高齢化、少子化が進んでいく状況の中でマクロ経済、日本経済をどうしなければいけないかということを述べさせていただきます。
 高齢化、少子化の意味は、人口全体に占める労働に携わる人の人数が比率として減るということですので、そうしますと、労働者一人当たりの生産性を上げていかなければいけないということになります。では、その労働者一人当たりの生産性を上げるための方策としてどういうものがあるかということを、この一ページの下の図のところに書いてありますが、一つは、一人当たりの物的な資本をふやすということです。もう一つは、労働者一人当たりの人的資本をふやす。そしてもう一つは技術進歩という三点があります。
 これをもう少し具体的にわかりやすく説明させていただきますと、今ITということが問題になっています。そこで、そのITによって経済成長が図られるのではないかということが考えられますが、そのとき、この物的資本というのは何かというと、これはパソコンになります。労働者一人当たりのパソコンの数をふやすということになるかと思います。
 それからもう一つ、人的資本は何かといいますと、パソコンがあってもそれを使えないと労働者は仕事ができないわけです。ですから、パソコンを使える労働者に育成することが人的資本を成長させるということになります。これは、私が仕事をしている大学の教育もそうでしょうし、小中学校からの教育もそうかと思いますし、それから社会人教育というものもこれに入るかと思います。
 さらに、技術進歩ということで、例えば今まで郵送で手紙を送っていたところをEメールで手紙をやりとりする、あるいは、ここに集まっていらっしゃる方々、ホームページを大体つくられて皆様の意見を述べられているということで、そのホームページで意見を述べることで効率化するということがあるわけです。
 ですから、こういう三つの点で成長あるいは技術進歩していかなければ、高齢化、少子化がもし進んだときには対応ができないということになります。
 そこで、二枚目の上の表を見ていただきたいのですけれども、こちらには、アメリカにおけるITの生産性への貢献度、寄与度があります。総予算の中での一つの目玉は、世界最先端のIT国家の実現ということかと思います。これが日本の長期的な経済成長にどういうふうに貢献するかということを示唆する資料として、アメリカの例を示しております。
 この中で四つの研究の成果があらわれておりまして、上から二番目に労働生産性上昇率、これが私が先ほど言いました、労働者一人当たりどれだけGDPを成長させたかという率です。アメリカでは、九〇年代後半において、大体一%前後の労働者一人当たりの生産性の上昇が見られます。
 これは何が寄与していたかということで、緑色のかかっている二つのところを見ていただきたいのですが、まず上の方の資本深化の下のIT関連、これはどれだけパソコンなどが労働者一人当たりでふえたかということをあらわしています。これは、右三つの分析では、大体一%の労働生産性上昇率のうちの〇・三四とか〇・五〇、半分近くをここで占めているということになります。
 さらに、その下の緑色にかかっているところですけれども、全要素生産性成長率のIT生産、これは先ほど言いました人的資本あるいは技術進歩のところですが、ここについても、IT生産のところで〇・二%から〇・三%の貢献をしているということがあります。
 さらに、全要素生産性成長率のIT生産の下にありますその他のところ、これはIT関連、例えばパソコンを生産するというところ以外の生産なんですが、そこでIT革命が貢献している可能性があります。すなわちIT産業以外、例えば私の身近なところでいけば、教育産業でIT革命を利用して、ホームページとかEメールを使って生産性を上げるというところが、このIT生産の下のその他のところに入ってきます。ですから、そういう意味で、IT関連に重点的に予算配分をして、そして、世界最先端のIT国家を実現するということは、非常に意味のあることだと思います。
 二ページの下のところを見ていただきたいんですけれども、では、労働生産性上昇の要因として、今回の総予算の中で具体的にどう関係してくるかということで、ここに対応表のようなものをつくらせていただきました。
 まず物的資本蓄積、これは、今説明いたしましたように、高度情報通信ネットワークの形成など、IT関連のところが重要かと思います。アメリカでも、不況のときに政府支出で情報ハイウエーをつくるということで、それが今IT国家として結実しているところがありますので、ここは重点的に行う必要があると思います。
 それから人的資本、これは人材育成、教育というところが大きくかかわっております。先ほど説明させていただきました七分野のうちの一つになるわけです。
 そして技術進歩、これは科学技術の振興ということで、これも重点化七分野の一つの分野になっております。この科学技術の振興の中でも四分野、ライフサイエンス、情報通信(IT)、環境、ナノテクノロジーということで、そのうちのITの部分は、今御説明したものの具体的な例になるかと思います。
 続きまして、私の専門が国際金融あるいは国際経済ですので、そちらの観点から総予算についてのコメントをさせていただきたいと思います。
 三枚目の資料を見ていただきたいんですけれども、まず、国際通貨面から御説明させていただきます。
 最近、円相場が円安になっているということが起きております。これは、日本経済に対する評価が低くなっているということのあらわれかと思います。為替相場がどう決定されるかということは、これは非常に難しい問題でもあるんですけれども、現在のように、資本がグローバル化して、国際金融取引が非常に大きくなっているというところですと、貿易あるいは経常収支の要因よりも資本移動の要因の方が大きいと考えられます。
 では、そのときに国際的な資本移動はどういうファクターで発生するかといいますと、一つは金利、もう一つは将来予想、それからもう一つはリスクプレミアム、リスクということがあります。
 金利については、急に日本の金利が下がったかといいますと、ずっとここのところゼロ%に来ておりますので、特段下がっているわけではありませんので、金利の要因ではないというふうに考えられます。
 むしろ将来予想、すなわち、将来日本の経済が弱くなっていくんではないかという予想のもとで円安が進んでいるということが考えられるわけです。
 さらにリスク、このリスクというのは、後ほど国債の累増のところと関連させてお話しさせていただきたいと思いますけれども、余りにも円建ての金融資産がふえますと、それに対して需要サイドの方から円資産を嫌うということが発生して、円資産からドル資産というふうに動きますと、これが円安に為替相場を動かすということになります。
 三ページの下の図を見ていただきたいんですけれども、青い線であらわしていますのが、円・ドルレートの市場レートです。それから、赤い線であらわしておりますのが、経済のファンダメンタルズをあらわす一つの指標であります購買力平価と呼ばれるもので為替相場を見たものです。
 これを見ていただきますと、八〇年代後半から、経済のファンダメンタルズをあらわす、赤い線であらわしています購買力平価よりも市場レートが高い、すなわち円高で推移してきたんですけれども、ここに来て、購買力平価、赤い線に市場レートが近づいてきている。すなわち、ファンダメンタルズに相当するものに近づいているということがあります。
 ただ、この購買力平価も、ファンダメンタルズとして、指標として使えるかどうかという一つの問題がありますが、一つのレファレンスとして、参考指標として、今まで購買力平価と呼ばれるものよりもずっと円高で推移してきたものが急に最近円安に動いてきたということは、これは、例えば日本の貿易収支黒字が急に赤字に変わったとか、そういう要因ではないわけですから、あるいは金利も、急に日本の方で金利安になっているということでもないわけですから、やはり大きな問題は、将来予想あるいはリスクということにあるかと思います。
 では、円安がいいのかどうかということで、確かに円安のメリットとして外需をふやすということがあるんですが、デメリットとして交易条件を悪化させる。交易条件というのは、輸出品を外国に高く売って輸入品を外国から安く買うことは円高の状態で行えるわけですが、もし円安になりますとそれが行えないということで、外国から高く物を買って外国に安く物を売らざるを得ないという交易条件の悪化ということがあります。
 さらに、円安になりますと外国に影響を及ぼすということがあります。特に、日本はアジアとの関連が強いので、アジアに影響を及ぼすことが考えられます。
 そこで、四枚目の上の図を見ていただきたいと思いますが、アジアの通貨、タイ・バーツ、フィリピン・ペソ、シンガポール・ドル、韓国ウォン、人民元を円に対するレートであらわして、それを二〇〇一年一月一日を一としてあらわしています。この数字が下の方に動いていきますとその国の通貨は高くなるというあらわし方になっています。
 特に二〇〇一年の後半、十一月ぐらいから、円安・ドル高が進む中、ドルとの連動性が高かったために、アジア通貨が軒並み円に対して高くなってきているということがあります。これは、一つは円安・ドル高という問題もありますし、それからもう一つはアジア諸国の為替制度の問題もあるかと思うんですけれども、ただ、日本での議論でいけば、円安・ドル高がこういうところにも影響しているということになります。
 円安の問題で、そのように交易条件を悪化させる、あるいは近隣窮乏化をさせる、それからもう一つ、円安が発生すると、さらに円安が発生するんではないかということで日本売りが発生するという心配があります。例えば、外国人が日本の株式を購入しているというときには、これは、株の収益率とともに、円の価値がどうなるかということも関連するわけです。
 そこで、円安の問題をどう考えるかというところで、四枚目の下のところを見ていただきたいんですけれども、国債の残高が累増しますとその国の通貨が安くなるということが起きています。
 代表的なのは、一九八〇年代にアメリカで発生しました双子の赤字と呼ばれるものがあります。八〇年代前半には、このときはたまたま金融政策が引き締め的でしたので、金利が上がってドル高が発生します。その後、八〇年代後半に、財政赤字をずっと続けてきた国債が累増してきたということでアメリカの国債に対するリスクがふえて、それによってドル安が発生するということが起こっています。これが日本でも今起こりつつあるんではないか。
 まず、公債の残高の累増が、特に最近非常にスピードが上がっている。十四年度の見込みで四百十四兆円の国債の残高になる。それから、最近ですと国債の格付が引き下げられました。
 さらに、五ページの上の図を見ていただきたいんですけれども、先ほど、十一月から円安が発生していると説明させていただきましたが、その直後ぐらいから国債の利回りも上昇しております。ですから、円安とともに国債の利回りが上昇しているということがあります。
 この国債の利回りが上昇している要因として、可能性として二つ考えられます。
 一つは、日本の景気が大変よくなってきたので、設備投資意欲をどんどん企業が持って、そのため、景気回復のプロセスで金利が上がってくるということが一つ考えられます。これは現実的に違うということはもう明らかだと思います。
 もう一つは、国債を大量に発行する、そうしますと、需要サイドとしては、余り持ちたくない国債を供給サイドでどんどん発行されますと、それを持つためには、もっと高い金利じゃないと持たないという気持ちが出てきます。あるいは、持ってもらうためにはもっと高い金利をつけないと持ってもらえない、これがリスクプレミアムと呼ばれるものです。このリスクプレミアムによって国債の利回りが上昇していくということは、非常に問題になることかと思われます。
 さらに、国債の利回りの重要性というのは、各種金利のベンチマークになっておりますので、国債の利回りに連動して他の貸出金利などが決まってきます。そうすると、国債の利回りが上昇すれば他の金利も上昇してくる。これは、景気が回復していないにもかかわらず長期金利が上昇してくるということになりかねません。ですから、こういう意味で景気回復に悪い影響を及ぼす可能性があります。
 さらにもう一つ、国際貿易面からお話しさせていただきたいと思いますが、時間がなくなってきましたので、簡単に説明させていただきます。
 ことしの一月十三日に、小泉首相とゴー・チョクトン・シンガポール首相が日本とシンガポールの自由貿易協定に署名をいたしました。そこで、貿易面で自由化するということもあったんですけれども、もう一つは、競争促進の観点から協力をするということが行われております。これは、自由貿易あるいは競争を促進するという観点からいきますと、日本の構造改革に貢献するんではないかというふうに考えられます。ちょっと時間がありませんので、ここは端折ります。
 それから、その次に、国際投資ですけれども、国際投資におきましては、特に対内直接投資の意味というものを私は重視しております。これは、日本の企業が傷んできたときに外国の企業に来てもらって、そしてそこでその雇用を吸収してもらうということも一つ重要かと思います。労働者としては、働くことが重要であって、どういう資本家が入っているかということは余り重要ではないんではないかというふうに考えられます。さらに、外国の企業が入るということで、技術移転あるいは競争を促進して、これが消費者の利益につながってくるということが考えられます。その方策として、今回税制の方の予算で出ております連結納税制度の創設、これは税制のグローバル化ということで私は貢献するんではないかというふうに考えております。
 最後に、もう時間が随分過ぎておりますが、デフレについて私の考えているところを説明させていただきたいと思います。
 最後のページの上の方に、「デフレ・スパイラルのメカニズム」ということで簡単に整理をさせていただいています。これについては、もう皆様御存じのことをまとめているだけですので、詳しい説明は必要ないかと思うんですが、ここで私が言いたいのは、一つは、国民あるいは経済主体の予想、例えば物価が下がるという予想あるいは景気が悪くなるという予想が景気をさらに悪くしているというところがまず一つのポイントです。さらにもう一つは、物価が下がるということが実質債務に悪い影響を及ぼす、実質債務の負担を増加させるということで、債務を負っている人たちの消費、投資を抑えるということがあります。さらに、ここに、日本で九〇年の最初から問題になっております不良債権問題が加わっているということで、予想の悪循環が発生しているというふうに考えられるわけです。
 それを解決するためには、ポリシーミックスとして、すべての使える政策を使って対策を行っていくということが必要かと思います。
 ただ、そのときに、財政政策につきましては、予算制約があるということですから、財政政策の使い方を効率的に行う。最初に私が説明いたしましたように、網羅的に財政を行うのではなくて、重点的に効果のあるところをねらって政策を行っていく必要があるかと思います。
 当然、構造改革も必要です。それから不良債権処理ということも必要ですし、それから、公的資金が導入になるかもしれないということの準備として、財政を余り赤字を多くしておくということはしないで、今からある程度の準備をしておくということが必要かと思います。さらに金融政策についても、ポリシーミックスとして協調的に行うということが必要かと思います。
 ただ、留意点として、これらの政策がタイムラグを伴っている。通常、金融政策を行いますと二年後にGDPに効果が上がってくるということが言われています。さらに、問題点としては、今インフレ的な政策を行うというときに、副作用がタイムラグを伴って出てくるということは留意して、これはコントロールするところで注意をしなければいけないところです。
 さらに、その政策を遂行するんだということを国民に信認してもらう、信頼してもらうということが必要だと思います。その政策遂行の信認のためには、例えば、財政のサステナビリティーを維持するということもありますし、それから中央銀行の独立性も維持するということで、財政に対して財政破綻が将来起こるんではないかという不信感を与えない必要があるかと思います。
 時間が超過いたしましたけれども、私からの意見陳述はこれで終わります。(拍手)
津島委員長 ありがとうございました。
 次に、成川公述人にお願いいたします。
成川公述人 労働組合総連合会の成川でございます。意見を言う機会を与えられたことを感謝申し上げたいと思います。
