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第1号 平成26年2月26日(水曜日)

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本分科会は平成二十六年二月二十四日(月曜日)委員会において、設置することに決した。

二月二十五日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      金田 勝年君    中山 泰秀君

      野田  毅君    保岡 興治君

      古川 元久君    山田  宏君

二月二十五日

 金田勝年君が委員長の指名で、主査に選任された。

平成二十六年二月二十六日(水曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 金田 勝年君

      武部  新君    東郷 哲也君

      中山 泰秀君    野田  毅君

      藤原  崇君    牧島かれん君

      武藤 貴也君    保岡 興治君

      山田 賢司君    福田 昭夫君

      古川 元久君    山田  宏君

   兼務 後藤  斎君 兼務 中川 正春君

   兼務 阪口 直人君 兼務 西田  譲君

   兼務 三宅  博君 兼務 山之内 毅君

   兼務 國重  徹君 兼務 遠山 清彦君

   兼務 樋口 尚也君 兼務 山内 康一君

   兼務 林  宙紀君 兼務 塩川 鉄也君

    …………………………………

   財務大臣         麻生 太郎君

   法務大臣         谷垣 禎一君

   外務大臣         岸田 文雄君

   内閣府副大臣       後藤田正純君

   内閣府副大臣       西村 康稔君

   外務副大臣        岸  信夫君

   財務副大臣        古川 禎久君

   外務大臣政務官      石原 宏高君

   外務大臣政務官      木原 誠二君

   衆議院事務次長      向大野新治君

   最高裁判所事務総局家庭局長            岡 健太郎君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  向井 治紀君

   政府参考人

   (内閣官房地域活性化統合事務局長代理)      富屋誠一郎君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房宇宙審議官)           西本 淳哉君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 佐々木克樹君

   政府参考人

   (警察庁刑事局組織犯罪対策部長)         室城 信之君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局参事官)            長谷川 靖君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 平嶋 彰英君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 杵渕 正巳君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          小川 秀樹君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    深山 卓也君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    林  眞琴君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    西田  博君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    齊藤 雄彦君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  萩原 秀紀君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  榊原 一夫君

   政府参考人

   (公安調査庁長官)    寺脇 一峰君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 新美  潤君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 和田 充広君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 下川眞樹太君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    冨田 浩司君

   政府参考人

   (外務省国際情報統括官) 松富 重夫君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 星野 次彦君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 武内 良樹君

   政府参考人

   (国税庁次長)      藤田 利彦君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           中岡  司君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           古都 賢一君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局次長)           宮野 甚一君

   政府参考人

   (厚生労働省職業能力開発局長)          杉浦 信平君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    蒲原 基道君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房技術審議官)         望月 明彦君

   政府参考人

   (国土交通省土地・建設産業局次長)        江口洋一郎君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  中島 明彦君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局次長) 山本 達夫君

   政府参考人

   (株式会社国際協力銀行代表取締役総裁)      渡辺 博史君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   法務委員会専門員     矢部 明宏君

   外務委員会専門員     辻本 頼昭君

   財務金融委員会専門員   北村 治則君

   予算委員会専門員     石崎 貴俊君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月二十六日

 辞任         補欠選任

  野田  毅君     東郷 哲也君

  保岡 興治君     鬼木  誠君

  古川 元久君     福田 昭夫君

同日

 辞任         補欠選任

  鬼木  誠君     藤原  崇君

  東郷 哲也君     牧島かれん君

  福田 昭夫君     小川 淳也君

同日

 辞任         補欠選任

  藤原  崇君     保岡 興治君

  牧島かれん君     武藤 貴也君

  小川 淳也君     大西 健介君

同日

 辞任         補欠選任

  武藤 貴也君     山田 賢司君

  大西 健介君     古川 元久君

同日

 辞任         補欠選任

  山田 賢司君     武部  新君

同日

 辞任         補欠選任

  武部  新君     野田  毅君

同日

 第一分科員山之内毅君、第二分科員後藤斎君、第四分科員中川正春君、阪口直人君、西田譲君、三宅博君、塩川鉄也君、第五分科員國重徹君、第六分科員遠山清彦君、樋口尚也君、第七分科員林宙紀君及び第八分科員山内康一君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成二十六年度一般会計予算

 平成二十六年度特別会計予算

 平成二十六年度政府関係機関予算

 (法務省、外務省及び財務省所管)


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     ――――◇―――――

金田主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりましたので、何とぞよろしくお願いいたします。

 本分科会は、法務省、外務省及び財務省所管について審査を行うことになっております。

 なお、各省所管事項の説明は、各省審査の冒頭に聴取いたします。

 平成二十六年度一般会計予算、平成二十六年度特別会計予算及び平成二十六年度政府関係機関予算中財務省所管について、政府から説明を聴取いたします。麻生財務大臣。

麻生国務大臣 平成二十六年度一般会計歳入予算並びに財務省所管の一般会計歳出予算、各特別会計歳入歳出予算及び各政府関係機関収入支出予算について御説明をさせていただきます。

 まず、一般会計歳入予算総額は、九十五兆八千八百二十三億円余となっております。

 この内訳について申し上げますと、租税及び印紙収入は五十兆十億円、その他は四兆六千三百十三億円余、公債金は四十一兆二千五百億円となっております。

 次に、当省所管一般会計歳出予算額は、二十五兆五千九百三十三億円余となっております。

 このうち主な事項について申し上げますと、国債費は二十三兆二千七百一億円余、復興事業費等東日本大震災復興特別会計へ繰り入れは七千三十億円余、予備費は三千五百億円となっております。

 次に、当省所管の各特別会計の歳入歳出予算について申し上げさせていただきます。

 国債整理基金特別会計におきましては、歳入歳出ともに二百十四兆八百六十億円余となっております。

 このほか、地震再保険等の各特別会計の歳入歳出予算につきましては、予算書等をごらんいただきたいと存じます。

 最後に、当省関係の各政府関係機関の収入支出予算について申し上げさせていただきます。

 株式会社日本政策金融公庫国民一般向け業務におきましては、収入一千八百五十八億円余、支出一千八十四億円余となっております。

 このほか、同公庫の農林水産業者向け業務等の各業務及び沖縄振興開発金融公庫等の各政府関係機関の収入支出予算につきましては、予算書等をごらんいただきたいと存じます。

 以上、財務省関係の予算につきまして、その概要を御説明申し上げた次第であります。

 なお、時間の関係もございまして、お手元に配付しております印刷物をもちまして詳細な説明にかえさせていただきますので、よろしく記録におとどめいただきますようお願い申し上げます。

 以上、御審議のほどよろしくお願いを申し上げます。

金田主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま麻生財務大臣から申し出がありましたとおり、財務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

金田主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

金田主査 以上をもちまして財務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

金田主査 この際、分科員各位に申し上げます。

 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。

 なお、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。遠山清彦君。

遠山分科員 公明党の遠山清彦でございます。

 財務大臣、お疲れさまでございます。

 本日は、この分科会は、財務省並びに外務、法務省の所管事項について審査できるということでございますので、私は、財務省、そして、きょう、渡辺総裁にお出ましをいただいておりますけれども、国際協力銀行についてお話を伺い、また後ほど、法務省にシリア難民の問題につきまして何点か確認をさせていただきたいと思います。

 まず、JBICでございますが、私は、二〇一二年四月にJBICが日本政策金融公庫から独立する前の国会審議におきまして、当初は独立を反対しておりました。

 その理由はたった一つでございまして、やはりJBICは少し雲の上の国際金融機関という側面がありまして、日本の中小企業、中堅、中小と言った方がいいかもしれませんが、特に地方の中堅・中小企業から見ると、ほとんど関係がない金融機関という位置づけでありましたので、ぜひとも、分離独立されるならば、JBICさんのホームページには、昔から、中小企業を支援していますと書いていますけれども、その実績はかなり厳しいものが当時あったというふうに考えておりまして、ぜひ、JBIC全体として、もっと中堅・中小企業の支援、あるいは海外進出の支援、これに力を入れていただきたいと要望申し上げまして、そういう体制をとられたということで、最後は賛成に回った経緯がございます。

 昨年度の実績を拝見いたしますと、JBIC全体としては、出融資・保証承諾実績として四兆二千四百九億円ということになっておりまして、これは過去最高の実績だということでございます。そこは率直に評価をしたいと思っております。

 今後は、量的な額の側面だけではなくて、質的な面におきましても、日本の企業の海外展開をさらに支援していくことが重要になると考えておりますが、この方針について、これは財務省ですか、御答弁をいただきたいと思います。

古川副大臣 お答え申し上げます。

 JBICは、二〇一三年四月より、海外展開支援融資ファシリティーを創設しておりまして、一三年度末時点での融資実績は百二十一億ドル、約一兆二千億円となっております。

 JBICは、金額面、量的な面のみならず、質的な面においても、例えば、委員が御指摘になりました中堅・中小企業向け融資でありますとか、あるいはリスクマネーの供給等に、質的な面での支援、ここにも力を入れることとしております。

 具体的に幾つか申し上げますと、中堅・中小企業支援につきましては、毎年度、着実に件数を積み上げておりまして、二十五年度については、十二月末時点ですけれども、昨年度の実績を超える三十七件について実施しております。

 また、リスクマネーの供給、案件形成の初期段階からの関与につきましては、例えば、インドのデリー・ムンバイ産業大動脈構想の推進主体でありますDMIC開発公社に対しまして出資を行いますとともに、積極的に経営に参加しております。これで、今後、日本企業によりますこれらプロジェクトへの参加を効果的に支援していけるものと考えております。

 こういうぐあいに、質的な面での案件の充実を通じましたより付加価値の高い支援を今後とも目指していきたいと思っております。

遠山分科員 副大臣、ありがとうございます。

 今実績が、これは平成二十五年、昨年の十二月末時点でございますから、年度でいうとあと三カ月残っている時点での件数で三十七件ということを聞きました。これは昨年度、二十四年度が十二カ月で三十四件ですし、平成二十二年度は十四件という数でございますから、これは飛躍的に伸びているということでございます。

 私自身がJBICの事務方から伺ったところですと、これを年間五十件まで何とか伸ばしたいと今努力をされているというところですが、私個人としては、百件目指してやってくれと今言っているところなんですが、この総数がふえていること自体は評価したいと思います。

 そこで、あえて、日本の中堅・中小企業というと、副大臣よく御存じのとおり、格付でいうとやはりシングルBに当たるところが多いわけでございまして、私の関心は結構そこにありまして、このいわゆるシングルBクラスの信用力しか持っていない、しかしそれが日本の普通の中小企業なんですね。その中小企業に対して、銀行保証等の優良保証を求めない形での与信件数、つまり、JBIC自体がリスクをとるという形での融資件数は、今おっしゃった三十七件のうち何件ぐらいなのかということ。

 また、今後、このシングルBクラス、もちろん信用力、与信力の問題でいろいろ難しい面はあると思いますけれども、これをふやすという意味で、やはり地銀との連携の強化というのも大事だというふうに私は考えておりまして、この点も含めて、今後の方針も含めて御回答いただければと思います。

渡辺政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御指摘ございましたように、分離独立後、中小あるいは中堅企業に対する案件をふやしているということでございまして、委員御指摘のとおり、なるべく早く件数としてもっとふやしていきたいというふうには考えているところでございます。

 今委員御指摘ございましたように、中堅、中小の場合には、いわゆる格付といいますかリスクのところがありまして、これに対してどういうふうに対応するかということでございますけれども、私どもとしても、保証を必ずとるということではなくて、それぞれの企業の実態を見て、それに合わせてということで考えておりまして、現状でいいますと、今御指摘がありました件数のうち四分の一程度については、銀行保証あるいはその他の保証をとらない形での融資を既に始めておるところでございます。

 ただ、それを行うに当たりましては、私どもの方は国内に支店というのは大阪に一軒しかございませんので、そういう意味で、ネットワークを活用するというよりは、地銀あるいは信用金庫と具体的に御相談をしながら、いずれにせよ協調融資の形でそれらの機関と一緒に融資をしていくわけでありますから、そういうところと情報の交換をしながらその企業の実情を審査する、そういう形で、我々として、なるべくリスクがとれるような形の業務をしていきたいというふうに今考えているところでございます。

遠山分科員 ありがとうございます。

 ぜひ、総裁みずからおっしゃっていただいておりますので、力を入れて、また数でも成果を上げるようにしていただきたいと思います。

 私も、実は、二年ぐらい前に、JBICにいろいろと文句をつけさせていただいた立場から、地元の福岡銀行さんを少し御紹介させていただいて、JBICと地銀の最初の連携協定はこの福岡銀行グループとやっていただいたというふうに記憶をしております、もう二年ぐらい前になりますけれども。

 やはり、地銀さんは地元の中小企業とのネットワークを持っていますし、また、JBICさんは海外では非常に知名度もあるし、信用力もあるし、また、諸外国の地方銀行とのネットワークも一部形成されているわけですので、それをうまくマッチさせることでもう少し成果が上がるんじゃないかと思っておりますので、期待をしております。

 その上で、次に、麻生財務大臣も大変頑張っておられますけれども、海外インフラ事業について少し伺いたいと思います。

 今、安倍政権で、政府また総理官邸も一体となって、またJBICもいろいろな協力をされて、積極的に海外インフラ事業を展開されていることは評価をしておりますけれども、一方で、具体的な大型インフラ案件の新規の事業権の受注の数というのは、必ずしも分離独立前に比べて目に見えてふえているとは言えない状況だと思っております。火力発電の分野を除けば、例えば、インド、中国、ブラジルなどの新興国で、再生可能エネルギー、港湾、水、鉄道事業など、いわゆる分野としても新規のインフラ分野で新規案件の受注をする、あるいは、これに対するファイナンス供与の成果、実績というのは必ずしも目立っていないというふうに思っているわけでございます。

 この点について、続いてまた総裁の方に、定量的に、分離前と比べてこういう実績がありますよという数字があれば、それを伺いたいと思いますし、先ほどの質問と同じですけれども、今後についても、この海外インフラの、特に新規のインフラ分野における新規案件の受注数をふやしていくという方針について、JBICとしてどのような立場か御説明をいただきたいと思います。

渡辺政府参考人 お答え申し上げます。

 火力発電以外のインフラの件数につきましては、正直申し上げまして、分離前、分離後、余り大きな違いがないということであります。

 ただ、最近の動向でいいますと、必ずしも新興国ではなくて、先進国におけるインフラ事業の方が件数としてちょっと伸びているというところがございますけれども、今議員御指摘のような国においては、必ずしも件数は伸びていない。

 ただ、世界全体として、今ちょっと資金不足なところがございますので、従来ですと、今御指摘の国ですと、例えば、アジアであれば二割ぐらいのお金がヨーロッパの銀行、あるいは中南米でありますと四割ぐらいのお金がヨーロッパの銀行から来ていたんですけれども、この銀行自体が今ちょっと事業が余りできない、全体として細っているということで、件数が世界的にも落ちているというところがありますけれども、それでも、我々としては今までの水準は維持をしているということでございます。

 ただ、基本的には、個別個別のプロジェクトの中身だけではなくて、やはり日本の企業が出ていきやすいような環境をつくるためには、いわゆる広い意味でのグランドデザインを日本が描いて、そこに日本の企業が入っていきやすくするというようなことを考えておりまして、先ほど大臣からも御指摘ございましたけれども、インドの場合には、デリー―ムンバイの間の全体の開発をする、その青写真をつくる会社に私どもが出資をし、かつ、取締役を派遣してそういうデザインをつくっていこう、そういうことで考えております。

 それから、あと、幾つかの国との間では、インフラなどを中心として先方の各省の大臣などとあわせて議論をするということで、私が直接出向いていきまして、インフラについて、その国が今何を考えているか、あるいはどういう部分について今重点を置いているかということについての確認をしながら作業を進めていく、そういう形で支援を進めていこうというふうに思っているところでございます。

遠山分科員 わかりました。

 いろいろな知恵を出していただいて、私は新興国ばかり強調しましたけれども、もちろん先進国でも、アメリカでもリニア導入とかいろいろな話が出ている時期でございますので、ぜひJBICの方にも積極的に頑張っていただきたいと思います。

 JBICに対する最後の質問になりますけれども、JBICが独立する際は、一つの批判の論点として、民業圧迫になるのではないかという声が学者等からございましたが、実際に独立した後はそういう声は余り上がっていなくて、ある意味、健全な民業補完という役割を金融機関で果たしていると評価をさせていただきたいと思います。

 ただ、その一方で、今アベノミクスの効果もありまして、民間の銀行、特に大手メガバンクの業績が大幅に回復をしてきているわけでございますから、JBICなどの公的資金とか公的債務保証に頼らずに民間の金融機関の活力を発揮できる状況が整ってきたというふうに思います。そういう意味でいうと、JBIC自身も少し支援のあり方をより高い次元に持っていくことが大事ではないかと思います。

 そこで質問なんですけれども、大企業やメガバンク案件などにおける協調融資比率、あるいは債務保証割合の抑制的な運用でございますとか、あるいはバランスシートの効率的な運用の観点から、既存債権の流動化推進などの分野において、今後JBICがどういう取り組み方針か、伺いたいと思います。

渡辺政府参考人 お答え申し上げます。

 金融の状況は今なお、残念ながら、リーマン・ショックの後の異常時の状態にあるということでございますので、そういう時点においては、私どものような公的機関がある程度の役割を果たすということが必要な状況でありますけれども、委員御指摘のように、将来的に、いわゆる平時に戻ったときに、かつ、日本の民間金融機関が活力を戻してきたときには、我々としては、量的にはある程度小さくするということは考えております。

 ただし、異常時であるか平時であるかによってお互いの仕事の役割が余り大きく変わるというのも、やや顧客の側からすると迷惑なところがございますので、できれば、定性的に言えば、例えば、お互いの資金調達の仕組みが違うので、長いものについては我々JBICなり公的機関がある程度責任を持つ。それから、やはり、コマーシャルリスクではない、ポリティカルリスクのところというのはなかなか民間がとりにくい。ですから、そういう部分については平時であっても異常時であっても我々は責任をとるという形にしまして、あとの量的な部分については、今委員御指摘のように、民間がある程度仕事ができるような状況になってくれば、私どもの融資割合は下げていく。

 それから、保証についても、基本的にはメガバンクあたりもかなり体力がついておりますので、ある程度御自分でおやりいただけるという御判断ができるということであれば、我々も少し縮めていきたいというふうに思っております。

 あと、さまざまな出資の機能とか、それ以外の、先方の政府とトラブルが起こったときの対応の機能、こういうことについては、我々が直接、レンダーとして、先方の政府といろいろ交渉ができるというメリットもありますので、そういう面については民間の金融機関に対しての補完機能を果たしていきたい、そういうふうに考えているところでございます。

遠山分科員 総裁、きょうは大変わかりやすい御答弁をありがとうございました。今後もJBICを応援していきたいと思っておりますので、ぜひよろしくお願いいたします。

 続きまして、もう時間が余りありませんので、少しまとめて伺うことになると思いますが、法務省にシリア難民の問題について伺います。

 まず、数字ですので二問まとめて伺いますけれども、シリアでの紛争開始後、日本で何人のシリア難民が難民申請をしているか、また、申請したシリア出身者のうち難民認定をされた人は何人で、また、難民認定はされなかったけれども、人道的配慮で在留資格を付与された人の人数は何人か、これをちょっと、数字ですけれども、まずお答えください。

杵渕政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十三年から二十五年までのシリア人に関する統計数値は、次のとおりとなっております。なお、平成二十五年の統計につきましては、現在集計中であるため、未確定の数値も含んでおります。

 この期間に受理した難民認定申請は五十二件です。また、この期間に審査結果を出したのは三十四件。このうち、難民として認定した事案はございませんでした。

 これら三十四件のうち三十三件につきましては、難民条約上の難民には該当しないものの、本国事情等を踏まえ、人道的な配慮により、我が国への在留を認めることといたしました。

遠山分科員 そうすると、五十二人のシリア人が難民申請をして、審査が終わったのが三十四人、そのうち三十三名、ほぼ全員近くに、難民認定はしていないけれども、在留資格を付与した。

 これは、そうすると、国際水準でいえば、人道的な配慮は日本政府としてしているということはかなり言えるのかなと思いますが、あえてその上でお聞きをしたいと思います。

 私、今、公明党の難民問題PTの座長もしておりますので、いろいろ情報は入ってくるわけですけれども、例えば、国際社会ではスウェーデンが、シリアの国内情勢がああいう状況でございますので、シリアからの難民申請は一〇〇%受け入れると表明をしていると聞いておりますし、あえてきょうは数字は申し上げませんけれども、他の先進諸国においても、現在のシリア情勢に鑑みて、同国からの申請者が数多く実際に難民として認定されているという情報がありますけれども、日本で難民認定がゼロというのはなぜなんでしょうか。

杵渕政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国の難民認定制度は、難民条約上の難民に該当するかどうかを審査し、判断するものです。シリア紛争から逃れてきたシリア人からの申請についても、本国の客観的な事情のみならず、申請者の個別事情をも考慮して条約上の難民に該当するかどうかを判断しているところです。

 なお、難民と認定しない場合でも、シリア本国の情勢等を踏まえ、人道上の配慮が必要と認められる場合には、我が国への在留を認め、庇護を図っているというところでございます。

遠山分科員 審議官の今の御答弁は、当然、私、ずっと難民行政を見てきているので、わからないではないんですが、しかし、たしか日本政府の公式な立場としては、今のシリアのアサド政権の非人道的な行為等々について、相当厳しい立場を国際社会で表明してきていると思います。

 ですから、当然、難民申請してくる者の個別事情は違いますので、シリアから来たというだけで、はい難民ということにならないというのはそのとおりだと思いますが、他方で、一般的に報道されているニュースを見ても、かなりひどい迫害を受けている人々が相当数いることは明らかでございますので、他の先進国のように、シリアから申請してきたからすぐ認めるというのは行き過ぎにしても、これからも難民申請者が日本でふえていく中で、難民認定ゼロですよというのは、国際社会から見ると、一言で言えば、ちょっと日本が厳し過ぎるんじゃないかということは言われかねないと私は思っていますので、そこは少し念頭に置いて、当然、適正な審査をしていただいて結構なんですけれども、シリアの状況が状況ですから、難民認定ゼロですよというのも少し違和感があるな、こう思っておりますので、その点は指摘だけさせていただきたいと思います。

 最後の質問になります。

 これは、難民認定を既に受けた人の話です。それから、シリアに限りません。難民認定を受けた人の家族というのは、これは国際標準では、UNHCR等に伺いますと、原則的に、近しい家族を呼び寄せることができるということになっているわけでございます。

 日本の場合も、もちろんケース・バイ・ケースで、家族を呼び寄せるか呼び寄せないか当局が判断していると思いますが、いろいろな難民の支援関係者から伺っているところでは、日本の場合は、難民と認定されているのに、例えば両親を日本に呼べないとか、配偶者を呼べないとか、子供を呼べないとか、こういうケースが意外とあると聞いているわけでございます。

 先ほど審議官おっしゃったように、厳格な審査をして、母国において何らかの政治的等な理由から迫害があると政府が認めている難民のことを私は言っているわけですから、その直近の家族がもし母国に残されていれば、その家族も当然本人と同等かそれ以上の迫害を受ける蓋然性が高いという推測が成り立つわけでございます。

 私としては、難民として認定を既に日本の政府当局からされた方々については、一定の条件を設けた上ではありますけれども、例えば、いとこのいとことかを呼んでいいとかいうわけにはいかないですからね、しかし、先ほど申し上げたように、親とか子供とか配偶者ぐらいの範囲は、ほぼ自動的に家族統合を認めていただいてもいいんじゃないかと思いますが、その点について伺って、終わりたいと思います。

杵渕政府参考人 お答え申し上げます。

 先生から、難民認定された方の家族についての入国、在留が認められていないのではないかという御指摘がございましたが、難民として認定された方は、定住者の在留資格を許可されて在留する、その配偶者や子供についても、定住者の在留資格を許可して、本邦での入国、在留が認められているという状況でございます。

遠山分科員 最後に一言だけ。

 そういう御答弁ではございましたが、少し私が聞いている現実とそごがあるようでございますので、またそれは確認して具体的に協議をさせていただきたいと思います。

 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。

金田主査 これにて遠山清彦君の質疑は終了いたしました。

 次に、後藤斎君。

後藤(斎)分科員 おはようございます。大臣、連日大変お疲れさまでございます。

 昨年もこの分科会で、幾つかの点について確認をさせていただきました。ことしは、それよりも二カ月ほど早い分科会なので、リニア超特急のようになっているのかなという感じもしています。

 きょうは西村副大臣にもおいでいただきました。昨日の災害対策特別委員会でも、古屋大臣に、ちょっと確認をさせて、検討するというお話をいただいたので、第一問目に御質問申し上げたいと思います。

 昨日の災害特の中で、農水省が月曜日に、当面の第一陣の農業対策を、ハウスの撤去には三分の一の助成をしながら、そして改植を含めて、二年前の北海道の豪雪、大雪の対策をベースにしたものを提出しました。

 ただ、きのうも御指摘をさせていただいたように、農水省が出したものは、倒壊、全壊をしたビニールハウスの撤去に三分の一の農家に対する負担をするということが一方である中で、既存の環境省の持っている災害等廃棄物処理助成事業については、基本的には、国が十分の九負担をしながら、地方負担は市町村が事業主体になるというのが前提ということであります。

 十分の九が国、地方負担は十分の一という形ですから、地方側から見れば、農家の方も含めて環境省の補助事業の方がプラスに働いていくのは当然のことなんですが、これをばらばらにメニューを出していくというのは実はだめで、そして、なおかつ、市町村においては、今回の豪雪は、ほとんど今までたくさん雪が降らないところに豪雪があった、そういう被害の形です。ですから、できるだけ早く簡易な申請の手続もきのう環境省に依頼をしましたし、それをパッケージで、やはり政府として対策を、きちっとこういうふうに支えていくんだということを出していくべきだと思うんです。

 その点について、西村さんのことですから、きのう、多分、いろいろな関係省を督促しながら対応されたと思うんですけれども、この一日でどういうふうにいい形で変化をしたのか、その点について西村副大臣にお尋ねをしたいというふうに思います。

西村副大臣 昨日も大変大事な御指摘をいただきました。

 もう委員御案内のとおりでありますけれども、環境省の方の事業は、農業者が壊れたビニールハウスをごみとして出した後、市町村がそれを処理する費用について国が実質上十分の九見るという制度でありまして、農業者がそのごみを出すところ、ビニールハウスが壊れたものをどうするかというところの予算が農水省の予算なわけです。

 確かに、別々に提示をされると、一体どっちが使えるのか、これはよくわかりにくいところでありますので、昨日の午後でありますけれども、非常災害対策本部を開きまして、その中で、これは古屋本部長、古屋大臣からも、そして私からも、環境省、農水省を調整して、わかりやすい仕組みで説明できるように、また、特に御指摘のあった農業者の視点に立って、わかりやすい説明、使い勝手のいいようにするようにということで指示をしたところであります。

 その後、財務省も含めて今調整をしているところでありますので、これは早急に取りまとめをして、農業者の皆さんにもわかりやすく、そしてまた市町村の皆さんにもわかりやすく、しっかりと提示をしたいというふうに思っております。

後藤(斎)分科員 その際、ぜひ副大臣、これは、財務大臣も当然、非常災害対策本部のメンバーでもありますけれども、膨大な申請手続、書類の厚さということでなくて、できるだけ簡易な形で、本当にあしたからでも、市町村やJAや農家の方たちがまずその撤去作業をしていく、その部分にステージが移っていく、まだ今どういうふうに申請書をつくろうかなということではなくて、こういうふうにやるから、きのうもお話をさせていただきましたけれども、包括的な、許可的なものをやはりやっていくということでないと、途方に暮れながらやっていくということは絶対いけないので、その点について、改めて副大臣のお考えをお伺いしたいというふうに思います。

西村副大臣 既に農水省においては、いわゆる査定前着工という形で、写真を撮るなどして現状をしっかりと記録した上で、査定がおりる前に事業に着手してもいいというような手続も既にとられておりますけれども、こうしたことも含めて、農業者にとってわかりやすく、かつ手続が簡素に、そして迅速に対応できるように、万全の措置をとりたいというふうに思います。

後藤(斎)分科員 もう一点、西村さん、これは質問通告はないんですが、この災害等廃棄物処理事業の対象事業というので、西村副大臣が今いみじくも、ごみとして撤去された以降の収集、運搬、処分だというお答えをしていただきました。

 私が環境省から聞いているのは、そうではなくて、今回のような甚大な部分はこの対象事業をやはり拡大して、本来であれば当然もう使えないビニールハウスであり、パイプであり、パイプを支えるコンクリートの支柱でありますから、それについても、その時点で、ある意味ではごみというか、使えない廃棄物になっているわけですね。

 ですから、そこはもう一度、西村副大臣が冒頭お答えいただいたものが事実であるのであれば、農家の方から見たという、その視点に立ってという話を西村副大臣は何度かしていただいていますけれども、やはり対象事業の枠を広げて、今、廃棄物的なものになっているような、全壊をしたような部分については、市町村が主体になれば撤去の部分まできちっと対応するんだよというふうなことで整理をしていただかないと、ごみになって収集するところと運搬だけだよということだと今までの御説明と違うので、そこについて改めてきちっと環境省とも整理をし、そしてやはり対象事業の分はできるだけ幅広く認定をしていくということで指導していただかなきゃいけないと思うんですけれども、その点について重ねてお伺いします。

西村副大臣 先ほど申し上げたのは、予算上の整理は、環境省の事業は、ごみとして出された後の収集から市町村がやるということで、ごみを出す部分については家庭なり事業者なりがやるというのが基本的な整理になっておりますので、農業者がごみを出すところは農水省の予算でということが一応の整理になっておりますが、その部分の取り扱いも含めて、今、財務省も含めて調整をしておりますので、農業者にとって使い勝手のいいような仕組みになるようにぜひ調整を進めたいと思います。

後藤(斎)分科員 大臣、今回の部分は、確かに今までハウスの撤去というのに補助金を出すということは余りなかったと思うんです。

 ただし、これも、この一週間余り、倒壊したハウスやパイプを撤去するのに、一反歩、十アール二百万くらいかかる、再建に十アール一千万円以上かかっていくという中であれば、この二百万を、例えば三分の一、農家の補助をして、三分の二が農家負担になると、百四十万くらいは基本的には自己負担、倒壊したハウスやごみを片づけるのに。ということであれば、大臣、その時点で農家に対してブレーキが、意欲も絶対減衰してしまうということになると思うんです。

 ですから、私は、今、西村副大臣にも御質問をさせていただいているように、そこについては、災害等廃棄物処理事業の中で、全体、九割は国がきちっと負担をしていくというふうなこととあわせて、今回、農水省が出したメニューを上手に組み合わせて、やはり百四十万、倒壊したハウスの撤去だけにかかっていくというのは、どう考えても、やる気どころか、もう事業をやめちゃう、変な話、そのまま放置をしてしまうということにも絶対なりかねないと思うんです。

 ぜひ、そこについては、今お話があったように財務省とも協議をして、どういうふうな形に最終的になっていくのかという、まだ月曜日の農水省の事業は発展途上のもの、第一陣だというふうに私は思っていますので、ぜひ財務大臣からも、事務方やまた関係省に農家の方や地域の元気を取り戻すような視点で対応していただきたいということを強く指示していただきたいと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 今回の農業被害にあるものにつきましては、今いろいろ言われましたように、農水省において、二月の二十四日でしたか、取りまとめられたところなんだと思っておりますが、これについては、引き続き詳しい被害状況を把握して追加検討策をすることとされておられますので、追加的に一体どういった支援が必要なのかということにつきましては、農水省ともよく検討させていただいた上で御返事申し上げます。

後藤(斎)分科員 西村副大臣はお忙しいでしょうから、これで最後にしますけれども、今財務大臣が、第二陣に向けてきちっと農水省と相談をさせてもらいたいというお話をして、検討していただけるということですから、今御指摘をさせていただいたように、やはり、農家負担が撤去だけで一反歩百四十万もかかるということだけは絶対やめていただきたい。

 対象事業の拡大も含めて、そこについては関係省とぜひよく相談をしていただいて、できるだけ早くパッケージのメニューとして、市町村や農家の方が不安のないように、これから対応ができるようにぜひやっていただきたいと思いますが、重ねて答弁をいただきたいと思います。

西村副大臣 私も現地を見せていただきましたけれども、高齢者の方々、これから引き続き、この災害の後も、一定の負担をして建て直してやっていくのかどうか悩んでおられる方、たくさん声をお聞きしました。

 山梨はブドウを中心に果樹の大きな一大産地でありますので、この産地として継続していけるように、農家の皆さんにできる限り使い勝手のいい制度になるように調整を進めていきたいというふうに思います。

後藤(斎)分科員 西村さん、どうぞ。

 次に、財務大臣、昨年も御質問差し上げましたが、いわゆる国家公務員の宿舎の問題です。

 この間も、予算委員会の中で、検討が進められて、削減計画に沿って、量的にはその数字が達成されつつあるというふうなお話をお伺いしました。

 ただ、去年、大臣にも、ぜひこの削減計画をもう一度実は見直していただきたいと。これはやはり、今回の豪雪もそうですし、これから首都直下という大きな災害を想定しながら、どういうふうに国の機能が、特に霞が関に機能を持たせるのかということは、今回も実は、この豪雪が、十四日の金曜日の夜から翌日の朝にかけて誰もあんなに降るとは思わなかったし、首都の、東京の一部の地下鉄を除いて、JRも道路も、ある意味では大混乱をした。特に山梨は、もう四日、五日、中央線もJRも中央道も途絶をされて、本当に孤立をしてしまったというふうに私は思っています。

 そういうものに備えていくためには、やはり危機管理をきちっと対応する。大臣は東京にもちろんお住まいですし、政務三役は交代で必ず土日も出勤をさせる、待機をさせる、当然そういうものがあります。ただ、一部の省、財務省もそうですけれども、本当に一部の危機管理要員を除いて、基本的には遠くにお住まいになっているというのがやはり今の現状だと思うんです。

 したがって、特に山手線の中の部分、売却が進んでいる地域もあるようですけれども、危機管理、大規模災害に備えるという観点で、私は、量というよりも質の部分できちっと、この計画の再考と、そして、大規模災害に備えるためにどういうふうな宿舎というものが、やはり土日というのは、役所に出てくるんじゃなくて御自宅にいらっしゃるというのがベースですから、その距離感というものも含めて、質の部分できちっと見直しというか再検討していただく中で、もう一度配置を考えていただくということが絶対必要だと思うんです。

 これについて、一年前、大臣も検討していただけるということを御答弁いただきましたけれども、改めて、現状と、これからの再検討に当たっての視点というものに大規模災害や危機管理というものを、もっと今まで以上に思いを込めて計画をつくっていただきたいと思いますけれども、その点についての御見解をお伺いしたいというふうに思います。

古川副大臣 このたびの御地元の災害も、改めてお見舞いを申し上げたいと思います。また、大規模災害、非常事態、危機管理における公務員宿舎のあり方、そういう着眼からの御指摘に対して感謝を申し上げたいと思っております。

 御案内のとおり、二十三年十二月の削減計画に基づきまして、二十八年度までの五年間を目標に粛々と削減等作業を進めておるところでございますが、今御指摘をいただきました危機管理という観点からは、特にこの即応態勢に支障があってはならないという観点から、今回特段の見直しをさせていただいております。

 御案内のとおり、国家公務員宿舎法の枠組みの中では、生命財産を保護するための非常勤務に従事する職員のうち、官署の構内または隣接する場所に居住する必要がある者に対して、無料宿舎の貸与が可能とされております。自衛隊などはこの制度を活用いただいているわけなんですけれども、このたび、さらに今までの現状を拡充する方向で見直しをさせていただきました。

 具体的には、これまで、官署からの距離、これが百メートル未満という基準でございましたけれども、これをおおむね二キロ以内に拡充することといたしました。こういうことで、例えば自衛隊におきましては、格段に無料宿舎の対象が広がるということになったということでございまして、このような角度から、即応態勢を確保するという観点で見直しをさせていただきました。

 また、宿舎の使用料、この使用料の見直しについても、今度、随分詰めた見直しをさせていただきました。

 ただ、この見直しに当たっては、やはり、今申し上げましたように、政策的な配慮が必要であるということで、具体的には、公務に支障があってはならないということと、それから、今申し上げました即応態勢確保という観点から、随分政策的な配慮もしまして、その上で、今後の宿舎使用料の引き上げの方針を決めたところでございます。

 具体的に申し上げてよろしいですか。

 まず、宿舎使用料。地方において、使用料が高くなってしまって、それで退去者がたくさん出てしまっては困るものですから、地方部の場合、これは現行水準の一・三倍を引き上げの上限として設定いたしました。また、単身赴任者の場合は、これは二重生活になってしまうということにちゃんと配慮いたしまして、使用料は現行水準にとどめるというような配慮。それからもう一つ、先ほど申しました即応態勢を確保するための無料宿舎の拡充ということでございます。

 このようにして、賃料の見直しに当たっても、配慮した上で適正なものになるようにしたいということでございます。

 さらには、仮に、使用料を今回引き上げることになるわけですけれども、これによって公務に支障が出てしまうということになってしまっては、これは本末転倒となってしまいますので、激変緩和の期間を設けまして、二年ごとに三回に分けて引き上げるわけですけれども、その都度状況を見まして、問題が生じた場合には、その都度対応を考えまして、引き上げを見直すこととしております。

 このように、さまざま実態を見まして検討しました結果、公務に支障のないように配慮した上での賃料の見直しということになっております。

後藤(斎)分科員 古川副大臣、御丁寧な御説明、ありがとうございます。

 確かに無料宿舎という規定は余りなじみのないことだったんですけれども、私は、完全に無料、ただだったらいいというものでもないような感じが実はしているんです。

 もちろん、非常に狭めたコアな危機管理の要員について、今、無料宿舎の制度の拡充という形で古川副大臣はお答えをいただいたんですが、それは、要するに幅広い危機管理、去年もお話をさせていただいたように、いわゆるBCP、業務継続をそれぞれの省庁がどうさせるのかということが、今回の豪雪でも本当にわかりましたように、関係省がやはり協力して、それも司令塔が一つで進めていかなきゃいけないということが改めてよくわかったと思うんです。

 したがって、そういう意味でのコアな部分はもしかして無料でもいいのかもしれませんけれども、そうではない危機管理、BCPに関与する人たちについては、平均だと一・七まで、平成三十年まで上げていくことで、所要の見直しという部分では、最後は財務大臣、財務省の判断で、その水準をどこでおさめるか決めていくということですから、私は、そういう観点で、この所要の見直しという部分については、冒頭指摘させてもらったような部分で、再検討をぜひお願いしたいというふうに思います。

 答弁は結構です。大臣も副大臣もうなずいていただいています。

 衆議院の事務次長にもおいでいただきました。

 きのうお話をお聞きしたら、いろいろな、議運で、今度は衆議院の宿舎の問題ですけれども、赤坂宿舎をメーンにしながら、青山宿舎も含めて、大臣が衆議院の十六人のうち八人、副大臣が二十人のうち十三人、大臣政務官は十八人のうち十一人が赤坂宿舎、青山宿舎に、政務三役の五十四人のうち三十二人、大体六割が赤坂宿舎または青山宿舎に一部お入りになられているというお話でした。

 大臣、これは去年もお話をさせていただいたように、やはりいろいろな宿舎問題というのはあるにしても、なぜあの場所に三百人が一同に泊まって、これは警備上も非常に警備もしやすいんでしょうけれども、国会開会中であれば、土日でも三分の一は国会に来て非常時に備えるという大前提と、土日で帰る人もたくさんいますけれども、やはりどんな大規模災害でも徒歩で国会にきちっと来られる、それぞれ、霞が関にも大臣や副大臣、政務官も行ける、非常に立地がいいわけなんです。

 先ほど古川副大臣からお話があったように、国家公務員の部分も、地方では一・三倍が上限、単身赴任も、二重生活に配慮して現行に抑制という、いろいろな手だてを講じながらやっているんですね。

 次長、これはぜひ、議運で今いろいろな議論が、一年前にも当時の次長にお話をし、事務総長にもお話をし、ようやく議運で宿舎の使用料について議論がスタートしているというふうに承知はしていますけれども、国家公務員の宿舎のあり方というのも今お話をお伺いしましたから、ぜひ、そういうものも踏まえて、きちっと最終的に、私は、危機管理も含めた、特に二重生活という部分の視点も私たちは当然持っていますから、そういうものをきちっと議運の中でも開示をし、そして、現状の、この五十四人のうち三十二人の政務三役も含めてそこに居住をしているんだということも含めた実態をきちっと報告をしながら、議運での合意形成が上手にいくように、次長の立場からもきちっと情報の提供等を含めて対応していただきたいと思いますけれども、次長のお考えをちょっとお伺いしたいというふうに思います。

