衆議院

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第2号 平成22年2月26日(金曜日)

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二月二十六日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      菅  義偉君    野田  毅君

平成二十二年二月二十六日(金曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 吉田 公一君

      緒方林太郎君    鹿野 道彦君

      城井  崇君    中島 政希君

   兼務 井戸まさえ君 兼務 櫛渕 万里君

   兼務 中島 正純君 兼務 大口 善徳君

   兼務 山内 康一君

    …………………………………

   法務大臣         千葉 景子君

   法務副大臣        加藤 公一君

   外務副大臣        武正 公一君

   外務副大臣        福山 哲郎君

   法務大臣政務官      中村 哲治君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    西川 克行君

   法務委員会専門員     生駒  守君

   外務委員会専門員     清野 裕三君

   予算委員会専門員     杉若 吉彦君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月二十六日

 辞任         補欠選任

  緒方林太郎君     中島 政希君

  阿部 知子君     服部 良一君

同日

 辞任         補欠選任

  中島 政希君     緒方林太郎君

  服部 良一君     阿部 知子君

同日

 第二分科員山内康一君、第四分科員井戸まさえ君、櫛渕万里君、中島正純君及び第八分科員大口善徳君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成二十二年度一般会計予算

 平成二十二年度特別会計予算

 平成二十二年度政府関係機関予算

 (法務省及び外務省所管)


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     ――――◇―――――

吉田主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。

 平成二十二年度一般会計予算、平成二十二年度特別会計予算及び平成二十二年度政府関係機関予算中法務省所管について、政府から説明を聴取いたします。千葉法務大臣。

千葉国務大臣 平成二十二年度法務省所管予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 法務省は、犯罪や人権侵害から一人一人の安全と安心を守るという国の基本的任務を遂行するとともに、だれにとっても身近で充実した司法を目指し、司法制度改革を推進しており、現下の厳しい財政状況のもとではありますが、この法務省の役割を果たすため、所要の予算の確保に努めております。

 法務省所管の一般会計予算額は六千七百九十八億二千四百万円、登記特別会計予算額は一千五百八十八億一千百万円、うち、一般会計からの繰入額が六百七十六億九千七百万円でありますので、その純計額は七千七百九億三千八百万円となっており、前年度当初予算額と比較いたしますと、六十億六千三百万円の減額となります。

 何とぞよろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。

 なお、時間の関係もございますので、お手元に配付してあります印刷物を、主査におかれましては、会議録に掲載されますようお願い申し上げます。

吉田主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま千葉法務大臣から申し出がありましたとおり、法務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

吉田主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

吉田主査 以上をもちまして法務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

吉田主査 この際、分科員各位に申し上げます。

 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。

 なお、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中島政希君。

中島(政)分科員 おはようございます。

 法務大臣にお伺いをいたします。

 私も法務委員でございますので、先日、大臣の格調高い所信を拝聴いたしまして、歴代の自民党の大臣と違って、新しい公共の中で治安等も考えていこうというところに非常に感銘をいたした次第でございます。

 その所信の中で、今までの歴代自民党政権の大臣と違うところ、特に私が感じましたのは、一つは、取り調べの可視化に向けて非常に意欲を示されていたというところでございます。

 民主党内では、過日、取り調べ可視化を推進する議員連盟もできまして、今国会での可視化法案の提出に向けて活動をしておるところでございますが、法務大臣として、可視化法案を今国会に御提出になられるお気持ちがございますかどうか、お伺いを申し上げます。

千葉国務大臣 御質問ありがとうございます。

 可視化につきましては、被疑者の取り調べの過程を録音、録画するということによって捜査の透明化を図っていこうということでございます。私ども、私を先頭にして、そして政務三役中心に、この実現に向けて全力で取り組んでいきたいと決意を固めて今進めているところでございます。

 今、実情は、省内に勉強会を立ち上げまして、そのもとにワーキンググループを置き、精力的に副大臣を中心に勉強を進めさせていただいております。また、その論点を整理するなどさせていただき、また私も直接実情を調査したいということで大韓民国に赴くなどさせていただいて、今、逐次、論点あるいは必要な環境整備、こういうものにどういうことが必要かという整理を進めさせていただいておりますので、これを何とか精力的に進めて実現の方向に着実に歩みを進めていきたい、これが今の段階でございます。

中島(政)分科員 千葉大臣は民主党のかつてのネクストキャビネットの法務担当大臣でございまして、参議院に民主党が可視化法案を提出したときの責任者の一人でもございました。

 私もあの案を拝見しておりますが、大変よくできている案だというふうに思っております。省内に勉強会をやっておられるということなんですけれども、あの案に何をつけ加えるのか、私はよくわからないんですけれども、非常によくできているので、それをそのまま出したらいかがですか。二回参議院で通っているんですから、良識の参議院が二回も議決している可視化法案ですから、しかも千葉大臣が野党の時代に苦労されてつくられたものでございますから、今さらそんなに研究しなくても、あれでいいんじゃないかと思うんですけれども、あれであれば、すぐあしたにも出せるんじゃないか、こういうふうに思うんですけれども、重ねて、今国会への御提出はいかがでございましょうか。

千葉国務大臣 ありがとうございます。

 私どもも努力をして野党時代に案をつくらせていただいた。これは決して不十分なものをつくったという気持ちは全くございません。

 ただ、改めてこれを実際に運用していくということになりますので、そうすると、確かに法律としては非常によくできている、それから決して遜色のないものだということはおっしゃるとおりだというふうに思っておりますし、私も自負をしておりますが、運用となりますと、では全部の事件について当初から本当に可視化をできるのかという問題もありますし、それから、どこか外でいろいろな尋問をするようなときは一体どうするのか、こういうような問題がありますし、これらの今の実情等もやはりきちっと精査をして、そして基準をつくっていく、こういうことも必要であろうというふうにも思いますし、財政は、これはどこかでひねり出せば何とかなるんだ、皆さんそう思われると思いますけれども、この措置も怠りなくしていかなければいけない。

 こういう問題等含めまして、何とか早い結論、あるいはその精査、実情に合わせた制度設計がきちっとできますように精力的に進めますので、どうぞ御協力をよろしくお願いしたいと思っております。

中島(政)分科員 よくわかりました。しかし、勉強はほどほどに切り上げていただきまして、何とか今国会に出していただきますようお願いを申し上げます。

 大臣の所信をお伺いいたしまして、もう一つ、自民党時代の法務大臣と違うなと感じたのは、いわゆる共謀罪ですね。これは長い名前で、犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法の一部改正案というものでしたけれども、これについての言及が歴代法務大臣はずっとあったんですけれども、千葉先生はこれについてはお触れにならなかった。ということは、法務大臣として、この法案はもうやらないんだ、成立を目指さないんだ、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。

千葉国務大臣 この問題は、これまで継続審議となっておりましたが、昨年一たん廃案となりました。

 ただ、既に国会で承認をいただいている条約はございます。国際組織犯罪防止条約、それからサイバー犯罪条約、これがございますので、私も決してこの問題について全くもうやらないという気持ちはございません。例えばコンピューターウイルス等に係るサイバー犯罪等もございますし、そういうことをやはりきちっと防止していく、そのための法整備をすることは重要な課題であるというふうに思っておりますので、関係の省庁ともいろいろな協議をしながら、きちっとした方向をまた出させていただきたい。

 ただ、この国会につきましてはそこまで至らない、こういう状況でございますので、これらの国際的にも協調していかなければいけない犯罪、そして締結された条約を履行するための措置は当然のことながらとっていく必要があるというふうに認識しております。

中島(政)分科員 共謀罪は、先生も参加されて、何国会も大騒ぎした法案なんですね。これをどうするかということを民主党政権の法務大臣としてお示しになるのはやはり非常に大事なことだと思うんですね、この通常国会が始まる中で。

 私は、ちょっとそのことについて、大臣がどういうふうに、共謀罪をいいと思っているのか悪いと思っているのか、やるのかやらないのか、やるのであればどういうところを直してやるのか、やはり所信で述べていただきまして、議事録にもきちっと残すということは非常に大事なことだったというふうに思っておりますので、次の機会に、共謀罪をどうするのかということについて、民主党政権の法務大臣として所信をぜひ御表明いただきたい、このように思っておるところでございます。

 私は、あの法案は、廃案になっているわけですけれども、もう一回出すのであれば相当直して出していただきたい、このように思っております。何国会も議論になった点を含めて、法務省もよく御存じだと思いますので、修正に修正を重ねて、全員が納得できるものを出すなら出していただきたい、このように思っております。

 次に、私、個人的な趣味で、私は大臣と違いまして法律家でも何でもありませんが、政治史とか政治制度とかに関心がありまして、そういう関心から検察庁の歴史とか検察庁法について多少勉強させていただいたことがあるものですから、この機会に検察庁法についてちょっとお聞きをしたいと思います。

 検察庁というのは非常に大きな権限を持っているものですから、一般の人は、検察の権限というものが、何か日本国憲法に規定があってそうした権限を行使しているんだろうというふうに思っているわけなんですけれども、御承知のように、日本国憲法には、検察とか検察官という言葉は、一カ所だけ出てくるんですけれども、組織としてどうだとか、検察の権限がどうだとかいう規定はないんですね。七十七条の二項、七十七条というのは、最高裁判所の、裁判所の規則を制定する権限について決めたところのその第二項に、検察官は裁判所の決めた規則に従わなきゃいけないと、これだけなんですよ。ところが、一般の人は、検察庁というのは大変な力を持っているものですから、憲法に何か規定があってそういう権限を行使しているんじゃないか、そういうような誤解を持っているわけなんです。

 検察についての決まりというのは、ほとんど検察庁法にゆだねられているというふうに理解をいたしております。

 検察庁法についてかつて私が勉強しようと思ったときに、文献がないかと思っていろいろ調べたんですけれども、余りないんですね。一般の大学の先生が書いているような本がございませんで、歴史的に見ますと、かなり古いのが、この人も検事出身の方ですが、昭和三十年に伊東勝さんが書いた「検察庁法精義」というものですね。これをまた引き写すような形で研究されて、後に検事総長になられた伊藤栄樹さんが昭和三十八年に「検察庁法 逐条解説」を出している。大体これでみんな勉強しているんです。私もこれで勉強しました。

 それで、これを要約するような形で、検察関係の人の便宜のために、これは一般の人も読めるんですが、法務総合研究所から「検察庁法」、こういうのが出ております。これが昭和四十四年に最初に出たんですね。大体、前の二つの本を引き写すような形でこれが出ていて、この法務総合研究所の本というのは、検察の職員の皆さんや何かのお勉強のために、研修のためにつくられたんだということが書いてあります。御承知のように、法務総合研究所というのは法務省の中の機関でありまして、犯罪白書なんかをつくっているところでございます。私も大体この三つを読ませていただきました。検察官が勉強する「検察講義案」というのもありますけれども、これも大体同じようなものです。

 余り研究書というのはない。国会の議論なども、それにあわせて私も参考にして、勉強をさせていただいている次第でございます。検察庁、こんなにでかい組織であるにもかかわらず、余り研究されていないというのが実態じゃないかというふうに私は思っております。

 それで、せっかく刑事局長に来ていただいていますので、幾つか検察庁法の解釈について、私も法務委員ですので、これから法務委員会でも聞こうと思っているんですけれども、この機会にお聞きしておきたいと思います。

 まず、普通の人は、例えば検事総長というのはどういう人がなるんだろうか、検察官出身しかなれないんじゃないかと思っているんです。

 刑事局長にお伺いしますが、検察庁法の十五条、十九条の解釈では、検事総長というのは検察出身以外の方もなれると私は解釈をしております。裁判官や弁護士出身の方、あるいは大学で法律を研究されている方もなれるというふうに私は解釈しておりますが、この点、いかがでございますか。

西川政府参考人 委員御指摘のとおりでございまして、検察庁法十五条、十九条によりまして、例えば八年以上弁護士の職にあった者など、この要件を満たす者であれば法律上は可能であるということでございます。

中島(政)分科員 一般の方は、検事総長には民間人はなれないと思っているんですね。マスコミの人にも私はよく聞かれるんですが、検事総長というのは民間人はなれないんですかなんて、よくそういう質問を受けるんですが、そんなことはありませんと私は答えております。今の刑事局長のお答えのとおりでございます。

 では、もう一つ聞きますが、検事総長と国会議員の兼任は可能ですか。刑事局長。

西川政府参考人 突然の御質問なのであれですけれども、少なくとも憲法上、法律上、除外するという規定は私はないと思っておりますけれども。

中島(政)分科員 私もそのとおりだと思っています。千葉先生が、弁護士の経験八年以上もちろんおありですから、検事総長になることは可能なんです。

 では、もう一つ聞きましょう。千葉先生のように、弁護士の経験があって国会議員である方が法務大臣になった。法務大臣と検事総長を兼任することは可能でございますか。

西川政府参考人 それについては非常に難しい問題があろうというふうに思います。

 これは、いわゆる政治と検察との間をどのように調整するかという極めて難しい問題がございますので、その辺の御議論は必要だというふうに思っております。

中島(政)分科員 検察庁法制定時に、法務大臣と検事総長を兼任させたらどうだというような議論もあったんですね。だから、そういうことはちょっとおいて検察庁法というのはできたんですけれども、私は、解釈上、法務大臣と検事総長が兼任することは憲法上も検察庁法上も何ら問題はないというふうに思っているんです。ぜひこれは法務省内で研究されて、「検察庁法」を改訂するときに公式の解釈を書いていただきたいというふうに思います。

 今御答弁いただきましたように、民間人でも国会議員でも検事総長というものになれるんだということを改めてこの委員会で御確認をいただきましたことは、大変意義あることだと私は思っているところでございます。

 次に、十四条の解釈についてお聞きをしたいと思うんです。

 十四条というと、御承知だと思いますが、指揮権について規定しているところで、これは前段と後段に分かれております。前段について、一般に法務大臣の指揮権を認めている。後段、ただし書きがありまして、個別の捜査については検事総長を通さないとだめだと。いわゆる指揮権発動云々で議論されるのは、この後段、ただし書き以降のことなんですね。

 その前段に、一般に法務大臣は検察を指揮監督できる、こういうふうになっているわけなんですけれども、私の解釈では、この「一般に」、伊藤栄樹さんや皆さんの解説書を読むと、「一般に」というのは具体的に対立する概念だと書いてあるんですけれども、私は、「一般に」というのは、ただし書きに書いてある個別の捜査についての指揮を除いたすべてだというふうに解釈しておるんですが、この「一般に」の解釈、刑事局長はどう思われますか。

西川政府参考人 当然検察も行政権の一部に属するということになろうというふうに思いますので、内閣さらには法務大臣の一般的な指揮監督下にあるということでございます。その特例がただし書きということでございますので、その余の一般的な事柄につきましては法務大臣の指揮監督下にある、こういうふうに理解しております。

中島(政)分科員 その「一般に」の中に入ることというのは、いわゆる検察庁の庶務とかいろいろ会計とかが含まれていると思うんですけれども、人事はどうですか。この一般の中に含めて考えてよろしいですか。

西川政府参考人 いわゆる行政事務ということになりますので、当然のことながら、法務大臣の監督下にあるということになります。

中島(政)分科員 そうしますと、十五条には、検事総長は内閣が任命する、こういうふうになっています。実際には、十四条に監督権の規定があるわけですから、私の解釈では、これは法務大臣がだれを検事総長にしようかなと考えて、自分が選んだ人を内閣に諮るんだ、こういうふうに解釈しますが、よろしいですか。