 十四年度予算案につきまして、働く者の立場で率直な意見を申し述べたいと思います。
 我々は今、大変な生活の不安、そして雇用の不安に直面しているわけですが、残念ながら、予算を読ませていただきましたけれども、この不安を解消するという内容を私は見出すことができません。そういう意味で、本当に国民に安心を与え、雇用不安をなくすという予算に抜本的に組み替えていただきたいというのが私の申し述べたい視点でございます。
 私としては、まず現状認識、それから四つの政策について述べていきたいと思います。
 今、国民にとって経験したことのないような先行き不安の事態に立ち至っておる、こういうふうに認識しております。そして、この一年間、振り返ってみますと、政府はいろいろ対策を打たれたというふうに報道されておりますが、我々の生活の現場には改善の実感が届いていないということでございます。
 特に、その第一は、失業の増大がとどまるところを知らずに悪化しておるということでございまして、これが大変我々にとって危機的事態、こういうふうに受けとめております。
 二つ目には、物価あるいは資産価格が持続的に下落しておりまして、いわゆるデフレ状況でございまして、この中で倒産あるいは失業もまた増大するということで、不況を脱却する糸口が見出せないんではないか、こういう危機感を持っております。
 そして三つ目には、これとも関係しますが、金融機関における不安定性が不良債権の処理などで大変まだ言われておりまして、金融システムの安定性に対する危惧が大変強まっておる。こういう三つの問題があるというふうに思っております。
 そして、この三つの問題は、私ども率直に考えますと、どうも関連しておりまして、やはりその基本には、国内の需要が先行き増大していくということが見出せないことが基本にあるというふうに受けとめております。その中で、家計、企業、そしてまた国自身が収入制約と負債に足を引っ張られてなかなか積極的な活動ができない、こういうふうな事態に陥っているのではないかというふうに認識をしております。
 そういう観点から、この政府の平成十四年度予算を見させていただきましたけれども、これらの国民の不安や直面している悩みにどうもこたえる内容がない、財政再建を第一優先順位に掲げているということは読み取れますが、国民の生活の不安や雇用不安にこたえているものがない、こういうふうに受けとめざるを得ないということでございます。
 そして、何よりも今国民が元気を出せるというためには、やはり生活の安心や安定に向かって、政治を含め国全体がそれを目指しているんだという姿勢をぜひ示していただきたいというふうに思ってございます。とりわけ、生活の安定にとりましてはやはり雇用が大事でございまして、失業しているということでは生活の安定ができないということでありまして、ぜひ政府の予算におきましては、雇用を安定させる、あるいは雇用をつくり出していく、そして需要が伸びていくんだということがわかる予算に御編成をお願いしたい、こういうふうに思ってございます。
 そのための第一の政策として私どもが考えますのは、失業率をぜひこの予算で下げるんだということを強く政府は国民に打ち出していただきたいということでございます。
 お手元に私の提出資料ということで表を何枚か出させていただきましたが、図表の第一で見ていただきますと、一番下が政府の二〇〇二年度の経済見通し、予算の背景になっているものでございますが、GDP伸び率、名目ではマイナス〇・九、実質では〇・〇と政府は言ってございます。その中で政府自身が示しています失業者、三百七十五万人というのが二〇〇二年度の値で、二〇〇一年度よりも二十五万人増加ということで、失業率五・六%という見通しを出しているところでございます。
 過去の流れを見ていただきまして、GDPの伸びがマイナスあるいはゼロのところでは、就業者、雇用者は減少しておりまして、これに伴いまして失業者が増加するというのが今までの姿でございます。したがいまして、よっぽどしっかりした対策をとってもらわなければ、失業が増大するというのは明らかでございます。
 残念ながら、政府の今回の予算を見ますと、この失業の増大に対してどういう手だてをとるのかということが見えないということでございます。
 昨年十二月閣議決定の予算編成の基本方針の中では、雇用情勢を踏まえ、雇用創出効果について重視して予算編成をするということが述べられまして、私ども大変期待をしたところでございます。しかし、実際の出された予算の中でどれだけ雇用創出効果を重視したのかということを読み取ることができません。ぜひ、この点については国会の中で十分議論をして、この予算が本当に失業率を引き下げるという効果を持つのかどうか御議論をしていただきたい、こう思っております。
 そして国民は、私どもの率直な感じでは、介護とか福祉の分野、あるいは教育の分野、環境の分野で、まだまだやってもらいたい、あるいは工夫すればできる事業はたくさんある、こういうふうに受けとめているところでございます。また、NPO等の新しい社会活動を活用すれば、それらの分野で雇用をふやすことができる、こういうふうに思っているところでございます。
 ページが乱れて大変恐縮ですが、お手元の資料の二ページには、私ども連合でいろいろ担当者が検討しましたところ、書いてございますように、介護・福祉や医療、教育あるいは保育、またIT関係の技術等の指導員の養成、あるいはバリアフリー化、あるいは地域における雇用等、いろいろ工夫すれば百二十万人近い雇用をつくり出すことができる、こういうふうに我々は考えておりまして、ぜひこれらの雇用をつくり出す施策をこの予算の中に盛り込んでいただきたいというふうに思ってございます。
 もしこのまま政府の見通しのように失業率が悪化し続けるということでありますと、お手元の資料の一ページに戻っていただきまして、下に失業等給付関係の収支状況ということで雇用保険関係の予算の内容を示してございますが、平成十三年度は、保険料率を千分の十二に引き上げて収入増を図り、支出をむしろ、特に自己都合退職者の給付日数を切り下げるということで手だてをした上でのバランスでございますが、それでさえも差し引き三千五百億円近い赤字を出しておる。残りの積立金は、もはや来年度、二〇〇二年度には底をつき、赤字に陥るということが明らかでございます。こういう事態を迎えているということで、ぜひ失業を減らすという中身を予算の中に強く盛り込んでいただきたい、こういうのが第一の主張でございます。
 雇用をつくり出す、あるいは失業率を引き下げるという点につきましては、私ども労働組合としましても、みずから責任と役割を負わなければならない、こう考えてございます。労働時間を短縮する中で、その分、新たに雇用、あるいは雇用を維持するということ、すなわちワークシェアリングを労使協定でしっかり締結し実施するということであれば、労働組合は、時間当たり賃金の単価をしっかり維持していただければ、収入減も受け入れて雇用創出に協力したい、こういうのが我々の考えでございます。今、日経連あるいは政労使の雇用対策会議の中で検討させていただいておりますが、我々としては、時間を短縮する中で雇用をつくり出すということについて、労働組合としてその役割を担っていきたい、こう考えているところでございます。
 二つ目の政策は、雇用のセーフティーネットをよりしっかり張っていただきたいということでございます。すなわち、失業者の生活の安定と再就職支援をしっかりやっていただきたい、こういう趣旨でございます。
 お手元の資料の三ページ目を見ていただきたいと思いますが、連合が昨年の九月から十月にかけまして、全国の職業安定所、いわゆるハローワークの前で、ハローワークから出てこられた方にアンケートをしております。全体で四千百八十五名の方にアンケートをさせていただきましたけれども、その真ん中の「今、生活で困っていること」ということでは、生活費が足りないんだ、失業保険が切れたら生活ができないという声が大変強くなっておりますし、みずからの健康や精神的なストレスを感じている方が三分の一に達しているという現状でございます。
 そして、その下の「政府に望む雇用対策」ということでは、失業手当の日数延長あるいは募集・採用時の年齢制限の緩和・撤廃などを強く求めておりますし、また、政府みずからが雇用をつくる事業をぜひ行っていただきたいという声が強く出ているところでございます。
 こういうように、失業者は、今の失業状況に対して、早くこれからの脱却を願っているところでございます。しかし、今回の政府の予算では、失業者のこれらの声が残念ながら反映してございません。従来の施策を若干延長した程度の内容にとどまっているということでございます。
 実は、現在、雇用保険をもらえる日数は、倒産など会社都合で失業した場合でありましても、雇用保険の加入期間と年齢で対応が決まってございまして、それは九十日、百二十日、百五十日、二百十日、そして最大でも三百三十日という給付日数で切られてしまいます。三百三十日をもらえるのは、四十五歳以上で、しかも雇用保険加入が二十年以上の人に限られているわけでございます。自己都合の失業者の場合には、雇用保険に二十年以上加入しておりましても百八十日が最高限度ということでございます。六カ月しかもらえないということでございます。これではとても雇用のセーフティーネットと言うことはできないというふうに我々は受けとめているところでございます。
 お手元の資料の四ページを見ていただきたいんですが、失業期間別の完全失業者数ということが、総務省の労働力特別調査で、二月、八月に報告をされてございます。一年以上の失業者をごらんいただきますと、これは一番最新の発表が昨年の八月の調査でございますが、今や九十二万人で、二七%を占めるという事態でございます。当然、これらの人は、残念ながら失業保険をもらっていないというふうに予想されるところでございます。この時点からさらに失業率は悪化しておりますから、今や三〇%近い方が一年以上失業しておる、当然これらは雇用保険をもらっていないことになるというふうに思っております。
 そして、失業保険の受給者数と失業者の比率をとってみたのがその下の図でございます。
 二〇〇〇年の暦年の数字では、百二万九千人が雇用保険を受給しているわけですが、これは、完全失業者数で割りますと、三二%という数字でございます。失業者のうちの約三割強しか雇用保険を受けていないというのが数字から明らかでございまして、しかも、その比率は低下をしてきているということでございます。
 ちなみに、イギリス、ドイツ、フランス等ヨーロッパ諸国では、注書きにございますように、失業保険のほかにいろいろ失業の扶助給付などがございますけれども、それらを合わせてみますと七割から八割の給付が受けられているという事態でございます。
 我が国は、いわゆる雇用のセーフティーネット、失業のセーフティーネットと言われておりますけれども、大変お寒い事情であるというふうに指摘せざるを得ないところでございます。
 さらに、雇用保険に入っていない方が失業しているという事態がふえてございます。すなわち、新規学卒したけれども就職できない方、あるいは自営業で廃業された方、残念ながら雇用保険に入っていないということで雇用保険を受けることができないのが現状でございます。ぜひ、これらの人に対する手だても必要である、こういうふうに考えてございます。
 我々としては、雇用のセーフティーネットをしっかり確立するということであれば、ぜひ失業保険給付期間を延長していただきたい。二つ目には、失業者に対する職業訓練や能力開発事業を抜本的に強化していただきまして、その間、雇用の訓練延長給付を支給するということで、やはり今のこの厳しい失業状況の中では、二年程度、ぜひ失業者の生活を支援するという体制をつくる、これがセーフティーネットに値するというふうに思っておりますし、雇用保険に加入していない新規の求職者や新規学卒の未就業者、あるいは自営業を廃業した方に対しましても、これら希望者には職業訓練等を受けられるような形をしまして、生活支援の給付ができる体制をつくっていただきたい、こういうふうに思っておるところでございます。
 なお、我が国の教育訓練、能力開発の事業も大変規模が小さいという現状にございます。少しずつふえてきていますが、全体では現在でも三十万人規模だというふうに我々は受けとめてございます。
 お手元の資料の五ページ目に、先進国におきます雇用政策支出のGDP比を、これはOECDの資料でございますが、掲げさせていただきました。これを見ていただきましても、日本の雇用対策費用の支出の比率は大変低いというふうに指摘せざるを得ないところでございます。特に教育訓練関係が、ほかの国、特にヨーロッパ諸国に比べますと圧倒的に少ないというのが日本の現状でございまして、ぜひ、能力開発、職業訓練、これらもしっかり対策をする中で失業を減らしていくという事業を抜本的に強化していただきたいということでございます。
 三つ目の政策は、社会保障関係の基盤強化の政策をしっかりしていただきたいということでございます。
 現在、医療改革の法案が出てきておりますが、国民は、年金、医療について、本当に政府は国民と協力して安心の社会保障制度を今後とも持続的につくっていただけるのかどうかということで大変危惧している現状にございます。
 政府としては、持続可能で安定的で効率的な社会保障制度を構築するというふうにされておりますけれども、医療改革の中身を見ますと、今回は、健康保険料の引き上げや本人の窓口負担の三割引き上げなど、負担がまず大きく患者、被保険者に課せられております。残念ながら、これを持続的な制度として本当に国民に保障するということになるかというと、改革は先送りされているというふうに我々は見てございます。
 診療報酬制度のあり方につきましても、あるいは老人保健制度、高齢者医療につきましても抜本改革するというのが、政府が既に九七年の健康保険法改正時、あるいは九八年の国民健康保険法改正時にお約束をしたところでございますが、いまだに成立せず、今回も、基本方針だけをつくる、あるいは今後三年間で見直しをするというふうな内容にとどまっております。とてもこれでは安心の医療、国民の信頼をかち取れる医療制度にはなっていない、我々はこう思っているところでございまして、ぜひしっかりした改革の中で、国民の安心と信頼をかち取れるような医療制度の改革を今国会で実現していただきたいというふうに意見を申し述べたいと思います。
 さらに、年金につきましても、依然として、いわゆる年金に入らない方、あるいは国民年金の保険料を未納している方が大変多いという現状でございます。これがまた年金に対する不安感を呼んでいるというふうに受けとめてございます。
 政府としては、二〇〇四年度までに、基礎年金に対する国庫負担につきまして、現状の三分の一から二分の一に引き上げるということを言っておりますが、やはりしっかりした公的年金制度をつくるということであれば、今から国民に、政府の姿勢として、しっかり二分の一に引き上げますということを示す必要があるというふうに思っております。
 特に、今消費が低迷しているという中にあっては、これらを政府として実行していただきまして、その分保険料を引き下げるということで、国民にぜひ、生活の安定の中でしっかり消費できるものは消費をしてもらうという環境整備も図っていく必要がある、こういうふうに思っているところでございます。
 最後に、デフレの対策について、一言我々の考え方を申し述べさせていただきたいと思います。
 デフレは大変深刻な状況にあるというふうに我々は認識しております。御存じのように、GDPデフレーターは、たしか九四年以降マイナスになってきておりますし、消費者物価、卸売物価ともここ三年続きで低下を示しており、特に昨年の秋からは、この下落幅が拡大をしてございます。
 この影響につきましては、先ほど小川先生の方からもございましたけれども、これが企業の収益減、さらには倒産・失業増に結びついている。そしてさらに、それが家計部門、企業部門の活動の萎縮に結びつきまして、内需を低迷あるいは減退させている。加えて、資産関係のデフレ、株価、土地の下落も続いているという中で、ますますデフレの影響が広まっている、こういうふうに思ってございます。
