衆議院

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第2号 平成18年2月27日(月曜日)

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平成十八年二月二十七日(月曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 大島 理森君

   理事 金子 一義君 理事 田中 和徳君

   理事 玉沢徳一郎君 理事 松岡 利勝君

   理事 茂木 敏充君 理事 森  英介君

   理事 細川 律夫君 理事 松野 頼久君

   理事 上田  勇君

      井上 喜一君    伊吹 文明君

      臼井日出男君    奥野 信亮君

      河井 克行君    河村 建夫君

      斉藤斗志二君    笹川  堯君

      実川 幸夫君    杉田 元司君

      鈴木 馨祐君    薗浦健太郎君

      園田 博之君    高市 早苗君

      渡海紀三朗君    冨岡  勉君

      中根 一幸君    中森ふくよ君

      林   潤君    藤井 勇治君

      二田 孝治君    町村 信孝君

      三原 朝彦君    山本 公一君

      山本 幸三君    山本 有二君

      小川 淳也君    大串 博志君

      岡田 克也君    加藤 公一君

      北神 圭朗君    笹木 竜三君

      高山 智司君    原口 一博君

      伴野  豊君    馬淵 澄夫君

      山井 和則君    坂口  力君

      桝屋 敬悟君    佐々木憲昭君

      塩川 鉄也君    保坂 展人君

      糸川 正晃君    徳田  毅君

    …………………………………

   公述人

   (岐阜県可児工業団地協同組合理事長)       加藤 千雄君

   公述人

   (鳥取県知事)      片山 善博君

   公述人

   (北海道大学公共政策大学院教授)         石井 吉春君

   公述人

   (文京学院大学経営学部教授)           菊池 英博君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十七日

 辞任         補欠選任

  臼井日出男君     薗浦健太郎君

  尾身 幸次君     中森ふくよ君

  亀井 善之君     冨岡  勉君

  中山 成彬君     中根 一幸君

  根本  匠君     藤井 勇治君

  二田 孝治君     林   潤君

  町村 信孝君     杉田 元司君

  原口 一博君     高山 智司君

  古川 元久君     山井 和則君

  佐々木憲昭君     塩川 鉄也君

  阿部 知子君     保坂 展人君

同日

 辞任         補欠選任

  杉田 元司君     町村 信孝君

  薗浦健太郎君     臼井日出男君

  冨岡  勉君     亀井 善之君

  中根 一幸君     中山 成彬君

  中森ふくよ君     鈴木 馨祐君

  林   潤君     二田 孝治君

  藤井 勇治君     根本  匠君

  高山 智司君     原口 一博君

  山井 和則君     古川 元久君

  塩川 鉄也君     佐々木憲昭君

  保坂 展人君     阿部 知子君

同日

 辞任         補欠選任

  鈴木 馨祐君     尾身 幸次君

    ―――――――――――――

本日の公聴会で意見を聞いた案件

 平成十八年度一般会計予算

 平成十八年度特別会計予算

 平成十八年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

大島委員長 これより会議を開きます。

 平成十八年度一般会計予算、平成十八年度特別会計予算、平成十八年度政府関係機関予算、以上三案について公聴会を開きます。

 この際、公述人各位の皆様方に一言ごあいさつ申し上げます。

 諸先生方におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。平成十八年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。

 御意見を賜る順序といたしましては、まず加藤公述人、次に片山公述人、次に石井公述人、次に菊池公述人の順序で、お一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 それでは、加藤公述人にお願いいたします。

加藤公述人 岐阜県の可児市から参りました加藤千雄です。

 当委員会に呼んでいただきまして、意見を述べさせていただく機会を与えていただきまして、厚く御礼申し上げます。予算については賛成の立場で、また我々中小企業からの御希望を述べるために参りましたので、よろしくお願いいたします。

 まず自己紹介ですが、私は岐阜県可児工業団地協同組合理事長の立場でございます。本業は、金属プレス加工、金型設計、製作、プラスチック成形などを行っております株式会社加藤製作所の、町のかじ屋のおやじでございます。当年とりまして六十八歳、社長歴五十一年間です。

 工場は、可児工業団地に二工場、米国に一〇〇%子会社、五〇%合弁子会社、中国に一〇〇%子会社、一五%合弁子会社、韓国に二〇%の合弁子会社、シンガポールに四〇%の合弁子会社で、五カ国八工場を持っております。この理由は、お客様が海外生産で現地生産、最適地生産、最適地供給のために、仕事が国内でなくなっちゃったものですから、お客さんをぼって歩いておるような次第でございます。出稼ぎに明け暮れる毎日でございます。

 まず、岐阜県可児工業団地は、国と県が高度化、集団化施策によりつくっていただきました五十四社六十五工場の、東海地区最大規模の四十一万坪、百三十六ヘクタールに及ぶ団地で、主に自動車、工作機械、航空機関係の部品、金型、治具をやっております。

 岐阜県地域の景気の状況は、地場産業の繊維、刃物、窯業、木工、建設、土木と、いまだに全然よい業種はありません。当工業団地だけは今よい業種がそろっておりますので、むしろ人手不足の状況でございます。工場も、今皆さん手狭になりまして、ことし、国の高度化資金を利用させていただきまして増設が始まっております。

 しかし、工業団地の土地も、建ぺい率が六〇%なんですね。そうすると、もう限界に来ておりまして、他の場所へ新しい土地購入をして工場を建てるということは、採算面からいってもとても難しい。それで困っておりましたら、きょうここに御出席賜っています当地御出身の金子議員さんが、ちょうどうまいこと国務大臣、また行革大臣のときに当たりまして、いろいろ相談申し上げたところ、六〇%から八〇%に建ぺい率をふやすことを許可いただきまして、お金をかけずに大改革をしていただきました。

 これは、我が工業団地が初めてなので、全国に広がれば非常にいいかと。これは二〇%の土地を無償提供いただけたと同じ効果があるわけですね。そういうことですから、工業団地の皆さんは大変感謝申し上げております。これは、規制緩和がお金をかけずにできたということでございますから、御報告申し上げます。

 このときに先生に、海外だと、中国、アメリカ、韓国等は、ハイテク企業には土地をただでくれるわけですね。だから、そっちへみんなどんどん行っちゃえば空洞化になるというお話をしましたところ、先生が、それはいかぬというので、一生懸命に頑張っていただきました。

 次に、後継者問題、よく国会でも取り上げられますので、この点をちょっとお話ししたいと思います。

 普通、中小企業の場合、売ることができない会社の株式、売っては困る個人の住宅、この税金が高いものですから、息子、後継者が引き継ぐときに払えません。売れませんから、いろいろなものが。だから長年借金して、それをずっと払っていくということは、楽ばかりで育った今の若者にはとても我慢できない。生まれてからずっと親の艱難辛苦を見ておりまして、しかも、暇もないので、子供のころから親らしい愛情に接しておりません。親と同じ苦労はもうする気もないということで、後継者がないので転廃業が物すごくふえておるということは、国でもよくわかっておっていただけると思うんですね。どの業界も会員が激減状況なんですね。これは困ったことだと思うんです。

 よかったのは、この十五年間不況が続きまして、後継ぎが魅力を感じるだけの価値がなくなっちゃった。せめて会社の株式の評価の減額とか免税とか、後継ぎをやればですよ、そういうことをやっていかないと、中小企業が日本を支えておるというぐらいですから、九九・六から七%の中小企業の存亡にかかっております。

 さっきちょっと、よかったことと申し上げたのは、若者が物づくりへ少し戻ってきたわけですね、勤務先がなかったので。親は皆、兄弟、家族がリストラに遭いまして、事務関係はみんな失業の憂き目に遭いまして、芸は身を助けると昔から言いますように、やはり手に技術をつけなあかんというので、私ども、五年か六年ぐらい前からは、募集した全員が現場へ来たんですね、女の子も入れて。それまでは全員が事務所だったんですね。だから、こういう点は、ちょっとこの不景気がいい方へ行った点でございます。

 それから次は、よくこれは国でも取り上げるんですが、僕ら、ひがみじゃないんですが、ハイテク産業、ハイテクとかITベンチャーとおっしゃいますが、これも定義が我々とちょっと狂っておるのでちょっと言ってみますが、電子、電気を使用し、またIT化できるとハイテクと国はおっしゃいます。しかし、これは他国へ簡単に即技術移転されます。そういうのはハイテクと言わず、ローテクと言われている我々かじ屋の方が、ハイテクの基幹部品、ハードディスクにしても何でも、全部我々ローテクの産業がつくり出すものがないとできません。

 それで私、たくみのわざの、これは字引を引いてもないので自分で勝手にまとめましたので、ちょっと説明申し上げます。教えることも教わることもできなくて、五感をすべて使い、自分自身で苦労し、努力、体験、体感の長年の経験により、頭と体にしみついた技術であり、機械化、デジタル化できない、見ても聞いてもできないひとり限りのアナログ技術、こういうふうに私、自分で定義したんですね。

 これからいきますと、中小企業しかこういう技術は育つ環境がないんですね。大会社は、三年から五年間隔で、ステップアップでいろいろな業種、広く浅く訓練させます。海外は、ちょっと覚えると次の会社へ行っちゃいます。これはもうだめですね。たくみの育つ環境は日本の中小企業以外にない。

 といいますのは、我々は仕事の範囲が狭くて、こればかり一生涯やらないかぬわけです。だから、幾らへぼでも当然うまくなります。その中で、たくみの技術が生まれてくる環境が整っておりますので、これを国とか大企業、社会全般で育成、保護、援助しなくては、今後日本の発展はあり得ない。大会社も、日本の中小企業がいい部品をつくり出して、それを安く、早く、欲しいだけ供給しているので競争力のある車でも何でもできるわけです。中小企業をつぶしちゃったら、もう日本の国自体の競争力がなくなると思います。

 若い人に今後どうするかといったら、物づくりの楽しさとか、自分らもやってみたくなるような環境づくりをせないかぬ。それに見合った所得の保障が必要だし、また、たくみの技師、たくみのわざ師、何かそういう称号をつくって、名医のように社会的に認知させる。所得と名誉が与えられれば、若い人もまた、なり手があるだろうということです。

 それから人の問題ですが、中小企業はいつも人手不足ですね、不景気のころちょこっと入りましたが。それで、皆さんいつも国会でも言っていますが、日本は世界一の長寿国で、ちょっと忘れましたが、二〇一八年ごろに四人に一人が高齢者になるといいますね。さっきのたくみのわざなんかから考えますれば、経験豊富な人材が世界一、日本におるということです。

 だから、これをうまいこと使えば、本当に世界一、日本しかできないものばかり。というのは、経験豊富な人が既にいっぱいそろっておるわけですから。だから、いかにぼけ防止をやれば、これをうまく活用できる、高齢者の活用ですね。手足はききませんけれども、頭と口だけは年食うほど動きますから、そういう点をうまく利用する。

 それで、この効果ですね。

 我々がお願いしたいのは、日本の優秀な人材は、政府のお役人さんとか大会社へ多く吸収されちゃっておるんですね。中小企業には、まれに残った少数の優秀な人と、あと残りその他大勢組で、よいものを早く、安く、必要なだけつくらないかぬ。こんなことは、だから中小企業の経営者はいかに困窮しておって、困ってやっておるかということです。

 この解決策としては、お役人さんが、日本は兵役がありませんから、入省されてからせめて二、三年、兵役のかわりに全員強制的に中小企業へ研修、出向、指導で来ていただけぬかと。そうすれば、中小企業では大変助かるわけですね。

 しかも今、きょうもそうですが、中小企業の対策としていろいろ施策をつくっていただいて、それは大変感謝して、ありがたいんですが、机上論ばかりなんですね。いっぱいできてもらっても、しかも優秀なお役人さんが大勢、手間暇かけてつくっていただいても、ぴったり合わないんです。全然使い物にならなくて、済みません、これは我々がへぼいのかもわかりませんが、使えなくて、いつも工業会、工業団地で無理に使えと言うんです。

 それだと、ちっとも合わぬものですから、そういう研修に実際に入って、指導がてら来ていただければ、中小企業が本当に困っていることとか、どういうことをやってあげたらいいのかというのは完璧にわかります。そういう人が戻られれば、もう中小企業にぴったりの施策がすぐでき上がる。しかも、少人数でぴったりのものができる。

 そういうときにアンケートや調査費が大変かかるんですが、それも節約できますね。いろんな業種へそういう人が、お役人さんが行かれますから、今いろんな問題が起こっていますが、そういうことも未然に防げるんじゃないか。だって、もし政府のお役人が兵隊がわりに全業種に行ってみえれば、よく事情を知ってみえるので、何だかんだ言わなくても、お役人さんはもう推察ができますね。そういう効果もある。

 そういうことでいろいろな効果が出るので、例えばお役人さんも、小さな政府を目指して人員削減するんじゃなくて、そういうところへ出している二、三年は、安ければ中小企業で給料を半分持ちでもいいですが、全額払ってもいいですが、その間は費用が要りませんから、国も合理化になりますね。また、結果としては、今発生しているような難しい問題、これはなかなか言いにくいですが、そういうトラブル。お役人さんも気の毒なのは、六十で切られちゃうと行き先がないので、どうしても天下り先を自分たちでつくってやらないかぬわけです。

 だから、そういう研修をさせている間に、そこで物づくりが気に入っちゃえば中小企業へ移籍してもらえばいいわけですよ。また、そういうときに、すぐ来られなくても、どうも自分は余りこれから上へ行かぬなというならば、事前に予約をいただいて、五十五でも六十でもいいので、来ていただければ、中小企業も成長することができますし、もっと発展できる、そういうことだと思います。

 それから、日本は資源がないという話がよく出るんですが、これは僕はうそだと思うんですね。すばらしい人材と、それから水なんかは十分にあります。それから、プラットホームのような格好の日本ですから、世界じゅうから一番いいものを安く幾らでも買ってこられるわけですね。だから、資源がないのが資源と私は思っています。よく国会で日本は資源がない、ないという話を聞くんですけれども、資源だらけだと私は思っております。

 それから、あと補助金ですね。いろんな施策を出していただいてそれに補助金がつくんですけれども、あれはまた免税じゃなくて課税なんですね。だから、半額補助といいますと、半額もらって、自分のところの利益を足しますと、すっと半分取られちゃうもので、残った四分の一はどうなるかといったら、中小企業は御存じのように書類づくりが下手ですから、書類づくりに取られまして、結局は、もらったら損をするということで余計使われないんですね。その辺もちょっと考えて、これはもう皆さんからの要望を私が聞いてきて皆さんに申し上げておるわけです。補助金というのは免税にしないといけませんね。さっきのように、人を貸していただくとか、そういうようになったら別に免税はいいんですけれども。

 あと、たくみのわざなんかをずっと持続させるためには、そういう人に、称号と、やはり減税をするとか何かしてあげないと、もうおれは遊んでおった方がいいということになると、せっかくの人材がパアになっちゃいますから、よろしくお願いしたいと思います。

 それから、我々は、今、完全民営化で商工中金でもめていますが、これは組合の銀行なんですね。これは、皆さんの声は、何らかの形でぜひ残していただけないかと。あそこは、大体一県に一つですから、完全民営にしたら多分だめになるんじゃないかなと我々は勝手に推計しております。だから、こういう銀行は残してもらわないと、ちょっと中小企業としては困ると思います。

 それから、岐阜県なんかは田舎の県でして、まあ、ここに先生もお見えになるんですが、大変人がいいわけですね。だから、何かやるというと県も一生懸命にやっていただけるので、協力してくれて助かる。今回も高度化資金を、国は、三年かかってやればいいのですね。三年かかってできたのではもう要らぬかもわからぬよ、そういう話をしたら、すぐやりましょうということで、ことし実施ということで、今度はこっちが書類づくりに追われるというような協力を賜っております。

 それから、景気は今後どうなるか。よく話が出るんですが、これは、皆さん御承知のトヨタさんだけでも二百万台、愛知地区に車の生産をふやすということをお読みになられたと思うんですけれども、大体何個ぐらい部品が要るかというと、今一台五万点ぐらい部品が要ります。そうすると、百万台ふやすと五百億個部品がふえます。二百万台だと一千億個です。ここ一、二年で世界生産が五千万台から六千万台になりました。これが大体二〇一〇年には八千万台になるだろう、下手したら一億かもわからぬということで、一千万台ふやそうと思うと五千億個部品がふえるんです。

 これはとても間に合わぬ。だから今愛知県地区は、岐阜県も含めて、もう自動車部品メーカーは全部パンクですね。もうトヨタでも、これだけにしてもらわないと、ラインがちょいちょいとまって、どこがとめるかで、どこかとめてくれということを今やっておるわけですね。我々も今物すごく忙しい最中です。

 私の推計では、自動車はどうしてふえるかといったら、可児市みたいな田舎に住めば、車がなかったらいけませんし、アメリカに行かれれば、住まれればわかりますが、車がなかったら死んじゃいますので、死ぬまで車に乗らなければいかぬわけですね。距離が長いですから、日本の四倍、五倍乗りますから、早く傷みますね。命の引きかえですから、やはり日本車が欲しいと。壊れないから。命の保障ができますからね。そういうことで幾らでも車は売れる。アメリカの人口は三億を超えるようになってきましたし、中国もアメリカとほとんど同じサイズの土地ですから。公共機関がないですね、アメリカも中国も。全部車ですね。だから、車は恐らく生産が一億台は近いと私も思っています。

 だから、我々かじ屋も、私は五十年苦労をしたんですけれども、これからはいよいよ左うちわになるんじゃないかなと期待しておるんです。ただ、ありがたいんですが、今度何がいかぬかといったら、人が足らなくなりますからね。

 あとは、いろいろな国に出ているのは、その国々の特徴だけ使えばいいと、全部行くんじゃなくて。例えば、アメリカで電気が安いといったらアメリカへ行けばいいですし、どこか材料が安いといったらそこの国にも行けばいい。そういうところの加工だけやる。完全に自分のところの工程内の分割をすれば、いいとこ取りをすれば、もっと日本も発展できます。日本だけではとても人手不足で、これ以上は生産アップできないと私は思っています。