西川政府参考人 いわゆる検事総長の人事については、内閣でお決めいただいて天皇が認証するということになっておりますので、そのような手続になろうと思います。

中島(政)分科員 内閣で、閣議でいきなりだれかを指名するわけじゃないので、これは「一般に」という中に入る人事権を通じて法務大臣が決めて内閣に諮るんですよ。そういう手続になっているに違いない。そうじゃなきゃおかしい。

 そういうことであれば、法務大臣が、十四条の一般の指揮監督権、この中には人事も含むとさっき御答弁いただいていますから、これに基づいて、民間人、中島さん、やりなさいというふうにすれば、理論上は法務大臣が民間人を検事総長にすることができると私は解しますが、刑事局長、いかがですか。

西川政府参考人 検察庁法十五条によりますと、検事総長、次長検事、各検事長は一級として、その任免は内閣が行い、天皇がこれを認証するということでございますので、基本的には内閣が決めるということでございますので、内閣がお決めになるということだろうと思っております。

中島(政)分科員 検察庁法を読むとそうなっているんですけれども、運用上考えれば、私の言っていることは解釈上間違いないと私は思っております。この辺もまた、この「検察庁法」を改訂するときにはよく書いてください。

 「一般に」の中に会計も含まれますか。検察庁あるいは地方検察庁の会計。

西川政府参考人 検察の行政事務でございますので、含まれるということでございます。

中島(政)分科員 ということは、法務大臣が、どことかの地区の検察に経理上何か問題があるんじゃないか、不明朗であるんじゃないかということを何らかの形で察知して、それについて調査しなさいということは可能でありますね。例えば、どこかの検察庁で裏金問題があるらしい、それについて調査しなさいと命ずることは、この一般の指揮監督権に含まれるというふうに解釈してよろしいですか。

西川政府参考人 一般的な権限はそのとおりでございます。

中島(政)分科員 という答弁でございますので、大臣におかれましては、各検察庁でそういう問題があったら、これは指揮権発動とは違うわけですから、いわゆる問題になる指揮権発動と違うから、「一般に」に含まれる前段の方ですから、どんどん指揮をしていただいて、世間に誤解のないように検察行政をお進めいただきたい、このように思っておる次第でございます。

 私、別に専門家じゃないんですけれども、最近、検察のことをマスコミの人に聞かれて、一部の新聞に検察改革がどうとかと私の名前で書かれたりして迷惑もしているんですけれども、そういうときに、新聞記者の人なんかも、検察の独立を余り侵すようなことを言っては危ないんじゃないですかと、どういう意味かわかりませんけれども心配してくれる人もいるんですが、検察権の独立というような言葉が、最近というか、ちょっと前から頻繁に使われるようになってきたんです。新聞記者なんかも、知らない人はやたらそういうふうに使うんですけれども、御存じのように、検察権の独立というような言葉が検察庁法制定時に使われたことはないんです。当時の木村司法大臣の趣旨説明の中で、検察権行使の独立性を担保するためにというような表現で十四条について趣旨説明している例はあるんですけれども、検察権の独立なんという言葉を掲げたことはなかったんですね。

 私は、どこから検察権の独立なんという言葉がやたら出てくるようになったのかといろいろ調べてみたんですけれども、伊藤栄樹さんも伊東勝さんも、あるいは「検察講義案」も、検察権の独立という表現は大っぴらには使っていないですね。非常に抑制的に書いてある。

 文献で、どこで出てきたか。これですね。検察庁の皆さんが研修に使っている法務総合研究所の「検察庁法」、これの中に、「第二節 検察権の独立(行政権、立法権との関係)」と、堂々と検察権の独立という表現で書かれている。内容を読めば、別に昔の統帥権みたいなことを言っているんじゃないというのはよくわかるけれども、ただ、一般の人が考えると、司法、行政、立法に対抗するような権限として検察権があるんじゃないかというふうに解釈されがちだと思うんですね。だから、これはやはり気をつけた方がいいと思います。誤解されないようにした方がいいと思う。

 伊東勝さんや伊藤栄樹さんの本にも書いていないような表現をどうしてこの法務総合研究所の「検察庁法」の解説で書いているのか、表現しているのか、後で教えてください。これは法務大臣にお願いしておきます。

 時間が来ましたので最後に申し上げますが、日本国憲法の前文にあるように、国政というのは国民の信託にゆだねられるものであって、その権威は国民に由来して、その権力というのは国民の代表がこれを行使するということになっております。

 検察庁法ができたときの政治状況というのがありまして、非常に国民との関係があいまいになっているんですね。検察庁には検事総長を初め認証官が十人もいるわけですけれども、これは国会の承認もないわけですね。憲法上、検察官の身分というのが決まっているわけでも何でもないんですけれども、認証官になっておる。例えば、会計検査院は憲法上の存在ですけれども、国会の承認を得て任命されるんですね。

 そういうことを考えますと、私は、検事総長以下の認証官というのは国会の承認人事にした方がいいんじゃないかと思っているんですが、法務大臣、どう思いますか。

千葉国務大臣 御指摘について、私も考えるところがございます。

 国際的に見ても、例えば独立検察官のような形で国民のいろいろな承認を得たり選挙のような形で選ばれるような、そういうものも全くないわけではありません。そういう意味では、検察に対する、あるいは検察官をどういう形で選任するかというのはいろいろな考え方があるんだろうということは私も十分承知をいたしておりますので、ぜひまた先生の御提起を受けとめて、頭に置いておきたいというふうに思います。

中島(政)分科員 時間になりましたのでやめますが、きょうは二月二十六日で、二・二六の日なんですね。私、政治史をちょっとやっていると、やはり二・二六事件というのは日本の政党政治が息の根をとめられた日で、非常に感慨深い日でございまして、統帥権の独立というようなことが政党政治を破壊したという歴史を見ますと、やはり憲法を厳重に守って、国民の信託のもとに検察の権限も行使されなければいけないというふうに私は思っております。それを申し添えまして、私の質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

吉田主査 これにて中島政希君の質疑は終了いたしました。

 次に、井戸まさえ君。

井戸分科員 民主党の井戸まさえです。おはようございます。

 鳩山政権は、チルドレンファーストということを掲げて、子供と子育てを応援することを最優先として課題に取り組んでいると思います。昨日、報道で、鳩山総理大臣が岡田外務大臣と千葉法務大臣をお呼びになって、国際離婚の際にお子さんたちが連れ去りだとかいろいろなことで今問題になっている、ハーグ条約の締結についての指示、検討というものをなさったという報道がありましたけれども、これに関して、そのようなことだったのでしょうか。まず、お伺いをさせていただければと思います。

千葉国務大臣 昨日、岡田外務大臣、そして私、総理とハーグ条約についての意見交換といいますか、現状についての意見交換をさせていただきました。総理は、早く議論を、論点整理といいましょうか、そういう勉強を精力的に進めるように、こういうことでございました。

 そういう意味では、まだまだ条約の要請をするところの趣旨がはっきりはしておりませんし、あるいは関係省庁も多岐にわたるということもあろうと思いますが、私も協力をして、精力的に論点の整理、あるいは議論を進めてまいりたいというふうに思っております。

井戸分科員 ハーグ条約締結に関しては、それを推進していただきたいと思っていらっしゃる方と、あと、やはりDV被害者を中心に、国内法がなかなか整備されない中での締結に対して慎重な方とかもいらっしゃるので、論点の整理というものをやっていただけるということなので、よろしくお願いを申し上げます。

 本日は、前政権から積み残された課題のうち、さまざまな事情によって、生まれたお子さんたちが無戸籍状態になって、人生のスタートラインにすら立てずにいるという問題について、法務省としての考え方と具体的な対応について伺っていきたいと思います。

 まず大臣、先般、性同一性障害者特例法により性別変更した兵庫県在住の男性の妻が、人工授精で出産をしたものの、嫡出子としての出生届が不受理となっていて、お子さんが三カ月たった今も無戸籍というケースについて、当事者の御夫妻、そしてその当事者である無戸籍の赤ちゃんとお会いをいただきました。

 この問題は、性同一性障害についての問題だけではなくて、広く非配偶者間の人工授精の問題ですとかいろいろなこと、いわゆるAID児の法的取り扱いについての議論も内包する極めて大きな問題であると思いますけれども、まずは大臣、当事者の御家族とお会いになったときの御感想を伺ってもよろしいでしょうか。

千葉国務大臣 わざわざお訪ねをいただき、そしてその思いをお話しいただいて、大変私も、何とかしてさしあげなければいけないんだなということを改めて感じさせていただいたところでございます、元気な赤ちゃんでもございましたし。

 そういう意味で、ぜひその思いを受けとめて、どういう形で解決をすることができるのか、本当に真剣に考えさせていただきたいと、そのとき改めて胸に刻ませていただいた、こういう気持ちでございます。

井戸分科員 面談の間が短い時間でしたので、御夫妻はその思いを十分に伝えられないかもしれないと思って、大臣にお手紙を差し上げております。このお手紙をお読みになったと思うんですけれども、私は、この御夫妻の特に妻の方、夫とともにこの障害を乗り越えて生きていこうと決断をなさった方の手紙の文面の中に、この問題が抱える深刻さというものを感じました。一部紹介をしていきたいと思います。

  昨年十一月、息子が誕生してからの私たちの生活は、妊娠中に想像していた幸せとは程遠く、つらく悲しい日々でした。法律とは何でしょうか。世間一般とは?普通とは?

  そんなことを繰り返し思い悩む毎日です。

  私の愛する男性は、国から父親として認められることができず、今、苦しんでいます。

  世間一般に当てはまるであろう、多くの五体満足の人と、少数の何らかの障害を持って生まれた人との間に、法律で差をつけられることなど、決してあってはならないと思います。

  どんな風に生まれても幸せに生きる権利は誰にでもあります。当然主人にも。

  今までずっと苦労が多かったことだろうと思います、毎日の生活の中で、常に苦しい思いをしてきたに違いありません。そんな彼が人生の何分の一かをかけて、やっとの思いで本当の姿を手に入れて、幸せに生きることをまっとうしようとしていた矢先に、このようなことになってしまいました。

  今可能な最速で最善の方法で、この件を解決してください。性同一性障害夫婦の子も「嫡出子」として認め、主人を「父親」にしてください。息子を法律上でも存在する子にしてください。

こうした内容だったんですけれども、改めて、大臣、このお手紙の内容を聞かれてどのようにお思いでしょうか。

千葉国務大臣 私も読ませていただきました。何というんでしょうね、重い心のうちというのがその文面からも本当に私も伝わってきたような気がします。

 性同一性障害という障害を持たれながら本当に頑張って生きておられる、そういう皆さんに対して、私も本当に、当初十分に理解が及ばなかったところがございますけれども、これまでの活動の中で、やはりきちっと社会の中で普通に生きることができるように、こういう意味での法律の整備などにはいささか取り組ませていただいてきましたけれども、それにしても、まだまだ、その際にも思いが及ばない問題が、あるいはこうやって新たに御提起をされるような実情が出てきているということを本当に改めて重く受けとめているところでございます。

 そういう意味では、いろいろ皆さんの御協力、そして御理解等もいただきつつ、法律の整備あるいは運用等の面でも、何とか、いわゆる性同一性障害の皆さんだからがゆえに差別がされるような、そういうことはないようにしていかなければならないというふうに考えております。

井戸分科員 先般、この問題が報道されて直後だったと思うんですけれども、一月十二日の閣議後の記者会見で、大臣は、このままでは問題ではないかと思っている、今の民法の中で、性同一性障害ということとは別に、一定の解釈で認めている部分があるのに、片方だけを否定するということは、ちょっと無理があるという認識をしている、そういう意味では、法整備が必要なのか、解釈をもう一度整理し直すのか、できるだけ早く検討、議論しなければならないと思っていると述べられております。

 また、私と一緒の兵庫県選出の辻泰弘参議院議員が、一月の二十七日の参議院予算委員会で質問されております。これに関して大臣は、根底には生殖補助医療の問題、この問題をきっちりと整理していかなければならないということである、それから、性同一性障害の方の特例法、このときにもここまでのことは予想をされていなかったという面もあるので、今法整備が必要なのか、あるいは何らかの運用ができないものか、政務三役のもとで今精力的に検討させていただいているということを御答弁なさっています。

 本当にこの問題というものは、性同一性障害にかかわらず、AIDのお子さんたちの問題ともかかわってまいります。

 AIDは、非配偶者間の人工授精によって、実際の父親、生物学的な父親とは別に、法律婚をしている不妊の男性の間のお子さんとして、嫡出子として今は戸籍を作成されているようなことになるんですけれども、AIDについては、一九四九年に日本では初めて行われていまして、以来六十年がたっていて、慶応大学で初めてAIDが行われたんですけれども、慶応大学だけでも一万人のお子さんたちがこのAIDで出生をしている。

 逆に言えば、そのお子さんたちは、例えば自分がAID児だということに関しては、成人してから突然、やはり血液型だったりそういったことを調べたときに自分の父親じゃないということを知ったり、もしかして自分は不倫の子だったんじゃないかとか悩んだりとか、そういういろいろな問題があるんですね。しかしながら、六十年間これが実際には行われてまいったんですけれども、法整備がなかなか進んでこなかったということは、私は非常に問題であると思っています。

 資料の方で朝日新聞さんの記事というものを皆さんにお渡しをさせていただいているんですけれども、二〇〇三年に厚生科学審議会の報告が出て、同じ年に法制審議会の試案というものも出ているんですね。

 これに関しては、性同一性障害の方たちもそうですけれども、当然、夫婦間で合意をしてAIDをやられるわけです。合意があった場合に関しては嫡出子として認めていこうという方向性のものが出ているというふうに私は認識をしておりますけれども、そこからの議論というのが頓挫をして、途中、代理出産をめぐりいろいろな議論が行われたり、また二〇〇八年には日本学術会議の報告書なんかも出ているんですけれども、そうした外側の議論とは別に、法改正とか法の立法という形での、この形は出なかったというのが非常に残念に思います。

 諸外国を見ますと、例えばイギリスでは一九九〇年、ヒトの受精及び胚研究法というのが制定されて、これまで数度の改正をされていて、二〇〇八年には、例えばドナーで同じような形で生まれた兄弟を知ることもできるようになっています。ニュージーランドでも二〇〇四年に、スウェーデンでは一九八四年に人工授精法というものが制定され、二〇〇六年にはこれが廃止をされて、逆に、新しい遺伝子に関する統合法というものが施行されております。

 なかなか進まなかった理由というか、この間、大臣は積極的にこの問題について取り組まれていたのは存じ上げてはいるんですけれども、これからこの問題に関してどのようなタイムスケジュールで取り組んでいかれるお考えか、伺ってもよろしいでしょうか。

千葉国務大臣 この間、井戸委員にもいろいろな節目節目に御意見をいただくような機会もございました。

 この生殖補助医療の問題、そしてそれに伴う法制審議会の議論、せっかく一定のところまで進んだものだというふうに思っております。ただ、あの当時、いろいろな各党各会派あるいは与党内での御調整もなかなかつきにくかったというふうには伺っておりまして、そこで厚労省の中心になっている医療の問題の方がそのまま滞ってきたという実情もあるように思います。

 別に人に責任転嫁をするという意味ではなくて、やはりそこが十分に議論を尽くされていないと、私どもの側で、では、どこまでをきちっと法的な守備範囲にするかということの基準をつくるのが、なかなかこれもまた難しいということがあろうかと思いますが、おっしゃったように、こちらの、何か、いや、なかなか難しいというような都合で考えている間に、本当に多くのお子さんやあるいは御両親が悩んでおられる、そういう実情があるわけですので、いつまでということを今の段階で申し上げることはまだまだできませんけれども、先ほど御指摘がありましたように、政務三役のもとで、厚労省にもできるだけ御議論を進めていただくようなそういうお願いもしつつ、議論を進めていきたいというふうに考えております。

