衆議院

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第1号 平成23年2月25日(金曜日)

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本分科会は平成二十三年二月二十三日(水曜日)委員会において、設置することに決した。

二月二十四日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      竹田 光明君    武正 公一君

      本多 平直君    山口  壯君

      齋藤  健君    野田  毅君

      遠山 清彦君

二月二十四日

 武正公一君が委員長の指名で、主査に選任された。

平成二十三年二月二十五日(金曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 武正 公一君

      浅野 貴博君    阪口 直人君

      竹田 光明君    中島 政希君

      初鹿 明博君    本多 平直君

      山口  壯君    山崎 摩耶君

      あべ 俊子君    齋藤  健君

      野田  毅君    村田 吉隆君

      遠山 清彦君

   兼務 井戸まさえ君 兼務 山本 幸三君

   兼務 赤嶺 政賢君

    …………………………………

   法務大臣         江田 五月君

   外務大臣         前原 誠司君

   財務大臣         野田 佳彦君

   内閣府副大臣       末松 義規君

   法務副大臣        小川 敏夫君

   財務副大臣        五十嵐文彦君

   環境副大臣        近藤 昭一君

   防衛副大臣        小川 勝也君

   内閣府大臣政務官     阿久津幸彦君

   外務大臣政務官      山花 郁夫君

   財務大臣政務官      尾立 源幸君

   最高裁判所事務総局人事局長            安浪 亮介君

   政府参考人

   (内閣法制局長官)    梶田信一郎君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    金高 雅仁君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    西川 克行君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    青沼 隆之君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            磯田 文雄君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           篠田 幸昌君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           金谷 裕弘君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局安全衛生部長)       平野 良雄君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    木倉 敬之君

   法務委員会専門員     生駒  守君

   外務委員会専門員     細矢 隆義君

   財務金融委員会専門員   北村 治則君

   予算委員会専門員     春日  昇君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月二十五日

 辞任         補欠選任

  竹田 光明君     初鹿 明博君

  山口  壯君     向山 好一君

  齋藤  健君     あべ 俊子君

  野田  毅君     柴山 昌彦君

  遠山 清彦君     池坊 保子君

同日

 辞任         補欠選任

  初鹿 明博君     山崎 摩耶君

  向山 好一君     中島 政希君

  あべ 俊子君     齋藤  健君

  柴山 昌彦君     伊東 良孝君

  池坊 保子君     竹内  譲君

同日

 辞任         補欠選任

  中島 政希君     阪口 直人君

  山崎 摩耶君     浅野 貴博君

  伊東 良孝君     村田 吉隆君

  竹内  譲君     高木美智代君

同日

 辞任         補欠選任

  浅野 貴博君     竹田 光明君

  阪口 直人君     山口  壯君

  村田 吉隆君     野田  毅君

  高木美智代君     遠山 清彦君

同日

 第一分科員井戸まさえ君、山本幸三君及び第八分科員赤嶺政賢君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成二十三年度一般会計予算

 平成二十三年度特別会計予算

 平成二十三年度政府関係機関予算

 (法務省、外務省及び財務省所管)


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     ――――◇―――――

武正主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりましたので、何とぞよろしくお願いいたします。

 本分科会は、法務省、外務省及び財務省所管について審査を行うことになっております。

 なお、各省所管事項の説明は、各省審査の冒頭に聴取いたします。

 平成二十三年度一般会計予算、平成二十三年度特別会計予算及び平成二十三年度政府関係機関予算中法務省所管について、政府から説明を聴取いたします。江田法務大臣。

江田国務大臣 平成二十三年度法務省所管予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 法務省は、法秩序を維持し、犯罪や人権侵害から国民の安全と安心を守るという基本的な任務を遂行するとともに、国民にとって身近で充実した司法を目指して司法制度改革を推進しており、現下の厳しい財政事情のもとではありますが、この法務省に課せられた任務を円滑、確実に遂行するため、所要の予算の確保に努めております。

 法務省所管の一般会計予算額は、七千五百七億九千五百万円となっており、前年度当初予算額と比較いたしますと、七百九億七千一百万円の増額となりますが、平成二十二年度末をもって一般会計に統合される登記特別会計を合わせた前年度当初予算額と比較いたしますと、二百一億四千四百万円の減額となります。

 何とぞ、よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。

 なお、時間の関係もございますので、お手元に配付してあります印刷物を、主査におかれましては、会議録に掲載されますようお願い申し上げます。

 以上です。

武正主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま江田法務大臣から申し出がありましたとおり、法務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

武正主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

武正主査 以上をもちまして法務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

武正主査 この際、分科員各位に申し上げます。

 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。

 なお、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。竹田光明君。

竹田分科員 おはようございます。民主党の竹田光明でございます。

 きょうは、質問の時間をいただきまして、法務大臣、主査、本当にありがとうございました。

 私は、一昨年、衆議院議員となり、初めて配属された委員会が法務委員会でした。全く法律の専門家でもなく、法務委員会に所属されて、本当に不安な思いで委員会室に行ったことをきのうのように覚えております。

 昨年の事業仕分けにおきましても、法務省所管の公益法人の調査を担当いたしました。最初の印象からいいますと、法務省所管の公益法人だからさぞかしきっちりとして立派な法人が多いんだろうという予想をしてまいりましたが、余りにずさんなところが数多く、びっくりしたことを鮮明に覚えております。中には、民事法情報センターのように、法人自体が解散するような、そういう事例もありました。

 本日は、仕分けにお伺いして問題点を指摘させていただいた点が、その後、改善されているのかいないのか、そのことを中心に質問させていただきたいと思います。

 まず最初に、日本語教育振興協会、日振協について質問させていただきます。

 政府は、留学生三十万人計画を進めております。日本に来る留学生、そのほとんどがまず最初に接する場所が日本語学校だと思います。その日本語学校の印象、内容、態度、環境、そのことすべてが日本国に来る学生たちの第一印象となり、日本に好感を持つのか、嫌な思いをするのか、非常に重要な役割があると思っております。

 日本語学校の業者の中にも、ここで日本にいい印象を持ってもらい、勉強してもらって、日本とその国をつなぐ、これは国益になるんだ、そういう強い志を持って教育と経営に励んでいらっしゃる方もいれば、本当にお金もうけとして考えていて、私が行った際も、最近ブローカーが値上げをして困るとか、そういうブローカー相手の商売というようなことをおっしゃる経営者もおりました。

 その調査に際しまして、各地の日本語学校、また生徒、先生、いろいろな方からさまざまな御意見を聴取し、現在に至るまでおつき合いをさせていただいて、いろいろ勉強をさせていただいております。

 それでは、具体的にお伺いいたします。

 事業仕分けにおきまして、日本語教育機関の審査・証明を行う財団法人日本語教育振興協会について調査いたしました。日本語教育機関の審査・証明を行う唯一の機関であり、その権力は長年にわたり絶大なものがあり、印象とすると、日本語学校に対してやりたい放題をしているんじゃないか、そのような印象を持ちました。

 事業仕分けでは、廃止、法的により明確な制度に改めるという結果になりましたが、それから約一年が経過しております。

 法務省にお伺いいたします。

 現在の日本語教育の審査・証明事業はどのように行われているのでしょうか。

江田国務大臣 委員が初々しい目で、この国の統治のあり方について、的確に、いろいろな調査研究、そして提言をされていることには、心から敬意を表します。

 また、民主党政権になって、事業仕分けということで厳しくさまざまなところへメスを入れている、これも大変大切なことだと思っておりまして、そんな中で、法務省所管のいろいろな公益法人についても厳しい目が注がれている、これを真剣に、真摯に受けとめていかなきゃならぬと思っております。

 財団法人日本語教育振興協会のことでございますが、委員御承知のとおり、留学ビザを出す場合に、日本語教育を行う機関、これが適切な機関でなきゃいけないことは、これも言うまでもないので、法務省の告示でその機関を定めるということになっております。

 その告示をする場合に、財団法人日本語教育振興協会の証明で、適切な機関であるということで告示をすることができる、こういう仕組みになっていて、その財団が法務省所管の財団になっていた、文科省の方も共管していると思いますが。しかし、御指摘のようなさまざまな問題があって、これは、これでいいのかということになっておりました。

 現在のところ、参考にすることができるということでございますから、今は、この協会の証明を参考とせず、文科省とよく相談をしながら、文科省の意見を聞きながら法務省としての告示を行おうということにしております。

 というわけで、財団法人日本語教育振興協会のそういう仕事というのは、今、中断といいますか、休止しているということになっております。

 この財団法人自体については、今のところそういうことですが、それではどうするか。新しい機関をつくるとかいうことにはまだなっておりませんで、現在のところは、文科省の方とよく相談し、打ち合わせをしながらしていこう、順次進めていこうということにしているところです。

竹田分科員 ありがとうございます。

 今、事業仕分けでさまざまなところにメスが入ったと大臣おっしゃいました。よくマスコミでは、事業仕分けで幾ら減額になったとか、お金の面ばかりが強調されておりますが、私は、大事なことは、要らない事業、間違った事業が正される、なくなる、そういうことの方がより大きな意味を持つと思っております。

 法務省関連でいいますと、そんなに金額の多い法人ばかりではありませんが、あるべき姿に戻っていくことが事業仕分けの意味かなと思って、事業仕分けの調査に参加させていただいておりました。

 事業仕分けの成果を受けて、現在、暫定的ではありますが、日振協が審査を行っていないということに、ひとまず安心いたしました。

 それでは、法務省と文科省に伺いますが、今後、日本語学校の審査はどういう形になっていくのでしょうか。

磯田政府参考人 今後の日本語教育の質の問題につきまして、昨年十一月に、高等教育機関に進学・在籍する外国人学生の日本語教育に関する検討会議を立ち上げ、質の保証につきましては、その審査基準、審査枠組み、主体のあり方等、さらに、日本語教育機関と高等教育機関との連携につきましては、渡日前、渡日後、入学前、入学後、さらには就職に向けてという、現在の外国人留学生及びその前の方々を視野に入れた検討を行っているところでございます。

竹田分科員 そもそも日振協の問題は、法務省、文科省、外務省の三省のすき間で、皆不自由しているところに、たまたま気のきく協会があって、そこが好き勝手みたいなことをしたというのが実情だと思っております。

 将来的に、日本語学校はどの省庁が担当する形になるんでしょうか。

江田国務大臣 事業仕分けにおいても、日本語学校の審査業務自体の必要性、これは認められているところで、御指摘のような、ずさんな運用ということでは困るので、これはこれから考えていかなきゃならぬところでありますが、告示の審査に当たりましては、外国人の入国、在留という観点、これも一つあります。同時に、日本語教育と質の高い教育、これも不可欠でありまして、法務省はその旨を文科省に伝えております。

 さあ、これは、どちらがというよりは、やはりお互い協力をしながらきっちりとした行政運営を総合的に進めていかなきゃならぬということだと思いまして、現在のところは、日本語教育のあり方については、今文科省の方から説明があったとおり、文科省で検討が行われていますので、その結果を踏まえて、また制度の見直しについては結論を出していきたい。

 今のところ、どこがやるというような結論を出しているわけではありません。

竹田分科員 ぜひ連携を密にしていただいて、以前のような状態にはならないように、よろしくお願いいたします。

 次に、矯正協会についてお聞きします。

 裁判員裁判が昨年から行われて、テレビ等で、裁判員の方の感想、それから、悩む様子、涙を流す様子、さまざまな映像が流れております。この裁判員制度によって、裁判に自分たちも参加しているんだという国民の関心が非常に高まってきたと思います。どちらかといいますと、私たち一般市民からすると、専門家が議論をして量刑を決めていたという印象のある裁判が、例えは適切かどうかわかりませんが、血の通った、私たちの気持ちが入った判決に変わっていく、そういう印象を受けております。

 矯正行政の一端を担う矯正協会についてお伺いします。

 直近の会長、四代にわたり検事総長がついておりました。事業仕分けの中では天下りだという指摘を受けましたが、現在はどうなっておりますでしょうか。

江田国務大臣 矯正協会も事業仕分けでメスを入れられたことはよかったと思っております。

 御指摘のように、過去四代の矯正協会の会長が検事総長経験者ということになっていたのは事実でございますが、直近の矯正協会会長は、平成二十二年の十月十九日に任期を満了いたしまして退任されました。現在は、会長職は空席になっております。学識経験者等から適任者を選任中であるということでございまして、現在は空席になっております。

竹田分科員 民間から選ぼうという姿勢は、やはり事業仕分けの成果だと思っております。

 私が以前、協会にお尋ねしたとき、なぜ四代にわたって検事総長なのですかとお聞きしたら、非常に高度な専門的知識が要るのでほかの役所の方では務まらないという説明を受けたんですが、この四カ月にわたって空席というのは余り好ましい状況ではないと思いますので、ぜひ早急に会長をお決めいただきたいと思います。

 テレビ等で裁判員の方のお話、マスコミ等の話を見ても、今私たちの関心が、犯罪者に対する、刑罰を与えるということから、更生はできるのかできないのか、また遺族の方の心情とか、少しずつ変わってきているように思います。

 その中で、社会が刑務所に期待する役割も変わってきております。刑罰でそこに閉じ込めるというよりも、更生をさせる、再犯防止を求める、そういう考えが社会的になってきていると思います。刑務所は、罰を与える、強い、そういうイメージがありましたが、更生、復帰、再犯防止という観点からの国民の要請にこたえ、変わっていくべきだと思いますが、どういうことをお考えでしょうか。

江田国務大臣 刑罰の歴史というものがございまして、大昔は、それはもうひどい刑罰を行っていたんですね。目をそぐ、腕を切り取るなどなど、石川五右衛門じゃありませんが、かまゆでとか、いろいろなことがあった。

 しかし、そういう残虐な刑罰で、見せしめでというのではなくて、やはり人ですから、それは、いろいろな犯罪を犯しても人である限り更生をさせていこうということで、いわゆる応報刑から教育刑への流れというのがずっと進んできたのが、洋の東西を問わず、人類の刑罰をめぐる歴史であっただろうと思っております。

 日本でも同じようなことで、犯罪者が刑務所に収容される、それは応報の面が全くないわけではないんです。やはり刑罰権というのを、それぞれの被害者の人が直接行使をするということではなくて、すべて国家が独占するということでやりますから、それぞれ自分の怒りの気持ち、これを国家は引き受けなきゃならぬということはそのとおり。しかし、やはり人ですから、もう一度社会に戻っていただく、あるいは、そうでない場合でも、いい人になっていただく努力はしていかなきゃならぬということで教育刑をやっていきたい。

 ところが、やはり従来は刑務作業というものが受刑者処遇の中心だったのは事実です。そこで、平成十八年の五月に、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律、これは画期的な法律でございまして、この法律ができて以降、個々の受刑者の問題性あるいは特徴等に応じて、作業だけでなくて、改善指導とかあるいは教科指導とか、そういう矯正処遇を行っていこうということで、今、例えば、改善指導につきましては、薬物の依存離脱指導であるとか、あるいは、人の命を奪ったような場合には、受刑者に被害者の視点をしっかり取り入れた教育をやるような特別改善指導であるとか、その他、出所後の就労支援とか、いろいろそうしたことにも精いっぱい意を用いていく、そういうことを今やっている最中でございます。

 政府としても、犯罪対策閣僚会議のもとに再犯防止対策ワーキングチームをつくりまして、そこで議論をし、今後とも改善指導のプログラムの充実に努めていきたいと思っているところです。

竹田分科員 今おっしゃいましたが、再犯防止ということが一番大事なテーマだと思いますので、ぜひそのようにお願いしたいと思います。

 また、実際に仕分けの調査で刑務所を訪れたときに、いろいろお話を聞いてまいりました。

 刑務所の総務部長が矯正協会の支部長を兼ねております。矯正協会の現役職員の加入率が九八%で、俸給の二百分の一を会費として徴収しているということでしたが、加入率が九八%で任意というのはちょっと信じがたいんですが、これは強制なんでしょうか、任意なんでしょうか。

江田国務大臣 任意でございます。

竹田分科員 また、会費の支払い方法を法務省の方に尋ねたところ、三回とも、皆自主的に、現金で持ち寄るというお話だったんですね。ちょっとイメージで、現金で大勢の方が持ち寄るというのは全然信じられなかったので、府中刑務所に行った際、どうやって払っているんですかと聞いたら、引き落としだということをその場で聞いたんですが、現在はどういう形で会費を徴収しているんでしょうか。

江田国務大臣 これは、私も余りよく存じ上げていることではないんですが、説明を聞きますと、何か現金でというようなことを答えたこともあるようですが、そんなことはないだろうと。

 ただ、給与の天引きというわけではなくて、今は給与を口座振り込みにしていますね。そこから自動に引き落としというんですか、保険料とかをそういう形で引き落とす、それと同じように、預貯金の口座からの引き落としが中心だと思いますが、そういうようにして、本人の希望によって実施しているというように承知をしているところです。

竹田分科員 あくまでも本人の希望で徴収している、また、そういう形式も本人の希望によるということで間違いないでしょうか。

 そして、そのようにして集められたお金が、平成二十二年度の収支予算書によると、四億一千三百五十七万円にも上ります。

 現役の刑務官から集めたお金はどのように使われているのか、その大切なお金は刑務官たちに喜んでもらっているのか、それを具体的に、例があれば教えていただきたいと思います。

江田国務大臣 これは、矯正活動に関する調査研究であるとか、それから、矯正図書館というのがありまして、その運営、あるいは研修の教材であるとか参考書の発行といったことなんですが、現場の矯正職員に一番身近なのは、恐らく、矯正活動の功労者を表彰する、間もなくその表彰式も行われるんですが、これによって皆エンカレッジされるとか、あるいは、子弟、子供たちの奨学金の事業、それから、公務災害が起きた場合に、お見舞金ですが、そういうものを支出するとか、そうしたことで、身近に、みんなで互助の活動をしているというように承知しておりまして、矯正行政の活動や矯正職員の福祉に有効に活用されており、多くの矯正職員の理解も得ているものと思っております。

竹田分科員 刑務作業の製品についてお伺いいたします。

 イメージ的に、たんすとか、大きいものをつくっているというイメージが多くて、実際、展示販売会に行きますと、非常に大きいたんす、机、立派なものがいっぱいあります。実際、それが今、需要があるのか、売れているのかということを現場の販売の方に聞きますと、なかなか売れていないというお話もありました。では、なぜそのような大きいものをつくっているのかと聞きますと、これが伝統だという答えでありました。

 伝統は伝統で結構なんですが、やはり時代とか社会の状況に合ったことをすべきじゃないか、自分たちと、百年やってきたことと現在は違うのだからもっと現在の状況を考えたらどうだということをちょっとお話しさせていただきましたら、受刑者の中にさまざまな方がいるから難しいことは無理なんだ、だからこういうことになっているんだというお話もありますし、納入業者の方に、業者としてもっといろいろな提案をしたらどうだというお話をしましたら、大きいものは単価があるからこれでいいんだという業者の説明もありまして、どんなものかなと思って帰ってきたんです。

 作業全般を見直しまして、例えば農業であるとか介護であるとか、そういうことも刑務作業として取り入れるとか、そういうお考えはどうなんでしょうか。

江田国務大臣 刑務作業ででき上がった製品などについて御関心を持っていただいて、大変ありがたく思っております。

 CAPICといいますか、これが、矯正展といいまして、できた製品の即売所をずっとやっておりまして、私も何度か行ったことがあるんですが、確かに、大きなたんすであるとか、時にはおみこし、そんなものをつくって、だけれども、おみこしもお祭りに買っていただくようなケースもあるようですが、まあ、そんなものが中心というわけではなくて、これは、こういうこともしていますよというある種の宣伝効果のようなものだと思います。それでも、私も参議院の議長時代にベンチを買ったりしまして、なかなかいいものもできたりするんです。

 それからまた、その刑務所がある土地に伝統的に伝わっている工芸、漆とか、なかなかそういう伝統工芸の伝承者がいなくて、刑務所の中でそういうものが伝わっているというようなこともあったりで、それもまた大事なことだとは思います。

 しかし、さはさりながら、雇用情勢、世の中の状況が大きく変わっていく中で、やはり刑務作業も対応していかなきゃいかぬということで、職業訓練につきましては、今おっしゃる、例えば農業であるとか、あるいは新しく、介護であるとか、既に大分導入もしておりますが、さまざまな新たな展開を今やろうとしているところです。

 例えば、農業ですと、農場へ行きますから、そうすると外へ出るんですね。そのことが一定の緊張感と一定の解放感とを与えて受刑の効果に大変役に立つとか、そうしたことを今考えているところです。

 最近ですと、ちょっと細かくなりますが、平成十九年度には、配管とか測量とかビルハウスクリーニングとか、二十年度には、CAD、これはコンピューターのようですが、総合美容技術、平成二十一年度には、建築塗装、あるいは内装施工、電気通信設備など、こういうものにも刑務作業を展開していく努力をずっと続けております。

竹田分科員 今のお話ですと、外部の作業も加わっているということでしょうか。

江田国務大臣 外部で行う作業もそれは入っております。

竹田分科員 大分時間がなくなってきましたが、受刑者が出所時に渡される報奨金の平均が、平成二十年のデータで五万九千八百三十一円です。刑罰でありますから、作業対価としてお金を渡すことに否定的なことを言う方も多いですが、現実の問題として、五万円、六万円を持たされて社会にいきなり出ていけといったときに、なかなか生活を自立できないのではないか。結局、知り合いに相談する、知り合いに頼る、そうすると、ついつい悪い仲間のところに声をかけ、助けを求め、またもとのもくあみに戻って、犯罪を繰り返す、そういうような例があると聞いております。

 出所後に生活して自立できるようにある程度のお金を、ある程度ですが、お金を渡す方向に持っていくとか、また、そういう施設をつくるとか、自立できるような出所後の対策、そういうことをどういうふうにお考えでしょうか。

江田国務大臣 作業報奨金というのは、今冷たい考えの人もいるとおっしゃいましたが、さはさりながら、やはり懲役ですから、刑務所で役務を行う、作業を行う、これが刑罰なので、そこへお金をそのまま、その作業の対価として適正な給料を払ってしまったのでは、そういう刑罰という効果、機能がなくなってしまうということもあって、なかなか難しいところです。

 しかし、委員がおっしゃるとおり、何も、一銭も持たずに社会に飛び出して、すぐまた再犯に戻ってしまうというのでは、これはいけません。

 そこで、作業報奨金というのは、刑務作業に従事した受刑者に対して、円滑な社会復帰のための資金という意義も確かに持っていますので、今後とも、諸般の事情を考えながら、適正な額になるように努めていきたいと思っております。

 なお、受刑者一人当たりの釈放時の支給額ですが、平成二十二年度が六万三千余、平成二十三年度はそれが六万六千余というように、ちょっとですが上がってきているのは確かなので、そこは努力していきたいと思います。

竹田分科員 もう時間も参りましたので、あと印象を述べさせていただきますが、本当に、罰することで、閉じ込めて、また繰り返す、そういうイメージがある矯正行政から、反省をし、また社会に復帰して、社会の一員として社会生活を行う、我々の仲間となる、そういうことが求められておると思います。

 一層、更生、自立のための矯正指導をお願いいたしまして、ちょうど時間になりましたので、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

武正主査 これにて竹田光明君の質疑は終了いたしました。

 次に、中島政希君。

中島(政)分科員 おはようございます。

 江田法務大臣に質問をさせていただきます。

 先般、江田大臣の所信を私も法務委員として拝聴いたしました。その中で、座右の銘として江田三郎先生の言葉を引用されました。道というものはもともとあるものではなくて、歩く人が多くなればそこが道になるのだ。もともとは魯迅の言葉でしょうか。私、大変印象深く、感銘を受けて拝聴いたしました。

 というのは、私が学生のころ、菅直人さんが、あきらめないで参加民主主義をめざす市民の会というのをやっているのをちょっと知りまして、その講演会に江田三郎先生がお出になった。その後、一人で社会党を離党されて、菅さんと一緒に社会市民連合をつくって、全国区の参議院比例に出るということを表明されたんですね。ところが、その直後に急逝をされまして、そして江田先生が裁判官をやめて、かわりに社会市民連合から全国比例に出て当選された。私はそのとき初めて国政選挙で投票いたしました。江田先生に投票したのを覚えております。

 今の民主党の源流をたどると、その一つの源流には、江田三郎先生の離党、社会市民連合の結成というのもあったのかなということで、所信のお言葉を印象深く聞いた次第でございます。

 そういうことで御質問を申し上げますが、前参議院議長であられる江田先生が法務大臣になる。三権の長をされた方が入閣されるというのは余り例のないことでございまして、衆議院では戦後四人おられます。そこに肖像画がある中村梅吉先生も、衆議院議長の後、法務大臣になられたわけですが、参議院では江田先生が初めての例になります。

 これは並々ならぬ御決意で入閣されたんだと思いますが、一方、参議院の権威また三権分立の原則からいって好ましくないのではないかというような批判も一部にあります。それにもかかわらず、入閣をされて、菅内閣を支えるというお立場に立たれたわけでございますが、その辺の御決意、あるいはこれに対しての批判にどのようにお答えになられるか、お聞きを申し上げたいと存じます。

    〔主査退席、本多主査代理着席〕

江田国務大臣 懐かしい話を聞かせていただきました。

 私は、私の父が当時の社会党の中でまさに悪戦苦闘する、しかし政権交代への道筋が描けない、それどころか社会党がどんどん教条的になっていく、そんな中で、父の悪戦苦闘ぶりを見ながら、もうこれは日本の政治は余り可能性がないから、私自身は裁判官でやっていこう、こんなふうに思っていたんです。ところが、その父が最後にまさに命がけで新しい旗を掲げて、そして、しかし実は、命がけがすぐに本当に命がなくなるという事態になって、私自身がもう半ばあきらめていたその政治を変えるために命がけになる人がいるんだ、それが自分の父親だ。しかも亡くなったのが私の誕生日だったんですよ。

 これは、親の跡を継ぐなんて嫌なことだけれども、やはりだれかがやらなきゃならぬ、こんな思いで裁判所に辞表を出して跡を引き継いだんですが、その父のまくら元で初めて菅直人さんに会って、そしてこの旗をもう一度掲げ直して走っていこう、こう言って握手をしたのが始まりなんですね。私の父と菅さんとは、その前、今おっしゃったその討論会で会って、それが菅直人、江田三郎、出会いの唯一の機会だったわけです。

 ということで三十数年やってきて今ここに至っているので、私は、やはり私どもが目指した政権交代、市民の政治、これをどうしても定着させていかなきゃならぬ、何があってもこの道をちゃんと開いて、日本の民主主義というのを新たなステージに持っていかなきゃならぬ、そういう思いでいっぱいであります。

 一方、〇七年から一〇年まで、私は、多くの皆さんの大変なお力添えで、参議院の議長という重責を務めさせていただきました。去年の暮れからことしの初めですか、菅内閣が改造するというような話があって、マスコミで私の名前も出たりしたときに、これは大先輩から、委員の地元の大先輩もおられますが、そういう人から、おまえ、参議院の権威というものをおまえは背負っているんだぞ、菅内閣というのはただ一代の内閣であって、参議院の権威は永遠なので、軽はずみなことはしちゃいかぬ、そういうおしかりというか御意見もいただいて、そのこともよくわかっているつもりです。

 しかし、去年の参議院選挙で岡山の有権者の皆さんに選んでいただいたときに、その有権者の皆さんの期待というのは、議長の権威を持って、言ってみれば、おつに澄まして権威でございますと六年間暮らしなさいといって選んでもらったんじゃない。そうではなくて、やはり議長経験も踏まえながら、特に今ねじれ国会ですから、これを乗り切るために全力を尽くせ、第一線に立て、こういって選んでいただいたと思っておりまして、そういう思いのところに菅総理大臣が、もう長い間の盟友の江田五月、おまえが、この政権交代の実を上げるために、権威主義じゃなくてむしろ第一線に立ってひとつやってくれ、こういうことを言ってこられましたので、これは私としてはその菅首相の覚悟を共有せざるを得ない、こういう思いで引き受けました。

 批判はよくわかりながら、あとはどういう仕事をするかでその批判に対してきっちりとお返しをしていきたい。批判の点はよくわかっております。

中島(政)分科員 乃公出でずんばの御決意だと。この御決意を多といたします。どうか菅内閣を支えて頑張っていただきたいと思っております。

 事のついででございますので、今、参議院と衆議院のねじれが生じております。参議院議長経験者でございます江田先生に伺いますが、先般、問責決議が通過したときに、現参議院議長の西岡先生が、問責決議というものを重く受けとめなきゃいけない、はっきり言えば、やめろという話ですね。参議院で問責決議が通過したら閣僚は辞任を考えなきゃいけない、あるいは、もし内閣問責決議案が通過したらやめろと言わんばかりの御説と拝聴したんです。

 これは、二院制のあり方からして、上下両院あって、上院の権限がこんなに強い国というのは日本だけだと思いますね。大体、連邦制か貴族制で、下院で政府はつくって、その政府が任期間中ずっとやる。途中で上院の選挙等あっても、それによって下院の信任で成立した政府が退陣するようなことはないというのが普通でありまして、日本と似たような、連邦制でも貴族制でもなくて、いわゆる民主的第二院制度をとっているイタリアなんかでは、上院も解散権があり、解散します。下院が解散をしますと上院も同時に解散します。