向大野事務次長 お答えさせていただきます。

 昨年も私答弁させていただきました。総長も。特に総長のときに今の危機管理の話がございまして、いずれも当時の議運委員長と庶務小委員長に話をさせていただきました。

 それで、今回は二月十三日にこの件、宿舎法の施行令の改正が出ましたので、早速、全ての、委員長、理事にお話しさせていただきました。

 きょう、後藤先生のお話もありましたので、早速、委員長、庶務小委員長にお話をさせていただいて、今度の引き上げの参考にさせていただきたいと思っております。

 以上です。

後藤(斎)分科員 二つの件を一括して、最後に大臣にお考えをお伺いしたいんです。

 今回の豪雪で改めて学んだことは、やはり司令塔ができるだけ早く、国民の皆さん方、特に被災地の皆さん方にわかるような形でメッセージを送ること、これは非常災害対策本部の早期の設置ということも含めてなんですが、あわせて、これから再建に向けて頑張っていこうとする地域、そして、今回、農家の方ということがこれからメーンになってくるかもしれませんけれども、それについては、被災された農家の方も含めて、再建に向けて、国も全力というか全面的に支えていくんだというふうなことを、副総理というお立場も含めて、また財務大臣というお立場も含めて、財政的な措置も含めてきちっとやっていくということを、最後にぜひ大臣のお口から答弁をお願いしたいというふうに思います。

麻生国務大臣 これは後藤先生の御指摘があるまでもなく、非常事態が起きたときには、間違いなく組織は極めて簡略化し、権力は集中させて迅速に対応できるような態勢をとる。そのために、議員宿舎等々も含めて、なるべく近くに集中させておくということも含めて御指摘なんだと思いますけれども、この種の問題に関しましては、これは最初の、初動が一番大事だと思っておりますので、御指摘を踏まえて対応してまいりたいと存じます。

後藤(斎)分科員 以上で終わります。ありがとうございます。

金田主査 これにて後藤斎君の質疑は終了いたしました。

 次に、古川元久君。

古川(元)分科員 おはようございます。民主党の古川元久でございます。

 麻生大臣、毎日御苦労さまでございます。

 きょうは、ちょっといろいろ聞いた後で、大臣には最後に少し感想とか御意見を求めたいと思いますので、自分に聞いていないからといってお休みになるのではなくて、聞くだけはしっかり聞いていただいて、最後にコメントをいただければというふうに思っております。

 まず、日本の経済の底力というのは、諸外国、特に東南アジアなどを見ますと、やはり中小企業がしっかりある。

 何年か前に、私、ベトナムに行ったことがありますけれども、ベトナムなんかの問題は、中小企業が成長していない。何で中小企業がなかなか成長しないといいますか、存在できない、うまく経営できないかというと、基本的に、帳簿なんかはつけていない、日銭で、幾らで仕入れたかもわからなければ、幾らで売ったのかもわからない。そのときに、当時、財務省からベトナム大使館に行っていましたアタッシェの人に話を聞きましたら、ベトナムで物価が上がったっていっても、そもそも定価販売なんというものはなくて、その場の交渉で決まっているから、物価なんというのはなかなか実態的には把握できないんですみたいな話もありました。

 そういった意味では、日本の場合は、江戸時代から大福帳というものをつけたり、明治になって税理士制度もできたり、やはり中小零細であってもきちんと帳簿をつけて、そして、そこを専門の、会計士とまで言わなくても税理士の人たちがチェックをしていく、こういういわばインフラがあったからこそ、中小企業がこれだけ下支えになってきた。そういう中から、世界のトヨタを初め、ソニーとか大企業も、もともとは中小零細であったわけでありますけれども、成長してきたんだと思います。

 そういった意味では、日本の底力でもあります中小零細企業、これから、成長戦略、第三の矢という中で一番大事なのは成長戦略だと思うんですけれども、今ある企業に元気になってもらうことも大事でありますけれども、やはり、将来大きくなり得るような中小企業、ベンチャーであるとかそういうところを育てていく、そうしたところをしっかり強くしていくというのが非常に大事だと思います。そういった意味で、中小企業の帳簿をきちんと、ちゃんとつくらせていくということは、中小企業が将来大企業に伸びていく。

 そしてまた、今、中小企業に対して、保証人がいなくても、あるいは担保がなくてもお金も貸せるような、そういう方向に動いていこうというふうに言っているわけですね。

 そのときに、では何をチェックするかといえば、やはりちゃんと帳簿がしっかりしているのか。この帳簿の信用性ぐらいはないと、帳簿も信用できない、担保もない、保証人もない、それでお金を貸せといっても、なかなかこれは、大臣も御自分が経営者でいらっしゃるからわかると思いますけれども、やはりお金も貸しにくいわけでありまして、資金調達とかそういうことから考えても、中小企業の帳簿をしっかりさせていくということは、中小企業が将来伸びていく、そして安定した経営をしていくという意味でも非常に大事なことだと思います。

 そういった意味では、前に、商法とかの改正によりまして、この会計帳簿の作成については、商法上は、会計帳簿に記載すべき事象が発生した場合には適時にこれを記載すべきものであるけれども、実際には、今までは、税務調査のときにまとめて記載するということが行われている場合が多かった。これだと、適時性を欠いている記帳というのは、記帳時に数字を人為的に操作するとか、そういう不正行為が行われたり、そういう可能性もありますし、またその信用がないということもあって、会社法では、こういう不正が行われる温床となりかねない慣行を改めるために、会計帳簿を適時、正確に作成するということを明文で規定したわけであります。

 しかし、商法とかは変わりましたが、では、それを受けた法人税法とか所得税法は変わっているかというと、そこは従来の、整然かつ明瞭、こういう言葉から変わっていないわけでありますね。

 今申し上げたような、中小企業の帳簿に対する信頼性を高める、そのことが中小企業が将来の健全経営あるいは将来成長していくベースにもなるというふうに考えたら、やはり税法上の、所得税法や法人税法の施行規則、こうしたものも商法に合わせて、適時、正確、そういう形に変えるとか、あるいは、変えるのが難しいのであれば、整然かつ明瞭というのに加えていくとか、そういうことを考えるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、平成十七年に、会計法及び商法の改正によりまして、商業帳簿の一層の信頼性を確保するために、適時に、正確な記録を求めることとされたということは承知をしております。

 税法上もこれと同様に適時、正確な記録を求めるべきではないかという御指摘でございましたけれども、税務申告におきましては、正確な記録に基づいて適切に所得計算をしていただくとともに、事後的な検証が可能なように帳簿を整理、管理していただくことが重要であるため、整然と、かつ、明瞭な記録を求めているところでございます。したがいまして、記録の適時性まで求める必要性はないものと考えております。

 特に、税法上は、帳簿の記録が、例えば欠損金の繰越控除制度ですとか、政策税制の適用の前提であります青色申告の承認の要件となっておりますので、その改正には慎重な検討が必要ではないかと考えているところでございます。

古川(元)分科員 今、審議官の方は、事後的な検証がちゃんと可能なようにというお話がありました。しかし、今実際には、中小企業はほとんど、帳簿も昔のように手で書いているんじゃなくてパソコンで入れて、電子的な記録として残っている。ただ、税務署に出すときにはそれを紙に打ち出してということになる。そうなると、途中でそれを操作していても、それはなかなか紙からわからないわけですね、電子的な記録の場合。

 確かに、適時というのは難しいというのは一歩譲っても、それであれば、加除したとかあるいは修正したとか、そのことぐらいの痕跡はきちんと残しておくように、後から事後的な検証ができる、そのためには、修正した履歴とか、やはりそうしたものはきちんと残すように、それくらいのことは義務づけてもいいんじゃないかと思いますが、いかがですか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 事後的な検証が可能なように帳簿を整理、管理していただくことが重要であるということで、整然と、かつ、明瞭な記録を求めているということでございます。

 御指摘のように、これを超えて帳簿書類の変更の記録の管理を求めるということは、納税者に新たな事務負担を負わせることとなりますことから、その必要性については慎重な検討が必要ではないかと考えております。

古川(元)分科員 新たな負担というふうに言いますけれども、これは帳簿の信頼性、先ほど申し上げたように、きちんと帳簿が信用できるというのがあって初めて、担保なし、保証人なしでお金が借りられるとか、そういうことにもやはりつながっていくんだと思うんですね。

 そういった意味では、逆に、若干これは手間がかかるかもしれませんけれども、そこまでやっているということになれば、これは帳簿の信頼性を非常に高めることにつながって、むしろ中小企業の経営にもいいプラスの効果を示すんじゃないかなというふうに思うんです。

 大臣、どうですか。経営者としても、やはり、帳簿のところはそれくらい若干手間がかかってもきちんとする、そのことによってお金も借りられるようになるんだったら、その方がいいんじゃないかと思うんですけれども、どうですか、大臣。

麻生国務大臣 これは、古川先生、多分、事務をやる業者の方の手間、負担がかかるというところが一番問題なんだと思うんですが、これをきちんとやっているかやっていないかというのは極めて大きな差になってくるのは事実です。

 ちょっと世代が違うからどうかしれませんが、ソニー、ホンダ、松下、昭和二十年代、小さな会社ですよ。五反田にあった小さなモーターバイク屋だったんだから、ホンダなんというのは。それが世界のホンダになった。間違いなく、帳簿ですよ。僕はそう思う。あの本田という人は技術屋にしては異常に帳簿に御関心のある方だったので、へえ、珍しいおっさんがいるなと子供心に思った記憶があるんです。

 その人たち三人は全然別の業種に進んだんですが、間違いなく、事帳簿に関してはしっかりせにゃあかんで、これは松下さんがよく言っていたせりふでしたけれども、そういった人たちが結果的にああなったということは事実なんだと思いますので、やはり帳簿をきちんとしておくという必要は、経営をきちっと数字で把握する意味でも一番大きい。

 私も海外の、南米とかアフリカとかアジアとか、随分あちこちに住んでいましたけれども、帳簿はその日、その場で何となく決まっちゃうというので、きのうと違うやないかと言っても全然通じませんし、そこらのところはなかなか、企業というものがきちんと成長していかない大きな理由じゃないのかなとは、その当時、まだ今ほどいろいろなものをよく知っていたわけじゃないんですが、そう思った記憶があります。

 確かに、おっしゃる点はやはり大事だと思いますけれども、ただ、毎日やっている方にしてみると、これは結構手間やなというところだけが一番気になるところです。

古川(元)分科員 大臣、自分でパソコンとかを使われるかどうかわかりませんが、今パソコンで、例えばワードとかを私も使いますけれども、修正した履歴を自動的にちゃんと記録しておいてくれるんですね。ですから、今の技術をすれば、一々履歴をちゃんととっておくように、それは消すこともできるんですけれども、消さないようにとっておくこともできるんです。

 ですから、私は、今の技術をしてみればそんなに手間ではないと思いますし、逆に、やはりそこまでやっていますよということが帳簿に対する信頼を高めて、そのことが中小企業の経営にもプラスになるかと思いまして、ぜひこの部分は前向きに検討していただければと思います。

 次に、新たに、再来年度、二十七年度の税制改正で、消費税を一〇%に引き上げるときに導入を検討しておられる自動車税の環境性能割についてちょっとお伺いをしたいと思います。

 これは取得時に課税をする方向で検討するというふうに聞いておりますけれども、そうなると、一〇%のときに自動車取得税を廃止するといいながら、これは実質的に形を変えた取得税の復活というふうに言えるんじゃないかと思いますが、いかがですか。

平嶋政府参考人 お答えをいたします。

 今委員御指摘がございましたように、平成二十六年度の与党税制改正大綱におきましては、自動車取得税は消費税率の一〇%への引き上げ時に廃止するとの方針をお示しいただく一方で、大綱の中で、消費税一〇%段階において、自動車取得税のグリーン化機能を維持強化する環境性能課税、環境性能割を、自動車税の取得時の課税として実施することとし、平成二十七年度税制改正で具体的な結論を得る等というふうに記述されている、それは御説のとおりでございます。

 いずれにしても、これは与党における今後の税制改正の議論を見守る必要がございますし、私どもとして、その与党の大綱について何か解説、言及のようなことはなかなか難しいわけでございますが、私どもの受けとめということでお話をお聞きいただきますと、自動車取得税というのは、基本的には、自動車の取得のみに担税力を見出して、取得価額に一定の税率を掛ける、こういう税でございます。その一方で、今回大綱で示された環境性能課税につきましては、燃費値、環境性能に応じて税率を変動させる、そういう仕組みにおいて、取得価額との組み合わせによって課するということにされていますので、環境性能というのを課税の柱の一つに据えているというふうに見えるわけでございます。

 そういうことでございますので、自動車取得税とは根本的に考え方を転換している部分があるんじゃないかというのが私どもの受けとめでございます。

 以上でございます。

古川(元)分科員 でも、取得時に課税するという意味では、これはある種、取得税と理屈は、そういうふうに違うふうに言っているかもしれませんけれども、実態は変わらないんじゃないか。特に今、環境割ということで考えるということを言っています。

 そもそも、この自動車取得税というのは、私、昭和六十三年に大蔵省に入省したときに、最初主税局に配属になって消費税の導入にかかわりましたから、当時から、取得税と消費税というのは二重課税じゃないかと。取得に対して税金を徴収するというのは、本来、消費税に一元化される。ですから、ほかの物品税はみんなこのときに整理されたわけであります。しかし、この自動車取得税については残ったわけでありまして、ようやくここで二重課税の解消が一〇%に消費税が引き上げられるときに成るかと思ったら、また取得時に課税をすると。

 今、一方で、これは与党の方で、政府もこれから検討するんでしょうけれども、軽減税率を検討すると言っていますね。軽減税率、本来であれば、消費税というのは全ての物品・サービスについて一律に同じ税率で掛けるのを、物品やサービスの特性に着目して税率を引き下げるようなことを行うというのが軽減税率でありますけれども、私からすると、この新しい環境性能割の自動車税というのは、軽減じゃなくて、逆に、環境にいわば着目をして実質的に消費税を重課するみたいな、そういう形の新たな二重課税の復活ではないかと思うんですけれども、この点はいかがですか。

平嶋政府参考人 お答えをいたします。

 先ほど申し上げましたように、与党の大綱でございますので、私どもの方からその与党の大綱そのものを解説するようなことはできないわけでございますが、私どもの受けとめということでお話をさせていただきますと、二重課税という点につきましては、二重課税というのは何を意味するかということ自体の定義の問題もございますし、また、二重課税にどういう問題があるのかという点も議論があるかと思います。例えば、所得に関しては、所得税と住民税が両方かかっているわけでございまして、それはどうかという問題も同じような問題かと思います。

 いずれにしても、この点につきましては、私どもの地方財政審議会という専門家から成る検討会がございますが、その中で、自動車取得税自体は、消費一般に課される消費税とは課税根拠が異なるから、二重課税との主張は当たらないとの意見が示されているところでございます。

 また、先ほど物品税との関係での整理のお話もございましたが、そのときに不動産取得税の方も残っているということもございます。

 その上で、今回の大綱につきましては、さらに議論を踏まえて制度設計されることだと思っておりますが、取得価額だけじゃなくて、燃費性能が大きく課税額に影響するということでございますので、やはり、消費税というよりは、むしろ環境性能を誘導しようという意図に基づいた税として検討されるのではないかというふうに考えているところでございます。

 以上でございます。

古川(元)分科員 この話はまたこれからもいろいろ議論していきたいと思っていますが、私は、取得時に課税するというのは、実質的には取得税を形を変えて復活させる、また、これは間違いなく、消費税との二重課税だというふうにずっと言われてきた、そうした同じ議論を惹起する問題になるということを申し添えて、次の課題に移りたいと思います。

 次に、日本のマネーロンダリング対策についてちょっとお伺いしたいと思いますけれども、今、テロに対する対応とかそういうことも含めて、マネロンに対して大変厳しい、そういう体制を世界各国はとっております。

 その中で、FATFというマネロン対策の政府間の機関があって、そこから日本はかなり厳しい指摘を受けているんですね。四十の勧告と九つの特別勧告というのがあるんですけれども、四十の勧告のうち日本は十六の勧告で不合格、九つの特別勧告のうち何と七つが不合格、こういう判定を受けているわけです。

 早く対応するようにというふうに指摘を受けているわけなんですが、FATFのこうした指摘に対する対応というのは、いつまでにどのような形で行っていくつもりですか。

室城政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国は、FATFの指摘事項に対応するため、例えば平成二十三年に犯罪収益移転防止法を改正するなどの取り組みを進めてきたところでありますが、FATFからは、依然として、継続的顧客管理などFATF基準で求められている義務の一部が我が国の法令で明記されていないなどの指摘を受けているところでございます。

 このような情勢等を踏まえまして、警察庁が担当する顧客管理の項目につきましては、現在、警察庁において有識者懇談会を開催し、行うべき制度改正の方向性について議論をいただいているところでございます。

 今後、有識者懇談会の議論を踏まえ、関係省庁と連携しながら、FATF勧告に対応した実効性あるマネーロンダリング対策に関する制度の整備に努めてまいりたいと考えております。

古川(元)分科員 義務の一部がという程度じゃないんですよ、これは。さっき申し上げたように、四十項目のうち十六項目不合格で、九勧告のうち七つもバツだというふうになっているんですから、やはりこれは相当深刻に受けとめないといけないんじゃないかと思うんですね。

 きょう金融庁に来ていただいていると思いますけれども、これは早くきちんと対応しないとどういう事態が起こり得るのか。私がちょっと聞くところによると、最悪の場合には国際銀行間の取引から締め出される、そういう危険性もあるというふうに聞いておりますけれども、いかがですか。

長谷川政府参考人 お答えいたします。

 これはあくまでも仮定の話ではございますけれども、仮にFATFにおきまして我が国のFATF勧告遵守への対応が不十分と判断された場合には、我が国は、マネロン、テロ資金供与に関するハイリスク国、リスクの高い国として、国名公表等の措置が講じられるおそれがございます。その場合、海外の金融機関が、我が国の金融機関との取引におきましてリスク管理を強化したり、我が国の金融機関との取引を回避したりするなど、我が国の金融機関及びその顧客企業の国際金融取引に支障を来すおそれがございます。

 金融庁といたしましては、こうした事態を回避するためにも、FATF勧告を遵守することが重要であるというふうに考えておりまして、関係省庁とも連携して適切に対応してまいりたいというふうに考えております。

古川(元)分科員 本当にそういう事態になったら、これは大変なことだと思うんですね。そういった意味では、やはり一日も早く対応していただきたいと思いますし、その対応をするに当たっては、預金の顧客管理が不十分だというふうに言われているわけです。

 この顧客管理というところでいいますと、先日、私も担当大臣で法案づくりをしまして、マイナンバーというのができました。これは、もう最初から預金口座とかそういうものも、アメリカなどでもソーシャル・セキュリティー・ナンバーというのは預金口座を開設するときなんかには必要ですから、そういった意味では、これを預金口座の開設とかそういうときには求めていく、預金口座にもこのマイナンバーを活用する。

 このことが、マネロン対策という点からも、また、もともとマイナンバーというのは、正確な所得把握につなげるということでもありました。預金などにマイナンバーを活用すれば、配当とかそういうものの把握もできる、あるいは利子などの把握もできるわけでありますから、そういった意味では、このマイナンバーを預金口座にも活用することを考えてみるべきではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。

向井政府参考人 お答え申し上げます。

 マイナンバー法におきましては、個人番号等の利用範囲を、まず社会保障、税制に関する分野に限定しておる関係上、調書の出ておりません預金につきましては、大半がマイナンバーをひもづけないということになってございます。

 他方、法の附則におきましても、個人番号の利用範囲につきましては拡大を検討するということになっておりますし、さらに、社会保障・税番号制度は、情報社会の重要な基盤としてさまざまな利活用の可能性があることから、政府のIT総合戦略本部のもとにマイナンバー等分科会を設置いたしまして、実現に制度改正が必要な利活用を含めまして、番号制度のニーズの洗い出し作業から検討を始めることとしておるところでございます。

 預金口座につきましては、マネーロンダリングの観点以外にも、税、社会保障の観点あるいは破綻法制の観点等、さまざまな観点からひもづけるべきではないかという議論がありまして、これにつきましては前向きに検討させていただきたいと思っております。

    〔主査退席、中山(泰)主査代理着席〕

古川(元)分科員 ぜひ早く、前向きに検討して結論を出していただきたいと思います。

 地元の話を最後五分ほどおかりして少しお伺いしたいと思います。

 私の地元の名古屋市の守山区の志段味地区というのは、私の選挙区の中では今一番発展しているところなんですが、ここの発展の中心になっているのは、土地区画整理事業が進むことによって、かつては名古屋のチベットとかいうふうに言われていたんですけれども、今や一番進んでいるといいますか、モダンな地域になってきているんです。

 これは、ここだけじゃなくて全国どこでもそうだと思うんですけれども、この区画整理事業は、かなり経済状態がいいときに計画をしてやってきました。しかし、その後状況が悪くなって、土地区画整理組合は大変厳しい状況にあります。特に、事業を進めるために、かなり銀行から借入金をしている。これが有利子でされているものですから、なかなか保留地も十分に売れないということになっていきますと、この有利子負担というものが事業上の相当大きな負担になっておりまして、このことがまた事業が進みにくいことの一つの要因にもなっています。

 そういった意味では、今、若干の無利子の貸付金もあるようですが、これは期間とか内容等使途に制限があって、規模の大きな組合では非常に使い勝手が悪いというふうに言われておりますから、土地区画整理事業がもっと円滑に進むために、何らかこの有利子負担を軽減するような、そうした措置というものは考えられないものでしょうか。

望月政府参考人 お答えいたします。

 議員御指摘のように、全国の組合施行の区画整理事業におきましては、近年の経済状況や地価の下落等で事業性が悪化しております。事業の円滑な推進が厳しくなっている地区が見受けられる状況でございます。

 国土交通省といたしましては、このような地区の事業の健全化を図るために、経営改善のために効果的な具体策や、あるいは運用時の留意事項を整理したガイドラインを作成し、広く事業者に活用いただくために周知を行っています。また、個別の事業につきましては、事業性の改善について、地方公共団体等と協力をして、事業計画の適切な変更等も考慮しながら、必要な対策を図ってきているところでございます。

 御指摘の志段味地区につきましては、組合事業の認可権者であり、国と連携して助成を行っております名古屋市とともに、適切な対応を図ってまいりたいと考えております。

古川(元)分科員 これはしっかり、口だけじゃなくて、ちゃんとやっていただきたいんですね。そうじゃないと、本当にこのままだと、立ち行かなくなって組合自体が破綻ということにもなったら、結局は、後は自治体がやらなきゃいけないということになろうかと思いますから、そういった意味では、しっかり国交省の方も取り組んでいただきたいと思います。

 もう一点、この地域においてなかなか事業が進まない一つの理由が、実は亜炭鉱の掘った跡がある。これは大臣の方が詳しいかもしれませんが、戦前、特に戦中にかなりいろいろなところを掘ったらしいんですが、どこに穴があいているかよくわからない。今は、穴が陥没をして被害が出たりしたら補償する、そういう基金はあるんですけれども、では、どこに穴があいているのか調査したり、見つけたらそれを充填する、そういうことに対応する制度というのはないんですね。

 私の地元は、東海大地震とか東南海のときに大きな被害が出るんじゃないか、ただ、私のところはかなり海から離れているので津波の被害はないね、そういうふうに言われているんですけれども、そういうときに一番心配されているのが、下が穴があいているところが、亜炭鉱の跡のところが陥没するんじゃないかというふうに心配されているんです。

 ですから、そういった意味では、これから防災を進めていこう、いつ来るかわからない東海、東南海の大地震とかそういうものに備えるのであれば、これは、亜炭鉱のどこにあるのかを調査して、そこをちゃんと充填していくとか、やはりそういうことへの対応というものもとっていくべきだと思いますが、いかがでしょうか。

佐々木政府参考人 防災、減災の極めて重要な課題の一つであるというふうに認識しております。

 地方公共団体との適切な役割分担のもと、議員御指摘の亜炭鉱の廃坑も含め、地盤の脆弱性等、必要な調査を行っていくことが重要と認識しております。

 平成二十五年度の補正予算におきまして、経済産業省で、過去に大規模な陥没事故があるなど、地元が空洞の有無、危険な地点を十分に把握している地域を対象に、南海トラフ巨大地震亜炭鉱跡防災モデル事業を実施することとしておりまして、関係省庁あるいは地方公共団体と連携いたしましてその対応を進めてまいりたいと考えております。

古川(元)分科員 しっかりと進めていただきたいと思います。

 時間になったので終わります。どうもありがとうございました。

中山(泰)主査代理 これにて古川元久君の質疑は終了いたしました。

 次に、福田昭夫君。

福田(昭)分科員 民主党の福田昭夫でございます。

 我が国は世界一の金持ちの国であるのに、十五年以上も続くデフレ経済に苦しんで、二十年が失われたと言われております。このままいくと失われた三十年になりそうなので、そうならないように議論をしてまいりたいと思いますので、ぜひ簡潔にお答えをいただきたいと思います。

 まず、アベノミクス、景気対策の実態について、麻生財務大臣、黒田日銀総裁にお聞きをしたいと思います。

 黒田総裁におかれましては、忙しいところ、きょうはよく出席をいただいて、ありがとうございます。総裁の部下たちが、日銀総裁は予算委員会の分科会には出席したことがないんだということで、きょうは勘弁してくれと何度も言いに来ました。しかし、財務大臣を初め各省の各大臣は全部分科会に出るんです、総裁。ですから、ぜひこれからは、どんなことがあっても国会には出席をする、そういうことをしっかり守っていただきたい、そう思っております。

 それでは、一つ目は、アベノミクスの現状についてであります。

 最近の物価上昇、貿易収支の赤字、円安の悪影響、経常収支の減少などを考えてみますと、アベノミクスは景気対策の効果を十分発揮していない。デフレ脱却どころか、家計を圧迫する悪性インフレ。貿易収支の赤字は最大、国内産業は空洞化。円安で輸入量は変わらないのに燃料輸入費だけが高騰をして、赤字がふえた。悪いところばかりが見えております。潤っているのは自動車を初めとする一部の輸出産業だけ。これでは、アベノミクスで本当にデフレを脱却できるのか、甚だ疑問であります。

 財務大臣と日銀総裁の現状に対する認識をお聞かせいただければと思います。

麻生国務大臣 資料の見方がいろいろ、見解が違っていると思います。

 まず最初に、少なくとも昨年の今ごろ、今のようなお話を聞くより前にもっと厳しい状態が続いた一年間、正確にはそれまでの二十年間、もっと正確には一九八九年十二月の二十九日以降、株価が最高値をつけました、三万八千九百十五円をつけた以降をデフレと言っている人もいますし、それ以後の九二年から、地価が下がったときからをデフレと言っている方もいらっしゃいますので、これは経済学者の歴史家なりに話す話だとは思いますが、いつからリストをとるかは別にいたしまして、基本的に、それまでのことと去年一年間の実績を比べていただければ一番わかりやすいと思いますが、少なくとも過去一年間内で四半期で見ていただきますと、四四半期連続でプラスに成長率が出ております。成長率が四四半期連続でプラスに出たことは過去に例がない、この一年間というより、この二十年間では例がないと思っております。

 また、物価につきましては、足元では昨年の十二月の生鮮食品を除きます消費者物価の上昇率は一・三%に上がっておりますので、デフレという状況ではなくなりつつあるということも、これも数字の上でははっきりしていると思っております。

 また、リーマン・ショック直後は、二〇〇八年ですから、あのときには〇・四二まで有効求人倍率が落ちたと存じますけれども、昨年の十二月では一・〇三ということで、一倍を超えておりますので、こういったところまで少なくとも有効求人倍率がふえましたのは六年ぶりだと存じますので、いろいろな意味で成果があらわれてきておると思っております。

 したがいまして、今、私どもとしては、二十年以上続いてきたものが、一年間でやっとここまで来れたと思っておりますので、二十年が一年で全てよくなるなんというのは、それはちょっと虫がよ過ぎるのであって、なかなか経済はそんな甘いもんじゃないんだ、私は基本的にそう思っております。少なくとも、去年一年間それなりの成果は上がってきた、私なりにはそう思っております。

 したがいまして、今後日本経済がやっていかないかぬことは、景気の回復感が出てきておりますけれども、実質的に懐が豊かになってきたという実感が出てくるまでに至っていないというところが一番大きなところだと思っておりますので、今後は、企業の収益が、勤労者の賃金の上昇、懐収入の実質の増加というところにつながっていく、結果として、それが家計の消費の拡大につながり、それがまた企業の投資を呼び、また消費の拡大につながっていく、そういった意味での経済の循環が実現できるように取り組んでいくというのが一番肝心なことなのであって、今ある方針を基本的に持続していくべきだと考えております。

黒田参考人 我が国経済の状況を見ますと、量的・質的金融緩和は、その効果を着実に発揮していると考えております。すなわち、実体経済面では、生産、所得、支出という前向きの循環メカニズムが働き始めておりまして、緩やかな回復を続けております。

 また、物価面を見ますと、先ほど麻生副総理も述べられたとおり、消費者物価、除く生鮮食品の前年比が、昨年の十二月で一・三%に、すなわち一%台前半まで上昇してきておりますが、この物価上昇の背景を見ますと、確かに、円安やそれに伴うエネルギー関連の押し上げが相応に影響していることは事実でございますが、景気が緩やかな回復を続けるもとで需給ギャップが縮小していることを受けて、幅広い品目で改善の動きが見られることも影響しております。

 このように、量的・質的金融緩和が着実に効果を発揮する中で、日本経済は二%の物価安定の目標の実現に向けた道筋をこれまでのところ順調にたどっているというふうに考えております。

福田(昭)分科員 お二人からそれぞれの見解をいただきましたけれども、ここに、日本総合研究所主席研究員の藻谷浩介氏の論文を持ってきました。「数字で読む「アベノミクスの空騒ぎ」」というタイトルがついております。

 藻谷氏の分析によれば、これは二十年以上、一九八〇年からしっかり統計に基づく分析をしておりますが、金融緩和と連動しなくなった株価、さらに、株価が上がっても消費はふえない、円安で輸出はふえるのか、円安で輸出はふえない、そして、売り上げ増でも雇用はふえない、さらに、日本の競争力の本当の問題とはということで述べておりますけれども、そこでは、日本はもし輸出を維持するなら、しっかりブランド力を高めることが必要だ、こう言っています。

 結論として、何と言っているかというと、

  コストやリスクを直視し、これ以上の効果は乏しいと見切ることができた時点でうまく尻すぼみに収束させていけるか。余り騒ぎにならないようにしつつ「竜頭蛇尾」を実現できるか。怖いのは、そんなはずはないといきり立って今以上のお金を投入し、ついには国債暴落・ハイパーインフレなどを引き起こしてしまうことです。そうなったらもう手がつけられません。その前に、安倍首相にはひっそりと旗を下ろしてもらうというのが、今考えられる最良のシナリオでしょう。

  「アベノミクス、いつのまにか終わっていたみたいだね。言われたほどの効果はなかったけれど、まあいっか」と、多くの国民が思えるうちに、金融緩和や公共投資の旗が静かに下ろされ、成長戦略の中の意味のあるものだけが残ることを、私は強く願っています。

こう分析をいたしております。ぜひ、大臣にも日銀総裁にもお読みいただきたいと思っています。

 ここで議論をしてもしようがないので、ここでやめておきます。

 二つ目は、デフレ脱却と消費税引き上げの両立についてであります。

 黒田総裁は、昨年いち早く、財務省が消費税を引き上げるような環境づくりをしたんでしょうけれども、デフレ脱却と消費税の引き上げは両立すると述べられましたが、その根拠をぜひ教えていただければと思います。後ほど麻生大臣も、どう思っているのかお聞かせください。

黒田参考人 日本経済は、これから先行き、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動といった振れの影響は受けつつも、生産、所得、支出の前向きな循環メカニズムは途切れず、基調的には、潜在成長率を上回る成長を続けると見ております。

 すなわち、金融緩和の効果が発揮されるもとで、国内需要は企業収益や雇用、所得環境の改善を受けて堅調な推移を続けると見ておりまして、輸出も、足元ではやや弱目でございますけれども、海外経済の回復などを背景に緩やかに増加していくと考えております。

 確かに、消費税は、消費に関する、あるいは消費に対する課税でありまして、消費税率の引き上げは家計の実質所得にマイナスの影響を及ぼすことは避けられないわけでございます。もっとも、政府において各種の経済対策が講じられること、消費税率引き上げは家計部門で以前から相応に織り込まれていると見られること、そして財政や社会保障制度に関する家計の将来負担を和らげる効果も期待されることなどから、消費税率引き上げによる家計の購買力低下の影響を緩和させる力も働くと考えられるわけでございます。

 したがいまして、先ほども申し上げ、さらに今申し上げた日本経済の先行きの見通しというものは、こうした消費税率の引き上げ、二段階の引き上げの影響も考慮したものでございます。

麻生国務大臣 名字がおもしろい人だったので何冊か読んだことはありますけれども、その方の話で一番間違っているのは、人口が減ったら必ずデフレになるという前提で書いていることですよね。そう思われて読まれませんでしたか。(福田(昭)分科員「あれはタイトルだけですよ」と呼ぶ)そこが全てあの方の大前提ですから。それだったら、ドイツなんか大デフレでなくてはおかしいので、これは少し違うんじゃないのかなと思って、以後読んだことはありません。(福田(昭)分科員「中身をよく読んでください」と呼ぶ)また、お勧めいただきましても、もう一回読む気もちょっとありませんので、あらかじめお断りを申し上げておきます。

 それから、先ほど三本の矢というものを申し上げましたけれども、これの効果もあって四四半期連続でプラスに成長して、物価も今、黒田総裁からお話がありましたように、消費者物価上昇率が、生鮮食品を除いていずれも一・三%となる、間違いなくデフレ状況ではなくなりつつあるということであって、また、昨年十月の、消費税率引き上げを確認した際には、税率引き上げによる反動減というのを緩和して、景気の下振れリスクに対応する必要があるということだったものですから、その後の経済成長率の底上げと好循環を図るために、経済政策パッケージというのをこのときあわせて作成いたしております。もう御存じのとおりです。

 その経済政策パッケージに基づいて経済政策を策定して、これを実行するために、平成二十五年の補正予算を五・五兆円組ませていただいたということで、先月通させていただきました。その中には、生産性向上設備の投資促進税制の創設などを含みます平成二十六年度の税制改正の大綱というのを取りまとめておりまして、加えて、十二月の二十日には、多分、歴史始まって以来だと思いますけれども、政労使三者で席を一緒にし、何回となく会議を重ね、組合との交渉を政府がやって、我々はその仕事までして、私は政府の仕事だと今でも思っていないんですけれども、これはやらねばならぬということで、私どもはそう決意を決めて、労使による共通認識を政労使三者で一緒にやろうということまでさせていただいて進めてきたところであります。

 したがいまして、今年の四月に消費税率を引き上げますが、もしこれを引き上げないで、法律を無視して、これは法律で決まっていますから、自民、公明、民主で決められた上でやっておるわけですから、その上でやらないということになりますと、また別の法律をつくるということになるというのはいかがなものかとも思いますし、私どもは、決めた以上、それをきちんとやるということをして、これによって、海外によって日本の信用というもの、国債の信用もきちんと維持するということにしたのであって、我々としては、デフレ脱却と経済再生、両立を図るということはG20における合意でもあろうと思って、我々はそれをきちんとやり遂げたいと思っております。

福田(昭)分科員 お言葉ですけれども、デフレ脱却と消費税引き上げは両立しない、そういう心配があるから五・四兆円の補正予算を組んだんですよね。それで、デフレ脱却はまだ道半ばだと言っているのに消費税を引き上げをするということは、私はアベノミクスの考え方からいうと矛盾していると思いますよ。

 そこで、では、日本が本当に財政破綻するのかどうかということについて議論したいと思います。

 我が国の経常収支の推移と現状であります。

 一つ目は、過去二十年間の経常収支の推移でありますが、資料の一をごらんください。財務省につくっていただきました。こちらを見ていただければ、非常に日本の国際収支が大きく転換しているということが読み取れると思いますけれども、財務大臣は、この国際収支の推移を見て何を考えますか。感想がありましたら言ってください。

麻生国務大臣 日本の経常収支の黒字というのは、平成の十九年までは拡大傾向にあって、平成十九年は二十四兆九千億というのが、たしかそれが一番のアッパーだったと記憶しますが、その後は縮小傾向となってきて、御存じのように、二十五年には三・三兆円の黒字ということにまで縮小してきております。

 経常収支というのは主に貿易収支と所得の収支から構成されているんですが、経常収支の縮小の主な要因というのは、リーマン・ショックとか東日本大震災とかによって貿易収支が悪化したことが挙げられるということでありますけれども、他方、これまでのいろいろな努力によって、所得の収支、GPIとかいろいろな表現がありますけれども、GNIともいいますが、所得収支について、日本から対外への投資のリターンとしての額が拡大基調にあり、国としての稼ぎ方が大きく変わりつつある。

 少なくとも、貿易収支に偏っていて、貿易立国だのとまだ言っている新聞がいっぱいありますけれども、GDPの中に占める貿易の比率は、今は十何%、四%をもう切ったのかな。それで、昔みたいのとは全然違いますので、近くの国の、三〇%、四〇%やっている国とわけが違いますので、内容が恐ろしく変わってきておるという前提に立たないと、この種の話は理解が難しくなるかと思います。

福田(昭)分科員 その点では一致しているようでありますが、貿易立国から投資立国に変わってきていると、この表から私は読み取ります。

 そこで、その結果として、日本の対外純債権残高は、平成二十四年末でありますけれども、二百九十六兆円を超えた。世界一の金持ちの国です。

 そこで、経常収支を今後とも、今、減ってきちゃいましたけれども、これの黒字をこれからも維持していかなくてはならないと私は思っているんですが、そのことについて、財務省として、財務大臣としてどんなお考えがあるか、お聞かせください。

麻生国務大臣 経常収支は、これはもう申すまでもなく、貿易収支と所得収支からで構成されるんですが、そのうち、所得収支につきましてはもう今申し上げたとおりで、今後も底がたく推移していく、私どもはそう予想しております。

 他方、貿易収支という点で見ますと、これは、何といっても、平成二十三年の東日本大震災によりますいわゆる原発の関係で、急遽、LNG、石油等々の緊急輸入が増加したことによって価格が暴騰する、加えて、円がこの一年間で約三割近く安くなる、また内需が好調になっておりますので、今、日本のGDPの中に占める比率は、間違いなく外需を内需が大きく上回っているという状況になりますので、これは輸入がふえてくるのは当たり前のことだと思っております。

 日本の輸出先であります新興国や、資源の輸出等々、資源国の輸出、輸入が下がっておりますので、できるだけということになるのはやむを得ないところだと思っていますから、引き続き低コストで輸入できるようにいろいろな形で努力をしていくということなので、企業の生産性の向上等々、いろいろ地道な努力を今後ともやり続けていくところが大事なんだと思っております。

福田(昭)分科員 そうすると、輸入がふえるということは、円が余り安くても困るんじゃないですか。ですから、今の相場はちょっと安くなり過ぎちゃっているんですね、これは。

 それでは、時間の関係がありますから次に行きたいと思いますが、我が国の国債発行の現状についてであります。

 一つ目は、発行通貨と金利についてでありますけれども、国債残高が、短期証券も含めると約一千兆円になるという話をよく聞きますけれども、それらは全て日本円で発行していると思うんですけれども、そのことについてお答えをいただきたいと思いますし、また、最近の新規発行した十年物の長期国債の利子はどの程度なのか、お答えをいただきたいと思います。

麻生国務大臣 一千兆円のうち、外国人が買ってあります分が約十数%だと思いますが、その外国人買いの十数%を含めて、全て円買い・円売りになっておりますので、日本の国債発行は一〇〇%日本の円によって成っております。こういう国は日本、イギリス、アメリカ、スイス以外はないのかな、そんなものだと記憶をいたしておりますが、そういった状況になっております。

 円建ては、最近の長期金利は現在約〇・六%ということになっておりますので、主要国の中ではスイスが一番低くて、一・〇ぐらいだと記憶しています。

福田(昭)分科員 二つ目の質問まで大体お答えいただいたようでありますが、資料の二をごらんください。これも財務省がつくった資料であります。国債及び国庫短期証券の所有者別内訳ということで、平成二十五年九月末の速報値であります。

 これをごらんいただければわかりますように、麻生大臣、海外はこの時点では八%だそうでありますが、しかし、今お答えいただきましたけれども、この海外が、外国人たちが買っている国債についても全て円建てで発行しているということ。ですから、そういった意味では、非常に安心できる発行の仕方ということであります。

 これを見ると、総額約九百八十兆円のうち、日銀を初め金融機関が約八百四十九兆円、約八六・六%を保有しているわけですが、これで何か心配の点はありますか、お聞かせください。

麻生国務大臣 基本的な心配といえば、それは、ギリシャとかその他のヨーロッパの国々と違って、ユーロというような外債を使っているわけではありませんので、その種の意味での心配はないと存じます。それが一番大きな違いで、よくギリシャと一緒になるとか言っていたとぼけた財務大臣が昔おられましたけれども、あのときは、わかっておらぬ人が財務大臣をやっておるんだなと思って聞いていました。幸い、やめられましたけれども。基本的なところが、そこが一番違うところだと思っています。

