衆議院

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第2号 平成18年3月1日(水曜日)

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平成十八年三月一日(水曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 茂木 敏充君

      稲田 朋美君    近江屋信広君

      大塚  拓君    笹川  堯君

      鈴木 馨祐君    林   潤君

      町村 信孝君    矢野 隆司君

      山本 幸三君    北神 圭朗君

      北橋 健治君    平岡 秀夫君

      前田 雄吉君    渡辺  周君

   兼務 臼井日出男君 兼務 篠田 陽介君

   兼務 福島  豊君 兼務 石井 郁子君

   兼務 糸川 正晃君

    …………………………………

   法務大臣         杉浦 正健君

   外務大臣         麻生 太郎君

   防衛庁副長官       木村 太郎君

   法務副大臣        河野 太郎君

   外務副大臣        塩崎 恭久君

   法務大臣政務官      三ッ林隆志君

   最高裁判所事務総局刑事局長            大谷 直人君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  上田 紘士君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 伊藤 茂男君

   政府参考人

   (防衛庁防衛局次長)   金澤 博範君

   政府参考人

   (防衛施設庁施設部長)  渡部  厚君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 久元 喜造君

   政府参考人

   (法務省大臣官房長)   小津 博司君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          倉吉  敬君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    大林  宏君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    小貫 芳信君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  三浦 正晴君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   塩尻孝二郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房外務報道官)           鹿取 克章君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 鶴岡 公二君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 梅田 邦夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 佐渡島志郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房国際報道官)           千葉  明君

   政府参考人

   (外務省大臣官房広報文化交流部長)        岡田 眞樹君

   政府参考人

   (外務省大臣官房国際社会協力部長)        神余 隆博君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    河相 周夫君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            吉川 元偉君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局アフリカ審議官)      小田部陽一君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    石川  薫君

   政府参考人

   (外務省経済協力局長)  佐藤 重和君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    谷崎 泰明君

   政府参考人

   (外務省国際情報統括官) 中村  滋君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局援護企画課長)      野島 康一君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

   外務委員会専門員     前田 光政君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君

    ―――――――――――――

分科員の異動

三月一日

 辞任         補欠選任

  笹川  堯君     林   潤君

  町村 信孝君     近江屋信広君

  岡田 克也君     大畠 章宏君

  北神 圭朗君     平岡 秀夫君

同日

 辞任         補欠選任

  近江屋信広君     大塚  拓君

  林   潤君     矢野 隆司君

  大畠 章宏君     前田 雄吉君

  平岡 秀夫君     北橋 健治君

同日

 辞任         補欠選任

  大塚  拓君     稲田 朋美君

  矢野 隆司君     鈴木 馨祐君

  北橋 健治君     渡辺  周君

  前田 雄吉君     高木 義明君

同日

 辞任         補欠選任

  稲田 朋美君     町村 信孝君

  鈴木 馨祐君     笹川  堯君

  高木 義明君     下条 みつ君

  渡辺  周君     吉田  泉君

同日

 辞任         補欠選任

  下条 みつ君     岡田 克也君

  吉田  泉君     北神 圭朗君

同日

 第一分科員篠田陽介君、第二分科員臼井日出男君、第四分科員石井郁子君、第五分科員福島豊君及び第七分科員糸川正晃君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十八年度一般会計予算

 平成十八年度特別会計予算

 平成十八年度政府関係機関予算

 (法務省及び外務省所管)


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     ――――◇―――――

茂木主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。

 平成十八年度一般会計予算、平成十八年度特別会計予算及び平成十八年度政府関係機関予算中法務省所管について、昨日に引き続き質疑を行います。

 この際、分科員各位に申し上げます。

 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。

 なお、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。林潤君。

林(潤)分科員 自由民主党の林潤でございます。本日は、矯正行政について質問をさせていただきます。

 近年の司法制度を取り巻く現状というものは、裁判員制度の導入を初めといたしまして、司法試験そして監獄法の改正など、まさに百年に一度の大きな転換期を迎えようとしております。我が国では、法律ざたと言いますように、こうした司法の改革は、大きな問題でありながらも、日常生活でできればかかわり合いになりたくないという対象だということで、国民的な啓発に努めます法務省の関係者の御苦労も御察し申し上げるところであります。

 こうした中、平成の初めに端を発する平成不況によりまして、犯罪が急増いたしております。平成十五年間で元年と十五年を比較してみますと、刑法犯の認知件数というものが、およそですけれども、二百万件から三百六十万件を超えるという増加が目立つ一方で、残念ながら、一般刑法犯の検挙率というものもおよそ四割から二割程度へと低下をしてきているのが現状です。国民の治安に対する意識というものは、近年、安心と安全がキーワードとなりまして、治安当局に対する、そして矯正当局に対する期待というものは極めて大きなものがあるわけであります。

 このように刑法犯が急増するに従いまして、実刑判決を受け、そして矯正施設に収容される人員もふえ続けております。未決を含めた収容人員は、平成元年に五万一千人台だったものが平成十五年には七万一千人台に、およそ二万人ふえているのが実情であります。

 これまで、矯正行政というものは、塀の中の出来事といたしまして特定の関係者だけが関心を持っていた事案でありますが、近年、愛知県の安城市のスーパーで起こりました女児刺殺事件というものが、単なる通り魔事件でなく、男が一カ月前に刑務所を出所したばかりで、犯行の数日前から、身元引受人だった県内の更生保護施設から行方不明になっていることがわかり、大きな社会不安を起こしました。

 こうした事案も一つとして後押しをいたしまして、矯正行政につきましても、とりわけ刑務所を取り巻くさまざまな問題が浮き彫りになったわけであります。

 そこで、本日は、刑務所は大丈夫なのか、こうした国民の声にこたえようと、刑務所や受刑者を取り巻く状況について質問をさせていただきます。

 まず、七万人規模という増大する未決を含めました被収容者が施設に収容される上で、ハードとソフトの問題が発生をしてきました。まずは、ハードであります刑務所の施設及び受刑者に対して、刑務官が十分に対応できているのかという問題であります。

 現在、収容定員に対する収容人員の比率はおよそ一〇五%。八割強の施設が定員オーバーで、行刑の受刑者が定員一人の独居房に二人収容されたり、食堂が満杯で作業場で食事をせざるを得ない、こうした刑務所もあると聞いております。一昨年には、山梨の甲府刑務所で受刑者が刑務官にのみでのどを切りつける、こうした傷害事件もありました。こうした受刑者同士のストレスもさることながら、警備や矯正に関して十分に行き渡るのか、こうした不安があります。

 そこで、まず、刑務所における過剰収容の現状とその解消に対する対策について、法務大臣にお伺いをいたします。

杉浦国務大臣 林先生におかれましては、法務行政に関心を持っていただきまして、まことにありがたく思っております。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げる次第でございます。

 先生が御指摘のように、犯罪がふえる。まあ、ここ二年ぐらいは犯罪件数は減っております。また、ちょっぴり検挙率も上がっておりますが、これは景気がよくなったせいも若干あると思いますけれども、しかし一方において、先生御指摘のように凶悪犯がふえておるということで、治安の状態は赤信号が点滅していると言ってよろしいかと思います。そういう中で刑務所等で過剰収容の問題が起こっておるわけです。

 数字については先生御指摘のとおりなんですが、既決と未決とを分けますと、既決の部分については平成十七年度末で収容率一一六%、定員が約六万で、収容人員が六万八千余ということでございます。

 大体どれぐらいの収容率が適正かという議論があるわけなんですが、私も、各地域、現場を見まして皆さんの意見を聞いたのですが、収容率八〇%、平均ですね、これが限度だろう。つまり、収容者は浮き沈みがあるわけで、八〇%を超えたら過剰だということのようでございます。

 未決の方は、昨年末現在、収容率が六三%。ほぼ適正規模ではないかというふうに思われるわけでございます。

 その結果、先生が御指摘のように刑務官の業務が過重になっておりまして、四週八休、普通の公務員はとれるわけですが、七休しかとれない。一つは、休出して残業。それから、残業もかなり多いという状況でございます。入っている受刑者の人にもストレスがたまる。制圧する、あるいは懲罰を加える等々、業務も過酷になっておる。現場へ行って、本当にみんなよくやっている、頑張っているという実感でございます。

 こういう過剰収容の状態を解消しなきゃならない。もうつとに始めておりまして、一つは刑務所の増設です。平成十三年度から、それまでは大体法務省の施設費は二百億円前後でずっと推移してきております。計画的にやってきたわけですが、とても間に合わないということで、補正予算で大幅に予算を計上する。三百億から五百億円ぐらい、十三年度から補正予算で措置をしていただいております。大増設でございます。

 現状は、定員が約六万に対して七万なんですが、今年度の補正予算、十七年度ですね、十八年度の当初予算で総額で五百億円ちょっと措置をしていただいておるわけですが、通していただくと。これが全部完成いたしますと、約七万になります。そういたしますと、入る人がふえなければ、収容率が九五%。全部完成しますと定員が七万一千六百くらいになりますから、収容率が九五%ちょっとに下がることになります。

 しかし、これも、予想としてはふえるだろうというふうに見込まれております。仮にふえなくても、過剰収容状態は変わらない。緩和されることは緩和されますが、変わらないという状況で、犯罪状況を見ながら、引き続き施設については増強することを検討しなければならないという状況でございます。

 一方、刑務所の中で処遇するだけではという、外でできないか、仮出獄ですね、これの弾力的運用ですとか、あるいは新監獄法では、外出、外泊が七日までできるようになっております。これはこの春施行になりますが、そういうことで運用を図るということも一つの方法であろうかと思います。

 年明けに韓国へ出張してまいりまして、韓国で最先端の驪州という刑務所を見てまいりました。東洋一ではないかと思います。日本では、これから旭とか美祢とか新しい刑務所をつくろうとしておりますが、韓国の方が一歩、二歩先に行っているという印象を受けました。

 韓国では、外泊を帰休と言っておりますが、今年度から二十日間、模範囚ですよ、仮出獄できる資格を持った者についてはですが、家庭のもとへ二十日間帰す。それから、一泊の外泊は、数え切れない、統計をとっていないからわからないけれども、模範囚に対してやっておるということです。

 これは、新監獄法で、我が国でも七日に限って外泊もできるということになりましたから、運用を検討していくことになると思います。これはどの程度できるか問題ですが、中、外で処遇ということになりますから、過剰収容にも若干は貢献するだろうというふうに思っております。

 それから、施設外で仕事をさせる。今、網走で、二見ケ岡農場、これは刑務所の土地の中ですが、一応開放的処遇をしておりますし、四国の大井造船所では、これは造船所の中に施設をつくりまして、一応刑務官が面倒を見ているけれども、塀はありません。塀はありませんので、工場の作業に従事しておりますが、そういう開放処遇も、これから積極的に検討していく必要があるんじゃないかと思っております。

 今後の収容動向予測、厳しいものがございますが、必要に応じて、あらゆる方法をとっていこう。過剰収容問題については、私を長とするPTを立ち上げました。若手に参加してもらって、今議論をしております。そういう方向、さらにそれ以外に何ができるか検討してまいりたい、こう思っております。

林(潤)分科員 施設の増設、そして開放処遇、PTの立ち上げ、さまざまなこうした取り組みに対して、これからもしっかりと現状に合った取り組みというものに努めていただきたいと思います。

 さて、最近では、アジアを中心といたしました来日外国人による犯罪も増加しております。刑務所でも国際化が進んできたということですが、府中と大阪、こうした大きな刑務所もそうなんですけれども、私の地元であります横浜の刑務所もこうした傾向があると聞いております。言語や食事、そして宗教などの生活習慣が違います外国人の受刑者によってさまざまな対応を迫られている、このように聞いております。

 そこで、こうした外国人受刑者に対しまして、国際受刑者移送条約による対応も含めまして、矯正処遇のための対策について法務当局にお伺いをいたします。

河野副大臣 この十年間で外国人受刑者の数が約四倍にふえまして、今、四千人弱が刑務所の中に入っていらっしゃいます。

 その四千人のしゃべっている言語は、全部で三十六の言葉がありまして、とても刑務官がすべてその言葉をしゃべるわけにもいきませんし、中には日本語が全くできない受刑者もおりますので、コミュニケーションがなかなかとれないということを考えると、なかなか、矯正という観点からは非常に難しいというのが現状であります。

 また、中には、イスラム教の人は豚肉を食べられない、シーク教ですとか、あるいはキリスト教のある宗派の人は牛肉を食べられない。そういう人には別な食事を用意しなければなりませんし、イスラム教を初め宗教上の礼拝活動もやってもらわなければいかぬということで、正直言って、刑務所の中の管理もなかなか大変でございます。

 この四千人の中の約四五%は、実に中国から来た人たちであります。この人たちが圧倒的に多いわけですから、今、法務省といたしましては、中国との間に移送条約を結ぶことができないだろうかということを考えております。

 我が国の移送のための法律によりますと、相手国と条約がなければ移送ができない。しかし、中国はそういう制度を使っていないものですから、余り中国側としては、やったことがなくてわからぬというところを、とにかく、中国の方で日本の刑務所にいるのが千八百人、日本人で中国の刑務所にいる方が十八人という百倍の格差がありますので、これは何としてでもやりたいというふうに思っておりまして、昨年から中国側と積極的に話し合いを始めているところでございます。

 本国でしっかり矯正をしてもらうという観点から、あるいは過剰収容対策から非常に有効な手段だと思っておりますので、しっかりとやっていきたいと思っております。

林(潤)分科員 四倍の四千人、こうした外国人受刑者のうち四五%が中国ということで、対応が大変だなと実感いたしました。この中国との移送条約をしっかりと今後進めていただいて、こうした外国人受刑者の問題の解消に努めていただきたいと思っております。

 そして、懲役を科せられました受刑者にとりまして、刑務作業を通じた更生を行うということは不可欠であります。当然、自由刑としても規定されているところであります。平成不況の波というものが塀の中にも波及いたしまして、現在、刑務作業の確保というものが困難になっている。そして、刑務官が仕事を確保するために外で営業をしている刑務所があるというふうにも聞いております。こうした刑務作業をどのように確保するつもりなのか、法務当局にお伺いをいたしたいと思います。

小貫政府参考人 委員御指摘のとおり、受刑者は増加し、作業量は減っているということで、作業量確保に大変厳しい状況に私どもは置かれております。御指摘のとおり、懲役の本質は作業をすること、規律、秩序の維持等にもまた重要な意味を持っておりますので、この作業量の確保というのは、極めて重要な矯正の仕事だというふうに思っております。

 そこで、委員も今申し上げたとおりでございますが、各企業を訪問いたしまして受注開拓をしたり、インターネットで、刑務所ではこういう作業が可能であるということを広報いたしまして公募を募るとか、いろいろな点で努力をしているところでございますが、地域によっていろいろな違いがございまして、大変苦労しているところもあるわけでございます。ただ、幸いにして、現状では、かろうじてではございますけれども、確保されている状況にある、こういうことでございます。

 以上でございます。

林(潤)分科員 こうした刑務官の人数が少ない中で、警備もやっている、教育もやっている、そしてなおかつ塀の外で営業もやっていく、本当に頭が下がる思いで見ているわけですけれども、この日本特有の担当制という制度、よさと悪さがあると指摘されておりますけれども、さまざまな点を克服いたしまして、健全な矯正行政に努めてもらいたい、このように思うわけであります。

 ここで、大切なことですけれども、刑務所について、犯罪に対する懲罰的な施設という考え方と、受刑者を矯正する施設という考え方があるわけであります。御存じのとおり、名古屋刑務所で受刑者による集団暴行が発覚いたしまして、刑務官五人が逮捕された事案というのもありましたけれども、明治以来の監獄法も大きく変わろうとしておりまして、受刑者の人権を取り巻く環境も変化しつつあります。

 こうした事案を踏まえまして、どちらに基づいて運営をされているのか、法務大臣にお聞かせ願いたいと思います。

杉浦国務大臣 矯正施設の理念は、先生のおっしゃる双方を踏まえたものだと思います。

 懲役という言葉がございますように、受刑者を社会から隔離して自由を奪って役務に従事させるということと、それから、矯正を図って、改善更生ですね、社会復帰、出た後、社会に円滑に復帰してもらうという双方の目的を持って基本的に運営されていると思います。

 ただ、先生のおっしゃるとおり、世界的な流れを見ますと、やはり後者の方に重点を置くと申しましょうか、我が国の刑務所の運営を見ておりましても、今度できます新監獄法の例もそうですけれども、ややもすると、その改善更生の方がおろそかだったんじゃないかという反省に立っているように見受けられるところでございます。

 私どもとしても、三ッ林政務官に再犯防止プロジェクトチームの長になっていただきまして、受刑者が社会復帰した場合に再犯を犯す可能性が非常に高うございますから、五割ぐらいでしょうか、そういう現状を踏まえまして、再犯防止をどうするか。

 それは、一つは、刑務所の中で改善更生に資するためのさまざまな、今、始めてもおるんです、今までも努力してまいりましたし、これからも多角的に犯罪者に対する教育プログラムとかさまざまな研究、検討を行って、新監獄法施行とともに一層充実するように期してはおるわけでございますが、それ以外にも再犯防止にできることがないかを含めまして、三ッ林チームで検討してもらうということを考えております。

林(潤)分科員 矯正をする施設という側面があるということを御答弁でいただきましたけれども、愛知県の先ほどの通り魔事件の例を出すまでもなく、出所した後にいかに犯罪を犯させないようにするか、そして、きちんと社会復帰させて根づかせるかということがやはり大切だと思います。

 自分も記者時代に、強盗に入った例というものを裁判まで見届けましたけれども、銀行強盗に入って、しゃばの風が冷たかった、そうしたことを裁判で述懐をしていた、こうしたことが非常に印象に残るわけであります。

 先ほど大臣御答弁あったように、刑期を満期で出所した元受刑者の再犯率は五〇%を超えていると聞いております。現在も刑務所において、社会復帰に役立つ資格を職業訓練として受刑中に取得させたり、出所後に就業させる手助けの取り組みをしていると聞いておりますが、こうした矯正、もうちょっと詳しくどうなっているかということ。

 そしてまた、覚せい剤事犯者や性犯罪者に対する再犯防止対策というものがあると思います。特別の教育プログラムを施したり、外部の専門家を招いて講義をしている。非常に熱心に改善をして取り組んでいると存じておりますけれども、こうしたことを含めまして、矯正施設を充実強化するための取り組みについて、法務大臣にお伺いいたします。

杉浦国務大臣 性犯罪プログラムも一部試行いたしてございまして、覚せい剤もやっております。それから、新監獄法では、さまざまな教育プログラムを義務づける、義務づけられていなかったものも幾つかございますが、そういうことも措置を講じておるところでございます。

 三ッ林チームで重点的に検討してもらいたいと思っていますのは、要するに、刑務所、少年院を出所した後、再犯を犯す人のほとんどが無職者です、職がない人です。裏返しまして、出所後、職を得た人の再犯率は極めて低い。これはもうはっきりいたしておりますので、なかなか難しいんですけれども、公として、国として、あるいは地方自治体と相談し、民間企業の協力も得て、仕事場を探す、つくり出すということが大事じゃないか。

 バブルがはじけまして、一つのあれとして、かつては土建業が出所者を引き受けてくれた。土木建築業は不振でございまして、篤志家が土建業から減っているという事情もございます。新しい分野で、例えば介護とかそういう分野で使っていただけるようなところを見つけ出すとか、ハローワークとかと提携しながらいろいろやっておりますが、仕事をつくり出すことで何かできることがないかという点に一つ力点を置いて再犯チームをやっていこう、こういうふうに思っておる次第でございます。

林(潤)分科員 こうした就労の大切さというものを非常に私も認識しているところであります。先ほど厚生労働省を含めたハローワークとの提携ということも答弁でありましたけれども、こうした対応をしっかりして、やはり就業させることによって社会復帰をきちんとできる体制で、特に、聞いたところによると、資格を取得した方が犯罪を再び犯している率が少ないというふうに聞いておりますので、こうした教育のプログラムを充実させていただきたい。

 その一方で、例えば覚せい剤の再犯防止の受講に関しては、順番待ちがあってほとんど受講できないとか、そうしたジレンマにも今陥っていると思いますので、早急にこのハードの面とソフトの面、きっちりとやっていただきたいと思います。

 それで、最後に、全体の刑務所不足ということが、しっかりと御答弁の内容からも出てきましたけれども、刑務所不足というハードからいたしますと、施設と人員の拡充という課題、まさに急務であります。そして、初めて刑務所に入る受刑者の方が、今五〇%を超えていると聞いております。こうした犯罪の進んでいない受刑者に対する再犯防止の取り組みはさらに急務だというふうに考えております。

 こうした刑務所のハードとソフトの不足、そして犯罪の進んでいない受刑者に対する再犯防止の観点からいたしますと、今、半官半民のPFIの刑務所の構想があるというふうに聞いています。このPFIの刑務所の展望と、これをどうやってこうしたことに生かしていけるのかということについて、法務当局にお伺いをいたしたいと思います。

小貫政府参考人 法務省では、現在、PFI手法を活用した刑務所の整備を二つのところで進めております。山口県美祢市の第一号の刑務所につきましては、昨年の六月に事業契約を結んでおりますし、島根県浜田市の第二号については、本年の四月に事業者を選定する、こういう運びになってございます。これらの事業は、第一号が平成十九年の四月、第二号が平成二十年四月に収容開始を目指しているところでございます。

 御案内のとおり、PFIの事業につきましては、施設の設計、建設、施設の警備や受刑者の処遇の一部を含めまして幅広く民間に委託することとしておりまして、このことによって、民間の創意工夫によりまして、矯正教育あるいは職業訓練等の充実に資するもの、こう期待しておりますし、また、この事業は、いわゆる構造特区制度を活用しておりますので、民間委託の範囲が拡大されるとともに、地方自治体からの協力が得られる、こういうメリットもあると考えております。

 まとめて申し上げますと、PFI手法を活用することによって、過剰収容対策としての効率的な施設の整備が可能になるということ、官民協働による運営によって地域との共生が図られて、まさに国民に理解されて支持される刑務所の整備が実現できるもの、こう考えております。

 ただ、一方におきまして、このPFI刑務所につきましては、武器や戒具を使用する権限を持っていない民間職員が警備をやるとか、受刑者の処遇を含めた業務を行う、こういうことになるために、施設の規律、秩序の維持の面で危惧を持っておられる声も聞かないわけではございません。そういうことで、収容者については選別をせざるを得ない、優良な被収容者を選別して入れざるを得ない、こういうことでありますので、あらゆる刑務所にこの手法が活用できるとまでは現状では至っていない、このように考えております。

 以上でございます。

林(潤)分科員 こうしたPFIの手法というものが、過剰収容や官民の共生、一石二鳥にしっかりなって、秩序の維持、犯罪の再発防止に果たす役割にしていただきたいと思っております。

 今後も、受刑者の人権と社会復帰を考えて、国民の安全、安心の要望にこたえられるような矯正行政を目指しまして取り組んでいただきたい、こうお願いをいたしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

茂木主査 これにて林潤君の質疑は終了いたしました。

 次に、臼井日出男君。

臼井分科員 自由民主党の臼井でございます。質問の機会をお与えいただきまして、ありがとうございました。

 本日は、まず、裁判員制度についてお聞きをいたしたい、こう考えております。

 裁判員制度というのは、いわば法律の城とも言うべき裁判所に市民の健全な常識というものを取り入れることによりまして、国民の司法に対する信頼あるいは理解、そういうものをさらに得ていく、こういうためにつくられたというふうに私は理解をいたしているわけでございますけれども、この私どもの考え、同時に、刑事裁判が抱えている問題もあります。一部の裁判等については、非常に裁判の期間が長いということに対して国民が批判を持っている、こういうこともございます。

 この裁判員制度の法律の成立とともに刑事訴訟法の一部改正というものが行われまして、その中で、公判前整理手続というのが採用されるということになりました。当然これは、裁判員制度を採用した裁判にも使われる、こういうことになるわけであります。

 現在、もう既に試行が実施をされているというふうにも伺っているわけでございますが、これを見てみますと、この公判前整理手続というのは裁判に非常に重要な意味を持っているということがわかってまいります。公判前整理手続におきましては、まず、検察官が公判で証明予定の具体的な事実を提示する、証拠開示もする。被告人・弁護人がそれに対しまして証拠意見を提示する、また反論もする、反証に用いる証拠の取り調べ請求等をする。また検察官がそれについて証拠意見を提示したりする。最後に、裁判所側でもって争点の確認等をし、どういう形でもって裁判を実施していくかということを決めていく。裁判の全体の概要というのが、ほぼここで決まってしまうわけであります。

 プロの裁判官あるいは弁護士、検事が、事件についてこうしたやりとりを通じて、かなり裁判については詳しく理解をすることになる、これは当然のことであります。一方では、裁判員というのはその場にはおることはできない。こうした手続をしながら一方で裁判員を選んでいく、こういうことになっているそうでありまして、当然、参加はできない。

 プロの裁判官、検事、弁護人が詳しく事件の内容を知っているところに、後から素人である裁判員が裁判に加わってきて、果たしてどれくらい平等の理解を得ることができるか、あるいは平等の発言、審議参加ができるだろうかということを考えると、私はちょっと、なかなかこれは難しいんじゃないかな、こういうふうに考えておりまして、自由民主党の中のいろいろな審議の過程でもこのことを主張しておったわけであります。どうして今ここで言えるかというと、この法律が通ったとき私は落選中でございましたので、その場におれませんでした。

 そこで、この点について、どのような考え方に立っているのかということをお伺いいたしたいと思います。

大林政府参考人 国民の皆さんに裁判員となっていただくためには、その前提として、あらかじめ明確な審理計画を立て、いつからどれだけの期間、裁判員としての職務を行うことが予定されるのかを決めておかなければなりません。そのような審理計画を立てるために、争点及び証拠の整理を行う手続が公判前整理手続として定められておりまして、これは委員御指摘のとおり、裁判員の選任前に行うこととしております。

 他方、公判前整理手続の結果につきましては、検察官や弁護人がどのような主張をし、どのような証拠の請求がなされたのかなど、裁判官から説明がなされることになっております。それで、裁判員は、これによってどのような証拠が採用され、これから取り調べられることになるのかを理解することができますし、また、検察官及び弁護人の主張の内容につきましては、それぞれから冒頭陳述という形で具体的に示されることになっておりますので、裁判員はこれによってもその内容を理解することができるということになっております。

 今、委員からは、対等の審議ができるかということでの御質問もありました。

 ただ、今申し上げている公判前整理手続につきましては、どのような証拠をどのような順序で取り調べるかという訴訟手続に関する事項でございまして、実質的な証拠の中身に余り立ち入ってはならないことになっております。すなわち、証言や供述調書の信用性を評価するなど証拠の実質的な中身の部分については、公判において裁判員と裁判官が協働しながら扱っていくということになっていますので、専門的な知識があるかないかということは別といたしまして、証拠の評価等については、基本的には対等な立場で審理に参加できる、こういうシステムになっております。

    〔主査退席、町村主査代理着席〕

臼井分科員 今回裁判員制度を取り入れるということになりましたのは、民間の健全な意識というものを裁判に取り入れるということになるわけなので、裁判員のよさが裁判において十分発揮されるような雰囲気づくり、環境づくりというのはぜひともしてもらいたいと思っておりまして、少なくとも、裁判前整理手続に参加をしなかったがゆえに、どうもプロの間に入っていけないというようなことにならないようにお願いをいたしたいと思います。

 また、きょうはこのことについては質問いたしませんが、非公開の中でもってこうしたことが行われるということについても、問題が起こることのないような慎重な対応をぜひともお願いいたしたいと思います。

 この裁判員制度に関係をして、一般には余り知られておりません、もちろん広報もしていないんだと思うんですが、補充裁判員制度というのがございます。

 この制度は、選ばれた裁判員が何らかの都合で引き続き出席ができなくなった、こういう際に補充として加わってくる、こういう立場の人たちでありまして、この人たちは、一般の裁判員と同じような参加義務も有しておりますし、守秘義務等も有している、こういうことだろうと思います。この人たちは、もし補欠が出てこなければ、ずっと最初から最後まで裁判を傍聴して、傍観者として、はい、御苦労さん、こういうことに当然なるんだと思うんです。

 私は、この裁判員制度というのは、既にいろいろ論議されておりますが、国民に相当な義務を負わせるということになるわけなんですが、そうした補充裁判員までの義務というものを負わせることはいかがなものだろうか、こう考えております。自由民主党の中の論議のときも、少し多目に採用しておけばいいじゃないかというふうな、ちょっと粗っぽいこともお話ししたこともありますが、この法律の中の第十条、裁判の期間その他の事情を考慮して必要あると認めるときは、置くことができる、こういうふうになっているわけなので、ぜひともこの項を考えながら、なるべく補充裁判員というのは少なくてよろしいんじゃないかというふうに考えておりますが、この点についてどうお考えでしょうか。

    〔町村主査代理退席、主査着席〕

大林政府参考人 審理が二日以上にわたる場合には、選任した裁判員が出頭できなくなる場合が想定されますけれども、その場合には、これにかわる新たな裁判員を選任する必要がございます。

 このような場合に、裁判員の追加的な選任を新たに行うことといたしますと、裁判員候補者の呼び出し等のため公判審理が相当期間中断せざるを得ないため、他の裁判員や被告人の負担が大きくなる上、そうなると、公判審理の予定が大きく変更されるため、当初から選任されている他の裁判員についてもさらに新たな支障が生じることも想定され、結局、迅速な審理が実現できないこととなります。そこで、そのような事態を可能な限り回避することができるよう、補充裁判員の制度が設けられているものでございます。

 補充裁判員となる方に御負担をおかけすることは御指摘のとおりでございますが、このように、補充裁判員の制度は迅速な裁判の実現のために必要不可欠なものですので、ぜひ御理解を賜りたい、このように考えているところでございます。

臼井分科員 それは、常に裁判員の数を定数でもって充足していなければいけないということで考えれば、もちろん、足りなくなれば改めて募集しなきゃいかぬということになるので、これは大変な手間なんですが、その辺の考え方も、私は違った考えの立場におりまして、もともと一人の裁判官あるいは三人の裁判官でやっておったことをやるわけですから、六人というのが何人か欠けても、それはそれでよろしいんじゃないか、私はこういう考え方に立っているわけでございます。

 いずれにいたしましても、これが国民にだんだんとわかってくると、相当な反発も出てくるんじゃないだろうかと思います。ぜひとも広報をしっかりしていただきたいと思います。

 行革本部の方から来ていらっしゃいますか。

 今回、政府が、行政減量・効率化有識者会議というもので、各省庁に対して公務員の総人件費削減の検討要請というものをされたわけであります。当然、法務省にも来ておりまして、治安関係のものに対しても、行刑施設等に対してもその要請がなされた、こういうことでございます。

 小泉さんは、世界で一番安全な国をつくる、こういうことを公約しているわけでございまして、かねてから不法滞在の外国人の追放等にも努力いたしておりますし、刑務所に入るお客さんもどんどんふえているということで、行刑の職員もしっかりとふやしていかなきゃいかぬ、こういうふうなことで努力をいたしてきております。

 私は、小泉内閣は大変いいことをいろいろやっていると思います。いいことをやっていると思いますが、その中でも私が評価をいたしているものの一つに、今までどちらかというと、この定数削減というのは、セクト主義といいますか、その省内でもって頭数はそろえろというふうな形でもって、なかなか必要なところに必要な人員が増員できなかったということがあったわけですが、小泉内閣になって、小泉総理の決断だと私は思っておりますが、この治安対策の人員等については、一けた違う格段の配慮をしていただいている。

 これは、各省庁とも不必要な人間は雇わないと私は思うわけですが、しかしその中でも、日本人の安心、安全というものが今非常に脅かされつつあるわけなんで、そういう状況の中でもって治安組織関係の定数増、格段の配慮をしてもらっている、このことは大変すばらしい決断であるということで、私は評価をいたしております。例えば矯正官署におきましては、平成十六年は二百七十三人、それから十七年が二百六十三人、十八年が二百七十三人、けた違いの増員をしていただいております。それは結構なことでございます。

 ところが、今度は物差しが変わってまいりまして、今までの削減という考え方から、純減というものに変わりました。

 今までの削減ですと、削減はしますよ、しかし定期採用もやります、特別な配慮によるものも採用をいたします、差し引き何ぼということになると、大分目標よりも少ないですねというようなことにもなったわけですが、これからは純減という、差し引き何ぼで出てくるわけなんで、さて、そういうことになりますと、なかなかこれらの特別な配慮というのは難しくなってくるのかな、しかし、それは困るなというふうに思っておりまして、こうした点についてはどのようなお考えでもって進んでいかれるのか、お聞きをしたいと思います。

上田政府参考人 お答えいたします。

 行刑施設関連の定員の削減の関係でございますけれども、行刑施設では、従来から、庶務とか会計とか自動車の運転とか、そういった非権力的な業務で民間委託が進められてきているところと承知しております。

 今回の総人件費改革の中で、行刑施設についてどういった観点から考えていくのかと申しますと、いわゆる中核的な、公権力行使に当たる真に中核的な部分ではないところで、できるだけ、従来よりもさらに徹底をして民間委託ができないだろうか、こういう観点からいろいろな検討を加えていきたいと思っております。

 それで、そのことの純減ということとの関係を申しますと、今回の純減というのは、政府全体として純減を図るということでございます。行刑施設の場合に、近年行政需要が増大してきているということは承知しておりますけれども、そういった、部門全体としては増員部門であるけれども、しかし、その中に民間委託が図れるところがあれば、これをできる限り徹底して民間委託をしていくというふうにして、現在ある部分については、できるだけその部分は縮小する、それから、これから仮に増員が必要になる部分があったとして、その増員圧力を少しでも少なからしめる。

 こういうことを通じて、これは政府全体としての、これは別に、例えば法務省だとか何とか省がどうだということじゃなくて、先生のおっしゃるとおり、縦割りのどうこうということじゃなくて、政府全体としての純減に資するようにしていきたいというのが私どもの考えでございます。

臼井分科員 どうもありがとうございました。非常に行刑関係のことに詳しく触れていただきまして、ありがたいと思っております。

 今お話しのとおり、純減というのは最終的には政府全体で考えるべきもの、引き続き、私ども日本人の安心、安全をしっかり守っていくためにも、特別の配慮が必要なところにはしっかりとしていただく、そして担当の方にはしっかり働いていただく、こういう形をぜひともとっていっていただきたいな、このように思います。

 先ほどの質問者の中にも出てまいりましたけれども、現在、刑務所の収容率というのは一一六%と聞いております。新しく山口県の一号PFI刑務所、それから島根県の第二号PFI刑務所、二つつくりましても一〇〇%を切れないんじゃないだろうか、こういうふうに聞いているわけでございます。

 入所者にも当然人権があるわけでございまして、なかなか厳しい環境にはあると思いますけれども、このような入所者増というものが一方にある。これと、行刑職員の削減というのが責務としてあるわけで、これをどのように調和させていくか、将来の見通しについてどう見ておられるのか、伺いたいと思います。

小貫政府参考人 まず、施設面につきましては、現状、平成十七年末現在の収容人員を前提といたしますと、二十一年までに整備していただける施設の数から見ますと、過剰収容状態の緩和には大きく役立つだろうというふうに思います。しかしながら、犯罪情勢等を見ますと、十七年度末の収容人員で推移するとは考えられないところでございますので、今後とも、収容動向を踏まえつつ、必要に応じた施設面での拡充には努めていかなければならない、このように思っている次第でございます。

 人的側面でございますけれども、過剰収容状態がここ数年、常態的に続いております。そういう中で、先生御指摘のとおり、御配慮いただいて純増を得てまいりました。このような状況の中で直ちに刑務官等を削減する、こういうことは、施設内の規律、秩序の維持や適正な個別処遇という面で困難を来しますので、治安の最後のとりでとしての刑務所等においては治安の悪化を招きかねないというふうに考えております。

 しかし、政府全体の方針でございますので、アウトソーシングについては努力をしてまいりたい、こう思っておりまして、現在、平成十八年度予算まで含めますと、民間委託はさらに二百三十二ポスト増になっております。十九年度以降のことでございますけれども、いろいろ試算した結果、さらに四百八十七ポスト増の計七百十九ポスト、これが拡大可能である。従来のアウトソーシング分と含めますと千三百三十六ポスト、十七年度末の職員定数の割合からいいますと七・六%となる、こういう検討結果を行革推進の事務局に報告したところでございます。

 そういうことで、純減というところまではいきませんけれども、増員数を抑える、抑制するという面では行政改革の推進に寄与してきたものと考えておりますし、今後もその面での努力を続けたい、こう考えております。

 以上でございます。

臼井分科員 大変でございますけれども、御努力をお願いいたしたいと思います。

 今のお話に関係してくるわけですが、先ほどの行政減量・効率化有識者会議が、総人件費削減に関して、十五分野の中に法務省も入ってきていると。刑務所や拘置所等の施設についても入ってきているわけで、法務省側としては、二〇〇六年からの五年間で、民間委託を現行の六百十七から千三百三十六にふやす、こう回答をし、減員には特に答えていない、こういうふうなことを聞いているわけでございます。

 このPFI刑務所は、先ほどお話ございましたとおり、極めて民間委託に適するように御努力をしていただいてつくってございますが、一方、既存の刑務所については、もともとそんなことは全く考えたことのない時代につくった建物なので、なかなかこれはまた大変じゃないだろうか、そう思います。

 今お話しのとおり、平成十六年度には二百十二人、平成十七年度は六百十七人の民間委託を既に実施しておる。またこれを倍増しよう、こういうふうなこともお考えであるということはわかっておりますが、こうした古いものに適用していくのはなかなか大変だと思います。改築といっても、なかなかそう簡単にはできないだろうし、その辺の、将来さらに民間委託というものを進めていくための何かお考えがあれば、お聞きをしたいと思います。

小貫政府参考人 先生御案内のとおりでございますが、既存施設は、ある一定期間、相当な期間でございますが、研修と訓練を受けた、そういった受刑者等への対応に習熟した刑務職員が運営するという前提でつくってございます。

 そういうことで、受刑者との接触を極力少なくしたり、死角をなくしたり、こういう面で、民間委託を拡大する上では一つのバリアとなるような構造となっている部分が多いわけでございまして、既存する施設においては、すぐに民間委託の拡大を図るということには限界があると考えておりますが、しかし、今後、施設の改築等の場合においては、設計等に配慮いたしまして、その面でも民間委託が可能になるような面での努力を続けてまいりたい、こう考えている次第でございます。

臼井分科員 今度の新しいPFI刑務所ということになりますと、施設の警備等々についてもやり得る、民間委託し得るというふうなことでもございます。ぜひとも知恵を絞って、引き続き御努力をいただきたいと思います。

 そこで最後になりますが、大臣、これからの裁判のあり方、裁判員制度と、それから特に、主として行刑施設の問題について今私は御質問したわけでございますけれども、まさに、かつての日本の、世界に類を見ないような安全な国家というものは失われつつある。しかし、カナダあたりに参りますと、まだかぎを閉めないで寝起きをしておられるという町も幾らもある。それから考えると、日本というのは、非常にそういう治安の悪化というのは大問題なんじゃないだろうか。難しい問題も大変ございます。ぜひとも、これから国民のために頑張っていただきたいと思いますが、最後に、その御決意を伺って終わらせていただきたいと思います。

    〔主査退席、町村主査代理着席〕

杉浦国務大臣 臼井先生には、法務大臣の先輩としていろいろ御指導をいただいております。ありがたく感謝申し上げております。

 世界一安心、安全な国の復活ということを総理から指示されまして、法務大臣に就任いたしました。きょう先生が質問された裁判員制度、これは先生と一緒に当初のころ議論したわけですけれども、やはり司法に対する国民参加、先進国では日本が最後になるようでございますが、先生のおっしゃったような趣旨で決めたわけです。実施までにはまだ何年かありますが、まだまだ国民の理解が得られていない。広報をいたしまして、しっかり出発させなきゃいかぬと思っておりますが、問題点も、先生の御指摘を含めましていろいろございます。

 ともかくスタートしてやってみて、検討の結果、改善すべきことは改善するということになると思いますが、今後とも一層の法務当局の努力が必要であろう、こう思っております。

 矯正業務についていろいろ御質問があったわけですが、私どもは、民間でできることはできるだけ民間に持っていく、法務省は割合優等生じゃないかと思うんです、刑務所についてもどんどん民間に出してまいっておりますので。総務系統ですね。今後とも、民間でできることは極力民間に委託していくという方向で努力してまいります。

 ただし、もう刑務所大増設ですから、公権力を行使する部分については増員せざるを得ないので、矯正当局全体として見ると増加を抑制する効果はあると思うんです、民間には。ですけれども、当面の間は緩和する程度にとどまるだろう。

 法務省全体としても努力してまいります。

臼井分科員 どうもありがとうございました。

    〔町村主査代理退席、主査着席〕

茂木主査 これにて臼井日出男君の質疑は終了いたしました。

 次に、近江屋信広君。

近江屋分科員 近江屋でございます。

 杉浦大臣、それから河野副大臣、そして三ッ林大臣政務官というチームで法務行政を引っ張っていただいているということに対しまして、まず心から敬意を表したいと存じます。

 先ほど臼井委員からもありました。総理は、世界一安心、安全な日本をつくる、こういう目標、理想を指し示しておるのでありまして、大変重要な法務行政でございますので、私どもも、正すものは正して、そして必要な御支援、御協力をさせていただきたいと思いますので、杉浦法務大臣初め、ぜひ頑張っていただきたいと存ずる次第でございます。

 まず、私からは、刑務所業務などにおける民間サービスの活用ということで、先ほど来ちょっと重なっている質問とは存じますが、大変恐縮ですが、改めて質問させていただきたいと存じます。

 総理は、通常国会冒頭の施政方針演説におきまして、大きな目標として、簡素で効率的な政府を実現する、これを目指すんだと。そして一方で、公務員の総人件費を削減するという方針も同時に述べられております。しかしながら、他方では、法務行政の中でも刑務所管理などについての矯正行政の分野では、犯罪が大変増加しておりますし、また、それに伴う受刑者もふえておりますので、それにきちんと対応することが急務であるということも現実であります。

 先ほど臼井委員からもありましたが、公務員の純減ということを求められておりますが、これは政府全体で考えることであって、必要なところは配慮が必要だということを先ほど述べられておりましたが、私としても、そこには同感をせざるを得ない面もあると思っております。

 そのように、総理が言われている、政府の要請である公務員の総人件費の削減ということと、法務行政における人員増の必要、この二つの要請にこたえるためには、やはり同じ施政方針演説で述べられているように、役所より民間に任せた方が効果的な分野については、積極的に民間のサービスを活用する必要がある、そのように考えるところであります。

 また、施政方針演説の中でも、官民の競争を通じてすぐれたサービスを提供する市場化テストの実施例として、刑務所の周辺警備という業務も挙げられておるところであります。刑務所の建設を民間の資金とかノウハウを活用するPFI方式で行うという試みもなされております。

 そのような、以上のようなことを踏まえまして、矯正行政全般における民間サービス活用の現状はどうなっているのか、そしてその将来計画はどのようなものであるのかを、重ねての質問でございますが、お伺いいたしたいと存じます。