 ですから、日本と似た二院制ですけれども、イタリアの場合は極端なそうしたねじれというのは生じない。また、解散もできますから、生じた場合は上院を解散しちゃうということもできる。ところが、日本の場合の二院制度というのはそういうふうになっていないわけでございまして、これは日本国憲法の大きな欠陥の一つだというふうに思います。

 釈迦に説法ですが、もともと、日本国憲法、GHQ案では一院制でございまして、ですから、天皇の国事行為のところには、これはミスプリのままで、国会議員の総選挙を公示することと。国会議員の総選挙というのはおかしいはずですけれども、これは、もともと衆議院の総選挙だったところを二院制にしたために、そのまま表現が残っている。即成でできた憲法の一つの欠陥のあらわれなんです。

 本来であれば、衆議院の優越というものをもっとちゃんと定めるべきであったんですが、日本側の要請で、貴族院的なものを残したいという当時の国務大臣松本烝治さんの発想もあって残ったわけですね。そうした背景には、下院が、衆議院が社会主義化しても上院で阻止するとか、そういういろいろな時代背景があったと思うんです。

 今日において、参議院がこうした衆議院と同等の権限を持っている、世界でもまれに見る強い権限を持っている参議院なんですけれども、こうした日本の二院制のあり方について、参議院議長を経験された江田先生はどのように思っているか。また、これから衆参ねじれの現象というのが常態化しかねない、これをどういうふうに打開していくか、どういうふうに国会を運営していったらいいのか。先生の御意見をこの際伺っておきたいと存じます。

江田国務大臣 このテーマは、もし話し出せばこれは永遠に話せる課題でありまして、しかし、限られた時間の中ですから簡潔に言わなきゃならぬかと思いますが、日本の二院制が、おっしゃるような経過でできて、十分練られた制度設計になっていない部分がある、これは確かに認めざるを得ないところがあると思います。

 ただ、私どもは、この憲法で国政を動かしなさいよ、こういう負託も受けているわけですから、今のこの憲法を生かしていく、この憲法を上手に使い尽くしていく、その努力をやはりしていかなきゃいけないんだと思うんですね。

 御承知のように、衆議院の優越が幾つかの場面でありますが、基本的には衆参が同じ権限を持っている憲法の立て方で、ですから、例えば議院内閣制も、日本の場合には衆議院内閣制ではありません、衆議院、参議院両方の内閣制で、衆議院でも参議院でも総理大臣の指名選挙を行います。違った場合には両院協議会の相談を経て衆議院が優越することになっているが、これは国会がこういう議決をしたということで、したがって、衆議院の議長と参議院の議長が一緒に天皇陛下のところへその報告に伺うわけです。ですから、参議院は総理大臣の指名にかかわっていないというわけではないので、その参議院が内閣総理大臣なり、あるいは閣僚の一人なりに問責決議をしたときには、やはり両院内閣制という意味における一院がそういう意思決定をしたということで、これは大変重い意味がある、これは私もそう思っております。

 ただ、衆議院で内閣不信任決議をした場合の効果というものは憲法で法定されているわけです。しかし、参議院の問責決議というのはそういう法律上の効果の規定というのはありません。したがって、こうしなきゃならぬということはないので、そこはもう政治的な効果で、そのときの政治的な重みというものをその大臣であるとか内閣であるとかがしっかりと受けとめて、そして適切な行動をとればいい、それが適切でない場合には、その後にいろいろな政治的な動きの中で参議院の問責の効果があらわれてくる、政治的にですよ、そういうものだと理解をしております。

 それはそれで、両院がそういうことでねじれが常態化していくというお話が今ございました。確かに私もそう思います。常態化したねじれが国会の機能麻痺につながっていいのかといいますと、それはそんなことはないので、国民がつくったねじれというものをみんなで上手に生かさなきゃならぬ。国会というのは答えを出さなきゃならぬ機関ですから、したがって、ねじれているときに、対立だけではなくて、やはり政府・与党もそこは柔軟に、しかし、野党も答えを出すために協議をして何とか合意をつくる、そういう努力をするのが野党の国民に対する大きな責任。国民がそういう、参議院の方で衆議院とは違った数の力を持ったということは、その数の力を持って合意形成に参加をして、大いに合意のために努力をしろ、汗をかけ、それが国民の意思だというふうに思っておりまして、今の状況については、私は、これは大変議長経験者としても心配をしております。

 ただ、私が議長時代に、ではすべてうまくいったかというと、これは必ずしもそうでもない場面があったので、反省をしながら今の状態を心配しているというところでございます。

中島(政)分科員 このねじれ国会というのは新しい経験だと思いますね。議長経験者であられる江田先生が、こうしたねじれが常態化した国政の状況で新たな慣行をつくっていただく御努力をいただきますよう、この席でお願いをしておきたいと存じます。

 検察の話をしようかと思っておりますが、最初に判検交流の話を聞きましょうか。

 法務委員会で前大臣の千葉先生にもこの話を御質問したことがあるんですけれども、この判検交流、年を追うごとに人数が多くなってまいりまして、本来、裁判所構成法を裁判所法と検察庁法に分けて分離したときの状況から全く反する状況になっている。しかも、昨年、法務委員会で私がお聞きしましたところ、判検交流について最高裁にも法務省にも何の根拠になるような文書がない、法律もなきゃ政令もないし、最高裁判所規則にも書いていないと。見つけてくださいと言ったんですけれども、そういうものはありませんでしたというお話でございました。

 その後、どうでしょうか、そういうような、この判検交流についての文書等というのはありましたでしょうか。また、まず最高裁の方に聞きますが、何人ぐらい今出向されておられるんでしょうか。教えてください。

安浪最高裁判所長官代理者 昨年の法務委員会でお答え申し上げたとおり、そのような資料については見つかってございません。

 現状についてでございますけれども、平成二十二年に法務省を含めまして行政省庁に出向しました裁判官は合計で五十六人でございます。内訳といたしましては、法務省に四十一人、法務省以外に十五人となっております。

 以上でございます。

中島(政)分科員 江田大臣にこの判検交流についての御見解を伺いたいと思います。この是非、そしてまた、こういうものが三権分立の日本の憲法の建前上いいのかどうか。しかも、何か口約束だけで年々やっている、何の文書もない。去年、私も法務大臣や最高裁に言ったんですけれども、こんな大事なことを口約束でやっていいんでしょうかというのが私の考えでございますけれども、大臣、どう思われますか。

江田国務大臣 これは、いろいろな角度の見方があると思います。私も、法曹、法律家の資格を持って、今現に弁護士の登録もしておるんですが、その前は、冒頭申し上げました裁判官を十年弱ですがやっていたこともございます。

 三権分立が機械的に分立されているだけではやはりだめなので、現に、チェック・アンド・バランス、いろいろな権限をそれぞれがチェックする権限、あるいは、それをまた、カウンターチェックといいますが、やる権限ができて、相互に乗り入れているような構造にはなっているわけですよね。仕組みとして乗り入れるだけではなくて、そこに相互の人事交流というものも、これはお互いの理解のためにやはり一定の限度であった方がいいんじゃないかということで、裁判官と検察官と弁護士、これが法律サービスを国民に提供する、そういう役割をそれぞれ担っているので、その間にお互いの仕事についての理解、あるいはお互いのそれぞれの立場に立って見ることのできるそういう余裕、そうしたものがあることは必要だ。しかし、それが、いやいや、法律家というのはいつもその中だけで事をいろいろ進めて、外から何かいろいろ言ったって、あの三者の中で全部まとめて、国民は結局食い物にされてしまう、そういう国民からの不信も実はあって、そこで司法制度改革もやった面もあるんですが、そういうある種のバランスではないかと思っております。

 今、判検交流だけが問題になっておりますが、それだけではなくて、弁護士から検事へ、弁護士から検事は非常に少ないんですが、弁護士任官といって弁護士から裁判官へ、これも次第にふやしていかなきゃいけないということで、適切な慣行としての、あるいは実務としての人事交流というのが行われていけばいいのだと思っております。その適切性が、文書が交わされることによって担保できるのか、あるいは文書がない方がむしろ現実の問題としてうまくいくのか、そのあたりは今、検討していきたいと思っているところです。

 ちなみに、法廷に立つ検事、これは訟務検事といいますが、そこに裁判官がかなり多く入ってきていまして、これはやはりちょっと行き過ぎの面があるというので、裁判官が法廷に立つ検事の役割を担う交流というのはやや少な目にしていこうと、今ブレーキを踏みつつあるところだと承知しております。

中島(政)分科員 今大臣おっしゃられましたね、いろいろな経験を積むことは大事だと思うんです。それから、最後におっしゃいました訟務検事の問題、これはそういう御認識でやっていただければいいことだと思います。

 最高裁にも、また法務大臣にもお願いしたいんですけれども、やはりこれは口約束ではだめだと思いますよ。これは大事な問題なので、やはり何らかの文書に、法律でも政令でも、あるいは最高裁規則でもいいんだけれども、どこかに書いていなきゃおかしい話なので、そこはよくお話し合いをいただいて、また委員会にも、国会にも御相談いただいて、何かそういうものをつくるということが大事ではないかというのが私の考えでございますので、改めて申し上げておきたいと思います。

 検察のこともいろいろ興味があって聞きたいんですけれども、ちょっと時間もなくなってきました。

 私は、大臣が所信の中で検察改革に意欲を示されたのを多としております。ただ、具体的にまだ何も決まっていないということなんですが、今の検察庁法の枠の中でも、いろいろできることがたくさんあると思いますね。

 民間人の検事総長を一回つくってみるというようなことも私はやっていいと思っているんですね、これは検察庁法の枠の中でできることですから。相撲協会だって、不祥事があれば、外から理事長代理を連れてくるようなことがあるわけですから、こういう局面になったら、一回民間の検事総長をつくったっていいんですよね。そういうこともあってしかるべきだと私は思っております。余りに閉鎖的な検察、検察権の独立なんという言葉はあってはおかしいんですけれども、検察の世界が閉鎖的になっている。軍部大臣現役制みたいに、検事じゃなきゃ検事総長になれない、こういう常識がずっといくというのは私はおかしいと思っていますよ。

 それから、これはいつも言っているんですけれども、国会、国民との関係が余りにも検察官は希薄なんですね。検事総長も最高検の検事もみんな認証官なんですけれども、大体、認証官というのは、憲法に規定があるか国会の承認になっているんです。検察庁だけ関係ないですからね。それで十人も認証官がいる。少なくとも、国民主権との関係を明らかにするという点で、認証官になっているような検事は国会承認にすべきだというのが私の年来の主張でございますので、改めて申し上げておいて、地元の問題を聞かせていただきたいと思います。時間がなくなりましたので。

 私の地元群馬県の高崎市に上大類病院という大きな病院がございまして、そこの後継ぎであったお嬢さん、お医者さんが、大阪の西成区のあいりん地区のくろかわ診療所というところに飛び込んで、ボランティアで医療活動をずっと続けておられたんです。ところが、平成二十一年十一月十六日に水死体となって発見されたわけなんですね。

 警察はこれは自殺だというふうに言ったわけなんですけれども、自殺しなきゃいけないような理由がない。日雇いの人たちが集まっている大変な地区に医療活動のためにボランティアで入られている。御本人も大変な決意をしているわけで、自殺する理由もないし、直前まで元気で活動されていた。御遺族や彼女にお世話になった人たちが、自殺ではない、本当の死因をちゃんと警察は捜査してくれということをたびたび主張しておりまして、これはテレビの報道番組でも特集になったりしておりまして、群馬県では大変よく知られている事件でございますし、マスコミで大きな話題になっている事件なんですね。

 それで、まず警察庁に聞きますが、この事件についての対応は今どうなっておりますでしょうか。お教えをいただきたいと思います。

金高政府参考人 本件は、平成二十一年十一月十六日、大阪市西成区の木津川において、当時三十四歳の女性の遺体が発見された事案であるというふうに承知しております。

 大阪府警におきましては、当初から犯罪の疑いありということで、遺体を司法解剖しているほか、関係箇所の鑑識活動あるいは関係者の事情聴取などを続けてきているところでございます。現在もまだ、関係者の事情聴取等の所要の捜査を継続しているところでございます。

中島(政)分科員 もう一度確認させていただきますが、では、今、事件として再調査をしているというように認識してよろしいんでしょうか。

金高政府参考人 これまでの捜査からは、必ずしも、犯罪であるということを明確に断定できる状況は出てきておりません。

 ただ、事件、事故、両方の観点から捜査を尽くしているというのが現状でございます。

中島(政)分科員 この亡くなられた方は矢島祥子さんとおっしゃるんですけれども、大変立派な御決意で、ボランティア的にこのあいりん地区の医療活動に従事されておりまして、自殺するような方ではないんですね。

 これはお父様に送った手紙の一節なんですが、読んでみますが、「私自身がこれまで生きてきた道のりより、はるかに厳しい状況の中を生き抜いてきた人たち。なのに、世間からはごみのように扱われているこの人たち。 私は、この人たちの側で仕事をしていきたい、と本気で思ってる。」こういう手紙をお父さんに差し上げて、大病院を継げば安泰な生涯が送れたにもかかわらずこういう困難な道に飛び込んでいかれた。自殺など考えられない、使命感にあふれた方でございました。

 私は、御遺族の御無念のお気持ち、また彼女に世話になった皆さんのお気持ちを考えると、ぜひしっかりもう一回捜査をしていただいて死因を明らかにしていただきたい、こういうふうに思っております。

 最初に江田三郎先生の話をしましたが、江田三郎先生も、恵まれない人たちのために生涯を送られた政治家でございました。今現在においても、あいりん地区のような非常に悲惨な状況にある場所があり、そこに安穏な生活を捨てて飛び込んで、その人たちを助けていこうという決意を持って臨まれた女性が志半ばで亡くなった、こういう事件があった。このことについて、大臣、どういう御感想をお持ちでしょうか。一言お聞きして、私の質問を終わりたいと思います。

江田国務大臣 私自身が今の委員の指摘されたケースについて詳しいことを知らないので、軽々なことは申し上げられませんし、また、法務大臣として、警察が行っている捜査の過程についてあれこれ言うべきことではないということを前提にしながら、しかし、感想を申し上げますと、私たちの世の中は、やはりみんなで支え合いながらつくっていかなきゃだめなんですね。それが、どうも最近、そういうみんなで支え合うというような気持ちがだんだん薄れている状況があって、そんな中で、しかし志を持ってそういうところに飛び込む方がおられるというのは本当に貴重なことだと思っております。

 今お伺いをしますと、矢島祥子さんですか、三十何歳かの女性の方。私は最近、どうも女性の方がそういう気持ちを持っていろいろなことを頑張るというのが強いんじゃないか、私も男ですが、もうちょっと男はしっかりしなきゃ、そういう感じも強くて、例えば、今、ニュージーランド・クライストチャーチで大変な地震で、日本人にも犠牲者がいるのではないかということが大変心配をされているところですが、報道によると、あそこでずっと出てくる人たちを見ても女性が多いですね。

 やはりそういうことで、外国へ行って、そして一生懸命世界のことをしっかり身につけて、次の世代のために、次のあすの世のために頑張っていこう、そういう方がああいう地震で悲惨な結果になっていることがあるとすれば、これは大変悔やまれることであって、今の大阪のケースが、単なる事故であるかどうかはわかりません、しかし、そういう思いの人が志半ばでその道を断たれるということは大変気の毒なことで、そうした人たちの志というものを私どもはしっかり引き受けて、次の時代のために頑張っていかなきゃならぬ。国会議員というのはそういう思いを忘れてはいけないと、委員の問題提起をしっかり私たちは受けとめたいと思っております。

中島(政)分科員 ありがとうございました。

本多主査代理 これにて中島政希君の質疑は終了いたしました。

 次に、初鹿明博君。

初鹿分科員 民主党の初鹿明博です。

 予算委員会の分科会で初めて質問をさせていただきます。

 日ごろは私は厚生労働委員会に所属をしておりますので、なかなか法務省の皆さんと接するという機会が少ないわけですが、きょうはよろしくお願いいたします。このような機会に尊敬する江田大臣に質問ができることを大変光栄に思っております。

 資料をお配りさせていただいておりますので、資料を見ながら少し質問させていただきたいと思います。

 まず、一枚目、二枚目に載せさせていただいたのが、二月の十四日に障がい者制度改革推進会議に提出をされた障害者基本法の改正についての、現段階での内閣府から出された案でございます。二枚目の新聞記事にも書いてありますとおり、今回のこの改正案で、今までは基本法に記載がなかった司法の手続についてもしっかり障害者に配慮をするようにという規定を盛り込もうということで、新たな規定が盛り込まれるということで今進められております。

 全体的には、障害者の団体の皆さんからさまざま御意見があって、なかなかまだ難しい状態ではあるんですが、この司法の手続についてはおおむね皆さんこれでいいんだろうというふうに合意ができているというふうに思っています。そういうことを背景にして少し質問をさせていただきます。

 三ページ目をちょっとごらんになっていただきたいんですが、こちらはちょっと古い新聞記事を載せさせていただいております。

 これは平成の十六年だったと思いますが、宇都宮事件に関する記事でございます。大臣、当然、宇都宮事件を御存じだと思います。知的障害のある方が別件で取り調べを受けていた際に別の強盗事件の自白をしたということで起訴をされる、その後、真犯人が出てきて、これは無罪になるという事件なんですが、この事件をきっかけとして、知的障害や自閉症など、発達障害をお持ちの方の取り調べが大変難しい、そして、場合によっては、自白を誘導されるということはないのかもしれないんですけれども、迎合してしまって、やっていないことをやったと言ってしまうようなことがあるのではないか、そういうことが問題になったわけであります。

 この事件を踏まえて、検察もさまざまな取り組みをされているということでありますが、先日、障害者対策プロジェクトチームの会議で、法務省の方にも来ていただいて、いろいろお話を伺ったんですけれども、それぞれの特性に応じて配慮をするようにというような指導はされているということですが、障害者の特性自体についての教育が本当にされてきたのかなというと、ちょっと疑問に思うところがあるんですね。

 これは通告していないんですが、江田大臣、知的障害とか自閉症の方がコミュニケーションをとる上での配慮をしなきゃいけないような特性というのはどういうものがあるか、御存じでしょうか。

江田国務大臣 それほど専門的な知識を私持っているわけではありません。しかし、そもそもがコミュニケーションを非常にとりにくいということがあって、やはり相当じっくりと時間をかけて、この人は今何を思っているのか、どういう思いでこういう発言なり行動なりが出てきているのかということを、その立場に自分を置きかえて考えてみなければなかなかわからないと。

 普通私どもが人とコミュニケーションをするときに判断材料とする言葉とか態度とかとちょっと違うことは、これは往々にしてあることで、しかし、そういうような目で、その人の立場に立ってコミュニケーションをこちらから成り立たせようとすると、必ずしもできないわけじゃない。そして、そういうことでやっていけば、そして、そういう適切な対処があれば、ちゃんと社会活動もできるし、仕事もできるし、判断力もあるし、そういうことだと思っております。

 私の身近でもいろいろな人がいまして、時々私もいろいろな人から手紙をもらったりしますが、その手紙に書いてあることはどういう思いなのかということを思えば、ああ、なるほど、これはこういうことを彼は考えているんだということがわかる。これは、世の中を成り立たせていく上に特に大切なことだと思っております。

初鹿分科員 本当に対応が非常に難しいんだと思うんですね。

 私の知っている範囲で自閉症の方などの特性についてお話しさせていただきますと、相手の言うことに迎合してしまうことが多かったり、また、一人称、二人称の区別がつかなくて、これが本当に錯綜したりということが多くあるようなんですね。例えば、江田大臣がされていることを、本当ならば江田大臣がこういうふうにしていましたと言うべきことを、私がそうしていましたと言ってしまったり、あと、例えば、バイバイと手を振りますよね、そうすると、手を振られた場合に、自分も振るのに、手のひらが見えているから自分の方に手のひらを向けて振ってしまうということがあったり、また、記憶が、一回言ったことが次の瞬間には忘れていたり、普通の人だったらわかるような言葉の裏にあるようなニュアンスみたいなものを読み取るのが非常に難しかったりということで、そういうことがわからないと、本当の真意というのがつかめないのではないかと思うんですね。

 そこで一つお伺いしますが、こういう障害の特性についての研修だとかそういうことについては、今までどのように取り組んでこられたのでしょうか。

江田国務大臣 研修というのは、恐らく検察の現場でどういう研修をされているかという趣旨のお尋ねだと思いますが、これは、確かに今までそうしたことについての研修は十分ではなかったんだろうと思います。

 そういう障害のある人も、ずっと長い社会生活を行ってきて、そうしますと、いろいろな障害のある人がいろいろな事態にぶつかりますよね。ぶつかって、だけれども、彼らもコミュニケーションをとらなかったら、もちろんうれしいわけじゃないんですね。つらいですから、そのつらさを乗り越えていくためには、迎合していく方がよっぽど人間関係がうまくつくれるから、どうしてもそういうことになってしまって今に至るということで。

 したがって、そのことをよく理解しないと、本当の認識とか経験とかというものを引き出すことはできないわけですが、今まではそういう人の特性に関する知見を涵養するということは十分でなくて、しかし、やはりこれは、今委員がおっしゃる宇都宮の事件であるとか、つい最近も大阪で事件がありました。宇都宮の場合は、ある程度、事が、裁判が進んでですから、これは無罪論告をしました。大阪のケースは、これはまだ始まるところでしたので、これは公訴の取り消しをいたしました。

 そういうようなことを踏まえて、やはりこれは、今、特にそういう知的障害というのは世の中に別に普通のことになってきていますから、だれでもすぐ身近にそういう人がいる時代になってきていますから、そうしたことを現場で捜査を担当する者にも十分理解を深めていかなきゃいかぬということで、実は、各地検で、精神科医を含む精神医療関係者であるとか福祉団体、福祉関係者等による講義とか、あるいは精神医療関係者らとの意見交換会とか、そういうものを実施するということで、これはつい最近、そういう指示を出して、網羅的に把握しているわけではないんですが、昨年四月から現在までの間に、各地検で研修が約八十件実施をされたと聞いております。今、取り組みをやろうとして、現実にスタートしてきたというところです。

初鹿分科員 今、大臣も例に出していただきましたが、四ページ、五ページ目で、これはことしの一月二十日に記事になった大阪の例を出させていただいたんですが、宇都宮事件があって五年たっているわけですが、その教訓を十分に生かしていないのかなというふうに思うんですね。今お話がありましたように、今、地検ごとに取り組みを進めているということで、これはこれで私も評価はするところなんですけれども、地検ごとの取り組みだと、まあ日々の業務はあるんでしょうから、この研修を受けた人、受けていない人という、どうしても差が出てきてしまって、現場で、受けた人だけが必ずそういう人を担当するということにはなかなかならないんだろうと思うんですね。

 ですので、例えば、新人の検事研修だとか一般の研修の中に、こういう精神科医だとか福祉の専門家で障害者のことをよくわかっている方とか、そういう方の講義をカリキュラムにきちんと位置づけていくことが必要だと思いますが、いかがでしょうか。

江田国務大臣 法務省でも、検察官を対象とする研修等は、これは実施をしてきているところで、被疑者らの特性等に応じた適切な捜査、取り調べ、さらに公判活動、これを行うよう法務省としても指導をしてきたところではございます。

 しかし、御指摘のような、専門家による障害者の特性に関する講義等、こうしたことが十分でなく、しかしそれは必要なことだ、検察官の知見を深める上で有効だと思われるので、こうした研修等において実施することを検討していきたいと思います。

初鹿分科員 ぜひこれは実行していただきたいなと思います。障害者基本法にも、今後、平素から関係職員に対する研修その他必要な措置を講じなければならないことと記載がされていくんだと思いますので、これは、検事さんだけじゃなくて、裁判官の方や、そのほか一般の職員の方も同様ですし、捜査に最初に当たる警察官も、こちらの方が実は特に重要なのかなとも思いますが、しっかり取り組んでいただきたいなと思います。

 ただ、実際に取り調べということになったときに、研修を受けていても、やはりなかなか難しいという状況は変わらないと思うんですね。幾ら質問をしても答えてくれないとか、そういう大変な中で、でも調書はつくらないとということで、現場の検察官の方は苦労されると思うんですよ。この状況というのが文章になって調書として上がってくると、恐らくわからないんだと思うんですね。

 そこで、やはり、検察官の方のことを考えても、取り調べというのを全面ビデオ録画する可視化というのは必要ではないかというふうに思います。今、一般的に、すべての捜査についての可視化については議論の最中だということですので、ここで全体をどうこうというのはなかなか難しいのかもしれませんが、事容疑者が障害者であった場合に、知的な障害のある方であった場合に、この人たちの利益を守るという点でも、あと、取り調べをする側の立場を考えても、全面可視化をするということが必要ではないかというふうに思います。また、それが難しいというのであれば、やはり、外国人であれば通訳の方がつくように、障害のことをよくわかっている精神科の方とか福祉の関係者とか、もしくは障害者の立場に立てる弁護士さんとか、そういう方の立ち会いを認める必要もあるのではないかと思いますが、御見解を伺います。

江田国務大臣 障害者についての対応ですが、これは、やはり、単に頭の中でわかっているだけではだめなので、障害者というものに対する理解あるいは共感、こういうものをどうやって社会全体に広げていくか、みんなが障害者というものに共感していかなきゃいけない、それが大変大切なことです。

 障害者基本法の改正作業について冒頭お触れになりましたが、ここでも書いてありますが、調整中で、ここでは刑事手続だけ書いてありますが、今、私ども、まだまだ調整中ですから、答えまで行きませんが、刑事手続だけでなくて、民事手続においても、やはり司法サービスというものがすべての人に提供できるように、すべての人に使いやすいようにということは、民事手続でも障害者に配慮したことが必要なのではないかというようなことも今考えている最中で、私、裁判所のことについてまで言うと、ちょっと口幅ったい、言い過ぎなことになりますが、裁判所の裁判官が、そういう障害のある人の証言というものをその立場に立って共感を持って聞くことができずに、事実認定が全くできずに、心の通った判断にならなかったようなケースもなくはないと思っておりますので、そこは、すべてにわたってそういう、障害者への理解というものを深めていきたいと思います。

 そして、今の取り調べの関係についてですが、取り調べの可視化、録音、録画をどこまでやっていくかということは、今議論の真っ最中で、スピードアップしていきたいと思いますが、とりわけ障害者については、法務省の中でつくっております、これは、取り調べの録音、録画のあり方を今検討している最中で、そこで、これは去年の六月に出しました中間取りまとめの中で、障害者について特出しをしておりまして、「自白の信用性を検討する手段として録音・録画を用いること」、これが、「知的能力等に起因する一定の事情が認められる被疑者について、自白の信用性を検討する手段としての録音・録画の在り方についても、今後、調査・検討することとしたい。」と、特別にそう書いてありますので、この点は、特にここに焦点を当てた検討はしていきたいと思っております。

初鹿分科員 ありがとうございます。

 大阪の事件でも、DVDを見て起訴をしないで済んだということなので、やはり重要なんだと思うんですね。捜査段階で出てきて、警察の方では犯人だということで送検されてくるわけですが、そこできちんと検察官の方でもう一度検証するということがこれによってできるわけですから、非常に重要だと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

江田国務大臣 大阪の事件は、公判前整理手続というところでDVDを見ましたら、これは、これでは自白が真実だとは到底思えないというので、起訴はされていたんですが、取り消しをいたしました。そういうことがないようにしたいんですが、やはり人間のやることですから、そういう間違いが今後ともないようにしたいけれども、やはり起こる。起こるときに、それが間違った結果にまでつながらないように、途中で検証しながら道をもとへ戻していくためには、取り調べの可視化というのは大変大切なことだと思いますが、どこまで導入できるか、これは今これからやるところでございます。

初鹿分科員 失礼しました。起訴の取り消しでございました。

 次に、山本譲司さんの「獄窓記」、ごらんになったことございますよね。読まれていると思いますが。

江田国務大臣 山本譲司君は大切な私どもの仲間でございました。不幸な事件で、刑務所での受刑生活を送って、そのことを「獄窓記」ということで書いて、忘れましたが、何か賞をもらって、その授賞式にも行ったり、また、後に、別の機会にも会ったり、もちろん読ませていただいております。

初鹿分科員 私も、実は、民主党で最初に都議会議員選挙に出るときに、一番最初に会ったのが山本譲司先輩でありまして、そのときからおつき合いをさせていただいておりまして、私も、「獄窓記」初め、出版された本は全部読んでいるんですが、あの本が出たことによって、刑務所の中に障害者がたくさんいるんだということが一般の人に広く知れ渡ったわけですね。

 そこで、受刑者の中の障害者のことについて少し質問をさせていただきたいと思います。

 ここに資料を出させていただいているんですが、これは〇九年の、法務省が出している矯正統計というものなんです。こちらを見ていただくと、三十七、下の方の表に知的障害者の数というのが書かれております。全部で三万人の受刑者がいる中で、知的障害と明確に診断されているのは二百四十二人ということなんですね。これは明らかに、一般的に見ても、人口の比率からして低いんじゃないかというふうに思われます。その一方で、上の表を見ると、知能指数が七〇以下が大体知的障害じゃないかということが言われるわけですが、足していくと、七〇以下で大体六千五百人ぐらいになるんですね。非常にこれはギャップがあるなというふうに思うんです。