 今心配なところは、福田先生、売り上げがGDPだとするならば、GDPで五百、借金が千というのは、やはり企業経営としてはいかがなものか。知事をやっておられたので御存じだと思いますけれども、収入は租税で約五十兆ですから、それからいったら、倍率からいったら二十倍ですから、もうそれはえらいことになるんだという感じがしますので、私どもとしては、これはその点についてはきちんとした考え方を持っておかないと、日本という国が何となく大丈夫だ大丈夫だという話にくみすることはありません。

福田(昭)分科員 だんだん時間がなくなってしまいましたけれども、麻生大臣の話を聞いて安心しました。よく国債が暴落して利子が上がると金融機関がだめになる、そういう言われ方をしております。しかし、麻生大臣の話を聞いて、私も、政府が思っているんじゃないなということを確認させていただきましたので、よかったなと思っております。

 そうした中で、私は、三つ目のストックの財政健全化指標について、これが非常に大事だと思っています。

 毎年度の基礎的財政収支、プライマリーバランスの黒字化、これは余り私はこだわらない方がいいと思っています。二〇一五年にGDP比赤字半減だ、これは実現できる、しかし、二〇二〇年は黒字化は無理だ、そういうことを言っておりますが、これにこだわらずに、やはりストックの残高を、GDP比でだんだん減らしていく、そういう作戦が必要だと私は思います。時間がないのでここは省略しますけれども。

 最後に、我が国の財政破綻の可能性についてであります。

 私は、経常収支、これがやはり何といっても黒字を維持するということが大事だと思っています。それから、発行通貨、これはもう全て円建てで発行する。そして、さらに必要なことは、名目GDP、これを拡大する。

 ストックの財政健全化の指標は、大臣に言っては釈迦に説法になっちゃうかもしれませんが、分母は名目GDPです、分子が、政府は粗債務と言っていますが、私は純債務が正解だと思っています、基本的に。しかし、分母の名目GDPがこの二十年間全然大きくならないで、分子だけ大きくなっていった、したがって財政が悪化した、こう言われているわけです。したがって、この名目GDPをしっかり拡大する、大きくしていく。

 そして、四番目に、やはり何といってもデフレ脱却。やはり物価が下がり続ける経済、これは病気ですから、この病気を治さない限りは、経済の再生と財政の健全化にはつながらない、そう思っておりますけれども、ぜひ大臣の考えをお聞かせください。

麻生国務大臣 今おっしゃいましたように、やはり福田先生、さきの戦争で負けてこの方六十数年間、世界でデフレ不況というのをやった経験がある国は、百九十三カ国でゼロなんですよ、一つもないんですから。したがって、日本も例外ではなくて、インフレ不況をやっても、デフレ不況をやったことがないものですから、今回の二十年と言われるデフレ不況対策は間違えた、日銀も間違えた、財務省も間違えた、政府もみんな間違えた、やったことがなかったから。私は、まずその反省の上に立たないと、何となく、今は目先だけの話をしてもだめなんだと思いますので、先生のようにきちっとしたところに立脚して言われるのは大変見識として正しい、私どもはそう思います。

 少なくとも、今回は、一番の問題は、二十年間にわたって五百兆のGDPがどんどんどんどん減っていった。当時は借入金が二百何十兆、二百六十兆とかなんとかいう話だったものが、気がついてみたら一千兆になっていました。では、金利はどうしたかといえば、当時、二百何十兆のときで金利は六・何%が、GDPは変わらずで、借入金は四倍にふえて、金利は十分の一になったという話は、これはどの経済学の本を読んでも、こういうときはどうするなんということを書いてある本はありません。なぜなら、過去に一度もそういう例が起きたことがないからだ、私はそう思っています。

 私どもは、そういった前提のないところをやっておりますので、まずはデフレ不況から脱却して、GDPを確実に大きくしてさっきの比率を狭めていく、少なくしていくというのが基本的な方向だという御指摘は全く正しいと思います。

福田(昭)分科員 それでは、お聞きしたいのは、経常収支が黒字で、しかも、発行している国債が全て自国の通貨建て、つまり円建てで発行している、そういう国で財政破綻した国はない、こう言われておりますが、財務省として調査をしていますか。

麻生国務大臣 ないと存じます。

福田(昭)分科員 ありがとうございます。

 時間がなくなりましたけれども、そういうことでありますから、私は、今回のアベノミクスは、財政が即破綻するような状況にない日本の財政を踏まえれば、やはりここは消費税引き上げは凍結すべきだと。私自身も、国民負担率がヨーロッパに比べて低い、これからの少子高齢化社会を深く考えれば、国民負担率はヨーロッパ並みにしていいと考えておりますけれども、しかし、何よりもデフレ経済から脱却しなければそれもできなくなっちゃうということを踏まえて、アベノミクスはしっかり大胆に見直ししてほしいと思っています。

 以上で終わります。ありがとうございました。

    〔中山(泰)主査代理退席、主査着席〕

金田主査 これにて福田昭夫君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして財務省所管についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

金田主査 次に、法務省所管について政府から説明を聴取いたします。谷垣法務大臣。

谷垣国務大臣 平成二十六年度法務省所管等予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 法務省は、法秩序を維持し、国民の権利利益を擁護するという基本的な任務の遂行を通じて、国民生活の安全、安心を守るため、法務行政の充実強化を図っており、現下の厳しい財政事情のもとではありますが、所要の予算の確保に努めております。

 法務省所管の一般会計予算額は、七千二百九十八億六千二百万円となっております。

 また、復興庁所管として計上されている法務省関係の東日本大震災復興特別会計予算額は、三十八億七千六百万円となっております。

 何とぞ、よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。

 なお、時間の関係もございますので、お手元に配付してあります印刷物を、主査におかれましては、会議録に掲載されますようお願い申し上げます。

金田主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま谷垣法務大臣から申し出がありましたとおり、法務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

金田主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

金田主査 以上をもちまして法務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

金田主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。國重徹君。

國重分科員 おはようございます。公明党の國重徹でございます。

 昨年もこの予算委員会の分科会におきまして、私は谷垣法務大臣に質疑をさせていただきました。大臣また関係各位の御尽力によりまして、私が昨年質問いたしました国選付添人制度の範囲拡大に向けての大きな前進の兆し、また、刑事施設の常勤医不足の解消に向けての有識者検討会の発足、こういったものにつながって、着実に前進しているということを感じております。これについて、まずもって心より感謝と御礼を申し上げます。

 本日は、大きく三点、一点目に少年事件における補導委託、二点目に子供の手続代理人制度、三点目に外国人、なかんずく民族的マイノリティーに対する差別解消に向けての取り組みについてお伺いします。時間の関係で最後少し尻切れトンボのように終わるかもしれませんけれども、できるだけ濃密な質問をしたいと思います。

 まず、一点目の補導委託についてですけれども、この中身に触れる前に、協力雇用主についてお伺いいたします。

 協力雇用主とは、非行の前歴等のために定職につくことが容易でない保護観察対象者等を、その事情を理解した上で雇用し、改善更生に協力する民間の事業主をいいます。

 この保護観察所に登録している協力雇用主の数は、平成十六年は五千五百四十七件、平成二十五年は一万一千四十四件、倍増しております。この登録急増はどのような原因に基づくものか、お伺いします。

齊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 増加の状況は今先生御指摘のとおりでございます。

 増加の原因は種々考えられますが、一つ大きなものは、法務省では、平成十八年度から厚生労働省と連携いたしまして刑務所出所者等総合的就労支援対策というものを始めております。

 その中で、例えば協力雇用主さんが対象者を雇っていただいたら、三カ月間、月四万円お支払いするといったトライアル雇用の制度とか、それから、対象者がその仕事、業務に関して雇用主さんに迷惑をかけた場合、一定の額を限度に補償する制度、さらに本年度からは、職場定着協力者謝金ということで、これは法務省の予算なんですが、雇用していただいて、いろいろ仕事も教えていただき、生活指導もしていただく、そういったことに対する謝金をお支払いするというような制度などを通じて、協力雇用主さんに対する支援策を強化しているということが一つの原因ですし、さらに、保護司さんなどを通じて協力雇用主さんの開拓に力を入れているということも原因だろうと思っております。

 以上でございます。

國重分科員 今答弁いただきました財政支援の内容について教えていただきましたけれども、私もこの財政支援が大きな理由の一つではないかと思っております。

 法務省の調査によりますと、保護観察中、無職の場合の再犯率は、就職しているケースに比べて約四倍、犯罪抑止には就職支援が欠かせないというふうに言えます。

 補導委託に話をかえますけれども、補導委託とは、家庭裁判所が非行少年の最終的な処分を決める前の試験観察において、民間の方に非行少年を預けて、仕事や通学をしながら生活指導をしてもらうという制度です。この身柄補導委託を行う補導委託先件数は年々減り続けて、平成二十五年は二百四十五となっております。

 補導委託先は慢性的な不足傾向にあるとも言われておりますが、その理由はどこにあると考えているでしょうか。

岡最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 委員御説明のとおり、身柄つき補導委託は、少年を補導受託者のもとで生活させ、従来と異なる環境で少年の生活状況の変化などの反応を見て、最終的に適切な処遇選択を行うという制度でございます。

 このように、身柄つき補導委託におきましては、住み込みで少年を預かってもらう必要があるということ、それから、少年の生活全般について受託者の方で指導いただくといった必要がございます。

 ただ、最近の雇用形態の変化や家族のあり方の変容などに伴い、自宅で少年と一緒に生活したり、少年を寮で預かったりすることができる雇用主や家庭が減少していることが原因ではないかと思います。

 ただ、こういった状況の中でも、補導委託先をいかに確保していくことができるかということは課題であるというふうに認識しておりまして、引き続き委託先の開拓に努めてまいりたいと考えております。

國重分科員 今、不足の理由をさまざま、るる述べていただきました。今話には出なかったかもしれませんけれども、受託者の高齢化等もその一つの要因としてあると思います。また新たな委託先を開拓していかないといけないと思います。

 補導委託先に支払われる補導委託費というのは、報酬、謝礼の趣旨を含まない実費補償だと言われております。受託者の活動は実質的にボランティアなんだと。補導委託先は、ボランティアからの寄附とか、また食料の自給自足、バザーによる資金調達がなければ現実的に運営できないところがあるというふうにも聞いております。

 ちょっと話の視点を変えますけれども、少年審判において、少年の家庭環境が非常に劣悪で、また帰住先がないことが少年院送致決定の考慮要素とされることはあるでしょうか。

岡最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 一般論といたしまして、少年の帰住先があるかどうかということは、その少年の要保護性を判断する際の考慮要素の一つにはなり得ると考えておりますけれども、少年審判におきましては、非行事実の内容、少年の資質、環境上のさまざまな問題点を総合的に考慮した上で処遇が選択されているものと承知しております。

國重分科員 私も弁護士時代に少年事件を数多くやってまいりましたけれども、初犯の自転車窃盗、占有離脱物横領罪で、家庭環境が劣悪で帰住先がないというケースで少年院送致になったケースもございます。もちろん、それ以外の事情、先ほどおっしゃられたような複合的な事情によって審判は言い渡されるものだと思いますけれども、仮に、行き場がないからといって少年院送致になるというのであれば、少年にとっても、また国のコスト面でも、不合理でよくないものというふうに思います。

 試験観察は、保護観察とは違って、短期間の期間限定とはいえ、補導委託の場合は審判後もその委託先で働き続けることが多いのも実情でございます。先ほど述べましたとおり、補導委託先は、保護観察における協力雇用主の数に比べて、格段に少なくなっております。

 そこで、提案ですけれども、補導委託においても協力雇用主の方にお願いして、もちろん保護観察の場合の単に協力雇用主が雇用を受け入れるというだけのものではないと思うんですね、質は違うと思います。ただ、そのこともきちっと説明した上で、数多くある、一万を超えている協力雇用主の方に、新規開拓として、こういった方を活用して補導委託先を広げていくということも考えるべきと思いますけれども、いかがでしょうか。

岡最高裁判所長官代理者 家庭裁判所は保護観察所との間でも日常的に連携を図っているところでございまして、保護観察所に登録されている協力雇用主の中に補導委託先としても適したところがございましたら、御指摘のような点につきましても保護観察所と相談して対応してまいりたいと考えております。

國重分科員 ありがとうございます。

 私も聞き取りで、今もそういうことはされているということは伺っておりますけれども、やはり数が全然足りないと思いますので、より積極的な活用というのを、待っているのではなくて、こちらから積極的に活用していっていただければと思います。

 次に、裁判所は、家庭環境が劣悪な少年、帰住先もなかなかない、その少年を、では補導委託にするかというと、補導委託先で例えば事件とか事故とかを起こす場合がある。私の友人の弁護士が担当したケースでも、補導委託先に預けたけれども、その少年がそこの家の車を勝手に乗ってどこかに消えちゃったというようなケースもあります。そういった事故とか事件とかを恐れて、なかなか補導委託というものにちゅうちょしてしまうというようなことも考え得ると思います。

 協力雇用主に対しては、先ほどの財政支援の中に、例えば見舞金として身元保証のようなものがございますけれども、こういったものを補導委託についても活用できないか。身柄つき補導委託というのは、試験観察決定は平成二十五年はたったの百十一件です。それほどの予算が必要とも思われませんので、やはりこれを、本当に補導委託というのを実効性あらしめるために、私はここに何らかの予算措置、見舞金等、今後講じることを検討すべきと思いますけれども、いかがでしょうか。

岡最高裁判所長官代理者 現行法上、補導委託先に対しましては補導委託費が各裁判官の判断により支給されており、実費補償という趣旨に基づいて、今後とも適切な水準を維持するよう努めてまいりたいというふうに考えておりますが、それに加えて、委員御指摘のような制度ということになりますと、立法政策の問題ということになるかと思いますので、私としてはお答えを差し控えさせていただきたいというふうに思います。

國重分科員 わかりました。役割分担があるということで、わかりましたけれども、私としては、しっかりとこれについても推し進めていきたいと思っております。

 では次に、子供の手続代理人制度についてお伺いいたします。

 平成二十五年の一月から、家事事件手続法が改正されまして、子供の手続代理人というのが施行されておりますけれども、家庭裁判所の調査官がいるにもかかわらず、子供の手続代理人制度が導入された理由、これはいかなる理由によるのか、お伺いいたします。

深山政府参考人 家事事件手続法におきまして、子が裁判の結果により影響を受ける事件については、子の意思をできる限り尊重するという観点から、今御指摘のあったとおり、家庭裁判所は、家庭裁判所調査官による調査その他の方法により、子の意思を把握するように努めて、その意思を考慮しなくてはいけない、こういうルールが設けられておりますが、新しい家事事件手続法では、これに加えて、みずから子がこれらの事件に関与することを希望する場合の手続保障を図るという観点から、子は意思能力があればみずから手続行為をすることができるという制度を創設いたしました。より子の意思を反映しやすくしたところでございます。

 しかし、こういった制度を創設いたしますと、現実に未成年者である子がみずから手続行為をするについては、困難を伴う場合が一定程度生じます。そのため、職権等で弁護士さんを手続代理人に選任することができるという制度もあわせて導入したものでございます。

國重分科員 では、家事事件手続法二十三条一項、二項で、裁判長が、子供の手続代理人を選任する場合、子供に対して選任を命じる場合というのは、具体的にどのようなケースを想定しているのか。この必要性の点について、内容についてお伺いいたします。

岡最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 御指摘の制度の趣旨につきましては、先ほど法務省民事局長から説明のあったとおりでございます。

 こういった家事事件手続法の趣旨に鑑みますと、あくまで個別の事件の裁判体の判断にはなりますものの、一つは、子がみずから事件の申し立てをし、または手続への参加を申し立てた場合など、子が手続を追行したいとの意思を明確にしている場合に、子に手続代理人を選任することが考えられます。

 また、子が手続を追行したいとの意思を明確にしていなくても、裁判所において、その子の意見を反映させるためにその子が手続を追行すべきであると判断した場合にも、子に手続代理人を選任することがあり得るというふうに考えております。

國重分科員 この子供の手続代理人制度というのは、先ほど申し上げましたとおり、平成二十五年一月一日から開始されております。

 では、昨年一年間、子供の手続代理人が選任された件数は何件なのか、お伺いいたします。

岡最高裁判所長官代理者 お尋ねの点につきましてでございますが、子に手続代理人が選任された事例はあるというふうには聞いておりますけれども、申しわけございませんが、その件数や事件の内容についてまでは今のところ正確に把握してございません。

國重分科員 今の答弁は、選任されたケースはあるけれども、その中身と数については今把握していないということですけれども、これは導入されて間がない制度ですし、さまざま運用上の課題もあるというふうに聞いております。しっかりと実態調査をしていただいて、これから述べます費用負担がどうなっているのかとかいうようなことも含めてしっかりとした調査をして、またそれに基づいてさまざまな今後の対応を考えていっていただきたいと思います。

 次に、子供の手続代理人に関して、弁護士の報酬、この費用負担というのは誰が負担するんでしょうか。

深山政府参考人 裁判所によって未成年者である子に手続代理人が選任される場合の、その代理人の報酬ですけれども、これは、裁判所によって定められて、裁判所が相当と認める額が家事審判に関する手続費用となります。

 この手続費用は、関係当事者各自の負担となるのが原則ですけれども、事情に応じて、その全部または一部を他の関係者に負担させることができるというルールになっております。例えば、子が親権者の変更の審判事件等に参加した場合には、事情によって、その手続代理人の報酬を当事者である両親の方に負担をさせるということができるようになっております。

 なお、裁判長が必要と認めて子の手続代理人を選任する場合について、子に手続代理人に対する報酬を支払う能力がない場合も少なくないと思われますけれども、そういう場合には、子は手続上の救助の制度によりまして、手続代理人に対する報酬の支払いの猶予を受けることができるということになっております。

國重分科員 今のまとめですけれども、子供の手続代理人制度というのは、原則として、その報酬の負担は子供が負担する、ただ、場合によっては、裁判所が当事者である親に負担させることもできるということでよろしいでしょうか。

深山政府参考人 家事事件手続法の規定上の手続費用分担の原則的な規定が、今先生おっしゃったとおり、各自負担であって、例外的な取り扱いが事情に応じた一部の者への負担の集中ということになっているのは、そのとおりでございます。

國重分科員 今、原則、子供に報酬を負担させるということですけれども、私も含めて、ここにいる皆さんが、では子供のときに弁護士に払える報酬を持っているかというと、通常、そういうことは考えがたいことになります。また、子供の親権とか監護権に関して峻烈な紛争の最中に、手続代理人の選任に好意的でない親に対して、では、子供の手続代理人を選任したから、お父さん、お母さん、報酬をあなたが負担してくださいよといっても、トラブルになるケースというのは十分に予想されます。

 そうなりますと、先ほどの補導委託とはまた別の観点で、裁判所はこの点に引きずられて、子供の手続代理人の選任というのをちゅうちょしてしまう、本来はつけるケースかもしれないなと思っても、やはり、ちょっとつけないでおこうかなというようなことが十分に考えられると思います。

 子供の最善の利益を図るという二十三条を死文化させない、実効性あらしめるためにも、報酬を公費で負担すべきじゃないか。また、これも、今実態調査をしていないから件数はわからないんですけれども、恐らく数は少ないと思うんです。ほとんど選任されていないんじゃないかと思います。予算をつけても、わずかだと思うんです。

 そうであれば、いろいろなレアケースがあって、本当に子供のためにつけないといけないというケースのときに、しっかりと、そこを思い切って選任できるように、公費負担ということを考えていくべきだと思いますが、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 今まで御議論がありましたように、國重さんがおっしゃったように、子供は資力がない場合が多いと思いますね。その場合に、では、親に求める道は開かれているけれども、なかなか簡単でないかもしれない、それも、しかも職権でつけるんだろう、そうであれば国が公費で払うべきではないかという御議論は、私は当然あり得る議論だと思います。

 しかし、他方、これは私人間の争いじゃないか、家庭内の紛争じゃないか、その費用負担を公費でやってくれというのは、それは特段の事情があればともかく、なかなか簡単に認められないよという議論も、私はあり得るだろうと思います。実は、法務省と財務省の主計局との予算折衝というのは、もう常にこういう議論があるわけですね。

 したがいまして、私としては、私人間の争いだから一切だめと言うつもりはないんです。ただ、では、これを実際に予算折衝として現実に予算を獲得していくためには、今委員がおっしゃったことでもあります、現実にどれだけあるかまだわかりません、やはり少し具体的な事例の事情も情報として十分に入れて、それでもって向かわないと、やるぞと言ってもなかなかできないということになるのではないか。

 まだ一年ですので、私、もうちょっとその辺の実際上の必要性は那辺にありやということを研究してみたいと思います。

國重分科員 大臣、ありがとうございます。

 昨年の、刑事施設の医師不足、常勤医不足についても、あの後、有識者検討会を発足していただいて、ことしの一月の下旬に報告書も出ております。

 それに、今大臣の方から、しっかりと実態調査をして、またそれを踏まえて検討していくというような答弁をいただきましたので、またしっかりと、さまざま難しい問題もあることは承知しておりますけれども、大臣のリーダーシップでよろしくお願いいたします。

 大きな三点目の件ですけれども、今、東京都内の複数の図書館にある「アンネの日記」が破られた器物損壊事件、これが発生しております。何の目的でやったか、誰がやったか、これは全く不明ですし、私は無責任な臆測をするつもりもありません。ただ、サイモン・ウィーゼンタール・センター初め世界が非常に憂慮しております。日本国内というよりも、恐らく世界が憂慮しているんだというふうに思います。

 まずは、これについて徹底した捜査をしていただきたいというのとともに、私も「アンネの日記」というのを中学か高校のときに読んだことがございます。また、アンネが十歳のときに、幼なじみにサイン帳に書いた詩というのも見たことがございますけれども、これには、親愛なるへニーへ、ささやかなものだけれども、あなたに上げましょう、野に咲くバラとワスレナグサを摘んでというようなことで、花の絵みたいなものを張っているんですかね。そのワスレナグサ、私を忘れないでというアンネのメッセージがございます。

 私たちは、文明国が一気に、一時に悪魔の社会に転落したという歴史の教訓というのを忘れてはならないというふうに思います。

 これは話がまた別のところの次元になるかもしれませんけれども、今、日本国内で、いわゆるヘイトスピーチ、一般に、人種とか民族とか宗教などを理由に特定の集団を侮蔑し、憎悪や暴力をかき立てる言動、こういったものをいいますけれども、集団で押しかけて大音量で人格をおとしめたり、殺せ殺せというふうに殺人予告を含む発言をしたり、そういうような行動がされております。

 この憎悪表現、こういったものに関して、人種差別に対して、大臣はどのように感じて、また、どのようにこれについて取り組んでいこうと考えられているのか。もちろん、規制立法とかというのは、私も法律家ですから、表現の自由とかというのが非常に重大だというような、他方利益のことも十分にわかっております。

 その上で、こういった行動に対してどのように感じて、どのように今後取り組もうと考えられているのか、見解をお伺いいたします。

谷垣国務大臣 「アンネの日記」あるいは関連書籍が次々と切り取られるといいますか破られる事案が発生していることは、私も新聞等で読みまして、一体どういう動機とか背景があるのかわかりませんけれども、いずれにせよ遺憾なことでございますし、何らかの人種差別的背景を持って行われているとすれば、これは人権擁護上も大問題である。

 実は、この問題に関しては私の立場は二つございまして、一つは、今、徹底的に捜査を遂げてとおっしゃった。こっちの方は、指揮権との関係もございますから、捜査当局が適正に判断をしてやるだろうという以上のことはきょうは申し上げないわけでございますが、人権擁護上ゆゆしき問題である、甚だ遺憾な事案であり得るというふうに思っております。

 それから、最近は、デモ等において、特定の国籍の外国人を排斥する趣旨のデモといいますか言動といいますか、それがしばしば行われている、ヘイトスピーチと言われているものだということも承知しております。

 こういった言動が、人々に不安感であるとか嫌悪感を与えるというだけじゃなくて、さらに差別意識というものを拡大させていくという、やはりこれも、人権行政、一人一人の人権が尊重される社会という観点から、私は大変ゆゆしき問題だろうと思っております。

 それで、今おっしゃったように、他方、表現の自由とか政治活動の自由とか、そういう問題もございますので、やはり事例等をよく我々も注意して見ていきたいと思っております。

 やはり、我が国がそういう意味で本当に品格のある国をつくっていくという意味から見ますと、法の問題もございますけれども、もう少しおおらかな態度といいますか、そういうことが私は必要なのではないか。その観点から、この問題を注視し、対応すべき点は何なのか、よくよく検討してまいりたいと思っております。

國重分科員 では最後に、まとめて一点お伺いいたします。

金田主査 時間が参りましたから、簡潔にお願いします。

國重分科員 簡潔に。済みません。

 ヘイトスピーチに関して、活動に関して、さまざまな実態調査がされているということはお伺いしました。

 ただ、そこで私が聞いたときに欠落していると思ったのが、被害者の調査、もちろん、これはさまざまなプライバシーとか心情とかにも配慮はしないといけないですけれども、やはりここをしっかりと調査していただきたい。

 その上で、障害者とか女性とか被差別部落の方とか、こういった方に関しては何らかの基本法というのが日本に存在いたします。これから、日本が多様な外国人を受け入れたり、世界に誇れる日本になるために、私は、時代の変化とともに、日本においても、外国人に関する基本的な法律、こういったものも制定していくべきであると考えますが、いかがでしょうか。

金田主査 谷垣法務大臣、時間ですので、簡潔にお願いします。

谷垣国務大臣 障害者に関しては、内閣府が中心になって取りまとめられまして、基本法ができた、私は、これは大変画期的なことだと思っております。

 外国人についていかなる観点から定めていくかということについては、まだ議論が十分煮詰まっていないと思います。法務行政の立場だけから申し上げることも、これはやはり政府全体として取り組んでいく、どういう議論が必要か、私も十分考えていきたいと思っております。

國重分科員 ありがとうございました。

 以上で終わります。

金田主査 これにて國重徹君の質疑は終了いたしました。

 次に、林宙紀君。

林(宙)分科員 結いの党の林宙紀と申します。

 きょうは、こういった御縁がありまして、ふだんは所属しておりません法務省の案件についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 私自身は、大学等々で法学部だったわけでもありませんし、いわゆる法曹の世界にいた人間でもありませんので、そういった意味では、かなり基本的というか初歩的なところの御質問になるかもしれませんが、いろいろと教えていただければという気持ちで質問させていただきたいと思います。

 本日は、まず最初に、検察官の皆さんによる被疑者の取り調べ、この可視化についてのお話ということで質問をさせていただきたいと思っております。

 まず最初なんですが、さまざま、国外の例等々を見ていても、国内の状況を見ていても、取り調べの際に、これは警察の方もそうですし、検察官の方が取り調べをするという場合もそうだと思うんですが、被疑者に対して取り調べをするときに、大体イメージとして、取り調べる側がいて、取り調べをされる本人がいるというような構図という認識でいるんですね。この取り調べられる側、つまりは、弁護人というのがそういったところに立ち会うといったことが余りないなということで、かねてから、これはどうなっているんだろうというふうに思っていたところがあります。

 ということで、まず最初に、取り調べに対する弁護士立ち会いといったことについて、現状がどのようになっているのかというのを教えていただけないでしょうか。

    〔主査退席、中山(泰)主査代理着席〕

林政府参考人 被疑者の取り調べに対する弁護人の立ち会いを認めるかどうか、これにつきましては、取り調べを行う検察官におきまして、取り調べの機能を損なうおそれ、関係者の名誉及びプライバシーや捜査の秘密が害されるおそれなどを考慮いたしまして、事案に応じて適切に判断しているものと承知しております。

 実際に、現状といたしまして、身柄事件の被疑者の取り調べに当たって弁護人の立ち会いを認めた事例というものについては、承知をしておりません。

林(宙)分科員 ありがとうございます。

 さまざま理由があって、私は今、どっちかというと被疑者側の立場で質問させていただいた形になっていると思うんですけれども、今おっしゃっていただいたいろいろな理由があると思います。

 いろいろ聞きますと、確かに、弁護人の方が入っていると、逆に本音のところをお話ししにくいところもあるんじゃないかというようなお話もかねてから聞いているので、そこはさまざま議論があるんだろうなとは承知しています。

 ただ一方で、幸いにして、私は取り調べをされたなんということはありませんので全くわかりませんが、私がもしそういう状況になったときのことを考えた場合に、法律的には素人の立場でいろいろと聞かれるわけです。相手はもちろん専門家の方でいらっしゃって、その中で、こちらが深く意図しないところで、簡単に言えば、強い人に対してすごく弱い立場で戦いを挑んでいるような、そういう形になるので、もしこちらが強く望んだ場合にはぜひ立ち会ってくださる方を認めてくださいということは、自然な望みではあるんじゃないかなというふうに思っているところはあります。

 一応、被疑者の要求があれば立ち会いを要求することはできるんだよということはお伺いしましたが、それについて、要求をするものの、認められているケースというのはそう多くはないというふうにもお伺いしています。

 これは、谷垣法務大臣が弁護士出身でいらっしゃるということもあって、もし可能であればなんですけれども、こういった要求があったら基本的には認めるということをもうちょっと積極的にやってもいいんじゃないかというような意見に対して、どのように御見解をお持ちかということをお聞かせいただければと思います。

谷垣国務大臣 これは、今刑事局長が御説明いたしましたように、個々の検察官がどのように判断してやっていくかということなんだと思うんですね、基本は。それに対して、弁護人の方も、被疑者、当事者と余人を交えずに、つまり秘密のうちに、秘密を確保しながら接見交通する。ちょっと難しい、通常用語とはちょっと違いますが、接見交通権というのが認められているという形で一応バランスをとっているんだろうと思います。

 それで、それを超えてどうするかというのは、先ほどちょっとおっしゃいました可視化をどうしていくかとか、そういう議論の中で、今法制審議会で議論をしていただいておりますので、そういう全体構造の中で考えていくのかなと思っております。

林(宙)分科員 大臣、ありがとうございます。

 この点については、先ほども申し上げたとおりで、両方の立場からのいろいろな議論があると思いますので、今大臣がおっしゃったように、その中でどういったお話になっていくのかというのを私も今後もしっかりと見ていきたいなというふうに思います。

 今、弁護士の立ち会いということでお伺いしましたので、ちょっとそれに関連することなんですが、去年の五月、ジュネーブで国連拷問禁止委員会というのがあったということでございます。ここで、もちろんいろいろな議論がある中で、日本での取り調べに対する弁護人立ち会いということで議論になった。報道でも一部その場面が取り上げられたところがあったので、御存じの方も中にはいらっしゃるのかもしれません。

 どういう内容だったかというと、なかなかその詳細な記録というのは一般的な目に触れるところには残っていないんですが、たまたまその拷問禁止委員会というところに日弁連の方が参加されたという記録があったものですから、ちょっとそれを簡単に御紹介しますと、その中で、アフリカの方がおっしゃった一言だということなんですけれども、要は、弁護人の取り調べの立ち会いということが余りない、そういった制度だと、本当ではないこと、真実ではないことを真実だということで記録するのではないかということで、日本の刑事手続を国際水準に合わせていく必要があるというような旨の御発言だったということです。それに対して、日本から出席されていた代表の方が少しそれに反論したところが報道で取り上げられたというような形になっています。

 こういったものを見ていると、先ほどからさまざま御意見をいただいていますように、いろいろな議論があるというのは私もわかった上で、そういったお話もあるということであると、こういった法曹の業界で、私も素人ですからそういう立場から考えると、何となく、それであれば弁護士の立ち会いぐらいは認めてあげた方がいいんじゃないのかなというふうに思わないところもないという形にはなるんですけれども、これについてはどのように御見解をお持ちかというのをお願いします。

林政府参考人 昨年のその国連拷問禁止委員会において、取り調べへの弁護人の立ち会いにつきまして懸念が示されたということは承知しております。

 この懸念というのは、日本において制度として弁護人の立ち会いが義務づけられていないということについての懸念であったとは承知しておりますけれども、一方で、我が国の刑事司法手続におきまして、被疑者の取り調べは、事案の真相を解明するために不可欠な手段でありまして、極めて重要な役割を果たしているところであります。

 したがいまして、被疑者の取り調べに弁護人の立ち会いを認めるかどうかは、先ほど来申し上げました事項を考慮して、事案に応じて適切に判断すべきものと考えております。

林(宙)分科員 ありがとうございます。

 今、ここまで、弁護士の方に立ち会っていただいた方がいいのか、それともそうでないのかという形で御意見を伺ってきたところなんですが、一方で、これはもう恐らくいろいろな方が注視していることだと思うんですけれども、録画ですとか録音による取り調べの可視化ということも今進められてきているんだと思います。これが今後どんどん進んでいくと、弁護士さんの立ち会いというのはむしろそこまで重要性を増さないというか、可視化、録画、録音ができればそれでいいということになってくるのかなというところもあって、こちらについてもちょっと聞いてみたいと思っているんです。

 まず、録画や録音ということで今進めていらっしゃる取り調べの可視化、現状、まだ法で義務づけられているわけではないとか、いろいろな状況があると思います。例えば、どういう案件に関して今やっていますよとか、そういったことを教えていただけると助かります。お願いします。

林政府参考人 検察当局における現状について御説明申し上げますと、現在、検察当局におきましては、被疑者の身柄を拘束中の事件で、しかも、今から申し上げます四つのカテゴリーで録音、録画を実施しております。一つは、裁判員裁判対象事件。それから、知的障害によりコミュニケーション能力に問題がある被疑者等に係る事件。次に、精神の障害等により責任能力の減退、喪失が疑われる被疑者に係る事件。最後に、いわゆる独自捜査事件であって、検察官が被疑者を逮捕した事件。

 こういった四つのカテゴリーにつきまして、公判請求が見込まれない場合であるなどの一定の事情がある場合を除いて、取り調べの全過程を含め、できる限り広範囲な録音、録画を行うなど、積極的な取り組みをしているものと承知しております。

林(宙)分科員 詳細にありがとうございます。

 この取り組み自体は非常にいいのではないかなというふうに私は思っているところですが、国連の国際人権規約委員会、こういったところがありまして、御存じのとおりだと思うんですが、日本の取り調べ制度について一つ勧告をされている。被疑者に対する取り調べが厳格に監視され、電気的手段により記録されるようという意味の勧告だということです。電気的手段というのは、つまりは録音、録画といったところになってくるんだろうなと思うんですが、これは確認させていただいたら二〇〇八年の勧告だということです。

 また、諸外国の例といったものをざっと調べてみましても、イギリスですとかアメリカも含めまして、かなりの国でこういった取り調べ、録音、録画の義務づけというのが進められてきているという環境ではございます。

 もちろん、これは今進めている段階で、その効果とかいろいろなものを見ながら判断していくという前提なんだとは思うんですが、日本が二〇〇九年から録画、録音による可視化というのを始めまして、そうしますと、議論の中で、最終的に制度とするのかとか義務づけていくのかというのはあるにしても、今後に向けてどういった議論が今されているのかというのを、現状でいいので確認をさせていただければと思います。

林政府参考人 取り調べの録音、録画の制度化に向けての議論についてのお尋ねでございます。

 現在、法制審議会の新時代の刑事司法制度特別部会におきまして、まさしくこの取り調べの録音、録画制度も含めまして、時代に即した新たな刑事司法制度についての議論が行われております。

 この部会でございますけれども、平成二十五年一月に、今後の検討事項でありますとか検討方針を示した基本構想というものが取りまとめられまして、この部会のもとに作業分科会が二つできまして、いろいろな制度のたたき台を作成するための具体的な検討が進められてまいりました。去る二月十四日に開催されました部会におきましては、その作業分科会が検討した結果であるたたき台が報告されておりまして、引き続き、これをもとに議論、検討が行われているところでございます。

 取り調べの録音、録画制度について、その状況を申し上げますと、この録音、録画につきましては、一つには、一定の例外事項を定めつつ、原則として被疑者取り調べの全過程について録音、録画を義務づける制度案と、もう一つは、被疑者取り調べの一定の場面について録音、録画を義務づける制度案、こういった二つの制度案が検討対象とされております。また、録音、録画を義務づける対象事件の範囲でありますとか、あるいは録音、録画を義務づける場合の例外事由のあり方などについて、現在議論が行われているところでございます。

林(宙)分科員 どうもありがとうございました。この取り組みが今後どう進んでいくかというのを非常に興味を持って見たいなと思っています。

 もう一つ、取り調べ可視化についてお伺いしたいなというのが、ちょっとここまでの質問と毛色が違うかもしれませんが、私も、先ほど、いわゆる法曹の世界にいたわけではありませんというお話をしましたが、ブロードキャストの意味の放送業界にはおったものですから、インタビューというのをいろいろな方にしていくという機会が非常に多くありました。その中で、本音を聞き出すというのはなかなか難しいなと。こうして国会の質疑に立っていても、こちらが引き出したい御答弁というのをいただけることは、今までの経験でいうと、なかなか難しいなというふうに感じているところでもあります。

 そういった経験から照らしていくと、取り調べというのも、そういった聞き出すという意味においては一つ同じようなところがあるんじゃないかなと思っていまして、そうしますと、結構、聞き出すための技術というのを自分で見つけていくというのも大事なんですが、ある程度セオリーといったようなものもきっとあるはずで、そういうものについて、取り調べをする方がどういう形で習得していくんだろうということに非常に興味があります。

 イギリスの例なんかですと、イギリスはそもそも取り調べのことをインタビューと言っているということも聞きましたし、例えば、これが今私が申し上げたことにそのまま当てはまるかわかりませんが、ピースモデルとか、そういった一定のプログラムがあるということもあるので、日本において、取り調べをされる方、検察官の方の技術の向上について、例えば研修制度みたいなものがあるのかどうか、これについて教えてください。

林政府参考人 取り調べをめぐる環境と申しますか、近年、非常に変化がございます。そういった中で、取り調べの技術向上というものは非常に重要な課題であると考えておりまして、法務・検察におきましては、検察官の経験年数に応じた各種研修を今行っております。

 そのカリキュラムの一環として、被疑者の取り調べに関する講義、研修等も行われておりまして、具体的に申し上げますと、例えば平成二十五年度には、初めての新任検事、任官三年目前後の検事、あるいは任官七年目前後の検事に対します各研修等におきまして、被疑者の取り調べに当たって必要な準備でありますとか取り調べにおける聴取方法等につきまして、取り調べの経験が豊富な教官でありますとか心理学の知見を有する研究者等による講義などを実施しているところであります。

林(宙)分科員 ありがとうございます。

 そういった研修のことを今お伺いしましたが、とはいいながらも、恐らくやはり一番大事なのは経験値ということになってくるところもあるんだと思います。

 きょうは、こういった被疑者取り調べ可視化についてお伺いをさせていただいて、御答弁いただいたとおり、さまざま、お立場、議論があるんだと思います。今後どういった方向に進んでいくのか、しっかり私も見守っていきたいなというふうに思っております。

 きょうは、もう一つ御質問したい内容がございまして、離婚に伴って親子が断絶するというようなことについて、日本の国内においてはどのように今後進めていくのかといったことについて、残りの時間で御質問させていただきたいと思います。

 まず、昨年、国際的な子の奪取の民事面に関する条約、いわゆるハーグ条約ということで、国会でも承認されまして、この四月一日から発効だということになっておりますが、これによって、国際間での子供の連れ去りといったことには対処をする、そういう地盤が整った、そういう枠組みが整えられたというふうに思います。

 一方で、まだこの日本国内においては、離婚をした片方の親というんですか、親権がない方の親と面会交流するというのが、もちろん、できている方々もいらっしゃると思うんですけれども、やはりそういった悩みというのを聞くことが多い、要は、面会交流ができない、どうにかならないのかというような悩みを聞くことも最近非常に多くなってきたところもあります。

 これも、会わせられる親というのは、基本的に良好な関係がその後も続けられているからだと思うんですけれども、会わせられないといった場合には、お互いにそれなりの理由があってというのももちろんわかった上で、きょうはお伺いしたいんです。

 子供が親と会うという権利は、基本的には子どもの権利条約とかそういったところで明確にうたわれているわけでして、そうしますと、やはり子供を中心に考えたら、基本的には、何らかの例外というものがなければ国内でもスムーズに面会交流ができる、そういう地盤を整える必要があると思うんですけれども、この件について、済みません、ちょっと幅広い感じになってしまいますが、政府としてはどのように今お考えなのかというのをお聞かせください。

深山政府参考人 今委員御指摘のとおり、いわゆる子どもの権利条約では、「締約国は、児童の最善の利益に反する場合を除くほか、父母の一方又は双方から分離されている児童が定期的に父母のいずれとも人的な関係及び直接の接触を維持する権利を尊重する。」ということが定められております。また、一般論といたしましても、離婚後も親子の面会交流が適切に実施されるということが極めて望ましいことだというふうに思っております。

 法務省では、平成二十四年四月に、離婚届の面会交流等の取り決めの有無をチェックする欄というのを離婚届に設けるという様式改正をしております。平成二十四年四月から二十五年九月までのおおむね一年半ぐらいですが、この間に提出された離婚届のうち、未成年の子がいる夫婦のものは十九万五千件ほどありますけれども、そのうち、面会交流の取り決めをしているというチェックをした方が十一万一千件ほど、五七%ほどおります。

