衆議院

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第1号 平成28年2月25日(木曜日)

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本分科会は平成二十八年二月二十二日(月曜日)委員会において、設置することに決した。

二月二十四日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      岩屋  毅君    小田原 潔君

      平沢 勝栄君    保岡 興治君

      大串 博志君    重徳 和彦君

二月二十四日

 平沢勝栄君が委員長の指名で、主査に選任された。

平成二十八年二月二十五日(木曜日)

    午前八時開議

 出席分科員

   主査 平沢 勝栄君

      秋本 真利君    岩屋  毅君

      小田原 潔君    大西 宏幸君

      岡下 昌平君    斎藤 洋明君

      宮川 典子君    宮崎 政久君

      保岡 興治君    若狭  勝君

      大串 博志君    篠原  豪君

      中川 正春君    原口 一博君

      本村賢太郎君    渡辺  周君

      重徳 和彦君

   兼務 井坂 信彦君 兼務 岡本 充功君

   兼務 上田  勇君 兼務 真山 祐一君

   兼務 吉田 宣弘君 兼務 藤野 保史君

   兼務 宮本  徹君 兼務 河野 正美君

   兼務 下地 幹郎君

    …………………………………

   国務大臣

   (原子力防災担当)    丸川 珠代君

   防衛大臣         中谷  元君

   国務大臣

   (内閣官房長官)

   (沖縄基地負担軽減担当) 菅  義偉君

   国務大臣

   (復興大臣)

   (福島原発事故再生総括担当)           高木  毅君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (行政改革担当)

   (国家公務員制度担当)

   (消費者及び食品安全担当)

   (規制改革担当)

   (防災担当)       河野 太郎君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当)

   (科学技術政策担当)

   (宇宙政策担当)

   (海洋政策・領土問題担当)

   (情報通信技術(IT)政策担当)

   (クールジャパン戦略担当)            島尻安伊子君

   国務大臣

   (経済再生担当)

   (社会保障・税一体改革担当)

   (経済財政政策担当)   石原 伸晃君

   国務大臣

   (一億総活躍担当)

   (女性活躍担当)

   (再チャレンジ担当)

   (拉致問題担当)

   (国土強靱化担当)

   (少子化対策担当)

   (男女共同参画担当)   加藤 勝信君

   国務大臣

   (地方創生担当)

   (国家戦略特別区域担当) 石破  茂君

   国務大臣

   (東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会担当)       遠藤 利明君

   内閣府副大臣       福岡 資麿君

   外務副大臣        木原 誠二君

   経済産業副大臣

   兼内閣府副大臣      高木 陽介君

   総務大臣政務官

   兼内閣府大臣政務官    古賀  篤君

   文部科学大臣政務官    堂故  茂君

   文部科学大臣政務官

   兼内閣府大臣政務官

   兼復興大臣政務官     豊田真由子君

   国土交通大臣政務官    江島  潔君

   防衛大臣政務官      熊田 裕通君

   衆議院事務総長      向大野新治君

   参議院事務総長      中村  剛君

   参議院事務次長      郷原  悟君

   裁判官弾劾裁判所事務局長 星   明君

   裁判官訴追委員会事務局長 岡本  修君

   国立国会図書館長     大滝 則忠君

   政府特別補佐人

   (人事院総裁)      一宮なほみ君

   会計検査院長       河戸 光彦君

   会計検査院事務総局第二局長            村上 英嗣君

   会計検査院事務総局第三局長            須藤  晋君

   会計検査院事務総局第四局長            寺沢  剛君

   最高裁判所事務総長    戸倉 三郎君

   最高裁判所事務総局総務局長            中村  愼君

   最高裁判所事務総局人事局長            堀田 眞哉君

   最高裁判所事務総局刑事局長            平木 正洋君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  土生 栄二君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  向井 治紀君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  澁谷 和久君

   政府参考人

   (内閣官房行政改革推進本部事務局長)       高野 修一君

   政府参考人

   (内閣官房東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部事務局企画・推進統括官)  高原  剛君

   政府参考人

   (内閣官房東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部事務局企画・推進統括官)  岡西 康博君

   政府参考人

   (内閣官房東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部事務局セキュリティ推進統括官)           石田 高久君

   政府参考人

   (内閣人事局人事政策統括官)           三輪 和夫君

   政府参考人

   (内閣人事局人事政策統括官)           若生 俊彦君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 福井 仁史君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   武川 光夫君

   政府参考人

   (内閣府男女共同参画局長)            武川 恵子君

   政府参考人

   (内閣府子ども・子育て本部審議官)        中島  誠君

   政府参考人

   (宮内庁次長)      山本信一郎君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局審査局長)        山田 昭典君

   政府参考人

   (警察庁長官官房総括審議官)           村田  隆君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    三浦 正充君

   政府参考人

   (警察庁交通局長)    井上 剛志君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    沖田 芳樹君

   政府参考人

   (消費者庁審議官)    福岡  徹君

   政府参考人

   (復興庁統括官)     吉田 光市君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 辻  裕教君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 大菅 岳史君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 相木 俊宏君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    森  健良君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   美並 義人君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   茶谷 栄治君

   政府参考人

   (財務省理財局次長)   中尾  睦君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           板倉周一郎君

   政府参考人

   (文部科学省国際統括官) 山脇 良雄君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           梅田 珠実君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           吉本 明子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           浜谷 浩樹君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           山北 幸泰君

   政府参考人

   (農林水産技術会議事務局研究総務官)       菱沼 義久君

   政府参考人

   (林野庁林政部長)    牧元 幸司君

   政府参考人

   (水産庁増殖推進部長)  保科 正樹君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           保坂  伸君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁資源エネルギー政策統括調整官) 吉野 恭司君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           佐南谷英龍君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房技術審議官)         清水喜代志君

   政府参考人

   (国土交通省道路局次長) 青木 由行君

   政府参考人

   (国土交通省自動車局次長)            和迩 健二君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  前田  哲君

   政府参考人

   (防衛省整備計画局長)  真部  朗君

   政府参考人

   (防衛省人事教育局長)  深山 延暁君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局長)  中島 明彦君

   政府参考人

   (防衛省統合幕僚監部総括官)           高橋 憲一君

   政府参考人

   (防衛装備庁プロジェクト管理部長)        田中  聡君

   内閣委員会専門員     室井 純子君

   法務委員会専門員     矢部 明宏君

   安全保障委員会専門員   林山 泰彦君

   予算委員会専門員     柏  尚志君

   衆議院調査局第一特別調査室長           大野雄一郎君

   衆議院調査局第三特別調査室長           宇佐美雅樹君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月二十五日

 辞任         補欠選任

  岩屋  毅君     大西 宏幸君

  保岡 興治君     斎藤 洋明君

  大串 博志君     本村賢太郎君

  重徳 和彦君     鈴木 義弘君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 宏幸君     宮川 典子君

  斎藤 洋明君     若狭  勝君

  本村賢太郎君     渡辺  周君

  鈴木 義弘君     小熊 慎司君

同日

 辞任         補欠選任

  宮川 典子君     宮崎 政久君

  若狭  勝君     保岡 興治君

  渡辺  周君     原口 一博君

  小熊 慎司君     小沢 鋭仁君

同日

 辞任         補欠選任

  宮崎 政久君     秋本 真利君

  原口 一博君     篠原  豪君

  小沢 鋭仁君     小熊 慎司君

同日

 辞任         補欠選任

  秋本 真利君     岡下 昌平君

  篠原  豪君     中川 正春君

  小熊 慎司君     村岡 敏英君

同日

 辞任         補欠選任

  岡下 昌平君     岩屋  毅君

  中川 正春君     本村賢太郎君

  村岡 敏英君     鈴木 義弘君

同日

 辞任         補欠選任

  本村賢太郎君     中川 正春君

  鈴木 義弘君     重徳 和彦君

同日

 辞任         補欠選任

  中川 正春君     大串 博志君

同日

 第二分科員下地幹郎君、第三分科員真山祐一君、藤野保史君、宮本徹君、第四分科員井坂信彦君、岡本充功君、上田勇君、第六分科員吉田宣弘君及び河野正美君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成二十八年度一般会計予算

 平成二十八年度特別会計予算

 平成二十八年度政府関係機関予算

 (皇室費、国会、裁判所、会計検査院、内閣、内閣府、復興庁及び防衛省所管)


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     ――――◇―――――

平沢主査 これより予算委員会第一分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりました。よろしくお願いいたします。

 本分科会は、皇室費、国会、裁判所、会計検査院、内閣、内閣府、復興庁及び防衛省所管並びに他の分科会の所管以外の事項についての審査を行うことになっております。

 平成二十八年度一般会計予算、平成二十八年度特別会計予算及び平成二十八年度政府関係機関予算中皇室費について審査を進めます。

 政府から説明を聴取いたします。山本宮内庁次長。

山本政府参考人 平成二十八年度における皇室費の歳出予算について、その概要を御説明申し上げます。

 皇室費の平成二十八年度における歳出予算要求額は、六十億九千九百五十五万四千円でありまして、これを前年度当初予算額六十一億一千六百九十万九千円と比較いたしますと、千七百三十五万五千円の減少となっております。

 皇室費の歳出予算に計上いたしましたものは、内廷に必要な経費、宮廷に必要な経費及び皇族に必要な経費であります。

 以下、予定経費要求書の順に従って事項別に申し述べますと、内廷に必要な経費三億二千四百万円、宮廷に必要な経費五十五億四千五百五十八万四千円、皇族に必要な経費二億二千九百九十七万円であります。

 次に、その概要を御説明いたします。

 内廷に必要な経費は、皇室経済法第四条第一項の規定に基づき、同法施行法第七条に規定する定額を計上することになっておりますが、前年度と同額となっております。

 宮廷に必要な経費は、内廷費以外の宮廷に必要な経費を計上したものでありまして、その内容といたしましては、皇室の公的御活動に必要な経費七億四千八百八十一万二千円、皇室用財産維持管理等に必要な経費四十七億九千六百七十七万二千円でありまして、前年度に比較して千七百三十五万五千円の減少となっております。

 皇族に必要な経費は、皇室経済法第六条第一項の規定に基づき、同法施行法第八条に規定する定額によって計算した額を計上することになっておりますが、前年度と同額となっております。

 以上をもちまして平成二十八年度皇室費の歳出予算要求額の説明を終わります。

 よろしく御審議いただきますようお願いいたします。

平沢主査 以上で説明は終わりました。

 それでは、御退席くださって結構です。

    ―――――――――――――

平沢主査 次に、国会所管について審査を進めます。

 まず、衆議院関係予算の説明を聴取いたします。向大野衆議院事務総長。

向大野事務総長 平成二十八年度衆議院関係歳出予算について御説明申し上げます。

 平成二十八年度国会所管衆議院関係の歳出予算要求額は、七百三十九億三百万円余でありまして、これを前年度予算額と比較いたしますと、三億九千二百万円余の減額となっております。

 これは、主要国下院議長会議の開催に必要な経費、給与改定に伴う人件費等の増額がある一方、議員会館関係経費、退職手当等の減額によるものでございます。

 その概要を御説明申し上げますと、国会の権能行使に必要な経費として四百四十一億二千万円余、衆議院の運営に必要な経費として二百六億七千四百万円余を計上いたしております。

 これらの経費は、議員関係の諸経費、事務局及び法制局の事務を処理するために必要な経費でございます。

 また、衆議院施設整備に必要な経費として十一億百万円余、民間資金等を活用した衆議院施設整備に必要な経費として八十億円余を計上いたしております。

 これらの経費は、議事堂本館等の施設整備費、議員会館等の整備に係る不動産購入費でございます。

 このほか、国会予備金に必要な経費として七百万円を計上いたしております。

 以上、平成二十八年度衆議院関係歳出予算の概要を御説明申し上げました。

 よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。

平沢主査 次に、参議院関係予算の説明を聴取いたします。中村参議院事務総長。

中村参議院事務総長 平成二十八年度参議院関係歳出予算について御説明申し上げます。

 平成二十八年度国会所管参議院関係の歳出予算要求額は、四百四十九億七千二百万円余でございまして、これを前年度予算額と比較いたしますと、八億九千二百万円余の増額となっております。

 これは、主に、通常選挙の実施に伴い必要となる経費を計上したことによるものでございます。

 その概要を御説明申し上げます。

 まず、国会の権能行使に必要な経費として二百四十億三千八百万円余、参議院の運営に必要な経費として百五十四億七千二百万円余を計上いたしております。

 これらの経費は、議員活動に係る諸経費並びに事務局及び法制局の所掌事務を処理するために必要な経費でございます。

 次に、参議院施設整備に必要な経費として十一億八千八百万円余、民間資金等を活用した参議院施設整備に必要な経費として四十二億六千八百万円余を計上いたしております。

 これらの経費は、各種施設整備に必要な経費及び議員会館の不動産購入費でございます。

 最後に、国会予備金に必要な経費として五百万円を計上いたしております。

 以上、平成二十八年度参議院関係歳出予算の概要を御説明申し上げました。

 よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。

平沢主査 次に、国立国会図書館関係予算の説明を聴取いたします。大滝国立国会図書館長。

大滝国立国会図書館長 平成二十八年度国立国会図書館関係歳出予算について御説明申し上げます。

 平成二十八年度国会所管国立国会図書館関係の歳出予算要求額は、百九十五億五千六百万円余でありまして、これを前年度予算額と比較いたしますと、四億七千八百万円余の減額となっております。

 これは、退職予定者の減に伴う職員人件費の減額等によるものでございます。

 その概要を御説明申し上げます。

 第一は、運営に必要な経費でありまして、人件費等九十六億二千二百万円余を計上いたしております。

 第二は、業務に必要な経費でありまして、国会サービス経費及び情報システム経費等七十四億一千四百万円余を計上いたしております。

 第三は、科学技術関係資料の収集整備に必要な経費でありまして、十億九千三百万円余を計上いたしております。

 第四は、施設整備に必要な経費でありまして、十四億二千六百万円余を計上いたしております。

 以上、平成二十八年度国立国会図書館関係歳出予算の概要を御説明申し上げました。

 よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。

平沢主査 次に、裁判官弾劾裁判所関係予算の説明を聴取いたします。星裁判官弾劾裁判所事務局長。

星裁判官弾劾裁判所参事 平成二十八年度裁判官弾劾裁判所関係歳出予算について御説明申し上げます。

 平成二十八年度国会所管裁判官弾劾裁判所関係の歳出予算要求額は、一億一千二百六万円余でございまして、これを前年度予算額と比較いたしますと、二百五十三万円余の増額となっております。

 この要求額は、裁判官弾劾裁判所における事務局職員の給与に関する経費及び事務処理費並びに裁判官弾劾法に基づく裁判官の弾劾裁判に直接必要な旅費及び庁費でございます。

 以上、裁判官弾劾裁判所関係歳出予算の概要を御説明申し上げました。

 よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。

平沢主査 次に、裁判官訴追委員会関係予算の説明を聴取いたします。岡本裁判官訴追委員会事務局長。

岡本裁判官訴追委員会参事 平成二十八年度裁判官訴追委員会関係歳出予算について御説明申し上げます。

 平成二十八年度国会所管裁判官訴追委員会関係の歳出予算要求額は、一億二千八百二十一万円余でございまして、これを前年度予算額と比較いたしますと、八万円余の増額となっております。

 この要求額は、裁判官訴追委員会における事務局職員の給与に関する経費、訴追事案の審査に要する旅費及びその他の事務費でございます。

 以上、裁判官訴追委員会関係歳出予算の概要を御説明申し上げました。

 よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。

平沢主査 以上で説明は終わりました。

 それでは、御退席くださって結構です。

    ―――――――――――――

平沢主査 次に、裁判所所管について審査を進めます。

 最高裁判所当局から説明を聴取いたします。戸倉事務総長。

戸倉最高裁判所長官代理者 平成二十八年度裁判所所管歳出予算について御説明申し上げます。

 平成二十八年度裁判所所管歳出予算の総額は、三千百五十三億円であります。これを前年度当初予算額三千百三十億九千七百万円と比較いたしますと、差し引き二十二億三百万円の増加となっております。

 次に、平成二十八年度歳出予算のうち、主な事項について御説明申し上げます。

 まず、人的機構の充実、すなわち、裁判官、書記官及び事務官の増員等であります。

 かねてより裁判所の体制の充実強化が求められている中で、複雑困難化する民事訴訟事件の審理充実、成年後見関係事件を初めとする家庭事件処理の充実強化等のため、裁判官は、判事三十二人、書記官は三十四人、事務官は一人、合計六十七人の増員をすることとしております。なお、このほかに、速記官から書記官への振りかえ五人も計上しております。

 他方、政府の定員合理化計画への協力として七十一人の減員をすることとしておりますので、差し引き四人の純減となります。

 次は、司法の体制の充実強化に必要な経費であります。

 まず、裁判事務処理態勢の充実を図るため、百四十三億五千七百万円を計上しております。

 その内容について申し上げますと、第一に、民事事件関係経費といたしまして三十六億五千二百万円を計上しております。この中には、民事調停委員手当、専門委員手当、労働審判員関連経費等が含まれております。

 第二に、刑事事件関係経費といたしまして四十三億一千四百万円を計上しております。この中には、裁判員制度関連経費、心神喪失者等医療観察事件関連経費等が含まれております。

 第三に、家庭事件関係経費といたしまして六十三億九千百万円を計上しております。この中には、家事調停委員手当等が含まれております。

 また、庁舎の耐震化等のための経費といたしまして百四十六億五百万円を計上しております。

 以上が、平成二十八年度裁判所所管歳出予算の概要であります。

 よろしく御審議のほどお願い申し上げます。

平沢主査 以上で説明は終わりました。

 それでは、御退席くださって結構です。

    ―――――――――――――

平沢主査 次に、会計検査院所管について審査を進めます。

 会計検査院当局から説明を聴取いたします。河戸会計検査院長。

河戸会計検査院長 平成二十八年度会計検査院所管の歳出予算について御説明申し上げます。

 会計検査院の平成二十八年度予定経費要求額は、百六十八億二千六百万円余でありまして、これを前年度予算額百七十一億二千八百万円余に比較いたしますと、三億百万円余の減額となっております。

 ただいま申し上げました要求額は、日本国憲法第九十条及び会計検査院法の規定に基づく会計検査院の運営及び会計検査業務に必要な経費等であります。

 次に、その概要を御説明申し上げます。

 まず、会計検査院の運営に必要な経費として百四十九億五千四百万円余を計上いたしております。これは、会計検査に従事する職員等の人件費及び庁舎の維持管理等に必要な経費であります。

 次に、会計検査業務に必要な経費として十八億九百万円余を計上いたしております。これは、国内外における実地検査等のための旅費及び検査活動を行うためのシステムの開発・運用等に必要な経費並びに検査活動に資する研究及び検査能力向上のための研修に必要な経費であります。

 次に、会計検査院施設整備に必要な経費として六千二百万円余を計上いたしております。

 以上、会計検査院の平成二十八年度予定経費要求額の概要を御説明申し上げました。

 よろしく御審議のほどお願いいたします。

平沢主査 以上で説明は終わりました。

 それでは、御退席くださって結構です。

    ―――――――――――――

平沢主査 次に、内閣及び内閣府所管について審査を進めます。

 政府から説明を聴取いたします。菅内閣官房長官。

菅国務大臣 平成二十八年度の内閣及び内閣府関係予算について、その概要を御説明申し上げます。

 内閣所管の平成二十八年度における歳出予算要求額は千百五十二億三千百万円でありまして、これを前年度当初予算額千九十億四千五百万円に比較しますと、六十一億八千六百万円の増額となっております。

 要求額の内訳といたしまして、内閣官房には、内閣の重要政策に関する総合調整等のための経費として千二十三億七千七百万円、内閣法制局には、法令審査等のための経費として十二億八千四百万円、人事院には、人事行政等のための経費として百十五億七千万円を計上いたしております。

 次に、内閣府所管の平成二十八年度における歳出予算要求額は三兆一千八百九十八億七千九百万円でありまして、これを前年度当初予算額三兆五十一億六千四百万円に比較しますと、千八百四十七億千五百万円の増額となっております。

 要求額の内訳といたしまして、内閣府本府には、各般の施策における総合的、戦略的な企画立案及び施策の的確な推進のための経費として二兆八千六百七十四億八千五百万円、宮内庁には、その人件費、事務処理のための経費として百九億四千万円、公正取引委員会には、厳正かつ実効性のある独占禁止法の運用等のための経費として百九億九千四百万円、警察庁には、警察庁、その附属機関及び地方機関の経費並びに都道府県警察費補助等のための経費として二千六百三十一億千四百万円、個人情報保護委員会には、個人番号の保護に必要な監視・監督等のための経費として十四億四百万円、金融庁には、金融庁一般行政、金融市場整備推進等のための経費として二百四十億五千百万円、消費者庁には、消費者の安全・安心の確保、地方消費者行政の推進等を図るための経費として百十八億九千二百万円を計上いたしております。

 以上をもって平成二十八年度の内閣及び内閣府関係予算の概要の説明を終わります。

 よろしく御審議くださいますようお願いを申し上げます。

平沢主査 以上で説明は終わりました。

 それでは、御退席くださって結構です。

    ―――――――――――――

平沢主査 次に、復興庁所管について審査を進めます。

 政府から説明を聴取いたします。高木復興大臣。

高木国務大臣 平成二十八年度復興庁予算について御説明申し上げます。

 復興庁においては、復興のステージの進展に応じて生じる課題に的確に対応しつつ、復興・創生期間初年度における被災地の復興に必要な取り組みを強力に推進するための予算として、東日本大震災復興特別会計に総額二兆四千五十五億円を計上しております。

 以下、その主要施策について御説明申し上げます。

 第一に、被災者支援については、被災者の住宅再建等を引き続き支援するとともに、長期避難者の心のケアやコミュニティー形成など、復興の進展に伴い生じる課題に総合的かつ効果的に対応するため、被災者支援の取り組みの強化に必要な経費として千百十四億円を計上しております。

 第二に、住宅再建と復興まちづくりについては、住宅再建に関する事業の進展等を踏まえつつ、引き続き、復興まちづくりを着実に推進するとともに、復興道路、復興支援道路の整備等に必要な経費として一兆千三百十八億円を計上しております。

 第三に、産業やなりわいの再生については、自立的な地域経済の再生に向け、販路の回復や観光復興に向けた取り組みを強化するとともに、企業立地による雇用の創出や商業回復、福島の原子力災害被災地域における産業の復興等に必要な経費として千三百七十四億円を計上しております。

 第四に、原子力災害からの復興再生については、住民の帰還促進や十二市町村の生活の再構築に向けた取り組みを強化するとともに、本格的な進捗が見込まれる放射性物質汚染廃棄物の処理を着実に推進するなど、福島の復興再生を加速するために必要な経費として一兆百六十七億円を計上しております。

 その他、新しい東北の創造に必要な経費として所要額を計上しております。

 なお、東日本大震災復興特別会計においては、復興庁予算に加え、復興加速化・福島再生予備費や震災復興特別交付税交付金など八千四百十四億円を計上しており、全体では三兆二千四百六十九億円を計上しております。

 以上、平成二十八年度の復興庁予算の概要について御説明申し上げました。

 何とぞよろしくお願い申し上げます。

 以上でございます。

平沢主査 以上で説明は終わりました。

 それでは、御退席くださって結構です。

    ―――――――――――――

平沢主査 次に、防衛省所管について審査を進めます。

 政府から説明を聴取いたします。中谷防衛大臣。

中谷国務大臣 平成二十八年度の防衛省関係予算について、その概要を御説明申し上げます。

 平成二十八年度予算においては、一層厳しさを増す安全保障環境を踏まえ、国民の生命財産及び我が国の領土、領海、領空を守る態勢を強化するため、平成二十六年度以降に係る防衛計画の大綱及び中期防衛力整備計画に基づく防衛力整備の三年度目として、統合機動防衛力の構築に向け、引き続き防衛力整備を着実に実施することとしております。

 具体的には、各種事態における実効的な抑止及び対処並びにアジア太平洋地域の安定化及びグローバルな安全保障環境の改善といった防衛力の役割にシームレスかつ機動的に対応し得るよう、統合機能のさらなる充実に留意をしつつ、必要な事業を計上することができたと認識しております。

 特に、警戒監視能力、情報機能、輸送能力及び指揮統制・情報通信能力の向上を重視するほか、島嶼部に対する攻撃への対応、弾道ミサイル攻撃への対応、ゲリラ、特殊部隊による攻撃への対応、宇宙空間及びサイバー空間における対応、大規模災害等への対応並びに国際平和協力活動等への対応を重視したものとなっております。

 平成二十八年度の防衛関係費の一般会計歳出予算額は五兆五百四十一億四千九百万円となり、前年度の当初予算額に比べ、七百四十億九百万円の増となっております。

 継続費の総額は、平成二十八年度護衛艦建造費で八百五十九億八千八百万円、平成二十八年度潜水艦建造費で六百八十八億五千万円となっております。また、国庫債務負担行為の限度額は、武器購入、航空機購入、弾薬購入、武器車両等整備、提供施設移設整備等で二兆一千九百六十一億八千九百万円となっております。

 また、東日本大震災からの復旧復興に係る経費を、平成二十八年度一般会計とは別途、東日本大震災復興特別会計に歳出予算額百十四億六千二百万円を計上しております。

 これをもちまして平成二十八年度の防衛省関係予算の概要説明を終わります。

 なお、時間の関係もございますので、主査におかれましては、お手元に配付してあります資料を会議録に掲載されますようお願いを申し上げます。

平沢主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま中谷防衛大臣から申し出がありましたとおり、防衛省所管関係予算の概要につきましては、その詳細は説明を省略し、本日の会議録に掲載したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平沢主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

平沢主査 以上で説明は終わりました。

    ―――――――――――――

平沢主査 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大西宏幸君。

大西(宏)分科員 自由民主党大西宏幸、質疑をさせていただきます。

 地方議員のときは年間二十時間以上質問をやっていたんですけれども、本当に、質問する時間が与党はないということをよく聞いていたんですけれども、やっと質問ができるということで、うれしく思っております。

 それでは、中谷防衛大臣にお越しいただいておりまして、本当にありがとうございます。冒頭の質疑は、北朝鮮の話をさせていただきたいと思っております。

 一月六日十時三十分ごろ、水爆実験、北朝鮮は成功したということを発表しました。しかし、当時の地震計測ではマグニチュード五・〇以下ということで、北朝鮮が過去行ってきた原爆実験の地震波形とほぼ同じだということも言われています。二十一年の実験よりも地震規模が小さい分、もしかしたら、今までの原爆の半分以下のパワーであったのかということも言われておるんですけれども、防衛省としては、これらの指摘やアメリカの発表以外に、北朝鮮が行ってきた実験はどのような裏づけでどのような判断をされて、例えば原爆、水爆じゃないという判断をされておられるのか、裏づけがあるならばお聞かせいただきたいんですけれども、よろしくお願いします。

中谷国務大臣 大西委員御指摘のように、政府としては、気象庁が探知した地震波などによりまして、さまざまな情報を総合的に勘案した結果、北朝鮮が一月六日に核実験を実施したと判断しております。

 今般の核実験につきましては、北朝鮮は水爆実験を成功させた旨発表を行っている一方で、米国は、引き続き評価を継続中なるも、核実験における出力の低さは熱核融合装置の実験成功と一致しないと指摘をしていると承知しております。

 防衛省としましては、米国、韓国を初め関係国と密接に連携しつつ、その分析、評価を継続する必要がありますが、地震の規模から考えますと、北朝鮮が一般的な水爆実験を行ったとは考えにくいと認識をいたしております。

 今回の核実験は四回目となるわけでありまして、北朝鮮において核開発について技術的な成熟が見込まれることなどを踏まえつつ、さらなる分析に努めてまいりたいと考えております。

大西(宏)分科員 よく聞かれる話、大西さん、水爆と原爆の違いというのは何やねんとよく聞かれます。

 これは本当に、一般的に我々が知識としていることと調べてわかることというのがあるんですけれども、今の技術の原爆では、通常、広島型と言われる原爆の十倍程度しか力を持つことができないと言われています。しかし、原爆を起爆剤的に使う水爆というのは、もしかして数千倍のパワー、もしかして数万倍のパワーを得ることができるのじゃないかと言われているんですけれども、原爆の開発の恐怖というのは、実は水爆につながるということで我々は恐怖するべきかもわからないということでございます。

 もし可能であれば、防衛省は水爆と原爆の違いというものをどこまで、オープンできるところでいいんですけれども、違いというか、わかっているところはどういうことか、ちょっと御所見をお聞かせいただきたいと思っております。

前田政府参考人 お答えいたします。

 今御質問がありました原爆と水爆の違いということでございますが、まず原爆でございますけれども、核分裂物質でございますプルトニウムあるいはウランを用いまして、臨界量を超えさせるということで核分裂を起こします。そうすると、この核分裂が連鎖反応を起こしまして急増していく、その結果、温度が急上昇することで爆発を引き起こす、こういう仕組みの核兵器であると承知をしているわけでございます。

 一方、水爆でございますが、先ほど先生も御指摘になられましたように、第一段階となる核分裂反応によってエネルギーを放射する、これを用いまして、第二段階といたしまして、重水素あるいは三重水素でございますが、これを核融合反応させる、これによりまして、温度が急上昇して爆発を引き起こす核兵器になる、こういうことになるわけでございます。

 威力でありますけれども、原爆と水爆、それぞれ大きさによってさまざまな威力のものが存在するわけでありますが、一般的に申し上げまして、水爆は原爆に比べてより大きな威力を有しているということになると思います。

 例えばでございますが、先生も先ほどおっしゃいました広島型の原爆、この威力は約十五キロトンであったというふうに言われておりますけれども、一方では、米国が一九五四年三月に実施しました水爆実験に例をとりますと、これは約十五メガトンということでありまして、つまり、広島型原爆の約千倍の威力ということになります。

 一九五四年の水爆実験においては、爆心地から約百六十キロ離れた海上で、このときは、操業中でありました我が国の漁船、第五福竜丸でありますけれども、この乗組員の方々全員が放射性物質を含んだ灰によって被曝をしたといったこともございまして、水爆の爆発は原爆に比べてより広範囲に被害をもたらすことを示している、このように認識をしているところでございます。

大西(宏)分科員 今言っていただきましたように、第一段階で原爆を起爆剤として使い、核反応で第二段階で爆発させるということで、単純明快に言うと、原爆はマッチの棒、そして水爆はガソリンスタンドのタンクみたいな感じになるんでしょうか。

 今ちょうどお話もありましたように、アメリカ軍がブラボー作戦という作戦で、マーシャル諸島のビキニ環礁で水爆実験を行いました。そのときに、約百六十キロ東方の海上にありました第五福竜丸が被曝をいたしました。そのときの乗組員が二十三人被曝をして、亡くなられた方もいらっしゃいます。これは広島型の原爆一千個分に値する十メガトンと言われております。

 そういうことを考えると、北朝鮮が水爆もしくは水爆実験を今後正確に行っていくことに対して、おのずと、水爆と原爆に対する我々の危機管理というのが大きく変わってくるのではないかと思っております。

 ちなみに、この水爆実験で二万人以上の方が被曝をしたということも言われております。

 原爆の製造よりも、製造のときも言われているんですけれども、原爆をつくるよりも、それを爆発させない維持管理というのがすごく高度な技術と莫大な資金が必要だと言われている中で、中途半端な技術で実験を北朝鮮は強行している可能性もあり、もし万が一、水爆保有国として北朝鮮が確立された場合、我々日本国はどのような危険があって、防衛省は、安全保障の観点から、この危機対応に対して今後どういうふうにしていかなきゃいけないのかということをやはり考えていかなきゃいけないんですけれども、考えてはると思うんですけれども、御所見はどうでしょうか。

中谷国務大臣 先ほど局長が説明いたしましたように、一般論として申し上げますと、仮に北朝鮮が水爆を開発する技術を獲得した場合に、原爆と比べましてより大きな威力を有する核兵器、これを手にすることにつながります。

 核兵器の小型化、弾頭化技術の進展とあわせますと、我が国に対する脅威がより一層高められるということになりまして、これにつきまして重大な関心を持ち続けるわけでございますが、北朝鮮によって事故また核爆発が起こった場合に、空気中に放射物質が拡散をして我が国に飛来する可能性、これも否定をできないわけでございます。

 原爆に比べてより広範囲に被害をもたらすことを考えますと、仮に北朝鮮における爆発であっても我が国への影響は否定をできないということでありまして、非常に重要な課題だと認識をいたしておりまして、非核化に向けまして、防衛省といたしましても、北朝鮮に対して引き続き情勢を注視してまいりたいと考えております。

大西(宏)分科員 確かに、今大臣がおっしゃいましたように、小型化をするといろいろな恐怖がありますし、実は、核物質の問題もさることながら、北朝鮮は何が怖いかというと、国家が破綻をしたときに、もし核爆弾や水爆が保有されたときに、万が一それが爆発する可能性がある。北朝鮮がもし破綻したら、我が国としては、隣国と協力しながら、そういう核爆弾について抑えていかなあかんぐらいなことを考えていかないけないんじゃないのかと思うんですね。

 それと同時に、ISILのように、テロのこういう行為をする組織がある中で、もし北朝鮮が破綻すると、アジアを混乱させるためにはそういうものを爆発させようとするかもわからない、こういうこともやはり考えていかなきゃいけないと思っております。

 北朝鮮が水爆実験と言われる実験とその後に衛星を打ち上げたということ、我々は弾道ミサイルと思っておるんですけれども、これは常時アメリカを見ていると思うんですね。先ほど言ったように、水爆を持っているぞ、弾道ミサイルはワシントンまで届くぞと。通常、北朝鮮が韓国に撃ち込むこととか、北朝鮮が日本に撃ち込んだら自分の国が危ないので、そんなことはやらないでしょう。やはりアメリカを見ているんですよね、こういうものというのは。

 そういうことも我々は察していかなきゃいけませんし、ともかく、我らの領土、領空に一瞬なりとも他国のミサイルが飛来するのは、やはり許されへん言語道断なことなんですよ。

 それと、これもよく地元の大阪の人から聞かれるのは、これは自衛隊の皆さんに本当に大変失礼なことかもわかりませんけれども、よく聞かれるので、ちょっとお答えいただきたいと思うんです。

 破壊措置命令のとおりに、PAC3ミサイル部隊やイージス艦部隊等々で弾道ミサイルを撃ち落とすことは本当に可能だったのか、例えばその成功の確率というのはどれぐらいのことを見ていたのかというのを、もし言えるようでしたらお聞かせいただきたいと思います。

中谷国務大臣 我が国に飛来するミサイル等に対しまして、現在、我が国におきましては、弾道ミサイル防衛システムといたしまして、SM3搭載のイージス艦とペトリオットPAC3ミサイルによりまして、我が国に飛来する射程約千ないし千三百キロ級の弾道ミサイルに対処し得るように設計をされております。

 イージス艦による迎撃につきましては、我が国の発射による迎撃試験におきまして、四回中三回命中をしております。また、米国の発射による迎撃試験におきましても、三十一回中二十五回命中をいたしていると承知をしております。

 一方で、ペトリオットPAC3につきましては、我が国の発射による迎撃試験におきまして、二回中二回とも命中をいたしました。また、平成十五年の米国等によるイラクに対する武力行使の際に現地に展開をして、迎撃範囲内の全ての弾道ミサイルの迎撃に成功したとの発表が米国政府よりなされたと承知をいたしております。

 これらの過去の試験の結果に鑑みますと、我が国のBMDシステムの信頼性また技術的な確証、これは高くて、我が国の領域に飛来する一千ないし一千三百キロ級の弾道ミサイルの迎撃に成功する確率は相当に高いものであると確信をいたしております。

大西(宏)分科員 大臣、安心しました。ありがとうございます。大阪のおっちゃん、おばちゃんに安心しろと言うておきますので、よろしくお願いを申し上げます。

 それも含めて、日本の周辺というのは、安全保障というのは日増しに緊迫感を増してきているんですよね。昨年の十月からことしの一月まで四半期に、南西航空混成団が三百五十二回スクランブルしている。すごく飛び抜けております。

 そこで、やはり考えるのは、防衛省として、この一年間で結構なんですけれども、いわゆる未確認、アンノーンではなく、国籍や機種、艦種を正確に把握している割合というのはどれぐらいあるんでしょうか。マスコミ発表では未確認とかアンノーンと言っているかもわからないんだけれども、防衛省の能力としてはこれぐらいあるよということがあればお聞かせいただきたいと思います。

 それとあわせて、それらの機体や艦からロックオン、レーザー照射等をされた回数があるならばお教えください。

中谷国務大臣 近年、中国機に対するスクランブルの回数も急激な増加をいたしておりまして、昨年度、二〇一四年において、その五年前の二〇〇九年と比較をいたしますと、十倍以上の四百六十四回となっているわけでございます。

 こういった危険な行為につきましての御質問でありますが、二〇一三年の一月には、中国の海軍艦艇から、東シナ海の公海上で警戒監視中の海上自衛隊護衛艦に対する火器管制レーダー、これの照射事案、また海上自衛隊護衛艦搭載のヘリコプターに対する火器管制レーダーの照射が疑われる事案が確認をされております。

 戦闘機からのロックオンにつきましてはこれまで確認をされておりませんが、この火器管制レーダーの照射というのは、基本的に火器の使用に先立って実施する行為でありまして、これを相手に照射することは不測事態を招きかねないものでありまして、危険な行為であると認識をいたしております。

 この事案につきましては、外交ルートで中国側に抗議を行うとともに、防衛省としても公表いたしておりますが、近年、十分な透明性を欠く中で、質、量ともに中国が軍事力を広範かつ急速に強化しまして、我が国周辺の活動、これは増大をいたしておりまして、このようなこと等につきまして、特に、二〇一三年の十一月、東シナ防空識別区を設定しまして、中国の国防部の定める関連の規則に従わない場合には中国軍による防御的緊急措置をとるという旨を発表いたしておりまして、このような中国の動向等につきまして、その不透明性と相まって、我が国を含む地域、国際社会の安全保障上の懸念となっているというふうに認識をいたしております。

大西(宏)分科員 中国が領土欲を持って台頭してくる中で、我々は、今後安全保障を完遂するためにどういうふうにすればいいのか。これは、高度な情報収集能力と危機対応に即した技術、装備がやはり必要だと思います。

 先ほどちょっと答弁になかったんですけれども、アンノーンか確認かというのはどれぐらいあるかという、そうないと思うんですよね。もっともっと技術を上げて、そして装備の充実が必要だと思うんですけれども、どうでしょうか。

中谷国務大臣 防衛省・自衛隊といたしましては、常時継続的に、我が国周辺の海空域において情報収集、警戒監視活動を行っております。

 例えば海上自衛隊は、P3C哨戒機によりまして、北海道周辺の海域、日本海、東シナ海を航行する船舶などの状況をそれぞれの海域において監視しております。航空自衛隊においては、全国二十八カ所のレーダーサイトと早期警戒管制機AWACS等によって、我が国及びその周辺の上空を飛行する航空機を常時監視いたしております。また、陸上自衛隊におきましては、稚内等の沿岸監視隊において周辺海域の監視を実施いたしておりまして、さらに、必要に応じて護衛艦、航空機等を柔軟に運用して警戒監視活動を行い、我が国周辺における事態への即応体制を維持しているということでございます。

大西(宏)分科員 ありがとうございます。

 順次、我々も協力しながら、情報収集能力、危機対応の技術、装備の向上に力を入れていかなきゃいけないということを思っております。

 続きまして、我が日本国は今後、サミットにしてもオリンピックにしてもパラリンピックにしても、世界的な開催物が多く予定をされています。そうなると怖いのは、世界を席巻しているテロが日本にも及ぶ可能性がある。これは、危機感を我々も持たなきゃいけないということです。

 防衛省は、テロ対策として他の省庁とどういうふうな連携をしておるのか、その連携に準備を行っているのか、ここで確認をしたいんですけれども、どうでしょうか。

中谷国務大臣 テロ対策を含みます国内の治安の維持につきましては、警察機関が第一義的に対応の責任を有しているわけでございまして、自衛隊は、発生したテロの態様に応じて関係機関と緊密に連携して対応するということになります。

 具体的には、テロ攻撃が一般の警察力をもっては治安を維持することができない緊急の事態である場合等には、治安出動等の発令を受けて、警察機関と連携して対処するということになります。

 また、テロ攻撃でNBC、化学兵器等が用いられた場合には、災害派遣または国民保護等の派遣によりまして、自衛隊がNBC対処のための装備品を活用しまして、放射能の測定、住民の避難、除染、これを実施することが考えられるわけでありまして、こうした事態に備えまして、平素から自衛隊は、警察、海保との共同訓練、内閣官房を初めとする関係機関との国民保護訓練等を実施いたしまして、施設の警備また住民の避難等における互いの要領等について確認を行っているわけでございます。

 伊勢志摩サミット等が予定をされておりますが、現在、政府はこれに向けまして、テロ対策を完遂するために、政府一丸となった総合的、一体的な取り組みが必要でございまして、基本方針を踏まえつつ、自衛隊・防衛省としても最大限貢献をするということが必要でございます。

 具体的な内容については、お答えは差し控えさせていただきますが、平成二十年の北海道洞爺湖サミットにおきましては、航空機等による上空の警戒監視、また不測の事態に備えた化学防護部隊等の待機の強化など、各種の支援を実施いたしました。

 今後とも、こういった伊勢志摩サミットの成功に向けまして、引き続き関係省庁と緊密に連携してまいりたいと考えております。

大西(宏)分科員 本当にこういう連携というのは大切なもので、確かに警察が中心的にやるかもわからないんだけれども、我が国というのは、飛行機、空港からテロというのが入ってくる可能性等、島国なのでいろいろなところから入ってくる可能性があるので、全体で守っていかなきゃいけないということは御指摘をさせていただきたいと思っております。

 そのほかにも、サイバーセキュリティー、そして重要機密の取り扱いというのが重要なんですけれども、過去の秘密漏えい等々もありますので、これは要望ですので、どうぞこの辺はさらに強化していただきますようによろしくお願いする次第でございます。

 続いて御質問なんですけれども、私は、大阪市会議員を十六年ほどさせていただいたときに一貫して、地方議員なので、消防官と接することもよくあり、警察官の方とも接することもよくありました。官職という言い方をすればいいのかどうかわかりませんけれども、自衛官もさることながら、どういうふうに我々は守っていってあげなきゃいけないのかということをよく考えます。

 私は、長年の労働組合の闘争で、権利のもとで多くの利権をむさぼってきた闇専従と闘ってきました。だから思うんですけれども、消防官にしても警察官、自衛官にしても、労働基本権の団結権とか団体交渉権とか争議権というのはないんですね。だからこそ、我々自民党は、自衛官とか警察官を守っていかなきゃいけないと思っております。

 その観点からお聞きしますけれども、平和安全法制が可決された後特に思うんですけれども、自衛隊員の活動中の安全確保や事故防止はどうされておられるのでしょうか。また、仮に事故が起きた場合の補償についてお聞かせいただけたらありがたいと思っております。

中谷国務大臣 活動の安全につきましては、万全の体制を図るべく、常に対応いたしまして実施をしているところでございます。

 仮に事故が起きた場合の補償についてでございますが、やはり誇りを持って安心して職務に従事をすることができるように、任務に従事する隊員が公務に起因して負傷した場合におきましては、療養補償といたしまして、治療費の全額、これを国が支給するほか、障害の状態となった場合におきましては障害補償、これが支給をされます。万が一、不幸にも自衛隊員が死亡した場合には、御家族に対しまして遺族補償また葬祭補償、これが支給をされます。

 さらに、自衛官が、生命身体に対する高度の危険が予測をされる場合におきまして職務に従事し、障害の状態となった場合または死亡した場合におきましては、特別公務災害といたしまして、通常の障害補償または遺族補償の額に五割加算をした額が支給をされる。

 また、このほか、一般の職務と比較して高度な危険が予測をされ、災害を受ける蓋然性が高い職務に従事する自衛隊員が、一身の危険を顧みることなくその職務を遂行し、またはこれらの職務に特有の事故により死亡をした場合等については、賞じゅつ金、これが授与されるというような制度を今維持いたしております。

大西(宏)分科員 公務員としてこれほど危険な仕事に従事されておられる官職の方々が全力を挙げて職務を全うできるように、今後とも、処遇改善とか待遇改善、また検討されていっていただきたいと思っております。

 続きまして、東日本大震災や阪神・淡路大震災が含まれるように、我々、地震大国に住んでいるという認識、自然災害の多い国に住んでいるという認識をしていかなきゃいけないと思っております。だからこそ、被災地等々にいち早く救援活動を行う体制を常時とらなきゃいけないと思っているんですね。あわせて、日本の領土は多くの孤島や離島を抱え、それに対しての即応態勢も考えていかなきゃいけません。

 この観点から私は思うんですけれども、拠点確保というのは軍事的には攻撃的な能力を有するんですけれども、被災地に救援しに行くのに拠点確保能力、例えばアメリカでいうたら強襲揚陸艦等々にも我々は助けていただきました、そういうようなことも踏まえて、戦うのではなくて、孤島である、離島である、そういう島国であるということを我々は認識していきながら今後もやっていかなきゃいけません。

 被災地に物資補給、医療支援などが可能である、今、「いずも」型の護衛艦や「ひゅうが」型の護衛艦が就航されていますけれども、今の配備状況と今後の計画はどうでしょうか。

中谷国務大臣 昨年も、ゲリラ豪雨や火山の噴火などの自然災害によって自衛隊が出動いたしまして、救命活動等を実施しましたけれども、この体制においてはしっかりと準備をしておく必要がございます。

 例えば、海上自衛隊におきましては、ヘリコプターの運用能力を生かしまして、輸送能力また医療機能を充実させることによりまして、災害等に対して、ヘリコプター搭載護衛艦、DDHといたしまして、「いずも」型の護衛艦、また「ひゅうが」型の護衛艦を整備してまいりました。

 「いずも」型の護衛艦等につきましては、一番艦の「いずも」が横須賀に配備をされて、二番艦「かが」、これは平成二十四年度から建造を開始しまして、平成二十八年度末に配備をされる予定であります。

 また、「ひゅうが」型の護衛艦につきましては、一番艦の「ひゅうが」が舞鶴に、二番艦が伊勢に配備をいたしておりますが、非常に、こういった能力に対して災害などにおいて活用すべきだと御指摘をいただいておりますのはそのとおりでございまして、今後とも体制の整備に努めてまいりたいと思っております。

大西(宏)分科員 ありがとうございます。終わります。

中谷国務大臣 先ほどの発言で一点修正でありますが、「ひゅうが」型の護衛艦については、一番艦「ひゅうが」が舞鶴に、そして二番艦「いせ」が呉に配備をされているということでございます。訂正させていただきます。

平沢主査 これにて大西宏幸君の質疑は終了いたしました。

 次に、斎藤洋明君。

斎藤(洋)分科員 自由民主党の斎藤洋明でございます。

 先ほどの同僚議員、大西宏幸議員に引き続きまして、防衛省・自衛隊に関連しまして質問させていただきます。

 我が国の国防に関します、国会議員の一人としてはもちろんのこと、私の選挙区であります新潟三区には、陸上自衛隊の第三〇普通科連隊が駐屯する新発田駐屯地がございます。その関係もありまして、日ごろから、現役、OBの方を含めて、自衛隊関係の方々と意見交換をする機会が非常に多くございます。したがいまして、大きな問題から身近な日ごろの問題も含めて強い問題意識を持っています。

 その観点から、防衛省に対しまして全十一問通告させていただいておりますので、質問させていただきたいと思っております。

 まず冒頭に、個別の質問に入ります前に、国家安全保障に関する基本方針であります、平成二十五年十二月閣議決定、「国家安全保障戦略について」の四1(2)の中に、武力攻撃事態等から大規模災害に至るあらゆる事態にシームレスに対応するための総合的な体制を平素から構築とありますが、この文言を踏まえて、自衛隊にはどのような体制の整備が求められているとお考えであるか、防衛省の認識をお伺いしたいと思います。

前田政府参考人 お答え申し上げます。

 御質問の点でございますけれども、自衛隊の体制整備につきましては、先生御指摘の国家安全保障戦略を踏まえまして、各種の事態のまずは抑止に努めるとともに、事態の発生に際しては、その推移に応じてシームレスに対応可能な体制を構築することが求められている、このように認識をしてございます。

 このため、防衛計画の大綱あるいは中期防衛力整備計画、こういったものを政府は持っておりますけれども、ここにおきましては、多様な活動を統合運用によりましてシームレスかつ状況に臨機に対応して機動的に行い得る、より実効的な防衛力、こういった考え方で統合機動防衛力というものを構築することといたしてございます。

 もう少し具体的に申し上げれば、例えば南西地域の防衛体制の強化といったことを初め、海上優勢あるいは航空優勢の確実な維持に向けた防衛力整備、あるいは、幅広い後方支援基盤の確立に配意しながら、機動展開能力の整備、こういったことを進めることとしているわけでございます。

斎藤(洋)分科員 ありがとうございます。

 自衛隊に求められる任務は非常に多様化かつ高度化はしておりますけれども、それに対して、規模を大きくしていくのではなくて、統合機動ということで、よりスマートに運用されることによって対応していくんだということであろうかというふうに認識をします。

 そのことを踏まえまして、統合機動防衛力といいますと、非常に高度な国家戦略のレベルから、日ごろの正面装備であったり、あるいは個々の自衛隊員の方々の処遇であったり、さまざまあるかと思いますが、先ほど申し上げましたとおり、地元に駐屯地もあります関係から、身近な問題も含めてきょうはぜひ質問させていただきたいというふうに思っております。

 まず、正面装備品の問題についてお尋ねをしたいと思います。

 そもそも国防予算の規模であったり求められるものが違うとは思いますが、我が国自衛隊を仮に米軍の同種同規模の部隊と比較をした場合に、先ほどの統合機動防衛力を支える空中輸送能力であったり、あるいは海上輸送能力であったり、特にヘリコプターのような輸送機材についてはどうしても量的な面でおくれをとっているのではないかというふうに考えます。

 そこで、我が国自衛隊も、ヘリコプターのさらなる充実などによりまして、有事対応のための、特に空中輸送能力の向上に努めるべきと考えますが、認識をお伺いしたいと思います。

真部政府参考人 今委員から御指摘をいただきました点につきましては、防衛省・自衛隊といたしましても大変重要な課題であるというふうに認識をいたしております。

 実際、防衛計画の大綱におきましても、自衛隊の輸送能力について、重視すべき機能、能力として位置づけましてその整備に努めているところでございます。

 島嶼部に対します攻撃、あるいは大規模災害等への対応、こういうことのためには、自衛隊の部隊を機動的に展開し、また移動し得るよう、迅速かつ大規模な輸送能力を確保することが不可欠でございます。このため、この大綱におきましては、統合輸送能力を強化することとしているところでございます。

 具体的に申し上げますと、これまでに、輸送能力やヘリコプター搭載能力を強化いたしました「いずも」型の護衛艦二隻の整備を進めております。これとともに、現行の中期防に従いまして、輸送ヘリコプターのCH47JAの輸送能力を巡航速度や航続距離等の観点から補完、強化し得るV22オスプレイ十七機の導入、あるいは輸送機C2の十機の整備、それから、航続距離を延ばすための、輸送ヘリコプターCH47Jの改修等によりまして、自衛隊の航空、海上輸送能力を強化していくこととしておるところでございます。

 防衛省・自衛隊といたしましては、これらの取り組みを着実に進めまして、統合輸送能力を確保していくべく輸送能力の充実を図っていく考えでございます。

斎藤(洋)分科員 ありがとうございます。

 平成二十六年度からの中期防衛力整備計画でも、先ほど御答弁ありましたとおり、機動運用能力を高めていく、その中で陸上自衛隊も機動運用部隊の比率を高めていくということでありますので、ぜひ、今後とも真摯に取り組んでいただきますようにお願い申し上げます。

 ヘリコプターの関連でもう一点お尋ねをしたいんですが、昨今、災害出動などでヘリコプターが、マスコミでその映像が流れる場面が多々ございます。

 その中で、メーンローターが一つしかない単発機とメーンローターが二つある双発機とがあるかと思いますけれども、航続距離であったり輸送能力、あるいはエンジントラブルがあった際の安全性などを考えますと、多目的のヘリコプターについては、本来であれば、なるべく双発機の整備を優先していただいた方が我が国の国情にもかなっていると考えますが、この多用途のヘリコプターについての、双発機の比率を高めていく努力の現在の状況についてお尋ねをしたいと思います。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、現在、陸上自衛隊が保有いたします多用途ヘリコプターUH1Jでございますけれども、こちらは、ヘリコプター一機に対しましてエンジンが一台搭載されている単発機でございます。一方、このUH1Jの後継機といたしまして、平成二十七年度から、エンジンを二台搭載する双発機である新多用途ヘリコプターUHXの開発を進めているところでございます。

 このヘリが将来量産されることが決定された場合は、いわゆる双発機の比率が高まっていくことになっていくというふうに考えております。

斎藤(洋)分科員 ありがとうございます。引き続きお取り組みをお願いしたいと思っております。

 先ほどもお話ししましたとおり、我が国の国情、山岳地帯も多いですし、長距離の洋上機動という場面も多いかと思います。隊員の安全や任務遂行のためにも、双発機の比率をぜひ高めていただきたいというふうに思っております。

 ヘリコプターについて二点お伺いしましたが、私の地元の郷土部隊であります新発田第三〇普通科連隊はヘリコプター部隊としての指定を受けておりまして、地元で意見交換する際にも、やはりヘリコプターについての議論というのが非常に多くなりますので、二点確認を申し上げました。ありがとうございます。

 引き続きまして、自衛隊員の方々の処遇について、私からもお尋ねをしたいと思います。

 私の地元は寒冷地でございまして、再三申し上げております地元の部隊にもスキー記章の保持者の方が多々おられます。

 防寒具の調達ということについてOBの方と話をしていますと、昔は非常な苦労があったということで、後方装備品であります外套であったり上着、下着、手袋などについて、私費で購入をするようなケースも昔は多々見られたというようなお話を伺っております。

 今現在はそういうケースはかなり少なくなったということではございますが、例えば、新潟の雪というのは非常に湿度が高くて、屋外で活動するとすぐびしょびしょになるというような場面がございます。二着目を私費で購入するようなケースもあるのかもしれないというふうに推察をいたします。

 防寒具に限らず、個々の自衛隊員の衣服などにつきまして、予算不足などで、例えば数量やスペックが不足をして、あるいは制式品として採用されていないために調達ができないということで、個々の隊員が私物として調達をするというようなことがあれば士気にかかわるというふうに考えますけれども、後方装備品について適切な予算の確保、調達ということをお願いしたいと考えておりますが、御認識をお伺いしたいと思います。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 装備品といたしまして、例えば自衛官が装備する防寒具につきましては、職務遂行上の必要性などを踏まえまして予算措置を図っており、必要な数量を確保するとともに一定の数量を更新しているところでございます。また、勤務地域の特性に応じて、上着や手袋など、必要な品目及び数量を設定いたしまして自衛官に貸与しているところでございます。

 防衛省といたしましては、今後とも、職務遂行上の必要性などを踏まえつつ、自衛官の実情等に十分配慮して、防寒具などの必要な装備品が適切に確保されるよう努力してまいりたいというふうに考えております。

斎藤(洋)分科員 ありがとうございます。

 適切に調達をされるようにという御配慮の部分でぜひお願いをしたいんですが、例えば、現場では、二双目の手袋を自費で購入しているケースが多々ありますとか、あるいは、駐屯地には売店があるかと思いますが、駐屯地の売店に話を聞いてみますと、実は、こういうものが非常に、私費で購入する人が多いというようなケースはあろうかと思いますので、ぜひ、現場の隊員の方々であったり売店関係者へのヒアリングなんかも行っていただきまして、身の回りの品について、有効であるあるいは必要であるということであれば、制式化をして採用していただいて、しっかり予算を確保して調達をしていただくという取り組みをぜひお願いしたいというふうに思います。

 私は、現場での創意工夫というのは非常に重要だと思っていまして、例えば服装や身につけるものについて、個々の隊員の方々が現場で新たに工夫をされて試行錯誤をされるというのはすごく大事なことだと思います。ただ、もしそれが事実上の制式品のような形でみんなが調達をしているということになりましたら、これはもう制式化をして調達をしていただくという努力をぜひお願いしたいというふうに思います。

 隊員の方々の処遇ということで、叙勲についてお伺いをしたいと思います。

 叙勲制度のあり方につきまして、官民格差ですとか男女格差ということを是正していく必要があるということも含めまして、今現在、政府において、叙勲制度の見直しに向けて有識者懇談会が行われております。

 私個人の認識といたしましては、国防という、公益を守り、かつ危険な公務に従事をされる自衛隊員の方々につきましては、同じ公務員同士でありましても、事務職員の方々と比べて、より適切な扱いを受けるべきではないかというふうに考えております。

 そこで、自衛隊関係者が叙勲制度上もより適切な取り扱いを受けられるように、防衛省・自衛隊としてぜひ働きかけていただきたいと考えておりますが、いかがでしょうか。

深山政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十五年に策定されました現在の防衛大綱におきましても、自衛隊員が高い士気と誇りを持って任務を遂行できるよう、栄典、礼遇に関する施策を推進すると明記されておりまして、こうしたことも踏まえまして、叙勲も含めて、現在いろいろな検討を行っております。

 これまでも、平成十五年秋から危険業務従事者叙勲が新たに設けられまして、年間約千八百名の元自衛隊員の方々が叙勲対象となっております。

 また、これまで、元統合幕僚会議議長、現在の職名でいいますと統合幕僚長に該当いたしますが、この元統合幕僚会議議長につきましては瑞宝重光章が授与されておりましたけれども、平成二十六年春には竹河内元統合幕僚会議議長に、また平成二十七年秋には石川元統合幕僚会議議長に、それぞれ瑞宝大綬章が授与されるということになってまいりました。

 今後とも、防衛省としては、我が国の防衛のため身命を賭して任務を遂行している自衛隊員がその個人の功績にふさわしい栄典が受けられるように、関係機関と協議してまいりたいと考えているところでございます。

斎藤(洋)分科員 ありがとうございます。

 統合幕僚会議の議長経験者の方々が瑞宝大綬章を受章されたというのは非常に大きな前進だと思っておりまして、政府の御努力に感謝を申し上げたいと思っております。こうした動きを、ぜひ今まで以上に、一般幹部の方や一般隊員の方にも波及をさせていただきたいというふうに思っております。

 特に、個別に見ていきますと、組織としての活力を維持して、かつ防衛力を維持するために、自衛隊は若年定年制を採用しておられます。叙勲の対象となるに際しまして、通算在職年数が勘案をされていると言われておりますから、その関係で、一般の事務系公務員に比べて不利になるのではないかということも指摘をされております。ぜひ、先ほど御答弁いただきましたとおり、自衛隊関係者の叙勲につきまして、適切な取り扱いが受けられますように御努力をお願いしたいというふうに思っております。

 海外の防衛関係者、国防関係者の方々ですとか駐在武官の方々と話をしても、現役のうちに叙勲をされて、記章をつけられて公式の行事に出席をしておられたりしますから、それとのバランスも含めてぜひ御努力をお願いしたいというふうに思います。

 次に、同じ処遇に関連しまして、公務遂行中の死亡事故というのはゼロにするように努力をすべきではありますが、万一発生した場合につきまして質問したいと思います。

 同僚の大西議員から既に質問をしておりますので、少し具体的にお尋ねをしたいんですけれども、賞じゅつ金が一定の場合に支給をされるということでありますが、例えば演習中に車両事故に遭って亡くなったという場合には、賞じゅつ金の対象にはなるんでしょうか。

深山政府参考人 お答え申し上げます。

 賞じゅつ金は、自衛隊の他の一般の職務に比較して、高度な危険が予測され、災害を受ける蓋然性が高い職務に従事する隊員が、一身の危険を顧みることなくその職務を遂行し、また、これらの職務に特有の事故により死亡した場合など、死亡された場合だけでなく障害を受けられた場合もこれは対象になり得るわけでございますけれども、授与するというものでございます。

 具体的には、海賊対処行動、災害派遣及び原子力災害派遣に従事中に死亡した場合など、あるいは落下傘降下、不発弾等の除去、潜水作業及びレンジャー訓練中の事故で死亡した場合などは賞じゅつ金の対象となっておるところでございます。

 一方、先ほど、訓練中の事故ということがございましたが、全ての訓練中の事故が賞じゅつ金の対象となるわけではございません。今言ったような、困難な任務に従事した等を対象としております。

 なお、賞じゅつ金の対象ではないようなケースで、負傷されたり、不幸にしてお亡くなりになった場合でありましても、先ほど御答弁申し上げましたが、その場合には、国家公務員災害補償制度の一環として補償がなされることになります。

