衆議院

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第1号 平成20年2月22日(金曜日)

会議録本文へ
平成二十年二月二十二日(金曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 逢沢 一郎君

   理事 遠藤 利明君 理事 田野瀬良太郎君

   理事 中山 成彬君 理事 増原 義剛君

   理事 森  英介君 理事 山本 幸三君

   理事 岡田 克也君 理事 前原 誠司君

   理事 富田 茂之君

      安次富 修君    阿部 俊子君

      井上 喜一君    井脇ノブ子君

      伊藤 公介君    岩永 峯一君

      臼井日出男君    尾身 幸次君

      近江屋信広君    大島 理森君

      金子 一義君    亀岡 偉民君

      倉田 雅年君    小池百合子君

      小坂 憲次君    佐藤 剛男君

      斉藤斗志二君    坂本 剛二君

      菅原 一秀君    杉浦 正健君

      杉田 元司君    園田 博之君

      高鳥 修一君    中馬 弘毅君

      長勢 甚遠君    西銘恒三郎君

      野田  毅君    深谷 隆司君

      藤井 勇治君    馬渡 龍治君

      三ッ矢憲生君    三原 朝彦君

      盛山 正仁君    泉  健太君

      太田 和美君    岡本 充功君

      吉良 州司君    北神 圭朗君

      末松 義規君    園田 康博君

      田村 謙治君    武正 公一君

      中川 正春君    西村智奈美君

      原口 一博君    細野 豪志君

      馬淵 澄夫君    松本 剛明君

      山井 和則君    笠  浩史君

      渡部 恒三君    赤松 正雄君

      江田 康幸君    笠井  亮君

      吉井 英勝君    阿部 知子君

      糸川 正晃君

    …………………………………

   公述人

   (慶應義塾大学経済学部准教授)          土居 丈朗君

   公述人

   (構想日本代表)     加藤 秀樹君

   公述人

   (千葉商科大学学長)   島田 晴雄君

   公述人

   (奈良女子大学大学院准教授)           中山  徹君

   公述人

   (相馬市長)       立谷 秀清君

   公述人

   (慶應義塾大学大学院教授)            片山 善博君

   公述人

   (中京大学大学院教授・経済学博士)        水谷 研治君

   公述人

   (日本金融財政研究所長) 菊池 英博君

   予算委員会専門員     井上 茂男君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十二日

 辞任         補欠選任

  岩永 峯一君     藤井 勇治君

  臼井日出男君     井脇ノブ子君

  尾身 幸次君     亀岡 偉民君

  小池百合子君     阿部 俊子君

  西銘恒三郎君     馬渡 龍治君

  中川 正春君     吉良 州司君

  原口 一博君     末松 義規君

  細野 豪志君     泉  健太君

  山井 和則君     西村智奈美君

  笠  浩史君     田村 謙治君

  笠井  亮君     吉井 英勝君

同日

 辞任         補欠選任

  阿部 俊子君     近江屋信広君

  井脇ノブ子君     臼井日出男君

  亀岡 偉民君     高鳥 修一君

  藤井 勇治君     岩永 峯一君

  馬渡 龍治君     安次富 修君

  泉  健太君     太田 和美君

  吉良 州司君     中川 正春君

  末松 義規君     原口 一博君

  田村 謙治君     笠  浩史君

  西村智奈美君     岡本 充功君

  吉井 英勝君     笠井  亮君

同日

 辞任         補欠選任

  安次富 修君     盛山 正仁君

  近江屋信広君     小池百合子君

  高鳥 修一君     杉田 元司君

  太田 和美君     細野 豪志君

  岡本 充功君     北神 圭朗君

同日

 辞任         補欠選任

  杉田 元司君     尾身 幸次君

  盛山 正仁君     西銘恒三郎君

  北神 圭朗君     園田 康博君

同日

 辞任         補欠選任

  園田 康博君     山井 和則君

    ―――――――――――――

本日の公聴会で意見を聞いた案件

 平成二十年度一般会計予算

 平成二十年度特別会計予算

 平成二十年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

逢沢委員長 これより会議を開きます。

 平成二十年度一般会計予算、平成二十年度特別会計予算、平成二十年度政府関係機関予算、以上三案について公聴会を開きます。

 この際、公述人の皆様に一言ごあいさつ申し上げます。

 公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわりませず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。平成二十年度総予算に対します御意見を拝聴し、予算審議の参考にさせていただきたいと存じております。どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようによろしくお願いいたします。

 御意見を賜る順序といたしましては、まず土居公述人、次に加藤公述人、次に島田公述人、次に中山公述人の順序で、お一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 それでは、土居公述人にお願いいたします。

土居公述人 皆様、おはようございます。

 私は、慶應義塾大学経済学部の土居と申します。日ごろは経済学の立場から財政を研究しておりまして、今回は、このような貴重な機会をいただきまして、平成二十年度予算案に関して私の意見を述べさせていただきたいと存じます。

 お手元に、参考資料といたしまして横長の資料を御用意させていただいておりますので、これに従いながらお話をさせていただきたいと存じます。

 私は、平成二十年度予算案に関しましては、以下のような点で評価しております。

 我が国の財政状況は非常に厳しいものがあるわけでありますけれども、前年度に引き続き、新発国債を減らし公債依存度を低下させたという点で、財政健全化路線を維持したという点は評価していいのではないかと思います。

 ただ、残念ながら、基礎的財政収支は一般会計予算においては悪化するということがありますから、今後も、緩みなく、引き続き財政健全化路線の継続をする必要があるというふうに私は考えております。その中でも、政府が二〇一一年度までの国と地方の基礎的財政収支の黒字化を目標としている、その中で、社会保障費の二千二百億円の抑制とか公共事業費の対前年度比三%減を実現するという点では、歳出削減に努められたということは認められると思います。

 税制面に関しましては、いろいろとよい点があるとは思いますが、時間が限られておりますので私が一つ挙げるといたしますと、中小企業の事業承継税制の導入が図られるということが、これはある意味で中小企業経営者にとっては悲願の一つだったと思いますけれども、これが税制改正の中で盛り込まれているという点は、今後、日本の産業基盤の底上げという点でも重要な一策であるというふうに私は考えております。

 次のページに移りまして、特別会計予算に関連して、財政投融資特別会計から九兆八千億円、それから、ほかの会計も含めまして、積立金や剰余金を財政健全化に活用するという形で約十一・七兆円拠出されたということは、これは財政健全化路線を堅持する意味でも重要な取り組みの一つであろうというふうに考えております。

 地域間の税収格差の問題が取りざたされておりますけれども、地方交付税の特別会計、交付税及び譲与税配付金特別会計におきましては、地方法人特別税を創設して税収格差の是正を図るということがなされるようでありますので、これも評価できる点ではないかというふうに考えております。

 ただ、一部には、地方法人二税、これが偏在の大きな源になっているわけでありますけれども、この法人二税と地方消費税を今すぐ税源交換して税収格差の是正に活用するのがよいのではないかという意見もあるようでありますが、私の意見といたしましては、これはまだ時期尚早なのではないか。まずは、消費税は社会保障の財源として活用するというところを充実させるべきであって、社会保障財源化をなし遂げた後で、さらに地域間の格差是正を行うということであるならば、その地方消費税を活用するという順序がよいのではないかというふうに考えております。

 それから、政府関係機関予算に関連いたしましては、余り、日ごろ注目度は低いようではありますけれども、平成二十年度におきましては新しい金融公庫が設立されるということでありまして、まさに政策金融改革の総仕上げの段階に入ってきております。これは、予算の中で新公庫へのスムーズな移行を図るということが求められるところであります。

 さらに、新公庫の株式会社化。これまでは、政府の出資が必ずしも有限責任ではなかったわけですが、この政府の出資を株式会社の形で行うことになったという点においては、これは、政府の責任の明確化、さらには財政負担の限定という意味でよいと考えております。

 さらに、四ページには、私が手に入れた資料ではありますけれども、平成二十年度において、一般会計と特別会計が、初めて主要経費別分類で純計の支出額が公表されることになったということであります。

 これまでは、一般会計のみ主要経費別分類、つまり、社会保障関係費、公共事業関係費というものが一般会計のみあらわされて国民の議論に供されたということでありますけれども、平成二十年度におきましては、一般会計と特別会計を合算する形で、しかも重複を除いて純計するという形で主要経費別の支出が合計として出されたということは、国民にとっても重要な財政の資料を提供していただけるものとして、私は大いに歓迎しております。

 そもそも、一般会計は、多く特別会計にお金が流れるという形で予算が計上されているということですから、単に一般会計だけで主要経費別分類をあらわしても、その繰り出された先の特別会計で結局最終的に幾ら支出されたのかということが、同じ分類方法であらわされることがなかなかこれまでなかったわけでありますけれども、これが平成二十年度では具体的に数字として出されるということのようでありますので、これは歓迎したいと思います。

 続きまして、個別各論の話に移りたいと存じます。

 私として、必ずしも網羅的に、この予算委員会での御議論の論点をきょうここでお話しすることはできませんけれども、私が重要だと思っております点について、幾つかここで取り上げさせていただきたいと存じます。

 今、大いに議論がなされております道路特定財源の暫定税率に関連いたしましては、私は、国会の御議論を学者の立場から拝見させていただいております。そこで挙がっている論点、重要な論点は幾つかあろうかと存じます。

 例えば、真に必要な道路をつくるんだという話、ないしは無駄な道路をつくらないということにするにはどうすればいいのかという議論、それから、原油高があって、それに対して低所得者の方にどのように配慮するべきなのかという点、それから、地球温暖化問題が暫定税率との関連で議論されているということでありますけれども、必ずしもその議論がうまくかみ合っていないようなところもあるのではないかというふうに思っております。

 経済学の立場でこの議論に一つの視点を与えるとすれば、ティンバーゲンの原理というものが役立つのではないかというふうに考えております。つまり、幾つか政策を実現するために目標とする対象があって、その対象の数とそれを達成するための政策手段の数とは一致していなければいけないという原理であります。例えて言うならば、方程式で二つの変数があって、その二つの変数の答えを導き出すためには二つの方程式がなければだめである、三つの変数の解が必要な場合には三つの方程式がなければならないという、目標の数と政策手段の数とが合致していなければよりよく政策目的を達せられないという原理であります。

 その観点から私が考えますのは、六ページでありますけれども、真に必要な道路をつくる、ないしは無駄な道路をつくらないという政策目的と地球温暖化対策という目的を両立させるためには、道路特定財源の暫定税率は維持することが必要なのではないかというふうに考えております。

 暫定税率を撤廃しないと、原油高でただでさえ苦しんでおられる低所得者の方々にさらなる苦しみを与えてしまうのではないかという御議論もあろうかとは思いますが、これは、暫定税率を撤廃しなくても、社会保障などのほかの方法でケアするということはできるわけでありますから、必ずしも暫定税率撤廃ということと結びつける必要はないのではないかというふうに考えております。

 財政の基本原則として、一つに、入るをはかって出るを制すという言葉がございます。私が思うには、暫定税率を維持して入るをはかって、そして、暫定税率で入ってきた収入をそのまま何も考えずに道路建設に充ててしまうということではなく、道路歳出に関しては、厳しく精査して、真に必要な道路をつくるということを実現していくことが必要で、まさにそこは出るを制すという話でありますから、決して、暫定税率を維持するということと無駄な道路をつくらないということは、きちんと議論をすればそのリンクは絶てるのではないかというふうに考えております。

 そういう意味で、暫定税率を維持しつつ道路歳出を厳しく精査して、本当に必要な道路というのは何なのかということをぜひ御議論いただきたいというふうに考えております。

 七ページに移りまして、今後の道路整備の中期計画で、五十九兆円を十年間に建設するというような数字が出ておりますけれども、この数字と平仄の合った統計として、過去の統計を私は手に入れることができました。この七ページのグラフはそのグラフでありますけれども、これまでの五年間で、いわゆる社会資本整備重点計画の中で盛り込まれている道路整備費が、この五十九兆という金額と同じ統計でとったところの金額で申しますと、三十二・六兆円ということであります。

 そもそも、整備計画の中では、この五年間に三十八兆円整備するということを数字として掲げておられたというふうに私は記憶しております。そういう意味でいいますと、確かに当初は三十八兆円という数字が出てきたわけでありますけれども、実際、予算の査定等によって厳密に必要な道路は何かということを精査した結果として、その金額を抑制することができたというあかしなのではないかというふうに私は考えております。

 そういう意味では、確かに、箇所づけといいましょうか、どの路線を建設するかということは、それはそれとしてきちんと議論する必要はあるかもしれませんが、ただ、今後五年間ないし十年間という中長期的なスパンで議論する段階においては、多少細かい積算というものはなくても、むしろ、マクロ的に予算総額を推計するという方法は妥当な方法なのではないかというふうに考えております。もちろん、五十九兆円という数字をそのまま受け入れられるかどうかは、真に必要な道路とは何かということをきちんと議論した上で、必要でない道路はつくらないということであるならば、五十九兆円を下回るということはあり得るのではないかというふうに考えております。

 続きまして、もう一つの論点は、いわゆる霞が関埋蔵金と言われている議論であります。

 八ページに、私なりに統計をとってまいりましたけれども、特別会計に平成十八年度末の残高といたしまして百九十六兆円の積立金が存在するという統計が、既に決算で出ております。この中で、果たして本当に取り崩して国民のために使うことができるところはどこにあるのかということを、つぶさに見ていきたいというふうに思います。

 そういたしますと、多くの部分は、保険と申しましょうか、国民年金や地震再保険などといった、国民の保険の支払いに備えたものとして積み立てられているものが大半であります。もちろん、この議論は、埋蔵金という話は年金の積立金に手をつけるという話ではないということは承知しております。特にその中でもよく話題になってくるのは、外国為替資金特別会計とか財政融資資金特別会計、平成二十年度は財政投融資特別会計と名前が変わりますが、この二つの特別会計について、しばしばその積立金は取り崩せるのではないかという議論がなされているように思います。

 ただ、私が考えるところによりますと、必ずしも積立金というのは安易に取り崩せるものではないと思います。特に平成二十年度予算においては、財政投融資特別会計からは九・八兆円その積立金を拠出する、それで国債の残高を減らすことをするという取り組みがなされるということであります。これは非常によいことだと思いますけれども、この九・八兆円を取り崩した後に残される財政投融資特別会計の積立金ということになりますと、これは金利変動準備金として必要な積立金が残るということになりますから、これをさらに取り崩すことはできないものなのではないかというふうに考えております。

 さらには、外国為替資金特別会計の積立金も、為替相場の変動によってその積立金の額が変わってしまうということが十分に考えられます。例えば、これからさらに円高が進むということになりますと、この積立金は大きく残高を減らしてしまうという可能性のあるものであります。ですから、その意味では、きちんと通貨の価値を安定させる意味でも、残高としてきちんと積立金を保っておくということは必要なのではないかというふうに考えております。

 そういう意味では、私は、特別会計の積立金の中から埋蔵金だとして捻出するということはかなり困難なのではないかというふうに考えております。

 埋蔵金は特別会計だけではないという御指摘もあります。九ページでありますけれども、独立行政法人などに遊休資産や剰余金があるのではないかということであります。確かに、独立行政法人の中では、私が思うには、必ずしも国民のために十分に仕事をなされていないような形で資産を保有しておられるようなところがあると思います。

 確かに、資産・負債差額がある程度まとまった金額になって、その金額は埋蔵金として活用できるのではないかという意見もあると思いますけれども、私が思うには、単に資産・負債差額がある金額存在するということだけで直ちに活用できるものではなくて、むしろ、その独立行政法人の事務事業が一体どれぐらい必要なのか、本当にそれぐらいの規模が必要なければ、不要なものは整理縮小して無駄遣いを減らす、これによって予算を効率化することによって、初めていわゆる埋蔵金とおぼしきものが有効活用されるという可能性は出てくるんだろうと思います。

 ですから、そういう意味では、単に独立行政法人は十把一からげに問題だというわけではなくて、むしろ、不必要な事務事業はないかということをきちんと精査した中で無駄遣いを減らしていくという方法で遊休資産や剰余金を活用することが重要なのではないかというふうに考えております。

 最後に、今後に残された課題として数点ここで述べさせていただきたいと思います。

 平成二十年度予算において、一般会計、特別会計において、例えば被用者保険の政管健保への支援ということで一千億円の社会保障費の抑制に寄与するとか、さらには、先ほども触れましたけれども、地域間の税収偏在を是正するために地方法人特別税を創設するなどという措置がとられましたが、これらは時限的な措置であります。ですから、また改めて、ことし、平成二十一年度予算編成に向けて、これを継続するか否かということを議論する必要があるものもこの中にはあります。

 ですから、そういう意味では、確かに財政健全化のために、歳出抑制なり、財政赤字を大きくしないような形で格差是正を図るというようなことは、平成二十年度予算でもいろいろな取り組みがなされているわけでありますけれども、その中には必ずしも恒久的な措置ではないものがまじっておりますから、この時限的な措置については、それをきちんと議論した上で、必要とあれば恒久化する必要があるのではないかというふうに考えております。

 さらには、当然のことながら、我が国の政府債務は巨額に上っておりますから、引き続き財政健全化を続けるということは重要だと思います。歳出削減は、当然これは財政健全化に寄与するわけでありますけれども、私が思うには、歳出削減だけで財政健全化を維持し続けるということは次第に困難になりつつあるのではないかというふうに思います。

 国民が強く欲している社会保障を削るというようなことをしないと財政健全化が維持できないようなことになってしまうということでは、必ずしも国民の支持は得られないということはあると思います。ですから、そういう場合には、必要な歳出に対しては必要に応じて財源を確保する、もっと具体的に言えば、消費税を含む抜本的な税制改革を行って税財源を確保するということが私は必要だと強く感じております。

 それから、十一ページに、最後に移りまして、これは平成二十年度の予算の話ではありませんけれども、平成二十一年度から基礎年金の国庫負担割合を二分の一に引き上げるというような方向で議論が進んでおりますが、この議論に向かって私が申し上げたいことを最後にお話しさせていただきたいと思います。

 私が思うには、今の段階で年金改革案についてはいろいろなアイデアが出されております。学者の間でも百家争鳴状態になっております。例えば、最低保障年金を導入すべきなのではないかという議論、それから基礎年金を税方式化すべきではないかという議論、さらには今の社会保険方式を維持しながら改善していけばよいのではないかという議論、いろいろあります。

 将来に向けた理想像については、必ずしもお互いの意見が合うわけではなくて、それぞれ互いに対立する意見のあるところが多いわけでありますけれども、基礎年金国庫負担割合を二分の一にするということに関して言えば、大半の年金改革案は、この一里塚を越えなければ次のステップに向けて動けない、さらには、将来、理想像と思っているところにたどり着けないのではないかというふうに考えております。

 そういう意味では、確かに、将来、年金制度をどうするかということはまだまだ議論が必要だとは思いますけれども、今は、とりあえず目先のこの基礎年金国庫負担割合を二分の一に引き上げるという点においては、一致協力して、党派を超えて、この国庫負担二分の一に必要な税財源を確保するという形で議論を進めていくということが私は必要なのではないかなというふうに考えております。

 つたない話でありましたけれども、私の意見を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)

逢沢委員長 ありがとうございました。

 次に、加藤公述人にお願いいたします。

加藤公述人 構想日本の代表をしております加藤秀樹でございます。

 この国会の予算審議を通して、我々一般国民の間でも最も注目されたのが特定財源の問題であります。特定財源について、大変熱心な、熱意のこもった審議が行われてきておりました。私は随分いい議論があったと思います。

 その中で、よく聞いておりますと、どうもキーワードは、必要なこと、必要な道路ということかなとつくづく思いました。必要な道路はやはりつくるんだという意見があれば、一方で、無駄なものがいっぱいあるではないか、あるいは、本当にそれが役に立っているのか、地域の活性化につながっているのか、いや、事業をやっているだけだ、そういう議論が随分いろいろな例を通してありました。私はこれを見て、これは特定財源に限らず、すべての予算項目、すべての行政事業に共通する問題だと思いました。

 したがって、きょうは、この必要なことということをキーワードにして、このことに絞って、一般的な行政のあり方について私の意見を述べたいと思いますけれども、例として特定財源に絞ってお話をしたいと思います。

 大勢の知事、市長、首長さんが、地方に道路は必要だということをおっしゃっていました。多分、この言葉自体にはうそがない、それは実感なんだと私は思いますが、ただ、その必要という中身をどれだけ精査したのかというところについて、私なりに地方の首長さんに個々に聞いた意見、あるいは地方議員、地方の職員、現場に近いところの人に個々に聞いた話を踏まえてお話をしたいと思います。

 その前に、こういう場所で申し上げる必要はないと思いますけれども、あえて一般的なことを確認的に申し上げますと、国民を代表する国会議員の皆さん方に国民が託していることというのは何かというと、一方で、道路を含めて国民が政府あるいは行政にしてほしいことというのは、これはもう限りがない、際限がないわけです。どれも、不必要なことというのはそういう意味ではないんだと思います。ただ、一方で、財源には大変な限りがある、どころか、大いに足りないわけであります。したがって、何を国民が一番期待しているかというと、そういう状況の中で、公正、フェアに、なおかつ効率的、効果的に国民のお金をどう使うか、そのことに尽きるんだろうなと思います。

 そういう観点から、私は、この特定財源というものに絞ってどうすべきかということを結論的に最初に申し上げますと、今やそれを維持する理由はないと考えております。

 特定財源、維持するか、あるいは一般財源化するかという選択肢で、大勢の首長さんにそういう質問を突きつけると、特定財源維持だという答えが多いと思います。しかし、私は、問題の設定の仕方を、例えば、特定財源の中から、仮にですけれども、十億円ここにキャッシュで置いて、それで、そういう人たちに自由にこの十億円を使ってくださいというふうにした場合に、本当にその人たちは道路関係だけに使うのかなと。

 あるいは、違う言い方をしますと、特定財源というものが、今、仮にすべてが地方の自主財源だったとします。地方の自主財源という前提の中で、では、地方の首長さんが、例えば知事が、自分の自主財源である道路特定財源を維持するかあるいは一般化するかという問題を、日々足りない財源をどう工面するかということに四苦八苦されておられる首長さんが、みずからその判断を迫られた場合に、特定財源を維持するかどうかというと、私は、そうでもないんじゃないか、胸に手を当てて考えていただくと、本当のところはそうでもないんじゃないかな、これは大勢の国会議員の方もそうではないんじゃないかなというふうに思わざるを得ません。

 先ほど申し上げましたけれども、そんなようなことを幾つか私なりに、具体的な例で、必要な道路、必要なことということの、その必要なという中身、あるいはだれにとって必要なのか、なぜ必要と言われるのかということを考えてみたいと思います。

 お配りいたしました資料、表紙をめくっていただきまして、二ページをあけていただければと思いますが、タイトルが「「地方にとって道路は必要」ということの意味」と書いてあります。

 まず、1のところに、「現在、地方の道路関係費は特定財源税収を大きく上回っていることが多い」、二番目に、「したがって自治体にとって「必要」な道路建設のために特定財源は不可欠とされる」、これが多くの首長さんの主張であります。

 そこに「A市の例」というのを挙げております。このAという市では、道路関係の事業費総額は三十四・三億円です。この中で、道路特定財源十四・五億、国庫補助、市債が四・三億、その上に一般財源を十五・五億使っております。したがって、これは特定財源以上の、その倍近くのお金を使っているわけですね。ですから、そういう意味においては、やはり必要だ、これはなくなったら困るということです。

 しかし、私は、この三十四・三億円の中身、その中身で何をしているかということだと考えます。それについて、右の方の角丸の枠で囲んだところ、これは現に私が地方の首長なりあるいは職員なり住民からいろいろ聞いて調べて得たものです。

 まず、1ですけれども、「地方道路事業の中には、国道が建設されるがゆえに作らざるを得ない道路」、これは例えばアクセス道路と言われるものがあります。国が計画をつくり、道路をつくっていく。そうすると、国道をつなぐ地方道というのは、それに応じて、いわばそこの住民がもともと、ここに道路があったらいいなというニーズがもとありきではなくて、国道をつないでいく道路がどうしても必要になるという、国がつくった道路があるからそれで結果的に必要というふうになってしまう道路の建設というのが相当あるということです。

 それから、いわゆる国の直轄事業であっても、国道建設に伴ってほぼ常に地方負担分が生じます。これは、二分の一であったり、三分の一であったりします。

 したがって、国の事業が本当に必要なのかどうか、これを削れば地方の道路予算もそれに応じて相当削減される可能性が高いと考えております。これは間違いないことだと思います。

 それから、二番目に、最近の国道建設の多くはバイパス道路というものが多いわけです。これは、市街地の国道が狭い、拡幅がなかなかできない、それで渋滞緩和等のために市街地の外を迂回してつくる道路、よくある道路ですね。これはもうだれもが皆さん御承知のように、中心市街地の空洞化をもたらしているわけです。したがって、こういう道路をつくるということが本当に地域の活性化につながっているのか、それだけのお金があったらほかのことができないのかという問題があります。

 これは高速道路についても同じことが言えます。私は香川県の出身ですけれども、本四架橋というのが三本できました。その結果どうなったかというと、残念ながら、私も含めて、あるいは私の両親も含めて橋があるといいなと言い続けてきたわけですけれども、やはり四国の産業の空洞化、商店の活力低下、例えば倉庫業などは四国からどんどん、そこに置いておく必要がなくなっているわけですね。

 ですから、地域の活性化というのは、そこに人とか物とか金を引きつける何かがあるかどうかがかぎなのであって、そこに行きやすくするかどうか、道路をつくれば結果的に活性化されるということは全くないということだと思います。

 これはバイパスとか高速道路の例に限らず、特定財源を使って、私は、特定財源の意義、有効性というのは過去においては十分発揮されたと思います。それは全く否定しません。しかし、これだけ継続して同じ状況かというと、それは違うわけであります。例えば、過去二十年間、やはり道路は必要だ、地域の活性化に不可欠だという名目のもとでいっぱいつくられたわけですけれども、その二十年間、三十年間の中で何が進んだかというと、地域の空洞化、疲弊、過疎化、一方で大都市の過密化ですから、結果はそこに歴然としているのではないかと思います。

 一方で、そこの3のところですけれども、では、住民が本当にそれこそ必要としている生活道路はどうなっているかというと、実は、本当に後回しにされているというのが実情だと思います。生活道路はもともと補助の対象にはなりにくいわけです。こういうものこそ、こういう地方の単独事業でやらざるを得ないものほど、一般財源化して、それを地方の自主財源にしてやればもっとやりやすいということだと思います。

 国交省のパンフレットなんかによく出てくるのが、あかずの踏切、あるいは、歩道とかガードレールがなくてもう人と車がぎりぎりのところで接触しそうな道路、そういう写真がよくあります。しかし、そういう写真を掲げる一方で、そういうところには実は最もお金が回らないようになっているというのが現実だと思います。あかずの踏切が云々されるのであれば、では、過去二十年間そこを優先的にやってきたのかということをまず私は明らかにすべきではないかと考えております。

 参考までに、この資料の三ページをあけていただけますでしょうか。これは、国交省の外郭団体だと思います、日本道路協会というところがつくった資料をもとにしてつくりました。日本は、これで見ますと、世界的に見ても道路高密度国家だと言えると思います。この資料によりますと、日本より道路密度が高い国はオランダだけでした。ただ、オランダというのは国じゅうが全部平地です。したがって、森林を除いた可住地面積でいくと、私は、日本は圧倒的に道路高密度国家と言えるのではないかと思います。

 それから、次のページですけれども、四ページをあけていただけますでしょうか。「国の「しばり」がなければ道路整備コストは大幅削減が可能」という例です。予算委員会においても例にされたことがありますけれども、長野県の栄村、これは新潟県の県境にあります。それから、一方で、下條村というのは南信州ですけれども、それぞれとてもおもしろい例でありまして、塩川財務大臣が、当時、おい、栄村にちょっと見に行ってこいやというふうに担当の主計官を行かせたという話もあります。

 構想日本の試算では、通常の生活道路は一メーター当たり大体十一万一千円、うまく補助がとれても五万五千円自腹を切らないといけない。しかし、五万五千円もなかなか自腹を切る余裕がない。そこで、栄村がいろいろ工夫したところ、一万九千円でできた。下條村というのは、さらに、道路を、行政は建設資材だけを支給する、住民が自分で工事をした、そうしたら何と三千円少々でできた。

 これは何も極端な、例外的なものではないと思います。こういう生活道路は東京の都心の中にもあるわけですから、やり方、削減のレベルは違うにしても、こういう工夫は全国でできる。そのためには、やはり国の縛り、補助金の配り方、これを変える必要があると思います。

 最後に、以上のようなことを踏まえて、これは特定財源に限らないと私は思います。特定財源について言えば一般財源化するということですけれども、私は、よく見ていきますと、これは福祉の分野でも教育の分野でも、すべての行政がいわばミニ特定財源化しているとも言えるんだと思います。それぞれが、例えば中小企業振興何とか費、あるいは青少年育成事業というと、項目を見る限り不必要と思われるものはありません。要するに、その中身なんですね。ですから、この中身を考えないといけないと思います。

 そこで、最後に、やや一般化して二つのことを申し上げたいと思います。

 一つは、もう一枚おめくりいただいて、この資料の五ページなんですが、「「国と地方」の関係はタテからヨコへ」と書いております。現在の行政の仕組みというのは、この左ですね、国があり、都道府県があり、市町村があり、これが明らかに上下関係で結びついている。したがって、市会議員よりは県会議員、県会議員よりは国会議員の方が偉いというような一般風潮になっているわけですし、職員に関しても同じなんです。しかし、本当は、これは役割分担が本来の形ではないかなと。

 実は、小泉内閣が三位一体改革ということでやろうとしたのは何かといいますと、この左の図の、国が都道府県経由で市区町村に仕事、これはコントロール、締めつけともいう面もあります、仕事の仕方を、ずっと、こういうことをやれ、こういうことをやるのならこういうやり方でやれということを流していく。それと同時に金が流れていく。これはセットであります。ところが、小泉政権がこの両方を切ろうとしたわけですけれども、結果的に何をしたかというと、金の方だけを切ったということだと思います。補助金、交付税を大いに切った。一方で、仕事に関する国の地方に対するコントロールはほとんど切れていないわけですね。

 したがって、国がコントロールするがゆえに、地方がどうしても必要になってしまう仕事というのが減っていない。必要とされる仕事が減っていないのに金が減ったから地方は大変、これ以上、特定財源まで切られたらかなわないなというのが本音だと思います。

 ですから、私は、これは特定財源を維持することに本質があるということではなくて、国の地方に対するコントロール、それは、結果的に地方の国に対する依存、これは裏腹のものですけれども、表裏一体のものですけれども、これを切らないといけないと思います。

 最後に、一つ御提案です。

 構想日本で、もう五年ほど前から、地方自治体で事業仕分けというのをやっております。これは、予算項目、地方であれば何百項目、あるいは県であれば何千項目にわたります。それを一個一個、中身を担当者から聞きながらオープンな場所で議論して、必要かどうかということを仕分けていく作業です。六ページに大体のそのプロセスがあります。これをやっていきますと、多い場合には三割、四割が今の県でやる必要がない、今の市でやる必要はないという結果になっております。この結果、一割以上の予算を実際に削減した市もあります。

 小泉政権のときの総選挙で、与党の公明党と野党民主党両党に、この事業仕分けをするべきだということを、マニフェスト、公約の中に掲げていただきました。最近においては、地方の首長がこれを公約や何かに入れる例もふえております。私は、最終的には、これを国でぜひやっていただきたいなと考えております。

 ちなみに、これは、構想日本というような何か怪しげな団体が勝手に言っているというだけではなくて、最後のページにありますけれども、カナダで一九九四年に、クレティエンという人が首相になりましたときに、プログラムレビューという名前で、実はこの事業仕分けと全く同じことを行いました。その前の時点までは、いわゆるサミットの参加国、G7の中で、カナダというのは財政状況が最も悪いところだったわけですね。日本より悪かった。ところが、これ以降、プライマリーバランスも債務残高も目覚ましい改善を見せております。

 まず実験的にでも結構ですけれども、ぜひ、この事業仕分けを国会の場で、あるいは国についてやっていただきたいと思います。

 以上で私の話を終わります。(拍手)

逢沢委員長 ありがとうございました。

 次に、島田公述人にお願いいたします。

島田公述人 千葉商科大学の学長をさせていただいております島田でございます。

 きょうは、平成二十年度の予算と、それから、私がこれからの日本を考える上で大切だと思われる構造改革の課題三つについて、お話を申し上げたいというふうに思います。

 平成二十年度予算につきましては、大変景気がスローダウンしている中で、歳出改革を持続しようとされたという意味では一定の評価ができるのではないかと思います。特に、新規国債発行額を何とか減額したという点は評価できるのではないかと思います。しかし、経済環境がますます厳しい中で、公債の残高は累増しておりますし、依存度は三〇%をはるかに上回っているという状況ですから、今後とも大いに、構造改革は熱心に進めていただかなくてはいけないのではないかというふうに思います。

 その中で、今年度の予算においても、財政改革の基本方針二〇〇六、五年間いろいろなところを削減するんだというところで、社会保障マイナス二千二百億円、公共事業関係マイナス三%というようなことをとにかくやったということ、それから、逆に、成長戦略に基づいて、科学技術の振興費をプラスする、あるいは中小企業対策底上げ、そういったことでめり張りをつけたということはそれなりに評価できるのではないかと思います。

 さて、それを申し上げた上で、私は、これからの日本を考える上で重要な構造改革の三つの課題に触れたいと思います。

 一つは地方の問題ですね。

 現在、都市と地方の格差がいろいろな形で拡大をしているということが否定できないわけでございますが、それの背景には、やはり人口減少というのが大きく作用していると思います。

 人口問題研究所の長期推計によりますと、現在、日本の人口は一億二千八百万程度ですけれども、今から四十二年たちますと、中位推計で九千五百万人、下位推計で八千九百万人ということになるわけですね。これまで二十何年間、中位推計というのは当たったためしがなくて、大体下位の方へ行くわけですが、もし下位推計に近づくということになると、三千八百万とか三千九百万の人口が四十年そこそこで消えるということですから、大変な事態でございます。

 人口の減らない地域と思われているところと、どんどん減るのではないかと思われているところがますます格差が広がっているわけですが、減らないと思われているのは東京とか横浜とか名古屋、あるいは滋賀県とか沖縄ですね。その他の地域は大変大幅に減るというふうに見込まれているわけですけれども、特に、北海道のように大きなところは大幅な人口減が想定されるわけでございます。

 今、全国各地を歩きますと、シャッター通りというようなことがありますけれども、これはまだ序の口でございまして、現在、全国各地で起きていることは、アバンダンドビレッジというんですか、あの村も最後のおばあさんが亡くなってだれも住まないというようなことで、各地域で、東北なら仙台、北海道なら札幌、人口が集まっていますけれども、それ以外の地域は本当にひどいことになっているという状況でございます。

 人口は多くても少なくてもいいんですけれども、多いところから少ないところへ移行する過程で、基金をもとにして構築されている仕組みが崩壊してくるわけですね。マクロでいえば、年金制度がそうでございますし、医療制度がそうだ、あるいは地域も参画している介護保険ということになると、今後、いろいろな問題が出てくるだろうと思われるわけですね。

 そういった意味で、地方経済全体が人口減少の中で機能不全に陥っているということですが、地方というのは非常に大切な役割を果たしているわけで、これは食料と人材の供給源ですね。それから、自然環境を守るというのはすぐれて地方に依存しているところが大きいわけでございますので、地方が疲弊するということは、大都会も根なし草になっていくおそれがあるという深刻な問題です。

 今般の予算の中で、地方について特別な配慮がさまざまな形でなされているというのは評価したいと思います。

 地域間の税収偏在を是正するために、先ほども話題になりました、地方法人特別税及び地方法人特別譲与税をつくる、平年度ベースで三千七百億円ぐらいの税収移転の見込みだということでございます。あるいは、地方交付税の特別枠で、地方再生の対策費として四千億ぐらいを確保している。また、先ほども話題になりました、道路特定財源による地方支援、千億円ずつ五年間というようなことで、さまざまな財政支援を地方に振り向けるということはよくわかるんです。