 また、親の一方が子供との面会交流を求めて家庭裁判所に申し立てられる事件の数も近年顕著な増加傾向にございまして、毎年相当数の事案において面会交流の取り決めが家庭裁判所を介してされているものと認識しております。

 もっとも、今御指摘のあったように、親子の面会交流がなお十分にできていないという指摘もございますので、法務省としては、離婚届のチェック欄の今後の数値の変化、あるいは家庭裁判所の実務運用を見守って、引き続き、面会交流の意義あるいは重要性ということの周知に努めていきたいと思っております。

林(宙)分科員 ありがとうございます。

 本当に、願わくば、そのチェック欄というか、その用紙自体を見ることがないようにということが一番大事なことなんじゃないかなと思うんですけれども、そういった形で今対応されているということです。

 実は、これは与野党の議員の方々で、先般院内集会があって、要は、親子断絶というのを防ぎましょうということを何とか法制化できないかということを検討していく議連をつくりましょうというようなものがありまして、私もそこに参加をさせていただいた次第です。

 これ自体が今後どのようになっていくかというのはまだわかりませんが、その中で、一つ有識者の方にいただいた案で、離婚の際に共同養育計画というものをちゃんとつくって、そこにチェックするというだけではなくて、ちゃんとつくって、それを要件にするとか、できるんだったらそれをやってくださいと少し勧めるとか、そういうことはどうだろうかという意見があったんですが、これについてはどのようにお考えですか。

深山政府参考人 離婚の際に、面会交流あるいは養育費の支払いといった子供の監護に関する事項について適切な取り決め、すなわち、これが共同養育計画と言われているものだと思いますが、これを作成するということが望ましいことは御指摘のとおりです。

 ただ、共同養育計画の作成を離婚の法律上の要件とした場合には、この計画が作成されない限り離婚をすることができないということになりますけれども、夫婦関係が破綻して離婚しようとしている場合において、子の監護に関する事項を両者の自発的な協議で取り決めることがなかなか困難だといった状況になっている場合も少なからず存在すると思いますので、これを法律上の要件とする制度を採用することについては、今まで非常に離婚についてのハードルが低い我が国の法制のもとで、国民一般の理解が得られるかについて慎重な検討が必要だろうと思っております。

林(宙)分科員 ありがとうございました。

 確かに、外国でもこれが要件になっているところというのがありまして、ただ、そこと日本は、今おっしゃったように、そもそも文化が違うのでというのは非常に大きい要素だなというふうには思っています。

 ちょっと関係ないですけれども、要は、日本が割と離婚のハードルが低いという表現を今されましたけれども、これは一つ私も意外でして、ただ一方で、最近はふえてきたんでしょうけれども、ある時期までは離婚というのは非常に少ない国でもあって、少ないというか、そんなに多くない国であったということも考えると、やはり、日本のそもそもの文化といったら変ですけれども、そういった背景というのも一度見直してみると、こういったことを考えていく上で役に立つのかなというふうには思っています。

 ちょっと時間の方も差し迫ってまいりましたので、最後に大臣に一つお伺いをして終わらせていただきたいと思います。

 ハーグ条約のときもそうだったんですけれども、今日本は単独親権であるということで、もちろんデメリット、メリット両方あると思うんですね。親子断絶を防止する、そういった法制を考えましょうというと、必ず共同親権というのはどうなんだという議論が出てきます。

 さまざま議論がこれまでもあったことは承知しておりますが、先ほどの議論と同じなんですけれども、では諸外国のように共同親権に変えましょうというのもまたちょっと行き過ぎなのかなと私は今の時点で思っているんですが、その折衷案というか、これも有識者の方から一つ提案がありましたが、共同親権というのを例えば選択可能にするといったことも一つあり得るのではないかなというふうにおっしゃっていたのが非常に印象的なんですけれども、これについて大臣はどのように御見解をお持ちでしょうか。

谷垣国務大臣 共同親権についての考え方は、私が大学で法律を学んだころは、もう大分昔でございますから、諸外国でも共同親権をとっている国というのはなかったと言っていいだろうと思います。

 その後、ハーグ条約加盟国で見ますと、共同親権制度に移る国が多くなりまして、それが圧倒的と言っていいかどうかはわかりませんが、多数を占めている、共同親権が多数派というのは現状です。

 私も全て学問的によく勉強したわけではありませんが、現在は、共同親権に行ったことについて若干の反省が見られる、それでよかったのかというある意味での反省が見られている時期ではないかというふうに思っております。

 それで、法務省としても、共同親権制度をとったことによって、何がメリットであり、どういうデメリットが生じているのか、今調査を行っておりまして、いろいろ回答を待っているのもあります。また、こちらから積極的に調査に行っているのもございます。

 ただ、この問題も余り安直に考えるといかぬな。安直と言うと言葉がよくありませんが、要するに、別れた夫婦が子供の養育のために十分意思が疎通させられる、冷静に話し合えるというような場合であれば共同親権はうまく機能するわけですが、そうでないと、共同親権制度をとったばかりに、子供のために適切に意思を決定していかなきゃならないのに、なかなかそれが進まないという事例もあり得るのではないかというようなことを思います。

 今お話しのように、日本の中にも、共同親権制度をとったらどうだといういろいろな御意見があることも私もよく承知しておりまして、特にそういう御意見の方は、先ほど委員がいろいろ御議論されましたように、やはり、離婚後も親と面会交流ができるということは、子供と一緒に住んでいない方の親にも面会交流ができるということが子供の健全な成長には資するのではないか、そのためには共同親権にしていくのがいいんじゃないかという御議論があるんだろうと思います。

 ただ、今のようなことも、先ほど私が述べたようなこともございますので、諸外国の例も十分検討しながら考えていきたいと思っております。

林(宙)分科員 どうもありがとうございました。

 きょういろいろいただきました御答弁をまたしっかりと考えつつ、私も議論を進めていきたいなというふうに思っております。本日はどうもありがとうございました。

中山(泰)主査代理 これにて林宙紀君の質疑は終了いたしました。

 午後一時に本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    正午休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

金田主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 外務省所管について政府から説明を聴取いたします。岸田外務大臣。

岸田国務大臣 平成二十六年度外務省所管予算案について概要を説明いたします。

 平成二十六年度一般会計予算案において、外務省は六千六百六十億八千二百七十九万九千円を計上しています。これを前年度と比較いたしますと、約九・五%の増額となっております。

 ODA予算は、外務省所管分として、対前年度比〇・四%の増額の四千二百三十億五百三十二万七千円となっており、四年連続の増額としております。

 私は、国際協調主義に基づく積極的平和主義を推進し、世界の平和、安定及び繁栄の確保に外交力を最大限活用してこれまで以上に積極的に取り組んでいく所存です。

 平成二十六年度予算案の作成に当たっては、こうした考えを踏まえつつ、以下申し上げる七本の柱を掲げ、めり張りをつけた上で必要な予算を計上いたしました。

 第一の柱は、外交実施体制の強化です。さまざまな外交課題に対応するため、発信力の強化、人的体制及び在外公館等の物的基盤を含め、総合的外交力を強化する必要があります。大使館三公館の新設と定員四十五名の純増を含めた必要経費を計上しております。

 第二の柱は、領土保全対策です。我が国の領土、領海、領空は断固として守り抜くとの決意のもと、引き続き毅然かつ冷静に取り組む所存です。

 第三の柱は、アルジェリア・テロ事件を踏まえた危機管理体制の構築、強化です。昨年一月の在アルジェリア邦人に対するテロ事件を踏まえ、危機管理体制を構築、強化し、即応体制の強化、情報収集、発信の強化、官民連携、国際テロ対策の強化等、総合的な対応により、海外における邦人及び日系企業の安全確保のための施策を強化いたします。

 第四の柱は、安保理非常任理事国選挙対策です。国連創設七十周年となる来年を見据え、我が国の常任理事国入りを含めた安保理改革の早期実現を追求しつつ、二〇一五年安保理非常任理事国選挙に万全を期す所存です。

 第五の柱は、グローバルな利益への貢献です。グローバルな課題への貢献を通じた世界全体の利益の増進のため、人権、女性をめぐる外交課題への取り組み、核軍縮の推進、中東情勢等に一層積極的に取り組みます。

 第六の柱は、経済連携の推進です。国益にかなった高いレベルの経済連携を戦略的かつスピード感を持って推進し、TPP交渉については、引き続き早期妥結に向けて取り組みます。

 最後に、第七の柱は、戦略的ODAの展開です。我が国のODA供与開始から六十周年に当たる本年、積極的平和主義を推進するとの観点からも、ODAの重要性は高まっています。日本にとって好ましい国際環境の形成、新興国、途上国と日本の成長の実現、人間の安全保障の推進と日本への信頼の強化を三本柱としてODAを一層戦略的に展開します。

 以上が、平成二十六年度外務省所管予算案の概要でございます。

 詳細につきましては、お手元に「国会に対する予算説明」を配付させていただきました。主査におかれましては、これが会議録に掲載されますようお取り計らいをお願い申し上げます。

 金田主査を初め、委員各位の御支援と御協力を心からお願い申し上げます。

 以上です。

金田主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま岸田外務大臣から申し出がありましたとおり、外務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

金田主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

金田主査 以上をもちまして外務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

金田主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。東郷哲也君。

東郷分科員 それでは、岸田外務大臣また石原政務官、よろしくお願いをいたします。

 ことし一月十日から十四日、安倍総理が、小泉総理以来八年ぶりとなるアフリカ諸国三カ国、コートジボワール、エチオピア、モザンビークを歴訪されたということで、大変な成果があったというふうに理解をいたしております。

 私も、昨年の十月に西アフリカの方へ行ってまいりました。安倍総理からの親書を預かって、トーゴ共和国の大統領とお会いをさせていただきました。そのときから安倍総理がTICADでアフリカ訪問を表明しておりましたので、大変な期待感を西アフリカ、ECOWAS地域の人たちがみんな持っておりました。

 そうした中で、日本との経済連携、あるいは、中央アフリカであるとかあるいは北アフリカの内戦あるいはテロ、こういった問題について日本政府が最大限これから援助をしていくことが必要になってくるのかな、こんなふうに思わせていただいております。

 そうした中で、まず、アフリカの問題について少し質問をさせていただきたいと思います。

 まず、現在、アフリカでは、中国が豊富な資金力と迅速な意思決定を背景として、インフラ整備を中心に大規模な開発支援を展開しております。中国の台頭により、日本企業はビジネスチャンスを喪失しているとも言われております。日本企業が海外展開を図るために、政府が政策的支援を戦略的に行っていくことが重要であると私は考えております。

 アフリカの国々は、従来の援助中心の支援ではなく、経済の自立を促す貿易や投資をこそ望んでおると言えます。その点、中国企業が中国人の作業員を使って建設まで丸抱えする手法には、新植民地主義との反発もあります。イギリスの霊長類学者でありますJ・グドール博士もこういった点を指摘しておるわけでありますけれども、安倍総理がことし一月のアフリカ訪問の際、締めくくりで演説したアフリカ連合の本部ビルも、中国が巨額の金に加えて、人も自国から持ち込むという、いわゆる中国方式で建設をしたものであるわけであります。

 一方、中国の支援の方法に対していろいろな懸念も出てきています。中身が非常に不透明であるとか、環境への配慮、影響など。主因は、開発援助委員会、いわゆるDAC等の国際ルールに基づいた支援が行われていないことにあるわけでありますが、日本政府として、この点、ルールに従った支援のあり方を中国に対して申し入れるべきではないかと考えておりますが、お答えをいただきたいと思います。

石原大臣政務官 東郷先生にお答え申し上げます。

 中国が他の開発途上国の貧困削減、経済社会開発を支援すること自体は、国際社会にとって望ましいというふうに考えます。

 一方で、中国の援助について、透明性、人権や社会、環境への配慮の欠如、受け入れ側の国の、アフリカの国の債務の持続可能性の軽視など、問題が指摘されており、御指摘の問題意識を我々も共有しているところであります。

 このため、我が国としては、多国間の枠組みを活用しながら、中国が自国の援助についての透明性を高め、国際的な取り組みと整合的な形で援助を行うよう促すべく関係国と協力をしているところであります。

 ことし四月には、新興ドナー国を含む多様な開発主体の参加のもと、効果的な開発協力に関するハイレベルの国際会議がメキシコで開催されるところでありますけれども、こうした機会も通じて、中国に引き続き促してまいりたいというふうに考えているところであります。

東郷分科員 どうもありがとうございました。

 このアフリカの支援というのは、先ほども言いましたように、自立させるための対等なパートナーシップ、中国のような方式でやるのではなくて、日本ができること、教育の支援、あるいは気候変動、温暖化に対する支援であったりとか、こういったさまざまな日本らしい心のある支援を展開していっていただくことを心から望んでおります。

 次に、日本企業がこうした中でおくれをとることなく、また、安心してアフリカで事業ができるよう環境整備を図ることは、アフリカ地域における経済成長にも裨益するものと考えます。

 しかしながら、政治的、社会的安定性への懸念を初め、現地国の行政機関の窓口対応のばらつき、煩雑かつ時間を要する手続といった法令の整備、運用面の問題、電力、通信の安定性など、日本企業がアフリカにおいて事業を展開するに当たって諸課題が指摘されておるところでありますが、日本企業が思い切ってアフリカへの投資を決断できるよう、企業だけでは解決が困難な問題について国が率先して相手国の政府に対して強力な働きかけを行うなど、積極的な取り組みを政府としてどのように行っていくか、お答えをいただきたいと思います。

石原大臣政務官 アフリカ諸国からは、日本企業の投資に強い期待が寄せられております。この背景には、技術移転や雇用創出をもたらす日本らしい投資に対する高い評価があるからであります。

 こうしたアフリカ諸国の期待に応えるために、TICAD5では、貿易、投資を主要テーマとして議論いたしました。

 我が国は、TICAD5において、今後五年間でODA一・四兆円を含む最大三・二兆円の官民の取り組みを打ち出し、その中で、特に日本企業からの要望の強いインフラ整備や人材育成に重点を置いて取り組んでいく考えを示したところであります。

 我が国は、官民合同ミッションをアフリカ諸国に派遣してまいりました。また、本年一月には、安倍総理が企業等の代表とともにアフリカ三カ国を訪問しトップセールスを行ったほか、モザンビークでは、新たにビジネス環境整備に向けた官民合同対話を打ち上げることで合意したところであります。

 今後も、これらの取り組みに加え、大使館等を通じた先方政府への持続的な働きかけ等を行うことで投資環境を改善し、官民連携のもとで日本企業の進出を最大限後押ししていく考えであります。

東郷分科員 TICADでも、これから五年間で官民含めての支援をしていく、総額三・二兆円という大規模なアフリカ支援ということを約束しているわけですから、ぜひしっかりと推進していっていただきたいと思います。

 続きまして、大臣に少しお伺いしますが、ことしの本会議の外交基本所信演説で、岸田大臣は、「国際的重要性を増すアフリカに対しては、安倍総理大臣のアフリカ訪問も踏まえ、昨年のTICAD5で表明した支援策を着実に実施し、ウイン・ウインのパートナーシップ構築を目指します。」と述べられておりますが、この点について具体的にいかがな政策を持っておられるのか。また、TICAD5でも投資協定の締結促進が表明されましたが、その後、進捗状況はどのようなものになっておられるのか、簡潔にお答えをいただきたいと思います。

岸田国務大臣 まず、成長著しいアフリカの勢い、活力を我が国に取り込むということ、これは我が国の国益にとりましても大変重要だと考えています。

 御指摘のように、先般、安倍総理が、日本の総理大臣として久方ぶりにアフリカを訪問させていただきました。その際にも、アフリカ各国から、日本の支援に対する強い期待が寄せられました。

 こういった期待に応じるためにも、昨年六月、日本の横浜で開催されましたTICAD5の際に我が国が表明しましたアフリカに対する支援、インフラ整備ですとかあるいは人材育成、こういった支援を着実に実施していかなければならないと思いますが、こうした支援は、現地において雇用を創出するとか経済に活力を与えるといった効果があると同時に、日本企業の投資も促進するという形で、日本も、そしてアフリカ、現地においても、ともに成長できる、こういったものを目指している支援策であると考えています。

 そして一方、アフリカにおいては、御案内のとおり、紛争ですとかあるいは貧困、こうした課題が依然存在いたします。こうした課題に対応する際に、TICAD5の場におきましても、平和と安定の開発等の支援策を着実に実施していく、あるいは、これを毎年、閣僚会合においてフォローアップしていく、こうした連携を通じて、アフリカの質の高い成長に貢献していく、こういったことも表明いたしました。

 こうした取り組みを通じて、日本とアフリカ諸国との間にしっかりとした信頼関係をつくるということは、例えば、国連を初めとするさまざまな国際場裏においてもアフリカの発言力がどんどん高まっているわけですが、こうした国際場裏においても日本とアフリカが協力していく、こうした関係にもつながるのではないか、こんなふうに考えております。

 こういった考え方に基づきまして、先ほど御指摘いただきました所信の中では、ウイン・ウインのパートナーシップ、こういった表現を使ってアフリカ関係について述べさせていただいた次第でございます。このような方針に基づいて、ぜひ戦略的にアフリカとの関係を進めていきたいと考えています。

 もう一つ、TICAD5での投資協定の締結促進が表明された、その後の進捗状況いかんという御質問がありました。

 御指摘のとおり、TICAD5におきまして、アフリカ諸国との投資協定の締結促進を表明いたしております。

 具体的な動きですが、資源国として成長著しいモザンビークとの間では、TICAD5の機会に投資協定の署名式を実施いたしました。同協定については、昨二十五日に、今次国会に提出することにつき閣議決定をしたところです。そして、現在、我が国企業の関心が高いケニア、ガーナ、タンザニア、モロッコ、リビア等との投資協定の交渉を開始すべく準備中であります。

 引き続き、アフリカにおける資源産出国あるいはこの地域の拠点国との投資協定の締結を積極的に推進して、我が国企業のアフリカへの投資、しっかり支援をしていく所存であります。

 以上です。

東郷分科員 岸田大臣、ありがとうございました。

 最後のフロンティアと言われるアフリカ大陸でありますけれども、しっかりと日本がアフリカの信頼をかち取るために、そして、先ほど申し上げましたけれども、中国とは違う日本らしさ、こういった外交を展開していっていただきたいと思いますし、我が国の国益で考えたときに、将来、例えば国連改革であるとか、こういった中でパートナーシップをきちっと積んでいく、そういった戦略外交のあり方を考えていっていただきたいと思います。

 続きまして、インドについて少し質問をさせていただきます。

 インドは、昨年十二月、天皇陛下が訪問されました。その直後、日印議連で私もインドの方へ行ってまいりましたし、ことし一月二十五日から安倍総理がインドの独立記念日に訪印をされております。

 そこで、インドは、今急速な経済成長を背景にBRICS諸国の一角を占めておりますが、新興国としての台頭が注目される一方で、膨大な貧困層の削減やインフラ整備などの課題をまだまだ抱えているのではないかな、こんなふうに見えます。

 インドの持続的な成長を支援し、成長を通じた貧困削減に資するために、伝統的な親日国であるインドに対して、ODAは、引き続きさらなる充実を図るとともに、円借款だけではなく、無償資金協力あるいは技術協力の一層の拡充を図るべきではないか。

 また、現在、インド側の事情により、青年海外協力隊員については日本語教師の受け入れにとどまっておりますが、こうした技術協力の専門家の派遣であるとか、あるいは研修員の受け入れ、青年海外協力隊の派遣機会の増大について、さらなる工夫が必要になってくるのではないかと思います。学生交流や人的交流の拡大に向けた施策をより一層強化していくべきと思いますが、どのようにお考えになっておられるか、お答えいただきたいと思います。

石原大臣政務官 先般の日・インド首脳会談において、安倍総理からインドのシン首相に伝達したとおり、インドの発展は日本の利益であり、今後もODAを活用したインフラ整備や貧困削減などの支援を行っていく考えであります。

 御指摘のとおり、インドは、その経済発展の潜在性の大きさの一方で、国民の約三割が貧困層に属するなど、世界の貧困人口の三分の一を抱えており、インドの貧困対策はミレニアム開発目標達成の観点からも重要というふうに考えております。

 インドの持続的かつ包括的な成長を支援するにあたり、円借款だけではなくて、無償資金協力、技術協力を含めたさまざまなODAスキームを有効に活用することが重要であるというふうに考えております。いただいた御指摘を踏まえて、今後とも積極的に取り組んでまいりたいと思います。

 確かに、インドは大きな国でありますから、インフラ関係の円借款がどうしても多くなってしまうのですが、その一方で、例えば無償資金協力を通じたポリオ撲滅といったことも、六年間で大体八十三億円、年間十二億といったものを行っておりますし、また、中小企業の製造業の経営幹部の育成といったことも技術協力で行っているところであります。

 人往来の件でありますけれども、技術協力については、さきの日・インド首脳会談の結果を受け、両国間の人の交流を通じた技術協力をさらに促進することの重要性に鑑み、従来、インド側の要望で日本語教育などに限られていた青年海外協力隊の派遣を工芸品、スポーツや教育分野等へ拡大しました。

 また、シニア海外ボランティアの派遣を開始すべくインド政府と話し合いを行っているところであります。

 また、専門派遣員、研修員受け入れ人数は近年増加をしておりまして、インド側の要望を踏まえつつ、今後、積極的に対応していきたいというふうに考えております。

 人的交流の拡大については、日・インド関係を一層裾野の広いものにするために取り組むべき重要な課題であります。日本政府としては、これまで、JENESYS二・〇等の青少年交流事業の実施や、インド国民に対する短期滞在数次査証の導入決定など、人的交流の拡大に向けた取り組みを行ってきており、こうした努力をさらに強化してまいりたいというふうに考えております。

東郷分科員 御答弁いただきまして、ありがとうございました。

 インドは今成長著しいということで、世界の市場の中でも大変注目を集めている。人口も中国に次いで十二億という人口を抱えておるし、そうした中で、ただ、今インドはまださまざまな課題があります。貧困の問題、言っていました。十二億の国民の三割は一日二ドル以下で生活をしている。カーストの影響なんかもまだまだ随所で残っておるわけでありますけれども、こういった中で、しっかりと、日本企業がインドへ進出していく、投資環境を整えていく、そうした中で、世界の経済をインドも引っ張っていくような、そういう戦略的な日印の関係を築いていってほしい、こういうふうに思います。

 インドについては、ことしの五月までに総選挙が行われるのではないかということで、決まっております。今現時点で、インドの経済成長が急速に減速している、あるいは汚職の問題、こういった中で、与党が、コングレス党が大敗するのではないかというのが大方のインド国内の見方、世界的な見方であります。

 そして、シン首相も選挙後に退陣をするということを言っておりますので、そうした選挙を予測してどうこうということはなかなかお答えしにくいと思いますけれども、これから、新しいインドとのパートナーシップをきちっと、日本政府が環境をしっかりとつくっていくことが必要になってくるのではないかな、こういうふうに思います。

 次に、北朝鮮の問題について質問させていただきたいと思います。

 二月十七日、国連の人権調査委員会、マイケル・カービー氏が委員長を務めておるこの人権委員会の中で、いわゆる北朝鮮の指導部が組織的で広範かつ深刻な人権侵害を国家レベルでやっていたということを正式に認めた。大量虐殺あるいは奴隷化、また飢餓といった多数の人道に対する犯罪、そして、この中でも、我が国を含め拉致の問題といったものが、国家レベルの犯罪として指導者が認め、そして、こういった世界に類を見ない非情な犯罪が今もなお行われている、こういったことを言って、ICC、国際法廷で裁くべきだということを勧告しております。

 そうした中で、国連の調査委員会と日本政府はこれからどういった形で連携していくのか。そして今、日韓関係、日中関係も非常に最悪な関係だというようなことが指摘をされておる中で、韓国、中国に、こうした人権委員会の報告について一緒に共有する、あるいはどういうふうにコミットしていくのか、こういった点について政府のお考えをお聞きしたいと思います。

岸田国務大臣 まず、拉致問題につきましては、国家の主権にかかわる問題であり、また国民の生命財産にもかかわる重大な課題であり、国の責任において取り組まなければいけない最重要課題だと認識をしています。また、御家族の高齢化等を考えますときに、ぜひ現政権下で全面解決に向けて全力で取り組まなければならない、こうした認識にあります。

 そして、御指摘の、北朝鮮における人権に関する国連調査委員会、COIの最終報告書ですが、これも、内容としまして、拉致問題を含む北朝鮮の人権状況の深刻さを詳しく述べており、我が国としては、こうした報告書をまず歓迎したいと考えています。

 そして、この報告書は、やはり北朝鮮に対する大変強いメッセージです。このメッセージを関係国とともにしっかりと北朝鮮に伝えていく、こういった努力をしていかなければならないと思いますし、また、この報告書につきましては、フォローアップをするためにアジア等に拠点をつくるといった形で努力をしていかなければいけない、こういった議論が行われています。報告書のフォローアップという点においても、これは関係国とぜひしっかり連携していかなければならない、こういった問題意識を持っています。

 そして、その際に、御指摘のように、中国、韓国、こういった国々との連携が大変重要だと考えています。東アジアの安定を考えた場合に、韓国、日本、さらには米国、こうした三カ国の連携が重要だということ、これは言うまでもありませんし、また、北朝鮮との間で歴史的な関係が存在し、六者会合の議長国でもあります中国の役割が大変重要だというのも強く感じるところであります。

 そういったことから、我が国としましても、中国あるいは韓国、こういった国々との連携のもとに北朝鮮問題に取り組んでいかなければいけない、こういった点は強く意識するところであります。現実、中国、韓国との間には大変難しい問題が存在し、難しい局面にあるわけでありますが、こうした大切な隣国関係につきましては、北朝鮮問題を初め具体的な協力関係を積み上げることによって、ぜひ政治の高いレベルでの対話にもつなげ、こうした大切な二国間関係全体をしっかりマネージしていきたいと考えています。

東郷分科員 大臣、御答弁ありがとうございました。

 この北朝鮮との問題、拉致の問題というのは、我が国の本当に最大の懸案事項であります。そして今回、こうした調査報告が出てまいりました。今大臣がおっしゃったように、御家族の高齢化、もう時間がないんです。そして、安倍政権のうちに解決するということを総理自身が何度も何度も言っている。そうした中で、今回、解決に向けた最大のある意味チャンスと捉えて、しっかりと、毅然とした北朝鮮に対する制裁あるいは解決に向けたアプローチというのをしていっていただきたいと思います。

 私も、韓国にも昨年行ってまいりました。そしてまた、唯一脱北者であります韓国の国会議員で趙明哲氏という方がいますが、その方ともいろいろお話をして、北朝鮮の収容所の問題、さまざま聞いております。本当に筆舌に尽くしがたいような問題であります。そうした中で、この間、北朝鮮の内政の混乱。張成沢氏を初め、親族七名を処刑する、子供までですよ、幼児の孫まで。国連の、十八歳以下の子供に対する死刑は禁じております。

 こういったことが今も起こっているわけですから、こういった中で、日本はもちろんでありますけれども、国連を挙げてしっかりと北朝鮮の問題について解決をしていく、そのきっかけとなることを切に願って、ちょうど時間になりましたので、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

金田主査 これにて東郷哲也君の質疑は終了いたしました。

 次に、阪口直人君。

阪口分科員 日本維新の会の阪口直人でございます。

 岸田大臣とはここ数日で三回目の質疑ということでございますが、どうぞよろしくお願いいたします。

 きょうは、日本の外交の課題として、グローバルな利益、また普遍的な価値にどのように貢献するかについて質問をしたいと思います。

 ODA白書において、岸田大臣は、自由や民主主義、人権、法の支配などを共有できる国を支援する、このようにおっしゃっておりますが、私は、もう一歩踏み込んで、そういった国をふやしていくということに貢献する、これが、日本が国際社会に提供すべき価値を示すことにもつながっていくと思います。

 私は、地球益、人類益の追求と、そして国益を守っていく、これをいかに高いレベルで両立させるかということが日本の外交の腕の見せどころであり、また、大臣にとっても大きなテーマなのではないかと思います。このような価値を追求することは、また日本の安全保障にもつながってくると思っております。

 ところが、個別に事例を見ていくと、特に、積極的に取り組むと先ほど表明をされた人権外交という点でどうしても理解できない点もありまして、きょうはその点について質問させていただきたいと思います。

 まず、スリランカの事例を挙げさせていただきます。

 二〇〇九年、二十六年にわたり続いたタミール・イーラム解放の虎、LTTEとの大変に過酷な内戦が終結をしました。しかし、この内戦の末期、特に二〇〇九年の一月から五月の数カ月間に、国連の専門家の報告書によれば、最大四万人の民間人が死亡したとされております。特に、三十万人とも言われるタミール人の避難民に対して、病院への攻撃を含む無差別砲撃が行われたことなどは、人道的な見地からも看過できないことであると思っております。

 そこで、国連の専門家委員会やヒューマン・ライツ・ウオッチ、アムネスティ・インターナショナルなどの人権団体が、政府軍とLTTEの双方が戦争犯罪など重大な人権侵害を行ったと報告しておりますが、スリランカ政府が法の裁きやアカウンタビリティーの要望に全く対応しないという事態を受けて、昨年三月、国連の人権理事会においては、スリランカにおける和解とアカウンタビリティー、説明責任の促進に関する決議を行いました。しかし、日本はこの決議に対しては棄権という判断をいたしました。

 私も、これは人権外交という見地から問題があるのではないかと思いまして、賛成した国、また棄権、反対した国を調べてみたんですが、賛成した国の多くは、日本が価値を共有するとしてともに行動している民主主義国であり、一方で、棄権、反対した国の多くは、独裁的であったり、あるいは人権問題を抱えた国と言えるのではないかと私は感じております。

 これは、民主主義、人権、法の支配、そして自由を掲げる日本の外交方針とは著しくかけ離れた対応に思われてしまうんですが、まず、反対した理由は何だったのか、お伺いをしたいと思います。

岸田国務大臣 御指摘のスリランカに対する我が国の外交姿勢ですが、いわゆる国民和解の進展ですとか、あるいは人道状況の改善のためには、まずは、スリランカ自身の自発的な取り組みを促すことが重要である、これが基本的な我が国の考え方であります。

 長年にわたり、スリランカの和平につきましては、我が国は関与してきました。スリランカがぜひ前向きな措置をとるよう働きかけをしてきた、これが我が国の外交姿勢であります。

 御指摘の人権理事会における決議ですが、この決議、人権理事会の直前にも、我が国は、日・スリランカ首脳会談を実施いたしました。安倍総理から働きかけをさせていただきまして、スリランカ大統領より、国民和解に向けた意義ある措置の実施が約束される、こういったこともありました。

 そして、その上で、決議そのものに対する我が国の態度ですが、我が国としては、こうしたスリランカの自発的な取り組みを促すという方針でいる中にありまして、その決議案につきましては、スリランカの取り組みを評価するような文言がなく、バランスを欠いたものではないか、こういった評価をしたところであります。こういった考え方に基づいて、棄権という対応をとらせていただいた、こういった次第であります。

 我が国のこうした取り組み、考え方につきましては、スリランカから前向きな動きも得られていると認識をしています。

 今御紹介させていただきました昨年三月の日・スリランカ首脳会談において、スリランカ大統領より対応が約束されたわけですが、その約束されたとおり、スリランカ政府は、昨年九月に、内戦の主戦場であった北部州における議会選挙を実施した、こういった結果にもつながっていると考えております。

 我が国としましては、我が国が推進する自由、民主主義、基本的人権、法の支配を重視する外交、こうした外交と、今我が国がスリランカにとっている対応、これは整合性があると認識をしておりますが、ぜひ、今後も我が国として人権状況の改善に向けて積極的に取り組んでいく、こうした方針は大事にしていきたいと考えております。

阪口分科員 長年の紛争を経験した国が平和そして復興していく上で、国際社会が求める百点満点の対応ができるとは限らないと思います。

 ただ、スリランカに対しては、日本は最大の援助国の一つでもあり、また、私も大変に印象的な言葉として、サンフランシスコ講和条約の際に、スリランカの当時のジャヤワルダナ大蔵大臣が、恨みは恨みによって報いるものではなく、慈悲によって報いるべきである、そういった感動的な演説を行って、対日賠償請求に沸き立つほかの国々、ほかの仏教国のアジアの国々に対して大変に崇高な意思を示すことによって、日本にとっても大変にありがたい存在であったという歴史があるかと思います。

 こういったことを考えると、スリランカの今後の和平、平和ということを考えたときに、今大臣がおっしゃられたようなさまざまな取り組みを評価することと同時に、しかし、人道上看過できない過去の人権侵害については、やはり正義の回復という意味でも、しっかりとした調査を行い、そしてしかるべき対応をとること、これを求めていくことも大事であると思います。

 この点については、ぜひ日本外交の価値を示すという点では留意をいただきたいと思います。

 また一方で、私は、外交というのはトータルの判断が大変必要だと思っています。

 スリランカにおいては、現在、中国の存在が大変に大きなものになっております。もともとアメリカは、対テロリスト戦略の一環として、テロ組織と言われていたタミール・イーラム解放の虎、LTTEに対峙するスリランカ政府を支援していました。ところが、民間人への攻撃など人権侵害を理由にアメリカを初め西側諸国がスリランカを孤立させてしまったところに中国が関与を強めて、そして厳しい条件をつけずに援助を実施したことで中国が接近をして、インド洋におけるパワーバランスにおいて中国が優位に立っている、こういった状況がございます。

 私は、先ほど大臣が答弁なさいましたが、本音を言うと、中国と接近する政府を少しでもつなぎとめておくために、棄権というような判断はできない、そんな考えもあったのではないかという思いをどうしても持ってしまうんですが、そのあたりはいかがでしょうか。

岸田国務大臣 まず、スリランカと中国、この二つの国の関係ですが、良好な二国間関係が存在し、その経済的な結びつきも大変緊密であるというふうに認識をしております。

 ただ、日本自身としましても、スリランカとの関係は大変重要な二国間関係であると認識をしています。スリランカは、インド洋のシーレーンの要衝に位置しています。こうした地政学的な重要性を有しておりますし、近年、経済的な発展も進んでいます。こうした経済的な潜在性を考えましても、大きな関心が高まっていますし、日本にとっても大切ではないかと思っています。

 また、先ほど委員の方からも御指摘がありました、歴史的な友好関係が日本とスリランカの間には存在いたします。このように、政治経済あるいは経済協力、平和の定着あるいは支援、幅広い分野におきまして協力関係がスリランカとの間にありますし、大変重要な国だと認識をしています。

 ぜひ我が国の立場からも、このスリランカの関係はしっかり大事にし、強化していかなければいけない、このように考えます。

阪口分科員 今私が申し上げたかったのは、確かに、国際関係におけるさまざまな利害関係はあるでしょう、しかし、日本の外交の中心に据えるべき価値として、やはり人権、人道的な見地で対応するということは必要だと思います。

 ことし三月に、再び国連の人権決議が採択される予定と聞いております。内戦が国際社会の目が届かないところで繰り広げられた上、戦争犯罪も追及されていないとして、イギリスのキャメロン首相が、国連による調査を支援する、このような声明を発表するなど、国連による調査を求める声が国際社会で広がっております。

 昨年は棄権という判断でありましたが、先ほども、改めて外務大臣から、人権外交に力を入れていくという言葉を聞きました。このあたり、昨年とは違った考え方を表明する、そういったお考えはいかがでしょうか。

岸田国務大臣 言うまでもなく、我が国が外交を進めるに当たって、自由とか民主主義とか基本的人権ですとか、さらには法の支配ですとか、こうした基本的な価値観は大事にしていかなければならないと存じます。

 スリランカに対する今日までの我が国の外交のありよう、そして考え方は、先ほど来申し上げてきたとおりであります。

 そして、今後の決議案に対しての態度でありますが、これは、まずは、具体的な文言はしっかり確認しなければなりません。そして、その上で、やはり、スリランカの取り組みを効果的に引き出すためにはどうするべきなのか、こういった観点で我が国の対応を考えていきたいと存じます。まだ文言が出てくる以前の段階ですので、今申し上げましたような考えで臨んでいきたいと考えます。

阪口分科員 私は、安倍政権の外交方針というのは、非常に国家主義的というか、個人の権利よりも国家の権力を重視するという点が大変色濃いということについては懸念をいたしております。経済を重視する、これは大変に大事な視点でありますが、未来に対しても持続可能でなくてはならない、そして、やはり、紛争が起こる可能性、また個人の人権が侵害されるといった状況を極力なくしていく、そういった強い意思をもっと示していくべきだと思っています。

 その中で、本当に、穏健保守を代表される岸田大臣に私は個人的には大変に期待と信頼をいたしておりまして、弱い立場の方々に対する配慮を行う、そういった外交をぜひ行っていただきたいと思います。

 これは答えにくい質問かもしれませんが、私も大臣と話していると大変優しい気持ちというのが伝わってきて、何かすごく答えにくいことを質問しているなと思うことが多いんですが、例えば、安倍総理と基本的な外交方針について、日本が世界に、国際社会に提供できる価値とは何かということを徹底的に議論したというようなことはあるんでしょうか。もしあれば、その点について少し伺いたいと思います。

岸田国務大臣 安倍総理と私、ともに、安倍内閣の一員として外交に責任を持つ立場であります。徹底的に話し合ったのかという御質問ですが、徹底的というのはどの程度かという問題はあるかもしれませんが、もちろん、さまざまな場で外交について意見交換をしております。

 そして、安倍総理と私は、外交を進めるに当たって、地球儀を俯瞰するような外交を進めなければいけない、ぜひしっかりとしたバランス感覚を持ちながら外交を進めなければならない、こういった点ではまず一致しているわけです。

 そして、その地球儀を俯瞰する外交を進めるに当たって、私自身としては、外交の三本柱ということで、日米同盟の強化、近隣諸国との外交推進、そして経済外交の推進、この三つの柱を掲げ、まずは日本の国益をしっかり守る。しかし、それだけでは日本の外交は不十分である。やはり、グローバルな課題、地球規模の課題、こういったものにしっかり日本も汗をかいてこそ存在感を示すことができる。こういった考え方に基づいて外交を進めているわけですが、この辺につきましても、安倍総理も十分理解し、賛成してくれていると認識をしております。

 こうした基本的な考え方においては、総理も私もしっかり一致をしておりますし、そのために、それぞれ役割分担をしながら、各国を回り、さまざまな課題に取り組む、こうした方針であります。議論をしながら、今申し上げましたような体制で、安倍内閣として外交を進めているという次第であります。

阪口分科員 自分の言葉でお答えいただいたことに大変感謝をしたいと思います。

 ミャンマーにおける事例について少しお聞きしたいと思います。

 人権状況を調べるためにミャンマーを訪問されていた国連のキンタナ特別報告者は、二月十九日にヤンゴンで声明を出して、西部ラカイン州で少数派イスラム教徒のロヒンギャ族四十人以上が殺害された疑惑について、国連人権理事会としてミャンマー政府の協力を得て信頼できる調査を行うように求める考えを表明しました。

 キンタナ氏は、子供の虐殺、女性に対する性的暴力などの申し立てがあったと指摘して、これまでのところ、国内調査においては、こうした深刻な申し立てにちゃんと取り組んでいないということで、ミャンマー政府の対応を非難しております。

 このロヒンギャ族については、人権にかかわるさまざまな問題がこれまでも指摘されていますが、この国連の報告書に対して、日本政府はこれまで何らかの対応をされたのでしょうか、あるいは今後どのような対応をしていくのか、大臣のお考えを伺いたいと思います。

岸田国務大臣 ミャンマーにおきましては、政治犯の釈放ですとか、あるいは事前検閲の廃止など、人権分野において進展を見ることはできると思っています。

 ただ、一方で、御指摘のような、さまざまな克服すべき課題は残っている、このように認識をしています。特に、ラカイン州における、ロヒンジャを含む住民同士が衝突し、死傷者や避難民が発生している事態については、人道的な観点から、憂慮すべき事態だと認識をいたします。

 我が国としましては、さまざまなレベルで、この暴力の停止、事態の収拾、国民の和解、こういったものに向けた取り組みをミャンマー側に働きかけております。

 私も、昨年九月ですか、ニューヨークでの国連総会の際に、ワナ・マウン・ルイン・ミャンマー外務大臣と直接お会いをさせていただきまして、この問題につきましても、問題を提起させていただいたところです。

 ぜひ、我が国政府としましては、ラカイン州における平和と安定に向けた取り組みを後押しする観点から、治安状況も注視しつつ、国際機関との連携を進め、そして、必要な人道的支援、これを、今日までも進めてきましたが、引き続きしっかりと進めていきたいと考えております。

阪口分科員 ロヒンギャの問題、ミャンマー国内においても、あるいは国際社会においても大変にセンシティブな問題だと思います。

 ミャンマー政府は、この殺害に対して、自分たちも調査をしているんだ、ですから、外国が干渉すべきではないというのが基本的な立場であると思います。

 ただ、今大臣もおっしゃったように、やはり、信頼性を確保する上では、第三者機関も入って調査をするということが私は大事であると思っておりますし、その上で、国連というのは一定の役割を果たし得る機関だと思っています。

