衆議院

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第2号 平成18年3月1日(水曜日)

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平成十八年三月一日(水曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 松岡 利勝君

      安次富 修君    伊吹 文明君

      遠藤 宣彦君    大野 功統君

      河井 克行君    高鳥 修一君

      福田 良彦君    大串 博志君

      小宮山洋子君    高山 智司君

      細川 律夫君    森本 哲生君

   兼務 北橋 健治君 兼務 神風 英男君

   兼務 原口 一博君 兼務 斉藤 鉄夫君

   兼務 谷口 和史君 兼務 福島  豊君

   兼務 桝屋 敬悟君 兼務 塩川 鉄也君

   兼務 照屋 寛徳君

    …………………………………

   国務大臣

   (内閣官房長官)     安倍 晋三君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 沓掛 哲男君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      額賀福志郎君

   防衛庁副長官       木村 太郎君

   防衛庁長官政務官     高木  毅君

   衆議院事務総長      駒崎 義弘君

   最高裁判所事務総局総務局長            園尾 隆司君

   政府参考人

   (内閣官房皇室典範改正準備室長)         柴田 雅人君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  松井 房樹君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  荻野  徹君

   政府参考人

   (内閣法制局第一部長)  梶田信一郎君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   東  良信君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   林  幹雄君

   政府参考人

   (内閣府沖縄振興局長)  藤岡 文七君

   政府参考人

   (宮内庁次長)      風岡 典之君

   政府参考人

   (警察庁長官官房長)   安藤 隆春君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  竹花  豊君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    縄田  修君

   政府参考人

   (警察庁交通局長)    矢代 隆義君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    小林 武仁君

   政府参考人

   (防衛庁防衛局長)    大古 和雄君

   政府参考人

   (防衛庁運用局長)    山崎信之郎君

   政府参考人

   (防衛施設庁長官)    北原 巖男君

   政府参考人

   (防衛施設庁施設部長)  渡部  厚君

   政府参考人

   (防衛施設庁業務部長)  長岡 憲宗君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    小貫 芳信君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 梅本 和義君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 梅田 邦夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房国際社会協力部長)        神余 隆博君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文教施設企画部技術参事官)  舌津 一良君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局スポーツ・青少年総括官)          西阪  昇君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           和泉 洋人君

   政府参考人

   (国土交通省自動車交通局次長)          松尾 庄一君

   安全保障委員会専門員   三田村秀人君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君

    ―――――――――――――

分科員の異動

三月一日

 辞任         補欠選任

  伊吹 文明君     安次富 修君

  大野 功統君     福田 良彦君

  大串 博志君     高山 智司君

同日

 辞任         補欠選任

  安次富 修君     篠田 陽介君

  福田 良彦君     遠藤 宣彦君

  高山 智司君     田嶋  要君

同日

 辞任         補欠選任

  遠藤 宣彦君     大野 功統君

  篠田 陽介君     高鳥 修一君

  田嶋  要君     小宮山洋子君

同日

 辞任         補欠選任

  高鳥 修一君     伊吹 文明君

  小宮山洋子君     森本 哲生君

同日

 辞任         補欠選任

  森本 哲生君     近藤 昭一君

同日

 辞任         補欠選任

  近藤 昭一君     大串 博志君

同日

 第三分科員北橋健治君、第四分科員神風英男君、原口一博君、塩川鉄也君、第五分科員斉藤鉄夫君、福島豊君、第六分科員照屋寛徳君、第八分科員谷口和史君及び桝屋敬悟君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十八年度一般会計予算

 平成十八年度特別会計予算

 平成十八年度政府関係機関予算

 〔国会、内閣及び内閣府所管(警察庁、防衛庁)〕


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     ――――◇―――――

松岡主査 これより予算委員会第一分科会を開会いたします。

 平成十八年度一般会計予算、平成十八年度特別会計予算及び平成十八年度政府関係機関予算中内閣府所管について審査を進めます。

 防衛庁について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。安次富修君。

安次富分科員 おはようございます。弥生三月、春の声は聞けども、沖縄県民にはまだ寒い毎日が続いておりますが、早く沖縄県にも春の声を聞かせていただきますよう、防衛庁長官の特段の御配慮をお願い申し上げます。

 私は、さきの総選挙で沖縄から衆議院議員に初当選させていただきました安次富修でございます。

 きょうは、予算委員会第一分科会ということで、特に防衛関係の諸問題について沖縄の目線から質問をさせていただきます。特に、先輩議員の皆さんから、この分科会というのはできるだけ選挙区に密着した、地元のことを聞いた方がいいよというアドバイスも受けておりますので、多少細かくなるかもしれませんが、誠意ある御答弁をよろしくお願い申し上げます。

 さて、戦後六十年を経て、今ようやく普天間が動こうとしております。私は、普天間で生まれて普天間で育った人間でございます。今日まで一センチたりとも動かなかった普天間が、ようやく今、この日米再編協議の中で、どんなに基地反対を訴えても動かなかった普天間がようやく動こうとしております。ここまで六十年、六十一年かかっております。ぜひ、この時間の重みというものを御理解いただきたいと思っておりますし、沖縄に残る、沖縄ゆえに残った問題というものが山積しておりますので、ぜひ特段の御配慮をお願い申し上げます。

 それでは、質問をさせていただきます。

 まず、普天間基地の移設問題について。昨年十月末の2プラス2の中間報告によって、普天間基地の移設先として名護市辺野古地区におけるキャンプ・シュワブ沿岸案が政府から提案されておりますが、地元の頭越しに決定したことに対して、地元から反対の声が上がっているというのが現状であります。名護市の島袋新市長も、沿岸案に対して受け入れられないという意思を表明しております。地元に対する丁寧な、粘り強い説明がきちんとなされているのか。地元の理解と協力なくして移設が進むことはあり得ないと思うのですが、政府として今後どのように地元との調和、理解を図っていくつもりなのか、お聞かせいただきたいと思います。

北原政府参考人 御答弁申し上げます。

 今先生御指摘のとおり、普天間の飛行場移設につきましては、日米間で、運用上の能力を維持しながら、また住民の生活環境や自然環境に対する影響などを考慮いたしまして、普天間飛行場の返還を加速できるような多くの選択肢を検討してまいりました。そして、その結果といたしまして、先生御指摘の2プラス2の共同文書におきまして、代替施設をキャンプ・シュワブの海岸線の区域とこれに近接する大浦湾の水域を結ぶL字型に設置するといった具体案が示されたものでございます。

 この案につきましては、私ども、沖縄県知事、また名護市長さん初め地方公共団体の首長さんに対しまして、十月二十九日の2プラス2共同文書発表直後、これには私自身がお伺いして御説明をさせていただきました。さらに、十一月には、額賀防衛庁長官みずからが沖縄へお伺いいたしまして、知事さん初め多くの首長さんとお話をし、御説明をし、御理解を求めたところでございます。さらに、ことしになりまして、二月には、沖縄県、また名護市等に対しまして、飛行ルートや騒音コンターなどを含めまして御説明をさせていただいているところでございます。

 先生御指摘のように、今日までなかなか厳しい状況ではございますけれども、私ども政府といたしましては、先生御指摘のとおり、地元の皆様の御理解と御協力、これが何よりも肝要と考えておりまして、最終的な取りまとめに向けまして、これからも一層、誠心誠意御説明をお伺いし、建設的な話し合いに努めてまいり、御理解と御協力を得たい、そのように考えているところでございます。

安次富分科員 ありがとうございます。

 額賀防衛庁長官も、特に、島袋新市長が誕生して以来、一カ月余りになりますけれども、地元の理解を得るために相当の御努力をしているということもお聞きしておりますが、先日の安全保障委員会でもお聞きいたしましたけれども、いま一度、額賀長官のこの問題に対する決意を述べていただきたいと思います。

額賀国務大臣 今安次富委員御指摘のとおり、私も長官に就任して直後に沖縄に参りまして、知事を初め関係市町村長さんと直接にひざを交えて話をいたしました。その後も、公式、非公式にいろいろと意見交換をさせていただいておりますし、それから、中間報告に基づく日米の交渉が進展していることについては逐一報告をさせていただいております。と同時に、関係市町村長さんからいろいろな質問が来ておりますから、そういうことについては丁寧にお答えさせていただいているということでございます。

 この問題は、もう委員御承知のとおり、二十一世紀初頭、日本の安全と日米同盟関係のあり方が問われる非常に重要な課題でございます。そういう大局観に立つと同時に、沖縄県に米軍基地の全体の七五%が集中しているという現実的な沖縄県民の負担を最小限にしていく、そういう努力の過程であるという認識のもとに、この日米再編をきっちりと成功させていく中で、日本の安全保障と沖縄の負担を継承していく。そしてまた、その象徴的な形として普天間の全面返還を委員御指摘のようにきっちりとなし遂げていくために、最大限の努力をしたいというふうに思っております。

安次富分科員 普天間を動かすことが沖縄の政治の安定、そして経済の発展の基礎につながりますし、それがひいては国家の安全保障に寄与する、アジアの平和と安定に寄与するということを、私も信念を持っているつもりでございますので、ぜひ額賀長官の時代にこの歴史的大事業をなし遂げていただきますよう強くお願いを申し上げます。

 次に参ります。

 次に、在日米軍の基地負担と受け入れ自治体の関係について御質問をいたしますが、そもそも基地負担は、基地所在市町村、そしてその住民のみによって負わなければならないものなのか。そうではないと思っております。全国民が負担を分け合い、負担に対しては補償をというのが政府方針であると認識しております。

 しかるに、二〇〇四年度、二〇〇五年度のキャンプ瑞慶覧米海軍病院の基地内施設の契約状況は、十件のうち沖縄県内企業の受注はわずかに一件のみとなっており、負担や迷惑は沖縄県民に強いておきながら、なおかつ、このように本土の企業が実際には受注しているというようなことでは、今の普天間の問題にしても何にしても、県民の理解を得ることは難しいと思うわけであります。

 ですから、そのような防衛庁、防衛施設庁の事業におきましても、沖縄県の経済の活性化、それから地元企業の育成という点でぜひ御配慮をいただきたいと思うわけでございますけれども、その点についての政府の認識を聞かせてください。

北原政府参考人 御答弁申し上げます。

 私ども防衛施設庁が発注いたします建設工事につきましては、従来から、官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律、これの趣旨を踏まえまして、地域経済の振興、また地元中小企業者の受注機会の確保に努めてきているところでございます。

 具体的な政策を三点ほど申し上げさせていただきますと、一つは、本体工事と附帯工事を分離してやったらどうか、また工区分けなども考え、これによりまして分離分割発注の実施でございます。二つ目は、経常建設共同企業体を有効に活用していったらどうかというものでございます。さらに三つ目は、競争入札等の大規模工事への参加要件の緩和などでございます。

 こうした措置を我々は講じておりまして、現時点で、私ども防衛施設庁発注建設工事におきます沖縄県内企業の平成十六年度の県内の受注状況につきまして御報告申し上げますと、件数で見た場合、二百五件中百八十二件が沖縄の企業がとっておりまして、シェアは約八八・八%になっております。ただ、金額で見ますと、約二百七十二億円中の約百八十億円、約六六・二%ということになっておりますので、今後とも地元建設業者の受注機会の確保には努めてまいりたいと思っております。

 なお、先生御指摘の海軍病院に係る契約の状況の十件のうち沖縄の県内企業の受注は一件しかないということでございますが、これはまず、すべて設計業務等に係るものでございまして、私ども基本的には公募型の入札方式で実施しているところでございます。今申しました公募型の入札方式の募集条件につきましては県内、県外を問わず設定をいたしまして、そして、これらの入札におきましては県内企業も積極的に応募をしていただくものもございまして、地元企業の受注機会の確保にも配慮しております。

 いずれにいたしましても、先生御指摘の点は我々十分踏まえておりまして、今後とも努力してまいりたい、そのように考えております。

安次富分科員 数字上はいろいろとやっておりますよということでありますけれども、なかなか実態としてのそういう気持ちといいますか、そういうあれがなかなか出てこないんですね。ですから、現実的に、本当にこういう形で地元にも配慮しておりますよ、ですから基地問題もいろいろと協力してくれということを初めて言えると思いますので、そこら辺もぜひフォローをよろしくお願いいたします。

 それからさらに、キャンプ瑞慶覧の返還についてお聞きをいたします。

 キャンプ瑞慶覧の返還は、いわゆる広大な普天間基地の返還の先行的モデルと言われております大事な返還でございますけれども、平成十九年度をめどに返還が予定されております。その跡地利用に関しては地元自治体、住民ともに知恵を出し合ってプランを練っているところでありますが、跡地利用の前に必要となる埋蔵文化財の確認のためにキャンプ敷地内に立入調査や測量を要請したところ、米軍がこれを拒否しているという報道が、二月二十三日付琉球新報においてなされております。

 御承知のように、跡地利用を進めるに当たり、文化財が埋蔵されているかどうかの確認には時間がかかり、基地返還後、本当に滞りなく跡地利用をスタートさせるためには、米軍の協力がぜひとも必要であるわけです。また、このようなことを前もってやることによって跡地返還がスムーズに行くと思いますし、また、スケジュール等におくれが出るなどの影響を極力抑えていくという点では、前もって埋蔵文化財、それから汚染物質とかいろいろなものを調査しておく必要があるわけでございますが、政府として米軍に地元自治体に対して協力していくよう働きかけていく考えがあるのかどうか、政府が地元自治体の意向を反映して米軍に協力しなさいというようなお考えができるかどうか、それをお聞かせいただきたいと思いますし、また、跡地利用計画の策定においてどのように支援をしていくつもりであるのか、これは内閣府に御意見をお伺いしたいと思っております。よろしくお願いします。

北原政府参考人 御答弁を申し上げます。

 先生今御指摘をいただきました立ち入りの関係でございますが、これにつきましては、立ち入りを予定いたします米軍施設・区域が所在する都道府県内にある地方公共団体の職員の方が立ち入りされるにつきましては、平成八年十二月に日米合同委員会で合意がございまして、当該施設・区域を管理する米軍に直接申請をしていただくことになっております。

 それで、今回の御指摘の点について、すなわち瑞慶覧への立ち入りについてでございますが、今申し上げました日米の合同委員会の合意に従いまして、昨年の六月に宜野湾市が、先生御指摘のSACOに基づきました住宅統合に関します返還予定地の区画整理に向けた測量調査ということから、現地の米軍に対しまして、これはG5でございますが、立ち入りを申請いたしましたが、九月に、米軍住宅の居住者に影響を及ぼすということで立ち入りが認められませんでした。

 また、同じ月に私どもの那覇防衛施設局の方に宜野湾市から協力の要請がございました。私ども、これを受けまして、現地米軍G5に対しまして宜野湾市職員の立ち入り目的等を説明いたしまして、前後三回にわたりまして理解を求めてきたところでございます。しかしながら、昨年の十一月、現地米軍から私どもの那覇局に対しましても、同様の理由から許可できないという連絡をいただいたものでございます。

 我々といたしましては、先生の御指摘も踏まえまして、また、これまで同様、地元地方公共団体の米軍施設・区域への立ち入りにつきましては、その実現に向けましてできる限りの協力はこれからも行ってまいりたい、そのように考えております。

東政府参考人 お答えをいたします。

 駐留軍用地跡地利用の促進及び円滑化についての一般的な私たちの考え方ということでございます。

 跡地利用の促進というのは、沖縄の均衡ある発展等々の観点から非常に大切だということで、これは沖振計画にも規定されているところでございます。私ども内閣府といたしましては、地元市町村等の跡地利用に向けた取り組み、例えば跡地計画をするとか、地権者の御意向をどういう形で実現するのか、そういった取り組みに対しまして、財政面も含めて、アドバイザーを派遣したり、そういうことを含めて実施をしておるということでございます。

 今後とも、引き続き関係省庁との連絡を緊密にして、それから一番大切な地権者の御意向を反映して、いい計画が取り組めるように努力をしたいというふうに思っております。

 以上です。

安次富分科員 まさに東統括官がおっしゃったように、地権者の意向というものを反映して、本当に、返還されてよかった、そう思えるような跡地計画、返還というものに政府挙げて邁進していただきたいと思っております。

 続きまして、北中城村の喜舎場スマートインターチェンジに関しまして御質問をいたします。

 御承知のとおり、沖縄にはつい最近まで鉄道のような公共交通機関というものが存在しませんでした。平成十五年にモノレール、ゆいレールが開通して、これが県内初めての公共交通機関となりました。戦前は鉄道があったというふうに聞いております。営業区間の短さなど、県民の足としての主役とはまだなっておりません。依然、沖縄においては、県民の交通手段というのは自動車、いわゆる自動車社会であります。

 さらに、沖縄県は在日米軍の七五%が集中している関係で、縦の線は非常にいいんですけれども、基地に阻まれているために、横の連絡道路が非常にいびつであるということでございます。そのために、一例を挙げますと、国道五十八号線、浦添市においては交通量が八万六千五百台。一日八万六千五百台ということは、今九州で一番交通渋滞している福岡を抜いて、九州でワーストワンとなっている交通渋滞地域であります。これも基地があるがゆえにこのような交通渋滞になっているということでありまして、今総合事務局挙げて、いわゆるはしご道路、そしてスマートインターチェンジというものを計画しているところでございます。

 そこで、地図を配らせていただいておりますので御参照いただきたいと思うわけでございますが、沖縄自動車道も沖縄本島を縦に延びており、まだ島の半分の長さしかありませんが、これが有効に活用されれば、沖縄における渋滞の解消に大いに寄与すると思われます。

 しかしながら、この沖縄自動車道とほかの国道との横の連絡がいまだに十分に整備されていないため、図をごらんになればおわかりのように、那覇市内、空港からも遠く、郡部を通るルートで北上しているのがわかると思いますが、沖縄自動車道はいまだに利用率が低いという状況であります。

 ですから、この際、スマートチェンジの増設を図ろうということでございます。従来のインターチェンジ建設には五十億円程度かかるところを、ETC専用のスマートインターチェンジであれば、設置、運営等の経費を五十分の一に削減でき、一億円程度で建設できることから、沖縄自動車道全体で八カ所増設する計画になっております。

 本年九月から実証実験として、モデルケースとして第一号、北中城村役場に隣接して喜舎場スマートインターチェンジを設置する計画になっているようでございます。しかしながら、この北中城村役場前も例に漏れず、役場から国道三三〇に接続する県道宜野湾北中城線は慢性的な渋滞となっておりまして、しかもそこの左側は全部基地であります。そうしますと、何のためにこのインターチェンジを増設するのか。メリットが生きてきません。

 そこで、県道宜野湾北中城線の渋滞解消にと、かねてキャンプ瑞慶覧内の道路の共同使用を北中城村の方から要請しているところであります。そのキャンプ瑞慶覧の一部返還に伴い、平成八年十二月SACO最終合意によって、道路用地として喜舎場ハウジング地区の一部が平成十九年度末をめどに返還が約束されているところでありますが、これを国道三三〇、そしてさらに五十八号線と連絡をさせる、横の連携をさせていく喜舎場瑞慶覧線を整備することで、スマートインターチェンジから五十八号線までの一つのはしごの道路ができるということでございます。

 その件に関して、跡地利用と地主の意見集約、計画によっては米軍から返還してもらう範囲において施設移転等の課題が発生する、基地があることによっていろいろな課題があるわけでございますけれども、その点に関して、政府としてどのような方針を持っておられるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

藤岡政府参考人 喜舎場スマートインターチェンジについてのお尋ねでございますが、御指摘のスマートインターチェンジにつきましては、現在、先生御指摘のように、地元におきまして社会実験の実施に向けた検討が進められていると認識いたしております。

 キャンプ瑞慶覧の当該地区でございますが、平成八年、これも先生御指摘でございますけれども、十二月のSACO最終報告におきまして、米軍住宅の統合を条件といたしましての返還が日米間で合意されているというふうに認識いたしております。

 道路整備でございますけれども、北中城村が当該地区の跡地利用計画を検討していく中で検討されるものと認識しておりまして、内閣府といたしましては、その計画が具体化されて整備される段階になりますと、その時点でどのような具体的な支援ができるかということを検討してまいりたいと思っております。

 以上でございます。

安次富分科員 ぜひ北中城村長さんや、また地元の御意見というものをよく把握して、この事業が円滑に進められるように、政府の特段の御協力をよろしくお願い申し上げます。

 さらに、沖縄県における不発弾対策についてお聞きをいたします。

 今、那覇市や県内各地において、建設ラッシュを思わせる建築工事風景を目にいたします。どこにでもある建築風景でありますけれども、本土と沖縄の違う点は、沖縄においては事前に不発弾の探査を施主負担で実施しているということでございます。

 この磁気探査というのは何かといいますと、私どもの沖縄の地中には、いまだにさきの大戦当時の不発弾が二千五百トンも残っているわけでございまして、これはあと六十年、不発弾の処理をするのに時間がかかるということでございまして、本当に沖縄の戦後というのは、まだまだ戦争を引きずっている、戦後が終わらないという状況であります。工事現場での不発弾事故は、三十年前の那覇市小禄での大惨事以来、幸いにも今日までまだ大きな事故は起きていませんが、いつ工事中に不発弾が爆発するかという危険性は常にあるわけであります。

 ですから、私たち戦争を知らない世代も、この不発弾の処理、それから、沖縄県では本当に二週間に一遍ぐらいは住民が避難して、そして自衛隊の不発弾処理隊が出動をして不発弾を処理するということでありまして、自衛隊の不発弾処理隊はもう何百回も出動して、それは県民から高く評価をされておりますし、地味な仕事ではありますけれども、自衛隊のそういう緻密な活動というものに対しては心から敬意を表する次第でございます。

 何といっても、不発弾対策事業というものを加速度的にやっていかないと、ずっと時間がかかっていくということでございますので、どうか、戦後から現在を経て将来にわたる不発弾処理に対する政府の責任ある答弁を。戦後処理事業として、やはりこれは国の全額国庫補助によってなされるべきだというふうに思います。今市町村で不発弾の処理事業をやっているわけでありますけれども、二分の一の補助でありますので、これは戦争行為によって、旧日本軍の砲弾もそして米軍の砲弾も本当に処理するのにあと六十年余り残っているということですから、やはり政府が責任を持ってこの事業をやっていかなければならない責任があると思いますが、その点について御答弁をお聞かせください。

藤岡政府参考人 沖縄の不発弾対策についてのお尋ねでございますが、まず、不発弾の探査、発掘に関してでございますが、沖縄県にはなお多くの不発弾が埋没しているというふうに私どもも認識いたしております。

 昭和五十年度から、沖縄県に対しまして不発弾等処理交付金を交付いたしまして、地元住民からの情報に基づき沖縄県が実施いたします計画的な不発弾の探査発掘事業等を支援してきたところでございます。また、平成二年度からは、民有地を含め、毎年度の探査発掘計画に地域を位置づけることによりまして、探査発掘事業を実施することができるということにしてきたところでございます。さらに、平成十四年度からでございますが、国が関与いたしております公共事業に加えまして、県内の市町村が単独に実施する公共事業に係る不発弾の事前探査についても支援をしているという状況でございます。

 次に、発見されました不発弾の処理に係る費用についてでございます。現在、費用の二分の一を特別交付金で措置し、その残りを市町村で御負担いただくという考え方になっておりますが、これは全国一律の戦後処理の一環の考え方に基づいておりまして、この点については御理解を賜りたいと考えております。

 内閣府におきましては、平成十八年度におきましても、計画的な不発弾の探査、発掘等の促進を図るという観点から、必要な経費を計上して、今後とも沖縄県等と協力し、不発弾対策に積極的に取り組みたいと考えております。

 以上でございます。

安次富分科員 質問時間が終了いたしております。

 沖縄においては、農業問題も教育問題も福祉問題も、すべて基地にぶつかっていくというのが沖縄の現状です。ですから、基地を解決することによって総合的な沖縄の振興を図っていくということにぜひ政府挙げて取り組んでいただきたいと要望いたしまして、質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

松岡主査 これにて安次富修君の質疑は終了いたしました。

 次に、福田良彦君。

    〔主査退席、河井主査代理着席〕

福田(良)分科員 自由民主党の福田良彦でございます。予算委員会第一分科会におきまして質問できますこと、大変光栄に思います。

 先ほど安次富議員の方から沖縄についての御質問でございました。私は、山口県岩国市が地元でありまして、岩国市は、錦川の清流のもと、名所であります錦帯橋を誇りに思っているところでございます。四月になりますと、ここも桜の名所であります。岩国市も山口県も、沖縄県同様、早く春が来るように願っておる今日でございます。

 それでは、質問に入らせていただきます。

 まず、今般の米軍再編は、米国が、国際的なテロの脅威、そして大量破壊兵器やミサイルの拡散などの安全保障環境の変化、また精密誘導兵器や情報ネットワークなどの軍事技術の進展に合わせて、軍の変革、いわゆるトランスフォーメーションを進める中、多様な脅威に対応可能とするため、海外に展開している米軍の配置を見直し、同盟国等との協議を強化するということの帰結であると私は理解しております。私は、これらの課題につきまして、日米が協力して取り組んでいくということの必要性については、十分に理解をしているところであります。

 このように米軍が世界規模で軍事体制を見直す中、昨年の十月二十九日、いわゆる中間報告では、沖縄からの海兵隊の海外移転や厚木の空母艦載機部隊の岩国への移駐など、在日米軍基地についてはさまざまな報告がなされました。これに対して、ほとんどの地元からは反対の声が上がっています。

 これまでに国は、再編に伴う住民生活への影響などにつきましては地元自治体を中心に説明をされてきております。しかし、それ以前に、米軍のトランスフォーメーションや日米安保体制の意義について国民に対しわかりやすく説明していかなければ、やはりこの米軍再編についての理解は得られないと私は考えております。

 そこで、この場をかりまして、今般の米軍再編の重要性や意義につきまして、できる限りわかりやすいお言葉で御説明を願いたいと思います。

額賀国務大臣 福田委員には、岩国におきまして、安全保障の問題、基地問題につきまして特段の御理解をいただいておりまして、また、地元に対しましていろいろと説得をしていただいたり、意見交換をしていただいたりしておりまして、心から感謝を申し上げる次第であります。地元のことと国全体の安全保障のことについて、非常にバランスを持って対応していただくことに対しまして、敬意を表する次第でございます。

 今度の米軍再編に伴うさまざまな問題について御指摘がありました。

 私も、福田委員のおっしゃるとおり、まず、何をするにいたしましても、最も国民あるいは国にとって大事なことは安心、安全ではないかと思いますね。やはり教育にしても、それから日常の経済活動にいたしましても、治安とか安全がなければ、それは教育も福祉もへったくれもなくなってしまうわけであります。

 国全体としても、安全がなければ、あるいはまた安定がなければ、やはり経済活動も営めない。あるいはまた、国際的な安定がなければ、資源とか貿易も円滑に進捗しない。そういう意味では、どういうふうに安全を確保するかということは最も大事なことだと思っております。

 戦後六十年、そういう意味において、日本の安全は、日本の努力と、日米同盟を結ぶことによって日本の安全確保がなされてきたと同時に、地域の安定にもつながっているものと思っております。アジアにおける日米同盟による米国のプレゼンスというのは、日本の安全に大きく寄与していると同時に、この地域の安定にも大きく寄与しているものと思います。

 日本を取り巻く環境というのは、いわゆるミサイルの脅威、北朝鮮を初め、あるいはまた中国とかロシアだとか、大国がひしめいています。そういう中で、軍事バランス、安定を保っていくことができるのは、やはり日米同盟関係が存在しているということは非常に大きな意味を持っているものと思っております。

 したがって、我々は、委員御指摘のように、大量破壊兵器だとかテロだとか、そういう新しい事態、新しい脅威に対してどういうふうに対応していくかということを考えた場合も、日米同盟関係というのは不可欠である。これをまたどういうふうに維持、堅持、強化していくことが大事かということが問われている。

 そういう中で、今度の米軍の再編に伴う日本の防衛力、防衛のあり方が問われている、象徴的なこととしてこの米軍再編の問題があるという認識を持っておりますので、ぜひ、地域の皆さん、国民の皆さん方全体の御理解を得る中で、この問題の成功、解決を図っていきたいというふうに思っております。

福田(良)分科員 日米同盟の大変重要なことは私も理解しておりますし、しっかり地元でも説明していきたいと思っておりますが、また政府におきましても、機会あるごとにその必要性につきましてはしっかりと説明していただきたいと思っております。

 次に、空母艦載機部隊の岩国基地への移駐について質問いたします。

 中間報告では、厚木基地の空母艦載機部隊が岩国に移駐するとの勧告がなされ、その数は五十七機に上ると聞いているところであります。地域の住民に対しましては、この勧告が与えたインパクトは多大なものがありました。中間報告の後、国が県や市からの質問に対し真摯に回答し、また騒音コンターを示して、岩国市や由宇町、そして周辺の自治体、また議会の全員協議会の場、住民説明会など、いろいろなところで説明をされたことには大変評価をしております。

 しかしながら、いまだ地元住民の不安が完全に払拭されたとは私は思っておりません。岩国基地の周辺の住民は、現在も基地に所在する米海兵隊のジェット機の騒音に悩まされております。これに加え、厚木基地にある空母艦載機のうち、特に騒音がうるさいジェット機など五十七機近くが岩国基地に移駐するということは、基地周辺の生活に多大な影響を与えるものと考えております。

 国は、騒音の予測コンターを作成し、地元に対して、住民の生活環境への影響は現状より著しくは悪化しないとこれまで説明されてきております。では、例えば、これまでどのくらいの世帯が騒音被害を受けていて、滑走路沖合移設工事が終わって空母艦載機が岩国に来ると、その騒音被害はどうなるのか。厚木基地と岩国基地とでは立地条件が大きく異なっており、厚木での騒音データをもって岩国でもそうだとすべきでもなく、新滑走路で訓練をした場合、現在の騒音と比較してどうなるのか、また、離発着回数はどうなるのか、飛行コースはどこなのかといった、騒音と安全性の観点から、しっかりと検討した上で判断をしなければなりません。

 いま一度御説明を願いたいと思います。

北原政府参考人 御答弁申し上げます。

 私ども、これからも真摯にいろいろ御説明をし、御質問にお答えをしていきたいとも考えているところでございます。

 それで今、騒音の予測コンターの点についてでございます。先生御承知のように、現在私ども、岩国飛行場の滑走路移設事業を推進しておりまして、これが平成二十年度末完成を目指して進めているところでございます。

 この事業が完了し、また先生御指摘の空母艦載機が移駐された後の騒音状況を予測した結果でございますが、その結果によりますと、陸上部におけるいわゆるうるささ指数でございますが、七五Wというのが第一種区域で住宅防音工事助成対象区域でございます。この区域は、現在の第一種区域と比べますと、ごく一部が増加することはございますけれども、ほとんどの区域がこれは減少をいたしまして、ちなみに面積で申し上げますと、現在の約千六百ヘクタールからその三分の一のおよそ五百ヘクタールに減少するものと予測をいたしております。また、この地域に所在される住宅防音工事の助成対象となります世帯数でございますが、この数は約一万七千世帯から約四千世帯に減少するものと予測をいたしております。

 いずれにいたしましても、私どもといたしましては、米軍再編に伴いまして空母艦載機の部隊が実際に移駐した後におきましても、騒音につきましては十分に調査をいたしまして、その対策には万全を期してまいりたい、そのように考えております。

福田(良)分科員 現在の防音工事の対象は住宅に限定されております。実際、地元の商店や工場の事務所などでは、国からの防音工事の対象になっていないわけでありますが、さまざまな面で営業や業務に支障が出ていると私は伺っております。今後、防音工事の対象にこのような商店や事業所なども含めるというお考えはないか、お伺いいたします。

北原政府参考人 御答弁申し上げます。

 私どもの防衛施設周辺におきます防音工事でございますが、これは先生御承知のように、防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律に基づきまして、関係住民の皆様の生活の安定、また福祉の向上に寄与することを目的といたしまして、特に静穏を要する学校などの教育施設あるいは病院などの医療福祉施設、また日常生活の中心拠点でございます居住の用に供する住宅を対象に助成をしてきているところでございまして、私どもといたしましては、住宅等における対策を優先する必要があるといった観点から、先生今御指摘いただきました商店ですとかあるいは工場の事務所といったところに対する防音工事の助成につきましては、これは将来検討の課題と考えております。

 ただ、今先生、岩国の飛行場というところに限定して、私、敷衍して申し上げさせていただきますと、今優先的にやっておりますこの住宅防音工事といったものにつきましては、その工事を希望する方に対します新規工事や追加工事等につきましては、十七年度をもちましておおむね終了する見込みであることは事実でございます。

 他方におきまして、岩国飛行場の近傍で騒音の著しい区域の住民の方々、これはうるささ指数が八五W以上でございますが、そういった区域にお住まいの皆様から、今度は住宅全体を対象とした外郭防音工事、これの実施要望が数多く寄せられていることも事実でございまして、当面は、やはり日常生活の中心拠点でございますので、これらの住宅における対策を優先して実施していきたいと思っております。

 繰り返しになりますが、先生御指摘の点につきましては、今後また真剣に検討してまいりたい、そのように考えております。

福田(良)分科員 さっきの騒音につきましては、コンビナート群が滑走路の延長線上にありまして、事務所というのはやはり事務員さんがいるわけでありますし、そこに詰めている会社の方が大勢いらっしゃるわけであります。一日の大方の時間をここで生活もしくは仕事をされるわけであります。その中で、やはり騒音に悩まされて精神的な障害を得たり、ノイローゼになったりとか、そういう深刻な状況も聞こえてくるわけであります。検討されるということでございますので、そういう現状をまたしっかりと聞いていただきながら、前向きな検討をお願いしたいと思います。

 次に、これは報道によるところでありますが、いわゆる中間報告によりますと鹿屋基地を優先的にこれまで検討するとされておりました普天間基地の空中給油機KC130につきまして、米側はSACO最終報告どおり岩国基地に移駐することを要求していると私は聞いております。

 これが仮に事実であるとするならば、できるだけ早く地元住民に説明すべきであると私は考えます。特に、さらにKC130十二機が岩国基地に来ることになれば、騒音など地元住民に対する影響はどうなるのかなど、地元住民は大変不安に感じているところであります。

 そこで、KC130の移駐先につきまして、日米間の協議の状況について御説明をお願いいたします。

額賀国務大臣 今委員御指摘のとおり、そういう報道がなされていたということは私も承知をしておりますけれども、昨年秋の中間報告に基づいて、KC130については鹿屋基地に移転をしたいというのが日本側の基本的なスタンスでございます。もちろん、委員御指摘のように、当初は岩国基地への移転ということも考えたわけではございますけれども、空母艦載機の移転等々もございますので、総合的に考えた結果、KC130については鹿屋地区にお世話になることが適切ではないかという判断をいたしまして、中間報告に書かせていただいたわけであります。

 今、三月末の日米協議の最終報告に向けて精力的に詰めの作業を急いでおります。まさにこの問題についても真剣にいろいろな議論をしているわけでありますけれども、我々は中間報告のスタンスをもって今協議を継続中であるというふうに御理解をいただきたいと思っております。その状況がまとまり次第、できるだけ早くそれぞれの地元に御説明をしなければならないということは言うをまたないことでございます。

福田(良)分科員 次に、海上自衛隊の移駐についてであります。

 中間報告では、地元の負担軽減として示されました、大変静かな海上自衛隊のEP3、OP3、UP3の十七機を厚木基地に移駐させるとあります。移駐の対象となる隊員は約六百名であり、その家族も含めると約二千名近くになると言われております。

 これに対しましては、地元の岩国市議会は自衛隊の移駐反対の要望決議をするなど、地元からも反対の意向が示されていることは御承知であると思います。中には、税収減を初めとする経済面や人口減少においての影響を心配して反対する人もいますが、私はそうではありません。自衛官とともに生活をしている地域住民といたしまして移駐に反対をするものであります。

 ここで御認識をいただきたいのは、昭和三十二年以来自衛隊と岩国市は良好な関係を構築してきており、自衛隊員及びその家族は、よき岩国市民、よき地域住民として、各種のスポーツの指導や文化活動、自治会活動、PTA活動等に積極的に参加され、まさに岩国市の地域コミュニティーの中核を担ってこられました。さきの台風被害のときも、迅速な復旧活動により、その存在はなくてはならないものとなっております。こうした方々の多くが岩国を離れられるということは、地域のコミュニティーの崩壊につながりかねず、国が言うような負担軽減どころか、負担増であるということであります。

 そこでお伺いいたしますが、この海上自衛隊の岩国から厚木への移駐についての計画は見直しができないのか、その点につきまして御説明をお願いいたします。

額賀国務大臣 御指摘のとおり、海上自衛隊と岩国市民の間が、長い間本当に友好に、地元に定着した形で地域コミュニティーを形成しているということについては、私も岩国に行ったときに実感としてよく感じさせていただいたし、それから、地元の議会の皆さん、福田先生からもよく話を聞かされていたことであります。

 そういう中で、中間報告においては、厚木から空母艦載機が行くことに伴って、岩国への負担をできるだけ最小限にするために、海上自衛隊について厚木に戻すという方向で書かせていただいているわけでございます。

 この問題については日米の間で大きな論点になっているわけではございませんので、私どもは、この中間報告に基づいて今整理をさせていただこうというふうに思っております。

 そういう中で、福田先生の御指摘でありますが、地元の皆さん方のそういう温かい思いというものを受けとめることは私も重々わかることでございますけれども、今後、それによって地域の皆さん方がいろいろな影響を受けることについては、できるだけ我々も配慮をしていくようなことを考えていかなければならないなという思いでおります。

 いずれにいたしましても、この問題については、福田先生のそういう御指摘等々もありますけれども、その上に立って、中間報告の原則に基づいて、最終報告に向けて我々は作業を進めていかざるを得ないということについて、ぜひ地元の皆さん方にも御理解を得るように努力をしたいし、また、それに伴うさまざまなことについてはどういうことができるのか、先生の意見もありますので、考えさせていただきたいというふうに思っております。

福田(良)分科員 自衛隊の移駐につきましては、やはり中間報告の中にも盛り込まれておりますが、この部分におきましては、内政的なことでもし見直しができるものでありましたら、ぜひ検討していただきたいというふうに、これは地元の大変大きな要望でもございます。それをお伝えして、次の質問に移りたいと思います。

 次に、NLPについてであります。

 まず、その前提といたしまして、空母及び空母艦載機部隊は年間百八十日から二百日ぐらい滞在するのではないかと言われております。

 その上で、国の説明によりますれば、空母艦載機が岩国に来た後も引き続き低騒音機を除くジェット機などのNLPは硫黄島で行うと聞いております。確認でございますが、本当にこのジェット機のNLPは岩国ではやらないのかについて、確認の意味で質問をいたします。

 また、低騒音機のNLPは岩国でやるということでございますが、この低騒音機のNLPによる周辺地域への騒音の影響について御説明を願います。さらに、硫黄島でのNLPはあくまで暫定的な措置であると理解をしております。今後、空母艦載機が岩国に移駐した後のNLPの恒久的な施設の選定はどうしようと考えておられるのか、あわせて御説明を願います。

北原政府参考人 御答弁申し上げます。

 NLPの関係でございますが、先生御指摘のとおり、いわゆる低騒音機E2Cにつきましては、現在、厚木飛行場で空母艦載機の離発着訓練を実施しておりまして、この点につきましては、岩国飛行場でもNLPを含む空母艦載機離発着訓練が実施されるものと考えております。

 それから、ジェット機、FA18等のジェット戦闘機でございますが、これにつきましては、NLPを含む空母艦載機離発着訓練につきましては、今回十月二十九日に発表されました2プラス2共同文書におきましては、現在の暫定措置に従いまして引き続き硫黄島で実施する旨が明記されておりますので、これに反する措置がとられることはございません。したがいまして、硫黄島が天候不良等により十分な訓練が実施できない場合を除きまして、ジェット戦闘機のNLPが岩国飛行場において実施されることはございません。

 それから、低騒音機E2CのNLPにおけるところの周辺の皆様への騒音の状況でございますが、先生御承知の、今ある滑走路におきまして直近でNLPが行われましたのは平成十二年度でございます。そのときにはEA6B等のジェット機のNLPがあったわけでございますが、そのときの音というのは八十デシベルでございまして、これは交通量の多い道路程度の騒音でございました。これを超える騒音が飛行場近傍の住宅地まで及んでおりました。

