衆議院

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第1号 平成15年2月27日(木曜日)

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本分科会は平成十五年二月二十五日(火曜日)委員会において、設置することに決した。
二月二十六日
 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。
      石川 要三君    杉浦 正健君
      丹羽 雄哉君    河村たかし君
      樋高  剛君    井上 喜一君
二月二十六日
 杉浦正健君が委員長の指名で、主査に選任された。
平成十五年二月二十七日(木曜日)
    午前九時開議
 出席分科員
   主査 杉浦 正健君
      石川 要三君    丹羽 雄哉君
      林 省之介君    森岡 正宏君
      家西  悟君    大石 尚子君
      河村たかし君    今野  東君
      齋藤  淳君    山田 敏雅君
      土田 龍司君    樋高  剛君
      井上 喜一君    松浪健四郎君
   兼務 前田 雄吉君 兼務 赤嶺 政賢君
   兼務 塩川 鉄也君 兼務 阿部 知子君
   兼務 保坂 展人君
    …………………………………
   法務大臣         森山 眞弓君
   外務大臣         川口 順子君
   法務副大臣        増田 敏男君
   外務副大臣        茂木 敏充君
   法務大臣政務官      中野  清君
   政府参考人
   (内閣官房内閣参事官)  佐々木真郎君
   政府参考人
   (司法制度改革推進本部事
   務局長)         山崎  潮君
   政府参考人
   (防衛施設庁総務部施設調
   査官)          枡田 一彦君
   政府参考人
   (防衛施設庁施設部長)  大古 和雄君
   政府参考人
   (法務省大臣官房長)   大林  宏君
   政府参考人
   (法務省民事局長)    房村 精一君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    樋渡 利秋君
   政府参考人
   (法務省矯正局長)    中井 憲治君
   政府参考人
   (法務省人権擁護局長)  吉戒 修一君
   政府参考人
   (法務省入国管理局長)  増田 暢也君
   政府参考人
   (外務省アジア大洋州局長
   )            薮中三十二君
   政府参考人
   (外務省北米局長)    海老原 紳君
   政府参考人
   (外務省中東アフリカ局長
   )            安藤 裕康君
   政府参考人
   (外務省経済協力局長)  古田  肇君
   政府参考人
   (厚生労働省職業安定局次
   長)           三沢  孝君
   政府参考人
   (厚生労働省保険局医療課
   長)           西山 正徳君
   法務委員会専門員     横田 猛雄君
   予算委員会専門員     中谷 俊明君
    ―――――――――――――
分科員の異動
二月二十七日
 辞任         補欠選任
  石川 要三君     林 省之介君
  河村たかし君     山田 敏雅君
  樋高  剛君     塩田  晋君
  井上 喜一君     山谷えり子君
同日
 辞任         補欠選任
  林 省之介君     森岡 正宏君
  山田 敏雅君     家西  悟君
  塩田  晋君     土田 龍司君
  山谷えり子君     松浪健四郎君
同日
 辞任         補欠選任
  森岡 正宏君     石川 要三君
  家西  悟君     今野  東君
  土田 龍司君     樋高  剛君
  松浪健四郎君     井上 喜一君
同日
 辞任         補欠選任
  今野  東君     齋藤  淳君
同日
 辞任         補欠選任
  齋藤  淳君     大石 尚子君
同日
 辞任         補欠選任
  大石 尚子君     河村たかし君
同日
 第二分科員阿部知子君、第四分科員保坂展人君、第五分科員塩川鉄也君、第六分科員赤嶺政賢君及び第八分科員前田雄吉君が本分科兼務となった。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 平成十五年度一般会計予算
 平成十五年度特別会計予算
 平成十五年度政府関係機関予算
 (法務省及び外務省所管)


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     ――――◇―――――
杉浦主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。
 私が本分科会の主査を務めることになりましたので、何とぞよろしくお願いいたします。
 本分科会は、法務省、外務省及び財務省所管について審査を行うことになっております。
 なお、各省所管事項の説明は各省審査の冒頭に聴取いたします。
 平成十五年度一般会計予算、平成十五年度特別会計予算及び平成十五年度政府関係機関予算中法務省所管について、政府から説明を聴取いたします。森山法務大臣。
森山国務大臣 平成十五年度法務省所管の予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 法務省は、治安、法秩序の維持確保及び国民の権利保全など国の基盤的業務を遂行し、適正、円滑な法務行政を推進するため、現下の厳しい財政事情のもとではありますが、所要の予算の確保に努めております。
 法務省所管の一般会計予算額は六千百十一億四千三百万円、登記特別会計予算額は千七百八十五億千五百万円、うち、一般会計からの繰入額が七百四十三億四千六百万円でありますので、その純計額は七千百五十三億千二百万円となっており、前年度当初予算額と比較いたしますと、十八億五千九百万円の減額となります。
 何とぞ、よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。
 なお、時間の関係もございますので、お手元に配付してあります印刷物を、主査におかれましては、会議録に掲載されますようお願い申し上げます。
杉浦主査 この際、お諮りいたします。
 ただいま森山法務大臣から申し出がありましたとおり、法務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
杉浦主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
杉浦主査 以上をもちまして法務省所管についての説明は終わりました。
    ―――――――――――――
杉浦主査 この際、分科員各位に申し上げます。
 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。
 なお、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。林省之介君。
林(省)分科員 おはようございます。自由民主党の林省之介でございます。
 私はきょうは、私が選挙区といたします大阪府の高槻市、島本町でございますが、今この地域で、法務局の出張所が統廃合によってなくなるという事態がございまして、しかもこの町は、この四月一日から中核市として二十一世紀の新たな町づくりに向かおうとしている町でございます。
 主査、お許しをいただければ、ちょっと資料を配付したいんですが、よろしゅうございますでしょうか。
杉浦主査 どうぞ。
林(省)分科員 資料をひとつ配付していただきますようにお願いをいたします。
 資料を見ていただいたら一目瞭然でございます。この町には、中核市になろうとしているにもかかわらず、いわゆる国の出先機関ともいうべき地方の支分部局が一切ないと言っていい状況が今まさに生まれようとしているわけでございます。どう見ましても、ぱっと見ただけで何と哀れな中核市だなということを、皆さん見ていただいただけでおわかりいただけるのではないかと思います。そして、唯一住民が誇りといたしております法務局の、しかも出張所でございます。
 人口およそ三十六万の都市でございます。面積基準も足りている、人口基準も足りている、ひとつ中核市としてやらせてください、国はこのことをお認めをいただいたわけでございます。しかし、そのお認めをいただいて、いよいよ中核市になろうというこの町が、今この資料をごらんになっていただいたらおわかりのように、一切の国の出先機関が今まさに、奪われると言うと言い方がきつくなりますから、なくなろうとしているような状況にあるわけでございます。
 確かに、平成七年の民事行政審議会答申、これを受けて、法務局出張所等の統廃合に鋭意当局が取り組んでいただいている。私もこの話を聞きましたのは平成十二年の十二月の末のことでございました。当時の統廃合の室長の関さんを初め数名の方がお見えになって、実はこういうことをこれから行おうといたしております、ひとつ御了解をいただきたいと言うので、私もそのことを初めて知ったわけでございます。私が当選をさせていただいたのは平成十二年の六月の選挙でございますから、それまで私は全く一民間人でございまして、こういうことが進んでいることも不明にして知りませんでした。これはえらいことですねというのが、その当時の私の第一声であったと思います。
 以来、地元行政を初めとして、数度にわたって私も会合を重ね、どうすればいいんだろうということで、ああならないか、こうならないかと。最初に、市長、町長、市議会議長を初め、多くの方々に上らせていただいて、最初に陳情をさせていただいたのは高村大臣のときでございます。そして、今法務大臣をしていただいております森山大臣のところにも、大臣はよく覚えていただいていると思いますが、二度にわたって、やはり市長、町長、あるいは議会代表を初めとした、それぞれの各団体の長の方々を初めとして、陳情、要望にも寄せていただきました。
 彼らの主張というのは、とにかく三十六万都市です、中核市になりますと。しかも今、この高槻市のJRの北側では、西日本一というような大きな都市再開発を行っております。その完成は平成十六年三月の予定でございます。これに関する登記事務も大変多くなってくるであろうというふうなことを、特に団体の皆様方などはおっしゃっておられるわけでございます。
 したがいまして、これからさらに登記事務がふえてくる可能性がある。あるいは今、まだこれはどうなるかわかりませんけれども、私どもの町には高速道路が走っているにもかかわらず、人口三十六万、この町は高速道路が走っていてインターがない。こんな町も恐らく日本で我が町だけではないかなというふうに思っています。
 そして、長年にわたってよく我々が耳にしたのは、革新の町、確かにいっとき革新の町と言っていい状況がございました。三十六万もの町に、高速道路が走っていてインター一つついていない。その夢をかなえるのが第二名神高速道路ということになっているわけですが、これとてどうなるかわからない。それがつけばインターチェンジができるという予定になっておりまして、住民たちはそれを首を長くして待ち望んでいるというような状況があるわけです。これがまた具体的にスタートしてまいりますと、当然のこととしていろいろと法務局の方にお世話になる事例も多く出てくるだろうということも、業界の皆様方などはおっしゃっておられるわけでございます。
 とりあえずここまでのところにいたしまして、まず大臣、こういう状況について、我々もよくわかっているつもりでございます。また、私もこのことについてあちこち相談をしましたときに、これは林君、総論賛成、各論反対では困るよということも言われました。重々我々としてはわかった上で、でも、なおかつ、この情けない状況の町に、せめて何らかの方法をお考えいただけないかというのが市民の願いでございますが、とりあえず、今までちょっと申しましたことにつきまして、大臣の御感想で結構でございます、御所見で結構でございますので、お聞かせをいただきたいと思います。
森山国務大臣 林先生がおっしゃいましたように、地元の方が何度かおいでくださいまして、るるその事情については承りました。
 私どもも、地元のお気持ちはよくわかるんでございますが、一方において、何年か前の閣議決定によって決められました方針というのもございまして、これに基づいて粛々とやっていかなければならないという務めもあるわけでございまして、しかし、地元の皆さんが疑問を持たれる、あるいは心から反対されるというようなことについてそのまま無理やりにいくということは、その後の業務の運営を考えましても適当ではございませんので、地元の方とよくお話し合いをして、そして御了解を得た上で進めていくということが望ましいのではないかというふうに考えております。
林(省)分科員 ありがとうございます。
 今、地元で大変心配していますことは、統廃合、これはちょうど中間といえばまさにそのとおりなんでございますが、私どもの町は大阪の北の外れの東側にございます。そして、その中間にある町にさらに西の町の出張所もあわせて統合する、こういう形でございます。
 確かに、時間的な問題で見ましても、おっしゃる三十分以内、車で三十分というのは、これは私も何度か時間帯を見ては、例えば朝の今ごろの時間帯に行けば市内中心部からどれぐらいの時間で行けるだろう、あるいはラッシュ時間帯に行けばどれぐらいの時間がかかるんだろう、昼間だったらどうだろう、私も五度、この出張所まで、新たにできる、支局とおっしゃっておられるようですが、支局まで車で何度も走っております。
 それから、新たにできる支局の周辺もしっかりと見ております。そしてまた、我々が大臣に要望いたしましたときにも、こういう状況ですという写真もつけさせていただいたと思います。極めて矮小な道でございます。そしてそこに、例えば登記の事務だけじゃない、いろいろな方が行かれるわけでありますから、人権の相談もあろうと思います。そういうときに、いろいろな方々が行かれるときに、この場所というのはどうなるんでしょうねというような場所に実は今統合されようといたしているわけであります。
 そして、時間帯というのは、それぞれの時間によってかかる時間は違うんですけれども、まさに一番時間がかかるときは土曜日の雨の日でございます。近くに大型店舗がございます。ここへの車がどっと続くわけですね、まあ土曜日は出張所に行くことはないんですけれども。このときには、皆さん方が三十分以内で行けますよというところが二時間かかります。朝夕ですと一時間はかかります。昼間の時間で辛うじて、すっと走れば確かに二十分前後で参れます。こういう地理的な条件に統合されようといたしているわけであります。
 そして、一方の町、これは吹田市でございますが、吹田市は既にこの二月にはもう統合が決まっております。我々のいわゆる存続させる会の皆さん方が今心配をしているのは、大変言い方が悪いかもしれませんけれども、うだうだ言いながら、はい、もう統合しますよ、いずれ我が町も近いところでそういう通達が来て、あるいは大阪の法務局の方から説明の一つもあって、はい、統合ですということになりはせぬかという心配を大変強く持っておられるわけですね。我々と一緒に歩調を合わそうとして反対運動をしかかった吹田市は、もう適当なところであきらめてしまわれたと言った方が私はいいと思うんですけれども、もうしようがないやということで、適当なところでもうあきらめられた。
 我々は今も、きょう実はこの存続させる会が大阪法務局の方に参りまして、そして何とか、残していただくということについては、もうはっきりと申します、もう無理だということは皆さんわかっているんですよ。せめて今しばらくの何らかの措置をお考えいただくわけにはいかぬだろうか。いろいろなことが考えられると思います。どんなことだとおっしゃられれば私の方で具体的に申し上げますけれども、とりあえず大臣、何かいろいろなことが考えられるんじゃないですかということについて、もうある時期を切って、もう関係ありません、何月何日をもって統合しますというような抜き打ち的な通達一本でそれで終わりですというようなことにはしません、いろいろなことが考えられると思いますが、一度せめていろいろなことは考えますよというぐらいなところのお話がいただけるとありがたいのでございますが、いかがでございましょうか。
房村政府参考人 私どもとしても、政府の行政改革の方針に沿ってできるだけ効率的な行政、限られた予算と人員の中で国民にできる限りの行政サービスをするという前提として、やはり行政を効率化する、そのために登記所の統合をしているわけでございます。
 ただ、登記所を統合することになりますと、当然そこに、地元の方々にとっては従来あったものがなくなるわけですので、御不便をおかけしていることも御指摘のとおりだろうと思います。先生のおっしゃったように、そういう意味で統合はもう何とか御理解いただきたいと思っておりますが、地元の方々の御不便を少しでも解消する方策としてどのようなものが考えられるか、これは地元の方々の御意見も伺いながら、私どもとしても今いろいろ検討しているところでございます。直ちにできるものもあれば、しばらくお待ちいただかなければならないようなものもあろうかと思います。そういうような点についても、地元の方々の意見も踏まえ、また意見交換をして、できる限りの検討はしたいと思っております。
林(省)分科員 今お話を聞きますと、いささか安心はするんだろうと思うんですけれども、やはり、これまでの経緯がございまして、かなり団体の皆さん方は懐疑的になってきているんですよ。あんなことを言って、ぐっちゃらぐっちゃらということを今まで何度もやってきたけれども、本当にそうなんですかね、ある日あるとき吹田のように、はい、統合しますで終わるんじゃないですかねという心配を大変強くお持ちなものですから。私は皆さん方を信頼しています。しかし、しょっちゅう皆さん方とお話のできない住民の方々にすれば、ひょっとしてまたいつもの手でやってくるんじゃないかということを、はっきり申し上げて大変心配をしていただいている。
 そこで、再度、きょう、存続させる会が代表団を送り込んで、大阪法務局の方に行くということを知らせを受けております。たまたまなんです。きょうたまたま、私がここでこの質問をするのと別に合わせたわけじゃありませんが、彼らは早くから予定をしていたようでございます。
 そんな中で、では少し先の話としてお聞きをしたいんですが、これは、昨年の十月の十一日、大阪法務局の方からいただいたお返事の中に、例えばこんなことが書いてあるんですね。「登記申請のオンライン化(平成十六年度) 今まで、登記所へ行かなければできなかった不動産登記、商業・法人登記の申請が、自宅や会社・事務所のパソコンから申請することができる制度を導入します。」こう返答の中に入っております。あるいは、「登記事項証明書、会社等の代表者の印鑑証明書発行のオンライン化(平成十七年度(目途))」と書いてあります。「今まで登記所へ行かなければ発行を受けられなかった登記事項証明書、会社等の代表者の印鑑証明書の発行がオンラインでできるシステムを導入します。」こういうふうに返答をいただいているようであります。
 この返答いただいたものが、まず、平成十七年度は目途と書いてありますけれども、皆さん方の今お進めのオンライン化のスピードからいって間に合うものなのかどうなのか、大体その辺のところで何とかなるでしょうねということについてはいかがでございましょうか。
房村政府参考人 ただいま御指摘の不動産の登記申請のオンライン化、これについては十六年度末までには法改正も含め実現をしたいと考えて、現在、法改正作業及びシステムの開発というものを進めているところでございます。また、その後の十七年度の証明書のオンライン化、これについても、それとあわせて検討、研究を進めておりますので、何とか十六年度末あるいは十七年度中には可能になるのではないか、現在のところそう思っております。
林(省)分科員 先般、陳情に伺いましたときに、住民の皆様方から大臣にもいろいろな御意見も申し上げましたし、民事局長にも御意見を申し上げたことがあります。そんな中で、これは私は少し計算が彼らに都合のいい計算ではないかなと思いつつも、現実に、すぐ自分たちの町にある出張所に行く場合と、少なくとも車で、時間のかかるときには一時間以上かかる新たに統合される支局に行く場合と、事件の件数、大体今四万二、三千だったと思いますが、それをみんなお金に計算する。近くだったから自転車で、大体皆さんも御案内のように、そういう出張所の周辺には司法書士さんだとかあるいは土地家屋調査士さんだとかというような方々がたくさん集まっておられます。だから歩いて行けるわけです、今あるところだと。それを、電車賃を使って行かなきゃいけないとか、車を使って行かなきゃいけないとかということで、計算をしますと、およそその費用というのは四億円ぐらいになります、こうある方がおっしゃっている。それはちょっと大きいでしょうと僕は言ったんですけれども、いずれにしても、それだけ言うならば今までとは違う余分なお金も現実にかかるわけですよね。時間もかかるわけでございます。
 その辺のところから、とにかくこれが本当に実現をできるんなら、何とかこの形になって、我々がしょっちゅうそういうことで動かなくてもいいような状況になるまで、何らかの方法を考えることはできぬのですかね。
 これは、いろいろなお考えをしていただいている中で私の方で勝手なことを言っちゃいかぬのかもわかりませんが、あえて申しますと、例えば一部の機能、そういう人たちがしょっちゅう行かなくてもいいようなことができる、一部機能を現在あるところに置けというようなことは言っておりませんよ。場所は市の方で提供してもよろしい。
 実は私、きのう、この件で市長と、市長も何度も来ていますからね。いよいよおれも、きょう、もう一度お願いかたがたの質問をすることになっておるんですと。ついては、市長さん、じゃ、仮に市庁舎のどこかとか、市の方が管理運営しているしかるべき場所に一部機能を設置するというような話にこれから先のこととしてなった場合に、そのことについては対応していただけますねと、私は念を押してまいりました。喜んでやらせていただきますということでございますから、例えばの話でございます、今申し上げているのは。
 例えば、一部機能、特に日常生活の上でしょっちゅう出張所に行く必要のある方、これからは支局でございますが、支局に行く必要のある方たちのお声の一番大きいのはそこなんですね。せめて自分たちの日常、営業活動の中でいささかのことを考えていただけるかと。
 これは、はっきり申しまして、住民の皆さん方は、大体この法務局の高槻出張所があるということすら御存じない方が半分以上でございまして、我々が反対運動をして、垂れ幕をかけたり、のぼりを立てたりして、そして、活動を始めてから初めてそういうものがあるということをお知りになった住民が圧倒的であります。今は、十万人からの署名を集めて、これも大臣にお届けをしておりますから、相当の方々が、こういう施設が高槻からひょっとしたらなくなるというので、えらいこっちゃとおっしゃっているんですけれども、それまではそんな状況だったんです。
 主として、けしからぬ、とんでもないと言って、そういう存続させる会をつくって、私を呼び出したり、東京にまで大臣のところに御要望に来られたりという方々は、はっきり申しまして、やはりそういう関係のお仕事をなさっている人たちであります。そういう方々が、やはり一番日常の活動の中で不便を来す、時間がとられる、お金がかかる。だから、いましばらく、そういうオンライン化がある程度にでき上がって、我々がもう一々判を持って出張所まであるいは支局まで来てもらわなくてもいいですよという状況になるまで、何らかの方法はないですかね、こういう話が一番最近は多いわけです。
 だから、統合されることについて、はっきり申しますけれども、大きな反対はないんです。しかし、そういうことすらもう知りません、我々はただもう統合に向かってやるだけです、これは閣議決定しているんです、あるいは答申にあるんですと。だけれども、答申だって、私も初めてじっくりと読ませていただきましたけれども、この民事局の答申についても、やはり、しっかりと地元の人たちのことを考えてやらないとだめですよということをちゃんと書いてありますよ。一方的にこうですと言って、国家権力でもってささやかな庶民の利用するものを持っていっちゃだめですよということをちゃんと書いてあるわけですから。
 そんな中から、いろいろな話をしているときに出てくるのが、例えばの話でございますが、今申し上げたような一部機能をしかるべく措置することはできぬのですかねという話になっているんです。これは、恐らく今そうしましょうというようなお答えはなかなか出にくいんだろうというのは重々わかりながらも、このことについて、とりあえずのお答えを聞かせていただきたいと思います。
房村政府参考人 御指摘のように、統合したときに、少なくとも従来登記所が果たしていた機能の一部でも何とか残せないかという御指摘は、随分受けるわけでございます。
 従来、私どもとしても、組織を統合して効率化するということになりますと、職員を残すわけにはまいらない。ですから、それにかわる措置として何か考えられないかということで、従来は、例えば、定期的にそこに赴いて登記相談に応ずるというようなことをしたり、あるいは、郵便局にファクシミリを設置していただいて、そのファクシミリから謄抄本の請求をしていただくというようなサービスをいろいろ工夫してきたわけでございますが、なかなか地元の方々の要望に十分おこたえするというのが難しいというのが実情でございます。
 ただ、私どもとしても、いろいろな新しい技術も進んでおりますので、そういうものを使って少しでもそういうことにおこたえできないかという検討はいろいろしてはいるんですが、なかなか地元の方々が思っていられることをそのまま実現するというのは難しい面はございますが、従来とってきた措置あるいは今後可能なものというものについても、地元の方々にも御説明し、またその御意見を伺って、我々でどこまでできるのか、それは今後も一生懸命研究したい、こう思っております。
林(省)分科員 既にもう今までに統合されたところもありますね。そのときのいろいろな事例も、私どもも、司法書士会なんかで私も勉強会に行ったり、あるいは、一度なんか講演会までやらせていただいているんですよ、たまたま少し勉強させていただいたものですから。このことについて、あなた、ひとつ講演をやってくれといって、司法書士会で講演までやらせていただいたことがあります。そんな中で、いろいろな事例がある。中には、もう本当に何が何でも反対だというようなことで、訴訟まで起こしておられるというような事例もございますね。
 我々の方はいわゆる総論賛成ですから、できるだけ協力をしましょうということで、はっきり申し上げまして、そういう過激な対応は一切していないんですよ。私も、とにかくおれも一生懸命やるから皆さんひとつ過激なことだけはやめてください、できるだけ話をしていきましょうということで、今日これまで、そういう市民団体の運動としては極めて、私の目から、あるいは私の口から言うのはどうかと思いますけれども、私の目で見て、随分と紳士的な対応を住民はしてくださっている、こう思っております。
 そんな中で、先ほどの話に戻りますけれども、いよいよ四月一日から中核市です。それに時期を合わすというわけじゃないんでしょうけれども、はい、もう統合です、後は知りませんというような、こちらも紳士的に対応させていただいているわけでございますから、法務局としてもできる限りの知恵を絞っていただいて、そして、ある程度に住民の皆さん方がそれでいたし方がないでしょうと言えるような答えを、これが僕はやはり知恵だろうと思いますから、ひとつ知恵を出していただいて、そして、お互いがこの線で何とかというようなところが出てくるまで、今すぐに持っていくということについては、何とかちょっと、じゃ、その話がちゃんとつくまでは待ちますよと。
 待ちましょうという、その話をする間は、これはもう移行措置期間ですから、すぐに統合ということについては、その話がちゃんとつくまでは少し待ちますよというぐらいなお返事は、きょういただくわけにはいかぬでしょうかね。
 これがいただけると、私は帰って、皆さんこうでしたと言って、胸張って、大臣初め民事局長も大岡裁きのようなすばらしい裁きをしていただきましたよ、皆さん、どうぞこれからもしっかりと紳士的に話し合いをしていきましょうという御報告ができるんでございますけれども、最後にそれを聞かせていただいて、質問を終わろうと思います。お願いいたします。
房村政府参考人 私どもとしては、先ほど来申し上げておりますように、統合するに当たっては、でき得る限り地元の方々の理解を得て行うということを基本方針にしておりますし、先ほど来先生の御指摘のいろいろな方策についても、十分地元の方々と意見交換をした上で、最終的にどうするかということを決めていきたいと考えておりますので、ただいまの先生の御指摘を十分踏まえまして私どももこれから対応していきたい、こう考えております。
林(省)分科員 どうもありがとうございます。
 やあと言って、こうですとまではいかぬですけれども、何とか、帰って皆様方に、こういう状況でございます、私も引き続き皆さんと一緒に紳士的にひとつ話し合いをしてまいろうと思っておりますので、皆さんもひとつしっかりと応援してくださいねというような御報告が大方できそうでございます。
 どうもありがとうございました。時間でございます。終わります。
杉浦主査 これにて林省之介君の質疑は終了いたしました。
 次に、山田敏雅君。
山田(敏)分科員 民主党の山田敏雅でございます。
 大臣、きょうはお時間をいただき、ありがとうございます。私のきょうの持ち時間は三十分なんですが、大変重要な、重たい問題をきょうは御提起したいと思います。
 ここに何人かお見えになっていますけれども、実は、椎名先生という方が「一〇〇万人を破滅させた大銀行の犯罪」という本を書かれました。この被害者の一部の方がきょうお見えになっているんですけれども、きょうは、法務省の怠慢というか、今まで何もしなかったことについて、いろいろお聞きしたいと思います。
 まず最初に、きょうの問題は、民事訴訟法二百二十八条四項に、私文書は、本人または代理人の署名または押印があるときは、真正に成立したものと推定する、この規定がございます。これについて、まず、これはいつできたのか、そしてこの趣旨はどういうものか、ちょっと伺いたい。
房村政府参考人 この現行民事訴訟法の二百二十八条四項のただいまの御指摘の規定は、もちろん現行法に入っておるわけでございますが、その前の、改正前の旧民事訴訟法にも入っておりますし、大正十五年の民事訴訟法改正において盛り込まれたものでございます。
 この趣旨といたしましては、文書が訴訟に証拠として提出された場合に、その文書が、作成されたものと言われているものが本当に作成した文書でなければ証拠として使えませんので、どういう場合に証拠として提出された文書がその作成者が作成したと認めていいか、こういう原則をあらわしたものでございまして、御指摘のように、本人の署名または押印がなされている場合には、その文書は本人の意思に基づいて作成されたものであるということを推定するという、通常の経験則を法律にしたものでございます。
山田(敏)分科員 大臣、これは約百年前にできた規定なんですね。現在では、この規定に基づいて、日本は印鑑を、実印を押すとこれが真正に成立したものと推定するということです。外国では、少なくとも今このような制度をとっている近代的な民主国家はございません。それは、印鑑を使うことと署名をすること、これがいろいろな意味で、法律的に重要な、真正であるかどうかということについて優劣があるんですね。
 ちょっと、署名と印鑑では、本人であるかということをまず確認しなきゃいけませんね、ここでいう場合は。それから、他人が乱用するということもありますよね。それから、にせものをつくるということもありますね。こういう点から考えて、どっちがいいと思われますか。
房村政府参考人 我が国では、一般に、その文書を作成したということを示すために、本人が署名をする、あるいは印鑑を押捺するという行為が行われております。
 署名と印鑑との優劣ということでございますが、いろいろな観点があろうかと思います。署名の場合には、本人が直接書くということでございますので、他人がもちろん偽造するということはあり得ますが、本人が書けばそれは間違いなく本人が書いたということでございますが、印鑑の場合には、本人が押捺しなくても他人がそれを押すということもありますので、文書に押捺されている印影がその人の印鑑に基づくということがはっきりいたしましても、その人が押したかどうかということは必ずしもその点からは確定できないということはございます。
 ただ一方、逆に、その文書にある印影がその印鑑に基づいたものかどうかということは、これは比較的確実に判断できます。一方、署名の場合には、全く同一の署名というのはございませんので、その文書に書かれている署名が本当にその人の署名と認められるかどうかという点については、これは判断に苦しむ場合が必ずございます。これは、訴訟等でも筆跡鑑定が非常に争点になると判断が難しくなることがございますが、そういう難点が署名にはございます。
 偽造をするということに関しては、印影にそっくりの印鑑をつくることももちろん可能でございましょうし、署名を手本にしてそれをまねするということも十分あり得るわけでございますので、そういう偽造という観点では双方そう差がないのかな。それ以外の点では、今申し上げたような、判断のそれぞれの過程で、それぞれ別個の問題を抱えているということが言えようかと思います。
山田(敏)分科員 今おっしゃった中で、印鑑というのは、だれかほかの人に預けたとか、何かの都合でだれか持っていったという場合は、本人が押したかどうかわからないわけですね。ところが、今から四十年前に、最高裁、昭和三十九年に判例が出ました。これは、この判例、ここにございますけれども、要するに、印鑑が押してあれば、反証のない限り、要するに反対に証明できない限り、紙の上に印鑑が押してあったら、これが本人の意思かどうかわからないわけですね、ですから、ほとんどのケースは反証できませんけれども、これは本人の意思に基づいてやったものだという判例が出たんですね、四十年前。この四十年前の判例で、バブル以降、特に百万人の方が大型ローンを借りたんですけれども、そのときにいろいろな方が保証人になったり、大変な被害者が生まれました。
 きのう、法務省の方が私の部屋にレクチャーに来られました。この民事訴訟法の、印鑑があれば真正に成立したものと推定する、こう書いてあるわけですね。ではそれが本人の意思に基づいていたかどうかということは、これは裁判所が判断します、ですから問題ありません、三権分立です、こういうふうにおっしゃったんですね。
 私は本当にびっくりしましたね。これは、法務省は、社会的に大きな問題が起こってたくさんの人が被害を受ける、特にこのような問題は、みずから命を絶たれた方がたくさんいらっしゃいます。自分の自宅を競売にかけられて、家族全員でホームレスになった方もたくさんいらっしゃいます。その実態を知っているんですかと。判決があるから、最高裁の判断があるからこれは問題ないんです、こうおっしゃったんですね。
 では一体、この実印があれば本人の意思と判断するというケースで、いろいろな、一番いい実例は、商工ファンド、この元従業員が陳述書を書いております。この中で、来たお客さんにうまいこと言って必ず印鑑を預かる。これは、押し忘れがあったらあなたに迷惑がかかりますからと必ず印鑑を預かる。ほとんどすべてのケースで、この商工ファンドの社員が保証書に、約二十カ所に印鑑を押した。それで大変な被害者が出たんですね。
 こういう事件があるんです。あったら、法務省は考えなきゃいかぬですね。どうすればこういうことを防げるのか。そうじゃないですか。この実態について知っているのか知っていないのか、これをちょっと答えてください。
房村政府参考人 そういう具体的事実関係については、私どもとしては、そういう印刷物等で拝見する限りでは、ございます。
山田(敏)分科員 そこで、大臣にお伺いしますけれども、一応、社会的に大きな問題が起こったときには、やはり法律を改正しなきゃいけないと思います。特に、今言いましたように、印鑑が押してあればこれは本人の意思に基づくという判例が起こって、これによってたくさんの方が被害が起こった場合は、法律の改正をやらなきゃいけないですよね。
 これは何万件、何十万件とあるんですが、そのうちの二、三、例をちょっと御紹介しますので、聞いていただきたいと思います。
 これは横浜の西さんという方ですが、ある人に、大変親しい人に頼まれて、そして三菱銀行から借り入れをした。ところが、大変親しいので印鑑を預けまして、この口座開設から融資の実行、すべて三菱銀行の社員が行ったんです。本人は、どの程度どうかわからないですね。後になってわかった。しかも、その奥さんも保証契約書、担保契約書、全部やられてしまった。このケースは、競売にかけられて自宅を出られた、ホームレスになられた、こういうことですね。
 もっと典型的な例は、逗子の鈴木さんというケースですけれども、脳梗塞、脳血栓の痴呆状態、この方が自分の意思で自分で印鑑を押すわけないですね。裁判でもこれは立証されたんですね、そういう状態であったということを。ところが、最高裁の判決がある、それから今の民事訴訟法の法律、印鑑があれば本人の意思でやったと推定される、こういうふうに裁判所は判決を下すんですね。そうしますと、一億八千万円、この方が判決に基づいて強制競売された。
 同じケースは、齋藤さんという方ですけれども、クモ膜下出血で痴呆状態にあった。この人の印鑑を使って、これも一億四千万円の融資をした。この判決も、実印が押されている、だからこれは本人の意思に基づくと。本人の意思であるはずがないんです。