 我々は、このデフレについて、今回政府はいろいろ不良債権処理あるいは株式市場対策等出されてございますが、やはりデフレの基本には需給ギャップ、すなわち需要が伸びない、あるいは減退しているということが基本にあるというふうに見ております。やはり、今回の予算におきまして、我々働く者の実感では、しっかりした失業率を引き下げる対策をとる、あるいは社会保障基盤を安定化する対策をとるという中で、国民に安心感を与え、そしてしっかりした生活の質の改善に努めてもらう、企業もいろいろな努力をするという条件をつくっていただきたいというふうに思っているところでございます。
 ぜひ平成十四年度予算では、雇用をつくり出す予算、そして内需の回復につながる予算にしていただきたいということをお願い申し上げまして、私の意見とさせていただきます。大変ありがとうございました。(拍手)
津島委員長 ありがとうございました。
 次に、竹内公述人にお願いいたします。
竹内公述人 それでは、平成十四年度予算案につきまして、私の方からは、特に歳出面及び歳入面の問題について、税制改革及び財政構造の問題についてお話し申し上げたいと思います。
 特に、問題意識といたしましては、税制との関係でいきますと、税制改革の軸足をどのように持っていったらいいかというようなことをメーンに置きたいと思います。
 まず、予算の見方でございますが、三つの視点から見たいというふうに思っております。
 第一番目の視点は、内需主導型の経済にどの程度のスピードで転換できるかということ。私の周りには大変若いエンジニアあるいはマネジャーがたくさんおりますけれども、最近の動きを見ておりますと、日本の企業に対する失望感が非常に強くて、かなりの学生が外資系の会社に三年ぐらい行くというような状況でございます。今、待ちの状態になっておりまして、早く日本の企業の再生が進んで若い人たちの活躍の場が広がる、そういうふうなことを考えましても、新しい産業のイメージというものをどうつくり出していくかというのが第一番目のポイントです。
 二番目は、財政再建への道筋を明確に示すというポイントでございます。特に財源面の安定性というところから見ていくということが二番目のポイントでございます。
 三番目は、公共サービスの質の向上ということで、財政という面からいえば歳出を削るということが重要なポイントでございますけれども、今後のさまざまな公共施設の老朽化、メンテナンスというようなことを考えた場合に、あるいは環境需要にどのように対応して財源を考えていくかということでございます。
 私の考え方といたしましては、これまでの、均衡ある発展というような形で非常に高いコストのサービスを全国で行うという考え方ではなくて、ナショナルミニマム、国の義務のところは大幅に切り下げまして、上乗せの部分を地域主体でやっていく、この二段階のサービスの形に変えていくということが基本的考え方でございます。
 それから、公共サービスの質という観点からいたしますと、今、PFIなどの民間主導型の建設事業というようなものが進んでおりますが、私はむしろ、新設のものではなくて、もう既につくったもの、つくった施設のリース、払い下げなどを通じて、民間の経営手法を用いた公共インフラの経営というような形を考えていく必要があるかと思います。
 この三つのポイントから予算編成の問題を見ていきたいと思います。
 その前に、まず歳入面から考えるポイントは、第一に、日本の最大の問題は税収が不安定であるということでございます。GDPを見ますと一見ゼロ%前後で動いているように見えますが、税収を見ますと完全にマイナスになっているということから考えますと、日本経済の現状は非常に難しいところに来ている。この税制の現状からいきますと、非常に景気の変動を受けやすい税の構造になっているということでございます。歳出の方は毎年大体平準化された動きをしておりますが、歳入の面からいきますと非常にマイナスの方向に動いているということで、この二つのギャップをどのように解消していくかということにつきまして、きょうは幾つか提案をさせていただきたいというふうに思います。
 歳出面からでございますが、今年度の予算を拝見いたしまして、まず幾つか評価できるポイントがあるんではないかというふうに考えております。大きく言えば、九二年以降、非常に速いスピードで歳出が拡大してまいりまして、いわばGDPの成長以上に歳出が増大したわけでございますが、こういった歳出の増大傾向にはストップがかかったということは第一に評価すべきポイントであるかと思います。
 それから、公共事業費の予算が一〇%削られて社会保障費の方に振り向けられているという点は非常に評価すべきことでございます。この一〇%の削減が十分かどうかということにつきましては、私としては、後ほど申し上げますが、不十分だというふうに見ておりまして、さらなる公共事業の削減が可能ではないかというふうに見ております。
 それから、二番目に評価すべきポイントとして、財政投融資からの脱却というポイントが幾つか今回の予算には入っております。
 特に、交付税特別会計からの脱却ということで、地方交付税の問題についてもなるべく一般会計からの歳出で埋めるということにつきましては、実際は歳出面で地方交付税がふえるということは中央政府の立場からいきますと非常に厳しいことでございますが、このような形で、隠れ借金の形ではなくて、非常に透明度の高い地方交付税の形に持っていくということは一つのポイントであろう。
 並びに、特殊法人への一兆円のカット、これは特殊法人から見ると非常に厳しい現状でございましょうけれども、私たちの目から見ますと、少なくともかなりはっきりとした改革が進んでいるという印象がございます。
 それ以外に、一般会計ではございませんけれども、保険医療の分野というところで、医療費をいかに抑えるかということをかなり中心ポイントに置いているわけでございますが、この改革はまだまだ不十分だというふうに見ておりまして、よりいいサービスをもっとスピーディーに提供するという意味では、医療の改革、財源の調整だけでなくて、医療経営の面でもっと規制緩和を進めていきませんと、医療渋滞というようなものが解消されないんじゃないかと思います。
 この辺は比較的評価できるポイントでございますが、さらにもっと予算面で工夫の余地があるんではないかということを幾つか申し上げたいわけでございます。
 まず第一に、公共事業分野という点につきまして、大きな考え方としては、より整備が進んだ事業というものはより民営化の方向に持っていく可能性があるということ。特に、上下水道、廃棄物処理などの分野は、地域的にはもうほとんど一〇〇%の整備率でございます。こういった分野におきましては、より一層PFIないしは民間委託というものを進める可能性が高いと考えられますが、例を見てみますとほとんど進んでいないということから考えますと、これからの非常に重要な環境投資に対して、予算面でむしろ制約要因をつくってしまっているというふうに見えます。
 他方、都市インフラの整備ということにつきましては、環状線など幾つかの大きなプロジェクトへの予算が配分されておりますが、何といっても、都市部のインフラの老朽化というものは非常に激しく進んでおりまして、都市に対する整備をもっとスピーディーに行うというようなことをもっと明確に出すべきではないか。
 それから、住宅などの分野にかなり予算が割かれておりますが、こういった公営住宅はもうやめて、中古市場をもっと活性化するような形で、民間の力を使って住宅の需要をよりスムーズにするような改革が必要ではないかというふうに見ております。並びに、都市整備公団などを通じて非常に平均的な住宅をつくるということも、そろそろやめた方がいい。廃止ということで、平均値からの脱却ということで、いいものは民営化してどんどんやっていく。並びに、本当に必要な人にはきちっとした住宅政策を行う。こういっためり張りをつけた政策が必要ではないかというふうに思います。
 それ以外に、都市のライフライン、電力、エネルギーなどの分野につきましてはまだまだ規制緩和が足りないということでいきますと、この辺にはさらなる民間の動きを導入していくということでございます。
 この辺はきょうのメーンテーマではなくて、私のメーンテーマは、地方財政の問題を今後どういうふうに改革していくかということにつきまして、まだまだ予算面から見ると改革の道筋が見えていないわけでございます。
 地方は、現在百兆円に及ぶ歳出を行っておりますが、実際の自主財源は三十二兆円程度でございまして、非常に大きなギャップを抱えているわけでございます。現在進んでおりますシナリオといたしましては、税源移譲というテーマ、それから地方交付税の削減、この二つのテーマが上がっておりますが、この二つのテーマが非常に議論としては進んでおりません。したがって、地方財政の面からの改革シナリオというものが十分に明確になっていないということでございます。
 この辺の問題に対しまして、今後どういうふうなアプローチがあるかということについて、幾つか提案をしたいというふうに思います。
 まず、歳入面の問題でございますけれども、今、税源移譲ということで、八十兆円ぐらいに及ぶ国、地方の財源の中身を何%にするかという議論が進んでおりますが、トータルで百六十兆円の歳出が行われておりまして、この国、地方の問題を今の税源の中で配分するという議論では、将来の地域サービスのサステナビリティーというものが十分に得られないということで考えますと、今後、自主財源の部分をもっとふやしていくということが必要でございます。
 一つの考え方は、地方の公共サービスに関しましては、受益と負担という考え方をもっと徹底させる必要があるのではないか。国からの税源移譲だけでこれからの地方分権が進行していくわけではございませんで、みずから受益とサービスを一致させることによって、憲法に書かれております、地方自治体がみずからサービスの水準を決定し、その責任、管理を行う、この趣旨に沿っていけるというふうに考えますと、現在の地方自治体がほとんど税制改革の面で目立った動きを行っていないということが、日本の財政の非常に不安定な側面をつくり出しているというふうに思います。
 特に、きょうの問題点といたしましては、大きく言えば、地方の公共サービスの中で、財源は大きく料金と税に分けて、二つのバランスで財源を調達していくということが大切だ。
 料金制は大変重要なポイントだというふうに考えておりまして、特に上下水道の分野などは、もう既に料金制が徹底されておりますが、さらにきちっとした料金制を導入することによりまして、この分野で民営化の可能性が出てくる。地域で民営化できれば、ここで雇用が創出されるという新しい展開が可能になってまいりますので、こういった料金制の問題が一つございます。
 それから、税制の面でいきますと、個人住民税の地方の部分をどういうふうに改革するかということでございます。
 現在、地方税に関しまして、特に住民税の分野は、所得割のところの課税最低限が三百三十万程度と非常に高い水準になっておりまして、地域によっては平均の年間所得が三百万でございますので、サービスは受けるけれども何も払わないという方がいらっしゃいます。大体千三百万人ぐらい地方で税金を納めていない方がいらっしゃるということを考えますと、やはりサービスとの対応性ということを考えますと、地方税に関しまして、課税最低限を現在の三百三十万程度から百万程度に引き下げる。どんな方も少しずつ税金を納める、これはサービスとの対応関係からいきますと当たり前のことではないかというふうに思います。
 そのかわりに、税率を、現在の五、一〇、一三というものを一律に一〇と。したがって、低所得の方は一〇で終わりということでございますが、ごみを出したり水を飲んだり、さまざまな経費を少し負担するというような考え方を導入いたしますことによって、地方財政の安定性も図れると同時に、ガバナンスといいますか、納税者によるチェックがききやすくなるのではないかというふうに考えております。
 この千三百二十万人の税を払っていない方々に税を払っていただくだけではまだ不十分でございまして、まだあと四千万人の方が、十五歳以上の税を納めない方が日本にいらっしゃるということで、専業主婦も一千万人ぐらいその中に含まれておりますが、やはり住民税の中の均等割を月千円程度納めていただく。もちろん、生活保護世帯とかそういうところは、年間に二百五十万ぐらいの最低保障がございますので、大変難しいという方はそこでいろいろな調整を行う。
 地域のコストは地域でということになりますと、納めた税金は、どこかへ行ってしまうのじゃなくて必ず地域で循環している。自分の納めた税金は必ずほかの人の雇用につながっているということを考えますと、これも地域循環的な雇用の創出にプラスになるのであって、必ずしも税金で終わるわけではないと考えますと、住民税の均等割の部分も早期に改革することによって、地方財政の安定性が図れるのではないかというふうに思われます。
 最後に、これ以外に地方財政に関して言えば、都市財政というものが今いろいろな形で議論になっております。もちろん、市町村合併という形で行政能力を拡大していく、いわゆる中小自治体に対しましてそういう方向はあるかと思います。しかし、大都市はどうするんだ。非常に大規模な都市では、むしろ過剰な投資やチェックしにくいさまざまな投資が行われております。この都市財政がこれから非常に大きな火種になる可能性がございます。
 こういった都市財政に対して、どういうふうに地方公共サービスを最適化し、住民に見えやすいサービスに変えていくかということから考えますと、さまざまな形で、公共施設の民間委託、民間移管あるいはリースというような形で、一部でもいいから第三者がそこを経営して、コストがどの程度削減できるのかというような、いわゆる競争政策を地方公共サービスの中で徹底させるというようなことが必要なのではないか。
 トータルに見まして、地方公共サービス及び地方歳出関係の百兆円の部分に対してのこれからの考え方というものを、今後、予算の中できちっと行っていくこと。それから、日本では、納税者というのは、物を言わぬ納税者、物を言えない納税者ということになっております。今後は、あらゆる行政サービスはいわばサービス事業体だというふうに考えれば、むしろ納税者の意見をより吸い上げるような、積極的に吸い上げるような仕組みを同時につくっていくということが必要ではないかと思います。
 ということで、終わらせていただきます。(拍手)
津島委員長 ありがとうございました。
 次に、佐高公述人にお願いいたします。
佐高公述人 構造改革なくして景気回復なしというのは小泉さんのいわば呪文のようなあれですけれども、その改革の姿勢について話をさせていただきたいと思います。
 たまたま小泉さんは同じ年に同じ大学を出まして、何度か食事もした仲ですけれども、これほど深みがないとは知りませんでした。余りに単純でありまして、小泉純一郎の純は単純の純であると私は言っておるのですけれども、そうしたら、どこかでそういうふうにしゃべりましたら、抗議のはがきが来まして、違う、純粋の純だと。まあ似たようなものだと思います。
 基本的にどういうところにそういう印象を持つかといいますと、私は、やはりアメリカと銀行に甘過ぎるという感じを持っています。この間の日米首脳会談でも、持ち上げられて、言うべきことも言わず、ただはいはいという感じでいるわけです。
 ブッシュという人がどのくらいのリーダーシップを持っているのかということにもかかわってきますけれども、ブッシュという人について、ニューヨーク市立大学教授の霍見芳浩さんという方がいらっしゃいますけれども、この霍見さんが、たまたまハーバード大学の経営大学院でブッシュを教えているわけですね。その教えた経験から、二十五年たっても彼は精神的に成長しておらず、知力ではむしろ退化していると断言している。二十五年前、こんな男はどんな会社や組織でも人の上に立つリーダーとしては不適格だと思いました、そしてこの二年間、ブッシュのテキサス州知事としての実績や、大統領になった場合の内外政策を注意深く吟味した結果、激動の二十一世紀のアメリカ大統領としてはもちろん不適格と判断していますというのが恩師の霍見さんの発言。私の発言ではございません、恩師の発言なわけですけれども、そのブッシュという人について、余りにも言うべきことを言っていないという感じが私はするわけです。
 ですから、御承知かもしれませんけれども、いきなり賛成というふうな感じで、何でも賛成みたいに手を挙げるから、向こうではサージャントと言われたわけですね、軍曹。もちろん大将でも中将でもなく、ずっと来て、大佐、中佐でもなくて、軍曹であるというふうなことを言われている。それでいいのかという感じが私はするわけです。
