衆議院

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第2号 平成15年2月28日(金曜日)

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平成十五年二月二十八日(金曜日)
    午前九時開議
 出席分科員
   主査 杉浦 正健君
      石川 要三君    丹羽 雄哉君
      河村たかし君    鮫島 宗明君
      城島 正光君    西村 眞悟君
      樋高  剛君    井上 喜一君
    …………………………………
   財務大臣         塩川正十郎君
   財務副大臣        谷口 隆義君
   農林水産副大臣      北村 直人君
   財務大臣政務官      田中 和徳君
   政府参考人
   (財務省主計局次長)   勝 栄二郎君
   政府参考人
   (財務省主税局長)    大武健一郎君
   政府参考人
   (財務省関税局長)    田村 義雄君
   政府参考人
   (財務省理財局長)    寺澤 辰麿君
   政府参考人
   (財務省国際局長)    渡辺 博史君
   政府参考人
   (農林水産省生産局畜産部
   長)           松原 謙一君
   財務金融委員会専門員   白須 光美君
   予算委員会専門員     中谷 俊明君
    ―――――――――――――
分科員の異動
二月二十八日
 辞任         補欠選任
  河村たかし君     城島 正光君
  樋高  剛君     西村 眞悟君
  井上 喜一君     金子善次郎君
同日
 辞任         補欠選任
  城島 正光君     鮫島 宗明君
  西村 眞悟君     樋高  剛君
  金子善次郎君     井上 喜一君
同日
 辞任         補欠選任
  鮫島 宗明君     河村たかし君
  井上 喜一君     山谷えり子君
同日
 辞任         補欠選任
  山谷えり子君     井上 喜一君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 平成十五年度一般会計予算
 平成十五年度特別会計予算
 平成十五年度政府関係機関予算
 (財務省所管)


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     ――――◇―――――
杉浦主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。
 平成十五年度一般会計予算、平成十五年度特別会計予算及び平成十五年度政府関係機関予算中財務省所管について、政府から説明を聴取いたします。塩川財務大臣。
塩川国務大臣 平成十五年度一般会計歳入予算並びに財務省所管の一般会計歳出予算、各特別会計歳入歳出予算及び各政府関係機関収入支出予算について御説明申し上げます。
 まず、一般会計歳入予算額は八十一兆七千八百九十億円余でございまして、その内訳について申し上げますと、租税及び印紙収入は四十一兆七千八百六十億円、その他収入は三兆五千五百八十億円余、公債金は三十六兆四千四百五十億円となっております。
 次に、当省所管一般会計歳出予算額は十八兆六千百二十七億円余となっております。
 このうち主な事項について申し上げますと、産業投資特別会計へ繰り入れは千六百三十六億円余、国債費は十六兆七千九百八十億円余、政府出資は二千三百八十三億円、予備費は三千五百億円となっております。
 次に、当省所管の各特別会計の歳入歳出予算について申し上げます。
 国債整理基金特別会計におきましては、歳入百六十七兆一千四百十八億円余、歳出百五十八兆一千四百十八億円余となっております。
 このほか、財政融資資金等の各特別会計の歳入歳出予算につきましては、予算書等をごらんいただきたいと存じます。
 最後に、当省関係の各政府関係機関の収入支出予算について申し上げます。
 国民生活金融公庫におきましては、収入二千二百八十七億円余、支出一千九百二十九億円余となっております。
 このほか、住宅金融公庫等の各政府関係機関の収入支出予算につきましては、予算書等をごらんいただきたいと存じます。
 以上、財務省関係の予算につきまして、その概要を御説明申し上げた次第でございます。
 なお、時間の関係もございまして、お手元に配付しております印刷物をもちまして詳細な説明にかえさせていただきますので、記録にとどめていただくようお願いいたします。
 よろしく御審議のほどお願い申し上げます。
 ありがとうございました。
杉浦主査 この際、お諮りいたします。
 ただいま塩川財務大臣から申し出がありましたとおり、財務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
杉浦主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
杉浦主査 以上をもちまして財務省所管についての説明は終わりました。
    ―――――――――――――
杉浦主査 この際、分科員各位に申し上げます。
 質疑の持ち時間はこれを厳守いただき、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。
 なお、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。城島正光君。
城島分科員 おはようございます。民主党の城島でございます。
 今年度の予算案について、私は、特に、一般的に大衆課税と言われる酒税、なかんずく発泡酒、それからたばこの増税について集中的に、特に大臣の御見解を賜りたいというふうに思います。
 今回の予算案の全体的なところを見てみますと、減税は、企業向けの法人税あるいは政策減税といったものが中心ですよね。そして、その他にいわゆるデフレ対策ということで、資産デフレ対策だと思いますけれども、相続税あるいは贈与税、金融・証券税制及び土地税制といったものの減税が盛り込まれているのですけれども、減税という観点からすると、そういう企業向け、法人関係、相続、贈与税ということですから一部のいわゆる資産家に対する減税。一方で、これから論議させていただきますけれども、本当に一般庶民に対してはこれはもう広範囲な増税になっているわけですね、今度の予算は。
 そういうところで、全体の構図そのものも非常に問題だと私は思っていますが、特に、大衆課税となっております酒、たばこ、これについて、今の全体像の中で、一体どうしてそういうことになっているのか、まずその基本的な点から大臣にお尋ねをしたいというふうに思います。
塩川国務大臣 大体一九九八年ごろに大減税をしたことがございました。それ以来、調整的な減税もしてまいりまして、景気対策のためにということで所得税を中心として減税をいたしましたけれども、それはやはり相当財政上の圧迫要因になっておることは事実でございまして、それをある程度修正させてもらいたい。その修正も、所得税全般についてではなくして部分的に、均衡を保つように、いわゆる空洞化したものに対する措置として、今回配偶者特別控除等一部を修正させてもらうことにしたのでございます。
 そのほか、増税として、先ほどおっしゃいますように大衆課税としての嗜好品に対する増税がございましたけれども、この部分については、確かに私たちも被害はあるだろうとは思っております。それは当然あるのでございますけれども、しかし、現在の国民総所得から見たら何とか勘弁していただける範囲内ではないかということで、ごく少量のところの増税に踏み切ったということでございます。
 特に、発泡酒につきましては、いろいろと議論がございますけれども、酒類間の調整をしたということが一つございますのと、発泡酒は確かに開発のために必要な投資もされ苦労もされましたけれども、業者に聞きますと、ほぼ操業や開発利益は大体埋め尽くしておるようなことも聞いておりますので、そうならば、各種酒類間の均衡を保つために若干手直しさせていただいたという程度でございます。
 したがって、大衆課税という大きい負担ではなくして、調整を主としてしたということで御認識いただければと思っております。
城島分科員 今、特に発泡酒から入られましたけれども、開発費用が大体賄えたというのは一体どういうことなのかよくわからないのです。
 いわゆる酒類間の調整ということをおっしゃいましたけれども、そうであれば、どだい、ほかの、たばこのときも一部説明があったわけですけれども、海外との比較なんということをよく言われますが、そうすると、ビールにおいては極めて高い税率になっているわけなので、そうしたら、発泡酒に合わせればいいじゃないですか、いや、本当に。酒類間の調整であれば、全体のバランスをかけてやれば、別にビールの方に合わせてしないで発泡酒の方に合わせればいい。