 山本譲司さんの本の中にも書かれているんですが、まず、知的障害があるんじゃないかと疑われる受刑者の中で、手帳を持っているという人がほとんどいないという事実がわかったと。多くの人は、手帳がないために福祉のサービスを十分に受けられずに、そのことが、社会の中でうまく生きられなかったり、社会から排除されたり、そして結果として軽微な犯罪を犯してしまう、それで刑務所に入ってくる、刑務所から出た後も、福祉のサービスにきちんとつながっていかないために、同じような犯罪を犯してまた戻ってくるということが繰り返されてきていたということなんですね。

 そこで、やはり、刑務所に入っているときに障害者の方々に適切な処遇をしていくためには、障害の有無をきちんと判断するということが大切なんだと思います。ただ、刑務所の職員の方が障害の有無をすぐに判断するというのはなかなか難しいんだろうと思いますが、しかし、やはりこれは何らかの方法でやっていかなければならないと思いますが、知的障害があるかどうかの判断をどういうふうにしていくのか、どういう検討がされているのか、お伺いいたします。

江田国務大臣 山本譲司さんの本の中に、現に山本さん自身が受刑をしていたその現場で、どれほど多くの、知的障害があると当然思われるようなそういう受刑者がいるかということが鮮明に書かれておりました。山本さん自身はそういう診断をする専門家ではありませんが、素人目から見ても、これは明らかに普通の人ではない、そういうある種の、ごみためと言うと申しわけないけれども、そういう状態になっている、社会の非常に悲惨な縮図がそこにある、それが刑務所の実態になっているということを山本さんの本が訴えているわけですね。

 これは、山本さんは、決して、そういうことを告発して、けしからぬという意味じゃなくて、そういう世の中の、言ってみれば私たちの悩みがそこにあるんだということだと理解をします。そして、そういう人にとって適切ないろいろな処遇が刑務所の中といえどももちろん起こらなきゃならぬことは事実ですが、今の統計でわかるように、そういう事実の前提が今整っていないということはやはりあると思います。

 そこで、刑事施設で現在実施している能力検査ですと、やはり知的障害者を正確に把握することは困難な実態になっている。これはそう言わざるを得ないので、今、精神科医とか心理学の専門家である調査専門官、そういう者以外の職員でも、そういう専門の職員をいっぱいそろえるのもいいけれども、なかなかそうは、言うはやすく行うはかたいことですので、それ以外の職員であっても知的障害の疑いのある受刑者を把握することができるような、そういうスクリーニングツールというのを今開発中だと聞いております。平成二十三年度から、こういうツールによって知的障害の疑いがあると判定された受刑者について、精神科医や心理学の専門家である調査専門官等による精査を行うことを検討しているところでございます。

 ただ、もう一度、くどいようですが、そういうスクリーニングツールとか、片仮名で言って、これでいいんだといっても、なかなかそういう万能のものはないので、社会全体にそういう障害者に対する共感というものをどれだけきっちりつくることができるかというのがやはり大切なところだと思っております。

初鹿分科員 そのようなやり方で、知的障害がある、発達障害があるということがわかっていくというのは非常に重要だと思いますが、わかって、その後、やはり処遇をどういうふうにしていくかということの中身も大切なんだと思います。

 先日、法務省の方とお話をして、矯正処遇の充実という資料をいただいたんですが、受刑者ですから当然作業はされるわけで、現状でも障害の特性に応じた作業が割り当てられたりしているようでございます。そして、その一方でまた、教科指導などの読み書き、また計算などの指導もされているということですが、特に、障害のある方はそれ以上に普通の日常生活もなかなか困難な方が多いんだろうと思いますので、出た後に、社会になじんで社会生活をきちんと営めていくようにするためにも、例えば掃除だとか洗濯だとかそういうような指導をしたり、対人関係だとか、あと障害を持っている方は金銭の管理がなかなかできなくて、お金を持っていると全部使っちゃったり、ちょっと親しい人がいると上げてしまったりとか、そういうこともあるということなので、金銭管理なども指導できるようなそういうプログラムというのも必要ではないかと思いますので、その点について、いかがでしょうか。

江田国務大臣 おっしゃるとおりだと思います。

 そこのところをどういうふうにこれからやっていくかですが、刑事施設の中に、社会福祉士とかあるいは精神保健福祉士、こういうものを配置して、福祉的な支援が必要な受刑者に対して、社会復帰に向けた相談とかあるいは助言とかを実施しておると同時に、高齢であったり、また障害を有して特に自立が困難な受刑者、これが実は多いんだと思うんですね。そういう特に自立が困難な受刑者について、刑事施設の入所中から保護観察所やあるいは関係機関との連携を密にして、出所後に速やかに福祉施設に入所をさせるといったような必要な福祉サービスを受けることができるように、あそこへ行きなさいよというようなことができるように今努めているところです。

 ただ、難しいのが、恐らくこういう受刑者の場合には、途中で仮釈放を保護観察というのに移行していくのがなかなか困難で、どうしても満期出所。満期出所になりますと、保護観察所や何かの手元で社会復帰を上手にしていく、そういうことができないんですね。

 そこで、これはやはり法的な手当てが必要だということで、私ども、刑の一部を執行猶予にして、その分、保護観察に付するというような、刑の言い渡しのときからそうしたことを考えに入れて手当てができるような、そんな立法を今検討しているところでございまして、ぜひとも御理解と御協力をお願いいたします。

初鹿分科員 ちょうど時間になりましたが、最後に一つ。

 やはり、出所した後、家が決まらないまま出ていってしまうという方もいるということなんですね。厚生労働省がこちらは所管になりますけれども、地域生活定着支援センターというのが、設置が今進められておりますので、ここを通じてきちんとした処遇をして、きちんと住居を確保するということができていくんだと思いますが、やはりこれは、家がないまま出るということが絶対にないようにしていただきたいと思いますので、その点について最後にお伺いして、質問を終わらせていただきます。

江田国務大臣 適切な問題の指摘だと思っております。

 現在、法務省の方としても、保護観察をもっと強化して、そして各地にそうした、帰っていくときにいろいろ援助ができる、そういうセンターをつくろうということで、予算要求もするんですが、なかなか予算もわずかしかつかないんですが、全力を挙げて頑張っていきたいと思っております。

初鹿分科員 どうもありがとうございました。

本多主査代理 これにて初鹿明博君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

本多主査代理 次に、財務省所管について政府から説明を聴取いたします。野田財務大臣。

野田国務大臣 平成二十三年度一般会計歳入予算並びに財務省所管の一般会計歳出予算、各特別会計歳入歳出予算及び各政府関係機関収入支出予算について御説明申し上げます。

 まず、一般会計歳入予算額は、九十二兆四千百十六億円余となっております。

 この内訳について申し上げますと、租税及び印紙収入は四十兆九千二百七十億円、その他収入は七兆千八百六十六億円余、公債金は四十四兆二千九百八十億円となっております。

 次に、当省所管一般会計歳出予算額は、二十三兆九千八百六十四億円余となっております。

 このうち主な事項について申し上げますと、国債費は二十一兆五千四百九十億円余、経済危機対応・地域活性化予備費は八千百億円、予備費は三千五百億円となっております。

 次に、当省所管の各特別会計の歳入歳出予算について申し上げます。

 国債整理基金特別会計におきましては、歳入二百六兆三千九百三十九億円余、歳出百九十四兆三千九百三十九億円余となっております。

 このほか、地震再保険等の各特別会計の歳入歳出予算につきましては、予算書等をごらんいただきたいと存じます。

 最後に、当省関係の各政府関係機関の収入支出予算について申し上げます。

 株式会社日本政策金融公庫国民一般向け業務におきましては、収入千九百十九億円余、支出千三百八億円余となっております。

 このほか、同公庫の農林水産業者向け業務等の各業務及び沖縄振興開発金融公庫等の各政府関係機関の収入支出予算につきましては、予算書等をごらんいただきたいと存じます。

 以上、財務省関係の予算につきまして、その概要を御説明申し上げた次第でございます。

 なお、時間の関係もございまして、お手元に配付しております印刷物をもちまして詳細な説明にかえさせていただきたいと思いますので、記録にとどめてくださるようお願いいたします。

 よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。

本多主査代理 この際、お諮りいたします。

 ただいま野田財務大臣から申し出がありましたとおり、財務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

本多主査代理 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

本多主査代理 以上をもちまして財務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

本多主査代理 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山本幸三君。

山本(幸)分科員 自由民主党の山本幸三です。

 きょうは、G20の話と予算の話をお伺いしようと思ったんですが、G20については、午後から財務金融委員会がセットされまして、そこで報告を受けて質疑するということで、私も一時間時間をいただきましたので、この話は午後ということにいたしまして、予算のことについてお伺いしたいと思います。したがって、ちょっと細かくなるかもしれませんから。

 まず、今年度の予算というのは主な目的は何ですか。

野田国務大臣 一つは、三段構えの経済対策のステップスリーという位置づけでございまして、昨年から実施をしてきた九千二百億円の経済予備費、そして補正予算に続く新成長戦略を本格稼働させるためのそういう位置づけが第一点だというふうに思います。

 それから、国民にお約束したマニフェスト等の主要事項、これを安定財源を確保しながら着実に実施していくということ、これが二点目であります。

 それから、特色としては、地方に最大限に、国も厳しいんですが、地方も厳しいということで、それに対する最大限の配慮を行うということもさせていただきながら、あわせて、大事なことは、財政健全化戦略を昨年の六月に閣議決定いたしました。その健全化戦略に基づく初年度の予算でございますので、財政規律を守るという観点から、歳出の大枠を七十一兆円、新規国債発行額を四十四兆円以内に抑える、そういう方針のもとで編成をさせていただいた予算でございます。

山本(幸)分科員 そこで、第一の目的がステップスリーだと。ステップワン、ステップツーで〇・三%GDPにプラスの影響、それから、〇・六ということが出ていますが、このステップスリーの本予算の経済効果は何ですか。

末松副大臣 本予算につきましては、そのすべてが経済対策ということでもございませんし、また、政策、事業というものが膨大でございますので、予算全体について経済効果を試算するということはしておりません。また、本予算の経済効果について、これまでも、過去、推計をしてきたことではないと思っております。

 一方、政府経済見通しにおきまして、二十三年度予算を踏まえて、二十三年度の実質経済成長率を一・五%と見込んでおります。

山本(幸)分科員 それじゃだめなんです。では、ステップワン、ステップツー、ステップスリーというのは何なんだと。その効果も示さないで、それで成長戦略に資していますなんて言えませんよ、ステップスリーを。ステップワン、ステップツーはちゃんと言っているんだから、ステップスリーについて言わなきゃ、そんなものは何も言えないじゃないですか。

末松副大臣 過去、麻生内閣のときに、三段ロケットということでやってきたことがございます。そのときの本予算について、三段ロケット目ということなんでしょうけれども、これは多分政権の経済効果の示し方があると思うんですけれども、そのときも、幾つかの事項、テーマを取り上げて、そこで経済効果とされたことはございますけれども、予算全体について、どれだけ経済効果があったのか、それをきちっとやろうとしますと、これは膨大な作業も見込まれますものですから、そこのところは我々としてはやっていない、こういうことでございます。

山本(幸)分科員 決して納得いたしません。

 財務大臣、経済財政モデルというのがあるのを知っていますか。

野田国務大臣 モデルがあることは知っています。

山本(幸)分科員 この経済財政モデルというのは複雑ですよ。それは財政の複雑さなんというものじゃないんだ、経済全体を見てモデルをつくっているので。だって、これは方程式が二千三百四十五もあるんだよ。そういうモデルをつくっておいて、できないわけないじゃない。予算のところ、財政ブロックのところだけ入れて、あとは前年と一緒で出せばすぐ出ますよ。何でやらないんですか。

末松副大臣 そのモデルと別に、例えば、経済効果の計算が困難な場合もございます。例えば、年金の支払いが実際に消費にどのように結びつくか、こういうことも技術的にかなり困難が伴いますし、また、研究開発補助金とかこういったもの、これもGDP押し上げ効果を、いろいろな前提を置くとしても、これを測定するということは技術的に結構困難を伴う。

 こういったものを一つ一つきちっと効果をやはり挙げていきたいという話になれば、二千数百どころではなくて、これは本当に巨大な数のことを全部調べていく、こういうこともございますので、我々としては、すべてを中途半端に、これが予算全体の経済効果だというイメージを持たれるのは必ずしも好ましくないという立場から、やっていない、こういうことでございます。

山本(幸)分科員 そんなの説明になりませんよ。だって、年金とか一々そんなもののためにモデルをつくっているんでしょう。そのためにいろいろな推計式を出してやっていくんだよ。既に過去のものについてはできていますよ、年金だって。だから、この点については入っていませんというならいいけれども、大体入っていますよ。それを入れて、今のモデルでいいから、つくって出してください。

末松副大臣 過去の事例とおっしゃいましたけれども、多分、過去の事例というのは、麻生内閣のときにつくられた三段ロケット、先ほど申し上げましたけれども、そのときのモデルということでございますけれども、そのときも幾つかの、本当に幾つかの、例えば雇用対策とか、雇用創出等の地方交付税増額とか、あるいは経済緊急対応予備費の新設とか、あるいは税制改正、住宅ローンの減税ですね、あるいは生活対策の実現とか、あるいは金融市場・資金繰り対策とか、こういったもの、大体計十兆円ですね、これを効果として挙げて、そして一段目ロケット、二段目ロケット、三段目ロケット合わせてGDP押し上げ効果というのを一%だ、こういうふうに見積もっているところでございます。

 したがって、すべてをこういったところをやったということではございません。

山本(幸)分科員 私は、過去の、麻生さんのときはどうのこうのというのは聞いていないんだよ。今やれと言っているんですよ。できるんだ、経済モデルがあるんだから。モデルの財政ブロックのところだけ数字を入れてやればいいじゃない。何でできないんですか。あるいは、あなたが言ったように、その大きなものを拾ったっていいよ。それを拾って出すなら出してもいいや。

 それと、このモデルにある数字について、これは相当なことを入れられるんですよ。今一々挙げている暇はないけれども、財政についても。何でできないんだ。何のためにそんなお金を使っているんですか。早くやりなさいよ。

末松副大臣 先生の、このモデルを使ったことにつきましては、一つのお考え方だと思いますけれども、そのモデルの適切性も含めて、そこは我々としても十分見きわめなければいけない、そういうふうに考えております。

山本(幸)分科員 何を言っているんですか。そうしたら、あなた方が出している中期経済見通しなんてどうなるんだよ。このモデルが基本になっているんでしょう。そんなものは出しておいて、それで予算については出せませんなんて、そんなの言えませんよ。だって、財政以外のほかのものを前提に置いて入れたら、中期経済見通しというのが出てくるんだよ。それを外して財政のところだけやれば、もっと簡単に出ますよ。何でやらないんですか。

末松副大臣 今御指摘ございました政府経済見通し、これで我々、実質成長率一・五%という話を置いているわけでございますけれども、この考え方は、予算等に基づく経済財政運営を前提といたしまして、その前提で、例えば世界経済の成長率とか為替レートとか、あるいは原油価格の動向とか、こういったものを一定の前提を置かせていただきまして、各種の経済データに基づきまして、民間主体の経済活動、例えば民間の消費、民間の住宅投資とか、あるいは民間の設備投資とか、あるいは輸出入の先行きとか、こういったものを全体を見渡しながらやっているモデル、それのモデルに基づいて実質GDPの成長率の見通しを作成しているということでございます。

山本(幸)分科員 だから、財政を前提にして、それプラス、そのほかの、世界経済の成長率見通しをこう置きます、あるいはほかの前提を、原油なり為替レートなり置いてやるわけだな。そこを外して、それは過去の、去年のものでいいよ、去年のもので一定として、財政だけは変わったとして入れればすぐ出ますよ。

 ところが、それにプラスしてあなた方は、そのほかの前提条件を、外生変数を入れて、出てくるものは出すんだ。だけれども、そのほかの前提条件を外して財政だけを入れて、出せないわけないじゃないですか。論理矛盾じゃないの。何でできないの。

末松副大臣 我々として、確かに完璧なモデルというのは、あればそれは一番いいというのはおっしゃるとおりでございますけれども、そこは人のやることですから、そこで中途半端なものを出すと、そして国民の皆さんに、どうもこういったものが予算全体のGDP押し上げ効果なんだというような形の印象を持たれることの方が、我々としては、ちょっとそこはまずいところもあるかなというふうに考えているところでございます。

山本(幸)分科員 だれも完璧なモデルがあるなんて思っていませんよ。だって、それは少しずつ直していくんだから。でも、かなり詳細なものができ上がっていますよ。

 だから、できるんですよ。できるけれどもやらないんだよ。何でやらないんだ。多分マイナスになるからでしょう。そうじゃないんですか。できるんでしょう。どうなんですか。

末松副大臣 先生の方で、ちょっとマイナスになるんじゃないかという話がございましたけれども、民間なんか、幾つかの指標、データをとって、それもそんなに多くない、本当に幾つかの指標をとって、それでゼロだとかマイナスだとか言っている部分ございますけれども、そういうことではなくて、もっと本当にきちんと調べれば、それはそれなりのGDP押し上げ効果はあると私は思います。

 ただ、全体を、一つ一つ全部をやっていくということがどれだけの大きな負担になるかというのも考えながらやっていっているところが現実でございます。

山本(幸)分科員 だったら、効果があるというならちゃんと示しなさいよと言っているんだよ。それは数字で議論しなきゃしようがないよ、そんなの。しかも、できるんだよ、このモデルを持っていて。どうして示さないの。効果があるなんて、そんな、口だけで印象的なこと言ったって納得できませんよ。早く出しなさいよ。

末松副大臣 私は効果があるのではないかという印象を持っているのは、この政府経済見通しで実質成長率が一・五%になっているということから、私はそういうふうな印象を持っているということでございまして、本当に膨大な作業にも上ることを含めて、そこは我々として余り中途半端な印象を国民の皆さんに与えるのはいかがなものかと考えているということを、ぜひ御理解いただきたいと思っております。

山本(幸)分科員 全然理解できないよ、そんなの。

 では、あなた方が出した主要経済見通しで、実質成長率一・五だよね。公需の寄与度はマイナス〇・二ですよ。これは、まさに予算が中心の効果じゃないの。マイナス〇・二ですよ。どこに効果があるんですか。

末松副大臣 そこはいろいろな見方があるんだと思いますけれども、公共事業が縮減をしていくということ等を含め、幾つかの要因はあるのではないかと私は推察しています。

山本(幸)分科員 だから、幾つかの要因があって、公需寄与度として、ちゃんとあなた方が出しているんだよ、マイナス〇・二だとね。これはそうでしょう。これはこの予算の効果じゃないの。そうじゃないんですか、財務大臣。

野田国務大臣 従来より公共事業関係費等を削っておりますので、そういう意味でのマイナスが出てくるというのは、それは当然だというふうに思います。

山本(幸)分科員 だったら、それをしっかり言ったらどうですか。この予算はマイナスの効果しかないんだ。(発言する者あり)

 ちょっと待って。違うというのは、言ってごらん。

五十嵐副大臣 公共事業そのものを重視して計算すれば確かにそうなるんだと思いますが、例えば税制で、雇用促進税制を今度新たに入れました。これは、五人以上の雇用者増、あるいは中小企業では二人以上の雇用者増を、総人件費の増と同時に、かつ一〇%以上の増加という形で入れていただくと二十万円の税額控除をするという全く新しい発想の対策でございますけれども、これはかなり雇用増そして総賃金の増加を生むと私は思っておりますけれども、それが一体どの程度使われるかというのはなかなか予測しがたい、新政策でございますので、あります。

 こういうようなソフトなものについて、あるいは、政府全体で今取り組んでいるパッケージ型のインフラ輸出に対する取り組み、こうしたものの政策効果を数量的にこの時点で正確にはかるのは難しいと思いますが、明らかに効果がないとは言えない、かなりの効果を生むだろうということで私どもは計算をしておりますけれども、それをすべて寄せて、あるいは複合的な効果を計算するというのはなかなか難しい。しかし、今までの単純に公共投資が計算できた、それを計算に入れて主に計算をするというのとは当然違う政策効果というのは出てくるんだろうと思います。

山本(幸)分科員 それなら、公需というのは何ですか。公需の中身をきちっとして、それも入れていないの。税制改正の影響だって入れていないの。政府最終消費支出も入っていますよ、これは。入っていないんですか、この公需のマイナス〇・二のところには入っていないというんですか、五十嵐さん。ちゃんと公需の中身を分けて、どれがプラスで、どれがマイナスで、出してくださいよ。

五十嵐副大臣 私の手元には、今、細かい、データのもとの数字は持っておりません。

山本(幸)分科員 だから、それをちゃんと出してください。そうしたら経済見通しは変わるんだから。あなた方は、主要経済見通しで、公需はマイナス〇・二だとちゃんと言っているんだよ。それには全部入っているんだ。そうでしょう。違うというなら、どう違うか、資料をちゃんと提出してくださいよ。約束できますね。

末松副大臣 ちょっと私も、今、手元に資料がございませんので、そこはまた、可能な限り、そこはお示しをできるかどうか、検討させていただきたいと思います。

山本(幸)分科員 あなた、五十嵐さんが言ったように、一つ一つについて効果があるという資料をちゃんと持っているんですね。あるんですね、内閣府、それぞれについて。

末松副大臣 個々につきまして、私ども、最初から申し上げておりますように、さまざまな予算の点につきまして一つずつ効果を測定しているという形にはしていませんので、私自身は今、実際にあるかどうかというのがわかりませんので、今御答弁申し上げたように、そこがあるのかどうかも含めて、私自身がちょっと知らないこともありますので、そこはまたそういった形で御連絡をさせていただきたい、こう申し上げたところでございます。

山本(幸)分科員 では、五十嵐副大臣はあると言ったじゃないですか。それを出してくださいよ。

五十嵐副大臣 効果があるということは申し上げましたけれども、公需寄与度の中には私が申し上げたようなことは入っていない、そう思っております。

山本(幸)分科員 では、公需寄与度には何が入って、どれが外れているんですか。

五十嵐副大臣 それはまた所管の府省に聞いていただきたいと思いますが、それは一定のこれまでの数式に当てはまる項目は入っていると思いますが、私が申し上げたようなものについては、税制のそのような、間接的なある意味での寄与といったものについては、推計が難しいですから、入っていないということは言えると思います。

山本(幸)分科員 税制の影響については入っていない。では、それはどこで出てくるんですか、GDPの中では。

五十嵐副大臣 その数字そのものは、政府にしましても、今回の税制の最中にも、経済産業省の数字と、それから内閣府の数字と、全く違う数字が出てまいります。

 例えば、法人実効税率の五%の引き下げ、これについて経団連あるいは経産省は物すごい何百兆円という経済効果があるというふうに言われますし、一方ではそうではないという数字も出ておりますから、それはモデルのとり方によってやはりかなり違ってくるものだというふうに思いますし、政府としては、そう軽々にこれだといって一元的に決めつけて発表することはできないというふうに思います。

山本(幸)分科員 だって、あなたは、税制改正の効果についての数字は持っています、これは効果がちゃんとありますと言ったじゃない。言ったなら、どれだけの効果があると思っているんだと、その数字を示してくださいよ。それは極めて興味がある。税制改正論議のときはきちっとしたいから、必ず出してください。

五十嵐副大臣 税制改正について効果はあると思いますということは言いましたけれども、一つ一つについて数字を出しているというようなことは言った覚えはございません。

山本(幸)分科員 数字がなかったら反論できないじゃない。公需がマイナス〇・二と言って、我々が考えれば、これは予算の影響だなと思いますよ。そのほかのところで、税制改正なり雇用対策なりで効果がありますと言ったら、それは民需も入るのかもしれないが、では、それはどれだけの効果があるかということを示さなきゃ説得力はありませんよ。あなたは、その効果はあるとさっき言明されたんだから、税制改正の議論をするまでに、私の方にぜひ出してください。いいですね。

末松副大臣 今、五十嵐副大臣への御指摘でございますけれども、たしか、過去の政権を含めて、そういうことを一つ一つ、数字があって、それをお示ししたというのは、ちょっと私の知る限り、記憶にございません。

山本(幸)分科員 何を言っているの。あなた、これはマクロモデルで、法人税をGDP一%相当上げたらどうなる、個人所得税を一%相当上げたらどうなるとちゃんと出ていますよ。そういう計算をしているということでしょう。

末松副大臣 私が言ったのは、個々の数字というものを出したということではなくて、一般的な乗数というようなことの計算のモデルでそういうことが出されたのではないかと今ちょっと感じておりますけれども、済みません、具体的な一つ一つの数字にちょっと私自身も触れておりませんので、そこは私自身も確認したいと思います。

山本(幸)分科員 出そうと思えばできるんですよ。これはそういうモデルなんだ。だから、そういう効果があると言明したから、ちゃんと税制改正の議論の前までに出してもらいたいと思いますよ。いいですね。

 最後に大臣に、なぜこんなことを言うかというと、ステップスリーというのは全然中身がないじゃないかと。成長戦略といって、これから十年間、平均で名目三%成長、実質二%以上と言っているんだけれども、それをステップワン、ステップツーでやってきた。ステップスリーでどこまで上げるかという発射台を早く立ち上げなきゃ、そんなことはできませんよ。だから、ことしの名目成長率一%、ところが来年になったら二・三と急に上がるなんという、とんでもないような、民間ともまた違うような話をしているわけですよ。

 それは、この予算編成がそういうことについて本当の意味の中身になっていない、そのことを公需がマイナス〇・二でもう示しているんじゃないか。これは何なんだ、一体この予算は。極めて中途半端、成長でもない、マニフェストと言うけれども、マニフェストはもうほとんど破綻しているじゃない。これは、この前、私が財源のところで言ったけれども。

 では、雇用か、本当に雇用があるのかという議論をこれからしますけれども、そういう意味で極めて中身のない中途半端な予算であって、ステップスリーという成長一つ説得力がないじゃないかと思っているんですが、それについての大臣の所感を伺います。

野田国務大臣 私は、予算を成立させていただいたら、必ず効果は発現するというふうに思っています。

 一つは、元気な日本復活枠で、新成長戦略分野、これはマニフェストと一緒になっていますが、〇・九兆、それから、さっき副大臣から御説明があった幾つかの税制改正、これは企業の活性化に、あるいは経済の活性化につながるものと思います。パッケージ型インフラ輸出でも、約二兆円の海外投融資の支援措置を入れています。

 加えて、これは計算の仕方が難しいんですけれども、新成長戦略の中で、柱になるプロジェクトが二十一あります。その二十一の国家戦略プロジェクトの関連では、一般会計で大体約一兆円の予算がついていると思います。

 それらが機能してくれば必ず効果は発現をすると思いますが、先ほど内閣府からいろいろ御説明もしましたが、私もちょっと経済財政モデルの詳しいことはよくわかりませんけれども、いわゆる予備費九千二百億使ったときの事業は数十だったと思います、補正予算は百数十だったと思います。それの経済への押し上げ効果、GDPの押し上げ効果は、これを計算することはすぐできると思うんですが、今回の一般会計に入る予算は膨大な量があって、そこで何をピックアップするかということは、私はやはり作業として大変だろうと思うし、ピックアップの仕方によって適切性が問われるということを恐らく内閣府はおっしゃっているんだろうというふうに理解をしています。

山本(幸)分科員 全く説得力がないんですね。だって、自分たちの経済見通しで公需はマイナス〇・二だとちゃんと出しているんだから。公的には効果はありませんよ、マイナスで足を引っ張りますよと言っておいて、それで通ったら効果があるなんて、何の説得力もない。説得力のある数字を示しなさい。

 経済財政モデルは極めて詳細ですよ。ちょっと勉強して。あなたが言っているようなことは全部含まれるようになっている。やろうと思ったらすぐできる。ただ、やらないだけだ、恐らくマイナスになるから。

 そういうことを含めて、今回の予算には非常に問題があるということを申し上げて、質問を終わります。

本多主査代理 これにて山本幸三君の質疑は終了いたしました。

 次に、村田吉隆君。

村田分科員 きょうは、この分科会の時間をちょうだいいたしまして、私は、民主党にそういう組織があるかどうかわかりませんけれども、自民党にはたばこ塩産業特別委員会というのがありまして、その特別委員長でございますので、なかなかたばこの問題というのも財金委員会で議論されることも少なくなったと思いますので、この機会をいただきまして、今回、たばこにつきまして、昨年十月から大幅な増税がなされました。それに加えて、政権交代によって、いろいろな意味でたばこに対する政策の変化というのもうかがわれるところがございますし、それから健康問題、特に、厚労省の方で労働安全衛生法の改正という動きもあるように伺います。