 この間、私はあるところで、ブッシュに鎮静剤を打てというふうに言ったのですけれども、すさまじい形で日本を、悪の枢軸云々というふうな形で同盟国に引き込もうとする。それに対して、小泉さんは、ほとんど何か深い考えもなく、西部劇ごっこに加わるようにしてそれに賛成していくというふうなことについて、本当に愕然とする思いがするわけです。
 住友財閥の総理事というのをやった小倉正恒さんという人がいますけれども、近衛内閣の大蔵大臣もやっているわけですけれども、その人が昭和三十年にこういうことを言っているんですね。
 「今日の日本を見ていると、なんとなくアメリカのために再軍備しなければならぬようなことになりそうでもある。しかしながら、もしも日本がアメリカと一緒になって軍備を拡張して戦乱をうながすようなことになっては、日本の文化も台なしになるし、なんとも情けないことである。国防は警察とか自衛隊の程度に止めておいて、日本人はもっと大きな考えを持っていることを、広く世界に知らしめ、日本はどこまでも平和的な意図を持っている。それは世界の人類のために貢献したいからである、という立場を深く認識せしめるようにありたいと思う」と。
 ある種の、日本の経営者、財界人の良質な部分の知恵だと思いますけれども、また、この小倉さんはこういうふうにも言っている。ガンジーの無抵抗主義に賛同し、「独立国の要件は三つある。兵備、富、道義だ。このうち第一にいらないものは兵備だ。つぎは富、道義さえ行われれば、国は貧しくとも平和が保てる」と。
 こういうふうないわばベテランの財界人の知恵みたいなものを、どうして小泉純一郎というふうな人が受け継ぐことができないのか。いわゆる抵抗勢力どうのこうのと言われますけれども、私の方からは抵抗勢力の方が平和勢力のように見えるということも一言つけ加えておきたいと思います。
 もう一つ。日本とアメリカ、日米関係が大事だというのは、その立場において主張することはそのとおりだと思いますけれども、もう一つ別の軸も入れていいんじゃないか。例えば中国は、お金の面において、外貨準備高をユーロにもかなりシフトしているわけですね。ドルだけということではなくてユーロにもシフトしている。そういうことによって、むしろアメリカに対していろいろ物が言えるということもあるんだろうと思うんです。
 この間の日米首脳会談を見ていまして、私は経済の面でもほとんど言われっ放しじゃないかという感じがいたしました。あえてその辺まで踏み込むと大きな問題にはなるんでしょうけれども、いろいろなことを言うけれども、おたくの国債を日本がどのくらい持っているのか、アメリカの国債を日本がどのくらい持っているかということをちらりと言うぐらいはいいんだろう。そういうことを何にも言わずに、唯々諾々として、銀行の問題でも言われっ放しということは、むしろおかしいんじゃないか。あるいは、小泉さんは知らないのかもしれません。その辺のところを、いろいろなことを言うけれども、橋本さんのときにちょっと問題になったわけですけれども、持っているんですよということは言った方がいい。何か焼き鳥屋でもどこでも行っていいから、そういうところをびしっと言うということが必要なんじゃないか。
 銀行に甘いということは、一番最初の、前の公的資金注入のときの過ちというのがあるわけですね。前の公的資金の注入のときに、皆さん御承知のように、健全な銀行に注入するんだと、健全な銀行に同額注入したわけですね。そのことのおかしさ、健全な銀行にどうして公的資金を注入するのかと。だから、あのときは三菱銀行が要るの要らないのという話になったわけです。だから、公的資金を注入する場合に健全な銀行云々と言った、そのときの過ちをどういうふうに反省するのか、今度また公的資金という注射をするのしないのという話になっていますけれども、私は、前の健全な銀行云々ということをどう反省するのかということが前提になければおかしいんだろうと思うわけです。
 それから、よくこれからは自己責任の時代だというふうなことを言われますけれども、銀行を選ぶんだと言うけれども、その銀行の情報が余りに公開されていないわけですね。そのディスクロージャーなしに健全な銀行に公的資金を投入したというふうなことは、もう完全にごまかしですよね。ごまかしのまま自己責任だけを押しつけるという感じがするわけです。
 端的に申し上げれば、今これだけ税金の、公的資金の注入というふうなことが問題になっているときに、その受ける銀行の経営者の退職金がどのくらいなのかということすらも明らかにされていない。そんなことで国民が痛みを負う気持ちになるかと。いろいろな状況の中で明らかになったのは、例の、日本長期信用銀行をめちゃくちゃにした杉浦敏介という人が九億の退職金を取った、いろいろなことをやいのやいの言われて、わずかに二億返して七億取ったという話だけが明らかになっている。そういう経営責任というふうなものがなおざりにされて、国民に痛みをという話は、私は通用しないだろうという感じがするわけです。
 前の公的資金注入のときに、私は、それを受けた各銀行の経営者に少なくとも私財の提供をさせなければそれは納得しないだろうというふうなことをある講演会で述べたら、そこにいた新聞記者が間違って、佐高氏、頭取に死罪を適用せよと主張と書いて、私はびっくりしたんですけれども、死罪、もちろん命までとろうとは思わないけれども、でたらめな経営をやった者に対してそういうきちっとした責任をとらせるということは当たり前の話ではないか。そういうところが余りになおざりにされている。公的資金投入、是か非かという論議がすぐマスコミでなされますけれども、その前に、銀行がどういう状況にあるのかということですね。
 繰り返しますけれども、前のときには同じ額を健全な銀行に注入した、あのときは何か緊急だからという感じで話が済みましたけれども、今振り返ればまことにおかしい。私は、そのときの過ちというのを繰り返さないために何が必要かということを大前提として論議しなければならないんだろうと思うわけです。
 情報公開というふうなことを言いますと、何か明らかにしたら信用不安は増すんだという論議がよく聞かれます。しかし、それは明らかにしないから不安が増すのであって、痛み云々ということなら、まず銀行の経営者、そういうところに痛みを負わせなきゃならないだろう。
 私は昭和二年の金融恐慌のことを調べて書いたことがありますけれども、あのときはさまざまに取りつけ騒ぎが起こって、自殺者も出ました。そういう中で、いわゆるビッグファイブというのに預金が集中していったわけですね。それは当然の話で、そういうふうになりますけれども、そういうふうにしないことがある種の政治の務めなんじゃないか。
 今、信用金庫とか信用組合とか、まさに地域、地場の金融機関が次々と倒れていっている。私は大手の銀行の方が腐っていると思いますから、それは比較の問題ですけれども。そうすると、腐っている大手の銀行がビッグであるということだけで残り、良質かもしれない小さな金融機関がつぶれていって、そして中小企業がそれにつれてつぶれるということになっては、日本経済のまさに足腰の部分をおかしくしていって、腐った頭だけ残るという話になるんじゃないか。その辺のところをきちっと手を打つような予算になっているかどうか。
 もう一つ最後に、痛みを負うというところがどういうことなのかという話で一つの例をお話ししたいと思いますけれども、今、何か、財界の中には今の不況は竹中不況であるというふうなことを言う人もいるそうですけれども、その竹中平蔵という人が住民税というものを何年かにわたって払っていなかったと。
 これは週刊ポストに書かれたわけですけれども、一月一日に日本にいなければ、住民税は請求されない、つまり払わなくていいんだというふうなことで、ハーバード大学の準教授時代に住民票をアメリカに移し、翌一九九〇年四月、慶応大学の総合政策学部助教授につくと東京・港区に転居したということで、四年間にわたって、一月一日、日本にいないわけですね。それによって住民税を払わないということをやっている。
 だから、私は、この記事を受けて、竹中さん自身がその週刊誌のあれにそのことは事実であるというふうに認めているらしいですけれども、これだったら、あの野村沙知代がかわいそうではないかというふうに書いたわけです。
 そういう政策の責任者というふうな者が、逃税ですか、税金を逃れる、脱税とは言えないのかもしれませんけれども、そういうふうな人が、他人には、国民には痛みを負えと。自分はどうなんだという話になるわけですけれども、その痛みを負えというふうなことの問題。痛みを負う場合には、当然自分が最初に痛みを負うということにならなければ、国民はそれを負う気持ちにはならないだろう。
 それに関連して、今、もう一つ、住民基本台帳というふうなことを一生懸命進めようとしているみたいですけれども、たまたま先週の土曜日に、私は、ほとんど考え方は違う櫻井よしこさんと、呉越同舟といいますか仇敵同士というか、それがこの問題では手をつなぐということで、櫻井さんに呼びかけられて、櫻井さんと一緒に、住民基本台帳、牛は十けた、人は十一けたによって管理される、そういうのはとんでもないんだということで二人で反対のビラまきをしたわけですけれども、やはり小泉さんが、基本的に、やるべきことをやらずに、やらないでいいことをやるというふうなことが一番大きな問題なんだということを申し上げて、私の話を終わります。(拍手)
津島委員長 ありがとうございました。
    ―――――――――――――
津島委員長 これより公述人に対する質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小島敏男君。
小島委員 自由民主党の小島敏男です。
 本日は、公述人の先生方には、大変お忙しいところを御出席いただきまして、ありがとうございました。なおかつ、さまざまな立場でさまざまな御意見をいただいたわけでありますけれども、興味深く拝聴させていただきました。
 現在の社会情勢を考えますと、特に景気低迷の場合には、国民サイドからすれば、何でもいいから景気を回復していただきたいというのが本音ではないかと思います。デフレ下の不況というのは我が国では初めて体験をするわけでありますけれども、当予算委員会においても、本当に各人各様の意見が出て、どれが本当なのかなということで迷うぐらいたくさん出ています。今度の日本の景気回復について、テレビ、新聞等においても、学者の先生方、評論家の先生方、そしてもちろん政治家の意見、全部ばらばらなんですね。
 ところが、目標は何かといえば、富士山の頂上に向かって、その頂上の国民の幸せに向かって、何とか今の景気を回復させるために皆さんが努力している。このこともわかるわけですよ。ただ、富士山の頂上に登るのに登山口が違う、そしてルートも違うけれども、ともかく皆さんが力を合わせているわけでありまして、私は、近年において、これだけ日本の国民が、そして日本の指導者が一致団結をしてこの問題に取り組んでいるということは初めてだと思うんですね。にもかかわらず、景気が一向によい兆しを見せないというところにいら立ちを感じるわけであります。
 ですから、先ほどのお話ではありませんけれども、どんな薬を飲んでも、どんな注射を打っても、ともかく効かないんだ。そして、けさの新聞を見ると、やはり小泉総理が万能薬はないというようなことも言っておるわけでありまして、私たちから考えれば、まず、こういう問題については早く結論を出さないといけないということを感じている次第であります。
 卑近な例を挙げますと、最近のBSEの問題。これは風評被害でほとんど牛肉を食べる国民が激減をしてしまったわけですね。ですから、今度のペイオフの問題でも、四月から実施ということになると、どの銀行が安心できる銀行なのかということを国民に不安をあおるために、ペイオフをやると今度は一千万しか保証されないよということになれば、国民は右往左往しているわけですよ。果たしてどこが安心して預けられるところなんだろうかということになりますと、BSEの問題ではありませんけれども、三月、六月危機なんということになると、何が起きるのかということで、国民は本当に不安のどん底に入っているわけです。一方、商店街に行けば、シャッターをおろしている商店街がずらり並んでいるわけですから、本当に日本発世界大不況が起きるんじゃないかというような感じさえ持っているわけですね。
 そういうことで、限られた時間ですので早速質問に入ります。
 まず最初に、小川先生からお話をお聞きしたいと思うのです。
 不良債権はデフレスパイラルの大きな原因だということは間違いないと思うのですね。そして、不況が不況を、価格下落がさらなる価格下落となり、不良債権をつくっているのが現状だと思います。
 そこで、不良債権処理は構造改革と違っているのではないかと思うのです。不良債権処理というのは古い国民意識のツケとして残された負の遺産だと思っているわけであります。したがって、ツケを払ってから新しい作業、つまり構造改革に乗り出すのが順序だと思うのですね。不良債権処理なくして景気回復なく、景気回復なしに構造改革を行うということは非常に難しい問題があるのではないかと思いますけれども、この点についてお伺いをしたいと思います。
 引き続いて、成川公述人にお伺いいたします。
 先ほど失業者が大変ふえて困っているということなんですけれども、昨日、大阪商工会議所の副会頭の方がこちらで意見を出していたのです。きのうのお話ですと、繊維工場等では日本人の労働力が確保できず、やむを得ず中国等に出ていかざるを得ない、そしてその安い労働者を入れないと企業が成り立っていかないんだというようなことをこの場で言っているわけです。
 確かに日本の失業者の問題も大変だけれども、私たちは、これからの日本産業の活性化という観点に立ったら、産業はつぶれていいんだということは言えないと思うので、この辺のことをどのようにお考えになっているか、お伺いしたいと思います。
 それから、最後に竹内公述人にお伺いしたいのです。
 確かに都市部の問題、それから地方財政の問題、いろいろあります。地方が自主財源で受益とサービスをやっていかなきゃいけないということもよくわかるのですね。ただ、三千二百を超えた市町村で、果たして自立できるような市町村が現実にあるのかどうか。
 そこで、政府の方は、今、総理が、三千二百を超える市町村を千に減らそうということで、平成十七年までにいわゆる市町村合併という形を推進しているわけです。今それがどんどん進んでいるのですけれども、そういう市町村合併になって、先生が言われたような地方は地方でという形でやれば非常にスムーズにいくと思うのですけれども、市町村合併が現在進んでいる中において、先生のお話とのいわゆる融合性というのですか、これはどのようにお考えになっているか。
 限られた時間で申しわけありませんが、よろしくお願いいたします。
小川公述人 ただいまの御質問にお答えいたします。
 御質問は、不良債権の処理と構造改革について順序があるんではないかということなんですが、私は、これは同時並行的に行うべきだというふうに考えております。
 というのは、まず、日本の問題は、金融の問題と産業構造の問題と両方今抱えているかと思います。先ほどの不良債権問題については金融の問題で、いわゆる日本経済の血液の循環をよくする、特に今、心臓の部分がとまりかけているということですから、そこの血液循環をよくするということがあると思います。ただ、血液循環をよくしただけで人間が動き始めるかというと、やはり筋肉を強くしていかなければいけない、あるいは余計なところについているぜい肉を落として、例えば足に強い筋肉をつけるということが必要かと思います。そうしないと人間は走ることができないと思います。
 ですから、そういう意味で、血液循環をよくするという意味での不良債権処理を進めると同時に、産業構造の改革を進める。そのときは、先ほど私が説明しましたように、ITなどのような新しい産業をつくっていく。そこに労働も移動させなければいけませんから、そのときに労働者の教育あるいは育成などもしていくということで私は考えております。
 以上です。
成川公述人 失業がふえている一方で、中小企業などには人を採用しようとしても人が来ない、そしてまた海外へ進出せざるを得ない、こういう問題をどう考えるかという御質問でございます。
 やはり人を大事にする経営。企業が生き延びる上でも、これからの需要をどうつくり出していくのか、その企業活動を支えるのはやはり人材でございまして、人材をどうしっかり育成していくのかということが、日本企業がアジアとともにこれから成り立ち得る道だ、そう思っております。どうも今の経営者は安易に、ただ安いからそれを雇う、こうなっておりますが、安さだけではアジアと共存して日本の産業が発展することはできない、こう思っております。
