衆議院

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第2号 平成15年2月26日(水曜日)

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平成十五年二月二十六日(水曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 藤井 孝男君
   理事 斉藤斗志二君 理事 自見庄三郎君
   理事 杉浦 正健君 理事 萩山 教嚴君
   理事 宮本 一三君 理事 末松 義規君
   理事 原口 一博君 理事 細川 律夫君
   理事 石井 啓一君
      伊吹 文明君    池田 行彦君
      衛藤征士郎君    尾身 幸次君
      大原 一三君    奥野 誠亮君
      亀井 善之君    高鳥  修君
      津島 雄二君    中山 正暉君
      丹羽 雄哉君    西川 京子君
      葉梨 信行君    萩野 浩基君
      原田昇左右君    松岡 利勝君
      三塚  博君    持永 和見君
      山口 泰明君    上田 清司君
      海江田万里君    河村たかし君
      城島 正光君    田中 慶秋君
      中村 哲治君    長妻  昭君
      細野 豪志君    米澤  隆君
      斉藤 鉄夫君    達増 拓也君
      中塚 一宏君    樋高  剛君
      佐々木憲昭君    矢島 恒夫君
      中西 績介君    横光 克彦君
      井上 喜一君
    …………………………………
   公述人
   (野村総合研究所研究理事
   )            富田 俊基君
   公述人
   (日本労働組合総連合会事
   務局長)         草野 忠義君
   公述人
   (構想日本代表)     加藤 秀樹君
   公述人
   (医療法人財団天心堂理事
   長)           松本 文六君
   予算委員会専門員     中谷 俊明君
    ―――――――――――――
本日の公聴会で意見を聞いた案件
 平成十五年度一般会計予算
 平成十五年度特別会計予算
 平成十五年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――
藤井委員長 これより会議を開きます。
 平成十五年度一般会計予算、平成十五年度特別会計予算、平成十五年度政府関係機関予算、以上三案について公聴会を開きます。
 この際、公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
 公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。平成十五年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。
 御意見を承る順序といたしましては、まず富田公述人、次に草野公述人、次に加藤公述人、次に松本公述人の順序で、お一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
 それでは、富田公述人にお願いいたします。
富田公述人 御指名をいただきました野村総合研究所の富田俊基と申します。
 平成十五年度総予算について、意見を述べさせていただきます。お手元の三枚組みの資料も御参照ください。
 十五年度予算では、一般歳出は十四年度並みに抑制されましたが、税収は歳出合計の約半分にとどまり、国債依存度は四四・六%にも達する。この比率は、平成十一年度の四二%、さらには終戦直前の昭和十九年度の三四%、昭和二十年度の四〇%を上回り、我が国史上最悪となる。
 さらに、驚くべきことに、特別会計の借入金を含めた国債残高のGDP比は、第二次世界大戦末期の水準にまで上昇している。資料一ページの図にごらんのように、二〇〇一年度末の国の債務残高のGDP比は一二〇%で、ミッドウェー海戦のあった一九四二年の一〇五%を超え、学徒出陣の一九四三年、一三三%に迫ろうとしております。
 しかも、一九九〇年代以降は、戦前の高橋是清財政、またアメリカのニューディール政策という典型的なケインズ政策が実行されたと言われる時期よりも、急速なテンポで国債の累増が続いている。さらに今後も、高齢化進展による社会保障関係費や不良債権処理など不可避の支出増加だけを考慮しても、急速な国債累増が当分続かざるを得ないであろう。
 加えて、国債や特別会計以外にも、政府は巨額の保証を行っている。政府保証債のほかに、郵便貯金やペイオフが凍結されている銀行預金、さらには地方債や特殊法人にも暗黙の政府保証を行っている。これらのオフバランスシート債務は、いつ顕在化し、国債に形を変えるとも知れないのである。
 これらの理由から、国内で最も信用力の高い金融資産である日本国債の国際的な信用は、既に揺らいでおります。
 資料の二ページをごらんください。上の図にごらんのように、日本国債には、同じ満期のイタリアの円建て国債よりも高い金利がついております。国際金融市場は、日本国債にリスクプレミアムを求めているのであります。
 この一方、国内では歴史的な低金利が続いています。最近では、十年国債の金利は〇・八%ほどであります。また、先週入札のありました二十年国債の金利は一・四%でありました。この低金利は、かつてのように統制によって実現しているものではありません。国内の金融市場は自由化され、海外との資本移動も自由であります。したがって、長期国債の金利が極めて低いということは、我が国の経済成長率とインフレ率が将来にわたって低いであろうとマーケットが予想している、それを反映したものと考えられます。
 また、長期金利は将来にわたる短期金利の予想平均値で決まるわけですので、長期国債の金利が極めて低いということは、今後かなりの期間にわたって、日本銀行の量的緩和政策が採用され、短期金利がゼロ近傍で推移し続けるであろうとマーケットが見ていることの反映であります。実際、二ページの右下の図にごらんのように、九九年二月からのゼロ金利政策、そして二〇〇一年三月からの量的緩和政策のもとで、ゼロ金利の影響が満期の長い国債に次第に波及してきました。
 ペイオフが凍結され、銀行には預金の流入が続いています。そこで、銀行は大量に国債を購入してきました。このため、銀行も、将来にわたる金利の低位安定を望まざるを得ない状態に陥っております。また、日本銀行の量的緩和政策によって流動性の大量供給が続いているが、長期金利に織り込まれるはずのインフレ期待は醸成されず、逆にインフレ期待が封じ込まれているかのようであります。
 資料の三ページにお移りください。
 こうした状況から抜け出ようということであろうが、一定期間後に一定のインフレ率を実現しようというインフレ目標政策が提唱されています。それがどのような方法で実現可能なのかは疑問ですが、仮にこの考え方が実施されて、インフレ目標政策の推進論者の想定どおりに期待インフレ率が上昇したといたしますと、それに見合って長期金利は上昇に向かうでありましょう。
 また、インフレ目標の実現に向けて、日本銀行による国債引き受けや、社債、株式、不動産などの購入といった非正統的な方法がなりふり構わずに採用されると、国を挙げてインフレで国債を削減しようとしているのではないかとマーケットは予想し、日本国債はさらに大きなリスクプレミアムを求められ、長期金利は上昇するであろう。つまり、インフレ目標政策の推進論者が期待する実質金利の低下と、それによる景気拡大は見込みがたいということであります。
 さらに、最近では、非リカードと称する財政拡大策が提唱されています。リカードは、景気対策を行っても、その財源は将来の増税で賄われると国民が予想するので、景気対策は効果がないと考えていました。これに対して、非リカード的政策は、将来に増税を行わないと政府が約束して景気対策を行うと効果があるという考え方です。つまり、非リカード的政策とは、財政再建を行わないと約束して国債の信用を低下させ、デフレから脱却しようという主張であります。
 しかし、今日ほど国債が著しく累増した状態で減税や財政支出の拡大を行うと、非リカード的政策のねらいとは逆に、景気に深刻な悪影響を及ぼす危険が大きい。今でも多くの国民が財政の持続可能性に強い懸念を持っているわけだから、大規模な景気対策が行われると、さらにその懸念が強まってしまいます。そして、年金、医療、教育など、これらの諸制度が崩壊し、その負担が将来世代ではなく現在の自分たちに、私たちに降りかかってくるとついに悟らざるを得なくなります。こうした不安感から、個人消費は抑制され、加えて国内から海外へと資金流出が加速するでありましょう。このため国債金利は上昇し、民間投資も悪影響をこうむる。これが非ケインズ効果と呼ばれる現象であり、一九九〇年から九三年のスウェーデンや、九二年から九五年のイタリアなどで発生した現象であります。
 このように、手段を選ばないインフレ目標政策や、国債の信認を揺るがせる非リカード的景気対策、財政政策の影響は、不確実、不確定で極めてリスクが大きい。
 既に我が国は一九九二年八月以降、累計で十三回、金額を合計いたしますと百四十兆円もの景気対策を発動してきました。また、現金など日本銀行の負債であるマネタリーベースのGDP比は、量的緩和政策のもとで上昇し、戦時期を除いて日本銀行創設以来の高水準に達しています。
 しかし、これらの拡張的なマクロ経済政策によって日本経済が持続可能な成長経路に復帰できたわけではありません。
 九〇年代以降の我が国経済は、冷戦終えん、そして情報通信技術の革新という世界レベルでの大きな産業構造の変化に直面してきました。したがって、企業も銀行もそれへの対応を積極的に進めねばなりませんでした。しかし、時間稼ぎのためといって財政金融政策の総動員を繰り返してきました。景気対策が繰り返されるたびに、企業は過去の経営に安住し、事業の再構築に取り組もうとしなくなったのではないか。民間部門は政府への依存を強め、知らず知らずに自助努力を怠り続けてきたのではないかと考えられます。この結果、産業の新陳代謝が進まず、非効率な産業が温存され、日本経済は次第に自律回復力を失ってきたのではないかと考えられます。
 我が国は、マクロ経済政策という政策資源をほぼ使い果たしてしまいました。しかし、民間の力を最大限に引き出す構造改革が残されています。今こそ、国家総動員体制ともいうべきマクロ経済政策への依存症から脱却し、市場経済と民主主義の原点である自立自助の精神に立ち返るべきである。したがって、ぼたもちが落ちてくるのを待つ人たちをふやしてきた保護救済型の諸制度を、新しい時代にふさわしい自立支援型の制度に再構築することが必要であります。
 こうした観点から十五年度予算を見ると、新しい時代に向けた改革の萌芽が幾つか見られる。
 一般歳出は、自然体でいくと高齢化の進展で一兆五千億円も増加せざるを得ないところをほぼ横ばいに保ち、その中で都市再生、科学技術、環境など四分野に予算の重点配分が図られてきました。
 地方分権に向けて、交付税と補助金の削減が行われた。かねてより指摘されてきました国の過剰関与、そして地方の個性喪失という問題の原因は、地方交付税によって国が地方に財源保障を与えてきたことに原因があります。この財源保障によって、地方財政には歳出を拡大させるというインセンティブが埋め込まれ、地方の財政にモラルハザードをもたらしています。交付税による財源保障を残したまま地方に税源移譲をしても、問題は全く解決いたしません。このため、十五年度予算では、地方財政計画の規模が削減され、交付税総額が抑制された。地方財政に歳出削減と課税自主権の発揮という自助努力が働く仕組みをつくるべく、ようやく小さな第一歩が始まったと言えましょう。
 公共事業予算では、便益の乏しい事業を抑制するために、新規事業の採択に費用便益分析が活用されました。社会保障関係費では、前年の消費者物価の下落に応じた年金給付額のマイナス改定が、初めて法律どおりに実施されます。年金受給者にはネガティブに受けとめられるかもしれませんが、現役世代が年金制度に抱いています不公平感が軽減され、年金制度の持続可能性への懸念が改善に向かうことが期待できます。
 また、義務教育予算では、これまで硬直的な国庫負担金制度のもとに置かれてきたわけですが、地方の自由度を拡大するための改革が始まりました。税制の面では、一兆五千億円の減税が行われるが、国債の信用を揺るがせる非ケインズ効果を発生させないために、将来の増税を約束し、多年度税収中立が守られるということは、ぎりぎりの選択と言えましょう。
 次に、財政投融資計画についてでありますが、十四年度比で一二・六%減少し、十六年前の昭和六十二年度の財投規模をやや下回るまでに削減されました。財投計画は毎年度のフローの計画を示すものであるが、そのストックである財投計画残高も減少します。新規の融資額が過去の融資の回収金を下回るようになったのです。独立行政法人への移行が決まった住宅金融公庫への融資縮小など、特殊法人改革が財投規模の縮小に寄与し始めたと言えましょう。
 このように、十五年度予算を全体として見ると、新しい時代に向けた芽が少し出ています。今後、民間活力をさらに引き出し、同時に財政の持続可能性を回復させて国民の安心が確保できるように、財政構造改革を加速させていく必要があります。
 その際、国の信用保証を国債に集中し限定する方向で改革を進めることが必要であります。特殊法人や郵政公社、地方公共団体、民間銀行、中小企業などの資金調達に国の信用保証がつけられております。国が信用保証を行いますと、これらが活発に経済活動を行うと思い込みがちでありますが、自分でリスクをとらなくてもよいということで、リスクとリターンの綿密な計算が行われず、成果を生まない支出や投資が行われてしまいます。市場によるリスクの配分機能が低下し、市場の規律がゆがみ、経済の成長が阻害されます。そして、このリスクは、結局は国民全体に転嫁されることになってしまいます。
 我が国の金融・資本市場と経済に市場メカニズムが働く範囲を拡大させるために、適切な公的債務管理を行い、国による信用保証を厳しく制限していくことが必要であります。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
藤井委員長 ありがとうございました。
 次に、草野公述人にお願いいたします。
草野公述人 御紹介をいただきました草野と申します。
 本日は、公述の機会を与えていただきましたことにまずもって御礼を申し上げたいというふうに思います。私は、労働組合、連合の役員でございますので、勤労者の立場からの御意見を申し上げさせていただきたい、このように思っております。
 まず、私たち勤労者の生活実態の現状を御紹介申し上げ、二〇〇三年、平成十五年度の政府予算案で対策を講ずべき課題について申し上げたいというふうに思っております。
 勤労者の生活は、先生方御案内のとおりだと思いますが、大変不安の高まりの中にございます。昨年九月に実施されました日銀の生活意識に関するアンケート調査、これは第十五回だと聞いておりますが、その結果を見ますと、現在の暮らし向きが「苦しくなってきたと思う」という方は四九・九%で、前年九月の調査の四五・六%よりもさらに増加をしてきております。これに対し、「ゆとりが出てきたと思う」はわずか四・八%でございまして、「どちらとも言えない」が四五%になっております。また、同じ調査結果を見てみますと、家計の収入を一年前と比べると減ったとするものが五一%と初めて半数を上回っておりますし、勤め先での雇用、処遇についての不安を感じている方々は八割強を占めるに至っております。これは、お手元にお配りしております図表1の方に出ている数字でございます。
 続きまして、私ども連合が昨年九月に実施をいたしました、組合員二万三千名から回答をいただきましたアンケート調査によりましても、世帯の年間収入が減ったとの回答が三五%と、二年前よりも四ポイント増加をいたしております。また、消費支出を減らしたという回答が二割を超えているところでございます。また、職場の不安では、収入が大幅に低下するというのが三八%、仕事がきつくなったというのが三六%、配転、転職で仕事が変わるとの回答は約三割、二九%に達しているところでございます。