 私はアメリカで働いておりましたけれども、外国で契約をするとき、特に一億円とか自分の自宅を全部かけるとか、そういうときは、もちろん本人の確認をして、そして、必ずウイットネスといって、これは第三者が立会人をするわけですね。そうすると、相互の意思を確認できて、本人のサインだというのは、これは有効なんです。日本の場合は、痴呆状態にある人が、だれかが印鑑を持っていって押したらその人の意思ですという判決が出るんです。こんな原始的な国はないんですよ。民主的でも何でもないですよね。これを今まで四十年間も放置して。
 これは本当に簡単なんですね、法律を改正すればいいんですよ、外国と同じように。こういう、実印があれば推定するというやり方じゃなくて、本人の意思の確認をして、それでそれが真正なものと推定する、こういう条項を入れれば、外国の例のように、こんな大きな被害の方は生まれないと思うんですね。大臣、どう思われますか。
房村政府参考人 最高裁の判例の趣旨、ただいま御指摘の個々の判決例につきましては、私どもも内容を見ておりませんし、個々の判決例について申し上げるのは差し控えたいと思いますが、最高裁の判例の趣旨を若干御説明させていただきたいと思います。
 民事訴訟法で、本人の捺印があるときは、これを真正なるものと推定すると書いてあるのは、署名と並んで書いてありますように、本人がその文書に署名をしていればそれはその本人がつくった文書と認められるだろう、また、本人がその印鑑を押したのであればそれは署名と同じように本人がつくった文書であろう、こういうことを言っているわけでございます。
 ただいま御指摘の最高裁の判決というのは、文書にその本人の印鑑の印影が押されているときに、その印影を本人が押したのか、本人の意思に基づかずにだれかが押したのではないか、当然こういう可能性があるわけです。そのときに、通常、印鑑というのはそうむやみやたらに人に貸すわけではないから、特に反証がなければ、その印影がその人の印鑑で押されたものであれば、それはその人の意思に基づいているであろうということが通常は想定される、そういうことを言っているわけでございまして、例えば、同じような最高裁の判例で、印鑑が例えば第三者に預けられている、そういうような場合には、本人の意思に基づいて押されたということは推定できない、こういうことも言っておるわけでございます。
 ですから、御指摘の最高裁の判例は、ともかく書類に押されている印影がその人の印鑑に基づくものでありさえすれば当然に推定できるというようなことを言ったのではなくて、他に特段の事情がなければそれは推定される。ですから、御指摘のように、まさに印鑑をだれかに預けちゃっているとか、痴呆状態にあるとかということがあれば、それは当然推定できない場合でございます。
 ですから、民事訴訟法の規定そのものは、本人が署名をしたり印鑑を押したりすればその人の文書であるという、ある意味では極めて当然のことを推定しているものでございます。
山田(敏)分科員 だから、最初に私は言ったでしょう。あなたは実際に起こったケースを知らないからそんなことを言っているんです。これは何万件とあるんですよ。そんなケースじゃないんですよ。実際に預けて、その判決が出ているじゃないですか。
 何でかといったら、紙の上に印鑑があって、それが本人か本人の意思でないかということを立証することはできないんですよ。ほとんど不可能だ。できるケースはある、それは非常にまれなケースなんですよ。ほとんどすべてのケースは、紙の上に印鑑が押してあって、それが本人の意思かどうかということを証明することはできないんですよ。だから、最高裁の判例に基づいて、それが本人の意思であるというふうにやっちゃったんですよ。それが何万件もあるんですよ。
 そんなケースを知らないで、理屈の上はそうかもしれないけれども、そんなことを言っていたら、何にも、世の中前に動かないじゃないですか。だから大臣に聞いているんですよ。大臣、答えてください。
森山国務大臣 他人の印鑑を悪用して不正を働くケースがあるということは、もう前からよく聞いている話でございますし、また、特にバブルのときにはそういうケースが多かっただろうというふうに想像がかたくないわけでございますが、そのようなトラブルを防ぐというためには、まず国民が意識を啓発される、もっと勉強し、あるいは特に注意をしていただきたいということが基本的にあるわけでございます。
 しかし、民事訴訟法の規定の合理性の問題というのも御指摘のようにあるかもしれないというふうに思いますので、それはまた別に検討するべき問題ではないかなというふうに考えます。
山田(敏)分科員 せっかく政務官、副大臣お見えになっているので、今、私のことをお聞きになってどう思われましたか、一言どうぞ。
増田副大臣 私は零細の出身ですから、話を聞きながら、これは考えられるなというふうに受けとめました。
中野大臣政務官 私も、椎名さんの活動については何回か聞いたことがございますが、その点については、やはりこれからも実態についてはできるだけ研究してまいりたいと思っております。
山田(敏)分科員 大臣、副大臣も政務官もこれはなるほど問題があるというふうにおっしゃっていただいたんですが、これは冷静に、今私が言いましたように外国のケースをよく考えていただいて、日本は、四十年間もあるいは百年間もこれを放置して、非常に時代おくれな、原始的な制度になっているんですね。今私が言いましたように、契約をするときは本人の意思を確認する状況をつくって、そして第三者がそれをサインする、こういうことをやればほとんどのこういう悲劇的なケースは救われたんですね。
 ということは、法務省の長い間の怠慢が原因じゃないかと思いますが、法律を改正していくべきだとお思いでしょうか、お答えください。
森山国務大臣 確かに、この法律は非常に古いわけでございまして、これのみならず、法務省が担当しております法律にはかなり古いものがまだ残っております。
 それをできるだけ早く近代化するためにいろいろ努力いたしておりますが、この法律に関して申しますと、欧米諸国等の例もお挙げになりましたが、その国のそれぞれの取引慣行に基づいてつくられているんだと思います。日本の今御指摘のこの法律も、もともと日本の契約その他のやり方の慣行をもとにしてつくられているものでございまして、主な、重要な取引には署名をして判こを押すというのが普通の例でございますので、それに基づいて行われているんだと思います。
 しかし、世の中、今大変複雑になっておりまして、スピードを要求される、国際化しているというようなことがたくさんございますので、古くなった法律は今の世の中に合うようにしていこうという努力の一環として、これも検討する対象になるかもしれないと考えます。
山田(敏)分科員 なかなか、なるかもしれないというような微妙な言い方で、よくわからないんですが、おっしゃることはわかりました。
 最近、ピッキングという事件が頻発、一日に二、三十件あるそうですが、これは預金通帳を盗まれます。その預金通帳の印影を見て印鑑が簡単に偽造できます。そして預金を全部引き出す。警察の方がおっしゃったのは、一日に二、三十件ある、毎日起こっているということですね。
 これも、印鑑があるからすべてなんですね。こういうことは外国でやらないですよ。銀行に行ったら必ず何らかの本人の確認、本人の意思の確認をやりますよ。さっきおっしゃった日本の慣行というのは、それは百年前の慣行なんですよ、印鑑を押してやろうというのは。これだけ世の中が変わってきて、だれかが印鑑を押して、それで家や財産をなくされた方、これはもう今ここにいらっしゃいますけれども、本当にホームレスになるんです、競売ですから。
 裁判で負けた。立証できないんですよ。印鑑があって、それは私の意思ではありませんということを立証できないんです。立証できなかったら裁判で負けるんです。負けたら強制的に競売を、担保の入っていない物件でも、あるいは自分の給料でも全部差し押さえできる。そして、生活の糧もなくなってしまう。さっきのケースの方のなんかは、もう一人で寝たきりの状態で、これも競売をかけて、何と救急車とお医者さんを連れてきて、寝たきりだから競売すると死んじゃうかもしれないというので、それで競売を実行する、こういうことが毎日行われているんです。非常に喫緊の問題で、そして日本の非常に原始的な、前近代的なこのやり方、これを至急やり直さないと、毎日こういう被害者が出てくる。
 こういうことですので、大臣、かもしれないじゃなくて、これはやらなきゃいけないという意思表示をしていただいて。これは、私どもも一生懸命議員立法をやりたいと思います。金融被害者の方を救う議員連盟もございますから、やりますけれども。あるいは、法務省は、これほど怠慢で、今局長の答弁をお聞きになったと思うんですけれども、これは問題ありませんと。問題あるどころじゃないんですよね。その認識の余りにものギャップをぜひ埋めていただきたいんですが、大臣、いかがですか。
森山国務大臣 先ほども申し上げましたように、そのような被害に遭わないためには国民の側も十分注意しなければいけないということも、大きな問題だと思います。それについて皆さんによく認識をしていただいて、判こなどを気安く他人に使わせるようなことがないようにしないといけないということが基本だと思いますが、おっしゃるように、古い法律でございますので、法律そのものも検討する対象にはなり得ると思います。
山田(敏)分科員 さっきより大分前に進んできましたので、ありがとうございます。
 ぜひ審議会、私も中小企業の個人保証の問題で大臣にお聞きしましたけれども、あれも破産法部会でやったそうですが、個人保証の問題も、たくさんの中小企業の方が今自殺をされますね。日本の場合は、身ぐるみはがれる、あしたから生きていくことができない、だから御主人が自殺をして、生命保険でお子さんが学校へ行くとか生活費を出す、こういうことが今起こっているわけですね。
 これの自由財産をやるということで、破産法部会で。委員の方を見たら、本当にびっくりしました。委員の七割の方が大学の先生なんですよ。一度も個人保証をやったことがない、一度も死ぬ目に遭ったことがない、中小企業の経営もしたことがない、その人が中小企業の方の個人保証を、自由財産をどうするかという審議をされても、全然危機感も、切迫感も、実態も何もないんですよね。七割の方がそういう大学の教授。法務省の審議会を見たら、法制審議会は、さっきもこの問題はどこの分科会なり部会でやるのかということでちょっと出していただいたんですけれども、もう何と七割、八割が東京大学の教授、何とかの教授と、こんなことを、痛みをわかっている人は一人も入っていないんですよ。真剣に、そして緊急に議論を出そうなんという雰囲気は何もないんですよ。
 どう思われますか、政務官、今うなずいていただいているんですけれども。これは審議会そのもののあり方を、国民の代表である政治家の大臣、副大臣、政務官が主導を持ってやっていただかないと、官僚の方が今までと同じやり方をやっていたら、ああ、またこれは審議会をやるんだ、では大学教授、これをやってくださいと。では、一年先に議論を出しましょうと。先ほどの破産法部会も、去年の三月になってまだ結論が出ない。一年たった、自由財産をどうするかというと、まだ出ない。三月に出す予定だとお聞きしていましたけれども、夏になりまして。そんなに一年半もかかって議論するようなことですか。どう思われますか、大臣。改革しなきゃいけないじゃないですか。
森山国務大臣 この問題、特に法制審議会で御相談するような問題は、法律全体のネットワーク、あるいは法律全体の制度というものとのバランスの関係もございまして、この問題だけを詳しく御存じだという方ももちろん必要かもしれませんが、その方よりは、むしろ法律全体のあり方ということを頭に置いて、その中でこれはどうなるべきかということになるんではないかというふうに思いますので、大学の先生方、こういう件に関する詳しい知識をお持ちの方々にお願いせざるを得ないというのが現在の実情でございまして、実際にお困りになる方、その方々の苦しみや痛みというものは先生方から伺って私どもが、あるいは政務官や副大臣は自分でもそのような経験があるというふうにおっしゃっておりますので、そういう我々が代弁し、かつ検討をお願いするということがその仕組みなんではないかと思います。
 今のところ法制審議会の中でこのために仕組みを変えるというのはなかなか難しいかと思いますが、しかし、今御指摘のこともございますので、さまざまな古い法律を見直すということはお願いしておりますので、その中の一つとして検討していただくということになろうかと思います。
山田(敏)分科員 私の質問はこれで終わります。ありがとうございました。
杉浦主査 これにて山田敏雅君の質疑は終了いたしました。
 次に、家西悟君。
家西分科員 民主党の家西悟です。おはようございます。
 委員長、できれば、私、足が悪いもので、立ったり座ったりするとすごく苦痛ですので、座ったままの質問をお許しいただければと思います。
杉浦主査 失礼しました。どうぞお座りになってお進めください。
家西分科員 それでは御質問させていただきますけれども、私の質問は、性同一性障害についての質問を法務大臣にお尋ねしたいと思います。
 性同一性障害について森山大臣の方はいかがお考えなのかということもあわせてお尋ねしたいと思うわけですけれども、性別について強い違和感を感じる人たちのことを性同一性障害というふうに言われるようになってきました。この方々が非常に深刻な問題を今抱えておいでです。
 そこで、大臣にお伺いしますけれども、名前の変更、これは戸籍法上の百七条の二によってほぼ認められてきましたが、性別の変更については、一例を除いていまだに認められていない。この現状について、法務省としていかがお考えなのか、お尋ねします。
    〔主査退席、丹羽主査代理着席〕
森山国務大臣 いわゆる性同一性障害とされる方々がその障害のゆえに大変な悩みを抱えていらっしゃるということは、私も承知しております。
 ただ、男女の性別につきましては、現行の法制度では、遺伝的に規定されている生物学的性によって決定されるという建前をとっている、それが前提になっておりますので、そのような理解がされていると思います。したがって、生物学的に見て完全な男または女として出生した方が性同一性障害と診断されましていわゆる性転換手術を受けた場合であっても、性別に関する戸籍の記載に錯誤等があるとは言えないわけでございまして、戸籍上の性別記載についての訂正は認められないという考え方が裁判所においては一般にとられているというふうに承知しております。
家西分科員 錯誤とは認められないというふうにおっしゃいますけれども、現実問題として、昭和五十六年四月二十三日に発行されました週刊文春、ここにその記事がございます。私が持っているのはフラッシュにも載ったものですけれども、既に一例あるということについては御存じなんでしょうか。この方は、アメリカのスタンフォード大学で男性から女性への性転換手術を受け、そして戸籍の変更を認められたと記載があります。そして、これは判例時報の一六九三号にも論文として記載されており、単なる週刊誌の記事という次元ではもうない。
 こうした前例があるのに、他の事例では認めておいでにならないということは、法のもとの平等性からしておかしいんではないかというふうに考えますけれども、法務大臣、いかがでしょう。ここにその判例時報もございます。実際にあったということをどのようにとらえておいでなんでしょうか。
森山国務大臣 お尋ねの性別変更例は、性同一性障害の方について戸籍の性別の訂正を認めた昭和五十五年十月二十八日の東京家庭裁判所の戸籍訂正許可の決定のことではないかと思いますが、これ以外に性別の変更に関して家庭裁判所が許可したという事例は承知しておりませんが、その理由については、平成十二年二月九日の東京高等裁判所の決定において判示されたように、現行の法制においては、男女の性別は遺伝的に規定される生物学的性によって決定されるという前提をとっておりますので、戸籍法とそのもとにおける取り扱いも、その前提のもとに成り立っているという判断がなされているということでございまして、そのような考え方によって、それ以外のケースについては認められていないのだというふうに考えられます。
家西分科員 では、昭和五十五年のその方のときと現行法は、法律が変わったんでしょうか、戸籍法上の。法改正がされたからそれ以降の人は認めておいでにならない、現行法上にそう記載されているからと。五十五年のその手術を受けられた人は、今の法律とは違うということなんでしょうか。
房村政府参考人 お尋ねの点でございますが、特に戸籍法等が改正されたわけではございません。
 ただ、御承知のように、裁判はそれぞれの裁判官が独立して行いますので、同種の問題について異なる裁判がなされるということは常にあり得るわけでございます。ただ、裁判制度として、異なる判断がそのまま定着するのは困りますので、最終的には上級審の判断によって統一をするということが制度的に仕組まれているわけでございます。
 そういう観点から申しますと、五十五年の東京家裁の決定の後、他の裁判所がいずれも却下をしているということは、裁判所全体の考え方としては、おおむね、先ほど大臣も申し上げた平成十二年二月九日の東京裁判所決定のような考え方がとられているということではないかと思います。
家西分科員 ではもう一点、深く聞きたいと思います。
 その一例の方以降はそうだと。でも、先ほど申し上げているように、五十五年以降の問題については全部認めておいでにならない。遺伝子上の問題というふうにおっしゃいますけれども。では、この方はどうして認められたのか、その点についてお伺いします。
房村政府参考人 ですから、個々の裁判官が最終的には独立して判断をすることになりますので、その裁判官の戸籍法に対する理解の仕方によって、現行戸籍法のもとでも性別変更ができるという考え方をその裁判官がおとりになれば、それは性別記載の変更を認める決定をすることになりますし、それは許されないと考えればもちろん却下することになります。そういう矛盾した判断は現行法上あり得るわけでございます。
 ただ、最終的に、裁判所全体として一つに収れんすることが望ましいということから、上級審の判断に従うというような仕組みになっているわけでございますので、個々のものについて、なぜこれが認められ、なぜ認められないかというのは、裁判官の判断によって異なることがあり得るということでございます。
家西分科員 例えば刑事事件とか、そういう話とは違うと思います。これは性別の変更の判決であって、これが個々の裁判官によって違うという判断、個々の裁判官の判断によって判決は違うんだというふうにおっしゃるのなら、私は、これは非常に問題ではないのか、逆に言えば。
 例えば、刑事事件を起こして、この人は無罪なのか実行犯なのかとかいうような話ではなくて、男子から女性に性別変更してほしいという家庭裁判所への訴えであって、それとは逆のパターンもありますけれども、個々の判断でというふうにおっしゃるのなら、これはもう論点矛盾というか論拠矛盾するんじゃないですか。性別の問題ですから、遺伝子学上は男子として生まれてきたけれども心は女性である、そして性転換手術して女性として認められた、にもかかわらず以降は認めない、それは裁判官の判断だというのは矛盾していないですか。
房村政府参考人 私が申し上げておりますのは、もちろん法律の解釈は裁判所としてなるべく共通であることが望ましい。したがいまして、上級審で判断が、法律についての解釈が示されているときには、下級審の裁判官としてはその解釈に従うことになろうかと思います。
 ただ、そういう上級審の判断が示されていない段階で判断をするときには、それぞれ個々の裁判官が独立して、自己の信念に基づいて法律を解釈するというのがまさに司法の独立でございますので、この戸籍法の解釈について異なる解釈を裁判官がとることは、法律上も当然に予定をされているわけでございます。
 ただ、それは、国民から見れば別々の裁判が裁判所によってなされるというのは困りますので、上級審で判断が示されれば、当然それに従った裁判を裁判所としては以後していくということになる、そういうことでございます。
家西分科員 上級審というのはわかりますよ、それは。それは一般論であって、これはあくまでも性別変更。
 これは、局長ではなくて、大臣や副大臣を含めてお答えいただきたいと思います。いかがお考えですか。
 私、非常におかしな話だと思います。今局長が言われるような答弁というものは矛盾しているんじゃないか。ほかの話であるのなら、それは、裁判官の判断によって若干の違いがある、判断の仕方というものは個々によって違うケースが出てくる可能性もある、だからこそ不服申し立てをして上告していくというのはわかりますけれども、性別というものはだれが見ても明らかな問題であって、そして、遺伝子学上男子、出生したときにそういう性器を持って生まれた、これを女性に変えたいと手術をした、そして女性へということになったということとは、今まで言っているように、違うんではないかというふうに思いますけれども、大臣、いかがですか。
森山国務大臣 法律的な問題ということで今提起されていらっしゃるわけでございますので、そのような観点から申せば民事局長がお答えしたようなことになるわけでございますけれども、平成十二年二月九日の東京高裁の決定におきましても、性同一性障害の問題の解決は立法にゆだねられるべきであるという言葉がございまして、そのようなことを考えますと、その東京高裁の決定の判示内容とか性同一性障害に係る国民的議論の動向を十分踏まえながら対処していかなければいけないというふうに思いますし、幅広く、かつ真剣に検討していかなければいけない問題だと思います。
家西分科員 そういうお答えをいただきまして、ありがとうございます。
 過去の問題をとやかく言っていてももう仕方がないというふうにも思いますけれども、現実問題として、やはりこれはもう、現代の医療としてはある種認められる。精神神経学会を初め外科学会が意見書を提出されて、戸籍変更の課題があるんではないかという緊急アピール、これをちょっといただいていまして、「精神神経学会理事会が緊急アピール」というような形で出されたりして、法務省の方とかにもお出しになられていると思います。そして、自民党の参議院議員の南野先生が、二年ぐらい前からですか、早くからこの問題を取り上げられているし、そして、参議院の公明党の浜四津先生なんかもそうでしょうし、私自身の民主党もこの問題に関心を持っています。そして、昨日も自由党の武山議員が厚生労働委員会で、一般質疑ということでこの問題を取り上げておいでになられます。
 法務省として、この問題について法改正をしていく、それなりの対応をしていくというお考えはあるんでしょうか。その点についてお伺いしたいと思います。
森山国務大臣 おっしゃるとおり、最近、これが大変大きな問題だとして取り上げられつつありまして、各党の議員の皆さんも多大な関心をお持ちでございます。
 私は、問題が大いにあるということは承知しているということは最初に申し上げたとおりでございますが、先ほどちょっと読みましたように、十二年二月九日の東京高裁の決定の中で、解決は立法にゆだねられるべきであるということでございますので、そのことも頭に置きながら幅広く真剣に検討していかなければいけないとは思いますが、何しろ、この問題が非常に特別のケース、特定の方にとっては非常に深刻な問題でございますが、世の中一般の人が十分理解しているかどうか。まだそこまで行っていないような気もいたしますし、啓発も十分しなければいけませんけれども、そのようなことを考えますと、議員の先生方がこの法改正について多大の御関心をお持ちになり、そのような作業を議員の皆さんでなさろうということであれば、法務省といたしましてもお手伝いをさせていただきたいというふうに考えております。
家西分科員 議員立法であれば応援はしていただけると。法務省としては考えはないというふうにとらえてもいいんでしょうか。大臣、いかがですか。
森山国務大臣 真剣に幅広く考えていかなければいけないとは思いますが、今すぐというのはちょっと難しいかなと思いますので、できるだけ早く関係者の希望に沿うという意味では、議員の皆さんが御努力なさるのが早いかなという気がいたしております。
家西分科員 もし超党派でお呼びかけがあれば、当然我々もそれに協力はしていきたいと思いますし、この問題は、ただ単に性別を変更するというだけではないと思います。
 いろいろな問題が、弊害が起こっているというふうにもお聞きします。就労の問題、進学の問題、そして医療の問題、ひいては海外へ行くときのパスポートの問題、これに性別が記載されているということになるとやはり問題もありましょうし、それと、選挙のときに、選挙券に男女ということも書かれているんです。これは法務省ではなくてほかの省庁にかかわる問題でしょうけれども、大きく社会的には問題がかかわる。そして、国民としての権利を行使できないということは、やはり問題ではないのかというふうにも思います。
 そういうことを考えたときには、これは何も趣味や嗜好でそういうふうになられているわけではなくて、医学的に見ても、やはり心の性と体の性が違うということ。その人たちは同性愛ではないわけです。
 同性愛と性同一性障害の違いというものは、大臣、おわかりでしょうか。その辺、いかがですか。
森山国務大臣 そう詳しくわかるわけではありませんが、おっしゃることは理解できるつもりでございます。
家西分科員 ぜひとも理解をしていただきたいと思います。
 私自身、HIV関係をずっとやっていまして、当事者でもありますけれども、同性愛の方々とも私は多くの知り合いがいます。そして、今回、性同一性障害ということの人たちにもお会いしました。そうすると、同性愛の方とはやはり違うなという感覚を私自身感じています。
 この人たちは、やはりもともとは男性であったり女性であったりする人で、持って生まれた性が逆転していたという方々なんでしょう。そういう人たちの問題というものはそれほど多いわけではなくて、今言われているのは、七千人とか一万人程度であろうというふうに医学的にも言われているわけですから、こういう人たちに限っては、性別変更というものは認めても私はいいのではないかと。
 ただ単に商売上利益を上げるために性別を変えたいとかいうような話ではなくて、本当に心から逆なんだという人たちというものは、一年以上医学的に検査をして、どの程度でこの人は満足できるのかというものを段階を隔ててやっていかれるわけですから、こういう人たちについてのことはぜひとも念頭に入れて、戸籍上の性別変更というものは認めていただきたいし、ぜひとも法務省としてもそのような研究会なり審議会なりを早急に立ち上げていただけないでしょうか。
 議員立法に期待するというふうに言わずに、法務省としてもそういうものに対して、学識経験者、当事者、そういった人たちに集まっていただいて、戸籍変更の手続にはどういうふうにしていけばよりよいものになっていくのか、国民のコンセンサスを得るためにはどういうように社会に対してPRしていくのが一番いいのかというものも、一緒になってお考えいただけないでしょうか。
 法務省は、ある種人権をつかさどる省庁だと私は思っておりますので、その点について、大臣にもう一歩踏み込んで御答弁いただければありがたいなと思います。
森山国務大臣 先ほどお示しになった性同一性障害の方々から示された意見書というのを法務省もちょうだいしております。
 私も、その方々に何人かお目にかかったし、またそのことをサポートしていらっしゃる議員の方に、各党の方にお目にかかりまして、いろいろ問題を伺いました。ですから、それをきっかけにいたしまして、法務省といたしましても勉強しなければいけないということで、勉強会が内々スタートしております。
 ですから、そのようなところを通じまして、先ほど申し上げたようなプロセスで、もし議員の皆さんがそのような動きをなさるのであれば、お手伝いをすることは十分できるというふうに思いますが、そのようなやり方が最も今のところ考えられるのではないかというふうに感じているわけでございます。
家西分科員 突っ込んで大変申しわけないんですけれども、先ほどの山田議員の質問でも、古い法律はどんどん改正をしていく、時代に即した法律に改正するという御答弁もあったように思います。やはりこういった問題も、今の医学から考えると、この戸籍法というものもある種時代に即した法律に改正するというのも、法務省としては努力が必要ではないかなというふうに私はとらえております。ぜひともそのように取り組んでいただきたいというお願いを申し上げて、次の質問に移らせていただきます。
 きょう、厚生労働省の方にも御質問をするということで来ていただいているかとは思いますけれども、おいでになっていますでしょうか。
 性同一性障害でお悩みの方が埼玉医大や岡山医大で性転換手術をされるというふうになった場合、女性から男性に手術をされる場合、手術費用が四百五十万から六百万円かかる。そして、男性から女性へというものは大体二百五十万円程度。それから、ホルモン剤が月に数千円から一万数千円でしょうか、数万円程度おかかりになるというふうにもお伺いしていますし、ましてや、問診をしていくというか、カウンセリングをしていく一年以上もの間というものは、費用というものは何とか保険で認めていただけないものか、そういうようなお考えはないのかどうかについて、厚生労働省の方にお伺いしたいと思います。
西山政府参考人 手術療法についてでありますけれども、ホルモン療法や精神療法など他の療法による治療が十分に行われたにもかかわらず、治療効果に限界がある場合などについて行われるべきものと考えております。
 保険適用につきましては、治療上やむを得ない症例かどうか、手術に用いる術式が適切かどうか、医療機関の倫理委員会の承認があるかなどを総合的に勘案した上で、個別に慎重に判断していく、このような考え方でおります。
 なお、先生も先ほど申されたように、性同一性障害に対する治療については、現在、日本精神神経学会のガイドラインに基づきまして実施されているところでございます。今後、診断、治療の状況や専門家による調査研究の状況等を見守ってまいりたい、かように考えている次第でございます。
家西分科員 ぜひとも早急にそれはやっていただきたいな。研究を進めていかないといけないんではないか。
 なぜならば、これは治療です。安易な問題ではなくて、治療として考えていかなきゃならないとなれば、やはり障害というふうに言われているわけですから、性同一性障害というものはある種病である。そういう人たちがちゃんと保険を使えるというふうにもしていただきたい。
 それとあわせて、就労問題もあります。見た目と戸籍上が違うということになった場合、なかなか正社員として就労できないとか、いろいろな弊害があるというふうに聞いています。私もそうだろうと思います、現実問題。限られた職種とかそういうものでない限り、仕事ができないというような環境自体、これもおかしい。
 そして、きょうは文科省には来ていただいていませんけれども、学校の場にもやはり、要は、スカートをはくのが嫌で学校を退学するという方もおられる。こういうこともあってはならないというふうにも思いますし、ある種、差別、偏見的な目でその人を見ることによって、就労活動ができないとか、いろいろな人権侵害が起こり得ると思いますけれども、このようなことがないように、厚生労働省として就労問題も含めていかにお考えなのか、お尋ねをしたいと思います。
三沢政府参考人 お答え申し上げます。
 私ども厚生労働省では、一般的に、企業の採用選考に当たりましては、就職をめぐる差別、これを未然に防止するという観点から、職務に関する応募者の適性、能力、これを基準として公正な採用選考が行われるよう、従来から事業主に対する啓発、指導、これを行っているところでございます。
 委員御指摘の性同一障害の問題でございます。これは近年大きな社会問題となりつつある、こういうことでございますので、私どもとしても、性同一障害の問題、それをめぐる就職のいろいろな問題、これについて適正に対処するという観点から、平成十五年度から使用するパンフレットとかビデオなどの啓発資料の中に、この性同一障害の方々に対する差別防止に関することを新たに盛り込んで啓発、指導を充実していきたい、こう思っております。
 具体的に申しますと、ビデオを作成するということでございますけれども、内容的には、六人の若者の方に登場していただきまして、社会の中に存在する人権問題という中の一項目として、多様な性というふうなテーマでこの問題についての啓発、指導用のビデオを今準備している、こういうことでございます。
家西分科員 それはどれぐらいの数をつくられて、どういうところに配付をされるんでしょうか。
三沢政府参考人 私ども、都道府県に出先の都道府県労働局という機関がございます。都道府県労働局におきましては、さまざまな労働をめぐる問題、これを相談するための総合労働相談コーナーというものを置いて、いろいろな問題を取り扱っています。もちろん、その性同一障害をめぐる問題、これもその対象に含まれているというふうに考えております。そういうところでこのビデオを活用していきたい、こう思っている次第でございます。
家西分科員 ぜひともそのようにしていただきたいというふうにお願いを申し上げたい。
 それと、あわせて人権侵害が発生した場合、人権擁護委員会やそういった観点からしっかりと法務省としては受けとめていただけるのでしょうか、そういう人たちのために。
森山国務大臣 法務省の人権擁護機関におきましては、性同一性障害とされる方々に対する差別の問題を含めて、人権問題全般について幅広く人権相談を行っております。具体的に人権相談で疑いのある事案を認知いたしました場合には、人権侵犯事件として速やかに調査し、事案に応じた適切な処置を講ずるように努めております。
 現在参議院で審議中の人権擁護法案におきましては、障害を理由とする不当な差別について、これを明確に禁止するということを言っておりまして、そのための特別救済手続の対象として、より実効性のある被害者救済を図ることにしております。
 今後とも、この問題を含め、積極的に人権の擁護を図ってまいりたいと考えます。
家西分科員 質疑時間が終わりましたので終わりますけれども、ぜひともそういった人たちが当たり前に生きれる社会を構築するために、法務省、また政府一丸となって取り組んでいただきますよう心よりお願い申し上げて、私の質問を終わります。ありがとうございました。
丹羽主査代理 これにて家西悟君の質疑は終了いたしました。
 次に、前田雄吉君。
前田分科員 民主党の前田雄吉でございます。本日は、司法制度改革について伺いたいと思います。
 法務大臣、初めに、一般国民にとって司法をより身近なものにするという司法制度改革について、基本的なお考えを伺いたいと思います。
森山国務大臣 司法というのは、今までどちらかというと、何となく取っつきにくい、自分には縁がないというような感じで受けとめられがちでございましたけれども、いわゆる事前規制型の社会から事後監視型社会への転換ということが今言われておりまして、そのような社会の変換ということになりますと、司法が果たすべき役割というのは非常に大きいというふうに思いますし、国民が司法に接触する機会も多くなるというふうに思うわけでございます。
 したがいまして、司法制度に対する期待が高まっていくわけでありまして、裁判を迅速に行うとか、あるいは裁判所へのアクセスの拡充をするとか、国民の期待にこたえる司法制度の構築ということが何よりも重要な課題というふうに考えるわけでございまして、そのために必要な質量ともに豊かな法曹の養成であるとか、あるいは国民の司法参加の一つの形であります国民的基盤の確立、つまり、国民の参加というようなことも考えまして、国民に身近で頼りがいのある司法制度をつくりたいというのが司法制度改革の基本的な考えでございます。
前田分科員 今、国民にとってより身近な司法制度をつくるという観点でお話があったと思いますが、この司法制度改革推進本部の司法アクセス検討会におきまして、国民に開かれた簡易裁判所の構築が急務という指摘がなされております。
 国民により身近なものとして、広く簡易裁判所が利用されるためには、簡易裁判所の事物管轄、つまり訴訟で争える上限の見直しが検討されてきております。日刊新聞等によりますと、現行の九十万から百四十万円に増額されると伺っておりますけれども、今法案で考えられているのはどの程度で、また、その見直しの数字的な根拠を伺いたいと思います。
山崎政府参考人 ただいま御指摘の点で、法案でどういう予定をしているかという点につきましては、現在検討中でございまして、最終的に政府で決定したというわけではございませんので、その点は御勘弁を願いたいと思います。
 確かに、今御指摘のとおり、簡易裁判所の事物管轄につきましては、軽微な事件を簡易迅速に解決する、これを目的としておりますし、また国民により身近な裁判所、こういう点から、簡易裁判所の特質を十分に生かして、裁判所へのアクセスを容易にするという観点から検討する必要があるというふうに考えております。
 そこで、どのような要素が対象になるかということでございますけれども、まず第一が、司法制度全体の中で、簡易裁判所の位置づけあるいは簡易裁判所の特質、これをどのように考えるかということ。それから、簡易裁判所と地方裁判所の機能分担のあり方でございますね。それから、経済指標の動向、それと管轄拡大による簡易裁判所の事件の質的変化、こういうものを考慮しまして、事物管轄につきましては適切な規模で拡大をしていきたいというふうに考えております。
 それから、指標の点、今お尋ねがあったかと思いますけれども、私どもの事務局で司法アクセス検討会がございますが、そこで検討された経済指標で申しますと、低い方では、土地価格指数でございますが、約百二万円となります。これは、昭和五十七年が前回の改正でございますから、それからということでございますけれども、百二万円です。それから、高い方では、国内総支出、これが約百六十六万、こういうような指数がございます。その他、指数はいろいろなものがございますので、多々ございます。
 以上でございます。
前田分科員 一般国民の財産を扱うという裁判所のことですので、私は、例えば車一つとっても二百万から四百万円の車を乗るような方も多くみえるわけですから、ぜひ、今後も拡大の方針で、より国民の財産に関与し得るような形に持っていただきたいと思います。
