衆議院

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第2号 平成13年3月2日(金曜日)

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平成十三年三月二日(金曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 宮本 一三君

      塩川正十郎君    阿久津幸彦君

      海江田万里君    武正 公一君

      平岡 秀夫君    水島 広子君

      若松 謙維君    中井  洽君

      西村 眞悟君

   兼務 大島 令子君 兼務 原  陽子君

    …………………………………

   法務大臣         高村 正彦君

   財務大臣         宮澤 喜一君

   法務副大臣        長勢 甚遠君

   外務副大臣        衛藤征士郎君

   外務副大臣        荒木 清寛君

   財務副大臣        村上誠一郎君

   法務大臣政務官      大野つや子君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    山崎  潮君

   政府参考人

   (公安調査庁長官)    木藤 繁夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   飯村  豊君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 竹内  洋君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 飯島 健司君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   丹呉 泰健君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局総務課

   生活習慣病対策室長)   高倉 信行君

   政府参考人

   (国土交通省鉄道局次長) 石川 裕己君

   参考人

   (日本たばこ産業株式会社

   代表取締役社長)     本田 勝彦君

   法務委員会専門員     井上 隆久君

   財務金融委員会専門員   田頭 基典君

   予算委員会専門員     大西  勉君

    ―――――――――――――

分科員の異動

三月二日

 辞任         補欠選任

  海江田万里君     武正 公一君

  平岡 秀夫君     阿久津幸彦君

  若松 謙維君     太田 昭宏君

  中井  洽君     黄川田 徹君

同日

 辞任         補欠選任

  阿久津幸彦君     水島 広子君

  武正 公一君     海江田万里君

  太田 昭宏君     上田  勇君

  黄川田 徹君     都築  譲君

同日

 辞任         補欠選任

  水島 広子君     平岡 秀夫君

  上田  勇君     若松 謙維君

  都築  譲君     西村 眞悟君

同日

 辞任         補欠選任

  西村 眞悟君     土田 龍司君

同日

 辞任         補欠選任

  土田 龍司君     中井  洽君

同日

 第一分科員大島令子君及び原陽子君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十三年度一般会計予算

 平成十三年度特別会計予算

 平成十三年度政府関係機関予算

 (法務省及び財務省所管)




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     ――――◇―――――

宮本主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。

 平成十三年度一般会計予算、平成十三年度特別会計予算及び平成十三年度政府関係機関予算中財務省所管について、政府から説明を聴取いたします。宮澤財務大臣。

宮澤国務大臣 平成十三年度一般会計歳入予算並びに財務省所管の一般会計歳出予算、各特別会計歳入歳出予算及び各政府関係機関収入支出予算について御説明申し上げます。

 まず、一般会計歳入予算額は、八十二兆六千五百二十三億七千九百万円となっております。

 このうち主な事項について申し上げますと、租税等は五十兆七千二百七十億円、雑収入は三兆二千百六十八億一千九百万円、公債金は二十八兆三千百八十億円となっております。

 次に、当省所管一般会計歳出予算額は十九兆三千七百二十二億一千九百万円となっております。

 このうち主な事項について申し上げますと、産業投資特別会計へ繰り入れは一千五百三十七億一千六百万円、国債費は十七兆一千七百五億三千四百万円、政府出資は三千百六億二千万円、公共事業等予備費は三千億円、予備費は三千五百億円となっております。

 次に、当省所管の各特別会計の歳入歳出予算について申し上げます。

 造幣局特別会計におきましては、歳入、歳出とも三百二十五億六千三百万円となっております。

 このほか、印刷局等の各特別会計の歳入歳出予算につきましては、予算書等をごらんいただきたいと存じます。

 最後に、当省関係の各政府関係機関の収入支出予算について申し上げます。

 国民生活金融公庫におきましては、収入二千九百八十九億二百万円、支出三千九十二億九千七百万円、差し引き百三億九千五百万円の支出超過となっております。

 このほか、住宅金融公庫等の各政府関係機関の収入支出予算につきましては、予算書等をごらんいただきたいと存じます。

 以上、財務省関係の予算につきまして、その概要を御説明申し上げました。

 なお、時間の関係もございまして、お手元に配付しております印刷物をもちまして詳細な説明にかえさせていただきたいと存じますので、記録におとどめくださるようお願いいたします。

 よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。

宮本主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま宮澤財務大臣から申し出がありましたとおり、財務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

宮本主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

宮本主査 以上をもちまして財務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

宮本主査 この際、分科員各位に申し上げます。

 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。

 なお、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。阿久津幸彦君。

阿久津分科員 私は、民主党の阿久津幸彦でございます。

 本日は、本当にお忙しい中、宮澤財務大臣を初めといたしましてJTの本田社長様にもおいでいただきまして、本当にありがとうございます。

 それでは、私の質問を始めさせていただきます。

 国がたばこ産業にどこまで関与すべきかという問いは、基本哲学にかかわるだけに、まことに悩ましい問題でございます。経済的規制はできるだけ緩和し、社会的規制については原則として維持強化するというのが私の基本哲学です。しかし、たばこの場合、国際再編への対応を考えれば規制緩和の方向でしょうし、健康問題を考えるなら、もちろん規制強化となります。

 そんな折、本年一月三十一日付の日経新聞にこんな記事が載りました。JTの経営やたばこ事業への公的関与のあり方などを諮問する財政制度等審議会のたばこ事業等分科会が、JT株式の政府保有比率を現在の三分の二から引き下げる方向で検討に入ったとのことです。

 そこで、国とたばこ行政のあり方について、何点かお伺いしたいと存じます。

 まず、宮澤財務大臣にお尋ねしたいと思います。

 JTは国産たばこの独占企業であることを認められておりますが、その理由といいますか、意義、目的は何でしょうか。

宮澤国務大臣 御承知のように、たばこ事業は長いこと我が国で専売事業であったわけでございますが、その後、制度が変わりまして、JTが国産たばこのいわば独占企業であるということでございます。これは法律にそのように定められておりますが、いろいろ事情はございましょうけれども、一番根本的なところは、たばこの葉っぱの耕作者との関係でございます。

 たばこ耕作者との間の契約に基づきまして、生産された葉たばこを全部JTが買い入れるということとなっておりますが、国産たばこは国際価格に比べまして割高でございますので、そういうものを使用しなければならないといういわば契約を負っておりますJTは、国際的には競争力をそういう意味で阻害されるということになる、こういう事情から、JTに独占企業である立場を与えておる。すべては、と申しては簡単過ぎますが、一言で申せば、葉たばこ生産者との関係でございます。

阿久津分科員 どうもありがとうございます。

 たばこの葉っぱの国内価格が高いということで、それに対するある意味では見返りということで独占的なものを残しているということだと思うのですが、もうちょっと本質的な、いろいろな意味合いの中でのお話なんですけれども、例えば、医療保険や公的年金など社会保障改革を考えたときの財源といいますか、国の財政に対する重要性という意味合いはございませんでしょうか。

宮澤国務大臣 困りますと、時々たばこ価格の値上げをお願いいたすということが確かにございます。最近でも、国鉄の清算事業団と林野会計か何かの関係でいたしたことがございますから、そういうふうに利用されることは確かに過去においてございました。

阿久津分科員 どうもありがとうございます。

 それでは、JTの参考人の本田勝彦社長にお尋ねしたいと思います。

 新聞報道等によりますと、JTは政府保有株の放出によって経営の自由度を高めたい意向であると伺います。その際の中長期的なビジョンはどうなっているのか、お尋ねしたいと思います。

本田参考人 お答え申し上げます。

 昭和六十年に専売改革が行われまして、自来、我が国国内市場は大変厳しい競争が続いております。昭和六十年に民営化されまして以降、JTといたしましては、たばこ事業を中核にいたしまして大変大きな大合理化を図りつつ、経営体質の強化に努めますとともに、多角化なり国際化等を推進しながら、一企業として、継続的な成長を目指してこれまで経営努力をいたしてきたところでございます。

 先生御案内のように、昨今の経営環境、まさにグローバリズム、またボーダーレスの企業再編、IT、バイオとか、そういうものを通じます技術革新の急進展というような大変厳しい経営環境の中で、私ども、今後競合他社と戦っていくわけでございますけれども、そういう競合会社と対等の経営の自由度と申しますか、資金調達の自由度等を含めて、今後の発展のためにぜひ必要である、そういうふうに考えているところでございます。

阿久津分科員 新聞等の記事によりますと、株式交換方式による買収やストックオプション制度の導入が今までできず、手足を縛られた状態ということで、率直に言って財務省の影響力を緩和させたいのではないかというか、そういう部分の記事が載っているのですけれども、そこについてはいかがでしょうか。

本田参考人 お答え申し上げます。

 現実に、私どもの株式の政府保有割合の規定がございまして、本則二分の一、附則で三分の二ということになっていますが、平成六年に上場されまして、平成八年に三分の一すべて売却済みとなっています。

 そうなりますと、新株の発行もできませんし、お国の方が増資したときに三分の二お買いいただければそれは守るということはできますけれども、事実上は転換社債も出せない、株交換もできない、そういうような状況になっておりますので、その政府保有規定につきましては、今申し上げました資金調達の自由度が増すような方向でぜひ御検討いただきたいということで今お願いいたしているところでございます。

阿久津分科員 続けてJTの本田参考人にお伺いしたいと思うのですが、JTは現在、医薬品、食品部門への事業多角化を進めております。たばこ事業、医薬品、食品事業の経営状況はどうなっておりますでしょうか。

本田参考人 お答え申し上げます。

 私どもたばこ事業を中心に懸命の努力をいたしておりますが、たばこ事業につきましては、あくまでも大人の嗜好品でございますので、成年人口という問題が背景にございます。

 御案内のように、日本の場合には二〇〇九年が成年人口のピークになっている、そういう中で、たばこ事業を強化するためにも、また、私どもの会社の経営基盤を強化するためにも、いわゆる多角化というものは必要であろうということで、現在私どもは、食品事業と医薬事業を中心に展開を図っているところでございます。

 両事業とも本格的に投資を始めましてからまだ日が浅いということもありまして、現段階ではまだ投資段階でありますけれども、できるだけ早い段階で利益の源泉というような事業が育つように、今懸命の努力をいたしているところでございまして、食品事業につきましては、来年度ぐらいには営業利益ベースでの黒転を目指してきておりますし、医薬につきましても、できるだけ早くたばこ事業の助けになるような事業に育つように、今懸命の努力をいたしているところでございます。

阿久津分科員 本田社長も生え抜き社長として本当に一生懸命やっていらっしゃるので、私も余りいじめるつもりはないのですけれども。

 平成十一年度の有価証券報告書によると、医薬では、売上高六百七十七億円に対して営業利益は百十四億円の赤字、食品は、売上高千九百五十億円に対して営業利益は百四十五億円の赤字、ちょっと数字に差があるかもしれないのですけれども、そういうふうに赤字が拡大傾向にあって、多角化が実際のところ失敗しているのではないかという懸念があるのですけれども、その点についてはいかがでしょうか。

本田参考人 今先生御指摘のように、平成十一年度の医薬事業の売上高は六百七十七億円、食品事業は千九百五十億円、営業利益は、医薬で百十四億円の赤、食品事業は百四十五億円の赤でございますけれども、先ほど申し上げましたように、現在投資フレームの段階でございまして、食品につきましてはほぼ利益構造のめどが立ち、来年度ぐらいには営業利益を、いわゆるEBITDAベースでの黒転を来年は目指します。

 医薬は現在、どちらかといいますと、私どもの医薬は世界に通用するオリジナル新薬ということで、今研究開発にかなり力を入れております。そういう意味で、しばらく投資が続くとは思いますが、これも二〇〇五年度には黒転を目指すべく、それぞれの事業についてマイルストーンを置きながら事業を進めているところでございます。

阿久津分科員 UBSのアナリシスによると、医薬品事業の開発進捗状況もちょっとおくれぎみであるという指摘があるんですね。それで、景気全体もかなり厳しい状況ですから、すぐに何でも結論を出せというわけにはいかないとは思うのですけれども、経営の自由度を高めたいという御意思はわかるのですけれども、実績から考えて私はまだちょっと時期尚早ではないかというふうに思っているのです。

 そこで、宮澤財務大臣にお伺いをしたいと思います。

 財務省は現在、JT株の政府保有比率を引き下げることを検討しているということなんですけれども、その理由は何でしょうか。引き下げの程度、それに伴うほかの規制措置の変更など、現状ではどのように考えていらっしゃるのか、お答えいただければと思います。

宮澤国務大臣 冒頭に申し上げましたように、葉たばこ耕作者との関係においてJTが独占事業であるということが主たる理由であると申し上げたわけでございますから、JTの方で、どうも政府がたくさんの株を持っているのはうっとうしくてしようがないと言われることは私はもっともだと思っております。したがって、耕作者との関係さえ何とかできれば、何も政府がたくさんの株を持っている必要はないだろうとJT側が思われるのは無理もないと基本的には私は思っておるわけです。

 いずれにしても、この専売事業というのは終わりまして十五年がたつわけでございますので、この際、JTがいかにあるべきかといったようなことは一遍考え直してみた方がいいと思いまして、財政制度審議会に対してことしのお正月に私から、JTの経営のあり方、たばこ事業への公的関与のあり方等々、諸問題をひとつお考えいただきたいということで諮問をいたしたところでございます。

阿久津分科員 そうしますと、新聞なんかではもう引き下げの方向で検討に入っているというふうには出ているのですけれども、その辺については、一応まだそういう方向性が必ずしも明確に出たわけではないというふうに御理解してよろしいのでしょうか。

宮澤国務大臣 JTの言っておられることは私はもっともだと思っておりますものですから、それならば、ついでにもう十五年も専売から制度がたちましたので、全体の問題をひとつ審議会で御検討いただきたいと思っておりますので、その結果として委員がおっしゃいますような答申が出てまいりますれば、それは基本的には私は十分尊重して考えなければならないだろうと思っております。

阿久津分科員 それでは、JTの本田参考人の方に再びお伺いしたいと思います。

 JTは、国内たばこの成長が望めないことを背景に、RJRナビスコの海外部門を九千四百億円で買収しました。しかし、これは、買収資金の償却が重荷になるばかりではなく、JTが国際訴訟のリスクを負ったことになるというふうに私は考えているんですけれども、このリスクについて調査検討をしておりますでしょうか。さらに、リスクを軽減するための方策を何か考えられていらっしゃいますでしょうか。

本田参考人 お答え申し上げます。

 私ども、大変に今たばこ業界というのはグローバルで、大変熾烈な再編と申しますか、起こっておりまして、私どもJTといたしましても、たばこ事業を中核にして成長するためには、国際化なり規模メリットの確保というのは必須条件であるということで、実は、先般RJRナビスコの海外部門を買収いたしたわけでございます。