 ただ、働き方について、物づくりなど、もう少し学校教育の中で、日ごろから、働くということはどういう意味があるのかということをしっかり若いうちから学ぶということが大事であって、ちょっとその点が現在欠けているのかな。安易にいわゆるきれいな職を求めるということについては、職業というものが本当にその人の成長にとってどういう意味があるかという点では、我々もよりしっかりした職業教育あるいは職業観の育成ということをしなければならない、こう思っております。
竹内公述人 市町村合併のお話でございますけれども、これはまさに受益とサービスの関係からしか本当に市町村合併が必要かどうかというのは、非常に判断しにくいと思うのです。
 つまり、自主財源が小さいと、どうしても吸収合併になってしまう、大きいところに吸収されてしまう。やはり対等合併に持っていくには、企業でいえば自主財源というのは自己資本みたいなものですから、いわばつくった物とそこにおられる人数、あるいは利用効率というものをある面でそこではかることができます。市町村合併に持っていけば、いわば利用率、回転率、あるいはいろいろな施設の使い回しがよりよくなりますので、大きくなることによってその利用度がどのくらいふえるかというのが一つの基準になってくるわけです。
 市町村合併ありきですと、実際に現場に行って、どうして必要なんですかと言うと、よくわからないという方が非常に多くて、具体的にそういった客観的な基準を用いることによって、よりつくった物がむだなく使われるというようなことがはっきり見えてくるのではないかと思います。
小島委員 どうもありがとうございました。
津島委員長 次に、青山二三君。
青山(二)委員 公明党の青山二三でございます。
 きょうは、四人の公述人の皆様には、大変お忙しい中をお出かけいただきまして、いろいろ貴重な御意見をお伺いすることができました。感謝を申し上げます。
 私の方からは、まず小川公述人にお伺いをしたいと思います。
 先ほど公述人のデフレ対策についてのお話をお伺いすることができましたけれども、昨夜決定されました政府のデフレ対策についての御所見をお伺いしたい、これが一点でございます。
 二点目といたしまして、消費者にとりまして、物価が下がるということは一面大変うれしいことでございます。しかしながら、もっともっとこれからも下がるのではないか、そういう期待感がございまして、消費活動がずっと抑制されているわけでございます。ですから、何とか個人消費を伸ばせれば、これが伸びれば景気は刺激されるのではないか、また景気は上向いてくるのではないか、このように考えているわけでございますけれども、この個人の消費活動を活発にさせる方策、何かございましたらお尋ねしておきたいと思います。
 先ほど国民に不安を与えないことが一番大切だとおっしゃいました。今、国民は不安と不信で毎日を過ごしているわけでございますけれども、この不信感、不安感を払拭させる、そういう方策、信頼を取り戻すという方策についてお伺いしたいと思います。
小川公述人 まず、昨日発表されました政府のデフレ対策についてですけれども、けさの新聞等を読みますと、いろいろ批判もあるかと思いますけれども、今打つべきところはある程度出てきたのかなというふうに思います。
 ただ、例えば公的資金などを今後導入するというようなことがもし起きてきたときには、やはりその準備をしておく必要があるかと思います。それは、先ほど私が御説明させていただきましたように、最初から明らかにしておくというのもなにかと思いますけれども、その準備をしておく。それは予算上、何でもかんでも支出するということではなくて、支出をある程度抑えておいてその準備をしておくということが必要になるかと思います。
 それから二番目の、個人消費を活発にする方法はどういうものかということなんですけれども、これは、私が先ほど御説明しましたように、やはり、例えば将来物価がまだ下がっていくだろうということ、あるいは賃金が下がっていくだろう、あるいはさらにリストラで失業するかもしれないということが原因にあるかと思います。ですから、そういう意味で、まず新しい産業をつくりまして、そこに労働者を移すような政策をとっていく。それは人材育成などになるかと思いますが、そういうことが必要かと思います。
 それからもう一つ、恐らく御質問に示唆されていたことは、インフレターゲットとかそういうことをもし示唆されているんであれば、それに対しては、インフレターゲット自体は必要な、あるいは重要な政策かと思うんですが、ただ、今のようなデフレの状態でインフレ目標を二%ですというふうに発表しただけでそのとおりインフレになるかどうかというところが問題かと思います。ですから、そこは、私のきょうのお話で、国民の予想がかなりのところで日本の経済を悪くしているというところの裏返しの問題で、その予想を変えることがどれほどインフレ目標を設定することでできるかということがあると思います。
 ただ、インフレが激しいときに、それを抑えるときにはインフレ目標というのが効果があるというふうに言われておりますので、そういう意味で、もしかすると逆にインフレを起こすときに効果があるかもしれませんが、それは今まで経験のない実験になりますので、私自身、どうなるかわからないところであります。
 それから、国民の不安、不信をいかに払拭するかということで、経済における危機管理、例えば、ペイオフのときに混乱したら、そのときには万全の対応をするということを明らかにしておく。ただ、明らかにしておくというときに、では、その財源をどうするかということが問題になりますから、その財源確保のためにも、例えば国債の量、金額を抑えているんだというようなことで国民に政策実行の信頼感を与えるということが必要かと考えております。
 以上です。
青山(二)委員 それでは、四人の公述人の皆様にお伺いしたいわけでございます。
 低金利政策についてでございますけれども、長い間低金利政策が続いておりまして、消費者とかあるいは退職金で生活をしていらっしゃる方々の生活を圧迫しているというようなことが見られます。例えば、利息で家族で旅行を楽しんだり、利息でささやかながら家族でお食事に行く、こういうことをしていた方々ができなくなるというようなことで、なおさら消費活動が低迷してくる。
 それで、この低金利政策に大変反発しまして、ある会社の社長さんからこんなお話を聞きました。もう日本の銀行で低金利政策では何の利もない、ですから、ドルにかえて貯金をしている、こういう話を聞いたわけで、今とても利息もよくていいぐあいだと喜んでいらっしゃいました。
 きのうも公述人の方が、個人資産一千四百兆あるといっても安心はできないのだ、国境を超えて金は動く、このようなお話をされておりましたけれども、この低金利政策についての御所見、今後の見通しなどについてもお伺いしたいと思います。
津島委員長 順番に四人の方に……(青山(二)委員「お答えのなかった方から」と呼ぶ)
 それでは、まず成川公述人、それから竹内公述人、佐高公述人の順で、簡潔にお願いいたします。
成川公述人 低金利政策、これによって貯金等で生活している人が大変な影響を受けている、これは事実でございます。我々としては、一刻も早くこの低金利政策を脱却する状況をつくらなければならない、こう思っております。
 しかし、やはりこれはデフレを早くなくし、そしてまたマクロ的には安定成長、失業率が下がる社会をつくらないとなかなか低金利を脱却できない、こう思っておりまして、早く安定成長になるような社会をどうつくるか、これが基本だ、こういうふうに思っております。
竹内公述人 低金利あるいはゼロ金利がなぜ発生するかということでございますけれども、基本的に貯蓄が過剰であるということでございます。貯蓄をする方が高年齢層に多くて、どちらかというと中年、中高年あるいは若年層にはお金が回っていないということでございますので、より消費意欲の高い方々のところにお金が残るというシステムを、高年齢層、特に年金受給層においては非常に高い貯蓄率を持っておりまして、その方々が物を買わないということが低金利の原因でございますので、供給サイドからいえば、より質の高いサービスみたいなものをつくっていくということ、需要の面から動かしていくということが最も重要だと思います。
佐高公述人 やはり銀行がまともでないことが大きな原因だと思いますし、ある川柳がございまして、「通帳のしみかと見れば金利なり」という。余りに銀行に対して政府が緩過ぎるということが原因だと思います。
青山(二)委員 大変ありがとうございました。
津島委員長 次に、井上喜一君。
井上(喜)委員 保守党の井上喜一でございます。
 四人の公述人の方々、本当にきょうは御苦労さまでございます。
 私は、まず竹内公述人にお聞きをいたしたいと思います。
 先生、短期といいますか中期的な経済財政運営についての基本的な考え方、あるいは本年度予算案につきましての、ある程度評価できる面あるいは問題として残っている面、今指摘をいただいたのでありますけれども、大体私どももそんなような感じを持っているわけでございます。
 ただ、予算といいますのは、なかなか想定したとおりに経済状況が動かないものですから、時には変更するというようなことがあるのであります。
 今言われておりますのはデフレ対策ですね。大変デフレが深刻であるということであります。きのう政府がデフレ対策を発表いたしましたけれども、大変評判が悪い。きょうの新聞なんかをごらんになりましても、そのとおりだと思うのであります。
 そこで、二つお伺いしたいのですが、第一点は、財政金融政策をとる場合に、今、非常に限られた制約の中でそういう政策をとらないといけない状況だと思うんですね、財政支出もこれ以上ふやせない、あるいは金融の方ももうゼロ金利だというようなことで。そういう中で、デフレ対策としてとり得る政策はどんなものがあるのかということが一つです。
 それからもう一つは、現下のデフレの状況を見ますと、もうそういうことにこだわっておれないのだ、大胆に財政支出をやる、あるいはもっと思い切った金融政策をやるべきだというようなお考えなのかどうか、どのようにお考えなのか。その場合に、どのような中身の政策が考えられるのかにつきまして御意見を伺いたいと思います。
竹内公述人 まず、デフレの問題ですけれども、現在、不良債権というところに非常に大きな焦点が集まっております。なぜ不良債権が発生するかといいますと、銀行が将来成長する分野に投資していないということが最も重要なポイントで、どちらかというと、ゼネコン等々、衰退産業にお金を振り向けている。ということは何かというと、銀行が新産業を見る目を持っていないということなんですね。どこから新産業が生まれてくるかということを十分に審査する能力がない。
 では、他方で、本当に新産業がないのかというふうに考えますと、外国の投資家等々の話を聞きますと、最近は、不動産の関係でいきますと、レンタル、賃貸の住宅が急激にふえておりまして、分譲よりもふえております。したがって、同じ下降線でも、中身を見ると、消費者がいい質のものに転換しているということがございます。やはりそういうことを考えますと、日本の銀行だけを見ると新規産業がないのですけれども、世界にはどんどん新規産業がまだ先進国でも興っているような状況で、環境サービスもありますし、医療も介護もございますし、さまざまな分野の新規産業の研究というものをきちっと行うべきであるというふうに思います。
 財政出動については、九二年以降の財政出動の経過を見ても、政府が歳出を増大することは、基本的には国民には痛みにならないわけですね。国債を発行して、それを預金から買っていくというのは全く痛みがないのですけれども、必要なものを買っているかといいますと、必要でないものも買ってしまうということになりますと、やはり個人消費主導型でとにかくいく、財政出動は非常に危ない政策だというふうに思っております。
 それで本当に消費が活性化するかということでございますけれども、ある面で、日本の企業が、消費者の目というもの、あるいは顧客の目というものを十分に見ていないということが大きなサービスの向上につながっていないのじゃないかというふうに考えますと、やはり企業努力によって新しい消費を生み出していくという基本スタンスが必要だと思います。
井上(喜)委員 今、予算でいいますと歳出ですね、あるいは歳出構造と言ってよろしいかと思いますけれども、根本的にこれは見直していかないといけないと思うのであります。
 よく公共事業につきましては言われるのでありますけれども、その他については余りそういうことは言われないのでありますが、これを財源の面から見ますと、公共事業の場合は、道路なんかは税、それから、他については大体建設公債でもって財源を調達しております。しかし、公債を見ますと、特例公債が二十兆円強なんですね。建設公債が十兆円弱であります。つまり、非公共事業に使われる財源が多いわけでありまして、私は、この分野の歳出の見直しというのが大変重要だと思うのでありますけれども、それをどう思われますか。いや、特例とか建設の枠はもうどうでもいいんだ、総額が問題なんだというようなお考えなんですか。それはどういうぐあいにお考えになっていますか。
竹内公述人 確かにハードなインフラの部分も非常に重要なんですけれども、非公共事業ということで、最近、情報通信であるとか光ファイバーの開放であるとか、持っているものをより使うというような展開が見られているわけです。そういう意味でも、非公共事業分野というのは、より早く資産を民間利用の方向に持っていくというような考え方でいけるんじゃないか。
 もう一つ、非公共事業で非常に重要なことは、管理運営、メンテナンスというのはこれから物すごく大きな分野になってきまして、こういう予算項目がまだ十分にきちっと計上されていないわけなので、今後、非常に危ない橋とか穴ぼこだらけの道路とか、そういう問題に対して、では将来どういうことを考えていくのかというようなことについても検討すべきだと思います。
井上(喜)委員 皆さんにお聞きをしたいと思っているのでありますけれども、どうも時間の都合でそれもできないと思います。
 佐高公述人にお伺いしたいのでありますが、今、ブッシュ大統領の人物評なるものをお聞かせいただいたのでありますけれども、プーチン大統領、江沢民主席についての人物評、いかなるものをお持ちなのか、お聞かせください。
佐高公述人 これから調査研究いたしたいと思います。
井上(喜)委員 それでは、連合からお見えになりました成川さん、社会保障制度の充実ということを言っておられるのでありますけれども、連合は、そのために消費税を上げていく、消費税でもってその財源に充てていくということについては反対じゃないんですね。
成川公述人 社会保障制度、やはり国民が日本で安心して暮らし、そしてまた活動するという上で大変重要である、こう思っておりまして、この制度がしっかり国民に理解を得られる、そして本当に国民の安心を担保できるということであれば、その財源については、我々としては目的間接税で充てるというふうに考えております。
井上(喜)委員 終わります。
津島委員長 次に、松野頼久君。
松野(頼)委員 おはようございます。公述人の皆さん、早朝からこうしておいでいただきましたこと、本当にどうもありがとうございます。
 それでは、私は三十分ございますので、少しゆっくりかと思いますので、お一人お一人にお伺いをさせていただきたいと思います。
 まず小川公述人にお伺いいたしますが、長期的に見て、日本の経済規模、また、今後の日本の展望ということで少子化ということを挙げられていました。本当にこれから私たちの世代はどんどん人口が減ってくる。出生率が一・三八とも三六とも言われていますので、これが一番大きな問題ではないかと思うんですね。
 そして、この少子化の中で、一人一人の労働生産力をIT化によって上げていけば一%程度の成長率が見込めるんではないかというお話がありましたけれども、一方では、政府は国債発行というものを今どんどんふやしているわけであります。小泉内閣で三十兆円という枠をはめたとはいえ、過去の累積国債発行残が、地方分まで合わせますと六百九十兆円という莫大な数字になっているわけであります。