 また、高度な危険が予想される状況下でそうしたことに遭われました場合には、五割増しした公務災害補償が支給されるという制度がございます。

 以上でございます。

    〔主査退席、小田原主査代理着席〕

斎藤(洋)分科員 ありがとうございます。

 具体的には個々の判断になっていこうかと思いますけれども、例えば演習中というのは、私も演習場を見学させていただきましたが、不整地をかなり高速で車体の大きな車両が走る脇を、一般隊員の方もまた行動するというような危険な場面が多々あるかと思います。これを避けるということはやはり任務の性質上できないと思いますので、賞じゅつ金の対象となり得る、高度な危険性が伴い、かつ一身の危険を顧みることなくその職務を遂行中に事故に遭われるという場合はやはりあろうかと思いますので、賞じゅつ金の対象というものが適切に広く認められますように、ぜひ今後とも対応をお願いしたいと思います。

 引き続きまして、自衛隊員の方々の勤務環境でありますとか駐屯地の整備につきまして、具体的に何点かお伺いをしたいと思います。

 まず、自衛隊員の方々の公務員官舎の整備につきまして、そもそもどのような方針で取り組んでおられるか、簡潔に御答弁をお願いしたいと思います。

深山政府参考人 お答え申し上げます。

 自衛隊員用の宿舎につきましては、先ほど申し上げました防衛大綱にやはり記述がございまして、必要な宿舎の整備を進め、即応性を確保するとともに、中期防におきましても、即応性を確保するため、駐屯地、基地等の近傍等において必要な宿舎の着実な整備を進めることとされているところでございます。

 これらを踏まえまして、自衛隊の宿舎整備に当たりましては、できる限り駐屯地等の近傍に設置して自衛隊の即応性を確保することといたしております。

 さらに、平成二十六年度以降、即応態勢を確保するために無料宿舎制度というのが拡充されました。自衛隊においても、国民の生命または財産を保護するための非常勤務に従事する隊員に貸与する無料宿舎について、今中期防期間中におおむね二万二千戸まで拡大するという方針でおります。

 今後も、自衛隊の宿舎は即応態勢を支える重要な基盤であるという認識のもとに、引き続き必要な宿舎整備に努めてまいりたいと考えております。

斎藤(洋)分科員 ありがとうございます。

 自衛隊員の方々につきましては、駐屯地以外の居住が認められる方であっても近傍への居住が求められるという点で、一般の公務員とは大きく事情が異なるわけでありまして、ぜひ引き続き、宿舎の確保、特に駐屯地の近傍でなければ即応態勢は維持できないという観点から、御努力をお願いしたいと思います。

 引き続きまして、駐屯地の関係で、具体的に地元の新発田駐屯地のことをちょっとお尋ねしたいんです。

 都市計画法上、新発田駐屯地は、新発田市によりまして第一種の中高層住宅地域に指定をされていると伺っております。そのために、建ぺい率ですとかに一定の制約がありまして、必要に応じた施設の増設などに制約があるという御意見を伺っております。もしこういうことがあるのであれば、国から市に対して用途地域の変更を求めていくということも必要かと思いますが、お考えをお伺いしたいと思います。

真部政府参考人 ただいま委員がおっしゃいましたとおり、新発田駐屯地は第一種中高層住居専用地域の指定を受けた地域に含まれておりまして、このため、具体例を申し上げますと、例えば弾薬庫など、こういった地域には設置できないとされている施設につきましては、新築は原則できないといったような制限を受けております。また、同じ仕組みの中で、駐屯地全体の床面積、こういったものにも制約を受けているところでございます。

 ただ、法律によりますと、一定の場合といいましょうか、法律用語では特定行政庁と言っておりますけれども、これはこのケースにおきましては新発田市でございますが、こちらの許可がいただければ、制限されている建築を行えるという規定が建築基準法にございます。

 こういったことを踏まえまして、新発田駐屯地において施設の整備を行うに当たりましては、当然のことながらこういった関係法令の規定に従って実施していくことになるわけでございますが、特に新発田市を初めとした関係機関とよく調整をいたしまして、部隊運用に必要となる施設の整備というものにつきましては、これが確保できるように努めてまいりたいと思っております。

斎藤(洋)分科員 ありがとうございます。

 この住宅専用地域の指定がありますために、例えば、新発田駐屯地では新入隊員の教育課程の一部をプレハブ施設で行っていたりですとか、事実上の制約はどうしてもあるという声も伺いますので、ぜひ、協議ですとかを通じまして適切な駐屯地の整備ということができますように、環境整備に御尽力をお願いしたいと思います。

 続きまして、今度は駐屯地のグラウンドの問題なんです。

 と申しますのは、新発田駐屯地は新発田城跡に設置をされた駐屯地でありますが、新発田城はアヤメの城と書いて菖城という別名があるぐらいで、もともと湿地帯につくられたお城であります。そのため、グラウンドも排水工事などを一切やったことがないために、グラウンドの水はけが極めて悪いという状況であります。具体的には、例えば、駐屯地の周年行事があるときに、しばらく雨が降っていないにもかかわらず、泥田のような状態で行事を催行するというような実態があります。

 これはぜひ予算を確保していただいて、新発田駐屯地のグラウンドにつきましても早急に排水性を改善していただいて統合機動能力を高めていただきたいと思っておりますが、いかがでしょうか。

真部政府参考人 今委員御指摘のとおり、私どもも、新発田駐屯地のグラウンドは水はけが悪うございまして、雨が降ったり雪が降ったりが続く場合にはぬかるんだ状態になるということは承知をいたしております。

 私ども、厳しい財政状況の中、毎年度、全国の駐屯地等からさまざまな施設整備の要望を受けまして、難しい中で優先順位をつけて施設整備の予算化に努めているところでございます。

 そういう中ではございますけれども、今、新発田駐屯地の件につきましても、私ども真摯に検討をさせていただきたいというふうに思っておるところでございます。

斎藤(洋)分科員 ありがとうございます。

 この新発田駐屯地のグラウンドの排水の問題というのは、本当に、地元の一般市民の方も含めて切に改良を願っておりまして、ぜひ大臣も御尽力をお願いしたいと思います。実際、近隣に小中学校もあるんですが、小中学校のグラウンドはからからになっているのに、新発田駐屯地のグラウンドだけ水浸しというような状況がありますので、ぜひ改善をお願いしたいと思います。

 こういった問題、今私は地元の駐屯地を見ておりますので申し上げましたけれども、地元のことだけではなくて、全国でいろいろあろうかと思いますので、駐屯地の建築規制の問題でありますとか、グラウンドの排水も含めて、整備の問題、ぜひ御尽力をお願いしたいと思います。

 以上、いろいろ申し上げてまいりましたが、正面装備の充実、それから自衛隊員の処遇ですとか勤務環境の改善に努めるということが自衛隊の即応能力の維持向上に不可欠だと考えております。ぜひ、防衛省・自衛隊一丸となっての取り組みをお願いしたいと思っておりますが、最後に大臣の意気込みをぜひお聞かせいただきたいと思います。

中谷国務大臣 本日は、斎藤委員の方から、自衛隊の活動や処遇につきまして、地元の駐屯地の実例も挙げまして御指摘をいただきまして、ありがとうございました。

 平素から駐屯地を訪問していただいて、直接、隊員から意見を聴取し、またいろいろな問題についてもみずから確認をいただいて御質問をいただきましたことにつきまして、敬意を表したいと思います。

 衣服とか装備品のことについての御指摘がありました。

 みずから手袋を買ったり外被を買ったりすること、私も三十年前は自衛官でありまして、私費で手袋を買ったり装備を準備したりしていたこともありますが、あれから三十年たっておりまして、きょう、その現状等もお知らせいただきましたので、現状につきまして調査をしまして、さらなる充実に努めてまいりたいと思っております。

 また、賞じゅつ金のことについての質問がございました。

 確かに、自衛隊というのは相当厳しい、また危険な訓練をいたしておりまして、夜間も演習場で車を走らせるなど、本当にこの対応等につきまして、危険の中での訓練も続けられておりますので、賞じゅつ金等におきましても、現場における自衛隊の活動を十分精査の上、適切なものになるように検討をしてまいりたいと思っております。

 また、宿舎の整備につきましても、できる限り駐屯地等の近傍に設置をいたしまして、自衛隊の即応性を確保してまいりたいと考えております。

 御指摘のグラウンドの整備にいたしましても、あと関連の施設におきましても、やはり隊員の居住と、訓練をする上において必要な施設でございますので、局長の方から回答がありましたけれども、この駐屯地のグラウンドにつきましても、必要に応じて適切に対応をしていく考えでございます。

 きょうは、隊員の処遇、また勤務環境等に御指摘をいただきました。いずれも隊員の士気にかかわる重要な課題でありまして、今後、適切なものになるように、即応性の維持向上に努めてまいりたいと思っております。

 本日は、御質問いただきましてありがとうございました。

斎藤(洋)分科員 ありがとうございます。ぜひよろしくお願いします。

小田原主査代理 これにて斎藤洋明君の質疑は終了いたしました。

 次に、上田勇君。

上田分科員 おはようございます。公明党の上田勇でございます。

 きょうは、横浜市内の米軍施設の返還関連のテーマについて何点か質問させていただきますので、どうかよろしくお願いをいたします。

 平成十六年に日米間で横浜市内の米軍施設の大部分の返還について合意がなされ、これまで順次返還が進んでまいりました。平成二十六年には深谷通信所が、これは約七十七ヘクタールの施設でありますけれども、返還され、二十七年には上瀬谷通信施設、ここは二百四十二ヘクタールの施設でありますけれども、返還が行われました。

 この間、これは通信施設でありますので本体の施設はそれほど大きくないんですけれども、周りが利用制限がかかっているので、そこでは農業が行われていたり、あるいは、野球場がつくられていて、少年野球などがそこでずっと行われてきました。

 この間、防衛省では、そうした民有地の地権者あるいは野球場の既存の利用者や、またその周辺の住民などに対しても非常に丁寧な対応をしていただいてきているということは、地元でも評価されているところでございます。

 その中で、旧上瀬谷通信施設について昨年六月に返還をされました。現在は、土壌汚染の調査を、もともと旧日本軍が使っていた施設でありますので、旧日本軍やその後使った米軍による施設の利用の経緯等を図面や聞き取りなどで確認しながら、地区全域において調査の実施に取りかかったところであります。

 この先は、構造物とか埋設物等の撤去などの原状回復をする作業があるわけでありますが、最終的に、原状回復のためのこうした作業の進捗状況及び今後のスケジュールについてお伺いしたいというふうに思います。

中島(明)政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生御紹介いただきましたとおり、旧上瀬谷通信所は平成二十七年六月三十日に返還をされております。

 その後、原状回復措置の一環といたしまして、この施設内の土壌汚染に係る資料等調査、先生御指摘いただきましたけれども、旧海軍施設ということで、過去の地形、航空写真、それから周りの環境測定データ、こういうものを中心といたしまして、昨年の八月から十二月まで実施をしたところでございます。

 この調査におきましては、この施設の使用履歴を確認したところでございまして、この結果を踏まえまして、平成二十八年度におきましては、土壌汚染の概況調査、それから、埋設ケーブル、アスファルトといった工作物、こういったものの撤去工事を予定しているところでございます。これらにつきまして、平成二十八年度予算案に関連経費を計上しているところでございます。

 今後とも、上瀬谷通信所の原状回復措置に引き続き取り組んでまいりたいと思っております。

上田分科員 この地区には、先ほど申し上げたとおり、ずっと営農が行われてきたことがありまして、二つの耕作者団体がございます。行政区が二つにまたがっているということもありまして、その農業専用地区協議会が二つあって、それに所属する農業者が野菜栽培などを中心とした農業を行っております。土壌汚染調査ということになると、地権者とか周辺住民に無用な心配をかける可能性もなくはないので、慎重な配慮をお願いしたいというふうに思います。

 そのほか、これまでも防衛省は地権者に丁寧に対応してきていただいているというふうに受けとめておりますけれども、今後の調査等の実施に当たっても、引き続き、地権者ともよく協議をし、その意向を十分踏まえて対応していただきたいというふうに考えております。よろしくお願いいたします。

中島(明)政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほども申し上げました調査結果につきましては、本年一月、先生今お述べになりました地元の農業専用地区協議会の方々に説明会を実施しております。この説明会におきまして、先ほどの資料等調査の結果に対しましては、例えば、土壌汚染の蓋然性についての確認、また、聞き取り調査をさらに十分にやってほしいといったような御意見を承ったところでございます。

 防衛省といたしましては、今後の調査の実施に当たりまして、地権者の方々に丁寧に説明を行うとともに、説明会における先ほど述べたような地元の方々の声を踏まえながら、きめ細やかに対応してまいりたいというふうに考えておるところでございます。

上田分科員 ぜひ、引き続きよろしくお願いをいたします。

 この地区において、将来の農地の利用について昨年の十月に意向調査を行いました。その結果、約半数が営農を継続するなど農地としての利用を希望されている、そして、四分の一程度が都市的な利用も含めた土地の活用を希望しているという結果でありました。残り四分の一がさまざまな意見だったということであります。

 農地を保全して都市農業を振興していくゾーンと、今度は都市的な利用を含めた土地を有効活用するゾーンに、換地などを行って、目的ごとに機能を集約する必要が出てまいります。ちょうどこの地区の中心部分に、環状四号線、いわゆる海軍道路と言われている道路が走っておりますけれども、その両側については、道路の両側は交通の便もいいので土地を有効活用し、その東西の離れたところに、農地等を集積して農業を振興するゾーンを設定するというような構想が立てられております。

 また、地元の横浜市では、広域防災拠点の構想もあるということであります。そうなりますと、その際には、機能を集約しますので、市街化区域とそれから市街化調整区域、この線引きなどをやらなければなりません。現状は全部調整区域になっておりますけれども、そういう線引きなどをやらなければなりません。

 そうした都市計画の策定がこれから必要となってまいります。これはあくまで横浜市の事業でありますけれども、国としてもその策定に当たって万全のサポートをお願いしたいと思いますけれども、御見解を伺いたいというふうに思います。

佐南谷政府参考人 ただいま御指摘のございました跡地における土地利用につきましては、現在、横浜市を中心といたしまして地権者との調整が進められていると承知いたしております。当該跡地における都市計画につきましては、横浜市が決定権限を有しておりまして、土地利用の方針の熟度が高まった段階で検討を行うと伺っております。

 国土交通省といたしましては、横浜市における都市計画の策定に当たって適切に助言するなど、しっかりとサポートしてまいりたいと考えております。

上田分科員 よろしくお願いいたします。

 今ここの地区というのは、国有地もあり、それから民有地もあり、混在している地区でありますし、なおかつ、営農継続の意向というのもそれぞればらばらなものですから、機能を集約していかなければなりませんので、その点は、ぜひ国土交通省、それから、もちろん原状回復に当たっている防衛省においても、御協力のほどよろしくお願いを申し上げたいというふうに思います。

 次に、この旧上瀬谷通信施設の地区というのは、東名高速道路の横浜町田インターから実に近い、至近距離のところにあります。しかし、長年開発が制限をされ、利用も制限されてきたために、そこに至るアクセス道路などが未整備であります。もちろん、先ほど申し上げたいわゆる海軍道路はあるんですけれども、それも道幅が余り十分でないということもあります。また、それぞれ地区内の道路などの都市インフラの整備がかなりおくれております。

 今後、横浜市において跡地利用計画を策定していくことになるんですけれども、その計画に沿った開発の実施に当たっては、やはり都市インフラの整備を、今までずっとおくれてきましたので、集中的に実施する必要があります。

 これまで国の安全保障という観点から利用の制限が行われてきた地区でもありますので、こうした整備に向けて、予算の確保等、国においても特段の配慮が必要と考えておりますけれども、その点、国土交通省の方の御意見を伺いたいというふうに思います。

青木政府参考人 お答え申し上げます。

 先生今お話ございましたように、旧上瀬谷通信施設の跡地利用につきましては、跡地全体の計画的な土地利用を進めていく、こういった必要がございますものですから、現在、横浜市におきまして、跡地利用基本計画の策定に向けまして検討が進められているというふうに承知をいたしております。

 この基本計画におきまして跡地の具体的な利用計画が定められてまいりますと、その計画を支援するための例えばアクセス道路計画など、こういったものが決まってまいります。その段階で、横浜市の方からの道路整備等の要望に対しまして、国土交通省といたしましては、社会資本整備総合交付金など、こういったもので支援を検討させていただきたい、こういうふうに考えております。

 なお、この旧上瀬谷通信施設周辺では、既に、例えば交通渋滞、こういった課題に対応する、それから、今後策定されます、先ほど申し上げました跡地利用計画の基幹道路としても期待をされております主要地方道環状四号線、それから市道五貫目三十三号線、この道路整備が横浜市において進められてございます。国交省として、現在、この整備につきまして、社会資本整備総合交付金で支援をさせていただいているところでございます。

 国交省といたしましては、こういった道路整備につきまして、引き続き社会資本整備総合交付金などで支援をさせていただく、このように考えてございます。

上田分科員 ぜひ、特段の御配慮をお願いしたいというふうに思います。

 この旧上瀬谷通信施設の跡地の利用の観点から、横浜市としては、平成三十八年以降に、国際園芸博覧会、花博の開催を今前向きに検討しているところでございます。近々、横浜市におきましてもそうした方針を固めて、ことしの秋ごろを目途に国に要望したいという方向で検討していると聞いております。

 これが国に上がってきますと、その場合には、今度は国際的な要請が必要になってまいります。国際園芸家協会とかそれから国際博覧会事務局へ申請などを行わなければならない、これは国の仕事として行っていただかなければならないわけであります。

 この花博を誘致するということは、随分これまで開発整備がおくれてきたこの地域の活性化を図っていく上でも非常に有効だというふうに考えておりますし、今申し上げましたインフラ整備もおくれていますので、これをきっかけにそうした必要なインフラを整備するということも、その起爆剤になるんじゃないかというふうに考えております。

 ぜひ、この花博の誘致について、横浜市の方からそういった要望が出た場合には、国としても積極的な協力をお願いしたいと思いますけれども、その点の御意見を伺いたいというふうに思います。

佐南谷政府参考人 ただいま御指摘のございましたように、国際園芸博覧会は、国際園芸家協会及び博覧会国際事務局からの認定を受けまして開催される博覧会でございます。日本におきましては、一九九〇年に大阪で国際花と緑の博覧会が開催されております。

 現在、横浜市におきましては、旧上瀬谷通信施設跡地における国際園芸博覧会の開催可能性につきまして検討を行っていると伺っております。

 今後、国際園芸博覧会の開催につきまして横浜市から国に対して要望がありましたら、関係省庁とも相談しながら適切に対応してまいりたいと考えております。

上田分科員 ぜひよろしくお願いしたいというふうに思います。

 それで、先ほどの課題にまた戻るんですけれども、この旧上瀬谷通信施設は、先ほど申し上げましたように、土地は十分確保できるんですけれども、現状では、もしこういった大きなイベント、花博のような大きなイベントを開催した場合には、どれだけそのお客さんを受け入れられるのか、そういうアクセスの問題もございます。

 ですから、先ほど申し上げました都市インフラの整備とあわせて、その辺、御検討をいただきたいというふうに思っておりますし、その際、必要な整備については特別な力を入れていただくように要望させていただきます。よろしくお願いをいたします。

 次に、ずっと取り上げてきました旧上瀬谷通信施設、その一部は国有地であります。冒頭申し上げましたが、旧深谷通信所、ここは全部国有地でございます。この土地というのは、深谷が七十七ヘクタールでありますし、上瀬谷通信施設は、民有地も随分まざっていますけれども、相当広い土地があります。

 横浜市にとっては、オープンスペースという意味では非常に貴重な土地になってまいりますので、これから、先ほど申し上げました広域防災拠点を初め、さまざまな、公園の整備等利用計画、非常に貴重な財産になるというふうに思っております。

 そういう意味で、横浜市として公共的な目的で利用を計画したいという場合には、ぜひ国有地については、廉価な売却であるとか無償貸し付けなど、利用に対する負担軽減について特段の支援をお願いしたいというふうに思いますが、財務省の見解を伺いたいと思います。

中尾政府参考人 お答え申し上げます。

 在日米軍から返還されました旧上瀬谷通信施設及び旧深谷通信所の国有地につきましては、旧上瀬谷通信施設については平成三十年度以降、旧深谷通信所につきましては平成二十八年度中に、防衛省から財務省に引き継がれる予定でございます。その後、現在、横浜市において検討中の利用計画に沿って処分等を行うこととしております。

 国有地につきましては、国有財産法や国有財産特別措置法により、公園や道路などの施設の用に供する場合、無償貸し付け等の優遇措置を適用することができ、厳しい財政事情のもと、旧上瀬谷通信施設及び旧深谷通信所といった返還財産につきましては、財産の沿革、経緯等に鑑み、一定の範囲で優遇措置を適用する取り扱いとしております。

 旧上瀬谷通信施設及び旧深谷通信所の国有地につきましても、こうした考え方のもと、横浜市が策定される利用計画に沿って適切に対応してまいりたいと考えております。

上田分科員 ぜひよろしくお願いしたいというふうに思います。

 この周りはかなり市街化が進んできていて、ここの旧米軍施設のところだけが、利用制限がかかっていたということもありまして、開発が取り残されているという反面、貴重なそういうオープンスペース、しかもほとんどの場所が平地で、横浜は非常に丘陵地帯が多いものですから、非常に貴重な土地でありますので、その有効利用というのは、これからさまざまな計画が立てられていくと思いますけれども、国としても、さまざまな方面からのバックアップをよろしくお願いしたいというふうに思います。

 次に、冒頭申し上げました平成十六年の日米合意で順次返還が進められてきたんですけれども、今残されているのが根岸住宅地区であります。

 この地区は、横浜市のまさに中心部、中区に存在をしている地区でありまして、周辺はいわば高級住宅街になっているところでもございます。長年ここに米軍の住宅があったわけでありますけれども、既に米軍側においても返還に向けての準備はかなり進んでいるというふうに承知をしております。

 この場所は、殊さら土地所有の関係が複雑でございまして、入り組んでいる。米軍施設の中に今でも民間の住宅が建っているといったような、そういう非常に複雑な状況にあり、さまざまな難しい条件があるのはよく理解するところであります。

 とはいっても、平成十六年からは十年以上が経過をしているわけでありますので、ぜひ、早期返還に向けての取り組みをお願いしたいというふうに思います。

 そして、もう一つお願いしたいのが、十六年の合意には含まれておりませんけれども、ノースドックについてであります。

 これは、横浜港のまさに中心的なところにありまして、港湾整備あるいは都市計画を行っていく上でも、立地的には非常に重要なところにございます。このノースドックについても、ここの返還促進、あるいは共同利用というような提案も出ているようでございますけれども、そうした取り組みを通じて、有効活用ができるような働きかけをこれからお願いしたいというふうに思います。

 この二カ所について、あわせて御見解を伺いたいというふうに思います。

中谷国務大臣 現在、全返還対象施設面積の約九割、三百七十五ヘクタールの返還を実現したところでございます。

 お尋ねの根岸の住宅地区につきましては、池子の住宅地区及び海軍補助施設の横浜市域における米軍家族住宅及びその支援施設の建設が完了をした時点で返還する旨を合意しているところでございまして、引き続き、米軍家族住宅等の移設事業の進捗を図りまして、早期返還の実現に向けて取り組んでいるところでございます。

 この返還に伴いまして、米軍の家族住宅百七十一戸等を整備することで合意をしておりまして、現在、配置検討及び基本計画、敷地造成等を実施しているところでありまして、今後、環境影響評価及び基本計画、建築土木等を実施することにいたしているわけでございます。

 そして、横浜ノースドックにつきましては、これまで、横浜冷蔵倉庫、また神奈川ミルクプラントの返還に伴いまして倉庫等を移設、集約しまして、現在、米軍のさまざまな物資の陸揚げ、また保管等を行うために使用しているものと承知しております。防衛省といたしましては、これまで、道路用地として一部土地の返還等、地元からの御要望につきまして米側に働きかけるなど、可能な限り対応しているところでございます。

 上田委員におかれましては、日米安保におきます米軍施設の返還等につきまして、地元の方々の御理解もいただくべく御尽力いただいておりますが、なお、今後、防衛省といたしましても、そのような御意見を聞かせていただきまして、早期の返還に努めてまいりたいと考えております。

上田分科員 大臣から御答弁をいただきまして、大変にありがとうございます。ぜひよろしくお願いをいたします。

 もちろん、日米安保で米軍の施設を提供する、それは、我が国としてやっていかなければならないことでございます。しかし、そうした施設ができるだけ有効に、また、地域のまちづくりともバランスをとりながら進めていかなければならない、そういう意味で、日米間で、横浜市内の施設の返還、十年前に合意をして、今、順次進めていただいていることは、大変評価をしているところでございます。

 引き続き、そうした安全保障の政策の確保とそれから地域づくり、そういったことを両立させながら、また、防衛省におきましてもぜひ進めていただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いを申し上げまして、ちょっと早いですけれども、質問を終わらせていただきます。

 以上でございます。よろしくお願いいたします。

    〔小田原主査代理退席、主査着席〕

平沢主査 これにて上田勇君の質疑は終了いたしました。

 次に、渡辺周君。

渡辺(周)分科員 おはようございます。民主党、渡辺でございます。

 早速質問に入らせていただきますが、まず冒頭に、ちょっと昨晩の通告はしておらぬのですけれども、防衛大臣か外務副大臣、国連安保理で、対北朝鮮の制裁決議で重大な進展があったと昨晩から報道されております。内容はつまびらかにはなっておりませんけれども、一連の北朝鮮の核実験それからミサイル発射で米中が合意に達したということが発表されております。

 この安保理の制裁決議、近く採択されるのではというふうな観測ですが、日本政府として、この採択がいつされるのか、どのような内容かということについて把握をしておりますでしょうか。

木原副大臣 お答えを申し上げます。

 今、渡辺先生から御指摘いただきましたように、この安保理制裁について米中間で重大な進展があったということは我々承知をしております。

 その中身について、また引き続き、安保理のメンバーの中で共有をしながら、これから調整をしていかなければいけないというふうに思っております。

 我々も、安保理の非常任理事国でありますので、その議論をリードできるように頑張っていきたいというふうに思いますが、具体的な時期等については、まだ現時点でつまびらかに申し上げる段階にはないということだけ申し上げておきたいというふうに思います。

渡辺(周)分科員 採択されるという見通しについてはいかがですか。いつということはまだとおっしゃいましたけれども、採択されることについては、可能性としてはどのように把握をし、また、あわせて、同盟国であるアメリカから日本政府に対して何らかの草案についての相談というのか、あるいは通告というのか、こういう案でいくというようなことは当然認識を共有しているのかどうか、その点も確認したいと思います。

木原副大臣 お答えを申し上げます。

 二点、御質問をいただいたかというふうに思います。

 採択されるかどうかということについては、当然のことながら、これだけ累次にわたる安保理の制裁決議違反を繰り返しているわけでありますので、当然採択されなければいけないし、おかげさまで米中の間に進展があったということでもありますので、採択されるというふうに見ております。

 もう一点、日米の情報の共有でありますけれども、この点につきましては、さまざまなレベルにおいて緊密に連携をとり合っておりますし、それぞれの制裁の内容についても情報交換をしているということでございます。

渡辺(周)分科員 ありがとうございました。

 ぜひ、この中には我が国の立場、安全保障問題と同時に、やはり拉致問題を私たちは抱えている、北朝鮮という国家によるテロであります、この拉致があるということを同列に各国に理解していただいて、そして、その制裁の中に我々としての主張が盛り込まれるように、日本政府として積極的にそれぞれの国とお話をしていただきたいと思います。

 その点について、副大臣、もう一言、よろしくお願いします。

木原副大臣 お答え申し上げます。

 拉致の問題は安倍政権の最重要の課題であります。そして、重大な我が国の主権侵害の問題でもございます。したがいまして、私ども、安保理の非常任理事国として、当然、拉致問題のことも含めて、今回の安保理決議について最大限実効性のあるものにしていく、そういう立場で交渉に臨んでいきたいと考えております。

渡辺(周)分科員 次に、防衛大臣にお尋ねをいたします。

 先日、私も大変懇意にしております、またいろいろ情報提供していただいております特定失踪者問題調査会、荒木和博さんが代表を務めておりますけれども、ことしの二月十日付で、特定失踪者が自衛隊施設の周辺で百二十一人不明になっているというような調査報告をまとめられて、大臣宛てに究明の要請があったと思いますが、大臣、そのような要請があったことは御存じですか。

中谷国務大臣 二月の十日に、特定失踪者問題調査会、荒木和博代表また村尾建兒専務理事初め、この調査会の方々が防衛省を訪問されまして、特定失踪者の中で、自衛隊また在日米軍の施設の周辺で居住または行方不明になった方々や、特定失踪者の中で自衛官及び元自衛官の方々に関する調査と情報提供を防衛省に要請されたという報告を受けております。

渡辺(周)分科員 大臣は、直接はお会いにはなっていなかったんですね。

中谷国務大臣 はい、その日は所用がありまして、豊田官房長がお会いして要請をいただきました。

渡辺(周)分科員 内容を、いらっしゃる方にも知っていただきたいと思いますので、ちょっとここで説明しますと、特定失踪者問題調査会は平成十五年に、キム・ジョンイル、金正日が拉致を認めた日朝首脳会談、拉致はやはり北朝鮮の犯行であった、しわざであったということで、その後、全国各地で行方不明になっている方々の御家族から問い合わせが相次いで、ひょっとしたら自分の肉親、友人も北朝鮮に実はさらわれたのではないか、北朝鮮という国の関与がささやかれていたけれども公式に認めたということで、ひょっとしたら行方不明になった肉親が北朝鮮にいるのではないかと問い合わせが相次いだことから発足をした団体でございます。

 今申し上げた行方不明者ですけれども、一月二十八日付の産経新聞をちょっと引用しますと、今日までの調査の結果、拉致の可能性を排除できない特定失踪者約四百七十名のうち、四分の一に当たる百二十一名が、自衛隊の施設あるいは米軍施設の周辺に居住していた人間であったり、あるいは関係する出身地だった方が実は行方不明になっていて、四分の一というのは大変な数字ではないか、偶然ではないのではないかということが、特定失踪者問題調査会の調査によって明らかになった。

 この特定失踪者の方は、御家族の事情で非公開になっている方もいます。もちろん名前は把握をしているわけですが、対外発表をするときには、例えばアルファベットでSさんとかMさんとかいうお名前で発表されていますが、特にこの一覧表が、北海道であるとか青森県であるとか、あるいは埼玉県であるとか、さまざまな自衛隊の関連施設、駐屯地、演習場がある周辺で分けたところ、極めてそういう結果が出たということでございます。

 ここで、特定失踪者問題調査会の方々が分析をするには、実は、北の工作機関が軍事情報を収集するために、拠点をこうした自衛隊施設や米軍基地に設けて、拉致する対象者、狙う人物の選定であるとか追尾、誘引、誘い入れですね、あるいは直接行動として拉致に出たのではないかというふうに言っております。

 そこで質問いたしますけれども、依頼もあったと思いますが、今回官房長がこうした要請を受けて、防衛省として、特定失踪者、なるほど、そう言われてみるとと、例えば、もう一度、失踪者なり、あるいは工作拠点らしきものがあるのではないか、そういうことも含めまして、何らか今後、調査をしていく、あるいは情報収集するということはお考えになっていますでしょうか。大臣、いかがですか。

中谷国務大臣 特定失踪者問題調査会から御要望をいただきましたその文書におきまして、自衛隊及び在日米軍施設周辺、あるいは関連が推定される地域において失踪が非常に多いと述べられております。

 北朝鮮による拉致容疑事案につきましては、拉致の可能性を排除できない事案も含めまして、一義的には、警察におきましてさまざまな情報収集また捜査等を行っているということから、防衛省といたしましては、御指摘の是非につきましてコメントすることは差し控えますけれども、当然のことながら、警察による捜査に適切に協力をしていく考えでございます。

 他方、他国の防衛体制また防衛政策について関心を有する国家が、情報収集の手段として防衛施設または防衛省の職員への接近を図るということは一般的なことであります。防衛省としては、今回の要請にも留意しつつ、北朝鮮を含む外国からの諜報活動を初めとする外国からの不当な働きかけから、防衛省が保有する重要な情報を保護するために、カウンターインテリジェンス機能の強化に努めてまいります。

 また、北朝鮮による拉致容疑事案につきましては、拉致の可能性を排除できない事案も含めまして、今後、警察による捜査等におきまして、有益である場合には警察と適切に協力をしていく考えでございます。

渡辺(周)分科員 北朝鮮に限らず、やはり我が国で、我が国の防衛体制であるとかあるいは防衛情報、安全保障に関する情報収集のために、いわゆる人的接触も含めて、いろいろな、恐らく我々が想定していないような手段で、諜報のプロのような人間が多分周辺にいるのであろう、そういうふうに考えるのが当然だろうと思います。

 その一つの証左として、証拠として、特定失踪者問題調査会の荒木さんが、昨年、北朝鮮の工作機関マニュアル、金正日主義対外情報学というマニュアルを入手され、翻訳をされております。

 その中に書かれておりますけれども、敵の心臓部に情報組織を打ち込むことに力を集中させつつ、そして、敵たちの上層人物が頻繁に往来する地域や軍事戦略的に重要な地帯に情報組織を整備して積極的に活動すれば、重要な情報資料を多く収集することができるというようなことが書かれているんですね。

 ですから、まさに自衛隊の基地、在日米軍の基地周辺、そこにいる人たちを自分たちの手中に陥れることができれば、ひょっとしたら何らかの、例えば、出入りしている人間ならば、警備の体制がどうなっていて、門から玄関までどれぐらいあって、どういうセキュリティーチェックでということも当然情報収集できるだろうということで、当たりをつけて狙われたのではないのかなというふうにおっしゃっているわけでございます。

 あわせて、先ほど大臣が少し言及されましたが、昭和三十年代から平成九年十二月までの間に、現職の自衛官、元職の自衛官で失踪した方が九人いるとこの調査会は報告しているわけでございます。さらに、米軍基地に従事していた人が二人、特定失踪者問題調査会ではないんだけれども、警察発表で二人、自衛隊の関係者がいるということでございます。

 これは、実際防衛省に籍を置いていた方、現職、元職問わず、失踪したということについては、防衛省として、さかのぼって、なかなか古い話もございますけれども、調査をしたり、あるいはデータを何らかの形で、当時の捜査資料なりから、今になっていろいろわかることもあると思うんですが、そういうことをするというお考えはありませんでしょうか。

 そして、そのことを、もちろん警察、公安当局なり、あるいは、対外公表可能なものであるならば、こうした特定失踪者問題調査会に提供するというようなことは、現職の自衛官の失踪についてはどのように今後関与していかれるのか、その点についても伺いたいと思います。

中谷国務大臣 渡辺委員も、防衛省の情報保全、またインテリジェンス保護のあり方等につきまして十分御承知のことであると思いますが、防衛省におきまして、適切な組織管理の観点からも、隊員に対する外部からの不当な働きかけから重要な情報を守るというカウンターインテリジェンスの観点からも、所属する隊員が特異な状況に置かれることがないように常に確認を図っております。

 他方、今回の調査会の皆様方の御要望、また委員の御指摘も含めまして、個別具体的な場合における防衛省の対応等の状況につきましては、我が方のカウンターインテリジェンス能力にもかかわることからお答えを差し控えさせていただきたいと思いますが、先ほど御答弁をいたしましたとおり、防衛省といたしまして、こういった情報が警察による捜査等において有益である場合には、警察と適切に協力をしていく考えでございます。

渡辺(周)分科員 当時は、神隠しだとか、ある意味で蒸発したなんという言葉もあったんですけれども、この北朝鮮による蛮行というものが明らかになってから、非常に言葉巧みにかの国に連れていかれた人間もいれば、横田めぐみさんのように力ずくで連れていかれた、あるいは、外国で言葉巧みに誘われて拉致をされた、いろいろな例があるわけでございます。今になってみると、全てが北朝鮮の、ほぼ北朝鮮のしわざであったということでございまして、当時はわからなかったことも今になればいろいろ符合することもあると思いますので、その点について、防衛省としても、真相解明に向かってぜひ協力をしていくべきだというふうに思います。

 また、情報の保全については、これは私も副大臣時代に、副大臣室にいっぱい、皆さんが持ってきた、ハニートラップにひっかからないようにという、隊員向けの教育の非常に立派なドラマ仕立てのDVDなんかを見ました。いろいろな手段で寄ってくるんだなというのを見まして、これは隊員の一人一人に認識をしていただくように、妙になれなれしく、親しく、いろいろな形で寄ってくる人間には気をつけろと、その点についてはぜひとも徹底を図っていただきたいと思います。

 北朝鮮の問題についてもう一つ大臣に伺いたいのですが、ここへ来て、米韓軍と北朝鮮が、それぞれが軍事的な配備、突然ステルス戦闘機が韓国に配備をされたり、あるいは北朝鮮は、アメリカ、韓国に対して、軍の最高司令部が、先制的な作戦を準備するだろうというようなことを言って、まあ、この国はいつも言葉激烈にブラフをかけてくるわけです、ソウルを火の海にするとか、東京を火の海にするとか、いつもいつも言ってくるわけでございますが。

 先ほど最初に伺った安保理の制裁が、どのような形で実効性あるものが実施されるのか、それによって北朝鮮の国内体制にどのような影響が出るのかということは現時点ではわかりませんけれども、いずれにしても、北朝鮮がまた何らかの軍事的威嚇行動、あるいは、それが威嚇にとどまらず、軍事的行動につながるかもしれないというようなことにも備えておかなければいけないと思うわけなんです。

 かつて、私どもが与党であったときに、自民党からは、北朝鮮が崩壊した場合には拉致被害者、いわば邦人救出をどうするかという法案が検討されておりました。私も、何とかこれを実現できないものかと思ってやりましたが、邦人救出のために自衛隊・防衛省が動くということはなかなか難しい。当時野党だった自民党は、随分、相手国の同意なくしてでも行くのだ、安全確認がされているから行くのではなくて、危険なところだからあえて自衛隊が行くのだというような主張でもございましたけれども、残念ながら、邦人救出法案が邦人輸送法案になりました。

 こうした、北朝鮮と米韓の緊張が万々が一高まっていった場合に、日本として、拉致された日本人、特定失踪者、行方不明になってかの国で助けを待っている邦人に対して何ができるのかということについては今検討されていますでしょうか。あるいは、何らかの図上演習とかシミュレーションとしてやっているのかどうか。その点について、今、いかがなのか。野党のときの自民党はそういった法案も用意されておりましたけれども、今、防衛省内ではどのような検討がされているのか、その点について確認をしたいと思います。

中谷国務大臣 昨年、特別委員会で安全保障法制につきまして議論が行われまして、海外における邦人の命をどのように守るべきかというような非常に重要な課題におきまして議論をいたしました。

 一般に、在外邦人の安全確保というのは、その邦人の所在する領域国が第一義的な責任を有するということになりますが、平和安全法制により、海外の邦人を守るための制度の充実につきまして、海外の活動等について国際法上の観点また我が国の憲法上の制約がありまして、今回の法整備によっても限界があることは事実でございます。

 在外邦人の保護措置につきましては、領域国の同意に基づき、武力行使を伴わない警察的な活動として行うものでありまして、領域国の同意がある場合に、その同意が及ぶ範囲、すなわち、その領域において権力が維持されている範囲で活動することを前提といたしております。

 このようなことでございますが、拉致被害者の方々の安全確保も含めまして、在外邦人等の安全確保のあり方につきまして、今後とも、政府全体として不断に検討を行っていくべき課題であると考えております。

渡辺(周)分科員 検討を行うというよりも、万が一北朝鮮が崩壊をする、つまり、もう主権国家として成り立たなくなっているような状況もあるのではないかと私は思うんです。その場合に、どのような形で、例えば同盟国を通じて、実際に北朝鮮が国交を持っている西側の国に協力を依頼して、例えば日本語でアナウンスをするなりして邦人に声をかけて、何月何日にどこそこに、あらゆる手段を使ってそこに来てほしいとか、あるいは、平壌にある同盟国の、西側の国の大使館に助けを求めてほしいとか、何かいろいろなことができると思うんです。

 その点について、今から検討ではなくて、当然検討されていると思いますけれども、北朝鮮が万が一、というよりも崩壊をした場合に、その際に日本としてどういうことができるのか。もう一回、大臣、検討をこれからするなんてそんなことじゃなくて、防衛省として例えば何ができるのか。

 例えばの話ですが、防衛省の人間が外務省の職員として身分がえをして、そして邦人保護という、まず外務省という役所のする最大の目的から何らかの形でできないのかということは検討されないのでしょうか。最後にそれを伺います。

中谷国務大臣 海外の邦人救出につきましては、昨年の新しいガイドライン等においても日米間の協力として記述をされているわけでありますが、やはり同盟国である米国との協力が極めて重要だと考えておりまして、これまで米国に対して、拉致被害者も含めまして情報提供をしてきておりまして、拉致被害者の安全確保のための協力を米国政府に依頼いたしております。

 また、邦人救出の安全確保のあり方につきましても、政府として、米国と緊密に協議をしつつ、不断に検討を行ってまいりたいと考えております。

渡辺(周)分科員 あらゆる場面を想定しての対応ができるように、ぜひとも取り組みを期待いたします。

 次に、外務副大臣に伺います。

 十二月二十八日の、韓国とのいわゆる慰安婦問題の合意についてでございます。一二・二八合意。十億円が拠出されることが約束されましたけれども、この十億円の財団の構想というものは今どうなっているのか。これは、一月四日の韓国紙ハンギョレ新聞の社説では、個別的な純粋支援費に使うんだということでございまして、追慕、記念事業には使わないというようなことでございます。いわゆる当事者の方々に直接支援をするということでこの財団は性格づけされているものでよろしいんでしょうか。確認です。

木原副大臣 お答えを申し上げます。

 財団につきましては、今まさに、昨年の日韓合意に基づいて、韓国側で検討していただいているというように承知をしております。

 そして、その具体的な事業の中身については、例えば、全ての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復に資する心の傷の癒やしのための措置、あるいは医療サービスの提供、あるいは健康管理及び療養、看病への支援といったようなものを想定しておりますが、その中身につきましても、引き続き両国でよく、緊密に協議をしてまいりたいというふうに思っております。

渡辺(周)分科員 それはまだ具体的に決まっていないということなのでしょうか。その確認です。

 それから、あわせて、韓国の場合は、御存じのように四月に選挙がありますね。それでこの日韓合意というのは政治的に問題視をされて、野党は当然これを政治問題化してくる。

 一月八日に韓国ギャラップというところが発表した世論調査では、これは一月十五日の読売新聞の記事からですけれども、ソウルの日本大使館の横にある少女像、移転には七二%が反対だと。しかも、一月二十二日付の日経に載っておりましたけれども、韓国外務省はホームページで、この十億円と少女像の移転は無関係だということを言っているわけです。朴槿恵大統領も、政府もああしろこうしろと言える問題じゃないということで、正直、リーダーシップは期待できない。釜山では、今度は八月に少女像を建てるという動きもありまして、市民団体がお金集めをしているところでございます。

 これを考えますと、日本側は、適切に処理されるものだろうと言っていますけれども、実際はこの少女像というものが、撤去、移転するどころか、ますますふえていくんじゃないか、このまま固定していくんじゃないか。ソウルの市長も大統領も、とにかくみんな、これは無理だと言っちゃっている。外務省もホームページに、十億円とは違う話だと言っちゃっているわけですね。

 これは、一つのシンボルとして、またウイーン条約にも違反する。やはり在外公館の威厳というものは尊重されなければならない、このウイーン条約で。日本は、行動対行動として、十億円を出すということも、この問題については、まずはこれを移転させることが先じゃないか。その辺の話し合いはされているんでしょうか。それとも、韓国のいろいろな政治事情で、とても今そこにいかないという状況なんでしょうか。いかがですか。

木原副大臣 お答えを申し上げます。

 韓国の国内の政治状況または政治日程等について、私から申し上げる立場にはないというふうに思います。

 その前提で、今回の措置につきましては、まさに委員から御指摘いただきましたように、公館の安寧そして威厳の維持の観点から日本政府が懸念していることを認知し、韓国政府として適切に解決されるよう努力するということを、まさに日韓合意で外務大臣そして長官が合意をし、そして両首脳でそれをまた確認したということでございますので、私どもとしては、このお互いの責任を双方が誠実に履行するということを期待しているということでございます。

渡辺(周)分科員 もう時間が来ましたからこれで終わりますけれども、その点について、もう一回大臣に答弁いただきたいんですが、ちゃんとそこを、努力するといって相手の出方を待っているのではなくて、向こうから何かの返事が来るのを待つんじゃなくて、こちら側としても働きかけをして、一定の協議を在韓日本大使館なりを含めてやっているのかどうか、そこを最後にお答えください。それで、具体的にアクションをしているということがちゃんと起きているのかどうか、そこだけを確認したいと思います。

木原副大臣 やりとりの詳細な中身につきましてはつまびらかに申し上げることはできませんが、各レベルで緊密に連絡をとり合っております。

渡辺(周)分科員 終わります。

平沢主査 これにて渡辺周君の質疑は終了いたしました。

 次に、原口一博君。

原口分科員 おはようございます。民主党の原口一博です。

 通告に従って中谷防衛大臣に伺ってまいります。

 この間の予算委員会での質問に続いてでございます。資料をお配りしております。

 総理が一月十二日に、沖縄の普天間基地の移設に関連して、沖縄の負担軽減についてお触れになりました。「そして、オスプレイについても、整備は木更津に移る、そして訓練は九州に移る、まさに運用のみが移るようになった。」と総理はおっしゃっています。

 その九州に移るという意味を中谷防衛大臣に先日伺いましたら、これは、県外訓練を行う場所の一例として九州ということにつきましては示したものでありますという御答弁でございました。

 中谷防衛大臣に確認しますが、もうこれは移ったんですか。どこかに移ったという事実があるかどうか、お答えください。

中谷国務大臣 沖縄の米軍基地負担軽減のために、オスプレイ等の訓練におきましては、沖縄以外において移転をするという方針のもとに、全国各自治体等におきまして、訓練の実施などにおきまして、防衛省といたしましても、その計画また移転の重要性等について説明をいたしているところでございます。

原口分科員 ということは、まだ移っていないということですね。今、各自治体に説明をして、お願いをしている、こういうことでよろしいですか。

中谷国務大臣 これは、日米の共同訓練、防災訓練、またいろいろなイベント等において、米軍が沖縄以外の地域におきまして活動していくことを要請しているわけでございます。

 例えば、日米共同訓練におきましては滋賀県また熊本県、防災訓練におきましても和歌山県、みちのくALERT等の宮城県、イベントにおきましても新田原の航空祭、また観閲式、自衛隊の観艦式などにおいて、米軍の参加ということで地元の自治体にも要請をしているということでございます。

原口分科員 防衛省の事務方に言います。本当に不誠実な答弁を大臣にやるのはやめてください。

 この間も、二十八年度予算を、FMSの総額を聞いたら、二十七年度を答えていますよ。さらには、オスプレイの佐賀県への要請についても、事実確認しても二転三転する。今のは違うでしょう。普天間基地の移設に関連して、普天間の米軍の訓練がどこに移るのかと。

 イベントやそういったものを自治体にお願いをしていたり、今米軍がいろいろなところでやっていますね、それをお願いするんじゃなくて、私が防衛大臣にお聞きしているのは、普天間の米軍がやっている訓練をどこにどうお願いをしているのか、そしてそれが移っているんですかということでございますので、明確にお答えください。

中谷国務大臣 これはあくまで、普天間で行われている、普天間の辺野古への移設までの間に、オスプレイの沖縄県外における訓練等においていろいろと要請をしているということで、例えば、私のふるさとの高知県におきましても防災訓練が計画をされておりますが、この際も沖縄からオスプレイが参加することにおいて、実際に計画を立てて要請をいたしたりしておりまして、実際に普天間のオスプレイにおける訓練を、沖縄ではなくて、沖縄以外の地域においてお願いをしているということでございます。

原口分科員 そうすると、普天間でやっている訓練をもう高知県でなさっているわけですね。

中谷国務大臣 高知県で行う防災訓練におきまして、沖縄に所在しているオスプレイ、これが参加して訓練をするという計画を立案しているということでございます。

原口分科員 防衛大臣とは長い間安全保障法制を一緒に研究させていただいて、協力をしてきました。ですから、ここははぐらかさずに。今のは防災訓練でしょう。

 普天間でやっている、まさに航空部隊と陸上部隊が一緒になった訓練、この訓練を、防災訓練じゃないですよ、まさに一旦有事のときにどうするかという訓練をいろいろやっているわけです。その訓練が高知県でもう行われていますか、防災訓練以外に、こう伺います。

中谷国務大臣 今のは防災訓練の一例でありまして、沖縄に所在するオスプレイが参加するという一つの例でございます。

 本来の共同訓練なども全国の演習場等を使って行われるわけでございまして、来年度におきましても、沖縄からオスプレイが日米共同訓練などに参加すべく、現在計画をつくっているところでございます。また、去年も実施をいたしました。

 このように、全国の空港また演習場の米軍オスプレイによる利用の可能性、また利用する場合の内容等につきまして、米側とまず相談もしなければなりませんし、受け入れる地元、実施する地域の御理解もいただきますので、このような形で、累次、オスプレイが参加する訓練、イベント、こういうことを進めて沖縄の基地負担軽減をしているということでございます。

原口分科員 大臣は、沖縄の普天間基地にいるオスプレイを使った訓練がどこで行われているかということを今お答えになっているんです。

 私が伺いたいのは、沖縄で今やっている海兵隊の訓練、普天間でやっている訓練、これの訓練がどこにどのように移りますかということを伺っているのであって、沖縄にいるオスプレイが来たから、それが、オスプレイというのは沖縄の普天間基地にある航空機の中の一つですね。私はそのことを聞いているのではなくて、沖縄の訓練が、普天間の訓練が九州のどこかで行われているんですか、それはどんな訓練ですか、あるいは日本のどこかで行われているんですか、そこを伺っていますので。防衛省が大臣にそこをはぐらかして答弁書をつくっているんだと思いますよ。だから、そういう答弁になるんです。

 なぜこんなことを聞くかというと、この間、大臣は、普天間の移設に関して、航空部隊とそれから地上部隊とが一体的に運用されなければいけない、したがって、訓練の成果を上げるためにこの一体化が何としてでも必要だと。私もそう考えるんです。

 とすると、今、辺野古に基地を移転しようとしていますけれども、この移転と訓練、これは辺野古に移転したら、そうそう簡単に、訓練を一〇〇だとすると、その一〇〇のうち、例えばオスプレイの航空訓練は外でできるかもわからないけれども、本体訓練は一定の距離以外のところでは、本体訓練と申しますのは、陸上部隊と航空部隊が一体となった、そういう訓練は沖縄以外ではできない、こういう理解でよろしいですね。

中谷国務大臣 海兵隊の陸上部隊、航空部隊との関係におきましては、海兵隊の一部のみを切り離して国外、県外に移転することは困難であるということでございます。

 訓練というのは一時的なものでございますので、そういった訓練期間に沖縄を離れるということは可能でございますが、しかしながら、部隊としての拠点におきましては、陸上部隊、航空部隊といった各部隊が相互に深い関係にございますので、沖縄に拠点は必要であるということでございます。

 訓練等の実施等につきましては、私の方からも米軍に対して、グアムの国外やまた沖縄以外の日本の地域において、共同訓練などの実施等につきまして、その必要性について説明をいたしております。現実にも、来年度の日米共同訓練の計画等につきましても、それぞれ理解を得た上で、できるだけ沖縄から離れた地域で訓練が実施できるように、そういう努力はいたしております。

原口分科員 そこが私、よくわからないんですよ。

 ヘリ部隊と陸上部隊は恒常的に訓練をともにしなければならない、恒常的に。それは海兵隊の持つ特性にもよっているんだと思うんですね。まさに陸海空が一体となってオペレーションをやるから海兵隊であって、そうすると、今の大臣の御答弁では、ヘリ部隊と陸上部隊の恒常的な訓練というものは前提にしない、つまり、ヘリ部隊だけ切り離した訓練というのはあるという理解でよろしいですか。

中谷国務大臣 おっしゃるように、海兵隊としては、部隊として即応性、機動性を発揮する必要がございますので、その構成要素である陸上部隊、航空部隊、後方支援部隊等が相互に近傍に配備をされて、平素から合同で効率的、効果的に訓練を実施する必要がございます。

 他方で、政府としては、この移設の関係で、オスプレイにつきまして、沖縄県外における訓練等につきましても、沖縄のオスプレイの駐留及び訓練時間を削減するものとして着実に進めているわけであります。方法としては、日米共同訓練とか自治体との防災訓練、またイベントといった機会を積極的に活用して、こういった沖縄におけるオスプレイの滞在、駐留、訓練の時間を削減しているということでございます。

原口分科員 私、そこがよくわからない。ここで聞いていらっしゃる、それこそ専門家の皆さんがそろっておられますけれども、わかりますか、委員長。

 つまり、ヘリ部隊と陸上部隊は恒常的に訓練をしなきゃいけないのに、オスプレイの航空部隊だけ、今おっしゃったような防災訓練に行ってみたり、あるいは日米の共同訓練に行ったりということができるわけですね。それもできるということでいいんですか。

 というのは、では、佐賀空港に何の訓練をお願いされているのか、あるいは佐賀空港以外の九州に。その訓練の中身というのは何ですか。今おっしゃったような日米合同訓練、あるいは防災のときのオスプレイのオペレーション、こういうことをお願いしているということでよろしいですか。

中谷国務大臣 訓練でありますので、海兵隊全体と日本の自衛隊が共同訓練することもあり得るわけでありますけれども、オスプレイが陸上部隊と別に単独で訓練をすることも、また一部の陸上部隊とともに沖縄県外で訓練することを否定するものではありませんので、それぞれの訓練のやり方というものはございます。

 ただし、オスプレイが単独に自衛隊と訓練をする、また防災訓練に参加するということはあり得るわけでございますが、決して、陸上、航空部隊がそれぞればらばらに機能するためにということではなくて、本来の米軍の海兵隊自体の機能を維持する訓練というのは当然のことながら継続されているということでございます。

原口分科員 そうすると、本当にこれは沖縄の負担軽減になるんですかね。

 ヘリ部隊と陸上部隊は恒常的に訓練をともにしなければならない。そして、それがばらばらだと、あるいは水上を飛ぶところが多いと、リスクやパイロットのストレス、機材の摩耗、燃料費の増大のコスト等を考慮しなければならず、それは訓練としてはやはり一つ問題ではないかという認識を私は持っているわけです。

 さて、前回二月二十二日の要求事項について、外務省から資料が出てきました。

 要求事項、民主党政権時代、米軍普天間基地の県外移設、また徳之島移設案を断念した経緯について、外務及び防衛官僚が当時の総理及び外務大臣に説明した公文書を出してほしい、勝手に怪文書を出して当時の総理を惑わせたと理解しており、指定期間を過ぎたものは開示してほしいと。

 外務省が私の要求事項についてこのように言っていますが、これは訂正してください。

 私は、怪文書を出して当時の総理を惑わせたと理解していません。何があったんだろうかと不思議に思っているだけで、それが怪文書であるのかどうかというのはわかりません。議事録を見ても、そういうことをやったんですかと聞いているのであって、それが私の認識であるという答えはここで撤回をしてほしいと思います。

 これは理事会で出された資料でございますので、委員長、後でよろしくお取り計らいをお願いいたします。

平沢主査 後刻、理事会で協議します。

原口分科員 ありがとうございます。

 その上で、回答がございました。

 平成二十八年二月二十二日の原口議員からの要求事項について、政府内の検討内容に係る文書を対外的に公表することは適切でないと考える。開示しないということですね。

 さらに、ここで丁寧に、原口議員から要求のあった公文書が、昨今、鳩山元総理が言及している普天間飛行場の徳之島移設案に係る二〇一〇年四月十九日付の文書であるならば、念のため、改めて確認したが、その存在は確認できなかった。この文書が理事会に報告をされています。

 きょうは理事の皆さんがいらっしゃいますが、委員長におかれて、この文書が真正のものであるかどうか御確認ください。

平沢主査 後刻、理事会で協議します。

原口分科員 理事会に出されておりますので、この文書だと思います。わざわざ私が要求していない文書まで調べていただいて、ありがとうございます。

 ここで、そうすると、外務省にはなかったと。これは防衛省にありますか、大臣。

中谷国務大臣 当時の普天間移設をめぐる日米間のやりとりにつきましては、あくまでも組織として外務省及び防衛省が説明する立場にありますが、その上で、外務省及び防衛省関係課におきまして、御指摘の協議の文書につきましては確認をされておりません。

原口分科員 防衛省でも確認できなかったということがわかりました。まさに出所不明の文書であります。

 そこで伺いますが、平成二十二年時点で、ウィルツィー在日米軍J5部長、ヤング在京米大安保課長、この方は存在しますか。また、船越外務省日米安保条約課長、芹澤防衛省日米防衛協力局長、これは平成二十二年四月十九日、今理事会に外務省が出したものと思われますが、存在しますか。アメリカについてはお答えがなくて結構です。日本側のお二人について、この方がその当時この職におられたのか、船越さん、芹澤さんについてお答えください。

森政府参考人 お答えいたします。

 二〇一〇年当時、外務省におきましては、船越北米局安全保障課長が在籍しておりました。

中谷国務大臣 念のため、当時の関係者である芹澤元日米課長にも照会いたしましたけれども、御指摘の文書は確認されませんでした。

原口分科員 大臣、その人がそのときにいたかを聞いているので。わざわざ聞いてくださったんですね。ありがとうございます。芹澤さんは、その文書は知らぬとおっしゃったんですね。

 そうではなくて、その当時、芹澤さんが防衛省日米防衛協力課長でしたか、そこだけ聞いていますので、お答えください。

中谷国務大臣 辺野古への移設を確認いたしました平成二十二年五月に担当の部局の課長を務めておりましたのは、日米防衛協力課長でありました芹澤清でございます。

原口分科員 ありがとうございます。

 そこで外務省に伺いますが、今、外務省では、当時の総理にこういうありもしないものを勝手につくって、そして政策をゆがめたのではないかという申し入れに対して監察を行っておられる。監察官がおられて、その方は異動されて、今、官房長を中心に何があったのかインスペクションを行っているというふうに聞いておりますが、これは事実ですか。

森政府参考人 お答えいたします。

 外務省におきましては、御照会を受けまして各種の調査を行ってきておりますが、外務省の職員が独断で作成した文書を用いて総理に説明をするというふうなことは考えられないと考えております。

 このように、当時の関係者の職務遂行について不適切な行為があったとは認識していないところでございます。

原口分科員 私は、不適切な行為があったということを聞いているんじゃなくて、今、外務省の官房長をトップに調査をして、監察をして、そして御報告を元総理にもなさるのではないかというふうに思料しているわけですけれども、調査はされていないということでよろしいですね。

森政府参考人 外務省といたしましては、当時の文書を当たるなど、調査をこれまで行ってきております。

 先ほど申し上げましたのは、その結果におきまして、不適切な行為があったとは認識していないということでございます。

原口分科員 不思議ですね。そうすると、文書はなかった、しかし、政治家の側はというか、この国を率いる人の側はそれを持っている。これはどういうことですかね。

 大臣、私も国務大臣を拝命いたしましたけれども、やはりいろいろな政策を後から検証しなきゃいけないんですね。こういうことが起きると、何が本当で何がうそだったのか、あるいは事実関係がどうなのか、大変大事な、今、これは沖縄の皆さんも国全体も大きく関心をお持ちです。こういうことが起こるということは、沖縄の皆さんをある意味非常に愚弄した話であり、許せないことだと思うんですね。少しでも負担軽減をして、日本全体で基地の負担を軽くしよう、そう考えて行動している、これは党派を超えて、そういう人たちに対しても大変遺憾なことだと私は思います。

 ちゃんと調査をして、こんなことを勝手につくって、勝手に報告されるなんというのはあってはいけませんよ。だけれども、実際に文書をお持ちだとおっしゃっているわけですから、私はその文書がどういうものかわかりませんけれども、開示もできなければ、そういうことをやった事実もないというのであれば、政治家は、官僚がそういうことを後から閉ざしてしまえば何の検証もできない。これはやはり政治主導とも言えないし、国民の御意思にも背くんだというふうに思います。

 残された時間でFMSについてやりたかったんですが、二十八年度予算案の中身も言ってもらっていないんですよね。私は、これは一般会計の中で予算がつくんだというふうに考えていますが、FMSの予算は特別会計ではなくて一般会計でございますね。大臣、お願いいたします。