 その買収に当たりましては、私どもも、まさに訴訟リスクというものについては慎重に検討いたしました。RJRナビスコのアメリカを除いて買ったのもそういう意味もございます。アメリカ以外の海外事業を買ったということもあります。

 もちろん、たばこにつきましては、最近いろいろな意味での訴訟リスクというのはございます。ただ、米国以外の市場におきましては、規模にいたしましてもいろいろな意味で大きなあれにはなっておりませんが、いずれにしても、訴訟リスクがあることは十分に私どもも考えておりますので、それについては適切に対処していきたいというふうに考えております。

阿久津分科員 私は、正直なところ、この九千四百億円という値段も、のれん代としてはちょっと高いんじゃないかというふうに思っているんです。アメリカは確かに訴訟大国というのですか、何でもかんでもやたら訴訟が起こるんですけれども、ただ、その傾向は世界に広がっております。

 それで、これは質問登録していないのですが、アメリカでのたばこ関連訴訟の総額は幾らぐらいか、何か数字は御存じでございますでしょうか。

本田参考人 アメリカでの訴訟件数、例えばフィリップ・モリスという大会社がございますけれども、数百件の訴訟を受けております。全体の賠償金額はどうかということについては、ちょっと私は承知いたしておりませんけれども、アメリカでは大変多いことは事実でございます。

 ただ、アメリカにおきましても、訴訟でメーカー側が最終的に敗訴した例は今までありません。かなり頻発しておりますけれども、最終的にメーカーが敗訴したということはありません。

 以上です。

阿久津分科員 私は、新聞、テレビ等のニュースでの記憶で、ちょっと数字が間に合わなかったんですけれども、目の玉が飛び出るような金額の訴訟をアメリカではたばこ業者に対して向けられて、こういう事態になったら果たして何とかなるんだろうかという心配を持っております。私は、その辺をよく調べていただいて、ぜひ検討していただきたいというふうに考えております。

 それで、場合によっては損を覚悟で一刻も早くRJRを売ることも視野に入れながら、慎重に調べていただきたいなというふうに思っております。

 続けてお伺いしたいと思います。

 国内の訴訟リスクについて、今後どう推移するとお考えでしょうか。新規の対策は何か考えられておりますでしょうか。

本田参考人 国内におきましても、過去数件の訴訟を私ども受けております。現在は二件ございます。過去の訴訟におきましてはすべて勝訴いたしていますが、現在二件起こっております訴訟につきましても、私ども適切に対応してまいりたいというふうに思っております。

阿久津分科員 グローバル化ということは、必ずしも、私たちの思いどおりというか日本人の常識が通じるものではないというふうに思っているんですけれども、適切なメッセージを訴訟対策も含めて送るということで、今、「吸いすぎに注意」というメッセージをパッケージに印刷されていると思うんですけれども、欧米のように、直接、死への警告というか、注意から警告ですね、死への警告メッセージを入れるべきではないかと思うのですが、そのような検討はなされているんでしょうか。あるいは、どうお考えでしょうか。

本田参考人 今、私ども日本におきます喫煙についての表示は、注意表示になっております。これは、たばこ事業法に沿いまして、大蔵省令で、審議会でいろいろと御議論の上でこういう表示にしましょうということで、私どもそれを守っているわけでございます。

 喫煙と健康問題につきましては、まさに身体的健康につきましてはリスクの可能性があるということは私どもも承知しておりますけれども、ただ、現在の科学的、いろいろな意味での知見からいきまして、日本における文言というのは適切な文言ではないかというふうに私は考えております。

阿久津分科員 それでは、厚生労働省の参考人の方にお伺いをしたいと思うんですけれども、喫煙人口の抑制、特に未成年者の喫煙防止の徹底が望まれておりますが、現在どのような対策を考えられていらっしゃいますでしょうか。

高倉政府参考人 お答え申し上げます。

 厚生労働省におきましては、現在、国民の健康上の重要な課題である生活習慣病の一次予防に重点を置きました、二十一世紀における国民健康づくり運動、いわゆる健康日本21を推進しているところでございますが、この中で、たばこに関する目標の一つとして、未成年者の喫煙をなくすということを掲げているところでございます。

 この目標の実現のため、当省におきましては、昨年五月に、未成年者の喫煙防止をテーマとして、平成十二年世界禁煙デー記念シンポジウムを開催したほか、パンフレット、インターネット等を活用して、未成年者を含む国民に広く、喫煙による健康影響に関します正確な情報提供に努めているところでございます。

 また、昨年十二月には、警察庁、大蔵省と共同で、たばこ販売業界に対しまして、未成年者の喫煙を防止するため、対面販売の徹底等の注意喚起を内容とする通知を発出したところでございます。

阿久津分科員 私は、シンポジウムはどうかわからないですけれども、対面販売の徹底というのは効果が上がってくるというふうに思うんですね。

 それで、例えば、その裏側の部分なんですけれども、自販機の規制については何か考えられていらっしゃるかどうか。これは厚生労働省だけの問題でもないかもしれないんですけれども。

 それから、欧米並みのあらゆる媒体でのCM規制などは考えていないでしょうか。

 といいますのは、今、本当に自由にコマーシャルを流せるのは日本だけというふうに私は理解しているんですけれども、広告代理店のカモに日本がなっているということも聞いています。私は、未成年者の喫煙をなくすためには、格好よいイメージを与えない努力というかキャンペーン、大変なスモーカーの先生もいらっしゃるんですが、そういう努力も必要ではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

飯島政府参考人 お尋ねの点でございますが、まず自動販売機の点でございます。これにつきましては、実際に販売の許可をいたします際に、必ず店舗に併設する、これは、お買いになる方をお店の方が確認できる、こういう趣旨で必ず店舗に併設していただくというようなこと、あるいは、購買者が未成年者であると推察される場合には喫煙者について確認していただくというようなこと、このような措置を販売の許可に際しましては講じておるところでございます。

 さらに、業界の自主規制といたしまして、未成年者喫煙防止を趣旨といたしました表示を行う、こういったことにつきまして徹底を図っておるところでございます。

 また、広告につきましては、同様、これは業界の自主措置でございますけれども、テレビ、ラジオ等々におきます製品広告は行わない、あるいは未成年者を対象とする製品広告、販売促進活動は行わない、こういったことについて取り組んでいただいておるところでございます。

阿久津分科員 私は、御推察のとおりたばこは吸わないんですけれども、たばこを吸うのは時代おくれというふうに考えております。ただ、やはりどうしても禁煙席がまだ主権を持っていないというふうに思っておりますので、その辺についても御配慮をいただければと思っております。

 たばこ税の税率を上げることによって価格の値上げが生じれば、まず税収がふえるであろうし、たばこ価格の上昇によって未成年者の喫煙人口も減るというふうに私は考えているんですけれども、たばこ価格の上昇と喫煙人口との増減のシミュレーションを行ったことはありますでしょうか。また、特に年齢層別の値上げによる増減分析をされたことがありましたら、これはJTの参考人なんでしょうか、お答えいただければと思います。

本田参考人 お答えを申し上げます。

 今先生の御指摘のような形での分析は行っていません。私ども、毎年一万数千人の成人の方々に調査をいたしまして、喫煙者率調査というのを行っていますが、増税、定改後に喫煙者率が下がっていることは事実でございます。

阿久津分科員 価格と需要の関係のシミュレーションはどこの企業でもやっていると私は思うんですけれども、ぜひその辺もきちんとしたデータをそろえていただきたいなというふうに思っております。それで、未成年者の喫煙を何とかいろいろな方向から抑えていきたいというふうに思っております。

 財務大臣の方にまたお伺いしたいのですが、税収がふえれば未成年者の喫煙人口も減るという、たばこ価格、たばこ税の税率を上げることは一石二鳥というふうにも思えるんですけれども、たばこ税の税率をもっと大幅に上げる考えはございませんでしょうか。

宮澤国務大臣 喫煙の功罪というのは非常にわかりやすい話なものですからどなたも一家言を持っていらっしゃるので、したがって、私はその論争に加わることは御遠慮いたしますが、嗜好品だと言われている限りは、やはり好んでいらっしゃる方がいらっしゃるということでございますので、今のことについても、そういうことも考えなきゃならないと思っております。

阿久津分科員 今のお答えであるとちょっと次の質問は難しいかもしれないんですけれども、地方分権推進の立場からお伺いしたいと思うのです。

 たばこ税の税率をある程度上げれば税収増が予想されますが、その税収増分を思い切って地方に重点的に配分するために地方交付税率を引き上げることも、地方財政が逼迫する中、将来的には検討せざるを得ないというふうに思うのですが、いかがでございますでしょうか。簡単で結構ですから。

宮澤国務大臣 今、たばこ財源というのは、地方に六十何%ぐらいかな、行っているんでございますね。国よりも地方の取り分が多いようになっていますから、そういう傾向にはあるんだろうと思うのです。

阿久津分科員 時間がかなり押してきましたので、私の方からコメントを申し上げて終わらせていただきたいと思います。

 国とたばこ行政のあり方は大変難しい問題だと思います。たばこが国の数少ない財源である点、健康問題、未成年者の喫煙の問題、嫌煙の世界的な流れの問題、さらに、必ずしも経営がうまくいっていないというふうに私は今思っているんですけれども、そういう問題など、私はJT株の政府保有比率の引き下げにはある程度慎重に対処するべきではないかというふうに考えております。

 また、たばこにはある程度国が社会的規制を加えて、今後も目を光らせて、特に未成年者の喫煙については警鐘を鳴らしていかなくてはならないというふうに思っておりますが、そのことを申し述べまして質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

宮本主査 これにて阿久津幸彦君の質疑は終了いたしました。

 次に、武正公一君。

武正分科員 この分科会で質問の機会をいただくことができまして、まずもって委員長初め皆様に感謝を申し上げる次第です。

 それでは、私、昨年初当選でございますし、地方議会の方に、五年ほど県議会におりまして、いわゆる総合経済対策時に地方財政の逼迫というものを目にしてきた、そういった経験を持っておりまして、そんなところも含めて質問をさせていただきたいと思います。

 まず、昨日、バブルがはじけた後の最安値を株価が記録したということで、これについてはもう財務大臣もいろいろな機会にそれぞれの事情を申し述べておられると思います。ただ、私は、今の日本の状況がやはり危機的な状況にある。財政しかり、あるいはまた景気しかり、構造改革も進まない、あるいは不良債権の処理も進まないということで、それがやはり期末前といってもああいった株価にあらわれているんではないかなというふうに思っております。

 年初の円安、株安、いわゆる日本売り、これがあったわけでございますが、私は、昨年の十二月二十日の大臣の記者会見、予算提出後の記者会見が各紙報道されております。これについて、その真意というか、どういう意味を持っておられるのかなということでお伺いをさせていただきたいと思います。

 ちょっと引用させていただきますと、「ただ、それはそれとして、大きな歴史から見ると、これだけ大変な借金を背負っておる日本の経済ですから、私は恐らく大変な借金をした大蔵大臣として歴史に残るんだろうと思います。それはやむを得ないことであって、そのために引っ張り出されて出てきたわけだから、それはやむを得ない。」ということなんですが、この「やむを得ない」ということの言葉の真意をお聞かせいただければありがたいと思います。よろしくお願いします。

宮澤国務大臣 不況対策が始まりまして三年越しになるわけでございますが、振り返りまして、公共事業等の補正予算、財政支出でございますね、減税あるいは金融機関に対する公的資金の導入等々、まあ異例なことをやりまして、ともかくピンチは免れたということだと思います。しかも、実は昨年の秋ぐらいには民需が戻ってくるだろうと思っておりまして、企業関係は確かに戻ってまいりました。しかし、家計にそれがいつものパターンのように響いていかないということが、私にとってはやや意外でございましたが、その後きょうまで続いております。したがって、これが六五%近くGDPでございますから、なかなか成長率というものは稼げないというのが現状でございます。

 それは、恐らくは、アメリカとしてはレイオフで片づけたところを、我が国としては、やはり、労働慣行、長いこと年功序列であるとか終身雇用であったとかいうことがIT革命とともに変わっていく過程にあって、ほかに事情もありましょうが、そういうことがあるので、なかなか家計が受け切れないというのが現状ではないかと私はひそかに思っておる、これは後にならないとわかりませんが。

 ということで、ともかく家計がうまく、いわゆる国民消費が起こらないということが今の経済の一つの調子の悪い原因で、それが今おっしゃったようなことにも関係をしておると思います。

 長くなりましたが、いずれにしても、この危機を脱却するためにはこれだけの借金が現実に私は必要であったと考えていたしまして、振り返ってどこか間違っておったかというだけのまだ年限がたっておりませんので、私はそう思っておりますのですが、これはいずれにしても返却しなきゃならないものでございますし、非常に大きな金額でございますから、日本の経済と国民の支出からいえば、私は非常な心配をしておるということはございませんけれども、しかし、大変な負担を次の方々に負わせているということは事実でございますから、いかにこれが入り用であったとしても、次の方々に負担をかけてまことに相済まぬ、こういう気持ちでございます。

武正分科員 大臣は、戦後からこの日本経済の復興、そして高度成長、そしてまたバブル前のさまざまな、二次にわたるオイルショックあるいは円高不況、そういったものをもう数々くぐり抜けてこられておりますので、我々は、若い世代として、新聞やいろいろな本でそういういろいろな過去の事例をうかがい知るしかないのでありますが、ただ、先ほどいつものパターンというお話がありましたが、多分いつものパターンが通用しなくなっているのが今ではないかなというふうに私は考えるわけであります。

 では、教科書があるかと言われても、アメリカは参考にならないとすれば、やはりそれはこの日本で、さまざまな痛みを伴うことも辞せず思い切って取り組むしかないのかな、それが今の時期ではないかなというふうに考える次第であります。

 それで、心配しているか心配していないかということで、ちょっとあいまいな御表現もあったのですが、先ほどの引用の次に、また続いて引用させていただきますと、「幸いにして、不況は多分ここまで来ると脱出できて、願わくば二十一世紀にまた強い経済の日本に戻りたいと思うが、国民の理解さえあればそれはできると思うのですが、ただ、随分これは高くつきました。」と、何かこう一言一言引っ張って大変恐縮でございますが、この国民の理解ということはどのように考えればよろしいでしょうか。