井戸分科員 これは、ある意味、議論は尽くされているので、あとはもう最後、まとめる段階に入っているのではないかなと思うんです。ここからもう一回改めて議論を最初からというのでは、なかなか、それこそ本当に六十年たっていて何も法律ができていない、その間にいろいろなケースで生殖補助医療を使って出生されるお子さんたちがいる。そのお子さんたちが、法律がないがゆえに無戸籍になったり、もしくは法律がないがゆえに自分の出生について、出自というものを知る権利を奪われてしまう。

 こういったことはあってはならないと思うので、ぜひともリーダーシップを発揮していただいて、厚生労働省の方にもこうした検討をいつまでにやってもらいたいということを強く要望していただいて、そして法整備の方に取りかかっていただきたいと思うので、どうぞよろしくお願いをいたします。

 先般、当事者の方とお話をしたときに、こうしたことというのは、なかなか当事者の方たちが意見を述べる場というのがなかった、特に性同一性障害の方の子の出生に関してはヒアリングの場所というものもなかったので、できたらば、政策決定じゃないですけれども、新しく法律をつくる上でも彼らの声を聞いてほしいということの要望がありました。

 大臣からは、そうした機会を、どんな形になるかわからないけれども、なるべくつくっていきたいということを御答弁いただいたんですけれども、改めてこうしたヒアリングを行っていただく、性同一性障害やまたAID児の方、親御さんやお子さんたち、もう成人なさっている方たち、六十年たっていますから、いろいろいらっしゃると思うんですけれども、そうした当事者の方々のヒアリングを行っていく御意思があるかどうかということを伺いたいと思います。

千葉国務大臣 今後、立法化あるいはさまざまな制度の改正、こういうものの運用上、考えていくに当たって、いろいろな場があると思うんですね。おっしゃったように、これから勉強するのは何事ぞということではありますけれども、最終的な、基本的な法律を改正するということになりますと、例えば法制審議会の御意見も聞くというような機会もあるかもしれませんし、あるいはこういう国会の場でさまざまな御議論をいただくということもあろうというふうに思います。

 いろいろな場面があると思うので、ぜひそういうことを通じて、当事者の皆さん、やはりこういう問題でお悩みの皆さんの生の声をお聞きできる、こういう機会は私はあるものだというふうに思いますし、それを私も働きかけていきたいというふうに思っております。

井戸分科員 性同一性障害の方々は、それで法によって性別変更しても、戸籍で、結婚とかをしたとしても、転籍をして新戸籍をつくったとしても、そこに性別変更をしたという記載というものが残っていくという問題もあるんですね。なので、いつも戸籍を見れば、男とは書いてあるけれども、そこにもと女性の、もと女の男というのがずっとつきまとってしまう。こうしたことも、今回この問題が出てきているのも、その記載がなければ、戸籍窓口では通常の一般の方のAIDのお子さんと同じように出生届が受け入れられるんですね。なので、ここのところもひとつ検討の課題として御認識をいただければと思います。いかがでしょうか。

千葉国務大臣 御指摘を念頭に置いていきたいと思います。

井戸分科員 私がこの性同一性障害の問題に取り組んでいるのは、お子さんが無戸籍になっているというのは、私が取り組んでまいりました離婚後三百日の問題と表裏一体というか、同じ法律によって子供の父親を決める。

 性同一性障害の方は、法律婚をしていてそこに生まれているのにもかかわらず、父親とは血縁である、それが前提だから嫡出子としては認められないと言っていて、離婚後のお子さんたちに関しては、血縁がない、こちらの新しいお父さんの方、婚姻をした夫の方が父親だということを言ったとしても、法的父親なんだ、父親を決めるのは血縁だけではないと。なので、離婚をして既にない家庭であっても、もとの夫を、前夫を父とした出生届でないと受け入れないとずっと厳格に言ってきたんですね。

 この七百七十二条の一項の規定をそのまま運用すれば、今回のケースは、何ら法改正も法解釈も要らずに、嫡出子として性同一性障害で性別変更した方が父親となるのが当然であろうというふうに私は思ったんですけれども、そういった意味でも非常に表裏一体。例えば七百七十二条のお子さんに関しては、だんだん裁判の事例なんかでも、血縁があれば前夫の嫡出を外していくということも運用もされていますけれども、何かケースケースで、その都度都度で判断をされてしまう、統一的なルールがないので非常に現場が混乱をしていると思うんですね。そうしたことも御認識をいただければと思っています。

 では、離婚後三百日の方で無戸籍になっているお子さんたちのことについて伺いたいと思います。

 この問題に関しては、本当に公明党さんを中心に前政権下でもいろいろなことが進んでいって、本当に目覚ましいというか、無戸籍になっているお子さんたちでも住民票がとれるだとかパスポートで海外に行くことができるとか、いろいろ改善はされてきました。特に離婚後懐胎をしたケースに関しては、民事局長通達によって前の夫の嫡出を外していますから、そういう意味では後夫の子供でもいいし、非嫡出子として届けることもできるという運用になっているんですね。

 しかし、この通達が出ました平成十九年五月の法務委員会の方で、千葉大臣が、こうした通達は出たものの、積み残されていく課題というものがあるのではないかという懸念を御質問なさっています。

 今現在、法務大臣になられて、この懸念というものはまだ存在するでしょうか。もしその懸念が存在するのであれば、どういったことがこうした問題で積み残された課題であると御認識をなさっていらっしゃるでしょうか。

千葉国務大臣 この問題については、私も、これも井戸委員にもいろいろな御意見をちょうだいする機会も多く、いささかなりとも取り組ませていただいてまいりました。そして、通達が出されたというときに、ここまで本当に多くの皆さんの後押しとかあるいは活動があったればこそ、通達という形ではあれ、そこまでたどり着いたんだなということは感じました。

 しかし、その積み残し、例えばあの通達によると、やはりきちっとした診断書をつけるとかそういうことがあったり、それから、本来、事実上、前婚の婚姻の実態がない、そういうときに、それがはっきりすれば診断書とかそういうことではなくしてちゃんと届けられる、こういうことでできないんだろうかということも私も考えました。

 そういう意味では、通達まではいったんですけれども、まだまだより進めなければいけない部分があるものと今でも感じております。

井戸分科員 御指摘いただいてありがとうございます。

 まさにそういった課題がいろいろと残ってはいるんですね。特に離婚後の懐胎に関しては嫡出子として届けなくてもいいという形になったんですけれども、離婚前の妊娠に関しては、それで調停、裁判という形をとる。これができるので、認知調停という形で事実上の父に認知をしていく形なんですけれども。しかしながら、これが現場では、例えば裁判所によって判断が違ったり、もともとできないという形で言われてしまって、そこで扉を閉ざされてしまうと、この子供たちが、無戸籍児が固定化されたりとか長期化してしまうという懸念が出てきます。

 ただ、本当に御努力によって住民票ができたことによっても、逆に言うと、戸籍がなくても生きられてしまうという状態も生まれているんですね。

 先般、非嫡出子に対します相続差別の説明を伺っていたときに、例えば財産とかを残すのに、例えば無戸籍児だったらこれは当然もらえないわけですね。父親がだれかということも、当然登録もされていませんから。そういったところからいくと、嫡出子、非嫡出子として、無戸籍児というと非常に、やはり無戸籍児の子供たちは不利益を得ているなと。特に、こういった相続もできないという状態というのはよくない。

 それは、相続分に関しては養育だとかそういった意味も含めている、養護という意味も含めているというような説明をいただいたときに、ああ、これは、子供たち、そして大人になっていく過程にとっても、無戸籍状態というのは本当にやはり解決をしていかなければいけない課題なんだということを改めて思ったんですね。

 しかしながら、運用でできる範囲というのは非常にもう限界が来ているので、これ以上はできないと思うんです。やはり法改正という形できっちりとしたルールづけ、そして、先ほども言いましたけれども、さまざまな形で、家族の形態が変わったり、生殖補助医療の進歩という形に対して、明治から全くここは動いてこなかった法律ですので、そうした形できっちりと対処をしていかなければいけないというふうに思っています。

 改めて御認識、そして法改正も含めて、御検討していくというおつもりがあるかということを伺いたいと思います。

千葉国務大臣 本当に井戸委員と思いは一つにさせていただいているのではないかというふうに思っております。そういう意味では、今国会にでき得れば民法の改正なども御提起できればと、今検討させていただいているわけでございます。

 そういう意味では、この七百七十二条ということもまたあわせて御提起をすることができ得るならば、これは私にとっても、大変必要なことだということも思いますが、なかなか一歩一歩ということもございます。

 ただ、改正が必要だ、それから今の通達までではなかなかまだまだ十分でない部分があるということも、よく私もわかっておるつもりでございますので、何とか歩みが進むように、ぜひ大きなお力になっていただければというふうに思っております。

井戸分科員 今、全国で無戸籍の方々とその家族が、今の大臣の発言で本当に励まされる思いだと思うんですね。

 やはり、この課題が残されている、離婚後の通達だけで問題は解決してしまったのではないかと思われている方もとても多くて、しかしながら、法改正が必要であるという御認識を大臣がお示しされたこと、そして、近い将来、そういう意味ではそうしたことを具体的に進めていくという方向性というものをお示しいただいたことは、本当に心強く思います。よろしくお願いを申し上げます。

 チルドレンファーストなので、法改正とか法に関しても、私は、子供たちにかかわることに関して、そしてそれが子供の育ちやまたその家族にとって障害になっているということに関しては、とにかくすぐにでもやらなければいけない。最優先ということは一番最初にも申し上げましたけれども、本当によろしくお願いしたいと思います。

 次に、これもまた無戸籍なんですけれども、熊本県に「こうのとりのゆりかご」、赤ちゃんポストですね、というものがありまして、先般、福田衣里子議員と岡本英子議員、そして福嶋健一郎議員と、四人で視察をしてまいりました。非常に感動いたしました。

 というのは、そこの理事の先生が本当に命を守るために必死でやられている。全国からいろいろな誤解とか非難というものも、捨て子を助長するのではないかとかそんな非難もたくさんされている中で、とにかく子供の命を救いたいということでこのポストをつくられ、そして、諸外国に比べても本当にあり得ないぐらい、けた数が違うほどのお子さんたち、二年半で五十一人ですか、預けられてきたということ、この現状を見ました。その子供たちの命を救うことができても、そこからの育ちというものに対して保障をすることができない。

 これは熊本県が、「「こうのとりのゆりかご」が問いかけるもの」というので、非常に分厚い報告書を出しています。この報告書というのは、通常のいわゆる県とか市とか、行政が出す報告書というのとは中身が非常に違いまして、大臣にも一度お読みをいただきたいと思うんですけれども、子供を産んだ、しかし育てられない、その理由というものがここに凝縮しているんですね。

 いろいろなケースがあります。その理由の一つが戸籍だったということに非常にびっくりしたんですけれども。戸籍に生まれたことを記載することができない、したくないので、やむにやまれず捨て子をしてしまうということが、その理由の第一がそこだったということにも驚いたんですけれども。

 そこの、慈恵病院の蓮田理事長によれば、こうした子供たちの育ちを保障していくためには、児童養護施設のような形ではなくて、やはり里親にすぐに、なるべくでしたらば赤ちゃんが生まれてから早いうちに里親に渡していく、そして家庭的な養護の中で子供たちの育ちを保障していかなければいけないのではないかと。しかしながら、特別養子縁組というものも制度上はあるものの、非常に運用が難しくてなかなか進んでいないということで御指摘をいただきました。

 特別養子縁組という制度がつくられてから二十年がたっているんです。もう一つ資料でお渡しをさせていただいているんですけれども、その件数を見て私も驚きました。昭和六十三年は七百三十人のお子さんたちが、特別養子縁組が成立をしている、平成元年には千二百五件だったんです。ところが、ここ数年はその四分の一しか養子縁組が成立をしていない。しかも、昭和六十三年、平成元年ころに関しては、訴えを取り下げたりという方たちも多かったんです。

 なので、この特別養子縁組の制度というのが運用がなかなかうまくいっていないのではないかと思いますけれども、この二十年を振り返っての印象を大臣に最後にお伺いしたいと思います。

千葉国務大臣 今、資料もわざわざお示しをいただきました。

 この制度ができて、こういうぐらいかなというふうには思いつつ、一定は、一つの制度としては定着しているのではないかというふうには思うのですけれども、やはりまだまだいろいろな、こういう制度がよく知られていないということもあると思いますし、それから、さまざまな条件が必要になる、そういうところにも難しいところがあるなどのことがあろうというふうに思います。

 そういう意味では、裁判所にもいろいろな柔軟な対応をしていただくということも含め、それから、こういうお子さんを一体どういう形でその育ちを支えていく、特別養子というようなことでいくのか、あるいは他の制度なども含めて総合的に考えていく必要があるのではないかというふうに感じます。

井戸分科員 ありがとうございました。

吉田主査 これにて井戸まさえ君の質疑は終了いたしました。

 次に、大口善徳君。

大口分科員 公明党の大口善徳でございます。

 きょうは、いろいろと課題になっていることをお伺いしたいと思います。

 まずは、公訴時効制度の見直しにつきまして、昨年十一月十七日、私は法務委員会で、早急な検討が必要という質問をさせていただきまして、この二月の二十四日に法制審議会から法務大臣に対し答申がなされました。そこで、この答申の内容を踏まえて、公訴時効制度について何点かお伺いしたいと思います。

 公訴時効制度に関する国民の意識について、法務省が、法制審議会の審議に反映させるべく、昨年十二月から一カ月間、国民からのパブリックコメント手続に準じた意見募集手続を実施されて、四百五十八件の意見が寄せられたということでございます。必要とする意見が多くを占めていたということでございます。

 また、二月の六日、これは内閣府の基本的法制度に関する世論調査、ここで公訴時効に関する国民の意識についての調査結果が出ましたね。これは、人を死亡させた最も重い罪の公訴時効期間についてということで、「短すぎる」「どちらかといえば短すぎる」が合わせて五四・九%、それから、その意見の中で、見直し策として公訴時効を廃止する意見が四九・三%、それから、期間を延長するは二二・一%、こういう意見でございました。

 そこで、こういう国民から寄せられた意見や世論調査について法務大臣の御所感をお伺いしたいと思います。

千葉国務大臣 今、二つの調査結果といいましょうか、多くの皆さんのお声がどうなっているかという御紹介を先生の方からもいただきました。

 こういうことを考えますと、国民の多くの方は、凶悪重大犯罪については、事案をはっきりさせて、そして刑事責任をきちっととってもらう、途中でそれが公訴時効ということで逃げ得になるような、そういう事態はやはり起こってほしくないな、こんなふうに思っておられるのではないかなというふうに受けとめております。

大口分科員 公訴時効に対して短いと答えておられる方の理由、例えば、時間の経過で犯人が処罰されなくなるのはおかしい、これが七九・八%、時間が経過しても被害者の気持ちは薄れない、五五・二%、時間が経過しても犯人が判明する場合がある、三六・九%、こういうことで、公訴時効の根拠についての国民の意識の変化というのも今回読み取れたと思うわけでございます。

 そういう中で、今回の答申におきまして、法定刑に死刑が定められているものについては公訴時効の対象から除外し、法定刑に懲役、禁錮が定められているものについては公訴時効期間を延長する、こういう内容であったわけですね。大臣は、二十三日の閣議後の記者会見において、法制審の答申内容に沿って法案を作成する、こういう発言もされています。

 そこで、確認をさせていただきたいのは、今後提出される予定の法案作成作業に当たって、民主党の政策集においては、法定刑に死刑が含まれる重罪事案のうち、特に犯情悪質な事案について、検察官の請求によって裁判所が公訴時効の中断を認める制度というものを主張されていたが、こういう案にこだわらないということでございましょうか。また、法案提出に向けたスケジュールもあわせてお伺いしたいと思います。