 マクロの経済統計におきましても、国民の生活の厳しさは明らかでございます。御案内のとおり、失業は、戦後の統計調査開始後最悪の三百三十万人を上回る高い失業者数でございまして、失業率も最悪の五・五%に達しているわけでございます。勤労家庭の収入は、九八年より実質、名目ともに前年比マイナスでございまして、二〇〇二年の家計収入は九七年の値よりも名目値で九・五%も減少をしております。これに税金、社会保険料の負担を控除いたしました可処分所得で見てみますと、九八年以降はやはり五年連続で前の年の値よりも減少しております。二〇〇二年の可処分所得額は九七年の額よりも九%も減少となっているところであります。
 このように、勤労者家計の収入、可処分所得が数年にわたって落ち込んだことは戦後でも前例のない事態でございまして、さらに、五年前と比較して約一割も減少したということは極めて憂慮すべき状況ではないか、このように考えているところでございます。
 それでは、このような勤労国民の生活の不安増大、失業増、そして収入減に対しまして、どのような対策が講じられてきたのでございましょうか。
 小泉内閣の経済運営の基本方針は、二〇〇一年六月の経済財政運営の基本方針に見られますように、官より民へとのかけ声で、規制緩和など市場原理を優先するサプライサイドの構造改革の策、また財政再建を意識した歳出規模圧縮の財政健全化主義を重視した政策がとられてきた、このように認識をいたしております。しかし、このような方針では、景気低迷からの脱却は実現できていないというのが現状であります。
 逆に、デフレが継続する中で不良債権が増大し、二〇〇二年十月には改革加速のための総合対策、さらには十二月には改革加速プログラムを決定し、不良債権処理の加速を最優先課題と位置づけてこられました。そして、一連の対策による景気下押し圧力に対しましては、都市再生などの公共事業の追加、不良債権処理の影響を緩和する雇用対策、中小企業対策などのセーフティーネット対策の強化を実施する必要があるといたしまして、二〇〇二年度の補正予算をこの通常国会の冒頭で決定されたところであります。
 しかしながら、これらの対策を行ったといたしましても、政府みずからの二〇〇三年度経済の見通しは、実質GDPで二〇〇二年度よりも成長率が〇・三ポイント下がった〇・六%成長にとどまり、名目成長率はマイナス〇・二%、失業率はさらに悪化をいたしまして五・六%、雇用者の報酬はマイナス〇・二%との見通しとなっております。
 特に雇用対策といたしましては、不良債権処理の加速において追加発生する失業や倒産への事後的な対策は、二〇〇二年度の補正予算で一定程度は考慮していただきましたが、三百三十万人の失業者、五・五%の失業率に対する対策としては極めて不十分ではないか、このように考えておる次第でございます。
 二〇〇三年度予算案におきましては、失業対策費は五千七百六十四億円であります。前年の当初予算比で八百八十四億円増の一八・一%の増加でございますが、この内訳は、この間の失業者増に伴う雇用保険の国庫負担金の増加分が中心でございまして、能力開発などの再就職支援対策、春には二十万から三十万にも達する新規学卒者の未就業者への就職あるいは就業支援などは極めて小規模にとどまっておりまして、従来型の対策と言えるのではないか、このように考えております。それに加えまして、失業者の雇用保険の給付は、基本手当の給付率と上限額の切り下げ、また自己都合離職者の給付日数の切り下げが行われようといたしております。
 二〇〇二年には一年以上の失業者は失業者の三〇%に達しておりまして、これらの人々は雇用保険の給付期限が切れております。世帯主失業者は九十九万人にまで増大しており、これら家計を支える者の失業は、子供の就学の断念を生じさせるとの影響も出ておるところであります。新規学卒者層の就職状況は厳しく、二〇〇二年度の新規高卒者は昨年をさらに下回る内定率でございます。これら失業の増加とこれが生み出す社会問題は、消費の低迷のみならず、先行き不安や活力の喪失など、大きな社会問題を生み出し、また失業者支援などの財政負担を高め、一方では所得税収を減少させております。雇用失業政策は、経済政策の基本をなす政策だと認識しております。今後の経済社会の健全性、発展力をつくり出す政策であることを強く主張させていただきたいと思います。
 続きまして、政府予算案の第二の課題といたしまして、財政再建を優先する余りに、景気回復、雇用不安を打開しようとするデフレ対策、消費需要の回復策が極めて弱いということではないかと認識をいたしております。
 名目成長率は、九八、九九年度マイナス、二〇〇〇年度はプラスでございますが、二〇〇一年度から再びマイナスで、二〇〇二年度もマイナス成長が見込まれております。消費者物価は九九年度からマイナス、企業生産者価格は九八年度から連続して下落しており、いわゆるデフレが進行し続けているところであります。この物価下落が消費需要や企業売り上げに悪影響を与えてきているところは御案内のとおりであります。
 しかしながら、政府の二〇〇三年度予算案は、勤労世帯の収入が五年間にわたって減少し続けている現状に対しまして、医療費の自己負担増、医療保険料の引き上げ、さらには雇用保険給付の切り下げ、介護保険料の引き上げ、また税制では、二〇〇三年七月からたばこ税の、あるいは二〇〇三年五月からは発泡酒の税の引き上げ、さらに二〇〇四年の一月からは配偶者特別控除の廃止など、国民の負担増、可処分所得の削減が提案をされております。これらの国民負担増は二兆円を上回る規模でございまして、明らかに消費の抑制につながるのではないかと危惧をいたしているところであります。
 先ほど申し上げました日銀アンケート調査によりますと、現在、国民のうちの四五%の人々が支出を減らしていると回答しており、その支出減の理由は、「将来の仕事や収入に不安があるから」が六〇%、「年金や社会保険の給付が少なくなるとの不安から」が五八%、「不景気やリストラ等による収入の頭打ちや減少から」が三九%との回答が寄せられているところであります。すなわち、仕事や収入の不安、また社会保障給付の切り下げが、家計の消費を抑制していることをあらわしているのではないかと考えるところであります。
 しかしながら、今回の予算案では、この国民の不安への対応に対して考慮されていないのではないだろうか、このように考えております。医療や雇用保険などの財政バランスの均衡と税収増を目指し、医療保険料や医療費自己負担増など、国民に社会保障や税の負担を課しております。
 先ほど申し上げましたように、既に勤労者の家計は五年間にわたって可処分所得が名目、実質とも減少し続けてきているところでありますが、二〇〇三年度につきましても、このような国民負担増により、可処分所得はまたもや低下することは確実と言わざるを得ないと思います。そうなれば、個人消費は確実に減少することになります。そして、内需は停滞し、景気低迷は一層深まり、失業者がふえ続ける経済社会が続くのではないかと大いに危惧されるところであります。
 政府は、二〇〇五年度または二〇〇六年度に名目二%強の経済成長に近づくと、この一月二十日改定の「改革と展望」で述べられておりますが、家計の収入減、先行きの不安感を高めるこのような政策を実施した場合、景気回復がどうして可能なのか、国民に明確に説明する必要があるのではないか、このように考えておるところであります。
 続きまして、中小企業の問題等を中心に意見を述べさせていただきたいと思います。
 企業向け銀行貸し出しは、二〇〇〇年十二月の三百六十五兆九千億円から、二〇〇二年十二月には三百十七兆五千億円と、二年間で四十八兆円余りが減少しておりますが、このうち、中堅・中小企業向け貸し出しは四十兆円も減少をしております。中小企業に対する銀行の貸し渋り、貸しはがしの実態は、構成組織、私たちの傘下の組合からもその悲鳴が連日のように届き、まさに深刻な状況にございます。
 私ども連合が二〇〇二年十二月からことしの一月にかけて実施をいたしました第六次の緊急雇用実態調査、これは三千八百組合ほどから回答をいただいておりますが、この中におきまして、金融機関から雇用調整の実施が融資条件であると圧力をかけられた組合は全体で一〇・四%ございましたが、規模別で見ますと、百人未満の企業が一五・七%、十人未満の企業では四〇%にも達しております。中小企業、地場産業ほど雇用調整の実施が融資の際の条件になっている実態が、ここでは明らかになっております。
 先生方御案内のとおり、我が国の中小企業は、製造品の出荷額で五一・七%、卸売業販売額の六二・三%、小売業販売額の七三・三%、従業員数で見ますと八〇・六%を占めるなど、まさに日本経済を底支えする重要な役割を担っておるところであります。中小企業の活性化抜きには景気回復も産業の再生も望めないのではないか、このように考えております。
 資金繰りに苦しむ中小企業に必要な資金を循環させるため、まず政府は、公的資金注入行に対して、中小企業向け融資が義務化された経営健全化計画の確実な実行と遵守を強く迫る必要があると考えております。
 同時に、地域金融機関を含むすべての金融機関が、融資先企業の財務状況のみならず、当該企業の将来性を適切に審査し、円滑な融資を促進する監督指導の強化が不可欠ではないか、このように考えるところであります。さらに、商工中金の担保免除特例制度のように、政府系金融機関による事業融資の貸し付け要件・限度額の改善、信用保証協会の信用保証制度の拡充など、政府みずからが中小企業への事業融資を強力に補完すべきだと考えております。
 一方、金融機関に対する金融検査が中小企業融資の実態にそぐわず、機械的、画一的に実施され、中小企業への貸し渋りや貸しはがしが行われているとの苦情も寄せられております。金融検査は、中小企業の事業の将来性を適正に審査し、貸し渋り、貸しはがしが生じないように実施しなければならないと考える次第でございます。
 政府は、地域の雇用と経済を支えております中小企業の役割を十分に考慮し、将来性のある中小企業は可能な限りつぶさず、再生を最優先に取り組むべきだと考えます。そのためにも、整理回収機構、RCCの企業再生機能を一層強化し、全力を挙げて取り組む必要があるのではないかと考えております。
 さらに、産業再生機構の設立に当たりましては、公正かつ透明な基準と運用に基づき、大企業ばかりでなく、中小企業を含めた債権の買い取りを進め、企業再生に積極的な役割を果たすことを求めてまいりたいと思います。
 とりわけ、中小企業の再建には、都道府県など地域での支援が重要であり、中小企業再生支援協議会は、地域の中小企業の再生に積極的に役割を果たすことが必要であります。産業再生機構と支援協議会とが十分な連携を図り、中小企業の再建計画の策定を広範に支援するよう求めてまいりたいと思います。
 また、産業と企業の再生に当たりましては、必ず関係する労働組合等と協議を行い、雇用の場を確保することをその目的に明示する必要があるのではないかと考えます。職場の労働者の協力を欠いては産業、企業の再生は不可能である、このように認識しているところであります。
 最後に、この予算に対して組み込んでいただきたい点を六点に絞って申し上げたいと存じます。
 まず第一は、二〇〇三年度予算全体で創出をいたします雇用量を明示する必要があるのではないか。そして、政府として失業率改善に取り組むということを国民の前に明らかにするべきではないかと考えます。政府予算で計上する社会福祉、医療・保育、教育、環境及び公共事業などの事業については、その直接的、間接的な新たな雇用創出量を明示するようにしていただきたいと存じます。
 第二に、能力開発事業の抜本強化、緊急地域雇用創出特別交付金の大幅上積みなど、雇用の維持・創出策を抜本強化し、政府の責任におきまして百万人以上の雇用創出を図る対策を計上していただきたいと考えます。
 第三に、雇用保険給付の維持、医療費三割自己負担の撤回、医療保険料の引き上げの抑制、配偶者特別控除の廃止など、国民負担増は二〇〇三年には行わないという御配慮をいただきたいと存じます。
 第四に、基礎年金の国庫負担の二分の一への即時引き上げと保険料の引き下げ、また子育て支援の強化、また住宅ローン利子・家賃比例税額控除制度の創設などによります可処分所得増等による消費回復を図ることの対策が必要ではないかと思います。
 第五に、産業再生では、雇用の安定、雇用契約の継承、政府系金融機関による中小企業の企業再生支援融資の拡大など、雇用安定と中小企業の再生を重視した産業再生策を実施していただきたいと思います。
 最後に、税制改革では、利子配当所得、キャピタルゲイン所得の総合課税化、消費税の益税・滞納解消の即時実施と総額表示方式は行わず、NPO税制の寄附金要件の一層の緩和を図ることなどが必要だというふうに思います。
 以上六点の対策の実行は、勤労者の生活と雇用の安定に貢献するものでございます。できるだけ早い実現を求めさせていただきまして、私の意見とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
藤井委員長 ありがとうございました。
 次に、加藤公述人にお願いいたします。
加藤公述人 非営利、独立のシンクタンクを主宰しております加藤秀樹でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 一月余りいたしますと、統一地方選挙があります。今、それも含めて、市町村のレベルでは市町村合併というのが大変大きい話題、恐らく最大のテーマだと言っていいと思います。
 一方で、合併促進のための特例法の期限、これが二〇〇五年に参ります。合併自体については、さあやるべきか、どうすべきか、いろいろあるようですが、特例債という、世上ニンジンと言われたりもしておりますけれども、お金を欲しいというのがあるものですから、焦って、やはり合併すべきかなという議論が大いに行われているというのが現状かなと思います。
 一方で、合併促進の大義として地方行政あるいは地方財政の効率化というのがあるんですが、果たして本当に合併をすることが地方行政、地方財政の改革につながるのか、必ずしも十分に議論が行われているわけでもありません。そこについてはいろいろ異論もあるようです。
 きょうは、そういうことについての御紹介を含めて、国と地方の税財政の関係というものについてお話をしたいと思います。
 市町村の首長あるいは議員からよく聞きますのは、国会議員はどうも、恐らく立場上なかなか明確に態度を示しにくいのかとは思うけれども、合併について余りきちんとした話を聞けないという声をよく聞きます。それが実際にどうか、私は必ずしもよくはわかりませんが、そんなことも含めて、実は、構想日本と経済同友会、それから提言・実践首長会という市町村の首長さんで構成する勉強会があります。この三者で全国会議員に対する合併についてのアンケートを行いました。まだこれは回収中でして、きょう御紹介できるのはまだ回収段階、百人を超えた段階ですけれども、それをあわせてここで御紹介したいと思います。
 ちなみに、お願いのようなことになりますけれども、まだこれは回収中なものですから、もしまだ御回答いただけていなければ、ぜひ後で御回答をお願いしたいと思っております。
 資料の、一枚表紙をめくっていただきまして、二枚目です。これは主にそこでの異論の紹介になっております。割合活発な議論を行っていらっしゃる首長さん十人余りにヒアリングをした結果です。
 同じぐらいの規模同士、あるいは大都会というのは比較的問題が少ないようですけれども、田舎、特に過疎地を抱えているところに行くと、住民の活動範囲が広がっている、だから広域化というのはそれは都市部の話である、地方ではむしろ、公共交通網の不備とか高齢化の結果、日常の活動範囲が狭まっているということも多いんだ、霞が関で机上で考えた一律の基準の適用というのは地方の切り捨てになるおそれが強いというような異論もあります。
 それから、昭和の大合併、これは二十八年、三十七年と行われました。その後、結局のところ過疎化が進んでいるではないか、行政サービスの効率化が進んだとも思えない。やはり歴史にもっと学ぶべきだという声もあります。