 勝手なことを申し上げて済みません。時間のようで、ありがとうございました。(拍手)

大島委員長 ありがとうございました。

 次に、片山公述人にお願いいたします。

片山公述人 鳥取県知事の片山善博です。きょうは、予算委員会の委員の皆さん方に地方の生の声を直接聞いていただく機会を与えていただきましたことを私、大変うれしく思っております。

 私は、今回の予算のうち、いわゆる三位一体改革なるものについて焦点を絞って意見を陳述させていただきたいと思います。その際、先ほど大島委員長から忌憚のない意見をという温かいお言葉をいただきましたので、ふだんよりも忌憚のない意見を申し上げさせていただきたいと思います。

 お手元に「いわゆる「三位一体改革」を総括すると」という一枚の紙をお配りしていると思いますが、それを見ていただきながらお話をしたいと思います。

 そもそも、いわゆる三位一体改革というのは一体何の目的でやったんだろうかということを、いま一度振り返ってみたいと思うんです。

 これは、財務省の方から、国の財政を再建するために地方に対する支出を削減しなければいけない、こういう動機があったことは当然だろうと思いますが、それはそれとしながら、地方の方は、この際、従来の国と地方の財政関係を改めて、地方の自主性が高まって、そして国と地方全体がよくなる、こういう方向に持っていけばというのが三位一体改革のそもそものねらいだったと思うんです。

 特に、一つは、「自治体財政の効率化」と書いていますが、補助金依存症候群というのがございます。

 これはどういうことかといいますと、例えば、事業をやるときに、補助金がもらえるからやる、補助金がもらえなければやらない、こういう体質がやはり地方団体には根強くあるのであります。例えば、ことしやらなくても、ことし建てなくてもいいなと思っていても、ことしなら補助金がもらえるよということがあれば、ついぱくっと食ってやっちゃう。それから、建てかえしなくても修繕でいいのにというような事態があっても、修繕なら補助金が出ない、建てかえなら補助金をやると言われれば建てかえる。こういう無駄が実はあるのであります。

 それから、補助金というのは全国画一的、一律基準でありますから、どうしても、地域では例えばもうちょっと小ぶりなものでもいいのになと思っても、それでは補助基準に合わないということになりますと、やはり実態よりはデラックスにしてしまう。こういう無駄もあるのであります。

 こんなことをやはりやめなければいけない。もっと地方自治体が現場で本当に最適な、一番ふさわしいやり方をやる、これによってスリム化を図るということが大いに求められますし、その余地が実はあるのであります。

 それから、補助金獲得のために陳情行政が盛んです。これは本当に心苦しいんですが、私たちも、国会議員の先生方に頼んで、省庁にいい意味での圧力をかけてくださいということをしょっちゅうやっています。

 本来ならば、国会議員の皆さん方は、国政に専念をしていただかなければいけない、国のあり方を考えていただかなければいけないときにもかかわらず、地元の補助金のために奔走していただくということをやっていただいているわけで、私などは本当に心苦しいのでありますけれども、そうせざるを得ない実態が我が国にはある。それをやはり解除しなければいけない。そして、中央官庁の皆さんも国会議員の皆さん方も本来の国政に専念していただく、そういう環境をつくらなければいけない、これが一つの大きな目的だろうと思います。

 それから、政府のリストラと関係するのでありますが、今、国家公務員の定数の問題なんかもありますけれども、政府を見てみますと、補助金分配業務と私は申し上げておりますけれども、補助金の箇所づけをするとか補助金を配る担当者が一体幾らいるのか、もうごまんといます。書類をつくらせて、一々それを見て、現場の実態は多分わかっていないと思いますけれども、ああでもない、こうでもないと言いながら、その箇所づけをする。この作業に大変な労力、時間、コストを費やしているわけであります。

 そして、終わった後は、今度は会計検査であります。チェックというのは、やはり現場に近いところで、納税者に近いところでチェックをした方が本当はいいのでありますけれども、現実には、補助金というものが補助基準どおりに使われているかどうかというのはやはりチェックしないといけませんから、やはり今のような非常に無駄な補助金分配業務と膨大なチェックシステムが必要になっているということです。これをやめれば、政府の大リストラになると私は思います。

 そんなことを通じてこの三位一体改革がうまくいったならば、国と地方を通じた大変大きな行政改革になる、公務員を相当減らすことができる、それから財政支出も相当スリムにすることができる、これが本来の三位一体改革のねらいだったはずであります。

 しからば、今日までの三位一体改革が、私が今申し上げました本当のねらいに照らしてうまくいっているかどうかということを検証してみたいと思うのであります。

 この一連の三位一体改革で約四兆円の国庫支出金、補助金とか負担金を削減するということになりました。それらは、では一体どういうものが削減されたかといいますと、大半は、そこにありますように、義務教育費国庫負担金でありますとか、あと児童手当でありますとか児童扶養手当のようなものであります。

 これらは実は、国庫負担金といいますのは、例えば義務教育費ですと現行二分の一、これを今国が三分の一に引き下げようとしているのでありますけれども、いわば割り勘の発想であります、本来ならば。これは恩恵的に国が地方に交付するんじゃなくて、義務教育というのは国と地方の共同責任だから割り勘で政府も負担しますよ、義務的に負担しなきゃいけないものなんです。

 ですから私は、義務教育費国庫負担金について、あれこれと政府、文部省なんかに陳情したことは一度もありません。国会議員の皆さんに頼んだこともありません。なぜならば、法律できちっと保障されているからです。私が文部省や財務省に行って、この問題で例えばあかんべをしても、悔しいながらも文部省や財務省はちゃんと法律どおりに鳥取県に義務教育費国庫負担金を交付しなければいけない、こういう代物なんです。ですから、裁量性はないわけです。ところが、イの一番にこういうものを廃止しよう、今回は率の引き下げをしようとしているわけで、これは何にもならないわけであります。正直申しまして、地方には何のメリットもありません。

 それから、逆にその陰で、実は本来廃止すべき対象の補助金が温存されるわけです。それは、箇所づけを要するとか、中央政府の裁量の余地が非常に大きいもの、官僚の皆さんにとってはうまみのあるもの、こういうものが温存されているわけであります。その結果、先ほどの政府の補助金分配業務も、今後も健在であります。政府のリストラにはつながらないと思います。人員削減にもつながりません。

 今回は、一般財源にすべき補助金といいますか国庫支出金の対象を誤っています。もっと政府に裁量性の強いものを対象にすべきであります。それが、そうでないものばかり、ロットのそろうものばかりを対象にしたところに、私は今回の三位一体改革の本質的な誤りがあったと思います。

 義務教育費や児童手当などの国庫負担金を、例えば一般財源化するとか率の変更をしても、地方団体にはメリットはありません。本来のメリットというのは、一般財源化したらスリム化できるというのがメリットなんです。一般財源化したら補助金と違って我々の自主的判断でスリム化できます、そうすることによって国と地方がスリム化できるんですけれども、今回の義務教育費はスリム化できません。

 地方の支出分がふえたからといって、税で賄うからといって、では義務教育をやめますかとか、例えば四十人学級のところを五十人学級に戻しますかなんてことはできませんので、スリム化の余地はない。児童手当についても、一般財源化されたから児童手当をやめますかとか、地方で児童手当の支給基準を勝手にハードルを高くしますかなんてことはできませんので、メリットがないということであります。この辺はよく御認識をいただきたいと思います。

 それから、「税源移譲の「功」を上回って余りある「罪」」と書いていますが、功もあるんです。これは従来、税源移譲というのはありませんでした。ですけれども今回、小泉内閣のもとで税源移譲が曲がりなりにもあるということは、これは私は一定の評価をしていいんだろうと思います。ただ、その評価をするよりももっと上回る副作用があるということであります。

 地方財源がおよそ二兆円消失することになりました。これは、具体的に言いますと、まず一つは、国庫支出金削減は四兆円です。これに見合いの税源移譲が三兆円であります。ここで一兆円消えております。ただ、私は、ここでこの一兆円について文句を言うつもりはありません。これはやはり、国も地方もお互いにスリムにしようということですから、四兆円の国庫支出金を削減して全額四兆円よこせというような、そういうつもりは全くありません。やはり三兆円でもいいと思います。

 ただし、そのいいと思いますという心は、先ほど言いましたように、国庫支出金、国庫補助金が一般財源化すればスリム化ができる。ですから、従来四兆円もらって地方が仕事をしていたものが、一般財源になったら、それを創意と工夫でスリム化することによって歳出を圧縮できる、したがって三兆円でも賄えますよ、そういう努力の余地がなければいけないのでありますけれども、義務教育費とか児童手当とか児童扶養手当はスリム化する余地がありませんから、この一兆円というのは非常に厳しいものであります。行革で吸収できない、そういう問題点を含んでいるわけであります。もともとの発想は、地方もスリム化できる余地のあるものを移譲しましょうということだったんですけれども、そうでないということで、当て外れであります。

 それから、問題は、税源移譲のどさくさ紛れに、交付税がほぼ一兆円消失しております。これは先生方は御承知いただいているでしょうか。官僚の皆さんは、だれもこんなことは説明しないはずです。財務省はもちろん、総務省の人も説明しません。

 どういうことかといいますと、三兆円は所得税で税源移譲します。その所得税というのは、もともと三二%分は自動的に交付税の原資になる代物であります。ところが、その三兆円ごっそり何もしないままで移譲しますと、三兆円は確かに移譲されますが、その陰で一兆円の交付税が自動的に減ってしまうんです。こういうことが行われているんです。

 こんなことはいけませんよという話を最初からずっとしていました。それはしませんという話だったんですけれども、結果はこんなことになっています。ただ、幾ら何でもこれは心苦しいと思ったのか、総務省と財務省が相談をしたのかどうか知りませんけれども、二千何百億円を三年間特例交付金として補てんしますということになっているようです。しかし、三年間でそれは消えてしまいます。一年間に一兆円消えて、三年間だけ恩恵的に二千何百億円ずつ補てんする、後はないよ、こういうことでありますから、平年度では一兆円消えているということであります。こういうことがトリックで行われているわけであります。恐らく国会議員の先生方はそのことは知らされていないのではないかと、僣越ながら私は思うのであります。御存じですか。ありがとうございます。

 それから、今回の三位一体改革では、自治体間の財政力格差と貧富の差を殊さら拡大する結果になっております。

 貧富の差はあります。これはしようがありません。今のように税収が伸びるとき、東京都のようなところが税収が伸びて、鳥取県とか島根県、税収が伸びない、これは仕方がないことであります。私たちのこれからの努力によって何とかこれを克服したいと思うところであります。

 ただ、今回は、国の政策によって、この貧富の差、財政力の格差を殊さら拡大する、人為的に拡大するということにつながっております。やはり、税源を移譲する、しかもそれが、スリム化できない分野で税源を移譲するということになりますと、この貧富の差は拡大するのであります。

 今までの負担金などが減らされる、しかし税源の豊かなところはそれを上回る税収が入ってきます。ところが、財政力の貧しいところは、今までの国庫負担金、義務教育費国庫負担金が減る、それに見合いの税収はわずかしか入ってきません。それを埋めるのが地方交付税です。交付税で適切に措置しますと政府は何回も言われていましたけれども、結果は、適切に措置されていません。やはり、交付税依存度が高まる、財政構造が脆弱になる、こういうことになるんです。

 自然体で格差が広がるのは、これはしようがない面があります。しかし、政策によって人為的に広げるということはやめていただきたいと私は思うんです。強い者の手を引っ張り、弱い者の足を引っ張る、こういうことは政治はやっちゃいけないことだと私は思うんです。

 私は、かつて自治省におりました。自治大臣秘書官というのをやったときに、大臣は梶山静六先生でした。梶山静六先生がしょっちゅう言われたことがあります。それは、政治というのは、強い者と弱い者がいたら迷うことなく弱い者に味方しなさい、強い者はほっておいてもどんどん前に行く、弱い者の後を押し、弱い者の手を引っ張る、これが政治の役目だということを私はしょっちゅう聞かされました。今、私は、鳥取県知事として、それを決して忘れないようにしながら行政や政治を行っております。

 今回のこの三位一体改革というのは、意図はともかくとして、結果としては貧富の差を拡大する、こういうことにつながるということは、ぜひ先生方に御承知おきいただきたいと思うのであります。

 三位一体改革を通じまして、本当につくづく感じさせられることがあります。これは本当に失礼なことも省みず申し上げますけれども、私は、各省が日本国政府の中で一体まとまりがあるんだろうかということを本当に考えさせられます。

 いろいろな方と話をしましても、みんな、自分の役所の権益とか補助金とか天下り先とか、そんなことばかりにきゅうきゅうとしておられます。日本全体、今大変な時期になっていて、国と地方を通じて一千兆円に借金がなんなんとしているときに、この国難をどうやって切り抜けようか、みんなが心を一つにしなきゃいけないときに、みんな自分の役所の権限とか天下り先のことばかり考えている。こんな国は私は異常だと思います。例えれば、学級崩壊みたいなものです。こんな学級崩壊状態が霞が関に蔓延しているということは、私は情けないことだと思うんです。

 三位一体改革をやる前に、私は、政府一体改革をぜひやっていただきたいと思うんです。政府が一体になって、心を一つにして、さあ国はこういう方向に行こう、国と地方全体をスリムにしようというような気構えがないと、今のような状態で三位一体改革といっても、エネルギーとコストと時間ばかりかかって、本当に労多くして益なし、外から見ていて、率直に申し上げてそういう感じがいたします。

 もう一つは、政府に誠実さが欠けています。これは、だんだん、年々歳々その欠ける度合いがひどくなっております。

 今回、先ほど申しました交付税一兆円消失、お詳しい先生は御存じでしょうけれども、多くの方は御存じなかったと思います。国民も知りません。地方団体の人もほとんど知りませんでした。私は全国知事会で昨年十二月に問題提起しましたけれども、ほとんどの方は御存じなかったです。官僚同士で密室でごちゃごちゃやって、何かこういう、最後、手を握ったりするということがあるわけであります。

 もともと、一兆円も交付税が消えてなくなるということが前提なら、こんな三位一体改革なんかやめようということだったと思います。そういうことがなくてちゃんと適切に措置をするからという前提のもとで、我々は、貧富の差が多少拡大してもしようがないということで甘んじて受け入れたわけであります。ふたをあけてみたら一兆円消えていた、全く不誠実であります。

 それからもう一つ、閣議決定違反もあります。BSEだけではありません、閣議決定違反は。

 それは何かといいますと、そこにありますように、そもそも骨太方針というのが閣議で決定されていまして、この骨太方針ではこういう決まりがありました。国から地方団体に税源移譲したときに廃止となる事業、事業といいますか予算、これが、地方の自主財源になっても義務的にやらなければいけないもの、これは税源を十割つけましょう、税源移譲十割しましょうということでした。これは、例えば義務教育なんかは、国から地方に財源が移ってもちゃんとやらなきゃいけませんから、義務的経費ということで十割移譲しましょうという、この十割のカテゴリーがあります。

 もう一つは、義務的でないもの、例えば一般財源化したらちょっとやめようかとか、縮小しようかとか、先延ばししようかということが可能なものについては、八割移譲するということが骨太方針で決められました。閣議決定であります。今回、施設整備系の補助金が、五百億円だったでしょうか、一部税源移譲になることになりました。これは私は評価をしております。施設整備系であっても税源移譲の対象になるということになりましたから評価しているんですけれども、結果的に税源移譲の移譲率が五割であります。これは一体どうしたことでありましょうか。それは、ちゃんと閣議決定で八割移譲するというカテゴリーに属するものであります。ところが、ふたをあけてみたら五割であります。

 閣議決定違反であります。BSEだけではありません。これは、私は不誠実だと思います。地方団体の方は八割だと信じていましたから、十割のものと八割のものがあれば、まぶして言えば九割ぐらいは税源移譲されるのかなというのが感覚としてはわかるわけですけれども、そういうことになっていないわけであります。

 繰り返しますけれども、私は、ぜひ、改めて政府が本当に心を一つにするという、この作業をやらなければいけないと思います。

 先月、私は台湾に行ってきました。台湾の政府のいろいろな方に、陳水扁総統初めいろいろな方にお会いしました。各省の方にもお会いしました。そのときの印象を申し上げますと、みんな、国のことを言っています、国のことを考えています。国を保持する、国の安全保障を確実にするにはどうすればいいかということを皆さん語ります。国民の尊厳を保つためにはどうすればいいかということをみんなが考えています。台湾の人たちは、私の省がどうだ、あの省が悪いとか、そんなことは一言も言いません。非常にうらやましいと思いました。翻って、我が国の霞が関に行ってみますと、みんな足のけり合いをしています。私なんかにも、各省みんな、よその省の悪口ばっかりです。こんな国は私はないと思います。

 どうしてこんなことになっているのか。それは、私は、やはり政治がもっとリーダーシップをとらなければいけないと思います。私の県庁で、部長さん方が、ああでもない、こうでもないと足のけり合いをしたら、そんなのはたちどころにみんな首です。それぐらいのことはできます。だから、心を一つにして、今、全国で一番小さい鳥取県、生き残りのために一生懸命頑張っています。

 予算も、財政課というところが、まあ財務省みたいなものですけれども、そこは各部から信頼されています。したがって、かなり厳しいことをやっていますけれども、各部はそれに協力をしながら、鳥取県全体として効率化し不合理を直すという予算編成をやりました。何とか、今のところまだ生き残る手だてができております。

 ぜひ、政府も心を一つにして、本当に国民から尊敬をされる、信頼をされる、そういう政府になっていただきたいし、それを実現するのが私は政治の役割だろうと思うのであります。霞が関の皆さんは一生懸命やられていますけれども、やはりピントがずれていることが多いです、外から見ていますと。そのピントのずれを直す、これは政治しかありません。今回の三位一体改革なんかでも、役人同士の密室のやりとりを、結果を丸のみすることなく、是は是、非は非、是は大いに認めてもらったら結構ですけれども、非は、それを直す、正す、これをぜひやっていただきたいというのが私の切なる願いであります。