 ぜひ、きょうの大きなテーマですが、人道的な見地から、どのような対応をするのが最も弱い立場にある現地の方々にとってよいのかということをしっかりと踏まえた対応を行っていただきたいと思っております。

 最後の質問なんですが、いわゆる補習授業校についてお伺いをしたいと思います。

 現在、義務教育年齢相当の子女の数が、昨年四月の段階で約七万一千人いるとされています。そのうち三万九千人が日本人学校あるいは補習授業校で学んでいると伺っております。

 憲法二十六条においては、教育の機会均等、そして義務教育無償の考えに立って、政府としても、現地の日本人会などが運営する日本人学校そして補習授業校を支援しているということですね。

 ところが、この予算がカットされていて、運営が非常に難しい補習授業校が多いということをよく聞きます。私も、途上国のさまざまな問題に特に関心を持っているものですから、現地で日本大使館の方々、またJICAの方々などにお話をざっくばらんに伺ったときに、この補習校の問題、特に、これは基本的に日本人会が運営しているということで、ボランティアの父母の方々によって実質的に運営されている。その上で、特に、公的な仕事をしていらっしゃる方に対する期待、負担が大きいということをよく聞くわけでございます。また、先生を雇用する上の予算なども乏しく、十分なレベルの教育を担保することが難しい、そういった補習校も多いと伺います。

 積極的に海外に出て、そして経済、社会に貢献をする、そういった日本人をふやすこと、これは成長戦略にもつながると思いますが、子供の教育を理由に海外赴任をちゅうちょするといった状況になると、こういった目的も果たすことが難しくなってくると思います。

 私は、決して大きな予算ではありません、この補習校また日本人学校などを充実させるためのしっかりとした取り組みをしていく必要があると思いますが、この点について大臣のお考えを伺いたいと思います。

岸田国務大臣 日本人学校あるいは補習校につきましては、委員が今御指摘になられましたように、大きな意義が存在すると認識をしておりますし、政府としましては、海外に居住する義務教育年齢相当の子女が可能な限り国内に近い教育を受けられるよう、在外教育施設を充実させるとか、あるいは父母の教育負担を軽減するとか、こういった努力を続けていかなければならないと考えます。そして、そのために、大変厳しい財政状況の中でありますが、可能な限り支援を行っていかなければならないと考えています。

 そして、御指摘のように、財政が大変厳しい中ですが、平成二十六年度の外務省の予算ということで申し上げさせていただきますと、二十五年度がトータルで二十億九千六百万でしたが、二十六年度は二十五億二千八百万ということで増額予算をお願いしている次第であります。

 引き続き厳しい財政状況ではありますが、御指摘の点の重要性もしっかり踏まえながら、予算面におきましても引き続き努力をしていきたいと、外務省としては考えているところでございます。

 また引き続きましての御理解とお力添えをお願いしたいと存じます。

阪口分科員 予算額がふえているということについては大変に頼もしく思います。ただ、円安の影響もあって、実際にはふえている分ほど中身が充実するかというと若干微妙なところもあるかと思いますが、これは、減少傾向が、今後はふやしていくという、そういった新たな方向に向かっていると考えてよろしいんでしょうか。

岸田国務大臣 予算、この数字的な面につきましては、やはり政府全体として、財務省ともしっかり協議した上でないと、明確なことを申し上げるのは難しいと存じます。ただ、気持ちとして、こういった分野の重要性は強く認識をするところであります。

 ぜひ、そういった思いを持ちながら、厳しい財政の中で何ができるのか、しっかり努力をしていきたいと考えています。

阪口分科員 終わります。どうもありがとうございました。

金田主査 これにて阪口直人君の質疑は終了いたしました。

 次に、牧島かれん君。

牧島分科員 自民党の牧島かれんです。

 きょうは、岸田外務大臣そして後藤田副大臣初め多くの皆様の御協力により質問に立たせていただけること、ありがたく思います。よろしくお願いいたします。

 きょうは宇宙政策について質問させていただきたいと思います。

 日本の宇宙政策、大変重要な分野でありますが、これから長期的に、そして継続的に、また包括的に取り組んでいかなければならない日本の重要な政策の一つと私は考えております。通信・放送、気象などの分野でも人工衛星は活用されておりますので、私たち国民一人一人の豊かな生活にも貢献をしております。

 さらに、小惑星探査機「はやぶさ」が幾多の困難を乗り越えて地球に帰還をしてきた、そのニュースは私たちを感動させるものでありました。また、小惑星イトカワから持ち帰った微粒子が太陽系誕生の秘話を私たちに説いてくれるのではないかということも、宇宙への大きな夢を子供たちにも抱かせてくれたものだったと思っております。

 そして、昨年九月十四日には、新型ロケット、イプシロン初号機の打ち上げに成功いたしました。発射の十九秒前に中止になるというようなトラブルも乗り越えて、日本にとっては十二年ぶりに一つのロケットが打ち上げられていく、その成功体験を持つことができたわけです。

 昨年四月二十四日の宇宙政策委員会で、安倍総理は、私は本年を宇宙利用元年としたいと思います、今後の宇宙政策の要諦は産業振興及び日米協力・安全保障であります、このためには、従来の研究開発重視から、出口を見据えた利用拡大重視への転換、自前で宇宙活動できる能力の保持を行わなければなりませんと話されています。

 この総理の御発言について質問をさせていただきます。利用の拡大そして自律的な確保をしていくというこの能力についてどのようにお考えなのか、お聞かせください。

後藤田副大臣 牧島委員におかれましては、なかなか一般的に関心を持っていただかない分野、宇宙について大変御造詣が深く、大変感謝をしております。

 なかなか一般的には日々宇宙は見られないんですが、我々の生活には密接に関係する、今委員おっしゃったような、いろいろな宇宙利用による生活の向上がなされているところでありますし、一方で、先ほどお話あったように、安全保障の分野において、陸海空、そしてサイバー、そして五番目に宇宙ということで、安全保障上においても大変重要だという認識のとおりでございます。

 我々内閣府の宇宙政策に関して申し上げますと、今おっしゃったように、宇宙利用の拡大というのは、気象予報だとか、通信・放送、カーナビ等々、新たなサービス、製品、これが創出されておりますし、また、宇宙利用によりまして、産業、生活、行政の効率化、また広義の安全保障の確保及び経済発展を実現するというふうに考えております。

 具体的に宇宙産業につきまして若干申し上げますと、一般社団法人の日本航空宇宙工業会の集計によりますと、二十三年度の産業規模は今総額七兆七千七百億円という規模になっております。そのうちの一部でございますが、宇宙機器産業は二千六百五十億、その中で内需が約九三%というのが今の現状でございます。一方、現在の宇宙利用産業の中心は通信・放送、委員おっしゃったとおりでございますが、日本企業が有する放送・通信衛星の二十基中、日本製は一基のみ、こういう現状認識をさせていただいているところでございます。

 そういう意味で、委員おっしゃった自律性の確保という意味では、自給自足をするということもそうですが、世界に打っていかなきゃいけないという状況でございます。

 今のところ、JAXAの衛星につきましては自前でやらせていただいておりますが、スカパーだとかBSATだとか、民間衛星につきましては、実は国産が一基のみという状況でございますので、やはりそういった意味で内需、いわゆる日本の衛星会社の受注はもちろんやらなきゃいけませんし、外に向けての受注、開発、こういうことをやって、宇宙産業の発展にしっかりと尽力してまいりたいと思います。

牧島分科員 ありがとうございます。

 国産の拡大、そして日本から世界へというお話をしていただきました。

 自律的な宇宙能力ということを考えますと、射場があること、そして国産ロケット、そして国産衛星を持っているというふうに定義づけることもできると思います。

 自国の衛星を保有する国は五十カ国以上に上っておりますけれども、人工衛星打ち上げ国ということを考えますと、一九五七年ソ連、五八年アメリカ、六五年フランス、七〇年日本そして中国、七一年イギリス、八〇年インド、八八年イスラエル、二〇〇九年イラン、二〇一二年北朝鮮、二〇一三年韓国となっております。

 この中でも、自国の領域から国産ロケットで国産の衛星を打ち上げることができる国というのは十カ国になります。

 日本国内では、平成二十年八月に宇宙基本法が施行されています。これは、宇宙の平和的利用、国民生活の向上等、産業の振興、人類社会の発展、国際協力等、そして環境への配慮の六つの基本理念に基づくものと理解しております。

 ここで質問させていただきたいのは、日本が考えている宇宙の平和的利用というのはどういう概念になるのか、解釈をお聞かせください。

西本政府参考人 我が国は、昭和四十二年に我が国が批准いたしました宇宙条約におきまして、宇宙空間は専ら平和目的のために利用されるべきということが規定されてございます。

 宇宙基本法の第二条におきまして、宇宙の平和的利用ということが規定されておりますけれども、これは、宇宙条約等の宇宙開発利用に関する条約その他の国際約束の定めるところに従って、日本国憲法の平和主義の理念にのっとって、宇宙開発利用を行うということにしているわけでございます。

 政府といたしましては、この宇宙基本法を踏まえまして、宇宙の平和的利用を推進するために必要となる施策を実施してまいる所存でございます。

牧島分科員 国際上の、宇宙をどのように利用していくのか、平和利用とは何なのかという概念は、これからまだまだ議論しなければならない場面があると思いますし、日本の信念にのっとって発言をしていく必要もあるのだろうというふうに理解をさせていただきました。

 多様な宇宙開発利用の全ての部門において圧倒的な力を持っているのはやはりアメリカで、それにロシアと中国が続いているというふうに分析できるかと思います。能動的な活動国がこのように限られているために、国際法を宇宙に関して制定していくということが事実上難しいと見ることもできます。

 唯一の公式の多国間軍備管理・軍縮交渉のための国際組織であります軍縮会議でも、一九九四年まではアドホックの宇宙の軍備競争防止委員会が開催されていましたけれども、アメリカの反対などにより、再設置されないまま現在に至ってしまっています。

 国連では、一九七九年の月協定以来、新たな条約は制定されていません。なおかつ、この月協定も、十五カ国が締約国になっていますが、そのうち、積極的に宇宙活動に関与している国、フランスとインドが、署名はしましたけれども、未批准のままというのが現状です。

 つまり、条約作成は大変難しいと考えざるを得ないのではないかと思います。

 そこで、御所見をお聞かせください。

 宇宙の行動準則は、国連総会での決議ですとか宇宙機関間のガイドラインなどのいわゆるソフトローによってなされている現状を、日本としてはどのように見ていらっしゃるでしょうか。

新美政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに今委員から御指摘ございましたとおり、宇宙に関するルールづくりでございますけれども、国連では、一九七九年に採択された月協定を最後に、新たな条約は作成されておりません。

 その前に、いわゆる宇宙条約、救助返還協定、損害責任条約、宇宙物体登録条約、そして月協定と来ているわけでございますけれども、それ以降、国連の宇宙空間平和利用委員会といったような多国間協議の場で合意形成をしようとしているわけですけれども、ただ、法的な拘束力を有する新たな条約の作成というのは困難な状況になっているわけでございます。

 この背景には、昔、このいわゆる五条約が議論された当時と比べて、今委員御自身からの御説明がございましたけれども、宇宙に衛星を自国で持っている国がもう五十カ国にもなっている、つまり、宇宙を利用する国というのが非常にふえている、そして、利害関係が非常に錯綜しているというようなことがあると思います。

 他方、まさにそうであるからゆえに、宇宙利用国の増加とか技術の進歩、あるいは民間企業による宇宙活動とか、新しい状況に対応するために宇宙空間利用に関する国際的なルールづくりが必要になっているということでございまして、まさに、そういう状況で、ある意味で現実的な対応策として、法的拘束力は伴わないけれども、いわゆるソフトローという形で宇宙にかかわる諸問題を対処するということは日本としても非常に重要だと考えておりますし、これはEU等を中心としましてそういうソフトローづくりの議論が進んでおりますが、日本としても積極的にその議論に参加していきたいと考えております。

牧島分科員 ありがとうございます。

 関連する国々はふえてきておりますので、国際関係が錯綜し、だからこそルールをつくっていかなければならない、日本もリーダーシップを発揮していくのだという御答弁をいただき、ありがたく思います。

 国連の宇宙空間平和利用委員会、COPUOSの加盟国でいいますと、七十四カ国と増加しております。これだけの国の中でコンセンサスを得ていくというのはやはり難しいだろうと思います。なので、ソフトローが政策的な選択肢として選ばれている現実があります。

 日本では、昨年一月二十五日、宇宙開発戦略本部で決定した国家戦略としての宇宙基本計画では、宇宙外交の推進として、二国間関係の強化と多国間協力の着実な推進が位置づけられています。さらに、環境への配慮として、国際的な対話の推進、スペースデブリ低減ガイドライン、そして宇宙状況監視、SSA、デブリ除去技術開発を挙げています。

 そこで、まずはスペースデブリに関する日本の考え方をお聞かせください。

後藤田副大臣 委員御指摘のように、運用を終えた人工衛星と、地球の周りを周回するスペースデブリ、宇宙ごみでございます、その総数は年々増加しております。

 高速で周回するものでございますから、秒速八キロ、大体そのぐらいの速さだそうでございます。やはり、人工衛星に衝突すると大きな被害になるおそれがある、こういう認識を各国持っております。

 今委員御指摘のSSA、宇宙状況監視の分野におきます日米の協力、国際的枠組みへの参加、これによる国際貢献が大変重要だと思っておりますし、同時に、それに合わせた我が国政府全体のSSA体制の構築が重要だ、このように思っております。

 最近では、二〇〇七年の中国の破壊実験で急増いたしまして、十センチ以上のものだけで二万個以上、これは各国宇宙活動にとりまして深刻な脅威となっておりまして、その後、さらに二〇〇九年の衝突事故でまた大変多くのデブリがふえたという状況でございます。

 そういう中で、アメリカはいろいろな知見を生かして我が国にもいろいろ警告をしていただいたり、これは年に百回ぐらいいろいろな警告をしていて、一方、裏返せば、全部アメリカに知られているということでもあるわけでございます。

 やはり、我々としては、そのような中で、宇宙基本計画に基づきまして、委員御指摘の国連等における国際規範づくりへの参加、これも積極的にやってまいりたいと思いますし、同時に、デブリ除去技術、これをやはり、平和的利用という、先ほどの先生の御指摘のとおり、その貢献を日本が果たしていく。今、JAXAでそのような研究も進められているところでございまして、政府といたしましては、内閣府、防衛省、そして文部科学省と連携しながら、そういった技術開発につきましても進めているところでございます。

牧島分科員 ありがとうございます。

 SSA体制も本当に重要な国際的な枠組みを必要としている分野だと思います。

 国際社会は、やはり、宇宙の安全、そして環境保護という観点からルールをつくっていかなければならないという思いは共通認識として持っているのではないかと考えます。なので、行動規範をつくっていかなければならない、ガイドラインをつくっていかなければならない、意図的な衛星破壊は差し控えるように促すということにもつながってくるはずです。

 今、後藤田副大臣に言っていただきましたとおり、一九九六年、日本はNASAに次いで二番目にデブリを低減する施策というものをつくっていますので、この分野は日本も存在感を示すことができる分野だと考えます。

 宇宙での行動の透明化を図り、衝突事故を防ぐための情報提供、そして通報制度、そうした観点からのSSA、宇宙は、陸海空、サイバー、そして宇宙とつながっていく安全保障上も重要な場所であります。昨年十二月十七日に閣議決定された国家安全保障戦略においても、「宇宙空間の安定的利用を図ることは、国民生活や経済にとって必要不可欠であるのみならず、国家安全保障においても重要である。」と記されています。

 そこで、宇宙に係る外交政策について、バイまたマルチ、どのような対話や国際協力がなされているのか、外務大臣からお示しいただければありがたいです。

岸田国務大臣 まず、先ほど来、委員の質疑を聞いておりまして思い出したんですが、私はかつて福田内閣で内閣府特命担当大臣をやっておりましたが、その際に、宇宙基本法に基づいて、政府の体制を変えなければいけない、そして宇宙開発担当大臣をつくらなければいけないということで、我が国初代宇宙開発担当大臣に任命されたことがありました。今、お話を聞きながら、大変懐かしくその当時を思い返しておったところでございます。

 そして、我が国の外交における取り組みですが、御指摘のように、昨年末、我が国としましては、国家安全保障戦略、初めて我が国としてこうした外交・安全保障政策の基本方針を策定したわけでありますが、その中に、宇宙空間の安定利用、これが重要であるということを明記いたしました。そして、そうした考え方に基づいて、外務省としても、二国間あるいは多国間、こうした対話を続けているところです。

 そして、二国間においては、やはり主に米国との間の対話ということですが、ちょうどきょうも、東京におきまして、安全保障分野における日米宇宙協議、今現在協議が行われている、こういった状況の中にあります。

 また、多国間の協議、対話ということにつきましても、EUが提案した宇宙活動に対する国際行動規範の策定に向けた議論、我が国は積極的に参加しておりますし、また、国連宇宙空間平和利用委員会、こうした委員会におきましても、長期的に持続可能な宇宙活動を担保するためのルールづくりに積極的に貢献をしているところであります。

 このように、二国間あるいは多国間、さまざまな切り口でこうした対話にこれからも積極的に参加していきたいと考えております。

牧島分科員 ありがとうございます。

 初代の宇宙開発担当大臣の岸田外務大臣に御質問できるというのは本当に光栄なことだと思っております。引き続きお願いを申し上げたいと思います。

 今まさに進行中の日米対話の現状もお示しをいただきました。多国間でありますと、今大臣からお示しいただきましたJAXAの堀川参与、外務省の参与でもあられますが、現在、COPUOSの議長を務めていらっしゃいます。任期は二〇一四年六月までありますので、この期間において、日本が多国間での議論のリーダーシップを発揮する場面も出てくるのではないかと考えます。

 また、三十五カ国・地域・機関が参加する国際宇宙探査フォーラムが本年一月九日に開催されましたときは、日本を代表して下村博文文部科学大臣が御出席をされました。ここでは、二〇一六年または二〇一七年の次の会合を目指すというお話がなされて、その開催は日本で行うということも表明がなされております。日本のプレゼンスを高めるチャンスと捉えております。

 二〇一二年、日本は、EUが提案します衛星衝突及びスペースデブリのリスク軽減、ASAT実験及びその行為の抑制などに関する、宇宙活動に関する国際行動規範の作成に向けた議論に積極的に参加をすると表明いたしました。この行動規範に関する多国間会合に参加し、タイ、インドネシア、マレーシア、ベトナムなどのASEAN諸国に対しても議論に参加するよう促しています。

 この国際行動規範の重要性、日本が果たしている役割について、いま一度御所見をお聞かせください。

岸田国務大臣 先ほど申し上げましたように、国家安全保障戦略に宇宙空間の安定利用が重要だということが明記されております。外務省としましても、引き続きまして、こうしたルールづくりに積極的に関与していきたいと考えております。

 そして、先ほど来の質疑の中にも出ておりました、宇宙利用国は増加をしています。自前で衛星を持つ国、五十カ国、あるいは自前で打ち上げられる国、十カ国、さらには中国の衛星破壊実験の話も出ておりました。こうした状況の中にありますから、やはり宇宙空間の混雑化は進んでおります。また、宇宙デブリの増加も指摘をされています。

 ぜひ、持続的かつ安定的な宇宙空間の利用を妨げるリスクにしっかり対応していかなければならない、こういった考え方に基づきまして、こうした国際規範にも我が国として積極的に関与しているという次第であります。

 宇宙活動に関する国際行動規範、二〇〇八年以来、EUの提案によって検討が進められておりますが、我が国も積極的に参加をしております。同規範は、宇宙物体の破壊の自制あるいは衛星衝突を回避するための通報・協議メカニズム等が盛り込まれております。宇宙利用国間の透明性の向上、信頼醸成、こういったものに貢献し得るものと評価をしております。

 ぜひ、早期作成に向けて、引き続き努力をしていきたいと考えています。

牧島分科員 早期作成に向けてという御答弁をいただきました。持続的、安定的に宇宙を利用するために、やはり行動規範が重要であると私も考えています。

 宇宙条約と行動規範を比較いたしますと、行動規範の方は法的拘束力はありませんが、例えば、今大臣からお話があったスペースデブリについては、国連デブリ低減ガイドラインを遵守するよう政治的な義務を記載する、そうすれば環境保護についてそれぞれの国がやらなければならないことも決まってくるというふうに考えます。ここから安全な活動を重視するという精神が読み取れるところなんです。

 御質問させていただきたいのは、この行動規範案では、軍事、民生、双方を含むことになるのか、外務省として、これまでの議論を踏まえての分析をお聞かせください。

新美政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御説明ございました、まさに宇宙活動に関する国際行動規範でございますけれども、昨年、全ての国に開かれましたオープンエンド協議というのを二回開きまして、まだ各国間において議論が続いている途中でございます。

 我が国としても、先ほど大臣からも説明ございましたけれども、この規範というのは、宇宙の利用国間の透明性の向上あるいは信頼醸成に貢献するという観点から非常に重要だと考えまして、議論に積極的に参加しているわけでございます。

 そこで、御質問の民生そして安全保障の関係でございますけれども、まず、日本としては、現在の宇宙活動はますます、民生と安全保障、委員からも御指摘ございましたが、区別が難しくなっておりまして、したがって、民生、安全保障、両方に適用される規範と申しますか、ルール、枠組みをつくる必要性が高まっていると考えております。したがって、日本そして多くの国が、民生、安全保障の両面に適用すべきと考えております。

 ただ、まだ議論の中では、いや、これは基本的に平和利用に限定するべきだという意見や、あるいは、今御説明ございましたとおり、基本的にソフトローの話をしているわけですけれども、宇宙空間に兵器の配置を禁止するような条約を逆に先行するべきだというような非常にかたい議論もありまして、まだ現時点では結論は出ておりませんが、繰り返しになりますが、EUを中心に議論されている流れの中心は、両方カバーされるものにしようということでございまして、現在も議論が続いているところでございます。

牧島分科員 民生、安全保障、双方でという行動規範になることを期待したいと思います。

 そこで、最後に、この行動規範の中央連絡ポイントがどこになるのかということを取り上げておきたいと思います。

 中央連絡ポイントは、主として次のような役割を果たすと規定されます。参加国からの情報や通報を受領し、ほかの参加国等に配付する。年次会合、臨時会合の事務局を務める。宇宙活動情報についての電子データベースを維持管理する。電子データベースは参加国が構築し、閲覧可能なのは参加国のみである。参加国の要請がある場合、宇宙関連施設の現地検査や技術開示等の活動の事務方として支援を行うといったようなものです。

 行動規範自体の深化そして進展のためには、この中央連絡ポイントが果たす役割は大変大きくなるだろうと見込まれます。また、包括的な宇宙情報を集めて配る集配地として新たな秩序の形成をするのがこの中央連絡ポイントとなってくる可能性もあります。

 そこで、私はこの中央連絡ポイントを日本が担うべきなのではないかと考えております。これからアジアの中でも宇宙の分野で台頭する中国が、あらゆる宇宙に関連する情報にアクセスする、それを確保するために中央連絡ポイントとして手を挙げてくる可能性もあります。また、行動規範の遵守を促進する、日本の技術を生かしていく、そしてあらゆる場面で仲介としての役割を果たすということも日本には期待されるかと思います。また、ASEAN諸国との関係を深める意味でもこの中央連絡ポイントの役割が出てくると考えておりますので、この宇宙制度構築と中央連絡ポイントを日本でというところ、現在の御所見をお聞かせいただきたいと思います。

新美政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、委員御指摘されましたように、宇宙に関する外交の議論でも、アジアとの協力、それは本当に大事だと思います。

 例えば、ASEANについても御言及がございましたけれども、今ASEANとの間では、JAXAが事務局になりまして、センチネル・アジアという、特に防災の分野を中心に宇宙を使っての協力をしましょう、これが日本を中心にされているわけでございます。

 そして、御指摘の中央連絡ポイント、これも非常に大事な役割、その役割については委員から御説明ございましたので繰り返しませんけれども、情報提供あるいは事務局機能等の役割を担うことが想定されているわけでございます。

 ただ、具体的にそれがどういう役割を担うかということが、まだその議論が固まってはいないというところがございまして、その中立的性格から、これは特定の国ではなくて、国連にその役割を委ねてはどうかというような意見も一部出ております。

 ただ、それは結論は出ておりませんので、そういう議論の流れも見ながら、委員の御意見も参考にしつつ、我が国としては、どういう形でこの中央連絡ポイントというのを機能させ、どこに置くのがいいのかということを、そういう議論に積極的に参加していきたいと今考えているところでございます。

牧島分科員 ありがとうございます。

 議論の推移を見守りながら、日本らしい外交政策を進めていくことができればというふうに考えております。

 宇宙が重要であるということは間違いのない事実としてここにあって、安全保障上も、そして私たちの豊かな毎日の生活の中にも宇宙空間はかかわりがあるということを多くの国民の皆様にも御理解をいただきたいと思います。

 同時に、政府におかれましては、外務省、内閣府、文部科学省、さらには防衛省と幾つかの省庁にまたがって宇宙政策が行われております。さらに宇宙政策を進めるためには、宇宙庁などの設置も視野に入れる必要があるのではないかなという思いもお伝えさせていただきまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

金田主査 これにて牧島かれん君の質疑は終了いたしました。

 次に、三宅博君。

三宅分科員 日本維新の会の三宅博でございます。

 きょうは、拉致事件とそれから日米関係、この二点についてお伺いしたいと思いますけれども、順番を入れかえまして、日米関係の方から入らせていただきたいと思います。

 昨年の十二月二十六日に、安倍総理が靖国神社へ参拝されました。それに対して、日本国内のいろいろな勢力からも批判もございましたけれども、それに呼応するような形で、アメリカ政府が今回の安倍さんの靖国神社参拝については失望したということを表明いたしましたね。ついせんだって、それに対して、自民党の衛藤さんの方からも、アメリカに失望したというふうなことをおっしゃって、いや、あれは個人的な見解を述べたので、それはまた撤回するというふうなことなんですけれども、アメリカがなぜ、安倍総理の靖国神社参拝について失望したか、その発言の真意を大臣の方からお聞かせいただきたいと思います。

岸田国務大臣 安倍総理の靖国神社参拝につきましては、総理の真意、考え方、これはもう既に総理自身が談話という形で発表をしておられます。国のためにとうとい命を犠牲にされた方々に尊崇の念を示し手を合わせる、こうした態度は、国のリーダーとしてこれは大切なことであるということ、さらには、不戦の誓いを行うために参拝をした、こういった思いにつきまして談話という形で発表をされておられます。

 まずは、外務省、外務大臣としましては、この安倍総理の真意をしっかり国際社会に伝えていかなければならないと思っています。安倍総理の談話につきましては、既に英語、中国語、韓国語を初め八カ国語に翻訳し、あわせて、百二十カ国にこうした談話を送付させていただき、そしてこの真意について説明をする、こういった努力をしているところであります。

 まずはこうした真意をしっかり伝えることが大事であると思っておりますが、それに対して、米国政府が発言したこの中身について、日本の外務大臣が、その真意を、これは真意を確認するすべもありませんし、これについて論評するのは適切ではないと考えています。

 いずれにしましても、まずは安倍総理のこの真意をしっかり伝えることが大事だと思いますし、一方、日米同盟、日米間の関係を考えますと、昨年来、日米首脳会談から始まりまして、日米2プラス2の開催など着実にさまざまな課題において関係強化が進められています。ことしも、日米防衛協力のガイドラインの見直しなど具体的な協力のスケジュールが確認をされているわけです。日米同盟自体はしっかり強固なものであるということは確認をされていると思います。米国の発言がどうであっても日米同盟は揺るぎないものであり、従来どおり進められていくものだと認識をしています。

三宅分科員 外務大臣の立場としてこの問題についてコメントをしないというふうにおっしゃいましたけれども、これは非常に大きな国政の優先課題であると思うんですね。それに対して、アメリカが抗議をしたんでしょう、失望したと。総理大臣の日本国内における靖国神社の参拝に対して、アメリカ政府がこれに失望したということは、これは内政干渉に当たらないんですか。それに対して一言のコメントも外務大臣として抗議の意を表さないということは、これはあってはならないと思うんですけれども、いかがでしょうか。内政干渉に当たるか当たらないか、それも含めて。

岸田国務大臣 先ほども申し上げましたが、米国のこの政府の発言について、何か申し上げる立場にはないと思っています。

 我が国としては、まずは安倍総理の真意をしっかり伝えていく、このことが大事ですし、理解を得るべく努力をする、これが外務大臣として大変重要なことだと思っていますし、結果として、日米同盟は日本の外交にとって基軸だと思っています。この日米同盟が揺るぎないものである、こういった実態をしっかり確認することが重要だと考えています。

三宅分科員 あたかも、保護者が子供の行為に対して失望したというふうな姿なんじゃないかなと私は受けとめるんですけれども。

 それから、外務省は、今、百二十カ国ですか、安倍さんの談話、その真意を伝えるために努力していると。その誤解して、抗議をして、失望したというアメリカに対して、何らこれに対して抗議もしない、あるいはその真意を確かめようとしないというのは、職務怠慢に当たりませんか。

岸田国務大臣 説明につきましては、その後も、さまざまなレベル、さまざまなルートを使って、我が国の考え方は説明をしています。そして、その後も、日米外相会談等の場を通じまして、日米間での意思疎通はしっかり図っているところであります。

 こうしたさまざまな努力の積み重ねによって、しっかりとした二国間関係を確認する、こういった努力は今後も続けていきたいと思っております。

三宅分科員 どこの国であっても、政治のトップが国家のために亡くなった英霊に最大限の敬意を表する、これは当たり前のことでありまして、最も普遍的な政治リーダーの行為の一つであろうと思うんですね。これに対してアメリカが失望するということは、日本に対して基本的な認識というもの、余りにも大きな誤解があるように思えて仕方がないんですね。

 本来ですと、そういうことはやはりすべきじゃない。内政干渉に当然当たりますし、そういうことをアメリカが日本に対して、あたかも保護者のごとく失望したというふうなことを表明するというのは、本当にこれは多くの日本の有識者の方も、そのアメリカに対して失望したということを表明されていらっしゃると思います。

 アメリカの日本に対する基本的な認識といいますか、日米関係の、この部分がベースになって、今いろいろと日本の問題がアメリカ本土において噴出してきているんじゃないかと思うんですね。

 これは河野談話のことですよ。これで、アメリカの西海岸の方のグレンデール市ですか、従軍慰安婦像が建てられたということですね。これに対して、大臣、どのようにお考えになっていらっしゃいますか、お聞かせください。

岸田国務大臣 こうしたアメリカの地方議会において、さまざまな動きが存在するということにつきましては、今日までも、我が国としての立場や考え方、こういったものを説明し、そして、こうした地方議会において、さまざまな民族の少数派が共生しようとしている、こうした社会において、特定の国の考え方を持ち込むということは好ましいことではないのではないか、こういった考え方など、さまざまな視点から説明努力を続けてきました。

 こういったことにつきましては、引き続き、現地の大使を初め、外務省関係者はもちろんでありますが、ロビイスト等さまざまな関係者の協力も得ながら、こうした我が国の考え方を関係者にしっかりと伝えていかなければならないということで努力を続けてきました。今後も続けていきたいと考えております。

三宅分科員 アメリカ在住の日本人の多くの方がこれに強い憤りを感じられて抗議をされていらっしゃいますよね。あるいはまた、日本の有志の方がアメリカまで出かけて、向こうの市長さんにお会いして、これはとんでもないことだというふうにおっしゃっている。ところが、アメリカの在米邦人の多くは、これに対して日本の大使館とか領事館のサポートがほとんどないというふうな、強い、理不尽な思いを抱いていらっしゃるんですね。

 アメリカに対しても、日本の領事館あるいは大使館等もそうなんですけれども、どういうふうな説明をするかというと、日本は既に韓国に何度も謝っているとか、あるいはもうお金も払っているんだというふうなことで、そもそも、河野談話に記されたことは、うそでしょう。なかったことを河野さんは、韓国に唆されたのか、あるいは勘違いしてはるのか、無知か、それはわかりませんよ。しかし、向こうに迎合してかというふうなことで、平成五年の八月四日ですか、河野さんが談話を発表された。

 これは、たしか総辞職される前日か何だったかと思うんですけれども、そのどさくさに紛れて、こんなとんでもないことをされた。その罪万死に値すると思いますよ、本当に。河野さんに対しては、これは本当に国賊、売国奴と言っても私は何ら言い過ぎでもないというふうに強い憤りを持っております。

 本来ですと、こういうふうな理不尽な河野談話に対して、その出所たる自民党がそれの撤廃に大きな力を発揮するのであればいいんですけれども、自民党が全くと言っていいほどこの問題からは逃げているんですな。

 それに対して、日本維新の会が、先週の二十日の日でしたか、山田宏さんが、当時の石原官房副長官を参考人として予算委員会にお呼びして、その経緯を聞かれたんですね。聞かれたその経緯の中で、やはりこれは韓国との間でつくられたといいますか、真実に基づかない談話であったということが明らかになったんですね。

 そこで、日本維新の会が、「慰安婦問題」に関する河野談話の見直しを求める国民運動ということを始めることになりました。その説明文をちょっと読ませていただきますけれども、聞いてくださいね。

  現在、韓国政府は諸外国で事実に基づかない「慰安婦問題」の告げ口外交を展開しており、そのため、米国内では「慰安婦像」が設置されるなど、我が国の名誉を著しく貶めています。

  この問題は、国際的には、強制連行を認めたかのような平成五年八月の「河野官房長官談話」に根本的な原因があります。この談話の根拠となった、聴き取り調査の対象となった慰安婦と称する十六名の女性は、氏名や生年すら不正確であり、その裏付け調査もされず、談話そのものが韓国の言い分を取り入れたものであったことは、平成二十六年二月二十日の衆議院予算委員会における山田宏議員の質疑で明らかになりました。ここまで「慰安婦問題」が世界的な問題となったのは、これまでの日本政府の事なかれ外交の責任であります。

  そこで、「慰安婦問題」に関する河野談話の見直しを政府に求める国民運動(署名活動)を展開しますので、よろしくご支援賜りますようお願い申し上げます。

こういった文面のもとで、これからしようとしている。

 これに対して、本来ですと、自民党もそう、あるいは政府が、うそに立脚したとんでもない日本の不名誉、このことがこれからの日本の国益をいかばかりかおとしめるかというふうなことを考えると、当然それなりの動きをとってしかるべきなんですけれども、本質的な部分については、ほとんどといいますか、全くこれを省みようとしない。これは本当に、自民党もそう、政府もそうなんですけれども、やはりこういった今の姿勢というものを反省していただかなだめだと思うんですけれども、いかがですか。

    〔主査退席、中山(泰)主査代理着席〕

岸田国務大臣 河野談話につきましては、さまざまな議論があります。そして、政府の立場につきましては、先日来、河野談話、これは官房長官談話ですので、政府の菅官房長官の方から、予算委員会の中で考え方を示させていただき、またその後記者会見等において考え方を示しております。

 政府としては、官房長官のこうした答弁ですとか、あるいは記者会見での発言に尽きていると考えております。

三宅分科員 菅官房長官が表明しておられる立場は、基本的に河野談話を継承するという立場でしょう。そのことを私は問題にしているんです。これが事実であればいたし方ない。うそでしょう、これは。うそに基づいた談話を当時の河野官房長官が発表し、それ以降、日本の本当に名誉が著しく阻害され、あるいは国益が損なわれている。このことをいつまで見過ごしているんですかということを私はお聞きしているんですよ。

 そもそも日韓関係については、これはもう大臣よく御存じだと思いますので詳しくは説明したくないんですけれども、昭和二十六年から日韓の予備交渉が始まったんですね。日本と韓国の国交回復、日韓基本条約が昭和四十年に締結される、それ以前に、二十六年から十四年間の下交渉がされている。

 ここでは、全くその慰安婦問題、これは従軍慰安婦、従軍慰安婦と言いますけれども、このこと自体がもう造語なんですよ。戦地売春婦、戦地における売春婦の問題だ。ところが、それを、従軍慰安婦という新たな造語をつくって、あたかも軍がこれに関与しているみたいな言い方をされているんですね。従軍記者とか従軍看護婦はいた。従軍慰安婦なんか、そもそも存在しないでしょう。だから、NHKの籾井さんが従軍慰安婦の問題なんかで非常に世間の批判を浴びた、私は違う角度で彼に批判をしたいんですね。従軍慰安婦なんかはいなかったんだ、戦地売春婦はいた、そういうようなことは言いたいと思いますけれども。

 それはさておき、十四年間の下交渉の中で、慰安婦問題、一切これは取り上げられたことがないんですよ。今、韓国は、アメリカを舞台にあそこまで執拗にロビー活動をし、慰安婦像を設置したり、あるいはソウルの日本大使館の前にも慰安婦像を設置しているんでしょう。であるならば、この日韓基本条約の下交渉のときに言ってしかるべきなんです。ところが、これはそもそも事実じゃなかった、なかったことだから、当時、全くしていなかったんですね。

 それから、今、韓国側は、日韓の両国の問題は決着した、個人に対する賠償はいまだにこれは放置されたままだということを言っているんですけれども、これもとんでもない話でしょう。日本側は、援助金の支払い方法といいますか、これについては、日本側の方の提案は、対日請求権のある人に直接補償したいということを日本側の方から提案しているんです。ところが、韓国側は、個人補償は韓国政府がやりますから、日本政府は韓国政府にまとめて支払ってくれと。向こうの要望に沿った形でこれはしたんですよ、国家に対して全てこれを払うということで。

 言ってみれば、日韓の間の個人賠償請求については完全かつ最終的に解決したということが、この間といいますか平成十七年の一月に公開された議事録の中で記されているでしょう。このことに対してはいかがですか。

岸田国務大臣 日本と韓国の間の請求権の問題につきましては、一九六五年の日韓請求権協定によって完全かつ最終的に解決していると認識をしております。

三宅分科員 この下交渉のあった当時なんですけれども、昭和二十七年でしたか、サンフランシスコ講和条約発効の直前に、李承晩大統領が竹島を力で奪ってしまった。日本は占領下ですから、どうしようもなかったんですね。

 その後、李承晩大統領は何をしたか。これは我々の年代の者はよく覚えているんですけれども、大みそかの除夜の鐘の直前に、NHKのテレビで「ゆく年くる年」という番組、今もあるんですけれども、私が十歳ぐらいの当時だったと思いますから今から五十三、四年前なんですけれども、毎年のように、日本海に向けてテレビが向けられ、日本海、北に向かって、韓国に向かってたたずむ日本人の漁師の御家族の姿が映されたんですね。

 それは、李承晩ラインというのを向こうは勝手に引いて、その近くに来た日本の漁船員を拿捕して韓国に連れていった、四千人ぐらいですね。そのうち、四十数名は向こうで亡くなった。それはひどい状態ですよ。狭いところに五、六十人、六畳一間ぐらいのところに無理やり詰め込んで、衛生状態も悪い、こういった中で日本人が多く亡くなっていった。拿捕された漁船も三百数十隻あったんですな。

 こういうふうな非人道的な行為をずっとしてきた、その韓国政府が日韓の基本条約の下交渉で一切これを言わなかったということは、なかったということなんですよ。だから、こういうプロパガンダといいますか、向こうの目的は、日韓の外交交渉においても精神的優位に立って、日本からいろいろな譲歩を引き出そうというふうなことでしょう。また、向こうはいろいろな戦術を使って、日本に対してずっと対処してきた。

 漁船の拿捕なんかも、言ってみれば、日韓の基本条約で未解決となったのは竹島の問題だけだったんです。この竹島の問題から目をそらすために漁船員を拿捕したりとか、今の従軍慰安婦の問題もそうですよ。日韓間に最終的に残った最大の問題である竹島、真の未解決の問題から自国あるいは諸外国の国々の多くの目をそらすためにこういうことをやっているんですね。

 余り時間がなくなってきましたので、このあたりでやめさせていただきたいと思いますけれども、韓国がこういうふうないろいろな外交的な攻勢を日本にかけてきているこの真の目的は、やはり竹島を隠したいという部分があるということを我々は認識していかなくてはならないと思うんですけれども、大臣、そのあたりは当然御存じだと思いますけれども、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 先ほど来お話をお伺いしておりまして、まず、竹島につきましては、国際法上も歴史上も我が国固有の領土であります。そして、請求権につきましては、一九六五年の日韓請求権協定によってこれはもう解決済みであると認識をしております。

 我が国のこうした考え方、立場、これは、しっかりと国際社会にも、また韓国にも粘り強く訴えていかなければならない課題であり、引き続きまして、こうした課題につきましては毅然として対応していきたいと考えています。

三宅分科員 アメリカを舞台に韓国は慰安婦の問題を持ち出す、中国は南京の三十万人大虐殺。両方ともこれはうそ、捏造の話なんですけれども、アメリカを舞台にやっている。彼らにとっては、アメリカが後ろ盾となっているというふうな意識もあるんでしょうな。だから、アメリカを舞台にするというのは、非常に国際的にも効果的であろうと。