 それから、財政悪化の本当の原因というのは何なのか。合併というのは見かけ上の効率化にはなるかもわからないけれども、実際問題どの程度財政がそこで改革されるのか、むしろ財政悪化の本当の原因というものをまずちゃんと議論すべきではないのか。これはまことに正論であると思いますけれども、そういう声も実は強くあるようです。
 それから、さらに言えば、合併特例債が結局のところまたむだな箱物に使われる可能性があるのではないか。合併バブルという言葉すらできているという声も聞きます。先ほど富田公述人から交付税のお話もありました。その延長線上に自治体のモラルハザード、もらい癖と言っちゃ悪いかもわかりませんが、そういう言葉も使われます。それはもう直らないのではないかという声もございます。
 一ページめくっていただきまして、三ページですが、これは現時点で、国会議員のうち御回答いただいております百名の方の答えを集計したものです。現在の市町村合併の進め方について、大いにやろう、積極派。まあ基本的には賛成だけれどもよく考えてやるべきだ、これを慎重派としました。それから、いや反対である、どちらかといえば反対である、合わせて反対派といたしました。反対、慎重、積極派、それぞれ三割余りぐらいで、割合拮抗しているというのが現状であります。
 それから、一枚めくっていただきまして、四ページ目です。昨年の秋に西尾私案と言われるものが出されました。これは、現在の合併特例法以降、新たにもう一度法律をつくって、一定の人口規模を持たない自治体を解消してさらに合併を進めていこうという案です。この西尾私案についてどう思いますかということを伺いましたところ、これはもちろん国会議員のお答えですけれども、賛成が三二%、反対が五九%という答えが出ています。
 それで、最初のお答えで、積極派の中で七割ぐらいの国会議員が、西尾私案も含めて賛成だ。それから慎重派については、この西尾私案については、さらに進めようということについては二割強の方がイエス、しかし六割弱、五六%の議員がそれには反対だというお答えになっております。
 次の五ページですが、財政の健全化の手段として合併の意義は大いにあるのか、それとも、そうでもない、割合表層的で短絡的だということだ、どちらでしょうかと。余り意義がないというお答えが四七%、やはり意義があるのではないかというお答えが四一%になっております。
 積極的に進めようという積極派の中では、確かに七六%の方が意義ありとお答えになっておられますけれども、必ずしもよくわからないとおっしゃる方がそれでも二割いらっしゃいます。慎重派、反対派になってくると、財政健全化の手段としての合併というものにはかなり懐疑的だという御意見が強いと思われます。
 一枚めくっていただきまして、六ページ目ですけれども、これは、積極派と、基本的には賛成なんだけれどももっとじっくり考えた方がいいという慎重派の中には、合併の効果に関してかなり開きがあるというものを示したグラフであります。
 五つの項目、地方行政の効率化、財政全般の健全性、自治体の自律性、住民サービスの水準、地域の活力、この五つについて伺いました。ちょっとわかりにくいんですが、星印が全体であります。それから、四角の線が慎重派であります。それから、丸でつないだ線が積極派であります。それから、ずっと低いところの数字ですけれども、三角でつないだ数字が反対派であります。
 財政全体の健全性について、全体としては五三%の議員が一応高まるだろうということですが、これも慎重派と積極派との間には二十数パーセントの開きがあります。また、住民サービスの水準あるいは地域の活力に合併というのは大いに貢献があるんじゃないかということについては、積極派の方は八〇%を超えておりますが、慎重派については半分強、かなりの開きが出ております。
 以上が、現在行っておりますアンケートの途中経過の御紹介です。
 もう一枚めくっていただきまして、「「国と地方のあり方」を考える時の基本的な視点」という紙があります。これは、よく地方財政について議論が行われますときに、立場によって皆さん御意見が随分違うわけです。
 例えば、財政学者のおおむねの御意見というのは、補助金とか交付税というものをもっと思い切って、もう全廃するぐらいすべきだ。それをやるから財政全体として赤字になるし、地方にモラルハザードが起こっているんだという御意見が強いわけです。
 一方で、例えば地方行政を束ねております総務省としては、いや、地方交付税というのは、各省が地方自治体に義務づけている、あれをやれ、これをやれと言っている仕事の後からお金の面で面倒を見るという仕組みなんだ。だから、もし交付税を変えるというんであれば、まず各省の地方に対するコントロールを変えるべきだとおっしゃるわけです。
 一方で自治体は、国からあれをやれ、これをやれと言われている、だからやらざるを得ない、それで金が必要なんだ。と同時に、まだ金が足りない。だから、まずは自主財源をもっと拡大して地方の財政力を強くするというのが必要なんだということを言うわけです。
 それぞれ一面では正しいわけですけれども、自分に都合の悪いところには余り言及していないという面もやはりある。まあ、みんなそれぞれ自分のところのことは余り言わずにとりあえずほかの悪いところを指摘しているということで、結局どういうことかといいますと、もうこの辺は言うまでもない話ではありますけれども、そこの下にある絵ですけれども、国、都道府県、市区町村とずっと今は縦につながっていて、仕事の指示なりコントロールが国からずっと自治体に行くと同時に、金とセットで動いているわけですね。
 これが本当は、市区町村、都道府県、国がダイレクトに国民あるいは住民とつながっていて、直接のやりとり、お金を取ってそれに対して行政サービスを行う、いわゆる受益と負担というのがセットで行政体と国民との間でつながっているという仕組みにするということなんだと思います。それを一面ずつ問題を指摘すると、先ほど申し上げたようなことになるのかなということだと思います。
 このことは、実は、国が地方にいろいろ指示を出してお金がセットというのは、結局のところ、今過疎化あるいは地方経済の活力がなくなっているということが言われますけれども、割合ヨーロッパなんかに行きますと、自治体、地方の小さい企業というのが元気だったりします。これは結局、国があれをやれ、これをやれというよりも、自立性が高い。高い結果、さあ自分のところの売り物は何なのか、自分のところのことを自前で考えてやっている結果、結果的に元気がいいということになっているということではないか。ですから、そういう地方の経済の活性化ということからも、国と地方の税財政の関係というのは非常に大事なテーマであると思います。
 次の八ページは一枚飛ばしていただきまして、九ページをごらんいただけますでしょうか。
 これは、過去二年ほど、下に十六県と書いてある、十六県の知事と構想日本で国と地方の税財政の関係について勉強会を開いてきました。
 何をやったかというと、国と地方の関係をお金、仕事の両面で考えると、まずやはりやらないといけないのは仕事の切り分けではないか。仕事の切り分けを、これは抽象的な議論ではなくて、都道府県あるいは市町村の職員に、予算書を一項目、一項目調べて、例えばこれはやはり県であれば県でやるべきだ、いやいやこれは国でやるべきではないか、これは市町村でやるべきではないか、いやこれはそもそも要らないのではないか、あるいは民間の企業がやったらいいことではないか。そうやって切り分けていきました。
 切り分けるに当たって、本当は市町村でやるべきあるいは国でやるべきものを何で今都道府県でやっているのか、それは背景にこういう国からの規制があるからなのかという、その切り分け作業と同時に、国からのコントロールの有無をセットで整理したものがこれです。この十六県のうちの六県で、そういう職員と一緒に、現場の人たちと一緒にやったところ、引き続き県でやるべき仕事というのは平均値で五割強だ。三割ぐらいは市町村でやれる。国に行くのが六%ぐらい。それから、そもそも要らないあるいは民間でやるべきというのが一一%という結果が出ております。
 それから、これをやった上で、仮に今この県が一千億円の予算だったとします。そうしますと、引き続きこの県でやるべき仕事というのは五三%ですから、五百三十億で済むわけです。四百七十億は、それぞれ市町村だったり、もうやらなくて済んだり、国がやったりということになります。
 そこで、次の作業というのは、じゃ、この五百三十億円をどうやって賄うか、これが財政の話であります。
 現在の、全く自前で集められる金、これが地方税、あるいは借金ですけれども地方債といたしますと、そこで足りない部分がどうなるのか。よく足らず前という言葉を使われます。その足りない部分を、歳出削減をする部分、あるいは税源の国からの移譲、あるいは税率を高めるということで賄う部分、あるいは現在と違う形の地方間の再分配で地ならしをする部分、この三つで対応していくということになる。こういう整理であると思います。
 ちなみに、十ページは、国から地方に対していろいろなコントロールがあるわけです。それを土木と農林水産の分野だけについて、これも自治体の方に聞いてまとめたものであります。
 最後に、八ページに戻っていただけますでしょうか、ちょっと前後して恐縮ですけれども。これは、国と地方のあり方を見直すポイントを五つにまとめてみました。
 まずは、やはり国のコントロールをとにかく思い切ってやめていこう。地方がやるべき事業に関するさまざまなコントロール、これは計画という形、あるいは規制、基準、さまざまな形であるわけですけれども、これを思い切って切っていこう。その上で、仕事のコントロールとセットになっている地方交付税あるいは補助金というものをもう原則やめていこうということであります。
 これも先ほど富田公述人のお話の中でも出てきましたけれども、これが財源保障機能の廃止ということになると思います。
 その上で、自主財源というものを強くしていこう。それは、抽象的に言いますと、国税、地方税の配分の見直しということになりますが、移譲税目の見直しということと同時に、税率の変更、地方で独自に、うちはこの税金についてはもっと高い税金をかけようということもあっていいわけですね。なかなか今そのことを自治体が自分で言いません。やはり首長さんも選挙で選ばれていますから、うちの税金がよそより高いということになってくると余り一般受けしないものですから言わないですけれども、これも本当はきちんと考えないといけない。
 それから、そういうことをやった上で、地方間のやはりでこぼこをある程度ならす上で財源調整、これは現在のような保障機能込みの交付税ではなくて、例えばドイツで行われているような共同税、これは国は一切関与しない。日本が行っておりますような基準財政需要額というものを定めて、そのもとで、いろいろマニュアルでここに幾らという配分の仕方ではなくて、地方間だけで一定のお金をプールして、それを極めて単純な、人口だけがいいかどうかわかりません、過疎地はもっといろいろな事情があると思いますから。それで、地方間だけで配分していく、そういう機能も必要だと思います。
 それから、一つだけ最後につけ加えますと、これも割合議論されていない、あるいは全く議論されていない点かもわかりませんが、これも先ほど富田公述人の最初のお話にありました。今や国債残高がGDPの一三〇%を超えているわけですけれども、実は、このGDPの一三〇%を超える国債残高というのが国と地方と両方で使われているわけですね。しかも、道路を含めて、資産の大部分はどこかの地方にあるわけです。
 ですから、この数百兆に上る国の負債、これの国と地方間での切り分けというのが実は重大な問題であると思います。これをどういうふうに切り分けて、現在はそれは国が全部返すという仕組みになっているわけですけれども、実はこれは国と地方できちっと仕事も金も切り分けようということになると、資産、負債、特に負債サイドを切り分けるという作業が必須になってくると思います。それもあわせて考えないといけない。それを含めて全部やることが、小泉総理がおっしゃる三位一体の改革に、中身のあるものにつながるということだと思います。
 直ちに予算委員会の議論にはならないテーマかと思いますけれども、これは予算制度、財政の私は最も基本にある重大なテーマだと思いましたものですから、きょうお話をさせていただきました。ありがとうございます。(拍手)
藤井委員長 ありがとうございました。
 次に、松本公述人にお願いいたします。
松本公述人 平成十五年度の総予算についてということで意見を述べるということでございますが、私は、医療経営をやっておりますので、医療、福祉に関して述べさせていただきたいと思います。
 医療法人というのは大変多いんで、全国的には民間病院八千三百、その一部ですので、どこの馬の骨かということもあるかと思いますので、私の略歴を資料の二ページ目に掲載しています。病院は百七十三床の急性期病院、それから老健九十床、その他を経営しております。
 今回の厚生労働省の十五年度予算の概要は、三枚目に概略を厚労省の資料から引用させていただいております。
 そういう中で、私自身の考えは、一ページ目に書きました医療の原則三つ、どういう立場、どういう観点で、どういう方法でやるのかという観点での考え方を述べさせていただきたいと思います。
 厚生労働省の三ページ目の概要を見ますと、やはりこれは、もう随分昔からですが、官優位、大病院、大都市の病院、公的病院優位の医療を展開するという考え方がベースにある。もっと言えば、官尊民卑の思想に裏づけられた施策であろうというふうに考えます。
 現実的な問題として、もっと厚労省の考え方を整理しますと、四ページ目の上段に改革の基本的視点ということで三つ挙げられております。患者の視点の尊重、質が高く効率的な医療の提供、医療の基盤整備と書かれておりますが、この三つの点が現実的に医療現場の実態として本当にそれに見合うものであるかどうかということを中心に述べさせていただきたいと思います。この三つの点が十分満たされるためには何が必要かと申しますと、やはり医療機関の経営基盤がしっかりしていないとだめだということです。
 最近問題になっております、総合規制改革会議の株式会社等の医療機関経営の解禁ということが話題になっておりますが、これは私は、現在の医療、福祉の中で民活を活用せよという提言だと受けとめるべきじゃないかと思います。
 株式会社の参入があればどういうことになるかといいますと、まず、この三つの基本的視点の中の二番目、質が高く効率的な医療の提供、これは株式会社化でできるだろうと思います。と申しますのは、有能な医者を全国から資金力に任せて引き抜いてくる。そして、利益を上げるためには、当然ながら人口の多い大都市じゃないと成り立たないわけですね。そういうようなことで、株式会社化の中でやっていくとすれば、地方の医療基盤は完全に破壊される。それと同時に、患者の視点を尊重というのも満たされないだろう。
 そういう意味で、医療経営に株式会社化を導入するというのはこれは間違いだろう、はっきりそういうふうに思います。厚労省なり規制改革会議の論法はこの三つの点から見ても明らかに間違いだし、厚労省の反論もお粗末だなという感じがします。それはなぜかと申しますと、やはり官優位、大都市、大病院優位の政策が長年続いてきたせいだろうというふうに考えます。
 そういう中で、経営基盤をどういう形で保障するかという前に、現実的な問題として経営基盤がどういう形で侵されているのかという点について、資料を使いながら御説明申し上げたいと思います。経営基盤の整備をするためには、まず官民格差という点、それから二つ目には医療機関の消費税の問題、三つ目には助成金の問題、四つ目には診療報酬の内容の問題、この四つに分けて簡単に触れさせていただきたいというふうに思います。
 五ページ目、ちょっとページ数を打っていなくて申しわけないのですが、五枚目に医療提供体制の各国比較がございます。厚労省の医療基盤整備、あるいは具体的な医療政策、あるいは診療報酬の中に出ているのは、平均在院日数を中心にして医療提供体制を変えようというのが基本的な考え方でございます。
 しかしながら、上の表と下の表では若干数字が違いまして、これは時期が若干ずれているので違うと思うのですが、基本的には同じと考えてよろしいかと思います。上段はある経営セミナーで出た資料で、下段はまた別の経営セミナーで東京医科歯科大学の川渕孝一教授が出された資料です。