 大島委員長から忌憚のないということをおっしゃっていただきましたが、ちょっと忌憚がなさ過ぎたかもしれませんけれども、ありがとうございました。(拍手)

大島委員長 ありがとうございました。

 次に、石井公述人にお願いいたします。

石井公述人 北海道大学公共政策大学院の石井と申します。

 本日は、北海道で地域経済、地域政策というようなことを考えている立場から、地域経済の現状と課題というようなことを中心にお話ししまして、予算に対する意見というようなことでやらせていただきたいと思っております。

 北海道、非常に今相対的に苦しい地域でございまして、一月に同僚が北海道と東京でアンケート調査をやりまして、格差が広がっているかどうかみたいなことを聞きましたら、東京よりも一〇ポイントぐらい北海道の方が広がっているという認識があるというようなこともございます。基本的には、昨今の景気状況というのは、北海道もようやく、自動車等元気な産業も頑張ってきているというようなこともございまして、全体ではかなり回復の動きというのが出てきておりますけれども、実態とすると、いいところと悪いところ、かなり二極化しているというような面がございまして、なかなか回復の実感が持てていないところも相当あるというところが今の状況というような感じがいたします。

 基本的にそこら辺は何が原因かということで考えますと、やはり九〇年代以降の財政政策のツケというようなことがどうしても大きな原因としてあるんじゃないかということが最初に私が申し上げたいことでございます。北海道の方々は余りそういう認識を持っていない方も多いんですけれども、九〇年代の財政依存が、いわば北海道経済なり、ほかもそうなんですけれども、地域経済の足腰をかえって弱める方向に作用したんじゃないかというような感じが非常に強くございます。

 資料をお手元にお配りしておりますけれども、詳しい数字等もつけておりますので詳細の説明は避けさせていただきますが、経済格差、個人間等々、格差が拡大しているというようなことが言われておりますけれども、地域間ということで所得格差というものを見ていただきますと、全体でいうと、むしろ九〇年代というのは格差がずっと縮小している。ここ数年はちょっと反転しているというような見方をせざるを得ないと思いますけれども、恐らく九〇年代に関しては、拡大するというよりは、むしろ縮小の動きが強くあったということでございます。

 これは、バブル崩壊が大都市部に集中的に影響を与えた、元気なところが落ちたという側面と、やはり財政が地方を大きく下支えしたというところが大きいんだろうというふうに考えます。後づけで物を言うのは非常にたやすいことなんだろうと思いますけれども、この所得を下支えした効果自体は、そのときの時代状況として必要だった面もあると思いますし、効果自体をとやかく言うということは決してないつもりなんですけれども、結果的に相当多額の借金を抱えたということと、その過程で整備された社会資本がなかなか地域経済の活性化にうまくワークしていない。もっと言えば、極端に言えばお荷物になっているような施設もかなり多くあるというような現実があるということでございます。

 率直に言うと、どうもこの時期に官に依存するマインドがむしろ強まったんじゃないかというような感じもございますが、そこら辺はちょっとさておきまして、本来、産業構造が変わっていく中で、労働力の円滑な移動というようなことも徐々に進めていかなくちゃいけなかった時期だったかと思うんですけれども、ここら辺が全く進んでいないまま今日があるというようなことで、そういったことを考えると、むしろ、足腰が強くなったというよりは、弱くなったというような見方をせざるを得ないということが一点目でございます。

 おつけした資料では、幾つかの数字で経済格差ということを見ておりますが、所得に関しては、今申し上げたとおり、九〇年代を通じてむしろ下がってきている。これは、もっと以前から、六〇年代以降ずっと一貫して下がっている、バブルのとき以外は下がっているという見方をしていただいていいと思います。前半は、むしろ工業の地方分散なんかがかなり進んだというようなことが大きな要因でございますが、九〇年代に関しては、ひたすら財政が底支えしたというような実態だろうというふうに思います。

 ちょうど九〇年代で、一人当たりの県民所得というのは、全国ベースでは若干上がっているんですけれども、東京は、この間でむしろ下がっております。下の方、下位のところはむしろ上がっているというような数字がございます。

 景況感なり雇用状況、実態的に悪いのは、地方の方が相対的に悪いのは事実でございますが、動きとしてどうなっていったかということは、地域差といいますか、実は余り大きく見出せないというような面も率直にあるということだろうというふうに思います。そうはいっても、北海道は、後でちょっと御説明しますが、かなり厳しい面はあるということでございます。

 私自身は、今の財政状況等を考えますと、基本的に、税収と歳出のギャップを埋めていくという方向自体は当然のことだろうと思っておりますし、財政の持続性を確保していくというようなことが、やはり今最優先に近い形で取り組まれる必要があるというふうに考えてございます。

 ただ、とはいっても、現実に地方の状況ということを考えますと、かなり財政に依存するままの姿に現状はなっているということも率直な姿でございますので、単純に歳出を削減するというようなことだけではむしろ悪影響が先に来てしまうんではないかということで、基本的には、やはり地方分権を通じた行財政システムの抜本見直しというようなこととセットでうまく進めていただく必要があるんじゃないかというふうに考えております。

 今、片山知事からもお話がございましたが、三位一体改革、基本的には、地方にできることを地方にということで進めていただくという方向は、まさにそのとおりだというふうに考えております。ただ、実態として、現状、地方に裁量性のある形での移譲がなかなか進んでいないというようなことも事実だろうというふうに思っております。

 義務教育の話も、先ほど余り裁量性がないというようなお話がございましたが、私は逆に、全く違う見方をしているところがございまして、ちょっと手元の数字で申し上げますと、一九八五年に義務教育の児童生徒数が一千七百万人ぐらいおりまして、これが、二〇〇〇年で四割近く実は減っております。教員の人数は、この間、一割程度しか減っておりません。これは、学級数といいますか、何人で先生が一人というような基準がベースだからそうなっているということです。

 ただ、細かく見ていきますと、実は、統廃合等、適切にそこら辺の努力をされているところ、もしくは大都市はかなり四十人に近い水準を確保しております。そうじゃないところはなかなか進んでいないということで、相当格差が実際上出ております。これは、言ってみれば、地方が頑張ったら減るんですけれども、減っても地方は別に何にも得にならないという、仕組み自体は皆さん御承知だと思うんですけれども、今の形では、国、都道府県、市町村、分断された権限関係というような中で、率直に言って、いわば大きな人口変動の中で行政組織がなかなかスリム化しないというようなことが常態化している。

 私、文部科学省に何にも特段のことを思っているわけではございませんけれども、まさにそういうことをどう進めるかということが大きなテーマになるべきではないかということで、ある程度権限、財源というようなものが一体的に運用されていかないことで、非常に非効率がそのまま残されるというような面があるんじゃないかというのは、一つの見方としてあえて申し上げたわけでございます。

 基本的には、地域が自覚と責任を持つという中である程度自立に向けた動きが出てまいるのではないかということでございますので、くれぐれも、そういった枠組みづくりを飛ばして歳出削減というようなことに向かってしまうということがあってはならないのではないか。逆に、そういうことの結果として、まさに置いていかれた地域で極めて深刻な社会問題等が発生するというようなことも、現実にはあり得るのではないかということでございます。

 逆に、私自身は、むしろ地域で個別の企業さんなりベンチャーも含めましてプロジェクトの動き等々見ておりますので、一たんやる気になって頑張る方が、北海道でも出ておられますし、そのほかの地方でも出ておられます。そういった息吹がどんどん強くなれば、それぞれの地域の生き残り策というようなことがもっと大きな流れになって動いてくるということは、もう十分あるんじゃないかというふうに思っております。

 それにつけましても、地方経済にとっては、いわば公共の役割、単純に言うと県民経済計算に占める公的セクターの支出割合というようなことを見ていただくとわかるんですけれども、非常に大きなウエートで今でも官が一定の役割を持っておられます。この中身をどのように変えていくかということが、むしろ地域経済を強くする一つの大きなかぎになるのではないかということを私自身は考えております。

 先ほども公務員の方の話が出ましたけれども、私も、人件費をどんどん下げていくような政策が常態化するのは、どうもますますモラルといいますか、やる気がなくなるだけにつながるのではないかというようなことで、やはり地方では、官に人材が偏在しているというような、そもそもそういう状況もございますので、そういった方々をむしろ民間にどのように円滑に、変な移し方ということではなくて、まさに、移って、いわば起業家的な意識を種としてつくっていただくような動きがうまくできないかというようなことをぜひお考えいただければありがたいというふうに思っております。

 特に北海道なんかを見ていますと、ほかもそうかもしれませんけれども、地域の主たる就職場所が役所だというようなことがどうしても常態化しておりますので、実際いろいろお会いしますと、非常に物を考えておられて優秀な方がおられます。逆にそういう方は、ある種、意識としては民間に負けない意識も持っておられますので、やめてどこかへ行ってくれというよりは、いろいろな仕組み、例えば民間であれば在籍出向のような形でうまく頑張れたら頑張っていただくというようなことも含めて、そういったことをぜひやってこれないかというふうに考えております。

 基本的に、官から民という流れは、地方にとっても非常に重要な方向性ではないかというふうに思っております。私自身は、今もいわゆる民営化のプロジェクトなんかにもかかわっておるんですけれども、やはりそういったこと一つ手がける中で大きく意識が変わってくるというようなことも、実際出てきているのではないかというふうに思っております。

 それにつけても、若干参考の方でつたない数字をつけておるんですけれども、正直に言いますと、北海道の方々といろいろ議論をしている中でも、一番欠けているのが、実は現状認識といいますか、今の状況がどうなっているかということに関して非常に問題意識が薄うございます。薄い理由は、端的に言えば、状況が開示されていない、わからないからでございます。

 例えば、本当に数を探しても大してないぐらいしか実は研究されていないんですけれども、地域別にどれぐらい受益と負担のアンバランスがあるかというようなこと、せいぜい十本までいかないぐらいの研究成果しかないということでございまして、やはりそういった実態がきちんと示されないと、なかなか意識が変わりようもない。

 ちなみに、六ページに、ブロック別、相当ラフな数字なんですけれども、しかも当たり前なんですけれども、今、税収と歳出というのは倍ぐらい違うわけですから、地域別に見ようが見まいが、要するに全部受益が負担を極めて上回るというような数字になるんですけれども、やはり具体的な数字で示していくことの意味というようなことがあるのではないかというふうに思います。

 七ページには、もっと身近な例ということで、要するに、市町村で同じようなものをちょっと試しにつくった数字で、数字自体の精度は相当ラフでございますので、数字を見ていただくというよりは、こういうものを示さないと認識できないという意味で見ていただきたいということなんです。

 要するに、市町村が基礎自治体として基本的なサービスを担っているわけですけれども、例えば、会計からいわゆる年金は全部落ちておりますし、さっき申し上げた義務教育の教員の人件費というのは、学校は市町村がやっておりますから本来は意識してもよろしいわけですけれども、全く抜け落ちている等々、なかなかその負担感がないまま地方自治が行われているというようなところが大きな一つのテーマになるのではないかということでございます。

 いずれにしても、そういったところから始めませんとなかなかその意識の浸透なり改革ということができてこないということで、そこがないまま地域経済がある種置いていかれるというようなことがあっては、日本全体にとっても大きなマイナスになるのではないかというようなことで、ぜひそこら辺の方向づけにつきましてきちっとした指針をお示し願えれば大変ありがたいというふうに思っております。

 私自身は、基本的には政府の役割は非常に大きいものがあると思っておりますし、要は、官から民へと言ったり、国から地方へと言ってみても、それは、基本的には公共サービスの最適化をどうするかという議論でございますので、要らないという議論とは恐らく随分違うのではないかということでございます。

 ただ、逆に言うと、本当に要らない、もしくは間違ったという部分を正していかなければ、なかなか変わってこられないということで、時間もあれで余り申し上げられませんでしたけれども、地方にとっても、九〇年代の経験というようなことは、ストック面でいうと、正直言いましてやや負の遺産になっている面があって、これをどのようにプラスに転換していくかというようなことも大きな課題だと考えておりますし、そういったことも含めて、柔軟に制度設計しながらお考えいただければというふうに思っております。

 北海道、ちょうど道州制特区等の議論も今出ておりますけれども、議論が矮小化している面がございまして、やはり財源を地方にきちんと任せていただくというようなことがないまま責任を持てということであってはなかなか現実の課題対応ができないというところは、ぜひ御配慮願えればというふうに思っております。

 きょうは、大変貴重な時間をお与えいただきまして、ありがとうございました。(拍手)

大島委員長 ありがとうございました。

 次に、菊池公述人にお願いいたします。

菊池公述人 菊池でございます。

 十二人の公述人のしんがりを受けまして、これから公述をさせていただきたいと思います。皆さん大変お疲れと思いますけれども、これから私のお話を聞いていただきますと、疲れは一挙に吹き飛びます。

 失礼ながら、今まで三人の公述人のお話を聞いておりまして私が感じますことは、日本は大きな閉塞感に陥っているのではないかと思います。例を挙げてみますと、いわば大きなタコつぼに入っちゃって、何か全体が見えなくなっちゃったんじゃないか。実は、一番見えなくなっておるのは小泉内閣でございます。ですから、そういった閉塞感の中で、これからどう打破すべきかということですね。

 実は、皆さんも御案内と思いますけれども、日本のこういった状態というのは、歴史上初めてのことだと思います。といいますのは、日本は経常収支が黒字ですね。多額の対外債権、二百兆も持っております。外貨準備も百兆近く持っている。アメリカの国債を八十兆も買っています。しかし、国内は、財政は赤字です。しかし、国内には千四百兆を超す個人の預貯金がありますし、資金はあり余っています。銀行預金も百二十兆も余っています。しかし、政府は緊縮財政をやっている。

 考えてみますと、今、日本が陥っているような状況というのは、歴史的にはなかったことだろうと思います。これを歴史的に見ますと、ちょうどイギリスが、十九世紀の後半、一八七〇年代から二十年間ぐらい、デフレがございました。このときは、イギリスは世界的に最大の債権国なんですね。経常収支は黒字でした。しかし、イギリスは植民地に金を回していってうまくやっていた。だから、財政は均衡していたんですね。今みたいに赤字だという日本は、これは初めてです。このときに緊縮財政と増税しか策がないというのは、余りにも無策なんですね。

 我々、何が今一番問題かといいますと、名目GDPが十年間も低迷していることです。これが一番の問題なんですね。そこで、これをどうしたらいいかということが一番の問題である。これは、財政政策を使う以外にはないと私は思います。具体的にどうするかということをきょうお話ししたいと思います。

 お手元にちょっと多目に資料を用意しております。ビニールのケースに入っておりますので、お忙しいところ恐縮でございますが見ていただきますと、まず最初のところに一枚の紙がございます。これは、私のきょうのレジュメ、公述のレジュメでございます。

 それから、その後に資料が出ておりまして、これはいろいろと後から御質問があろうかと思いますし、私は、常に客観的なデータ、つまり、政府が出しているデータだとか、OECDが出しているそういうデータですべてを分析しておりますから、その結果の分析の数字がここにございます。

 それから、三番目に入っておりますのが、これは手前みそでございますけれども、ちょうど今出ております文芸春秋の三月号に私が財政のことを書きました。見出しはかなりどぎつく出ております。「サラリーマン大増税の嘘を暴く 財務省が演出する「財政危機」宣伝にだまされるな」、こういう内容も書いてあります。しかし、これをよくお読みいただきますと、実は、どうしたらいいかという具体策を、私なりに、ある意味では力いっぱい書いたつもりです。

 一番いいのは、クリントン前大統領が一九九三年から二期間務められましたね。そのときに、五年間で財政を黒字にしたんです。そのお話を、きょう、この最初のお話の後でいたします。きょうはパネルも用意してきておりまして、それを見れば、現在日本がとっております政策が、要するに、いかに税収が上がらない政策なのか、経済規模がますます小さくなっていく政策なのか。

 一方、クリントンは、あの時期、アメリカは債務国ですよ。しかし、いかにして税収を上げる政策をとったか。端的に言えば、投資項目をどんどんふやしたんです。公共投資をふやしました。地域開発しました。資料もそこにありますし、この後お話しします。そういうことをしたから五年間で税収が黒字になったんです。日本と全く違うことをやっています。そこで、クリントンの例を考えますと、日本の政策が、現在、やや厳しい言い方をしますが、いかに愚なる政策であるかということがはっきりいたします。

 それでは、レジュメに従いまして申し上げます。

 私は、まず、現在の予算案に対しましては反対でございます。同時に、現在政府を中心に進めております大増税計画、あるいはプライマリーバランスを二〇一一年に均衡する政策、これも反対でございます。プライマリーバランスを二〇一一年にゼロにすること、これははっきり申し上げてできっこない、私はそう思っております。

 実は、先生方十分御案内と思いますけれども、これはアメリカでは一九八五年に、レーガンの後半のときに、そういう財政均衡法という政策をとったんですね、数字を合わせようと。つまり、数字合わせで何とかしよう、数字を先行させようと思っていたんです。しかし、これは完全に失敗しました。だから父ブッシュは落選したんですね。それで、クリントンが新しく出てきたのは、数字目標ではありません。これをこの後お話しいたします。

 ですから、現在政府がとっております、二〇一一年プライマリーバランスを均衡させようとする政策は、アメリカで失敗した政策をまたここで日本がやろうとしているんです。アメリカという国は、実は私は大変好きな国なんです。毎年アメリカに行っています。大体九月から十月にはワシントンとかニューヨークで、友達もいますし、政府の要人、といってももちろんプライベートですが、会って意見交換をしています。彼らは、すばらしく発想の原点が大きいです、戦略的です。小さいことも考えていますよ。しかし、国益をすごく主張します。こっちがかっちり意見を言いますと、よく聞いてくれますよ。

 ところが、日本はといいますと、そういう発想が非常に乏しくなってきているわけですね。だから、アメリカのいいところを学ぶべきですよ。ところが、そうじゃないようなところばかり今まで学んできたんです。例えば、デフレのもとで減損会計とか時価会計をやりましたね。経済規模はどんどん小さくなりますよ。それは税収は上がりません。税収が上がらないような政策をとってきたわけですよ。