 ところが、うそであるにもかかわらず、日本政府が真っ向正面からこれに対して反論もあるいは反撃もしない。やられ放題の外交じゃないんですか、これは。これは、外務省の担う使命と役割の大きさからして、そういったものを十分に全うできていない今の現状じゃないかなと思います。

 しかしながら、こういったことは覚悟を決めてやっていかなくてはならないということで、これから大臣の手腕というものに期待を寄せておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

 それから、残り時間も少なくなってまいりましたけれども、今、日米の間でいろいろな問題が出てきておるわけなんですけれども、日米同盟、日米安保条約の本質的な目的といいますか、これはどんなものなんですか。特に、アメリカにとって日米安保の真の目的というのをどのようなものと認識されていらっしゃるか、お聞きしたいんですけれども。

岸田国務大臣 まず、我が国を取り巻く安全保障環境、これは、北朝鮮問題を初め、大変厳しい状況にあります。一層厳しいものになっていると認識をしております。

 そういった中にあって、我が国の平和と安定を守るためには、まずは我が国自身の防衛力をしっかり強化しなければならない、こういったことであります。防衛力を適切に整備し、そしてあわせて、日米安保条約を引き続き堅持して、米軍の前方展開を維持し、抑止力を確保する、この二つが大変重要だと考えております。

 こうした考えのもとに、政府としましては、日米安保体制の抑止力向上のために、昨年も、日米2プラス2を東京で初めて米国の国務長官そして国防長官本人の出席を見て開催をしたわけでありますが、そうした結果を踏まえまして、ことしも、日米防衛協力のガイドラインの見直し等を含めて幅広い防衛協力を進めていかなければならない、このように思っています。

 日米安保体制の本質というのは、以上申し上げた点であると思いますし、我が国にとりまして大変重要なテーマだと考えています。

三宅分科員 昭和二十七年にサンフランシスコ講和条約が発効し、日本が独立を回復したというふうに表面的にはなっていますけれども、じっといろいろと見ていきますと、ここには疑念を抱かざるを得ない部分が多くあるんですね。

 これは、二十七年に講和条約が発効して、私の子供のときは、まだ進駐軍がおりました、私はその姿を覚えていますけれども、それ以降、進駐軍、占領軍はアメリカへ帰ったというものの、今、日本国内に七十カ所以上のアメリカの基地、施設がございますな。これは普通ですと、講和条約が発効して日本が独立を回復したのであれば、同盟関係があるんですから、米軍の施設、基地が数カ所あるんでしたらわかるけれども、七十カ所以上の基地、施設があり、アメリカの軍人軍属、その家族が十万人以上いまだに日本におりますよね。

 これを見ますと、どうもアメリカの真の目的は、日本の自立といいますか、これの回復を何としても抑えたいのと違うかなというふうな思いがするんですね。

 それから、日本を取り巻く国々、北朝鮮もそう、あるいは中国もそう、ロシアもそうですけれども、彼らは核保有国ですよね。この三国は核保有国。日本のみが核がないということなんですけれども、過去、北朝鮮もそうなんですけれども、日朝交渉の席上で、我々は、日本に届く武器を持っている、東京を火の海にするぞというふうなことで恫喝したりとかいうふうなこともありました。こういう中国あるいはロシア、いろいろな外交努力でそれは防げるとは思いますけれども、彼らが日本に対して核の恫喝をしたときに、日本はどうしてこれを防ぐようにするんですか。

岸田国務大臣 御指摘のように、東アジアの安全保障環境は大変厳しいものがあります。だからこそ、我が国としましては、こうした状況に適切に対応するために、我が国の防衛力の整備とあわせて、安全保障条約を堅持して、米国の抑止力を重視していかなければならない、このように考えています。

 こうした日米同盟のありよう等を中心に、こうした厳しい安全保障環境に対応していくというのが我が国の外交・安全保障政策だと思っています。

三宅分科員 いよいよ今から本論に入りたいと思ったんですけれども、もう時間がなくなりましたので、きょうはこれにて質問を終了させていただきます。またの機会を捉えまして、いろいろとこういう本質的な論議をしたいと思っておりますので、よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

中山(泰)主査代理 これにて三宅博君の質疑は終了いたしました。

 次に、中川正春君。

中川(正)分科員 大臣、長時間にわたって御苦労さまでございます。

 きょうは、改めて日本の人権外交について、具体的に、特に北朝鮮との問題、あるいはまたミャンマーがありますが、こうしたアジアで最後のその問題を抱えている、いわゆる政府として、長い歴史の中で、一つは破綻をしている政権、もう一つは民主化を進めていく過程にある政権、これが最後の課題なんだろう、アジアの周辺でいけば。ここに対する人権という切り口で日本の外交をどう進めていくのか、そういう観点でお尋ねをしていきたいというふうに思います。

 二月の十七日の日に、国連の人権理事会から、いわゆる拉致を含む北朝鮮の人権侵害行為について、それこそ人道に対する罪であるということを結論づけて発表した報告書が出ました。日本もこれに十分関与しながら進めてきた調査でありますので、大臣としてもそれなりの見解をお持ちだというふうに思います。

 まず、この報告書の評価と、それから日本政府としての受けとめ方から聞いていきたいと思います。

岸田国務大臣 御指摘の北朝鮮における人権に関する国連調査委員会、COIの最終報告ですが、その中で北朝鮮における厳しい人権状況等がしっかり盛り込まれ、この最終報告がなされたことにつきましては、我が国としてまず歓迎の意を既に表明させていただいております。

 この最終報告書は、北朝鮮に対する大変強いメッセージになると認識をしています。国際社会と連携しながら、まず北朝鮮に対してこのメッセージをしっかり伝えていく努力をしていかなければいけないと思いますし、また、この報告書をフォローアップするためにアジア等に拠点を設けるとか、こういった議論も行われています。ぜひ、フォローアップにつきましても我が国としてしっかりと貢献をしていきたいと考えています。

中川(正)分科員 拉致問題というのが、それこそ北朝鮮の最高指導者レベル、あるいはまた諜報機関や陸海軍それぞれ軍部の関与の中で戦略的になされていたというような事実がこの報告書で報告され、あるいはまた、脱北者等々も捕まって本国に送還されれば、当局による迫害、拷問あるいはまた長期間の拘束等々を受けるというような事実についても報告をされたというような中身なんです。

 これは、当事者、いわゆる日本や韓国やその関連諸国と北朝鮮という関係だけではなくて、国際社会の中でこうした事実が認められ、そしてそれに対して糾弾されるというようなことなんだろうと思うんですね。

 それを受けて、では日本政府として、この報告書をどう活用しながら外交というものを展開していくか、人権外交を展開していくかということ、ここがポイントなんですね。

 まず、それを順番に聞いていきたいと思うんですが、拉致問題なんですけれども、これについて、さらなる圧力をかけていく、いわゆる国際社会の圧力をかけていくということについては、この報告書というのは、非常に端的に、具体的なそれぞれの証言に基づいて、あるいは証拠に基づいて報告しているわけですけれども、日本として、この報告書をどのように活用しながら拉致問題に向けて展開をしていこうとしているのか、まずそこから説明をいただきたいと思います。

岸田国務大臣 まず、拉致問題につきましては、我が国としましては、対話と圧力に基づいて、核あるいはミサイル、こうした問題とあわせてこうした諸問題を解決していく、こういった方針に基づいて取り組んできました。特に拉致問題につきましては、家族の高齢化等を考えますときに、我が国として、ぜひ現内閣で全面解決にこぎつけなければならない、強い思いで臨んでいるところです。

 そして、その中にあって、今回、こうした国連の調査委員会の最終報告書が出ました。その報告書自体の活用については、先ほども申し上げさせていただいたメッセージとしての活用、そしてこの報告書をフォローアップするという動きに貢献していく、こういった形で日本としても努力をしていかなければいけないと思っていますし、そういった形でこの報告書を活用していく、こういった考え方に立っています。この報告書もこうした全面解決に向けての大変重要なファクターとしてぜひ大いに活用していきたいと考えています。

中川(正)分科員 私は、どういう方向性を持つかということを戦略的に日本が考えるとすれば、それはやはり他国との連携なんだと思うんですよ。

 これまで、海外へ行って拉致問題を日本が説明する、私もその先陣を切って、それぞれの国際会議で、あるいは連携を模索して話をしてきたんですが、特に、本当に連携をしていかなきゃいけない例えば韓国であるとかアメリカであるとかというようなところへ行くと、日本は拉致しか言うことがないのか、もっと幅広い人権ということを考えていけば、さまざまに脱北者あるいは収容所の中で苦しんでいる北朝鮮の国民自体の受けとめ方とかというような形で、幅広く連携ができる素地があるじゃないか、いわゆる人権ということをベースにすればという話が絶えず返ってきました。

 実は、今回の報告書は、そうした世論、特に韓国と拉致問題について連携をしていく、そういう必要性というか重要性から考えれば非常にいいチャンスなんだと思うんです、安倍外交がなければね。今のややこしい問題がなければ本当は非常にいいチャンスであって、これを軸に一緒に拉致問題も連携していこうよというような基軸がつくれるということなんですよ。そういう方向で、拉致問題を人権という枠組みで捉えて、韓国あるいはアメリカとマルチでいく、日本だけがやっているんじゃないんだ、これはマルチでいくんだという枠組みをぜひつくっていただきたいというふうに一つは思います。これが私からの指摘です。

 それからもう一つは、脱北者の問題なんですが、これはいつだったかな、ちょっと日にちはここにないんですけれども、拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する法律、これを北朝鮮人権法と呼んでいるんですが、議員立法で私も関与しながら成立をさせました。北朝鮮に制裁をするときにこの法律を使っているんですよ、修正もして。

 この中に幾つかのポイントがあるんですが、脱北者に対して、「政府は、脱北者の保護及び支援に関し、施策を講ずるよう努めるものとする。」、それからもう一つは、「政府は、第一項に定める民間団体に対し、必要に応じ、情報の提供、財政上の配慮その他の支援を行うよう努めるものとする。」この民間団体というのは、拉致であるとかあるいは脱北者の支援等々をしている人たちに対してということなんです。こういう条項があるんですよ。

 現状はどうかというと、脱北者は、中国にある日本の大使館あるいは総領事館に逃げ込んで、そこで中国を説得しながら、日本に外務省が連れてきて、それで人道的な救済ということをやっているんですけれども、日本に連れてきた後は実は何にもないんですよ。支援団体があって、特に民団だとかあるいはNPOの支援団体がそこのケアをしているということなんです。

 考えようによっては、これは難民という形で定義ができる、そういうものでもあると私は思っているんです。

 ここにあるように、この人たちは最初、経済難民として出てくるんだけれども、外へ逃げてくるんだけれども、しかし、中国の中でさまざまな人権侵害を、中国ではこれは不法入国者ですから、だから、その分、やはり民間の中で差別されて、人身売買の対象になって非常に厳しい状況にあるんですよね。

 日本の大使館や総領事館に逃げ込んできた人たちを日本は救済しているんですが、本国に捕まって、例えば、中国当局に捕まって北朝鮮に送還されればどういうことになるかというと、この報告書にあるように、当局による迫害や拷問、あるいは収容所に放り込まれるという事実がありますよということなんですね。

 そういうことがはっきりしておれば、本来はこれは難民として定義をされていい人たちだと思うんです。まず、そこのポイントが一つあるんですけれども、これについて法務省の見解を求めていきたいんですが、来ていただいていますね。

杵渕政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国の難民認定制度は、難民条約上の難民に該当するかどうかを審査し、判断するものです。北朝鮮から逃れてきましたいわゆる脱北者からの申請についても、北朝鮮の客観的な事情のみならず、申請者の個別事情をも考慮して、条約上の難民に該当するかどうかを判断することとなります。

 以上でございます。

中川(正)分科員 これまでは、北朝鮮の状況というのがなかなか、法務省で北朝鮮まで行ってどういう状況かと調べてくるような熱意もないし気持ちもなかったから、これは難民認定していないんですよ。こういう報告書がはっきり出てきただけに、こういうものもしんしゃくしながらこれからは判断をしていくということになると思うんですが、そこはどうですか。

杵渕政府参考人 ただいま申し上げましたのが難民認定制度でございますけれども、入管局といたしましては、難民とは認定されなかった場合でも、北朝鮮の事情、その者の経歴、家族状況などを個々に考慮いたしまして、人道上の配慮が必要な場合には、我が国への在留を認め、適切に庇護を図ることになっておりますし、また、そうしてきております。

 御指摘の国連の調査委員会報告書は、北朝鮮の客観的事情に関する重要な資料の一つと位置づけられると認識しております。内容を精査した上で、いわゆる脱北者からの難民認定申請があった場合には、その難民該当性の判断に当たり、適切に考慮してまいりたいと考えております。

中川(正)分科員 ということなので、大使館や領事館でやっているときに、日本に帰ってくるときに難民申請をやるべきだというふうに私は思うんです。その手続もしていないという状況の中で、外務省が在留許可だけおろして日本に連れてきて、そのままにするんです。なものですから、今、二百人以上の人たちがもう日本にそういう形で来ているんですけれども、非常に厳しい状況に置かれているということを認識していただきたいというふうに思うんです。

 その上で、この法律でいけば、努力義務でありますけれども、必要に応じ、情報の提供、財政上の配慮その他、周辺のことをすることができる。あるいはまた、みなし難民みたいな形で、この人たちに、日本語の教育から、それぞれ情報をしっかり得ていくということも含めて、最初のケア、いわゆる定着ケアというもののプログラムはつくれるんです、第三国定住みたいな形でつくれるんです。ということを外務省はやはりやるべきだというふうに思うんです、もし難民認定しなければ。難民認定をすれば、その難民認定の枠組みの中でそういうケアができる仕組みになっているんです。

 ここが中途半端になっているし、それと同時に、スクリーニングしていくという意味でも、やはり外務省はもうちょっと国内で関与をすべきだというふうに思うんですが、どうでしょうか。

岸田国務大臣 難民認定のお話が出ていましたが、要は、実質的に人権をどう守っていくのか、これが重要だと認識をいたします。

 脱北者の定住支援ということにつきましても、我が国に帰国し、または入国した脱北者が自立した生活をすることができる、こうした環境を早期につくる、こうした視点から、何ができるのかを考えていかなければならないと存じます。

 北朝鮮人権法の趣旨を踏まえまして、関係省庁が連携をし施策を進めていくということが確認されているわけですが、問題が生じた場合に、随時、対応の改善も考えていかなければならないというふうに思います。

 いずれにしましても、脱北者に対してどの程度の保護及び支援を行うべきなのか、こうした議論が存在いたします。御指摘の点も踏まえながら、ぜひ引き続きまして検討を続けていきたいと考えます。

中川(正)分科員 ぜひ結論を出してください。いずれにしても、連れて帰ってくるのは外務省ですから。外務省が連れて帰ってくるんだから、それを保護する、あるいは人道的に救済をしていく必要性というのは外務省の中で固まっているんですよ。あとは、この人たちがどのように日本の社会で定住していくかということ、そのための制度設計だけなんですね。それを本当は各省庁が連携してやらなきゃいけないんだけれども、どこもやらない。これは、議員立法の限界をつくづく私は感じているんです。スポンサーがいないんですよ、この法律に。だから、これは、ぜひ外務省がスポンサーになるべき法律だというふうに思うんです。

 そういう意味で、第三国定住と一緒。第三国定住も、一番最初の定住部分でオリエンテーションをやっていく部分は外務省が持っているんです。ということを念頭に置いて、ぜひ前向きに検討してください。

岸田国務大臣 御指摘の点について、外務省の役割の大きさは感じるところであります。ぜひ、外務省も関係省庁の中でしっかり役割を果たしていきたいと思っております。

中川(正)分科員 次に、ミャンマーの件について具体的にお尋ねをしていきます。

 民主化のプロセスに対して、日本政府は具体的にどういうスタンスをとっているのか、ミャンマー政府に対して何を言っているのかということを確認していきたいと思うんです。

 私、この間、ミャンマーに行ってきまして、ポイントは二つあるなと。

 これから選挙に入っていくわけですけれども、その前の憲法改正の議論があります。その中の一つは、アウン・サン・スー・チーが今大統領になれないんですよね、配偶者が外国人であるということの禁止条項があるということで。これについて、具体的に言えば、アウン・サン・スー・チーが大統領になっていくということ、この道筋を開くようにというようなことを日本政府として言っているのかどうか、それを確認したいというふうに思います。

 それから、もう一つは、少数民族との和解というのがあります。これは、このままでいけば、和平は徐々に徐々に、まだ不安要素はいっぱいありますけれども進んでいるということですが、しかし、最終的に選挙へ入っていった場合には、国の形、連邦制を彼らは言っているわけですけれども、その中でどれだけ少数民族の自治というのを、分離するんじゃなくて、連邦制の中でどれだけ自治というのは確認できるのか。

 その中にいろいろな利権構造があって、要素があるわけですけれども、それでもやはり今の体制というのは余りにも収奪的過ぎるというか、中央政府からやられてしまう、あるいは中国から収奪されるという思いがある中で、このままでいけば、やはり選挙への参加というのが非常に混乱をしていく可能性がある。それに対して、連邦制下での自治権の拡大というものについて、日本政府はどういう見解を持ってミャンマー政府に働きかけているのか。

 この二つのポイントについて、公式見解があるのかないのかわからないけれども、大臣の今の見識、認識でも結構です、少しお話しください。

木原(誠)大臣政務官 まず私から御答弁をさせていただければというふうに思います。

 先ほど委員の方から、ミャンマーにも行っていただいているということで、本当に長年にわたりましてミャンマーの民主化に中川先生が取り組んでいただいておりますこと、敬意を表したいというふうに思っております。

 もう御案内のとおりだと思いますが、今ミャンマー自身が、民主化、法の支配の強化、また少数民族との国民和解、経済改革等の分野でさまざまな取り組みをしている。我が国としては、これをとにかく官民挙げて、総力挙げてしっかり支援していくという立場でございます。

 御指摘いただいた二点については、まず民主化プロセスについてでございますけれども、私どもとしては、やはり民主化プロセスの中で特に一番大切なことは、法の支配がしっかりと貫徹をしていくということであろうというふうに思いますので、まず法制度の整備、そしてまた法曹人材の育成を含めた取り組みをしっかりやっていきたい、このように思っております。

 その中で、憲法改正のお話、御指摘をいただきました。

 我々といたしましては、民主化プロセスを支援していくという前提の中で、憲法改正の議論についてもしっかり注視をして、また見守っていきたいというふうに思っておりますが、今ミャンマー自身の努力として、連邦議会憲法改正実現委員会というのが発足をして、そして、今まさに憲法改正案を策定中である、こういうふうに承知をしてございます。

 我々としては、これはミャンマー自身の最高法規でもありますから、まずはミャンマー自身がどういう内容をつくっていくかということを見守りながら、しかし同時に、民主化プロセス全体を支援していくという中でしっかりと注視をしてまいりたい、このように思っております。

 もう一点、少数民族のお話を賜りました。

 少数民族との停戦、和平、そして和解というものがしっかり進まないことには、これから私どもの、例えば民間企業が出ていくときにも、出ていくということはなかなか難しいわけでありますので、これは何としても進めていかなければいけないというふうに思っております。

 総理からも、また大臣からも、累次にわたりまして、さまざまな機会においてそのことをミャンマー自身に働きかけてございますし、実は昨日、テッ・ナイン・ウィン国境大臣がちょうど日本に訪日をされておりましたけれども、私自身からもそのことを申し上げたところでございます。

 私どもとしては、まず少数民族との停戦そして和平、これを一つ一つしっかり実現していく、そのことをしっかり後押しさせていただきたい、こういうふうに考えているところでございます。

中川(正)分科員 ぜひ大臣の見解もそこは聞いておきたいというふうに思いますが、その前に、日本の企業あるいは日本政府が具体的にコミットしている支援というのは二段階あると思うんですね。

 日本の政府自体は、非常に前のめりになって、いろいろなプロジェクト、ティラワなんかの工業団地であるとか、あるいは鉄道であるとか港であるとかというような話がどんどん進んでいますけれども、向こうへ行くとよくわかるんですが、一般企業は今じいっと様子を見ているんですよ。具体的なコミットということに対して非常にリスクを考えている。そのリスクというのは、やはり、政治が大丈夫かどうか、選挙がどういう形になっていくのかということを見ている。

 ということと同時に、実は、アメリカのこの国に対するスタンスということももう一つあって、例えば北朝鮮とのこれまでの連携がちゃんと切れるのかどうかとかいうふうな部分も含めて、また、アメリカから制裁が出てくるんじゃないかということもあって、じいっと見ている。

 それだけに、さっきのようなアウン・サン・スー・チーに対しての一つの憲法改正のポイントなんかを日本政府がはっきり言わないと、今のスタンスだと、ちょっと様子を見ましょうか、それで、頑張ってね、頑張ってねと言っているだけなんです。メッセージがそこから出てこない。

 だから、やはりここはメッセージをはっきり出して、進めていくということによって選挙が成功していくんだよということを向こうの政府に対してもしっかり言っていかないとだめだと思うんです。

 なぜそれを言うかというと、向こうのリーダーに会ってこの話をしたら、やはりアウン・サン・スー・チーの問題に対しては非常に否定的なんです。憲法改正をやらないという意思が強いんですよ、向こうのリーダーたちは。もう一方の少数民族の分野については、非常に弾力的に考えていこうとしているというニュアンスがある。

 しかし、これは、そのままでいけば、少数民族との間の和平と、それからその先の問題についても、なかなか具体策が出てこない。弾力性はあると思うけれども、具体的な法整備に向けての具体策が出てきていないんです。だから、そこがあるから、いつも不信感が重なって、軍部だけが先走りして無理やり統治をしようとするから、そこでぶつかって、中央政府の意思とは関係なしに、現場では、特にカチン、シャンでは戦闘がまだ続いているという状況がある。

 だから、それだけに、やはりここも日本政府としては、もっとはっきりとしたメッセージを中央政府に対して発していくということが大切なのであって、様子を見ています、民主化について頑張ってください、頑張ってください、これでは話にならないというふうに私は今感じています。

 そういう点も含めて、大臣、改めて見解を聞きたいと思います。

岸田国務大臣 現在、ミャンマーにおいては、民主化、法の支配を初め、さまざまな課題が存在します。それに対して、我が国としては官民挙げて支援を行っているところですが、その中で、やはり今の話にもありましたように、民主化プロセスの部分と、少数民族の和解、国民和解の部分、この部分は大変重要なポイントだと認識をしています。

 民主化プロセスにおいても、法制度の整備あるいは人材育成、こういった支援を行っているわけですし、この重要性についてはしっかりメッセージは送っているわけです。ただ、具体的な部分について、どうあるべきだの部分まで我が国として踏み込むことについては、やはりミャンマー自身の自主性の尊重といった観点も大事にしなければならないのではないかと思います。

 少数民族の和解につきましても、停戦と和平の達成は大変重要な点だということ、こういった点については間違いなくしっかりメッセージを送っているわけですが、具体的な進め方につきましては、ミャンマー自身の、国自身の自主性もしっかり見守りながら、日本として何をするのか考えていくべきではないか、基本的にはこういう考え方に立つべきだと思っています。

中川(正)分科員 国際社会が何にも言っていないんだったら、そんなことも言えるんだろうと思うんですが、国際社会はみんなはっきりしたことを言っているんですよ。日本だけが何となく、法務の専門家を送ります、法律をちゃんとつくってください、そして民主化に頑張ってください、さっきの話だとそういう話ですから。それでとどまっている。

 だから、そこに日本の外交の特徴があるんだとすれば、そういうことなんだろうけれども、それではだめなんだ、政治的な意思というのをやはり示さないとだめなんだ。外務省の官僚レベルだけでやっているんだったら、それはそういうことなんだろうと思うんだけれども、これはやはり、そこに政治が入ってきて、国際的な秩序というのをどうつくっていくかということを前提にして外交をするということであれば、もっとメッセージ性を持ってやっていくことが大事だというふうに思います。

 そのことを申し上げて、時間が来たようでありますので、もう少し突っ込んだ話をしたかったんですが、ここで終わります。ありがとうございました。

中山(泰)主査代理 これにて中川正春君の質疑は終了いたしました。

 次に、武藤貴也君。

武藤(貴)分科員 自民党滋賀四区選出、衆議院議員の武藤でございます。

 本日は、質問のお時間を与えていただきまして、ありがとうございます。私も自民党の所属議員でして、先輩の前で御質問させていただくのは大変恐縮なんでありますけれども、いろいろ私が今まで思ってきたことを率直に御質問させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

 きょうは、対中ODA、対中援助について御質問させていただきたいと思うんです。

 数年前に、中国がロケットを宇宙に発射するというニュースが飛び込んでまいりました。昨年、今度は中国が月面着陸に成功した、こういうニュースが飛び込んでまいりました。中国は、宇宙進出に向けてたくさんの予算を割いて、ロケット打ち上げに成功し、月面着陸にも成功した。と同時に、その前になりますけれども、既にGDPも日本のGDPを抜いている、こういうことも公になっています。そうした中国に対して、日本は現在でも、ODAまたはそのほかも含めまして、経済的な支援を行っているわけであります。

 私、実は、大学生のときに国際政治を勉強させていただいて、一冊の本に出会ったといいますか読む機会がありまして、これが政治を志す一つのきっかけというか遠因になったんですけれども、古森義久さんという産経新聞の記者さんがいまして、その人がPHP新書から「「ODA」再考」という本をお出しになられました。

 この中で、日本のODAがきちんと使われていない実態、あるいは、ODAで建てられたものが、例えば青年交流センターという無償資金援助で建てられたところで風俗営業がなされていたというようなことが書かれていました。

 当時、私は大学生だったんですけれども、衝撃を受けまして、日本が貧困撲滅ですとかあるいは人道支援という観点でODAを行ってきたにもかかわらず、それがそういう目的以外のところで利用されていた。これは非常に残念なことだな、ODAのあり方というものを、もう一回、日本国民としても、あるいは政治も考え直さなければいけないんじゃないか、そういうふうに思ったのを今でも覚えています。

 それで、対中円借款と言われるものはもう既に廃止されておりますけれども、いまだに、草の根無償資金援助ですとか技術協力等々で、留学生の支援とかあるいは環境事業の支援ということで援助が継続されている。

 まず、全体的なことを大臣にお伺いしたいと思うんですけれども、この対中ODAというのは、一九七九年に始まりまして、現在まだ続いている。三十五年間ですね。私がちょうど一九七九生まれで三十五歳なので、三十四歳ですが五月で三十五になります、ちょうど私が生まれたときに始まって現在も続いている。総額約三兆円に上ると言われています。

 ほかの各国のODAも調査してみますとわかるんですが、これは世界最大級の期間、そして規模も世界最大級。これだけの資金援助をして、昨年末、防空識別圏の設定ですとか、あるいは尖閣諸島周辺における領海侵犯が繰り返されています。果たして日中友好に効果があったのか、この検証が必要だと思います。

 まず最初に、大臣に、こうした今まで日本が行ってきた対中援助が、本当に、日中友好、日本の国益、ODA大綱にも書かれていますけれども、我が国の安全と繁栄、国益にかなってきたのかということを、総括的に御意見をお伺いさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

木原(誠)大臣政務官 お答えを申し上げます。

 まさに御指摘いただいたとおり、一九七九年以降、私ども、対中ODAを実施させていただいたということでございます。

 私どもにとっては、何といっても、大切な最重要の隣国という関係にございます。そういう中にあって、中国の改革・開放政策の維持、促進にも貢献できたというふうに思っておりますし、日中関係を下支えする主要な柱の一つとして強固な基盤を形成できたのではないかというふうに考えております。

 とりわけ、経済インフラ整備支援等を通じまして中国の改革・開放を後押ししたということによりまして、中国経済自体が安定的に発展をし、そしてアジア太平洋地域の全体としての安定的な発展にも貢献をしたということであろうというふうに考えてございますし、また、私ども日本との関係で申し上げれば、中国における投資環境の改善が進んだということもございます。そういう意味で、日中の民間経済の関係の発展にも大きく寄与したのではないかと考えております。

 こうした成果もあったことも踏まえて、二〇〇八年五月の日中首脳会談においては、当時の胡錦濤国家主席から、ODAについて心からの謝意の表明もあったところでございます。

 さまざま課題を御指摘いただきましたけれども、総じて日中関係の大きな意味での発展に寄与したものというふうに評価をしているところでございます。

武藤(貴)分科員 今、さまざまな効果があったという御回答をいただきましたけれども、私は、多分、恐らく政府の方々も御苦労されていると思いますけれども、最近の日中関係の政治分野における交流がうまくいっていない、これは厳然たる事実であると思います。

 そういう中で、やはり、民間の経済交流、あるいは中国の近代化発展に寄与してきたことはたくさんあると思いますけれども、ただ、政治分野で、今申し上げたように、きちんとした外交関係が友好な形で結ばれていない現状があるということは、一つの結論として、ODAが三十五年間続けられてきて、政治分野でそこまで成熟した友好関係をつくれなかったという事実、結果をきちんと総括しなければいけないんじゃないかと私は思っています。

 それで、その前に、果たして中国が本当に開発途上国なのか、この見解をお伺いしたいんですけれども、政府開発援助大綱、ODA大綱と言われているものの中に、目的、方針、重点という理念の部分があります。ここに、「我が国ODAの目的は、国際社会の平和と発展に貢献し、これを通じて我が国の安全と繁栄の確保に資することである。」あくまでも「我が国の」という主語が入っています。地域ももちろん必要でしょうし、中国の発展も必要だと思いますけれども、目的はあくまでも「我が国の安全と繁栄の確保に資すること」だと書いています。

 ODAの中に基本方針として一番最初に掲げられているのは、開発途上国の支援。開発途上国という言葉がたくさん出てきます。その中に、貧困撲滅ですとか、人道的な観点から行われるという、たくさんの理念が掲げられているんですけれども、先ほど申し上げましたように、中国が本当に開発途上国なのか。

 OECDが出している開発途上国のランクというものがありますけれども、その中でも、中国は、開発途上国、LDCsというんですかね、それには分類されておらず、その二つ下のランクの低中所得国というふうなところに入っています。

 先ほど申し上げましたが、ロケットを打ち上げたり、北京空港も、三十四万平方キロメートルということですけれども、成田空港よりも大きい、非常に近代化した空港をつくっています。こういう国が、確かに国内の政策、沿岸部と内陸部の格差の拡大、これは国内政策によって広がった部分が大きいと思いますけれども、そういう中で国全体が発展してこなかったのは、中国国内の責任が多々あると思います。

 そういう実態を踏まえて、外務省として、日本政府として、中国を開発途上国として位置づけてこれからも人道支援を続けていくのか。中国政府の、もし続けるならば、やはり、自分の国の自助努力というものをきちんとさせた上で、その中で、リクエストベースドと言われますけれども、こうした援助をしてくれというのじゃなくて、こっちも、こういうことをやるべきじゃないですかという提案も含めて、きちんとODAを考えて見直していくべきじゃないか、こういうふうに思いますけれども、御所見をお伺いしたいと思います。開発途上国の定義も含めて、お願いします。

木原(誠)大臣政務官 お答えを申し上げます。

 先ほど、誤解があってはいけないので、あえてもう一度申し上げますが、中国自身が発展をした、またアジア全体の中で安定的に発展をしたということは、もちろん中国にとってもアジアにとっても大切なことでありますが、同じアジアに属する、また中国と隣国である私どもにとっても、当然裨益をする大切なことであるという意味において、日本にとっても非常に重要であったというふうに考えてございます。

 その上で、今、開発途上国であるかどうかというお話でございました。委員の方からOECDのお話もいただきましたが、中国は、OECD開発援助委員会、いわゆるDACが作成している最新の援助受取国リストにおいては、先ほど低中所得国という話がございましたが、既に高中所得国へと位置づけられているということが事実でございます。他方で、一般的なこの定義に基づけば、DAC上のルールでは、ODAの供与対象となる開発途上国で依然としてあるというのが事実でございます。

 他方で、今委員の方から累次にわたりましてお話しいただきましたとおり、近年、中国が極めて急速に経済発展をし、そして、まさに技術水準も向上しているというのもこれまた事実でございますので、私どもといたしましては、ODAによる中国への支援は既に一定の役割を果たしたというふうに理解をしております。

 したがいまして、そういう認識に立って、私どもとしては、今後は、今後はというか、もう既にそうなっておりますが、日中両国が直面する共通の課題について、我が国の国民の生命や安全に直接影響するもの、こういったものに限って、極めて限定的にこれから活用してまいりたいと考えておるところでございます。

武藤(貴)分科員 今、御指摘ありました、日中両国の国益に直接関係するものとおっしゃられたんですけれども、今回、二〇一二年度実施の技術協力プロジェクト一覧があるんですけれども、これを見ますと、直接日本国民に資するものじゃないものもたくさん含まれているように感じます。

 例えば、北京市の持続的農業技術研究開発計画とか、あるいはダム運用管理能力向上プロジェクトとか、あるいは、これはあれですけれども、道路の耐久性・補修技術向上プロジェクトとか、四川省に植林するプロジェクトとか、こういうのもたくさん含まれています。こういう、中国としては確かにありがたいという側面があるのかもしれませんけれども、あくまでも我が国の国益に資するという観点からすれば、不十分ではないかというふうに思います。

 もう一つ、先ほど、たくさん中国から謝意があったというふうにおっしゃられました。これは、日本国政府に感謝するという言葉だったのか。厳密に言うと、評価するという言葉も中国政府はよく使われています。感謝という言葉を余り使わない。国内に向けて日本からODAをもらっていることも余り言わないので、知られていないんですけれども。中国政府は、海外に援助する場合は支援というふうなことを使って、中国自身もODAを出す国になっていますけれども、日本からもらう場合は、協力とか、合同でプロジェクトをやっているという言い方をします。もう一回、その謝意という言葉が現地語でどういう言葉であったのかというのをお伺いさせてもらいたい。

 それと、ODA大綱に、四原則、援助実施の原則というものがありますが、この中に、基本的人権及び自由の保障とか、市場経済導入、民主化の促進というものが書いていますけれども、果たして本当に民主化が中国国内で図られてきたのか、これは効果がないのではないかと思いますけれども、御所見をお伺いさせてもらいたいと思います。

    〔中山(泰)主査代理退席、主査着席〕

岸田国務大臣 まず、中国の謝意について、具体的にどういった表現を使っているのかという御質問ですが、例えば二〇〇七年四月の温家宝総理の国会における演説においては、日中友好関係の発展は両国人民に確実な利益をもたらしました、中国の改革開放と近代化建設は日本政府と国民から支持と支援をいただきました、これを中国人民はいつまでも忘れませんというような発言。

 また、これは二〇〇八年五月ですが、胡錦濤主席訪日時の日中首脳会談における発言ですが、日本政府と日本国民が円借款等により中国の近代化を支えてくれたことに心から感謝します、こういった表現がされております。

 また、二点目、中国の民主化に資することになったのかということでありますが、この民主化につきましては、そもそも国の体制が我が国とは随分異なっております。そして、経済を初めさまざまな条件の違いもあります。一概に我が国から中国の民主化について評価するのはなかなか難しいし、立場としてそれは控えなければならないのではないかと存じます。さまざまな我が国の支援が活用されたということは事実だと思っていますが、評価については、我が国の立場から評価するのは控えたいと存じます。

武藤(貴)分科員 私は、今大臣お答えいただきましたけれども、評価を差し控えるということでしたけれども、日本のODA大綱に書かれている目的について達成されたかどうかをお伺いさせていただきたいと思ってお伺いしました。

 私が何でこんなことを聞くかというと、実は、各国というのは、ODA大綱じゃなくて、法律を定めて、それに基づいてODAを出している国々もたくさんございます。特に、アメリカは対外援助法というものがありまして、これに基づいて厳格な運用がなされている。もちろん、法律に違反すれば、法律違反ということで問題になるわけです。ところが、日本の場合は、ODA大綱ということですから、非常に緩やかな、ガイドラインと言えば大げさかもしれませんけれども、厳格な運用が求められていない。

 今おっしゃられたように、法律だと国会の同意があって成立します。そして、その法に基づいて厳格な予算づけが行われていく。ところが、このODA大綱というのは、非常に、言ってみれば緩やかで恣意的な運用によって、厳格な運用がなされない、目的とか、あるいは理念、方針に基づいて運用されていない場面が多々出てくるわけです。

 後で留学生支援のことについてもお伺いしたかったんですけれども、留学生支援というのはODAの一項目になっていましたので、これはどこの条項に基づいているんですかと言ったら、経済協力というODA大綱の文言に基づいて留学生支援を行ってきたというふうな、役所の、文部科学省と外務省の答弁がありました。でも、経済協力で留学生支援をやっているという国はほかにないと思います。

 ですから、日本が、厳格な、きちんとした、国民に説明のつく運用をするためには、大綱じゃなくて、やはりODA基本法というものを制定して、それに基づいた運用というものが今後検討される、あるいは研究されていくべきだと思いますけれども、これについて御所見をお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 まず、ODAにつきましては、言うまでもなく、我が国の外交にとりまして最も重要な外交手段であります。

 そして、ODAを実施する際に一つ大切にしなければならない考え方として、二国間を含む総合的な外交判断に基づいて、機動的そして柔軟な対応が求められるという点であります。

 ODA政策につきましては、その理念あるいは援助実施の原則等を大綱という形でまとめて実施をしているわけですが、それにかえて、ODA基本法、こうした法律を制定するという議論があるわけですが、それが適当かどうかについても、今申し上げました機動的あるいは柔軟的な対応が求められる、こうしたニーズにしっかり応えられるかどうか、この点もしっかり考えた上で、これは将来的な課題として議論を進めていくべきものではないかと考えています。

 しっかり現実に対応できるODA、我が国の外交にとって最も重要な外交手段であるODA、これを生かすためにはどういった体制がいいのか、こういった視点で議論は進めていくべきだと考えます。

武藤(貴)分科員 議論を進めていくべきだという前向きな御所見をいただきました。ありがとうございます。

 私はやはり、ODA大綱だと、きちんとした、国民に説明ができる、民意を反映した形で厳格な運用がなされていかないと思いますので、法律をつくって、それに基づいてやっていくべきだというふうに思います。

 そして、次に、今やられているODAの中で、留学生支援ともう一つ、環境支援が重点が置かれているものの一つとしてあると思います。

 この環境支援ということ、空気の浄化ですとか、いろいろな環境汚染の浄化の支援がプログラムによって事業としてなされているんですけれども、一つ、PM二・五というのが中国大陸から日本に、特に西日本を中心として多く飛来しているということが明らかになっています。それの人体に対する影響も明らかになっている。一つ、環境支援の目的が日本の国益になっていないんじゃないかというふうに、前、外務省にお伺いしたところ、中国のPM二・五を浄化する環境技術が向上すれば、これは日本の国益にもなるんだというような回答が返ってきました。

 ちょっと古い事例なんですけれども、かつてカナダで越境する公害訴訟事件が起きまして、カナダからアメリカに越境する物質が流れ出て、それで健康被害が出て裁判になる、トレール溶鉱所事件というのがありました。一九二八年のことなので、ちょっと古い事例なんですけれども。要するに、国内で発生した公害に関しては国に管理責任があるんだ、カナダに管理責任があるんだという判決が出て、カナダは賠償をアメリカに支払ったという経緯があります。

 日本もやはり、環境被害があるということが科学的に証明されているわけですから、これをしっかり中国にただしていく必要があると思います。環境被害を出さないようにPM二・五をまず防いでもらうこと、そして、こっちに飛来したもので環境被害が出るのであればその賠償も求めて、日本は研究等々を進めていくべきだと思います。

 それで、仮に、日本に汚染した物質をどんどん流すと日本から環境支援がもらえるということになるのであれば、韓国だって、北朝鮮だって、周辺の諸国は、汚染物質を日本に流せば日本から技術協力がもらえるという理屈が成り立っちゃうわけですから。だから、これはしっかり、日本が支援するんじゃなくて、中国の自助努力でやってください、あるいは、環境被害が出た場合は賠償も求めていきますよということをしっかり表明していくべきだと思いますけれども、御所見をいただきたいと思います。

下川政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、御指摘のありましたカナダの汚染物に関する国家賠償の問題でございますが、御指摘のトレール溶鉱炉事件というものに関しましては、当事国である米国とカナダの合意により設置されました仲裁裁判所におきまして、科学的データを十分に検証した上で判決を出したものというふうに承知しております。

 中国のPM二・五の我が国への影響については、科学的な見地から慎重に検討していくべきものであるというふうに考えております。

 以上を申し上げた上で、PM二・五を含む中国における深刻な大気汚染につきましては、中国におられます在留邦人の方々の健康への影響という観点、さらには日本の環境にも影響を与えかねない問題として、日本政府としても高い関心を持って注視しているところでございます。

 中国の大気汚染対策というのは、もちろん一義的には中国が責任を持って対処すべき問題でございますけれども、国境を越える環境問題は一刻も早く解決すべき問題でもございます。したがいまして、我が国は、過去の公害対策等で培った経験や技術を活用しながら、日中二国間や日中韓の枠組みも通じて、可能な協力を進めていきたいというふうに考えているところでございます。