 他方におきまして、岩国飛行場の滑走路移設事業が完了いたしまして、かつ、空母艦載機が移駐した後、いわゆるこのE2Cの低騒音機が岩国飛行場でNLPを実施する場合の航空機騒音が周辺の地域の皆さんに与える影響を予測いたしました。これによりますと、七十デシベルということで、これは新幹線の車内程度の音でございますが、これを超える騒音の影響の範囲というのは海上また岩国飛行場の中におさまるというように推定をいたしておりまして、周辺地域の皆様方への騒音の影響はより小さいと考えております。

 それから、三つ目の御質問で、恒久的な施設の選定の点でございますけれども、現在、恒常的な空母艦載機離発着訓練施設の整備場所につきましては、現段階では特定しているものはございませんけれども、私どもといたしましては、これまで適地と判断してまいりました三宅島の取り扱いも含めまして検討を行い、引き続きその実現に努めてまいりたい、そのように考えております。

 以上です。

福田(良)分科員 余り時間がなくなってきました。

 簡潔に質問いたします。

 滑走路の沖合移設事業につきまして、今、空母艦載機の移転によりましてこの計画におくれはないのか、その辺について質問、そして、今この滑走路事業につきましては、地元より受注機会の確保等の要望がかねてよりありますが、これからもしっかり、今回の談合事件を受けまして、今後とも公正な入札をしていただきたい。そして、特に地元業者の受注機会の拡大、こういう面も考えがしっかりとありますか、お伺いいたします。

 また、三月には出されると言われております最終報告、これが滑走路の沖合移設が終わった後、具体的にいつごろになるのかということが報告の中に盛り込まれるのか、お伺いいたします。

 そして、民間空港も聞こうと思ったんですが、これはまた後にします。

大古政府参考人 三月末までの最終報告に向けたスケジュールにつきましては、昨年十月の2プラス2の共同文書で示されました個別の施設・区域に関する措置につきまして、具体案を最終的に取りまとめまして、その具体的な実施日程を含めた計画を作成することとしております。

 その意味で、御指摘の空母艦載機の岩国飛行場への移駐につきましても、スケジュールを含めて、最終報告に書くべく、今、日米間で協議を行っておるところでございます。

河井主査代理 時間が来ておりますが、額賀防衛庁長官、簡潔にお願いします。

額賀国務大臣 お答えします。

 これは、当初予定どおり、平成二十年度に完成すべく事業を推進していきたいというふうに思っておりますし、それから、いろいろな談合事件等々もあったので、これからは、地元のことにはもちろん配慮をいたしますけれども、公正にきっちりと入札等々が進行するように万全の体制をしきたいというふうに思っております。

福田(良)分科員 時間が来ましたので質疑を終わりたいと思いますが、二日前に由宇町が由宇町としての報告を出されました。きょう長官のところに伺うと聞いております。しっかりと地元の意見を反映して、今後の施策に反映していただきたいと思っております。よろしくお願いします。

 以上で終わります。ありがとうございました。

河井主査代理 これにて福田良彦君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

河井主査代理 次に、国会所管について審査を進めます。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。高山智司君。

高山分科員 民主党の高山智司でございます。

 本日は、国会関係、また皇室関係、あと最高裁の関係といったところを質問させていただきたいと思います。

 まず初めに皇室関係から。

 秋篠宮妃殿下の御懐妊報道というのがありまして、この衆議院の予算委員会でちょうど予算審議をしておりましたら、民主党にもメモが入り、総理にもメモが入りということで、ああ喜ばしい話だなと、御慶事ということで私も喜んでおりましたけれども、一つ、これはちょっと、ただ喜んでもいられないなという問題が隠されていると思いました。

 それは、宮内庁の方からも、宮内庁長官の記者会見ですとか皇室医務主管の記者会見にもありますように、そもそもこれが報道機関のスクープで報道されたということ、これはちょっと問題じゃないかなと思っておりますので、きょうはその点について質問したいと思っております。

 まず、この喜ばしい御慶事ですけれども、初めに総理に報告したのはいつですか。

風岡政府参考人 今回の秋篠宮妃殿下の御懐妊に関する報道は、私どもにとりましても全く思いがけないものでございました。その意味で、その報道が妃殿下にいろいろな意味で御動揺、御負担を与えたことについては、我々として極めて残念なものだと思っております。

 御指摘のこの状況について、いつ官邸の方へ御報告をしたのかということでございますが、私どもとしては、事実関係の確認等の作業がありまして、官邸には、四時前に、宮内庁として当日何らかの発表を行うという旨をお伝えしますとともに、その日の九時前になりましたけれども、官邸に対しまして、発表内容と、九時から長官が記者会見を行うという旨をお伝えしたところであります。

高山分科員 そうしますと、総理が予算委員会の最中にメモなんかを見ていたのは、あれもやはりNHKのスクープを見てということなんでしょうか。あれは宮内庁の報告じゃないんですか。ちょっとその点。

風岡政府参考人 宮内庁からの御報告につきましては、ただいま申し上げましたような状況でございますので、あの時点でのメモにつきましては、あるいはテロップ等が流れたということで、官邸の方で御連絡をしたのではないかというように推測をしております。

高山分科員 これはたまたま御懐妊という本当に国民的御慶事でございますので、みんな、ああよかったねということで済んだ面もあるのかもしれませんけれども、これは、一人の女性が妊娠したのかどうなのかという、一般論で考えますと、とんでもない個人情報の流出じゃないかなというふうに思ったんです。

 これは宮内庁の中の情報漏えいなんじゃないか、だれかマスコミにリークした人がいるんじゃないかということで、内部調査はされましたか。

風岡政府参考人 二月七日に御懐妊に関する事実関係が報道されました後、私どもとしても、関係者から状況を聞くなどの措置はとってまいりました。しかしながら、報道に至った経緯については判明をしておりません。私どもとして、内部の状況というものについては、それなりにやってきたつもりであります。

高山分科員 宮内庁のお仕事というのは、皇室の方々のまさに私生活も含めてサポートする立場ということで、逆に、情報漏えいに関しては、他の官庁よりもむしろすごく気を使う立場だと思うんですね。けれども、憶測も含めてですけれども、いろいろな週刊誌等を読みますと、我々一般人の家庭よりもはるかにプライバシーが侵害されているなと、ちょっと懸念を私は持っています。

 そういった認識のもと、宮内庁内で、そういう皇室の方のいわゆるプライバシーにかかわる出来事、あるいはこういう極めて重要な今回の御懐妊報道に見られるような情報ですね、個人情報というか、これはどういう管理の指針があるのですか。内部でどういう取り決めをしているのか、その取り決めを教えてください。

風岡政府参考人 私ども宮内庁の職員は、天皇皇后両陛下、また皇族に御奉仕をする、公私にわたってそれをお支えするという立場でありますので、当然のことながら、業務に関連して私どもが承知をしている情報の管理というものは徹底をするということは、御指摘のとおりだと思います。

 具体的に規約等というものがあるわけではありませんけれども、私どもとしては、仕事に従事する者として、当然のこととして、そういったものについて情報の管理というものは常々留意しているつもりでありますけれども、今後ともその点については十分留意をしなければならない、このように考えております。

高山分科員 今、規約等そういう取り決めはないというようなお話でしたけれども、そうしますと、こういった情報漏れ、あるいはこういう個人情報の管理、これは責任者はだれなんですか。

風岡政府参考人 こういった情報の管理につきましては規約がないと申し上げましたけれども、公務員としての一般的な、もちろん守るべき義務というのは当然あるわけでございます。そうした中で、こういう情報管理につきましては、事務方としては宮内庁長官また次長の私、こういうところが責任を持って行うべきことであるというように思っております。

高山分科員 そうしますと、今回のこのスクープ報道に関して、長官あるいは次長は何か責任をとられましたか。

風岡政府参考人 今回の情報につきましては、先ほど申し上げましたように、部内におきましても、どういう状況であったのかということについて聞き取りするなどの措置は行ったところであります。

 私どもとしては、こういうことが内部から出るということが仮にあったとしたら、それはあってはならないことだということでありまして、今後ともこういうことについて徹底をしていくということが重要なことだというように思っております。

高山分科員 これは確かに報道機関がある意味えげつないですよ、こういうことを報道してしまうのは。だから、それで抗議を申し入れるということは当然だと思いますけれども、内部的に宮内庁長官あるいは次長、こういうスクープ報道を許してしまったということに関して何か責任をとられないんでしょうか。全く責任はとられていないということなんでしょうか。もう一度答弁をお願いします。

風岡政府参考人 今回なぜこのような報道に至ったのかにつきましては、事実関係が正直言ってはっきりわかっておりません。私どもとしては、内部職員の立場として、当然、情報管理の徹底ということは今後に向けて必要であるというふうに思っておりますので、その意味で徹底を図っていきたいというふうに考えております。

高山分科員 それでは質問の仕方を変えますけれども、これは、皇室医務主管の記者会見にしても長官の記者会見にしても、随分遺憾、今回のことは問題だというとらえ方をされているようですけれども、この問題に関しまして、この妃殿下の御懐妊という情報漏れに関して、長官あるいは次長が今後責任をとるおつもりはありますか。

風岡政府参考人 先ほども申し上げましたように、今回の事柄について、どういうような形で報道に至ったのかは明らかになっておりません。

 今後のことにつきましては、まだ仮定の話でございますので特に私の方からはお答えを差し控えさせていただきたいと思いますが、いずれにしましても、私どもの中の情報管理の徹底ということは当然重要なことであるというふうに認識をしております。

高山分科員 そうしますと、では、今回のスクープ報道を許してしまったという中で、内部から情報がどうのこうのというようなことを今言いましたけれども、こんな極めてプライバシーにかかわる、妊娠したかしないかということですよ、一般の国民であっても。これが外に漏れたというのは、何か情報管理体制に不備があったというふうに考えてよろしいのでしょうか。

風岡政府参考人 くどいようでございますけれども、今回こういう形で報道に至った経緯はどういうことであったのかというのは、私どもとしても残念ながら把握はできておりません。

 今後こういうことが発生しないように、我々としては今回のものを反省して、私どもの立場では内部の情報管理の徹底を図るということが必要かな、このように思っております。

高山分科員 今回の経緯がわからなかったということですけれども、情報漏えいしたかどうか調べていったんだけれども、その調査でわからないということそのものが問題じゃないですか。だって、次にまた情報漏えいがあるかもしれないじゃないですか。どこで漏れたというのがわかれば、じゃ、ここをこうしようと対策を打てますけれども、わからないということは、そのものが、事後処理がちょっと問題あるんじゃないですか、長官と次長の責任問題として。漏れてしまったのは百歩譲ってしようがなかったとしても、二月七日から今に至るまで、内部調査をされたけれどもどこから情報が漏れたかわからない、このことが問題じゃないですか、どうですか。

風岡政府参考人 これは、現時点で私どもとしては、どういう形でこういう報道に至ったのかについては残念ながら把握はできておりません。

 今後こういうことがないように、先ほど先生も御指摘のように、宮内庁長官、また皇室医務主管が医者の立場から、こういう報道がなされた場合には妃殿下に非常に大きな影響を与えるんだということで、我々はマスコミを含めたところにも協力をしていただくようにお願いをしているわけです。もとより、私どもの内部においても情報管理というものは当然徹底をしていかなければならない、このように思っております。

高山分科員 なかなか次長から認めにくいでしょうから、私、これは情報管理体制に不備があったと思いますよ。今、次長の方から、個人情報管理の取り決め、規約がないという話でしたけれども、私、さっきちょっといろいろインターネットを見ていましたら、大きい病院では、今もう個人情報を保護するのは当たり前だということで、いろいろ何ページにもわたる指針をつくっています。

 その中で、個人情報に関することは患者本人様の同意がない限り第三者に言うことはありませんですとか、幾つかの病院で僕は見てみたんですけれども、大体そうですよ。そういう点から考えまして、今回、秋篠宮殿下にも、報道で知ったですとか、電話で報告したですとか、これはちょっと順番が違っていますよね。

 私、一つ懸念していますのは、九月に無事に御出産の予定だということでございますけれども、男子が生まれるのか女子が生まれるのか、秋篠宮妃御自身は生まれるまでお知りになりたくないというようなことを報道で聞いておりますけれども、もし九月の前に男の子だ、女の子だということの情報が漏れて報道された場合、これはだれが責任をとりますか。

風岡政府参考人 仮定の話ですので明確にお答えすることはできませんが、いずれにしましても、そのときそのときの状況を踏まえて考えるべきことだというように思っております。

高山分科員 ちょっと悠長に構え過ぎていると思いますね。

 要するに、これは一回情報漏えいがあったんですよ。ですから、私は、九月に向けて、より、もうこういう情報は漏れちゃいけない。これから何度か御健診もあるでしょう。そんな中でまた情報漏れがあって、どうも男の子らしい、女の子らしい。これは、皇室の方じゃなくて一般の国民であっても、こんなことをされたらたまらないですよ。プライバシーの侵害そのものですよ。

 残念ながら、今、日本のマスコミはそういうことを注目している。お世継ぎはどうなのか。こういった中で、皆さん方は、今まで以上に情報管理体制をしっかりする必要があると思うんです。それを、気を引き締めてという程度のことではなくて、私が今例に出しましたように、いろいろなほかの病院では個人情報保護をちゃんとやっているんですよ。こういうことを宮内庁病院あるいは宮内庁全体で、一般の個人情報の扱い、今、公務員の規則に基づいてと言いましたけれども、それよりも、皇族の方の私生活に身近にいる立場ですから、こういう情報の取り扱いということについて内規を今後つくるおつもりというのはありますか。

風岡政府参考人 今、先生御指摘いただきましたように、まさに個人情報ということでこういうものが漏えいすることについては、私どもとしても大変残念で遺憾だと思っております。

 今後こういうことが生じないようにするためにはどういう措置が必要かということについては、私どもとしてもよく対応を検討していきたいというふうに思っております。

高山分科員 いや、次長、済みません、そんな検討している時間はないですよ、これは本当に。今は本当にみんなウの目タカの目で、どうなんだ、どうなんだと気にしています。

 こんな中で、二月の七日に情報漏えいがあって、今までそういうのを検討していないことそのものも私は問題視しますよ。しますけれども、今後も、どういう情報管理体制をするか、これは早く確立していただかないと、本当に皇室の方がかわいそうだと思います。信頼してせっかく皆さんに私生活をお任せして、サポートしてもらっている、それでどんどん情報が漏れてしまう。

 これは、はっきり言って宮内庁の責任だと思いますよ。ですから、きちんとこの情報管理の責任者を明確にしてください。そして、この責任者のもと、こういうふうにプライバシーにかかわる情報は管理するんだ、こういう規定をつくっていただきたいと私は思いますが、次長、どうですか。その点をお約束していただけますか。

風岡政府参考人 今回のことを踏まえて、先ほど申し上げましたように、長官が遺憾表明をするとか、あるいは皇室医務主管という立場でもまた重ねて報道機関に申し入れをするとかいうようなこともやりましたし、内部的なことについても私どもとしてやってきたつもりです。

 ただ、先生御指摘のように、今後こういうことが再度発生することを防ぐべきではないか、そのために真剣に取り組めという御指摘だと思います。私どもとしても、具体的にどういうやり方をしたらいいのかということにつきましては検討させていただきたいと思いますが、先生御指摘のように、個人情報という極めて重要なものでありますので、そういうことを十分念頭に置いて取り組んでいきたい、このように思います。

高山分科員 私も、これは一番悪いのは、ウの目タカの目でスクープ情報をねらってくるそういうマスコミだと思いますよ。だけれども、もうそういう状態があるのはわかっているんですから、最低限、民間の病院では今個人情報保護はきちんとしていますよ。それぐらいは最低限やってもいいと思いますし、私は、それが今までなくてやってきたというのは、これはちょっと不備があったなというふうに思い、ちょっと残念な気がいたします。

 これにて私の皇室に関する質問は終わりにしまして、次は国会の件に移りたいと思います。

 昨今、行革だというような話がよく言われておりまして、国会も聖域ではないんだというような話です。それで、公務員の五%純減だなんという計画が出てきて、行革事務局の方でも行政機関に準じた取り組みをなんということを例えば言ってきたりしているわけですね。

 これは、しかし、行政の方が議会の方に、行政に準じた取り組みをなんということを言うのは僣越だなというふうに、私はちょっとこの記事を読んで思ったんですけれども、まずそもそも、報道なんかを見ますと、国会の職員も五%純減ですとか、こういうのがよく出ているんです。

 これはちょっと事務総長に伺いたいんですけれども、政策決定がなるべく霞が関から永田町、政治主導なんだというふうになる中、議会及びその議会事務局の役割というのはこれからもどんどん重要になるというふうに思うんですけれども、こんな中で人員削減をしてしまっていいんですか。ちょっと事務総長の御私見を伺いたいんですけれども。

駒崎事務総長 政府におきまして、昨年末、行政改革の重要方針を閣議決定いたしまして、その中で、郵政公社職員を除く国家公務員を今後五年間で五%以上純減するという目標を設定されております。

 また、それを受けて、現在、政府内において、いわゆる行政改革推進法案を策定中でありまして、その取り組みを踏まえまして、先月、内閣官房長官から本院に対しまして協力依頼がなされているのは事実でございます。

 衆議院といたしましては、これまで、たび重なる政府の定員削減計画についても、内閣官房長官からの依頼に基づきまして協力してきた経緯がございますが、現在、議院運営委員会におきまして衆議院事務局等の改革に関する小委員会が設置されまして、そこで議員に対する事務局のサービス及び組織のあり方という根本的なところから御議論がなされようとしております。

 私といたしましても、国権の最高機関としての国会の地位の向上のためにも、私ども事務局といたしまして、立法府の補佐機関として機能のさらなる充実強化を図りながら、簡素で効率的な活性化した組織を構築することがまず第一に大切だと考えておりますので、そういう意味でもこの小委員会での御議論の結果を待っているのが現状でございます。

高山分科員 いや、事務総長、当然これは議運で決めることなんですよ。けれども、今事務総長がおっしゃいましたように、官房長官から今までも協力依頼があったと、ことしだけじゃなくて。それで随分協力してきたというようなお話ですけれども、そうすると、この五%純減というのはのむんですか。

駒崎事務総長 今までの経緯は経緯といたしまして、ただいま議運の小委員会、先ほど申しましたが、そこで御議論いただいておりますので、そこで何らかの結論が出されるものと思いますので、私どもといたしましてはその結論に従っていきたいと存じております。

高山分科員 いや、ちょっと残念ですね。やはり議会制民主主義を支えているのは、我々国会議員もそうですよ。だけれども、その秘書、あるいはまた衆議院、参議院それぞれの事務局、あるいは国会図書館、こういったところが全体で国民のために議会制民主主義をやっていこうという中ですよね。

 だから、そう考えていくと、衆議院の事務局も、いや、我々の仕事はちょっと今単純に公務員を減らしなさいという中で減らされるべき仕事ではありませんというようなことを言っていただかないと、いや、それは議運で決めることなのでというのは、もちろん仕組みはそうなっています。

 けれども、では議運で決めたら、五%純減どころか、いや、もう調査局とか委員部は要らないよ、あんなのはもう全部議員でやればいいんだ、そういう決定になっちゃうかもしれないし、極論を言えば。もうちょっと議会職員としての仕事の有用性というのをおっしゃっていただきたいなという思いがありますね。

 私としては、去年来、御案内のことと思いますけれども、自動車課の問題であるとか警備の問題、あるいは今も話題になっていますけれども、送迎のバスをなくせだとか、あるいは法制局長官公邸が全然使われていないじゃないかとか、そういう無駄遣いをなくすということに関しては全くスタンスは変わりませんよ。

 けれども、その無駄遣いをなくして、その上で、むしろ立法機能の調査ということで、議会の職員の能力とまた人数も大幅にふやしていこうじゃないかという立場に私は立っているんですけれども、そういった点、今回、衆議院の事務局内ででも、さすがに自分たちでもちょっといろいろ考えなきゃいけないなというようなことで、何か調査局を強化するですとか、あるいは立法機能の強化ということで検討を始めていますか。

駒崎事務総長 今先生がおっしゃるように、無駄な部分を省いて簡素化して、それで立法機能を強化するということは、当然これはやっていかなきゃいけないんだろうと思います。その結果として定員がどうなのかということは、議運の中の御議論になるんだろうと思いますが、ただいまの御質問のように、事務局の内部でも、いろいろ事務的に検討できることは昨年来もう既に検討はしてございます。

 そういう中で、例えば立法機能の強化のために、いろいろな方策が種々考えられるんだろうと思いますけれども、そういうことを一つ一つ検討して、議運の先生方の決定なりに、こちらとしては御判断いただくということになろうかと思いますが、全然検討していないというわけではございません。いろいろな案を今、担当の部課でも検討しておると思います。

高山分科員 そうしますと、今御検討の案の中で事務局案としてどのようなものが一番話し合われていますか。

駒崎事務総長 これは調査局の中でそれぞれいろいろな案を、例えば、今各委員会ごとに独立して、常任委員会十七のうち十五の調査室がございますけれども、それをもう少しブロック化して連携をとりながらやっていったらどうかとか、さまざまなことを検討しております。まだその検討の過程なものですので、私の方にこれはという案で上がってきているわけではございません。

高山分科員 事務総長もいろいろ、議運の先生方のこともあるでしょうから、私は応援していますから、頑張って事務局改革をやりましょう。

 そんな中で、ちょっと一つ残念なことがあります。私、この間、衆議院の審議中継というんですか、インターネットで、今国民の皆さんが結構あれで質問を見てくれているという人は多いんですね。全部を中継していないですから、今。インターネットの中継というのは、国民の皆さん、結構あれを楽しみに見ている方がいっぱいいらっしゃるんですよ。

 ところが、ちょっとびっくりしたんですけれども、あれは二、三年前のものを見ようとすると、もうないんですね。議事録はずっと永久にとってあるのに、衆議院のあの審議中継は何か直近のものしかないんですか。過去のものはなぜ消されて、どこかに格納しているんでしょうか。あの取り扱いをちょっと教えてください。

駒崎事務総長 インターネット録画中継につきましては、平成十二年の一月の二十日からその運用を開始しておりますが、前日の十九日に議運委員会の理事会において、保存期間につきまして一年間ということをお決めいただいております。

 それで、平成十六年の八月六日には、さらにその確認の意味でもありますが、公開の期間につきまして協議されまして、ライブ中継から過去一年間は国会審議映像をデータベースに保存し公開する、なお、公開の終了は審議日単位ではなく会期単位で行うこととし、会期の終了日が一年を経過したときに公開を終えるものとすると改められまして、以後、この決定に従って運用されているところでございます。

 国会の正式な記録というのは、会議録、委員会議録、本会議録でございます。審議中継というのはあくまでもその参考資料として扱われているものでございまして、それと、不穏当発言等で会議録が訂正された場合にも、それを正確に現在では反映できていないということがございますので、容量の問題も多少あるわけですが、それらの問題を含めまして、議運委員会でやはり延長をするということで改めて御決定いただければ、それに従っていきたいということでございます。

高山分科員 いや、そうですかね。正式な議事録は会議録で文書のものだというのは、それは当然わかりますけれども、今の時代、謝罪会見で何秒頭を下げていただとか、目がこうだったとか、結構そういうことから国民の皆さんは多くの情報を得るんじゃないですか。

 例えば、審議も滞りなく議事録上ではいっていても、ああ、実際にはこういうやりとりがあったんだな、こういうことを知ることが、まさに国会はもともと公開の場なんですから、だから、この審議中継というのは非常に私は国民の皆さんも楽しみにしているし、しかも今後も保存しておいて、ああ、十年前はこういう議論があったんだなと過去の検証に使うには、議事録も結構だけれども、もちろんこのテレビ中継、本当はテレビ中継するのが一番いいのかもしれませんけれども、それが予算の関係でできないので、このインターネット中継はぜひ何年も何年もとっておくべきだと思うんですね。

 この点、しかも予算請求しているじゃないですか、一回、サーバー増設のための。どうしてそれを取り下げているんですか。

駒崎事務総長 ただいま申し上げましたように、一応議運で決まっているものですのでそれに従っているということでございまして、現状では衆議院のテレビ中継というのは大変多くのアクセスをいただいているところでございますので、改めて御決定いただければ、容量も多少の余裕があるようでございますので、延ばせるんだろうと思います。

高山分科員 私は、この審議中継、まさにこれは国民みんな知りたいと思っていますし、しかも最もこれは安いですよ、コスト的に言えば。テレビ中継だ、会議録だ、いろいろ考えても、審議中継はインターネット上にただアップするだけですから一番安い。

 これは、今後どんどん永久保存に向けて、私も議員としてきちんと活動していきますけれども、ちょっと事務局の方でも、なるべく安いコストでこういう保存ができるように、ぜひ検討してください。それは本当にお願いいたします。

 ちょっと時間が参りましたので、きょうは裁判所の方に質問をお願いしておりましたけれども、これは私、法務委員会ですので、また次回に譲りたいと思います。

 終わります。

河井主査代理 これにて高山智司君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして国会所管についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

河井主査代理 次に、内閣府所管について審査を進めます。

 防衛庁について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。塩川鉄也君。

塩川分科員 おはようございます。日本共産党の塩川鉄也でございます。

 きょう、私、基地問題に関連して幾つか御質問をさせていただきます。

 最初に、日米安全保障協議委員会、2プラス2の共同文書の内容についてですけれども、ここで訓練移転ということが取り上げられております。文書の中でも、「この報告で議論された二国間の相互運用性を向上させる必要性に従うとともに、訓練活動の影響を軽減するとの目標を念頭に、嘉手納飛行場を始めとして、三沢飛行場や岩国飛行場といった米軍航空施設から他の軍用施設への訓練の分散を拡大することに改めて注意が払われる。」このように文書では書かれています。そのために、米軍機の訓練移転ということで、千歳ですとか百里、小松、築城、新田原などに飛来するのではないかと地元の皆さんが大変懸念の声も上げ、多くのところで反対の声が上げられております。

 そこで、この共同文書の内容について何点か確認をしたいんですけれども、よくマスコミでは沖縄の負担軽減のためF15の訓練移転が行われると言われていますけれども、この共同文書において、訓練移転が行われる米軍機というのはF15に限定されているものでしょうか。

大古政府参考人 お答えいたします。

 昨年十月の2プラス2共同文書におきましては、委員御指摘のとおりの表現があるところでございます。

 この中の「訓練の分散」につきましては、この三つの米軍飛行場の戦闘機が基本的には対象になると考えております。その意味では、第一義的には、嘉手納飛行場につきましてはF15が、岩国飛行場につきましてはFA18が、それから三沢飛行場につきましてはF16がそれぞれ配備されておりますので、この戦闘機が訓練分散の対象になるというふうに考えております。

塩川分科員 三沢のF16、岩国のFA18、これらの米軍機の訓練移転もあり得るということです。

 続けて、この訓練移転には、二国間の相互運用性を向上させる必要性ということと訓練活動の影響を軽減するという二つの目的があるんだと書かれていると思うんですが、その点、確認のために、二つの目的を持って訓練移転を行うんだということだけお答えいただけますか。

大古政府参考人 ただいま委員の指摘したとおりでございます。

塩川分科員 そこで、二国間の相互運用性の向上というのはどういうことを意味するのか、その点をお答えください。

大古政府参考人 この相互運用性、英語ではインターオペラビリティーと申しますけれども、必ずしも確立された定義があるわけではございませんが、一般には、戦術、装備、後方支援等に関しまして両国の共通性、利用性を確保することをいうものと理解しております。

塩川分科員 長官にこの点でお伺いしたいんですけれども、昨年の十二月にアメリカのローレス国防副次官が日本に見えられまして、長官との会談をされた、そのことはもうマスコミなどでも報道されております。その際に、ローレス次官のコメントとして、「目的は訓練を減らすことではなく、自衛隊との共同訓練や相互運用性を高めることだ」と述べたと言われております。

 ですから、今回の戦闘機訓練の移転というのは、爆音被害などの沖縄県民の負担軽減が主要な目的ではなくて、米軍と自衛隊との相互運用性、つまり、日米共同作戦といいますか、その向上が主要な目的、眼目ではないか、ローレス次官の発言はそういう趣旨だったのではないかと思うんですが、その点はいかがでしょうか。

額賀国務大臣 委員御指摘のとおり、今度の米軍再編に伴う日米協議のキーワードは、一つは抑止力を維持するということ、もう一つは負担を軽減していこうということ。その連立方程式を解くためには、日米の間で基地を共同使用するとか、お互いに運用能力を高めていくとか、そういうことで能力を維持し、結果的に負担が少なくなっていくことを目標にしているということだと思います。

塩川分科員 能力向上の結果として負担が軽減をされるという趣旨ということですか。

額賀国務大臣 連立方程式を片方だけ解くことではありません。両方解くわけであります。

塩川分科員 引き続き、その共同文書の内容についてなんですが、嘉手納基地を初めとして、三沢飛行場や岩国飛行場といった米軍航空施設から他の軍用施設への訓練の分散を図るとありますけれども、ここにある米軍航空施設には、横田とかあるいは厚木、これも含まれているということでよろしいんでしょうか。

大古政府参考人 昨年の十月の共同文書では、御指摘の嘉手納飛行場、三沢飛行場及び岩国飛行場が例として挙げられたところでございます。

 ただ、いずれにしても、具体的な計画作成に向けて日米間で今協議を進めているところでございますので、最終的な、具体的な内容につきましては現段階ではお答えできないということで御理解いただきたいと思います。

塩川分科員 嘉手納基地には米本土の戦闘機部隊も展開をして、いつでも出撃できる態勢と訓練を強化していると聞いております。訓練が移転をされる場合に、これら米本土の戦闘機部隊の訓練も受け入れることになるということでしょうか。

大古政府参考人 基本的には、日本にあります米軍飛行場の飛行機が対象になるということで理解しているところでございます。

塩川分科員 実際には、ダイレクトであるかどうかは別にしてみても、嘉手納ですとか三沢などを経由して、例えば百里などにおいても米本土からの米軍機の訓練が行われる可能性というのはあり得ると考えます。そこで、現地の皆さんにしますと、こういった訓練移転について反対の声が大変強いというのが実態だと思います。それはもう長官御自身が、現場にも足を運ばれて実感をされておられることだと思います。その点で、やはりしっかりと地元の声を聞くべきだと思っております。

 そこで、安保条約六条に基づく地位協定の実施に伴う国有の財産の管理に関する法律、通称国管法と言われているそうですけれども、その第七条に、国がこの法律の第二条の規定により合衆国に対して政令で定める国有の財産の使用を許そうとするときは、内閣総理大臣は、あらかじめ、関係行政機関の長、関係のある都道府県及び市町村の長並びに学識経験を有する者の意見を聞かなければならないとあります。そもそも、この国管法の七条に基づいて地元自治体の長の意見を聞いた事例というのはあるんでしょうか。

北原政府参考人 これは過去ということですね。過去から今日まで、その事例はございません。

塩川分科員 合衆国に国有財産を提供する必要がある場合については関係自治体の長の意見を聞かなければならないと規定をされているのに、聞いたことがないという理由はなぜでしょうか。

北原政府参考人 御答弁申し上げます。

 先ほど先生引用になりました国管法の第七条でございますが、先生お読み上げにならなかったんですけれども、第七条の頭の方には「政令で定める国有の財産の使用を許そうとするときは、」という規定がまずございまして、そしてそれを受けた政令がございます。

 ポイントといたしましては、「合衆国に使用を許そうとする国有の財産のうち、その使用を許すことが産業、教育若しくは学術研究又は関係住民の生活に及ぼす影響その他公共の福祉に及ぼす影響が軽微であると認められるもの以外のものとする。」という規定がございます。すなわち、軽微なものについては意見を国管法七条に基づきまして聴取することはないわけでございまして、これまでの過去の経緯等を我々考えましたときには、これまでは、関係住民の生活に及ぼす影響等が少ないということから、いわゆる軽微なものと判断をし、したがいまして、過去、国管法に基づき意見を聴取したことはないのであります。

塩川分科員 要するに、政令に言われていますように、関係住民に及ぼす影響などが軽微な場合には必要がないという規定であって、過去そういう軽微な事例ばかりだったということをおっしゃっておられるんですけれども、本当にそうなのかということなんです。

 例えば百里の問題につきましても、私、質問主意書を出しまして、答弁書をいただきました。この答弁書では、百里基地への訓練移転に関連して、現在までに、この規定、国管法の七条の規定に基づき関係のある都道府県及び市町村の長の意見を聞いたことはないという回答でした。つまり、関係住民の生活に及ぼす影響が軽微だから、地元の長に説明をしなかったということになるんじゃありませんか。

北原政府参考人 私がまず申し上げましたのは、過去、これまでのことを申し上げました。これは、軽微かどうかということは社会通念上の判断によるものでございまして、その趣旨は、先生の先輩でございます上田耕一郎先生にも質問主意書で御回答させていただいております。

 それから、先生今御指摘の百里云々の件でございますが、この点につきましては、御承知のように、2プラス2での共同文書には嘉手納飛行場等から他の軍用施設への訓練の分散ということで明記されておりますけれども、訓練の具体的な移転先ですとか、あるいは訓練の移転に関します具体的内容につきましては、現在日米間で協議中でございます。したがいまして、国管法第七条の規定により関係行政機関等の意見を聴取することについては、お答えする段階にはございません。

 いずれにいたしましても、先生、地元の御意見を聞いたりということは極めて大事だという御指摘は全くそのとおりでございまして、私ども、共同文書が発表になりました十月二十九日以降、防衛庁長官が先頭に立ちまして、全国の関係する自治体に対しまして、この国管法第七条の規定の適用のいかんにかかわらず、私どもといたしましては誠心誠意御説明をし、御意見を聞き、御質問に答えてまいっているところでございます。

塩川分科員 百里基地の地元の小川町長と小川町議会百里基地対策委員会委員長の連名での要望書が東京防衛施設局長に提出をされております。そこには、訓練移転について、本町としては、騒音の加重や安全、安心面の懸念など、住民生活に大きな影響を与えることから、航空自衛隊百里基地への訓練の受け入れについては断固反対だと述べてあります。周辺自治体の鉾田市や行方市、また茨城県も反対の意向を示しております。

 具体的な内容は協議中だと言いますけれども、既にこの方向でということで、政務官なども現地を訪問しまして説明をされておられるじゃないですか。その説明の範囲であっても、地元自治体からは、こういう住民に大きな影響を与えるものについては断固反対だと意思表示がされているわけです。そのときに、この国管法七条の規定に基づいて、なぜきちんとした説明を行わないのか。

 長官、いかがでしょうか。百里基地は長官の御地元でもありますから、そういう点でも断固反対だという地元自治体の声をしっかり受けとめる、そういう点でも国管法七条の規定に基づいての説明責任を果たすということも必要だと思いますけれども、いかがでしょうか。

額賀国務大臣 私の地元でございますから、市町村長さんや議会の皆さん方とも顔を合わせることがよくありますし、意見を聞かせていただいております。また、百里だけではなくて、委員も御承知のとおり、また今北原長官が言ったように、中間報告の後、その経緯、それからその後の日米協議が進展しているわけでありますから、その過程について逐一報告をさせてもらっている。それは丁寧にやらせてもらっているということであります。中間報告に引き続いて日米協議が進展をして、結論が出れば、訓練移転についての内容はこうこうこういうことですということになれば、その時点でまたきっちりと説明をさせていただくことになると思います。

塩川分科員 長官は、この訓練移転という案件というのが軽微なものだというふうにお考えでしょうか。そうでなければ、しっかりとした、国管法七条に基づいての説明責任を果たすべきだと思うんですが、改めていかがでしょうか。

額賀国務大臣 訓練移転について、決して地元のことについておろそかにしてはいけないというふうに思っております。その途中において、まだ正式に、どれくらい移転をさせていくのか、それから期間はどうなのかについて今協議中でありますから、それが決まった時点で初めて、その具体的な、騒音がどうなるとか影響がどうなるとか、決まった上で判断すべきだというふうに思っております。

塩川分科員 既に動き出している案件で、地元から断固反対だという声があるわけですから、それをしっかりと受けとめた対応こそ求められていると思います。この点を重ねて申し上げて、次に、米軍所沢通信基地の問題について御質問します。

 私が住んでおります埼玉県の所沢市に、九十七ヘクタールの所沢通信施設というのがございます。そこは歴史的にも、所沢市挙げて全面返還を求める取り組みが行われてきたところであります。同時に、部分返還ということで、南北に長い米軍通信施設を横断する東西連絡道路をつくってほしいという要望がありました。そういう点で、この間三年間にわたって、防衛施設庁の予算の中で調査費も組まれてきているところであります。

 そこで、お尋ねしますが、この東西連絡道路、直線道路を建設する場合には、その部分にちょうど米軍が財産とする通信局舎や倉庫がかかるということで、その施設の移転費用が生じる可能性があります。所沢市が所沢市の基地対策協議会に示した移転の概算費用などは約九億円などとして明示をしてあります。この点について、国は、原則として原因者負担であるとして、この米軍施設の移転費用について所沢市が負担するのが筋だと言っていると聞いておりますけれども、そのとおりでしょうか。

北原政府参考人 御答弁申し上げます。

 まず、公共事業の施行に伴います公共補償の一般的な考え方でございますが、道路事業など公共事業の施行に伴い、その道路建設によりまして移設が必要な物件がある場合の補償につきましては、先生御承知のとおり、公共事業の施行に伴う公共補償基準要綱などがその基準になると考えております。このような場合には、当該道路事業の起業者がその負担を行う者となるものと承知をしております。

 他方におきまして、私ども防衛施設庁が所管をいたしております提供施設移設整備、いわゆるリロケーションにつきましては、地元自治体等からの返還要請を踏まえまして、日米両政府間の合意に基づき、米軍に提供している施設・区域の返還を受けるために、これは国費支弁をもちまして、当該施設・区域に所在する建物あるいは工作物等を別の場所に移設することとしているところでございます。

 これまで、先生御指摘の点につきましては、我々といたしましても、所沢市等と調整を行うための基礎資料を得ることを目的といたしまして、各種の調査を実施してまいりました。所沢市につきましては、先生も御指摘をされましたけれども、私どもの調査の結果を踏まえまして、ことしの一月三十日、所沢市基地対策協議会におきまして所沢市の基本的な考え方が示されたものと承知しております。すなわち、これは共同使用ではなくて返還が基本である、一点。もう一点は、形状は先生今おっしゃいました短距離で結ぶといったものでございます。

 いずれにいたしましても、私どもといたしましては、今後、地元から返還申請書の提出がなされれば、それをもちまして米側及び所沢市等と具体的な調整をしてまいりたい、そのように考えております。

塩川分科員 防衛施設庁が所沢市に対して、施設の移転費用が生じた場合には所沢市が負担するのが筋だ、原則原因者負担だと述べたのはそのとおりですね。

北原政府参考人 その趣旨のお話をしていることは事実でございますが、今申しましたように、二つあるわけでございます。一点は原則の話、それから他方このリロの話と、二つをあわせてお考えいただきたいと思います。

 それで、リロのことで対応するためには、ぜひとも、今後、地元からの返還申請書の提出、これを待ちまして、私ども、米側それから所沢市等と鋭意具体的な調整を進めさせていただきたいと思っております。

塩川分科員 日米合同委員会に基づいて返還を要求しているのは日本政府であり、本来、原因者負担というのであれば、米側に対する日本側を指すものであって、日本政府こそ原因者負担の当事者だと考えます。

 そこで、米軍提供国有地内に所在をする米軍財産、特に通信局舎などを含む軍事用の施設の移転費用を地元自治体が負担した事例というのはあるんでしょうか。

北原政府参考人 御答弁申し上げます。

 結論的にはございます。それは、地元自治体等の返還要請に基づきまして米軍財産を移設した例といたしまして、米軍多摩サービス補助施設の北側に隣接した都道稲城日野線、いわゆる川崎街道でございますが、それの拡幅事業に伴い、同施設の一部を返還した事案が該当いたしまして、この返還部分に所在し、米軍が整備しておりました、これには運動施設がございましたけれども、これらが移転の対象となりまして、その移転につきましては、道路拡幅の事業者であります東京都が行っているものであります。