 ですから、小泉内閣の五年間を見た場合に、経済、財政に関する指標で改善したものは何一つございません。数字を挙げてみますと、皆さん御存じのとおり、例えば名目GDPといいますのは、二〇〇〇年には五百十三兆でした。五年たった現在、ことし、五百三兆か四兆ぐらいだと思います。そのぐらいしか上がっていませんね。五年間たってもマイナスです。五年間マイナス成長ですよ。

 それから、この後申し上げますけれども、デフレが進んでいるときの実質成長というのは、現実的にはこれは幻想にすぎません。ごまかされているんです。といいますのは、実質成長というのは、皆さん御案内のとおり、名目成長率マイナスGDPデフレーターですね。GDPデフレーターというのは総合物価指数です。総合物価指数というのはデフレのときはマイナスですから、マイナス、マイナスだからプラスになるんですよ。

 例えば、ついこの前発表になりました昨年の十―十二月の実質成長五・五%、こんなに行ったじゃないか、さあ増税だというような人もいますね。さあ黄金の時代だと言います。しかし、よく中身をごらんいただければ、先生方は御案内と思いますけれども、GDPデフレーターはかえって拡大してマイナス一・五%です。ですから、マイナス、マイナスでプラスが上へぽんと上がっているだけですよ。まあ、十―十二月というのは比較的需要もふえるときですからね。

 それから、今、政府では、今予算案ではGDPデフレーターというのは来年はゼロになると言いますね。しかし、ついこの前、先週の金曜日に日本経済研究センターが出しました統計によれば、来年はこれはマイナスです。再来年の二〇〇七年度もGDPデフレーターはマイナスだろうという最新のデータが出ております。ですから、私がこの予算案に反対だと申しますのは、この予算案は、まず私の感じとして申しますと、絶対に数字のとおりにはならないと思います。

 それからもう一つ、税収もお考えいただきたい。税収は、実は二〇〇〇年には、五十・七兆、五十一兆台に達しました。この年は、名目成長率が〇・八%、実質で三・四%、かなり高成長でした。そのまま継続すればよかったんです。ところが、二〇〇一年四月に小泉内閣が成立して、構造改革ということを始められました。みんなそれに踊らされました。

 この構造改革というのは、御案内のとおり、経済的な面でいうと柱は二つなんです。

 一つは、デフレが進んでいるときに緊縮財政をやろうと。緊縮財政をやって財政支出を落とす。そういう意味で、税収もいずれ結果的にはふえるんじゃないか、だから財政赤字が縮小し政府債務が縮小するんじゃないか、こう思ったんですね。

 ところが、これは全くの誤算といいますか、これは、一九三〇年代のアメリカとか日本、こういうところの経験を見た場合に、デフレが進んでいるときに緊縮財政をやりますと、結果として何になるかというと、財政赤字が拡大し、政府債務が増加します。これは当然のことです。そのとおりのことがこの五年間行われたんです。

 ですから、小泉内閣が成立しましたときに、私は、こういうことはまずいんじゃないか、緊縮財政をやりますと、結果的には、財政赤字がふえる、政府債務はかえってふえるんじゃないかということを、実はこの席上で申させていただきました。二〇〇二年の二月二十七日でございました。ちょうど四年前でございます。この席上で、私、実はお招きいただいたもので、そう申し上げてまいりました。結果はそのとおりです。別に私は易者じゃないんですよ。戦前、一九三〇年代の経験を見ればそのとおりになるということです。

 それから、小泉構造改革の二番目には、これは不良債権の加速処理です。

 しかし、不良債権というのは、二〇〇〇年度に実はほとんど解消していたんですね。これは、二〇〇三年度に出ました経済財政白書で、主要金融機関の不良債権比率は五%です。これは、ほとんど解消です。ところが、二〇〇一年度にこれが八・四になったんですよ。二〇〇一年度というのは、小泉デフレ政策です。デフレの結果、不良債権をふやしたんですよ。

 それで、二〇〇二年の十月に大臣がかわりまして、金融再生プログラムということを実施したわけですね。それで不良債権をどんどん処理しようとした。これは、DCF、ディスカウントキャッシュフローというやり方で、五年先の収入も見ますから、デフレのときにこれが向上するはずはありません。それから、減損会計も使う。そういうことになりますから、結果的には企業がどんどんつぶされる。だから税収が上がらない状況になってしまったんですよ。

 ですから、結果的には、現在の税収、本年度が、例えば実際の二〇〇五年度予算の税収は四十四兆円ですね。これが、ふえて四十七兆円になると言われています。四十七兆円になっても、十八年前の税収にすぎません。今審議いただいているこちらの二〇〇六年度予算では、税収は四十五・五兆円ですね。これは、二十年前の税収ですよ。だから、小泉構造改革というのは、言うならば、経済を次々と破壊して、税収が上がらない経済にしてしまったわけです。このことは先生方十分御案内だと思いますが、改めて御認識をいただければ幸いでございます。

 それで、レジュメのところで少し敷衍してまいりますと、まず第一には、「日本は世界の笑いもの」と書いてあります。

 実は私、よくワシントンなんかへ行きますね。そうすると、三年ぐらい前からそうなんですけれども、彼らは、親しくなりますと、結構おもしろいことを言うわけですよ。何と言うか。実は、二〇〇三年に行ったときなんかそうでした。ブッシュが、アメリカがデフレだというので思い切って減税をやりましたね。そのときに行きましたら、向こうの人が、日本が国債をどんどん買ってくれるからありがたい、だから我々は減税ができた、景気もよくなった、どうして日本は減税をやらないんだ、こう言うわけですね。だから、私は言ったんですよ。いや、私は実は積極財政論者で、そういう意見なんだ、ちょっと日本へ言ってくれないか、こう言ったんです。まあ、言ってくれたかどうかは知りませんけれども、そういうこともございました。

 ですから、「世界の笑いもの」というのは、こんなに対外債権もある、外貨準備も百兆近くあれば、それを担保にして幾らでも国債は発行できます。無駄なものに金を使えと言っているのではありません。必ず税収が上がるような、投資減税だとかそれから開発投資、無駄なところにつくるのではなく、特に私は、エネルギー関連の開発投資をもっと政府でやって、民需を喚起するようなことをすべきだと思います。そういうふうにすれば、必ず景気はよくなってくるわけです。そういうことをしないので、あの国はどうしているのかなと思っているのが、実は諸外国の本音ではないでしょうか。私は、実感で感じています。

 ですから、現在の税収の赤字、それから拡大、増税しなきゃいかぬというのは、小泉構造改革の失敗のツケです。あるいは、デフレ政策のツケです。私はそう考えています。ということは、数字を分析しますと、私は、実はそれ以外に結論が出てこないんですよ。そういうことを私は思っています。ですから、諸悪の根源はこの緊縮財政です。財政政策に大きな間違いがあるんですね。

 どんな間違いかといいますと、まず第一に、私は、日本は財政危機だとは思っておりません。政策が間違っているから、政策危機だと思っています。

 財政危機だと思っていないのは、実はお手元に資料がございまして、それを見ていただきますと、資料の右側に、現在、千葉商科大学の学長で、前の政府税制調査会長を長くやっておられた加藤寛さんがここに書いております。純債務で見れば日本の債務は二百五十兆だ、政府が言うような七百兆とか八百兆じゃないと。それから、いたずらに危機を叫んではいけない。それから、最後のところには、マスコミに言いたいことは、財政危機を当然のこととすれば大増税必至となるが、この固定観念をまず捨てるべきことだ、こうおっしゃっています。加藤寛先生がおっしゃっているんですよ。間違いありませんよ、これは。

 それで、私は、かねがね純債務論者です。純債務論者というのはどういう意味かといいますと、純債務というのは、先生方御存じだと思いますけれども、まず、政府には借り入れがありますね。例えば、七百九十五兆とか八百兆とかなんとか言っています。しかし、政府は、金融資産を多額に持っています。現在、大体四百八十兆ぐらい持っていると思います。そういたしますと、その借り入れから金融資産を引いたもの、その差額が、ネットデットといいますか、純債務です。国際的にいいますと、これで見るんですよ。

 ですから、アメリカ人は、さっきも申したとおり、日本が財政危機なんて思っていないんですね。全然思っていません、本当言って。どうもおかしいね、政策が間違っているんじゃないの、こういうことですよ。ところが、日本は粗債務だけで見ているからいけないんですね。加藤先生は、それは間違いだということをここでおっしゃっていました。

 それから二番目には、財政の基本は量出制入、これを量入制出だけを基準にする。

 つまり、量入制出というのは、これしか収入がないから結局これしか出せません、今の政府の方針です。しかし、先ほどから随分、もう限度だということも出ています。そう考えて、財政のもう一つといいますか、むしろ大体世界的にはこちらの考えの方が多いんですけれども、量出制入、つまり、最低限の歳出というのはこれだけ必要なんだ、だから収入を伸ばす政策をとらなきゃいけないんだ、そういうことを財政政策の中に入れなきゃいけないんだということです。これを典型的にやっているのはアメリカです。それから、イギリスもそうです。

 ですから、名目GDPの増加率を見ますと、こういうことが言えるんです。これは、資料はここにありますけれども、一九九七年を一〇〇といたします。九七年を一〇〇としたのは私なりのやり方なんですけれども、九七年というのは、今のデフレは、日本では一九九八年から始まっています。現在のデフレは財政デフレです。金融デフレではありません。

 それで、九七年を一〇〇といたしますと、結局、アメリカの場合には現在既に一四〇ぐらいに名目GDPが伸びています。しかし、日本は現在、一九九七年に比べますと九七ぐらいです。だから、これが伸びないから、結局は、債務のGDP比率、粗債務にしろ純債務にしろ、それを名目GDPで割った数字がどんどん伸びていくのです。だから、さあ大変だ大変だと言っているのです。債務の問題じゃないのですよ。名目GDPが伸びないのです。だから、伸ばす政策をとることです。これをとらないからいけないわけですね。そういうことが一番の問題です。

 それで、日本は特殊な財政モデルといいますか、日本経済というのは、御案内のとおり、石油危機後くらいからずっと貯蓄超過になってきました。その貯蓄をうまく使って政府が公共投資をしたために、資金循環がうまくいったのですね。これは今も変わりません。ところが、日本の場合には、そういうことを無視して、現在では、公共投資をどんどん落とそうとする、それが大きな間違いだと。この辺のところは、もう少し実態を考えていきませんと、本当に経済はどんどん萎縮してしまいます。

 ですから、増税なしで改革が可能だといいますのは、私は、百兆円の投資枠をつくって、投資減税で五十兆、それから開発投資で五十兆、これを十年間継続してやることです。そうすればどうなるかといいますと、名目GDPは十年後には八百兆、税収は倍増して九十兆、赤字国債は解消いたします。こういう政策をきちっととるべきではないかと思います。

 クリントンのお話をしようと思いましたけれども、一言申しますと、クリントンがやりましたことは積極財政です。前期の三年間では、全体で三・三%必ず伸ばすのですよ。前期よりも必ず三・三%ずっと伸ばしていきます。そして、そのふえた部分というのはほとんど公共投資、つまり、グラウンドトランスポーテーションと言っていますが、地上輸送ですとかそれから地域開発、そういうところにかなりの金をつぎ込んでおります。これは、この資料の六ページのところに出ておりますから、後ほど。ちょっと時間の関係で細かくはできません。そういうことでございます。ですから、そういうことをやって、結果的には、五年間で税収がどんどん上がって、財政赤字が解消して、黒字に転化したのですね。

 ですから、財政政策の中に、そういう景気刺激策、あるいは、いかにして税収を上げるかという信念を入れない限り、日本の財政はこれからますますタコつぼの中に落ち込んで、どんどんと小さくなっていきます。これは非常に危険なことです。ですから、そういう面の視点をはっきりと入れるべきであることを申し上げて、それはクリントンのやったことを学ぶべきであると申し上げたいと思います。

 それから、時間が来ておりますが、恐縮ですが最後に一言申し上げたいことは、小泉総理は、二〇〇五年の一月の施政方針演説で、恐れず、ひるまず、とらわれずの姿勢を貫いて、昭和初期の浜口雄幸首相のように改革を実行するのがまさに私の本懐であると述べられました。立派な信念であると思います。しかし、浜口雄幸首相といえば、その高潔な人柄は別といたしまして、為政者として、特に経済政策においては大失敗をして日本を破滅に追い込んだことももはや歴史的な事実です。昭和恐慌のときに満州事変が起きたわけですね。それで、その後のような泥沼の戦争に入ってしまった。

 私が申し上げたいことは、小泉首相の構造改革というのは、ビジョンなき破壊活動ではないかと思います。これは、ぜひとも見直しをしていただかない限りは、本当に危険です。これを申し上げて、私の公述にかえさせていただきます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

大島委員長 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

大島委員長 これより公述人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。金子一義君。

金子(一)委員 四人の公述人の方々には、この公聴会においでいただきまして、さまざまな大変貴重な意見をそれぞれの皆様から伺わせていただくことができました。皆様方の意見を国政にも踏まえて、これから我々も活動を進めさせていただきたいと思っております。冒頭に改めて御礼を申し上げます。

 きょうは、盛りだくさんいただきましたので、公述人の皆様方全員に質問がなかなかできないかもしれません。お許しください。

 まず、加藤公述人でありますが、可児の工業団地全体が非常に元気になってきておられるというお話も伺いました。これは、引っ張っているのは設備投資がというお話がちょっとあったようなんですが、工場の増設、つまり工業団地の中の増設なのか、あるいは国内の発注先の工場の増設に伴う需要が出てきているのか。

 それからもう一つ。今までは、可児の工業団地というのは、どちらかといえば自動車、電気通信機器、あるいは航空機の部品をつくる工場が集まられているというふうに伺っておりますけれども、海外で生産をされる、つまり生産現場を海外に移されてしまうという例が非常に多かったなと思いますが、そういう方々が何らかの事情で国内に帰ってきて、つまり回帰、帰ってこられて国内の可児の工業団地で増産されるという動きになってきているのかどうか、ちょっと全体のイメージをお話しください。

    〔委員長退席、田中(和)委員長代理着席〕

加藤公述人 済みません、先ほどは御清聴ありがとうございました。

 今いただきました先生の質問なんですが、さっき言ったように、ハイテクと皆さんが言ってみえる電気、電子を使うもの、ああいうものは、極論を言いますと、部品を日本から輸出して、日本から持っていってくっつければできちゃう、テレビとかコンピューターでも。

 ところが、我々の分野は、やはり人がもう十年、二十年かかって培う、ハイテクと一緒にしてもらっては困るので、さっき申し上げたように、たくみのわざ、これはやはり日本しか育つ素地がないですから、こういうものは日本でやらないとだめだと思います。

 ただ、問題は、日本も御承知のように人口が減っていきますので、さっき申し上げたように、重点的に政府の優秀な人なんかを兵役のかわりに回してもらいたいと言ったのはその辺なんですね。どっちでもいいものはやれる国へ持っていって、人口減による生産減を何とかカバーしたい。だから、既製服はよその国に回して、注文服は日本でやるというような感じになるのじゃないかと思います。

 それからもう一つ、ちょっとこれは余分なのですが、回帰される方は、海外でやはりよほどひどい目に遭われた方だと思います。ただ、今の可児工業団地の場合は、行ったところから戻った例はありません。

 もう一つ、去年アメリカは、よそで稼いだお金は一年間四五%の税金を五%にすると言ったので、たしか新聞では二十兆、本当は三十兆円か四十兆円かわかりませんが、アメリカに戻ったのですね、それで日本の円が下がりましたけれども。ことしから、去年でもありましたが、ちょっと円高になりました。日本もあれをやったらどうかと思うのですね。世界じゅうに日本の会社が出ていっているので、そっちでもうけたお金を日本に持ってきた場合に、日本に持ってきちゃうと五〇%取られますから、それを五%か一〇%にすれば、お金がどっと日本へ還流すると思いますね。そうしたら、それは、だんだんそれを設備に使う、いろいろなことに使えば、当然税収になります。

 それからまた、さっき申し上げたように、工業団地の土地も建ぺい率を広げていただいた。これを日本じゅうの工業団地に通達を出してやれば、土地を買ってまでは高いからだめなんですが、ただで二割土地をもらったことになれば、みんな工場はそこへつくります。つくれば人も雇う。そうすると、固定資産税はふえるわ、所得税もふえるわ、そこへもってきて営業活動をやれば、消費税はふえるは、法人税はふえるはと。

 だから、さっきから申し上げてみえるのですが、やはり一番は、研修に二、三年兵役のつもりで全お役人さんを出してもらうと、国もそれは節税になるわけですし、中小企業は助かりますし、そういうミスマッチということがなくなる。幾ら我々が言ったって、今回は聞いていただけて大変ありがたいんですが、普通に言ったって、政府の方には聞いていただけないし、届きませんね。だから、そういう意味で今のようなことはぜひお願いしたい。

 それから、もう一つだけ、ちょっといいですか。さっき、年寄りの方が千四百兆持ってみえると言ったんですが、税金が高いから下へ回らぬので、それを若い者に、例えば一人五百万か一千万、税金なしで渡せば、若い者は金を持ったらみんな使っちゃいますから、そうすれば消費税はふえる、税金はふえますよ。老人が持っておると、早く死んじゃうので、またすぐ高い相続税になりますから、これは若い人に渡すといいんじゃないかと。ちょっと余分なことですが、よろしくお願いします。

金子(一)委員 そうしますと、海外から工場が戻ってきて国内で増産するというよりも、発注先の日本の親企業というんでしょうか、発注先企業、これがやはりよくなってきて発注量がふえてきたということなのかなという感じを受けておるのですが、それはそれでよろしいわけですね。

 支払い状況なんかはどうなってきましたか。少しはよくなってきたんですか。いっときは親会社が、発注先が、こういう部品関係の金型等々ですと、一たん発注条件が決まって、工業団地の工場の皆さんが材料を仕入れて、それで試作品をつくって、そこでもう一遍改めて価格の見直し、発注価格の見直しで、今度また値引きをやられるというので非常な苦労が工業団地の皆さんにあったと思うんですが、その発注条件というのは最近変わってきているんですか。