 そういうもろもろのことを考えると、たばこという一つの財政物資をめぐって、販売業者もあり、葉たばこの生産農家もあり、あるいは愛煙家の問題もありまして、そういう人たちが、たばこという問題について政府はどういうふうに今後取り合っていくのかということについて、愛煙家については不安とまでいかないかもしれませんが、生産に携わっている方々あるいは販売に携わっている方々には大きな生活の、将来を左右する動きが起こっているんじゃないかということで、そういう観点から幾つかの問題をただしたいというふうに思っております。

 事実関係のこともございますから私は政府委員で結構だと申し上げたんですが、お忙しいところ、副大臣も御出席をいただきましたことについて感謝をいたしたいというふうに思います。

 ところで、私も資料をもらったのでございますが、前回の平成十八年度のたばこ税の引き上げと比べて、今回は三・五円という大変大幅な、かつてない引き上げになりましたので、買いだめといいますか、それも大きかったし、それから反動減というのも、谷が非常に深かったように思います。

 十月から、十、十一、十二、一、二、五カ月がたとうとしているわけでございますが、たばこのその後の販売動向はどういう状況になっているのか、事実関係でございますけれども、副大臣から御答弁をいただきたいと思います。

五十嵐副大臣 村田先生にお答えをいたします。

 確かに、おっしゃったとおりでございまして、九月は前年同月比プラス八八%とかなり駆け込み需要があったわけですが、その反動減が大きくて、十月は六九・九%のマイナス、十一月は三九・四%のマイナス、十二月が二八・七%のマイナス、一月は一八・九%のマイナスとなっております。

村田分科員 ニュースなんかの情報を見ますと、乱高下のグラフ、これは前回あるいは前々回と比べて大きいことは事実なんですが、副大臣、率直なところ、財政当局として、このぶれというのを、山と谷というのを、今の時点で、税収動向という観点からいってどう評価しているかということをお伺いしたいと思います。

五十嵐副大臣 報道でもありましたけれども、当初、禁煙をされた方が多かったんですが、節煙、本数は減らすけれども、買いだめが終わってから吸い始めるという傾向が見られて、改定月の落ち込みから、回復の状況は、比較的、深さは深いんですけれども、角度はこれまでと似たようなものかなと。

 ただ、これがどこのあたりで落ちつくかというのは、もう少し見ないと、四カ月から六カ月、巡航速度といいますか、通常のペースになるのがどの程度で、いつからかというのを見なければいけないと思いますが、これまでのところでは、回復はかなりのスピードでしてきており、税収については、二十二年度でいいますと、見通しより増収になるのかなというふうに思っております。

村田分科員 そうすると、健康志向ということで毎年大体四%ぐらい売り上げが下がっていく、そういう傾向がかつて見られたわけですけれども、それを加えて税収見積もりでは五百億円超の増収になる、そういう試算をしておった、見積もりをしていたと思うんですが、それをまた上回る効果、そういうことですか。

五十嵐副大臣 たばこ特別委員長でいらっしゃいます村田先生から、仮に、二月、三月、まだ出ていないわけですけれども、昨年と同じような仮定を置いてした場合にはどうなんだというようなお話があって、その仮定に応じて計算をしますと、二十二年度は見通しより五百億円前後多くなるかなということに、あくまでも仮定の話でございますけれども、そういう計算になっております。

村田分科員 厚労省に来ていただいていると思うんですが、たばこについて、自民党の中でも厚労部会と私どもとでけんかするんですよ。それで、苦しい中、いろいろな議論をして、これまでも増税をお願いしてきたようなこともあるのでございますけれども、厚労省の立場から、今の副大臣の増税の評価というか、結果の推移というものをどう評価いたしますか。

篠田政府参考人 お答えを申し上げます。

 今副大臣の方からお話ございましたように、財政上のお話は、やはりおっしゃったような傾向だろうと思います。

 私ども、所管から申しますと、どちらかといいますと、国民の健康面ということでございますので、今回の値上げでどういう影響が出るかということになろうかと思いますが、喫煙率、値上げを挟みまして前後どうなるかということにつきましては、十分な数字をまだ押さえておりませんので、そういった面では、まだ、結論的にこうだと私どもの立場から申し上げるのは、やや時期が早いかなというふうに考えているところでございます。

村田分科員 いや、今、税収という面からいうと上回るという、仮定の話でしたが、そういう答弁がございましたが、それに基づいてどう評価しますか。

篠田政府参考人 税収のお話になりますと、重ねて申し上げますけれども、私どもというより、むしろ財政当局としてどう御判断されるかというのが中心になろうかと思います。もちろん、私ども、財政と健康ということで関連はございますけれども、税制についての動向ということにつきましては、五十嵐副大臣の方から申し上げたとおりかと思います。

 私どもとしては、これも従来から申し上げていることでございますけれども、消費がどうなるかという点、それが国民の健康にどう影響するかということがやはり所管としての中心の課題でございますので、財政上の収支につきましては、私の方から申し上げるのはちょっといかがかなというふうに考えております。

村田分科員 厚労省の立場から言うと、上げ方が少なかった、こうおっしゃるのかと思って二度聞いたのでございますけれども、後でまたお伺いすることもございますので、これくらいにしておきます。

 それで、私どものところに、私のところは特にそうなんですが、全国たばこ新聞という新聞が届くわけで、たばこの値上げというのは、直接的に売り上げが減少するということだけではなくて、たばこの販売業者につきましても、たばこが二百円の時代と四百円の時代と、在庫管理をうまくやらないとそれだけお金が余計要るということになりますので、売り上げが落ちるだけじゃなくて、在庫管理をきちんとしなきゃ本当に資金繰りが困るんだというたばこ販売業者の苦しみというか悲鳴というのもやはり頭に入れていただきたい。たばこ事業を所管する大臣としては、そういう方々の悩みということも頭に置いていただきたいなというふうに思います。

 ところで、条約がございます。FCTC条約という条約のもとに、未成年者の喫煙をできるだけ抑える、禁止する、これを徹底するという意味でタスポというのをかつて発行したわけですけれども、実際、見てみると、タスポの発行によって、たばこの売り上げが、在来型の、街角のたばこ屋さんからコンビニとかスーパーに移ったりなんかしまして、私は、そういう意味では、本当に昔からの、コミュニティーを守り、町を守ってきたたばこ屋さんの売り上げが減っていっちゃうというのは大変気の毒だし、困ったことだなというふうに思うんです。

 しかし、他方、やはり未成年者の禁煙ということも実現していかなきゃいけないということも社会の要請でありますから、業界の自主的な努力というのは評価したいというふうに思いますが、タスポの発行枚数というのを見ますと、喫煙者がどれだけいるのかと、喫煙人口を見るということもありましょうけれども、余り多くないなという気がして、面倒くさいからコンビニに買いに行こうとかいうことになっているんじゃないかと私は思わないでもないんですよ。

 副大臣、どうですか。タスポの発行枚数を見ながら、どう考えておられますか。

五十嵐副大臣 お答えします。

 その前に、先ほど、先生の、たばこの増収の見込みのところ、推計を、ことしの一月と同じ本数だけ二月、三月売れた場合という仮定だったのを、ちょっと間違えて表現してしまい、失礼いたしました。(村田分科員「そういう理解をしました」と呼ぶ)

 それで、今の御質問でございますけれども、タスポの発行枚数は、今九百九十万枚でございます。一月末現在でございます。推定の喫煙人口は二千四百九十五万人でございまして、普及率は三九・七%なのですが、自販機でたばこを購入する人は約九百万人程度とアンケートで見込まれておりまして、そうすると、自販機を利用する人については大体普及をしているのかな、この普及の程度はかなりの程度ではないかというふうに評価をいたしております。

村田分科員 この前、テレビを見ていましたら、過疎地でガソリンスタンドがどんどんなくなって生活の支障にもなっている、そういう報道がありました。

 過疎、高齢化が進んでいく。私の選挙区なんかは特に、北の方へ行きますと、本当に買い物も行けない、そういう事態が住民にひたひたと押し寄せているような地域が多いのでございますが、愛煙家のことも考えますと、販売店をしっかり確保していくということがやはり必要じゃないかなというふうに思いますので、そういうことも頭に入れながら、財務省、担当の官庁でございますから、たばこ販売の実態ということについても、余りこのことについては議論されないことかもしれませんが、どうか実態というものを頭に入れておいていただきたいなというふうに思います。どんどん販売店も高齢化している、そういう実態でございますし、ここはよろしくお願いをいたしたいというふうに思います。

 ところで、一方、新聞の記事にもなりましたけれども、値段が上がったから、インターネット代行で輸入する、そういうこともあるやに、報道記事がございました。副大臣、このことは把握していますか。

五十嵐副大臣 財務省では、国際郵便物を利用して輸入するたばこにつきまして、たばこ税等を納めることなく輸入できるとうたっている輸入代行業者のインターネットサイトがあることを承知しております。

 もう既に摘発をした、お菓子などの表示の中に実はたばこを隠匿しているというような例を確認しておりまして、実際に開披検査を強化いたしております。発見された場合には適正な課税を行っていると承知をいたしております。

村田分科員 そういうことはなかなか見つけにくい自由化の時代でございますけれども、どうかそういう問題がこれ以上広がらないように、よろしくお願いをいたしたいというふうに思います。

 それから、民主党のといいますか、政府の税制改正大綱のことについて、これは大臣に質問したいと思っております。

 これを見ますと、「たばこ税については、国民の健康の観点から、たばこの消費を抑制するため、将来に向かって、税率を引き上げていく必要があります。」と書いてありますね。これは、我々と比べると、もう少し踏み込んだ、健康サイドに立っているかな、そういう改正大綱になっているかなというふうに理解をいたします。「将来に向かって、税率を引き上げていく必要があります。この方針に沿って、平成二十二年度税制改正では、一本あたり三・五円の税率引上げを実施しました。」と。

 だから、この税制改正大綱を見る限り、税収目的ではなくて、健康観点からだ、それで上げたんだという記述になっているというふうに思います。だから、私を含め、たばこにかかわる、葉たばこ生産者でも販売業者でも、将来に対して非常に不安に感ずるわけでございます。

 その次に今後のことが書いてあって、「現行のたばこ事業法を改廃し、」とも踏み込んでいますけれども、この後段のことについて、今たばこ産業にかかわる皆さん方が、この記述をもって、やはり大変心配しているわけですね。

 今のたばこ事業法にのっとって葉たばこの生産をし、それから販売も許可制でもってやっているわけでございまして、この後段の方の将来の見通しについて、書いてありますよ、「たばこの消費や税収、葉たばこ農家、小売店、」と。みんな並べて書いてありますが、これでは全くわからないので、この際、大臣には、愛煙家とお伺いをいたします一方で、やはり財政物資担当大臣でもあり、あるいはたばこ事業の担当大臣として、ここはもう少し、不安のないように、より具体的に、今後の方針というものを明らかにしていただきたいなというふうに思います。

野田国務大臣 御指摘のとおり、愛煙家です。タスポは持っていません。

 という中で、私にとってはある意味せつないテーマなんですけれども、税制改正の中では、先ほど村田委員から御指摘があったとおり、国民の健康の観点からたばこの消費を抑制する、そういう視点の中で、今回、昨年の十月一日に大幅な税の引き上げをさせていただきました。

 ただし、依然として、たばこが財政物資であるという位置づけは変わりません。先ほどの見通しの話もありましたけれども、大きくその税収が減るということがあるかどうか、その状況をよく見きわめなきゃいけませんけれども、財政物資であるという位置づけは、基本的には変わっておりません。

 その上で、たばこ事業法の改廃を含めて、今後の見通しというか、今後どうするかなんですが、いずれにしても、十月一日のものは大幅な引き上げだったものですから、まさに消費とか税収とか、あるいは販売業者、葉たばこ農家、製造業者、どういう影響が出てくるか、それを見きわめなきゃ、検証しなければいけないと思っておりますので、その検証があって、次の段階へのいろいろな検討だというふうに思います。

 ちなみに、平成二十三年度の税制改正においても、厚生労働省さんからは、またさらなる引き上げの御要望もいただきました。でも、いただきましたけれども、これだけ大幅な引き上げというのは過去にないものですから、あるいはほかの国にもないものですから、その検証なくして、その先の議論は十分にはまだできないというふうに思っております。

村田分科員 たばこというのは、消費税の換算でいえば、ほぼ一%ですよ。それだけ国家や地方の財政に寄与していながら、何か日陰者のような扱いを受けていて、愛煙家も大変不満を述べられることが多いわけですけれども、一方において、野田大臣はたばこの担当大臣なんだから、健康サイドにだけ立たないで、もう少し、育てるというか、事業が成り立っていく、全面禁止にするつもりがないならば、そこのところは、厚労大臣とのいろいろなやりとりであっても、もう少し事業者サイドに立つ発言も期待をいたしたいというふうに思います。

 最後になりましたけれども、今さっき申し上げました、条約に基づく労働安全衛生法、受動喫煙についての法改正がなされるということなんですが、どうも我々が見ていても、それでは、どういう内容にしようとしているのか、簡単に、一言だけ説明してくれますか。法改正に向かっての審議会の結論、この時点ではそういうことでしょうか。御説明を簡単にお願いします。

平野政府参考人 先生御質問の今後の職場での受動喫煙防止対策につきましては、昨年十二月に労働政策審議会から建議をいただきました。

 その建議の内容といたしましては、一般の事務所、工場等については、全面禁煙または空間分煙とすることを事業者に義務づける、飲食店等の顧客が喫煙する職場については、当分の間、換気等により可能な限り労働者の受動喫煙を防止することを事業者に義務づけるという提言をいただいたところでございます。

 今後、これらの内容の実現を図るべく、労働安全衛生法の改正を含め、検討しているところでございます。

村田分科員 この審議会あるいは公聴会の過程の話が、やや規制派に偏った動きじゃないかということが週刊誌等でも散見されるわけですね。

 こう言ってはなんですが、民主党の党としてのやり方、あるいは内閣としてのやり方を見ていましても、割合強引なんですね。政治主導というものを履き違えていて……(発言する者あり)かなり強引なんですよ。

 だから、きょうの質疑でもるる申し上げているように、やはりそこで生活している人もいるわけです。この規制を強化すれば、零細な飲食店なんかは一体どうするのか。中に分煙をするスペースもないわけだし。生活がかかっているわけですよ。もちろん、健康という問題、あるいは喫煙家がルールを守るということは必要なんだろうと私は思いますけれども、とはいえ、余り強引にやっちゃいかぬ。やはり万機公論に付さなきゃいけないというところがあるというふうに思います。

 もう質問時間がなくなりましたので、改めて、法案をつくる過程において、そう無理なことはしてはいけませんよということをひとつお願いして、あるいは要求して、私の質問を終わりたいというふうに思います。

 大臣、きょうもお忙しいところ、ありがとうございました。

本多主査代理 これにて村田吉隆君の質疑は終了いたしました。

 次に、あべ俊子君。

あべ分科員 こんにちは。自由民主党、あべ俊子でございます。

 本日は、大臣に質問の時間をいただきました。大臣、今回の予算、立てるのが大変だったと思います。大臣にとって、マニフェストとは何でしょうか。

野田国務大臣 マニフェストは、選挙の際に有権者の皆さんにお訴えをして、その重要な判断材料となった、大変重たい約束だと思っています。

あべ分科員 大臣、判断材料になったと。しかし、判断材料にするには、マニフェストとしてのあり方が、私は不十分ではないかと思います。特に、大臣御存じのように、マニフェストを選挙の際に掲げるときに、その財務的な、予算が幾らかかるかということを裏づけることを義務づける国があります。大臣、これは御存じですか。

野田国務大臣 財源確保を明確化するという国もあります。言われているイギリスなどは、逆に違うんですね。いろいろな国のマニフェストがあると承知しています。

あべ分科員 どうも現政権は、イギリスの例を特に国会運営に関してよく出されますが、大臣、イギリスのマニフェストはごらんになったことはございますか。

野田国務大臣 ざっと見たことはあります。

あべ分科員 現政権が衆議院選挙の前に出されたマニフェストと比較して、どういう感想をお持ちですか。

野田国務大臣 私どものマニフェストは、諸外国に比べて、財源とか工程表とか、比較的しっかりつくったマニフェストになっているなというふうに思っています。

あべ分科員 要するに、細かいということですね。イギリスのマニフェストは、かなりざっくりしたマニフェストでありまして、全体的な姿勢は出ているものの、具体的なものが余りないマニフェストだと私も理解しています。

 すなわち、今回予算編成をするに当たって、現政権のマニフェストは詳細過ぎた、なおかつ、それに対して予算がかなり影響を受け過ぎたというふうに大臣はお思いになりませんか。

野田国務大臣 イギリスは、あべ委員おっしゃるとおりで、割とざくっとしているということが後からわかりました。二〇〇三年のころは、イギリスは財源も確保しながら工程表をつくっていると思っていたんですが、現物を見たら、意外とざくっとしていたんですね。その意味では、詳細にまじめにまとめた民主党のマニフェストだというふうに思います。

 したがって、逆に細かくやった分、それを一つ一つ着実に実施するために、困難はきわめていますけれども、苦労しながら実施を今、努めているということでございます。

あべ分科員 大変御苦労されていると思いますが、実は私は、前回の衆議院選挙で、マニフェストを見て国民が投票したとは思っていません。自民党がだめだったから、消極的選択としての政権交代だと私は思っております。

 余りマニフェストに縛られ過ぎると、これは国益にもかかわる問題なので、私は、マニフェストそのものは選挙の前に、選挙公約としての、逆に言ったら、予算委員会にかけるぐらいのことがあってもいいんじゃないかと思いますが、大臣、いかがですか。

野田国務大臣 政権交代の要因については、マニフェストの効果も一定効果はあったと思うんです。二〇〇三年ぐらいから随時マニフェストを出すようになって、御支持が上がってきたということは事実です。

 一方で、私の方から言いにくいんですが、逆にライバル政党の側に問題が出てきて、その分、私どもに御支持が出てきたということも、これは事実としてあっただろうというふうに思います。

 その中で、マニフェストのこれからの取り扱いのあり方ですが、これから多分、次の選挙のときにも、私どもはやはり何らかのマニフェストを出すと思います。御党も出すと思います。お互いにどういうルールの中で、その後、国会審議の中でどうやってやっていくかというのは、これはまさに、お互いに知恵を出さなければいけないのではないかなという気持ちに今なっています。

あべ分科員 本当に大臣、私は、我が党から見ていて、非常に誠実な方だと思っておりますので、誠実な方が、約束しちゃったというマニフェストに非常に忠実にしていくがゆえに、この国の歳出が非常に膨らんでいくことは、私は、大臣の胸が非常におつらい思いをしながら、胸が痛いのではないかと思っております。

 そういう中にありまして、やはり私は、今言われている四K、高速道路の無料化、さらには高校無償化、子ども手当、さらには戸別所得補償、これをやめちゃったらどうかと思うんですが、大臣、いかがですか。

    〔本多主査代理退席、主査着席〕

野田国務大臣 私は、自分の一番の仕事は、財政健全化の道筋を定めて、それに沿ってこの国の財政運営をしていくことだと思います。実は、本当にえらいときに、厳しい財政状況のときに担当になったなと思います。

 一方で、それはマニフェストの実現とは別であって、マニフェストについては、予算委員会でも何度も御説明してきたとおり、安定財源三・六兆円を確保しながら実施をしてきていますので、財政のいわゆる破綻の問題とは、これは別の意識でやらせていただいている。その分、大変なところはあるんですが、財政に無理な、過大な負担をさせるようなことは、私はしてはいけないというふうに思っています。

あべ分科員 マニフェストをやっていこうというがゆえに、財政の破綻は、前兆は確かにございました。それを現政権で加速させているという御自覚はおありになりますか。

野田国務大臣 申しわけありませんけれども、そういう自覚はございません。

 よく御指摘いただくのは、税収よりも新規国債発行に頼っている今の予算というのは、異常事態だと。まさに異常事態です。異常事態でありますけれども、その極致は、やはり平成二十一年度から始まっているわけで、自公政権から私どもが政権を引き継いだときは、決算ベースでいうと、新規国債発行が五十二兆になりました。そして、税収の方が三十八兆円台でした。

 それから比べると、次の平成二十二年度は、予算ベースで、補正をかけた分で税収三十八・九兆、そして、いわゆる借金四十四兆、今回は約四十一兆の税収、そして国債発行が四十四兆と、差は縮まってきているということは、収支の改善が進んでいるというふうに思います。

あべ分科員 どこに軸を置いて考えるかでありますが、二年連続赤字国債の発行がふえているという戦後初めてのことは、特にリーマン・ショックという、これは、めったに起きないことに対して、それを標準として、基軸として考えることはいかがなことかと私は思いますが、大臣、いかがですか。

野田国務大臣 基軸に置くというか、現実に、そのことによって実体経済に大きな影響があって、例えば、麻生政権のときに、当初予算では税収四十六兆を見込んだのが九兆円以上へこむというのは、これはやはりかなり厳しい現実で、その厳しいどん底から、今、回復の過程にあるということであります。

 しかも、その後の、例えば平成二十二年の経済成長、実質GDPは、トータルで三・九%になると思います。これはG7の中では一番上です。もちろん、循環の問題もあるかもしれませんが、そういう厳しい財政状況の中で、収支の改善を進めながら成長と両立させる、そういう工夫をしてきているというふうに御理解いただきたいと思います。

あべ分科員 そうすると、そういう中にありまして、今大臣が、別に財政破綻にマニフェストが加担をしているわけではないとおっしゃるのであれば、マニフェストの主要施策における絶対公約の実施、これは、三年間連続可能だと思っていますか。

野田国務大臣 平成二十二年度の予算、今執行中、そして、今お願いをしている平成二十三年度予算ということでは、それぞれ三・六兆、税制改正と歳出削減で安定財源を確保して、マニフェスト主要施策を実施してきました。

 これからの歩み、どこまでどの事項を伸ばしていくのか、あるいは先送りせざるを得ないのかということは、これは何度も総理もお話をされていましたけれども、九月までにマニフェストの検証を行っていく。特に社会保障分野については四月に一定の方向性を出すことになりますので、その分野についての検証はもっと早まると思いますが、そういう段取りを経ながら検討していきたいというふうに思います。

あべ分科員 すなわち、マニフェストの政策に関して、財政破綻に加担していないということを前提にするのであれば、その九月の折り返し地点のときにマニフェストの見直しをされるのでありますが、それは、平成二十四年度の計画、ある程度の予算を立てた後なんですか、前なんですか。

野田国務大臣 時系列でいうと、例えば財政論でいうと、四月までに社会保障のあるべき姿、方向性を出して、六月までにその制度設計をする、それを支える安定財源と財政健全化を一体改革でやる、これは一応、工程表です。

 加えて、財政運営戦略は向こう十年間の財政健全化の道筋ですが、向こう三年間の中期財政フレームというのがあります。この中期財政フレームは、毎年、年央に見直す、いわゆるローリングしながら目標を達成するためという位置づけで、だからこれも六月です。

 そういう検討を進めながら、実際の予算の概算の要求というのは、これは例年どおり八月末までということになると思います。という中で、マニフェストをあわせて横目で見ながら検討していく、見直しをしていく、検証するということだと思います。

あべ分科員 すると、平成二十四年の予算を見ながら、マニフェストができるかどうかを見て、その結果でもって、九月のマニフェストの折り返し地点における査定を行うという理解でよろしいでしょうか。

野田国務大臣 したがって、マニフェストの全体の検証は九月までということになっていますけれども、いわゆる、八月末までに各省から概算要求を出していただき、その後、年末にかけての予算編成過程で、その検証結果というのを踏まえた予算編成ができる。だから、スケジュール的には問題はないと思っています。

あべ分科員 そうすると、特に私が問題だと思っておりますのは税と社会保障の部分だと思っておりますが、特に今回、自然増部分は全く関与をしなかった、すなわち、なすがままということでございますが、この自然増分に関して、しっかりと着手をしていかなければ膨らむだけになっていくと思いますが、このあたりの自然増分に対して、大臣としてはどうお考えですか。

野田国務大臣 平成二十三年度予算編成で、社会保障の自然増分は、歳出の大枠の七十一兆円以内に抑えるという取り組みの中でカバーをさせていただきました、ほかのいわゆる歳出削減等によって。ということは、今回、きちっとカバーをしています。

 これから毎年一兆円以上社会保障費が伸びていくわけでございますし、一般歳出の半分以上が社会保障関係費という中で、どうしてもこれから増大することも含めながら、安定した財源をどう確保するかということは、これからまさに、六月までの議論の中でいわゆる決着をつけなければいけないというふうに思っています。

あべ分科員 特に、社会保障の自然増部分に関しては、上からマイナスシーリングをかけるだけではなくて、私は制度設計そのものに大きな問題があると思っておりまして、この国が、マイナスシーリングを予算にかけるだけで終わるんだったら、国会議員は要らないわけでございます。その制度設計の部分を、やはり財務が主導でやっていくということにも私はかなり限界があるのではないかと思っておりますが、ここの部分は、制度設計をしっかり見直さなければいけない。

 これは税に関してもそうでございますが、大臣、この辺の御認識はいかがですか。

野田国務大臣 まずは、何より国民が一番将来に対する不安に思っていることは、やはり、年金、医療、介護等の社会保障だというふうに思います。国民皆年金、国民皆保険、昭和三十六年にできて以来、もう約五十年でありますので、これはやはり抜本的見直しをして、持続可能なものにしていく。それをつくることが国民にとって安心につながりますし、いわゆる、財布のひもが緩むきっかけにもなるかというふうに思います。

 そのためにこれは避けて通れないテーマで、その安心するビジョンのためには、それを支える財源というものが明らかになっているということだと思います。そのための議論をするということは、今回、本当に大事なテーマだと思いますので、各党にもぜひ呼びかけさせていただきたいと思いますが、ぜひお知恵もかりたいというふうに思います。

あべ分科員 これは、QTの、党首討論の中でもあった話でございまして、特に、与野党協議をしていく上で、やはり与野党の、野党がある程度その中身が出ているのに与党が出してこないということは大きな問題でございます。

 さらに、医療、年金、福祉の問題に関して、年金税方式にするかどうかということは、私は大きく分かれるところだと思っておりますが、やはり、消費税を上げなきゃいけない、これは、だれが考えてもまともに考えればわかる話でありまして、しかしながら、無駄遣いの話とセットにしてしまっているところに大きな問題があると思います。

 すなわち、無駄遣いの話と、しっかりと社会保障税としての目的税のあり方の消費税を入れていくという議論は全く違う話だと私は思っておりますが、大臣、いかがですか。

野田国務大臣 あべ委員の御指摘のとおりだと思います。同感です。

 無駄遣いは、常に注意深く、そういうことのないように不断の努力を行っていくことが必要です。一方で、あくまで、やはり、社会保障を支えるための消費税を含む税制改革、抜本改革です。これはこれで、やはり、社会保障を支える安定財源はどういう税金がいいのかということ、この議論と、無駄遣いは一方でやめる、これは両立しなければいけない、両方やらなければいけないテーマで、無駄遣いがやまないから次の議論に行かないといったならば、永遠に社会保障に未来はなくなってしまうというふうに私は思っていますので、御主張は全くそのとおりです。

 ただ、国民感情としては、もっと無駄遣いをなくせよ、あるいは、特に、国会議員をどうするんだ、給料が高いんじゃないかとか、そういう声は受けとめながら、何といっても、これはそろばん勘定だけではなく、国民感情も大事ですから、それに対する答えとしては、常に無駄遣いをチェックしていますよ、国会の方もこういう切り詰めをしていますよという姿勢は必要だというふうに思います。

あべ分科員 野田大臣のお答えを聞いて非常に安心しましたが、私は、鼻血が出るまで無駄遣いをやめてから、消費税の話をそれまでしないということは言ってはならないことだと思っております。ですから、一般の方々にもっとわかりやすく、社会保障が、いかに今整理をしなければ次世代にツケを残すのか。無駄遣いをやめる、鼻血が出る前に、その社会保障の次世代へのツケの部分を今からやっておかなければ、もう、生まれてくる子供たちも鼻血が一緒に出て生まれてくるということをやってはならないと思うんですね。

 ですから、そこは、一般財源の話と、一般的な会計の話と社会保障の中長期的な話は別建てで、しっかり皆さんにわかる説明をしなければいけないんだと思っております。

 また、その議論も自民党の中でもしておりますが、それ以外に、社会保障を目的税とする消費税を入れるのであれば、入れるということとセットで、社会保障がどうなるかということを、福袋ではいけないということを何人かの経済学者の方がおっしゃっておりまして、上げるけれども、何か使わせてね、何が入っているかわからないけれども、あなたたちの社会保障に使うねという話は、私はなしだと思います。

 大臣がおっしゃるように、社会保障が安心であれば内需が拡大するというのはおっしゃるとおりでございますが、本当に安心するには、社会保障を目的税とする消費税を入れた中で、何が確保できるのかということが、国民目線で、年間、病気になったとき、また障害を持ったときにどうなるかということがはっきりすることが一番大切だと私は思います。