塩川分科員 運動施設、ソフトボール場とも聞いていますけれども、私がお聞きしたのは、通信局舎のような軍事用の施設を移転する費用を地元自治体が負担した事例というのはあるのかということですが、いかがでしょうか。

北原政府参考人 これまでそのような例はございません。

 それから、先ほど先生おっしゃいました、私、運動施設と申しました、それはソフトボール場でございます。

塩川分科員 そういう点でも、前例がないような米軍の軍事施設そのものの移設費用を地元自治体に押しつけるようなことは行うべきではないということを申し上げたいと思います。

 その上で、米軍所沢通信施設の果たしている機能、役割の問題ですけれども、外務省にお聞きしますが、米軍側の出しております文書、これはホームページでも掲載されているものですけれども、二〇〇五年の七月二十五日付で、統合参謀本部議長指令と読むんでしょうか、こういう文書がございます。そこに、緊急行動メッセージ、EAMと言われるものが取り上げられていまして、このEAMは高度に組織化されたいわば有効性が認められたメッセージであって、核攻撃部隊の指揮管制において第一に使用されるものであるとあります。こういった文書があることは事実ですね。

梅本政府参考人 御答弁申し上げます。

 委員御指摘の文書というのは、米国防省の通信システム一般に関する政策を記しました二〇〇五年七月二十五日付の米統合参謀本部議長の指示、インストラクションを指すものだというふうに理解をしております。御指摘の文書は、ただいま御指摘ありましたように、米国防省のホームページ、インターネット上に数多くのいろいろな文書が公表されているわけでございますが、その中に入っておりまして、そういう意味で公表されているというふうに承知をしております。

 ただ、この米国防省の文書について、その位置づけあるいはその詳細について、我が国としてこれを申し上げる立場にはないわけでございます。

塩川分科員 横田基地の出しています広報紙にフジフライヤーというのがございますけれども、このフジフライヤーの中で、これは二〇〇〇年の十一月三日付ですけれども、横田の通信施設の機能についての説明が行われています。ここに施設部隊の責任者の方のコメントとして、我々はエマージェンシー・アクション・メッセージ、EAMをサポートしているということが書かれています。

 これはそもそも、米軍の中での通信機能の強化の中で、スコープコマンドという通信機能の強化が図られている。そういう中で、この所沢通信施設に核攻撃部隊への指令機能が持たされているということを当事者自身が認めているものであります。

 もともと所沢通信施設は、六〇年代にOTHレーダーの問題が取り上げられました。これは七五年に撤去をされる。さらに八〇年代にはジャイアント・トーク・ステーションという形で、核攻撃のゴーサインを出すという通信機能を持つということが暴露されました。

 今日、アメリカの先制攻撃戦略の中で、核兵器についても先制を求めるような今のアメリカの戦略の中で、改めて核攻撃指令を持つ基地の危険性というのも浮き彫りになっていると思います。こういった核攻撃指令の機能を持つ基地の撤去こそ求めるべきじゃないか。長官にその点、御答弁お願いします。

額賀国務大臣 私としては、この所沢通信施設というのは、これまでもそうだったし、今後も日米安保条約の目的を達成していくためには必要と思っております。地元の要望については、関係省庁ともよく連携をとり、できるだけ米軍それから地元の言い分等々を考えながら、適切に対処していくことが望ましいというふうに思います。

塩川分科員 米軍所沢通信施設の通信機能というのはアメリカの核先制攻撃を支えるものだ。核攻撃の指令機能の撤去を求めるものですし、基地全面返還は市民の願い、所沢市の共通の願いでありますから、この基地の全面返還、基地撤去を求めて、質問を終わります。

河井主査代理 これにて塩川鉄也君の質疑は終了いたしました。

 次に、照屋寛徳君。

照屋分科員 社会民主党の照屋寛徳です。

 私は、普天間基地の即時閉鎖、返還、そして海外への移設を強く求める立場であり、言われている沖合案、浅瀬案、沿岸案、陸上案、いずれにも反対の立場であります。基地の島と言われる沖縄に六十年間生きて、なぜ沖縄だけがこの国の安全保障の負担や犠牲を一方的に強いられなければいけないのか、このような理不尽さに怒りを覚えるものであり、私は、小さな島沖縄に基地の県内移設はこれ以上認められないという考えであります。

 さて、額賀長官、きょうから弥生三月を迎えました。米軍再編に関する日米協議は、三月に最終報告が取りまとめられると聞いております。額賀長官は、三月までに米軍再編について日米間の最終報告が合意される、できる、こういう見通しというか確信を持っておられるんでしょうか。

額賀国務大臣 照屋委員の、沖縄県民の皆さん方の思いというのはよく承知をしております。

 沖縄返還をなされた佐藤栄作首相のもとで、私の政治的な師匠でありました橋本登美三郎先生が当時官房長官をしておりました。私は、当時は新聞記者でありましたけれども、よく官房長官を通じていろいろな話を聞かせていただいておったということでございますので、よく沖縄県民の思いは知っているつもりであります。

 そしてまた、その後も、普天間返還を打ち出したのは、当時我々の仲間でありました橋本総理でございますから、橋本総理のもとで内閣官房副長官も経験をさせていただいた者として、この問題について非常にみずからの問題のような気がいたすぐらい関心を持っているところであります。まず、そういうことを照屋先生や沖縄県民の皆さん方にぜひわかっていただきたい。

 その上で、私は、今度の米軍再編に伴う日米同盟のあり方については、よく言われるように、抑止力を維持しながら負担を軽減するという形でこれまで交渉がなされてきて、中間報告が昨年の秋になされたわけでございます。三月末までに精力的に協議を進めておりますし、この再編を成功させる、解決させていくことが日本の安全保障、地域の安定にもつながっていくという確信を持っておりますし、また、日本の負担が軽減されるという形で最後の結論を得ることができるというふうに思っております。

 沖縄においても、総体的には土地の返還とか海兵隊のグアム移転だとか軽減が、縮小される中で結論を得ることができるものと思っております。

照屋分科員 長官は総体的にはという形容詞を使われましたが、私は、中間報告というのは、沖縄の基地負担の軽減よりもむしろ日米軍事同盟の急速な一体化が進むな、こういうふうに思っております。

 ところで、中間報告沿岸案については、長官御承知のように、稲嶺県知事それから名護市長が反対をしておりますし、地元久志、豊原、辺野古が強く反対をしております。長官は、このような沖縄の強い反対にもかかわらず沿岸案で見切り発車をして、沿岸案をそのまま沖縄県民に押しつけるおつもりでしょうか。

額賀国務大臣 私も中間案が出た直後に長官にならせていただいたわけでございますけれども、即座に、稲嶺知事を初め、当時の名護市長の岸本市長さん、あるいは議会の皆さん方、多くの方々とこの問題について協議をしてきました。そしてまた、地元の久志村の方々とも意見を交換させていただいております。

 全体的なトーンとしては、日本の国の安全保障を考えることは非常に大事なことである、そして日米同盟というものは必要であるという共通の認識を持ってもらっているのではないのかというふうに思っております。

 その上で、稲嶺知事も、土地の返還とか海兵隊の移転については一定の評価をする、しかし、普天間移転に伴う県内のヘリポート移設については問題であるというふうに言っておりますけれども、地元の方々も、基地をつくることについて、ヘリポートが来ること自体には反対はしていない、今のような沿岸案では受け入れられないという意見を言っているのではないかと思っております。

 我々は、今、日米の間で最後の結論を得る努力をしております。その努力を得る過程で、誠意を持って、地域の市民の皆さん方や知事さんや市長さんや議会の皆さん方と率直に話しながら、理解を得る努力をしたいというふうに思っております。

照屋分科員 額賀長官、あと一カ月しかないんです。この一カ月の間に、地元に対してどのように説明責任を果たして、どのように地元の理解を得るのか。今の中間報告のまま、いかに総理や長官が地元沖縄の理解と協力を得ると言っても、理解と協力には必ずしも同意だけじゃないんです。一方的に理解や協力を求められても、それは、沖縄の側から拒否することだってあるわけです。

 総理は、二月二十三日に、県選出の自民党国会議員とお会いになって、政府案でやっていくと明確に言っているんです。長官、この中間報告は、修正なんかやるつもりはない、修正しないんだというのが長官を初め政府の本音ではありませんか。

額賀国務大臣 昨年秋に中間報告が日米の間で合意をされ、それについて地元の皆さん方に今御説明をさせていただくと同時に、詳細について結論を得るべく日米の間で協議を重ねているところでございます。

 私どもは、中間報告の原則に基づいて日米間で協議をし、そして、それに基づいて、それぞれの基地の周辺の方々、あるいはまた県や市町村、自治体の皆さん方に説明をし、そして御理解を得る努力を今しているところである。しかし、まだ日米の間で最終報告に至っていないので、この最終報告に向けての協議をする傍ら、地元の皆さん方に、説得をし、御理解を得る最善の努力をしていくということでございます。

照屋分科員 これ以上論争しても、結局、県民は長官や政府の本音を見抜いているんです。私は、そんなに、沖縄県民は一方的に犠牲を甘受するほどお人よしではないということをあえて言っておきたいと思います。

 ところで、防衛庁は、電源立地地域交付金をモデルに、新たな交付金制度、米軍再編対策交付金、これは仮称ですが、このようなものを創設して、基地建設の促進を図る準備をしているとの報道がありますが、その新しい交付金制度の内容や仕組みについて伺いたいと思います。

額賀国務大臣 この米軍再編問題を地元の皆さん方に御理解を得るために、今、日米間で協議をしているということは、先ほど申し上げたとおりであります。

 基地の再編とか縮小、整理ということを展開していく上に当たっては、さまざまな問題が提起されてくるものと思っておりますので、我々は既に政府全体で取り組むべき問題であるというふうに考えまして、関係閣僚会議というものを設けまして、今後の地域の発展の問題、雇用の問題、あるいは新しいインフラ整備の問題、さまざまなことに対応していくために、そういう政府挙げての取り組みを考えているわけであります。

 まだ最終報告でどういう形になっていくかが決まっていない段階で、具体的な政策が決定しているわけではありませんけれども、この基地の再編の問題が、国民の間に、あるいはまた基地を抱えている自治体に定着していくような形で総合的に考えていきたいということで、我々もさまざまなことを考えているということを、それは先生の御指摘のとおりでございます。

 今後、再編の結論が整理されていくに伴い、整理をし、国民の皆さん方に提示をしていくような形になると思います。

照屋分科員 長官、新たな基地交付金制度、私は、札束で沖縄県民のほおをぶん殴れば基地建設が容易に進むだろうと思ったら、大間違いだと思う。

 そのことを強く指摘をして、次に、航空自衛隊那覇基地の滝脇司令が、去る二月十六日、下地島空港の軍事利用の必要性を明言して、F15戦闘機の那覇基地への配備の見通しを示す記者会見をやりました。

 額賀長官は、滝脇司令の発言内容について報告を受けておりますか。長官は同司令の発言についてどのようにお思いでしょうか。

額賀国務大臣 私もこの問題について報道によって知らされまして、すぐ私は空幕長を呼んで、本人を東京に呼んでそういう発言をしたのかどうか確認をすべしと。議論をすることはいいけれども、公の場で、まして国民の情報のパイプ役を果たしているマスコミの前で、自分の考え方がいかにも航空自衛隊及び防衛庁、政府の考え方のような印象を与えるような発言はまかりならぬという話をしたわけでございます。その経緯については照屋先生も御承知のとおりであると思いますけれども、そういう対応をいたしました。

    〔河井主査代理退席、主査着席〕

照屋分科員 これは長官、司令の軽率な発言、そのように軽いものじゃない。シビリアンコントロールを無視した制服組の暴走ですよ。それぐらい厳しく受けとめてほしい。

 長官は、下地島空港については、一九七二年、旧琉球政府と日本政府との間に軍事利用しないという屋良確認書があることを御承知ですか。

額賀国務大臣 照屋先生おっしゃるように、下地島空港は第三種空港で、その調整の権限は管理者である今の沖縄県にあるということはよく承知をしておりますし、それが、いわゆる今先生がおっしゃるように、屋良確認書であるということは知っております。

照屋分科員 滝脇司令の発言で、地元宮古島市の住民は非常にびっくりしております。不安を覚えております。

 額賀長官は、軍事利用をしないという政府と当時の屋良琉球政府主席とのいわゆる屋良覚書、これを今後も政府として厳守をしていく、こういうお気持ちはありますか。決意を聞きましょう。

額賀国務大臣 これは、沖縄県議会でもそういうことを決めておりますし、我々、今そこで、自衛隊で活用するとか、そういうことを考えているわけではありません。

照屋分科員 ちょっと通告した質問順序と違いますが、次に、キャンプ・シュワブの沿岸水域の立ち入り問題について聞きます。

 二月の二十三日、佐藤勉那覇防衛施設局長は記者会見をして、辺野古沖の従来案が結局停滞をしてつくれなかったのは、環境団体などが海上での抗議行動をしたのが一つの大きな要因だ、沿岸案の利点として、シュワブ沿岸海域が立入禁止の制限水域、これでつくりやすいんだ、こういうことを言っておりますが、なぜ今までキャンプ・シュワブ沿岸部の制限水域を明らかにしてこなかったんですか。

北原政府参考人 照屋先生に御答弁申し上げます。

 ただいま先生御指摘をいただきましたキャンプ・シュワブにおける提供水域につきましては、先生御承知のとおり、沖縄復帰の昭和四十七年五月十五日の日米合同委員会合意に基づき提供しているところでございます。

 提供の状況等につきましては、いわゆる五・一五メモで書かれているわけでございますが、これにつきましては、平成八年三月二十八日の日米合同委員会、また、平成八年十二月のSACO最終報告におきましても、その一層の公表を追求することが確認されております。また、沖縄県の御要望も踏まえまして、当時米側とも調整した結果でございますが、平成九年三月二十五日、関連の地図、図面等を含めてこれはすべて公表がされているところでございます。

 御指摘の提供水域につきましても、すべて公表はされているところでございます。

照屋分科員 次に、私は、きょうの分科会で安次富委員からもありましたが、米軍キャンプ瑞慶覧の文化財調査のための立入調査問題、これは非常に重要な問題だと思っております。視点が違いますけれども、米軍キャンプ瑞慶覧のうち、沖縄市、北中城村、宜野湾市が求めているSACOで返還が合意された地区の文化財確認のための立ち入りや測量が米軍から拒否されております。必要な調査、測量ができないと、返還後の跡利用がおくれるわけです。

 これは、政府としても米軍に対して、関係自治体なんだから、照屋寛徳が入ろうというわけじゃないんだから、何も測量、立ち入りによって米軍の安全が損なわれるわけでもない。私は、拒否をしている米軍もけしからぬけれども、政府としても米軍に対して認めるように働きかけてほしいということと、結局この問題は、地位協定三条で基地管理権を米軍に与えている、この問題だろうと思います。だから、県民が地位協定の抜本的、全面的な改定を求めている、このようなことも踏まえて、政府として、認めるような働きかけについてどのようにお思いでしょうか、お聞きをします。

北原政府参考人 照屋先生に御答弁申し上げます。

 ただいま御指摘いただきましたキャンプ瑞慶覧の立ち入りの件でございますが、先生御指摘のように、宜野湾市あるいは沖縄市、北中城村、それぞれ文化財調査等のための立ち入りにつきまして現地米軍に要請をしたところでございますが、現地米軍は、米軍住宅の居住者に影響を及ぼすといったこと等を理由に立ち入りを許可しておりません。

 この点につきまして、私ども那覇防衛施設局に、宜野湾市につきましては協力の要請がございました。それを受けまして、私どもは、現地米軍、先生御承知のG5でございますが、G5のもとに、宜野湾市職員の立ち入り目的等をるる御説明申し上げまして理解を求めてきたところでございますが、現地米軍からは許可できないという連絡があったところでございます。三度にわたりまして申し入れをしたわけでございますが、実現はできませんでした。

 いずれにいたしましても、私どもといたしましては、地元の地方公共団体の米軍施設・区域への立ち入りに関しましては、その実現に向けましてできる限りの協力を行ってまいりたい、そのように考えているところでございます。

照屋分科員 終わります。

松岡主査 これにて照屋寛徳君の質疑は終了いたしました。

 次に、谷口和史君。

谷口(和)分科員 公明党の谷口和史でございます。

 今もお話が出ましたけれども、私の方からは、まず、在日米軍の再編をめぐる日米協議についてお伺いをしたいと思います。

 昨年十月二十九日、いわゆる2プラス2におきまして、在日米軍再編の中間報告、これについての合意がなされました。そして、ことし三月までの具体案の最終的な取りまとめに向けて、これまでに四回、日米外務・防衛当局間の審議官級協議が開催をされているというふうに承知をしております。

 また、ことし一月十七日には、額賀防衛庁長官みずからアメリカ合衆国を訪問され、ラムズフェルド国防長官と会談をされました。この会談の中で、在日米軍再編問題は三月の最終報告取りまとめに向けて協議を加速させるということで一致をされております。

 改めて申し上げるまでもなく、このたびの在日米軍の再編は、日米両国にとりまして安全保障上極めて重要な意味を持っており、また国際社会の中にあって日米両国それぞれの役割が広がっていくことも十分予想をされます。在日米軍再編の日米協議の動向を、多くの国民の方々が大変注目しながら見守っておられます。

 ここで、私の主要な地元である神奈川県の状況について若干触れさせていただきたいと思いますけれども、昭和二十七年、サンフランシスコ平和条約が発効されたときには、神奈川県内には米軍基地が百六十二カ所ございました。広さでいいますと約三十五・九平方キロメートルで、現在の茅ケ崎市とほぼ同じ面積でございました。

 その後、県を初め地元自治体や住民の皆さんの基地返還の要望運動等により、基地が整理縮小され、またあるいは返還をされてまいりました。しかしながら、現在でも、県内に十五カ所、面積にして約二十・九平方キロメートルも基地が存在をしております。これは、綾瀬市とほぼ同じくらいの広さでありまして、県土の約一%を占めております。

 神奈川県は都市化が進んでおりまして、人口も密集をしており、基地の存在は、住民の生活や安全あるいはまちづくりに大変大きな影響を与えております。安全で安心できる町、住み心地のいい町、こういった町を切望する声を私は県内のさまざまな地域で多くの方々から伺っております。

 基地周辺の自治体や住民の皆さんは、地元負担がどのように軽減されるのか、あるいは軽減されないのか、このたびの日米協議の行方をかたずをのんで見守っておられます。防衛庁長官を初め関係当局の方々もこのような事情を十分承知していただいているとは思いますけれども、あえてこうした地元の状況をこの場をおかりしましてお伝えさせていただきます。

 その上で、現在の日米協議の交渉の状況はどうなっているのか、また最終的にこの協議をどのように調整されていかれるのか、防衛庁長官の御決意も含めてお尋ねをしたいと思います。

額賀国務大臣 地元神奈川県で日ごろから安全保障、防衛問題について御理解をいただいておりまして、心から感謝を申し上げる次第でございます。

 委員御指摘のとおり、今度の米軍再編の問題というのは、2プラス2に出席した大野前防衛庁長官もいらっしゃいますけれども、戦略目標として、日本の安全と地域の安定をどうやって図っていくか、そして日米同盟がどういう役割を果たしていくのか、そういうことについて大きな目標を掲げて今度の米軍再編が行われているわけで、米軍再編に伴う自衛隊のあり方が今問われているというふうに認識をしておるわけであります。

 一月十七日にワシントンでラムズフェルド長官と会談をしたときに、そういう大きな日米同盟が、日本やアジアにおいて、あるいは世界の中でどういう役割を果たしていくかということは極めて大事なことである、日本とアメリカはそういう意味では自由あるいはまた民主主義、そういう共通の理念を持って地域の安定に寄与していく、そういう考え方のもとに、日本とアメリカの再編の協議をぜひ成功させなければならないという共通の認識の上に立って今協議をしているわけでございます。その中で、中間報告で大体の概念そして方向づけがされたわけでございますから、具体的な地域の問題について今詳細な協議をしているということであります。

 ラムズフェルド長官との場においても、私自身、谷垣先生等を初め与党の意見も聞かせていただいておりましたので、座間の問題、相模原補給廠の問題等々について具体的に言及をいたしまして、これは日本も一生懸命頑張るけれども、アメリカも譲るべきところは譲って、そして大きな目標に前進していかなければならないという話をいたしました。米国側も理解を得たものと思っております。

 三月末までに審議官クラスで精力的に協議をし、どうしても詰めることができないときは、これは長官同士で、政治決断をしてでもきちっとしていこうということになっております。

谷口(和)分科員 大変ありがとうございます。

 続きまして、基地周辺の安心、安全をどのように確保するか、こういう観点から何点か質問をさせていただきたいと思います。

 最近、厚木基地の周辺住民の騒音被害について一部報道がありましたけれども、それによりますと、相模原市では、今年度、米軍機及び米軍ヘリの騒音に対する市民からの苦情件数が過去最多に及んでおります。

 厚木基地を離着陸する米軍機とヘリの騒音に対する苦情を見ますと、今年度は十二月までの九カ月間で一千六百件も市の方に苦情が寄せられております。市としましては昭和五十九年以降の苦情件数の記録が残されているようですけれども、これまでに過去最多の件数は平成十一年度の一千四件でありまして、今年度は十二月までの時点でもう既にこの件数を大きく上回っております。

 今年度、米軍機に関する苦情件数が最も多かったのは昨年九月の三百二十八件、それから二番目が十月の百五十五件、そして四月百十四件、五月百十件、八月百一件、こういうふうになっております。これは、南風のために相模原市側から着陸するケースの多い夏場と、そして引っ越しで初めて騒音の被害を受けられた転入者の多い春ごろに集中をしております。

 また、昨年八月二十日、空母キティーホークが横須賀に入港した後、八月二十九日からの数週間は市への苦情電話が、市の方で苦情電話をとり切れなかったというほど激増し、一昨年九月の入港時に比べると二・五倍になっているということであります。住民の皆さんからは、テレビや電話が聞こえない、病人が家にいるので何とかしてほしい、こういった訴えが多かったというふうにあります。また、キャンプ座間の米軍ヘリ騒音への苦情件数も二百十五件に上っており、過去最多でありました平成十五年度、これは五十二件ですけれども、その四倍に達しております。

 市としても、墜落の危険が増す低空飛行や編隊飛行、夕方以降の飛行活動は禁止していただきたい、こう強く要望をされております。

 このように、超過密化した市街地上空での航空機の飛行は、基地周辺の方々に騒音被害だけでも多大な影響を与えております。さらに、航空機の部品落下事故やヘリコプターの不時着など、一歩間違えば大惨事につながりかねない事態も想定され、基地周辺の住民に与える不安感や生活への影響は大変重大なものがあります。

 今まで、残念にも事故や事件が起こった場合には、何が事故原因であったか徹底して原因究明に当たられ、再発防止策についても十分検討の上、さまざまな改善がなされてきていることと思います。このような御努力には敬意を表するものでありますけれども、航空機事故が万一発生した場合、被害がいかに甚大になるかということを考えますと、事件や事故を未然に防ぐためには具体的にどのようにしたらいいのか、いわば事故予防の発想を常に持ちながら、怠ることなく日常的に準備をしていくことがいかに重要であるかということを私はここで強く訴えさせていただきたいと思っております。

 その意味から、具体的な事実を通して、今後、事故ゼロを目指してどのように取り組んでいかれるのか、お尋ねをしたいと思います。

 まず、最近五年間で米軍機及び自衛隊機による墜落事故等の発生状況は全国でどのようになっているのか、防衛庁と防衛施設庁にお尋ねしたいと思います。

長岡政府参考人 私ども防衛施設庁が承知をしております、最近五年間、これは平成十二年度から平成十七年十二月末でございますけれども、その間の在日米軍による航空機事故等の発生件数は八十八件でございます。内訳につきましては、墜落が五件、それから先ほど先生がお触れになりました部品等の落下が二十八件、それから民間空港等への予防着陸等が五十五件でございます。

 以上でございます。

山崎政府参考人 自衛隊機の事故について御報告をいたします。

 平成十二年度から平成の十七年十二月三十一日までの間に発生をいたしました自衛隊機の主な事故の発生件数は十六件でございます。その内訳は、墜落等が十五件、その他が一件でございます。

谷口(和)分科員 ありがとうございます。

 次に、最近発生した事件について、具体的な内容をお尋ねしておきたいと思います。

 まず、一昨年の七月十九日ですけれども、横浜市泉区に米軍ヘリから二百発入りの弾薬箱が落下した、こういう事件がございました。厚木基地を拠点とする米軍ヘリが横須賀基地に向かって飛行中に、横浜市の泉区上空で、積んでいた弾薬二百発を誤って住宅街へ落下させたというものでありました。

 弾薬が落下した現場周辺は、マンションや一戸建て住宅が建ち並んでおる、こういう住宅街でありましたけれども、落下してから八時間後に米軍関係者が駐車場で六十一発を発見、十二時間たってから、現場から約一キロも離れた駐車場で付近の住民の方が百三十四発を発見し、警察に届けておられます。

 本件について、事実関係はどうだったのか、確認をさせていただきたいと思うんです。

長岡政府参考人 御指摘の事件でございますけれども、七月十九日の午前八時四十五分ごろでございます。横浜市泉区和泉町におきまして、在日米海軍所属のH60ヘリコプターから、御指摘の機関銃の弾薬二百発の入ったケースが落下をいたしました。

 本件事故を受けまして、同日、横浜防衛施設局から、神奈川県、横浜市、綾瀬市、大和市に対して情報提供をいたしております。同日以降、現地米軍それから警察の合同捜索によりまして、今先生御指摘のようなケースがありまして、結局、弾薬ケースそれから弾薬百九十八発を発見いたしております。

 なお、幸いなことに被害についての報告は受けておりません。

 以上でございます。

谷口(和)分科員 それでは、この件について外務省はアメリカに対してどのような対応をされたのか、お尋ねをしておきたいと思います。

梅本政府参考人 お答え申し上げます。

 外務省といたしましても、事故が発生をしたという一報を受けまして、直ちに外務省の方から米側に、これは在京アメリカ大使館でございますが、遺憾の意を伝達し、また原因究明、再発防止措置の実施を申し入れたところでございます。

谷口(和)分科員 次に、もう一件、昨年の七月三十日ですけれども、午前十一時四十五分ごろ、藤沢の片瀬海岸の海水浴場付近に米軍ヘリが一機不時着をいたしました。現場は漁港の敷地内で、近くには駐車場や漁協の建物などがあり、百メートルほど離れた場所には海水浴客が大勢おられました。幸いに負傷者は出ませんでしたけれども、場所が少しずれていたら大変なことになったということは間違いございません。

 この件についても、事実関係はどうだったのか、お尋ねをしておきたいと思います。

長岡政府参考人 本件につきましては、平成十七年の七月三十日でございますけれども、午前十一時四十五分ごろ、在日米海軍所属のUH3Hヘリコプター一機が、油圧系統の異常を知らせるランプが点灯したということから、神奈川県藤沢市の片瀬海岸に予防着陸をいたしております。

 本件につきましても、同日、横浜防衛施設局から、神奈川県、藤沢市、大和市、綾瀬市等に対しまして情報提供をさせていただいております。

 これは、予防着陸をいたしまして、整備が完了した後、同じく七月三十日でございますが、午後の六時五十分ごろ現場を離陸いたしまして、午後の七時十分ごろに厚木基地に帰着をしたということでございます。先生御指摘のように人的被害はなかったわけでございますけれども、若干油が漏れたりはしておるところでございます。

 それから、今外務省からも御答弁ありましたけれども、先ほどの横浜の件もそうでございますけれども、防衛庁といたしましても、再発防止について、その都度、米軍に対して申し入れているところでございます。

谷口(和)分科員 ありがとうございます。

 この件につきましても、外務省のアメリカに対する対応について確認をしておきたいと思います。

梅本政府参考人 お答え申し上げます。

 今御説明のありました七月三十日の予防着陸につきましても、これは予防着陸でございますのでいわゆる事故、事件とは多少性格の違うところもございますが、やはり地元のいろいろな関係者に大変な不安を与えるということでございますので、私どもとしては、やはり事故のありました同日に外務省の方から在京アメリカ大使館に対して遺憾の意を表明し、原因究明それから再発防止について万全を期すように申し入れをしたところでございます。

谷口(和)分科員 先ほどから御答弁いただきました事件、事故の発生件数については、見方によって、件数が多い、もしくは少ないなど、いろいろな評価が考えられるかと思います。また、二つの事件につきましては、アメリカにはアメリカなりの主張もあるかと思います。しかしながら、一歩間違えれば大惨事につながりかねなかったことを銘記しておかなければならないというふうに思います。

 基地の周辺地域には常に空からの危険があるわけで、事故等が発生した場合、その後の対応について万全を期していかなければならないことは当然でありますけれども、事故ゼロを実現するために、日ごろからできることはすべて取り組んでいくことがさらに重要であるというふうに思います。

 そのために、例えば事故ゼロを実現するためのアメリカとの定期協議を積極的に開催することなど、さらに工夫することも必要ではないかというふうに考えております。事故ゼロを実現するためには今後どのように取り組んでいかれるのか、防衛施設庁と外務省にお尋ねをしたいと思います。

長岡政府参考人 先生御指摘のとおり、私どもといたしましても、米軍の航空機による事故は起きてはならないものだと考えておるところでございます。平素から、米側に対しましては、隊員の教育とか安全管理の徹底を図るよう、それから防止について実効ある措置を講じていただくよう、事あるごとにさまざまなレベルから強く要請を行っているところでございます。

 今後とも、防衛施設庁といたしましては、米側に対しまして、航空機の運用に際しましてはくれぐれも地域住民の方々の安全に配慮をしてくれるようにということで働きかけてまいりたいと存じております。

 それから、実は在日米軍の方も、今ライト司令官になられまして、事件、事故ゼロということを司令官がおっしゃっていまして、事件、事故のゼロを目指して努力をしているというふうに聞いているところでございます。

梅本政府参考人 外務省といたしましても、どういう小さいものであっても、事件、事故というのは、やはり周辺住民を含む国民の御理解と御支持を得ながら安保体制を維持していく上で非常にマイナスであるというふうに深刻にとらえております。そういう意味で、事件、事故が起きたとき、その時々はもちろんのこと、いろいろな機会をとらえまして、アメリカ側、これは大使館、それから米軍あるいは米国防省に対して、事件、事故をゼロにするためにいろいろな努力を払ってほしいということを注意喚起しております。

 引き続き、これは防衛施設庁、防衛庁ともよく連絡をとりながら、事故ゼロを目指すように私どもも努力をしてまいりたいというふうに思っております。

谷口(和)分科員 ありがとうございます。ぜひ事故ゼロ、事件ゼロを実現していっていただきたいというふうに思います。

 それでは次に、厚木基地周辺の国有地の利用、管理についてお伺いをしたいと思います。

 厚木基地周辺の国有地は緑地帯や緩衝緑地帯として整備をされておりますけれども、地元住民がスポーツやレクリエーション等に利用できるように、今後とも無償で地元自治体に貸し付けることとともに、区域を拡大することも必要ではないかというふうに考えております。

 また、国有地への放置車両やごみの不法投棄などは、周囲の美観や生活環境を損ねたりするだけでなく、不審火等の発生要因ともなるので、維持管理をさらに徹底すべきであると考えますけれども、今後どのように取り組みをされていくのか、お尋ねをしたいと思います。

北原政府参考人 御答弁を申し上げます。

 私どもが買い入れました飛行場周辺の移転跡地であります、いわゆる先生御指摘の周辺財産につきましては、私ども、防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律の規定に基づきまして、逐次、緑地帯その他の緩衝地帯として整備をしてまいっております。それとともに、関係の地方公共団体がこれを広場ですとか公園などとして使用したいといった場合には、同法あるいは国有財産法の規定に基づきまして、無償使用許可等を行っているところであります。

 さらに、私どもといたしましては、関係地方公共団体の御要望に沿いまして、国みずからが休息所、いわゆるあずまやのようなものでございますが、あるいはベンチなどの公園的施設の整備を行った上でこれの無償使用許可を行うといった、地域の利活用に積極的に取り組んでいるところでございます。

 こうした成果といいますか取り組みの結果といたしまして、先生御指摘の厚木飛行場に限って申し上げますと、飛行場の周辺に所在する約七十ヘクタールの周辺財産がございますが、そのうち、関係地方団体に対しまして、広場、公園等として約三十ヘクタールの無償使用許可等を行っているところでございます。関係自治体は、御承知のように綾瀬市並びに大和市になります。

 我々といたしましては、今後とも、関係市当局とも十分御調整をさせていただきまして、地域の利活用に積極的に取り組んでまいりたいと思っております。

 それから、先生御指摘の緑地帯の周辺財産の管理でございます。こういった点につきましては、先生の御指摘等も大変重要なことと認識しておりまして、これまでも草刈りですとか樹木の剪定、あるいは巡視、清掃など適正な管理に努めているところではございますけれども、引き続き周辺住民の皆様方が先生御指摘のような御不安を抱くことのないように、我々といたしましては一層適切な管理に努めてまいりたい、そのように考えております。

谷口(和)分科員 ありがとうございます。

 続いて、テレビ共同受信施設のデジタル化対策、これについてお伺いをしたいと思います。

 御承知のように、平成二十三年七月から、地上アナログテレビの放送が終了いたしまして、いわゆる地デジ、地上デジタルテレビ放送へ完全移行することになっております。厚木基地の周辺にはテレビの共同受信施設が設置されておりますけれども、この施設はいわゆるデジタル対応にはなっておりません。

 そこで、地上デジタルテレビ放送による障害発生の有無について速やかに調査を行い、改修等の対策を早急に講じていくべきである、こういうふうに考えますけれども、今後どのように取り組んでいかれるのか、お尋ねをしたいと思います。

北原政府参考人 先生御指摘の地上デジタル放送につきましては、現在のアナログ放送から平成二十三年には完全移行するというように承知しております。関東圏につきましては平成十五年の十二月から放送が開始されておりまして、先生御指摘の厚木飛行場周辺では昨年の十二月に所定の出力で運用が開始されているものと承知いたしております。

 したがいまして、防衛施設庁といたしましては、航空機の離発着等により地上デジタル放送に受信障害が発生するか否かの実態を把握する必要がある、そういった観点から、本年度、十七年度予算で厚木飛行場周辺におきまして所要の調査を行うことといたしておりまして、その結果を踏まえまして適切に対応してまいりたい、そのように考えております。

谷口(和)分科員 ありがとうございます。ぜひ周辺住民の方々がテレビの受信に対して安心できるように、取り組みをお願いしたいと思います。

 最後になりますけれども、航空機騒音状況公開システム、こういうシステムがありますけれども、これについてお伺いをしたいと思います。

 厚木基地の地元の自治体の庁舎には、この航空機騒音状況公開システムのタッチパネル式のディスプレーが設置をされております。このディスプレーでは、厚木基地周辺に設置してある騒音自動測定装置で測定した騒音レベルを瞬時に閲覧することができます。平成十六年から市庁舎のロビーに設置をされており、これは市民の方々からも大変好評であります。

 また、騒音状況については、既にインターネットにより一部公開されておりますけれども、地域住民の方々が情報を速やかに、かつ簡単に、容易に閲覧できるように、更新頻度を高めるなどシステムを拡充していくべきであるというふうに考えますけれども、今後の取り組みについてお伺いをしたいと思います。

北原政府参考人 御答弁申し上げます。

 先生から御指摘いただきましたが、タッチパネル式のディスプレーにつきましては、先生御指摘のとおり十六年四月から情報公開ということでやってきております。

 そして、御指摘のホームページでございますけれども、十七年の十一月から我々スタートしておりまして、今現在は月平均値を掲載しております。一カ月ごとに更新をしているわけでございますが、これにつきましてはやはり更新頻度を高めるなどシステムを拡充すべきだという先生の御指摘等も踏まえまして、周辺住民の方々に対しまして幅広く情報を提供する観点から、私どもといたしましては更新間隔の短縮等につきまして検討してまいりたい、そのように考えております。

谷口(和)分科員 以上で終わります。ありがとうございました。

松岡主査 これにて谷口和史君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして防衛庁についての質疑は終了いたしました。

 午後一時から本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

松岡主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 内閣所管について審査を進めます。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。北橋健治君。

北橋分科員 民主党の北橋健治であります。

 まず、内閣官房長官の政治家としての御見解を賜ればと思っている、消費税率引き上げの問題から入らせていただきたいと思います。

 これは財務大臣が、昨年の内閣改造に伴いまして就任直後、消費税率の引き上げについて明言をされまして、スケジュールまで言及されたことがございましたが、政府・与党内部にもいろいろな意見があったと思います。昨年末には総理も一定の方向を示されまして、この小泉内閣におきましては消費税率引き上げの問題はないというふうに私ども理解をいたしておりますが、ただ、伝え聞くところによりますと、与党内部にも、例えば社会保障全体のことを考えると一二%ぐらい必要ではないかとか、これは私ども民主党の中におきましても、年金目的消費税の議論というのは総選挙でも明確にお訴えしたところでもございまして、与野党内部に今後の課題として消費税率をどうするかという問題があると思うのであります。

 国家財政の状況も依然として多くの債務を抱えているわけでございまして、また、財務大臣の所管といえばそうでございますが、政府は政府税制調査会を運営されておりますけれども、総理の諮問機関でございます。そこにおきましては、税制やいろいろなことを中長期的に議論するという、手綱を締める役割も官房はお持ちだと思いますし、また、経団連と連合が社会保障全般の負担のあり方について議論を開始された経緯もございますので、そういったことで、官房長官、今後のそういった問題についての御見解がもしおありでありましたら、お聞かせいただければと思います。

安倍国務大臣 小泉総理が、総理の任期中には消費税を上げない、こうおっしゃったのは、消費税論議を避ける、逃げるためではなくて、まずは政府において血のにじむような努力をして歳出カットをしていく、無駄を省いていく、そのための努力に自分の任期中はかけたい、こういう思いだったんだろう、このように思っています。

 しかし、現在も我が国の財政の状況は極めて厳しい現状にあるわけでありまして、これは与野党を問わず同じ認識ではないか。そして、何とかこの財政を健全化していかなければいけない、こう考えている。この思いは、恐らく与野党、自民党、民主党同じくするのではないか、このように思っています。政府といたしましても、二〇一〇年代の初頭において国と地方を合わせたプライマリーバランスを黒字化するという大きな目標を立てております。それに向かってあらゆる努力を積み重ねていかなければいけないと考えています。

 十八年度中に何とか日本の経済、デフレ脱却を果たしたい、こう考えているわけでございまして、そして、それと同時に国の経済の力を強めていく、成長率をしっかりと上げていく、その力強い経済によって自然増収、税収増を図っていくことも当然考えていかなければいけない、こう考えております。

 そして、それと同時に、今までしっかりとやってきた努力であります無駄遣いをなくしていく。昨年の総選挙における国民の声もそうだったのではないか、こう思います。我々、しっかりと国の財政において無駄遣いをなくしていく、歳出において、この歳出の改革をしなければいけない、こう考えております。そしてまた、それと同時に社会保障については、これはやはり我々の大切なセーフティーネットでありますから、この機能はしっかりと守っていかなければいけない、こう考えているところでございます。

 そうした中で、平成二十一年には年金の国庫負担を三分の一から二分の一に引き上げなければなりません。また、高齢化によって社会保障の給付費はふえていくわけであります。そうしたものにどう対応していくかということを考えなければならないわけでありますし、また、少子化対策をしっかりと進めていくためには、やはりこれは新たな給付も必要になるかもしれないという議論もあるわけでありまして、そうしたことを総合的に考えながら、我々、消費税をどうすべきか、これは国民的な議論をしなければならない、こう思っています。

 その観点から、我々、六月には歳出歳入一体の改革について案を取りまとめる方向で議論をしているわけであります。私も、この消費税の問題は避けて通れないわけでありますが、それまでにやるべきことはしっかりとやっていかなければいけない、このように考えております。