中谷国務大臣 はい、そうでございまして、二十八年度の予算案におきまして、契約ベースで約四千八百五十八億円を計上することといたしております。

原口分科員 今回の日米新ガイドライン、安保法制で、防衛費をそのことによって伸ばすことはないと言われていますけれども、前回も、さきの国会でも大臣と議論させていただきましたが、ROEの問題であったり、情報の統合運用だったり、オスプレイ一機でも、日本仕様にするのに、インテグレートのプログラムで相当のお金がかかるわけですね。大体百億ぐらいと聞いています。とすれば、やはり日米で共同に何かをやろうとすれば予算が伴う、そこははっきり認められた方がいいのではないかと私は思います。

 資料で、皆さんにあらかじめ申し上げますが、この映像じゃわかりませんけれども、少しショッキングなものがございますので、お断りしておきます。

 十をごらんください。これは、二〇〇一年の八月に本委員会で私どもが中東に派遣をされたときのものであります。イラクのバグダッド、それからもう一つはヨルダンのバカア難民キャンプ。

 バカアの難民キャンプでは、小学校の一番最初のところに、この左の上の、日本人の子供とパレスチナの子供が手をつなぐ絵が掲げてあります。日本のODAでつくられて、パレスチナの皆さん、難民キャンプの皆さんは日本に大変な感謝をしてくださっていました。日本は特別な国だということでございました。

 それ以外の絵は全部サダム・フセイン時代のバグダッドで、当時、我が予算委員会の派遣も、アメリカが二十キロ先に空爆をしていましたから、行かないようにということで話がありましたけれども、当時の野呂田予算委員長が英断をされまして、私どもはバグダッドに入りました。ちょうど九・一一の直前です。

 白血病棟、これは劣化ウラン弾の影響だと言われていますが、経済制裁でほとんど薬もなく、白血病の子供たちが大変な苦しみの中でお母さんと一緒に寝ていました。

 あと三つは、アーメリア防空ごうという、湾岸戦争のときに、誤爆で、五百人近いお母さんと子供たちが一瞬のうちに熱で亡くなった、爆弾で亡くなった、ミサイル弾で亡くなった。一番右の上の写真は、ちょっと不鮮明ですけれども、赤ちゃんの手形がついた壁だとイラク側は説明していました。

 何でこんな話をするかというと、今回、サダム・フセインの残党、フセイン政権の一部がISの中核となっているというふうに聞きますが、やはり、恐れを生むということを本気で私たち安全保障にかかわる人間も考えなきゃいけないと思います。

 恐れが恐れを生んで、そしてそれが、彼らが言うには、自分たちがこういう子供たちを守る手段がないから、圧倒的な大きな力に対してテロをと。テロは絶対に正当化できません。しかし、テロのもとにあるものが、こういう理不尽なものに対する怒りであったということがないようにしなきゃいかぬというふうに思うわけであります。

 もう時間がわずかですので、中谷大臣にぜひ、政治の世界の言葉も、恐れではなくて統合、怒りではなくて理解、それが大事なんだと思います。

 精神科医の水島広子さんが、アティテューディナルヒーリングという、それこそ白血病や難病の子供たちが最期を怖がらなくて済むように、恐れを手放すアプローチというのを、精神科、対人療法のアプローチでなさっています。

 私は、政治の世界も、そういうアティテューディナルヒーリングのような、今どうしてこの人がこんなことを言うんだろうとか、国会の中も、ある意味非常に、十年前と比べると、皆さんの心がささくれ立った社会を反映しているような気がいたします。恐れに恐れで返すのではなくて、恐れを手放すアプローチ、テロに対する闘いの中で、こういう心理的なあるいは精神的なアプローチもぜひ検討をしていただきますように。

 普天間基地の移設の問題についてはちょっと答弁がすれ違いましたけれども、また別の機会で議論させていただくことをお願い申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

平沢主査 原口君から指摘のありました資料につきましては、私から予算委員会理事会に報告させていただきます。

 これにて原口一博君の質疑は終了いたしました。

 次に、下地幹郎君。

下地分科員 質問通告していませんけれども、きのう、菅官房長官のところに名護市の十一人の市会議員が来まして、名護市を通さないで補助金を出してくれとかいろいろなことを要望しているわけなんですけれども、大臣はそれについてどう思いますか。

中谷国務大臣 官房長官との面会の後、私のところにも市議団の皆さんが来られました。

 御要望をいただきましたが、その御要望等につきまして、現在、交付金の制度といたしまして、これはやはり行政の市町村に対して出しているものでございまして、きちっとした行政以外に出すということは法律的にも難しいということは、私の方からも説明はさせていただきました。

下地分科員 大臣、私はその方がいいと思うんですね。

 基地問題を解決したいというのもわかりますけれども、私たちも沖縄で日米同盟というのは必要だということでありますけれども、いろいろな人がいるんですよね。そういうものに反対する人もいる。しかし、県知事もそうですけれども、名護市長も、これは市民が選んだり県民が選んだりしているわけですから、国の意思と違うからといって新たな仕組みをつくるというのは余りよくない。

 これは、こういうやり方をしていることが四年後の選挙において評価されなくてかわる場合もあるし、いろいろな現象が起こってくると思うので、無理やりそういうことをやらずに淡々と、今、大臣がおっしゃった、行政上の手続にのっとってやられた方がいい、私の方からもそう申し上げさせていただきたいというふうに思います。

 それで、本論に入りますけれども、ハリス太平洋司令官の発言がありました。大臣もいろいろな質問を受けられていると思いますけれども、二〇二五年。

 政府としては、二〇二〇年までにつくって、移設に三年ぐらいかかる、移設に三年ぐらいかかって引き渡しをするというのが今までの政府の考え方ですよね。しかし、これは二〇二五年というようなことになっていますけれども、この二五年という数字は、政府の方から説明をしてハリス長官がそういうふうな発言をしたということなんでしょうか。

中谷国務大臣 せんだってもハリス司令官が防衛省に来られましたが、政府の方からそのような話はいたしておりません。

 現状につきましては、昨年の十月に辺野古移設の埋め立ての本体工事に着手をして、これまで陸上における仮設工事を進めて、現在、所要の準備を進めて、海上の工事を本格化していく段階にあるということで、そういった状況については御説明はしております。

 ハリス長官が米の公聴会で発言をされたことは承知をいたしておりますけれども、辺野古の移設に係る工事に関連しまして、その進捗状況について具体的に申し上げる段階ではないと考えておりまして、普天間の辺野古移設を含む米軍再編に係る計画につきましては米軍と協議しながら進めているところでありまして、政府側としましては、これらの計画をしっかり進めていくという日本政府のかたい意思、これを伝えているところでございます。

下地分科員 海兵隊の航空計画二〇一六年度版にはもう二〇二五年度の計画がつくられていますよね。このハリス長官の発言の根拠になったのは、アメリカの議会の、この海兵隊航空計画をもとに発言されていると思うんですけれども、今の、二〇二五年は説明はしていない。今、政府としては、国会の中でも私にも話をしたのは二〇二〇年、それから移設にかかるということを言っているんだけれども、アメリカの航空計画の資料の中には二〇二五年と書かれているということになるので、これは大臣の意思とは違うというようなことになろうかと思うんです。

 これに関して、この航空計画の二〇一六年度版は違うということを指摘して、アメリカ側に通告して、これを書きかえさせる、違いをやらせるというようなお考えをお持ちですか。

中谷国務大臣 御指摘の海兵隊航空計画二〇一六につきましては、今後十年程度における航空機、装備の意向を見据えて、アメリカの海兵隊が公表しているものでございます。

 アメリカ側に確認をしたところ、その内容は、随時変更され得ることを前提に、アメリカの内部の報告用の資料として作成をされたものでありまして、アメリカの国防省の正式な立場を反映したものではないと承知をいたしております。

 したがいまして、この二〇一六の海兵隊航空計画の内容につきまして、ハリス司令官の発言との関係も含めまして、日本政府としてはお答えする立場にはないということでございます。

    〔主査退席、小田原主査代理着席〕

下地分科員 この計画の内容で誤解を招く。なぜかというと、菅官房長官、安倍総理が五年以内の停止状態というのをおつくりになるというふうなことを沖縄県に約束しているわけですよね、合意文書で。となると、これが海兵隊の考えを反映していないということで済まされるかといったら、そうは済まされないと思うんですよね。

 二〇二〇年ということを今まで政府が申し上げてきた以上は、これが公式だろうが公式じゃなかろうが、しかも司令官が言っていることですから、やはりこれは指摘をして、違うよ、実際は二〇二〇年、二三年が移設の日だよということを明確にすべきじゃないの。

中谷国務大臣 事実、私も、いろいろな米側の方とお話をいたしておりますけれども、常々言っているのは、代替施設建設は日本側の責任において進めているものであると。政府からアメリカ側に対して、事業が完了してこの普天間飛行場の辺野古への移設が可能となる時期が二〇二五年になるという見通しを伝えたこともありませんし、また、米側からもそのような見通しが日本側に伝えられたこともありませんので、日本側と米側の考えは異なったとは認識をいたしておりません。

 いずれにしましても、政府から米側に対して、二〇二五年という見通しを伝えたということはございません。

下地分科員 だから、大臣、二五年という見通しを伝えたことはないと言っても、あそこの、太平洋の司令官が二〇二五年だと記者会見で申し上げているわけですよ。それが間違っているならば、日本の考え方と違うというならば、指摘をして直しておかないと。

 大臣、では、何年に完成するの。

中谷国務大臣 政府としては、当時の計画を全く変更はいたしておりません。

 また、米側につきましても確認をしたところ、随時内容は変更され得るという前提の海兵隊内部の報告用資料として作成されたものということで、アメリカの国防省の公式的な立場を反映したものではないという回答でございました。

下地分科員 日にちで言ってください、数字で。

中谷国務大臣 順調に進めば、工事は五年間で完了いたします。平成二十五年四月に日米で合意した統合計画につきまして、普天間飛行場の返還を「二〇二二年度又はその後」としているところでありまして、現在、この本体工事に着手をいたしまして、陸上における仮設工事を進めまして、所要の準備をして海上の工事を本格化していく段階にあるということでございます。

下地分科員 二〇二二年でいいんですね。

中谷国務大臣 はい。平成二十五年の四月に日米で合意した統合計画、これは変更しておりません。その中では、普天間飛行場の返還を「二〇二二年度又はその後」としているところでございまして、この計画に従いまして工事をしているということでございます。

下地分科員 大臣、今、二回も答弁しているけれども、二〇二二年度その後という言葉が二〇二五年という言葉で、ハリスさんに対して違うメッセージを送っているんじゃないの。二〇二二年度、はっきり申し上げたらどうですか。

中谷国務大臣 これは、平成二十五年当時に日米間で真摯に議論をいたしまして、その上で得られた合意といたしまして、「二〇二二年度又はその後」としているところでございます。

下地分科員 だから、その後というのは何ですか。その後というのは、二〇二五年があり得るということなんですか。

中谷国務大臣 合意したとおりでございまして、「二〇二二年度又はその後」ということが日米間で合意されたということでございます。

下地分科員 だから、大臣、ハリス長官の二〇二五年は私どもは関知していません、航空計画二〇一六年度版は決して、そんながちっとしたものではなくて、変更があり得るものだから別に大したことはないし、それに関しては、私どもは指摘をして直すつもりはないということを大臣はおっしゃっているわけなんですよね。

 それでいて、何年かとお聞きしたら二〇二〇年と。二〇二〇年という言葉の後にその後というのは、二〇二〇年という言葉の後のその後だったら、三〇年も四〇年も五〇年も六〇年もありますよ。それを、しかも五年以内に普天間を閉鎖状態にするということを言っている政府が、二〇二〇年なら二〇二〇年と明確におっしゃらなければ整合性がないでしょう。だから、その後という言葉の意味がどこにあるのかというのをしっかり言わないとわからない。

 だから、二〇二〇年と言ったら、ここで僕の話はもうこれで終わりなんですよ。二〇二〇年、はい、わかりました。それでいいんです。その後と言ったらいつなのか。何でハリスさんの二〇二五年も否定しておきながら、その後という言葉は二〇二五年から二〇二〇年の間のことを言っておりますとか、何か、その後の定義をくださいよ。

中谷国務大臣 二〇一三年当時の日米の合意した統合計画におきましては、「二〇二二年度又はその後」といたしておるところでございますが、これは、当時のさまざまな議論の上、このような表現になったものでございまして、やはり日米間の約束でありますので、この中で工事を実施するということでございます。

 なお、ハリス発言の内容につきましては、前後の質問とか、ハリス発言の真意につきまして、全文を読まないとその本当の意味が確認できませんので、今後、アメリカ側にその真意も確認してまいりたいと思っております。

下地分科員 その後というのには、では、二〇二五年というのは否定しないという意味ですね、二〇二五年。

中谷国務大臣 政府の姿勢といたしましては、順調に進めば、工事が五年以内に完了できるように全力で取り組んでいるところでございます。

下地分科員 いや、僕が聞いているのは、二〇二〇年という答弁をいただいて、その後という言葉の意味の中に二〇二五年は否定するものじゃないというような意味でよろしいですかと。その後があるんだから。だから、ハリス長官のやつは否定するものではないということでいいんですよね。その後の解釈を知りたいわけです。二十年とか三十年後をその後と言う場合もあるし。その後というのは、何年以内をその後と言っているのか。二五年はその後の中に入っている、ハリス発言は否定するものじゃない、その後の中に入っている、それでよろしいんですね。

中谷国務大臣 日本政府の考え方は、順調に進めば埋立工事が五年で完了をいたしまして、二〇二二年には普天間は返還可能になるということでございます。

下地分科員 大臣、だからその後に、その後という言葉を今のは、大臣はその後を今答弁で言わなかった。三回答弁したけれども、その後を言ったけれども、今の答弁は言わなかった。二〇二〇年に完成する、では、この答弁でいいですね。

中谷国務大臣 順調に進めば、二〇二二年に普天間の返還は可能になると考えております。

下地分科員 大臣はその後という言葉を答弁の中から削除しましたので、これはもう二〇二〇年が日本政府の完成の日にちだというようなことで私は認識するし、この答弁で大体誰が聞いてもそう思うでしょう。

 大臣がおっしゃった、二〇二〇年に完成するというのは物すごく重い答弁で、完成日がこの数字でしっかりと認識されるというようなことになるわけなんです。

 それで、大臣、もう一個ですけれども、大臣のところに、今裁判をやられていますよね。裁判をやられていますけれども、この代執行の裁判が十月の二十七日から始まったんですよね、去年。今、第三回の口頭弁論が終わって、それで今高裁の判決が来るというようなことになるわけなんです。これで、まあ裁判結果がどうなるかわかりませんよ、それは私たちが論じることではないかもしれませんけれども、どっちにしろ、政府が勝とうが沖縄県が勝とうが、最高裁まで裁判をやるということになると、司法関係者の話では、八月ごろか九月ごろには判決が出るだろうというようなことになっているわけなんですよね。

 これで大体十一カ月ぐらいの期間がかかるというようなことになるんですけれども、岩国の飛行場を建設したときに設計変更がありますけれども、設計変更は何回ありましたか。

真部政府参考人 岩国の飛行場の滑走路移設事業に関しましては、都合八回の公有水面埋立承認願書の変更を行っております。

下地分科員 真部局長、設計変更においては、一回ごとに県知事の埋立承認を得なければいけないというルールは変わりませんよね、沖縄県においても。

真部政府参考人 適用される法律関係は変わらないと思いますので、基本的には同じとお考えいただいてよろしいかと思います。

下地分科員 変わらないということになると、局長、これは一回ごとに、今でも埋立認可を廃止しろと県知事が申し上げているわけよね。となると、県知事が埋め立ての設計変更が来た段階で印鑑を押さないケースというのが出てくる可能性があるわけですよね。こういうふうな印鑑を押さないケースになると、印鑑を押せばそのまま順調にいきますね。印鑑を押さないケースが出てきた場合には、防衛省としては、今のような代執行をやっていかなければいけないという状況になるわけですか。

真部政府参考人 これまでのところ、現在、変更の申請をしなければならないという状況にはないというふうに考えておりますので、恐縮でございますが、今、委員おっしゃった仮定の話を進めてお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。

下地分科員 じゃ、行政的に聞きましょう。

 一般的に、一般論ですよ、防衛省の埋め立てじゃなくてもどこの埋め立てでもあるわけですけれども、県知事さんが印鑑を押さないというふうになった場合には、もうそれは事業を諦めるか、事業を進めようとした場合にはどういう手続をやるの。

真部政府参考人 必ずしも直接のお答えになっていないかもしれませんが、そういう変更申請が必要な場合には、やはり知事の理解が得られるような申請内容にして申請をすることに努めるということがまず第一だろうと思っております。

下地分科員 いや、僕はそんなことを聞いているわけじゃないよ、局長。

 一般的に、皆さんは埋立事業をやられている。やられていて、事業が理解いただければそのまま進みますよね。知事が印鑑を押さないとなってきた場合には、二つの選択肢しかないですよね。一つは、押さないから事業を諦めるかということになるけれども、もう一つ、事業を進めたいという場合には、何らかの行政的な手続をしていかなければいけない。

 今回、知事が取り消しの裁判を言ってきたときに、皆さんは、この埋立承認の取り消しに対する裁判をやっているわけですね。代執行の裁判をしているわけです。そういう方法をやらざるを得なくなりますよねということですよ。

真部政府参考人 申しわけありません。

 まことに恐縮でございますが、もしそういうことがあれば、関係法令に従って適切な措置を選択していくということになろうかと思っております。

下地分科員 局長、それでいいと思うんですよ。関係法令にのっとってそれをやるというようなこと以外に道はないんですよ。

 関係法令にのっとってやるとなると、大臣、岩国で八回ですよ。今、那覇空港を見ても、翁長知事が印鑑を押していない設計変更があるんですよ。十月に出したものを今でも押していないというようなことがあるんですよね。今の辺野古の状況からすると、相当にこういうケースが出てくる。一回ごとに代執行をやらなければいけないというようなことになる可能性があるわけなんですよ。

 私がそう言っても、仮定の話には答えられないというのは、もう答弁はわかっていますから私が説明しますけれども、これを一回ずつやると間違いなく、この一回の代執行を一回ずつやって十三回やると十年ぐらいの歳月がかかることは、誰しもわかっているんです。

 だから、こういうふうな状況になってくるという時間的な、法的な、今、真部局長が言った法的に手続にのっとってやるとなると、二〇二〇年というようなことが、今大臣が限定したことがそう簡単なものでもない。正直言って、四カ月間、今工事現場は動いていないんです。ずっと今撤退して、今工事は動いていませんよ。そういうふうなものも含めて、それらの代執行の手続にかかるということになると、相当に時間がかかることは誰しもがわかること。

 それを踏まえて、公有水面埋め立てにおける外来種の侵入防止に関する条例というのをつくっていますけれども、今、辺野古の埋め立てをやるという計画が出ていますけれども、県内の土砂、県内の石で埋め立てをするのが二割、あとの八割は県外から持ってこなければならないというようなことになっているはずなんですけれども、それは間違いありませんよね。

真部政府参考人 相当部分を県外から持ってくるという計画になっておるところでございます。

下地分科員 今、相当の部分と言うけれども、私が調べたら、八割だと明確に防衛省は申し上げているんです。

 公有水面埋立事業に係る埋立用材に係る外来生物の侵入防止に関する条例というのがありますけれども、これに関して、沖縄県と調整して、埋め立ての土砂を入れられる、そういう調整をしていますか、今。

真部政府参考人 工事がまだそういった段階にないこともございまして、今、委員御指摘の条例に関して、何か具体的な調整を行っているということはございません。

下地分科員 この条例が、土砂を入れることに対する障害というか難しさというのは、どういうふうに認識していますか。

真部政府参考人 条例の趣旨は、外からの土砂の県内への持ち込みによりまして、県内の環境が変えられるといったようなことを防ぐ見地からというふうに承知いたしております。そのための詳細な手続などを定められていると承知しておりまして、それが障害と申しますか、そういったものをクリアする必要があるということだろうということは私どもも認識しているところでございます。

下地分科員 大臣、あと五分ですから。

 聞いてのとおり、最高裁の判決やっていたら、私が見ている範囲では、あの裁判長が二つの和解案を出しましたよね。一つは、訴訟をおろしてどうだというのと、二つ目には、埋め立てをして三十年軍民共用で使って、後、沖縄県に返したらどうだと、この二つの案が出ましたよ。

 この裁判長が、翁長知事が埋め立てを取り消してくれというにもかかわらず、埋め立てをしてどうかという和解案を出すこと自体、大した裁判長だなと私は思うんですよ。

 そういうふうな中で、翁長さんが埋め立てを承認して三十年というのもなかなかのみにくい。裁判が、私は、国が有利で、国が勝てると思っているので、中谷大臣が裁判をおろすというのもなかなか難しい状況にあると思うんです。

 そういうふうな状況の中で今和解案がやられていますけれども、和解案に対する政府としての対応というのは、今どこぐらいまで調整して、いつごろ正式に和解案の判断を裁判所にお伝えになるつもりですか。

    〔小田原主査代理退席、主査着席〕

中谷国務大臣 先日、福岡高裁の那覇支部から和解案が提示をされておりますが、この内容は報告を受けておりますけれども、他方で、その内容につきましては、国が裁判所から、対外的に明らかにしないように要請をされておりまして、また、政府としても対応が可能かどうか検討中でございますので、具体的なコメントにつきましては差し控えさせていただきたいと思います。

 また、和解勧告に関しまして、県側から提案が出てくる場合の政府の対応等につきましても、仮定の話でございますので、現時点におきましては、お答えは差し控えさせていただきます。

下地分科員 和解案は、もうそろそろイエス、ノーを出さなきゃいけない時期が来ているというふうに思うんですよ。まあ、口外しないと言っても、もう新聞にこれだけ載っていますからね。これは、そう言っても説得力がないと思うんです。

 そこで、私の提案なんですけれども、これは和解案に両方乗れないと思うんですけれども、もう一回、裁判の和解案はおいておいて、やはり沖縄県と話をした方がいいと思うんですよね。

 なぜかというと、これは、今私が申し上げたように、行政手続上からしても、大臣はきょう二〇二〇年とおっしゃいましたけれども、これはもう、ハリスさんの二〇二五年も難しいと思いますよ。私に言わせると、今の現状、現場の状況、そして法的手続、県の条例、全てを見て、やりたい、やりたい、やりたいと言っても、周りの人から見ても、これがうまくいっていると思っている人はそういないんです。大臣のところの省であっても沖縄県の中においても、そういうふうな思いを持っている人たちは、そう簡単じゃないなというふうに思っている人たちは多いと思うんですよ。

 そこで、ここは裁判所に頼らず、大臣が腹を割ってもう一回話をする。それで、違う戦略があるのかどうなのか、胸襟を開いて話をなされることが、私は、菅官房長官と大臣と二人でやられることが大事かなというふうに思っているんです。

 仮定の話には答えられないでしょうけれども、仮定で、もし辺野古以外の案を沖縄県が提案してきた、違うプランを提案してきたといったら、検討する価値はありますか。

中谷国務大臣 そもそもの目的が普天間飛行場を一日も早く移設するということで、もう二十年になりました。過去、経緯でいろいろな案が出て、いろいろな対応、努力をされたと思いますけれども、これ以上そういった面で遅滞をするということは得策でもありませんし、やはり一日も早く実現をすると考えますと、現在政府が考えている辺野古へ移転をするということが唯一であると私も過去の経験上そう思っております。

 しかしながら、沖縄県の皆さんの理解と納得は得る努力を続けていく必要がございまして、昨年も一カ月、政府と沖縄県の協議の期間がございましたけれども、今後とも、沖縄県協議会がつくられて、開催をされまして、負担軽減を目に見えたものとするということと同時に、こちらのことも御理解いただくように、沖縄県との対話、これは継続をしてまいりたいと考えております。

下地分科員 終わりますけれども、大臣、大臣たちが、政府が考えている普天間の早期返還のシナリオの中で、普天間基地の辺野古移設が一番早いというシナリオはもう崩れた、これはもうはっきりしている。

 今、普天間のことを考えるなら、新たなプランを考えるということも大臣の選択肢の中にあるべきだということを申し上げたい。安全保障上、戦略上、新しいプランがその効果をもたらすんだったら、それを検討するということが普天間の方々への早期の返還にもつながるというようなことを本気で模索する時期が来たのかなというふうなことを申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

平沢主査 これにて下地幹郎君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

平沢主査 次に、内閣所管について審査を進めます。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。重徳和彦君。

重徳分科員 改革結集の会の重徳和彦でございます。

 きょうは、石原大臣、そして古賀政務官にお越しいただきました。本当にありがとうございます。

 きょうは、二点について質問させていただきます。

 初めに、マイナンバーについてでございます。

 マイナンバー、ことしに入って個人番号カードの申請なども始まりまして、私自身の見たところの進捗状況、そしてそれに対する政府側の考えをお聞きしてみたいと思います。

 私自身は、マイナンバー制度、進めるものは進めるべきだというふうには思っておりますが、ただ、いろいろな懸念の声が上がっているのは確かでありますし、本当に、万が一情報漏えいなどの問題が出たら大変なことになりますので、こういったことについても気を引き締めて対策をとっていただきたい、こういう姿勢できょうは質問させていただきます。

 まず初めに、二〇一八年、平成三十年から、マイナンバーは、これは任意という段階でありますけれども、銀行口座を持つ人たちは番号がひもづけされていくことになる、番号が求められることになるということなんですけれども、任意でやっている限りはそんなに広まらないと思いますし、何のために任意なのかというとよくわからない。将来的に義務化していくということが明確であれば、それはそれで一つの筋道だなとは思うんですが、将来的な義務化、これについてどのように今お考えかということについて御答弁をお願いします。

石原国務大臣 お答えいたします。

 その理由は、やはり社会保障制度の資力調査、すなわちストックがどのぐらいあられるのか、また、税務の調査をするときにその実効性を高めるなどの効果があるから、今、トクシゲ委員がおっしゃられたようなことに意味があるんだと私も認識をしております。

 それでは将来という御質問であったと思うんですけれども、将来的には、委員御指摘のとおり全ての預貯金口座への付番を目指すというものでなければ意味がないという御指摘でございますが、そこはまさに同感でございますけれども、昨年の法改正では、既存の口座については、銀行が預貯金者と接触する機会というものは実は多いようで少ないということも踏まえまして、告知義務は預貯金者に課さないというところにしたわけでございます。

 では、この後どうするのかということになるのでございますけれども、付番開始三年を目途に、どのぐらい普及しているのか、また、今委員が前段で御指摘されましたとおり、情報が、あってはならないことですけれども、そういうことがあったりしたらまた大変なことでございますので、施策の促進に向けて、どんなふうになっているか、やはり検討状況というものを見た上で新たに見直しを行うという規定が設けられているところでございます。この規定に基づいて、その当時の状況を十分検分して検討されるというふうに理解をしているところでございます。

重徳分科員 石原軍団に徳重聡さんという方がいらっしゃいますが、私は重徳ですので、ややこしい名前で大変恐縮でございますが、よろしくお願いします。

 それでは、古賀政務官にお伺いしますが、個人番号カードの申請がことし一月から始まりまして、その申請の数が想定を上回っているというような報道なんかも見るんですが、政府から見て、これは想定よりも上回っているということなんでしょうか。どうあれ、それなりの数の申請があると思うんですが、その要因、原因というものについてどう分析されていらっしゃいますでしょうか。

古賀大臣政務官 今御質問のありましたマイナンバーカードでありますけれども、一昨日、二月の二十三日時点の数字ですが、約八百万件の申請受け付け処理が完了しておりまして、既に住基カードの有効交付枚数約七百十万枚と比較しても超えてきているというような状況にございます。

 マイナンバーカードにつきましては、写真つきの公的な身分証明書となるほか、住民票の写し等のコンビニ交付、また、e―Taxを初め各種オンラインの申請に利用可能といった形で、さまざまなメリットがあるということになっております。さらに、申請につきましても、郵送だけでなくパソコンやスマートフォンによる申請方法や、交付手数料の無料化、こういった点も理解をいただく中で順調に申請が伸びてきているというふうに考えているところです。

重徳分科員 マイナンバーは慎重論も国民の間にはあるわけなんですけれども、こういう状況を見て、マイナンバー制度が受け入れられているなという感じがありますか、どうでしょう。感覚めいたものでもいいですし。慎重論あるいは反論がいろいろある中で、そうはいっても国民の間で受け入れられているという感覚でしょうか。

古賀大臣政務官 今委員御指摘のように、受け入れられているという面もあるという中でこの数字があると思います。

 ただ一方で、まだまだマイナンバーカードのメリット等について皆様方の、国民の方の理解が十分に進んでいないという認識もありまして、しっかりとした広報を続けていきたいというふうに思っております。

重徳分科員 もう一つ、ICチップを活用できる、いろいろと用途がこのマイナンバーは広いという面があります。現時点で、自治体や民間でも少しずつ活用の幅が広がっているというようなことを報道でも聞くんですけれども、政府の方としてどのように把握していらっしゃいますでしょうか。

古賀大臣政務官 今御質問のございましたICチップを活用した自治体あるいは民間事業者の動向という点でありますけれども、自治体の動向においては、まず、住民票の写し等の各種証明書が取得できるコンビニ交付サービスについてですけれども、ちょっと比較をしますと、昨年末、これは住基カードでのサービスであった時点と、そしてマイナンバーカードによる、ことしからの、三月末見込み時点を比較しますと、導入団体にして百団体から百八十五団体、サービス対象人口にしまして約二千万人から四千百万人となる見込みでありまして、大きく導入が進むと見込んでいるところであります。このほか、印鑑登録カードですとか図書館カードとして利用を行っている市区町村もあるというふうに把握をいたしております。

 次に、民間事業者におきましてですが、この一月から、総務大臣の認定を受けることによって公的個人認証サービスを利用できる、そういったさまざまなサービスに活用可能ということであります。今月の十二日には三社に対しまして初の大臣認定を行ったところであり、そのほかにも、銀行、保険等のさまざまな業種の事業者から相談を多数いただいているといった実態にあります。

 以上です。

重徳分科員 今御答弁あったように、サービスの提供者側が、その数がふえて、そしてサービスの内容もふえていくということになれば、当然利用する側も利用しやすくなり、またカードの申請もふえて、そういったことが相まってこれが普及していくということも想定されるわけなんですが、マイナンバー制度、こういうサービス提供者側がどんどん参入して、これは提供者側から見ても、この点、マイナンバー制度が軌道に乗ってきているというふうに見ていらっしゃいますでしょうか。その辺、感覚的なことも含めてどうでしょうか。

古賀大臣政務官 今の御質問についてですが、順調に、例えばコンビニ交付、あるいは、今、大臣認定の話をしましたが、御理解が進む中で、サービスもこれからさらに広がっていくという感覚であります。

 ただし、カード自体の認識と同時に、サービスの方も、さらに自治体あるいは事業者の方に御理解いただく中で、よりいろいろなサービスを提供いただけるようになってくるんじゃないかと思っておりまして、そういう意味でも、我々ももっと周知や広報活動を徹底していきたいと考えております。

重徳分科員 わかりました。一応、推進する立場の政府でありますから、それはどんどんこれからも広げていかなければという思いもあると思います。

 ですが、その一方で、住基カード、住基ネットが導入されたときには国会でも非常に反対論ももっともっと強くて、今回、マイナンバーに関して言うと、何となく国会審議でも、そんなに激しい反対論にさらされまくっているという印象も余りないものですから、こういうときにこそ、いろいろなすきや緩みが出てくるんじゃないかと私は懸念をいたしております。

 その意味で、今、マイナンバーに関して、これは憲法違反である、恐らく憲法十三条、プライバシー権を侵害するというようなところが主なところだと思いますが、訴訟が起こっています。この訴訟に対する判決は、もちろん司法の場における判断を待つほかないとは思いますが、しかしながら、そこで訴訟を起こしている方々の声や主張にもしっかりと耳を傾ける必要があると私は考えています。

 その観点から、三つ、石原大臣に質問をさせていただきたいと思います。

 まず一つ目は、訴訟の中で言われるポイントの一つなんですけれども、今回のマイナンバーというのは、今までの住基ネットと違いまして、管理したり、その番号を集めたりするのが役所だけではありません。企業がやるという役割が随分担わされることになるわけなんですが、大小さまざま合わせて四百万社以上あると言われる企業が、それぞれの従業員、五千万人以上いると言われる従業員の方々の情報、データベースをつくっていくということになるわけなんです。そうなりますと、やはりそのセキュリティー対策が心配になってきます。当然、お金も多額にかかると言われております。

 これだけ多くの企業が、今後、普及していくに伴って、多くの負担に持ちこたえられるのか、それから、その対策を万全の形で期すことができるのかどうか、このあたり、やはり不安に思う方が当然だと思うんですね。

 その意味で、こういった不安に対して、どのように政府としてその不安を解消しようとしておられるのか、お答えいただければと思います。

古賀大臣政務官 今、重徳委員御指摘ありましたように、民間の方にもいろいろな対策を講じていただかなければいけないというところであります。

 マイナンバーを取り扱う企業におきましては、マイナンバー法に基づいて、マイナンバーの漏えいの防止の安全管理措置を講じるということになっておりまして、個人情報保護委員会のガイドラインにおいて、こういった企業が講じるべき安全管理措置を定めております。これは、企業の規模に応じて、配慮しながらの措置、ガイドラインということでございます。

 具体的には、例えば、従業員に対する教育や監督の点、あるいは書類やパソコンなどの盗難防止、またウイルス対策ソフトの更新などを示しているところでありまして、必要な安全管理措置を適切に講じていただくことで民間企業からの漏えいを防止することができるというふうに考えております。

 また、万が一事業者がこういった安全管理措置を講じない場合には、同委員会から勧告、命令をする、さらに、従わないときには罰則というような適用もあるわけであります。

 政府としては、こういった中で、引き続きガイドラインの周知徹底などに努めてまいりたいと考えております。

重徳分科員 何となく、前向きに聞いている方はなるほどということかもしれませんが、心もとないという印象も大いにあるのではないか。もっとも、これからの話ですから、状況を見ながら適宜対策をとっていくということが必要だと思います。

 では、現に、さはさりながら、情報漏えいが起こってしまったという事件に照らして考えてみたいと思います。

 御存じのとおり、日本年金機構が百二十五万件もの個人情報を漏えいというか、情報が漏れてしまった、こんなことが起こりました。

 これは、マイナンバー法に基づく特定個人情報保護評価というものもちゃんと行われていまして、その評価書をちょっと見てみましたところ、厚生労働省そして日本年金機構は、公的年金業務等における特定個人情報ファイルの取り扱いに当たり、特定個人情報の漏えいその他の事態を発生させるリスクを軽減させるために十分な措置を講じ、もって個人のプライバシー等の権利利益の保護に取り組んでいることを宣言するという、個人のプライバシー等の権利利益の保護の宣言と、宣言文章がちゃんとあるわけですね。

 これはリスク評価した上で宣言しているんですが、ここで十分な措置を講じているんだという宣言をしている割には百二十五万件の漏えい。だから、この程度のリスク評価、そしてそれに基づく宣言では、全くこれは防げていないじゃないかということが言えるんです。こういうのを一つとってみても、不安が募るのは当然のことだと思います。

 そこで、要するに何が足りなかったかということなんです。そして、何が足りなくて、これから、日本年金機構なんという組織として十分な規模を持ったところではないようなさまざまな企業、団体が情報を管理するということになるわけですから、日本年金機構の不祥事に照らして一体どのような対策を講じて万全を期そうとしておられるのか、これについてお述べいただければと思います。

古賀大臣政務官 ただいま委員御指摘あったように、年金機構における個人情報流出があった、なお一層、公的機関、行政機関においてもしっかりとした情報管理をしなきゃいけないというふうな認識に立っております。

 まず、そういった意味では、ルールをきちんとつくると同時に、それが徹底されなければならないというふうに考えております。

 ルールの方でありますが、行政機関等におきましても、先ほどの民間企業と同様に、マイナンバー法に基づいて安全管理措置を講じるとなっております。

 また、不正アクセスなどマイナンバー管理を害する行為に対する罰則、あるいは情報を一元管理しないといった制度面、システム面の両面での保護措置を講じているところでもあるわけであります。

 ただ、措置を講じるだけでは心配だというのはごもっともでありまして、こういったことをしっかり踏まえて、個人情報の漏えいリスクが高まることのないように、なお一層厳格な管理をマイナンバーにおいてもしていきたいと考えておりますし、何より、やはり一人一人の職員がきっちりとこのルールを守って対策をやっていくということが大事だと思っておりまして、政府としても、この年金情報の流出事案を踏まえて、必要な対策をしっかり講じて万全を期してまいりたいと考えております。

重徳分科員 先ほどの答弁と基本的には変わらない話でありますので、要は頑張るというような話ですね。未然に防ぐということに尽きるわけですから、とにかく頑張っていただきたい、この一言に尽きるわけですが、いろいろな反省事項はあると思いますので、ここはもう少し私もいろいろと政府あるいは年金機構における状況を検証はしてみたいと思っております。

 これは本当にアリの一穴で、一つ穴があいてしまいますと、システム全体、マイナンバー制度全体に対する不信感につながると思いますので、万全を期していただきたいと思います。

 もう一点、似たような御答弁しかないかもしれませんが、住基ネットの訴訟というのは、二〇〇八年、平成二十年、最高裁で合憲だという判決が出ました。だけれども、先ほど申し上げましたように、住基ネットとマイナンバーは大分違うんですよね。住基ネットはあくまで住所、氏名、性別、生年月日を役所の中で管理するということですから、余り表にさらされることはない。それであっても違憲訴訟が起こっていろいろな議論がある中で、最終的には合憲。でも、地裁、高裁レベルでは違憲だという判決もあったわけですから、これとて万全ではないということではなかろうかというふうに思うんです。

 マイナンバーとなると、税、社会保障、防災、非常に幅広い分野にわたって、繰り返しになりますが、民間企業も取り扱うわけであります。そういう意味で、これが本当に違憲訴訟にたえられる、合憲なものであるということからしても、十分な措置が必要ではないかと思うわけなんです。

 同じような御答弁でしょうが、プラス何かあればとは思いますが、基本的には大体今までの内容ですね。しっかりと裁判にも持ちこたえられるのはもちろん、実態としても漏えいのないように管理を行っていただきたいと思います。

 さて、では、次の話題としましてTPPについて議論させていただきたいと思います。

 TPP、いろいろな論点はあるんですけれども、私、きょう短い十分ほどの時間で議論させていただきたいのは、TPPというと関税率の話が非常に大きく取り上げられます。特に農産品のうちの主要五品目などというものについては、とにかく関税率をどうするか、こういう議論が中心になってまいりました。

 実際、きょうはちょっと具体例として牛肉について取り上げてみたいと思うんですが、牛肉に関しては、三八・五%だったのが、今後十年で二〇%、さらに十六年目以降は九%というふうに大幅に関税率は下がっていくということで、普通に考えれば、たくさんの外国産の肉が入ってくるというのが当然の道理であります。それはそれで、さまざまな現場での課題、難題はあると思います、それはしっかりと取り組む必要があると思いますが、こういうことも含めて、全般的には私も自由競争促進というのはしていきたいとは思っております。

 だけれども、大事なこととして、関税率そして経済的な競争ということもさることながら、忘れてはならないのは、これは食べ物ですから、やはり安全基準。それから、牛肉に関しては過去からBSEだとかいろいろな問題がありました。トレーサビリティー、消費者の利益を保護する、確保する、こういった内容についても決して配慮を忘れてはならない、むしろ一番大事なことではないかと思うわけであります。

 その意味で、まず、ちょっと確認なんですが、TPPの交渉の中で、こうした関税率引き下げ以外に、安全基準、トレーサビリティーなどといった、消費者利益を守る、こういったような内容について交渉はあったのかどうか、あったとしたらどのような内容だったのか、お尋ねいたします。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘の食品の安全あるいはトレーサビリティーのようなものは、TPPの協定の中では、第七章、SPSと呼んでおりますが、衛生検疫に関する章でございます。それから表示の制度という形になりますと、第八章、TBT、貿易の技術的障害という、この章でルールについて取り扱いをするということでございます。

 TPPの交渉は大きく二種類ございまして、関税率、それからサービスや投資などを阻害する規制を緩和する、これは広く市場アクセスの交渉と呼んでおりますが、市場アクセスの交渉につきましては、基本的には相手国の制度について、これを撤廃しろといったような交渉を行うわけでございますが、食の安全あるいは表示制度のような、ルールに関する議論は、ワーキンググループの中で、十二カ国の中でどういう共通ルールを定めるかという、一般論としての、ルールについての議論が主でございまして、特定国の特定の制度について、これについていいの悪いのという議論がなされているということではございません。

重徳分科員 よく、国際的にこれまでも、過去から大議論になっているのが、例えば牛を育てるに当たって、成長ホルモンを投与するということの是非あるいはラクトパミンという飼料添加物、餌に配合する、こういった物質を入れることの是非、このようなことが国際的に大変な議論になってまいりました。

 これは、一つには、もちろん、成長促進ホルモンですから、農業者の競争条件という意味でも、三十カ月ぐらい普通はかかる牛の成長を二十カ月で出荷できるようにするという意味では、生産者側の競争条件という意味でも、問題視されてもおかしくないことではあると思いますし、その一方で、そういったものが含まれている食品を口にする側の消費者の問題という意味でも、これは国際的な議論になってきたということだと思います。

 ですけれども、一つ、例として、ラクトパミンという飼料添加物、これについて、現に牛、豚の輸入あるいは国内での生産を禁止しているのは、EUとか中国とかロシアというふうに、今回のTPPの交渉には参加していない国が中心でございます。だから問題にならなかったのかもしれませんが、そうでないにしても、仮に、今後、TPPという枠組みの中に参加している国の間で、こうした、関税率そのものではないけれども、貿易に関する制限といったものについて、どこかの国が行おうというふうにした場合には、TPPの協定に基づいて何かしらのやりとりが行われる、すなわち、禁止することはおかしいじゃないかとか、いや、禁止するべきだとかいうようなことがTPPの協定の枠組みの中で行われる何かしらのテーブルがあるのか、それとも、WTOなど、既存の枠組みの中で行われるのでしょうか。

 このあたり、TPPの中に何かしら、今、澁谷さんがおっしゃった共通ルールの枠組みといいましょうか、場があるのか、紛争解決の場があるのか、そうでないのか、こういったあたり、若干想定の問題ですけれども、わかる範囲でお答えいただきたいと思います。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 TPP協定の交渉の中におきまして、SPS、衛生検疫に関するワーキンググループにおける議論の中では、実は各国も、日本もそうなんですけれども、国内で食の安全について大変関心が高い。貿易を促進するというTPPの本来の目的とはまた別に、やはり食の安全というものは非常に大事にする。これはどの国も同様でございまして、そういうものにどう配慮していくかということが議論の中心でございました。

 結果として、WTO上のSPS協定という協定、我が国も入っておりますけれども、このSPS協定の基本的な考え方を踏襲するというのがTPPの食の安全についての結論でございます。

 したがいまして、現在WTOで行われているような議論なり、あるいはその制度などがTPPによって変わるということは特段ないものと承知しております。

重徳分科員 今おっしゃるのは、つまり、TPPによって、特段新たな、そういった紛争解決の場が設けられるとか、TPPのルール、新しく設けられたルールに基づいて何かが行われるということはないであろうということでよろしいですね。

 今私が例を申し上げましたのは、輸入の制限といったような場面でありましたが、では、仮に、輸出入は自由なんだけれども、表示に関して、消費者の保護というよりは、消費者の選択を確保するための表示を、仮に特定のものに、輸入品に関して表示をもう少し厳格化するといったようなことについても同じようなことになるんでしょうか。

澁谷政府参考人 表示制度につきましては、それが強制規格などの制度として導入する場合に、これはTBTという章になりますけれども、手続を導入するに当たっては透明性を確保するという規定がWTOにもありますが、TPPにおいてもそれがより明確になっているところでございます。

 ただ、注がしっかり条文に書いてございまして、我が国が行っているようなパブリックコメント、こういうものを導入すれば足りるというふうに注で明記されておりますので、現在我が国が行っている制度改正の実務がTPPによって影響されるということは考えておりません。

重徳分科員 まずは、わかりました。

 大変大事な問題でありますので、また引き続き議論させていただければと思います。ありがとうございました。

平沢主査 これにて重徳和彦君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十八分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

平沢主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 復興庁所管について審査を進めます。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。真山祐一君。

真山分科員 公明党の真山祐一でございます。

 本日、このような質問の機会をいただきましたことに、まずは心から御礼を申し上げる次第でございます。

 現在、平成二十八年度の予算案がさまざま審議されている中でございますけれども、やはり私は、福島県在住の国会議員ということもございまして、被災地、東日本大震災からの復興について何点か質問をさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 来月で東日本大震災から五年の節目を迎えようとしております。最大で発災直後四十七万人避難者の方々がいらっしゃいましたけれども、現在は十八万人に減ってきている状況でございます。しかしながら、十八万人もの方々がいまだ避難生活を余儀なくされている、これをやはり実態として受けとめなければいけないと思っております。

 確かに、災害公営住宅の建設も今年度末で約六割まで完成を見る予定でございますし、また、高台移転も年度末で四五%まで進むというふうに言われております。こうした中で、仮設住宅をこれから出られる方々もたくさん出てこられるわけですし、そうした中で仮設住宅を集約化していく、こうしたこともこれから検討が進んでいくものと思っております。

 こうした被災者の方々がいらっしゃるわけでございますけれども、先ほど言いました仮設住宅、もしくは、みなし仮設住宅のみならず、避難生活を送っていらっしゃる方々はたくさんいらっしゃるわけでございます。御親戚のところにいらっしゃる方々、または自力再建をされた方々、多々いらっしゃるわけでございます。

 そういう中におきまして、まず最初に大臣にお伺いをさせていただきたい案件でございますけれども、避難生活を余儀なくされる被災者は、津波被災、また地震被災によって住居を追われ、一度避難したわけでございますけれども、しかし、何かしらの事情があって被災したままの住宅に戻られた方々がいらっしゃいます。こうした方々は、いざ自宅に戻ったはいいけれども、修繕する費用も結局賄えずに、被災住宅に今もまだ、もう五年になろうとしているわけでございますけれども、津波をかぶった、また地震で壊れた、その家に住み続けていらっしゃるわけでございます。

 そして、そういう方々の多くは、行政とのつながりも非常に薄いといいますか、なかなか支援の手が行き届いていない、そうした実態もあるわけでございます。そして、さらに言いますと、その多くの方々が、あわせて生活困窮も抱えていらっしゃるような実態でございます。

 こうした方々を被災者支援の現場では、在宅被災者というふうに位置づけて支援をしている、そういった団体もいらっしゃいます。この在宅被災者については、なかなかその実態がつかみにくいというふうに言われておりますし、実際、私もこの名前を初めて聞いたときには、少しぴんとこないのが正直な感想でございました。

 そういう中で、私自身も、宮城県石巻市の方に行かせていただいて、こうした支援をされている団体の方と一緒に在宅被災者の家を一軒一軒訪問させていただきました。発災そのままの住居というのはまさにそのとおりでございまして、中には、建物が傾いている、そんな家に住んでいらっしゃる方々もいらっしゃいました。また、地震で崩れて雨漏りがしていまして、畳が腐っているような家に住まわれている方もいらっしゃいました。

 やはりそうした方々の実態をしっかりつかんで、この支援の手を差し伸べていかなければいけない、届けていかなければいけない、私はこのように考えているところでございます。

 この在宅被災者を中心とした被災者支援については、昨年暮れ、十二月に大臣にもいろいろ御要望を聞いていただいたところでございますけれども、改めまして、こうした在宅被災者に対する高木大臣の御認識及び今後の支援の取り組みの方向性、方針について、御所見をお伺いいたします。

高木国務大臣 ただいま委員御指摘いただきましたとおり、東日本大震災の被災地の状況は、地域によっても、あるいはまた被災された方々によっても、さまざまな状況がございます。

 今御指摘いただきましたけれども、自宅が被害を受けながら、仮設住宅へ避難をしないで、自宅での暮らしを続けてこられた方々の中に、現在も生活環境が十分に整わない、御指摘いただいたとおりでございますけれども、そうした方々がおられるという指摘がございます。

 こうした在宅の被災者につきましても、住宅再建の支援金などの国や自治体の制度を御活用いただけますけれども、その使い方などについてアドバイスなどが必要な場合があるというふうに考えておりまして、平成二十八年度は、被災者支援総合交付金、これを大幅に拡充いたしまして、円滑な住宅移転や、あるいはまた生活再建のためのメニューを追加しておりまして、このような相談支援を在宅の被災者に対しても行うことができるようにしております。

 こうした対応を通じて、自治体とともに、在宅の被災者の方々に対しても支援してまいりたい、そのように考えているところでございます。

真山分科員 ありがとうございます。

 平成二十八年度の予算にも今回計上いただいております被災者支援総合交付金、こういった予算を活用して、支援の手がしっかり手元に届く、そうした体制をつくり上げる。先ほど大臣御指摘いただいたとおり、そうしたさまざまな住宅再建支援の補助メニューであるとか、そういったことを使っていらっしゃらない、また知らない、使い方がわからない、そういった方々が、私も訪問する中でいらっしゃいました。

 ぜひ、そうした意味で、この被災者支援の体制構築を、この五年の節目、復興・創生期間が始まる節目だからこそ強化をしていただきたい、そのことを強くお願い申し上げさせていただく次第でございます。

 以下の質問につきましては、参考人の方々にお聞きをさせていただきますので、大臣の方は外れていただいても結構でございますので、よろしくお願いいたします。

平沢主査 それでは、大臣はお帰りください。

真山分科員 ありがとうございます。

 それでは、続きまして、今ほどの話とも少し関連をいたしますけれども、被災者の医療費の窓口負担の減免について質問をさせていただきたいと思います。

 東日本大震災による被災者の医療費の窓口負担、減免措置がこれまでなされてきたわけでございますけれども、これについて、福島県原発避難地域に関しましては復興予算の方で手当てがされておりまして、今後も継続するというふうに認識をしております。

 一方、ほかの地域、原発避難地域以外の地域におきましては、これまで国保等の調整金の仕組みの中で減免措置というのを実施し、窓口負担が軽減されていたわけでございます。この措置が、一応平成二十七年度末までの三カ年の計画でございましたので、それが終了予定となっているところでございます。

 こうした事態から、今、各自治体におきまして、被災者の減免措置を継続するか否か、この議論がなされておりまして、各自治体、持ち出しにて減免をするという自治体も出てきているように認識をしております。

 一方で、やはり財政、財源の問題がございますので、できないという判断をされる自治体も出てきている中でございます。財政状況等を鑑みれば確かに厳しい内容ではあるんですけれども、被災者お一人の視点から見ますと、住んでいる地域によって負担軽減があったり、またはなかったりするわけでございまして、そういったことに対して、不安の声、また不満の声も届いているところでございます。

 そうした状況を受けまして、さまざまな事情はあろうかと思いますけれども、復興庁として、こうした状況についてどのように考えていらっしゃるか、お聞きをさせていただきたいと思います。

吉田政府参考人 お答え申し上げます。

 国民健康保険につきましては、法律上、医療費の窓口負担の減免を実施するかを保険者である市町村が判断する制度となってございます。

 東日本大震災の被災者につきましては、窓口負担の減免を決めた市町村に対しまして、発災後一年間につきましては、減免に要する費用の全額について国が財政支援を行ったところでございます。

 平成二十四年度以降は、福島第一原発事故に伴う避難指示区域等の被災者につきましては、特に被害が大きいことから、市町村が減免を行う場合、これに要する費用に対しまして、主に復興特会を財源として原則国による全額の財政支援を行っており、平成二十八年度政府予算案におきましても、同様の支援に必要な予算を盛り込んでいるところでございます。

 その他の地域の被災者につきましては、市町村が減免を実施し、財政負担が著しい場合に、国が国民健康保険の特別調整交付金によりまして財政支援を行い、市町村の負担が過度にならないよう配慮をしているところでございます。

 さらに、震災前と比べて医療費の増加に伴う財政負担が大きい市町村に対しましては、特別調整交付金による財政支援を拡充しておりまして、平成二十八年度における取り扱いにつきましては、現在、厚生労働省の方において検討をしていると承知しているところでございます。

 今申し上げましたように、国民健康保険につきましては、その減免を実施するか否か、各市町村が判断する制度となってございます。これは、各地域の復興の状況や被災者の生活状況等を十分踏まえた上で、みずからの財源をどういうふうに分配していくかを念頭に置きながら、各自治体においてそれぞれ必要性を判断していただくものと考えているところでございます。

真山分科員 今御答弁いただいたわけでございますけれども、私、前段の大臣への質問の中で、在宅被災者の問題を取り上げさせていただきました。先ほど申しましたとおり、在宅被災者の多くは生活困窮をあわせて抱えているという実態がございます。

 そうした中で医療費の窓口負担が発生するということについては、単に減免措置についてという視点だけではなくて、そういった生活困窮者をいかに支えていくかという視点でもぜひ御検討いただいて、そういった方々の負担軽減をしっかり図っていただきたい、そのことを強く申し上げたい、お願いするところでございます。

 次の質問に移らせていただきますけれども、これも被災地に関することでございます。

 今、被災地におきましては、人材の確保ということが非常に大きなテーマになっているところでございます。とりわけ、きょう質問させていただきたいのは医療従事者についてでございます。

 今、福島県内におきましても、例えば楢葉町が解除になりまして、楢葉町の医療施設として、ふたば復興診療所がオープンをしたわけでございます。そうした明るいニュースがある一方で、原発被災地、先ほどの楢葉町のような解除された地域もそうですし、また、その近い地域におきましても、やはり人材不足というのが非常に深刻な問題になっておる状況でございます。

 私の知っている範囲で申しますと、例えば南相馬市におきましては、透析の医療機関が、医師、スタッフの必要な人員を確保できずに、人数制限といいますか、そういった上限を設けている状況でございます。

 この透析につきましては、言うまでもございませんけれども、一日また二日置きに治療を必要とするものでございまして、患者にとりましては、そういった医療機関の医療体制も整わなければ、当然そちらに帰るという選択もできないわけでございますし、また、そういった状況がいまだ五年になろうとしても続いているというのが実態でございます。

 こうした被災地の医療人材の不足に対して、政府としてどのように取り組んでいく方向なのか、確認をさせていただきたいと思います。

梅田政府参考人 お答えいたします。

 福島県の全体の常勤医師数は東日本大震災以前の水準に回復しているものの、南相馬市のある相双地域を初め、地域によっては震災以前の水準まで回復していないという状況にございます。

 福島県における医療提供体制の再構築ということにつきまして、医療の復興事業を支援するために、地域医療再生基金を約五百億円積み増しまして、医療機関の再開、新設への支援のほか、医師や看護職員の県外からの派遣や、災害により離職した医療従事者を県内の医療機関で雇用する際の人件費の補助などに活用できるようにしているところでございます。

 また、各都道府県における医療人材確保対策としましては、都道府県内の特定の地域等での勤務を条件とした地域枠を活用した医学部入学定員の増加、また、地域の医師不足病院への医師派遣等を行う地域医療支援センターの医療法への位置づけや運営に対する財政的支援、そして、看護師等の離職時等における届け出制度など、ナースセンターの機能強化による看護職員の復職の支援などの取り組みを推進しているところでございます。

 さらに、福島県には、現在、厚生労働省職員を派遣し、直接地元医療機関や市町村等と意見交換を行うことによって被災地のニーズをお聞きしております。

 引き続き、福島県とも連携しつつ、被災地のニーズに沿った医療の確保に取り組んでまいりたいと考えております。

真山分科員 大きな予算をつけていただいているのは重々承知でございますけれども、ぜひ、人の確保という点では、国のネットワークも活用していただいて御尽力いただきたいと思います。

 そして、次の質問に移らせていただきます。

 続きまして、福島県の農業の再生についてお聞きをさせていただきます。

 福島県の農業経営者は、原発事故による風評被害、実害もございますけれども、払拭されておらず、いまだ厳しい経営環境を強いられております。失った販路を拡大することは容易ではありませんし、また、今後の展望もなかなか描きづらい、そんな状況でございます。さらには、事故前、事故後も含めて負債が重くのしかかっている、そういった状況を聞いております。

 こうした状況から、昨年の九月、福島県の農業従事者の代表の皆様が、農業経営の再建支援を旨とする要望書を農水大臣に申し入れされました。この申し入れ内容の中でも、特に風評被害解消までの借入返済の猶予、さらに、既存農業事業から新規事業転換の際の二重ローンの解消という点に関しましては、経営上重要な要素であります。

 こうした要望に対してぜひきめ細やかな対応が必要であると考えているわけでございますけれども、こうした申し入れに対しまして、農水省としての取り組みをお伺いさせていただきます。

山北政府参考人 お答えいたします。

 東日本大震災によります被災農業者に対しましては、風評被害による場合を含めまして、政策金融公庫の実質無利子となります農林漁業セーフティーネット資金などを活用いたしまして、その経営維持に必要な資金繰りの支援を行ってきているところでございます。

 また、あわせて、今御指摘ございましたように、債務者の状況に応じて償還猶予などの措置が適切に講じられるよう、これまでも関係金融機関に要請してきておるところでございます。これを受けまして、各金融機関におきまして個別に対応されてきているところというふうに承知をしております。

 また、今御指摘いただきましたので、農林水産省といたしましても、引き続き、債務者の状況に応じて償還猶予などの措置が適切に講じられるよう、関係機関に丁寧に説明してまいりたいというふうに思っているところでございます。

 また、少し二重ローンというお話もございましたけれども、二重ローンの問題につきましては、御存じのとおり、平成二十四年二月に東日本大震災事業者再生支援機構というのが設立されておりまして、これまで、農林漁業分野において、活用実績、これは対象債権額で四十三億円というふうになっているわけでございます。支援機構では、二重ローンの問題の解決に向けまして、金融機関と連携しながら、金融機関等が保有する事業者の債権を買い取りまして、事業者に対する資金のまた新たな貸し付け、あるいは債務保証等の措置も講じてきているということでございます。

 引き続き、こうした措置も使いながら、被災農業者の債務の負担軽減を図っていく、そういった再生を支援していくということで適切に対応してまいりたいというふうに考えているところでございます。

真山分科員 ただいま御答弁いただきまして、いろいろ御尽力いただいているのは承知でございますけれども、しかし、個別の対応という点では、実際、現場ではなかなか対応をいただけていないという実態があるのも事実でございますので、ぜひ、そういったことも含めてきめ細やかな対応を、農水省として取り組みをしていただきたいとお願いをさせていただく次第でございます。

 次の質問をさせていただきます。

 風評及び出荷制限による被害を受けている農産物の一つに、キノコが挙げられます。キノコの栽培には、主に露地栽培また菌床栽培等があるわけでございます。こちらは、本来であれば放射性物質の影響はそんなに受けないわけでございますけれども、実際には風評被害によって影響を受けているところでございます。

 また、こういった栽培物だけではなくて、山林からとれる野生キノコについては、出荷制限が解除されていない地域もまだ多くございますし、当然解除については慎重にならなければならない、それは言うまでもございませんけれども、一方で、出荷制限解除へのハードルが非常に高いわけでございまして、例えば品種別に検討してほしいとか、そういった声もいただいているところでございます。

 さらに、栽培物に必要な原木につきましては、福島県は日本有数の原木の生産地でございました。ですので、安価に大量に仕入れることができたわけでございますけれども、県内の生産者は、それができなくなってしまって、割高な原木を他地域から仕入れざるを得ない、そんな状況でございます。

 放射能による被害をこうむっている農産物は多々あるわけでございますけれども、こうしたキノコを取り巻く環境というのは非常に象徴的に被害が、実態があるというふうに私は思っております。このキノコに関する風評、実被害について、政府の、農水省としての対策をお伺いさせていただきます。

牧元政府参考人 お答えをいたします。

 福島県における栽培キノコ、また野生キノコにつきましては、原発事故の影響によりまして、主産地であったにもかかわらずキノコ原木が不足をいたしまして、加えて、御指摘いただきましたように、出荷制限、風評被害等の影響を受けるなど、大変な御苦労が続いているものと認識をしているところでございます。

 このため、農林水産省といたしましては、キノコ栽培の再生に向けまして、原木等の生産資材の導入支援、また、キノコ原木の安定供給のための需給状況の提供、さらには、原木林再生のための実証的な取り組みの支援などに取り組んでいるところでございます。

 また、御指摘をいただきました野生キノコについてでございますが、出荷制限の解除に向けての検査を現場の実情を踏まえたものにしてほしいという大変強い御要請があったところでございます。これを踏まえまして、昨年十一月に、検査の際の検体数など具体的な考え方を整理いたしまして、関係都県に通知をしたところでございます。これに基づきまして適切かつ円滑に検査が行われるよう、関係都県に対して指導、協力をしているところでございます。