 ですから、これから人口が減少していく中で、今発行している国債というものの利払いが一体どのように重くのしかかってくるのかと同時に、国債の償還、どの程度まで国債を償還していけばいいのか、それとも完全に償還しなければいけないのか、どの程度まで残しておいて、どの程度は経済成長率で吸収していくのかという、本来であれば採算計画があってしかるべきだと思うんですけれども、大体民間企業では、どれぐらいの借金をするからそこにどれぐらいの投資をする、それによって収益がどれぐらい上がるからこの辺までは大丈夫だというバランスシートをつくるわけですが、国というのは全くそれがありませんで、ただただ三十兆の枠をはめた、そして、一体今後どういう方向に行くんだという方向性が全く見えないわけであります。その辺について御意見を伺いたいと思います。
小川公述人 まず少子化の問題ですけれども、私自身、少子化に関連する研究をしているわけではありませんので、そちらの方については確かなことを言えません。私のきょうのお話は、少子化を所与としたお話でさせていただきました。ですが、当然少子化に対して対策をするということは必要かと思います。それはまた別のところで御議論いただきたいと思います。
 では、少子化を所与としたときに、御質問は国債の問題だと思うんですけれども、私も、できれば国債は少ない方がいいと思います。ただ、今の日本の現状を考えますと、ある程度は財政出動をして政策を行っていかなければいけない。ただ、それは予算制約のもとで、三十兆円という額が最適な額かどうかということは一つ問題かと思いますけれども、その金額の中で予算を組むということは必要で、三十兆円をゼロにするというわけには、この日本の経済の状況ではできないというふうに考えております。
 それから、では、最適な債務の残高はどれだけかということも非常に重要な問題ですが、よくプライマリーバランスということで言われております。要するに、利払い部分と、公共投資あるいはITでGDPが上がってきて、そこで将来的に得られる増収部分、そこが合っていれば、少なくとも今の債務は金利のところで膨らんでいくということはないわけですね。ですから、まず一つは、そういう観点で現状を維持するということがあるかと思います。
 これは一つ極端な話ですが、そのときに、現状の国債をそのままずっと永遠に維持するということも可能かと思います。それは、国債を国民の金融資産の一つとして考えていくということで、今の残高で維持するということは可能かと思います。
 ただ、そのときに問題なのは、私のきょうの説明にありましたように、ディマンドサイドが今の国債の残高を最適な量と、これは金融資産運用の観点からですが、そのときに、資産運用する側のポートフォリオの中で日本の国債の量が最適な比率かどうか、量かどうかというところで、もしそれが多過ぎるということになれば、最近のように国債の利回りが高くなってくるということになるかと思います。
 以上です。
松野(頼)委員 ありがとうございました。
 続きまして成川公述人にお伺いしたいんですが、今、失業率五・六%という現状であります。それと同時に、これから就職をしようとしている新規の学生の皆さんというのはこの失業率の中にあらわれてこないんですけれども、本当に就職難で今苦しまれているわけであります。ですから、そういう部分まで含めると、これから職を求めようとする若者と、今雇用が危ぶまれている中高年の皆さんとの労働力のバランスというものを考えると、潜在失業率というのは五・六どころではないんではないかなというふうに思うわけであります。
 そして、随分私たちも連合の皆さんとおつき合いをさせていただいて非常に思ったイメージは、労働組合の皆さんというのは随分変わったなと。というのは、労働組合の皆さん同士で自分の会社への営業をしてみたり、どうせほかに出すならうちにくれよといって売り上げの助けをしてみたりとか、非常に経営者のような感覚で、組合運動を通じて自分の会社のことを考えているという時代に今入ってきているということに、私は本当に、接しさせていただいて大変な驚きと大きな期待を持っている次第であるわけです。
 しかしながら、その中で現実は非常に厳しくて、どんどん会社の売り上げは下がってくる、固定費の人件費は下げなければいけないということで、リストラが行われているわけでありますが、現状の、失業者の皆さんに対する国の、特に失業給付金を中心とした支援と、先ほど少しお話にありましたけれども、再就職の支援、もう一歩踏み込んでこういうところまでしていただければありがたいという案がありましたら、お教えいただきたいと思います。
成川公述人 失業は御指摘のように大変今厳しい事態で、さらにこれは改善の見込みがないということがなおさら雇用不安に結びついている、こういうふうに思っております。
 失業統計は、要するに、労働市場に入ってきませんと失業者にカウントされない、いわゆる職探しをしていない人は失業者に入ってこないということで、一たん離職をして職探ししたけれども、なかなか再就職できないということで家庭に戻ってしまう、職探しをやめるということになりますと、これは非労働力という概念になりまして、失業に入ってきません。こういう方が大変ふえているのは統計的にも明らかであります。だから、実質的に職があれば働きたい、こういうことで考えれば、今の五・六%の失業は数%上がって八%あるいは九%の失業率になる、こういうふうに見て間違いないというふうに我々は受けとめてございます。それだけ今大変厳しいということでございます。
 それから二つ目に、労働組合自身が企業経営の中でいろいろな協力をふやしておる、こういうことでございました。前々から、日本の労働組合は、企業経営者とよく話し合いをする中で労働組合員の労働条件改善を目指しているわけでございます。
 一番今厳しいのは、中堅、中小の組合がどれだけ努力をすればみずからの企業が維持され、そこで雇用が維持されていくのかということが見えなくなりつつあるというのが組合員からの非常に強い危機感でございます。そうなりますと、早目にやはり企業経営をしっかりしてもらわないと、組合員の雇用あるいは従業員のこの先の雇用が見通せない、こういう事態でございまして、早目にしっかり交渉する、そして、組合員自身がやれることであれば組合も考えていい、こういう態度あるいは方針をとっているということでございます。
 しかし実際は、働くということは、自分の職場で、自分の職種のところで働くというのが本来でございまして、そういう形の社会にしっかりしませんと、それぞれ働く人の能力自身、十分発揮できないということで、これは全く臨時的にやっているというふうに私は受けとめてございます。
松野(頼)委員 ありがとうございます。
 続きまして、竹内公述人にお伺いいたします。
 ちょうど竹内公述人がインタビューにお答えになられたのかもしれませんが、「発想の転換が必要な社会資本の整備」という、二〇〇〇年五月に「改革者」という中でインタビューに答えられ、非常に目からうろこが落ちる思いで、新しい時代の社会資本整備と公共事業ということを書かれていらっしゃいました。そして、先ほどのお話の中でも、国がやる公共サービスと地方がやる公共サービスをはっきり区切るべきだというふうにおっしゃっていて、全くそのとおりだと思います。そして、先ほど地方交付税、また地方公共団体の歳出歳入のお話がございました。
 その中で、私が非常に思うのは、ここまでのサービスは地方公共団体、公の部分がやるけれども、それ以上の部分はもう公の部分ではやらないんだという線引きを考えるべきじゃないかと思います。
 例えば、具体的に言いますと、上下水道、また、生活に必要なごみの収集だとか、もちろん道路もそうかもしれません。道路は、国と地方、また考え直す必要があると思うんです。それは、まず絶対に生活必要インフラとして公の部分でやらなければいけない。それに対して住民がどれだけの対価を払っていくかという部分と、よくバブルのころに言われて、今もまだ建設がされ続けていますけれども、豪華な庁舎とかコンサートホール、イベントホール、例えば三千三百弱の地方自治体がそれぞれ全部つくり始めている。また、運動施設をつくってみたり、そういう部分を一体どういうふうにこれから扱っていくべきなのかということを考えていかなければいけない時代に入っているんじゃないかなというふうに私は思うわけであります。
 ですから、その辺の線引きのお話と、先ほど地方税というお話が出ました。地方税の中で一番私はずっと固定資産税というのを追いかけておりまして、その税収が地方自治体の歳入の最大の柱となっています。この固定資産税というものが、平成六年の通達によって、全く国会の決議を経ないままに増税されている。地価は四分の一に下がっているけれども税収の額が全く減らないという現状があるわけです。
 しかしながら、一方、地方自治体の財政を考える場合には、これが一番大きな安定した税収ですから、ここは下げないんだということで、やはり、下げないでくれ、下げないでくれという声も現実に多いわけです。
 ですから、きちっとした税収を確保しながら固定資産税を適正な額に抑えた場合に、今の地価の下落と同時に固定資産税が下がった場合に一体どこからどういう形で持っていくのか。資産から大きく課税をして取るのではなくて、先ほど地方住民税の話が出ましたけれども、広く薄くどうやって取っていくのか。もし展望があったら、その二点についてお教えいただければと思います。
竹内公述人 まず一点目の、国と地方の切り分け、それから地方の中でも民営化ができる部分との切り分けということについては、大変賛成でございます。特に、これからの社会資本というのは、計画ありきではなくて、需要に合わせて調整していくという形になっていきますと、今までのような何千キロとかそういう考え方ではなくて、もっときめ細かい、運営主体のものに変わっていくと思うんです。
 その点では賛成なんですけれども、最後におっしゃった民営化可能な分野ということについて言えば、やはり、民営化可能な分野は、収入は料金になってくるというふうに思います。料金がある程度、八割とか行っている場合は、もう民営化可能な分野ということでどんどん民間に移管した方がいいと思いますし、今おっしゃった上下水道や廃棄物の分野でも、例えば東京都におきましては料金収入が上水道だけで三千四百億円ぐらいありまして、むしろ黒字体質になっております。こういう分野はむしろ民間で十分やっていける分野だと思いますので、都市部においては民間が力を振るえる分野はまだたくさんあると思います。
 それから、最後におっしゃった地方税収の中の固定資産税頼りという部分ですけれども、確かに固定資産税というのは、余り努力をしないで安定財源として今まで考えられてきたんですけれども、私は、住んでいるだけで税金を取られるというのは非常に問題があるんではないか。売ったときに取られるのは仕方がないんですけれども、住んでいるところで税金をかけるというよりは、物を買ったりサービスを買ったりというところで税金が動くという考え方に移行していくべきではないか。固定資産税の上がりぐあいが、いろいろな調整を入れた、評価額の七割まで何とかという……(松野(頼)委員「平成六年」と呼ぶ)そうですね。そういうふうな調整をしたことによって、恐らく現実の所得と皆さんが払える所得との乖離というかギャップが出てきている場合があるんじゃないかということについては、もっと緩和するというか、そんなような方法もあるんではないか。そのへこんだ部分は、先ほど申し上げたように、サービスとの対価関係で解消していくというようなことが重要だと思います。
松野(頼)委員 続きまして、佐高公述人にお伺いしたいと思うんです。
 今の小泉内閣のお話でありますが、確かに、銀行に対して甘いというふうに言われる。私、まだ初当選をして二年で、余りこの政治の世界になれていないわけでありますが、今回の銀行の救済、公的資金注入の話、それは以前からもちろん見ていますが、全く不思議でならないわけであります。
 おっしゃったとおりに、経営責任をしっかりとらせる、当たり前のことでありますし、また、健全な銀行になぜ公的資金を入れるのか、全く不思議な話でありますし、もし本当に政治がやるべき部分で考えるのであれば、ルールをきちっと決めること。どこまで資本が劣化したら公的資金を入れなければいけないとか、この銀行は何万人の従業員がいるから、また預金者なり融資先がこれだけの数あるから、社会的不安を招くからここは救済をするんだとか、個別案件でそれぞれ政治が介入をしてやることが非常に私はおかしいことだと思います。
 であれば、従業員何万人以上、預金高何百兆以上の銀行はというルールをつくって、そのルールに当てはめて、今度の案件はこのルールに当てはまるからこういう処理をします、このルールはこういうことだからこういう処理をしましたという、だれが聞いてもはっきりとわかるルールをつくるのが政治の役目ではないかというふうに思うわけであります。まずその辺の御意見を一点。
 そして、いろいろ本とかを書かれているので、きょうのお話とはちょっと離れるかもわかりませんが、二十一世紀に入りまして、これからの時代の日本の政治のシステムがどうあるべきかということ、非常に私は今のお話でもあいまいな部分が多い。漠然と、もし外国の人にこれは何でこうなったんだというふうに質問をされた場合に、それが説明できないようなことで決められている案件が余りにも多いということが、非常に私自身も疑問でありますので、その辺をお聞かせいただければと思います。
佐高公述人 おっしゃるとおりだと思いますし、銀行についても、さっきのアメリカに甘いというのがありまして、つまり、長銀の後の新生銀行は、例の瑕疵担保条項にしても、考えられないような甘いものをあれしているわけですね。だから、そこもやはりおっしゃるようにきちっとしたルールでやっていかなきゃならないんだろうと思います。
 政治のシステムということについては、私は、むしろ企業の中のことをもっと透明性を持ってやらなきゃならないというふうにいろいろ書いておりまして、政治もやはり一番大事なのが透明性、公開性だと。そういうものをどういうふうにつくるかというのは、松野さんなんかと一緒にこれから考えていきたいと思います。
松野(頼)委員 皆さん、一問ずつどうもありがとうございました。
 時間がありますので、今のデフレ対策についてお話を伺いたいと思いますが、まず小川先生、今のデフレ対策、私が非常に思うのは、今のこの日本の不況というものをマクロで考えるんじゃなくて、一つ一つの企業を考えていかなければ、ミクロで見ていかなければいけないんじゃないかというふうに私は持論を持っているわけであります。
 中小零細企業を見てみますと、何とか本業は売り上げ二割減、三割減で抑えている、けれども、担保に出している土地の価格が数字上、毎年毎年三%、八%と下落をしていくことで資産の劣化が行われている、担保が劣化しているために全く金融機関から融資が出てこない、運転資金さえも貸してもらえないという現状だと思います。そして、相変わらず金融機関は土地を担保にとり、本業の部分を見てくれずに運転資金を貸してくれない。その集合体で、マクロで考えて、日本のこの不況が全く脱却をしないんではないかと思います。
 そして、不良債権の処理、処理と言われていますけれども、不良債権を一つずつ見ると、これはもしある程度地価なり株価が持ち上がっていけばすぐに優良債権になるわけでありますね。すぐ切り離して、そこを倒産させて、帳簿から外せば不良債権の処理になるというふうに言われていますが、それをRCCに持っていったんでは、きのうも公述人からお話があって、本当にそのとおりだと思うんですが、ただただ金融機関の不良債権を国につけかえただけじゃないかと。実際、一つ一つのミクロの案件で見ると、全く不良債権の解消にはなっていないというのが現実ではないかというふうに思うわけです。
 ですから、例えば土地に対する政策、土地の値段を、これは上げるというとまた問題なんで、下げるのも私は問題だったと思うんですけれども、上げるというのも問題で、ですから、ある程度税制を緩和してやることで流動させて、自然にマーケットプライスの中で上がっていくという状況をつくり出す税の軽減をしていくべきではないかというふうに思いますけれども、小川先生のお考えはいかがでございましょうか。
小川公述人 まず、ミクロで見ていくべきだ、それはそのとおりでございます。ミクロの積み重ねがマクロかと思います。
 そこで、金融機関が土地担保で貸しているところの問題点ということですが、本来、金融機関がしっかり企業の状況を見て、そして金融機関の中でリスク管理すればいい問題なんですけれども、恐らく日本の金融機関はそれができない状況、あるいはもしかするとそういう能力がない金融機関であって、あるいは今もそうなのかもしれないと思います。そうすると、やはり確固たるものが必要になるわけですね。