 次に、家庭裁判所の機能の活用について伺います。
 家庭裁判所で、いわゆる家事事件について、今現在、弁護士のみが法律業務を行っているわけでございます。国民の家庭裁判所へのアクセスを考えますと、司法書士へ家事事件の代理権を早急に付与するべきではないかと僕は思っております。行政のこうしたあり方を考えるときは、現実の姿、現状がどうあるかを見るべきだと思っているんです。
 司法書士は、既に、依頼者の相続や遺産の分割協議、また離婚に伴う財産分与などの相談、助言業務を日常的に行っております。本人がする家庭裁判所への調停・審判申し立て書類の作成等も関与しているわけであります。また、昨今は、家庭の崩壊、不況も相まって、離婚や相続問題も非常に増加しているわけで、国民は専門的知識を持った身近な支援者を切に求めていると私は思います。
 家庭裁判所の調査員には司法書士の方も多く、また、裁判所提出書類作成というのは本来は司法書士の業でありまして、実務的な経験、能力については、簡裁事件の実績をまつまでもないことであると考えます。また、大都市に集中している弁護士だけではなくて、地方にあまねく存在する司法書士に、業務上の制約を解いて、家庭裁判所活用のための家事調停事件あるいは家事審判事件への代理権付与を重ねて早急にすべきであると私は思いますが、いかがでございましょうか。
森山国務大臣 御承知のように、昨年の通常国会において改正された司法書士法によりまして、司法書士にも簡易裁判所における民事事件についての訴訟代理関係業務を認めることになりまして、この改正法は今年の四月一日から、もう間もなく施行されることになっております。
 この改正は、さきの司法制度改革審議会の意見書で提言されたところを実現したものでございますが、御指摘の家事事件についての代理権の付与については、この審議会の審議におきましても今後の課題として位置づけられております。
 また、衆議院の法務委員会及び参議院法務委員会における改正法の審議に際しましては、委員御指摘の家事事件についての代理権付与につきましては、簡裁訴訟代理関係業務の実務上の実績などを踏まえて、早急に検討すべきであるとの附帯決議がされているところでございます。
 法務省といたしましても、この附帯決議の趣旨にかんがみまして、改正法により付与される簡裁訴訟代理関係業務を司法書士がどのように遂行するかといった実績、そして国民のニーズ、同業務を行うに当たっての司法書士に対する法務大臣の認定の前提として行われる研修によりまして身についた能力の程度などを見ながら、検討を進めてまいりたいというふうに考えております。
前田分科員 今、国民のニーズというお話がありました。これも非常に高まってきているわけでございますので、早急なる附帯決議の実現に向けてお願いしたいと思っております。
 次に、司法書士への民事執行代理権の付与、これについて伺います。
 今お話がありました改正司法書士法の四月からの施行によりまして、簡易裁判所で司法書士が訴訟を行うことができるようになったわけでございますけれども、強制執行といった権利の実現には、裁判による判決だけではなくて、執行裁判所での代理権がなければ一貫した事件処理ができない、不合理であると私は考えますが、こちらの方の代理権についても早急に付与すべきではないでしょうか。
森山国務大臣 御指摘のように、先ほど申し上げました家事事件についての代理権の付与と同様に、司法書士への民事執行事件の代理権の付与という問題も重要な課題であると考えております。
 この点につきましても、司法制度改革審議会における審議では、家事事件と同様に、将来の課題として位置づけられたというふうに承知しておりますが、改正法の審議に際しましては、委員の問題意識と同様の見地から附帯決議がなされたところでございます。
 法務省といたしましても、家事事件とともに、附帯決議の趣旨を踏まえまして、民事事件に関する簡裁訴訟代理関係業務を司法書士がどのように遂行するかといった実績などを見ながら、さらに検討を進めていきたいというふうに考えております。
前田分科員 次に、法律専門職の活用について、二点伺いたいと思います。
 一点は、現在、司法書士などいわゆる法律専門職は、他の有資格者を業務の補助者として使用することが法務省の通達等で禁止されているわけでございます。一体これはいかなる根拠によるものと法務省は認識をしておられるのか、御説明いただきたいと思います。
房村政府参考人 御指摘のように、司法書士が土地家屋調査士の補助者となること、あるいは逆に、土地家屋調査士が司法書士の補助者となることは禁止されております。この趣旨でございますが、司法書士、土地家屋調査士というのは、それぞれその職務に関して独占的な権限を有しております。他の職種の人間が司法書士の権限に属する事務を処理することは、原則として禁止されております。
 そういう関係に立っておりますので、仮に、例えば司法書士が土地家屋調査士の補助者となることを認めるということになりますと、土地家屋調査士が、いわば指揮命令関係を通じて、本来自分で処理できない司法書士の事務について指揮命令をするということがあり得る、逆も全く同様でございます。そういうことから、それぞれの職種の独立性を保つということのために、そのような関係に立つことを禁止しているものと理解しております。
前田分科員 先ほど法務大臣が、国民のニーズを重視するということを言われました。今のお話ですけれども、考えますと、では、国民は何を考えているのかということを思い起こすといいと思います。
 国民は、国民へのワンストップサービスを提供できるような、いわゆる協働事務所、ともに働く事務所、この協働事務所を推進すべきではないか、こう考えていると思います。そこに行けば何でも解決していただける、そんな身近な専門的な知識を有した事務所を切に求めていると思います。
 その協働事務所を推進させるためにも、私は過去のこのような、今の法務省通達で禁止されているような先例は変更すべきではないかというふうに考えております。弁護士、弁理士は既に法人化が認められております。司法書士、土地家屋調査士においても、法改正によりこの四月から法人化できるようになっていると伺っております。
 しかし、先ほど申し上げましたけれども、一般国民が求めているのは、このような大規模法人だけでなくて、日常に生ずる法律とか税務の問題など何でも一括して処理してもらえるというワンストップサービスの多機能型事務所を求めているんではないかと思います。
 そもそも、事務所の従業員が全員何らかの有資格者だという場合において、資格者相互が業務を補完し合う、これを禁止することが私は不合理じゃないかというふうに思います。過去のこのような先例は、現状をよく考えられて、そぐわないところは変更すべきであると思いますけれども、いかがでございましょうか。
房村政府参考人 国民のニーズが、そういう一つの事務所に行けば多種多様な法的サービスを受けられる、こういうところにあることは間違いないだろうと思います。また、それにこたえられるような努力をすべきだろうとも思っております。
 先ほど申し上げましたのは、私どもとしては、資格のない者が資格のある者を指揮命令することは好ましくないということでございますが、資格の異なる者同士が協働して事務所を構え事務を処理するということは、もちろん現行法のもとにおいても可能でございますし、通達でも禁止しておりません。
 したがいまして、法務省のみならず、他省庁ともあわせて検討を行いまして、そういう経費共同型の協働事務所であれば十分可能であるという結論を得ておりますので、今後も、各専門職種、私どもの所管しております司法書士あるいは土地家屋調査士の方々には、そういった経費共同型の協働事務所は法律上当然に許されているんだということを周知徹底してまいりたいと思っております。
前田分科員 今お話がありました。ぜひ、国民が求める、多様なニーズが一カ所で解決できるような場所を今後も提供していただきたいと思います。
 次に、ちょうどきょうこの予算委員会にも河村議員が来てみえますけれども、私は、個人情報という点で非常に恐ろしいところがあるなということを、調べているうちにわかりました。
 登記のオンライン化について伺います。
 権利証が消える、これは国民にとっては非常にショッキングなことであると私は思います。例えば、この権利証自体に国民の皆さんは、今、国民感情として、非常に重要なものであるということで、例えば仏壇の奥へしまってあるとか銀行の貸し金庫に預けてあるとか、それが権利証に対する国民の考え方であると思っております。これが、オンライン化によりまして、付番と、それから数字の十けたのものに変わってしまう。ペーパーレス社会で非常にそれはこれから進めていくべきじゃないかという意見もありますけれども、現在個人情報保護法案もできておりませんし、このオンライン化によりましてこうした個人の財産が流出するようなことがあってはならないと私は思います。こうした重要な案件において、では、どうやって本人を確認するか、本人確認制度はいかにあるべきかという点についてお答えいただきたいと思います。
房村政府参考人 御指摘のように、現在、権利証というのは非常に大きな機能を果たしております。登記が完了いたしますと、権利証を申請人に交付いたします。このことによってその当事者に登記が完了したということを通知すると同時に、事後の登記手続において、その権利証を用いていただくことによって本人確認を行う、この二つの機能を果たしているわけでございます。
 現在、登記申請のオンライン手続を進めているところでございますが、何分権利証というのは紙でございますので、オンライン化するとなると、そのままの形では到底維持できない。そこで、今申し上げたような権利証が果たしている二つの機能、通知機能と、それから本人確認の機能、これをオンライン手続上でどうやって確保するか。通知の方は比較的容易だと思いますが、本人確認の方は、これはなかなか工夫が要るところでございます。
 さまざまな方策をただいま検討しているところでございますので、御指摘のような趣旨を踏まえまして、今後も精力的に検討を続けて、本人確認に誤りのない制度を構築したい、こう考えております。
前田分科員 権利証の問題というのは、私は国民にとって非常に大事なものだと思いますね。これは、普通の人でしたら、一生のうちに、例えばサラリーマンが家を買う、多大なローンを抱えて買ったりするわけでございますので、本当に一生のうちに一回、そして、自分が死ぬときに、今度、子供に譲り渡すという相続のときと、恐らく二回ぐらいではないかと思うんですね。ですから、これは間違いがあっては非常に取り返しのつかないことであると思いますので、特に本人確認の制度については厳重に、いろいろな皆様の御意見を伺ってやっていただきたいなということを申し上げます。
 また、次に、このオンライン登記において、登記の原因はどういうふうに証するのか、これについて伺いたいと思います。
房村政府参考人 現行の登記制度におきましては、原則として、登記原因を証する書面、例えば契約書でございますが、こういった書面を申請書に添付するということを求めております。
 ただ、これがない場合もございますので、ない場合には申請書副本で代替できる。この登記原因証書もしくは申請書副本に、登記済みであるということを記載して権利証にするわけでございます。
 オンラインの申請をするということになりますと、やはり紙のものはそのままを使えない。しかし、登記原因をおよそ証することなく手続を進めていいかということになりますと、これも問題があるのではないか。何らかの形で電磁的に登記原因を証するようなものを出していただくというようなことを検討しているところでございます。最終的にはまだ結論は得られておりませんが、今後もそういう登記の真実性の担保という観点から慎重に検討したいと思っております。
前田分科員 次に、このオンライン登記で問題になる点がもう一点ございます。
 登記者の調査権限についてどのようにお考えになられているのか、どこまで登記者が調べることができるのか、これについて伺いたいと思います。
房村政府参考人 正確な登記をするということは、もう登記制度の根本的な要請でございます。その出発点は、まさに登記の申請をしている人がその本人かどうかということでございます。また、オンラインになりますと、成り済ましが非常に容易ではないかという御指摘も受けているところでございますので、オンライン申請を考えるとなると、本人確認のための登記官の権限というようなものは、これは不可欠ではないかと考えております。
前田分科員 今、権利証が消えるという非常にショッキングな話の中で、問題である本人確認の制度、そして登記の原因、そして登記者の調査権限についてお伺いしました。
 これは、先ほど申し上げたように、国民にとって個人の財産にかかわる非常に大事な点であると思いますので、国民の皆さんの理解を得られるような形で、検討状況も国民の皆さんに開示していただきながら、いろいろな有識者の御意見を集約して検討していただきたいと思っております。
 きょうは、司法制度改革について、国民にとって、本当にごく普通の国民にとりまして司法がより身近になるような改革の成果をお願いいたしまして、私の質問を終わらさせていただきます。
 ありがとうございました。
丹羽主査代理 これにて前田雄吉君の質疑は終了いたしました。
 次に、今野東君。
今野分科員 民主党の今野東でございます。
 私は、入管制度についてお尋ねをしたいと思います。
 去年の九月に私はアフガニスタンに行ってまいりまして、そうした国で、ぎりぎりの状況の中から、難民が母国を離れて不法入国せざるを得ないという状況なのだということがよくわかりました。しかし、我が国では、難民認定申請希望者やあるいは認定申請者を、退去強制事由に該当する者として収容してしまっているという現実があります。
 まず、この難民認定希望者や難民認定申請者が、難民該当性の行政判断の確定しない段階から収容され、難民認定審査と退去強制手続を同時に行うこと自体、これは人権の観点から私は問題があるのではないかと思っているのですが、まず、ここのところの大臣の所見をお尋ねしたいと思います。
森山国務大臣 難民認定申請中の人が、不法入国、不法残留などの退去強制事由に当たる場合には、退去強制手続は、難民認定手続とは別個の手続として並行して行われるということになっております。しかも、退去強制手続は、原則として身柄を収容して進めるということになっておりますので、このような難民認定申請者を法律の規定に基づいて収容するということが行われているわけでありまして、御指摘のような現象が間々見られます。これは法律に基づいて行っているわけでございますので、人権侵害に当たるとは考えておりません。しかしながら、健康状態その他、個々の事情によって人道上の配慮を要する場合には、仮放免を柔軟に運用するなどいたしまして、対処しているわけでございます。
 なお、現在、法務省においては、難民のより適切な庇護を図る観点から、難民認定申請中の者の法的地位の安定化を図るための仮滞在許可制度の創設を含む難民認定手続全般の改正等に関する法改正作業を行っているところでございまして、できる限り早く国会に提出したいと考えているところでございます。
今野分科員 体の調子を整えることが長期的な収容によってなかなかできなくて、精神的にもアンバランスな状況になりまして、体の異常を訴えるというケースもしばしばあって、そういう事例について、支援をする方々の中から、私のところにさまざまな状況が寄せられております。必ずしも人道的な配慮がなされているとは思えないところもあるわけですけれども、それは後ほど質問をさせていただきます。
 まず、UNHCRで、庇護希望者に関するガイドラインというのがありまして、難民認定は、難民を難民として確認する作業にすぎないというふうに書いてあります。彼らは犯罪を犯そうとして来たわけではありません。難民認定希望者や申請者を強制的に収容するということを大臣はどうお考えなのでしょうか。お尋ねします。
森山国務大臣 難民の認定とは、その外国人が難民条約に定める難民の要件を備えているということを確認する行為ではございますが、現行法上、我が国の難民認定手続は退去強制手続とは別個独立の手続でございまして、退去強制事由に該当するものについては、従来から、難民認定手続が行われている場合であっても、退去強制手続をこれと並行して行っているというのは、先ほども申し上げたとおりでございます。
 そして、一般論で申し上げますと、退去強制手続は身柄を拘束して進めるということになっておりますので、難民認定申請中のものであっても例外ではありませんで、退去強制令書に基づく身柄の拘束については、適正な手続にのっとって行っているものでございます。
 また、収容施設における被収容者の処遇に当たりましては、保安上支障がない範囲内におきましてできる限りの自由を与えておりますし、被収容者の情状等を考慮いたしまして身柄の拘束を解く必要が生じたときには仮放免を弾力的に運用するなど、人権に配慮した取り扱いをしているつもりでございます。
今野分科員 収容されている方々に対してできる限りの自由を与えているとおっしゃいましたけれども、それは非常に狭い狭い範囲の中のことでありまして、大臣も西日本入国管理センターに視察においでになった経緯があります、そこのところは実はおわかりなのではないかと思いますが、法務省のこの難民の人権への不可解な取り扱いについては、収容段階だけではなくて、今の収容施設内での処遇にも大きな問題があると私は考えております。
 その密室性のゆえに、被収容者の自由を束縛し、また暴力や人権侵害が常に起きるという危険性を考慮に入れるべきであると思いますが、これに関してはどのような対策を講じていらっしゃるんでしょうか。
森山国務大臣 入国管理局の収容施設における難民申請者を含む被収容者の処遇につきましては、入管法第六十一条の七によりまして、被収容者に対しては、保安上支障がない範囲でできる限りの自由を与えるべき旨が規定されておりまして、これを受けた被収容者処遇規則に、さらに具体的な事項が定められております。これらの規定するところに従いまして、被収容者の人権に配慮しているというわけでございます。
 しかしながら、収容施設においては、規則に違反したり秩序を乱した被収容者の行為を入国警備官が制止するような場合におきましてある程度の力を行使するという場合もあるので、職員に対する監督指導の徹底、警備処遇に携わる入国警備官に対する法令研修及び実務に即した警備処遇研修の実施を行っております。
 例えば、法令研修におきましては、入国警備官を対象として、採用直後の初任科研修、その後に実施される中等科研修におきまして、外国人に対する人権保障について講義を行っておりますし、また、警備処遇研修におきましては、処遇実務の座学のほか、保安事故など非常時の対応、逮捕術等の実務訓練を行っているところでございます。
今野分科員 私は、そこのところが不十分なのだというふうに思いますが、一九九八年十一月、国連の市民的及び政治的権利に関する国際規約、自由権規約と言われるものですが、これに基づいて、規約人権委員会は、第四回の日本政府報告に対する最終見解を発表していますね。そしてその中で、委員会は特に、警察や入国管理局職員による虐待に関する苦情申し立てを調査や是正のために持ち込むことができる独立した機関が存在しないことを懸念する、委員会は、締結国によって、そのような独立した組織、または担当者が遅滞なく設置されることを勧告するというふうに述べています。
 法務省としては、こうした国連の見解についてどのように考え、どのように対処したんでしょうか。
森山国務大臣 入国管理局の収容施設は、あくまでも退去強制事由に該当する者を実際に送還するまでの間、その身柄を確保しておくことを目的としているわけでございますので、施設の長の責任におきまして処遇の適正を図ることで十分ではないかというふうに考えており、あえてこの委員会が勧告したような独立した機関を設ける必要はないのではないかというふうに思っております。
 しかしながら、入国管理局においては、被収容者の人権保護の徹底を期するとともに、被収容者の適正な処遇に資するために、平成十年以降、被収容者処遇規則の改正を行いまして、収容施設の長が被収容者から直接意見を聴取したり巡視を行うなどいたしまして処遇の適正を期するべきことを新たに規定いたしましたり、規約人権委員会の勧告を受けまして、意見箱の設置によりまして被収容者から意見を聴取する制度を実施したり、不服申し立て制度を創設したりしております。
    〔丹羽主査代理退席、主査着席〕
今野分科員 先ほどもちょっとお話をいたしましたが、入国管理センターに収容されている人たちを支援するグループから、私のところに入管職員のさまざまな暴力的扱いの事例が来ております。
 例えば、去年の九月十四日、西日本入管に収容されているアフガニスタン人が、隔離する部屋、独居房に入れられた事件というのを大臣は御存じでしょうか。
森山国務大臣 聞いております。
 昨年九月の十四日、西日本入国管理センターにおいて、決められた容量を超えた投薬を申し入れた被収容者が、投薬が認められなかったことを不服として、貸与品とか備品を破壊する行為に及んだ。そしてまた、他の被収容者がこれに同調して大声で叫んだ上、プラスチック製スプーンで腹部を突き刺すというような自損行為をしたという話を聞きましたが、被収容者処遇規則第十八条に基づきましてそれぞれ隔離をしたという事実はございます。しかし、お尋ねのような職員による暴行はなかったというふうに承知しております。
今野分科員 一人部屋、いわゆる独居房に入れるときに、足を二枚の毛布に巻かれて、さらにガムテープで巻かれて、そして腕を腰に縛ったまま、これは新聞報道では「下半身を縛られたうえ両手に手錠をかけられた状態で保護室に隔離収容された疑いがあることが分かった。」というふうになっておりますけれども、私のところには、足を二枚の毛布で巻かれて、その上ガムテープで巻かれて、腕を腰に縛ったまま、三十六時間そのままにしたというふうになっているんですが、この事実関係はよくお調べになったんでしょうか。
森山国務大臣 私が調べたところでは、隔離しました被収容者は二人とも、隔離室のドアを足でけるなどして暴れ続けたそうでございまして、そのことから、受傷事故と器物損壊行為の防止のために、被収容者処遇規則第十九条に基づきまして、一人には革手錠及び捕縄を、もう一人には革手錠をそれぞれ使用したというふうに聞いております。
 ただ、その時間は、一人は一時間五分でありまして、もう一人、他の一人には、まず捕縄とともに一時間三十一分使用いたしまして、一たんおとなしくなったので解除いたしましたが、再び暴れ出しましたので、五十八分後にもう一度革手錠のみを使用して、これは一時間二十七分行ったというふうな話でございました。
今野分科員 先ほど大臣は、入国警備官にある程度そうした力を発揮することがあるのだというふうにおっしゃいましたけれども、これは明らかに程度、その限界を超えているのではないでしょうか。
 憲法三十六条「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。」これは明らかに憲法にも違反していることではないかと思います。さらに、刑法百九十三条の公務員の職権乱用でありますし、刑法百九十五条の二項にある、拘禁された者に対して暴行または陵辱もしくは加虐の行為を行ったということになるのではないでしょうか。
増田政府参考人 個別事案についてのお尋ねですので、私の方からお答えをさせていただきたいと思います。
 ただいまお尋ねの事案の場合には、この被収容者が夜中に薬物の投与を申し出て、既にその日の許された、許容された薬物の投与量を超えていたためにそれを断ったところ騒ぎ出した。その上、房内においてコップを壊したりあるいは合板製の机を壊して破損させたり、このような騒ぎをまず一人が起こします。さらに、もう一人がそれに呼応して騒ぎ出すというような事態に発展いたしました。本当にぐあいが悪いなら健康診断ということで、検温であるとか血圧測定を求めても応じなかった。
 こういうことで、説得などでいろいろ時間がたったのですが、いずれにせよ、本人たちが怒号し、さらにはドアをけるなどの行為が続いたために、先ほどお尋ねのように毛布を使用したというのも、本人の足をけがさせないために毛布で足を覆うなどの措置を講じたものであって、その後、他の収容者からもいろいろ騒ぎを起こすなど、騒然とした事態になったために、順次二人を別の保護室に一人ずつ移して説得をしていった。
 その結果、先ほど大臣からの御答弁にありましたとおり、一人は一時間五分程度で静まった。しかし、他方の人は、一時間五十分ほどで静まったものの、一たん解除といいますか手錠を外したところ、また一時間後に騒ぎ出したので、やむなく夜中の三時ごろから四時ごろまでの間再び革手錠をせざるを得なかった、こういう経過でございまして、その他調べてみたところ、部屋の中のポットも破損されているなど、相当に激しい動きがあったためにこのような事態になったわけでございまして、決して委員のおっしゃるような特別公務員暴行陵虐のような行為があったとは考えておりません。
今野分科員 これは、いわゆる独居房にどれぐらいの時間収容していたんですか。
増田政府参考人 申しわけございませんが、今手元に保護室に入れていた時間の資料はございませんので、後でわかり次第お答えしたいと思います。
今野分科員 こういう重大な事件について、つまり全体像を把握していないわけじゃないですか。どれぐらい収容していたか、何時間収容していたか、わからないんでしょう。報告は、これはそういう形で上がってきているんですか、本当に。
増田政府参考人 お尋ねの事案は九月十四日の夜中から十五日明け方四時までの件ですが、その九月十五日付で報告が上がってきております。
今野分科員 その報告の中にどれぐらい独居房に入れていたかというのはないんですか。そんな不十分な報告なんですか。
増田政府参考人 この報告におきましては、本人が暴れ出してからこれを制圧し、そして革手錠などを施したが、その後いつ事態がおさまったのか、そこまでの報告でございます。それが午前四時十七分にすべて平穏に戻った、こういう報告でございますので、とりあえずの報告としては、これで足りているものと考えております。
今野分科員 これで足りていませんよ。だって、収容されている人を独居房に入れて、彼らはこの部屋を、テリブルルーム、テリブルと言っているんです、恐ろしい部屋。それほど怖がっているんですよ、収容されている側から見れば。入管の職員の方は何ともないかもしれませんけれども。独居房に入れていた時間がわからない、それは報告じゃないじゃないですか。そんないいかげんな。
増田政府参考人 先ほども申しましたとおり、今私が手元に持っておりますのは、とりあえず九月十九日に受けた報告だけを今持参しているために、その後の報告については持っておりませんので、今お答えできないということでございます。
今野分科員 お持ちじゃないんだから、何時間入っていたかと何回聞いたって、それは同じことですけれども、つまり、そういう報告がきちんと上がっていないということですよ。中途半端にやっているんじゃないですか。結局はそういうことじゃないですか。
 入管に収容されている被収容者が、その処遇について、こういったことを例えば大臣に直訴するシステムというのは、大臣、あるんですか。
森山国務大臣 平成十三年の十一月一日に被収容者処遇規則を改正いたしまして、被収容者が自己の処遇に関する入国警備官の措置に不服があるときは、入国者収容所長等に対して不服を申し出ることが認められておりますし、所長等に必要な調査と結果の通知を義務づけ、さらに、被収容者がその結果に不服があるときは、法務大臣に対して異議の申し出を行うことができる制度を創設いたしました。これは、被収容者の人権保護の徹底を期するとともに、被収容者の適正な処遇に十分資するための制度であると考えております。
 この制度の運用については、平成十三年十一月一日に実施して以来、本年一月末日までの間、全国で不服申し出があった件数は六十一件でございまして、そのうち異議の申し出は十五件となっております。これら不服申し出、異議申し出の内容といたしましては、収容されていることへの不満、あるいは在留許可の要望、物品購入の要望などでございまして、いずれも調査の結果、申し出に特別の理由がないと判断されているわけでございます。
 今後とも、本制度の機能が十分に果たされるように、適正な運営に努めていきたいというふうに考えております。
今野分科員 先ほどの入管であった去年の九月十四日の件については、大臣のところには報告は上がってきているんですか。
森山国務大臣 そういう事件があったということは報告は聞いておりますが、今申し上げた異議の申し出というたぐいのものではございませんでした。
今野分科員 不十分な報告を受けて、ああ、そうですかということだけにしてしまっている実態が今見えたわけですけれども、革手錠をかけて、そして独居房に放置をしていた、しかも何時間放置していたのかわからない。こういう実態を、大臣、どうお考えになりますか。
森山国務大臣 最近設けましたいろいろな新しい規則等によりまして、収容者の人権を尊重するということが職員にもわかっているはずでございますし、職員は一生懸命その仕事に努めていると思いますが、中には、収容者の側から見ますと、そのようなことが十分徹底していないなと思われる面があるのかもしれません。あるいは、きちんとその理由あるいは状況等を説明するということがもっと必要であるのかもしれない。
 いろいろな問題があり得るかなというふうに思いますが、基本的に、収容施設の職員は、人権を尊重しつつ、最大の努力をしているというふうに思います。
今野分科員 人権を尊重していないからこういう事件が起きるわけじゃないですか。この方たちは、私たちが考えるいわゆる罪を犯して収容されているわけではないわけです、不法入国をしたという罪はありますけれども。
 こういう方々が難民認定の見通しがないまま一年もあるいは二年も収容されているわけで、そうした状態に悲観をして自殺する人もいるわけですね。また、自殺未遂もあるわけですが、自殺やあるいは自殺未遂の事件について、これは何件ぐらいあるんでしょうか、大臣。
森山国務大臣 入国管理局の収容施設の中で自殺等の事故があった場合には、その事故の内容と、これに対してとった措置を直ちに法務大臣に報告するということになっております。
 平成十年から平成十四年までの間に西日本入国管理センターにおいて一件ございますが、自殺未遂の件数につきましては、本人が自殺を意図していたかどうかはっきりとしないので、自損行為の件数ということで申し上げますと、平成十年から十四年までの間に収容施設内で発生した自損行為事件は百五十七件でございます。
今野分科員 自損行為じゃなくて自殺未遂についてお尋ねしているんですよ。つまり、そういう数字も把握していないわけですか。
増田政府参考人 自殺未遂につきましては、本人が死ぬつもりでそのような行為をしたのかどうか、必ずしもはっきりしないケースが多うございます。
 例えば、先ほど委員がお尋ねになられた平成十四年九月十四日の件にしても、一人は、プラスチックのスプーンで腹を何回か突いているという行為がございます。こういったものを自殺未遂と見るのかどうか、なかなか難しい問題がございまして、そういう意味で、私どもとしては、自殺未遂の件数としては、件数は把握しておりません。そのかわり、その本人が自損行為をしたものはきちんと把握していなければいけませんので、自損行為として先ほど大臣からお答えがあったとおりの数字は把握しているということでございます。
今野分科員 残念ながら時間がありませんからこのあたりで終わりますが、今お尋ねをした件についても、どうも、この九月十四日の件についてすらはっきりわかっていない、どれぐらい収容したのかもわかっていない、質問通告をしているにもかかわらず。非常にずさんな報告なわけでありますね。
 これは、何か把握したくない事情があるのかどうかわかりませんけれども、きっちりと把握するとそれに対処しなくちゃいけないからしたくないのかもしれませんが、これでは、やはり国際社会の中でも人権上問題だと非難されてもしようがないわけでありまして、大臣のところにしっかりと、これは人権上の問題ですので、もっと細かく報告が上がってきて、そして、それにきちんと対処できるようなシステムをつくるべきだということを申し上げて、質問を終わります。
 ありがとうございました。
杉浦主査 これにて今野東君の質疑は終了いたしますが、手元に資料がないために保護房収容の時間がわからないというような答弁もございましたので、そのあたりは後でよく調べて、今野先生に御報告するようにしてください。
 次に、阿部知子君。
阿部分科員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
 冒頭、ちょっと私は委員長に教えていただきたいことがございますのですが、きょうは朝から、委員長、その席で大変に重責を務めていらっしゃいますが、こちら側には、委員席、どなたもおいでにならないのですね。私は、分科会と申しましても、やはり大臣もお出ましあそばして、皆さんきちっとなさっているわけです。これでは余りにも、国会審議のありよう、恥ずかしいと思うのですが、これを予算委員会の理事会でお取り上げいただきまして、どなたもおいでじゃない。
 私は、今、今野先生の御質疑も大変内容の深いものであったと思いますし、ただ、入管当局の責任者の方がデータをきちんとお持ちでないというのは残念でありますが、とにかく、このような形で分科会が持たれますこと自身、国民に恥ずかしいと思いますし、私どもが責務といたしますことが果たされませんので、必ず理事会でお取り上げくださいますようお願い申し上げます。
杉浦主査 同感でございます。きちっと取り上げさせていただきます。
阿部分科員 本当に御苦労さまです。
 引き続いて、質疑に入らせていただきます。
 私は、この間ずっと連続して、名古屋の刑務所で起こりました、御本人の死亡二名を含むこれまで明らかになりました、三名の公務員による暴行致死の問題を取り上げて質疑を重ねております。
 今の今野委員の御質疑でもそうですが、入管というところも、それから刑務所も、そして、これから参議院をもしも通過いたしますれば、でき上がるところの触法精神障害、精神障害ゆえに法を犯した方たちの収容というのもすべて公的権力のもとにある、いわば公的権力が自由を奪っている。それなりの理由でではございますが、そういう監視下に置かれた方たちの人権という問題で、今の入管との御質疑を聞きましても、やはりかなり当局の把握が甘いというか、だれも声を上げられないのに、きちんと当局が把握しなければ実態も見えない、死してすらだれにもみとられることもなく死んでいくということが繰り返されると私は思うわけです。
 そうした観点から、特に、その長を務められる森山大臣の責は重いと私は思いますし、通常の自由を持った人間のことで起こることではないので、その点、とてもアンテナをシャープに、そして、心底その方たちの人権を守るという決意で臨んでいただきたいと思いますが、冒頭、まずこれら、今の今野委員の入管問題も含めて、それから私がずっと問題にしております刑務所問題も含めて、取り組みの決意のほどをお願いいたします。
森山国務大臣 人権を守るということは、大変大事なことであり、法務省の大きな仕事の一つでございます。
 いろいろ御指摘いただきました不十分な点も多々あるかと思いますが、最大限の努力をいたしまして、人権を守る仕事を一生懸命やっていきたいというふうに思います。
阿部分科員 では、先ほど委員長のお許しを得て配付させていただきました資料を使わせていただきます。
 私の資料は三枚ございますが、この間明らかになった三例を時系列に並べましたものと、あわせて特に私は、本日、死亡という、死人に口なしでございまして、死して声は発することのできない方たちの事案についての今後の実際の改善をどうあればよいかということが、私自身、この間必死に考えまして、決意とか口先だけのものでは守り切れない死者の権利、死に至らしめないためのプロセスがあると思いますので、そうした観点から質問させていただきます。
 まず、冒頭、この名古屋の事例に端を発しまして、いわゆる矯正施設下における死亡件数ということが新たに調査されねばならないという意識が上ってまいりまして、法務省としても検討されている全国刑務所でということは、新聞報道等では聞いておりますが、ちなみに、名古屋の刑務所でこの三年間のまず死亡件数、そして、これは質問予告してございますから、行政解剖の件数、司法解剖の件数について、おのおの担当者から御答弁をお願いします。
中井政府参考人 お答えいたします。
 名古屋刑務所からとりあえず報告を受けたところによりますと、同刑務所における過去三年間の死亡事例は五十一例でございます。このうち、司法解剖に付されたのは四例でございまして、行政解剖に付された例はない、かように聞いているところでございます。
阿部分科員 そういたしますと、今のを伺いますと、司法解剖に付される例は、何らかの死因について、検視を行いました段階で、犯罪の有無は別でございますが、より究明をしなければならないという認識に立たれたというふうに受け取りますが、そうした司法解剖事例について、おのおの司法解剖がなされた結果の報告と申しますのは、これは、つかさつかさ、刑事局、矯正局にはどのようにシステムとして上がるようになっているのでございましょうか。これを刑事局と矯正局の局長にお願いいたします。
樋渡政府参考人 お答えいたします。
 まず、刑務官によります受刑者に対する特別公務員暴行陵虐事案で、特異または重大なものにつきましては、その受理及び処分等について速やかに各地方検察庁から法務省に報告がなされることになっておりますが、そういう報告に至るまでの、具体的にどういう経過をたどるかということを御説明申し上げますと、まず、監獄法施行規則によりまして、自殺その他変死の場合には、検察官にその旨を通報するということになっております。しかしながら、一般的に、刑事訴訟法におきましては「変死者又は変死の疑のある死体」というふうに、変死の疑いも入れまして、これは検察官が検視をしなければならないということにされております。