 今後とも、地方自治体の皆様方などと連携いたしまして、被災地におけるキノコ栽培の再生に向けた取り組みなどを全力で推進してまいりたいと考えているところでございます。

真山分科員 ぜひ、こういった風評、また実害に苦しむ皆さんに寄り添っていただいて、その声を政策の中に反映していただきたいと思うところでございます。本当に、このキノコ一つとっても、農業者の方にとっては一つ所得でもあったわけでございまして、それが断たれた無念さを酌んでいただきたいというふうに思うわけでございます。

 次の質問になりますけれども、福島県の農業の生産現場では、セシウム対策として、カリウムの散布などによる吸収抑制対策が現在行われております。この吸収抑制対策の効果は実証されておりますけれども、作物がセシウムを吸収するメカニズム、また環境中の移動メカニズムについては、解明し切れているわけではございません。

 福島県の西郷村というところに独立行政法人の家畜改良センターがございます。ここでは、牧草のセシウム移行のメカニズムを研究し、品種改良や、また土壌へのすき込みによる稲わら処理などにも生かそうという、そんな研究をされておりました。

 また、福島大学、東京大学、東京農業大学等が連携して、水田生態系におけるセシウム吸収のメカニズムの解明、こういった研究もなされております。その結果、簡単に申しますと、水田に流れ込む用水の懸濁態セシウムが、稲へのセシウムの給源となり得る、そんな研究がなされております。その結果、その用水の源であるため池を調査、また、その周辺の山林の落ち葉等に付着した放射性物質が落葉とともにため池にたまって、それが用水として流れ、稲の吸収につながるという、山林と用水と水田という循環の中での移動メカニズム、こんな研究をされているわけでございます。

 こうした研究を着実に進めることが風評被害払拭の根本、大前提であると考えておりまして、政府として、十分な予算を確保し、主体的に研究を進める必要があると考えておりますけれども、政府の見解をお伺いさせていただきます。

菱沼政府参考人 お答えいたします。

 原発事故対策としての研究開発におきましては、これまで、大別いたしまして三つの技術開発をさせていただいております。農地土壌の除染技術、さらには、汚染土壌の放射性セシウムの濃度を低減させる技術、水稲、果樹、牧草等の放射性セシウムの吸収抑制技術の開発をさせていただきました。これらの成果につきましては、現場において汚染対策として広く活用されております。

 一方、農地の除染が徐々に進む中、さまざまな課題がまた出てきております。この中で、議員の御指摘のような研究も、まさにこれから着手していかなきゃいけない、着手しつつあるところでございます。

 具体的に申しますと、二点ございまして、放射性セシウムを吸収しない作物の開発に向けた研究の一環として、まずは吸収メカニズムの解明をしていこうじゃないかというようなこと。さらには、二点目でございますが、除染後の農地へ周辺からまた放射性物質が流入するといったことは問題でございますので、防止する技術開発、この一環として、セシウムの環境中の動態解明に向けた研究を行っているというようなことでございます。

 今後も、必要な予算を確保しつつ、農業者の方々が安心して営農を再開できるように、この研究をしっかり進めてまいりたいと考えております。

真山分科員 ぜひ、同様の研究をされている機関と連携していただいて、実あるものとして進めていただきたいと思います。

 恐らく最後の質問になろうかと思いますけれども、今度は水産物についてお聞きをさせていただきます。

 福島第一原発事故による影響は、海洋、海にも及んでいるわけでございまして、現在、福島県では試験操業を続けております。試験操業を行いながらも対象魚種をふやしている、そんな段階でございますけれども、まだまだ完全操業に至るには時間がかかる、そんな状況でございますし、また、いろいろ慎重にならなければいけない案件でもあると思っております。

 そういう中で、早期の出荷制限等の解除、また風評払拭を図る上でも、魚介類の放射性物質の動態について研究を進めるべきと考えております。

 そこで、政府として、魚介類の放射性物質に関する研究への今後の取り組み方針について、お伺いをさせていただきます。

保科政府参考人 お答え申し上げます。

 農林水産省では、平成二十四年度から、海洋生態系の放射性物質の挙動調査事業費というのを計上いたしておりまして、国立研究開発法人水産総合研究センターが福島県等の関係県と協力して、沿岸、沖合あるいは内水面において、水生生物の放射性物質の取り込みとか、その仕組みを解明するための研究開発を実施しております。

 一例を挙げますと、この研究の中で、水産総合研究センターが福島県の水産試験場やアクアマリンふくしまと協力しまして、福島県で、汚染された海底土から餌生物であるゴカイとかヒラメへの放射性セシウムの移行について、飼育試験を行いました。その結果、海底土からゴカイやヒラメへの移行については、それぞれ、海底土の二十分の一以下であるとか五十分の一以下である、ほとんど移行しない、そういうことが明らかになっております。

 こうした成果につきましては、毎月、県漁連が開催しております会議に研究者が毎回参画しておりまして、その中で説明を行うなどして、漁業者の不安の解消に努めてきているところであります。

 また、原子力の事故の影響を大きく受けた福島県の御要望を踏まえまして、放射性物質に関連した研究や水産業の復興に関する研究を行う福島県の水産試験研究施設の整備を支援するために、平成二十八年度の予算案におきましては、その設計調査を支援するための経費を計上しております。

 今後とも、関係県と協力して、放射性物質の水生生物への影響等について調査研究を進めてまいりたいと考えております。

 以上でございます。

真山分科員 時間となりましたので、以上で終了します。ありがとうございました。

平沢主査 これにて真山祐一君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

平沢主査 次に、裁判所所管について審査を進めます。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。若狭勝君。

若狭分科員 自民党の若狭勝でございます。

 きょうは、最高裁判所の方からいろいろとお話をお伺いしたいと思います。ありがとうございます。

 まずは、ことし、裁判所の予算において、裁判官、判事を三十二人増員ということでございます。これは、恐らく、常態的に判事の数というのが不足しているということで、それを毎年毎年こういう形で増員要請をしているということと承知しております。

 そもそも、裁判所がこういう形で非常に裁判官が不足しているという理由について、簡単に教えていただけますでしょうか。

中村最高裁判所長官代理者 御指摘いただきましたとおり、ことしにつきましては判事三十二人の増員をお願いしているところでございます。

 その理由につきましては、複雑困難化しております民事訴訟分野及び家庭事件につきまして、適正迅速な処理を行うことができるような人的体制を図っていきたいということでございます。

 もう少し具体的に御説明させていただいてよろしいでしょうか。具体的に説明させていただきますと、民事訴訟につきましては、事件数が一時減少しておりましたけれども、二十七年におきましては、推計値ですが、前年比でやや増加に転じております。減少傾向に歯どめがかかったように思われます。

 内容的に見ますと、専門的な知見を必要とする事件や、先例のない非典型的、非類型的な、複雑な事件が多くなっているというように感じております。

 例えば、企業再編、買収防衛策をめぐる商事事件でありますとか、国際的な経済活動の税務処理をめぐる事件、このような事件につきましては、経済活動全般の指針となり得るような、大きな影響を与える法解釈を迅速、適正に示すことが求められますし、外国との関係での法制の調査、紛争の背景になる企業の複雑な経済活動や商取引などについての理解というのも必要となってくるような事件があります。

 また、IT化の一層の進展に伴いまして、ソフトウエア開発関係訴訟など専門的知見を要する先端的な事件も係属するようになっているところでございます。

 このような、近時、複雑困難化している事件を適正に処理していくためには、合議体による審理をこれまで以上に充実強化させたいというふうに考えているところでございます。

 また、家裁の関係につきましては、調停事件や審判事件の増加傾向が続いております。とりわけ、高齢化の進展に伴って、近年、累積的に増加している成年後見事件への対応、あるいは、少子高齢化の急速な進行を背景として事件数や解決困難な事例がふえてきております子をめぐる調停事件、このような事件についての適正迅速な処理を行いたい、そういうことを今後していきたいということでこの増員をお願いしているということでございます。

若狭分科員 裁判所は国における極めて重要な機関ですから、きちんとした人員の手当てというのは当然のことと思います。それについては十分我々も理解しているところでございますが、一方、裁判所というのは、ほかの行政庁、役所と違って、全体として、国民に説明をする、あるいは説明責任というのがなかなかしづらい、求めにくいというところがあると思うんです。

 きょうは、その辺の裁判所のいわゆる説明責任の一環として、少しいろいろとお聞きしたいと思います。これはもとより、裁判官の独立の問題があるので、若干ほかの省庁とは違う面があるとは思うんですが、その中でも、差し支えない範囲で教えていただければと思います。

 裁判官、こういう形で増員をして仕事をしっかりするということであるわけですが、そもそも裁判官の教育というものがどういうふうになされているのか、この辺は国民も余り知らないところだと思います。

 私は司法研修所の教官などもしていて、そういう意味では全国的にいろいろな情報も入ってくるんですが、裁判官の中には、数多い裁判官の中ですからいたし方ないんですが、当事者にどなったりとか、あるいは少し言葉を、私も経験があるんですけれども、裁判官から若干だまされたような感もあるんですよね、そういうこともあります。

 そういう中で、国民から信頼される司法という面においては、そういった一人、二人の裁判官であっても、国民の信頼を失うようなことがあってはならないと思います。その意味で、そもそも裁判官の教育というのはどういう形でなされているのかということについてお聞きしたいと思います。

堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 裁判官が執務に必要な能力を身につけ、向上させていくということは非常に重要であることは当然でございまして、そういった能力を身につけるのは、何といいましても、日々の事件処理の執務を通じて身につける、これは基本となります。

 ただ、それをさまざまな形で支援していくという必要がございまして、これは、裁判官の研修を担当いたします司法研修所がございますけれども、こちらの方で、例えば新任裁判官の研修でありますとか、さまざまな分野をテーマといたしました各種の研究会等、さまざまな機会を捉えて幅広く研修を行っているところでございます。

 それ以外にも、裁判の現場におきましても、日々の執務とともにさまざまな勉強会あるいは協議会といったものも行っておりまして、そういった機会を通じて能力向上のための研さんを行っているところでございます。

若狭分科員 最高裁判所の方に、情報として、この裁判官は若干問題があるというような情報というのは上がってくるものなのでしょうか。

 例えば、裁判官の日ごろの訴訟指揮についてどうかというアンケートか何かを弁護士会に求めて回答していただいているというようなこともあろうかと思うんですが、そういうことも含めて、そもそも最高裁判所の方には、この裁判官はやはりちょっといろいろ問題があるというような形で情報というのは上がってきているものなのでしょうか。

堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 裁判所におきましては、裁判官の人事評価制度というものを設けておりまして、裁判官の日々の仕事ぶり、あるいは能力、適性といったものについて評価をし、そういったものを基礎にして、さらなる能力の向上あるいは適正な人事の基礎とする、そういった制度を設けているところでございます。

 その人事評価に当たりましては、広くさまざまな情報を基礎にするということを考えておりまして、その中には、裁判所外部からの情報というものも基礎にするという仕組みになってございます。そういう外部の情報という形で、弁護士を含む事件関係者からの情報が寄せられた場合には、評価権者の方で、通常、裁判所の所長でございますけれども、そういった情報も適切に評価をいたしまして、人事評価という形をとってございます。その人事評価という形を通じて、個々の裁判官の長所、短所といったものについて最高裁判所の方にも届くという仕組みになってございます。

 そういう意味では、個々個別の事件という形で直接ということになりますと、先ほど委員御指摘のとおり、職権行使の独立への抵触というものもございますので、そういったところに問題がないように配慮しながら、人事評価制度を通じてそういった情報は一定程度把握をしているというところでございます。

若狭分科員 少し話がかわるかもしれないんですが、今までいろいろ冤罪という問題がクローズアップされることがございます。冤罪がはっきりすると、警察とか検察庁というのが批判の的に当然なるわけですが、裁判所において、こうした冤罪が起きた際に、冤罪が明らかになった際に、裁判所としては、そうした具体的な事件については何らかの検証とかいうのをしているものなのでしょうか。

平木最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 裁判所といたしましては、無実の人が有罪判決を受けるようなことは決してあってはならないことであると考えております。そのような事態が生じないためには、どのような事件においても、当事者双方の主張に十分耳を傾け、当事者双方から提出された証拠を十分に吟味し、そして、最終的には検察官が立証責任を負っているわけでございますので、検察官が合理的疑いを超える程度の立証を尽くしたかどうかを慎重に見きわめて判断することが重要であるものと考えております。

 検証の点についてでございますが、確定した事件でございましても、個別の事件の具体的な内容に踏み込んだ検証を行うことは個々の裁判の当否の評価になりかねませんので、裁判官の職権行使の独立の観点から問題があるのではないかと考えておるところでございます。

若狭分科員 今の検証の話ですが、例えば裁判所の内部、最高裁も含めて内部的な検証などをするということになりますと、それは裁判官の独立の問題に即響くとは思うんですが、例えば第三者的な人に検証してもらうということでも事の本質は同じだというふうにお考えでしょうか、裁判官の独立の問題に関して。

平木最高裁判所長官代理者 委員御指摘のような第三者による検討という形であったとしても、裁判所がそれを依頼する以上は、やはり委員御指摘のとおり裁判官の職権行使の独立の問題に悪影響を及ぼす面があるのではないかと考えておるところでございます。

若狭分科員 そうしますと、冤罪といってもいろいろな種類があると思うんですが、裁判官の過誤だと思われるような、そうした種類の冤罪が判明したとしても、裁判所、最高裁判所としてはいかんともしがたいというような理解でよろしいんでしょうか。

堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 直接的な検証ということにつきましては、なかなか難しいところがあるというのは先ほど刑事局長からお答え申し上げたとおりでございますけれども、先ほど申し上げましたようなさまざまな研修の機会がございます。そういった研修の機会に、例えば事実認定の問題、あるいは証拠を適切に評価するといったテーマの研修や教育を、個々、特定の事件を素材としてということではございませんけれども、もう少し一般的な形で研修として取り上げる、そういった形で適切な事件処理を進めてまいる、そういった対応をしているところでございます。

若狭分科員 続いて、話題をかえます。

 裁判員裁判の関係でございますが、裁判員裁判というのは、開かれた司法だし、市民の素朴な見方、感覚というのを導入できるということで、非常に意義深い制度だと私も思っております。

 そこで、裁判員裁判が実施されましてから、少なくとも平成二十一年の五月から相当時がたっております。今の裁判員裁判というのは、九人、つまり、裁判官三人、裁判員が六人という九人制で行われていると思うんですが、法律では、裁判員四人と裁判官一人のいわゆる五人、そういう裁判体も規定されていると思います。

 私は、裁判員裁判が軌道に乗ったら、このいわゆる小裁判体というか五人裁判体をもっと活用して、すべからく多くの人に、裁判員裁判を市民の方にやっていただくということによって、裁判員裁判の広がりと理解というのがもっと深まるというふうにかねがね思っております。

 ついては、こうしたいわゆる小裁判体、五人の裁判体で裁判員裁判を行うということは今までないと思うんですが、これからはその辺のところを考えていくという予定はございますでしょうか。

平木最高裁判所長官代理者 裁判官一名及び裁判員四名の構成による小規模な合議体で審理、裁判を行うかどうかは個々の裁判体が事件ごとに判断すべき事項でございますので、委員御指摘の、これからもっと活用すべきではないかという点につきましては、最高裁の事務当局としてお答えする立場にはございません。

 もっとも、法律上、小規模な合議体で審理、裁判を行えるのは、公訴事実について争いがないと認められ、事件の内容その他の事情を考慮して適当と認められる場合に限られますところ、裁判員法の立案過程にも関与した裁判実務家が執筆した文献の中では、公訴事実に争いがなくても、量刑に関する争点が複雑な場合などは小規模な合議体で審理、裁判することが適当とは言えないことや、公判前整理手続の段階では予定されていなかった重大な論点が生じる可能性もあり、そのような場合に途中から裁判官三名と裁判員六名の構成に変更するとなりますと、公判手続の更新手続を行う必要が生じ、かえって訴訟関係者や裁判員の方々に負担をかける可能性があるなどと指摘されているところでございます。

若狭分科員 そうしますと、いわゆる小規模裁判体の実施の可能性というのが少ないというふうに今受けとめたわけですが、今までの裁判員裁判において、いわゆる一審判決が、事実認定においても、あるいは量刑においても、高裁あるいは最高裁でひっくり返される、判断が変わるということが少なからずあると思うんですが、最高裁判所としては、ここでもう一度、裁判員裁判における一審の事実認定、あるいは決定、判決というのは重視しているというようなことを申していただくことは可能でしょうか。

平木最高裁判所長官代理者 現行法上、裁判員裁判の判決を事実誤認や量刑不当を理由に破棄することができることになっておるところでございますけれども、具体的にどのような場合に破棄すべきかということになりますと、事件ごとに裁判体が判断すべき事項ということになります。

 しかし、一般論として申し上げますと、裁判官同士での議論では、裁判員裁判においては第一審の判断を尊重するという議論が広く行われておりまして、現に、例えば主要な十五罪名の破棄の割合につきましては、第一審の裁判官裁判に対する平成十八年から二十年までに終局した控訴審判決と、裁判員制度施行から平成二十七年十二月末までの期間における第一審の裁判員裁判に対する控訴審判決とを比較いたしますと、前者の破棄率は一七・六%に上るのに対しまして、後者の破棄率は八・九%にとどまっておりまして、裁判官裁判に比べて破棄率は低くなっておるところでございます。

 なお、この問題に関しまして、最高裁判所の判決は、事実誤認に関しては、控訴審が第一審判決に事実誤認があるというためには、第一審判決の事実認定が論理則、経験則等に照らして不合理であることを具体的に示す必要があるとの判断を示しており、また、量刑不当に関しましては、これまでの傾向を変容させる意図を持って量刑を行うことも、裁判員裁判の役割として直ちに否定されるものではない、しかし、そうした量刑判断が公平性の観点からも是認できるものであるためには、従来の量刑の傾向を前提とすべきではない事情の存在について、裁判体の判断が具体的、説得的に判示されるべきであるとの判断を示しているところでございまして、控訴審の裁判体は、こうした判例を考慮に入れながら、事件ごとに適切に判断していくものと考えておるところでございます。

若狭分科員 少し視点を変えますが、裁判員になりまして実際に裁判を続けていたところ、そろそろ求刑の段階になります。死刑という求刑がなされたといたします。その際に、裁判員の中に、例えば事実認定において、そもそも私は無罪だと思う、有罪ではないというふうに思っている人がいたとします。

 その場合、その無罪だと思っている人が、そうした死刑求刑がなされた事件のいわゆる量刑の評決から私は辞退します、私にはちょっと荷が重過ぎます、無罪なので死刑か無期かとかいうそうした選択に自分がかかわることはできませんというようなことを言う裁判員がいた場合、その辞退というのは今の現行制度では認められているのでしょうか。認められているとしたら、どういう形の流れがあるのでしょうか。

平木最高裁判所長官代理者 辞任の申し立てを認めるか否かは各裁判体が個別に判断すべき事項ではございますが、委員御指摘のように、死刑が求刑される事件、特に当該裁判員の方が無罪の御意見をお持ちであったような場合には、その裁判員に大きな精神的負担が生じるということは裁判所といたしましても十分に認識しておりまして、審理、評議の中でも、裁判体におきまして、裁判員の様子に気を配り、適宜お声がけを行ったり、必要に応じて裁判員の方から個別に事情をお聞きするなど、細やかな配慮を行っているところでございます。

 精神的負担を理由とする辞任の申し立てがあった場合も同様に、その裁判員の方から事情をよくお聞きした上で、辞任を認めるかどうかを丁寧に判断していくことになるものと考えております。

若狭分科員 その一般論はよく理解しました。

 例えば、そうしたときに、裁判員の人が三人も四人も辞退をする、補充の人をある程度確保していたとしても、それでもちょっと足りなくなっちゃう、もう一度最初から裁判員を選び直すという必要性があった場合においても、その一般論というのは通用するというような理解でよろしいでしょうか。

平木最高裁判所長官代理者 これも各裁判体の判断事項ではあるのですけれども、一般論として申し上げますと、裁判員の方が辞任の申し立てをしまして、それが裁判員法の要件に該当する以上、辞任を認める、解任するという判断になろうと思いますので、無理強いをするということはないものと考えておるところでございます。

若狭分科員 今のお話は非常によかったと思います。それを国民の人にもわかってもらえるように、そうした機会があればというふうに願っております。

 そして、話題がまたかわります。

 昨年の十二月に、いわゆる夫婦別氏の最高裁判決が出ました。その最高裁判決においては、こうした選択的夫婦別姓制度に合理性がないと断ずるものではない、そういう制度のあり方については、国会で論ぜられ、判断されるべき事柄にほかならないというべきであるという判決内容だと思うんですが、それは、文字どおり、国会で議論をされるべきだという理解でよろしいでしょうか。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 今委員が読まれた部分の判示ですが、これは最高裁の判決書を確認いたしましたが、ほぼそのとおりの記載があることは事実でございます。

 ただ、これをどう解釈するかということにつきましては、事務当局として解釈する立場ではございませんので、そのお答えは差し控えさせていただきたいと思います。

若狭分科員 解釈というか、とりあえず、国会で論ぜられ、判断されるべき事柄にほかならないというのは、それは文字どおり、そのままですよね、解釈とかいう問題じゃなくて。

中村最高裁判所長官代理者 文字どおりの記載が判決書に書かれているということでございます。

若狭分科員 最後に、修習生の給費制の問題について若干お聞きしたいと思います。

 私も司法研修所の教官をやっていて、修習生の役割というか、今後の司法を担うということで、非常に大事な存在であります。しかも、その修習生が、金銭的、財産的な負担が大きいということで、法曹にならない、あるいは法曹から出ていってしまうということになりますと、優秀な人材が司法界、法曹界から出ていくという、極めて国としても損失が大きいということであります。

 今は給費制ではなくて貸与制になっていると思うんですが、こういう問題について、今後、重要な修習生をどう育てるかという観点に鑑みて、国会議員においても三百人以上の人が、やはり何らかの、今の制度を変えて、給費制とか司法修習生手当とかいうのを創設した方がいいのではないかという人が国会議員の中にも多いんです。

 その点について、最高裁とすると、あくまで法律の問題ですから言及はなかなかしにくいとは思います。ただ、いろいろと、司法修習生を所管しているのは最高裁判所ですから、最高裁判所としては、今後のいわゆる立法事実とかあるいは各種司法修習生のデータなどについて、積極的に関係部署、関係各所に情報提供をするということについてはよろしいでしょうか。

堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 最高裁判所といたしましても、意欲と能力のある者が経済的事情ゆえに法曹への道を断念するような事態を招かず、司法修習生がその修習に専念することを確保することが重要であるというふうに考えております。そのための方策として、現在はいわゆる貸与制度が設けられているところと認識をしているところでございます。

 昨年六月の法曹養成制度改革推進会議の決定におきまして、「法務省は、最高裁判所等との連携・協力の下、司法修習の実態、司法修習終了後相当期間を経た法曹の収入等の経済状況、司法制度全体に対する合理的な財政負担の在り方等を踏まえ、司法修習生に対する経済的支援の在り方を検討するものとする。」とされておりまして、最高裁判所といたしましても、この決定を踏まえて、法務省において行っている検討に必要な連携協力を行っているところでございます。その関係で所要の調査も行われるということになってございますが、最高裁判所といたしましても、この調査に対しまして必要な協力をしてまいりたいと存じております。

若狭分科員 ありがとうございます。

 これで終わります。以上です。

平沢主査 これにて若狭勝君の質疑は終了いたしました。

 次に、吉田宣弘君。

吉田(宣)分科員 公明党の吉田宣弘でございます。

 本日は、予算委員会第一分科会にてこのように質問の機会を賜りましたこと、心から感謝を申し上げる次第でございます。実りある議論としてまいりたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。

 本日は、憲法のらち外に置かれた国民がいたのではないか、そういった問題意識のもと、ハンセン病裁判について質問をさせていただきます。

 ハンセン病裁判は、社会一般的には、らい予防法違憲国家賠償訴訟と呼ばれておりますけれども、ここでは、質問の便宜上、ハンセン病裁判と呼ばせていただきます。

 このハンセン病裁判を、改めてその概要について確認をさせていただきますが、一言で申し上げれば、ハンセン病に罹患した患者を感染のおそれがあるとして隔離することを認めたらい予防法が憲法に違反するとして熊本地方裁判所に提起をされた国家賠償訴訟です。そして、結論については、国民の皆様も御承知であると思いますが、厚生労働省、当時の厚生省の患者隔離政策及び国会議員の立法不作為のいずれもが違法であり、不法行為に基づく賠償が原告のハンセン病患者の皆様に認められたわけでございます。

 政府は、この判決について、控訴するか否かの決断を迫られたようでございます。

 御記憶の方も多いかもしれませんが、当時の厚生労働大臣、我々公明党の大先輩である坂口厚労大臣が、四面楚歌の中で、控訴断念を強く主張し、一切譲らなかった。大臣の首をかけての決意であったと、後に続く後輩でございます私は、この坂口厚労大臣の闘いに衷心より深く敬意を表するものでございますが、坂口元大臣のこの決意は、当時の総理大臣、小泉総理の心も揺り動かしたものと思います。結果、小泉総理は控訴断念を決断し、熊本地裁の判決が確定し、裁判が終結したわけでございます。

 控訴断念を決断したときの内閣総理大臣談話では、次のように述べられております。

  今回の判断に当たって、私は、

小泉元総理のことです、

 内閣総理大臣として、また現代に生きる一人の人間として、長い歴史の中で患者・元患者の皆さんが経験してきた様々な苦しみにどのように応えていくことができるのか、名誉回復をどのようにして実現できるのか、真剣に考えてまいりました。

  我が国においてかつて採られたハンセン病患者に対する施設入所政策が、多くの患者の人権に対する大きな制限、制約となったこと、また、一般社会において極めて厳しい偏見、差別が存在してきた事実を深刻に受け止め、患者・元患者が強いられてきた苦痛と苦難に対し、政府として深く反省し、率直にお詫びを申し上げるとともに、多くの苦しみと無念の中で亡くなられた方々に哀悼の念を捧げるものです。

と。

 小泉元総理の談話に込められた心の痛みは、今質疑に立たせていただいている私の心にも通っているところでございます。

 この小泉総理の談話は有名ですけれども、加えて、判決では立法府の責任も認められた。そこで、立法府においても、例えばここ衆議院において、

 熊本地方裁判所におけるハンセン病国家賠償請求訴訟判決について、政府は控訴しないことを決定した。本院は永年にわたり採られてきたハンセン病患者に対する隔離政策により、多くの患者、元患者が人権上の制限、差別等により受けた苦痛と苦難に対し、深く反省し謝罪の意を表明するとともに、多くの苦しみと無念の中で亡くなられた方々に哀悼の誠を捧げるものである。

  さらに、立法府の責任については、

少し省かせていただきますが、

 ハンセン病問題の早期かつ全面的な解決を図るため、我々は、今回の判決を厳粛に受け止め、隔離政策の継続を許してきた責任を認め、このような不幸を二度と繰り返さないよう、すみやかに患者、元患者に対する名誉回復と救済等の立法措置を講ずることをここに決意する。

と決議がされております。また、参議院においても同様の決議が行われております。

 今、私は、この質問をさせていただいていることについて、今の決議にありました、全面的な解決を図るためという言葉を胸に置きながら、質問をさせていただいているところでございます。

 このように、ハンセン病問題は、行政府及び立法府がその責任を明確に認め、救済のための立法措置を講ぜられたことにより、判決以降、被害者の救済が進められてきたと承知をしております。このような結論を導いたものは、裁判所の判決によるものであったわけでございます。裁判所は、まさに司法が人権の最後のとりでとして、強力な国家権力の間違いを是正する見事な役割を果たしたと言えます。

 そこで、お伺いをさせていただきます。

 お聞きしたいのは、改めてではございますが、国民の皆様に、憲法が採用する三権分立のもと、裁判所が果たす役割について御教授を願いたいと思います。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 憲法は、七十六条一項において、「すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。」と定めているところでございます。

 こうした憲法の規定のもと、司法権を行使する裁判所の果たすべき役割は、具体的な紛争の適切妥当な解決を通じて法の支配を確保するとともに、基本的人権を擁護することであるというふうに認識しているところでございます。

吉田(宣)分科員 ありがとうございます。

 今御教授いただいたように、裁判所は、国民が人権侵害を受けた場合、法の支配のもと、これを回復する重要な役割を有していると私は承知をしておる次第でございます。現代立憲主義のもと、裁判所の果たす役割はますます重要になっていると私は感じておりますし、その意味でも、私は裁判所の存在に深く敬意を表するものでございます。

 しかし、私の今回の質問の本題はこれからでございます。かなり前置きが長くなりましたことにはそれなりの理由がございますけれども、御容赦いただきたいのですが、また、答弁者におかれましては、これから答弁が困難な質問ももしかするとあるかもしれません。この点、先にお許しいただきたいと思いますし、そのような場合、率直にそのように申していただければと思います。

 では、本題に入ります。

 今のやりとりにありましたとおり、裁判所は、人権の最後のとりでとして、国民に人権侵害があった場合、立憲主義のもと、これを是正する大切な役割があります。

 ここからあくまで仮定の話でございますが、仮に裁判所自身が憲法に違反し、もって人権を侵害してしまったような場合があれば、あくまで仮にでございますが、そのようにして人権を侵害された国民はどこに救済を求めればよいのでしょうか。

 私は、国会議員として仕事をさせていただき、改めてハンセン病問題に携わるようになるまで、このようなことは考えもしませんでした。多くの国民の皆様も同様だと思います。

 ただ、あらかじめお断りしなければなりませんが、質問の前提として、私は、ハンセン病問題で裁判所が人権を侵害したと、それを決めつけて話を進めているということではないということでございます。その意味で、言葉は慎重に選ばなければならないと緊張しながら話もしている次第でございますけれども、ただ、そのことを疑わせる事実がハンセン病問題には眠っていたのではないか、そのように感じるところもあるわけでございます。

 これからそのことをお話しさせていただきますが、その前に、裁判所に数点ほど確認をさせていただきたく存じます。

 まず、裁判所法第六十九条一項は、「法廷は、裁判所又は支部でこれを開く。」と規定しております。ただし、同条第二項は、この原則に例外を認め、「最高裁判所は、必要と認めるときは、前項の規定にかかわらず、他の場所で法廷を開き、又はその指定する他の場所で下級裁判所に法廷を開かせることができる。」と規定をしております。

 ここで裁判所にお伺いしたいのは、この裁判所法六十九条一項の例外たる二項の規定はどのような場合に適用されるとお考えになっておられるか、そのことについてお伺いをさせていただきます。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 裁判所法六十九条二項の必要と認めるときという要件につきましては、一項の例外ということで、これは極めて例外的な場合をいうというふうに考えております。例えば、風水害、火災等のため、その裁判所の庁舎内で法廷を開くことが事実上できなくなった場合などがこれに当たるというふうに考えております。

 ただ、どのような場合にこの例外に当たるかということは、網羅的にお答えするのは困難であるということは御理解いただきたいと思います。

吉田(宣)分科員 では、続きまして、今おっしゃられた裁判所法六十九条二項の必要と認めるときという要件は、どのように判断をされるのでしょうか。このことについてもお教えください。

中村最高裁判所長官代理者 六十九条二項の要件の判断は、最高裁判所が行う司法行政上の判断ということになりますが、一般論として申し上げますと、個別の事案ごとに下級裁判所からの上申を受けて、下級裁判所に必要な資料を提出させた上で、六十九条二項の定める必要と認めるときという要件が満たされる例外的な場合に当たるか否かを個別具体的に判断するということになろうと考えております。

吉田(宣)分科員 ありがとうございます。個別具体的というお話でございます。

 さて、この点、最高裁判所から先日いただきました資料によると、裁判所法六十九条二項のもと開かれた法廷、ここでは、申しわけありません、質問の便宜上、特別法廷という表現をとらせていただきます。

 この特別法廷を開廷するための開廷場所の指定上申及び処理の状況は、昭和二十三年一月三十日から平成二年十二月十三日までの間に、開廷場所の指定を求める下級裁判所からの上申の数が百八十件、うち百十三件が認可されております。認可率は六三%。そのうち、ハンセン病を理由とする上申は、昭和四十七年以降はないとお聞きしております、昭和二十三年から昭和四十七年までの間に九十六件、うち九十五件が認可、一件が撤回で、却下事例はなし、認可率は九九%です。これに対して、ハンセン病以外の病気及び老衰を理由とする上申は、昭和二十三年から平成二年までの間に六十一件、うち九件が認可、二十七件が却下、二十五件が撤回、認可率は一五%です。

 この数字からわかるとおり、ハンセン病を理由とする認可が、極めて高い確率で認められたことがわかります。

 ここに、一つ目の疑問が私にはあります。

 すなわち、先ほど、裁判所法第六十九条第二項の運用は、裁判所が、火災や自然災害など風水害等々で建物が物理的に使用できなかったような場合など、または、説明にはございませんでしたが、例えば、病床から起き上がることも難しいような重症患者に対する病床での出張裁判が上申された場合などというふうなケースが考えられるわけでございますけれども、ハンセン病患者の上申については、ハンセン病に感染している、そのことそのものだけが理由とされている可能性が高いと推測せざるを得ません。

 さて、この特別法廷について、今、最高裁判所内部において、すなわち裁判所法六十九条二項の運用が適切であったか否かということだと思いますけれども、検証作業が行われているとお聞きをしております。

 この検証作業は、一、どのような経緯で、二、いつから行われるようになったのか、三、検証はどのような形でされているのか、四、検証結果はいつまでにまとめられるのか、五、それは公表されるのか、以上五点について最高裁判所からお教え願えればと思います。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 まず、経緯、いつからというところでございますが、平成二十五年十一月六日付で全国ハンセン病療養所入所者協議会ほか二団体からそのような検証を申し入れる要請を受けたことを契機といたしまして、平成二十六年五月十九日にハンセン病を理由とする開廷場所指定に関する調査委員会を設置した上で、現在、事務総局において調査を進めているところでございます。

 どのような形で進められているのかという御質問に対しましてお答えいたしますが、調査におきましては、最高裁判所及び下級裁判所において関係資料を探索し、検察庁、厚生労働省から関係する資料の送付を受けたほか、関係者等に対するヒアリング、意見聴取、現地調査などを行っておるところでございます。

 その後、調査委員会が行っております調査につきまして、広く有識者の意見を聴取し、調査の参考とするため、ハンセン病を理由とする開廷場所指定の調査に関する有識者委員会を開催することといたしました。

 平成二十七年九月八日に第一回の有識者委員会を開催した後、二十八年一月二十六日までに四回の委員会を開催しているところでございます。今後、平成二十八年三月二十九日に第六回の有識者委員会が開かれる予定になっておりまして、この委員会までに全ての議論を終えることを目途に議論が進められているところでございます。

 最後に、結果等の公表の関係でございますが、現在、有識者委員会においてまさに議論をいただいているところでございます。有識者委員会の終了後、いただきました意見を踏まえて報告書を作成する予定でございます。

 報告書をいつまでに作成できるかという具体的なところは、現時点でお答えするのは困難であるということは御理解いただきたいと思います。もっとも、有識者委員会における議論の終了後、できる限り速やかに報告書を作成し、また適切な形で公表したいと考えているところでございます。

    〔主査退席、小田原主査代理着席〕

吉田(宣)分科員 今御説明ございました。本当にありがとうございます。

 できるだけ早く取りまとめをしていただきたいと私からはお願いを申したいと思います。と申しますのも、ハンセン病患者また元患者の方は、御高齢の方がやはりふえております。これから一日一日が大切な人生の方々でございますので、どうかよろしくお願いいたしたいと思います。ただ、今は、この最高裁判所の検証結果というものを待ちたいと私は思っております。

 ここまでのやりとりでは、私がさきに申し上げた裁判所の憲法違反という、普通では考えられない事態のお話は出てきてはおりません、裏に隠れてはおりますが。問題は、今御説明があったとおり、検証が何をきっかけに行われ始めたか。すなわち、このことについての報道がございます。

 昨年の一月十八日付の毎日新聞の社説によると、「検証のきっかけは、五〇年代に起きた菊池事件だ。」というふうな報道がございます。そして、「入所者団体などが一昨年、特別法廷の正当性について最高裁に検証するよう申し入れた。」とあります。

 この新聞報道にある菊池事件、御存じな方が少ないかと思われますので、今引用した毎日新聞の紙面をおかりして簡単に紹介をさせていただきたいと思います。菊池事件とは、

 ハンセン病とされる男性が殺人罪などに問われ、無実を訴えながら死刑が確定し、執行された。その特別法廷で、裁判官や検察官は白衣に手袋をはめ、証拠物をトングで挟んで扱った。

  国選弁護人は検察側証拠に全面同意しており、適切な弁護がされなかった疑問も残る。被告と面会していた療養所関係者は「暗黒裁判だった」と振り返る。

この裁判の再審を求める動きのある事件のことを指して菊池事件と呼んでおりますが、この事件が起こった場所は、私の生まれ故郷である熊本県でございます。

 では、この菊池事件にどのような憲法上の問題があるのか。この点につき、今度は昨年の三月十七日付日経新聞でございますが、その紙面で、この菊池事件のことを、「ハンセン病患者が被告となった刑事裁判が、感染の恐れを理由に国立療養所内に設けられた事実上非公開の「特別法廷」でされていた問題」と記載をしております。

 この事実上非公開という言葉に、憲法違反を疑わせる事情があるわけでございます。

 すなわち、憲法八十二条第一項は、「裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。」と規定されています。また、憲法三十七条一項は、「すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。」と規定をしております。

 そこで、最高裁判所にお伺いをしたいと思います。

 憲法八十二条第一項が公開裁判を規定し、憲法三十七条一項が刑事被告人に公開裁判を受ける権利を保障している趣旨はどういうことなのでございましょうか。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 事務総局としてその趣旨を、事務総局としての解釈を示すことは差し控えさせていただきますが、ただ、八十二条一項の規定につきましては、平成元年三月八日の最高裁大法廷の判決がございます。その大法廷の判決の中に、この規定については、「その趣旨は、裁判を一般に公開して裁判が公正に行われることを制度として保障し、ひいては裁判に対する国民の信頼を確保しようとすることにある。」というふうに判示されているということを承知しております。

 三十七条一項にも同様の規定がございますが、この規定は、さきに述べました公開原則につきまして、刑事裁判についての被告人の権利という側面から規定したものと一般的な学説が論じているということを承知しているところでございます。

吉田(宣)分科員 ありがとうございます。

 今御説明がありましたとおり、裁判の公開は極めて重要な意義を有しているというふうに言えます。

 この菊池事件について、裁判の中身それ自体を議論することはここではあえて控えさせていただきたいと思っておりますが、私は、冤罪の可能性があるのではないかなというふうに考えております。

 仮に冤罪であったとするならば、無実の人間が死刑執行をされたことになります。そして、この菊池事件における特別法廷が事実上非公開であったことが真実であったとすれば、最高裁判所の司法行政は、憲法三十七条、憲法八十二条一項違反ということになるのではないかと思います。

 このことを余り申し上げたくないんですけれども、憲法違反の裁判により無実の人間が死刑になったということ、すなわち、裁判所が憲法に違反して、もって人権を侵害してしまったような場合、人権侵害をされた国民はどこにその救済を求めればいいのかという問題に行き着くように思われます。

 ただ、さきの検証も、個別事案に関する裁判内容まで検証するものでなく、その事情は私も承知をしているところでございます。ただ、最高裁判所みずからが検証に取り組み始めたことの意義は、私は極めて大きいというふうに思っております。

 裁判所が憲法の番人という役割を果たしていく中で、司法自身による検証作業というものは、多くの問題、例えば、冤罪の問題であったり、今社会的に批判もあるところかもしれません、司法消極主義、消極的過ぎやしないのか、そういった議論もございます。そういったことに関する点から、この検証作業が行われれば、私は、これから、国民の人権または個人の尊厳のさらなる確立といったものに向けて極めて重要ではないのかな、そのように考えております。

 その意味におきましても、私は、司法に検証システムを制度化する、このことを強く主張したいと思っております。

 加えて、今お話をしてきた議論は、再審制度のあり方にもつながってくるというふうに私は考えております。

 これまで、日本の再審事件というのは、無罪判決をかち取ることに傾倒してきた嫌いがあると思うのですけれども、例えば、事件の事案ごとに再審、誤判のいわゆる原因といったものを精査し、今後、そういった反省のもと、法律の改正であったりとか、そういった刑事手続の改善といったものにつなげていくことができれば極めて有意義ではないのかな、そのように考えております。

 このような思いから、私は、再審制度のあり方について、今後また別の機会に質問をさせていただきたいなというふうに考えておりますが、本日は、答弁も要求をしておりませんのに法務省にも陪席をしていただいております。このことに関しましては、心から感謝を申し上げるとともに、お許しを請う次第でございます。

 時間が間もなく参りそうなので、以上で終わります。

小田原主査代理 これにて吉田宣弘君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

小田原主査代理 次に、内閣府所管について審査を進めます。

 内閣府本府について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河野正美君。

河野(正)分科員 おおさか維新の会の内閣部会長を拝命しております河野正美でございます。本日はよろしくお願いいたします。

 我が党は、従前よりIR推進の立場で行動させていただいております。IRにつきましては、またいずれ審議の機会があるかと思いますけれども、私、実は元来、精神科の医師として地域医療に従事をしてまいりました。その中で、大変に頭を悩ませていた問題の一つが依存症の対策であります。最近は有名野球選手、その前は有名歌手の薬物問題というのがテレビ等をにぎわせていたのはもう御承知のとおりかと思います。

 IRの議論が高まってきますと、決まって懸念として出されるのがギャンブル依存という問題でございます。そうした心配は理解できますが、問題なのは、IR、カジノができたら大変だというのではなくて、やはり依存症というのを、国を挙げてしっかりと対策をとっていかなければならないのかなと思います。

 我が国は、極めて身近にパチンコというものがございます。あくまで遊技という建前だと思いますけれども、ギャンブル依存症の調査を行いますと、我が国は諸外国に比べて極めて高い数字が出ている、五倍近い数字が出てきたりもするわけであります。

 まず、依存症に関する政府の現状認識をお伺いしたいと思います。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 依存症には、アルコール、薬物等さまざまな依存症がございます。医療機関を受診しております依存症の患者数を見ますと、調査年によって増減がありますが、平成二十六年のアルコール依存症は約四万九千人、薬物依存症は約三千人となっております。

 依存症は、適切な治療やその後の支援により回復が可能である一方、依存症の方が地域で適切な医療等に結びついていないということが指摘されております。このため、依存症に関する相談、支援の体制や、依存症の方が必要な医療や支援を受けられる体制等を整えていくことが課題であるというふうに認識いたしております。

河野(正)分科員 内閣府におかれましても、アルコール健康障害対策、あるいは薬物乱用対策といった問題を所管されていると思います。

 アルコール健康障害は、アルコールへの依存により本人の健康に問題が生じるのみならず、飲酒運転であるとか暴力、虐待、自殺などさまざまな社会問題にもつながってまいります。そういったことから、アルコール健康障害対策基本法による対策が進められてまいりました。アルコール飲料というのは極めて大きな税収にもなると思いますので、我が国では極めて身近で、簡単に、二十四時間に近い体制で手に入るというものでございます。

 薬物乱用につきましては、また、家族を含めた多くの人々の人生を不幸にしてしまうため、政府としても、青少年に対する予防教育であるとか薬物依存者の社会復帰支援、密売組織の徹底した取り締まり、密輸入防止に向けた水際対策、国際的な連携協力の推進などに取り組んでおられるかと思います。

 このように、今お話ありましたけれども、一つ一つの依存症に対する対策もとることが大切だと思いますが、先ほどもお話ししましたように、きちんと適切な治療プログラムを持っていれば社会復帰の可能性も大きくなると思いますし、有能な人材を依存症の負のスパイラルに陥れて、いわば社会から葬り去ってしまうことは国家的な損失になるのではないかなと思います。

 現在では、内閣府で個別の依存症対策を進めつつ、厚生労働省が依存症全体の対策に当たっていると思いますけれども、政府を挙げた総合的な依存症対策を進める必要がより高まっているんじゃないかなと思います。内閣府から政府の認識をお聞かせいただきたいと思います。

武川(光)政府参考人 お答えいたします。

 内閣府におきましては、アルコール依存症対策を含むアルコール健康障害対策及び薬物依存症対策を含む薬物乱用対策を行っているところでございます。

 薬物乱用の根絶に向けた取り組みにつきましては、薬物乱用に対する治療、社会復帰の支援や青少年の再乱用防止の強化を目標の一つとして、平成二十五年八月に策定した第四次薬物乱用五カ年戦略に基づき、政府を挙げた総合的な対策を講じているところでございます。

 アルコール健康障害対策につきましては、アルコール依存症の防止とともに、依存症当事者やその家族への支援の充実を図るため、現在、アルコール健康障害対策推進基本計画を本年五月までに策定しようとしているところでございます。

河野(正)分科員 我が国における依存症の実態というのはどのような状況にあるか、先ほど数値は、アルコール依存症は四万数千人ということを言われましたけれども、厚生省として早急に調査をして現状把握をしておくべきじゃないかなと思いますが、厚生労働省の見解を伺いたいと思います。

    〔小田原主査代理退席、主査着席〕

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 まず、都道府県等の精神保健福祉センターや保健所におきまして依存症に関する相談を実施しておりますけれども、この相談件数でございますが、調査年度によって増減がございますけれども、精神保健福祉センターにおける平成二十六年の相談件数は、アルコールが三千百七十件、薬物が六千六百二十二件となっております。また、保健所における平成二十五年の相談件数は、アルコールが一万五千二百八十四件、薬物が三千六百五十五件となっております。

 現時点ではこのような相談件数等のみしか把握をしておりませんけれども、御指摘のとおり、依存症対策を推進していくためにはその実態を把握することが重要であると考えており、今後とも、患者調査等の統計調査や厚生労働科学研究等を活用いたしまして、依存症の実態把握に努めてまいりたいと考えております。

河野(正)分科員 済みません、ちょっと確認させていただきたいんですが、これは延べの件数でしょうか。それとも、それだけの数があるということでしょうか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 延べの件数でございます。

河野(正)分科員 ありがとうございました。

 私も、精神科医師として、精神保健福祉センターあるいはさまざまな保健所でいろいろ相談を受けてきましたけれども、意外と少ないのかなと思います。こういった方は非常に大きな問題を、特に依存症ですと、お金にまつわる、多重債務であるとかさまざまな問題も保健所でいろいろ悩み事を相談されますので、そういったことを考えると、意外と少ない数じゃないのかな、延べであるならというふうに思った次第であります。しっかりと力を入れていただきたいというふうに希望いたします。

 依存症というのは、酒にしろ、薬物にしろ、ギャンブルにしろ、ともすれば誘惑にかてないというふうなことを言われて、国が助けるのはどうなのかなといった問題もあるかもしれません。そういったことを言われてしまうわけですが、依存症患者さんがやはり治療によってしっかりと社会復帰できるように、社会生活に復帰できるようにしていくことが重要じゃないかなと思います。

 我が国の社会復帰支援の体制について、厚生労働省、施設などの実情を教えていただけますでしょうか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 地域において、依存症患者の社会復帰を支援するための社会資源といたしましては、当事者同士の集団活動を通じて、依存症の要因となる物質等を中断した後から社会復帰までの回復支援を行う依存症回復施設、それから、グループミーティングを通じて、依存症の要因となる物質等に接しない状態を維持するための支援を行う自助グループ等がございます。

 依存症回復施設につきましては、平成二十二年度から、厚生労働省から民間団体に委託いたしまして、依存症回復施設職員に対しまして、依存症に関する医学的知識や関係機関との連携に関する研修を行うことなどによりまして、依存症への対応力の強化を図っているところでございます。

 また、先ほど相談件数を申し上げましたけれども、精神保健福祉センターや保健所におきましては、依存症回復施設や自助グループに対しましても必要な助言や指導を行っているところでございます。

河野(正)分科員 以前質問をさせていただいた機会にお尋ねをしたら、覚醒剤等々の薬物の治療プログラムを持っている精神保健センター等が全国で二十数件しかなかった、また、民間を合わせてたしかそれぐらいの数値で、本当に、実は民間に依存しているような状況だと思います。

 病気の一つであると認識して、これからIRの議論もあるかもしれませんが、治す意識というか、きちんと認識して、認知して治療していくということをやはり政府が先頭に立ってやっていかなければいけないのかなと思っております。国が社会復帰を支える姿勢をしっかりとつくっていくことが大切だと思いますが、政府の見解を加藤大臣に伺いたいと思います。

加藤国務大臣 広く依存症全体に対する医療の話、あるいは回復に向けての支援、これについては今厚生労働省において対策が進められているわけでありますが、基本的には相談支援、医療提供、そして関係機関の連携、こういったことを地域においてまさに整備していくことが重要だろうというふうに思っておりまして、引き続き、普及啓発、人材育成、調査研究などの取り組みを主として厚生労働省において推進されていくというふうに承知をしております。

 私の内閣府においては、先ほどお話がありましたように、薬物の乱用あるいはアルコール対策、依存症対策といったことを推進しているわけでありますが、今御議論がありましたように、依存症全体という形でどう取り組むのか、あるいは、今御指摘があった薬物とアルコール以外に、もう一つの柱としてギャンブル依存症というものにどう取り組むのかについては、これからいろいろ議論していかなきゃいけないというふうに思います。

 そのやり方においては、内閣官房、内閣府でやるというやり方、あるいは、昨年、内閣官房、内閣府の見直し法ができまして、ことしの四月から施行されますので、それによると、閣議決定をもって当該省庁で総合調整できるという仕組みもあります。

 そんなことも踏まえながら、それぞれの課題に対してどういう対応をすればいいのかといったことをしっかり議論しながら、適切な対応、また各省庁連携して事に当たっていきたい、こう思っています。

河野(正)分科員 ありがとうございました。

 IRなどを議論するに当たって、やはり依存症という問題をきちんと明確にして、これを機に、今まで本当に依存症対策というのが遅々として進んでいなかったと思いますので、こういった議論を含めてしっかりと対応していくことが一億総活躍につながっていくのかなと思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。

 次に、認知症についてちょっとお尋ねをしたいと思います。

 来月、注目される最高裁判決があると思います。在宅の認知症患者さんが介護者の気がつかないうちに外出をし、列車にはねられて死亡された、そして、さらに不幸なことに、これでJR東海が介護者に運行停止による損害賠償を求めたという裁判でございます。

 一審、二審ともに、一定の範囲で介護者の責任を認めて、賠償を命じる判決を下しております。このことは、家族に認知症患者さんを持つ方々にとっては非常に大きな衝撃ではないかなと思います。

 政府は、介護離職ゼロを目標に掲げ、在宅での医療、介護の環境整備を進めていると思います。しかし、認知症患者の監督責任を親族が負うことになれば、在宅での介護に対するハードルはこれまで以上に高くなってしまうのかなと思います。政府の掲げる目標の達成を大きく阻害する要因にもなりかねません。

 これは本当に、誰が責任を持つかということは非常に大きな問題で、簡単には解決できないというふうに思いますが、最高裁の判決はまだ出ておりませんけれども、在宅での介護に与える影響について、現時点で政府の対応はどのように考えられているでしょうか。よろしくお願いします。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 係争中の訴訟あるいは個別の事案についてのコメントは差し控えさせていただきたいと考えておりますが、認知症の方やその家族ができる限り住みなれた地域で安心して暮らすためには、例えば、認知症の高齢者に対して地域の方が気軽に声をかけたり、介護している家族が身近で相談したりする場所があるなど、認知症高齢者やその家族を支える地域づくりが重要であると考えております。

 このため、厚生労働省では、関係省庁と共同して策定した認知症施策推進総合戦略、いわゆる新オレンジプランに沿いまして、徘回見守りに対応するネットワークの構築や、認知症サポーターなどによる地域での見守り体制の整備を推進しているところでございます。

 さらに、昨年十一月に取りまとめられました、一億総活躍社会の実現に向けて緊急に実施すべき対策を踏まえまして、平成二十七年度補正予算におきまして、高齢者とかかわる家族等の介護負担の軽減を図るため、見守り支援機器を導入する際の支援、あるいは、平成二十八年度予算案におきましては、認知症カフェ等を通じて顔なじみになったボランティアによる、認知症の方の居宅を訪問して一緒に過ごす取り組みを新たに実施することといたしております。

 これらの取り組みを通じまして、在宅で生活する認知症の方や家族の方々への支援をしっかり進めてまいりたいと考えております。

河野(正)分科員 今、JRの事故の話をさせていただきましたけれども、やはり高齢運転者によるアクセルとブレーキの踏み間違え、これはどうしても反応時間が遅くなってきますので、高齢者は、残念ながら、そういった危険を察知したとしても瞬時に反応ができないということもございます。また、認知症高齢者による高速道路の逆走事故など、大きな問題が頻発しているのかなというふうに思います。

 地方創生ということになりますと、山間部やいわゆる僻地、過疎地といったところにもしっかりと人が住んでいくということになりますが、高齢の御夫婦だけで暮らしているケースも多々あるかと思います。そういったいわゆる僻地と言われるような場所であれば、車は生命線でもありますので、高齢化社会を迎えた我が国におきましては、やはり高齢者が関係する事故あるいはその補償問題というのは、しっかりと対策をしておかなければいけないんじゃないかなと思っております。

 次に、障害者差別解消法についてお尋ねをいたします。

 二〇二〇年の東京パラリンピック開催に向けまして、ことし四月に施行される障害者差別解消法は重要な第一歩ではないかと思います。この法律は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本的な事項や、国の行政機関、地方公共団体、そして民間事業者に対して、障害を理由とする差別を解消するための措置などについて定めることによって、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現につなげることを目的としたものだと思います。

 オリンピック・パラリンピック開催を控えまして、健常者、障害者にもかかわりなく、日本人、外国人を問うこともなく、互いの人格を尊重し、ともに生きる社会をつくるため、大切な法律であると考えております。

 そこで、施行に向けた準備状況を伺いたいと思います。

 国や地方公共団体等の行政機関は、対応要領、対応指針を定めて、障害を理由とする不当な差別的取り扱いの具体例などを示すことになっていますが、その策定状況について内閣府にお尋ねをいたしたいと思います。

武川(光)政府参考人 お答えいたします。

 障害者差別解消法におきましては、国の各府省では、不当な差別的取り扱いの禁止や合理的配慮の提供について適切に対応するため、まず、みずからの職員に向けました対応要領、また所管する分野の事業者に向けました対応指針を定めることとされております。既に全ての府省で策定、公表いたしているところでございます。

 続きまして、地方公共団体におきましては、みずからの職員に向けた対応要領を策定するよう努力するとされておりまして、昨日時点では、都道府県及び政令指定都市の九割以上が前向きに取り組んでいる状況でございます。

河野(正)分科員 衆議院、参議院に対しましても、昨年十一月、日本障害フォーラムより、立法府における障害者差別解消法の施行に向けた対応要領策定に関する要望というのが提出されています。

 実際、我々も、議事堂内を動いていく中で、段差が多くあり、直ちにバリアフリー化を進めることは困難じゃないかなと思う場面がございます。また、手話通訳であるとか、そういった聴覚障害者に対しての情報保障なども十分ではないのかなというふうに思うところでありますが、まだまだ我々国会の中においても課題が残っていると考えております。

 これまでの検討状況、取り組みにつきまして、きょうは衆議院事務総長あるいは参議院の方からも来ていただいておりますので、衆参それぞれどのように対応されているのか、お話しいただきたいと思います。

向大野事務総長 お答えさせていただきます。

 今、先生おっしゃいましたように、昨年の十一月、障害者団体の方から議長に対しまして、対応要領を策定してほしいという御要望がございました。議長から早速、本院職員を対象とした対応要領を策定するようにという御指示がございました。

 これを受けまして、対応要領の素案を策定いたしまして、一月十五日から今月十四日までの約一カ月間、当院のホームページを通じて国民の方々から意見を募集いたしました。五団体から意見がございました。

 さらに、今月の五日には、衆参両議院の事務局、それから国会図書館の三機関合同で、十四の障害者団体から意見を聴取したところでございます。

 今、その御意見を反映させた職員対応要領の最終的な策定作業を行っているところでございまして、四月一日の障害者差別解消法の施行に合わせまして、職員対応要領を施行いたしたいと考えております。

 それから、今先生おっしゃいましたように、バリアフリー化の件ですが、御承知のとおり、これは昭和十一年にできまして、もう約八十年たちまして、当時の形ですから、なかなかバリアフリー化というのは難しい部分もあるんですが、これまでもかなり取り組んでおりまして、例えば、本会議や委員会で傍聴者に対しましては、ソフトの面でございますが、手話通訳者に傍聴を認めるとか、あるいは盲導犬を初めとする補助犬を同伴しての傍聴を認めたりいたしております。

 また、参観者に対しましては、車椅子の貸し出しとか、手話によって案内をしたり、あるいはホワイトボードを持って衛視が実際に物を書いて御説明をする。あるいは、これはハードの面でございますが、例えば、多目的トイレを設置したり、手すりを設置したり、スロープをつくるとか、そういうこともやっております。

 また、ホームページでは音声読み上げ機能をつけたり、請願や陳情も点字によるものを認めている。

 これからも、先生方の御指摘をいただきながらしっかりやっていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

郷原参議院事務次長 お答えいたします。

 参議院におきましても、障害者差別解消法の趣旨を踏まえまして、現在対応要領を策定しているところでございます。

 先ほど衆議院の方から御紹介ありましたけれども、先般、参議院、衆議院、図書館と合同で関係団体からのヒアリングを行いまして、現在は国民の皆様からの御意見を募集しているところでございます。

 ちなみに、明日が締め切りになっておりまして、これから、出てきました御意見を踏まえながら、四月一日の施行に向けて対応要領をまとめていきたいと考えております。

 また、施設面の整備につきましては、バリアフリーは当然でございますのでいろいろ努力してまいりましたけれども、スロープの設置あるいはエレベーターの設置等、いろいろ努力しておるところでございます。

 それから、一点だけ最後に、委員会室あるいは本会議場におけます聴覚障害者の方への対応でございますが、基本的には、原則は、御本人が手話通訳者あるいは要約筆記者、そういう方を連れてきていただくというのが原則でございますけれども、御本人が手配できない場合は、事前にお申し出いただければ、参議院側で費用負担を含め手配するようにいたしております。

 簡単でございますが。

河野(正)分科員 ありがとうございました。

 しっかり対策を進められているということだと思いますけれども、傍聴とか見学に来られた方はいいんですが、もし、議員でそういった障害を持っている方が選出された場合、まだまだ十分な対策ではないのかなと思いますので、引き続きよろしくお願い申し上げます。

 地方公共団体は、その地域における障害を理由とする差別に関する相談や紛争の防止といった取り組みを進めるために、障害者差別解消支援地域協議会を組織することができるとされております。この協議会の組織の設立状況をどのように把握されているか、簡単にお答えいただけますでしょうか。

武川(光)政府参考人 お答えいたします。

 本年四月に施行される障害者差別解消法におきましては、地域の実情に応じた、差別の解消のための取り組みを主体的に行うネットワークとして、障害者差別解消地域協議会を組織することができる旨が規定されております。

 地方公共団体における地域協議会の設置に向けた取り組み状況は、昨日時点では、都道府県及び政令指定都市の八割以上が前向きに取り組んでいる状況でございます。

 内閣府におきましては、これまでも、設置を促進するため、検討会やモデル事業アドバイザーの派遣を行ってきたところでございますが、今後ともしっかりそれら支援策を講じてまいりたいと思っております。

河野(正)分科員 民間事業者は、障害者への合理的な配慮を行うよう努めなければならないというふうにされております。

 事業者が果たしてこの制度を十分に理解できているのかどうか、対応が進んでいるのかどうか、不安の声も聞くところであります。

 法的義務ではないものの、努力義務は課せられているので取り組みを進める必要があると考えますが、現状をどのように考えておられるか、加藤大臣に伺いたいと思います。

加藤国務大臣 議員今御議論がありましたように、本年四月一日から障害者差別解消法の施行が行われるわけでありまして、それが円滑に進んでいくためにも、民間事業者への周知啓発が大変重要だというふうに認識をしております。

 民間における対応指針についても、現場の実情に即した内容になるよう、障害者団体やそれぞれの事業者団体等にもヒアリングなどを実施して、各方面の協力、参画を得ながらつくったものでありますけれども、さらに、事業を所管する各府省において、各事業団体等を通じて事業者にしっかり周知をしていくよう、また事業者向けの説明会等も開催をしているところであります。