北橋分科員 そうしますと、安倍内閣誕生とも言われておりますけれども、来年の夏まではこういった税率引き上げの議論は政府内部では進まないであろうという見通しでしょうか。

安倍国務大臣 国の財政をどうしていくかという中において、税をどういう仕組みにしていくか、税率についての議論は当然あってしかるべきではある、こう思うわけでありますが、まず、果たしてどれぐらい我々は歳出を切り詰めていくことができるか、あるいはまた国の資産をどれぐらい売却して今までの国債の債務の返済に充てることができるかどうか、そうしたことをいろいろと勘案した結果、国民との議論の中で、では、どれぐらいの税収であれば、そのときの経済の状況にもよる、こう思うわけでありますが、そうした議論になっていくであろう、このように思っております。しかし、議論自体をしないということではない、こう思っております。

    〔主査退席、河井主査代理着席〕

北橋分科員 私、内政の最も重要な課題の一つだと考えておりまして、民主党は、三、四年はしっかりと歳出削減の努力をして、年金の抜本的再改革を実現して、そのための財源として目的消費税ということを考えております。また別の機会に譲らせていただきます。

 あと一点、最近話題になりました、政府のマル秘ではないかと思われるデータを職員が自宅に持ち帰りまして、それがウイルスに感染をしてネット上に公開される。ゆゆしき案件が幾つか出てきたわけでございまして、既に政府が昨年十二月に確定をいたしております統一的な官庁内のそういった書類の管理に関する説明は受けましたが、政府としても今後具体的な改善策を検討されていると思いますが、具体的にどういう点をどう変えていこうとされるのか、官房長官にお尋ねいたします。

安倍国務大臣 秘密文書の取り扱いにつきましては、「事務次官等会議申合せ」によりまして、作成、保存、処分等について遵守すべき事項を定め、各府省において文書管理規程や秘密文書の取扱責任者を設けるなどして、その徹底を図っているところであります。

 情報セキュリティー対策の強化については、我が国の安全保障、危機管理の上でも極めて重要な喫緊の課題であることから、私が議長を務めております情報セキュリティ政策会議におきまして、第一次情報セキュリティ基本計画、政府機関の情報セキュリティ対策のための統一基準等を決定し、秘密文書に該当する情報を含め、重要な電子情報の適切な管理と情報セキュリティー対策の強化に努めてきたところでございます。

 秘密文書の取り扱いの具体的な運用は、各府省において行っているものでございまして、個々の具体的な件数等々については承知はしておりません。

北橋分科員 コンピューター社会になりまして、こういった問題は極めて現代的な重要な課題だと思っておりますが、例えばハリウッドの映画を見ておりますと、情報機関のデータに職員がアクセスするときに、情報の機密性に応じましてアクセス番号入力を求める、そして職員といえどもそのコードを持っていなければアクセスができないように資料を管理しておりますし、そういった意味では、だれがその情報にアクセスしたかというのもわかるようになっている。これは映画でございますから、現実にアメリカの情報をよく把握したわけではございませんが、やはりかなり厳格な情報管理が行われているだろうと思うんです。

 今度の場合は、職員の方がマル秘の扱いのデータも含まれた資料を家に持ち帰っていたということでございますので、これはしっかりと官房長官の方で監督をしていただいて、厳重なチェックが必要だと思いますが、基本的には、外に漏れては困ることについてデータをきちんと分類いたしまして、だれがアクセスしたかどうかもわかるように、責任体制を明確にするというところに一つのポイントがあるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

安倍国務大臣 政府機関のデータがウイルスにより流出する事件が多発している件については、遺憾に考えております。

 このような事件の防止のため、これまで各府省庁に対して注意喚起を行ってきたところでありますが、状況の深刻さにかんがみまして、先般、二月二十七日の事務次官等会議において、各府省庁に対し、官房副長官より、事件の再発の防止を期すよう改めて指示をさせたところであります。

 さらに、情報流出事案対策のための詳細な技術資料集等を、二月の二十四日付で内閣官房情報セキュリティセンターより発出させたところであります。

 今後とも、このような事案の発生を防ぐべく、各政府機関において、職員が重要情報を許可なく持ち出すことの禁止など、政府機関の情報セキュリティ対策のための統一基準に基づいた対策の徹底について、職員への周知、啓発等を通じ、強力に指導してまいる所存でございます。

北橋分科員 この問題については、欧米先進国においてどのように実効ある措置を講じているかも我々も調査をしたいと思います。政府も努力を続けておられると思いますので、しばらくの間見守らせていただいて、改めてまた議論させていただければと思っております。

 きょうは、日朝の包括協議が終わりまして、私ども、報道を通じ、また外務省の説明を聞きまして、北朝鮮側の今回の姿勢に本当に誠意というものを感じられなかった、極めて残念な結果であると愕然としているわけでございますが、官房長官も、この交渉が始まるに当たりましては、断固たる決意をお持ちで関係者を激励して送り出したと思いますけれども、その結果こういうことになっているわけでございますが、交渉経過を振り返りまして、率直にどのような御感想をお持ちでいらっしゃるか、総括的な官房長官の御見解をまず聞かせていただきたいと思います。

安倍国務大臣 先般の日朝協議におきましては、我々のこの日朝間の問題として最優先事項である拉致問題の解決を一歩でも二歩でも進めたい、そのために北朝鮮側には誠意ある態度、対応をしていただきたかったわけでありますが、残念ながら、今回の交渉において北朝鮮側は誠意ある対応をしたとは言えない、このように認識をしているところであります。

 今回の協議は一年三カ月ぶりに再開されたものでありまして、政府として、今回の協議の成果について楽観視をしていたわけではないわけでありますが、そうした中で、多くの時間をかけてじっくり議論をし、最優先課題である拉致問題や、核、ミサイル等の安全保障問題に関し、我が方の懸念や要求を直接伝えることができたことは意義があったというふうに考えております。

 北朝鮮側との間では、昨年十二月、今回の協議の立ち上げに当たり、懸案解決のため、誠意を持って努力し、具体的措置を講ずることを確認しております。したがって、我が方の立場が、先方の諸懸案の解決に向けた具体的行動につながることを強く期待いたしております。

 政府としては、問題解決に向けた進展を図るため、引き続き、対話と圧力の基本的考えに立って、総合的に粘り強く対応していく考えでございます。

北橋分科員 私は、対話路線の限界を多くの国民は痛感されたのではないかと思うわけでございますが、今後の対応につきましては改めて結びにお伺いするといたしまして、具体的に、北朝鮮側が交渉で言ってきたことについては本当に容認しがたいことが幾つかございましたが、その点、幾つかについてまず御見解を賜りたいと思います。

 まず、横田めぐみさんのいわゆるにせ遺骨と言われている、この鑑定について相手国が異論を唱えてきております。蒸し返してまいりました。まず返せと言っている、そしてDNA鑑定の専門家に説明させろ、それから専門協議会を両国間で設置してはどうか、報道によればそういったことを言ってきたというんですけれども、これに対しては官房長官はどういうふうに対応されるんでしょうか。

安倍国務大臣 今回の日朝協議におきまして、北朝鮮側によるDNA鑑定のための専門家会合立ち上げの提案がございました。これに対しては、我が方より、北朝鮮側が経緯を説明することが先決である旨改めて指摘をするとともに、DNA鑑定結果は北朝鮮側が行った再調査の一部分のみに関連する事項であって、本件をもって、先方がさらなる調査を実施しない理由にはならない旨、重ねて強く伝達をしたところであります。

 この横田めぐみさんの遺骨と言われるものが本物であったかどうかについては、そもそもこの遺骨を出してきた経緯、説明は全く説得力のないものであって、我々は、これはDNA鑑定の結果にもよるわけでありますが、本物ではないと事実上断定をしているわけであって、そして、横田めぐみさんを初め、ほかの方々も全員生存をしているとの前提に立って交渉をしていく考えであります。また、そういう交渉を今回もしたわけでございます。

 その中で、真相究明の問題をDNA鑑定の問題にすりかえさせるべきではない、こう考えておりまして、政府内部において、DNA鑑定について専門家による協議という向こうの提案については、これについては極めて我々は慎重に対応ぶりを検討していかなければいけない、基本的にはもうこの問題には決着はついている、しっかりと先方にめぐみさんの返還を含めてこの問題の解決を強く求めていくべきである、このように考えております。

北橋分科員 今回、日朝交渉に参加された外交官の非公式の説明を私も見ておりますが、その中で感想として述べられているところに、拉致の国際化も非常に相手国は気にしているようだというふうに感想を述べられておりまして、結局、国の品格というんでしょうか、プライドといいましょうか、それは相手国も当然大事にしているんでしょうから、この日本側の、今長官のおっしゃった立場というものが国際的にしっかりと理解をされているということは、相手国に対する非常に大きな圧力になると思うのであります。

 この点、アメリカ合衆国、同盟国はもとよりでございますが、国連総会でも初めて決議がされたということで、この拉致問題は世界各国から非常に注目されるようになってきております。これは、超党派の議連の皆さん方と一緒に、そして家族会の皆さん方の必死の頑張り、そして安倍官房長官を初めとする皆様方の努力の成果だと思いますが、そういったアメリカなどの諸外国に対して、今この遺骨の問題は、日本政府の立場が絶対に正真正銘間違いないことである、相手の言いがかりである、もう決着済みの話であるということはしっかりと説明をされているんでしょうか。そしてまた、納得は得られている、このようにお考えでしょうか。

安倍国務大臣 政府は、これまでも、国際社会に対し、さまざまな機会をとらえて拉致問題に関する我が国の立場を説明するとともに、理解と協力を求めてきております。本件につきましても、まず北朝鮮こそ、なぜ横田めぐみさんのものとは異なる複数のDNAが検出される骨を横田さんのものと称して提供したのかについて、日本と国際社会が納得できる説明を行う責任を負っているというふうに考えているわけでありますが、我々も、国際世論を喚起する上においても、この骨のDNA鑑定の我が国の結果についても、機会をとらえて説明をしてきているわけであります。

 私も米側の高官と会った際には、この問題について、北朝鮮側がクレームをつけているけれども、日本側のこのDNA結果には自信を持っているという話をしております。そういたしますと、アメリカの高官は、それはもう日本が言っていることが正しいということは、自分を含めて多くの国際社会の人たちは当然認識をしている、そのように話していたのを今思い出しているところであります。

北橋分科員 日朝交渉に対する国際世論の温かい理解を築く、そして北朝鮮に対する外交的圧力の包囲網を築くという意味におきまして、相手の言ってきた理不尽な要求に対して、逆にそれを利用して、しっかりとした国際的な包囲網を築く一環として努力を続けていただきたいと思っております。

 報道によりますと、交渉上、北朝鮮はアメリカの金融制裁について大変困惑しているというか、困っているようでございまして、かなりインパクトがあるようでございます。六カ国協議の参加の問題につきましても、アメリカの金融制裁の解除、こういったことを口にしているようでございますけれども、これについてはどのようにお考えでしょうか。

安倍国務大臣 二月七日に行われました日朝安全保障協議の際には、我が方より、北朝鮮側に対し、六者会合への早期、無条件の復帰が先方にとっても利益になること、現在の北朝鮮の対応は生産的でないことを述べた次第であります。

 これに対しまして、先方より、対話を通じた朝鮮半島の非核化が目標であり、六者会合の共同声明を実施するとの立場に変わりはない、ただし、米国による金融制裁が続く限り六者会合には復帰しないといった発言がございました。ただし、米国による資金洗浄対策の措置につき、北朝鮮側より解除の仲介を求められるといったことはございませんでした。

 現在、米国がとっている資金洗浄対策の措置は、同国の法執行措置であり、六者会合とは直接関係のないものであるが、北朝鮮はこれを口実に、六者会合への出席を拒んでいる。このような状態が好ましくないことは言うまでもなく、北朝鮮としても、六者会合を通じた核問題の平和的解決は北朝鮮を含む関係六者すべてにとっての利益であることを理解すべきである、このように考えております。

 我が国としては、引き続き、北朝鮮に対し、六者会合への早期、無条件復帰を促すとともに、今後とも、六者会合のメンバーとして、北朝鮮による核廃棄の実現を初めとする共同声明の実施に向け、外交努力を傾注していく考えであります。

北橋分科員 今回は、北側からまた、脱北の支援者のNGOを引き渡せというとんでもない要求もあったと聞いておりますけれども、時間が限られておりますので、本当に理不尽な要求を繰り返した、平行線に終わった協議であったなということを痛感いたしております。

 今回、政府側は、特定失踪者の問題についても取り上げたと報道で承知をいたしております。三十四人という可能性が濃厚であるというリストをお出しになったようでございますが、特定失踪者の方々を調査する会によれば、いわゆる千番リスト以外にも多くの方々が含まれているのではないかということで、お名前を公開されている方は二百五十二人もいるわけでありまして、これはまた外務大臣にもお伺いしたいと思いますけれども、問題は、政府に認定されている人はその中のほんの一握りにすぎません。今お一人、裁判で認定されるかどうかというその係争の経過を聞きますと、本当に胸が痛む思いでございまして、これはひとえに捜査当局の努力にかかっていると思います。

 ただ、二十年、三十年前という時代にさかのぼって、拉致されたという新たな証拠を見出していくというのは、本当に困難をきわめる捜査だと思うんですが、国家主権の侵害にもかかわる、そして人道上、絶対に容認できない案件でございますので、捜査当局も万全を期していただきたいと思いますが、担当局長の決意の一端をお伺いしたいと思います。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 警察は、これまで、拉致容疑事案十一件十六名と判断しているところでございます。ただし、これらの事案以外にも、北朝鮮による拉致の可能性を排除できない事案があると見られることから、鋭意捜査、調査を行っているところであります。

 警察としては、北朝鮮による拉致事案ではないかとする告訴、告発、現在三十六件四十名を受理しており、所要の捜査を推進しているところであります。また、拉致の可能性が否定できないとしてなされました、実は九百件以上の届け出、相談がございます。これらに対しても、御家族や関係者の御心情に配意しつつ所要の捜査、調査を行っているところでございます。

 こうした現状を踏まえまして、警察庁では、各都道府県警察に対しまして専従的に指導を行ってまいりたい。また、かかる事案について、関係機関あるいは民間団体との調整を行うことを目的といたしまして、平成十八年度に拉致問題対策室、仮称ではございますが、これを設置することとしております。

 また、都道府県警察においても、部門間の連携をさらに密にするとともに、捜査員の集中的運用を行うなど体制の強化を図ってまいりたい、こう考えております。

北橋分科員 官房長官にも、ぜひとも万全の捜査体制をしくために、最近は治安、安全の問題が多発しておりますので現場も大変だと思いますけれども、ぜひ官房長官が仕切って頑張っていただきたいと要望しておきたいと思います。

 時間が限られておりますが、今回交渉が終わって、世論調査というものも行われております。ある新聞社によりますと、次の一手はどうすべきか、このような平行線の話し合い、しかも北朝鮮側に誠意というものが見られなかった、したがって、今後は経済制裁を含めて強い姿勢で臨んではどうかというのが、ある新聞の世論調査では七割強になっております。

 世論調査もいろいろあると思いますけれども、私は、本当に多くの国民は、報道を通じて、相手は拉致の幕引きをねらっているんじゃないか、今回は北朝鮮の時間稼ぎではないだろうか、もう対話路線は限界に来ているのではないだろうか、このようにかなりの人が思っているのではないかと思うのであります。官房長官も、拉致実行犯の引き渡しを強く求める、それが実現できない場合には圧力を強めざるを得ない、ことし年頭にもそういう決意を述べられておりました。

 きょうは新たに、平壌宣言を逸脱しているような新たな補償まで要求してきているわけでございまして、そういったことを、もろもろの相手国の対応を見ますと、本当に対話の継続がどれだけの打開策になるんであろうか、大変疑問に国民は思っていると思うんです。

 そういった意味では、今こそもう一度圧力を強めざるを得ないという、この選択肢というものもあわせて大事ではないかと思うんでありますが、それに対する長官の御見解をお伺いして、私の質問を終わります。

安倍国務大臣 ただいま委員が御指摘になられましたように、我が国は、対北朝鮮の問題の解決のために対話と圧力の姿勢でもって臨む、これが基本的な方針でございます。

 対話をすることも、対話それのみが目的ではございませんし、また圧力のみが目的ではない。要は、この拉致問題を解決するために何が有効かということでございます。

 今回、残念ながら、誠意ある対応は示しませんでした。しかし、私たちは、決して対話を閉ざそうというふうには考えていないわけでありまして、対話をしなければ問題は解決しない。しかし、残念ながら、今回誠意ある対応がなかった以上、我々はいろいろな圧力をかけていかなければならない、こう考えているわけでありまして、今我々は、どのように圧力をかけていくか、それを検討しているところでございます。

北橋分科員 終わります。

河井主査代理 これにて北橋健治君の質疑は終了いたしました。

 次に、小宮山洋子さん。

小宮山(洋)分科員 民主党の小宮山洋子でございます。

 きょうは、子供の安全について、三十分間質疑をしたいと思っています。

 まず、「犯罪から子どもを守るための対策」について、政府は昨年十二月に緊急対策六項目を掲げ、三月までと時期を区切って取り組むとされています。ところが、補正予算には、子供の安全については全く盛り込まれませんでした。これで本当に十分な取り組みが緊急にできているのかどうかをまず官房長官に伺いたいと思います。

安倍国務大臣 子供の安全確保は、政府全体で取り組むべき重要な課題であるというふうに認識をしております。その中で、政府としては、昨年十二月に、喫緊の課題である登下校時の児童の安全確保のための緊急対策として六項目などを掲げた「犯罪から子どもを守るための対策」を取りまとめ、犯罪対策閣僚会議においても、その着実な推進を確認したところであります。

 通学路の安全点検、防犯教室の開催、情報共有体制の立ち上げ及び学校安全ボランティアの充実、これは参加の呼びかけでありますが、これについては全国各地で地域の実情に応じた取り組みが現に行われているところであります。また、路線バスをスクールバスとして活用するための環境整備は、各自治体の選択肢を広げるための取り組みでありますが、既に関係四省庁、文科省、警察庁、総務省、国土交通省の協議が調い、路線バスを活用する場合の具体的な取り組み方策について、地方公共団体や業界団体等に文書が発出されているところであります。また、政府広報等を通じ、国民への協力の呼びかけも既に行われているところでありまして、いずれも、補正予算による新たな予算措置がなければ対応できないという性質のものではございません。

 また、緊急対策六項目に盛り込まれた施策のうち、予算を必要とする施策については、平成十七年度予算での対応に加えまして、平成十八年度予算案においても適切に計上をしているところでございます。

 なお、いずれにせよ、予算を伴う施策を実行に移すためには準備期間が必要でございますが、平成十八年度の新規施策についても、本年度中にできる限りの準備を整えておいて、そして新年度にはいち早く実行に移すべきものであるというふうに考えております。もう既にそのための準備は前倒しで進めているということでもございます。

 今後とも、子供の安全確保のため、これらの対策を適切に実施していくよう、政府全体としてスピーディーかつ遺漏なき対応に努めていきたい、こう考えております。

小宮山(洋)分科員 民主党は、やはり補正予算に、通学路の安全のためのスクールバスや防犯灯等の整備、それから犯罪被害防止のための安全教育、また地域ぐるみの学校安全体制の整備などの総合的な施策が早急に必要であること、また、公立の小中学校の耐震改修などに合わせまして七千二百三十五億円が必要だという考え方をお示ししました。

 例えば、今官房長官おっしゃったスクールバスの問題などにしましても、過疎地では本当にすぐに欲しいというふうに言っているわけですね、来年度予算まで待つまでもなく。スクールバスについても、今、路線バスの転換など環境整備をしているというふうに言われたんですけれども、予算をつけて必要なところにスクールバスを購入するとか、もっと早急な対応があっていいのではないか。その路線バスの転換というのも、三月までは実際には行われない、環境整備だけと伺っているんですけれども、例えばこの一点だけについても、予算をつければすぐにもできることをなぜなさらないのかという気がするんですが、その点はいかがでしょう。

安倍国務大臣 スクールバスの導入につきましては、各地方自治体が判断する、こう考えております。僻地学校である場合などに国が購入費の補助を行っている、こういうことでございます。

 また、小中学校の児童生徒の通学の用に供するためのスクールバスについては、その維持運営費について地方交付税で所要額が措置をされております。

 さらに、昨年十二月に政府が取りまとめました「犯罪から子どもを守るための対策」においては、スクールバスに関する選択肢を広げるべく、六項目の一つに「路線バスを活用した通学時の安全確保」を掲げたところでございます。

 これを受けまして、関係省庁で実現のための方策について検討を進めまして、地域の路線バス等をスクールバスとして活用するために、地域の関係者による協議会を設置することなど、迅速な対応が可能となる方策について取りまとめを行いまして、二月の十七日付で、関係省庁から地方自治体に対して通知を発出したところであります。

 このように、政府全体として迅速に取り組んできたところでありまして、今後とも、各自治体のスクールバスの導入についての積極的な取り組みを推進してまいりたい、こう考えております。

小宮山(洋)分科員 迅速にとおっしゃいますけれども、どれだけスクールバスが今までよりも多く活用されるようになったのか、そうしたことがまだ実際に数字としてあらわれてきていない以上、余り迅速だとは思われません。もっと迅速な取り組みが必要だというふうに思っております。

 そして、十八年度予算につきましても、ずっと見せていただきましたが、昨年度と比べて、子供の安全について目立ってふえている項目というのは余りありません。文部科学省のボランティアの充実や地域ぐるみの対策の推進、法務省の再犯防止対策ぐらいで、これでは今年度と比べてどれだけ本気で取り組むつもりがあるのか、私は疑問に感じるんですが、いかがでしょう。

安倍国務大臣 ただいま小宮山委員から大変厳しい御指摘があったわけでありますが、我々政府としては、かなりこの分野においては十分に予算の配分を行ったつもりであります。

 「犯罪から子どもを守るための対策」に係る予算措置についての御指摘でございますが、例えば、学校を巡回し、学校安全の取り組みについて指導するスクールガードリーダーの全国展開を行うことができるよう、地域ぐるみの学校安全体制整備推進事業については、その規模をほぼ倍増させています。七・五億円から十四億円にしております。また、新規事業として、情報技術を活用して子供たちの安全に係る情報を共有するための取り組み、これは二・一億円でありますが、小学校低学年の子供たちを高学年の子供たちと一緒に集団下校させるための子供待機スペースの確保、これは七億円でございます、これも盛り込むなど、子供の安全を守る施策については、平成十八年度予算でも適切に計上をしております。

 今後とも、内閣官房のリーダーシップのもと、予算措置を含めた取り組みについて、総力を挙げて推進をしてまいります。

    〔河井主査代理退席、主査着席〕

小宮山(洋)分科員 この来年度予算の中の新規に上がっている項目についてちょっと伺いたいんですが、子供を対象とする犯罪の検挙の徹底ということが新規に上がっています。ということは、子供への犯罪の検挙率は下がっているんでしょうかという点。それから、栃木県で起こりました小学生の殺害事件、これについてはまだ逮捕されていないので、地元の皆さんは非常に不安な思いだと思いますが、この捜査がどうなっているのか。もう一点、今回、検挙の徹底が新規とありますが、新規に何を行うのか。

 この三点を警察庁に伺いたいと思います。

竹花政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の子供に対する犯罪の検挙率についてでございますけれども、平成十七年中の十三歳未満の子供が被害者となった犯罪について、例えば殺人について見ますと検挙率は九二・四%、強姦につきましては九五・八%、強制わいせつにつきましては五一・〇%、略取誘拐につきましては七五・〇%となっております。これは、十七年中の数字は暫定値ではありますけれども、そのような状況になっております。これを平成十六年に比べてみますと、殺人で四ポイント検挙率が減少しているほかは、強姦で一六・一%、強制わいせつで五・〇%、略取誘拐で一・二%の検挙率の上昇ということになっております。

 また、栃木の事件の捜査の状況でございますけれども、発生当日以降、栃木県警察及び茨城県警察におきまして合計約三百人態勢の合同捜査本部をしきまして、以後、現場及び遺体が発見されました現場周辺での聞き込み捜査あるいは鑑識活動等々の所要の捜査のほか、チラシ等の配布、フリーダイヤルの設置など、広く情報の提供を求めて現在懸命の捜査を続けているところでございまして、一日も早い事件解決に向けてなお努力をいたすということでございます。

 また、十八年度の警察庁予算のうち、子供を犯罪から守るための対策に係る新規の事業でございますが、一つは、パトロール活動を強化するための小型警ら車の増強整備に要する経費として二億九百万円、また子供対象暴力的性犯罪等の受刑者の出所情報を法務省から受理し、各都道府県警察へ情報提供するためのシステムの整備に要する経費といたしまして三百万円、児童虐待等の被害から子供を守るための被害抑止研究会の設置等に要する経費として一千四百万円、またインターネット上の違法・有害情報を抑止するため、違法情報の通報やプロバイダーに対する削除勧告等を行う、いわゆるホットライン業務の外部委託に要する経費として五千二百万円を盛り込んでいるところでございます。

小宮山(洋)分科員 民主党としましては、学校を中心とした子供の安全につきまして、おととしの奈良での事件などを受けて一年余りにわたって検討してきました成果として、学校安全対策基本法案を二月二十三日に議員立法として提出しました。国、地方公共団体、学校設置者の責務、財政上、法制上の措置、基本計画の作成、推進に必要な基本的な施策など、さまざま盛り込んでいます。ぜひ、この国会で具体的な法律がつくれるよう、与野党協力をして検討していきたいというふうに思っております。

 現在、子供の安全につきましては、学校は文部科学省、学童保育や児童館は厚生労働省、学習塾は経済産業省、性犯罪者などの再犯防止は法務省と省庁縦割りになっていますので、もっと広い範囲の子供の安全についての法律が必要だと考えておりますけれども、政府としてはそのような法律をつくるおつもりはないんでしょうか。

安倍国務大臣 子供の安全を守るための対策については、これは政府全体で取り組んでいくべき課題である、こう考えております。そのためには、省庁間の縦割りを排し、幅広い取り組みが大切であるという委員の御指摘はそのとおりである、こう思います。

 そこで、先ほどお答えをさせていただきましたように、十二月に登下校時の児童の安全確保のためのこの六項目の対策を取りまとめたわけでありますが、これは犯罪対策閣僚会議においてその着実な推進を確認したところでありまして、犯罪対策閣僚会議などにおける議論を踏まえまして、例えば、学習塾に通う子供の安全対策、路線バスを活用した通学路の安全確保、放課後の児童生徒の居場所に係る魔の八時間対策など、個別の施策についても関係省庁の連携協力の場が直ちに設けられたわけであります。

 このように、既に省庁間の縦割りを排した幅広い取り組みが可能な体制を整えているところでありまして、この体制を十分活用し、各省庁が連携しつつ実効性のある子供の安全対策を継続的に推進していくことが何よりも重要なことである、このように認識をしております。

 今後とも、こうした政府全体としての取り組みを進めていきたい、こう思っております。

小宮山(洋)分科員 もちろん関係省庁の連携は必要なんですけれども、そのためにはやはり子供の安全の基本法のようなものをできればつくる必要があるのではないかと私ども民主党では考えて、今検討も進めておりますので、またそれについては提案をさせていただきたいと思っています。

 そして、今御紹介したこの民主党の基本法にも盛り込んでいるんですが、子供たちに安全マップをつくらせることが有効と言われています。先日、青少年問題特別委員会で参考人質疑をいたしましたが、安全マップづくりを提唱している学者の方が提言をされまして、この分野の蓄積がないために犯罪原因論が持ち込まれて、不審者を見かけた場所といった、人に着目したつくり方が行われているところがある、そういうところでは、不審者を発見せよというようなことが大人への不信を増長させたり、障害者、ホームレス、外国人などの差別にもつながる心配があると。犯罪が起こりやすい場所に着目をするのが本来のつくり方だということです。

 予算の中には安全マップづくりということの予算は上がっていないようですけれども、こういうことについてはどのように指導をされていくのか、文部科学省に伺いたいと思います。

西阪政府参考人 お答えいたします。

 通学路のマップなど安全マップの作成は、子供の安全対策として大変有効な手段だと考えております。特に、安全マップの作成に当たりまして、子供たちがみずからの手でマップをつくっていく、あるいはその際に保護者や地域の方々の協力を得てつくっていくということが大変効果を発揮するというふうに考えております。

 なお、このマップにつきましては、通常、子供たちにとっての要注意箇所、例えば人通りが少ない場所でございますとかあるいは暗い場所、不審者の情報が寄せられた場所、そのような箇所の確認、あるいは交番、子ども一一〇番の家など万が一のときに子供たちを見守っていただけるような場所を確認していくということでございまして、先生御指摘のような点でいけば、場所ということを中心にして考えていく取り組みだというふうに考えております。

小宮山(洋)分科員 今おっしゃった、その不審者が発見された場所という、人に着目をしてやり過ぎるといろいろ問題があるので、その点もちゃんと留意をして指導された方がいいのではないかということを申し上げたんです。次のテーマのお答えとあわせて、もう一度そこのところだけお答えいただきたいと思います。

 同じ参考人質疑で、子供への性犯罪に取り組んでこられてCAPのプログラムを行っている方が、防犯ブザーなど機械に頼るのは危険だと。あの栃木の殺害された小学生も持っていたんですね。でも、機械はやはりすぐに押せる場所にないとだめで、そういう意味では、一番大事なことは自衛をするための方法を子供自身が身につけることだということなんです。来年度予算にはそうした教育の項目というのは、どうも私が探したところ見えないようなんですが、どのようにその自衛する力を身につけさせることを進めるのか。

 また、そのときの質疑の中で、世界じゅうで行われているCAPのプログラム、これは体育館にたくさん集めてやるというようなことではなくて、一つ一つの教室に子供たちを集めてきめ細かくやるものですから、学校や教育委員会の理解とか財政的な支援が必要だということなんです。私たちは、これは有効なプログラムだと思っているんですが、こうしたものに積極的に取り組むおつもりはないかということと、あわせてお答えください。

西阪政府参考人 まず、マップでございますが、これは通学路を中心といたしました学校周辺の地域、場所を中心といたしましてつくるものでございまして、場所を中心として作成されるものということでございます。

 それから、子供たちの安全対策という点につきましては、さまざまな取り組みが必要でございます。大人たちが子供たちに安全、安心な環境を提供するということはもちろんでございますが、先生御指摘のように、子供たちがみずから危険を予測する、あるいは万が一のときに危険を回避できる、そのような能力を子供たちにつけさせるということは大変重要なことであろうと思っております。こういう観点から、先ほどの通学安全マップにつきましても、子供たちがみずからつくっていくということでそのような意識あるいは能力もついていくということがあろうかと思います。

 また、従来から防犯教室ということを実施しておりまして……(小宮山(洋)分科員「質問に答えてください。CAPのプログラムを進めるかと聞いたんです」と呼ぶ)はい。最近につきましては、実践的な防犯教室を実施しているところでございます。

 御指摘のCAPプログラムにつきましては、それを取り入れて積極的にやっている学校があるというふうに承知しておりますが、具体的に、防犯教室などでどのようなプログラムを採用するかということにつきましては、各学校で、学校あるいは地域の実情に応じて判断して取り組むべき問題だと思っております。

 私どもとしましては、防犯教室の実施などを通じまして、子供たちの実践的な安全教育を推進していきたいというふうに考えております。

小宮山(洋)分科員 私がお尋ねしていることには答えていただいていないと思いますが、きょうは時間がないので、また場を改めてしっかり伺いたいと思います。

 性犯罪者の再犯防止について、法務省は取り組むとされておりまして、今回もこの予算にも幾つか上がっているんですが、どのように再犯防止に取り組まれるのか。例えば、刑務所の視察もしましたが、現在は特別のプログラムというのはほとんど行われていないんだと思うんですけれども。法務省に伺います。

小貫政府参考人 これまで、性犯罪者に対する行刑施設や保護観察所における指導プログラムにつきましては、いずれも、委員御指摘のとおり標準的なものは存在しておりませんでした。また、行刑施設においては、従来の監獄法に法律上の根拠がなかったということもありまして、受刑者に対して受講を強力に働きかけるということが困難でございまして、拒否されればそのままということでございまして、委員御指摘のとおり、十分とは言いがたい面があったということは認めざるを得ないというふうに思っております。

 そこで、法務省では、昨年の四月に、精神医学、心理学等の専門家を構成員といたしまして、性犯罪者処遇プログラム研究会を立ち上げまして、矯正処遇と保護観察が連携した標準的なプログラムを策定いたしまして、十八年度から実施することとしております。

 また、本年の五月までに施行されます、監獄法を改正いたしました刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律のもとでは、プログラムが必要な受刑者に受講を義務づけるということができるようになりましたし、保護観察対象者に対しましては遵守事項を定めるなどして受講を指導するということから、より効果を上げていくことが可能になるものと考えております。

 なお、プログラムの実施に当たりましては、指導職員の増員や研修、民間カウンセラーの導入等が平成十八年度予算案に計上されておりまして、これによって実施体制を整備していくこととしております。

 なお、先ほど警察庁からもお話がありましたけれども、昨年の六月一日から、十三歳未満の子供を対象とします暴力的な性犯罪を犯した受刑者につきましては、出所予定日あるいは帰住予定地等の出所情報を警察に提供いたしまして、警察において、再犯防止のための措置を講ずる上で活用していただいているところでございます。

小宮山(洋)分科員 先ほど申し上げた青少年特で、来られた参考人が、性犯罪に詳しい方なんですが、諸外国を見ても性犯罪者の再犯防止については悲観的だ、大事なのはティーンエージャーへの性教育で、ピア、仲間同士で話し合わせるような性教育が必要という意見でした。内閣委員会でも先日質疑をさせていただきましたが、過激な性教育というレッテルを実態と異なる見方で攻撃する傾向が危惧されておりまして、性犯罪防止のためにも、専門家が必要という性教育に取り組むおつもりはないかを伺いたいと思います。

 それについて、内閣委員会で官房長官が、学問的な蓄積がないとおっしゃったんですね。それで、学問的かどうかわかりませんが、ちょっと幾つかのデータを持ってまいりました。

 例えば、子供への性的加害者の四〇%から六〇%が十八歳以下の少年であるということ、また、成人の性暴力加害者の六〇%から八〇%が最初の加害行動を思春期に始めているというような調査がございます。こういうところからしましても、やはり思春期の性教育ということが重要だと言われる専門家のおっしゃるとおりだと思うんですけれども、文部科学省と官房長官にお答えいただきたいと思います。どうぞ的確に短く、文部科学省、お願いします。

西阪政府参考人 学校におきます性教育につきましては、学習指導要領にのっとりまして、児童生徒の発達段階に応じて適切な時期、内容で行うということが重要なことだろうと思っております。適切な性教育の実施によりまして、性に関する科学的な理解、知識が進み、それに基づきまして、望ましい態度、行動が育成される、あるいは自己や他者の価値を尊重して大切にしていくという心が育成されていくというふうに考えております。

安倍国務大臣 ただいま文科省から答弁をいたしましたように、一般的には、学校における性教育については、学習指導要領に沿い、児童生徒の発達段階に応じて進めていくことが重要であり、その意味で、十代についても、発達段階に応じた適切な内容の性教育を行うことは重要であるというふうに認識をしております。

 他方、今委員が御指摘の、いわば性犯罪を抑止するのに有効かどうかということについては、これは、現在確立された学問的なものがまだないというふうに認識をしており、まだ理論の過程ではないか、こう考えております。

小宮山(洋)分科員 やはり現場の積極的な取り組みを応援するような政策を、政府としても、子供の安全、性犯罪の防止という意味からもぜひ進めていただきたいと要望を申し上げます。

 あと残りが三分ほどになりましたけれども、学校の耐震強度が不十分であるということは、これは子供の安全の面からも、避難場所になっている点からも重要だと思っています。八一年の建築基準法改正以前に建てられた公立小中学校で、耐震強度が不十分で未改修のものが二〇%、耐震性が確認されていない建物が四三%もあります。民主党としては、こうした耐震工事のための予算を補正に組みましたが、政府としてはどのように取り組むのかを、文部科学省と官房長官から手短にお願いします。

松岡主査 文部科学省舌津技術参事官。簡潔にお答えください。

舌津政府参考人 お答えいたします。

 学校施設の耐震化は緊急の課題でございまして、このため、文部科学省では、国の財政事情が非常に厳しい状況にあるわけでございますけれども、耐震関連予算の確保に最優先で取り組んでいるところでございます。

 また、耐震化を進めるためには、その前提となります先生御指摘の耐震診断につきましても早期に実施する必要があるということから、私ども、地方公共団体に対しまして、国土交通省の補助事業も積極的に活用して、本年中に完了するように強く要請してまいりたいというふうに考えております。

 このようなことによりまして、耐震性の実態を明らかにした上で、特に緊急性を有するものから計画的に耐震化を進めていくということが大変重要なことだというふうに認識しております。

安倍国務大臣 ただいま文科省から答弁いたしましたように、いろいろな対策をしっかりとやっていかなければいけない。子供にとっては、一日の時間の大半を、過半を過ごす場所が学校であります。その学校の安全はしっかりと確保をしていかなければいけない、こう考えております。

 厳しい財政状況のもと、政府としても耐震関連予算の確保に最優先で取り組んできたところであり、具体的には、平成十八年度当初予算において公立学校施設整備費千百三十七億円を計上し、この中で、新たに安全・安心な学校づくり交付金を設け、耐震化の実施主体である地方自治体の裁量性を高めることにより、より効率的な耐震化を進めることを可能にしております。

 政府としては、引き続き、公立小中学校の耐震化が重点的かつ計画的に進められるよう、関係省庁が一体となって地方自治体とともに取り組んでまいります。

小宮山(洋)分科員 少子化のことは伺えなくて申しわけありませんでした。

 少子化への対応としてもやはり子供の安全ということは大切ですし、最後に、今、内閣官房副長官補が議長の関係省庁連絡会議というものがございますけれども、犯罪防止の犯罪対策閣僚会議だけではなくて、子供の安全のためにも、やはり大臣級の会議に格上げをされる必要があるのではないかということを申し上げまして、私の質問を終わります。

松岡主査 これにて小宮山洋子君の質疑は終了いたしました。

 次に、神風英男君。

神風分科員 民主党の神風英男でございます。

 本日は、皇室典範の改正について質問をさせていただきたいと思います。

 昨年の十一月に皇室典範に関する有識者会議が報告書をまとめられました。その中で、女性・女系天皇を容認する、また長子優先という大変大きな改革の二つの柱が示されておりまして、それを受けて、本来であれば今通常国会でその改正案が提出の運びであったようでありますが、先般の紀子様御懐妊の御慶事によって、その提出が見送られる公算であるということでございます。

 逆に、そういう静かな環境になったものですから、これまでの検証の意味も込めて、きょう、この皇室典範の改正の動きについて質問をさせていただきたいと思うわけでありますが、これまでの皇室典範の改正についての動き、一般的には非常に唐突にこの動きが出てきたような印象をどうしてもぬぐえないわけでありますが、こうした動きは一体いつごろから始まっていたのか、まずその点についてお示しをいただきたいと思います。

安倍国務大臣 政府として公式に皇室典範に関する検討を始めましたのは、一昨年、平成十六年十二月に、皇室典範に関する有識者会議を開催し、検討を依頼することとした時期でございます。

神風分科員 公式には平成十六年ということであろうと思うわけでありますが、新聞報道によりますと、内閣や宮内庁のOBらによって、皇室典範の改正を念頭に置いた極秘の検討会が九七年四月から開かれていたという報道がございます。研究者を集めて月一回程度の割合で開いていたということであるわけでありますが、このいわば極秘の検討会でまとめられた結果というか報告書というんでしょうか、それは、今般の有識者会議での報告書の中で、どの程度あるいはどのように反映をされているのか、それについて教えていただきたいと思います。

安倍国務大臣 先ほど答弁させていただきましたように、政府として公式に皇室典範に関する検討を行ったのは、皇室典範に関する有識者会議が初めてでございます。

 それ以前に、ただいま委員が御指摘になった点でございますが、関係の職員等が非公式にさまざまな検討を行った事実はあるかもしれませんが、それは、いわば、いろいろな可能性を想定して、自発的に準備のための勉強を行ったものであるというふうに考えております。いつごろ、どのようなメンバーが参加して行われたものであるかは、確たることは私は承知をしておりません。