 したがいまして、監獄法施行規則にはない変死の疑いというものにつきましても、刑務所の方から通報を受けるということが、事実上そうされております。その変死の疑いというものをいろいろ幅広く行刑施設では考えていただいておりまして、多くのお亡くなりになった方について検察に通報が来ておるのが実情でございます。
 そこで、その通報を受けました検察官が出向きまして検視をするわけでございますが、検視の結果、犯罪死でないことが明らかである場合にはそれで終了いたします。検視ではそのことがはっきりしない場合におきまして、司法解剖を実施することになります。司法解剖を実施いたしました結果、犯罪死でないことが明らかであれば、それもそこで終結をいたします。
 これらの場合は、上司には報告をするでありましょうが、通常、法務省刑事局の方に報告が上がることは一般的にはございません。
 それで、司法解剖の結果、まだはっきりしない場合に、これが刑事事件、事件性があるものかどうかということを検察官が検討するわけでございまして、その検討した結果、犯罪死である、要するに刑事事件であるという場合に初めて立件をされて、本格的捜査が始まるということになるわけでございます。
 そこで立件をされた場合に、先ほど申しましたように、一般的な事務報告規程によりまして受理報告がなされる。これは、特異または重大な事犯のみに報告をされることでございますが、行刑施設内においてこういう刑務官による犯罪があれば、特異ではなくても重大であることは間違いございませんので、恐らくほとんどのものが報告されるだろうということになっておるわけであります。
阿部分科員 答弁が長かったので、確認をさせていただきますが、私の伺いました、今教えていただきました四例について具体的にお願いいたします。
 今、仕組みはお話しいただきました。そして、司法解剖の結果のはっきりしないもの、いわゆる、司法解剖した結果、御病気であっただろうと思われるようなものについては報告がないということは一点わかりましたが、グレーゾーンのもの、あるいは、さらに捜査が必要なものについて上がってくるとすれば、この司法解剖を受けた四例の御報告は、刑事局としては今何例お手持ちでしょうか。
樋渡政府参考人 当局におきましては、行刑運営に関する調査検討委員会のプロジェクトの一部としまして、過去三年間に、各地方検察において各行刑施設から被収容者の死亡の通報を受けた事案について分析、検討する予定で現在しておるところでございまして、現在まだ調査中でございますが、先ほど矯正局長が答えました四件については、まだ恐らく先ほど申しました報告はないだろうというふうに思っております。
阿部分科員 私は、やはり、何度も申しますが、拘束下の死亡で、通常に亡くなるわけではないわけでございます。そして、司法解剖に至るということは、その時点で何らかの事件性なり問題があると考えなくてはいけない、疑わしいものであるわけですから。それについて、司法解剖、何例でしたかとお伺いして、今の御答弁は、突き詰めれば、詳細には関知しておらぬ、承知しておらぬ、わからぬという答弁なわけですね。いかがですか。
樋渡政府参考人 刑事局の立場から申し上げますと、刑事局として把握する必要がありますのは、各地検において捜査、公判中の事件や、将来捜査が行われる事件のうち重要なものでございまして、検察庁が受刑者の死亡の通報を受けた事案といいましても、検視等の結果、明らかに自殺あるいは病死と判断されるものがありますことから、行刑施設から死亡の通報を受けた事実すべてについて、各地検から報告を受け、把握するまでの必要はないものと考えております。
 もとより、矯正行政の観点からの把握については別でございまして、行刑施設における受刑者死亡事案の報告のあり方についても、今後、行刑運営に関する調査検討委員会で検討されるものと承知しております。
阿部分科員 御答弁を確認させていただきますが、四例について、詳細に、必要がないとはおっしゃいませんでしたが、知る立場にないということですが、少なくとも二例は御存じですよね。だって、おととしの十二月と、それから五月の事例は、司法解剖がなされて、その事件性が捜査中でありますから、今の答弁のそのままに受け取りますと、二例は御存じかと思いますが、いかがでしょうか。
 長い答弁じゃなくて、きちんとお願いします。私、もうこうやって、たんびに人の答弁の後をとるようなことは嫌なんです。前に進みたいから、お願いします。
樋渡政府参考人 お尋ねの五月の事件と十二月の事件は、これは現に事件になっておりますので、事件になった段階で報告を受けておりますが、先ほど矯正局長が答弁された四件のうちにこの二件が入っているかどうかも、今、私の方にはわからないわけでございまして、そうすると、残り二件ということになるわけでありますけれども、その二件については、今のところ報告はなかったということを申し上げることになろうかと思います。
阿部分科員 この三年間に、今捜査中の二件以外に四件も起こっては困るわけで、これは本当に、何件、件とか言いますけれども、一人一人死んでいるんですから、それくらいの緊張感を持って私は答弁してほしいです。普通に考えたって、司法解剖四件、この三年間といったら、当然、今問題になっている二例だって含まれていなければ、本当にまた死者がふえますから、そこはもう事務サイドできちんとお願いします。
樋渡政府参考人 まことに失礼いたしました。今、確認いたしましたら、四件のうちにその二件は含まれているということでございました。失礼いたしました。
阿部分科員 続いて、矯正局長にも同じ御質問をいたしますが、司法解剖に付されたうち、矯正局長として、解剖の報告書なるものを、知っておられるものは何件ありますか。
中井政府参考人 司法解剖の結果につきまして、矯正局としては、ただいまの刑事局の御説明にありますように、これを公的に知り得る立場にはございません。
阿部分科員 まあ、立場にはございませんが、例えば名古屋のホース事件では、これは中井局長の御答弁ですが、司法解剖の解剖の鑑定書の結果も、担当の者がメモ書きのように書き取ったものも含めて報告を受けたと、せんだって御答弁でございますが、これは違いますでしょうか。もう本当に、もうこれを何度もやらせないでほしいのですが、二月の二十一日の漆原委員の御質疑の折に、中井政府参考人が、「矯正当局といたしましては、司法解剖結果を受け取るべき立場にはございませんで、」そこから一連続きまして、「解剖医からその旨の話を聞いて、それを、又聞きをそのままメモしてこちらに報告してきたという外形になっております。」と。こういうものが何件おありですか。
中井政府参考人 お尋ねの平成十三年十二月事件のときには、たまたま私どもの職員がその解剖の場におりましたために、その場で解剖された医師が話された内容を又聞きしまして、それを聞いたということでございます。
阿部分科員 私は、そういう、たまたまとか又聞きとか、システムに組み込まれないものは絶対に死者の権利を守ることができないと思っております。先ほどの矯正局長の答弁でもそうでございましたが、四か二かわからない。そして今、中井局長は、たまたまと。たまたまいなかったら情報は、例えば矯正局の管理下にある刑務所で起こったことでも局長すら知ることがない。そして、すべては検察から事件として指摘されたときだけ起こる。
 私は、この制度を根本的に改めるために、やはり、すべての公的な権力によって自由を奪われた方々の死について、いわゆる陪審制度、これは、犯罪の有無、どちらでも、それにかかわりなく、死を、その死自身がいかなることであったかを、だれかがきちんと、落ち度なく、抜け目なく私は見ていかないと、いつまでも内部告発や、あるいは事件と言われてしか、後手にしか回れないような仕組みがこの国に根づいておるということが極めて残念でなりませんが、森山法務大臣、いかがお考えになりますか。
森山国務大臣 名古屋刑務所における一連の事件については、まことに残念であり、本当に申しわけないことと、おわびする言葉もないというのが私の心境でございます。
 今御指摘になりました、システムに取り込んでおかないと人権が守りにくいというお話、それも一面あろうかと思いますが、矯正局あるいは刑事局その他で、今までの経験から、このようにすれば何とか人権も守り、事件の追及もできるというシステムを構築してきたのだと思います。
 しかし、それでは十分でないという面もあるわけでございますので、現在、既に数日前からスタートしております行刑運営に関する調査検討委員会で、それらも含めて基本的に考え直そうということにいたしておりまして、鋭意努力しております。
阿部分科員 これまでのルールに従ってやってきたことが死を生んだという認識を持っていただかないと、死して浮かばれることがないと強く思います。
 そして、死の陪審制度というのは、諸外国でも既に実施されておりますところから、特に日本の刑務所は、国際的にも、入管もそうですが、問題になっているところであります。ぜひとも、今の大臣の御答弁は、これは大臣が率先してなそうと思えば改革の方向は出るものでございます。お二人の局長の答弁を聞いて、この方たちのもとで亡くなっていった方は、本当に私は浮かばれないと思いますので、大臣がもしこの職にあり続けるのであれば、必ずこの死の、死してなお、みずから何も言えずに死んでいった人たちのために、陪審制度に積極的に検討、取り組んでいただけるよう、もう一度御答弁をお願いいたします。
森山国務大臣 御指摘のとおり、先ほど申し上げました委員会その他をフルに活用いたしまして、改善の方法を最大限努力していきたいと思います。
阿部分科員 続いて、中井局長にお伺いいたしますが、五月の事例については、この受刑者が亡くなられましたときに、担当の刑務所で御家族を呼んで死亡状況を説明されております。これは中井局長御答弁ですが、このときに革手錠の使用等を伝えていなかったと、御家族には。虚偽に結果的になるわけですけれども。
 この十二月の事案は、捜査には関係ないことですから、矯正局長の責任において、御家族、御遺族にはどのように話されましたか。お願いします。
中井政府参考人 ちょっと突然のお尋ねですので、その点は確認させた上で答弁させていただきたいと思います。
 それからもう一点、先ほど私は、解剖の際に私どもの職員がたまたま立ち会うことがあるという御説明をいたしましたけれども、若干補足させていただきますと、名古屋の場合には、どうも解剖の場に立ち会いまして医師の話を聞く例が多いようでございますけれども、全国的に見ますと必ずしもそうではないので、先ほど、公的には、そういうシステムとして私どもが解剖の場に立ち会うというシステムにはなっていない。それからまた、もとより、解剖の結果につきましては、当然のことでございますけれども、これは検察のやられることでございますので、我々のところにその最終結果が届くようなシステムにはなっていない、こういう趣旨でございますので、補足させていただきたいと思います。
阿部分科員 補足はお受けいたしますし、それゆえに私は、死が第三者も交えたきちんとした権利擁護の機関でチェックされなければならないと申しておりますので、別に御答弁に異議はございません。現状のままでは、何ら死はきちんと検証されないと言いたいだけですから。
 それから、御家族の件ですが、既にこれほど問題になり、そして問い合わせが急だったからと言われるのは、例えばこの前、森山大臣も、遺族の立場になり、家族の立場になればという御答弁があったわけです。なぜそれだけの当たり前の人間の思いやりがないですか。その方が矯正局長を務めるということは、私は全国の受刑者の家族にとってはいかばかりかと思いますが、いかがでしょうか。
中井政府参考人 この十二月の件につきましては調べさせていただきますけれども、今までのところ、私どもでは、御家族の方との接触をしたのかどうか、そういった詳細については現時点で確認できていないのが実情でございます。
阿部分科員 私は、それをみずからやるくらいの感性を持っていただきたいと、矯正局をお預かりの方には。例えば、私は病院を預かっておりまして、病院で人が亡くなります。御家族にどう説明しよう、どう思われるだろう、そのことは、本当に死の起こった瞬間、私は、大きな私の役割になってくるわけです。
 そして、何度も申しますが、病院以上に強制的な公的権力で拘束して死んだんです。そうしたら、そのことがどう家族に伝わったかと思いやる心のない人が、矯正局なんかやったらいけないのです。当たり前の人間の感覚がいかに欠けているか。私は、本当にこの事案二つは、死した人のためにも、私しかここで言えないんだったら、何度お時間をちょうだいしてもきちんとさせたいと思いますし、まずもって今の、ここに至るまでです、局長みずからが問いかけることもない、このことを深く反省していただきたいと思います。
 第三点、人権擁護の観点で人権局長にお願いいたします。
 お手元にお示しいたしました資料の一枚目を見ていただきたいのですが、いわゆる九月事案でございます。事の発端は、これが明らかになったがゆえに、五月の事案も十二月のさかのぼる事案もやっと日の目を見たというものでございます。
 九月の事件と書いてございます時系列を縦からとっていただきますと、まず、この受刑者は、四月の段階で刑務所の中から名古屋の弁護士会に向けて人権救済の申し立てをいたしまして、弁護士会の方で事情を聞かれまして、さらに七月、弁護士会の方が人権擁護委員会で調査を決定いたします。そして、九月九日に同弁護士会が刑務所に調査を伝えて以降、この受刑者への暴行がもう連続、毎日行われるわけでございます。
 そしてさらに、九月二十五日の暴行が非常に強いもので、革ベルトでおなかを締め上げて、腸間膜、腸の中の膜が切れて、病院に転送されることになって初めて事件が発覚し、なおかつですが、その次、十月四日です。名古屋の法務局人権擁護部にこの被害者の周辺の方から初めて人権相談が上がる。
 よろしいですか。事が発覚し、新聞報道になり、記者会見が行われてからしか人権擁護部に人権相談が上がらないのですよ。弁護士会に必死に訴える、訴えて訴えて弁護士会が取り上げて調査に行こうとしたら暴行がふえる。ふえて、瀕死の状態で運ばれる。それでもなお人権擁護部に声は行かないのです。その後、新聞で報道されて初めて人権擁護部に相談が上る。人権擁護局は何をしておるのか。私は、人権擁護局長のこの件に関する御見解を伺いたいと思います。
吉戒政府参考人 お答え申し上げます。
 十月の四日の日に九月事件の被害者の関係者の方から名古屋法務局の人権擁護部に人権の相談がございました。これが九月事件につきまして私どもが調査に入った端緒でございます。それ以前に弁護士会の方にどういうふうな相談をされておったかということは、私どもの方としては承知しておりませんでした。
阿部分科員 だからこそ、人権擁護局のあり方、このままじゃ、事件になって報道されて初めて、その前にこの受刑者は何回もSOSしているんです。SOSしたら何回も暴行を受けて、瀕死になって運ばれて、事件になって初めて擁護局に、これは相談がいくというよりも、もう事件が発覚して新聞にわかって、ああ、こういう部署がありましたかと。みずから何ら受刑者の人権に対するSOSをキャッチできない仕組みになっていると思われませんか。
 これは、何件の人権擁護局への相談件数がありましたかと言って、たしか平成十四年度は一件、名古屋から。でも、名古屋の刑務所は相次いで、情願問題も含めて、相次いで相次いで受刑者はSOSを出しておったわけです。この実情についてどう考えられますか。
吉戒政府参考人 人権侵犯事件の最初の端緒は、やはり被害者あるいは関係者の方からの申し立てというものが多うございまして、それ以外には、人権擁護委員からの通報、あるいは関係の行政官署からの通報、さらには新聞等からの情報提供、そういうものが端緒でございます。
 先生のお気持ちもわかりますけれども、ただ、人権侵犯事件の処理の目的は、やはり被害者の方の気持ちに沿った処理をするということでございまして、被害者の方の中には、人権擁護機関の関与を望まないで直ちに裁判を起こすという方もございますし、あるいは司法官憲の方に申し立てをされるという方もございまして、私どもの方が、そういう人権侵犯事件が世間にあるかどうかということをパトロールするといいましょうか、そういうふうな体制にはなっておりませんので、その点は御理解いただきたいと思います。
阿部分科員 その程度のものであるということは理解しますが、それでは受刑者の人権は守られず、なおかつ死者は声を上げられないわけですから、そのためにも、これから人権擁護法案の審議もございますが、現状のものは全く機能せず、不十分どころか、このような事態があっても、具体的な事例があっても、何ら救済できずにここまで来ているという認識を大臣もよくお持ちいただきまして、人権擁護法案のあり方についてきちんとした方向性が出るように、特に、私は、第三者機関ということで、局内にあるのではなく、第三者的にすべての人権がチェックされる方向を望んで、質疑を終わらせていただきます。
杉浦主査 これにて阿部知子君の質疑は終了いたしました。
 次に、保坂展人君。
保坂分科員 社民党の保坂展人です。
 今回、矯正施設の中で、名古屋刑務所で起きている問題、そしてCAPICの問題についてお尋ねをしたいと思います。
 早速ですが、いろいろな問題が問われていますが、ここで、刑事局長に伺いたいんですね。
 今回の名古屋の件の、特別公務員暴行陵虐致死罪の公訴時効はたしか七年と聞いております。一方で、矯正局保安課が、一昨年の情報公開法を施行する前は五年保存しておったんですね、死亡案件のファイル。しかし、施行前に三年に縮めた。
 私ども死刑廃止議員連盟で、実は、死刑関係書類も大量に廃棄されたものですから、そのヒアリングで一昨年の十二月に、それはおかしいよという警告をしてまいりました。三年で廃棄することはないだろう、受刑者が亡くなったという重大なケースですよということを申し上げた。
 今、名古屋地検特捜部が、七人の検事が総がかりでこの件を捜査している。そして、二件のリンチ殺人事件と一件の集団暴行事件を立件した。まだ捜査は終わっていないと思いますが、法務省、いわゆる身内の中で、しっかりやったというふうに思います。
 しかし、このことは、よく考えてみると、背筋が寒くなるものがございます。なぜかといえば、全国の受刑者は六万八千人、その中で、名古屋刑務所にいる方は二千二百人、三%ぐらい。全国はどうなっているのか、これはだれしも思うわけです。名古屋だけが特別なのか。新聞の社説にもありましたね、暴力は名古屋だけなのかと。
 例えば、この三年という大変不満な範囲でございますけれども、保護房に収容していた者の死亡事案の中で、名古屋刑務所以外に府中あるいは横須賀、私どもは、ぜひそういった現場も調査をしていきたいと思っていますけれども、これはやはり今回の件をきっかけに、全国の刑務所の中で亡くなった受刑者の不審な部分はすべて洗い出すということが必要じゃないか、その決意について。
 そして、その際に、三年で全部ファイルがなくなってしまうということは、刑事局から見てどういうことなのか。私は、こういうケースが出てきた以上は、これは矯正局長にも後で聞きますけれども、直ちに、きょう以降は廃棄しないというふうにすべきだと思いますね。まず、では刑事局長。
樋渡政府参考人 私は、刑事局長として、矯正局のことに関してなかなかコメントできない立場でございますが、こういうことが起こったということを考えればまた考えることもあるかと思いますが、それも含めて、今その検討委員会において、さまざまな面から行刑運営についての検討をしているところでございまして、私もメンバーの一人でございますから、いろいろと検討を加えていきたいというふうに思っております。
保坂分科員 矯正局長は、まさに捜査現場にいた方で、よくおわかりだと思いますよね。現在、矯正局の長でございますから。
 私どもの幹事長の福島瑞穂参議院議員が、あるいは私もです、過去十年間、例えば革手錠だとかそういった不審死がどのぐらいあるのかと。これはデータは出せない、今のところ出せないという返事なんですよ。その理由が、三年間で捨てていますからと。ただ、個々人のものは残っています、しかし、だから個々人のものを全部洗わなければいけないから大変な手間がかかりますという話なんですね。
 ここまで批判が高まっていて、一つ伺いたいのは、三年で捨てていくというのは、毎月捨てるのか年に一回捨てるのか、こういう議論をしていて、また今月末、ぽいっと廃棄されるのか。これはちょっと早急な改善を求めたいと思いますね。これだけのことが出てきているわけですから、そういったこの扱いについて、三年で廃棄、これはやはり変えていただきたいですね。いかがですか。
中井政府参考人 まず、保存期間の関係でございますけれども、被収容者の死亡報告書についてのお尋ねだと思いますけれども、これは、被収容者が死亡した場合に、矯正施設長から矯正局長及び矯正管区長あてに報告させているものでございます。
 被収容者が死亡に至るまでの経緯において適切な医療が施されたか否かということを確認するという報告書の目的がございますので、その保存期間が三年と定められておりまして、したがいまして、保存期間が満了いたしますと、再度確認いたしますが、多分一年に一度まとめて廃棄するということだろうと思います。
 それで、委員御指摘のとおり、この報告書の保存期間が経過いたしましても、被収容者の身分帳簿というのが残っておりまして、これは、この中には、三十年保存されているわけでございますけれども、死亡の経緯を記録した書類自体は残っているわけですね。ただ、その内容も、先ほどの被収容者死亡報告書と比べまして多くの情報を有しておりますので、基本的には原始資料としては問題がないという理解に立っているわけです。
 さはさりながら、今委員からまさに御指摘があったように、今回の名古屋刑務所の一連の事件の調査経緯、これは私ども再検証しているわけでございまして、御指摘の点も踏まえまして、私どもの報告書の保存期間、これを延ばすべきかどうかといったようなことも含めまして、調査検討委員会も立ち上がりましたので、そこにも必要に応じてお諮りするなどして検討させていただきたい、かように考えております。
保坂分科員 では、大臣、この件だけ確認したいんですが、今の答弁だと、検討した結果やはり捨てるべきだということになり、三月また捨てるかもしれない。これはちょっといかぬですよ。やはり亡くなった方が何人だったのか、どこにいたのかということがなければ、刑事局だって、もし本当に洗うんだったらできないですよ、これは。一個一個見るなんて大変ですよ。大変だから、その数すら国会議員にも提出できませんと言っているわけですから。
 これは大臣、しっかり指示されたらどうですか。廃棄するというのは改めた方がいい。どうですか。
森山国務大臣 名古屋刑務所の一連の事件を踏まえまして、いろいろ調査を再検証する場がございますでしょうから、御指摘の点も踏まえまして、この存置期間を延長すべきかどうかも含めて検討させていただきたいと思います。
保坂分科員 検討させていただきたいだと、本当に、検討の結果捨てられたということになってほしくないということを強く申し上げておきます。
 大臣、本当に率直に言いたいんですけれども、去年の国会、いろいろな論戦がございました。その中で、まだ結局これは道半ばでありますが、外務省改革という言葉が語られました。今回、これは法務省のあり方、先ほど委員の中には、入管のあり方についても質問が出ていましたよね。これはやはり法務省改革ということをはっきり言っていいんじゃないか。いかがですか。大臣の口からそういう言葉が、あるいはどこかで出ているのかもしれませんが、はっきり法務省改革をやるというふうに言えますか。
森山国務大臣 今、御存じのように、先ほど来申している調査検討委員会で問題の整理をいたしておりますが、それらをベースにいたしまして、さらに第三者の方々を、たくさん入っていただいて、法務省改革あるいは特に行刑の運営についての改革を十分御検討いただいて、新しい行刑のあり方を生み出していきたいというふうに私は考えております。
保坂分科員 改革という言葉が出たことは非常に、中身を伴っていただきたいと思います。
 そこで、実は、この件、私が最初に聞いたのがきっかけじゃなかったかなと思うんです、昨年、法務委員会で。大臣の方から、情願という言葉を聞くのは、ついこの間聞きましてということで、そうだったんですかという話になり、それでは大臣に情願そのものは届いていたのかという議論になって、この予算審議中かなりそのことが問題になりましたね。今問題になっています。
 そこで、そのときのやりとりを思い出していただきたいんですが、そもそも情け願うという言葉、これは旧感覚じゃないだろうか。大臣直訴とか、やはりまず情願という言葉自体を変えたらどうですか。大臣直訴がいいかどうかわかりません。しかし、情け願うなんという扱いをしない方がいい。いかがですか。
森山国務大臣 私も非常に今の時代には合わないおかしな表現だと思います。しかし、その情願というのが法律に基づいて決められた制度だそうで、その法律が明治四十何年ですか、大変古いものでございますから、その当時としては余り違和感がなかったのかもしれないと考えますが、それらも含めて、法律制度あるいは行刑のあり方、すべてについて基本的な改革を目指して努力していきたいと思います。
保坂分科員 何なら議員立法で、これは超党派で、その情願というのをきちっとした言葉に変えると出してもいいと思います。
 それで、今回の名古屋刑務所の事案を見ますと、何かその刑務所内でリンチだとか暴力だとかそういうことがあったときに、その受刑者の方がいわば救出されるという方法におおむね三つあるだろうと。一つは所長面接、一つは今言った情願だと。しかし、この一、二についてはほとんど機能していないということが明らかになった。残されているのは何かというと、告訴、告発であります。
 ただ、告訴、告発の扱いについて、これは矯正局長に伺いたいのです。私のもとに受刑者、これは名古屋刑務所に受刑されていた方から長いお手紙をいただきまして、実は以前からあったんだと。そして、問題は、告訴、告発をするんだけれども、こういうことがある、例えば暴行を受けたということで告訴、告発をするんだけれども、まず、その告訴、告発状自身が検閲の対象なんですね、これは。検閲の対象。対象外になっていないんですね。ということは、やはりそれを施設の関係者の方が見てしまうということがある。
 そして、具体的な扱いについては、例えば、治療は行われるけれども、医者がきちっとカルテに書かなかったりとか、あるいは、大体この告訴が検察当局に届いていくまで時間がかかって、この方の場合は、けがをして、実際の聴取を受けたのは百五十日後だというのですね。
 つまり、告訴、告発しても、内容自体を知られてしまいますから、またさらなる懲罰理由にもなるおそれもあり、また、けがをしたって、すぐにチェックをしなければならないものを、時間がたてば治ってくる傷もありますね。
 そういうことを考えると、この告訴、告発のあり方、ここをやはり変える必要があるのですね。少なくとも、検閲の対象外にして、情願は届いていなかったわけですから、告訴、告発したときには、きちっとそれは守秘義務を課されるというふうに変えたらどうですか。
中井政府参考人 御指摘のとおり、現在の法令によりますと、告訴、告発に係る書面につきましても検閲の対象になっていることは事実でございます。
 いずれにしましても、この問題は非常に大きな問題でございますので、このたび設けられた調査検討委員会等の場でも十分御議論いただきながら、私どもがお諮りしつつ、種々の観点から検討させていただきたい、かように考えております。
保坂分科員 大臣、この名古屋刑務所問題の最後の質問で、先ほど同僚の阿部議員からも、遺族の方に誠心誠意やはり御説明があるべきである、どういうことがあっても、遺族に対する、かけがえのない命を奪われた遺族に対してしっかり説明をしていただきたいという要望があったと思うのですが、改めて、ぜひしていただきたいという要望をしたいのですが、いかがでしょうか。
森山国務大臣 遺族に対する思いやりといいますかそのような配慮はぜひ必要だと思いますので、今後もそのようなやり方を心がけていくべきだと思います。
保坂分科員 きょうは刑事局長も矯正局長も来ておられますけれども、私は、先日の予算委員会で森山大臣に再答弁もしていただいたCAPICの問題を取り上げました。
 といいますのは、ここ二年ぐらいでしょうか、ラベルは信じられるのかというのが日本社会に広がったように思います。例えば、国産牛といえば国産牛だなと思って買ってきたわけですけれども、そうじゃなかった。こういうことが一連の、今公判中の事件も含めてありますよね。雪印食品などはそれで解散をしてしまった。つまり、中身を偽るというのは、これは重いことだぞという自覚が日本社会に余りなかったのかもしれない。しかし、これは消費者第一に考えてみれば極めて重いことだということで、捜査当局の方も立件をし、また、今公判にも臨んでいる、こういうことでございますね。
 しかし、場合によったら、そういった事件で逮捕され、また、その判決を下された受刑者になる方が矯正ということで作業にいそしむ。その作業をして、いわば刑務所でつくられた家具が、実は上にニスを塗るだけだったりとか、傷がないかどうかいろいろ調べるということだけだったりとかということで、果たしていいのかということで、大臣に前回聞きました。
 私、実はきのう驚いたのです。家具だけだと思っていたら、矯正からの事前の質問予告の説明で、実は、帯広刑務所製という小豆があって、この小豆も、当然買う方は刑務所、帯広刑務所は広そうですから、刑務所の中の農園でつくられて、そして出荷させられているのか、そういうものだと思いますね、これは。しかし、違っていたということが明らかになりましたね。もう言っていただきました。
 それから、何ですか、福井の方では婦人靴は本体は仕入れてきたというのですね。そして、靴底に入れる中敷きというのですか、そこにCAPICというのを入れて、そして刑務所製として売られていた。なおまだ販売しているのですね、在庫は。
 こういうことをどういうふうに認識しておられるのか。局長、まずこの二件についてどう認識しておられるのか、簡単に説明してください。
中井政府参考人 受刑者が全く生産に関与していない製品といったものを刑務所作業製品として販売されていた疑いがあるということでございますけれども、これはやはりあってはならないことだと思います。
 事案の調査についてはいずれも調査させていただきますけれども、これを過去の問題だということではなくて、私の聞いている範囲では、平成十年度ぐらいまでのものが多いように聞いておりますけれども、きちんと事案の真相を解明いたしまして適切に対処していきたい、かように考えております。
保坂分科員 ちょっとそれはおかしいんですね。きのう話してくれた方が後ろにいらっしゃるので、要は、帯広刑務所製という小豆は、帯広刑務所で要するに育った、農園で育った小豆だと思うじゃないですか、だれだって。そうじゃなくて、刑務所外から持ってきて、汚れていたりとか粒をそろえたりして袋に入れて刑務所製ですよと出していたというのは、これはいかがですか。その事実だけ聞いているんですよ。
中井政府参考人 お尋ねの事実は、基本的に御指摘のとおりでございます。
 傷のある豆や規格外の小粒の豆を除くなどの選別作業をいたしまして、袋詰め、計量、袋の口を閉じる、箱詰め、再計量を行っていた、極めて簡易な作業でございますけれども、一点だけ御理解を賜りたいことは、そういった作業しかできない受刑者もいるということを考えますと、刑務作業自体としては、それは有意義なものであったと私どもは考えております。
 しかし、委員の御指摘はまことにそのとおりでありまして、消費者の側からいいますと、帯広で豆の栽培や収穫自体も刑務作業として実施している、こういう誤解を与えかねない点がございます。そのために、これについては中止いたしております。
 在庫品につきましても、作業の中身を表示するなどいたしまして販売しておりますけれども、これも今月末までに中止する旨、矯正協会の事業部から報告を受けております。
保坂分科員 福井も靴の中敷きを入れたというだけでその刑務所製。だって、我々も行きますよ、矯正展。靴並んでいれば、なかなか手塩にかけてつくったんだなと思って買うじゃないですか。これは詐欺というんじゃないですか、どうですか。福井、どうですか。
中井政府参考人 福井の製品につきましても、やはり非常に加工度と申しますか、それが低い事実がございましたので、これも近く中止するというぐあいに報告を聞いております。
保坂分科員 ちょっと刑事局長、聞きたいんですけれども、今話しているのは、表示に一部真実が含まれていたということなんですよ、そうですよね。中敷きを入れるという作業はあったわけ、ただ、靴本体は違うんです。小豆だって、小豆は収穫して、それはやはりそろえたりとか袋に入れたりしなきゃいけない。だから、一部真実なんですよ。しかし、消費者は全部つくっていると思って買うわけです。こういうのって不当表示じゃないんですか。どういう見解ですか。
樋渡政府参考人 おっしゃっていることは理解しているつもりでございますが、この具体的な犯罪の成否は、やはり証拠関係によって認定されるものでございますから、一概に申し上げられないということになると思います。
保坂分科員 そんなこと言ったら、雪印食品の社員とかは怒り出すんじゃないですか。やはり、どんなつらい思いをして会社解散したのかとか、経営陣の対応も悪かったということでしょうよ。そういうことで今立件して公判請求してやっているわけでしょうよ。やはり、どんな場合にもしっかり基準を設けて、法と正義のもとに厳正に対処すると言ったらどうですか。
樋渡政府参考人 おっしゃるとおり、一般論として申し上げれば、検察当局は、刑事事件として取り上げるべきものがあれば、法と正義に基づいて適正に対処するものと承知しております。
保坂分科員 大臣、これは意外と大きな問題のように思います。
 要するに、これは法というものに対する信頼、あるいは消費者が欺かれて、やはりそういうことをすれば事件になって、場合によれば会社がつぶれるんだ、大変厳しい基準を形成しているわけですね、今我が国の社会で。しかし、当の、捕まったところで、中敷き入れなさいと言われて、あれ、刑務所製なのかな、どういうふうに矯正されちゃうんだろう、その人は。もっと今度はうまくやろう、こうなっちゃう。
 こんなことを放置しちゃいけない。まず、この件で処分がないと聞いていますよ、現在。いいんですか、こんなことで。今の小豆の問題と、福井の靴の問題を聞いて、どうですか、大臣の所感は。
森山国務大臣 小豆について申しますと、私の想像では、恐らくよそでつくったものを持ってきて、その選別をしたり袋に入れたりすることをやっていたんだと思いますが、その作業の内容が正確に伝わらない。その作業自体は、もしかしたら、そういう細かいことあるいは単純なことをやるということが矯正活動の一つで、それが非常に有効だという場合の人もあると思いますので、その作業をやめるというよりは、その作業の内容を正確に買ってくださる方に説明した方がよろしいのではないかというふうに思います。
 それで、帯広刑務所製と、もし書いてあるとすれば、それは誤解を招きますので、帯広刑務所の中で選別をしましたということがわかるような表示にしたらいいのではないか。
 福井県の靴についても同様でございまして、これはどういう作業だったかわかりませんが、そのような表示にすれば問題は少なかったのではないかという感じがいたします。
 処分については、これは団体の職員あるいは団体の所管の仕事でございますので、その団体において適宜考えなければならないことでございますが、これだけ大きな問題になっているということを承知した上で、十分検討してやってほしいというふうに思います。
保坂分科員 今法務大臣、また誤解を招くようなことを言ったんですよ。
 というのは、考えてみてくださいよ、オーストラリアから肉が来るわけですよ、そして日本のメーカーが詰めかえるわけです。それで日本製、これが問題になっているんですよ。構造的には同じなんですね、今の小豆の話だって。ですから、基準が幾つもあっちゃいけない。
 一つ矯正局長に聞きますけれども、何でこんなことになっているのかな。四十八品目もチェックしたら、停止しましたね、これ。カタログから削除したんです。簡単なことで、天下りのことを聞きますから、それに答えてください。
 どうも刑務所の幹部刑務官が、退職されるとかなり大勢、矯正協会の職員になりますね。そして、矯正展などのいわゆる事業者やメーカーなどとの間に立って切り盛りするわけでございますね。その方が刑務所の取引先の家具会社社長のマンションに住んでいた。家賃払っていたのかという声があるんですよ、払っていたと本人は言っているようですけれども。そして、さらには、その会社に天下ってしまった、こういうことがあるんですね。
 姫路の少年刑務所長は、取引先の家具会社でアルバイトをして働いた後、また矯正協会の中国地区事業部長になった。何か、行ったり来たり、随分家具業界と親密でございますが。
 そういう癒着体質が、矯正展で売り上げを上げたいし、もっと買ってもらいたいから、足らないからもうちょっと気のきいたものはないのかといって、じゃ、輸入品をちょっと持ってきて刑務所内でちょこっとさわって、ほこりがないか、傷はないか、見ただけで刑務所製になっちゃうわけですから。そういう体質にやはりメスを入れるつもりはありませんか。これはゆゆしきことですよ。
中井政府参考人 姫路少年刑務所ということで特定ですので、その件についてお答えいたします。
 お尋ねの件につきましては、法務大臣から既に御指示をいただいておりまして、公益法人が特定の関連企業に利益誘導するなどの疑惑を持たれかねない、こういうことであるから、何らかの措置をとるべきではないかという御指示を受けているところであります。
 私どもといたしましては、それを矯正協会の事業部に伝えて指導いたしました。その結果、事業部からは、お尋ねの者の辞職も含めて検討中であるという報告を受けております。
保坂分科員 いろいろ問題が多いんですけれども、矯正局長といえば、捜査現場でやはり相当不正やさまざまな社会的な犯罪について正面から取り組んでこられた検事さんですよね。検事だと思います。どうやら矯正局長というのは歴代、総務課長と一緒ですか、検事でないとできないものですかね。中井局長、いかがですか、やってみて。