 まして、やはり今もちょっと大臣もさりげなく触れられましたけれども、本当に企業努力というのは、私も長い間民間企業にいたからわかりますけれども、こういう状況の中では必死になって開発するわけじゃないですか。それが、一定のところまでいくと何となく全体の土俵をさっと変えられて、まさにお上の判断でこれが増税になる。
 現場では、生産する現場というのは、御承知だと思いますけれども、五十銭単位のコストダウンをやっているわけですから、それが一気にこういうことで、ほんの少々なんておっしゃいますけれども、これは、そうした民間活力の、まさに小泉内閣がよくおっしゃっているじゃないですか、民間活力を阻害する最大のやり方ですよね、このこと自身が、というふうに思うんですけれども、合わせるんであれば、発泡酒側にビールの方を合わせるということが必要じゃないですか。
大武政府参考人 大臣の前に、一言御説明させていただきます。
 現在、我が国で消費されている酒の大宗が、御存じのとおり、実はビールでございまして、平成十五年度の予算における酒税収入、約一兆七千億円のうち、五五%がビールからの税収、九千億円となっておるわけでございます。そういう意味では、ビールの税率を引き下げるということは、大変大きな減収をもたらし、かつ、現下の厳しい財政状況を考えますと、そうした減税を行うことが困難だということを御理解いただきたいと思います。
 なお、家庭のビールの消費の大半を占める缶ビールの希望小売価格に対する酒税負担の割合というのは三五・六でございますが、これら、確かに、度数でいえば他の酒類より高いことは事実ですが、全体のいわば製品として見ると、他の酒類より高い水準にあるといっても、しょうちゅうなどの負担に比べますと、必ずしも高過ぎるということでもないように思っているわけでございます。
城島分科員 それともう一つ、問題なのは、この発泡酒の市場構成比を見てみますと、圧倒的に家庭なんですよね、いわゆる庶民の皆さんが家庭で飲むのが発泡酒。そして、ビールそのものは、もちろん家庭でも飲みますけれども、いわゆる料飲店というところで飲む比率も極めて高い。本質的にやはりちょっと違うんですよね、これは。単なる、製品の味がもうほとんどビールと同じだというようなことではなくて、まさに庶民のビールというんでしょうか、ということで、きちんと、そういう面ではジャンルが違っている。
 圧倒的に、もう九割以上が家庭用市場で売れているのはこの発泡酒ということですから、そういう面でいいますと、ますますこの発泡酒の増税というのは、それこそ家計に直結しているという大きな問題があるということなんですよ。
 ですから、単純に、何かビールと同じようなものだからというようなことで上げていくというのは、もう市場の構成と定着度からいっても、基本的には、役割というか、その性格というんでしょうか、市場が全く違うということの観点が抜けているんじゃないでしょうか。いかがですか。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 先生御指摘のとおり、発泡酒は確かに家庭で飲まれているという割合が非常に高いことは事実でございます。ただ、ビールも、実は缶ビールはかなり家庭で飲まれていて、瓶ビールは事業用で専ら飲まれる、こういうような形になっているのかと存じます。
 発泡酒の消費実態につきまして、十三年分の家計調査によりますと、発泡酒自体はあらゆる所得階層で飲まれておりまして、収入が最も小さい階層の発泡酒の消費を見ても、実は他の階層より少ないか同程度となっておりまして、全レベルの方々が飲んでいるものでございます。最近一年間の消費状況ですと、やはり収入階層が高いほど発泡酒の消費支出の金額も多くなっているということが読み取れるかと存じます。
 また、今回の酒税の見直しで、個々の家計にどのような影響を与えるか、これは飲み方によって、人によって違いますので、平均値が余り意味があるかどうかわかりませんけれども、平均をとると、一世帯当たりの年間の負担増は約六百円というようなことになっているのかと存じます。
城島分科員 そういう点はあるかもしれませんが、少なくとも、最初申し上げたように、今回の予算の全体像でいうと、まさしく、ある面で、所得の少ない庶民層に対する増税というもの、そして比較的富裕層に対する減税というような、まさしく弱者いじめというんでしょうか、そういうことがこの全体の税体系の中に、今回の予算案の中にあるんではないか。
 そういう観点からすると、本当は一層消費をふやさないかぬ、経済をよくするには最大の六割の個人消費をという中で、そうした観点も含めてみると、経済に対してもそうですし、公平性という観点からしても逆行するんではないかという感じがして仕方がないんですね。
 今回の、例えば、今、中心的にはお酒の論議をしていますが、これは経済に悪影響を与えないんですか、大臣。
塩川国務大臣 現在の日本の経済のスケールからいいまして、そう大きい影響を与えるというものじゃない。しかし、心理的に愉快なものではないということは十分理解できますけれども、これはしかし、現在の財政状況等を踏まえて御辛抱していただきたいと思っております。
城島分科員 やはり大臣、いつの間にか庶民感覚がなくなられていますよ。今、可処分所得が毎年減っているんですから、可処分所得そのものも。減っている中で、まさに庶民としての発泡酒、いわゆる庶民としての発泡酒に真っ先に増税を図っていくということ。
 それから、酒に関しては、酒類間の調整を図ったということですけれども、先ほど当局から話はありましたけれども、それにしても、諸外国と税率を比較しても、ワインなんというのはもうべらぼうに高いわけでありまして、全体的に見ても、これ以上高い税率を酒類にかけていくということは、やはりそのこと自身が逆行であって、調整するんであれば、低い方に調整するんだったらまだわかるんですけれども、これ以上、高い税率を上げる段階にはない、まして、今の経済状況からいってもないというふうに私は思います。
 それから、あえてもう一回言っておきたいのは、特に発泡酒については、こうした企業努力というのを一体どういうふうに政府は考えるのかということにおいては、本当にこれは疑問ですね。企業が今懸命になって生き残っていこうというところに、いろいろな点で、積極的に、しかも市場に受け入れられる、そういうものを開発していくというものに対して、それが少し成果が出てきたという段階になって、ルールを変える。まして、今回みたいに課税をする。これは全く、小泉さんが言ういわゆる官から民へという流れも含めてでありますけれども、言っていることと現実の政策が全く逆の象徴的なことじゃないかというふうに思いますね。
 こういうことを含めてみて、私は、増税した分が税収増につながることは期待どおりにはいかないというふうに思っておりますが、これは、この部分において、本当に税収増になるというふうに見られているんですか。
大武政府参考人 お答えをさせていただきます。
 我々で計算させていただきましたところで申し上げますと、酒類間の税負担格差の縮小によります税収増、一応、平年度ベースで約七百六十億円ぐらい見込ませていただいています。その算出に当たりましては、発泡酒の税率の改正に伴います小売価格の上昇によりまして、発泡酒の需要が確かに先生言われるとおり減少する一方で、やはり減少分の一部はビールその他の酒類へシフトするということが見込まれるかと存じます。
 具体的には、発泡酒の課税数量、改正がない場合に比べまして、これは、発泡酒の飲用動向と発泡酒の増税に関する調査報告書、発泡酒の税制を考える会という、発泡酒の増税反対と言われるところがアンケートをとられた、そのデータも実は利用させていただいているわけです。それによりますと、約九%ぐらい落ちるだろう、他の酒類は逆に課税数量が若干増加するだろう、そういう前提で計算させていただいているところでございます。
城島分科員 最後に、これはぜひ大臣に念頭に入れて検討していただきたいんですけれども、いわゆるお酒の、酒類の業界、これは製造業者は九割が中小業者なんですね。清酒及び合成清酒の製造業者の九割は、今申し上げたように中小零細業者。ここの一社当たりの生産数量とかあるいは経営規模というのはまさしく小さくて、経営基盤というのは非常に脆弱になっているということでありますから、こうした状況で、なおかつ市場状況が厳しい中で今回の増税が実施される、すると当然、私が先ほどから言っているように、消費は落ち込んでいくということになって、経営悪化というのは避けられない。
 そうしますと、そこの雇用問題も非常に厳しいものになっていくんじゃないかというふうに思うわけでありまして、増税するのであれば、やはりそういう点に対してもぜひ念頭に置かれて、配慮する点をきちっと検討していただかないかぬなというふうに思います。これはやはりきちっと、大臣、そこも念頭に入れておいてください。よろしいですか。