千葉国務大臣 法制審から、大変十分な、多岐にわたる御議論をいただいた結果の答申をいただきました。私は、やはりこれをきちっとまずは重く受けとめて、それを基盤にしながら立案作業をしていきたいというふうには思っております。

 ただ、民主党でこの間さまざまな知恵を絞ってつくっている政策も一つの大変貴重な考え方であったということも私も承知をしております。

 ただ、法制審で議論をいただいたら、そこで、わからなかったこと、あるいはそれにさらに多くの皆さんの意見を取り込んでの結論をいただいたということでございますので、民主党の議論というのは決して無駄ではなかったというふうには思っておりますが、法制審でさらに練っていただいたことを重く受けとめた立案作業をしていきたいと思っておりますし、この国会で御提起をさせていただいて、そして皆さんの御賛同をいただければというふうに願っております。

大口分科員 法制審の答申を重視する、こういう御答弁だというふうに受けとめさせていただきたいと思います。

 そこで、公訴時効の見直しについては、一方、慎重であるべきだとの意見も見られます。これは民主党の中でもそういう御意見の方も結構いらっしゃって、今いろいろ御苦労されておると聞いております。

 その一つは、被告人の防御権の問題であります。例えば、被告人がアリバイの主張をしたいと思っていても、事件から四十年、五十年たってから起訴された場合には、アリバイを証言してくれる人を見つけようと思っても見つけられないのではないかという問題。要は、冤罪に巻き込まれるリスクが高いのではないかということです。

 また、捜査を行うことができる期間が延びるわけですから、警察の負担が重くなり過ぎるのではないか、膨大な証拠物件をどう保管していくのかも問題になる。箱だと一千箱ぐらいですかね。そういうことがあります。

 また、公訴時効は、平成十六年に、殺人などの死刑に当たる罪の公訴時効期間を十五年から二十五年に延長するなど、公訴時効期間の延長を内容とする改正を行いました。この改正以降に発生した例えば殺人事件については同改正による捜査や裁判への影響や効果を検証できない段階で、さらなる改正を行うことは拙速という意見もあるわけです。

 こういう見直しに慎重な意見についてどのようにお考えでございますか。

千葉国務大臣 そのような意見がいろいろなところから出されているということは私も承知をいたしております。

 それぞれに個別にお答えをするということはさせていただきませんけれども、例えば捜査の技術というものの最近の大変な進展を見ますと、かなり長期間にわたって証拠を保全する、そういうことも随分進歩をしているというふうに思います。そういう意味では、その懸念の一部は解消されるものではないかというふうに思っております。

 それから、被告人の防御権、これについても、今のような、証拠をきちっと保存していくというようなことを通じて、防御権を侵すようなことはできるだけ避けられるのではないかというふうに思いますし、それから、やはり捜査の手法ということも、例えば、できるだけ透明度を図っていくというようなことも今後いろいろ検討されていくだろうというふうに思います。

 そういうことを考えますと、懸念の声、それは私もわからないことはないんですけれども、それを解消するいろいろな条件はかなり整えられつつあるのではないかというふうに私は感じております。

大口分科員 今の御答弁の中で、DNA鑑定の非常に著しい進歩等々はあると思います。ただ、これは扱いを気をつけないといけないと思うんですがね。

 それともう一つは、取り調べの透明化ということで、可視化ということを大臣はにじませていたと思うんですね。そういうこともあるのでということですか。可視化も視野に入った今の御答弁ですか。

千葉国務大臣 直接これとあわせてというようなことはありませんけれども、取り調べを透明化していくような、そういうこともあわさることによって、よりその懸念も払拭をされていくということにつながるのではないかというふうに思ってはおります。

大口分科員 それから、いわゆる遡及効の問題ですね。

 法制審議会の答申内容の公訴時効改定規定は、改正法施行前に犯した罪であっても、施行時に時効が完成していないものについては適用されると、いわゆる遡及適用を認めているわけです。

 この規定が設けられますと、例えば、本年七月に時効が完成する八王子市スーパー強盗殺人事件や、来年九月に時効が完成する上智大生殺害事件についても公訴時効が廃止される可能性が出てくるということでございます。このあたりは被害者の会の方も評価しているわけであります。

 一方において、いわゆる遡及適用については、刑罰不遡及の原則、我々が法学を学ぶときの大原則、憲法三十九条の趣旨に反する、こういう意見もあるわけであります。平成十六年改正の時効期間の延長のときは遡及適用はしていないということもあるわけです。

 そういうことで、この遡及適用をめぐっての議論で、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

千葉国務大臣 前回の改正時にこの問題が盛り込まれなかったと。多分、そのときは罰則の強化というようなことが中心となっていたというふうに私も承知をしておりますので、この問題も余り議論の土台に上がらなかったのではないかなというふうには思います。

 今の御指摘でございますけれども、憲法に反するのではないかという意見があることは私も承知をしておりますし、そういう御意見があるのも全く理解できないわけではありません。ただ、厳格に言うと、憲法三十九条の規定というのは、例えば、実行行為のときに適法だったけれども、後から刑罰法規をつくって処罰の対象にするというようなことが、基本的には憲法三十九条の予定をしている形態だというふうに思います。

 先ほどもお話がございましたように、例えば、公訴時効によって本当に逃げ得になっちゃう、公訴時効が満期になった直後に判明をしたというようなことなどを考えますと、そういう逃げ得を本当に許していいのかなということなどを考え合わせますと、三十九条というのがそういうことまでをも禁じているというふうには思えないのではないかというふうに私は考えております。

大口分科員 公訴時効完成に対する期待権というものは保護に値しないという御見解なのかなと今お伺いしました。

 次に、取り調べの可視化についてでございますけれども、これも昨年十一月、法務委員会で質疑をさせていただきました。その後も、法務省、警察庁、民主党の中でもいろいろ議論されていると伺っております。先般、法務委員会において、千葉大臣の所信表明においても、「被疑者取り調べの可視化の実現に向けて、着実かつ精力的に取り組んでまいります。」、こういうふうにされたところであります。

 そこで、平成二十二年度の予算に計上された調査費用の趣旨について。

 私は、昨年十一月、法務委員会で、この平成二十二年度予算の概算要求事項について、取り調べの録音、録画制度と新たな捜査手法に関する調査研究ということで、新たな捜査手法というものを掲げる必要はないのではないか、こういう質問をさせていただきました。このことについて、大臣は、この表現が適当かどうか検討したい旨の答弁もされました。

 今回、その表現がどうなっているのか。五千四百万円計上されているわけですけれども。また、その名称が変更された趣旨についてお伺いしたいと思います。

千葉国務大臣 この調査研究費用、これはまさに調査研究、勉強等、あるいはいろいろな実情の調査等に充てたいというふうに考えております。新たな捜査手法を直接研究しようということではございませんけれども、可視化の捜査の実情等を調査したり、そういうことの関連で、新たな捜査手法というのは例えば一体どんなことを諸外国でやっているんだというようなことを調査するという、そこは関連事項としてあり得ることではあるなと。

 ただ、捜査手法そのものを可視化とあわせて研究しよう、調査しよう、そういう趣旨ではありませんので、あくまでもその検討の過程で、そういうこともあわせて考えて調査するというようなことはあろうかというふうに思っております。

大口分科員 大臣は、一月ですか、韓国に行かれた、それで、取り調べの可視化についての現状視察をなさったということでございます。

 聞くところによりますと、韓国における取り調べの録音、録画は、義務づけではなく、検察官の裁量によって行われているというふうに聞いております。また、取り調べの弁護人立ち会いについては、認められているものの、実際に立ち会うことは余り行われていないというふうにも聞いています。

 この韓国において行われている取り調べの録音、録画及び弁護人の立ち会いについて、大臣が視察された感想をお伺いしたいと思いますし、民主党が過去に提出した法案との違い、こういうものを踏まえて御説明をいただければというふうに思います。

千葉国務大臣 私も、やはり直接に調査をさせていただくというのは意義のあることだなということを思いました。

 今お話がありますように、韓国では、検察官の裁量によって行われている、弁護人の立ち会いも認めておるけれども、そんなに積極的に利用されていないというようなことでございました。ただ、この基本には、取り調べあるいは捜査ということについて、どうも日本と構造が大分異なるようでございます。

 それから、証拠の扱いについて、裁判の場で検事調書等の証拠力が相当制約をされているということで、むしろ検察の側で何とかその証拠能力をきちっと整える、そういうことのためにこの録音、録画というものを逆に証拠として扱ってもらおう、こういう努力をされたようでございます。

 それから、検察の捜査のあり方も日本とちょっと構造が違うというようなこともあって、大分背景が異なるので、必ずしもそれをそのまま日本の捜査に当てはめるということはできないのかなというふうに思います。

 ただ、一点、可視化をすることによって、録音、録画をすることによって捜査の透明性が高まり、国民から捜査に対する信頼が大変高まった、こういう評価といいますか分析がされているようで、私もそれは大変参考になることだなというふうに感じて、戻った次第でございます。

大口分科員 各国それぞれの制度が違いますので、やはりぴったりとくるものはないんですね。日本は日本の刑事訴訟法体系の中で考えていかなきゃいけないと思うわけであります。

 そういう中で、千葉大臣は、二月二日の記者会見で、中井大臣の御認識については、私から申し上げることではありませんが、よくお話を伺えば、必ずセットということを考えておられるかどうかというと、必ずしもそうではないであろうと思います、私も、捜査のいろいろな手法については、それはそれでまた御議論いただくことは決して否定するものではありませんが、セットで考えるべきものではないと思っていますと。

 要するに、取り締まりの可視化と新たな捜査手法の導入というのはセットで考えるべきものではない、こういうふうにおっしゃっているし、中井大臣もそこまではおっしゃっていない、こういう御認識を記者会見で述べられているということでございます。

 警察庁においては、犯罪捜査のあり方に関する調査研究のために、中井国家公安委員長みずからが選んだ有識者で構成される国家公安委員長研究会、及び、警察庁内の関係課長等で構成される警察庁研究会の二つの研究会が設けられているようであります。報道によれば、二年をめどに結論をまとめられるということであります。

 そこで、仮に、これらの研究会によって、可視化と新たな捜査手法の導入とはセットでなければだめだ、こういう結論が出された場合、大臣としてはどういう対応をされますか。

千葉国務大臣 なかなか難しい御質問。というのは、今の段階で仮にというお話をいただいても、お答えをすることはなかなか困難なんですけれども。

 今、中井大臣ともいろいろな機会に話をさせていただいており、でき得るだけ、この国会が終わるときまでには両方の歩みを何とか一緒にするような、そういうこともいろいろ検討してまいりたいというふうに考えております。中井大臣も、できるだけその研究の速度を速めたい、こういうこともお話をされておられますので、できるだけ連携を図り、そして足並みをそろえて可視化についての取りまとめができるようにしてまいりたいというふうに思っております。

 ただ、警察庁の方で、それと並行して、新たな捜査手法など、あるいは捜査のこれからのより一層の高度化、そういうようなことについて御研究をされたりすること自体は当然おありなんだろうというふうに思いますので、それはそれとして私は見詰めてまいりたいというふうに思っております。

大口分科員 大臣も、所信表明で、法務行政には、他の省庁が所管する事項と密接に関連する事項が少なくありません、従前、往々にして省庁間の調整に時間を要していたようですが、現在は、政務三役が中心となって、機動的かつ風通しよく、他の省庁の政務三役との間で意見交換を行い、迅速な意思決定を行っています、こういうことであるわけですね。今、御答弁では、中井大臣とこの通常国会が終わるまでにはすり合わせを終わると。こういう答弁を今お伺いしたと思います。

 そうしますと、この通常国会に取り締まりの可視化を義務づける法案というのはちょっと出せないということなんでしょうか。今後のスケジュールについて、警察庁の研究会の結論ということまでは待つ必要はない、また、セットではないということでございましたので、そういうことを踏まえてスケジュール観をお伺いしたいと思います。

千葉国務大臣 これも、単独で、私のもとだけでできるものではありませんで、やはり捜査機関、警察の方もございますので、そことどう調整をするか、こういう問題。それから、できるだけ早く皆さんの期待にこたえていく、こういうことも一方でやらなければいけませんので、その両方をあわせにらみながら今いろいろな研究それから問題の整理等をさせていただいているということでございますので、この国会でどうなるかということは、最終的な結論まで今出せるところではございません。

大口分科員 そうすると、この通常国会で提出するというのは厳しいという御認識なんですか。

千葉国務大臣 そこは、ただ、やはり機会を見て、いつでも出せる体制はできるだけ整えておかなければいけないということは考えておりますが、その調整等も含めて、これからどういう進展になっていくかということにかかってくるかというふうに思っております。

大口分科員 次に、足利事件についてでございますけれども、私も菅家さんにお話も直接お伺いしました。これは人一人の人生を台なしにすることである。本当に我々はしっかり見ていかなきゃいけないと思うんですね。

 二月十七日に開かれた検察長官会同において、樋渡検事総長は、足利事件について、真犯人でない人を起訴し、服役させた、検察としてこのようなことを二度と起こしてはならないと反省の弁を述べるとともに、近く事件に対する検察としての検証結果を公表する方針を表明されていると伺っています。

 平成十九年八月、最高検がいわゆる氷見事件及び志布志事件の問題点を検証した報告書をまとめ、これを全国の検察庁に通知しています。足利事件についてもこのような報告書をしっかりまとめられると考えてよろしいのか。それから、再審の判決が三月二十四日予定だと聞いておりますけれども、いつごろまでにまとめられるのか。

 そして、氷見事件、志布志事件の報告書は検察庁のホームページには掲載されていないということでありますが、今回の件は非常に国民の関心が高いことでございますので、ホームページ等にも掲載すべきであるということを提案したいと思います。いかがでございましょうか。

千葉国務大臣 私も、この報告書については、取りまとめた上で、そんなに遠くないと思うんですけれども、公表されるという方向だというふうには承知をいたしております。

 今、ホームページ上に載せてきちっと皆さんに御報告するようにという御提起でございます。そういうことも念頭にというか、どういう方法でやるかということも含めて今検察当局で検討されているものだというふうに思いますので、きょう、このような機会に大口先生からの御提起があったということは、きっと伝わっていくものだというふうには思っております。近いうちに何らかの形で公表されるものだと思います。

大口分科員 夫婦別氏につきまして、大臣は大変熱心に取り組んでこられました。平成八年二月二十六日の法制審の答申から、はや十四年たったわけでございます。所信表明でも、選択的夫婦別氏制度の導入などについて規定を整備するため、民法及び戸籍法の一部を改正する法律案(仮称)を国会に提出することを予定している、この通常国会で出す、こういうことでございます。もう三月に入りますので、今一番御苦労されていると思います。

 この点につきまして、鳩山総理が、昨年の十一月五日の衆議院予算委員会におきまして、家族のきずなが薄められてしまうという懸念の指摘もある、いろいろな意見があるので、国民的な議論を深めていくことが大事だ、無理やり押し通すのはいかがなものかという思いがある、こういう答弁をされて慎重な姿勢を示していたわけでありますが、本年二月十六日、記者団に対しては、私自身は夫婦別氏というものは前から基本的には賛成している、夫婦別氏は大分前から議論している、そんなに拙速という話ではないとも語っていらっしゃるわけであります。