 私は、組織というものは、地道に努力すればその組織の長になるという展望がつゆ一つない組織というのは、やはり腐ると思っているんですよ。もちろん、優秀な方だからそういう捜査畑から局長になったというのは、一、二だったら説明つくけれども、これは歴代見たらシステム化していますよ、法務省では。法務省改革の一つの論点は、僕はそこにあると思う。
 ですから、御自身が今長をなさっていて、これは、その矯正局のたくさんの職員、地道にやって現場も知ってきた者の中から矯正局長やるということだって可能じゃないですか。どう思われますか。
 まず局長へ聞いて、それから大臣に聞きます。
中井政府参考人 御指摘のような考え方もあろうかと思っております。
 いずれにしても、私本人のことでございますので、なかなか答えにくいものですから、しかるべき方にお答えいただければと思っております。
保坂分科員 では森山法務大臣に、これは本当にまじめな話で、そういう根拠法令とかあるわけじゃないでしょうけれども、実際上やはり矯正局の局長と総務課長は検事なんですね。それ以外の方は当たらない。ここはやはり風穴をあけないといけないと思いますね。検事がだめだと言っているんじゃないんですよ。そうじゃなくて、それ以外の方はなれないというのはやはり風通しが悪い。そして、地道に努力をしてきている現場の方が矯正局長になったっていいじゃないですか。そういう改革もぜひやるべきだと思いますが、いかがですか。
森山国務大臣 矯正局の仕事の中には、非常に、犯罪人に対する刑とか拘留の執行その他、検事の仕事に縁の深いものが多いものですから、検事が専門的な法律知識と経験によってこれを行うのが適当であろうというので、従来そういう方が続いてきたというふうに私も聞いておりますが、御指摘のように、部内の中でも優秀な人にはそういうチャンスがあるということはもっと必要なことであると思いますし、現に、大分前の話ですが、昭和二十七年から三十年までは事務官が就任したという経過があるそうでございます。
 今後は、検事であるとかないとかそういうことと関係なく、有為な人材を登用していきたいというふうに思っております。
保坂分科員 私がちょうど昭和三十年生まれで四十七歳ですから、半世紀その人事がなかったということになります。
 ぜひ、トップは検事から来てやがてかわっていくという組織ではなくて、国会答弁で、きっちり組織を代表して何かがあったら答弁するという組織に矯正局をつくりかえる、そういう改革が必要だと思います。
 終わります。どうもありがとうございました。
杉浦主査 これにて保坂展人君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして法務省所管についての質疑は終了いたしました。
 午後一時に本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時二十四分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時開議
杉浦主査 休憩前に引き続き会議を開きます。
 外務省所管について政府から説明を聴取いたします。川口外務大臣。
川口国務大臣 平成十五年度外務省所管一般会計予算の概要について御説明申し上げます。
 外務省予算の総額は七千三百五十八億四千八百万円であり、これを平成十四年度予算と比較いたしますと百七億円の減額であり、一・四%の減になっております。
 我が国の財政状況は引き続き極めて厳しいものがありますが、流動化する国際情勢の中、山積する外交課題に有効に対処していく必要があります。
 このような観点から、平成十五年度予算においては、重点外交課題の推進及び外務省改革の二点を最重要事項として、予算の効率的配分を図っております。
 まず、重点外交課題の推進に関する予算について申し上げます。
 重点外交課題の推進の三つの柱は、安定した我が国周辺環境の構築、国際社会全体の平和と繁栄の実現、及び日米関係を初めとする二国間、さらに国連等のマルチの外交的枠組みの強化であります。
 安定した我が国周辺環境の構築につきましては、韓国、中国、ロシアとの関係強化、促進のための経費、朝鮮半島情勢への対応のための経費、アジア太平洋地域におけるコミュニティー形成のための経費等に総額百億円を計上いたしております。
 次に、国際社会全体の平和と繁栄の実現でありますが、グローバルな安全保障問題への対処のための経費、地域紛争への対処のための経費、第三回東京アフリカ開発会議(TICAD3)等人間の安全保障への取り組みのための経費等、総額七百三十五億円を計上しております。
 また、外交的枠組みの強化でありますが、日米関係、日欧関係の維持強化のための経費、国連等マルチの枠組みの強化のための経費、多角的自由貿易体制の維持強化のための経費、自由貿易協定、経済連携の推進のための経費等に総額四十五億円を計上しております。
 次に、外務省改革に関する予算について申し上げます。
 まず、外交実施体制の強化につきましては、危機管理体制、在外公館警備、情報収集能力の強化のための経費、IT化の推進のための経費等として二百十一億円を計上しております。
 次に、国民のニーズに沿った外交実施体制ですが、広報・広聴体制の再構築のための経費、領事サービスの改善、拡充のための経費等、四十一億円を計上しております。
 ODAについては、我が国の外交政策遂行の最も重要な手段であり、アジアの安定と成長、紛争予防や平和構築のための活用など、国益上重要な地域、分野への重点的実施、環境を初めとする人間の安全保障、国民参加のODA実施、ODA改革の推進を重点としております。
 その上で、一般会計予算において、政府全体でのODA予算が対前年度比五・八%減となる中で、外務省のODA予算は、対前年度比四・二%減の五千百六十五億円となっております。このうち無償資金協力予算は、対前年度比一八・四%減の千八百九十五億円を計上しております。また、我が国技術協力の中核たる国際協力事業団につきましては、対前年度比三・六%減の千六百四十億円を計上しております。
 このようなODA予算のもとに、ODAの戦略性、透明性、効率性の向上、国民参加のODA実施に努めてまいる所存であります。
 最後に、機構・定員の整備でございますが、まず機構面では、在東ティモール大使館及び在チェンマイ総領事館の新設等を予定しております。また、定員につきましては、本省及び在外公館合計で六十八名の増員を図り、平成十五年度末の外務省予算定員を合計五千三百九十名といたしております。
 以上が、外務省所管一般会計予算の概要であります。よろしく御審議のほどお願い申し上げます。
 なお、時間の関係もございますので、詳細につきましてはお手元に「国会に対する予算説明」を配付させていただきましたので、主査におかれまして、これが会議録に掲載されますようお取り計らいをお願い申し上げます。
 以上です。ありがとうございました。
杉浦主査 この際、お諮りいたします。
 ただいま川口外務大臣から申し出がありましたとおり、外務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
杉浦主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
杉浦主査 以上をもちまして外務省所管についての説明は終わりました。
    ―――――――――――――
杉浦主査 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。森岡正宏君。
森岡分科員 私は、自由民主党の森岡正宏でございます。
 きょうは、難民とかいわゆる北朝鮮からの脱北者、そんなことについて御質問をしたいわけでございますが、まずその前に、私は川口外務大臣に、憲法観、日本国憲法につきましてどう考えておられるのかお聞きしたいと思うわけでございます。
 なぜ私、そんなことを聞くかと申し上げますと、最近川口大臣に対して、政治家でないからだめだとか、大変失礼なことを言う政治家がいらっしゃる。政治家の中にもいい人もおれば悪い人もいる、私はそういうふうに思うわけでございまして、やはりああ、人だと思うわけでございまして、川口大臣は政治家ではなくても大変立派に外務大臣をお務めいただいているということを前提に私は大臣に御質問したいわけでございます。
 政治家じゃないからということをおっしゃるわけでございますが、私たち政治家は、選挙に出るときに、選挙公約をしたり、またいろいろな政策を打ち上げたり、自分の思想信条、それを有権者に訴えて出てくるわけでございます。政治家じゃないからだめだとおっしゃる人の中には、川口大臣というのはどういう人なのかわからない、そんな気持ちを込めて言っておられる人もいるかもしれない。
 そんなことから、私は、特に日本国憲法にかかわる問題、今国際情勢が大変緊迫している、そんな中で日本の外交、防衛ということは非常に大事な問題だと思うわけでございまして、その先頭に立ってお働きをいただいているわけでございます。そんな意味で、日本国憲法、特に前文に「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」こんなことが書かれている。そして、憲法第九条がある。そういう憲法を持ちながら、今、日本の外交とか安全保障について大変御苦心をいただいているわけでございます。そんなことで、今の憲法についての御感想を率直にお話しをいただければありがたいと思います。
川口国務大臣 全く個人の意見ということで申し上げさせていただきたいと思います。
 私の世代というのは、戦後、小学校に行って、平和憲法とともに育ってきた世代でございます。この憲法の前文で平和主義をうたい、そして国際協調主義をうたっているということで、それとの関係でもございますけれども、九条というのがあって、戦争放棄をするという形になっているわけでして、我が国が戦後六十年間近くこの憲法を持ってきたということのその意味、これが我が国の社会に与えた影響は大きいと思います。この憲法について、これは平和主義、国際協調主義という考え方は私は貴重なものであると思っています。
 それで、九条について。九条、これは政府の解釈は、もちろん我が国として自衛権を持っているけれども必要最小限度であって、集団的な自衛権については、これは解釈がございまして、政府としてはこれについては行使をしないということで考えているわけですけれども。私は、一国が国として国際社会で責任を果たしていくということの意味、これは何かということをきちんと国として考える必要があると思っています。その観点で、集団的な自衛権、これについてもどんどん議論をしていったらいいというふうに考えております。
 いろいろ国民の中には意見がありましょうから、それを議論していって、そして、どういうふうに国全体として考えていくかということを、ある程度時間がかかるというふうに思いますけれども、議論をしていくことは大事だと私は思います。ということが、私が基本的に日本国の憲法について考えているところでございます。
森岡分科員 重ねて申し上げるわけでございますが、今外務大臣をお務めいただいておって、今の憲法では困ったなと思うようなところはございませんでしょうか。私は、今日本は戦後五十八年目を迎えておりますけれども、アメリカから与えられた憲法、そしてそれに基づいたいろいろな法律、憲法を含めて、やはり見直すべき時期に来ているなということをつくづく感じるわけでございます。
 そしてまた、今日まで、戦後五十七年間、平和でやってこれた、これはこの平和憲法があるからだというようなことをおっしゃる方がいらっしゃいますけれども、私は、この憲法だけじゃない、むしろアメリカと同盟条約を結んでいる、そして自衛隊の存在がある、こういうものが非常に大きな役割を果たしてきたというふうに思うわけでございまして、この辺について、もう一度御答弁をお願いしたいと思います。
川口国務大臣 この辺の御質問になってきますと、個人としての考えを聞いていただいているのか、外務大臣としての発想で言っているのかということがちょっとあいまいになってきてお答えしにくいんですけれども、あくまで個人ということで申し上げさせていただきます、閣内不一致と言われてはいけませんので。個人ということですけれども。
 私は平和憲法は評価をしますけれども、同時に、我が国が国際社会で責任のある一国として国際問題を考え、それに、やるべきことをやっていくということを考える上で、ある種の影響を今まで与えてきていたと思います。これがこのままであっていいかどうかということは、先ほど少しやわらかく申し上げましたけれども、私としては、個人的には疑問を持っています。
 したがいまして、これをきちんと議論する必要があるだろうということを申し上げているわけでして、多分、速いスピードでそれができるかどうか、これはよくわからないところがあると思います。大いにその議論がなされるべきでありますし、今度、三月一日にタウンミーティングが安全保障問題に関連してありますけれども、聞きましたら、非常に参加希望者が多くて、定員の二倍以上だったということを聞きまして、これは、日本国民の方がそういうことにも関心を非常に持ってきていただいているということで、私としては非常に結構なことだと思っています。
 もっともっとこの分野での議論が広く行われてということになると、もう少し日本として国際問題について違う対応をすることが当たり前になっていくんではないかと考えます。個人の意見ということを改めて申し上げます。
森岡分科員 どうもありがとうございました。私、意地悪な質問をしておるわけじゃございませんで、まじめな議論でございますので、お許しをいただきたいと思います。
 さて、難民の受け入れ政策について伺いたいと思います、余り時間もないものですから。
 かつて我が国は、昭和五十年代だったと思うんですけれども、インドシナ三国、ベトナム、ラオス、カンボジア、ここの政治体制が崩れてきたことに伴いましてボートピープルが助けを求めてきた、それなのに日本の政府はそれになかなか対応しなかった。
 そんなことから国際社会の中で批判を浴びて、そして、人道的見地からということで、一万人だったと思うんですが、特別枠を設けて、そしてインドシナ難民を日本に入れ、日本語教育、職業訓練、いろいろなことをやって、そして日本に定住させてきた、そういう実績を持っておるわけでございまして、それはかなり国際社会から評価されたと思います。私はその当時、アジア福祉教育財団という外務省から委託を受けて難民対策をやっておった団体の理事長の秘書をやっておったものですから、当時のことをよく知っているわけでございます。
 そんなことから、私は、ただいま北朝鮮から脱北者がどんどん出てきている、そして日本でいろいろな対応、外務省も御苦労いただいておるわけでございます。しかし、現在、今聞きますと、難民申請のあった者のうち、毎年二十名程度しかいわゆる条約難民、難民条約上の難民を受け入れているにすぎないんだ、二十名程度なんだということを伺っているわけでございますが、難民の資格要件というのを改めて、これは法務省に伺ったらいいんでしょうか、教えていただきたいと思います。
増田政府参考人 我が国は、難民の受け入れにつきまして、国際的な取り決めである難民条約や国内法である出入国管理及び難民認定法等にのっとりまして、個別に審査の上、難民と認定すべき者を適正に認定しているところでございます。
 そこで、お尋ねの入管法に言う難民の意義でございますが、これは、「人種、宗教、国籍」「特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいる者であつて、その国籍国の保護を受けることができないもの又はそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まないもの」をいうと一義的に、明確に定義されております。
 これは、難民条約等第一条に規定されている難民の定義と同一でございまして、我が国における難民であるかどうかの認定は、この定義に該当するかどうかによって判断しているところでございます。
森岡分科員 昨年、瀋陽の事件が起こりまして、にわかに難民問題がクローズアップされてきたように思います。北朝鮮から中国へ逃げて亡命を申し出る人たち、すなわち脱北者、こういう人たちもよく話題に上るわけでございますし、私は、先ほど申し上げましたインドシナ三国に対する特別枠を設けて難民対策、受け入れをやった、こういう実績を考えますと、そしてまた朝鮮半島と日本との関係、いろいろなことを考えますと、果たして今の難民政策、これでいいんだろうかという疑問を持っているわけでございます。
 今のように、いわゆる条約上の難民、これだけを受け入れていて果たして国際的な責任を果たせているんだろうかという思いを強く持っているわけでございまして、今、内閣に難民対策の連絡調整会議というんでしょうか、古川副長官が代表を務めておられるそうでございますが、内閣府でそれの集約をやっておられる、こういうふうに伺っております。
 内閣府の方、そして川口外務大臣に、今の現状、難民受け入れ対策、これでいいんだろうかということについて、それぞれお答えをいただきたいと思います。
佐々木政府参考人 現在、我が国で難民として受け入れておりますのは、インドシナ難民、そして条約難民ということでございますが、以上のような現在受け入れている難民以外に、避難民等、広い意味での難民を受け入れるか否かという問題につきましては、一般論としまして、言語、文化、宗教、習慣等、そういうものが異なる人々とどのようにともに暮らしていくかという我が国社会のあり方にもかかわる問題でございます。政府としては、国民とともに、幅広い観点から検討を重ねてまいりたいと考えております。
 委員御指摘のとおり、昨年八月、広く難民問題に関する諸課題に政府として必要な対応を検討するため、内閣に難民対策連絡調整会議を設置したところでございます。今後何らかの事態が発生いたしまして、政府全体で方針を議論、決定しなければならない場合には、この会議を活用しまして、いかなる事態にも適切に対処してまいりたいと考えております。
川口国務大臣 私も、この問題については委員と問題意識を全く同じに持っております。今、内閣で取りまとめということになっておりますけれども、これを政府を挙げて一生懸命にやらないといけないと思います。
 この脱北者の問題については、御案内のように、それぞれの方々の個人個人の安全を守るという難しい課題が一つ入っておりますので、これをやりながら、要するに、本人がだれかということがわかるということを避けながら議論をしていかなければいけないという非常に難しい問題がありますけれども、日本に来て、ちゃんとその地域の社会に溶け込んでやっていけるかどうか、住宅、保健、その他さまざまな問題があるわけでして、やはり政府としてもう少し力を入れていかなければいけない課題だと考えます。
 それから、立ち上がりましたついでに、人間の安全保障の委員会というのが国連にありまして、緒方さん、それからインド人のセンさんという二人を共同議長にしてやって、報告書が出たばかりですけれども、これの一つに取り上げているのが、移動する人間、この人たちをどうやって国際的に保護をするか、その枠組みをどのようにつくるかという問題があります。これが提言の一つに入っています。
 これは、こういった脱北者のような人、避難民、それから国内での避難民、それからまた移動労働者、いろいろあります。そういった人たちを国際社会としてどうやって保護をしたらいいかという問題意識がありまして、私は、こういった取り組みも、日本の国際秩序をつくる上での一つの貢献ができる点ではないだろうかという問題意識を持っていまして、これについても検討をしてみたいと個人的には考えております。
森岡分科員 私は、もしも、北朝鮮だけではなく、朝鮮半島で大きな異変が起こった、そのときに、いわゆる条約上の難民ではないけれども、日本海沿岸にどっと、日本に庇護を求めて押し寄せてくる、そういう事態が起こらないとは言えない、そんなことを考えておられるのかどうなのか、その辺、お答えをいただきたいと思います。
茂木副大臣 森岡委員は法務大臣の秘書官もお務めになりまして、非常に国家の名誉を大切にする、そういう政治信条のもとで、先ほど御披瀝いただきました憲法に対する考え方、また、在日外国人の問題でも大変関心を持たれて日ごろから活動している、こういうことを承知いたしております。
 朝鮮半島の問題でありますけれども、今の状況で、切迫した状況にはない、ただ、今後、将来のことを考えて、委員御指摘のような状況もいろいろ想定をしておかなければならないかな、こういうふうには考えております。
 ただ、大量の難民等が出たときの政府としての受け入れ体制を今の時点で発表すると、それが場合によっては、今でさえ食糧事情が厳しかったりして非常に脱北が出る中で、かえってそういうのを助長する、そういう懸念もあったりとか、それからまた、それがプライバシーの問題にもかかわってきたり、こういうことで、政府としては、御指摘のように、いろいろな対策を関係省庁間で詰めていかなければなりませんけれども、今の段階で政府として、こうなんです、ここまでやります、こういうことを申し上げるのは適切ではないかなと思っております。
森岡分科員 いや、私も、大幅に、日本はこれだけ受け入れるんですよというようなことを世界に公言いたしますと、大変な人たちが押し寄せてこないとも限らない、慎重にやっていただかなければいけませんけれども、しかし、いつでも対応できるんだという備えだけは持っていただきたいなと思います。
 話題を変えまして、せんだって、日本人の女性で脱北者がいらっしゃって、その方を外務省で保護していただいて、日本へ連れ帰っていただいた。私は、大変結構なことだったなと思っているわけでございますが、そのときに、外務省のお世話で日本に連れて帰った人たちがもう既に数十人いるんだということを聞きました。
 今後もふえることが予想されますし、そして、そのときにどんな手続をして帰ってこられたのか。難民だったのか、難民としての扱いだったのか。日本人は帰国ということでわかるわけでございますけれども、在日朝鮮人の方でありますとか、またそのほかの人たちがいるとしたら、どんな手続、入国の資格というのはどういうことだったのか、これを法務省の方に伺いたいと思います。
増田政府参考人 お尋ねの方々の入国の関係ですが、まず、答えとして、難民として受け入れているものではございません。
 これらの人たちの入国の手続でございますが、入管法所定の手続によって、それらの方々が我が国に到着したとき所持された渡航文書に従いまして上陸の審査を行い、例えば親族訪問等の理由での上陸申請ということであれば、そういった目的などに基づいて審査を行い、上陸を許可しております。
森岡分科員 親族訪問というお話でございましたが、親族がいらっしゃる方はいいけれども、いらっしゃらない方はおられなかったんでしょうか。改めて伺いたいと思います。
増田政府参考人 お尋ねのような人たちの場合についてその全体をお答えするのは、プライバシーの問題とかあるいは本人、関係者の身の安全の問題がかかわりますので、先ほど申し上げた親族訪問というのは、あくまで一つの例として申し上げたものであって、それ以上のお答えは差し控えさせていただきたいと思います。
森岡分科員 今、入管局長がおっしゃったように、やはりそういう人たちの中には、日本で名前さえ名乗れない、北朝鮮に家族を残しているからというような方もいらっしゃるようでございますし、私は、この人たち、もう何十人も帰っておられるということでございますけれども、日本へ帰した、ところが、職業さえつけない、また外に向かって、行政サービスを受けたりいろいろな活動ができない、どんなふうな生活をしておられるんだろうかなと。
 拉致被害者については特別立法措置がとられた。しかし、この人たちは勝手に北朝鮮へ行ったんだから、それは個人の意思で行ったんだから、国家は構う必要はないんだというような思いを持たれる方もいらっしゃるかもしれませんけれども、私は、非常に気の毒だな、だれがこれから面倒を見ていったらいいんだろうかなというようなことを非常に心配しているわけでございまして、外務大臣または茂木副大臣、どちらか、このことについてお答えをいただければありがたいなと思います。
茂木副大臣 確かに、私も正直申し上げて、深刻な問題だと思っております。全体的に、今の日本で暮らしている、この豊かな社会の中で同じレベルかというと、そこまで行っていない方も多いんじゃないかな、こんなふうに思っているところであります。
 それぞれの脱北者及びその家族の生活に対しましては、例えば、日本にいる家族や親族の支援のある方とか、また支援者の方の支援を得て自立をされている方等々、それぞれの状況は違ってまいります。また、我々としても、フォローはしていかなきゃなりませんが、余り家族のプライバシーとか、入り過ぎるところもできないところがありまして、その状況を見詰めさせていただく。そこの中で、また御相談に乗れることについてはできる範囲で乗らさせていただく、こういう形をとっております。
 今後のことにつきましても、これから例えばそういう方がふえてきたときにどうするのか、こういう問題も出てくると思いますので、委員の御指摘も踏まえまして、さらに検討していきたいと思っております。
森岡分科員 時間が参りましたのでこれで終わらせていただきますけれども、難民受け入れ政策の見直し、そして脱北者対策、しっかりやっていただきたいということをお願いして、終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
杉浦主査 これにて森岡正宏君の質疑は終了いたしました。
 次に、齋藤淳君。
齋藤(淳)分科員 民主党の齋藤淳と申します。
 きょうは、日本のODA、特に国際社会で日本が主導的な役割を果たしている感染症対策の問題について、大臣初め外務省の見解をただしたいと思います。
 イラク、北朝鮮関係の対応でお忙しい中でお願いするのは恐縮なんですけれども、国際情勢が短期的に変動する中で、その国際社会の基底にある貧困と健康の問題が看過されてはならない、私はそのように思っております。特に、長期的な紛争の予防ということを考えても、根本的な貧困緩和措置を無視することはできないと思っています。特に、沖縄イニシアチブが二〇〇〇年に打ち出され、始まって、今ちょうど折り返し点にあるかと思います。その意味で外務大臣に伺います。
 まず、平均的には世界各国の貧困指標というのは改善を見せているわけですけれども、まるで降り積もった雪が解けても根雪のままで万年雪のように置き去りにされている、そんな困難な状況になったままの国も世界各国、多数存在します。
 このように平均的には貧困が緩和されていく中で二極化する途上国の状況を踏まえて、日本のODAの役割についてどのような認識を持っておられるか。特に、日本の国内経済状況が厳しい中で、財源も苦しい、グローバル化、マーケット化の中で、あえて政府が二国間で、日本発信型の援助を行う意味について、ビジョンを伺うことができればと思います。
川口国務大臣 非常に基本的な御質問、重要な御質問だと思います。
 我が国のODA、委員がおっしゃっていらっしゃるように、財政状況が非常に厳しい中で、ここ五年ぐらい、ずっと減り続けてきました。それで、十五年度の予算についても減りましたけれども、今まで一割ぐらい減っていたところを、減り幅を半分にとどめることができたというのは、冒頭申し上げたとおりです。
 このODAを使ってどういうことをするかということでございますけれども、我が国のODAというのは、日本が外交的に手段が余りない中で非常に貴重な手段である、ツールであると思います。
 委員がおっしゃった貧困等との関係でいきますと、貧困を減らすというのは、今、ミレニアムゴールの中でも非常に重要なテーマでして、我が国としては、このODAを一生懸命に使ってそれに対応していくということでございます。特に人間の安全保障ということについては、これは我が国がODAをやっていく中の柱の一つとして位置づけています。
 これで、個人個人に着目をした形での貧困の解消、感染症から自由にしていく、環境問題等々、これは柱として一生懸命にこれを、格差がなくなるということが非常に重要でございますので、これをやっているところでございます。
齋藤(淳)分科員 ありがとうございます。基本的な認識は私も共有しているなと思いまして、安心したところです。
 次に、若干、ODAの中でも特に感染症対策に絞って伺いたいと思います。
 一昨年の十月になりますけれども、私が当時留学していたエール大学にクリントン前大統領が講演に来まして、次のようなことを言っていました。
 二〇〇一年の段階で世界じゅうの死因の四分の一は、エイズ、結核、マラリア、下痢に関連する感染症である。三千六百万人がエイズに感染している。五年以内にこの三千六百万人という数字は、恐らく一億人に達するであろう。中略ですけれども、中国は、かつて想定されていた数字の二倍近いエイズの感染者がいることを最近になって認めた。さらに続きますけれども、一億を超すエイズ感染は世界各国の民主主義の基盤を揺るがすかもしれない。
 いろいろな意味で、経済活動にも負の影響を及ぼすかもしれない。長期的にこの地球の未来を考えたときに、感染症をめぐる問題、そして、この問題に我が国がどのように関与していくかということは非常に重要な問題だと思います。
 九四年からのグローバル・イシューズ・イニシアチブの収穫と教訓を生かし、その前提のもとに沖縄感染症イニシアチブが策定され、実行されてきたわけだと思うのですけれども、いま一度、そのイニシアチブの政策目標ないしは原点というものを御確認いただきたいのですけれども、いかがでしょうか。
古田政府参考人 御答弁申し上げます。
 御指摘ございましたように、感染症は、単に途上国の住民の保健上の問題だけにとどまりませんで、今や途上国の経済社会開発全体への大変重要な阻害要因になっているというふうに考えておるわけでございます。このため、感染症対策を思い切って推進することによって、ひいては途上国の貧困削減を推進するという観点から、二〇〇〇年七月の九州・沖縄サミットの際に、沖縄感染症対策イニシアチブを発表させていただいたところでございます。
 このイニシアチブにおきましては、具体的な数値目標的なものといたしましては、二〇〇〇年から五年間で三十億ドルを目途として、HIV、エイズ、結核、マラリア、寄生虫症、ポリオ等の対策について途上国支援を行っていくということにいたしておるわけでございます。
 これにつきましては、これまでの取り組みでは、二〇〇〇年、二〇〇一年度の二年間で約十八億ドルという実績を上げておるところでございます。
 なお、沖縄感染症対策イニシアチブにおきましては、こういう数値目標のほかに、基本理念といたしまして、開発の中心課題として感染症というものがあるんだ、あるいは、地球的規模での連携と、具体的な、地域的な対応が必要であるということ、それから、公衆衛生活動と連携させた日本の経験と役割というものを大事にしていこう、この三つを基本理念として考えております。
 さらに、それにのっとった基本方針として、途上国の主体的な取り組みの強化、人材育成、NGOを初めとします市民社会組織、援助国、国際機関との連携、それから、いわゆる南南協力、研究活動の促進、コミュニティーレベルでの公衆衛生の推進といったようなことについて基本方針を掲げております。
 さらに、HIV、エイズ、結核、マラリア、寄生虫、ポリオと、疾病ごとに具体的にどんな感染症対策をやっていくべきかということが定性的に書かれておるわけでございまして、私どもといたしましては、目下、このイニシアチブの流れに沿って鋭意やっておるところでございます。
齋藤(淳)分科員 ありがとうございます。
 確かに、事前に外務省から入手した資料を見るところ、総額では確かに五年間で三十億ドルというコミットメントは達成しそうな勢いです。問題は中身になるのかな。
 そして、今いろいろ手続的なもの、理念的なものに関しては触れられましたけれども、具体的にどのような形で疾病を予防し減少させていくのか。その効果に照らし合わせて、効果の面での目標に対して適切な政策手段がとられてきたかということが反省材料になるのかなと思います。
 例えば、沖縄イニシアチブに先立ちますGIIに関しまして、これは九四年から実施されていたわけですけれども、これはある意味では適切なタイミングで重要な政策イシューを取り上げられたと評価することもできますけれども、一方で、国際開発センターから出ておりますこのGIIに対する評価を、外務省のODAのインターネットページからもダウンロードできるわけですけれども、ここにはこういったことが書いてあります。
  日本がGII分野に公約の三十億ドル以上の資金を投入したものの、上述のように実際の金額投入は、人口直接分野やエイズ分野よりも人口間接分野に多かった。かつ人口間接分野の複数のサブ分野に分散していた。結果的に個別案件レベルでは成果があがったものの、リプロダクティブ・ヘルス分野やエイズ分野において金額面以外に日本としてまとまった形での成果や効果は見えにくかった。これらの状況は、GIIには戦略性が不足していたために起因すると考えられる。戦略性があれば、上記の点に加えて、援助効率も改善したと考えられる。
とあります。
 こうした予算配分を見る限り、こうした反省が沖縄イニシアチブにどこまで生かされたのかなと若干疑問になる点がございます。
 配付資料の三枚目になるかと思いますけれども、下に、各分野ごとに、無償資金協力、技術協力、有償資金協力、バイラテラルの部分のそれぞれの金額が分野別に総額に対して何%を占めるかという計算をしております。これは平成十三年度の実績ですけれども、エイズが七・四%、結核〇・八%、マラリア一・六%、寄生虫は四捨五入するとゼロ、ポリオで六・九%。確かにこういった直接的な援助よりも、むしろ安全な水ですとか地域保健、基礎教育といった分野が非常に多くなっている。
 確かに、当初の沖縄イニシアチブの構想の段階で、地域保健、公衆衛生と密接な連携をとってきた日本の疾病対策、これを生かす形でということはわかるんですけれども、反面、本来の感染症対策に使われる部分が手薄になっているのではないかなという懸念ですとか心配をこの集計数値から抱くのですけれども、このあたりはいかがなものでしょうか。
古田政府参考人 御答弁申し上げます。
 途上国の感染症問題でございますが、さまざまな原因から来るものであるわけでございまして、貧困でありますとか、ジェンダーの格差でありますとか、教育、あるいは脆弱な保健医療システム、安全な水の供給の欠如、栄養不良といった、さまざまな要因が考えられるわけでございます。
 したがいまして、私どもといたしましては、感染症対策としては、幅広い手だて、例えば保健医療システムの強化でありますとか、安全な水の供給対策でありますとか、基礎教育の充実強化でありますとか、あるいは貧困対策でありますとか、そういったことについて幅広く長期的に取り組んでいくことが必要ではないかというふうに考えておりまして、いわば包括的な援助を実施していくというのが基本ではなかろうかと思っております。
 御指摘の点で、確かにいわゆる間接費の比率が高いという御指摘がございまして、これはGIIに関する評価の後の若干の数字をトレースしてみますと、間接分野については少しは比率は下がってきて、直接分野は上回っておるわけでございますが、しかしそれほど大きな変更はないわけでございまして、この数字についてのいろいろ御意見、御批判はあろうかと思いますが、私どもとしては、そういう幅広い政策をやっていった中での結果としてこういう数字が出ているということでございます。
 ただ、そういう数字そのものを云々というよりは、一つ一つの政策がどういう成果を生んでいるのか、どういう効果があるのかということを謙虚に、特にODAの評価というのもODA改革の重要な一環でございますので、こういう評価の中でいただいた御指摘を謙虚に受けとめながら、改善すべきところは改善していくという中で変わっていくのかなというふうに思っております。
 そういう予算配分、数値目標とは別に、具体的に、特に無償技術協力のウエートが高うございますので、この沖縄対策イニシアチブを踏まえまして、JICAの方で疾患別に指針をつくっておりまして、そこで政策の、あるいは対策の優先度をつけながらやってきておるわけでございますので、こういったことの結果としての数字だということで御理解いただければと思いますが、その一つ一つの結果を見直す中でまた検討していきたいというふうに思っております。
齋藤(淳)分科員 ありがとうございます。
 これは全く老婆心ですけれども、やはり安全な水、地域保健、基礎教育という部分で、どのようなプロジェクトに具体的に支出されているのか。やはり今、経済状況が厳しい折ですから、タックスペイヤーの皆さん、かなり厳しい目をODAに向けております。特に日本のODAは箱物中心なのではないかという、誤解の部分も多少あるかと思うんですけれども、感染症対策までそういった分野に支出されているのではないかという、あらぬ疑惑というものを持っている国民というのは実は非常に多かったりするのですね。できれば、それに対して明確に反論していただけるような御答弁をこれから願えればと思います。
 きょうは個別具体のプロジェクトまで立ち入った議論は差し控えたいと思いますけれども、私どもの方も、例えば安全な水、この中に分類されているプロジェクトがどこまで感染症対策としてそもそも妥当なものか、地域保健の個別の案件もどこまで本当に感染症対策として分類すべきものなのかどうか、このあたりは改めて精査させていただきたいと考えているところであります。
 さて、予算の達成という意味では確かに順調に来ているのではないかなと思いますけれども、繰り返しになりますけれども、援助が実効性を高めて、感染症に感染する人、感染症によって亡くなる人、この人数をやはりどの程度削減できたかという意味で政策目標を達成することが、タックスペイヤーに対するアカウンタビリティー、説明責任を果たすことになるのかなと思います。
 確かに、開発援助というのは、困難な状況の中でいろいろな不確実性に直面しながら行うものですから、失敗することもあるでしょうし、援助の効果が体現されるまではいろいろ時間がかかることもあるかもしれません。現時点で具体的な数字を出すということは難しいとは思いますけれども、これまでの疾病予防に関する実績と今後の見通しについて、何らかの形で御見解を伺うことができればと思います。