宮澤国務大臣 それがこれからのことでございますが、ちょっとよろしいですか、その答えをして。

 結局、財政再建と言われますけれども、それは実は税制のことでもあり、中央、地方の行財政の再配分のことでもあり、なかんずく社会保障のこれからの問題でもありますので、どうしても財政再建をしますためには、私はシミュレーションをしなければいけない、これが同時、サイマルテニアスに、整合的に答えを出す唯一の方法だと思っておりまして、その道を今進もうとしておるわけですが、そうなりますと、結局国民が二十一世紀においてどれだけの負担をする覚悟があるか、それとの関連でどれだけの給付を求めるか、それを一義的に答えを出さなければならないということになります、最後のところは。そのことを申し上げております。

武正分科員 続いて引用させていただきますと、「モデルを作って、その中での選択を国民にお願いする。それによって、一義的な決定ができるというふうに考えるしか、どうも考え方がないと思っていて、それは恐らく経済財政諮問会議にお願いをする」云々と、「そういうことから始めるとして、さてそれを実際上動かすのは、日本経済がもう一つまだこういう状況ですから、ちょうどモデルができるころに、日本経済もそろそろ財政再建、あるいはそれらの問題を論じるところができたかなと。いつでしょうかね。来年の終わりごろなんでしょうか、」ということを去年の十二月におっしゃっておられますので、その時期が、このときの記者会見ではことしの終わりぐらいというような形で述べておられるのですけれども、このことも少し御説明いただければありがたいと思います。

宮澤国務大臣 もともと、モデルについてのノウハウは、かつての経済企画庁が持っていたわけでございますけれども、このたび新しい研究所が、アメリカから、これはアメリカに留学と申すのでしょうか、アメリカで仕事をしておられた権威を、日本人でいらっしゃるのですが、所長に迎えたこともありまして、非常に充実した研究所がスタートしましたので、せんだってそこへモデルを財政諮問会議としてお願いをいたしたわけです。

 それで、当面役に立つ程度のモデルなら大体夏過ぎにはできるだろう、こういうお返事でございました。

武正分科員 これはモデルができる時期でありまして、モデルができて、その後そのモデルを、先ほど来引用しておりますが、国民に示す。ある面、もしかして幾つかのパターンがあって、どういうパターンを選択しますかねというような形というふうに考えてよろしいのでしょうか。

宮澤国務大臣 シミュレーションをして、どのパターンを国民が選択、そのとおりでございます。

武正分科員 巷間言われるのが、参議院選挙後にそのモデルあるいはパターンという中で、財政再建、当然財政として増税というものが国民の間で危惧をされるところでありまして、そういうところも、先ほどの、家計がなかなか消費に回らないといったところも、次に来る消費税の税率のアップや、あるいは保険、年金等の保険料の上昇などを、やはり家計を預かっている主婦を中心にどうしても財布のひもが締まってしまうというところがもう今実際のところではないかなというふうに思っております。

 さて、時間もあれですから、私は、先ほど冒頭でお話ししましたが、地方の県議会を五年やってまいりまして、地方財政、特に今回この平成四年度からの総合経済対策、これを地方議会の立場から見てまいりました。

 そういった中で、この平成十三年度に、いわゆる赤字地方債というもの、特例地方債といいますが、発行が予定されております。平成十三年度から十五年までの間は交付税特別会計借り入れの償還を平成十九年度以降に繰り延べ、残余は国と地方が折半、国負担分は一般会計から繰り入れ、地方分は特例地方債、また特例地方債の元利償還金はその全額を後年度基準財政需要額に算入。

 この赤字地方債というのは通称でありますけれども、やはり赤字国債を想起してしまいまして、昭和四十年に戦後初めて発行を始めて、五十年から本格的に発行が続き、平成十三年度、国債発行残高三百八十九兆のうち百五十四兆円というのが赤字国債ということであります。

 今回のこの、赤字国債についても、当初は、文献を見ますと、これ限り、今年度限りなんだというような形で発行がされたやに拝察をしております。それがずるずると発行を続けてさきの額になってしまったということでありまして、地方の財政というものが、特に地方交付税が大きな割合を占めているために、景気の影響を受けやすい法人税などとの連動により、好況時にはふえて、また平成四年度以降不況になりましたらがくっと減る。そのために、その財政支出を維持することがたえられなくて借金を重ねてしまうということで、地方債残高も三倍近くになりました。

 そういった意味で、赤字地方債がこれからどんどんふえることが危惧されないかということが一点。

 それと、交付税特会でございますが、第二次石油危機以降に赤字がたまり始めて、地方財政対策やバブル期の税収増で一たんは大幅圧縮に成功したわけですが、先ほど言った、九四年から膨れ始めて、平成十二年度末で三十八兆円。これは、いつの日か財政状況が好転した暁には返済することになっているというふうに聞き及んでいるんですが、やはりこの赤字地方債がこれからふえていくのではないかなという危惧と、あとは、この交付税特会をいつの時点でどうやって返済するのか、これについてお伺いしたいと思います。

宮澤国務大臣 その前に、前段でおっしゃいましたことに一言申し上げますが、この財政再建に取りかかるということの一つの条件として、日本経済がまずまずプラス成長のサイクルに入ったという確認が必要だと思っておりまして、それは国の歳入がマイナスになっていくようではとてもやれないものでございますから、そのことを一つ、先ほどの御質問のところへつけ加えさせていただきます。

 それで、次の問題は、おっしゃるとおりのことでございます。

 つまり、先ほど申しましたように、財政再建をやらなければならないときには、当然、国と地方の行財政の関連、これを見直さなければならないと私は思っておりまして、根本的にやり直す。国の財政も悪うございますが、地方の財政も悪うございますので、いつまでも継ぎはぎだらけのことをやっておるわけにもいかない。

 そういうことを思っておりますものですから、そこで、なるべく隠れ借金みたいなものをこの際ふやしておきたくない。借金は借金として正直ベースでしておいた上で根本的な見直しをするということでありませんと、根本的な見直しが可能でございませんので、そこで、このたび地方特例債というものをお願いした。

 公共団体は今まで借金をしてはならぬといいますか、長い意味での公債などは、自治省としては、いろいろなお立場から考えておられなかったわけですけれども、しかし、特別会計の借金もこれは借金であって、何となくだれかの借金だと地方公共団体に思っていただくのは、やはりあなたの借金ですというふうにお考えいただかないと、再建をしていくときに本当に全部の姿が透明にならない、こう考えたわけでございます。

 したがって、国もその分だけは国債を減らしたいところですが、発行いたしました。同じ正直ベースでやろうということをいたしましたので、私どもの気持ちの中に、まさにおっしゃいますように、そんな嫌なことをさせることもないじゃないかというお気持ちはよくわかりますが、先々本当にみんなきれいにするときには、やはりこれもきちんと透明にして、その上で解決をしたい、こういう気持ちがそういう形で出ておるというふうに御理解くださいませんか。

武正分科員 あわせて、交付税の特会をどういうふうに返済していくのかということも同じくでよろしいでしょうか。(宮澤国務大臣「はい」と呼ぶ)はい。

 続いて、昨年の七月なんですけれども、その特会が民間から資金を借り入れるために行った入札結果が当時の大蔵省から公表されて、一兆円を期間六カ月で、二兆七千億円弱の応募で、年利〇・三〇八%ということを伺っております。そういった意味では、市中から調達をしていくということが始まったわけでございますが、平成十三年度の調達額が十四兆、六カ月から七カ月物ゆえ毎月二兆円。

 日経公社債情報という雑誌の本年二月五日号では、財務省の主計局の方ということで引用がありまして、責任を持って調達するということで自治省さんあるいは総務省さんを納得されたというようなことが書いてありましたが、ただ、同じくその記事には、仮に入札が今後不調に終わったときどうするんだろう、地方財政制度の信頼が揺らぐと考えるというようなコメントも出ているわけなんですけれども、ちょっとこれについての御所見を伺いたいと思います。

丹呉政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、十二年度から交付税特別会計におきましては、資金運用部の原資の状況等を踏まえまして、より幅広い資金調達を図る見地から民間借り入れを始めたところでございます。

 今年度は、借りかえを含めまして七回の入札を行い、平均して募入決定額に対して二倍程度の応募があるなど、未達なく順調に行われたところでございます。この結果、十二年度における民間借り入れは手当てをすべて完了したところでございます。

 なお、御指摘のように、仮に入札におきまして未達が生じた場合であっても、年度内に再入札を行うまでの間、財政融資資金からの借り入れにより必要な資金を確保することとしておりまして、特に問題がないものと考えております。

武正分科員 時間も過ぎておりますので、次に移らせていただきます。

 先ほど来、経済対策ということを何度も引用させていただきました。九二年からの経済対策、事業規模百三十五兆。国債発行額は、建設三十一・八五兆、赤字国債十四・三三五兆、合計四十六・一八五兆。また、減税額は十九・七兆、うち地方への影響分は合計三十一・二兆。地方負担額、単独事業を含めて二十二・三兆。減税のうち、地方の減収分が八・九兆。こういうことでございまして、先ほどのお話のように、特会借り入れを含めて百八十八兆の残高、九二年度末の七十九兆に比べて二・七倍、百十八兆の増加ということでございます。

 その背景にはやはり、補正予算債あるいは地総債など、後年度元利償還金を手厚く認めることで地方自治体に単独事業を積極的に進めさせた国の経済対策があると思われます。さらに、減税の約半分を地方自治体が背負うことで、地方財政の自立化とか健全化を目指す上からも非常に財政が逼迫してきたということでございます。

 私の埼玉県も、平成三年度で七千二百十億円の県債発行残高が平成十二年度末で二兆二千五百六十億円ということで、それこそちょうど三倍になっております。このように、地方分権時代に国の経済対策を、言葉がいいかどうかわかりませんが、無理やり請け負わなくてはならないような手法はもう限界に来ているのではないかというふうに考えますが、御所見を伺いたいと思います。さらにまた、国の減税の影響をそのまま地方が受ける、背負わなければならないというこの税の仕組み、これについてもあわせてお伺いしたいと思います。

宮澤国務大臣 幾らか申し上げたいことはございますけれども、しかし、地方単独分の公共事業をもうなかなか地方がやってくださらないという事実だけ見ましても、大変に困っていらっしゃるということはわかっておりますし、それから、国の減税分、それは確かに地方がその影響を受けておられて、しかし、その結果について国は全く知りませんと申しているわけでもない。

 いろいろありまして、申したいこともございますが、やはりこのままではとても、地方財政は国と同じように、先細りというよりはもう継ぎはぎだらけで、もとからやり直さないとだめだというふうに感じます点は同じでございますので、それで、財政改革のときにはどうしても地方も御一緒にしないといけない、こう思っておるわけです。

武正分科員 さらに、この背景には四全総、一千兆円の事業規模、それから日米構造協議、十年間で四百三十兆円、九五年度から見直しで六百三十兆円。こういうような、国で国全体の公共投資額を決めていくというやり方、地方分権といいながら、こういうやり方をいつまでも続けていって果たしてどうなんだろうかと思うのでありますが、これについて御所見を伺いたいと思います。

宮澤国務大臣 四全総も、もう少しさかのぼりますと、地方からぜひやらせろと言って殺到された時代もありまして、長い間の経緯がございますので、ちょっと申し上げたいこともあるけれども、それはまあ今言ってみてもしようがないことであって、とにかく地方財政もそういう状況にあることは事実でございますし、国とか地方とかいって他人ではございませんので、やはり一緒に全体をレビューして根本的にやり直さなきゃならないと考えております。

武正分科員 それでは、いつ財政再建に取り組むかということでございますが、大臣は先ほど、景気が、日本経済がプラスになっていくというのを条件として挙げておられました。景気が好転しないと財政再建はできないんだというお話がございましたけれども、私は、二匹のウサギはきっと同時に追い捕まえることができるんじゃないかな、やはりそれをやる気概をもう見せなければいけないんじゃないかな、待ったなしというふうに考えておりまして、特に地方財政の状況は、そういったところももろに、それぞれ地方の自治体の首長さんあるいは議会はそれをあらわしていると思うんですね。

 ですから、そのときに、地方の税財源の充実強化、これが分権推進計画でうたわれているんですが、先ほどたばこ税をもっと地方に、六割だけれどももっとという移譲についての話も阿久津委員からありましたが、例えば固定資産税などもさらに地方にもっと充実強化ということも言われておりますし、法人税の、景気の動向を受けやすいような形での地方交付税ではなくてというようなことも言われているわけです。

 地方税財源の充実強化、これは、それこそ日本経済がプラスになったり好転したりというのを待っているわけではなくて、今もうその改革を進めていけるんではないかな、それをきっと、赤字地方債をなかなか、嫌だけれどもということをおっしゃられたように、そういった税財源の充実強化、これはもう今からでも始められるんではないかなと思うのですが、御所見を伺います。

宮澤国務大臣 それは、地方の実情を御存じの上でおっしゃることは私はごもっともだと思っておりますけれども、国の財政もごらんのとおりでございます。したがって、全体の改革というものは、日本経済全体がよくなるように努めていく、その中で行うしか方法がございませんけれども、それでもやはり改革となりますればいいことばかりはない、これは国にとっても地方にとっても覚悟しておかなければならない要素だと私は思います。

武正分科員 もう時間もあれですから、最後に一つお伺いをさせていただきますが、財政構造改革法は凍結をしているわけでございますが、この法律で対GDP比三%という形でうたっております財政の赤字、これについては今の現状との乖離が甚だしいのでありますが、どのようにお考えでございましょうか。

宮澤国務大臣 モデルをつくりましてシミュレーションをいたしまして、幸いにして、全体の各エレメントがこれで仕方がない、給付とか負担とか全体の問題、国民負担ということが定まりまして、これは大変な国民の御決心を必要とする、恐らくどなたも余り喜ばれるような結果にはならないはずですが、しかし、しようがないねということが決まりましたら、今度はそれを年次的にどうやって実現していくかという問題が次に参りますので、そのときに今の問題が出てくるだろうと思っております。

武正分科員 国民に対する負担を求めなければならないということが先ほど来大臣の御答弁から出てもいるんですが、今回、宮崎のシーガイアの破綻を契機に総務委員会で調べてみましたら、六千八百の第三セクターのうち約六百以上に損失補償している。その損失補償の総額は幾らだと聞けば二兆六千億だ、各地方自治体がその六千八百にどれだけ出資をしているかといえば約二兆弱である、出資金以上の二兆六千億の損失補償もしているわけでありまして、そういったことを含めますと、やはり国民に負担を求める前にみずから省みることが多々あるといったことを最後に申し述べまして、終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

宮本主査 これにて武正公一君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして財務省所管についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