 一番下段、一般病床の定義の違いというのが載っております。平均在院日数は九八年で日本は三十一・五日、アメリカは七・一日となっておりますが、そもそも定義の違うものを比較すること自身が間違いなわけです。日本の場合は二十床以上の医療施設を病院というわけですが、これをアメリカの定義に合わせると、日本の一般病院の平均在院日数は十九・八日になるわけですね。厚労省の発表しているのは三十一・五日です。そして、人口十万人当たりの一般病床数は二・七になります。アメリカの平均在院日数七・一日というのは、三十日未満の非連邦立病院、新生児の在院日数を除いたものですね。
 そういう基本的な内容が違うものを数字として並べて、これを日本の医療提供体制を変える根拠にしているわけですね。これは仮説が違えば結論が違うのと全く同じで、やはり日本の風土、文化、政治、社会、経済を含めて医療提供体制は検討すべきだろうと思います。そういう意味で、基本的に間違った前提に立って医療提供体制を検討されている、それが予算に反映されているということは非常に問題があるだろう。
 私自身は、現在の日本の医療機関は疲弊している、それは毎年毎年変わる医療政策の中で疲弊し切っているのだろうと思います。そういう点で、厚生省の先ほどの三つの視点ということについては絵にかいたもちではないか、もっと医療の現実を見て、どう再編するかということを考えていただきたいというふうに思います。
 次のページですが、これは日医が二〇〇三年二月に出した病院経営の資料です。
 一般病院は、二〇〇一年の十月度と二〇〇二年の十月度を比較しますと、経常利益が何と六四・五%も下がっております。療養型は五一%プラスです。精神病院はマイナスです。その下段の規模別の経常利益を見ますと、五百床以上は利益が上がっておりますが、百床はマイナス、二百床から四百九十九床もマイナスでございます。これだけの経営の実態であります。
 次のページですが、これも日医の資料ですが、給与費を比較しております。法人、個人、それから院内処方、院外処方ですね、それぞれ違うんですが、いずれにしましても利益率はすべて下がっております。
 官民格差の問題について、非常に露骨な資料を見つけました。その下段の官民経営比較表、これはちょっと古いんですが、九五年度ですね。船橋市立医療センターと千葉徳洲会病院です。なかなか公的病院の財政の資料というのは明らかにならなかったんですが、これはある雑誌に載っておりました。
 船橋市立医療センターの医業外収益の中で、助成金が出ていますが、市の一般会計と県補助金が何と二十七億一千七百四十七万円出ているんですね、この二つを足しますと。その上段に、医業利益がマイナスで十八億五千二百十三万円。右側の千葉徳洲会病院を見ますと、医業利益は三億六百万上がっております。医業外収益も合わせてみますと、船橋市立医療センターは何と二十七億の助成金を得て、五千七百二十九万円の経常利益。千葉徳洲会病院は一億六千四百万、これがいわゆる一般の公的病院と民間病院の差なんですね。このこと自身は余り政治の場でも議論されていないと思うんですが、全国的な調査をすれば、膨大な赤字が公的病院に出ている、しかも、それが税金を相当投入されているということがわかると思います。
 次のページですが、これは日本病院会の医療経済・税制委員会の資料ですが、公的病院と私的病院を比較しております。
 これは、十二年度、十一年度、十年度、九年度の決算、ここでは百床から百九十九床の部分を挙げました。それは、地域医療の第一線の医療機関は大体このぐらいの規模が非常に多いということですね。しかも、地域医療をやっているというのは民間病院がほとんどです。これを見ますと、明らかに従業員一人当たりの年間給与費は、十二年度決算で見ますと、何と百八十万も年俸が違います。従業員一人当たりの年間医業収益は、あるいは医師一人当たりの年間医業収益は、民間の方が高いわけですね。
 そして、下段を見てほしいんですが、これはちょっと古いんですが、平成十二年度の病院経営分析報告ですが、公的病院の赤字の比率ですね。真ん中の赤字の全体の比率は百九十病院で七一・九六%、右の私的病院の赤字は三十四病院二八・八%です。膨大な助成金、一般会計からの繰り入れの中で、公的病院は大赤字を出しているということですね。そういう中で、医療安全対策をしっかりせいと言われているんですが、医療安全対策というのはお金がかかります。経営基盤がきっちり保障されない限りは、医療安全対策も十分できないということは現実だろうと思います。
 そういう中で、一つ消費税の問題を、ちょっと急に指名されたので準備が悪くて申しわけないんですが、消費税の資料をつけ忘れました。お手元にはありませんけれども、やはり日本病院会の医療経済・税制委員会の平成十三年度調査、十三年度決算をもとにした調査によりますと、大体、一病院当たりの消費税の実質負担額は、平均七千四百八十二万です。これはお手元の資料にございません。これだけの損税が発生しているんですね。
 厚労省は、診療報酬に消費税分を上積みしたと言っておりますけれども、これだけの実質的な損税が発生している。そうなりますと、経営基盤をしっかりさせようとしても、これから消費税が、年一%ずつ上げろとかいう話がありますが、全国の病院は総つぶれになります。このことをぜひとも知っていただきたいなと思います。
 日本病院会の医療経済・税制委員会を中心に、四病院団体協議会も含めて、いろいろな形で陳情しているようですが、なかなか政治家の皆さん方の反応も悪いということですが、ぜひこの問題を深刻に受けとめて考えないと、それこそ医療基盤の整備というのは口先だけで、現実的には崩壊するだろうというふうに思います。
 官民格差のことを先ほど申し上げましたが、助成金についても船橋市立医療センターと千葉徳洲会の比較も申し上げましたけれども、診療報酬体系についても非常に問題があるだろう。
 日本の医療というのは、質と予防ということをこれまでないがしろにしてきたわけですね。とにかく薬をたくさん使う、検査をたくさんするということで医療経営が成り立っておった。薬価制度で成り立っておったわけですね。
 やっと最近になって質が問題になってきているわけですが、先年の四月の診療報酬改定で、人工骨頭、大腿骨頸部骨折の手術なんかするときに、五十例以上じゃないと点数を上げない。五十例を切れば二五%カットするということで、これは大変なひんしゅくを買って修正されたんですが、問題は、人工骨頭、人工関節の手術をするというのは、感染して再発させないということが非常に大事なわけですね。ところが、無菌室の手術室を持っている病院と、全然そういうのがない病院で点数が同じなんですね。感染しない手術の質を評価していない。これは具体的な一例ですが、そういう診療報酬の中で、質が全く評価されていない。そして、質を向上させるということを言っても、やはり絵にかいたもちでしかないだろうというふうに考える次第です。
 最後に、介護保険のことについて述べたいと思いますが、一番最後のページです。介護老人福祉施設、老人保健施設、療養型医療施設の三つについての二〇〇七年度の目標値として見ますと、新参酌標準が出ておりますけれども、これに沿っていきますと、全国的に特養をふやすということになっています。
 下の段に書いていますけれども、平成十五年度予算の中で特別養護老人ホームを一万四千五百人もふやす。数字を落としていますが、老健はこの半分ぐらいですか。ところが、この助成金を見ますと、特養の場合には二億七千五百万円、五十床についてですね。何と老健は二千五百万です。財政が逼迫しているにもかかわらず、助成金を特養と老健でこんなに差をつくっているということはどうしても承服しがたいわけです。
 それで、介護保険の中で、今回、四月から介護報酬が上がるんです。その中で在宅重視ということを主張しておりますが、あれは裏目に出るだろうと思います。というのは、在宅の点数を上げれば、自己負担はふえるんですね。それで、施設の入所料を下げれば安くなる。そうすると、ますます入所した方が楽なんですね。だから、在宅がふえるという見通しは、あの政策では絶対あり得ないだろうと。
 そういう意味で、厚労省の掲げた理念と具体的な施策は全く裏腹の関係にあるだろうと思います。これは、数十年間、官を重視した医療政策がこういう結果をもたらしたのだろうと思います。医療、保険、福祉、教育等々は、社会的共通資本としてどうするのかということを、その経済基盤をしっかり支えるという観点で予算を考えていただきたいなというふうに思います。
 以上です。(拍手)
藤井委員長 ありがとうございました。
    ―――――――――――――
藤井委員長 これより公述人に対する質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西川京子君。
西川(京)委員 おはようございます。自由民主党の西川京子でございます。よろしくお願いいたします。
 きょうは、公述人の先生方、本当にお忙しい中をお越しいただきまして、大変貴重な御意見を伺わせていただきまして、ありがとうございます。
 まず最初に、富田公述人にお伺いしたいと思います。
 けさ、日経の東京のダウ平均が八千三百六十円と、バブル崩壊以後最安値に迫る株価の下落がございます。大変、今日本経済は厳しい状況を漂っているというような状況があるかと思います。
 実は私、去年の公述人の質問を拝見させていただきましたが、公述人の御意見は、要するに、もうマクロ経済の財政出動の景気対策は終わった、できれば、むしろ財政の構造改革をきちんとすることが実は大変な景気回復につながるという御意見が書いてあったように思います。
 現在、小泉内閣は、スタート以来、三十兆円枠の国債という枠をはめてスタートいたしましたが、かなり厳しい現実の中で、私は軌道修正してきたと思っております。今回、今年度、現実に三十六兆四千四百五十億円の公債発行を予定しておりますが、現在でも先生はそういう御意見でいらっしゃいますかどうか。その辺をお聞きしたいと思います。
富田公述人 西川先生から御指摘された問題ですが、私は、現在もますますそのように考えております。
 結局、景気対策をやって、じゃ、これまでよくなったかといえば、そうではない。むしろ、この十年間、本当に市場経済の中に我々の国があるのかどうかということを、企業の経営者は本当に確信を持っておられるかどうか。だんだん、景気対策をやればやるほど、政府依存というのが強まってきたのではないかというふうに存じます。
西川(京)委員 私は、ちょっとやはり異議があるんですけれども。
 実は、富田公述人のこの資料を読ませていただきましたが、四番ですね、九〇年代以降、累計で十三回、合計百四十兆円もの景気対策のための国債発行が発動されているという話がございましたが、実は、よく精査してみますと、GDP統計を拝見いたしますと、景気対策のための国債発行というのは実は六十兆円ですね、この中での。そして、公共事業は九五年以来減少し続けております。
 では、この実際の赤字、百四十兆円マイナス六十兆近い、あとは何なのかといいますと、実は、景気対策をうまく場所場所によって行ってこなかったがための財政赤字による国債発行が残りを占めている、私にはそう思えるんですね。現実に、アメリカの景気は大変ひどい時期がありましたが、やはり景気対策をまず最優先、そのポイント、その時期において効果的にするということが一番本当は大切なんだろうと私は思っています。
 そして、あの橋本内閣でのダウン、その後の小渕内閣、その以前のと二度あった景気対策の、少し上がりぎみの後に財政構造改革をした、そして上がりぎみの後に構造改革をした。アクセルとブレーキを大事なところで踏み間違えているという現実があると思います。
 私は、やはり景気対策に対しては財政出動というのは大変効果があると思っておりますが、いかがでございましょう。
富田公述人 まず、景気対策の百四十兆円と申しますのは、これまで発動されました景気対策の規模でございまして、景気対策に要しました国債ということでは、西川先生、御指摘のものだと思います。
 ただ、先生の御指摘、景気対策が必要だということなんでございますけれども、ここまで国債残高を累増させまして、これからさらに少子高齢化が進むという中で、現在の社会を形成しております諸制度がこのままでもつのかどうかということを次第にみんな心配してきているというふうに私は思います。したがいまして、国民に安心感を確保するために、財政の持続可能性を回復するということが第一に重要であるというふうに思います。
 そして、これまで景気対策が必要なときに違うことをやってきたのではないかという御指摘でございますけれども、私は、九七年の景気後退の原因というのは消費税の引き上げにあったのではなくて、結局は、金融システムの安定性が確保できない状態にあった、それで不良債権の処理がおくれていたということで、九七年末から景気後退が生じてしまったというふうに見ております。
 したがいまして、私は、より長期的な観点よりやはり日本経済そのものを考えませんと、後は野となれ山となれで景気対策を繰り返すということでは、日本国債にあらわれました信用の低下というのがさらに傷を大きくしてしまう危険があろうというふうに存じております。
西川(京)委員 私も、限りなく国債を発行しようとは申し上げておりませんけれども、やはりその状況に応じて、どちらを優先するかというのは大変大事なことだと思います。
 今、小泉内閣の財政政策は、ある意味では、景気対策と財政規律、補正予算というように、本当に針の穴を通すような財政運営だということを、これは竹中大臣もおっしゃっておりますけれども、私は、やはりむしろ、そういう状況だといつまでも続くと思います。その時期に、思い切った経済政策の転換というのは絶対必要なような気がいたします。
 ただ、国債発行に対して、無制限にそれをしていいとは私も思っておりませんので、やはり、先生がおっしゃるように、民間の自立的な産業の発展を一番の目標にするというのは私も大賛成でございますが、いきなり財政を切ってしまって、民間にいきなり丸投げしてもなかなかそれは厳しいことで、やはり一定期間、官民一体となっての民間需要の喚起というのが私は大事なような気がいたしております。
 ありがとうございました。
 次に、加藤公述人に御質問させていただきます。
 市町村の合併の問題について大変意義深いアンケートをいただきまして、私はちゃんと答えましたので。このうち、百人の結果を拝見させていただきました。
 きのう、実は、全国の各市町村長さんたちが武道館に集まりまして、大変今のやり方には反対だという、ほとんどがそういう思いでの会がございましたが、私もそれに参加させていただいて、さまざまな思いを持ちました。
 実は、日本のこれからの産業の大きなポイントとして、私は観光というのを大きなポイントにしております。そういう中で、一律な大きさを想定したような合併というのは、どうしても私は余り賛成できないんですね。そういう意味で、財政的な面は厳しい状況の中で一定の規模にする必要はわかるんですが、ある意味では、大きいところがあってもいいし、また、小さいきらりと光るところがあってもいいと私は思っております。そういう意味で、両方がうまく調和して美しい日本の将来をつくるというのが、私は国の一つのビジョンだと思うんですね。
 そういう中で、見ておりますと、地方交付税、補助金の廃止、そして地方間の財源調整の問題、大変参考になりましたけれども、実は、三位一体となっての税源移譲というのが言われておりますが、大変厳しい地方の小さなところでは、課税権をいただいても課税する対象がないというようなところもあるわけですね。
 ですから、そういうところは早く大きくなれと言いたいのですが、そういうところ同士が大きくなったって課税対象がふえるわけではないわけですので、そういう意味で、地方交付税というのがひもつきで一体化となって仕事と金が行くという構造は、確かに責任能力のあれを大変弱くすることはわかるんですが、この辺が私は非常に微妙なところがありまして、一体として地方にやってほしい、自由に使ってほしいという部分、ある程度は非常にそうすべきだと思っています。
 しかし、ある面、また地方自治体の長というのは必ず選挙があるということで、地方自治体の質の問題もあるかもしれませんが、常に大衆迎合に陥りがちな部分を持っているわけですので、そのあたりに一定の、日本としての基本線というか、そういうものに対する国からのメッセージ、それはやはり私は必要なような気がするんですね。