小貫政府参考人 過剰収容が常態化しております行刑施設、刑務所、拘置所においては、職員の増員を行っても不足する要員を確保するために、民間活力を生かした整備運営を推進しているところでございます。

 まず、市場化テスト等を含めた民間委託でございますが、御案内のとおり、宮城刑務所と福島刑務所で市場化テストを実施中でございます。これらを含めまして、平成十七年度の民間委託数は、平成十六年度の二百十二ポストから約三倍の六百十七ポストと大幅な拡大を図ってまいりました。

 さらに、御指摘のPFI手法による民間ノウハウを活用した施設の建設、運営につきましては、現在二つの施設の開設を目指しておりますけれども、この二つの施設を合わせた職員の必要数は六百二十七人と試算されますが、そのうちの二百九十人の業務を民間にゆだねることが可能と見込んでおります。

 将来計画につきましては、先般の総人件費改革への取り組みといたしまして、刑務所及び拘置所の非権力的な業務について、平成二十二年度までの五年間における委託可能数を試算したところでございますが、平成十八年度の予算案では二百三十二ポスト増、平成十九年度以降、新たに四百八十七ポスト増の計七百十九ポストが拡大可能であるという試算になりました。その結果、総トータルで、民間委託可能数は千三百三十六ポスト、十七年度末の職員定数の民間委託率で算定しますと七・六%になる、こういう検討結果を得まして、内閣官房行政改革推進事務局に報告申し上げたところでございます。

近江屋分科員 民間委託、平成十六年から十七年に三倍ということを初め、市場化テストに対しても大変積極的に取り組んでおられて、先ほど杉浦大臣が、民間委託の優等生的な対処の仕方をしていると言われておりましたが、全くそういう感じがいたします。引き続き、民間サービス活用という観点を存分に進めていっていただきたいと希望するものであります。

 次に、入国管理業務についてでございます。

 この入国管理業務についても、やはり総理の施政方針演説の中で、「ビジット・ジャパン・キャンペーンなどにより、二〇一〇年までに外国人旅行者を一千万人にする目標の達成を目指します。」と述べられております。しかるに、外国人団体観光客ですか、チャーター便によりまして地方空港から入国する例もふえているようでありますが、特に地方空港では、入国審査体制の不備が観光客受け入れ促進の支障となっているというケースも多いのではないかということを聞いております。

 またさらに、総理の施政方針では、「増加している外国人犯罪に対処するため、入国時に指紋による審査を導入するとともに、警察と入国管理当局の連携を強化して、二十五万人と推定される不法滞在者を平成二十年までに半減することを目指します。」と述べられております。外国旅行者受け入れのためとともに、不法入国者、そして不法残留者対策という観点からも、入国審査要員充実への必要度は極めて高いのではないかと考えます。

 公務員の総人件費削減という方針のもとでこうした情勢に対応するためには、可能な限り、やはり民間サービスの導入を図るとともに、政府部門の中での人員の機動的な配置転換が必要ではないかと考えるものであります。先般、行政改革推進事務局も、公権力を行使する刑務官は別としても、行刑施設の行政職員など純減できる部分もあると指摘しております。

 そこで、法務省内で取り組んでおられる人員配置の合理化について、過去の実績、さらに他省庁からの配置転換受け入れ、そういう過去の実績についてお伺いしたいと存じます。

小津政府参考人 お答えいたします。

 最近におきます法務省における業務の合理化、定員削減の取り組みでございますけれども、最近では、治安関係職員の増員による人的体制の充実を図っております一方で、定員削減計画に基づき、平成十三年度からの五年間において法務省全体で二千四百十三人の定員削減を実施しておりまして、これに加えまして、十六年度と十七年度におきましては、別途、内部管理業務の効率化等によりまして、合計三百四十七人の合理化減を実施するなどしてまいりました。

 また、十八年度以降の四年間は、閣議決定に基づきまして、法務省全体で三千七百二十三人もの定員を合理化することとしておりますけれども、今後とも、ITの活用による内部管理業務の効率化などによりまして、めり張りのある合理的な人員配置を推進して、簡素で効率的な政府の実現に向けて努力してまいりたいと思っております。

 また、他省庁からの受け入れでございますけれども、法務省におきましては、行政需要に応じた部門間配置転換の推進を図るという政府全体の方針に基づきまして、昭和五十五年度以降現在まで、合計八百六十三人の方を他省庁から受け入れておりまして、平成十八年度におきましても十三人を受け入れる予定でございます。

 なお、これ以外に、法務省では、昭和六十一年度から平成元年度にかけまして日本国有鉄道清算事業団等の職員四百二十七人を受け入れたという実績があるところでございます。

 以上でございます。

河野副大臣 地方の入国審査についてお触れになりましたので、若干つけ加えさせていただきたいと思います。

 地方へチャーター便で来られる観光客が大変ふえております。しかしこれは、調べますと、ほとんどが台湾からのチャーター便になっております。今までは、チャーター便が着く空港へ入国審査官を派遣して処理をしておりましたが、ほとんどが台湾の中正空港からのチャーター便でございますので、最近は、法務省の人間を台湾に派遣してプレクリアランスを行っております。そうすると、空港に着いたときには非常に簡単な、証印を押す業務で入国を認めることができますので、そこに地方の県庁等から人を出していただいて、それで対応するということもやっております。

近江屋分科員 入国管理のことで副大臣から詳細な説明がございまして、大変苦労しながら、工夫しながらやっておられるんだなという実感を持ちました。

 また、配置転換、合理化、大変精力的に進めておられる。数字を挙げて説明いただいたところでありまして、引き続き合理化という観点から努力していただければなと思います。

 続きまして、情報管理についてでございます。

 総理の施政方針の中で、我が国が世界最先端のIT国家となったこと、今後もIT新改革戦略に基づいて高い信頼性と安全性が確保されて、国民一人一人がITの恩恵を実感できる社会をつくっていくという方針が述べられております。

 しかしながら、IT化のマイナス側面として、本年二月、刑務所など四施設におきまして受刑者情報が流出したという問題が生じたと聞いております。

 そこでまず第一に、その事案の概要、どういう概要であったのか。二つ目に、矯正施設における情報管理の問題点を挙げるとすればどういう点なのかということ。そして三番目として、それに対してどのような対応策を講じていくのか。それぞれについてお伺いしたいと存じます。

小貫政府参考人 まずその流出事案につきましては、京都刑務所職員を含む複数の職員が、平成十三年十月ころから十六年十二月ころにかけまして、福岡刑務所ほか四庁で作成されました処遇上の実例、指示文書等の電子データを、研修あるいは執務の参考資料にしたいとしてコンパクトディスク等外部記録媒体に複写していたものを職員間でやりとりしておりました。そうしたところ、京都刑務所職員の自宅で使用するパーソナルコンピューターがウィニー関連のウイルスに感染したことによりまして、この職員が保有するコンパクトディスクに保存されていた約一万ファイルが流出した、こういうものでございます。情報の中身は、被収容者三千三百八十人分、さらには職員二千二百八十三人分の氏名等個人情報の電子データが含まれていた、こういうことでございます。

 続きまして、情報管理の問題点ということでございますが、矯正組織で使っているコンピューターシステム、二つございます。一つは、被収容者データ管理システムというデータベースで管理しているデータと、各施設で使っておりますそれ以外の一般データの二つがございまして、今回流出したのは各施設で用いているものでございました。

 その問題点というのは、この一般施設で用いるものにつきましては、施設内の職員であれば閲覧や複写ができる状態にあったこと。今回の流出情報は、その一般業務のデータが外部媒体に複写されまして、自宅に持ち帰っていた、こういうことがあったわけでございます。こういった管理状況が極めてずさんであったということと、職員全体を含む矯正組織全体の情報管理意識の低さに問題があった、こう認識しているところでございます。

 そこで、再発防止の一方策といたしましては、情報管理に万全を期するように職員に改めて周知徹底するということはもちろんのことといたしまして、施設内のすべてのコンピューターに外部記録媒体への複写等を不可能にする機能を追加いたしまして、電子情報を施設外に持ち出せないように早急に措置を講ずることとしてございます。

 以上でございます。

近江屋分科員 情報管理に関する不祥事が若干あったということでございますが、問題点の対処として、システムをもちろんきちんと万全にすることも重要でありますが、それより何よりも、携わる者の意識改革、意識をきちんとするということが何よりも重要であると存じますので、その点、今、担当者の方々から意識改革をきちんとするということの御説明がありましたので、引き続きその点を十二分に措置していただければと存じます。

 続きまして、日本司法支援センターについて質問させていただきたいと存じます。

 やはり施政方針の中で、ことしの春に日本司法支援センターを設立し、秋には全国で業務を開始します、どこでも気軽に法律相談が受けられるように、国民に身近で頼りがいのある司法を実現しますと施政方針の中で述べておられます。

 そこで、今後の司法行政における日本司法支援センターの位置づけ、特に、裁判員制度、和解、調停制度などとの全体的な位置づけについて、それに、計画の進展状況はどうなっておるのかということ、また今後の見通しはいかなるものであるのかという点を伺いたいと存じます。

杉浦国務大臣 詳しくは事務当局から言ってもらいますが、この日本司法支援センターというのは、今度の司法改革全体の中で、裁判員制度とかさまざまな柱の中の大きな柱でございます。

 社会が多様化して価値観も多様化している中で、全国にネットを張って国民の皆さんのニーズにこたえていこう、法律相談初め、そういう大きな位置づけでスタートしようとしておるものでございます。この四月に設立しますが、詳しい内容は事務方から答弁させます。

倉吉政府参考人 今大臣からお話があったとおりでございますが、日本司法支援センターは、国民が司法に身近にアクセスできるようにということで非常に広範な業務を扱います。今御指摘のありましたとおり、広い意味で紛争解決制度の中で、それを下支えをする、バックボーンになる大きなシステムになるであろうと思っております。

 御指摘の裁判員制度でございますが、裁判員が法廷に来てもらうためには、今までとは違って、連日的に法廷を開廷するということをしなければなりません。それに対応できる国選弁護人を確保する、これは極めて日本司法支援センターの重要な業務だと考えております。

 それから、和解、調停という御指摘がございました。これも非常に大事なところでございまして、いわば訴訟手続に関するものだけではなく、今後は、和解、調停に加えて各種の裁判外紛争解決手続、ADRと呼んでおりますが、そのADR手続による紛争解決、そういった道もあるんだということの情報も的確に来られた国民の皆様に提供できるようにしなければならない、こう思っております。

 法務省といたしましては、平成十六年の四月以降に司法法制部にプロジェクトチームをつくりました。その中でさまざまな設立準備に当たってまいりましたが、昨年の九月六日、支援センターの理事長となるべき者として金平輝子氏が指名されたところでございます。

 その後は、金平理事長予定者と十分な意思疎通を行いながら準備作業を行ってきておりまして、現時点におきまして、本年四月上旬に支援センターを設立し、十月上旬から業務を開始できるよう、地方レベル、中央レベルでさまざま細かな準備に努めておるところでございます。

近江屋分科員 ありがとうございます。

 私も法務委員になりたてで、日本司法支援センターについて詳しく御説明いただきまして、大変ありがとうございます。

 また、法務大臣から、これは司法制度改革の中核をなす施策なんだということも承りまして、その重要性を改めて再認識したところでありまして、引き続き法務行政の中で最大限の御努力をいただければ幸甚に存ずる次第でございます。

 さて、最後に、司法制度の整備というものは政府の当然の責務であるというところは言うをまたないところでありますが、すべての国民、そしてすべての組織体によって、あらゆる分野にわたって現行の法令がきちんとしっかりと遵守されているということが重要であると存じます。

 司法制度改革の基本的な考え方、それは、明確なルールと自己責任原則に貫かれた事後監視・救済型社会への転換を図って、自由かつ公正な社会を実現していく、そういう考え方であると存じますが、そういう考え方を形にしていくためにも、現行法令がしっかり遵守されていく、コンプライアンスということが重要不可欠な要件であると思っております。

 こういう観点から、現在、一部の企業においては法令遵守面での問題点も幾つか生じておりますけれども、しかし多くの企業においては、コンプライアンス体制の構築のために、それぞれ社内において積極的に取り組まれておると認識しております。さらに、日本経団連は、毎年十月を企業倫理月間と定めて、企業倫理の確立について会員企業にその徹底を図っている、その成果も生じているのではないかと認識しております。

 また、企業のみならず、もちろん政党においても、コンプライアンス、政治活動における法令遵守ということは、極めて公党として、国民政党として重要であるということは言うまでもないことであります。それぞれの政党でそういう法令遵守ということが講じられているとは思いますが、我が自由民主党においても、自民党本部の中にコンプライアンス室というものを設置して、専任の弁護士を常駐させ、それぞれの選挙の際には法令遵守状況はどうなっているのかということを派遣してきちんと点検するなど、それぞれを機能させていると自負しております。

 先般、予算委員会の一般質疑の中で、我が党の菅原一秀議員が、民主党の中でこの二年間十一件ほどの刑事事犯を含む不祥事件があったという事実関係を述べたら、大変民主党から激しく反応を受けましたが、我が党においてもここ二、三年で四、五件の不祥事件が生じたことも事実でありますので、これは、それぞれの政党においてこういう不祥事件がゼロになるように努めていくということが必要であろうかと思います。特に政治家が誤解を受けないように、李下に冠を正さずと申しますが、その格言を肝に銘じてそれぞれ努力していくべきことと存じます。

 そのような観点から、法令遵守の徹底については、政党、企業を初めとするすべての団体、そしてひいては国民の皆さん、それぞれの立場で努力すべき事柄であると認識しておりますが、その点の法務大臣の御所見を伺いたいと存じます。

杉浦国務大臣 先生がおっしゃるとおりだと思います。さすが自民党の事務局の中で長年御苦労されてきた方のお言葉と承っておりました。今後ともよろしくお願いいたします。

 我が国、民主主義社会というのは法の支配する社会でございます。法というのはルールであります。皆が守っていくべきものが法でございます。先生のおっしゃるとおり、一人一人の国民、企業、政党を初めとするすべての団体が、法は多岐にわたっておりますが、守っていくということは大事なことである、まことに先生のおっしゃるとおりでございます。

 天網恢々疎にして漏らさずという言葉がございます。粗いように見えて、法の網は細かいわけでございます。ライブドアの件なんかがその典型かもしれませんが、法の網をくぐって、うまくすり抜けたと思っておられたのかもしれないんだけれども、やはりひっかかったということじゃないでしょうか。その教訓を教えてくれた事件ではないか。中身はまだ詳しく存じませんが、そんなふうに思ったりもしておるわけでございます。

近江屋分科員 今ほど杉浦大臣から、法の網をくぐり抜けるというような観点ではなくて、法を守る、法秩序を維持していくという観点がそれぞれの国民が持つべき視点であろうということを伺いまして、まことに同感であります。

 これで私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

茂木主査 これにて近江屋信広君の質疑は終了いたしました。

 次に、矢野隆司君。

矢野分科員 私は、自由民主党近畿比例ブロックから昨年当選をさせていただきました矢野隆司でございます。

 本日は、予算委員会の分科会で発言の機会を与えられましたこと、まずもって関係各位に御礼を申し上げたいと存じます。

 私の地元、近畿二府四県、大変たくさんの空港がございます。先般も神戸空港が新たに開港したわけでございますが、一種、二種あるいはコミューター空港を含めれば大変たくさんの数の空港でございます。わけて、常時出入国の業務をされておられるというのが関西国際空港でございます。

 本日は、出入国管理法の一部改正ということに絡めて関西空港における出入国の業務についてお尋ねをしよう、こう思っておりましたところ、地元の方から、いろいろとそれに付随する質問をしてほしい、こういうことでございまして、いささか、法務省といいますよりも、その他総務省や外務省からも政府参考人としてお越しをいただいた次第でございます。

 早速ですが、質問に移らせていただきます。

 本年の一月二十七日、大阪地方裁判所におきまして、大変画期的なと申しますか、いささかインパクトを与える判決がございました。

 それは、大阪市が管理をいたします都市公園、この公園に今テントを張って住んでおるホームレス、マスコミではホームレス、ホームレスと書いておりますが、私は公園居住者とあえて呼ばせていただきますけれども、この方が、住民票をこの公園内に住所地として転入したい、そういうことを地元の区役所に届け出たところ、受理されなかった。そのことを訴えられまして、裁判をされました。その判決が一月二十七日に出されまして、その主文といたしましては、区役所は受理しなさい、住民登録を受け付けなさい、こういう判決でございました。

 大変一般社会にも驚きを持って受けとめられたようでございますが、ここで、非常に基本的なことでございますが、住民票が移る、住民登録されるということは、いわゆる住民基本台帳に登載されるということだと思いますが、この住民基本台帳に登載されるべき国民の要件というものがもしあるのであれば、まず教えていただきたいと思います。

久元政府参考人 住民基本台帳に登録されますためには、その市町村の中に住所を有しているということが要件になります。住民基本台帳法上、住所については明確な要件は書いておりませんけれども、この住所につきましては、地方自治法第十条の住民の住所と同じであるというふうに従来から解釈をしているところであります。

 そこで、この住所につきましては、民法第二十二条と同じように、生活の本拠であるというふうにされておりまして、その認定は、私ども、従来から、市町村において客観的居住の事実を基礎として、当該居住者の主観的意思を総合して行うものというふうに運用してきているところでありまして、この考え方は裁判例におきましても認められているというふうに考えております。

矢野分科員 ただいま、生活の本拠であるのが住所である、こういうことでございましたが、今回のケースを引き合いに出すわけではございませんが、いわゆる都市公園に居住される人を想定されてそういう法律あるいは行政的な手続がつくられたのでございましょうか。その点も教えていただきたいんです。

久元政府参考人 いわゆる公園居住者につきましては、近年かなりふえてきているという状況でございますが、実は、この住民基本台帳制度は昭和四十二年に法律としてできたものでありまして、それ以前は住民登録法という法律がございました。この昭和二十六年の住民登録法、また住民基本台帳法、共通の考え方といたしまして、法律は変わっておりますけれども、客観的な事実を基礎として住所を認定するという考え方をずっと一貫しております。

 ただ、この公園居住者につきましては、最近はふえてきておりますけれども、昭和二十年代におきましても、また昭和三十年代、昭和四十年代におきましても、いわば、住所が必ずしも定まっていない方、路上生活者のような方がおられたことは事実でありまして、そういう方を想定いたしまして、このことも含めて従来から法律が運用されてきているということは事実でございます。

矢野分科員 恐らく、ただいまの答弁は、過去に、実際の事例といたしまして、洞窟の中に住んでおる方、あるいは橋の下で生活を営んでおられる方に住民票が交付されたということを指し示しておられるんだと思います。

 今回の判決では、公園での占有権まで認めたわけではない、こういうことでございますが、この方が、もちろん、大阪市側は控訴をしておりますので判決が確定したわけではございませんけれども、もし確定して住民登録されるとなりますと、この人には具体的にどのような権利それから義務が与えられるのか、教えていただきたいと思います。

久元政府参考人 地方自治法におきましては、まず、一般的な住民の権利義務について規定されております。「住民は、法律の定めるところにより、その属する普通地方公共団体の役務の提供をひとしく受ける権利を有し、その負担を分任する義務を負う。」ということになりますので、その地方公共団体から基本的な行政サービスを受ける権利を有するということであります。

 一方、この住民票に登載されることによりまして、別途一定の要件を満たしますと、選挙人名簿に登録がなされることになりますし、また、国民健康保険の被保険者となるといった権利義務が発生するということになるわけでございます。

矢野分科員 重ねてお尋ねしますが、いわゆる印鑑登録も可能になるわけでしょうか。

久元政府参考人 そのとおりでございます。

矢野分科員 これまでに、このような請求訴訟、同様のものでございますね、請求訴訟は過去にあったのでございましょうか。あるいは、現在、同様の事例で訴訟が提起されておるものがあるのでございましょうか。いかがでございましょう。

久元政府参考人 訴訟につきましては、ほかには例は聞いておりません。

矢野分科員 これは私の私見ではございますけれども、支援施設に入らず、判決の言う住所があって、住民登録をされるということがもし確定すれば、果たしてこの人をホームレスと呼んでいいのかどうかというのが私の個人的な意見としまして非常に疑問が残るところでございますが、それはさておきまして、今度は、きょうは外務省さんにもお越しいただいていると思いますが、外務省の方にお尋ねいたします。

 パスポートの発給要件、すなわち、どのような書類が必要とされているのか教えてください。

谷崎政府参考人 お答えいたします。

 ただいま御質問にありました旅券でございますけれども、この旅券は、所持人の国籍と、それから身分事項を国際的に公証するという機能と、国内的には憲法で保障する海外渡航の自由を確保する、こういう機能を持っております。その上で、旅券については、旅券法で要件が定められております。

 具体的には、旅券の申請に当たっては、旅券法に基づいて国籍と身分事項を確認するための戸籍謄本または抄本が必要でございます。また、本人確認のためには、住民票及び運転免許証等の公的な確認の書類が必要となっております。

矢野分科員 ありがとうございます。

 重ねてさらに突っ込んでお尋ねをしますが、書類の中で、いわゆる一般の方は、自動車免許証とか、あるいはその他の顔写真のついておる証明証、あるいはそういう許可証、身分証、そういったもので申請をされると聞いておりますけれども、全く顔写真のない書類だけでも申請はできるんでしょうか。

谷崎政府参考人 本人確認のためには、もちろん、写真つきの書類というのが一番望ましいわけでございまして、具体的には、運転免許証等の写真つきの書類を求めるということでございます。

 他方、人によってはそれらの書類を所持していないということがございますので、写真のない書類でも受理するということはございますが、その場合には、複数の確認の書類を提示するよう求めているというのが実態でございます。

矢野分科員 恐れ入りますが、具体的に、写真のついていない証明証で申請が可能な具体例というものが幾つかございましたら、教えていただきたいのでございます。

谷崎政府参考人 複数の本人確認の書類として、具体例としては、健康保険証さらには年金証書等の書類が本人確認のための書類として認められております。

矢野分科員 そういった申請の中で、これは統計がもしおありであれば教えていただきたいんですが、全体の申請者の何割ぐらいがそういう全く顔写真のついていない書類で申請をされて、パスポートが発給されておられるのか。もしおわかりであれば教えていただきたいんです。

茂木主査 谷崎領事局長、わかればここで答えてください。わからなければ後で資料を出してください。

谷崎政府参考人 手元に詳しい資料を持っておりませんが、七割、約七〇%が写真つきの書類で申請がなされております。

矢野分科員 それでは、さらに突っ込んでお尋ねしますが、パスポートを発給する場合、全く顔写真のついていない書類で申請をされた場合のいわゆる本人確認というものはどういうふうにされておられるんでございましょうか。

谷崎政府参考人 本人確認のための方法としましては、申請したときにできる限り本人確認のための書類を義務づけるというのは先ほど申し上げたとおりでございますが、さらに交付するときでございますけれども、これは原則出頭してもらって、そこで渡すということを行っております。

 したがいまして、渡すときに本人の方から例えば居住地域に送られたはがき等を携帯するようにということを言っておりまして、そういった形で本人確認というのを行っております。さらには、面談をしますので、いろいろな意味での挙動というものは見ておりますので、その上で、さらに例えば書類に書いてあります御両親の名前を質問するといったようなこともございます。

矢野分科員 大変よくわかったわけでございますが、いささか納得がいかないのは、果たしてそれで本当に本人確認ができるのかなということでございます。

 これまでに、いわゆる本人ではないのに本人と称してパスポートの申請をした例、あるいは発給を受けた例というのが少なからずあるのかないのか、その辺、少し詳しく教えていただければありがたいんですが。

谷崎政府参考人 ただいまの御質問でございますけれども、まず旅券でございますが、毎年、年によって差がございますけれども、大体三百万ないしは三百五十万くらいを発給しております。その中で、いわゆる不正取得が発覚したという例でございますけれども、大体、押しなべて言いますと、年間でございますけれども、五十件から百件の間ということでございます。

 例えば平成十七年で申し上げますと、六十四件が成り済ましという形で発覚しております。さらに、虚偽の申請というのを行っている例が四件ございます。さらには、未遂ということで、先ほど申し上げたような本人確認の途中でこれが真正ではないということがわかった例でございますけれども、それが平成十七年で申し上げますと十五件ということでございます。

 具体的に、中身でございますけれども、基本的には偽造という方法でございますが、戸籍謄抄本あるいは本人確認の書類を偽造しているということとか、さらにはいわゆる成り済ましということで、その書類そのものは正しいんですが、実は本人そのものではなく、他人のものを使っているという意味での成り済ましという例が先ほど申し上げた五十件から百件の中の内訳でございます。

矢野分科員 六十四件あったということでございますが、そのいわゆる成り済ました個々の理由というものがあると思うんですが、どういった理由が多いんでございましょうか。

谷崎政府参考人 若干先ほどの繰り返しになりますけれども、成り済ましというのが六十四件、それから二重取得というのが二件、それから虚偽申請というのが四件というのが平成十七年の内訳でございます。

 この六十四件の中身につきましては、先ほど申し上げましたように、いわゆる偽造ですね、書類そのものが間違っているというのと、それから、書類そのものは正しいんですが、本人そのものではないという意味での、他人のものを使っているという意味での成り済ましというのがこの六十四件の大宗を占めているということでございます。

矢野分科員 理由をちょっとお尋ねしたんですが、ちょっとよくわからなかったんですけれども、要するに、これは犯罪を目的としてパスポートを不正に取得しようとした、こういう理由が大半なんでございましょうか。その辺はどうなんでございましょう。

谷崎政府参考人 我々の方としては、理由についての詳しい統計は今持っておりませんけれども、多くの場合は、不法に日本に滞在している外国人が日本人の旅券をとろうとする例が大宗を占めているというふうに考えております。

矢野分科員 伺った話によりますと、例えば本人が真正の、要するに本当に自分のパスポートを申請しようと旅券事務所へ行ったところ、いや、もうあなたのパスポートは発給されていますよ、こう言われてびっくりしたというケースがあったように聞いております。

 あるいは、本人確認のために、これは、本人確認のときはその本人が旅券事務所へ出向かなきゃいけないというふうに聞いておりますが、そのときに、鼻から下をぐるぐる巻きに包帯で巻いて、きょうは声が出ないんです、こう言って、付添人がいる。横の付添人に質問するとその付添人がちゃんと答える。よくよく調べると、実はその付添人のデータでその包帯の人がパスポートを申請しておる、こういう事例もあるように聞いております。

 非常に、大変込み入ったといいますか、念の入ったといいますか、そういう手口といいますか手段で、巧妙な形で我が国の真正旅券を不正に取得しようとしていると思うんでございますが、その辺の、外務省として、とりあえず当面、何か対応策といったものはあるんでございましょうか。

谷崎政府参考人 今先生の方から具体例としてありました付添人が代理で答えるといった例は、確かに先ほどの過去の件数の中に含まれておりまして、そういうことで、未遂ということで、不正の旅券の取得をしようとした例というのはございます。外務省として、都道府県の方との協議を通じまして、できる限り本人確認というのは厳重にやるようにということは常々協議の対象としております。

 やはり一番本人性を確認する上で大事なのは本人の方の挙動ということでございまして、その辺が怪しいというようなことがございましたときには、先ほどちらっと申し上げましたけれども、旅券に書かれております事項について詳しくさらに質問する、例えば故郷の山とか川とか、それから御両親の名前とか、場合によってはその御両親の名前を漢字で書かせるといったようなことで本人確認を、既にしておりますけれども、基本的にはそれをさらに厳重にするということだろうと思います。

矢野分科員 それでは、もう一度総務省の方に戻ってお尋ねをしたいと思います。

 やはりここでも同じ質問になるかと思いますが、いわゆる住民登録をしようとする人、すなわちその申請者が果たして本当にその書類に記載された人物である、こういう確認というのはどういうふうにとっておられるのか、教えていただきたいと思います。

久元政府参考人 住民登録も形式的な要件を具備していればそのまま受理をしてよいというものではなくて、実質的にその本人であるということをきちんと確認することを求めております。具体的には、住民基本台帳法施行令で、この届け出があったときは、その届け出の内容が事実であるかどうかを審査して記載等を行わなければならないというふうにしております。

 具体的な本人確認の方法ですけども、私ども、従来からこのことについて徹底してきておりますけれども、特に近年、成り済ましが非常に多いということ、ふえてきているという状況の中で、基本的には顔写真が入った本人確認の書類というものを提示して、例えば住民基本台帳カードあるいはパスポート、運転免許証、こういった資格証明書等で本人の写真が入っているものを提示を求めるということを私ども市町村に要請をしてきておりまして、ほぼ、ほとんどの市町村がそういう運用をしてきているという状況でございます。

矢野分科員 外務省のパスポートの申請よりはいささか厳格な形のような御説明でございますが、しかしながら、全くそういう顔写真の入ったものがないという方の場合はどうされるのでございましょうか。

久元政府参考人 基本的には顔写真入りのものを求めるわけですけれども、それ以外の方法につきましては、それぞれの市町村でいろいろな方法をとっております。

 例えば、申し出があった住所に書類を送りまして、果たしてそれが届くかどうかといったような確認等を行う。もしもこれが戻ってきたような場合にはこれを保留扱いにいたしまして、事実関係を実質的にさらに調査をするといったようなことを行っているところでありまして、そういう方法を私どもも要請しているところでございます。

矢野分科員 そこで、法務省にお尋ねしたいのでございますが、現在、いわゆるオーバーステイなどを除きます不法入国、不法上陸者、約三万人と推定されていると伺っております。先ほどの近江屋先生の御質問でも触れられておりましたけれども、大変たくさんの不法入国者が今も我が国でどこかに住まわっておる、こういうことでございます。

 外国の偽造パスポートを使って入国したというケースはこの際除外いたしまして、日本の真正なパスポートを不正使用もしくは偽造、改造したりしてのいわゆる成り済ましパスポートと申しますか、そういったものの摘発事例、入国管理業務の中での摘発事例といったものはあるのでございましょうか。お尋ねします。

三浦政府参考人 最近におきまして入国管理局で摘発いたしました日本旅券の不正発給事案について若干御紹介をさせていただきたいと存じます。

 まず一件目でございますが、本年の二月上旬の事案でございます。中部国際空港で発生して摘発しておりますが、これは、十数年にわたりまして我が国に不法滞在していた韓国人の男性でございますが、そういう状況でございますので、本国に正規には帰れないわけでございます。さりとて、入管に出頭しますと当然これは収容されますので、それも嫌だということで、何とか一時帰国をしたいということを考えたようでございまして、勤め先の同僚の日本人に成り済まそう、こういうふうに企てまして、その同僚の男性の方に、会社関係の手続に必要であるといううそを言いまして、その日本人男性の戸籍の抄本をとらせまして、これを預かる。さらには、その男性に対して、病院に行きたいので国民健康保険証を貸してくれないかということで、これを借り受けるということをいたしました。またさらに、その男性の目を盗みまして、男性の会社の社員証、これは写真が載っております、これを盗み出しまして、写真を自分の写真、韓国人の男の写真に張りかえまして、これらの書類をそろえまして県の旅券センターに赴きまして、日本人の男性であると称して旅券の発給申請を行いまして、怪しまれることなく旅券の発給を受けたという事案がございます。

 これは、実はその後、この男はその旅券を使いまして、一回、韓国と日本の間を往復して、うまくいったので再度出国しようとしたところを入国審査官が見つけたわけでございますが、これは本物の旅券でございますので、なかなか通常では発覚が難しい。たまたまこれは匿名の情報提供がありまして、事前に名義人のいろいろ状況を調べておきまして、質問を詳しくいたしまして、家族関係はどうですかとか、そういったことを聞いたところ、全くあいまいな返事しかできないということで摘発できた、こういう事案がございます。

 あと、このほかに、昨年一年間で、同じような立場にある中国人が同じように一時帰国を図りまして、ブローカーに多額のお金を払って、同じような形で真正な日本の旅券、もちろん本人のものではなくて、日本人名義のものを取得したというケースがございます。これらも、恐らく写真は本人が準備しておるのでございますが、それ以外のいろいろな書類はブローカーの方でうまいこと調達して手続をさせたという事案でございます。

 最終的には、先ほども領事局長から御説明がございましたが、本人が旅券を受け取りに行く必要がございます。その際に、成り済ました日本人の名前、生年月日、それから住所などを入念にみんなに記憶させまして、窓口でよどみなくこれらを答える。それで本人だというふうに誤信させて係官から旅券を受け取った、こういう事案でございます。

 これらにつきましては、いずれも日本から出るときの審査で発見しておりますが、これは例えば、航空会社がチェックインするときにいろいろお客さんと話をします。どうも、日本人の旅券を持っている割には日本語がほとんど話せないというようなことで、不審だということで我々に通報いただいて、審査窓口で摘発をするといったケースでございますとか、入国審査官がどうも挙動がおかしいということで詳しく質問をして発見した、こういう事案がございます。

矢野分科員 大変、入国審査官の方の御苦労が忍ばれるお話だと思います。

 旅券発給事務のさまざまなことを本日外務省の方から伺いましたが、私といたしましては、運用面におきましても、いささか犯罪者の側に立って物を申せば、抜け道といいますか、抜け穴があるように思えてなりません。

 きょうは、北朝鮮による拉致犯人の入出国手口についてまでは触れませんけれども、これでは、日本人が別の日本人に成り済ますことも可能じゃないかなと思いました。例えば、相手国が入国を拒否する、いわゆるペルソナ・ノン・グラータのような犯罪者集団の中の日本人構成員、あるいは日本人に極めて風貌の似た、容貌の似た外国人の犯罪者が不正に我が国の真正旅券を入手して堂々と入出国を繰り返す、そういったことも可能であるし、現にそういったことが行われているんじゃないかと私は思っております。

 現在、日本を通過国とする、通過上陸とする場合に七十二時間の仮上陸が認められておるところですが、例えばこの七十二時間という時間を悪用いたしまして、日本国内の協力者と示し合わせれば、外国の旅券で日本に入り、日本の中で日本の真正な旅券を受け取って、その人に成り済まして外国に出国する、そういうことも可能なわけだと思っております。

 今般、大阪地裁でそういう判決がございました。これはどうなるか、今後わかりませんけれども、不正申請や不正取得させられるというような社会的弱者の方の立場もあるわけでございまして、現行制度においては、その意味でパスポートの発給条件というものをもう少し厳格に運用されてはいかがかなと私は思っております。

 そこで、法務大臣に最後にお尋ねいたしますが、さきの法務委員会でも法務大臣は、治安分野は活力ある社会の基盤である、治安分野に重点を注ぎたい、こういう決意を述べられました。入管法の改正案など、さまざまな知恵を絞られておられるところであると思いますが、最後に大臣の御所見を伺って、私の質問を終わりたいと思います。

茂木主査 時間が過ぎておりますので、極めて簡潔にお願いいたします。

河野副大臣 不正旅券の問題は、なるべく法務省も気をつけたいと思っておりますが、どんな道にも抜け道はございます。

 この問題は、例えば日本人がすべて免許証のような明確に写真のついた身分証明書を持っていれば、かなり防げる問題ではございますが、今、我が国にはそういう制度がございません。今法務省で行っております入国管理のプロジェクトチームにおきましても、そうした問題提起を提言の中でさせていただきたいと思っております。

矢野分科員 ありがとうございました。

茂木主査 これにて矢野隆司君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして法務省所管についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

茂木主査 次に、外務省所管について政府から説明を聴取いたします。麻生外務大臣。

麻生国務大臣 平成十八年度外務省所管予算案につきまして、概要を御説明させていただきます。

 平成十八年度一般会計予算において、外務省は対前年度比二・二%減の六千九百十二億四千百万円を計上いたしております。また、我が国の極めて重要な外交手段であるODAの予算は、外務省所管分として、対前年度比三%減の四千七百三十二億九千百万円を計上いたしております。

 外交の目的は、紛争、テロ、貧困等さまざまな課題を抱える国際社会の中で、我が国の安全と繁栄を確保していくことだと考えております。このような考え方に基づき、平成十八年度につきましては、国民とともにある外交、自由で豊かな世界を目指す外交、世界に発信する機動的外交という三つの柱のもと、予算案を作成させていただきました。

 第一の柱である国民とともにある外交に関しましては、我が国の安全と繁栄の確保のための予算を計上させていただいております。

 まず、国民の安全と安心の確保のため、一昨年に起きましたスマトラ沖大地震及びインド洋津波災害の経験を教訓とした大規模緊急事態対応のための予算や、本年三月から導入を予定いたしておりますIC旅券に関する経費を計上いたしております。

 次に、我が国国民の繁栄の増進のため、海外における日本企業の活動を支援するための予算や、我が国の国際競争力を強化するために経済連携協定(EPA)の交渉を推進するための経費を計上いたしております。

 第二の柱である自由で豊かな世界を目指す外交に関しては、国際社会全体の平和と繁栄の実現に向けた、我が国の国際協力、国際貢献のための予算を計上させていただいております。

 まず、我が国の外交のかなめであるODAに関する予算です。ODAにつきましては、昨年、さまざまな国際会議の場において小泉総理大臣から我が国の決意を表明したことも踏まえ、より効果的かつ効率的なODAの実施に向けて、コミュニティー開発支援無償を初めとする新たな協力の枠組みを導入するとともに、ODAの事後評価やNGOとの協力の強化といったODA改革を着実に行うために必要な経費を計上いたしております。

 次に、国際的なテロ対策への支援に必要な経費です。テロ対策等治安無償の導入などにより、引き続き国際的なテロ対策に協力をしていきたいと考えております。

 第三の柱である世界に発信する機動的外交に関しましては、我が国が効果的に外交政策を推進していくために、我が国に対する理解を促進し、外交実施体制を強化していくための予算を計上いたしております。

 このもとで、国内外での戦略的広報と幅広い人々に働きかけるパブリックディプロマシーの強化に必要な経費、情報収集・分析体制の強化や在外公館の体制、機構・定員を含む外交実施体制の強化のために必要な経費を計上いたしております。

 定員につきましては、総人件費削減の流れを受けて、外務省としても昨年以上の業務合理化による削減努力を行っております。一方、国際社会におきまして我が国が取り組むべき課題が増大し続けている中、我が国の外務省の定員は主要国と比べ極めて脆弱であることから、平成十八年度につきましては、新規定員五名を含む十九名の増員を図る予定です。

 以上が、平成十八年度外務省所管予算案の概要であります。よろしく御審議のほどお願い申し上げます。

 なお、詳細につきましては、お手元に「国会に対する予算説明」を配付させていただきましたので、主査におかれましては、これが会議録に掲載されますようお取り計らいをよろしくお願い申し上げます。

茂木主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま麻生外務大臣から申し出がありましたとおり、外務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

茂木主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

茂木主査 以上をもちまして外務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

茂木主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。篠田陽介君。

篠田分科員 自民党の篠田陽介でございます。

 私は三十二歳であります。いわゆる団塊ジュニアと呼ばれる世代であります。私は、今日の日本の繁栄を築いてくださいました先人の方々に心から感謝しています。頑張れば報われる社会をつくっていただいた、そう思っております。

 しかしながら、これから生まれてくる子供たち、また、これから育っていく我々、これからの将来を考えたときに、非常に大変なことが二つあると思います。

 まず一つ目は、国内においての財政再建問題であります。これは大変であります。何とか私も借金返済世代の代表として、一生懸命借金は返してまいりたいと思っています。

 しかしながら、もう一つの大きな心配、これは地球温暖化問題であります。

 人類は自然に対して謙虚にあらなきゃならないというふうにも思っております。四十六億年の地球の歴史のうち、人間のこれまで生きてきた年数というのは限られたものであります。一年に例えると、一時間にも満たないような期間であります。その中で、本当に自然に対して謙虚であらなきゃいけないという思いを私は強くしております。

 衆議院におきましては、環境委員会と外務委員会に所属をさせていただいております。

 私の選挙区は名古屋、愛知であります。非常に物づくりが盛んであると同時に、昨年も愛知万博が開催されました。非常に環境対策、また省エネ、リサイクル、関心の高い地域であります。一生懸命、今日本が地球温暖化防止に向けて、環境省が先頭となりながら頑張っておりますが、しかしながら、世界各国がこの一つの目的に向かって進んでいかなければ、これからに対し、大きなツケが残ってしまうと考えております。

 私の持論は、日本の持っております環境対策技術、リサイクル技術、さまざまな技術を活用して、世界に対して新しい形の国際貢献をしていく必要があるのではないか。その意味で、環境委員会と外務委員会に所属をさせていただいております。これから一生懸命頑張ってまいりたいと思っております。

 私は、今回、大きく三つ質問させていただきます。

 まず一つは、中国の環境汚染についてお伺いしたい。また、今議論が進んでおると思いますが、ODA改革、どのような方向性に向かうのかということもお尋ねをさせていただきたい。あとは、これは法務関係になりますが、これから日本が労働力確保のため、どういった方策をとっていったらいいのか。その三つを大きな柱として質問させていただきたいと考えております。

 私は、きょう、新聞を配らせていただきました。「「汚水の中に沈む」中国」ということで、中国が今環境汚染、また公害で大変苦しんでいるというような記事を、最近あちらこちらの新聞で目にしております。そういったことについて、今外務省はどのような見解をお持ちなのか、これをまず麻生外務大臣にお聞かせいただきたいと思っております。

    〔主査退席、山本(幸)主査代理着席〕

麻生国務大臣 日本も一九六〇年代、七〇年代、似たような経験はいたしておりますけれども、急速な開発とか経済成長というのをやりますと、いわゆる大量に化石燃料資源を投入するということになる。その結果として、いわゆる環境汚染というのが起きたのは、我々もついこの間やった経験であります。

 私どもは、中国の場合、ちょっと正確な数字が、十三億人となりますと、日本の十倍となりますと、なかなか数字もぴんとこないところもなきにしもあらずなんですが、いずれにいたしましても、この中国という国の経済が持続的に発展していくということにとりまして、環境の問題でいえば、温室ガス効果とか排出基準とか、いろんな意味でグローバルな影響が大きい。

 加えて、これが水とかいうなら、まだそこの人だけになりますけれども、これが空気によりますと、北海道はともかく、私らの北九州などというのはまともに、もろに来ますので、ちょっとそこらのところはかなり深刻に考えておりますのは、地元住民意識としてもそういったところがあります。

 こういった認識につきましては、中国側も最近はかなり認識を新たにし始めつつある。そこと経済成長とのバランスが非常に難しいんだと思いますが、第十六回でしたか、いわゆる全国中央委員会というところにおきましても、第十一次五カ年規格制定に関する提案というのがなされております。その中におきましても、環境重視の姿勢というのが出されているという状態になりつつありますので、この問題は、私どもは、意識し始めて、実行し、かつ効果を上げるまでにはかなりの時間を要した経験がありますので、いっときも早い効果が出てくることを期待いたしておるところであります。

篠田分科員 お答え、ありがとうございました。

 昨年でございますが、吉林省の方で化学工場から有害物質が出た、これがロシアに渡って、それからシベリアに抜けてオホーツク海まで達する、あの世界自然遺産となりました知床にまで達するんじゃないかと。これは、中国の環境汚染、公害は中国だけの問題ではないというふうに考えております。