神風分科員 この極秘の検討会でまとめられた内容というんでしょうか、骨子というのはいかようなものであったのか、事務方で結構ですので、教えていただければと思います。

柴田政府参考人 今官房長官から御答弁申し上げましたように、非公式、自発的な勉強という性格でございますから、どうも報告書のようなものを取りまとめたということはないようでございます。それから、私もこの仕事についたのは最近でございますけれども、かなり、秘密といいますか取り扱いを十分注意しなければいけないものでありますので、職員は皆それを気をつけて取り扱っていたというふうに承知しております。

神風分科員 まとめられた骨子は不明であるということでしょうか。

柴田政府参考人 はい。承知しておりません。

神風分科員 この極秘検討会に発足直後からかかわられた内閣法制局元幹部の方、恐らくこれは大森政輔内閣法制局長官であろうかと思いますが、その方によりますと、有識者会議で検討材料とされた資料は過去の成果である、有識者会議のメンバーは料理を食べる人であってもつくった人ではないと述べられているそうでございます。

 つまり、この報告書の内容というのは既にこの官僚らによる極秘検討会の時点で決まっていた内容が大半であったのではないかと思うわけですが、いかがですか。

柴田政府参考人 先ほども申し上げましたように、いろいろな事態を想定した自発的準備のための勉強でございますから、何か一定の結論とかいうことではないんじゃないかと私は思っております。

 先ほども申し上げましたように、そういう報告書については私も承知しておりませんので、大変申しわけないんですけれども、それ以上のことは申し上げられないということでございます。

神風分科員 二月の十七日の、これは産経新聞の報道によりますと、内閣官房と内閣法制局、宮内庁などで構成する政府の非公式検討会が、二〇〇四年の五月の時点で既に女性・女系天皇容認を打ち出しており、さらに皇室典範に関する有識者会議の設置や議論の方向性についてもこの非公式検討会の中で決められていたということでございますが、これは事実でありますか。

柴田政府参考人 先ほども申し上げたとおり、繰り返しになって恐縮でございますが、いろいろな可能性を想定して自発的に準備のために勉強するというのは、これはもう我々ふだんからやっていることでございます。そういう中で、何もしていなかったかといえば、それはいろいろなことを想定して勉強はしておりました。ですけれども、先ほど申し上げたように、報告書をまとめるとか、そういうことは私は少なくとも承知しておりません。

神風分科員 二〇〇四年の十二月の有識者会議の設置の時点で、二〇〇五年の秋には結論を出す、二〇〇六年、つまり今通常国会において皇室典範改正案を提出して小泉総理の任期中に成立をさせようという政治日程が今回の動きの中ではるかに先行していたような印象があるわけでございます。皇室典範の改正案のある意味では体裁を繕うためにこの有識者会議というものがつくられたのではないかと思える節もあるわけでありまして、これについていかがお考えか、官房長官に御意見をお伺いしたいと思います。

安倍国務大臣 今、柴田準備室長が答弁いたしましたように、そもそも役所というのは、こういう下準備、またいろいろなことに備えて勉強をするという習性がございますので、この皇室典範、そういう時期が来るかもしれないのでということで下準備的な勉強をしていた人たちがいたのかもしれませんが、そもそも、そうしたものは私も成案として見たこともないわけでございます。

 基本的には、あくまでもこの有識者会議において勉強がスタートされたと言ってもいいだろう、このように思うわけであります。

神風分科員 そこで、この有識者会議のメンバーについてでありますが、メンバーは十人の有識者の方々が名を連ねられているわけでございますけれども、このメンバーの方々というのは、どういった基準であるいはどういう理由でだれがお決めになったのか、あるいはどなたかの御推薦によって決められたのか。本来であれば一人ずつ伺いたかったんですが、ちょっと時間もありませんので、総論としてで結構ですから、それについてお示しをいただきたいと思います。

安倍国務大臣 象徴天皇の制度は広範な国民の理解と支持を基礎とするものであるため、皇位継承の問題についても幅広い観点から大所高所の御議論をいただくべく、これにふさわしい高い見識を有する方々にお願いをしたものでございます。

神風分科員 それでは、この十人のメンバーの中で、日本の皇室の伝統や歴史についての専門家の方というのはどなたになるんでしょうか。

柴田政府参考人 先ほど官房長官から御答弁申し上げたとおりでございますが、メンバーの方々には一般的な意味での高い見識を期待したということでございまして、先生おっしゃる皇室についての歴史とか専門性については別途ヒアリングを行いまして、二度にわたって、五月の末と六月に八人ほど先生方をお招きして御意見を伺ったということがございまして、そういうことで専門性についても対処したということでございます。

神風分科員 橋本元総理も、この有識者会議のメンバーについて、果たしてあの人たちが本当に国民を代表する人選だろうかと強い疑問を表明しておられるわけでありますが、これについて、安倍官房長官、御感想をお聞かせいただきたいと思います。

安倍国務大臣 こうした有識者会議は、政府のいろいろな政策をつくる際にお願いをする場合があるわけでありますが、その人選について、どういう方々にお願いをしようかというのはいつも悩み多き点ではあるわけであります。

 今回は、特に皇位継承にかかわる点でありますから、十分な検討がなされた結果、こうした方々にお願いをした。私も、順当な人選であった、このように思います。しかし、それは人さまざまでありますから、自分はそうは思わないという方もおられるということは、それはあり得るだろう、このように思います。

神風分科員 この有識者会議の開催状況についてでありますが、平成十七年の一月の二十五日に第一回目が開催をされて、それから十一月の二十四日までの間に十七回の会議が開催されたということであります。

 各メンバーの出席状況というのもいただきましたが、全回出席の方、あるいは一番少なくて、緒方先生でしょうか十一回出席ということでございますが、これは一回当たり何時間ぐらいの会議であったのか。あと、出席される方は、よく政治家がやるように顔だけは出すという形ではなくて、最初から最後まできちんと出席をされてその審議に加わられていたのか。その点について。

柴田政府参考人 まず、委員の先生方は大変みんなお忙しい方ばかりなものですから、日程調整には正直申し上げまして大変苦労いたしました。それで、できるだけたくさんの方が出席していただくようにということでやりましたけれども、結果は先生のお手元に届いているとおりでございます。

 それで、一回当たりどのくらいかということですが、大体平均すると二時間ぐらいの開催でございます。例えば最後の報告書をもらうときなんかは短かったですけれども、大体審議は二時間、あるいはそれを超えるときもありましたけれども、そんなものでございます。

 それから、途中退席した方はいらっしゃいましたが、ちょっと顔を出して出ていかれるということではなくて、いられる可能性があるだけいらっしゃって、それで退席されたということでございます。ちょっと顔を出して退席したという方は、私の記憶ではありませんでした。

神風分科員 ということは、今回のその有識者会議の審議時間、トータルでいうとおおよそ三十四時間であるという理解でよろしいですか。

柴田政府参考人 公式なものはそうですが、あと、非公式に三回ほど、報告書にも四月の十四日と六月二十七日、八月十七日にやったということが出ております。それも最低二時間以上はやっておりますので、あと六時間ぐらいはさらに上に乗るんじゃないかなとは思いますけれども、大体そんなところでございます。

神風分科員 今回の有識者会議の議論の中で、皇位継承の安定性に重点を置いて、歴史観であるとか、あるいは国家観といったものを余り考慮されずにこの案が作成されたというような言及があったわけですが、なぜ歴史観であるとか国家観について考慮をされなかったのか、その点を教えていただきたいと思います。

安倍国務大臣 有識者会議におきましては、憲法で定められた象徴天皇の制度は我が国の歴史と深いかかわりを持ち国民の支持の上に成立するものであることから、これにふさわしい皇位継承制度を検討するに当たって、国民の理解と支持を得られるものであること、伝統を踏まえたものであることなどを基本的な視点として挙げて、検討がなされたところでございます。

 有識者会議におきましても、当然、男系継承の背景にあると思われる考え方を整理し、認識した上で制度の検討を行った、こういうことでございます。それらの考え方の当否を判断したり優劣を論じることは、特定の歴史観や国家観を否定することにもなるため適当ではない、そう判断したというふうに認識をしております。

 政府としても、この問題については、国民一人一人の多様な国家観、歴史観を極力尊重しつつ、古来男系継承が続いてきたという現実と皇位継承の安定ということを考えながら検討を行うことが適当であるというふうに考えているわけでございます。これは、いわばまさに天皇の存在、皇室というのはこの日本の歴史そのものであるというふうに考えてもいいのではないかというふうに私は思うわけでございます。

 先般来日されたブッシュ大統領は、その演説の中で、日本におけるスピーチの中で、日本は、天皇制をずっと綿々と築いてきたという、この歴史、伝統を重んじるとともに自由と民主主義を発展させてきた、これはまさにすばらしい、日本というのは伝統そして自由と民主主義、これをしっかりと調和させているすばらしい国である、このように述べられたわけであります。私も、まさにそのとおりではないだろうかと。

 歴史観、伝統を重視するというのは、これは当然のことであろう、このように思うわけであります。しかし、その中で、現実にいかに安定的な皇位継承を可能にするための方途を有識者会議の方々に御検討をいただいたということではないかと思っております。

神風分科員 今回、皇室の御意向あるいはお考えはお伺いをしていないわけですが、これについては、なぜそういう措置をとられたのか。もともとは九七年にそういったいろいろな方策を調査するようにというような指示を出された橋本元総理も、皇室の意見を聞かないということに対しては無礼であり少なくとも非礼だと述べていらっしゃるようでありますが、その点についてはどのようにお考えでいらっしゃいますか。

安倍国務大臣 憲法第四条によりまして、天皇は国政に関する権能を有しないこととされていることから、天皇が国政に関与したと解されるようなことが生じないように十分慎重な配慮が求められるわけでありまして、皇位継承制度は国会で議決される法律に定められたものでありまして、まさに国政にかかわる問題である、このように認識をしております。

 したがって、有識者会議においては、皇位継承制度のあり方について天皇陛下や皇族方のお考えを伺うことは、天皇陛下や皇族方が国政に関与したと見られることになりかねないために、差し控えたものであるというふうに承知をしております。

神風分科員 少し皇室会議について伺いたいと思います。

 皇室会議の議による審議事項として皇位継承の順序変更等というものがあるわけでございますし、また皇室会議には皇族の代表がお二人入っていらっしゃるわけでありますから、今般の皇室典範の改正においても、本来であれば、皇室会議を開いて、そこで皇室の御意向を伺うというのがある意味では必要であったのではないかなと思うわけでありますが、そういった権限というのは皇室会議には全くないということなんでしょうか。

風岡政府参考人 皇室会議の権能、権限ということでございますけれども、皇室会議は皇室典範により設置をされました機関でありまして、法律で定める権限の行使ということになっております。具体的には、今先生も一部御指摘をされましたけれども、皇位継承の順序の変更とか、あるいは立后及び皇族男子の婚姻、それから皇族の身分の離脱、摂政の設置、廃止、摂政の順位の変更、こういうものにつきまして、皇室会議の議を経る、あるいは皇室会議の議による、こういう手続をとることになっております。

神風分科員 今後、皇室会議にこのような権限を持たせて、例えば皇室典範の改正といったような場合には皇室の御意向を伺うというお考えはございますでしょうか。安倍官房長官にお願いしたいと思います。

安倍国務大臣 先ほど申し上げましたように、憲法との関係におきまして、天皇陛下あるいは皇族の方に意見をお伺いすることは、国政に関与した、このように指摘をされる危険性、可能性があるわけでありまして、むしろ皇族の方々に御迷惑をかけることにもつながるわけでありまして、そうしたことは控えるべきではないか、このように考えております。

神風分科員 昨年の七月の二十六日の有識者会議では、女性・女系天皇容認ということと、旧皇族復帰による男系男子維持の両論を併記した論点整理というものが公表されていたと思います。にもかかわらず、わずか三カ月後の十月の二十五日には、吉川座長が、旧皇族の復帰について現代に受け入れられるかどうかを議論したがほとんど可能性がないことがわかったと述べていらっしゃいます。

 なぜわずか三カ月で可能性がないという結論に変化をされたのか。また、この可能性がないというのはどういう意味であるのか。なぜ可能性がないと断言できるのか。ちょっとその点についてお示しをいただきたいと思います。

柴田政府参考人 吉川座長の御発言は結局は有識者会議の報告に尽きますので、その有識者会議の報告に沿って申し上げたいと思います。

 まずは、旧皇族の復帰という具体的な方策、これは男系男子を維持するということで提案されているわけでございますけれども、今現在、非嫡系継承、ちょっと言葉がわかりにくいかもしれませんが、いわゆる側室から生まれた子による継承というのが制度的に否定されている。あるいは、社会の少子化の影響というのもある。こういうことで、男系男子による安定的な皇位継承自体が極めて困難になっているということがまずあると思います。

 その上で、さらに旧皇族の皇籍復帰という方策そのものについては、幾つか理由を挙げておりますけれども、まず一つは、旧皇族の方々は、既に六十年近く一般国民として過ごしておられる。それから、今上天皇との共通の祖先は約六百年前の室町時代までさかのぼる遠い血筋の方々であるということでありますから、皇族として親しまれていることが過去のどの時代よりも重要な意味を持つ今の象徴天皇制度のもとでは、これらの方々の復帰等について国民の理解と支持を得ることが難しいのではないかというのがまず一番目でございます。

 それから二番目は、皇籍への復帰、編入を行う場合に、当事者の意思というのがやはり前提になると思います。その当事者の意思ですけれども、結局は意思により左右されるのではないかと。例えば、何人戻ってきていただけるのかとかいうようなことも、これは当事者の意思次第になるわけでございます。それからまた、制度の運用いかんによっては、皇族となることを事実上強制したり、当事者以外の第三者が影響を及ぼしたりすることになりかねないんじゃないかということが二番目の理由として挙げられております。

 それから三つ目でございますが、一たん皇族の身分を離れた方が再度皇族となることは、これまでの歴史の中では極めて異例だということでございます。皇族の身分等をめぐる混乱を避けるためにも、こういうことは現在でも十分な配慮が必要なんじゃないか、こういうようなことを総合的に判断しまして、極めて困難であるというような報告書の取りまとめになったわけでございます。

神風分科員 今回の議論の中で、よくかぎ括弧でくくった形で女性・女系天皇という表現が使われるわけであります。これはマスコミの表現の仕方にも随分大きな原因があるのかなと思うわけでありますが、女性・女系天皇という形で一くくりに表現をされますと、大半の国民の皆さん方は、単に女性の方が天皇になるという程度の認識しか持たれない方が非常に多いわけですね。私も地元でいろいろこの話をするわけですが、あなたの今の話を聞いて、やっと女性天皇と女系天皇の区別がわかったということを言われることが大半でございます。

 そういう中で、女性天皇と女系天皇の違いを国民の方にわからせるような形の努力というのは何かされているんでしょうか。ちょっとそこが逆に、あえてその努力を避けているような感じがいたすわけでありますが、いかがですか。

柴田政府参考人 皇位継承の問題を考えますときに、なかなか我々の日常でなじみにくい言葉というのが幾つかございました。有識者会議でも、今先生がおっしゃったような点は大事なポイントだということでございまして、先ほど先生からお話ありました七月に公表した論点整理においても、それから昨年十一月の最終報告においても、基本的な用語の解説というようなことで、見開きですぐ見られるような形で説明をするというような工夫はしたところでございます。

 最近の報道機関の調査などでも、女性天皇と女系天皇、詳しく解説を付して質問している例も最近は出てきていると思います。

 いずれにしろ、女性天皇と女系天皇の違いを含めて、皇位継承問題に関して、国民によく説明して、国民各層における議論を通じて、一層正確な理解が深まるように我々もよく注意してやっていきたいというふうに思っております。

神風分科員 新聞各紙の世論調査を見ても、女性・女系天皇を容認するかという設問に対して、昨年の十一月時点で賛成の方が七七%、反対が六%であったものが、ことし二月の二日から五日にかけて実施された調査によると、賛成が六三%で一四%低下をしている、また反対が二一%、つまり三倍以上、一五%増加をしているということであります。

 この数字は紀子様御懐妊のニュースの前の調査でございますから、そういう意味では、だんだん時間がたって、やっと国民の間にも女性天皇と女系天皇の差を幾分御理解いただける方がふえてきたのではないかなと思うわけでありまして、そういう点をぜひこれからも努力していただきたいなと思うわけであります。

 あと、女系天皇を容認するということは、極言すれば、日本の全国民の家系が天皇家になり得るという理解でよろしいんですか。官房長官、いかがですか。

柴田政府参考人 先に申し上げたいと思いますが、女系天皇というものを認めるという報告の内容になっておりますけれども、そこには大前提がありまして、憲法では世襲というふうに書いておりますし、天皇の血筋というのがこれはもう基本ですから、そういう意味では、おっしゃるようなことではないんじゃないかというふうに思っております。

神風分科員 今回の一連の議論の進め方について、それを見てみますと、やはりこの天皇制というものを制度としてあるいはシステムとして維持していこうという視点のみから、いわばやはり初めに結論ありきの中で議論が進められているというように思えてならないわけでございます。

 つまり、現状の男系男子を維持していくのか、あるいは女性・女系天皇を認めるのかという議論の立て方になっている。先ほども申しましたけれども、多くの国民の皆さんは、まだまだこの女性天皇と女系天皇の区別もわからないままに、単純に女性が天皇になってもいいんではないかという気持ちの中で、この女性・女系天皇を容認するという方向を認める方が多いんではないか。逆にそういう形で世論を誘導しているんではないかというような疑いを持つわけであります。

 問題の本質というのは、やはり、これまで二千年以上にわたる男系を維持するのか、あるいはこれまで日本の歴史上なかった女系というものをここで本当に認めるのか。男系対女系という、そういう構図であろうかと思っております。

 この男系男子対女性天皇という構図の中に、この女性天皇という言葉の中に女系天皇という本質を隠すような形での議論だけは避けていただきたいなと。はっきりと男系と女系とは違うんだということを国民の皆さん方に広く認識をしていただく中でこの議論を進めていただきたいなと思うわけでありまして、最後に官房長官の方から御感想、御意見をお伺いできればと思います。

安倍国務大臣 憲法にあるとおり、まさに天皇は国民の象徴であります。国民から尊敬され、そして多くの国民から親しまれることが大切だろう、このように思うわけでありまして、この皇位継承についても、しっかりと国民的なコンセンサス、理解が得られることが重要である、こう考えております。

 そういう意味におきましては、女系・女性天皇の意味においても、国民の皆様に十分に御理解をいただくということがこれは大切だろう、こう思っているわけでありまして、こうした議論を慎重にしっかりと行っていくことによって国民的な理解は深まっていく。その上でちゃんとした議論がなされなければならない、こう考えております。

神風分科員 ありがとうございました。

松岡主査 これにて神風英男君の質疑は終了いたしました。

 次に、森本哲生君。

森本分科員 民主党・無所属クラブの森本哲生でございます。

 本日は、予算委員会分科会ということで、現在国民の皆さんが高い関心を示しておられます皇室典範改正問題、先ほど神風議員も触れられましたが、その件について、なるべく重なるところは避けて質疑をさせていただきたいと存じます。

 この問題は大変重要でございまして、私にとりましても大変重い質疑だというふうに感じております。大変光栄でありまして心より感謝をいたしておりますが、敬けんと申しますか、崇高な気持ちでこの質疑をさせていただくことが大事だというふうに思っておりますので、議論というよりもむしろ確認というような形で、しばらく、三十分時間をいただきますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 また、官房長官、きょうはどうもお疲れさまでございます。きょうはお見えになるということを想定もしておりませんでしたので、答えていただけるところはできるだけ官房長官から答えていただきますことをお願い申し上げまして、質疑に入らせていただきます。

 昨年十一月二十四日に公表されました皇室典範に関する有識者会議の報告書は、女性天皇を容認し、長子優先とする考え方が示されております。今日、さながら日本でも国民投票キャンペーンが始まったかのように、賛成、反対双方の立場で活発に議論が行われておるわけでございますが、私は、本日は、報告書の内容の当否というよりも、むしろ、立法事実や今後の展望、そして国民世論をどう判断していくのかなど、外郭的な論点を中心に質疑を進めさせていただきますので、よろしくお願いをいたします。

 まず、有識者会議が設置された背景などについて質問をさせていただきます。

 報告書によりますと、有識者会議は、「内閣総理大臣から、将来にわたり皇位継承を安定的に維持するための皇位継承制度とこれに関連する制度の在り方について検討を行うよう要請を受け、」ということでございます。問題意識を持たれたのがいつごろか、要請がいつごろなのか、必ずしも具体的ではございません。なぜ今この時期にという疑問が少々残るわけでございます。

 昨年四月、衆議院の憲法調査会の報告書が公表されました。その中で、天皇の皇位継承の問題については主として皇室典範の問題として議論されておりますが、女性による皇位継承については多数意見となっております。ちなみに、多数意見とは、五カ年の調査会設置期間の中で、二十名以上の委員の方が意見を述べ、かつ、反対意見の倍以上である意見を指しております。

 もっとも、女性による皇位継承を認める場合、皇位継承権を与える皇族女子の範囲については、皇族男子の適当な皇位継承者がいない場合に限り、例外的に男系の女子に対して皇位継承権を認めるべきであるとする意見と、皇位継承権者の範囲を男系女子まで拡大したところでそれは一時の摂位にすぎず、天皇制の継続を考えれば、女系女子にまで皇位継承権を認める必要があるとする意見とに分かれています。

 つまり、女性天皇は多数意見でも、女系天皇については、先ほどの質問もありましたが、意見が分かれているというのが衆議院の意思であると言えます。国民に見える形での議論はまさにこれからという状況であったということは、間違いないと思っております。

 衆議院憲法調査会報告書の内容にいかなる行政裁量権も拘束されるというわけではありませんが、このような問題意識であることを前提に、有識者会議の設置背景について御答弁をお願いいたします。

柴田政府参考人 まず、お尋ねの件でございますけれども、現在の皇室の構成からしますと、将来にわたり安定的に皇位継承を維持するための検討を行うことは、避けて通れないのではないかということでございます。それから、今の現行憲法では、天皇は、内閣の助言と承認のもとに、内閣総理大臣や最高裁判所長官の任命とか、国会の召集などの大変重要な役割を担われておられます。

 そういうことですから、皇位の安定的な継承を維持するための検討というのは、できるだけ早く、早急に取り組むべきだ、こういう認識のもとに、一昨年の十二月二十七日に有識者会議を開いて検討していくということが決定されまして、昨年の一月二十五日でございましたが、第一回会合が開かれたところでございます。

森本分科員 その点につきましては、ひとつ重ねてお伺いをさせていただきたいんですけれども、内閣官房皇室典範改正準備室は、いつ設置されたのか、そして室長のほか何名のスタッフがおられるのか、お聞かせいただけますか。

柴田政府参考人 準備室の設置日は、昨年の十二月一日でございます。十一月の二十四日に報告書をいただきましたので、十二月の一日に設置いたしました。それから、メンバーは十五人でございます。

森本分科員 ありがとうございました。

 それではちょっと、通告の二番目、先ほどの神風議員と重なっておりますので、有識者会議の人選等につきましては少し省略をさせていただきたいと存じますので、よろしくお願いします。

 それでは、現行の憲法二条は、「皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。」と規定をいたしております。もともと明治憲法二条は、「皇位ハ皇室典範ノ定ムル所ニ依リ皇男子孫之ヲ継承ス」と規定をしていましたので、男女という性差によって区別されないことを現行憲法は確認したと言うことができます。

 この問題に関連し、昭和二十一年七月八日の衆議院帝国憲法改正案委員会では、当時の金森徳次郎国務大臣が次のように答弁をされております。

 ソコデ皇位ノ継承ニ付キマシテモ、皇位ト云フコトノ根本ノ性質ト組合セテ、如何ニ此ノ問題ヲ扱フカト云フコトハ、新シイ問題トシテ之ヲ研究シナケレバナラヌト思ツテ居リマス、サウ云フ研究ヲモ含ミツヽ、此ノ第二条ニハ其ノ制限ガ除カレテ居リマスルガ故ニ、憲法ノ建前トシテハ、皇男子、即チ男女ノ区別ニ付キマシテノ問題ハ、法律問題トシテ自由ニ考ヘテ宜イト云フ立場ニ置カレル訳デアリマス、

このような答弁でございます。

 内閣法制局に伺いますが、この答弁の趣旨は現在も有効なものと考えてよろしいのでしょうか。また、答弁の中で、「法律問題トシテ自由ニ考ヘテ宜イ」とあります。憲法の名あて人はだれなのかという問題から導かれる結論として、自由に考えることができるのはまさに主権者である国民だということでよろしいのでしょうか。それとも、単なる立法政策の問題としてとらえておられるのでしょうか。よろしくお願いします。

梶田政府参考人 お答えいたします。

 ただいまの御質問にございましたように、現行憲法の第二条、それから旧憲法の第二条、それぞれ規定が異なっております。

 現行の憲法におきましては、今委員お話ございましたように、皇位は世襲であるということのみを定めてございます。この世襲であるということ以外の皇位継承に関する事項につきましては、すべて法律である皇室典範の定めるところによるというふうにされております。したがいまして、憲法を改正しなくとも、皇室典範を改正することによりまして、女子が皇位を継承することを可能とする制度に改めることができるというふうに考えております。このことにつきましては、今御質問にございました昭和二十一年の金森国務大臣の答弁などにおきまして、従来からお答えを申し上げてきているところでございます。

 それから、もう一つの御質問でございますけれども、今申し上げましたように、皇室典範、これは法律でございます。国会におきまして皇室典範を改正することによりまして、この制度を改めることができるというふうに考えております。

森本分科員 ありがとうございました。

 それでは、次の質問に移らせていただきます。

 最も保守的な考え方に属するのだろうと推察されますが、男系男子維持のために、昭和二十二年十月に皇籍離脱をされた旧皇族を復帰させるという考え方があります。いわゆるY染色体論について議論するつもりはありませんが、報告書であえて補論として掲載している趣旨がどういうことなのか。

 また、これは法律上の問題があるかないかというレベルの議論ですが、旧皇族の方々は既に六十年近く一般の私人として生活をされているということは想像がつきます。むしろ、旧皇族の方々が再度皇籍を得るということになった場合、戸籍であるとか民事法制上の問題が起こり得るのかどうか。

 これについて、通告がなかったかもわかりませんが、簡単で結構でございますので、もし答弁できないということであれば結構でございますが、もしよろしければお答えいただけませんでしょうか。

柴田政府参考人 まず、報告書で補論として扱ったのはどういう理由かということでございますが、報告書の流れからしますと、男系男子の維持というのが、昔の男系男子を続けてきた条件ということから見ますと、今非常に変わってきているというのがございます。

 どう変わってきているかといいますと、一つは、先ほどもちょっと申し上げましたが、非嫡系の継承、いわゆる側室から生まれた子による皇位継承というのが新皇室典範によって否定をされたということなんです。歴代の天皇の継承というのを見てみますと、神武天皇からもう百二十四継承あるわけでございますけれども、そのうちの六十六継承が嫡出の継承、それから非嫡出の継承は五十八でございまして、半分近く非嫡出で占められているということでございます。それが戦後の皇室典範によって否定されたということでございますから、男系男子が続いてきた大きな前提条件が変わってきたというのが一つ。

 それから、非常に少子化の影響というのも受けているということがございまして、皇族の方も、やはり明治、大正世代と昭和の世代とを見てみますと、最初の結婚の年齢というものも遅くなっているということもありますし、お子様の数というのも、明治とか大正の世代では三・三人だったんですけれども、昭和世代になりますと一・六人ということになっておりますので、そういう少子化の影響というのもかなりあるのではないか。

 そういうことからすると、まず、男系男子を維持するということが非常に難しいというのがあります。旧皇族の復帰というのは、今先生おっしゃいましたように、男系男子を維持するための方策でございますから、それは旧皇族の復帰であろうと、まず男系男子を維持することが難しいんじゃないかという考えがあって、ただ、さらに加えて考えると、六十年前に離脱されたとか、そういう幾つかの理由を補論として整理をしたということでございます。

森本分科員 ありがとうございました。

 それでは、次に移らせていただきます。

 皇室典範の今回の改正案は、愛子様の御成育に合わせて、次の次の天皇として早期に養育方針を確定させるという要請があると言われております。

 ところで、これまで、皇族女子の方は御成婚によって皇籍を離れるということになっていましたが、皇室典範が改正された場合には、当然、婚姻後も皇室にとどまることになります。

 皇位継承資格にどのような影響を与えるのか、さらには、配偶者たる男性の身分、名前の呼び方なんですけれども、どのように検討されているのでしょうか、答弁をよろしくお願いします。

柴田政府参考人 まず、制度をつくる上での前提として、女性天皇それから女系天皇を認める場合には、今現在は、女性皇族は結婚すると皇籍を離脱されるということになっておりますけれども、それは、結婚しても皇室にそのままとどまっていただくというような制度になろうかと思います。

 それから、名称の話については、今幾つか絞りつつあるところでございますけれども、決まっているかと言われれば、まだ決まってはいないということでございます。

風岡政府参考人 皇位継承資格を持つことになった場合に御養育の方針に影響が出るのかという御質問だったと思います。

 私ども宮内庁の立場は、天皇皇后両陛下並びに皇族方に御奉仕をするという立場でありますので、現におられます皇族方について、制度改正を前提とした仮定の話というのはお答えしにくいわけでございます。

 ただ、一般論として申し上げますと、皇族が皇位継承資格をお持ちかどうか、あるいは御結婚によって皇室を離れることになるかどうかなど、将来のお立場がどうなるのかということにつきましては、御養育においても当然考慮されるべき事柄だというふうに思っております。

 また、御養育は、健康面とか知識面、あるいは人格面等幅広く総合的なものでありまして、御成長に応じた御養育が大切だ、このように認識をしております。

森本分科員 ありがとうございました。

 次はちょっと官房長官にできたらお答えをいただきたいんですけれども、小泉首相としては、来年度予算が衆議院を通過したタイミングで皇室典範の改正案を国会に提出するという決意であったと思います。しかし、秋篠宮妃の御懐妊の報道があって、提出を見送るという政治判断をされたのではないかと思っております。

 本来であれば、こういう議論は、予算委員会分科会ではなくて、両院の内閣委員会あたりで議論が闘わされるはずであったというふうに思っておるのです。

 まず、提出を先送りされたことについての見解、また、法案提出の時期は何を基準にだれが判断を下すのか、あわせて答弁をお願いいたします。

安倍国務大臣 皇室典範の改正につきましては、昨年の十一月に、皇室典範に関する有識者会議の報告書をいただいたところでございます。

 そこで、このたびの秋篠宮殿下妃紀子様の御懐妊、御慶事もございました。この御慶事も踏まえまして、慎重にかつ冷静に、国民各層の賛同が得られるように取り組んでいきたい、こう考えているわけであります。その中で、今私どもは、与党におきまして、提出する前の議論をスタートしたところでございまして、政府としては、現在の段階では、与党での議論を見守っているところでございます。

 今後のスケジュールにおきましては、まず、しっかりと与党の中で議論がなされた後、そこでコンセンサスを形成し、かつ、国民的な議論、世論の方向を十分に踏まえながら、法案としてどういう形で提出をしていくかどうかという検討をしなければならない、こう思っておりますが、いずれにいたしましても、慎重にかつ冷静に、しっかりとまず議論をしていくことが重要ではないか、こう考えております。

森本分科員 ありがとうございました。

 今国会、臨時会では提出はまずないというふうに考えさせていただいてよろしいのでございますか。

安倍国務大臣 この典範の改正につきましては、事の重要性を十分に考慮しながら、ただいま申し上げましたように、まず、現在のところ政府としては、与党において御議論をいただいているというところでございまして、どの段階で法案を提出できるようになるかということを今この場でお答えできる状況ではないということでございます。

森本分科員 慎重にということでございますので、私もそれは当然だと思います。

 それでは、次に移らせていただきますが、憲法一条は、天皇の地位が、主権の存する日本国民の総意に基づくと規定をいたしております。とりわけ、「この国のかたち」に変化をもたらす実質的意味での憲法の改正という観点で考えれば、まさに国民の総意として報告書の内容が受け入れられる必要があるのではないかと思っております。国民世論の動向を正確に把握する必要があると思っています。

 ところで、報告書の中では、国民の多数が女性天皇を支持しているというニュアンスの記述が見られますが、内閣官房として最近独自に世論調査を行ったのか、また、そうでないとすれば、何を根拠にそのような内容の記述を加えているのかという点を答弁いただきたいと存じます。神風議員とも重なりますので、簡単で結構でございます。

 それとさらに、マスコミ各社がこの問題で世論調査を行って結果を公表していることは、私も承知をいたしております。しかしながら、これもダブると思うんですが、女系と女性が概念として全く別物であることを国民の多くの方々が認識しているのかいないのか。区別できないで、両方賛成だという方が結構な率でいるのではないかと疑問に思うこともございます。

 制度改正を進める側としては、本当の意味で国民的支持を得られる改正ができるかどうかということに関連をしてまいります。国民世論についてどのような認識でございましょうか、あわせて答弁をよろしくお願い申し上げます。

柴田政府参考人 まず、政府として世論調査をしたかということでございますが、それはしておりません。有識者会議の報告の中には、国民多数が納得できるだろうかというような、そういう記述もございますけれども、それは、有識者の判断としてそういう記述になったということでございます。

 それから、女性・女系天皇の話でございます。

 先ほど申し上げましたが、できるだけ両方の概念を区別してわかりやすくということで我々も努めております。今後も、説明する際には、やはりまず今の要件が男系男子というところから出発しますから、男系男子とは何ぞやというところから、女系とかあるいは女性天皇の話もよくわかりやすくしていきたいというふうに思っております。

森本分科員 ありがとうございました。

 先ほどの神風議員の言葉もありましたけれども、やはりこの件につきましては、私ももう少ししっかり知っておらなければいけないのですけれども、やはりこの区別がなかなか私どももつかないというようなことでございますし、ようやく理解が十分できるということでございます。そういうこともございましたので、ダブりのようなことで申しわけなかったのですが、あえて質問をさせていただきました。

 それでは最後に、国民投票の実施可能性ということでございます。

 国民投票といっても、憲法九十六条で言うところの、憲法改正についての国民の承認を得るためのものではなく、今回の皇室典範改正ということでございます。

 ここで紹介をさせていただきますが、昨年十一月七日から十九日にかけて、衆議院憲法調査特別委員会の委員によるヨーロッパ各国の国民投票制度の調査視察が行われました。一行はスペインにも視察に行かれたとのことですが、日本とどことなく状況が似ている、王位継承権における男性優位の規定を削除する憲法改正が現在検討されているとのことでございます。

 スペイン憲法五十七条一項は、このように規定をされております。

 王位は、世襲で、長子相続及び代襲相続における通常の順序に従い、新しい系統よりも古い系統が優先し、同一系統内では近い親等の者が優先し、同一親等内では男子が優先し、同性内では年長者が優先する。

 この規定、同一親等内では男子が優先しの部分を削除する憲法改正には、国民投票が義務づけられております。

 さて、日本の場合を考えてみますと、例えば、皇位が世襲制であることは、形式的意味の憲法、すなわち憲法典に書かれてあることなので、これを改正するには、国民投票に付されます。しかし、女性・女系天皇を認めるかどうかということについては皇室典範事項なので、先ほどもお話がありましたが、通常の法律改正手続と同じであることになります。すなわち、国民投票は必要がないということでございます。

 憲法典に書かれるかどうかということは偶然性を内包していることも含めて考えると、憲法附属法としての皇室典範の改正、しかも今回の改正案は、憲法改正案に匹敵するものとして、国民投票で主権者の意思を決するということも考慮に値するのではないでしょうか。

 ただ、この予算委員会分科会の場で、任意的、諮問的でも、一般的な国民投票制度をどう考えるのかということを論じるつもりはございません。この実施可能性だけ指摘をさせていただきたいと存じます。

 前提として内閣法制局にお尋ねをさせていただきますが、内閣に国民投票法案の提出権限があるのかどうかという点、あるとすれば、その根拠条文を示していただきたい。その上で、現実的選択肢として、内閣主導でこのテーマで国民投票を実施することがあり得るのかどうなのか、答弁をよろしくお願いいたします。

梶田政府参考人 御質問の趣旨、必ずしも正確に理解しているかどうかわかりませんけれども、ただいまお話ございました女性の天皇に係る問題につきまして、国民投票にかかわる法律案というようなものを政府として検討しているということは承知しておりませんので、そういう点につきましての答弁は差し控えさせていただきたいと思いますが、国民投票制度と憲法との関係の一般論として申し上げますと、憲法におきまして、前文で、「その権力は国民の代表者がこれを行使」するという部分がございますし、それから四十一条におきましては、「国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。」こういったような規定がございます。規定から明らかなように、国の統治の基本原理といたしましては、間接民主制を採用しているわけでございます。

 したがいまして、憲法におきまして、例えば九十六条におきまして憲法改正の国民投票の制度を規定しておりますが、こういった憲法自体が例外的に規定している場合を除きまして、国民投票の結果に法的な拘束力を認めるような制度を設けるということになりますと、憲法上は疑義があるのではないかというふうに考えております。

 ただ、国会が、国の重要な施策を決定するに際しまして、参考とするために、国会の発議に基づきまして、国民投票に付して国民の意見を求めるといったように、今申しました、国会が国権の最高機関であり、国の唯一の立法機関であるという憲法の原則に触れないような形で、国民投票の結果にいわゆる法的な拘束力を伴わないような国民投票の制度を設けるということであれば、そのこと自体を憲法が否定しているわけではないというふうに考えております。

森本分科員 ありがとうございました。

 時間が参りました。

 いずれにいたしましても、極めて重要な改正でございますので、拙速に陥らず、多くの国民の支持が得られるための努力を重ねながら、国民の皆さんにわかりやすい形で議論をしていただければありがたいということをお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

松岡主査 これにて森本哲生君の質疑は終了したしました。

 次に、高鳥修一君。

高鳥分科員 自由民主党、高鳥修一でございます。本日は、官房長官、よろしくお願いを申し上げます。

 皇室典範の問題が続いておりまして大変恐縮でございますが、私も、まず最初に皇室典範の改正問題について、そして後半で中越大震災の復興支援についてお伺いをいたしたいと思います。

 まず、皇室典範の改正問題についてお尋ねをいたします。

 皇室典範の改正問題は、内容が内容だけに、総理もおっしゃっているように、慎重に慎重に進めなければならないというふうに思います。特に、秋篠宮妃殿下の御懐妊のニュースが伝えられる中で、この問題はこれから御誕生になるお子様の皇位継承順位を左右する問題だけに、まずは無事の御出産を祈るというのが国民の自然な感情であるというふうに思います。この問題で国会が国論を二分して争うのは避けるべきであるというふうに考えるわけでございます。ただし、問題について国民の間の理解を深める、そういう努力は続けるべきであるというふうに考えております。

 そこで、平成十七年十一月二十四日に提出をされました皇室典範に関する有識者会議の報告書についてお伺いをいたしたいというふうに思います。なるべくさきの質疑と重複するところは割愛したいと思いますが、多少関連があるところもあると思います。お許しを願います。

 まず初めに、有識者会議開催の趣旨というのがこの報告書の七十五ページにございます。こちらを見ますと「皇位継承制度と関連する制度について、高い識見を有する人々の参集を求めて検討を行うこととし、「皇室典範に関する有識者会議」(以下、「有識者会議」という。)を開催する。」このように書かれているわけでございます。この有識者会議、メンバーは十名おられるようでありますが、皇位継承制度と関連する制度について高い見識を有しておられる方は何名おられるのか、そしてそれはどなたを指されるのか、具体的に教えていただきたいと思います。

柴田政府参考人 まず、有識者会議のメンバーの選定の考え方でございますけれども、現在、象徴天皇の制度ということでございますので、広範な国民の理解と支持を基礎とするものだということでございます。したがいまして、皇位継承の問題についても、幅広い観点から、大所高所の御議論をいただくべく、これにふさわしい高い見識を有する方々にお願いしたということでございます。