武藤(貴)分科員 時間がもうなくて、聞こうとしていたことの半分も行かないんですけれども、次に、ちょっと話題をかえて、留学生支援についてお伺いさせてもらいたいと思います。

 先ほど申し上げましたODA大綱の経済協力という部分に基づいて留学生支援をしてきた。これを来年度からODAから外してやっていくということでありますけれども、ODAじゃない部分でやるとしても、予算額も内容も変わらないという現状があります。

 私は、ODA大綱に基づいて留学生支援をやる、あるいは基づかないで留学生支援をやる、これは別に反対するものではないんですけれども、ただ、日本の税金に基づいて、中国からの留学生にお金を出して学んでもらう。やはりこれは日本に感謝してもらいたいですし、日本のそういういろいろなものを学んで、中国本土に帰った後も、そういうことを中国本土でいろいろな形で生かしていただきたいというふうに思います。しかし、文部科学省の方々にお伺いしたら、本国に帰った後どうなっているのか、ほとんどわからないということでありました。

 調べてみますと、国費留学で日本に来た中国人留学生、学費免除される上に、生活費が月々十二万円、院生の場合は十四万円もらっています。日本国内の生活保護は七、八万円だと思うんですけれども、これ以上に高い額を毎月毎月留学生の方が、中国人がもらっているわけですね。

 こういうものをもらっているわけですから、本国に帰った後どうなっているのかということをきちんと把握するのと、それと、やはり日本の国益に資する形で、私たちの税金が使われて中国人が学んでいるわけですから、それを生かす形で今後運用していただきたい、このように思います。

 ちょっと、もっと聞きたいんですけれども、とりあえず御意見をお伺いしたいです。

中岡政府参考人 委員御指摘の留学生の件でございますけれども、中国人留学生を含めまして外国人留学生の受け入れは、各国の人材育成への貢献のみならず、日本人学生の異文化交流促進などの学修環境の充実とか、あるいは相互交流による教育研究力の向上など、大学自体の国際化に大きく貢献しているものでもございますし、一方で、日本文化の理解促進、国際関係の改善に資するなど、国益につながる多様な意義を有するものと考えております。

 したがいまして、中国人留学生を含めました外国人留学生の受け入れにつきましては、外交的、経済的、教育的にも重要な意義を有するものであると考えておりますので、ODA対象にするかどうかにかかわらず、支援が必要なものというふうに考えておるわけでございます。

 先ほど委員御指摘の、中国人留学生の帰国後の捕捉ということでございますけれども、外国人留学生の帰国後における追跡調査につきましては、独立行政法人でございます日本学生支援機構におきまして、卒業後の連絡先、進路等を調査して、可能な限り情報を把握するように努めているとともに、外務省と連携いたしまして、帰国留学生会を活用し、帰国後の状況について継続して情報収集に努めているところでございます。

 今後ともしっかりとフォローアップに努めたいと考えております。

 以上でございます。

武藤(貴)分科員 御答弁ありがとうございました。

 もう時間が来たのでこれでやめますけれども、やはり日中友好に資する形でODAをこれからきちんと見直していかなければいけないというふうに思います。きょうはたくさんの御意見をいただきましたが、私もそういう立場で今後も意見を言っていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

 ありがとうございました。

金田主査 これにて武藤貴也君の質疑は終了いたしました。

 次に、塩川鉄也君。

塩川分科員 日本共産党の塩川鉄也です。

 きょうは、外務大臣に改めて米軍機の低空飛行問題についてお尋ねをいたします。

 最初に、鳥取県における米軍機の低空飛行問題ですけれども、米軍機と思われるジェット機の低空飛行目撃情報が住民から市町村に寄せられますと、鳥取県はその都度、ジェット機の低空飛行情報というフォーマットを使用して、市町村から中国四国防衛局美保防衛事務所にファクスで送付するのと、市町村からの情報の報告を県が取りまとめて、これを踏まえて、外務省の方に、米軍に対する低空飛行訓練の中止等適切な措置と相談窓口の設置などを要請することを依頼しております。

 最初に外務省の方にお尋ねしますが、ことしの一月七日、鳥取県は外務省に対して、ジェット機の低空飛行目撃情報を報告し、低空飛行の中止を要請しました。その内容について紹介していただけますか。

冨田政府参考人 お答え申し上げます。

 一月七日、鳥取県の方から、私どもの地位協定室の方にファクスで、ジェット機の低空飛行情報についてという報告をいただいております。

 その中で、一月二日ほか、幾つかのジェット機の飛行情報について御連絡をいただくとともに、低空飛行訓練の中止等適切な措置と相談の窓口について要請していただくよう引き続きお願いしますという御連絡をいただいているところでございます。

塩川分科員 これは、一方で外務省にそういう要請があるのと同時に、防衛省に対しても緊急要請を行っていまして、そこには具体的に、この正月においては県内各地で米軍機の低空飛行情報が相次いで寄せられています、本来静寂にことほぐ正月にこのような低空飛行訓練があったことは極めて遺憾でありますと、静かな正月が爆音で台なしだということを訴えておられるわけであります。

 防衛省にお尋ねしますが、鳥取県下の市町村から防衛省に寄せられたジェット機の目撃情報の報告は、過去何年間か、どのぐらいの件数か教えていただきたいのと、あわせて、防衛省が集計しております米軍機の飛行に係る苦情受付状況表、これにおける鳥取県からの苦情件数として受け付けているのは何件か、この二点でお答えください。

山本政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、鳥取県の関係自治体から寄せられる米軍機に係るジェット機の低空飛行に関する情報につきましては、中国四国防衛局の美保防衛事務所に連絡されることとなっております。

 過去五カ年度におきます当該連絡の件数は、平成二十一年度が七件、平成二十二年度が六件、平成二十三年度が十三件、平成二十四年度が八件、平成二十五年度は、平成二十六年一月末現在でございますけれども、四十四件ということで、合計七十八件となっております。

 一方で、過去五カ年度におきます米軍機の飛行に係る苦情等受付状況表における鳥取県からの苦情件数は、平成二十六年一月末現在で、平成二十五年度の四件となっております。

塩川分科員 過去五年間で七十八件情報として寄せられている。これは、鳥取県は当然、苦情として寄せているわけですけれども、防衛省の苦情として把握している件数が四件ですか。

 こんなに差があるのはなぜなんですか。

山本政府参考人 お答え申し上げます。

 鳥取県の関係自治体から中国四国防衛局美保防衛事務所に提供される米軍機に係るジェット機の低空飛行に関する情報につきましては、まず、米軍に対する苦情なのか、中国四国防衛局に対する情報提供なのかを、鳥取県の関係自治体に確認することとしております。

 その上で、米軍に対する苦情であった場合には、米軍にその内容を通知し、飛行の有無等の事実関係を問い合わせるとともに、その結果を鳥取県の関係自治体に情報提供しております。さらに、米軍機の飛行に係る苦情等受付状況表につきましては、米軍機であるとの回答が米軍からあったものを集計する方法により作成をしております。

 鳥取県の関係自治体から寄せられる米軍機に係るジェット機の低空飛行に関する情報の件数と、米軍機の飛行に係る苦情等受付状況表の件数が一致していないのは、こうしたことによるのではないかと考えております。

塩川分科員 鳥取県から寄せられる、各市町村、住民の方からの声なんですよ。それは、困るということなんですよ、全部苦情なんです。それなのに、情報提供というふうにされちゃうと、苦情として扱われないということが、今回のこういう形で、情報提供か苦情かという形で大きな差になってあらわれるわけです。

 ですから、この点では、鳥取県は、二月の十八日に、各市町村に対してこういう依頼の通知を出しています。在日米軍機による低空飛行等の情報提供様式の変更に関する依頼ということで、つまり、住民からの具体的な苦情の内容を書いてください、こういうことで集計をして、これを防衛省に苦情として認識してもらえるようにしよう、こういう扱いに変更した、ぜひ協力してほしいという中身であります。この点は、我が党の市谷鳥取県議なども働きかけを行ったわけですけれども。

 防衛省にお尋ねしますが、鳥取県下の自治体から寄せられたこういう低空飛行についての情報というのは、鳥取県はこのように苦情として整理をしているわけです。ですから、今後、当然のことながら、苦情として受け付けて、米軍に確認をするし、要請もするし、その旨を当該自治体に連絡をする、こういうことになるということでよろしいですね。

山本政府参考人 お答えいたします。

 防衛省におきましては、米軍機の飛行に伴う苦情を鳥取県の関係自治体から受けた場合には、米軍に対しその内容を通知し、飛行の有無等の事実関係を問い合わせを行うとともに、その結果を鳥取県の関係自治体に情報提供しております。その結果につきまして、米軍機の飛行に係る苦情等受付状況表に米軍から回答があったものを集計する方法によっております。

 今後とも、このような考え方にのっとりまして、適切に対応してまいりたいというふうに考えております。

塩川分科員 ですから、苦情として受け付ければそういうふうに処理をするということですから、今、鳥取県はそういうふうに整理をしたと言っておられるわけで、しっかりと受けとめて、米軍機かどうか確認をし、必要な住民の声を届け、そして苦情受付状況表などの整理も含めて、米軍機かどうかの確認をきちんと地元自治体、住民に知らせていく、こういうことをしっかりとやってもらいたい。

 岸田大臣にお尋ねしますが、先日は、エリア567というところでの、島根、広島上空での低空飛行問題を取り上げましたけれども、今回、ブラウンルートと言われる、中国地方の尾根を飛んでいるような、そういう飛行ルートのことで、鳥取県の事例で紹介しているわけですけれども、昨年五月三十日の中国地方知事会議は、共同アピール「住民の平穏な生活を乱す米軍機の飛行訓練への対策について」を出しました。その中で、国に騒音測定器の設置を要望しております。

 島根、広島に防衛省が設置をし、群馬県についても地元の要望なども踏まえて検討したいということでしたけれども、鳥取県内に騒音測定器を設置する、こういう立場で国として働きかけをしてほしいと思うんですが、大臣から御答弁をいただきます。

岸田国務大臣 まず、御指摘の中国地方知事会議からの御要望につきましては承知をしております。こうした継続的な航空機騒音が地元住民の方々にとりまして大変な問題であるということ、これは強く認識をしなければならないと考えています。

 そして、騒音測定器の設置について御質問いただきましたが、測定器の設置を含む実態把握の調査につきましては防衛省において行っておりますが、御案内のとおり、昨年九月から、島根県と広島県、この二つの県におきましては試行的に騒音測定器を設置する、そして測定結果の公表を行う、こういった対応を行っているところであります。

 今後につきましては、ぜひ、外務省としましても、引き続き防衛省とよく連携しながら、適切な対応を考えていかなければならないと思っております。

塩川分科員 ぜひ、自治体の方から、国が客観的に被害状況を把握して米軍に中止を要請してほしいということが趣旨ですので、そういう点でも、米軍に訓練中止を求める、そういう立場に立って、国がしっかりとした実態把握をする、このことを強く求めておくものであります。

 次に、首都圏における米軍横田基地のC130の低空飛行問題です。

 横田基地の訓練に関する自治体への事前通知、防衛省が出しております。周辺自治体に対して横田基地の訓練に関する通知はどのような通知が出されているのか、その中身について簡単に説明をしていただけますか。

山本政府参考人 お答え申し上げます。

 横田飛行場における訓練に関する自治体への事前の情報提供につきましては、米軍からの情報提供を受け、その内容について関係自治体にお知らせしているところでございます。

 具体的には、横田飛行場における、一、消火訓練の実施、二、レディネスウイーク、即応準備週間と呼んでおりますけれども、レディネスウイークの実施、三、EME、緊急管理演習の実施、四、ORE、運用即応演習の実施、五、PAS、パブリック・アドレス・システム、GBS、地上爆発模擬装置試験の実施、六、人員降下訓練の実施、七、年間演習計画に関しまして、東京都及び同飛行場の周辺自治体である五市一町、福生市、昭島市、武蔵村山市、立川市、羽村市、瑞穂町に対しまして、訓練の日時、場所、訓練の内容などにつきましてお知らせを行っております。

 また、八、横田飛行場における編隊飛行訓練の実施につきましては、これらの自治体に加え、埼玉県及び八市、日野市、青梅市、あきる野市、八王子市、入間市、飯能市、狭山市、日高市に対しまして同様の内容のお知らせを行っております。

塩川分科員 こういうように、米軍横田基地の訓練については、やはり、基地内で煙が出る、どうなっているんだということについて地元の住民の方から不安の声が上がる、そういうときに、事前に通知してくれということを自治体の方から働きかけてきたというような経緯があるんですよね。

 ですから、消防訓練、消火訓練などについても事前に通知をするとか、基地内で音が出るとかそういう訓練についても伝えるとか、そういう中で、人員降下訓練、パラシュートの降下訓練、空から人が降ってくる、こういった訓練などについても、この間、事前の通知が地元自治体に行われているわけであります。その対象となるような自治体がこの間ふえてきているというのも確かであります。

 防衛省に重ねてお尋ねしますが、「横田基地における人員降下訓練の実施について」という通知の件ですけれども、これはパラシュートの降下訓練ですから、輸送機からおりるわけですよね。だけれども、その輸送機というのは、別に基地の滑走路にとどまっているわけではなくて、空を飛んでいるわけで、その飛んでいるエリアというのは、これは横田周辺の多摩だけではなくて、神奈川の方にも行くし、埼玉の方にも飯能方面までは飛んでいくわけです。

 そういう点で、この人員降下訓練については、現状では五市一町と東京都に限られていますけれども、実際には飯能市など埼玉県下にも飛んでいく。であれば、こういったC130の米軍横田基地の人員降下訓練についての事前の通知は、飯能市を含めて周辺自治体まで拡大することが必要なんじゃないかと思うんですが、この点はいかがですか。

山本政府参考人 お答えいたします。

 横田飛行場におきます人員降下訓練の実施に関する情報につきましては、先ほど申しましたように、現在、東京都及び同飛行場の周辺の自治体である五市一町に対して情報提供を行っているところでございます。

 防衛省といたしましては、そのほかの自治体への情報提供につきまして、自治体からの御要望等を踏まえつつ対応してまいりたいというふうに考えております。

塩川分科員 ですから、関係する自治体から要望があれば事前通知を行いますということでよろしいですか。

山本政府参考人 はい、そういうことでございます。

塩川分科員 資料の配付をいたしましたが、大臣もごらんいただきたいんですけれども、これは、こういった、米軍横田基地が主催をしている関東航空機空中衝突防止会議というのがありまして、つまり、米軍横田基地が、民間の航空機のパイロットやオーナーの方、航空関係者の方を集めて、首都圏の有視界飛行における安全の確保ということを目的に開いている会議で、この間、四回行われております。

 その四回目の資料がこの冊子でありまして、これがその中の一部になっております。これは、地元自治体が、米軍横田基地の広報に、資料があるんだったら欲しいという要望をして、横田の広報が地元自治体に提供し、そのことを私もお聞きしたものですから、防衛省に依頼をして、米軍の方から防衛省経由でこういう冊子もいただいたわけであります。

 この地図をごらんいただきますと、これは右下の方に囲みで注記がありまして、一番上に太い実線がありますけれども、これがC130のフォーメーション、つまりC130の編隊飛行の訓練エリアを指しているわけです。この地図全体、上の方に、ヨコタ・エアベース・VFR・トレーニング・エリアズとありますように、C130とかUH1とか、こういったものの航空機のエリアが地図に落とし込んであるんですけれども、太い実線というのがC130の編隊飛行訓練のエリアとなっているわけです。ですから、米軍自身が、こういうエリアで飛んでいますよということを日本の民間の航空関係者の方に周知をしているということなんです。

 防衛省に確認をしますけれども、こういった太い実線で囲まれていますC130のフォーメーション、編隊飛行訓練のエリアは、首都圏のどの都県まで広がっているでしょうか。

中島政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生からまさに御説明いただきましたとおり、配付いただきました資料によりますれば、南関東、神奈川を含みます一部空域といったものが、米軍のC130が編隊飛行を行うエリアとして示されているものだと思います。

 ただ、このエリア内におきまして、実際に米軍のC130がどのような飛行をしているかといった詳細につきましては、我が方は承知しておらないということでございます。

塩川分科員 地図をごらんいただけばわかることなんですが、北の方からいけば、茨城、栃木、群馬、それから長野、山梨、埼玉、東京、神奈川、静岡と、九都県に及ぶ範囲で訓練飛行が行われているということなんです。

 そこで、先ほど紹介いただいた防衛省の事前通知の中にも、編隊飛行訓練の実施についてという通知があります。この編隊飛行訓練の実施についての通知をもらっているのは、東京以外では埼玉県内の自治体に限られているわけなんですね。ですけれども、ここでごらんいただいたように、さらにその遠くまでC130が飛んでいるわけなんです。

 例えば、桐生タイムスという群馬県桐生市のローカル日刊紙があるんですけれども、その夕刊なんですけれども、この桐生タイムスには、「大型飛行機で騒音」という見出しで、「家全体が振動した」とか「五、六機が編隊を組み、驚くほど低空を飛んでいた」、こういう声が紹介をされて、市の方は、県に対して、米軍機かどうか確認してもらいたい、こういう要請を行ったということなんです。

 ですから、ごらんいただいてわかるように、編隊飛行訓練も首都圏全域で行われて、現にこういう飛行訓練が行われ、この日付の八月十九日というのは、防衛省から編隊飛行訓練の実施についてという通知が出されている、まさにその訓練そのものだったわけです。

 ですから、桐生市にこの通知が届いていれば、こんなことで地元の自治体が混乱することはなかったということでもあるわけで、そういう点でも、このC130の編隊飛行訓練エリアに該当するような自治体には編隊飛行訓練の通知をしっかりと行うということが必要じゃありませんか。

山本政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘ございましたように、横田飛行場における編隊飛行訓練に関する情報につきましては、これまで情報提供を行っております東京都及び同飛行場周辺の自治体であります五市一町に加え、これまで御要望のあった自治体、埼玉県ほか八市に対して行っているところでございます。

 防衛省といたしましては、そのほかの自治体への情報提供につきましては、自治体からの御要望等を踏まえつつ対応してまいりたいというふうに考えております。

塩川分科員 桐生市からも、実際、米軍機かどうか確認したいという声も出ています。私も、この直後に副市長とお会いして、そういう話もお聞きしたところです。ぜひ、そういう形で、自治体からの要請があればしっかりと通知をするという対応をお願いしたい。少なくともこういった事前の通知が必要なわけで、実際には、とにかく大規模な訓練が行われているわけなんです。

 米軍横田基地のC130が首都圏上空で編隊飛行訓練を実施しているということがこういう形で明らかになったわけですけれども、これは単にそこにとどまるだけではありません。

 例えば、東富士の演習場があります。ここに、地元の団体と週間使用計画というのを結んでおりまして、一週間の訓練計画について自衛隊と米軍が出すとなっているんですね。その米軍の訓練計画の中に米軍機の航空機使用というのがあって、「プロペラ機が演習場上空を飛行します(物料投下のみ。)。」物資ですね。つまり、輸送機が東富士演習場の上空で物資投下の訓練を行うということが、週間使用計画、つまり東富士演習場で計画として行われるということが書かれているんです。

 ここで言っているプロペラ機はC130じゃないかなと思うんですけれども、この物料投下がどんなものかも含めて、防衛省の方、いかがですか。

山本政府参考人 お答えいたします。

 東富士演習場におきましては、自衛隊及び米軍が東富士演習場を使用するに当たり、防衛省と関係自治体等との取り決めに基づきまして、その使用計画を一週間前に関係自治体等に通報するため、陸上自衛隊富士学校長から御殿場市長に通知をしたところでございます。

 その中に、「プロペラ機が演習場上空を飛行します(物料投下のみ。)。」という記述がございますけれども、このプロペラ機の機種ですとか物料投下の内容につきましては、米軍の運用に係る事項でありますので、防衛省としては承知をしておりません。

塩川分科員 米軍横田基地主催の会議資料、地図を見ても、富士山周辺も訓練飛行のエリアに入っています。御殿場市の地元の話によりますと、この米軍C130が定期的に東富士演習場に飛んできて、米軍の海兵隊のキャンプ富士への物資の運搬とあわせて、投下訓練を行っているということが言われているそうであります。首都圏全域でのC130の訓練飛行の一端が見えております。

 防衛省が余りおっしゃらないので、例えば雑誌で「Jウイング」というのがあるんですけれども、二〇〇六年の二月号を見ますと、「世界最大の輸送力 米空軍の輸送機」ということで、「横田基地 C130E同乗レポート ジャンパー降下、物資投下、アサルトランディングを体験する!」こういう格好で、アサルトランディングというのは強襲着陸帯のことですけれども、こういった物資投下あるいは人員降下、強襲着陸帯への着陸訓練、こういうことが首都圏の上空で行われているということが紹介もされているわけなんです。

 防衛省にお尋ねしますが、この事前の通知におきまして、人員降下訓練の回数、人員降下訓練に関する事前通知、この回数は近年何回ぐらいあるんでしょうか。

山本政府参考人 お答えいたします。

 物料投下訓練及び人員降下訓練の年度ごとにおける事前通知回数でございますが、近年では、平成二十二年度は事前通知の実績はございません。平成二十三年度につきましては、物料投下訓練三回、人員降下訓練一回、平成二十四年度につきましては、物料投下訓練一回、人員降下訓練三回、平成二十五年度につきましては、平成二十六年二月二十一日現在で、物料投下訓練四回、人員降下訓練三回となっております。

塩川分科員 これは、さかのぼって、例えば十年ぐらい前というのはこういうのはあるんですか。

山本政府参考人 お答えいたします。

 現在さかのぼることができる年度が平成二十二年度までということでございます。

塩川分科員 こんなにいっぱい人が降ってくるようなパラシュート降下訓練を首都上空の横田基地なんかでやっていないんですよ。まさに近年の、この数年間の話なんですよね。

 こういうパラシュート降下訓練を事前通知で実際にやっているわけですが、事前通知なしにパラシュート降下訓練をやっている例もあるというのは、地元で監視行動やウオッチャーの方なんかの話にも出てきているわけです。兵士が基地の外に落ちちゃったとか、こういう話なんかも現に出ているわけです。

 この問題について、米軍横田基地のプレスリリース、これは防衛省が自治体に事前通知もしていますけれども、その中に、サムライサージという訓練なんかを紹介して、いわば整備の部隊と航空機の部隊が協力をして合同訓練を行う、今はラージ・フォーメーション・トレーニングと呼ばれているそうですけれども、こういった訓練が首都の上空で行われています。

 大臣にお尋ねしますが、今、米空軍がCV22オスプレイの配備先として横田基地も検討対象にしているという趣旨の報道がありました。そのために、横田基地周辺の自治体からは、CV22オスプレイ配備の検討を撤回せよという議会の意見書を採択する、それが十数議会にも広がっております。

 ここにあるのは、オスプレイの配備をやめてほしいというだけではなくて、繰り返されるこういうパラシュート降下訓練のような大規模軍事訓練が首都の上空で行われているということについて、やめてもらいたいという気持ちも含めて、抗議の意思として出されているわけです。

 人口密集地の首都圏の上空で大規模軍事訓練を繰り返すというのは異常だと思いませんか。

岸田国務大臣 日米安全保障条約が、我が国の安全、さらには極東の平和と安定のために米軍が我が国に駐留すること、これを認めているわけですが、駐留を認めているということは、軍隊としての機能に属する諸活動を一般的に行う、これを前提にしていると認識をしています。そして、この諸活動の中に飛行訓練というものもあるのだと認識をいたしております。

 ただ、その一方で、米軍が全く自由に飛行訓練を行ってよいわけではないということ、これは当然のことであります。我が国の公共の安全に妥当な配慮を払って活動すべきだということ、これも当然のことであります。

 政府としましては、こうした米軍の飛行訓練に際しましては、まずは、安全面において最大限の考慮を払ってもらわなければならないというふうに思いますし、また、さまざまな騒音等の影響につきましても、これはもう最小限にとどめてもらわなければならない、こういったことで、これまでも米側に対してさまざまな申し入れを行ってきました。

 今後とも、日米合同委員会初めさまざまな場を通じましてこうした考え方は伝えていきたいと思いますし、具体的な課題についても、しっかりと意思疎通を図っていきたいと考えます。

金田主査 塩川鉄也君、時間が参りました。

塩川分科員 この首都圏上空での軍事訓練が異常だという発言がないということ自身が問題だと言わざるを得ません。

 大体、アメリカ本国では、人口密集地の上空で低空飛行訓練なんかありませんよ。日本だって、自衛隊は人口密集地上空での低空飛行訓練なんか通常行っておりません。

 そもそも、首都に米軍基地、外国軍基地があること自身が異常だ、こういう異常を改めて、オスプレイは本土にも沖縄にも要らないし、首都圏上空でのこういう軍事訓練はきっぱりとやめるということを強く求めて、質問を終わります。

金田主査 これにて塩川鉄也君の質疑は終了いたしました。

 次に、山之内毅君。

山之内分科員 日本維新の会の山之内毅でございます。

 私は、ふだんは内閣委員会、財務金融委員会、そして災害特別委員会に所属しておりまして、岸田外務大臣におかれましては初めての質疑となりますが、どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、私は、本日は大臣に、日本経済の再生に資する経済外交の強化、この件についてお伺いして、また、海外に行かれる邦人の方に対する環境整備、こういった点から質疑をさせていただきたいと思っております。

 まず、私は、衆議院に当選させていただいて一年生議員のまだ三十二歳の若輩者ではございますが、そもそもなぜ衆議院に出馬をいたしましたかといいますと、今、財政、プライマリーバランス、こういったものが極めて厳しい日本におきまして突破口はないのかと。また、私は鹿児島出身でございます。地方中の地方、もちろん鹿児島市は中核都市ではございますけれども、そういったところが、成長戦略、地域でもって何か海外に打って出る、もしくはアジアの玄関口になるような転換はできないものだろうかと。

 やはり田舎にいると若い方々の仕事がない、所得が低い、だから、どうしても都市部に流出してしまう。鹿児島であれば、東京、大阪、福岡でしょうか、そういったところに行かれるというところです。私も、実家が、武家屋敷もあるような田舎の町もあるんですけれども、そこだと、それこそ団塊の世代の方々がたくさんその時期に集団就職で出ていかれた古い町でございます。

 そういったところで、古民家も空き家になっています。そういった空き家のところがどうなっているかというと、私は、神社の神職をしておるものですから、古民家を改装するときに家屋の清はらいというのに行くんですね。新しく入る方がいらっしゃったら、そこにおはらいに行くんですけれども、そういったときに、買われた方がフランス人の方だったんですね、奥様は日本人の方でしたけれども。

 要は、日本の田舎の方で空き家が出てくる中で、そういった方々が出ていかれた、お子さん、お孫さんは都市部に行かれた、その中において、フランス人の方が来られたんです。その方とお話ししますと、こういったものはすごくいいじゃないか、日本のいわゆる味があるいい物件じゃないか、しかも安いし、買おうということで奥様と改築して、すてきなデザインにされて住まわれました。

 要は、ある意味、日本人が離れていった場所に、外国人の方が新たな価値観を持ってこられる。特に日本におきましては、ASEANもそうですけれども、そういったところと相互に交流しながら、そういった価値、日本人がいなくなったところに新たなものを求めて来ていただくような、そういったものを含めて経済外交をしていって発展していくべきだと思っております。

 財政は厳しいものだと思います。私も、内閣委員会におきましては、プライマリーバランスの黒字化、これは二〇二〇年までにされると。借金が一千兆円ある中において、三本目の矢、成長戦略、規制改革、これをする。

 私は、鹿児島が地元なものですから、どうしても今回、TPPの問題があります。TPP、農畜産国においては、私は賛成なんですけれども、当初、県の方のローカル新聞では、鹿児島県においては四千億のダメージがあるだとか報道されています。やはり地元の方々は不安になるんです。ああ、鹿児島、また地方が衰退してしまう、これはどうすればいいのか。私の個人的な認識であれば、TPPも含めてですが、今後はTPPだけにとどまらず、RCEPもある、FTAAPもある、当然そういった流れになっていくものと思っております。

 その中で、改めて大臣にお伺いしたいことが、大臣の本会議での発言にもあられました、今後、積極的平和主義の立場から、ASEANを初めとするアジア太平洋諸国の方々、こういった方と関係強化をしていきたい、かつ、経済外交、こういったものを強化していきたいとおっしゃられていました。この点について、所見を教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。

岸田国務大臣 積極的平和主義についてですが、まず、我が国を取り巻く外交・安全保障環境は大変厳しいものがあると考えます。そして、昨今は、サイバーですとか宇宙ですとか、国境を越えた新しい脅威が発生している、こういった状況の中にあります。

 そういった状況ですので、やはりどの国も、一国のみでみずからの国の平和や繁栄を守ることはできない。やはり国際社会と、また関係国と連携しながら、地域ですとか国際社会全体の平和や繁栄を維持することによってみずからの平和や安定も維持できる、こういった時代にある。こういった時代認識に基づいて、我が国としても、今後とも積極的に、こうした地域や国際社会の平和や安定に、そして繁栄に貢献していこう、これが積極的平和主義の基本的な考え方であります。

 こうした考え方に基づいて、我が国は、従来以上に国際貢献に汗をかいていこう、こういった姿勢で臨んでいます。

 アジア太平洋地域におきましても、さまざまな難しい状況が存在いたしますが、特に、私自身も、外交の三本柱として、近隣諸国との外交推進というものをその三本柱の一つとして掲げさせていただいております。東アジア地域、そしてASEAN諸国を初めとするアジア太平洋地域の国々とともに、今言った考え方のもとに積極的平和主義を進めていくべきである、このように基本的に考えております。

山之内分科員 ありがとうございます。

 私も、経済連携、日本一国で今の時代に成り立つのであればそういった連携ももしかしたら必要ないのかもしれないですが、とうの昔にそういった時代ではないわけで、やはりそういった意味で今回TPPも入られているということだと思います。

 その中で、先日、甘利大臣も行かれましたTPPの交渉、私もよく聞かれます、地元の方もそうですけれども、今後どうなっていくんだろうかと。一部報道では、今回まとまらなかった、長期化が必至だ、次回日程も未定だとか、そもそもTPP交渉自体が危機に瀕しているのではないかだとか、そういったお話もあります。

 こういった点に関して、現時点で大臣が答えられる範囲で結構でございますが、御認識をお願いいたします。

岸田国務大臣 先日、シンガポールで行われましたTPPの閣僚会合、それに先立って首席交渉官会合も行われましたが、その会合の結果として、結論、妥結というところにまでは至らなかったわけですが、今回のこの議論、報告を受けておりますが、ルールづくりにおいても、あるいは市場アクセスの部分におきましても、大変真摯な交渉、議論が行われたということでありました。

 多くの分野で相当の進展があったということでありますし、これまで難しい課題が残されているとされていた分野についても進展があったという報告を受けています。また、交渉官に対しましても、解決に向けた具体的な指示が出された、こういった状況でもございました。

 ぜひ、こうした進展を手がかりにしながら、今後とも、このTPP交渉、全ての参加国との交渉を継続していきたいと考えております。ぜひ、包括的でバランスのとれた合意が達成するよう、今後とも最大限の努力をしていきたいと我が国は考えています。

山之内分科員 ありがとうございます。

 先ほど、私、地元は鹿児島と申し上げさせていただいて、手前みそですが、九州の貿易、この数字を私、手元に持ってきました。私も具体的に数字で把握したかったものですので、大体九州経済圏、貿易、全国構成比なんですけれども、輸出輸入ともに約一〇%という現状のようです。

 私は、九州、鹿児島というのはアジアに近い、地政学的には非常にメリットがある地域だと思っております。鹿児島も昔、それこそ調所広郷という方が、島津藩に借金が五百万両ぐらいあったんですけれども、それを南蛮貿易という、諸外国と貿易することによって、それだけではないですけれども、そういった形で返済して、ある意味、明治維新を起こした、財政を整えたという方がいらっしゃいます。

 いずれにしろ、鹿児島というのは、地政学的にも貿易になじむ土地柄だとは思うんですけれども、実際鹿児島は、その中で、輸出というのは全国構成比の〇・一%しかないんですね。一〇〇%で〇・一%ですから極めて輸出というのはない、輸入においては二・二%、二・二%というのは何かなと思ったら、錦江湾という湾、桜島の下の方ですけれども、そこに石油備蓄基地がありまして、ほとんどが石油という状況です。

 TPPということも絡んで、これがいいものであったというためには輸出を促進していかないといけない。特に鹿児島においては農畜産物の輸出を、直接鹿児島からアジアの諸外国に輸出していくような戦略が必要だ。ただ、地元の農家の方々とお話しいたしますと、いや、我々も輸出はしたいけれども、どうやってすればいいのかがちょっといまいちよくわからない。そうだと思います。田舎の七十代、八十代の御高齢の方に、例えば、直接いきなり海外に行って営業をしろだとか、それは極めて厳しいことだと思うので、ある意味、国がそして自治体が戦略を持って展開していかなければいけないと思っています。

 その中で、六次産業化というものもある、そこで、鹿児島県もそれぞれ対応をされていらっしゃいます。問題は何かといったら、要は、売れるものを生み出す、その地域地域に合った売れるものを対応していかなきゃいけないということ、結局はそこに行き着くと思います。

 例えば、記事にもあるんですけれども、この前、福岡で日本で初となるハラール商品見本市、私もハラールというのは初めて聞いたんですけれども、これは、イスラム圏、そういった方々に対して、ハラールとはアラビア語で許されたもの、行為、ああいったところは、豚由来の物質だとかアルコールを原料に含まないことに対してハラールマーク、そういったものをつける。要は、宗教上の問題なんですけれども。

 私も、去年の夏ですけれども、財務金融委員会で海外の視察へ行かせていただきました。フィリピン、シンガポール、インドネシアへ行かせていただきました。その感想は、シンガポールへ行かせていただいて、インドネシアへ行かせていただいた。インドネシアは、人口が二億人でしょうか、ジャカルタに着きまして、交通渋滞が極めて多い。その中で、当然、当時、インフラ輸出で五兆円規模を検討しているということもお話しされていました。

 いずれにしろ、先ほどの話もそうなんですが、食品それからインフラ輸出、そういったものを総合的に、日本から海外に行かないといけない、その中において、当然、鹿児島もその流れに乗って、鹿児島の加工された農畜産物、先ほどのハラールマークのようなものも含めて出していきたい。

 ただ、そのときに、どうしても自治体だけでは戦略の規模等も厳しいところもある。ある意味、国が地方と一体となって戦略をとっていただける、このようなことに関して何か御所見がありましたら、お答えいただけますでしょうか。よろしくお願いいたします。

石原大臣政務官 外務省におきましては、地方自治体からの照会、相談窓口として、全在外公館に地方連携担当官を配置しているところであります。必要に応じて、自治体の方に外務省の人間が訪問をして意見交換も実施しているところであります。またさらには、地方魅力発信プロジェクトとして、在外公館の施設を利用し、地方の物産、観光等をプロモーションする活動も実施しているところであります。

 今後とも、地方の海外との活動、交流をしっかりと支援してまいりたいというふうに考えております。

山之内分科員 ありがとうございます。

 まさに、その一環だと思います。記事にもありました、フランスの工場候補地から枕崎へ。枕崎というのは、鹿児島の本当に南のところなんですけれども、かつおぶしが有名でございます。フランスにかつおぶし工場を建てる計画を進めている、そういうことで、水産加工会社の方、ブルターニュ地方の企業誘致担当者らが見学とあるんですね。在日フランス大使館から訪れた対仏投資担当官も同行されていた。

 先ほどの話もそうなんですけれども、日本だと当たり前のことを海外から高く評価していただける。こういったものに対して、官民一体となって積極的に推進していただきたいと思っております。

 また、先ほど、これも実際、民間の方々のマーケティングだと思うんですけれども、売れるものというのも、ある程度仕掛けなきゃいけない。その一環で、クール・ジャパンというものがあると思うんです。

 例えば、よく言われたのが、米を直接ロシアに送るのは厳しいけれども、すしにすれば、ロシアだけでもたしか二千店舗ぐらいですか、あられると聞いております。例えば、すしにして、すし文化を発信して、そのために米を出す。そういったミックスもそうですけれども、例えば、アジア諸国であれば、日本の著名な、タレントの方もそうですけれども、そういった方々と一緒に知名度が上がることによって販路も促進させていくというようなことがあると思います。

 私も、そういったいわゆるクール・ジャパンに携わっている方々にお話を聞いたことがあります。それは、シンガポールにおいて、例えば、女性のファッションショーとかが行われる。ガールズコレクション、鹿児島ではなかなかないですけれども、東京だったら東京ガールズコレクションだとか、そういった女性のファッションショーをするようなものがあるというんですね。そういったものもあるんですけれども、それをシンガポールで開催する。

 開催したら、今現実はどうかと聞くと、いや、日本はちょっと厳しいねと言われるんですね。何でと言ったら、韓国が強いと言うんですね。何でですかと言ったら、韓国の方々は、ある意味、国家戦略を持って、シンガポールという消費地でファッションショーをやる。モデルの方が出てくるわけですね。そうしたら、韓国のモデルの方が出てきた方がわあっとなるようです。認知度が高いようなんですね。

 それはなぜかといったら、シンガポールで売っている韓国製の商品なんかのコマーシャルに既に彼女らが出ていて、それで出ていけばわあっとなる。日本は余りそういったものがない、これが現実であるという状況でした。

 やはり、クール・ジャパンというのも、経済産業省の方で五百億円、今回、本予算でも三百億円でしょうか、推進機構をつくられていると思いますけれども、一部の方に言わせると、やはりちょっと使い勝手に厳しいところがあるかなと。

 どういったところなんだとお聞きいたしますと、例えば、五十億円だとか三十億円だとか大規模なものに投資すると。サブカルチャーだとかポップカルチャーというのは、いわゆる草の根から来られていますので、そういった中小の事務所は余りお金がないんですね。でも、人気はあるというところがたくさんあるんです。そういったところが、大きなクール・ジャパンに乗りたいけれども、ちょっと資金的にリスクもあって乗れないだとか、そういった点が多々あります。

 やはりクール・ジャパンというのは、もちろん、日本伝統文化、そういったものを発信しつつ、下から来るポップカルチャー、サブカルチャーといったものも大事にしなきゃいけない。そういった状況の中で、そういったものと一体となって農畜産物も輸出する。

 この地域は、シンガポールはこう、インドネシアはこう、フィリピンはこう、台湾、上海、香港はこう、その土地土地に色があると思うんですね。当然受けるものも違うと思います。私もフィリピンに行かせていただいたときに見た映像というのは、どちらかというと文化的にはアメリカ型なんでしょうか、そういったカルチャーの文化も。例えば歌手の方なんかも、当然欧米の方々がテレビには映っていらっしゃる。台湾は、逆に言うと、日本のそういった番組が三チャンネルか四チャンネルぐらいある。そういった現状があると思います。

 そういった点に関して、総合的に経済外交の一環でクール・ジャパンというものがあると思いますが、ここに対して、総合的に戦略といったものがあられればお答えいただきたいと思うんですが、お願いいたします。

石原大臣政務官 委員の御指摘、私も共有するところがありまして、これは個人的にもう少ししっかりと探ってみようと思うんですけれども、いろいろなコンテンツの発信で、韓国の場合はコンテンツ振興庁というのがあるというような話です、予算が非常に大きいという話ですが、今、私ちょっとそれを調べているところなんです。

 外務省では、クールジャパン推進会議において決定されたアクションプランに基づき、日本産酒類振興事業や、食文化、ポップカルチャー等に関する多様な事業を実施しているところであります。

 予算的には、実は、在外公館の文化事業、大体年間二億円ぐらいでありますけれども、その予算をクール・ジャパンのこういうものに使っていく。また、日本ブランド発信のための新規の予算ということで、平成二十五年度は一千八百万円で、これから分科会の予算が終わって予算が通れば、来年度、平成二十六年度は三千六百万円という形で、こういう予算を使いながら、小さな予算ではありますけれども、クール・ジャパンの発信にこれからもしっかりと努めてまいりたいというふうに考えております。

山之内分科員 ありがとうございます。

 今後、やはり外需をとりに行く、日本は総力を挙げてとりに行く。では、鹿児島はどこと連携するのか、東京は総合的に行けると思いますけれども、当然、各地域地域がターゲットを絞って狙っていく。まあ、航路の問題もあると思います。ハブ空港であれば何カ所も行けるかもしれませんが、地方の空港というのは、それなりの競争がある中で、選択と集中、選ばれて特化していかなきゃいけないという状況だと思います。

 いずれにしろ、外需をとりに行くということになると、当然、海外に邦人が行かれるということで、邦人の方々の安全性、安全面。

 過去あられたアルジェリア邦人に対するテロ事件、これは極めて痛ましい事件でありました。手前の方にも検証委員会の報告書があります。論点は、「情勢悪化や大規模テロを予想できなかったのか。」「在アルジェリア日本国大使館にはテロ・治安対策の専門家が十分に配置されていたのか。」、また、「平素から、第三国の現地治安・情報機関との信頼関係が構築されていたか。」「防衛駐在官が派遣されていない地域に関し、関係国の軍や同国の武官団から我が国にとって有益な情報を入手できていたのか。」等あると思います。