 この選択的夫婦別氏制度に対する総理の発言に対する千葉大臣の認識をお伺いするとともに、ことしの二月十五日の予算委員会で、亀井金融担当大臣は、夫婦別氏制度に反対をすると明言をされて、家族のきずなを大事にしていく中で夫婦別氏を取り上げなければならないのかと答弁するとともに、選択的夫婦別氏制度の導入を柱とする民法及び戸籍法改正案の提出については、国民新党が合意しないと閣議にかけられない旨強調しています。

 亀井大臣が基本政策閣僚委員会などで同改正案に反対した場合、民主、社民、国民新党の連立を維持した上で同改正を国会へ提出することは困難だと考えるんですが、この点についての大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

千葉国務大臣 総理の御発言というのは、鳩山内閣として前向きな姿勢を持っているぞ、こういう御発言でございますので、私は大変力強い発信であったというふうに感じております。

 いろいろと御意見があり、亀井大臣の御発言などもございますが、今、中身も含めて、本当にこういう趣旨なんだよということも含めて御理解をいただくいろいろな努力を各角度からさせていただいており、もう時間も大分厳しいところには来ておりますけれども、何とか最終的に御納得をいただいて、これは内閣として方針を決めるものでございますので、その方向に収れんできればというふうに願って、私も努力をしております。

大口分科員 我が党もこれを推進してまいりました。そういう点では大変御苦労されていると思いますけれども、千葉大臣になったその成果の一番の試金石でございますので、どうぞ御努力をお願い申し上げたいと思います。

 以上でございます。

吉田主査 これにて大口善徳君の質疑は終了いたしました。

 次に、山内康一君。

    〔主査退席、城井主査代理着席〕

山内分科員 最初に千葉法務大臣にお尋ねします。

 難民問題について、千葉大臣は以前から難民問題に御関心をお持ちだったと承知しておりますが、ぜひ、千葉大臣が法務大臣をなさっている間に、この難民問題、改善等大きな発展を期待しております。そういった観点から質問させていただきます。

 近年、難民認定申請者の収容というのがふえているようです。昨年、二〇〇九年十月末現在の数字で三百三十一名、その前、二〇〇八年の十二月の段階で二百名と、難民認定申請者を収容するケースが近年ふえておりますが、この背景あるいはこの意味についてお尋ねします。

千葉国務大臣 今お話がございました難民問題、私も、これからの日本の社会の大きな、国際化に向けての課題であろうと思いますので、一生懸命頑張りたいというふうに思っております。

 今、難民認定者の収容がふえているという御指摘がございました。確かに近年増加しているようには私も理解をいたしております。

 これは、難民認定申請者の数も大変ふえているということがございます。その中で、在留資格を有しないという方が難民認定申請をかなり多く行っておられるものですから、仮滞在許可を受けることができないということになりますと退去強制手続が並行して進行する。この退去強制手続が基本的には全件収容ということがまず基本になっているものですから、やはり難民申請者の数が増加している、その中で、なかなか在留資格や仮滞在許可を受けられる数が限られるものですから、総体として収容者がふえている、こういうことではないかというふうに思います。

 ただ、法務省でも、御本人の健康状態とか、あるいは逃亡のおそれとか、それからこれまでの収容期間、そういうことをいろいろと考え合わせて、人道上の見地から、できるだけ、収容しなくて済むというケースについては配慮をしているというふうに思います。

 私も、より一層目を光らせてまいりたいというふうに思っております。

山内分科員 難民申請者がふえているということは、ある意味、日本を信じて申請してくださっているという意味ではいいことではないかな。その信頼にこたえるような体制を今の日本政府はとっているかというと、まだまだ不十分ではないかなというふうに思います。

 確かに、難民申請をやっている方は書類に不備があるのがほとんどではないかと思います。そもそも、自分の国、自分の母国に迫害されているから難民になっているのであって、あらゆるドキュメントがそろっている方がむしろまれなケース、そういうふうなのがある意味難民認定の現状ではないかなと思います。

 そういった意味で、しゃくし定規に対応するよりも、むしろきちんと保護を与え、支援をし、そして例えば逃亡のおそれがないような人まで収容してしまうということがあってはならないと思います。そういった意味では、大臣の御見解は全くそのとおりだと思いますが、さらなる努力が必要なのではないかなというふうに思っています。

 その中で、一部NPOの方から指摘を受けているんですが、未成年の難民認定申請者が収容されている事例がある、これは、もしかするといろいろな、児童の権利に関する条約等に違反する事例があるんじゃないかという懸念が表明されております。このことについて大臣の御見解をお尋ねします。

千葉国務大臣 御指摘、私も改めて考えさせていただきまして、調査をいたしたところですが、手続上は、入管の中で、入管法上、退去強制手続というのが収容ということを基本に、先ほど申し上げましたような原則に立っているということと、未成年の者も手続上は例外にされていないということがございます。

 しかし、未成年者については、やはりできるだけ柔軟な、それから未成年者に配慮したような取り扱いをしなければいけないということで、親族や児童相談所などに一時的に保護をして、預かっていただくとか、そんなことも含めて極力柔軟に取り扱いをしているということは私も承知をしております。

 ただ、それでも、なかなか預かり先がないとかそういうこともあったりして難しいときもあるんですけれども、そういうときでもまた、できるだけ短時間にするというようなこと、あるいは大人と同一の部屋にしないとか、家族一緒の部屋にするとか、配慮はしておるんですけれども、やはり、未成年ということを考えるときにはその配慮をさらにきめ細やかにしていくことが大事だというふうに私は思います。

山内分科員 今の質問の続きなんですけれども、では、実際に収容されている未成年の難民認定申請者の方というのは大体何人ぐらいいて、その理由というのはどういう理由になっておりますでしょうか。

千葉国務大臣 二十二年の二月二十四日現在でございますけれども、難民認定申請中の未成年者で収容されている方が三人、十七歳の方が二名と十九歳の方が一名ということでございます。

 これは多分、退去強制手続ということで収容になっているのだというふうに承知しております。

山内分科員 ありがとうございました。

 続いては、難民及び難民認定申請を出している途中の人たちに対する支援について、外務省と法務省、どちらにもお聞きしますが、最初に外務省にお尋ねしたいと思います。

 そういった難民認定申請中の人たちに対する支援の現状についてお尋ねします。

武正副大臣 山内委員にお答えをいたします。

 外務省として、生活に困窮する難民認定申請者に対する生活費、住居費、医療費の支給を実施するとともに、難民認定者のうち希望者に対する定住支援プログラムを実施しております。

 難民支援の現場においては、迫害を逃れて我が国に来た難民の背景、特殊性を考慮し、心理カウンセラー、日本語教師、職業相談員、通訳等を初め、長年難民支援の経験を積んだ専門家が連携して業務を実施しております。

 今後も広く専門家やNGOの知見や経験をかりながら難民支援を進めていきたいと考えております。

山内分科員 生活費の支援に関しては、予算が足りなくて支給基準が急に厳しくなった、そういう報道が一時期なされていたこともあろうかと思います。そういった意味では、まだまだ生活費の支援なども拡充していく必要があるのではないかなというふうに思います。

 同時に、難民認定申請を出して、それが認められるまで、残念ながら、恐らく一年半とか二年とかかかるケースが大半だと思います。その間、就労ができなくて、就労ができないけれども、生活費がもらえるのは、たしか上限が四カ月とか半年とか、そんなに長い期間生活費を続けてもらえないわけですから、申請している間にも働くことを認めてあげる、こういう措置が本当は必要なのではないかと思います。

 その点に関して法務省にお尋ねしますが、難民認定申請中に働くような制度をつくることはできないんでしょうか。

千葉国務大臣 そういう御意見があること、それから御提起があることを私もよく存じております。そういうことが可能であれば、それも一つ考えなければいけないことかなというふうに感ずるところですが、まだまだそこまでちょっと論が煮詰まっていないというところではございます。御指摘は十分よくわかります。

 ただ、今の段階では、そういう意味で法務省として努力をしなければいけないのは、やはり認定まで今大変時間がかかるという、そこを何とか少しでも短くして、そして、今、四カ月ということですけれども、そことのすき間ができるだけないようにしていくことからまず努力をしなければというふうには思っております。

山内分科員 確かに、もし認定が半年ぐらいで終わるのであれば働く必要がなくなりますので就労ビザを考える必要もないので、認定を早くするか、就労を認めるか、多分どちらかなんだと思うんですね。ですが、実際、認定はそんなに簡単にできるものではないというのはよくわかります。外国語、いろいろな言語の書類を見たりするので時間がかかる、それはわかると思いますので、スピードアップか就労を認めるか、あるいは生活保護費を二年ぐらい支給するか、何らかのオプションをきちんと打ち出していただきたいと思います。

 実は、自民党政権のときも同じ質問を法務省にしたら、そのときよりも大分前向きな答弁になりました。ぜひ千葉大臣、政権交代の成果を私も実感しましたので、前向きな御検討をお願いしたいと思います。

 それと、続きましては、ビルマ、ミャンマーとも呼びますけれども、民主化運動にかかわっている人はビルマ難民という言い方を好みます。私もビルマ難民と呼びたいと思いますが、その第三国定住が試行的に始まります。

 外務省にお尋ねしますが、法務省にも後でお尋ねします。

 私は、大変すばらしい、画期的なことだと思います。アジアの国では最初に入るのかな。数が少ないという批判もありますが、やはり最初は難しいからパイロット事業的に少人数でやる、十分妥当な発想だと思います。そういった意味では、何としても成功させていただきたいという思いは持っております。

 そういった意味で期待を込めて質問しますが、今発表されているスキームではちょっとサポート体制が薄いのかな、もっと手厚いやり方をしないと適応できないんじゃないかな。ヨーロッパの国などでは、結構、二年ぐらいみっちり政府がサポートしたり、あるいはアメリカだと、むしろ政府よりも民間のNPO、赤十字などを含めてNPOが大変手厚い支援をしているといったような、まあ、長所がありますが、日本の場合は、どちらも、NPOの方も政府の方もまだまだ体制が不十分だと思います。その点について外務省はどういったことをお考えでしょうか。

武正副大臣 第三国定住は、自発的帰還及び第一次庇護国への定住と並ぶ難民問題の恒久的解決策の一つと認識しております。

 国連難民高等弁務官事務所、UNHCRは、難民問題に関する負担分担の適正化の観点から、第三国定住による難民の受け入れを推奨しておりまして、我が国も、国際貢献及び人道支援の観点から、一昨年十二月の閣議了解で、来年度からパイロットケース、今委員おっしゃったように、タイのメーラ・キャンプに滞在するミャンマー難民を年一回、約三十人、三年連続して受け入れることにしております。本年九月を目途に難民を呼び寄せ、定住支援プログラムを実施する予定でありまして、受け入れ難民の我が国社会への定着性などを検証した上で、本格的な受け入れを実施するか否かを判断していきたいと考えております。

山内分科員 ぜひ成功させて本格的に受け入れていただきたいと思います。ちょっと時間がないので法務省には質問しません。

 その難民の受け入れに当たって、これまで難民事業本部、正式名称はもっと長いんですが、その難民事業本部という、大変外務省にゆかりのある組織が伝統的に日本における難民支援を担ってまいりました。歴史的にも大きな役割を果たしてきたとは思いますが、ただ、組織の内容を見ると、予算なんかを見ても非常に管理費の割合が高いように感じますし、事業本部長さんは外務省のキャリアの方が毎回いらしているようですし、課長ポストも外務省から一人行っていると思います。

 そういった意味で、せっかく脱官僚、民主党政権ができました、もっと民の力を生かすという意味では、こういった、政府のお金に丸抱えでやってもらっている財団中心に受け入れを進めていくというとどうしてもコストが高くなってしまうんじゃないか。

 難民事業本部のような半公的な組織が関与することは大変重要だと思っております。難民の受け入れに当たっては、日本語教育で文化庁と連携しなくちゃいけない、就労支援で厚労省と協力しなきゃいけない、そういった意味では、そういう外務省の影響力のある財団がいるというのは、いいところ、悪いところ、両方あると思います。

 ただ、私が思うのは、NPOとそういう財団とのすみ分けを考えるべきじゃないかな。末端のソーシャルワーカー的な業務とか末端の生活支援とかは、もっと、地方自治体とか、民間のNPOとかそういうボランタリーな人たちとの連携が欠かせないと思います。そういった意味では、この難民事業本部というところ、もちろん意義はあるんですけれども、そっちばかりお金を出すのではなくて、もっとNGOに対してお金を出していけるような、そういうスキームづくりが必要ではないかなと思います。

 そういった意味で、第三国定住も含めてですけれども、今のスキームでは、どれぐらいの予算というかお金がNPOに行って、どれぐらい民間のNPOとの連携を図っているということになっているでしょうか。

武正副大臣 委員の御指摘は、幅広く難民認定事業にかかわる体制をということで、NPOへの委託というようなことも御提案をいただいておりますので、難民支援関連事業を難民事業本部が実施しておりまして、外務省は、事業内容を精査の上、人件費及び事務所経費を含む管理費予算について、平成二十一年度以降の予算においては前年度より削減をしているわけであります。

 難民保護事業の委託のあり方については、難民の方々の安全性、保護の必要性など難民保護事業の特殊性に留意しつつ、また効率的な実施の観点から検討していきたいと思っております。

 二十二年度については、二億八百万円ということで管理費の予算案となっております。委託費全体は六億一千九百万円ということでございます。

 以上です。

山内分科員 私は、外務省の人間が一人でも入っているからけしからぬとは言うつもりもありませんし、例えば、外務省には特殊言語の専門家がいらっしゃると思います。ミャンマーの難民受け入れに力を入れているときであれば、ミャンマー語ができる専門職の方に出向してもらって何年か働いてもらう、そういうケースはあってしかるべきだと思っておりますが、ただ、何か指定席のように毎回毎回本部長は外務省の人がやってきて、そういう組織が、民間の発想とか民間の視点を入れた援助事業をやっていく上では、そういう天下りが恒常的に、トップの人が立っている、この状況はいかがなものかな。まあ、現役出向だと思うんですけれども。

 それについて副大臣の御見解をお尋ねします。

武正副大臣 岡田外務大臣が外交演説で、独立行政法人、公益法人の見直しをうたっておりまして、この二十三日に、外務省では、私と吉良政務官をヘッドにしまして、独立行政法人・公益法人見直しタスクフォースを立ち上げておりますので、御指摘の点も含めて検討していきたいというふうに思っております。

山内分科員 私は昔、具体名は出しませんが、某NPOで働いていたときに、内閣府の市場化テストに応募したことがあります。今外郭団体がやっている同じ仕事を三分の一のコストで我々はできますというプロポーザルを書きましたが、当時の政権には却下されました。

 そういった意味では、せっかく民主党政権になって、政権交代で、もっと民の力を生かそう、新しい公共とおっしゃるんであれば、例えば難民事業本部に出しているお金と同じぐらい、あるいは難民事業本部に使っているお金の一部を民間に委託していく。

 今、本当にワーキングプアと言っていいぐらいの給与水準で働いているNGOのスタッフの人はたくさんいます。だから安上がりだからいいとは言いませんが、ただ、こういう熱意のある人たちが余りよくない待遇で働いている状況を考えると、NPOに対してもっと助成を出していくということは決して間違っていないと思いますし、恐らく外務省の出向の方よりも一人当たりのユニットコストは安いはずですから、そういう意味では、今難民事業本部に出しているのと同じぐらいをNGOに出していくとか、そういう形で、今後難民支援の予算をふやしていかざるを得ないと思います。

 第三国定住がふえていけば、もっと人もふえるでしょう。難民認定申請も、これまで日本はほとんど鎖国状態でしたけれども、千葉大臣のもとに難民の受け入れがふえていけば、きっとその支援活動のための予算というのはもっと必要になると思います。そのときに、難民事業本部がどんどんぶくぶく肥大化するんではなくて、NPOとのすみ分けというかNPOとの連携で、もっとお金が民間の非営利組織に流れる、そういう仕組みをぜひつくっていただきたいと思っております。