 量的な問題だけでなくて、質的には何をしようとしているのかということでございますけれども、総合的取り組みということで、地方の元気再生事業、非常にわずかな予算がついているようでございます。それから、国土形成事業調整費とか、地域自立・活性化交付金二百五十億円。まちづくり、地域再生、これは前からあるものですが、四千億円近い。地域公共交通維持、再生、二百億円。さまざまなことをやっております。

 ただ、ここで、地方が再生していくということについて、財政の支援の中身がどういうことになっているかということを考えたいと思うんですね。

 これは、増田大臣が、特に地方の元気再生事業ということで、全国の自治体の皆さんが自分の地方をこうしたいんだということを、案を出してくれるところに多少の予算をつけましょうということで、地方の自立的な、自主的な動きを支援しようということのようでございます。

 これは大変評価されることなんですが、実は、既に地方はいろいろな形でそういうことを行っているわけで、私が大変注目しておりますのは、地方の、人を人口集中区から地方にお招きしよう、そういう動きですね。皆さんにお配りしました資料の五ページ目をちょっと開いていただきたいんですが、新聞記事で、私が書いたものです。この中で相当詳しく説明しておりますけれども、全国各地でさまざまな試みが行われている。人口が縮小していくことが地域の機能不全に陥っていくわけで、人口を何とかふやしたいという努力をしております。

 また、中央省庁もさまざまな形で予算措置をしてこれまで何年もやってきているんですが、私の印象では非常にこれがばらばらで、実は、志はいいんですけれども余り機能していないということで、これはもっと大きな観点から、国全体として、そして地方も連動して、人口を健全な形で分布するように誘導するようないろいろな施策を地域の主体的な動きで推進していくというのを進める必要があるのではないかというふうに思います。

 実は、地方というのは大都市と比べると、競争上、本当に不利なわけですね。同じような事業を行っても、お客さんの数が一けた、二けた違いますので、とても不利なことは明らかなんです。それで、私はこれを地方救済の四つの方程式と呼んでいるんですけれども、これまでは補助金、交付金、税制優遇、工場誘致ということでやってきた、それが機能していたんですが、近年、これがほとんど機能しなくなっているわけですね。

 地方は非常に不利な状況に立たされているわけですけれども、私は、今、日本社会全体が急速に高齢化しているということが、実は一つの大きなチャンスになっているのではないかというふうに思います。それは何かといいますと、高齢化していく、年々百万人近い人たちが定年退職をしていくわけでございますが、こういう方々の共通の願望は健康ですね。地方というのは、健康の三要素といいますか、必要条件を備えているところが多い。これは、きれいな空気ときれいな水とストレスのない静けさというのが一番大きな原因なんです。ただ、それは必要条件で、それをそろえているというのは寂れているということですけれども、それでは人は来ない。人が来るためには、生活インフラ、生活サービスが整っていなくてはいけないわけですが、住宅とか交通とか医療とか介護とかですね、これらは、しかし、地方の自主的な努力でできることが非常に大きいわけなんです。

 問題は、そういう地方の自主的な努力をどういう形で支援するかということで、全国各地で行われている例の中で、多分、傑出した成果を上げているのは、私は北海道が成果を上げていると思います。北海道は、人口減少で大変な難しい問題に直面しているわけですけれども、北の大地への移住計画というようなことで、官民が協力してネットワークをつくって努力している結果、例えば伊達市という市では、この六年間をとって見ますと、毎年二百人から三百人の住民が道外から来ているという成果を上げて、地価も上昇するというようなことが行われています。

 そういうことで、今、皆様にお配りした資料の六ページ目でございますけれども、人々にそういう情報を提供するということで、自治体と企業が連携したネットワークをつくって、移住・交流推進機構という運動を進めております。

 人が動くということは、必ず民間企業にとってもメリットが生ずるわけですね。交通関係や観光あるいは諸施設、さまざまな経済的メリットが生じますので、そういう運動も今起こしているわけです。八ページを見ていただきますと、この移住・交流推進機構というのは、実は総務省の外郭団体の地域活性化センターが事務局を今やっていただいていますけれども、私が会長をしておりますが、こういうような民間企業と全国の市町村、都道府県が参加して、人が動くことをビジネスにしていくということで動きを進めております。

 そういった、ただ予算を張りつけるということでなくて、地方の民間企業を取り込んだ主体的な動きを支援するというのを浸透させることが必要なのではないかと、一つの御提案を申し上げたいと思います。

 それから、もう一つ、ふるさと納税についてぜひ先生方にお願いをしたいと思うんです。

 ふるさと納税制度というのが閣議で決定されて、今の税制法案の中に入っているわけでございますけれども、これは、人々がふるさとと思うところに個人住民税の一定部分を、正確には分割納税ではないんですが、寄附税制を活用した形で、税額控除の形で、人々が地方税に納める部分の一部分を地方に移転できるという仕掛けでございます。これは、税ということでやると大変理論的にも制度的にも難しいんですけれども、現状の寄附税制を大幅に拡充するという形で、今、法案になっているわけでございます。

 これは、人々にとって、自分の納める税を自分がどこへ納めるかというのを選ぶことができるという意味で、非常に画期的な意味があって、人々の納税意識の涵養、あるいは国を大切に思いたいという意識の涵養につながると思いますが、自治体の方でも、ぜひそういう寄附を受けたいということで自治体間競争が行われて、自治体を見直すという動きにもなりますので、今税制法案が大変難しいところに来ておりますけれども、ぜひ、国益を見据えて、早く税制改革法案を通していただいてこの税制を実現していただきたい、そういうふうに思うわけでございます。

 もう一つ申し上げたいのが、対日投資でございます。

 対内投資というのは経済活性化の貴重な刺激になるわけで、資本だけでなくて、必ず経営、技術、人材というのが伴います。そういうことで、国民に多様な選択肢を提供しますし、成長を刺激するもとになるわけですが、イギリスは、対内投資を非常に進めている結果、過去十六年間も引き続き景気が好調を維持するという、我々にとって大変参考になる例でございます。

 日本の場合には、大変大きなアンバランスがあって、対日投資は大変進めてまいりましたけれども、なおGDP比で見ると諸外国に比べて一けた小さい。今申し上げたイギリスは四四%、フランスは三三%、GDP比ですが、投資残高ですね、ドイツが二五、アメリカは一三、日本は二・五ということでございますので、これはやはり対日投資を導入する環境がまだまだ整備をされていないということですね。

 日本のような国の場合には、特にMアンドAの形で導入することが自然なわけですけれども、三角合併という仕組みがようやく整備をされた。しかし、対日投資の生活インフラもその他もろもろのものもまだまだ未整備だということで、今抜本的にこれを経済活性化のために導入するためにはどうすればいいか。

 恐らく重要なテーマは、相互承認ということをもっと進めること、それから透明性、そしてビジネスコストを削減するというようなテーマではないかということで、今度新しく内閣府にできた有識者会議で今それを鋭意研究中でございます。

 相互承認は、医療、医薬などでは、諸外国で使われているものが日本ではなかなか入ってこないという問題がございますけれども、これは法務にも金融にもあるわけでございますね。それから、透明性の問題について言うと、内外の無差別原則、国の規制の方針、ルール、こういうものをもっと世界にはっきりわかるように明確化する必要があるということでございます。それから、ビジネスコストが高い、最大のものは法人税だと思いますね。法人税は、実効税率、日本では四〇%ですけれども、OECDの多くの国々の平均は約二八%でございますから。

 こういうものを含めて、日本が成熟化して、いろいろな資源を持っているわけですね、資本も技術も人材もあるんですが、にかわで固まったような形になっている。そこへ海外からフレッシュな刺激を導入するということは、成熟する日本を活性化させる上で非常に重要なので、ぜひこれは先生方にまたいろいろな形で御支援をお願いしたい、そういうふうに思います。

 それから、最後に申し上げたいのは消費者行政の一元化で、これは福田総理が大変熱心に進めたいとおっしゃっているわけで、昨今、この一元化のための研究会もつくられましたけれども、私は、これは非常に大きな、歴史的な転換の意味があるというふうに考えます。

 といいますのは、日本では、各行政機関がどれも消費者保護をうたい、消費者行政サービスをしているということではありますが、それらの行政部門は、基本的には産業別に縦割りになっていて、生産者あるいはサービス提供者の保護育成が本務でございます。経済産業省は企業、厚生労働省は医療法人、社会福祉法人、農林水産省は農家、農業団体、国土交通省は建設業者、運輸業者ということになっておりますので、消費者保護行政を展開しておりますけれども、どうしても徹底することがやや難しい。これらのサービスが複数の役所で同時に錯綜いたしますので、非常に複雑になっているわけですね。

 そういう意味で、日本が工業輸出立国から成熟生活立国へと大きく歴史的な転換を遂げている中で、生活者、消費者の立場から一貫した一元化された消費者行政というのがもしできれば、これは、消費者が安心して、消費のさらなる発展ということのきっかけになりますし、新たな生活立国の発展の基礎がつくられる可能性がある。そういう意味で、歴史的な意味があるというふうに私は考えております。

 では、どうすればいいのか。最後に一言申し上げますと、まず、窓口の一元化ということが必要だと思います。それから、情報がばらばらになっておりますけれども、消費者の観点から一元的に入手し得る、消費者行政についての勧告なども統一的な立場からできるようにする。生産戦略主導で日本はやってきたわけですけれども、これから、生活者、消費者という観点から、政策もそういう観点から全面的に議論ができるような、そういう組織が望ましいのではないか。その組織は、これまでの既存の役所に比べて、独立性を持ち、専門性を持ち、そして透明性を持つということでございます。

 ただ、これが屋上屋を架すということになっては意味がないので、全体がスクラップ・アンド・ビルドで屋上屋を架さずにこういうことが実現できるかというところが大変な大きな課題で、今の努力がそういう形に結実するかどうか、まだまだ予断を許しませんけれども、私も多少お手伝いをしておりますが、ぜひ先生方におかれましても御理解をいただいて、日本の役所の構造を、大きく消費者の観点から一度きっちりと、成熟国の基礎条件として整理をするということで御支援をいただければありがたいというふうに思います。

 どうもありがとうございました。(拍手)

逢沢委員長 ありがとうございました。

 次に、中山公述人にお願いいたします。

中山公述人 奈良女子大学の中山です。

 きょうは、私の方からは、この間、政府がかなり力を入れて進めていただいている少子化対策もしくは子育て支援、さらには地域再生、そういったものをどういう形で進めていくのが望ましいのか、そういった点について意見を述べさせていただきたいと思います。

 日本の少子化対策については、今、島田先生も冒頭で御発言ありましたように、日本の出生率を見ていますと、もう待ったなしという状況だと思います。残念ながら、このまま事態が推移しますと、日本の人口は先進国の中でも世界一位の速さで減っていくのはほぼ間違いないと思います。こういった面で世界一位になることが望ましいのかどうかというあたりはかなり議論の余地があるかと思いますけれども、少子化対策にもやる時期というのがありまして、今ちょうど団塊の世代の子供さんたちが大体三十歳前後ですから、同じ少子化対策をやるにしても今が時期的には非常に重要でして、この時期を逃せば逃すほど、せっかく少子化対策を進めても、残念ながら効率的に進まない、そういうことが起こってくるかと思います。

 また、地域再生についても、先ほどから議論がされていますように、一般のマスコミでも限界集落の問題がしょっちゅう取り上げられまして、日本の国が長年ずっと築き上げてきた集落、それとともに歴史とか文化、そういったものが残念ながら消滅してしまう危機というのを今各地域では迎えているのではないかなと思います。

 そういう意味では、この間、政府も少子化対策や地域再生についていろいろと御尽力いただきまして、また、少子化対策なんかでも次々と新しい展開をされています。そういった点には非常に敬意を表したいのですが、ただ、例えば、実際にそういった少子化対策、子育て支援を担っている職場の状況はまだまだ厳しい状況に置かれているのではないかなと思います。

 若干、具体的な例をお示ししながら報告させていただきたいのですが、例えば、私のレジュメですけれども、社会保障関係の職場で、今そこで働いている職員の状況がどうなっているのかということなんです。

 例えば、大阪府下の社会福祉法人の初任給を見たものを書いています。これは四大卒、四年制の大学の卒業生で、例えば保育所とかでしたら保育士の資格を持っている人ですね。税込みです。Aという法人は、初任給が十四万九千八百円、一時金が四カ月です。B法人は、初任給が十五万四千二百円、一時金が四・二カ月。Cという法人は、十五万七千五百円、一時金が四・四七カ月。

 また、たとえ初任給が低くても、後でぐっと給料が上がっていけばそれでいいんじゃないかというふうな感じになるかと思いますが、実際、こういった社会福祉関係の職場でどういうふうに給与が推移しているかということなんですけれども、同じ四大卒で、有資格者で、税込みで、これは各種調整が込みですから、実際の基本給はこれより一割ぐらい引いていただいたらいいんですけれども。

 Dという法人は、初任給が十五万五千八百円、四十歳になって二十三万八千八百円ですから、二十年近く働いて八万円ぐらいしか給与が上がっていない。一時金が四・五カ月です。Eという法人は、初任給が十七万七千五百円で、四十歳になって二十二万円、一時金が三・五カ月ですね。Fという法人は、初任給が十七万九千八百五十円、四十歳になって二十五万七千九百五十円、一時金が三・二カ月。これは、税込みで、しかもさまざまなものが込みですから、実際、手取りになりますと、恐らく、四十歳の方で、税が引かれて保険が引かれていくと二十万円を確実に切ってしまうと思います。

 かなり、今社会福祉関係の職場というのは労働が厳しくて、一生懸命働いているんですが、二十年かかって働いても手取りが二十万円に届かない、これがかなりのところの民間の社会福祉法人の実態ではないかなと思います。

 ちなみに、包括的な資料があればよかったんですが、インターネットで調べていますと、トヨタ自動車は、最初、初任給、これは基本給だと思いますが二十万二千円、キヤノンは二十一万五千円、三井住友銀行は二十万五千円、NTT東日本だったと思いますが二十万八千八百十円。

 大体、基本給で五万円ぐらいの差がありまして、これに一時金、各種、いろいろなものが入ってきますと、恐らく年間で、初任給で百万円ぐらいの差が現実的にはついているんじゃないかなと思います。社会福祉法人といっても、今御紹介した資料というのは四年制の大学を卒業した有資格者の給与でして、現実的にはこういう状況になっているようです。

 もちろん、正規職員になれれば、まだ、それはそれでいいんですけれども、今、社会保障関係の職場では正規職員が物すごい勢いで減っています。

 お示ししているのは、大阪府下の市町村の公立保育所の雇用形態ですけれども、今年度で正規職員の比率を見ますと、大阪の吹田市で正規職員は三四%です。ということは、保育所の職員のうち、正規職員は三人に一人しかいない、あとの、三人に二人は嘱託職員かアルバイトであるということですね。河内長野市が三六%、泉大津市が四〇%、茨木市が四一%ということで、最近は正規職員の比率が軒並み五〇%を切っています。

 大阪府の公立保育所は以前から非正規職員が多いかというと、そうではありません。一九九九年の値を見ますと、吹田市は正規職員が五七%ですから、この八年間で二〇%以上正規職員が減っています。それ以外のところでも、河内長野が四四%、泉大津が四八%、茨木が四八%ですから、上に掲げた二〇〇七年と比べていただきますと、この八年ほどで大体一〇%ぐらい正規職員の比率が減っていっています。

 また、民間の社会福祉法人の方ではかなりのアルバイトを使っておられます。アルバイトで働いている人はどういう条件かといいますと、例えば、Gという法人は、一年目で時給七百五十円、二年目が七百七十円、三年目が八百円。Hという法人は、一年目が八百四十円、二年目が十五円上がって八百五十五円、三年目が八百七十円。Iという法人は、一年目が八百円、二年目が八百十円。

 ちなみに、これもインターネットで調べますと、セブンイレブン・ジャパンが募集されているのが、大体七百五十円、八百円、八百五十円。マクドナルドの方も募集されていますが、高校生が七百五十円ぐらいで、あと八百二十円、八百五十円、そういう時給で募集されています。

 ですから、例えばGという法人の一年目、これはアルバイトですけれども、例えば保育所でしたら、有資格者になりますから、大半は保育士の資格を持っていますので、高校生のアルバイトというわけにいきません。でも、実際、アルバイトの人で、もらっている給与は大体高校生と一緒とか高校生よりもちょっと高いアルバイト代で今は社会福祉法人で働いておられます。

 また、この間、政府の方でも、昨年の四月から放課後子どもプランを開始されまして、小学生の豊かな放課後を保障しよう、安全、安心なところで子供たちが過ごせるようにいろいろな手だてを講じよう、地域のいろいろな人の協力を得ながら子供たちを見守っていこう、そういった放課後子どもプランをスタートされています。今の社会的な状況を見ていますと、小学生の子供たちが豊かな放課後を送るということは非常に重要なことで、ぜひそういったことは進めていただきたいと思います。また、そういう中でも、政府の方は、学童保育をぜひ充実させたいということで、一つの小学校に一つずつ学童保育をつくっていきたい、そういう方針も持っておられて、ぜひそれも今後進めていただきたいと思います。

 ただ、そこで見ていただきたいのは、学童保育の職員がどんな状況かといいますと、例えば、これも大阪府下の学童保育の職員の状況を紹介していますけれども、大阪府の池田市は、嘱託職員を二十二人雇用されています。給与は九万七千七百円、経験年数加算なし、一時金もなし。アルバイトを五十五人雇ってはりますが、アルバイトは時給が九百円。茨木市は、嘱託職員が五十七人、給与は十三万千円、経験年数加算なし、一時金は三・三カ月。アルバイトを四十二人雇ってはりまして、時給が八百五十円。堺市は、嘱託職員を八十五人雇ってはって、月給が十五万八千六百円、経験年数加算があり、一時金三カ月。アルバイトは、嘱託職員の十倍ほど雇ってはって七百六十七人、時給は八百円ですね。学童保育の職場については、大阪府下ではほとんど正規職員を置いておりません。大半は、年間契約の嘱託職員と、あとは時給で働いているアルバイトの職員です。

 全体として見ますと、政府はこの間、子育て支援、少子化対策を一生懸命進めておられて、その点については非常に敬意を表しますが、そこで働いている職員の状況は決して恵まれたものではなくて、残念ながら劣悪と言わざるを得ないような、そういう状況かと思います。

 例えば、先ほど見ていただいた学童保育なんかでいいますと、家庭の状況にもよりますけれども、恐らく、月十万円前後の給料で働いていると、残念ながら、生活保護を申請すれば受け付けてもらえるぐらいの給与ではないかなと思います。実際、私が聞いている範囲でも、学童保育は大体昼から晩にかけてありますので、午前中は例えばコンビニエンスストアでアルバイトをして、それから学童保育の職員として働いている、そういう人が少なからず存在しております。

 では、なぜこういう状況になっているのか。政府がこの間、一生懸命少子化対策や子育て支援に努力されているわけですけれども、実際、なぜそこで働いている人の状況がこうなっているのかということなんですが、きょうは保育所を中心にお話をしましたので、保育所の例でその仕組みを簡単に紹介します。

 私立保育所の場合は、例えば運営費が、その大半が国庫負担金として法人に支給されています。一部、独自の財源も存在しますけれども、基本的には国庫負担金として行政から運営費が支給されるわけです。では、その支給額は何で決まるかというと、国の定める保育単価というもので決まります。この保育単価の大半は人件費に充てられるわけです。

 では、国が今決めています保育単価で人件費を計算する場合、どういう基準で計算するかということなんですが、大体、年齢に関係なく、おおむね三十歳ぐらいで一律に計算します。

 具体的に言いますと、例えば定員が九十人ぐらいの保育所があった場合、大体、九十人だったら保育士さんがこのぐらい要るだろう、それで保育単価が幾らになって運営費が幾ら、そういう決まり方になります。ですから、例えば五十歳の保育士さんが働いていても、三十歳の保育士さんでも、二十歳の保育士さんでも、そういうのに関係なく、大体、保育士さんが何人で幾ら、そういう決め方になっています。

 例えば、私立保育所なんかでは、最近、やはり子育ての難しい家庭、子供さんがふえています。ですから、そういう意味では、経験豊かな層を雇用したいというふうに考えておられる私立保育所がたくさんあるわけですけれども、実際、ベテランの保育士さんをたくさん雇用しようと思っても、運営費上はそれが難しい。その結果、先ほどお示ししましたように、四十歳になっても手取りが二十万前後ぐらいしか出せない、現実的にはそういうことが起こっています。

 また、若い人をたくさん雇おうと思っても、ある程度給与を上げていかないと若い人は来てくれません。最初から高い給与を出してしまうと、給与を上げることができないわけですね。ですから、結果的には、若い人を雇用しようと思うと、最初の年は十五万円前後ぐらいで雇用しないと昇給が保障できない、そういうことが起こってしまっています。

 また、公立保育所については、私立保育所と若干財源が違いまして、一般財源化が行われています。公立保育所の運営費を一般財源化するのが望ましいかどうかについてはもっと議論の余地はありますが、現実的にどういうことが起こってしまっているかというと、この間、地方交付税の削減がかなり進んでいます。公立保育所の予算については当然基準財政需要額で見ていただいていますけれども、現実的には、地方交付税が全体として削減された結果、公立保育所の予算も削減せざるを得ないということが各地域で起こっています。

 では、今、公立保育所の予算をどういう形で自治体は削減しようとしているかというと、一つは、公立保育所の民営化ということです。民営化するとなぜ自治体の財政負担が軽減されるかといいますと、公立保育所の場合は、保育士さんの大半が行政職員になりますので、行政職員の給与水準がある一定保障されます。ところが、公立保育所を民間保育所にしますとコストが激減するんですが、その最大の理由は、先ほどお示ししましたように人件費が一気に下がるからです。ですから、公立保育所を民間に変えますとコストは削減できるんですが、それは、先ほど言ったような人件費に変わるからコストが削減できるわけです。

 また、公立保育所も、民営化せずにコストを下げようと思うと人件費を下げざるを得ないんですが、ただ、職員の給与を下げるということはなかなか難しくて、実際、どういう形で人件費をトータルで下げているかというと、先ほどお示ししましたように、正規職員を雇わずに非正規職員を雇用することでトータルでの人件費を下げる、そういうことが行われています。その結果、実際、そういった子育て支援、子育てサービスにかかわる保育所とかいろいろなところでは、最近、非正規の職員が非常な勢いでふえているということが起こっています。

 実際、社会福祉関係の職場では今そういうことが起こっているんですけれども、社会保障関係の職場、きょうは保育所とか学童保育でお示ししましたけれども、そこの雇用形態とか賃金というのは各法人とか各自治体の努力で改善できるかというと、現実的にはそうはなっていません。各法人の努力での収益というのはごく一部でして、大半は、国が定めている予算、保育単価、制度、そういったもので収入が決まってしまいます。ですから、今の社会保障関係の職場の雇用、給与というのは、実際のところ、国とか自治体の予算、制度でほぼ決まっているのではないかなと思います。

 残念ながら、現状は非常に劣悪でして、しかも、急速にこの間、不安定化が進んでいます。もちろん、社会保障関係の職場というのはかつてから裕福な職場であったかというと、決してそうではありません。一般の職場に比べますと賃金等は決して恵まれていなかったんですが、それでも、それなりの暮らしは正規職員になりさえすれば保障されていたはずなんです。かつての政府とか自治体の予算では、私立も含めてそういったことが保障されていました。ところが、この数年間、そこがまさに、経済ではないんですが底割れのような形になっていまして、どこまで落ち込んでいくのかがわからない、そういう状況に今なっています。残念ながら、余り言葉はよくないかもしれませんが、現行の制度、予算が社会保障関係ではそういったワーキングプアをつくり出していると言っても言い過ぎではないのではないかな、そんな状況かと思います。

 その結果、どういうことが起こっているかというと、せっかくそういった社会保障関係で働きたいと思っている若い人が、将来に不安を感じて働かない。例えば、高校生が大学の進路を決める場合、先ほどお示ししましたように、こちらの企業に行ったら年間百万円以上初任給が高いとか、四十歳になっても手取りが二十万円になるかどうかわからない、そういう現実がありますと、なかなかそういう職場で働こうと思う意欲がわいてこないわけですね。また、この間、社会保障関係の職場では労働者がやめていきますけれども、それは、意欲だけではなかなか続かない、人の暮らしを一生懸命支えようと思っているんだけれども自分の暮らしが支えられない、残念ながらそういう問題が今起こっているかと思います。

 政府は、今後、少子化対策や子育て支援を熱心に進めていっていただけると思うんですけれども、少子化対策や子育て支援にはいろいろな施策がありますが、その中でも重要な一つとして、きょうお示ししたような、保育所とか学童保育のような対人サービスの分野があると思います。この対人サービスの分野というのは、そこで働いている職員の質というものが決定的に重要です。本来、職員の質というのは、そこで働き続けることによって高まっていくもの、また、意欲のある人が入ってくることで質というのが高まっていくはずなんですが、残念ながら、現在の状況では、そういう働く人の質を高めるような形にはなっていないのではないかなと思います。

 また、きょうは余り時間がないので細かいことは申しませんけれども、今後、地域再生を進めていく場合でも決定的に重要なのは、地域で安定した雇用をどれだけつくり出せるか、そこが決定的だと思います。地域で安定した職場をつくる上で非常に重要なのは、きょうお話しした社会保障の分野ではないかなと思います。

 もちろん、この国会でも議論されていますけれども、道路をつくる公共事業も重要です。公共事業で働きたいという人はたくさんいますけれども、ただ、今問題になっているのは、公共事業でつくり出した道路を使う人がどれだけいるのかということが議論されているかと思います。

 社会保障というのは、社会保障の分野で働きたいという人もたくさんいますし、人が住んでいる限り必ず社会保障のニーズというのは存在します。そういう意味では、今後、地域再生を考えていく場合、特に地域で安定した雇用をつくり出していく場合、どれだけ各地域で社会保障分野で安定した雇用をつくり出していけるのか、そこが各地域の再生を考える上で決定的に重要ではないかなと思います。

 特に、社会保障分野というのは、社会保障に使ったお金が地域で回ります。社会保障というのは、大半は人件費です。社会保障分野で働く人というのは、その地域に住んでいます。その地域でお金が回っていくということは、非常に地域再生にとっても決定的に重要な意味があるのではないかなと思っています。

 そういった意味では、きょうお話ししましたように、社会保障分野で働いている職員の雇用をどう安定させていくのか。そこで人の暮らしを助けると同時に自分の暮らしもきちっと成り立つように、そういった当たり前のことが実現できるように、そういった予算措置、そういうことをしていくことが少子化対策や地域再生にとっては決定的に重要ではないかな、そのように考えています。

 政府も、財政状況が厳しい中で、少子化対策や地域再生についていろいろな取り組みをされていますけれども、ぜひそういった職場で働く人の状況にも目を向けていただいて、そこの充実を図っていただければ、さらにいい少子化対策や地域再生につながるのではないかな、そのように思っています。

 以上です。(拍手)

逢沢委員長 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

逢沢委員長 これより公述人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。菅原一秀君。

菅原委員 おはようございます。自民党の菅原一秀でございます。

 本日は、衆議院予算委員会の公聴会ということで四人の先生方に公述人としてお運びをいただきました。大変お忙しい中、ありがとうございます。また、ただいまは、それぞれのお立場から、大変独自の、またユニークな御意見を賜りましたことを感謝申し上げる次第でございます。

 時間が二十分と限られておりますので、私の方からは、土居公述人と島田公述人、お二方に絞って質問をさせていただきたいと存じます。

 まず、土居公述人に御質問させていただきますが、プライマリーバランスについてのお話がございました。今まさに二〇〇八年度の予算審議中でございますが、ちょうど去年の今ごろと今と、予算を取り巻く環境が大変変わってきております。

 昨年は、八十二・九兆円の一般会計、約七・六兆円の税収増であった。歳出は〇・六兆増でありまして、極めて財政再建型予算、こう評されたわけであります。内閣府の試算でも、昨年の今ごろは、二〇一一年度のプライマリーバランス黒字化に向けて、いわば歳出改革をしなくても可能なのではないか、こんな予測までされていたわけであります。

 今回、新規公債発行額を四年連続減らした、公債依存度も低下をしてきた。事実、平成十一年、十年前三十七・五兆円であった国債の発行額が、今日二十五・三兆円、十年間で十二・二兆円改善をされた。公債依存率も、十年前から比べますと、三〇・五%ということで大変改善をされてきたわけであります。

 ところが、今回、予算を審議する中でるる議論がありますように、いわゆるサブプライムローン問題や原油高騰、あるいは、国内においては、改正建築基準法に係るいわば住宅着工件数の落ち込み等々、最近ではギョーザの問題等で食品業界にも大変な影響を及ぼす、こういう見立ての中で、税収増が、去年七・六兆増であったのが一千億円しかないという大変厳しい状況。何とか歳出の方を〇・三兆増に抑えた分救われたかなという感はありますけれども、やはりここに来て、プライマリーバランス黒字化に向けての懸念というものが声高に叫ばれているわけでございます。

 この点について、どう処方していけばいいのか、これをまずお尋ねしたいと思います。土居公述人、お願いいたします。

土居公述人 御質問ありがとうございます。

 今委員おっしゃったように、平成二十年度予算のプライマリーバランスにかかわる部分については、まさに、税の自然増収がなくなってしまった分、プライマリーバランスの改善ができなかったというような認識を私は持っております。

 今後のことについて私が考えますところは、やはりプライマリーバランスの改善には、歳出削減の努力も必要なんだけれども、それだけでは不十分なのではないかというふうに考えております。特に、社会保障の給付が高齢化に伴ってふえていくということを考えますと、社会保障給付のためにしかるべき税財源を用意して、それをきちんと確保するということが重要なのではないか、もう少し露骨な言い方をすれば、要は増税ということになるわけです。

 通常、増税といいますと、景気に悪影響をもたらすのではないかということが言われますけれども、社会保障給付の増加に対応した部分で増税をするということになりますと、端的に言えば、ある国民から税を取り、また別の国民に給付をして、その国民が年金所得なりでお金を受け取ってまた消費をするという可能性が出てくるという点では、消費への悪影響とかはかなり限定的になるのではないかというふうに考えております。

 そういう意味では、余りちゅうちょせず、増税ということも考えていただくことは重要なのではないかというふうに考えております。

菅原委員 歳出削減のみならず、いわば税の抜本改革というお話も賜りました。

 ただ、そこの間に、やはり、潜在成長力を高めて、高い名目GDP成長というものをいかにして維持していくか、そのための、いわば税収アップのためにどうあるべきかということも大事ではないかと思います。

 税制に関して言いますと、一九九六年から七年にかけて大変大胆な財政構造改革をやって、結果的にはこれが景気に大きな影響を与えたという轍を踏まないためにも、タイミングというものは極めて重要だと思うんです。

 このタイミングについて言えば、今、八百兆という長期債務を抱えていながらも、国債の金利は二%前後、しかも、ある程度高い推移で取引されている。いわば、日本についてはまだまだ魅力というか潜在力というか、国際的な芽もまだある。ここに来て、確かに日本売り、日本株の低落ということが言われているわけでありますが、やはりこの辺も踏まえて、成長力をいかに高めるかという点と税制改正のタイミング、これは、選挙がある、ないとかいうそんな議論ではなくて、真に国民のためにどうあるべきかという骨太な議論が大事だと思っておりますので、この点について、土居公述人から御所見を賜りたいと思います。

土居公述人 特に、経済成長に関連する部分につきましては、委員御指摘のとおり、非常に重要なところであります。もちろん、増税まずありきという話ではないというふうには私も考えております。

 特に、経済成長を促すという観点からいたしますと、確かに、サブプライムローン問題でアメリカの景気後退が懸念されているというようなところがありますから、余り外需依存ということばかりは言えないかもしれませんけれども、しかし、日本の中で内需をさらに拡大して景気浮揚につなげるというような具体的ないいアイデアというのは、そんなにたくさんは存在しないと思います。

 そういう意味では、かつて加工貿易という言葉が我が国にはあって、学校の教科書には、我が国は加工貿易で成り立っている国であるなんというようなことを書かれていたこともありますけれども、やはり日本の得意を生かして、新興国、アメリカ以外にもまだ世界には国際的に市場が広がっておりますから、そういう新たな販路も切り開きながら、多少外需に依存する形にはなりますが、国際的に競争力をつけて日本企業がさらに利益を上げていくというようなことが重要な方策ではないかと思います。

 もちろん、そのためには、いろいろ税制面での対応とかそういうことは考えられると思います。

菅原委員 ありがとうございました。

 島田公述人にお尋ねをしたいと思います。

 この二月十八日の産経新聞の記事を拝読いたしまして、非常に感激をいたしました。いわば、日本の指導者が国民共通の目標を示せ、また、その目標に対して国民もしっかり気概を持つべきだ、こういう御示唆がございました。

 先ほどの議論の中で、日本売り、日本離れが起きている、しかしながら、まだ世界は日本を見放してはいない。これは、一部希望的観測とも言われるかもしれませんが、改革を実現していく、政策を実現する力、こういったものにやはり依拠しているのではないかな。

 昨年、自民党が参議院選挙に負けました。いろいろな要因があります。地方の問題あるいは当時の税の問題等々、私どもは分析をいたしてきました。しかしながら、だからといって、その改革のマイナス、負の部分だけが大きく取り上げられてしまって、この文章でも島田公述人がおっしゃっておられるように、この改革はまだ道半ばであってその実がとり得ていない、この状況の中において、いわば企図された効果がまだ上がっていない中で、格差社会と称して改革の後退が懸念される。言うなれば、島田公述人いわく、格差社会というのは、その格差は、日本の改革のスピードがややもすればおくれている、遅い、こういった部分に要因があるのではないか、こういうようなお示しがございます。

 言ってみれば、小泉改革の中には、郵政民営化、三位一体改革、プラスの面もあれば、当然マイナスの面、負の面も我々は今見詰めているわけでございますけれども、この状況において、今後、いわばアジェンダというものをしっかり見せなければいけない。

 そこで、先ほど三つの構造改革の御説明をいただきました。確かに、地方の問題、あるいは対日投資、そして消費者行政の一元化という御指摘があったわけでございますけれども、もっと国民にわかりやすいといいますか、国民をリードしていく、そのアジェンダがいかなるものか、この点について御所見があればお尋ねをしたいと思います。

島田公述人 ありがとうございます。

 先ほど私、多少具体的過ぎるテーマに絞ったので、菅原先生から、もうちょっと大局観で話をせいというお話をいただいたと思います。本当にありがたく受けとめております。

 実は、日本経済の長期的な展望を考えますと、一番大きな流れは、やはり人口の縮小、高齢化なんですね。

 こんな統計がございます。一九八六年時点では、日本の世界におけるGDPの比重というのは非常に大きくて、一四・数%あったんですね。アメリカが二五%ありまして、両国で世界の四割を占めるという時代がありました、バブルのピークのときでございますが。ところが、二年前はどういうことになったか。皆さん御高承と思いますけれども、その比重は九・一%。人口はふえているのにそれだけ沈んだんですね、日本がスローだったからだと思いますが。

 これから人口がどんどん減ってまいりますと、今から二十年後ぐらいには日本の比重は世界の中で四%ぐらいになるのではないか、明らかにこれは小国に向かっているわけですね。私は、それはそれでいいと思います。成熟国で小国に向かうのは構わないんですけれども、その中で、国民がやはりみずからを鼓舞できるような目標というのはあると思うんですね。

 今、BRICsあるいはアジアの時代と言われていますが、これらの国々を訪ねると、もう青年たちが、とにかく成長、発展、先進国を追い越すんだと燃えたぎっております。日本は一九八六年に一度世界最高所得、国民所得を達成してから、そういうことは余り国民を鼓舞する目標にはならないということは、特に若い人はそう感じているわけですね。しかし、何かがあるはずだということですね。

 それは何かといいますと、私は二つあると。つまり、国内経済が縮小に向かうわけですけれども、縮小に向かう過程で、先ほど申し上げました、基金をもとにして構築されている仕組みが崩壊してくるんですね。それは、年金であり医療であり介護であり、そういう問題です。これは、しかし克服できないことはない。先ほど土居先生もいろいろな年金改革の考え方について触れられましたけれども、基礎年金を税負担し、あとは自由にやってくれというような仕組みを国民が理解できれば、この問題は克服できるわけですね。ということが一つございます。