加藤公述人 大変忙しくなってきたので、条件はよくなっております。

 ただ、一つお願いなんですが、これに関して、支払い遅延防止法がありますね。これを各省庁が話してもらわないと、あれは一千万になると、それがだめになっちゃうんです。(金子(一)委員「もうちょっと詳しくしゃべってください」と呼ぶ)いいですか。株式会社にすると、一千万円になりますね。そうすると、支払い遅延防止法が使えないんです。あれがひっかかれば現金を三割以上くれますから、支払いがよくなるということですね。

 あれが、資本金一千万円にしちゃって株式会社にすると、途端に外れて、手形で四カ月、五カ月とかなりますから、各会社が例えば一千万の受注をすると、大体半年、六千万ぐらいの運転資金が要るわけですね。先に材料を買ったり、設備をいろいろせないかぬものですから。

 だから、これは中小企業庁と、それから経済産業省と法務でしたか、三つあるんですけれども、その三庁が話し合っていただいて、下請支払い防止法の資本金をいっそ、中小企業というのは三億円以下というふうになっていますから、その辺までにする、一億でも五千万でもいいですが。そうしてもらわないと、さっき申し上げたように、せっかくいい法律をつくっていただいても使えなくなっちゃうんですよ。だから、ぜひそれをお願いしたい。

 みんな小さいところは無理して一千万にしたんです、株式会社以外つき合わないとお客さんが言うから。無理してやったら、支払いが悪くなっちゃうので、片っ方、お金を借りている。サンドイッチになって大分あれで倒産したんですね。これはいろいろな会で言ったんですけれども、皆さんのところまでは届かなかったのでいかぬのですが、あれは大失敗でしたね。

 今は一円からよくなりましたけれども、支払いがあれだと、三〇%の現金、しかも、支払いが納品してから三十日にもらえるんですよ。ところが、あれを外れますと、締め切りになってから一カ月たって、そこから四カ月の手形だとか、だからめちゃめちゃになっちゃうんですね。返品もできませんし。だから、今まで悪いお客さんは一カ月に二遍ぐらいずつ支払わないと間に合わないんですよ。とめておれないんですね、一カ月以内ですから、納品してから。うちの方も間に合わぬから。

 そういうことですから、ぜひその辺をよく省庁間で調整してもらえれば、非常にあれはいい法律なんですね。どうぞよろしくお願いします。

金子(一)委員 下請代金支払遅延等防止法について、今の御意見を踏まえて国会でもまた議論をさらにさせていただきたいと思います。

 人手不足が出てきたというんですけれども、雇用はどうなっているんですか。大体、工業団地の皆さん方は、特にたくみのわざを継承しようということになると、かなり正規雇用というんでしょうか、期間工という期日を決めた雇用ではなくて、今、人手不足の中でどういう状況が、加藤公述人の会社だけでなくて工業団地全体の感じはどんなことになっていますか。

加藤公述人 実は今は、人材派遣ですか、あれもないような状況ですね。二年くらい前までは、可児は、各工業高校とかみんな校長先生にいろいろ来ていただいて、どうやったら会社が雇ってくれるか、そういう人を育てるためという打ち合わせ会議をやりまして、それでも不景気は約十五年続きましたので、五十四社六十五工場で、希望が大体十人か十五人しかなかったんですよ。ここへ来て一気に、合計すると五百人、六百人欲しいと言われた。だから、とても人がおりません。ぼちぼちはふえてきたんですが、とにかく人材派遣もない状況で困っています。

 だから、とてもそういうたくみのわざというわけにはいきませんが、私ども個人の会社でいいますと、その不景気の間に、毎年、六十五工場の募集人員の半分、三分の二うちが採っておったんです。絶対人が足らなくなるということで、もう人をだぶだぶに入れておいたのでうちは今ちょうどいいわけですけれども、それぐらい今人が困っています。

 愛知県は今有効求人倍率が二ぐらいにいっていますね。可児の方も一を超えましたから、もうとても人がいないです。だから、さっき言ったように、仕事を、前は物によったのですけれども、これからは工程内で、人がかかれば中国へ行く、電気の安いところはアメリカへ行く、そういう仕事は。そういうふうに分けないと、日本人だけではとても人が足りませんね。

 よろしくお願いします。

金子(一)委員 まだまだお伺いしたいことがあるんですが、せっかくでありますので片山知事。

 四兆円補助金を削減して三兆円を地方に財源移譲しよう、これはもう三年前に方向を決めて、そして、その過程で、知事会とこれを具体的にどう進めていくかということについてはかなり議論されながらやってきた話なものですから、一兆円消えちゃったというお話がちょっとあったんですけれども、あれ、おい、知事会、政府とどういう話し合いになっていたのかなと。いや、中身は聞いていますよ、中身はもちろん聞きながら、あえて質問しているわけですが、これは、やはり地方の自由度と同時に、国、地方を通じてお互いにプライマリー、財政を健全化させようという議論、経過があったわけですよね。

 さっき、国会議員は、おまえら知らないだろうとおっしゃったのは、三二%の交付税が従来あったんだけれども、三兆円地方財源にいっちゃったら、今度は縮小した部分の、もともと国税の部分の分母が減っちゃった、それから三二%もらったって、昔に比べたら、三兆円税源移譲を受けて、三二%の分母が減っちゃったんだから、その分、地方と国との間では国がしわ寄せを受けているねという話だと思うんですよ。多分、そのことを知らないだろうとおっしゃったと思うんだけれども、これは、我々知った上で議論しているんですよ。いや、そうなんですよ。

 というのは、知事のところは大変な御努力をされている。公務員の削減、歳出の、給与の低下に取り組んでおられるんだけれども、やはり大都市も含めて、この予算委員会で議論が出てきているのであえて言いますけれども、大阪市なんかは、もうちょっとちゃんとあなた方やりなさいよ、こういう地方自治体自身の努力というものを考えてこれから取り組んでほしいという気持ちが我々にもあるんですよ。ぜひ、そこのところをちょっと。

    〔田中(和)委員長代理退席、委員長着席〕

片山公述人 四兆円の国庫補助負担金が削減されて、それに対して見返りの税源移譲が三兆円でありますので、この過程で一兆円消えているということ、これは私は何にも文句を言っていないんです。先ほど申し上げたとおりで、これはもともと織り込み済みのスキームであります。

 ただし、この場合に何を削減するのかというところで、実は政府が間違っているということを私は申し上げたんです。

 奨励的補助金でありますとか、政府が箇所づけをするような補助金、すなわちそれは、一般財源化したときに、我々地方側で削減できるとか、スリム化できるとか、廃止できるとか、先延ばしをできるとか、そういうものであるはずだったんです。それならば四兆円が三兆円に目減りをしても、我々は何とか努力をして吸収できますという約束事でスタートしたのです。ところが、ふたをあけてみたら、義務教育費負担金とか児童手当とか児童扶養手当で、削減できないものばかりだったので、そこに戸惑いと、当初の約束と違うんじゃないですかということがあるわけです。

 それから、もう一つの一兆円は、三兆円を税源移譲した場合には、もともとその中の一兆円は地方団体固有の交付税の税源だったわけです。これが、この三兆円の税源移譲のときに何の手当ても、ほとんど何の手当てもしていませんから、一兆円が消えてしまう。

 先ほど金子先生が、この分が国にしわ寄せとおっしゃいましたが、全くこれは逆でありまして、国の方が不当利得をしているわけです。地方の方が一兆円消えてしまって、その一兆円はどこに行ったんですかというと、国の方の懐に入っているわけですから、これは、言葉はちょっと悪いかもしれませんが、国の方の不当利得ということであります。

 したがって、何をすればよかったかというと、この三兆円の税源移譲に合わせて所得税に係る交付税率の引き上げ、交付税率の調整を本来すべきだったんです。

 返りまして、では知事会はどうしていたんだといいますけれども、最初にこの四兆円の削減と三兆円の税源移譲というスキームを決めたときに、よもやこの一兆円の交付税がこの過程で消えるなどとだれも思っていませんでした。そんなことが最初から示されていたら、絶対これには反対をしたはずであります。ですから、これはある種のだまし討ちだと言って差し支えないと思います。

 大阪市のようなのは、あれはもう私なんかも、とんでもないと思います。私どものところのように、本当に一生懸命やっているのに、ああいう変なのが出てきますと、みそもくそも一緒に見られて、甚だはた迷惑であります。私は、大阪市は大阪市で徹底的にあれは究明をして、批判をしていただいたらいいと思います。ただし、地方自治でありますから、本当は国会で追及するんじゃなくて、大阪市議会がしゃんとして、大阪市議会が厳しくチェックをしなきゃいけない。ところが、その大阪市議会が、市民の皆さん、オンブズマンから追及されるというのは、これは何ともひどいものであります。

 しからば、何が問題かというと、今の地方議会のあり方、すなわち、選任のされ方とか、議会の構成とか、そういうものがいいんですかということの点検が必要だと思います。それが国の仕事だと思うんです。一々大阪市の手当なんかを追及するのが国会の仕事ではないと思います。国が今の地方自治法で地方議会の枠組みをつくられておりますので、その枠組みに問題があるのではないか、そこにやはり見直すべき点があるのではないかということを国会の方で、法律論議としてやっていただきたいと私は思うのであります。

金子(一)委員 今の三二%の交付税率の話は、国と地方で国が不当利得だというような議論は、地方自治体と国の間の、まあ議論としてはわかるんですけれども、我々国会としては、やはり国も地方も通じてプライマリーバランスを達成していくためにどうしたらいいのか。そして、今の大阪市、知事のところは大変な御努力をされているというのは申し上げた上で私は言っているわけでありますけれども、そういう部分をどうしていくのか。やはり交付税率の議論というのは、国としてはそのことをよく見きわめながらやっていきたいというのが気持ちなんです。

 時間になりましたので、最後に一問だけ。

 片山知事、これで三兆円税源移譲決まったじゃないですか、もちろん中身の議論はあるとして。第二弾をどうしていくんだろうか。これはやはり大事な、これから議論を進める上でこれまでの反省というのも大事だと思っているんです。

 ただ一方で、三兆円の税源移譲をしたねと。今の状況はいいんですよ、鳥取県も、とりあえず前年の部分は、裁量はなかったかもしれないけれども、義務経費みたいなものは確保できた。だけれども、今度、移譲した分、移譲を受けちゃった分、高齢化が進むと、あっという間に独自財源は減りますよね。高齢化すれば基準財政需要はふえますよね、お年寄り。

 だって、今度の医療改革を見てくださいよ。あれは、療養病床に入っている方は、今度は地方自治体で施設をつくって考えてください、この財源は三位一体で鳥取県に譲ってあります、渡してありますという議論があると、これは相当、地方の基準財政需要に上がっていってしまう。ここを将来どう考えていくのかということが、私、これからの議論の上で一つの大事な議論だと思うんです。

 時間も来ましたので、最後にひとつ簡明に答弁をしてください。

片山公述人 今の金子先生の御指摘は、非常にクリティカルな問題だと私も思います。今の姿はいいんですけれども、これから先どうなるか。

 例えば高齢化が進む、それから、例えば義務教育の問題でも、教員の退職手当がこれから膨大に必要になるわけです。今の状態で移譲のスキームになりますけれども、二〇〇七年問題を筆頭にして、これから膨大な退職金が出ていく、これを織り込んでいないわけです。これをどうやって調達するのかというのは実は大きな問題なんです。

 そこで、繰り返しになりますけれども、やはり、移譲をされる場合には、我々がスリム化できる余地のあるもの、これを中心にしていただきたいということ。

 それからもう一つは、地方税の体系というものをやはり見直す必要があると思います。今のように大都市に偏在する税源に依存している度合いが多い地方税の体系を改めて、できるだけ全国に、税源が偏在しない、そういう地方税の体系にするということが一つ求められると思います。

 それから、先ほどありましたけれども、大阪市の問題を申しますと、大阪市が悪いことをしたら、なぜ鳥取県がペナルティーを受けなければいけないのか。これは全く護送船団であります。大阪市が悪いことをしたら、大阪市がペナルティーを受ければいいんです。関係ない人まで巻き込まないでいただきたいというのが偽らざるところであります。

金子(一)委員 どうもありがとうございました。

 両公述人、大変失礼いたしました。ありがとうございました。

大島委員長 次に、桝屋敬悟君。

桝屋委員 公明党の桝屋敬悟でございます。

 四名の公述人の皆さん、本当にきょうはありがとうございました。貴重な御意見を賜りまして、本当に私もお一人お一人と議論したいんですが、時間が十分でありますから、端的にお尋ねをし、端的にお答えを賜りたいと思います。

 最初に、片山公述人と石井公述人、たまさか私がずっと追っかけております地方という問題を、まさに問題を与えていただきました。

 最初に、石井公述人にお伺いしたいと思いますが、公述人のお話、資料もいただきまして伺いますと、今日までの我が国の地方というのはやはり官が引っ張ってきたということはお認めになりつつも、それではいかぬのではないかということで、公共サービスの最適化という表現をされましたけれども、まさに官から民へ、こういう流れが求められている。そうした公的セクターの改革を地方もしっかりやっていかなきゃいかぬ。その改革ができない段階で単に地方の歳出削減ということだけがあった場合は、これはちょっと大変なことになりますよ、こういう御指摘をいただいたかと思っております。

 私も、いみじくもそのとおりだと思っておりまして、まさに地方の改革は、緒についたばかりというのはちょっと言い過ぎでありますが、一生懸命今取り組んでいただいている。

 そんな中で、下手をすると、十八年度の予算は何とか地方の財源は確保できましたけれども、十九年度はえらい心配でありまして、竹中平蔵さんが総務大臣ですから、きょうはいないから言いませんけれども、大変心配なんですね。

 それで、この地方の歳出削減というのは、スケジュールとしては、地方の改革というのはもうちょっと時間がかかるんだということなのか、十九年度からばっさり歳出削減みたいなことがあると大変なことになるという御指摘なのかどうか、スケジュール感を聞いてみたい。

 それと、あわせて、そうした地方の改革を進める上で、定義はいろいろありますけれども、今まさに議論されている道州制というものが、その改革の手法になじむものかどうか、期待できるものかどうか、お考えがあれば簡単に御説明いただきたいと思います。

石井公述人 スケジュール感ということでございますが、実際の地方財政の、むしろ客観的な数字の状況だけを見ますと、当然、時間がないということがあるんだろうと思います。

 ただ、正直言いまして、都道府県、市町村、意識なり体制がまだ十分ついてきていない面があるということで、ある意味では、悪い言い方をしますと、現実の三位一体が進む中で、手元の資金的な問題が出てくるということがむしろきっかけになっていろいろな見直しが始まっているという面もあるものですから、ある意味では、時間と闘いながら一個一個やっていかなくちゃいけないというようなこととして申し上げたつもりでございます。

 それと、その割に道州制なんか迂遠な話じゃないかというような御指摘があるのかもしれませんけれども、むしろ、思い切った仕組みの変更といいますか、そういうものを伴わないと動きがなかなか加速されないのではないかというようなことが私自身の問題意識で、道州制自体が万能の対処策だというようなことは全く思っておりませんけれども、今の歳出構造の中で、総合的な視野、視点といったものを何とか取り戻すために、ある程度ブロック的な規模で政策調整をするということの意味があるんじゃないかというようなことでございます。

 若干私の資料に書いたんですけれども、北海道で、例えば北海道新幹線というようなことが大分、ずっと話題になっております。これは、鉄道という分野での話でいうと、札幌まで引くということに関して、非常に財源的に厳しくて難しい問題があるということの位置づけだろうと思います。ただ、北海道の地域経済を考えて、総合交通体系というものを考えたら、是が非にでも、むしろ一般道路の整備が遅くなっても、もしくはある程度やめても、あるべきじゃないかというような議論が当然あるわけでございます。

 そういった重点化の議論をどこでするのかというようなことで、もちろん国レベルでも当然やっていただくべき議論でございますが、もう少し身近な問題としてやれる仕組みが今必要ではないかというようなことで申し上げた次第でございます。

桝屋委員 ありがとうございます。

 それは、やはり地方の改革を進める上でも、道州制というくくりといいましょうか、レベルといいましょうか、そうした仕掛けも必要ではないかというお話ではないかと思います。

 石井公述人、郵政民営化になりましたけれども、北海道はいまだに、その日の集配と配達がなぜ北海道だけ一日おくれちゃうのというふうに思っておりまして、公共サービスの最適化という観点では、ぜひ地元でも取り組んでいただきたいな、こう御提案を申し上げ、応援をしたいと思っております。

 それから、片山公述人にお伺いしたいわけでありますが、三位一体の御意見は、久々にまた御指摘をいただき、おしかりをいただいたような気がしております。

 今日までやってきたことについてはもう余り言いたくはないのでありますが、ただ、ここまでアクションを起こしてきて初めて、先ほど御指摘があったように、政府一体改革になっていない、各省の抵抗というのが浮き彫りになったとおっしゃったけれども、これは、やはりここまでやったがゆえに出てきた問題でありまして、公述人がるるおっしゃった、評価できる部分も確かにあったわけでありまして、問題は、次どうするか、先ほどの金子委員との議論もありましたけれども、これから先どうするかです。

 御指摘も踏まえて、これから先の改革を間違ってはならぬ、こう思っているのでありますが、今後の改革に向けて、総理は、さらに地方分権の改革は続けなきゃならぬ、地方の主体的な取り組みといいましょうか、総理は地方の責任ということを言われるので冷やっとする部分が若干私にもあるのでありますけれども、続けていかなきゃならぬ、こういう政府を挙げての認識が今ある中で、これからの改革作業、三位一体の、あるいは地方分権のこれから。

 今、竹中平蔵総務大臣が二十一世紀ビジョン懇なるものをつくられて、いろいろテーマが上がっておりますが、あんなものも横目で見られて、次へ向けての我々に期待をしたい御提言がありましたら、ぜひこの場で御開陳いただきたいと思います。