塩川国務大臣 できるだけ検討の材料にはなりますけれども、しかし一方、財政を維持するために、それじゃ増減税のバランスをどこでとるかということになりますと、どうしても一応各税種間、税の間でひとつバランスをとらなければいけない、そしてまた、各税の中においても負担者の均衡を図るということが必要でございますので、十分に、できるだけ大衆課税はよくないということは承知しておりますけれども、しかしながら、事実上そういう事態にならざるを得ないことも、ひとつまた御了解いただきたいと思います。
城島分科員 ちょっと大臣答弁は不満ですね。もっと時間があればやりたいんですが、もっと切り込むところはいっぱいあるわけじゃないですか。この前も、財金のあれを見ても、道路特定財源の問題だってそうですよ。言い始めたら切りがない。だから、そういうやることはまだ先にある中でこういうところに来ていることについては、私は依然として納得できない。
 それから、もう一点重要なのがありますから、次に、たばこの増税ですね。
 これは、実は先日は本会議で私はびっくりしたんですけれども、大臣答弁、ゆめゆめ財務大臣がお答えになっているとは思わない発言がありましたけれども。財務大臣ですからね、学者や評論家が言っているわけじゃないですから。もう一度、このたばこの増税についてきちっと、なるほどという背景を大臣から御説明いただかないとなかなか納得できない答弁だったなと。
 もう一度、冷静に国民に向かって御説明いただけますか。特に、たばこを吸っている人は何だかんだいっても三千万人いらっしゃるわけで、その人たちからいただこうというわけですからね。
塩川国務大臣 今回、たばこにつきましては、一本につき一円の増税をお願いすることにいたしました。
 これは、国の財政上の問題としてたばこに御負担を願うということにしたんですが、同時に、要するに、世界的に禁煙運動というものが奨励されておりますので、そういうことも込めてひとつ御了承賜りたいと思うて、一円の値上げに踏み切ったということであります。
城島分科員 御趣旨は、私があれするわけではないですけれども、要するに、財政が大変厳しいからぜひ御理解いただけないかということですね、たばこについても。
 それは率直にそういうふうに言っていただかないと、少なくとも今、財務大臣、一方でたばこ関連で働く人たち、例えばJTの企業はまさにそうですけれども、三分の二の株主ですからね、国は。最大の株主ですよ。そして、そういう分煙とか節煙とか、これは当然そういうことは必要でしょう。共存していくという施策は、政府もやはりやっていくべきですよ。
 しかし一方で、財源として求めている話ですから、しかもそれはいただくわけですからね。それが、そういう例えば禁煙云々、あのときはそれが何かメーンみたいだったですから、それは余計なお世話だということになりますよ。税金をいただくのに、そのために、皆さんの禁煙の運動を手助けするために上げましょうなんて、それは余計なお世話だ、払う方からするとですよ。
 ですから、やはりそれは財源が極めて厳しいということなので、なかなかこういう状況を御理解いただきたいということなら、それはそれとして、それとしての論議ができるわけでありますから、そこは一応きちっと確認をまずさせていただいたということであります。
 それにしても、この部分も、先ほどのある面でいうと、まさしく酒類、特に発泡酒と基本的には同じで、まさにこれは、さはさりながら大衆課税、三千万人に対して増税をするわけでありますから、これはこれとして大変大きな問題が、私は、先ほどの発泡酒と同じように、筋違いだ、やることがまだいっぱいあるという中で大衆課税というのは基本的におかしい。取りやすいところから取るということ以外に、ここは何にも哲学が見えてこない。まして、ああいう答弁をされれば、一体何を論議してこれをやられたのかなというふうに思わざるを得なかったわけであります。
 しかし、今状況を見てみましても、今回恐らくこの増税で、今の国内におけるたばこの状況は、大臣がおっしゃるまでもなく、たばこの生産する側からすると、やはり厳しい状況になっているわけです、それでも。
 今年度も、調べてみますと、ことしも既に五十億本以上減少しているんですね。三年間で見ますと、百七十億本以上も減少している。しかも、ちょっとここが、よくよく見ますと、いわゆる日本たばこの、国産のものの減少が大きいわけですよ。輸入物というか海外産のものよりは、それは大きいということの中で今回の増税を行われると、一方で、やはりたばこ関連産業で働いている方々、ここに対する影響というのはかなり大きなものがあるのではないかというふうに思うんですね。
 大臣はおっしゃいましたけれども、そういったことも含めて見たときに、これは発泡酒のときもそうですけれども、そういう厳しい状況の中でこの一本一円値上げをする、これは増収になるんですか。どういうふうに見られているんですか。
大武政府参考人 お答えをさせていただきます。
 たばこの今回の措置につきまして、一つは中長期的な面と短期的な面とあるかと思います。
 やはり、たばこ税の税率引き上げに伴いまして、過去何度か小売の定価改定を行わせていただいているわけですが、過去の経緯から見ても、値上げ直前の仮需の反動あるいは需要減ということで、先生言われるとおり、ある程度の販売数量の減少が生じるということかと思います。
 過去の定価改定時における需要減等を勘案すれば、御指摘のような、ただ大幅かどうかというのはわからないですが、いずれにせよ、今回私どもの推計といたしましては、一応二%程度減少するだろうということで、当面、来年度の税収、平年度千百億ぐらいの増収を見込ませていただいているわけです。
 ただ、中長期的にということになりますと、これはどういう影響を与えるかは、やはり経済情勢あるいは喫煙環境など、たばこをめぐるさまざまな要因に左右をされるわけでございまして、中長期的にはどういうふうになっていくのかというのはまだ見切れないということかと存じます。
城島分科員 先ほど言ったように、現段階においてのたばこの状況というのはかなり厳しいものがありまして、昨年、例えばJTでいうと、国内で二十五工場のうちに八工場閉鎖になっているんですね。正確に言うと八工場の廃止を決めたということであって、今回の増税でさらにこの部分について、工場閉鎖ないしは雇用にこれも極めて大きく影響を与えるんじゃないかという不安感が広がっているわけであります。先ほど言ったように、ある面でいうと最大の株主である財務大臣でありますから。
 こうしたことからの、たばこ関連で働く人たちの不安感、あるいは葉たばこ業者もそうでありますし、あるいは販売をしている人たちもそうでありますけれども、こういったところの人たちに対しての影響というのも一方ではあるんですよね、この問題は。そういったところに対して、大臣は一体どういうお考えを持たれているのかな、どういう感想を持たれているのかなということはぜひ聞いておきたいものだというふうに思うんですが、大臣、いかがですか。
大武政府参考人 事実関係を先に御説明させていただきます。
 もう先生十分御存じのとおり、たばこは、やはり特殊な嗜好品としての性格がございまして、従来から他の物品に比べて高い税負担をお願いしてきているわけでございまして、その意味では、我が国の税体系において重要な役割を果たしている、これはむしろ諸外国においても同様という状況かと思います。
 なお、今回の引き上げ、先ほど大臣、一本一円と申されましたけれども、実質的には一本〇・八二円ということにとどめさせていただいて、そうした三K業界ということも考慮させていただいているところでございます。
城島分科員 いずれにしても、今回の酒類、特に発泡酒、たばこについても、それぞれ負担をする人からして、なるほどと納得できるような答弁が、私、率直に言ってないなと。
 公平性とかあるいは今の社会状況とかいったところからいって、どう見ても簡単に取れるところから取ろうというようなことしかどうしても聞けないし、一方、そういう状況の中で、これを負担する側、家計であり、あるいはそれを支えている産業で働く人、この人たちからすると、極めて強い不安感が出てくるという影響が大きいわけでありまして、こういった状況の中で、やはり、この二つの象徴的な大衆課税というのは、私は本当に問題があると思うんですね。
 今後、こういったことについてやはり本当に慎重に検討していただかないと、どんどん不公平感が出てくる。それから、ある面でいうと、公平性を欠いた中で、そこで働いたりする人たちに対する雇用とかあるいは不安感が増す、不公平感が増すということに一方的になっていってしまうというふうに思うんです。
 もちろん、先ほど言いましたように、これからの中では、特にたばこについては、吸う人と吸わない人との共存というのは必要ですから、そういった政策はきちっとやっていくべきだと思うんですね。
 ですから、そういった面に、例えば極端に言うと、今回、反対でありますが、一円上げる、何のために、何に使うのかというとき、ちゃんと例えばそういうところに使うなんという話が出てくればまだしも、発泡酒にしてもたばこにしても、一体、上げたものを何に使うんだ、負担した方からしたら何に使われるんだと。特に、たばこは、旧国鉄の長期債務にも使われているわけですよね。そうしたことも含めてきちっとした、やはり、納める側からしても、それを支える側からしても納得いくような、そういう論議の中で出てきてほしいものだと思うんです。