 それから、生産性。トヨタとかソニーの生産性は世界トップなんですけれども、労働力の七割を占める部門の生産性が極端に低い。これは何だというと、サービス、流通、建設、建築、農林水産です。

 この理由は二つあります。一つは経営がおくれていることですが、もう一つ、もっと大きいのは、規制改革がおくれていて情報が透明でない、ちゃんとしたフェアな競争が行われていない。だから、建築業界はあんな妙なことがたくさん起きるわけですね。そういうものを改善していくということができれば、労働力が減ってもこれは十分可能だ、対応できるわけです。

 それから、地方に人口が移るような、先ほど申し上げたような施策を講ずる、国民運動として起こしていくということになると、経済が国内的に収縮していくことには対応可能です。

 もう一つ大きいのは、経済は収縮しても企業は収縮することができないんです。企業というのは成長し続けなければ企業でない。そうすると、その違いはどこへ出てくるのかというと、すべて世界へ展開するということですね。先ほど土居先生もおっしゃったことです、そのとおり。

 ただ、日本企業が世界へ展開するのを世界じゅうが歓迎する条件をつくらなきゃいけない。それは何かというと、一つは、日本が、世界の人類が本当に求めている問題に明らかに貢献をする。これは、環境であり、生命であり、健康でありというような分野だと思いますが、今の若い人たち、大学院生なんかの要望を聞きますと、そういうところで仕事をしたいと皆言います。ですから、やはり政治の先生方が旗を振って、そこへ向かうんだということを言っていただくことがとても重要なんじゃないかと思うんですね。

 それから、やはり賢い安全保障です。日英同盟を放棄して日本がああいう運命に遭った。今のアメリカは相当ひどいですけれども、しかし、よく考えて、やはりアメリカ基軸、かつ中国と手を結びながら、せんだっての福田総理のドクトリンは見事だったと思いますね、日中が協力することがアメリカのためにもなるということを初めて関係者に認めさせたわけですから。そういう世界観を持って進むということで、国内には構造改革、外にはそういうことというような目標をだれが示すかといえば、これは政治の先生方に示していただく以外ない。

 ただ、政治の先生方は国民の鏡でございます。国民のレベルを超える政治家というのはあらわれにくいんじゃないかと思うんですね、幾ら立派なことを言っても国民が理解しなければ選挙に通りませんから。だから、私はこの新聞に書いたんですが、国民の気概が一番求められている。本当に頑張っている先生方を国民が投票して支えるという気持ちがないから、日本がこのていたらくに陥る。

 ねじれ国会なんてヨーロッパじゃ年じゅうあることです。ただ、それでも、党利党略でなくて、国民の国益になる問題、例えば年金なんというのは党利党略に、課題にすべきではない。これは国民の国益のためにやるわけですね。そういう成熟した政治をぜひお願いしたい、そんなふうに思います。

 私は、日本は可能性は十分あって、そういう国に日本がなれば、世界じゅうの国々はもっと日本に投資しようということになるだろうというふうに思います。

 ありがとうございました。

菅原委員 ありがとうございます。大変力強いサジェスチョンをいただきました。

 土居公述人にもう一点、もう時間がありませんので、埋蔵金の話がございました。この埋蔵金という言葉自体、我が党の中にも、今回の財政融資資金特別会計、この準備金の九・八兆円を取り崩す、あるいは外国為替についても二兆円余り、十一兆強ということで、これを財政健全化に向けて工夫をしてきたわけであります。

 私も、一月、二月、新年会に五百カ所ぐらい回りまして、年金や医療の話をしているときよりも、埋蔵金と一瞬言っただけで、ふっと寝ていた人も起きるような、ある意味では、国会では、埋蔵金、いやそれは違う、こういう議論がありながらも、一般社会、国民の中には、埋蔵金という言葉自体がひとり歩きといいますか、ややもすれば市民権、社会権を得ているわけなんです。

 先ほどお話があったように、為替の変動で含み損が生じて、これが結果的にはマイナスになるのではないか、あるいは、財融特会を取り崩すのであれば借換債をまた借りなきゃいいんじゃないか、その中で相殺すればいいんじゃないか、そういうような意見もあるわけでありますけれども、やはり今回のこの特別会計には限界があるとおっしゃいました。

 あわせて、九ページにもあるように、独立行政法人や公益法人、ここにやはりメスを入れなきゃいけない、私はこう考えておりますし、この遊休資産や剰余金を精査する、これは第一だと思っています。都市再生機構、URなんかは、本体が赤字が五千億円、ところが、ファミリー企業を含めて連結ベースで見ると四千三百億で、減っちゃうわけですね。これはそれぞれ内部留保があるのかどうなのか、よく見てみなければいけませんけれども、いわば、まだまだそうやって精査をし、メスを入れ、効率化を進めていかなければいけない。

 こういう独法の、そういう意味での埋蔵金はあるのかな、こういう思いも持つわけでありますけれども、この点について具体的なお話があればお示しをいただければと思います。

土居公述人 今、埋蔵金の話がありましたけれども、恐らく、私が考えるところでは、独立行政法人でも、国民がどれぐらい独立行政法人の事務事業を欲しているかということ、このニーズがあいまいであるということから、無駄であるとか無駄でないという議論がなかなか収束しないというふうに思います。そういう意味では、私が思うには、もう少しきちんと、独立行政法人の評価委員会も厳しい目を持って評価するというようなことが行われなければならないというふうに思います。

 私が思うには、埋蔵金、どこを掘ったら埋まっているのかということを具体的にということで申しますと、なかなかそれは、まさに効率性の観点から見れば、URももちろんまだまだ、効率的にその財産を活用すれば浮くお金もあるのではないかとかいうこともあるのかもしれませんが、ただ、行政はすべて効率性の観点から行われているわけではなくて、公平性の観点、さまざまな評価軸でいろいろ国民のために貢献するという発想があります。ですから、そういう意味では、評価軸をきちんと決めて、どの事務が必要で、どの事務が必要でないかということを明確な基準で評価する、あいまいな、アバウトに、何となくうまくいっているとか、何となく国民のためになっているとかということではない形できちんと精査する必要があると思います。

 そうして、私が思うには、できるだけ早く埋蔵金論争に終止符を打っていただきたい。つまり、どこに本当に無駄があったのか、なかったのかということですね。打ちどめ感がなければ、ずるずる、掘ったら埋まっているんじゃないかという発想で国民は見ますので、そこはきちんと御議論いただいて、打ちどめ感を出していただきたいというふうに思います。

菅原委員 ありがとうございました。

逢沢委員長 次に、赤松正雄君。

赤松(正)委員 公明党の赤松正雄でございます。

 きょうは、土居先生、加藤先生、島田先生、そして中山先生、ありがとうございました。大変に示唆に富んだすばらしいお話を聞かせていただきました。

 予算委員会は、私は長く、政治家の以前からこの議論を聞く立場にいたんですけれども、かつては極めてイデオロギー重視というか、イデオロギーに過剰に偏した議論が行われたりした時代がございました。また、近年は、特に去年、私は予算委員会の理事をしておりましたが、極めてスキャンダラスなテーマで空転をするというような場面があって、これも大変につらい、苦しい場面がございました。そういうのに比べますと、ことしは極めて、税の使い方をどうするのかという部分で、非常に予算委員会らしい議論が行われてきたのではないかな。そういう意味で、予算委員会の真価というものを政治家の一人として高く評価したい、何か自画自賛みたいになりますけれども、そういう思いがするわけでございます。

 私がいただいた時間は十分という、十分ではない時間でございますので、土居先生は、この間、公明党の会合に来ていただいたり、また、加藤先生は、先ほども触れていただいたように、私ども、事業仕分けということに大変強い関心を持って、構想日本の構想に強い関心を持って、幾たびか聞かせていただいた。その割にはその後の応援がないと言われないですよね、そういう側面があろうかと思いますが。また、先ほど中山先生からは、極めて重要な社会保障に関する、そこで働く人たちの給与という部分に絞った形で、非常に示唆に富んだお話をいただきました。

 私は、申しわけありませんが、島田先生一人に限定させていただいてお話を聞かせていただきます。慶應義塾退官記念の講演もしっかり読ませていただきました。島田先生にとっては、非常に大きく時代を画する、御自身の人生を画する場面に今直面しておられるんだろうと思います。

 私が聞こうと思ったことを菅原同僚委員がさっき聞かれたので、後に回します。

 まず冒頭、この予算委員会で、大変かなりの部分、税の使い方という部分で、集中的に道路の話がありました。先ほど、土居公述人、そして加藤公述人、お二方から、ある意味で、切り口によっては共通していますし、また見方によっては相反する、私流に解釈すれば、短期的には相反しているんだろうと思いますが、中長期的には同じことを言われたんだろう、こういうふうに思うんです。

 島田先生は、お時間もなかったのか、あるいはそんな小さいことは余り関心がないと思われたのか、ほとんど触れられませんでした。このテーマにつきまして島田先生の御所見を伺いたい、こんなふうに思います。

島田公述人 これは大変重要なテーマだというのは十分承知してはおりますけれども、ほかに専門の先生方がいらっしゃって、しかも国会で最大の課題なので、私があえて一石を投じなくても健全な議論になるのではないかと期待しておりましたものですからあえて触れなかったのですが、今大変貴重な場面をいただきましたので、ぜひ私の考え方を申し上げさせていただきたいと思います。

 予算委員会で、この道路財源の問題については大変熱心な議論が行われておりますが、前段から見ますと、だんだん議論がいい方向へ向いてきているのではないかというふうに思います。

 前段、石油価格が非常に上昇したというので、この値下げ隊をつくるというような話が新聞にいろいろ出ておりましたけれども、これは私は、正直言って、いかがなものかなと思いました。石油価格が非常に上昇しているのはもう理由は明らかでございまして、世界経済が不調の中で余った資金が石油に集中していく、それが異常な価格をつけるわけですね。ですから、OPEC諸国も、需給バランスは足りているという判断でございますね。

 それを国民の税の問題で受けとめるべきかどうかというのは、私はかなり異論がございまして、これは市場の問題ですから、むしろ企業、民間にこれに対応させるべきなんですね。恐らく、企業は猛烈な技術革新をせざるを得ないということだと思います。民の方は、懸命に、高い石油を余り使わないように努力をする。もちろん、北海道の灯油とか、そういう一部支援しなければならないところは十分あるんですけれども、そうすることによってエネルギー効率を高めていくという、非常に重要なチャンスなんですね。

 それを、値下げ隊というようなことをやるというのは、私はいかがなものかなと思っておりましたが、そういうことでなくて、いよいよ議論は本当に必要な道路は何なんだというところに絞られてきているので、まだこれは議論の決着がついていないようですけれども、ぜひやっていただきたいと思うんですね。

 先ほど加藤公述人が言われたように、あかずの踏切がたくさんある。これは今、国土交通省の方でも、実はやらなきゃならないことが一万何千カ所もある、しかし緊急でないものもあるので、緊急のものを数えると九千ぐらいになる、本当に緊急のが三千あるということを、お役所はそれを説明する。これは関係当局も精査をすると言っていますが、本当に精査されているのか。答弁は、三千はもう絶対やらなきゃいけないことで、その財源は確保しなきゃいけないんだ、こういう議論ですけれども、やはり国民は、本当ですかと思っていますよ。やはりまだおかしい。

 石油価格が上がったから税負担をどうしろなんという議論は、もう国民はあきれて、政治家の先生は一体何やっているんだ、ねじれ国会はわかるけれども、非常識もきわまるというふうに国民は思っていたんですね。最近の議論はそうではない、ああ、いいところへ向いてきたと思っていますけれども、本当に、三千と言われている中身というのは、生活感覚から見ても、まだ我々が納得する議論をしておられるとは思えないですね。

 これはいろいろな経緯で役所がデータをそろえているんでしょうけれども、やはり精査をして、国民の目線に立った、本当に必要なものならつくる、そうでないものはもっと有効なことに使うというあたりで、これは、本当に先生方が真剣におやりいただければ、両党の差は本当はなくなるんじゃないかと思うんですけれどもね。

 先ほど加藤さんが非常にいいことを言われて、やはり、国の決まった仕組みがある、それの中で地方が引きずられていく。そういうことはよく精査をして、本当に国民のために必要なもの、住民のために必要なものという観点から組み直せば、おのずと決着点は出てくるんだろうと思うんですね。ということで、期待しております。いい方向に向いていると思います。

赤松(正)委員 島田先生は、両方に極めてバランスのとれた、すばらしい見解を示していただきました。

 私は、ここで、与野党、特に大きい政党、自由民主党と民主党、特に民主党の皆さんの、きょうここに座っておられる多くの皆さんの極めてしっかりと研さんを積み重ねられた上での鋭い議論の展開にいつも感心をしておるわけですけれども、自由民主党という政党は極めて懐の深い政党だなという思いを、きょうは具体的実例は申し上げませんが、幾たびも感じています。そういう観点からいくと、自民党の若手と民主党の古手、ベテランが頑張れば、極めていい方向に行くのではないかなというようなことを思ったりいたすわけです。

 そういうことはともかくといたしまして、先ほど島田先生が菅原委員の御質問に答えられて、実は、日本の社会四十年周期説というのを、私が大変尊敬している小説家ですが、半藤一利さんが言っているんですね。つまり、明治維新から四十年たって日露戦争ですね、その後四十年たってさきの大戦の敗戦ですね、それから四十年たってバブル絶頂ですね。そうしますと、今、バブル崩壊から下り坂の流れにあるという計算になるので、二〇二五年がその底になるという、この四十年説をとるとそうなってしまうんです。

 つまり、背景には、要するに、明治維新からさきの大戦までは、言ってみれば、先生がおっしゃるところの国家目標というのが、富国強兵であったろうと思うんですね。それから、その後の四十年間というのは経済至上主義。では、次はどうするんだ。

 先ほど先生がおっしゃったように、賢い安全保障、それから三つの提案を踏まえた上での構造改革のお話、こうあるんですが、要するに、私は、国民の目線と強調されるんですが、やはりほどほどの国家、当たり前の話ですが、国家の目線というか国家枠組みというものを持った上で、国民に対していかに目線を強めていくかということだろうと思うんです。

 結論的に、先ほど先生の、もう少し、そんなことは政治家が考えろというお話なんでしょうけれども、ちょっとサジェスチョンをいただきたいと思うんです。

 私なんかは、富国強兵、経済、こう来たから、ほどほどの安全保障、そして経済、これはもう両方とも無視できないことでありますけれども、これからのいわゆる日本国民をぐっと引きつけるそういう方向性、国家目標という観点でいけば、なかなか難しいんですが、私個人で言えば、芸術、文化、教育、こういった部分の大きな国を目指していこうよということなのかな、こう思うんです。そのあたり、もう時間がなくなりましたけれども、島田先生の短いコメントをいただければと思います。

島田公述人 先生の御指摘、基本的に賛成でございます。

 日本は、総体的には、量的には小さくなっていく、その中で、国内の構造改革は抜本的な考え方で乗り越えるということは可能だと思いますし、世界の信用を確保していくということも、世界に貢献し、安全保障をしっかりやっていけば可能だと思いますが、やはり最後に残るのは、魅力的な国民でありたい、魅力的な国家でありたい、日本人はすばらしい人たちで、日本という国はとてもいいところで、小さい国だけれども、みんなが訪ねたいし、一緒にやりたいというときは、やはりソフトパワーというのが非常に重要だと思うんですね。やはり、日本文化の持っているもの、あるいは日本人の才能、特に若い人たちの感性というのは非常によくなっていますから、そういうものが存分に発揮されるような、そういう指導理念というのを打ち出していただけるということは最も重要なことだと思います。

 賛成でございます。

赤松(正)委員 ありがとうございました。

 終わります。

逢沢委員長 次に、松本剛明君。

松本(剛)委員 民主党の松本剛明でございます。

 先ほどの赤松先生のお話で、私も、民主党はどんどん若い方が育ってきているので、若手かどうかの境界線に既に差しかかりつつあるのかもしれないと思いながら、敬愛する公明党の赤松先生もすばらしい議論の仲間として、きょうもまたしっかり議論させていただきたいと思います。

 そこで、きょうは、まず加藤先生にお伺いをさせていただきたいと思っております。きょう、少なくともここにおいでの方は、構想日本が怪しげだと思っている方はだれもいないと思いますので、存分に御見識を御披露いただけたらと思っております。

 必要な道路とは何かという議論については、まさにおっしゃったとおりであろうというふうに思います。私どもも、現実に、乱暴な言い方をすれば、ただでできて要らない道路というのは恐らくないと言ってもいいぐらいだろうというふうに思います。ただ、限られた中でどういうふうにつくるかということが大変大きな問題となっているんですが、今回、この道路の問題を予算委員会でもかなり細かくいろいろ議論をさせていただく中に当たって、やはり一つ大きなウエートを占めているのは、高速道路が大変大きなウエートを占めてきているというふうに思っています。

 この高速道路の問題というのは、ある意味では、小泉政権のときに民営化という形で一つ大きな俎上に上ってきたわけでありますが、今回の予算の審議の中でも、一つは高速道路、現在のいわゆる基本計画にある一万四千キロに加えて、地域高規格ということでさらにその外に七千キロ、さらにその先にも候補路線というのもある。

 一つは、高速道路の自己増殖的な部分というのが随分と取り上げられてきていますが、この高速道路網に対する加藤先生の御見識。それから、あわせて道路公団の民営化、私どもからすると、今回も高速道路の料金値下げという話が政府側からも出てまいりましたが、民営化ということと、政府の方で値下げを主導するということの矛盾も私自身は感じているんですけれども、今回の民営化というものをどう評価されているか。この二点について、まず御見識を承りたいと思います。

加藤公述人 高速道路建設と道路公団の民営化ということですけれども、最近、ウェッジという雑誌があります、それにごく簡単に高速道路の民営化について原稿を書きました。機会がありましたらお読みいただければありがたいと思いますけれども、そこに書いたことのポイントをかいつまんでお話ししたいと思います。

 結論から言いますと、私は、道路公団の民営化は失敗であったと思います。

 なぜかといいますと、民営化が目指したもの、それは、道路というのは、これは公のもの、公物だという議論が随分国会でも行われました。これは当然であります。公のものをどうやってつくるか、公益にかなうようにつくるにはだれがつくることを判断するか、そこが一番問題だったんだと思います。

 それで、実際には、かつて国幹審、今は国幹会議と言われております、ここで議論が行われ、結果が決まっていく。当時において、九千三百四十二キロというのが既に命令が出ておりました。そのさらにもとの計画レベルでは、一九八七年に一万四千キロというものが計画で決められております。こういうものが、公物、公益という観点から見て、本当に国民が必要かどうかというところが問われているんだと思います。

 この点に関して、日本人だれもが異存がないということであれば、それは堂々とつくればいいということであります。ところが、どうもそうじゃないんじゃないか、決め方にも問題があるんじゃないかというところが最大の問題だったんだと思います。問題があるのであれば、道路をつくろうという決め方のところ、結果的に無駄な道路はこれ以上つくらせない、つくらなくて済むような仕組みをつくろうというのが民営化だったんだと思います。

 したがって、本当は、何も民営化というようなことをやらなくても、国政あるいは行政の場において、もうこれ以上要らないものは、こういう理由で、ここまでは必要だったけれどもここから先は要らないということで決断をすればそれで済む、極めて単純な話だったわけです。ところが、なかなかそうはいかないというのが現実なんだと思います。

 本来は、公的なものを公的な場所で決めるわけですけれども、国幹審、国幹会議というのが、公的な場所として設定はしているんだけれども、そこで議論される中身が極めて私的な利害に基づいた議論が行われている。ですから、プロセスは一見公正、公的であるけれども、実質が私的利害に基づいている。したがって、民営化ということにおいて、道路公団、道路をつくるということをマーケットの中にぽんとほうり込むことによって、その私的な利害が届かないようにしようということだったんだと思います。

 最初に失敗だったと申し上げたのは、今も国幹会議は存続して、そこで決定されている。会社が今できているわけですね、民営化の結果。にもかかわらず、会社は道路を建設するかやめるかということについての意思決定を全くできないということは、もうこれは、そのこと自体が民営化の当初の目的を全く外してしまっている、改革は失敗であったということを言わざるを得ない。

 それから、現に、九千三百四十二キロは何らかの形ですべてつくる、さらには一万四千キロもつくるということになっております。先ほど一般道路について、日本は道路高密度国家だと申し上げましたけれども、高速道路についても全く同様であります。私もかつてそこにおりましたけれども、役所がつくる統計というのは、いろいろな観点からつくるわけですね。うそではないけれども本当ではないというものが極めて多いわけですね、ここがみそなんだと思いますけれども。したがって、例えば道路の総延長キロでいうと、それはアメリカのような巨大な国土を持った国は長くなる。ところが、密度で見るとどうだ、人口当たりで見るとどうだ、先ほど申し上げましたように、可住地面積当たりで見るとどうだ、そこで実質で見ないといけないんだと思います。日本の場合には、一時間以内で高速道路の入り口に到達できる人の割合が九割をはるかに超えております。これは世界最高だと思います。

 それから、もう一つだけ申し上げますと、道路はもともと、道路公団というところがお金を借りて、借金をして道路をつくって、有料道路の料金でもって借金を返していくという仕組みでした。今は、そこに新直轄ということで、税金を使うという仕組みが入っております。実はこれは、もともと、俗称薄皮有料という言葉がありました。高速道路のほとんど九割を税金でつくって、薄皮、最後のまんじゅうの上の方の、温泉まんじゅうの皮一枚みたいなところをぺろっと、舗装だけを借金、道路公団がつくって、はい、これは有料道路ですというふうにしてやってきたというのは、かつてからありました。新直轄というのは、それをさらに広げようということであります。これは、特定財源の金がそこに回るということですから、道路をさらにつくりやすく、しかも特定財源の金と借金と、いろいろなものが入りまじって、極めてお金の流れということでも不透明になったということだと思います。

松本(剛)委員 あと二点ほど、加藤先生にお伺いをしたいと思っています。一点は分権に関する御見解、それからもう一つは事業仕分けの使い方についてお伺いをしたいと思います。

 一つは、分権についても、今回の道路の問題についても、少し見方を変えますと、地方自治体の皆さんも大変御苦労されているという声は私どもも聞くんですが、実は、スケジュールを見てみますと、今回の予算編成というんでしょうか、税制の改革も含めて、いわば政府の中、霞が関の中では去年の夏から年末まで六カ月時間があり、国会には今回、事実上、ここで衆参合わせても年度末ということから考えると恐らく二月ぐらいしか時間が与えられず、そして地方の方は、実は、地方議会の方は地方税法が国で決まってから議論をいたしますのでほとんどゼロ、場合によっては専決処分などで処理をしているケースもある。この辺に、やはり今回の問題が一度に噴き出している部分があるのではないのかなというふうに思っております。

 先ほど、決め方が大変重要という意味でも、今の申し上げた点も、全部国が決めないと地方が一歩も動けないという状態を脱することが大変重要ではないかなというふうに私どもは思っております。

 現実に地方の事業仕分けなどを担当されて地方自治体を見てきておられる中で、やはり国の関与というのは相当強いということを我々も感じていますが、その辺の現場の声なども御披露いただけたらと思います。

加藤公述人 構想日本で事業仕分けをやってくる中で、実は本当にいろいろなものが見えてまいりました。一般論、マクロではわからないことですね。ですから、改革とか必要という言葉は、それ自体だれも反対しないわけですけれども、しかし、その中身が問題だと思います。

 国の地方に対するコントロール、それは逆から見ると地方の国に対する依存ということですけれども、先ほど、栄村、下條村の例を挙げました。これは、国が、生活道路についても、道路構造令等々ということで道路のつくり方について細かく規定をしているわけです。それに従って道路をつくれば補助金もついてくる、そのかわり十一・一万円かかる、補助金がうまくつけば五万五千円、それを、自腹もなかなか切れないから、工夫したら一万九千円でできた、そのためには幅も少々狭くしたというようなこともあります。

 こういう例はいろいろあるわけですけれども、例えば、栄村の一万九千円でつくった道路、あるいは下條村の三千円余りでつくった道路、これを見てみると、補助金は出ていないわけですね。せっかくそこまで工夫してつくったのであれば、一万九千円の半分、九千五百円で済むわけですから、これは国費だって大いに節約できる。全体で見れば、大変国民の利益になるわけですね。ですから、半分、九千五百円と言わず、一万九千円全額補助したとしても、五万五千円よりもはるかに安くつくわけです。しかし、これは何が言いたいかといいますと、国が決めた決まりを守らない限り金は出ない、こうやって金とセットにすることによって、地方に対するコントロールが極めてきいている。

 これは、福祉施設の廊下の幅が何十何センチということになっておりますし、それから、例えば小学校の天井の高さ、これが少し前までは、三メーター以上ないといけない、明治の初めに決まったことであります。これも事業仕分けのプロセスの中で見えてきたわけですけれども、これを二メーター七十に、三十センチ低くすると、一棟当たり八千万円ほど安くできる。では、やろうということで、実行しようとした市があります。これを特区という形で何度か外してもらおうと思った。ところが、そのルールを持っている文科省がうんと言わない。最後に何と言ったかというと、特区は認めない、しかし、文科省が有識者に諮って、天井の高さを低くしても、児童、学童に対して精神的なことを含めて問題がないと明らかになったら、文科省が全国に対してオーケーを出すと。

 これは、天井の高さが問題なんじゃなくて、要するに、自分たちが仕切るか仕切らないかというところが問題なんだということのとてもいい例だと思います。これは幸いに、当時の公明党の神崎代表がたしか小泉総理に質問をしていただいて、たちどころに総理から、おい、何をやっているんだというようなことで、この省令はなくなりました。こういうのが山ほどあります。

 これでも二メーター七十、外国のどこの、もっと体が大きい子供のいる国の学校を見ても、二メーター五十とか七十なんですね。三メーターというのはとても高いわけです。ですから、それを地方が、お金がないから自主的に工夫して、よし、天井の高さを低くしよう、八千万節約できる。なぜそれをさせないのか。こういうことは、予算項目の一つ一つにすべて存在しております。

 ですから、やはり分権。分権といっても、言葉ではなくて、地方で行っている、国の国費も地方の費用も、結局、そのお金はどこで使われているかというと、日本のどこかの地域なんですね、それが国費であったとしても。地方というのは、国よりも大事でないこと、あるいは自分が住んでいるところ以外のどこかよその場所みたいな印象がありますけれども、日本は地域の集まりなのだと思います。ですから、その地域でどうやってお金が使われているかということを一個一個、予算項目ごとにそうやって見ていくと、いっぱい無駄があります。その無駄をさせている、必要という名目上、無駄をさせていることの背景が、国の地方に対する縛りという形であります。それは、法律であったり、先ほどの道路構造令という政令、省令ということであったり、補助金の交付要領、交付要綱、何とか要綱という形であったり、いろいろなレベルのものがあります。これを切っていくことが、私は何よりも肝心だと思います。

 国の地方に対する縛りを二割切れば、地方は二割自由になる。二割自由になれば、予算は一割カットできるかもしれない、ひょっとしたら三割カットできるかもしれない。国の地方に対する縛りを五割切れば、地方の自由度は五割ふえる。そうすると、予算は、無駄なことは三割切れるかもわからない、ひょっとしたら七割切れるかもわからない。私は、そういう構図だと思っております。

松本(剛)委員 大変大きな話が含まれているということで御指摘をいただいたのかなというふうに思っています。

 もう一つ、事業仕分けについて、国の事業仕分けをどうするかという話は、我々もどこから取っかかるかいろいろ悩むところなんですが、その意味で、ひとつ、こういう応用ができるのかどうかということでお聞きをしてみたいと思っています。

 私も事業仕分けの現場を拝見させていただきました。このレジュメの中にも流れがありますが、この中で、私が行かせていただいて感じたのは、こういった流れが全部オープンな形でされているということが、実は事業仕分けの一つ大きなかぎなんだろうというふうに思います。

 先ほど島田先生の御指摘の中でありました、私どもも、民主党の原点も、消費者、生活者、納税者ということでございまして、やっとこの国もそういう体制に変わらなければいけないということがテーマになったことは私も大変喜ばしいことだろうと思っておるんです。

 まさに、消費者行政と言うべきなのかどうかわかりません、いわゆる業界監督的な行政とは消費者の問題で求められるものはちょっと違うので。いろいろな形が、実際にも提案されていますから、形があると思うんですが、これを現実的には、まさに島田先生、スクラップ・アンド・ビルドと言われたように、場合によっては各省庁からはがさなければいけないものも率直に言えばあるとすれば、これをまさに事業仕分けの、ある意味では応用のような形で、オープンな形でやるということで進めることも一つの方法なのかなというふうに思うんですが、そういった応用について、可能性その他含めて、もしお考えがあれば、加藤公述人にお聞かせいただきたい。国の事業仕分けをオープンな形で、ある意味で創造的事業仕分けのような形ができることについて、ちょっとお伺いしたいと思います。

加藤公述人 かつて坂本竜馬は、日本を掃除したく候ということを言いました。私は、この事業仕分けというのは戦後六十年間の行政の大掃除という作業だと思っております。これは、国について本来やるべきことだと考えております。

 簡単に、事業仕分けとはどういうことかを申し上げます。

 先ほども少しお話ししましたけれども、なかなか国でやれないものですから、県とか市町村に行ってやります。それで、予算項目一つ一つを見ると、項目を見る限り、無駄に見えるものは本当にないんですね。中小企業振興何とかというと、それは中小企業を振興することは大事だと思うわけです。

 ところが、そこに行って、我々はチームを組んで行くわけです、担当者から、まさにこういうオープンな場所で、だれでも傍聴に来ていい、その市なり県の担当者に予算項目を一つずつ説明してもらうわけです。あえて言えば、財務省の査定作業のようなことをもう一度オープンな場所でするということなんですね。ですから、逃げも隠れもできないということです。担当者にとってはとてもしんどいと思いますけれども、よく対応していただいております。

 そうすると、例えば、典型的な例なんですけれども、ある県で青少年育成事業費というのがありました。わずかな金額だったわけですけれども、青少年育成がその県にとって必要な、あるいは我々全員にとって重要なというのは、これはだれも反論しません。しかし、何をやっているんですかと聞いたら、子供たちを公園に連れていって子馬に乗せている、ポニーに乗せているというんですね。ですから、それはよっぽどお金が余っていたらいいんだけれども、そうじゃなければ、子供を県のお金で公園に行って馬に乗せる必要があるんですかと質問するわけです。そうすると、担当者は、いや、青少年育成は県にとって重要な仕事だと。このやりとりが延々と、十分、十五分と続くわけです。

 ですから、担当者は漢字七文字、十文字でしか考えていないということなんですね。よく中身で議論しましょうというのができないわけです。それは中小企業振興に関してもそうです。すべてに関してそうなんですね。

 ですから、私は、そういうふうにして見ていく余地というのは国に関しても非常にたくさんあると考えております。もちろん、国の場合には、例えば年金とか医療のように、制度が決まれば同時に歳出が決まってくるというものも多くあります。しかし、医療費の支払い一つ一つ見ても、制度が決まっても、やはりその中に不透明な部分、不必要な部分がいっぱいあって、制度は変えなくても減らせる部分も大いにあります。これをオープンなところでやる。

 実は、公明党、民主党に公約に入れていただいて、その後、先ほども申し上げました、神崎代表に質問していただいたというようなこともあって、小泉政権のときには、いわゆる骨太の方針の中にも入りました。行政改革推進法ですか、あの中にも入っております。それから、安倍政権になっての与野党合意の中にも入っております。

 入っているんですけれども、これをやると、実は、国の各省の無駄、それから、現時点においてはですけれども、無駄の源泉になっているいろいろな決まり、権限というものが全部白日のもとにさらされてしまうわけですから、せっかく与党の中にいっときチームをつくっていただいたにもかかわらず、これは残念ながら、その後全く機能はしておりません。

 国の作業を全部やるのは大変ですけれども、実験的にではあってもいいと思います。そこのノウハウは構想日本は十分に持っておりますから、ぜひこの事業仕分けを国についてやっていただきたいな。私は、これは革命になると思っております。まさに坂本竜馬の言葉に匹敵することになると思いますし、私は、それをやれるのは、やはり現在の仕組みの中からなかなか抜け出られない行政府ではなくて、まさにそれこそが立法府の仕事だと思いますし、それをやっていただければ、今のこの予算委員会、今のこの国会というのは日本の中興の祖だ、歴史的に必ずそう言われることになると思います。そのことのいい例が、私が先ほど申し上げましたカナダを見てもわかると思っております。

松本(剛)委員 ありがとうございました。

 私自身も、今おっしゃった、手法としては事業仕分け、そしてテーマとしては島田先生がおっしゃった消費者行政というのが、実は大きな政府改革の入り口になるのではないかという思いでおります。

 時間も限られてまいりましたが、土居先生に一点、島田先生に一点、お伺いをさせていただきたいと思っております。

 土居先生には、先ほどのレジュメの中にもありました、財源を確保した上で道路の事業を精査するという項目があったわけでありますが、また、入るをもって出るを制すというお話もありました。道路の財源を確保した上で、入るをもって出るを制すだと、その分は必ず道路がつくられることになってしまうと思いますので、先生のおっしゃっているここの財源を確保というのは、全体の財政の意味で、今減税をする余地はないというお話なんだろうというふうに理解をしております。その意味では、私どもが申し上げている一般財源化をすべきではないかという財政改革の面からも同じではないかなと思います。

 また、先生のコラムでもコミットメントという言葉が出てまいりました。政治的にも、小泉政権のコミットメントからしても、一般財源化をすべきではないかと思いますが、ここの財源を確保した上で道路を精査するといったことの御趣旨、一般財源化ということについての御見解をお伺いさせていただきたいと思っております。

土居公述人 まさにコミットメントという重要なキーワードを出していただきましたけれども、私が思いますのは、財源を確保するというのは、当然、財政全体の財源を確保するという意味であります。

 暫定税率に関連してという部分については、もちろんいろいろな思惑はあるのかもしれませんけれども、私の経済学の立場からしますと、これを下げるというのは直ちには受け入れにくい。それは、地球温暖化の問題がやはりどうしても避けがたい問題としてあるので、それを考えると、ガソリンに対する税金として、これをどのように使うかということはまた次の次元の問題として議論するとして、どういう税率であるべきなのかということからすると、税率水準からすると、やはりまだ下げる余地はないんじゃないかというふうに考えています。

 あと、もう一つ私が申し上げたいことは、道路の予算についてのコミットメントについては、この平成十九年までの五年間での道路整備の予算というのが、一応三十八兆円で五カ年でやるというようなことからしますと、十年間にそのまま引き延ばしたところでいえば七十六兆円になる。これが五十九兆円になるということ、金額だけをとりますとですね。そうしますと、少なくとも、道路の予算はそれだけ抑制するということにはなっている。

 問題は、さらにそれ以下にできるのかどうなのかということは、これはまさに、先ほど来議論がありましたように、真に必要な道路をきちんとつくるとは一体どういうことなのかということを議論することによって、具体的に詰められるものではないのかなというふうに思います。

松本(剛)委員 暫定税率と地球温暖化について言及がございましたが、使い道をそういうふうに広げるということを前提であれば、おっしゃっている意味も私も理解できます。道路に使う暫定税率ですと、確かにガソリンの使用は抑制されるかもしれませんが、その結果道路がどんどんできるということだと、恐らく国際的に見ても、環境に大変な懸念を持っておる方々からすると、びっくりするような使い方になるのではないかなというふうに思います。

 なお、土居先生ともゆっくり議論する時間がなくなってしまいましたが、私どもは、道路の予算、これまでの使い方そのものに問題があったのではないかなと思っておりますので、前から少し減ったからそれなりに精査をされているという評価は、今回の委員会でもしていないということを一つ申し上げておきたい。

 それから、あとは、これはまた機会をいただいて議論させていただきます。年金の問題についてお話もありましたが、私どもは、実は基礎年金ではなくて最低保障年金という考え方をとっていますので、先生の最後の表の中で、そこへ収れんされませんので、民主党の意見は中へ入らなかったなと思いながら拝見をさせていただきましたが、そこの御理解をいただけたらと思います。