片山公述人 三位一体改革をやったから各省のあらが出てきたからいい面があるんじゃないかとおっしゃいましたけれども、各省がばらばらで一体感がないというのはもう昔からのことでありまして、今に始まったことではありません。またかというのが私の率直な感想であります。

 今後についてでありますが、地方団体の中には二期改革を目指すというような意見もあります。私は、率直に申し上げまして反対です。今日まで、本当に美名のもとにいろいろなことをやってきましたけれども、全部何かだまされたような感じがあります。私は、二期改革をやるのであれば、まず政府の一体化改革をやっていただきたい。それで、本当に国と地方を、地方分権の国づくりをするために、また国と地方の財政をスリム化するために、一つの方向で政府全体で協力しようと心が一つになったら二期改革をやったらいいと思います。今のような状態でやっても、本当に長い時間かかって、労力を出して、はらはらして、それで何にもならない、悪い方に行くということですから、私はやめた方がいいと思っております。

 今一番地方団体で問題なのは、私は、率直に申し上げて、財源の問題よりはむしろ質の問題だと思っています、大阪市の問題も含めて。地方団体の質を高めるにはどうすればいいのか。分権の受け皿は、規模を大きくする市町村合併とか、財源移譲だけではありません。規模を大きくしたって、質の悪いものはやはり質が悪いんです。ですから、質をいかによくするかということにこれからの注力をした方がいいと思います。

 それは何をするのかというと、透明化を徹底するにはどうすればいいのか、それから、地方議会が本当にチェック機能を果たすためには今の議会システムでいいのかどうか。先ほど申し上げましたけれども、よくありません。全国の自治体の議会は全部、余りチェック機能はありません。ならば、法律を変えて、法律は国の仕事ですから、法律を変えてもっと地方議会が生き生きとチェックをするようにするにはどうすればいいのかという改革をするのが国の責務ではないかと私は思います。

桝屋委員 ありがとうございました。

 加藤公述人にも伺いたかったわけでありますが、時間がありません。国家公務員をどんどん中小企業に、こうおっしゃいましたけれども、使い物になるかどうか私は大変心配でありまして、天下りの問題も含めてきょうの御意見をしっかりいただいて、研究してまいりたいと思います。

 きょうはありがとうございました。

大島委員長 次に、松野頼久君。

松野(頼)委員 民主党の松野頼久でございます。

 きょうは、公述人の皆さん、本当にお忙しいところ、また遠路からこうして衆議院の予算委員会においでをいただきましたことに、本当に心から御礼を申し上げる次第でございます。

 実は、きょうのこの会を開催するに当たって、予算委員会の現場で、地方に予算委員会が出ていって地方公聴会をしてみようじゃないかと。ここ十数年されていないんですけれども、やはりこれだけ都市と地方の格差が広がっている、そこに私たちが出向いてみようじゃないかという、これは与野党を問わずに非常に建設的な意見をいただいて、ただ、物理的にちょっと難しいということでこういう形に至ったわけであります。それだけ今、国の方でも、国と地方の格差なり、地方地方の現状なりということに関心を持っているというか、真剣に考えているという状況であることをまず冒頭お伝えをさせていただきたい。

 そしてまた、きょうずっと皆さんのお話を聞いていて、こんなにも地方によって、ただ大都市と地方というだけではなくて、地方地方によってこれほど多くの差が出てきているのかなということを非常に感じざるを得ない大変貴重なお話を伺ったというふうに思っています。

 まず、加藤公述人にお話を伺います。

 まず、加藤公述人、本当に中小企業、中小企業という規模ではないのかもしれませんが、社長歴五十一年、本当に生の声を聞かせていただいたと思います。そしてまた、岐阜、愛知のこの商圏の中では人手不足という話を聞いて驚いた次第なんです。

 私の地元、熊本では、昨今、ある飲料メーカーの工場ができまして、二十人採用のところに二千人応募をしたという、これだけ就職難が出ている。それに比べて、金子筆頭の御地元の岐阜、特に愛知、これは多分トヨタ効果であろうと思うんですけれども、そこでは人手不足だという。これだけ大きな差が出ているんだなということを初めて伺って、目からうろこの次第でございます。ぜひ、人手が必要な際は、熊本にお越しいただければ優秀な人材がたくさんおりますので、どうか採用していただければありがたいと思いますけれども。

 それで、公述人から幾つかのお話がございました。中央省庁の役人を、一回物づくりの現場を体験した方が机上の空論ではない政策ができるであろう、もっともな話であります。それが実現するかどうかわかりませんけれども、ただ、非常にそこが、今の補助金や交付金の制度と今の実態がかけ離れているのは、私もそう思っております。

 そしてもう一つ、まさに経営者の立場から、興味深くお話を伺った。ここのところはぜひお伺いをしたいんですが、中小企業にとっての事業継承税の話、そしてまた今の政府系金融機関の統廃合の話、これが、これから後半国会、行革国会と言われている中で、一つのテーマとして浮上してくるのではないかと思いますけれども、ぜひその辺の御意見を、私はかねがね、やはり中小企業の経営の立場からは、まずこの税制の問題、そしてまた金融の問題、経営に大変関係のある大きな問題ではないかという問題意識を持っておりましたので、五十一年の御経験からぜひお話を伺いたいと思います。

加藤公述人 たびたび、どうも済みません。

 中小企業対策として、ことしも千六百十六億円でしたか何かつけていただいて、予算もいただいているわけですが、さっきのミスマッチをなくしたいということと、それから、さっき商工中金、これは政府がどう考えているのかちょっとわからないのでいかぬのですが、今のままでそっとしておいてというわけにもいかぬので、何らかのあれはあると思うんです。

 ただ、あくまで組合の銀行なんですね、組合が出資もしていますし。だから、店舗は大体一県に一つなんですね。だから、完全に民営化したらちょっともたないんじゃないかなと。全国にばらばらしていますから。だから、地銀みたいにもっと大都市に集まったり何かすればいいんですけれども、そこは、立派な皆さん、優秀なお役人さんや政治家さんで考えていただいて、ただ、これは何とかあの形で残していただきたいというのは、中小企業の希望です。

 これは、担保なしでいいとか、いろいろ優遇策をとっていただいていますし、金利も、もともとあれは財投のお金ですから仕入れが高かったんですね。だけれども、今度、民間になればそれもちょっと安くなるかなとは思うんですけれども、その辺もありまして、ひとつよろしく配慮いただきたい。

 あともう一つ、事業継承は、子供なり後をやる人が真剣にやるという場合は、ただし書きですけれども、継ぐのなら相続税を例えば減額する。そうでないと、相続税でだんだん会社が弱っちゃうんですね。日本の税金でいくと、大体三回、おじいさんから孫に行ったらもうゼロになっちゃうんです、あれは。

 だから、これは日本の国をどんどん弱めるんですから、どっちみち、我々、いいときは、会社と個人は別と言うんですよね。いかぬときは全部、全財産とられちゃいますから。中小企業が強いというのは、全財産をかけてやっておるんですね。だから、そういう意味で、あれだけはちょっと、優遇じゃなくて、あれは存続のためにそういうことを配慮いただきたい。

 そうでないと、後継ぎも、さっき申し上げたように、税金を払うばかりだとやる気がなくなっちゃいますから。今の若い方は、いいときに生まれ、いいときに育ち、いいときに就職していますので、嫌なことからみんな逃げたがるんですね。そういうことは、皆さんの息子さんやお孫さんを見ていただけばよくわかると思うんですけれども。そんなことで、ぜひあれは実現していただきたい。

 それからあと、老人の千四百兆あるもの、あれも若いのに回していただけると。皆さんの選出区へ行って、先生が、おれがやったぞと言ってもらえば絶対落選はないというぐらい効果があると思うんですね。あれは、税金で取られると腹立つんですが、一たんもらって使う分には物すごく気分よくなっているわけですよ。それでまた税金が戻ってくるわけですから、固定されておるよりも、あの千四百兆をせめて二割やれば、国家予算の何倍になりますかな、すぐ景気なんかよくなると思う。まだら模様がなくなると思うんです。

松野(頼)委員 ごもっともでございまして、相続税の税収なんというものはたかだか一兆数千億円なんですよ。たかだかです。それで資産が動かずに、千四百兆動かないでいるというのは全くばかげた話で、ある意味では、非常に財政危機のときに、私なんかは、一年間でもいいから相続税の税収をゼロにしてしまえ、そうすると、税収が一兆数千億から、五、六年引っ張ったとしても七、八兆ぐらいの金額をあきらめれば、損して得とれの部分が大きくあるのではないかということを実は考えていたこともあります。

 特に、事業継承税制に関しては、勝手に税務当局が、あなたの会社の株は一株当たり幾らですよといって、資産から一株の単価を割り出して、それでかけてくるものですから、お父さんがやっていた仕事を引き継ぐだけでも、何億円ものお金を払わなければ今と同じ状態の仕事が引き継げないということがあるんですね。

 ですから、現金で例えば相続を受ける者と、事業として、事業継承のために相続を受ける場合、ここは明らかに切り離して、事業を続ける場合に限っては、一株の単価を、きちっとその単価、当初の発行株の価格で渡すとか、そういうことを考えていかなければ、全国の中小企業の事業継承というのは非常に難しくなっているというのは私も全く同感でございまして、すばらしい意見をいただいて、ありがとうございました。

 あともう一点、政府系金融機関。これは郵政民営化の特別委員会の中でも随分議論になったんですが、要は、財投を中心として、郵貯、簡保の資金の出口として政府系金融機関の統廃合というものが今出てきているんだろうと思うんですけれども、これは、出し手側の国の方の形態が変わるというよりも、例えば中小企業金融公庫、国民金融公庫等々含めて、多くの中小零細企業の皆さんは、特に民間の金融危機のときにどれだけこれで助けてもらったかということがあると私は思います。

 ぜひ私たちも、皆さんの立場で、国会の中でこの議論をしていきたいというふうに思っておりますので、ぜひ皆さんも御地元で、金子筆頭もいらっしゃいますので、声を上げていただいて、しっかりと御協力いただければありがたいと思います。

 次に、片山知事にお伺いをいたします。

 三位一体の改革、金子筆頭と非常にレベルの高い御議論をされていたのを聞いて、ただ、一点、鳥取と大阪の話が出たんですけれども、大阪というのは、やはりある程度税収というものがある富裕の自治体、豊かな自治体である。私ども地元も、やはり税収が少ない、地方交付税に頼らざるを得ない自治体。そこで大きな感覚の違いがあるのではないかというふうに私は思っているんです。

 国は、基本三税であります所得、消費、法人、この三税をがっちり握って放さない状態です。そして、その他の税収で地方自治体は何とかやっている。その差額を埋める形で地方交付税というやり方があるんですけれども、まさに今回の三位一体は、知事がおっしゃったように、受け手側からすると、全く自由裁量のない、義務教の国庫負担分だとかいうところを渡されているというそのお話、財政需要の小さい自治体から見ると、私は全くそのとおりではないかというふうに思います。

 それで、知事にお伺いしたいのは、例えば、本当の意味で、地方自治体からどういう税源を渡してもらった方が、またどういう税源をどこの会計に渡してもらった方が使い勝手がいいのかというのを、具体的に少しお教えいただければありがたいと思います。

片山公述人 三位一体改革で、どういう国庫支出金を削減対象、一般財源化の対象にすればいいのかというお尋ねですが、これは、要するに、政府に裁量のある、箇所づけをするものなどを中心にすればいいと思います。

 それは、例えば奨励補助金の大半はそうでありますし、あと、施設整備系、ハード事業系の補助金、これらは、例えば受け手の我々ですと、ことしやらなくても来年に延ばそうかとか、一〇〇やるものを五〇、七〇にしようかとか、こういう裁量がききますので、そういうものを中心に三位一体改革の対象にしていただければよかったと思います。

松野(頼)委員 あと若干、片山知事が先ほど公述の中で地方税の部分をおっしゃいました。

 去年、実は地方税法が改正になりまして、一部、事業所税の地方の割り戻しの額が、スズメの涙でありますけれども、若干戻るようになったと思います。

 ただ、私どもも熊本という地方で見ていると、例えば大手の小売店が、大手でなくても小さい小売店、例えばコンビニなんかもそうでしょうし、流通系もそうでしょうし、そういう企業が進出をしてきて、そして物は中央から送られてくる、そして資金は当然地元から引き揚げられていくという中で、ある意味では資金のストロー現象的なものが起こっているんですね。それで中央の法人税が、例えば東京なり大阪なりというところ、大都市圏、そこで払われるということに対して、少し、スズメの涙ではありますけれども、一歩進んだのではないかと思いますが、この資金のストロー現象というものをどのようにお感じになっておられるか、お聞かせをいただければありがたいと思います。

片山公述人 全国的に展開されている法人の課税権をどこに属させるかという問題だろうと思うんです。これは非常に重要なポイントであります。

 松野先生がおっしゃいました、事業税関係で若干、スズメの涙ほど地方に還元という話がありましたが、これは、いわゆる法人事業税の分割基準の見直しというのを今回行おうとしているわけであります。

 ただ、実は、地方にとってはこれはうれしいことなんです、スズメの涙とはいえども。それは、東京都に集中する税の一部を、税を全国に一定の基準でもって還元しようというものでありますから、いいのでありますけれども、これが今回の三位一体改革の税源移譲のつじつま合わせに使われたということに対しては、いささか複雑な気持ちであります。

 分割基準の見直しというのは、本来、三位一体改革の財源調整ではなくて、税源がどこの課税団体に帰属するかということを客観的に評定する作業なんです。これを今回財政的な調整の手段で使おうとしているということは、かつて金子先生などと税を一緒にやった者としては、内心ちょっと私は違和感を持つものであります。

 ともあれ、そういう全国展開をする法人の税源というものは、どうしても本社に吸い上がりがちであります。したがって、これは本当にお願い申し上げたいのは、財源調整だとかという、そういうふうな、瑣末なとは申しませんけれども、表面的なことではなくて、本当に所得の発生をどこに帰属させたらいいのかということを冷静に分析をしていただきたいと思うんです。

 といいますのは、どうしても従業員中心の基準になっております。ところが、今、無人化とか、特に液晶関係の工場なんかは、私どものところにありますけれども、ほとんど人を要さない。そうしますと、そこで多大の付加価値をつけているんですけれども、所得を分配するときには工場の所在地にはほとんど税収としては反映してこないというようなこともあるものですから、現在の法人企業の産業形態をよくにらんで、どこに所得や付加価値の源泉があるのかということを見て、そして正しい分割基準というものを決めていただきたいということをお願い申し上げたいと思います。

松野(頼)委員 確かに知事がおっしゃるように、法人事業税の分割基準、ただ、どうしても、地方税は地方税の中だけでこれを行っているというのが現実だと思うんですが、やはりこれは、僕ら地方のわがままに聞こえるかもしれませんけれども、国の国税の基本三税の中からもある程度渡してもらわなければ、これで格差がより一層大きくなっていく。そして、昨年の税制改正の分割基準の見直し、本当にスズメの涙なんですけれども、もう少し割り増し分を戻す財政調整機能をつけるには、やはり国税の分野に入っていかざるを得ないのではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。

片山公述人 それは大変重要なポイントです。

 二つあると思うんですが、一つは、国税から地方税にもっと税源を移譲してください、これは、今、三位一体改革ということで廃止のものとバーターで行っていますけれども、そういう観点とは別に、もっと地方が、例えば介護保険もやるようになった、これから医療制度改革の中でも地方が果たす役割がもっとふえるというような、地方のプレゼンスの増大に伴って、もっと税源としては地方にあった方がいいのではないか。そういう観点から、国税から地方税への移譲というのは一般論として考えられていいというのが一つであります。

 もう一つは、国税と地方税との間でもっとやりとりをする余地があるのではないかと私は思うんです。これは、税収中立、国税も地方税も総額を変えないという前提で結構だと思うんですけれども。

 といいますのは、今、都道府県の税体系というのは法人所得課税に非常に比重が重くなっております。そうすると、景気が悪いときにはどっと下がります、これは法人事業税とか法人住民税ですけれども。それで、市町村の場合には、個人の所得課税である住民税と固定資産税とが大宗を占めておりますので、非常に安定的です。実はうらやましいんです。

 したがって、我々の方の都道府県の税体系も、もう少し安定的、それから、先ほど御質問のときにお答えしましたけれども、税源の偏在度の少ないもの、大都市と地方でできるだけ税源の偏在度の少ないものを中心に税体系を構成するということになりますと、先生がおっしゃったこととちょっと反するかもしれませんけれども、例えば、今の地方の法人所得課税、すなわち法人事業税などを、一部を国税の方に渡して、そのかわり、国税から、安定度が高くて税源偏在度の低い、例えば個人所得課税である所得税を住民税に移譲する、ないしは消費税を地方消費税に移譲する、こういうエクスチェンジといいますか、バーターなども一つの政策課題になってくるのではないか。

 もちろん、これは地方団体の中でも異論はあるんです。法人事業税の税収のウエートの高いところは私なんかの考え方には反対でありますから、地方の中では足並みはそろわないかもしれませんけれども、こういうことも一つの今後の地方税体系のあり方として御検討いただければと思います。

松野(頼)委員 全く知事がおっしゃるとおりでありまして、国は基本三税がある程度安定して収入を得る。市町村は、これはこれでまた僕はちょっと問題があるかなと思っているんですけれども、固定資産税を市町村税の五六%、余りにも一つの税で取り過ぎていることは問題があるかもしれませんけれども、市町村は市町村で逆に安定をしているんですね。県という形の、県税というものが一番ぶれが大きい税目ばかりが集まっている。

 知事がおっしゃるとおりに、僕は、決して国税から渡すだけではなくて、国税と地方税という今の縦割りを本当に柔軟にある程度切りかえて、そして、国の方がやはりパイが大きいわけですから、若干の微調整がしやすいと思うんです。ですから、ぶれが多いものを国税に渡して、ぶれが少ないものを逆にもらうというような形の考え方をこれからとっていかざるを得なくなってくるのではないかというふうに私も思っているところでございます。