 また、エチゼンクラゲの大量発生がありました。これは、中国からの汚染物質が、富栄養化物質が海水に流れ出て、それでエチゼンクラゲが大量発生したというふうにも言われております。これは、日本だけの問題じゃなくて、日本から積極的に中国に対して、もっと環境対策が必要じゃないか、そのような観点から、私は、ODAというものを積極的に活用していただきたいと考えております。

 また、中国は十三億の民であります。また、これらの民が日本の十倍資源の無駄遣いをしている、要するに、エネルギー効率が非常に悪いと言われております。ですから、今日本がなすべきこと、日本の省エネ技術、リサイクル技術、環境対策の技術、さまざまな技術を中国に積極的に供与していくことが、私は、長い目で見たとき、中国から日本が信頼される国家となる、そのように考えております。

 今、靖国問題等々で中国とやっておりますが、私は、靖国問題は靖国問題と、一つのイシューとして、それは真摯に解決の道を探っていくということはありますが、しかしながら、靖国問題だけが外交ではありません。さまざまな環境対策、こういったところに対して、困っている国に対して積極的に支援してあげるというのが今取り組む姿勢かなと考えております。そのことによりまして、ひいては日本のさまざまな省エネ技術、これらがさらに世界に対して発信していけると私は考えておりますので、この分野で一生懸命頑張ってまいりたいと思います。

 そこで、また外務省にお尋ね申し上げますが、直近の中国に対してODAはどんな実績を上げておられるのか。ODAを勉強してまいりますと、中には円借款、無償資金協力、技術協力という分野に分かれております。また、一元化という話も今出てきておりますが、現在の対中国へのODAの実績を数字でいただきたい。また、特に環境分野に対して、どのような経過で、どのような貢献をされているかということもお尋ねしたいと思います。

塩崎副大臣 ただいまの篠田委員のお尋ねでございますけれども、最近の対中ODAの実績ということで、例えば二〇〇四年度の実績を見てみますと、円借款、それから無償資金協力、技術協力、この三種類がございますが、円借款の供与限度額が八百五十九億、それから無償資金協力の供与限度額が四十一億円、そしてJICAによる技術協力が五十九億円、こんな形になっているわけでございます。

 今お尋ねの、省エネ分野を含む環境分野、これを見てみますと、円借款の九四%、それから無償資金協力の約一〇%、そして技術協力の約四一%が省エネ分野を含む環境分野になっております。

 先進的な事例というようなこともお尋ねかと思いますが、いろいろございます。自民党の中の議論でも、環境、エネルギーに特に力を入れろ、こういう議論も随分出ておりましたが、例えば、エネルギー効率が低いということでは最たるものであります鉄鋼分野、この鉄鋼分野での環境保護技術向上プロジェクトということで、二〇〇二年から二〇〇七年にかけて実施している例もございますし、それから、黄砂対策として、これはアジア開発銀行、そして中国、韓国、モンゴル、日本の四カ国、これらが共同して黄砂対策に関するモニタリングと、それから早期警戒ネットワークのシステム構築ということで行っているものもございます。これは、二〇〇五年から調査団を派遣して、ことしも調査団をさらに派遣して、これらのモニタリング、ネットワークの整備をしていこう、こんなふうになっております。

篠田分科員 大臣、どうもありがとうございました。

 今のお答えでありましたら、円借款、無償資金協力、技術協力、合計九百五十九億円、先ほど麻生外務大臣が、全世界に対して四千七百三十二億円、そのほぼ五分の一ぐらいが中国に対して使われているということでございますので、これは大きなシェアだと思っております。ですから、こういったことを本当に積極活用していただいて、中国から日本に対して本当に感謝の気持ちを持っていただけるような、そんな結果となればな、私はそのように考えておりますので、これからも一生懸命頑張っていただきたいというふうに考えております。

 また、今、けさの新聞、いろいろなところでODA一元化についての記事が出ておりました。読売新聞は、ODA改革、これで縦割り行政が改まるか、朝日新聞、外務と財務、権益争奪ということで記事が出ております。今、ODA改革はどのような方向に進んでいこうとしているのか。私の世代から見ると、要するに、いろいろなパターンでのODAがあるかと思いますが、そのODAを受ける国にとっては、特にそういった、どこから、どのお金なのかということは関係ないわけであります。

 ですから、私は、本当に戦略的に、例えば中国に対しては環境対策について、これを一生懸命やります、ベトナムに対しては日本からの投資環境の整備をしますというふうな思い切ったシフトが必要だと思っております。多分、予算のシーリングのように、各省からいろいろなものが上がってきて、それを今取りまとめている現状ではないか、これで本当に戦略的なODAができるのかという心配を私はしておりますので、これから、例えば中国に対してこれ、ベトナムに対してこれ、インドネシアに対してこれというような柱を立てて、戦略的なODAを実施していただきたいと思っております。

 今のODAの一元化について、どんな進捗状況なのか、教えていただきたいと思っております。

麻生国務大臣 まことにごもっともな御指摘だと思っております。

 世界は今、御存じのように百九十一カ国ございます。かなりの国が貧しい、発展途上、いろいろな表現がありますけれども、そういった国々なんだと思いますので、このお金をもらってもどう使っていいかわからぬとか、国によっては、経済統計を出してくださいと言うと、統計自体がない、もしくは統計自体のつくり方がわからない、統計を何のためにつくるかわからぬというような国も実はいっぱいありまして、日本という国のいわゆる昔で言う経済企画庁は、専ら海外に人材派遣をやって、統計の必要性、統計のとり方、統計の分析、これは基本的には経済企画庁があちらこちらで人を出しておった。

 また、昔で言う、旧自治省でいきますと、自治省は超ドメスティックな役所のように見えますが、実は、海外で簡単に言えば中央集権というか統制経済というか、旧東欧諸国もしくはアラビア等々の中近東の国々から人が来て、私が総務大臣をしておりますときも、早い話が、地方自治って何、地方税と国税の違いは何のためにどうするとか、そういった基本的な話は全部教えないかぬという話になった。

 実は、地方自治大学校という大学を総務省でやって、これは本来は、地方の公務員をいろいろな意味で教育訓練をするところだったんですが、毎年ベトナムから十数人とかいうような形で、そこは日本の行政官僚というものの有能さに目をつけて、その教育をおれたちのいわゆる行政官にやってやれというのに関しても、それはODAと少し違うんですけれども、そういった形でやることによって、自由になったはいいけれども、後の運営、オペレーションを行政は全然できないというのではまた混乱になったりしますので、そういったところを含めて戦略的に考えないかぬというのが大前提だと思っております。

 まず、今申し上げたような前提にして、今経緯はどういうふうになっておるかという御質問でしたので、二月二十八日、昨日ですけれども、海外経済協力に関する検討会というのが報告書を出されておりますが、いわゆる実施機関を一元化しろということが提案されております。これによって、円借とか技術協力とか無償協力とか、そういった連携を通じてきちんとやらないと効果が上がらぬではないか。全く、篠田先生が言われましたとおりのことが書いてありまして、人材の育成とか、また援助機関として国際機関との協力をきちんとやって、機関同士で競争せいとか、いろいろなことが国内外から見てもわかりやすく、なるほどというような効果が上がるように期待できるのではないか。

 また、同じ報告書で、海外経済協力会議という仮称のものをつけて、今、日本の海外経済協力の重要性についていわゆる大局的な見地から、各省が上げるんじゃなくて、内閣府できちんとしたそういうものをつくって審議を行うということを提言されております。

 案件の発掘とか形成とか、いろいろなところから企画立案をしていかないかぬ、各機関によって。こういう面につきましては、ODAの外交政策上の位置づけとか在外公館の活用とかいうものを通じて、少なくともほかの機関にウルドゥー語ができるとかアルタイ語ができるなんという人はそんなにおりませんので、私どもとしてはそういった機関を活用して、地域とか援助の専門家集団を有しております外務省というところで、海外経済協力会議というものの審議するいわゆる基本戦略のもと、関係省庁との連携をきちんとやらぬとこれまたできませんので、引き続き政府全体を調整する調整の中核に当たっていくことが適当ということが記されております。

 こうした検討結果を踏まえて、今後は総理の主導のもとに、ODAの戦略性を高めるため、ODAの各種を有機的に連携させ、より一層効果的、効率的に実施できる体制を整えることが重要ということで、これがきちんと記された形になっております。

 私ども外務省といたしましても、これまでのODAに対する体制とはちょっと、こういった大局的見地に立って運営されるなら、それに合わせて、我々もそれができるような体制というのをきちん磨き上げ、もう一回、抜本的に改めると言うと何となく役人的表現ですけれども、とにかくきちんとした体制をつくり直さないかぬということなんだと思って、やはり基本的には、おっしゃるとおり国益ですので、国益を踏まえて国際協力というものをやっていくためには、どうしても外務省側の方としても企画立案能力を高めないかぬということだと思っておりますので、今年いっぱい中にこの体制の見直しをやるべく、いわゆる予算の途中ではあろうかと思いますけれども、私ども、省内の体制をきちんとせいということを言明いたしておるところであります。

篠田分科員 外務大臣、ありがとうございました。

 今、世界各国に大使館があります。私もベトナム議員連盟という議員連盟で事務局を務めておりまして、ベトナムも三度ほど訪問したことがあります。やはり、その国のことを一番よくわかるのが現地に行っている大使館の方々だと思います。ですから、こういった企画立案、その国に対して何が必要かというのは、やはり外務省が主導となりながらやっていくのが当然だとありますし、私はそれが適当だと考えておりますので、そういった中の組織改革、本当に一生懸命頑張っていただきたい、私もまたその応援をさせていただきたいと考えております。

 また、今、私の選挙区は名古屋でございます。非常に物づくり最先端都市ということで、今一生懸命頑張っております。有効求人倍率、愛知県は一・六六でございます。非常に人手が足りないといいますか、そのような現状であります。しかしながら、中はどうなっているかといいますと、やはり単純労働というのが多いのも、これは実際であります。さまざまな工場の現場で働く方の人が足りないとか、そういったことがあります。

 また、今、さまざまなそういった日本の省エネ技術、名古屋から愛知から私はその必要性を訴えながら、そのセールスマンにもなりたいということで頑張ってまいりたいと思います。

 ですから、今、例えば中国、省エネに対して非常に関心が高くなってきています。ですから、日本がどんな省エネ技術を持っているのか、これをやはり中国の方々に日本に来て見ていただくことも必要じゃないかと思っています。それで、こういった技術をうちの本国にも導入したいということになれば、さらにそういったことでも協力していける。それは、政府、また民と一体となりながら戦略的にやっていく必要があると考えております。

 ですから、今現状で、日本と中国、省エネ、環境対策面で相互協力が必要と考えておりますが、これからどんな取り組みをされていくのか、また、今どのような取り組みをされているのか、何か実例があれば教えていただきたいと考えております。

塩崎副大臣 今、篠田委員おっしゃったとおり、省エネ、環境面での協力というのは非常に重要だと思いますけれども、既に中国等々との間で我が国が、先ほど大臣もお話しのように、高度成長期の日本もいろいろと苦労してきたわけで、その中から得てきた技術等を開発途上国にも還元する、そして、地球環境のためにもということでいろいろやっているところでございます。特に、エネルギー効率化を支援するということはエネルギー安全保障上も非常に大事でありますし、また、温室効果ガスの排出削減というのは地球温暖化の対策にもなるということで、我が国のすぐれた技術と、それからこれまでの得てきた知見というものを活用したODAというのをさまざまやっております。

 それはソフト面、ハード面、両方あるわけでありますが、特にソフト面でも政策の支援というのをやっておりますし、ハード面では、例えば発電所の改修とか発電所の建設とか、こういう基本的なものはもちろんのこと、特にこれからは代替エネルギーというか再生可能なエネルギーへ転換していくということで、化石燃料への依存というものを下げていこうということで、風力発電とか地熱発電とか太陽光発電とか、こういった面にも転換できるようなODAの支援をやっているところでございます。

 そういうような中で、国際社会の発展に貢献をし、そしてさらに、我が国が、頼れる日本というか、我が国に対する信頼の確保というものも、今、篠田委員御指摘のような省エネ、環境面での我々の技術的な優位を活用したODAを展開していくということを今やりつつあるというところでございます。

篠田分科員 大臣、どうもありがとうございました。

 私は、経済産業省がこれからも、経済産業省はいろいろなことを積極的にやっていこう、活用していこうという省庁でありますから、そういったところが多分日本の省エネ、環境技術、さらに売り込んでいくためにさまざまなことをされていくと思うので、これは外務省も一緒に経産省と協力をしながらやっていただきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 また、次に、日本の出入国管理制度について、これはちょっと外務省外になりますが、法務省になると思いますが、質問させていただきたい。

 これは、私は外交上も必要なことだと思っております。と申しますのは、例えば、日本に働きに来た方、いろいろな研修を受けられた方が本国に帰って、もう一度日本に来たい、また、日本という国は大変よかったと、本当に親日になっていただけるいい活用手段だと私は思っております。

 しかしながら、今の入国管理制度、私も武部勤の秘書を九年半務めておりましたが、さまざまな入国管理の問題でいろいろな御意見等々、お聞きいたしました。今、入国管理制度の中で特に研修制度というのがあります。さまざまな技術に関して、これは単純労働ではないということでの研修で日本にお越しいただく、一定期間研修をしていただいて、その技術を本国に帰って活用するという制度であります。

 ですから、単純労働ではない分野ということでの研修制度でありますが、しかしながら、実際どうであるかというときに、やはりこれはもう単純労働として受け入れる、日本側が考えておる、この辺のギャップが私はあるのではないかというふうに考えております。研修制度という名のもと、実際は労働力の確保策として使われているんじゃないか、これを、考え方からまず改める必要があるのではないかというのが私の考え方であります。

 先ほど申し上げましたが、愛知県は有効求人倍率一・六六であります。全国一であります。しかしながら、単純労働に頼る分野での求人もかなり多いわけであります。これから人口減少社会の中、どうやって労働力を確保していくのか、これが日本において大きな問題となってくると考えております。ですから、出入国管理制度、とりわけ研修制度について、実際に労働力確保として機能している現状についてどのような改善策を考えておられるのか、法務省に御意見を聞きたいと考えております。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 今、委員御指摘のとおり、研修、それから、それに引き続きます技能実習制度というのがございますが、これは、我が国の技術、技能または知識の途上国等への移転を図ることを目的として設けられたものでございます。しかしながら、現実には必ずしもこの趣旨を理解されていない部分もございまして、まさに御指摘のとおり、低賃金労働者の確保の観点から扱っているような事例も見られることは事実でございます。

 したがいまして、これは、本来の制度の趣旨をきっちりと実施していくために、まず、私どもといたしましては、関係機関とも連携いたしまして、この制度の趣旨の周知徹底を図りたいと思っております。もちろん、外国から来られる方に対してもそうでございますし、受け入れる側の日本の側の企業もそういうことでございます。

 それから、実態調査を強化してまいりたいと思っております。現実に研修、技能実習がどんな形で行われているのかということを我々の方でもよくフォローアップしていきたい。これによりまして、制度の適正な運用を図ることが重要であろうと思っております。

 また、この制度につきましては、現在、実務研修中には、研修生という立場なものですから、いわゆる労働関係法令の保護が若干薄いところがございますので、これを何とかすべきではないかという観点。またさらには、技能実習生というのは、今それに見合った在留資格がございません。特定活動という形でやっておりますが、これを、やはり何らかの在留資格を創設すべきではないかという観点から、これから検討をしていくこととしておるところでございます。

篠田分科員 どうもありがとうございました。実態調査をされるということをぜひ期待しております。

 私は、これから減っていくであろう労働力確保をこれからどうするのかというのは、国としてしっかりとしたビジョンを明確にされることが大事であると思っております。しかしながら、今の出入国管理制度のままでいいのかどうか、その議論も改めてしていく必要があると考えております。

 外国人犯罪がふえていると言われております。不法滞在の外国人を減らしていくためにも、この入国管理が大事だと思っております。治安の確保、安全、安心の確保が大前提であり、その中で入国管理また労働力を確保していくということをこれから真剣に議論する、こんな時代になってきていると思います。

 そこで、もう時間となりましたが、最後に一つだけ質問させてください。

 今般、出入国管理法を一部改正されました。その中で、入国者に対して指紋を採取することを義務づける。私は、入国で義務づけたのであれば、出国の際も同じく義務づけた方がいいんじゃないか。そうすることにより、入ってきた人、出ていく人というのが管理できるのではないか。それにより、犯罪抑止力にもつながってきますし、不法滞在の外国人を減らしていく方策になると考えておりますが、これについての法務省の見解をお聞かせいただきたいと思っております。

三浦政府参考人 ただいま委員御指摘ございましたとおり、現在、私どもにおきまして、緊急に講ずべきテロ対策、テロの未然防止という観点から、出入国管理及び難民認定法の一部改正法案を今通常国会に提出すべく準備を進めているところでございます。その中で、今御指摘ございましたように、外国人が我が国に上陸する際の審査の際に、指紋その他の個人識別情報の提供を義務づけるということを考えております。

 ただ、これも委員御指摘のとおり、出国、日本から帰る場合については、今回はちょっとそのところまでは規定を考えておりませんが、これは非常に有効であることは私どもも重々承知しておりまして、今後、研究、検討を続けてまいりたいと考えております。

篠田分科員 ぜひ検討していただきたいと思っております。私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

山本(幸)主査代理 これにて篠田陽介君の質疑は終了いたしました。

 次に、平岡秀夫君。

平岡分科員 民主党の平岡秀夫でございます。

 きょうは、米軍再編問題について、特に外務大臣と議論をさせていただきたいというふうに思っております。

 分科会の性格上、時間が限られておりますので、先に地元負担の問題に関連して、地元との関係というものをまず最初に御質問させていただきたいというふうに思うわけであります。

 実は、二〇〇四年の十月一日に、小泉首相は、午後二時半に東京・東新橋にあります共同通信社で、共同通信加盟社編集局長会議というので講演をしておられまして、そこで、政府は自治体に事前に相談し、自治体がオーケーした場合には米国と交渉するんだということを表明されたというふうに報道されております。

 しかしながら、昨年の十月二十九日に中間取りまとめというふうな形である程度の合意がなされているわけでありますけれども、地元との相談がないままにこうした中間取りまとめが出されてしまったということについては、私は、極めて小泉首相の責任も大きいし、小泉内閣のもとにおられる外務大臣の責任も大きい、こういうふうに思っておるんですけれども、この点について、どのようにお考えになっておられますでしょうか。

麻生国務大臣 平岡先生御指摘のとおり、今回の再編の話、いわゆる2プラス2、いろいろ表現はありますけれども、兵力態勢の再編問題につきましては、御存じのように、基本的には在日米軍の抑止力の維持と地元負担の軽減という二つの問題で、その観点からいろいろ論議をされてこられたんだと思っております。その成果がいわゆる2プラス2で提示をされておるところなんですが、その内容につきましては、事前にもっと早目にあってもよかったのではないかという御指摘はいろいろなところから言われておりまして、私どもも重々承知をしておるところでもあります。

 交渉が、今回もまだやっておりますので、七千が八千まで積み上げてみたり、いろいろなことをまだしております最中でもあったので、地元の自治体になかなか説明ができなかったということにつきましても、これは確かです。私どもも、そういった意味では、今回はそこらのところの時間的なものもあってなかなか説明ができなかったというように理解をいたしております。

 したがいまして、今、全然この話は聞いておらぬとかいう話になって、いろいろ地元の御理解を得にくいというところで、鋭意、いろいろ、防衛施設庁に限らず、地元住民との間の努力をして、地方公共団体、地元住民、いろいろな表現はありましょうけれども、そういったところで努力をさせていただいているというのが実態だと存じます。

平岡分科員 地元に説明ができなかったという事実は素直にお認めになるということでありまして、その問題をここで余り追及してもいかがかとは思いますけれども、ただ、小泉首相はそういうふうに講演ではっきりと述べられ、そしてそれが全国に配信されているというような状況のもとで、中間取りまとめが地元との十分な協議のないままに発表されたということについては、私は、内閣としての責任は極めて大きいということをここで申し上げさせていただきたいというふうに思います。

 そこで、大臣も少し触れられましたけれども、地元との協議が調わないままに中間取りまとめが出されたんだということになっているという状況の中で、これから、地元との協議が調わない場合には、米軍再編問題については中間取りまとめを見直す、場合によっては白紙撤回ということもあるのかもしれませんけれども、そういう見直すというお考えはあるのかどうか、この点について確認したいと思います。

麻生国務大臣 今おっしゃいましたように、私どもから見て、よく言われますように、今決められた、例えば普天間が辺野古の話にしても、この計画どおり、おまえ、一センチも動かさないぞ、そういうような話では、とても話はなかなかまとまらぬと思います。そういった意味では、どの程度の話でいろいろお話し合いをさせていただくかは別にして、この原案は一ミリたりとも動かさないとか、一言片句たりとも変えられないとかいうのでは、それは交渉というものではないので。

 そういった意味では、いろいろな意味で、地元のお話やら何やらは、いろいろな御要望、御意見等々はあろうと思いますので、そういったものに関しましては、譲れる範囲、私どもとしては柔軟に対応すべき、そういったものだ、基本的にはそう思っております。

 ただ、これは丸ごとどうかしちゃうということになると、やっとここまでまとめて、とにかくこれまで十年間全く動かなかった沖縄の話を例に引かせていただければ、ちょっと、それがまた十年みたいな話では、とても住民の納得も得られないところだと思いますので、速やかに軽減負担が行われるようにするためにはどうするかという観点も非常に大事なところだと思っております。

 これはよく平岡先生御存じのとおり、先生のところは岩国なんだ、ああ、そうかそうか、ちょっと忘れていました。済みません。

 いろいろな意味で、ここらのところは、御意見というものは十分に拝聴した上でやっていかないと、この種の交渉はまとまらぬものだと思っております。

平岡分科員 一センチか一ヘクタールかは別としても、今大臣の答弁は、中間取りまとめについては、これから地元との協議の中でいろいろな推移があるだろう、それを踏まえて見直す余地もあるんだということを言われたというふうに理解しております。

 ところで、そういう地元との協議、地元との話し合いというのは、私は、これまで決して十分に行われてきていないんじゃないかなという気もするんですけれども、これから地元との協議、最終取りまとめが三月中にも出されようかというふうに言われている中で、どういうふうに進めていかれるか、この点は外務大臣よりはむしろ防衛庁にお答えいただくことかもしれませんけれども、お答え願いたいと思います。

木村副長官 先ほど外務大臣もお話しされておりましたが、我々も、昨年十月の2プラス2の共同発表の中で、ぎりぎりまで交渉が続いていたという現実もありました。そして、発表直後、施設庁長官を中心に、関係する自治体に説明をさせていただき、そして額賀長官初め私も政務官も手分けして、五十五の自治体がありますが、これらを回りながら御説明をしてきたわけであります。

 もちろん、説明するだけではなくて、今日までいろいろと地元の御意見もいただきながら、それをまた日米間の協議で反映させる努力もしてまいりましたので、今月末の最終まとめまで、額賀長官が時に言う、誠心誠意を持って事に当たっていきたい、こう思っております。

平岡分科員 誠心誠意事に当たるということですから、これからもしっかりと地元との協議は続けていくということと理解していいわけですね。確認です。

木村副長官 もちろんそのとおりです。

平岡分科員 そういう状況の中で、既にお聞き及びかもしれませんけれども、私の地元の岩国ですけれども、岩国市では、三月十二日に、厚木基地からの空母艦載機、ジェット機五十七機というふうに言われていますけれども、移駐受け入れの賛否を問う住民投票を行うということにしておるわけであります。このような住民投票が実施されるに至ったことについて、外務大臣としてどのように受けとめておられるか、この点について、まずお聞かせいただきたいと思います。

麻生国務大臣 今、こういった話になった背景は何かと言われれば、多分、説明が不足していたという感情的な問題というのも非常に大きかったんだと思いますし、また、何機どうなって、いつから何人とかいうような具体的な内容がまだきっちり示されていないというところも、何となく、本当にその数字かというところに関しても、自衛隊というか防衛庁側の方も、しかとした数字とかなんとかというのをまだ交渉したいところもあったものですから、そこらのところの数字も余り明確にはできなかった部分等々もありますものですから、何となく双方で信頼関係というものがかなり崩れていたんだと思うんですね。

 今まではそこそこ話はできていたんだと思うんですけれども、何となく、今回のこの一連の経緯の間に、いわゆるコミュニケーション、連絡が密じゃなくて粗だった、粗かったというところが、そういった感情論として、それならという話になっていくような雰囲気にさせてしまったのが大きな背景じゃないかなと。背景は何かと言われれば、多分そこが背景だったと存じます。

平岡分科員 私は、背景というよりは、こういうことになったことについてどう受けとめているかということであるので、その背景でもいいんですけれども、確かに、言われたように、これまでの手続といいますか手順というものが、かなり地元住民にとってみれば、本当に、我々が無視されているんだといったような気持ちというのが相当あったのではないかというふうに思います。

 それはそれとして、この三月十二日には住民投票が行われるということはもう決まっておるわけでありますし、今、この岩国市の中ではいろいろな動きがございます。大分混乱しているという状況でもあります。

 さはさりながら、住民投票が行われれば、その結果が出てくるわけでありますけれども、例えば、厚木基地からの空母艦載機移駐受け入れについて反対が多い場合、国としてはどういうような対応をすることになるのか。

 例えば、これは二〇〇四年の九月二十三日に、ラムズフェルド国防長官がアメリカの上院軍事委員会で証言しておりまして、その中には、部隊は、これはアメリカの部隊ですけれども、部隊は要求され、歓迎され、必要とされるところに配置すべきである、こういうことを言っております。もし、この地域住民の人たちが、おれたちはこんなの要らないよ、要らぬというような反対の声を上げた場合は、このラムズフェルド国防長官の言葉に基づいて、これはやはり無理だ、地元は歓迎していないというようなことで、しっかりと交渉していただけるんでしょうか。どうでしょうか。

麻生国務大臣 今、岩国市民の方々、周辺住民、これは広島も一部かかってくるところでもありますので、騒音等々のことからそういったところも関係するところですから、今手分けしていろいろやっておられる。私自身も岩国にも参りましたし、広島にも伺ったと思いますけれども、そういった状況でやっている真っ最中ですから、今、だめだったらどうするという否定を前提とした仮定を前提にして、今の段階で、その場合はこうですという答えを持っているわけではありません。

 ただ、基本的にアメリカの場合は、基地ができると、その地域の場合、いろいろな意味で、そこに落ちる金も極めて大きいものですから、アメリカの場合、基地撤去反対というのが圧倒的にアメリカ国内では多いという現状でありますので、ラムズフェルドの場合、そういった日本の事情というのは余りぴんときていない可能性はゼロじゃないと思います。どこでも歓迎してもらえるものだと、基地の誘致合戦の方が多い状況ですから。

 そういった意味では、そういった気持ちもないわけではないと思いますけれども、行かされる兵隊の方にしてみれば、歓迎される地域に行かせたいという希望というのは、何となく、私どもとして何となくわからぬわけではありませんけれども、こちらにはこちらの事情がございますので、そこらのところは丁寧に説明していく必要がさらにあろうと存じます。

平岡分科員 今、大臣は、アメリカの場合の基地の撤去について、それが反対だというような動きがある、ラムズフェルドさんは余りよく知らないんじゃないかというようなことを言われましたけれども、ラムズフェルド国防長官はそのときの証言でも、我が軍のプレゼンスや活動が地元住民の不快を誘って受け入れ国のいら立ちになっている場合があるんだというようなことでソウルの例を挙げて言われているので、外国では必ずしもそういうふうに歓迎されているばかりじゃないんだということはちゃんと認識をした上での発言にこれはなっているわけでありますから、しっかりと、そういう地元の意向があることは、これは住民投票の結果次第でありますけれども、外務大臣からもアメリカ側に伝えていただくということは、ぜひお願いしたいというふうに思います。どうでしょうか。

麻生国務大臣 当然だと存じます。

平岡分科員 それで、この中間取りまとめの中で、若干、私の地元に関係しそうなところで二つほど質問させていただきたいというふうに思います。

 一つは、NLP、ナイト・ランディング・プラクティス、着艦訓練についてなんでありますけれども、この中間取りまとめの中に、「日本国政府は、米海軍航空兵力の空母艦載機離発着訓練のために受け入れ可能な恒常的な訓練施設を提供するとのコミットメントを再確認する。」というふうにしておるわけであります。

 これは、ある意味では、今は恒常的な訓練施設がないという状況として認識されているわけでありますけれども、どういうような当てがあってこのような合意をされたんでしょうか。例えば、岩国飛行場というようなことも念頭に置いてこういう合意文書になっているんでしょうか。どうでしょうか。

塩崎副大臣 平岡先生御案内のように、このナイト・ランディング・プラクティスをやる施設については、長い議論があって、いろいろな案も出てきたことは御案内のとおりでありますが、昨年の十月のこの共同文書では、「米国は引き続き硫黄島で空母艦載機離発着訓練を実施する。」というふうに定められておりまして、先ほど来お話が出ている空母艦載機が岩国に移駐されることになっても、NLPは原則として硫黄島で実施されるということになるわけでございます。

 一方、アメリカは、硫黄島の利用にはこれまでもいろいろと制約が多いということで、代替訓練場の確保を要望されてきているわけであります。

 こうした中で、今回の文書で空母艦載機離発着訓練のための恒常的な訓練施設の特定を行う旨明記されたわけでありますが、空母艦載機のための代替訓練場を確保するための方策を引き続き模索していきたいと考えますけれども、現時点において、何らかの施設を特別に特定しているわけではないということでございます。

平岡分科員 今の答弁は、引き続き硫黄島でやるんだというのは、暫定的な措置として位置づけられているんですよね。だから、ここにも書いてあるように、恒常的な訓練施設と言うときには、これは硫黄島じゃないということなんですよね。そうなってくると、どこが有力かということですけれども、今、岩国は考えていないということを言われましたので、そこはしっかりと記録に残しておきたいというふうに思います。

 それで、同じく中間取りまとめの中で、こういうのがあるんですね。岩国飛行場に関してでありますけれども、この岩国飛行場については、米軍再編問題とは切り離して、中間取りまとめが出される前の日に、民間空港との共用問題ということで、認めるということが出たんですね。それに関連して、この中間取りまとめの中では、民間航空の活動を支援するために必要な追加的施設、インフラの整備ということが、この中間取りまとめの中に書いてあります。

 となると、こういう施設の整備の費用負担も含めて、どういう意図でこういう内容の合意になったのか、この点についての外務大臣の認識をお伺いいたしたいと思います。

塩崎副大臣 今御指摘のございました岩国飛行場の民間空港の再開問題については、平成十七年十月の日米合同委員会において、米軍の運用上の所要を損なわない限り、日本側が提案している一日四往復の民間航空機の運航が認められることを日米両政府間で確認したことを受けて、政府としては、引き続き精力的に米側と協議を行い、できるだけ早期に民間空港再開が実現できるように努力をしていきたい、このように考えているところでございます。

 この関連で、いかなる追加施設、インフラの整備を行うことになるのかということにつきましては、今後、米軍の運用上の所要等を勘案しつつ検討していくことになりまして、現時点で確たることを申し上げることは難しいというふうに思っております。それらは、現行の日米安保条約並びに関連取り決めを遵守しつつ行われることは言うまでもなくて、この点については、共同発表でも確認されているところでございます。

平岡分科員 とりあえず地域的な問題についてはおいておいて、時間がないので、米軍再編問題の基本的なところについて、大臣にお聞かせいただきたいというふうに思います。

 今回の米軍再編における基本的な考え方として、アメリカ側は、在日米軍の役割についてどういうふうに認識していたのか。たまたま日本に駐留しているだけの軍隊というような認識で、今回の米軍再編、特に在日米軍基地の再編が考えられていたのではないかというふうに思われる節が、いろいろなところであるわけですね。大臣としては、どのように米国が考えていた、認識していたというふうにお考えでしょうか。

麻生国務大臣 御存じのように、アジア地域におきましては、きのう、おとといのような台湾海峡の両岸の問題に限らず、朝鮮半島等々、まだアジア太平洋地域におきましては、政情等々は決して安定したものとは言いがたいという意識は、我々皆一様に感じているところだと思いますので、そういった意味では、不安定、不確実というところにあって、やはり米軍の抑止力というものは極めて重大な安定要素になり得るものだ、私はそう思っております。

 したがいまして、冷戦が終了した後も、大量破壊兵器とかミサイルの話とかいろいろありますけれども、そういった不確実な状況にあるのであれば、基本的には日米安全保障条約というのはきちんと実効せしめるように、あるように維持するというのが第一。そして、そういった米軍の抑止力、戦争抑止力というもののもとで日本の安全を確保するというのは、これはやはり冷戦中も、冷戦構造崩壊と言われた一九九〇年以降も、前に比べたら少し変わったとは思いますけれども、基本的には抑止力というものは必要なものだと思いますので、この日米安全保障条約の、安保体制という表現でしょうか、こういったものの必要性というのは基本的には変わっていないんだ、私どもはそう思っております。

 ただ、その間に、御存じのように、軍事技術というのは物すごい勢いで進歩しましたので、そういった意味では、いろいろな形での技術上、ミサイルに限らずいろいろなもので、現地にそれだけ本当に人が必要なのかというような話になってみたり、もっと遠隔からできるんじゃないかとかいう話が出てきてみたり、いろいろな形で今なされているというのは事実ですけれども、私どもとしては、こういった日米安全保障条約を両国で組むことによって、私どもはこの地域の安定に協力していくんだというのは、これは共通、共有の価値観だと思って、そこが2プラス2等々での理解に至ったものだと思っております。

平岡分科員 私の質問に直接答えていただけていないのでありますけれども、もう少し砕いてというか細かい話に移っていかないと、なかなか答えにくいのかもしれませんので、ちょっと移ります。

 今回の米軍再編について言えば、よく言われている話ですけれども、キャンプ座間に陸軍の第一軍団司令部が移転してくる、そのときに、陸上自衛隊の中央即応集団司令部も座間に置いてくる、こういうようなことがあるわけですね。この陸軍第一軍団司令部というのは、中東の方までカバーしている、そういう軍団なんですね。そういうものがこの座間に立地するということについては、これは日米安保条約の極東地域というものを無視した配置になっているんじゃないかというふうに思うわけです。

 これまでの外務大臣の答弁の中でも、そういう問題について触れられたところはありますけれども、少なくとも今回の問題について言えば、日米安保条約で考えている極東の平和と安全ということじゃなくて、もっと広い地域のものにアメリカ軍は考えている。こうなっているとしたら、日米安保条約のもとにいる在日米軍というのは、日本とか極東のためじゃなくて、たまたま日本にいるけれども、もっと広い範囲の、中東まで含めた地域を考えている、そういう軍団じゃないかというふうに思うんですね。そこに、アメリカが考えている在日米軍の役割については、我々が考えているものとちょっと認識が違うんじゃないかというふうに思うんですけれども、その点についてはどう思いますか。

塩崎副大臣 今御指摘の米陸軍第一軍団司令部の座間移転の問題ということでございますけれども、昨年の十月の発表では、キャンプ座間に置かれております在日米陸軍司令部の改編が盛り込まれておりまして、アメリカのワシントン州に所在をいたします第一軍団司令部がキャンプ座間に移転するわけではないわけであります。

 改編後の在日米陸軍司令部の中核的任務というのは、当然のことながら、日本の防衛及び極東の平和と安全の維持ということであるわけであって、日米安保条約第六条においては、米軍による我が国の施設・区域の使用目的を「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、」というふうに定められているわけでございます。この目的に合致した施設・区域の使用が行われるか否かというのは、それを使用する米軍が、我が国及び極東の平和と安全の維持に寄与する役割を現実に果たしているとの実態があるかどうかという問題によって判断をされることだと思います。

 申し上げたとおり、改編後の在日米陸軍司令部の中核的な任務というのは、繰り返しになりますが、日本国の防衛及び極東の平和と安全の維持ということになりますので、日米安保条約第六条の使用目的に合致した施設・区域の使用が行われるというふうに考えており、今までののりをはみ出るというようなことではないのではないかというふうに理解をしております。

平岡分科員 今、極東における国際の平和及び安全の維持に寄与しているという実態があればいいんだという御答弁でありましたけれども、私は、ここはそういう、集合的に言えば、それを果たしていればほかのどこの地域までもカバーするために在日米軍に対して日本側が基地を提供しているんだという考え方はやはりおかしいだろうと思うんですね。やはり日本に駐留する以上は、在日米軍が果たすべき役割というのはそれなりに制約があるべきである、私はこう思っておりますので、この点については、先ほどの答弁については異論を申し上げておきたいというふうに思います。

 ところで、極東の話が出ておりまして、今回の2プラス2の中でも、台湾問題について日米が、極めて異例なことかもしれませんけれども、いろいろなことを言っておられますけれども、私は、この台湾というものをどう位置づけるのか、特に日米安保条約の中における極東との関係ではどう位置づけるのかということが必ずしも整理されていないのではないかというふうに思うわけですね。

 かつての一九六〇年の安保国会では、当時台湾が中華民国でありましたけれども、極東地域の中には中華民国の支配下にある地域も含まれているというふうな政府解釈が示され、一九六九年の佐藤・ニクソン共同声明でも、台湾の平和と安全維持が日本の安全にとって極めて重要であるというふうにされていますけれども、一九七二年の日中共同声明などでは、中国は一つであるというふうな認識が確認をされているという状況にあるわけです。

 そうなると、極東と台湾との関係、どういう状況になっているかということについて、私はこの日中共同声明の持っている意味というのは極めて大きいものがあると思うんですけれども、大臣、この点についてはいかがお考えになりますか。

塩崎副大臣 今、台湾の問題について御指摘がございました。

 日中の国交正常化というのは日米安保条約にかかわりなく達成されたわけでありまして、日米安保条約及び同条約に関する政府の立場というのは、それによっては影響を受けていないというのがまず第一点であります。

 台湾をめぐる問題については、我が国としては、従来から一貫して当事者間の話し合いによる平和的解決ということ、そしてそれらのための対話の早期再開を強く希望してきているわけでありまして、こういった基本的な点については何も変わっていないということだろうと思います。

 昨年二月の2プラス2の共同発表でも、日米両国の共通の戦略目標として、台湾海峡をめぐる問題の対話を通じた平和的解決を促すことが掲げられておりますけれども、これも我が国の従来からの立場を示したものであるわけであります。

 そこで、今、極東と台湾という御質問だったかと思いますけれども、いわゆる極東条項と呼ばれている安保条約の六条は、我が国及び極東の平和と安全の維持に寄与するためにという先ほどの点でありますが、米軍が我が国の施設・区域を使用することができる旨を規定しているわけであって、ここに言う極東の範囲については、昭和三十五年の政府統一見解がありまして、そこに述べられたとおりであるわけであります。

 ちょっと長くなるかもわかりませんが……

山本(幸)主査代理 短く簡潔に。時間が参りましたから。

塩崎副大臣 はい。

 一つは、国際の平和と安全の維持という観点から日米両国が共通の関心を有する地域、その地域ということ。二番目に、実際問題としては、在日米軍が我が国の施設・区域を使用して武力攻撃に対する防衛に寄与し得る区域。それから、大体において、フィリピン以北並びに日本及びその周辺の地域であって、韓国及び中華民国の支配下にある地域を含む。それから四番目に、なお、この区域に対して武力攻撃が行われ、あるいは、この区域の安全が周辺地域に起こった事情のため脅威されるような場合、米国がこれに対処するためとることのある行動の範囲は、必ずしも前記の区域に局限されるわけではないというのが統一見解としてあるわけでありまして、お尋ねの台湾地域につきましては、このような政府統一見解において極東の範囲に含まれるというふうにされております。

平岡分科員 ちょっと質問の趣旨がよく理解できていないのかもしれませんけれども、日中共同声明で中国は一つであるというふうに言ったという状況の中では、台湾というのは、ある意味では、我々にとってみれば、中国というものの中に台湾というのが位置づけられておって、中国と台湾の問題というのは基本的に国内問題なんですね、中国の。

 それに対して、2プラス2でも、台湾の問題についても平和的な解決が必要であるとかというようなことを言うのは、武力行使をしちゃいけないというのは、それは……

山本(幸)主査代理 時間が来ていますので、短くしてください。

平岡分科員 国対国という武力抗争の問題じゃなくて、別の問題だとは思いますけれども、中国は一つであるというその認識、台湾は国内問題であるという位置づけに立って認識しなければいけないということを私の方から申し上げて、質問を終わりたいと思います。

山本(幸)主査代理 これにて平岡秀夫君の質疑は終了いたしました。

 午後一時に本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

茂木主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。大塚拓君。

大塚(拓)分科員 自由民主党の大塚拓でございます。

 我が国は、外交上の手段としては、軍事的な手段は非常に限られているというのは周知の事実でございます。同時に、これまで非常に強みとしてきた経済力というものも、近年、中国、インドなどの台頭に伴って非常に相対化が進んでいるということ。それから具体的な政策として、日本政府は、観光立国とか対日投資倍増とか、日本のイメージというかそういう分野が非常に問われる政策課題も掲げているわけでございます。

 こういうことを考えると、我が国の外交戦略上、いわゆるソフトパワーと言われるような分野というのが限りなく重要になってきているのではないかという認識をしております。そういう認識に基づいて、本日は、外務省に対する質問ということで、パブリックディプロマシー、国際広報といった分野に絞って質問させていただきたいと思います。

 まず、二月十三日ですか、ニューヨーク・タイムズの社説で、麻生大臣、大変批判をされておりました。これは、オフェンシブ・フォーリン・ミニスターということで、攻撃的な外務大臣というタイトルだったわけですが、ただ、内容を読んでみますと、大変ひどい内容だったというふうに考えております。その内容も、事実に反するようなことも含めて大変一方的な書きぶりであって、ニューヨーク・タイムズの論調はしばしばそういうふうになることがあるわけで、これは、こうやって放置しておくのは非常に問題かなとも思うんですけれども、さはさりながら、外務省の対応も素早かったかなと。二十三日付でしたでしょうか、佐藤ニューヨーク総領事代理という名前で反論投稿が掲載されました。大変適切で、よい反論ぶりだったのかなというふうに考えております。

 最近、こうした、歴史認識問題なんかに端緒を発した日本を批判するような記事というのが、ニューヨーク・タイムズに限らずですが、多方面で見られるわけです。こういうのに機動的に、適宜適切に反論投稿をしていくというのは非常に重要なことだと思うんですが、こういった問題のある記事、歴史認識などで問題があると思われる記事が、過去一年間どの程度出てきて、それに対して反論投稿がどれぐらい掲載されているのかという点と、本件について、もし麻生大臣の御所見があればお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 御指摘のありましたとおり、二月の十三日でしたか、よく出ますので、大体、無視されるよりはよっぽどいいんじゃないかと思ってはいるんですけれども。

 こういったのが出てくるのはよろしいんですけれども、事実誤認の話がやたら多いのが少々いただけないなと思って。日本から送ってある原稿を、言葉を直して、向こうに直された文をこっちで読むと、これは最初の日本文と違うんじゃないかと。人の耳に伝えていくと、最初に伝えた話と全然違っちゃうのと似たような話がこの世界でも起きるのはよくある話だとは思いますけれども、事実誤認の場合には、これはちゃんとさせておかないかぬなと思って、直ちに反論を出さないかぬということで、させております。