 島田先生に、では最後に一点。

 私どもも、地方、先ほど食料と人材というお話がございました、まさにそこは大きな課題だろうというふうに思っています。

 実は、民主党のマニフェストでも、今回、農政というのを一つ大きなテーマにさせていただいたんです。私自身は、作成するに当たって、何とか食、農政という、つくる側と受けとめる側の両側の議論からきちっと進めていきたいなと思ったんですが、印刷物にしていく過程にあって、やはり短くないといけないとかそういうことで、食の部分が落ちてしまったんですが、やはり食、農政というのは大変重要、裏表だと思います。重要だと思います。

 それから、人材であれば教育ということになると思うんですが、まさにこれからの地方支援、そういう意味ではそれを、先生も先ほど触れられました。今回も、実は道路に特定した地方の支援というのがあるんですが、むしろ、もっと食、教育など、地方が自由に使えるお金として渡すべきではないか。一般財源化、地方の自由に使えるお金というのが大変大事ではないかという私どもの視点に対する御見解を伺えたらと思います。

島田公述人 時間もありませんから一言にさせていただきたいのですけれども、私は、まさに地方というのは、食、健康、人材形成というものの最も重要な基盤だと思うんですね。ですから、総合的にもう一度本当に見直して、そこを心新たにして資源配分を考えていただきたいと思います。

 それから、先ほどおっしゃった点、ぜひ一言だけ。大変ありがたい御指摘で、消費者行政の一元化ですが、あれこそはまさに事業仕分けの最適なテーマですね。やはり、一つの具体的なテーマを定めて、これは私は民主党も自民党も公明党も一緒に取り組める国益じゃないかと思うので、ぜひ先生方にお願いしたいのですが、構想日本をお願いしたいと思いますから、ぜひ、ここだけはねじれも何もなく、国民、消費者のために事業仕分けをやりたい。よろしくお願いいたします。

松本(剛)委員 時間が参りました。中山先生も大変大事なテーマをお取り上げいただいたと思うんですが、質問する時間がなくなりまして申しわけありませんでした。

 島田先生がおっしゃったとおりでございます。私どもは対立をしているつもりはございませんが、ただ、市場と同じで、やはり政策の競争をしないといけないというふうには思っておりますので、よろしくお願いをしたいと思います。

 ありがとうございます。

逢沢委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 きょうは、お忙しい中、土居公述人、加藤公述人、島田公述人、中山公述人、本当に貴重な御意見をありがとうございました。日本共産党の笠井亮でございます。非常に限られた時間ですので、幾つか端的に伺いたいと思っております。

 まず、中山公述人に伺いたいのですが、公述の中で社会保障関係で働く職員のリアルな状況を伺って、まさに、御指摘がありましたが、社会保障の拡充を通じた少子化対策、地域再生が大きな政治の課題であるということを改めて痛感いたしました。

 私は、大もとには、政府が進めてきた社会保障予算抑制の構造改革の路線、規制緩和、市場原理優先ということで、福祉の分野も営利化を進めてきたことが今日の事態を招いているというふうに感じております。

 中山公述人は、きょう主に保育の例を挙げてリアルにお話をされましたが、社会保障関係のほかの分野で職員の方々の状況、例えば高齢化社会のまちづくりも研究テーマにされておられますが、例えばで結構ですが、介護でも何でも、保育以外ででも働く職員の状況が深刻になっている、あるいは、それをもたらしている要因が何か、そして政策的な課題が何かということについて御意見をいただければというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

中山公述人 社会保障分野のそれ以外のところということですが、端的にわかりやすいのは高齢者分野だと思います。

 高齢者分野では、例えばヘルパーさんというのは高齢者を実際に在宅で考えていく場合に非常に重要ですけれども、介護保険法が導入されて以降、正規の職員の形でヘルパーさんに携わっている方というのはもうほぼ皆無になっているのではないかなと思います。

 在宅介護というのは非常に重要だと思いますし、諸外国で見ますと北欧なんかでは在宅介護にかなり力を入れていますけれども、例えばスウェーデンに行きますと、ヘルパーさんはほぼすべて公務員の形態で雇用されていまして、公務として在宅介護に携わっておられます。

 ですから、今後、高齢者の介護なんかをやっていく場合、何か家事を部分的に手伝うというような形でなくて、高齢者をトータルに在宅で介護していくという場合は、そこに携わる方々の雇用形態、これをどう安定させていくのか、またその状況をどう引き上げていくのか、そういったところが高齢者分野なんかでは非常に重要になるのではないかなと思っています。

    〔委員長退席、遠藤(利)委員長代理着席〕

笠井委員 中山公述人、もう一点なんですが、先ほど来あります、また今国会でも大きな論点になっている道路特定財源に関連して、政府が進めてきた道路建設あるいは公共事業のあり方をめぐってのことなんですが、加藤公述人からもこの問題をテーマにして非常に興味深いお話を伺っております。

 かつて、私は参議院の予算委員会で中山公述人に質問させていただく機会があって、改めてそのときのことを思い起こして、二〇〇〇年の三月だったんですが、当時、空港建設ということで大きなテーマがありまして、国際化で空港ということで、中山公述人がその問題を取り上げられて、おおむね首都圏から九州博多まで十八の空港をこれからつくっていく可能性があると。それを例えれば、新幹線のぞみに乗っていくととまる駅が八つしかないのに、その間に十八も空港が要るのかというお話が非常に印象深く感じられて、それぞれ必要性ということで個々に言えばあるんだろうけれども、しかし、そういう面でも精査が必要だというお話がありました。そして、社会保障の持っている経済的な面での雇用効果、きょうもお話がありましたけれども、そういう点でいいますと、公共事業と比べてもどうなのかということでも大いに考えていく必要があるというお話がありました。

 そこで、今の道路の問題なんですが、それから八年たっているわけですけれども、今日も、ひたすら十年間に五十九兆円ということが議論になって、それをつぎ込んで高速道路だあるいは六大架橋というような、あるいはそういう問題なども進める仕組みを維持しようということが議論になっているわけですけれども、中山公述人は、こうした現在の政府の道路建設のあり方についてどう見ておられるか。それから、地域の再生とのかかわりで、これからの公共事業はどうあるべきか、社会保障の問題も含めてですが、お考えかということについて伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。

中山公述人 先ほどから議論になっています道路特定財源の件ですけれども、例えば道路でいいますと、大半の道路は市町村がつくっていますし、また都道府県がつくっています。もちろん国道もありますけれども、量的には圧倒的に市町村や都道府県の道路が多いわけですね。

 実際、都道府県や市町村が道路をつくるわけですけれども、財源という点でいいますと、国がかなりの財布を握っています。そうなりますと、財布のかなりの部分を国が握っていて、実際に市町村や都道府県がつくろうと思った場合、自分の財布ではありませんから、できるだけたくさんとってこないと、どこかが、別のところが使ってしまうというような発想になってしまうかと思うんです。

 本来であれば、財源も含めて自分できっちり持っておれば、本当に必要なものにきっちり使っていくということができると思うんですけれども、本当に必要かどうかよりも、自分のところがとってこなければよそにとられてしまう、そういう発想が残念ながら出てきてしまって、本当に必要なものなのか、後々使い続けるのかというよりも、ともかくどれだけのお金をとってくるかというところに重点が残念ながら移ってしまっているんじゃないかなと思います。

 そういう意味では、特に公共事業なんかというのは地元密着で、非常に地域独自に考えていくものですから、財源も含めて、できるだけ地方が自分の財源できっちりできていけるような、特定のものにせずに、できれば、道路がいいのか教育がいいのか民生費がいいのか、そういうものもトータルに判断できるような形で一般財源化を図っていくということが恐らく今一番重要ではないかな、そんなふうに考えております。

笠井委員 島田公述人に一問伺いたいのですが、構造改革の課題ということでお話がありました。島田公述人は内閣府の雇用対策特命顧問もされてきたということでありますので、雇用の問題で一言伺いたいのです。

 特に、雇用の分野でいいますと、この間、派遣労働者の問題それから日雇い派遣という問題も問題になってきまして、当委員会でも、そういった実態が出されながら議論がありました。直接雇用と正社員化を求めるという声も強いですし、それから、労働者派遣法について、これは改正をしながら、むしろ派遣労働者保護法こそ必要だということも議論がありました。

 そこで、今の雇用、とりわけ非正規とのかかわりで、日雇い派遣というような実態が広がって非常に深刻だということについて、島田公述人、どういうふうに見られていて、この問題をどうしていったらいいかという問題、政策的にも、政府がどういう取り組みをすべきかということで御意見をいただければと思います。

島田公述人 今先生のおっしゃられた問題、少し大局的な観点で位置づけてお話し申し上げたいと思うんです。

 日本は、バブル崩壊、デフレから脱却するために、企業がいろいろ低為替レートとか低金利とか使いながら、応援を受けながらみずからも構造改革をしてきて、ようやくデフレを脱却するところへ立ったわけですけれども、その過程で、労働あるいは家計というものを見たときにどういうことになっているかというと、まず、家計の方は金利収入が入らない、それからグローバルな競争の中で賃金が上がらないということで、相当なしわ寄せを家計部門全体が受けている。ですから、日本の消費も元気にならないというのは、それは大きな一つの大局があると思うんですね。

 その中でもっとひどいことが行われているんですけれども、就職氷河期に就職できなくて、こぼれた人がフリーターをしている、三百万とか四百万とかいろいろな数字がございますけれども。それから、ニートという方々がいる。それから、就職氷河期に運よく就職できた人は、ゴムが伸び切っちゃって、サービス残業して、ひどい目に遭っている。中高年の方は、年金がおぼつかないから非常に不安だ。これから人口が減っていくんですね、日本は。非常に労働力というのは貴重なのに、そんな使い方されていていいのかというような、そんな社会になっていますね。そういう全体像。

 したがって、労働者はもっと生産性を上げなきゃいけないから労働者をどうこうしなきゃいけないという議論がありますけれども、日本の労働者は割合ちゃんとしているんですね。問題は、雇用の仕方が悪い。つまり、雇い主が労働者の能力をちゃんと開発して使えるようにしていないことが余りに多過ぎるんですね。ということで、私は、雇用改革、雇用の質を向上する時代だということも申し上げているんです。

 そこで、先生の今のお話なんですけれども、これは二つあると思うんですね。

 実は、労働市場は事実上非常に流動化していて、青年、壮年男子というのは相対的に少なくなっている、主婦とか外国人とか老人とかいうものの比重がだんだん高まっています。それは当然のことです。この方々は、例えばフルタイムの仕事になじまない人もいるんですね。自分の能力を使いたい。これはいい意味での、まあ日雇い労働という言葉はちょっと私は余り好きじゃないんですけれども、実際そうなんでしょうが、いい意味でのテンポラリーな仕事なんですね。これは十分に本人も企業も活用せざるを得ない。

 ただ、それとは違った意味の、今問題になっているような、本来はフルタイムの仕事をしたいのにつけないということで非常に不利な立場に置かれている人たちもいるので、これは峻別した方がいいと思うんですね。

 能力を、自分の好きな時間だけ売りたい、そういう方は、例えば経験豊かな主婦なんかにたくさんいらっしゃるんですよ。かつて丸の内に勤めていたけれども、今外国語の仕事をしたいというような人を、企業はきょう一日、きょう半日使いたいというのがたくさんあって、両方これは組み合わせた方が効率化するんですね。しかし、そうでない人もいます。

 ぜひ、先生方におかれましては、十把一からげではなくて、本当に勤労者のニーズを踏まえた、勤労者の能力が最大限活用されるような観点というのを貫いて、その中で制度論をやっていただきたいと思います。実は、これはもっと時間があれば五時間でも六時間でもやりたいんですけれども、とにかく、十把一からげではなくて、本当に勤労者のニーズに合った、精査して、適切な制度をつくる御努力をお願いしたいということでございます。

笠井委員 大事な問題なので、また引き続き議論をさせていただきます。

 時間が来ましたので、土居公述人、加藤公述人、また別の機会にというふうに思いますので、よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

遠藤(利)委員長代理 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 私にいただきました時間が十分で、そして、少し欲張りなので、せっかくいいお話を伺いましたので四方におのおの一問ずつ伺いたいと思いますので、なるべく端的な御答弁というか御意見を賜れれば幸いです。

 まず、土居公述人にお伺いいたします。消費税問題であります。

 今いろいろな財政的な厳しさの中で、消費税は打ち出の小づちみたいに、年金にも医療にも介護にも、とにかく何でもかんでもというふうに使いたいという意見もあちこちで聞かれます。きょう、私は公述人のお話を聞きながら、例えば社会保障財源のうち、これは私の受け取り方かもしれませんが、年金等々への補てんということをお考えのようにも受けとめます。

 私は、逆に、消費税と申しますのは地域差も少ないですし、地域に不可欠な医療とか介護ということの財源として、今既にある消費税でももっと地方配分を高めていくべき税目ではないかと思うわけです。このあたりはどのようにお考えでしょうかというのをお願いします。

土居公述人 私は、消費税の社会保障財源化というアイデアは支持をしているわけでありまして、年金に限らず、医療、介護、当然そういう社会保障に必要な財源を工面するための財源として消費税を活用するということは重要だろうというふうに思っています。

 当然ながら、地域格差の問題はある程度、消費税で賄うことによって、かつまたその財源を確保したことによって地域の医療や介護もきちんとその給付が手当てできるという面から見ても、格差是正ということには貢献できるものだというふうに考えております。

阿部(知)委員 私どもの党では、むしろ年金等々は、きちんとした、所得の累進度を戻す形で、一九八九年段階でもいいと思うんですが、そういう所得再分配効果ということをきちんと年金にはもたらし、逆に消費税は、これは村山政権下でもやりましたけれども、五%のうち一%を地方にといたしましたけれども、もっとも、地方六団体の要求のとおりに、そもそもの配分のところで地方に手厚くしていくという考えですので、また先生にも随所で御支援をいただきたいと思います。

 二番目の加藤公述人に伺います。

 実は、私は二月の九日、十日と京都に参りましたとき、新幹線の駅の中でウェッジを読みまして、ああそうか、道路公団民営化というのはそういうことだったのかと、改めて、先生の御指摘、非常に鮮明に私にはすとんときました。

 結局、今道路をつくり続けることの必要性は、いろいろな地域差があり、必要なものは必要なんだろうけれども、それを決めていく仕組みが国民からは見えない。事業仕分けということを御指摘で、そこにキーワードはあるんだと思いますが、一方で、道路などというのはナショナルミニマムという観点もございますし、必ずしも地方だけで決められるものでもない、ここに一番難しさがあるんだと思います。

 今後道路を、私どもの党では総合交通会計といって、港湾も空港も新幹線も、あれもこれもそれもどれも全部やったら破産しちゃう、だけれども、おのおのが、地方の必要性と、それから国の、先ほど申しましたナショナルミニマムという観点から、どこでドッキングさせるか、その場の設定の問題かなと思うのですが、そのあたりで少し教えていただければと思います。

加藤公述人 今のナショナルミニマムという、これは大変重要な言葉であると同時に、とても怪しい言葉にもなるわけですね。

 ミニマムとは何なのか。人間というのはとても欲張りな存在ですから、例えば、本当に戦後間もないころであれば、ちょっと古い言い方をすれば、新しく世帯を構える、なべかま布団みたいな話だったのが、今や冷蔵庫も洗濯機も一家に一台、テレビ、携帯、全員が持つ、こういう時代です。これと同じことが、私は、国にも地方にも、行政サービスすべてについてあると思っております。

 したがって、私は、そういう観点から見れば、国が今決めてやるべき道路について言えば、高速であろうが地方の道路であろうが、もうないんではないか、ないと言っていいレベルに達していると思います。だからこそそれを、地方分権して、地方で判断するように財源と権限をそこに渡せば、それは道路を含めて、道路に行くか医療に行くか教育に行くか、それを地元の人が判断して網の目のようにやっていく、そういう時代に来ていると考えております。

阿部(知)委員 そのあたりは、これから我が国も、いわゆる低炭素社会として環境負荷が少ない国土設計や地域設計をしていくというあたりで、私どもの党も、即、今の段というのではないですが、先生がおっしゃったように、もうかなりの部分分権化できる、ただし、時代の要請に合うような低炭素社会のグランドデザインは必要だろうということで、ワンクッションちょっと置きたいという考えであります。

 続いて、島田先生には、私は、先生が昔から、人口の都市集中という問題が今の最大の問題なんだという御指摘をされていることは強く共感いたします。

 アメリカでも、いわゆるベビーブーマーをどうやって地方に帰すかというためのさまざまな税制優遇等々ありました。恐らく、私の見聞する限り、アメリカが、地方に人を帰そう、都市はスラムだしということを考えたときに、医療の問題が非常に大きくなった。特に、無保険者が大変に多うございます、農村は無保険者が多く、これが一たび病気になると、いわゆる破産宣告しなきゃいけないというような状況の中で、地域で暮らす、地方で暮らすとは、同時にそこの場で医療がやはり完結していないと、私は、このごろの論議で、患者さんを運ぶための救急車が通る道路が必要なんだというのは、どうしてもいただけない。だって、三分、五分の勝負の医療の中で、わざわざ高速道路を使って患者さんを一時間以内の搬送などというのは、本末転倒のような気がします。地域で生きる地域の医療、これは同時に社会資本ですから、そこで人材の雇用も生まれます。

 先生は今、本当に地方に帰ってもう一度つくり直す国ということを考えて、医療の問題はどのようにお考えであるか、お願いします。

島田公述人 阿部先生は医療の専門家でいらっしゃいますから釈迦に説法ですけれども、まさに今の医療制度全体は大混乱じゃないかと思うんですね。マクロ的に言えば、高齢化が進んでいますからもっともっと医療費がかかってしまう、しかし、国民の担税力から見たらだんだん小さくなってまいりますので、そのギャップをどうするか。恐らくこれまでの医療の考え方ではなくて、きめが細かくてフレキシブルで、よく調べた、みんなの納得のいくような医療というのを考えなきゃいけないわけですが、これは大問題ですね。

 しかし、きょうは時間がないのでぜひ一言にしたいと思いますが、おっしゃるように、地域で、例えば子供を産む問題、育てる問題、老人の問題、さまざまな問題が別の種類の問題としてあるわけですね。そこに必ずしも医療体制がマッチしていない。それをただふやせばというのは、これは国民としてはもう許容量がないわけですね、財力がありませんから。ですから、今持っているものをどういうふうにうまく使って、制度の無駄を排除して、きめの細かい医療が実現できるか、これは最大の政策の課題だと私は思いますので、また新しく予算委員会に呼んでいただきましたら大いにひとつやりたい。よろしくお願いします。

阿部(知)委員 本当にそうでございまして、ぜひ島田先生を呼んで、委員長にもお願いいたします、濃厚な集中審議をお願いしたいと思います。

 最後に、中山公述人、私は、きょう、保育の現場を取り上げていただいて本当にうれしく思いました。私は実は小児科医で、一体この国は何なんだと。一番大事な子供を育てる保育あるいは学童の分野にこれだけ予算をけちって、人が人を育てるといったって、本当にこれでは我が社会は真っ暗だと思うくらいのことを思っておりましたので、保育現場で働く人たちの低賃金そして非正規雇用の現実ということをこの予算委員会で御披瀝いただきまして、本当にありがとうございます。

 私は、ではどうすればいいかというときに、いわゆる産業別の最低賃金の考え方、ここにも官民格差がございまして、私は決して官がたくさんもらっているとは思っておりませんが、民間の保育所の人件費の方が圧倒的に低うございます。この間、国は最賃の見直しの中で地域別の話は少し出てまいりますが、私は、こういう分野こそ産業別に、そして本当に人が人を育てる分野の最低賃金ですから、産業別できちんと補てんしていくという制度が必要と思われますが、先生はいかにお考えでしょうか。

中山公述人 非常に心強い御発言をいただきまして感銘していますけれども、確かにおっしゃっておられるように、今そういった社会保障関係、きょうは、保育、学童保育を取り上げましたけれども、そこでは働き続けることが非常に困難になっていると思います。そういう意味では、個々の法人の努力ではもう難しいですし、今の自治体の現状を見ますと、各自治体の努力だけでもそれは難しいと思います。

 そういう意味では、今先生の御指摘にあったように、国の方が最低限のそういう賃金を職種別に定めてそれをきちっと保障していくように、そういう体制をつくっていくことが、どこの地方に生まれても子供を安心して育てられる、そういうしっかりとした基盤になると思いますので、ぜひそういう方向で御検討いただければ非常に助かるなと思っております。

阿部(知)委員 いずれも貴重な御意見をありがとうございました。またぜひ来ていただきたいと思います。

 ありがとうございます。

遠藤(利)委員長代理 次に、糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 各公述人の皆様方におかれましては、大変貴重な御意見をいただきましたこと、まずは御礼申し上げます。私は午前中の最後の質疑者でございますので、どうかまた忌憚のない御意見をいただければというふうに思います。

 きょう、いろいろと質疑を聞いておりまして、やはりいろいろなところに格差が生じているのかなということを各公述人の皆様方の御意見から感じました。今、当然、国会の中で議論をしておるところでありますが、医療の問題、教育の問題、農業の問題、こういう問題を議論しておりますけれども、どこにも生じているのがやはり格差かなというふうに感じているわけです。

 そこで、まず、地方と都市部というんでしょうか、ここで生じている格差、当然皆様方はあるというふうに思われていらっしゃると思いますけれども、あるとするならばそれはどこにあらわれていて、例えば今回の平成二十年度の予算案に関しまして、皆様方が思っていらっしゃる格差、これを解消するに足るような予算措置がしっかりととられているのかどうか、ここについてお答えを各公述人皆様方からお聞きしたいと思います。

土居公述人 御質問いただきました件に関しまして私が思いますのは、例えば税収格差という観点を取り上げますと、特に地方法人二税の税収格差というのは顕著にあるということであります。今回の平成二十年度予算案では、これを地方法人特別税という形で一部是正するということになりましたし、あと地方交付税の特別枠を設けるというような形で、私としては、その格差是正の一歩を踏み出したというふうに評価をしております。

加藤公述人 きょうは言葉の話ばかりいたしますが、私は、この格差という言葉も、非常に大事であると同時にとても怪しいものをいっぱい含んでいるなと考えております。

 私は、基本的には、きょうは経済学者の先生がお二人いらっしゃいますけれども、多くの経済学者が一般的に言うように、機会の均等があれば結果平等は必ずしも要らないということではないと思います。結果の平等というのが極度になくなっていくと、あらゆる革命、一揆というのはそういうときに起こっておりますから、それは大事な問題だと私は思います。

 ただ、そういう前提の上で、今行われている格差議論というのは、結局、お金の差のことしか議論していないのではないか。行政について言うと、先ほどの、最初のときの資料でもお示ししましたとおり、教育であれ道路であれ医療であれ福祉であれ、日本じゅうでやるべきことを、これは北と南、海と山、いろいろな場所があります、その違いをほとんど認めずに、同じことを霞が関で決めて全国にやらせる、その仕組みがあって、しかも、その仕組みが温存されたまま、お金の方は補助金と交付税がどんどん減っていくという状況のもとで格差が出てきているんだと思います。

 したがって、ややはしょりますけれども、これを直していくには、コントロールの部分を切って、したがって、いわゆる地方分権というものを進めて、現場の判断でもっと工夫ができるようにして、お金の方を埋めるのではなくて、お金が少なくてもやれるやり方、その余地をもっとふやしていく。先ほどの栄村とか下條村とか、これは、お金が減ってやむを得ずやると同時に、お金がないから結果的にすごくいいことができる。先ほどの資料にも書きました、コミュニティーの結束力が強まるとか、そういう金でははかれないプラスの面が必ずある。私は、そこを評価して、そういうふうに分権を進めていくしかないと考えております。

    〔遠藤(利)委員長代理退席、委員長着席〕

島田公述人 格差という言葉は、今、加藤さんがおっしゃったように確かに怪しい言葉なんですが、経済的に見ると、所得格差、資産格差というようなことが基本だと思うんですね。

 それで、改革をし過ぎて格差が出てきたという議論がありますが、あれは経済的に見たら全く根拠がないおかしな議論なんですね。というのは、改革によって成長を進めるということが格差を縮める。これは、失業も減ってまいりましたし、所得分布も均等化するんですね。これは歴史的に見ても景気循環から見ても全部明らかなことなんですが。

 今先生のおっしゃられた都市、地方格差というのはまた別問題で、これは資源が集中する、特に、情報が集中しますと経済活動が盛んになりますから、そこが所得も資産も多くなるわけですね。そういう意味でいくと、地方というのは常に不利です。同じだけの努力をしても、そういう外部効果がないので常に不利になりますね。

 ですから、先ほど申し上げたように、これまで日本の政府もそれは重視しておって、四つの救済策、補助金、交付金、税制優遇あるいは工場誘致、これは民間の話ですが、やってきた。ところが、それが機能しなくなったということを申し上げましたけれども、考え方を変えますと、大変重要なチャンスに今あるんですね。

 それは、高齢化をしていますから、皆さん健康志向だ。というと、改めて地方の持っているよさというのが見直される可能性があるわけですが、今回の予算がそれを的確にとらえて構成されているかというと、私はちょっと評価できませんね、今回の予算は。お金をつけようという努力は一生懸命されていますけれども、一番重要なのは、お金ではなくて、地方の方が自分の持っている、自分の地域の魅力に気がついて、もっと魅力を高めようとして生活インフラを整えて、人口集中区で希望を失っている人たちに気がつかせて、お招きをするということなんですね。

 これは、ちょうど戦後六十年の歴史を逆転するような話です。終戦直後、みんな貧乏で、東京に行けば仕事があるというので、みんな東京へ行っちっちといって集まった。これは、実は仕事があるよという情報があり、民間企業が金のわらじを履いて探して、みんな大都市へ連れてきたんですね。今度は、その逆が今行われるべきなんですね。

 つまり、地方へ行けば健康になれるよ、そしてもうちょっと安い値段で楽しい生活ができるよ、それの成功例が友達、親戚その他でたくさん出てくれば、そうしようかということが起きてくる。そうすると、自然に人口の分布が健全になる。そのことが地域の生活水準を少し高めるということですね。経済競争で、地域というのはやはり東京にはかないませんから。

 しかし、質的にやや豊かな国をつくれる可能性は十分あるわけで、そういう意味で、私がさっき申し上げた、移住・交流推進機構のような運動を国の機関とも協力しながら今強力に進めておりますけれども、ぜひ、そういうことが実は国家百年の大戦略なんだと。目立ちません、予算はほとんど使いません。予算を使うことがいいことじゃないんですね。私は、予算というのは、つくったらもう終わったと思っているお役人さんが多いので、予算はむしろ麻薬じゃないかとすら思う、補助金は、もっと言うと毒薬ではないかとすら思いますので。

 やはり、状況を、政治の先生方は、この方向が望ましいんだという旗を振っていただく、元気をつけていただく、そこへ民間が糾合して、民間のもうかるかもしれないから頑張ろうというのは予算の何十倍の規模になりますので、そういう流れをつくっていただくというのが政治の仕事ではないか、そんなふうに思います。よろしくお願いいたします。

中山公述人 地域間格差の問題ですけれども、都市と農村の格差の問題というのは従来からもうずっとあったかと思います。従来であれば、交付税とか公共事業によって、そういった問題が非常に鮮明になるのをある程度抑えてきていたかと思うんですけれども、この間、交付税と公共事業というのはかなり減ってきた中で、いわゆる都市と農村の問題が非常に鮮明化してきたのではないかなと思います。

 では、かつてと同じように公共事業をもう一回ふやせるかというと、それは現実的に難しいので、かつての都市と農村の問題が非常に厳しくなるのを抑えていたそのやり方とは違う形で、都市と農村の問題を考えていく必要があると思うんです。

 その方向としては、きょう述べました、一つはやはり社会保障という問題、もう一つは第一次産業の問題、それから、それを可能とする分権だと思うんですが、そういったことが今回の予算で十分実施の方向に向かっているかというと、まだまだ頑張っていただきたい面が残っているのではないかな、そんなふうに考えています。

糸川委員 まだまだきょうはたくさんの質問を用意してきたんですけれども、また次回以降しっかりと議論させていただきたいと思います。

 本日はこれで終わります。ありがとうございました。

逢沢委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。

 公述人の先生方各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 午後一時から公聴会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

逢沢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 平成二十年度総予算についての公聴会を続行いたします。

 この際、公述人として御出席をいただきました先生方に一言ごあいさつを申し上げます。

 公述人の先生方におかれましては、公私とも大変御多用中にもかかわりませず当予算委員会に公述人として御出席をいただき、本当にありがとうございました。平成二十年度総予算に対します御意見を拝聴させていただきまして、予算審議に生かしてまいりたいと存じますので、どうぞ忌憚のない御意見をお述べいただきますようにお願いを申し上げます。

 御意見を賜る順序といたしましては、まず立谷公述人、次に片山公述人、次に水谷公述人、次に菊池公述人の順序で、お一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 それでは、立谷公述人にお願いいたします。

立谷公述人 御紹介いただきました、福島県相馬市の市長でございます立谷と申します。

 きょうは、このような席で意見を開陳する場をいただきまして、まことにありがとうございます。

 私は、市町村長という立場で、現在の道路特定財源の問題に対して、我々市町村長が置かれているところの懸念あるいは今後の希望等々について意見を開陳させていただきたいと思っております。

 開陳に当たりまして、私は相馬市の事例をもってお話をさせていただきたいと思うんですけれども、私ども自治体を預かる者として、自治体経営がしっかりしていること、それから、我々は持続可能な地域社会をつくっていきたいということで頑張っているわけでありますけれども、持続可能な地域社会であるためには、まず子供たちが地域に残らなくてはならないんですね。そうすると、雇用ですとか地域振興ですとか、そのようなことが大切になってまいります。また、安全、安心な地域づくりということも大切な要素になってまいります。そのような観点から、相馬市の事例をもとにお話をさせていただきたいと思うんです。

 実は、私は六年前まで医者をやっておりまして、今でも医師であることには間違いないんですけれども、六年前までは、救急医療ですとかあるいは介護保険等々の仕事に従事しておりました。例えば、介護保険の医師の意見書というのも随分書いたわけでございます。その際、やはり地域に若者がいないような社会だと介護もままならないということを強く実感してまいりました。そのようなことから、地域がどうあるべきかということと道路のかかわりというのは非常に大きいものと思っております。

 まず、我々の地域がこれからも健全に存続していくために、自治体経営をしっかりとやっていかなくてはならないという課題がございます。そのために、今地方財政は非常に厳しい時代になってきておりますけれども、私は、就任して六年間、行財政改革に精を尽くしてまいりました。

 自治体経営という言葉がこの時代は最も適切なのではないかと思っておりますけれども、相馬市の話ですけれども、就任当初に大型公共事業をすべて凍結いたしました。これは、公共事業に頼らない地域づくりに邁進しなくてはならないと思ったからでございます。

 さらに、この自治体経営の観点から、職員の給与をカットいたしました。財政難に対して、みずから身を削ってこれを何とかしなきゃいけないということだったんですけれども、ラスパイレス指数が最初九八・九だったんですが、七ポイントほど下げまして九二前後まで下げてございます。それで浮いたお金をもって、財源をもって、企業誘致等々いろいろやったわけであります。現在でも、財政状況はよくなりましたけれども、ラスパイレス指数が九五の状況で、職員ともども頑張っているということでございます。

 公共事業に頼らなくても行政の質を向上させる、あるいは市民サービスの向上を図るということができるわけでございますけれども、しかしながら、必要な公共事業はやらなくてはならない。道路について言っても、必要のない道路をつくる必要はそれこそないと思いますけれども、やはり必要な道路はしっかりとつくっていかなくてはならないわけであります。

 そんなことを考えながら、いろいろと行財政改革をやってまいりました。例えば、五年間で職員の数を九・八%削減してございます。それなりの給与削減の効果を出してございます。また、行政の質の向上のために、ISOの14001を取得いたしました。その後、9001に挑戦いたしまして、つい先日、認証に合格したわけでございます。

 そのようなことをやりながら、また、いろいろ話題になるようなこともやったんです。昨年は選挙の開票時間の全国的なコンテストがありましたけれども、相馬市は昨年の統一地方選挙で二十二分十三秒という日本記録を打ち立てたわけであります。職員が、行革のために頑張ろうということで、みんなでしっかり取りかかった結果なんですけれども。そうやって行革をやりながら、自治体経営の体質を強化していくということをやってきたわけでございます。

 また、反面、自治体経営の体質を強化するとか行革だけでは、持続可能な地域社会をつくっていくことはなかなかできないんですね。当然、地域振興を図って雇用を確保していかないと、なかなかできないということになるわけです。

 暇があると企業誘致のための営業活動ばかりやってきたんですけれども、交渉ベースに乗った中で大体六勝九敗ぐらいで、負けたケースの方が多いんですね。もっとも、その六勝の中には非常に大きな工場も含まれておりまして、今、日本一のジェットエンジンの工場と、これも日本一になると思いますが、太陽光発電の工場ができてございます。それでも我々の地域の子供たちを全部就職させることはできないんですね。さらに頑張らなきゃいけないんです。

 ただ、負けたケースを一つ一つ検証しますと、やはり我々相馬市の場合は、道路整備がおくれている、交通が不便だ、そういう理由で悔し涙を流したということがたくさんございました。九つの敗戦のうち、ほとんどがそういう理由だったわけでございます。

 ですから、子供たちが適切な職を得て相馬で将来とも暮らしていくために、私はしっかりと企業誘致をしていきたい。その企業誘致のためには、道路の整備というのは極めて大きな問題であります。後で詳しく述べさせていただきますけれども、少なくても現段階では極めて大きな問題であるということでございます。

 それともう一つ、医師だということを申し上げましたけれども、やはり今、医療体制がなかなか整備できない。これは、医師不足もありますが、医療の財源もございます。そのような中で安全、安心を担保するために、やはり患者の搬送という意味での工夫が必要になってまいります。

 皆さんにお配りした資料の裏をごらんになっていただきたいと思います。これは、私どもの相馬市と福島県の県庁所在地でございます福島との間の道路の状況を図示したものでございますし、相馬市内の企業、あるいは、これは立派な社会資本なんですけれども、相馬港の状況を図示したものでございます。

 それで、相馬市には現在、高速道路もなければ高規格道路もない、おまけに新幹線もないということなんですけれども、そういう条件の中で頑張ってきたとは思っております。しかしながら、今後さらに頑張るために、いろいろ必要になってくるわけであります。

 緑でカーブのくねくねした道路が図示してございますけれども、これが今、相馬と福島を結ぶ国道百十五号線という道路でございます。この間に阿武隈山脈という非常に高い山がございまして、我々はその山を越えて福島医大病院に患者を運ばなくてはならないんですね。

 救急医療の状況を見ますと、いわゆる一次救急というのは、一般の開業医の先生でもできますし、小さな病院でもできるということになりますけれども、二次救急は相馬市内の救急指定病院に頼っております。担当しております。

 しかしながら、さらなる高度医療、例えば心臓に、心筋梗塞で心臓が詰まった、それを再開するためにカテーテルというものを使うんですけれども、そのカテーテルの先に風船をつけてそれで広げるというようなことをやるんですが、これはいわゆる高度医療というものに属しまして、相当な大きな病院のレベルでないとなかなかできないということになるわけです。

 その医療を、第三次救急を私どもは福島医大病院に頼っているわけでありますけれども、この図を見ていただくとわかりますが、山の上りと下りが相当な急カーブなんですね。例えば心筋梗塞の患者さんを運ぶ際には、このカーブを通っていくということが安静の保持ができないということになります。

 したがいまして、ここを何とかして高規格道路で、具体的に言うとトンネルなんですけれども、真っすぐ走れるような道路にしてくれないか、市民の安全、安心のためにそういう整備をしてくれないかということをずっとお願いをしてまいりました。計画にのりまして、これが実現する方向ということになってございます。昨年、我々は随分要望したんですけれども、中期計画の策定、そういう事業がございまして、その際、強く要望いたしました。

 またさらに、相馬港という港、これは何のために開発されたのかといいますと、福島を中心とする経済圏の輸入のための玄関、いわゆる物流港湾として開設されたわけであります。したがいまして、福島で必要な物資を相馬港から運ばなきゃいけないんですが、このくねくね道路がコンテナトラックの走行を許さないんですね。すれ違うことができないそうです。

 したがいまして、福島市という経済圏にとっても相馬にとってもこの道路がネックになっている、そういう状況でございまして、この中期計画の中で、ぜひ、相馬と福島を結ぶ高規格道路、これを実現してほしいということを申し上げたんです。