 全く知事がおっしゃるとおりに、ただこれは国税ですよ、これは地方税ですよ、県税ですよ、市町村税ですよといって、今の縦割りの中だけですと、本当に去年の税制改正のように、若干の分割基準の見直し程度の形しか動かせなくなってくるのではないか。これだって限界があるわけですから、どこまで出せるかということを考えた場合に、やはり大都市圏と地方、また国と地方の格差というものを考えていく上には、私は必要なことではないかというふうに思っているところでございます。

 あと、菊池先生にお伺いをいたします。

 菊池先生の「エコノミスト」の論文とか著書を偶然書店で買わせていただいて、今半分ぐらい実は読んでいたところで、きょう、こういう形でお目にかかれるとは非常に光栄でございます。

 確かに、国のバランスシートという議論、ここ何年も実は出ているんです。本当にこれだけ大きな財政赤字、財政赤字ということで、これが増税への一つのコマーシャルのように使われて、こんなに赤字があるから大変だということが一つの問題点ではないかと思います。ただ、先生があれでお書きになった、金融資産の中に、一部社会保障費の例えば年金積立金なんかを入れられているところは若干、これはちょっとあれかなと思うんですけれども。

 ただ、これだけの財政赤字に対して国の資産がどれだけあるのか、そして、でき得れば、一般会計の中の公債の負担の割合を減らすためにも、少しこの辺で資産を売却して負債を返済するという考え方をとらざるを得ない時期に来ているのではないかというふうに思うんですが、先生のお立場から、この国のバランスシートの考え方をもう一度お聞かせいただければありがたいと思います。

菊池公述人 松野先生からの今の御指摘でございますが、確かに、財政危機だ、財政危機だ、ずっとこう言われてきたんですね。

 御存じのとおり、当初、財政危機だということが本当に大きく俎上にのって具体化されましたのが、一九九六年の六月でございましたか、橋本内閣のときに、消費税の値上げ、それから福祉部分の負担等で、結局九兆円の国民負担を一九九七年から実施するということにしたわけです。そのときの基準になりましたのが、結局は、今も御指摘ありましたとおり、借り入れだけ、いわゆる粗債務というもの。それで、もうすっかり我々は、それだけなんだというふうに思っちゃっているんですね。

 ところが、先ほどもちょっとお話し申し上げたとおり、やはり金融資産を見ていかなければいけない。あのときには、確かに粗債務だけの名目GDP比率は八七%でございました。しかし、純債務で見ますと二三%。ですから、御案内のとおり、九七年の三月にアメリカのゴア副大統領が来まして、どうして緊縮財政やるのと橋本総理に迫ったんです。それはどうしてそういうことを言ったかというと、ゴア副大統領とか海外では、要するに金融資産を持っているじゃないかと、純債務で見ていたわけですね。そこに一つ大きな問題があった。

 ですから、この十年を考えて、まさにオオカミが来るぞ来るぞというんですけれども、まだ来ておりません。それはどうしてかといいますと、国債を買っている投資家とか海外の人たちは、実はみんな純債務で見ているんですよ、頭の中全部。

 だけれども、今一番の問題、例えば国債が格下げされましたね、二〇〇二年の五月から六月。これは小泉内閣が二年続けて緊縮財政をやったときであります。そのときに、ムーディーズだとかスタンダード・アンド・プアーズが書いていることをよく読めば、ここで緊縮財政をやると結果的には名目GDPが伸びないでしょう、そうすると結局、債務、これは純債務でも粗債務でも、その国民負担というのは名目GDPで割った分なんだ、その数字が上がるでしょう、これがいけないんですよということをはっきり言っています。

 それで、格付会社も、結局これは二通りに分かれるんですね。ムーディーズは粗債務、借り入れだけで見ているんです。あそこは御存じのとおり日本に非常にきつい判断をいたします。ボツワナ以下ですから、日本の格付は。しかし、スタンダード・アンド・プアーズは完全に純債務で見ております。ですから、優良投資の一番最後の格付です。その辺のところで、我々がもっとこういう問題に気づくべきだったと思います。ですから、今ようやくこの問題がクローズアップされてきたのはいいことだと思います、加藤寛先生の。

 それで、今度は松野先生が御指摘の中身の問題ですね。

 確かに、社会保障基金まで入れると問題なんじゃないかと。ですから、純債務で見たときの問題は、例えば、確かに借り入れが八百兆ある、でも金融資産が五百兆ある、これは相殺はできないわけですね。

 ですけれども、問題なのは、特にその純債務の中の一番大きな問題になる金融資産の中の中身です。それは、外貨準備、それから対外投融資と今のいわゆる社会保障基金であります。

 対外投融資というのは、これは両建てですから、むしろ粗債務から相殺、相殺といいますか、バランス上、両方落としたって構わないぐらい。それから、外貨準備というのは、ちゃんとアメリカに置いてあるわけですから、それに見合いのものは政府短期証券。だから、これはちゃんと見合っているんです。

 一方、まさにおっしゃった金融資産の中の社会保障基金ですけれども、これは、問題は、社会保障基金というのは我々が税金として拠出したものですから、拠出制で積んであるわけです。ですから国民の金なわけですね。それで、これはでは相殺できないじゃないか。できません。しかし、担保性があるんですよ。だから、ここが問題なんですね。海外から見ると、そういう形で見ているわけです。

 一番いい例を言いますと、具体的に、一九九七年から八年にかけまして、御存じのとおり東アジア通貨危機がございました。そのときに、マレーシアでは、マレーシアもやはり社会保障基金を日本と同じように積んで、基金として残してある。これを担保にして国債を出したんです。そして、景気を振興して不良債権を処理したんですね。これは後ほどIMFなんかで非常に褒められました。

 ですから、担保性もあるんです。担保性があるということはどういうことかというと、これは外貨準備もそうなんですけれども、それをベースにして資金循環をすることが可能だということです。保障基金というのは我々が出したお金ですから、それがちゃんと回ればいいわけですね。そこがポイントだと思います。

 ですから、確かに、純債務で見たときのポイントは、松野先生の御指摘の点でございますけれども、国のバランスシートという面から見ますと、そういうものをきちっとやはり出していただく。これは国会でも出ていたと思いますけれども、財務省の方なんかにお願いしたいことは、確かに、今借入金がこれだけあるよ、一人当たりこれだけあるよと債務ばかりを強調されますね。しかし、これだけ金融資産があるんだということを、債務を発表すると同時に発表していただきたいんです。そうすれば、国民はこれでわかるんですね。そこでやはり今御指摘の問題点もわかってきます。

 それから、もう一つ私がこのことで先生方に非常にお願いしたいことは、こういうふうに債務を誇張し過ぎますと、結局、国民の特に若い人たちは、未来に対して非常にもう失望します。大丈夫なのかしら、ツケ払わなきゃいけないんじゃないか、結婚もできない、同棲しているのが結構いますけれども、子供を産む前に結婚もできないとか、本当にそうなんです。私は大学にいますからよくわかるんですけれども、OGなんかに会うと、先生、結婚しても大丈夫かしら、子供も育てられないしということを本当によく言いますよ、真剣に。

 そういうふうに未来に対して非常に失望感が出てしまう。だから、これを払拭していただきたい。これはもう政治の先生方以外にございませんので、この場をかりまして強くお願い申し上げたいと思っております。

松野(頼)委員 済みません、きょうは、公述人の石井先生には、ちょっと聞こうと思っていた議題が時間が来て聞けなかったんですけれども、四名の公述人の皆さん、それぞれの立場から本当に貴重な御意見をいただきましたことに心から感謝を申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

大島委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。

 きょうは、四人の公述人の皆さんに貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございます。

 最初に、加藤公述人にお伺いいたします。

 冒頭の意見陳述の中でも、商工中金のお話がございました。何らかの形で残してほしい、完全民営化をしたらだめになるんじゃないか、もたないんじゃないかとおっしゃられました。私も、中央会の地方の方の声など伺いましても、政府保証があるということだけでも金利の面でも猶予もある、そういう点で完全民営化というのはいかがかという御意見もいただきました。

 この完全民営化をしたらだめになるんじゃないか、もたないんじゃないかと思われる根拠といいますか理由といいますか、お感じのところで結構なんですけれども、お聞かせいただけないでしょうか。

加藤公述人 経営者の立場から考えれば、一つの県に一個ずつばらまいたって、お客さんがそれだけとれないと思うんですね。普通、銀行は、地銀でも全部集中していますね、都会なら都会に。そこから次の都市、次の県へ行っておるわけですね。だから、一般的に考えて、配置から見てだめなんじゃないかな、そう思っております。

 もう一つ、案としては、中小企業金融公庫ですか、あっちの方へ入れてもらうのならまだいいかなというあれもあるんです。これは私の勝手な私見ですから別にあれですが、参考として。

 何らかで残してもらわないと、中小企業の救急車みたいなものですから。だから、その救急車がいなくなると、けがしない間はいいですけれども、けがしたときにはぜひそういう救急隊がいていただかないと、セーフティーネットとよく政府は言われるんですが。

 そう思っておりますが、どうぞよろしくお願いします。

塩川委員 ありがとうございます。

 商工中金、中小公庫、国民公庫、それぞれ規模別で、中小企業、零細事業者のためにふさわしい役割を果たしていると私、率直に思っております。それに見合うような対応が求められているんだと思うんです。

 あわせて、物づくりにかかわりまして、たくみのわざのお話がございました。本当にそのとおりだと思っております。中小企業でこそ担うことができる。

 その点で、今、製造業の分野で、正社員が減って非正規の労働がふえているということが取りざたをされております。現に、東海地方などの有効求人倍率を見ましても、確かに高いですけれども、その中で、やはりパート労働の有効求人倍率が大きく引き上げているという実態もあるのかなと思っております。

 今、大手ユーザーからのコストダウン要求もなかなか強いものがあると思いますし、そういう中で、私が承知をしているような二次、三次の下請の中小企業の方などは、中核的な物づくりを担う人材のところまで請負会社の社員だったりするようなことが広がっているということをお聞きしております。

 これでは、日本の物づくりを維持する、強化することができないんじゃないか、つまり、物づくりの現場に非正規というのはふさわしくないんじゃないかと率直に思っておるんですけれども、加藤公述人の御意見を伺いたいと思います。

加藤公述人 それだから、先ほど申し上げましたように、政府の優秀な人材が集まっているんですから、ぜひ二、三年貸していただければ、外人を連れてくるよりはいいです。

 今、金型屋さんなんかも大体人がおりませんので、自分のところの社員は、お客さんを立ち上げるのに、トヨタなんかでも急いで立ち上げないかぬ、海外へ手伝いに行って、国内は、言い方は悪いけれども済みません、ベトコンばかりだというんですよね、みんな。だから、中国人を連れてきたり、もう世界じゅう、ブラジルとかいっぱい連れてきて、非常に従業員は苦労してやっておるんです。

 うちでも、外人を取り込んじゃって、ブラジルはもともと日系ですから、七、八人は日本人になれということで、そういうふうにして正規社員にしたり、苦労が絶えません。

塩川委員 派遣におきましては、労働者派遣法の改定の中で、製造業、一年が三年に拡大するという話なんかもありまして、私、やはり物づくりは地道に長い年数をかけてやるものだ、そういうところまで派遣を拡大するのはいかがかなと率直に思っております。

 時間の関係で残りのお三方に、同じ質問で恐縮なんですけれども、お聞かせいただきたいと思っております。

 格差拡大というのは、今国会でも大きな議論となりました。今、国民全体の所得というのが九七年、九八年から減っていく、そういう中で、特にサラリーマンの所得そのものも、この七年ぐらいで八十七万円ぐらい年間所得が落ちていると言われています。格差拡大について否定的な議論というのが政府から出されていますけれども、その点でお伺いしたいんです。

 片山公述人、石井公述人、菊池公述人に伺いますけれども、格差が拡大しているとお考えか。あわせて、それが小泉改革によって影響を受けている、あるいは加速をされている、そういう認識をお持ちか。その二点について、それぞれお三方から御意見をちょうだいしたいと思います。

片山公述人 これは、統計に基づいて確たるお答えではないんですけれども、実感としまして、やはり格差は拡大していると思います。

 その原因が那辺にあるのかというのは、これは私はよくわかりません。小泉内閣になってから拡大したのかどうかということも、統計的なデータの裏づけがありませんので、わかりません。

 私が認識しておりますのは、問題は、先ほど労働者の正規、非正規の話がありましたけれども、日本の例えば労働組合の問題にしても年金の問題にしましてもそうなんですけれども、総じて、正規雇用の人たちを対象にした制度で設計されているわけです。労働組合も、非正規雇用の人たちは余りウエルカムではないんだろうと思います。

 実は、そういうところが問題なのではないか。セーフティーネットの問題というのがよく言われますけれども、正規であっても非正規であってもちゃんとセーフティーネットが張られているという環境がこれからの日本には必要なのではないか、その辺が一番のポイントではないかと思っております。

石井公述人 私も、統計的な部分というのをいろいろ見ている中で申し上げると、ある程度開いている面もあるんだろうというふうに思っております。

 ただ、その要因等をどう考えるかというようなことで、一応、私自身は、二点ほどちょっと気になっている点がございます。

 一つは、今、片山知事もお話しになりましたけれども、いわゆる同一処遇、同一賃金というような考え方が正規、非正規の中で全く貫徹されていないということ、これは、いわゆる国際競争力をどう保つかというようなことと全く別物として、ある意味では非常にゆゆしき問題じゃないか。ある種の官民格差というようなことも、職種別に見ていって非常に大きな問題があるところをどう見ていくかというような問題ではないかというふうに考えております。

 それと、基本的には、ここ数年、やはり法人部門にやや過剰な流動性といいますかキャッシュフローがたまっているというようなところがございまして、これは、労働分配率がどんどんむしろ下がっている過程でやや異常な姿じゃないかというようなことで、設備投資なり、ある程度従業員への配分というようなことをそろそろ考えていただくべき時期に来ているのではないかというふうに感じております。

 以上でございます。

菊池公述人 まず、格差の問題でございます。

 私は、大学にもう十一年勤務しておりますので、実感として幾つかそういうものを含めて申し上げますと、確実に今、拡大はしていると思います。それから、加速しているかというと、一時は急速に進みました。しかし、ここのところちょっと、停滞といいますか、落ち込みがまずまずかなと。

 これはどうしてかといいますと、結局、私が見ているのは、学生が毎年新しく四年制の大学に入ってきます。そのうちの一割ぐらいやめるんですよ。やめる学生が、理由を見てみますと、家計の、リストラになった、あるいは自営業がつぶれたとか、そういう学生がやはり非常に多いわけです。十人やめるとしたら、今でも七、八割はその理由です。これは、私がこの大学に来ましたのは九五年でございましたけれども、それから最初の数年はそれほどなかったです。はっきり申し上げて、これはやはり小泉構造改革になってから急速に加速してきたことは事実です。

 では、これはなぜかといいますと、私流に考えを申し上げれば、これはやはり緊縮財政をやっているからなんです。緊縮財政をやっているということは、さっき申し上げたように、これは、金はたくさんあるんですからね。しかし、政府がどんどん支出をカットしていく、あるいはいずれ増税だと言う。それから、先ほどから御案内のとおり、地方に対しては、都市以上に厳しい試練といいますかプレッシャーがかかっていることは確かだと思います。やめる学生も地方の方が多いです。

 ですから、そういうふうな状況が非常に強くなって、いわば、日本が明治維新以来つくってきました社会的なセーフティーネット、これが次々と破壊されてきているんじゃないかと思いますね。これは非常に怖いことです。ですから、そういう面で、やはりこの際、これは深刻に受けとめる必要があるんじゃないかなと思います。

 それからやはり、地方との格差。今あるのは、都会、地方の格差。それから産業格差ですね。大手と中小の格差、それから、零細と言っては失礼ですが、個人経営のような資本力の弱い格差。それから、それが今度、人間のそういう一種の階層、所得の格差。こういうふうになってきております。だから、特に産業の二重構造的な格差も、今かなり出つつあるんじゃないかと思います。

 今、景気がいいといいますのは、大手企業でリストラをやった、輸出をやった、大体これが主力でございます。これで、景気がいい、では増税だといっても、やはり増税で税金を払う原資がどんどん少なくなっているんじゃないかと私は思っております。

塩川委員 終わります。

大島委員長 次に、保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。

 片山知事に伺いたいんですが、先ほどお話の中で、政府に誠意が欠けているんではないかというお言葉がありました。かつて自治省から大臣秘書官をやられて、中央省庁のさまざまな官僚の方と会うと、省益あるいは天下りの話とか、非常に視野の狭い話で、国としての危機感に欠けるんじゃないだろうかとおっしゃいました。

 私も、ここ十年ほど前に比べると、各省庁の官僚の方たち、顔ぶれも変わりましたけれども、どうも構えも変わってきたのかなという気がしますので、そのあたり、なぜそうなってきたのか。政府一体改革じゃないかとおっしゃいましたけれども、どこから始めたらいいと思われるか。お願いします。

片山公述人 私もかつて霞が関に籍を置いておりました。やはり、省利省益とか役所の組織維持、権限拡大に走る傾向は当時からありました。私などは、その中でできる限り良心に従った行動をとったつもりであります。

 ここ最近、私も知事になりまして六年たつのでありますけれども、外から見ておりまして、この霞が関の矮小化傾向というのは急速に進んだと思います。これは小泉内閣の構造改革の結果かどうか、これもわかりませんけれども、急速に進んだことは確かだと思います。

 なぜかと申しますと、私なりに考えますに、恐らくは、今、財政が縮小傾向になってきておりまして、従来のように、例えば、予算が拡大する、したがってそれに伴って権限が拡大する、天下り先がふえる、こういう基本構造がなくなっておりますので、縮小の中でどうやって各省が自分たちの縄張りを守っていくかということにきゅうきゅうとしている。この辺で、恐らくは、本来のミッションというものを著しく失ったんだろうと思います。昔は、そうはいっても、省利省益に走る面があっても、大きなミッションというのはみんな持っていたような気がしますけれども、もう今はそのミッションすらわきに追いやってしまったような、そんな気がいたします。