 ただ、そのときに、土地の価格が下がって担保にした価格が下がってくるということが問題になるかと思います。そのときに、では、土地の価格をどうやって下げないようにするかということで、一つは税制上の措置ということは考えられると思います。ただ、税制上の措置というのは、一回税金の税率を変えるということで、それはその年は効くでしょうけれども、その後、また下がろうとしたときに、またそこで税率を変えていくということで、ずっと続けていかなければいけないという可能性もあるかと思います。
 むしろ私は、今の問題は金融機関の不良債権の問題かと思いますので、それを処理していく。先ほどRCCの御批判がありましたが、御批判の点もあるかもしれませんが、ただ、市場価格で不良債権を売却していくということになれば、それは地価も流動しやすい値段になっていくかと思いますので、そういう意味では、私はもう一つの面では評価できるところはあるかと考えております。
 以上です。
松野(頼)委員 今の土地の問題なんですが、竹内先生はもっと本質のことをおっしゃっていまして、ヨーロッパでは、建物、その設備に対しての価格であって、土地の値段というのは余り関係ないと。本当にそこまで日本も行き着けば、より一層いいことだというふうに思うわけです。土地を買うお金で、十分な、例えば今のコストの二倍のお金が建物にかけられれば、より一層その建物は充実するわけでありますから、そこが理想の部分なんだろうというふうに思うんですけれども、今までのバブル崩壊からずっと日本の行ってきた土地政策、また金融機関の行ってきた土地政策、やはり土地を担保に大量のお金を貸し付けてしまったがために、そこまで行き着くのはちょっと現実的には難しいのかなというふうに思うんです。
 本来は、土地はある程度の値段で安くて、そして建物の価値に対してユーザーが対価を払ったり設備投資をしたりというのが大体欧米諸国、当たり前の話ですし、また、日本のように二十年、三十年ではなく、五十年、六十年、百年というスパンでその建物を見ていくような価値観というのも、全く日本とは違うところであるわけであります。
 ですから、今後、日本がそういうふうに向かっていくためにはどのような方策をとったらいいのかということをお聞かせいただければと思います。
竹内公述人 大変いい御指摘をいただきました。先ほど需要不足という話もございましたけれども、本来的に日本はまだ住宅、オフィス等々を見ますと非常にレベルの低い状態にありまして、一つ耐久性というものを取り上げましても、例えば百年もつ建物というのは一体あるのかというと、ほとんどない。それから、分譲価格が必ずしも耐久性と連動していない、お隣の物件との比較で決まっているというようなことで、ある面で、質的な評価はほとんどなされていない状態で架空の取引が行われているわけでございまして、その部分が土地価格ということでいわば隠れてしまっていたわけです。
 今は、そういう意味ではタイミングが非常によくて、土地価格が下がってきたので、いよいよ建物の資産価格をまさに会社の資産にしたりというようなことで、資産評価価格というものを考え直した方がいいと思うんですね。それを、まさにキャッシュフローと質と耐久性と回転率でもってやっていけば、いいものをつくれば、そこにまた新しい需要が生まれるという循環が出てくると思うんですね。
 そういう意味では、今、デフレ対策ということで不良債権処理というような後ろ向きの対策もありますけれども、今こそ、住宅、オフィスビルの新しい投資の方法、不動産証券というのもありますけれども、これはまさに資産評価なくしてできないものでございます。それから、今までの日本の技術、工法とか考えると、五十年の耐久性のものは十分つくれますし、百年のものは十分つくれます。しかし、それを評価してくれる人がいないからそれができないわけであって、まさに技術はあるけれども使えない、この問題が一番大きいというふうに思います。
松野(頼)委員 確かに、税制でも、コンクリートだったら五十年、コンクリートといったっていろいろあるわけですよ。固定資産評価でも、もっとびっくりするのは、再建築費評価法といって、塩化ビニールだったら幾ら、じゅうたんだったら幾ら。そのじゅうたんだって、平米何百円から何万円まであるわけでありますから、そういう何か画一的な、昔のロシアの重量税じゃありませんけれども、重いからどれだけの税金だみたいなところがまだ日本の税制には非常に残っていますので、その辺をどんどん声を上げていただいて、そして、建物なら建物、その建物に対しての対価というものをしっかりと評価する方法というものをどんどん逆にお訴えをしていただければありがたいと思います。
 最後に、成川公述人にお伺いいたします。
 今の労働市場、労働条件の中で、失業をどうやって抑えていくのか。先ほどワークシェアリングのお話がございましたけれども、ワークシェアリングの現状というものを教えていただければと思います。
成川公述人 失業をどうやって抑えていくかということですが、先ほどの質問に、私、ちょっと答え漏らしましたけれども、やはり失業を下げていく社会をつくるんだという、国民、政治、そして企業、そしてまた働く者、気持ちを一つにするのが大変大事であると思います。残念ながら、今の政治の中では、失業を下げるというのが政府の目標に掲げられていないんです。これはぜひやはり政府として掲げて、それぞれ努力し合うという形をしっかり政府が国民に提示していただくということが大事だと思います。
 具体的には、いろいろな政府の施策の中には雇用をつくり出す関係の施策が入っているんですが、これがどのぐらい雇用をつくり出すのかということをみずから明らかにしておりませんし、それを政策目標に掲げていない。そのことによって、せっかくやったことが、ある程度は雇用をつくっているんだけれども、意識されないがゆえに十全に発揮できていないという問題があると思います。
 こういうことで、それぞれの政府の施策、特に公共投資等の施策をしっかり評価していただいて、その評価基準の中に、どれだけ地域の雇用を維持する、あるいはつくり出すのかということを目標に入れるべきだ、こういうふうに思います。
 と同時に、今、労使の間では、雇用をどうやって安定かつまたつくり出すかという話し合いがされております。その一つが、先ほどもちょっと紹介しましたが、ワークシェアリングであります。
 我々としては、労働時間を短縮する中でこれを分かち合うということについて、今、労働組合の内部で議論し、そこまではやろうではないかという話をしております。実際、直面している組合は、これ以上賃金を下げられたらたまらない、こういう声が強いのが実態です。しかし、雇用が安定し、社会の安定につながり、それが新しい我々の未来をつくっていくということであれば、やはり失業はふやしてはいけないというのが組合の今の議論でありまして、労働時間短縮で雇用をつくり出すということに組合は責任を持っていきたい、こう思っています。
 ただ、残念なのは、経営者側はこれに悪乗りしまして、賃下げもワークシェアリングだ、こういう言い方をしてきています。我々は、賃下げはワークシェアリングではない、これはあくまで経営側のまさにリストラ、合理化でありまして、雇用をつくり出す、あるいは雇用を維持するということがない限り、これはワークシェアリングとは言えない。やはりワークシェアリングの基本は、労働時間の短縮をするということを労使でしっかり確認し、それに伴って、雇う人をふやす、あるいは現状の人員を、しっかり雇用を安定させるという協約を結ぶのが大事だ、こう思っています。
 同時に、ぜひこれは政府にもお願いしたいんですが、労使それぞれ、働く者にとっては月収はダウンするという痛みを伴っているわけで、経営側はしっかりその中で雇用を支えていただくということでやっていただかなければならない。安い労働者でパートなどに振りかえるということは我々としては認められない。やはり質のしっかりした労働者を雇っていただくということもやっていただきたい。
 そういう意味で、ぜひ機会均等を、労働時間の違いだけで賃金なり労働条件に差が出るというふうな、今往々にして日本はそういう事態にありますけれども、労働時間の違いだけで、いわゆる短時間労働者とフルタイム労働者の間での賃金格差、労働条件格差がないような形をルールとしてしっかり定めていただきたい。機会均等と言っておりますが、この法制化をお願いしたい。
 あわせて、やはり、政府自身が失業を下げるということに全力を挙げているんだという姿をしっかり国民に示していただきたい、そう思います。
 いろいろな形があると思いますが、一つは、いろいろな支援の措置をとるということがあると思います。もう一つ訴えたいのは、日本では、能力開発、職業開発の仕事が大変弱いんですね。企業に任されて、公的な分野が大変弱い。しかし、これでは、新しい日本のレベルアップした産業あるいは技術を支えられないと我々は思っておりまして、ここで発想を転換しまして、やはり十年先を見据えて、我々働く者のレベルアップ、日本の国民のレベルアップ、職業能力のレベルアップに政府みずから汗を流すという対策をぜひ抜本的に強化していただく、これが大事じゃないかということをお訴えしたいと思います。
松野(頼)委員 公述人の皆さん、どうもありがとうございました。終わります。
津島委員長 次に、達増拓也君。
達増委員 公述人の皆様、大変お疲れさまでございます。
 まず、佐高公述人に伺いたいと思います。それは、鈴木宗男問題についてどう考えるかということであります。
 政官業癒着の構造こそ我が国最大の構造問題だと考えております。政治家による口きき、不当な圧力、あるいは秘書や元秘書も含めてですけれども、そういうものがある限り、財政の健全化、行政の改革、そういったことはできないわけですし、また、民間の活力も活性化していかない。政官業癒着の構造を改革することなくして、本当の構造改革というのはあり得ないと思っております。
 鈴木宗男議員の問題については、NGO会議に出す出さないという問題だけではなく、ODA予算、アフガニスタンのみならず、アフリカ諸国、そして北方領土関係の支援事業、そういった予算にも大きく関与し、また、農林水産省関係の予算にも関与している。そして、色丹島のディーゼル発電機については、それを受注した企業から約一億の献金が、これは自民党本部の方に献金が行われているということであって、単に一政治家個人としてそういうことをやっているんではなく、これはもう、あるときは閣僚として、またあるときは党幹部としてオール自民党をバックに行動し、そして、その結果も、オール自民党に対して、あるときは党への寄附金、またあるときは自分から党の若手議員への寄附といった形で、非常に、自民党を中心とした今の政治、行政、それに業界が絡む、そういう構造全体の問題として出てきていると思うんですけれども、この辺、どう考えるでしょうか。
佐高公述人 達増さんは、たしか田中前外相とは激しいバトルを展開された方だと存じておりますけれども、やはり田中前外相の功績ですよね。ここまである種の腐敗の構造が具体的に明らかになったということは、そうだと思うのですけれども。
 私は、鈴木宗男問題というのは、本当に外務省というのは、外務官僚、達増さんもたしか前そうだったと思いますけれども、ここまで簡単にもろいものかというか……(発言する者あり)中井さん見ていると、そうも思えないけれども。
津島委員長 質問に答えてください。
佐高公述人 はい。やじに答えない方がいいのですね。ごめんなさい。
 それで、あそこまで問題になった後に、小町官房長が、この人事はさわれないのですと。そこまで腰抜けなのかという感じがしておりまして、私は、それこそ予算を、外務省関係の予算については、ちょっとしばらくストップした方がいいのではないか、この問題が明らかになるまで、そういうふうに思います。
 もう一つ、小泉内閣ということでいえば、小泉さんは旧来の自民党を壊すのだという感じでなったわけですよね。ところが、壊さない方向に転換したのだろうという感じだろうと思います。そういうことで田中眞紀子という人を私は切ったのだと思いますし、その辺のところが……(発言する者あり)自民党席からやじが飛んでおりますけれども、国民は既に承知のことなんじゃないかというふうに思います。
達増委員 次に、成川公述人に伺います。
 それは、小泉内閣の構造改革、小泉改革というものの理念、基本戦略についてなんでありますが、竹中経済財政担当大臣の指導のもとでつくられた経済財政白書では、構造改革というものは、要は資源の再配分だということが書かれています。非効率な部門から効率のいい部門に人やお金といった資源が移っていけば、日本の経済立て直しができるのだと。そのためには、まず非効率な部門から人やお金が出ていってもらわなければならないということで、緊縮財政と不況下の不良債権処理を組み合わせ、とにかくまず倒産と失業でむだなところから人やお金を吐き出させ、そうすれば、そうした人やお金はおのずと効率的な部門に行って、日本がよくなると。二、三年我慢しなきゃ、痛みが伴うかもしれないけれども、中長期的にはそれでいいのだという、それが小泉構造改革の基本戦略、理念であるのですけれども、このことについてどう考えますでしょうか。
成川公述人 構造改革というと、非常にプラスイメージで語られていますが、どうもこれは、英語で言いますとリストラクチャリング、リストラでございまして、まさに現状をリストラする、こういうことです。
 我々は、リストラの際には、やはりそこの一番強い部分、この先伸びる部分はしっかり伸ばす、そして整理をする部分は整理をする。これをやらなければならない。今小泉内閣のされようとしているこのリストラというのは、まさに企業と同じであって、まず切る。まず切って、そしていい部分だけ残す。しかし、これは国レベルでまず切れば失業が増大するわけでありまして、しかも、先ほど紹介しましたように、失業に対する手だては極めて貧しいという現実があります。
 やはり我々は、リストラをするときには、まずビルトです。何が伸びるのか、先行き求められているものにしっかり手当てをする、これが大事でありまして、これをやった上で、スクラップするところはスクラップして、速やかにビルトするべき部分に移していく。それもまた、ここではいろいろな能力開発なり、適応するための施策が必要なんです。おのずとそこに流れていくのではないのです。新しいレベルが要求されているわけでありまして、そこに適応できる人材あるいはそういう仕組みをつくらなければいけない。
 小泉内閣のやられているリストラは、残念ながら、そういう新しいレベルアップをするものがほとんど提示されずに、具体的にないということで、我々としては評価できない、こういうふうに思っております。
達増委員 小川公述人にIT政策について伺います。
 自由党は、全国民に携帯端末を配布という政策を考えていたのですが、その後の事態の推移に伴ってバージョンアップいたしまして、今は全中高校生、八百万人の中高校生に約十万円のパソコンを全員に配布、約八千億円かけて、一気に日本のIT化、IT革命を進めようということを今考えているのですけれども、こういった政策についてどうお考えなさるでしょうか。
小川公述人 まず、私が先ほどの御説明で言いたかったのは、パソコンの問題もありますけれども、情報ハイウエーを日本でも確立するということだと思います。
 確かに、学生、中高校生がパソコンを一台持てば、それは非常にいいことだと思います。ただ、いいことですけれども、予算制約というものもございますので、それはできればそうしていただきたいですし、それから、私、一橋大学で教えていますけれども、そちらでも、大学生でもパソコンが全員に行き渡っていない状態で授業をやっていますので、希望としてはそういうところにも入れていただきたいとは思いますけれども、それは全体の予算の制約もあるかと思います。
達増委員 竹内公述人に質問いたします。
 地方税についてかなり、受益に対する負担をきちんと対価として払っていこうという考え方、やはり地方税は応益税、国税は応能税という考え方があって、所得の再分配みたいなところは国の方でやればよく、地方はもっと効率的なサービスを提供する、そういう基本的な考え方に基づいているのでしょうか。
竹内公述人 そのとおりでございます。
達増委員 終わります。ありがとうございました。
津島委員長 次に、佐々木憲昭君。
佐々木(憲)委員 公述人の皆さん、御苦労さまです。
 時間が短いので、お二人にお聞きをしたいと思います。成川公述人と佐高公述人にお聞きをいたします。