宮本主査 次に、法務省所管について政府から説明を聴取いたします。高村法務大臣。

高村国務大臣 平成十三年度法務省所管の予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 法務省は、法秩序の確保及び国民の権利保全等国の基盤的業務を遂行し、適正・円滑な法務行政を推進するため、現下の厳しい財政事情のもとではありますが、所要の予算の確保に努めております。

 法務省所管の一般会計予算額は六千百十四億三千九百万円、登記特別会計予算額は千八百二十一億八千三百万円、うち、一般会計からの繰入額が七百六十九億千八百万円でありますので、その純計額は七千百六十七億四百万円となっており、前年度当初予算額と比較いたしますと、八十六億六千九百万円の増額となります。

 何とぞ、よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。

 なお、時間の関係もございますので、お手元に配付してあります印刷物を、主査におかれましては、会議録に掲載されますようお願いを申し上げます。

宮本主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま高村法務大臣から申し出がありましたとおり、法務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

宮本主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

宮本主査 以上をもちまして法務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

宮本主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大島令子君。

大島(令)分科員 社会民主党・市民連合の大島令子でございます。

 質問に先立ちまして、先般、二月十九日から二十四日、欧州会議人権委員会のグンナール・ヤンソン氏が、日本の死刑制度に関しまして調査のために来日されました。その折には、法務省、外務省の皆様にお世話になりましたことをお礼申し上げます。そして、高村法務大臣におきましては、二十分間という懇談の機会を持っていただきました。私は、死刑廃止議員連盟の一員として同席させていただきましたことを本当に感謝申し上げております。

 では、早速質問に入らせていただきます。公安調査庁の調査権について、まず公安調査庁長官に伺いたいと思います。

 私は、昨年十月十三日から十七日まで、愛知と朝鮮をつなぐ友好のピースライン訪朝団の団長といたしまして、北朝鮮を訪問いたしました。私が団長で、計十五名が参加しました。目的は日朝友好のためです。ところが、帰国翌日の十月十八日、一緒に訪朝しました地元事務所のスタッフに、中部公安調査局公安調査官と名乗る方が、事情を聞きたいと接触をしてまいりました。翌十九日、私は公安調査庁調査第二部長に問いただしたところ、事実を認めました。

 この接触は何のために、どのような権限に基づいて行われたのか、お伺いいたします。

木藤政府参考人 具体的な調査の経緯とか手段、方法について明らかにすることは、当庁の業務に支障を来しますので、従来から答弁を差し控えてまいっているところでございますが、今回の件につきましては、先生からの具体的なお尋ねでございますので、お答えさせていただきます。

 お尋ねの件につきましては、当庁の中部公安調査局の調査官が、昨年十月十八日に、北朝鮮を訪問した大島先生に面会し現地の事情などを聞くために、愛知県内の先生の事務所に依頼の電話を入れたところ、応対に出た秘書の方から、議員は不在であり、いつ戻るかわからないという返答を得たわけでありますが、その秘書の方が先生と一緒に訪朝されていたということから、その秘書の方から話を聞けないか、お願いしたものでございます。

 こうしたお話を伺おうとすることは、当庁は、破防法という法律に基づきまして、暴力主義的な破壊活動を行った疑いのある団体とか、それを将来行うおそれのある団体などに関しまして、必要と認められる調査を行うことを職務としておりまして、そのような調査の一環として、北朝鮮は朝鮮総連と密接な関係があることにかんがみまして、北朝鮮に行かれた方から現地の実情などについてお話を伺うことがあるわけでありまして、今回の場合も、担当の調査官におきまして、そうした観点からお話を伺おうとしたものでございます。

大島(令)分科員 それでは、ほかにも北朝鮮に行った方々に同様の調査活動を行っているのでしょうか。

木藤政府参考人 率直に申し上げまして、北朝鮮の国内事情につきましてはなかなか情報収集が困難であるという実情にございます。したがいまして、北朝鮮に行かれた方からお話を伺うことができれば当庁としては非常にありがたい、このように考えておるところでございます。そうした意味から、先生の秘書の方のほかにも、訪朝経験のある方からお話を伺おうとすることはあるわけでございます。

大島(令)分科員 北朝鮮の国内事情の収集ということでございますけれども、先ほど答弁でありました破防法については、国外調査についての規定はないのではないかと理解しております。そうであるならば、訪朝者に国外の件に関して事情を調査するような活動は調査権の逸脱ではないかと思いますが、見解を聞かせてください。

木藤政府参考人 例えば北朝鮮の事情をなぜ当庁として調べるかということでございますが、朝鮮総連がその綱領の中で、我々は全在日同胞を朝鮮民主主義人民共和国政府の周辺に総結集させる、こう定めております。また、その規約の中でも、北朝鮮の祖国統一民主主義戦線に団体として加盟するということを規定しておるところでございます。こうしたことからも明らかなように、北朝鮮と朝鮮総連とは密接な関係にあると考えておりまして、当庁としては、暴力主義的な破壊活動をやった疑いのある団体を前身とする朝鮮総連に対して調査を進めているわけでございますが、この朝鮮総連に対する調査の一環といたしまして北朝鮮に対しましても調査を行っておるところでございます。

大島(令)分科員 では、先般、公安調査庁の調査第二部長の説明では、調査活動は現場、つまり地方の公安調査局や公安調査事務所の活動であって、本庁は現場が集めてきた情報の集約、分析だけであると述べられましたが、これはそういうふうに理解してよろしいですね。

木藤政府参考人 個別の情報収集の件ではなくて一般論として申し上げますと、当庁は本庁と地方支分部局の出先の機関によって構成されるわけでございますが、地方支分部局で具体的な情報活動に従事するということも当然あるわけでございますけれども、本庁におきましてもやはり情報収集活動というものを行っておるわけでございます。

大島(令)分科員 先ほど来、北朝鮮と朝鮮総連の関係の中で私ども訪朝した人間に対する情報収集をすると申されてきましたけれども、日朝友好運動のために訪朝団に参加したメンバーに対する事情聴取がどうしてそれに該当するのか。日朝友好運動を破壊活動と認められるというふうに理解されるわけなんですね、この間の経過を踏まえますと。そういう位置づけでよろしいんでしょうか。そうであるならば、私たちは今後、日朝友好運動として日本人が北朝鮮に行くと必ずそういう接触が来るということで、友好運動ができなくなるわけなんです。

木藤政府参考人 当庁といたしましては、先ほど申しましたように、北朝鮮の国内事情がなかなか把握しがたい、こういう実情にあるものでございますから、北朝鮮に行かれた方々に対しましてできるだけ機会を得ましてお話を伺いたい、このように努力しておるところでございます。したがいまして、北朝鮮の実情を知りたい、そういった観点でやっておる活動でございまして、北朝鮮に行かれた方々それ自体がどういった団体で行かれているからどうだという、そういったことに関心を持って調査活動をしているわけではないわけでございます。行かれた方々が友好ということを主目的にしておられるならば、それはそれとして、当庁とは別のことでございまして、当庁としては、あくまで北朝鮮の実情を知りたいということでいろいろな方々にお話を伺えるかどうかお願いをしておるところでございます。

大島(令)分科員 まず、北朝鮮に行くということは、国交がありませんので、私どもはそれなりの手続をとってまいります。なかなか行けません。今回参加したメンバーも、私と在日同胞の女性の方以外は初めてでございます。こういう民間の方が、無防備の方が初めて行って、そして私が気づかぬうちにそのまま公安調査局の方が接触したならば、その人たちは、例えば職場の中で北朝鮮に行くと言わずに行っているかもしれない、有給休暇をとる、そういう方々にとっては、そういう調査活動で、日ごろの日常生活の中で、人権ですとか自分たちの活動に対する非常に不信感を持たれる。また、私自身も、大島令子と一緒に北朝鮮に行ったら、わけのわからないそういう方が事情聴取に来た、一体大島議員とはどういう人なんだろうと疑問に思われるわけなんです。

 そういう私たち一般の国民の感情というものをどういうふうに長官は理解しておられるんですか。

木藤政府参考人 私どもは、破壊活動防止法という法律に基づきまして、我が国の治安、公共の安全の確保のために必要と認められる調査を行っておるところでございます。

 そして、私どもに与えられた権限はいわゆる任意手段にとどまるわけでございまして、相手方の御協力を得ながら調査を進めていく、この大前提があるわけでございます。

 したがいまして、私どもといたしましては、北朝鮮に行かれた方々にできるだけ幅広くお話を伺いたいということでアプローチするわけでございますけれども、ただ、それぞれのお立場の方がおられるということはよくわかるわけでございまして、そういったお立場の方々が、自分の立場というものを考えられて、私どもに協力していただく場合もありますし、それは立場上できないということもありますし、それはもうその相手の方の御判断なのでございまして、私どもとしては、ただお願いしているということでございます。

大島(令)分科員 一般に、警察と名乗ればどういう仕事をしているか普通の人は理解されます。しかし、公安調査庁と名乗って、今の若い世代の方々が、教科書の中で、どういう仕事をしているか認識していると思われるのでしょうか。

 そういうふうに、どういう目的でどういう手段でどういう仕事をしているのかわからないまま接触するということはやはり不適切であると私は思っておりますので、以後、北朝鮮に行った方々に対するこういう調査活動はやめていただきたいということを申し上げて、次の質問に移ります。

 次に、公安調査庁のいう朝鮮総連と破防法の関係でございますけれども、破防法は、私が生まれた昭和二十七年にできました。そして、公安調査庁は、朝鮮総連が破壊活動をする団体ということで、その朝鮮総連になる前の、民戦ということで破壊活動をやったということ、それと拉致問題などを挙げてそういう団体と規定しているわけなんですが、五十年以上も前の問題で、どうして朝鮮総連が破防法の二十七条に基づいて調査する団体なのかよくわかりませんので、もう一度説明をしてください。

木藤政府参考人 朝鮮総連は、かつて暴力主義的な破壊活動を行った疑いのある団体を前身とする団体でございます。今後の治安情勢いかんによりましては、将来暴力主義的破壊活動を行う危険性のあることを否定し得ないということから従来調査を行ってきたところでありまして、現在もその動向について鋭意調査を行っておるところであります。

 御指摘のように、確かに、朝鮮総連という名称になって以降、現在までのところ暴力主義的破壊活動を行ったと認め得る事象はないわけでありますけれども、今申しましたように、そういった活動を行った疑いがあるいわゆる民戦という団体、これを前身としておりまして、現在もなお暴力主義的な闘争を肯定的に評価しているということがありますし、また、北朝鮮それ自体が、ラングーン爆弾テロ事件とか大韓航空機爆破事件など国際テロ事件を引き起こして、テロ支援国家と見られているわけでございまして、そういった北朝鮮と極めて密接な関係にあるということにかんがみますと、情勢の推移いかんによりましては、将来再び団体の活動としてそういった危険な行動を行うおそれがなしとしないと考えておりまして、そういったおそれがある限りは調査を継続する必要があると考えております。

大島(令)分科員 私は調査する必要がないと思っておりますので、見解の相違ということで、一たん次の問題に移らせていただきます。

 次に、高村法務大臣と荒木外務副大臣にお尋ねいたします。

 今までのお話のやりとりを聞きまして、朝鮮総連に対して公安調査庁がこのような調査を行うこと自体が、相手国の信頼を損ね、ひいては日朝友好運動への妨害になると私は考えております。

 まず、高村法務大臣に、これに関して、今のお話を聞いて、今後も継続するのが適当であるという印象を得たかどうか。そして、私も愛知出身でございますが、特に荒木副大臣においては地元愛知で、日朝教育文化交流をすすめる愛知の会の顧問として、私も顧問でございますが、そういう日朝の友好平和運動に携わっている立場から、今までのやりとりに対する見解を聞かせてください。

高村国務大臣 日朝間で友好関係を築いていくことは、それはそれとして大変重要なことであると思っております。ただ、そのことと、公安調査庁が破壊活動防止法に基づいて必要な調査を行うことは、次元を異にする問題であると考えているわけであります。

 こうした観点から、公安調査庁におきましては、引き続き必要な情報収集に努めていくべきものと存じております。

荒木副大臣 朝鮮半島の平和と安定というのは大切な問題でありまして、外務省として日朝国交正常化に精力的に取り組んでおるということは言うまでもないことでございます。

 ただ、今議論になりました案件につきましては、外務省としてはよく承知をしておりませんので、立ち入ってコメントをすることは差し控えたいと思います。

 一般論として申し上げれば、ただいま公安調査庁より答弁がありましたように、同庁が法律に基づいて与えられた権限を行使して行う調査活動につきまして、特段の外交問題が生じているわけでもない以上、我々が云々することはございません。

大島(令)分科員 それでは、外務省の官房長にお尋ねいたします。

 外務省にも国際情報局が存在し、巨額の機密費が予算化されていることは周知の事実でございます。当然、北朝鮮事情についても外務省は関心が高いと思っておりますが、外務省も同様に訪朝者に接触して事情聴取を行ったりしているのでしょうか。

飯村政府参考人 お答え申し上げます。

 外務省の報償費は、御承知のとおり、情報収集及び諸外国との外交交渉あるいは外交関係を有利に展開するために、その都度の判断で最も適当と認められる方法によって機動的に費消されているものでございます。

 御質問の点でございますけれども、報償費の具体的な使途につきましては、公表すれば行政の円滑な遂行に支障を生じると考えておりまして、御説明申し上げるのを、恐縮でございますが、差し控えさせていただきたいと思います。

大島(令)分科員 私は、一九九九年十二月三日、日本国政党代表団と朝鮮労働党代表団の団長金容淳氏の交わした共同発表にもございますように、七つの政党、ここには野中広務自民党元幹事長も訪朝されているわけですが、こういう形で、とにかく日朝の国交正常化を進めようとしているという意思を政治家も外務省も感じるわけですので、厳に、このような訪朝した方々に対して日本国内において調査活動をするのをやめていただきたいということをお願いしまして、次の質問に移らせていただきます。

 実は、ここに一冊の本がございます。これは公安調査庁マル秘文書集という本でございます。内容を見ますと、この本の四十六ページには、調査団体として、日本ペンクラブ、アムネスティ、日本教職員組合、全日本教職員組合、いろいろな市民団体にまで調査の対象を広げていると書かれているわけなんです。ほかにも、膨大な公安調査庁の内部文書が掲載されております。

 私は、もしこれが事実であるとするならば、市民団体や労働組合団体に対する調査は即やめるべきであると思いますが、長官の見解を聞かせてください。

木藤政府参考人 御指摘にかかわる書物が出版されているということは承知しておりますが、当庁といたしまして、その書物の作成、出版に全く関与しておりませんので、その記載内容につきましては責任を負う立場にないわけでございます。したがいまして、その記載内容についての御質問については答弁を差し控えさせていただきたいと存じます。