 どれぐらいあるのかという御指摘でしたけれども、去年一年間で八十件ぐらいあった分のうち、大体反論をいたしておりますが、載せてくれるところ、載せてくれないところ、自分の都合のいいところだけ載せて、そうじゃないとかいろいろあるんですけれども、そのうち五十七件は掲載をされておるというように思っております。

 このようなことに関しては、今後とも、八十で五十七ということで、七〇%ちょっとぐらい載せているということだと思います。昨年は敗戦後六十周年、世界大戦後六十周年ということもあったものだと思いますので、いろいろ投稿がなされたんだというように理解はいたしておりますけれども、私どもとしては、丁寧にきちんと反論をしていくべきだという大塚先生の御意見は、全くそのとおりだと思っております。

大塚(拓)分科員 このような方針で、しっかりやっていただきたいなというふうに考えているところでございます。

 一方で、役所、政府レベルでの反論というのはやはり限界もあるのかなというふうに思っております。政府の反論投稿ですと、やはり事実がしっかり確認できる範囲で、極めてニュートラルな反論に限られてくるというところもあるのかなと思っております。そういうときに、政府が直接反論をしていくということのみならず、親日的な有識者というプールをつくって育成していって、そういうものを通じて反論していく、あるいは対日イメージの向上を図っていくというようなことも効果的なのかなと思っております。

 こうしたケースで恐らく有名かなと思っているのは、アイリス・チャンという人が書いた「ザ・レイプ・オブ・南京」という、非常に反日的な、南京大虐殺についての書物がありますが、これについて、真偽は定かではないんですけれども、中国政府の支援があったのではないかという指摘もしばしばなされているところでございます。これに対して日本側からは、元防衛大学教授の秦郁彦教授が反論投稿を「ジャパンエコー」に掲載している。

 それから最近聞いておる話では、中国で、北京の中国社会科学院というのが、これは国務院直属の機関ですけれども、こういうところで学位をどんどん授与していって、その学位を授与された中国人が、提携している海外の研究機関なんかにどんどん行って、二百ぐらいの機関と提携しているという話でございますけれども、出ていって、執筆活動を繰り広げているという話も聞いております。

 ほかにも、ちょっと毛色が違うものですけれども、フルブライト・フェローシッププログラムなんというものも、昔から、日本で親米的な研究者を育成するというのに非常に効果があったのかなと。ほかにも、いろいろなシンポジウムを開催したりとか論文に助成をしていくとか、そういう政策的にいろいろな手段が考えられると思うんですけれども、外務省として、そのような有識者を通じた対外政策広報といったものは、どのような戦略のもとに行われているのかをお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 これもまことに大事なところでして、何となく日本人の場合はこの種の、饒舌は銀、沈黙は金というぐらいですから、代議士なんか、べらべらしゃべるやつは大体信用しちゃいかぬとか、しゃべるやつは大体だめでしょう。我が国の風習として、べらべら弁が立つやつは大体、ガセか本当かは別にして、とにかく余りしゃべり過ぎたらいかぬわけですよ。

 そういった習慣が私どもはあるんですけれども、これは海外においては、民族が違う、言葉が違うとかすると、やはりしゃべって、理屈で説得という以外にすべがないというルールになっていますから。弁が立つとか、最近日本でディベートという言葉が出てきましたけれども、いわゆるアーギュメント、口論じゃなくて、討論というのがきちんと成り立たない民族性、歴史かな、そういったものがありますから、そういったところは、ちゃんと論理的に説明ができる人をきちんと持っておくというのはすごく大事なことだと思っております。戦争前も、プア・チャイナという言葉をあれだけざあっと広めるのに中国は成功したわけですから。そういった意味では、日本としては、この種のことは正直申し上げて余り得意ではない分野だとは思いますけれども、きちんとやっていかないかぬところだと思っております。

 今、現実問題としてどういうことになっているかといえば、有識者の数は、向こうから来てもらったいわゆるオピニオンリーダーは、おととし、平成十六年で五十一件、日本から送った方は三十一件ということになっております。

 一つ、私ども、意外と根を張ってきたなと思うのは、JETプログラムというのがあるんですけれども、ジャパン・イングリッシュ・ティーチング・プログラムといって、もうこれは何年になりますか、三十年近くになろうと思います。今、アメリカにおける最大の知日派のグループというのは、多分、このJETプログラムで日本に来たという人の組織が、アメリカに帰った後も、例えば、田舎だなんと言うとかなり問題ですけれども、ワイオミングとかアラバマとか、大体人間より牛の方が多そうな地域からいっぱい来ているわけです。そこらのところに送り返しますでしょう。すると、そこで確実にJETプログラムのOB会ができるんですよ。

 ワイオミングにある岐阜県人会なんて考えられないでしょうけれども、ワイオミングに岐阜県人会ですよ。私は何のことかと思って調べたら、岐阜にたまたまワイオミングから何人も行くんですね。そうすると、日本の岐阜県知事は、やはりアメリカといったらワイオミングに行くと一番。岐阜県にいたという人がいっぱい出てきて、ちゃんとというようなことは、これは総務省がやっているプログラムですけれども、実は意外と根を張っております。

 ジェラルド・カーチスに言わせると、アメリカにおける知日派の第四世代は問題なくJETプログラム、もうGIの組織を完全に上回ったと彼はこの前来たときに言っていましたので、そういった意味ではすごく大事な、草の根に広まっているということも確かですので、この人たちを含めまして、私どもは地道な努力を今後ともし続けていくという努力は、いいことをやっているんだからわかってもらうべきだじゃなくて、ある程度PRというか宣伝広告をするべきだ、私どももそう思っております。

茂木主査 答弁も簡潔にお願いいたします。

大塚(拓)分科員 JETプログラムについては私もよく存じ上げていて、留学していたときなども、たまに日本語でしゃべりかけてくる人間がいると思うと、JETプログラムで日本に行っていたんだということをよく聞いたわけでございます。

 そのJETプログラムにちょうど関連するので、ちょっと質問の順番を変えますが、やはり将来の知日派世代の育成というのは大変重要なんだと思うんですね。そういう問題意識を私はもともと持っております。

 私はハーバード大学のケネディスクールというところに、委員長も副大臣も行かれた学校ですけれども、留学をしていたわけですが、昨年、ハーバード大学ケネディスクールの日本人留学生の組織というものがありまして、そこで初めての試みとして、ジャパン・トリップというツアーを企画したんですね。

 これは、各国から留学してきている、アメリカ人だけじゃなくていろいろな国から留学してきているわけですが、それを三十六名でしたか、四十名弱ぐらいを選抜して日本に連れてきて、昨年は、小泉首相、町村当時外務大臣、安倍当時自民党副幹事長ですか、それから福井日銀総裁とかにお会いいただいたり、トヨタの工場に連れていった。

 あるいは、サピックスという、これは小学生のための受験塾なんですけれども、トップ受験塾で、今一番、その塾に入るのも難しいと言われているところなんでございます。ここに連れていって、小学生のトップの連中とハーバードの学生に同じ数学の問題を解かせて競争させるとか、結果は日本人小学生の大勝でありまして、ハーバードの学生はみんな自信をなくしていたわけですけれども、そういうことを昨年やりました。

 これは、参加者の対日イメージの向上というのは大変顕著だったと思っております。向こうに帰ってからも、頼みもしないのにあっちこっち、ハーバードの学長のところまで行って、日本はこんなにすばらしかったということを宣伝してくれたりとか、地元の学生新聞のライターなんかはその記事をさんざん書いてくれたりとか。恐らく、ここに参加していた連中というのは、各国からの政府の派遣の外交官ですとか政府の役人であったり、もしくは政治家を目指している人間ということなので、非常にこれは、将来の各国のリーダーの卵ということで効果的な活動なのかなというふうに思っております。

 ちなみに、参加者の中で今、出世頭は、卒業後にカナダのケベック党というフランス語圏の与党、あそこの党首になった者がいまして、私の同級生でございますが、効果も既に目に見え始めているかというふうに考えておるわけでございます。これについては外務省の方でも、ボストン領事館の方から、効果的なパブリックディプロマシーのツールということで報告書が上がっているというふうに聞いております。

 一方で、やはり日本に来るというのは非常にコストもかかる、滞在費用が高いわけですね。一人当たりの負担が去年二千数百ドルかかった、二十数万円かかっております。一生懸命我々も寄附を募ろうとするわけですが、やはりそういう公共分野の場合は、ビジネススクールなんかと違って、なかなか企業の助成が得られにくいというケースがある。それから、もともと学生の所得もビジネススクールなんかよりも随分低いんですね。

 それからまた国際交流基金の助成なんかも、ないかなと思って検討はしてみたんですが、どうも該当するプログラムがないんですね、短期招聘プログラムの中で。いろいろ要件が厳しくついていて、それに該当しない。大学院に来ているというだけではなかなか該当しない。それから、年次の予算のサイクルに縛られているので機動的な運用ができない。こういったことがありまして、要するに、そういうプログラムを一年前から準備することなんてまず無理なわけです、学生も入れかわっていきますから。いろいろコスト面であきらめた学生というのは結構おりました。恐らく、国に帰ったら将来はトップの政治リーダーになるべき人材だろうと思われるのに、非常に残念だなと思ったわけです。

 こういう、海外の大学院等に留学している有望な学生を招聘してくるというのは非常に効果的なプログラムなんではないかと思っております。特に、日本人団体が現地の大学院にあるわけですから、手足となっていろいろ、日本の文化を発信していこうと一生懸命頑張っているわけですね。これに対して、やはり日本政府として何らかの助成の手段があってもいいんではないのか。あるいは、現地の大使館、領事館等々から、人のアレンジであるとか場所をアレンジするとか、そういうサポートもあってもいいんではないのかというふうに考えておるんですけれども、大臣、副大臣、両方お伺いできればと思います。

塩崎副大臣 今ケネディスクールのお話が出ましたけれども、私もその会に出て、本当に、各国から来た大学院生が日本をつぶさに見て帰っていただいて、大変効果的だったということは私も実感をしたところでありまして、今大塚委員がおっしゃったことの重要性は、全く同感であるわけであります。

 政府も、十七年度は諸外国から約七十名の学生を呼ぶことになって、例えば韓国とかヨーロッパから呼んでいる招聘プログラムがございます。したがって、実際にやってはおるわけでありますが、その一方で、今のような急に出てきたものにどう対応するのかということについては、確かに国際交流基金のスキームなどでも当てはまらないということでありますが、しかしながら、やはり税金でありますから、限られた税金をどう有効に、戦略的に使っていくのかという中で考えなければいけないというふうに思っています。

 セカンドトラックの会議とかそういうのも、サポートが少し厳しくなってきているというところを見ると、私も気持ちの上ではサポートをもっとしたいなというふうには思いますが、何分にも、予算の使い方としてどうするかということは非常に問題であり、そうなると、やはりソフト面でどうやるか。どう知恵を、我々はサポートとしてできるのか。例えば日米学生会議なんていうようなものも伝統のあるものとしてありますが、これについてもサポートを、かなり知恵の面で、ソフトの面でしているというふうに思います。

 したがって、でき得るものはもちろん、国会の承認が得られればいいと思いますが、できないものについては、そういった知恵を出していく、ソフトを出していくということでサポートをし、同じような認識を持ちながら日本の理解を深めていきたい、このように考えております。

麻生国務大臣 基本的には、今塩崎副大臣の方から申し上げたとおりなので、七十名ぐらいの者は間違いなく毎年ということになっていますけれども、現実問題として、学生が三年計画とかそんなことは考えられませんから、大体、来週行こうかとか来月行こうかというところですから、それらに対して対応をうまくできるようなというのは、役所としてはなかなか難しい。一種のつかみ金みたいなもので持っておかない限りはとてもできませんから、そこらのところは、ちょっと難しいなという感じがいたします。

 役所でうまくやるという方法がどこかあるか、ちょっとこの場で何とも返答のしようがないんですけれども、今言ったように、やはりある程度、いい、これはというのに目をつけてつかまえておくというのはすごく大事で、一時、バークレー・マフィアという言葉が出たぐらいUCバークレーが積極的にやって、結果として、インドネシアはほとんどUCバークレー卒になった等々いろいろありますので、私どもも、方法はちょっと考えないかぬところだと思いますけれども、基本的な考え方として、そういったプロミシングな、あるいは将来を嘱望されているような若い学生を招聘というのは、私は基本的には正しい考えだと思っております。

大塚(拓)分科員 ありがとうございます。

 ケネディスクールについては、ことしも同様の、ちょっと趣向を変えて、ことしは日韓共催で日韓トリップというのを三月下旬にやるということになっているようでございます。参加者は、必ず政府セクターに多くの者が入っていくということで、これに対するサポートというのは、対日イメージの向上、親日派、知日派の育成という意味で非常に有効だと思いますので、ぜひ積極的にサポートをお願いできればと考えております。

 一方で、今予算の、限られた税金であるという話が出ておりましたが、やはり外務省の海外広報予算、全体ちょっと少ないのではないのかな、この重要さに反して、ちょっと少ないのではないのかなという印象を持っております。

 これが、平成十八年度だと三百十五億円の予算がついております。ちょっと調べてみたんですが、民間企業でトヨタ、これはトヨタ単体で広告宣伝費というのが八百十七億円ついているわけでございまして、半分にも満たない。営利企業の活動と一概に比較できるものではないとは思いますけれども、もうちょっとあってもいいのではないのかなと。

 幾つかちょっと事例を引いてみたいと思いますが、一つは、フォーリン・プレスセンターという海外広報の機関、外国人記者向けの機関というのがあると思います。ここで昨年まで「ビューズ・フロム・ジャパン」という、日本の論調を紹介する情報媒体があったわけですけれども、それが、昨年度で予算が打ち切られたということで、既に発行をやめてしまっているということでございます。

 先ほどから申し上げているように、海外のメディアの論調というのは、何か特定の方向に引っ張られるということもあったり、あるいは事実に基づかないということもあったり、海外メディアの報道ぶりだけに日本の対外広報というのを依存していると、非常に危ないなという感触を持っている中で、この「ビューズ・フロム・ジャパン」というのは、日本の中の論調、「正論」とか中央公論とか、そういうところのサマライズした翻訳を載っけていたんです。余り活用されてはいないとはいえども、非常に貴重で、いい媒体かなと思っていたので、これが廃止されてしまって非常に残念だなと思っているところでございます。

 このフォーリン・プレスセンター自体の予算というものも、平成十五年が多分ピークで四億七千三百万円あったのが、平成十八年、三億八千六百万円。大分削減をされている。一億円近く削減されているということでございます。

 それから、日本の広報誌で「ジャパンエコー」というのがございますが、これについても、なかなか海外の図書館で見ないケースが多いんですね。私が留学しておりましたハーバードの図書館にも入っていなかった。これはジャパンエコーのマネージングダイレクターをされていた方が直接おっしゃっていたので間違いないと思いますが、入れられていない。このジャパンエコーの予算というものも、平成十五年がピークで一億千七百一万円が、平成十八年度には八千八百七十万円と大変削られている。

 それからもう一点、「外交フォーラム」というのがございますね。これは外務省の広報誌の位置づけになっているものだと思いますけれども、これの英語版というのがございます。「外交フォーラム」の本体は月刊誌なんですが、英語版については季刊誌ということで、全論文は掲載されていないというふうに認識しておりますけれども、この英語版も、なかなか海外の図書館に行って見る機会が少ないわけでございます。これの予算が、平成十六年、二千十六万円だったのが、平成十八年、千六百八十万円と大きく削られている。

 大したお金ではないと思うんですね、この辺の広報誌関連の予算などは。パブリックディプロマシーみたいなものが非常に重要だというこの時代に、こういうふうに削ってしまっていいものだろうか。

 どのように御認識されているか、お伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 これは、全く反論の余地がないぐらいはっきりしているんだと思いますが、外務省の予算自体が、やはりこの五年間はひどかったですな。前任者は皆苦労されたんだと思いますけれども、物すごい勢いでバッシングの対象になったものもいろいろありましたので、そのせいもあるんだとは思いますけれども、極めて予算としては厳しい状況がこの四、五年続いたのは事実です。その結果として、外務省全体の予算が減っておる。

 また、在勤手当なんというのは、この五年間で大使クラスで四割、一等書記官クラスで三割ぐらい減っていませんか。三割減らすというのは、五年間で三割給料を減らされたら、ちょっとしんどいと思いますね。

 そういった形になっていた状況が長く続いておりましたので、今言われたものもそういった関係に合わせて、多分、ここだけ伸ばすわけにもいかなかったという背景なんだと思いますけれども、今御指摘ありましたように、これは英語版に限らずいろいろな言葉で、もっとやれるべきところはいっぱいあろうと思いますので、この点につきましては、今後とも留意はしていきたいと思っております。

大塚(拓)分科員 ぜひ、海外のどこの大学の図書館に行っても「ジャパンエコー」と「外交フォーラム」の英語版が、しかも月刊で置いてあるというような状況を目指して、予算が厳しい折ではございますけれども、ぜひ頑張っていただきたいと考えております。

 次に、対中広報のお話でございますが、外務省の方から、メーンランドではいろいろな広報活動をやっているというふうに聞いておりますが、一つ、香港というのが対中広報の拠点として結構効果的なのではないのかなと。

 香港は自由市場でございますから、いろいろな自由な活動ができる余地があるのでございますね。言論の自由もある程度担保されておるわけですし、場合によっては、番組の買い上げですとかそういうことも可能かもしれない。対中広報の橋頭堡としての香港の位置づけをどのように考えられているか、どのような取り組みを今なされているかというのをお伺いできればと思います。

塩崎副大臣 御指摘のように、香港は、中国といえども少し違う制度で、自由があるわけでありまして、そんな中でメディアに関しては、香港で発信をすることによってメーンランド・チャイナの方も見られる、読める、そういうメディア媒体があるわけでございます。

 したがって、今委員御指摘のとおり、外務省もそういった点に着目をして、本省の人が行くときもありましょうけれども、当然、総領事館がありますから総領事館の者が、できる限りテレビやラジオそれから紙媒体を含めて、出るようにしておるわけであります。もちろん、中国そのものでもやっているわけでありますけれども、御指摘のとおり、香港でこういうことをすることがまた中国にも、いい広報活動の伝播につながるというふうに認識しております。

大塚(拓)分科員 今塩崎副大臣がおっしゃられたように、共産党の幹部なんかも必ず、香港のメディアはもちろんチェックしておるわけでございますし、ぜひ頑張って、定期的に日本の論調が紹介されるような、日本の関係者というか親日派の人が露出していくようなことに努力していっていただきたいというふうに考えております。

 対中広報に関しましてもう一点ですが、ODA広報のことでございます。

 これも近年、ODA広報が不十分ではないかということをよく指摘されておるのですが、昨年、平成十七年七月に、日中共同世論調査というものがございました。これは、言論NPOというのと北京大学等が共同で実施したものということで、我が国でも東京新聞であるとか雑誌のエコノミストであるとか、しばしば引き合いに出されて紹介されているところでございます。

 これによると、やはり対日好感度は非常に低いんですね。日本に親近感がないと答えている中国人が六二・九%。日本についての第一印象は何ですかと聞いたとき、第一位の答えが南京大虐殺で、これが五〇・一%。それから、日本人の国民性はどう思いますかと聞くと、これも第一位が残酷で戦うことが好きだ、これは四二・三%。日本の政治思潮、政治の考え方というのはどんなものだと思っているんですかと聞くと、一位が軍国主義で、これは六〇%。我々が軍国主義者であるということはあり得ないことなわけですが、そういうふうに残念ながら思われてしまっている。

 一方で、ODAに関する認知というのは大変低いんですね。先ほど日本についての第一印象、一位が南京大虐殺だったわけですが、この質問項目の中にも対中援助というのがあるわけですけれども、これは〇・五%ですね。南京大虐殺をイメージする人の百分の一しかイメージしない。一方、対中援助というものを知らない、ODAを知らないと回答している中国人が七七%に及んでいる。

 対日好感度の低さというのは、せっかく長年、着々と積み重ねてやってきた対中ODAについての広報というものを積極的にやってこなかったというのも、やはり一因なのではないかと思うわけです。ODAは見返りを期待しているものじゃないという議論もあるわけですけれども、やはり税金を投入してやっている以上、やったことについてはしっかり広報していくという責任があるのではないかというふうに思うんですが、いかがお考えですか、御所見を。

塩崎副大臣 今、いろいろアンケート調査結果についてのお話がありました。

 つけ加えて言いますと、インターネットなどを使っている人には割合伝わっているということ。若干ジェネレーションギャップもあるのかなという感じがいたしますし、しかし一方で、そうすると、ジェネレーションに合わせた広報をやっていかなければいけないということになるんだろうと思います。

 今回、円借款を、オリンピックまでに新規は停止するというようなことになった背景にも、今御指摘のような点もあろうかと思っておりますし、外務省はそれなりの努力をして、そういった声を背景に、広報についてもしっかりやってもらうように中国の方に要請をしてまいりました。

 最近になって、数字を見てみますと、例えば去年の一月から九月までに新聞、雑誌、テレビ、インターネット上の報道によるODA関連ニュースの報道というのは、二百四十四件というふうに伝わってきているわけであります。しかし、そういいながら、やはりもっと全国津々浦々、知ってもらうことが大事なのではないかということでありますので、今申し上げたような件数でありますが、さらにそれがふえて周知が徹底されるように、我々としてもさらに努力をしてまいりたい、このように思っております。

大塚(拓)分科員 大臣、先週だったと思いますが、経済協力局を廃して国際協力局を新設するというふうにされておりましたけれども、ここでしっかりODA広報というものが実施できる体制というものを、ぜひ新しい組織でもつくっていっていただきたいと思います。

 時間になりましたので、終了いたします。

茂木主査 これにて大塚拓君の質疑は終了いたしました。

 次に、前田雄吉君。

前田分科員 民主党の前田雄吉です。

 きょうは、外務省に対して厳しい質問をさせていただかなければなりません。中国残留孤児を情報収集活動に利用したという案件であります。

 初めに、事実関係から少し御説明させていただきます。

 今回の対象になります原博文氏、四十歳、都内在住、中国残留孤児を母に持つ方であります。彼が、母親、家族らと日本に九一年に帰国されました。そして、九六年六月、中国の秘密情報保持で逮捕、九七年、国家機密探知罪ということで五年から七年の刑を宣告されまして、七年弱、中国で服役されて、帰国されました。

 もちろん、国益を守るため、日本の外交のために情報収集活動というのは必要である、これは当たり前の話であります。しかし、服役中の邦人保護がなっていなかった。そして、御本人に約束したことを日本の外交官たちは守っていない。服役、収監されたら外交ルートを通して釈放してやる、そして、ちゃんと補償してやるから情報収集活動を続けろ、こういうことを御本人に対して言っております。

 私は、二十一日に二時間、そして昨日は三時間にわたりまして、ちゃんと証言をとってまいりました。ちゃんとこのICレコーダーに入っています。そしてまた、御本人から、ちゃんと文意が通じるようにということで、証言の書面もとらせていただいております。ここの黒く塗ってあるところは、あえて、これは川口大臣時代に、事もあろうにこの分析官が少女買春で逮捕されたということでありましたので、この方のお名前だけは伏せておきます。

 これから一つずつ御説明いただきたいと思いますけれども、まず初めに、厚生労働省、日本に帰国された中国残留孤児は何人いて、そして、今現在生存しておられる、家族の方まで含めた人数は何人でありますか。

野島政府参考人 お答えいたします。

 委員お尋ねの中国残留孤児等の方々に関する人数でございますが、四十七年九月の日中国交正常化以後、国費援護により帰国いたしました中国残留邦人につきましては、昨日現在、本年二月現在、御本人が六千三百十三人、同じく同伴して帰国した御家族が一万三千八百八十六人ということで、合わせますと二万百九十九人でございます。

前田分科員 ありがとうございます。

 では、そうした帰国後の方々の生活支援はどのようになっているか、厚生労働省、再びお願いします。

野島政府参考人 お答えいたします。

 我が国に帰国された残留邦人の方々等に対しましては、国といたしましては、地方公共団体等と連携いたしまして、いわゆる帰国支援法というのがございますが、帰国者支援法に基づきまして自立支度金を支給する。それから、帰国者の定着促進センター、自立研修センター、支援・交流センター等々によりまして、日本語教育それから生活指導、就労相談等、さらには国民年金法上の特例措置あるいは公営住宅への優先入居といったような各種の支援策を講じているところでございます。

前田分科員 数々の残留孤児の皆さんが帰国後の生活支援をよく厚生労働省はされています。

 そこで、もう一つ厚生労働省に大事な質問をさせていただきます。

 原博文さんは日本人ですか。

麻生国務大臣 日本人だと記憶します。

前田分科員 今、大臣、本当にきちんとお答えいただいた。原さんがこの証言の中で、一番日本政府にしてほしいこと、何を挙げたと思われますか。これは、日本人であることを認めてほしい。今、外務大臣のお答えで、きちんとこれは原さんに伝わると私は思います。

 そこで、原さんは三年前に日本に帰国されました。帰国されてから、これは非常に身の脅威を感じるということでございますので、私は、原さんに面会しました翌日に、警察庁長官に対して上申書を書かせていただきました。身の保全、身の安全を守っていただけないか、そういう内容の上申書であります。

 警察庁、現在、どのように彼の身の安全を守られる方針であるのか、また現状はどうなっているのか、お答えいただきたいと思います。

伊藤政府参考人 お答えをいたします。

 ただいまお尋ねの原博文氏の件につきましては、新聞報道については承知をいたしておりますが、私ども警察といたしましては、新聞報道の域を出ることは承知をいたしておりません。また、御本人から現在までのところ御相談もないわけでございまして、原氏がどのような危険を感じておられるか、あるいは危険を感じておられるかおられないか、その内容については現在のところ承知をしていないところでございます。

 ただ、警察といたしましては、身辺に危険が及ぶ可能性がある方につきましては、情勢に応じて所要の措置を講じてまいりたいと考えております。

 以上でございます。

前田分科員 今、警察の方からしっかりした御答弁をいただきました。原氏の日本政府に要求したい内容の一つに、敵対的勢力の悪意ある圧力ということを受けている、この敵対的勢力というのは日本だけではなくて、中国の情報収集活動をしたということで、在日の中国人の皆さんからも非常な脅威を覚えているということでありますので、今後、しっかりと状態を把握して、身の保全を確保してあげてください。

 しかし、それにしても、これは外務省は何をやっているんですか。きちっと、帰国した御本人の状況すら警察庁に報告していないんですか、外務省は。これはどういうことですか、一体。日本外交のために情報収集活動をして、それで、収監されたら外交ルートを通して助けてやる、身の保障をしてやる、さらに情報収集活動を続けろ、安心してやれ、これを言っておきながら、ほったらかしじゃありませんか、外務省。何をやっているんですか、そこへ並んで。外務大臣はちゃんと、日本人だときちっと認めていただきましたよ。こういう皆さんみたいな行政マンがいるから日本外交はなめられるんですよ。どう考えているんですか。

 まず、この七年間の収監生活の中から帰ってこられて外務省を訪れました、そのとき、外務省はどういう対応をされましたか。

谷崎政府参考人 お答えいたします。

 ただいまの原さんの件でございますけれども、そもそも、邦人の保護でございますけれども、海外において逮捕、拘留あるいは受刑した場合でございますけれども、本人のプライバシー等がございますので、基本的にはこれは公表しないということでございます。

 しかしながら、本件、この原氏の場合につきましては、報道機関等にいろいろ取材に応じておりまして公表されている、そういう事情がございます。それを踏まえた上で、御答弁申し上げたいというふうに思います。

 この原氏でございますけれども、平成十五年の一月に、六年七カ月にわたる受刑が終わりまして、釈放され、帰国したというふうに承知しております。同年七月に、当時の外務省の領事移住部を来訪され、我が方の職員が邦人保護の観点から面談しているという事実がございます。

前田分科員 その折に、どういう対応をなさいましたか。どういうことをアドバイスされましたか。

谷崎政府参考人 この平成十五年七月にお会いしたときでございますけれども、特にこの面談の中身でございますが、帰国の報告、それから服役中の邦人保護に関連するもの、具体的には服役中の御苦労されたお話、さらには領事面会への謝意というようなことがございました。

 また、特殊な点でございますけれども、御本人が大使館に荷物を預けておりましたので、その受け取りの方法等についての協議をしたというふうに承知しております。

前田分科員 一つ抜け落ちていますね。日本語もたどたどしい方ですので、生活に非常に困っておられる。どのようにしたらいいのかといって御本人がお尋ねされました。そうしたら、ちゃんとここに証言をとってありますけれども、御本人はどういうことを外務省の省員に言われたか。いや、それは市役所の窓口へ行ってください、こういうふうに言われたというんですよ。そして、御本人は調布の市役所へ行きまして、そこでは、この方は精神病患者ではないかということで、精神病院に入院させられそうになりました。

 こんなやり方は外務省でやられることですか。日本外交のために情報収集活動されて、収監されて、帰ってきて、そのとき、この三年前に帰ってきたときの話がここに中国語で書いてあります。日本の友達に、朋友と書いてあります、友達に会いに行ったと。そうしたらいなかった。しかし、そこで彼は愕然としたと言っていますよ。何の支援もなく、市役所へ行ってください、その窓口で聞いてください、これは何ですか、外務省。もう一度、答弁。

谷崎政府参考人 繰り返しになって恐縮でございますけれども、私どもの現在承知しておりますのは、帰国に際しての報告、さらには服役中の苦労話等を伺ったということでございますが、今委員御指摘の個々具体的な点については確認しておりません。

前田分科員 そういういいかげんなことをしているから、いつまでたっても日本の外交というのは海外からばかにされるんですよ。

 先ほど外務大臣は、予算で苦労しておられたという話をされましたけれども、もっと本当に真剣に、この日本の外交のためだったら幾ら使ってもいいじゃないですか。だけれども、少なくともあなたたちがいる限り、こういう部門に予算を使われるというのは絶対に国会として許されない、私はそう思いますよ。

 では、さらに続けますけれども、原博文さん、この九四年から、日本の外務省のだれに対して情報提供をしていた、情報交換をしていた、それはどういうふうにおつかみですか。

中村政府参考人 今、議員冒頭御指摘の情報収集の重要性ということで、我が外務省におきましては、本省在外公館を通じての情報収集活動を行ってきて、御指摘の、本件にかかわる情報収集につきましては、その具体的態様、内容等を明らかにすることは、我が国の今後の情報収集活動自体を損ねるおそれがあると考えざるを得ませんので、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。

前田分科員 いや、何かいい逃げの答弁ですね。

 実際に、原さんがこの証言で書いてくれました。情報交換をだれとしたか。国際情報局分析第二課石塚英樹氏、そして次がS氏、これは先ほど申しました、川口大臣時代に少女買春で逮捕されたということであえて名前を伏せました、そしてその次の方が沼田氏、この三名であります。これぐらいのことをどうしてきちんと外務省はつかんでいないんですか。そしてやはり、この石塚英樹氏については、全幅の信頼を彼は寄せていたんですよ。愛国心を持った、日本のために、すばらしい外交官だ、私のこの証言の中にも、まだそういう気持ちが半分ぐらいは残っている、そういうことを言っておられます。

 彼の気持ちを利用したんじゃありませんか。しかも、日本語もたどたどしい中国残留孤児の人を利用したこの情報収集活動というのは、外交活動を逸脱しているんじゃありませんか。まず、こうした残留孤児の家族を情報収集者として使うことは、これは人道上許されることでしょうか。お答えいただきたい。

中村政府参考人 情報収集活動はもちろん外交活動の一つという位置づけでございます。御指摘のとおりでございます。

 ただ、今申されました情報収集活動において、どのような形で情報収集を行うか、いわゆるヒューミントと申しまして、人的な情報を介して情報を入手するということが広く行われていることは一般的に認められているところでございますが、しかし、その具体的内容……(前田分科員「簡潔に答えろ」と呼ぶ)

 今御指摘の内容についての明確な事実関係をお答えすることは、先ほど申し上げたとおり、差し控えさせていただきたいと思います。

前田分科員 やはり本当に、それだったらば、きちんと約束したことを守りなさい。外交ルートを通じて釈放してやるから安心しろ、ちゃんと補償してやるから安心して収集活動を続けろ、そういうことを言っておきながら、実際に彼が七年間、中国の北京の寒い収監施設の中で暮らしたわけです。

 確かに、外務省省員は面会に来ました。証言があります。面会に来られました。布団が欲しい、そう言った。しかし、初めの冬は半年間布団がもらえなかった。寒い北京の収監施設ですよ。そこで彼はどうしたか。ほかの囚人の皆さんの衣服を借りてその冬を乗り切った。例えばアメリカだったらどういうことをしたか。アメリカだったら、朝コーヒーが飲みたいと囚人の人が言えば、それはきちんと大使館に伝わって、大使館が中国外交部に交渉して、その日のうちに即日コーヒーが飲めるようになった。日本の外交官たちは何をやっているんですか。そんなこともできなかった。そして、彼の布団は、やはりアメリカ大使館の方が交渉して、まだ布団がない囚人たちにひとしく布団が回ったときにやっともらえた。何ですか、これは。これが邦人保護と言えるんですか。

 こうした態度で、状態で、邦人保護はきちんとなされたと思いますか。外務大臣、一回お答えください。

谷崎政府参考人 今御質問にありました邦人保護を十分にやったかという点でございますけれども、基本的に、こういうケースでございますけれども、邦人保護の観点は、一般的に申し上げますと、相手国政府が法令にのっとった形で公正な待遇をしているかというような点について、大使館としてはよく注視するということでございます。

 その上で、この原氏の場合について申し上げますと、逮捕直後、直ちに領事面会をしております。御本人の方が弁護士ということが必要になりますので、弁護士のあっせんを行ったということでございます。

 服役期間でございますけれども、六年七カ月の間に、合計二十七回領事面会をしておりまして、差し入れというのも、もちろん、御本人の御要望がございましたので、延べ十五回行っているということでございます。

 総体的に見ますと、我々としては必要な保護業務をきちっと行ったというふうに思っております。

前田分科員 ですから、先ほどから言っています、外交ルートを通して釈放してあげるからと約束されたんでしょう。そして、補償をしてやるからと言われて、今、外務省はこの方に対して補償していますか。全く何の補償もしていない。やはりこれではだめですよ。

 日本政府に対して何を要求したいかという私の問いに対して、彼は、ここの中で、後でこの質問が終わりましたらこれは記者の皆さんに公表しますけれども、三つのことを御要望されている。一つは、私が日本人であるという身分をちゃんと承認してほしい、これは先ほど外務大臣がちゃんと言われました。私は、外務大臣はしっかりされていると思いますよ。そして二番目に、情報収集活動で中国側の懲役刑に服した、日本政府は、やはり補償をきちんと、そして生活支援をきちんとしてほしい。それから三番目に、敵対的な勢力からの悪意ある圧力を受けないようにしてほしい。この三点を御要望されています。こうした要望が御本人から出されていて、いまだ何もしていない。

 それで、彼が帰国したときに、石塚英樹氏は彼の携帯に一本だけ電話をしてこられました。これは証言の中にちゃんとありますよ。何と言ったか。私は今スイスにいる、直接会えない、だから自分一人で頑張ってくれ、こう証言されました。彼はその自分の携帯電話を見ました。発信先はスイスではありません、〇三です。外務省、外交官、この石塚英樹氏は許せませんよ。私は彼を今度参考人で呼ぼうと思っていますよ。

 こういう対応しかできないこの日本の外務省の体制というのは、間違っているんじゃありませんか。今、日本の国のために情報収集活動をされている皆さんが、みんなやる気をなくしますよ。これは日本の情報収集活動に多大な悪影響を及ぼす案件であります。約束されたんだったら、生活保障から、釈放ができなかったらそれに対しての謝罪、こうしたことをきちんとされるべきだと私は思いますね。

 ちょっと時間が迫っておりますので、もう一つ。

 二十二日午前の千葉明報道官の記者会見、これで二つの重大なことを言っておりますよ。一つは、簡単に言うと、この新聞報道は誤りであるということを言っていますよ。二番目は、ここがまた重大ですよ。日本のマスコミは小さなことも大騒ぎするんだ、それはよくないことだと。日本のマスコミはそれで御飯を食べているんだと中国語で書いてありますよ。中国のマスコミは日本のマスコミまで低レベルに落ちてほしくないと。何ですか、これは、この報道官は。

 きょう、来てもらっていますね。あなたは日本の報道官ですか。中国のマスコミを持ち上げてどうするんですか。お答えください。正しい報道ですか。

千葉政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘の報道でございますけれども、二月の二十二日に、中国青年報の記者と称する者から電話のインタビューを受けて答えたものと記憶をいたしております。

 その際、私から申し上げたことは、第一点は、先ほど来もございますが、外務省の情報収集活動の内容等について具体的に述べることは情報収集活動自体を損ねることになりかねないため、これを差し控えたいということ、及び、一般論としては、海外において日本国民が滞在国の当局に拘束されている等の場合は、邦人保護の一環として、領事面会その他必要かつ可能な支援を行っており、そして本件についても同様の対応を行っているという旨を伝えたものでございます。

 御指摘の二点でございます。

 第一点、本件報道は誤りだということを私はこのインタビューの際に申しておりません。

 私が申し上げましたのは、このような報道については情報収集活動自体を損ねることになりかねないためにこれを差し控えたい、間違いであれば、間違いだということもあり得るけれども、ただし、この場合にはコメントを差し控えたいと申し上げたことにすぎません。

 第二点につきましては、日本のマスコミが小さなことを大きく騒ぎ立てると申したのではなくて、あなた方中国のマスコミは小さなことを大きく騒ぎ立てることはやめてほしいと申し上げたということでございます。

 それから、先生がごらんになった報道がどのバージョンかわからないんですけれども、私が持っておりますネット版に書いてありますのは、こう申し上げたわけでございます。中国の報道機関というのは、党ののどであり舌である、こういうことですねと申し上げたんですね。中国共産党の意向を受けて報道する、これがあなた方中国の報道機関の役割であると私は承知をしている、こういうことを申し上げたわけで、それに対して、日本の報道機関というのは経済主体であるということを申し上げました。先生御指摘の御飯を食べているというのは、これは経済主体であるということを申し上げたわけです。

 そして、最後の御指摘でございますが、これは、今私が申し上げた点を踏まえまして、一種の反語でございますけれども、印刷された青年参考には、どうも党ののどであるという部分が落ちていたようでございます。

 以上でございます。

前田分科員 あなたたちは中国のために外交をやっているんじゃないんですよ、日本のためにやっているんですよ。だったら、この委員会が終わった後できちんと記者会見を開いて、あの報道は間違っているということを正しなさい、あなた、いいですか。私は、彼の補償を求めて、彼を連れて外務省を訪れます、いいですか。

 最後に、外務大臣、今の外務省の日本のために情報収集活動をされている皆さん、そうした方々が意欲をなくさないためにも、やはりきちんと補償をすべきだ、約束されたことは守るべきだ、そう私は思いますけれども、外務大臣、どうですか。

麻生国務大臣 前後関係が、一方的な、原博文さんのお話だけをもとにしてしておられますから、したがって、私どもその裏の確証がとれているわけじゃありませんので、そんな一方的にお答えをすることはできないんですが、この方は、情報収集活動に関連して報酬は受け取っておられたんだと思うんですね。ですから、その点も勘案して話を聞かないといかぬところかなと思っております。

前田分科員 十万円以上の報酬の場合は局長決裁だということも聞いております。ということは、今外務大臣が言われた、報酬に関することですので、外務省がきちんと出しておられる。だったら、外務省がちゃんと統括されていることであります。きちんと約束されたことを遵守されるべきだと私は思います。

 外務大臣は総裁選にも出られるわけですから、やはりこの一人の中国残留孤児を救えるかどうかというのも、外務大臣が温かい方かどうかしっかり見られていると思いますので、今後、あらゆる情報、機会を通してこのことをぜひきちんとお調べいただきたいと思います。

 以上で終わります。

茂木主査 これにて前田雄吉君の質疑は終了いたしました。

 次に、北橋健治君。

北橋分科員 きょうは、大変残念な結果でございましたけれども、日朝の交渉を踏まえて、今後政府としてどう対処されるかを中心にお伺いするわけでございます。

 冒頭お伺いいたしますが、麻生内閣が誕生すれば任期中消費税率は上げない、そのように受けとめてよろしいでしょうか。

麻生国務大臣 ここは、北橋先生御存じのように、私は外務大臣として呼ばれておりますので、一衆議院議員として呼ばれているわけではありませんので、ちょっと所掌の範囲外は、しかも国内の所掌の範囲外の話でもありますので、外務大臣の立場からとしては、ちょっと答弁は差し控えさせていただくべきだと存じます。

北橋分科員 それでは大臣の所管のところで、イランの問題から入らせていただきたいと思います。

 テレビの映像では、イラン代表団と麻生大臣を初め日本側との和やかにお話をされている映像が流されました。その終わった後のブリーフィングを聞きますと、これは大臣も、まなじりを決して極めて辛らつに国際社会に復帰するようにイランを説得した模様だ、このように察するわけでございますが、この一連の折衝の結果を踏まえまして、大臣として、いかがでしょうか、どういう手ごたえをお感じでしょうか。

麻生国務大臣 御存じのように、北橋先生、モッタキという外務大臣は、駐日イラン大使として約五年近くいた経験がありますので、ちょこちょこ日本語もというような感じの人ですから、テレビで見えるところでは昔の日本語を使って和やかな雰囲気でスタートしたことは確かです。しかし、現実問題として、これはほとんど三時間にわたっておりますし、後半の方はほとんど英語だけになりましたので、実質、通訳入りだったら四時間以上ということになったんだと思いますが、やっております。

 内容につきましてちょっと詳細に申し上げるわけにいきませんが、少なくとも、イランの話は、このままいったらおたくは間違いなく孤立です、それから、IAEAの理事会からいきなり安保理事会に出されたら、多分ロシアを含めて、中国を含めて賛成と言って、だれも反論なしという状況になったときは、それは物すごくきついことになりますよ、イラクのときはアメリカとイギリス、ほかに棄権がありましたけれども、こっちの場合は全然違いますからということを申し上げて、孤立の道はかつて日本も一回選んだ道ではあるけれども、結果としてはいい結果を招かないのではないか。

 したがって、今のめる案としては、多分ロシアが提案している案なんだけれども、この案に関してはロシアの方の発表とイランの発表と公式発表が違っています。私どもはロシアとの確認を裏でとりましたけれども、違う内容を言ってきていますので、話が違っちゃいませんかという話やら何やらで、現実問題として、ここまで来ればどういう対応をするべきかという点については、公式の場と二人きりのときと両方やっておりますけれども、かなり具体的なところまで詰めて、きのう総理に会われたり、いろいろしておられるんだと思います。