 それで、先生御指摘のような、皇室制度等に関する専門的な知識ということでございますけれども、したがいまして、メンバーの方々には、もちろん歴史の先生等々、そういう専門的な知識を有している方もいらっしゃいますけれども、一般的な意味での高い見識を期待したものであるということでございまして、皇室制度に関する専門的な知識、知見につきましては、別途、五月の末、六月の初めに行いましたヒアリングを通じて審議に反映をさせていただいたということでございます。

高鳥分科員 この報告書の一ページの中ほどに、今お話があったとおりでありますが、「五月、六月には、その後の議論の参考とするために、皇室制度、憲法、宗教、歴史など様々な分野の専門的な知識を有する八名の識者から意見を伺った。」とございます。この八名の識者とはどなたのことでございましょうか。

柴田政府参考人 八名の方のお名前と専門分野を申し上げますと、大原康男先生、宗教行政論というふうに承知しております。国学院の教授です。高橋紘先生、静岡福祉大学教授、現代史、皇室研究。八木秀次先生、高崎経済大学の助教授で憲法の御専門。横田耕一先生、流通経済大学教授で、憲法学の御専門。それから、鈴木正幸先生、神戸大学の副学長でございますが、日本近代史学の先生でございます。高森先生ですが、拓殖大学客員教授ということで、神道学、日本古代史学の専門でございます。所先生、京都産業大学の先生でございまして、日本法制史の先生。山折哲雄先生、国際日本文化研究センターの名誉教授、宗教学、思想史が御専門ということでございます。

高鳥分科員 報告書の十八ページに、女性天皇、内親王、女王の「配偶者の名称」の部分において、「専門的知識を有する有識者等の知見も得て、適切な名称を定める必要がある。」こういう記述がございます。これは本来、内閣総理大臣が招集をされた有識者会議のメンバーというのは、こういう知識を持っておられる方なのではないでしょうか。有識者が有識者に話を聞かなければならないというのは、私は少し違和感を感じるのでございます。

 どうもこの報告書の七十五ページに記述をされている趣旨と、実際に選任された有識者会議のメンバーには、若干の開きがあるのではないかと思われるわけでございます。この件について答弁は結構でございます。

 次の質問に移らせていただきます。

 皇室典範に関する有識者会議は総理大臣の私的諮問機関、正式名称は総理大臣の懇談会ということであるそうでありますが、この私的諮問機関が出された報告書の法的な効力、強制力、拘束力と申しますか、こういうことはあるのでしょうか。

柴田政府参考人 有識者会議は、皇位の安定的な継承を維持するための政府としての案を作成するに当たりまして意見を取りまとめていただいたものでありまして、ほかの懇談会あるいは審議会の意見と同様、拘束力ということで見れば、その法的な拘束力はないということでございます。

 それから、一般論として申し上げますけれども、懇談会や審議会などへの検討の依頼というのは、大臣個人として行っているわけではなくて、ポスト、大臣の職として行っておられるわけですから、検討の成果は、新大臣のもとでも政策立案に活用されることが通例ではないかというふうに思います。

高鳥分科員 秋篠宮妃殿下御懐妊という大変おめでたいニュースが二月七日に入ってきたわけですが、有識者会議の報告が出されました平成十七年十一月二十四日とは状況が一変をしております。この状況下におきまして、政府は有識者会議の報告のとおり、皇室典範改正法案の提出を考えておられるのでしょうか。官房長官の御見解をお伺いしたいと思うのですが、さきの参議院内閣委員会におきまして、これは一月十七日でありますが、この報告書を踏まえて、通常国会に法案を提出すべく現在作業に当たっていると御答弁をされておられます。いろいろ報道はされておりますが、改めて現段階での官房長官の御認識をお聞かせください。

安倍国務大臣 ただいま高鳥委員が御指摘になりましたように、秋篠宮殿下妃の御懐妊、この御慶事については、我々、国民とともにお祝いを申し上げたい、このように思うわけでございます。そして、我々も国民の皆様とともにことほぎ、そしてお見守りをしていきたい、こう考えているわけであります。

 その中で、皇室典範の改正につきましては、この御慶事も踏まえながら、委員も御承知のように、今現在、与党、まず自由民主党において、十分な御議論がなされる必要があるとの観点から、今御議論をいただいているもの、このように思っているわけであります。政府といたしましては、この御議論をまずもって見守っていきたいというふうに考えておりまして、その上で、十分に慎重に、そして冷静に検討していきたい、こう考えております。

高鳥分科員 今、冷静に慎重にという御答弁をいただきましたが、今国会において仮に皇室典範改正法案が提出をされずに、九月に小泉総理が退任をされ他の方が総理になられた場合、この報告書の扱いはどうなるのかということを教えていただきたいと思います。

 先ほどの答弁で、これは個人ではなくてポストに対してのものであるというようなお話もございましたけれども、これはあくまで一般論でありますから、次の総理がどなたになられるかというのはもちろんわかりませんし、その方がどんな考えをお持ちになっておられるかももちろんわからないわけであります。

 あくまで一般論ということでありますが、ちょっと繰り返しになるかもしれませんが、その方が今回の報告書に拘束されるということはあるのでしょうか。それとも、次の総理の判断によって、場合によってはそのまま引き継がれる可能性もあるし、またそっくりそのままは引き継がれないことも可能性としてはあり得るのでしょうか。一般論として、それは次の総理が時の状況を見て判断されると考えてよいのでしょうか。官房長官の御認識をお伺いします。

安倍国務大臣 先ほど柴田室長が答弁をいたしましたように、法的な拘束力は、この有識者会議の結論は持っていないわけでございます。そしてまた、検討の成果は新大臣のもとでも政策立案に活用されることが通例でございますが、しかし、もちろんこれは新大臣が別途の検討を始めることができないというわけではないわけでありまして、それはもう政治の判断、政治家としての判断であろう、こう思います。

高鳥分科員 関連でお伺いいたします。そうしますと、新大臣が、新たな総理が御自身の判断で新たな諮問機関をつくられるということは制度上可能なんでしょうか。

安倍国務大臣 それはもちろん制度上可能でございます。例えば、自民党の政権がずっと続いていくということもあり得ますし、場合によっては、別の政党の政権ができるということも十分にあり得るわけでありますから、当然論理的には可能である、このように思っております。

高鳥分科員 報告書の内容について若干お聞きをしたいというふうに思います。

 旧皇族の皇籍復帰につきまして、有識者会議では、報告書の中の八ページの一行目、今上天皇との共通の先祖は約六百年前の室町時代までさかのぼる遠い血筋の方々である、このことを考えると、これらの方々を広く国民が皇族として受け入れることができるか懸念されるとされております。

 しかし、共通の先祖、こういう表現であるならば、明治天皇の皇女が朝香宮、東久邇宮、北白川宮、竹田宮にそれぞれ嫁がれておられます。また、昭和天皇の皇女、すなわち今上陛下のお姉様でありますが、東久邇宮に嫁がれておられるわけであります。今上陛下との共通の先祖は、明治天皇あるいは昭和天皇であり、報告書の記述は事実と異なるのではありませんか。御答弁をお願いします。

柴田政府参考人 まず、事実関係を申し上げますと、明治天皇の皇女四方と昭和天皇の皇女お一方が旧宮家に嫁いでおられます。それは確かでございます。

 それで、今のお話でございますが、旧皇族の復帰あるいは編入という議論は、男系継承を維持するということが前提の議論でございます。ですから、男系でたどっていけば、それは六百年前の天皇にさかのぼるということを申し上げているわけでございます。

 それで、今おっしゃったように、昭和天皇や明治天皇につながっているじゃないかということは、結局は女系の血統による血縁の近さというものにも意味を持たせるということになるのではないかというようなことがありまして、それはもう男系の血ということで、六百年前というふうな記述になっているわけでございます。

高鳥分科員 今の御答弁は、ちょっと私は納得がいかないと思います。

 もちろん、男系をたどれば約六百年前ということは、それは理解ができます。しかし、この報告書は、あえて男系をたどればと書いていないんですね。共通の先祖はということで、男系をたどればという後の方に出てくる表現とは違う表現がされているわけであります。この点において、私は、この報告書は事実と異なるのではないかということだけ指摘をさせていただきます。

 続けて、報告書の四十一ページにございます「参考十六」に、戦後、十一宮家皇籍離脱の理由が掲載をされております。離脱の説明について、皇族のうちから、いわば自主的に皇籍を離脱し、一国民として国家の再建に努めたい、そういう御意思を表明せられたということでございます。この記述は記述として正しいとしても、当時の時代背景、すなわち敗戦という特殊な状況のもとで、日本の主権が制限される中でなされたという背景が全く記述をされておりません。

 何かこの報告書を通して読みますと、初めに結論ありき、いかにして女性・女系天皇に道を開くか、そしてその他の方法については最初から道を閉ざしている、そういう印象を持たざるを得ないのでございます。

 報告書では、七ページの下に、旧皇族の皇籍復帰等の方策について、国民の理解と支持、安定性、伝統、いずれの視点から見ても問題があり、採用することは極めて困難であると断定をしております。同様の記述は、八ページにも繰り返し出てまいります。国民の理解が得られないと断定したわけですが、独自の世論調査をされたのか、されていないのか、簡潔にお答えください。

柴田政府参考人 まず、独自の世論調査はしていないということでございます。これは、先ほども申し上げましたが、有識者会議の委員の皆さんの御判断ということでございます。

 それから、皇籍離脱の経緯につきましては、この資料の中にも、皇籍を離脱する場合には皇室会議にかけるということでございますから、当時、片山総理大臣が議長でございまして、議長の説明ぶりというのをそのまま載せております。

 その中では、御意思があったということもありますけれども、「戦後の国外国内の情勢就中新憲法の精神、新憲法による皇室財産の処理及びこれに関連する皇族費等諸般の事情から致しまして、」「皇籍離脱の御意思を実現致しますことが適当である」というような資料を掲げてございます。

 それから、第八回の資料では、GHQの方針を背景としまして、皇室財産を厳しく制限していくというような動きの資料も載せておりますので、決して偏った資料で判断したということではないということをぜひ御理解いただきたいと思います。

高鳥分科員 今の御説明、納得のできる部分もございますが、しかしながら、客観的な世論調査ということはされていないという御答弁でございました。これでは、最初から困難であると断定するにしては少し根拠が不足しているのではないかというふうに指摘をしたいと思います。

 そして、報告書の中では、繰り返し時代の変化、国民世論の変化ということが言われておりまして、皇室もそれに合わせなければならない、そういう主張でございます。しかし、変化する世の中で、天皇制が国の中心の柱として政治や権力闘争を超越した権威として不変であることが、日本の安定性あるいは一貫した発展に寄与してきたという考えもあると思います。官房長官の御認識をお聞かせ願いたいと思います。

安倍国務大臣 私ども日本国民は古来から天皇、天皇家とともに歴史を紡いできた、このように思っています。それが一つの長いタペストリーであるとすると、その中心の糸はやはり私は天皇家ではなかったか、こう思うわけでございますが、その中で、やはり、我々はその重要性、歴史をしっかりと認識しなければいけない、その上で、皇位の安定的な継承を図る上でどうすればいいかという議論をするべきであろう、このように考えております。

高鳥分科員 現行憲法下において、典範の改正というのは国会の決議で行われるわけでありますが、国民の象徴である皇位の継承であるので国会の決議で十分だという意見もございます。しかし、一面では天皇家のお世継ぎ問題であるこの問題を、当事者の御皇族の意見を一切聞かれずに有識者会議は審議されたやにお伺いをいたしておりますが、官房長官はどのようにお考えでいらっしゃいますか。

安倍国務大臣 皇室の御意見また天皇陛下の御意見をお伺いするべきではないかという議論があるわけでありますが、この点に関しましては、憲法との関係におきまして、皇室典範の改正というのはまさに法律の改正でございまして、よって、政治とのかかわりということにおいて、皇室あるいは天皇家が政治とかかわったと疑われる可能性があるということから、それは差し控えるべきである、こう判断をしたわけでありまして、むしろ、そう思われることがかえって御皇族に御迷惑をかけることにもなる、こういう判断をした次第であります。

高鳥分科員 皇室典範はそろそろ最後にしたいと思います。これは通告していなかったかもわかりませんけれども、皇太子妃、おきさき選びでさえもあれほどの苦労があったというわけでありますが、女系容認によりお世継ぎ問題が解消されるという論は、考え方によってはむしろ皇位の継承の道を狭めてしまうおそれがあるのではないか。つまり、女性天皇、女性皇太子もしくは女性宮家に婿入りをする民間男子が果たして存在するのであろうか。

 民間男子の皇族への婿入りということは有史以来一度もないということでありますが、こういった問題をどうやってクリアしていくお考えなのか、もしお考えがあれば、お聞かせ願いたいと思います。

柴田政府参考人 確かに御指摘のように、民間の男性の方が女性皇族と結婚するというのは、皇室に入るという意味では今までなかったことでございます。初めてのことですから、いろいろ手探りでやらなきゃいけないこともあろうかと思います。

 ですけれども、やはり環境の整備というのはいろいろな形で努力をしていかなければいけない、そういうようなことがこの報告書の中にも触れられていると思いますけれども、実際にはこれから、もし仮にこの制度ができた場合のことでございますけれども、そういうことを努力していくということになろうかと思います。

高鳥分科員 ありがとうございました。以上で皇室典範の問題は終わらせていただきたいと思います。

 ちょっと話題が変わって恐縮でございますが、新潟県中越大震災、被災者の復興支援について、特に住宅再建の問題についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 御案内のとおり、新潟県は、一昨年中越大震災に見舞われまして、昨年そして本年と記録的な二年続きの豪雪という、大変大きな被害を受けているわけであります。私も、その中で、新年早々、十日町の仮設住宅に暮らしておられる方のところに伺いまして、ボランティアで雪おろしのお手伝いをさせていただきました。

 その後、今仮設で住んでおられる方といろいろ座談会的にお話をさせていただいて、大変残念なことですけれども、住宅再建のめどがなかなか立たない、そんな中で二度目の冬を今越しておられる方々が大勢おられます。これは、新潟県全体では一月三十一日現在で二千四百五世帯ということであります。

 地元の方々の気持ちを考えますと、仮設住宅のまま三度目の冬を迎えさせるということは何としても避けなければならない、三度目の冬は、何らかの形で住宅再建のめどが立った形で迎えさせてさしあげたいな、そういうふうに思うわけであります。

 ところが、まず、希望される方全員がなかなか復興支援住宅であるとかそういった公営住宅に簡単に入れないという状況であるというふうに聞くわけであります。

 この入居条件というのがどういうふうになっているのか、もし厳しい入居条件があるのならば、これを緩和することはできないのだろうかということであります。市町村によっては、全壊でなければこの復興支援住宅のような形で入ることができない、全壊に近い半壊ではそれは認められない、そのような話も聞いております。国の基準をちょっと明確にお伺いしたいと思います。

和泉政府参考人 お答え申し上げます。

 災害により滅失した住宅に居住していた低額所得者に賃貸するために、災害により住宅を失った者を入居要件としまして、災害公営住宅の供給を行ってきたところでございます。

 被災者の救済とか居住の安定確保という災害公営住宅制度の趣旨にかんがみれば、この条件でございます、災害により住宅を失った者については、住宅が全壊した場合だけではなくて、修繕や補修では住宅としての機能を回復することができない程度の損傷も含めまして、事業主体が適切に判断すべきものと考えております。

 この旨は私どもの方から地元公共団体に伝えているわけでございますが、今先生の御指摘もございますので、改めて被災地域の地方公共団体に対しましてこの旨を周知しまして、災害により住宅を失った低額所得者の居住の安定確保が図られるよう努めてまいりたいと考えております。

高鳥分科員 ありがとうございます。

 今ほどの御答弁で、必ずしも全壊だけではない、被災住民の居住の安定のためにまた御支援をいただけるという御答弁をいただきました。実際に現場に行ってみますと、まだそれが周知徹底をされていないという面がございますから、ぜひとも御指導また御支援を賜りたいというふうに思います。

 そしてもう一点、コミュニティーを維持する観点から、被災者が住みなれた地区に戸建ての公営住宅を提供してもらいたい、そういう希望もあるわけでありますが、こうした戸建て公営住宅に対して最大限の御支援をお願いしたいと思いますけれども、こういった要望に対してどのような対策をお持ちであるのか、お聞かせ願います。

和泉政府参考人 現時点で、具体的な計画としまして戸建ての公営住宅というのはまだないわけでございますが、公営住宅の建て方としましては戸建て住宅も可能でございます。

 したがいまして、地元公共団体からそういう具体的な計画が上がってまいれば、私どもとしましてしっかりと支援してまいりたい、こう考えております。

高鳥分科員 先ほど申し上げたとおりでありますが、ぜひとも、三度目の冬はそれぞれのお宅で迎えられるように、国としても温かい御支援を賜りたいと思います。

 以上で私の質疑を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

松岡主査 これにて高鳥修一君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして内閣所管についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

松岡主査 次に、内閣府所管について審査を進めます。

 警察庁について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。福島豊君。

福島分科員 本日は、警察関係のさまざまな問題についてお尋ねをさせていただきたいと思っております。

 まず初めに治安の問題でございますが、国民の多くが体感治安の悪化というものを感じているわけであります。また、私の地元であります大阪府は、改善しつつありますけれども、ひったくりが全国でも最も多発をしている、こういう地域でございます。国全体では、この数年の取り組みによりまして、ひったくりや路上強盗などの街頭犯罪について一定の抑止が働きつつある、警察白書などを拝見いたしますとそのように感じる次第でございます。

 現在、こうした治安の回復のために、空き交番の解消計画、これを進めていただいております。また、大阪府においても、警察官の増員ということで、大変な御支援をいただいておりますことに感謝を申し上げたいと思いますが、現在の取り組みの状況について御説明いただきたいと思います。

    〔主査退席、河井主査代理着席〕

竹花政府参考人 お答えいたします。

 現在、各都道府県警察におきましては、警察官の増員あるいは交番の配置見直し、交番相談員の活用等によりまして、いわゆる空き交番の解消に向けた取り組みを進めているところでございますが、その結果、平成十六年四月には全国で約千九百カ所ございましたいわゆる空き交番が、平成十七年四月には約千二百カ所と、一年間で約七百カ所減少いたしております。解消に向けた取り組みはおおむね順調に進んでいるというふうに考えておりまして、十九年春を目途にこのいわゆる空き交番を解消するために、引き続き都道府県警察に努力させるようにいたしてまいるところでございます。

福島分科員 また、交番相談員、これはOBの方等を活用するということで、平成十七年には四千二百二十二人と伺っております。こうした多面的な取り組みも効果を上げている、そのように思います。

 ただいま政府参考人の方から、解消計画が着実に進んで、平成十九年には解消するという見通しをお示しいただきました。しかし、この中で、一方、気になりますのは、交番数自体が、平成十六年の六千五百九カ所から、平成十九年には六千三百カ所へと減少するということであります。

 日本は人口減少社会になりましたけれども、地域によっては人口がふえているところもあります。ちなみに、私の地元の鶴見区というところでありますが、ここは、大変大規模な工場が移転をした跡にたくさんのマンションが建ちまして、人口が増加を続けている。そしてまた、そうした工場の移転の跡には大きなショッピングモールができたり、町の姿が着実にといいますか、急速に変わっているわけであります。こうした地域においては、実は、交番をふやしてほしいという要望が地元ではあります。

 しかしながら、全体としては、公務員の定数の問題等々さまざまな問題がありまして、こうしたことは難しい、どこか別の場所のをそこに移すしかない、こういう考え方になるわけでありますけれども、空き交番の解消と同時に、やはり、必要なところには交番を設置する、そういうようなことも私は必要ではないかというふうに思います。

 大変厳しい行政改革の中にありますけれども、こうした面での努力もしていただけないかというふうに私は思う次第でございますが、政府の見解をお聞きしたいと思います。

竹花政府参考人 御指摘のとおり、さまざま、町の状況は変化してまいるわけでございますが、各都道府県警察におきましては、昼夜の人口あるいは世帯数、あるいはもともとある面積、行政区画、あるいは事件、事故の発生状況等、さまざまな治安要素を勘案いたしまして適正な交番の配置に努めているところでございます。

 各都道府県警察が策定しましたいわゆる空き交番を解消するための計画によりますと、十六年四月に六千五百九ございました交番のうち、千九百二十五カ所いわゆる空き交番があったわけでございますが、その解消するための計画をいろいろ検討する中で、約二百カ所交番数が減少する結果になっておりますが、これは、先ほど申し上げたようなさまざまな要素に照らして慎重に検討した結果でございまして、地域の治安情勢や警察官数の状況に応じた合理的な見直しであるというふうに私ども思っているところでございます。

 しかしながら、議員御指摘のように、この解消計画の推進に当たっては、住民の意見を十分に聞き、住民が不安を感じることのないように配慮していくことが必要と考えておりまして、また新たな状況が生ずれば、さらに必要な見直しを行うことも必要であると考えております。警察庁においても、その旨、都道府県警察を指導してまいりたいと考えております。

福島分科員 よろしくお願いいたします。

 地域の安全のためには、こうした警察の努力と同時に、地域住民の自主的な取り組みも大変大切なものでございます。

 平成十六年の六月に、警察庁は、犯罪に強い地域社会再生プラン、これを策定していただきました。地域住民への地域安全情報の提供や防犯講習、防犯訓練、警察との合同パトロールの実施等の支援策が講じられていると伺っております。また、防犯ボランティア団体、先日発表がございましたけれども、現在急増いたしておりまして、団体数では一万九千五百十五団体、そしてまた延べ構成人員は百十九万四千十一と、昨年と比べても大きく増加をしているわけであります。これもやはり警察の平素の地道な努力の積み重ねの反映ではないか、そのように思うわけであります。

 私の地元の大阪市の鶴見区では、三月の二十一日に、区を挙げて、青色パトロールということで、区全体を、そのPRのためにパレードを行うこととなっております。発端は、十六年の六月ですから相当前になりますけれども、鶴見区の榎本という連合町会がございますが、ここのところが大阪市で初めてこういう取り組みを進められました。そして、途中に、ランプをつけてもいい、こういう話になりまして、これがまたさらに、防犯活動を一生懸命やるぞ、こういう流れになったわけであります。そうした結果として、この地域の街頭犯罪は一年間で半減をした、そういう成果も得られているわけであります。現在、三十名から七十名の方が、朝夕、毎日パトロールしておられると、大変熱心な取り組みをいただいております。

 このことも、先ほど申しましたように、人口が急増しているといいますか、どんどんどんどん流入人口がふえている地域でありまして、そういったこともあって、地元住民の自主的な努力というものが促されているという側面もあるわけであります。

 こうした全国各地で行われている地域住民の取り組みについて、国としても積極的にこれを宣揚し推進していくということは重要だというふうに考えますけれども、政府の見解をお聞きいたしたいと思います。

竹花政府参考人 お伺いしました地域の状況を聞きまして、大変心強く感じるところでございます。

 地域の防犯力を高める上では、みずからの地域はみずからの手で守るという自主防犯意識のもとで、自主防犯ボランティア団体が全国各地で結成され、積極的に活動されているということは、犯罪抑止上必要不可欠なことであろうというふうに思っているところでございます。

 これらの方々は対価を求めて活動されているのではないとは思いますけれども、やはり公的機関がさまざまな形でサポートをする、あるいは称揚するといったような取り組みも、また彼らの活動を後押しする力になるのではないかというふうに思っているところでございます。

 警察庁といたしましても、地方自治体や都道府県警察におけるさまざまな取り組みに加えて、さまざまな支援をする必要があろうということで、例えば、これは従来からでございますけれども、警察庁と、所管の公益法人でございます全国防犯協会連合会というのがございますけれども、こことタイアップいたしまして、犯罪防止に功労があった団体、あるいは最近急増しております自主防犯ボランティア団体のうち、特に功労のある方々については表彰を行っているところでございますし、また、昨年十二月の犯罪対策閣僚会議におきまして、安全・安心なまちづくり関係功労者表彰要綱というものが決定をされまして、これに基づきまして、防犯活動に特に顕著な功績や功労のあった個人や団体を内閣総理大臣が表彰するということで、本年から実施をすることといたしております。

福島分科員 引き続きよろしくお願いいたしたいと思います。

 続いて、大変細かなことで恐縮なのでございますが、地域の住民の方からはいろいろな御指摘がありまして、お尋ねをいたしたいと思います。

 道路の安全の問題、警察では重ねて、道路交通法の改正を初め、さまざまな取り組みをいただいております。平成十七年の警察白書も、「世界一安全な道路交通を目指して」ということで、その取り組みの姿勢が伺えるわけであります。

 そうした中で、道路の管理についてお聞きをしたいのであります。

 これは間々あることでございますけれども、個人が所有地の前の道路の一部にさまざまなものを置いて、不法に占拠している。なかなか、これは言っても従わない。道路管理者がどうするのか、こういう観点もあるわけなのでありますけれども、一方で、地域の方々からの意見では、やはり警察も積極的にこうしたことに関与していただけないだろうか、こういう指摘があるわけであります。

 道路管理者の責任といいますと、道路法の規定でございます。一方で、道路交通法の第七十六条にも、「何人も、交通の妨害となるような方法で物件をみだりに道路に置いてはならない。」こういう規定もあるわけでありますし、そしてまた、道路の使用が必要な場合には七十七条、七十八条で所管警察署長に許可を求める。そして八十一条では、違反行為にかかわり、「違反行為に係る工事又は作業の中止その他当該違反行為に係る工作物等又は工事等について、道路における危険を防止し、又は交通の妨害を排除するため必要な措置をとることを命ずることができる。」

 実態としてどこまで妨害しているのかということは、当然警察としてはお考えになられるところだろうと思うのでありますけれども、こうした安全な交通のためには、道路の管理の状態も大変大切なことでございますので、こうした地域住民の声というものを警察としても受けとめていただきたい、そのように思うわけでありますけれども、政府の見解をお聞きしたいと思います。

矢代政府参考人 道路を不法に占拠し、交通の妨害となっております違法放置物件、これは、一般の迷惑になるばかりでなく、交通渋滞や交通事故の要因ともなり得るものでございます。

 道路交通法には違法工作物に関する御指摘のような諸規定もありますし、また、現実に、警察官によります直接の注意、警告には違法状態の是正効果があるところでございますので、従来から警察でも、このような問題となるケースにつきましては、道路管理者等と連携をいたしまして、所有者等に対し所要の指導、警告を行い、道路交通の妨害の排除を図ってまいっているところでございますが、今後とも、御要望の趣旨を踏まえまして、適切な対応がなされるよう、各都道府県警察を指導してまいりたいと考えております。

福島分科員 続いては、同じく道路のことでございますけれども、工事などを行う場合に従事者が自動車で現地に赴くことが間々ある。といいますか、なかなか自動車でないとそこまで通えないということがあるわけであります。近辺に駐車場がある場合はいいのでありますけれども、駐車場がなければ路上に駐車をしながら工事をする。となると何が起こるかといいますと、駐車禁止違反、駐禁ということですぐ御指摘をいただくわけであります。取り締まられてしまう。

 一般的に、こうした工事にかかわるものであったとしても、不法に駐車をして渋滞等を招くことはやはり避けなければなりませんし、きちっと対応していただくことが必要だと思いますけれども、ただ一方で、限られた期間の中での工事だから、何とか柔軟に地域で対応していただきたいという御指摘もあるわけであります。

 警察白書でも、「ハード・ソフト一体となった駐車対策」、こういうことが述べられております。単に取り締まるというだけではなくて、「違法駐車抑止システムの整備、路外駐車場や荷さばきスペースの整備、きめ細かな駐車規制の実施」、ハードの手法とソフトの手法が一体となった対策というものが記述されているわけであります。

 こうした一時的な工事等にかかわるような駐車のための需要が生じた場合に、やはりさまざまな配慮をしていただくということも、一方では、違法な駐車をなくすという観点から大事ではないか、そのように思うわけでありますけれども、この点についての政府の見解をお聞きいたしたいと思います。

矢代政府参考人 道路では、道路工事を初めガス、水道工事その他、さまざまな工事が行われておりますが、工事関係者には資材置き場や関係車両の駐車場所を確保して行っていただいているところでございまして、その際、周辺に駐車禁止規制がなされていない道路であれば、工事に従事する方々の車両を駐車することも可能であるというわけであります。

 各都道府県警察におきましては、その地域の交通実態を踏まえまして、絶えず交通規制の見直しを行っておりますが、この駐車規制につきましても、駐車の効用にも配慮しながら、きめ細かな駐車規制を推進しているところでございまして、平成十六年から平成十七年末までの二年間、全国において駐車規制の見直しを集中的に行いました結果、約一万四千区間、約一万二千キロメートルにつきまして駐車規制の解除または緩和が図られているところでございます。また、この間、駐車場の整備につきましても働きかけを行ってきているところでございます。

 路上駐車をその場所で許容するかどうかは、さまざまな要素を勘案しながら判断する必要がありまして、なかなか難しいテーマではございますが、今後とも、交通実態を踏まえた適切な駐車管理が行われますよう、都道府県警察を指導してまいりたいと考えております。

福島分科員 次に、犯罪の未然防止ということで、警察の持つ相談機能というものが非常に大切ではないか、こういう指摘があるわけであります。

 ストーカーなどの事例でも、実際に犯罪が起こる前に対応してほしかった、相談に乗ってほしかった。これはストーカー規制法ができまして、現在対応は非常に進んできているわけでありますけれども、それ以外の事例においても、警察がさまざまな形で相談に乗っていただければもう少し何とかなるかもしれない、こういう事例もたくさんあるんだろうというふうに私は思います。実際に起こってからどうするかということも大切でございますけれども、やはり予防ということは、犯罪が急増する中にあっては同時に考えなければならないことだろうというふうに思います。

 警察白書を拝見しますと、各都道府県の警察本部に警察総合相談室、こういうものを設置していただいている。また、警察署に警察安全相談窓口、こういうものも設置していただいている。電話での相談でも、シャープ九一一〇番の導入もなされている。実際に相談件数も、平成十六年には、前年よりも二十八万千五百十四件増の百八十万六百七十件だ。大変努力をいただいているというふうに思います。

 しかしながら、一方で、やはり地域の住民の方からは、やはり警察というのは敷居が高くて相談になかなか行きにくい、そしてまた、相談のためにおられる方もごくわずかではないか、こういう指摘もあるわけであります。今後も、犯罪の予防というようなことも含め、相談機能というものをきちっと充実していただく、こういうことが必要ではないかと思いますけれども、政府としての御見解をお聞きいたしたいと思います。

竹花政府参考人 相談業務の重要性については、議員御指摘のように、犯罪を抑止する上でも、あるいは、いろいろお悩みになっている事柄について私どもも親身になって相談するということで、国民の不安を解消するという意味でも非常に大切なものであるというふうに考えております。

 そこで、各都道府県警察本部及び各警察署に相談窓口を設置いたしておりまして、各警察署おおむね一ないし二名の相談員を配置いたしているところでございます。この中には非常勤職員である警察安全相談員も含まれておりまして、これを拡充いたしているところでございまして、そういうことによりまして体制の充実を図っているところでございます。

 もっとも、これは窓口でございますので、やはり事件になりそうなものについては事件課に、あるいは少年問題であれば少年相談等の専門相談担当部署に引き継ぐなど、相談者の要望に沿った、できる限りスムーズで、たらい回しとかそういうことが決してないような対応に努めているところでございます。

 また、御指摘のようなシャープ九一一〇というものも、平成二年に導入したのでございますけれども、これが現在ではすべての都道府県警察で導入されているところでございますが、こうしたものにつきましても、九月十一日を警察相談の日ということで設定をいたしまして、広報活動に相努めているところでございます。

 いずれ、議員御指摘のように、相談者の立場に立った真摯な対応に努めるように、警察庁におきましても各都道府県警察を指導してまいりたいと考えております。

福島分科員 ありがとうございます。

 また、こうした予防ということについて言えば、やはり青少年の犯罪に対して最も力を注がなければならないというふうに思います。先ほども、さまざまな相談を適切なフォローをしていくという御指摘がございましたが、少年については、少年サポートセンターがあるというふうに伺っております。このサポートセンターを中心とする相談体制はどのようになっているのか、お教えいただきたいと思います。

竹花政府参考人 警察におきましては、全国百九十カ所、少年サポートセンターを設けておりまして、ここが少年相談の専門窓口となっておりますが、このほかにも、警察本部、警察署にいらしていただければ、それぞれ担当者もおり、あるいは、このセンターを紹介するという形で対処いたしているところでございます。保護者の方、少年自身あるいは学校等の関係者が直接来署される場合もございますし、電話で、例えばヤングテレホンコーナーという形で設けているところもございますが、そうした電話での相談にも応じているところでございます。

 このような相談活動に対しまして、少年サポートセンターに配置されました、カウンセリング等の専門の知識を有する少年相談専門職員というのがおりまして、この方でありますとか、あるいは少年非行問題を長年取り扱って経験豊富なベテランの少年補導職員、あるいは長くこの問題を扱っている警察官もおりますが、そういう方々が中心となってその受理、対応に従事いたしているところでございます。

福島分科員 大変努力をしていただいているということで、感謝を申し上げたいと思います。

 白書では、平成十六年に、少年自身、また保護者からの相談件数は全国で九万二千八百二十七件に上るというふうに伺っております。少年犯罪の予防ということで、私は、こうした点はさらに注力をしなけりゃいけない、水面下にはまだまだたくさんの問題があるだろう、そしてまた、こうしたサポートセンター自体が存在しているということを知らない人もたくさんいるんだろうというような思いがいたしております。

 そういう意味では、早期介入ということで、こうしたサポートセンターというものがあると、敷居を低くして、多くの方が気軽に相談できるように努力をすべきであるというふうに思いますけれども、こうした点についての政府の見解をお聞きいたしたいと思います。

竹花政府参考人 御指摘のとおり、少年の相談業務というのは、少年非行防止の上で非常に大事な役割を果たしているものと私ども思っておりまして、こうしたものがまだまだ知られていない実態にあるということもまた、私どもは反省しなければいけないと考えております。ヤングテレホンコーナーも、先ほど申し上げましたけれども、この電話番号につきましても、このサポートセンターは百九十カ所ございますので、こうした点についてもきちっとした広報をしてまいりたい。また、電子メールなどを活用した相談業務もさらに拡充をしてまいりたいというふうに思っております。

 それとともに、何よりも、相談を受けた少年サポートセンターの側の能力の向上というものも必要であろう。これがありませんとやはり信頼が深まっていかないということもございまして、従来からカウンセリング等の専門技能の向上を図るための研修を行っておりますけれども、これをさらに充実してまいりたいというふうに考えております。

 また、幾ら相談を受けましても、後々継続して指導していくことが必要な場合もございます。こういう場合に、警察職員ばかりではなくて、ボランティアの方々の御協力あるいは関係機関との連携も必要な場合が生じてまいります。そういうことを含めまして、関係機関あるいはボランティアの方々との連携の強化にも努めてまいりたいというふうに考えております。

福島分科員 ぜひよろしくお願いいたしたいと思います。

 この国会では、交通バリアフリー法が抜本的な改正が行われるということになっております。さまざまな領域において障害者の問題にどのように向き合っているのかということが、私は、問われる必要があるだろうというふうに思っております。それは司法においても同じでございます。障害者と司法、この関係については従来からもさまざまなことが言われてきたわけであります。この点については法務省にもかかわる話がありますけれども、本日は警察の問題についてお聞きをいたしたいと思います。

 警察白書平成十七年版では、「障害者を支援する活動」として、手話ができる職員の配置、電話により意思を伝達することができるファクス一一〇番、これが全都道府県で、また、メール一一〇番も全都道府県で開設と記載されております。平成七年に閣議決定され平成八年からスタートした障害者対策に関する新長期プラン、いわゆる障害者プランの中で示された方向が着実に進んできているのだというふうに思います。

 こうした現状について、そしてまた今後の取り組みについて、簡単に政府の御見解をお聞きしたいと思います。

竹花政府参考人 御指摘の、障害者からの緊急通報をファクスにより受け付けるファクス一一〇番につきましては平成十一年の五月に、また、メール一一〇番につきましては昨年の四月をもって全都道府県警察に開設するに至ったところでございます。

 これらの十七年中における活用状況でございますけれども、ファクス一一〇番の受理件数は約九百六十件、それから、メール一一〇番の受理件数は約二千件と承知をいたしております。

 いずれ、こうしたものの存在につきまして、さらに広報等に努めてまいりたいと考えております。

福島分科員 昨年、厚生労働省の関連では、障害者自立支援法というのが審議されたんですが、審議を通じて思いましたのは、障害者の方同士はお互いに、インターネットなりITを使って実に緊密に連絡しておられるな、こういう思いがいたしました。そういう意味では、こうしたファクス一一〇番にしてもメール一一〇番にしても、周知していただいて、使い勝手のいいものにぜひしていただきたいと思っております。

 こうした盲聾等の身体障害への対応は前進してきていると思います。今後の課題として、知的障害への対応、これをより進めていく必要があると思います。みずから意思を表示することのうまくない知的障害者の方々の権利をどう守っていくのか。加害者である場合もありますし、被害者である場合も当然あります。その両様の場合において、こうした障害の特性というものが十分踏まえられる必要がある。

 「知的障害者の人権を守るために」、これは厚生省の障害保健福祉部障害福祉課が監修をしたハンドブックでありますけれども、このようなことが書いてあります。

  警察において知的障害者の権利を擁護する見地から、取調べを受けている知的障害者が刑事責任能力を有するかなどをあらかじめ判断しようとすることはほとんどない。警察において、まれに被疑者に対し簡易鑑定という簡単な精神鑑定を行う場合があるが、これは警察が被疑者の刑事責任能力を前提として捜査を継続することができるかという捜査の必要性の観点から行われるものであり、警察の捜査に支障がないと判断した場合には行われない。また、警察の取調官に知的障害について専門的知識を有している者はおらず、概して知的障害者に対する理解は一般人のそれを超えるものではない。したがって、警察が知的障害者の被疑者の人権に配慮し取調べを行うということもほとんどないと思われる。

 最後の「思われる。」というのは、何をもって思ったのかというのはなかなか、警察の立場からすれば、私は、こういう指摘は直ちにどうかということはあるのではないかというふうに思いますけれども、仮に加害者、そしてまた、それが疑われる段階においてどのように捜査を進めるのかということにおいて、十分知的障害者の障害の特性ということに配慮して対応していただきたいというふうに思っております。

 そしてまた、被害者となった場合でも、なかなかその被害というものについて、これが認められない場合がある。

 知的障害者が被害者となった場合、まず警察や検察庁が被害者供述の信用性に自信がもてず、犯罪立証が困難であるとして、そもそも犯罪を捜査・立件する段階で自ら刑事訴追を断念してしまうことがある。知的障害者が犯罪被害者となった場合のほとんどのケースが、このような処理で闇に葬られてしまっているとの意見もあるくらいである。

こういう指摘もあるわけであります。

 加害者の場合、被害者の場合、さまざまなケースがありますけれども、今後の警察の活動の中において障害者の問題についてどのように対応するのかということについては、今まで以上に努力をしていただきたい、そのように思う次第でございます。

 もう時間も終了しましたので、何かあれば簡単に御答弁いただいて、終わりにしたいと思います。

河井主査代理 簡潔にお願いします。

縄田政府参考人 知的障害者の配慮についてお尋ねでございます。

 警察庁におきましては、一般的に、知的障害者、先生今御説明ございましたとおり、誘導を受けやすいとかそういった特性があることから、事情聴取に当たりましてはどういうことを留意してやらなきゃいかぬかということを、機会あるごとに教養しておりますし、また、先ほどお示しのパンフレットあるいはハンドブック等の中身につきましても十分把握した上で、第一線に対して指導をしているところであります。

 今般もまた会議がございますけれども、そういった場を通じて指示をし、一線の捜査員に十分徹底をさせ、遺漏のなきように努めてまいりたい、こういうふうに思っております。

福島分科員 どうもありがとうございました。終わります。

河井主査代理 これにて福島豊君の質疑は終了いたしました。

 次に、桝屋敬悟君。

桝屋分科員 公明党の桝屋敬悟でございます。

 この第一分科会、警察庁所管の業務の審査であります。本日は、三十分ほど、毎年この分科会で議論いたしておりますが、自動車運転代行業の問題につきましてことしも議論をさせていただきたい、このように思います。