 この図の真ん中を見ていただきたいと思うんですが、平たんな部分がございます、直線の部分がございます。これは、山のてっぺんのところが比較的直線道路でできておりますから、ここまで新しい道路をつくる必要はないと。我々は、機能が欲しいということで要望してきたわけであります。別に立派な道路が欲しいということではなくて、患者さんを搬送する、あるいは物流にたえる道路を建設してほしいということでお願いをしてきたので、これは私の判断で、ここは抜いてくださいということを申し上げました。無駄な道路はつくる必要がないということだろうと思っております。

 そういう中で、今問題になっております道路特定財源の問題について一言言わせていただきたいと思いますが、この道路特定財源云々の前に、日本の中で、あるいは地方の中でも、比較的道路整備が進んでいる地域と、それからまだまだおくれている地域と、この温度差は相当なものがあるということをひとつ御理解いただきたいと思うんですね。

 私の相馬市には、何回も申しますけれども、高規格道路もないし高速道路もないんです。新幹線もない。しかし、子供たちのために、企業誘致をやって地域振興を図りながら、雇用の場を確保していかなくてはならないという課題を持ってございます。そのような観点からいって、私は、この道路特定財源の問題については、道路が全部つくり終わったんであればそういう税金は要らないと思っておりますけれども、現段階で我々の地方にとってはまだまだ必要な状況であるということを御理解いただきたいと思います。

 そしてまた、これは地方でないとわからないことなんですが、よく巷間、これは応能税ではないかという議論がございます。確かに、私、こうやって東京に来まして、東京では車を持つのに非常にコストがかかりますから、そしてまた、車がなくても移動手段はしっかりいたしておりますから、車なしでも暮らせるわけですね。

 しかしながら、地方の実情はどうかといいますと、大概の相馬市の家庭に行きますと、お父さんが通勤のための普通自動車を一台持って、お母さんが軽自動車に乗っているんですね。この軽自動車でおばあちゃんを病院に連れていったり、あるいはそのお母さんが、奥さんがパートの仕事に行ったり、そういう状況なんですね。また、もう一台、車が大概ありまして、軽トラックなんですね、農作業用の軽トラック。その辺で畑作業をするような軽トラックなんですね。

 こうやって地方の御家族が車を保有する、あるいはその方々が払うガソリン代を、私は応能税と考えていいのかということを訴えたいと思うんです。ですから、応能税だからそれを水平分配してもいいんじゃないかという話がありますけれども、地方におりますと、とてもそういう感覚は持てないんですね。生活必需品として車があるわけでございます。

 もっと言わせていただければ、財源不足のために道路特定財源を一般的な、例えば福祉であるとか環境であるとか、そういう用途に使うということであれば、私は、堂々と消費税を上げてその分の財源を確保するのが筋ではないか、そのように思っているところでございます。

 それと、地方からせっかく出てきましたので、もう一つ訴えておきたいことがあるんですけれども、今、我々の地方議会は、三月の予算の審議に入ろうとしております。平成二十年度の予算審議でございます。全国一千八百弱の自治体が今その仕事につこうとしているんですけれども、非常に悩ましいのは、租税特別措置法案の行方でございます。これが継続されるのか、あるいは消えてしまうのか、そのことによって我々はどうしていいかわからない、非常に困惑しているというのが現在の状況でございます。

 どのようになっても対応しなくてはならないのかもしれませんけれども、私が聞くところによりますと、大概の自治体は、これがなくなるとやってはいけないから、やっていくことができなくなるから、このことを織り込み済みにして予算編成をしているというのが実情でございます。

 例えば、私は福島県でありますけれども、福島県は、この暫定税率がなくなると百五十八億円の減収になる、税収の減になるということでありますが、その百五十八億円の手当てはつかない、その分の代替財源はないということだそうでございます。それで、そういうこともあって、結局、織り込み済みということで予算編成をいたしております。

 相馬市の例でいきますと、相馬市の道路建設予算が、人件費を抜いて六・三億円。その中で、道路特定財源から回ってくる、諸税がありますけれども、これが約半分の三・四億円でございます。これがなくなったときどうなるか。道路をつくらなきゃいいだろうという話があるんですが、ところが、今までの道路整備を起債でやってきたんですね。そうしますと、起債の償還がございますから、これが相馬市全体で二十九億円ございまして、その起債の償還に平成二十年度回る分が同じく三・四億円ございます。したがいまして、道路特定財源から入ってきた分は全部起債の償還に回るんだ。

 しかしながら、安全、安心のために道路の補修をする、あるいは子供たちの通学のために歩道をつくる、あるいはバリアフリーの整備をする、そのようなことはとめるわけにいきませんので、そうすると、一般財源の方から持ってこなくてはならないんですね。それでなくても、道路特定財源から入ってくる税収というのは約半分ですから。そうしますと、どうしても一般財源から持ってきて、生活のために必要な道路整備はしなくちゃいけない。

 あるいは、さっき企業誘致の話をしましたけれども、企業誘致がうまくいった分、地域は変わっていくんですね。例えば、渋滞が起こって子供たちが通学できないとか、そういう事態が起こってまいります。そのための道路建設はどうしても必要だということになるわけでございまして、ここでこの道路特定財源が入ってこないということになりますと、非常に厳しい状況に立たされるということでございます。

 今、地方自治体がみんなこういう状況の中で四苦八苦しているということもひとつ御認識をいただきたいと思います。

 それから、せっかくこうやって呼んでいただいたので、私から先生方にお願いしたいことがあるんですが、国の道路財源が余っているという議論があるんですね。せっかく集めても、余っているから一般財源化しようか、そういう議論があろうかと思います。しかしながら、今申し上げましたように、私どもの地方は、道路特定財源からの税収だけでは道路をつくれないんですね。借金も返せないんです。ということであれば、余っているんだったら地方に下さい。道路特定財源を一般財源化するような余裕があるのであれば、我々地方の道路整備のために下さい。それが、これは受益者負担による税でありますから、ガソリン代あるいは自動車取得税、いろいろありますけれども、そういうところで税金を払ってくれた、これは有権者の皆さんといいますか、国民の皆さんに対する非常にわかりやすい答えではないかと私は思っているんですね。ぜひ御検討いただきたいと思います。

 私からは以上です。ありがとうございました。(拍手)

逢沢委員長 ありがとうございました。

 次に、片山公述人にお願いいたします。

片山公述人 御紹介いただきました片山です。

 お手元に、私の方で用意させていただきました、一枚紙でありますけれども、「道路特定財源問題から日本の課題を考える」という紙があると思いますので、それを見ていただきながらお話を申し上げたいと思います。

 予算についての意見でありますし、予算というのは、予算編成過程において、それぞれの個別の事業についての是非を査定して予算案ができ上がるわけであります。ですから、個別の作業の集合体ということであると思いますけれども、やはり予算編成を貫く一つの理念といいますか、考え方があるべきだろうと思います。

 それは、すなわち、我が国がこれからどういう国を目指すのか、将来の我が国の国家像というのは何だろうかということを常に念頭に置きながら一つ一つの予算を編成していく、そういう編成姿勢が大事だろうと思います。すなわち、人に人柄があるように、国にも国柄があって、どういう国柄にすべきかということを念頭に置いた予算編成ないし予算の審議、さらには予算の決定ということが求められるんだろうと思います。

 そこで、私は、日ごろ考えていることを申し上げてみたいと思うんですけれども、これからの日本はどうあるべきだろうか、やはりこの議論が欠かせないと思います。

 今、我が国の現状を見てみますと、いろいろな分野で国力の低下というのは否めないと思います。それは、国際社会の中における日本の政治的プレゼンス、もうこれは大変失礼でありますけれども、そういうこともやはり痛感せざるを得ないこともあります。世界の中のGDPに占める日本のウエートというのは確実に落ちております。

 その他、もう挙げれば切りがないのでありますけれども、特に私なんかが気になっておりますのは、昨年の暮れに発表になりました、OECDの十五歳の子供の学力調査、これはPISAの調査でありますけれども、確実に三年ごとに我が国の子供たちの学力は低下を来しております。あと三年たちますと、また下がるんだろうと思います。よく言われますけれども、資源のない国で、日本は人材だけだというのは、私も本当だろうと思います。その人材が劣化をしているということは、我が国の将来にとっては大変ゆゆしい問題であります。本当にこのままでいいんだろうかと懸念をしているところであります。

 そこで、私は、日本のこれからの国柄というのは何だろうかということを考えてみるのでありますけれども、そこに書いてありますように、これからは知的立国を目指すべきだと思っております。知に基づいた国づくりであります。国家レベルでは知的立国、自治体レベル、地域レベルでは知の地域づくりと私などは申し上げているんですけれども、地域でも知というものを大切にしながら地域づくりをやっていくということであります。

 具体的にそれは何かといいますと、幾つかあると思いますけれども、私は、重要なのは科学技術の力だと思います。やはり日本は、例えば資源エネルギー問題にしましても、地球環境問題にしましても、それから医療面での技術にしてもそうですけれども、世界の中で大きく貢献する科学技術の力を伸ばすべきだと思います。そのことによって、国民を富まし、そして世界に貢献をする、こういう国柄でありたいと思います。

 もう一つは、文化芸術大国であります。我々は何のために働いているかといいますと、やはり心豊かに、物心両面に豊かに暮らすためだと思います。経済成長は果たしましたけれども、では、そのもう一つの反面である文化芸術について、日常、我々国民はそれを十分に満喫し、楽しんで、豊かな生活を送っているかどうかというと、なかなかそうではない現実があります。

 なおかつ、この文化芸術といいますのは、単に心の問題だけではなくて、経済面でも大変大きな力を発揮します。例えばハリウッドの映画などを日本人は相当消費しておりますけれども、あれはアメリカの経済に大きく裨益をしております。最近では日本でも、Jポップでありますとかアニメとか漫画という文化芸術の一部について世界で好まれておりますけれども、これがもっと広範に、音楽であるとか絵画であるとか、そういう方面でも日本人の創造力というものが遺憾なく発揮されるようにしなければいけない。これが、文化芸術大国であります。

 間違っても、軍事大国でありますとか金満国家でありますとか、場合によっては土建国家とか言われることのないように、そういう国柄にしなければいけないと私などはつくづく思うところであります。

 それだけではなくて、知的立国の要件としてはまだあると思います。それは、一つは、そこにありますように、清潔で透明性の高い政府。これは実は北欧などがそうでありまして、いろいろな比較がありますけれども、清潔で透明度の高い政府というのは北欧の一つの特色であります。そういうところから高いレベルの科学技術が生まれたり、それから、国際的な比較の中で子供たちの学力が世界で一番だというフィンランドなどが生まれてきているわけであります。これは、政府レベルでは今申し上げたとおりでありますけれども、自治体レベルでも、やはり透明度の高い、そして自立度の高い自治体の形成が求められるということだろうと思います。

 以上のようなことを実現しようと思いますと、行政や政治が何に基軸を置くかといいますと、私はやはり、教育、人材の育成が最も基礎にあるべきだろうと思います。それがあって初めて、科学技術でありますとか文化芸術でありますとか、それから透明度の高い政府、それを担う政治というものが実現されるんだろうと思います。

 話が、今回焦眉の急になっております道路特定財源の問題になるのであります。

 確かに、私も、自治体の首長をやっておりまして、道路は非常に重要だという認識は持っておりますけれども、今日の我が国において、道路だけを特別扱いにして、それを特定財源にして、この先十年間、もう優先的に道路整備の財源を確保しようということが、これからの我が国の国柄を考えた場合に本当に妥当かどうかというのは、これは真剣に考えざるを得ないのであります。

 この道路財源を、五十九兆円でも幾らでもいいんですけれども、それだけを本当に別枠で最優先で確保するということが、今私が申し上げております将来の国柄としての知の地域づくり、それから知的立国というものを推進することになるのかどうか、知的財産権を生むとか、そういう知的な人材を輩出することになるのかどうかというのは、よくよく考えてみなければいけない問題だと思います。

 さらには、最近、週刊誌その他で報道されておりますけれども、この資金の使い道について、必ずしも透明でない部分、コンプライアンスに欠ける部分、不公正な部分というのがあります。こういうことは決してあってはならないことであります。これは道路特定財源だけではありません。財政一般に通ずる原則であります。

 私は、かつて若いころ、もう今から三十年近く前ですけれども、税務署長というのを東北でやっておりましたけれども、税を納税者の皆さんからいただくというのは本当に大変なことであります。好きこのんで払っている人ばかりではありません。中には、払えなくて、それで無理やり滞納処分というプロセスを通じて取り立てられるわけであります。取られる方も泣きますけれども、取る方だって、やはり心の中では泣いているわけです。

 そういうものが一たん国や自治体の財政に乗っかってくると、例えば年度末の使い切りだとか、とんでもないことでありますけれども、それから役人の天下り先に供給されるとか、それからコンプライアンスに欠けたところに行くなんというのは、私は、元税務署長の経験者として、本当にあってはならないことだと憤りさえ感じるものであります。

 特定財源制度でありますけれども、私は、特定財源を今、道路について維持する理由はもうなくなったと思っております。これは異論、反論がおありの方が多いと思いますけれども、私はそう思っております。

 なぜかといいますと、一つは、財政の原則からいいますと、できるだけ特定財源とか特定目的の資金というものは排除するというのが一般原則であります。予算とか財政運営というのは、一つの土俵の上で、その中でいろいろな項目を見て、その中で優先順位をつけていく、優先劣後をつけていく、これが財政運営の原則であります。その中で別枠にする、優先枠を設けるというのは、極力避けなければいけない。もちろん、これは例外的に、ある種の事情があればそういう特定財源化というのはないわけではありませんけれども、それはあくまでも例外ということであります。

 そこで、道路特定財源の問題でありますけれども、では、果たして特定財源として維持存続する理由が見当たるかということであります。

 一つ歳入面から見てみますと、例えば、歳入面から見て特定財源を維持するというのは、理由がある場合もあります。ごく少数の特定の納税者から税を取るという場合は、それは不公正ではないかとか、何で私たちだけが負担するのか、そういう反論が出てまいりますので、それは、あなた方のために特に使うんですよということで、実は歳入と歳出の間にバランスがとれ、そして税制としては成り立ちやすい、納税者から受け入れられやすいということがあります。

 現在の道路特定財源、すなわち、例えば典型的なガソリン税、揮発油税と地方道路税を見てみますと、もう納税者は広範多岐で、国民一般であります。ドライバーはもとよりでありますけれども、私のようにまだ運転免許証を持っていない人間でも、例えば、日々タクシーに乗ったり、バスに乗ったりします。それは、毎日、ガソリン税でありますとか軽油引取税の負担を実質的に負担していることになります。それから、物流で使う、これは軽油が多いわけでありますけれども、これらも、物流の面での消費者でありますから、それは最終的には末端の消費者として負担をしていることになるわけです。

 ということになると、もう国民みんなが道路特定財源というものは負担しているわけで、そういう国民みんなが負担するものを一定の特定の財源にするということは、財政の原理原則からいうと、通常はあり得ないことなのであります。この面での特定財源制というのはもうなくなっていると私は断言していいと思います。

 歳出面でありますけれども、歳出面は、特定財源というのは、結局歳出を縛るわけでありますから、それは、ではだれを縛るのか、そしてそれはだれのために、何の目的で縛るのかということ、ここがちゃんと説明できなければいけないわけであります。

 だれを縛るのかというのは、これは簡単であります。この法律が通れば、これは国を縛り、そして自治体を縛ることになるわけです。

 では、それを何のために、何の目的で縛るのかということでありますけれども、今、民主党などの皆さんは別ですけれども、政府・与党の皆さんは道路が大切だということで一致されているわけでありますから、そういう中で政府を縛るというのは、ほとんど意味がないわけであります。多数党をとったところが予算を組むわけでありますから、その政府を縛るというのは意味がないわけです。

 では、自治体を縛る、これは意味がないわけではありません。自治体は嫌がるんだけれども、これに使わなきゃいけないといって縛る、これは特定財源制の意味があります。しかし、今日、今自治体は、四十七の都道府県知事もそうでありますし、六人を除く全国の自治体の市町村長さんがこぞって、道路が重要で、道路が最重要だと言われているわけでありまして、そういう人たちを縛って道路に使えというのは、全く意味がないわけであります。

 ですから、歳出面から見ても、道路特定財源として特定財源制を維持するというのは、私はもう意味がないと思っております。

 自治体には、実はさまざまな課題があります。先ほど相馬の市長さんもおっしゃられましたけれども、それは道路も重要でありますけれども、決して道路だけではない、重要なものはほかにもたくさんあります。

 私は、八年間、鳥取県で知事をやりましたけれども、そのときに痛感しましたのは、自治体にはさまざまな課題があるけれども、わけても何が一番重要かと言われれば、迷わず、それは教育だと言ってまいりました。今でもそう思っております。本当に教育は、都道府県にとってもそうですし、それから市町村にとっても、現下最重要の課題だと私は思います。

 その教育現場には、実は今、問題が山積をしております。いろいろな問題があります。もっと本当はちゃんと手厚く対応してその問題を解決しなきゃいけないのに、なかなかいろいろな事情があって、それは例えば、言いにくいですけれども、教育委員会の力量が必ずしもないとか、そういうことも含めて、それからあとはお金が潤沢でないということも含めて、いろいろな理由によってその課題の解決が妨げられております。

 一例を申し上げますと、例えば、そこにありますように、今、教師の多忙化ということが全国的に叫ばれております。最近の、例えばいろいろな報告物がふえるとか、それから、教師も評価をされますので、評価をされるためにいろいろな自分の自己データを申告しなきゃいけない。そういう、本務でないといいますか、本来子供たちに向き合うべき教師が、本務でないところの雑務でもっていろいろな時間をとられているわけです。多くの教師が、雑務にとらわれて、自分たちが本務としている子供たちに向き合う時間が足らないといって嘆いているのであります。それならば、それを解決してあげなきゃいけない。それは教育委員会の仕事であります。

 では、具体的にどうするかというと、雑務を取り払ってあげるか、雑務をどうしても処理しなければいけないのならば、その雑務を処理する係の人、例えば事務の職員をもっと充実してあげるとか、そういうことをしなきゃいけないんですけれども、お金がないからできませんということが専らであります。

 学力の低下ということは、先ほど申しましたけれども、本当に私は懸念をしております。特に、一番気になりますのは、読解力リテラシー、読解力が日本は下がっているのであります。韓国が世界で一番であります。北欧は非常に高い水準にあります。

 読解力というのは、単に本を読む能力だけではありません。いろいろなものを総合化して、その中から創造していく、クリエートしていく、そういう能力も含めて読解力リテラシーであります。これが低下するということは、単に国語の試験の点数が落ちるだけではないんです。科学技術を生み出す力、数学も含めてですけれども、あらゆるものの基礎となるものが低下をしているということでありまして、大変ゆゆしい問題であります。

 韓国などはこの問題に以前から着目をして、図書館政策というものを充実してきております。その結果が、十年近くたって今日になっているんだろうと思います。この間、我が国は、図書館はどちらかというと冷遇されておりました。

 現在、学校図書館というのは、私は非常に重要だと思うんです。学校で子供たちが小さいときに、図書館を通じて読解力をつけていく、読書の楽しみを覚える、読書を通じて人生を豊かにする、読書を通じて自分が統合する力とか創造していく力を身につける、非常に重要な拠点なんですけれども、何とも冷遇されております。

 私は、鳥取県という非常に貧乏な県で、図書館が重要だということで、本当に歯を食いしばって図書館の充実に努めてまいりました。県立高校にすべて、司書資格を持った正規の職員を配属する、かなりお金がかかります。小中学校は市町村立でありますから市町村の仕事ですけれども、市町村長を励まし、そして若干の支援もしながら、できるだけ学校に図書館司書を置いてくださいということをお願いして、鳥取県では九十数%、図書館の司書が何らかの形で配属をされております。

 びっくりしましたのは、東京都にはほとんどいない、東京都の公立小中学校には。神奈川県には全然いない。埼玉県にもいない。まだ調査が進んでおりませんけれども、少なくとも私が調査したその三都県ではこんなありさまであります。市町村長さんなどに、どうしてこういうことをしないんですか、大切なのにと言いますと、一つは文科省の基準がないということを言われるんですけれども、もう一つはお金がないということであります。お金があったらできるのにということです。

 だったら、例えばこれだけ道路特定財源があって、道路に使う財源とそれから学校図書館に使う財源はけたが全然違います。道路の端数で学校図書館は実は司書を置けるんです。そういう問題なんです。だったら、市町村長さんは、本当に教育が重要だと思えば、道路特定財源を、今は全部道路にしか使えないということですけれども、これを多少自由を持たせて、そして学校図書館なんかにも使えるようにするというのは、これは市町村長さんにとっても非常に合理的な選択だと思うんです。

 にもかかわらず、私は、現在非常に奇異に思っておりますのは、六人を除くすべての市町村長さんが署名をされて、その署名の中には暫定税率の維持というのもありますけれども、もう一つは、特定財源を外さないでくれ、一般財源にしないでくれ、ほかのものに使えないようにしてくれ、自分で自分を縛ってくれ、そういう要望をされているというのは、私は、元首長OBとしては非常に奇異に感じるわけであります。

 六人の中のお一人を御紹介申し上げておきますと、兵庫県の尼崎の市長さんにこの間お会いしましたら、女性の市長さんでありますけれども、署名はしなかったということであります。なぜ署名しなかったのですかと伺ったら、尼崎は、道路も重要だけれども、でも小中学校の校舎の耐震化がもっと重要なんです、ですからそっちの方にお金を使いたい、そういう事情にありながら、他に、一切道路以外には回せないようにしてくださいなんてとても署名できませんでしたということを私に述懐されておりましたけれども、私は、それは実に素直だと思うんです。偉いと思いました、国土交通大臣の地元でありますし。

 そういう市町村長さんもおられますけれども、多くの皆さんはそうではないということであります。

 最後に一つ。私は、議会制民主主義ということを考えざるを得ないと思います。

 先ほど、相馬の市長さんもおっしゃっておられましたが、今、国会ではこの問題を議論されているんです。全国の千八百の自治体の予算は、これから議会で審議されるんです、地方議会で、議会制民主主義の中で。これが全部宙ぶらりんになるんです、道路に関する部分は。口では地方分権だとか自治だとか言いながら、実は、自分たちで考えられないように、議会で審議もできないような状態に、今、国会ではされているわけであります。

 どうしてもう一年早くされなかったのか。去年はまだ民主党が参議院で多数をとっていなかったからと言われるかもしれませんけれども、少なくとも去年の七月二十九日以降はこういう状態はわかっているわけでありますから、なぜ去年の秋口からこの議論をされていないのか。私は、これも自治体の元首長のOBとして、これについては失礼ながら本当に憤りを感じます。それが一つ。

 もう一つあります。それは、自治体もやはりうかつであります。なぜならば、我が国は法治国家でありますから、法律は切れるとなっているんです、ことしの三月三十一日で切れる、延長されない限りは切れるんです。それを、あたかも延長されることが当然のごとくにすべての自治体が予算を組むというのは、これはもってのほかなのであります。それで穴があくというのは、実は、非常に冷たいようですけれども、自業自得の面があるんです。法律がどうなっているのか、ことし三月三十一日で切れる、それならば本当に延長されるだろうか、でも参議院の状況はこうだということを冷静に考えれば、もうちょっと自治体の予算の編成も違ったやり方があったのではないかと思います。

 それに対して、例えば、これはわかりませんけれども、総務省や国交省が、いやいや、延長を前提に組んでおけ、もしそう言ったとしたら、それは政府が国会を軽視しているということであります。

 いずれにしても、私は、議会制民主主義がかなり空洞化している、この問題から浮き彫りになってくる、これは我が国の民主主義の将来にとって非常に重大な問題でありますので、一言つけ加えさせていただきました。

 ありがとうございます。(拍手)

逢沢委員長 ありがとうございました。

 次に、水谷公述人にお願いをいたします。

水谷公述人 中京大学の水谷でございます。

 二〇〇八年度予算に対しましては、結論として賛成したいというぐあいに考えております。

 問題がないわけではございません。膨大な予算書であります。細かく言えばいろいろございますでしょう。大きなところで申しましても、収支相償わない予算というのは本当に予算と言えるのかという原則論からいきましても、大変な問題だと思っておるのであります。

 赤字の累積として、借金が出てまいります。借金がある以上、これはどうやって返済するのかという計画がない予算というのは、普通はないのであります。その計画の指針が十分であるかどうかといいますと、これはいささか、そうは言えないのじゃなかろうかということがございます。

 ただ、努力が相当なされているというのも事実でありまして、支出の面から申しますならば、本来なら、国民の立場からいたしますと、あれも欲しいこれも欲しいというところでありますけれども、例えば公共投資、これは相当削減しております。最大の費目でありますところの社会保障費、これは高齢化に伴ってふえていくのが当たり前でありますけれども、それをここまでよく抑えているなという感じであります。これは、不満の点もございましょうけれども、全体としてはやむを得ざるところかなというぐあいに思っております。

 財源不足の中で、重点施策が全くないわけではございません。例えば、レアメタルに対する開発。これは、我が国の将来を考えた場合、やはり相当重要な問題でありまして、こういったところに張りつけてあるというところも評価すべきであろうかと思っております。

 もちろん、収入がどうなるかということは大きいのであります。その点では、税制の問題についてはさらに検討する必要があると思うのでありますが、収入は見通しであります。見通しは経済情勢次第だということもあるのであります。その見通しにつきましては、とやかく言うことはなかなかできないのでありますからこれでやむを得ないだろうと思うのでありますが、将来を考えましても、自然増収で賄えるというような状態ではないと私は考えておりまして、このあたり、大きな問題になってくるだろうと思うのであります。

 しかし、赤字でだめかといいますと、現実の経済社会におきましては、この膨大な赤字というのを前提にして運営されているのでありまして、大きな借金がある、大変遺憾ではありますけれども、これもまた前提となって社会が運営されているのであります。これを一挙に覆してということは極めて非現実的なのでありまして、これぐらいの努力をなされたのでありますから、その意味では、今回の予算はやむを得ないだろう、こういうぐあいに考えております。

 しかし、だからといって、将来にわたってこのような予算で続けていいのだろうかという点については疑問がございます。その疑問の立場というのは、将来の国民の立場であります。このままいくとどうなるかということなのでありますが、赤字の分だけ資金が足りませんから、借金がふえます。今でも膨大な借金です。借金の金利の支払い、これは永遠に必要であります。

 借金して使うとき、これはいろいろな使い方がありますからいいのでありますけれども、しかし、借金がふえていきますと、金利の支払い、返済に大変なことになります。そういう意味では、おのずから限界があるのであります。

 借金の限界はどの程度かと申しますと、年間の支払いは、年間の収入の半分程度であろうと私は考えております。会社で申しますならば、年間売り上げの半分であります。どれほど多目に見ましても、年間売り上げまでが限界だろうというぐあいに考えます。もしそれを超えてまいりますと、金利の支払いに大変な苦労があるのであります。もし、まともに払わないということなら別です、あるいは、返さないというのなら話は別であります。

 国に置きかえますと、国の収入は年間どれだけあるかということなのであります。税収が五十四兆円。税外収入をまぜて結構でございます、五十八兆円。それを全部国が使うことはできません。地方交付税として地方に分けなければならない、これが十六兆円ございます。使えないのであります。国が使える資金、新年度予算でも四十二兆円であります。どれほど多目に見ましても、国の借金は四十二兆円が限界だと思っております。現実は五百五十三兆円になろうかというのでありますから、論外であります。このままいっていいものかといいますと、これは大変なことになります。

 金利の支払い、これはどうなるかということから考えますと、何とかしなければならない。もちろん、収入がふえればいいわけであります。収入はといいますと、これは経済成長次第でございまして、かつて我が国では高度成長を続けました。どの程度であったかと振り返ってみますと、十年たてば倍になる。ですから、税収におきましても、十年たったら倍になるという経験しかなかったのであります。時がたてば税収はふえるであろうと考えておりました。

 現実は全く違います。現在の経済水準というのは、ちょうど十年前と同じです。十年たって同じ水準。最近のところ、ずっと経済は拡大してまいりました。景気は上昇してまいりました。では、どれぐらいか。年率一%です、わずか。そして、それを五年以上続けた結果として十年前の水準になっただけなのであります。

 ということは、将来を考えてどうなるかということをお考えいただきたいのであります。我々は考えなきゃいけません。将来もこのまま横ばいになるだろうというのは大きな、皆さん方のお考えかもしれませんが、私は違うと思います。今の水準というのは異常に低いとお考えになる方が多いのでありますけれども、逆ではないかと思っております。もし今が異常に低いなら、異常がなくなれば上がります。経済は拡大します。大丈夫です、心配要りません。しかし、現実には、我々は大きな要因で景気を押し上げているのであります。

 一つは、アメリカの要因であります。アメリカに随分たくさん輸入していただけるおかげ、これをこうむっております。続くでしょうか。もはや続かない状況になってきていると私は思います。それだけでも大きなマイナス要因であります。

 我々国民の立場から申しますと、政治が一生懸命景気をよくしてくれております。感謝すべきです。しかし、その中身はといいますと、先ほどから申し上げております、赤字であります。これがこのままでいけるのでしょうか。圧縮せざるを得ません。となりますと、それは景気に対してマイナス要因となってまいります。避けられないでしょう。ということは、経済水準は下がっていくだろうと私は思っております。当然、それに伴って税収は減ります。純減であります。

 財政再建が必要なのであります。借金を返さなければなりません。借金をして、使うときは結構です。しかし、返すというのは大変なのであります。収入以上に使っているのが現状です。これを逆転させなきゃいけない。逆転して、黒字になった分しか借金は返せないのであります。借金して返さないつもりなら、借金して豊かな暮らしを続けようと思います。赤字は減りません。これが原則です。

 もし借金を返そうと思えば、相当な支出の削減が必要であります。これは何かといいますと、大きな費目でありますところの社会保障費を含めまして、純減させていかなければいけません。公共投資、もちろん相当な削減が要りましょう。これは大変なことなのであります。国民にとりましての負担は大変です。しかし、もはやそこまで来ているということなのであります。

 もちろん、収入がふえればいい。それが減るということになりますれば、増税は避けられないと思います。支出の削減につきましても増税につきましても、景気を悪くします。相当な景気の悪化が避けられないと思います。だから、やってこなかったということであります。

 しかし、そのままでいいのでしょうか。今、赤字がありましても、借金がどれだけありましても、国全体として何ら不都合はございません。普通は不都合が出てきます。インフレになるのであります。国が収入よりうんとたくさん使いますと、物がなくなってインフレになるのがどこの国でも起こることであります。

 では、我が国はどうか。デフレです。相変わらず物余りです。しかも、極端な物余り。それだけ多くの供給力の予備というのがあるからこそ、赤字でも何ともないのであります。

 これは将来続くのでしょうか。私は、普通の国になっていくと考えております。物余りで困った、どうにもならない、永遠に物が余るだろうと思っていたのがアメリカであります。その物余りのアメリカは、五十年あるいは六十年ぐらいしか続いておりません。そして、今やインフレ体質です。

 我が国は、今、大デフレです。企業は、やっていけません。したがって、企業はこれからも衰退すると思います。やっていくためには海外へ出なきゃいけないという国際化、すなわち空洞化というのは今後とも進むでありましょう。空洞化の結果、物がつくれなくなる。そのために、つくる技術がなくなっていく。いいものを本当につくれなくなった国、物不足からやがてはインフレになっていく。これがアメリカのたどった道であります。さらに、イギリスのたどった道であり、先進諸国のたどった道であります。我が国も同じような過程をたどるでありましょう。

 したがって、物余りで物すごいデフレというのは当分続くと私は思いますけれども、やがては普通の国になっていく、インフレになっていく。そのとき何が起こるかということなのであります。金利が上がります。途端に金利が払えなくなります。金利が払える状態じゃございません。それだけの大きな借金なのであります。

 ということは、それまでの間に借金を返しておかなければならないのであります。どんなことがあっても返す必要があると私は考えております。それは、我々がつくった借金だからです。我々が借金をつくったまま、子供や孫に残したままあの世へ行けるか、こういうことなのであります。どんなに犠牲を払っても、我々が返していかなければならない、適正な水準まで戻しておかなければならない。

 そのために何が必要かといいますと、まず、支出の削減。物すごいことです。しかし、それをやらざるを得ない。そして、大きな増税。必要です、必要ならやるということです。その結果どれぐらい大変になるかということは、皆さん御承知のとおりであります。

 では、そんなに大変だからやらないのか、それでもやるのか。やる必要があると思います。それは、将来の国民のことを考えますと、いろいろな資産もつくりました、いい経済状態にしました、しかし借金を残しましたでは済まないと思います。その借金の金利を支払いましても何にもならないからです。それでいて、将来の国民が何か手が打てるかといいますと、どうしようもないのであります。借金をつくった人の責任、我々の責任なのであります。

 しかし、もしそんなことをやったら大変なことになる、経済は破滅的だとおっしゃるでしょう。いや、私もそう思います。相当な経済水準の低下であります。今の水準が少し落ちる程度じゃありません。しかし、落ちてもしようがございません。当たり前のことなんです。それを嫌がるからこそ、赤字財政を続けなければならないという現実があります。

 もしそうならば、低下したら破滅なのかといいますと、私は、実はそうは思っておりません。我々の生活水準は相当下がるでしょう。しかし、どんなに下がっても、かつて我々が体験したようなことにはなりません。

 六十三年前を思い起こしてください。我々は、ほとんど物をつくることができませんでした。何もなかった日本経済、国内総生産はほとんどゼロに近かったのであります。その中にありまして、我々は、一つ一つ物をつくりました。すぐにいいものはできません。粗悪品ですよ、日本製は。そこから少しずつよくしていったんです。よくしていって、いつの間にか、いつの間にかじゃありません、徐々にレベルを上げてまいりました。一人当たりの国内総生産、ヨーロッパに追いつきました。ヨーロッパを追い抜きました。アメリカに追いすがりました。アメリカを追い越しました。北欧の諸国も追い越して、世界一になったことは御承知のとおりであります。ゼロから出発して世界一になれる国民、日本の国民が本気になってやったら相当なことができると私は考えております。

 しかし、今、本気になっているのでしょうか。本当に死に物狂いでやっているのでしょうか。

 我々国民としては、何かあるとすぐお国に頼む、お国に頼みたい、こういう気持ちが表面に出ます。しかし、もはや、お国に対して要求しても、お国はやれるだけの財力がございません。あらゆるサービスがもうできないんだ、国として必要な最低限、外交と防衛でありましょう、治安、その程度ぐらいしかもう受け答えはできないんだということを国民が認識する必要があると思います。

 財政が大変だということになりますと、今一番有名なのは夕張市であります。夕張市の財政は大変であります。夕張市は、年間の収入の八倍近い借金があります。これでやっていけるはずがないのであります。しかし、夕張市の、八倍の借金に比べますと、我が日本はどうか、国はどうかと申しますと、十三倍の借金です。夕張市どころじゃないのであります。

 夕張市は懸命にやっています。しかし、まだ我々は、やっていません。夕張市が本気になったのは去年、おととしです。おととしまでは何となく過ぎていたはずであります。そして、おととしから急に問題が表面化した。

 では、我が国は、この問題は表面化しているのでしょうか。まだ表面化していないと私は思います。表面化させなきゃいけない。そして、国民に協力を求めなきゃいけない。そして、国民に協力を求めたら、本気になったらやれる。

 したがって、そういう大改革、財政の大改革をやるべきである、こういうぐあいに考えておるのであります。

 ありがとうございました。(拍手)

逢沢委員長 ありがとうございました。

 次に、菊池公述人にお願いいたします。

菊池公述人 皆さん、こんにちは。ただいま御紹介いただきました菊池でございます。

 本日、公聴会の方にお招きをいただきまして、私の所見を聞いていただく機会を与えていただくことを大変うれしく思います。大変光栄に思います。

 今、水谷先生からは超緊縮のお話がございましたけれども、私は全く逆のお話を申し上げます。しかも、はっきりとここで申し上げておきたいことは、やはり現在日本は大変な危機でございますけれども、これは政策危機です。財政危機ではございません。これは細かく、データをもって、出ているデータはすべて政府、財務省、内閣府、OECDのデータを使っております。そういう客観的な視点からお話を申し上げたいと思います。