 先進国の中でこことは唯一そこそこの関係をずっと持ち続けている国の一つとして、この話の仲介ができるというような状況にはもう既になくなっていると思いますけれども、私どもとしては、中近東における不安定な状況は、日本の石油輸入量の九〇%をあそこに頼っておりますし、我々もイランから約一五%ぐらいの石油を輸入している関係もありますので、ここがごたごたするというのは我々の国益も損ないますので、ぜひ地域の安定のためにも、また、おたくの繁栄、平和のためにも、ここはとにかく、IAEAへ上げて、このままずっとだまし続けてきたような形になって信用がなくなっている分も含めて、まずは信頼回復から始めないと一歩も前に進めませんよという話をかなり長時間にわたって、塩崎副大臣ともどもやらせていただいたというのが経緯です。

北橋分科員 この問題に関する日本の世論なんですけれども、私が二つ気になりましたのは、一つはテレビ放送でイランの国会を映している姿がありまして、ひな壇に座っている人も国会議員の皆さん方も全員合唱するように、頑張ろうと言っているのか何と言っているのか、大合唱をしているわけであります。テロップが流れまして、何と言っているかというと、アメリカに死を、このように叫んでいるイランの国会風景をかつて見たことがあります。

 そして、最近では、大臣がイランとの折衝に入られるというそのちょっと前に、民放だったと思うんですけれども、ライス国務長官の非常にこわばった、緊張した面持ちで会見をされている映像が出まして、そして、事実上これがイランに対する最後通牒とも思えるような、厳しい口調のコメントがテロップで流れました。その後にアメリカの空母から戦闘機が発進していくところをもってその放送は終わったわけでございます。

 これは、アメリカの動きも相まって世論的にも非常に注目されているところでございますが、大臣はどうでしょうか。この問題については、もちろんアメリカと緊密に連携をとられていると思うんですが、まだ話し合いの余地は残っている、何としてでも説得せねばならない、そのように見ておられるんでしょうか。

麻生国務大臣 今、アメリカという国はイランとの基本的な人脈、公式なパイプがほぼありません。

 したがって、こことのパイプがありますのは日本、また、今濃縮の話についていろいろ技術やら何やらの話をしておりますのはロシアということになりますので、常任理事国の中でいくと多分ロシアが一番であろうと存じます。

 そういった意味では、アメリカとしては、これはイラクに続いてイランということになるんだという意識で、今アメリカの中におきます世論調査を見てみますと、悪の枢軸一番は、かつてのイラクから、今度はイランになっておりますし、そういった意味では、情勢は、アメリカ・イラン関係は極めて悪くなっておると思っております。イランの方も、十分それは理解をしているところだと思います。

 ここは、御存じのように、イラクより人口で約三・何倍、四倍近く人口がありますし、また石油の産出量も埋蔵確認量も極めて大きいところでもあり、また、ちょっとアラブ人と違って、ここはペルシャ人で、人種系でいうときは、かつてのペルシャ帝国ですから、全然違うところでもあるんです。

 昔、パーレビーシャーのときにはイランは最もアメリカと近い湾岸諸国だったのが、ちょうどあの革命後ひっくり返った関係これありで、何となく愛憎極めて半ば、反面に回ったというような感じになっておりますので、感情的にもなかなか難しいというのはアメリカ人としゃべってもよくわかるところなんです。

 今回、これはこのままいくとかなり激しいことになるという予測をアメリカ側もしていますので、少なくとも、安保理事会に上がる前の段階のIAEAの段階でという感じを強く持っております。

 イラン側も、IAEAの段階で何とかしたいというのは、向こう側のあれも、安保理にこれはすぐ上がるのかと言うから、間違いなく三月の案でだめになった場合即上がるという話をしておりますので、すごく安保理を気にしていることはわかりますけれども、何となく両方ともちょっと引くに引けないところになってきておりますので、これはロシア案という仲介案が非常に大きなキーワードになっていると思われます。

北橋分科員 日本にとりましては非常に重要な資源供給国ということもありますし、また、軍事的な問題になりますと重大な世界の問題になりますので、ぜひ大臣には引き続き頑張っていただきたいと思います。

 それでは、日朝交渉の結果を踏まえて、今後の政府の対処方針あるいは大臣の所見をお伺いしていくわけでございますが、当初、日本側は、拉致問題の解決なくして国交正常化はないということを今回もきちんと伝えた、これは一つの厳しい結果であったけれども成果であったということは聞いております。

 具体的に、生存者全員の帰還を初め、真相究明、実行犯の引き渡しを日本側は求めたと思いますが、相手側の対応を聞いておりますと、これまた非常に容認しがたいといいますか、これじゃとても話し合ってみてもらちが明かないな、そんな気のするような幾つかのやりとりがあったと聞いております。

 そこで、その中のポイントについて政府の見解をまずお伺いしていきます。

 まず、横田めぐみさんのにせ遺骨と言われる問題を相手国が蒸し返してまいりました。その中で、北朝鮮は、DNA鑑定の専門家による説明を求めたい、鑑定担当者に面会させろ、そして専門協議会をつくれ、こういうふうにもう一度話を蒸し返してきたわけでございますが、先ほど第一分科会で、安倍官房長官に対して私は質問をしましたところ、これは決着済みであるということで、その要求にはもちろん応じない趣旨の御答弁があったところでございます。

 私が外務省にお伺いしたいことは、北朝鮮はやはり、国家の威信といいますかプライドといいますか、それも非常に大事にされる国だろうと思うのでありますが、最近は、国際社会の中で、大臣も御奮闘されて国連総会の決議までいった、いろいろな諸外国がこの問題で深い関心を寄せるようになった、私は、これは外交的圧力で前進をしていると評価をしている一人でございます。そういう中にありまして、この問題について、やはり北朝鮮は余りにも誠意がなさ過ぎるということを各国にアピールするためにも、これは重要なポイントではないか。

 そういった意味で、この問題でキーを握っているのは、国連の中ではアメリカ合衆国ではないかと私は個人的には思っているわけでございますが、アメリカを初めとして主要関係国に対して、この点について日本のとっている立場は絶対正しいということで御理解をしっかりと得ておくということは、今後の交渉上、大事ではないかと思っているんですが、その点いかがでしょうか。

麻生国務大臣 今回の日朝協議においては、これは最初から、うまい話が来るとはなから期待していたわけじゃ正直ないんですが、今回、今御指摘のありましたように、DNA鑑定のために専門家会合を立ち上げという提案があっております。

 私どもは、これに対しては、官房長官からのお話とも重複するんだと思いますが、このDNA鑑定結果は北朝鮮が行った再調査の一部分のみに関連する話ですから、これだけをもって新たに再調査を実施しないという理由には全然ならないでしょうがということを重ねて強く言って、早い話がけったということであります。

 真相究明の問題を今後さらにやっていかなければいけませんので、DNA鑑定問題に話をすりかえられるのは、これは私どもとしては断固望まないところでもありますので、関係省庁ともこれは慎重に協議して、対応ぶりを検討してまいりたいと思っております。

 また今、国際社会のお話があっておりましたけれども、御指摘がありましたように、アブダクション、拉致という言葉を、少なくとも国連の場、しかも総会の場において認めさせた、使わせたということは、大きな圧力として北朝鮮側に認知させたところだと思っております。

 私どもは、今後とも、北朝鮮の側が、何でいわゆる横田めぐみさんのものとは異なる、しかも複数のDNAが検出される骨を横田めぐみさんのものと称して提供したんだということについて、これは日本並びに国際社会というものが納得できるような説明をしろということで、向こう側が説明を負う、責任はかかって北朝鮮側にある、そのように考えております。

北橋分科員 もう一つ北朝鮮側が要求してきたことは、脱北の支援者、そのNGO七人の身柄を引き渡せと。理不尽な要求をしたものでありますが、こういったことに対しては、当然、日本政府としては断固としてはねつけるということでよろしいんでしょうか。

梅田政府参考人 お答え申し上げます。

 七名の日本の支援者につきまして引き渡しを求めてきたことに関しましては、会議の場で、問題外のことであります、何を言っているんですかということと同時に、そもそも脱北者が出ないように北朝鮮の中で状況の改善に努めるべきなんじゃないか、それが重要ではないかということを指摘しております。

 いずれにしましても、この七名の方々を北朝鮮側に引き渡すということは考えられないことでございます。

北橋分科員 次に、アメリカの金融制裁のことが話題になったやに報道されているわけであります。六カ国の協議に北朝鮮が戻るためには、アメリカの金融制裁の解除が大事だというようなことを言っているようであります。

 日本側としては、これはマネーロンダリングの対応でございまして、六カ国協議の問題ではないというふうに答えていると思いますが、当然そういう方針で、アメリカの金融制裁について日本側としても支持する立場を貫かれるんでしょうか。

塩崎副大臣 北朝鮮は、今回のお話し合いの中でも、この金融制裁の解除について、六者の話し合いに復帰することについての、いわばこれをなくすことが条件というようなことを言っているわけでありますが、それを何とかしてくれと日本に言ってきたような報道もありますけれども、特にそういうことはございませんでしたし、我々としては、何といっても、これは基本的にはアメリカの法執行ということで、六者協議の話し合い自体との直接の関係があるわけではないという理解であります。

 したがって、我々はあくまでも、この金融制裁というのはアメリカの法執行の問題として、六者会合への無条件、早期の復帰ということが大事なわけで、朝鮮半島の非核化というのが最終目的であるこの六者会合については、何しろ早期、無条件に復帰をすべきだというのが、日本のスタンスとして、他の国と一緒に主張しているところでございます。

北橋分科員 次に、北朝鮮側が言っていることに、賠償問題で新たな要求をしてきたということが注目されると思っております。

 といいますのは、これは日朝平壌宣言に照らして、いわゆる一括解決、経済協力方式ということが平壌宣言にうたわれているわけでございますが、今回北朝鮮は、八百万人余の強制連行あるいは従軍慰安婦問題を持ち出しまして、三項目の別途補償が必要だという要求をしてきたと聞くんですが、この問題について、平壌宣言に照らしてどう考えていらっしゃるか、それから、日本としてこういう要求に対して今後どう対応されるか、お伺いいたします。

麻生国務大臣 今北橋先生が御指摘なさっておりましたように、これは解釈の余地は全くありません。極めて明白でありまして、この点に関しては、いわゆる一九四五年八月十五日以前に生じたことに基づく日朝双方の相手に対する財産及び請求権は相互に放棄とされておりまして、これによりまして、植民地支配に起因するあらゆる金銭支払いという請求は、いかなる名目、根拠にかかわらず、すべからく、法的に完全かつ最終的に解決されたものとするとなっておりまして、これと並行して日本から北朝鮮に対して経済協力を行うというのが日朝平壌宣言に示された基本的な方式でありまして、このことに関して、全くそれ以上の解釈の余地はないと思っております。

 日本としては、この方式に基づいて国交正常に向けて前進ということを考えておりまして、先方の正しい理解を得るように今後ともこれは努力していかないかぬと思っております。これが基本です。

北橋分科員 ぜひその方向で今後とも日本の立場を貫いていただきたいと思います。

 さて、外務省に事実関係を確認しておきたいと思いますが、特定失踪者をめぐるやりとりについてでございます。

 実は、前回も拉致問題の特別委員会で質問をしましたときに、事前に、外務省としては、特定の方について、初めてリストの中から具体的に取り出して、北朝鮮側に安否、消息を照会したというふうに聞いておりまして、前回の特別委員会の局長答弁では三十数名と言っておったと思いますが、いわゆる拉致の疑いが濃厚な方々について、相手国に対して主張しているということでございました。

 お伺いしたいことは、実は、特定失踪者については、本来は、私は、政府あるいはそれに準ずる機関が、人道上あるいは国家主権の侵害にかかわる問題でございますので、いろいろとやっていただきたいところでございますが、今は民間の団体が本当に手弁当で苦労しながら一生懸命やっていらっしゃるわけでございまして、そこで四百五十人強の方々が特定失踪者として考えられていて、そしてそのうち二百五十二名は氏名を公開している、こういうことでございます。

 私は、お伺いしたいことは、テーブルで両側に向かい合って、正式の交渉の場において三十四人のリストを渡したのか。あるいは、二百五十二人なんだけれども、これも参考に渡したのか。ロビーイングで会った、すれ違ったときに、こういう問題があるのでやってくれと頼んだのか。つまり、これは、日朝間の正式な議題として特定失踪者の問題はどのように取り上げられているか、その実態をまずお伺いしたいと思います。

梅田政府参考人 お答えいたします。

 拉致協議の場におきまして、私の方から、特定失踪者の問題については提起をしております。

 提起の仕方といたしましては、二百数十名、場合によっては四百数名の失踪者、その方々が調査の対象になっています、その中で本当に可能性があるという方のリストを渡すので、きちっと調査をしてほしいということを言っております。

 それに対しまして、先方は、名前と生年月日だけだったものですから、さらに詳細な情報をもらえれば調査をしますということは約束をしております。

 それで、それを踏まえまして、現在、特定失踪調査会の方と連絡をとり合っておりまして、情報を用意した上で、北朝鮮側に調査を改めて正式に要求したいと考えております。

北橋分科員 御案内のとおり、政府が認定されている拉致被害者の中には、日本側には全く捜査当局が証拠を持っていなかった人まで北朝鮮側から出てきたということもありますので、可能性というのは三十四人ではないと思うんですね。そういった意味で、氏名を公開するというのは、御家族にとりましてはいろいろな煩悶の末に決断をされておられますので、ひとつここは、二百五十名を超える方々が、こうやって日本では特定失踪者調査会がこのように公表し居どころを捜している、そういう努力も今後続けていただきたいと思っております。

 さて、総括的な今回の会談の成果といいますか、手ごたえといいますか、印象をお伺いするわけでございますが、ちなみに、終わった後、世論調査というのがありまして、日経新聞によると、こういう相手国の状況では平行線が続くわけですから、経済制裁を含めて強い姿勢で臨むべきだというのが七一%に達しております。

 これは、世論調査というのは当たらずとも遠からずで、いろいろな調査の数字はあると思いますが、私は、今回報道された日朝交渉を見守っていた国民は、ほとほと北朝鮮側に誠意というものが感じられなかった、このように受けとめたのではないかと思います。

 しかし、政府側のその後の見解を聞いておりますと、引き続き対話と圧力ということで、対話は継続しているということも言われているわけでございます。率直に言って、北朝鮮はもう拉致の幕引きをねらっているんじゃないだろうか、あるいは時間稼ぎじゃないだろうかという見方も巷間渦巻いているわけでございまして、しみじみと国民の多くは対話路線の限界を痛感されているのではないかと思うわけです。

 そういう中で、政府は北の真意を見きわめるということで今回やってきたわけでございますが、大臣として、今回の交渉の結果を事務当局から聞かれて、どういう印象を持たれたでしょうか。そして、それでもなおかつ対話と圧力、つまり対話というものも続ける、こういうお気持ちでいらっしゃるんでしょうか。まず、率直な御所見を承りたいと思います。

麻生国務大臣 先ほど申し上げましたように、一年三カ月ぶりとはいえ、最初から今回の会談でいい話が出てくると期待していたわけではありません。

 しかし、私どもとしてこの会議を通じてよかったなと思っておりますことは、かなりの長い時間をかけて、先ほど梅田の方からも話をしておりますように、いろいろ率直な話を私たちの方からも言い、いろいろなことをやるけれども、少なくとも、この拉致の話が結論が出ない限り全くだめよ、とにかく先に進むことはないということは確実に向こうに伝わったこと自体は意義があったんだと思っております。

 今回、昨年の十二月でしたか、日朝包括協議再開の立ち上げに当たりまして、私ども、いろいろな懸案を出すときには、少なくとも具体的な案を出せという話を言ってありますので、今回出てきておりませんが、ここと交渉するに当たって、対話と圧力と言っていますが、対話だけじゃだめです。それだけははっきりしておると思いますので、圧力というものが要る。

 これまでも、圧力と言わないまでも、いろいろな形で圧力はかかっておりますので、朝鮮銀行はなくなってみたり、RCCにかかってみたり、朝鮮総連等々、いろいろ家宅捜索へ入ってみたり、私ども、いろいろな形で事は進んでおると思っております。

 今は、そのほかにも、いろいろな法的措置を講ずるということは、制裁じゃなくて、うちは法的にそういうことができるというような、きちんとしたものに基づいてやる、実質圧力ということになろうと思いますし、国連の話も先ほど御指摘をいただきましたけれども、国際世論の圧力、また日本の世論というものがこれを風化しないような雰囲気というものも、いろいろな形で圧力になっておるんだと思います。

 今後とも、こういった圧力なくしてここと話がすんなりつくとはとても思えないというのは、この数年間の交渉の結果だと思っておりますので、私どもとしては、どのような圧力をかけるかはちょっと今この段階で何とも申し上げられませんけれども、圧力なくして対話だけで物事が解決すると思ってはおりません。

北橋分科員 今のお話の中で、外交的な圧力というお話もございました。前回の質問でも、大臣は、この問題で精力的に世界じゅう飛び回っていろいろ努力をされているということで、それは私も深く共感をするところであります。

 時間も少なくなってまいりましたが、私は、やはりこの問題は、アメリカの出方というのは大変大きいんじゃないか。民主党も、べーカー大使の時代から、民主党のパイプを通じて、アメリカ本国にも拉致問題の大切さを訴える努力を続けてきたんですが、このアメリカという国の存在感というのは大変拉致問題の解決に大きいと自分は思います。

 もう一つ、ケリーさんという朝鮮半島問題の責任者がたまたま民主党本部にお立ち寄りいただいたところ、私も質問し、拉致問題のための協力をお願いしたんですが、そのやりとりの中で、アメリカの代表団は、これはロシアに一つのかぎがあるという言い方をされて帰国されました。

 中国や各国が北朝鮮に対するいろいろな影響力を持っていると思いますが、そういった意味では、ロシアはイラン問題というこの解決に重要な役割を果たしているということでございます。そういった意味も込めて、アメリカやロシアなど、大臣としての外交的手腕、あるいは人権大使をつくられているわけでありますから、精力的に外国に対する理解活動、そして包囲網を築いていく、そういうことが非常に大事だと思っているのでありますが、大臣にその御決意の一端を聞かせていただければと思います。

麻生国務大臣 おっしゃるとおり、日本だけではなかなかということだと思いますし、事実、ここの、ここというのは、北朝鮮の場合は一番恐れておりますのはやはりアメリカというのは、これははっきりしておりますので、そういった意味では、アメリカとの関係というものをきちんとした上で対応するというのは、これはもう私どもとしては基本的なところだと思っております。

 今ロシアのお話もあっておりましたけれども、確かに豆満江から北の方に行くとロシアの国境ということになってまいりますので、いろいろな意味で北朝鮮に対する影響力というのをロシアが持っているということも、私どももわからぬわけではございませんので、これはいろいろな形で、今、いわゆるロシア非常事態担当大臣というのときのうずっと一緒でしたけれども、北方四島問題以外、我々一緒に共同でやるものの一つとしてこういったものが考えられるというのは確かだ、私もそう思います。

北橋分科員 時間が参りましたので、終わります。

茂木主査 これにて北橋健治君の質疑は終了いたしました。

 次に、福島豊君。

福島分科員 大臣、副大臣、大変御苦労さまでございます。

 先週でございますけれども、二十日から二十三日まで訪中をさせていただきまして、中川政調会長初め自由民主党の先生方とともに、第一回目の与党交流協議会ということで、率直な意見交換を行ってまいりました。

 その中で、最近は、政冷経熱から政冷経涼ということで、日中関係がますます冷え込んでいる、国交正常化以来、最も冷え込んだのが現状ではないか。しかしながら、何とかこの関係というものを打開していかなければいけない、そのことにおいては、日中双方において、この協議の中で一致した点であったというふうに思います。

 まさに一衣帯水の隣国でございますので、どこか別のところに日本は行くわけにはいかない。この日中の関係というものをどうしていくのかということは、二十一世紀の前半、アジアがどうなっていくのか、また世界がどうなっていくかということにおいても極めて大切な課題だと思います。当然、双方の国民の感情ということもあるわけでございますけれども、まず初めに、この日中関係の改善ということについて、大臣の御決意をお聞きしたいと思います。

麻生国務大臣 歴史をさかのぼって、聖徳太子、大化の改新にさかのぼって、日本と中国との関係というのは、属国にはならない、日出る国の天子として自主独立。また、鎌倉時代、元寇の役がありましたときも、日本は、自主独立というのを保つということに対しては最大の腐心を払ってきたところなんだと思います。

 その後も、関係は上になったり下になったり、いろいろ難しかったんだと思いますけれども、隣国として、大きな大国の隣の島国というのはなかなか常にきついので、これはヨーロッパにおけるイギリスの立場、似たようなものも感じないわけではありませんけれども、私どもとしては、そういう地理的な条件というのは変えようったって変わりませんから、少なくとも、日本という国のこういった独立とか自主とかいうものを維持しつつやっていくときには、隣国がどこかへ引っ越すわけはないので、そういった意味では、いかにこの国ときちんとした自分たちの自主独立を維持しつつやっていくかということになっているのは、もうこの一千数百年、ずっと変わらぬところだと思います。

 ただ、このところ、多分、今の状況を見て、ぐあいが悪くなったというのは、どこと比較するとぐあいが悪くなったかという話なんだと思うんですが、少なくとも、今中国という国と日本との関係は、経済関係においては過去最大の規模に膨れ上がっておりますし、人的交流ももう圧倒的に、四百万を超えるオーダーになっております。

 いろいろな意味で、この国との関係というのは、経済関係はもちろん、また文化の面においても、今、少なくとも、中国の上海のカラオケで「昴」というのを歌ったら、私よりうまい日本語でみんな歌えるというような感じで、歌も完全に普及しちゃったというような感じで、サブカルチャーの部分においても、うまくこの国は確実に連携を深め、広め、拡大していったというのは、このところの歴史だと思っております。

 今後とも、アジアの中において、妙にこの地域の覇権を双方で争うというんじゃなくて、うまく協調していけるのが、地域にとって、この地域というのは東アジアにとりましても、日中双方にとっても、非常に双方の国益、利益に資すると思っておりますので、大事な国としてつき合っていくということが肝要だと思っております。

福島分科員 どうもありがとうございます。

 その中で、中国から戻ってまいりまして、報道がありました。台湾の総督府が、国家統一綱領、そしてまた統一問題に関する総督府の諮問機関であるところの国家統一委員会、二十八日、昨日でございますけれども、この終了について署名をしたという報道がなされているわけであります。このことは憲法改正ともつながってくるわけでありまして、今後の両岸関係に対して大変大きな影響を与えると考えられるわけでありますけれども、外務省としての見解をお示しいただきたいと思います。

麻生国務大臣 おととい、これは事前に通告もありましたし、いろいろな形で私どもの話はありましたけれども、福島先生、運用終了じゃなくて運用停止。停止ですから、そこのところはちょっと、意味が大分違いますので、運用停止になっております。

 日本としての立場は、日中共同声明の話以来、何ら変更ありませんということは、これは台湾代表處側にもその旨は直接伝えております。基本的には、私どもはこの問題、台湾海峡を挟む両岸の話なんですが、この問題に関しましては、日本の立場としては、少なくとも軍事的とか政治的対立というのはまず望まない、それから、当事者間の直接の話でちゃんと決めてくださいよ、一方的に何を変更するというのは全く私どもとしては受け入れられませんと。とにかく、台湾側が現状を変更する意思はないと、最後のところでこれは述べておりますので、その点に対しては私ども一番留意をしているところです。アメリカも、日本とほぼ同じような対応をしておると存じます。

 そういった意味から、向こうも、分離何とか反対というのを去年やった法律を通しましたものですから、それに対抗してこちらもということになったんだろうと推測はしますけれども、私どもとしては、これによって台湾海峡の緊張が高まるというのを全く望んでおりませんので、いわゆる対話というものは、早期に対話が再開することを私どもとしては望んでいるということで、基本的には、この前もこの後も日本の対応としては変わってはいないというように御理解いただければと存じます。

福島分科員 両岸関係が安定するということが最も国益にかなう、そのように私も考える次第でございます。

 続きまして、私どもが訪中しておりますときに、二階経済産業大臣も訪中をされたわけでありますが、東シナ海の海底油田の問題、こうした日中関係、大局から見ると、近年の関係というものが今までの歴史の中で最も深くなっていることは間違いないわけでありますけれども、冷え込んでいるというふうに言われている中で、こうした個別の案件についてどのように具体的に対話を進め、合意点を達成していくのかということは、極めて大切なことだというふうに考えております。そしてまた、これは後ほどお聞きしますけれども、今後の日本にとってのエネルギー戦略、また世界のエネルギー戦略とも大変絡んでくる話だ、そのように考えております。

 まずは、この東シナ海の海底油田の開発をめぐって、今後どのように両国間の協力に向けて進んでいくのか、この点についての見解を示していただきたいと思います。

麻生国務大臣 東シナ海における油田開発につきましては、もう御存じのように、ちょうど、間にいろいろ島がある話の一端なんですけれども、これまで三回、日中の間に会談を行っております。

 それで、とにかく私どもが言ったのは、情報の提供、それと一方的な開発の中止というものを二つ申し込んでいるんですけれども、共同開発というのをやった方がいいんじゃないですかという話と両方で言って、我々前回、三回目、提案をいたしております。

 これに対しまして、本日、正式に向こうから返事は来ていると思いますが、三月六日、七日の両日、北京において次回の協議を行うということで、共同開発に向けて、今度は向こうが、ボールは向こうに行っておりますので、どう出てくるかということだと思っております。

 少なくとも政府としては、この種の話で、東シナ海で何となくきな臭い話は避けた方がいい、双方にとってその方がいいんだというように思っております。よく協力の海とかいう表現はしておりますけれども、一緒にやっていった方が双方にとっても利益じゃないかなという感じがいたしておりますので、その提案をし、今、向こうの返答待ちというところであります。

福島分科員 どうもありがとうございます。

 中国の今後のエネルギー需要はますます増大している、これは世界的にも大変大きな課題だ、どう対応していくのか、原油も着実に価格は上昇を続けている、長期にわたるだろうというふうに考えられているわけであります。こうした点において大きな変動があると、世界経済に対しても大きな影響を与えざるを得ない、そのように思うわけであります。しかし、中国の発展、これはやはり支えていく必要がある、そのためのエネルギー需要、これも世界的なコンセンサスの中で確保されなければいけない、局地的にさまざまな地域で紛争が起こるようなことがあってはならないと思います。これはまたインドも同じことだというふうに思うわけであります。

 先般のG8、ロシアが議長国ということで、さまざまなことが指摘されておりましたけれども、こうした大きな枠組みの中で、世界のエネルギー需要を、今後の急速に経済が発展する国も含め、どう確保していくのか、コンセンサスをつくっていくということが必要だ、そのように思っております。

 本日の新聞報道でも、プーチン大統領が寄稿されて、「G8に向けて」ということで、こうしたエネルギーの問題についても安全保障という観点から提案を行っているわけでありますけれども、こうしたことも問題意識は共通なんだなということを実感いたしております。

 こうした中国の今後のエネルギー需要に対して、日本政府としても国際的な枠組みの中でどのように対応していくのかということについて、外務省の見解をお聞きいたしたいと思います。

塩崎副大臣 福島委員御指摘のように、中国のエネルギー事情というのは、言ってみれば大きな穴があいたバケツみたいなもので、それで水をふろに入れようか、こういうことで極めてエネルギー効率の悪い経済であります。それが今いろいろなところで問題を引き起こしているというか、東シナ海の先ほどの問題についてもその一端かなというふうに私は理解しておりますけれども、今委員御指摘のように、国際的なフレームワークの中でこのエネルギー安全保障を考えていくべきじゃないか、まさにそのとおりだと思うわけであります。

 G8は、今回ロシアが、今お話しのとおりエネルギー安全保障、これが一つのテーマになって、本当にどういう角度でこれが実現するかというのは今後各国で詰めていかなきゃいけないことでありますが、今の御指摘のように、中国を含めて、インドも含めて、このエネルギー安全保障を国際的なフレームワークの中で考えていくというのが極めて大事で、実はきょうでありますけれども、外務省で、中国、インド、ロシアの専門家を招いて、アジア地域のエネルギー安全保障について議論することを目的といたしました外交とエネルギー安全保障セミナーというのを開催しております。

 こういうようなものも我々の認識のあらわれということで、G8あるいはIEA、それから国際エネルギーフォーラム等々、国際的なフレームワークの中でエネルギー安全保障の問題を今後さらに議論を深めていくということが、外交等々の面でも安定性を高めていくことになるのではないかというふうに思って、今後とも努力していきたいと思っております。

福島分科員 国際的な安定が図られるということが我が国の将来にとっても最も重要な課題であるというふうに思いますので、ぜひとも御尽力をいただきたいと思います。

 ただいま、穴のあいたバケツという話がございましたが、確かに中国のエネルギー効率というのは、多くの識者が、非常に非効率であるという指摘があるわけであります。経済成長を支えるに当たって、やはりエネルギーを効率的に利用する経済に転換していっていただく必要がある、そのように私も思います。これはまた環境問題とも裏腹の関係にあるわけであります。こうした点については、我が国は世界でもトップの技術水準を持ち、中国に対してさまざまな形で協力をすることが可能であると思いますし、そしてまたそのことが我が国の国益にとってもかなう話である、そのように認識をするわけであります。

 こうしたエネルギー利用の効率化に向けて、日中間の協力、これについて外務省の御見解をお聞きいたしたいと思います。

塩崎副大臣 先ほどのバケツの穴の大きさでありますけれども、中国のエネルギーの効率というのが日本の大体十分の一だ、こう言われています。したがって、これをどう改善するのかということを考えないで、ただエネルギー源の確保という観点だけで物事を考えていったらえらいことになるわけでありますので、今お話しのとおり、私ども日本も、第一次オイルショック前まではかなりエネルギー効率も悪かった。二回のオイルショックを通じて、今御指摘のエキスパティーズを高めてきて、世界に冠たるエネルギー効率と環境の面での質の高さを確保する技術を持っているわけでありまして、先ほど申し上げたようなセミナーも、中国を巻き込んでそういった技術協力も含めた話し合いをしていくことが大事ではないのかというふうに思っております。

 ODAは、御案内のように、円借款はオリンピック前で終わりということでありますけれども、もう既に、円借款の中身を見てみても、かなり環境とエネルギーの分野に特化しつつあると言っても過言ではないようなことになっておりますので、今後は、技術協力を含めて、先生今御指摘のような問題点をしっかりと持ちながら、中国のエネルギー効率を高めることが実は世界的な安全保障の向上にもつながっていく、こんなふうに思っております。

福島分科員 全く同感でございます。ただいま副大臣から御指摘がありましたけれども、円借款の問題、二〇〇八年のオリンピックの前にこれは終了すると外務大臣の間で合意がなされているわけであります。

 現在まで円借款は大変大きな役割を果たしてきた、中国経済の発展にとって大きな原動力になってきたということは間違いないと思います。問題は、現時点において、中国の経済が成長して、確かにそうした形での経済協力の対象としてはどうかな、こういう状況になってきているんだと思います。しかし、問題はまだまだ残っているということは間違いがない、エネルギーの問題もそうでありますし、また環境の問題もありますし、そしてまた広大な中国の大地を考えると、まだまだ格差があり、内陸の問題をどうするか、人材をどのように育てるか、こういった課題もあるんだろうと思います。

 ポストODAという議論が今なされているわけであります。エネルギーの分野ですと、例えば排出権取引をどう活用していくのか、こういったような視点も多分出てくるだろうと思いますし、従来の枠組みにとらわれずに、さまざまなツールを活用しながら新しい形の協力関係というものを戦略的につくっていかなきゃいけない、そのように思うわけでありますけれども、外務省の御見解をお聞きしたいと思います。

塩崎副大臣 今先生がおっしゃった点につきましては、私どもも認識を同じゅうするところでありまして、世銀のウォルフォウィッツ総裁が中国に行ったときに、融資を継続するかどうかというときに、やはりまだ彼らは続ける、こういうことを言ったということは、問題がまだまだあるということなんだろうと思います。

 今御指摘のように、エネルギー問題、環境問題、それから最近は鳥インフルエンザ等々、先生の御専門でありますが、感染症の問題もありまして、人間の安全保障という大きな枠組みで考えてみても、いろいろなODAを超えた協力関係というのを中国との間でもつくっていかなければいけないと思っております。技協、それから無償については、まだ物によって考えていくということでありますし、特に技協については、まだまだ提供できるものは今のエネルギー環境の技術を含めてたくさんあろうかと思いますので、その辺、新しい枠組みを模索しながら日中の間での協力というものを考えていきたい、このように思います。

福島分科員 日中関係は、アジアの平和と発展、そしてまた世界の平和と発展において不可欠の関係である、こういう指摘が先般の協議会で繰り返しなされたわけであります。ただ、時代に即応してその中身も変わっていくということも事実だろうと思います。時代を先取りして、そして新しい関係をぜひ築いていっていただきたいと願うわけであります。

 そしてまた、そのことと関連して、アジアの問題でございます。

 アジア経済は、今後も世界の中でも最も発展を続ける地域というふうに考えられているわけであります。日本の経済成長、今後の推移を考えたときにも、アジア経済が成長を続けるということが不可欠の要素であると思っております。

 ただ、その中にあって、アジア経済の中の日本の位置づけ、どう将来像を描いていくのか、このことが問われなければいけないと思います。個別の国家間のFTAの締結、逐次進んでおりますけれども、まだまだである、こういう指摘も当然あるわけであります。将来のビジョンを踏まえて、個々のこうした努力というものを一つにまとめて、そして、どういうアジア経済をつくっていくのか、こういう視点が問われるんだろうと思っております。この点についての今後の取り組みについて、政府の見解、外務省の見解をお聞きいたしたいと思います。

麻生国務大臣 今、アジアは世界の人口の約六割、しかも、経済的な面からいきますと一番急激に伸びている、中国、インド等々を含めまして、今非常に顕著なところだと思っております。そういった中にあって、今、経済が発展しているときは何となく物の話とかいう話にどうも話が偏りますけれども、しかし、いろいろな意味で、いわゆる金とかサービスとか人といったようなソフトの面、いわゆる物の移動プラスそういったものを含めて、全体で見なきゃいかぬ時代になりつつあるのではないか。

 そういった意味では、私どものアジアというところにあって、今まで日本だけが突出して経済力が大きかったんですけれども、幸いにして、今、中国とかインドというのが伸びつつあるところでもありますので、私どもは昨年の十二月、この東アジアの中で、インドとかオーストラリアとかいう、経済力もある、ある程度いろいろな意味でこれから伸びる可能性がある、そういったところプラスいわゆる価値観を共有したところと一緒になってアジア共同体というのをつくろうではないかという話を打ち上げて、スタートさせていただいた。ECもEUも、昔はそんな今日になるなんて予想した人はいないわけですから、そういった意味では、私どもとして、生きている間ぐらいには確実にそういったものを、やはりほら吹いただけのことはあったなというものにしたいものだと思っているんです。

 そういった意味で、アジアの中で日本という国はこれまで、先ほどもどなたか、民主党の方の御質問にもありましたけれども、水の話とか公害の話とか、貧富の格差の話とか地域間格差、これは今から三十年前、もうみんなやりましたから。イタイイタイ病から何からみんなやった。水の話もやった。

 地域間格差の話なんというのは、今でもないとは言いませんけれども、少なくとも昔みたいにそんな差はないし、電気も電話も皆通じるような形に、テレビも皆見られるというようなことになって、地域間格差というのは急激に狭まった経験もある。それは、いろいろ政治としてそっちに配分してきましたから。都市で取った税金を地方にまいたとか、いろいろな形で。今になるとそれは、公共工事は悪のごとく言われるけれども、しかし、それのおかげで地域間格差が埋まっていったというのは事実だと思いますので、そういったような経験は我々はやった。

 また、日本という国は、一九九七年、八年、いわゆるアジア通貨危機のときに、日本がいろいろ手を出したから、少なくともアジアの国々ではリスケ、破産しないでうまくいったじゃありませんかという意味で、安定勢力としての力は、結構最後になったら日本はやってくれた。最後までやってくれたのは日本だけですからという点もありますし、少なくともこの六十年間、お互い目線を合わせて結構やってきた。

 そういったところは日本としてやってきた実績として言えるところですし、さらに、これから高齢化というのはいずれまたアジアにも来ますから。少なくとも中国は、合計特殊出生率は限りなく一なはずですから、韓国は一・一、日本よりはるかに低いし、香港は〇・幾つになっていますので、そういった意味では、そういったときでも日本という国はちゃんと活力ある高齢化社会をつくってみせたというようなのは、やはりアジアの中において日本の存在する値打ちとして大事なところ、そんなところを頭に描いて今後とも対応していかねばならぬのだと思っております。

福島分科員 残り時間が少なくなってまいりましたので、若干質問をはしょらせていただきたいと思います。

 日本がさまざまな困難を乗り越えてきた、そのことをアジア全体として共有しながら地域の発展を考えていく、これは大変大切なことだというふうに思います。

 先般、首脳会談が初めて持たれまして、これを定期的にやっていこう、こういうことになったわけであります。これはやはり大切な一歩であったというふうに思います。今後、このアジアのサミットをどのようにして発展させていくのかということを考えたときに、それを支える事務局の体制づくりということも極めて大切だと思いますし、そうした問題における日本の貢献ということもあるのではないか、そのように考えるわけであります。外務省としての御見解をお聞きいたしたいと思います。

塩崎副大臣 御案内のように、十二月に東アジア首脳サミットが初めてマレーシアで行われたわけでありまして、そして、これはASEANの国で毎年一回開くということになりました。定着する道筋がつけられた、こういうことではないかと思います。したがいまして、これをどういう強固なフレームワークにしていくのかというのが大変大事で、その際に、今先生御指摘の、事務局をどう強化していくのかということが極めて大事だと私どもも思っております。

 今回、やはりASEANがドライバーズシートに座って、この東アジア・サミットをこれから運転していくということになっておりますので、一義的には、やはりASEANが主体的な役割を担ってもらわなきゃいかぬ。ASEANは御案内のように事務局もございますが、そういうところへのサポートというものも日本はしっかりとやっていくべきではないのかなというふうに思っております。そういうことで、そのASEAN事務局をサポートする中で、この東アジア・サミットの事務局の機能強化につながるのではないか。

 そして、当然、三カ国政府、インド、オーストラリア、ニュージーランドも入っているわけでありますので、それのコーディネートの音頭取りを日本もやるべきではないかと思います。そういうことで体制を整えて、あとは中身を、どういうふうに私たちが日本として貢献をし、この東アジア・コミュニティービルディングに資していくかということだろうと思いますので、先生の今の御指摘を踏まえた上で、またしっかりと頑張っていきたいと思います。

福島分科員 どうもありがとうございます。

 最後に一つだけ、先ほど北橋先生の方からありましたけれども、このアジアの中で北東アジアの安全保障をどうするかということ、このことがやはり大きなかぎであります。

 なかなかこの六者会合も、マネーロンダリングの問題等でうまく進んでいないようでありますけれども、この六カ国協議というものがいかにして構造的なシステムに発展していくのか、そこまで持っていくのは大変なことだなというふうに思いますけれども、しかし、そうした方向に向けて努力をするということが一つのかぎだというふうに思うわけであります。この点について、最後に御見解をお聞きいたしたいと思います。

茂木主査 時間が迫っておりますから簡潔にお願いします。

麻生国務大臣 今おっしゃられましたように、六者会合というのは、基本的には、この北東アジアを考えた場合に、やはり一番現実的な枠組みはこの六者だと思います。したがいまして、今、一国だけのおかげで何となく話が進んでおりませんけれども、基本的にはこれを含めたところで六者の会合が再開される方向を考えて、枠組みとしてはこの枠組みで今後ともきちんとコミュニケーションが保たれるというのが一番肝心かなと思っております。

福島分科員 以上で終わります。先ほど、最後に通告しました質問については、大臣から、日本の経験をいかに発信していくのかということでお答えをいただいたと思っております。

 引き続きの御活躍を祈りまして、終わります。どうもありがとうございました。

茂木主査 これにて福島豊君の質疑は終了いたしました。

 次に、鈴木馨祐君。

鈴木(馨)分科員 自由民主党の鈴木馨祐でございます。

 本日も、朝からずっと御審議ということで、お疲れさまでございます。麻生大臣以下政府参考人の方々には、心からその御苦労を思うところではございますが、申しわけございませんが、三十分ほどお時間をちょうだいいたしたいと思います。

 きょうは予算委員会の分科会ということでございますので、大きな質問ということでは、また外務委員会、テロ特などで御質問させていただく機会もあるかと思いますので、割と細か目な質問で、ただ、お答えについては大局的な観点からいただければというふうに考えております。

 まず一点目でございますけれども、最初に、世界各地にございます在外公館の配置についてでございます。

 外務省の在外公館は世界各所にある次第でございますけれども、果たして、どういう基準というか判断で、ここに何人とかここに何人とかいうふうに決めていらっしゃるのか。

 すなわち、世界的に見れば、日本の外務省というのは、非常に定員が限られた中でやりくりしておられるというのは承知しているところではあるんですけれども、ただ、実際に配置しているところを見てみますと、例えば手元の平成十八年の資料だと、サンフランシスコとかマイアミとかロサンゼルスとか、そういう安定的なところに割と手厚く配分されているのかなと。逆に、戦略的に重要な、例えばキルギスなんかは公館もないようですし、また、中東地域についてもそれほど手厚くは配置されていないように見受けられてしまうんですが、そこは、それはそれとして、どういった基準でこれまでそういった配置をされてきたのか、お答えいただければと思います。

塩尻政府参考人 在外公館の人員配置でございますけれども、具体的あるいは明確な基準というものはございませんけれども、当然のことながら、業務量だとか、あるいは案件がどういうものがあるだとか、あるいは邦人企業がどういう状況だとか、邦人数がどういうぐあいになっているか等々、データをいろいろ集めます。そういったものに基づいて、相手国との関係、その地域の状況、それから各種政策、案件の重要性、緊急性等々、さまざまな観点から勘案して決めているということでございます。

茂木主査 明確な基準ではなくて、単一な基準はないということですね。

鈴木(馨)分科員 ありがとうございます。外交の両輪というのは、邦人保護の領事業務とともに、恐らく政策的な外交戦略というものの遂行にもあると思いますので、引き続き、その適正な配置を今以上に、今もされているとは思いますけれども、今以上にされていくようにお願いいたします。

 次でございますけれども、いわゆる上海総領事館での事件に関する質問でございます。

 これまで予算委員会等でも割といろいろと質問されているところではありますけれども、どうも私の感覚からすると、突いているポイントが非常に限られているなという感覚がございまして、すなわち、これはいろいろな党からの質問ではありますけれども、外務省と官邸との連携だとか、あと、もしくは、自殺された方にしっかりとケアされていたのか、そういったような質問に終始している感は否めないというふうな感覚を持っております。

 恐らく、私の観点からしますと、事の本質というのは、情報漏えいをいかに防ぐか、まさにカウンターインテリジェンスというものの一角であろうというふうに思っております。

 私が一番危惧しますのは、上海の事件というのは、もしかしたら氷山の一角かもしれない、要は、まだ発覚していない、把握されていない事案というのはもしかしたらあるのかもしれないと思う中で、ひとつ、今後の予防を考える上で、恐らくこれは二つに分けて考える必要があるのだろうと。