 しかし、一般論として申し上げたいと思いますが、当庁は、いわゆる破壊的団体の活動などについて調査しているものでございまして、そうした破壊的団体やその構成員と全く関係のない一般の市民団体やその活動につきまして調査しているということはございません。

大島(令)分科員 しかし、この本の最後には、公安調査庁の全国の幹部の氏名、自宅住所、電話番号まで書いてあります。何人か官舎と思われる住所の表示がございますけれども、そこは電話が使われていない。しかし、持ち家の方もございまして、この本は内部の方とか退職された方が書いたということで、私は、非常にこれは事実を書いてあるというふうに想定しております。

 そういう前提に立ちまして、今長官が破防法に基づいた団体を調査すると申されましたが、この中にしっかりと、法曹、教育関係とか大衆市民団体も調査の項目に入っているわけなんですね。だから、これに基づいて、それは一切しないと、この場で約束をしていただきたいわけです。

木藤政府参考人 ただいまも申し上げたところでございますが、一般論として申し上げますと、当庁は、いわゆる破壊的団体あるいは暴力主義的破壊活動とか、そういったことと関係のない一般の市民団体や活動については、現に調査していないわけでございます。今後もそのようにしていきたいと考えております。

大島(令)分科員 では、法務大臣に伺います。

 この名簿はだれが見ても、私は、文書、資料が真正なものであるということは明らかであると思います。もしこの本に書かれている内容が事実であるならば、世論は、もう公安調査庁という機関は必要ではないのではないかという印象を受けると思います。大臣は、公安調査庁のあり方として、こういう暴露本、そして実在している方々の名簿がほとんど載っているわけなんですが、こういうことに対して、公安調査庁が今後このまま存在し続けることが、日本の世論そして私たちにとって、あり方として正しいかどうか。どういうふうに認識されますでしょうか。

高村国務大臣 公安調査庁長官が御答弁いたしましたように、我が国の民主主義体制を暴力で破壊しようとする団体について調査する機関というのは、私は必要なものだと思っておりますし、これは維持しなければいけないと思っております。そういうことでありますから、そうしたおそれのない市民団体やその正当な活動を調査の対象とすることはない、こういうふうに思っております。

 その暴露本に書いてあることの中で、どれだけが真実でどれだけがでたらめか、よく私は精査しておりませんが、精査したところで、どこは当たっていますよというようなことは言わないことになっているので、それは何とも申し上げられませんけれども、逆に、もし公安調査庁の中の情報が漏れているとすれば、それは極めてだらしのないことでありまして、そういうことはないように注意をしてまいります。

大島(令)分科員 ここに、本年二月五日の朝日新聞の記事があります。

 これには、公安調査庁の調査第二部が一九九八年九月作成ということで、月額の報償費の平均額が書いてあります。そして、その支出先も、日本赤軍の支援者ほか五人、平均報償費二十八万五千円。朝鮮総連、朝鮮人商工会など十一人、二十八万七千円。それから、日本ユーラシア協会など四人、二十四万一千円ということで、記事として書いてございます。そうしますと、これを計算しましたら、月額ですと約七百二十万、年間ですと約九千万円が報償費ということで支払われております。

 私は、先般自分の事務所に公安調査庁の方が接触し、十九日に第二部長とお会いしたときに、情報調査活動というのは地元でやるので、本庁は情報の集約、分析だということを聞いておりますので、こういう報償費、これは実は架空のものではないかと推測されるわけなんです。

 これについて聞きたいと思いますが、一体この報償費は何に使ったのか。もしこういう方々に調査協力費として払ったということであれば、この団体の中から自分たちの情報を国に提供するということで、スパイのような、非常に団体の中で混乱が起きるわけで、現にこの名前の挙がった団体からも、ロシア協会と日中友好協会の責任者は、そうした協力者は存在しないし、平和交流の市民団体を監視対象にしていること自体異常で、公安庁に抗議すると述べているわけなんです。

 もしそうでなければ、これは外務省の架空の機密費という形の、にせの、予算をとるための資料ではないかとも想定されるわけなんです。ここに、内閣官房長官あてに、例えば報償費の請求書がございますけれども、目的を書く欄がございません。ですから、これは、架空の報償費を得るための便宜的な申請書をそのまま新聞に載せられたのではないかと私は想像するわけなんですが、こういうことが果たして実際にあるのかないのか、その辺のことを担当の方に聞きたいと思います。

木藤政府参考人 朝日新聞の当該報道は承知しておるところでございます。

 従来から、内部文書として報道された文書につきましては、本当に当庁の作成に係る文書か否かを確認するということにつきましては差し控えておりますので、御指摘の報道に係る文書につきましても、当庁の作成文書かどうかを確認することは差し控えさせていただきたい、このように考えております。したがいまして、その文書に掲載されました報償費の支払いの点につきましても、答弁を差し控えさせていただきたいと存じます。

 ただ、一般的なこととして申し上げますと、当庁には報償費という予算科目はないわけでございまして、公安調査官が調査活動をするための経費としましては、公安調査官調査活動費というものが認められておるわけでございます。その調査活動費の執行は、もとより適正に行っておるところでございまして、会計検査院の検査を受けておりますけれども、特段の指摘は受けておりません。

大島(令)分科員 時間がないということですので、きょうは三十分の限られた時間の中で、私も初めての質問でございます。一生懸命調べましたけれども、ほとんどの答弁が、答弁は控えたい、そして一般論でということでございますが、私たち国会議員が、この委員会の運営もすべて私たちの税金でやっている、皆さんも私も税金で生活している立場である以上、答弁できないとか一般論で済まされるような問題ではないと私は思うわけなんです。

 ぜひ、法務省や外務省がもう少し国民の前に道を開いて、私たちにいろいろな情報を明らかにする中で、必要なものは使うという姿勢でやはり進めていただきたいと意見を申し上げて、質問を終わらせていただきます。

宮本主査 これにて大島令子君の質疑は終了いたしました。

 次に、西村眞悟君。

西村分科員 正反対の立場からの質問で、政府も大変ですね。

 教科書からいきます。衛藤副大臣が来られています。時間を割いていただいて、ありがとうございます。

 歴史教科書の問題について、中国政府から、特定の教科書の検定不合格、そして出版停止を求められてきております。中国政府の声明は、要旨はこのとおりでございます。

 中国政府と人民は、日本国内で最近教科書に絡みあらわれている動向を極めて注視しているものである。指摘すべきは、日本の右翼団体が周到な用意のもとに、皇国史観を高く宣伝し、侵略の歴史を否定、美化する目的で歴史教科書をつくり上げていることである。仮に修正を経たとしても、反動的ででたらめな本質は変えることができない。

 こういうふうな声明を発して冒頭の要求をしております。

 それに対して外務省の局長は、内政干渉ではない、内政干渉というものは、国際法上他の国家が自由に処理し得るとされている事項に立ち入って、強制的に相手国を自国に従わせることであると定義した上での、内政干渉ではないという答弁をしております。

 ちなみに、この教科書の検定不合格、出版停止を要求した国家は、アメリカから人権抑圧を指摘されたことに対して、それは内政干渉であると強く反発している国家でございます。

 さて、外務省の高級官僚は、機密費の問題で金銭感覚が麻痺していると同時に、国家の主権というものに対する感覚も麻痺しているのだと私は思わざるを得ないし、心ある日本国民は思っていると思います。しかしながら、この局長の定義と内政干渉であるか否かをここで議論するのではなく、大臣にぜひこの点は確認していただきたい問題だけを限られた時間の中で申し上げます。

 自国の歴史を子供たちにいかに伝えるかは、国家の将来にとって重大な事項である。その上に立って、国際法上、教育というものは、我が国が自由に処理し得るとされている領域にある問題である。この二つの立論については大臣は御賛同をいただけますか。

衛藤副大臣 西村眞悟委員にお答えいたします。

 その点については、全くそのとおりであります。

西村分科員 教育が国際法上、自国の自由に処理し得る領域にあるということでございます。

 そして冒頭に読み上げた中国の政府の声明は、まさに国際法上自国が、我が国が自由に処理し得る領域に関しての政府の公式の声明であるということは、自国が国際法上自由に処理し得る領域というのは、言葉をかえて言えば主権の領域でございます。したがって、中国政府は、我が国の主権の領域に立ち入った要求をしているということが一点確認されるわけでございます。

 さて次に、我が国国民は、特定の教科書が検定前にどういう内容であるかということは一切知ることができません。それが検定という制度の本質でございます。しかしながら、中国政府は検定前の教科書を入手している、あの声明を見れば入手している。それもガセネタではなくて、これが真正な検定前の教科書であるというふうな確認をした上での声明を発しておると言わざるを得ないのでございます。

 その入手経路について、事前に申し上げておきました、外務省及び外務省関係者が、日本国民が知らないこの教科書を中国政府に御注進で渡したのか、それとも外務省は関与されていないとするならば、だれがこの教科書を渡したのか。もしくは、中国政府が我が国国内でその教科書を入手しているのか。

 これだけの声明、我が国の主権の範囲にある問題に関して外国がこのような声明をする以上、入手経路について中国当局にただしましたか。また、外務省の中で渡した者がいるかどうか確認いたされましたでしょうか。

衛藤副大臣 西村委員にお答えします。

 まず内政干渉の問題でありますが、御案内のとおり、過般の国会審議におきまして、当時の政府委員、条約局長が、国際法上の内政干渉、こういった概念規定について言及しております。一般には、国際法上他の国家が自由に処理し得るとされている事項に立ち入って、強制的にその国を自国の意思に従わせようとすることと解されておりまして、命令的な関与または介入という言葉であらわされることでございます、こういう指摘がございます。

 この観点から申し上げたいのでありますが、まず、今御指摘のありました教科書の問題でありますが、外務省の職員をして本件につきまして中国側に、その検定中の教科書の内容についてそれを中国側に知らしめた、そういうことは一切ございません。

 それから、どういう入手経路かということでありますが、御案内のとおり、検定委員は数名いらっしゃるわけでありまして、また数名の方がさらに、調べてみると、コピーをして一般第三者に、この問題についてどうだろうという意見を聞いたのでありましょうか、そういうような形跡もあります。そこで、そういうところから中国側が知り得ることになったのではないか、入手経路については私はそのように理解をしております。

 また、我が国の主権の領域に立ち入っているかどうかということでありますが、この件につきましては、私は、現段階において中国政府が我が国の主権の領域に立ち入っているとは思いません。また、そのようなことをさせてはなりません。

西村分科員 矛盾されております。

 教育は、我が国が、国際法上自由に処理するとされている事項の中にある、このことを副大臣は先ほど同意され、そのとおりだ、これ以外に答えはない、したがってそのとおりと言われた。そして、中国政府の声明は、歴史教科書を出版停止しろ、でたらめだと。まさに我が国の教育、自由に処理するとされている領域の中に彼らは入っている、その問題を言挙げしている、これを確認したのです。

 さて、我が国国民は知らない、中国政府は知っていて、先ほどの声明のように口汚く我が国の歴史教科書の問題について触れてきた。我が国国民は反論できない。中国は、外国は知っている、我が国国民は知らない。しかも、それは我が国国民が子供たちに教えるために使う教科書である。こういうふうな構造の中で、まさに、反論できないということ自体が強制なんだ、そうなるのです。

 外務省の局長は、強制的という言葉を挿入することによって、内政干渉でないという理論を組み立てた。武器をもって脅迫するというふうな強制ではない。しかし、人が反論できない、日本国民が反論できない問題に関して、まさに日本国民の教科書に関して、中国がそれを事前に知っていて言ってくるということは、まさに主権の侵害であり内政干渉なんだ、強制的なんだ。これをそうではないとする外務省は、もはや外交の魂を売り渡したのだ。

 なぜなら、中国政府自身が、自国の人権抑圧に関してそれは内政干渉だと言って突っぱねている国が、こういうふうなことを我が国の教科書に関して言ってきている事態に遭遇して、静観するとは何事だ。政治的効果として、我が国は中国に屈服するのだというサインにほかならない、私はそのように思います。副大臣が、主権侵害ではない、させてはならないというふうに言われました。させてはならないのです。しかし、私の認識では、もう既にさせているのです。

 ところで、外務省もいろいろな文書を扱っておられるからいろいろな配慮もあって、近隣諸国条項というのがある。国家が義務を負うときには、条約は我が国会の承認を経るはずだ。近隣諸国条項なんて国会で承認されたこともない。これは対外的に何ら効力を発しない、我が国の内部規定である。我が国がこれによって諸外国に何ら義務を負っているのか否か、我が国の歴史教科書をつくる際に他の国の言いなりにならねばならないという義務を負っているのかどうか、我が国家にそういう義務があるのかどうか。副大臣、どうですか。

衛藤副大臣 近隣諸国条項は、まさに御指摘のとおりだろうと思っております。

 また、明確にしておきたいのでありますが、中国と韓国におきましては、平成十四年度に使用するために現在検定を受けている中学校歴史教科書について、中国外交部スポークスマンや韓国の外交通商部長官などが関心と懸念を表明してきておるわけであります。現に二月二十七日には、江沢民国家主席から中曽根元総理に対して、教科書問題についての配慮を願いたい旨の発言もありました。また、二月二十八日には李廷彬韓国外交通商部長官から我が方の寺田在韓国大使に対し、我が国の歴史教科書検定に関し韓国側の懸念の表明があった。

 関心や懸念あるいは配慮をお願いしたいということでありまして、今西村委員が御指摘のような形での内政干渉、こういうようなことに結びつけるわけにはまいらないし、やや無理があるのではないか、このように申し上げたいと私は思うのであります。

西村分科員 最後に確認させていただきます。

 外務省は、この我が国国民の歴史教科書に関し、教育という領域に関し、いやしくも主権の侵害及び内政干渉という事態を断じて容認することはできない、これは確認させていただいてよろしゅうございますか。

衛藤副大臣 西村委員にお答えいたします。

 全くそのとおりでありまして、教科書の検定等々につきまして、他国の政府をして我が国の主権を侵害させるとかさせないとか、そういうことは論外でありまして、断じて外務省としては、そのようなことに対しては頑として措置をとります。主権の侵害はさせません。それははっきり申し上げます。

西村分科員 お時間をいただいてありがとうございます。

 さて次に、文部大臣に。

 中国の教科書は日本のことをめちゃくちゃ教えておる。こんな残酷なことをしたんだ、そしてそれを血をかぶりながら打ち負かした中国共産党政権はまさに輝ける政権なんだということを六歳の子供から教え続けておるんですね。これは質問じゃないです、通告していませんから。こういうふうなことを六歳のときから教えられた人間が、日本に大量に来ている。日本人に対しては、こういう残酷なことを自国の中国にした人民に対しては、何をしてもいいんだ、これが案外、不法入国者を含めて、日本で中国人犯罪の増加を来している精神的前提にあるのではないかなというふうに私は思っております。