 この目的税、消費税を入れる前に、私は社会保障のあり方を生活の視点で出していくことが重要だと思いますが、大臣、いかがですか。

野田国務大臣 委員の御指摘のような、社会保障に具体的に国民の皆さんがイメージを持てるような、そういう全体像を示すということがまず大事だと思います。

 その上で、社会保障といってもいろいろなものがありますので、いわゆる税制改正法の附則の百四条に書いてあるとおり、いわゆる年金、医療、介護、プラスして少子化対策というところなのか、含めて、どこまで社会保障の中で、例えば、消費税を充てるのだったらば、その使途はどうするかという議論を、その順番でやっていかなければいけないのではないかなというふうに思いますし、そういう工程の中で、これから四月、六月、それぞれの節目の議論をしていきたいというふうに思っています。

あべ分科員 特に、医療、年金、福祉に関しては、加えて言えば、実は農業もそうなんですが、政権交代があったからといって、政争の具にはしてならない部分だと私は思っております。

 特に、持続可能性を考えたときに、その部分が政権がかわることによって非常に不安定になるということは、国民にとっては大きな迷惑でありますから、ここは、ぜひともしっかりと、政争の具にしない形で制度を設計していかないと、次世代に本当に迷惑がかかる。

 特に、大臣に私がお聞きしたいのは、世代会計というのはお聞きになったことはございますか。

野田国務大臣 はい。聞いたことがございます。

あべ分科員 これは、いわゆる、生まれてから死ぬまで支払う税金、社会保障料の国民負担、世代間でどう違っているかという視点からのあり方を評価する仕組みですが、ただ、しかしながら、これをやっていくと、特に、医療、年金、これは会計学ではないわけでありますから、支え合っていく仕組みであるということを考えたときに、この世代会計、私は世代間闘争にはなってはならないとは思っています。

 しかしながら、今の十代、二十代、将来に希望が持てるか、不安がないかということを考えたときに、この制度設計を、世代間格差をもっと整理していくということを、私どもが、国会議員がやっていかなければいけないと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

野田国務大臣 給付と負担という形で人生全体のステージを見ていくと、例えば、私ぐらいの世代がちょうどとんとんで、その下の世代からだんだん負担の方が多くなっていくという構図だと思います。

 これは、やはり、この国に生まれてよかったという国をつくる前提が崩れてしまうと思います。今さえよければいいという政策ばかりやっていると、将来の世代に申しわけありません。そういう世代の会計の視点も含めてのいわゆる改革は必要だと思います。

あべ分科員 この世代間格差に関して、やるのには物すごい労力とお金がかかります。しかしながら、今までなぜ放置してきたのかということを考えたときに、非常にわかりやすい政策を立てた方が選挙に勝つ。また、政治に興味のある人が高齢者が多い、若い人は選挙すらも行かないという中にありまして、しかしながら、声は出せないけれども、また声を出す状況にないけれども、特に障害を持った方々、病気を持った方々、こういう方々の声をもっと上げていくという仕組みをもっとつくっていかないといけないと思いますが、大臣、いかがですか。

野田国務大臣 大変かみ合った議論ができて光栄に思います。全く御指摘のとおりだと思っています。

 これは、いかなる政党も、どの政党がということではなくて、どうしても投票率の高い世代を意識した政策をつくりがちであって、いわゆる二十以下の若者たち、子供たち、これから生まれてくる世代、それを支える族議員というのはいません。それは残念なことだと思います。

 私が尊敬しているアメリカの三代目の大統領でトマス・ジェファーソンという人がいます。ジェファーソンは見事な言葉を残しているんですけれども、借金を残すような国家財政というのは、これはもう詐欺と同じだと。ある意味、日本は一番国家的詐欺をずっと続けてきたのかもしれません。そういうところから早く脱していかなければいけないと思っています。

あべ分科員 そういう意味でいうと、次世代に負債を送る、そういう今の赤字国債の発行に関しては、財政小児虐待というふうにも言われるわけでございまして、特に、その世代にツケを残さないために今何をやらなきゃいけないのか、子供たちに子ども手当をつけたということは、諸外国でもやっていることでありますから、これは私は大反対ということではありませんが、ちょっとやり方に問題があると私は思っています。

 まず、その子ども手当、半分が貯金をしているということは、大臣、なぜだと思いますか。

野田国務大臣 子ども手当の意義は、さっきの議論の続きになりますけれども、どちらかというと、社会保障が人生後半に手厚くなっていて、人生前半の方が諸外国に比べて手薄だった分を、直接的に生活を支援するというよりは、子供全体を社会で育てようということで、家庭にお金を給付するというやり方をとらせていただいたことは、私は、スタートラインとしては悪くはないというふうに思っています。

 それをどこまで拡充するかについては、これは現物と現金とのバランス等々、これから議論が必要だと思っていますが、この事業自体は決して悪い事業ではない、政策効果がある事業だと思います。

 貯蓄に今現時点ではとまっているではないかということでありますけれども、これは、お子さんの年齢によって急に消費をしなければならないような時期もあると思いますので、今はためておいて次に備えているかもしれませんし、将来の消費につながるかもしれませんし、現時点でまだ何とも言えないというふうに思います。

あべ分科員 大臣、子供を育てるときに、どういう子供の時期にお金が一番かかると思いますか。

野田国務大臣 その都度、節目ですね。幼稚園から小学校へ、あるいは小学校卒業して中学校へというようなときというのは、やはりお金が一番かかるのではないかと思います。

あべ分科員 節目だけではなく、例えば、小学校時代、中学校時代、高校時代、大学時代、そういうステージがあると思いますが、どの時代に一番お金がかかると思いますか。

野田国務大臣 まず、生まれたての幼児期、これはかかるだろうと思います。それから、やはり高校、大学、だんだんと、いわゆる高等教育を受けるような段階ほどまたお金がかかってくるだろうというふうに思います、教育費という意味ではそうだと思います。

あべ分科員 おっしゃるとおり、教育費でございまして、そうしますと、やはりこれは現金給付よりも、教育のお金のかかる時期に現物給付をしていくということが私は筋ではないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

野田国務大臣 だから、高校生あたりからは負担がかかってくるということを踏まえて、高校授業料の無償化ということを、子ども手当が切れる十五歳の後についてはそういう措置をとらせているというのは、今委員の御指摘の観点からも沿ったものだというふうに思います。

あべ分科員 高校の無償化に関しては五千億の部分でございますが、しかし、その現金給付の部分で、違う部分の方のニーズが高いということを考えたときに、マニフェストでお約束されたから実行するのではなく、国民の実態に合った形で実現していくということが私は特に大切ではないかと思っています。

 そうした中におきまして、先ほど申し上げた世代間格差、私、今五十一でございますが、先日、若い方にお会いしましたら、あなたたちにはおれたちの不安がわからない、二十代、三十代がどんな不安を持っているのか、もっと知ってほしいと。それはもう、どれぐらい不安かというと、おじいちゃんがうちを建てた。住宅ローンは残る、おまえ、払っておけよ、立派なうちをつくっておいてよかったからな。でも、おまえが住むころには雨漏りして、もしかするとリフォーム代がもっとかかるかもしれない。自分たちは年をとっているから、病気をしたら優しくしろよ。おまえ、何か元気ないな、でも、住宅ローンはちゃんと払えよ。それぐらい不安だというふうに若い方がおっしゃっているわけであります。

 若い方がもっともっと希望が持てる政治をしていかなければいけない。高齢者の高齢者による高齢者のための政治だけではなく、やはり、若い方々が、もし政治家になるほどのそういうガッツがなくても、政治家がその声をしっかり上げていくということが私は非常に重要だと思っております。この世代間格差、世代会計に関しては、私どもが真剣に取り組まなければ、本当に次世代に禍根を残してしまうと思っているところであります。

 また、与謝野大臣が年金の受給開始時期を上げるべきではないかという発言をされて大問題になりましたが、実は、WHO、世界保健機構は上げるべきだということをかなり前から出しています。

 これは、世代会計と世代間格差の著書の中には、この老人という定義をどうするかということをしっかり議論しなきゃいけないというふうにも書かれていますが、大臣、これに関してお考えを聞かせてください。

野田国務大臣 与謝野大臣の御発言は、これはもう一応撤回になっています、いわゆる年金の支給開始年齢の引き上げについてです。

 一方で、今現行法のもとの中でも引き上げの進め方をやっているわけでございますので、まずその推移を見るということが大事だというふうに思います。

 今の御質問は老人の定義ですね、これはなかなか難しいですね。心の問題もありますし、いろいろな問題があるので、定義はちょっと定かには言いにくいと思います。

あべ分科員 非常に難しいところでありますが、こういう中におきまして、やはり日本は、七%と言われる高齢化社会から一四%と言われる高齢社会になるまで、非常に短期間で進んできてしまったというのが世界的にも指摘されるところでございまして、日本二十四年、ドイツは四十年、スウェーデン八十五年、さらにはフランス百十五年かけて高齢化率七%から一四%に上がってきているわけでございますから、日本がこれから何をしていくかということは、本当に世界じゅうにとって注目になると思っております。

 ですから、ここの部分、しっかり大臣としても頑張っていただきたい。できれば四Kのマニフェストをそぎ落とした形で国債をふやさないということが、私は若い者に希望を持たせることだと思いますので、ぜひとも御検討をよろしくお願いします。

 時間になりましたので、終わります。

武正主査 これにてあべ俊子さんの質疑は終了いたしました。

 午後一時に本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

武正主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑予定者の御出席が得られません。

 事務局をして御出席を要請いたさせますので、しばらくお待ちください。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

武正主査 速記を起こしてください。

 質疑予定であります近藤三津枝さんの御出席を要請いたさせましたが、御出席が得られません。やむを得ず議事を進めます。

    ―――――――――――――

武正主査 次に、法務省所管について審査を進めます。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。馳浩君。

 質疑者の御出席が得られません。

 質疑者の御出席を要請いたさせますので、しばらくお持ちください。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

武正主査 速記を起こしてください。

 質疑者の御出席を要請いたさせましたが、出席が得られません。やむを得ず次の質疑者に入ります。

 次に、山崎摩耶さん。

山崎(摩)分科員 民主党の山崎摩耶でございます。

 本日は、予算委員会の分科会で質問の時間をちょうだいし、ありがとうございました。

 本日は、成年後見制度について、法務大臣及び厚生労働省に質問させていただきたいというふうに思います。

 この制度は、高齢社会の進展とともに、高齢者や障害のある方を取り巻くさまざまな社会状況の変化ですとか、独居世帯の増加などから、その必要性が高まっているものでございます。

 この成年後見制度は、ちょうど介護保険創設と同時期の平成十二年に創設されましたが、高齢者や障害のある方たちの権利を守る上で、有効かつ必要性の高いものとなっております。

 しかし一方で、制度創設から十年を経て、さまざまな課題も浮き彫りになってきております。この制度がより多くの国民の皆様に使われるものになればよいと考えますので、若干の提案を含め、私の質問をさせていただきたいというふうに思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、成年後見制度ですが、認知症ですとか、知的障害、精神障害などによって物事を判断する能力が十分でない方について、本人の権利を守る援助者を成年後見人として選び、法律的に支援するという制度です。後見、保佐、補助という三種類の後見制度で成り立たせている制度であります。

 初めに、この成年後見制度の普及の状況ですとか実施状況について、法務大臣にお尋ねしたいというふうに思います。

 現在、成年後見制度の利用者は全国で約十七万人程度いらっしゃるということですが、全国の家庭裁判所の法定後見制度の後見開始の審判のデータを見ますと、直近の三年間ではほぼ二万三千から四千件ということで推移をしております。

 まず、この数字について、大臣としてはどのようにお受けとめでいらっしゃるか。また、見ますと、地方ごとのばらつきもあるやに感じますが、そのあたりも含め、御所見はいかがでございましょうか。

江田国務大臣 お答えいたします。

 まず、成年後見制度というのはどういうものかということなんですが、近代法において人と人との関係をいろいろ規定していくときに、民法ですが、これは意思能力を持った個人の間のいろいろな債権関係、契約関係として規定をされるわけですね。しかし、人は常に意思能力が万全にあるわけではないので、子供の場合であるとか、あるいはお年寄りの場合であるとか、意思能力に欠ける場合に、そこを補ういろいろな制度をつくっておりまして、未成年者の親権が一つですし、それからあと、成人になってからは禁治産、準禁治産という制度がございました。

 私など、昔、法律を勉強したのはもう古い話なので、禁治産、準禁治産の時代に勉強しましたが、しかし、これが非常に使い便利が悪い。と同時に、今委員がおっしゃるように、時代の変化に伴って、高齢化社会、あるいは認知症であるとか、いろいろなそういう判断能力、意思能力に欠ける人たちがたくさん出て、しかし、こういう皆さんに対してしっかりした民事法上の補助のシステムをつくっていかなきゃならぬということで、禁治産、準禁治産というのをやめまして、成年後見という制度を取り入れたわけでございます。

 禁治産、準禁治産のころには、この制度は本当に使われていなかったと思いますが、成年後見ということになりまして、今委員御指摘のとおり、平成十二年、二〇〇〇年ですか、運用が開始をされ、その当時は年間二千四百七十という数で、それが平成十五年には一万二百二十一、十八年が二万八千三百六十三、これはちょっと多いんですが、二十一年になってちょっと下がりまして、二万四千二百七十四、二万数千というオーダーで来ております。

 以前の制度と比べたら随分使われるようになってきたなという思いがありますが、同時に、恐らく今の社会の中では、この程度ではまだまだ全く足りないんだろうという認識を持っておりまして、もっともっと多くの皆さんに成年後見制度、任意後見を含め、使っていただきたい、こういう思いでいっぱいであるし、また、委員が、地域によるばらつきがあるというお話がございましたが、十分把握はしておりませんが、恐らくそういうこともあるので、十分行き渡っていないところについてはさらに周知徹底、啓蒙を図っていきたいと思っております。

山崎(摩)分科員 ありがとうございます。

 もう少し普及してもよろしいかなというのは私も同感でございます。

 成年後見制度がなかなか進まないといった理由の一つに、手続の費用の問題ですとか後見人の報酬など経済的な問題も指摘をされております。巷間、申し立て費用で約十万円程度と言われておったり、後見人の報酬が月に五万円から三十万円くらいまである、こういったことも言われております。低所得の高齢者などでは、これらの費用がネックになってなかなか頼めないということも聞いておりますが、手続にかかる費用ですとか報酬についての御見解をちょっとお伺いしたいというふうに思います。

江田国務大臣 手続の費用でございますが、ごめんなさい、私も、成年後見になってから十分勉強していないんですが、ここの手元にある資料によりますと、法定後見開始の審判の申し立てに必要な費用というのは、後見、保佐、補助、これは皆同じで、申し立て手数料は八百円ということで、あと登記手数料、これは登記の印紙代ですが、四千円というような数字になっております。

 ただ、その前に鑑定というのが要るんですね。これがなかなか大変で、どうも鑑定費用が、さまざまなものがあるようですが、五万円以下のものが六三%とかなっておりますが、五万円を超えて、高いものはどうも二十万ぐらいまでいくというようなことで、ここはひとつ考えなきゃならないことなのかなと思っております。

 それから、後見人の報酬ですが、これも恐らくさまざまだろうと思うんですけれども、やりくりしながら比較的安い費用、報酬でやっていただいているケースもあると思うんですけれども、高い場合もあって、どうしても必要な場合には、さまざまな社会的な制度として後見をやっていただくいろいろな社会の人材を安く活用できるようにもしていくことは、いろいろな取り組みがなされておりまして、ボランティア的にやっているようなところもあり、さまざま。

 後見人の報酬の点は、これは家庭裁判所で定めていただくということになっておりまして、現実に利用していただけないような高価なものにはしないように家庭裁判所が適切な判断をしているものと思っておりますが、委員のまた御指摘をしっかりいただきたいと思います。

山崎(摩)分科員 また、成年後見人のモラルハザードといいますか、例えば財産を着服している者が急増するなど、一方ではスキャンダルのようなものも報じられております。特に認知症の高齢者ですとか障害者の成年後見人に選任される方のうち、親族による後見が七割以上と言われておりますが、この親族による業務上横領事件が四年間で二十五件に急増しているなど、これについては意図せず犯罪行為を生み出すような環境になっているという御指摘もあったりしております。

 また、最高裁によりますと、不祥事ですとか任務怠慢などで解任された成年後見人、保佐人を含みますが、これが二〇〇〇年の三十七件から、二〇〇八年には二百五十七件に上った。しかし、これもまた氷山の一角ではないかという報道もあったりいたします。

 こういった状況については、大臣はどのようにお考えでいらっしゃるか、また、何か防止策などは講じられているのか、お伺いしたいと思います。

江田国務大臣 そのような、御指摘のような事案が見られるということは大変残念なことでございまして、そうでなくても、社会的弱者の被後見人からいろいろなものを吸い取るような後見というものが行われてはならないことは当然でございます。

 民法では、後見事務の適切な遂行を確保するために、家庭裁判所による後見事務の監督に関する規定がございまして、家庭裁判所で後見開始の審判をする段階で適切な成年後見人を選任する、これは家裁がそこはしっかり見ていただかなきゃならないし、さらに、事案に応じて必要な場合は、弁護士とか司法書士などの専門家を後見人に選任するとか、あるいはまた、親族等を成年後見人に選任する場合は、その職務と責任を十分に自覚してもらうように、選ぶ前にビデオを見ていただくとか、面接によっていろいろ説明をするなどということを実施しております。

 私も、つい先ほど、ビデオそのものではないんですが、ビデオの画面をプリントアウトしたものを見ますと、次のうち、この場合はどれを選択しますか、一、二、三、正しい選択が次の画面で出てきて、三が正しい、それはなぜかなどというようなクイズ型にして、なるべく頭に入るような格好で後見人の職務の自覚を促すといったこともしており、また、もちろん不正がございましたら、後見人解任というようなこともございますので、適切な対応に努めていると思いますが、それでも不適切なものがあるかと思うので、そこはみんなでひとつ注意を喚起しながら、必要な場合にはいろいろな人から後見人の解任とかという手続もございますので、社会的なバックアップで、いい制度に成熟させていきたいと思っております。

山崎(摩)分科員 大臣がお答えくださいましたけれども、実は諸外国などでは、後見人に選任された後に研修があったりするわけですね。我が国は、それは実はございませんで、今おっしゃったようなビデオですとかパンフレットが送られてくるだけだと。これではやはり不十分ではないかというふうに思いますので、ぜひそのあたりも検討していただきたいというふうに思います。

 またさらに、今まさにおっしゃいましたけれども、後見人を監督する家庭裁判所の人員につきましても、やはり成年後見制度、ふえてまいりますでしょう。そうしますと、やはり人員不足ではないか、こういう御意見も識者の中から出てきたりしておりますが、この辺の御見解。やはり少し家裁の人員もおふやしになったらいかがと私なんかは思いますが、大臣の御所見はいかがでございますか。

江田国務大臣 これは私も言いたいことがいっぱいあるんですが、法務大臣が裁判所のことについてどこまで言えるか、そういう問題もございまして、やや口ごもりながらお答えをしなきゃならぬと思うんですけれども、戦後、司法というものは何かというので、司法は、権利義務の判断とか、あるいは検察官の申し立てを判断していくとか、それこそ法と証拠に基づいて事実を確定し、そこへ法を当てはめて結論を得る、そういう営みなんです。

 戦後、家庭裁判所というのが生まれました。この家庭裁判所というのは非常に大きな役割を実は本当は期待されているので、ある意味で社会化された司法機能、そうしたものが社会の隅々までずっと行き渡って、ある意味で、国の、司法機関による社会のバックアップといいますか、本当に法には温かさがあるんだ、血も涙も通っているんだという、そういうことを家庭裁判所がやっていく。少年事件の場合であっても、家事事件の場合であっても、そういうことになっていけばいいなと、裁判所の方に、司法の方にそのことは私も期待をしておりまして、裁判所の方から法務省も手伝えと言われるなら、いつでも喜んで手伝いたいと思っているところです。

山崎(摩)分科員 家裁の人員等について大臣に御答弁を願うようなこと自体が土台無理だとは重々承知して御所見を伺いました。ありがとうございます。

 次に、厚生労働省にお尋ねをしたいというふうに思います。

 今後、独居老人が急増をする傾向にある。それから、認知症の高齢者も、現在二百万人ぐらいで推移しておりますが、近い将来には三百万人を超すと言われております。認知症の方の特に権利保護というのが大きな課題になってきているところです。

 厚労省では、認知症対策の推進として、市民後見人の育成と活用というものを検討していらっしゃるということで、二十三年度予算でもそれを積んでいらっしゃるというふうに伺いましたが、この市民後見人について、どのようなお考えで推進策を進められようとしているのか、ちょっとお答えいただきたいと思います。

金谷政府参考人 お答えいたします。

 今お話ございましたように、今後、認知症の高齢者あるいはひとり暮らしの高齢者の方が大変増加してくるということでございます。こういった方々を対象といたしまして、後見等の審判請求、これは市町村長、申し立てができるわけでございますが、そういった必要性も高まるというふうに思っております。こうしたことから、私ども、弁護士と、先ほど大臣答弁にございましたが、そういった専門家によります後見人のみならず、いわゆる地域の方々、市民、そういった方々も含めまして後見人を確保していく、これが非常に重要だというふうに認識をいたしております。

 このため、私どもといたしまして、まず、今国会に介護保険法の改正案を提出することにさせていただいておりますが、その中におきましても、今お話にございました専門家以外のいわゆる市民後見人の育成、活用、こういったものにつきます認知症施策の推進を図ることを予定しておるところでございます。

 また、お話ございました来年度予算におきましても、一つには、市民後見人を養成するための研修の事業、それから、この活動を安定的に実施するための組織体制の構築に必要な事業、そして、市民後見人の方が適正な活動ができるような支援をするための事業、そういったことを行います市民後見推進事業を創設することとしておりまして、次年度の予算に約一億五百万円の予算を計上させていただいております。

 一応、全国二十市町村で実施をしていただきたいというふうに思っておりまして、こういった施策を通じまして、市民後見を初めといたしました成年後見制度の普及促進を図ってまいりたいというふうに存じておるところでございます。

 以上でございます。

山崎(摩)分科員 執行事業の中で養成研修などはどんなプログラムになっているのか、また、後見人として実際に仕事をされた場合、選任された場合の支援策なども執行事業の中でいろいろお考えなのか、この二点をちょっとお尋ねいたします。

金谷政府参考人 お答えいたします。

 今申し上げました事業におきまして、これは一応モデル事業というふうなことで二十カ所の予定をしておるわけでございますけれども、先行的にそういった市民後見を養成されておられるような自治体がございまして、そういったところで、例えば一番時間数の多い大阪市では、基礎二十時間、実務四十五時間、施設実習四日間とか、あるいは二十四時間から五十時間ぐらい、そういった研修をやっておるということでございます。この二十のモデルの中で、どのような研修体系をとっていくのか、そういったことも検証してまいりたいと思っております。

 また、この事業の中で、先ほど申し上げました支援をするためということで、市民後見の方々が、基本的には日常生活的な、例えば介護保険の契約でありますとか、もっと細かいところでいいますと、お買い物とか、そういったケースのものを想定しておりますが、困難な事案が生じた場合には、例えば専門家の方々のフォローアップ体制とか、あるいはそういったものの相談に応じるような機構とか、あるいはそういったことを考えるなど、そういった活動ができるような支援、あるいは、例えば市民後見人を選任するに当たって、その研修をした方を市町村長が家裁の方に推薦をするとか、そういったような形をして確保ができるような、そういったことを想定しつつ、その執行事業の中で具体的にどのようなことができるかを考えてまいりたいというふうに考えておるところでございます。

山崎(摩)分科員 市町村がしっかりそのバックアップをしていくというようなことであれば、実際に選任された方も充実したお仕事ができようかと思いますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。

 先ほども述べましたけれども、成年後見で親族の方が七割を占めている。ですが、今後、独居世帯などが出てまいりますと、やはり親族がなかなか難しくなってまいりますので、こういった市民の後見制度、これは国民全体で見守りをする、そういうきずなの醸成みたいなところも含めて非常に重要だと思います。ぜひ厚労省にも着実にこの推進をよろしくお願いしたいと思います。

 最後の質問というか、ちょっと具体的な成年後見制度の活用事案について法務大臣にお尋ねいたします。

 難病に認定されております筋萎縮性側索硬化症、通称ALSという病気がございますが、大臣は御存じでしょうか。

江田国務大臣 私は、医学の方はそれほど存じ上げていないんですが、しかし、テレビなどで最近よく報道されていまして、だんだん進行して、体が動かない、最後はもう目の動きだけ、それを周りの人が判断してというような状況は知っております。ただ、どういう機序でそういうことになるのか、治療はどうなのかなどということは、ごめんなさい、ちょっとよくわかりません。

山崎(摩)分科員 ありがとうございます。

 大臣はそこまで御承知ということですが、世界的に有名な宇宙物理学者のホーキング博士ですとか、最近では学習院大学の元教授の、クイズダービーでしょうか、人気者になられた篠沢教授ですとか、その手記なども出版されて話題になっております。

 全身性の神経疾患ということで、全身の運動機能が徐々に失われていく、最終ステージにはのど、気管を切開して人工呼吸器が必要になる、こういう病気ですね。しかし一方で、患者さんの意識は最後までクリアであり、判断能力ももちろんありますし、自己決定もできるというわけですが、意思伝達行為といいますか、意思を伝達する能力がやはり非常に難しくなるというのがこの病気の一番大変なところでございます。

 ですので、みずから署名をするという行為は難しいですし、日常のコミュニケーションも、大臣がおっしゃってくださったような、唇ですとかまばたきといった微細な動きを読み取っていくという特有な方法で行わなければいけない方たち。しかも、さらに病状が進行しますと、唇とかまぶた、お顔の筋肉も全く動かせなくなる。ということで、全く意思の表示、伝達ができなくなる、そういうステージが最終段階にはやってくる、こういう病気でございます。

 現在、我が国には、このALSの療養者の方は約八千四百人ぐらいおられて、人工呼吸器の使用患者さんも、厚労省の調査では千五百三十人という数が把握されているということです。特に、人工呼吸器をつけますと、二十四時間、三百六十五日の看護、介護ケアが必要になりますが、その千五百人のうちの約半数が在宅で療養されているというのが今の実態でございます。

 例えば、判断能力は奥深くのところではお持ちですが、意思の伝達能力が全くなくなっていく、こういったALSの方などは、今話題にしておりますこの成年後見制度みたいなものは、障害者として対象になるのかどうなのか、お答えいただきたいと思います。

江田国務大臣 大変お気の毒なケースでありまして、これはやはり、いろいろな形で人として生きていくための社会的なバックアップが要るという感じは、恐らく、委員と私と共有できると思っております。

 ただしかし、成年後見という制度がそういう場合になじむかどうかということなんですが、冒頭申し上げましたとおり、ALSの場合も、もちろんこれは人ですし、権利能力という点では何の欠缺もございません。しかし、権利能力ではなくて意思能力、行為能力が欠ける場合にこれを支えるというのが成年後見でして、こういう皆さんは、意思能力というのは何も欠けていないんですね。したがって、今の民法の体系の中では、認知症などの理由で判断能力が不十分だ、これを保護する、あるいは支援するという制度にはうまくなじんでこないので、また別の、民法体系とは違うバックアップ体制を何か考えなきゃならぬ、そういう思いでございます。

 大変申しわけないんですが、成年後見制度のカバーする分野とちょっと違うと言わざるを得ません。

山崎(摩)分科員 そうだというふうに、今の制度ではカバーできるものにはなっていないということは承知いたしました。

 任意後見制度というのが一つございますね。こちらは多分、本人に十分な判断能力があるうちに、将来を見据えて、公正証書等でこれを結んでいく、この制度はALSの患者さんなども適用はできるわけですね。

江田国務大臣 ALSの患者であるとないとにかかわらず、任意後見制度というものを活用できることは当然でございます。

 ただし、ALSの病状が進行していって、そして判断能力に問題があるような別のことが起きてくれば、それはその段階で任意後見ということになりますが、判断能力が万全のまま、ALSの病状が進んで行動が極めて制限されるということになった場合に成年後見という制度が活用できるかとなりますと、これは先ほど申し上げたような理由で、今の民法の体系の中ではなかなか困難です。やはり、ほかのいろいろなバックアップ制度を考えなきゃいかぬということだと思います。

山崎(摩)分科員 時間がそろそろ参りますが、同じように障害を持たれても、こういった重度の難病の方たちというのは、意外と障害者の施策なんかから漏れてしまって、実は使えないということもあったりいたしますし、民法という話が先ほど来出ておりますが、ある種、この制度の想定外といいますか、医学、医術のケアが大変進んでおりますので、やはり法の中の想定外の状況というのも今後出てくるんだろうというふうに思います。大臣がおっしゃられたような、ほかの制度で、ほかの仕組みでということも当然考えられますが、こういった患者さんたちの権利擁護の問題、今後の課題として、大臣には、ぜひ前向きにお受けとめいただいて、お取り組みいただければというふうに思いますので、今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

 成年後見制度につきましては、先ほど来御指摘した課題もございますので、十年たちました、検証を少しおやりいただき、しかも、まだ二万件で推移しているというのは、一般国民に対する広報等もまだまだ不十分ではないかというふうに思いますので、国民にとって広く認知され、使いやすい仕組みにぜひしていただきたい、国民目線での施策を充実させていただきたいということをお願いいたしまして、質問を終わりたいと思います。