 大臣もおられませんし、交通局長、それから国土交通省からは自動車交通局次長においでいただいております。どうぞ忌憚のない議論をさせていただきたいというふうに思っております。一応通告はしておりますが、そのとおりにいくかどうか自信はないわけでありますが、思いつくままに議論させていただきたいと思います。

 さて、きょうの私のテーマでありますが、自動車の運転代行業であります。御承知のとおり、この運転代行業は、平成十四年にその法律が自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律ということで施行されて、三年半ぐらいが経過をしたわけであります。

 先日の国会での議論でもありましたけれども、業務の適正化に関する法律でありますから、法律の目的は、自動車運転代行業というものが我が国の地域の中で、交通の世界の中で定着をするということよりも、むしろ変な業者をはびこらせてはいかぬというような、いわゆる適正化という名前がついておりますから、どうしてもそうした目的があるわけで、そこはそろそろ新しい舞台に移行したいなと私は思っている一人でありますけれども、いずれにしても、三年半が経過いたしまして、その間、施行状況、十六年からは代行業においても例の二種免許も義務化されまして、相当法の目的というものも定着してきたのかな、このように思っているわけであります。適切な運営の確保に向けて、警察庁あるいは国土交通省は取り組みをしていただいているというふうに理解をしております。

 これも全然通告をしておりませんが、一等最初に両省に聞いてみたいんでありますけれども、当初、この法律ができるまで、代行業の歴史は随分長い、制度の谷間と申しましょうか、法律がない時代から運営されてきて、平成十年ぐらいは全国で二千五百ぐらいの業者が把握されていた段階から、この適正化法ができまして、各都道府県の公安委員会の認定ということになりまして、それならばということで、認定を受けて業に参画される業者がふえているということで、今、認定業者が五千を超え、六千ぐらいになっている、六千も超えているかもしれません。

 そんな実態にあろうかと思うんですが、端的に言って、どうでしょうか。まず警察庁に聞いてみたいんですが、飲酒運転は随分効果があったんでありましょうか。もう感触で結構であります。数字をお示しいただければ、それでもありがたいんですが。

矢代政府参考人 お答えいたします。

 飲酒運転ですが、これはこの数年確実に減少しておるわけですが、ただ、並行いたしまして、飲酒運転に対します重罰化もあわせてなされておりますので、そういうものによります効果もあっただろうと思います。

 ただ、この代行運転の業が飲酒運転の防止に寄与していることについては間違いないと考えております。

桝屋分科員 ありがとうございます。

 おっしゃるように重罰化ということで、とりわけそれぞれのお立場にある方は、飲酒運転をしてはならない、こういう御自覚が随分進んできたんだろうと思うんですが、ただし、やはりこの代行業の皆さん方がそうした国民の皆さんのまさに生活の利便を支えてきたということで、それも私は大きな効果があったのではないかなというふうに思っているところであります。

 ただ、適正化法という法律でスタートしたということもあるのでありますが、やはり現場においては、特に新規の参入事業者等を中心に、中には、法の趣旨から照らして、法に違反をする、そうした事例もあるわけであります。無認定の営業であるとか、無保険で営業されておられるとか、あるいは無免許の方の下命容認というようなこともあって、検挙も行われているということをずっと聞いているわけでありますが、警察庁で把握されておられます主な検挙事例、あるいは件数について、まず御報告を願いたいと思います。

矢代政府参考人 お答えいたします。

 この業法違反の検挙でございますが、平成十五年は二十八件、それから平成十六年は五十三件でございましたが、平成十七年中は三十件を検挙しております。

 お話しのように、無認定営業、無保険運行あるいは無免許運転の下命容認等ということでございますが、最近の具体的な検挙事例を御説明いたしますと、例えば、静岡県の例ですが、代行運転者、これは無免許で、交通取り締まり中でございましたが、検挙いたしまして、これを調べてみますと、その経営者が無免許運転を下命しておったということであったということで、さらにこれを調べますと、実は、この者は実質的な営業をやっていますが、名義貸しで、他の者に営業の名前を借用しておった、こういうことでこれらを検挙しております。

 また、栃木県の例ですが、代行従業員、これも無免許でしたが、これを一斉検問で検挙いたしまして、これを調べますと、配車の責任者がやはりこれを下命しておったということがわかりました。さらに、これを調べますと、経営者がほとんどこれを放置しておったという状況がわかりまして、これらの者を検挙したという事例がございます。

桝屋分科員 制度が始まって、十六年ぐらいが少し数が多かったようでありますが、十七年三十件、具体的な事例も今御報告いただきました。これが全部かどうかということで、まさに氷山の一角ではないかという気もするわけでありますが、残念ながらこうした業者もあるということであります。

 今、警察庁の方からお話しをいただきましたけれども、国土交通省の対応についてもあわせてちょっと確認をさせていただきたいと思います。

松尾政府参考人 お答えいたします。

 国土交通省といたしましても、自動車運転代行業の業務の適正な運営を確保するために、現場における指導監督等の強化を図るという観点から、平成十五年五月に地方運輸局に対しまして通達を発出し、立入検査の実施、それから無保険営業等の違法行為の処分等の適正化を図るように指示をしたところでございます。

 引き続きまして、警察庁とも連携を図りつつ、適正な運用につきまして指導監督してまいりたいと思っております。

桝屋分科員 ありがとうございます。

 これは両省共管ということでありますので、現場においてはよくよく連携をとっていただいて、対応方を改めてお願いをしておきたいと思います。

 この代行業でありますけれども、きょうはもうデータは全部言いませんけれども、二千五百ぐらいであったものが今六千を超えている。こうした業者の中には、新規に参入される業者、それから小規模零細の事業者という数が大変多いわけでありまして、中には、先ほど言った名義貸しというような実態があったり、なかなか難しい業界だろう、こう思っております。

 そうした中で、違法な事業者に対する取り締まり、指導を行っていくということが私は大事だろうと。同時に、やはり実態というものをしっかり両省において把握をしていただきたいな、こう思うわけであります。

 私もずっとこの問題に取り組んでおりますから、地方に出かけた際は、夜であれば必ず代行事業者の皆さんに声をかけたり、どういう実態なのか、いろいろ聞かせていただいているわけでありますが、なかなかいろいろな問題があるわけであります。特に、公安委員会の認定を受けるときには一台ということで認定を受けられて、しかしながら、実際に週末の忙しい時期であるとか、あるいは正月、忙しいときには、実際にその業者で動いている車が一台だけではないというような実態があったり、そうしたことが大変に心配をされるわけであります。

 私は、警察庁なり国土交通省、それぞれ所轄においては地域の実態というのは大分把握されているんだろうと思いますが、ぜひ両省においても、単に認定事業者が幾らぐらいかということだけではなくて、認定事業者のうち零細な、一台だけで運営をされているような、業をなしているような業者がどのぐらいあるのかとか、そうした実態もぜひとも把握していただきたいな、こう私は思っているのでありますが、これは警察庁に、業の実態の把握ということについてお伺い、お願いをしてみたいと思います。

矢代政府参考人 お答えいたします。

 この代行業者、認定業者は、先ほどお話にございましたように、平成十三年は三千ちょっとでございましたが、平成十七年には六千十業者を数えております。

 これの実態ということでございますが、私ども、この全体の概要を知るということで、定期的に運転代行業者の数ですとか随伴用自動車の台数あるいは従業員者数等、その他幾つかの項目につきましてその推移を把握する、これが一つでございます。

 また、先ほどからございますように、運転代行業あるいはその業者及びその事業に係ります交通事故や事件、あるいは苦情の取り扱いが結構ございますので、苦情などの取り扱いを通じまして内面の実態把握に今努めておるところでございまして、引き続き、今後ともその実態把握に努めまして、この自動車運転代行業の適正化が進むように考えていきたい、このように考えております。

桝屋分科員 ちょっと話がそれますが、ここから先は、この法律は見直しの規定があったわけでありまして、そろそろ三年半を経過して四年目にかかっているわけでありますので、五年の見直し、これからどういう見直しをしていくか、見直しが必要であるかどうかということ、これが検討されるんだろうと思いますが、まず、やはりその検討に当たっては、今私が申し上げております実態というものをしっかり把握してもらいたいということであります。

 確かに、ずっと私、毎年この問題を取り上げておりますから、警察庁においても、それから国土交通省においても、定期的に、定点で、それぞれ認定事業者がどのぐらいあるのかということはもちろん把握されておられるというのはわかっているわけでありますが、そうした見直しに向けて、あるいは適正化法の実態、運用状況というものを実態を把握し、そして問題があるのかないのかというようなことを検討するについては、そうした段階に今来ていると思いますので、私は、そうした意味でもしっかり実態をつかんでいただきたいと。

 それで、これはもう質問外でありますが、両省にお聞きしたいのでありますが、代行業の今抱えている問題点、ここまで適正化の法律を運用してまいりましたけれども、私は、幾つかの問題が出ているんだろうと思っているんですね。その辺は、どんなことが今問題になっているのか。もうこの問題でいけば、第一にこれだ、第二にこれだ、第三にこれだと、大体全国どこへ行っても言われるわけでありまして、問題の所在というものをどういうふうに認識されているのか。

 もっと言いますと、これは質問通告しておりませんが、この法律は今までうまくいってきているのかと。適正化法というネーミングで、適正化ということで今日まで三年半やってきたけれども、いや、存外、この法律の運用というのはうまくいった、地域に定着をしたというふうにお考えなのか。あるいは、いやいや、ここまで来たけれども、これはもう何としても見直しをしなければ、なかなか大きな問題があるという認識なのか。では、その問題というのはどういう問題があるのか。そんなところをちょっと語っていただければと思っておりまして、両省からお願いをしたいと思います。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 印象を申し上げますと、この業法制定以前はそもそもルールがなかったわけでございまして、それに対しまして一定のルールを設けてその制度を開いたわけでございますので、その限りではこの適正化というものは進んでおるんだろう、こう考えております。

 ただ、その後、業者も随分ふえておりますし、競争もなかなか、地域によりましては競争が見られるわけでございますし、また業者の体制につきましても、弱小なところも数が多くございます。したがいまして、そういうことの中から、先ほど申し上げましたような法違反のケースも見られるわけでございますし、あるいは一般の利用者から見て満足のいく状況になっているかということにつきまして、いろいろな御意見もあるんだろうと思うのです。

 したがいまして、全体的な評価は、まだしばらくこれをずっと続けながら、五年後ということでございますので、評価すべきものと思いますが、法制定前に比べれば、当然のことながら進んでおるか、それは道半ばということでなかろうか、こう思っております。

松尾政府参考人 自動車運転代行業につきましては、マイカーの進展によりまして、酒を飲んだときにでもマイカーを使って自宅まで戻りたい、また次の日にそのマイカーで出勤等をしたいというような中で出てきた、自然発生的に生じた産業でございます。

 矢代交通局長の答弁にもございましたように、ところが法のルールの外側にあったということで、法の網の外にあったという状況でございます。それを、この法律に基づきまして、一定の規制のもとに適正な運営を図ってもらうということで始まった法律でございます。私どもとしては、そういう中では所要の効果を発揮しているもの、こういうふうに認識をしております。

 ただ、国土交通省といたしましては、この自動車運転代行業につきましては、特に利用者の利益の保護という観点で指導監督等取り組んでおります。保険金等への加入状況、あるいは料金、約款の掲示、説明等が十分になされているのかどうか等々につきましては、また引き続きよく目を光らせてまいりたいと思っておるところでございます。

桝屋分科員 両省の御見解を伺わせていただきました。

 もちろん両省とも、ノンルールの世界からルールがちゃんとできたんだから、そこは大きな前進です、こういうふうにおっしゃっていただいて、そのとおりだろうと思っております。

 ただ、本当に現場において国民の皆さんがこの代行業を利用されるときに、代行業の本質といいましょうか、よくおわかりになっているのかどうか。相手が、お客さんが飲酒をされているということもありまして、なかなか現場では大変でありまして、よくよく理解の上、このサービスを利用していただかなきゃならぬということもあるわけでありまして、国民の皆さんの周知といいましょうか、この業に対する理解を深めるということも大事な点だろう、こう私は思っております。

 ただ、業者の皆さん方に聞きますと、やはりいろいろ今の法律のスキームも、問題が必ずしもないということはないんだろうと思っております。

 確かに、一歩前進ではあったんだけれども、例えば、持ち込み車両の問題であるとか、あるいは料金の問題、やはりダンピングの問題があるわけですね。そして料金、やはり現場においては、競争でありますから、安いほどいいと。しかし、安い料金というのは必ずしもいいサービスではない、事故が起きた場合の保険が、きちっと保険に入っていなかったというようなことが往々にしてあるわけでありまして、こうしたダンピング料金問題にどう対応していくのか。

 あるいはその標識も、これはなかなかいいものだと私は思っておりましたけれども、いろいろ聞いてみますと、代行業という、ぺたっと張るわけですね。代行する車にも張るし、随伴する車にもちゃんとつけるようになっています。あれはお客さんの車につけるんじゃないかと思うんですが、嫌がられるケースもあるというようなことも聞いておりますし、それから、公安委員会が一回認定をし、認定後のチェックというものが、指導監督、これがどういうふうになされているのかというようなこともあるでしょうし、ダンピングの話をしましたけれども、今の代行業の現場における実態は、今なお、やはり正直者がばかを見るような実態がある。やってしまった方が勝ちだというようなことがあって、ここをきちっと取り締まることができればいいのでありますが、なかなかそこまでできないという実態もあるわけであります。

 こうしたことを考えると、私は、ぜひこれから、この三年半の実施状況を、五年の見直しに向けて、やはり問題点をきちっと整理していただく、もちろん実態というものを十分把握していただいて、今私が申し上げたような実態も、場合によっては全国のデータというものも整理しながら、問題の所在がどの辺にあるのかということはそろそろ検討される段階ではないのかな、こう思っております。

 そこで、きょう一番私が申し上げたいことでありますが、来年、その次の年でしょうか、しかし、今から準備をしなきゃいかぬわけで、私は、関係者あるいは有識者による検討の舞台というものをぜひ設置するように両省で検討してみていただきたいな、このように思っているわけでありまして、単に所轄から上がってくるデータを年に一回まとめるということだけではなくて、やはり本当に、真に国民のサービスとして、よりよいサービスとしてさらに発展をするように、そうした観点から検討会というのを立ち上げて、データを集め、検討を開始する、こういうことに取り組んでいただく段階ではなかろうか、こう思っているのでありますが、これもできれば両省から御見解をお伺いしたいと思います。

矢代政府参考人 お答えいたします。

 この運転代行業法、法律の施行後五年を経過した時点で施行状況に検討を加えるということになっておるわけであります。そのときの実態がどうなっておるか、あるいはその実態と制度との間にどういう乖離があるのか、こういうことであろうと思います。

 その検討のためには、やはり継続いたしまして運転代行業の実態把握に努めていくことがまず重要である、こう考えております。また、この五年経過後の検討に当たりましては、これは当然のことでありますが、その時点におきます運転代行業の実態のほか、さまざまな方々の意見を聞きまして、あるいは利用者の声や関係者の意見を踏まえまして検討すべきものでありますし、また検討することになるだろうと考えております。

松尾政府参考人 国土交通省といたしましても、五年後見直しに当たりましては、実態把握をさらに強めていくとともに、警察庁とともに、利用者の声あるいは事業者を含む関係者の意見等を踏まえながら、検討してまいりたいと思っております。

桝屋分科員 両省とも、五年を経過した後におもむろに腰を上げようか、こういう印象も伝わってくるのでありますが、私は、ことしこういうことを申し上げているのは、一つは、やはり自主的な取り組みといいましょうか、業界挙げて、自分たちが、やはり国民の皆さんに信頼されるサービスにしなきゃならぬということで取り組んでもらいたいというのが私の切なる願いでありまして、そういう意味では、実は、この業界には社団法人、協会もあるわけであります。

 御案内のとおり、公益法人改革というものがいよいよこの国会で議論される、法案が出てくる、こういう段階でありますから、今まで、両省の御指導もこれあり、この協会、社団が、まさに公益の事業を、国民の皆さんによりよいサービスを提供する、そうした環境づくりをしていこうということで取り組まれてきたんだろうと私は思いますが、必ずしもこの業界、心一つにまとまるということが簡単でないわけでありまして、今までの、背景にあります共済制度等も含めて、なかなか困難な問題を抱えておりますから、私は、そうした検討の場を公的な部分で設置していただくということが、自主的な取り組みが、まさに公益法人の改革ということも横目に見ながら、視野に入れながら、非常に重要な時期が来ただろうと。そういう公的な検討の舞台があれば、業界の皆さん方も、業者の皆さん方も、心一つに、いいサービスになるように努力していこう、結束していこう、こういう機運が生まれてくるのではないか、私はこう思っているわけであります。

 いろいろな制度がいよいよこの国会で動き出すという、御案内のとおり、協同組合のあり方についても今回法改正も予定されているわけでありますから、いろいろな意味ではチャンスだなと。そろそろ腰を上げられないとチャンスを逃がしますよ。私は、チャンスは前髪でつかめ、こう思っておりますので、通り過ぎた後やったって、もう今度はこの社団も自分たちの所管から外れるんだというような、あとは内閣で全部面倒見てもらえばいい、そういう安易な姿勢ではなくて、今こそチャンスだという思いで取り組んでいただきたいなと。

 私も国会議員の一人として、しっかりこの問題はこれからもコミットしていきたい、こう思っておりますが、最後に、警察庁交通局長のお話を伺って、終わりたいと思います。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 確かに、現在、協会の会員数、加入率も低いわけでございますが、ただ、この代行業の先々のことを考えますと、業者の方々が協力しながら、その次に向けまして御努力を願うということは大変に大事なことと思っていまして、私どもも期待しております。

桝屋分科員 引き続き取り組みをさせていただきますので、どうか大臣にもしっかりきょうの議論を伝えていただいて、お取り組みをお願いして、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

河井主査代理 これにて桝屋敬悟君の質疑は終了いたしました。

 次に、原口一博君。

原口分科員 民主党の原口でございます。

 きょうは、警察の行政について、大臣並びに関係部局に質問を申し上げます。

 まず、大臣、先日は予算委員会の集中審議でも大変ありがとうございました。北側国土交通大臣の代理として御発言なさったことを前回質問させていただきましたが、きょうは、国家公安委員長として、主に予算や警察組織そして犯罪捜査のあり方、そして特に最初に御質問申し上げますのは、何といっても拉致の問題でございます。

 私も超党派の議員でつくります拉致議連の副会長を仰せつかっておりますが、この拉致の問題解決なくして日朝国交正常化なし、解決なくして私たちの国民の安心なし、そういう考えに基づいて質問をさせていただきます。

 まず、警備局長に伺いますが、辛光洙、チェ・スンチョルに対して、拉致の実行犯として逮捕状が発付されたとのことでございますが、事実関係及び経緯をまず述べていただきたいと思います。

小林政府参考人 お答えいたします。

 去る二月二十三日に警察は、地村さん夫妻及び蓮池さん夫妻の拉致の実行犯といたしまして、それぞれ、北朝鮮工作員の辛光洙及びチェ・スンチョルを特定いたしまして、逮捕状を請求、その発付を得たところでございます。

 福井県警及び新潟県警は、昭和五十三年七月、これらの事案が相次いで発生した以降、鋭意捜査を継続してまいりましたところ、昨年末ごろでございますが、当該拉致の実行犯の特定に資する新たな証拠を入手したことなどを踏まえまして、これまでの間、今までの捜査結果と突合を行うなど、裏づけ捜査を慎重に行ってきたところでございます。

 このたび拉致実行犯が特定されましたため、また逮捕状が発付されたことから、警察庁では、直ちに外務省を通じまして北朝鮮に対し同人らの引き渡しを要求したほか、現在、インターポール、ICPOを通じまして国際手配に向けた手続を行っているところでございます。

原口分科員 外交ルートでの引き渡し、そしてインターポールによる本人の身柄確保、ぜひこれは、大臣、北朝鮮とは国交がございませんが、国家公安委員長としてあるいは小泉内閣の閣僚として強く、警察の皆さんは警備局を中心に随分頑張っていただいたと思います。辛光洙容疑者については、福井県警察本部、警視庁共同捜査本部、地村保志、富貴恵御夫妻の拉致の実行犯、北朝鮮工作員辛光洙という形で逮捕状をとるに至るまでは、大変大きな努力と、困難が横たわっていたというふうに思います。ここまで来たんですから、ぜひ、大臣に御所見を、これは通告をしていませんが、内閣の中でしっかりとした引き渡しを求めていただきたいというふうに思います。

 さて、拉致の実行犯、今お話が出ましたチェ・スンチョルは、日本人に成り済ましていたと言われていますが、一体どなたに成り済ましていたのか、事実関係をお尋ねいたします。

小林政府参考人 チェ・スンチョルでございますが、蓮池夫妻の拉致の実行犯ということで特定されたわけでございますが、この者は、昭和四十五年夏ごろから我が国に密入国した後、約十五年の長期にわたりまして、小住健蔵さんら二名に成りかわりまして、両人名義の日本旅券等を不正に取得の上、対南工作、対韓国工作でございますが、のための工作員の獲得、育成及び韓国への送り込み等を行っていた、また数回にわたって海外へ渡航し、海外拠点との連絡、運営等の活動を行っていたものと承知しています。こうした同人の活動は、昭和六十年三月に警視庁がその補助工作員を検挙したことにより明らかになったものでございます。

原口分科員 今、二名とおっしゃいました。そうしたら、その二名の方々はどこへ行かれたのか。小住健蔵さん、ほかもう一名はどなたの名前を使っていたのか。事前のレクでは小住健蔵さんという話でございましたので、もう一名、もし今お答えがおできになるようでしたらお答えください。

小林政府参考人 今、小住健蔵さんの話をいたしましたが、もう一人は小熊和也さんでございまして、この方は既に死亡されております。小住健蔵さんについては、所在不明ということではっきりわかりません。

原口分科員 現実に存在をされていらっしゃる方が、日本人が、まさに、お一人はお亡くなりになっていますが、お一人は所在不明。ゆゆしき主権、人権の侵害、その疑いをさらに濃くするわけでございます。

 さて、それぞれの拉致現場では複数の共犯者がいたとされています。今のこの二人は北朝鮮の特殊部隊における拉致の実行犯、そこでのヘッドのようなものだというふうに私も認識をしておりますが、それぞれの拉致の現場では複数の共犯者がいたとされています。実行行為について、警察庁はどの程度把握しておられるのか。また、この辛光洙、チェ・スンチョル両者には日本国内にそれぞれ補助工作員がいたとされていますが、事実関係を伺いたいと思います。

小林政府参考人 御指摘の両者についてでありますが、辛光洙及びチェ・スンチョルはいわば拉致の実行グループの長でございまして、このもとに組織的に行われたものと認識しておりますが、それぞれ拉致の際には複数の共犯者がいたものと考えております。

 また、委員御指摘のように、これまでの捜査から、両名については、こういった拉致実行の共犯者とは別に、ロジスティックスといいますか、日本国内における活動期間中に住居の手配や北朝鮮との連絡等の中継といったことをする、いわば補助的な活動を行う工作員がいたということが既に明らかになっているところでございます。

原口分科員 今局長がお答えになりましたように、いきなり北朝鮮から来てそして拉致を実行するということは、その人間だけではやはり不可能だというふうに思われます。何らかの、国内にいて、そしてその拉致の実行を助ける者が、いわゆる協力者がいたのではないかというふうに思います。

 九月十七日の総理の訪朝によりまして、五名の方、そして御家族が、日本へ拉致被害者の方々がお帰りになりました。ただ、公安委員長、非常に私が心配しておりますのは、その方々が、目の前にまさにそういう協力者がいるのではないか、あるいはまた、そういうテロリストとおぼしき者がいるのではないかとおびえながら暮らされる。そんなことがあっては絶対ならないと思いますので、引き続き捜査と、そしてこういう者の逮捕に御尽力をいただきたい。そして、そのためには、やはり警察庁が主導してしっかりとした組織体制をつくり、各省の連絡も万全にやっていただきたいということを申し添えておきます。

 さて、これはちょっと残念なことでございますが、先日、参議院の拉致特委が、我が民主党の広野委員長を中心に、福井、石川両県に現場実査に赴いたときに、福井警察警備部の参事官が、ちょっと正確には伝わっていませんが、拉致被害者に特定失踪者に関する情報を求めていない、あるいはこれからも求めるつもりはないというような趣旨の御発言をされたと報じられております。

 きのう私たち民主党では、民主党の拉致の対策チーム、対策本部を立ち上げていますが、その役員会を開催しまして、実際に広野委員長や、あるいはそのときにおりました議員からそういう趣旨の発言があったというふうに聞いております。このことの真意を尋ねたいと思います。

小林政府参考人 まずもって申し上げるべきことは、これまで警察として、拉致被害者の立場というものがやはりございますので、それを十分に尊重した上で捜査を行ってまいりました。今後とも、そうした拉致被害者を初め関係者からの協力をいかに確保するか、これがこうした捜査遂行上、最重要課題だ、こう考えているところでございます。

 委員御指摘のような報道がなされ、また現地のヒアリングにおいてもそのような応答がなされたということは承知しているわけでございますが、今回の両御夫妻の捜査、それは何分にも本件の実行行為者の特定というところに重点を置いたわけでございます。今般は、そういったこともありまして被疑者の特定以外の新たな情報というものが得られていないということでございまして、現地の警備部の幹部の発言も若干言葉足らずではなかったかと思いますが、説明が御指摘のような形で報じられたもの、こう考えております。

 しかしながら、これまでも地村御夫妻からは、拉致の実行犯のみならず、さまざまな観点からの事情聴取等にも御協力をいただいております。ただし、その具体的内容については、捜査中の事件でもありまして答弁を差し控えさせていただきたい、こう思っております。

原口分科員 参事官がこういう御発言をされたこと自体が、公安委員長、不適当だと思いますが、私はここで処分とかそういったものを求めているわけではありません。限られた人員の中で一生懸命頑張っていらっしゃる。ですから、言葉が足りなかったこともあるでしょう。

 ただ、特定失踪者の御家族の皆様も、やはり何といっても生きているうちに一目会いたい、肉親に会いたい、何とか祖国に帰したい、そういう思いを強くしておられますし、それはもう、時がたてばたつほど自分の体は自由に動かなくなる、本当に大丈夫だろうかという思いを持っていらっしゃるので、ぜひその思いにこたえるように、またそういう思いにやはり共感を持って対応していただくように指摘をしておきます。

 さて、そういうことを申し上げた上で、特定失踪者について、より積極的に調査、捜査を行うなど対応を行っていくために、何といっても体制の強化といったことが必要であると思います。国家公安委員長としての対応への決意を伺いたいと思います。

沓掛国務大臣 原口委員から非常に貴重な御意見をたくさんいただいて感謝しております。また、それを的確に運用上も生かしていきたいという思いで、これからお答えさせていただきたいというふうに思います。

 北朝鮮による日本人拉致容疑事案は、我が国主権を侵害する極めて重大な事案だというふうに思っております。実は、私自身も、平成十年の三月二十八日から四日間、平壌でこの交渉をやった人間でございまして、このことがいかに難しいかということが身にしみている人間の一人でもございます。

 さて、警察庁では、北朝鮮による日本人拉致問題の重要性を踏まえまして、これまでに判断いたしました十一件十六名の北朝鮮による日本人拉致容疑事案及びこれら以外の拉致の可能性を排除できない事案の捜査等におきまして、各都道府県警察に対し専従的に指導を行うとともに、かかる事案について関係機関あるいは民間団体との調整を行うことを目的に、このたび、平成十八年度に拉致問題対策室を設置することといたしております。また、都道府県警察におきましても、部門間の連携を密にするとともに、捜査員の集中的運用を行うなど、体制の整備を図っているものと承知いたしております。

 今後とも、今御指摘のありました特定失踪者、その御家族の気持ちを十分理解しながら、この問題に取り組んで、捜査、調査等を引き続き強力に推進していきたいというふうに思っております。また、いろいろな面で委員からも御指導等いただければありがたいと思っております。

原口分科員 大臣、しっかりした御決意をいただきましてありがとうございます。

 やはり直接交渉にもかかわられて、私も、この問題が非常に解決が難しいのは、これは私の所見でありますが、やはり国家の主導者、国家全体の体制、そういったものに深く関与する問題ではないかというふうに思っています。そのときに、まさに制裁と対話、あるいは対話と圧力という言葉を政権はおっしゃっていますが、交渉の中で、この政権に対して、それをアンドするのか、あるいは何かをエポケーするのか、そういったことが今いろいろなところで話し合われていますが、まずは事実を認定して、そして一刻も早く拉致の実行犯を逮捕し、身柄を押さえるということがまず第一だというふうに思います。

 さて、次に、先刻我が党の細川筆頭がこの委員会で御質問なさいました、沖縄で自殺されたとされる野口さん。私も、大臣、直接お姉様とお母様と会ってきました。気丈にもいろいろなことを教えていただきました。汗を流さないで、自分が築いたものはそんな簡単に築いたものではないんだ、血と汗の結晶なんだということをおっしゃっておられたそうであります。しかし、その後、聞き取りをしていくうちに幾つも不思議なことが散見されました。

 一つは、十七日の朝、いつもなら顔を見て出て行かれる野口さんが、顔を見ないで、奥様の顔もごらんにならないで、背中を見せて行かれた。泣いておられたのではないだろうかというお話でありました。そして、その日は十七時四十分まで会社におられて、そしておうちに、大変だったね、いろいろなライブドア関連の捜索等もあったように聞いていますが、これから帰るから、今帰るからねと電話をされて、それから沖縄で翌日の夕方六時三十分ごろ、那覇の警察署から、おたくのせがれさん自殺ですよという一報が入るまで、全く杳として行方が知れなかったということであります。

 野口さん自身というよりも、会社にかかわる、どの会社なのかよくわかりませんが、大きな問題が野口さんの死につながったのではないかと言う人もいます。

 そこで、事実について刑事局長に伺いますが、この野口さんの亡くなったカプセルホテルにあったとされるサッカーシャツが遺族に戻っておりません。私の聞き取りで、きのうからきょう、那覇署並びに皆さん、御遺族に確認をされたと思いますが、やはりこれは戻っていない。これは事実でしょうか。

縄田政府参考人 お尋ねの件につきましては、本年一月十九日、沖縄県警察の捜査員が、貴重品及び御指摘のサッカーシャツを含めました衣類等を、御遺族に確認いただいた上で返還しているというふうに報告を受けているところであります。

 今委員、御家族の方が受け取っていないというお話ございました。私どもといたしましては、話が食い違うところでありますし、御遺族の方から受け取っていないという旨の申し出がありましたら、沖縄県警察において、御遺族の方とも連絡をとった上で、所要の事実確認をしっかりするものだろうというふうに承知をいたしています。

原口分科員 刑事局長、私もここで責めているわけではございませんで、事実の解明をしたいので。公安委員長、御遺族が警察署にお尋ねになったとき、女の人がとりに来たでしょうと言われたそうです。現実に、御遺族は写真を見せられただけで現物もごらんになっていないし、ましてやそれが返ってきてはいません。きょう、御確認の電話を私の質疑通告でなさって、実際にそれは御遺族から私と同じことを皆さん聞かれていると思います。

 非常に不可解なんですよ。野口さんの行政解剖の所見について自殺の根拠となるものがあったのか。そして、二つ続けて聞きますが、野口さんが亡くなる前の東京での足取りは把握されているんでしょうか。二点について伺います。

縄田政府参考人 行政解剖の所見についてお尋ねでございますけれども、行政解剖の結果につきましては、死者の名誉にもかかわることでありますので答弁を差し控えさせていただきたいと存じますけれども、沖縄県警察におきましては、死体の取り扱いに関しまして専門的な教養を受けている刑事調査官が臨場いたしまして、遺体や現場の状況、関係者からの聴取など、さまざまな角度から慎重に真相究明に当たり、死因につきまして犯罪に起因するものではないと判断をしたところであります。

 また、医学的死因の究明の慎重を期すために、御遺族の了承も得まして解剖を実施したところでありますけれども、解剖所見をあわせて考慮いたしましても、その死因につきましては犯罪に起因するものではないと判断したところでございます。

 東京でのお話をお尋ねでございますけれども、亡くなられた方の生前の行動につきまして、沖縄県警察におきましては所要の調査等を実施したところでありますけれども、その具体的な内容につきましては、死者の名誉とかあるいは御遺族のプライバシーにかかわることもあろうかとも思います。また、警察として申し上げるべきものではないというふうに考えております。

原口分科員 いや、私は、亡くなった方の御遺族の疑問を晴らしたい。そして、自殺ではなくて、あるいは自殺幇助であったり、あるいは殺人であるという可能性も、いろいろな聞き取りをしましたけれども、どんなに慎重にいろいろな証拠を見ても、やはり不思議なことが、公安委員長、いっぱいあるんです。那覇空港のビデオに野口さんの姿が撮影されていなかったのではないか、これは皆さん御確認になっていないんじゃないか、その事実について問います。

 また、時間が迫っていますので二問続けて話しますが、野口さんは、これは私の調査で、かつて沖縄にたびたび行かれたとき、委員長、申しわけありませんが、これは個別の会社ですからイニシャルでお話をさせていただきます。ただ、警察庁には個名を言っていますのでイニシャルでおわかりになると思います。S社のHさん宅にお泊まりになったのではないかという事実を把握しています。そういう話をなさっていると聞いています。このHさんについて警察は把握されているのか。

 と申しますのも、暴力団員のAさん、Aさんについてもあらかじめ言っています、が沖縄で十六日に撲殺されているという事実があります。これはあるかどうか答えてください。

 また、その翌々日の十八日に野口さんが亡くなっており、沖縄県警が十八日の十八時半に、先ほど申し上げました、野口さんが自殺されたという奥様への電話と同時刻に、Hさんは広島の知人に、野口さんが殺された、自分も危ないと電話しているという話もあるそうでございます。こういう周辺的な状況から考えまして、暴力団関係者あるいは組織的犯罪者の自殺幇助の疑いがぬぐえないんではないのか、このことについての御見解を伺いたいと思います。

縄田政府参考人 那覇空港でのビデオの確認についてまずお尋ねでございました。ビデオの確認など、個々の警察活動の具体的内容につきましては答弁を差し控えさせていただきたいと存じますけれども、沖縄県警察におきましては、御指摘の事柄なども含めまして、遺体の現場の状況とか関係者からの聴取結果などを踏まえまして、慎重に真相究明に当たりまして、犯罪に起因するものではないと判断したとの報告を受けておるところでございます。

 また、個別の会社あるいは個人の方についての情報についていかがかということでございますけれども、亡くなられた方の交友関係等につきましては、プライバシーにかかわることでありますので、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。また、警察がこのような方等について承知しているかどうかにつきましても、同様のことで答弁を差し控えさせていただければと思っております。

 もう一つ、殺人事件といいますか、傷害致死事件との関係でお尋ねでございました。これは一月十六日に、御指摘ありましたように、傷害致死事件で暴力団の沖縄旭琉会の構成員が殺害された事件でございますけれども、現在、沖縄県警察におきまして被疑者一名を傷害致死で逮捕して、現在捜査中であります。

 したがいまして、この捜査の中身、情報等については答弁を差し控えさせていただきますけれども、ライブドアとかあるいは亡くなられた方と暴力団との関係につきましては、御指摘の事件等に関するものも含めまして、種々の情報がいろいろ取りざたされておることについては十分承知をいたしております。

 これにつきましては殊さらコメントすることは差し控えたいと存じますけれども、なお一般論で申し上げれば、警察におきましては、刑事事件として取り上げるべきものがあれば法と証拠に基づいて適切に対処していくもの、こういうふうに承知をいたしております。

    〔河井主査代理退席、主査着席〕

原口分科員 組織犯罪対策あるいは暴力団対策をする上で、いわゆる暴力団犯罪の被害者や暴力団排除に立ち向かう国民を保護する対策の充実が必要であると考えます。

 よく今、国家公務員の人員削減やあるいは給与の削減という話がありますが、実際に巨悪に立ち向かう、やみの勢力に立ち向かうその方々は、家族も含めて大変大きな不安を抱えながら、正義のために頑張っていらっしゃると思います。

 そこで、大臣に伺いたいと思いますが、やはりサイバー的な犯罪、私どものところにも毎日、国会のあれから、変なメールが届きます。そういったものも含めて、やはり暴力団対策に従事する警察官についてはさらに人員と予算を確保すべきであり、また警察官の家族を含めて万全の処遇と体制を整えるべきであるというふうに考えますが、大臣の御所見を伺い、そして、私は那覇署がやったことが間違いだということを言っているんじゃありません。

 しかし、その後、新たな事実や不可思議なことが起こっている。現にサッカーシャツはだれかの手に行っているじゃないですか。この委員会に提示をしていただきたいんですが、そういうところにあったものは必ず引き取りがあるはずですよね。どなたかが来られたらそのサインがあるはずであります。御遺族が自分の手に戻っていないということであれば、少なくともその証拠を、証拠というかしるしを本委員会に提示していただきたい。その方の引き取りのサインがあるはずでございます。

 そのことをあわせて申し上げて、国家公安委員長の、真相解明に向けた大臣の決意といったことをあわせて伺いたいと思います。

 以上三点、よろしくお願いいたします。

沓掛国務大臣 今御質問の野口さんのことでございますけれども、まず第一に、野口さんが自殺かどうか……

松岡主査 時間が来ておりますので、ひとつ簡潔にお願いします。

沓掛国務大臣 ということについては、私自身も大変関心を持ち、かなり皆さんからよく聞かせてもらいました。

 私自身も、かつては四高時代は医学部に行こうと思って両津にいた人間でもあるので、医学的なことも大変関心があるので、勉強させていただきました。

 そこで、どういうふうにして判断するかというと、死体があると、まず警察署長が、異常であればすぐ県警本部長に伝える。そして、そこで必ず、そこにいわゆる刑事調査官という、刑事を十年以上やり、そして、かつ、医学的なことの研修をいろいろ受けて、そういう人が全国に百数十人おりますが、その刑事調査官が中心になって、その死因が何であるかを調査します。この沖縄の場合も刑事調査官が行って調査しております。

 調査する内容というのは、まず遺体がどうなのか、そしてその遺体の置かれた現場がどういう状況なのか、そしてその周辺のいろいろな人から事情聴取して、そこで判断することは、死亡が犯罪によっていることが明らかなものであるのか、そうでないのか、その判断をいたします。

 ここにおいて、三つの総合的な判断から、一応この死亡はいわゆる犯罪によらないことが明らかであるという判断がなされております。その根拠は今申し上げた三つのそれぞれにあるので、私なりにもいろいろ確認してみました。その上で、ここで行政解剖というものをやることになりました。

 この場合は、幾つもの傷がありますし、睡眠薬も飲んでおりますから、どれが決め手で死んだのかという医学的死因をそこでいろいろ調査しました。死体解剖保存法という法律がありまして、これに従ってしたわけでございます。これを琉球大学の医学部の教授で、ある程度そういう経験のある、解剖学とか、そういう人でなければできないわけですが、その琉球大学医学部でそういうしかるべき人がさらに行政解剖をいたしました。

 そういうものを総合的に見て、これはどの点を見てみても、やはり自殺以外は考えられないという判断をしたのが今回の結論でございます。そういうことでございますので、その後のことについては、これはそういう結論が出た、結論で一応終息しているということでございます。

 この暴力団、いろいろ出ておりますけれども、暴力団そのものに対する対策は、これは極めて重要ですから、暴力団対策として懸命に今もやっているわけですが、この人との、野口さんとの関連ということについては、特別、何かということであれば別ですが、特に出ておりませんし、これと関連したということについては、先ほど来話があるように、野口氏の尊厳やいろいろなこともありますので、それ以上特にないということだけ申し上げておきます。

 それから、暴力団対策については、今申し上げたように全力を挙げて対応していくし、またいろいろな、閣僚レベルでも、政府でもやっておりますし、警察でもその新しい対策を立てていろいろやっています。