 したがって、我が国の治安維持の問題に関してもゆゆしき問題である。隣国は我が国の歴史教科書に対してとやかく言っております。しかし、その隣国は我が国のことを、みずからの歴史教科書によって、残虐非道な民族であるということをいまだに教え続けておる。我が国の治安維持の観点からも重大な関心を持っていただきたいと存じます。

 さて、先日の法務委員会で行いましたJR東日本に対する過激派の浸透の問題を、もう少し発展せしめて質問させていただきます。

 警備局長の答弁では、JR総連、JR東労組における革マル派組織の実態について解明を進めてきたところである、これまでのこうした警察活動を通じて、警察としては、JR総連、JR東労組に対し革マル派が相当浸透しているというふうに見ているところである、そして、これからも極左暴力集団の調査監視を、アジトの摘発を進めるのだというふうに答弁されております。

 この事実を受けて御質問させていただきます。

 革マル派は非常に盗聴技術にたけた集団でございまして、練馬アジトの捜索では、警視庁、警視総監及び警察庁長官宅の盗聴も可能であったことがわかっております。

 革マルが怖いというふうに言われております。みんな口に出しませんが、運輸行政に携わった人、JR東日本の会社幹部等々は、革マルが怖いんだと思っておる。事実、だれもが、完全民営化に向けた過程の中で、この質問をしない。この質問をするという私のところにも、家族及び事務所は、革マルがそういう集団だから気をつけるように指示された方がいいという、本当にその筋からのアドバイスがある。こういう中で会社側に何が起こっておるか。こういうことが起こっておるのです。

 JR東日本の会社幹部は、官僚主義と身の保身から、JR東労組をよい組合だと言って褒め上げ、東労組もストやスキャンダルをちらつかせながら恫喝するという、いびつな労使関係になってきております。そして、この東労組の革マル派が浸透しているということに危機感を感じたJRの勤労者が別の組合をつくろうとする、当然それは正常な感覚で正常な動きですが、それを会社が妨害しておるんですね。

 一九九三年十二月十二日、これは、その東労組の組織運営に反発して新しい組合を、東新労組を結成しようとした。このときに、結成の前後に本部役員候補者等を中心として、突然転勤や出向命令を発しておるわけです。そして、結成大会はJRと関係ない公共施設で行ったにもかかわらず、勤務中の会社社員四、五十名を動員して結成大会参加者をチェックしている。そして結成大会の直前に、本部三役に予定されていた四人のうち三人を突然遠隔地へ転勤または出向させたわけですね。

 また、JRグリーンユニオンというのが結成されていますけれども、一九九五年夏以降の問題ですが、現場管理者を総動員して徹底的な新組合結成妨害工作を行っている。そして、人事部長名で、「当社は健全かつ安定した労使関係を確立するため真剣な努力を重ねてきただけに、今回の事態は極めて遺憾である」、こういう談話を発表している。明らかに労働組合の結成、そして労使関係を正常化しようという社員の動き、これは会社が関与すべきことではない。そして、その役員を出向、転向せしめて、会社は組合組織結成をつぶそうというふうなことは不当労働行為なんだ。

 副大臣の地元の新潟なんかでJRグリーンユニオンが起こっていますけれども。それでこのJRグリーンユニオン、新組合新潟地本の組織人員は、結成時八百二十七名、会社ぐるみのすさまじい脱退勧告によって二百九名まで激減させられておる。しかし、彼らは労使関係の正常化のために頑張っております。

 法務大臣に、限られた時間ですから、所感をお聞きするわけでございますが、公共輸送機関の中に警備局長が確認されたような過激派が浸透して、それが怖い、会社幹部も身の保身から、正常化しようとする動きを過激派とともにとめるような動きをしておる。しかし、JRの良識ある諸君らは、それをはねのけて、正常な組合活動をしようと努力している。

 この会社の動き、そして東労組の動き、これを治安維持の観点から、放置しておれば将来に重大な禍根を残すという意味で私はお聞きするのですが、前の御質問といささか違いますのは、治安維持の観点から、JR東日本の会社というもの、どういう行動をしておるのかということについてしっかり確認しなければ私は将来に禍根を残すと思いますが、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

高村国務大臣 革マル派は暴力によって民主主義的国家秩序を破壊することを容認する危険な過激派団体の一派であるということは、委員が御指摘になったとおりだと思います。こうした革マル派が重要な公共運輸機関である東日本旅客鉄道株式会社の労働組合内にその勢力を浸透させていることは、憂慮すべき問題であると認識をしております。

 したがいまして、治安維持の観点から、今後とも同派に対する調査を鋭意推進し、その実態の把握に努めるとともに、同派構成員による不法事案については、その背景事情も含めて徹底的に解明し、厳正に対処すべきものと考えております。

 不当労働行為の話は、直接私の所管でございませんが、治安の観点からは今申し上げたとおりでございます。

西村分科員 なぜ東京都民が毎日利用する公共輸送機関の中のゆゆしき状態が外に漏れないかというのは、JR東日本と文芸春秋の訴訟合戦がありました。そのとき、JR東日本は、各駅のキヨスクに週刊文春を置くことを拒否したわけですね。十一万部が売れるこの売店を使わせなかった。それによって、言論といいますか、報道は結局営利ですから、金銭が入らなければ会社がつぶれるわけですから、屈服せざるを得ない。JR東日本というのはある意味ではそういう巨大な力を持っておるのです。したがって、余り触れない、言論にもあらわれないということでございます。

 運輸行政の責任者の方が来ていただいていると思いますが、国鉄以来の問題が引きずられております。運輸行政は、事故が起これば事故調査委員会をつくります。航空機でも鉄道転覆でもつくるのですが、事故が起こる前には何もしなくていいのかという問題をちょっとお伺いしたい。

 新幹線の犬くぎが何者かに抜かれた、これはプロのしわざです。しかし、杳としてその犯人がわからない。これは怖くて乗っていられないということを意味するのですけれども、案外のうてんきに運輸行政はなされているのではないか。

 そういう中で、今警備局長が答弁されたことは読み上げました。そして、法務大臣が御答弁されたことはお聞きになったと思います。事故が起こってからではだめなんだ。労使の関係を正常化させなければだめなんだ。完全民営化という流れの中で、この問題に目をつぶっておれば、将来株を入手する株主に対して、言うなれば欠陥商品を売ることになるぞ、その責任は国家にあるぞというふうに私は思います。御答弁をお願いしたい。どういうふうに対処していくか、実態は明らかなのでございますから。

石川政府参考人 国土交通省といたしましては、今先生お話がありましたように、警察当局等々でいろいろな指摘がされているということは承知しております。それで、私どもとしては、基本的に、安全で安定した鉄道輸送をどう確保するかということがポイントだと思っております。

 事故につきましては、重大な事故が発生した場合には私ども原因究明に入るわけでございますが、基本的には、一義的には鉄道事業者がその事故の原因究明、あるいは、事故が発生しないようにふだんから努力をされるということが大事だと思っております。

西村分科員 仕方ないですな、そういう答弁で。

 法務大臣、革マルというのは非常に盗聴技術にたけておりまして、運輸行政に携わった方はもう骨身にしみておられる、JR東日本の会社も骨身にしみておるのだと思いますが、やはり先ほどの、私の前に質問された方とは全然観点が違いますが、前にも言いましたように、情報収集それから警備、そしてそのシステムが非常に重要だと私は思います。これがなければこの問題は乗り越えられない。前に言いましたように、人遠きおもんぱかりなくるば必ず近き憂いあり。

 したがって、今私も野党で、機密費減額を言っておりますが、私の観点からは、前にも言いました、政府の今の答弁、飲食費の差額の答弁が、機密費で支払われておったというレベルでは、減額の要求に抗し切れない。もっと力強く、機密費は減額どころか、こういう治安維持の問題、外交上のこういう問題、国益に関する情報収集のために要るのだという観点から強く、大臣、我が国の治安維持の機構の、財政問題も含めた再点検をお願いして、運輸行政、また、JRという会社に働く者たちが、勤労者が安心して生き生きと使命感を持って働けるような環境をつくっていただきたい。今のままでは、いささか危惧すべき材料が多過ぎる。それが国民に知られていないだけだ。しかし、我々は知った以上それに取り組む責務が国民に対してあると思いますので、どうかよろしくお願いいたします。

 質問を終わります。

宮本主査 これにて西村眞悟君の質疑は終了いたしました。

 次に、水島広子君。

水島分科員 民主党の水島広子でございます。

 日本が子どもの権利条約を批准してもうじき七年がたちます。秋の臨時国会でも少年法がテーマになりましたが、今、日本社会では、子供たちの問題が大きな不安を持って受けとめられています。子供たちが健康に育たない国に未来はありません。日本が子供たちを育てていく責任をきちんと果たせているのか、子供たちが健康に育つ環境を提供できているのか、政治の責任が大きく問われる領域だと思います。

 本日は、日本が子供の権利を守れているかという観点から、幾つかの質問をさせていただきたいと思います。

 冒頭に、外務副大臣にお伺いします。

 本日は法務大臣への質問ですが、わざわざ外務副大臣にいらしていただいたのは、子供の権利に関して緊急にお伺いしたいことがあるからです。

 御承知のように、ILOは一九九九年六月の総会で、最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための即時の行動に関する条約、百八十二号条約を採択しました。この条約は、児童労働の包括的な廃絶を目指した百三十八号条約を補完し、その取り組みの最優先課題として、児童労働の中でも最悪の形態のものを一刻も早く撲滅することを目指したものです。言いかえれば、生命の危機、成長の危機に瀕している子供たちを救うことが本条約の使命であろうと思います。だからこそ、アメリカのクリントン前大統領がいち早くジュネーブに駆けつけて、本条約への支持を表明したのです。日本としても、この条約を批准することが急務であると言えます。

 百八十二号条約の批准に向けての日本政府の取り組みの現状はどうなっているのでしょうか、お伺いします。

衛藤副大臣 水島広子委員にお答えを申し上げます。

 御指摘のILO第百八十二号条約、最悪の形態の児童労働禁止及び撤廃することを確保する条約でありますが、本件につきましては、この条約を締結する意義を政府として十分認識しておりまして、この締結について承認を得るために、今国会に提出すべく、鋭意検討を進めている状況にあります。

水島分科員 日本が子供たちの人権に敏感な国であるということを国際社会に示すためにも、ぜひ六月にジュネーブで開かれますILO総会に間に合うように批准すべきだと思うのですが、重ねてお伺いいたします。

衛藤副大臣 このILO第百八十二号条約は、政府として今検討中でありますが、まだ国会の方にこの法律案を提案しておりません。御案内のとおり、提案した後、国会の審議を待つ、こういうことでございますので、御理解をいただきたいと思います。

水島分科員 この条約は、批准を待たなければならないものだとか、日本の中に乗り越えるべき障害がたくさんあるとか、そのような性質のものではないと理解しておりますので、本当に早期に国会に御提出をいただきまして、そしてILO総会に間に合わせていただけますように重ねて要請をさせていただきます。ぜひよろしくお願いいたします。

 さて、次に、無国籍児について法務大臣に質問をさせていただきます。

 子どもの権利条約の第七条では、児童は、出生のときから氏名を有する権利及び国籍を取得する権利を有するものとすると規定しておりまして、国籍を有する権利は広く基本的人権として認められております。

 法務省の在留外国人統計によりますと、一九九九年に無国籍外国人として登録されている人は二千百三名です。このうち五歳未満が八百三十七名で、九〇年の十一倍以上に達しております。外国人登録証に国籍が記入されていても本国から認知されていなかったり、また不法滞在の未登録者の子供を入れますと、無国籍あるいは結果的に現在無国籍状態になっている子供は、日本に相当数存在しております。

 まず、この事実を認識されているかどうかを法務大臣にお尋ねしたいと思います。

高村国務大臣 我が国で出生した子が無国籍児となるのは、生地主義を採用している国の国籍を有する者の子の場合などが考えられるわけであります。

 無国籍児は増加しているという御指摘でありまして、今まさに御指摘があったとおりでありますけれども、法務省としては、どのような事情で増加しておるかについては必ずしもはっきり把握していないわけであります。

水島分科員 では、事実としては認識されているという御答弁と理解いたしまして話を続けさせていただきたいと思います。

 まず、なぜ無国籍児が発生してしまうのかということを考えてみたいと思いますが、日本の国籍法では、第二条で、子供が日本国籍を取得できる条件としまして、父母のどちらかが日本国民であるとき、出生前に死亡した父が日本国民であったとき、あるいは、日本で生まれた場合において、父母がともに知れないときまたは国籍を有しないときと規定されております。

 ところが、現実には、第三号の父母がともに知れないときまたは国籍を有しないときの条件が不明確で、法務局の裁量に任されていることに批判の声もございます。

 さきの最高裁で争われたアンドレちゃんの場合も、仮に父母が全くわからない捨て子の場合には国籍法により日本国籍を取得することができたわけです。でも、母親がフィリピン人らしいということになると、日本側は子供をフィリピン国籍と判断して日本国籍は取得できない、でも、フィリピン側では、母親が本当にフィリピン人であることが証明できないと国籍を与えられないということで、子供は無国籍になってしまいました。

 この事件は、一九九五年に最高裁で逆転勝訴しましたが、結局、この子供が国籍を取得するまでに四年もかかりました。また、最高裁判決の後も、子供が母子手帳を持っていたなどという理由で日本国籍が与えられず、無国籍になってしまった子供の例などが報告されております。

 最高裁の判決は、父母がともに知れないことを立証する義務が国にあるということを明らかにしたという点で画期的なものですが、日本政府として、この最高裁判決に基づいて何らかの指導的な文書や通達などを出されたのか、また、現在、父母がともに知れないときの基準については具体的にどのような判断を行っているのか、まずその点をお伺いしたいと思います。

山崎政府参考人 ただいま御指摘の最高裁判決、我々としても十分承知をしております。これに基づきまして、最高裁で御判断をいただきましたので、それに伴います実務を全国に指導しております。もちろん、この判決の周知のために、判決内容を送付したり、会議等でいろいろ取り上げて議論をして周知をしているということでございまして、今後もこの判例に沿った実務の取り扱いをしていくという予定でございます。

水島分科員 今の二点目の、父母がともに知れないときの基準について具体的にどのような判断を行っているのかについてもお答えいただきたいのですが。

山崎政府参考人 その点につきましても、最高裁の判決で、最終的に特定できない、わからない場合には日本国民ということで言われておりますので、そのように扱うということでございます。