 大臣、最後に申し上げたいんですけれども、先ほどもちょっと私触れましたけれども、今回のこの全体像からいって、大衆課税、率直に言うと、とんでもない判断だというふうに思っていますよ。
 これは、六割を占める個人消費に対しても、あるいは本当に庶民に対しても直撃をする、その懐に手を突っ込む話でありまして、まさに財政再建のいい先人たちがいるわけじゃないですか、かつてでも日本には。恩田木工とかあるいは上杉鷹山とか。まず何からやったかというと、隗より始めよじゃないですか。
 そうしたら、この前の財金の論議でもありませんけれども、やはり政府みずからがきちっとメスを入れるところをまずやって、そして、それでも足りないからといってお願いをする、国民の共感的理解を得るという状況をつくることが僕は先ではないかと。その面については、全然改革にメスが入っていないという中で、財政の帳じり合わせみたいなことで、ほかの社会保険なんかも一部そうなんですけれども、大衆に、本当に一番弱いところに負担だけが行ってしまい、まして雇用不安も出てくる。もうとんでもないことだ。
 私は、逆さまだ、順番が逆だということを強く申し上げて、こういうような形での増税はぜひ避けていただきたいということを強く要請をして、終わりたいと思います。
杉浦主査 これにて城島正光君の質疑は終了いたしました。
 次に、鮫島宗明君。
鮫島分科員 民主党の鮫島宗明です。
 ずっと野党の中でBSEの問題を担当してきたものですから、やはり、この問題を最後までフォローしなければいけないなというふうに思っています。
 今、WTOで非常に厳しい交渉を皆様方がおやりになっていることは、よく存じ上げています。アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドあたりが強硬な国だと思いますが、彼らの持っている最大の弱点は、京都議定書に加入していない、環境問題に後ろを向いているというところだと私は思いますので、多分、WTO交渉にそういう視点を持ち込むと、少し行き詰まっている状況が開けてくるんではないかというふうに思います。私は政府のメンバーじゃないので、これ以上の知恵は出しませんが。
 牛肉のセーフガードについても、ある種、国内産業の保護、公平公正な国際取引という考え方から輸入牛肉のセーフガードの措置があると思いますが、一九九四年ガット第十九条のセーフガード協定及びWTO農業協定第五条に基づいて、セーフガードの措置がとられている。
 今、BSEの発生で、平成十三年の十月、牛肉の消費が平年値に比べて四二%まで落ち込んだんですよね。牛肉関係のビジネスの方々は皆、大変お困りになったんですが、その後、政府の適切な対応もあって、今、市況は徐々に回復しつつある。直近の数字でいいますと、一人当たりの牛肉の消費量が八三%ぐらいまで戻ってきている。これは、国産牛の方が戻りが早くて、輸入牛肉の方が少し戻りが遅いというのが現実です。
 ところが、今、四二%と落ち込んだのが八三%まで戻りつつある過程の中で、輸入牛肉も、それは、一番落ち込んだときと今と比べれば、輸入量がかなりふえたという扱いになる。そうすると、WTOの協定の中に、対前年比で一一七%以上ふえたら関税を三八・五から五〇%に上げることができますよという規定があるんですが、それに基づいて今政府が上げようとしているわけです。
 多分、平成十五年度の上四半期、四、五、六月は対前年と比べて一三〇%ぐらいになるでしょうから、これは自動的に上がることになるんですが、もともと、こういう関税措置はどういう目的で考えられたのか。つまり、今のようなプロセスの中で、消費の回復過程で戻っていくということについてかけるべきものじゃないだろうというのが私の考えなんですが、そもそも、この関税というのはどういう目的で課せられるのかということをお伺いしたいんです。
北村副大臣 委員から、BSEの関係から発して、関税の目的がどうなんだという御質問だ、このように思います。
 委員、御理解をいただいていると思いますが、関税というのは国際的に認められている国境措置であると思います。そういう面では、それぞれの国の中にあります国内産業の生産条件の格差を考慮する、あくまでも国内産業を保護することを主たる目的としているというふうに理解をしております。
 そして、指摘のございました牛肉の関税については、我が国の国民の方々の動物性たんぱく質の重要な供給源である、そして我が国農業の基幹部門として重要な位置を占めている、この肉牛生産、これを保護するために課せられているものである、このように認識をしております。
鮫島分科員 先ほど申し上げた一九九四年ガットの協定及びWTOの協定の際に、こういうBSEの発生というのを想定していたんでしょうか。あるいは、BSEじゃなくても口蹄疫でも何でもいいんですが、とにかく、不測の事態で、消費が平年の五割以下に落ち込むような異常な事態というのを想定していたのかどうか。
松原政府参考人 ウルグアイ・ラウンド交渉におきまして、この関税の引き下げの代償措置として、牛肉の輸入量が急増した場合において認められる国境措置ということで、牛肉の関税の緊急措置、これが認められたわけでございますけれども、これにつきましては、関係国と交渉する段階におきまして、BSEの発生後に見られたように、牛肉の消費が五割以下まで低下いたしまして、これに伴いまして輸入が大きく減少するということを想定しているわけではございません。
 しかしながら、輸入が減少いたしまして、その低い水準から急激に輸入が増加すれば、やはり国内産業に影響が及ぶことが予想されるものでございまして、本措置は、そのような場合にも適切に機能することが強く期待されている措置であるというふうに考えているところでございます。
杉浦主査 松原さん、質問は違うんだよな。もう一回お聞きになってください。
 鮫島君。
鮫島分科員 いや、僕は時間がないんです。とにかく十時に切り上げなくちゃいけないんです。
 計数にかかわることは参考人が答弁したいと言うので、短く正確に答えるなら私は結構ですと言ったんだけれども、今のようなことだったら困るんで、後は全部、北村副大臣にお伺いいたします。
 要するに、関税の目的は、国内産業の保護というのはよくわかりました。それから、そのときに、ガットの、あるいはウルグアイ・ラウンドの交渉の中で、五割以下にまで消費が落ち込むようなことを想定していましたかというふうに今聞いたんですが、答えていないんですが。
北村副大臣 委員御指摘のとおり、このときにはBSEが発生するなんということは、それは全くこれを予測して決めたわけではない。しかし、それぞれの社会状況の中で上がり下がりがあるということは、これは予測はしていたということであります。
鮫島分科員 輸入量がふえたから機械的に関税を三八・五から五〇に上げます、これが一番起こり得る可能性は来年の七月からがこのことが起こり得るんですが、先ほどその関税というのは国内産業の保護育成というふうなお答えでしたが、今のような環境の中で牛肉の関税を三八・五から五〇に引き上げると、生産サイドにどういうプラスの効果を持つのか、説明していただきたい。
松原政府参考人 国内の肉用牛の生産者の状況についてでございますけれども、昨年十一月は米国の港湾ストの影響で一時的な品薄感もございまして……
杉浦主査 ストレートに、簡潔に答えてください。
松原政府参考人 失礼いたしました。
 BSE発生直後に前年比で四割前後の程度の水準まで低迷してきた牛肉消費の動向も次第に回復してきているわけでございますけれども、依然として、委員が御指摘のとおり、昨年十二月でまだ八三%というような低い数字にとどまってございまして、肉用牛生産者の経営にとりまして、必ずしも明るい展望を見出しがたい状況にあるわけでございますので、こうした中で輸入が急増した場合に、国内の肉用牛生産者の経営に影響を与えるということは必至でございますので、この関税の緊急措置につきましては、そういった影響を緩和する効果を持っておるというふうに考えておるところでございます。
杉浦主査 政府関係者の答弁は、要点を簡潔に。先生は環境委員会があって急いでおりますから。
鮫島分科員 輸入牛肉と国産とのすみ分けというのが今はできていて、しかも今、国産はほぼ一〇〇%戻っている、輸入牛肉はまだ七五%程度にしか戻っていないという中で、この輸入牛肉の世界をさらにいじめてみても、国産牛にとっては、生産サイドにとっては、私は何のプラスの効果もないと思います。
 ただ、今の国産牛の子牛の値段が非常にいい値段がついていて、このメリットというのを維持したいというのはあるかもしれませんが、じゃ、消費者側にとってこの三八・五を五〇に上げることはどういうマイナスが働くというふうに思っていますでしょうか。