 内閣府においても、法の円滑な施行に向けて、法の趣旨、目的を事業者も含め国民に広く御理解いただくため、障害者差別の解消に向けたフォーラム、これは全国で十カ所開催いたしました。さらに、事業者を含む幅広い国民の方々にこの法律の中身を理解していただくということも含めて、リーフレットを作成し、また、そうした機運を高めるためのポスター、こういったものも作成をして、その頒布等に努めていきたいと思っております。

 いずれにしましても、この法の施行は目の前に来ておりますので、政府全体としてしっかりその周知啓発に取り組んでいきたいと思っております。

河野(正)分科員 ありがとうございました。

 最後に、ほとんど時間がありませんので、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックについて伺いたいと思います。

 二〇二〇年まであと四年しかないということになりました。

 先日、読売新聞が世論調査を行ったというふうに報じておりますが、準備状況について、順調に進んでいると思っている方が一七%、一方で、順調ではない、そうは思わないと考える方が八割に及んでいるということであります。また、さまざまな懸念の中でどのようなことに力を入れるべきかという質問に対して、テロ対策の強化が五四%ということだそうでございます。

 そういうことを考えますと、例えば二〇一六年のリオデジャネイロのオリンピックでは、深刻な海洋汚染があるということで、競技会場に未処理の下水が流入しているとか動物の死体が浮いているとかいろいろな報道もありますし、国際社会からもいろいろな注目を受けるんじゃないかなと思います。また、一九七二年のミュンヘン・オリンピックでは、選手村に武装組織が侵入し、アスリート十一名を含む十七名が死亡したということもございます。

 そういったことから、国民の不安に対して、この東京オリンピック・パラリンピック、どのように政府が取り組んでいるかをお聞かせいただきたいと思います。

平沢主査 時間が来ていますので、簡潔に答弁してください。

高原政府参考人 政府では、平成二十五年九月に、二〇二〇年オリパラ大会の開催地が東京に決定された後、速やかに東京オリンピック・パラリンピック担当大臣が任命され、セキュリティー対策あるいはユニバーサルデザイン等、政府として講ずるべき施策の立案と実行に取り組んでまいりました。

 今後、大会が開催される二〇二〇年まであと四年しかないとの認識のもと、国民の皆様に御心配をおかけすることがないよう、オープンなプロセスにより意思決定を行いつつ、必要な取り組みを加速させていく所存であります。

 以上であります。

河野(正)分科員 ありがとうございました。

平沢主査 これにて河野正美君の質疑は終了いたしました。

 次に、篠原豪君。

篠原(豪)分科員 維新の党の篠原豪でございます。

 お聞きしたいことがたくさんありますので、閣僚初め答弁される皆様方には、できるだけ簡素に、的確にお答えいただければと思います。よろしくお願いいたします。

 さて、子ども・子育て支援新制度が昨年の四月から始まりました。スタート時にはかなりいろいろな混乱もあったというふうに聞いております。これがもう一年たちましたので、どういうふうにどこまで進んで、状況が、今どのような課題があるのか、これが気になるところでございます。

 導入に当たっては、私も横浜市会議員をさせていただいたときにいろいろと議論させていただいたことが思い出されます。その中で、横浜市での待機児童対策など先進事例を御研究いただいて、そしてその解消を図るためにいろいろな取り組みをされています。

 国は、待機児童加速化プランというのを作成して、現在進めているところでございますけれども、まず初めに、この加速化プランというのはどのようなもので、目標が現在どこまで達成されていて、そして今後の課題をどう捉えているのかをお伺いいたします。

吉本政府参考人 答弁申し上げます。

 待機児童解消加速化プランでございますけれども、平成二十五年度から二十九年度にかけまして約四十万人分の保育の受け皿を確保し、平成二十九年度末までに待機児童の解消を目指すということでスタートしたものでございます。

 このうち、平成二十五、二十六年度の二カ年で約二十万人分の保育の受け皿の確保を目標としていましたところ、約二十一・九万人分の受け皿の拡大を達成することができました。

 また、平成二十九年度までの五年間の合計でございますが、昨年五月時点での自治体の意向を確認いたしましたところ、約四十五・六万人の保育の受け皿拡大ということになっております。

 一方で、平成二十七年四月一日現在の待機児童数でございますが、二万三千百六十七人ということで、五年ぶりの増加となっております。これは、女性の就業率の上昇でありますとか、子ども・子育て新制度が施行されたことに伴いまして保育サービスの選択肢が広がったことなどを背景に、潜在的な需要が顕在化してきたことが考えられるところでございます。

 今後、女性の就業率上昇がさらに進むことを念頭にいたしまして、一億総活躍社会実現に向けた緊急に実施すべき対策によりまして、加速化プランに基づく平成二十九年度までの整備目標を上積みいたしまして、四十万人から五十万人といたしましたところでございますので、この保育受け皿のさらなる拡大を目指して進めてまいりたいというふうに考えております。

篠原(豪)分科員 厚労省の発表で、集計結果を途中で発表しているものの数字だと思うんですけれども、この中で、自治体が、参加しているのが四百五十四、不参加自治体数が千二百八十八というふうになっています。これはやはり何か理由があると思いますので、この点も含めてしっかりとやっていっていただきたいというふうに思います。よろしくお願いします。

 この間、いろいろとヒアリングをしていますと、運営者である自治体の側からは、今後の財源がどうなるのか、きちっと確保できるのかが不透明じゃないか、こういった声が聞こえます。この不安のお声は、今お話しいただいた加速化プランもそうでしょうけれども、これから加速させていけば、十万人ふやすというお話がありましたけれども、その分お金も当然かかってくるんだろうというふうに思います。

 そのときに、そもそもの制度でいえば、これは、具体的には、消費税の引き上げの確保で〇・七兆円、そして、幼児教育、保育、子育て支援の質、量の拡充を図るために、〇・七兆円のこの部分を含めて一兆円分の財源が必要だ、それも恒久財源で必要というふうになっているはずだと思います。

 そこで、まず、この財源の現状、これは一般財源を繰り入れているかどうかということも含めて。また、消費税が一〇%になったとき、二十九年度に予定している財源の確保は計画どおりに本当に大丈夫なのか。そして、一兆円の財源が必要とされている、消費税増収分以外の〇・三兆円についても、財源の確保の道筋が示されているのかどうか。さらには、示されていないのだとすれば今後どのように道筋を立てていくのかについてお伺いいたします。

加藤国務大臣 今御審議していただいております平成二十八年度の当初予算においては、子ども・子育て支援新制度全体では、二兆二千五百九十三億円を計上しております。

 このうち、消費税増収分を活用した子ども・子育て支援新制度の量的拡充と質の向上については、国費ベースでは二千五百十九億円を計上しているところであります。

 子ども・子育て支援の量的拡充と質の向上を実現するには、一兆円超の財源が必要とされております。このうち、消費税の引き上げにより確保することとされている〇・七兆円の範囲で実施する事項を実施するための必要額については、今年度も昨年度に引き続き確保させていただいたところでございます。

 そして、御質問の来年度以降ということになるわけでありますけれども、この〇・七兆円の範囲でやるということに対しては、今申し上げたように、一つ一つ実施をしていく。そして、〇・三兆円超の財源の部分、ここで実施すべきものについては、現時点でその財源をどう確保するかというのを、見通しを持っているわけではありませんが、これは、各年度の予算編成過程において引き続き検討し、対応していきたいと思っております。

篠原(豪)分科員 これは、消費税の増税分の事業一つ見ても、将来的に頼っていこうとしたときに、政府は今、出生率を上げていこう、少子化をとめていこうということを大きな戦略として掲げたというふうに思っています。そうなってきますと、保育利用者のニーズは右肩上がりになっていくんじゃないか、決して下がることはないんじゃないかというふうに思います。そういった中では、本当に財源をどういうふうに担保していくのかというのは極めて大事な問題だというふうに思います。

 これを明確にしておかないと、自治体の方々も、運営者として制度はつくって、それに対応して事業は始めたけれども、例えば自費である程度お金を入れているようなところもあると思いますし、それが本当に今後どうなるかわからない中で、どうしていくんだろうという一つの心配。

 それと、あわせて、一般財源から入れていくということが続いてしまえば、制度がそもそも設計と違っていてやってしまえば、結局借金でやっていくんじゃないか、こういったことになってしまう。そうなりますと、やはり、制度の本来目指す、質の向上を安定させることができるんだろうかということにもつながっていきます。

 ですので、やはりこの点は早急に財源の道筋を立てて、何よりも、運営者の方々、これは自治体そして事業者の方々、そして利用者の方々が、本当に安心してこの制度に頼っていけるんだというようなことをしっかりと示していただきたいというふうに考えています。

 次の課題に移ります。

 待機児童の解消を始める中で、今何が起きているかといえば、やはりゼロ―二歳児、ゼロ歳から一歳、二歳児、ここのところの受け入れが少ない。これをふやしていくということで、小規模保育を拡充していこうということです。

 小規模保育は、現状を見ますと、今、小規模保育をつくるときに、内装整備費で、例えば既存のアパートとか、そういったところを変えていくということはできるんですけれども、整備そのものをそもそもはできないという状態になっていると思います。

 ですので、これをやはり国が打ち出してもよいのではないかという声が上がっていて、これを国が認めてくだされば、自治体としても手を挙げられる、挙げたいんだというお話も伺っていますので、小規模保育事業所の建設費補助が必要だという考えがあることについて、お考えをお伺いさせていただければと思います。

吉本政府参考人 答弁申し上げます。

 先ほど御答弁申し上げましたように、受け皿の整備の目標を四十万から五十万にしたというところで、一番重要なのは、議員御指摘のありましたゼロから二歳児、ここの整備を進めていくことだというふうに考えております。

 そのために、今年度の補正予算、また来年度の当初予算におきまして、保育所の施設整備費の上積み、あるいは賃借料加算などを大幅に改善する、あるいは企業における多様な取り組みを支援するということで、事業所内保育等の企業主導型保育サービスの創設、こういったことを盛り込んでいるところでございますが、それに加えまして、今御指摘のありました小規模保育につきましては、現在は改修等のみについての補助になっておりますけれども、施設整備の補助を新たに創設いたしまして、さらなる拡大を進めていきたいというふうに考えております。

篠原(豪)分科員 ありがとうございます。

 例えば、整備をしたとしても、十年間空き地を借りて、そこに、今プレハブもいいですから、公立小学校でもプレハブで普通に学校をやっているところもありますので、そういったものを建てていけば、いろいろとふえていく。

 そして何が起きるかというと、今言いたかったのは、そんなにコストのかかるものじゃないし、時間を短くやればというやり方もできるだろうし、その結果として、いっぱい小規模保育ができてくるとすれば、必要だからそういうことになってくるんだと思うんですけれども、やはりこれは、利用者の方々も、これは個人給付ですから、どこを自分で選ぶかという選択肢が広がれば、これは質の向上にもつながっていくんだろうというふうに思っています。ですので、そういったことも含めてしっかりと考えていただきたいというふうに思っています。

 同じゼロ―二歳児についてですけれども、違う観点でお伺いします。

 自治体では単独事業をやっているというところも聞いていますけれども、地域型保育事業というのは、二歳で終わってしまえば三歳以降どうすればいいのかという不安があります。これを連携施設で協定を結んでやれば、三歳からはその園に必ず入れますよとか、また、三歳の前も、いろいろと連携があれば、例えば大きなユニットから支援を受けられるよというふうになるんだと思います。

 小規模は職員の数も少ないので、何かあったときに、例えばスタッフの派遣であるとか、質の向上のための研修であるとか、フルスペックのユニットを持っている大規模な施設と連携すれば、そういうこともできるのではないかというふうに考えています。

 ただし、協定を結んでやるのであれば、支援するためのスタッフ体制の充実なども求められていくことになります。これは自治体の単費でやっているところもあります。また、地域によっては、結構幼稚園が協力をしてくれたり、幼稚園も預かり保育、預かりの時間をどんどんふやしてくれているところもあります。まだ、そうはいっても、やっていない地域というのがありますので、こういった地域に対してもインセンティブを働かせていく、そういうことが必要なんだというふうに思います。

 そこで、こういったところを、もう一度、総合的な制度の中でしっかりと打ち出していく、それが大事なんじゃないかというふうに考えておりますが、いかがでしょうか。

吉本政府参考人 小規模保育事業でございますけれども、これが確実に行われますように、卒園後も、満三歳以上の児童に対しまして必要な教育または保育が継続的に提供されるように、連携協力を行う連携施設を適切に確保することを求めているところでございます。

 こうした連携施設につきましては、お話がありましたように、保育所でありますとか、認定こども園、また幼稚園といった施設が想定されるわけでございます。保育所につきましては、三歳以上の定員を適切にふやしていただくというようなこと、また、認定こども園につきましては、その普及促進を図り、また、幼稚園につきましては、小規模保育の実施のための施設整備を新たに補助するといったようなこともいたしまして、適切な連携施設の確保をお願いしているところでございます。

 厚生労働省としましては、各市町村に対しましては、公共施設を連携施設として設定することですとか、各事業者に連携施設をあっせん、調整するといったようなことなど、市町村としての積極的な関与、役割を果たすようにお願いをしておりまして、先般の全国児童福祉主管課長会議の場でも、改めてその旨をお願いしたところでございます。

 ただいまお話がございました横浜市の事例につきましても、好事例ということで、私どもとしても、一つの有効な手法ということで参考にしていただけますように周知を図ってまいりたいというふうに考えております。

篠原(豪)分科員 ありがとうございます。

 連携していくことがどんどんふえていけば、今であれば、そのときになったら幼稚園とか保育園を探して入ればいいということじゃなくて、その前から親が安心できる、そうなれば子供の安定にもつながるということですので、そういう制度をしっかりやっていただきたいというふうに思います。

 次に、もう一つ自治体さんの声であるのが、一号認定の施設型給付の地方単独費用部分についてです。

 これはいわゆる基本部分と上乗せ部分というのがあって、基本部分については問題ないんですけれども、上乗せ部分については、今までは措置の中で見ていた基本部分を膨らませましたので、これは、上乗せ部分は県と市町村で二分の一ずつ出してくださいということになっています。だから、国は出していないということですね。

 その中で、今までの給付からすれば、財源の方は、財源全体で見ればその総量は変わっていないんですが、制度そのものを変えましたので、これに対してどういうふうにするんだ、これは違うんじゃないかという声が上がっています。

 そこで、この一号認定の自治体に任せている経過措置分は、国はこれをどういうふうに解釈していて、今後どのように整理をされていくのかということについて伺います。

中島(誠)政府参考人 委員御指摘の子ども・子育て支援新制度におきます施設型給付の費用負担割合、新制度におきましては、国が二分の一、都道府県四分の一、市町村四分の一ということでございます。

 それで、お尋ねの一号認定子供につきましては、新制度が施行する前は、いわゆる私学助成という部分と幼稚園の就園奨励費補助という形で助成が行われていた。そのことにつきましては自治体でかなりのばらつきがあったということとともに、その場合に、国と地方の負担割合が、おおむね国が二割で地方が八割であったという状況でございます。それを新制度の方に持ってくるということになるわけでございまして、制度設計を変える、そういう意味で、今委員御指摘のように、一階部分、二階部分になってございます。

 それで、一階部分につきましては、全国統一費用部分と言っておりますけれども、これにつきましては、全体の費用のうち、いわゆる質の改善、量の拡充以外の部分については、新制度施行前の国の負担割合をしっかり維持するということ、それから質の改善、量の拡充については、原則ルールどおり国が二分の一を負担するという考え方で設定させていただきました。そして、この仕組みで市町村の負担割合がふえますが、この部分は地財措置でしっかり対応させていただいておるということでございます。

篠原(豪)分科員 聞いていますと、やむを得ず経過措置を適用している状況じゃないかと。それで、この部分についてはやはり地方に過大な負担を求めている形となっているというふうに言っていまして、それと同時に、経過措置となっているのであれば、その期間を明示してほしいというふうに言っているんですよね。

 ですので、もし自治体の方々がこの部分を拒んだ場合に何が起きるかというと、事業所の方々にお金が行かなくなる。そうすると園の運営ができなくなる。そして、園の運営ができなくなると、そもそもの趣旨とは反対の方向に行ってしまいますので、ぜひしっかりと御検討いただきたいと思います。

 以上です。

 そして、お金の給付の問題というのもありますので、お伺いいたします。

 事業者さんから上がっている声なんですけれども、これまで園ごとに概算で、年に四回精算方式でお金を払ってきているんですけれども、これを個人給付にして毎月の精算ということにしましたので、一人一人の、百人の園があれば百人の方々の利用状況に合わせて、制度、仕組みがあればいいんですけれども、それを一つ一つ事業者の方々が事務作業していかなければいけないということになる。これは園もとても大変になっているんだという声を聞いています。

 この事業所側の事務の煩雑さに加えて、もう一つ問題なのは、やはり全国統一のシステムがないので、例えば横浜市なんかはこのシステムを組むのに相当なお金と人材を使っているんですね、三百七十万人いますから。そういう都市ですから。そういうこともあった中で、結果、事務の負担増とか財源の負担増とか、あと、現場でいえば、利用者の計算ミスとか間違った請求の問題などが発生しているんだというふうに思います。

 こういったことを国としてはやはりもうちょっと簡単に、きれいにしていく必要があるんじゃないかと思います。その点についてどうお考えか、お伺いします。

中島(誠)政府参考人 子ども・子育て支援新制度の事務について、委員御指摘のように、事業者さん、市町村、負担が重いというお声は聞いておるところでございます。

 事業者の事務量負担、特に幼稚園サイドの先生方から見るとかなりの事務量負担になっているということでございますので、二十八年度、現在御審議をお願いしている予算におきましては、公定価格上、大規模な園については、非常勤の事務職員さんを雇い上げていただく費用について担保できるような形の措置も講じているということでございます。

 また、市町村の担当職員の方の事務の量の増大ということにつきましては、もろもろの事業所から市町村に出される申請様式について統一的なひな形を作成させていただいて、市町村ごとにつくる煩雑さというのをなくすということ、それから、現況届の提出についても、待機児童の場合には市町村の御判断で現況届を保護者から提出いただく必要はないという形の扱いを省令改正でさせていただいたということでございます。

 今後も、委員の御指摘も踏まえまして、引き続き給付事務等の簡素化に努めてまいりたいと思っております。

篠原(豪)分科員 ぜひよろしくお願いします。

 小規模は、運営者の方々が保育もやっていて、事務も一緒にやっていて、事務専任の方々というのは多分いないところがほとんどだと思いますので、そういったところに対してもきめ細やかな御配慮をいただきたいというふうに思います。

 処遇の改善といえば、やはり一番大きいのが保育士さんの処遇の問題です。

 お配りした資料の一枚目のものですけれども、保育士さんの平均年齢三十四・七歳、勤続年数が平均で七・六年、そして現金給与額が二十一万円ということです。

 去年の審査でも私はこのことについて聞きまして、政府からあった答弁が、年にすると三百十七万円収入があるということなんですけれども、他の職種は、お配りした資料の中には他の職種が入っているんですが、おおむね全職種で四百八十万円ということで、若干低くなっておりますというふうにおっしゃっていました。処遇改善策として、公定価格上三%相当の処遇改善を行いますということもおっしゃっていました。

 そこで、再度伺いますけれども、百六十三万円も違うのが、本当に政府は若干の違いの認識なのか。それと、保育士の平均賃金三百十七万円というのは、今一体幾らに増額しているのか。そして、公定価格上三%相当の処遇改善というのは、一人の保育士さんとしてみれば一体幾らの賃金増になるのかということをシミュレーションしているのかということを確認させてください。

吉本政府参考人 保育士の賃金についてでございますが、直近の調査によりますと、平成二十七年六月時点におきまして、年収で三百二十三万円でございます。全産業の年収に比べますと低い状況にあるというふうに認識をしております。

 待機児童の解消に向けまして受け皿拡大を進めていく上では、保育士の確保は喫緊の課題でございますので、保育人材の処遇を改善していくことは非常に重要な課題だというふうに認識をしております。

 このため、平成二十七年四月から施行いたしました新制度におきましては、消費税財源を活用し、公定価格上三%相当の処遇改善を行ったということでございまして、これは、試算をいたしますと月額約九千円に相当するという額でございます。

篠原(豪)分科員 次の質問に移ります。

 子供の貧困にかかわる問題の方に行きたいと思うんですが、今、一人親の家庭がふえていて、もちろん全ての一人親の方々イコール貧困ではありませんけれども、資料の二枚目を見ていただきますと、母子家庭の世帯が百二十三万、父子家庭が二十二万、そして、平均世帯年収が、父子家庭が四百五十五万円であるのに対して母子家庭が二百九十一万円。母独自の年間収入は二百二十三万円となっています。こうなると、やはり母子家庭数が多くて、大変で、お母さんは働きに出ていらっしゃる方というのが多いんだと思います。

 こういった御家庭のお子さんも預けられているときに、これは自治体の方に聞いた話ですけれども、男性保育士さんの存在というのが、父親不在家庭の子供たちにとっては、子供たちからしてみると、果たす役割は大きいんだというようなお声を聞きました。であるならば、男性保育士数の確保という観点からもですけれども、男性の保育士さんを配置できる仕組みづくりもそろそろ真剣に考えてみてもいいんじゃないかというふうに思っています。

 そこで、男性保育士さんの確保についてどのようにお考えか、お伺いします。

吉本政府参考人 男性保育士についてでございますが、少しずつふえてきておりまして、そうではありますが、現在のところの割合でいいますと五%弱ということで、依然として低い状況でございます。

 保育士の仕事、保育の仕事というのは、男女を問わず、保育に関する専門的な知識を有する保育士が専門性を発揮して実施をしていくことが重要だというふうに思っておりまして、一般的に考えますと、多様な子供の保育に当たる場合に、さまざまな個性の保育士がそこに携わって、チームとして養育を行っていくことが有意義だというふうに考えられますこと、また、例えば保護者支援におきましては、父親の支援といったような課題もあろうかというふうに思います。そうした男性の保育士につきましても、積極的に保育の現場に進出していただきたいというふうに考えております。

 引き続き、処遇の改善など人材確保の取り組みを総合的に実施しまして、男性保育士も含めまして人材確保に努めていきたいというふうに考えております。

篠原(豪)分科員 これまで余り議論をされていないところだという話を聞いていますので、ぜひ、いろいろな副次的な効果が見込まれる、そういった戦略を持つことがやはり子供たちの将来の安定に本当につながっていくということを考えて進めていただきたいと思います。

 最後に、子供の貧困対策についてお伺いしたいんです。

 この貧困の問題は、日本はOECD基準で一六・三%、過去最高を記録したと過去に報道がありましたけれども、我が国が貧困対策をどうするのかということで、平成二十六年には子供の貧困対策に関する大綱というのが出され、都道府県に計画をつくってくださいということになりました。

 問題は、子供の貧困と一口に言っても、その実態把握、どう見つけていくのかが非常に難しいのだろうというふうに考えています。

 政府は今、二十五の指標をつくって、実際の生活環境把握に努めることになっていますけれども、政府が今考えている二十五の指標というのは、実際、結構ほど遠いものだと思っていて、例えば、朝食を食べていないとか、親と日中何時間いられるとか、お休みの日にはどこかへ連れていってもらえるかとか、普通のことがあるんですが、こういったものが取り上げられていない。

 国が、貧困の解決は貧困の連鎖を断ち切ることだというふうに言っている中で、実態を本当に捉えて、どうしていくかということが大変重要なことだというふうに考えています。

 この課題に対して、横浜市も都道府県同様に、政令市でつくりなさいということではなかったんですけれども、自主的につくりました。これが素案なんですけれども、この中では、指標を見てみますと、例えば、自分にはいいところがあると答える子供の割合とか将来の夢や目標を持っている生徒の割合、こういったものを指標に入れているわけです。

 こういったことを考えたときに、実は、大綱をつくったり計画をつくるに当たって、有識者の方々、お願いしている方々というのは同じ方もかぶっているんですよ。ただ、その中で、今、大綱と自治体の見方というのが大分違っていて、もちろん国が先だったんですけれども、これをやはり国がつくって、貧困というのは、すき間を埋めていくためにはどういうところを見つけていくかというのがこれからの課題だと思いますので、高校の進学率が何%とか、わかりやすい指標は幾らでもあるんですけれども、そうじゃなくて、本当に家庭の中でどういうことが起きているのかということをやはり考えるべきだと思っています。

 そこで、二つお伺いします。

 まず、二十五の指標だけでは子供の貧困の実態を把握するために不十分ではないかと考えているので、今後どのように実態を把握し、政府として対策を進めていくおつもりか。

 そして、最後になると思いますけれども、地方公共団体でも子供の貧困対策に取り組むところがふえてきていて、地方の計画の方がよりよいものになっていくのだとすると、国は、地方との情報共有を進めながら、改善をしながら発展させていくべきだと思いますが、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 今、子供の貧困について御議論いただきましたけれども、その実態というのは、正直言って見えにくいし、また、捉えようとしてもなかなか捉えにくいという側面があります。政府としても、子供の貧困対策を進めるに当たって、やはりその実態をしっかり把握した上で適切な施策を展開していくということが大変重要だと思っております。

 御指摘ありましたように、子供の貧困対策に関する大綱では二十五の指標を掲げておりまして、まずはこれらの指標がどう改善されているのか、そして大綱に掲げられた施策を着実に実施していくことが重要だと考えております。

 その上で、我が国におけるこれまでの調査研究等を見たときに、やはり子供の貧困の実態が必ずしも明らかになっていないということは言えるのではないかと思います。

 大綱においても、子供たちが置かれる貧困の実態等を把握、分析するための調査研究を継続的に実施していくこと、また、子供の貧困に関する新たな指標の開発に向けた調査研究の実施について明記されているわけでありまして、やはり、貧困の実態を的確に把握していくためには、今までの、今ある二十五の指標に限らず、より実態を反映し得る指標にどういうものがあるのか、また、その指標を改善したときに貧困の改善がしっかりと図られているのか、そういったことに関してしっかり研究を進めて必要な対策をしていきたい。政府でも、今内閣府では、諸外国における子供の貧困に関する指標等について鋭意情報収集、調査研究も進めているところでございます。

 それから、御指摘ございました地方公共団体との関係でありますけれども、やはり国と地方公共団体がしっかり連携して進めていくことは大変大事でありまして、昨年十二月には、ひとり親家庭・多子世帯等自立応援プロジェクトを決定し、今、これに基づき、一人親家庭の子供に対する学習支援や居場所づくりなどを推進していくこととしております。また、そうした政府の取り組みについては、自治体と情報の共有も鋭意図っております。

 また、地方の実情に応じた具体的な施策を展開していただいている地方自治体において、そうしたプロジェクトの実効性を高めていただくためにも、それぞれ地域にネットワークをつくっていただいて、創意工夫を凝らした事業を展開していただきたいと思います。

 また、平成二十七年度補正予算で地域子供の未来応援交付金というのを創設いたしまして、貧困状況にある子供たちの実態把握、支援体制の整備計画の策定、また地域における核となる人物、機関とのネットワークを活用するための体制整備、さらには地域の資源を生かした先行的なモデル事業の実施等を支援することとしております。

 こうしたそれぞれの自治体における、今、横浜市の事例もありましたけれども、先駆的な取り組みあるいは効果的な取り組みについて、私ども、積極的に情報収集して国の政策に反映し、さらにはほかの自治体への横展開、こういったこともしっかり図っていきたいと思います。

篠原(豪)分科員 時間ですので、ありがとうございました。

 きょうお話しできなかったですけれども、子育て世代包括支援センターとか、いろいろな取り組みが、今、子ども・子育て支援新制度の中で始まっています。

 ぜひ、子供たちの将来はこの国の将来です。大臣、しっかりやっていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。どうもありがとうございました。

平沢主査 これにて篠原豪君の質疑は終了いたしました。

 次に、中川正春君。

中川(正)分科員 大切な時間をいただきました。感謝を申し上げたいと思います。

 きょうは、女性の政治分野への参画について大臣といろいろ知恵を出し合っていきたいという思いで、ここに立たせていただきました。

 まず、これはよく指摘されることですけれども、日本の現状というのはどうなっているかというのをちょっと事務方の方から、まずその数字を押さえていって、そのことをベースに議論を進めたいと思います。よろしくお願いします。

武川(恵)政府参考人 お答えいたします。

 国会議員に占める女性の割合は、衆議院議員で九・五%、参議院議員で一五・七%でございます。また、地方公共団体の長に占める女性の割合は、都道府県知事で四・三%、市区長で二・二%、町村長で〇・五%。また、地方公共団体の議会の議員に占める女性の割合は、都道府県議会議員で九・七%、市区議会議員では一四・四%、町村議会議員では九・四%となっております。

中川(正)分科員 そこで終わらないで、国際的に見て、こういう現状というのがどういう評価になっているのか、また、OECDを初め、さまざまに指摘をされるところでありますけれども、そうした国際機関の評価というのがどうなっているか、そこのところを、それが肝なんです、しっかり説明してください。

武川(恵)政府参考人 列国議会同盟、IPUの調べによりますと、下院と、一院の場合は一院で比較したものがございます。

 平成二十七年十二月現在で、日本、九・五%という数字は、世界百九十カ国中百五十四位となっております。世界平均では二二・八%、アジア諸国の平均は一九・三%、アラブ諸国の平均が一九・一%となっております。

 以上でございます。

中川(正)分科員 あっさりしているんですけれども。

 さっきOECDのメンバーが私のところに来ていただいてこの話になったんですが、やはり一般的な社会の中でのダイバーシティーというか女性の社会参画と、それから政治分野での女性の参画というのは、どの国も連動している、だから、社会分野で女性参画を本気になって進めていこうという日本の今の姿勢があるとすれば、それもやはり政治分野抜きでは考えられないというふうな指摘がありました。

 加藤大臣、あちこちで女性の会があって非常に元気のいい挨拶をされておりまして、ほほ笑ましく見ているんですけれども、足元で、恐らく日本の現状というのは、世界の二周、三周おくれているという現状なんだと思うんですね。そこの分野については余り言及なさらないので、そこのところを大臣としてどのように考えておられるか、また、政府として、この分野についてはどのような政策とスタンスをつくっているのかということ、入り口、まずそこからお聞きをしていきたいと思います。

加藤国務大臣 まず、基本的な認識としては、政治分野における女性の参画拡大というのは、やはり政治に多様な民意を反映させていくという意味においても大変重要だというふうに思います。また、女性活躍を推進していくという立場の中で、さまざまな国際比較の指標があります。総じて、決して日本は高いわけではありませんけれども、その中でも、政治分野の取り組みというのがむしろ足を引っ張っている事項の一つであるというふうにも認識をしているわけであります。

 したがって、そうした意味で、政治の世界においてもより多くの女性の方々が活躍をしていただきたい、こういうふうに認識をしておりますし、先般まとめました第四次の男女共同参画基本計画においても、衆議院及び参議院議員の候補者に占める女性の割合を平成三十二年までに三〇%とする目標を、これは政府がやる話じゃありませんからちょっとほかの指標とは違いますけれども、政党に働きかける際の一つの努力目標として示させていただいた、こういうところでございます。

中川(正)分科員 各政党に対しては、具体的にはどういう働きかけをしておられますか。

加藤国務大臣 これまでも、前の大臣も働きかけをさせていただいているところでございますし、また、私も、今回の第四次を踏まえて、これは、これからまさに働きかけをさせていただきたいと思っているところでございます。

中川(正)分科員 私の過去の働きかけも、改めて考えていくと、やはり具体性を持って各政党に、ここだけはしてくださいよという話は、オープンにしながらやらなきゃいけないんだろうと思うんです。

 だから、頼みに行っていますというだけではなくて、具体的に各政党に、ここと、ここと、ここはやってもらいたいということがあるとすれば、それはどういうことだと思われますか。

加藤国務大臣 まず、先ほど申し上げた第四次の計画においては、政党等における実効性のあるポジティブアクション等の導入を促すべく、政府として、必要な調査研究、情報提供を行うとともに、政党等に対して積極的に働きかけを行うという基本的な方向を示させていただいた上で、女性活躍推進法に基づき民間企業等が行う取り組みの内容、これを踏まえていただいて、女性の活躍に関する現状の把握、分析、そして、女性候補者における数値目標の設定や人材育成等の取り組みを含めた行動計画、こういったものをおつくりいただく、あるいはそうした情報を開示していただくということについての自主的な取り組み、それから、両立支援体制の整備等を初めとした女性議員が活躍しやすい環境の整備などについて、政党等にそういった形で働きかけをしていきたい、こう思っております。

中川(正)分科員 それはいいことだと思うんですね。政府も目標をつくっているわけだから、各政党も目標をつくってください。うちの党はこれだけの女性議員をいつまでにつくるというような目標をはっきりつくって、それをオープンにしてください、これが一つあるんだろうと思うんです。それと同時に、さっきお話に出てきたように、その目標を達成するために、具体的なアクションプランというのがこういう形になりますということだと思うんですね。

 今回、それははっきりと各政党に対して政府として要望するんだ、表に出して、ここのところはやってくださいということを言っていくというふうに解釈していいんですか。さっきの答弁では、何か評論家みたいな、こんなことをしなきゃいけないでしょう程度の話だったんですけれども、それは具体的に今回改めて各政党に要求をするというか、それでコミットしてくださいという政府としての意思をはっきり表明されるということですか。

加藤国務大臣 今申し上げたのは、政府が昨年末に決めました第四次の男女共同参画基本計画の中に盛り込ませていただいた内容でございますから、それを踏まえて、今申し上げたことを各党にお願いに上がりたい、こういうふうに思っています。

中川(正)分科員 実は、超党派で、政治分野への女性の参画を推進する議員連盟というのができていまして、私は今会長をさせていただいているんですが、野田聖子さんが幹事長ということで、与野党協力し合って進めていこうという体制をつくっています。

 そんな中で、一つ具体的に出てきたのは、先ほどの基本姿勢、それをいわゆる理念法として法案化していくというふうなことが考えられるんじゃないかということですね。

 一つそういう提案もしていきたいんですけれども、政府として、これは議員立法でやるのがいいのか、それとも閣法でもって提起していくのがいいのかという判断があるんだろうと思うんです。私は、理念法でいく限り、基本法が決まっているわけですから、それに基づいた形で進めていくということであるとすれば、これは閣法であってもいいんだと思うんですね。

 また、中身は、私もさっきここで提起をしていただいた中身でいいんだと思うんです、理念法としては。

 それにもう一つかぶせるとすれば、パリテというか、基本的なスタンスとしてフィフティー・フィフティーですよと。そこから始まって、クオータのような考え方を出してくると、絶えず憲法の話が出てくるんですけれども、憲法の考え方もクリアしていこうということになれば、フランスで逆に憲法を変えていった経緯があるんです。その中の基本姿勢としては、パリテ、フィフティー・フィフティーから始まる、当然フィフティー・フィフティーなんだという、そこの理念なんかも入れ込んで、理念法として法案化していくという方向があるんだと思うんです。

 これについては、大臣、ぜひ積極的に乗っていただきたいんですが、所見をお聞かせください。

加藤国務大臣 今お話がありましたように、政治分野において例えば女性の参画を進める場合に、政治分野だけではありませんけれども、法令によって性別による割り当てをするいわゆるクオータ制といったやり方と、それからもう一つは、法令ではないけれどもそれぞれ自主的な取り組みをしていただくということ、二つの道筋があるんだろうと思っております。

 男女共同参画会議においても、やはり法令によるそうしたクオータの義務化については、今御指摘ありました憲法の平等原則、この関係において目的と手段の間の実質的関連性を慎重に検討することが求められている、こういうことが示されているわけで、先ほど申し上げました基本計画の中では、政党における自主的な取り組みが求められる、こういうことでございます。

 その上で、今お話がありました、中川委員を中心に超党派の議員連盟で熱心な御議論を進めていただいているというふうに承知をしております。まずはそうしたところの議論をしっかり承りながら、今お話がありました、どういう形で国会に出すのがいいのかどうか、また、内容的には、主としては政党間でお話しされるという中身も多々あろうかと思っております。まずはそうした議論を我々としては注視をさせていただきたい、こう思っています。

中川(正)分科員 実は、今考えている法案も二つに分かれていまして、一つは理念法です。

 さっきの話で、パリテということと同時に、男女共同参画の基本法がありますから、その基本法から引っ張ってきて、さっきまさに大臣が政治分野でこうした方向を持っていますということを内容としてお答えいただいたその中身を理念法として法案化して、それで政治分野で具体的に方向性を決めていく。その中のポイントというのは、各政党で目標を決めてくださいよ、その目標に至るプロセスというのをちゃんと公示してくださいよ、その上で世間が評価できるようにしてくださいよ、そういう枠組みですね。

 これについては、もともと政治分野だけじゃなくて一般的な基本法があって、それに政治分野をぶら下げるわけですから、基本法の部分で閣法で進めていただいただけに、政治分野の理念法も方向性は十分閣法で進めていいことだというふうに思うんですよ。それが非常に各党としても乗りやすい話なのかなということ、これを一つ提起しておきたいというふうに思うんです。

 それから、もう一つはクオータなんですが、これは、おっしゃるように、今の政治状況の中では、強制的にというか、法律で枠組みを決めてこれだけつくりなさいよというふうなつくり方はできないんだろうと思うんです。基本的には、クオータを入れるか入れないかという判断は、政党ができる形にしなきゃいけないと思うんです。

 ところが、今の問題は、今の公職選挙法の仕組みの中で、そうしたことを入れようと思っても、クオータを入れようと思っても、入れられるかというと、なかなか難しいんですね、入れられない。もっと言えば、国のレベルだけじゃなくて、地方のレベルで本当はクオータを入れたいんだけれども、地方もどうやってそれを工夫したらいいかというのは、なかなか知恵が出てこないんですね。という現状があるということ、ここから出発しなきゃいけない。入れようと思っても入れられない。

 だけれども、入れる選択はあってもいいと思うんですよ。各政党が、いや、うちはクオータを入れるんだよと言ったら、それが入れられる仕組みを選択するということはあってもいい。だけれども、それができないんですよ、今。そのことについては担当大臣としてどのように考えられるか。

 まず、最初の理念法の部分と、それから公職選挙法の今の実態というもの、これについてどのように考えられるかということです。

加藤国務大臣 先ほどの理念法、男女の候補者数について目標を定めるなどの自主的な取り組みを行うよう努めることを政党に求める、そうしたことを中心とした理念法を今御議論いただいているというふうに承知をしております。

 今、議連においては、超党派ということで我が党の方も参加して議論をしていただいているというふうに聞いておりますけれども、いずれにしても、政党間でそれなりの意見の集約といいますか、議論をしていただくということが、政治に係る分野の場合にはまずは必要になってくるのではないかなというふうに思っております。

 それから、クオータ制そのものについては、先ほどちょっと申し上げましたように、男女共同参画会議においても、法令によってクオータを義務化するということについては慎重に検討することが求められるというふうにされておられますので、そういった意味において、法令でそのままそれを強制的にこうするというのに対しては、やはり慎重に対応していかなければいけないのではないかな、こういうふうに思っております。

中川(正)分科員 もうちょっと積極的な話にならないですかね。

 というのは、さっき言ったように、基本法があって、その中身に準じる形で理念法というのをつくっているわけですね。だから、担当大臣としては、これはいいんじゃないですか、うちの自民党の中もまとめますよというぐらいの気概があっていいように思うんです。それを期待していたんだけれども、何か、俺、知らないよという形で返事があったので、言っていることとやっていることが違うじゃないかという印象を持ちました。頑張ってください。これが一つ。

 それから、もう一つ、公選法の改正なんですが、どういうことかというと、今具体的に入れているのは衆議院の比例の方ですね。これが今、重複の立候補をして、それで惜敗率の順番で当選してくる、そんな仕組みになっているので、クオータを入れようと思っても入れられないんです。

 韓国の場合は、純粋比例になっているものだから、男、女、男、女と来るんですよね。だけれども、日本の場合、このままにしておくと入らない。そこのところを言っているんです。

 それを入れることもできるというような仕組みをもう一類型つくるとすればどうなるかというのを考えた。

 それはどういうことかというと、例えば女性と男性のグループをつくる。これは女性と男性だけでなくても、いろいろなグループ化をしたら、それこそ若い人だけのグループとか特定の地域のグループとか、そういうグループ化ができるんですよ。

 いずれにしても、男と女のグループをつくって、その中で順番に、これはいわゆる惜敗率の高い順番で、男をとる、次に女性のグループからとる、次に男性のグループから、女性のグループからという形で、男、女、男、女というクオータにしていくことができる、やろうと思ったらできる。

 それは政党の意思によりますよ。うちはクオータを入れないんだと言ったらそれでもいいというような法律の改正を、改正というよりはそれを付加するような形で進めようじゃないかということなんですね。

 いわゆる大臣としてということじゃなくて私見でもいいですから、どうですか、いいと思いませんか。

加藤国務大臣 現行でも比例区の部分は、惜敗率制度ではなくて、政党が別途決めて、順番を決めるというやり方もあるという中で、一つの選択的にやれるようになっているわけであります。さらにそれに選択の幅を拡大しよう、多分そういう御議論なんだろうというふうに思います。

 先ほど申し上げましたように、いずれにしても、法律的にいわばこういう割り当てというのは慎重にということは、これまでの議論の中で出てきている。ただ、今議員おっしゃったように、選択的な形で、政党が自主的に取り組み、選ぶという中で、どういうやり方があるのか、そういう中での一つの議論ではないかな、こういうふうに承らせていただきました。

中川(正)分科員 担当大臣として、それはいいですねとか、もし反対であるとすれば、私はこういう理由で反対なんだという、そこの意思をはっきりさせてください。

 ちょっと応援団が来た、宮川さん。この議連の自民党の中心になって、今その話をまとめようということで頑張ってくれているんですよ。だから、そんな中で、ぜひそれぞれの党の理解を得たい。

 ただ、クオータというと、何となく強制的にそういう形でやるんだというイメージがあるんだけれども、今私が言っているのは、大臣がおっしゃったように、それぞれの政党の意思の中で工夫をしていこう、まずこれが前提なんですね。

 だけれども、今の公選法の現状では、その意思があっても入れられないんです。入れることができないんです、純粋比例にしないことには。だから、そういう意味で、なるべく今の現状に沿った形で入れるオプションをつくるとすればというので、これを出してきたんです。

 これぐらいは、大臣、世間に向かって、これはいい政策だから、政府としてもぜひ、各政党、頑張って入れてもらったらどうだ、入れてもらったらというよりも、法律だけでも、まず第一歩として改正していったらどうだというようなメッセージを出してもらうということ。これだと、ああ、大臣は本気で考えているんだな、こういうことになる。

 だけれども、幾ら世間の前でいいことを言っていても、足元のところで、そんな第三者的な、何か傍観しているような、もう私は関係ない、あなたたちに任せますよというようなことを言っていたら、これはにせものだ、あなたの話はというふうに見られるとしても、それはもう、これは言い過ぎに注意しましょうということで、このごろ、私も謙虚に話をしているんですけれども。

 そういうふうに見られてしまうということなので、ぜひ大臣、大臣としての後押しというか後ろ押し、これをやってもらいたいというのが、実はきょうのお話なんです。最後、ちょっとコミットしてください。

加藤国務大臣 最初に申し上げましたけれども、政治に多様な民意を反映していくという意味においても、政治分野における女性の参画を拡大していくというのは、私も、大変重要であり、積極的に展開すべきだというふうに思います。

 そういう中で、今、議連の中での御議論を御紹介いただきました。そういう方法も含めて、今、私どもとしては、第四次のこれを含めて、ポジティブアクションをとっていただくべく各政党にお願いをし、その中では、現状の分析、そして行動計画の策定等々もお願いをして回ろうと思っているところでございます。

 また、その延長の中において、今お話があったようなやり方、そのどのやり方がいいかというのは、これは大いに議論があるところだと思います。ただ、それぞれの政党が、やはり積極的に女性の政治への参画の拡大、それができるような選択肢をふやしていくということは非常に大事なことだ、こういうふうに思います。

中川(正)分科員 依然として物足りないんだけれども、これで終わっておきます。あとは、宮川さんの方からまた攻めてもらいますから、よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

平沢主査 これにて中川正春君の質疑は終了いたしました。

 次に、宮川典子君。

宮川分科員 自由民主党の宮川典子でございます。

 今、思いがけず中川先生から宿題をいただきましたけれども、せっかくですので、自民党の中では、これから党内手続というか、党内の中で議論をしていきたいと思っております。また、我が党におきましても、二〇・三〇の目標がございますので、それに向けて、例えば、議員の数を三〇%にするということは大変難しいことかもしれませんけれども、候補者はそのあたりまで目指していきたいというような意思も私たちとしてはございますので、ぜひ、党内の議論を政府としても見守っていただければありがたいなと思っております。

 全く自分の質問と違うところが振られてきましたけれども、ぜひ議論をよろしくお願い申し上げたいと思います。また、野党の皆さんにもそのようにお願いしたいなと思っております。

 きょうは、第一分科会でせっかく三十分の質問の機会をいただきましたので、女性活躍推進ということと、あとは子供の健全育成にかかわる課題ということを、一億総活躍の観点から、ぜひ大臣にも、また参考人の皆様にも、さまざま御答弁をいただきながら、質問させていただきたいと思っております。

 まず、一億総活躍というこの文言を聞いて皆さんが思うことは、今まで光の当たらなかった方、そしてじっと声を上げられずに耐えていた方に光が当たるような政治というのがこれから実現されるんだ、そういう思いを私自身も持っておりますし、多くの皆様が希望を持ってこの一億総活躍というのを見ていただいているんじゃないかなと思っております。

 まさに今私たちがやらなければいけないことは、お一人お一人、国民の皆様がそれぞれのお力をもって活躍していただく世の中をつくるということだと思いますので、その観点でいえば、やはりキーワードは、女性、子供、若者というところではないかなと私自身は思っております。

 まず、女性活躍推進についてぜひお伺いをしたいんですけれども、女性活躍推進法、もしくはまたその方針、女性の輝く社会というふうに、安倍政権になってから、大きなキャッチフレーズとして唱えられてきたわけでありますけれども、女性の働き方というのがこの中でかなりクローズアップされているように思います。

 しかし、私自身が感じていることというのは、女性の働き方また女性の考え方というのは、昔から非常に多様であった、今、ダイバーシティー、多様性という言葉が大変重要でありますけれども、多様であった。しかし、今進められている政策というのは、女性が働きに出たときに起こり得るさまざまな課題に対しての対応というのが非常に分量が多くて、しかし、その多様性に対応しているかといえば、まだまだ手の行き届いていないところが多々あるのではないかなというふうに私自身は感じております。

 また、これは現場に行ってというか、実際に私の地元やいろいろな地域に行きまして女性の皆様のお話を伺うと、私たちが望んでいるのとちょっと違うんだよねというお話をいただくことも多々ございます。

 女性の働き方がそもそも多様であったということに関して、女性活躍推進の中でこのダイバーシティーをどう捉えていくおつもりであるのか、大臣から御所見を伺いたいと思います。

加藤国務大臣 安倍政権がスタートしてもう三年超たつわけでありますけれども、当初から、女性の活躍の推進というのを大変大きな柱として進めさせていただいております。

 また、違う言い方をすれば、全ての女性が輝く社会を実現していきたいということで、それは、それぞれの女性の方々がみずから希望や夢を持っていただいて、別に仕事だけではなくて、家庭の場、あるいは地域における活動、いろいろな活躍の場があるんだろうと思います、そういう中で、その思いやあるいは能力、そういったものを十分に発揮していただける、まさにそうした社会というのは、非常に多様性の富んだ社会につながっていくというふうに思っております。

 それも非常に豊かな社会であると同時に、また、経済という面で見ても、やはり多様性というのは、さまざまなイノベーション等、あるいは生産性の向上等も引き起こしていくわけでありますので、そうした意味で、広い意味では経済の成長にもつながっていくというところがあるんだと思っております。

 そういう意味で、私どもは別に、仕事と例えば育児の両立ということだけではなくて、さまざまな意味でそうした環境を整備して、希望と夢の実現できる社会というものをぜひつくっていきたい。中には、自分で事業を起こしてやっていく、あるいは農業等に取り組んでいくという方々もおられるわけであります。そういった幅広い支援というものにしっかりと取り組んでいきたい。

 冒頭においては、補正予算では保育所の支援等を打ち上げさせていただきましたので、ややもするとそういう受けとめ方があるのかもしれませんけれども、それも一つの施策であって、さまざまな形で希望を実現されたいという方、その環境を我々も一緒につくらせていただきたい、こう思っております。

宮川分科員 政策が段階的に進んでいくんだという御答弁をいただきましたので、これは聞いていらっしゃる皆さんに大変勇気の出るお言葉だったんじゃないかなと思っております。

 私自身の経験から、きょうは、自営業に携わる女性の皆さん、そして御自身で起業をされたいと思う女性の皆さんのことについてちょっと深掘りをしていきたいと思っております。

 実は、私の家は母子家庭であります。十歳のときに父親が亡くなって、母が女手一つで私と弟を育ててくれたわけですけれども、何で私たちがある程度、私はそう思っているんですが、ひねくれずにこうやって過ごしてこられたかというと、やはり、母親が自営業に携わっていたというのが一番大きな理由だったんじゃないかなと思います。

 父が亡くなりましたのは十歳のときですから、大変多感なときでありましたし、弟もまだ幼いときでありました。しかし、自営業といっても酒屋で、小売をやっていましたが、居住区域とお店が、本当に壁を一つ隔ててあるという状況でしたので、仕事をしながら子育てもする、私たちは仕事をする場所に帰っていくというような感じがあって、子育てというのは自分のそばに置いてやりたいんだという母親のニーズにも、しっかり自営業というのがマッチをしたということもありますし、我々の心情的にも、母親が常に家にいてちゃんとお仕事ができる環境があったというのは、大変プラスだったというふうに思っております。

 今、女性活躍推進のお話をする中で、自営業をなさっている女性の皆さんとか、また、これから起業をしたいという方たちから、自分たちのイニシャルの起動力がどうしても薄いということで、起業支援であるとか、自営業の人たちにもっと目を向けた政策をしてほしいんだという御要望が大変多くあると思います。

 また、そういう方たちは、御自宅でできないまでも、自宅の近くに店舗や会社を構えて、子育てもなるべく公助を頼らないで自分たちができる限りのことをやろう、自由度のきく仕事でもあるので、そういう御努力をされているわけであります。

 今、内閣府の中でも女性のチャレンジ応援プランというのを進めていらっしゃると思いますけれども、被雇用者に対する施策だけではなくて、まさに自分が雇用者として、もしくは自営業者として頑張っていらっしゃる女性の皆さんに対して、今後どのような対策を講じていくのか、今決められているもの、また、進められている施策があったら、ぜひここでお教えいただきたいと思います。

保坂政府参考人 お答え申し上げます。

 女性の起業を支援するため、経済産業省では、女性のチャレンジ応援プランにおける施策の着実な実施を図っておるところでございます。

 具体的には、今年度、三つの事業を実施いたしました。

 一つ目は、起業についての知識習得を支援する創業スクールを全国で二百五十六コース開催しているわけでございますが、そのうち、女性起業家コースにつきまして、五十コース開催をしてございます。

 二番目でございますが、地域の活性化に向け、新たに起業したい方への支援策として、創業・第二創業促進補助金を実施してございます。これは三分の二補助でございますけれども、今年度は、全七百七十五件中、女性向けに二百三十八件を採択してございます。

 三番目でございますが、起業の際の資金面での支援として、日本政策金融公庫の新創業融資制度を拡充いたしまして、昨年二月から、融資額三百万円以内に限りまして、原則として無担保無保証融資の対象とする女性向けの特例を実施してございます。

 平成二十八年度予算案にも関連施策を盛り込んでおりまして、引き続き着実な実施に努めてまいりたいと考えておるところでございます。

宮川分科員 ありがとうございます。

 今、創業スクールなんかも含めて、起業するに当たって、まだまだ知識が足りない方とか情報が足りない方にもそういう提供をしていただいているということで、とても心強いなと思っております。また、三百万円限度ということでも、イニシャルのコスト、これだけの支援金があるということは、とてもありがたいことだなというふうに思っております。

 ただ、もう一つ考えなければいけないのは、さまざまな事業形態があるということだと思います。

 もちろん、店舗を構え、また会社を別棟で構えてお仕事をしている方もいらっしゃれば、例えば、ずっと私、このネイルアートをやっているんですが、これは私の高校の同級生がやっております。では、どこでやっているかというと、店舗は今構えておりません。家の一角というか、一つの部屋を、外から入れるように出入り口をつくって、サロンのようにして、実はそこをネイルサロンとして経営しているんですね。ですから、子供たちが自由に出入りをしてきて、ママを早く帰してくれと言われながら私はネイルをしてもらっているわけです。

 資格のある方、特に、例えばネイリストの方やエステやマッサージとか、家の一部でできるような仕事をされている方、こういう方たちも実は大変多くいらっしゃって、意外と機材とか資材にお金がかかるので、このイニシャルのコストを何とか助けてくれないかというお声があります。

 それに対して、今おっしゃった支援が何か使えるのか、それとも新たに講じていかなきゃいけないのか、それについてもお伺いしたい。

 もう一つは、例えばこんなお声があります。近くに中小企業の会社が何軒かある、しかしながら飲食店が全くない、近くで飲食店があったらなというお声がその企業の方からあるので、昼間だけは自分の家に誰もいないので、お昼御飯を提供するようなことだけ、うちカフェみたいなことをやりたいんだ、でも、これをやるにはきっと衛生法だとかいろいろなことがかかわってくるんだろうな、そういうふうになると自分にも負担があるのでなかなか踏み切れないんだという方もいらっしゃいます。

 私の地元の山梨県の郡内地方、富士山の方の地域では、実は、昼間だけ一般の家を開放して吉田のうどんというのを提供しているんですね。これは本当に、食べるところは、賞状とか、おじいちゃん、おばあちゃんの絵が飾ってあるような普通の仏間だったり居間です。昔の土間を使って、そこでうどんをつくって、ゆでて提供しているという営業形態をつくっている人たちもいます。

 つまり、地域では、そうやって工夫をしながら地域の皆さんに物を提供するというのも昔から女性の知恵でやっていたということがあるんですけれども、例えばこういううちカフェみたいなことをやりたいときに、一般の家庭でやるものですから、もちろん食品の安全、衛生問題というのはありながらも、少し規制の緩和をするとかということを今後考えていくような方針があれば、ぜひ教えていただきたいと思います。

保坂政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、先ほどの創業・第二創業補助金などでは、実際に、御両親の介護のために御地元にお帰りになった方がそこの古い民家を利用して飲食店をやっているような例にも補助金を出してございまして、さまざまな工夫をしているところでございますが、こういう補助金の情報の普及等も含めて、女性の起業に関しましては、経営ノウハウの不足や起業家との交流の場の不足など、女性ならではの課題がいろいろとあると承知してございます。

 経済産業省では、これらの課題に応えるために、来年度から女性企業経営者や創業支援機関とのネットワークを構築すべく、来年度予算に関連予算を盛り込んでいるところでございます。

 具体的には、全国十カ所に、起業を目指す女性の相談に応じるネットワークを立ち上げまして、地域の金融機関や創業支援機関、先輩女性起業家等の関係機関にまずつないでいくこととしてございます。これによって補助金等の情報の普及等を図らせていただくということでございます。

 さらに、起業の際には個別に、さまざまな規制あるいは金銭面での問題等に直面することがあると思いますので、この制度を活用しまして適切な機関の窓口などを紹介していきたいと考えているところでございます。

 この春の実施に向け、制度の具体化を図り、起業を志す女性の実態に即したきめ細やかな支援を行っていきたいと考えております。

 以上でございます。

宮川分科員 ありがとうございます。

 いろいろな個別のケースに対して相談ができる窓口があるというのは、恐らく女性の皆さんにとっては本当にありがたいことで、心強いことだと思います。ぜひその窓口の強化もしていただくのと同時に、先ほど申し上げましたように、ちょっと工夫をすれば少し収入が得られるような資格を持っている方たちへのイニシャルコスト、資材や機材へのコストの補助、支援もぜひこれからも拡充していただけるようにお願いしたいなと思っております。

 もちろん、被雇用者というのが、労働者という中で見れば非常に数としては多いわけですけれども、これからは女性の知恵を生かして、新たなもの、または地域に貢献したいがために自分で業を起こされたいという女性の方はたくさんいらっしゃいますので、そういう皆さんのお気持ちが生きるような体制を、私も頑張ってつくっていきたいと思いますし、ぜひ大臣を含め皆様に御尽力をいただければありがたいなと思っております。

 それでは、続いて、子供の健全育成にかかわる課題ということで質問をしてまいりたいと思います。

 今回、新年になりまして、私、大変衝撃でしたのは、高校生や中学生、若者の自殺のニュースが毎日のように報道されているということであります。

 また、有名プロ野球選手の薬物乱用のことに関しましても、子供たちが憧れて目指す甲子園の博物館からその選手の今までの歴史の品物というのも即座に撤去をされ、また歴史のVTRからも消されるというようなことがありました。子供たち、青少年が憧れている人たちがそういう世界に大変今溺れてしまっているということ。

 また、いじめや自殺の原因として、インターネットやSNSが一つの原因になっている。私も元教師として経験をしていますのは、このインターネット上で行われているいじめというのは大変陰湿であるということ、それと、私たち大人が思っている以上に、物すごく速いスピードでいろいろなフィルターを乗り越えてさまざまな有害な情報が流れているということに関して、もっともっと対応を真剣にしていかなければいけないと思っております。

 例えば、この前問題になりました薬物は覚醒剤でありますけれども、覚醒剤もさまざまな呼び方があるんですね。例えば、有名なところではエスと言いますけれども、今はアイスとかクリスタルというふうに言われていて、アイスと言われても全然周りの人にはわからないことだと思います。

 これは、よほど若者の情報にキャッチアップしていないと、その言葉だけがフィルターを抜けてしまっては、例えば、覚醒剤とエスという言葉は有害情報だからといってフィルタリングで抜いたとしても、アイスとかクリスタルと言われると何のことかわからないというふうに、隠語も非常に多くなっております。

 例えば、援助交際なんかが多くなったときによく言われましたけれども、女子中学生、女子高校生というのもはじかれるようなネットのフィルタリングもありますけれども、今はJSとかJCとかJKといって、隠語はどんどんふえていく。私たちが思っているよりも、青少年はそうやって有害な情報にどんどんさらされているというのが現状だと思います。

 また、対策は間違いなく後追いになっているというのも事実だと思います。こういうものについて、現在、後追いであるけれども、何とかキャッチアップして追いついていかなきゃいけないというのが、これもまた現実だと思います。

 何か対策を講じているものがあれば、特に青少年の健全育成という面に関しましては、命にかかわること、そして命を脅かすことに関してはもっと真剣な取り組みが必要だと思いますけれども、どのような対策が講じられているのか、ぜひ御答弁いただきたいと思います。

武川(光)政府参考人 政府におきましては、平成二十年に策定されました青少年インターネット環境整備法を受けまして、昨年七月には第三次基本計画を策定したところでございます。各府省が一体となって、青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備に努めているところでございます。

 今先生がおっしゃった有害情報等をはねるためのフィルタリングにつきましては、その性能向上及び利用普及を施策の柱として掲げておりますが、そのフィルタリングの提供や開発につきましては民間事業者において担われておりまして、また、専門家を入れた民間団体による審査、認定の仕組みが設けられるところと承知いたしております。

 政府といたしましては、今後とも、青少年の健やかな育成を担当する立場から、総務省、経済産業省、文科省等関係省庁と連携しながら、官民一体となって、第三次基本計画に基づいて、例えば、フィルタリングの精度の向上とか、それを起こすための手順の簡素化などの性能向上及び普及啓発、また青少年や保護者のインターネットリテラシーの向上を図ってまいりたいと考えております。

宮川分科員 ありがとうございます。

 取りまとめをしている内閣府としては、今おっしゃった総務省、経産省、文科省、こういう省庁とも連携をしなきゃいけないということで、大変多岐にわたる対応をなさらなきゃいけないのではないかなと思っております。

 もう一つ、きょうは資料をお配りしておりますが、ぜひこの写真が載っているのを見ていただきたいと思います。

 これは、私の地元で食育に大変熱心に取り組んでいらっしゃる食品会社の社長さんが撮ってきた写真であります。これを見ていただいて、これは給食を食べた後の写真でありますけれども、見ていただいてわかるとおり、青いものにほとんど手をつけていなかったり、かなり偏食であるということがこれでよくわかっていただけるのではないかなと思っております。

 私も教師時代にさまざまな子供たちを見てきて、三百六十五日、六年間、毎日焼きそばのお弁当を持ってきた子供であるとか、食事はお菓子でしか栄養をとらないとか、ビタミンは全部野菜ジュースだというような、食生活が非常に乱れた子供たちがたくさんおりました。今、その子たちが二十代、三十代になってきて、早くも健康を害している、もしくはそんな治療をしているというのは、かなりの異常状況だと私自身は思っております。