 各自治体がもうばらばらに勝手にやってよくて、その町に住んでいる、その場所によって国民が物すごい社会的サービスの格差を受けたり、そういうのはやはりおかしい。そして、国としての基本的な思いというのを、やはり皆さん、各自治体に伝えたいという思いはあります。その辺に関する微妙なバランスをどうお考えでしょうか。
加藤公述人 今の委員の最初のお話に、観光のお話がありました。私は、そこは非常に大事なところだと思います。
 参考までにヨーロッパを見てみますと、数百人から数百万人まで、自治体は非常に大きい開きがあります。イタリー、フランス、そのあたりでも、確かに自治体の数を見ましても二万とか三万、日本よりはるかに多いわけですね。
 それで、これは特別な例かもわかりませんが、恐らく多くの国会議員の方、ワインのお好きな方も多いと思います。イタリーでバローロという非常に、最も有名な銘柄があります。この村というのは、たしか六百人ぐらいなんですね。ここは一つの際立った例かもわかりませんが、結局、国から地方に対するいろいろな仕事を、あれをやれ、これをやれというのが原則としてない。そこで、自分で考えざるを得ない。さて、自分の売り物は何かというところがやはりスタートになる。それがワインかもわかりませんし、観光かもわかりませんし、あるいはそこ独自の産業かもわからない。それがやはりすべてのスタートだろうと思います。
 ただ、その上で、今委員おっしゃいました、そうはいっても本当に田舎に行ったら税金の対象にならないではないかというのもあると思います。ですから、最低限のものをどうやって確保するか。先ほど申し上げました、仕事とセットのひもつきのお金ではない、あるいは財源を保障するのではないという形での、地方間の再分配の方式という意味での、これを交付税と呼ぶべきかどうかわかりませんが、仕組みはやはり必要だと思います。
 それからもう一つ、先ほど申し上げませんでしたが、国と地方の仕事の切り分け、金の切り分けがすべての基本ではあるわけですけれども、切り分けの比率については先ほど私は全く申し上げませんでした。
 例えばイギリスの場合ですと、八割以上、八割とか九割が実は国がやっているわけです。ですから、国と地方をしっかり切り分けることは大事だけれども、その切り分けた上で、国が七割をやるのか、二割をやるのか、五割するのか、地方が何割するのか、そこは別の問題であると思います。私は、これは一概に地方が多ければ多いほどいいとは思いません。
 ですから、基本的なことは、むしろ国がしっかりやる。しかし、それは仕事にしても金にしても切り分けた上で国がやることで、地方は地方で自分のことをしっかりやる。しかし、それは比較的比率が少なくて、二割、三割という可能性は、それはあってもいいと思います。
西川(京)委員 これで時間が終わりました。ありがとうございました。これで質問を終わらせていただきます。
藤井委員長 次に、斉藤鉄夫君。
斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫でございます。
 きょうは大変にありがとうございました。早速質問に入らせていただきます。
 まず、加藤参考人にお伺いをいたしますけれども、きょう私は、加藤さんがふだんからお訴えになられております、NPO税制、寄附税制の拡充こそ日本の経済を根幹から変える、構造を変えるということについてのお話があるのかな、こう思って来たわけですが、きょうはその話がございませんでした。まず、私も文化関係の税制、そこら辺から糸口をつけて頑張っていくべきだということを主張しておりますが、その点につきましての加藤参考人の御意見をお伺いしたいと思います。
    〔委員長退席、萩山委員長代理着席〕
加藤公述人 今委員からお話のありました寄附税制、私は大変に大事な仕組みだと思います。
 現在、公益法人改革という形で、これは行革事務局が担当して、公益法人あるいは中間法人、それからNPO法人、全体の制度改革が進行中であります。私もその懇談会に参加いたしております。今の予定では、三月中に、公益法人、今の民法三十四条に基づきます財団、社団含めたすべての仕組み、非営利の法人という形の、今まで公益法人、中間法人、それからNPO法人と三つに分かれている仕組みを一つにまとめるという改革が進行中と聞いております。
 私は、非営利法人という仕組みをつくった上で、では、そこに対して、今は公益法人に与えられているさまざまな優遇措置、寄附税制を含めて、それがどうなるかというところが非常に大事なところだと思います。
 ごく概括だけ申し上げますと、現在は、財団、社団、公益法人、法人格をつくるところで、官庁がおまえのところは公益性ありだと認めたところには、その器をつくるところで既に優遇措置がセットになって出てくる。よく言われる事前行政の最たるものだと思います。まだその法人が活動する前に、山のような書類を審査して、その結果、おまえのところは公益性がありといえば自動的に優遇措置がついてくるという仕組みになっているものですから、その後活動を始めて十年、二十年とやっていますと、最初は公益法人だったのが、いつの間にか無益あるいは私益法人になってしまっていても優遇措置がついている。
 一方で、NPO法人などは、周りの人たちから大変役に立っているとありがたがられたとしても、今はその優遇措置、寄附税制、そこに対する寄附は所得控除にならないという仕組みになっております。ここを、その基本から変えていく。
 変える点は、私は、一つは、公益性というものをだれが判断するのか。やはり霞が関の真ん中で日本全体について一律、一元的に公益性を判断するのは無理ではないか。なるべくローカルに、地方自治体、例えば都道府県別に公益性を判定するための独立の機関をつくって、そこで判定する。その上で、税務当局は、そこがその公益性を判定したのであれば、その判断の上に乗っかって、例えばその団体に対する寄附については所得控除をする。果たしてその判断が正しいかどうかということは、その団体の財務及び活動についてのディスクロージャーで検証していく。基本的にはそういう仕組みがいいと考えております。
斉藤(鉄)委員 ありがとうございました。
 もし時間があれば、後で地方分権のことについてもちょっとお話を伺いたいと思いますが、先に富田公述人にお伺いをいたします。
 きょう、お話を伺って、最初のフレーズで、我が国の国債残高が非常に第二次世界大戦末の状況に似てきている、こういうことで改めて深刻さを感じたわけですが、よく、現在の日本は、そうはいっても世界最大の債権国であり、個人金融資産も千四百兆、千五百兆ある、だから、そのことを考慮に入れれば一概には昔ほど深刻ではないんだ、こういう説もありますけれども、この点についてはどういうふうにお考えでしょうか。
富田公述人 現在は国境を越えてお金が自由に行き来する時代でございまして、確かに巨額の個人金融資産とか対外純資産を我が国は持っているわけですけれども、それは私有財産なわけでして、これを無理やり強制して国債を持つようにというふうな、戦時のようなことはできませんので、やはり、巨額に国内の貯蓄があるわけですけれども、それは情勢いかんでは自由に国境を越えて出ていくという可能性もある。そういうことをやはり踏まえませんと、お金があるから国債を出しても大丈夫じゃないかということにはならないということでございます。
斉藤(鉄)委員 ありがとうございました。
 草野公述人にお伺いいたします。
 お話の最後に六点おまとめになりました。その三点目に、国民負担増、これはやめるべきだ、それから四点目に、年金の国庫負担の割合を二分の一へ引き上げ、これを早急にやるべきだ、こういうお話がありましたけれども、その間にはやはり国民負担増がなければできないという思いもあるわけでございまして、この点の関係、安心と国民負担増、この関係についてどのようにお考えか、お伺いいたします。
草野公述人 負担と給付のバランスをどうとっていくかということは、まことに重要な課題だろうというふうに思っております。
 私ども連合といたしましては、昨年の十月に社会保障ビジョンを出しまして、これは、二〇二五年を一つの焦点に当てました、すべての社会保障の負担と給付のあるべき姿というのを出してまいりまして、ただ、二五年というのは一つのスパンとしてはいいと思うんですが、これだけ変化が激しいときでありますので、五年タクトぐらいで見直しをしていこう、こういうことにいたしております。
 しかしながら、一方、今先生御指摘の基礎年金の部分は、過去におきまして、国庫負担を二分の一に引き上げるということがもう既に決まっているわけであります。しかも、先ほどからも申し上げておりますように、やはり経済あるいは生活に対する先行き不安が非常に国民の気持ちをなえさせているといいますか、消費についても絞り込むようなことになっておりますので、今は私は、生活の将来の安定というものを先に確認していくということの方が優先すべき課題ではないか、こういうように考えております。
斉藤(鉄)委員 松本公述人にお伺いします。
 今、私もいろいろな医療関係の本を読んでおるんですが、どの本にも共通してあるのは、日本の医療には患者の視点がない、あるのは、大変お医者さんには申しわけないんですけれども、お医者さんのもうけ主義と、官の論理とおっしゃいましたけれども、それだけがあって、そのことが医療過誤、また隠ぺい等の根底になっているんだ、こういう本がいっぱい出ているわけで、我々もそれを読んでいるんですが、この点についての御意見を伺えればと思います。
松本公述人 現実的に、医療過誤なんかの問題については、やはり私は、卒後臨床教育あるいは卒前教育に問題があるんだろうと思います。
 現在、医者のもうけ主義ということについては、なかなかできなくなっている。昔は薬価差で食っていっていたという状況があるんですが、それができなくなってきているということも事実です。そういう点では、患者さんの権利意識が高まって、余りもうけ主義的な医療をやると批判されるような環境になっております。また、病院では、先ほど申し上げましたように、経営基盤が非常に脆弱になってきていますので、安全について費用をかけようとしてもなかなかそれが捻出できないような環境にあるということですね。
 医療事故の問題の基本は、やはり医学教育の問題だろうと思います。卒後臨床教育の問題で、当初の案では、大学病院に二十床に一人の研修医を置くということになっておったんですが、審議会では十床に一人というふうに、やはり大学中心の研修体制をつくろうとしているわけですね。
 ところが、外科の手術を十数年したことのない人が外科の教授になる、あるいは、基礎研究ばかりしておって内科の臨床をしていない人が、遺伝学でいい仕事をしたから教授になる、あるいは、外国の、「サイエンス」とかイギリスの「ランセット」とか、そういう有名な雑誌に論文が出ると教授採用の資料になるんですね。そうすると、基礎的な研究で業績を上げた人が臨床の教授になるということで、現実的には臨床を指導できない教授が余りにも多いんです。はしかを診断できない小児科の教授もいました。
 そういうシステムが現実的に本当に大学で臨床教育ができるかというと、できないですね。それで、第一線医療機関で実際に研修をするということが非常に大事ですし、大学での教育がそういうモラルも含めて指導できていないということで、もちろん現在の小学校、中学の教育にもさかのぼりますが、そういうところが現在医療過誤の最大の要点だと思います。患者さんと話すときに、正面を向いて話せない医者が最近大変多くなっています。そういう根本のところから直さないと、医療過誤は少なくならないだろうと思います。
斉藤(鉄)委員 終わります。ありがとうございました。
萩山委員長代理 次に、井上喜一君。
井上(喜)委員 保守新党の井上喜一でございます。
 きょうは、公述人の皆さん方に有益なお話を伺いまして、本当にありがとうございました。順次御質問をさせていただきたいと思います。
 まず富田公述人でありますが、公述人のおっしゃいますこと、私もおおむね賛成でございます。
 そこで、お伺いしたいのは、一番最後のところ、今後の課題ということで三点挙げてございます。財政構造改革を加速するとか、あるいは財政の持続可能性を回復するとか、国による信用保証を国債に集中し限定する、この三点ですね。これについてもう少し庶民にわかりやすく、具体的にこの三点について御説明いただきたいんです。
富田公述人 時間の制約もあってちょっと簡単な三点になってしまったわけでございますけれども、結局は、長い視点で経済政策運営を行うことが重要であるということでございます。そして、私どもは崩壊してしまった旧ソ連とか東欧のような計画経済に住んでいるのではない、市場経済の中に生きているんだということが大前提だということを絶えず念頭に置かねばならないということでございます。
 つまり、市場が持っている本来の機能である最適化とか、そういうものを生かすような形に経済運営を行うことが重要である。そのために、歳出を民間活力を引き出すようなものに変え、そして長期的に財政の持続可能性を維持するということ、そして、三番目に指摘させていただきました点は、やはり国が全部連帯保証人になっていますと、国自体の信用も低下しますし、また連帯保証してもらっております地方自治体とか特殊法人の行動もやはり効率的なものにならないということはあるわけでございます。
井上(喜)委員 次に、草野公述人にお尋ねいたします。
 最後に、要望、要請というんですか、六点ばかりありましたが、その一番最初の雇用の創出についてであります。
 幾つかの主要なカテゴリーについて、もっと雇用を創出していったらといったようなお話があったのでありますが、もう少し具体的に、どういうことをするのか、あるいは、そのことによってどれぐらいの雇用が生まれるのかというようなことをお聞かせいただきたいんです。
草野公述人 先ほども申し上げましたように、今雇用不安というのが大変世間を覆っているわけでございまして、私ども連合といたしましては、それぞれの政党の先生方にお願いをいたしますときに、具体的に、例えば学校あるいは介護の問題、例えばホームヘルパーの方も含んででありますが、あるいは環境整備ということでの森林の管理の問題その他、百四十万人の雇用創出ができるという、仕事ごとの分類をいたしまして提起をさせていただきまして、一昨年の補正で二十万人分雇用創出をしていただいたということで、百二十万人ということをずっと要求をさせていただきました。
 そういった意味では、特に介護であるとか教育であるとか環境であるとか、これから極めて重要になってまいりますところに雇用創出の目標をしっかり掲げた予算措置をしていただくと、世間の方が大変安心をしていただけるのではないか、そういうふうな思いで出させていただきました。
 具体的数値は、また時間の関係で別途差し上げさせていただきたいというふうに思っております。
井上(喜)委員 続いて、加藤公述人であります。
 市町村合併についてお話しをいただきました。
 私は、どうも今、市町村合併について、上から物を言うと、例えば財政の効率化とか言うものでありますから、なかなかこれは進まないのでありますが、現実に合併をしますと、いいことはいっぱいあるわけですよね。合併することによっていいことがいっぱい出てくると思うのでありまして、そういう進め方をした方が私はいいのではないかと思うのでありますが、こういうのを阻んでいる一つの原因として私は都道府県制があると思うんですよね。
 日本の縦割り行政、国から県、市町村までのこういうきっちりした体制というのは、やはり都道府県制があることによって非常に強化をされている。あるいは、市町村の自主的な御判断を都道府県制というのはかなりゆがめているんじゃないかと思うのであります。したがいまして、私は、本来の市町村合併というのは、都道府県制の廃止あるいは再編と並行して進めた方がよりうまく進むんじゃないかと思うのでありますが、この都道府県制の廃止等についてのお考えをお聞かせいただきたいんです。
加藤公述人 今委員から御指摘のありました、私も全く同感であります。
 先ほど、私のところで、六つの県と一緒に、県の仕事のどれぐらいを引き続き県でやるべきか、切り分けをやってみたと御紹介いたしました。あれは六つの県の平均ですが、どうも今都道府県でやっている仕事のうちの半分ぐらいでいい、本当はもっともっと減るんだと私は考えております。三割は市町村、一割弱が国ということになっています。私はもっと市町村に行くんじゃないかなと感じとしては持っております。