 ちなみに、先ほど引用しましたGIIの評価報告書には、このようなことが書いてあります。数値目標に関して、
 GIIには、達成目標金額と実施期間のみが数値的な目標であった。このため、GIIによる投入からもたらされた開発課題の改善について、実施中および終了後に、各側面から数値的に評価することが困難であった。
今まで国際コミットメントというのは金額でなされることが多かったし、確かにいろいろな意味でその方がクリアな議論ができる部分もあるかもしれません。しかし、ODAに対する支出に関して有権者の皆さんに納得してもらうためには、例えば感染症予防のためにこの国でコンドームを幾ら配ることを当面の目標にする、あるいは何万人の小学生にこういった感染症に関する教育を施すですとか、金額以外の具体的な目標を設定し、それをなるべく少ない金額で達成していく、これがやはりこれからのODAの政策として必要になるのではないかなと思いますけれども、いかがでしょうか。
古田政府参考人 御指摘の点、大変貴重な御指摘として承らせていただいております。
 目標というお話がございましたが、確かに感染症対策について、因果関係の問題でありますとか、どういう期間をとるかとか、それから、そもそも予防、看護、治療、サービスといったようなものの不備による部分と、先ほど申し上げましたような貧困とかジェンダーの格差の問題でありますとか、あるいは医療システムの問題でありますとか、安全な水の供給の欠如でありますとか、いろいろな要素が絡み合っておりますものですから、わかりやすい数値目標を出すというのはなかなか難しゅうございまして、その点は先生も御理解いただいておると思うのでございます。
 そういう中で、国際的にも、この分野で議論いたしますときには、国連のミレニアム開発目標でありますとか、WHOでありますとか、あるいはエイズ総会でございますとか、これもやはりプロジェクトごとに一つ一つ短期的にその評価を測定するというよりは、世界全体でいつごろまでに大体どのぐらいのスケールで感染率を下げていこうかとか、そういうような目標を掲げているのが通例でございますし、私どもとしては、そういう議論に参加しながら、そういうものを念頭に置きながら、個々のプロジェクトについて最大限有効にやっていくというアプローチをとっておるわけでございます。
 具体的にプロジェクトを始める前、始めた後に、ある程度、現実問題としてどんな変化があったかということの測定はさせていただいておりますが、御指摘のように、具体的な目標とその成果というような、必ずしもかちっとした形にはなっておらないことは現状でございまして、私どもとしては、このGIIの評価もその一環でございますが、これから引き続き、この分野でのODAプロジェクトの評価を進めていく中で、評価から逆にフィードバックして、どういった目標設定が適当であるか、よく考えてみたいというふうに思っております。
齋藤(淳)分科員 ありがとうございます。
 次に、これは若干政治的な判断になるかと思いますので、大臣もしくは副大臣の答弁を求めたいと思うんですけれども、昨年十二月の段階で、例えばアフリカだけでも二千八百万人がエイズによる死を待つ段階であると言われております。
 確かに、援助は戦略的に日本の短期的な国益に奉仕するために用いるべきもので、アジアを重視すべきだし、経済的なリターンが見込まれるものに使われるべきだというような議論もございます。しかし、事エイズ、HIVないし結核ですとか感染症に関しまして、地域的にはやはり今そのニーズの最も高いアフリカ地域を今後も重要視する必要がございますでしょうし、そして、アフリカに対して感染症対策の援助を行うという場合には、確かに環境整備も重要ですけれども、予防も重要ですけれども、直接的な治療のニーズというのはやはり大変高いものがあると思います。このあたりについて、直接的な治療を日本の今後の方針としてふやしていく用意があるかどうか、見解をただしたいと思います。
古田政府参考人 御答弁申し上げます。
 二点御質問があったかと思いますが、一つはアフリカのエイズ問題に対する我が方の考え方、あり方ということでございます。
 御指摘のように、アフリカの人口は世界の約一割でございますが、エイズ感染者の七割以上ということで、大変深刻であるわけでございます。そういった観点から、私どもとしては、研修等による人材育成でありますとか、NGOとも連携した予防、ケアでありますとか、医療施設整備、研究活動といったようなことを行っておりますが、特にアフリカでは、ケニア、ガーナ、ザンビア、この三カ所を拠点ということで集中的に実施をしまして、それを徐々に周辺地域に支援の輪を拡大していく、こういう手法をとってきておるわけでございます。
 さらに、国際連携という観点から、ナイジェリアに日米で合同調査団を出しますとか、あるいはマラウイにカナダと一緒に日加合同調査団を出しますとかいったようなことで、共同プロジェクトという形でもやらせていただいておるところでございます。
 次に、御指摘のありました直接的な治療のニーズということでございますが、一般的に申し上げますと、感染症対策は、先生御案内のように個々の疾病ごとに当然異なっておるわけでございまして、我が国としては、疾患ごとに、WHO等の国際的な感染症対策の方針にのっとって、各国の状況を見ながら対策を実施しておるということでございます。
 例えば、ポリオなどのようにワクチンで予防可能な感染症につきましては、予防接種プログラムに従って予防を中心とした援助を行うということでございますし、結核対策は、むしろ患者発見と直接監視のもとでの治療に力を入れて、抗結核薬の供与を行うというような対応をしておるわけでございます。また、HIV、エイズ対策につきましては、一定のODA予算の中で最大限の効果を上げるという観点からは、個々の治療よりは、むしろ途上国における予防、人材育成等を重点的にやっておるのが現状でございます。
茂木副大臣 補足をさせていただきますと、委員の方から直接の治療のニーズが高いのではないかなという話でありまして、当然、今後それぞれの当事国からの話も聞いていかなきゃなりません。そしてまた、先ほど古田局長が答弁させていただきましたように、そういう評価の中でいろいろな要因があるわけでありまして、直接治療、こういうものがさらに有効である、こういうことが評価された場合にはそういうことにも力を入れていきたいと思います。
齋藤(淳)分科員 微に入り細に入る答弁、まことにありがとうございます。
 日本の顔の見える援助ということに若干話題を移したいと思うんです。
 医療協力に関しても、特に結核対策を例にとれば、例えばDOTS、ドッツといった治療法があるわけですけれども、これを実際に途上国に出かけて行う人材をやはり国内的にも国際的にも養成していく必要がある。まず、この面では日本は非常に大きな実績があるわけなんです。
 一方で、例えば結核研究所あたりの方にいろいろお話を伺いますと、予算削減で今後この施設が維持していけるのかどうかも危うい状況だというような話を聞いたりもしています。そのうわさがどこまで本当かはわかりませんけれども。
 例えば厚生労働省などとも協議の上、こうした国内的な人材育成、今後とも維持発展させていく可能性というのは、そういった準備は十分おありでしょうか。
古田政府参考人 御答弁申し上げます。
 御指摘ございましたように、我が国の結核分野での国際協力は、技術協力をとりましても、また人材育成の面をとりましても、大変国際的には評価の高いものであるというふうに理解しております。
 今お話のありました、特に結核研究所あるいは結核予防会といった組織には、専門家派遣あるいは人材育成の面で大変大きな貢献をしていただいておるわけでございまして、さらにはWHOや世界各国の結核対策を担う人材も大いに輩出しておるということでございます。
 そういう評価の上に立って、厚生労働省も含めまして関係機関との御協議、御協力ということで、一層充実していきたいというのが基本的な立場でございます。
齋藤(淳)分科員 ありがとうございます。
 さらに、人材育成に関連する問題ですけれども、開発援助に従事する人材の問題を考えた場合に、実は日本では開発援助に関心を持つ若者というのは大変大勢いて、イギリスあたりに留学する大学院生のかなりの人数が開発学を専攻しております。川口外務大臣もかつてそうだったのではないかなと思うんですけれども、アメリカにおいて開発関係、公共政策を勉強している大学院生も含めれば、留学の帰国組なんというのは多数いるわけです。意欲的で能力もある人たちが実はかなり日本の開発のジョブマーケットではあぶれているような現状がある。
 さらに、こういった開発学に関係なく、医療ですとかいろいろエンジニアリングですとか、個別具体的な分野に関しても、専門家を援助の現場に投入しようというときに、待遇ですとか勤務の期間ですとか、いろいろな意味で問題があって、大変なミスマッチ状況にある。これに関して、やはり長期的に何らかの形で是正していく方策をとらなければ、いつまでもやはり日本の援助は顔が見えない、箱物中心だという批判を甘受しなければならないのではないかなと思うんです。
 あともう一つ、文部省で、例えば国立大学で開発関係の大学院というのを多数設置したわけですね。供給と需要の間のミスマッチを長期的にどのように是正していくのか、見解を伺いたいと思います。
古田政府参考人 御答弁申し上げます。
 御指摘のような専門性を持った、専門的知見を持った有為な、若者のみならずシニアの方もそうかと思いますが、そういった人材は我が国としては宝でございまして、この貴重な資産を援助の世界でも、大いに御活躍いただきたいと思っておりますし、それから、この援助の世界はそういう若い方々やシニアの方々に新たな意味での生きがいの場を提供する、そういう分野でもあろうかというふうに思っております。
 そういう観点から、私どもとしては、さまざまな活用策のメニューを用意しつつございまして、必ずしも十分ではないかもしれませんが、例えば、御指摘のありました、大学で開発援助等の研究を行った大学院生に対しまして、JICAでは、年間六十名ということでございますが、JICAで実務を行うインターンシッププログラムというものを現に行っております。それから、そういった専門的な知見を持った方々が個人ベースであれNGOベースであれいろいろと御提案をいただくというような観点から、草の根技術協力事業の仕組みでありますとか、シニア海外ボランティア事業の仕組みでありますとか、そういったさまざまなメニューを用意しております。また、JICA事業の専門家として活動する医師の方々を登録する制度もございます。それからさらには、マッチングの御指摘がございましたが、これを効果的に促進するための仕組みとしてJICAに国際協力人材開発センターというものを設置いたしまして、これを有効に活用していきたいというふうに考えております。
茂木副大臣 私、昨年アフガニスタンに行ってまいりまして、本当に日本の若者、国内でいうと、希望がないとかやる気がないとかいうんですが、JICAであったりNGOであったり、また国連の機関であったり、本当に真剣に仕事をしている、そういう姿を見て感動した覚えを持っております。
 確かに個々のマッチングのプログラムとかそういうことは必要だと思うんですが、同時に、社会全体としてそういう開発関係の仕事に携わる人間を評価しまた受け入れる、こういう社会をつくっていかなくちゃいけないんだと思います。
 例えば、NGOを見たときに、日本ですと、何かこのNGOというのはボランティアなんだ、本当にNGOでお金をもらう、給料をもらう、そういうことがおかしいような雰囲気がまだありまして、なかなかしっかりしたNGOというのはできてこない。日本が国際機関にいろいろなお金を拠出しても、その国際機関から例えばNGOに出る段階になると、日本のNGOがそういった形でしっかりしていないためになかなかそういうお金が有効に活用できない、こういう問題もあります。
 また、日本の企業にしても、海外で援助関係の仕事とかそういうことをしてきた人を積極的に受け入れるとか評価するより、どちらかというとやはり、まあ変わり者と言うと失礼ですけれども、何か海外に二年も三年も、アフリカに行ってきたとか、そういう部分というのはまだ残っていまして、社会の底辺として、開発に関する若者とかそういう人間を受け入れる、そういう意識をつくっていくということが私は同時に重要なんではないかなと思っています。
齋藤(淳)分科員 ありがとうございます。
 日本のNGOは、ODAから事業費を受け取ってもなかなかまだまだ有効にその予算を生かし切れない。どうしてかというと、やはりロジスティックスを担う部分が非常に弱い。事業費は出ても運営費が大変だ、まさにこの不景気の中で予算を獲得するのが大変だというような状況。その中で、ガバメンタルNGOになってはいけませんけれども、やはり、NGOに対する過度の依存にならない支援の枠組みをぜひ外務省としても積極的に御検討をこれからもいただきたいということをお願いして、質問を締めくくらせていただきます。
 どうもありがとうございました。
杉浦主査 これにて齋藤淳君の質疑は終了いたしました。
 次に、大石尚子君。
大石(尚)分科員 川口大臣におかれましては、連日、北朝鮮の問題や、特にイラクの問題で大変お疲れのことと存じます。どうぞお体にはおいといくださいまして、存分に職務を遂行してくださいますようにお願いいたします。
 私、きょう御質問申し上げます中東の和平づくりと申しますか、中東の和平構築のために日本とシリアの国交をどうしていったらいいか、おつき合いをどうしていったらいいかということは、去年の実はこの分科会で質問させていただくつもりでございましたら、諸般の事情でチャンスを失しました。それで、きょう改めて御質問したいと思うのですが、タイムリーというか何というか、決して歓迎すべきタイムリーではないのですけれども、きょう新聞で、副大臣も来月早々にはイラクへ小泉総理大臣の特使としてお出向きになられる、そしてシリアにも、新聞によりますと、中山太郎元外相が特使としてお訪ねになられる、そういう報道がございました。
 私、実は、一九八二年、これは昭和にしますと五十七年でございますか、ちょうどイスラエルがシナイ半島を返還するかどうかというその直前に、イスラエル側からゴラン高原に入っております。そのとき、ゴラン高原の下にちょっと踏切のようなゲートがございまして、そこで管理をしている人に、きょうは中に入れるかどうかと尋ねて、きょうは大丈夫と。それで、バラ線が張りめぐらされていて、地雷が埋まっている道をジープのような車で上がっていったわけでございます。こういう戦争もあるのかと思って、私の戦争のイメージと中東の戦争のイメージというのががらっと変わってしまったんですけれども、そのとき、ゴラン高原に立ちましたときに、確かにシリアの領地でございました。そして、イスラエルの女性の案内してくだすった方が言われるには、そのゴラン高原からずっと斜面を見おろしましたその向こうにイスラエルの国民が住んでいるのでございますね。したがって、ここは、ゴラン高原を私たちが管理していないと安眠できないのだというのが彼女の説明でございました。そのときに、何とかシリアとイスラエルも仲よくなっていただければいいのにと痛切に思ったのが、その一九八二年のことでございます。
 したがって、その後、日本の自衛隊がPKOに参加いたしまして、ゴラン高原に、これはUNDOFに加わって、そして今もう七年になるんでしょうか、ずっと活動を続けている。この自衛隊が行くかどうかというとき、私は、あそこへは行ってほしいと思ったのを思い出すのでございます。
 そうこうしておりますうちに、いろいろと、シリアという国が中東においてアラブ諸国の中でどのような立場にあるのか、大変興味を持ちまして、そして、特に今、バッシャール・アサド大統領は、二〇〇〇年に父君をお亡くしになられて、その後を継がれて二代目の大統領でございましょうか、それで、去年たしか国連の安保理の理事に就任されて、アラブ諸国の中からはたったお一人かと思います。それで、この方は、政治家となられるお立場と思っていらっしゃらなかったらしいのですが、イギリスで歯医者さんをしていらしたとか、それで、お父様を亡くされてから大統領に就任されて、そして、大変自国の改革にも御熱心で、ITに深い関心をお持ちのようで、特に日本のITの発展等には関心も深く、そして、お人柄が大変すぐれたすばらしい方のようでございます。
 私は、外交もやはり根幹というか原点は、人と人でございましょうと思いますので、中東の和平、これはイラクだけではございません、パレスチナの問題がございますゆえに、これからバッシャール大統領が担っていっていただける、いただいてほしい大変重要なお役、バッシャール大統領の行動、動きによってアラブ諸国の動きがかなり影響を受けるのではないか、間違っているかもしれませんが、私はそのように理解いたしております。
 そこでまず、日本とシリアと、今までも深い、こちらからの御援助もあったと存じます、今後ともどのような関係を結び、どのようにおつき合いを進めていこうとしていらっしゃるのか、細かくなくて結構でございますので、方針をお答えいただければと思います。
茂木副大臣 実は、私も昨年の十一月の末から十二月の初めにかけまして、川口大臣の御指示をいただきまして、総理の特使として、当時私がシリア、ヨルダン、トルコと回ってまいりました。
 イラク関係の協議ももちろんでありますが、より長期的な課題であります、先生御指摘の中東和平問題についてもいろいろな議論をしてまいりました。そのときに、バッシャール・アサド大統領とも一時間ほど協議をさせていただきましたし、また、ゴラン高原も、シリア側の方から入りまして、UNDOFの部隊も見てきたといいますか、会ってきたところであります。
 私はこう申し上げたのです。シリアの首都ダマスカスの町には、今の町の下に七つの文明が層になって埋まっている、一方、日本の歴史を見ましても、例えば、奈良、平安であったり室町、多層な文明の中ででき上がっているということで、お互いに、シリアと日本は良好な関係が築けるのであろう。実際に、伝統的に両国間は良好な関係というものがございまして、また、委員御指摘のように、まさにシリアはこの中東和平の当事者として重要な国である、そのように認識をいたしております。
 こういった認識に基づきまして、我が国は、シリアの経済社会状況、これを踏まえながら同国の中東和平プロセスへのより積極的な参画を促し、また現政権、バッシャール政権の改革路線、これを支援するために、基礎生活分野等を中心にODAを実施をしてきているところであります。
 また、文化面におきましても、教育、古文書保存、遺跡修復関連の機材供与など、文化無償協力や国際協力基金を通じたさまざまな日本文化紹介等を実施をしてきているところでございます。
大石(尚)分科員 ありがとうございます。
 バッシャールさんが、実は日本を御訪問になられるという記事が大分前に出ていたのでございます。二〇〇一年の八月七日の朝日新聞によりますと、これはダマスカス発でございますが、「シリア大統領 年内にも訪日」。向こうの外務次官が会見して、日本側からアサド大統領の訪日の招請を受けている、それで、今年十一月から年末ごろの間で検討している、シリア大統領として初の訪日を検討しているという記事なのでございます。日本側からバッシャール・アサドさんの招請をなされたのは、シリアをその当時訪問された杉浦外務副大臣でございました。
杉浦主査 そのとおりでございます。
大石(尚)分科員 それで、バッシャールさんにぜひいらっしゃいよとおっしゃってくだすったのだと思います。バッシャールさんもその気になっておられたようで、それが年内かと思ったら、またちょっとずれまして、これは十一月二十八日の朝日の夕刊によりますと、「来年初頭の三カ月のうちに訪日することになるだろう」と。来年というのは去年なのでございますね。去年の一月から三月ぐらいにいらっしゃると。
 この方は、大統領に就任されて、御自分が暮らしていらした、仕事をしていらしたイギリスとか、あるいは奥様に大変深い御関係のあるフランス、スペイン、そこには公式訪問をなさったようでございますが、その後、大統領に就任して初めての公式訪問が日本になる予定だったらしいのでございますね。それが、三月訪問が実りませんで、日本側からお断りしてしまったと聞きました。それはどういう経緯があったのでございましょうか。
安藤政府参考人 私から、ただいまの御指摘の点につきまして、経緯を簡単に御説明させていただきたいと思います。
 先ほど来お話のございますように、バッシャール大統領は、二〇〇〇年の七月に、故アサド前大統領の逝去後、政権を移譲されて、シリアの中の改革路線を推進するということで、非常に意欲的に国政をとられてきたわけでございます。また、先ほどの御指摘もございましたように、日本にとりまして、シリアは中東において非常に重要な国であるということで、この新しく就任されたバッシャール大統領を日本にぜひ訪日の招待をしたいということで、まさに当時の杉浦副大臣が二〇〇一年の八月にシリアを訪問されました際に、シャラ外務大臣に対して、バッシャール大統領の訪日を招請されたわけでございます。
 その後、シリアにあります我が方の日本大使館から、改めて口上書によりまして、書面によりまして、二〇〇一年度中に招聘を行いたいという意向を伝達いたしました。これに対しまして、同じ年、つまり二〇〇一年の十月に先方の方から大統領発の書簡で、二〇〇一年中の日本訪問は困難であるけれども、明年、つまり二〇〇二年中には喜んで訪日をしたいというお話がありまして、その後、一年の後半に、三月、むしろ後半ということで訪問を考えているというお話がありまして、二〇〇二年に、つまり去年に入りまして、先方から、具体的な話として三月中に訪問をしたいという先方の意向の提示がございましたけれども、その時点で、実は中東情勢がかなり混迷を深めておったということと、当方の、日本側の要人の日程の調整という問題がございまして、この三月というタイミングではしばらく、もう少し先延ばしにしていただきたいということを申し上げたわけでございます。これは決して無期限の延期ということではなくて、外交日程がうまく合わなかったということで先延ばしをさせていただいたということで、その後も、今現在シリア大使におります林大使と先方政府との間で、訪日の可能性についていろいろ話はしておりますので、今後進めていくべき課題だというふうに私どもは認識しております。
大石(尚)分科員 ことしは、シリアと日本と国交樹立五十周年だそうでございますね。そういう意味では実にタイムリーでございますので、ぜひ早い時期に、中東の状況も状況でございますが、大統領にお越しいただいて、記念行事もきっと計画されているのだろうと思います、詳しく伺いたい気持ちもございますが、シリアで何が行われるのか、日本でどのような記念行事があるのか、計画されているかいないかだけ、ちょっとお尋ねしてよろしゅうございますか。
安藤政府参考人 まさにことしは日シリア国交樹立の五十周年に当たるわけでございまして、外務省及び国際交流基金といたしましては、まず第一に、幅広い文化交流事業を実施したいということで、今、来年度の予算でどういうものができるかということを真剣に検討している最中でございまして、具体的には、シリアの国内で、日本の舞踊であるとかあるいはコンサートであるとか、こういうものを実施するとか、あるいはそのほか、日本においてシリア関係の文化事業を実施してはどうかという可能性を探っているところでございます。
 実は、シリアの駐日大使というのがしばらく不在でございまして、もう一年以上不在になっておりまして、今までは臨時代理大使でございました、いろいろな事情がございまして。したがいまして、ちょっとその辺のきちんとした打ち合わせができなかったのですけれども、つい先日、新しく、アッタールさんという方がいらっしゃったときに、ほぼ同時期でございますけれども、ショウフィーという駐日大使が着任してまいりましたので、この駐日大使とも、今後、どういう具体的な行事をしたらいいのかということについてこれから相談をしていこうということを話し合ったところでございますので、今後具体的にこの五十周年の記念事業というのを考えていきたいというふうに思っております。
大石(尚)分科員 今アッタールさんのお話が出ましたけれども、アッタールさんが来日していらっしゃるということを聞きまして、アッタールさんというのは、二十五年にわたって向こうの文化大臣をお務めになられた女性のすばらしい方でございましたが、私もシリアには思い入れがあるものですから、お目にかかれるものならとお願いしたら、ほんの三十分ほどお目にかかることができました。そのときに、びっくりしたのですけれども、アッタールさんの胸に勲一等の勲章がついていたのでございます。それで、後でいろいろ伺いましたところ、日本とシリアの学術並びに文化交流において大変貢献がおありになって、それで、去年でございましたかしら、十四年の春ですからそうでございますね、勲一等瑞宝章を受章していらっしゃる。そういう方が日本とシリアの間においでになるというのも、これもまたチャンスでございます。
 私、本当に残念だったなと思いますのは、バッシャール・アサドさんにとりまして、大統領に就任されて、先ほど申しましたように、いろいろ各国への公式御訪問がまだ軌道に乗らない、そのスタートが日本であったら、これから長年シリアを統治していらっしゃる方だと思いますので、シリアと日本との交流の中で、日本に対する印象というものがバッシャールさんの中にばちっとアルバムができ上がったのではなかろうかと。そういうものの積み重ねで国と国とのおつき合いというのはでき上がっていくのではなかろうかという思いがありました。
 それ以降いろいろなところに行っていらして、何かことしは中国を訪問したついでに日本にも行きたいような記事もどこかで見た覚えがあるんですが、それはちょっと全然比重の違った、レベルの違った話になりますので、ぜひ何らかの形で、今年度、特に国交樹立五十周年の記念を一つの節として、シリアの大統領に日本に来ていただいて、これからのいいおつき合いをできるように。
 そして、これはもしお考えが違っていたら御披露いただきたいのでございますが、日本はアラブ諸国と大変いい関係で今までおつき合いしてきていると思うんです、戦ったこともないし。ところが、今度のイラクの問題で、決してそうだとはおっしゃらないと思いますが、アラブ諸国の国民にとっては日本はやはりアメリカ側の人、アメリカと一緒のグループというふうにアラブの国民は見てしまうのではないか。これは本当に残念なことでございます。
 もちろん、アメリカとの協力、同盟、これは否定するものではございません、大事にしなければいけないという立場に私もございますが、もう一つの日本の顔というものを何らかの形で、シリアとの国交を通じて、おつき合い、交流を通じてアラブの国民の方々に、シリアのアラブ諸国へのいろいろな働きかけを通して、その後ろに日本の顔が見える、何かこういうイメージづくりというものが、この方になら、バッシャールさんにならやっていただけるのではなかろうか。お目にもかかっていない方にそういうことを期待するのは大変当を得ていないかもしれませんけれども、私は、この大統領に大変期待させていただいているのでございます。
 そこで、最後に大臣に、お疲れのところ大変恐縮でございますが、ぜひバッシャール・アサド大統領の来日の実現と、それから今申しました、シリアとともに日本の顔がアラブ諸国の国民に見えるような、その工夫。それからさらに、もう一つ大事なことは、なぜアラブ諸国民に、シリアと一緒の、あるいはアラブの諸国、いろいろな国と一緒の日本の顔を見てほしいかと申しますのは、やはりテロの標的に私ども日本がならないためにも必要なのではないだろうか、そういう思いがございます。
 やはり、アメリカと一緒に日本もやっつけようと、テロというのはいつどこからどう攻めてくるかわからない、攻撃してくるかわからないので、そこいら辺の思いもございますので、一連のこの質疑をお聞きくださいまして、川口大臣のお気持ちを最後にお尋ねいたしたいと思います。
杉浦主査 主査としてはいささか不規則発言ではございますが、アサド大統領初めシリアへの思いについては大変共感をいたしております。
 御答弁を川口外務大臣お願いいたします。
川口国務大臣 大石委員や、そして今の杉浦主査のシリアに対する温かい気持ち、これはお話を伺いながらひしひしと感じました。
 私も、シリアは中東の中にあって非常に重要な役割を果たしている国だと考えています。大統領の訪日につきましては、先ほど安藤局長からお答えをいたしましたように、これは私たちの課題として対応させていただきたいと思っています。
 それから、中東の国民の方々に日本のことを知ってもらう、これはとても大事だと思います。日本は、イギリスやアメリカと違いまして、この地域では非常に中立的な関係を今まで持ってきていますし、また日本にとっても、この国は、この地域は、シリア自体ということではありませんが、中東地域全体として、日本の石油の八八%が中東から来ているわけですから、この地域が平和で安定しているということは大変に重要でございます。これらの地域と、国々と、もちろんシリアも含め、今後とも引き続き、いい関係を保っていきたいと思っています。
 そういう意味で、今度のイラクの問題に当たりましても、一度ミッションを特使という形で出しましたし、また今回、先ほど茂木副大臣が言いましたように、それから委員もおっしゃいましたように、シリアには中山元外務大臣に行っていただくということでございます。日本の国民がこの地域に関して感じている温かい気持ちをぜひ理解してもらいたいと思いますし、そういう意味では、日本はイラクの国民ともずっと歴史的にいい関係を持ってきているわけでございまして、引き続きさまざまな形で交友関係は持ち続けていきたいと思っています。
 テロということは、これは忌むべきことでして、日本は、イスラエルについてもパレスチナについても、テロをやめるようにということは両方に同等に働きかけているわけです。中東和平がこの地域で、こういった今ある緊張事態と独立した形で中東和平というのは引き続き追求されなければいけないと思っていまして、その意味で、もうお一方、有馬特使にも、中東和平を進めるという観点で、この方はもう何回行っていただいているか、ちょっと数え切れないぐらいなんですけれども、来週また行っていただこうと思っています。
 この地域の国民の方々と日本の国民とが強く結びついているというのは大事なことだと考えています。その中で、大石委員にも、今後引き続き、よろしくお願いを申し上げたいと思います。
大石(尚)分科員 ただいまは杉浦座長さん、何とお呼びしたらよろしいのでございましょうか……
杉浦主査 主査でございます。
大石(尚)分科員 杉浦主査から大変ありがたい異例のお言葉をいただきまして、ありがとうございました。
 また、川口大臣も、こういうことを申し上げてはいけないのかもしれませんが、女性でおいでになります。それで、アッタールさんとお話ししているときに、中東の和平を含む世界の和平づくりには女性同士が手を組んだ方が早道かもしれませんねなんていうようなお話をしたのでございます、今そういうのははやりませんけれども。ぜひシリアとのおつき合いを通じて、そしてアラブ諸国と、特にシリアはイラクともいい関係というか、関係が持てる国でございましょうから、中東の和平づくりに大臣もこれからぜひ頑張っていただきたい。私どもも、立場は違いますけれども、別なそれぞれの立場で努力していきたいと思っております。
 きょうは本当にありがとうございました。
杉浦主査 これにて大石尚子君の質疑は終了いたしました。
 次に、塩川鉄也君。
塩川(鉄)分科員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは米軍基地の問題について質問をさせていただきます。
 私、埼玉の所沢市に住まいがありまして、所沢市には米軍の所沢通信施設というものが置かれております。私の自宅からも至近距離で、私の子供が通っています保育園の目と鼻の先で、そういう点では、この間、返還がされる中で、公園ですとか公共施設も多数あり、その返還された地区においては、地域の住民の皆さんがいろいろ利便性を持って利用される、そういう地域となっているわけです。
 同時に、基地そのものはまだ九十七ヘクタールと残っておりまして、ちょうど所沢市の真ん真ん中にあるものですから、そういう点でも、この東西をつなぐような場所に南北に長い基地として残っているという点では、町づくりにとっても大きな障害となってきたところであります。
 所沢市では、市を挙げてこの所沢通信基地の全面返還を求めると同時に、一部返還として東西を結ぶ連絡道路をつくってもらいたい、あるいは、西側を走ります文教通り線の拡幅、こういった要望というのが一貫してなされてきているところであります。そういう点でも、全面返還とともに、町づくりにとっての改善を図る部分返還というのが市民共通の願いとなっております。
 今回、来年度の予算案に、米軍所沢通信施設内連絡道路計画に係る調査費五百万円が計上されることになりました。部分返還の実現の一歩として、このことをうれしく思っておるところです。この調査費を計上した理由と調査内容をぜひ明らかにしていただきたいと思います。
枡田政府参考人 お答え申し上げます。
 所沢通信施設が所沢市街を東西に二分しております。そういった状況にありまして市民生活に影響を与えているということで、累次の機会にわたりまして、埼玉県、所沢市から、東西連絡道路の整備のための一部用地の返還要請がございます。そういったことを踏まえまして、今後、本事案につきまして地元の所沢市等と調整するに当たりまして、まずその現有建物等の現況、あとその配置状況等を把握しておく必要がございますので、そのための調査経費といたしまして、平成十五年度予算案に約五百万円を計上したところでございます。
塩川(鉄)分科員 実際の現場で作業を進めていらっしゃる所沢市と埼玉県とそれから東京防衛施設局、この三者がこの間勉強会を重ねてこられまして、そういう中でこういった調査経費の計上につながっているんだと思うんですけれども、その際、昨年中に東京防衛施設局から地元の所沢市などに出されました予算措置に係る資料がございまして、そこでは調査項目として、東西連絡道路予定地の幅二百メートル区間の現況平面図の作成、それから建物・構造物調査、それに、自動車から発生する電磁波等のノイズ調査(文献等調査)ということであります。
 その中身についてもう少しお聞きしたいんですけれども、例えば東西連絡道路予定地の幅二百メートル区間の平面図を作成するということだと、予定の路線があってその両側百メートルずつの幅二百メートルの調査ということを想定されておられるのかが一点と、あと、先ほどのお話でも現有建物とあるわけですけれども、どういう建物があるというふうにまず承知されておられるのか、その点をお聞きします。
枡田政府参考人 まず、来年度政府予算案に計上しております五百万円の調査費の内容でございます。
 当方としましては、この調査費でもちまして、所沢通信施設内の現況平面図を作成したり、現在ある建物等の現況調査ということで平面図の作成だとか、あと、通信施設でございますので、自動車から発生する電磁波等のノイズ調査、こういったものを調査する予定にしておりますが、平成十五年度予算が成立した後、具体的にその調査内容については検討してまいりたい、このように考えておるところであります。
 なお、現在、所沢通信施設でございますが、御案内のとおり、この施設は米空軍が管理している通信施設でございます。基地内の主要な施設といたしましては、通信局舎だとか、あと通信アンテナ、これは二十数塔ございます、そういったものが所在をしておるところでございます。
塩川(鉄)分科員 通信局舎がちょうど真ん中にありまして、その近くを道路が抜けるようになるのかなと地元の方は想定しているわけですけれども、この局舎も含めて、同時に通信アンテナが二十数塔あります。
 所沢通信施設というのは送信施設であるわけで、このノイズ調査というのは不思議でならないんです。受信の施設であれば、当然のことながらノイズの影響というのは配慮しなければならないんですけれども、送信施設ということになると通る自動車の影響の方が逆に心配になるわけで、これが何で調査項目に入っているのか、そこの点、不思議でならないんですけれども。
    〔主査退席、石川主査代理着席〕
枡田政府参考人 御指摘のとおり、現在この施設は通信施設、送信用の施設ということで使われていると承知しておりますが、このノイズ調査につきましては、米側としましても、そういった電磁波が与える影響について調査する必要があるというようなことでございますので、私どもとしては調査いたしたいと考えているところであります。
塩川(鉄)分科員 ノイズ調査ということで、米側が調査する必要があるという要望があって項目に入っているということですけれども、この間、米軍側との調整というのはどの程度進んでいるものなんでしょうか。
枡田政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、現在、地元の方から累次の機会にわたりまして御要請があることから、事務的に米側に対しまして地元からの返還要請を伝えるとともに、所沢市が作成をいたしました東西連絡道路の計画の構想のようなものでございますが、そういったものにつきまして米側に対して説明しているところでございます。
 ただ、米側の方からは、この東西連絡道路整備のための一部用地の返還要請につきましては、通信施設の運用に支障を来すおそれがあるとの懸念が示されておりまして、困難な問題があると考えておりますが、何か工夫をすることはできないか、県、市と調整を行ってまいりたいと考えているところでございます。
塩川(鉄)分科員 今の御説明の中に、所沢市の計画構想を説明しているということでお話がありましたけれども、これは、所沢市と県と東京防衛施設局の三者の方で議論した上でまとめられた「東西連絡道路及び文教通り線の整備等について」という、二つの案を示しているその構想ということでよろしいんでしょうか。
枡田政府参考人 そのとおりでございます。