 それでは、お手元に資料を幾つかお配りいたしまして、それから、私が書きました「実感なき景気回復に潜む金融恐慌の罠」という本、ちょっと御贈呈させていただきましたので、それは後ほど見ていただくことといたしまして、お手元の資料で、一つ、一番上にA4の一枚、レジュメが書いてございます。時間もございませんので、このレジュメをもとにして、私が申し上げたいことを最初に申し上げて、それから同時に、横長のこういうA4の資料がございます、先ほど申し上げたとおり、すべて客観的データでお話しいたしますから、このデータを公述の中でごらんいただきながら申し上げたいと思います。

 それでは、縦長のメモをごらんいただけますか。

 私は、この予算案には反対でございます。その理由と、閉塞感に陥っている現状の打開策ということを申し上げたいと思います。

 私はもともと、小泉構造改革が始まりました二〇〇一年の四月、これは大失敗に終わるだろうと思っておりました。結果は、そうでございます。議論の余地は、私はないんだろうと思います。すべてのデータがすべて悪化しております。よくなったのは、大企業の収益、それから輸出の増加だけです。それ以上何かございましたら、後ほど教えていただきたいと思います。

 お手元のメモがございますね。まず、このレジュメの大きい項目を読みます。

 一番上、構造改革が日本の経済社会システムを崩壊させた。戦後、日本は経済的、同時に社会的にも最大の危機だと私は思っております。

 それから、二番目、下の方ですね、日本は緊縮財政のわなに陥り、悪魔の縮小不均衡現象を呈している。どういう現象かは数字で後ほどお話しいたします。

 裏を見てくださいませ、恐縮です。裏の一番上のところ、三番目、二〇一一年の基礎的財政収支黒字化の目標、政府が立てておられますね、これを凍結していただきたい、と同時に、積極財政への転換をしていただきたい。アメリカの実情を見ましても、一九八五年に、レーガンのときに、グラム・ラドマン・ホリングズ法という財政均衡法を立てました。これは、結果的には大失敗だったんです。

 それから、その下の方、クリントン大統領の財政改革。その大失敗の後を受けて当選したクリントンが、結果的には五年で財政を黒字にしました。それの具体的な数値、方法をここで御紹介いたします。

 一番最後、未来にすくむな日本人、財政呪縛からの解放、危機唱えるより前に行動しろ、すべきじゃないか。我々日本人のお金を日本の成長のために使おう。使い尽くすんじゃないんです。運用するんです。運用して、果実を国民に帰するように使うわけです。そうすればこの閉塞感は打破できると私は思います。これは三年、五年の計画です。政策の全面的な転換が必要だというのが私の考え方でございます。

 それでは、順を追ってお話をいたします。もとのメモの一ページに戻っていただけますでしょうか。恐縮でございます、いろいろ見ていただきますが。

 まず、構造改革が日本の経済社会システムを崩壊させた、戦後最大の政治、経済危機。政治というのは、経済はもちろん政治につながってくるわけですけれども、そういうことでございます。

 ここに書いたことをずっと読ませていただきます。

 構造改革はビジョンなき破壊活動である。これを見直さなければいけないということを、実は、二年前ちょうど公述人でここにお招きをいただいた、ここでも私、結びの言葉で申し上げました。当時、小泉内閣でございました。

 それで、これは間違った理念と手法でスタートしたんだから、結論、答えは間違ったことしか出てこないんですよ、さっき申し上げたとおり。それが日本の、経済だけではありません、社会的にも大変に、破壊活動的なことが随所にございます。

 まず、項目を整理していきますと、一番、デフレのときに緊縮財政。緊縮財政というのは、投資関連の支出とか、地方交付税交付金、国庫支出金を削減しましたね。それから、予算はゼロ成長予算。これで何をねらったかというと、赤字の縮小、債務の圧縮をねらったんですよ。しかし、結果はどうですか。全く逆の結果ですね。デフレが促進した。財政赤字が拡大した。債務は増加した。そのツケが、実は、医療の極端な圧縮。お産したくたって、たらい回しでお産もできない。小児科も消えている。医療費は、緊縮財政が非常に大きなウエートを占めています。大部分と言っても言い過ぎではありません。そういうことで医療システムが崩壊している。それから、教育費の圧縮。先ほど片山先生は大変いいことをおっしゃいました。私も本当に危機感を持っております。

 それから、二番目、不良債権を加速処理すれば銀行貸し出しが増加し、景気が回復する。こうやって竹中さんがしょっちゅうおっしゃっていました。どうですか、今は。全く銀行貸し出しは伸びていません。

 どうなったかといいますと、二〇〇〇年度の不良債権比率というのは五%だったんですよ。私は、長く東京銀行におりましたから、銀行屋でした。実態から申しますと、五%というのは、これはもう大体、不良債権、終わっているんです、回収は。ですから、二〇〇〇年度といいますと、これはとてもいい年だったんですね。九九年から二〇〇〇年度にかけては非常にいい年で、税収も上がりました。五十一兆まで上がりました。現在はそこまでいっていないんですから。

 ところが、二〇〇一年に小泉内閣ができて、不良債権がどうなったか。八・四に上がったんですよ。小泉内閣が緊縮財政をとったから不良債権がふえたんですよ。その八・四を半分にしようというのが当時の金融再生プログラムで、時価会計とか減損会計によって健全な企業と銀行をつぶし、デフレで貸し出しが低下する、ペイオフとか自己資本比率で金融機能が減殺しているということですね。例えば、UFJ銀行がつぶれましたね。あれは、私の意見では、金融庁がこういう手段で意図的につぶしたんであろうと思います。私、本に書いてあります、きちっと客観的データを。私はそう解釈しております。

 それから、三番目、金融政策への過度の偏重。ゼロ金利とか流動性供給をしましたね。それでデフレを解消しようと思った。いまだに解消していません。ですから、マネタリストといいますか、マネー、金融政策でデフレが解消するという考え方は、はっきりこの五年間で否定されたんです。

 それから、四番目、乱暴な規制緩和。一例はタクシーの台数ですね。最近、問題になっています。運転手さんの給与は、その前に比べたら四割ぐらい下がっている。台数も多い。交通事故も多いんですよ。こういうような秩序立った規制というものを、はっきりと、規制というものはどうあるべきか、いい規制があるわけです、それを、むやみにやればいいということでこういうことが起きている。

 それから五番目、一つの理念は市場原理でありまして、しかし、この市場原理による社会的な乱れというものは大変に強いものがありますね、厳しいものがあります。

 市場原理というのは、皆さんはよく御存じのとおりですが、これは経済学のもともとの原理、言葉ですけれども、経済学というものは、三つの要素がございます。金と物と人です。そのおのおののものをできるだけ安く買って、高くなって売る、これが市場原理の一から十まで、すべての根幹です。人間もそうなんですよ。安ければ雇う、要らなかったら捨ててしまえ。だから、市場原理の中には、人間性の尊厳とか魂というものは全くない。

 最近の事例をお考えになりますとよくわかりますね。この数年間、社会の乱れ、例えばホリエモンだとか、村上世彰さんなんかがありました。もうけりゃいいんでしょう、何が悪いんですかと。インサイダー的なこともやっている。裁判所に行ったら、全面的に否定する。そういうような気風が物すごく蔓延しました。

 そして、社会的な連帯感、倫理観の欠如、収益至上主義、これがあっという間に広がりましたね。日本はもともと宗教的な束縛が弱い、家庭内でも弱い国だったからでしょう。恐るべきことです。これは全面的に変えるべきではないかと思います。「国家の品格」というのを書かれたお茶の水大学の藤原正彦先生は、市場原理はけだものの原理だとおっしゃっています。私も全く同感です。

 それから、本質的な誤りは、需要を喚起する政策をとるべきところを、需要を極端に圧縮した。日本は資金余剰国でありますから、公共投資とかいろいろな形で資金を循環させなければ経済は活性化しません。それを極端に圧縮したものですから経済規模が縮小する、だから税収が不足する、さあ緊縮財政だ、さあ増税だということになっちゃって、それでこれが結局格差の拡大になっております。

 そこで、まず、お手元の資料の図表を見てくださいますか。恐縮ですが、お手元にデータをお持ちと思いますが、右上に1とございます、これをごらんいただけますか。

 まず、「いざなぎ以来の景気拡大は大ウソ」と書きました。率直に書いたんです。皆さん、景気は実感ないと言いますね。それから、イザナギ以来の景気拡大だと政府とか内閣府は言います。しかし、これはデフレの裏返しにすぎないんですよ。

 一番下のグラフをごらんください。今のデフレというのは、一九九八年から始まっています。橋本財政改革は九七年、これで極端に抑えつけた。そこから始まっているんです。これは財政デフレです。その後、金融危機等もありましたけれども、依然として続いているのは財政支出、特に公共投資をどんどん落としていきます、その波及効果。したがって、デフレでまだ新しい民間投資も余り出てこない。地方なんかほとんど皆無に近いですよ。だから、一番下、ずっと落ちていますね。これは、一九九八年から見ていますと、ちょうど二〇〇六年までの八年間で八・八%のデフレなんですよ。

 一方、上の方をごらんください。名目成長というのが真ん中に書いてありますね、五百七兆と、上の方にGDPがございます。その上に五百四十八兆、実質ですね。実質がふえた、ふえたとおっしゃるけれども、実はこれも、一番最初の方に言った、デフレの裏返しにすぎないんですよ。こういうところに、大きな一つの問題といいますか、我々の認識を誤らせている大きな根幹がございます。これは非常に気をつけなければいけません。

 それから、イザナギ景気以来だとおっしゃるのであれば、右下のところを見ますと、イザナギ景気というのは一九六五年十一月から七〇年まで五年間ありまして、この間、名目成長で一七%、実質では一一%。それで、一番のポイントは、あのイザナギ景気のころは、毎年減税しながら、ほぼ五年間で税収は倍になっているんですよ。しかし、今、日本、税収はどうですか。一番上のグラフを見ていきますと、二〇〇〇年には五十一兆あったんですよ。どんどんどんと落ちましたね。小泉内閣になってから落ちたんです、税収は。それで、二〇〇六年、小泉さんの最後の年ですら四十九兆しかいっておりません。ここに大きな問題が実質上ございますね。

 その次、めくってくださいますか。これをめくっていただきますと、格差というのがどうして起きたかということが数字の上では御了解いただけると思います。

 これは、地方交付税と補助金の推移というのを二〇〇〇年度からずっと見てみたんです。二〇〇〇年をベースにして、毎年ずっと落ちていますね。左上、地方交付税交付金と補助金、国庫支出金というのは、実は、この七年間で三十六兆落ちているんです、国から地方へ回すのは。それから、左下は公共投資。これも同じような基準にしますと、累積しますと十一兆です。合わせますと四十七兆。

 つまり、小泉構造改革になって、構造改革がスタートしてから、ことしもその延長線と考えていいですね、実に、地方へ本来ならば回っていた四十七兆円を回せなくなったんですね。それは地方も干上がっちゃいますよ。それは地方の事業を促進するという名目はあるでしょう。しかし、短期間にこれをやったら格差が拡大するのは当然じゃないでしょうか。地方財政が破綻するというのは当然です。こういうところに大きな問題点といいますか、数字上ではっきりと格差の問題がございます。

 それでは、レジュメに戻ってくださいますか。あっちへ行ったりこっちへ行ったりで恐縮でございますが、レジュメの真ん中下、二番目です。日本は緊縮財政のわなに陥り、悪魔の縮小不均衡現象を呈している。

 これはどういうことかといいますと、今までのところの五年間をよくごらんいただくと、こういうことだったと思うんです。緊縮財政、十年間で歳出増加はゼロです。そうすると、経済が不活発になる、税収が減少する。それで増税しましたね。例えば定率減税はこの二年間で三・三兆円、国民から、所得税の増加になっております。そうすると消費も減少する。民間投資とか公共投資、ともに落ちます。それから名目のGDPが停滞する。これは十年間、日本だけです、停滞しているのは。この後グラフでお示しします。それから税収が減る。さあ大変だ、今度はまた緊縮財政だ、増税だ。そうすると、経済規模が縮小する、GDPが縮小する。さあ、どうするか、また緊縮だ。こういうことになってくるんですね。

 まさにこれは悪魔の縮小不均衡ですよ。なぜ悪魔と言うかといえば、日本はお金があるんですから、お金があるのを使わないからこういうことになるということですね。

 では、本当にどうなのか。今、グラフを見ていただきましたね。恐縮ですが、グラフの右上の3というのをごらんいただけますか。

 これは、名目のGDPの国際比較をしたものです。一番下、ずっと低迷しているのは日本です。これは一九九七年を一〇〇にしたんです。というのは、一九九八年からデフレが始まっています、日本は。そうしますと、日本は九七年に比べて二〇〇六年は一〇〇にもいっていないんです、九七です。一方、上の方はどうですか。アメリカ、イギリス、九七年に比べれば大体一・五倍になっています。ユーロ地域で一・四倍、ドイツで一・二倍。ドイツは若干統一等で厳しい緊縮財政であったとはいえ、一・二倍に伸びています。これも全然伸びていないんですよ、経済成長が。

 だから、何がここにあったかということですね。これはもちろんデフレ政策をとってきたんですが、その次のページをめくってくださいますか。

 次に、これが予算です。日本は財政規模が小さ過ぎる。日本は小さい政府だとおっしゃいますが、そうではありません。もはや小さ過ぎる政府です。

 これを見ていただきますと、これもやはり一九九七年を一〇〇にいたしました。それでずっと見ていって、二〇〇六年、一番下、一〇二とありますね。つまり、この九年間、全然伸びていない。新年度予算も入れれば十年間、ほとんど伸びていないのは日本だけです。アメリカは一・六倍、イギリスも一・六倍、それからフランス、ドイツあたりで一・二倍ぐらいいっていますね。

 つまり、財政支出というのもそれぞれの経済の大きな指標なんですよ。デフレ政策を政府がとるよと言えば、もう釈迦に説法みたいなことを申し上げますけれども、企業は縮み思考になる、自分も投資しないよと。さあ、政府がこういうふうにやるんだ、積極的にいこう、減税もしようと思えば、そうか、需要が起きるね、じゃ、投資しよう、こうでしょう。この相乗効果なんですよ。

 ですから、政府がこのように緊縮財政のわなに陥って、さあ、どこも見えなくなった、緊縮だ、緊縮だと言っているとこういうことになるのですね。これが一番大きな原因です。はっきり言いまして、これは世界から見ますと、本当に、ちょっと言葉が厳しい言い方をしますと、笑い物です。

 私はよく、毎年ニューヨークとかワシントンへ行きましていろいろな方にお会いします。そういたしますと、どうして日本はこんなに財政支出を抑えたりなんかしているんだ、どうして減税しないんだとはっきり政府の要人の方がおっしゃいますよ。オウンファイナンス、自分の金でできるじゃないかと。アメリカは日本に国債を買ってもらっているために景気も拡張できると喜んでいますね。アメリカ人というのは率直ですからね。日本はどうしてやらないんだと何回も言われましたよ、私は。

 では、その次のページを見てくださいますか、五番目。

 要するに、投資不足というのはこの数表でよくわかるんです。上の方は民間の純投資。投資がどの程度かということには純投資という概念を使うといいんですね。これは、投資の増加額と、投資というのは減価償却いたしますね、毎年返ってくる、それを引いたもの、ネットの投資、これがふえていくということが経済成長に結びつくんです。投資というのは経済のエネルギー、動脈ですから。動脈というより、まさにエンジンですね。

 そうすると、上を見ますと、民間投資、小泉さんになってから中小企業が一時マイナスになりました。また少し戻ってきても細々としていますね。左の方、ぐっといったのがバブルでしたから、その後、九七、八年もよかったんですね。小泉さんが出てくる前はよかったんですよ。

 小泉構造改革というのは何かといえば、一応その前の一九九九年とか二〇〇〇年で経済が回復し始めた、これは小渕さんのころですね、小渕さんとか森さん。これは結構うまくいってきたんです。テークオフしかかった経済を墜落させちゃったのが小泉構造改革ですよ。これは歴然としています、事実で。

 下をごらんください。公的資本を同じようにネットで見ますと、実は一九九七年からマイナスです。つまり、回収の方が公共投資も多くなってきた。

 日本というのは八割ぐらいが山岳地帯ですから。今一番の大きな問題は、内閣府が二〇〇一年に公共投資のGDP比率を欧米並みにしようとしましたね、二・五か六に。その前は四%ぐらいいっていました。だけれども、体質的にも違うんですよ、経済構造からいって。さっき言ったとおり、貯蓄をうまく回さなきゃいけないという構造。これは民間だけじゃ回らないんです。民間には今百五十兆ぐらいの余資がありますから、これは民間だけじゃとても回りません。だから一生懸命外へ外へとみんな投資していますね。内需を喚起しないから、今でも税収は上がらないわ、名目GDPは上がらないわと、こういうことなんです。物すごい悪循環。これを悪魔の縮小不均衡と私は呼んでいるわけです。

 それでは、メモの二ページ目を見てくださいますか。惨たんたる日本経済。その次に書きましたけれども、これは御存じだということで省略します。

 ですから、二〇一一年の基礎的財政収支黒字化の目標、これを凍結していただきたい。そして、それによって、では、何だ、日本は財政危機じゃないのかといいますと、私は、財政危機だとは思っておりません。

 データで申しますと、あっちこっち行って恐縮でございますが、資料の七ページへ戻ってくださいますか。資料を中心にお話ししましょう。

 今、プライマリーバランスというのが問題になっていますね。しかし、プライマリーバランスをふやしたのは構造改革の結果です。よろしいですか。ここの基本認識はしっかり持たないといけないんです、我々は。構造改革、ごらんになってください、下の方に黒くなっていますね。小泉内閣になってから、どんどんこれがふえたんです。

 そして、さっき申し上げたような形で交付税交付金を削除して、地方からほぼ三十六兆円ぐらい、はっきり言えば召し上げる、出さないようにする、公共投資を十一兆も落とすというようなことをしてやってきたわけですね。

 それでも、実は二〇〇八年度、このままいきますと、プライマリーバランスは予想どおりいかないだろう、これが大体公の見方です。私も、絶対いかないと思っています。二〇〇八年度はもっと経済は厳しくなると思います。これでもう完全に行き詰まっているわけです。早くこれを凍結して、新しいビジョンに立った方がいいわけです。これを強行しますと、歳出削減だ、さあ医療費削減だ、三割削減だ、どんどんこれは社会的な基盤が広がっていきます。このことをしっかりと我々は認識すべきです。

 その次のページ、見てくださいますか、表の8。

 私が財政危機ではないと言うのは、実はこの表なんです。左側で、八百三十四兆とありますね、粗債務、借り入れ。ところが、日本は五百八十兆ぐらい金融資産を持っているんですよ。最近、埋蔵金とか何かいいまして、ようやくこの辺の特別会計のことなんかが出てきましたけれども。

 そうすると、どういうのがあるか。一番下だと外貨準備百十兆ありますね。これは、政府の短期債務に結びついています。それから、財投債というのは、こっち側の内外投融資と二重記帳です。それから、国債の中でも建設国債とか内外投融資に入っている部分は二重記帳です。あと、社会保障基金、恐らく二百六十兆今あると思います。確実な数字では二百四十兆、二年前にありましたけれども。二百六十兆あると思います。これは年金基金と健康保険の積み立てですね。そういうふうに見ていきますと、純債務というのは二百五十兆ぐらいしかない。

 だから、私はよくアメリカにも行きますし、いろいろなところに行きますが、海外の主たる日本のことを知っている人は、日本が財政危機だと思っておりません。これはもうはっきりしております。私は文芸春秋に書きましたので、お手元にもございます。

 それから、その次のページを見てください、図表ですね。ここに金融資産の内訳が出ております。社会保障基金も書いておりますし、外貨準備も書いております。

 それから、その次のページをごらんくださいますか、右上の9。ここには、加藤寛さん、前の税制調査会長を十年もやられた方が、日本は財政危機ではない、純債務は二百五十兆円程度だ、債務の半分は二重記帳だと書いているわけですね。つまり、税制調査会長を十年もおやりになった方がちゃんと産経新聞に書いていらっしゃるんですから、これは間違いはないと思います。

 時間の関係もございますから、では、どうすべきかということで、あとはお聞きください。

 何とかして、やはり財政資金を活用した景気振興策が必要です。デフレのときには財政資金を活用する、これはもう歴史的な教訓です。昭和恐慌の解決もそうです。大恐慌もそうでした。それからアメリカでもそうです。二〇〇三年から四年にかけて、デフレが出たときに思い切ってやったら、減税しましたね。これは最近でもそうです。もう金融ではだめだ、財政だということをして、思い切って十六兆、ブッシュがやりましたね。そういうようなことであります。

 では、どういうところへ出したらいいか。ここで、社会的共通資本という言葉を使いました。皆さん、今まで余りお聞きになったことがない言葉と思いますが、公共投資というと、ああ、道路かという議論になりますけれども、決してそうではなくて、もっと幅広い概念。これは、実はクリントンのときに入れたんですけれども、ソーシャル・コモン・キャピタルという概念で、環境とか自然の保護、医療、教育、下水道、公共交通それから通信、いわゆるライフライン、そういった幅広いもの。それからあとは、私は特にここには書きませんでしたけれども、入れたいことは、エネルギーですね、脱石油。これはもう本当に爛頭の急務だと思いますけれども、そういうものに対して、しっかりとした、五年計画ぐらいのもので金をつける。毎年五、六兆円出せばいいんです。

 そうすると、一時的には、債務の、国民所得の負担は高くなります。しかし、これはいずれ、二年、三年で税収も上がり、景気がよくなってきますから、必ず減ってきます。これが実は財政政策であり、大きな経済政策だ。こういう政策は、今日本には非常に乏しい、乏しいというかほとんど皆無です。そうすべきだと思います。

 ですから、定率減税も復活する、それから住宅ローンの減税も拡充する。アメリカでは、実は、円にして六兆円ぐらいの住宅ローンの減税がずっとあるんですよ。日本は今五千億円ぐらいです。それから、中小企業の投資減税。法人税を下げる必要はありません。投資減税をして、特に中小企業で投資をしたら減税する、こういうふうにすればいい。法人税を下げたって、そのお金が国内の投資に回るかわかりませんからね。財界はそういう御意見ですけれども、私はあれは反対です。経済的効果はほとんどないと思います。

 クリントン大統領の改革というのは、これは、ちょっと時間がありませんので、後ほどどなたか御質問いただけるならありがたいと思います。

 最後に、未来にすくむな日本人。だから、日本は、幸いなことに金融資産があるんです。アルゼンチンとは違います。したがって、この金融資産をしっかりと活用していけばいい。

 例えば、先ほど、社会保障基金に二百六十兆あるとしますね。一%の運用益で二・六兆円の運用益が出ます。消費税一%上げると二・五兆円ですから。だから、消費税は上げる必要はないんです。ちゃんと持っている資産を運用して、その運用益を社会保障基金に使っていけばいいんです。そういうふうにして、もっと資金を回すことを考えなきゃいけないんですね。

 最後に申し上げたいことは、我々日本人のお金を日本の成長のために使おうじゃないか。

 あと、補足として申し上げると、経済財政諮問会議、これを廃止していただけないかと私は思っています。官邸内の対日投資会議とか規制改革会議、日米投資イニシアチブとございますね。これは、官邸の中でできておりまして、しかも、そういう委員は、国会議員の先生方の認可といいますか承認を得ておりません。我々が、国民が選んだのは、皆さん方先生方、衆議院の代議士であり、参議院の先生方です。ですから、そういう人が、ぴしっとして議論をした上で決めていただきたい。

 現在では、諮問委員会で決まったものは、すぐに内閣に行ってしまう。御存じと思いますが、第二次改革というのが去年の十二月に出ました。新聞にはちょこっとしか出ないんですよ、国会の議論じゃないですから。ですから、こういうものは廃止いただきたい。しかも、これが非常に危険なのは、かつてヒトラーが独裁政権をとったときには、こういうものを使ってヒトラーは合法的に首相に選ばれたんですから、国会で。それが、結果的にはああいう、独裁化した。

 最後に、各省庁の審議委員、これもすべて国会の承認人事としていただきたい。それで、任命期間を四年にしていただきたい。

 ということは、私は、専門の金融、財政で見ますと、十年前の金融危機のころにその審議委員なんかやっていらして、不適切だ、余り適切とは思えない意見を言われた方が、今でも残っていらっしゃいます。だから、よくなるはずはありませんよ。

 ですから、せめて、二期二年としたら、二年で、四年でもうおしまい。そして、もっと政府間も風通しがよくなる、それで我々が選んだ先生方の意見がもっと通るようにしていただきたいなと思っております。

 日本は、本当に現在、危機的な状況です。やはり、オバマじゃありませんけれども、オバマにあやかるわけじゃありませんが、本当にチェンジなんですね。根本的に考えなきゃいけない。これは、財政呪縛からの脱皮です。日本は財政危機じゃないんです。はっきりとした数字でお話ししている。これは非常に議論があると思いますから、幾らでも議論は申し上げますし、私はすべて客観的データで申し上げたいと思っております。

 時間の関係もありますから、もし、いろいろ御意見等、御異論もあれば、後ほど聞かせていただけたらと思います。

 あと、クリントンの財政改革。これは、クリントンは、債務王国でございましたアメリカが、結局、積極財政をやって、それによって、それを先ほど申し上げた社会的共通資本というところに集中投資した、それが効果を生んだんです。

 どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)

逢沢委員長 菊池先生、御懇篤なる陳述、大変ありがとうございました。

    ―――――――――――――

逢沢委員長 これより公述人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。坂本剛二君。

坂本(剛)委員 今国会は最初から、ガソリン国会だ、こんなことを言われてスタートいたしました。

 今、四人の公述人の先生から、伸び伸びと、思いっ切り御自分の説を御開陳いただきまして、まことにありがとうございます。私の地元福島県から相馬市長さんがおいでになっていますから、まず、道路財源のことについて、ごく基本的なことをお伺いしたいと思うんです。

 去年の夏ごろから、この道路特定財源あるいは暫定税率の問題で、県内市町村のみならず、全国から私のところへ参りまして、おっしゃることは、道路特定財源はもとより、臨時交付金の交付率のかさ上げもやってほしい、制度の拡充も頼む、とにかく地元のために、地域をよくするためにガソリン税を精いっぱい使わせてくれと。先ほどの相馬市長さんのお話と全く同じでして。

 これは私もちょっとメモっておったんですが、いろいろ施策を考えれば考えるほどやはりこういういろいろな案が出てくるんだろうな、こう思いますが、例の国道百十五号線、いろいろな意味で福島とのアクセスで非常に重要な意味を持っているんですね。中央自動車道がいつになるかはわからぬと言ったら語弊がありますけれども、とにかく、高規格道路を早く、整備するまでには時間がかかる、しかし社会は毎日毎日動いている、これを整備していかなきゃならぬというそのお気持ち、よくわかります。

 もし仮にこの暫定税率が何かのハプニングがあってとまってしまうようなことがあったときに、一体どうするんですか。他分野の一般財源を流用して云々という話もあるんですが、現にもう予算を組み立てている相馬市としてはどう対応することになりますか。もし何かお考えがあったらお聞かせください。

立谷公述人 私ども地方自治体は、今、入り口で非常にうろたえているというのが現実なんですね。

 ちなみに、相馬市は二本立てで考えてございます。そのうちどちらを採用するかというのは私が判断してまいりたいと思っておりますけれども、道路特定財源から回ってくる税収で、先ほども申しましたけれども、まず、起債の償還をやるのがせいぜいなんですね。どうしてもつくらなくちゃいけない道路というのはその年度ごとに、あるいはその状況によっていろいろあるわけでありますけれども、その分については一般財源から回しているというのが実情でございます。ですから、その一般財源から回す分がもっと多くなるかもしれない。その際は、これは借金をするか、財政調整基金をさらに取り崩すか。

 今、もう一つは、私ども地方自治体、特に市が非常に憂慮している問題は、団塊世代の退職金がなかなか賄えないという問題なんですね。これはいろいろな批判もあると思います。退職金というのは負債でございますから、なぜ積み立てておかなかったんだ、なぜ準備しておかなかったんだということなんですけれども、私が市長を引き継いだ段階でそのような財源はございませんでしたから、これは我々が日常の業務の中で、毎年の財政の中で対応せざるを得ないような状況なんですけれども、この退職金のための借金をしなくてはならないんですね。

 道路建設のための起債とか学校建設のための起債は、いずれはその恩恵を将来世代も受けるんだ、そういう将来世代にわたって分割するという、分担するというような精神がございますけれども、退職金を払うための退職手当債のようなものは、いたずらに今の怠慢を将来に先送りするだけなんですね。そういうことはやりたくないんですけれども、場合によってはそのような対応をしながら、このつじつまを合わせなきゃいけないということになってまいります。

 先ほど先生方からのお話の中で、そんなことがわかっておったんだったらどうしてもっと早くからやらなかったんだというようなお話がございましたけれども、私、本当にそう思います。今この時期で急に、あと一カ月ちょっとでこの問題について白黒が出る、まあ出ないわけにいかないと思いますし、そうしていただかないと私たちもどうしていいかわからないんですけれども。

 そういう中で、急に今まで入ってきた財源がなくなるということになりますと、これは大変なことになる。それは単年度ごとの考え方でいけばまた別なんですけれども、残念ながら多大な起債を抱えてしまっているということなんですね。これは継続してまいりますので、そういった意味では相当な混乱が予測されるということになるわけでございます。

 以上です。

坂本(剛)委員 相馬市長は、全国に先駆けていち早く、二十年三月いっぱいで暫定税率が終わる、これにどう対応するんだという行動を起こしまして、福島県の市町村、東北六県、そして全国の市町村を動かしたという話を聞いています。非常にそれは先見の明があって、やはり真剣に地方自治経営に取り組んでおるなということがよくわかるわけです。

 片山さん、前は、直前まで鳥取県の知事をやっておった。鳥取県でも大変重要な道路需要があって、高規格道路がまだなかなか容易でない状況にあると。来年度ですか、平成二十年度予算は約四百九十二、事業費ベースで組んでいるようでございますね、私、ちょっと資料を見ましたらば。しかし、もしこの暫定税率がなくなると二百五十億ぐらい事業費がペースダウンする、どうしようもないことになってくるという話でございます。

 実際そういうふうになったときには、これはどうなんでしょう。前知事として、ちょっと所見をお伺いしたいと思うんです。

片山公述人 今の鳥取県の予算がどうなっているか私はもう承知しておりませんので、一般論で申し上げますけれども、予算を組んで当てにしていた財源が入ってこないということは、これは日常的にあり得ることなんです。

 例えば公共事業などは、大体年度当初に予算を組みますけれども、その財源というのは、一般財源も起債もありますけれども、国庫補助金というのを相当当て込むわけであります。ところが実際に、補助金というのは、内示があった段階で比べてみますと、当初予算に組んだものよりも少なかったりするわけです。そうしますと、それは年度中途、例えば九月の補正でありますとか十二月の補正でありますとか、場合によっては年度末の補正で減額するのであります。

 ですから、当てにしていた財源が入ってこないというのは今回が初めてでは、今回といいますか、今回、仮に暫定税率が延長されなかったとしても、それは初めてだということはないんです。ただ、規模が大きくなるということはあると思います。

 それからもう一つは、当てにしていた財源がどっと落ちたというのは、実は私も経験しているんですけれども、平成十六年度に交付税の大幅削減がありました。実は、今よりももっと衝撃は大きかったのであります。何せ一般財源が、例えば鳥取県ぐらいのクラスで二百億近く落ちるわけであります。それが何の予想もしていない、しかもそれは交付税法で、例えば平成十五年度でもう交付税は減りますよとか十六年度から減りますよとか、そういうメッセージも何にもない中で、単に財務省と総務省とのやみの折衝で決まったことをそのまま国会は通されたわけであります。こんなことはないのであります、本当は。

 それと比べますと、今回のはもう五年前からわかっているんです、これが切れるというのは。それだったら、切れることを前提にしてみんな行動しなきゃいけないんです。切れてはいけないんだったら、早目に延長しようということを与党の皆さん方はやらなきゃいけないんです。今やるというのは本当はおかしいんです。

 私は先ほど、民主党がいけないと言ったんじゃないんですよ。そうじゃなくて、地方自治体千八百をみんな、予算審議を宙ぶらりんにしているような、これは政府・与党と国会の責任であります。やはり、延長するのならば、延長する方が挙証責任がありますから、延長したいということを言われなきゃいけないです。

 ですから、ぜひこれは、今回だけじゃなくて、これから先生方にお願いしたいのは、本当に地方分権というのならば、地方自治体が伸び伸びと議会で審議をして、住民の代表である議員が意思決定できるような、そういう環境を整えてあげていただきたいと思うんです。今のようなこれはむちゃくちゃであります、本当に。依存をする、もう国会の審議をはらはらはらはらして、どうなるだろうかと言わざるを得ないような、そういう環境に置くことは絶対これからあってはいけないことだと私は思います。

 あと、つけ加えますと、万が一これが落ちたら、本当に困ることは困るんです。それは鳥取県だって致命的に重要な道路はありますから。そこでどうするかというのは、これは本当は、余裕がもしあれば、もし一年前にこの暫定税率が切れるというようなことが決まっていれば、私がもし知事ならこうします。

 どうするかというと、ガソリン税は下がりますから、県内の住民の皆さんの担税力はそれだけ上がるわけです。余裕ができます。そうしますと、地方分権の中で、例えば、道路はやはり暫定税率が下がったとしてもつくり続けなければいけないという合意があるのであれば、ガソリン税が下がった分だけを、例えば住民税とか、他の税でもいいですけれども、それで独自課税をして、その分で財源を調達してつくるかつくらないかを決めましょう、これが本当の地方分権だと私は思います。

坂本(剛)委員 道路特定財源の一般財源化ということがよく言われます、きょうもそんな話が出ましたけれども。実は、これを自由に使える一般財源にしちゃいますと、例えば自治体の首長あたりが選挙の公約でいろいろなことを、いろいろな分野で濃淡をつけた公約がありますが、そういうことを当選後実行するということになると、どうでしょうね、各自治体間で道路に対する整備の度合いがまるっきり変わっちゃう。そうすると、自分の市から周辺市町村に出ていく道路さえもできなくなっちゃうという、そんな状況が生まれるのじゃないかと心配する意見もあるんですが、その辺についてはいかがですか、相馬市長さん。

立谷公述人 道路の建設にかかわることなんですけれども、二通りの考え方に立たなきゃいけないと思うんですね。

 一つは、私ども相馬市の周辺を見た場合、例えば相馬市内の市道であれば、それは私の裁量で、あるいは議会との調整の中で可能であります。この件について私がマニフェストに書いて、こうしたい、ああしたいということも可能だと思います。

 しかしながら、広域的な道路、例えば先ほどお示しいたしました相馬と福島のネットワーク道路、あるいは、相馬は高速道路は現段階ではありませんから、相馬から東京だ、仙台だ、そのような広域的なネットワーク道路の部分とこれは分けて考えなくてはならないと思うんですね。

 広域的なネットワークについては、ちょっと我々は言及できないところがありますし、それはやはり、広域自治体である県であるとかあるいは国の方でやっていただかないと、よその地域との交流、連携のもとに産業の活性化をしましょう、あるいは住民の安全、安心を確保しましょう、そういうことはなかなか難しいものだろうと思っております。

 しかし、相馬市が独自に行う事業につきましては、先ほど申し上げましたように、一般財源からある程度投入しないとできないような、そういう仕組みになっているんですね。つまり、今までの起債の償還という縛りに遭っておりますので、道路特定財源から回ってくる税収だけでは解決できない問題がありまして、その分については一般財源を削ってこれを持ってこなきゃいけないということになるわけであります。そうしますと、やはりこれは、その分の財源があるないという議論とまた別に、全体的な、総体的な比較の中で道路に対する自分の考えを政策にしていかざるを得ないということになるわけであります。

 ただ、義務的経費のような形で道路の補修の財源あるいは借金返済のための財源、こういうものは現にあるわけでありますから、これはそういう仕組みの中でつくってきたという宿命みたいなものなんですね。そこのところを解決しない限り、なかなか自由な発想というのは困難であるということになってくるわけであります。