 ですから、そういう意味では、都道府県の再編、その再編というものが、道州制なのか、あるいはさらにそれを超えて連邦制というものなのか、どういうものなのか、あるいは部分的な都道府県合併みたいなものなのか、それは私にはよくわかりませんが、必要であることは間違いないと思います。
 ただ、そのときに、例えば神奈川県のような、横浜市、川崎市というような政令指定都市を除くと、神奈川県というのは一体何なのか。どうも、相模郡庁という言い方がどうかわかりませんが、という位置づけのところと、先ほど御紹介しました十六県というのは、比較的、町と田舎という言い方をあえてしますと、田舎の県が多いわけです。こういうところはやはり都道府県の役割がまだまだ大きいわけです。
 ですから、これも市町村合併と同じように、一律に合併をすべきだ、一律に道州制だということじゃなくて、むしろ政令指定都市との関係でどうなのか。あるいは三県、四県、今、東北三県あるいは東北六県でいろいろやっておりますような部分的な共同事業、ビジネスでいえばジョイントベンチャーかもわかりません、そういう試みを含めて少しずつ進めていくということが必要なのではないか。くれぐれも、やはり中央集権型のまた合併とか統合ということはやめた方がいいと考えております。
井上(喜)委員 最後に、松本公述人に伺いたいのでありますが、医療のサービスを株式会社が提供することについては問題があるというような御意見だったんですが、大都市で開設するようになるんだというふうな話であったと思うんですが、例えば過疎の村で、余り大規模じゃなしに、株式会社が医療サービスをするということについてはいかがお考えですか。
松本公述人 まず過疎で株式会社がやる場合に、それはできないだろうと思います。
 なぜかと申しますと、まず過疎になかなか現在では医者が行きたがらないんですね。一定の技術に達するにはやはり三十代にならないと一人で診られないような状況ですので、そして、そのころになりますと子供ができて、大概、私は大分市の南の方で病院を開いているわけですが、本人がいいと言っても、奥さんが教育環境が田舎ではよくないから行きたくないということになりますので、やはり株式会社が過疎でやるということは考えられないんじゃないかなというふうに思います。
井上(喜)委員 終わります。
萩山委員長代理 次に、城島正光君。
城島委員 きょうは、四人の公述人の先生方、本当に御苦労さまでございます。それぞれの皆さん方から大変有益な御意見と見解を聞かせていただいたなというふうに思っております。
 時間の制約があって皆さんに御質問できるかどうかわかりませんが、私なりにお尋ねしたい点を中心に御質問させていただきたいと思います。
 まず、連合の草野事務局長に何点か御質問させていただきますが、かなり強調されておりましたけれども、私も、そして我々民主党も、今の最大の問題の一つがやはり雇用問題であるというふうに思っておりまして、特にこの雇用問題は構造的にも大変大きな問題になってきている。いわゆる今までの失業者対策ということだけではなくて、御指摘のように、新卒者も含めた若い層の失業問題ということもこれは大きな社会問題になってきているのではないかというところも含めて、この雇用対策というのが大変な問題の深まりと広がりを持ってきているなというふうに思っているわけでありまして、そういうことからしても、この雇用対策には、それこそ抜本的な広範囲にわたる施策が必要じゃないかというふうに我々は思っております。
 そういういわゆる失業率の状況等も含めて見たときに、もう一度草野公述人のこの辺に対する御見解を承りたいと思いますが、もう一点、あわせて、今の政策、特に政府の政策の中で、この雇用関連で、雇用の流動化策、ある面でいうと雇用の規制緩和ということの中での雇用の流動化策というのがかなり、この数年、そしてまた今国会でも幾つかの法案が出されてきているわけですね。
 しかし、流動化というのは、ある面非常に、一見いいようでありますけれども、私のかなり強い危機感は、流動化するに当たっては、少なくとも今までの日本の雇用慣行の中でいけば、内部労働市場の整備は世界の中でも冠たるものがあるわけでありますが、いわゆる外部労働市場の条件整備とか、そういったものがほとんど今貧弱であるという中で流動化していくことによって、雇用面においてかなり大きな格差が、悲劇的な格差が生じてきつつあるなと。したがって、早急に外部労働市場の整備をしないことには大変大きな問題があるなというふうに思っているわけです。
 その一つが、よく言われる典型労働と非典型労働、例えばパートタイム労働者に代表されるところでありますが、その均等処遇の問題とかいったことを早急にやっていかないと、これは大変深刻な事態になっていくなということも思っているわけでありますが、この点についても御見解を承れればというふうに思います。
    〔萩山委員長代理退席、委員長着席〕
草野公述人 今先生の方から御指摘がありました、雇用が最大の課題で、しかも問題が深刻さと広がりを増している、全くおっしゃるとおりだろうというふうに思っております。
 私どもは、基本的には、雇用の問題を解決するにはやはり景気を回復させていくということが第一義的になければならない、こういうふうに思っております。ただ、それは直ちにあすできるという問題ではございませんので、その間、どのようにこの雇用対策をしていくかというふうに考えていかなければならない、こういうふうに思っております。
 そういう意味では、第一点といたしましては、先ほど来申し上げておりますように、公的雇用を含めた、ある意味では雇用をつなぐためのセーフティーネットということをまず考えていかなければならない、こういうふうに思っております。
 第二点といたしましては、一昨年から昨年にかけまして、政労使ワークシェアリング検討会を進めてまいりましたが、その合意に基づきましたワークシェアリングというものを基本的にやはりとらまえていかなければならない。
 ワークシェアリングは、先生御案内のとおり、緊急対応型と多様就業型と二つございますが、緊急の処置につきましては昨年の三月末に政労使で合意をいたしましたが、願わくば、雇用維持型の場合でも助成が出るような予算措置をしていただければと。今は雇用がふえなければ予算措置がされないということになっておりますので、そこはぜひ御配慮をいただきたい。
 それから、多様就労型の問題につきましては、今先生御指摘の二つ目の課題と密接に結びついております。私どもは、オランダ・モデル的日本型ワークシェアリングというのを目指しておりますけれども、そこにはやはり、仕事が同じならば雇用形態にかかわらずに同一、同等の処遇があるという、いわゆる均等待遇あるいは均衡待遇の措置がとられませんと、この多様就労型のワークシェアリングは進んでいかないだろう、こういうふうに思っております。
 それから、雇用の流動化につきましては、私ども労働組合は何か雇用の流動化に反対だと言われているようでありますが、決して反対ではございません。雇用の流動化というのは必要だろうというふうに思っておりますが、その場合に、先生御指摘の外部労働市場をどう整備していくか。実は、この外部労働市場の整備というのは、労働組合にとってももろ刃の剣でございまして、大変痛い課題も抱えなきゃならないんですが、私どもは、外部労働市場の整備は喫緊の課題である、こういうふうに思っているところであります。
 ただ、この外部労働市場の整備をいたしませんでいたずらに雇用の流動化を進めていけば、今受け皿がございませんので、はじき出された人たちは失業という受け皿に行かざるを得ないという現状がある。そのために雇用のセーフティーネットが今極めて重要だ、こういうふうに思っております。
 非典型労働者の急増については、御指摘のとおり、勤労者の三〇%近くになろうといたしておりますので、ここをどう対応していくかというのは、まさに政治の非常に大きな課題になってきているのではないか、こういうふうに認識をいたしております。
城島委員 そういう観点にも立って、実は民主党は、初めてだと思いますけれども、予算案を党としてつくってみて発表させていただきました。詳細はこの場では時間の関係で省かせていただきますが、マスコミで大枠のところを取り上げていただいたわけであります。
 先ほど草野公述人おっしゃったように、要望としてありましたけれども、我々は、そういう点でいうと、この予算案の中で、百万人の雇用創出が我々の予算をやれば実現が可能だという点を一つ大きく打ち出しているわけであります。特に、八兆円の重点投資で百万人の仕事を生み出すということでありまして、潜在需要を掘り起こすような点に重点的に約四・九兆円。そうしますと、雇用増として、我々の試算によると約六十九万人というようなことを代表例に挙げながら、やはり最大のポイントである、仕事をどう生み出すかということに立脚をした予算案をつくってみたわけであります。
 先ほど加藤公述人もおっしゃいましたけれども、あわせてこの予算案の特徴は補助金問題でありまして、一括交付金にしてみようじゃないかと。地方についてのひもつきの補助金をやめよう、地域対応に、十分自主的に地域の個性を生かせるような、自由に使える一括交付金に振りかえてみようということも一つの目玉であります。
 特に、百万人雇用創出、あるいは医療費の三割自己負担と言われる大衆課税の凍結といったようなことも盛り込んだこの民主党の予算案。我々としては、将来不安を払拭し、かつ有効な雇用が生み出せるのではないかというふうに自負をしているわけでありますが、勤労国民という視点から見た、連合の観点から見たところの御意見、評価をいただければというふうに思います。
草野公述人 今先生御指摘のように、先ほど冒頭で私の方から幾つかの要望を出させていただきました。
 その中で、今先生御指摘のような百万人の雇用増、仕事を生み出していこうということ。それから、グループホームの増設であるとか三十人学級、あるいは職業能力開発事業の抜本的改革というものを含めて、百万人の雇用増を示していただいたこと。さらには、医療費の三割負担凍結、あるいは国民負担なき雇用保険財政の安定化、介護保険の国庫負担増など、勤労国民の不安を解消させる内容となっている等々を含めまして、私どもとしては、大変いい案ではないかというふうに判断をいたしております。
城島委員 ありがとうございました。
 富田公述人にちょっとお尋ねいたします。
 先ほどのいろいろな御見解、特に構造改革が必要だという、一言で言うと構造改革、特に財政構造改革が必要だと。基本的なところについては同感であるということの前提の中で、しかし一方で、先ほどからの御指摘にもありますけれども、やはり、経済の回復というんでしょうか成長ということも、さまざまな面からいってこれも喫緊の課題だろう。そうしたときに、今までの経済運営というのが本当にすべてが失敗だったのかどうかという点については、異論が唱えられているところも結構あるんだろうと思うんですね。
 今まで、特にこの十年間の幾つかの政策でも、私もちょっと思うのは、例えば橋本内閣のときの、九六年から九七年だと思いますけれども、当初は非常に安定的な、あるいは理想的な成長に乗りかけたんじゃないか。しかし、そこで、富田公述人はちょっと見解が違われたんですけれども、一般的に言われる、かなり国民負担を、あのとき九兆円だったかと思いますけれども、消費税を上げるとか医療費の自己負担等を上げるとかいうような、負担の決定というんでしょうか増税方針というようなことで、結局、これでいうと十三兆円になりますね、デフレ政策をとるということによって一気に株価も下落をしていった。
 というのは代表例なんですけれども、過去十年間の日経平均の株価の変動を見ますと、すべて僕はいいというわけではありませんが、せっかく財政出動で株価を上げて、いい方向へ行くかなというときに必ずブレーキを踏まれる。どうしても、財務省主導とは言いませんけれども、やはり、財政再建の懸念というのが出て必ずブレーキが踏まれることの繰り返しをどうもしてきた。そのことが一つ大きな今の状況の要因になっているのではないかという見方も、かなり強い説としてあるんだろうというふうに思いますが、あえてもう一度その辺の見解についての御見解をいただきたいと思います。
富田公述人 まず、九七年の景気後退、これをどう考えるかということが一番重要でございます。
 九七年は、委員御指摘のとおり、四月に消費税が引き上がったわけですが、その悪影響は四―六月でほぼ出尽くしまして、七―九月は、個人消費もプラス、設備投資もプラス、そして成長率もプラスでございました。
 ただ、この数字が出ましたのは九七年十二月の上旬、たしか三日だったと思います。そのときを思い起こしますと、九七年十一月三日には三洋証券、そして拓銀、山一、月末には徳陽シティと相次ぎ破綻が起こりまして、世の中喧騒状態にございまして、GDPの中身をきちっと検証するということもなされないまま、その後、景気が悪化するわけですけれども、景気悪化の原因として、消費税の引き上げが指摘されております。しかし、景気が悪くなりましたのは、この九七年の一連の金融機関の破綻の後でございます。
 九七年から九八年にかけて、個人消費は低迷いたしました。なぜかといえば、これまでの我が国の終身雇用という慣行が大企業でもやはり維持できないのかというふうなことで、個人消費が九八年初めに低迷する。
 さらに、九八年には設備投資も停滞いたしましたけれども、これは二つ理由がございまして、第一は、金融機関が融資をこれまでのように拡大できなくなった。今日のように、流動性供給が潤沢に日本銀行によって行われていない中でございました。銀行は、預金の払い出しに備えて流動性をみずから手厚く積むということでございます。企業も、在庫を積み増したり設備投資を行うというよりも、手元に流動性を確保するという行動に出ました。二番目の理由は、アジア危機、そしてロシア危機という国際金融不安が起こったわけでございます。
 つまり、当時を単に消費税が引き上がったから景気が悪くなったというふうに見ている限り、そういう思考停止状態に陥っている限り、この新しい時代を展望して切り開いていくことは困難であるというふうに考えます。
 そして、株価が、あたかも景気対策で上昇して健全化に向かうと下落するということは全くございませんでして、むしろ、我が国の株価というのは、九〇年代の初めというのは、バブルの崩壊で極めて自律的に下落を続けた後は、アメリカ株に極めて連動してきたということは無視できないわけでございます。
 今日の株式、非居住者の、外人の保有比率が非常に高くなってきております。平均で二割ですね。売買では半分近くが非居住者になっているということを考えましても、およそ先進国で景気対策を行って株価が上がるなんという国は既にないわけでございます。景気対策というのは金融で行うというのが、資本移動が自由化されてからの基本的な枠組みになっているわけでして、景気対策で株価が動くなんという、決して社会主義、計画経済じゃないということを申し述べたいと思います。
 したがって、景気対策と株価の関係というのは、何か全く関係のない絵を二つ合わせて、あたかも関係があるように錯覚しているものであるというふうに申し述べたいと思います。
城島委員 論議をしたいんですけれども、質問でございますから、次に移らせていただきます。
 草野事務局長に、雇用保険改正の問題についてちょっと具体的にお尋ねしたいんです。
 雇用保険改正案が今度政府から出されることになっているようでありますが、小泉総理は、中小企業の金融も含めてですれども、セーフティーネットに万全を期す、そういうことを何度もおっしゃっているわけでありますが、私自身は、先ほどの雇用問題も重ねて言いますと、この雇用保険改正、先ほど触れられましたけれども、給付日数が減ったり、いろいろな、雇用保険の財政の帳じり合わせでしかないな、どこに万全を期すということがあるのか、言っていることと具体案が全く逆じゃないかというふうに私は思っております。
 民主党としては、雇用保険財政の安定化のための基金あるいは能力開発基金の創設を対案として考えているところでありますが、特にこの雇用保険改正について御見解を承りたいと思います。