松原政府参考人 私どもが関係者から聞き取ったところによりますと、スーパーなどの量販店におきましては、一般に、通常から、為替変動などによります一〇%程度の仕入れ価格の上昇というものを商売上のリスクということで小売価格の設定時に既に織り込んでおるということでございまして、八%程度が実質的には輸入価格が上昇する、仕入れ価格の変動というふうに見てございますが、これを流通段階で吸収いたしまして、比較的安定した価格で消費者に販売されるということで、大きな影響はほとんどないのではないかというふうに見ております。
鮫島分科員 そうすると、今の答えは、三八・五を五〇%に上げてみたところで、消費の落ち込みもないし、輸入量の減衰もないという答えでいいんですか。
松原政府参考人 消費者に対する価格の影響はほとんどないということでございますけれども、輸入量の急増ということで、先ほど申し上げたように、牛肉の生産段階におきましては大変深刻な影響があるのではないかというふうに考えておるということでございます。
鮫島分科員 ちょっと答弁がずれていますが、流通、消費サイドにとってどういうマイナスがありますかと。これはマイナスがないとセーフガードの意味がないんですよ。だから、必ずマイナス、消費を冷え込ませる効果がこれだけありますと、そのことが国内生産の保護育成につながるという話がないと、何のためにこのセーフガードを発動するのかということになるので、流通、消費サイドにどれだけの抑止が働きますか、金額に換算してどのぐらい働きますかという質問ですから、ちゃんと答えてください。
松原政府参考人 例えば外食産業などにおける牛肉を使った食材につきまして、一部での材料にコストが上がってくるということがあるというふうに考えておるわけでございますけれども、そういったものが実際の販売価格にどれだけ転嫁するかということはなかなか測定しがたいことでございまして、全体といたしましても、消費者への影響、どのぐらいになるかという金額をお示しするのはなかなか困難というふうに思ってございます。
鮫島分科員 極めて、農水省は基軸を生産サイドから消費サイドに移す、食品安全行政も確立しますと言っていながら、消費者サイドの方が全く見えていない。
 例えば、最大手の牛どん屋さんの計算ですと、三八・五から五〇%にすると、そのことで業者が失う利益が単年度で十億二千万、そういう計算もあるわけです。逆に、価格転嫁しようとすると、牛どん一杯当たり十円乗せなくちゃいかぬ。このことは、牛どんだけ上から見ていると牛肉ですが、下にいっぱい米があって、これは国産のお米が使われているわけですが、関税を上げて牛肉の消費を冷え込ませると、米の消費の減退にどういう連動的な影響があるかは計算していますか。
松原政府参考人 ただいま委員より牛どんの価格、十円アップというふうなことの例を引いてお話しになったわけでございますけれども、牛どんの価格が上昇いたしまして消費が減少いたしましても、その消費が他のどんな食材に振り向けられるかということによって米の消費と動向は左右されるのではないかと思ってございます。
鮫島分科員 ちょっと何となく、全然答弁になっていない。牛どんの構成をよく見ると、大体、重量比で一対一なんですよね、具と米が。だから、肉が五トン減れば米も五トン減るということで計算はできますし、輸入牛肉を落としたつもりが米の消費まで落としちゃうということも十分視野に入れて発動をしないといけないと思いますよ、もし発動するなら。私は反対ですが。
 それで、特別セーフガードを決めている条文が、オリジナルは英文になっているんですよね。それで、WTOの事務局、ガットの事務局にそれぞれ出されているわけですが、そのオリジナルの英文と、それから今、特別セーフガードの仕組みを規定した日本の法律の条文とが、一つの言葉のところだけ違う。ほとんど直訳、逐語訳に近いんですが、英語の方では、輸入量が前年に比べて一一七%を超えたときには、税率の変更をメイ アプライと書いてあるわけですよ。変更をすることができる、してもよろしいという書き方になっているんですが、日本語の文章では、メイを外して、「第二条の規定にかかわらず、同表に定める税率とする。」というふうに、メイを外した訳になっているんです。
 この英文のオリジナルの条項と、日本の法律の第七条の五との関係というのは、どういうふうに理解すればいいでしょうか。これはある意味、見方によっては、日本の得意な翻訳外交、英文を日本語にするときに微妙にひねって変えるということじゃないかと思いますが。
田村政府参考人 お答え申し上げます。
 違いの点につきましては、ただいま先生がおっしゃられたとおりでございまして、ガットに通報した文書におきましては、メイ アプライ、適用することができると書いてあります。つまりこれは、我が国として緊急措置の権利を有するということが表明されているというふうに考えています。
 一方、この協議の結果を受けて制定された私どもの国内法、関税暫定措置法の第七条の五でございますが、これにつきましては、これも先生のおっしゃるとおり、確かに、輸入数量が一定の水準を超えた場合には、譲許税率であります五〇%とするとされております。いわば、自動的に緊急措置が発動される規定となっているわけでございます。
 この間の関係につきましては、関係国との協議の結果を受けて、発動のためのその手続や要件を国内法令においてどのように規定するか、これはいわば我が国が主体的に判断することでございまして、その範囲内でございまして、緊急措置がいわば、今でも、本来の譲許税率は五〇%でございますが、これをさらに関税率を自主的に引き下げたことの不可欠の代償としたことにかんがみまして、一応、協議で定められた要件を満たした場合は自動的に発動する仕組みとする、これも我が国の権利に含まれるものである、そのように考えております。
鮫島分科員 いや、私が聞いたのは、なぜメイを外したんだということが聞きたかったんですが、まあいいです、また長くなるから。
 先ほど私が、牛肉の消費が平年に比べて、十三年の十月は四二%まで落ち込み、直近の数字では八三%まで回復していますというのは、これは総務省の家計調査なんですが、このもとのグラフは農林水産省が作成したと聞いていますが、それでいいんですか。イエスかノーかだけで。
松原政府参考人 おっしゃるとおりでございます。
鮫島分科員 これは、折れ線グラフになっていて、対前年同月比で肉の消費がどの程度回復していますというのを示している、農水省が使っている説明資料の一ページなんです。対前年同月比というところが、例えば、平成十四年度の動きなんかを対前年同月比というと、平成十三年のBSEが発生した異常年ですから、変な数字になっていて、対前年同月比をとると何だかわからない数字になっちゃうというので、農水省の方も、十三年九月以降の購入数量はBSE発生により低下していたため、十四年九月以降は、対前年というのを十二年同月比を用いたというふうに書いてありまして、私は、この方がもちろん真っ当な数字だと思いますが。
 当然、関税を変える場合も、これまでと輸入が急増したかどうかというときに、前の年の、異常年の数字に基づいてやるのではなくて、平年ベースの、通常年の数字との比較でやるのが常識だと思いますが、課税当局は、その点、どういうふうにお考えでしょうか。
田村政府参考人 この緊急措置の一番のポイントは、基本的に、我が国の牛肉に対する譲許税率は五〇%だけれども、しかし、自主的に三八・五%まで下げる、しかし、それのいわば代替措置として、一定の、一七%以上ふえれば、一七%を超えればもとの譲許税率に戻しますということで、いわばその二つがパッケージとなっているということが、やはり何を考えるにおいても一番のポイントだと思います。
 そこで、それをパッケージというのは、その合意として決まった、その場合に、確かに先生がおっしゃっているように、BSEというのは非常に特殊な緊急事態であることは、それはもうそのとおりだと思いますけれども、一応、その議論の中で、前年比と、もちろんその中には平常年比とかあるいは三年平均比とか、いろいろな議論はあると思いますが、前年比として決められた、その合意を合意として、きちっとそのパッケージの趣旨を生かして条文に入れている、こういうことでございます。
鮫島分科員 パッケージという趣旨はわかりますよ。しかし、余りに理不尽な、非常識な適用の仕方をすると、私は今のWTOの交渉にも影響すると思いますよ。日本という国は、非常に感情的、幼児的に、機械的に適用をして、一切、状況判断をしない国なんだと。
 私は、さっき、日本文では英文のメイが外れていると言いましたが、この日本文、実は、日本では合意を受けてこういう日本語の内容の法律をつくりましたということが、交渉相手のアメリカにも、カナダにも、オーストラリアにも、ニュージーランドにも伝わっていないですよね。私は、きょうの昼もカナダ大使館から呼ばれて、この件について政府にかわって説明しなくちゃいけないんですが。先週は、オーストラリアの大使も来ましたし。そうしたら、みんな知らないんですよ、この日本語を。英語とは逆に、このメイが外してあるということを。
 だから、そういう意味では、こういう環境の中で日本が自動発動するというのはなかなか理解が得られないのではないかというふうに思います。