水島分科員 最終的に特定できないという、また不明瞭な御答弁であったと思いますけれども、私は、子どもの権利条約の批准国としまして、日本に生まれた子供がどこかの国籍を取得できるように働きかける義務、そしてどこの国籍も取得できない場合に日本国籍を与える義務が国にはあると思いますが、法務大臣のお考えはいかがでしょうか。

高村国務大臣 直ちにそう言えるかどうかはちょっと私わかりませんけれども、無国籍児ができるだけ少なくなるような配慮というか運用は必要だ、こういうふうに思っております。

水島分科員 つまり、何を申し上げているかといいますと、例えば、この最高裁判決のときの訴訟というのは、日本に住む米国人の夫妻が同じような境遇の子供たちのためにと起こした訴訟です。こうやって心ある人が訴訟を起こしてくれない限り子供たちは日本国籍を取得できないのだとしたら、やはり国籍法の改正も含めて検討する必要があるのではないかということなんですけれども、もう一度お伺いいたします。

高村国務大臣 先ほど申し上げたように、また委員もおっしゃっておられるように、子供にとって無国籍ということは大変でありますから、そういうことができるだけなくなるような運用、解釈をしていく必要はあるんだろう、最高裁の判決を受けてそういうふうに思っておりますが、直ちに国籍法の改正が必要かどうかということについては、私が今ここで必要であるというふうに断言するのはちょっとちゅうちょを覚えるわけでございます。

水島分科員 確かに、日本の国籍法におきましてもその例外措置としての生地主義をとっているという点では、無国籍児をなくさなければというその配慮はもちろんうかがい知ることができるわけです。

 ただ、現実には、例えば、先ほど申しましたように、全くの捨て子であればすぐに日本国籍が取れるけれども、ただ、何か親の形見を少しでも持っていると、そこから親の国籍が推測されるというような理由によって国籍が取れなくなってしまっているというのが現場で起こっていることでございます。そうやって子供に何も親の形見を持っていてはいけないと言えるのか。

 そしてまた、日本側がその国の人であると勝手に判断をしても、結局本国側がそれを認めない限り子供は無国籍になるというこの現状を本当に一刻も早く改善するために、やはりこの最高裁の判決に従いまして国籍法を改正する必要があるかどうか。

 また、改正しないのであれば、現状の父母がともに知れないときということの運用基準を、本当に、日本のどこでそのような子供が発生してもきちんと均一の基準で運用されるように、そして結果として無国籍児が一人もいなくなるように、そのような検討も早急にしていただきたいと思っております。

 これは、私は本当に日本の中での大きな問題であると思っておりますので、ぜひよろしくお願いいたします。

 そして、今のは無国籍児のケースですけれども、もう一つ深刻な問題といたしまして無国籍状態児という存在がおります。親が不法滞在をしている場合に、そのことが露見するのを恐れて子供の出生を届けず、また外国人登録もしないというケースは実際には多くございまして、結果として多くの子供が無国籍状態になっております。

 無国籍児は国民健康保険への加入が認められておらず、医療費が高額で病院に行けません。心臓手術が必要なのに受けられずに死を待つのみという子供も存在しております。未熟児で生まれた場合、保育器の使用が十分に行われないということもあります。予防接種、特にポリオについては、集団接種の対象から外される自治体もあります。また、公立保育園への入所ができません。小学校への就学を認めない自治体もあると聞いております。小中高を通して私立への就学はほとんどできません。

 いずれにしても、無国籍児であれ無国籍状態児であれ、日本国内に居住していながら日本の法の保護下にはなく、子どもの権利条約には反した状態となっているのが現実でございます。子供の中には、学校にも通わされず、狭いアパートの一室で終日テレビを見て過ごしているというようなケースもあるわけです。

 親の不法行為と子供の人権とは全く別次元の問題です。こうした子供たちへの人権侵害を解決するために、日本政府として現実的で温かみがある取り組みが必要だと考えますが、法務大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

高村国務大臣 今委員がおっしゃることはよくわかるんですが、これは法務省が管轄する国籍の問題として処理すべき話なのかどうかということが一つあるのと、それから、届け出ないからそうなっているというのをどうするかというのを、私がどうやったらいいか、今直ちにお答えできないわけですが、ちょっと考えてみたいと思います。

水島分科員 この問題を親子をセットで考えている限り、恐らく子供の人権というものはずっと報われないのではないかと私は思っております。例えば、子供のことを届け出るとそれがそのまま親につながってしまうので届け出られない、結果として、親は望む望まないにかかわらず子供をそういう不健康な状態に置かざるを得ないということが日本の中で現実に起こっているわけでございまして、本当にそういったときの子供の人権をいかにして救済していくかということを、今法務大臣からも前向きの御答弁をいただきましたけれども、ぜひ法務大臣の見識で、この問題、本当に子供たちの人権をしっかりと救済できるような取り組みを考えていただきたいと思っております。

 これは私自身の考えでございますけれども、例えば、児童虐待に対する処置のように対処することはできないんでしょうか。親権などの問題がありますから強制することが目的ではありませんけれども、先ほど申し上げたように、福祉や医療の枠外に置かれていることを是正するための緊急避難的な措置として、一時的には親と別に保護することがあってもよいのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

高村国務大臣 要するに、子供が何らかの理由で医療等を与えるそういう保護の対象外になっているということをどう救うかという問題で、人権の観点から法務省としても考えたいと思いますけれども、直接的に地方自治体なりあるいは厚生労働省なり、いろいろ政府全体で考えなきゃいけない問題かな、こういう感じはいたします。

 ただ、不法滞在者の子供が不法滞在者が届け出ないがゆえに不利益なことになっておる、子供と親は違うんだから子供については保護が与えられるべきだというのは、それは一つの考え方だと思いますし、私もある程度賛成したい部分もあるわけでありますが、一方で、基本的な問題は、不法滞在者をなくすということをしないと、やはり法務省が一番考えなきゃいけないことは、不法滞在者をどう減らしていくかという話なのかなと。そうはいってもたくさんいるわけですから、そういう中で親の因果が子に報いみたいな話はなくしていかなきゃいけないよという話は、それはもっともな部分がかなりの部分ある、こういうふうに思っております。

水島分科員 おっしゃるように、これは各省庁にまたがる問題であると思いますので、本当に政治家としての大臣に、ぜひその省庁の枠を超えて積極的な取り組みを御提案いただけますようにお願い申し上げます。

 そもそも不法滞在者がいるからこういう問題が起こるのであって、不法滞在者を減らさなければいけないということはもちろんそうなんですけれども、そういう原因をなくしていくことの結果というのはかなり先にあらわれてくるものであって、今現在人権侵害に苦しんでいる子供たちがたくさんいるというこの現実がございますので、その原因をなくしていくための措置とともに、今現在のこの人権問題をどうやって解決していくかという現実政策の両方をぜひしっかりとお取り組みをいただきたいと思っております。

 今法務大臣は、かなりの部分というふうに、全体的に御賛成はくださらない、極めて慎重な物言いをされておりましたけれども、私は、やはり親の因果が子に報いという考え方をなくしていかない限り、本当の意味で我々が人権を尊重できる社会というものは手にすることができないと思っております。

 ですから、かなりの部分とおっしゃらずに、これはもう親の問題と子供の人権というのは本当に全く別のものなんだ、親が幾ら不法行為をしているからといって、だからといって子供が法の保護下に置かれるべきではないなどということは、本当にくれぐれも日本に暮らすあらゆる大人に言っていただきたくないですし、ぜひ、そういう意見をリードしていく法務大臣としましても、本当に積極的に親の問題と子供の問題は別なんだというメッセージを日本国じゅうに発していただきますように、心よりお願いをいたします。

 さて、同様の問題が実はほかにもございます。自分には何の責任もないことで子供の人権が侵害されているあしき例が、日本の非嫡出子の問題であると私は思います。

 国連の児童の権利に関する委員会では、一九九八年の六月に、日本の第一回報告に対して、主な懸念事項といたしまして、「法律が、条約により規定された全ての理由に基づく差別、特に出生、言語及び障害に関する差別から児童を保護していないことを懸念する。」「嫡出でない子の相続権が嫡出子の相続権の半分となることを規定している民法第九百条第四項のように、差別を明示的に許容している法律条項、及び、公的文書における嫡出でない出生の記載について特に懸念する。」と記し、勧告として、「特に、嫡出でない子に対して存在する差別を是正するために立法措置が導入されるべきである。」としております。

 まず、この勧告に対しての日本政府としての姿勢を教えていただけますようにお願いいたします。

高村国務大臣 御指摘の人権委員会や児童の権利に関する委員会の各最終見解につきましては、法的拘束力を有するものではないものの、その内容等を十分に検討の上、政府としてこれに適切に対処していく必要があると考えております。

 もう少し申し上げますと、民法第九百条第四号ただし書きの規定は、法律婚の尊重と嫡出でない子の保護との調整を図ったものでありまして、嫡出でない子を合理的理由もないのに差別するものとは言えない。市民的及び政治的権利に関する国際規約第二十六条や児童の権利に関する条約第二条が禁ずる差別には当たらないと考えております。

 なお、最高裁は、民法第九百条第四号ただし書きについて、憲法第十四条第一項に反しないと判断しているものと承知をしております。

 また、平成八年二月に、法務大臣の諮問機関である法制審議会から、嫡出である子と嫡出でない子の相続分の同等化を図る旨の答申が出されておりますが、この問題につきましては、家族制度のあり方や国民生活にかかわる重要な問題として国民の意見が大きく分かれていることから、今後の議論の動向を見守りながら適切に対処していく必要があると考えております。

 それなりに合理的な理由がある区別であるのかな、こう思っておりますが、これは、世論調査なんかしますと、直すことについて反対の方が多いんですね。特に女性の方に多いという結果が出ておりまして、この問題について、余り政治的主導というよりも、やはり国民の世論の動向を見つつ決めていく問題なのかな、こういう感じを持っております。

水島分科員 現在の民法では、生まれた子供だけが生涯にわたって非嫡出子としての戸籍上の記載を背負いまして、また相続上の差別を受けるわけです。

 もちろん、そこに法律婚を守るという大義はあるわけで、だからこそ今おっしゃったような世論調査の結果になっているんだと思いますけれども、法律婚を守るという大義があるとしても、なぜ法律婚をないがしろにした親は何も法律上の差別を受けずに、子供のみにその影響が及ぶという構造になっているのでしょうか。なぜ当事者の大人ではなく、みずからの出生に何の責任も負わない子供が差別を受けなければならないのか。この民法の構造について御説明いただけますか。

高村国務大臣 一夫一婦制といいますか、法律婚主義を守ることは大切だということは御賛同いただけたんだと思うのですが、責任のある親が何のとがも受けない、おかしいじゃないかというのは、そうかなという気もいたします。いたしますが、ではそれについてどういうふうなことをしたらいいのかな、なかなかよくわかりませんので、同じ子供でありながら、片方が一とすれば片方が半分である、そういうことの中で親も心の痛みを感じてもらうということなのかな、それで十分だとは思いませんが、何かいい案があったら教えていただきたいと思います。

水島分科員 実はいい案を持っておりますが、ちょっときょうは質問事項の関係上、その案をここで御披露するわけにはいきません。ぜひ今後機会を見つけて法務大臣にその案を検討していただければと思いますので、よろしくお願いいたします。私の申し上げたことはきちんと御理解いただけたと思います。

 そして、今言ったように、なぜ当事者ではなくて、一番人権を尊重されるべきである子供にその害が及んでいるかという、こんな法律を残しているということは、私は日本社会に大きな恥であると思っております。大人の問題のツケを子供たちにとらせるという子供の人権に鈍感な国の構造が変わらない限り、子供たちが日本に生まれてよかったと思えるような国にはならないのではないでしょうか。一刻も早い民法改正が必要であると思いますが、今私が示そうとしております新たな案の検討も含めまして、民法の改正について、その必要性について、法務大臣の御見解を改めてお伺いしたいと思います。

高村国務大臣 私は、委員がおっしゃっていること、反対だと言っているわけじゃありません。国民世論の動向を見て決めたい、こういうふうな感じを持っております。

水島分科員 先ほど法務大臣は、これはそれなりに合理的な区別である、そのような政府としての見解を示されたわけでございますけれども、ただ、先日、あれは秋の臨時国会でしたでしょうか、森首相が私生子発言なるものをされました。私が私生子のように生まれたと言われるのは不愉快であるという、問題の非常に多い差別発言をされているわけです。

 これは森さんだけではなく、もしかしたら森さんだけが特殊な方なのかもしれませんけれども、実際のところ、日本社会では、大臣がそれなりに合理的な区別とおっしゃっているその法律上の区別によって、現場では、森さんのように、それを差別に転用している人がたくさんいるというのが日本社会の現状でございます。

 ですから、これをもしも合理的な区別とあくまでもおっしゃるのであれば、現場で起こっているさまざまな差別を是正するための新たな立法というものが私は必要になると思います。ただ、何といっても、その立法というのは、恐らくそれこそ各省庁にまたがる、多岐に及ぶものであると思いますので、そんなことであれば、やはりこの問題のもとをつくっている民法を改正することが何よりも必要なことであると思っております。

 きょう私が申し上げましたことに関しては、高村大臣からは、私はかなり御理解をいただけて、また前向きな御答弁もいただけたものと理解しております。

 この民法の問題というのは、非嫡出子の問題だけではなく、もう一つの大きな柱であります選択的夫婦別姓の導入という側面もございます。こちらに関しては世論調査でも非嫡出子の問題よりも随分と賛成する人がふえてきているということでございますので、ぜひその世論の動向を、本当に、何ら恣意的な操作なくきちんと聞き入れていただきまして、そして、結局のところは、この人権問題というのは常に少数派の、日の当たらない領域に起こってくるものでございますので、少数だから切り捨てるというような態度をくれぐれも持たれずに、本当にきちんとした人権国家を日本に築いていただけますように、そのためにも何としても今国会で民法の改正を御検討いただけますように、改めて強く要請を申し上げまして、そして大臣の高い御見識を信頼申し上げまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

宮本主査 これにて水島広子君の質疑は終了いたしました。

 次に、原陽子君。

原分科員 社会民主党の原陽子です。よろしくお願いいたします。

 冒頭、高村大臣にお聞きをしたいと思います。

 大臣は、先日の法務委員会で判検交流について、共産党の木島日出夫議員と民主党の野田佳彦議員の質問にお答えになられまして、そして、個人的には、判事から訟務検事になる数が多過ぎるので是正しなければならないという趣旨の答弁をされたと聞き、三権分立の観点から、私も、それはそのとおり、それを歓迎しております。そのような個人的な御意見には間違いはございませんか。