 本日は、ありがとうございました。

    ―――――――――――――

武正主査 次に、外務省所管について政府から説明を聴取いたします。前原外務大臣。

前原国務大臣 平成二十三年度外務省所管予算案について概要を御説明いたします。

 平成二十三年度一般会計予算案において、外務省は六千二百六十二億二千三百十五万五千円を計上しております。これを前年度と比較いたしますと、四・七%の減額となっております。

 他方、ODA予算は、外務省所管分といたしまして、対前年度比〇・九%の増額の四千百六十九億八千九百四十一万九千円となっております。一般会計予算案において外務省所管ODAが増額となったのは、平成十二年以来十一年ぶりでございます。

 平成二十三年度予算案の作成に当たりましては、四つの予算上の重点項目を設け、めり張りをつけた上で、必要な予算を計上いたしました。

 第一に、新成長戦略実現のための取り組みです。

 私は、外務大臣就任以来、中長期的視点に立った経済外交を展開していく重要性を強調してまいりました。経済外交を戦略的に展開し、我が国の土台である経済を強化することにより、我が国の総合的な外交力を高めてまいります。具体的には、インフラ海外展開の基盤整備支援、我が国の環境・エネルギー技術の海外展開支援、ソフトパワーを通じた成長機会の拡大等を推進してまいります。

 第二に、平和安全保障上の取り組みであります。

 経済外交を展開する上で必要な安定した地域・国際環境を構築するためには、日米同盟を基軸とした盤石な安全保障体制が必要不可欠です。また、米国、そして近隣諸国等と協力しながら、国際社会が直面するさまざまな課題へ取り組んでまいります。特に、アフガニスタンにつきましては、引き続き、治安、再統合、開発を三本柱とした支援を着実に実施してまいります。

 第三に、グローバル化の負の側面への対応です。

 我が国といたしましては、人間の安全保障の視点に立って、引き続き、ミレニアム開発目標の達成に向けた貢献を行ってまいります。昨年九月に菅総理がMDGs国連首脳会合において表明した保健・教育分野の支援、第四回アフリカ開発会議でのアフリカ向けODA倍増等の公約を確実に実施します。

 第四に、海外における外交実施体制の強化、最適化です。

 これまで述べてきた政策を効果的に実施するためには、海外における外交実施体制の強化、最適化が必要不可欠です。在外公館の新設や在外公館職員の再配置を含む体制整備を推進すると同時に、情報収集・分析能力及び情報保全を含む外交実施体制を強化します。

 以上が、平成二十三年度外務省所管予算案の概要でございます。よろしく御審議のほどお願い申し上げます。

 なお、詳細につきましては、お手元に「国会に対する予算説明」を配付させていただきました。主査におかれましては、これが会議録に掲載されますようにお取り計らいをお願い申し上げます。

武正主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま前原外務大臣から申し出がありましたとおり、外務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

武正主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

武正主査 以上をもちまして外務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

武正主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。阪口直人君。

阪口分科員 民主党の阪口直人でございます。

 前原大臣が掲げていらっしゃる経済外交について、特に、パッケージ型インフラ輸出の戦略、そして、それを効果的に展開する方法についてお伺いをしたいと思います。

 今後、世界各国において、特にアジアを中心とした新興国においては、膨大なインフラ整備の需要がございます。上下水道の整備や原子力発電所、また高速鉄道、さらに再生可能エネルギー分野など、日本が世界屈指の技術を持ち、また各国のインフラ整備にその強みを生かせる分野はたくさんあると思います。

 私は、パッケージとは二つの側面があると理解しています。マスタープランの作成から設計、物資の調達、またファイナンス、管理運営までを官民一体となってパッケージで行う。そしてもう一つは、現地の人々の生活環境の向上につながるソフト面の支援。例えば、法整備支援ですとか環境技術の移転、また人材育成などをパッケージで行う。現地の問題解決につながり、また日本が培ってきた経験、強みを生かせる可能性が生まれると思います。

 私は、議員外交として各国のリーダーや政府関係者の方々と会うたびに、このパッケージ型インフラ輸出について説明をしまくっています。各国のリーダーからも大変高い評価を得ていると思います。海外からの投資については慎重なミャンマーのアウン・サン・スー・チーさんなども非常に強い関心を示してくれました。

 私は、このパッケージ型インフラ輸出を経済外交の柱にすることで、アジアの新興国を中心とした膨大なインフラ需要を満たす、そして、それが日本において雇用を生み出し、また経済発展につながっていく、そんなサイクルを確かなものにする必要があると思います。そのためには、効率やメンテナンスなどの信頼性、環境への配慮や、また現地で生活していらっしゃる方々への配慮など、日本は大変に高い信頼性を得ていると思います。

 何としても大変過酷な受注競争に日本が勝つことが、私は、日本の国益にも、また地球益、環境益にもつながっていく、そして、全体のモラルを高めていくことにもつながっていくと考えています。

 何としても日本が勝ち抜いていくためにどうすればいいか。大臣の戦略、また思いをぜひ伺いたいと思います。

前原国務大臣 阪口委員が、外交の専門家としてさまざまな国に行かれて、議員外交で日本の強みを売り込み、また人的ネットワークを生かして御努力をいただいていることに、心から敬意と感謝を申し上げたいと思います。

 今、お話のありましたように、経済外交というものを推進していく目的というのは、ベースには、日本の国力を強めて、さまざまな外交力を強めるということと同時に、経済外交というのは、私は、ウイン・ウインの関係でなければいけないと思っています。つまりは、日本だけが得をする、もうかるではなくて、海外にも、日本の技術に裏打ちされたすばらしいインフラというものが提供されるといったことが大事だというふうに思っておりまして、このウイン・ウインの関係をどう理解されるのかということを説明するのが、私は極めて大事だというふうに思っております。

 あとは、これはまた阪口委員にもアドバイスをいただきたいと思いますが、いい技術のものは高いんですね。しかし、トータルで考えると、ランニングコストとかメンテナンスを考えると、いいものを、初期段階は高くても、それを導入することによって、ランニングコストを含めてプラスになっていくんだということをどれだけ御理解をいただくかということを、やはり訴えることが大事だと思います。安かろう悪かろうという言葉がありますけれども、高いものはそれなりのメリットがあるということを伝えることが大事だと思います。

 例えば、石炭火力発電所でいいますと、日本というのは極めて高いレベルの石炭火力発電所を持っておりまして、単なる脱硫装置ではなくて、CCSとか、そういったCO2を分離、隔離あるいは減少させるための極めて高いレベルの技術があるわけでありますが、その分高くなる。しかし、長い目で見れば、地球環境の問題、あるいは排出権取引を含めてプラスになるんだということをしっかり説明することが大事だというふうに思っております。

 基本はウイン・ウインの関係。いかに相手にも得になるかということをしっかりと説明をし、そして、無理にとりに行かない。つまりは、無理にとりに行って、結果的に、将来的にそれが大きな赤字となって、国民負担としてのしかかってくるとなると、こちらにも、その事業をしたことによって、その国に対する不満がたまるし、また相手側からも、やると言ってくれたのに途中で日本は断念したということで、むしろウイン・ウインでなくて、ルーズ・ルーズの関係になってしまいますので、そういう意味においては、やはりウイン・ウインの関係をトータルで植えつけるための努力というものが、説明責任というのが必要ではないかと考えております。

阪口分科員 今、前原大臣がおっしゃった、あくまでもウイン・ウインの関係を目指していく、これは本当に大切なことだと思います。

 ただ、日本はさまざまな意味ですぐれた点をたくさん持っている。ですから、私は、やはり日本が勝つことが本当に地球益にも、その国の人々の生活を守るということにもつながっていく可能性が非常に高いと思うので、ここは何とかいい形でこのパッケージ型インフラ展開ができるように力を合わせていきたいと思っております。

 そして、その上で、多くのステークホルダーが参加するこのパッケージ型インフラ輸出をどのようにファイナンスの部分で支えるか、これは私は大きなポイントだと思っています。そして、全体の取りまとめを行う能力を持った機関の一つが私は国際協力銀行ではないかと思っています。

 パッケージ型のインフラ輸出というのは、恐らく、システムで稼ぐ、大変長い時間をかけて初期投資を回収するという面があると思います。

 ただ、電気料金だとか水道料金、これは多くの場合、現地通貨で支払われることになると思うので、その利益の移転をどうするかなど、これはやはり、公的金融機関が民間銀行よりも果たすべき役割は大きいのではないかと思います。また、全体のコーディネーターとしての国際協力銀行の役割、そういった意味でも、もっと大きく、自由にしていかなければならない。この点、政権としてどのように取り組んできたのか。また、これからどのように取り組んでいくのか。

 恐らく、前半の部分は、外務大臣というよりは財務省の管轄かもしれませんが、ぜひお聞きをしたいと思います。

前原国務大臣 まず、具体的に申し上げて、私が国土交通大臣をさせていただいていたときに、高速鉄道を先進国、特にアメリカ、あるいは他の国に採用してもらいたいという思いがございましたけれども、今お話のありましたJBICにつきましては、先進国で使えるものは原子力発電所だけだったわけです。

 これについて、やはりJBICの機能というものをより強化しなくてはいけないということで、まずは政令改正をいたしまして、高速鉄道にも使えるようにいたしましたし、今は都市鉄道にも使えるようになりました。

 つまりは、阪口委員がお尋ねの観点からいいますと、政令を改正して、そして適用範囲を広げてきた、こういった面がございまして、今後も必要な部分については、そういった政令改正、そして、さらに必要であれば、法令改正を含めて、JBICのいわゆる融資機能、あるいは出資機能というものを強めていくことが、パッケージ型インフラ輸出のためには極めて大事な国家戦略のツールではないか、そう思っております。

阪口分科員 ありがとうございます。

 また、今後、国際競争を勝ち抜いていくためのファイナンス力の強化ということで、JBICのみならず、外務省としてはどういう方向に向かっていくのがいいと考えていらっしゃるか、お聞きしたいと思います。

前原国務大臣 JBICの投融資機能強化というのがございますし、JICAの海外投融資機能を年度内に再開させたいというふうに思っております。それから、NEXI、保険でございますが、これも、現地通貨、先ほど阪口委員がおっしゃったように、現地通貨為替リスク対応強化あるいは付保率の引き上げ、こういったことを行うことで、このNEXI、貿易保険の強化というものにも取り組ませていただきたいと思っております。

 それからあとは、ODAも、もちろん人道的なODAも大事でありますし、また、NPO、ボランティア、こういった方々がやっていただくODAというのも極めて大事でございますけれども、円借款とかさまざまな事業については、どうすれば日本のすぐれたインフラ技術が活用されるかという観点も、ODA運用の一つのルールとして我々としては関与をしていきたいというふうに思っておりますし、それに伴ったODAのあり方の見直しを、今、財務省とも行っているところでございます。

阪口分科員 ありがとうございます。

 私も、何とかこういった国際競争に勝つためには、まずは競合相手の戦略を知る必要があるという観点で、昨年、カンボジアとラオスに、特に中国や韓国の投資の状況がどうなのか、調査に行ってまいりました。多くの日本人のビジネスマンとお話をしたんですが、彼らが言うには、中国はとにかく意思決定が物すごく速い、そして、事業を行う際のコストも大変に安い、さらに、彼らが言うには、コンプライアンスを守る意識が日本の企業とは全然違う、また、ビジネスモラルも全く違っていて、なかなか厳しいということをおっしゃっていました。

 まずは、公平な競争の土俵に上げる、上がってそこで勝負できるような、共有できるビジネスモラルづくりということを日本としては働きかけていく意義があるのではないかと私は思っています。

 この点についてどのようにお考えなのか、大臣の所見を伺いたいと思います。

前原国務大臣 私が外務大臣を拝命して五カ月余りになりますけれども、いろいろな国の外務大臣あるいは政府高官と話をいたしました。あるアフリカの高官としておきましょう。高官がお話を我々にしてくれましたのは、中国との比較でありました。

 アフリカは中国がかなり進出をしているということは、阪口委員も御案内のとおりでございますけれども、日本がいい悪いとか中国がいい悪いという判断基準を申し上げているわけではありません。現実を申し上げているわけでありますが、中国の場合は、中国人をかなり現地に連れていって、そして仕事をさせるということでございまして、その分、幾つかの不満が現地にはある。

 一つは、当然ながら、中国の人を人夫あるいは作業者として連れていけば、その分の雇用が生まれないわけでございますので、地域の雇用につながらない、こういう指摘がございました。二つ目は、それにかかわるのでありますが、地域の雇用につながらなかったら、その人たちが結果的にはノウハウを身につける機会というものにつながらないということ。三つ目は、今の二つ目にオーバーラップいたしますけれども、技術移転がなかなか行われないということでございまして、そういう意味においては、中国はそういう形でやる、しかし、それはそれでありがたい面もある。つまりは、熟練した労働力あるいはノウハウ、技術を持った労働力がない場合は、中国のやり方の方がむしろ早くできるし、いいものもできる。

 しかし、中長期にその国の自立的な発展を考えた場合には、人を育てて、そして、技術も移転をして、ノウハウもしっかりと伝えていくという日本のやり方というのは、私は好まれるのではないかと思っておりまして、そういう意味での、やはり、本当に相手の国の立場に立った、先ほど申し上げましたし、阪口委員も同意をしていただいた、ウイン・ウインの関係をどう中長期的につくっていくかというためには、私は、日本式の、現地の労働力の採用、そして、技術移転をしっかり行う、ノウハウの移転もしっかり行うという中で、ともに成長する、上がっていく、そういった視点というものも必要ではないかという気がいたします。

阪口分科員 ありがとうございます。

 本当に、日本の今のやり方に対して、大臣が揺るぎのない信念とまた自信を持っていらっしゃることを改めて確認することができて、大変に心強く思っております。

 さて、私がラオスで調査をした際に、また当地のビジネスマンがおっしゃるには、IMFがラオスを返済能力が極めて低い国だ、このように評価していることもあって、円借款が現状では組めない、このことがビジネスチャンスを逃すことにもつながっているということを我々に訴えておられました。

 やはり、商社の方などは、目の前にチャンスがあるのになかなかそこに参入できないというのは大変に悔しい状況だと思いますが、この点について、こういった国に対して、これはアフリカ等にもたくさんあると思いますが、日本としてはどのような戦略で臨んでいくのか。ある種の安全性を担保しつつ、同時にビジネスチャンスを逃さない、その方法についてお伺いをしたいと思います。

前原国務大臣 先ほど申し上げたように、国々の発展の度合い、レベルというのは千差万別だと思います。その上で、円借款に満たないというところがあれば、円借款が供与できるようになるためには、その国のどういった部分を改善してもらいたいのかといったことを、まずは無償協力、技術協力、こういったものを行いながら、少し口幅ったい言い方かもしれませんが、その国のレベルアップを我々としては図っていくということも極めて大事なことなのではないかと思っております。

 あとは、やはり、いろいろな経済外交を推進していく上で、私は、さまざまな国のカウンターパートナーに申し上げているのは、投資環境の整備をしてほしいということを申し上げているわけですよ。それは、例えば、法制度がまだまだ未整備であるとか、あるいは、書類がたらい回しにされて、ある国では、その国での事業が決まったんだけれども、積み上げている四メートルほどの書類を出さないといけない、極めて煩雑、煩瑣で時間がかかる、こういうことをおっしゃっておりました。

 そういう意味においては、あらゆる意味での投資環境というものをどう整備していくのかということ、これは、通関手続のレベルアップも大事でございますし、あとは、知財をどう保護してもらうのか。つまり、技術移転はいいけれども、何か正式な取り決めがないままコピー商品が出回るとか、そういうようなことでは、信頼したウイン・ウインの関係は築けないというようなものもございますので、そういったところをまずはしっかりと、円借まで至っていない国については、ともにレベルアップをする、ボトムアップをするという意味で、しっかりと協議をしていくことが大事だというふうに思います。

 また、先ほど申し上げたように、まだ円借には至っていないところについては無償、そして技術協力、その国の現状に即した形で、我々がまさにかゆいところに手が届くようなアドバイスを人的な面も含めてやるということも大事なことではないかというふうに思っております。

 円借ができないとビジネスチャンスがなくなるというのはあるんですけれども、ただ、国民の税金を使ってやる以上は、円借というものが、今まで債務不履行になったケースも多々ありますので、その点を考えると、しっかりとやはりチェックはしなきゃいけない。では、それまでに持っていくために、先ほど申し上げたようなことをやりながら、その国の発展というものを後押ししていくということも大事なことではないかと思っております。

阪口分科員 ありがとうございます。

 今、やはり国民の税金を使うからにはというお話がありましたが、私は、国民の税金を使って展開されているさまざまなODA案件、このチェック、チェックというのはしっかりしたフォロー、これも大事ではないかと思っています。

 カンボジアにこの調査に行った際に、日本が無償、さらにローンでつくった幾つかの公社がございました。シアヌークビル港湾公社、またプノンペン水道公社、さらにテレコム・カンボジアといった公社があったんですが、韓国が証券取引所をつくる、そういった支援をするということで、独占的に株式上場の権利をカンボジアと韓国のトップが話し合って、韓国の企業に行わせることを決めてしまったという事例を見つけました。

 現地のカンボジアの黒木大使という方が頑張られて、すべてが日本の無償、そして円借款でつくったシアヌークビル港湾公社に関しては、日本のソフトバンク系のSBIという証券会社が取り扱えるように何とか頑張ってくれたようなんですが、私は、日本の援助なのに日本の知らないところで日本を排除する、そういった可能性のある取り決めがなされているということについては、非常に遺憾に思っています。

 ただ、これはやはりODAをしっかりと後々までフォローするという姿勢が少し欠けていたということが原因の一つではないかとも思うんですが、こういった、これまで日本が頑張ってきたその結果としてのさまざまなODA案件のフォローアップ、これを今後どうしていくか、今どうしているのか、大臣に伺いたいと思います。

前原国務大臣 阪口委員が、いろいろな国に行かれて、ODAの使い方をこれほどしっかりと、ある意味で厳しくチェックをされているということは大変私はすばらしいことだと思います。改めて敬意を表したいと思います。

 その上で、この三公社、カンボジアのプノンペン水道公社、シアヌークビル港湾公社、テレコム・カンボジアというものについて、私も調べさせていただきました。その結果、確かにシアヌーク港湾公社以外については韓国の証券会社が上場の主幹事になっている、こういうことでございました。

 ただ、あくまでもこれは株の扱いについての主幹事でございまして、では、カンボジアのプノンペン水道公社の発注する仕事が日本はとれていないのかというと、とれています。シアヌークビルの港湾公社で日本の企業がとれていないのかというと、とれています。

 テレコム・カンボジアはこれから、ちょっとおくれているみたいでして、まだ発注先が決まっていないということなんですが、そういう意味では、日本が支援をし、そしてその公社が仕事を発注する面については、無償については日本の企業がとれている、他方で、円借款についても、公正な競争の中で日本の技術力がしっかりと評価されてとれているというのもありますので、主幹事が他国の企業になったからといって、では、支援をしていたことについてはいかがだったのかということについては、もう少し広い観点で見ることも必要ではないか。

 ただ、そういうふうな細かな点までしっかりとODAの使い方についてチェックされるという観点は、極めて大事なことでございますので、今後も委員のさまざまなアドバイスをいただければと思っております。

 ありがとうございます。

阪口分科員 本当にしっかりと調べて御答弁いただきまして、ありがとうございました。

 ただ、現地の日本企業の方々、日本人の方々の感情的な部分をいろいろ聞いたところ、やはり韓国にまたやられたというような、ちょっと、これまで復興支援、平和構築、日本は頑張ってきた割には、その果実を十分にとっていないんじゃないかという、そういった声もありましたので、ここはやはりしっかりとフォローしていくということをお互いに留意していくべきではないかと思っています。

 最後の質問なんですが、昨年の……

武正主査 阪口さん、時間も来ておりますので。

阪口分科員 わかりました。

 ではまた、用意してきた質問は次回ということで、きょうは本当にありがとうございました。

武正主査 次に、田中和徳君。

 質疑者の御出席が得られません。

 質疑者の御出席を要請いたしますので、しばらくお持ちください。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

武正主査 速記を起こしてください。

 質疑者の御出席を要請いたしましたが、御出席が得られません。やむを得ず次の質疑者に入ります。

 次に、遠山清彦君。

 質疑者の御出席が得られません。

 質疑者の御出席を要請いたしますので、しばらくお待ちください。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

武正主査 速記を起こしてください。

 質疑者の御出席を要請いたしましたが、御出席が得られません。やむを得ず次の質疑者に入ります。

 次に、浅野貴博君。

浅野分科員 新党大地の浅野貴博でございます。

 本日は、三十分という質問の時間をいただきました。まことにありがとうございます。

 まず、取り調べの可視化につきまして、小川副大臣に御質問したいと思います。

 一昨年の第四十五回衆議院総選挙におきまして、民主党はマニフェストの中に、「六 消費者・人権」「取り調べの可視化で冤罪を防止する」「政策目的 自白の任意性をめぐる裁判の長期化を防止する。 自白強要による冤罪を防止する。」「具体策 ビデオ録画等により取り調べ過程を可視化する。」と掲げておられます。

 このマニフェストの中にある取り調べの可視化は、取り調べの、ある部分のみを録音する一部の可視化を指しているのか、それとも全過程の可視化を目指すものであるのか、その説明をいただきたいと思います。

    〔主査退席、本多主査代理着席〕

小川(敏)副大臣 なかなか、一部の可視化か、全部の可視化かという点を今ここで明確にするというのはちょっと難しいんですが、基本的には、やはりなぜ取り調べを録画するのか、可視化するのかといえば、それはその目的があるわけでございます。一番の目的は、不当な取り調べによって冤罪があってはいけない、虚偽の自白がなされてはいけない、これを防止するということにあるわけでございます。ですから、そうした意義をしっかりと発揮するために、必要な範囲の録画、可視化はしっかり実現しなくてはいけない、これが基本でございます。

 その可視化を実現するために、全過程が必要なのか、あるいは必ずしも全過程でなくて、除外される部分があるのか、それは今まさに議論しておるところでございます。ですから、全部か一部かと言われると、ちょっと今の段階では申し上げにくいところがあるんですが、やはり可視化の意味をしっかりと踏まえた、そうした制度を実現していきたい、そのように取り組んでおるところでございます。

浅野分科員 一昨日の新聞記事にございますが、厚労省の村木元局長にまつわる郵便割引制度悪用事件で、村木元局長が逮捕され、無罪判決が出されました。その過程で一連の、大阪地検特捜部前田元検事の証拠改ざん等、検察官自身によるさまざまな悪行といいますか不正が明らかになってまいりました。その過程で、今、最高検の中で検察の一連の不祥事を審査する作業が行われ、最高検が、その結果を受けて、二月二十四日、昨日、法務大臣の私的諮問機関である検察の在り方検討会議に対して、裁判員裁判事件で現在法務省でも一部の可視化は行われていますけれども、今後、三月十八日から、東京、大阪、名古屋の各特捜部が扱う事件についても可視化を行うという発表をしているものと承知しますが、特捜部における可視化については、これは一部の可視化でしょうか、それとも全過程の可視化でしょうか。

小川(敏)副大臣 まず、委員が御指摘になりました村木さんの事件におきまして、指摘にかかるような事態が起きましたこと、やはり検察庁として深く反省しなければならない、私としましても大変に遺憾なことだったと思っております。

 最高検といたしましては、なぜこのような事態になったのかということを反省して、二度と繰り返さないということのためにその事実経過を検証した、これがまさに最高検の検証でございます。

 そして、今後このようなケースを二度と起こさないための一つの方法として、取り調べの可視化というものをまず最高検が自主的に、任意で行っていきたいということを、二月二十四日ですか、在り方会議に提言といいますか、まとめたものを報告したわけでございます。

 それで、最高検がこれで任意に行おうという可視化は、あくまでも任意のものでございまして、そして、必ずしも取り調べの初めから終わりまで全部ということではなくて、やはり検察官において裁量的に必要だということを判断したものを中心に行っていこうということでございます。ですから、取り調べの全過程を行うというような趣旨のものではございません。

 また、一つつけ加えますと、これはあくまでも、最高検におきまして、村木さんの事件の反省の上に立って、任意に、自主的にこれを行っていこうというものでございまして、その取り組みに対しては評価いたしておりますが、私どもの、政府の考えといたしましては、最高検が行おうとしているこの任意の可視化の試行、これをもって、例えば先ほどのマニフェストで約束した取り調べの可視化が実現できたものとは考えておりません。

 ですから、私ども政務三役としましては、やはり可視化の意義をしっかりと踏まえた制度を法定化して実現していこう、このように努力、検討しておるところでございます。

浅野分科員 我が新党大地といたしまして、昨年九月、我が党の代表鈴木宗男の上告が棄却され、衆議院議員を失職し、それから取り調べの全過程の可視化を求める署名活動というものを独自に行ってまいりました。

 先日、二月九日、江田五月法務大臣、中野寛成国家公安委員会委員長に、合計で七万、本日の時点では七万七百十四件署名が集まっておるんですが、それを持って、一日も早く取り調べの全過程の可視化を実現してほしいという申し入れをさせていただきました。

 我々の主張といたしましては、私が所属している取り調べの全過程の可視化を実現する議員の会でもそう主張しておりますが、一部のみですと、やはり自白に至った過程でどんなことが行われていたのか、取り調べの過程で、もしかしたら検察官による誘導もしくは脅迫じみたものがあったかもしれない。そういったことを防止するために、やはりあくまでも全過程の可視化をしなくてはならないという考えで、我々は今行動しております。

 今、副大臣のお話をお聞きしますと、今まさに、必要な範囲、どの部分を可視化するか、全過程なのか一部なのか、一部だとしてもどの部分を可視化するか、必要な議論がなされているとお聞きしました。

 では、今回の最高検の一部の可視化をもって、最終的な法務省における可視化の実現、最終的な結論とはならないということでよろしいでしょうか。

小川(敏)副大臣 委員の御指摘のとおり、今回の最高検の任意の可視化の試行は、あくまでも最高検が行うものでありまして、私どもが取り組んでおります可視化、あるいはマニフェストで約束しました可視化の実現がそれで足りるとは全く思っておりません。

浅野分科員 ありがとうございます。

 取り調べの可視化で冤罪を防ぐということは、まさに、国民生活第一、国民の目線に立った政治を行う、それを掲げた民主党が政権をとった、政権交代をなし遂げた最たるあかしになるものだと私も思っております。

 その過程で、民主党としては、野党時代に、平成二十年六月四日、二十一年四月二十四日、参議院において二度、既に可視化法案を出し、採決し、参議院では可決しているものと承知します。

 私が北海道に帰りまして、さまざまな後援者の方と活動をする中で、過去に二度参議院で可決しておきながら、なぜ可視化がなかなか実現しないのか、今になって法務省の中でまた新たにワーキングチームができて勉強会をする、なぜ遅々として進まないのか、そうした疑問の声が、強くたくさん寄せられます。その点について小川副大臣の考えを教えていただきたいと思います。

小川(敏)副大臣 まず、先ほど最高検の発表が二十四日と申しましたが、二十三日でございますので、訂正させていただきます。

 それで、今御質問の点でございますが、可視化によりまして、無理な取り調べ、あるいは間違った自白がなされないように、適正な取り調べを行って冤罪を防止するというのは大変重要でございます。そのことはもう重々よく承知しておるわけでございますが、一方で、やはり、犯罪に対して適正な捜査を行って、適正な処罰を裁判によって科さなければならない、それによって社会の安全、市民の生活を守らなければならないということもございます。ですから、捜査にそうした重大な支障があるようなところまで果たしていいのかというような議論も当然あるわけでございますので、そうした点も踏まえて取り組んでおるところでございます。

 それで、民主党案を野党のときに提出したというのは確かに事実でございますが、さらに子細に検討してみますと、やはり実際にそれを施行してみる場合に、なお足らないところ、例えば、民主党案ですと、全事件、全過程の可視化が基本でございますが、果たして被疑者が拒否した場合はどうするかとか、さまざまな細かい部分の規定が少し足らないのかなと。

 ですから、そうしたことも踏まえて、しっかりとした可視化法案を、私どもは、これを検討して、練り上げて、何とか成立させたい、このように検討、努力しているところでございます。

浅野分科員 可視化の究極の目的は、冤罪をなくす、同時に社会正義を実現することに尽きると思います。

 可視化によって起こり得るデメリットがあるとすれば、それは十分な検討が必要かと私も考えます。ただ、従来の捜査手法を変えたくない、何かそういう面倒くさいことが起きるのをなるべく避けたい、一部事務方、官僚の方でそういう声があるとして、それに法務政務三役、副大臣初め大臣が引きずられることのないように、まさに民主党が掲げておられます政治主導をもって、断固たる決意で可視化実現に向け取り組んでいただきたいと思います。

 続きまして、北方領土問題について前原大臣に質問したいと思います。

 小川副大臣、ありがとうございました。

 二月五日、鳩山由紀夫前内閣総理大臣が、北海道、私の地元の根室市に行かれまして、講演をされました。その中で、四島同時に返せというアプローチであれば、今のような現実の中で未来永劫平行線のままだ、二島にプラスアルファという考え方で、プラスアルファの解釈に知恵が必要だ、こういった発言をされたと私は承知しております。