 この関税が、先ほどから国内産業の保護育成というふうにおっしゃっていますが、じゃ、これ、関税局にお金が入って、このお金はどこに回るんでしょうか。これが国内生産の保護育成に使われるということが、どう法律的に担保されているのか、わかりやすく、短く説明してください。
松原政府参考人 牛肉の関税収入の使途につきましては、肉用子牛生産安定等特別措置法の第十三条におきまして、農畜産業振興事業団が行う肉用子牛生産者補給交付金等の交付業務や、食肉等に係る指定助成対象事業業務に必要な経費に支出をするほか、国が行います肉用牛生産の合理化でございますとか、食肉の流通の合理化その他畜産の振興に資する施策に必要な経費の財源に充てることができるというふうにされておるということでございます。
鮫島分科員 そうすると、普通に考えると、じゃ、関税収入の、さまざまな事務手続料を引いた分、つまり、過半がそちらの事業団の方に行って、牛肉生産の保護育成のために使われる、そういう解釈でよろしいんですか。つまり、常識的に考えれば、この関税のうちの八割、少なくとも八割ぐらいはそういう資金として生かされるという解釈でよろしいんでしょうか。
松原政府参考人 指定助成対象事業等につきましても、必要な予算を査定した上で、しかるべき手続を経て交付金ということで措置をしているということでございます。
鮫島分科員 いや、私は、このお金が何に使われるかは割合大事なんですよ。つまり、消費者としては全く納得できないわけですよ。こんなに低迷して、少し戻りかけたら関税をぼんとかけるということは、消費者側から見ると全く納得できないので、どう使われるのかと。財務省と農水省と折半にしちゃうとか、そんな話じゃない。今のように、ちゃんとした法律があるんだから、少なくとも八割以上はちゃんと生産の育成に使われますということぐらい、はっきり言ってもらわないと納得できないですけれども。
松原政府参考人 牛肉の関税収入でございますが、先ほど申し上げましたように、食肉の流通の合理化といったことにつきましても、施策とその関連の施策に使われておるわけでございまして、食肉の流通コストの削減でございますとか、あるいは品質の維持、安全性の向上等といったようなことで、消費者の方々にも裨益するようなことで使用されているというふうに御理解をいただきたいと思います。
鮫島分科員 定量的な質問をしているので、定性的な答弁は意味がないんですが、何でそういうふうに変な答弁しかできないのか不思議に思いますが。
 大体聞いていただければわかるように、とにかくBSEの発生で四二%まで落ち込んだというのは異常な事態、それが戻りかけたからといって、しかも法律では一応機械的に一一七%を超えたら適用できるというふうになっているから関税を上げるんだと。これは生産者にも私は何にも影響がないと思いますよ。消費者には損害を与える、それから外食産業の業者にも損害を与える。だれが得するんだというと、結局、農畜産物価格安定事業団がBSEを利用してあぶく銭を稼ぐという、だれからも理解されない、国際社会からも理解されない、極めて異常な措置だと思いますので、ひとつ財政金融委員会の方で、こういう問題提起を受けて、余りナンセンスなことはしないように大臣にお願いしたいんですが、ちょっと感想だけ最後に大臣の口からお聞かせください。
塩川国務大臣 農水省とよく協議して、いたしたいと思います。
鮫島分科員 どうもありがとうございました。よくわかりました。
杉浦主査 これにて鮫島宗明君の質疑は終了いたしました。
 次に、西村眞悟君。
西村分科員 お願いします。
 塩川大臣、私は、今の小泉内閣の閣僚の中で一番安定感があるお方だと思っております。それは、コモンセンスがおありだ。それで私は、一番、地元でも、塩川大臣が本当にいいことを言ったんだ、日本経済活性は閣僚が、財政に責任を持つ閣僚がこういう戦略的発想を持つことだと言って、いわゆる座談会でも盛んに申したのは、大臣が一ドル百五十円から百六十円程度が適正だとの認識を示されたことです。国民が今苦しんでおる、国民は、不当なハンディの中の経済、世界経済の中に組み込まれて苦しんでおるんだ、為政者としては、そのハンディを正す、レートを正さねば、国民の汗と努力が雲散霧消するんだ、これが政府の見る視点だと思うんですね。
 大臣、前に、私の記憶では、一ドル百五十円から六十円というふうに言われましたが、その根拠をお教えいただけましたら。よろしくお願いします。
塩川国務大臣 私は、何も為替を百五十円から百六十円に持っていくべきだということは言っていないので、現在の、あの当時は百二十二、三円でございましたですが、これは購買力平価に比べて非常に高いではないかということを申し上げたんです。
 これにつきましては、やはり市場が為替を決定するものですから、これに対する人為的な介入というものは避けるべきであると。自由経済を振興しておる現在の、しかも日本が世界経済の中でいわばリーダーの一角を担っておる、背負っておるのでございますから、不当に為替を操作するということはよくないということでございますけれども、しかし、いずれにしても、購買力平価からいったらちょっと円は高いんではないかということを申し上げた。
 それじゃ、どのぐらいの価格が本当に購買力平価としていいかということは、いろいろとございますけれども、格付会社等が計算しておるのにいきますと、基礎はやはり百五十円前後じゃなかろうかという数字があるということを披露したのであって、百五十円に強引に為替の相場をそういうふうに定着させていこうという、そういう意図で申したものでは絶対ないということで御理解いただきたいと思います。
西村分科員 私はやはり、今、ちょっと相場がおかしいという御認識は示されたわけですから、その際に、逆プラザ合意的戦略的発想が為政者に必要だと。現実に、一九八五年、プラザ合意によって円は二倍に引き上げられ、我が国の製品は一挙に二倍になったわけですから。こういうことで経緯しているのが国際マネーの戦略であります。
 さて、不当に我々が為替相場をいじくるということを控えるという前提からいたしましても、我々の国際環境の中に、対外的な環境の中で、円を不当に上げるという要因があるのではないかという問題意識を持っておりますので、次、お教えいただきたいんですが、我が国は世界で一番他国に金を貸している国だと承っておりますが、その総額は幾らほどで、そしてドル建てがその中のどれぐらいの額で、円建てで貸しているのがどれだけの額かということを事務方からお教えいただければありがたいです。
渡辺政府参考人 お答え申し上げます。
 最新の、二〇〇一年末の時点で申し上げますと、我が国全体が海外に持っております資産の残高が三百七十九兆七千八百十億円となっております。
 外貨建てあるいはドル建て、円貨建てという貨幣別の内訳というのは、統計の性格上とっておりませんが、例えば、今申し上げた三百七十九兆のうち、直接投資の残高で申し上げますと、約三十九兆が直接投資でございますが、このうち十八兆がアメリカ向けになっております。また、証券投資等の残高が総額で百七十兆強ございますが、このうち米国向けのものが六十四兆。したがいまして、今申し上げました二つの数字を足しますと、八十三兆のものが米国向けということになっております。
 それからまた、それに加えまして、貸し付け、預金等もございますので、そういうものにつきまして、その他の統計等でややラフに推計させていただきますと、持っております残高のうち五割強がドル建てで、あと円貨建てが三割前後、その他の通貨が約二割ということで、多少のずれがあるかもしれませんので御容赦いただければと思いますが、大体そんな感じではないかと思っております。
西村分科員 巨大な債権のうち、半分がドル建てであるというお答えですね。
 我々がドルを借りて経済復興に励むときに、一生懸命働いて製品を生み出さなければ、円とドル、円が下がっていく、下がっていけばドルで返さなければならないわけですから、本来、借りたときの値段よりも高く返さねばならない。これが金を借りる国の、返済する責務を負った国のやるべきことなんですね。
 さて、我が国はドルで貸しておるんです。ということはどういうことになりますでしょうか。ドルで我が国から金を借りているアメリカは、円が高くなってドルが安くなることが非常に、それだけで有利になる。借りた金を、例えばプラザ合意のときに一ドル二百五十一円が一ドル百二十一円になりました。日本からドル建てで借りている金はそのとき半分なくなった、アメリカは万々歳だ、こういうことになりますね。
 さて、こういうからくりにある以上、大臣がおっしゃったように、適正なドルと円のレートには変動相場制でならない、ならない要因は我が国みずからがつくっている、私はそのように思いますが、大臣はいかが思いますか。
 というのは、我々は多額の債権を円建てに転換する努力をすれば、円で我が国から借りております国は適正な円とドルとの交換比率に持っていかざるを得なくなるのではないか。これは何も操作した、プラザ合意のようにやっているわけでも何でもない。自国の通貨で、貸してくれと言われる他国に金を貸すのは、これは当たり前のことなので、わざわざ紙切れのドルで貸す必要は全くないんだということであります。