 ですから、この道路特定財源の問題についても、私は、ことしの四月から急に制度が変わるということになりますと、今までに縛られてきた分で非常に苦しい思いをせざるを得ない。これが、時間をかける中で修正しながら、我々がそういうところで苦しまないような、そういう制度をつくっていただくのであれば大きな混乱はないと思いますけれども、現在のところ、大変憂慮している、そういう状況でございます。

坂本(剛)委員 しっかりやっている相馬市でさえもそういう状況ですから、一般財源を流用しなければ住民の安心、安全を確保できないという状況であれば、他市町村もましてやこれは大変な状況にあるんだろうと。したがって、一般化なんというようなことはおよそ及びもつかないということだろうと思います。

 そこで、あと時間がないというから、先ほど、片山公述人、教育、人をつくること、人材育成、盛んに力説なされておりました。私もそうだと思います。

 ただ、OECDのあのデータが私は一概に信じられないんですよね。急にこのごろ上位に上がってきた国もありますしね。どういう児童を集めてデータをとっているのかわからぬし、タクシーの運転手さんまで受験生には特別計らいをするというふうに、全国民が教育のレベルを上げるためにえらい大変な騒ぎをしていますが、まさに公平、透明度の高い調査結果ですから、これは日本の場合は一番公平にデータが出ているんだろう、私はこう思っているんです。したがって、余りそのことには頓着しないんですけれども。

 ただ、私は、教育も大事ですが、日本のシステム、人を評価するシステム、どうもこの辺に欧米と違う、アメリカとは違うものがあるんですね。それは、何だというと人の足を引っ張るこの国の悪い癖。一度失敗するともうしばらくはうだつが上がらないという減点主義なんですね。役所のあり方なんか、まさにそのとおり。隣のテーブルの人の投書をして足を引っ張り合いする。一般企業でもそのとおりですね。なぜもっとおおらかになって加点主義でいかぬのだ。この加点主義を採用することによって、私は日本人の持っているポテンシャルを必要以上に発揮できるんじゃないのかな、こんなふうに思っているんです。

 高いレベルの教育は、諸外国と見てそんなに遜色ないと私は思っているんです。しかし、幾ら高いレベルと技術と経験を積んでも、それを発揮できない環境ならば、思い切ってそれを実行に移す、そういう環境になければ、常に減点を念頭に置きながら事に臨んでおったのでは、自分の能力なんて発揮できないじゃないですか。その辺を私は、もっと国全体で、この国のあるべきシステム、人の、人事の評価、あるいは国内のシステムそれ自体をもっともっとおおらかな加点主義に変えていってはいかがかなと思うんですが、これは片山先生、いかがでしょうか。

片山公述人 持論として伺いましたけれども、だから道路をつくり続けなければいけないということにはならないんだろうと思います。

 私が先ほど申し上げましたのは、やはり、道路は重要なところもあります。それは、さっき言いましたように、鳥取県でも致命的に重要な道路はあるんです。それぞれの地域にあると思います。ただ、だからといって、道路が全部必要で、本当に道路だけは聖域で、これだけの大量の金額を財政資金の中で特別優先枠を設けなければいけないかというと、決してそんなことはないと思います。優先枠を設けるというのは、実は、弱い立場の人とか声の小さい存在に対して優先枠を設けるのであります。道路が果たしてそうかどうか、よくよく考えてみる必要があると思います。

 それから、地域によって、道路が本当に必要だというところはあります、それはあると思います。だけれども、別の地域によっては、道路も重要だけれども、道路よりも、さっきのように学校の施設の耐震化の工事の方が重要だとか、それから例えば保育所の待機児童が本当にたくさんいて、その待機児童を解消する方が重要だとか、そういう地域だってやはりあるんです。

 教育だって、私は本当に心を痛めていますのは、いじめとかそれから不登校というのは、これだけ長い間言われても、いまだに解決をしないんです。なぜ解決しないのか。

 例えば、フィンランドなんかを見てみますと、不登校の問題は、実はメンタルケアの専門家がこの子供たちのケアをするんです。専門家です。ところが、日本ではそういうメンタルケアの専門家を学校に配属していません。教員がやるんです。だから教員がまた多忙化するんです。

 本当は、子供たちが不登校になるのであれば、各学校に、必要な学校にはメンタルケアの専門家、心理療法士なんかを配属するというフィンランド並みのことをやったらいいと私は思うんです。ただし、幾ばくかのお金がかかります。そのお金をどうやって捻出しますかといったときに、片や道路だけは特別扱いにされて、もう右から左にすうっと全部五十九兆円通ってしまう。ところが、メンタルケアの専門家を置こうとして、一人六百万、七百万の単価のスタッフを置こうとしたら、お金がありませんと。これでは余りにも不公正だし、非効率だと私は思うんです。

 道路はいけないと言っているんじゃないんです。道路も学校のスタッフも一つの土俵に並べて、さあ、どっちが重要なのか、どれを優先させるのか、どれにどれだけの金額を投入するのか、これが比較できる土俵をつくってくださいと言っているんです。これが一般財源化ということであります。

坂本(剛)委員 大変、最後は平行線で狂っちゃったけれども、ありがとうございました。済みません、残りの先生に御質問できなくて。

逢沢委員長 次に、富田茂之君。

富田委員 公明党の富田茂之でございます。

 四人の公述人の先生、貴重な御意見、本当にありがとうございました。

 私は、まず水谷先生に御質問させていただきたいと思うんです。

 先生のお話を聞いておりまして、実は、昨年の五月にAfDBの総会に上海に参りましたときに、カナダの前の首相でしたポール・マーティンさんとお話をする機会がありました。マーティン前首相は十年近く財務大臣をやられて、そのときに財政再建を当初の四年ぐらいでしっかりなさったという経験を伺っていましたので、AfDBに対する支援のお話をした後に、どのように財政再建をされたんですかと尋ねてみました。

 日本は、先ほど水谷先生がおっしゃったように、五百五十三兆、国と地方の長期債務を合わせれば七百七十八兆、対GDP比で一四八%だというお話をさせていただきました。そうしましたら、マーティンさんは、日本の国民はそのことを知っているのかとまず聞かれたんですね。数字としては、この予算委員会なんかでもよく出てきますし、これだけの借金があるんだと。先ほど菊池先生は、そうじゃないというお話、半分ぐらいだと言っていましたけれども、それでも二百五十兆を超える借金がある。ただ、日本国民は、実感として、自分の借金だという実感はないんじゃないかという話を私はマーティンさんにさせていただいたんですね。

 その前提で、どういうふうにやっていったらいいか、何か参考になれば教えてくださいと言いましたら、国民を説得するためのかぎは、財政赤字の数値を説明することではなく、その帰結を説明することだというふうにおっしゃって、先ほどの水谷先生と同じようなことを言われまして、こういうふうに言いました。財政赤字とは、すなわち子供たちからお金を借りて我々の生活を賄っているのと同じことなんだ、子供から借金して返さない親はいないだろうと私に言われて、非道徳的であるから財政赤字は減らさなければいけないんだというふうにまず一点挙げてくれたんですね。もう一つは、このままいけば年金は払えないと言えばいいんだと。かなり過激なんですけれども。この二点で国民を説得したというふうにカナダでは言われていまして、先ほど水谷先生の意見を伺っていて、全く同じような形で言われているなと。

 調査室の方で先生に関するいろいろな資料を用意してくれたんですが、週刊東洋経済でも、かなり、こんなことを言ったら怒られちゃうかもしれないけれども、年金が払えなくなっていいのかというような御主張もされていました。多分マーティンさんと同じような思いできょうお話をしていただいたと思うんですが、国民にきちんと協力してもらって財政の大改革をされるんだというふうにお話をされました。その国民に協力を求める際にどんなふうに言っていったらいいのか。こんなに借金がありますよ、大変ですよではなかなか納得していただけないと思うんですね。その点について御指導いただければと思います。

水谷公述人 先生のおっしゃるとおりであります。

 実は、国民に知らせていないのかというと、知らせていると思います。しかし、聞きたくないんです。そういうことを知ってしまうと、対処しなければならない。対処がどれぐらい厳しいかというのはすぐわかります。ですから、みんな知りたくない。借金は自分の借金だと思っていない。すなわち、国の借金は国民の借金と思っていない。国が自分の国であるという感覚がない。あるいは、人の国だと思っているかもしれません。

 ともかく、国の資産は自分のもの、国の借金も自分のものだと思えば、こんなわけにはいかないだろうと私は思います。ですから、国民の自覚というのが一番重要なんじゃないでしょうか。いつの間にか、国からはもらうものだ、国には出さない、国を収奪する、これが徹底しています。しかし、それがいつまでも続くはずがないということなんです。

 国家は大きいです。借金ができます。ですから、国が借金しても何の支障も出ないんですね。申し上げました、それはデフレということがあるからです。デフレはまだ続くでしょう。したがって、まだしばらく出ませんよ、問題は出ません。表面化しないです。そして、表面化したときにはもう手おくれなんです。どうにもならないんですね。

 ですから、私は、先生のおっしゃっているのは、大変重要なことをおっしゃっていると思いまして、ぜひ、そういったことをやはりいろいろな機会に言っていくべきじゃなかろうか、このように思っております。

富田委員 ありがとうございます。ぜひこれは予算委員会でも、予算を通した後に、秋に向けてそういう議論をやっていきたいというふうに思います。

 立谷公述人に御質問させていただきたいと思うんです。

 調査室の方から用意していただいた資料を見ましたら、先ほど、六年前まで医師をやられていたと。お医者さんの時代に、福島市や仙台に救急の患者を運ぶ際に途中で何人か亡くなった、そういった経験を通して、やはり行政の立場になってやらなきゃいけないと決意されたというふうにインタビューに答えていらっしゃいました。

 道路に関する中期計画に関する意見書でも、相馬市の周辺には小さな町が幾つかあって、それぞれの町に特色ある病院はあるけれども、救急病院はないんだ、仮に相馬市で脳疾患の患者さんがいたら、隣の市まで運んでいかなきゃならない、そういった場合にやはり道路のネットワークは大事なんだというふうにお話をされていました。

 この委員会では、道路のネットワークでやるよりも、ちゃんと病院を建てればいいじゃないか、お医者さんを準備すればいいじゃないかというような意見もよく出てきます。医師から市長になられて、実際にその現場を経験された立谷市長としては、道路のネットワークの方で対処した方がいいのか、実際に拠点病院をできるだけ地域につくった方がいいのか、どちらの御意見か教えていただければと思います。

立谷公述人 まず、先生のお話ですけれども、病院をつくったらいいじゃないかというのは暴論ですね。非常にふざけた話です。

 というのは、今、医師が足りない、医療資源が足りない。さらに、地域の小さな小都市ごとにあるのは、これは大概町立病院とか市立病院なんですね。これは自治体病院協議会の方で本当に問題になっているんですが、それぞれが大変な赤字を抱えて運営されております。その病院を、例えば相馬市の病院にすべての科を張りつける、すべてのドクターを張りつける、そんなことができるはずもない。隣の市に相馬市の得意な科も全部張りつける、ドクターも張りつける、そんなことができるはずがないということであります。

 相馬市では非常に独自な政策をとっておりまして、相馬の市立病院は二次救急の病院なんですが、それでも医師不足の状況の中で、勤務医が悲鳴を上げているんですね。二次救急の病院でありながら、患者さんにしてみれば、自分の病気が、自分のぐあいの悪さが一次救急なのか、二次救急なのか、三次救急なのか、そんなことはわかりませんから、やたらめったら行くわけです。二次救急病院に、子供が熱を出した、そのぐらいだったらいいんですが、子供が泣きやまないというだけで行くんですね。それは責められないんです。若いお母さんがそのことに対して心配しているとしたら、責められないんですね。

 相馬市内の開業医の一次救急をやる先生方に、準夜勤の時間、つまり十二時前までの時間、当番で詰めてもらいまして、一次救急は開業医の先生方が交代交代で診てください、入院となって二次救急が必要になったら勤務医が診なさい、そういうユニークなシステムをつくり出しまして、開業医と、つまり診療所と病院の連携を図っております。そうやりながら、少ない医療資源をできるだけ有効に使おうとしているんですね。

 その際に、私はさっき福島医大病院という第三次救急病院の話をしましたけれども、第三次救急病院に第二次救急病院から搬送するということを前提にこの階層構造ができているんですね。この階層構造をうまく利用しないと地域の医療資源が生かされてこないんです。ですから、搬送ということが前提にされております。したがって、搬送のためには、それにたえる適切な道路が必要であります。

富田委員 もう残り時間わずかですので、最後に片山公述人に一点だけ教育の件でお聞きしたいんですが、図書館が大事だというお話は本当にそのとおりだと思います。

 今回の予算でも、やはり子供たちを社会総がかりで教育しようということで、文部科学省の予算もかなり充実させました。司書さんのお話がありましたけれども、司書さんや司書補さんを育てるような法律も、栄養教員の法律とあわせて、今回法改正もお願いしますし、片山公述人が言われたように、人材立国のために基礎的な教育の部分が本当に大事だと思うんですね。決してこの平成二十年度予算は教育のところをおろそかにしているわけじゃありませんし、文化庁予算も、公明党が自民党の皆さんと連立を組ませていただいてからは一千億台に乗せて、しっかりそこの部分も続いております。

 教育のこの一点という形でもっと充実させるとしたら、どこがポイントだと思いますか。手短にお願いします。

片山公述人 私は、せっかくの御質問でありますので、あえて申し上げさせていただきますけれども、今、国のレベルで、教育改革をいろいろなところで議論されております、私も中教審の委員になっているのでありますけれども。実は、そこで一つだけ欠落している大きな問題があると思っております。それは、小中学校の経営主体の問題です。

 小中学校の経営主体は、市町村の教育委員会なんです。経営者でありますから、自分が経営する学校の現場でいろいろな問題がありましたら、それを必死で、本当に本当に解決しなきゃいけない、そういう立場なのでありますけれども、いかんせん、我が国の市町村の教育委員会は、これは大変失礼でありますけれども、必ずしも、いじめでありますとか不登校でありますとか、心の病でありますとか教師の多忙化でありますとか、そういうことを本当に自分が経営者として解決しなきゃいけないという、そういう力量にどうも欠けているのではないか。本当に失礼でありますけれども、私はそう思うのであります。

 何でこんなことになるのかというのは、いろいろなことがあるんですけれども、例えば、今の教育委員の任命の仕方というのが地方教育行政の組織及び運営に関する法律に書いてありますけれども、まあ中途半端なんです。それから、教育委員会にそもそも自主的な財源措置がないとか。要するに、自主性がないのであります。これをどうするかというのは、私は地方行政の中で大変大きな課題だと思うんです。

 もう一つは、これもあえて申し上げさせていただきますけれども、子供たちに向かう教師というのがいかなる立場、境遇に置かれているかということであります。公立小中学校の教員は、実は都道府県の職員であります。任免権は都道府県の教育委員会にあります。給料は都道府県知事が払っております。そのうちの三分の一を国が後で補てんをしているということであります。働く場所は市町村立の小中学校の施設であります。そこで教える内容、コンテンツは、文部科学省でつくった学習指導要領であります。さて、この教員はどっちを向いて仕事をしたらいいんだろうか。ばらばらなのであります。

 一つの企業を考えた場合に、そんな、あっち向いたりこっち向いたり、任命権者と違うところで働いたりしていて、本当に一体的にいい学校の経営ができるだろうかということを私はつくづく心配するのであります。これは、実は市町村レベルで解決できる問題ではありません。都道府県レベルでもできません。ひとえに、それぞれの制度を国が法律で決めている、そのはざまで今学校現場はあえいでいるわけであります。

 どうか、道路問題も重要だと思いますけれども、本当に必要な教育問題、これを根本から解決するためにはどうすればいいのかというのをぜひ国会の皆さん方も真剣にお考えいただくようお願いを申し上げます。

富田委員 終わります。ありがとうございました。

逢沢委員長 次に、武正公一君。

武正委員 民主党の武正公一です。

 公述人の皆様、きょうはどうもありがとうございます。

 私は、平成七年に県議会議員に初当選をして、埼玉でございますが、二期目、五年経過をした平成十二年に衆議院に初当選をいたしまして、今三期目でございます。

 立谷公述人も同じく平成七年の四月の福島県議会議員当選ということでございまして、ちょうど同じ時期に県議会に籍を置いておりました関係もありますので、まず立谷さんにお聞きをしたいんですが、あのとき、私も県議会に籍を置いていますと、平成三年なり、バブル崩壊後でございましたので、国の総合経済対策ということで、地方に対して有利な地方債、具体的には地域整備総合債でしょうか、地総債と言われたもの、こういったものを、盛んに地方自治体に国が債券を発行して、わかりやすく言えば借金をして、そしてさまざまな事業を、特にインフラ整備、これで何とか景気を浮揚させよう、こういったことをやっておられました。

 私の県議会でも、自治省から来られた方が、これは有利な地方債なんです、将来交付税で補てんがされますからと、有利な地方債、有利な地方債と言って、それが耳に残るぐらい言われました。そうはいっても、でも借金だからなと思いながらも、やはりそうした国の政策には地方自治体はなかなか逆らえないというような中で、そうした有利な地方債を使いながら景気浮揚のさまざまな事業をしていったわけでございます。

 国会に来てそのことをいろいろと調べてみると、そうはいっても、当時、地方単独事業、地財計画で総務省が見込んだ額にはなかなか及ばなくなってきた、地方の単独事業で地方にやってくれ、また将来は交付税で補てんしますよといっても、地方はそれをやり切れない、そういったところも、国会でもさまざま、衆議院の総務委員会でも議論をさせていただきました。

 先ほど、いみじくも、道路特定財源がこの三月末で打ち切りになった場合どうなるかという話で、立谷公述人は、ちょうど、三億五千万円ぐらいでしょうか、道路特定財源分は実は起債の返済に充てているんだ、その分をそっくり一般財源から入れなければならないというようなお話でございました。この起債が一体どのぐらいの額なのか、ちょっと私も不勉強で知りませんが、年間三億円ぐらいの起債の返済、それが、もしそうした過去の国の、地方自治体に対して、私はやはり景気浮揚のある面手足として地方自治体は使われた面があったのではないのかなと。

 今、地方債の残高の総額は二百兆円です。それをこれからどうやって、夕張のこともありましたから地方自治体には厳しくというような法律もできましたけれども、そうはいっても、もう二百兆円の借金があって、では、これは一体すべて地方自治体の責任なのかどうかといったときに、やはり国のそうした政策の一端を担わされたというようなこともあったのではないかなというふうに思うわけであります。

 そこで、立谷さんには、こうした国と地方自治体との関係、これをどのように今見ておられるのか。どうも国と地方自治体の上意下達というような関係がやはりまだまだ強いこの日本にあって、私ども民主党はやはり分権だと。分権調査会というところでは中間報告も去年まとめましたが、基礎的自治体に権限を移譲していく、補助金は一括交付金という形で自治体が自由に使えるようにしていく、こういったことを私どもは提案しておりますが、地方分権、あるいはこれまでのそうした総合景気対策での地方自治体の役割、あわせて、ぜひ、三位一体改革、ここら辺の一連の流れを公述人としてどのように考えておられるか、お述べいただけますか。

立谷公述人 非常に多岐にわたる御質問をいただきました。

 今の御発言の中で、相馬市に道路の起債残高はどのぐらいあるかわからないという話だったんですけれども、二十九億円ございます。これを、道路特財から入ってくるのが三億円ちょっとですから、十年かかるんですね。

 私が市長になった六年前に一番最初にやったのは、農業集落排水事業をとめたことです。こういうことは景気対策としてなされたんだと思いますけれども、実際検証しますと、いわゆる投資的経費、建設の財源を別として、維持管理費がどうかといいますと、大体甘く見て倍、きつく見て四倍、そのぐらいの非常に効率の悪い事業なんですね。一カ所つくった段階でやめて、今非常に正解だったと私は思っておりますけれども、こういうことは、やはり首長の判断でやめるものはやめなくてはならない、それが担保される社会でなくてはならないと思っております。これは基本中の基本だと思うんですね。

 ただ、道路の問題の、道路の借金の二十九億円、二十九億円に相当するだけの道路をつくって、その道路が何だったのかという精査を行っているわけではないんですけれども、相馬市内で見る限り、費用対効果あるいは投資効率ということを考えたときに、それほど悪い、こんな道路は要らないなというような道路は余り見当たりませんので、私は、それは一つの方法論として、その当時の考え方としては妥当だったのではあるまいかなと思っております。

 先ほどお示しした相馬市の行革の一覧表の中に、私が市長に就任したときは、三百五億円だったか、そのぐらいの起債残高がございました。行革をやりながら、ちまちま返していっているんですけれども、昨年二百九十ぐらいになりまして、ことしの末で二百八十五億円になる予定でございます。しかしながら、この道のりは遠いですね。山ほど遠いですね。ですから、私は、公共投資で世の中がよくなるという考え方には相当慎重にならざるを得ないと思っております。私自身の実感として、そのように思っております。

 そういうことで、私自身は、相馬市として、市長として、補助金行政というかそういうことも含めて、これが是か非かということをしっかり判断した上で、そのときそのときの政策を組んでいきたい。私がいろいろ展開してきた政策は、まず一番最初に思ったことは、金をかけないでいい地域社会がつくれないだろうか。例えば、相馬市民に救急救命教育を施しました。今、市民の四分の一、一万人以上が救急救命、蘇生術をマスターしてございます。それで助かった市民も数人いるというような状況になってございます。ですから、知恵の絞りよう。

 その知恵を絞る際に、例えば起債事業であっても、どのような条件で、将来の返済計画も含めて果たして我々の身の丈に合った事業であるかどうかということをしっかり精査することなんですね。精査した際に、我々の裁量権がふえるであろうと考えて、みんなで賛成しながら突っ込んだのが三位一体改革でございました。

 しかしながら、地方財政をやっておりまして一番最初に持っていかれるのは、義務的経費なんですね。この義務的経費のパーセンテージの高さというのが実は極めて大きな問題でございまして、自由に使える裁量のお金がなかなかない、そのような財源がなかなかないというのが今の地方自治体でございます。

 そういう際に、我々が考えなくてはいけないことは、三位一体の改革を踏まえていえば、やはり地方交付税の改革が一番最後に来てしまった、つまり、地方交付税がつじつま合わせのような形になってしまったというのが最大の反省でございます。多分そうなるだろうということは予想されてはいたんですけれども、地方分権という考え方を推進するに当たって、もっと警戒心を持つべきではなかったのかなと思っております。

 今、議員のおっしゃった補助金の問題でございますけれども、私も基本的に補助金が一般的な財源になるということについては賛成でございます。

 ただし、きょうのテーマでございます道路特定財源については、若干性格が違うのではないか。市町村に全部よこされても、広域的な道路をつくることはできません。やはり、国道あるいは県道として、ネットワーク道路等々の広い地域にまたがる道路、あるいは全国的な規模で企画すべき道路については、私どもの裁量にゆだねられてもしようがないということになります。

 ただ、相馬市がつくる市道については、できるだけ相馬市の裁量でやらせていただきたいと思うわけであります。

 これは、先ほど私は意見陳述の際に申し上げましたけれども、相馬市がつくろうとする建設予算全体、これは借金も含めて、人件費を除いた予算が来年度で六億三千万ございます。そこに入ってくる道路特定財源からの収入が三・四億円でございますから、約三億円、一般財源から持ってこなきゃいけないんですね。私は、その分を国からいただければこんなありがたいことはないなと。国の方では、余っているから一般財源化すると言っていますけれども、余っているから一般財源化する分があったら、それは地方の道路財源として、一般財源でもいいですよ……(発言する者あり)ですから、余った分があればの話ですね。

 相馬市で建設事業に使うべきところのその分については、いただければこんなありがたいことはないと思っていますけれども、ただ、何度も言いますように、今の問題はこの道路特定財源という税収の形態が維持されるかどうかということにあろうかと思っておりますから、その辺やはり国会議員の先生方に適切な議論をしていただいて、地方が困らないようにしていただいて、その上で私どもは、さっき片山先生がおっしゃいましたけれども、例えば教育予算を削って借金の返済に充てなきゃいけないような、そういうことがないようにひとつ御配慮を賜りたい、そのように考えておるところでございます。

武正委員 民主党は、一般財源化をしてそれをそれぞれの自治体に使っていただく、それぞれの中で選択と集中ということで御判断をいただくということであります。

 今、公述人からは、基本的に分権、これはやるべしということも確認もできましたし、特に市道については自由に使える、そういった仕組みであるべしというようなことも確認もできたわけでございます。

 そこで、同様に片山公述人に、ぜひ、知事としての二期八年を振り返られて、特に三位一体改革、これをどのように検証されているのか、これについて、特に、教育ということも既に言っておられますし、義務教育費の国庫負担金、この地方の負担増といったこともやはり問題であったというようなことも指摘をされておられるようでありますので、三位一体改革を御検証いただけるとありがたいと思います。

片山公述人 三位一体改革の検証ということでありますけれども、その前に、先ほど議論になっておりました景気対策と地方財政との関係、これは非常に重要な問題でありまして、バブルが崩壊しました後の一九九〇年代に国は景気対策を非常に一生懸命されました。そのときに、地方自治体も総動員されまして、公共事業の追加、それからいわゆる単独事業、これは総務省の施策でありますけれども、これをやれということになったのであります。

 その際に、先ほど言われたように、一般財源といいますか、地方財源の方は全部借金で当面賄って、それを、後で交付税の上乗せをしてあげますから有利だ、こういうことになって、全国邁進したのであります。今、その借金の返済のツケが回ってきて、その段階がどうなっているかというと、交付税をふやしてやると言っていたのに、交付税は大幅激減ということで、これが実は自治体の財政破綻の大きな背景にあるわけなんです。

 ですから、そういう人をたぶらかすようなことを国はやるべきではないと私は思うんです。大体、何百兆円も借金をした国が、自治体に対して、おまえら借金しろ、後で全部面倒を見てやるなんて言えた義理ではないと思うんです。自分の頭のハエも追えないのに、地方自治体に借金をさせて、それを面倒を見るなんということは金輪際言われるべきではない。

 ところが、それをその後も言われて、実はそれでひっかかった自治体が、もう合併でもせざるを得なくなったときに、合併しろ合併しろとまた合併特例債で、その合併特例債の償還も、まあ今度は全部とは言いませんけれども、多くを交付税の上乗せで見てやるというような政策を、実はこの国会が法律を承認して、合併特例法の承認をしてつくっているわけであります。また今度、この合併特例債を発行して、その償還がいずれ来ますから、そのときにまた同じように、はしごを外されたとかだまされたとかという話になるのであります。こんな不道徳なことは絶対やめていただきたい。

 それは、国会の議員の皆さん方が政策をつくられたわけじゃないでしょうけれども、政府がつくったんですけれども、それを承認されたのは国会であります。ぜひやめていただきたい。これがどれだけモラルハザードとか、それから地方財政を悪化させたかということ、これをよく肝に銘じていただきたいと思うんです。

 三位一体改革というのは、実は、きょうの議論と大いに関係あるんですけれども、これは、自治体に自由度を増してください、財政運営上の自由度を増してくださいという運動だったんです。自治体の財源というのは、地方税、地方交付税、それから国庫補助金等があるのでありますけれども、これをばらばらではなくて三つセットで改革しましょうというのが三位一体改革。

 そのときの趣旨は、国から自治体にいろいろな財源が交付されますけれども、多くはひもつきなわけです。道路特定財源も実はそのうちの一つ、ひもつきなのであります。それから、公共事業の補助金もひもつきであります。そういうひもつきで、その中でも特に恣意的性格の強いものをやめてください、官僚の恣意、裁量性の強いものをやめてください、それにかわる財源として、自治体が自由に使える一般財源をそれの見返りに下さい、交換してください、こういう運動だったわけですね。要するに、我に自由を与えよという自治体の運動だったんです。そのために、結果的にはかなり財源が減ったんですけれども、それにも甘んじてそういう取り組みをやってきたんです、小泉内閣のときに。

 私は、今回非常に不思議に思いますのは、そうやって取り組んできた地方六団体の多くの皆さん、私の元同僚なども、今回、道路特定財源に限ってはみんな、我に自由を与えるなと言っているわけです。国の道路特定財源も道路に縛ってくれ、我々が使う財源も道路にしか使えないようにしてくれと。これは全く地方分権の否定であります。私は、何とも情けないと思うんです、今までやってきたことは一体何だったんだろうかということを申し上げるんですけれども。

 国会議員の皆さん方も、地方分権というのは自治体に自由度を与えることだ、国の関与とかそういうものをなくすことだ、制約をなくすことだ、これが地方分権だということはぜひ共通の認識として持っておいていただきたいと思うのであります。

武正委員 先ほど、三位一体改革の中の義務教育費の国庫負担金の増額、これをあわせてお聞きしたんですが、それはどのように振り返っておられますか。

片山公述人 義務教育費国庫負担金をどうするかというのは、三位一体改革のときに大きな問題になったんです。小泉総理から、四兆円の国庫補助金、負担金の削減のリストをつくれというのが宿題でありまして、その中に何を盛り込むかといったときに、本来ならば、さっき私が申し上げましたように、国の官僚の皆さんの恣意性とか裁量性が強いものから順番に盛り込んでいくべきなんです。それを一般財源に振りかえることが地方分権を進めることになるんです。

 ところが、それは、表現は悪いですけれども、国にとっては非常にうまみがあるんです。配分のうまみ、それから査定のうまみがあるわけです。ですから、そういうものを官僚の皆さんは死守しておきたい。それで、うまみのないものを放出したかったんです。うまみのないものというのは、例えば自動振り込みに近いようなものですね。これが義務教育費国庫負担金だったんです。

 そういう裁量のないものをもらったところで、自治体は、それをもらったから、一般財源にしたからといって、例えばそれを削るとか、合理的な活用ができる、そういうフィールドが非常に少ないのであります。例えば道路の補助金だったら、それが一般財源になれば、ことしやめて来年にしようかとか規格をちょっと下げようかとか、そういう効率化ができるのでありますけれども、教職員の給与費なものですから、ことしは出すのやめようかとか一挙に半分にしようかということはできないんですね。したがって、その一般財源化というのはほとんど意味のないものだったんですよ、自由度を増すという観点では。

 結果、何が起こったかというと、それは税にかえましたから、東京都のようなところは、税源がいっぱいありますから、じゃぶじゃぶ入ってくるわけです。ところが、私がいた鳥取県とか多くの自治体、県では、税源が少ないですから、入ってこないわけです。その穴埋めは交付税がするということが地方財政調整制度のルールなんですけれども、その交付税が、さっきおっしゃったような、はしごを外さざるを得ないような、総務省にとってははしごを外さざるを得ないほど疲弊してしまっているんです。財政調整能力が極度に低下しているのであります。したがって、ここで地方財政に大きな格差がついてしまった。

 こんなことはもうわかっているわけでありまして、私は当時、知事をやっておりましたときに、義務教育費国庫負担金を優先的に三位一体改革のリストに入れればこんなことになりますよということは警鐘を発していたんですけれども、やはり今日案の定こうなってしまって、全国の田舎の自治体の知事さんあたりから、格差がついた、格差がついたと。これは当たり前のことなのであります。自業自得とまでは言いませんけれども、そういう問題なんです。

 ですから、よほど、やはり総務省がこうしろと言ったからとか国が言ったからとかじゃなくて、自治体の皆さんは本当に自分の頭で判断してどうなるかということを考えなければいけない、いいというか、悪い教材になるだろうと思います。

武正委員 あわせて、公述人は法人二税の配分の見直しということも言っておられまして、昨年の衆議院の総務委員会などでも、ふるさと納税ですね、前総務大臣がこのふるさと納税を持ち出されまして、確かに、地方にそれぞれ寄附をできる、寄附税制の見直しということは私ども民主党も言っていたんですが、税の基本からいえば、住んでいるところ、働いているところ、あるいは企業が立地をしているところ、こういったところがやはり納税の基本だろうといったことで、それは別な制度でやるべきだろうという議論もいたしましたが、そうしたふるさと納税の議論。

 そして、今回の法人二税の配分見直しと公述人が言っておられるところと、今回、東京都とか愛知県からある面税収を召し上げるというようなやり方をとったことも含めて、どのように評価をされているか、お願いいたします。

片山公述人 私は、結論から言いますと、法人事業税の見直し、今回、地方税法の改正案がかかっていると思いますけれども、それは反対であります。それから、ふるさと納税の構想にも反対であります。

 どちらも、これをやろうと構想された皆さん方の善意は、私はそのとおり受けとめたいと思うんです。やはり田舎の方は非常に財政が困窮している、せめて何かできることをしてあげたいという、これは明らかに悪意ではなくて善意であります。ですけれども、その善意を、もっと大きな立場で解決に向けて努力をしていただければと思うんです。

 なぜかというと、それは、税体系の見直しであります。本来、例えば法人事業税というのは大変大きな格差がつくんです。特に景気が変動するときに格差がつきます。現時点でいいますと、大都市部に有利で、田舎に非常にしわ寄せが来る、こういうことになるのであります。そういう景気の変動に敏感な税制というのは、実は地方税には余り向いていないんです。特に景気が悪いときほど自治体の仕事はふえるという面もあります。

 ですから、そういうことを考えますと、今の地方税の体系というのはやはり見直す余地が十分あって、例えばどうすればいいかというと、法人事業税のような自治体間の格差がつく税目は国税の方に移換する、それに該当する、相応する税収を生み出す税、例えば個人所得課税である所得税から自治体の住民税にそれをエクスチェンジする、こういうやり方が実は本当に国がやるべきことなのであります。

 ところが、これはなかなか難しい作業です、骨の折れる作業です。でもやらなきゃいけないんですけれども、骨が折れます。骨の折れる作業はちょっとおいておいて、手近にできることは何だろうかというと、ふるさと納税とか、法人事業税の中だけで何かちょこちょこと見直そうということになるんですけれども、これは私は、百害あって一利なしとまでは申しませんけれども、副作用の方が大きいと思います。

 ふるさと納税というのは何かというと、住民でない人に資金提供をお願いするわけです。本来の税というのは、実は自治体と住民との対話のツールなんです、どれだけ仕事をしますからどれだけ税を下さいという。そうすると、住民の側、納税者の側は、それならもっとしゃんと仕事をしろ、無駄が多いじゃないかと。これが実は税の持っている非常に大きな意味なんです。ところが、ふるさと納税というのは、田舎の県の人が東京の県人会なんかに何か恵んでくださいみたいなことになってしまって、税としての本来の機能ではなくなってしまうんですね。そこが非常に問題があると私は思っております。

 それから、法人事業税の見直しは、一番問題なのは、これまで地方分権というのは、地方税源を充実しましょうと言ってきたんです。そのために、大きな痛手をこうむりながらも、四兆円の補助金等を削減して、交付税も削減して、それで三兆円の住民税の移譲をなし遂げたわけです。地方税源を充実させようとやってきたのに、ここに至って、何の議論もしないまま、ほとんど議論しないまま、あっという間に都道府県の一番の基幹税である法人事業税の半分が国税の方に召し上げられてしまう。国税が調整をしてあんばいをするという、こんな情けない状態になろうとしているのであります。

 きょうは地方税法の問題ではありませんけれども、私はぜひお願いしたいのは、こんな地方分権を踏みにじるような地方税法の改正案にはぜひ反対を与党の先生方もしていただきたいと思います。

武正委員 水谷、菊池両公述人に、限られた時間、五分間でありますが、きょう、大田大臣が関係閣僚会議で、いわゆる景気判断の下方修正、一年三カ月ぶり、これを提出するということであります。

 サブプライムローンの影響は、日本の邦銀八行で七千億弱ということで、欧米に比べれば低い量でありますが、さりとて、特にアメリカの景気悪化、減速、これは日本に当然影響もあるということでありますし、いろいろな物価が次々に値上がりをしております。これは家計を直撃するのは必至であります。

 私どもは、そういった中で、暫定税率の引き下げというものは、特に消費者マインドにとって、確かに、二兆六千億円を厳密に家計と企業で分けて、その消費に与える効果というものを見ていくという経済学的なことも伺っておりますが、やはりマインドとして非常に効果があるのではないかというふうに私は思っております。

 また、税は国民が決める、代表なくして課税なしという民主主義国家本来の、ようやくあるべき姿に日本が近づいた今回の通常国会だと私は評価をしておりまして、ぜひ、この減税効果により経済を活性化するという考えについて、今の景気判断とあわせて、それぞれ、短いんですけれども、水谷、菊池両公述人に御所見を伺いたいと思います。