塩川(鉄)分科員 それで、今現場に行きますと、こちらの道路の計画があるという頭で見ているわけですが、そうしましたら、基地内に今、何か建物をつくっているんですね、軽量鉄骨が立ち上がりまして。道路計画にかかわるものなのかなどうなのかなというのは不明でして、所沢市の方からも、市長名で二月七日に、所沢通信施設内に建設中の施設についての照会というのが東京防衛施設局の方に出されていると思うんです。
 基地内に建設中の建物の使用目的、工事期間、いつまで使用する予定か、こういった問い合わせについて、確認されましたでしょうか。
枡田政府参考人 その点につきましては、東京防衛施設局に確認したところ、米側の回答として、米側の負担により実施されている工事でございます。そして、本施設は電気機器等を保管する倉庫を建設しているという回答がございました。(塩川(鉄)分科員「電気機器等」と呼ぶ)電気機器等を保管する倉庫でございます。
 本件工事は、そういったことでございますので、当方が来年度予算案に計上しております調査費との関連はございません。
塩川(鉄)分科員 あそこの基地には、通信局舎の隣に大きい倉庫があるんですよね。あの倉庫がありながら何かまた小さい倉庫をつくるという理屈がわからないんですけれども、その点の説明とかというのはないんでしょうか。
枡田政府参考人 その点につきましては伺っておりません。
塩川(鉄)分科員 東西連絡道路に係る調査費についてなんですけれども、これは、地元の方では全面返還の要望を持ちながらも一部返還ということで承知しているんですが、実際には一部返還なのか共同使用なのか、そういう点での議論というのは、今どうなんでしょうか。
枡田政府参考人 現在、そういった具体的なものにつきまして米側と協議をしているといった段階にはございません。
塩川(鉄)分科員 私は、東西連絡道路の建設にかかわって、基地内施設の移転新築の可能性があるんじゃないかと思うんですけれども、そういいますのも、先ほども紹介しました、東京防衛施設局が地元に示した資料で、先ほどの調査項目を示していった資料ですけれども、その文書のタイトルそのものが、「所沢通信施設の一部移設に係る調査費について」なんですね。つまり、東西連絡道路の建設に係る調査費ではなくて、現場の東京防衛施設局の方では「一部移設に係る調査費」となっているんです。
 この「一部移設」というのは何なんでしょうか。
枡田政府参考人 今御指摘の資料につきましては、昨年、東京防衛施設局が地元の関係自治体に調査費の要求概要を説明する際に使用されたものでございます。その表題が「所沢通信施設の一部移設に係る調査」となっておるわけでございますが、本件につきましては、正確性を欠いた記述があるということから、今後の対応には十分注意してまいりたいと考えておるところでございます。
塩川(鉄)分科員 正確性を欠いた記述というのは、そもそも誤りなのか、別な意図があるのか、そういう点はいかがですか。
枡田政府参考人 それにつきましては、あくまで本件につきましては、具体的に米側と正規な協議をしているというわけでもございません。先ほど本件調査費の内容について御説明したとおり、本件については、防衛施設庁としましては、いろいろな困難な問題があるということを十分認識しておりますので、本事案について地元所沢市等と調整するためにそういった現況を把握する必要があるということで調査しておりますもので、必ずしもこれは正確な表現でないということでございます。
    〔石川主査代理退席、主査着席〕
塩川(鉄)分科員 中心部にある通信局舎などは、県の担当者の方に伺いますと、防衛施設局の方からコンピューターもある通信施設、重要な施設だというふうに伺っている、そういう説明だったんですね。もし移転新築ということでこういった局舎が対象になっているということは、いわば最新鋭の施設に建てかえるわけですから、所沢市が切望しています全面返還という立場で考えますと、これはずっと遠くに行くような、そういう話にとれる大問題であるわけですね。その点で、県や所沢市の担当者も、東京防衛施設局から施設の移転もあるかもしれないという話を受けているんですよ。
 先ほども紹介しました所沢市の計画構想、これに連絡道路について二つの案が掲載されています。これは、直線で結ぶということになりますと、ちょうど局舎と倉庫の間を抜けるというルートなんですね。それが第一案で、もう一つが、これをそもそも二つとも迂回をするルート。この二案を出しているわけなんです。
 ですから、そういう点では、こういった施設に配慮した迂回のバイパスでもいいという案として提案をしているんですけれども、冒頭お聞きしました防衛施設庁の方での調査費で想定しています現況平面図の作成のエリア、これはちょうど真ん中を抜けるという道路を想定した調査エリアになっているわけです。つまり、迂回路を想定した調査エリアになっていないんですよ。そういう点でも、私、何か移転新築というのが頭にあってこういった調査エリアに設定しているんじゃないか、そういう懸念を覚えるんですけれども、その点、いかがでしょうか。
枡田政府参考人 今御説明ございましたけれども、調査内容として、施設・区域内の現況の把握ということで二百メートルの幅というものを一案として示してございますが、これはあくまで一案でございまして、今後、地元とのいろいろな御相談だとか米側とのいろいろな話し合いというものも考えますと、私どもとしては、この十五年度の調査費につきましては、その細部内容については、予算成立後、改めて精査して検討してまいりたい。二百メートルの区域に限るといったことを現時点で決定しているわけではございません。
塩川(鉄)分科員 ぜひとも、全面返還というのが悲願でありますので、そういう立場からも、基地の固定化につながるような局舎等重要施設の移転新築を伴わない道路計画というのを進めてもらいたいと思うんですけれども、その点、お約束いただけるでしょうか。
枡田政府参考人 現時点におきましては、そういった細部のものにつきまして、この場で確たることをお話しすることができないことを御理解いただきたいと思います。
塩川(鉄)分科員 それでは困るので、所沢の斎藤市長さんとお話ししたときにも、わざわざ迂回のルートも提案しているんだから、わざわざ施設の移転新築なんか行わなくても済むんだよなということまでおっしゃっているわけですね。そういう点でも、私、ぜひとも道路をつくる際に移転新築を行わないという立場で進めてもらいたいと思いますし、そもそも施設の移転新築が道路をつくる際の絶対条件ではないと思うんですけれども、その点はそれでよろしいですよね。
枡田政府参考人 いずれにしましても、現在具体的に防衛施設庁として道路計画を持っているわけでございませんので、今の段階で具体的に移設云々ということまで考えているわけでございませんので、その点について今の段階でお答えはなかなか難しいということで御理解いただきたいと思います。
塩川(鉄)分科員 それでは困るわけで、建物の移転新築を行わない道路建設というのも当然のことながら選択肢として排除されていないと思うんですけれども、その点はよろしいですよね。施設を移転新築しなくても道路をつくるという選択肢もあると思うんですけれども、その点はよろしいですよね。
枡田政府参考人 一般論としてはいろいろな道路整備の形態があろうかとは思いますが、今の段階では具体的にどうだということは申し上げられませんけれども、一般論としては、いろいろな道路整備の形態があろうかとは、それは思っております。
塩川(鉄)分科員 この点では、所沢通信施設は横田基地の送信機能を持っている基地ですけれども、対になっています受信施設の大和田の通信所が、この間、九八年度から五年間をかけて思いやり予算で管理棟の全面改修が行われているわけですね。ですから、一方の受信施設の大和田の通信所が思いやり予算で全面改修されているものですから、そういう意味では、その対となっている送信施設の所沢の通信施設についても何らか新築、建てかえの話が出てきているんじゃないかと。
 そういう声というのは、やはり埼玉などにいますと改めて感じるものですから、そういう意味でも、全面返還の立場で、基地の固定化になるような新設の建物を行わない道路計画づくりというのをぜひとも進めていただきたいと思っています。
 それを踏まえて、埼玉には、この所沢通信施設を初めとして、今お話ししました大和田の通信所、それからキャンプ朝霞の三カ所の米軍の施設があります。毎年、埼玉県基地対策協議会から、このような基地対策に関する要望書を提出されておりますけれども、ここでも、今述べた三つの米軍基地の返還を求めているわけです。ぜひとも、こういった地元の要望にこたえて、米軍所沢通信施設、大和田通信所、キャンプ朝霞の早期全面返還へ向けてアメリカ側に働きかけをお願いしたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
茂木副大臣 今委員の方から御指摘いただきました埼玉県所在の三つの在日米軍の施設・区域につきましては、埼玉県の方より確かに要望事項を承っております。「米軍基地について」「米軍基地の縮小・返還又は共同使用の促進を図られたい。」「特に所沢通信施設の全面又は一部返還若しくは一部共同使用の促進を図られたい。」こういう御要請はいただいております。
 一般に、施設・区域のあり方につきましては、日米合同委員会等の枠組みを通じまして、随時さまざまなレベルにおきまして日米間で協議を行っております。ただ、この埼玉県内の施設・区域につきましては、日米安全保障条約の目的達成のために必要な施設である、このように認識をいたしておりまして、現時点で返還を求めることは考えておりませんが、今後とも、政府としては、個々の米軍の施設・区域について関係省庁とも協力しつつ、日米安全保障条約の目的を達成するとの前提の中で、地方公共団体の御要望も可能な限り満たすべく適切に対処してまいりたいと考えております。
塩川(鉄)分科員 安保条約のもとで必要な施設というお話ですけれども、なぜ必要なのかという説明が地元の皆さんには見えてこないんですよね。そういう点でも、この米軍の所沢、大和田基地の機能、役割は何なのかということについて、きちんと地元に説明する責務があると思うんですけれども、この機能、役割というのはどういうものなんでしょうか。
茂木副大臣 本来、私がお答えする質問ではないのかもしれないんですが、まずキャンプ朝霞でありますけれども、これは放送施設としての機能を果たしている、こういうことであります。それから所沢の施設でありますが、これは通信施設、特に送信を行っている施設であります。ここには、米軍の第五空軍、そして第三七四空輸航空団、そして第三七四支援群、第三七四通信中隊、これがおります。そして大和田の通信所でありますが、これも通信施設、こちらは受信の方であります。
 そういったそれぞれの施設ごとに、通信関係の受送信の話であったりとか放送施設、これは米軍が日本の中におけるオペレーション体制を展開していく上で、コミュニケーションの一つの大きな手段として活用されている、このように認識をいたしております。
塩川(鉄)分科員 受信施設、送信施設という一言の御説明というのは、ワンフレーズポリティックスへの批判も多いところですから、きちんとした説明責任を果たすという点で、もっと地元の方に、必要だというのであれば、そういう立場での説明をいただきたいと思うんです。
 例えば、この所沢の通信施設については、かつて、私どもの不破当時委員長が、ジャイアント・トーク・ステーションということで、核攻撃指令の基地、こういう機能を持つ通信施設だということを国会においても追及をした経緯があります。
 最近では、米軍の横田基地の機関紙の「フジ・フライヤー」、こちらの方で、所沢及び大和田の通信基地に関する記事を載せています。二〇〇〇年の十一月三日付の記事でしたけれども、そこでは、横田、所沢、大和田を結ぶ通信システムは、小さな電力で遠距離通信が可能な短波通信により五つの役割を負っている。一つは外交通信、二つは緊急行動メッセージ、三つが米空軍の航空通信、四つが気象情報、五つが第七艦隊を支える役割、これらを負っているとこの記事では述べています。
 挙げられた五項目はどれもそれぞれ重要な意味を持っているわけで、外交活動の通信とEAMの通信は、大統領を頂点としたアメリカの国家戦略にかかわるものであり、軍事行動開始の大統領指令を含むもの、そういうふうに理解をされるような施設であります。
 私は、これは米軍側の立場での基地の説明だと思うんですけれども、こういった中身についても日本政府からの説明というのはないものなんでしょうか。
茂木副大臣 先ほど来、通告のない質問に答えておりますので、不十分な点があるかと思うんですが、やはり日本側からも、米軍の施設であるにしても、やはり地元の住民の皆さんあるわけでありますから、周辺に住んでいらっしゃる皆さんにとって納得いくような形での説明というのは必要だと思います。
 同時に、当然、これは軍のオペレーションという形でありますから、すべては当然つまびらかにできない、こういう性格のものはありますが、出せる範囲ではきちんと出して、説明責任を果たしていく、こういうことが今後とも必要だと思っております。
塩川(鉄)分科員 このような基地の返還ですとか一部開放の手続というのは、地位協定のもとで行われているわけです。そういう意味でも、この地位協定の見直しが必要だという声がそれぞれの地方自治体から広がっているのは御存じのことと思います。
 既に、沖縄県や神奈川県、東京都から、地位協定の見直しの条文も提起されていると思います。
 例えば、沖縄県からの地位協定見直しの要請書、これは九五年でしたけれども、ここでは、地位協定第二条第三項の返還基準の追加改定を具体的に提起をして、日本政府は、施設・区域の所在する都道府県や市町村から意見を聴取し、施設・区域の存在が、当該自治体の振興開発等に悪影響を及ぼしている場合は、米国政府に対し、その返還を要請し、米国政府は、その要請に応じなければならない旨を明記することを要望していますし、神奈川県は、人口密集地域の基地問題解決を図るための措置の明記を要望しています。さらに東京都は、日米合同委員会の場で関係自治体の意向を聴取し、それを協議することを明記することを求めていますけれども、こういった自治体の要望にどうこたえるのか。
 いわば自治体の町づくりにかかわる条項というのはそもそもないものですから、米軍基地が町づくりを阻害している場合に、自治体の立場を踏まえて何らかのきちんと協議をする場を設けるとか、こういったそれぞれの地方自治体の要望にどうこたえていくのか、その点を御答弁いただきたいと思います。
茂木副大臣 御指摘のような御要望が各自治体からさまざまな側面から提出されているということは承知をいたしております。
 さまざまな委員会でお答えを申し上げて委員もよく御案内のところであると思いますが、政府の方針といたしましては、日米地位協定について、まず、その時々の問題について運用の改善によって機敏に対応していくことが合理的である、こういう考え方のもとで運用の改善に努力しているところであります。これが十分効果的でない場合、運用の改善では十分効果的でない場合には、我が国のみでもちろん決定し得ることではありませんが、日米地位協定の改正も視野に入れていくことになる、このように考えております。
塩川(鉄)分科員 今、アメリカのイラク攻撃が……
杉浦主査 質疑時間が終了しております。
塩川(鉄)分科員 問題となっているときに、米軍横田基地と一体でその機能を担う所沢、大和田通信基地について、やはりアメリカによるイラク攻撃を後押しする米軍基地は受け入れられない、そのことを申し述べて質問を終わります。
杉浦主査 これにて塩川鉄也君の質疑は終了いたしました。
 次に、松浪健四郎君。
松浪(健四郎)分科員 保守新党の松浪健四郎でございます。
 ずっと予算委員会が開かれまして、川口大臣並びに茂木副大臣におかれましては、大変なつらい思い、お忙しい思いをしておられることに対して御慰労を申し上げたいと思います。
 とにかく平和でなければならない。そして、私たちは、平和憲法を持つ国民として、平和であってほしい。しかしながら、現在の国際情勢は極めて厳しい状況にございます。きょうは、いろいろな難しい外交、安全保障の問題ございますけれども、イラクの問題だけに絞って質問をさせていただきたい、こういうふうに思います。
 平和はだれもが願いますけれども、願うだけでは平和はやってまいりません。どのような形で平和をつくっていくか、つくり出さなければならないか、このことが私たちに問われておる、こういうふうに思います。そして、現下の状況は、政府だけでできるものではございません。与党、野党問わず、政治家が一丸となって平和のために協調しながら努力していかなければならない状況にあることは他言をまつまでもございませんけれども、私たち保守新党も、どんなことができるだろうか、そう考え、先週、私どもは訪米団を結成し、そして海部俊樹元内閣総理大臣を団長としてアメリカに行ってまいりました。
 そして、日本にはどういうことができるだろうか、そしてアメリカは多くの協調している国々とともに、世界の平和のためにどのように考え、どのような行動をとられようとしているのか、そして国連における対応についてどういうふうにお考えであるのか、そのようなことをお聞きしながら、私たちは平和のための我々の考えを伝えさせていただいたところであります。
 そこで、まず最初にお尋ねしますのは、大量破壊兵器の開発、拡散の問題は、冷戦後、世界的な広がりを持つ問題であります。我が国の平和と繁栄に大きな影響をもたらすものだ、こう考えますけれども、いかがでございましょうか。
川口国務大臣 松浪委員を初め海部元総理を団長とする皆様が、先生のお言葉をかりれば平和づくりのために御苦労をいただいていることを大変にありがたく存じます。
 大量破壊兵器は、特に、委員もおっしゃいましたように、冷戦後、非常に合理的な行動をする国同士の間の冷戦ということではなくなって、世界にいろいろな国があり、そしてまた大量破壊兵器がそういった国からテロリストグループや他の国に流れていく可能性があるという状況にあって、大量破壊兵器の問題はますます大きな問題となってきていると思います。この問題についての関心というのは、北東アジアの地域の安全に関する環境が、安全保障環境が不安定性、不透明性がある中で、我が国にとっても無縁ではない、我が国にとっても非常に重要な問題であると思います。
 大量破壊兵器の問題にどうやって対応していくかということで、国際社会としてさまざまな取り組みがございます。例えば、一つは拡散をどうやって抑えていくかということで、国際的に輸出管理をどうやっていくかという話もございます。それから、特に発展途上国、特に日本との関係ではアジアの諸国がこういった点に関する行政能力を持つということが大事で、そのためのキャパシティービルディングのための支援、これも大事なことであると思います。
 我が国としては、このテロの問題については、G8の会議の場や、そしてASEANの関連ですけれどもARFですとか、そういった場で議論をし、支援をし、取り組んできております。今後とも引き続き取り組まなければいけない重大な問題だと思っています。
松浪(健四郎)分科員 私たちは、訪米した際、アーミテージ国務副長官、それから第四十一代ジョージ・ブッシュ元大統領ともかなりの時間をかけて意見の交換をさせていただきました。そしてまた、戦略国際研究所、CSISのジョン・ハムレ所長とも意見を交換させていただきました。
 私たちは何となく傍観的立場にいるような気がするのではないのか。アメリカ国内にありましては緊迫感がみなぎっております。ホテルに入りますと、テレビをつけると、まず災害、何かが起こったときこのホテルからどうして自分たちが安全に逃げることができるか、または身を処すことができるか、この注意から始まりますし、どのホテルに行っても同じでありました。そして、ホテルには、まず二日ぐらいそこに閉じ込められても生活ができるぐらいの食糧、食糧というほどのものではありませんけれども、食べ物の備蓄があったり。ここまで徹底しておるのか、そして、テロに対してどういう考えを持っているのかということは我々の肌に直接伝わってまいります。
 そういう国の人たち、ましてや、あの九・一一の折にペンタゴンを初めとして大変な被害を受けたアメリカ国民のプライドというようなものと、同時に起こったであろう恐怖感、これが我々日本国民とのどれほどの温度差があるのかということは、予算委員会の議論を通じても私は感じることができなかった、そういうふうな気がしております。
 そして、まあ民間の戦略国際研究所でありますから自由に意見を述べることができるとはいえ、ハムレ所長はもとの国防次官でありますから、相当な知識を持って、そしていろいろなことをおっしゃるわけでありますが、我々は、まず、アメリカという国は日本にとっては最大の友好国であるということを心しなければなりません。
 議論を聞いておりますと、同盟国だ、同盟国だと、安保が先に来ておる。私は、安保が先に来るんではなくて、友好国だ、このことを国民の一人として十分に認識しなければならないな、こういう思いを持つものでありますけれども、イラクの大量破壊兵器に関する問題は、我が国を含む国際社会共通の問題であります。我が国として看過できない脅威である、アメリカだけの脅威ではなくて我々の脅威である、こういう共通認識を持つ必要があります。
 世界各地で平和的解決を求める運動、これが広がっておるわけですけれども、我が国としても、主体的にこの問題の平和的解決へ向けた外交努力を行うべきだと考えます。これまでの努力及びこれからの方針についてお尋ねしたいと思います。
茂木副大臣 委員、アメリカに行かれた実情につきましてつまびらかに御報告をいただいたわけでありますけれども、私も昨年アメリカに行きまして、やはり、日本とは違った意味での緊張感を正直言いまして感じました。空港のセキュリティーなんかでも靴の底まで全部見るわけで、スーツも脱いで、そういう状態でありまして、相当な緊張感というのがあるなと思っております。
 また、日米同盟、こういう御指摘がございましたが、これは常々川口大臣も、この日米同盟というのは、単に軍事的といいますか、そういう安全保障上の問題だけではなくて、要すれば民主主義であったりとか自由主義、共通の価値観を共有する多層的な関係なんだ、そういうことを基本的なベースにする。これは、委員御指摘のとおりであろう、このように考えております。
 そして、イラクに対する働きかけ、なかなか説明が不足している部分もあると思うんですが、政府としても、さまざまな形で展開をさせていただいております。
 若干紹介をさせていただきますと、まず、昨年九月の国連総会の際に、川口大臣より、サブリ外相に申し入れを行いました。また、昨年十一月の安保理決議一四四一の採択直後に、外務省の新藤政務官そして安藤中東アフリカ局長より、カーシム・シャーキル在京イラク臨時代理大使に強く申し入れを行いました。
 また、先月の二十九日には、川口大臣より、改めて同臨時大使に対し強い申し入れを行ったところであります。現地におきましても、二月の一日に、河野臨時代理大使より、イラク側に対して強い申し入れを行ってきました。
 まさに状況が大変緊迫をしてきている中にありまして、しかし、日本としては平和的な解決を目指して最後の最後までぎりぎりの外交努力を続けていきたい、こういうことから、川口大臣の御指示を得まして、私も今週末からイラクに直接行きまして、イラクの積極的な協力を引き出すべく外交努力を続けてまいりたい、こんなふうに考えております。
 周辺諸国に関連しましても、昨年、中山元外務大臣、そして高村元外務大臣、そして私の方で手分けをいたしまして、そういったイラクの周辺国でありますエジプト、そしてサウジアラビア、ヨルダン、シリア、トルコ、イランと回らせていただきましたし、また今次も、私と同時に、中山そしてまた高村両先生には、エジプト、サウジ、そしてシリア、トルコと手分けをしていただいて、同趣旨の申し入れ、最後の最後までイラクに対して働きかけをする、そういうことをやらせていただきたいと思っております。
 もちろん、安保理の理事国等々に関しましても働きかけをさせていただいておりまして、ブッシュ大統領と小泉総理の間、そしてまた川口外務大臣とパウエル国務長官の間等々、各国の首脳間また外務大臣間で、この問題につきましてさまざまな意見交換をさせていただきながら、国際社会が一致してこのイラクの問題を解決しよう、こういうことで努力をさせていただいております。
松浪(健四郎)分科員 とにかく、外務省は大変でしょうけれども、最前線に立って、さらなる努力をしていただきたいということを強くお願いしておきたいと思います。
 申すまでもなく、イラクはイスラムの国であります。このイスラムの国を考えるときに、私たちの価値観をもって、私たちの物差しをもってはかるというのはなかなか難しゅうございます。つまり、政治的圧力をかけて、ぎりぎりのことをしなければなかなか難しい。
 そのためには、常に総理や川口大臣がおっしゃっているように、国際協調が大切であります。そして、その国際協調の圧力こそが、イラクが自主的に、私は、サダム・フセイン自身が自主的にまず安保理の一四四一決議案にこたえていくのではないのか、こういうふうに思っておりましたけれども、悲しいかな、現実はそうなっていない。それゆえに問題がややこしくなってきております。
 アメリカ自身も、国際協調、これを必死になって求めておるところでありますが、どうもうまくいかないような印象を報道上我々は受けておりますけれども、日米間ではいかなる、どのような協議が行われているのか。このことについてお尋ねしたいと思います。
川口国務大臣 日米間では、本当に日常ベースで、アメリカとのコンタクトを東京で、あるいはワシントンでやっております。
 その中には、この間、パウエル国務長官が来ましたので、総理もお話をし、そして私もお話をさせていただきました。総理とパウエル長官の会談の中でさまざまな話がありましたけれども、国際協調の重要性、これについて総理からもきちんとおっしゃっていただいております。それから、私も、パウエル国務長官との話の中で、国際協調がこの問題に対応するに当たって非常に重要であるということを言っております。
 もともと昨年の段階で、この問題を、国際社会対イラク、大量破壊兵器を持ったイラクということなんだ、そういうふうにプレゼンテーションをする、またそういう実態であるということをきちんとアメリカに言ったのは日本でございます。
 アメリカはこれをきちんと聞き入れてくれて、国際協調が大事だということでやっているわけですけれども、委員がおっしゃいましたように、残念ながら、最近は、この問題は、アメリカとフランスの問題だとかあるいはアメリカとイラクの問題だとか、何かそのようなところに焦点がいって、そういうとられ方をしているということは、問題の本質から目をそらす形になって、望ましい姿ではないと私も思っております。
 国際協調をして、イラクに最大限の圧力をかけて、イラクがさまざまな決議に従って行動をするということが、平和的な解決のために非常に必要であると思います。
松浪(健四郎)分科員 査察が必要だ。日本より大きな国なんですね。この国の査察をするのに、果たして今の人員で物理的に可能なのかどうか。これは三カ月、四カ月延ばしたから十分に査察ができるか。私は、とてもじゃないけれどもできない。日本の国だって、数百名の人間で一部始終調べることができるか、できないと思います。
 査察は、自分たちで出かけていって調査するんじゃないんだ、向こうが協力的にいろいろなものを明示して、それを見る、そういう形になっているんだ、それならば、余計にサダム・フセインの政権の協力がなければやっていけないということははっきりしておるわけでありますけれども、それを一体いつまで望むのか。
 本当に、国際協調しようとしない国々、あたかも平和を我々が求めているんだと言わんばかりに強調される国々の人はどのように考えられておるのか、私は疑問に感じておりますけれども、とにかくイラクは、国際的圧力を受けて、小出しに譲歩する戦術を繰り返しております。
 このまま単に査察を継続しても本当に有効なのか。私は、有効ではないのではないのか、そう思いますし、イラクの能動的協力がなければ大量破壊兵器の破棄という問題が解決されるのか懸念されます。
 フランス、ドイツを含めたヨーロッパも、二月十七日に開催されましたEU首脳協議においては、イラクの十分な協力なしには無期限の査察を継続することはできない、このように述べられております。これに対する考え方はいかがでしょうか。
茂木副大臣 松浪委員の御意見のとおりでありまして、答弁もするまでもないぐらいの、答弁の分までやっていただいた気もするわけでありますけれども、先日のEUの首脳協議におきましても、委員御指摘のとおりの結論の文書でございまして、実際、私が今月の初めにフランスそしてドイツ、イギリスと回ってきましたが、それぞれの国におきまして、まずイラクの大量破壊兵器、これは大きな問題なんですよ、そして二つ目に、この一四四一で定められているのは、査察官が探す責任があるんじゃなくて、イラク側に、積極的に協力をして疑念を晴らす、そういう責任、挙証責任がある、そして今の段階でのイラクの協力は不十分だ、これは共通の認識である、こんなふうに考えております。
 そして、イラクの国土、委員御指摘のとおり日本の一・二倍ある国土でありまして、これはブリクス委員長も、査察の体制を若干ふやしたからそれで解決できるという問題ではない、まさにイラク側がどう変わるか、ぎりぎりのタイミングで、本当に積極的な、全面的な積極的な姿勢を示すのか、小出しのままで続けるのか、こういうところは大きな岐路なんではないかな、こういう認識は共有をいたしております。
松浪(健四郎)分科員 いずれにいたしましても、政府が考えなければならないのは、世界の平和であります。同時に、我が国の国益であります。したがって、どのような判断をし、どのような努力をしていくか、これは申すまでもございませんけれども、とにかく国連では、イラク問題の平和的解決へ向けたぎりぎりの外交努力が展開されておりますけれども、先般、アメリカ、イギリス、スペインの三カ国は、安保理に決議案を共同提案いたしました。
 この提案の内容につきましては既に報道されておるとおりでありますけれども、アーミテージ国務副長官との会談の中で出てまいりましたのは、とにかく多くの国々が賛成してくれるように最大の努力をする、そして日本政府もこの新提案には十分に理解を示してくれているというような感じで、我々にも感謝をするという話でありました。
 それで、この新提案の内容、これに対する評価がいろいろなされております。既に軍事力を行使できるものなのかどうか、書いてないけれどもそう理解できる、こういうような読み方、評価等ありますけれども、我が国政府は新提案をどのように評価されているのか、そのことについてお尋ねをしたいと思います。
川口国務大臣 この提案ですけれども、これは、一四四一でイラクに最後の機会を与えて、そして残っている時間は余りないということを言ったのを受けまして新提案がなされた、三カ国の新提案がなされたということです。
 我が国のこのペーパー、この提案への評価というのは、これが最後の外交的な圧力を国際的に協調をしてイラクに与えるためのものである、そういう性格のものであるというふうに評価をして、そういう観点で支持をしているわけです。
 それで、実際に決議が、先般のパウエル国務長官等の話によりますと、これを七日にブリクス委員長が査察の状況について報告をするということになっているわけでして、その後安保理としてこの提案について態度を決めることになるだろうということを記者会見でたしかおっしゃっていらっしゃいましたけれども、我が国としてこの提案の内容に賛成をするかどうかということは、これはイラクがこの与えられた最後の機会をきちんと認識をして、査察に積極的に協力をして、そしていろいろなものを出してくるということにかかっている。そういう状況を見て、また七日の報告を見て、そして判断をするということになるだろうと思います。
松浪(健四郎)分科員 私たちは、文化的には仏教圏に属するのかもしれませんけれども、私たちの交流はまずキリスト教文化圏と始まって、そしてその交流が密になりました。ところが、一番おくれてきたのはやはりイスラム文化圏との交流ではなかったか。それゆえに私たちの目から見れば異質に映るし、また違和感を覚える面もあるかもしれませんけれども、私自身は、長い間イスラムの国に生活をしたり、また多くの友を持ち、交流をしてまいりました。難しい、それは肌で感じてきたことでありますけれども、今イラクの起こっておる問題、これもひょっとしたらイスラムの問題であるかもしれませんし、同時に、イスラエルとパレスチナの問題、これもやはりイスラムの問題が深く介在しておる、こういうふうに認識しております。
 となりますと、イスラムのこともさることながらといいますか、イスラム文化圏のことに我々は外交努力を一生懸命これからも重ねていかなければならないし、また、おおむね産油国が多いという一面もありまして、我々のエネルギーが中東諸国に依存しておるというような視点から見ましても、重要な地域であります。
 それで、中東の平和と安定は、そういう意味で、イラク問題のみならず中東和平の取り組みも極めて重要である、こういうふうに考えるものでありますけれども、我が国の外交努力の方針、これからどうするのかということを最後にお尋ねしたいと思います。
茂木副大臣 松浪先生、アフガニスタンの問題初め、まさにイスラム文化圏の諸国といろいろな関係を持ちながら、平和の定着の問題であったりとか御尽力を賜っておりますこと、まず敬意を表したい、こんなふうに思っております。
 そして、御指摘のように、日本は中東地域に原油の八八%を依存している。そして、それぞれの国といい関係にあるんですね。そのために、そういった経済関係もありますけれども、文化関係等含めて、中東地域に七千名ぐらいの日本人が今住んでいる。まさに中東の平和と安定、これは我が国の平和と安定に直結をする問題だ、こんなふうに今考えているところであります。
 特にそこの中で、御指摘ございました中東和平問題、イスラエルとアラブ諸国間の関係の悪化とか、そういうものは中東地域全体の安定性、安全性を脅かす問題である、こういうふうに考えておりまして、これ以上の悪化は許されない、こんなふうに我々も認識をいたしております。
 ところが、現状を見てみますと、依然このイスラエルとパレスチナの間の関係、緊張を続けておりまして、イスラエルの侵攻、パレスチナの暴力行為、こういう暴力の悪循環、こういうものがあるわけでありまして、これをどうしても断ち切っていかなきゃならない。
 そんな立場から、我が国としても双方に対してきちんと、やめてください、こういう働きかけをやっておりますし、来週の初めには、有馬中東和平担当大使を改めてイスラエル、パレスチナ自治区に派遣いたします。さらに、有馬特使でありますが、暴力停止に向けて建設的な取り組みを行っておりますエジプトも訪問いたしまして、協議を行う予定であります。
 また、深刻な人道状況にありますパレスチナ人への緊急の人道支援の問題であったりとか、やはりパレスチナが希望を持つ、和平への希望を持つ、こういうことも大変重要でありまして、パレスチナ人によります改革を初めとする国づくり努力への支援を積極的に実施しているところであります。
松浪(健四郎)分科員 これからも中東諸国のために最大の外交努力をお願いしたいと思います。
 幸い中東諸国は、日本は手を汚したことがございませんので、好感を持ってくれておる国々ばかりであります。よろしくお願いしたいと思います。
 時間が参りましたので、これで終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
杉浦主査 これにて松浪健四郎君の質疑は終了いたしました。
 次に、赤嶺政賢君。
赤嶺分科員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。
 きょうは、川口外務大臣、茂木副大臣、午前中安保委員会でいろいろ質問させていただきましたけれども、午後もまた、今度は沖縄県の那覇軍港をテーマに質疑をさせていただきます。
 那覇軍港について、一月二十三日に那覇港湾施設受け入れに関する協議会が開催をされまして、この中で、那覇軍港の移設先の位置、それから軍港の形状、逆L字形と呼ばれておりましたが、これが提案されています。
 そこで、きょうは事細かく一つ一つ聞いていきたいと思いますので、午前中のような議論にはならないと思いますが、聞いていくだけということですが、きっちりお答えいただきたいと思います。
 それで、那覇軍港については、九四年と九六年に米軍がそれぞれ案を出しております。
 九四年案というのは、那覇軍港の出撃基地化、まさに出撃を目的とした港湾の整備でした。LCACだとか汎用揚陸艦が運用できる、海兵隊の出撃基地機能を持っている。それに対して政府も意見を出しまして、九六年案というのが出されたんですが、九六年の米軍の案は埋立地先に湾状の軍港を建設するという構想です。岸壁にガントリークレーンを配置する、それから揚陸艇の接岸岸壁も設けました。この九六年案についても政府は見直しを求めたということですが、今回提案された逆L字形構想、これは九四年、九六年、どこを見直ししたものですか。
大古政府参考人 那覇港湾の移設につきましては、経緯から申しますと、平成七年の五月に、日米合同委員会で形状を含めて移設することが合意されております。
 ただ、そのときの移設される港湾の地型、これについても日米間で合意を見たわけでございますが、これの前提となる民間港湾部分につきまして県の方でいろいろ変更の協議をしている、こういう状況でございますので、今回、一番最新の県側の案を踏まえまして、日米間の調整状況を一月二十三日の協議会において我々の考え方として示したところでございます。
赤嶺分科員 もうちょっと具体的に答えてほしいんですが、九四年案、九六年案のどこが変わったか。例えばガントリークレーンの機能、これは今回の案ではいかがですか。
大古政府参考人 現在、米側と協議の上沖縄県の方に示した案につきましては、民間港湾の計画を前提とした形状を示してございます。
 この形状を踏まえまして今後作業を進めていきたいと思うのでございますが、具体的な港湾の中での機能については、今後米側とも協議して具体的に決めていくということで考えております。