 その発言に対しまして、二月七日、北方領土の日でした、午後の予算委員会で前原大臣は、元首相が日本政府と異なる考え方をおっしゃるのは控えていただきたい、そういった旨の発言をされたと承知しています。

 それに対しまして、では、日本政府の方針とは何なのか、北方領土交渉に臨む日本政府の公式見解とはどういうものかという質問主意書を私が提出いたしましたところ、二月十五日に閣議決定された答弁書では、「政府としては、北方四島の帰属の問題を解決してロシア連邦との間で平和条約を締結するという基本的方針を堅持しつつ、北方四島の我が国への帰属が確認されれば、実際の返還の時期、態様及び条件については柔軟に対応する」、こういった従来の見解を繰り返す答弁がなされております。

 そこで、前原大臣にお聞きします。

 過去の答弁書でもそうです、「われらの北方領土」、広報冊子にもよく出てきます、「北方四島の我が国への帰属が確認されれば、」四島の帰属の確認、これは、歯舞、色丹、国後、択捉、四島同時の帰属の確認を求めるということでしょうか。それとも、帰属の確認においても、例えば一島ずつ、または先に二島、残り二島は後で、そういった時間差、段階的なものも認めるという意味でしょうか。説明を願います。

前原国務大臣 浅野委員の質問主意書にもお答えをいたしましたとおり、政府の考え方といたしましては、北方四島の帰属の問題を解決してロシア連邦との間で平和条約を締結するという基本方針を堅持しつつ、北方四島の我が国への帰属が確認されれば、実際の返還の時期、態様及び条件については柔軟に対応する考えでございます。

 では、お尋ねのあった鳩山前総理の考え方、御発言はどこが違うのかということについて申し上げれば、例えば、鳩山前総理は二島にプラスアルファといったお話をされておりますが、これは政府の方針とは一致をしていないということであります。あくまでも、先ほど申し上げたとおり、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結する、そしてまた、この帰属が確認されれば、実際の返還の時期、態様及び条件については柔軟に対応する考え方ということでございます。

 先ほど、この確認の形態についてお話がありましたけれども、今申し上げたようなことがすべてでございまして、これ以上お話をするということになれば、これからロシアといろいろな交渉をしていかなきゃいけませんので、そういう意味においての我が国の手のうちといいますか、あるいは考え方を縛ることになりますので、貴委員に質問主意書でお答えをしたことがすべてである、そして、鳩山前総理のお考えの二島プラスアルファというのは違うということを申し上げたということを御理解いただきたいと思います。

浅野分科員 交渉の手のうちをさらさないというのは私も十分理解できます。

 前原大臣に一つ確認したい点がございます。

 要するに、四島を日本に返還する、四島を取り戻すという意味では、前原大臣も鳩山前総理も、もちろん私自身も、日本政府としてその思いに何ら変わりはないと思います。その四島返還に向けた道筋は一つではなく、複数あると理解してよろしいでしょうか。

 最終的に四つを取り戻す。その過程で、以前「われらの北方領土」にも書かれていました、四島一括という言葉がありました。根室の方の元島民の方でも四島一括ということを主張される方もいます。学者の中にもいらっしゃいます。四島すべてを同時に、今すぐ耳をそろえてすべて一遍に返せというやり方もあれば、最終的に四つ返ってくればいい、その過程でいろいろな方法がある、いろいろな道があると思います。四島返還に向けた方法は複数あるという理解でよろしいでしょうか。

前原国務大臣 先ほどお答えをしたとおりでございますけれども、北方四島の帰属の問題を解決してロシア連邦との間で平和条約を締結するという基本方針を堅持した上で、北方四島の我が国への帰属が確認をされれば、実際の返還の時期、態様及び条件については柔軟に対応するということでございます。

浅野分科員 先ほど前原大臣が、答弁いただきました質問主意書にも書かれておりました鳩山前総理の見解は必ずしも政府の見解とは一致していないと考えると。今、前原大臣から、二島プラスアルファ、これが政府の方針と違うというお話をいただきました。

 確かに、二島プラスアルファだけですと、四島じゃないのかという認識を持たれると思います。ただ、この二島プラスアルファという公式の中のアルファに二島という数字が仮に入るのであれば、結局は四島返還になるわけですから、必ずしも鳩山前総理がおっしゃったことが日本政府の方針と異なるとは私は思いませんが、いかがでしょうか。

前原国務大臣 アルファというのは、二とおっしゃっているわけではありませんので、アルファとおっしゃっているということについて言えば、それは政府の考え方と違うと言わざるを得ないわけでございます。

浅野分科員 私の質問の趣旨は、鳩山前総理、今でもロシアに対していろいろな人脈をお持ちで、日本外交にとっては重要な影響力をお持ちの方だと思います。北方領土問題、日本国民の悲願であるこの問題を解決する上で、もちろん今先頭に立たれているのが前原大臣でいらっしゃいますけれども、鳩山前総理が果たされる役割もこれからあるかと思います。その鳩山前総理と前原大臣があたかも見解が食い違っている、けんかするような形ととられるのは、ロシアに対するメッセージを発する上でもマイナスだと思いますし、いずれにしても、前原大臣がこれからロシアとの交渉をさらに進めていかれる中で、あらゆる外交上のカード、幅を持って臨まれることが重要かと思います。その上でこういう質問をさせていただきました。

 次の質問に移らせていただきます。

 二月七日、北方領土の日に九段下の九段会館で行われました北方領土返還要求全国大会、菅総理も出席されまして、ロシアのメドベージェフ大統領が昨年十一月一日に北方四島の国後島を訪問したことは許しがたい暴挙だといった発言をされました。

 この発言は、当日、菅総理、前原大臣と違いまして終始メモに目を通されながらお話しされていた姿が印象的だったんですが、この許しがたい暴挙発言は、外務省が事前に用意したペーパーに含まれていたものだったのでしょうか、確認を願います。

前原国務大臣 浅野議員も、北方領土返還要求運動の全国大会に御出席をされていたと思います。私の記憶が正しければ、鳩山前総理の近くに座っておられたんだと壇上から拝見をしておりましたけれども。

 外務省が用意したペーパーというのはあくまでも参考でございまして、これは総理であろうが、あるいは私であろうが、別にそのとおり読めというものではなくて、それについては参考にしながら、政治家としての判断で、責任で発言をするというものでございますので、余りそのとおり読んだかどうかということについては我々は注視をしていないということはお伝えをしておきたいというふうに思います。

浅野分科員 いずれにいたしましても、外務省が用意した文言ではなかったということを今の前原大臣の答弁で私も理解しました。以前、民主党の外務部門会議でも岡野ロシア課長もそうおっしゃっていましたので、菅総理のアドリブだったことは私も承知しております。

 要するに、この許しがたい暴挙発言というのは、前原大臣が、総理がその場でそういう発言をされるということを全く御存じない中での発言だったと理解してよろしいですか。

前原国務大臣 それがどういう意味を持つかということについて私が聞かれれば、これはロシアに行ってラブロフ外相あるいはナルイシキン大統領府長官にも申し上げましたけれども、元島民のみならず、北方領土返還運動に頑張ってこられた方々のみならず、日本国民全体の思いというものを代弁されておっしゃったものであるということを私は申し上げたわけでございまして、浅野委員は御理解をいただけると思います。

 先ほど、鳩山元総理の御発言も、私は批判をしたわけじゃないんです。特に私が危惧をいたしましたのは、ちょうど私がロシアに行く直前でありましたので、やはり、外交で、言葉じり、そこだけをとらえられて、違うことを言っているじゃないかというようなことを言って、相手を利することがあってはいけないという意味で申し上げたわけであって、鳩山元総理の北方領土返還問題に対する強い思い入れや、努力をされてきた経緯、あるいはこれからも御努力をいただくであろうという期待というものは、全く変わるものではありません。

 そしてまた、総理の御発言に対して我々が一つ一つ何かコメントをすることが、むしろ交渉相手に対して利するようなことがあってはいけない、こういう思いの中で私は発言をしているわけで、そのことは、浅野委員も同じ方向に向いて、御理解いただけるものだというふうに確信をしております。

浅野分科員 ありがとうございます。

 外交におきまして、私が申すまでもありませんが、どういった言葉を使うか、交渉に当たりどういう雰囲気をつくるかという、非常に重要な意味を持つものだと思います。

 少なくとも、北海道におきましては、北方領土問題に最前線で日々、三百六十五日取り組んで相対しておられる根室の皆様、元島民の皆様は、この許しがたい暴挙の発言により、本来であるならば前進に向けて話し合いをすべきだった前原大臣のラブロフ外相との会談が、非常に険悪な雰囲気のままで始まり、何ら実利を、実利を得るというよりも、そのリカバリーに終始してしまったんじゃないか、そういった憤りの念があることは事実だということを申し上げたいと思います。

 いずれにいたしましても、二月十一日に前原大臣がラブロフ外相とお会いされ、またナルイシキン大統領府長官と会談された、このことは、許しがたい暴挙発言によってまた日ロが険悪な雰囲気になりつつあったこの状況をリカバリーして、前に戻す契機をつくった上で非常に意義があったと私は考えております。

 特に私が意義深かったと考えるのは、前原大臣が、これは外務省のホームページにも書かれております、「北方四島における共同経済活動について、日本の法的立場を害しない前提で何ができるかを日露双方のハイレベルで議論していくこととなった。」とあります。北方四島における経済協力について前原大臣から提唱されたものかと思いますが、この経済協力のあり方について、どういったビジョンを持っておられるのか、説明いただきたいと思います。

前原国務大臣 このことは、ラブロフ外相との会談の中で私から提起をいたしました。

 大きなポイントとして、まず一つは、まさに浅野委員は地元でいらっしゃいますけれども、根室の皆さん、北方領土問題に取り組んできた皆さん、あるいはそれをサポートしてくださった地域の皆さん方というのは、地域経済、これは北海道に限らずでありますけれども、かなり疲弊をしているということについて、私は大変申しわけない気持ちでいるわけです。六十五年間この問題が解決をしていない。そして、解決をしていれば、もう少し、人的交流、あるいは漁業の問題でもさらなる活動の余地があったかもしれない中で、ある意味、縛られた形で活動を余儀なくされている面があるというのは、これは紛れもない事実だろうというふうに思っております。

 そういう中で、当然北方四島は日本の固有の領土でありますので、日本の法的立場を害しないという大前提で、何かできる、そして、地域の方々の経済活性化、あるいは領土問題、今まで取り組んでこられて、何か前進だという思いを持っていただけるのであればそれにこしたことはないし、またそれが領土問題解決の一つのステップになればいい、こういう思いで私は発言をしたわけでございます。

 一九九八年の漁業に関する合意もございました。漁業に関する合意、あるいは北方領土内におけるさまざまな協力活動でそういうものができないかどうかということを、ハイレベルでぜひ話し合いをしてほしい、話をしたいという申し出をいたしました。

 今、外務省の中で、言いっ放しではだめだ、外務大臣が相手の外務大臣に対して提案をしたんだから、どういうものが我が国の法的立場を害さない前提で活動できるという具体的な提案になるかということを検討してもらっています。そして、それをしっかりと相手側に投げて、ハイレベルで交渉をしていきたい、こう考えているところでございます。

浅野分科員 今大臣がおっしゃった一九九八年のいわゆる安全操業の漁業の協定、これは、我が党の代表鈴木宗男も私も以前から考えておりましたが、海で日ロの双方の法的立場を害さない、いわゆるあいまいな形で今そういう漁業の交流というものがなされております。海でできることが陸でできないことはないと我々は考えております。

 例えば、日本人が四島に渡るときに、外務省が発行するパスポートを持って向こうの入国手続をとるということは、法的にできないと思います、ロシアの管轄権を認めることになりますので。そうではなく、例えば内閣府が発行するちょっとした特別な身分証明書を持っていく。日本側としてはあくまでも国内手続をとるという建前で四島に入っていく。そういった形をとり、ロシアの実効支配がただ強まっていくだけの四島において、日本人が活発な経済活動を行い、日本のプレゼンスを高めていく、これが今硬直した領土交渉打開の一つになると私は考えております。そういった意味で、大臣が今回日ロ外相会談で提案されたことは非常に意義があったと私は考えております。

 最後に、この経済協力、大臣として、今後、いつまでを目途に、ロシア側と具体的な交渉、中間報告なりそういったものを進める考えでいらっしゃるのか。また、一九八九年の閣議了解、日本人は北方四島に行かないでくれとした閣議了解、これを見直す考えはあるか否か、お願いします。

前原国務大臣 時期については、今明確に申し上げることができないことは御理解をいただきたいというふうに思っておりますが、どういう具体的な提案ができるかということをしっかりとまとめて、また、浅野議員は地元でいらっしゃいますので、いろいろな御提案をいただいて、我々としては、採用できるものについては採用させていただきたい、地域の方々からの御意見というものも採用させていただきたい、もちろん、先ほどの前提つきでございますけれども。

 閣議了解につきましては、現時点で見直すつもりはございません。日本の法的立場を害さないでどう行い得るのか、これが具体的にどういうものがあり得るのかということの中で我々はぜひ球を投げていきたい、こう考えておりますので、ぜひ御協力をいただければありがたいと思っております。

本多主査代理 時間ですので、最後に。

浅野分科員 ありがとうございます。

 私も、北海道を代表する国会議員の一人として、前原大臣の交渉を後押しできるような活動をしてまいりたいと思いますので、裂帛の気合いで北方四島を取り返すべく交渉に臨まれることを期待しております。よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

本多主査代理 これにて浅野貴博君の質疑は終了いたしました。

 次に、井戸まさえさん。

井戸分科員 民主党の井戸まさえです。

 きょうは、ハーグ条約について、まず前原外務大臣に聞いていきたいと思います。

 国際化が進む中で、この三十年間で国際結婚は六倍にふえて、日本人も、仕事や留学など、日本以外の国に居住することがふえてきています。

 そうした中で、国際結婚か否かにかかわらず、子供のいるカップルが離婚する際に、一方の親が他方の親の同意がない中で子供を連れて国境を越えることに関して、そこで紛争がいろいろと起こりまして、その紛争を解決する国際ルールとして、世界八十四カ国が加盟したハーグ条約というものがあります。

 日本はそのハーグ条約には加盟はしていないんですけれども、子供を連れて日本に帰るケースが非常に多くて、それがトラブルになっているということで、最近では、加盟国の方から、日本にも加盟するようにという、そうした要請が来ていることは当然外務大臣も御存じで、それに対しての対処というものも始めていらっしゃるとは思うんです。

 私自身は、こうしたトラブルを解決する手だてとして、子供の最善の福祉、利益を優先した何らかの国際的なルールというものは必要であるという認識は持っていますけれども、現在、民主党のハーグ条約検討小委員会の事務局次長として、連れ去りの案件ですとか、またハーグ条約の運用状況を知るにつけて、このハーグ条約というのがそうした子供の最善の利益を保障するものであるか、それが最善かと問われれば、正直言って懸念があります。

 懸念の最も大きな要素としては、DVに対してのそうした配慮が十分ではないのではないかというところでございます。

 なぜなら、この条約というのは一九八〇年に制定されていまして、まだDVとか児童虐待というものも、広範に起こる深刻な人権問題としてとらえられていなかったころ、それ以前に制定をされた古い条約であるということがあると思います。だからこそ、DVが返還の拒否事由、例外事由として挙がってきていない。

 当然、DVの目撃というものが、例えば親にDVがされているところを目撃したことが子への虐待であるという、我が国では児童虐待防止法で、それは子への虐待であるということになっているんですけれども、その前提もこの条約の中ではなくて、また、返還審理の中でも、連れ去りの理由というもの、だれが今までその子供を監護してきたかとか、また、子の重要な利益にかかわる実態というのを考慮しないで子を返還する構造になっているという、根本的な問題があると指摘もされています。

 ハーグ条約の返還の例外の拒否事由の運用については、ハーグ国際私法会議事務局が出したレポートにもありますけれども、国際条約ながらも、それぞれの国々が国内法でこれを担保しているというので、結構ばらばらで、統一した見解というのがなかなかないんですね。そうすると、これは子の利益と反することになるんじゃないかな、いろいろなケースを見ながらもそう思うものもあります。

 そして、最初にも言ったんですけれども、よくハーグは国際結婚、離婚にかかわることだということで報道されることが多いんですけれども、実は、海外に一定期間住んだ日本人同士にもかかわってくる問題であるので、自分は国際結婚をしないからいいのだということではなくて、日本国民全員にある意味起こり得ること、国民全体の問題としてとらえなければならないのではないかというふうに思っています。

 しかし、例えば国民への、この問題の所在を理解してもらうための世論喚起という意味ではまだまだ十分ではないとも思いますし、特に、起こり得るべき懸念に対して答えられる情報が、こちらに入ってくる情報というのが非常に少なくて、党においても、そして政府においても、さらなる慎重な検討が必要なのではないかというふうに思っています。

 まず、前原大臣に、このハーグ条約締結の是非に関する検討状況について伺いたいと思います。

前原国務大臣 井戸まさえ議員が、ハーグ条約、親権の問題について熱心に取り組んでおられますことに、心から敬意を表したいというふうに思っております。

 ハーグ条約の締結の可能性につきましては、関係省庁の副大臣会議を設置するなどいたしまして、政務レベルでの積極的な関与のもと、真剣に検討を進めております。

 ハーグ条約は、両親が国境を越えて子を奪い合う状況は子供にとって有害であるとの考え方から、国家間で一定のルールを定め、ルールに基づいた解決を追求するための条約であることは御承知のとおりでございます。

 他方で、今、井戸議員がるる御説明をされたように、また御指摘をされたとおり、この問題は子供の福祉にかかわる重要な問題であります。検討すべき論点は多数ございますけれども、各方面から寄せられるさまざまな意見を踏まえつつ、子供の福祉の観点から、できるだけ早く結論が出せるように、関係省庁と協力をして検討を進めていきたいと思います。

 ちなみに、本日の昼、三回目の副大臣会議を行ったと承知しております。

井戸分科員 今、できるだけ早く結論をということで御答弁があったんですけれども、報道ベースで見ますと、政府のハーグ条約締結の状況に関しては、例えばことしの一月十日の読売新聞を見ますと、「米国が再三求めてきた同条約の締結により、米軍普天間飛行場移設問題などで揺れた日米関係の立て直しの一助にする思惑があるとみられる。政府・民主党内にはなお、慎重論が根強くあるが、菅首相の春の訪米の際に加盟方針を表明することを視野に検討を進め、三月中に政府見解をまとめる予定だ。」との記事も出ていまして、一月二十七日の朝日新聞でも同じように、この時期的なところの見通しも書かれておりました。

 たまたまですけれども、きのう私は、世界各国の米軍基地内で購読されている星条旗新聞という新聞社がありまして、そこのハーグに関しての取材も受けたんですけれども、そこの記者さんも、訪米に当たって、これを目途にやっているのではないか、そうした感触はいかがなのでしょうか、こういった質問もあったんですね。

 しかし、私は、結論ありきで、例えばここの時期があって、そのために三月に取りまとめをするとか、こういったことはあってはならない。逆に、日米関係のかわりに、子供の人権なり母親たちのそういった思いというものを引きかえにするというような報道が出ること自体、これは非常にいけないことだとも思います。

 前原大臣に、人権問題でもあるハーグの問題と日米関係の問題は別であること、また、予定をされています春のオバマ大統領と菅首相との会談で表明ありきで議論を進めているわけでないことを、ぜひここで表明していただきたいと思います。

前原国務大臣 まず、幾つかポイントを申し上げたいのは、春ということではなくて、この一年の上半期のいずれかの時期ということを申し上げてまいりましたので、まず、春ではない。(井戸分科員「訪米ということですか」と呼ぶ)ええ、訪米です。総理の訪米ですよね。総理の訪米については、上半期は広く言うと春と言えなくもありませんが、上半期であるということで、細かいことで申しわけございません。

 それから、二つ目でございますけれども、普天間の問題で他の問題をディールするということは全くありません。

 しかも、普天間の問題については、鳩山政権のときに、少しこの問題については何か大きなテーマになり過ぎましたけれども、菅政権では、五月二十八日の日米合意を守るということを合意して、そしてまた、期限は区切らないということも日米間で合意をする。しかし、沖縄の負担軽減のためにも頑張っていきましょうということと同時に、日米の戦略目標の再評価をし、日米同盟を安全保障の面でも深化させていくと同時に、経済、人的交流・文化、こういった三本柱での日米の同盟関係の深化を図っていくということで合意しておりますので、何かそれまでに普天間の問題で、例えばTPPでもよく言われるんです、何か、TPPはアメリカから押しつけられて、普天間でおかしくなった日米関係をTPPに入ることでというふうに言われますけれども、私が知っている限りでは、TPPについては、入れ入れと言われる方はおられません。あるいは、逆に、入るときには何か日本は条件をつけて、その中身について少し、より妥協したものになるのではないかという心配をされる方がむしろおられるぐらいで、TPPも、普天間あるいは日米関係の何か条件だということもありません。ましてや、ハーグ条約というものが何らかの取引ということではありません。

 ただ、ハーグ条約も含めて、例えば牛肉の問題とかあるいは保険の問題とか、さまざまな分野において日米問題が生じているということは事実でありますし、特にハーグ条約の問題は、日米間だけではありません。これは他の国からもかなり日本の取り組みについて言われている。ヨーロッパの国もそうですし、北米大陸でいえばカナダからも言われておりますし、事、日米関係で物事を考えるべき問題ではないということは申し上げたいと思います。

 いずれにしても、これは人権にかかわる問題であると同時に、それぞれの国とのいわゆる外交問題になっている話でございますので、そういった人権そして外交問題ということで、じっくり話をすると同時に、ただ、いつまで議論したって結論を得ないということはいけませんので、議論をして、ある一定の時期に結論を得るということは考えていかなくてはいけませんが、何かそれが、何かのタイミングまでに土産でという意図はありませんので、そういうことなしに議論をして、議論が煮詰まった段階で結論を出していただくということで、与党の方でも御協力をお願いできればと考えております。

井戸分科員 その辺をはっきりと言っていただいてありがたいとは思うんですけれども、いつまでも決めないというのはおかしい、それもよくわかるんですけれども、ただ、やはり実態把握とかをしっかりやった上で、これが本当に子の利益につながるのか、そして日本人、邦人の保護にもつながっていくのかということを、きっちりとそこの実態把握というのをしていかなければならないと思うんです。

 昨年、私、九月の終わりぐらいにハーグ条約に関しての資料というのを取り寄せたときに、またことしの一月になってちょっと数字とか変わっていて、例えばアメリカだったら、ハーグの連れ去りの件数とか、今は百件とかなっているんですけれども、昨年の九月の段階でちょっと見てびっくりしたんですけれども、日本への連れ去りの件数、だから、海外から連れ去られたよと言われている件数に関しては外務省は把握をしているんですけれども、日本から連れ去られたケースに関しては、ここで書いてあるのは、「我が国政府は、件数など網羅的なデータを把握していない。」とあるんですよ。でも、例えばこれは去年の九月二十九日現在の資料なんですけれども、その前の段階で、既にもう例えば新聞では日本から連れ去られたケースなんか出ていて、しかも外務省にこれは相談もしているというんですね。しかしながら、それを把握していないと。

 それで、今どのような、例えば日本からの連れ去りの件数なんというのは把握をしているんでしょうか。そうした基礎的なところに関してできていない上でこのことを幾ら話し合ってもだめだと思うんですね。

 また、ハーグの運用に関しては、例えば、返還された子供は、連れ帰った親が付き添わない場合は、そこで監護権を決める裁判を行うんですけれども、その間はだれが面倒を見るのかだとか、例えば、返還される子供に付き添って親が行った場合は返還先でどのような在留資格を得ていくのかとか、ハーグ条約で返還された後に、裁判所でどちらが監護親だということで決まって、その後の子供はどうやって生育されているのか。こうしたことに関しての基本的なデータということをぜひとも調査、把握というものはしていかなければいけないと思うんですけれども、今こういったところの調査、把握というのはどのような現状になっているか、教えていただいてもよろしいでしょうか。

山花大臣政務官 今御指摘の点ですけれども、まず、ハーグ条約について検討しようということで、いろいろな形で運用の実態などの把握に努めております。例えば、担当の課の者が実際に条約事務局に赴いて調査をしたりとか、あるいは在外公館を通じて調べたりとか、あるいは条約事務局が公表しているデータなどの分析などもやっていたりとか、あと、私自身も先日、条約事務局の事務局長さんとお話をしてきたりとか、そういうことをいたしてまいりました。

 先ほどの御指摘の中でちょっとコメントしたいことがあるんですけれども、一九八〇年代につくられた条約なので、DVのケースなどが条約そのものには想定されていないんじゃないかという御指摘があったんですけれども、条約事務局の事務局長さんが、ハーグ条約というのは例外的な規定もあってという中で、子の福祉にとってよくないケースは例外に当たるんだ、例えばということで、冒頭に挙げられた例というのがドメスティック・バイオレンスというようなことで挙げられておりましたということと、つまり、ほかにも裁判例も実際これまで知見が積み重ねられておりますので、そういったことで、形式的な、機械的な適用からする不正義については実際各国で知見がかなり積み重ねられているのだと承知をいたしております。

 あと、日本からの連れ去りのケースについて外務省は承知していなかったではないかという御指摘なんですけれども、これもいささか鶏が先か卵が先かみたいなところがあります。

 つまりは、ハーグ条約に加盟をしているのであれば、それはもう外務省のというか中央当局の責務としてやらなければいけないことでありますけれども、現実、今加入していない状態で、例えばの話、領事局の業務としても、ドメスティック・バイオレンスなどで本当に命の危険があるんだという話で相談に来れば、邦人の生命とか身体の安全の確保というのはそれは間違いなく領事局の業務ですので対応しなければいけない。しかし、離婚の相談という話になると、民事不介入が基本ですから、ハーグ条約に入っていればそれについてもちゃんとやらなければいけないというような法的な枠がはめられますけれども、それ以前の段階で、どこまで把握していたのかという過去のケースについて申し上げますと、なかなかその実態については難しかったのではないかと思っております。

 ただ、現時点では、今、どういうケースがあるのかということについて、私自身も実際に、DVのケースでいうと被害者という表現になるんですけれども、連れてきた方々にもお会いをしたりとか、あるいは弁護士の方に実態を聞いたりとか、そういう努力を今までしているところでございます。

井戸分科員 今、ハーグ条約に入らないからなかなかそういうものの把握が難しかったということでお話もいただいたんですけれども、では、ハーグ条約に入らないと、例えば日本から連れ去られた子供に対して、こういったことに関して返してくれということは言えないのかといったらば、実は、例えばインドとかパキスタン、非締結国なんですけれども、この国々は、加盟をしているイギリスに子の返還を求めた事例というのもあるんですね。

 それと、例えば本当に子の連れ去りの問題を解決しようというのであれば、むしろ、今ハーグに入っている八十四カ国というのは、日本で言う、例えば国際結婚の割合でいったらば、非常にそこの部分というのは少ないんですね。逆に、今、平成十八年の人口動態調査なんですけれども、例えば夫が日本人で妻が外国人というケースは、六・六%が加盟国で、八四%が逆に非加盟国であったりだとか、妻が日本人で夫が外国人というケースでも、加盟国は二六・七%で、非加盟国は四一・五%なんですよ。

 本当にこの問題を解決しようと思ったらば、ハーグだけじゃなくて非締結国との間のことを解決しなければいけないので、フォーカスがハーグだけに当たっているというのは、私はちょっと、片方しか解決ができないんじゃないかなと思うんですけれども、この辺は、逆に言えば、ハーグに入らなくても、二国間でしっかりとした取り決めができればそういった問題も解決ができるということも考えられると思うんですけれども、大臣はどのようにお考えでしょうか。

山花大臣政務官 済みません。御指摘のケースについて、インド、パキスタンのケースについては承知をいたしておりますけれども、一般論として申し上げますと、ハーグ条約に入っていない国との間のこうしたトラブルというのはいろいろな国で起こり得る話であります。

 外務省として、例えば子供が外国に連れ去られたというような通報を受けたようなケースですと、これについては、例えばケースワーカーだとか弁護士を紹介するであるとか、あるいは現地法にのっとった解決方法の提案などの側面支援ということを行っております。この過程において相手国との連絡調整というのを行うことがあるという形で当事者の方の支援は行うということになっています。

 何とかそれでうまくいったケースがあるのではないかという御指摘もあろうかと思いますけれども、ただ、例えば、それは日本の国あるいは外国の国の個別の裁判において結果としてそういう結果が出たのでうまくいったという、うまくいったという評価は何を物差しにするかにもよるんですけれども、それについて、必ずしもこれは一般化できるかというとちょっと難しいところがあって、むしろマルチの形で定型的にこうした解決の準則を定めたのがハーグ条約ですので、それについて、八十四という国が多いのか少ないのか、あるいは結婚の比率で、ありていに言うと日本にとって損か得かみたいな観点もあるかと思いますけれども、それにとって、入ることがメリットなのか、あるいはデメリットとして何があるのか、もし入るとしたときのデメリットになることについてどうやって障害を取り除くかという観点から今検討をしているところであります。