 ですので、やはり子供の貧困問題ももちろんでありますけれども、健全育成という観点からしても、食育指導というのは、もう少し国としても力を入れていかなければいけないと思っております。

 実はこれは、若いときの好き嫌いではないんだと思うんですね。恐らく、二十代、三十代、社会人になっても同じような傾向があるんじゃないかな。昔は、食があふれ過ぎているという意味での飽食という言葉を使っていましたけれども、今は、非常に食に無関心、飽きるという意味での飽食という時代に来ているんじゃないかなと思います。

 こういう食生活をしていた子供たちが、二十代、三十代になって、食に対してどんな感覚を持っているのか、もしその調査があったらぜひ教えていただきたいなというふうに思っておりますし、それに対しての対策があればお答えいただきたいと思います。

武川(光)政府参考人 お答えいたします。

 内閣府では、平成二十六年に食育に関する意識調査を実施しておりまして、今おっしゃっていただきました二十歳から三十歳の若い世代の特色を出してみますと、その知識、意識、実践の面で若干他の世代と異なる課題が見受けられるところでございます。

 例えば、ふだんから朝食を食べているかという面につきましては、ほとんど食べないと回答した人は、全世代では七・三%しかおりませんでしたが、二十代から三十代の世代の男性では二割に及んでおります。また、栄養バランスに配慮した食生活の実践例として、さまざまな主食と副食をそろえて食べているかというのを尋ねたところ、全世代では七割の方が毎日食べているということに対して、二十代から三十代では三割から五割という結果でございました。また、一日の食事をほとんど一人で食べるという層も、全体では一割なんですが、二十代の男性では二割という高い層になっております。

 このような状況につきまして、やはり、これを解消するためには、若いときから、子供のときからしっかり健全な食生活を確立することが重要であるという考えから、文部省の学校給食とか、あるいは農水省の農林漁村体験の機会の提供に努めるとか、あるいは厚生省の国民健康づくり運動の一環として取り組みを進めているところでございます。

 今後とも、関係省庁連携してしっかりやっていきたいと思っております。

宮川分科員 食の問題というのは本当に大きな問題だと思っています。今、朝食の欠食のお話をしてくださいましたけれども、実は、夕食も欠食しているという子供たちが非常に多いんですね。

 これはどういうことかというと、朝はもちろん、親御さんもばたばたしているので食べてこない、昼間、特に子供たちだと、給食を通して、お弁当を通して何とか食事はとっている、しかしながら、夜は、塾に行ったり、子供たちだけで過ごす時間が多いので、その間に菓子パンなんかを食べてしまって、夜、家で提供される食事は食べないというふうに、こうやって、栄養のもとになるような朝食とか夕食というのを欠食している子供たちは本当にたくさんおります。

 また、一概には言えませんが、私が教育現場をさまざま見てきた中で、例えば、給食を元気でおかわりする子もたくさんいます。しかしながら、家でネグレクトを受けていたりして食事が一切とれないがために、給食に命をかけて食事をとっているという子供たちもいるんですね。しかしながら、そういう子供がこうやって残している現状なんです。

 つまり、そもそも、小さいときからしっかりと食育ということに触れていない、また、食から栄養をとるということに、家庭も含めてまだまだ意識が低いということがあるんだと思います。

 食事をとらないということは、欠食することだけではなくて、結局はカロリーが足りないんですね。カロリーが足りない。また、逆に、今、学校給食なんかは、給食費未納の問題でどんどん一食当たりの価格が下がっております。そうすると何がふえるかというと、炭水化物や脂質がふえます。そうすると何が起こるかというと、今度はカロリー過剰になって肥満の子供たちがふえてしまうということで、給食や子供たちの周りの食生活がしっかりしているということは、後の、恐らく医療にかかわるようなお金だとか健康に害を及ぼすようなものから外れていって、まさに食というのは一番最初の未病予防にもなるわけですね。

 これだけ我が国で社会保障というのが問題になっているわけですから、最初のうちから全世代的にしっかり食についての方針を決めていくというのはとても重要なことではないかなと思いますので、ぜひ各省庁力を合わせてこれからも対策を進めていただきたいと思っております。

 また、この問題は、まず一番最初に、貧困に苦しむ子供たちに対してまず私たちがすぐに手を差し伸べられる、きょうにもあしたにも差し伸べられる問題だと思いますので、ぜひ大臣にも力を入れて取り組んでいただきたいと思っております。

 今のお話を聞いていると、例えば、インターネットのフィルタリングの問題は総務省、経産省そして文科省が連携をしてやっている、食育の問題は文科省や農水省や厚労省が連携をしてやっているということで、子供にかかわる問題、特に、人にかかわる問題の中でも子供にかかわる問題というのは非常に多岐にわたっていて、さまざまな専門分野の対応がないと実は全ての対応が打ち切れないというのが現実じゃないかなというふうに思っております。

 一億総活躍という言葉を聞いて私が非常にうれしかったのは、初めて人に向かって矢印が向いたなというふうに思ったんですね。例えば、高齢者の皆さんだったら高齢者の皆さん、子育て、働き盛りの世代の皆さん、そして子供、若者というふうに、今まで専門分野で縦に割っていた行政のあり方というのが横に輪切りで切られた。それぞれの世代が抱える大きな問題を横の輪切りで切っていけるような政治というのが、この一億総活躍という言葉のもとにはできるんじゃないかなというふうに思って、私自身は、とても希望を持ちながら、今これに向かって自分なりに政策活動したいなというふうに思っております。

 やはり、特に子供というのは我が国にとっては未来であります。この子たちにとって最適な、また最良な、そして、一番お金をかけても、この人たちが健全に育っていくということが何よりも我が国にとっての基盤づくりであって、国力であって、何よりも一般の国民の皆様お一人お一人も希望が持てることだというふうに思うんです。だとするなら、縦割りの行政ではなくて、子供や若者にかかわることというのは、横の輪切りで、全部まとめて、それぞれの専門知識を集約したような場所というのが必要じゃないかなというふうに思います。

 これはまさに一億総活躍でありますし、言葉はこれが適切かどうかわかりませんが、例えば子供・若者省とかそういう新しい省庁ができてもいいんじゃないかなというふうに思います。これはもちろん、野党さんでもこんな意見が出ているというのは承知しておりますけれども、子供の問題に関しては、特に私たちは与党ですので、いち早く、子供、若者というものに対して、もっともっと行政の中の改革も進めていくべきではないかなと思います。

 これが最後の質問になりますので、ぜひ大臣から心強いお言葉をいただければと思いますが、また、今、大臣としてお考えがございましたら伺って、質問を終わりにしたいと思います。

    〔主査退席、小田原主査代理着席〕

加藤国務大臣 委員から、インターネットにおける、いかに子供を守っていくのか、あるいは食育という点に関して御議論をいただきました。

 子供の健全育成、そして次の時代を担う若者が自立して活躍をしていただく、その環境をつくっていくためには、本当に多岐にわたる施策の展開あるいは支援といったものが必要だというふうに思っておりますし、また政府にとっても大変重要な課題であると思います。

 今の政府においては、青少年の健全な育成に関する事務は私のところでやらせていただき、また、総理を本部長として全ての閣僚によって構成されております子ども・若者育成支援推進本部が設置されておりまして、そこにおいて子供、若者の育成支援に関する施策が総合的に進められており、また、二月の九日には政府全体における基本的な方針を定めた子供・若者育成支援推進大綱も決定したところであります。政府としては、その大綱を踏まえて、子供、若者の健全な育成のために、政府全体で、しかもしっかりと連携をとりつつ、総合的に施策を進めていきたいというふうに思っております。

宮川分科員 ありがとうございます。これで終わります。

小田原主査代理 これにて宮川典子君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

小田原主査代理 次に、内閣所管について審査を進めます。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。本村賢太郎君。

本村(賢)分科員 民主党の本村賢太郎でございます。

 どうぞ、石破大臣を初め、御指導よろしくお願いいたします。

 まず、政府関係機関の地方移転についてお伺いしたいと思っております。

 私の選挙区は神奈川県相模原市でございまして、今回、JAXA相模原キャンパスと国民生活センターの二つが対象になっております。きょうは、それらを中心に御質問させていただきたいと思っております。

 今回のJAXA相模原キャンパスは、大臣も御承知のとおり、「はやぶさ」の帰還から大変大きな夢と希望を市民に与えていただきました。これは日本じゅう、世界じゅうと言っても過言ではないかと思いますが、現在「はやぶさ2」も飛んでいるわけでありますけれども、地元の保育園の卒園式なんかに行くと、将来の夢は宇宙飛行士になりたい、そういう声も聞くような、本当に自治体を挙げてJAXA相模原キャンパスの存在を大変大きく位置づけております。今回の移転に伴いまして、子供たちから商店街や自治会、さまざまな皆さんが自主的に移転反対の署名運動を繰り広げるような形でありまして、石破大臣のもとにこの存続希望の要望が届いているんじゃないかと思っております。

 そういった視点からも、昨年の十二月十七日に、具体的検討を進める提案の概要の中で、組織全体の移転の検討にJAXA相模原キャンパスが含まれておりませんでした。まあ、含まれていたのは二つでありますけれども。

 また、提案のポイントは、岐阜県各務原市の科学館における教育、人材育成について、その具体的な連携体制の構築とされており、論点の中では、移転に伴う研究能力等の確保、向上に懸念、移転、新設の場合、費用の捻出や、移転等に伴う「はやぶさ2」を初めとした研究遅延の懸念とされております。

 また、来年度の予算には、今研究棟の中に入っている展示室、「はやぶさ」のいろいろな展示物があるんですが、これらの展示物を、新たに建物を建てて、研究棟から移すという予算も組まれているようであります。

 そこで、大臣にお伺いいたします。

 JAXA相模原キャンパスの移転について、全体移転はないと考えていいのか、そして相模原キャンパスはなくならないのか、お伺いいたします。

石破国務大臣 今、私から、あるとかないとか、断定的に申し上げることはできません。

 経緯は、今委員がおっしゃったとおりであります。相模原の皆様方からも反対の御要望も私は頂戴をいたしております。私は相模原も各務原もよく知っているつもりなのですが、経緯は、委員御案内のとおり、おっしゃったとおりです。

 これはどのように整理をしておるかといいますと、移転に伴う研究能力等の確保、向上、移転、新設の場合の費用の捻出、移転等に伴う研究遅延の懸念があるが、各務原市の航空宇宙科学博物館におけるこれまでの実績を考慮し、航空宇宙分野における普及、理解増進活動の連携の具体化の可能性について検討ということになっておるわけでございます。

 私どもとして、このようなものが移転をする、何もJAXAに限った話ではございませんが、それが国民全体にプラスになるということでなければ移転する意味はないのだと思っております。したがいまして、そういう観点からさまざまな検討がなされ、恣意的ではない、各務原の方も相模原の方も御理解、御納得いただけるような、そういう結論を出してまいります。

本村(賢)分科員 今大臣からも、国民全体にプラスがなければ今回の政府関係機関の移転はないというようなお話もいただいたわけでありまして、ぜひとも、そこは大事なポイントだと思っておりますので、引き続きお願いをしてまいりたいと思っています。

 次に、今回、消費者庁、消費者委員会、そして私どもの地元の国民生活センター相模原事務所の移転のお話がございます。

 大臣も御承知だと思いますが、消費者庁は、三十本の法律を所管しておりまして、消費者保護に関係する法律には二百本以上携わっております。まさに他省庁を消費者の目線で監督する司令塔だと私は思っておるんです。

 その中で、今回、国民生活センター相模原事務所の移転に関しまして、昨年の三月から八月が締め切りだったにもかかわらず、突如、十二月の十四日に河野大臣が徳島の県知事さんとテレビ会議をした際に初めてそういった話が出てまいりましたし、また、地元相模原市や神奈川県には正式な通達がことしの一月の十五日。

 そういった非常に乱雑な、いわゆる行政事務として八月で締め切ったものを後出しで、私どもの市長も寝耳に水というお話を記者会見でもされておりますが、こういったことがあったら行政の信頼を失うんじゃないかと思っておりますし、もしやるんだったら二次募集などをして整理をするべきじゃないかと思います。

 八月末の締め切りの後に提案された経緯について、大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

石破国務大臣 昨年三月から八月まで、地方移転について地方からの御提案を募集したものであります。

 徳島県から平成二十七年八月末日に内閣官房に提出された独立行政法人国民生活センターに係る地方移転の提案関連文書では、委員御指摘のように、同センターの現所在地として「東京都港区(東京事務所)」とのみ記載をされておりました。その後、十二月十四日に徳島県知事から河野大臣に対しまして、このセンターの地方移転に係る検討の対象機関にセンター相模原事務所を含む提案資料が説明をされ、十二月十八日に徳島県より内閣官房に追加の提案がなされたものであります。この経緯を踏まえて、センターの地方移転に係る検討の対象機関に同センター相模原事務所を追加することとしたというのが事実関係でございます。

 これをどう考えるか、ルールと違うではないか、行政に対する信頼が失われるのではないかという御指摘であります。何せこれは本邦初演のお話なので、明確なルールというものがあるわけではございませんが、具体的な提案があった場合に、検討しますというような意思を示すことまで排除するものではないと考えております。

 実際に正式な文書で相模原にお話をいたしましたのは一月でございますが、昨年の十二月十八日に神奈川県政策局政策部総合政策課からお問い合わせをいただきました。これが提案の対象になっている旨は、電話におきまして私どもから申し上げたところでございます。ですから、文書で回答いたしましたのは一月十五日でございます。意見抽出や意見聴取の連絡をさせていただいたのは一月十五日でございますが、十二月のうちから神奈川県並びに相模原市とは連絡をとっており、二月二日に、まち・ひと・しごと創生本部事務局が神奈川県、相模原市から意見を承ったというふうに承知をいたしております。

 これはちょっとルールと反するのではないかと言われると、そこは全く反しませんというふうに断定をする自信は私はないのですが、実際に徳島から追加の御提案がある、そのことまでルール違反だからだめだというふうに排除するものではないというふうに、私自身、これを承認したものでございます。

本村(賢)分科員 それでは、今後、国民生活センター以外の場所において、例えば他県や自治体の方から、うちの方にまた追加で政府関係機関の移転をお願いしたいといった場合、これは政府として受け入れる予定はあるんでしょうか。

石破国務大臣 今後、そのような予定はございません。

本村(賢)分科員 創生本部の皆さんからお話を聞くと、よりよい成果を得るために検討の中で出てきたという御説明がありましたが、なかなかここは理解に苦しむところでありまして、今後はそういったことがないというお話も今いただきました。では、なぜ国民生活センターだけが後出しで入ったのか。

 もっと言うと、昨年の八月の段階で、徳島県議会に私が確認をしましたら、相模原事務所は大き過ぎるから外すという方向で徳島で決まったらしいんですね。そういった経緯もありますし、昨年十二月に今回の有識者会議の資料を見て神奈川県や相模原市が気づいたということでありまして、いわゆる移行の決定に関しても自治体に対して大変失礼な話だったし、また、正式な文書が通達されたのが一月十五日、十二月十四日のテレビ会議から一カ月後でありまして、少しここは失礼な点がまち・ひと・しごと創生本部の方であったのではないかということは指摘をさせていただきたいと思っています。

 次の質問に入ります。

 一月二十七日の意見交換会が極めて短時間であった、約二十分間ぐらいだったということでありまして、ちょっと話を聞くと、徳島県、消費者庁、国民生活センター、消費者委員会をあわせて会議を行ったということでありますが、昨年八月七日の有識者会議名簿には、「検討対象となる機関ごとにそれぞれ専門的見識を有する方を任命。」とあるにもかかわらず、今回、有識者会議における検討のあり方について、消費者問題の専門家が不在であったことは非常に問題ではないかと思っています。

 その点について、また、意見聴取が二十分だったのは本当にふさわしい時間だったのか、大臣の御見解をお伺いいたします。

石破国務大臣 前の御質問で、少し自治体に対して失礼ではないかという御指摘、それは謙虚に、真摯に承らねばならないことだと思っております。

 まち・ひと・しごと創生本部で自治体の方々がそういう不快な思いをされたとすれば、それは全て私の責任に帰するものでございまして、おわびを申し上げる次第でございます。よく気をつけたいと思います。

 今の御指摘でありますが、今回、この有識者会議におきましてはいろいろな方々に入っていただきました。地方行政、行政組織、行政学、そして地域イノベーションの分野等の専門家に委員をお願いしてきたものでございます。特に、全国を対象とした国の機関としての機能の維持向上が期待できるかという大きなポイントにつきましては、所管省庁において検討を行うべきものだと考えております。

 この有識者会議のみならず、消費者団体の方、あるいは消費者行政に携わってこられた方、私も福田内閣におきまして防衛大臣を務めておりましたが、そのときに、福田総理の強いお気持ちもあって消費者庁が創設されたという経緯はよく承知をいたしております。消費者庁の創設にかかわられた方等々、私どももいろいろな御意見を頂戴いたしております。

 ですから、二十分という時間が短いとか、代表が入っていないではないかという御批判は、それは謙虚に、真摯に承らねばなりませんが、消費者問題にかかわる方々の御意見は今後も丁寧に聞いてまいりたいと思っております。

本村(賢)分科員 ぜひ大臣、消費者問題の専門家の皆様の御意見も、今、真摯にお聞きいただけるということでありますので、そのことを信じていきたいと思います。

 次に、平成二十七年三月十三日に行われた提案説明会資料には、二十七年度内に、まち・ひと・しごと創生本部においてその必要性や効果につき検証した上で移転すべき機関を決定とありますし、また、既に四月以降にも検証が予定されている。例えば、三月中旬に神山町に一週間程度長官らが滞在をされたり、四月以降に商品テストや研修が実施をされたり、それから夏には比較的長い期間で試行的滞在の勤務が行われるとかいう話があるんです。

 本来、これはことしの三月で結論が出るというふうに私どもは承知をしていたわけでありますが、消費者庁そして消費者委員会、国民生活センターを初め、いつまでに結論が出るのか、今後のスケジュールについてお伺いいたします。

石破国務大臣 三月中に、もうすぐ三月でございますが、総理を長としますところのまち・ひと・しごと創生会議で決定をするものでございます。ですから、まだそこに至っておりませんので、今確たることを申し上げることはできません。

 ですから、三月の時点で、まち・ひと・しごと創生会議でどのような結論を得るかということは、実証するというのは、私が知る限りにおいて、消費者問題担当大臣であります河野さんが、そのようなことは実際やってみなければわからぬと。

 なぜ徳島かということになったときに、今御指摘になりました神山町等々、徳島の場合には、通信回線というものが非常に発達をしておって速度が速いと言われております。ですから、いろいろなベンチャー企業も進出をしておるところであって、これは徳島県全体に言えることでありますが、そうかといって、本当に消費者行政というものを行う場合に、それで全国民の利便というものが低下をしないか、消費者庁の持っているそういう責務が減殺されることはないか等々、それを試してみなければわからないのだと。

 だから、三月までに期限を切って決めるのではなくて、実証期間を置いて、国民の共感と納得が得られなければ判断をしてはいけないというお考えでありとせば、それを、三月末だからそこまでに結論を出しなさいよということで排除するものではないのかもしれません。

 持って回った言い方をして恐縮でありますが、三月末まで多くの議論を重ねて、総理のもとで決定をしてまいりたいと考えておるところでございます。

本村(賢)分科員 ぜひ決定は丁寧に、自治体や、先ほど大臣が言われたように国民のプラスになるような方向で方向づけを決定していただきたい、そう願っております。

 大臣も何度も相模原にいらしているのを私も承知しておりますが、私ども相模原市も基地が三つありまして、非常に基地の負担が大きいところで、キャンプ淵野辺の跡地にこの国民生活センターを、当時の消費者行政、今、福田内閣のお話もいただいたわけでありますが、当時の相模原市が、本来ならば全面基地返還を市として望んでおったわけでありますが、国民生活センターの受け入れを決定した経緯もございます。そして、今、市には三つの窓口の消費者センターもございますので、本当に国民生活センターと一体となって歩んできた経緯もあります。

 先ほど、徳島の通信回線が非常に高いお話もありましたが、ちょっと逆に指摘をさせていただくと、消費生活専門相談員資格保有率は徳島県は全国で四十位でありますし、研修参加率は四十五位、本年度の相談員資格試験、消費生活アドバイザー試験合格者はゼロ、相談件数やあっせん件数も少なく、スキルを磨くのが非常に難しいんじゃないかという点は指摘をしておきたいと思います。

 また、アクセスですね。飛行機は、羽田―徳島間が一日十一往復、それで福岡―徳島が一日一往復のみでありまして、消費者庁が有識者会議に提出した資料によりますと、徳島駅を起点にした場合、東京駅起点にした場合に比べ、所要時間が長くなる都道府県が四十一都道府県、短くなる県が六県ということであります。恐らくこういった視点からも、徳島県へ例えば研修施設や消費者テストの機材を全て動かすというのはなかなか難しいんじゃないかなということは指摘をしてまいりたいと思います。

 次の質問に入りますが、資料二をごらんいただきまして、これは、担当大臣である河野大臣の、一月二十日の自民党の調査会における発言をアップしたものであります。

 河野大臣は、一月二十日に、消費者庁平成二十八年度予算等を審議する自民党消費者問題調査会に出席をされまして、地方で仕事ができない役所、潰した方がいいというような、これは非常に失礼なお話をされております。船田元会長は、徳島移転はデメリットが多い、性急な決定には極めて慎重であるべきという御指摘もされておりますし、きょうの毎日新聞には、官邸の方からテレビ会議は情報漏えいの懸念がされておりますから、官邸側としてはテレビ会議システムでの参加はなかなか難しいんじゃないかというお話もございました。

 そこで、この河野大臣の発言を、石破大臣としては、私はこれは非常に失礼な、情けない発言だと思いますが、どう受けとられるでしょうか。

石破国務大臣 何でもそうなのですけれども、発言の一部だけを切り取ると物事の本質を間違えることがございます。

 私どもは、河野大臣と当然のことながら同じ政党に属しておりますので、一月二十日の消費者問題調査会におきまして、河野大臣の発言、全文を私は読んでみました。そうでないと、物事の本質を間違えるところがございますので。

 河野さんが言っているのは、まず最初からだめですということありき、それはいかぬのではないだろうかということをおっしゃっておられます。ですから、消費者庁を地方に移さないから潰せというのは河野さんの本意ではなくて、地方からいろいろな御提案があります、それを、最初から、できません、なぜならばということを言うのは行政として決して適当ではない。

 そしてまた、テレビ会議の御指摘がございました。確かに、秘密保持の点からどうなのかということはございます。

 私も防衛省で随分仕事もしてまいりました。秘密保持ということには、人一倍と言ってはなんですが、関心を持っておる、注意をしているものでございます。そうすると、秘密保全というもの、専用回線等々を使いまして、秘密保持のやり方があるわけで、それができないということになりますと、太平洋戦争のときに、最後に暗号が解読されたのでやったことは何なのかというと、伝書バトでも飛ばすかというような話になっちゃうわけですね。

 ですから、秘密保持というものをどのように行うかということもやはり議論しなければだめで、テレビ会議だと秘密が漏れちゃうからだめということありきではない。それを克服できるものが何かあるだろうか、できません、なぜならばを言うのではなくて、できるためにはどうするのか、それでもってなお国民の利便に寄与しないとすれば、それはとるべきではない。河野さんはそういう考え方の持ち主だというふうに理解をしておるところでございます。

本村(賢)分科員 大臣に最後に、今回の地方創生や東京一極集中是正は、私たち野党側からもここは評価をしなくちゃならないわけでありますけれども、ただ、本来の地方創生は地方から湧き上がってくる形がふさわしいんじゃないかと思っておりますし、上から目線の地方創生はやはりちょっとおかしいなという気持ちがしております。

 相模原から、移転してほしい側からの努力が見られない、そして、そもそも相模原市は政令市で首都圏に位置するが、実態は地方、一極集中是正というなら二十三区に絞ればいいという声も地元から上がっているのは事実でありまして、このように、今回、地方対地方の対立を生むような地方創生であってはならないと私は考えております。

 そこで、石破大臣の地方創生に対する思いをお伺いいたします。

石破国務大臣 きょうの地方創生特別委員会でも所信を申し述べてきたところでありますが、日本の国はこれからどうなるかというと、一億二千七百万人の人口がおりますが、このままの出生率、死亡率が続くとすれば、二百年後には日本人は千三百九十一万人になるわけで、三百年後には四百二十三万人になるわけです。これは委員も同じお考えだと思いますけれども、国家主権というのは領土と国民と統治機構の三つによって成り立っておるわけでございますが、この国民そのものがどんどんといなくなるという事態は、いわば静かな有事とでもいうべきものだと思っております。

 他方、相模原もそうでしょうね、食料を生産し、再生可能エネルギーをつくり、出生率が高い地方がどんどんどんどん疲弊をしていって、東京だけが残る町というのは、多分日本としてあり得ないのだと思っております。

 ですから、東京の人と富を全国にばらまくなんぞというつまらぬ話ではなくて、かつて地方というのは、公共事業と企業誘致によって産業の基盤をなしておったことは間違いない事実であります。公共事業が減る、そしてまた企業が海外に移転するときに、地方の持っている本来のポテンシャルをいかに上げるか、他国に比べてまだ劣位にある労働生産性、特にサービス業、これをいかに上げるか等々を考えていかなければなりません。

 と同時に、まさしくおっしゃいますように、上から目線ではなくて、地方の発意というものを重視したいと思っております。ですから、今度の新型交付金もそうです。省庁の地方移転もそうです。

 相模原と例えば徳島、あるいは相模原と各務原というふうに意見が違ったときに、そこにおいて最も重視しなければならないのは、なぜそこなのか、そしてそれが国民全体の福利厚生に資するものであるかということでございまして、恣意性を排して国全体のためにということと、そしてまた、国の存亡にかかわる問題でございますから、東京の持っている利点を最大限に上げ、今のままいけば、やはり震災等々に対する脆弱性は否めないわけでございます。そして、経験したことのないスピードと規模で高齢化が進むわけです。その東京の脆弱性を克服することと地方のポテンシャルを上げていくということは決して矛盾するものではなく、この両立を図るのが地方創生だと理解をいたしております。

本村(賢)分科員 ぜひ、これから、少子化対策を含めて、地方から声が上がるような新しい日本の形、子や孫の世代に誇れる日本をつくっていくためにも、大臣の御指導をまたお願いしてまいりたいと思っております。

 次に、米軍基地に関しまして質問させていただきたいと思います。

 日米地位協定について防衛省の考え方をお伺いしたいと思うんですが、実は他国では、韓国で二回、ドイツで三回改定されております。

 昨年、私どもの相模原では、八月二十四日に相模総合補給廠の爆発事故がありまして、米軍から、消防協定の関係で、相模原市消防と連携をして鋭意精査していくということでありましたが、結果的に一日しか、数時間しか現場に入れなかったということもあります。相模原でいうと、焼夷弾の処理とかゴルフボールの問題とか、それからキャンプ座間の炭疽菌の問題など、あらゆる問題がある中で、やはり日米地位協定の改定は、私どもの相模原市長を初め神奈川県知事もそうでありますし、さまざまなところで改定を望む声が出ております。

 防衛省は、質問すると、日米地位協定は変えられる、しかし今運用改善をしているんだということをよくよくいただきますが、防衛省として、今回、八月二十四日の爆発事故に伴いまして、やはり防衛省もかなり苦労されたと私は思っていますから、この必要性を感じているんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

熊田大臣政務官 日米地位協定に関する御質問をいただきました。

 協定そのものに加えて数多くの日米合意を含んだ法体系でありまして、政府といたしましては、手当てすべき事項の性格に応じ、日米合同委員会を通じた取り組みなどによって不断の改善を図ってきておるものと承知しております。

 昨年の八月、相模総合補給廠における火災の際にも、火災発生後、米側から日米合同委員会合意に基づく通報があったものと承知しており、その後、米側から原因調査の状況に関する情報提供もされているところでございます。

 いずれにいたしましても、このような事故が起きた場合は、住民の方々の不安を払拭する観点から、一刻も早い状況把握のため、迅速かつ十分な情報提供が行われることが重要であることから、引き続き米側に協力を求めてまいります。

本村(賢)分科員 熊田政務官、紙を見て言うんじゃなくて自分の言葉で、地位協定の改定が必要かどうかを聞いているので、ぜひ端的に答えてください。

熊田大臣政務官 先ほども御答弁申し上げたとおりでありますが、地位協定につきましては、防衛省ではなく政府全体として考えなきゃならないものと心得ておるところでございます。

本村(賢)分科員 政府全体として考える中で、その政府の一員である政務官としての考えはいかがでしょうか。端的に答えてください。

熊田大臣政務官 何度も申し上げておるとおりでございまして、今、私の立場でこのことについて申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。

本村(賢)分科員 非常に残念ですね。ちゃんと責任を持って、政府の一員でありますから、しっかりと御自身の考えを持っていただきたいなと思います。

 次の質問に入ります。

 資料三の中で、平成二十五年十月に日米合同委員会で返還に合意している相模総合補給廠の北側外周部分について、昨年の分科会でも質問させていただきましたが、「相模原市と調整いたしまして、返還に向け、平成二十七年度中に条件工事を実施するための現地実施協定を締結するという方向で引き続き努力してまいりたい」というお話でありますが、この進捗状況はいかがでしょうか。

熊田大臣政務官 相模総合補給廠の北側外周部分の土地についてでございますが、相模原市の要望を受け、平成二十五年十月の日米合同委員会において、当該土地の返還に伴い必要となる米軍施設の移設等を条件に返還することが合意され、現在、相模原市において、条件工事のための調査等を実施していると承知をしております。

 条件工事を実施するための現地実施協定の締結時期につきましては、現時点で確固たることを申し上げることは困難でございますが、現在、今年度中を目途に相模原市及び米側と調整しているところであり、防衛省といたしましては、可能な限り早期に同協定が締結できるよう引き続き努力してまいります。

本村(賢)分科員 ぜひ、今年度中という、日数も少なくなってまいりましたが、防衛省を初め地元自治体とも協力しながらこの協定を一日も早く結んでいただいて、相模原市の玄関口のJR相模原駅に隣接した二百十四ヘクタールの補給廠でありまして、多くの市民の皆さんがこれで困難を来していますので、防衛省のリーダーシップを期待して、私の質問を終わりにします。

 ありがとうございました。

小田原主査代理 これにて本村賢太郎君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

小田原主査代理 次に、内閣府所管について審査を進めます。

 内閣府本府について質疑の申し出がありますので、これを許します。宮崎政久君。

宮崎(政)分科員 自由民主党の宮崎政久です。

 きょうは、内閣府本府の島尻安伊子大臣にも御出席いただいております。私の地元の浦添市に関連することをこの予算委員会の席で取り上げさせていただきますことに心から感謝を申し上げまして、質疑をさせていただきたいと思っております。

 まず最初に、沖縄の子供の貧困対策の推進について大臣にお伺いをいたします。

 子供の将来が、どこで生まれたのか、どこで育ったのか、その環境に左右されることなく大きく大きく育ってほしい、誰もが大人として、子を持つ親として考えることでありますし、私たち大人は、次の時代を担う子供たちにこういった視線を誰もが持っているものだと思います。

 私たちの沖縄県は、まだまだ残念な状況が一部にあるわけです。一人当たりの県民所得が全国最下位である。弱い立場の人に最終的にしわ寄せがいくわけでありますが、その弱い立場の最たるものというのは子供であると言わざるを得ないわけです。

 沖縄県では、生活保護率が高い、非正規の就業率が高い、離婚率、若年出生率、児童扶養手当の受給率は残念ながら全国一位、母子世帯の出現率は全国平均の二倍、高校生の中途退学率は全国一位、若年の無業者も、率でいうと全国の一位、このような厳しい状況にあるという現実がございます。

 先日、島尻大臣には、浦添市のてぃーだこども食堂の御視察をしていただきました。ここは、浦添小学校に併設をされている児童センターで、センターの職員さんはもちろんでありますけれども、浦添小学校のPTAの皆さんを中心に、ボランティアで運営をしていただいております。

 実は、私たちの地元では、一日の食事が学校の給食だけ、そういう子もおります。では、そうした子は土曜日とかどうして過ごしているんだろう、こういった思いもあって、共働きが普通に、沖縄では余り共働きと言わないんですよね、みんな二人とも働いているので。そういう沖縄で、地域の人たちが立ち上がって、今、ボランティアでこういう活動をしている実情があります。

 子供に個別に話を聞くと、実は子供も寂しい思いをしているんですね。寂しい思いをしているけれども、お父さんとお母さん、片親の子もいます、親が頑張って働いていることを実は子供はよく知っているんです。だから、自分が寂しい思いとかを口にすることは非常にはばかられる、自分が寂しいなんていうことを言うと、お父さんやお母さんを応援できなくなっちゃうと言って、こういう思いをずっと胸にしまい続けている境遇の子供も非常に多いんです。

 ですから、そういった中から、どんな家庭の子供も気軽に集まって、みんなで一緒に御飯を食べよう、おなかいっぱい食べよう、こんな思いから、お父さん、お母さん、地域の皆さんのボランティアでこういう活動が始まっています。

 このてぃーだこども食堂は、地域の子供は地域で育てるというテーマを掲げて、ポリシーでやっておられる。昔は、近所の子は近所が育てるというのは当たり前のことだったと思うんですね。こういうことを今自覚的にやっていただいている方がいます。

 島尻大臣の肝いりで、今回、沖縄の子供の貧困対策の緊急事業、平成二十八年度の予算案で十億円を計上していただいております。

 大臣のここにかける思い、また、沖縄の社会であるとか沖縄の子供たちに向けている大臣の目線をぜひ聞かせてください。

島尻国務大臣 お答えを申し上げたいと思います。

 まず、宮崎代議士におかれましても、本当に県内の子供の貧困の状況等、細やかに御視察をいただいて、また、大変に重要なことだということで活動をなされているということに私からも敬意を表したいと思っております。

 今、宮崎先生の御指摘もございましたけれども、沖縄の子供を取り巻く環境というのは、例えば、一人当たりの県民所得が全国最下位であって、そして母子世帯の出現率が全国一位であるなど、全国と比較して特に深刻な状況であるというふうに思っています。私自身も、担当大臣としてさまざまな施設を視察いたしまして、NPO等の関係者とも意見交換を行ってまいりました。やはり子供たちの大変厳しい状況というものを実感しているところでございます。

 また、沖縄特有の事情といたしましては、このような深刻な状況にもかかわらず、行政の支援が子供に行き届いていないということ、それから、日中にとどまらず夜間も子供の居場所がないということ、それから、貧困家庭の親が経済的自立をするための雇用の場がまだまだ少ないということ、これらが課題となっているというふうに認識をしております。このため、沖縄振興特別措置法に基づいて沖縄振興を担当する立場から、沖縄独自の施策を講じることといたしました。

 具体的には、平成二十八年度から、新たに、個々の子供の貧困に関する状況を把握して、支援を要する子供とその世帯を支援措置につなぐ支援員の配置、それから、子供が安心して過ごせる居場所の運営の支援、これらをモデル的、集中的に行う沖縄子供の貧困緊急対策事業というものを実施することといたしまして、平成二十八年度予算案に十億円を計上させていただきました。できるだけ幅広い市町村で実施されるように、補助率を十分の十とさせていただき、また、地域の事情に合わせて実施が可能な柔軟な仕組みにさせていただいております。

 加えて、貧困家庭の経済的自立を促進するために、一人親家庭の親の雇用や雇用形態の安定などに取り組む事業者などについて、沖縄振興開発金融公庫の貸付金利の優遇措置を行うこととしております。

 これからも、沖縄県や市町村のほか、経済界や教育界などさまざまな立場の皆様と連携をいたしまして、沖縄の子供の貧困対策に取り組んでいきたいというふうに考えております。

宮崎(政)分科員 ありがとうございました。

 これはいわば、私たち大人が、ある意味、今まで見て見ぬふりをしていた部分もあると言えるぐらいの問題だと実は思うんです。だから、無関心から、実はこれからやらなければいけないことがあるということで、自覚的に関心を持って私たち大人が変わっていく、行動していくことによって社会が変わっていく、次の時代を担う子供たちがそこに触れてもらう、こういったことをこれから自覚的にやらないといけないと思っています。

 そこで、大臣にもう一つお伺いしたいんです。

 今御説明があったとおり、十億円の予算、比較的使い勝手がいいようにということで、補助率も十分の十としていただいた。ただ、改善の余地も、もちろんないわけではない。例えば、物品購入費などは対象として加えられない部分もあるわけであります。さらには、モデル事業ということで三年間実施をするというふうになっております。

 さきに私も指摘したり、また大臣もお答えいただいたとおり、沖縄の子供をめぐる厳しい環境というところを見ますと、これは三年で全てが解決できるわけでないことは誰でもわかる話であります。ぜひこれは、三年くらいで芽出しをして、そして今後も、例えば、実施をした市町村の意向を踏まえてその制度を改善して、さらに発展的に実施をしていくなどの余地があっていいものだというふうに私は思うんですけれども、今後の取り組みについて、大臣のお考えをぜひ聞かせてください。

島尻国務大臣 何度も御指摘いただいておりますように、今回、平成二十八年度予算案において十億円を確保いたしました。本事業については、今まさにお話しいただいたように、モデル的に三年間実施するということを想定しております。

 その後についても、私も、この事業を御提案させていただいたときに、沖縄振興計画、現行法の期間中、つまり、平成二十八年度から三十三年度までということを想定し、子供の貧困に関する集中対策期間として、関係省庁における施策の進捗も踏まえながら、市町村の御意見も聞いて対策に全力を尽くしていきたいというふうに考えております。

 先生御指摘のように、まずは始めてみて、さまざまな問題点が出てくるというふうに思っておりますので、その都度また、何が子供にとっていいのかということをまず第一に考えていきたいと思っております。

宮崎(政)分科員 ありがとうございました。

 まさに、これは島尻大臣であるからこそ始めていただけた事業ということで、県内でも、保育の関係の皆さん、例えば、子供の社会的な問題に携わっている多くの皆さんから非常に感謝の言葉をいただいている事業でありますので、ぜひ大臣、今御答弁いただいたような形で今後も御検証、そしてまた推進をしていただきたいと思っておりますし、私もこれをしっかりと支えていきたいと思っております。

 次に、浦添市にたんぽぽ園という障害児の通所支援事業所がございます。ここは、障害があったり、発達におくれが見られる、いわゆる発達障害のゼロ歳児から就学前までの子たちに適切な保育を提供しております。

 こういう障害のあるお子さん、やはり自分の子供に、発達に不安があるんじゃないかということになると、親御さんはどうしても心配が先に立ってしまうわけでありますし、不安になります。そこで、実はこのたんぽぽ園では、お子さんと保護者が一緒に通う親子保育、親子療育という形で通所支援事業をしております。基本的な生活習慣をつけられるようにして、集団生活に適応できるように、運動とかお遊戯とか絵本を読んだりというようなことをしながら、個別の支援計画に基づいて、遊びを通じて発達を促していくということをやっているところであります。

 非常に評判がよくて、実は県内の他市町村から浦添市に転居してまでこのたんぽぽ園に通う方もおられます。定員は二十名。ことしの登録者は五十四名、昨年は六十名。実は、毎年平均大体六十名ぐらいの方が登録をされていて、本当は平日毎日通ってもらいたいんですけれども、保護者の方と相談をして週二回ぐらいにしてもらって、登録をされている方が皆さんこの園に通えるような工夫をしているということで、やっていただいている皆さんの御努力に心から敬意を表しながら、十分に対応ができていない残念な面もあるというところでございます。

 保育施設があれば、保育士さんがいればさらに対応ができるということで、浦添市では、待機児童の解消という大きな課題もありますので、言ってみれば第二たんぽぽ園のような形で、障害児に対応できるような保育所、発達支援センター、もちろん健常のお子さんも受け入れられる保育所、こういうものを複合的に、子供の保育に万全を期する施設をつくりたいという計画を立てております。浦添市の牧港四丁目の寮の跡地の国有地を使ってつくってまいりたいということを今計画し始めたところであります。

 そこで、防衛省にお伺いをしたいと思っております。

 きょうは、熊田政務官にも御出席いただいております。熊田政務官には、毎年毎年沖縄に足を運んでいただいて、沖縄の実情を私たちと一緒になって考えていただいております。

 こういった施設の建設を行う場合、防衛施設に関連して、環境整備法に基づく措置として民生安定事業などの支援をいただくことが多いわけでありますが、今回、こういった保育所をつくるような場合でもこのような制度を使うことが可能であるかどうか、お尋ねをいたします。

    〔小田原主査代理退席、主査着席〕

熊田大臣政務官 防衛省といたしましては、防衛施設の設置、運用により生じ得る障害の防止等のため、防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律に基づき、騒音防止工事や民生安定施設の助成、特定防衛施設周辺整備調整交付金等の各種施策を実施しております。

 浦添市が検討されている事業につきましては、具体的な事業計画の内容についてお伺いをしつつ、御指摘の保育所及び発達障害児支援施設等の複合施設に対していかなる支援が可能か検討してまいりたいと存じております。

宮崎(政)分科員 政務官、もう一点確認をしたいんです。ちょっと確認的に聞きたいんですけれども、保育所のような施設であれば環境整備法の民生安定事業の対象になるということについては、これは間違いないということでよろしいですね。

熊田大臣政務官 間違いございません。

宮崎(政)分科員 ありがとうございます。

 こういった形で、今、浦添では、政府が立てた待機児童解消加速化プランをしっかりと実現することはもとより、さまざまな立場にいる子供さん、そしてその子供さんを育てているお父さん、お母さんはもちろんのこと、周りの人全てにさまざまな支援をこれからも提供し続けたいというふうに思っております。

 平成二十七年の三月に、浦添市は第三次てだこ親子プランというのを策定しております。この中では、保育量、保育のボリュームのこれからの見込みを算出した上で、待機児童解消加速化プランも踏まえて、認可保育園による通常保育事業の充実、認定こども園への移行、小規模保育事業の促進、障害児保育事業の推進、認可外保育施設への支援の充実、病気になっちゃったという意味での、病児や病後児の保育の推進、幼稚園における預かり保育の推進などさまざまな事業を推進する計画でおります。

 実は、私自身も、初めて選挙に出させていただいたときに、私も共働きで、子供を三人、まだ育てている最中なものですから、小児デイケア、子供が病気になっちゃったときに預かってもらえる病院での小児デイケアの支援拡充というものを公約に掲げて、これにずっと取り組んでいるところでありますけれども、地元の浦添市でも、こういった形で、病児・病後児保育の推進なども今一生懸命やろうとしているところでございます。

 子育てというものには多様なニーズがございます。こういう多様なニーズに対応して保育サービスを充実させるということは、全ての子供と全ての子育て家庭を漏れなく応援する環境を整備するということであります。浦添市は、松本市長が福祉の世界の出身ということもございまして、市長自身の熱い思いも反映しているこの第三次てだこ親子プランであります。

 浦添市において、このような保育所や障害児の保育に関連する複合施設を運営したいと考えております。一括交付金の活用はもとより、他省庁、例えば厚生労働省などを初めとする支援メニューも含めて総合調整をしていただくということで、内閣府からの御支援をしっかりといただいてまいりたいと考えております。

 施設を設置した後の運営への支援という意味で、沖縄振興を所管する内閣府から、島尻大臣の御所見を聞かせていただきたいと考えております。

島尻国務大臣 障害をお持ちのお子様方については、やはり、その発達の段階に応じて、一人一人の個性とそしてその能力に応じた支援を行うということが必要であって、各地域で継続的な支援を行うための体制を整備するということは大変に重要な課題であると私も認識をしています。

 その中で、先生御指摘の浦添市の施設に関してでございますけれども、浦添市さんがおつくりになったこのプランに基づいて、具体的な計画ということはこれから検討なさる予定であるということでございます。

 例えば、発達障害児を含めた障害児の通所支援については、児童福祉法に基づいて、厚生労働省において運営に係る費用の負担を行っているというふうにも承知をしております。

 今後、きょう先生から御指摘がありましたように、この浦添市のプランというものがどういったものなのかということをまた松本市長に御説明いただいたり、そういう中で、この浦添市の計画の内容というものをしっかり伺いながら、関係省庁とも連携をして、国として、内閣府としてどういった運営に対する支援ができるのかということを検討してまいりたいと考えております。

宮崎(政)分科員 ありがとうございました。

 子供、子育て、また貧困などに関する質疑の最後に、大臣の思いというんでしょうか、ぜひ聞かせていただきたいと思っているんです。

 実は、沖縄の中に難しい問題はたくさんある。さまざま、いろいろな問題があって、解決しなければいけない問題が山ほどあるわけですけれども、今回、島尻大臣が沖縄担当大臣に御就任になって、特に沖縄の子供の貧困というところに目線を当てて、ここに大きな予算も充てていただいた。

 そして、実は、大臣は週末になると可能な限り沖縄に戻っていただいて、いろいろなところを、特に子供、子育て関連の施設はよく視察をしていただいております。私も、地元に来ていただいたときには、もちろんそれ以外の、スポーツ関連とかいろいろなところで御一緒しますけれども、子供関連の施設はよく御一緒しているという状況であります。

 今回、こういった形でやろうというふうに思われた、何か思いの源泉みたいなところをぜひ一言聞かせていただければと思います。

島尻国務大臣 沖縄担当大臣を拝命いたしまして、やはり沖縄の振興というものがまず第一。つまり、経済の活性化。そして、今、沖縄というのはかなりポテンシャルが高いということも言われておりまして、日本の経済の牽引役にもなれるぐらいのポテンシャルがあるということで、その道筋をしっかり立てていかなければならないという決意を持ったわけであります。

 他方、なかなかこれまで光が当たってこなかった、まさに教育だとか福祉の部分、ここに加速度的に何かの支援をしなければならないということを強く考えました。それは、これまで、それこそ宮崎先生とも県内でいろいろな活動をさせていただいておりましたけれども、その中で、やはり光が当たらなかった部分というのは、まさに沖縄の子供の貧困のところではないかというふうに考えております。

 つまり、沖縄の振興、そして沖縄の経済が強くあるにはやはり人材の教育が必要であって、そういった観点からも、しっかりと人材の教育、つまりは、沖縄のどのような背景を持つ家庭に生まれてきても、ひとしくすくすくと健康に子供たちが育って、その子供たちがまた沖縄のために、あるいは日本のためにしっかりと自己実現をしながら人生を送っていっていただくような、そんな環境をしっかりとつくらなければならないと考えた次第でございます。

 やはり、沖縄の特殊事情の中に、まだまだ雇用の数が少ないとか、あるいは所得がまだまだ全国に比べて低いとかいった問題がございますので、そういったところをしっかりとまた、沖縄振興を担当する大臣として強く進めていきたいというふうに思っているところでございます。

宮崎(政)分科員 ありがとうございました。

 きょう、大臣とこういった形で、沖縄の貧困の問題、そして、地元で今、浦添市で、牧港四丁目の国税事務所の寮の跡地を前提に、障害児保育、健常児も含めて保育の関連複合施設について御支援をこれから十分に協議していただけると。そしてまた、熊田政務官からも、保育所の設置に関して民生安定の御支援をいただけるというようなお言葉をいただいたことは、非常に地元としてはありがたいと思っております。

 浦添市、松本市長と一緒になって、しっかりとこの施設整備も進めてまいりたいというふうに思っておるところでございます。ありがとうございました。

 最後でありますけれども、今度は、今大臣の御指摘にもありました経済の部分の御質問を一点させていただいて、終わりたいと思っております。

 沖縄都市モノレールが延伸をされまして、浦添市内に四つの駅ができます。この四つ目の駅は、てだこ浦西駅といいまして、平成三十一年に開業の予定となっております。

 これに合わせて、浦添市では駅周辺の地域の開発計画というのが進んでおりまして、平成三十一年春には町開きをしようということで、先日も土地区画整理事業組合の設立総会も開催されました。

 この一帯は、てだこ浦西駅周辺スマートシティ開発プロジェクトという名称で今準備を進めておりまして、スマートシティー、環境配慮型の都市をつくろうということでありまして、これからの開発のモデルとなる地域をつくろうとしております。

 特に、分散型エネルギーというものを導入いたしまして、この地区への事業者さんの参入促進、雇用促進をしていきまして、昼間人口で最大一万五千名、雇用五千名の増加を見込んでおります。

 太陽光、風力といった再生可能エネルギーを活用する、クリーンエネルギーを活用したガスのコージェネレーション、電力や温水、冷水をエネルギーに変えて商業施設などに送配するシステムを導入していこうということであるとか、HEMS、BEMSのような形でのエネルギーの活用も考えていきたいというふうに考えているところであります。

 この分散型エネルギーを亜熱帯の沖縄でやるというところに非常に大きな意義がございます。この分散型エネルギーシステムというのは、これまで、国内では冷温のところ、寒いところで行われているんですね。コジェネを分散型エネルギーシステムと一緒にしてインフラパッケージにすると、実は東南アジアの諸国に売り出していくことが、システム輸出が十分にできるものでありますし、アジアの発展や、そういうものを日本が取り込んでいくという意味でも大きな意義がございます。

 インフラパッケージで輸出をしていこうということになると、今度は相手の国々から、では実証的にそれを見せてくれというふうに言われるわけでありまして、そのときに、気候、環境がほぼ同じ亜熱帯の沖縄でしっかりとこれを進めているということを見せていくことは、国益にも大きくかなうというものでございまして、ぜひとも政府の後押しをお願いしたいというふうに考えております。

 モノレールの延伸、都市開発ということにとどまらず、沖縄振興の中核として、てだこ浦西駅の開発、これは、実は以前にも浦添市の松本市長らとともに経済産業省にお邪魔をいたしましてお願いをさせていただいているところでございます。

 現在、総務省の予算事業を活用して検討を進めておりますけれども、分散型エネルギーシステムの構築というものは地域活性化の観点からも重要でありまして、関係省庁連携しての取り組みが必要だと思っております。経済産業省の取り組みの方針を伺わせてください。

吉野政府参考人 お答えいたします。

 ただいま委員の方から御紹介がありましたような再生可能エネルギーそれからコージェネレーションなどの分散型電源、こうしたものは、エネルギー基本計画におきましても、エネルギーの効率的な利用、それからエネルギーシステムの強靱化、さらにはエネルギーの地産地消による地域の活性化に寄与するということで、非常に重要なものであるというふうに認識をしております。

 このため、経産省としましても、各種予算事業などで、再生可能エネルギー源それからコージェネレーション等の導入、さらに、それらを組み合わせました分散型エネルギーシステムの構築を支援してまいりました。こうした取り組みをさらに進めるために、来年度の予算案におきましても必要な支援措置を盛り込ませていただいているところでございます。

 また、こうした取り組みに関しましては、関係省庁との取り組みも大事だというふうに思っておりまして、総務省さん、環境省さんそれから林野庁さんとともにタスクフォースを立ち上げておりまして、こうした地域の取り組みを、省庁の垣根を越えてしっかりと御支援してまいりたいと思っております。

 それから、御指摘のございました、こうしたスマートなシステムを、海外に打って出ていく、これに関しましても、現在、私どもはエネルギー革新戦略というものを取りまとめておりますけれども、この中におきましても、国内でしっかりそういう事業を進め、またそれを、海外に打って出ていくんだというところも掲げて、今後取り組みを進めてまいりたいと思っております。

 以上でございます。

宮崎(政)分科員 ありがとうございました。

 このエネルギーシステムは、経済産業省星野政務官のもとでも御相談を受けていただいているものでございます。さまざまな活用の可能性のあるものでありますので、どうか政府一体となっての御支援をお願いしたいと思っております。

 きょうは地元のことをたくさん聞かせていただきました。心から感謝を申し上げまして、質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

平沢主査 これにて宮崎政久君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

平沢主査 次に、内閣所管について審査を進めます。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。井坂信彦君。

井坂分科員 大臣、きょうは本当に一日お疲れさまです。ありがとうございます。

 井坂信彦です。

 本日は、公務員制度改革、とりわけ情報公開の面についてお伺いをしたいというふうに思います。

 ちょうど二週間前、二月十日の予算委員会、政治と金の集中審議で、私、甘利前大臣が国交省にどのような口ききをしたのか、その接触記録が保管されていない、記録されていないということで、では、安倍政権発足当時の「政・官の在り方」、閣僚懇談会の申し合わせにこういうルールがあるじゃないかと。個別の行政執行に関する要請、働きかけであって、政府の方針と著しく異なり、公正中立が確保されないおそれがあり、対応が極めて困難なものは大臣に報告する、そして、それを適宜記録する、こういうルールに基づいて記録された文書は何件あるんですかと尋ねたところ、安倍政権三年間で全省庁ゼロ件ということがわかったわけであります。

 公務員改革基本法の五条三項にこう書いてあります。職員が国会議員と接触した記録の作成、保存、管理、公開のために必要な措置を講ずる、個別事業の決定や執行に係るものは、特にその徹底に留意する。公務員改革基本法にこう書いてある。

 それを受けて、直後の平成二十一年の閣僚懇談会申し合わせでは、公務員改革基本法五条三項に基づき、官僚が政治家と接触した場合の記録作成、保存、管理、公開について、別に定めるところにより実施する、平成二十一年の段階ではこう書かれていた。当時、二十一年版では附則に、さっき申し上げた平成二十四年版の「政・官の在り方」のルールは附則に書かれていて、本則には、別に定めると書いてあった。ところが、平成二十四年版になると、結局、平成二十一年版に附則で書いてあったものをそのまま平成二十四年版の本則に載せただけで、何らほかに定められることがなかったわけであります。

 ここで大臣にお伺いをいたしますが、さすがにこれでは、要は、平成二十一年から平成二十四年のこの閣僚懇談会申し合わせにちょろっと書いてあるだけでは、公務員改革基本法五条三項に従ってルールをつくったということにはならないのではないでしょうか。お伺いいたします。

河野国務大臣 国家公務員制度改革基本法五条三項でございますが、これは、平成二十年だったかと思いますけれども、議員修正が自公民で行われております。提案者の一人だった民主党の吉良代議士がその提案者として答弁に立っているわけでございますが、この五条三項の規定の趣旨を問われたときに、大臣の意に反した官の行動、また口ききと言われるような政の官に対する圧力、これを排する、そのための情報公開の徹底というようなものだという答弁をされております。質問をしていたのが民主党の西村智奈美代議士でございますが、全部記録を行うことは事務が煩雑化するのではないかという指摘がありますという問いに、吉良さんはさらに答えられて、事務をいたずらに膨大化させて本来の趣旨を損ねるということは避けなければいけないというふうに思っておりますという答弁がございます。

 この閣僚懇談会の申し合わせを見ると、「個別の行政執行に関する要請、働きかけであって、政府の方針と著しく異なる等のため、施策の推進における公正中立性が確保されないおそれがあり、対応が極めて困難なものについては、大臣等に報告するものとする。」というふうに申し合わせをしておりますので、この国会審議に基づいた、趣旨に基づいた申し合わせがされているというふうに私は理解をしております。

井坂分科員 この話をしますと必ず出てくるのが、余り記録文書がふえると事務が煩雑になる、膨大になる、こういう話であります。

 私は、本当にそうかなと思っておりまして、私自身も、役所の方と会うといったって、一日に百人も会って百も頼み事をするわけではありませんし、議論するわけではありませんし、役所の方は物すごい人数がいる中で、一人の職員の方が仮に全ての政治家との接触を全部記録したとしても、件数はいかほどになるんだろうかというふうにも思うわけであります。

 私は、ここは水かけ論になると思いますから、本当に事務がそんな膨大になるのかどうか、これは概算でもいいので、大体これぐらいを記録し出すとこれぐらいの膨大な量になります、一人の公務員がこれだけ日々記録だけに手間をとられますみたいな概算を出していただかないと、何か、膨大になると言われても、私は膨大にならないと思いますから、せめて概数を出していただけないですか。

河野国務大臣 私は、その必要はないと思っていまして、これだけの国会議員がいるわけでございます、与党も野党も役所に対して問い合わせを多々するということがありますから、全部記録したらそれは明らかに煩雑になるわけです。それがどれぐらいになるかということを記録をとるのもさらに屋上屋を重ねることになって、一体全体何のためにやるんだ。管理のための管理というのは行政改革担当大臣として今一生懸命やめようとしているところでございますので、これは、私は、申し合わせのとおり、公正中立性を損なうようなものがあればきちんと記録をして大臣に報告をする、このルールのとおりにやらせていただきたいと思っております。

井坂分科員 今、極端な例のやりとりになりましたけれども、全件ということでなくても、要は、現状のルールは、何でルールがあるのに記録がゼロ件かといえば、条件が厳し過ぎるからだというふうに思います。四条件全部満たすような働きかけは、私はそれでも本当にないのかなというふうに思いますが、ないということで、どの省庁もこの間ずっとゼロ件で来ている。私は、これはルールが全く機能していない、死文化しているというふうに思います。

 そこの枠を、条件をもう少し緩めて広げたらこれぐらいの事務量が見込まれる、その見込みぐらいは出して、範囲を選択しなければ、これはルールを決めるときに当たり前のやることじゃないかと思います。別に全件を、件数を真面目に数えろとかそういう話じゃなくて、概数はどれぐらいあるのか、ここの範囲まで記録したら大体これぐらいの件数になりそうだという話がなければ、そもそも膨大になると言われたって、本当にそうなんですかと言われたときに、多分議論ができないというふうに思います。どうですか。

河野国務大臣 これは、数が多いか少ないかという問題ではなくて、公正中立な行政ができるかどうか、あるいは、それに反するような口ききがあったらきちっと記録をしろというのが趣旨でございますから、別に、数が多いからやらない、数が少ないからどうということではなくて、きちんと公平中立な行政を担保するためのものでございますので、私は、特にそうした調査をする必要性を感じておりません。

井坂分科員 思った以上に後ろ向きなのでびっくりしておりますが。

 例えば、今回の甘利前大臣の事件も、回数が、全部で少なくとも十二回の接触があって、最初のうちは、本当に単なる問い合わせのようなこともあるんですよ。でも、やはり、重ねていくうちに、どうも補償交渉の中身、機微に触れるようなやりとりになってくる。こういうことは私はよくあることだというふうに思います。

 そういったときに、最初のころの、全然関係ないやと思って保管をしていなかった記録が後々大事になってくる、あるいは、まさかの事件、疑惑が起こったときに、やはりどういう接触があったのかということを掘り返して検証しなければいけないことが出てくるということが実際あるので、私は、立法事実はあると思います。

 実際接触があったときに、その場で、こんな三条件、四条件に当てはまるような極悪なやりとりは少ないと思いますよ。だからゼロ件なんだということだと思いますけれども、そんな、その場で、明らかに公正中立を害して、政府の方針に著しく反してというような、しかも対応が極めて困難なもの、こんな、その場でこれは記録しなきゃいけないなんというものよりも範囲を広げて記録をしなければ、この制度自体は全く意味をなさないというふうに私は思います。

 重ねてお伺いをしたいんですけれども、そうはいいながら、平成二十四年版の「政・官の在り方」、閣僚懇申し合わせの2の(2)のところをごらんいただきたいというふうに思うんです。

 (1)は、先ほどの非常に厳しいルール、大臣に報告しなさいと書いてある。(2)のところには、公務員改革基本法及び公文書管理法に基づき、官僚と政治家が接触した場合における記録の作成、保存、管理、公開について、大臣の指揮監督のもとに適切に対処すると。一方で、ちゃんと記録の保存と公開について適切に対処すると、ぼんやりとは書いてあるわけであります。

 この部分は、各省庁は適切にやっているんでしょうか。

河野国務大臣 行われているものと信じております。

井坂分科員 何か宗教みたいな話になってきましたけれども、これはやはり、私はチェックが要ると思いますよ。

 申し合わせにここまではっきり書いてあって、しかも、ルール一は厳しい、要は、本当に極悪な働きかけがあったときのルール。ルール二は、まさにさっきの公務員改革基本法、そんな厳しい場合だけじゃなくて、五条三項に基づいてちゃんと保存、公開を大臣のもとに適切に対処しましょうとやってあるんです。

 ところが、この間、いろいろな政治家と官僚の接触の記録がありますよね、出してくださいと言うと、ありません、あるいは個人メモだと思って、公文書として、行政文書として取り扱っていません、こういうことが繰り返されてきているから、私はきょうこの議論をさせていただいているんです。

 そんな中で、きょうまた、これはもう本当に偶然なんですけれども、毎日新聞の一面にこの話で記事が載りました。「内閣人事局に「記録」存在」と、一面のトップ記事であります。

 政官接触の記録を、内閣官房人事局も、毎日新聞の情報公開請求に、つくっていないと回答していた。ところが、同局が職員の作成した国会議員との接触記録を保存していたことがわかった。つくっていないと回答したのに保存していたことがわかった。何でやと突き詰めると、任意でつくったんだと説明。法律に基づく政官接触記録ではないとして開示しなかったと見られる。こういうことが報じられているわけであります。