 まず、成川公述人ですけれども、デフレ対策の問題についてお聞きしたいと思いますが、昨日、政府がデフレ対策ということで政策を出しましたけれども、その主な柱は、一つは不良債権処理をかなり強力にやっていく、二つはそのために銀行に対する公的資金投入などの支援策を一層強める、この二つが大きな柱になっていると思うのです。
 しかし、これはこれまで政府がやってきたことの延長線上であると私は思います。つまり、こういう政策を推進する、不良債権処理を強力に推進するとなりますと、当然失業や倒産というのがふえてくるわけでありまして、つまり、デフレになった原因がまさに不良債権処理でありまして、なぜそれがデフレ対策なのか、デフレ加速策ではないかというのが私の感じでございます。
 昨年六月の骨太方針でも、これはデフレ圧力になると述べているわけで、それをデフレ対策と言っているのはおかしいじゃないかと私は思うのですけれども、成川公述人はどのようにこの政策を評価されていますでしょうか。
成川公述人 デフレ対策の基本は、やはり需給ギャップをどういうふうに解消するかというのが基本でなければならない、こう思っております。特に、その中では、供給側だけを整理いたしますと、まさにまた需要が減退するということでありまして、やはり需要をどうやってしっかり支え、伸ばしていくのかという政策が欠かせないと思っておりますが、残念ながら、今回の、一次でありますか、デフレ対策にはそれが見えないということは、基本的にデフレ対策としては全く力がないのじゃないか、私はそう見ております。
 ただ、不良債権処理につきましては、やはりしっかり処理すべきものは処理をするということをしませんと金融システムに対する信頼感を取り戻せない、こう思っておりまして、しっかりした情報開示をする中で、不良債権と言われるものがあれば、それを処理するというのは必要であると思います。ただし、その際、それが職場の具体的な雇用に結びつく可能性大というふうに我々は見ておりまして、この点に対しては組合とのしっかりした話し合いが不可欠でありますし、その際、経営側の責任を明確にする中で企業再建策をしっかり講ずるということが雇用の安定のためには欠かせないと思います。
 現在までの企業再建処理は、民事再生法等を見ますと、大変経営側に甘く、労働者に厳しく、労働者だけ首を切られるという形になっておりまして、これは、我々としては問題である、早急に労使対等の中で経営再建を図る、そしてこれに対して社会的な支援が必要なものは支援をつけるという体制をつくった上でやるべきだ、こう思っております。
佐々木(憲)委員 そこで、雇用ですけれども、失業者を出さない、出た失業者に対する十分な対策、それから新しい雇用の創出、これは、成川公述人がほかの雑誌でお話をされているのを私拝見をしまして、そうだと思っております。
 そこで、最近の失業増の原因としては、非自発的失業者が非常に多い。その原因が二つありまして、一つは、中小企業者が営業ができなくなって失業者になっていく。もう一つは、企業のリストラ、とりわけ大手企業のリストラの非常に激しい進行が雇用不安を拡大しているというふうに思うんです。
 したがって、対応策として、一つは、不良債権処理を時間を区切って大量に一気にやってしまうというやり方、不良債権処理は一定程度私は必要だと思いますが、そういう手法をやはり見直す必要があるんじゃないかと思っております。それともう一つは、企業の社会的責任という面からも雇用の責任というのを果たしてもらわなければならぬと思いますが、この二点についてどのようにお考えでしょうか。
成川公述人 不良債権処理を進めるに当たりましては、先ほど述べたとおり、しっかりしたルールでやるという必要がありますし、逆に、不良債務を出している側の企業の再建ということでは、労働組合あるいは従業員としっかり話し合う中で再建策を講ずる、その際、労働者が一方的にしわ寄せを受けるということのない体制をつくった中で進めるべきだ、こういうことでございます。
 それから、雇用に対する社会的責任ということは全くそのとおりでございまして、まさに雇用を維持できないということは、次の社会の活力を失う、こういうことでございますので、企業家、組合、従業員並びに政治の場でも、本当に国民が力を出すという社会をつくるためには、失業をこれ以上ふやさない、あるいはむしろ失業率を下げる、この手だてを本当に全力を挙げて政治の中心課題に据えてやっていただきたい、こう思っております。
佐々木(憲)委員 佐高公述人にお伺いをいたします。
 来年度予算は今年度の第二次補正とワンセットというふうに見られておりまして、例えば公共事業などは、そういうふうにしますと、前年度からさらにふえていくという形になっておりまして、決してマイナスにはなっておりません。それからODA予算、これも相変わらず一兆円規模であります。外務省分がその半分。そういうふうに従来型の予算が組まれていっているわけです。
 なぜこういうふうに組まれているかということですが、やはりそこは、財界、業界、それと政界と行政、このトライアングルの相互依存関係といいますか、もっと言いますと癒着関係というのが私はかなり背景としては大きなもの、深いものがあると思うんです。今回の鈴木宗男さんの問題はその一環だと思いますけれども、こういう政官財の関係にしっかりメスを入れるということが大事だと思いますけれども、佐高公述人はこの点についてどのようなお考えをお持ちか、お聞かせいただきたいと思います。
佐高公述人 その辺も私はある種、小泉さんに少しは期待したんですけれども、公共事業の問題でも、具体的に諫早の問題とか熊本の川辺川の問題とか、そういうものをやめるんだということでなければ公共事業の見直しをするということにはならないんだろうと思うんですね。ですから、私がかけ声を呪文のように唱えているだけだと言うのは、そういう意味で申し上げたわけです。
 それから、おっしゃるように、政官業の癒着をどういうふうに断ち切るかというのは、私は今まで、官僚でそれなりの頑張ってきた官僚、あるいは保守の政治家の中でも石橋湛山とか松村謙三とか、それなりの良識を発揮してきた人の伝記を書いたりしてきたんですけれども、そのそれぞれの場でそれぞれが頑張ってそういうものをなくするということでなければならないんだろうと思うんですね。
 私は、今度の鈴木さんの問題でふっと思うのは、ムネムネ会とかいうのがあったといいますけれども、いざとなると冷たいものだなという感じが非常にしております。企業のリストラ以上に冷たいのかもしれませんし、日本の企業というのは終身雇用だと言われるけれども、一番肝心のときに、今みたいなときに守るのでなければ終身雇用にならないわけですよね。そういうものと自民党の派閥も似ているのかなという感じがいたしました。
佐々木(憲)委員 終わります。
津島委員長 次に、辻元清美君。
辻元委員 本日はどうもありがとうございます。社民党の辻元清美です。
 デフレの問題も出ていますけれども、私は、日本の経済の活性化には需要喚起というのが一つのポイントだと思うんです。この需要の喚起をするためには、何ぼ立派な予算を組んでも、その予算の執行、予算をだれがどういう形で使うかという執行のあり方と、それから政治や経済に対する信頼を回復するということが大事だと思っていますので、この二点について数名の方に伺いたいと思います。
 成川公述人にまずお伺いしたいんですけれども、私はセーフティーネットこそデフレ対策にしていくという視点が大事じゃないかなと思っているんです。これは先ほどの需要の喚起ということなんですが、今雇用対策というのは最重要課題です。しかし、その執行に当たりまして、例えば二つ事例を申し上げますと、助成金のあり方、物すごい額を積んでいるわけですが、有効に使われていない。各種助成金ばかりつくって、結局それが執行されずに終わっている。官僚に聞きましても、一応つくらなあかんねんというような答弁が返ってくる。もう一つ、職業訓練にしても、結局カルチャーセンターのようなところに流し込むというようなあり方なんですね。実際にそこに通っている人から聞いても、どこかのカルチャーセンターに行っているのと同じやと。そうなってくると、職業訓練などに本格的に取り組むシステムをつくる、また機関をつくるところに新しい雇用を生み出し、お金の使い方、執行体制のあり方という点で大きく見直さなきゃいけないと思うんですけれども、そういう問題点についてどうお考えでしょうか。
成川公述人 まさに御指摘のとおりでありまして、執行面に大いに問題があると思っております。そして、セーフティーネットこそが国民の安心から需要をつくるという見方については全く賛成でございます。
 執行体制の問題ですが、雇用対策は確かにいろいろな助成金制度があります。我々もいろいろ要求し、こういうのがありますという回答を受けておりますが、残念ながらこの利用度が大変低い、あるいは非常に利用しにくい現状にあります。
 そういうことで、今、地域雇用創出特別交付金制度が三年ぐらい執行されておりますけれども、これに対しましては、我々は、地域の労使でしっかり検討し、労使で考えた案についてこれをしっかり活用するという提案をしておりますが、行政側は、これは各県ばらばらでございますけれども、必ずしも協力的でない県もあるという実態でございます。あくまで、現場のいろいろな創意を行政はしっかり生かす、行政と現場の需要あるいは知恵を結びつけるということをぜひ行政の執行部門でやっていただきたいと思います。
 職業訓練も全く同じでございまして、カルチャーセンター等に単なる認定を与える、また、公的職業訓練、従来の考えの中だけでやっておりますが、やはり現場が今苦労し、現場が求めている人材は何かということを把握し、特に中堅中小企業などはやはりこの公的職業訓練に共同で参加する、また、労働組合あるいは従業員代表がそこに参加する中で、本当に現場が今求めている人材を中期的視点に立って育成する、こういう執行体制をぜひつくっていただきたい、こう思っております。
辻元委員 次に、金融なんですけれども、不良債権処理も、銀行の帳簿を消しゴムで消してきれいにしたらいいというものではないと思うんです。ところが、そういう議論ばかりが何かまかり通っているような気がします。
 さてそこで、この不良債権処理の事例で、きのうも私はちょっと聞いたんですけれども、ダイエーの処理について佐高さんに伺いたいんです。
 ダイエーの処理についてはきょうの新聞にも出ておりまして、一千億積み増すと。私は、中途半端じゃないか、これを本当に処理しようと思ったら、八千億から一兆ぐらいの銀行からの債権放棄的なお金が必要だろうと。そして、かつ、そうなってくると銀行に対しての公的資金、銀行を直撃しますから、公的資金を入れなきゃいけないという議論が、今この時期に、もう死活問題として出てくる。そうすると、銀行、柳澤金融担当大臣、金融庁及びダイエーなどの経営責任がどんと出てくるということで、私は、政権維持のためにダイエーを生殺しで処理したんじゃないかと考えています。
 こういう中で、金融担当大臣の責任、それから金融庁の責任というのも本委員会でかなり議論されたんですが、このダイエーの事例も含めまして、どのようにお考えでしょうか。
佐高公述人 私は、ダイエー救済というのは、はっきり銀行救済だというふうに思っています。
 不良債権という言葉は、横文字に直すとバッドローンなんですね。つまり悪い貸し出しで、悪いということは、そこに責任者が本当はいるはずなんです。ところが、不良債権と言いますと、これは官僚用語でしょうけれども、この辺にたまった水たまりみたいな感じしか与えないわけです。その辺の問題がまず前提としてあるんだろうと思います。
 私は、北海道の北洋銀行の今会長をやっている武井正直さんという人のことを褒めるんですけれども、私が褒めますと、私が批判しているやつらの恨みが全部そっちに行っちゃって大変だから絶対褒めないでくれと言われているんです。武井さんをなぜ褒めるかといいますと、あのバブルの最中に、バブルに乗っかった融資をやらなかった、断固としてやらなかった人なんです。
 それに対して、あえて申し上げますけれども、大蔵省の愚かなる官僚たちは、愚かきわまる官僚たちは、何回も武井さんに向かって、融資をふやせと言ったそうですよ。それに対して断固抵抗して、武井さんはそれをやらなかった。だから、北洋銀行が残って、ずうたいは大きい北海道拓殖銀行を引き受けることができたわけです。
 そういう例があって、そういう経営者を基準にするのか、ばかみたいに、隣の人間がやっているから何でももうかるんだということで走った大手の愚かなる銀行経営者たちを基準にするのかで絶対違ってくるわけです。その愚かなる経営者たちを基準にして不良債権問題が私は語られ過ぎているというふうな感じがいたします。
 さっき辻元さんが言われたように、柳澤さんの問題も、健全なる銀行に同額公的資金を注入したんだ、あの問題をどういうふうに決着つけるのかということでなければ新たなる公的資金の注入問題は起こしてはならないはずなんで、そこをもう一回きちっと責任をとって、だれがあれしてだれがどう責任をとるのか、そこから始まらなければ、注射するのかしないのかという見当違いの議論になるというふうに思います。
辻元委員 特にダイエー問題については、今後傷口が広がる可能性があるので、私もしつこく追及していきたいとは思っているんです。
 次に、予算の執行ということで、昨年のこの予算委員会の今ごろは何の議論をしていたか。同じ証人喚問ということで大きな焦点になっていましたKSDだったんです。毎年毎年なんですよ。そうなってきますと、どんな予算を組んでも、結局、先ほどから出ています政官業の癒着に、そのサイクルに金を流しているようでは、どぶに金を捨てているのと同じなんです。ですから、その構造をいかに断ち切るかというのは、私はこの予算委員会の非常に大事な使命だと思っています。
 そういう意味では、予算を早く通さないと景気にも影響があるから、証人喚問や疑惑解明というのは別にやってくれという話ではないと思っています。リンクしていると思います。
 さてそこで、佐高さんにもう一点お伺いしたいんですけれども、私は、鈴木宗男議員はもう哀れになってきました。この間見ていますと、これは私の感想ですが、感想と述べてから発言しないとすぐ議事録の削除と言われますので。自民党と橋本派のドル箱になっていたんやないか、金で権力を買おうとしていた、それは自民党の中の権力であり、そして政治に対する権力の執着だと私は感じます。
 そこで、政官業の癒着でこの間ずっと出てきていますのは、政治献金のあり方なんです。企業・団体献金。きのうからの質問もそうなんです。結局、企業献金をもろうて、そして癒着していく。これを一切、政党への企業・団体献金も禁止したらどうかという意見も出てきますが、その点、いかがでしょうか。
佐高公述人 私は、不良債権問題が論議されている中では、少なくとも銀行からの献金はこれからはもらわないということを具体的に決めるのでなければ、不良債権問題は、どんな論議をしても説得力を持たないというふうに思います。
 私も、さっきちらっと申し上げましたけれども、辻元さんと同じように、鈴木さん哀れだなという感じは、私も非常に哀れみの情は強い方でございますので、鈴木さん、こんなに冷たくされてどう思っているんだろうという感じが、手のひらを返すというのはまさにこのことじゃないかという感じがいたします。
 それと、さっきちらっと申し上げたんですけれども、政策担当者とか、そういう政策を行う者のある種のけじめですね。ちょっと申し上げるのがあれしたんですけれども、かつて裏の財界総理と言われた小林中という開銀総裁がいたんですけれども、この人は、池田勇人という人と非常に近かったんですね。池田勇人が大蔵大臣になったときに、その開銀総裁をやめるわけですよ。おれは池田の友人だ、そのおれが政府金融機関である開銀の総裁をやっていたのでは、池田が痛くもない腹を探られることになると。これだけのけじめがあったんですね。
 つまり、献金の話にしても、痛くもない腹を探られるというふうなことならもらうなということをぜひ申し上げたい。
辻元委員 どうもありがとうございました。終わります。
津島委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。
 公述人の皆様におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。
 以上をもちまして公聴会は終了いたしました。
 本日は、これにて散会いたします。
    午前十一時五十八分散会


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