赤嶺分科員 今後協議していくというような話ではないと思うんですよ。
 例えば揚陸艇、これはいかがですか、揚陸艇の岸壁。
大古政府参考人 その点につきましては、現有の那覇港湾施設は、米軍が必要とする貨物や人員の沖縄と他の地域との間の輸送のため、その積みおろし等を行うということになっております。
 防衛施設庁といたしましては、現在この施設の浦添地区への移設作業を進めておりますけれども、あくまでもこの作業についてはこの機能の確保を目的としているというものでございます。
赤嶺分科員 最後のところはよく聞き取れなかったんですが、つまり、揚陸艇の接岸岸壁は移設先の港湾でもつくられるわけですね、建設されるわけですね。
大古政府参考人 先ほど申し上げていますように、代替施設につきましては、現有の那覇港湾施設の機能を確保することを目的としております。(赤嶺分科員「では、つくられるのですか、つくらないんですか。確保されるわけでしょう」と呼ぶ)一定の係留施設なりはつくると思います。
赤嶺分科員 九六年の構想で――施設部長、今の私の質問についての理解はできていますか。
 つまり私は、施設部長が現機能は確保されると言うから、当然そういう揚陸艇の接岸岸壁等は移設先の軍港でも確保されるわけですねと聞いているわけですが、それをお認めになっているわけですね。はっきり、イエスかノーかだけ答えてください。
大古政府参考人 先ほど申しましたように、人員の積みおろしということの機能もございますので、そういう機能については移設先においても確保されるというふうに考えております。
赤嶺分科員 九六年の構想の中で、直径四百五十メートルの回頭水域というのが出されたことがあります。
 現在の那覇軍港は、真向かいに那覇港を抱えていまして、港湾の中で方向転換ができにくい。そこで回頭水域というのがあるわけですが、当然移設先で港湾が、軍港湾が軍港湾として機能していくためには四百五十メートル程度の回頭水域は必要だと思いますけれども、この回頭水域についてはどうですか。
大古政府参考人 先ほど申しましたように、民間港湾計画の変更を踏まえまして、米側の移設計画についても見直しているところでございます。現時点では、米側との調整として、形状について協議した上で了解が得られております。
 回頭等の幅につきましては、今後具体的に協議していきたいと思っております。
赤嶺分科員 回頭水域の幅は具体的にはこれからの検討ですが、回頭水域を設けることには変わりありませんね。
大古政府参考人 これは、民間港湾の地先に米軍施設を移設することになりますので、そういう意味では、民間港湾を計画されている県の方とも調整した上で、米軍の運用も確保できるように、今後、調整していくことになると思っております。
赤嶺分科員 米軍の運用を確保するためには、当然、回頭水域を確保するということになるわけですが、その回頭水域の設置に伴って、使用条件、これはどうなりますか。
海老原政府参考人 今、使用条件についてのお尋ねがありましたけれども、これは、現在の那覇港湾施設につきましては、使用主目的は、港湾施設及び貯油所とされておりまして、また、使用条件につきましては、提供水域は港湾運営のために使用されるとされております。
 今後できます移設先におきます使用条件、使用目的につきましては、今後、日米間の協議によって決定されるものでございまして、現時点で確たることは申し上げられないわけでございますけれども、先ほど大古部長の方からもお答え申し上げましたように、代替施設におきましても現在の那覇港湾施設の機能を確保するということが目的とされていることから、現行の使用条件、使用目的を踏まえたものになるだろうというふうに考えております。
赤嶺分科員 そうすると、現在の那覇軍港では制限水域があるわけですね。同時に、現軍港の機能維持ということになりますと、現在、回頭水域というのは四百五十メートルの規模です。その五十メートルの制限水域ではとてもカバーできませんので、さらに四百五十メートルの回頭水域を制限水域以外に設けるという理解でいいですね。
 それで、どのぐらい、何個ぐらい設けるんですか。前に、皆さん、マスコミで表示したことがあるんですよ、回頭水域について。大体幾つくらい設けるつもりですか。
大古政府参考人 制限水域の問題につきましては、先ほど御説明しました平成七年五月の日米合同委員会の合意において、五十メートルの制限水域を設定するということで合意されている経緯がございます。
 今回の新しい港湾の移設作業におきましては、今後、具体的に制限水域の幅については米側と協議いたしますけれども、基本的には、この五十メートルという平成七年の合意を踏まえまして協議していくことになる、こう思っております。
赤嶺分科員 ですから、これは北米局長への質問になるかもしれませんが、回頭水域というのは四百五十メートルあるんですよね。五十メートルの制限水域とは別に設けることにならないと、回頭水域は設けられない。先ほど、現軍港の機能を維持するということになりますから、当然設けていくわけですが、別個設けるということになるわけですね。
海老原政府参考人 先ほど大古部長からもお答えを申し上げましたけれども、地位協定の二条一項に基づいて施設・区域として提供をしております水域ということで申せば、先ほどの五十メートルの制限水域というのがございます。したがいまして、そこにおきましては、これは港湾運営のために使用されるということで、その目的のために、施設・区域として地位協定に基づいて提供されているということでございます。
 今先生がお尋ねになりました回頭水域でございますか、これはちょっと外務省としては把握いたしておりません。
赤嶺分科員 ほとんど答えが出てこないんですけれども、現軍港というのは、LST、戦車揚陸艦、ランプと呼ばれる戦車揚陸艦の特殊な上陸地点があります。さらに、現行の使用目的では、港湾施設とともに、貯油所、油ですね、オイル、貯油所というのも明記されています。これらの施設や機能というのはどうなるんですか。
海老原政府参考人 それはまさに、この協議会におきまして、日米間で協議が行われているということだろうと思います。
 原則は、先ほどから申し上げておりますように、現在の那覇港湾施設の機能を確保する、そういう原則に基づきまして、これから協議会において、今のお尋ねにあるようなことについても日米間で協議を行って、調整を行っていくということになると思います。
赤嶺分科員 ほとんど、知りたいことがなかなか知らせてもらえないという感じですが、結局、回頭水域の問題でも、現在は、那覇港の民間施設を貸していただいているんです。ですから、民間の側との協議が必要なんですね。今度、浦添埠頭に軍港が移ったら、この回頭水域というのは、民間との関係でどうなるのか、あるいは米軍の専用施設になっていくのか、大変重大な問題であります。
 そういうことについても、なかなか、これからの協議、これからの協議という一点張りでお答えいただけませんけれども、米軍が、現軍港の米軍としての機能を確保するために回頭水域を専用水域にするだとか、いろいろな要求が持ち込まれてきたときに、日本の側は、これを拒否する、そういうこともできますか。できるとすれば、その拒否する根拠は何ですか。
大古政府参考人 先ほども申し上げておりますように、移設される港湾の形状については、米側とも調整の上、了解を得ているわけでございます。これについては、米側としても、当然のことながら、基本的な運用条件が了承されているという認識だということで聞いております。
 そういう中で、ただ、この施設につきましては、民間港湾と隣接しておりますので、今後、運用に当たってどうしていくかにつきましては、沖縄県なりと十分調整してまいりたい、こう思っております。
赤嶺分科員 それじゃ、今度は、施設・区域の使用形態について伺います。
 これは前にも外務省に質問をしたことがありますが、前回は昨年の三月二十八日ですけれども、そのときに、制限水域の問題とそれから軍港と基地を直接結ぶ進入道路について質問をいたしました。
 進入道路についてはまだ確認していないという答弁でありましたけれども、改めて伺いますが、軍港と基地を結ぶ進入道路について、使用形態はどうなりますか。軍民共用ですか、それとも専用ですか、いかがですか。
海老原政府参考人 ただいまお尋ねのありました、この代替施設とあわせて提供されることとされております進入道路の形態、それから、今お尋ねのありましたような地位協定上の根拠と申しますか、その使用のあり方ということにつきましては、今後、日米間の協議において決定されるというものでございまして、現時点で具体的なことを申し上げる段階ではないというふうに考えております。
赤嶺分科員 それじゃ、進入路というのは、米軍の専用施設になるかどうかまだわからないということですか。今後の協議だということですか。
海老原政府参考人 今後の日米間の協議によるということだろうと思います。
赤嶺分科員 政府は、軍港の使用について使用協定は結ばないということで、現在の那覇軍港の使用条件がそのまま適用されていくと。この点はどうですか。
海老原政府参考人 使用条件につきましては、先ほども御答弁申し上げましたけれども、まだ、今後決定されるということではあると思いますけれども、基本的には現在の使用条件、使用目的というものを踏まえたものとなるというふうに考えております。
 今お尋ねのありましたいわゆる使用協定というものにつきましては、締結することは考えていないということでございます。
赤嶺分科員 現在の那覇軍港の使用条件について、那覇軍港は、米軍の直接占領下で米軍がつくった軍港であります。それがそのまま今日まで引き継がれてきているわけですが、私たち沖縄県民が那覇軍港の使用条件について目にすることができたのは、あの少女暴行事件が起こった後の一九九七年に公表された五・一五メモでありました。
 その五・一五メモの中で、例えば、先ほどの五十メートルの制限水域についてこう書かれています。水域については、常時使用される。第二水域内で、合衆国軍隊は、係留する船舶の船幅または係留中の船舶の外舷側での作業のいずれについても制限されない。第一及び第三水域は、合衆国軍隊の排他的使用のため常時制限される。第二水域は、合衆国軍隊の使用期間中は排他的使用のため制限される。このようになっています。
 今回移設によって設けられる五十メートルの制限水域については、九九年の分科会で、当時は大森施設庁長官だったと思うんですが、現在の使用形態と同様の考え方で設定されると答弁しております。
 制限水域の使用条件についても、五・一五メモと同じものと考えてよろしいですか。
海老原政府参考人 先ほど申し上げましたように、代替施設の使用条件、使用目的につきましては、現行のものを踏まえたものになるというふうに考えておりまして、今お尋ねのありました五十メートルの制限水域というものについても、基本的には現在の条件を踏まえた形になるということが考えられていると思います。
赤嶺分科員 先ほどちょっと質問を忘れていたことなんですが、さっきの進入道路の問題です。あれ、現在の港湾開発との関係でいきますと、民間の中を走って基地に入るという設計になっているんですね。それで、そういう場合に、使用条件はこれから決めるということだったんですが、民間との共用、あるいは、最近沖縄の米軍基地の中で、国道を挟んで両側にあるときにはトンネルを掘って、米軍の専用トンネルをわざわざつくってあげるというようなことまでしておりますけれども、その点は何かお答えできますか。進入道路が民間の商業用地の間を走っていく、その場合に何か考えられる問題点はありますか。
大古政府参考人 進入道路の形態等につきましては、先ほど北米局長からもお答えいたしたとおり、今後協議される問題でございますけれども、牧港地区と新しい港湾とを結ぶに当たっては、民間港湾計画のあるところを通りますので、当然この点につきましては沖縄県とか浦添市とかとの調整が必要だ、こう思っております。
赤嶺分科員 先ほどから那覇軍港の機能、機能ということがよく出てくるわけですが、那覇軍港の機能とは一体どういう機能でしょうか。これは、もし外務大臣ができるんでしたらお答えいただきたいと思いますし、そうでなければ局長でもいいんですが。
海老原政府参考人 これは提供の目的と関連するわけでございますけれども、我々が機能と申し上げているのは、米軍が必要とする貨物あるいは人員の沖縄と他の地域との間の輸送のため、その積みおろし等を行うということをもって機能と申し上げております。
赤嶺分科員 そうすると、米軍の司令官が、かつて那覇軍港の機能について、那覇軍港はステージングエリアと呼ばれ、有事に大量の軍事物資が集められ、それを前線の部隊に輸送する重要な拠点である、このように説明したことがありますが、現機能を維持する、確保するという場合は、米軍が有事を含めて軍事物資の輸送基地として当然使用できるということになると思うのですが、いかがですか。
海老原政府参考人 この代替施設につきましては、施設・区域として地位協定に基づきまして提供されるということになると思います。したがいまして、米軍はそれを日米安保条約の目的の達成のために使用できるということになります。
 今の有事というのがどういう場合を指しておられるのか必ずしもわかりませんけれども、あくまでも、米軍は日米安保条約の目的の達成のために使用するということになると思います。
赤嶺分科員 日米安保条約の目的達成のために軍港を使用する。そうなりますと、例えば今、軍港に入ってくる船隻は、ピークの一九八七年で年間九十六隻、少ない場合には年間十六隻です。これが最近ふえているわけですね、民間の輸送船も入ったりしておりますけれども。
 やはり、国際情勢が緊張し、そして安保条約の目的を達成する、最近は周辺事態法だとかテロ特措法だとか、いろいろなものがつくられているわけですから、緊張が高まったときに、那覇軍港というのは、使用条件の範囲であれば、安保条約の目的達成のためには、米軍はここを、船隻が入ってくるとか、そういう使用頻度については限定がない、日米安保条約の目的達成であれば、これ以上は入っちゃいけませんよというのはないわけですね、那覇軍港というのは。
海老原政府参考人 先ほどの答弁と同じになりますけれども、施設・区域として提供されたもの、これは港湾であっても同じでございますけれども、あくまでも、日米安保条約の目的、すなわち我が国及び極東の平和と安全の維持という目的のために使用されるということでございます。
 したがいまして、その目的のためにどの程度の頻度においてその施設・区域を使用するかということにつきましては、それはまさに米軍の、軍の運用の問題でございまして、それにつきましては、基本的には米軍において判断するということだろうと考えております。
赤嶺分科員 それで、機能の維持といっても、一番大きな変化は、現在の那覇軍港は水深が十メートルで、浦添の場合は、浦添の今の位置だと、浦添全体として水深が深いところです。ですから、水深十二メートルという理解でいいですか。
大古政府参考人 水深の問題につきましては、今後具体的に米側と検討していくこととなりますけれども、現時点におきましては十二メートル程度を念頭に置いておるところでございます。
 ただ、この水深につきましては、輸送船舶の最近の技術的傾向を踏まえまして念頭に置いている水深でございまして、貨物や人員の積みおろし等を行う現在の那覇港湾施設の機能を何ら変更するものではございません。
赤嶺分科員 まだまだたくさんの質問を抱えておりますが、時間が来ていますので終わりますけれども、最後に、一番県民が心配している原潜だとかあるいは空母の入港も……
杉浦主査 赤嶺君、質疑時間は終了しております。
赤嶺分科員 可能になると思いますが、そういう懸念もあるということを指摘しまして、私の質問を終わりたいと思います。
杉浦主査 これにて赤嶺政賢君の質疑は終了いたしました。
 次に、土田龍司君。
土田分科員 大臣、副大臣には御苦労さまでございます。
 私は、前回の選挙が終わってからずっと外務省を担当しておりまして、前回の臨時国会からは変わりましたけれども、長年外務委員会におりますと、外務省の方々とのおつき合いも深まるし、あるいはまた注目度も違うわけでございまして、多少の愛着を感じながら委員を務めておりました。
 せっかく茂木副大臣がお見えでございますので、先にちょっと副大臣にお尋ねするんですが、特使に指名されて、いよいよあさってからイラクに行かれるわけでございますが、どういった目的で、あるいはどういった方々に会われるのか、報道では概略聞いておりますけれども、目的と決意についてお話をいただければと思います。
茂木副大臣 土田委員には常々外務委員会でいろいろ御指導いただきまして、本当にありがとうございます。
 今回、川口大臣の指名そしてまた総理の特使といった形で、今週の土曜日にイラクの方に向けて出発をしたい、このように考えておりますが、御案内のとおり、イラクの情勢、大変緊迫をしてきている中で、この問題を平和的に解決をしたい、そしてそのためには、どうしてもイラク側の積極的な協力が必要である、態度の変更が必要である、そういったぎりぎりの外交努力をする、そのためにイラクの方を訪問する予定であります。
 昨日決まりましたので、今、外交ルートを通じまして要人等々との面談の調整をやらさせていただいているところでありまして、今この段階でだれと会いますとお答えできないのが大変恐縮でありますが、できるだけハイレベルの人間とお会いをして、忌憚のない意見交換であったり、国際社会が今イラクをどう見ているのか、どういう態度の変更が必要であるのか、こういうことにつきまして、しっかり日本としての立場を主張してきたい、このように考えております。
土田分科員 一昨年の一月に外務省の不祥事が発生をいたしました。いわゆる松尾事件ということで、その後、外務省の内部の問題、あるいは在外公館でもいろいろな事件が発生した。あるいは、四月から田中真紀子さんが大臣になられて、委員会も非常に活発といいますか、鈴木宗男さんの問題もあったりして、にぎやかな委員会になってきたわけです。
 ただ、私はずっと外務委員会で定期的に何回も何回も質問を続けましたのは、やはり外務省改革が本当に進んでいるかどうかということだと思うのです。川口大臣からも何回も答弁もいただきましたけれども、私は今、外務省を見ておりまして、そんなに体質が、あるいは体制が、あるいは意識が変わったようには感じられないのです。
 外務省の方々はひたすらあらしが過ぎ去るのを待っているような感じがしている。「変えよう!変わろう!外務省」ということで、職員の方々から、そういった発案のもとで自分たちも変わろうという意識があったのは一部であって、あるいは一時期であって、そんなに外務省改革というのは進んでいるように感じられないんですが、大臣、どうですか。あらしはもう過ぎ去ったのでしょうか。
川口国務大臣 外務省改革は、私は着々と進んでいると思います。省議を外務省でやりまして、ずっと見渡すと、六人、外部からの幹部がいすに座っているという状況で、恐らく霞が関じゅうどこを探しても、省議で六人、外部から登用された人が座っている、そういう役所はないと思います。これは一例ですけれども、着々と進んでいる。
 もちろん、意識の改革、これは時間がかかります。隅から隅まで意識が変わるというのは少し時間をかけなければいけないと思っていますが、実質的にきちんと変わりつつあるという実感を、手ごたえを私は持っています。
 今、最後に残った課題として、機構改革の問題があります。これは茂木副大臣が、たくさんの案件を抱えながら、この問題については今懸命に取り組んでいただいています。多分この後、補足をしていただけると思いますけれども、私の実感は、外務省は変わっているということです。
土田分科員 私は、順番が逆だと思っているのです。
 最後に残った機構改革だとおっしゃいましたけれども、実は機構改革が先でございまして、人間の意識なんてそんなに変わらないです。意識を変えろと幾ら大臣が毎朝言われても、人の意識というのはそんなに変わるものじゃない。もしも説諭することによって変わるんだったら、もっと人類は利口になっているんですけれども、なかなか変わらない。だから制度を変えていくんだ。機構を変えることによって、おのずから意識が変わってくると私は思っているのです。
 今の答弁の中で、最後に残った機構改革をいよいよ始めるとおっしゃるんですが、これは逆でございまして、こういった不祥事から二年たってまだ具体的な機構改革ができない、これからいよいよ始めるんだというんだったらば極めて遅いんじゃないかと思うのですが、どうですか。
川口国務大臣 機構と制度は違います。制度はかなり変えています。
 機構というのは組織、設置法における組織の問題です。これは、変えるためには法律も変えなければいけませんし、その前に、例えば総務省といったところとの折衝というのがあります。そういうことをやって機構を変えることができる。
 例えば、人事の登用制度、これは公募制、今二回目をやっています。これも霞が関広しといえども外務省しかない、そういう制度です。
 適材適所における人材の登用、これも、年功序列制が非常に強い習慣になっている霞が関で、外務省はそれを変えています。
 制度は確実に変わっている。制度と、それから組織法を変える、最後の、まさに何局何々課ということをどうするかという狭い意味の機構、これを今、いろいろ関係先がありますので、相談をしながらやっているということであります。
土田分科員 ぜひ大きな期待をしたいと思います。
 まず冒頭、極めて個別の問題でございますが、重要だと思いますから、今資料をお配りいたしました。日本とフィリピンの航空貨物便の問題なんです。
 どういうことかといいますと、東南アジアに対して、日本はさまざまな投資をして、商売をして利益を上げているわけでございますが、その中で、幾つか問題がある中でも極めて象徴的な例として、この日比間の航空貨物の懸案が、まるでのどに刺さったとげみたいに、これがなかなかうまくいかない状況にあるわけです。
 アジア局長もお見えでございますので、ちょっとこの辺のことについてやはり外務省として認識を新たにしてもらいたいと思って、あえてこの文書をつくってみました。
 ちょっと概略を説明しますが、このCLAという会社、一九九七年の三月に、フィリピン国営企業フィリピン航空開発公社とインターナショナル・ビジネス・エビエーション・フィリピンと日本企業であるアイ・エー・エス・エスの三社によるフィリピンの合弁会社をつくったわけです。
 そこで、日比間に航空貨物を専業とした飛行機を飛ばそうということで着々と準備を進めておったわけでございますが、九八年の三月に暫定事業の認可がおりる。同年四月二日にはラモス大統領から貨物フラッグキャリアとして認定をされる。さらに六月にはフィリピン航空局からCLAの成田の発着便までもらった。
 だんだん話がうまくいっていたんですが、フィリピンの政権がかわってしまった。ラモス政権からエストラダ政権にかわったために、一遍にこの話がとんざしてしまいます。なぜとんざしたかというと、このエストラダ政権の最大のスポンサーであったフィリピン航空のオーナーがこれに対して反対をしてきたということらしいんですね。そのために、これまで手順を踏んできた許認可事業が次々と却下されていって、とうとう認可取り消しまで行ってしまっているわけです。
 ところが、またいい話が出てきまして、今度はエストラダ政権からアロヨ政権にかわります。一ページめくってください。一ページめくってもらって、アロヨ政権になりましたので、またこの話が復活をしてまいりました。
 そして、また同じように二〇〇一年の十一月にフィリピン航空局からCLA、暫定事業認可を発給してもらって、同じようにフラッグキャリアとしての認定をしてもらって、同じように正式認可が八月におりるわけでございます。
 ところが、ここに来て、また同じような邪魔が入ります。フィリピン航空の所有者から、これはまかりならぬというような話が次々と出てきて、とうとう同じように、昨年の十一月六日、一番下でございますが、暫定事業認可が失効してしまうということになってしまったんです。
 この問題は、確かに一民間企業の問題ではございますけれども、投資を勧めている、あるいはバックアップしている日本政府としましても、この問題をおろそかにしちゃいけないんだと私は思うんです。
 特に一九九九年の六月四日に行われた日比首脳会談の席上で、このことが議題として上げられました。首脳会談の議題として上げられたにもかかわらず、このような、うまくいったりとんざしたりというようなことを繰り返しているわけですね。そうなると、日本の投資家というのは、これに対して今後投資を自粛するといいますか、控えざるを得ないような状況になっていくんじゃないかと私は心配しているんです。
 大臣は初めて聞かれる話かもしれませんけれども、今私がお話し申し上げました点につきまして、感想なり御意見はございますでしょうか。
川口国務大臣 政府委員から答弁があると思いますけれども、私の感想という意味で申しますと、投資についての制度の透明化と安定性、これは非常に大事なことである、そういうことです。
薮中政府参考人 本件につきましては、まさに投資環境の整備ということ、そして、これは大変日本の投資企業、これが円滑な事業がなされるということは非常に重要なことだというふうに思っております。
 そういう意味で、全体的な投資環境の整備ということでは、首脳レベルで先方にも申し入れを行っておりまして、投資環境を整備すべきであるということ、そしてまた、この具体的な案件でございますけれども、このCLA社の問題につきましては、これも我が方大使館からフィリピン政府に対し、累次にわたり、公平に取り扱われるようにということで申し入れを行ってきております。
 最近では、昨年の十一月に大使館の高いレベルから、公使でございますけれども、先方の政府に申し入れを行いまして、本件が公平に取り扱われるようにという申し入れを行ってきたわけでございます。
 今委員御指摘のとおり、本件につきましては、現在まだフィリピン政府内で検討が行われている、そして実際の運航には至っていないというふうに承知しておりますけれども、引き続き本件については我が方もきちんとフォローをしてまいりたいというふうに思っております。
土田分科員 投資環境の整備は極めて重要であって、公平に扱うようにという申し入れをしておられる。確かにそうですね。高野大使、公使もそうですが、この件については熱心にやっておられる、あるいは申し入れをしておられることは聞いているんですが、一向に話が進まない。ただ申し入れをするだけで話が進むのかどうか。長年にわたって、九七年から、多分このために多額の費用がかかっていると思いますし、申し入れだけで進むのかどうかという感じがするんですけれども、局長、どうですか。
薮中政府参考人 今御指摘のとおり、まさに結果が出ないといかぬわけだと思いますけれども、我々としては引き続き、そういう意味で、公平な取り扱いということ、そして全体的な投資環境の整備ということで先方に申し入れていきたいと思っておりますし、また、投資全般につきましては、今、日比間で経済連携についての話し合いも行っております。こうした中でもさらに努力を行い、日本からの投資環境が安定したものになるよう、さらに努めてまいりたいというふうに思っております。
土田分科員 経済協定、経済話し合い、これは自由貿易協定のことをおっしゃっているんですか。
薮中政府参考人 自由貿易の内容もございます。さらに幅広い経済の連携ということで、投資の分野についても含む、そうした協定を目指して、現在、日比間で具体的な、まだ事務レベルでございますけれども、作業が進められているということでございます。
土田分科員 事務レベルの話し合いが始まったということはいいと思うんですが、やはり将来的には自由貿易協定、FTAを進めていくべきではないかと私は思っているんです。シンガポールが終わって、メキシコ、韓国、マレーシアとも話し合いが始まりますね。フィリピンとも、そういった具体的な話し合いをすることによってしか解決ができないのかなという気もしますし、外務省の取り組みについても、首脳会談で話し合われた内容であるのに、ここまでほっておかれるというのは少し甘いのかなという感じが私はするんですが、どうですか。
薮中政府参考人 まさに日比間の経済連携協定ということにつきましては、現在は事務レベルでございますけれども、政府としては非常な優先課題としてこれから取り組んでいきたいというふうに思っております。
土田分科員 いやいや、自由貿易協定についての話し合いを始める意向は政府にあるんですか。
薮中政府参考人 まさにそういうことでございまして、経済連携協定というのは、自由貿易協定の内容も含めて、それにさらに投資分野等々、幅広い分野の問題を取り扱おうというふうに思っております。
土田分科員 さて、大臣にお伺いしたいと思いますけれども、今月の十八日に、イラク情勢に関する安保理の公開会合で原口大使が、査察継続の有効性に疑問を投げかけた上で、国際社会の断固とした姿勢を明確な形で示す新たな安保理決議の採択が望ましいという主張をされました。この新しい決議の採択に言及したのは日本だけだという突出した対米支持といいますか、これを世界的に表明したのだと私は思うわけでございます。
 これまで、例えば外務大臣なり総理大臣も、国会質問に対してもあるいはテレビにおいても明確な形で質問に答えてこなかった。国会の場でもテレビの場でも、国会議員にわかりやすくあるいは国民にわかりやすく、あるいは合意を求めるようなことをしてこなかった。それなのに、そういった国会軽視をしながら、なぜ安保理で国民の気持ちを無視したようなことで突然発表されるんでしょうか。
茂木副大臣 十八日の原口大使の演説でありますけれども、新たな国連決議の採択が望ましい、この発言につきましては、私の記憶が確かであれば、たしか二月の六日に小泉総理が、国際社会が一致した対応をしていくためにも新たな安保理決議が望ましい、こういう発言を国会でさせていただきまして、同様の趣旨の発言を、いろいろな文脈の中ではありますけれども、川口外務大臣の方からさせていただいている、こういう感じであります。
 何か、原口大使の演説に関しまして、若干日本語の表現と英語の表現が違う。これは、確かに違う言語でありますから、そこは一言一句一緒になるわけではないんですが、その問題と、政策的に例えば今まで言っていることと言っていないこと、こういうことで自分なりにもずうっと比較をしてみましたが、これまで川口大臣そして総理初め政府が言っていないこと、方向として出していないことを原口演説の中で出している文脈はない、このように承知をいたしております。
 もしございましたら、御指摘いただきましたら、そこの中できちんと答えさせていただきたいと思います。
土田分科員 この時点で、政府が安保理の場で、アメリカに対して、対イラク攻撃、武力攻撃を強力に支持したというふうに私は感じるんですが、これはどういった意図から発表されたんでしょうか。
川口国務大臣 この時点で我が国が武力の行使を支持したということは全くないわけです。我が国としてこの決議に賛成するかどうか、これは、現在まさに最後の働きかけをイラクにやっている、茂木副大臣にこれから行っていただきますけれども、そういったことに対するイラクの対応、すなわち積極的に査察に協力をして、大量破壊兵器の破棄、これをやったという証拠を見せるかどうか。そして、三月の七日にブリクス委員長が国連で話をすることになっています、査察の評価をすることになっております。そういったことを踏まえて、政府として総合的な立場からぎりぎりの決断をする、そういうことになります。
土田分科員 武力行使に対しての支持じゃないとおっしゃいますけれども、だって、原口さんが演説をした直後にアーミテージさんから丁重なお礼を言われたわけですよね。これは、ではアメリカが誤解したんでしょうか。武力行使に対して日本が支持を出したからアメリカからお礼を言われたということじゃないんですか。
茂木副大臣 今大臣の方からも申し上げましたように、このアメリカ、イギリスそしてスペインの共同提案の新しい安保理決議でありますが、まさにタイミングが切迫している、こういう中で問題を平和的に解決するための最後の外交的な努力の一環である、その努力に対して我が国として理解を示し、その決議の趣旨について支持をする、こういうことに対してまたアーミテージ副長官の方からも、そういったアメリカの姿勢に対して支持をしてくれたことに対する感謝の表明があった、このように理解をいたしております。
土田分科員 この原口演説で、もはやイラクに残された時間は限られているという主張をしているんですけれども、外務大臣が考えるタイムリミットというのはいつなんでしょうか。
茂木副大臣 具体的な日付で、いつがタイムリミットだ、こう申し上げるのはなかなか難しいんだと思います。恐らく、例えば安保理の理事国であっても、いつがタイムリミットですよということを表明している国は、少なくとも私の記憶では今のところないな、このように思っております。
 そういった中で、全体としてタイミングが切迫しているのは間違いないわけでありまして、昨年新しい安保理決議の一四四一が採択をされまして、現状までの段階で、どの国も、イラクがあそこで定められた積極的な協力を十分に行っていない、こういう認識は持っているわけでありまして、残された時間は少ないということについては認識は一緒なんだと思っております。
土田分科員 外務省のホームページの中に、外交政策QアンドAというコーナーがあります。その中で「日本は国連の常任理事国になるべきでしょうか。」という質問が掲載されているんですね。その答えの中で外務省は、「安保理は加盟国を拘束する決定を行うことができる唯一の機関ですが、日本は現在、非常任理事国となる時にのみその意思決定過程に参画しているにすぎません。 このような点を踏まえ、安保理改革が実現する暁には、日本は常任理事国として一層の責任を果たしたいと考えています。」というふうに書いてあるんですね。
 イラク問題に対する政府答弁を聞いている限りにおいては、安保理で意思決定過程に参画できるような能力が本当に日本にあるかどうか、今の外務省の対応あるいは政府の対応を見ていますと、そういった能力は甚だ感じられない。間違ったことを書かないで、ホームページに書くんだったらば、現政権下では常任理事国になるべきじゃないと書くのが正しいと思うんですが、どう考えますか。
川口国務大臣 まず、常任であれ非常任であれ、安保理の理事国として日本が十分にやっていく能力があるということは、過去既に八回、非常任理事国を、これはブラジルと並んで世界で最多ですが、これをやったということで証明済みだと思います。
 それから、常任理事国になることができたら、これはもっと広く深く、そして早い時期から国際社会の制度あるいは考え方、秩序ですね、その構築に携わることができるという意味で、我が国は我が国が思う方向の外交をすることができる。そういった我が国の積極的な取り組みというのは、平和の構築であれ人間の安全保障であれ、さまざまなところで既に証明済みであると考えています。
土田分科員 時間がないので、二十四日の北朝鮮のミサイル発射のことについてお尋ねします。
 毎年実施されている軍事訓練である、射程距離の短い地対艦ミサイルの発射であったということでございますけれども、これはやはり北東アジアにおける緊張を高めることになったのは間違いないと思うんです。しかも、いかに訓練であっても、こういった時期にミサイルを発射してくることについては、やはり何らかの意図があったんじゃないかなというふうに私は思うんです。
 その点で、二十四日の夕方の時点で防衛庁はミサイル発射の情報を入手していた、それにもかかわらず、官邸、外務省あるいは防衛庁長官にその事実が伝えられたのは翌日であったと。今の現状を考えたときに、非常にお粗末だなという感じがしてならないんですけれども、こういった情報伝達がおくれたことについて、閣僚の一人として大臣はどういうふうに考えていますか。
川口国務大臣 ミサイルという言葉一言出ますと、大変なことであるというふうに思われるのかもしれませんけれども、これは、弾道ミサイルではなくて、短い、地対艦ミサイルでございます。そして、これの発射の実験というのは、ほぼ毎年今までなされているという性格のもので、平壌宣言の関係からいっても問題になるものではない、また、我が国の安全保障に影響を与えるというものでもない、そういう性格のものです。
 したがいまして、これは、委員がおっしゃいましたように、外務省がこの件について知りましたのは翌日の朝でございました。そういうことでありますけれども、我が国が今あるさまざまな状況、これを考えれば、もしこれが我が国に影響を与えるような種類のミサイル、例えば弾道ミサイルですね、そういうものであれば、当然これは、防衛庁のその担当のところでそういう判断をして、政府内でたちどころに情報がシェアをされる、そういうことであったと私は考えています。
土田分科員 大臣、それだと、これは単なる定期訓練であって、政治的な効果をねらったものじゃないということですか。
川口国務大臣 北朝鮮が何を考えてこのミサイルの発射をやったか、これは厳密に言えばわかりません。一つ確実なのは、私が先ほど申しましたように、毎年やっているものであるということです。それから、もう一つ言われていることは、例えばミサイルの性能、これをテストするものであったという指摘もなされております。
 これが、何が目的であったか、委員のおっしゃるようなことが目的であったのかなかったのか、そういうことも含めてスペキュレーションの域を出ないわけですし、そういうことに対して今推測をするということは、憶測をするということは我が方としてはできない、そういうことです。
土田分科員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。
杉浦主査 これにて土田龍司君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして外務省所管についての質疑は終了いたしました。
 次回は、明二十八日金曜日午前九時より開会し、財務省所管についての審査を行うこととし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時三十二分散会


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