 まず、これはお伺いしたいと思いますが、記事になったこの文書というのは、公文書、行政文書なのか、それとも最近はやりの個人メモという扱いなのか、どちらになったんでしょうか。

河野国務大臣 この毎日新聞の、存在がわかったものというのは行政文書なんだというふうに思っております。

井坂分科員 行政文書としてちゃんと政治家との接触は、一方で保存されているものもあるんだということであります。

 であれば、大臣にお伺いしたいんですけれども、既に行政文書としてちゃんとつくって、しかも、行政文書ですから、公文書管理法に基づいて適正に保管されているはずですから、これをまさに公務員改革基本法五条三項の求める政官接触記録のルールとしてきちんと定めるべきではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。

河野国務大臣 五条三項は、先ほど申し上げましたとおり、議員修正が行われて、そのときに、当時の提案者の答弁にもありますように、この趣旨は、先ほど申し上げましたような、公正中立を欠くような、アクションを求めるような口ききを記録するということになっておりますので、ここで言われている、毎日新聞が言っているこの文書は、五条三項に基づいて作成された文書ではありません。これは、行政文書ではありますが、五条三項に基づいてつくられた文書ではないという整理で特に問題がないと私は思っております。

井坂分科員 だから、そういう整理で、別に五条三項に基づいた文書を出してくださいと請求されても出さなかったけれども、公文書としてはきちんとメモをして、メモというか、議事録をとって保管していたから、あるのはありました、こういうことですね。そこまではいいんです。

 あるんですから、それをちゃんと政官接触の記録として、五条三項に基づいて別途管理をすべきではないですかということをお聞きしています。

河野国務大臣 行政文書ではありますが、五条三項に基づいてつくられた文書ではありませんので、五条三項に基づいた文書を出せと言われれば、それは該当しないわけでございます。

 しかし、行政文書でありますから、こういう文書を開示してくださいという開示請求があれば恐らく出すことになるんだろうと思いますので、そこは私は特に、五条三項の文書とそれ以外の行政文書と、開示請求があったときに的確にそれが出されればよろしいんではないかというふうに思います。

井坂分科員 これは細かい話なので参考人の方でも結構ですが、きょうの毎日の朝刊で「「記録」存在」と言われてしまったような、こういう議事録、政治家と当局との接触の記録、議事録というのはほかにも多数あるんでしょうか。

三輪政府参考人 お答え申し上げます。

 議員と官の接触と申しましても、非常に態様がさまざまでございます。御指摘の文書のように記録をとっているものもあろうかと思いますし、あるいはそうでないものもあろうかというふうに思います。

 私どもですぐ、量がどれぐらいだということは把握いたしておりませんので、きちんとしたお答えは申しかねますけれども、そういった意味では、いろいろな態様がありますので、それをきちんとカウントし、どれぐらいだというところには至っていないというのが現状でございます。

井坂分科員 重ねて、これも参考人で結構ですのでお伺いしますが、今回、議員と役所との文書を私も当局から取り寄せましたけれども、議員名がまず真っ先に黒塗りになっております。これは、例えば議員名を黒塗りにするというのは、どういうルールに基づいて議員の名前の部分を黒塗りにして出しておられるんでしょうか。

三輪政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘の文書につきましては、国会の委員会で、政官接触の記録についてのフォーマット、書式というものがあればそれを出してほしい、こういう御要求に基づきまして、後日、理事会で、一般的な接触の記録の例としてお出しをしたという経緯がございます。

 したがいまして、この提出する文書の中に、個別の議員さんのお名前あるいは説明者側の当事者が誰であるかということは問題ではなく、記録している場合の例をお示しするということが目的でございました。したがって、その文書につきましては、具体的な記述の内容あるいはお名前というよりは、そのイメージを御説明するのが目的であった、このように理解をいたしております。

井坂分科員 そうすると、この文書を出したときは、書式、フォーマット、どういう枠組みで文書を記録しているんですかという枠が大事だったので、枠は見えるようにしたけれども、中身は特に必要ないだろうということで黒塗りにした、こういう理解でよろしいでしょうか。

三輪政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の資料につきましては、そのような理解で提出をしたというふうに理解をいたしております。

井坂分科員 あと、ほかにもお伺いをしたいことがあります。

 内閣法制局長官が、安保法制のときの内部のやりとりの文書がないんだ、行政文書、公文書としてはないんだというようなことで、この間、問題になっております。

 先ほどもちらっと申し上げましたけれども、本来、公文書あるいは行政文書として、私の感覚からすれば当然保管すべきだと思うものが、時に、これは個人的なメモだから役所の公の文書じゃないんだ、行政文書じゃないんだということで、だから保管しなかったんですといって我々の目の届かないところに追いやられてしまう、こういうことが間々あるように思います。

 そこで、どこから先が行政文書で、どこまでは個人メモなのかという議論をさせていただきたいと思います。

 行政文書については、職員さんが仕事上で書いた、あるいは手に入れた文書、それを組織的に用いている、役所で保管、保持をしている、この三点が行政文書になる三要件だというふうに伺っております。

 職員さんが書いたとか手に入れた、これは明快だというふうに思いますし、役所が現時点で保管している、持っている、これも明快だと思います。二番目の、組織的に用いたという条件がいつも幅広く解釈をされて、いや、これは組織的に使ったんじゃない、個人的なメモですと。そして、個人メモという名のもとに、行政文書であるべきものが行政文書じゃないという言いわけが通ってきてしまっているというふうに思います。

 そこでお伺いいたしますが、組織的に用いるといった場合のこの組織的に用いるの定義は、これは二人以上の職員さんがこの文書を見れば組織的に用いたとみなすのかどうか、お伺いいたします。

河野国務大臣 組織的に用いるかどうかというのは、例えば、職員が個人の便宜のためにつくったのかどうか、あるいは、ほかの職員もその職務上利用しているかどうか、あるいは、専ら作成をした職員が個人の判断で保存または廃棄ができるようなものかということを総合的に判断することになろうかと思いますので、恐らく、そこはこうしたことを踏まえてケース・バイ・ケースで判断をされていくのではないかと思います。

井坂分科員 ちょっと予想と違う答弁だなと思いました。

 この問いを、きのう、公文書管理課の方にもしました。この間、ほかのいろいろな部署の方にもしているんですけれども、ルールは曖昧な割に、皆さん口をそろえておっしゃるのは、複数の人がこの文書を見たり使えば、これはもう組織的でしょうという割と明快な線引きが通説としては霞が関に広まっているなという感触を受けておりましたが、目的が個人用だったとか、そんないろいろな要素がここには含まれてくるんでしょうか。もう一度、お願いいたします。

河野国務大臣 複数の職員がしっかりはっきり職務に使ったというなら、そうかもしれません。あるいは、隣の職員がちょっと見たというのはまた別かもしれませんから、そこはいろいろあるんだと思いますが、まあ、常識的にその辺は判断をしていくことになるんだろうというふうに思います。

井坂分科員 確かに、今おっしゃったような、職務に使った、これは大事だと思います。漫画を回し読みしたら、それは職務に使っていないですから行政文書じゃないと思います。職務の文書、しかも、別に見せるつもりじゃなかった完全な個人メモなのに隣の人がたまたまちら見をした、これも、複数が使ったあるいは複数が使うためにつくった文書とは言えないのかなというふうに思います。

 もう少し詳しくお伺いをいたします。

 例えば、今一番懸念になっている議員とのやりとりを、ある職員さん、部下の職員さんが必死にメモをしてきて上司に報告するときに、きょう、この議員と話してきてこんなやりとりでした、これを上司に、この議事録を見せながら報告をしたら、これはもう完全に組織的と判断して差し支えないでしょうか。

三輪政府参考人 お答え申し上げます。

 一般的な御質問でございますので、本当にケース・バイ・ケースになろうかと思いますけれども、その態様が組織として共有しているというふうにみなせれば、それは行政文書になるというふうに考えるべきではないかと思っております。

井坂分科員 何か、これまでせっかく具体的に議論をしてきたのに、今また物すごくぼやっと一般化をされましたが、もう一度重ねてお伺いします。

 組織としてと言ったらまた非常に曖昧になりますが、複数の職員がその文書を一瞬でも仕事に使ったら、それは組織的に用いたと判断して間違いないでしょうか。どの職員さんも大体そういうふうに答えられますが、どうですか。

三輪政府参考人 お答え申し上げます。

 一瞬見たとかいうような御指摘がございました。

 私どもも、いろいろな態様を具体的に想定しているわけではございませんけれども、あくまでも、組織として共有したと言える程度のものであれば、これは公文書の定義に当てはまるんだろうというふうに思います。

 以上でございます。

井坂分科員 せっかく大臣が具体的にいろいろわかりやすく答えてくださったのに、最後は法文にまで戻られてしまうと、困ったなというふうに思います。

 大臣にお伺いをします。

 やはり現状、組織的に用いた行政文書なのか、それとも、あくまで個人的なメモなのかという線引きが、今答弁があったように、非常に曖昧です。ケース・バイ・ケースといえば聞こえはいいですが、これは性善説ならそれでいいんですが、性悪説に立てば、ケース・バイ・ケースをいいことに、これは個人メモだったことにしようということが普通にできてしまうルールだというふうに思います。

 そこで、大臣にこれは御提案申し上げるわけですが、やはり行政文書と個人メモの線引きを法律上はっきりさせる必要がある。例えば、今申し上げた複数の職員が職務上閲覧をしたものとか、こういうふうに明確化をし、さらに、この間あったように、これは明らかに行政文書だろうと我々が思うようなものを個人メモと言うような、ある種脱法的な行為に関しては、現状、公文書管理法は罰則がないということでありますが、こういう脱法的な行為に関しては罰則を設けるべきだというふうに思います。大臣の政治家としてのお考えをお伺いしたいと思います。

河野国務大臣 なかなか、線引きが曖昧なものに罰則ということになりますと……(井坂分科員「いや、明確化をして」と呼ぶ)明確化をしたときに、その定義は割と今はっきりしているんだと思うんですね。それをどう判断するかというところが、やはりケース・バイ・ケースにならざるを得ないところというのがあるんだろうと思います。

 ですから、これは、行政のトップとしての大臣がきちんと判断をしていかなければいけない部分というのがやはり出てくるのかな。そこは大臣が、いやいや、これは行政文書ではないかと言って、きちんとそうした公文書が保存、管理されていくというところがやはり大事なんだろうと思います。

 定義はしっかりしているわけですけれども、では、それは一瞬見たのか組織的に使ったのか、ようわからぬところがあったりする。そういうところはきちんと誰かが判断をしなきゃいかぬわけですから、それは、現場がそう言って逃れようとしているなら、大臣が、いやいや、それは行政文書だと言ってきちんと判断をするというところは、行政のトップとしてしっかりやらなければいけないことだと思っております。

井坂分科員 余りイメージが湧かないですけれども、そんな個別の文書がメモか行政文書かを大臣が判断するというのは、余りぴんとこないというふうに思います。

 もう一問やりたいものがあるので、よろしいですか。

 似たような話で、実は天下り、きょうは天下りの議論もしようと思ったんですけれども、一点だけ。

 平成十九年の公務員法改正で、いわゆる天下り規制ルールが追加をされました。国家公務員法の百六条四項で、公務員のOBの職員さんは、退職から二年間は、もといた役所の部署への働きかけ、口ききが禁止、そのような働きかけを受けた現役職員は、再就職監視委員会に届け出なければいけない、こういう規制と届け出のルールが追加をされました。

 しかし、これも、昨日、再就職監視委員会に確認をしたところ、これまでの届け出はゼロ件だということであります。まさに先ほどの政官接触ゼロ件と同じような、せっかくルールをつくったのに、結局ゼロ件。

 これも大臣にお伺いしますが、これはやはり制度が機能していない。これも同じようなルールで、明らかに悪い接触だけを報告するとなっているんですよ。明らかに悪い接触だけを報告する、それは、悪い接触は報告されていいのかもしれないですけれども、グレーゾーンとか、後々、実はあれは悪かったんじゃないかとか、実際もう今あるわけでありますから、こういうものをやはり多少は幅広く、全件とは言わないですよ、多少幅広くもともと記録をしておかないと、このグレーゾーンが白だったのか黒だったのかという判断すらできない。要は、届け出がないものは白だと思いなさいと言われたって、それこそ宗教みたいな話になると思います。この部分も記録の範囲を広げるべきだと思います。

 最後に大臣の御所見を伺って、終わりにいたします。

河野国務大臣 これは、はっきり、届け出をしないと懲戒処分の対象になるわけですから。届け出をしなかったら白ではなくて、届け出をしていないのが後でわかれば懲戒の対象になりますので、そうした働きかけがあれば、疑わしきは懲戒処分にならないようにきちんと届け出をするという性質のものなんだろうというふうに思っております。

 ですから、それぞれの公務員の皆さんがしっかりここは運用をされているのではないかというふうに、おまえは性善説過ぎると言われるかもしれませんが、そういうことで、これは、もし何かほかであのときに働きかけがあったということがわかって、届け出をしていなければ、しなかった人が懲戒処分の対象になりますので、恐らくそこは、グレーゾーンはきちんと届け出をすることになるのではないかなというふうに思っておるんですが。

井坂分科員 あったかなかったかがわからないから公開のルールをつくりましょうということでありますから、やはりここは、私は制度化が要るというふうに思います。

 でも、きょうは本当にお忙しい中、大臣、どうもありがとうございました。

 以上です。

平沢主査 これにて井坂信彦君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

平沢主査 次に、内閣府所管について審査を進めます。

 内閣府本府について質疑の申し出がありますので、これを許します。藤野保史君。

藤野分科員 日本共産党の藤野保史です。

 公文書管理法が施行されまして、間もなく五年。私は、先日、十七日に国立公文書館を視察させていただきました。大変重要なお仕事をされているなと実感をいたしました。

 また、最近は、先ほど来お話があるように、適切な公文書管理というのは大事だなと思う出来事も相次いでいる。今もお話がありましたけれども、集団的自衛権の行使容認、憲法解釈の変更というのは大変重要な問題でありますし、この法律にとっては土台を揺るがしかねない特定秘密保護法が、二〇一四年十二月からは施行されている。

 私たちは秘密保護法は廃止すべきだと思うんですけれども、秘密保護法が政府に都合よく運用されないためにも、大臣が所管されている公文書管理法というものが大変重要な意味を持っていると私は認識しております。

 そこで、改善を求められる課題というのは多々あると思うんですが、きょうは、私は、立法府が持っている公文書について、絞ってお聞きをしたいと思っております。

 その大前提として、この公文書管理法第一条の立法趣旨につきまして河野大臣にお聞きしたいんです。同法は、二〇〇九年の国会審議の際、衆議院で修正をされた上で全会一致で成立していると思いますが、一条でどの点が修正され、どうした趣旨が強調されることになったのか、御答弁いただければと思います。簡潔にお願いします。

福井政府参考人 法案の審議過程で、細部にわたっての説明はちょっと差し控えさせていただきますが、国民の主体的な利用とか、あるいは国民主権の理念にのっとるという点が各党から強調されて修正になったと認識しております。

藤野分科員 ちょっと、簡潔にと言った私もあれですけれども、非常に簡潔過ぎてですね。

 配付資料の一枚目で紹介をさせていただいております。

 何がつけ加えられたかといいますと、「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るものであることにかんがみ、」という文言が追加されました。

 これについて、当時の小渕優子大臣はこう言っております。

 どちらかといえば、政府案に示したのは行政の立場から見たこの本法案の意義がより強く表現されていたのではないかと思いますけれども、主権者たる国民の立場に立って、公文書が国民共有の知的資源であり、国民が主体的に利用し得るものと位置づけた、これによって権利をより明確にしたというふうに当時の大臣は答弁されているんですね。

 河野大臣、ですから、やはり民主主義の根幹というのが位置づけられている。やはり民主主義というのは、国民が正確な情報に自由にアクセスして、それに基づいて正確に判断を行って、主体的に主権を行使することで深まっていくと私は思うんです。そういう意味で、非常に重要な立法趣旨がある。

 この立場からすれば、国立公文書館が管理する対象が行政府の文書だけでいいということにはならないと思うんです。やはり、立法府、司法府を含め多くの民主主義にかかわる文献を国民が主体的に利用できるようにする必要があると思っております。

 配付資料の二では、内閣府に設置された国立公文書館の機能・施設の在り方等に関する調査検討会議の提言、二〇一五年三月のものも指摘をしております。ここでも、「特に、国会審議等の立法過程は、国の在り方に関する意思決定の過程の重要な一部であることから、立法府の文書を国民が閲覧・利用できるようにすることは大変重要である。したがって、三権の公文書を一体的に見ることができるようにする意義は大きい」と指摘をされております。

 大臣にお聞きしますが、この認識は大臣も一緒ということでよろしいですか。

河野国務大臣 公文書並びに公文書館に興味を持っていただきまして、本当に感謝申し上げたいと思います。

 おっしゃったように、主権者たる国民がさまざまな判断を民主主義の中でやっていくためには、いろいろな文書を参照できるようにするというのが極めて重要だと思っております。ここにありますように、「三権の公文書を一体的に見ることができる」ということは、主権者たる国民がその権利を行使するのには非常に大切なことでございます。

 もちろん、一体的でなければならないとまでは言えませんが、裁判所から司法文書も随分いただいておりますので、できれば、立法府にもぜひ公文書館に立法に関する文書をいただいて、一体的に管理できるようにしていきたいなというふうに思っております。

藤野分科員 今御答弁いただいたように、やはり極めて重要な意義があると私も思っております。

 しかし、やはりなかなか、三権分立という観点もありまして、配付資料の三で御紹介しているんですが、二〇〇九年の立法時には、一体的に管理するのをどうやるかという意味で、三者が定期的に集まって、移管するルールを協議したり、情報交換、検討を行う場を設定して、しかも、これを法的に位置づけたらどうだという提言がされたわけです。これを受けて、政府で検討したけれども、やはり三権分立の観点から、閣法ですから、閣法で立法や司法に義務づけるようなものはなかなかできなかった、こういう経過であったというふうに、副大臣の答弁を引用しております。

 ですから、三権分立の観点からなかなか義務づけはできないけれども、今お話がありましたけれども、この十四条では、協議によって司法府や立法府の文書を移管することができる、こういう仕組みになっている。一つの到達点だというふうに私も認識をしております。しかし、この到達が生かされているのか。この十四条に基づく協議が行われているのか。

 今、大臣に答弁いただいたんですけれども、簡潔に、司法と立法、それぞれどういう状況か、事務方で結構ですので、現状を御答弁いただければと思います。

福井政府参考人 お答えさせていただきます。

 まず、司法府の方からでございますが、司法府との関係につきましては、平成二十一年の八月五日に、内閣総理大臣と最高裁判所長官の協議による申し合わせを行っております。

 ちょっと補足させていただきます。

 公文書管理法自体の施行は平成二十三年でございますけれども、公文書管理法の第十四条は、もともと、国立公文書館法の該当条文を持ってきたものでございます。このもともとの法律の方の規定に基づきまして、最高裁判所長官との間で協議が調いましたので、平成二十一年度から、歴史資料として重要な判決書等の裁判文書、それから司法行政文書の移管が進められてきておるという状態でございます。

 平成二十六年度までで締めますと、裁判文書が八千五百五十冊、司法行政文書四百三十二冊が移管されているという統計になっております。

 それから、立法府の方でございます。

 まず、現在のところ、公文書管理法第十四条に基づく協議が行われていない。したがいまして、国立公文書館への移管の実績がないという状況でございます。

 私ども内閣府の方では、先ほど先生も御引用いただきました公文書館の機能・施設の在り方等に関する調査検討会議の方で、できれば一体的に見られた方がいいんじゃないかということで御意見を出させていただいて、これは、昨年、衆議院議運委員会の方におつくりいただきました新たな公文書館に関します小委員会の方でも御報告をさせていただいているところで、小委員会の方で一応検討事項になっていると認識をしております。

藤野分科員 司法府との間では、協議も行われて移管も進んでいる。ただ、立法府との関係では、協議すら行われていない。もちろん立法府の問題も認識をしておりますけれども、当然、移管という点から見れば、まだゼロという状況であります。

 そのもとで何が起きているのかというのをちょっとお聞きしたいんです。

 立法府が保有する重要な公文書、これが国立国会図書館あるいは憲政記念館などの中で塩漬け状態になっている。きょう取り上げたいのは、この国会事故調の報告書の資料であります。

 国会図書館にお聞きしたいんですが、この国会事故調が調べた資料は、どのような状態で保存、管理されていますでしょうか。

大滝国立国会図書館長 お答えいたします。

 国立国会図書館が保管いたしますいわゆる国会事故調の資料につきましては、両院議院運営委員会合同協議会メンバーの合意及び両院議長の了解のもと、平成二十四年十月のいわゆる国会事故調の根拠法の失効を受けまして、国立国会図書館に引き継がれたものではございます。

 引き継ぎを受けた時点では、段ボール箱七十七箱に格納された状況でございましたが、文書を良好な状態で保存するために、現在では、国立国会図書館内の常に施錠された事務室の一定区画のキャビネットに、段ボール箱から出しまして収納し、鍵をかけて厳重に保管しているところでございます。

藤野分科員 私も、二月十八日に国立国会図書館も視察をさせていただきまして、この管理されているという部屋といいますか、事務室を見せていただきました。キャビネットだけなんですけれども、その外観といいますか、部屋の状態はよくわかったんですね。専用の保管庫じゃないんです。その前の日に行った国立公文書館では、やはり専用の保管室で、いわゆる湿度や火災防護などもしっかりやられていましたけれども、私が見たのは、国会図書館の一室で、率直に言って、あいていたからというような部屋、部屋というかスペースです。部屋でもない。本当に狭いスペースで、配電盤もむき出しになっているような状況ということで、これは火事、火災があったらどうするんだろうと率直に感じたんですね。

 河野大臣は、率直に言って、この図書館の資料の価値を最もよく御存じの方だというふうに思うんですが、この資料、このもとになった資料がこういう状態で保管されているというのは御存じでいらっしゃいますか。

河野国務大臣 資料が保管されているというのは存じております。

藤野分科員 ですから、本来、こういう重要な公文書であれば保存、管理に当たっているような状態では全くないというのが私の印象でありました。まあ、段ボールよりはいいんですけれども。

 かつて大臣は、ブログでいろいろとこの文書についても指摘をされております。今は見られないんですけれども、いろいろな形で見られるので、ちょっと御紹介させていただきたいんです。こうおっしゃっています。

 朝日新聞が吉田調書を探り出し、インターネットに順次掲載している。しかし、国会事故調にかかわった人たちは、それどころではない資料が国会事故調の収集した資料にはあったという。電事連の会議録や安全規制のルールづくりに関する班目氏の発言やさまざま、もろもろだそうだ。電事連は、あれだけのロビー活動や妨害行為をやりながら、任意団体だからと会計一つ公開していない。最近は、東京電力を外して電力自由化に備えた会合を重ねているようだが、福島第一原発事故以前に行われた電事連のさまざまな会議録が国会事故調によって収集され、国会図書館に眠っているそうだ。

 こういうふうに紹介をされております。

 また、大臣も世話人の一人をされていらっしゃって、私も入らせていただいているんですが、国会議員超党派、原発ゼロの会。このゼロの会は、二〇一三年の二月二十七日に衆参両議運委員長に申し入れを行っております。要するに、扱いができるように、国会の話が先ほどもありましたけれども、やはり国会がしっかりやれ、こういう申し入れで、これもそのとおりだと思うんです。

 中でも、私が注目しましたのはこの一文であります。「当該資料は福島第一原発事故のさらなる検証に資するばかりでなく、衆参両院の全会一致により憲政史上初めて国会に設置された独立調査委員会が収集した貴重な国民財産という性格も有しております。」こういう指摘なんですね。貴重な国民財産と。

 私は大臣にお聞きしたいんですが、これは通告をさせていただいていないんですけれども、当該資料は衆参両院の全会一致により憲政史上初めて国会に設置された独立調査委員会が収集した貴重な国民財産だ、私もそう思いますが、大臣も今もこの認識でしょうか。

河野国務大臣 おっしゃったとおり、初めて国会で、しかも全会一致で設置された独立した調査委員会でございます。収集した資料は、福島第一原発の事故という人類が余り経験したことのない原子力に関する事故でございますから、これは人類の共有の財産とすべきものであると思いますし、これが今公開されないのは、公開のためのルールがないから公開が行われていないわけでございまして、これは、特に、安全保障上の理由があるとか、何かそういうことがあるわけではございません。

 行政府の人間が立法府にああしろこうしろと言うことは差し控えなければならないとは思いますが、せっかくこれだけの資料を事故調が集めて、ルールを決めれば公開をされるという状況にあって、それがかなり長い間こういう状況にあるというのは、非常に残念ということでございますので、余り行政府の人間が立法府にこれ以上言うのはいかぬとは思いますが、そこはぜひ立法府にも私はお願いをしたいなというふうに思っております。

藤野分科員 本当に私も、人類共有の財産と言って間違いないという大変重要な資料だと思います。

 今、公開のルールというお話をされました。国会のお話も今出ましたけれども、図書館運営小委員会、ここは情報公開法に基づく話ばかりしているんですね、公開公開と。

 私が先ほど来問題にしていますのは、情報公開法とまさに車の両輪である公文書管理法なんです。公開の前提として、文書が未来永劫にわたってしっかり保存、管理されなければならない。それがなければ公開という話もやはり十分なものになっていかないと思うんですね。

 公開というアプローチでは、この小委員会の議論を見ても、もう三すくみ状態といいますか、なかなか進まないというのは大臣も御存じだと思うんです。

 私が言っているのは、前提として、公開以前の管理の問題。公文書管理法があるんだから、公文書管理にこの貴重な資料をのせる。十四条、協議という枠組みも当時の知恵を使ってつくってきているわけですから、この十四条の協議にこの資料をのせて、そういう塩漬けといいますか、まさにああいう状態から、適切な国立公文書館というところに移して、そこでさらに、公開に向けたいろいろな交通整理もあると思います。しかし、今の状態というのは全くそういう状態になっていないというのが私の質問の趣旨でありまして、せっかく大臣が所管しているこの時期にといいますか、格別の、原発問題を初めとするいろいろな識見をお持ちの大臣が、今、公文書管理の担当大臣をされているわけですから、私は、まさに今、突破口を開くべきじゃないかと。

 立法府にあれこれというお話がありましたけれども、私はあれこれ言う必要はないと思うんです。協議を持ちかければいい。この十四条は、立法府からでなければならないとか、あるいは行政府から言い出さなければならないという決まりはないというふうに認識しております。そうであれば、行政府がイニシアチブをこの十四条に基づいて発揮するというのは、私は十分可能だと思うんです。

 その点で、まさに今、協議ゼロという状況ですが、このゼロを脱して、第一号案件としてこの協議を行うにふさわしいのが私はこの国会事故調の資料だと思うし、ふさわしい大臣が河野大臣だと思うんですが、いかがでしょうか。

河野国務大臣 十四条で協議をすることができるわけでございまして、一応申し入れをさせていただいて、今いろいろ検討をいただいているという状況でございます。

 国会事故調の資料だけでなく、例えば、恐らくこれは参議院なんだと思いますが、帝国議会当時の資料もあるわけでございまして、さまざまな価値のあるものが立法府にあるということは、よく知られているわけでございます。

 おっしゃるように、これが少なくともまず適切に保存、管理されるというのは非常に大事でございますし、それが一定のルールで公開をされるというのがその次の段階で大事になってくると思いますので、公文書を担当している大臣として、公文書館の建設については衆議院の土地でやらせていただきたいということで、これは議長にもお話を申し上げなければいけないわけでございますから、それとあわせて、両院が持っている文書についても少しお諮りをしてもいいかなというふうに思っております。

藤野分科員 やはり河野大臣が大臣のときに突破口を開いていただくことが、私は非常に重要じゃないかな。歴史のめぐり合わせのようなものを私も感じておりますので、ぜひこの国会事故調の資料を含めてこじあけていただきたいというふうに思います。

 そして、最後にといいますか、もう少しあるんですが、公文書というのは、国だけでなくて、地方にとりましても非常に重要な意義を持っていますし、ある意味、国民の命とか、あるいは次の世代を育てていくとか、そういう非常に身近な意味でも公文書管理というのは大事だなというふうにこの間感じております。

 私は北陸信越ブロックから選んでいただいているんですが、ちょっと五つの県をそれぞれ、私が経験したことを紹介させていただきたいんです。

 例えば新潟県では、新潟水俣病の皆さんが、まだ、いまだに本当に大変な苦しみの中で暮らしていらっしゃる。いろいろ調べてみますと、当時、一九五二年段階で、熊本県の水産課がいろいろチッソの排水などを調べて報告書というのを作成していた。この報告書は県がつくっているわけですから、行政文書でありますから、これがもし適切に保管、管理、そして公開されていたら、水俣病の被害は食いとめられたかもしれない、そういう専門家の方もいらっしゃるんです。ですから、そういう意味で、まさに命にかかわる大変重要な役割を果たす。

 福井県の「もんじゅ」では、もう御存じのように、九五年にナトリウム漏れの事故を起こしまして、当時、動燃が、事故現場を撮影したビデオを意図的に隠蔽といいますか、カットしたという事件もありました。ビデオとかいうのも、電磁的記録として本法の適用を受けるということになります。

 富山県では、二〇一二年の四月に、富山県立ではありますけれども、イタイイタイ病資料館というのが新設をされまして、私も二回ほど行ったんですけれども、本当に充実した資料、公文書だけでなく、さまざまな展示品で、二度とああいう公害を起こさない、富山県民の強い決意といいますか、思いを感じる。そこに県民が行って同じ思いを育んでいくというのは大変重要だなと感じました。

 石川県にはまだ公文書館はありませんけれども、しかし、県議会には、公文書・古文書の管理体制構築及び利用者の利便性を求める請願などが出されて、これは全会一致で採択をされております。

 そして、配付資料でお配りしているんですが、四番目の資料になるんですけれども、これは長野県の松本市文書館から御提供いただきました。感謝をしております。

 これは長野県の今井村というところで保管されていた「庶務関係書類綴」というもので、まさに一九四五年、昭和二十年の文書であります。マル秘とか至急、こういうものが並んでおります。

 これは何かといいますと、読みにくいので御紹介させていただきますと、要は、国力が推定できるような統計、商業統計、さまざまな統計印刷物は焼却しろ、そういう命令書なんですね。右側の方は、戦争関連のポスター類、いろいろなポスター、これも燃やせと。さらには、この通達そのものも燃やせというふうに書いている資料であります。

 私、先日、国立公文書館を視察させていただいた際に、理事の方から、日本は先進国の中でも公文書管理というのはおくれている、その理由の一つとして、太平洋戦争終結時期の混乱で公文書管理体制が途切れてしまったということを挙げていらっしゃいました。まさにそのことを物語る貴重な資料だというふうに思います。

 同時に、長野県というのは、満蒙開拓団、これに全国最多の三万三千人が送られまして、犠牲になった。半数近く帰ってこなかった市町村もあるんです。同県の阿智村というところには満蒙開拓平和記念館という、これは一般社団法人でありますけれども、これが二〇一三年四月に開館しまして、私もたびたび訪れております。

 ここに行きますと、若者たちが自分たちのルーツを知りたいといって多数来館をされて、そこで満蒙開拓の歴史を知って、ばあちゃんの人生を初めて知ったとか、じいちゃんを見る目ががらっと変わったとか、こう言って帰っていくわけですね。本当に、まさに人生が変わるような体験をそこでしていく。

 ですから、やはり公文書というのは、本当に私たちにとって大事な意味を、国でも、そして地方でも果たしているわけで、ことしは五年目の見直しの年でありますけれども、本当に、この見直しによって、質、量ともにこの体制を強くしていく必要があると思っております。

 そこで、最後になるんですが、問題はその体制なんですね、予算と体制。

 内閣府にお聞きしますが、二〇一五年度の公文書管理関連の予算、人員体制、これはどのようになっていますでしょうか。内訳も含めてお願いします。

福井政府参考人 二〇一五年度、本年度の、まず公文書管理関係の予算でございますが、公文書館の予算総額は約二十二億五千万円でございます。それから、内閣府の方に調査費として約六千万円をいただいております。

 それから、体制でございますが、国立公文書館のいわゆる常勤職員、これは役員を含めまして五十一名でございます。それから、内閣府の方に公文書管理課という課がございます。こちらが十九人で、私は審議官でございますが、私を入れて二十名という状況になってございます。

 これらによって、現在の公文書管理を進めているところでございます。

藤野分科員 いずれも海外に比べて一桁から二桁少ない。

 きょうは質問する時間がありませんでしたけれども、例えば、公文書を廃棄するかどうかというところにかかわる部署である内閣府の公文書管理課、各省が廃棄したいといろいろな文書を言ってくるんですが、それをチェックする、こういう役割をされている方は、わずか五名だとお聞きをしました。年間二百三十万件近い公文書、廃棄されるような文書が、わずか五名でチェックされている。これは大変な御苦労だと思います。

 特定秘密保護法との関係でも、やはり向こうが、向こうといいますか、要するに、廃棄する文書に秘密指定が解除されたものを紛れ込ませたりして、いろいろするんじゃないかというのは、国会審議でもたびたび議論になりました。

 こういうことを最終的にチェックする最後のとりでのようなところが五名ということであり、その予算は何と五千六百万円、約六千万円とお聞きをしております。ですので、やはりこれでは本当に公文書管理法がそういう役割を果たせないというふうに思うんです。

 そして、質的にも、これはNHKの「クローズアップ現代」でも紹介されておりましたが、公文書管理の専門家であるアーキビスト、まだ日本でなじみがなくて、アーキビストの日本語訳もまだないとお聞きをしましたけれども、これの育成、重要性をNHKは報じていたんですね。

 紹介いたしますと、フランスでありました。フランスは、公文書管理に日本の約三倍の予算をかけている。公文書管理局長の言葉として、アーキビストはハイレベルな情報の科学者、情報の歴史家なのですと。養成されたアーキビストのうち八百人が各省庁に派遣をされて、第三者の視点で、各省庁で誤った公文書管理がされていないかチェックをする。さっき五名と言いましたが、八百名。全然違うわけですね。

 私が印象深かったのは、彼ら、彼女たちは、各省と交渉するための交渉力がなきゃならないし、そのため、専門家として尊敬される人でなければならないと言っていたんです。そのとおりだなと。

 大臣にお聞きしたいんですが、こういう重要性、量的にも質的にも高めないといけないという重要性に鑑みれば、やはり予算、体制、これは抜本的に拡充すべきじゃないかと思うんですが、最後にこのことをお伺いしたいと思います。

河野国務大臣 公文書が民主主義の一つのインフラであるということを考えると、先ほどからお話に出ております公文書管理課はもとより、公文書館、これは独立行政法人国立公文書館でございますが、こういう公文書に携わる組織の予算、人員というのは極めて重要だと思いますし、今おっしゃられましたアーキビストの養成というのも大事でございます。古い文書を修復する、そういう技術というのも伝えていかなければならないわけでございます、そこは言うまでもないところでございますが。

 他方、私、今、国家公務員制度担当大臣として定員管理を厳しくやらなければいかぬ、行政改革担当大臣として行政改革も進めていかなければいかぬということで、なかなか右手と左手が握手しないでけんかしているという状況でございますが、新しく国立公文書館をつくれという動きでございますし、どこにつくるかという選定を近々やるわけでございます。機能はきちんとしたものを持ったものをつくっていきたいというふうに思っておりますので、そこはしっかり御指導を賜りながらやってまいりたいと思います。

藤野分科員 質問を終わります。ありがとうございました。

平沢主査 これにて藤野保史君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

平沢主査 次に、内閣所管について審査を進めます。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。秋本真利君。

秋本分科員 自民党の秋本真利でございます。

 きょうは、河野大臣に質問できるということで、楽しみにやってまいりました。

 大臣になられる前、党の行革推進本部長として、一緒に仕事をさせていただきました。きょうは時間がないものですから、そこで行った議論も大臣は当然記憶があると思いますので、それも踏まえた中で大臣とやりとりをさせていただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いをいたします。

 最初に、開栄丸についてお伺いをいたします。

 一部メディアで、大臣が持論を少し封印してしまって寂しいというような報道も出ておりますが、私は、内閣に入って、河野太郎大臣だからこそやれることをやるべきだし、今現在、私、生意気ですけれども、外から見ていて大変心強く思っている次第でございます。

 一つの成果として、開栄丸がございます。年間十二億円払いながら、もう七年間ぐらいにわたって全く使用されていないというものについて、大なたを振るって秋の行政レビューで議題に上げまして、十二億をばさっと切って来年度から六億ということで、二年間で事業を終了するというふうに聞いております。

 文科省にお伺いをいたしますが、使用終了までどのくらいのお金がかかる予定なのか、それと、使用終了年次について改めて確認をしたいと思いますので、お答えいただきたいと思います。

    〔主査退席、小田原主査代理着席〕

板倉政府参考人 お答えいたします。

 開栄丸につきましては、行政事業レビューにおきまして、契約の打ち切りや契約内容の見直しも含め、最も合理的な方策に改めるべきと指摘されたところでございます。この御指摘を踏まえまして、原子力機構は、原燃輸送との間で締結した基本協定に基づく使用の終了に係る通知を平成二十八年二月二十四日付の書面にて行ったところでございます。

 この基本協定書にのっとりますと、使用の終了を行うことによって、平成二十九年度をもって使用が終了することになり、基本協定において平成四十三年度までに約百六十九億円と見込まれている原子力機構の負担を、最大でも約三十七億円になるように削減させることが可能となります。

 また、いつ終了できるかということでございますが、これは現在、原子力機構が負担する金額も含め、原子力機構と原燃輸送との間で使用の終了に係る交渉が行われているところでございまして、交渉の経過を注視してまいりたいと考えてございますが、先ほど申しましたように、最大で三十七億円になるように削減させることができるということで、今後二年間、早ければ平成三十年に使用が終了できるというふうに考えているところでございます。

秋本分科員 使用を終了する方向で今進めているということですけれども、来年度の予算、五億九千五百万円計上されておりますけれども、この根拠、内訳を教えてください。

板倉政府参考人 お答えいたします。

 開栄丸に係る平成二十八年度予算案につきましては、使用の終了を行うことを踏まえ、ドック点検の取りやめなどを想定し、係留に必要な最低限の経費のみを計上してございます。

 同船の予算案、約五億九千五百万円の内訳といたしましては、船舶の建造に係る費用を分割して支払う船舶資本費は、平成二十七年度と同規模の約三億四千四百万円、船舶維持費は、使用の終了を前提とした最低限の経費として約二億五千百万円をそれぞれ見込み、予算案に計上しているところでございます。

 いずれにしましても、現在、原子力機構と原燃輸送との間で、平成二十八年度の契約額を含めた使用の終了に関する交渉が行われているところでございまして、交渉の経過を注視してまいりたいと考えてございます。

秋本分科員 使用の終了に向けて交渉しているということで、事前のヒアリングの時点で、大臣、乗組員が十三人程度いて、そこに一人当たり一カ月百二十三万円人件費を払っていたということで莫大な人件費がかかっています。

 これを、私に事前にレクで、一人にしようと思います、八時間の三交代制で一日三人ということで、実質その時間帯にいるのは一人ということにして人員を減らすというふうに言っていますが、私が国土交通省に確認をしたところ、係船届の相談も出ていなければ、原子力の保安規定上の減員ということについても原燃輸送からも何も出てきていないということで、全く相談がないということでございます。

 国土交通省に私は尋ねました、係船届を出さないで一人にするということができますかと。そうすると、それはできませんと。原子力の保安上もどうですか、それもできませんということです。

 であるにもかかわらず、事前のレクの段階で文科省は私に、係船届は出さずに人員を一人にしていくというふうに言っております。私はこの根拠を知りたいと思います。ですから、行革本部の方で、ぜひ契約書をしっかりと見ていただきたい。現在結んでいる契約書で、どういうふうな契約の中身になって終了をしていくことができるのか。それを文科省任せにせず、行革でもしっかりとチェックをしていただく。

 そして、一つ行革にもその中でお伺いしたいのは、終了に向けての契約書を、文科省は五億九千五百万円というものを予算計上しているわけですけれども、その根拠とか契約書というものについて、事務方でも構わないんですが、中身を見ていますか、行革本部は。そのことについて、お伺いをしたいと思います。

 文科省に対しては、どういう根拠で一人にできるのかということと、行革本部については、その根拠たる契約書を見ていますかという二点、お伺いいたします。

河野国務大臣 今、予算の審議をお願いしているところでございますので、これは予算成立後にきちんと契約書類等を確認しながら、フォローアップをしてまいりたいと思っております。

 船の人員については、文科省が来ておりますので、直接お問い合わせをいただきたいと思います。

板倉政府参考人 船の人員についてお答えいたします。

 開栄丸に係る平成二十八年度予算案につきましては、使用の終了を行うことを踏まえまして、船舶検査証の返納を前提としまして、係留に必要な最低限の経費のみを計上するということで予算を計上しているところでございます。

 船員につきましては、船の監視などを行う要員として常時一名体制、三交代制のため計三名体制に見直す方向で必要な予算を計上しております。

 いずれにしましても、現在、原子力機構と原燃輸送との間で、平成二十八年度の契約内容を含めた使用の終了に関する交渉が行われているところでございまして、交渉の中で船員人数についても決まることになると考えてございます。

 文部科学省としましては、秋レビューの指摘に真摯に対応すべく、交渉の経過を注視してまいりたいと考えております。

秋本分科員 ということなので、大臣、ぜひ文科省任せにせず、来年度、予算審議が終わって、通ってからということですが、しっかりと中身を精査していただきたいと思います。

 例えば、先ほど文科省の方から、資本費の三億四千四百万円については変わりません、船舶の維持費の方でコントロールしますという話がございました。

 ここに私は資料を持っていて、これは大臣も当然、行革本部長だったときに見ていると思いますが、この中で、船員の人件費以外にも、管理会社に対する人件費や原燃輸送に対する人件費等も一億円単位で計上されています。この辺をしっかりと、どこをどういうふうに削ってこの金額なんですよというのをしっかりと見ていかなきゃいけないと思うんですね。

 ですから、十二億が六億になったから、半分になったからよかったよね、百八十億円ぐらいかかるものが三十数億円になったからいいよねということではなくて、六億であっても大きな金額ですから、その中身についてしっかりと精査をしていっていただきたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。

 次に、私は党の行革推進本部の委員でもございまして、そちらの党の行革推進本部の方から、JAEAの関係法人のみの競争入札に関する調査報告書というものを提出させていただいて、ちょっと入札の内容がおかしいんじゃないかということを提言させていただきました。

 このことについて、文科大臣と行革大臣に対して提出をしたわけですが、文科省にお伺いします。今の提言書を受けて、現在、文科省の対応についてどういう状況になっているのか、お伺いしたいと思います。

豊田大臣政務官 お答えいたします。

 先生御指摘のPT報告書につきましては、昨年の十二月二十二日に受領いたしましてから、文部科学省におきまして、御指摘されました事項につきましての事実関係の分析を進めてまいりました。

 その結果、報告書における指摘事項は事実であるということを重く受けとめまして、その要因といたしまして、指摘された御契約の多くが施設の維持管理業務に関するものでございまして、例えば、事業の透明性確保のために機構のホームページで契約額を公表しておりまして、こうした情報を応札しようとする者が入手できるといったことに加えまして、毎年または複数年ごとに同じ内容で継続する契約でありましたために高落札率になりやすいといったこと、あるいは、施設の放射線管理業務など、技能、資格、経験等が求められる契約内容が多うございまして、こうした専門性が必要とされる場合や、あるいは、施設の維持管理のために近隣地域に従事者が定住する必要がある場合に、事業者が限定されるなどして、応札者が特定少数の事業者に固定化される傾向があるということも判明いたしました。

 しかしながら、そうした上で、PTの御指摘なども踏まえまして、今後のさらなる契約の透明性そして競争性を確保する観点から、機構におきまして、平成二十八年度の契約に向けて電子入札の完全導入や公告期間の延長、これは十四日から二十日に延ばしますといった契約に関する改革を開始いたしますとともに、平成二十八年度から機構の役職員の再就職制限の強化などにも取り組むこととしたところでございます。

 いずれにいたしましても、今後とも引き続き、先生の御指摘なども踏まえまして真摯に対応してまいりたいと考えております。

秋本分科員 大臣に端的にお伺いしますけれども、文科省から中途の報告というのは受けていますでしょうか。

河野国務大臣 まだ受けておりませんが、文科大臣から、この件についてはしっかりやりますというお話をいただいておりますので、文部科学省の対応を注視してまいりたいと思います。

秋本分科員 私は提出者ですけれども、私も報告は受けておりません。しかし、四月一日からの契約からしっかりと改善をしていただけるものと信じておりますので、豊田政務官にもお願いをいたしますが、四月一日からしっかりと、この提言、杞憂に終わるようにやっていただきたいというふうに思います。

 関係法人のみの入札、もちろん入札した後にそれがわかるわけですが、指摘されたような状況が起こったら、それは不成立にしてもう一回再入札をかけるとか、そのぐらいの意気込みでやってもらいたいなと思っておりますので、お願いをしたい。

 それで、公取にもお伺いをします。

 報告書の内容を河野大臣に出したわけですから見ていると思いますが、一般論として、五年間の入札件数のうち四分の一が落札率一〇〇%で落ちているということも踏まえて、どのような見解をお持ちになっているのか、お伺いをしたいと思います。

山田政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の報告書におきましては、JAEAにおけるいわゆる関係法人のみの応札によります競争入札におきまして、例えば平均落札率、今御指摘にありました点も含めまして、非常に高いなどの状況が指摘されております。こうした落札率の高さというのは、私どもが見ましても高い値であるなというふうには考えられると思っております。

 同じ報告書の中には、ほかにも指摘されている点がございます。

 ただ、いずれにしましても、独占禁止法に違反するかどうかという点につきましては、事業者間で相互に事業活動を拘束するなどの行為があったかという事実関係などに基づいて判断されるものでございますので、個別の取り扱いにつきましてはお答えを差し控えさせていただきたいと思います。

秋本分科員 一般的には高いということですから、提言を出しておりますし、文科省もやりますと言っているわけですから、四月一日以降の入札についても、公取の方でしっかりと目を光らせていただいて、このような事態が来年度以降も続くということがないように。もし続いていたら、公取も怠慢だと私は思いますよ。しっかりとこの辺について目を光らせておいていただきたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げて、先に進みたいというふうに思います。

 次に、JAEAの再処理事業についてお伺いをいたしますが、HAWの所有権についてお伺いをしたい。

 その前に、資料をお配りしておりますけれども、文科省と昨年度からずっとやりとりを続けておりまして、Q、A、Q、Aという形で何度も質疑応答を繰り返してまいりました。

 これを見てもらえばわかるとおり、Qが私が質問したもの、Aが文科省の答弁ですが、最初に、東海の再処理工場で再処理した使用済み燃料から出た廃液については、所有権はどっちにあるの、つまり、電力会社にあるのか、JAEAにあるのか、あるいは文科省にあるのかわかりませんが、誰にあるのというふうに聞いたら、二十七年の三月二十三日付では、資産価値がないため所有権はありませんと。えっ、それはそんなことないよねと。

 改めて、民法等でも、仮に廃棄物であってもその所有権がないということはないんじゃないのというふうに聞いたら、最初、所有権がないと言っていたのに、今度は、秘密保持契約を結んでいるので答えられませんと、木で鼻をくくったようなふざけた回答をしてきているわけでございます。

 そこで、改めて、きょうは政務官にも来ていただいておるのでお伺いをしたいと思いますが、使用済み廃液というのは、当然、発生するまでに、使用済み燃料を再処理して初めてPuやDU、TRUが出てきて、廃液も出てくるわけですよね。ですから、一つずつお伺いをしたいと思いますが、まず大前提として、廃液のもとになっている使用済み核燃料は、これは誰のものですか。

豊田大臣政務官 お答えをいたします。

 先生に対しての事務方の対応につきまして、私も、経緯を踏まえてきょう話を聞いたところでございます。

 そして、先生も本当に大変お詳しい中でございますが、御質問につきましては、事務方としては、高レベルの放射性の廃棄物の責任主体がそれぞれどこにあるのかという御質問だという趣旨に解釈をしたそうでございます。

 使用済み燃料の貯蔵プール、そして、先生がおっしゃったように、途中でいろいろ出た廃液につきましての御質問、そして最後にガラスの固化体になるわけでございますが、事務方の理解といたしましては、高レベルの放射性廃液につきましては、いずれガラス固化体に処理されるというものでありますことから、この時点での所有権の整理というものはなされていないそうでございます。

 そして、最終的に発生した高レベルの放射性廃液、前に先生がおっしゃっている廃液の処理につきましては、各電力会社からの委託を受けて機構が実施するとの役割分担がなされていますという趣旨を御回答したというふうに申しておりました。

 そして、最終的な廃棄物でございますガラス固化体の帰属につきましては、先生御案内かと思いますけれども、ガラス固化処理契約において、機構と各電力会社で協議をし、別途決定するということにされておりまして、具体的に、一般的に、この部分は誰の所有権ですということが決まっているものではないというふうな理解でございます。

 そしてまた、先生の御指摘の情報開示の話でございますが、機構と電力会社が締結をしている契約にかかわる情報開示につきましては、所定の手続によりまして、契約の相手方の承認を得た上で情報開示をするという情報公開のルールに基づきまして、適切に対応をしていく必要があるというふうに考えてございます。

秋本分科員 聞いたことに答えていただいていないんですが、それはよしとしましょう。

 では、ちょっと改めてお伺いしたいんですが、政務官、それ以上は深く聞きませんので、イエスかノーかでお答えいただきたいんですが、今答弁に立つに当たって、今回の契約書、中身を読んだことはございますか。

豊田大臣政務官 機構と電力会社の契約ということでよろしゅうございますか。はい、読んでおります。

秋本分科員 私は今聞いていて、読んでいないんだろうなと思ったので、読んでいないということで事務方に聞こうと思ったんですが、読んでいるのであれば政務官に聞かざるを得ません。

 あの契約書を見ると、今、途中経過の所有権はありませんみたいな話をしていましたが、あるじゃないですか。管理料等は、廃液以外のものについては全部書いてありますよ。電力会社が支払うということで、金額が妥当かどうかは別にして、電力会社のものだから電力会社が払うというふうに書いてあるじゃないですか、契約書に。所有権が曖昧になっていて、どっちのものか協議しますみたいな話ですが、所有権は電力会社にありますよ。それに、資産として電力会社に計上されていますから、電力会社のもの以外の何物でもないと私は思います。

 協議をすると書いてあるのは、その処理料や経費について協議をするというふうに書いてあるのであって、所有権については協議の余地もないと私は思います。もしそこに協議の余地があるなら、どうしてPuや何かは電力会社の資産に計上されているんですか。事務方、ちょっと答えてください。

板倉政府参考人 お答えいたします。

 契約上は、燃料に含まれるウラン及びプルトニウムを三酸化ウラン粉末及び硝酸プルトニウム溶液の形態で分離、回収するとともに、その他の物質をより適切に処理処分または貯蔵管理するものとするということが書かれておりますが、これは原子力機構がするということになってございまして、この中に廃液の貯蔵を管理する者が定められているところでございます。

秋本分科員 ちょっと時間がないので少し飛ばしますが、例えば、再処理の役務契約だとかガラス固化の役務契約を、契約書の中を見せてくださいと言うと、これは手持ちの資料で文科省から来たものですが、再処理契約書を締結する八社全ての窓口として、電気事業連合会の原子力部に対して当該契約の開示について要求したところ、電気事業連合会から、法的な根拠に基づく所定の手続がない限り開示には応じられないということを言ってきたりとか、何か聞くと必ず、秘密保持契約で中身が見せられませんみたいな話になるんですよね。

 例えば、放射性廃液、所有権はありませんと。そんなことはないだろうと聞いたら、慌てて今度は、秘密保持契約で教えられませんと。そんな、所有権がどっちにあるか教えられないなんてふざけたことがあるかという話じゃないですか。

 所有権がどっちにあるかわからないんだったら、では、廃液の保管料は誰が払っているんですか。ガラス固化体になってから料金をもらいますからそこは整理していませんと政務官がおっしゃっていましたが、廃液、JAEAは何年間保管しているんですか。では、その保管料は取っていないということですか。

 この辺の契約が全然わからないんですよ、中身が。行革本部で中を見せてくださいと言ったら、秘密保持契約で全部見せられませんみたいな話で、全然検証ができない。ふざけるなという話ですよ。最初に答えた答えと二回目の答えが全然変わる。何かといえば、秘密保持契約で教えられませんと。そんなことを繰り返しているようなことではだめだと私は思います。

 ちょっとお伺いをしますが、会計検査院は、秘密保持契約を結んでいたとしても、中身について見ることができますか。

寺沢会計検査院当局者 お答えいたします。

 会計検査院では、日本原子力研究開発機構の契約につきまして、合規性、経済性、有効性等の観点から検査を行い、不適切な事態を検査報告に掲記しております。

 御指摘の契約につきましては、これまで検査を実施してきたところでございますが、検査報告に掲記したことはございません。

秋本分科員 財務省にお伺いしますが、財務省は、予算要求が来たときに、中身について、秘密保持契約が結んであっても中を見ていますか。見て、ちゃんと判断をして、予算をつけるつけないということを全ての秘密保持契約について行っているかどうか、答えてください。

美並政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、契約書そのものの開示を受けたことはない、したがって、見てはおりません。

 ただし、予算査定に当たっては、予算要求に係る事業の内容について、当然ながら精査というものが必要でございますので、例えばJAEAと第三者が結ぶ契約内容についても、我々は、必要に応じて文部科学省に説明を求めるというふうな手続になります。それは当然、秘密保持条項があるなしにかかわらず、そういうことを求めることになります。

 その場合も、文部科学省としては、財政当局、我々に説明する上で不可欠なものであれば、契約当事者の承諾を受けて、契約の内容についても説明をしていただいているというふうに承知しております。

 したがって、契約の内容そのものの開示は受けておりませんけれども、査定に当たって必要な情報を得るというふうにしているところでございます。

秋本分科員 端的に言って、会計検査院は権限があるから中を見られるけれども、財務省は、必要があれば見られるけれども、見せてくれるかどうかは所管省庁次第ということですよね。だから、財務省は何か物すごく強烈な権限に基づいて言っているわけじゃなくて、いや、中身が中身だったら予算をつけてやらないぞという意味じゃないですか。

 会計検査院はちょっとおいておいて、しっかり中を検査していただくということで、行革本部と財務省でしっかりと、私は今回こういうことを問題提起しますが、全省庁の秘密保持契約を結んでいる契約を全部一回出させて、本当にそれが秘密保持契約を結ぶ必要があるのかどうか。あるいは、その妥当性、民間の方が求めてくるものもあると思うんですよ。これについては、核防護上とかそういう問題ではなくて、商業ベースで、自分の会社としては秘密保持契約を結びたいんだよねということを言ってくると思うんですよね。ですから、その一つ一つについて、本当にそれが妥当なのかということをチェックしなきゃいかぬと思うんです。

 ですから、私は、河野大臣が大臣の間に、ぜひこの問題についてメスを入れてもらいたい。

 特に、先ほど申し上げましたが、JAEAは何かというと、電事連に聞いたら電事連がだめだと言っているから出しませんみたいなことを平気で言うんですよね。契約書を見たら、電事連なんということは一言も書いてないですよ。ましてや、JAEAの再処理事業、原電が入っていますけれども、原電は電事連の会員でもありません。なのに、原電のことを聞いても電事連に確認しているんですよね、JAEAは。何でそんなことをするんですか。窓口が電事連になっていますと平気で答えるわけですよ。秘密保持契約の内容について電事連に確認したら電事連がだめだと言うから出しませんみたいな話ですよね。

 ですから、秘密保持契約、そういうところまで含めて中身を見ていって、この保持契約を結ぶのが適正なのか適正じゃないのかということについて、私は、横串を刺して一回全部チェックをする必要があるというふうに思います。

 先ほど言ったとおり、何か最初は違うことを言っていて、都合が悪くなると秘密保持契約ですみたいなことも私は経験していますが、大臣にぜひお願いをしたいのは、横串を一回刺してチェックをしてもらいたいと思いますが、いかがでしょうか。

河野国務大臣 行政事業レビューにおいて、レビュー対象事業の予算について検証しなければならない場合には、秘密保持条項があるなしにかかわらずきちんと点検が行われるべきだと思いますので、こうした趣旨は各省庁に徹底して、確認すべきは確認してまいりたいと思います。

秋本分科員 ありがとうございます。

 秋のレビューの報告にも、既存の契約で秘密保持条項があるものについて、不開示とする合理的な理由がない限り、情報を公開するべきであるというふうに大臣が文書を内閣府として出していますから、ぜひ一回全部の省庁に、秘密保持条項を結んでいるものは全部出してということで横串を刺して、それが本当に適正かどうか、あるいは、もしできるのであれば、こういう場合は結んでもいいよね、こういうものはだめだよねというガイドラインをつくるとか、あるいはそれをチェックする部署をぜひつくってもらいたいと思いますので、よろしくお願い申し上げて、先に進みます。

 最後に、スキーバスのことについてお伺いをいたします。

 スキーバス、残念ながら、ああいう悲惨な事故が起きてしまって、今、自民党でも国交省でもいろいろな改善策を練っている中で、インターネットで比較サイトをつくって、そこで比較していこうぜということをやっていますが、どんな安全情報を集めてそこに掲載するかみたいなものを国交省に聞いても、まだ決まっていませんみたいな話なんですね。

 消費者庁に、消費者保護、エンドユーザー保護のために消費者庁がコミットしているのと言ったら、いやいや、国交省がやっていますからこれからですみたいな、これからじゃないだろうという話なんですよ。だって、消費者庁はここで闘わなかったらどこで闘うのですか。消費者庁はしっかりと国土交通省に、エンドユーザーのためにこういう情報を集めろというところで最初からコミットするべきだと私は思いますが、大臣はそう思いませんか。

河野国務大臣 今回の事故は非常に重大な事故でもございますので、消費者庁といたしましては、消費者が安全性を考慮したバスを選択することができる、そして、事業者がそれを受けてバスにきちんと安全投資をするといういい循環ができるというのが大事だと思っておりますので、消費者がまずバスの旅行について、それぞれ使用されるバスの安全性というものがきちんと消費者に伝わるような、そういうシステムを国交省と一緒につくり上げてまいりたいと思っております。

秋本分科員 国交省もいろいろなことをやっていますが、輸送の安全を確保するガイドラインというのがあって、大臣、このガイドラインにこういうふうに書いてあるんですね。

 公示の運賃の下限を下回る運賃での運行は、安全コストが計上されていないので、当該運行において利用者の生命身体の安全が十分確保されないおそれがあることに十分御留意くださいというガイドラインがあるのですが、消費者庁に事前レクを申し込むと、先生、これは入札で落とすという話ですから業者の話ですよみたいな話なんですよ。

 生命身体の安全が脅かされるおそれがあると言っているものは、これは誰のための情報なんですか。エンドユーザーでしょう。エンドユーザーがそういうおそれがある商品を選ばないための話じゃないですか。業者のためですよという、ふざけたことを言っているなという話ですよ。

 消費者庁はこういう情報を、たばこを吸い過ぎるとちょっとあなたの健康を害するおそれがありますよというのと同じように、余り安いバスを選ぶと生命身体の安全を損なうおそれがありますよとガイドラインに書いてあるわけだから、これをやはりエンドユーザーに伝わるように私はするべきだと思いますが、どうでしょうか。

河野国務大臣 おっしゃっているガイドラインそのものは、確かに契約の相手方となる事業者向けのガイドラインでありますが、このガイドラインが言っているエッセンスは、間違いなく消費者にとって非常に大切なことでございます。安全性をいかに確保するかということに直結するわけでございますから、このガイドラインが周知しようとしているその趣旨を消費者庁といたしましては消費者にしっかりと伝えていく、そういう努力をやってまいりたいと思います。

秋本分科員 時間が来たので、最後にちょっと一点だけ要望しておきます。

 観光庁が、バスが決まっている場合は、それはエンドユーザーに知らせてくださいということで、早期に決まっている場合は最初に知らせろ、複数社に絞り込めた場合は途中でもいいから知らせろ、最後、決まったら、直前でも知らせろという三段階になっているのですが、その三段階の最後の時点で、バスが決まった時点で知らされても、キャンセル料が発生してしまうのでエンドユーザーはお金を払わなければキャンセルできません。これは、私はどうなんだろうというふうに思います。