 対外債権は、大臣が持たれる円とドルの交換比率の問題意識をにらんでも、円建てで切りかえるのが望ましい、国益にかなうと私は認識していますが、大臣はいかがか。どうぞ。
谷口副大臣 西村委員がおっしゃったことはまさにそのとおりだと思うわけで、為替変動リスクというのはなるべく減少させなければならない、これはいろいろな観点でそう言えるんだろうというように思うわけでございます。
 現状を見ますと、我が国金融機関の対外債権残高は、円建て比率が約三〇%、ドル建て比率が五〇%で推移をいたしておるわけでございます。そんなことから、従来から我が国も非居住者のところでサムライ債だとかユーロ円債市場を頑張ってきたわけでありますけれども、こういう状況の中で、このような為替変動リスクを避けるという観点での円建て取引の推進を図っていかなければならないということで、財務省で円の国際化推進研究会というものをつくっておりまして、先日、座長の取りまとめをいただきました。
 オンショア、オフショアといいますけれども、今回、オフショアの取引については、市場参加者を拡充したり、今までは金融機関だけでありましたけれども、これを生損保だとか証券会社にも広げたり、この取引を海外企業の発行しておる債券にも広げたり、またデリバティブ取引だとか我が国の国際取引だとか、こういうことにも拡大して、これからより一層円建て取引が拡大できるように推進をしていきたいというように考えておるところでございます。
西村分科員 マネー戦略というのは本当に常識に根差しておって、僕は、常識が戦略になると思っておるんですね。非常識なものは戦略になりません。後で振り返ってみれば、あれはやられた、当たり前のことをやられたんだ、当たり前のことが気づかなかったんだと。プラザ合意なんかそうですよね。だから、逆プラザ合意をやればいいんです。
 それは、今この不当な円とドルの比率、レートで打撃を受けている我が国の巨大な産業のことを思えば、ドル建ての我が国対外債権の、五割の何割かを免除してやる、だから円建てに賛同しろ、これから円で返せというふうな大胆な提案、これは言いまくってやれるものじゃないですから、迫力を持ってどうだと言うこと、これが今の政治の責務です。これによって我々の国のつくり出す製品が適正な価格で世界の消費者に供給され、我が国が正当な収入を得るならば、これは政治の責務として取り組まねばならないのではないか。
 今副大臣がおっしゃったこと、いろいろ難しいこともありました。しかし、その審議会でやるんじゃなくて政治の決断でやる、逆プラザ合意をやっていただきたいというのが私の言い分であります。
 さて、次の質問に行きますが、今、消費が伸びない、消費が伸びないと言われております。消費が伸びれば、デフレですから、経済は生き返ってていく。そのために、構造改革したら経済が回復すると言う人もある。不良債権を処理したら回復すると言う人もある。それで二年間やってきた。結果は、我々よりも一般国民が実感しているとおり。
 さて、消費が伸びない伸びないと言っているその消費はいかなる理由で増減しているのかというのを見るならば、政府統計から見て、消費は可処分所得に一貫して正比例して増減しているという結果があらわれておる。消費性向はどういうことになっておるのか。むしろ増加傾向にある。増加傾向でここまで来て、この二、三年、七五・六%でほぼ横ばいになっている。
 ということは、構造改革とかいろいろするよりも、国民の可処分所得が伸びれば、消費は確実に伸びるということではないのか。単純なことであります。可処分所得が伸びれば、消費は確実に伸びる。政府統計でもこのことが出ている。
 では、いかにして可処分所得を伸ばすのか。政府ができることは何か。これは減税ではないか。
 よく緊急事態で財政出動を政府はいたします。財政出動、これは国債であれ税金であれ、国民からいただいた金を政府が財政出動で投入していくということでありますが、直接金融、間接金融の例えで言いますならば、これは間接財政出動です。直接財政出動というのは、そもそも国民からいただかない。国民が汗水垂らして働いたものは、国民の懐にとめておいてくれ、これが直接財政出動。政府が介入しないから直接なんです。
 減税ではありませんかというふうに単純に常識から私はお聞きしたいので、常識でお答えいただければありがたい。
谷口副大臣 今、西村先生が前半おっしゃったことですけれども、消費性向のことをおっしゃったわけですが、基本的に、可処分所得と消費の動きというのはほぼ同じような動きをするわけですが、最近の消費性向が上がっておるというのは、消費性向の算出の仕方が、可処分所得分の消費ということになるわけですね。可処分所得のうちどれだけ消費に回ったかということになるわけで、これは好ましいことではないわけでございますが、最近は可処分所得が減っておりまして、その一方で、消費が下方硬直性というか、生活必需品が中心になっていますからなかなか下がらないということで最近は上がっている、こういうことがあるわけです。
 それと、減税がどうかということなのでありますが、これも将来不安、今、これから年金改革等々を行うわけでございますが、非常に急激な高齢化の中で、やはり将来の不安等がございますと、減税をした実入り分がなかなか消費に回らないというようなこともあるわけです。
 そういうことを考えますと、基本的には、やはり我が国の構造改革を推し進めていく必要があるだろう。例えば、雇用の面であるとかまた歳出の面であるとか規制の面であるとか、こういうことを進めていき、民間需要を創出していくというようなことを今やっていく必要がある。こういう観点からこのようなことを考えていかなきゃいかぬわけです。ですから、そういう意味では、おっしゃるような減税の意味合いがあるんだろうと思いますが、必ずしもそういうことではないというように思っております。
西村分科員 消費が伸びない伸びない、今おっしゃった中にもう理由は言われた。所得が減っているからなんです。単純な話なんです。だから、所得を伸ばせば消費はふえますなと私は聞いているんです。それはそのとおりだと。だから、消費を伸ばすにはどうすればいいのか。これをすれば財政が破綻するとか破綻しないとかの議論は別にして、減税ですなと言うておるわけです。
 国民の懐に不当に、あの何とか振興券みたいにわあっとやるわというんじゃない。汗水流して働いたものを、収入として得ているその収入をそのままお使いくださいよと。その消費は可処分所得の増加に比例しているじゃないですか。可処分所得がふえたら消費がふえますな。これは常識を聞いておるわけですな。
 さて、今、財政のこととか将来の不安、構造改革です、何か雲をつかむようなことを言っておる。雲をつかむような話で二年間やってきて結果が出ておると私は言っておる。結果は出ておる。可処分所得が減ってきたんですから。そうでしょう。構造改革、この二年で可処分所得はふえて、ふえているけれども将来不安で消費しませんよというのならわかる。減っておるんですから。
 ということで、次に行きます。
 いろいろの減税するには財源が要る。この財源を調達する。大臣、財源調達するにはどうしたらいいのか。一つは税や。税金を取る。これは人間、国家がある以上、もう骨身にしみてわかっておる。それからもう一つ、国債を発行する、借金するということ。もう一つ、大臣、財源を調達する方法は、政府貨幣を発行するということですよ。これは借金するのも何も要らぬ。ただ印刷局か何か、また金貨を鋳造したらいい。今こそ政府貨幣を発行すべき年ではないか。
 この政府貨幣の発行をした事例は日本に意外にある。十七世紀、荻原重秀、これは金貨の中に含まれる金の含有量を少なくして、同じ金で一・五倍の通貨を発行した。これで日本は初めて貨幣経済の世界に入った。徳川吉宗の時代に、また新井白石の改革によってデフレに戻っていった。そこで吉宗もまた通貨を発行した。それから明治維新、太政官札を発行した。細かく、いろいろな藩の改革の中では、山田方谷先生の改革でも同じことをやっています。
 近年、一九三二年、高橋是清は、昭和七年、国債の日銀引き受けによる通貨発行によって昭和恐慌から脱却した。ただ、二・二六で亡くなられた、六十七年前のおととい亡くなられたので、この評価は戦争によって帳消しになっておりますが、非常な決断と功績であります。国債を日銀引き受けにしてその分の通貨を発行する、それだけなんです。借金がなくなって、金の流通が民間にふえるわけですから、消費がふえて、昭和恐慌から脱却する。この第三の道を今模索すべきではありませんかと言っているわけです。
 先ほど、可処分所得がふえれば消費が確実にふえる、消費がふえればデフレから脱却できると言っておるわけです。よく今、インフレターゲットとかいう、ああいう言葉がはやっております。余り軽々しく使ってはだめです。インフレターゲットという言葉自体は、デフレからインフレに戻すということで、現在の最大の目的ではありませんか。それをインフレターゲット賛成論とか反対論とかで日銀で人事をしている。妙な国だなと。