 それに関して一言副大臣の御見解をお尋ねします。

武正副大臣 法務省さんとしっかりと連携をして取り組んでいきたいと思います。

山内分科員 国内の難民支援に限らず、一般的にNGO支援のあり方ということで、今、民主党政権になってから、新たなODAに関する指針づくりなどにも取り組まれていると聞いております。そのときに、今後ODAをNGOにどれぐらい流していくかとか、NGOとの協力の新しい枠組みとか、そういう検討が今恐らくなされていると思いますが、今後どういう方向を目指していくべきか、武正副大臣の御見解をお尋ねします。

武正副大臣 これも外務省内に、こちらは福山副大臣、西村政務官をヘッドに、ことしの夏までにODAのあり方を見直す、同じくタスクフォースを立ち上げて、既にスタートをしております。この中でもやはり、ODAのあり方の見直しの中で、当然NGOとの連携強化、こういったものをうたっていくことになろうということで、今も政務三役、特に副大臣、政務官がNGOの皆さんとのそうした意見交換、これを進めております。

 また、今、具体的に新年度からの事業といたしましては、NGOインターンシッププログラムというものが新年度から始まることなども含めて、そうした動きがありますが、今言ったような見直しの中で、そうしたものも、さらに新たな提案なども含めて位置づけていきたいというふうに思っております。

山内分科員 NGOと外務省の連携を深めていこうと思ったら、恐らく人材の交流というのが大事ではないかなと思います。

 前の政権のときでも人事交流というのはちょっとずつやられていまして、今やっていないかもしれませんが、若手の外務省の職員がNGOで何週間か研修を受けるとか、そういうことはやってきました。

 もっと深い人事の交流であったり、あるいは、別に期限つき任用でも中途でもいいんですけれども、NGO出身の人がもっと外務省の中に入ってくるとか、それからNGO大使というポストが外務省にはあります。今、NGO大使、歴代、外務省の官僚の方がやっているんですけれども、NGOとの連携を考えると、NGOの出身の人、あるいはNGOじゃなくても、学者でも企業の方でも国連機関の出身の人でも、だれでもいいんですけれども、むしろ民間の人がそういうNGO大使のようなポストについて、外務省の政策にもっと関与していく、その方が新しい公共を国際的に広げていく意味でも意味があることじゃないかなと思います。そういった、新しい、もっと人的な面での交流とかを深めていくことが必要だと思っております。ぜひ御検討いただければと思います。

 それでは最後に、難民認定の枠組みとか難民の受け入れ、ここ数年の間に難民の認定制度というのは非常に改善されたというふうに思っております。ここ十年ぐらいで見ると、大分民間の代表の人が難民の審査に入れるようになったりとか、そういう意味ではちょっとずつよくなってきていると思っておりますが、今後さらによくするために大臣はどういったアイデアをお持ちでしょうか。

千葉国務大臣 今後、より一層難民の支援について、私たちも努力をしなければいけないというふうに思っております。

 今御指摘いただいたように、この間、難民審査の参与員、ここに多くの民間の方に入っていただいて、それによって審査のスピード化を図ってきている、こういうこともございます。専門的ないろいろな経験、こういうものを生かしていただいているということもありますし、それから、大変うれしいのは、UNHCRとかIOM等、そういうところとの連携もこのところ非常に活発に、密にさせていただくような形になってまいりました。

 私、今後やはり、日本の社会が大きな意味で外国の皆さんにどういう形で窓を開いていくのか、あるいはそのためにどういう受け入れの体制をつくるのか、人と人との交流という中で国際貢献をどのように果たしていくのか、こういう大きな視点で、骨太の考え方で考えていかなければいけないのかなというふうに思っております。私だけでは微力でございますので、新しい政権がそういうことに大きな指針を出せるようになれば私は大変よいことだというふうに思っておりますので、そういう方向に努力はしたいと思っております。

山内分科員 ある意味、中国の孫文だって日本に来ていた時期があったと思いますし、フィリピン独立の英雄ホセ・リサールも東京にいたことがあります。日本は戦前、アジアの独立運動の指導者が日本に逃げてきて滞在していた、そういう経緯もありますし、今、ビルマの難民の皆さんの中には、アウン・サン・スー・チー政権ができたらもしかすると閣僚クラスに抜てきされるんじゃないかと言われている有力な学生運動のリーダーも実は日本におります。そういう人たちを今敵に回しておくと、いつか日本がしっぺ返しを食らうかもしれません。

 そういった意味では、現ミャンマー政権との友好関係も大事ですけれども、難民として来ている人たち、こういう人たちもきちんと保護しておかないと、日本に対して悪い感情を持って帰国されたら、日本にとって国益を損ない、それから日本に対する国際的な評価にもつながってくると思います。ぜひ、難民の受け入れ、もっと拡大していく方向で頑張っていただければと思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

城井主査代理 これにて山内康一君の質疑は終了いたしました。

 次に、中島正純君。

中島(正)分科員 民主党・無所属クラブの中島正純でございます。よろしくお願いいたします。

 本日は、取り調べの可視化のことについてお伺いをしたいと思っております。先ほど取り調べの可視化について御質問をされて、重なってしまったのでちょっと残念ですけれども、気合いを入れて質問させていただきたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。

 私は、当然、取り調べの可視化については賛成でございますし、時代の流れが、そうしなければならないというふうに思っております。ただ、私は、元大阪府警の警察官、刑事でございまして、取り調べのプロとして、ずっと取り調べをやってきました。そうしたときに、この取り調べの話が持ち上がった以前は、実は反対だったんです。それはなぜかといいますと、やはりいろいろなメリットの部分とデメリットの部分があるということ。

 メリットといいますと、今、第一線の現場の刑事といろいろ話をしてからこの部屋に入ったんですが、言った言わないということで後で裁判でもめることもなくなるということが一番大きなことになってくるということ。あと、今まで、裁判になってごろっと供述を変えるということは本当に多々あることです。今までは犯罪行為について行ったことを述べていた被疑者であっても、裁判になって急にごろっと変える。そうなると、裁判の時間がいたずらにずるずると延びてしまうことを防ぐことができるということについては、本当にいいことだ、日本全国の警察官はそのように思っていると思うんです。

 ただ、デメリットの部分であれば、警察の取り調べ室の中ではいろいろな人間ドラマがありまして、取り調べの中では、被疑者と人間関係をつくっていって、被疑者も刑事のことを信用して、そして徐々に徐々に供述をしていくという流れがほとんどでございます。時には一緒に笑ったりとか一緒に泣いたりとか、時には家庭の中の事情にまで入り込んで、なぜ殺人を犯したのかということを聞いていく。そのためには家庭の内情までやはり知っていかなければならない。そのためには、談笑したりとかいうことで人間関係をつくっていきます。

 そのときに、もし被害者の御家族がその談笑している、笑っているところの部分のDVDを見られたときにどのように思われるか。例えば、娘さんが殺されて本当に悲しんでいるところを、刑事と被疑者が笑って楽しくやっているということがあっては、本当に、被害者の家族の方、また被害者の方も浮かばれないということも起きるかもしれません。

 そして、ビデオを録画していることによって、被疑者も権利の主張をしてきてなかなか供述をしないということが起きるかというふうに思います。そうなると、まず、逮捕状の執行にちゅうちょしてしまう。逮捕状をとるときに警察がよほどの証拠を固めなければなかなか逮捕状を請求することが難しいということも起きてしまう。それから、供述がなければ起訴されないという可能性も起きてくる。また、有罪にならないという可能性も起きてくる。ということで、最終的にどうなるかというと、本当に悪い者が逮捕されない、そうなると治安が悪くなる、それが最終的に国民に返ってくることになるということが一番デメリットだというふうに思っております。

 しかし、先ほども話がありましたけれども、鹿児島県の公職選挙法の冤罪事件、また富山県の強姦被疑者の誤認逮捕の冤罪事件などなど、警察官もやはり自分で自分の首を絞めているというところがあります。ですから、そのようなことを考えると、取り調べの可視化は当たり前だというふうに私は思っております。

 そこで、御質問をしたいんですが、私はそのように取り調べの可視化は必要だというふうに思っております。千葉大臣にお伺いいたします。基本的なことになるかもしれませんけれども、なぜ取り調べの可視化が必要なのか、お願いいたします。

千葉国務大臣 今、これまでの経験を踏まえたお話を伺いながら、大変私も、一つ一つうなずかせていただく、こういうお話でございました。本当にありがとうございます。

 やはり、今もう既に質問の中でも触れていただいておりますけれども、取り調べを録音、録画して可視化するということは、一つは、取り調べの適正を確保する、これが大きな理由だというふうに思いますし、これもお話がございました、自白の任意性といいましょうか、裁判員裁判にもなっておりますので、これが裁判の場で延々と争われるということになると、負担が大変大きくなります。

 そういう意味では、裁判の迅速ということにも、録音、録画することによって、それを見ていただく、供述の変遷が、一体何だったんだろうということを見ていただくことができるというメリットがあると思いますので、基本的に、流れとしては、取り調べを可視化するという方向にこういう理由から私は進めていくべきだというふうに思います。

中島(正)分科員 今、取り調べの可視化に関する法務省内での勉強会とか、ワーキンググループで会議をしておられるというふうにお聞きしておりますが、それを行おうと思われた理由をお聞かせ願えますでしょうか。

千葉国務大臣 民主党は、取り調べの可視化というのを大きな、基本的な政策に掲げております。それを実現する方向、それは持ちながら、委員が御指摘をされましたように、実務上はどういう問題があるのだろうか、あるいは、すべてを可視化することが妥当なのか、あるいは必要なのか、いろいろな、そういう実務を踏まえた、捜査の実情を踏まえた検証や、あるいは論点をきちっと勉強する必要があるだろうというふうに考えまして、それで録音、録画をする方向を見定めながら、実務できちっと運用できる、そういうものをつくり上げていこうということで勉強会を立ち上げているところでございます。

 委員のような御意見をぜひまた、いろいろな形で実情を教えていただければこの勉強の実も大変上がるのではないかというふうに思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

中島(正)分科員 副大臣にお伺いいたします。

 その省内勉強会、ワーキンググループにおける現在の検討状況をお聞かせ願えますでしょうか。

加藤副大臣 私からも、今の先生の御指摘、大変参考になりまして、また時期を見て生の御意見を承れればと思っているところであります。

 御質問の省内勉強会及びワーキンググループでございますけれども、勉強会の方は、第一回目を昨年の十月二十三日に開催をいたしまして、それ以降、現在まで三回開催をいたしました。その中身といたしましては、取り調べの録音、録画制度の導入に関する当面の主な論点の整理、あるいは、一月に法務大臣が大韓民国を訪問して取り調べの録音、録画の実情を視察してこられましたので、その御報告また意見交換等を行ってまいりました。

 一方、ワーキンググループでございますが、国会の日程にもよりますけれども、おおむね毎週一回ぐらいのペースで今開催をいたしておりまして、こちらでは、さらに細かな部分を含めまして、取り調べの可視化のメリットから、現在検察における取り調べの一部録音、録画を実施しておりますが、その実情、あるいは取り調べの適正確保方策の概要、あるいは取り調べの実務に至るところまで議論をさせていただいております。

 また、この会かどうかは別にいたしまして、先ほど申し上げましたとおり、ぜひ率直な生の御意見を承れればと思っております。

中島(正)分科員 済みません、副大臣にもう一度。

 先ほどの質問とダブるかもしれませんが、省内の勉強会、ワーキンググループにおいて、今現在どのような論点を取り上げて検討されているのか、お願いいたします。

加藤副大臣 現在、まだ継続中でございますし、これは与党の先生方にも政策会議等で近いうちにすべて御報告をしたいということは申し上げているところでありますが、今申し上げましたように、取り調べの可視化のメリットというのがある一方で、さまざまなお立場の皆さんからデメリットの方も御指摘をいただいてございます。

 実際に、検察においても一部録音、録画は今既に実施をしているところでありますので、その実情を踏まえてメリット、デメリットの整理をさせていただいて、仮に可視化を実現したとなったときの実務上の問題点をできるだけクリアしたいということで、その問題点についても論点整理をさせていただいております。

中島(正)分科員 今回、日本としても、初めて行うことですから、やはりいろいろ参考となるものが必要かと思うんですが、今後、諸外国における取り調べの可視化の実施状況、どのようなものかということを調べられるとか、そういうことはお考えでしょうか。

加藤副大臣 今申し上げたとおり、千葉大臣におかれましては、一月の初めに大韓民国の方に御視察に行かれております。これも今御指摘の一つだと思いますが、加えまして、この先、例えばイギリス、フランス、あるいはアメリカの一部など、既に実施をしている地域、国もございますので、それらの地域も含めて、諸外国の取り調べの可視化の実施状況については、ぜひ調査を進めてまいりたいと思います。

 ただ、一方で、もう釈迦に説法だとは思いますけれども、刑事司法制度そのものの差異、日本との違いというものも大変大きいものがございますので、それも十分に踏まえた上で研究、検討を重ねたいと考えております。

中島(正)分科員 今後、諸外国における被疑者の取り調べの可視化の状況について、いろいろ調査をしたりするお考えはお持ちでしょうか。

加藤副大臣 既に、日本にいてわかる部分については、先ほど申し上げましたワーキンググループ等でも議論をさせていただいているところですけれども、実際に、諸外国の法制度あるいはその運用状況等というのを、現地に赴くことも含めてより一層詳しく調査検討していくというのは、今回の可視化の議論におきまして極めて有効であるというふうに考えてございますので、ぜひ適切な時期にさらに実行してまいりたいというふうに思ってございます。

中島(正)分科員 私、警察官でしたけれども、警察、検察、違うところもいろいろあると思うんですけれども、国内において取り調べを可視化することについて、課題とかリスク、私も先ほどお話ししたんですが、今持ち上がっているものなどがあるでしょうか。

加藤副大臣 これも、先ほど先生から既に御指摘をいただいた、取り調べの現場においてはやはり取り調べ官と被疑者との信頼関係、人間関係というのが非常に重要なんだというお話がございましたけれども、それを構築していって真実の自供を得ることに対してこれがかえって妨げになってはならないというようなことは、当然指摘をされているところであります。また、被疑者本人の羞恥心というんでしょうか、気持ち、あるいは、組織犯罪などでは顕著かと思いますが、報復を恐れるというような気持ちから被疑者本人が真実の供述をためらうということになってもまた問題でございますので、こんな点が指摘をされております。

 あるいは、一方、全体の制度、仕組みの問題といたしましては、果たして、すべての事件、事案について、しかも全過程を録音、録画するということが本当に必要だろうかという論点もあります。もう御案内のとおり、膨大な事件数になりますので、それだけの人的な労力あるいは金銭的なコストをかけるだけの価値が本当にあるのか、そうでない事件もあるんじゃないか、こんな議論もされているところでありますので、今後もまた、さまざまな御意見をいただきながら、この課題、リスクというものについても整理をしてまいりたいと思っております。

中島(正)分科員 千葉大臣にお伺いいたします。

 そのような課題やリスクについて、今後どのように検討していかれるか、対応策をお願いいたします。

千葉国務大臣 今委員からも御指摘をいただいたような課題もあり、そして、省内の勉強会、ワーキンググループでも、今そのような論点あるいは問題点をいろいろと整理させていただいているということでございますので、そういうことをきちっとまとめながら、実務的にも十分にそれを生かしていただけるような、そういうものとしてまとめられるように今後の議論を進めてまいりたいというふうに思っております。