草野公述人 雇用のセーフティーネットに万全を期すべきというのは、全く御指摘のとおり、必要なことだというふうに思っております。
 今回の雇用保険の改正の一番の問題点は、やはり中高年の離職者に対する給付が大幅に削減されているということではないだろうか。賃金の高い受給者を重点に削減することで低所得者への影響は少ないとして、一〇%以上削減となる受給資格者の比率は二割程度とした全体平均の試算が出されておりますけれども、今、最も再就職が厳しくて量的にも大幅に出てきております中高年の部分を見ますと、四十五歳から五十九歳層では、実に受給資格者の四分の一が一〇%以上給付の削減を受けるということになりますし、二〇%以上削減される人たちが約一割近くになる、こういうような実態でございます。
 連合といたしましては、ハローワーク前で求職者の人たちのアンケート調査、聞き取り調査をやっておりますけれども、失業期間が長くなるほど、賃金ミスマッチを再就職できない理由とする者は少ないという結果が出ておりまして、雇用保険の給付を再就職賃金に合わせれば再就職が促進されるという理屈は、実態とはちょっと合っていないのではないだろうかというふうな感じを持っているところでございます。
 それで、実は、失業した場合の給付が日額一万円、日額八千円等々と言われておりますが、例えば一万円にいたしますと、三十万円ということになる。これが高いのではないか、こういう御指摘だろうと思うのですが、実は、ここから前年度の住民税等々が引かれますし、社会保険料も引かれます。そうしますと、私どもの試算でいきますと、例えば日額八千円の方の場合は、三十日ですから二十四万円になりますけれども、実際には、ここから六万五千円ほど引かれます。したがって、十七万円台の収入ということになりまして、果たしてこれが高いと言えるのかどうかということも、ぜひお考えをいただきたいというふうに思っております。
城島委員 それでは続いて、医療費の問題について、これも草野公述人と、それから松本公述人にもちょっと御見解をいただきたいんです。
 まず、草野公述人には、今回の医療費、特に自己負担三割の凍結ということを、野党四党もそういう法案を提出させていただきました。連合もそういう主張をされているわけでありますが、特に保険財政について、そんなことをやって大丈夫なのかという意見もあるわけでありますが、この辺も含めて草野公述人に御見解を承りたいのと、松本公述人にも、この保険財政、特に自己負担三割の凍結問題について、現場感覚として見たときにどういう御見解をお持ちなのか、お尋ねしたいと思います。
草野公述人 先ほども井上先生のときに御紹介いたしましたが、私ども、こういう「連合21世紀社会保障ビジョン」というパンフレットをつくっておりまして、この中に、基本的な考え方、それからグランドデザインを全部提起いたしておるところでございます。
 今、城島先生の方から、医療費三割負担の凍結、これは私どももお願いをしておりますが、今回の三割負担につきまして、当初、三割負担と薬剤一部負担廃止によって約五千四百億円の医療保険の医療費が減少するというふうに試算をされておったというふうに聞いております。また、二〇〇二年度の予算編成時には、医療費が一%増になるというふうに見込まれていたというふうに記憶をいたしておりますが、しかし、二月十九日の中医協に報告されました医療費の動向では、二〇〇二年の四月から十月がマイナス〇・六%、十月だけでマイナス三・三%でございまして、当初の見込みよりも大幅に減少いたしておるという実績が上がっております。
 そういうことから考えると、三割負担に引き上げる必要は全くないのではないだろうか、こういうふうに思っております。
 さらに、多剤投与といいますか、薬に頼るということを避けるために一定の効果があった薬剤の一部負担金、これは存続させることが必要ではないか。そのことによっても、三割負担への引き上げを凍結、廃止すべきではないか、このように考えております。
松本公述人 医療財源のことですが、健康保険組合なんかというのが大企業を中心にやられておるわけですけれども、随分たくさん、保養所とかいろいろなものを持っています。その財産は兆を超えるというふうにある資料にありましたけれども、普通、赤字になってくると、企業は社長の個人的な資産まで処分してやっていくということになるわけですが、健保組合の方は、そういうことをやったということは寡聞にして知らない。そういうような基本的なところから取り上げていかないと、厚労省の出した資料だけで赤字、赤字というのが本当なのかというような疑問を感じます。
 そういう点で、もっと健保組合の実態について、先ほどの公的病院の赤字の実態も含めてメスを入れないと、今後の医療については十分なことができないだろうという気がいたします。
 それと、三割負担の問題ですが、これは結構、大企業の健保組合なんかはそれを補てんしているんですね、三割負担しても。大企業の組合員なんかの場合には、それはそう心配ないかもしれませんけれども、政府管掌あるいは国民健康保険なんかの場合は、もう既に国民健康保険は三割になっているわけですね。そういう意味で、平等という意味合いで三割負担をさせるということについては、別に私は悪いことではないと思っています。
 しかしながら、これまで、医療がこれだけ財政が窮迫してきているというその責任をだれ一人とっていないんですね。厚労省の役人が間違った政策を出して、それが出費がたくさんになったといっても、責任をとらない。そしてしかも、過去の失政の総括をしておりませんから、当然ながら同じ間違いをする。
 先ほど申し上げましたような厚労省の三つの視点、患者の視点の尊重、それから質、効率性、医療基盤の整備ということですが、先ほど申し上げましたように、本当の意味でこの三つを保障するためには、医療機関の経営基盤を強化しなければ、絵にかいたもちになる、それで医療機関が破綻するというのは、もう目に見えているわけですね。そういうところには、この間、一貫してメスを入れていないんですね。
 そういう中で、医療機関が経営が逼迫してくると、正直なところ、この検査をたくさんしようじゃないかというような問題が既にあちこちで発生しています。平均在院日数を中心にしたシステムを導入することによって、熊本済生会病院は、全国で最初に急性期特定入院加算というものをとったわけですが、単価が、これまで三万ぐらいのものが六万数千円と、二倍になっているわけですね。そういうところを分析して、医療費をどうすれば安くなるのかという観点がないということ。
 もう一つは、先ほど申し上げました予防と質というところで、予防について言えば、例えば今回、生活習慣病について三千数百円、今まで負担がわずか八百円前後であったんですが、三千数百円になったわけですが、それに対して、きちっとした体力評価をして運動指導をやっているところと、ただ机上で説明だけに終わらせて三千数百円もらっているところがあるわけですね。そういうことについて、その人の年齢で体力評価して、どういう運動処方をすればいいかというところをやっている病院とやっていない病院が全く同じ同一料金というようなところが、結局、楽をしてもうけようという発想は、医者も人間ですから、そういうところになりがちなんですね。
 そういうところにメスを入れないで三割負担云々かんぬんと言っても、それはやはり健保組合の幹部の経営能力がだめなあかしであって、その責任を若い世代の保険料負担ということで転嫁すること自身がそもそも大きな間違いだろう。
 そういう意味では、過去の失政の内容を改めて検討して方策を出していくことを皆さん政治家の方に私は望みたいと思います。
城島委員 ありがとうございました。
藤井委員長 次に、樋高剛君。
樋高委員 自由党の樋高剛でございます。
 きょうは、四人の公述人の先生方におかれましては、お忙しい中をお越しをいただいて、御高説を賜りまして、厚く御礼を申し上げます。本当にありがとうございます。
 まず、今回の二〇〇三年度の予算案につきましては、緊縮型としながらも、史上最高の新規国債を発行して、構造改革を掲げながらも、従来型のいわゆる小手先の調整を繰り返した予算案にすぎないのではないかと私は思っております。特に税制の部分なんですけれども、大衆増税という言葉に象徴されますけれども、減税の財源を単に国民負担へと置きかえた税制改正にほかならないのではないかというふうに思っております。
 まず最初に、草野公述人に伺いたいと思いますけれども、さまざま今論議になってきております消費税の表示の方式につきまして、お考えを賜りたいと思います。
 政府税調、去年の十一月でしょうか、まとめた答申によりますと、「消費者の便宜のため、価格の総額表示が促進されるよう配慮していく必要がある。」と記述されております。そして、去年十二月、政府の平成十五年度税制改革大綱では、さらに踏み込みまして、消費税を含む総額表示方式が義務づけられることとなって、そして平成十五年度税制改正案に盛り込まれているという経過をたどっております。
 消費税の表示につきましては、現行は内税方式と外税方式どちらでもよいことになっておりますけれども、これまで、内税方式と外税方式どちらが適正かという議論そのものが私は欠落しているのではないか。国として、税制のあり方やあるいは税の使い道など、いわゆる抜本的な検討がそもそもなされていないままこういう方向づけがなされること自体に、私はまず問題があるのではないか。そして、単に適正な表示のあり方を広めることを目的に消費税額の内税方式の義務づけを今国会で行うことは、政府として余りにも拙速な対応だと私は考えますけれども、どのようにお考えになりますでしょうか。
草野公述人 消費税の表示問題につきましては、今先生御指摘のとおりだろうというふうに私どもは理解をいたしております。やはり、税は取られるということもございますが、税を納めるという意識が国民の中に定着していくことが非常に重要だろう。そういう意味では、内税ではなくて、きっちりと税を外で表示する。そして、自分はこれだけの税を負担しているんだということがわかるようにしていくことが大事だし、一方でやはり、うがった見方をいたしますと、痛税感を避けるために内税にしていくのではないかということが我々心配でございます。
 それと、今既にシステムを入れているところが、これを変えるとなると膨大な設備投資をやらなければいけないという面もありまして、今の状況の中でそれが果たしてできるのかどうかというのは大変大きな課題だろうというふうに思っております。
 いずれにしろ、きっちりとした議論をすべきであって、何かのついでに変えるというようなことはやめていただきたいというふうに思っております。
樋高委員 しっかりと論議をしていかなくてはいけないということであろうと思います。
 富田公述人にお伺いをいたしたいと思います。
 国債のいわゆる専門家ということで、平素から論文なども私は拝聴させていただいております。国債整理、以前の論文の中で、三つの選択肢ということで、いずれ整理をしていかなくちゃいけないけれども、その整理をどういうふうにしたらいいだろうかということを、私、基本的なことも本当に先生の論文から学習をさせていただきましたけれども、その中では、財政再建、デフォルト、またインフレと、三つの方法を示されております。
 この三つの方法につきまして、改めて、わかりやすく、メリット・デメリットを含めまして、先生の御高説を賜れればと思っております。
富田公述人 先生御指摘のように、国債が大量に累増した後、国債を整理するということが避けられないわけでして、その方法は三つあります。
 第一が、意図するかどうかは全く別にして、インフレーションということでございました。これは、第一次世界大戦後のドイツ、そして第二次世界大戦後の我が国などにその事例がございます。こういうことは避けるべきということは当然でございます。
 二番目がデフォルト、これは国債の支払い条件の変更でございました。これには、例えば短期の国債を長期に無理やり借りかえるということで、例えばムソリーニなどがそういうことを行いましたし、また、我が国に振り返ってみますと、第二次世界大戦の直後、GHQの占領下にあったわけですけれども、戦時中に政府が軍需企業に対しまして支払い保証を行っていたものがございます。それを、GHQ占領下の我が国は、支払い保証、政府保証をやめました。したがって、政府が保証しているからといって、やはり財政が危機的な状況ですといつまでも保証できないという事例でございます。また、デフォルトはほかの国にも例がございます。これも当然避けねばなりません。
 そうすると、何が正しい道かといえば、財政の健全化しか答えはないわけでございます。それは、これまで九〇年以降ずっと政府債務のGDP比がどんどん上昇し続けているわけですけれども、この上昇をまずストップする必要があるわけでして、政府債務のGDP比を一定にするというのがプライマリーバランスを黒字化させるということでございます。
 したがいまして、国債整理ということで一番重要な点は、あるいはほかに選択肢がないという意味において、財政の健全化であり、それは具体的にはプライマリーバランスを、現在、国、地方合わせますと五%強なわけですけれども、それをできるだけ早く黒字化していくということが重要であり、それが財政の持続可能性を回復するということでございます。
樋高委員 次に、加藤公述人にお伺いをしたいと思います。
 きょういただきました資料の中の八ページのところに、「「国と地方のあり方」を見直すポイント」ということが記載されております。この一番、二番、三番、私は大賛成でございまして、国のコントロールの原則廃止、地方交付税、補助金の廃止、これは自由党でも法案を出しているぐらいでございます。自主財源の強化ということも賛成でございますが、四番と五番の部分も私は大きなポイントではないかと。地方間の財源調整、また地方の経営責任の明確化という部分でありますけれども、この部分につきまして、もう少し詳しく先生の解説をいただきますればと思っております。
加藤公述人 まず、地方間の財源調整であります。
 どういう名前にするかは別ですけれども、現在の地方交付税は仕事とくっついているわけですね。ですから、今の仕組みをやはり基本的に変えるということです。それで、先ほども申し上げましたけれども、やはり一つ参考になるのは、ドイツでやっているような共同税的なものかなと。
 これは、非常に荒っぽく申し上げますと、税金、これはどういう形で、国税として集めるということでもいいんだと思いますが、国税で、それが消費税であれ所得税であれ、一定の金額を集めて、それをプールしておいて、そのプールしたものについて国がどうこうするということは一切言わない。そのプールしたものを、地方間ででこぼこをある程度ならすための再分配の資金として使う。そういう目的で使うものであれば、それを国税というかどうかはわかりませんが、名前は私はどっちでもいい話だと思います。
 再分配するためのルールはいろいろあると思います。一番単純なことでいいますと、人口に応じて再分配するというのがあります。しかし、例えば、日本でも山村なんかへ行くと人口は非常に少ない。少ないけれども、我々の山があるからちゃんと水がきれいなんだとか、環境がちゃんと保たれているんだというような意見もいろいろあると思います。ドイツの場合には、割合平たんですし、都市も分散していますから、日本ほどばらつきが少ない。ですから、日本の場合には、人口よりももう少し工夫はしないといけない。感じとしてはそんなものかなと。
 ドイツの場合には二段階、詳しく言えば三段階と言えるんでしょうか、なっておりまして、今の日本が採用しておりますような、国を含めての垂直の再分配機能というのも最終的には一部あります。ですから、そういう部分までさらに少しは残すのか、あるいは全く国が関与する部分は除いて水平的な部分のみにするのか、これはもう少し考えないといけないと思います。
 最後の五のところについては、まだ私のところでもいろいろ議論を始めているところで、詳しくは詰めておりません。ただ、財政悪化を事前に防ぐ仕組みというところ、ここが大事なところだと思います。悪くなってしまって、それを処理する仕組みというのは一応日本にもあるわけですけれども、それを事前に防ぐ仕組みというのが全くないものですから、歯どめに結局なっていない、そこがポイントではないかなと思います。
樋高委員 どうもありがとうございました。
藤井委員長 次に、矢島恒夫君。