 まず、他国の公安機関なりなんなりの接触があって、それに何らかの形でひっかかってしまった後の事後処理というのが一点でございます。もう一つは、そもそもそういうのを近づけないように、例えばしっかりわきを締めるとか、そういった話になると思うんですが、そういった恐らく二つの観点から考える必要があるのだろうというふうに思っております。

 接触を許してしまった後であれば、それはいろいろと、駆け込めるような、そういった体制づくりというのも必要だと思いますし、そこのところについては多少の議論はもうされているところであるとは思うんですが、一方の、近づけないというところであります。

 人間は非常に弱いもので、酒だとか、いろいろと誘惑というのは多いものでありますけれども、さはさりながら、外交官というのはまさに情報戦争の最前線にいるわけでして、そこは普通の人以上に気を、わきをしっかりと締める必要はあると思います。

 例えば、これは他国の例でどうなっているのかわかりませんけれども、ほかの国ですと、そういった情報を渡してしまった場合というのは、恐らく厳罰に処されているようなケースも多いのかとは思いますが、そういった実際の具体的な対応策はともかくとして、まずは、この件について、今後しっかりとした対応策をとるに当たっての決意というものを一言いただければと思います。

麻生国務大臣 鈴木先生おっしゃるとおり、外務省の職員になって海外に勤務をすれば、いろいろな形でのこの種の可能性というのは、高まりこそすれ減ることはありません。しかも、そういうのをもってなりわいとしている人たちも世の中にはいっぱいいるわけですから、そういった人たちが寄ってくるのは覚悟せないかぬということなんだと思います。

 それが色気で近づいてくるか、酒で近づいてくるか、金目で近づいてくるか、それはいろいろあるんだと思いますけれども、少なくとも私どもは、そういった確率があるということだけは、よく気を引き締めて、まず心してかからないかぬ。これはもう当然のことで、これは今回のときも、役所でその点に対してのいわゆる粛正とか気を引き締めるというのはきちんと詰めないかぬ。しかも、そういった国というのは、ほかの自由な国とはまた違う国に行く場合は特にそうだと。

 それから二つ目は、それでもひっかかる場合、それを隠そうとするとさらに傷が大きくなる。株と似たような話かもしれませんけれども、ちょっと埋めようとするとさらに穴が大きくなるという話はよくある話なんで、そういうときはもうさっさと、とちりましたと言え、言った方がよっぽど話が早い、後でさらに話が大きくなってから国会で突っ込まれることを考えたら、よっぽどその方がいい、さっさと言えという話を、答弁するのはこっちなんだから、おまえらじゃない、おれが答弁しているんだ、だから冗談じゃないという話をよくよくこの間も言ったところなんです。

 そういった意味では、こういった話というのは、妙に隠そう、隠ぺいしよう、まあ、出世がとまるとかいろいろなことを考えるのはわからぬわけじゃないですけれども、人間ですからひっかかることはよくある話ですし、向こうはひっかけようと思ってプロが来ているわけですから、それはひっかかる可能性は極めて高いという前提で考えないと、絶対ひっかからぬ、うちに限ってそんなことはありませんなんというのは、それは全く信用しちゃいかぬ話ですからと思って、その点、ひっかかったときの対応についてはさっさとという話は、この間申し渡してあるところです。

 いずれにしても、何となくいい女が来たなと思ったら、まず鏡を買え、鏡を買ってよく見ろ、それから答えろ、それだけは言ってあります。

鈴木(馨)分科員 非常に人生経験にも基づいていらっしゃる厳しいお覚悟を伺いまして、安心した次第でございます。今後ともしっかりと取り組んでいっていただければと思います。

 次に、予算委員会ということで、ODA関係に触れたいと思います。

 途上国支援に係る戦略についてでございますけれども、まさに、麻生大臣は若き日をアフリカの一角で過ごされたというような話も聞いておりますし、塩崎先生もそうですが、開発戦略には非常に造詣が深い方々だというふうに伺っております。

 そこで、あえて最初に総論的なところを伺いたいんですけれども、日本の途上国支援、ODAというのは、いかなる目的に、本当に大局的な目的としては、究極の目的としてはどうなっているのか。すなわち、相手国のためなのか、そういうナイーブな議論に流れることも結構あるとは思うんですけれども、もしくは、情けは人のためならずではないですけれども、日本のため、やはり税金ですから、そこは最終的には必ず国益というものに返ってこなくては出す意味がないんだ、そういったものであるのか、そこのところをひとつ伺えればと思います。

麻生国務大臣 いろいろな形で、鈴木先生、インドという国を例に引かせていただきますけれども、この一月インドに行って、インドで、日本のODAによって地下鉄がニューデリーの中にできております。それに乗ったんですが、入り口に麗々しく、本当にだれが見てもわかるように、日本のODAのおかげですということが出ていて、改札口を通ろうとしたら、またそこにも円グラフがつけてあって、日本のODAのおかげで、これだけのお金は全部日本のお金よと。だれが出してくれた、これだけこれだけと、人が出したお金まで全部あって、日本がこれだけというのは、もうだれが見ても。これだけはっきり言ってもらうと、全然そういうことを言わない国もありますので、まことにありがたいというような話をその総裁にいたしましたら、いや、ちょっと待ってくれ、おれたちの方は、これはベストアンバサダーと呼んでいるんだと。

 理由は、自分は技術屋だけれども、最初からこの仕事に携わったんだ。日本との会議を最初にやるとき、八時に作業現場に行ったら、全員日本から来た人たちは作業服を着て待っていた。おまえ、今ごろ来て何だ、現場の責任者じゃないのか、八時に作業を開始するんだから、作業服に着がえて八時までに待っているのが常識じゃないかと。次の日、七時四十五分に行ったら、もう全員いた。やむを得ず、その次の日は七時半に行った。そのころ、みんな着がえていた。作業、働く、勤勉というのはこういうことだ、働くということが美徳なんだということ、あのODAという金の裏側には日本の労働、勤労、勤勉という美徳がついているんだということを教えてもらった、インド人にして働くということはこういうものだと教えてくれたのは、これがもう最大のプロジェクトだ、だから我々はベストアンバサダーと呼ぶんだと。その話を聞いて、なかなかいい話だなと思って私は感激したんです。

 金だけやって施してやるというイメージはやめた方がいい、僕はそう思います。借りた金は返すとか、そういう当たり前のことがきちんと文化としていろいろな仕事を通じて広まっていくというのが一番と思っておりますので。

 ポーツマスで小村寿太郎が日露講和条約にサインした後、日本はイギリスから借りた軍事公債一千万ポンドの返済を開始するんですけれども、期日までに、ただの一銭も減らすことなく、期日をたがえることなく完済したということで、これまでその種のことで滞った歴史が一回もない国というのは日本という国だけだと、この間、ある銀行の人に教えてもらったんですけれども、そういうようなものがやはり日本人を支えている信用の源なんだと御先祖に感謝せないかぬところだと思っています。

 このODAの話も、そういったものが広まっていくというのが一番肝心で、回り回って日本になるんだと思いますけれども、それはその人たちに勤勉とか働くとかいうことをきちんと伝えていくということも大事なところだ、私どもは基本的にそういう考え方でやっております。

鈴木(馨)分科員 ありがとうございます。インドの地下鉄の話を聞くにつけ、毎朝会議にちょっとずつ遅刻している自分が恥ずかしくなる、そういう状況でありまして、私もインドに行った方がいいのかなというようなことも考えるわけでありますけれども。

 次に、同じくODAなんですけれども、国別の援助計画というのが国ごとにつくられていることは重々承知しておるんですが、これまでのODA戦略という意味で見ると、どこの国にどれだけどういう形で出すのか、そういった総合的なストーリーというのがなかなか浮かんでこない面がどうしても否定できないのかなという気は、私なんかはしております。

 そういった意味で、今後、政府としても、やはりもっと戦略的にODAを活用する、日本ファンをふやすとか、そういった意味もあるんですけれども、要は、どこの場所から優先して、いろいろある要請の中から、国益に資するでも何でもいい、そういう指標を使って優先順位をしっかりとつけるような、そういった総合戦略というものが必要なのではないかと思うんですが、今後、そういったことを検討されるおつもりがあるか、そういった状況があるのかどうか、伺えればと思います。

麻生国務大臣 まことに御指摘は正しいと思います。

 私どもも、今回、政府系金融機関の改編に当たりまして、いわゆるJBICを廃止して政府系金融機関を一本化する等々の中で、ODAというものは、これは外交の基本中の基本というか、物すごく大きな一本の柱なんだから、これについては、ODAを戦略的に使うべきだという御意見というのは、経済財政諮問会議でも民間議員の方からも指摘をされております。

 そこで、二十八日でしたか、検討会の報告というのが上がっていると思いますけれども、私ども、今回、ODAの政策につきましては、海外経済協力に関する検討会というのを官房長官の下でされたのを受けまして、この種の話は、総理大臣を頭にして基本的なものをつくる、そういったものをつくる、企画立案は外務省がやる、実行はJICAがする、きちんとしたものをつくろうじゃないかということで、ここにお見えの町村先生初めいろいろ御苦労をいただいて整理をしていただいて、今外務省としても、それに合わせて、経済協力局を解体して、組みかえして、きちんとそういったものに対応できるようなものにつくりかえましょうという話で、今、私どもとしては、かなり大胆なことを手がけつつあります。

 いろいろな意味で効率的にいかないと、たらたら百九十一カ国、ODA以外を含めた国でありますけれども、何となく一定の基準で一律になんというのをやっていたら、それはちょっと余り芸のない話ですから、きちんとして、日本のためになるとか、回り回って平和のためになるとか、いろいろな表現があるんだと思いますけれども、きちんとそういったものは戦略的に考えて対応すべきものだ、私どももそう思います。

鈴木(馨)分科員 ありがとうございます。力強い御決意と明確な政策の話をいただきまして、非常に心強く思った次第でございます。

 開発の関係で、これは非常に細かい議論になるんですが、きのうの新聞に出ていたかと思うんですけれども、今ちょうどパリで、ある国際会議が行われておりまして、何が議論されているかというと、前々からシラク大統領が導入を強調した、例の航空券がという話ですね。日本語訳だと、国際連帯税というものになるみたいなんですけれども。

 話を聞くと、どうもその会議にはアナン事務総長だとか世銀、IMFの関係者も出席されている。フランスが国内法でもう導入を決めて、イギリスが既存の税制を、既存の航空券に係る税を多少、一部リラベリングというか、ラベルを張りかえて開発目的にするんだといったような話を進めているようであります。今、まだアメリカは賛成していないような立場みたいですけれども。

 将来的にこういった話が盛り上がる可能性もなきにしもあらずかなと思いますので、現時点でので構いませんので、日本政府の外交の面からの考え方というのを伺えればと思います。

塩崎副大臣 御指摘のように、きのうときょう、パリで会議が開かれておりまして、国際連帯税、これが議論になっているわけであります。日本はオブザーバー参加ということで参加をしています。

 フランスのこの考え方というのは、基本的には、二〇一五年を目標にしておりますミレニアム開発目標、MDGとよく言いますが、これのために、感染症対策の資金源として航空券の連帯税の導入を進める、こういうことでございます。

 我が国の導入については、当然、航空機に乗られる方に対する新たなる負担ということになる一方で、ODAにこれを向けるということについての国民の理解がどのくらい求められるのかというのが、因果関係において若干まだまだつながっているような感じには思えないということでございまして、我が国は、当面は、保健と開発に関するイニシアチブを中心とした、エイズとかマラリアとか結核とか、こういった点でこのミレニアム開発目標を達成しようということでやっておりますので、世界の動きをにらみながら、当面、我が国は我が国の独自の動きをしている分については、そのままやっていこうということでございます。

鈴木(馨)分科員 どうもありがとうございます。

 次に、ちょっと話が飛んでしまうんですけれども、簡単に言うと日本版CNNというようなたぐいの、要は日本としてのニュースの見方の発信ツールとして、例えばNHKを国際的に活用するとか、そういった議論が、最近割とよく出ている話だと思うんですけれども、それについて、外交の観点からいきますと、やはり日本のバリューをどんどん発信していって理解を求めるという非常に強力なツールになるのかなという気もいたしますので、その必要性等につきまして、外交の観点から塩崎副大臣の御見解を伺えればと思います。

塩崎副大臣 この間、カタールにトランジットで参ったときに、私、アルジャジーラに行ってまいりました。今度、アルジャジーラは英語の国際放送を始める予定でございます。そのアラブの世界の発信力というものを、これまでアルジャジーラは独自のものとして示してまいりましたが、今度英語で国際放送を始めるというのを見て、この発信力にかけているカタールの政府並びにアルジャジーラそのものの考え方に少し私たちも動かされたわけであります。

 今御指摘のように、国際放送を強化するということで、NHKを含めて、この強化については、我が国もその必要性ということについては非常に重要だというふうに思っておりますし、既にいろいろな面で国際的な発信というものを既存のものを使ってやってきているところでございますし、これからさらに進めるためには、やはり総務省、麻生大臣は前総務大臣でございますが、具体策については総務省とよく検討して、各方面と連携しながら進めていかなければならない、このように考えております。

鈴木(馨)分科員 どうもありがとうございます。今後の取り組みを楽しみにしていたいと思います。

 次に、通告とは順番が変わるんですけれども、国連の次期事務総長選挙につきましてちょっと伺いたいことがございまして、御見解を伺えればと思います。

 と申しますのは、今、アジアから出すか出さないかとか、いろいろな論点があると思いますし、そこは中国とかも積極的にいろいろな発信をしているようですけれども、アジアから出られる有力候補の一人というのが、韓国の現在の外務大臣でいらっしゃると伺っております。

 それについて、これは外交上の話ですし、すべてを言うのは恐らく得策ではないと思いますので、おっしゃれる範囲で構わないと思うんですが、韓国といえば、安保理改革とか日本の安保理常任理事国入りというところでいろいろな意見をお持ちの国でありまして、簡単に、支持をどうするとか、支持しないとか、両方とも得策じゃないと思うんですが、ある意味、日本としては、候補の支持の決定に当たっては、安保理改革に対する姿勢とかそういったものを、ある意味で留保条件というか、条件にして、支持、不支持をしっかりと伝えるというような考え方もあり得るのかなと考えております。

 これにつきまして、お答えのできる範囲で伺えればと思います。

麻生国務大臣 鈴木先生、この種の話はそういったことも考えてやらないかぬことも確か。ただ、ビルマの、今のミャンマーのウ・タントという人だと思いましたけれども、この人が一九六〇年代に事務総長を二期十年、七一年までやって以来、かれこれ三十五、六年、アジアから事務総長というのが出たことがない。もう御存じのとおりで、エジプトから出ましたりアフリカから出ましたりしたんですけれども、ここから出たことがないという状況が続いておりますので、アジアからというのはやはり私どもも考えておかないかぬところだとは存じます。

 そのほかにも、スリランカから一人、それからタイから一人というのが今の状況だと思っておりますので、今、少なくとも、私の知っている範囲で三人立候補者の名前が挙がっておりますけれども、これからまだ時間がありますので、そのほかの地域からも出てくると思います。

 今言われたようなことも含めて、私どもとしていわゆる国連改革というのを、町村大臣とかが苦労をされていろいろされたんですけれども、何となく喚起されただけで、もうちょっと、いま一つ前へは、いろいろ抵抗もあってできなかったのは御存じのとおりなので、私どもとしては、国連改革というものは、やはり安保理改革というものは避けて通れない問題だと思いますので、こういった改革のことに関しましても、熱心かつ能力があるという、二つないとちょっとなかなかできないかなと思いますので、十分に勘案をして決めさせていただきたいと存じます。

鈴木(馨)分科員 非常に難しい問題に御答弁いただきまして、ありがとうございます。

 次に、もう一件、国連の関係でございますけれども、国連の拠出金の話でございます。

 今日本が拠出している国際機関といいますと、国連というものもある一方で、いわゆるブレトンウッズのIMFだとか世銀だとか、そういったものもあるわけであります。

 この二つ、何が違うかといえば、国連の方は一国一票ですし、常任理事会の拒否権というのも、別にそれに対応しているわけではありません。逆に、IMF、世銀というものは、実際の拠出割合によってある程度投票権というものが決定されている、そういった構造的な違いがあるわけであります。

 普通に考えますと、国連には、出しても出さなくても一緒だから、出せる限りで出せばいい。逆に、IMF、世銀の方は、出せば出すほど投票権があるわけですから、それはそういう状況の方が望ましいのは事実であると思います。

 恐らく、これの両方の判断基準というのが、今の実際の経済力、日本のGDP割合なりなんなりに対応しているというのが大もとの考え方であるとは思うんですが、いろいろな条件がありまして、現在は、国連の方は二〇%近く出しているわけですけれども、IMF、世銀の方は一けた台にとどまっているという状況にあるわけであります。これはどう見ても、算出のもとの根拠は一緒であるにしてはちょっと両方で違い過ぎるなというのが、恐らく普通の人が考えれば、私も素人ですけれども、そういう結論になるのかなと思います。

 そこで、所管されている関係もありますので、国連の方について、今後、拠出の方をどういうふうな形でネゴしていこうと思われているのか、そういったところを伺えればと思います。

塩崎副大臣 今御指摘のように、世銀、IMFは、直接投票権と結びついたクオータということになっているわけでありまして、一国一票の分担、投票行動の仕組みとは若干違うということで、考え方もおのずから、どのくらいの負担をするのかというのは変わってくるんだろうと思います。

 基本的には、今我が国が一九・四六八%の分担率を担っていますし、これは、一般の国連の経費のみならず、PKOの負担にもつながってくるものであるわけであります。したがって、国民の声をしっかりと聞きながら税の扱いというものを考えていくということが大事というのがまず基本だろうと思います。

 その際に、何を国民に理解していただくのかというときに、責任というものがどういうふうに日本によって担われているのか、やはりそれに見合った負担というものにしなければいけない。今、世上、少し過剰じゃないかということを指摘されていることは十分わかっているわけでありますが、しかし、国際社会の中で、国連の中で日本がどういう役割を担いながら分担率を担っていくのかというのは、総合的に判断をしなければいけないんだろうと思います。

 ただ、その際に、やはり公平かつ公正であるということが担保されているというふうに、私たちはそれを確保していかなければいけないと思っておりますので、総合的な判断の中ではありますが、この公平かつ公正な分担になっているかどうかということを、これは三年に一遍の交渉でございますが、やっていかなければならないというふうに考えております。

 今先生御指摘のように、世銀、IMFとは、当然、一律に論じるわけにはいかないということではありますので、今後、ことしがちょうどその見直しの年でもございますので、年末に向けて、国民の皆様方の声をしっかりと背負いながら、大所高所から、外交戦略もあわせて考えながら決めていきたい、このように思っております。

鈴木(馨)分科員 ありがとうございます。

 最後に一点、さんざんもうあちこちで話されているかと思いますけれども、イランの関係でございます。

 たしか、おととい、外務大臣は先方の外相と会われて、かなり長いことお話をされていたというふうにも伺っておりますが、報道によれば、それほどはかばかしい状況になったわけではないというようなことも伺っています。

 ただ、さはさりながら、他国と違って、いろいろオイルの関係とかも深くて、そういう深い関係を持っている日本としては、独自のスタンスもあっていいのかな、引き続きそういう努力もされてもいいのかなという気はいたしますので、そこについての御決意というところ、先日の会談も踏まえて、いただければと思います。

茂木主査 質疑時間が終了しておりますので、大臣、手短にお願いします。

麻生国務大臣 イランとの関係は、アメリカの場合は関係がほぼ全くないことになっておりますので、アメリカ側から見たら、日本というのは、物すごくパイプを持っている数少ない先進国の一つと思います。

 ただ、このイランの核の話につきましては、核を平和的に開発することに関しましては、これは日本も既にやっておるわけです。おれのところだってその権利がある、それは当然のことです。しかし、おたくとうちの違いは、うちは全くガラス張り、やり始めて二十七年間、全くうちはだれからも文句を言われないようにきちんとあけてきました、おたくはずっと隠してきたんでしょうがと。それが不信を買ったもとなんだから、その不信を解消するところからスタートしてもらわないとどうにもなりませんよ、権利だけ言ったってだめよ、義務もやってもらわないとという話をしております。

 現実問題として、これをやっていくに当たって、今一番関係を持っていますのはロシアでありまして、ロシアとの関係は、少なくとも濃縮する過程というのは、御存じのように、遠心分離機にかけてずっと上げていくんですけれども、その段階の研究の話もできないのかと言うから、それもだめとロシアは言っているぐらい信用がないんだから、そこから始められたらどうですかという話をしております。

 ただ、向こうも、このままいくと、IAEAからいきなり次は安保理に行っちゃいますと、いよいよどうにもならなくなって、安保理に行ったら、うちも、日本もそれに従わざるを得ません、こっちは安保理に入ろうと思っているんだから、そこらのところも、おれたちの立場も考えて、おたくの都合だけでいくのは無理なんですよという話をして、唯一ぐらいの友達もなくすよという話をいろいろして、総理からもほぼ似たようなことを言っておられますけれども。

 近々、IAEAも、とても認められるような状況にないという報告が出てくることになろうと予想されますので、それまでの間、約一週間弱のところだと思いますが、ロシアとの何やらをきちんと詰めてもらわないかぬというところまで、非常に話は緊迫した感じが今の現状だと理解をいたしております。

鈴木(馨)分科員 時間が参りましたので、終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

茂木主査 これにて鈴木馨祐君の質疑は終了いたしました。

 次に、渡辺周君。

渡辺(周)分科員 民主党の渡辺でございます。

 きょうは、この分科会、特に北朝鮮問題について質問をさせていただきたいと思います。

 また、北朝鮮問題に先立ちましてちょっと一問、もう大分時間はたっておりますけれども、コンゴ人のムルアカ氏のことについて、これは我が党の同僚議員からもぜひ質問してほしいということがございますので、ここで質問をさせていただきます。

 この問題につきましては、過去、もう何度か外務委員会や予算委員会等でも取り上げられた問題でございまして、平成十四年の三月、外務省アフリカ第一課が、ムルアカ氏のパスポート、旅券問題、これは偽造文書であるということが判明したというふうな発表をした後に、翌年、平成十五年の二月四日、偽造ではなくて無効である、無効ではあるけれども偽造ではなかったというような見解に訂正をしたわけでございます。

 この点について、この問題、時間はたっておるんですけれども、その後、ムルアカ氏は法務省から永住許可を受けているということでございます。

 ここで改めて、このムルアカさんのことについては我が党も、予算委員会、外務委員会の中で、随分この問題を質問いたしました。この点について我々としても、当時質問をした議員からしますと、極めて厳しい言い方をして、要は、非常に疑惑の渦中にあるかのような追及をしたということでございまして、その点については今、国としてどのように御判断をして、また、偽造旅券ではなかったという公式見解があるのかないのか。そして当時のこの問題に対して、御当人に対して、何らかの名誉毀損の回復をしたのかどうか。

 この問題についての外務省の責任と、その後の結末についてお尋ねをしたいと思います。

小田部政府参考人 お答えさせていただきます。

 まず、当省といたしましては、旅券が有効かどうかという判断につきましては当該旅券の発給国が行うものでございまして、ムルアカ氏の旅券の有効性に関する判断もコンゴ民主共和国政府が行うものだと考えております。また、その前提の上に立って、委員が今御指摘ありましたように、平成十四年三月八日付、在コンゴ民主共和国日本国大使館口上書をもって、同国政府より、当該旅券は偽造文書であることが判明したという回答を得ているということを御説明した経緯がございますし、さらにその後、もう少し細かい事情を聞いたところ、翌年三月には、コンゴ民主共和国政府からは、当該旅券にはしかるべき判こが押されていないので無効であるとの回答を得た経緯がございます。

 また、その後も、本件は重要な問題でございますので、先方政府に対して事情を聞いておりますところ、先方政府が一貫して言っておりますことは、十四年三月八日付口上書で回答しているとおり偽造であるということを、確認を得ているところでございます。それが一点目でございます。

 それから二点目でございますけれども、コンゴ民主共和国政府、ただいま申し上げましたとおり、ムルアカ氏の旅券は偽造だという立場を維持しておりますことから、ムルアカ氏に対して、謝罪あるいは何らかの名誉回復措置というのは講じておりません。

 なお、平成十六年五月、ムルアカ氏より東京地裁に対しまして、国に対する損害賠償請求事件の申し立てがございまして、現在、第一審の審理中という状況にございます。

渡辺(周)分科員 ということは、この点については審理中を理由に、ここで答えることは差し控えるということでございますか、今のそういう後半のお答えでは。

小田部政府参考人 その点につきましては、コンゴ民主共和国政府がムルアカ氏の旅券は偽造だという立場を維持しておりますので、そういった観点から、謝罪や何らかの名誉回復措置は講じていないということでございます。

渡辺(周)分科員 この点につきましては、私のみならず、恐らくこの問題を当時追及した同僚委員からも、しかるべき時期をとらえて、またさらなる確認があろうかと思いますので、この点につきましては以上にさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

 さて、それでは、北朝鮮の問題につきまして大臣の御見解を伺いたいと思います。

 我が国と北朝鮮で、二月の四日から五日間、日朝協議が行われました。この日朝協議、結果的には、御存じのとおり、並行方式で日朝協議を進めてきたけれども、特に拉致の問題についても何ら進展がなかったということは、これは国民の一人としても許せないこと、またこの問題に取り組んできた人間としても、この不誠実な対応について、まさに怒りを禁じ得ないわけなんです。

 この日朝協議において、途中、これは共同通信が流したネットのニュースの中にありまして、意外とこの問題は余り大きな取り上げ方をされなかったんです、一般紙などにはこれはなかなか出てこなかったんですが、日本が経済制裁をするならば物理的な対応をするということを、宋日昊交渉担当大使が拉致問題に関連して発言をしたと。これは、二月十九日、この日朝協議が終わってからですけれども、共同通信のネットのニュースの中で、日本が経済制裁を発動すれば強力な物理的対応をとると、日本の原口交渉政府代表に通告していたことがわかった、複数の交渉関係者が十九日明らかにしたということでございます。

 この点について何らかの報告を受けているかどうか、まず大臣、お尋ねをします。

麻生国務大臣 その共同の話が出たことは知っておりますけれども、私ども、原口に確認したところ、そのような事実はございません。物理的な対応をするというような話はございませんでした。

渡辺(周)分科員 ということは、それは大臣、この日朝協議に行かれた方々、交渉団と、行かれる前も当然すり合わせをしているでしょうし、帰ってきてからも報告をすべて受けている。

 そうすると、こういう経済制裁をしたら物理的対応をする、これは新聞の記事でございますから、どういうふうな情報源で書かれたのかわかりませんけれども、ここには、公式協議の合間に実施された非公式会談での発言で、日本側は、弾道ミサイルの発射凍結を解除するというあからさまなおどしだと。つまり、弾道ミサイルの発射の凍結を解除する、これを物理的対応は意味するのだろうということで書いてあるわけですけれども、非公式会談でも、発言したことはすべて大臣のところには入ってきている、つまり、公式協議の中の発言、やりとりだけではなくて、非公式のやりとりについても大臣はすべて把握していらっしゃいますか。

麻生国務大臣 すべてかどうか、ちょっと言いようがありませんけれども、今のそのモラトリアムの話につきましては、御指摘のような事実はありません。

 いずれにしても、二月七日に安全保障会議というのをやっているんですが、これは、日朝平壌宣言というものを全体に前に進めていかないかぬ、これが大前提ですから、そういったものに基づいていこうということで双方は一致している。ここは確かなんですが、それに関して今発言がないということは、平壌宣言の中にそれは書き込まれているところでもありますので、モラトリアムという、ミサイルの延長というものはその中に当然含まれているというふうに解すべきものだと理解をいたしております。

渡辺(周)分科員 今回のこの日朝協議においては、北朝鮮から、非常に信じられないような発言や態度があったということはもう御存じのとおりだと思います。

 例えば、拉致したことは悪いけれども、我々は人間的に扱ったではないかというような、開き直りともとれるような北朝鮮側の対応。あるいは、日本のNGOを、北から中国国境に逃げてきた方々を、北朝鮮の刑法、国家転覆陰謀罪に基づいて引き渡せというような、まさに愚かとしか言いようのないようなことを平気で突きつけてきた。新聞等ではくせ球なんて書いてありますが、我々にしてみると、これはもう、へ理屈というか、そこまでしか言うことがなくなったのかというようなことでございます。つまり、今、こういう北朝鮮の現状を大臣としては、もうかなりこれは向こうも手詰まりになっているんじゃないだろうか、かなりむちゃくちゃを言わないと、向こうはもうカードがなくなってきているということで、かなり焦燥感もあるのではないかと思います。

 反面で、今、南北朝鮮が大変友好な関係にある。我々も何回か韓国に行きますけれども、韓国政府というのは、まさに今、これは外務大臣のお立場からは言えぬでしょうけれども、正直言って、向こうの国会議員と話をしますと、日本には拉致問題があるのはわかるけれども、なぜもっと北朝鮮と親密な関係をつくらないのかなんということを、韓国の国会議員から我々も言われまして、話をしていると、何か北朝鮮のエージェントとしゃべっているみたいです、代理人と話しているみたいなんです。この国が南北に分断をされて、国家保安法といって、昔は北朝鮮のことを褒めたり友好的な立場をとると、最高刑死刑だなんて法律がある国とは思えないような、まさに完全な精神的武装解除をされてしまっている。

 今、開城の工業団地というところには韓国の会社が十五社も進出をして、十一社も、今もう既に操業していて、六千六百人の北朝鮮の人間をワーカーとして働かせているということで、我々も統一省に行ってお土産をもらいました。後でこれは何ですかと聞いたら、腕時計が北朝鮮製、開城の工業団地でつくった腕時計なんですね。今でも動いていますから、そこそこの品質だ。昨年の十二月に行って、まあまあ三月ぐらい、今もまだ動いていますけれども、そこそこ動いているんですね。

 南北がどんどん融和をしているという反面で、北朝鮮がどんどんどんどん延命をする。そこで我々として、やはりこの国としてどう対応するかということでもあるんですが、日本とはそういう意味で、ちょっと長くなりましたけれども、我が国に対しては非常に乱暴な口をきき、非常に不誠実きわまりない対応をしていても、韓国とうまくいっているから我が国はいいんだ、少々日本が厳しいことを言ったっていいんだというような雰囲気も少し感じられるわけですが、今の北朝鮮の状況について、総合的には大臣はどんなふうに見ていらっしゃいますか。

麻生国務大臣 今言ったようなふざけた話というのは、幾つかあったことは御想像にかたくないところなんだと思いますけれども、外交交渉というのは総じて、持ち上げたり、たたいたり、いろいろ忙しい世界ではあるんです。この国と話をしていくに当たって、対話と圧力というけれども、対話だけで話なんか成り立つことはありません。したがって、これはどうしたって圧力が要ることは確かです。私どもはそう思って、対話と圧力という表現は正しいと思っております。

 また、圧力につきましても、今、御存じのように、朝鮮銀行がRCB勘定になってみたり、朝鮮総連に家宅捜索が入ってみたり、いろいろな形で、私どもは法律に基づいてそのとおり執行しているということなんだと思いますが、向こうから見たら、それは圧力以外の何物でもないと感じているはずだとは思います。

 また、日本が暗躍というと聞こえが悪い、いろいろ運動をして、少なくとも、アブダクション、拉致という単語を初めて国連の総会で認めさせたというのは、これはもうすごく大きな話で、当然、圧力。それで、熱しやすく冷めやすい日本人のことだから、そのままほっておけばそのうち鎮火するかと思ったら、とんでもない。だんだんだんだんという話も向こうの計算外だった。いろいろなことになっているとは思いますけれども、こういった話を鎮静化させないで、風化させないできちんと維持していくというのは大きな圧力になるんだ、私どももそう思っております。

 ただ、これは今後、要は圧力というのは手段でありまして、私どもとしては、今言われている名前プラス勘定の仕方によっていろいろあるんですけれども、数多くの方、三十名とか、いろいろ数が出てきていますけれども、そういった数のものになってきますと、ある程度、渡辺先生、生きているという前提も考えておかないけませんものですから。そうすると、生きているままとられているというと何となくこちらも、まあ、人質交渉みたいな話ですから、なかなか難しいところもありますので、どうしてもいま一つ何となくというのが、私ども、正直な気持ちとしてはあります。

 ただ、気持ちがありますだけに、ずっとほたっておいてもどうにもならぬと思いますので、圧力というのをどの程度やっていくかというのは、今後、その段階にどのようにやるか、ちょっとこの段階でまだ申し上げるわけにはいきませんけれども、その点は、対話だけではだめ、はっきりしております。

 また、開城の話が出ましたけれども、事実です。いろいろな形で、韓国の場合は、中国との間にある北朝鮮という国がこっち側にくっついて一緒になるのか、向こう側にくっつくかによって大分違いますので、それはいろいろ考えておられるとは思います。ただ、何となく、今の大統領になってからかなり向こう寄りの方が強くなってきたというのは、アメリカも日本もちょっと危惧をしておるというところで、国会議員、ハンナラ党、ウリ党、いろいろあります。人によって大分違いますけれども、ちょっと正直、私ども、つき合いがないわけじゃありませんけれども、しゃべっていて、大丈夫かねというのは正直なところであります。

    〔主査退席、山本(幸)主査代理着席〕

渡辺(周)分科員 外務大臣、少々失言しても私は決して追及したりしません。特に北朝鮮問題については、一生懸命言葉を選びながらお話しされているようでございますが、やはり北朝鮮に対しては日本の与党も野党もなく、今回の日朝協議の後を受けて、交渉を終わって、日本の国民はこの不誠実な態度に怒っていると、あらゆることを考えて、北朝鮮という国に対して日本の政府あるいは議会がメッセージを送り続けなきゃならない。

 まさに向こうは時間切れを待っているわけでございまして、特に韓国や中国が、北朝鮮と友好的な関係、まさに支えているわけですね、この北朝鮮の国家を。結果的には、日本よりも脅威とするのはアメリカであって、頼みとするのは韓国であり、今や中国である。という中で、我が国としてもこれは、まさにおっしゃったとおりに、対話だけではなく、やはり圧力をちらつかせた対話でなければ何にもならないわけでありまして、そんなものは、まさに彼らにしてみれば痛くもかゆくもない。

 あの国がここまで生きてこられたのは、まさに瀬戸際外交を繰り返して、ブラフをしながら近隣の超大国を自分の方に向けてきた。つまり、おれたちは追い詰められたら何するかわからないぞという恐ろしさを見せながら、ここまであの国というのは先軍国家として、軍事しかやってこなかった。民は飢えて死ぬ。この国がここまで生きてきたのは、まさに、そういうぎりぎりの外交戦略によるものでございます。

 さて、ここで私は、大臣とはこの間総務委員会でも御一緒しておりますけれども、この間の総務委員会で、日本発の、北朝鮮あての保険つきの郵便物というのはどれぐらいあるんだという話をして、きょう、さっき回答をもらいました。

 全国で集めると大変だということで、今わかっているだけでもって、これは東京中央郵便局と大阪中央郵便局が、現金と記載され北朝鮮あてで送ったのが、今百六通だけだ、わかっているのが。全部で七百二十七通あるんですが、今判明しているのは、北朝鮮あての保険つき郵便物百五十八通、うち現金を送ったのが百六通。大体、全国で送ったうちの約二二%、五分の一で、幾ら送っているかといいますと、二千二十三万二千円送っているんですね。

 これは、きょう、先ほど郵政公社からもらいました。こうやって日本の国から簡単にお金が送れるわけなんですけれども、これは表に出ているものだけでありまして、正直言って、こんなものは小包に紛れ込ませてしまって国へ送ってしまえば、もう何がどうなっているのかわからない。

 これは、北朝鮮から逃げてきた人たちの話を聞きますと、郵便局に届いたものはみんなあけられて、手数料と称してみんな持っていかれるわけですよね、何割か。こんなもの、無傷で送り主に届くわけがない。必ず向こうの郵便局にあけられて、現金を送ってきたら、最低五%ぐらい取られる。つまり、十万円送ったら五千円、二十万円送ったら大体一万円ぐらいはみんな抜かれる、そんな国だそうでございます。

 これをここで、とめろということを外務委員会でまさか質問するわけにいきませんけれども、実際こういう経済制裁といいますか、現行法を強化するということに関して、大臣、外務大臣というお立場でわかる範囲で、どういうことをすべきかということがありましたら御見解をお聞かせいただきたいと思います。

麻生国務大臣 これは、渡辺先生、他省庁に関係するところでもありますので、なかなか、これはというのはちょっと今すぐには言えませんけれども、例えば、今総務省の話をされましたから総務省で言わせていただければ、静岡県はどうか知りませんけれども、固定資産税はきちんと取ってもらおうと。これはかなりな、法律をそのまま履行していただくということでもありますので、すごくいろいろな意味で、別に間違っていませんから、それは一つの方法。取っておられる市と取っておられない市とありますので、そこらのところは、取る方向で私も総務省のときにやったことがあるんですけれども、現場の事情がなかなか難しいというのが実情ですけれども、一つの大きなものになり得ると存じます。

渡辺(周)分科員 外務大臣ですから、他省庁の政策決定について御意見をおっしゃられないというのはよくわかりますが、実は、民主党でもきのう、この固定資産税の話でヒアリングをしました。

 公共施設だということで課税を免れていますね、全部もしくは一部減免。では、幾らこれは固定資産税が減免されているのかと言ったら、言えないというんですよ。何で言えないのか。地方税法上、秘密だと。だって、公共施設だからといって課税されないものが、幾ら課税されていないのかと聞いたら、個人の家の固定資産税については別に秘密でもおかしくないけれども、公共を理由に課税されていないものは、幾ら課税されているかと言われたって、それは言えないというんですよ。

 地方税法というのはどういう法律なんだということで、これはまた改めて別の場で議論するんですけれども、まさにこういう、我が国としていろいろなことで理解できないことがありまして、北朝鮮という国が、いつまでたっても、引き延ばしさえすればいいと思っている一つの原因ではないのかなと本当に私は思うんですね。

 つまり今回も、ちょっと話を戻しますけれども、宋日昊担当大使が、またこういう協議をやることの必要性は感じた、非常に何かいい雰囲気だったというようなことを終わって言っていますけれども、現実問題として、ずるずるで、次はまた追って連絡するみたいな話。つまり、もう引っ張るだけ引っ張っておいて、先ほど大臣おっしゃったように、日本の世論がだんだん乾いてきて、だんだん物を言わなくなってきた。ああ、あきらめたというふうに持っていくのが当然彼らの手段でありますから、我々としてはこの問題を、本当に絶対に風化させてはいけないというふうに思うんですが、二つお尋ねします、時間がありませんので。

 一つは、このときに出されました特定失踪者について、北から、新しい情報があれば調査するようなことが向こうからありましたけれども、その点について、その後何らかの形で北朝鮮側に伝達をしたことは何かあるのか。

 それからもう一つは、この日朝協議が四、五、六、七と行われた後、最後の拉致の協議の後に、北朝鮮側の主催で食事会があったというふうにあるんですね。ちょっと私わからないんですけれども、北朝鮮の主催なんですね、これは新聞報道ですけれども。

 協議で激しい応酬があって、かなり溝があるということをお互いが認識し合いながら、応酬しながらも、終わった後に北朝鮮側の主催で食事をしている。そこの非公式の食事会に向かうところは、一部、マスメディアのテレビ映像なんかでも私は見ていますけれども、実際こういう、非公式な会合なのか、あの協議があってその後、決別したというか、これだけ溝があったにもかかわらず、終わった後にまた酒を飲んだり飯を食うとかいうのはどういうことなのかと思うんですが、この点について大臣、どういうことを御存じですか。ちょっと私、理解できないんですけれども。

塩崎副大臣 特定失踪者につきましては、協議の場でこちらからもリストを提出し、それは簡単なものだったものですから、追って関連情報をこちらから提供することになっておりますけれども、北朝鮮側からは、我が方から関連情報の提供がなされれば特定失踪者の調査を行う旨、回答してきたということでございます。今の、追加情報をこちらから出すのは、当然、北京の大使館ルートを通じてやるということでございます。

 それから食事の話でありますが、何も、こちらだけがごちそうになったわけでは決してないわけでありますけれども、この協議の期間中、二回食事会がございました。四日の夜と、そして今御指摘の七日の夜でございますが、四日が日本側の主催、そして七日は北朝鮮側の主催で、それぞれ一時間半から二時間弱ぐらいの話し合いの場でございました。

 今回はいろいろお互い、新しいメンバーが交渉の担当者として出てきておりますので、そういったことで、新たな会談をずっとこれから議論するという中で、その基礎をつくるということで個人的信頼関係を構築するというか、お互いに知り合うというか、そういうことで食事会が行われたわけでありまして、当然のことながら、昼間のいろいろ踏み込んだ話し合いのようなことはなかったということでございます。

渡辺(周)分科員 この食事会が終わって、宋日昊大使は記者団に、食事会の雰囲気はよかった、このような協議を今後も継続するとの認識で一致したと。

 ちょっと信じがたいですよね。食事会の雰囲気はよかったと。昼間さんざん、こちらが被害者ですよ、国家主権を侵された国がテロ国家に対して交渉に臨んでいるのに、食事をするなとは言いませんけれども、やはり腹をくくった姿勢というものがないと、それはそれ、これはこれで、日本型の、とりあえず一杯やってからまた考えましょうみたいな、もしそういうふうに向こう側にとられたとしたら、これはやはり、日本の交渉団というのは本気じゃないんじゃないかというふうなことを申し上げたいわけです。

 最後に、梅田参事官がお見えでございますので、この間のことにつきまして、実際、本当に日本側は厳しくやったのかどうか。何か、はなから、もう結果を持ち帰れなくてもしようがないんじゃないか、北朝鮮側ははなから何も用意していなかった、こちら側も、まずは顔合わせみたいなイメージだったのかなというふうな認識が私自身ぬぐい去れないんですけれども、出席されたお立場としてどうだったのか、最後に伺いたいと思います。

梅田政府参考人 お答えいたします。

 協議の雰囲気といたしましては非常に厳しいものがありました。当然、我々は主権を侵害されたということ、それから、十一名の方がまだ生きておられるという前提のもとにいろいろなことを相手側に対して求めているわけですから、それも一人一人、物すごく詳細に話をしております。

 ですから、北朝鮮側は当然のことながら、我々の話を聞いて不愉快な気持ちを持ったと思います。それから、彼らが言ってきた点も、今先生から御指摘のあったとおり、本当に何ということを言うんだろう、この人たちはという点もございましたので、それは、物すごく厳しいやりとりがありました。

 それから、食事について一言言わせていただきますと、我々、現場でも、本当にこれを受けるべきかどうかというのは非常に悩みました。ただ、彼らのメンツもある、それと、最後、やはり食事の場を利用しまして、改めて言うべきことは我々伝えております。そんなに食事会の雰囲気が愉快であったとか、よかったとかというものでは決してなかったことは、私、断言できます。

 以上でございます。

渡辺(周)分科員 また改めて機会をとらえまして、この問題、外務大臣と質疑したいと思います。

 終わります。

山本(幸)主査代理 これにて渡辺周君の質疑は終了いたしました。

 次に、稲田朋美さん。

稲田分科員 自由民主党の稲田朋美でございます。本日は、平成十六年五月六日、上海総領事館の電信官が領事館の中で自殺をしたという事件について、お伺いをいたしたいと存じております。