高村国務大臣 判事から検事に行くのが多過ぎると必ずしも言ったわけではなくて、ほかのものが少な過ぎるからバランスがとれないねという話。私個人としてはですよ。

 法曹三者というのは、やはりそれぞれ、その立場になったときはその立場でやる、そういうものだと私は思っておるのです。ただ、一方の、法曹一元と言われる、本来の、主流の弁護士から判事になるのは余りいない中で、判検交流、判事から検事もしくは法務省に来る、そのバランスが今とれていないことが問題なのかなと。それは私の私見でありまして、これについて司法制度改革審議会で今御論議をいただいている、こういうことでございます。

原分科員 バランスがとれていないという御意見をお持ちであるのであれば、そのバランスがとれるようにしていただきたいと思います。

 それでは、早速質問に移らせていただきます。まず最初に、青少年の犯罪についてお尋ねをいたします。

 私も前回の臨時国会で、少年法や児童虐待法に取り組みをいたしました。その中でやはり、子供たちのことを、青少年のことを問うということは、実は今大人社会が同時に問われているということを最も強く感じました。そして、俗に言う十七歳問題、十七歳を初めとする少年犯罪がことしほど目立っている年はないのではないでしょうか。

 今回、少年院に入って仮退院をした少年たちが再び犯罪を犯す率について資料を請求させていただきました。それを見ますと、再び罪を犯す率というのは大体二〇%前後を推移していることがわかりました。

 少年院法の第一条には、少年院とは矯正教育を授ける施設と書かれてあります。つまり、再犯を防止できてこそ少年院であるわけです。今回の予算編成では人や予算はふえているのかをお尋ねしたいと思います。

長勢副大臣 平成十三年度予算案におきましても、少年事件の適正な捜査処理、非行少年の処遇の充実、今おっしゃいました再犯防止等につきまして充実を図る努力をしたところでございます。合計六十一人の増員を盛り込むとともに、青少年対策関係予算として総額約五百六十億九千六百万円を計上しておりまして、前年度と比較いたしまして二十五億三千五百万円の増額となっております。

 主な事項として、今申しましたような青少年検察の充実強化もありますけれども、少年院教化活動の充実、少年鑑別所業務の充実、青少年保護観察の充実等に増額を図っておるところでございます。

原分科員 それでは、例えば、再犯防止、再び罪を犯さないために、仮退院をした後の少年たちにどのようなフォローをなさっているかということをお聞きしたいと思います。

長勢副大臣 日本の少年院は世界でも大変効果を上げておるという評価をいただいておるところでございますが、少年院入所中におきまして、非常に科学的、あるいはまた、心理学とかいろいろな分野の学問あるいは研究成果を踏まえた教育方法の研究を踏まえまして、非行の重大性を認識させる、また罪の意識をきちんと持たせる、さらに人への思いやりを持たせる、社会的なつき合い方を考えさせる、覚えさせるといったような、健全な社会人として必要な感性、知識といったものを身につけさせるための指導を相当念入りにやらせていただいております。そういう中で、社会適応訓練ですとか、それからまた社会奉仕活動などを通じまして、社会に復帰できるように矯正教育を念入りに行っておるところでございます。

 さらに、保護観察所におきまして、保護観察官あるいは保護司の方々が、保護者等とも連絡をしながら、出院後の生活が円滑にできるようにいろいろな助言をする、また援助をするということをやっております。退院後も当然、保護司の方々などに今のことを大変御苦労いただいてやっておるわけでございまして、今後ともこの成果が上がるようにさらに最大限の努力を図ってまいりたいと思っております。

原分科員 さまざまな御努力をなさっているということは十分にわかりましたが、統計で実際に推移したまま減少をしていないということが出ているということは、まだまだ対策が不十分ということではないでしょうか。

 もちろん、この問題に関しては、地域社会とか家庭とか学校環境など、さまざま社会全体に及ぶ問題であるとは思います。だからこそ、私は、少年院という窓口から、社会をどう変えていけばいいのかということを提起していただくことが重要ではないかと思います。先ほど、世界でも高い評価を受けている日本の少年院ということをおっしゃっていましたが、少年院から日本を変えるつもりで、少年を見守る大人たちが社会全体に対して実情を訴える必要があるかと思います。

 私は、提案として、例えば縦割りを超えた連絡会議等を厚生省などとつくったらどうかななんというふうにも思ったりするのですが、大臣にこれはお聞きしたいと思います。青少年の犯罪や再犯を防止するために、高村法務大臣の決意をお聞きしたいと思います。

高村国務大臣 不幸にして一度非行や犯罪に走った少年が再び犯罪を犯す、そういったことはまさに、社会にとってもそうでありますが、個人にとっても大変不幸なことであるわけであります。

 今、長勢副大臣からお答えいたしましたように、日本の少年院は国際的にも高い評価をされていますけれども、また同時に、だからといって再犯率が減っているわけではないという事実もあるので、あらゆる施策を講じながら、再犯率が減るように、その少年の特性に応じた処遇をして更生を図っていく、そういった面に法務省としても全力を尽くしてまいりたい、こう思います。

原分科員 ぜひ、子供たちが本当に元気に暮らせる社会になるためにも、若い世代の代表として私も一緒に頑張っていきたいというふうに思います。

 次の質問に移らせていただきます。次の質問は、恩赦というものについてお尋ねをしたいと思います。

 実は、このことは私が中学生ぐらいのときから疑問に思っていたことであります。そのときというのは、昭和天皇が亡くなられたときで、私はたしか中学一年生ぐらいだったと思うのですが、そのときは余り知識はなかったので、天皇陛下が亡くなられると罪が消えるんだよとか、刑務所から出てくるんだよとか、それって不思議な制度だね、それって本当に必要なのかな、いいことなのかななんという会話を同級生同士でしたのを覚えていまして、そのことをぜひきょうはお聞きをしたいと思います。

 先日、村上正邦前議員が逮捕されました。最近やはり世間を騒がせているのが、政治に絡む疑惑や犯罪です。間もなく参議院選挙も近づきます。

 そこで、憲法と恩赦法で定められている恩赦について私は調べてみました。中でも、公職選挙法を犯した人の被選挙権などが恩赦によって復活している数を調べて驚きました。平成元年二月の二十四日の天皇陛下が亡くなられたときに一万五千人、その後、その二年後の十一月十二日に今の天皇が御即位されたときに五千人の選挙に出る権利が復活しています。私はこれは物すごい数だというふうに思っています。全体の数では、平成元年に一千十四万人、そして平成二年に二百五十万人の方が一律に復権をしています。大臣、このような数字があるということを御存じだったでしょうか。

高村国務大臣 今指摘された数字は、申しわけありませんが、知りませんでした。

原分科員 恩赦に関してはさまざまな意見があるとは思います。私も実はこのような制度があるということをここの世界に来て知ったわけですが、しかし、今政界にまつわるさまざまな汚職の事件があったりしますよね、たくさんあるかと思います。その政界にある汚職の芽を摘む急務がある今、私は、この公職選挙法違反に限りその復権を一切認めるべきではないというふうに思うのですが、大臣の今のお考えをお聞きできたらなと思います。

高村国務大臣 選挙が公正に行われるということは、議会制民主主義を維持する上で極めて重要なことであります。選挙違反者に対する罰則の適用はそういう意味で厳正に行われるべきだ、こう考えております。

 ただ、選挙違反者についてだけ一律に恩赦の対象から除外するということに合理性があるとまで言えるかなというと、私は、そうではないのではないか、他の犯罪とのバランスや事案の内容などを勘案して判断していくべきだ、こういうふうに考えております。参議院選挙が近いから選挙犯罪だけみんな恩赦にしちゃえなんといったら、それこそ選挙になりませんから、そんなことはありませんから安心をしてください。

原分科員 ありがとうございます。

 それでは、最後の質問に移らせていただきたいと思います。最後に、司法試験法についてお聞きをしたいと思います。

 現在、先ほど大臣の御答弁にもありましたけれども、司法制度改革審議会が行われています。幾ら司法制度というものを改革しても、そこに至るまでの教育がしっかりしていなければ意味がありません。一九九八年に司法試験法が改正されまして、司法試験の選択科目から行政法が外れました。今、司法による行政のチェック機能ということが問題視されている中で、私はこれは見過ごせない事実であると思います。

 実は、この懸念は、法改正の当時既にありました。そこで、一九九八年の二月の二十四日の閣議決定に先駆け、二月の二十日、自社さの政策調整会議で、行政法は大切なので司法研修所できっちりと教える、こうした約束が行われました。

 その前夜の会議では、自民党の保岡興治代議士、さきがけの武村正義代議士、そして当時最高裁判所人事局長で、現在事務総長をされている堀籠幸男氏と法務省の方がそこの会議で同席をしていました。そこで法務省の方から、二月二十日の三与党政策調整会議の席で、最高裁との調整の上、行政法を司法研修所で全員に学ばせるように努力をすると表明する用意があるという発言があったということを聞いております。

 これは実際その最高裁判所の堀籠事務総長に確かめたいことなのですが、これは政党間のやりとりのことなので大臣にお伺いをしたいと思います。

 当時、社民党から、司法研修所でのカリキュラムを充実すること、そして、今回の改正の影響を正確に把握した上で見直しが必要なら柔軟に対応することの二点の発言がありました。そして自民党からも、運用面できちんとやるようにという発言がありました。最高裁と法務省はこれを承知した、了承したと当時の関係者から聞いておりますが、この見解でよろしいのでしょうか。

高村国務大臣 最高裁の方はともかくとして、法務省の方はそういった御趣旨は十分に認識しているところでございます。了解という言葉がぴったりかどうかわかりませんけれども、そういう御趣旨は十分に了解しているところでございます。

原分科員 自社さのそのときの同意を今の森政権が守るかは別として、そういうやりとりがあったということは事実ということでよろしいですよね。

 今回これについても、そのときの約束がどうなったかを調べてみました。まさにこの十三年の四月から、その新しいカリキュラムがスタートいたします。充実すると約束したことに対して、実は私はそのカリキュラムを取り寄せたのですが、実情はひどいものだというふうに私は受けとめております。

 行政法が前期には選択講座としてたったの二時間、そして後期の方でもたったの二時間、これも選択科目でたったの二時間というふうにあるだけで、例えば前期も後期もどちらの科目もこの行政法を選択しない人は、裁判官になろうが、弁護士になろうが、検事になろうが、行政法の知識が全くなしでも法曹界に入ることができてしまうというようなカリキュラムだと私は受けとめております。

 このときの約束、そのときにそういうやりとりがあったという約束があったにもかかわらず、約束が守られていない。私は、何か政治の世界にはそういった守られない約束がたくさんあるのかななんて、ちょっとショックを受けております。

 司法試験法の審議の際に、法務省の山崎司法法制調査部長がこういうふうにおっしゃっております。「私どもの認識といたしまして、行政法、労働法、これは大切な法律でございます。それを無視するということではございません。」「司法研修所において、行政法、労働法、それ以外のものももちろん、破産だとか知的財産権とかについての情報提供をするというふうにシフトを変えているわけでございます。」このようにおっしゃっております。

 国会審議で、「大切な法律」、このように言われた行政法も労働法も、この十三年の四月からスタートされるカリキュラムには選択科目にしかならなかったということを大臣はどのようにお考えになっておられるでしょうか。

高村国務大臣 司法研修所のカリキュラムというのは最高裁判所のもとに置かれた司法研修所で決定されるべき事項ですので、法務大臣が、これはよくないじゃないかとか、いいねとか、そういうことは余り言うべき立場ではない、こう思っています。

 法律実務家にとって、行政法等の多様な法的素養を習得することが重要であるということは言うまでもないことであります。そこで、法改正に当たって、基本六法についての確実な基礎を身につけた者を司法研修所に受け入れた上で、このような行政法とかあるいは労働法とか、多様な法的素養を習得させることが必要である、こういうふうに考えました。また、このような司法試験法の改正趣旨を踏まえて、既に平成十一年から、司法研修所の集合研修のカリキュラムにおいて、行政法の学者や行政事件を担当する実務家による講義などが取り入れられていると伺っているわけであります。

 選択でいかにも時間が少ないじゃないかという御発言がありました。私、実態を必ずしもよく知らないんですけれども、私の経験からいいますと、司法研修所で行政法も労働法も学んだような記憶がないわけですが、実務界に入っては、やはり基本六法を学んでおくとそれなりに対応できるということは事実だと思います。ただ、それだけでなくて、研修所の中でそういったものを幅広く、幅広くというと物すごく広くなりますから、全部を必ず受けなければならないというのは逆に大変ということもあるかなと思いますが、私、実態をよく知りませんけれども、それなりに工夫してやっているという報告を受けております。

原分科員 しかし、現在、司法制度改革審議会でもさまざまな議論が行われている中で、司法制度の充実を図るためにも、そこに至るまでの教育の課程というものをやはり重視をしていかなくてはならないことだと私は思います。もちろんさまざまなそういった工夫をなされているということもわかりますけれども、やはり行政法や労働法というのは私はとても大切な、学ぶべきものだと思いますので、その当時社民党が主張した見直しというものを重視していただいて、できるのであればというか、行政法がぜひ司法試験の必須科目となるようにこれからも議論を続けていっていただきたいと思います。

高村国務大臣 社会の司法に対するニーズというのはいろいろあるわけですが、そういう中で、これからどういうふうにしたらいいのかということを司法制度改革審議会でいろいろ御審議いただいているところであります。

 そういう中で、司法試験をどうするべきかという話もありますし、それから司法研修所でどういうカリキュラムでやるべきかという問題もありますし、もう一つ、当時余り大きな問題として出てきていなかったロースクールという、そこでいろいろ社会のニーズにこたえた実践的な教育をするようなシステム、これは文部省とも話さなきゃならない、政府全体で考えなきゃいけない話ですが、今までの法学部と全然違ったような法律実務家を養成するための高等教育機関をつくっていった方がいいのではないか、そういうような話が出てきております。そういうことをそれぞれ、社会のニーズがどこにあるか、法曹に対してどういうことを要求しているのか、そういったことを踏まえて司法制度改革審議会の中で御審議いただいているもの、そういうふうに承知をしております。

原分科員 私も、司法というのはとても大切なものだと考えておりますので、ぜひ充実した教育内容等になるようにこれからも積極的に働きかけていきたいと思っております。

 どうもありがとうございました。

宮本主査 これにて原陽子君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして法務省所管についての質疑は終了いたしました。

 これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 分科員各位の格段の御協力を賜りまして、本分科会の議事を無事終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午後零時七分散会




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