中島(正)分科員 取り調べの可視化をすることによって、やはり、警察の逮捕力の低下、それから検察の起訴のちゅうちょ、それから有罪獲得の困難、これらのリスクが本当に大きく発生するんじゃないかなというふうに思っております。マイナスになることはあっても、今のまま、そのままの状況でいけばプラスになることはないというふうに思ってしまうんです。

 それを打開するためには、例えば、今省内の勉強会とかワーキンググループの中で、司法取引やおとり捜査それからDNAの簡素化とか、新しい捜査手法、それから、検察に強力なる捜査の権力といいますか、力を与えていかなければならないのではないかなというふうに思います。

 悲しいかな、今の日本の制度では、外国と比べると、外国では物的証拠だけで起訴されるということがあります。しかし、日本は、今、供述と物的証拠、この二本柱でないとなかなか起訴されないというような状況でございます。ですから、可視化をすることによって、被疑者が取り調べ室の中で何もしゃべらない、権利の主張をしてしゃべらないような状況になってしまったときに、物的証拠だけではなかなか難しい状況になるんじゃないかというふうに思います。

 ですから、日本の制度もこれから、DNAも相当進歩しております。何人かのうちの一人というような、本当に精度も上がっております。ただ、今、DNA鑑定をするには、裁判官の令状請求が必要でございまして、本当にいろいろな大変な作業が必要でございます。それを簡素化して、例えば、事件が起きた、その関係者の皆様方に何らかの、試料を採取するためにいただく、それによってDNA鑑定を簡単にできるようにするということが必要じゃないかと私は思うんです。

 海外では、今、物的証拠だけで起訴している状況。でも、日本では、なかなかそれが難しくて、供述と物的証拠でないと起訴されない、そして有罪に持ち込めないという状況でございますが、今後そういうことも検討されていかないのかどうか、お聞かせ願えますでしょうか。

千葉国務大臣 今御指摘の問題等、これは本当に現場からのお声だというふうに思います。

 この問題については、法務省それから警察庁の方でも御議論をいただき、中井大臣のもとの勉強会もスタートしていただいて、そういう中では、新しい捜査手法等々にも大変研究を深めていただくという方向のようでございます。私たちも、そういうものもぜひ参考にさせていただきたいというふうに思っております。

 それから、御指摘のことは、本当に日本の捜査あるいは司法手続の根幹にかかわるような問題の御提起だというふうに私は思います。そういう意味では、可視化という議論の中で、日本の捜査のあり方、あるいは刑事司法のあり方、そして、そういう中で録音、録画というのをどういう位置づけにするのか、こういうところまで本当は議論が深まらなければいけないのではないかというふうに思いますけれども、そういうデメリット等も十分に頭に置きながら考えていきたいというふうに思っております。

 従来、とかく、私たちも、そういう現場の実情とか捜査の困難さ、そういうことをまだまだ十分に検討が終わらない段階で法案をつくっていた、そういう部分もあったかというふうに思います。そういう意味では、ぜひ議員に積極的に御議論に参加をいただければ、また中身が大変濃いものになっていくのではないかというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

中島(正)分科員 ありがとうございます。

 それでは、検察当局で行っておられる取り調べの一部録音、録画の現在の実施状況を、副大臣、お願いいたします。

加藤副大臣 先生御案内のとおり、平成十八年の八月以降、検察当局におきまして、取り調べの一部録音、録画を実施いたしております。これは、裁判員裁判における被告人の自白の任意性の効果的かつ効率的な立証方策を検討するということが目的でございますが、裁判員裁判対象事件に関して、立証責任を有する検察官の判断と責任において、取り調べの機能を損なわない範囲内で相当と認められる部分の録音、録画の試行をしてきたところであります。

 その後、二十一年の四月からは、裁判員裁判対象事件のうち、自白調書を証拠調べ請求することが見込まれる事件の全件について、原則として同様の録音、録画を実施いたしていると聞いております。

 数についてでありますけれども、平成十八年八月から昨年十二月末までで三千七百八十八件の録音、録画を行ったものと承知をいたしております。

中島(正)分科員 その録音、録画についても、当然、うまくいったものもあれば、うまくいかなかったものもあると思うんですけれども、検察当局で行っていた取り調べの一部録音、録画について、どのような実例において録音、録画を実施することができなかったのか。副大臣、お願いいたします。

加藤副大臣 実際に検察当局で試行あるいは実施してきた場合に録音、録画を実施することができなかったというものでありますけれども、例示をいたしますと、被疑者本人が録音、録画を拒否したために実施しなかった事案、あるいは、外国人事件で通訳人の協力が得られなかったために実施できなかった事案というようなものが挙げられております。

中島(正)分科員 今おっしゃった、通訳人の協力が得られなかったため録音、録画ができなかったということですけれども、そのような場合にも録音、録画を実施する方法について、可視化の勉強会等で検討されたりしないのでしょうか。副大臣、お願いいたします。

加藤副大臣 実は、御指摘をいただきまして、数を調べますと、通訳人の協力が得られなかったために録音、録画が実施できなかったというケースが、総数はそう多くはありませんが、比率でいうと意外とありまして、いい御指摘だと思いますので、今後、いずれかのタイミングで研究をしてみたいというふうに考えてございます。

中島(正)分科員 そのほか、当然、録音、録画することについては、大半が被疑者に対して有利に運ぶことだとは思うんですけれども、拒否した被疑者がいるということであれば、その拒否した理由は何だったんでしょうか。副大臣、お願いいたします。

加藤副大臣 一部、理由が判然としないものもございますけれども、多くは、取り調べを受けている自分の姿を他人に映像として見られたくないというような意見であるとか、あるいは、そもそも自分は事実を供述しているんだから録音、録画は必要ないではないかというような声、あるいは、先ほども申し上げましたけれども、共犯者等がある場合におきまして、その報復を恐れるというような、申し立てによって拒否したというケースがあったようであります。

中島(正)分科員 取り調べを録音、録画したDVDは、弁護人以外に開示されることはないのでしょうか。先ほど報復とかいうこともありましたので、そういうことを恐れて恐らく拒否するということもあり得るのではないかと思うんですが、弁護人以外に開示されることはないのかどうか。副大臣、お願いいたします。

加藤副大臣 多少法律的なところで御説明を申し上げますと、刑事訴訟法における証拠開示に関する件についてお答えをするといたしますと、このDVDについては、被告人が起訴された事件に係る公判前整理手続において被告人または弁護人に対し証拠開示をされるということ以外には、被告人の共犯者が起訴された事件に係る公判前整理手続において検察官が被告人の供述調書を証拠調べ請求している場合に、当該共犯者または共犯者の弁護人に対し証拠開示される場合があるというふうに理解をいたしております。

中島(正)分科員 それでは、そのDVDはどのような場合に公判廷で再生されたりするんでしょうか。

加藤副大臣 取り調べを録音、録画いたしましたDVDについて公判廷において証拠調べを行う場合といたしましては、検察官、被告人または弁護人が証拠調べを請求し、裁判所がこれを認めて決定した場合というのが一つございます。あるいは、そもそも裁判所が必要と認めるときに職権で証拠調べをするということを決定した場合、こういう場合に公判廷で証拠として取り調べられることになりまして、再生されるということになります。

中島(正)分科員 そうなると、ここで大きな問題が一つ起きてくるんじゃないかと思うんです。

 その取り調べを録音、録画したDVDが公判廷で再生された場合、傍聴人、いわゆる一般の方々の目や耳に触れることがあるのではないかなというふうに思うんですが、その辺はいかがでしょうか。

加藤副大臣 公判廷における証拠調べの方法でありますので、このDVDの再生方法につきましても、個々の裁判体の判断によるというふうに承知をいたしておりますが、検察当局におきましては、法廷での証拠調べにおけるDVDの再生におきましては、被告人のプライバシーなどに対する配慮の必要から、原則として、裁判官、裁判員及び弁護人など訴訟当事者の手元の小型モニターにのみ映像が映されるように配慮をいたしております。法廷内の大型モニターに映し出されて傍聴人がそれを直接見るということが避けられるように、裁判所に対してその旨を求めているものと承知をいたしております。

 一方、仮に裁判所によってそのような配慮がなされた場合でありましても、音声については傍聴人が聞くことができるということになっていると承知しております。

中島(正)分科員 わかりました。ありがとうございます。

 最後に、千葉大臣にお伺いいたします。

 非常に物議を醸し出すようなことを言うかもしれないんですが、取り調べの可視化をするということになれば、私は弁護士の接見も可視化したらどうかなというふうに思っておりまして、法律を変えなければならない大きな問題になるとは思うんですけれども。ただ、やはり、今、被疑者の人権ばかりが尊重されて、そして被害者の人権が損なわれているのではないかなというふうに思います。必ず裏には被害者、犠牲者がいてるということを忘れてはならないというふうに思うんです。

 先ほども申し上げましたけれども、取り調べをしているとき、弁護士が入った次の日の朝からやはり態度がごろっと変わっているんです。これは、ほとんどがそうなんです。まだ記憶に新しいことかもしれませんけれども、山口県の母子殺害事件でもそうですが、例えば、心神耗弱を装えとかいうようなこともあるかもしれません。そして、弁護士の接見の中で何が話をされているのかということが本当に不透明な部分もあります。取り調べの可視化をするのであれば、弁護士の接見もしてこそ、やっとフェアじゃないかなというふうに私は思います。

 取り調べの可視化は私は必要なことだと思うんですけれども、それと同様に、弁護士の接見も可視化する。ただ、可視化したそのDVDをオープンにするわけではなく、例えば、裁判官の許可を得た場合だけ検察、弁護士に開示されるとか、そういういろいろな方法を考えていって、今後そういう弁護士の接見も可視化していったらどうかというふうに私は実は考えておりまして、これをこれから幅広く広めていって、何とかそのようにできるように一生懸命頑張っていきたいと思うんですが、千葉大臣の御見解をお伺いできますでしょうか。

千葉国務大臣 今、冒頭に被害者の方のお話をなさいました。私も、被疑者に対するいろいろな権利保護がされている、しかし、被害者の皆さんの救済とかあるいは保護というのは、これから本当に大事なことだ、いろいろな形でこれはやっていかなければいけないというふうに思います。

 ただ、弁護人の接見の可視化というのは、衝撃的というか、多分、これまでにどこでも御指摘がなかったものではないか。そういう意味では大変注目をされる御発言なのかなというふうに思います。私も、正直、思いも寄らない御提起でございます。ただ、これは、被害者の方の救済というのとは必ずしも私は直結しないものだというふうには思います。それと、弁護人の接見交通権というのは、やはりこれは認められた大変重要な権利でございます、被疑者の防御権を保障するという意味で。ですから、衝撃的な御指摘。

 これは、また委員がいろいろな皆さんにお話をしていただき、御理解をふやしていただくと。それはぜひ頑張っていただければというふうには思いますが、これについて直ちに何か法的な措置をとるとか、それを制約するような形になる可視化というのは、私は、憲法的にもあるいは司法の大きな基本からいってもなかなか難しいのではないかというふうには、今の段階は思います。

中島(正)分科員 ありがとうございました。

城井主査代理 これにて中島正純君の質疑は終了いたしました。

    〔城井主査代理退席、主査着席〕

    ―――――――――――――

吉田主査 次に、外務省所管について、昨日に引き続き質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。櫛渕万里君。

櫛渕分科員 民主党の櫛渕万里でございます。

 私は、きょう初めて委員会の質問に立たせていただきます。昨年の総選挙で初当選をして以来初めての質問となりまして、多少緊張しておりますが、福山副大臣、きょうはどうぞよろしくお願いを申し上げます。

 本日は、鳩山新政権における核軍縮政策について質問を進めていきたいと思います。

 なぜ初質問でこのテーマを取り上げるかということを先にお話しさせていただきますと、昨年は、日本で初めて国民の力で政権交代が実現をいたしました。そうした歴史的なタイミングにまるで合わせるかのように、核兵器廃絶に向けての世界的な機運が高まってきていると実感をしているからであります。

 もちろん、アフガン戦争を初め各地の紛争やテロ、そして核拡散、この大きな現実的な課題が大きく立ちはだかっていることではありますが、しかし一方で、政治の大きなリーダーシップで、昨年の四月にオバマ大統領による核なき世界へのプラハ演説、そして続いて鳩山首相によります九月の国連演説、また昨年の十二月には市民社会も含めて提案されたICNNDの報告書の提言、こうした一連の流れが、ちょうどこれから三月に発表される予定のアメリカのNPR、また四月の核セキュリティーサミット、そして五月に五年ぶりにNPT再検討会議が開かれますけれども、そういったところに向けて、核軍縮に向けてかつてないほどの歴史的な分岐点が今であると思うからです。ぜひよろしくお願いいたします。

 そうした中、まず最初の質問は、先週の二月二十一日に日豪外相共同ステートメントが発表された件についてお尋ねしたいと思います。

 この中で、核兵器の役割を核使用の抑止という唯一の目的に限定すること、そして非核保有国に対して核兵器を使用しないという安全保障の実効性を高めることについて、考え方を検討し、議論を深める、このようなことが内外に発表されました。

 そこで、質問です。

 このステートメントが発表されるまでの間にオーストラリア側とどのような議論があったのか、そして、このような宣言を今発表されたねらいを教えていただきたいと思います。

福山副大臣 櫛渕委員にお答え申し上げます。

 外務副大臣の福山でございます。昨年の衆議院選挙で当選をされて初めての質問ということで、私がお答えさせていただくのはいささか恐縮でございますが、お答えをさせていただきたいと思います。

 また、櫛渕委員におかれましては、議員になられる以前から、地球的規模の課題に対しまして、NGOの立場から、またいろいろな専門家の立場から御尽力をいただいていることに対しまして、心から敬意を表する次第でございます。

 今まさに委員からのお話がありましたとおり、核軍縮に対して、プラハの演説、これはもう歴史的に、二〇〇九年四月五日というのは、大変な歴史を刻む演説だというふうに思っておりますし、私も、他の国の大統領の演説を聞いてこれほど感銘を受けた演説はない。例えばケネディの演説とかは我々は記憶にないわけですけれども、現職のアメリカの大統領の演説を聞いて、私は、印象的だったのは、この目標はすぐに到達できるものではないと言って、しかしながら希望を失ってはいけないんだというメッセージに非常に強く感銘をいただいたわけです。

 まさに先ほど御指摘をいただいたように、その後、鳩山政権が国民の多くの支持をいただいてスタートし、鳩山総理の国連の演説において、核軍縮に対して強くコミットしたいということを宣言いたしました。

 そういった文脈の中で、オーストラリアとは、御案内のように川口・エバンス委員会が報告書を提出いただきました。この報告書を我々は参考にしながら、オーストラリア政府と、先週の外相会談において、何らかの核軍縮政策についてステートメントは出せないものかということを非公式に、継続的に議論を積み重ねた結果、先週の岡田外務大臣そしてスミス外務大臣とのステートメントに至ったわけでございます。

 その意義でございますが、まさにオバマ大統領のプラハ演説に始まる、ことしは核兵器のない世界の実現に向けたある意味でキックオフの年だというふうに認識をしている、そして、そのキックオフの年に、まさに国際社会の努力を日本とオーストラリア政府で後押しするという意味合いのステートメントがあのステートメントだというふうに私は認識をしております。

 ステートメントにおいては、委員も御指摘のように、核兵器不拡散条約、いわゆるNPT運用検討会議に向けた実践的核軍縮・不拡散措置に関するパッケージを追求していくことで意見が一致しました。これは、NPT運用検討会議において日豪でパッケージで提案をしていこう、つまり、NPT運用検討会議に日豪の政府の提案が反映をされるためにパッケージをつくっていこうという、まずそのことについての一致を見た。