矢島委員 日本共産党の矢島恒夫でございます。四人の公述人の皆さん方には、大変貴重な御意見をいただき、ありがとうございます。
 早速、幾つかお尋ねしたいと思います。
 最初に、草野さんにお尋ねしたいんですが、国民負担増と消費不況の問題でお話がありました。私たちも、野党四党、健康保険のいわゆる三割負担増を凍結せよと法案を提出しておるところでございます。
 そこで、実は、安心の医療制度へ抜本改革をという連合の方針、提案、これを読ませていただきました。そのすべてをお話しいただく時間は到底ございませんが、そこで、国民皆保険制度の維持の問題で、ほかにもありましたけれども、あの終わりのところで財源問題に触れていらっしゃるわけなんです。つまり、先ほども少しお話がありましたけれども、やはり財源をどうするんだという疑問に対してお答えしているんだろうと思いますが、その点についてお話しいただければと思います。
草野公述人 ちょっと膨大な内容でありまして、私も全部を承知しているわけではありませんが、医療保険の安心の医療につきましては、まず、診療報酬体系を抜本的に変えていくべきだということを基本に置いております。
 それから、負担の方につきましては、社会保障の保険制度の負担でいえば、やはり二割というのが限界ではないかというのが私どもの基本でございまして、そこのところで今回もぜひお願いをしたいというふうに申し上げておるわけであります。
 年金の方につきましては、これは目的税を含めた財源対応をしておるところでございます。
矢島委員 松本さんにお伺いしたいのですけれども、同じく、医療制度改革と言われる中で国民負担増がもたらされると。恐らく診療抑制、九七年の二割負担のときにも、四十九万人とも言われておりますけれども、病院に行かなくなったということが統計的にあらわれている。既にもう昨年の十月から高齢者の医療費負担が増大しております。そういう中で、病気の重症化といいますか、重くならないとなかなかかからない、重くなって初めて医療機関にかかるというような弊害もあらわれてきているんじゃないか。それから、医療機関の経営に及ぼす影響というのも考えられる。
 これらの点で、現場で医療に当たられている松本公述人の御意見を承りたいと思います。
松本公述人 医療費の問題ですが、現実的には、患者さん、病気そのものは、やはり貧困との関係が非常に密接です。どこに行っても、貧困であれば、そこの疾病率は非常に高いということで、国民皆保険制度といいながら、やはり所得の少ない人は、いかにそれを有効に使うかということで、辛抱するというのがもう常識ですが、三割負担になれば当然控えるだろうというふうに思います。
 現実的に、そういうことの中で医療費総体を見ますと、昨年の四月に診療報酬が改定されましたが、大変な事態が起こったわけですね。整形外科で、リハビリなんかでずっと来られておったお年寄りが、値段が高くなったということで、整形外科単独で標榜しているところは一〇%ぐらい収入が減っています。
 そういうように、役人の一筆で診療報酬を書きかえることによって、患者さんがかかりやすい、かかりにくいというようなことが出てきます。そういう点では、そこの診療報酬そのものをもう少ししっかりしたものにしないと、一番迷惑がかかるのは所得の少ない人だということになります。
 別刷りの資料がお手元にあると思うのですが、ここで、九九年の国民医療費は約三十一兆円ですが、その中の医療費上位の一%が何と医療費全体の四分の一を使っているんですね。しかも、それが高度医療と言われるものなわけです。高度医療にそれだけ使うということについては、ある意味では実験的なことですから相当厳密に選別しておく必要があるし、それは別財源で出していくようなことが必要だろうと思います。
 基本的な医療をどうするかという、ナショナルミニマムというのですか、そのあたりは、ある意味では一割とかそのぐらいのことでやっていくような、システムそのものを変えないと、三割負担のみをとって議論するのは間違いじゃないかというふうに思います。
 以上です。
矢島委員 次に、富田さんにお伺いいたします。きょうのお話にもありましたが、地方交付税の問題です。
 来年度の地方交付税法について、いよいよ総務委員会では審議が始まります。いずれにしろ、「金融財政事情」の昨年の十一月号だったと思いますけれども、その中で「時論」というのがありますが、「モラルハザード生む交付税の改革を」、そういう文章を読ませていただきました。国と地方の役割分担の問題だとか、あるいは地方分権の問題などを挙げられておりましたけれども、現行の地方交付税の問題点、これを、時間がありませんので申しわけないのですけれども、事例を挙げていただくという形になるかと思いますけれども、よろしくお願いしたいと思います。
富田公述人 現在の地方交付税は、地方財政の収支じりを埋める形で決定されております。地方財政計画というのが年末に決まりまして、そこには地方の歳出入があり、差額が交付税によって補てんされる。地方債も補てんの役割を果たしているように見えますが、起債充当率とかそういうのがありますので、結局は、国から地方への交付税によって地方財政が成り立つ。そういたしますと、個々の地方公共団体にとってみますと、みずからの受益と負担を全く考慮することがない状態になっているわけです。したがって、この地方交付税を通じて、国の過剰関与ということ、そして、どこへ行っても同じような地方行政がなされているということが起こっております。
 したがって、交付税の地方への財源保障機能というものを縮小し、そして廃止しませんと、真の意味での地方分権というのはないだろうというふうに見ていいかと思います。
 そして、現状のモラルハザード的な現象と申しますのは、基準財政需要なるものが自治省の方で計算されているわけですけれども、それは国の歳出とか経済規模よりもはるかに速いテンポで拡大を続けておりまして、とてもナショナルミニマムとかいうミニマム的なものじゃなしに、ぜいたく財と言っていいほど拡大してきた。ですから、自治体がみずから受益と負担を勘案しなくていいという仕組みの中で、どんどん地方歳出が膨張してきてしまっているというのが地方交付税の問題でありまして、この改革が重要であるということでございます。
矢島委員 同じ問題で加藤さんにお聞きしようと思いましたが、時間になってしまいました。また機会があればということで、終わります。
藤井委員長 次に、横光克彦君。
横光委員 社民党の横光克彦でございます。
 きょうは、四人の公述人の皆様、それぞれ専門分野からの貴重な御意見、ありがとうございました。
 まず、草野公述人にお尋ねをいたしたいと思うのですが、いろいろなアンケート調査、データを提示していただきました。この五年間で一割も家計の収入が減ったと。そしてまた、支出を減らしている理由として、将来の仕事や収入の不安、あるいは年金や社会保障給付が少なくなるとの不安、こういった不安。そしてまた、勤め先での雇用、処遇についての不安が、かなりの不安、少しの不安、合わせますと、何と八割強の方が現実に雇用、処遇についての不安を抱いている。いわゆる不安だらけなわけですね。こういった不安だらけの中で、この二〇〇三年度以降の国民負担増は二兆三千億円だ、これからまた始まるわけでございます。
 いわゆる消費の抑制、これは火を見るより明らかと言わざるを得ないと思うんですが、この中で、政府がはっきりやろうとしているのがいわゆる不良債権処理の加速でございますね。これを進めることによってもうリストラは避けられないと思います。当然のこととして失業者が増大する、こういうことが懸念されるわけでございますが、現場ではどのような状況になっているのか、把握しておられるのでしょうか。
草野公述人 今先生御指摘のように、不良債権の処理が進行すると、リストラと言われる人減らし、あるいは倒産、閉業に追い込まれるところがふえてくるのではないかということは、私ども、大変危惧をいたしているところでございます。
 今、現場でというお話がございましたが、私どもが調査をした内容ですが、組合への調査でございますので、なかなかわからないというところが実は多いわけでありますけれども、雇用調整と金融機関の対応についてのことをお伺いいたしました。
 それで、雇用調整の実施が融資の条件だという金融機関からの圧力があったかなかったかということをお伺いしまして、トータルでは、あったというのが一〇・四%、なかったが四三%、あとはわからないという、組合でございますので、わからないというのがあるのですが、ところが、その中で、解雇を実施した企業のところで、圧力があったというのは実は三〇%近くに達している、こういうデータもございます。一方で、圧力があった場合に、三分の一では希望退職を実施している、こういうようなデータもございます。
 特に、百人未満の企業では、金融機関からの人員削減等の圧力を指摘する声が、全体一〇%に対して一五%あるということでございますので、かなり厳しい状態になっているのではないか、こういうふうに思っております。
横光委員 次に、松本公述人にお尋ねしたいんですが、いただいた資料に「「小泉改革」の正体はセイフティネットの破壊である」というような文言もございます。これは、医療現場からの声の一部だと思うんですが、さまざまな問題点を指摘されました。
 官民格差、公的病院の赤字に税金を投入している、あるいは消費税の損税の実態、また、介護においては、在宅介護を重視しながら現実は逆の方向を行っている、いろいろなゆがみがある中で、また、いろいろな問題点が解消されていない中で、国民健康保険法が改正されて、これからまた新たな負担増が始まるわけですね。そのことに対する現場の、どのような状況が起きるかということは先ほど質問ございましたので、ちょっと飛ばします。
 先生、きょう、非常に強く言われていたのが、良質な医療の提供体制の必要性、構築の必要性、これはおっしゃっておられました。いわゆる良質な医療というのは良質な医師からくると思うわけですね。要するに、良質な医師の研修、あるいは医師の、官と民との、どういう方向に進むかという問題点、こういったところがいわゆる良質な医療につながると思うんですが、医療の現場の実態は、これからの若手の医師の育成あるいは方向性というのはどのようなことになっているか、お聞かせいただければと思います。
松本公述人 今後の若手医師の養成の問題については、現在、平成十六年度から臨床研修必須化ということになっておりますが、これがプライマリーケアという第一線の医療を重視するということで考えられてきたわけですが、審議会の検討委員会の委員長さんは東大の教授さんで、やはり大学中心にしか物を考えない。したがって、二十床に一人、研修医を大学で研修させるという方策だったのが、いつの間にか十床に一人ということで、若手医師の囲い込みを図っているというのが現実です。
 なぜ問題なのかといいますと、大学は、やはり大学内で立身出世する、教授になるということは論文の数で決まります。論文の数というのが、インパクトファクターといって、結局、外国の有名な雑誌に載ったのを十点とすると国内に出したものは一点しかやらないというようなことで、そうなりますと、そういう外国の有名な雑誌に出すためには基礎研究が中心になるんですね。臨床じゃないんです。そうすると、机上では非常にいい仕事をしているけれども、患者を診られない医者が医学部の教授になるというシステムですね。そういう中できちっとした臨床指導はできないだろうと。例えば、大分医大の内科の教授が私の病院に来て、診てくださいと言っても、恐らく、自分の専門の糖尿病は診られても、ほかのところは指導できないだろうというふうになっています。
 そういう、基本的に臨床医を養成するというシステムを日本は放棄してきた。四十年前は、アメリカの医療と日本の医療は基本的に変わりませんでした。しかしながら、この四十年間の中で、アメリカの臨床と日本の臨床が物すごい格差がついてきたというのが現実です。それは、システムそのもの、大学が若い医者を、臨床現場じゃなくて、囲い込んで下請研究をさせたということが一つです。
 それと、もう一つは、先ほど申し上げましたが、官民格差の中で、公的病院の方が居心地がいいんです。土日は救急もしません。地方の救急は全部民間病院ですね。そうすると、休みもとれて人数が多くて楽ができるということで、そういう点で、大学に長くいる人は、公的病院の部長になること、あるいはそこの院長、副院長になることを目指します。そういう人事権は全部教授が握っているんですね。(発言する者あり)そうなんです。赤ひげじゃないんです。
 そういうような、システムそのものが、本当に実力のある臨床医を養成できないということがあるので、先ほどから言いました官民格差、官優先、大病院、大都市優先のシステムを変えない限りはすぐれた臨床医が出てこないだろうと思います。
横光委員 ありがとうございました。
 今のお話の中で、いわゆる救急医療のこともちょっと触れられました。これはまさに医療の最先端で、命を救うか救えないかで、非常に大事なところだと思うんです。この救急医療の分野も官民の問題があると思いますし、ここはもっともっと協力的な体制というものがこれから必要だと思うんですが、この問題は現実はどうなっているんでしょうか。
松本公述人 先ほどは申し述べませんでしたが、私の資料の最後から二枚目に「地域における必要な医療提供の確保」という、厚生労働省のことを書いておりますが、この中で、実際に厚生労働省の考え方は、やはり現場を知らない方がいろいろ指図しているというのが現実だろうと思います。
 「地域における小児医療提供体制の充実」ということで、小児救急医療対策事業ですか、支援事業というものをやりました。
 大分県の中でも十の医療圏の中で、大分医療圏の中で、それをどうするかという議論がありましたけれども、そのときに、隣の医療圏の小児救急のことは全く検討されないんですね。だから、その医療圏からも十キロぐらいしか離れていないのだから、それを全体としてどういう救急をやるかという、大分市広い中で、北と南と東と西ということで、南の外れにうちはあるわけですが、そうすると、隣の郡部、ほかの医療圏が関係するわけですね。その医療圏と一緒に小児救急のことは一切考えていないということですね。
 近くに県立病院があるわけで、県立病院というのは大分の中央の県立病院じゃなくて、地方の三重病院というのがあるんですが、そこに小児科医一人なんですね。一人で頑張っているんですけれども、これは絶対体力的に参るわけです。そうすると、民間と一緒になって小児救急医療をどうするかということを考えていただかなければいかぬのですが、そこは全く行政にも念頭にないんですね。
 あるいはまた、私どものところは呼吸器の専門家はいないので、ちょっとコンサルテーションしてほしいということで、国立病院の医者に、呼吸器の専門家にお願いしたら、いや、兼業は禁止されている、コンサルテーションに行くには無料だ、無料なら行っていいというと言われるわけですね。
 だから、官と民の役割分担と連携というのが医療の中で全くなされていないということです。人の命にかかわることに官民が協力していないという実態があるわけですね。
 そういう中で、例えば救急医療についても今度の予算書の中に書かれていますが、この資料のしりから二枚目に、日本赤十字社恩賜財団済生会等の開設する云々には九億七千八百万計上すると。民間病院に対してはどうするかというのは一言も書かれていないわけですね。
 そういうような、救急医療は何のために、だれのために用意しなきゃいかぬかということが、官は自分たちの領域から一歩も出ない、厚労省は官民の役割分担と連携を強調しているんですが、実態は全くそれはなされていないという、そこのところをどうかしないと、幾ら救急医療といっても絵にかいたもちだろうというふうに思います。
横光委員 どうも。終わります。
藤井委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。
 公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。
 以上をもちまして公聴会は終了いたしました。
 午後一時から委員会を開会することとし、公聴会は、これにて散会いたします。
    午前十一時五十八分散会


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