水谷公述人 今の景気は、下方修正は当たり前だと思います。私はもっと悪くなるだろうと思っております、それは余り細かくは申しませんけれども。

 その場合の対策としまして何が必要か。景気をよくするためには、物が売れればいいんですね。売れるためには、だれかが買わなければいけない。そこで、今先生おっしゃったように、個人が、消費者が買う、これが一番いいですね。あるいは、国が買ってもいいわけですね、公共投資はその代表ですけれども。公共投資をやる、あるいは減税をやるということによって、需要がそれだけ高まりますね。ですから、その分だけは赤字がふえる、赤字がふえるだけ需要が高まる。

 では、それだけ高まって、どれぐらいの効果になるか。これは、それによって収入がふえて買う、買った人のお金がだれかに回るからという、そういう波及効果はあると言われますけれども、現実にはそれほど大きいものではございません。それは、物がこれだけ余っていますと、波及効果はどうしても少なくなりますね。でも、このことは、やればやっただけの効果はあると私は考えています。だから、思い切りやれば思い切り効果があります。

 しかし、思い切りどれぐらいできるかといいますと、金額にしますとそれほど大きな余裕はないです。それによって下がっていくところの景気をどこまで支えられるかというと、微々たるものだろうと思います。その微々たるもののためにそれだけの減税をやった場合、それを取り返さなきゃいけないということをお考えになるかどうかという問題なんです。

 これは、取り返さざるを得ません。ということは、逆に言いますと、何らかの補てんをしないと事業ができないからです。それは、減税の分について何かの補てんをいたしますと、そのところでもとへ戻ってしまいます。

 こんなことをいつまでもやっていても、根本的な問題の解決にならないと私は思います。相当大きく減税をやれば別です。しかし、それは相当大きな赤字の増大になりますよ。

 本当にそこが許される段階へ来たのかどうかということを考えますと、もはや、そういう段階をはるかに超えちゃった、とてもできない。そんなことで全体の景気が動くほど日本経済は小さくはない、こんなふうに考えております。

菊池公述人 今の御質問についてでございますけれども、私は、おっしゃられた、特に減税の政策、それから、これが予算全体に対してどういうふうに影響を及ぼすかということについて申し上げたいと思います。

 まず、我々国民の身近な感触としては、何といっても、定率減税がこの二〇〇七年、八年度で全廃されました。これは三・三兆円の増税です、所得税としまして。そうすると、これはこれからじりじりと響いてくる。今ちょうど確定申告の時期ですね。これでまた戻りがなくなっちゃったなとか、そういうような実感として出てくるだろう。だから、これはやはり消費にとって非常に大きなマイナスになってくると思います。

 それから、先ほど御案内のサブプライムローンというようなことがございましたけれども、この影響は、直接的には、日本についての大きな原因としては、この構造改革の大きな問題点といいますか、はっきり言いまして財政上でも失敗だったと思うのは、極端に内需を抑え込んできたからですよ。

 今の日本経済はどうかといいますと、まさに、この構造改革が始まってからの数年間というのは実質的に、内需の拡大というのは、基本的には名目GDPの国内の需要の面ですが、これはむしろ減っている分も多いです。だから、結局企業は輸出せざるを得ない。輸出依存度というのは、もう既に一六・四%ぐらい、かつてのバブルとかその後ぐらいでも一〇%ぐらいでしたから。

 それで、結局、何か円安的な様相の中で、円安がある意味ではこのサブプライムローンを助長したこともあるんです、円トレーディングとか円キャリーと言われまして。だから、そういう中で極端にこの問題が向こうから来ました。そうすると、今度は円高になる。円高になって、これはやはり企業収益も落ちますし、その関連の需要が落ちていくと思います。ですから、そういう意味での大きい影響になる。

 それから、国民所得の面で、先ほど申し上げましたとおり、今、ではどうすべきかといいますと、やはり定率減税は戻す方が簡略でいいと思います。それから、もう一つは、住宅ローンの減税ですね。

 先ほども少し触れましたけれども、この住宅ローンについては、住宅ローンの借入額の、当初は二%を税額控除するというようなところからスタートしたんです。それが一%になって、今は〇・五%だと思います。それで、金額的に今大体五千億ぐらいだと思います。構造改革の中で、内需が抑制されている中で、唯一、実はこの住宅ローンというのは比較的伸びていたんです。これは底支えしていたと思うんですよ。それを徐々に、財政赤字だというので、どんどん縮小してきちゃった。財政政策の中に、税収を上げるような経済効果というのをどんどん減殺していっちゃった。だから、税収が上がらないんです。

 ですから、やはり住宅減税というものはもっと拡充すべきだと思います。私は、とりあえず、借入残高の二%ぐらいまでは戻す、それから、自分の住むところだけではなくて、別荘といいますか、あるいは貸し家でもいいんですけれども、そういう面での投資面まで見ていいんじゃないか。ちなみに、アメリカの場合はそれも見ておりまして、円にしまして大体六兆円、このぐらいの税の減免をしています。アメリカは結構そういうことをやっているんですね。

 それから、もう一つ申し上げたいことは、先ほど来の公共投資の効果ということですけれども、これについて、こういう視点でもっと考えるべきだと思うんですよ。公共投資を出す、あるいは、私は先ほど申し上げたようにもっと幅広い社会的共通資本のような形まで広げて考えるべきだという考えなんですけれども、そういうものに政府支出を出しますね。それに伴って、必ず一定の効果というのは出てくるんです。これを一年ないし二年、そしてそれが民需を喚起してくる。だから、重要なことは、公共投資とかそうしたものを出すときには、民間投資を誘引するようなインセンティブのものに集中すべきです。そこら辺のところをよく、きちっと焦点を絞るべきだと思います。

 そして、全体の税構造からいいますと、何といっても、債務との関係でいけば、債務の国民負担率というのは分子が政府債務、分母が名目のGDPですね、これを下げていくことが、一つの健全財政といいますか、財政指標の好転する見込みなんですね。

 今、政府の問題点は、名目のGDPをふやすような政策は全くとらずに、上の債務だけ落とそうとしているわけです。ついこの前から埋蔵金論争みたいなものがありましたね。結果的には、十兆円を、どこかから出てきて、そのうち九兆円で、たしか、既存の国債を回収する、買い戻すように国債整理基金に入れたと思うんです。

 しかし、本当にその十兆円近い、九兆円のものがあるならば、これによって景気対策をやればいいんですよ。景気対策をやれば、それによって景気が増加して、それで、結局、名目GDPがふえるんです。名目GDPをふやして、さっき言った債務の国民負担率、つまり、分母が名目GDPで分子が政府債務ですね。それで、政府債務の伸びよりも名目GDPの伸びが多ければ、当然この比率が下がりますね。これをしなければならないと思う。この辺のところが今の財政に非常に欠けているところではないかと私は思います。

 だから、そういう視点で公共投資とかそういうものも御審議いただいて、もっと経済全体、経済は生き物ですから。死に体じゃないんです、死に体で、数字ばかり合わせて、バランスを調整すればいいというものじゃないんです、言い方が厳しいかもしれませんが。そういう御配慮と御指導をいただけたらというふうに思います。

武正委員 最後には、公共投資も選択と集中だ、民間投資を誘引するようにというようなことでございました。

 ありがとうございました。

逢沢委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。

 最初に、片山公述人にお伺いしたいと思うんですが、先ほど、暫定税率の方の問題、期限が切れたときに、どうしても、地方として、鳥取で必要な場合には別な手だてをというお話がありましたけれども、どういうものをイメージしておられたのかなということを少し思いました。

 私も以前、石油コンビナートで、これは住宅地と全く違うところにあるわけですから、そこで災害が起こったときに、以前ですと、コンビナート用の消防車両その他が必要だったわけですね。ですから、かつて、法定外普通税としての、石油タンクの容量に着目した防災税を提案したことがありますが、これは残念ながら地方議会では否決されましたけれども、後に石災法という形でできていきました。

 今おっしゃった、例えば道路の場合、どうしても必要なものとなったときに、住民投票なりなんなりで住民的な支持が得られたときの場合になりますけれども、法定外普通税のようなものによって、これは総務省が認めないとうまく実現できないかとは思いますけれども、そういうことによってもやり方はあるんだというお考えを何かイメージされたものがあって言っておられたのかなと思ったんですが、最初にそれをまず伺いたいと思います。

片山公述人 先ほど私が申し上げましたのは、暫定税率が仮に下がりますと、例えば都道府県でいいますと、軽油引取税が減収になります。それから、自動車取得税が減収になります。市町村も県も、地方道路譲与税が減収になります。そうしますと、今までそれを当て込んでいて道路事業を目いっぱいやろうとしていたのができなくなる。

 さて、そこでどうするかという話になって、例えば福祉や教育からそれを、福祉や教育にしわ寄せをして、そこから財源を持ってこなきゃいけなくなったら困るでしょう、そういう論法が今あるんですけれども、そうじゃなくて、本来ならば、道路特定財源が落ちれば、例えば国庫補助金が落ちたときに事業をやめるのと同じように、道路事業もその分だけやめたらいいんです。民主党の皆さんは、何か税率は下げるけれども事業だけはやらせてあげるというのは、これはやはりおかしいんです。両方とも下げるのがバランスであります。

 ただ、そのときに、いや、うちは絶対これはやらなきゃいけないんだというところもあるかもしれません。これはやめたら本当に、すべてやめたら困るというところが万が一あるかもしれません。そういうところは新たな課税をしたらどうですかという話をしたんです。

 それはどういうことかというと、ちょっと繰り返しになりますけれども、ガソリン税が下がっていますから、特に田舎の方は、一軒に二台あったりすると、暫定税率を下げる減税の効果があるわけですね。そうしたら、担税力があるわけです。そうしますと、住民の合意を得てからでありますけれども、例えば、私が描いているのは、個人住民税の超過課税をしたらどうですかという一つの案があるわけです。

 個人住民税の超過課税というのは、今、青天井になっています、個人住民税は。もちろんそれは非常に難しい面はありますけれども、本当にその道路が必要で、本当に役所だけじゃなくて住民の皆さんも必要だと思っているならば、その個人住民税の超過課税に同意するはずなんですね。もし、超過課税を提案したときに、いや、もうそれは要らない、増税してまで要らないと言ったら、実はその道路事業は本当に必要なものではなかったという検証ができるわけです。

 私はなぜこんなことを言うかといいますと、地方自治体は今財源難だとか格差だとかと非常に言われていますけれども、本当に今やっている歳出がぎりぎりのものかどうかという検証を実はよくやっていないんです。あれも要る、これも要ると言って、お金が足らないと言っているんですけれども、本当にそれが住民の皆さんにとって欠くべからざるものなのかどうかというのは検証していないんですね。

 本当は、税率を上げ下げして、ことしはこういう道路事業をたくさんやるから税を上げさせてもらえますかというようなプロセスがあれば、そこで、ああ、結構です、本当に必要な道路ですねと言えば、これは住民合意があったことになる。いや、やめてください、税率はそんなに上がらない方がいい、道路も要らないと言えば、それはそのままになるわけですね。実は、これが本当の意味の地方自治の作業なんです。これを欠いたままの我が国の地方自治というのは、実はいびつな地方自治なんですね。

 今回、暫定税率がもし下がったときに、こういう作業というものがあり得れば、私は日本の地方自治というのはもっと活気が出るんだろうなと思いますけれども、いかんせん、今、四月からのことで、さあ、やれといっても、それはもう無理ですから。そんなことも考えると、去年の四月になぜやらなかったのかということが問題になってくるわけです。

吉井委員 片山公述人には、私、二つのやり方、固定資産税の場合だって、担税力のある場合に超過課税という道があるわけですし、今おっしゃったその超過課税の道と、もう一つは法定外普通税というもので考えていくことかなということで伺った次第です。

 続きまして、石油諸税もそうですけれども、要するに、課税客体に着目して名前がついておるわけですね。しかし、本来はそれは必ずしも目的税として使わなきゃいけないというものじゃないわけで、名前のついたものは、例えば酒税でいえばアルコール中毒対策に使っているかといったらそうじゃないわけですし、たばこ税が肺がん対策でもなければ、地方税の固定資産税が耐震強化のために使っている、そういう目的税じゃありません。あくまでも、いろいろな名前がついているのは、課税客体に着目しているからたまたまそういう名前がついているだけで、税は、基本的には一般税として、そしてその使い方は、優先順位に合わせて政策的に選択していく、しかもそれはやはり地域住民の要望から出発して決めていく、本来そういうものではないかと思うんです。

 先ほどのお話を伺いながら、大体そういうお説なんだなというふうに感じたんですが、改めて伺っておきたいと思います。

片山公述人 税制、財政の基本的考え方は、今おっしゃったとおりであります。税というのは、一般的な財源を確保するために一般的に取る、これが税制の基本であります。

 ただし、特別な事情がある場合、それは特定の人から特に高い税率を取るというようなケースがありましたときに、やはり国民の間、住民の間に不公平感が生じますので、そういうときに、その税制がスムーズに運営されるためには、ある特別の仕掛けがあるということもあり得るわけです。それが、例えば、特定の人から取っているんだから、その特定の人に恩恵、行政サービスが施されるような、そういう仕組みにしましょうというのが目的税であったり特定財源ということになるのであります。

 それは、一般論としては例外的にはあり得ますけれども、道路の場合、これはもうさっき言いましたように、実質的な負担者は国民ほとんどでありますから、そういう中で特定財源にするというのは根拠がないだろうと私は思うのであります。

吉井委員 次に、菊池公述人にお伺いしたいと思います。

 私も、一番最後におっしゃった点、経済財政諮問会議にしても、実質的に国民に選挙で選ばれたわけでもないし、国会が選んだわけでもないのに、しかし、これは日本の経済財政の事実上の司令塔の役割になってしまって、おかしいことをやってみたりとか、この間も予算委員会でやりましたけれども、その議員の方が、経済財政諮問会議では、随意契約はだめだと公正競争を言いながら、自分は、大分キヤノンの進出地では、大分県に対して鹿島建設に随意契約で入れてくださいとお願いしている文書を出したりとかやっているわけですから、やはりこれはおかしいと思うんですね。それから、それは規制改革でも一緒で、主張している方が改革利権と言われるような方向に走ったりとかがあります。

 この機会にお伺いしておきたいのは、混合診療の問題ですね。これは非常に大きな問題になっていると思いますから、この点についての規制緩和というものがどういう問題をもたらしているかということと、本来こういうものは、やはり国会が全くかかわりのないところで勝手につくって、勝手に主張して、勝手なことをやっていくのはおかしいという点についてのお考えを改めて伺っておきたいと思います。

菊池公述人 経済財政諮問会議の件でございます。

 私は、本当にこの数年間、こういう超国会的な機能が政府にあるということに対して、大変疑問を持っておりました。

 まさに今先生がおっしゃられたとおり、基本論を言えば、我々が選挙で選んだのは国会議員の先生方なので、その先生方の審議が国民の代表をする審議なんですね。ところが、内閣府の新しい法律で経済財政諮問会議というのをつくって、しかもその委員、これは、問題点は、まず第一に、首相がその議長であるということ。それから同時に、委員の方に民間委員の方がいらっしゃる。あとは大臣の方がいらっしゃる。この民間委員の方は、首相が自分で選ばれて、別に国会、先生方の承諾を得たものではありません。

 しかも、その前の前提で、今混合診療のお話が出ましたけれども、これについてなんかは、もともとは、これが出たのは、御存じだと思いますが、一九九三年の宮沢・クリントン会談で、九四年から対日要望書というのが送られてきたんですね。その関係で、それをある程度こなすというか、審議していくのが前提だったんじゃないかと思うんですが、一九九四年に対日投資会議とか、規制の民間開放会議というのができて、それから、二〇〇一年には、小泉さんになってから日米投資イニシアチブ。そこの委員も、これももちろん首相が選んでいますから、国会の信任は得ていません。

 そういう人たちがそういうものを検討して、これを諮問委員会に持っていく。そうすると、諮問委員会が決めちゃうわけです。それが首相のところに行っちゃうと閣議決定しちゃう。だから、国会審議を全く経ていないものがひとり歩きしちゃうという大変怖い現状ですね。

 だから、本質論として、超国会的なものというのは独裁に通じますから、これはぜひ私は法改正をして廃止していただきたい。

 同時に、そういう審議のような、いろいろな要望書とかがあるでしょう、それは国会の中の議論、国会の中に委員会をつくる等で、そこの中できちっと対応していただくのがいいと思います。

 それから、混合診療の問題が出ましたが、混合診療の問題について、第二次の改革みたいなものが去年の十二月に出ましたね。それで、これも大きく新聞には出ないんですけれども、たしか朝日新聞だったと思いますが、小さいところに、第二次改革が出て、それを閣議に持っていった、そうしたら福田総理が最大限尊重しますと言われたと。待てよ、国民のみんなの信任を得ていないものを、しかも混合診療なんという大きな、我々の健康にかかわるものを全く審議も経ないで、おかしいなと思ったんですね。

 この混合診療について私の疑問を申しますと、私は、混合診療の全面解禁には反対です、全面的に反対です。どうしてかというと、日本の医療制度の国民皆保険を崩すことになるんです。

 それで、アメリカからの要求というのは、これははっきり書面に出ていますけれども、一つは、混合診療を全面自由化しろ、それからもう一つは、それに伴って、政府の保険に対する支出をカットしろということを言ってきているんですね。

 ですから、混合診療というものをもっと幅を広げて認めようということになると、財政支出が厳しいとかなんとかいう口実のもとに、結局、医療に対する国庫の支出金、これをカットされるさらなる理由づけになると思います。ですから、まさに混合診療というのは大きなわなですね、私の言葉、私は文芸春秋に書きましたからこの場は使いますけれども。

 ですから、これは先生方に本当にお願いしておきたいんです。やはり国会の審議で、先生方がきちっとこういうものを審議していただきたい。それでやって、こういう混合診療も、私は全面的に反対です。現在でも一部はできるんですよね、例えば差額ベッドだとか。その程度のものを限定的にやるならいいですけれども、これをもっと全面的に自由化するようなことがないように、これは私のお願いでございますし、しかも、基本的に経済財政諮問会議の根幹的な流れでこういうものが、今申しましたように、自由に、国会の皆さんの審議を経ずに来ている。大変危機を感じております。よろしくお願い申し上げます。

吉井委員 どうもありがとうございました。

 時間が参りましたので、終わります。

逢沢委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日は、四人の公述人の方それぞれに、濃い内容で、大変に聞きごたえもございましたし、残念なことに私の質疑時間は十分なので、ちょっと早口で、足早で教えていただきたいと思います。

 まず、相馬市長の立谷公述人にお願いいたします。

 実は、この公聴会の二日ほど前に地方公聴会というものを、宮崎の方に参りまして、延岡市長からお話を伺いました。東九州自動車道が大変に立ちおくれているというお話と同時に、私の方から、いわゆる交付税交付金が三位一体改革の中で大幅に減じられた、先ほど片山前知事もお話しでしたが、市町村にとって交付税交付金が大幅に減額されたことで最も影響を受けたことは何ですかとお伺いいたしましたら、小学校の耐震構造がきちんと裏打ちできないと。

 たまたま、きょうも公述人のお話の例の中に、尼崎市の白井さんという市長さんが、やはり子供たちの学校の耐震構造のことが立ち行かないと。これはやはり本当に可及的速やかでないと、アスベスト問題も耐震問題も、一刻の猶予もならないと思うんです。

 さて、相馬市にあっては、この交付税交付金減、三位一体改革、結果的に減でございましたから、そのことの一番懸念される影響とは何でございましょうか。

    〔委員長退席、遠藤(利)委員長代理着席〕

立谷公述人 財政をやっておりまして、交付税交付金の減少というのはやはり非常に苦しい状況でございました。しかしながら、耐震構造等々の問題については、やはり苦しくてもどうしてもやらなきゃいけないことなんですね。したがいまして、やはりトータルで考えて、全体の財政運営の中で、削るところは削る、やりくりをしながら、必要なことはやらなきゃいけませんから。ですから、何が苦しいかと言われても非常に困るんですけれども、それは全体的な行革の苦しみですね、乾いたぞうきんをもう一回絞るような。

 参考になるかどうかわかりませんけれども、今、私の市長交際費は年間百万円でございます。そこまで落とさないとやっていけないような、そういう苦しみの中で、それでもやらなきゃいけないことはこれはどうしようもないですから、どうしようもないというか、断行するということで対応してまいりました。

阿部(知)委員 やらなければならないところは、カットしなくてはならなくても、そのために医療や安全というところが影響を受ければ、これは元も子もないということになります。

 きょうは、実は、限られた時間で、本当は立谷公述人に、私はずっとこの論議の中で、とにかく道路か医療かという選択をさせないでくれということを申しております。

 さっき、福島医大に運ぶ救急道路のお話も出ました。それは全く否定しません。そして、ちょうど市長がやっておられる相馬の公立病院、ここがまた地域の基幹病院として、小児科もおられるし、心臓血管関係もやっておられる、脳外科もやっておられる。二次としては本当に頑張っておられて、しかし同時に、そこの院長さんも、お医者さんが十八人くらいでしたか、あと五人か六人いてくれたらもっと地域、頑張れるのにと。もうこれはどっちも悲鳴なんだと思うんですね。

 ここは、午前中もお願いしましたが、委員長に、ぜひ医療についても公聴会をやっていただきたい。

 私は先ほど、市長のお話を聞きながら、とてもいらいらした感じで、でも道路もなければ二次も、その後三次に送れないからとおっしゃったときに、地方の窮状というか、私も医者ですからよくわかりますが、今、医療現場は、本当に去るも地獄残るも地獄のような中で、でも、これもやらにゃならないというところでみんな踏ん張っています。私は、ここにやはり政治が光を当てるということをやっていただかないと、何か道路問題というのは、本当に、救急で運ぶ先、運ぶ道路と言われたって、それじゃ何かおかしいとすごく思いますので。

 ごめんなさい、時間の関係で、本当は御答弁をいただかねばいけないんですが。では、どうぞ一言。

立谷公述人 済みません。

 先生のおっしゃることも何か理解できるような気はいたしますけれども、地方の病院の置かれている状況、特に二次救急病院あるいは基幹病院の置かれている状況というのもひとつ御理解いただきたいんですね。大都市にはそのような問題はないとは言いませんけれども、我々地方に比べたら少ないと思います。しかし、地方の医師不足は深刻でございます。

 もう一つ医師不足が深刻になった原因があるんですが、私が医者になった三十年前はそれほどやかましくはなかったんですね。外科の先生が手術の麻酔をかけてくれました。今はそういうことができないんですね。どんどんどんどん専門科に分科していきまして、また、そういうふうにしないと患者さんからのクレームに耐えられないんですね。非常に窮屈な時代になってきております。

 そういう中で、昔だったら、十年前、二十年前だったら医者の気持ちだけで診療できたんですけれども、今は体制が伴わないと診療することが非常に厳しい時代になってきております。

 相馬市の医師なんですけれども、今、産婦人科で、手術のミスでもって逮捕されるという事件を抱えておりまして、私の親戚でございますので大変憂慮しているんですけれども、そういう状況の中で、萎縮診療を余儀なくされるんですね。萎縮診療というのは、医者の良心に基づかない、妥協ですから。しかし、せざるを得ないような状況が生まれてきています。そうなったときに、やはり、専門の設備のある、スタッフのある、知識のある、そういう病院を求めざるを得ない状況になってきているんですね。

 ですから、道路がなければ医療ができないということは、それは多分極端な話かもしれませんけれども、そのような状況がないと地方の二次救急病院の医療をサポートできない、そういう事情もあるんですね。このことはひとつ御理解いただきたいと思うし、三次救急も、本当に高次医療のできる病院というのは限られている。

 福島県なんというのは県土が非常に広いですから、そのような広い県土の中で、患者さんがぎりぎりの状態でここまでやれたんだ、最善のことができたんだ、そういう医療体制というのはやはり必要になってくるということをひとつ御理解いただきたいと思います。

 以上です。

阿部(知)委員 本当に現場の切実な声だと承ります。

 続いて片山前知事にお願いしたいですが、私は、今の日本の社会が最も負担を与えている、先送りしているのは、子供たちの問題と、もう一つ、やはり環境、これも未来の子供たちの問題だと思うんです。

 逆に、分権化ということを片山さんが何度も繰り返しおっしゃってくださいましたが、その分権化していくときに、実は、エネルギーの分権化、その地域地域で地消地産というような意味での自然エネルギー問題というのは、私は、分権化のもう一つの横軸になるのではないかと。

 きょう、片山前知事のお話は、みんながいろいろ聞いてくださったので、あと一点だけ。

 私としたら、これからの少子高齢社会が、本当に分権型の社会で生きていけるために、エネルギー政策における分権化を日本はドイツのようにもう一つも二つも進めるべきだと思いますが、そのあたりを、ちょっと飛んで恐縮ですが、お願いいたします。

片山公述人 それは本当に重要だと思います。

 今、話がちょっと飛躍するかもしれませんけれども、我が国の中山間地というのは極度に疲弊してきているんですね。私がおりました鳥取県もそうなんですけれども、かつては、中山間地というのは、実は日本のエネルギー供給基地だったんです。薪炭ですね、薪とか炭とか。それが、エネルギー革命でもう役に立たなくなって、その後、林業なんかも非常に衰退してきたんです。

 今日、これだけ石油が払底するといいますか、価格も高騰し、それから埋蔵量も限りがあるということになりますと、もう一回見直しをするということが必要だろうと思うんですね。そのときに、最新の科学でもって、木質バイオマスなんというのを私も手がけましたけれども、中山間地の振興とともに、我が国のエネルギー政策を考える上での一つの活路になるんではないか。

 あとは、自然エネルギーとして、これは鳥取県でも随分やりましたけれども、風力発電とかそんなことは、これから各自治体で取り組んでいくべき課題だろうと思います。

 それから、もう一つは、観点が違いますけれども、地産地消ということをさっきおっしゃいましたけれども、できるだけ食料というのは身近なところで安心できるもの、目の届くところから調達するというのは、これは基本だろうと思うんですね。どこから来ているかわからない、しかも、どういう関係があって、何が起こるかわからない、外国の例えば労働紛争だとかそういうところまで懸念しなければいけないというのは、これは本当に難儀なことだと思うんです。それよりは、身近なところで、目の届くところで調達できるということだと思うんですね。

 これをこれから本当に進めるべきだと思います。それは、例えば輸送コストを非常に削減することになります。軽油を使ってトラックで遠方まで運ぶということではなくて、身近なところで調達できるということですから。限界はありますけれども、こういうことは大いに自治体の政策として取り組まれるべきだろうと思います。

阿部(知)委員 残るお二方には、ごめんなさい、時間の使い方で、質問できませんでした。でも、いいお話をありがとうございました。

 終わります。

遠藤(利)委員長代理 次に、糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 公述人の皆様方には、大変貴重な御意見をいただきましたことを、まずは御礼申し上げます。最後の質疑者でございますので、また忌憚のない御意見をいただければと思います。

 まず、菊池公述人にお聞きしたいと思いますが、菊池公述人、きょうの資料の中に、「大増税が医療・年金を破壊する」、こういう資料をいただきまして、先日、私は予算委員会で舛添大臣に、これからの福祉を安定させるために安定財源は何を求めますかという話をしましたら、やはり消費税というお話をされたわけです。

 そこでお聞きしたいんですけれども、社会福祉関連支出のために、今、消費税を引き上げる、こういう構想が出てきております。これをどのようにお感じになっていらっしゃるか、まずお答えいただきたいと思います。

菊池公述人 今御質問ございました、将来にわたっての福祉財源をどう持っていくか、これは大変大きい問題だと思います。

 私はこう考えております。現在、消費税を上げる環境にはないし、必要はない。

 それは、最初に申し上げたいことは、まず、先ほども、公述のときにもちょっと触れましたけれども、現在、社会保障基金にはほぼ二百六十兆の積立金がございます。これは我々国民の拠出金でございます。アメリカなんかだとこれは税収なんですけれども、しかし、日本は別勘定になっております。それがある。それからもう一つ、やはり外貨準備金がございますでしょう。この外貨準備というのは、今大体百十兆ございます。

 ともに、その運用益だけを見ても、例えば社会保障基金の場合でしたら二百六十兆、一%ですと二・六兆ですね。通常は大体三、四%ありますから、少なくとも七、八兆というのはすぐ出るんです。それから、消費税というのは一%増税いたしますと二・五兆円の税収がふえます、これは地方税も入れまして。そういたしますと、社会保障基金の運用益だけで消費税の大体三、四%は出るわけですね。

 それから、外貨準備金の運用益、これもようやく国会でも話題になったようでございますけれども、これだけでも、現在、財務省の発表では三・四兆円ぐらいあるだろうということになります。だから、そういう我々の蓄積ですね。

 それから、外貨準備金について、もう一つ皆さん御留意いただきたい。御存じと思いますけれども、これはもともと、一九九九年九月までは、日本銀行が政府の短期保証債を引き受けて、それで外貨準備していたんですよ。ところが、一九九九年の十月から政府の短期保証債は市場で売りっ放しなんですね。だから、現在はどうなっているかというと、政府短期保証債というのはざっと百兆あります。これは全部、国民の預金が結局外貨になって、七、八割ぐらいはアメリカの国債買い、そういうことになっている。つまり、アメリカの国債に化けているわけですね。だから、先ほど来私は、原資は幾らでもある、だから経済を拡張しろというのはそういう面もあるんです。

 社会保障に区切って申し上げますと、そういう社会保障の積立金だけで消費税の数兆円のものは出るわけですよ。ですから、現在、国民がこれだけ苦労しておりますし、それから、大体、可処分所得でも九年間マイナスですから、そういうところに増税をする必要はない。

 それからもう一つは、先ほど来私は、公述のときに、経済はもっと活性化すべきだというふうに申し上げましたね。毎年大体五兆から六兆円、社会共通資本といいますか、そういったものにもっと公共投資を使って、民間投資を誘引すべきだ。そうしますと、名目GDPというのは、私のシミュレーションでは五、六%いきます。二〇〇八年度予算では二%いくかいかないかですよ。恐らくことしは、二〇〇八年、私はいかないんじゃないかと思う。つまり、財政資金を使わなければせいぜい二%前後しかいかないんです、名目GDPは。この点はもうはっきりしています。そういう数字を出した人もたくさんいらっしゃいます。

 したがって、財政資金をもっと使って、それによってある程度、社会的共通資本といいますか、道路財源とかそれだけじゃなくて、幅広く、さっきから出ていますね、教育の問題も出ています、医療の問題も出ています。医療といっても、単に医療費をふやすだけじゃありません、関連のいろいろな支出がありますからね。雇用を増加させる、あるいは新しい機器と設備を投資する。あるいは病院だって、今老朽化しているものを建て直したっていいわけです。そういう社会保障を展望したような形で経済を活性化していければ、名目GDPというのは五、六%はもう出るだろうと思います。

 そして、そういうふうにしていきますと、こういうことが言えるんですよ。社会保障基金については、厚労省が二〇二五年までこれだけ伸びますよと言っている。これは計算してみますと、毎年ほぼ一兆円、毎年度一兆円ずつ伸びるということになる。毎年一兆円ぐらいの増加であれば、これは実は、経済を活性化すればその中で処理できると私は思います。

 それからもう一つは、消費税を直接社会保障にぶつけるべきだという意見がありますね。これは、私はむしろ消極的なんです。どうしてかといいますと、そうしますと逆に、社会保障支出といいますのは、景気に余り変動はないわけです。必ず、アップアンドダウンなく、一定の増加とか、ある程度必要です。

 ですから、問題は、景気がよくなって消費税が上がった下がったということになりますと、それによって医療費を抑えることにもなりますから、むしろ医療費とか社会保障費を抑える要因に使われるのではないか。だから、私は、消費税を直結する考えではなくて、経済をもっと全般的に活性化してその中で処理する方がずっと範囲も広くなる、こういうふうに考えております。

    〔遠藤(利)委員長代理退席、委員長着席〕

糸川委員 ありがとうございます。

 時間の関係で、あと一問お聞きしたいなと思っているんですが、今の菊池公述人のお話ですと、非常に未来が明るいように聞こえるんです。

 ただ、それでも地方と都市部との格差というのが広がっていまして、私は一貫して今回聞いているんですが、地方の陳述人の皆様にもお聞きしました、そして本日の午前中もお聞きしたんですけれども、菊池公述人、あらゆる面で今格差が生じているわけですけれども、特に所得格差とか、都市部と地方との、例えば若年層の方々の所得の格差でもいいんですが、これにどのように対処をすべきだというふうにお考えでしょうか。

菊池公述人 基本的に、私は、先ほども公述で申し上げましたとおり、この十年間、日本は名目GDPが伸びておりません。したがって、経済規模が全く伸びない状況になってしまっているわけです。結果的に経済規模が一定の速度で伸びていく、常識的な姿で二、三%、少なくとも三、四%伸びていくような、ほかの先進国並みの成長であれば、その中でいろいろな、教育費だとかそれから医療費だとか、こなしていかれるわけですね。だけれども、それは全然伸びていませんから。むしろ減っています。その上、地方交付税交付金を、先ほど申し上げたとおり、この七年間で三十六兆円、地方に本来、二〇〇〇年度をベースにすれば支給していたものを支給していないわけです。ですから、地方というのは非常に疲弊してきているんです。

 だから、まず、予算面というか、経済効果からいいますと、こういうことが言えるんですね。地方交付税交付金というのは、もともと地方の方々はよく働いて貯金されます。そうしますと、貯金するから地方の銀行というのは貯金が多くなるんです。地方で使い切れませんから、そのお金を実は中央の銀行にコールマネーとかあるいは債券の購入で振り向けているわけです。中央の銀行、東京とか大阪、その都市部の銀行が、そこにある大手企業なんかに貸す。だから、当然所得とか法人税は都市で上がるわけですね。

 そうしますと、もともとその原資は地方から来ているから、その上がった所得を地方に戻すべきだ、そして資金を循環させよう、そういう経済効果もあったわけですよ。地方交付税交付金というのが制度化されましたのは一九四三年、戦争中ですけれども、それが戦後も続いた。それが、非常に資金循環のうまくいった、大きな効果なんですね。

 それを、先ほど申し上げましたとおり、一挙に二〇〇一年度から削減してきた。だから、地方は、お金は中央に召し上げられちゃうわ、戻りもないわ、これは干上がっちゃうのは無理ないですよ。ですから、雇用機会もない、経済的な新しいものも出ない、デフレの加速ももっと進んじゃう、そういう状況なんですね。

 ですから、まずここら辺のところにメスを入れて、地方交付税交付金というのは、はっきり言えば二〇〇〇年度前に戻すべきです。それは、さっき言ったように、経済を拡張して、戻していくべきです。そういうことによって、医療費だとか教育費だとか、そういうものに対する支出というのは当然出てくるわけです。

 それからもう一つ、格差が大きいのは、先ほど来お話が出ていますが、私は教育だと思います。やはり教育、国公立の教育の施設とか、図書館の話も出ましたね、そういうものに対する支出は物すごく落ちています。それから、教育の資料を先ほど見ていたんですが、先進国の中で、何しろ日本はもう最下位に近いですよ。恥ずかしいことです。日本という国は、はっきり申し上げれば人材しかないんですから。ですから、そういうものに対する支出をもっと出すべきだと思います。

 それから、あとは何といっても、雇用機会というのは、経済の規模を拡張することです。拡張しないから雇用の機会がない、結局フリーターしかない、パートしかない、だからこういうような格差がどんどん広がっていくということなんですね。

 ですから、原点に戻りますけれども、根本的に財政政策から見直していただかなければ絶対だめです。これは、私は、本当に数字の上ではっきりしておりますので、ぜひこの点をお願いいたしたい。そして、この格差はそういう面からまず解消する方向、それをぜひ、この際、皆様方にお願い申し上げたいと思います。

 どうもありがとうございました。

糸川委員 質疑時間が参りましたので、質問を終わらせていただきます。

 きょうは、大変貴重な意見、ありがとうございました。

逢沢委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。

 公述人の先生方各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきました。まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして心より厚く感謝を申し上げます。(拍手)

 以上をもちまして公聴会は終了いたしました。

 次回は、来る二十五日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時十六分散会


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