 観光庁にこれを言うと、ちゃんと営業許可を受けたバス会社を用いることでその責任を旅行会社の方は果たしているんだというようなことを言うのですが、判例をもってそういう根拠を述べていますが、この判例は、大臣、大臣も聞いているかもしれませんが、海外での事故をもって裁判が行われた例なので、国内のものではありません。

 ですから、裁判の判例も、国交省の資料を見ると、略となっているところが大事なんです、ここの略となっているところは、海外のパッケージのそういう旅行だったので、海外だから安全性の確保というのはそこまで、国内とは違って確保できないよね、旅行会社を決めたら、そこぐらいまででしようがないんじゃないのと判例には書いてあって、海外の事例なんですね。ですから、国内は事情が違います。

 ですから、しっかりとエンドユーザーにそういう情報を提供するという意味では、消費者庁に、闘うというよりも国交省と力を合わせて、エンドユーザーにこういう情報をしっかりと提供できる体制をぜひ構築してもらいたいと思うのですが、最後に大臣にお答えいただいて、終わりにしたいと思います。

河野国務大臣 消費者がバス旅行を選択するときに、行き先や料金だけでなく、バスの安全性というのも選択の大きな要素にならなければいけませんし、それが大きな要素になるというところから、安全性を事業者が確保しようとするいい循環が始まるということだと思いますので、そこは国土交通省と力を合わせて、きちんと伝えられるように努力してまいりたいと思います。

秋本分科員 終わります。ありがとうございました。

小田原主査代理 これにて秋本真利君の質疑は終了いたしました。

 次に、宮本徹君。

宮本(徹)分科員 日本共産党の宮本徹です。

 無駄をただすという面から、きょうは、特に公共事業について河野大臣と議論させていただきたいと思います。

 まず最初に、財務省に、財政制度審議会がこの間の建議で公共事業の新規投資について指摘している点について、簡潔に説明していただけるでしょうか。

茶谷政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年六月の財政制度等審議会の建議におきまして、公共事業部分につきましては、

  新規投資に当たっては、社会資本の整備水準の向上や将来の人口減少等を踏まえれば、我が国にとって必要とされる国際競争力強化や防災対策であっても、費用対効果を厳しく見極め、これまで以上に厳選すべきである。

  今後、高度成長期以降に急速に蓄積してきた膨大な社会資本の老朽化への対応が大きな課題となる。こうした「選択と集中」との考え方は、費用の増加が見込まれる社会資本の老朽化への対応に際しても徹底していく必要がある。

等の指摘があったところでございます。

宮本(徹)分科員 私は、財政審は、教育の問題とか間違っていることをよく言っていると思うんですけれども、公共事業の問題では非常にいい指摘をしていると思っています。

 人口減少等を踏まえて、新規投資は必要性を厳しく見きわめなきゃいけないということを言っているわけですけれども、この財政審の指摘について、河野大臣はどういうふうに認識をお持ちでしょうか。

河野国務大臣 政府としては、国際競争力を強化する、あるいは防災等に資するインフラ整備、そうしたことについて、優先度あるいは時間軸を明確にしつつ、人口減少といった社会構造の変化を踏まえ、選択と集中のもと、長期的に効果が最大限発揮されるように取り組むようにしております。また、PFIその他、民間能力の活用を図っていくことも重要でございます。

 行政改革担当大臣といたしましては、事業レビューの中で、必要に応じてこうした事業も取り上げて検証の対象として、効果、効率性、透明性の向上を図り、国民の皆様に納めていただいた税金がしっかりと有効に無駄なく使われるように努めてまいりたいと思います。

宮本(徹)分科員 具体的な新規の高速道路事業について、少しだけお伺いしたいんですけれども、税金投入で不採算の高速道路の建設というのが続いております。

 東京では、今、東京外環道、関越―東名間の工事、十六キロメートルの工事が行われています。市街地の地下を巨大トンネルを貫くということで、事業費も破格で一兆三千七百三十一億円。通行料金で採算はとれないので、そのうち税の負担が一兆円を超して、事業費の七五%が、都心の高速道路だけれども、税金でつくっているということになっております。

 ところが、この上、国交省は、この区間だけじゃなくて、今度は東名以南もつくろうという方向に向けて、二月十日に東京都と川崎市との協議会を発足させました。

 国交省にお伺いしますが、この区間のルート、事業費、建設費は誰が負担するのか、採算の見通しはどうなっているのか、教えてください。

江島大臣政務官 まず、首都圏の三環状道路でありますけれども……(宮本(徹)分科員「いや、三環状道路はもう。短くお願いします、該当部分だけで」と呼ぶ)わかりました。

 かいつまんで申し上げますと、大変に渋滞が激しいということでありまして、特に事故も発生する等の課題がありますので、このような渋滞や事故等を解消するために、東京都と川崎市とともに、この外環道の東名高速―湾岸道路間の計画の具体化に向けた協議会が二月十日に設立をされたのは御案内のとおりでありますが、この協議会におきましては、今後、この計画の具体化に向けた検討の進め方について議論を進めていくということにしております。

 また、御質問でありましたこのルート、それから事業費等につきましては、まだ具体的には、現段階では定まっておりません。

宮本(徹)分科員 この間、国交省のページを見ましても、外部に委託して、この東名以南についてもさまざまな調査研究、検討をしているようです。

 東名以南というのは二十キロメートルありますので、東名以北並みに事業費がかかるということで、単純に計算したら、一兆七千億円を超える事業ということになるわけですよね。

 財政審は、昨年の建議でこう言っております。道路事業について、近年は人口減少等に伴い、自動車交通量は全体的にピークアウトしている、今後の人口減少や既存のインフラ維持管理コストの増加などを踏まえ、新規投資の一層の重点化が必要であるというふうに言っているわけですよね。

 今つくっているものの維持だって大変な事態になっているわけですから、こういう視点でいえば、私は、およそつくれない道路だというふうに思いますが、この東名以南の外環道、財政審が指摘する点は踏まえて検討されているんでしょうか。

    〔小田原主査代理退席、主査着席〕

江島大臣政務官 今後、検討を進めていく中で適切に検討してまいりたいと思います。

宮本(徹)分科員 今後という話ですね。始めるに当たって財政審の指摘を検討しているそぶりすらないわけですよね。

 採算のとれない道路づくりで借金の山をさらに大きくしていくというのは、本当に私、未来世代に無責任なことだと思いますので、河野大臣には、しっかりこの問題も調べていただきたいと思います。

 それで、きょうとりわけ伺いたいのが、社会資本整備総合交付金を使った東京都の特定整備路線についてです。

 きょうは、傍聴にも、この特定整備路線で家を削り取られる方々も見えていらっしゃいます。

 この社会資本整備交付金については、つい先日、会計検査院から、「社会資本整備総合交付金等による事業等の実施状況について」という報告書が出されたところです。

 この特定整備路線というのは、東京都の都市計画道路事業なんですけれども、二十八区間、約二十六キロメートルが対象で、名目は延焼遮断帯ということを言っているわけですけれども、七十年前の、東京が焼け野原だったときに、戦災復興計画の中で都市計画決定されて、ずっと七十年間塩漬けだったものがほとんどなんですね。

 それが、突然、四年前に、延焼遮断帯にするんだということで計画が持ち上がって、二〇二〇年度までにつくっちゃおうということで、大変強引なやり方で推し進めようとされております。

 これに対して、もう七十年たっていますから、そこのところには生活があるわけですよね。家もあるわけですよ。つい数年前に建て直したという家だってあるわけですよね。ですから、住民の皆さんから猛反発が今起きているわけです。国交省に対しても不服申し立てが四千二百六十二件起きています。裁判も起きております。この延焼遮断帯だという名目にも、非常に疑問の声が上がっております。

 きょう、配付資料で地図をつけさせていただきました。例えば、補助八十六号線赤羽西というのを見ていただければわかりますけれども、この区間の三分の一は公園を通るんですよ。公園というのは延焼遮断帯そのものなわけですよね。こういうところを通すという話にもなっています。

 それから、その下は、板橋大山と書いてありますけれども、大山ハッピーロード商店街のど真ん中を百メートルにわたってそぎ取る。ちなみに、ここの商店街は、経済産業省が「新・がんばる商店街七十七選」ということで、すばらしい商店街だということで選ばれたこともある有名な商店街ということになっています。

 これは、地図を見たら、ちょっとわかりにくいですけれども、実は東武東上線と平面で交差するんですよ、この道路は。ただでさえここの踏切はあかずの踏切として有名なところで、交通量がふえたら一層渋滞が増すということを言われています。

 それから、次のページを見てください。これは品川区の放射二号線です。この道路は、何と星薬科大学のキャンパスのほぼ中央を貫通して、大学のキャンパスを分断する。大学の設置基準では、薬学系学部には薬用植物園というものの設置が義務づけられておりますけれども、それを潰すものになっているわけであります。

 ですから、こういうものですから、大学もどうにかしてくれということで文科省に陳情も行かれて、馳大臣がお会いになったと聞いておりますが、これはどんな陳情内容だったのか、文科省、説明していただけるでしょうか。

堂故大臣政務官 御指摘の件に関しましては、平成二十七年十二月二十一日に、馳文部科学大臣が、文部科学省においでになった星薬科大学の理事長、学長等と面会を行ったところであります。

 その際、星薬科大学側からは、東京都が計画している特定整備路線放射第二号線は、星薬科大学の構内中心部を貫通、分断することになり、安全面や環境面で懸念があること、現在、東京都に対して本計画の再検討や地下化、迂回の検討を求めていること等の話があったとお聞きしています。

宮本(徹)分科員 そういう話なんですね。ちなみに、東京都に対しては与党の方が同席して申し入れも行ったというふうに伺っております。

 星薬科大学というのは百年を超える歴史を持っているところなんですね。ちなみに、創設者は作家の星新一さんのお父さんだそうですけれども、大学の存立にかかわる事態になっています。

 大体、延焼遮断帯ということを考えたら、大学はこんな広いキャンパスなんですから、文字どおり延焼遮断帯になっているわけですよね。交通ネットワークという点でいっても、大学のすぐ近くには幹線道路も通っているわけですよね。にもかかわらず、この七十年前の計画が突如とよみがえって、無理やりこれが二〇二〇年までということでつくられようとしているわけですね。

 こういう道路がキャンパスの真ん中を突き抜けてつくられるということは、大学の教育条件にとって好ましいことなんでしょうか。文科省はどうお考えでしょうか。

堂故大臣政務官 大学のキャンパスについては、大学教育を行うにふさわしい環境が確保されるよう、大学設置基準等に基づき、必要な校地、校舎、設備、施設等を備えることが必要であります。

 一方、大学設置基準等を満たした上で具体的にどのようなキャンパスを整備するかについては、各大学がその教育理念や教育研究の分野、学生の状況等を勘案し決定すべきことであり、この件について、文部科学省としてのコメントは差し控えたいと存じます。

宮本(徹)分科員 何か冷たい答弁ですね、大学が申し入れして馳大臣にも会っているのに。大学には教育上ふさわしい環境が求められて、大学設置基準で薬草園が必要となっているんだから、薬草園がなきゃいけない、そう言ってくれればいいだけなんですよ。

 それで、国交省にお伺いしますけれども、住民や大学などの意向を、無理やりこういう道路づくりを強行するということはあってはいけないと思いますけれども、どう考えているんですか。

江島大臣政務官 まず、御指摘の東京都市計画幹線街路放射二号線という道路でありますけれども、木造住宅の密集地域の防災性を大きく向上させるための都市計画事業として、地元の品川区の意見を踏まえた上で、平成二十四年に特定整備路線として事業化することが決定をされたというふうに伺っております。当該区間に関しましては、都としては平成二十七年の一月に都市計画事業認可を取得しております。

 都は、整備に当たりまして、事業認可申請に先立って、まず、地域住民に対しての事業概要などを周知する説明会を開催しております。また、事業認可取得後には、関係権利者の生活再建を支援する相談窓口も現地に設置をしておりまして、さまざまな対応を行っているというふうに聞いております。

 今後、東京都が関係者の理解と協力を得ながら事業を進めるということが大変重要ではないかと思います。

宮本(徹)分科員 だから、理解と協力を得ながら進めるのが重要と言って、理解も協力も得られていないから言っているわけですよ、私は。理解と協力を得られていないんだから問題だということを国交省は言わなきゃいけないんですよ。そのことが、まさに会計検査院の報告で指摘されている問題だというふうに思います。

 この問題は、東京都の責任だけにはできません。まず、そもそも事業認可をやっているのは国であります。大体、この国の事業認可の仕組みはおかしいんですよね。七十年前につくられた都市計画に適合しているかどうか、これだけなんですよね、見ているのは。こんな機械的なやり方は改めなきゃいけないと思います。

 そして、もう一つ問われるのは、国のお金の出し方ですよね。

 この特定整備路線は、事業費の総額は三千五百億円ですが、誰が出しているのか。五五%は国です。国の方が多いわけですよね。社会資本整備総合交付金から交付されるということになっております。この制度は、二〇一〇年に創設された、比較的新しい制度です。自治体が整備計画をつくって、これで一括して交付するということになっております。

 東京都の特定整備路線を含む整備計画はどういう名前のものかといいますと、きょう持ってきましたが、「高度な防災都市を構築し地域の暮らしを支える安全・安心な道路の整備」という計画です。これは、物すごい分厚い、たくさんの事業が一遍に入っています。七百三十八の事業がずらずらずらっと並んでいます。道路の新設もあれば、電線の共同化もあれば、道路標識もあれば、カラー舗装まで入っていて、これが一つの計画として、パッケージとして申請が出されて、国は一つ一つの事業の中身は見ていない、効果も見ていない。パッケージで見て判を押してお金をつけているということなんですよね。延焼遮断帯の効果だとか、そんなの何にもチェックしていないわけですよ。

 そこで、先日出された会計検査院の報告書について、会計検査院にお伺いしたいと思います。

 この社会資本整備交付金から出されているものについて、九百十四地方公共団体が作成した二千八百二十八の計画について、さまざまな角度から点検されております。

 配付した資料の次のページを見ていただきたいんですけれども、その点検のうち、特定整備路線が入っている東京都の計画のものをつけました。上が会計検査院の点検項目、丸印が会計検査院として問題だとチェックしたところです。特定整備路線を含む計画については五つも丸印が入っております。

 まず、丸印の真ん中あたりのところですか、「事前評価を実施していたもののうち国土交通大臣へ事前評価書を提出していなかったもの」、ここに丸がついております。

 国交省の通知によりますと、地方自治体は、整備計画を作成して大臣に提出する際は、事前評価を実施して整備計画に添付するということになっているわけですね。ところが、これが添付されていなかったということなんですね。添付されていないにもかかわらず、国土交通省は受領していたということになります。

 この事態については、検査院はどうお考えなんでしょうか。

須藤会計検査院当局者 お答えいたします。

 会計検査院が二千八百二十八の整備計画を検査したところ、事前評価を実施したが事前評価書を提出していなかった事態が百八計画、また、事前評価を実施していなかった事態が百八十七計画あり、この結果、事前評価書が添付されていないにもかかわらず、国土交通省が確認せずに受領している事態が二百九十五計画見受けられました。

 そこで、会計検査院といたしましては、地方公共団体等が社会資本整備総合交付金事業等を適切に実施することができるよう、国土交通省において、地方公共団体等に対して支援、助言等を行う必要があると報告したところです。

宮本(徹)分科員 国交省の側も大変問題だと思うんですよね。つけなきゃいけないものがついていないのに受領しちゃって、そして交付金を出している。この東京都の計画でいえば、会計検査院のチェックが入った後に、やっと平成二十七年七月に国土交通省へ提出したという経過になっているわけです。お金がついて何年もたった後ですよ、出さなきゃいけないものが出てきたのは。結局、この計画については、添付すべき事前評価書がなくてもノーチェックでお金を出していたことになるということであります。

 それから、この資料の丸印の三つ目のところを見ていただきたいんですけれども、「国土交通省が例示した検証事項の一部を検証していなかったもの」、ここにも丸がついております。

 国交省は、事前評価の項目について八項目例示しております。その八項目の中身を見ますと、円滑な事業執行の環境だとか地元の機運、こういうものが事前に検証すべきものだというふうに書いてあります。

 検査院にちょっとお伺いしますけれども、事前評価の際、どういう検証が望ましいというふうにお考えなんでしょうか。

須藤会計検査院当局者 お答えいたします。

 会計検査院といたしましては、事前評価において事業実施の確実性を検証するためには、国土交通省が例示した検証事項八項目、例えば、地域の課題への対応、あるいは整備計画の目標と事業内容の整合性などでありますが、これらの検証事項全てを検証することが望ましいと考えております。

宮本(徹)分科員 つまり、検査院は、この八項目全てを検証することが望まれる、事業の確実な実施のためにも必要だと言っています。

 先ほど言ったとおり、八事項の中には地元の機運ということも入っているわけですよね。円滑な事業執行の環境ということも入っているわけですよ。

 ところが、この特定整備路線の、全部とは言いませんよ、幾つかについては、およそ円滑な事業執行の環境だとか地元の機運があるとは言えないわけですよね。異議申し立てが山のように出ている、大学からもやめてくれと言われている。住民の合意形成もできていないし、機運が盛り上がるどころか反発が広がっているということなわけですよ。検査院が望ましいというものについても、今回の東京都の計画についてはやられていないということであります。

 それから、もう一つお伺いします。

 丸印の一番右側、事前評価の結果について公表していなかったというところにも丸がついております。

 会計検査院にお伺いしますが、事前評価書の公表にはどういう意義があるというふうにお考えなんでしょうか。

須藤会計検査院当局者 お答えいたします。

 事前評価を整備計画とあわせて公表することとなっているのは、地域住民等のチェック及び評価を受けるためであり、社会資本整備総合交付金等による事業等実施の重要な手続と考えております。

宮本(徹)分科員 今お話ありましたように、住民のチェックを受けるために事前評価を公表しなきゃいけないというのが会計検査院の考えなんですよ。これが出されていなかったわけですから、住民のチェックの、住民が事前に見て意見を言う場もなかったということにもなるわけですね。ですから、極めて重大なところで、この東京都の特定整備路線の計画については手続上問題があったと言わざるを得ないというふうに思います。

 それ以外にも丸がついているところがあるわけですが、きょうは、時間の都合上、会計検査院からの紹介はここまでにさせていただきますけれども、重点計画との整合性も確認していないということになっています。それから、交付対象事業と評価指標の変化量との因果関係も明確になっていない、効果も明確じゃない、そういうところにも丸がついているのがこの事業なんですね。

 そして、財政審の建議でも、この社会資本整備総合交付金は問題視されております。事業評価がちゃんと行われていないだとか、こういう指摘がされているわけですよね。

 今紹介してきましたけれども、特定整備路線という事業は大変いろいろな問題があります。会計検査院も指摘しています。財政審も指摘しています。中身は一切吟味しないで、丼でお金をどんどんどんどんノーチェックでつけてきた、そのことによって住民が苦しめられる事態が今起きております。

 河野大臣にお伺いしたいと思いますが、こうした交付金の交付のあり方というのは問題じゃないですか。

河野国務大臣 今御指摘いただきました社会資本整備総合交付金につきましては、もう既に会計検査院から指摘が行われているわけでございますので、行革担当大臣としては出る幕がありませんで、指摘を受けた国土交通省において、まずこれらの指摘について真摯に対応していただくべきものと思っております。

宮本(徹)分科員 出る幕がないというのでは、きょう議論する意味がないわけですよね。国土交通省がちゃんと対応するのかという問題があるんですよ。任せちゃうわけですか、行革担当大臣としては。

河野国務大臣 もうこれは既に会計検査院が指摘をしているわけですから、国土交通省がきちんと対応するか否かにかかっているわけでございますので、これはもう国交省の対応を注視していく以外にはないと思っております。

宮本(徹)分科員 では、まずは注視ということで、対応をとられなかったら河野大臣にも動いていただきたいというふうに思います。

 国交省の問題点も、いろいろ会計検査院の報告では指摘されておりますが、この会計検査院の指摘を国交省自身はどう受けとめられているんですか。

江島大臣政務官 この社会資本整備総合交付金でありますけれども、これは本当に地方にとって自由度が高い、創意工夫を生かせる交付金として平成二十二年度に創設されました。私も首長をしておりましたので、非常にこういうのはありがたいなと。まさに全国の自治体が待ち望んでいた制度であります。

 ただし、やはり、自主的、主体的に検証した結果を記載する、いわゆる事前評価書を添付することとされているのが条件でありまして、また、今回は、この会計検査院の指摘を通じて、事前評価なしの整備計画を国交省が受領しているという事態があった、これは事実でございます。

 今後は、国交省としては、この事前評価書の提出について確認を、今までも本当はするべきだったと思っておりますし、これから遅まきながら、まず、事前評価書が未添付の整備計画に関しましては速やかに提出をするよう、関係の地方公共団体に対して通知を既に出しております。また、今後も、本来の趣旨であります社会資本整備総合交付金の自由度というものはなるべく尊重しながら、適切な支援、そして助言等を進めてまいりたいと思います。

宮本(徹)分科員 いやいや、受領も大変問題なんですけれども、それ以外にも会計検査院はたくさんのことを指摘しているわけですから、やはり交付金は国民の税金ですからね。自治体の自由度が高いお金の出し方であるんだけれども、点検すべきところはやはりちゃんと点検しなきゃいけないですよ、国が。そういうことをやらないとだめだという認識を持たなきゃいけないと思いますよ。

 ちなみに、この特定整備路線については、手続の瑕疵というのが明確なわけです。会計検査院の指摘でも明確です。間違っていたということを今国土交通省の方からもお話がありました。ですから、これについてはこのまま新年度の予算をつけるわけにいかないと思いますよ。進行中の事業については、手続に瑕疵があったんだから、まず凍結して、白紙に戻して再検討しなきゃいけないんじゃないですか。

江島大臣政務官 しっかりと、これからきちんとその添付を要請していくということは先ほど申し上げたとおりでありますけれども、最初の、今の時点で、なかったものを全て凍結しなければいけないというふうには考えておりません。

宮本(徹)分科員 極めて問題ですよ。河野大臣、こんな姿勢でいいんですか。

河野国務大臣 会計検査院の指摘に対して、国土交通省には真摯に対応してもらいたいと思います。

宮本(徹)分科員 今の態度は真摯とはとても思えないですよ。手続に瑕疵があった、瑕疵があったことを認めながら、そのまま、なかったことにはできないから進めていくと。まず一旦凍結して、住民の機運はないとはっきりしたわけですよ。検証事項をやっていなくてそのまま進めるなんて、そんな無責任な話はないじゃないですか。どうするんですか。

江島大臣政務官 重ねて申し上げますが、指摘の点に関しましては、本来のこの制度の趣旨に沿った運用がされていなかったというのは、これは事実でありますが、一方で、この事前評価の結果の添付というものが交付の絶対条件とまではされてはいないというふうに考えています。ですから、交付金の返還の必要はないというふうに考えておりますけれども、現時点においての未添付の計画に関しては、また結果の提出をこれから求めてまいりたいと思います。

宮本(徹)分科員 まず、一旦事業はとめるべきですよ。問題があったと会計検査院の指摘が出ているわけですから。住民の中に機運があるのかと、ここで会計検査院に言われたような問題についてもう一回検証しなさいということを東京都に言うべきじゃないですか。

江島大臣政務官 国交省といたしましては、これは、整備計画に対しまして、必要性、熟度をよく勘案した上で、予算の範囲内で支援をしてまいりたいというふうに考えています。

宮本(徹)分科員 何を言っているんですか。だって、何も見ずにお金を今までつけてきたということは会計検査院が指摘しているわけでしょう。必要性だとか何だとか考えてつけているわけじゃないじゃないですか、今まで。

 ですから、時間が来ましたからここで終わりにしなければいけませんけれども、会計検査院の指摘を真摯に受けとめていただきたいということを河野大臣も繰り返しおっしゃっていますので、本当に真剣に受けとめていただいて、一旦この道路は凍結して、このお金がつく過程がどうだったのかというのを再検証するということを求めて、河野大臣も注視していくときょうおっしゃっていただきましたから、それがやられるのかとぜひ注視していただきたいというふうに思います。裁判も起きています、異議申し立ても起きています。

 よろしくお願いを申し上げまして、私の質問を終わります。

平沢主査 これにて宮本徹君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

平沢主査 次に、内閣府所管について審査を進めます。

 警察庁について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岡本充功君。

岡本(充)分科員 民主党の岡本でございます。

 きょうは、警察庁に関する質問をさせていただきたいと思いますが、まず冒頭は、お配りをさせていただいております資料に基づいて、少し地元の課題についてから、ちょっと順番が違いますけれども、質問させていただきたいと思います。

 資料三として、名古屋港西部地区における総合的な暴走行為対策という資料が載っています。

 私も、このエリアに行くと、暴走行為をしている車等を見受けるわけでありますが、まずもって警察庁にお伺いしたいんです。こうした暴走行為の対策として、現に暴走している車をとめる手法や技術などは進歩しているんでしょうか。

井上政府参考人 お答えいたします。

 ただいま御指摘の現に暴走行為が行われている場合にその車両を停止させる技術につきましては、過去において、私どももさまざまな技術開発等を行った経験はございますけれども、一つには、やはり暴走行為をその現場で停止を求めることによる、本当に現場で生ずる危険をいかに少なくするかという問題もございます。

 片方では、何らかの大がかりな装置を活用しようとする場合に、暴走族が、そういった装置をどこに設置しておるというような情報をさまざまな偵察要員等を活用して察知する等によりまして、なかなか効果的な活用に至らなかったというような経緯がございます。

 ただいま御質問の現場で効果的に暴走族を停止させるということについては、道路を封鎖してしまう、袋のネズミにしてしまうというような方法によって現場で確保するということは現に行っておりますけれども、普通に道路を走行している集団をとめるということは、実際上難しいというのが現状でございます。

岡本(充)分科員 警察も研究機関を持っているわけですから、そうした技術もぜひ研究ぐらいはしていっていただきたいなと思うんです。

 今回の資料の4にあります、ドリフトが行われているという愛知県の飛島村の現場でありますけれども、私も見たことがあります。多くの若者がたくさん取り巻く中、大臣、車でドリフト走行をしているんです。ここにも書いていますけれども、そこにはコンビニエンスストアがありまして、そこに次のドリフト走行をする車などもとまっている、警察もそこで見ている、こういう状況なんですね。

 であれば、次に走る車をとめれば、要するに、出ていけないようにすればいいんじゃないかと私なんかは思うわけですけれども、ドリフトをしているその車の周りを若い人たちがたくさん取り囲んでいますから、車の運転技術を誤ると、その車に乗っている者だけでなく、周りで見ている者も被害に遭うという可能性があるような場所なんですね。

 今局長からの答弁もありましたけれども、効果的にとめる方法がないといっても、現に次の出番を待っているような者がいるのであれば、例えばその者を検挙することは当然可能なのではないかというふうにも思いますし、それを一緒に警察も見ている前で大きな事故が起こった場合、警察の見ている前でドリフト走行をして多数の若者が死んだという事案になると、これはえらいことだと思うんですね。

 大臣、ぜひ、今の局長の答弁はそういうことでありましたけれども、捜査のあり方を少し工夫する必要があるのではないか。そしてまた、特にこの箇所についてどのような対策をとっていくかは、事務方で結構でありますので、それぞれ、大臣と局長の方から御答弁いただければと思います。

河野国務大臣 暴走族に関しては、構成員やらグループやらというのは減少しているというふうに認識をしておりますが、依然として一一〇番通報は年間三万件を超えるというありさまでございます。

 交通の安全や国民の平穏な生活に多大な迷惑と危険を及ぼしているというのは間違いないところでございますので、おっしゃるように、これは今後ともしっかり取り締まりをやっていかなければならないというふうに思います。

 それぞれ、現場現場で状況が違うと思いますので、具体的な事案につきましては事務方から答弁させたいと思います。

井上政府参考人 御指摘の愛知県内における暴走族のドリフト行為につきましては、愛知県警察において把握をし、取り締まり及び諸対策を行っているものと承知をいたしております。

 具体的には、所轄の警察署を中心に、ドリフト行為が行われる週末夜間の現場において駐留警戒を行い、危険走行を行う車両を整備不良、転回禁止等により検挙するほか、パトカー等で道路を封鎖する方法により、悪質な共同危険行為等の禁止違反での検挙にも努めているところでございます。

 具体的には、平成二十六年中は、整備不良、転回禁止、信号無視等で十名を検挙いたしておりますし、昨年、二十七年中は、大変罰則の重い共同危険行為等の禁止、それから整備不良、転回禁止等で四十五名を検挙したところでございます。

 また、ギャラリーへの対策として、観客でございますが、コンビニ店の駐車場におきましてドリフト行為の危険性を訴えるチラシを配布し、蝟集しないよう指導を行っているところでございます。

 愛知県警察では、引き続き、今後、取り締まりの徹底を図るとともに、道路管理者に対して、ドリフト行為ができないようにするための滑りどめ舗装等の路面改良や中央分離帯の閉鎖を求めましたり、蝟集場所となるコンビニ店に対して、深夜における駐車場の閉鎖を求めるなどの働きかけを行っていくとの報告を受けているところでございます。

岡本(充)分科員 ドリフト走行を今後ともさせることがないように、ぜひしっかり対策をとってもらいたいんですが、質問して、今週末とは言いませんけれども、しばらくして見に行って、まだやっているなんという話になるのでは、私は、本当に対策として不十分と言わざるを得ないと思いますよ。

 そういう意味では、これまでとってきた対策でも残念ながらまだやっている人がいるということであれば、もちろんイタチごっこですけれども、さらに工夫しないといけないんじゃないか。民間の事業者であるコンビニに、営業しないでくれとか駐車場を閉じてくれと言うのは、やはりそれはそれで、民間の事業ですから、そこに過度な負担はかけられないと思います。

 だから、先ほどお話をしましたように、どういう工夫ができるのかをもう一度考えていただいて、少なくとも今年度中にはこういう行為が行われなくなる、もしくはここに来ると検挙をされるという体制をとるべきじゃないかと思うんですけれども、大臣、ぜひ、こんな若い方が命を落としてからじゃ大変ですよ。集まらないようにビラを配ったって集まるんですから。大臣、決意を。

河野国務大臣 今のお話をきちっと県の公安委員会並びに県警本部に伝えて、現場の対策をしっかりやってもらいたいと思います。

岡本(充)分科員 国会の議事録に残る形で指摘をしているわけでありますから、対策に期待をしたいと思いますし、もちろんまた、できていないことであれば、こうした指摘をこういう場で繰り返し行わせていただきたいと思います。

 続いて、資料の一番最初に戻るわけですけれども、同じく道交法について少しお伺いしたいと思います。

 道路交通法というのは、各都道府県の公安委員会規則に委任されているものがあると承知をしておりますが、その中で、都道府県格差がどういったものにあり、どういうものに大きな差異があるか、それについて御答弁いただきたいと思います。

井上政府参考人 御指摘のとおり、道路交通法におきましては、地域によって交通事情、交通の実態が異なりますことから、必ずしも全国一律で定めるまでの必要性がない事項につきましては、地域の特殊性を考慮して、都道府県公安委員会が、道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要があると認める場合に、必要な制限を定めることができるとしているものでございまして、こうした措置には合理性があるものと認識をいたしております。

 実例としましては、例えば、自転車等を含む軽車両の乗車、積載の制限ですとか、駐車許可の基準などについて、都道府県公安委員会規則に委任をされているものでございます。

岡本(充)分科員 都道府県によって差があるものというのは、それ以外に大きな差があるものはないという理解でよろしいですか。軽車両における取り扱いのみということでよろしいですか。

井上政府参考人 駐車許可の基準、それから軽車両の乗車、積載の制限のほかにも、運転者の遵守事項でございましたり、道路における禁止行為、その他も幾つか、各県の道路交通法施行細則、公安委員会規則に委任された規定となっておるものがございます。

岡本(充)分科員 大臣、今の駐車の要件だとかさまざまな要件が、これは都道府県ごとに差があるということで、その合理性についてやはり評価をする必要もあるんじゃないかという気もするんですね、ある県ならよくて、ある県ならだめという話になると。場合によっては、それが取り締まりの対象になる可能性もあるわけですから。

 そういう意味で、きのう、答弁レクのときに、差をこの場で話していただけるという話でしたが、その他というような形で多数あるようですから、きちっとまとめて御報告いただきたいと思います。大臣、まとめていただけますか。

河野国務大臣 全国一律でルールを定める必要がないものというのも当然あるんだろうと思うんですね。それは、都道府県の公安委員会に委任する。

 例えば、今話がありましたような、観光地ではタンデムの自転車を認めてもいいよとか、あるいはチェーン規制が雪のあるなしによって違ってくるというのは、地域の特殊性を考慮してやっているわけでございますから、そこに差異があるというのは、私は合理的なものであるというふうに思っております。

岡本(充)分科員 差異があってはいけないと言っているわけじゃないんです。差異があるものについて整理をして、合理的なものかどうか評価をしたいというふうに私は考えておりまして、そういうきちっとした、まとめたものを出してくれと言ったら、なかなかまとめられないという話、きょうまでに。

 この答弁でいただけると聞いたんですが、今の話だと、その他などという話になっていますから、まとめたものをいただけますかというふうに聞いているんです。

河野国務大臣 四十七都道府県、北海道から沖縄まであるわけですから、恐らく相当な数があると思いますので、それなりに都道府県でまとめているものがあればお出しをしたいと思います。

岡本(充)分科員 では、それをいただきたいと思います。

 その上で、例えば、さまざまな道路の規制等があります。取り締まりをどういうところでやるのかというのもあると思います。

 一般論としてしかお話ができませんので、ここでこの場所というふうに示すわけにはいかないんですが、例えば、一方通行規制が開始したまさにそのポールのすぐ横から、車両が斜めに道路を横断する、こういう場合。その斜めも、一方通行の指している方向とは違う方向の斜めではありますが、もちろん、角度によるとか、周辺の安全の状況とか、さまざまな事案を勘案しなければいけないと思いますが、こうした走行をするもの。もしくは、一方通行の規制が開始したところから出てくる車両が、出た瞬間に方向が変わるというような形の場合、直ちにこれが取り締まりの対象になるのかどうかということについて、御答弁をいただきたいと思います。

井上政府参考人 お答えいたします。

 一方通行規制につきましては、道路交通法八条におきまして、「車両等は、道路標識等によりその通行を禁止されている道路又はその部分を通行してはならない。」と規定されているところでございます。

 ただいまお尋ねのような個別事案の取り締まりの可否につきましては、それぞれの都道府県警察におきまして当該事案の具体的な状況に応じて判断するべきものでございまして、警察庁としてお答えすることは差し控えさせていただきたいと存じます。

 ただ、一般的に、一方通行規制がなされた区間におきまして、その交通規制に違反して通行した場合、通行した距離が仮に短い場合でも違反が成立し得るものと承知をいたしております。

岡本(充)分科員 違反は生じるんですよ。ただ、それが直ちに検挙の対象になるのかどうかというと、どうなんでしょうか。一般論ですよ。

井上政府参考人 一般論としましても、その取り締まりをどういう場合に行うかということにつきましては、個別具体の状況に応じてそれぞれの都道府県警察が判断をするべきであるというふうに判断をいたしておりまして、警察庁としては、お答えをすることは差し控えさせていただきたいと思います。

岡本(充)分科員 私は、いろいろな事情があって、それは周辺の安全性の問題だとか、危険性をどう評価するかとか、交通量だとか、見通しだとか、そういうものを見た上で取り締まりがあるべきだ。今のような答弁だと、結局、違反をすれば、どこで取り締まることも都道府県警のもちろん自由な裁量の範囲だというのは、それはそうかもしれませんけれども、やはりそれで住んでいる人を萎縮させるという話があると、どうなのかなと。

 例えば、スピード違反を検挙する場所だって、どう考えても、ここでこの時間に検挙するのが合理的なのかなということを走っている側としても疑うような取り締まりをやっていることもありますよね。

 やはりそういう意味で、ここは一定程度の柔軟性を持って取り締まりの運用はあるべきだ、私はそう思うんですけれども、大臣、どうですか。

河野国務大臣 取り締まりというのは、地域の実情に合わせてそれぞれ行われているというふうに思っております。

 今おっしゃられたように、ここでスピード違反の取り締まりをやるかというようなところで捕まって、切符を切られて、納得がいかないということもあるだろうと思います。

 それがいいかというと、むしろ、事故を防ぐために、交通安全をきちんと守るために取り締まりというのは行われるべきであって、恐らくそれにふさわしい場所とか時間というのがあるんだろうというふうに思います。それはやはり現場で個別に判断されるものであって、そこは一定の地域の事情というのが当然勘案されるべきだと思います。

 だから、警察庁が、ここではやるとか、ここではやらないとか言うべきものではございませんので、それは地元の県警、公安委員会にお任せをして、つかさつかさでやっていただいている、そういうことだと思います。

岡本(充)分科員 私は、警察行政というのは住民の皆さんとの理解があって進むんだと思っているんです。だから、住民の皆さん方の意見を聞きながら、やはり今のような交通の取り締まりのあり方、規制としてこういう規制になっているものも、例えば、一方通行のところでも、斜めに道路が交差していたら斜めに行った方がより安全だという道もあるでしょう。

 だから、ケース・バイ・ケースでそれぞれ見ていくということではあるけれども、私がここで期待したのは、そういうケース・バイ・ケースを見る中で、取り締まりのあり方というのも弾力的に行っていくという答弁ぐらい出るかなと思ったんです。そういう意味で、四角四面に、警察庁としてはそこはそれぞれにお任せしますという丸投げのような話であるのは大変残念だと思うので、もう一度、最後に大臣からお答えいただけますか。

河野国務大臣 そこは地域の実情に合った取り締まりをやっているわけで、それは現実にそういうことが行われているんだろうというふうに思います。

 むしろ、ここはこういうふうにやった方が安全だというならば、そこの交通ルールが変わるべきであって、そこで取り締まりをむやみと弾力化するのではなくて、そこの地域の交通ルールがそれでいいのかということが図られるべきなんだろうと思います。

 いずれにしろ、四角四面に取り締まりをやれと言っているわけではなくて、地域の実情に合った、交通安全に資するような取り締まりが行われるべきだというふうに思います。

岡本(充)分科員 そういう意味で、実情に合った取り締まりが行われるべきだと私も思う中で、ちょっと気になることが一つあって、路線バス用の車両が制限時速六十キロを超えるような高速道路でお客さんを乗せて走っているという状況、こういう状況は現にこの日本で存在するのか、国土交通省にまず確認です。

和迩政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のような路線バスについては、高速道路に比べ走行速度が低いことや、乗客が頻繁に乗降するなどの実態を踏まえ、シートベルトの設置義務を課しておりません。

 このような路線バスのうち、地域住民の利便性の確保のため、路線の一部で高速道路を走行せざるを得ない場合があります。このようなバスについては、道路運送車両法の基準緩和の制度に基づき、走行速度の制限などの安全担保措置を講じた上で、シートベルトの設置をせずに高速道路の走行を認めております。

岡本(充)分科員 違うんです。私はきのうのレクで思ったんですけれども、道路交通法と車両法の高速道路の概念がそれぞれ違っていまして、ここで言うと時間が来てしまいますからあれなんですけれども、言葉が確かに、ワードが違うんです。高速道路とか高速国道等でしたか、とにかく表現が微妙に違って、定義が違う、こういう話なんです。

 要するに、周りの車は八十キロで走っている中で、路線バスが、六十キロでもいいですけれども、走っている、こうした区間は日本に存在するのかどうかということをまず聞いたんです。

和迩政府参考人 制限速度が六十キロを超える道路につきまして、先ほどの高速道路ということも含めて申し上げておりますので、存在いたします。

岡本(充)分科員 そこの住民の皆さんの利便性もあるでしょう。さっきの話です。にわかにそれで禁止をしろというのも私は酷な話だと思うし、どういう工夫ができるのかということはぜひ考えてもらいたいんです。

 それだけのスピードが出ているところで急ブレーキをかければ、一番わかりやすい例でいえば、路線バスの一番後ろの座席の真ん中なんかは、前に何もないわけですから、シートベルトがなければ前に転げていくということは想像にかたくないわけです。特に、小さい子供がそこに乗っていたらどうなるでしょうか。

 これから先、もちろん大臣は規制緩和に御関心が強いのかもしれませんけれども、やはり逆に、危ないと思うところは規制をしていかなければいけないところもあると思います。

 そういう意味で、高速道路の安全性をどう確保していくか。それは、一義的には車両法の世界の問題だから国交省だときのう説明に来た警察庁の職員の方は言われましたけれども、大臣、これは国交省とやはり相談をして、高速道路において路線バスが走ることの安全性の確保、もう一度考えた方がいいと思いますが、いかがですか。

河野国務大臣 高速道路を路線バスが走る場合には、保安基準を緩和して、六十キロまでにしろとか、あるいは六十キロを超えたらベルが鳴るようにしておけ、そういういろいろなルールの中で、安全性と利便性を勘案して、一部で許可されているんだろうというふうに思います。

 高速道路を路線バスが走ることによって、今おっしゃられたように、お子さんが一番後ろの真ん中に座っていたらどうするんだというようなことが現実として起こり得るならば、そこは警察庁と国交省と少し相談をする必要があるかなというふうに思っておりますので、ちょっとそこは、どういうような状況になっているのか、一度確認をしてみたいと思います。

岡本(充)分科員 立って乗車をされている方もいらっしゃいます。したがって、そこも含めて、私は、事故が起こってから対策をとるというのではまずいと思いますので、ぜひ国交省とよく相談をしていただいた上でまた御報告をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

河野国務大臣 実は、私の地元で、路線バスを高速道路で走らせろと言って、けんもほろろに断られました。ですから、そういうことも踏まえ、どういうところが危険なのか、あるいは今のやり方でしっかり担保されているのか、あるいは急ブレーキをかけたときにどうなのか、少しいろいろな観点から確認をして、御報告申し上げます。

岡本(充)分科員 続いて、資料二の変死体の取り扱い等についてお伺いしたいと思います。

 そもそも、死体取扱総数がこのところ減ってきている理由というのはどういうことなんでしょうか。

三浦政府参考人 お答えを申し上げます。

 確かに、死体取扱総数が、ここ最近、若干でございますけれども減少いたしております。

 犯罪死体の減少につきましては、これは恐らく、殺人等の認知件数が減少しているといった傾向と軌を一にしているものと認識をいたしております。

 他方、犯罪あるいは変死体ではないその他の死体についても減少しておりますけれども、これは、正直、ちょっと明確な理由というのはわかりません。

 我が国の死者数は全体としては増加をしている中で、その他の死体の扱いが減っているということにつきましては、基本的には、医者にみとられて亡くなるという死体がふえているということだと理解はしておりますけれども、取り扱いの死体の数が減っているという明確な理由については、今のところちょっとわかっておりません。

岡本(充)分科員 私は、もう一つ聞きたいのは、変死体とされている、もしくは犯罪死体とされている死体のうち、司法解剖もしくは新法解剖に付されなかった死体の数は、平成二十七年度、平成二十六年度、それぞれ何体ですか。

三浦政府参考人 警察において平成二十七年に取り扱った死体十六万二千八百八十一体のうち、犯罪死体は四百八十八体でございましたが、このうち解剖を実施したものは四百二十二体でありまして、これは全て司法解剖を行っております。また、変死体については二万二百十一体でございますが、そのうち司法解剖を実施したものが七千九百五十四体、新法解剖を実施したものが九百六十四体となっております。

岡本(充)分科員 つまり、大臣、この数字を見てもらうと、変死体と言われているもののうち、半数以上が司法解剖されていないんです。

 では、検視官の臨場死体取り扱い、臨場率七六%ですが、変死体のうち検視官が臨場死体取り扱いしなかった死体は何体ですか。なおかつ、司法解剖、新法解剖もされなかった、こうした死体は何体ありましたか。

三浦政府参考人 死体の類型ごとの臨場率を見ますと、犯罪死体については一〇〇%、変死体は九五%でございます。

 解剖していない死体の検視官臨場の状況については、数字としては把握をしておりませんけれども、臨場率九五%というところから見ますと、解剖していない変死体についても、その大部分については検視官が臨場していると認識をしているところであります。

岡本(充)分科員 時間もないので、大臣、もうまとめに入らなきゃいけないんですけれども、変死体とされているのに、検視官も行かない、司法解剖も新法解剖もされていないものがないとは言えないというのが今の答弁なわけですよ。

 一方で死体の取扱件数は減っているという状況の中で、私は、犯罪性があるものを逃してはならないのではないかという観点から、今のこの数字の統計を見ると、若干の危惧を抱くということでありまして、これも、大臣、全部やる、なかなか大変だと思います、正直。時間もかかると思います。

 きょうはちょっと質問できませんでしたけれども、恐らく、死体があることを知ってから解剖に至るまでに一定程度時間がかかっていると思います。そういったようなことの中で、要するに、犯罪性のあるものを漏れなくキャッチする方法があるのか、ぜひ検証してもらいたいと思います。

 そういう意味で、私も大変強く関心を持っておりますので、引き続きその検証結果等も教えていただきたいと思います。最後に大臣のお話をいただいて、終わりたいと思います。

河野国務大臣 犯罪性のあるものについては、やはりきちんと臨場されるべきだと思いますし、必要な解剖というのは行われなければならないというふうに思いますが、一方で、人員にも限りがありますし、臨場率も少しずつではありますが上がってまいりましたので、今の状況でそうしたことが起きていないかどうか、そこはきちんと注視してまいりたいと思います。

岡本(充)分科員 終わります。

平沢主査 これにて岡本充功君の質疑は終了いたしました。

 次に、岡下昌平君。

岡下分科員 自由民主党の岡下昌平でございます。

 まず、委員長を初め事務局の皆様方、きょうは大変長時間お疲れさまでございます。いよいよ私、最後の質問者でございますので、今しばらくおつき合いをいただきたいと存じます。

 私の方から警察関連、何項目か質問をさせていただきたいと存じます。

 ことしは伊勢志摩サミットが開かれます。五月二十六日そして二十七日、首脳会議が伊勢志摩にて開催され、また、その関連する会合が日本各地で開催されることとなっております。四月十日には外務大臣会合が広島で行われまして、それを皮切りに九月二十四日の交通大臣会合まで開催されることとなっております。また、二〇二〇年には東京オリンピック・パラリンピックが開催されるということでございます。したがって、警察の体制を強化する必要があると考えております。

 リオデジャネイロのオリンピック、ことし八月五日から十七日間の日程で開催されますけれども、治安が非常に悪くて、現在、外務省の海外安全ホームページ上でもレベル1、十分注意してくださいということが紹介されている現状でございます。

 連邦警察も麻薬などの取り締まりなどを強めておりますけれども、強盗などがふえて、治安が決してよくなっているような現状ではございません。先日行われたリオのカーニバル期間中も、日本人の被害の強盗事件が連続発生していて、国際的にもオリンピックの開催が危ぶまれているという現状ではないかと存じております。

 一方、我が国では、昨年二〇一五年の訪日外国人旅行者数は一千九百七十三万人、前年比四七・一%増、また、クルーズ船による外国人入国者数は、昨年は百十一万人となっておりまして、二〇二〇年の目標の百万人を五年前倒しで達成したということでございます。

 その要因は何かといろいろと考えてみますけれども、やはり、我が国では治安がしっかりと保たれているということへの安心感が訪日客をさらに急増させていると言っても決して過言ではないと思っております。

 安心して外国人の方が我が国で観光ができて、日本をまた訪れたいと思っていただくことがさらなるインバウンドの取り込みにつながると思いますし、その逆、我が国の、日本国民にとっても、外国人が多数訪日される、そういったときに、治安がしっかり保たれているということが重要になってくる、このように考えております。

 そこで、お尋ねをいたしますけれども、まず、サミット、オリンピック、あるいはインバウンド等に対して、警察庁としてどのような治安強化対策を講じようとされているのか、お聞かせをいただきたいと思います。

村田政府参考人 お答えをいたします。

 平成十五年以降、刑法犯認知件数は連続して減少しているところでございまして、犯罪情勢は、数字上は改善の兆しが見えるところでございます。

 しかしながら、伊勢志摩サミットや二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を控えまして、サイバー犯罪、サイバー攻撃や国際テロ等の新たな脅威は増大しており、これに対する新たな対応が必要となっております。

 警察といたしましては、こうした情勢を踏まえ、テロ対策に万全を期すとともに、平成二十五年十二月に閣議決定された「世界一安全な日本」創造戦略に基づき、世界一安全な国日本の実現に向け、関係省庁、地方公共団体、地域住民等と連携しつつ、引き続き治安対策に着実に取り組んでまいる所存でございます。

岡下分科員 治安の維持のためには、やはり警察官の増員が今後も必要でありますし、まずはその定員をふやすことが何よりも重要である、私はそのように考えております。

 国家公安委員会の定員は行政機関の職員に関する法律で定められておりますけれども、平成二十六年七月二十五日に国の行政機関の機構・定員管理に関する方針が閣議決定されました。各府省の定員の合理化につきましては、平成二十七年度以降、五年ごとに基準年度を設定し、府省全体で、対基準年度末定員比で毎年二%、これは五年で一〇%以上を合理化することを基本方針とすることになっております。

 そこで、まず伺いたいんですけれども、平成二十八年度の警察庁の定員は今どのようになっているのか、お聞かせください。

村田政府参考人 お答えいたします。

 二〇二〇年のオリンピック・パラリンピック競技大会を控える中、国際テロの脅威が現実のものとなるなど厳しい治安情勢にございます。

 昨年七月に内閣総理大臣が決定いたしました平成二十八年度内閣の重要課題を推進するための体制整備及び人件費予算の配分の方針においては、テロ対策等を含めた治安の基盤強化に取り組むこととされているところでございます。

 平成二十八年度の予算案におきましては、警察庁職員について、例えば、国際テロ対策の強化として七十六人、サイバー空間の脅威への対処能力の強化として十八人、生活の安全を脅かす犯罪対策等の推進として二十人等、百二十八人の増員が盛り込まれるとともに、定員合理化数は七十四人とされており、その純増数は五十四人となるところでございます。

岡下分科員 今、純増数五十四名、これは、今後さまざまなイベントを控えている我が国におきましては、やはり少し少ないのではないかなと思います。

 それでは次に、地方警察官についてお尋ねをいたしたいと思います。

 地方警察官の定員は条例で定めますけれども、警察法五十七条第二項におきまして、政令で定める基準に従わなければならないとなっております。まず、その仕組みについて御説明をお願いいたします。

村田政府参考人 先生おっしゃるとおり、地方警察官の定員は、警察法第五十七条第二項において、条例で定めることとされるとともに、その定員は政令で定める基準に従わなければならないとされております。

 したがいまして、地方警察官の増員につきましては、政令である警察法施行令を踏まえ、都道府県においては警察官の定員を定める条例が改正されることにより措置されるものでございます。

 なお、警察法施行令において定められた定員に要する経費のうち給与費等については、地方財政計画に盛り込まれ、地方交付税交付金として都道府県に対して措置されるものと承知しております。

岡下分科員 それでは次に、昨年二〇一五年の全国と大阪の地方警察官の政令定員と条例定員はどのようになっているのか、お聞かせをいただきたいと思います。

村田政府参考人 お答えをいたします。

 平成二十七年度の全国の政令定員は二十五万三千四百六十人であり、条例定員は二十五万七千九百七十八人でございます。同様に、平成二十七年度の大阪府警察の政令定員は二万八百十八人であり、条例定員は二万一千三百三十八人でございます。

岡下分科員 確かに、二〇〇八年、当時知事に就任された橋下さんですけれども、警察官を増員するどころか、財政改革の一環として警察官の定員削減案を打ち出されたんです。大阪府警側は治安悪化を招くということで猛反発をされて、この削減案は見送られたという経緯がございますけれども、しかし、そういった削減をするぞというプレッシャーの中でさまざまな問題が別の要素で出てきてしまって、結果的に犯罪発生件数等々を抑制することには一切つながらなかった、そういう現状がございます。

 また、平均給与等々を見てみましても、大阪府におきましては、平成二十一年は減額措置等々で全国で最下位、平成二十五年には四十五位と、徐々に最近は上がりつつございますけれども、結果、こういった締めつけはするけれども、治安の改善には至ってこなかったという経過がございます。

 そこで、平成二十八年度の地方警察官政令定員の増員につきましてどのようになっておりますでしょうか。大幅増員につながっていますでしょうか。お答えください。

村田政府参考人 お答えいたします。

 ストーカーやDV事案や特殊詐欺を初めとする女性や高齢者が被害に遭う犯罪が増加しているほか、国際テロの脅威に直面するなどの厳しい情勢を踏まえまして、平成二十八年度予算においては全国で地方警察官九百九十四人の増員が盛り込まれているところでございます。

岡下分科員 今、九百九十四名の増員と聞くと非常に数は多く感じられますけれども、しかし、これは全国に配分されるということになります。となりますと、やはりまだまだ数は少ないということを指摘させていただきたいと思います。

 次に、警察基盤の充実強化についてお尋ねをさせていただきたいと思います。

 平成二十八年度の警察基盤充実強化の予算案は約三百三十億円、そして、警察活動の拠点施設の整備費に約百六十八億円。内訳を見ますと、警察活動の拠点となる警察本部あるいは警察署等を整備するとともに、機動隊庁舎、警察学校等の建設、修繕を実施していくこととなっております。

 そこで、警察署の建てかえ予算は実際幾らであって、それがまた何カ所あって、新設も何カ所あるのか、そしてまた地域はどこなのか、お答えをいただきたいと思います。

村田政府参考人 お答えをいたします。

 平成二十八年度予算に計上しております都道府県警察施設整備費補助金のうち、警察署の整備に係る予算額は六十五億五千万円でございます。また、これら警察署の整備事業の総数は三十八署でございます。そのうち、新設の警察署は、いずれも仮称でありますけれども、茨城県の神栖警察署、新潟県の新潟東区警察署、佐賀県の佐賀南警察署、熊本県の熊本合志警察署の四署となっております。

岡下分科員 それでは、建てかえあるいは新設の費用の地方と国の比率はどのようになっていますでしょうか。お答えください。

村田政府参考人 お答えをいたします。

 警察法三十七条第三項並びに警察法施行令第三条第一項、第二項の規定に基づきまして、建築工事費について、所定の基準により算出した所要額の十分の五を補助しておるところでございます。

岡下分科員 先ほどの御答弁で、新設の場所が四カ所、茨城県神栖、それと新潟、佐賀、熊本ということでございました。

 確認させていただきたいんですけれども、地元の都道府県から実際に要望があれば、警察署新設に向けて予算を確保していただけるのでしょうか。お答えください。

村田政府参考人 お答えをいたします。

 関係する都道府県警察から警察署の整備事業に係る補助金の要望を受けまして、二十八年度の事業実施に見合う所要の補助金予算を措置したところでございます。

岡下分科員 ということは、都道府県から要望があれば予算措置をされるということでよろしいですね。ありがとうございます。

 それでは、先ほどの神栖警察署の件を実は茨城県警の方にお伺いいたしました。茨城県の神栖署の新設の署員は百六十名でありまして、建物の工事費が約十一億円、平成二十九年の四月、来年の春開署予定となっております。

 鹿嶋署は、今現在、鹿嶋市と神栖市、この二つの市を管轄されておられまして、鹿嶋市の人口が約六万六千人、神栖市は約九万四千人ということになっております。また、平成二十七年の刑法犯罪総数が、鹿嶋市が五百四十三件、そして神栖市は千百七十四件となっております。

 今申し上げた点を踏まえまして、私の地元堺市中区への警察署の新設要望についてお伺いをしたいと思います。

 堺市は、人口八十四万人で、七つの行政区に区分される政令指定都市であります。私の選挙区は、西区、人口十三万五千人、中区は人口十二万五千人、そして南区が人口十四万七千人、この三つの行政区で成っております。

 区別の刑法犯罪認知総数は、二〇一五年では、西区は千八百四十二件、中区は千六百七十一件、南区は千六百九十三件であります。二〇一一年の人口十万人当たりの街頭犯罪認知件数では、大阪は全国ワーストワンです。堺市の七つの行政区の中では堺市中区がワーストワンとなっております。

 したがって、堺市は、二〇一二年から三カ年、地域安全対策重点推進事業を行い、市民主導で、地元自治連合会の皆様方の御協力のもと、さまざまな治安維持活動に取り組んでいただいております。

 例えば、犯罪の発生場所や発生時間帯を分析しまして効果的な防犯パトロールを行っている。あるいは、防犯カメラの設置や防犯灯、生活道路の照明を増設している。あるいは、公園などを点検し、見通しの悪い箇所を改善していく。あるいは、ごみの清掃や落書き消しなど、犯罪が発生しにくいまちづくりに取り組んでいただいております。これらは全て市民主導で頑張っていただいておりまして、一定の成果は上げていただいておりますけれども、やはりこういった活動には限界がございます。

 先ほど申し上げましたけれども、南区には南堺警察署がございます。そして、西区には西堺警察署がございます。しかし、人口十二万五千人もの中区には警察署がなくて、西区の西堺警察署が、西区と中区、この両方の区を所管されております。

 西区、中区の人口を足しますと約二十六万人です。刑法犯罪件数は合わせて約三千五百件。やはり、一つの警察署ではなかなかカバーし切れないのではないかということを以前より大阪府議会におきましても指摘されてきた次第でございます。また、住民からも、堺市中区にぜひ警察署を新設していただきたいとの要望活動を長年にわたり続けていただいております。先ほど御紹介させていただいた茨城県神栖に比べても、人口もそして犯罪件数もずっと多いのが堺市中区の現状でございます。

 そこでお尋ねしますけれども、堺市中区への警察署の新設は、警察官の確保やほかの地域との調整あるいは予算の折衝等、いろいろ大変な課題が山積していると思いますけれども、今申し上げた現状を鑑みて、大阪府から要望が出れば前向きに検討していただけるのでしょうか。お答えいただきたいと思います。

村田政府参考人 お答えをいたします。

 今の仮定のお話について回答するのは大変困難でございますけれども、一般論として申し上げれば、当庁といたしましては、新設か否かというのにかかわらず、各都道府県において実施される警察署整備事業につきまして、あらかじめ事業計画等を確認の上、所要の補助金を措置するということにしております。

岡下分科員 堺市中区では、ここ最近、八件の凶悪犯罪が発生しています。二十五年には青酸化合物を服用させた殺人事件、昨年はコンビニで強盗事件が発生いたしております。

 したがって、堺市では自治会や住民の皆様方と力を合わせて、平成二十一年には四万九千五百五十三筆、平成二十四年には六万四千二百十四筆、平成二十六年には七万二千二百二十一筆の警察署新設のための署名活動を行って、これは大阪府警の方へも要望しております。

 また、堺市は、堺市中区役所の隣に約三千平米の警察署新設用地を既に確保しておりまして、地元にとって二十年来の悲願である警察署の新設を待ち望んでいるところでございます。

 先ほどの質問で、国は、地元自治体から要望があれば前向きに検討する用意があるという御答弁をいただいたと思います。

 重要な点なので、最後にもう一度確認をさせていただきたいんですけれども、これほど基礎的自治体が頑張って、そして地元の堺市の住民とともに警察署の新設に向けて地道な活動を続けていらっしゃるにもかかわらず、今日までその予算措置がなされていないということは、これまで大阪府が具体的な予算要望をしてこなかったという理解でよろしいのか。お答えください。

村田政府参考人 お答えをいたします。

 平成二十八年度の予算におきましては、議員のおっしゃった中堺警察署の新設事業に係る補助金の要望は、大阪からは出なかったというふうに承知をしております。

岡下分科員 明確な御答弁ありがとうございます。

 地元市の二十年来の要望というものを今日までまだ大阪府が一切上げてきていないという現実を、今御答弁いただいて、よく理解できた次第でございます。

 また、そのほかに、大阪府は、昨年の十一月に、大阪府ファシリティマネジメント基本方針というものを策定いたしております。これは、大阪府公共施設等総合管理計画というものでございまして、いわゆる公共施設の新設を原則認めないということをここに明記した、そういった基本方針を策定しております。これは知事部局が策定しておるわけであって、知事の指示のもとこういった動きがございます。

 しかし、大阪府はそのような公共施設の新設はしないということを明記しましたけれども、基礎自治体は求めているわけであって、基礎自治体の堺市が今、悲願を達成するべく、住民の皆様方の要望を聞きながら地道に活動している姿勢というものをぜひ御理解いただきまして、国の方といたしましても、堺市の取り組み、現状というものをしっかりと御理解いただいて、大阪府に促すような、そういった御協力をいただきたいと切にお願いを申し上げて、私からの質問をこれにて終わらせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

平沢主査 これにて岡下昌平君の質疑は終了いたしました。

 これにて本分科会の審査は全て終了いたしました。

 この際、一言御挨拶申し上げます。

 分科員各位の御協力を得まして、本分科会の議事を終了することができました。ここに厚く御礼申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午後八時二十八分散会


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