 それから、二つ目でございますが、核兵器のない世界を実現するための第一歩として、先ほど御指摘のありました、核兵器を持たない国に対して核兵器を使用しないという安全保障の実効性を高める、いわゆる消極的安全保障の考え方、それから、核兵器保有の目的を核兵器使用の抑止のみに限定するといった唯一の目的宣言等、この考え方を検討する、そして議論を深めていくということでも一致をいたしました。

 我々としては、この問題提起をさらにパッケージに昇華させて、そしてそのことが、NPTの運用会議の成功という短期の目標のみならず、核兵器のない世界に向かう一つのプロセスとして、核リスクの低い世界を実現していくために、今後も議論していくための一つの問題提起として、この共同文書をつくらせていただいたというのが意義だと認識をしております。

櫛渕分科員 ありがとうございます。

 核なき世界に向けての大きな世界へのメッセージの発信をまさに行ったという点について、高く評価をし、歓迎したいと思います。

 そこで、今度は、日本の核軍縮政策についてお尋ねしたいと思います。

 そういった流れを受け、そして世界にメッセージを発信する中で、一方、従来、日本政府は、核以外の脅威に対しても核の抑止力が必要であるという立場であり、そのために核軍縮に抵抗するような姿勢も一部報道がありました。だからこそ、一月二十九日の外交演説、そしてこの日豪外相共同ステートメント、また昨年九月の鳩山総理によります国連演説、この明言された一つ一つが大変重要なステップであると理解をしており、高く評価しているところです。

 そこで、お伺いしますが、福山副大臣、この一連の流れは、鳩山政権としてはこれまでの日本政府の従来の立場を変更した、そのようにとらえてよろしいのでしょうか。

福山副大臣 これまでも、日本は、唯一の被爆国として核兵器を持たない、非核三原則を初めとした立場を維持していたというふうに思います。

 他の政権との違いを殊さらに強調することが、私は今の段階では建設的だとは思いません。私どもとしては、核軍縮というのは恐らく日本国民全員が希求をしていることだと思いますし、そういった意味合いでいえば、一番明確に核軍縮についての言葉が二国間であらわれたのは、さきの日米で行われた共同ステートメントだというふうに思っているんです。

 先ほど櫛渕委員が言われたように、日本は、ともすれば、核の抑止力に頼っている分だけ核軍縮については消極的だというふうに見られる嫌いがありました。しかしながら、日米の共同ステートメントでは、日本と米国政府は、「すべての核兵器保有国に対し、核軍縮の過程における透明性、検証可能性及び不可逆性の原則を尊重するよう要求する。米国政府は、国家安全保障政策における核兵器の役割を低減させることをコミットし、日本国政府及び米国政府は、他の核兵器保有国に対し、同様の措置をとるよう要請する。」ということを昨年の日米の首脳会談の際に共同ステートメントとして発表しております。

 つまり、わかりやすく言えば、我が国は、現在、米国とも共同し、国家安全保障政策における核兵器の役割を低減させることをすべての核兵器保有国に対して要請しているという段階でありまして、これは消極的どころか積極的に核兵器の低減について日本はコミットしたと各国は受けとめているというふうに思っておりますので、我々としては、そのことのプロセスの中で、先ほどお話がありました日豪外相のステートメントも位置づけているというふうに考えているところでございます。

櫛渕分科員 ありがとうございます。

 世界に向けての積極的な働きかけということと同時に、もう一度確認ですけれども、日本の核政策というところについては、核以外の脅威に対して核に依存しないという方向で、今後日本の政策を見直す予定だと受けとめてよろしいでしょうか。

福山副大臣 これは、今の御質問によると、核兵器以外の脅威に対してとおっしゃいましたので、その脅威が何かにもよりますし、安全保障政策は一概にゼロかサムかではありません。

 日本の脅威、そして安全保障の環境をしっかりと議論しながら、核抑止の問題については並行して議論をしていかなければいけないので、櫛渕委員の御指摘は私は理解はいたしますが、それは日本の安全保障政策と表裏一体の中で、日本の周辺の安全保障の状況をかんがみながら並行して進めていくべきだというふうに思っておりますので、今直接的に櫛渕委員の御指摘されたことがイコールにはならないというふうに私は受けとめております。

櫛渕分科員 ありがとうございます。

 先ほど日米というふうなお話が出ましたので、次に、三月に発表が予定されておりますアメリカのNPRとの関係について、続けて御質問させてください。

 米国では、今、核体制見直し、いわゆるNPRの議会への報告が若干おくれているようでございます。まさにこのステートメントの中でも取り上げられております核の役割の限定を認めるかどうかということが一点、そして二点目は、現在保有している核兵器の近代化を進めるかどうか、この二点が争点になると聞き及んでおりますけれども、日本とも大変関係の深い内容だと思うんですね。

 日本にとっては、こうした今の現状、日本が核に依存する、核の抑止力の中で安全保障が保たれているという現状の中において、これまでは、日本がこうしたアメリカの政策に反対をしている、だからアメリカ自身がこの第一歩、核軍縮に向かう政策に踏み切れないという声も一方で聞こえてくるわけですけれども、岡田大臣のこの間の一つ一つのステートメント、そして外交演説等は、核なき世界に向けての目標に反する政策を求めるものではないと述べられておりますし、NPRにおいてアメリカが核の役割を唯一の目的に限定する、そのように方針を出せばそれを歓迎すると申しておりますので、改めてこの点について、副大臣からも御明言いただけないでしょうか。

 NPRの議論が今行われている中で、これまで、日本自身が核抑止力を中心に安全保障政策を持っているので、アメリカが核の唯一の目的に踏み切る、あるいは核兵器の近代化を進めるという核軍縮には及ばない政策について、日本自身から反対の声が届いているようにアメリカにはメッセージが伝わっていると思います。

 しかし、今、岡田大臣初め政務三役の先生方が努力されている方向性というのは、日本は少なくとも新しい政策についての見直しあるいは議論を深めていくという方向性でのメッセージを世界に発信されていると思いますので、その点について、改めて副大臣からもお願いします。

福山副大臣 これも、我が国の安全保障上及び国際的な安全保障を損なわないようにしなければいけないので、なかなか神経質な問題であることは間違いありません。

 まず、NPRの内容についてですが、これはなかなか、アメリカ自身のNPRの作業をしているところで、我々としては、そのことを予断を持って今コメントするのは差し控えたいというふうに思っています。

 ただし、オバマ政権が、いずれにしろ核のない世界を希求されているわけです。そのことに対しては、鳩山政権も、鳩山総理も岡田外務大臣も、積極的にバックアップしていく姿勢は全く変わりません。

 しかしながら、我が国としては、一方で、日米安保条約は堅持をしなければいけないと思っておりますし、その抑止力のもとで日本の安全を確保していくということは必要であると考えているところでございます。そして、この核抑止力のもとで自国の安全を確保することと、長期的な課題である核のない世界を希求することは、我々は矛盾しないと思っています。そのことを矛盾するとか、だからといってゼロかサムかという議論をすると、自国の安全保障を損なう可能性があるというふうに思っていまして、そのことに関して言えば、両方を求めていくことが日本の安全保障政策としては重要なことだというふうに私は思っております。

櫛渕分科員 明快なお答えありがとうございます。

 それでは、特に日本の安全保障について、もう少し質問を進めさせていただきます。

 第一は、日米関係、日米安保改定五十年における日米安保の深化の議論、ちょうど行われており、そして第二には、国内においては防衛計画の大綱の見直し作業が進んでおります。

 この二つの議論の中で、何らかの形で、核兵器のない世界を目指し、核兵器の役割を減らしていくということが明示されるよう求めたいと思いますが、お考えはいかがでしょうか。

福山副大臣 御案内のように、日米同盟は五十周年を迎えまして、今、両国間で、まず事務レベルを含めて、日米同盟の深化についてどういった課題があるのか、またどういったことを求めればいいのかについて議論しているところでございますので、まだ議論が始まったばかりでございますから、内容についてはまだお話ができる状況ではありません。

 しかし、一方で、日米同盟の深化、中身、それから防衛計画の中身というよりかは、まさに櫛渕先生御案内のように、四月には核セキュリティーサミットがあります。五月にはNPTの運用検討会議がございます。そして、夏ごろから秋口にかけて、時期はまだ決定をしておりませんが、我が国で核軍縮と不拡散の国際会議を開催いたします。

 まさにこのプロセスが、私は、日本の核軍縮に対する思いを世界に広げていく、世界に伝える最大のプロセスだというふうに思っていまして、そこと並行してもちろん日米安保の深化の議論はありますけれども、それは決して分かれる話ではないので、今のプロセスの中で一体となって我々としては核軍縮の議論を進めていきたいというふうに思っております。

櫛渕分科員 ありがとうございます。

 先ほど、周辺の状況にかんがみということもあったので、三点目として、具体的なこれからのプロセスをお尋ねしたいと思います。

 やはり北東アジアの情勢です。北東アジア非核兵器地帯ということを中長期的な目標として民主党も従来から掲げてまいりました。こうしたところに向けての姿勢も、一歩踏み出すべきではないかというふうに思います。しかし、一方、周辺状況ということで大きな懸念もある中、例えばどのような条件が生まれれば北東アジアの非核地帯化の議論が可能になるとお考えか、お聞かせいただけますでしょうか。

福山副大臣 これは、北朝鮮からの核実験等が行われているやという報道等がある状況の中で、まず、北朝鮮の核の脅威というのを我が国としては取り除かなければ、非核化という議論は全く絵にかいたもちになるというふうに思っておりまして、ここはいろいろな条件があるというふうに思いますが、北東アジアの情勢自身はまだまだ不確定要素がありますので、今、逆に、条件をこちらから提示をすること自身が、今の安全保障上の環境に変化をもたらす可能性もあるので、一概に、こういう条件が整えばということはなかなか発言がしにくいというのが正直なところでございます。

 ただし、明確に言えるのは、北朝鮮の核の脅威がある限りは、今の議論というのはなかなか現実化をしない。まず、北朝鮮に強く六カ国協議への復帰を求めることが第一の我々のやることだというふうに思いまして、だからといって、先ほどから申し上げているように、長期的な核兵器のない世界に向けての希望や努力は怠るということではありませんので、そこは御理解をいただきたいと思います。

櫛渕分科員 北東アジアの情勢については、私は、何よりもやはり六者協議を早期に再開させること、その中で、北東アジアにおける持続可能な安全保障メカニズムが何なのかという議論を一方で同時に目指す方向として始めていくことが、核兵器、北朝鮮の今の硬化した状況を改善させることにも役立つと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。

 そして、続きまして、こうした安全保障の分野で、これまで日本の政権の中ではなかなかできてこなかったことでありますけれども、いわゆるNGO、そして市民社会との協力のあり方について何点かお尋ねしたいと思います。

 これまでも世界各国では、民間の専門家、そしてNGOが議論する中で、例えば対人地雷禁止条約、そしてまたクラスター爆弾禁止条約などが成立をしてまいりました。こうした日本の安全保障を含めて、核なき世界に向けての取り組みにNGOの参加ということをこれから日本政府としてもぜひ考えていただきたいと思います。

 一つ具体的には、五月のNPT再検討会議の政府代表団の中にNGOをアドバイザーという形で参加させるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

福山副大臣 櫛渕委員も御案内のとおり、気候変動枠組み条約、COP15、コペンハーゲンの会議におきましては、実は政府代表団の一員に、初めてNGOのメンバーと経団連の方と連合からの代表者にお入りをいただいて、会合に参加をいただきました。

 ただ、今、NPTの運用検討会議については、どのような代表団を構成するのかについてまだ決まっておりませんので、今のところは、検討の余地はあると思いますが、議論にはまだなっておりません。今後、専門家を含め、どういった方に参加をいただくかについては、岡田大臣とも協議をして検討していきたいというふうに思います。

櫛渕分科員 福山副大臣のお考えとしては、いかがでしょうか。

福山副大臣 これは、NPT運用検討会議の、例えば議論のされ方とか、どういうメンバーでどういう議論がされるのかということによってかなり変わってくるというふうに思っておりますし、実はNPT運用検討会議の中身の議論は国家の安全保障の関係が出てまいりますので、恐らく守秘義務も含めて、かなり情報は厳密に管理をしなければいけなくなるというふうに思いますので、そのことも含めて、専門家、NGOの参加については検討していきたいというふうに思っております。

櫛渕分科員 ぜひ検討をお願いします。

 そして、その政府の代表団に入るかどうかということの検討のプロセスで、先日、二月十五日付で、被爆者団体、そしてNGOの方から、副大臣初め岡田大臣の方へも、市民との意見交換の場、NGOとの政策協議の場のお願いというのをレターとして出させていただいています。これは特に、ICNNDの報告書に市民社会も参加した形でこの間プロセスが始まっておりますので、ぜひこの協議の場は実現していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

福山副大臣 私は、核兵器のない世界をこれから希求をしていくときに、市民社会やNGOの参加は不可欠だと思っています。いかに市民社会の中で核兵器のない世界というものに対する雰囲気というか空気が醸成されるかというのは大変大きな要素でございまして、先ほどお話がありました地雷等は、まさに市民から出てきた話が世界的に大きな流れになったということも、僕は間違いないというふうに思っております。

 ですから、岡田大臣になられてから、外務省はNGOとの懇談等はより多くなりましたし、私がよくかかわっている気候変動のところでも、大臣を初めとして私どもがNGOと定期的に懇談をしようという議論もしておりますので、核軍縮の問題について、NGO、市民社会の皆さんと懇談をし、意見交換をし、政策を考えていくことについては全くやぶさかではございませんし、そこは逆に歓迎をするところだというふうに思っています。

櫛渕分科員 ぜひよろしくお願いします。期待をしたいと思います。NGOが参加する中で、日本の新しい外交というのは新しい境地を切り開いていくものと確信をしております。

 幾つかまだ質問があったんですが、時間が来てしまいました。最後に、私のこの核軍縮に対する思いを述べさせていただきたいと思います。

 やはり、核軍縮の議論というのは、長い間、いわゆる各国国家戦略という中で余りに技術的、数字で語られてきたことが多かったと思います。確かに、安全保障の中ではそれがいわゆる常識だったかもしれません。しかし、特に核兵器については、核兵器がもたらす人間の苦痛や荒廃、そして破壊のリアリティーということを余りに世界はまだまだ理解をしていない。

 核実験が起こったとき、広島、長崎のパネルを持って現地に私、乗り込みました。例えばインド、パキスタンの人たち、うちには安全保障として、抑止力として必要だとこぶしを振り上げますけれども、しかしパネルを見た途端にどれほどその非人道性にショックを受けるか、こういうことがまさに実態でもあります。

 こうした核軍縮、核不拡散の議論がまるでゲームであるかのように数字や技術で行われてきている時代をまさに変えて、人間の暮らす地球であり、核政策によらない、核兵器によらない新しい安全保障のあり方をどう次代に切り開いていくか、それはまさに日本の役割だというふうに私は思います。

 被爆国として核廃絶を目指すだけでなく、その先に核兵器によらない新しい安全保障のあり方を日本の外交の柱にぜひ掲げていただき、長期的な視野になるかと思いますが、そして今、変化を、これから日本も、日本の核抑止力そして安全保障体制、慎重な深い議論が必要になってくるかと思いますが、ぜひその大きな方向性、お持ちいただいて、福山副大臣には、ぜひ岡田大臣とともに新しい日本の外交を確立していただきたいと思っております。ぜひよろしくお願いいたします。

 きょうはありがとうございました。

吉田主査 これにて櫛渕万里君の質疑は終了いたしました。

 これにて本分科会所管の審査はすべて終了いたしました。

 これにて散会いたします。

    午後零時二分散会


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