 学者の世界じゃないんですから、政治家は頭で、戦略を使って、本当の御家庭の人たち、それから中学生にもわかる単純なことを決断していく。通貨を発行することだ、通貨を発行してそれを財源として大減税をするんだとすれば、それは可処分所得がそのまま民間の活力の中に留保されますから、それが使われる。使われればデフレから脱却だ。一%から二%のインフレターゲットと称するものが今問題になっているのなら、それですべてが終わり、万々歳だということになるんですが。
 第三の道というのはやはり、どうお聞きしていいのかな、大臣、どう思われますか。
塩川国務大臣 それは、西村さんのおっしゃるのは、政府紙幣を発行せいということと同じですね。これで貴重な経験があります。
 私は、昭和十八年に中国の方へ行っておりました。そのとき、どんな貨幣があったかというと、元があるんです。元が、中国政府が発行しておる、これは蒋介石政権。それから円があるんです、日本政府。それから儲備券というのがあったんです。これは北支那派遣軍というか、中国、南京政府の軍の発券。三つあったんです。それで、おっしゃるのはまさに儲備券なんですね、今おっしゃる政府券というのは、政府発行券。
 そうすると、どうかといったら、儲備券と日本の円との間では一対一・五、そして儲備券と中国の元、三対一とか、そういう比率で交換しておった。ややこしいことになってしまって、わけがわからぬようになってしまった。それで結局、いわゆる儲備券、軍が発行している券が三分の一ぐらいになっているんです。こういうふうになりますと経済の混乱が起こってきて、結局、そこの収拾をどうするかと。
 そうしますと、現在の円と政府券と、二つも並立してきたらどう収拾するんでしょうか。そこはやはり考えた上での理論を考えてきてほしい。
西村分科員 大臣の体験された事態と現在の日本というものは全然違いますよ。巨大なデフレギャップがあります。世界最優秀の商品を生み出せる設備が眠っているんですよ。これを活性化するのがデフレからの脱却でしょう。
 それから、いろいろな通貨を発行するとは私は申し上げておりません。政府が持っているセニョレッジの特権を行使して、例えば政府発行の五十兆円貨幣を一枚つくって日銀に貸して、日銀はそれを担保にして日銀券を発行したらいいんです。いろいろなやり方があります。
 さて、小野盛司さんという方がやった一つのシミュレーションがあるんです。五年間、毎年五十兆円の減税をする。五十兆円減税を五年間続ける。財源は国債発行による。これを日経新聞社のコンピューターのシミュレーションでやれば、インフレ率〇・六%になる。それから、驚くべきことに、一挙に不況から脱却する。つまり、GDPは二八%増加し、民間設備投資は二・五倍、法人企業利益は三倍に激増する。失業率は二・一%まで下がる、インフレ率は二・六%になる、日経平均は三万二千円に戻る。
 これをサミュエルソンに送って評価を求めれば、サミュエルソンは、インフレ率は気にしなくてよい、需要を回復しデフレから脱却できればよいのだ、こういう手紙が来た。ペンシルベニア大学の、これもノーベル経済学賞のクライン教授も、二%ぐらいのインフレ率が適当なのではないか、経済状況が改善されるのは本当によいことだ、こういうふうな返事が返ってきたというんですね。
 なぜ、こういう政府を圧迫している財政、借金の重みから解放されたのかといえば、今、GDPと長期債務残高の対比の中で政府は苦しんでおる。苦しんでおるけれども、政府がやっておるのは、債務残高、分子を減らそうとしている。分子を減らす、借金を減らそうとしているんです、今。借金を減らそうとしておりますから分母が減っていっている、GDPが減っていっているんです。だから、いつまでたっても比率は同じなんです。GDPを一挙に、これは分母をふやすことを考えれば、分子の増加など消してしまう。こういうシミュレーションがあるということも、どうか御承知おきいただきたいなと思います。
 今、余りにも分子ばかりにかかわっている。しかし、会社経営をしている人は、もう自明のことですよ。十億円の借金をした人間で青くなってはあはあしているのは資産一億円しかない人、これは当たり前。一千億円持っている人が十億円借金しようが五百億円借金しようが、へっちゃらなんだ。これは当たり前のことじゃないですか。
 我が国には巨大なデフレギャップがあり、これが適正なレートで動き始めれば、本当にあと七百兆、八百兆のGDPを生み出す設備があるわけです。これを動かせと僕は言うておるわけですよ。つまり、分母を広げましょうと。分母を広げる前に、少々の借金はしますよ、分子に上乗せしますよ、でもそんなことはへっちゃらだと。それぐらいの経済の力が我が国にはあると私は申し上げておるわけです。
 このセニョレッジの件については、我が国だからこそできるんだ。今、大臣の体験の、シナ大陸のあの状況の中ではできない。これは麻薬ですから、一たん政治がこんなのを覚えたら、先ほどの御体験みたいになるわけですよ、日本もやった軍票。しかし、日本はならないんです、デフレなんですから。デフレでならない、インフレにはならない。まあ御感想でも。
 御感想の前に、あと二分ですから、御感想はもう胸にしまっておいてください。正田邸の問題に参ります。
 大臣、正田邸は、大臣の行政組織が決められたことです。したがって、行政組織に今、決められたことを云々聞かれても、また同じ答えが返ってくる。しかし、我々は政治家同士なんです。僕は、いましばらく正田邸解体は猶予していただけないでしょうかと。猶予することによって国家に何かの損失があるんですか。その間にいろいろな利用方法が国民の中からアイデアとして出てくるではありませんか。
 愛知和男先生が会長をされている社団法人日本ナショナル・トラスト協会は、品川区長に手紙を送って、旧正田邸をナショナルトラスト方式によって保存、活用を図りたいと思う国民運動は全国に広がりつつある、八万八千名の署名が集まっておるというふうに、品川区長の高橋さんに手紙を書いております。私も、我々の国会で、この国有財産を皇室用国有財産に転換する決議をして利用することも可能なんです。
 皇居の中には生物学研究所も蚕の研究所もいろいろあり、天皇陛下が個人的な研究をされておありなんです。皇后陛下は子供の童話の問題に取り組まれております。この建物を、例えば童話の世界的な事務局として活用することもできます。いろいろな活用方法があります。
 大臣の組織が判断された、旧正田邸が価値が著しく損なわれているというこの認識は、お聞きになったらおわかりのように、昭和八年の建設当時よりも大きく改造、改修がされておるので、これを確認できたので、建造物としての文化財の価値は著しく損なわれていると判断したというものでございます。しかし、これは建造物としての文化財の価値が、増改築が行われているので著しく損なわれているという判断にしかすぎず、旧正田邸が持つ社会的、歴史的、文化的な価値に関する判断ではございません。
 今しばらく解体に御猶予をいただけないでしょうか、大臣。解体に御猶予をいただきたいと八万八千名の署名があります。皇后陛下の御生家であります。社会的、文化的、歴史的価値については財務省は判断されておりません。大臣、どうかよろしくお願いします。お答えをいただけますように。
塩川国務大臣 私は、この問題は、西村先生なんかにちょっと賛成に力をかしていただいて、もっと積極的に前向きなことで解決していただいた方がいいと思うんです。
 といいますのは、この問題、残すか残さぬかの問題になってしまいますと、やはり国民的にちょっとまずいことになってくるんじゃないか。それよりも、皆さんのおっしゃっているのは、ここに陛下が青春時代を過ごされた、それは一つの記念すべきこととして残したいという、この気持ちなんですから。正田邸というのは、現代の建物、それで残すのか、あるいはそうじゃなくて、ここに陛下がお住まいになったことを記念して、先ほどおっしゃる、蚕の会館とかあるいは児童館とか、何かそういうようなものをつくって、ここに陛下がおられたんだよということをする方がかえっていいんじゃないかなという、そういうことも考えられると思います。
 そうならば、そちらの方で前向きのことでひとつ検討していただいたら、我々も協力していきたいと思いますので、これは品川区との間もありますので、よく相談してまいりたいと思います。
西村分科員 質問を終わります。ありがとうございました。
杉浦主査 これにて西村眞悟君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして財務省所管についての質疑は終了いたしました。
 これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。
 この際、一言ごあいさつ申し上げます。
 分科員各位の格段の御協力を賜りまして、本分科会の議事を無事終了することができました。ここに厚く御礼申し上げます。
 これにて散会いたします。
    午前十時三十四分散会


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