 この問題が私たち国民の知るところとなりましたのは、昨年十二月二十七日発売の週刊文春でしたが、衝撃的だったのは電信官自殺の理由でございます。その理由が、中国人女性と親しくなり、そのことを理由に中国公安から卑劣な脅迫を受け、暗号システムを教えろと強要されたことにあったと報じられたことです。

 さらに、我が国の情報の危機管理のお粗末さ、また外交の不可解さは、このような重大な事件、ウィーン条約に違反する行為が中国からなされ、その結果、一人の人の命が奪われたことについて、外務省がまともな抗議もせず、首相官邸に報告もせず、外務省どまりで対応されたということにあらわれていると思います。

 この事件以前でも、平成十四年、瀋陽の日本総領事館に北朝鮮の男女五人が保護を求めて駆け込んだということがありました。そのとき、中国の武装警察官がそれを追って領事館に侵入し、男女を連れ去るという、中国から我が国に対する主権侵害がなされたことがあったのですけれども、これに対する外務省の対応もほとんど有効な抗議がなされず、幕引きがなされたと記憶しております。

 一体日本の外交はどうなっているのか、また情報防衛はどのようになっているのかというのが、私を含めた国民の正直な感想ではないかというふうに思います。

 そこで、まず外務大臣にお伺いいたします。

 麻生外務大臣は、流暢な英語はもちろんのこと、御就任後、本当に毅然とした態度で外交に臨まれていて、大変頼もしく、また尊敬いたしております。

 今回の中国が行った行為、外務省がおっしゃるところの領事関係に関するウィーン条約上の接受国の義務に反する遺憾な行為、さらにはそれに対する今までの外務省の対応について、大臣の御感想、御所見を伺いたいと存じます。

麻生国務大臣 これは、現地の中国側公安当局者によります、ウィーン条約接受国の義務に反する遺憾な行為が正確な法律用語だと思いますが、日本の外務省職員が自殺に追い込まれたというようなことは、これは、当然のこととして、話としては非常に深刻な話なんだと私どもは思っております。

 発生後、いろいろなことを調査をさせて、いろいろなことをして、また同時にさまざまなレベルで抗議も行ったということが事実で、細かく全部知っているわけではありませんけれども、その中にあって、本人の無念なところもさることながら、基本的には、そこのところの重大な話が官邸まで上がっていかなかったというところが一点。

 もう一点は、大事なところは、この方の決意、覚悟のおかげで、少なくとも機密に関するところは保たれたというところは、私どもとしてはそれなりに感謝をせにゃいかぬところ。この人が自分の身の保全を図って漏らしていたら、話はもっと込み入っていたことになったろうと思っておりますので。

 私どもとしては、この種の話というのは、今後とも起こり得る話と覚悟しておかなければいけませんから、そういった意味では、この種の話が二度とないように、まず任地に赴くに当たってはそれ相当の覚悟が要る、そういったときの接触は必ずある、それに対してどう対応するか。かつ、それでも対応し切れず、気がついたらはめられていたというときには、妙にそれを隠し立てしないで、さっさと上に失敗しましたと言った方が早い。その方がよっぽど国全体としての被害が少なくて済むということも考えて対応をしなけりゃいかぬというような話を官房長ともども含めてしたところでもあります。

 この種の話は、何もここだけの話じゃありません。今後とも、情報をとろうとする側の立場に立てば、ある面、当然のアプローチの仕方といえばアプローチの仕方として覚悟しておかなければいけませんから、そういったところも、何もこの国に限っただけの話じゃないので、いろいろな形のアプローチの仕方はあろうと思いますので、少なくとも外交官たるものという覚悟が要るんだという点なんだと思っております。

稲田分科員 ありがとうございます。

 それでは、外務省に今回の事件についての事実関係についてお伺いしたいと思います。

 まず、電信官が自殺した理由についてですけれども、外務省の御見解は資料二のとおりですね。「現地の中国側公安当局関係者による、領事関係に関するウィーン条約上の接受国の義務に反する遺憾な行為」というふうに表現されているんですけれども、それは具体的にどのような事実を指すのでしょうか。

塩尻政府参考人 遺憾な行為の内容でございますけれども、これは、現地の中国側公安当局関係者による脅迫、恫喝ないしそれに類する行為があったというふうに判断しております。

稲田分科員 その背後に女性関係、いわゆるハニートラップであったという点についてはいかがでしょうか。

塩尻政府参考人 具体的な背後関係については、インテリジェンスの関係の話もございますので差し控えさせていただきたいと思いますけれども、いずれにしましても、現地における公安当局関係者による恫喝、脅迫ないしそれに類する行為があったということでございます。

稲田分科員 それ以上具体的にはお答えいただけないんだと思いますので、それ以上は聞きませんけれども、もう既に報道では、背後に女性関係があったというふうに報道されておりますし、またお手元の資料三でございますけれども、麻生大臣が、「外務省主催のタウンミーティングで、一昨年五月に在上海日本総領事館員が自殺した問題に言及。中国側から女性問題に付け込まれ、領事館員が「暗号の乱数表を渡せ」と強要されたと明かした。その上で「追い込みをかけたみたいなもの。断固対応するのは当然だ」と述べた。」というふうに新聞にも報道されているところでございますので、大臣自身が既に、背後に女性関係がある、ハニートラップの事件であるというふうに述べられているところでもございます。

 したがいまして、インテリジェンスの問題というふうにおっしゃいましたけれども、もう既にその問題は国民の中で知るところになっているのではないかというふうに思います。また、国益また国民の知る権利からも、こういった問題の具体的な背後関係についてはきちんと外務省の方で発表されるべきではないかというふうに私は思います。

 次に進みます。この事件についての中国側の見解は資料一のとおりでございます。これについては訳文をつけておりますので、その訳文を見ていただきたいんですが、「二〇〇四年五月、日本国駐上海総領事館で館員の自殺事件が起こった。事後、日中双方は外交ルートを通じ、数回にわたり、やり取りを行った。日本側は、仕事上の重圧により自殺に至ったと表し、ご遺族の意思により中国側に公開しないよう要求した。中国側としては、人道主義に立ち、日本側及び遺族に協力し、善後策について適切な処理をした。」というふうに書かれているわけでございますが、この中の「日本側は、仕事上の重圧により自殺に至ったと表明した」というのは真実でしょうか。

塩尻政府参考人 今委員が御指摘されましたように、中国側は死亡の原因として職務の重圧によりというふうに論じておりますけれども、我が方の判断は、先ほどお話ししたとおり、中国側関係者による脅迫、恫喝ないしそれに類する行為によって自殺に至ったというふうに判断しております。

稲田分科員 そうしますと、この「日本側は、仕事上の重圧により自殺に至ったと表明した」という部分はうそということでお伺いいたしておきます。よろしいですね。

塩尻政府参考人 まさにそのとおりでございます。

稲田分科員 それでは、次の「ご遺族の意思により中国側に公開しないよう要求した。」という点については真実でしょうか、それともうそでしょうか。

塩尻政府参考人 本件につきましては、御遺族の強い御意向もありまして、昨年十二月に我が方で公表するまで公表を差し控えたというのはそのとおりでございます。

稲田分科員 私が聞きたいのは、中国側に公表しないように日本が要求したということが真実であるか否かの点でございます。

塩尻政府参考人 失礼いたしました。他方、中国側に対して公表を差し控えるようにという要請をしたことはございません。

稲田分科員 この点につきましても、私は国家の名誉にかかわることだというふうに思います。つまり、日本側はこの件についていかなる意味におきましても被害者であり、そして中国側は加害者であるわけでございまして、被害者側から加害者側に公表しないように要求したなどというふうに中国側が表明していることについて、ぜひその点は真実に反するというふうに抗議をしていただきたいと思います。

 次に、本件のように、他国、中国からウィーン条約違反行為があり、それにより外務省職員の命が奪われるというような重大な結果を生じた国益侵害行為について、当然、相手国に対し厳重な抗議をし、場合によっては何らかの報復処置も辞さないという強い姿勢で臨むべきであると思いますが、外務省が事件直後にとった対応が、資料四の質問主意書に対する答弁でございますけれども、この二枚目の答弁の三項を見てわかるんですが、「平成十六年五月中旬に、在中国大使館公使から中国外交部アジア司副司長に対し、また、在上海総領事から現地当局の関係者に対し、それぞれ申し入れた。」という二回だけというのは余りにも抗議としては軽過ぎるのではないかと思いますが、その点、外務省の見解をお伺いいたします。

梅田政府参考人 お答え申し上げます。

 本件につきましては、先生御指摘のとおり、中国側によるウィーン条約上の義務に違反する遺憾な行為があったということで、厳重な抗議を行うとともに、事実関係の究明、真相の究明を求めております。

 実際に、今御説明のありましたように、事件直後の平成十六年五月に在中国大使館の公使から外交部副司長に、また上海総領事からも現地の公安関係者に、それぞれ申し入れを行っております。また、昨年の十二月に三回、外務省の在中国大使館から中国外交部それから在京中国大使館にも申し入れを行っております。それから、ことしになりまして、一月に行われました局長レベルの日中非公式協議におきましても、アジア局長から先方のカウンターパートに申し入れを行っているところでございます。

稲田分科員 私が言いたいのは、昨年の十二月は、文春による事件公表の前後に至るまでの間で、事件直後に二回しか抗議をしない、それをもって外務省が厳重な抗議を行ったと考えていることが、非常に私は国民の意識からもずれているのではないかなというふうに思うわけでございます。

 また、昨年の暮れないしことしに入ってから、おっしゃいますように数回にわたって抗議をなさっているわけですけれども、その申し入れに対して中国は何ら誠実な対応をとっていないというふうに思います。反対に中国は、日本政府の悪質な行為に強烈な憤慨を表明する、既に結論づけた問題を意図を持って誇張し、中国のイメージを損なっている、日本にわずかな道理もない、中国警察当局は当時、日本の上海領事館関係職員から事情聴取し、事実を確認した、聴取記録や日本の職員の署名もあるなどと事実を全面否定した上で、日本を悪質だと非難しているわけでございます。

 このような対応に対し、外務省は今後どのように対応なさるつもりでしょうか。単に真相究明を求めても私は平行線になるのではないかというふうに思っているわけでございます。

 私は、二十年間弁護士をしておりましたけれども、交渉において最も重要なことは背後の恐怖であるというふうに教えられていました。交渉が決裂したときの対抗手段なしで交渉するなということでございます。外務省はいわば日本国の弁護士のようなものだと思います。仮に中国が非を認めようとせず、現在のように反対に日本を非難するという立場を変えない場合には、どのような対抗手段を講ずるつもりなのかをお聞かせください。

梅田政府参考人 初めに先生から御指摘のありました、一年七カ月の間、間があったではないかという点につきましては、これは我々も反省すべき点はあったのではないかというふうに思っております。

 それから、二点目につきましては、これは、引き続き中国側に対して遺憾の意を表明し続けるとともに、真相の究明について回答を求め続けるということではないかと考えております。

稲田分科員 私が言いたかったのは、そういう平行線の場合に何らかの報復処置を考えていらっしゃるかどうかという点なんですけれども、その点もぜひ考えていただきたいと思います。

 次に、複数あると聞きますこの電信官の遺書をなぜ公開されないのか、その理由についてお伺いいたします。

塩尻政府参考人 死亡した館員の遺書につきましては、複数存在しております。ただ、その内容というのは、インテリジェンスの問題があります。それから当該職員のプライバシーにかかわる問題もあります。それから御家族の意向もあるということを考えなければいけないというふうに思います。

 他方、遺書には、現地の中国側公安当局関係者による脅迫、恫喝ないしそれに類する行為があったという趣旨のことが書かれております。

稲田分科員 しかし、中国側は何の関係もないというふうに主張して、現在も平行線の様相を呈しているわけでございますので、遺書を公表することは非常に重要なのではないかというふうに思います。

 また、プライバシーとおっしゃいましたけれども、一体どなたのプライバシーをおっしゃっているのでしょうか。私は、亡くなった本人が遺書を複数残されたということの意味は、また領事館内で自殺されたということの意味は、それを公表することを望んでいらっしゃるのではないかというふうに思います。

 もちろん、プライバシー、インテリジェンスは守らなければならないし、遺族の人格権も守らなければならないと思いますけれども、一方で、国益というもの、また国民の知る権利、また世界に向けて日本の正当性を表明するという意味からも、真実究明の手段としてこの遺書しかない場合、私は遺書を公表すべきであるというふうに思います。

 次の質問に参りますが、外務省はなぜこの問題を首相官邸に上げずに外務省で処理しようとされたのでしょうか、その理由についてお伺いいたします。

塩尻政府参考人 先ほど来から御説明申し上げておりますとおり、外務省の方で種々調査をいたしております。それから、中国政府に対してもさまざまなレベルで抗議を行った、あるいは事実究明を求めたということです。それから、機密漏えいもないことを確認しております。他方、再発防止のために必要な措置をとってきたということで、そういう中で、官邸に報告しなかったということでございます。

稲田分科員 今の外務省の答弁を聞いておりますと、官邸に報告しなかったことが正当であったというふうに聞こえるわけでございますが、小泉総理自身も不快感を表明されておりましたし、今大臣の方からも、官邸の方もこういった情報については把握すべきであるというような感想を述べられたと思うんですが、それでも、現時点で振り返って、外務省で処理しようとして官邸に上げなかったという判断は誤っていたと思われるのか思われないのか、その点についてお伺いいたします。

塩尻政府参考人 これは大臣も国会で一度答弁されておられるかと思いますけれども、現時点で振り返って考えてみますと、官邸に報告しておいてもよかったのではないかというふうに考えております。

 今回のこの経験を踏まえまして、官邸への連絡については、主管部局長が必ず外務大臣に報告、相談し、その上で対応策を決定するということが現在外務省の中で徹底されているということでございます。

稲田分科員 ありがとうございます。

 さらに、当時の川口順子大臣には報告したということでございますが、どの範囲で報告されたのでしょうか。自殺の背景、動機まで報告されたのでしょうか。

塩尻政府参考人 当日、平成十六年五月六日ですけれども、上海総領事館から電報の形で本省に報告されております。その報告が川口大臣にも上がっております。

 それから、その後の中国に対する厳重な抗議あるいは事実関係の究明、こういったことについても川口大臣に報告、相談をして対応してきたところでございます。

稲田分科員 そうしますと、川口順子大臣も自殺の背景までも御存じであったというふうに伺っておきます。

 さて、お聞きしましたところによりますと、昭和五十五年以降、国内で三人、国外で五人の外務省の職員が自殺されたというふうに聞いております。その背景についてはまたきちんと調べていただきたいと思うんですけれども、本件のようなハニートラップという古典的な諜報活動に対し、電信官の命を守れなかった外務省についての批判もあるところだと思うんですが、今後、外務省として、そういったことに対する外務省の内部での教育についてどのように考えていらっしゃるのか、お伺いしたいと思います。

塩尻政府参考人 これまでもそういった体制をとり、研修、研さんをやっておりますけれども、今回の経験に立ってもう一度組み立て直すということで、情報防護について再確認をする、対処方針というものがありますけれども、それを再度徹底するということでございます。それと、必要な研修、研さんをさらに強化するということで対応したいというふうに思っております。

稲田分科員 ぜひよろしくお願い申し上げます。

 最後に、インテリジェンス機関の設置の必要について外務大臣にお伺いいたします。

 元内閣情報調査室長であり、昨年九月十三日に「対外情報機能の強化に向けて」という提言を出した対外情報機能強化に関する懇談会の座長である大森義夫氏が、ウイルの三月号に、上海領事自殺事件はインテリジェンス戦争における一つの敗北であり、一個人を超えて日本として国家が敗北したのだというふうに述べられております。

 今回の事件を教訓として、日本でも専門のインテリジェンス組織をつくることが必要であるという意見がありますが、この点についての大臣の御所見をお伺いいたします。

麻生国務大臣 これがいわゆる機密保護法とかいろいろな法律と関係してくるところなんだとは思いますけれども、稲田先生、この種の話というのは、私は、今後さらに考えていかなければいかぬという雰囲気が少しずつおかげさまででき上がりつつあるんだと思うんですね。

 私は、いいことだと正直思っております。少なくとも、ついこの間まで北朝鮮の拉致はないという話だったんだから。そう言う方もいっぱい野党にもいらっしゃいました、その当時は。しかし、今は、やった本人がおれのところでやったと、国家元首が国家犯罪を自分のところで認めておるわけですから、それは随分おかげで時代は変わったんだと思っております。

 この種の話というのは、やはり長いこと忘れられている話なんですけれども、これは日露戦争にさかのぼってずうっと諜報というのはやってきたんですけれども、ただ、稲田先生、諜報とか情報とか謀略とかいう話は、何となく日本の世界じゃ余り評価は高くないんですよね。MI5とかMI6とか、あれはみんなサーがつくんですよ。サー何々。こちらは大体らっぱとか草とか、大名のお目見え以下みたいな形で、もともと地位が低いんですよ。こういう話を全然評価しない。だから、情報というのは暗い話になるんですよ。

 これこそが国家の大問題なんだという意識というのは、やはり日露戦争の明石元二郎初め、やはりすごく大事なところなんだ、私もそう思っていますし、おかげさまで、やっと防衛庁も情報関係の人は佐官じゃなくて将官までいけるようになったのもつい最近の話ですから。

 そういった意味では、この種の話に関してもう少し理解というものと大切さというものを外務省以外の人たちにもよくよく理解をさせるようにしないと、この種の話はいつまでたっても何となくスパイ小説の域を出ないみたいな話じゃこの国にとってはためにならぬと思いますので、今言われましたように、今後十分に検討されてしかるべき問題なんだと思っております。

稲田分科員 大変力強いお言葉、ありがとうございます。

 今回の事件は、自殺された電信官にとっても不幸な出来事ですし、また我が国にとってもインテリジェンス戦争の敗北というべき不名誉な出来事だったと思うんですけれども、せっかく麻生大臣のような国益を守るという立場で外交を考えていらっしゃる大臣に恵まれているわけですから、この機会に日本としても専門のインテリジェンス組織をつくって、国家としての情報機能を真剣に考えるべきときではないかというふうに思います。

 本日はどうもありがとうございました。

山本(幸)主査代理 これにて稲田朋美さんの質疑は終了いたしました。

 次に、糸川正晃君。

糸川分科員 国民新党の糸川正晃でございます。

 一般質疑ではなかなか外務大臣に質問する機会が少なかったものでございますので、きょうは期待をしております。よろしくお願いいたします。

 日本は、一九五四年からODAを開始いたしまして、アジアはもとより、世界各地における開発途上国の社会経済発展のために五十年以上にわたってODAを供与してきたわけでございます。特に、一九九一年から二〇〇〇年までの十年間というものは、実績では世界第一位の規模にあったということでございます。

 私は、援助大国として日本が世界に果たしてきたその役割というものは非常に大きいなというふうに思いますが、その一方で、ODAは国民からの貴重な税金を原資とするものでございますし、そういうことをかんがみますと、現在の非常に厳しい財政の中で、他国の援助をするよりも、まず日本国民を豊かにするということが先決ではないかなというふうなことも声として聞かれてくるわけでございます。

 この点に関しまして、外務大臣はどのような見解をお持ちなのか、お答えいただけますでしょうか。

麻生国務大臣 これは、糸川先生、このODAが始まる最初にさかのぼってこの話はずっとあり続けた、今後もあり続ける話なんだと存じます。

 その上で、やはり一人だけいいというのでもだめだし、また、向こうに、例えばいろいろ技術支援をした、資金配分をいろいろ傾斜配分をやった、いろいろなことをやった結果、早い話が、そこの国も経済的に成長してマーケットになっていくと、今度はこちらの物としてもさらに売れる。こちらの方は、御存じのように人口は減っていくんですから、外のマーケットで大きくなったマーケット以外は伸びようがありません。こちらの分は、高齢化しても生産性が上がればそれはそれなりにもつわけですから、ファイナンスをやっておられるのでおわかりと思います。

 そういった意味では、私どもの国としては、いろいろな国に、やはり伸びていくであろう国に援助する。向こうの方も、ほかの国から見てあの国が何で伸びたのかといえば、日本とつき合ったからやということになると、やはりそれは伸びてくる。大事なところなんだと思うんです。

 その意味で、ODAというのは基本的にはすごく大事なところで、よくちょっと例に引く、変な例かもしれませんけれども、勉強ができないやつというのは友達も勉強ができないやつが多いんですよ。わかりますか。だから、勉強ができるやつと仲よくなるというのは勉強ができる一番いい方法なんですよ。ゴルフの下手なやつと幾らゴルフをやったって絶対うまくなりませんから、そういうものなんです。

 だから、やはり、日本とつき合ったらおれたちも金持ちになるなと思わせる手口がすごく大事なので、だれかれなくみんなにお金をやっていたってだめです。私は、基本的にはそう思って、このODAを戦略的に使うべきだという説は正しいと思って、今の御質問に、ちょっと例としてはいかがなものかと思いますけれども、大体そういうものを基本に、おなかの中に入れて、相手にわからぬようにやらないかぬのがまた難しいところだと思います。

糸川分科員 非常に楽しい御意見をありがとうございます。私も、頭のいい友達を持てるように努力したいと思います。

 私も、国際社会の一員としては、貧困や飢餓で苦しんでいるところの撲滅のためですとか、それから国際社会が直面する課題に対して、日本はODAで貢献をしていくということは必ず必要になってくるなというふうに考えております。

 ただ、同時に、先ほど大臣が御答弁されましたように、日本の国益も図っていかなきゃいけない。これは、より戦略的にODAも活用していく必要があるというふうに考えておりますが、今後、外交戦略として、ODAをどういうふうにカードとして位置づけていかれるのか、御見解をお聞かせいただけますでしょうか。

麻生国務大臣 ODAというのは、日本の場合は、多分最も有効な外交手段なんだ、私はそう思っています。

 このODAというのをいかにうまく使うかというところをもうちょっと、これまでも戦略的にある程度使ってきたんだと思いますけれども、今回、少なくとも、今、財政も厳しくなってきている折、ODAというのはもっと戦略的に使うべきではないかという等々の御批判を受けて、今度、総理のもとにいわゆる戦略会議みたいなものを、名前はまだ正式に決まっていないんですが、そういったものをつくる。安全保障会議と同じような形で戦略会議みたいなものをつくる。

 そして、外務省の中にも、今の経協局というものを今度は解体します。そして別の組織につくり上げて、国際協力局として、いろいろな形、円借とかJICAとか、そういったものが全部こちらの方にまとまることになりますので、それに対応できるように局の方もつくり直す。

 また、こういったものを戦略的に使っていくことをやらないと、ただただむやみにやったら、施しているような感じでやると、向こうももらうのが当たり前みたいになってくると、これは話が込み入っちゃいます。やはり、日本とやると、ただただお金じゃなくて、よく言う、魚をくれるんじゃなくて、釣り道具をくれて釣り方を教えてくれる方がよほど長期的にはという話と同じようなところなんだと思います。

 私どもは、このODAというのをきちんと使うことによって、今、よくファンダメンタリストみたいなものの宗教がテロの温床だと言うけれども、そうかね、あれはもともとは貧しいからほかにということになっとりゃせぬか、だから貧困こそがテロの温床のもとのもとになっているという点もあるんじゃないのということになると、貧困というものが減りますと、その分だけテロが比例して減ることになるということは十分考えられます。

 私どもは、このODAというものを使って、いわゆるそういった極端な貧困、一日一ドル以下とか、いろいろ表現はありますけれども、そういった地域に対しての支援というものをうまくやっていくということが肝心。少なくとも、水が飲めない、何がないという最低条件を満たしていないところを何とかしてやるというのは、すごく大事な戦略だと思っております。

糸川分科員 私も、世界で困っているところを助けるということは、日本のやらなきゃいけない政策だというふうに思っております。

 日本は財政が厳しいということでございますが、その中で、諸外国は今、ODAの予算を増額しようという動きがあるということが承知されているところでございますが、主要国のODAに対する取り組みというのはどのような状況になっているのか、お答えいただけますでしょうか。

佐藤政府参考人 ODAについての他の主要国の動向ということでございますが、今御指摘にございましたように、主要先進国はいずれも、特に今世紀に入りましてからですが、ODAを増額してきております。

 その背景としては、恐らく、二〇〇〇年にミレニアム開発目標という国際社会の共通の開発目標が設定をされたこととか、あるいは二〇〇一年の同時多発テロということで、貧困対策に対する重要性が国際的に改めて再認識されたというような背景があるのではないかというふうに考えられるわけでございます。

 特に、例えば英仏独といった国は、ODAのGNP比の目標というのは国際的に〇・七%という目標がありますが、そういった目標にコミットをして、ODA予算をかなり大幅に増額してきております。

 それから、アメリカも、同時多発テロ事件以降、ミレニアム・チャレンジ・アカウントという特別の勘定を設けまして、特に、この二〇〇六年までの三年間でODAを五〇%増額する、そういったことを表明しておりまして、このように、先ほど先生御指摘があったように、主要先進国がいずれもODAに対する取り組みというのを非常に積極化しつつあるということでございます。

糸川分科員 それでは、今、ODAというのはいろいろな省庁が実施をされているわけでございますが、外務省として、このODAを一元化していくという取り組みというところでしょうか、一元化をどのように考えられているのか、御見解をお聞かせいただけますでしょうか。

佐藤政府参考人 ODAにつきましては、例えば、政府のODA予算ということで申しますと、十三省庁にまたがっているということでございます。外務省以外の各省庁それぞれの設置法に基づいて、その個別の所掌事務にかかわる専門的な国際協力を行っておられる、それが途上国との関係でODAになっているということでございます。

 予算的に見ますと、外務省、財務省、あるいは留学生交流を扱っております文部省、そういったところにかなりの予算がございますが、その他の省庁につきましては、予算的には必ずしも大きくなくて、一般会計全体の中で約六・四%程度という比率になっております。

 こうした各省庁でODA事業を実施しているわけでございますが、そうした事業につきましては、ODA全体の効率性を確保するとか、あるいは外交政策の整合性を確保するということが必要だと考えておりまして、各省庁の間でできるだけ、まさに情報を共有したり連携を強化したりする、そういったことの取り組みを強化する必要があると考えております。

 あと、それから、同じく一元化という観点から申しますと、昨日公表されました経済協力に関する検討会、いわゆる有識者検討会の報告書でも、ODAの実施機関、無償資金協力であるとか円借款であるとか、あるいは技術協力、そういったものの実施機関をJICAに一元化する、そういった方向が示されているわけでございまして、そうしたODAの手法というものをできるだけ有機的に連携させて、できるだけ一元的に把握して、それを効率的、効果的に実施していく、これは非常に重要なことであろうと思いますので、そうした提言の方向で進めていきたいというふうに考えております。

糸川分科員 先ほど大臣が、釣り道具を渡すよりも技術を教えた方がいいとか、釣り方を教えた方がいいというようなこともございますので、いろいろな得意分野というのがあると思います。それはぜひまとめていただいて、外務大臣としてやっていただければなというふうに思います。

 今、東アジア地域との経済関係等の緊密化というものがどんどん進んできているわけでございまして、ASEAN諸国との関係が今後ますます重要になってくるというふうに考えております。

 そこで、我が国の対ASEAN・ODAという部分で、この基本方針というのはどのようになっているのか、御説明いただけますでしょうか。

佐藤政府参考人 ただいま御指摘ございましたとおり、ASEAN諸国との関係というのは、当然ながら我が国にとって非常に重要なわけでございまして、それゆえにこそ、我が国のODAも、あのASEAN諸国というのは最も重要な重点地域ということでこれまで取り組んできたわけでございます。

 ちょうど現在、我が国としては、今お話がございましたけれども、そのASEAN諸国との経済連携の強化というものを進めているところでございます。

 また、他方で、ASEANといった場合に、そのASEAN域内で、経済域内の経済格差がかなり大きく残っている、これがASEAN自体にとっての非常に大きな問題であるという面もあるわけでございます。

 そうした状況を踏まえまして、私どもといたしましては、一方で、経済連携を強化する、推進するという観点から、例えば市場経済体制を強化していくための経済政策支援であるとか、あるいは投資環境の整備といったような支援、こういったものをODAを通じて行っていく。あるいは、ASEAN域内の開発格差の是正のための支援といったものをODAを通じて行っていく。こういったものを重点的にASEAN諸国との関係では行っていきたいというふうに考えております。

糸川分科員 投資環境の整備というのは、これは非常に重要だなというふうに思っておりまして、先ほど大臣が、日本の経済の発展のためにもこのODAが必要なんだと。これは、特にASEAN地域のところに対して、これからの経済規模を、日本の経済をどんどん発展させていくという中では必要になってくると思いますので、しっかりと取り組んでいただければなというふうに思います。

 イラクに対しましても、今まで、緊急的な民生向上のため、無償で資金協力を行ってきたわけでございます。今後、中長期的な復興支援として、円借款によります本格的なインフラ整備、例えば先ほどおっしゃられたように水の整備ですとか、そういうことをされていくことが重要だというふうに考えております。

 このイラクに対する円借款供与の方針、それから見通しをお答えいただけますでしょうか。

佐藤政府参考人 イラクに対しましては、ただいまお話がございましたとおり、これまでのいわば緊急的な無償資金協力から、中長期的な復興支援ということで、円借款を活用して、イラクの開発計画といったものを踏まえながら、イラクの基本的な経済インフラ、電力であるとか運輸であるとか、そういったインフラ整備、これを円借款を通じて支援を行っていきたいと考えているところでございます。ちょうどこれから、その円借款の段階に入っていくというところでございます。

 そのために、これまでいろいろ、イラク側のニーズ、あるいはイラク側の意向というものを確認しながら、イラク側ともたび重なる協議を行ってきておりまして、それからまた、JICAを通じて、どういうプロジェクトがあるのか、どういうプロジェクトが適当なのかというような調査もかなりたくさんやってきております。

 そういった協議とか調査というものを踏まえて、今、具体的に円借款の案件としてどういうものが実施可能か、まず最初にどういう案件を取り上げるのが適当かということで、国際協力銀行、JBICが具体的なその案件形成というもので最終的な調査を行っております。

 そういった調査の結果を踏まえまして、これは当然ながら、イラクの政治情勢というものを見きわめる必要はございますが、できれば本年度末、三月末までにも、こういうものをやりますということで、イラクに対する意図表明ができるようにということで、政府部内で検討を進めているところでございます。

糸川分科員 これはもう、外務省の使命といいましょうか、しっかりとイラクに対しても復興支援というところに取り組んでいただければなというふうに思います。

 次に、北朝鮮の拉致問題についてお尋ねいたします。

 私、今、地元が福井なものですから、北陸エリアは、多数のそういう拉致に遭われたんではないかなと言われる、そういう想定をされている人たちもいらっしゃるわけでございまして、北朝鮮による日本人の拉致というものは、人間の尊厳、人権とか基本的自由の重大かつ明白な侵害でございます。その拉致問題の解決というのが今外交上の重要課題の一つであるというふうに思っております。

 最近、日朝協議が行われたという報道ですとか、そういったものは聞いておるんですけれども、政府においてそういう取り組みをしているというのはわかるんですが、改めて、今この問題の解決に向けてどのような取り組みをされているのか、また、その基本方針というのはいかなるものなのか、お答えいただけますでしょうか。

麻生国務大臣 これは、糸川先生、基本方針は簡単に三つぐらいに言えると思うんです。いわゆる生存者の帰国、生きているという条件、生きているという前提で我々は交渉していますから、向こう側のすべて亡くなっているという条件で交渉しているわけじゃありませんから、生存者が一つ。理由、いわゆる真相の究明、何でこんなことをやったのという真相の究明。それで、とにかく容疑者というのは、ほぼ警察庁、警視庁も辛光洙等々容疑者は特定していますから、引き渡せ。この三つがまず条件というのが、我々の言っていることは簡単にはこの三つということになるんだと思っております。

 したがって、向こうとしては、いわゆる賠償だ何だかんだいろいろなことを言っておりますけれども、私どもとしては、この拉致の問題というのが解決しない限りは、うちはほかの交渉はしても、まとまったとしても、これができない限りは実行はしませんよ。

 だから、やってもらいたいことは、向こうも言いたいことはあるんでしょうけれども、こっちは、これをやってもらわない限りは、うちはやる義務はないんだ。しかも、そっちは自分が国家犯罪を犯したと認めているんだから、やってもらいますというのは、もうこれは全く私ども変わらないところを言い続けております。

 それで今、具体的にどういうことになっているかというと、基本的には、対話というのは全くなかったわけです。やり始めても、またとまったり動いたりしながら、この一年三カ月ぐらいにわたって全くありませんでしたので、開始をされて、今回は三日、四日ぐらいかかりましたけれども、その間ずっとこの話をしつこく言い続けています。私どもとしては、この問題を風化させないというのはすごく大事なことだと思っておりますので、国際的な場でもこの話を出して、アブダクションという単語を国連総会で認めさせる等々、また、日本の国内でもこの話が風化しないように言っている。

 そして、やはりこの国は、これまでの経験からいきますと、対話だけじゃ話が全然進まぬ、圧力が要るということなんだと思うので、その圧力については、いろいろな方法があるんだと思います。今までも朝鮮銀行初め、あれをRCCに移したりいろいろしてきていますけれども、私どもとしては、今後さらに何をどう詰めていくかというのは今この段階で申し上げる段階にはありませんけれども、そういった圧力をふやさない限り前に進まないであろうと思っております。

糸川分科員 大臣のそういう前向きな御答弁が、非常に国民もそれは期待していることだろうと思います。

 ただ、北朝鮮が逃げ腰というんでしょうか、逃げてなかなか交渉の場に応じないとか、交渉のテーブルに着いてものらりくらりとしているというところから、粘り強い交渉というのが必要になってくるのかなというふうに思っております。

 二月上旬の日朝包括並行協議に関する政府の評価、これはいかがなものなのか。また、同協議は、こういう協議を今後どのように進めていかれるのか、お聞かせいただけますでしょうか。

麻生国務大臣 粘り強い交渉は絶対です。とにかく、ありとあらゆる理屈というか何というか、いろいろな話をくっつけて話を引き延ばそうとしたりいろいろしますので、私どもとしては、粘り強い交渉は絶対。

 それから、今回久しぶりに、一年三カ月ぶりで再開したこの日朝会議において、私どもは、何だか向こうが拉致に関して何かして前向きな答えが出てくるというのを最初から期待したわけでは、これはもう全くありません。

 ただ、私ども、評価としては、少なくとも五日間近く、とにかくずっとこの話をしていますから、それでとにかくほかのがどんどん進んでも、これが進まなきゃほかのをしても全然意味がありませんよという話なので、もう向こうもこれは間違いなく、うちは、うちというのは日本の場合はもう全く折れないということが向こうに確実に伝わったというのは今回の成果の一つだったのと、もう次いつできるかわからぬというような感じで決裂はしなくて、日にちは決めませんでしたけれども、次もまたやろう、やらざるを得ぬということになって、向こうもやると言ったところは成果だったんだと思います。

 ただ、ほっておいたって、何か、次またしましょうなんて向こうから言ってくるなんて、そんなことはまず、余り期待しない方がいいと思っていますので、何らかのことをやって、次やらない限りはまたこういうことになりますよと言って、輪が狭まってくるということをして初めて出てくるというようなものなのだと覚悟しておかないかぬと思っております。

糸川分科員 先ほども大臣が、この問題が片づかなければ次に進まないよという御答弁をいただいているわけでございますが、その中で、今回警察当局もこの辛光洙を実行犯だというふうに断定されているのかなと。

 今回、この辛光洙について、通称チェ・スンチョルというんですか、逮捕状が出たわけでございます。これを受けて、政府は北朝鮮側に対して具体的にどのような対応をとられているのか、お聞かせいただけますでしょうか。

梅田政府参考人 お答えいたします。

 二名の、辛光洙は前から容疑者で引き渡しを求めておるわけでございますが、今回の事案につきましては、新しい人とともに、改めて北京の大使館を通じまして北朝鮮側に引き渡しを要求しております。

 北朝鮮側は、それに対しましては、本国にきちっと連絡をするというふうに回答をしております。

糸川分科員 この辛光洙という人については、引き渡しをこの間の協議のときにも要求されているということは、これはもうわかっていることでございます。その際、どうも、日本側のNPOでいろいろ脱北者を支援している我が国の人たちに対しても、これも拉致なんじゃないのかというようなニュアンスで、この人たちも引き渡せというような要求もされているわけでございますが、当然、回答は何となくわかっておりますけれども、そこに対しての政府の見解というものをお聞かせいただけますでしょうか。

梅田政府参考人 お答えさせていただきます。

 会議の場で、先方に対しましては、そちらの要求というのは問題外であるということが一点、それから、そもそも脱北者が出ないように、あなたたち、もっと中を改善せないかぬのじゃないかというようなことを申しております。

 いずれにしましても、七名の方は、褒められるということはあってもいいのかもしれないんですが、引き渡すということはあり得ないというふうに考えております。

麻生国務大臣 糸川先生、これは一番肝心なところで、日本から亡命して北朝鮮に行くという人はよほど変わった人、昔はいましたけれども、いないんですよ。向こうは、北の方を含めて、脱北者というのが多いわけです。こちらは、今豊かになって、昔は移民せざるを得なくなった人もいましたけれども、こっちは移民、出ていく人は今ほとんどいないわけですから、いわゆる貧しいがゆえにどうのとかとかなんということはない国と、決定的に違うので、向こうは逃げてきている、こっちは持っていかれちゃっているんですから、全く話のもとが違うでしょうがという話で、これはもう全然問題の対象になりませんということを申し上げております。

糸川分科員 こういう七名の方が中国なんかに行って拘束されないようにしていかなきゃいけないのかな、そういう支援もぜひしていただいて、気をつけていただければなと思います。

 政府が今認定している十六名の拉致被害者以外にも、民間の団体が、先ほどから私の地元が福井ということもございまして、北朝鮮による拉致の可能性もあるんじゃないかなという人たちがいまして、このいわゆる特定失踪者問題について、こういうことに関しましても北朝鮮と今までどのような交渉をされてきたのか、お聞かせいただけますか。

梅田政府参考人 特定失踪者に関連しましては、従来から先方に対しては、関連情報があれば提供するようにということは求めてきておりますが、この間の会議におきまして、改めてこちらから氏名と生年月日、三十数名の方のリストを渡しまして、調査をしてくれということを頼みました。先方は、さらに詳細な情報をもらえれば調査をするというふうに言っております。

 現在、日本の関係者の方と調整をしておりますので、調整が整い次第、北朝鮮側に要求をしたいと思っております。

糸川分科員 もう時間もございませんので、もしできましたら大臣に最後に御答弁をいただきたいんですが、今の捜査の進展を踏まえて、政府として今後どのように北朝鮮と交渉していくのか、再度この思いというものを聞かせていただければなというふうに思うんです。

麻生国務大臣 日本というのは、何となく熱しやすく冷めやすいところがあるんだと思いますけれども、この話は、これは遺族の方の立場に立てば、ある日突然にそこそこ育った子供がとか夫がとかいうのがぽっといなくなっちゃうわけでしょう。何となく人さらいというような話で、しばらくしたら北朝鮮からなんという話が、しかも、それはどこか悪い人がやったというんじゃなくて、国家挙げてやったみたいな話になってくる。

 それはとてもじゃないでしょうという話で、これは今後とも、私どもも時間のかかる話だとは思いますよ。しかし、これを風化させないで続けていくというのはすごく大事なところだと思っています。

 今、何となくこの種の話が、マスコミが取り上げなくなったり、もっと別のメールの話になってみたり何とかの話になったり、ちょっと関心が移っているけれども、これは全然別の話ですからねというのを今後ともきちんと維持し続けていくというのは、とても大事なところだと思っております。

山本(幸)主査代理 遺族というのは、親族ですね。

麻生国務大臣 済みません、遺族と言った、親族ね。ごめんなさい。家族というのが正しいと思います。

糸川分科員 本当におっしゃられるように、ただ時間をかけても、私、今まだ三十一でございますけれども、例えばこれが四十年たってからでは、今いらっしゃる方々、日本に帰っていらっしゃっても、もうお父さん、お母さんがいらっしゃらないという状態になってしまうかもしれませんから、できるだけ家族に、まだいらっしゃる間に解決していただけることを望みます。

 ありがとうございました。

山本(幸)主査代理 これにて糸川正晃君の質疑は終了いたしました。

 次に、石井郁子さん。

石井(郁)分科員 日本共産党の石井郁子でございます。

 私は、きょうは、国際条約に対する政府の対応についてお聞きをしたいと思います。

 まず、女性差別撤廃条約についてでございますけれども、この実施状況の第六回報告書というのを、ことしの夏にも国連の女性差別撤廃委員会に提出することになっていると思います。

 そこで、二〇〇三年に政府が出した第五回報告書というのがありますけれども、そこでは、選択議定書の締結の是非について真剣かつ慎重に検討しているというのが政府の報告でございました。しかし、いまだに批准はしていないわけでございます。二〇〇三年現在でも、世界では既に締約国は四十九、署名国が七十五に上っております。私は、日本がおくれているという点では、やはり女性の人権を国際的な水準で守り、担保するという視点が欠けているからだというふうに言わざるを得ないわけでございます。

 そこで伺うわけですが、第六回報告書についてどのように準備されているかということと、女性差別撤廃条約の選択議定書の批准についてはどういう報告をするおつもりなのか、お聞かせください。

塩崎副大臣 まず、報告書の内容あるいは進捗状況についてというお尋ねでございます。

 現在、内閣府取りまとめということで、各省庁とともに第六回政府報告を鋭意作成中ということでございまして、内容は、ですから今詰めているところでございます。女子差別撤廃条約の各条文に基づいて、同条約の実施のためにとった措置及びこれらの措置によりもたらされた進歩に関し報告を行うという予定で、今準備中でございます。

石井(郁)分科員 選択議定書についてはどのような回答を準備されているのかというのが一番お聞きしたい点でございますけれども、いかがですか。

麻生国務大臣 いわゆる女子差別撤廃条約選択議定書の話ですか。済みません、個人通報制度のところね。

 この個人通報制度というのは、条約の実施に効果的な担保を図るというところが一番の趣旨から、注目に値する一つの制度なんだ、私どももそう思っていますが、他方、司法権の話からいきますと、その国それぞれ司法制度というのがありますので、その問題から、これはちょっと待ってくださいと。これは個人のという話になりますけれども、逆に、言われる方の個人の話もありますので、いろいろな意味で慎重に検討すべきじゃないかという意見も今出ていますので、そういった意味では、この締結の是非については、目下まだ検討中というのが正確なところだと存じます。

    〔山本(幸)主査代理退席、主査着席〕

石井(郁)分科員 そのような政府の回答は、NGOとの対話というか懇談の中でもこれまでもお聞きしているところでございます。

 しかし、その点でも、国連の方では勧告の中でどのように述べているかといいますと、この選択議定書の提供するメカニズムが司法の独立を強化する、司法が女性に対する差別を理解する上での助けとなることを確信していると。国連はそういう見解なんですよね。