 これをどうやって改革するのかというのは、私は、簡単だと実は思っているんです。各省のお役人の皆さんがなぜ権限とか天下り先とかに固執するかといいますと、ひとえにこれは人事の仕組みにあると思っております。霞が関のいわゆる高級官僚といいますか、今、1種というんでしょうか、昔上級職といっていたカテゴリーに属する人たちというのは、完璧な年功序列制度になっているのであります。今どき完璧な年功序列制度をとっている世界はこの霞が関ぐらいだと思います。昔は、陸軍と海軍が、陸士何期、海兵何期といっておりました。あれと全く同じことをやっているわけであります。

 そうしますと、ピラミッド形の組織の中で年功序列をやりますから、どうしても、ある一定のところからはみ出さざるを得ない。では、その人たちは、年功序列ですから、おまえは能力がなかったからやめなさいというわけにはいかないので、それなりの処遇を施しながらどこかでかくまう、こういうことになるので、おのずからその天下り先が必要になる。天下り先を確保しようと思ったら、補助金とか権限とかそういうものは手放したくない、こういうことになるのであります。ですから、霞が関の皆さんを、年功序列、早期退職、天下りというこのくびきから解放してあげるのが私は一番だろうと思うんです。

 どうやればいいのか。それは、年功序列をやめる、みんな定年まで働いてもいい、国民のためにいい仕事をする人は事務次官まで上ればいいし、そうでない人は課長補佐で終わればいい、当たり前のことであります。県庁ではそれをやっております。したがって、天下り先の必要性なんかありません。どうしてこれが中央政府でできないのか。これをやるのは私は政治の力だと思います。

保坂(展)委員 もう一点続けて片山知事に伺いたいんですが、議会のあり方の問題についてお話がありました。公共事業の中でも必要なものももちろんありますけれども、私たちは、公共事業をチェックする議員の会という会で、全国方々に、道路であるとかダムであるとか、あるいは箱物であるとか、いろいろ見てまいりました。なかなかこういった事業はとまらない。とまらないというところにやはり地方政治の問題があっただろうというふうに思います。

 片山知事が、議会とのあり方、これに対して随分思い切った改革をしたと聞いておりますけれども、そのあたりの点について述べていただきたいと思います。

片山公述人 議会の問題というのは幾つかあります。これは、国会の問題ではなくて地方議会だということで聞いていただきたいと思うんですが、私は、日本の地方議会は総じて二つの欠陥があると思っています。一つは、透明性が著しく低い、もう一つは、チェック機能が弱いということだと思います。

 透明性の問題につきましては、これは執行部との兼ね合いの問題でありまして、執行部が透明性が低い中で、議会も透明性が低くなっている。したがって、執行部が根回しをして、議会が始まる前にもうあらかじめ結論を決めて、それで議会に臨むものですから、議会が非常に不活発になる、何を議論しても結論は変わらない、こういうことになるわけであります。

 私は、知事に就任以来、この慣行を変えました。したがって、根回しをしない。ただし、人事案件といいまして、副知事の選任同意でありますとかそういうものについては、人の問題ですからあらかじめ連絡はしますけれども、その他の案件については根回しはしておりません。したがって、ぜひこれを通してくださいとかということも一切やっておりません。異論、反論は議場でやりましょうということで、議場でちょうちょうはっしやっています。ということは、案件によっては、例えば修正なんかは日常茶飯事であります。場合によっては、否決もあります。だからといって、こけんにかかわるということはありません。予算の減額修正もありますけれども、まあ、考えてみれば今やらなくてもいいな、こちらがもうかったというぐらいの感覚に今なっております。

 ですから、全国の地方議会でそれをやられれば私はいいと思うんですけれども、これは執行部との兼ね合いの、相関関係の問題ですから、一概には言えないかもしれません。

 もう一つ、チェック機能が著しく低い。これは透明性が低いこととの兼ね合いですけれども、議会がちゃんとチェックをして、議案なり予算案なりの中で無駄なものをえぐり出してそれを除去しようという姿勢がもともと感じられないんです。

 鳥取県議会では、そうであってはいけないので、私は予算なども精いっぱい見ますけれども、一人でできることは限りがありますから、ですから、三十八人の県会議員さんに、目を皿のようにして見てください、どこかに無駄があるはずですからということをお願いして、徹底的にやってもらっています。そうすることによって、さっきの減額修正だとか議案のチェックなんかが出てきているわけであります。

 こういうふうにすればできるんですけれども、なかなかこれは例外的でありまして、これを全体をシステム的にやるにはどうすればいいのかというのが私は一番の問題だろうと思うんです。

 地方自治体の分権の受け皿というときに、総務省、国はすぐに、市町村合併で規模拡大と。あんなことをやっても何にも変わりません。質の悪いのが拡大しても、質の悪いままです。ですから、ポイントは、質をいかに高めるか。それは、透明性の徹底とチェック機能の回復ということです。これをどうするか。それは、一つは、議会制度を改革すること、地方自治法を改正すること。それから、監査制度が機能するようにすること。この二つであります。この二つは国会の仕事であります、地方自治法の改正でありますから。

保坂(展)委員 次に、菊池公述人に伺いたいんです、時間も余りないんですけれども。

 小泉政権は大分続いたわけです。そして、小泉政治を継承する路線がこのまま転換されずに続いた場合、どうなるのか。かつて警鐘を打ち鳴らしたとおっしゃっておりましたので、現時点でさらに警鐘を打ち鳴らしていただきたいと思います。

菊池公述人 小泉首相の政治方針、これを特に私の専門分野の金融とか経済の分野で見ますと、結局は、まず財政面の緊縮財政、物につかれたように、とにかく抑えればいい、抑えればいいと。先ほど、この考え方が間違いであるということは申し上げました。

 ですから、もしこれを続けていくとどうなるかということになりますと、財政支出をカットしますね、例えば今、政府の方針は、二〇一一年にプライマリーバランスを均衡しようとしています。これには大体二十兆円の増税ないしは緊縮、これによって二十兆円の財政収支を改善しようということで、新聞の見出しなんかにはそういうことがはっきり出ております。

 そういたしますと、どうなるかといえば、これは、政府が強権を発動すればできるでしょうね、増税を課する、あるいは地方の投融資施策を、例えば公共事業をカットする。そうすると、何を忘れているかということは、それによって、名目GDP、つまり、経済が停滞して名目GDPがどんどんマイナスになっていくということです、減っていくということです。

 それで、これは、具体的に非常におもしろい発表があるんです。昨年の四月に内閣府が、緊縮財政とか増税をやった場合にどういう影響があるかというのを発表いたしました。これは、ホームページに出ております。私はそれを見ました。先ほどちょっと出ましたが、私の本にも書いてあります。

 どういうことかといいますと、例えば、五兆円の財政の削減をやる、公共投資を落とすとか。そういうことをしますと、そうしますと、その五兆円分はそれは税収でプラスになるでしょう。しかし、名目のGDPは七兆円ぐらい減る。税収目標を二十兆としましょう。五、四、二十兆。そうすると、七の四倍ですから、二十八兆から三十兆円ぐらい名目GDPが減るんですね。今、五百兆とすると、これは四百七十兆。下降するとかなり激しい、多いですから、もう四百六十兆ぐらいまで行っちゃうかもしれない。そうすると、そこで税収はぐっと減ります。そういうことを考えていないわけですよ。財政の帳じり合わせだけを考えているわけです。これが非常に危険なんです。過去、この小泉内閣になってから、特に財政政策の一番大きいことはここです。

 それから、今、景気がよくなっていると言いますね。しかし、これは、デフレのもとでの景気循環なんです。例えば、二〇〇〇年を一〇〇にいたします。そうすると、今の時点というものは、デフレ率といいますかGDPデフレーターを累積で見ますと、大体一〇%ぐらい落ちています。ところが、その間少しずつ循環しているんです、デフレのもとで循環しているんですよ。今でもまだデフレです。今、デフレで少しずつ上がってきているわけです。デフレのもとでは上がりは少ないんですよ。今、少しずつ上がっていますけれども、株だってふらふらしていますでしょう。もうこれ以上余り進まないんじゃないか。

 ですから、そうなると、ますます経済規模は小さくなりますし、先ほどの御指摘のように格差も拡大します。これは、本当に日本の社会的基盤が崩壊していくと思うんです。私は、そういう危機感を持っております。

保坂(展)委員 ありがとうございました。

大島委員長 次に、糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 本日は、お忙しい中、公聴会に御出席いただきまして、また貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。

 では、早速質問をさせていただきます。

 まず、菊池公述人にお伺いいたします。

 日本は小さ過ぎる政府だというふうにおっしゃっていらっしゃいますが、どのような視点で判断されてのお考えなのか、御見解をお伺いしたいと思います。

菊池公述人 先ほど、日本は既にもう小さ過ぎる政府なんだということを申し上げました。

 これは、こういう統計がございます。もしお手元の資料を見ていただけるんでしたら、資料というところを開いていただいて、四ページ、五ページとあります。五ページの右の上のグラフを見ていただけると幸いでございます。恐縮です。

 こういうことでございます。まず、政府の規模を何であらわすか、これはいろいろあります。しかし、OECD、経済協力開発機構のところで出されています資料で見ていきますと、名目GDPに対して政府支出がどのぐらいかという資料がございます。

 これを一九九七年で見てみますと、九七年で見てみるという意味は、デフレが始まったのは実は九八年からですから、その前の時点で見ると、統計資料といいますか問題を非常にクリアに見ることができるので、私はそういう手法を使っているからです。

 その左の上にありますのが、一九九七年のこのグラフですね。そうしますと、アメリカと日本が一番左にありますね。こういう視点で見ますと、既にこの時点で日本は世界で一番小さい政府です。

 その右をごらんいただけますか。一九九七年から、では財政支出がどうなってきたかということをずっと統計で出してみました。そうすると、上の方にずっと行っていますね。一番伸びているのがアメリカとイギリスです。九七年に比べて、数字としますと、アメリカが一三四、イギリスも一三〇ぐらいに行っています。つまり、その時点から三割財政支出が伸びているんですね、歳出ベースです。

 一方、日本はといいますと、一時的には九七、八年の金融危機のときに財政支出をしました。それから、その後落ちついてきまして、特に小泉内閣になってからぐっと落としておりますから、現在はこれが、九七年を一〇〇にして一〇五ですね。

 ですから、そういう意味では、相対的には小さいことは小さいですね、名目GDP比で。ところが、名目GDPが伸びていないんですから。伸びていないから、小さいから、ではいいじゃないかという意見もあるかもしれません。

 しかし、ここが問題なんですよ。アメリカは、やはり同じ比率でちゃんと伸ばしているわけですね。ですから、こういうことが言えます。もし、この比率で一九九七年以降アメリカ並みにずっと伸ばしたとしますと、日本の歳出、財政規模は大体百兆ぐらいです。そうすると、税収は六十五兆ぐらい上がっています。これが実はノーマルな経済成長なんです。

 緊縮財政というものはその逆のことをやっているから、どんどんどんどん小さくなって、さっきから問題が出ていますようなことが出てくるんですね。すべてやはり、この財政赤字の解消とか政府債務の減少というものは、そういう拡大の路線でないと解決はできないと思います。経済とか財政といいますのは理屈じゃないんですよ、経験学なんですよ。どこか成功したところを参考にするのが一番いいんです。私は、いつもそういう考えで見ています。統計を見ていますと、そういうことがはっきり言えます。

 これが私が、日本は既に小さ過ぎる政府なんだと。これ以上、小さくしよう小さくしよう、例えば、今御審議の二〇〇六年度予算、八十兆を割った、八年ぶりだといって、小泉さん初め喜んでおりますけれども、これは実は大変に大きな間違いをされているんじゃないかなと私は思っています。

糸川委員 何度も自民党の推薦ということで公述に立たれた先生の御意見、大変貴重な御意見だなというふうに思います。

 それでは、菊池先生にもう一問。

 郵政公社が民営化されますと日本の国債に対してどういう影響を及ぼすのか、御意見がございましたら、お聞きしたいと思います。

菊池公述人 これは、ある意味では大変いい御指摘でございます。数年先に必ず起きるであろうことでございます。

 それは、私の考えを申し上げますと、現在の日本が発行しております国債、これは通常の国債と、財投債も含めてでございます。これの保有状況を見ますと方向性が出るんじゃないか。

 今、日銀の統計資料で私が最新で分析したのは二〇〇四年の十二月末、発行総額がざっと五百兆円ございます。五百兆のうち郵便貯金で百兆、それから簡易保険で七十兆ございます。つまり百七十兆、郵政公社が持っているわけですね。

 郵政民営化がもう決定をいたしました。そうなると、どういうことが起きてくるかといいますと、この百七十兆が順調に書きかえられるかということなんです。実はこの百七十兆といいますのは我々の、財投債も入っておりますから、例えば新幹線ができた、立派な道路もできた、戦後、短期間にこれだけ日本が成長して立派な国になったのは、こういった財政投融資も含めた資金を順調に回転したことにあったことは確かだと思います。

 そうすると、その資金が、今度は書きかえができなくなる、もういいよということもあるかもしれません。そうなりますと、この百七十兆がどうなるか。民営化されますね。現在のところ、簡易保険会社、それから郵便貯金会社、あと二つありますが、問題なのはこの二つになります。これが民営化されることになりますと、問題は金利ですね。日本はせいぜい一・五から二%でしょう。アメリカは四、五%です。そして民営化された、例えば外資も入ってくるでしょう。そうしたら、高いところへどうしてやらないんだと。当たり前ですね。そうしますと、ざっと百七十兆がかなりのものが海外へ出ていく可能性があります。そうなると、国債の書きかえができなくなる。

 では、どうなるかといいますと、国債が書きかえができなくなりますから、国債市場で価格が下がる、つまり金利が上がります。大体、金利とかそういうものは、じりじりと下がって、ある日突然ぼんといくものだと思いますけれども。そうなりますと、そこで金利が上がりますから、例えば住宅ローンを初め市場金利も大きく上がります。これは、我々の子供たちとか何かそういう人たちが住宅ローンを借りるときには、かなり高いものになるでしょうね。

 それと同時に、やはり金利というものは経済成長の大きなメルクマール、基準ですから、我々でも、結局貯金をして、それを国内に低金利で回してきたことでこれだけ経済が発展したわけですから、当然経済成長に大きく影響いたします。

 ですから、私は実は郵政民営化には反対でございました。こういう面からです。ですから、別のやり方があったと思いますけれども、もちろん、これはもう皆様方の結果で、今は賛成になっておりますけれども、これは大変にこれから大きな影響を及ぼすんじゃないか。

 したがって、私は先生方にまたお願いを一つ申し上げておきたいことは、こういう影響が出るんじゃないか。大体、出てこないとなかなか物事というのは難しいでしょうけれども、そういうときには、やはり国益を重視した形で、日本の国債を優先的に買う。そういうことを、例えば国会で決議する、しばらくの間、政府はちゃんとこの会社の株式を持っていますから。そういうことをしっかりしていただくというようなことが必要なんじゃないか。

 本当にそういう意味では、ぜひとも国益といいますか、我々国民の利益というものをどう守っていくか。今までの継続性が一挙になくなってしまうことは、非常に怖いと思います。決して私は外資の攘夷論でも何でもありません。しかし、基本的なもの、国益に反するものは、やはりこの際きちっとした概念を持って反対していただくということが必要なんじゃないかと私は思っております。

糸川委員 本当に熱弁、ありがとうございます。

 もう何も言うことがなくなってしまうんですけれども、では最後に、これは公述人の方々のきょう最後のあれでございますので、一言ずついただきたいんですが、公共事業の削減に賛成か否かというのを、これはもう本当に一言ずつでお願いしたいと思います。

加藤公述人 景気の面からいくと、余り締めるのはちょっとどうかと思って、ケース・バイ・ケースでやっていただきたいというふうに思っております。

片山公述人 これは一概には申せません。私たちの地域にとって必要なものについては、これはつけてもらいたい。要らないものは要りません。

石井公述人 中身を変えていくべきではないかと考えております。例えば、雇用効果ということであれば、福祉なり教育というようなことは相当効果がございますので、そういった本当に必要なものをやっていただきたいというふうに思っております。

菊池公述人 私は、当初の公述のところでも申し上げましたけれども、もう先生方十分御案内のとおり、日本は貯蓄超過国家です。現在でも銀行預金は百二、三十兆は余っておりますね。これは、しようがないから国債を買ったりなんかしているわけですけれども。

 ですから、そういう状況から考えますと、常にこれはやはりある程度公共投資を出して、そして資金の循環をしない限り、安定した成長は期待できません。ですから、まずそういう視点をきちっと再確認していただきたいなと思います。

 二番目には、もちろん無駄なところに出す必要はございません。ですから、必要なところにどういうふうに出していくか。これは一段と内容を審査する必要があろうかと思いますけれども、私が特に今思っておりますことは、やはりエネルギー関係ですね。

 石油の問題、中東もありますし、それから原子力でも、先生方御案内のとおり、ドイツあたりでは、もう原子力発電をあと十年ぐらいでやめていこうということです。日本はもちろん原子力発電のウエートは高いですけれども。しかし、そう考えますと、エネルギー、例えば風力発電とか、ダムでも効率的なものはつくっていいと思いますけれども、そういったエネルギーなんかにかなり注意をする。それから、新エネルギーですとかナノテクとか、いろいろ今ありますね。これは私、いろいろ聞いた話ですけれども、なかなか民間限りでは及ばないところもあるんですね。

 ですから、そういうところに官がきちっとお金を出して、そして民需を喚起するような、そういう形でやっていただけるとよろしいんじゃないかなと私は思います。

糸川委員 ありがとうございました。

大島委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。

 公述人各位の皆様方に御礼を申し上げます。

 きょうは、率直に、また現場の声、本当に忌憚のない声、お聞かせを願いました。まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 以上をもちまして公聴会は終了いたしました。

 次回は、明二十八日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時二分散会


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