 それから、この暴力団からの保護という面についても、保護というのは、やらなければ、それは警察官だって自分の家族が危険ではやれませんから、またほかの情報提供者もいろいろできませんから、そういう面の保護についてもいろいろ対応しております。予算的にも、保護対象者の家庭にビデオをつけるとか、あるいはそういういろいろなものの装置をつけるとか……

松岡主査 大臣、なるべく簡潔にお願いいたします。

沓掛国務大臣 そういうこともやっておりますし、人員的にも警察はことし三千五百名ふやしていただけるので、そういう中でしっかり対応していきたいというふうに思っております。

原口分科員 もう終わりますが、野口さんが暴力団と関係しているなんてことは一切ないと思います。

 故人のこの無念、そして御遺族の疑いを晴らすべく、しっかりと捜査を要求し、先ほどの資料についても、委員長におかれましてはお取り計らいをお願いしたい。

松岡主査 資料要求につきましては、政府において対応を願えますか。

 では、そのことも含めて、ひとつよろしくどうぞお願いをいたします。

原口分科員 ありがとうございます、委員長。

 終わります。

松岡主査 これにて原口一博君の質疑は終了いたしました。

 次に、斉藤鉄夫君。

斉藤(鉄)分科員 公明党の斉藤鉄夫でございます。

 私は、きょうは二点、一つは、高速道路における二次災害の問題について、それからもう一点は、福祉タクシーの問題について質問をさせていただきます。大臣席に大臣がいらっしゃらなくなってちょっと寂しい気持ちはいたしますけれども、元気いっぱいに質問をさせていただきますので、どうか委員長、よろしくお願い申し上げます。

 まず、高速道路上の二次災害について質問させていただきます。

 高速道路で事故がある、もしくは車が故障するという場合に、当然、救援の車が行くわけでございます。救援の車が行って故障車を直す、もしくは事故車を処理する、そういう作業を行いますが、この作業中に事故に遭う、後ろから高速道路を走ってきた車が追突をするとか、この二次災害も大きくいろいろ報道されているところでございます。

 この高速道路における事故車、また故障車救援、その現場における二次交通災害の現状についてどのように認識をされているか、まず最初にお伺いをさせていただきます。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 高速道路ですが、これは人身、物損、両方の事故合わせてですが、年間十万件近くの事故が発生しております。また、これを上回る故障車があるわけであります。

 高速道路は高速性、閉鎖性という特性がありますので、事故車両や故障車の処理現場におきましては、確かに常に危険がつきまとうわけでございます。この際の二次災害の状況ということでございますが、事故車、故障車の処理に当たっております日本自動車連盟、JAFでございますが、ここでは、年間二ないし三件の事故、これは物損及び人身ですが、これが発生しております。また、いわゆる旧道路公団の交通管理隊、これはパトロール隊でございますけれども、一緒に事故や故障車の処理をいたしますが、年間八件から九件程度の人身または物損事故が発生しているところでございます。

 この事故処理あるいは故障車の処理に当たります関係者は、二次事故を発生させないよう万全の注意を払いつつ業務に当たっておりますが、そのような件数が見られるということでございます。

斉藤(鉄)分科員 この高速道路上の事故車また故障車の救援ですけれども、これまでは、先ほどお話がございました社団法人の日本自動車連盟、いわゆるJAFがほとんどの業務を受託しておりましたけれども、現在では、このJAF以外にも、ロードサービス会社が九社誕生しているそうでございます。

 これらロードサービス会社では、損害保険会社やカード信販会社などと連携しまして、全国の自動車整備工場や板金修理工場、レッカー会社などとネットワークを結び、サービスを展開している。ですから、わかりやすく言いますと、故障車が出る、JAFが行く。もしくは、いわゆる損保の関係で、所有者は損保に電話をかけて、損保会社が地域の自動車整備会社に電話をかけて、整備会社がその故障車のところに駆けつける。そういうJAF以外の救援が非常にふえている、このように聞いております。

 そこで、問題になっておりますのが、JAFが行く場合は、救援をするときに、いわゆる事故を防ぐために赤色回転灯をつけることができる。ところが、損保会社から電話を受けて地域の整備会社が事故現場に急行する場合、また事故で故障車を直している場合、事故を防ぐための回転灯をつけることができない。ここに大きな差があるということをお聞きしました。

 もちろん、回転灯だけで事故を防ぐわけじゃなくて、三角灯をつけたりいろいろな方策をするのは、これは当然でございますけれども、しかし、JAFの車にはつけられるこの回転灯が、同じ仕事をしているのに、一般の整備会社から行った場合にはつけられない。そこに矛盾を感じている方がたくさんいらっしゃるわけでございます。そういう意味で、なぜつけられないのか。

 この赤色回転灯というのは緊急自動車という指定になるそうですけれども、もう一つ、町を走っております車の中には黄色の回転灯を設置している車両もございまして、これは、道路交通法施行令に定めるところの道路維持作業用自動車、「道路を維持し、若しくは修繕し、又は道路標示を設置するため必要な特別の構造又は装置を有する自動車」ということなんだそうです。

 この事故車、故障車の救援に当たっている救援車両は、これらの赤色の緊急自動車もしくは黄色の道路維持作業用自動車という定義の中に考えられないんでしょうか、このことをお伺いしたいと思います。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 事故車、故障車の救援に当たる車両ということでございますが、旧道路公団と協定を結びまして事故車、故障車の救援に当たります、いわゆるロードサービスあたりの車両につきましては、これは都道府県公安委員会から緊急車両の指定を受けているところでございます。これは、JAFだけではなくて、旧道路公団と協定を結んでおります民間の事業者の車も同様でございまして、緊急車両の指定を受けております。

 その理由ですが、高速道路上の事故車、故障車、これは大変危険な交通の障害物でございますので、その排除は迅速に行わなければなりません。これは本来、道路管理者が行うわけでありますけれども、道路管理者である旧道路公団、今はそれぞれ高速道路株式会社となっておりますが、これが直接すべて行うわけにいきませんので、これらのJAF等と協定を結びまして事故車、故障車の処理をやっていただいている、こういうことでございます。このようなものにつきましては、都道府県公安委員会は、これは危険防止のための応急作業が必要であるということで、緊急自動車に指定している、こういうことでございます。

 それで、今、赤色回転灯のお話がございましたが、これらの緊急自動車には赤色回転灯をつけることになっておりまして、これは道路運送車両法で定まっておりますし、また、道路交通法でも、緊急走行する場合にはこれを使うことになっておるわけです。

 その理由ですが、緊急自動車は早く現場に行く必要がございます。それで、通行区分外の通行をやりましたり、あるいは追い越しの方法や進路変更というものも例外扱いになっております。そこで、他の車両と区別して、他の車両に識別される必要がある、こういうことで赤色の回転灯をつけておるわけでございます。

斉藤(鉄)分科員 ですので、事故の救援に行くときには、JAFの車であろうが地元の整備会社の車であろうが、そこに早く行って早く修理しなきゃいけないので、同じ立場じゃないですかという問題意識なんですけれども。

 道路交通法施行令の中の緊急自動車として指定される条件として、「電気事業、ガス事業その他の公益事業において、危険防止のための応急作業に使用する自動車」という項目がございます。

 大変に古い話で恐縮なんですが、約三十年前に我が党の先輩議員がこの施行令を取り上げておりまして、事故車、故障車救援車両を「その他の公益事業」に該当できないだろうかと質問をされておりました。当時の警察庁の答弁は、緊急自動車は、停止していることよりも、普通の車より速く走る、あるいは通行区分を変えて走るというようなことのために指定され、道路維持作業用自動車については、普通の自動車より非常に低速で作業するというようなことを中心に考えられている、そういった取り扱いについてどういった取り扱いが一番妥当かという点につき、関係省庁と連携し措置していく、こういう答弁でございました。

 この御答弁以降、どのように検討され、措置をされたのか。また、施行令にある「危険防止のための応急作業に使用する自動車」という定義に事故車救援車両は該当にならないのか。先ほどの問題意識、JAFの車であろうが地元の整備会社の車であろうが救援のために行っているということは同じじゃないかという問題意識に立って、この御質問に答えていただきたいと思います。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 お話しの、昭和五十年当時ということで三十年前で、具体的な検討状況まではわからないのですが、その後のこの関連の制度改正を見る限りでは、昭和五十三年の道路交通法等の改正が行われておりますが、その改正で、今お話しの道路維持作業用自動車の範囲を明確化する、そのために、公安委員会への届け出制度を設けております。

 また、高速自動車国道等におきまして故障車があったときの運転できなくなった車でございますが、これにまつわる安全確保ということで、停止表示器材、これは、三角板でございますか、あの様式を定めまして、自動車の運転者に対して表示義務を課すなどの制度改正を行って、高速道路におきます交通事故防止の対策を実施しております。

 それから、事故車救援車両についてのお尋ねですが、これは、先ほど申し上げましたように、旧道路公団等と協定を結びまして、その義務の一環として事故車あるいは故障車の対応に当たっているものでございます。

 したがいまして、その協定に基づきまして、JAFあるいはその他の業者、民間の業者でございますけれども、言われたらいつでも出ていくという二十四時間の体制でございますとか、あるいは、いろいろなケースで連絡がありますけれども、これを断らない、すべて応ずる、どこでも応ずる、こういうような体制、それから要件は、インターなどから近い場所に事務所が必要のようでございますが、そういうようなことで協定を結びまして、その義務の一環として事故車、故障車の対応に当たっている、こういうことでございます。

 したがって、同様のものでありますれば、これは、JAFであろうとあるいは他の民間事業者であろうと、緊急自動車の指定は可能でございまして、実際にやっておるところであります。

斉藤(鉄)分科員 ぜひそういう現場の、今前向きな答弁をいただきましたので、御検討いただきたいと思います。

 ちょっと角度を変えますが、仮に、現在ロードサービスを提供している企業グループがNPO法人や公益法人の公益性を有する形態をとって緊急自動車の指定申請をした場合、認可される可能性はあるんでしょうか。先ほどの御答弁ですと、十分あるということになるかと思いますが、この点についてもう一度確認させていただきます。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 今ほど、確認的に申し上げますが、自動車の使用者が公益法人やNPO法人であっても、これは、同じ要件があれば緊急自動車の指定になるわけですが、その際、公益法人であるかあるいはNPO法人であるかといった事業主体が直接の要件ではありませんで、あくまで、先ほど申し上げました協定に基づく一環である、こういうことでございます。

斉藤(鉄)分科員 その点はよくわかりました。

 最後に、高速道路における二次災害、最初に御報告ありました、かなりの数になっております。事故現場での二次災害防止のために新たに検討されている措置などがありましたら、お伺いをいたします。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 高速道路におきます交通事故あるいは故障車等の発生現場ですが、事故車の処理、移動のほか、被害者の救出、それから現場の復旧など、さまざまな作業が必要になるわけですが、そのいずれの作業も、これを安全に行うためには、まず安全器材の活用、それから作業マニュアルを定めて注意深く行う必要がございます。

 このために、これらの諸業務を行います関係者におきましては、発炎筒でございますとか、あるいは矢印板でございますとか山型看板ですとか、あるいはスタンド型のもございますけれども、あるいは三角表示板のほか自発光式のセーフティーコーンでございますとか、こういったものを使いまして、工夫を凝らして安全を確保しているわけでございます。

 これらの器材は年々新しく開発されてきておりますが、今後ともさまざまな工夫がなされていくものと考えております。

斉藤(鉄)分科員 よろしくお願いをいたします。

 それでは次に、介護タクシーのことについてお伺いします。

 高齢者の移動手段として使われる介護タクシー、これは、国土交通省の調べによりますと、事業者数が、平成十四年度で千五百九十四社、十五年度で二千三百六十二社、十六年度で三千七百七十一社と、すごいスピードでふえております。

 そうした中、平成十六年三月十六日付の各地方運輸局自動車部長あての通達で、ヘルパーさんの自家用車を使った移送も可能ということになりました。これについては、安全性に問題があるのではないかとの指摘もありましたけれども、利用者に対して対応できる台数が追いついていないという背景もあったということで、理解できないわけではないですが、このことは、事業申請に必要な運転免許を初めとするさまざまな資格を取った上で事業を始めた介護タクシー関係者にとって、大きな痛手になっているという話も聞いております。きょうの質問に直接関係ありませんけれども、こういう声があるということをこの場でお伝えしておきたいと思います。

 ところで、今回、ハートビル法と交通バリアフリー法を統合した新バリアフリー法が閣議決定されました。我が党としても、障害者団体等からさまざまな意見をお聞きしております。年齢や障害の有無にかかわらず安心して暮らせる社会の実現に向けて、しっかりと取り組んでいかなければならないと思っております。そこで、この介護タクシーは、おのおの御自宅から利用する施設等への移動に使われるものとして、重要な役割を持つものでございます。

 まず、国交省にお伺いいたします。

 高齢者や障害者の移動手段である介護タクシーの現状をどのように把握し認識をされているのか、お伺いをいたします。

松尾政府参考人 お答えいたします。

 要介護者や身体障害者など、単独では公共交通機関を利用することが困難な移動制約者には、ドア・ツー・ドアの移動を提供するタクシー、これを我々は福祉タクシーと呼んでおりますけれども、その普及促進は、今後、本格的な少子高齢化社会の到来に伴いまして、緊急かつ重要な政策課題と認識しているところでございます。

 この認識のもと、国土交通省では、特殊な車両を使用し、要介護者や身体障害者等の輸送に限定したタクシー事業を行う場合には、従来より、最低車両台数や営業区域などの許可基準や運賃認可などにつきまして、一般のタクシー事業よりも弾力的な運用を行い、参入しやすくしているところであります。

 こうした措置によりまして、福祉タクシー事業者及び福祉タクシー車両数は順調に増加しておりまして、委員御指摘のとおり、平成元年度に比べますと、十六年度では、事業者数は十倍の三千七百七十一社、車両数につきましては、同じく十三倍の七千二百五十五両と増加しているところでございます。

斉藤(鉄)分科員 大きくふえているということで。

 先日、福祉タクシー、介護タクシーを経営されている方から御相談を受けました。その方は開業されて二年目を迎えたんですけれども、この間、さまざまな経験をする中で、利用される方のニーズが多様化しているということを実感されまして、それにおこたえしようということで、ステーションワゴンタイプ、普通自動車の福祉タクシーを一台つくられた。これは、後方からのスロープタイプで、助手席には回転シート、乗降が楽になるようにとステップもつけたりということで、まさに福祉専用車両としての装備をしたそうでございます。しかし、車両登録の際、特種用途自動車として申請手続をしましたが、認可がおりなかった。理由は、特種用途自動車としての構造要件に適合しなかったからだそうでございます。

 適合するとしないでは大違いでして、自動車重量税については、半分になるところが半分にならない。それから、保険ですけれども、自賠責と任意保険とで、年間四十万円もの差が出てくるそうでございます。福祉タクシーの事業者さんというのは非常に小規模な方が多いわけですけれども、そういう小規模事業の中でこの差というのは非常に大きいということで、このような福祉タクシーについても、構造要件等もう少し配慮してもいいのではないかと。

 今回の福祉タクシー、今どのような区分になっているのかということをまずお伺いしたいと思います。

松尾政府参考人 お答えいたします。

 いわゆる福祉タクシーといたしましては、ストレッチャー等のまま乗降できる寝台型車両というのも入っております。また、委員御指摘のように、車いすに乗ったまま乗降のできるリフトつき車両あるいはスロープつき車両等のように、車両自体に特殊な設備を有している場合もございます。また、回転シートやリフトアップシートのように、お客様の乗降を容易にするための装置を設けた車両を使う場合もございます。

 そのほか、これに加えまして、いわゆる普通の一般乗用車を使いまして福祉タクシーを営む場合がございます。ただ、この場合には、乗降に人的な介助が必要となることから、乗務員が、訪問介護員、いわゆるヘルパー等の資格を有しておるか、全国乗用自動車連合会が実施いたしますケア輸送サービス従事者研修を終了していることを許可の要件としているところでございます。

斉藤(鉄)分科員 ぜひ、先ほどのような現場の声も御配慮いただきまして、この福祉タクシーが普及するような要件等、また今後考えていただければとお願いをする次第でございます。

 冒頭述べましたように、今後さらに進むとされる高齢化社会の中で、この介護タクシー、福祉タクシーというのは、大変大きな、必要不可欠な要素になってくると思います。一般のタクシーと介護タクシーとは根本的な違いがあるということ、また、介護タクシーに乗車されるのは高齢者や障害者の方、また足の不自由な方がほとんどであり、安全確保には手助けする人や装備が必要になってくるという事情、こういったことを考えますと、今回のように、従来の構造要件をすべての福祉車両にも一律に適用させるとなると、利用者の安全性や多様なニーズにこたえられないだけでなく、先ほど申し上げましたように、経営にも非常に大きな影響を及ぼすということでございますので、先ほどありましたような細かい配慮をお願いする次第でございます。

 福祉車両、介護タクシー、福祉タクシーの普及を進めていく考え方、政策について、最後に国土交通省にお伺いします。そのまた最後に、内閣府にお伺いいたします。

松尾政府参考人 福祉タクシーの普及促進に当たりましては、いろいろ幾つか乗り越えなければいけない問題点がございます。そのうちの一つは、車両の問題でございます。使用車両が一般自動車に比べて高価なことがございます。

 したがいまして、リフトつき車両及びスロープつき車両等の購入に係る税制上の特例措置をこれまで講じてきたところでありますけれども、先ほど申しましたように、福祉タクシーを普及させるという政策のもと、平成十八年度におきましては、福祉タクシーの導入及び効率的な運用のための共同配車センターの設置に関する補助制度の新設、二点目といたしまして、中小企業金融公庫、国民生活金融公庫によるリフトつきタクシー、スロープつきタクシーに対する財政投融資制度の新設、三点目として、税制上の特例措置、具体的には交通バリアフリー設備の特別償却制度でございますが、これを延長した。この三点を認めていただいたところでございます。

 今後は、こうした制度も活用しつつ、福祉タクシーの一層の充実に努めてまいりたいと思います。

斉藤(鉄)分科員 ここは第一分科会でございまして、国土交通省ばかりに聞いていてはいけません。先ほどの福祉タクシーに関する議論を聞いていただいて、高齢者施策、障害者施策を全政府的な立場から管轄する内閣府から最後に答弁をいただきたいと思います。

林政府参考人 お答えいたします。

 高齢者、障害者等が、その能力を最大限発揮しながら、社会の一員として役割と責任を果たしつつ、生きがいを持って暮らす、そういう社会を築いていくということは、大変重要なことと考えております。

 政府といたしましては、国民の一人一人が長生きしてよかったと誇りを持って実感できる、心の通い合う、連帯の精神に満ちた、豊かで活力のある社会の確立、また、年齢や障害の有無にかかわらず、国民だれもが相互に人格と個性を尊重し支え合う共生社会の実現に向けまして、高齢社会対策の大綱、また障害者基本計画に基づきまして、今後とも、政府一体となって関係施策を総合的かつ計画的に推進してまいりたいと考えております。

斉藤(鉄)分科員 ありがとうございました。終わります。

松岡主査 これにて斉藤鉄夫君の質疑は終了いたしました。

 次に、遠藤宣彦君。

遠藤(宣)分科員 本日最後の質問者になりました、自由民主党の遠藤宣彦でございます。

 今回、警察庁の方に質問させていただきますが、昨今の犯罪の変質あるいは増加という問題、本当にかつてないほど、私たちの身近な、深刻な問題として今取り上げられております。私自身も子供が幼稚園に行っている娘がおります。また自分の住んでいる世田谷区では、数年前にああいった一家殺人事件があった、近隣のところに泥棒が入った。また自分自身は、今電車で通っておるんですが、時々不審な人間を見てほかの車両に移るとか、非常に身近なところで危機感というものを持っております。

 犯罪というものが時代によって随分変わってくる。昭和三十年代には吉展ちゃん事件のような誘拐事件が出てきた、四十年代には三億円事件とか、あるいは四十年代の末から五十年代、過激派の爆破事件、こういったように、時代というか世の中を非常に反映しているといいますか、世の中のものを映し出している、そんなことがあると指摘されると思います。

 しかしながら、今、警察の人員が不足しているとか、あるいは一部の不祥事で警察のところがどうも至らない、こんな非難が時たま出ますが、警察といういわば権力機構の一つと見られがちなところは、人権とのかかわり、あるいは他省庁とのかかわり、そして予算の制約、そんな中で、どういうふうに治安大国日本にふさわしい社会を回復していくかというところに一個人として大きな関心を持っております。

 私自身は、今申し上げましたように、警察というものは、実は我々が思っている以上にさまざまな制約がある中で、恐らく努力をされている。しかし、私たちが今この社会でさまざまな犯罪、今までと質の違う犯罪、動機も、どうしてこんな犯罪が起きるのかわからないというような犯罪、みずから死刑になりたくて、大阪の宅間、あの人のような犯罪を犯す人も出てくる。

 こういった中で、さまざまな段階で、犯罪というものが少なくなっていく努力をしなければならない、そこに対しての対策を立てなければならない。警察の肩を持つわけではございませんが、警察だけにすべて負わすのは、私たち市民としても、これはちょっと無理があるんじゃないか。きょうは、そんな観点で、総括的な質問、あるいは多くの視点をさまざまな角度から指摘させていただきたいと思います。

 実際に、犯罪者が生まれる中で、どこで手を打つべきなのか。平場の感覚の中でこれを考えていきますと、まず家庭、そして学校教育現場、あるいは地域社会、そして刑罰といいますか刑を受けるところの問題、最後に警察官の職務の範囲といいますか権限、この五つについて改めて私たちは検証していかなければならない、そのように思います。

 私どもが望むのは、警察が抑制的に権力を行使するというそのことだけではなくて、実際に安全、安心な社会をつくってもらう、そのために、省庁の壁を乗り越えたり、あるいは予算が足りなければ必要なところにつけていく。今の風潮と逆行するかもしれませんが、安全のために、安心のために、あえてタブーを恐れずにきょう質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 まず、家庭の問題が指摘されると思います。

 昨今、少年犯罪が非常に変質をし、また増加をしてきた。十二万三千件というふうに聞いておりますが、再犯率がたしか二八%で上がってきている。つまり、少年犯罪というものが、一度刑を受けたとしても、それが反省につながっていない。あるいは、そもそも犯罪というものを犯すことについての家庭の中において教育がされていないのではないか、そんな思いがあります。

 民法上、親には監護権、教育権というものが実は規定されています。これは何を意味しているか。一次的責任は実は親にあるんじゃないか、こんなことが見てとれるわけであります。しかし、すべての親とは言いません、一部の親だと思いますが、子供を置き去りにしてパチンコにふける、そんなような例も世の中で指摘をされている。警察の側からすれば、家庭から出てくる前に家できちっと監督してほしいという思いが恐らくあるんじゃないか。

 こういった中で、今、民法上に規定されている親の監護教育の権利義務を何らかの形で自覚させるという本来の方策を考えていかなきゃいけない。法は家庭に入らずと言いますが、実際には家庭の中が一番初めであります。警察庁が、家庭のあり方、あるいは家庭においてこういうふうにあるべきだ、ここのところとかかわりを持っていく、親の自覚を促すような方策を何らか考えられないか、あるいはそういった方策を検討する余地はないのか、まずこういったことからお伺いしたいと思います。

竹花政府参考人 お答えいたします。

 議員御指摘のように、警察におきましては、非行少年の犯罪捜査、あるいは不良行為少年の補導といった過程で、親に対しましてさまざまな指導助言を行う場合がございますが、こうしたアドバイスを真摯に受けとめない親も少なからず見受けられると現場から報告を受けているところでございます。子供は、親の子でもあると同時に、我々の将来を担う大切な宝でございますので、私ども、親としても社会からのアドバイスを素直に受け入れる責任もあるのではないかというふうに考えるところでございます。

 平成十二年の少年法の改正で、家庭裁判所による保護者に対する訓戒、指導等の措置が新設をされましたし、今国会に提出されております少年法等の改正案に、少年院と保護観察所の長による保護者に対する指導助言等の規定が盛り込まれていると承知をいたしております。また、青少年の健全育成に関する都道府県の条例におきましても、青少年の深夜外出あるいは安易な性行動あるいはインターネット利用等に関して、子供たちを守る責務を保護者に課すような条例も出てきておるものと承知をいたしております。

 こういう流れは、議員御指摘のような観点に立ったものであると私どもも考えておりまして、警察としても、そうした流れはやはり必要な流れであるというふうに考えておるところでございます。

遠藤(宣)分科員 ありがとうございました。

 一部の過激な意見の中には、親と子供の連帯責任だ、子供が犯罪を犯したら親の名前を公開しろというような意見も出ている。こういった親と子供の、本当に、家庭においてまず親が食いとめなきゃいけないという責任感を社会全体で醸成していかなければならないというふうに思います。

 そして家庭の次に、教育現場の問題があると思います。これは文部科学省の所管にはなりますけれども、あえて触れたい。

 私の知っている学者で林道義さんという方がいますけれども、父性に関する話なんですが、子供の教育において最も大切なものは秩序感覚であると。世の中には秩序というものがあって、それを保っていかなければならないんだということを、三つ子の魂といいますか、スズメ百までといいますか、幼少時にこれを身につけさせなければ社会全体の秩序というものは維持できないという指摘があります。

 そしてまた、古来日本においては、おてんとうさまが見ているよ、神様が見ているよ、そんなことを我々の親あるいは祖父母の代から言われてきた。つまり、目に見えないものに対する畏敬の念を持つということが、少なくとも自分たちの心の中で犯罪への衝動を抑える一つの大きな抑止力になっているんじゃないかというふうに私は思います。

 そこから引き寄せますと、現在さまざまな議論がある。教育の問題、宗教教育の必要性、あるいは道徳、倫理、社会のルールを学校においてきちっと教えていく機会というものをある程度担保しなければ、家庭において教育現場においてそのあたりがいいかげんなままに出てきた少年が犯罪を犯す。警察、もうちょっと何とかしろと言われても、これは困ってしまう。

 つまり、冒頭申し上げましたように、省庁のさまざまな所管があることは十分承知しております。しかし、世の中の安心、安全というものは、そんなものは関係ない。本当に必要とあらば、警察が、治安の観点から、教育の分野においてこういう教育をぜひやってもらいたい、こういった授業をぜひ取り入れてもらいたい、こういった機会をぜひ私はつくっていくべきだと思っております。

 交通事故のビデオを免許の更新のときによく見せてもらいます。ああ、こんな大変な事故を起こしたらとんでもないことになる、心の中で抑止力が働く。また極端な言い方ですが、犯罪を犯すということはどんなに自分の人生にとって傷になるのか、あるいは少年院、刑務所というところがどんなにつらいところなのか、非常に過激な意見かもしれませんが、あらかじめ教えておくということも一つの手なのかな、こんなような気も持っております。

 私は、網走の刑務所跡に三回ぐらい行きましたけれども、山県有朋が書いています、二度とこんなところに来たくないと思わせないと犯罪の抑止力にならないんだと。これは明治のことですが、人間自体が変わっていないとすれば、すべてとは言いませんが、一部まだまだ現在の時代に妥当する部分がある。

 そういう意味で、教育と犯罪抑止の関係、必要なところは警察の側も一定の機会を持って、協議する機関、物を申していく機関、機会、これをつくるべきだと考えますが、そのあたりのことについてお伺いできればと思います。

竹花政府参考人 御指摘のとおり、社会全体に規範を低下させるような風潮が拡大をしている中で、かつてのように、親がなくても子が育つ、黙っていても子供たちは育っていくのだという時代ではなくなってきたという認識を持っております。他方で、家庭の教育力の低下がある中で、学校できちっと教えていただくことは、犯罪抑止の上でも子供たちが健全に育っていく上でもどうしても必要だし、またその必要性は増しているものと私ども考えております。

 警察庁といたしましても、文科省ともさまざま協議をいたしておりますが、具体的に、平成十七年の一月には、文部科学省と共同いたしまして、非行防止教室等プログラム事例集というものを作成いたしまして、文部科学省よりすべての学校に配付していただいて、先生方の教育の参考にしていただこうということで、そういう取り組みもしておりますし、また、毎年五回程度、教員の方々や、これは警察の側でございますが、少年補導職員等の研修に相互に講師を派遣し合うことで、協議や意見交換をしているところでございます。

 ただ、国レベルでこういうことをやっておりましても、やはり現場できちっとした話し合いが行われませんとということもございまして、都道府県警察におきましては、従来からございます学校警察連絡協議会などの定期的な協議の場を初め、学校警察連絡制度というものを新たにつくりまして、学校と警察の壁を小さくいたしまして、さまざまな事例、事案についても具体的な協議を行うことといたしております。

 そういうことを進めていく上でも、警察OBをスクールサポーターとして活用する。この方に、警察OBではありますけれども、警察と学校をうまくつないでもらう、あるいは学校における非行防止教育といったものにも一役買っていただくということで、現状、ここ二、三年の間に、そういう意味で、学校現場と警察における連携が非常に強まっているという状況にございますので、警察庁といたしましても、そうした動きをさらに指導して督励してまいりたいというふうに考えております。

遠藤(宣)分科員 ありがとうございました。

 最近のある事件とあえて言いますけれども、刑務所の内部がテレビにいろいろと映される機会があった。私の知っている人間の周辺は、あんなところにだけは入りたくないという話題が実はいっぱい出てきた。こういったこともありますので、本当に刑を受けるというか、そういったところに行くということが大変なことだ、つらいことだということを一定の効果をにらみながら考えていくことも、実際の治安の回復という結果をもたらすためには、一つのオプションとして考える時期に入っているのではないかなというふうに思います。

 そして三番目に、地域でどのように治安の回復を担保していくか。私の家の隣の隣も、先日窓が割られて泥棒に入られました。そのまた隣も入られました。本当に今、地域社会が皮肉なことに犯罪の多発ということで連帯感を取り戻しつつある、これは災い転じて福となせるかどうか、まさに今が瀬戸際だと思います。

 不審者が歩いている、どうもおかしな人がつけてきている、こんな話がいっぱいある中で、一方においては困ったことも起きています。

 これまた警察の側を弁護するわけではありませんが、私も、街頭演説をやっているとき、必ず交番のお巡りさんと話をしてから、終わった後に話をして実際のところを聞きます。不審者が多くなった、同時に、本当の不審者とちょっと怪しそうな人間、だれでも通報してくる。これは例え話として非常に差しさわりがあるかもしれませんが、本当に危ない情報、本当に危険な人の情報と大したことのない情報が余りに一遍に警察に集中しますと感覚が麻痺してくる。例えがちょっとまずいかもしれませんが、オオカミが来たぞオオカミが来たぞと、行ってみたらいなかった。こういったことで、本当に警察が出なければならないところを見落としてしまうことがある、これが批判の対象になるわけでありますが。

 こういった、不審者情報が今いっぱい出てきている中で、警察にもいっぱい通報がある。その一方で、地域社会で、この情報を何とか共有して地域の防犯に当たろうという機運が高まってきた中、警察とその通報者の中間において、一定の情報を警察と共有するなり、あるいは警察と分担するなり、あるいは警察の前段階でそこを確認するなり。例えば、警察に通報されるけれども、近所の人に聞いたら、そこの地域の人に聞いたら、あの人はいつもふらふらしているんですよ、あの人は大丈夫です、そういうような一次情報、二次情報がある。もちろん警察への通報がおくれたらまずいんですが、警察と通報者の間に、今の盛り上がってきた地域社会の連帯というものを一つのてことして情報を共有する、警察と分担をする、そういったことが今考えられないかというふうに私は思いますが、今もしそういった取り組みをされているのであれば、ぜひお聞かせ願いたいと思います。

竹花政府参考人 不審者情報にも、子供にかかわる犯罪もございますれば、連続的に行われる窃盗あるいは強制わいせつといったようなものもございます。さまざまな不審者情報がございますけれども、警察といたしましては、何はともあれ、不審と思ったものについてはすべて警察に御連絡いただくようにお願いをいたしているところでございます。

 その上で、届け出た方々からのさまざまな情報を精査いたしまして、これは問題だというものについては、例えば子供の問題については、教育委員会や御家庭に対して、メール等を通じてあるいはホームページを通じて御連絡をしていくといった形にしております。

 確かに、いいかげんな不審者情報が地域の方々にばらまかれるというようなことがあっては、かえってこれはマイナスの側面も生むということから、私どもといたしましては、やはり慎重に、しかし警察にはできるだけたくさんのものを教えていただくということで、地域の方々あるいは学校の方々と共有をしてまいろうということで日々努力をいたしているところでございます。

遠藤(宣)分科員 最終的に警察が治安の責任をとらなければならないという観点からしますと、もちろん警察に情報をすぐに上げる、集中させるということが原則ではありますが、今のお話の中で、最終責任をとる、そして常に上げてもらいたいという中で、一方において情報過多になる。

 となれば、昨今行われたような、例えば、性犯罪者の情報をあらかじめ法務省との間で共有する、これを敷衍しまして、過去に犯罪を犯した人間、あるいは事前の他機関の持っている情報、こういったものをより警察の方に材料として持たすことによって、いわば大量の通報に対しての識別の能力が警察は高まる。

 大原則が警察にすべて上げなければならないということであるならば、それを識別する能力を高めるために、そこを補完する情報を他省庁、法務省はもちろんでしょうけれども、もっと事前に入手した情報が識別できる情報を持つような工夫をしていっていただきたい、このように思うわけであります。

 そして四番目になりますが、私はかねがね思っておるのですが、刑罰の問題。

 今、外国人犯罪というものが本当にふえています。法律をかじった方であれば御存じだと思いますが、刑法といいますか刑罰の機能。一般予防という、一般の人が悪いことをしたらこんな目に遭うよということで抑止力になるか、あるいは特別予防、犯罪を犯した人がもう二度とやはりするまいと思う、教育刑主義といいますか、そういった考えがいまだに議論がされております。

 例えば外国人犯罪、簡単に言いますと、ある外国人が母国で法律を犯すよりも日本で法律を犯した方がもうけが大きくて刑が軽い、そうなれば、水は高いところから低いところに流れるように、これを食いとめろといってもなかなか大変なものになってしまう。もちろん、入国管理とかさまざまなものを駆使して努力をされていることは十分承知です。そしてまた、主権の問題というのがありますが、私は、これ以上外国人犯罪について日本の治安が脅かされるケースがふえるようであれば、例えば二国間協定を結んで、一定の犯罪についてはより重い母国の方で裁かせるぞというようなことが考えられないか、そんなようなことも昨今思っております。

 この問題につきましては、警察庁というよりも法務省の問題になりますから、本日は深い質問にはいたしませんけれども、この外国人犯罪と刑罰のあり方、今考える時期にあると思います。

 そして、たしか広島県であったと思いますけれども、高齢者の刑務所、わざわざ、そこのところに戻ってきたいために広島の管内に来る。御飯も食べられる、暖かいところで寝られる、最後に、たしか私の記憶によればお墓まで建ててもらえる、外で不安を持ちながら道に座っているよりも簡単な軽犯罪を犯して刑務所に戻してくれればいい、こんな話を私は聞いたことがあります。

 つまり、刑罰というものが、外国人犯罪者であれ高齢者の犯罪者であれ、抑止力にならなければそれは刑罰の意味がない。とかく権力とか刑罰というのは抑止的に使わなければいけないという刑法学の原則からすれば奇抜な意見かもしれませんが、私たちは、冒頭申し上げたように、最終目標は治安の回復ですから、今やタブーなく、その目的を達成するために議論をしなければならない時期にあるということを指摘しておきたいと思います。

 そして最後に、これも時流と逆行するかもしれませんが、警察の職務範囲と機密費の話があります。

 岸内閣のときの警職法の改正で大荒れになったという過去のトラウマがあると思いますが、警察は職務の権限の拡大に非常に憶病である。自分たちからなかなか言い出せない。最近のものであれば機密費の問題があります。

 確かに一部不適切な使われ方をしたものがあるかと思いますが、私の知人で税関の部長をやっていた人間、あるいは警察の第一線でやっていた人間、今、情報公開法あるいは個人情報保護法、もろもろの中で、実際にネタをとるために、犯罪を犯している側の組織と接触しなきゃいけない、そこといろいろと交渉しなきゃいけない、こういったときにどうしても必要なもの、機密費が要るんだと。

 さまざまな監査のあり方、その扱い方、いろいろな議論があると思いますが、犯罪組織側からの内部告発という観点からすると、これは必要なものであります。なかなか警察の側からは言いにくいかもしれませんが、この機密費の扱い方、しっかりした監査のもとに適切に拡大をしていかなければならないと私は考えておりますが、そのあたりの御所見について伺えればと思います。

安藤政府参考人 委員御指摘のとおり、犯罪捜査におきまして協力者からの情報提供は不可欠なものでございまして、そのため、捜査に関する情報提供者に対する諸経費といたしまして捜査費が措置されているところであります。

 もちろん、これら捜査費の執行は適正に行わなければならないところでございまして、警察におきましてはこれまで、監査実施体制の増強など会計監査の強化を図りますとともに、効果的な捜査費執行の方法につきましての執務資料を作成して都道府県警察に配付するなど、会計経理に関します指導教養を強化してきたところであります。

 今後とも、治安情勢に対応しました必要な予算を確保するとともに、現場捜査員の声を取り入れながら、捜査活動に必要となる捜査費が第一線警察により適正かつ積極的に使われるよう指導してまいりたいと思います。

遠藤(宣)分科員 いずれにせよ、角を矯めて牛を殺すことなく、そしてまたあつものに懲りてなますを吹くことなく、我々の最終目標は、繰り返して申し上げますが、治安の維持、安心、安全大国の日本の社会を守っていく、これを保っていくということですから、本当に必要なときは憶することなく、ぜひとも必要なものは必要として適切な監査のもとに使っていただきたいなというふうに思います。

 そして最後に、大臣に御所見をお伺いしたいのですが、今ほど治安の維持、治安の回復に国民の関心が集まっている時期はありません。日本国憲法の前文に「国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」という一文があります。日本は安心大国、安全大国ということで国際社会で高い評価を受けてきた。しかしながら、犯罪の変質、社会の変質の中で今大きく変わっている。こういった中、大臣のこれからの治安に対する取り組み、そして所見をお伺いしまして、私の質問とさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

松岡主査 国務大臣沓掛国家公安委員会委員長。

 恐縮ですが、時間が来ておりますので簡潔にお願いいたします。

沓掛国務大臣 はい。

 大変貴重なお話、いろいろありがとうございました。大いに参考にさせていただきたいというふうに思っております。

 刑法犯認知件数も平成八年からどんどんふえて平成十四年にはピークになっておりましたし、また、子供が被害者になる犯罪件数も大変ふえてきておりました。そこで、政府といたしましても、犯罪に対する閣僚会議を設けて総合的に対応することもやり、また警察におきましても、街頭パトロールをふやすとか、あるいは空き交番を解消するために、まあ来年の春になくする、そういう計画で今どんどんやってきたり、先ほど来ございました不審者情報への対応もいろいろやってきたり、あるいはまたDNA鑑定など最新の科学捜査なども活用して、同時にまた、平成十三年から地方警察官の定員の増をやっていただきました。

 そのことで、平成十四年をピークにして後は少しずつ下がってきて、かつての一番悪い状態は脱しつつあるかなというふうには思っておりますものの、かつて昭和四十年代の治安がよかったころから見れば刑法犯認知件数は二倍にもなっておりますので、かつての世界一安全、安心の日本国を復権するために、これからまた力いっぱい頑張っていきたいと思います。

 また、もちろん警察だけではなくて、先ほど来お話のありましたように地域社会との取り組みも非常に大切でございますし、またそれから、一度刑務所で、犯罪を犯した方、そういう方々の、出てこられた方への対応というのも、この方の再犯率も高いわけですから、しっかりやっていく、総合的な対策をこれからしっかりやっていきたいというふうに思っております。

遠藤(宣)分科員 ありがとうございました。終わります。

松岡主査 これにて遠藤宣彦君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして警察庁についての質疑は終了いたしました。

 これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 分科員各位の御協力によりまして、本分科会の議事を滞りなく終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午後六時五分散会


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