 だから、今、司法制度との関連で問題だという御答弁ですけれども、日本の場合、一体何なんだ、何が御心配なのか、もう少しお聞かせいただけませんか。

麻生国務大臣 これは、むしろ法務委員会で質問された方が正確な答えを得られるんだと思いますけれども、これは、個人の話でどうのこうのというのを、言われる側の立場とか、いわゆる丸々法律的な話で、多分、ちょっと待ってくださいと。これは、言える、通告する制度はいいけれども、通告される側の話もよく考えてもらわないけませんよというのが基本的な法務省の立場なんだと思います。

石井(郁)分科員 そういう点では、いろいろ研究をされているという状況かと思うんです。

 しかし、研究はどこかでやはり結論を導いていただきたいというふうに思いますし、今、政府としても、男女共同参画ということで計画もつくり、いろいろこの面でも見解が出されているかと思うんですけれども、これは男女共同参画会議の監視・影響調査専門調査会というのがあるんですね。そこでは、この「女子差別撤廃委員会からの勧告を含む最終コメントを踏まえた対応について」と。だから、この国連からの勧告についてどういう対応をするかということは、男女共同参画の側でも議論をされている。そこでは、選択議定書については批准の可能性を早期に検討されたいということを、やはり影響調査の専門調査会からも声として上がっているわけですね。そして、昨年十二月に男女共同参画の基本計画は閣議決定されました。この中にも、批准の可能性を検討するということが記されているんですよ。

 だから、一応検討の課題というか可能性があるということで記されているわけですから、これは国連に対してどのように報告するんですか、また、政府としてそれはいつ結論を出すんですかということは当然求められると思うんですね。それで、私はこういう点でもやはり外務省としてのイニシアチブが必要だろうと思いまして、今法務委員会という話もありますが、外務大臣にお聞きをしたところでございますが、いかがでございましょう。

神余政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、委員御指摘になられましたように、一生懸命勉強しているところでございます。

 例えば、自由権の選択議定書の中で、比較的、自由権委員会に対して行われております個人通報の事例が幾つかございますので、そういった具体的な通報の事例、どういうものが報告され、どういう勧告がなされているのか、それにつきまして可能な限り今情報収集をしている、勉強しているというところでございます。それからまた、それに対する関係国の対応ということもございますので、そういったことを勘案しながら、引き続き鋭意検討しているところでございますので、現時点におきましては、そういう具体例をもって検討中でございます。

石井(郁)分科員 なるべく早く結論を出していただきたいと思うんです。ことしの夏には、政府が報告書をつくらなければいけない。また、国連からは、こういう点ではおくれているんじゃないかという指摘を受けないようにすることが私は必要だというふうに思います。まだまだ現実に女性差別というのがある中で、この選択議定書の批准、締結というのは、実際に女性の人権を守るという点での大きな担保になる、そういうものでございますので、ぜひお願いをしたいと思います。

 きょう、もう一点は、国際人権規約の留保問題があります。その点でお聞きをいたします。

 これは、一九七九年に国際人権規約を批准したと思いますが、そのときに、経済的、社会的、文化的権利に関する国際規約、いわゆるA規約ですね、その十三条二項(b)及び(c)の批准を留保しているわけでございます。(c)というのは、「高等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとする」という項目でございます。国際人権規約をいわば批准してから二十七年になるのに、この留保は解かれていないという問題なんですね。

 私は、まず最初に、大臣にその基本的な御認識を伺いたいのは、やはり国際人権規約というのは、国連憲章に基づいて人権の尊重及び遵守の義務をうたっている、各国はそれを推進するというか助長しなければならないということだと思うんですが、この国際人権規約について、大臣はどのような御認識をお持ちでしょうか。

塩崎副大臣 石井委員今御指摘の、国際人権、いわゆるA規約でございますけれども、Aの中の第十三条二の(b)及び(c)に対する我が国の留保についての御指摘かと思います。

 この指摘の留保を撤回するか否かということにつきましては、今委員も少しお話で触れられたところでございますけれども、いわば我が国の文教政策そのものの構造というか、そういうもののあり方との関係もございまして慎重に検討する必要があるということで、関係省庁と一致してこれからも引き続いて検討してまいりたい、このように考えているところでございます。

石井(郁)分科員 これは後でもよろしいんですけれども、国際人権規約という、全体、包括的というか、これの精神あるいはその内容をきちんと政府として実行していくというか、そういう点で大臣の御認識を伺いたかったわけですけれども、関連しますので、今御答弁ありましたが、この批准された年、一九七九年、一応国会でかなり議論されています。

 そこで、当時の衆議院の外務委員会、園田外務大臣ですけれども、このように述べていらっしゃるんですね。本当は留保なしに批准することが望ましい、「将来この留保事項は一歩一歩となくしていく方向に努力することは当然である」という御答弁でした。

 このときの衆参の外務委員会で附帯決議もなされておりまして、衆議院では、国際人権規約の留保事項につき、「諸般の動向を見て検討を行う」、参議院では、留保事項については、「将来の諸般の動向をみて検討する」というのが、国会の到達というか意思だったと思うんですね。これに対してのまた園田外務大臣の御答弁は、「本決議につきましては、政府としては当然の義務であり、今後ともこの決議の趣旨を踏まえ、最善の努力をいたす所存でございます。」ということが述べられました。

 それから、これは五年後になりますけれども、一九八四年には日本育英会法というのが国会で審議になりました。このときも、本当に学費、育英奨学金のあり方についての真剣な議論の後、衆参の文教委員会の附帯決議が出されまして、それで、衆議院、参議院ともに、この国際人権規約第十三条二項(b)及び(c)については、「諸般の動向をみて留保の解除を検討すること。」というふうにあるんですね。

 だから、やはり留保事項は一歩一歩なくしていく、あるいはもう解除を検討するということが国会の意思だというふうに思うんですが、これはその後、政府としてどのような検討をなされたのか。先ほどの答弁とちょっと重なるかもしれませんが、改めて、こういう国会の意思を踏まえて政府はどういう御検討をされたのかということをお聞かせください。

塩崎副大臣 今お触れになったのは、一九八四年七月の衆参両院の文教委員会の附帯決議についてお触れになられたと思うわけでございますけれども、先ほど申し上げたとおり、御指摘の留保を撤回するかどうかということは、各国それぞれ、文教制度、高等教育を含めた構造というのがいろいろあるわけでございまして、やはり我が国の文教政策のあり方との関係を踏まえて検討せざるを得ないということで、今の附帯決議の御趣旨は十分踏まえて、引き続き関係省庁と対処していくよう検討を進めてまいりたい、このように考えております。

石井(郁)分科員 残念ながら、真剣な検討をされているというふうには思えないし、大変、国会の意思とか国会のそういう決議を本当に軽視しているんじゃないかと言わざるを得ないと思うんですが、そこで、ちょっと話をかえまして、大臣に伺いたいと思います。

 たしか麻生大臣は一九四〇年生まれだと思いますが、実は私も同年でございまして、それで私はちょっと学費の問題で伺いたいんですが、私は北海道の貧しい炭鉱に育ちましたけれども、国立大学に進みました。当時、国立大学の授業料は九千円です。入学料というのは千円ですから、年間一万円あれば国立大学には一応入れるということだったんですね。

 大臣は私とは全然はるかに違いますけれども、私立のたしか学習院大学だと思いますが、当時、初年度の納入金というのは学習院の場合はお幾らだったんでしょうか。

麻生国務大臣 下から芋づる式に上がったので全然記憶はありませんけれども、石井先生、これはみんな国立大学、人様の税金を使って学校に行った手合いですよね、この二人とも。国立大学に行って、人様の税金を使って学校に行ったんだから、それぐらいお国のために頑張れ、こっちはちゃんと金を払っておるんだからもうちょっとまじめにやれとかいろいろ、国立大学に行った人をよくからかうんですけれども、当時は、私立と国立の差は物すごく大きかったんですよ。しかし、今はどうなっているかというと、国立の学生の入学金等々は、格差が昔に比べて猛烈に縮まっているはずです。

 それはどうしてそうなっていったかという背景は、国立東京大学、昔の東京帝大の学生の家族のいわゆる経済能力というのは慶応大学に次いで高いというのが、一回資料で出たんですよ。そのときがたしか、ここらあたりが主計官かどこかその辺ぐらいの時代ですよ。たしか二十数年ぐらい前から国立の入学金をばんと上げてきた。だって、貧しい人のための大学だったはずのものが、実は一番に次いで二番目に高い人が行くようになったというのが多分背景だったと思いますので、ちょっとお答えになっていないかもしれませんけれども、差がすごく縮まったことだけは確かです。

石井(郁)分科員 現状はまさにそうだと思うんですね。私はやはりそこが問題だというふうに思うんですよ。つまり、国立大学というのは、経済的に貧しくても大学に行ける、そういう意味では、教育の機会を本当に門戸を広げているという制度として意味を持ったと思うんですね。ところが、今は本当に高いわけですよ。

 それで、大臣がおっしゃいましたけれども、国立大学の標準授業料、年間五十三万五千八百円でしょう。入学料が二十八万二千円なんですね。だから、初年度で八十一万円を超えるという時代ですよね。一方で、私立大学も、平均授業料八十一万七千九百五十二円と、ちょっと計算したんですが、入学料で二十七万九千七百九十四円、あと施設費とかかかりますから、大体初年度の納入金は百三十万円なんですね。だから、依然として初年度の分では差はありますけれども、しかし、授業料で見ると、国立大学と私立大学の一部の学部で逆転するところまで出ている。

 これは、だけれども異常じゃないんですか。そもそも安いはずの、安くて当然の国立大学が何で上がらなきゃいけなかったのか。上げてきたのはやはり政府でしょう。私たち、私立と差があるのはおかしいというのはありますけれども、国立大学は、政府は、私立が高過ぎるからその差を縮めようということでどんどんどんどん上げてきたんですよ。これは隔年に、一年ごとに入学金と授業料を上げてきたんですよね。これがずっと八〇年代、七〇年代から続きました。それでここまで来ているんですよ。こういうやり方というか政策というのはおかしいわけでしょう、一つは。

 そういう点でいいますと、どうなんですか。私は今、国際人権規約の批准問題を話していますけれども、A規約の条項を留保している、やはりこういうことがとめどもない授業料の高騰につながっているんじゃないんでしょうか。どうでしょう。

麻生国務大臣 A規約、B規約のところと直接つながっているわけではないと思うんですが、石井先生、これは物すごく難しいところなんだと思うんですが、アメリカの場合、ステートユニバーシティー、州立大学というものがプライベートなユニバーシティーよりレベルは低いということになっておるわけですね、ハーバードだプリンストンだとかいうところは。例えばカリフォルニアでいえば、スタンフォードなんというところがバークレーより高いという、大体一般的にそうなっている。

 ところが、日本の場合は国立の方がレベルが高いことになっておるわけです。本当かどうか知りませんよ。卒業生の顔を見て、なかなか信じがたいところがありますが……

茂木主査 発言は慎重に。

麻生国務大臣 ありますけれども、そういうことになっているものですから、みんなそちらを目指すわけですよ。例の国立一期校に行くわけです。そうすると、それは金持ちの子も、貧しかろうとも、みんなそっちに行くわけです。だって、できるから。学校の先生もそこに勧める。だっておまえ、何もそんなところに行っても、役人になるつもりもないのにそんなところに行くな、あれはもともと役人をつくるための学校なんだから、役人にならぬのに行くなと言ったって、とにかく頭がいいから理3に行ったら、入ったら、カエルの実験で血を見て貧血を起こしたなんというふざけた話があって、有馬朗人という当時東大の総長がすっかんかんに怒って、何でおまえ、そんなやつが理3なんか受けたんだと言って、いや、頭がいい人はここに行くことになっていますからと。事実、頭がいいから入ったんですけれども、その後、理1に変わっていますけれども、この人は。

 いろいろな意味で、私どもは教育制度としても、何となく制度自体が、いい意味でつくったんですけれども、現実問題としては、行く人は何となく金持ちの子が行っちゃうというんだったら、それは違うんじゃないかといって、今度は逆に、所得何百万以上の人は入れませんともなかなかできなかったというのが、多分、今、結果論として見てみますとそういう背景になって、何か、勉強できるのは子供のときから塾にやらせたり何とかをやらせているという、結論、金がかかるからというような形になっていった。

 僕はこれが答えとかいうものを持っているわけではありませんけれども、そういったいろいろなものが複合的に生み出して、何となく、塾に行く、学校に行くより塾に行ったやつの方ができるとかいうことになってくると、だんだんそういった形に変質していったのかなと思って、ちょっと、これが答えというものを正直持っておりません。

 ただ、日本の場合は私学に負っている部分というのはすごく大きいというのも、これにそこそこ携わった者から言わせていただくと、ほかの国と違って、私学に負っている部分というのは日本の場合はすごく高いことも事実なものですから、多分このような話になっているんだと存じております。

石井(郁)分科員 この問題は、今大臣の御答弁のように、やはり日本の教育制度全体のあり方とか、教育に対する親の意識や関心だとか、また財政事情だとか、いろいろなことが絡んであるんだろうということは私もそうだと思うんです。

 しかし、大事なことは、やはり高等教育を受けたいと思う人が受けられる。これは、私は一番最初に、A規約の条項ですが、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるべきだ、これが今、やはり世界的に到達して、どの国もそういう努力をしていると思うんですね。しかし、日本の場合は、国立も私立も高い授業料のために、もう行くのも断念する、あるいは行っても学業を続けられない、今、こういう若い世代が非常に出ている。親もまた大変な思いをしている。この現実が一つはあるので、私は、政治の問題として、これは政府にもきちんと考えてほしいという質問をしているんです。

 具体的にちょっと申し上げますけれども、本当に今学生は、先ほど来の、国立大学でも高い。それで、大臣は、年収の高い層が国立大学にも行っているんじゃないかというお話もありましたけれども、そうじゃないんですよ。そういう層もありますけれども、本当に経済的にまだまだ困難な家庭であってもやはり国立大学を目指している、実際そこに在学しているというのは統計でも出ています。そういう状況なんですね。

 それで、今学生たちが大変困難な中で学業をしている。これはもう、いっぱいいろいろな事例を聞くわけです。大体、アルバイトに追われているし、コンビニで夜遅くまでアルバイトして、大学へ行ったら眠っている。そういう姿を見て、それはけしからぬとは言えるけれども、やはり授業料をひねり出さなきゃいけないためにそういう生活を余儀なくされている。だから、私は、今の高い授業料というのは、大学の研究や教育を充実させるという点からも、本当に疲弊させていくんじゃないかということが一つあると思います。

 それともう一つが、家庭の事情なんですよね。日本のこの高い教育費というのは、少子化の問題のところにも関係してきますけれども、やはり教育費が高いために本当に子供は産めない、産む気にならないと。経済的支援の第一に挙げられるのが教育費の問題なんですよ。そのぐらい教育費が高い。

 ちょっと具体的に申し上げますと、私立大学に子供を入れるためには、今、二二%の人が借金をしています。借金を抱えている。教育ローンを抱えていますよね。借金額は平均で百五十九万円だというのが調査でも出ています。ということで、学費について負担が重いとか大変重いというのは、現実にもう九割の方の声なわけですよ。

 それで、先ほど少子化の問題も申し上げましたけれども、これは国民金融公庫の国の教育ローン利用の調査でも出ていましたけれども、世帯の年収に対する在学費用、つまり教育費の費用の割合というのは三三%だというんですね。だから、教育費というのは年収の三割を占めている。実際、そういう家計状況に今あるんですよ。

 だから、私は、こういう高い、どんどん上がってきたんですよ、この二十数年でどんどんどんどん上がってきているんですよ。私学と国立は競争して、これは国立を上げるのは政府ですから、まさに政府が上げてきたわけですよ、政策的に。そういう意味では、今ここまで来ている状況を本当にこの先もずっと続けるのかということは、もう決断しなきゃいけないときではないのかという意味で、きょうは、この留保事項をやはり解除すべきときだということで質問をしているところでございます。どうですか。

麻生国務大臣 御指摘の点、わからぬわけではございませんけれども、財政事情等々もあったんだと思いますし、日本の場合は私学の比率が先進国の中で極めて高いという比率もあったんだと存じます。今言われたような形で、何となく、景気もよかったせいも多分あの時代はあったろうとは思いますけれども、今こういうぐあいになってくると、改めて今御指摘のような問題点を抱えていることは事実として受けとめておかなきゃいかぬ。したがって、このトレンド、流れをこのままずっと続けるかどうかという点につきましては、これは文部省所管の話ではありますけれども、これは基本的には考えないかぬところなんだと思います。

 片や、おかげさまで奨学金の方は結構、昔に比べれば、私らが学生のころに比べたら、奨学金制度とか育英資金というのは物すごく普及しましたので、こちらの方につきましては、昔と比べて随分もらいやすくなったし、受けやすくなっていますので、そこらのところがそこそこ役に立っているとは思いますけれども、今言われたように、今後ともこのトレンドを維持するのかという点については、問題はあると存じます。

石井(郁)分科員 私学のことをおっしゃいましたけれども、これは国際的に少し調べてみますと、私学が過半数を超えている国でやはり批准をしている。無償化条項を批准している国が既に二十五カ国あります。これはベルギー、オランダ、ブラジル等々があります。それから、日本の十分の一以下の国内総生産の国でも、これはインドネシア、エストニア、コロンビア、パラグアイなど十二カ国も批准しているんですよ。だから、やはり国際的な人権規約、こういう問題について政府がどういう態度で臨むかということが私は問われていると思います。

 もう御存じだと思いますけれども、留保している国が日本とルワンダとマダガスカルだということで、これは有名になっているわけですけれども、だから、世界が到達しているそういう方向で、やはり日本もこの人権規約について、私はもっと前向きに取り組んでいただきたいということなんです。

 もう時間になりましたけれども、最初に戻りますが、女性差別撤廃条約の選択議定書についても、フィリピン、タイも既に締結しているんですね。私は、本当に今日本がこのままだと人権後進国だと言われるわけでございまして、そういうことを言われないためにも、外務大臣としてのリーダーシップを発揮して、ぜひことし、女性差別撤廃条約も、それからこの人権規約の問題についても、政府が回答する年でもありますので、ぜひ英断をもって臨んでいただきたいということを申し上げます。

 まだちょっと時間が一分ぐらいありますね。

 最後に一点だけですけれども、こういう締結に当たって、NGOの人たちとの協議というのを大変国連が重視していますね。それで、これは二〇〇一年の最終報告の中でも、第三回報告作成準備、これは人権規約の方ですけれども、その早い段階において、NGO及び市民社会の構成員と協議することを勧奨する、お勧めするということを出しています。

 それで、今回の場合は、いつ、どこで、どういう機関と協議をするおつもりでしょうか、それだけ。

神余政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、NGO及び他の市民社会の構成員と協議することが勧奨されております。政府といたしましても、人権分野あるいはその他の分野におきますNGOとの協議、これは十分認識しているところでありまして、これまでも各種人権条約におきます報告書の作成に際しましては、NGOとの協議の場を設けてきたところでございます。

 今回、国際人権A規約の第三回報告についても、このような協議の場を設けるということを含め、あるいはまたどのようにしていくのかということも含め、今現在、鋭意検討しているところでございます。

石井(郁)分科員 以上で終わります。

茂木主査 これにて石井郁子君の質疑は終了いたしました。

 次に、北神圭朗君。

北神分科員 民主党の北神圭朗でございます。

 本分科会最後の質問になりますが、大変重要な問題を取り上げたいというふうに思いますので、充実した御審議をお願いしたいと思います。

 きょうは、北朝鮮の外交問題について質問させていただきたいと思います。

 今、日本の外交、安全保障上の最大の挑戦というのは、これはあくまで私見でございますが、やはり中国だというふうに思っておりますが、当面のより喫緊な課題として、やはり北朝鮮の問題があるというふうに考えております。

 ここ数年、平成十四年に小泉総理が訪朝して日朝首脳会談というものを開いてから、基本的に拉致問題というものが焦点を浴びてきたというふうに思います。これはもちろん大変重要な問題で、全力で取り組んでいかなければならないというふうに思っておりますが、他方で、余り騒がれていない問題として、KEDOによる軽水炉の開発事業の問題がありまして、これが昨年廃止をされたということなので、これについてちょっと質問をさせていただきたいと思います。

 十八年度の予算においても、KEDOの事務局経費とかあるいは国際協力銀行の貸し付けに対する利子補給について、合計約十二・三億円ぐらいの額が計上されております。

 KEDOについて、これまでの経緯を概略申し上げますと、これは、平成七年ぐらいに北朝鮮がNPT条約を脱退する、核開発の疑惑が生じたと。これは、多分、アメリカ主導で何とかしないといけないということで、KEDOという国際共同事業、国際コンソーシアムというものを立ち上げて、これで、具体的には、北朝鮮の方は、既存のあるいは開発中の核開発の施設というものを凍結あるいは解体をする、これを条件に、アメリカ、日本、そして韓国が中心となって、KEDOを通じて、軽水炉開発について基本的には資金供与をしていくということだというふうに思います。

 この枠組みの中で日本がどういう役割を果たしてきたかというと、KEDOに対して、軽水炉プロジェクトへ四億ドル、今の円レートで大ざっぱに言えば、大体四百五十億円ぐらいだということになりますが、四億ドルを超える国際協力銀行からの貸し付けを行った。また、そのほかに事務局経費、これはKEDOの事務局経費ですが、それを含めて、合計約五億ドル、今申し上げたように円で換算をしますと大体五百七十億円ぐらいかな、そういった財政負担を行ってきたというふうに思います。

 ところが、こういった多額の資金提供をずっとしてきた、十年間にわたってしてきたという結果、いきなり、少なくとも我々からしてみれば突然、昨年の十一月に、KEDOの理事会において、軽水炉開発事業というものを廃止するという決定がなされた、報道で見たんですが、そういうことになっているわけでございます。

 そこで、まず大臣に伺いたいのは、なぜこのようにKEDOによる軽水炉開発事業が廃止をされたか、その経緯について伺いたいと思います。

麻生国務大臣 これは、北神先生、一言で言えば、もう間違いなく北朝鮮の対応の結果こうなっちゃったということなんだと思います。

 一九九四年にたしか始まった、この種の話が始まって、合意された枠組みでしたか、何かそういう言葉だったと思いますけれども、あれで始まったんですけれども、当時は、北朝鮮の核開発阻止というためには、ライトウオーターの方は例の濃縮ウランの方に行きませんから、そういったもので現実的な選択だった。多分、その当時、いきなり、例の古いシステムを使ってプルトニウムなりウラニウムの方に行こうとしていましたからね。そのために、新しい技術を使って、ライトウオーターを使いさえすれば、原爆に使える可能性がありませんから、そういったところで、こっちでいこうじゃないかということで、みんな合意して、それこそみんな金出せというので、これでスタートさせたというのは、それなりに、向こうの思いを引きとどまらせる、エネルギーはそれでもそこそこ確保できるというためには、一つの手段としては間違っていなかったと思うんです。

 御存じのように、その間どうだったかというと、二〇〇二年までの間、約八年間、北朝鮮は実はやっておったわけです、それとはまた別に。それで、それが発覚して、何だということになって、二〇〇二年にそれが、十二月だったかな、何かそういう話になって、結果として、こちら側も、おまえ、話が全然違うじゃないか、じゃ、おれたちはやらない、KEDOの話はもうこれ以上進めないという話になって、結果的に一年後の二〇〇三年にとまった、停止した、KEDOのプランを停止させたんだと思っております。

 その後は、もう御存じのように、北朝鮮の外務省声明によると、核兵器保有宣言というのを二〇〇五年にやるもんで、もういよいよこれは話にならぬということになって、軽水炉プロジェクト推進の基礎が、もともとそれをやらせないためのアイデアだったものですから、ではやめだということになったと判断したんだと思って、昨年ですか、二〇〇五年の十一月に、結果的にこの話は廃止、廃止というか、やめやということになった経緯なので。

 私どもから言わせると、もともとの話、全くぶち壊したのはおたくらじゃありませんかと言うんですけれども、それにかかった経費というのは、それぞれみんな、輸銀というかJBIC、あそこがみんな持っていた部分が、金利分やら何やらが、みんな途端に、ストックベース、とまっちゃったというのが今の現状なんだと思いますので、最もふざけているのは北朝鮮なんだから、ちゃんとその分出せということを、おまえらはおれたちに損害を与えたんだから出せということは、我々としては言わないかぬ、大事なところだと思っております。

北神分科員 今の経緯があったとおり、私もそのように認識しておりますが、当然、廃止というのは当たり前だし、北朝鮮がそういう核保有宣言をするまでやるわけですからね、だから当然だし、むしろ、きょう論じたいのは、遅すぎるんじゃないかと。

 それは、予測できなかったんだったらしようがないと思いますよ。でも、私は、これは本当に、向こうの対応もふざけているけれども、こっちの対応も何とも情けないなというふうに思っているのが、きょう私が申し上げたいことなんですよ。

 日本側が十年間にわたってずっと財政負担をしてきた、それが水泡に帰すというか、貸し付けを四億ドル、四百五十億円ぐらいしている。さらに、事務局経費、これはKEDOの方ですけれども、いくと五百七十億円ぐらいだと。これについて、特に貸し付けについて、おっしゃったように国際協力銀行がやっている部分ですが、これは今後、当然北朝鮮に返せと言うのが筋だと思うんですけれども、その辺、どういう対応をされるのか、お聞きしたいと思います。

塩崎副大臣 先生おっしゃるように、JBICはKEDOに対してお金を貸しているわけですね。したがって、この軽水炉プロジェクトがこういう状態になってしまったわけでありますから、先ほど大臣からお話あったとおり、原因は北朝鮮に当然あるわけであります。KEDOとしては、筋として、KEDOのこうむるすべての金銭的損失については、北朝鮮に対して支払いを要求するというのがKEDOのやるべきことであるわけであります。日本が直接北朝鮮に貸しているわけではないわけでありますから、KEDOが北朝鮮に対して、その損失を回復してもらうということをやる。我々としては、KEDOの立場をサポートする意味であらゆる協力を行っていくというのが筋だろうと思います。

 したがって、KEDOの理事会の行動というのが大事であって、KEDOが有する債務の処理について、他のKEDOの理事会のメンバーと緊密に調整をし、連携をしながら、北朝鮮に対する圧力をかけていくということになろうかと思います。

北神分科員 KEDOから北朝鮮に回収を求めるということなので、私もそれが筋だと思いますが、これも、去年のたしか年末の記事で読んだんですが、北朝鮮が、この開発の廃止、事業の廃止を受けて、自分たちは多大なる損失をこれで受ける、だからアメリカに求償を求めるというような話をしている、もう話にならぬ国ですから。こんな国に対してKEDOが果たして回収できるかというのは、極めて疑わしいと私は思っているんですよ。それが違うんだったら、ぜひ、見通しがあるんだったらお示ししていただきたいと思います。

 それで、確かにKEDOが主体となって貸し付けをしているという仕組みですが、基本的にはこれは国際協力銀行が原資を出している。こうなれば、北朝鮮から回収できなければ、私が推測するに、やはり国民の血税で穴埋めをしないといけないことになるんじゃないか。その点について、回収できなかった場合、どういうふうに穴埋めをするのかということをお聞きしたいと思います。

塩崎副大臣 先ほどお話が出ましたけれども、北朝鮮が債務を履行しない場合にどうするのかというと、これは供給協定の第十六条の二項で、まず北朝鮮に対して、KEDOは金銭的損失の支払いを要求するということになっているわけでございます。KEDOは、一方で、我が国との資金協力協定において、JBICへの返済を確実にする旨、約束をしているわけでありまして、したがって、今申し上げたように、まずは供給協定に基づいて北朝鮮に対するKEDOへの金銭的な損失に対する支払いを要求するというのが筋で、そして、現時点では、我が国としてあらゆる協力を行うというのが政府としての立場で、北朝鮮が返済を拒否するということを前提で今のようなお話をするわけにはいかない。

 やはり、あくまでも、北朝鮮に対してKEDOが返済を迫ってもらうということに対して我々がどういうふうにアクションがとれるのか、協力ができるのかということではないかと思いますので、今そのような、今おっしゃったような、結局払えないんじゃないかというようなことを前提に物事は進められないということだと思います。

北神分科員 そちらとしてはそういう答弁にならざるを得ないと思うんですが、これは、私は、どう考えても回収できないだろう、やはり冷厳な事実認識に基づいて今後の対応を考えないといけないというふうに思うんですよ。

 そういった場合、これはもう大変な話でして、やはりKEDOを中心とした外交政策というものはもう明らかに失敗した。北朝鮮との駆け引きでまた一本とられたのみならず、多額の資金を提供しておきながら、それが恐らくは回収できない。そして、この外交の失敗が日本国民の税金によって肩がわりされるということは、これは言語道断だというふうに私ははっきり申し上げなければならないというふうに思うんですよ。これは、単に残念だったなとか、予測違いだったなとか、失敗だったなということで済まされる問題ではない。

 少なくとも、私はなぜそう言うかというと、当然、北朝鮮というような、こんなややこしい国と外交をするというのは大変難しい話だと思います。その点については私も認識を共有しているんですが、これまでの経緯を見ると、この資金供与というのを十年間ずっとやってきたわけですよ。途中経過を見ると、これは明らかに、傷口の広がりを防いだり、あるいは損失の金額が多額になるのを防ぐことはできたというふうに私は思うんです。

 そこで、お配りしている資料にもありますが、これは、外務省がなかなか詳細な数字を出せないという話だったので、KEDOの事業報告書とか、あるいは外務省のいろいろな情報を得て私が勝手に作成したものです。一応外務省にも確認をいただいて、ある程度正確だということなんですが、私が把握できた範囲でのこれまでの対北朝鮮の資金供与の流れをまとめたものであります。

 これから明らかなように、これは左側に、一九九五年、KEDOが発足したときから二〇〇四年まであるんですが、事務局経費、そして軽水炉事業の貸し付けの金額、それに対して利子の補給を税金でやっている、その利子補給の金額があります。一番右端に、その間の北朝鮮関連の出来事、ほとんどが余り明るくない出来事ばかりなんですが。

 これを見ると、右側を見ていただくと、まず、KEDOが一九九五年に発足する。それで、一九九七年に、これは県警だと思いますが、警察が北朝鮮による拉致疑惑を七件十名というふうに公表している。さらに、次の年、一九九八年、北朝鮮がテポドンのミサイルを発射する。それでその翌年、一九九九年に新潟沖の日本領海に不審船が侵入する。それで、二年たって二〇〇一年、これは、今度は鹿児島の奄美大島の方の沖に不審船がまた侵入する。

 それで、二〇〇二年になると、日朝首脳会談で、五人拉致被害者が帰国されるといういい話はあったんですが、その同じ年に、アメリカの当時のケリー国務次官補が、北朝鮮が核兵器開発を継続していることを認めているんですよ。それで、その翌年に北朝鮮がNPT、核拡散防止条約から脱退を発表し、さらにその翌年に小泉さんがまた北朝鮮を訪問しているということなんです。

 こういったさまざま、ある意味、はっきり言えば、日本国に対する敵対行為ですよね。そういうことがあるにもかかわらず、ない年もありますが、毎年毎年貸し付けを行ったり、KEDOの事務局経費を払ったりしているんですよ。これはどう考えてもおかしいと私は思うんですよ。

 こういうのを見ると、普通の常識的な判断で言えば、この国は信義にもとっている。もともとは、おまえらが核開発をやめるんだったら我々は資金供与するんだという約束のもとでやっているんですけれども、こんなことをされたら、これは信義則に違反する話ですから、普通だったらもうやめるというふうに思うんですよ。

 その辺について、麻生外務大臣は、公平に見て、就任が昨年ですからこれに直接かかわっていないということで、私は別に大臣に直接の責任を求めるわけではないんですが、これは今の外務大臣として、こんなふざけた話はないですよ。北朝鮮もふざけているけれども、日本の政府の対応もふざけているとしか言いようがないと私は思いますね。いかがでしょうか。

塩崎副大臣 今先生の御指摘の点について、お気持ちはよくわかるところでありますし、なかなか悩ましいところがあるわけでありますが、今御指摘のように、クロノロジーで北朝鮮側のいろいろなけしからぬ対応についておっしゃったとおりでありますが、では、そのKEDO並びに日本政府が何もしなかったかというと、そんなことはなくて、例えば、九八年のテポドンのミサイル発射のときには、軽水炉プロジェクトの進行を米、韓と協議の上で一時見合わせるというようなこともやってまいったわけです。

 御案内のように、KEDOの理事会というのは日、韓、米、EUという構成になっているわけでありまして、不断の話し合いを行ってまいりました。

 さっき大臣からお話ありましたように、スタートしたときには、NPTにとどまり、それからIAEAの保障措置にのっとって義務を履行するという中で、軽水炉とそれから重油の提供というのを決めた、そういうフレームワークだったわけですね。クリントン、ペリー、ガルーチということで、様子を見ながらではありますけれども、それを進めるしかないだろう、こういうことだったと思うんです。

 そういうことで、今回順々に、最近の、先ほどのクロノロジーの中にあった出来事もエスカレートして、最終的に二〇〇三年の十二月からもうこのプロジェクトは停止ということにしてきたわけでありますので、KEDOの理事会並びに国際的なフレームワークの中で国際的に相談をしながらこういう形になってきたということで、結果として今御指摘のようなことが言われることについては認識しておりますけれども、それぞれに時点時点で考えた上での行動をとってきたということだろうと思いますし、これからは、先ほど申し上げたように、やはり筋を通していくということが大事だろうと思いますので、先ほど申し上げたとおりのステップを踏んでいきたい、こう思っております。

北神分科員 確かに、テポドンの後に、官房長官の談話か何かがあって、一時停止をする。当時、野中官房長官だったと思います。ただ、一カ月後ぐらいに、今塩崎副大臣がおっしゃったように、一時的に停止するけれども、また再開をする。その再開にはそれなりの理屈があったと思うんですが、その後にでもいろいろあるんですよね、不審船がまた行われたり。

 一回そこで停止して、見合わせて、それでもう一回再開する。そしてまたああいう不審船とかをこっちによこすようなことをしたら、さっきの話、普通の感覚だったら、もうこれは話にならぬというのでけるべきだと思うんですよ。もちろん、KEDOというのは日本だけじゃなくて国際共同事業ですから、特にアメリカにいろいろ話さないといけないと思うんですが、そういったことを実際やっているのか。

 というのは、私は、勘ぐりといえば勘ぐりなのかもしれないけれども、やはりこれは、カーター元大統領が、金日成と何かテニス仲間なのか知らないけれども、北朝鮮に行ってアグリードフレームワークというものをつくって、それで、日本とか韓国、おまえらもちょっと来いやというような話で、基本的に当初はアメリカ主導だったんですよ。

 恐らく、日本は、北朝鮮にお金を上げるのも、もう本当にらちが明かぬような話はないというふうに思っていたにもかかわらず、こんなにアメリカが言うんだったらしようがない、つき合うしかないんじゃないかということは、もしそれが正しかったら、やはり日本の国益よりはアメリカへの配慮というものが一番大きく左右しているんじゃないか。

 ぜひ、大臣あるいは副大臣でも結構ですけれども、この経緯をどういうふうに見ているのか。本当に日本が、この話はいいな、すばらしいな、これで北朝鮮の核開発を抑止することができるなと喜んでやっているのか、それとも完全に引きずられてやっているのかということをちょっとお聞きしたいと思います。

塩崎副大臣 振り返ってみると、かなり北朝鮮が常識外のことを次々とやってきたということだと思うんです。

 先ほど申し上げたように、最初のこのフレームワークをつくったときには、これで一段落ということをみんな期待した。そして、実際、当時は危機的な状況はとりあえず脱して、小康状態のままで来たわけですね。その中でいろいろな事件が起き始めてきて、もちろん不審船の問題もありますが、不審船の問題一つをとってこれをとめるというわけにはいかないというのは今先生おっしゃったとおりでありまして、私も去年の十一月から外務省にいるわけで、その当時の当事者ではありませんが、恐らく、様子を見ながら、本当にこのまま進んでいいんだろうかということを協議しながら、一つ一つ進めていったんだろうと思うんです。

 例えば、核兵器を持っているぞという話を突然言われて、あれを予期していた人は多分いないと思うんですね。そういうようなことが次々と行ってしまった。いろいろなフレームワークをつくって、六者協議もやってみても、それでも予想以上の悪化を続けていったということで、振り返ってみれば、確かに、どこかでやめられたんじゃないかというのは、それはどんな物事でも、物事というのは大体そういうものであって、しかし、そのときそのときに本当にベストの判断をする努力をしたかどうかということで、今、アメリカのおつき合いというようなお話かと思いますけれども、決してそういうことではなくて、核で一番困るのは恐らく日本でありましょうから、そういう意味においては、それぞれ、そのときそのときの最善を尽くしてきたというふうに考えざるを得ないと思います。

 むしろ、これをどう反転していくのかということの方が大事であって、対話と圧力ということを大臣からもいつも申し上げておりますけれども、そのプロセスの中で、本来の姿に北朝鮮を持っていくことを考えていくべきではないのかなというふうに思います。

北神分科員 余り時間がないんですが、だから、ポイントを言えば、そのときそのとき最善の努力をされたと。ただ、私は、これを見たら、そうでもないと思うんですよ。こんなのは明らかに、やはり中途でやめるべきだと思いますし、アメリカにも韓国にもそれは説得すべきだと思うんですよ。

 塩崎副大臣にも麻生大臣にも責任を追及するつもりは全く、全くというか、そういうことではないと思うんですが、こういった事件、北朝鮮の敵対行為があるたびに、これはちょっと通告にない話なんですが、当然、これは外務省の中で協議をして、こんなことをまたやられた、KEDOの資金供与というものをどうするかということを中で協議しているのか。それを協議しているだけじゃなくて、私は別に役人の責任を追及するつもりもなくて、やはりこれは政治家の問題ですから、その都度その都度ちゃんと大臣に上げて、今回、不審船がまた鹿児島に来た、我々、このKEDOにずっとつき合っているけれども、これをどうしますか、そういう判断を仰いでいるのかということを、ぜひ事務方の方にお聞きしたいというふうに思います。

梅田政府参考人 ちょっと私も、昔のそれぞれの経緯について確信を持ってお答えすることはできませんが、この問題につきましては、先ほど先生から御指摘がありましたように、非常に大きな財政負担をする可能性があるということで、同時に、それぞれの北朝鮮が行った行為は非常に日本の安全保障そのものに影響があったということでございますから、それぞれの事件が起こった時点で、外務省の事務方も政治レベルと調整をしたものと確信しております。

 ちなみに、昨年の決定に当たりましても、これは、副大臣、大臣のみならず、官邸にもきちっと事情を説明して、終了するという決定がなされたものでございます。

麻生国務大臣 北神先生、たんびたんびやはり心配するんですよ、役所は。あなたも役人の経験があるからおわかりなんだと思うんですよ。ただ、何となく、まあ、そこそこいっていればいいんじゃないかという気分もやはりあるんですよ。それが一つある。

 この日本において、この種のことに関して世論が変わったというのは、やはり、テポドンで一回、それともう一つは小渕内閣のときの撃沈命令ですよ。

 あのときは、保安庁の船では追いつかないわけだから、保安庁の船のノット数まで向こうは知っているんだから。それで、海自が出たわけですよ。海自の場合は、平電、平電というのは暗号電報じゃなくて、平電で、いわゆる逃げるというのは打電が入っていますでしょう、韓国語そのままで、聞かれたことあると思いますけれども。平で打っているわけですよ。平電というのは、いわゆる暗号にしなくて。とにかく、ノット数が全然違うから追いつかれるわけですよ。それで、ぼんと撃沈命令を出すわけです。

 しかし、あれが帰ったときに、あのときのニュースがどうだったか覚えていますか。日本の海上自衛隊が洋上で発砲というので、大変だ、大変だといってえらい騒ぎで、撃った方が悪いみたいなことを言っていたんだから。

 ところが、実際、その船は帰ってくるわけですよ。帰ってきて自衛隊の船を見たら、ばんばん穴があいている。それを見て、みんな息をのむ。この中で一人も死ななかった方がというので、あれからどんと世論が変わるんですよ。世論というもの自体が、それからすごく厳しくなってきた。

 私は、この日本の中において、何となく、拉致なんかありっこないよとかいうような話であってみたり、不審船なんというものは、私らは玄界灘にいますからね、昔はよく聞いたものだったんですよ。あれが不審船ですよなんて言っていたんだから。漁師なんかよく言っていましたよ、そういった沖合に行けば。

 だから、そういったようなものというのは何となく見て見ないふりをしていた流れが、やはり変わったんですよ。僕は小渕内閣のときの決断としては大きかったと思いますね、あれは。

 そういった意味では、あれ以来世論が変わってきて、何となくこの種の話もうやむやにしなくなって、何となくはっきり言うようになったというのが、多分、世の中の風潮とか世論というものの変化とこの種の一連の対応との関係というのは、結構深いと思います。

 それで、小泉内閣になってから、御存じのように、有事法制も通ってみたり国民保護法制が通ってみたりいろいろして、さらに世論というものが、私に言わせれば、いい方向に動いてきた。多分、私みたいなのをつかまえて、世の中で、昔は右翼の権化のごとく言われたのが、最近は中道穏健派ぐらいまで格下げになったかな、格上げになったかなと思っているんですけれども。

 だんだんこの種の話に対して、ふざけているんですよ、私に言わせると、この話も。全くそう思いますよ。そのとおり、結構ふざけていると言った人も自民党の中にはいたんですけれども、何となく、まあまあまあという雰囲気もあった。これは与党の中にいて、政調にいましたからよく知っていますので、そういった流れは、いろいろ意見があったというのは確かです。

 それで、そのころからいろいろ意見があって、最終的に二〇〇三年までかかるんですけれども、それまでも毎年いろいろあったんだけれども、何となく、まあまあまあ、もう一年ぐらいとか、典型的な話なのかもしれませんけれども、そういったものは反省すべき点だ、私どももそう思っております。

北神分科員 もう時間ですので、簡単に、最後に締めくくりたいと思いますが、私も本当に、これは結果論じゃなくて、やはりここまで明らかに敵対行為をされていると、普通は中途でやめるべきだと。それをしなかったというのは、やはり外交の失敗で、しかもその外交の失敗をまた国民が税金で肩がわりしなければならないというのは、本当にこれは重い責任だというふうに思っております。

 それで、最後に、また違う機会で議論したいと思いますが、三つだけ提案したいのは、この話は今余り騒がれていないので、やはり説明責任というものを国民に果たさなければならぬ、それが一つ。もう一つは、KEDOを通じるなり日本が裏で働きかけるのか知りませんが、やはり北朝鮮にちゃんと返せということを、筋を通して、強く、力強くやっていかないといけない。三点目は、アメリカも責任があると思うんですよ。こんなものをつくって、これは見解は違うかもしれませんが、日本はつき合わされて、アメリカにも敗戦処理というかその責任分担、資金的なものを含めて求めていくべきじゃないかというふうに提言をしまして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

茂木主査 これにて北神圭朗君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして外務省所管についての質疑は終了いたしました。

 これにて本分科会所管の審査はすべて終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつ申し上げます。

 分科員各位の格段の御協力を賜りまして、本分科会の議事を無事終了することができました。ここに厚く御礼申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午後六時三分散会


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