井戸分科員 子供を連れて日本に帰ってきた方々のお話、山花政務官もお聞きになったと思うんですけれども、例えば、向こうで監護権を争う裁判をしたときに、DVの被害者であったならば、夫からDVを受けているときにテープをとった、それを証拠として裁判所に持っていっても、裁判所は、それは相手方の同意を得たんですかと言われてしまう。DVで命からがら大変な状況のときにようやくその証拠のテープをとっても、それが裁判所で認められないだとか、また、シェルターに駆け込んでも、既に夫が先回りをしていて、うちの妻はちょっと精神的に問題があるから、来てもそれを受けないでくれ、こういうようなことで、結局日本に帰るしかない。例えば、ハーグ条約の締結国であればそれが誘拐犯になるということがわかっていてもそれをやらざるを得ないというのは、ある意味もう命の問題である、これは自己防衛をするためにしようがないというところもあると思うんですね。

 そうしたところを十分に例えば領事館なり大使館なりが、邦人の保護という観点からその方たちに今までもきちんと対処できてきたのかといったら、私は不十分であったと思うので、そういったところも含めてしっかりと担保ができて初めて、そうした条約の、入る、入らないというところも含めて検討というのはできてくると思うので、ぜひともそういった実態をさらに調べていただきたいと思っています。

 小川副大臣に伺います。

 このハーグ条約を締結するに当たって、例えば、国内法を整備すれば大丈夫だ、そういった声もあるんですけれども、法務省としては、このハーグ条約のいろいろな懸念に対して、どういった国内法を整備してやればこの懸念というのは払拭されるのか、もしくは国内法だけでは無理である部分というのもあるのかどうか、そうした御見解を教えていただければと思います。

小川(敏)副大臣 条約というものを考えないで国内法で自由に決めていいのであれば、返還を拒否できる事由というものを非常に広範に決めればいいわけでありますけれども、そういうふうに決めて、しかし条約というものを置きますと、国内法がそういうふうに決めれば、それは条約の趣旨に反する法律だからといって、日本が条約に加盟しながらその趣旨を潜脱しているという批判を受けることにもなりますので、やはり、条約に加盟する以上、条約の趣旨に沿った範囲で立法するしかないというのが原則でございます。

 ですから、条約で許容されている返還拒否事由を国内法で定めるというのがいえば一つの原則でありまして、条約が認めていないような返還拒否事由は盛り込むことができないのかな、こんなような考え方でございます。

井戸分科員 ちょっと時間が少なくなってきたので、ハーグの問題はここまでにして、前原大臣、ありがとうございました。

 次に、AID児、生殖補助医療で出生をする子供たちの問題、これも私はずっと取り組んでまいっておるんですけれども、生殖補助医療を受けて、第三者から精子提供を受けて出生したいわゆるAID児に関して、この戸籍の、出生届、父欄というのはどのような形で書くのが法務省としては正しい出生届の届け方なんでしょうか。ここについてまずお伺いをしたいと思います。

小川(敏)副大臣 戸籍の受け付けは形式審査でございますので、提出された戸籍が形式に合っていれば受理するということでございます。すなわち、その戸籍に書かれた父親が生物学上本当に父親であるかどうかということを調査することはありません。

 ですから、形式が整っておれば受理するというのが戸籍の原則でございます。

井戸分科員 私は、性同一性障害の方が同じようにAIDを受けられて、そして出生をしたケースに関して言ったらば、これは正式な婚姻を両親がしていたとしても非嫡出子である、母の非嫡出子で届けろ、父欄は空欄でなければいけないということで、いろいろ調べましたところ、AID児に関しては全部この扱いをするのが戸籍上の扱いであると。

 今、AIDというのはもう六十年も歴史があるんですね。一万人が生まれているんですけれども、このAIDで法務省が求めるのは、本来、父欄は空欄なので、非嫡出子なんですね。ところが、実際には形式的審査なので、嫡出子として扱われている。扱われて嫡出子となっているけれども、AIDに関しては、本来でいえばこれは戸籍訂正が必要な、非常に身分が不安定な状態だというのが法務省の方の見解だと思うんですけれども、ここについてはいかがでしょうか。

小川(敏)副大臣 あくまでも、書類の形式上の書式で父親、母親と記載されておれば、それは受理するわけでございますが、性同一性障害の場合には、形式的に受理するといっても、父親がいわば生物学上父親たり得ないことが明らかでありますので、届け出を出された書類上、父親でないことが明らかでありますので、やはり、性同一性障害で女性から男性になられた人を父親とする戸籍届は、出された届け上、生物学的に父親じゃないことが明らかなので、嫡出子としては受理できない。

 ですから、例えばAIDであっても、いや、これはAIDなんですけれどもと言ってAIDの証明書か何かをつけて提出されれば、それは受理できるかどうか。あくまでも、形式上整っていれば、それ以上調査してあなたが本当の父親ですかというようなことは確認しないで、形式上そろっていれば受理するというのが実務の取り扱いでございます。

井戸分科員 ただ、本来であれば、嫡出子と非嫡出子というのは、財産に関しての二分の一規定なんかもありますよね。だから全然違うんです、本来は。なので、法務省の見解からいえば、AID児に関して言ったら、民法七百七十二条の推定が及ばない子、そもそもこれがかからない子なので、性同一性障害の子であろうとそうでなかろうとAIDは同じ扱いをしなければいけないのに、性同一性障害でお子さんが生まれるというケースが出てくるまで、ある意味、子の福祉を考えて、わかっていたけれども、非嫡出子なんだけれども、実はそのまま嫡出子として扱っていたというのが現実のところだと思うんですよ。だから、これが窓口でわかってしまうから、同じAIDという生殖補助医療をしたにもかかわらずそこで差別が出てきてしまうというのは、やはりおかしいことだと思うんですね。

 私、一年前、ここを千葉大臣にお話しさせていただきました。それで、厚労省のガイドラインができないので、何としてでも親子法制を早く改定して、例えば性同一性障害のお子さんたちも嫡出子として扱えるような形にしたいけれども、厚労省の方がなかなかガイドラインを出さないのでそこをさらにプッシュしていくということで、それで実際にもやってくださったんです。それが大体六月ぐらいだったんだけれども、そこから全然とまっているんですね。

 法務省として、さらにこの親子法制、野田議員の出産などもあって、また世論の中でもいろいろと議論があるところだと思うんですけれども、ぜひここは、政権交代をして、我が政権で、子の福祉の観点からも含めて親子法制をしっかりともう一回つくり直すということをやっていかなければいけないと思うんですけれども、ここに関して、いつまで、どのように。

 実際、この性同一性障害のお子さんは無戸籍もう一年以上ですし、その後にも性同一性障害のAID児が生まれていますし、五月にもまた出産をします。親子法制ができないがゆえに、どんどんとこの国では無戸籍のお子さんたちがふえているというような、知りながら何もしていないということは、私はやはり立法の不作為を問われると思います、怠慢を問われると思いますので、ぜひともここのところ、いつまで、どのような形で進めていくのかを、御見解というものを教えていただきたいと思います。

    〔本多主査代理退席、主査着席〕

小川(敏)副大臣 これは私の考えということで聞いていただきたいんですけれども、こうしたAIDの問題を含めた生殖医療あるいは性同一性障害者の問題、親子関係というものは、やはりこれはきちんとした取り組みをして確かな制度を構築する必要があるということは感じております。

 ただ、それが、戸籍を受理する法務省が戸籍の受理の仕方で解決できる問題ではなくて、やはりもっと広い観点から、そうしたAID、性同一性障害者、そうした親子関係というものを決めて、それを決めていただいたら、その趣旨に沿った戸籍の扱いの事務のやり方を決めるというのが順番じゃないかと思っております。

 そして、生殖医療に関する研究会ですか、これが平成十五年ぐらいからとまっているというのが大変残念なことでありますので、もちろん法務省もその関係する一員でありますから、法務省に全く責任がないということではありませんが、やはり法務省だけでなくて、関係する省庁を踏まえて、そうした親子関係というものをきちんと検討して決めていっていただけたらなというふうに思っております。

井戸分科員 ありがとうございました。

武正主査 これにて井戸まさえ君の質疑は終了いたしました。

 次に、稲津久君。

 質疑者の御出席が得られません。

 質疑者の御出席を要請いたしますので、しばらくお待ちください。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

武正主査 速記を起こしてください。

 質疑者の御出席を要請いたしましたが、御出席が得られません。

 この際、暫時休憩いたします。

    午後四時六分休憩

     ――――◇―――――

    午後五時三十分開議

武正主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。赤嶺政賢君。

赤嶺分科員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 きょうは、前原外務大臣、小川防衛副大臣に質問をしたいと思います。

 最初に、訓練水域の問題についてであります。この問題は、今予算委員会で、私、三回目になります。明確な答弁がいただけないものですから、繰り返しの質問になっております。

 政府と沖縄県は、一月二十五日に沖縄政策協議会の第二回基地負担軽減部会を首相官邸で行いました。その中で、前原外務大臣は、米軍水域にかかわる訓練について、一、事前通告の徹底、二、通告された区域内での訓練実施の遵守を米側と確認したと伝えられております。さらに、前原外務大臣は、区域外訓練は、この間の例を踏まえ、米側と話し、区域内をしっかり守るという趣旨の基本を確認したと記者に述べられております。

 つまり、米側は、沖縄県の領海の中や、あるいは排他的経済水域の中に設定されている訓練水域、これを外れた訓練通告が去年、ことし、あったわけですが、もうこういうことは起こらないというぐあいに認識してよろしいでしょうか。

前原国務大臣 一月二十五日の沖縄政策協議会の負担軽減部会においての発言について、赤嶺委員からのお尋ねでございますけれども、本年一月の米軍によります沖縄周辺等の海域における爆撃訓練につきましては、実際には、あらかじめ指定された訓練区域外の海域では行われなかったものと承知をしております。それはよろしいですね。

 しかしながら、当初の米政府からの通報では、爆撃訓練を行う予定の海域に訓練区域外の我が国の排他的経済水域等も含まれていたために、漁業関係者等を初めとする沖縄県の皆様に不安を与え、御迷惑をおかけしたものと認識をしております。

 かかる不適切な通報がなされたのは、米国政府部内における訓練実施部隊と在日米軍等の事前の調整がなされなかったためであると承知をしております。

 特に、沖縄近海におきましては、既に米軍にかなりの広さの訓練区域を認めておりますことから、射爆撃等の訓練は、基本的には訓練区域内で行われるべきものと考えております。

 また、訓練区域外の我が国のEEZにおいて訓練を行うことが必要な場合にも、漁船の操業に係るものを含む我が国の国際法上の権利及び義務に妥当な考慮を払わなければならないことは言うまでもありません。

 これらを踏まえて、今後、不適切な通報がなされることがないように、善後策について米側と話をしてまいりたいと考えております。

 御質問の一月二十五日の沖縄政策協議会米軍基地負担軽減部会において、私から沖縄県知事等に対し以上のことを御説明したものでございまして、アメリカ側に対しては、二度とこういうことがないように徹底をしてまいりたいと考えております。

赤嶺分科員 通報は不適切であった、しかし、今後も、排他的経済水域の中で設定された訓練水域の外でやる場合は、沿岸国の、あるいは県民の、漁民やその他に配慮してやれよ、結局、そういうことですね。

前原国務大臣 もともと広い訓練区域を認めているわけですから、基本的にはそこでやってください、こういうことであって、仮に訓練区域外の我が国のEEZにおいてやる場合においては、国際法上の権利及び義務に妥当な考慮を払ってくださいよということをしっかりと伝える、こういうことでございます。

赤嶺分科員 妥当な考慮を払っていると認識したらやれるわけですね、米軍は。

前原国務大臣 米軍を含む外国軍隊が我が国の国際法上の権利及び義務に妥当な考慮を払う限りにおいては、我が国のEEZで訓練を行うことは国際法上禁止されておりません。

 他方、特に、沖縄近海におきましては、既に米軍にかなりの広さの訓練区域を認めておりますことから、射爆撃等の訓練は、基本的には訓練区域内で行われるべきものと考えております。

 また、訓練区域外の我が国のEEZにおいて訓練を行うことが必要な場合にも、先ほど申し上げたとおり、漁船の操業に係るものを含む我が国の国際法上の権利及び義務に妥当な考慮を払わなければならないことは言うまでもございません。

赤嶺分科員 やはりできるということですよ。やるということですよね、米側は。これは県民にとっても行政にとっても大変危険な行為であり、あれだけ広大な訓練水域を提供していながら、なおやれる余地を残すような立場というのは、私は納得できません。

 そして、ことしの一月のことをおっしゃいましたけれども、去年の十二月もやっているんですよ、日米の実動統合演習の中で。そのときは、いわばパヤオを使ってということまで申し出があって、これは自衛隊から申し出があったようですが。しかも、自衛隊の説明が、いや、掃海訓練は海底の浅いところが適しているんだと言って出てきたといいますから、何をかいわんや、こんな軍事優先は認められないということをまず申し上げておきたいと思います。

 それで、去年の五月の日米共同発表について、一点確認したいと思います。

 普天間移設にかかわる日米共同発表が五月に行われたわけですが、グアム移転に関する項目の中で、米側は、地元の懸念に配慮しつつ、抑止力を含む地域の安全保障全般の文脈において、沖縄に残留する第三海兵遠征軍の要員の部隊構成を検討する、こういうことがあります。

 大変注目したんですが、これは具体的にどういうことを指しているのでしょうか。

前原国務大臣 もともとの合意というのが、グアムに移る海兵隊の八千人については司令部要員、こういうことでございましたけれども、その八千人というものについての中身を、どの程度かということについては、まだ具体的に我々は知り得ておりませんけれども、中身を見直すということを意味しているんだと私は理解をしております。

赤嶺分科員 アメリカの方は、今、オバマ政権のもとで、新たな地球規模の米軍再編、グローバル・ポスチャー・レビューを検討していると聞いておりますが、それは今どういう検討状況にあるのか、そして、今回の日米合意のこの規定はそのことを念頭に置いたものかどうか、それを答弁していただけますか。

前原国務大臣 お尋ねのグローバル・ポスチャー・レビューでございますけれども、海外の米軍基地、部隊の配置を現在の戦略環境に一層適したものにするための米軍の体制の見直しのプロセスであることは、委員も御承知のとおりでございます。

 現在、オバマ政権のもとで、GPR、グローバル・ポスチャー・レビューが行われておりますけれども、その結果の公表時期等は未定でございます。したがいまして、我々としては、今どのような中身かということについて申し上げられる段階にはないということでございます。

赤嶺分科員 菅総理が、この五月ですか、訪米するということになっていくわけですが、そことGPRとの関係について、さらにちょっと伺いたいんです。

 先ほど前原大臣がおっしゃったように、私たちも、グアムに移転する八千人は司令部が中心だ、こう聞いてまいりました。そして、その中に実戦部隊が入っていないじゃないかという問題も提起してきましたけれども、どれだけの実戦部隊が移転することになるか。日米合意の中で部隊構成を検討するといいますから、これも今の米軍のGPRの中で決まっていくもの、こう理解してよろしいでしょうか。

前原国務大臣 このGPRというのは、米軍の海外での基地、部隊の配置の見直しを戦略環境に合わせて行っていく、こういうものでございまして、このことについて我々が判断をするという立場にはございません。

赤嶺分科員 いずれにしても、日米間で部隊構成を検討する、司令部中心に八千人と言われてきた認識を変えなきゃいけなくなるわけですね。

 ただ、今のグアムの計画でも、グアムには実戦部隊が配備されることになっております。私もたびたび質問で取り上げてきましたが、去年の七月に米軍が公表した環境影響評価の最終報告書でも、海兵隊に配備されるのは、兵員が約八千六百人、家族九千人で、その構成は、司令部が三千四十六人、地上戦闘員千百人、航空戦闘部隊千八百五十六人、兵たん戦闘部隊が二千五百五十人となっています。

 今の計画でも、グアムには実戦部隊が配備される。その場合、配備される実戦部隊は、沖縄の実戦部隊が配備されるか、あるいはアメリカ本土から実戦部隊が配置されるのか、そのどちらか以外に説明がつかないのではないかと思いますが、この点、いかがでしょうか。

前原国務大臣 先ほども申し上げましたように、去年の五月の二十八日の共同発表文書というのは、委員も御承知のとおりだと思いますけれども、二〇〇九年二月十七日の在沖縄海兵隊グアム移転に係る協定に定められたように、第三海兵隊機動展開部隊の要員は約八千人、そして家族約九千人が沖縄からグアムへ移転をする、こういうことが書かれているわけでありまして、その中身については、この2プラス2の共同宣言には書かれていないわけでございます。

 そういう意味では、その中身について、我々としては、当初は司令部要員ということで理解をしておりましたけれども、それがどのように変更されているのか、されるのかということについて、現時点において、最終的なアメリカ側からの話を聞いている段階ではございません。

赤嶺分科員 今の質疑のやりとりで私がわかったのは、沖縄にどういう部隊が残るかについて、八千人の中身はまだ決まっていない、これだけはよくわかりました。

 そうすると、これからの在沖米軍、いろいろ変化もあり得るわけですね。

 そこで、東村高江のヘリパッドの問題について聞いていきますけれども、その前に、一点確認しておきたいことがあります。

 これは通告もしてありますが、金武町、宜野座村、恩納村、名護市に広がっているキャンプ・ハンセン、米側は中部訓練場と呼んでいるわけですが、そのキャンプ・ハンセンには、米軍のヘリパッド、ヘリの着陸帯の数は幾つあるでしょうか。

小川(勝)副大臣 キャンプ・ハンセン内の施設についてのお尋ねだと思いますが、提供施設整備によりまして、我が国の予算で二カ所のヘリコプター着陸帯、すなわちヘリパッドを整備しております。このほか、お尋ねのキャンプ・ハンセン内には、米軍により整備された複数のヘリパッドが存在していると承知しておりますけれども、その数及び位置の詳細については、私どもで把握をしているわけではございません。

赤嶺分科員 日本側がつくってあげたヘリパッド、ヘリの着陸帯は二カ所だ、その他複数あるけれども日本側はわからないと。金武町も、何度政府に対して問い合わせても教えてくれないというんですね、外務省も防衛省も。

 それで、きょう金武町からの資料を持ってきたんですが、金武町は、航空写真等やその他、自分たちのふるさとですから、どの辺にヘリパッドがあるか注目してきているわけですね。そうすると、数えたら、金武町と名護市と恩納村、宜野座村、その四市町村の中に、ヘリパッドの数は、キャンプ・ハンセン内に三十九カ所あるというんですよ。金武町はそのように認識しているんですが、この認識について政府はどのようにお考えですか。

小川(勝)副大臣 先ほども答弁をさせていただきましたとおり、その数及び詳細について把握しておりませんので、そのことについて正確なコメントをできる立場にないと存じております。

赤嶺分科員 ただ、三十九カ所というのは多過ぎるなという実感を持ちませんか。

小川(勝)副大臣 事実として確認をさせていただいているわけではございませんので、答弁するわけにはいかないと思います。

赤嶺分科員 それでは、金武町が認識している三十九カ所の図面、金武町は渡してくれますから、それを取り寄せて、防衛省で責任を持って、何カ所あるか、金武町で、数えて米側に問い合わせていただけませんか。

小川(勝)副大臣 沖縄に担当者がおりますので、金武町に連絡をとらせていただきたいと思います。

赤嶺分科員 米側にはいかがですか。米側にも問い合わせてくれますか。

小川(勝)副大臣 今、情報の提供を初めていただきましたので、金武町の持つ情報、あるいはその分析をさせていただいた結果、検討させていただきたいと存じます。

赤嶺分科員 県民的には、あのキャンプ・ハンセンの山岳地帯に、しかも、向こうは、先祖代々聖地になっている場所まで荒らしてヘリパッドをつくっている。ヘリが飛び回っている。

 ですから、政府は、三十九カ所のヘリパッド、米軍がそのすべてを使っているかどうかというのは一度も説明を受けていませんし、認識もしていないわけですね。そのことも米側に問い合わせてくれますか。

小川(勝)副大臣 先ほど、しかるべく答弁をさせていただきましたので、その情報のさまざまな分析をさせていただいた後に検討させていただきたいと思います。

赤嶺分科員 三十九カ所。私は、これはつくりたい放題つくらなかったら出てこない数だと思いますよ、こんなたくさんのヘリパッド。

 それで、今、沖縄防衛局が強引に工事を進めている高江のヘリパッド建設計画であります。これは、先ほどの中部訓練場とは違い、北部訓練場であります。その一部返還の条件として、返還予定地にあるヘリパッドを東村高江に移設しようというものであります。

 返還されない訓練場内には、十五カ所のヘリパッドが残されております。これは、SACO合意等で明確になって、政府も認識していることであります。この十五カ所に加えて、返還予定地の六カ所が、新たなヘリパッドとして高江に建設するということの合意があったわけです。

 この計画が実行に移されたら、高江集落は六カ所のヘリパッドに取り囲まれてしまい、ヘリコプターが海側からも山側からも、高江集落全体を縦横無尽に飛ぶことが予想されます。人口は百五十人です。大きな不安を与えるわけですね。

 北部訓練場の返還によって負担の軽減というのであれば、無条件に返還をして、ヘリパッドの移設、これは既にもう十五カ所あるわけですから、やめるべきではありませんか。

小川(勝)副大臣 十五カ所のヘリパッドがあることは承知をいたしておりますけれども、また、どのような運用をしているのかということもすべて把握しているわけではありません。

 ただ、承知いたしておりますのは、このことは、委員も御承知のとおり、SACOの最終報告に盛り込まれている措置の一つでございます。北部訓練場のうちの過半の返還についての条件、約束事と承知をいたしておりますので、我が国といたしましては、その約束の履行のために全力を挙げているところでございます。そのことによって沖縄県の方々の負担の軽減につながっていくというふうに考えてのことでございます。

 なお、工事についても、住民の皆さんからいただきますさまざまな注文や、あるいは配慮せよということについても、さまざま配慮を加えているつもりでございます。

赤嶺分科員 今、SACO合意のお話をされました。十四年前ですよね。そして、ヘリパッドというのは海兵隊が使っているものです。さっき、米側は新たなGPRを検討していると。一方で、八千人、司令部中心のグアム移転だったものが実動部隊も入るかもしれない、部隊構成についての日米合意もできている。在沖米軍が変化するわけですよ。

 しかも、それを、今現在十五カ所ある地域に六カ所ふやす場合に、本当にそれが必要なものであるかどうか、こういう検討は、負担の軽減というなら最低限必要じゃないですか。

小川(勝)副大臣 先ほど外務大臣から御答弁がありましたとおり、まだ日本及び沖縄の分野におきまして米軍がどのような配置をするのかということも決まっていないというふうに承知をいたしておりますし、また、お尋ねの点でございますけれども、再度の答弁になりますけれども、これはSACO最終報告の約束事でございますので、新しい変化が確認をされるときに何らかの申し出をさまざまなチャネルを使って日本側から米国側に申し上げることはあり得るかもしれませんけれども、今のところ、約束事でございますので、それをしっかり履行していくということをアメリカ側にも見せていくことがすべてにおいての負担軽減に関係をしてくる可能性が高いものとして、全力で取り組んでいるところでございます。

赤嶺分科員 SACO最終報告は約束事だから守ると言ってみたって、アメリカは守っていませんよ。後で時間があれば聞きますけれども、嘉手納のパラシュート訓練なんかはその最たるものじゃないですか。SACO最終報告で移転するといいながら、例外だといってやるわけですよ。

 今副大臣がおっしゃったように、沖縄にどんな部隊が残るかわからない。日米合意でも変化があることが示されているわけですよ、部隊構成について。そうであれば、あそこは海兵隊が使うヘリパッドですから、現在十五カ所もある、その十五カ所について、あと六カ所つくる必要があるのかどうか。

 ここは、まさにアメリカ自身が変化しようとしているわけですから、日本がこの変化に対して機敏に対応して検討する、検証するというのは当たり前じゃないですか。それが負担の軽減につながるなら、なおさらじゃないですか。いかがですか。

小川(勝)副大臣 私どもは、米軍がどのように、どのヘリパッドを、どの目的で使っているのか、今承知をしているわけではございませんので、グアムへの移転あるいは米軍における在沖においての展開の中で、今委員から御提示のありましたように、さまざまな形で日本から提案をさせていただく、あるいは相談をさせていただくという場面が来るということを否定するわけではありません。

赤嶺分科員 先ほどの、キャンプ・ハンセンに三十九カ所、そして北部訓練場に二十一カ所、全部で六十カ所ですよ。六十カ所もあんな狭い沖縄にヘリパッドが必要なんですか。これは多いと思いませんか。そんなたくさんあるヘリパッドをさらにつくろうとして、反対する住民をけ散らして工事を強行する、こんなのはおかしいと思いませんか。やはり検証すべきところをきちんと検証する必要があると思いますよ。

 私は、これは通告しておりませんのであれですが、外務大臣、六十カ所も沖縄にヘリパッドがあることについて、もし何か御感想をお持ちであれば聞かせていただきたいんですが、いかがでしょうか。

前原国務大臣 先ほど防衛副大臣が答弁をされましたように、我々としては数を知り得ておりませんので、その知り得ていないという前提でお答えすることは難しいということは御理解をいただきたいと思います。

赤嶺分科員 いや、知ろうとしてこなかったんですよ。行けばすぐわかりますから。特に前原外務大臣なんかはよくわかっておられると僕は思いますよ。

 それで、高江のヘリパッドですけれども、今でも高江の上空はヘリの騒音が大変です。夜間の飛行もあります。場合によっては無灯火の飛行もあります。現在でも、高江の住民がヘリの操縦者と目が合うほどの低い位置で低空飛行や低空旋回が行われています。去年は、米軍によるホバリング、これも結局、米軍がやったということだけははっきりしているけれども、だれがということはついに政府は明らかにできませんでしたが、ホバリングも県道上、公道上でありました。

 高江にヘリパッドを集中させることによって、ヘリの墜落の危険性も飛躍的に高まるわけです。こういう着陸帯が自分の近所につくられるとしたら、反対だと言って立ち上がるのは当然だと思いますが、小川副大臣はどうですか。

小川(勝)副大臣 大変つらい御質問ですけれども、私がどう思うかというよりも、沖縄の負担をトータルで軽減していこうというのが内閣の一致した思いでございまして、その中で、お尋ねのとおり、高江に集中すると言われれば、そのとおりかもしれません。

 しかし、相手もあることでございますし、そして、長い間の交渉で、どうやって負担の軽減をなし得ていくのかという並々ならぬ先人の努力のレールの上に私どもがおりますので、何とぞ、この形でやらせていただいて、その後は、さまざまな形で追加的な負担の軽減というのをともに求めていくというのは当たり前のことでございますので、御理解をいただきたいと思います。

赤嶺分科員 まともな話し合いもしないで、防衛省は、警備員まで雇って、そして力ずくで工事をしているわけですよ。沖縄の旧正月の日にもやりました。あなた方が訴えている住民の裁判の日にも、すきをねらって工事をやる。

 工事のやり方がいかに乱暴であったかといいますと、二十三日の早朝は、作業員約百人、車両約二十五台、作業箇所は道路使用許可範囲外として警察から中止するよう警告されたため、作業は一時中断した。要するに、警察から注意を受けるような、そういう作業なんですね。知事公室長も、安全を守ってほしい、このように申し入れたと、きのうの県議会の答弁でやっています。

 警備に出てきた若い人たちが暴力的な言動をして、やっている。それは防衛局が雇っているというんですが、雇った警備員について、住民に対する接し方、教育、そういうのをやったんですか。ただ数さえ集めて、乱暴に、反対の住民を押しのけて工事をやろうという考えですか。教育がないままやったから、こんな乱暴な工事が現場で展開されているんじゃないですか。

武正主査 赤嶺さん、時間がもう参っておりますので。(赤嶺分科員「答弁」と呼ぶ)

 では、短く答弁をお願いいたします。

小川(勝)副大臣 お尋ねの点は承知をいたしておりませんけれども、現地の関係者は、安全を第一に、円滑に工事を推進していただいているものと確信をいたしておるところでございます。

赤嶺分科員 終わりますけれども、きょうの沖縄の地元新聞の社説にも、余りに乱暴だとか、さっきの、車両停止違反の場所にとめていて警察に注意されたというのも、報道に出ていることなんです。知らないという話は通りません。

 乱暴な工事着工、そして、本当に必要であるかどうかわからない、米軍が必要だと言ったらそのまま唯々諾々と従って膨大なヘリ着陸帯を県内につくるようなことはぜひやめていただきたい。工事中止を求めて、私の質問を終わります。

武正主査 これにて赤嶺政賢君の質疑は終了いたしました。

 次に、山内康一君。

 質疑者の御出席が得られません。

 質疑者の御出席を要請いたさせますので、しばらくお待ちください。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

武正主査 速記を起こしてください。

 質疑者の御出席を要請いたさせましたが、御出席が得られません。

 この際、暫時休憩いたします。

    午後六時八分休憩

     ――――◇―――――

    午後六時三十分開議

武正主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 これにて本分科会所管の審査はすべて終了いたしました。

 これにて散会いたします。

    午後六時三十一分散会


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