 世界各国まで広がっていくと、当然、絶対というのはなかなか厳しいですが、やはりある程度はそういった邦人の方々から情報を収集しないといけないと思うんですね。これはもちろん、政府だけで全てというとなかなか厳しいところもあると思います。ある意味、民間の方々とも連携しなきゃいけない。例えば、世界各国には商社の方も行かれていると思います。

 いずれにしろ、総合的な戦略、経済をとりに行くと同時に、こういった安全の保障、こういったところも含めて、今どのように考えられているのか、御所見をいただけますでしょうか。

岸田国務大臣 まず、在外邦人の保護は、政府にとりまして大変重要な任務であります。

 そして、昨年のアルジェリアにおける事件、大変痛ましい事件でありました。こうした事件を経て、我が国としましても、我が国の邦人保護の体制につきまして、さまざまな議論を行い、検証を行い、今後の体制づくりに努めているところです。

 政府としましても、こうした邦人の保護に関しまして、対応策を検討する、あるいは体制を整備する、そしてさらには、外務省だけではなくして関係省庁の連携を考えていく、こういったことも当然考えていかなければなりませんし、また、邦人の保護に関しましては、政府としましても、今申し上げたように、さまざまな体制整備をしなければいけませんが、何よりも、渡航者あるいは滞在者本人にしっかりと危険につき周知していただく、本人自身がみずからを守るためにしっかりと注意し対応する、これがまず基本だと思っています。

 ですから、こうした考えのもとに、渡航情報の発信ですとか、あるいは海外安全ホームページの充実ですとか、あるいはSMSなどを活用したさまざまな情報提供ですとか、こういった点についてもよりきめ細かに対応していかなければならない、こうした議論を行っているところであります。

 今、安保法制懇という有識者会議の場で、集団的自衛権と憲法の関係等についても議論を行っているわけでありますが、その中にあっても、邦人の安全確保についてどんなことを考えなければならないのか、こういった議論も行われているということであります。

 こうした議論もまた参考にしながら、我が国としまして、しっかりとした体制を考えていきたいと考えます。

山之内分科員 ありがとうございます。

 今大臣もお話しされました安保法制懇、そこで議論が深まっていると私も拝見しております。大体、今は、ペーパーにすると五類型、それに、先日は北岡氏が報告のポイントの中に、先ほど言った、在外邦人救出に向けた法整備等が検討をされているというところであると思います。

 私としても、安全保障というものは極めて重大な問題であると思っております。私が認識している限り、二十年前、湾岸戦争のころであれば、ショー・ザ・フラッグと言われて、お金だけじゃなくて実際に人を派遣してくれと言われた過去がある、私はまだ十歳ぐらいだったと思いますけれども、それから周辺事態法もありまして、それからイラクの派遣、これに対しては、やはり自衛隊の方々が非武装地帯に行かれたと思うんです、非戦闘地域に行かれたと思うんですけれども、それをオランダ軍の方々が守るという状況の中にあると思います。

 当然、この安保法制懇においては、そういったことも含めた議論が進められていると思うんですけれども、これがいつごろに、安保法制懇が形になって、今後どのような展開をしていくのか、ある程度のめどが、今現時点でお答えできる範囲がございましたら、お答えいただきたいんですが、大臣、よろしいでしょうか。

岸田国務大臣 安保法制懇の議論、有識者の議論ですが、現在も行われております。

 具体的にいつまでとか、何か具体的なスケジュールについて決まっているものはないと承知をしていますが、ぜひ精力的に議論を行い、有意義な報告が出されることは期待したいと思っています。

 いずれにしましても、こうした報告書を受けて、我が政府としてどう対応するかを考えていき、しっかり成果につなげていきたいと考えています。

金田主査 山之内毅君、時間が参りました。

山之内分科員 ありがとうございます。

 時間が参りました。

 いずれにしろ、私、日本が今後外需をとりに行く、それも、各地方が戦略を持って外需をとりに行って、日本国に対して実体の利益を、その中において、やはりそういった方々を守るための法整備もしていただきたいことをお願いいたしまして、私の質疑を終了させていただきます。

 ありがとうございました。

金田主査 これにて山之内毅君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして外務省所管についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

金田主査 次に、法務省所管について審査を進めます。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山内康一君。

山内分科員 みんなの党の山内康一です。

 最初に、法務大臣に質問させていただきます。

 昨年来、排外的な主張を掲げる団体がいわゆるヘイトスピーチと言われるものを行って、いろいろな問題が起きております。ヘイトスピーチ自体が多くの人に恐怖感を与えるということもありますが、同時に、国際社会において日本のイメージダウンにもつながっているということが言えるのではないかと思います。

 今、中国や韓国の民間団体、あるいは一部政府もかかわって、日本のイメージダウンを図るような、そういう宣伝工作が世界じゅうで行われているときに、そのタイミングでこういうヘイトスピーチが国際社会に報道されると、日本のイメージが損なわれるということがあると思います。

 そういった意味で、ヘイトスピーチと言われているものが余り広まらないようにしていくということは、外交上も非常に重要だと思いますし、いろいろな意味で、この部分の取り締まりというと難しいかもしれません、こういうヘイトスピーチと言われているものがなくなるように、何らかの手段が必要になるのではないかと思います。

 あるいは、このヘイトスピーチの中では、よく殺せといった表現を使う方もいらっしゃいます。口で言っているだけであればまだ害は少ないのかもしれませんが、将来的に、そういうグループの一部が過激化して、場合によってはテロ行為につながる、そういう可能性も全くないとは言い切れないと思います。

 ちょっと前にも、ドイツでネオナチがトルコ移民の方を連続殺人で殺してしまう、そういうテロ事件もありました。そういうヨーロッパの国々のように外国人に寛容なイメージのある国でさえ、排外的な過激な集団の危険性が高まっているということもあります。

 日本でも、今はそんなに大きな脅威ではありませんが、将来そういう脅威が起きないように、こういうヘイトスピーチを取り締まる何らかの対策あるいは法整備が必要ではないかと思います。それについて、法務省のお考えをお聞きします。

谷垣国務大臣 山内さんがおっしゃるように、ヘイトスピーチと言われるものの中には、外から見ていてどのように見えるかという問題をはらんでいるものもたくさんございますし、いたずらに人種間の対立をあおるようなことは決してよいことではない。我が国が品格ある国家を目指すのであれば、非常に憂慮すべき点が多々ある。私は、山内さんがおっしゃったのもそういうことではないかと思いますので、その点は全く同感でございます。

 ただ、どういうふうに取り締まる法律をつくっていくかということになりますと、ヘイトスピーチに関してまだ確立された定義といいますか概念が必ずしもない。ある憲法の教科書によりますと、少数者集団に対する侮辱、名誉毀損、増悪、排斥、差別などを内容とする表現行為である、一応こういう定義があるようでございます。

 これに対して法がどう対応しているかといいますと、もしこれが民法上の不法行為に当たるということであれば、損害賠償責任というものが民事上成り立つ。それから、一定の場合には、刑法の業務妨害罪であるとか名誉毀損ということもあり得るかもしれません等々、刑事規定もあるわけですね。

 それで、それを超えて何をするか、こういうことになるわけですが、民法上の不法行為にも刑事上の刑事罰の対象にもならない行為に対する規制については、他方で表現の自由等との関係をよく詰めておかなければならないということもございます。その辺、まだ必ずしもどういう取り締まりをするかということについて考えがきちっとまとまっているわけではないんです。対応しなければならない問題は既存のもので対応しなければならないわけですが。

 いずれにしても、差別意識を生じさせることにつながりかねない言動については、人権擁護の観点から引き続き注視していく必要がある。外国人に対する偏見や差別の解消を目指した啓発活動も必要であると思っております。現状行われていることをよく観察してまいりたいと思っております。

山内分科員 今、谷垣大臣のおっしゃったことに関しては、本当に全くそのとおりだと思います。学者の説を見てもいろいろな御意見があるようで、まとまった意見というのは全くないようです。規制をやるべきだという人もいれば、表現の自由との関係で反対される方もいる。

 そういった意味では、これはぜひ政府としても整理をされる必要があるのではないかなということは非常に私も感じております。整理するためには、まず調査しなくてはいけない。それから、場合によっては有識者の会議をつくったり、あるいは検討会をつくったり、そういう何らかの将来に向けた調査とか検討を法務省としても始めるべきではないかなというふうに思います。

 国連の人種差別撤廃条約でも、ヘイトスピーチのような行為は取り締まることが望ましいとされているというふうに思います。

 九五年に日本が人種差別撤廃条約に参加したとき、当時、法規制が必要ないという政府の判断だったと思います。私も、九五年ごろの記憶を思い出すと、日本国内でそんなに人種差別が激しいというイメージは、確かに当時の世相はなかったと思います。ですから、正当な言論を萎縮させる危険を冒してまで処罰立法を検討しなければならないほど、日本の人種差別の扇動はひどくない。その九五年当時の認識、私も九五年を思い出すとそれは全くそう思います。

 しかしながら、ここ数年の日本国内の動きを見ていると、必ずしも九五年と同じ情勢判断で本当にいいのかなという疑問も感じます。他方で、報道されているほど全国津々浦々までこういう人種差別の動きが広がっているとは私自身も思いません。

 そういう意味でも、現状をきちんと把握するための調査。あるいは、憲法学者初めいろいろな学者の意見もいろいろある。大臣おっしゃったように、確立した定義も確立した概念もないということですから、日本国内における有識者の意見を集約して概念を確立していく、あるいは検討していく、何らかのそういったことを今始めてもよい時期ではないかなと思うんですけれども、それについて政府のお考えをお聞きしたいと思います。

谷垣国務大臣 こういう人種差別、人種対立をあおらず、一人一人の人権がきちっと守られていく社会を日本は目指さなきゃならないと私も思います。

 ただ、今おっしゃった一九九五年、人種差別撤廃条約に加入した当時と少し違っているのではないかというお話がございました。私は、現時点においても、直ちに法整備に取りかからなければならないというふうにはまだ実は認識しておりません。

 今、山内さんがおっしゃるように、こういうヘイトスピーチが問題になるような事案というのは、必ずしも全国津々浦々にあるというものではなく、大体特定の場所で起こっているわけですね。余り具体的な名前を挙げない方がいいかもしれませんが、東京の大久保であるとか、大阪の鶴橋であるとか。そういうところで何が行われているかということは、まず私どもは十分に調査、観察する必要があると思います。

 その上でまた、私ども、基本法を整備するというだけではなく、人権擁護機関も持っておりますので、そこのさまざまな手段を通じて、警鐘を鳴らすと言うと言い過ぎかもしれませんが、いろいろ注意を喚起するというようなこともやっていく必要があるだろうと思っております。

山内分科員 私も、実は谷垣大臣と認識は非常に近いと思っております。おっしゃるように、ヘイトスピーチといっても、ごく限られたエリアで限られた特定の日だけということだと思いますし、去年に比べると最近は余り報道もされていません。そういった意味では、私自身も、日本国内あらゆるところで人種差別が蔓延しているとは全然思っておりません。

 他方で、イメージですね。ごく一部の問題であってもCNNか何かで流れると、世界じゅうの人たちが、日本はおかしなことになったんじゃないか、そう思う、イメージがあると思います。そういった意味では、政府として、何か予防をやっているといったような姿勢を示していくというのは必要じゃないかと思います。

 今、谷垣大臣は警鐘を鳴らすということをおっしゃいました。私は、そのことは非常に重要だと思っております。人権擁護局に啓発活動をやっていますという資料をいただきました、本当にそういった啓発活動が大事だと思いますが、恐らく現状では、予算とか人員、あるいは内容が非常に幅広いテーマであることを考えると、今まで以上に力を入れていくことが必要ではないかと思います。

 あるいは、大臣がおっしゃるように、民法上あるいは刑事上の何らか別の法律で対応できるケースというのもあるんじゃないか。確かに、殺せみたいなことを特定の個人とかあるいは特定の団体に対して言っているとすれば、何か別の刑事上の罪に問えるかもしれません。そういった意味では、現行法の枠内でもできることはたくさんあると思います。

 現行法の枠内でできることも含めて、こういったヘイトスピーチを広がらせないために法務省として取り組んでいることについて、もう既にお話しをいただきましたが、改めてお聞きしたいと思います。

谷垣国務大臣 おっしゃるように、現行法で対応できることはかなりあると思うんです。刑法上も、名誉毀損とか侮辱罪というようなものも考え得るわけでございますし、それから威力業務妨害罪みたいなものも態様によっては当たり得る、あるいは脅迫罪とか強要罪みたいなものも場合によっては使い得るとは思います。

 ただ、私の立場もいろいろございまして、一方で現実に捜査を担当しているところも所管しているわけでございますので、一般的な現況はともかく、個別的にどうかということになるとちょっと問題がございますから、そういった点は捜査当局が適切に対応すると存じます。

山内分科員 ありがとうございます。

 ぜひ、そこまでぎらぎらした対策でなくても、啓発の部分はできることはたくさんあると思いますので、ぜひこれからも力を入れていただきたいと思いますし、できれば、別の役所になりますが、文科省なんかと連携しながら、教育の場面などで小さいときからそういう差別意識が生まれないような何らかの連携というのをぜひお願いしたいと思います。

 続きまして、ヘイトスピーチに関しての公安調査庁の活動についてお聞きをしたいと思います。

 公安調査庁が毎年出している報告書があります。「内外情勢の回顧と展望」、ことしの一月号を見ると、その中にもやはりいわゆるヘイトスピーチと言われるものの状況が書いてあります。それは恐らく、公安調査庁さんも治安上の問題だと認識をした上で調査をされていると思うんですけれども、現在どういった取り組みがなされているのか、それについてお聞きしたいと思います。

寺脇政府参考人 お答えを申し上げます。

 排外主義的な主張を掲げて活動しておりますグループに関しましては、その活動がいわゆるヘイトスピーチということで問題視をされております。種々の社会的な問題を引き起こしていると承知をしておりますので、関心を持って見ているところでございます。

 私ども公安調査庁といたしましても、引き続き、こうしたグループの動向を注視してまいりたいと考えております。

山内分科員 業務の性質上、余り詳細な報告は最初から期待をしておりませんが、ただ、私は、このヘイトスピーチの問題は単に権利の問題というだけではなくて、治安上の将来の課題として今のうちから予防をしておかなくてはいけないと思いますし、そういった意味では、別に公安調査庁は捜査権、逮捕権はないと思いますが、だからこそ、それとは別で、きちんと事前に、将来の予防につながるような調査をしっかりやっていただきたいというふうに思っております。

 次の質問ですが、公安調査庁のリソースの配分というか、これからやっていくべき、強化すべき分野ということで質問をしたいと思います。

 この「内外情勢の回顧と展望」、これは過去に何年分かを私も何度か読んでいるんですけれども、ちょっと不思議に思うのは、例えば、何と日本共産党という項目がありまして、日本共産党の動向についても調査されているわけですけれども、昔はともかく、今の日本共産党さんを見ていると、暴力で国家を転覆しようというような雰囲気は余り感じられませんし、これを見ると共産党の国会議員の数の動向とかが書いてあるんですけれども、そんなことは特に今の時代に一生懸命調べる必要が本当にあるのかなと。

 恐らく、五十年前とか六十年前とか、共産主義を志向する人たちの中でまだ一部にそういう暴力的な手段に訴えようというグループがいたころは、そういう仕事も必要だったかもしれませんが、今の日本の共産党さんなんかを見ていると、別に私は共産党支持者でもなければ共産党議員でもないんですが、そういうことに人員を割くよりは、むしろ、先ほどのヘイトスピーチの問題。

 あるいは、今、日本にも外国人、余り特定の宗教を批判すると私がヘイトスピーチをやっているように思われると困るんですが、特にやはりイスラム系のテロ組織などと関係のあるような人も日本に一部滞在していたといったことが、実際問題、もう既に報告されております。欧米諸国でも既に、ホームグローンテロといって、本国、自分の国の中で生まれ育ったイスラム教徒の若者がテロになってしまう、こういう事例が出てきているんですが、恐らく日本でもそういう可能性が少しずつ広がっていると思うんです。

 そういうアジア系、イスラム系の外国人の在住者がふえていくということは、当然ながら、将来にわたってそういうホームグローンテロのようなものができてくる潜在的な余地が少しずつ広がっているということだと思うんですね。そういった分野こそ、実はこれから公安調査庁が力を入れるべき分野ではないかなと思っております。

 何といっても、法務省は入国管理局がありますから、そういう日本にいる外国人の中の潜在的なテロリスト、あるいは顕在的なものを含めて、そういったものを取り締まるという観点では、公安調査庁の役割というのは今後はどちらかというとそういう分野にシフトしていくべきではないかと思っているんですけれども、それについて公安調査庁の御見解をお聞きしたいと思います。

谷垣国務大臣 公安調査庁の調査能力というのを上げていく必要があるというのは、我々にとって一つの課題でございます。

 ただ、限られた資源と人材をどこに振り向けていくかということでございますが、やはり日本の治安にとって脅威になるような新しい事態が次々と生じてくる、これも事実だろうと思います。そこに向けて、やはりきちっとした情報がとれるような努力を重ねていくというのは大変大切だろうと思います。

 今おっしゃったヘイトスピーチのようなものがこれからどういうふうな様相を呈してくるか、あるいは、ホームグローンテロというんでしょうか、そういうようなものもやはり注意が必要だろうと思いますので、そういう点、今後とも、どういうふうに資源配分をしていくかということをよく検討しながら進みたいと思います。

山内分科員 ありがとうございました。

 それから、ちょっと細かい質問になりますが、公安調査庁の幹部職員の人事ということについてお尋ねをしたいと思います。

 公安調査庁の、上から、長官、次長、あるいは三番目の総務部長ですか、こういったポストは大体法務省の検事の職の方がつかれていると思います。こうやって、せっかくプロパーの職員がいる中で、上の方を大体プロパーじゃない人たちが占めるということになると、どうしてもプロパー職員の士気の問題、モラールの問題につながるんじゃないかなという気がします。

 実は、私も、大学を出てJICAの職員になりました。当時、JICAは、トップ、総裁ポストは外務省、副総裁が二つあって、一つは当時の通産省、もう一つは農水省と、トップスリーは全部役所の天下りに占められておりました。そういった意味では、私がずっと天下り問題を一生懸命国会で質問してきたのは、個人的には、そういう天下りがプロパー職員の士気をそいでしまうというのが実体験としてあったからなんです。

 そういった意味では、安倍総理になってからたしか海上保安庁の長官はプロパー化されました。私は、こういう試みは非常に重要だと思っております。別に今すぐ公安調査庁を全部プロパー化しろとは決して思いません。もちろん、検事職の方は非常に優秀な方が多いと思いますが、例えば三つあったら一つぐらいプロパーにするとか、既にいる生え抜きの職員の士気を高めるような何らかの人事制度というのは、これからぜひ政治主導で考えていっていただけないかなというふうに思っております。

 特に、公安調査庁のプロパーの皆さんはインテリジェンスのプロとして養成されているわけですけれども、今や、合同情報会議のような日本政府全体の情報コミュニティーの中でも、公安調査庁は最も重要な四つの機関の一つだと思います。

 そういった意味では、インテリジェンスのプロとして養成された身内の生え抜きの職員というのをもっと大事にする、そういう人事もあっていいのではないか。それについて、大臣、お考えがあればお聞きしたいと思います。

谷垣国務大臣 山内さんのおっしゃった、プロパーの方々の士気といいますかやる気を高めていくためには、上はみんな常に天下ってくるというのでは何となく元気が出ないというのは、私もそのとおりだと思います。

 私も、過去やらせていただいた閣僚、それぞれの場所で多少そういうことも工夫してみたわけですが、法務省にとりましても、この公安庁に限らず、それぞれのプロパー、現場をよく知りながら努力しているのがおりますから、法務省の人事全体としては、今、山内さんのおっしゃったようなことも考えていかなきゃならぬ、これは頭の中に入れているつもりでございます。

 ただ、公安庁の場合、今トップスリーというふうにおっしゃいましたけれども、ある意味で、検察出身の専門的な法律知識、どういう規制処分をしていくかというようなデリケートな法の解釈、運用に関する部分がございますので、検察官の経歴のある方を選んでいくというのはそれなりに合理性があるんだろうと思っております。

 それから、もう一つ申し上げますと、トップスリーと言われておるのは、恐らく公安調査庁の長官と次長、総務部長を言っておられるんだろうと思いますが、検事以外の者を充てないというわけではございませんで、今の総務部長の前の総務部長はプロパーの出身でございました。

 したがいまして、そういうことも考えて適材適所の人事をやってまいりたいと思っております。

山内分科員 非常に前向きな温かい御答弁、ありがとうございました。

 それでは、法務省の質問は以上で終わらせていただきまして、残り十分ないですが、外務省の岸副大臣に質問させていただきたいと思います。

 まず、NSCができました。NSCができたけれども、ちゃんとそこにいい情報が集まらないと正しい判断はできないというのは、至極誰でも考えることじゃないかと思います。

 そういった意味では、NSCができたその次のやるべきことというのは、恐らく、きちんとしたインテリジェンスがNSCに伝わるような体制をつくっていくということだと思います。

 今話のあった公安調査庁という組織もある。同時に、外務省にもインテリジェンスに関する部署があります。国際情報統括官組織という、知らない人が見るとなかなかわかりませんが、かつて国際情報局だったぐらいの、ある程度大きな組織ですけれども、こういった組織というのはこれまで以上に重要になってくると思います。

 外務省の国際情報統括官組織に当たるような組織として、アメリカの国務省にINRという組織があります。これはビューロー・オブ・インベスティゲーション・アンド・リサーチという略なんですけれども、ここはちょっと、私が昔読んだ本なので今の数字はわかりませんが、二百人ぐらいのスタッフしかいないそのINRという組織が、非常に正確な情勢分析をしていたケースが幾つかあると言われております。

 例えば、イラクの大量破壊兵器は結局なかったんですけれども、実は国務省のINRは、多分ないんじゃないかということをちゃんと正確に予測しておりまして、実は物すごい、金額と人員でいうと、国務省のINRの二百人に比べると、その何十倍もいるCIAだのNSAだのよりも、国務省のINRの方が正しい情勢判断をしていたという例もあったというふうに聞いたことがあります。

 そういった意味では、アメリカ国務省のINRのカウンターパートのような情報統括官組織というのも、非常にうまく活用すれば日本の安全保障、外交のために重要な組織になると思っております。

 国務省のINRも、恐らく情報源というのは在外公館から来る公電類とか、あるいは、国務省も日本の外務省と同じく地域のスペシャリストをいっぱい擁していると思いますので、そういう長年培った地域のスペシャリストの意見を反映させた結果として、予算額でいうと何十倍、何百倍もあるCIAやNSAよりも、場合によってはいい結果を出してきたということが言えると思います。

 そういった意味で、日本の外務省の国際情報統括官組織、今の現状、どれぐらい人員がいて、どれぐらい予算があって、そういった現状の活動あるいは組織の規模についてお尋ねをしたいと思います。

松富政府参考人 外務省の国際情報統括官組織は、種々の情報収集活動を行っております。その上で、客観的、総合的観点から国際情勢を分析、情勢判断を行っているところであります。

 外務省の中では、他の地域局、機能局も同様に情勢判断を行っていますが、これらの組織は日々の案件処理や政策判断の中で情報処理を行っているわけですけれども、国際情報統括官組織は、それらから距離を置いて、中長期的または分野横断的な観点を含めて分析を行っている次第でございます。

 現在の定員は八十名ということで、来年度の予算案としては五名の定員をお願い申し上げているところでございます。

山内分科員 では、来年八十五名になるという理解ですね。財政厳しき折にしては頑張って五人ふやしたんだと思いますけれども、やはり各地域局などと違って、政策から距離を置いて情報を見ているという点が情報統括官組織の重要なところだと思いますし、中長期的な視野、あるいは、いろいろな省庁から出向の専門家もたくさん集まっているというふうに聞いています。そういう意味では、この情報統括官組織、日本は対外インテリジェンス機関がないからこそ、外務省のこういう組織というのは非常に重要だと思っていますので、ぜひこれからも力を入れていただきたいと思います。

 次に、外務省予算の中に、インテリジェンスに関して、委託先として、ラヂオプレスという非常に地味な、たしか戦前からある組織の後継団体だと思いますけれども、そういうラヂオプレスという組織があります。

 これは、北朝鮮や中国、ロシア、あるいは旧ソ連の中央アジアの国々の情報をモニターしている組織なんですけれども、ここには、特殊言語をちゃんとわかって、そしてその地域の専門性を持ったスタッフがいらっしゃいまして、非常に価値のある情報を上げているというふうに聞いております。

 日本のみならず、今では諸外国もそういうオープンソースのインテリジェンスに力を入れるようになってきていますけれども、外務省の情報統括官組織の、関係でいうと、そこから委託しているのかもしれませんが、こういう外にあるラヂオプレスのような組織というのも非常に重要な役割を果たしていると思います。

 しかし、その予算というのは、去年の予算で二・六億円。毎年入札しているので来年度予算というのはわからないんですが、恐らく二・六億よりちょっとふえるぐらい、多くても三億ぐらいだと思います。

 中国、北朝鮮、ロシア、あるいは旧ソ連の中央アジアの非常に重要な国々の情報をモニターしている組織の予算が三億円、これは私は、まだまだ少ないんじゃないかな、ぜひこういった分野こそ力を入れてほしいと思っているんですけれども、それについて外務省の意見を聞きたいと思います。

松富政府参考人 オープンソース、公開情報の重要性については、先生御指摘のとおりだと思います。

 数字についても、一般財団法人であるラヂオプレスが外務省から受け取っている金額については、先生御指摘のとおりでございます。

 ただ、外務省としては、さらにラヂオプレスを育成すべく、ほかのクライアントの開拓、さらには一般民間企業との契約というものも協力して、ラヂオプレスの強化にも貢献したいと考えています。

 今後とも、公開情報収集関連予算については、しっかり確保して、有効に活用していきたいと思っています。

山内分科員 ほかの民間団体も含めてということです。裾野は広い方がいいと思いますが、ただ、人材は何十年もかけないと育たないところもあると思いますので、毎年毎年、単年度契約だとなかなか厳しいので、例えば複数年契約ができるようにとか、いろいろな工夫をして、長期的な視野に立って、そういった分野の人材をオール・ジャパンで育てていっていただきたいと思います。

 時間がないので、早口で最後の質問に行きたいと思います。

 日本国際問題研究所というシンクタンクがあります。この日本国際問題研究所、国問研とよく言うんですけれども、これは世界のシンクタンクランキングで十三位に位置づけられております。これは、アジアではナンバーワンですし、アメリカの名立たる財団の中にあって、なかなかいいところにいます。

 実際、ここは恐らく、トップも元外務省のOBの方、あるいは出向の方もいるので、まあ、半分は外務省の附属機関のように世間の人は見ていると思うんですけれども、ただ、この手のシンクタンクというのは本当は複数あってもいいと思いますし、あるいは、こういうシンクタンクがたくさんあることが、日本のソフトパワー、あるいは日本の対外的な発信力を強化するために非常に重要だと思っております。

 このための来年度の予算四・八億円、もっとこういう分野は力を入れてほしいなと思います。陸上自衛隊の戦車は一台十億円です。それに比べたら、半分ぐらいしかシンクタンクにお金をかけていない。もうちょっと頑張っていただきたい。

 副大臣、最後、時間がありませんが、もし一言お願いできれば。

岸副大臣 委員の御質問、まさに国問研に対して高い評価をいただいておることを本当にありがたく思いますけれども、こうしたシンクタンクの重要性というものは本当に大切である、こういうふうに思います。

 まさに、シンクタンクによります外交に関するさまざまな研究の成果というものは、外交当局とは異なる民間の視点からの示唆を与えるわけですから、政策の幅、検討の幅を広げるもの、こういうふうにも思っています。

 シンクタンクで今この国問研が十三位ということでありまして、ほかの欧米系のシンクタンクと規模を比べますと非常に小さいわけですけれども、その中では非常に頑張っているわけですけれども、残念ながら、そのほかに日本からのシンクタンクといいますと、やはり百位を下回ってしまうというような状況になっているわけでございます。

 予算につきましても、本年度から、日本の外交シンクタンク全体の強化、育成をも目的とした補助金として、外交・安全保障調査研究事業費補助金というものを運用しております。これは、本年度と来年度、二年間を見た上でもう一度再検討していく、こういうふうな方向で今進んでおるわけでございますけれども、こうした補助金を活用して我が国のシンクタンクを強化して、今後も努めてまいりたいというふうに思っております。

 国問研につきましては、我が国随一の外交のシンクタンクとして、その役割の強化の必要性をまさに認識しているところでございます。

金田主査 時間が参りました。

山内分科員 できればベストテン、できればベストファイブぐらいに入るように頑張っていただきたいと思います。

 以上で質問を終わります。

金田主査 これにて山内康一君の質疑は終了いたしました。

 次に、西田譲君。

西田分科員 日本維新の会の西田譲でございます。

 谷垣大臣におかれましては、法務委員会で常日ごろから、大変真摯に、かつ丁寧にいつも御答弁をいただいているところでございまして、きょうは予算委員会ということでございますけれども、同様によろしくお願い申し上げるところでございます。

 さて、平成二十六年度予算、一般会計で九十五兆八千億ということでございますけれども、うち、税収が約五十兆、国債依存は四十一兆でございますね。そのうち、特例公債、いわゆる赤字国債が三十五兆程度であったかと思います。この赤字国債頼みの財政運営ということでございますけれども、これは明らかに財政法第四条に違反するわけでございまして、こういったことを一九七五年、三木内閣のころからでございますか、もうずっと今日まで、平成に入って四年ほどを除いて、ずっとこの赤字国債を発行して、財政法違反の状況を放置しながら今日まで来て、結果として、累積の債務は、平成二十六年度末の見通しで一千十兆円ということでございます。子々孫々まで負担を先送りする、まさに正義にもとる財政運営だと私は思っているわけでございます。

 正義にもとると申しますと、大臣が常日ごろから強調されていらっしゃいます信条でございます法の支配、まさにこの法の支配に違背する財政運営が続いているというふうに思うわけでございますけれども、我が国のこの財政状況についての大臣の御所見と、そして、そういった中にあって、今回の法務省予算の策定に当たってのお考えを、まず最初にお聞きしたいと思います。

谷垣国務大臣 確かに、今おっしゃるように、我が国の財政は非常に厳しい状況にございます。財政法四条違反とおっしゃいましたけれども、だからこそ、特例公債法を毎年国会に提出して御審議をお願いしながら運営してきている。

 非常に財政も硬直化しておりますので、私、一番、もちろん将来にわたる財政負担も心配いたしますが、これだけ硬直しますと、本当に必要なところに財政が出動するということがなかなか難しくなっている、財政硬直化の問題もございます。

 こういう厳しい財政の影響は、法務省予算にもいろいろ影響していないとは申しにくいところでございます。

 法務省は、何か予算をいただいて特定の事業をなし遂げていくというよりも、どちらかというと、人がどういう仕事をしていくかということが中心の役所でございますから、人員の確保というのがまたこれは重要でございますが、財政の方も、もちろんその裏打ちがなければいけないということですね。

 平成二十六年度の予算を見ますと、法務委員会でもしばしば申し上げておりますように、法務省としては、再犯防止ということに極めて重きを置いております。

 それから、政府全体としても、外国の方にたくさん来ていただこう、ビジット・ジャパンといいますか、ようこそ日本と申しますか、そういうような中で、観光客、観光立国のための出入国管理体制というのは、当省にとっても大きな課題でございます。

 そういうことを中心に、充実強化されなければならない点はかなりめり張りをつけた予算ができたのではなかったかな、このように思っております。

 大変厳しい財政、それから人員の確保もなかなか大変なところでございますが、世界一安全な国日本というのを目指していかなければいけない。二〇二〇年に東京にオリンピック、パラリンピックを誘致できたことの背景にも、治安のよさというのはやはりあったんだろうと私は思っております。そういった国際的な評価を崩すことのないように頑張りたい、こう思っているわけでございます。

西田分科員 御答弁ありがとうございます。

 まさしくこの厳しい状況の中で、めり張りをつけた予算策定を法務省としてなされたということでございます。

 おっしゃったとおり、九十五兆の一般会計に対して、法務省予算は七千二百九十九億、一%にも満たない予算でございます。本当に、法秩序を守る大切な省庁の予算が一%にも満たない、数字の上では大丈夫かなというふうに常日ごろから思うわけでございますけれども、そういった厳しい財政状況の中で、今回のめり張りをつけた予算。

 一方で、やはり、これは当たり前のことなんですけれども、間接経費のような、民間もそうでございます、予算を投下するところの強弱をつけるのは当たり前ですけれども、一方で、当たり前のこととして、間接経費をいかに抑えていくかということが非常に大切になってくるわけでございます。当然、厳しい財政状況の認識の中での予算でございますから、搾って搾って、もう搾りかすも出ないぞという御認識が法務省としては恐らくおありなんだろうというふうに思うわけでございます。

 実際、この予算を見てみますと、庁費でございますね、庁費ということで間接経費等も計上されていることだと思うんですけれども、これは、実際予算書を拝見しますと、法務省本省で計上され、そしてそれぞれまた、法務総合研究所、検察官署、矯正官署、そして矯正の後が出入国官署、保護観察官署、公安調査庁と、またそれぞれの部署で庁費を計上されていらっしゃるわけでございますね。

 この庁費、私がちょっと計算、合計してみますと、法務省予算七千二百九十九億に対して、一千億を超える庁費になってくるわけでございますけれども、政策的なめり張りというのも一つ、さらに、間接経費の徹底削減というところでの、この一千億近い庁費の適正な執行等に対しての大臣のお取り組みの方針について、お聞かせいただければと思います。

谷垣国務大臣 庁費というようなものに関しては、できるだけ効率化を図り、無駄を削減していくというのは当然のことでございます。

 ことしは消費税が四月から入るということで、額面自体は昨年より、その分の上積みがございますのでふえておりますが、全体を厳しく絞っていかなきゃいけない。

 そういう中でどういうことをやってきたか、またこれからもやっていかなきゃならないかということでございますが、一つは、一者応札みたいなものをできるだけ解消していく、これは相当力を入れてやってまいりました。それから、共同調達の推進ということも、これは大事なテーマではないかと思ってまいりまして、こういうことをずっとやってきて、かなり経費の改善ができているのではないかと思います。

 そういう執行の実績も踏まえて予算の要求を行って、経費の削減に努めているところでございますが、これは、私も財務省で仕事をしたり、いろいろなところで仕事をしてまいりましたけれども、無駄の撲滅というのは永久革命みたいなところもございまして、今後とも、このあたりは力を入れてやっていきたいと思っております。

西田分科員 ありがとうございます。

 恐らく、もう最大限のお取り組みをされていらっしゃる、そして、法務省の職員の方々におかれましても、そういう御認識を共有されていらっしゃるということだと思います。

 間接経費の削減は何も省庁に限った話じゃございませんでして、民間の業界でも試行錯誤が繰り返されている分野でございます。

 私の友人で一人、間接経費、特に購買戦略のコンサルタントをやっている人間がおりまして、時々話をするのでございますけれども、ほとんどの経営者の方が、これ以上間接経費の削減はできないというふうに現状思っていらっしゃるんですけれども、さらにそこから一五パーから三〇パーは可能だと私の友人のコンサルタントは豪語するんですね。

 どういうやり方をしているんだといいますと、例えば、間接経費がかかるいろいろな備品等の調達にあっては、椅子をいっぱい購入するでも何でもいいです、通常、見積もりを多くても十社ぐらいからとるということはあろうかと思うんですけれども、これを削減するために、日本全国のサプライヤーからあらゆる見積もりをとって、そして最後にオークションまでかけて、そして調達する、そういったことをやると、一五パーから三〇パー、大体かかっていくんだと。これは泥臭い作業になるけれども、そういったことをもって経費の削減を行う。あるいは、先ほど共同調達とおっしゃいましたが、共同購入というのを他社や他の機関とあわせて行っていくことによって下げていく。

 民間ではさまざまなこういう努力もされているわけでございまして、経営者の方がもうできないと言っても、やはり、さらにできる余地というのは恐らくあるんですね。

 全体から見れば微々たる予算になってしまうのかもしれませんが、これはちりも積もれば山となる部分でございますから、ぜひとも、さらなるお取り組みをしていただければというふうに思うわけでございます。

 そして、この庁費、ちょっと大きい金額が出てくるのが情報処理関係の庁費でございますね。特に、法務局の登記事務処理、これが約三百七十億、そして出入国管理の関係の情報処理業務庁費は百二十億と巨額になってくるわけです。

 当然、恐らく、これはシステムの問題がありますので、巨額になってこようかと思いますけれども、大臣が先ほどおっしゃったような、一者応札がないようにとか、これは恐らく競争性の担保、確保をきちんとしていくということであろうかと思いますが、一方で、これは適正な品質の維持というのも大事でございます。特にセキュリティーでございますね。そういったことも踏まえて、特に巨額に及ぶ情報処理関係庁費、適切な品質と価格の担保に御尽力いただければというふうに思う次第でございます。

 次に移りたいと思います。

 大臣、御答弁ございますか。

谷垣国務大臣 おっしゃいましたように、法務省予算の中で情報処理に係る金額というのはばかにならないものがございまして、これは大事なことですから、削るのがいいというばかりではない、やはりきちっとした機能も有しておかなきゃいけないわけですね。かつては、レガシーシステムなんというのはいかぬじゃないかというので、これは大体もう乗り越えることができたと思っておりますが。

 このシステム関係の経費は、複数の業者が入札に参加できるようにして、できる限り競争性を高めながら取り組みをしていくというようなことを、これはもうずっとやっていかなきゃいかぬ、このように思っております。

西田分科員 ありがとうございます。

 それでは、この政策的なめり張りといったところについて、法務省所管のテーマについて何点かお聞きしてまいりたいと思います。

 まず一点目に、出入国管理でございます。

 法務委員会で、大臣所信の中でもありましたけれども、日本経済の発展に資する外国人をどんどん受け入れていくんだ、そして一方で、不法行為をもくろむ外国人は厳格に排除をしていくんだ、そういった出入国管理体制の厳格な運営をしっかりやっていこうということは大臣の所信でもおっしゃったとおりでございまして、これが、先ほどのこの人員の部分にも恐らくあらわれているのではなかろうかというふうに思います。

 平成二十六年度で、来年度六十四名の増員。これまでを見てみますと、昨年は四名増員だったんですね。余り増員されていなかった。一昨年が五十八名の増員、その前は百九名増員、さらにその前が百四十九名増員。何かここの数字だけ見ていると、民主党政権の方が出入国管理に力を入れていたのかというふうに、数だけですけれども、思うわけでございますけれども。それはともかく、この五年間で計三百八十四名の増員がなされて、現行四千名弱、三千九百五十名程度の出入国管理に携わる人員体制ということではなかろうかというふうに思います。

 さて、この間の法務委員会でも、途中で尻切れになってしまいましたけれども、いわゆる最近の難民認定申請の急増の問題、平成二十四年度で二千五百名程度、これも、十年前に比べると、もう八倍になって急増しているわけでございますね。これは、平成二十五年度はまだ数字がまとめられていないとのことですが、三千名は優に突破するというような感触だということをおっしゃっていただいております。

 それだけの難民認定申請が行われておりまして、例えば、平成二十四年度はたった十八名ですね。それ以外の方々は、多少、庇護ということになって、それ以外の方は全部拒否になっているわけでございますけれども、これは、難民認定申請に対しては物すごく膨大な審査事務が発生しているのではなかろうかというふうに思います。

 そういった中でこの予算を見てみますと、この出入国管理業務費のところだと、三角印、いわゆる昨年度減額が結構目立つわけでございますね。例えば、収容費であったりとか謝金であったりとか、そういったところで減額が目立つのでございます。

 この難民認定申請、当然、これだけ急増しているので、強化をしていかなければならない分野だと思うのですけれども、二十六年度予算、この予算書だけ見ると、どう強化されているのかがわからないのでございますけれども、内容を御説明いただければというふうに思います。

榊原政府参考人 お答えいたします。

 難民認定申請数の増加に適切に対処するため、平成二十六年度における難民認定事務に要する予算といたしまして、難民認定審査のための翻訳委託経費や難民審査参与員の委員手当の増額を要求するなど、合計で約二億九千六百万円を計上しており、対前年度比では、約四千百万円、約一六%の増額となっております。

 以上でございます。

西田分科員 ありがとうございます。

 時間がなくなってきておりますので次に行きたいと思いますが、ぜひ、この出入国管理、大臣所信でおっしゃったことが言葉だけにならないような、厳格な出入国管理体制を望むものでございます。

 人権擁護予算についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 人権擁護関係の予算は、本省分で十五億五千八百万、法務局での活動費、恐らくこれは人権擁護委員の実費弁償分だと思いますが、約十七億程度計上されているところでございます。

 まず最初に、この本省分で計上されています人権擁護推進費の十五億五千八百万、この具体的使途、それと、その使途に対する法的根拠、さらには、昨年より増額されているわけでございますが、実際にその活動内容の評価、この三点についてお聞かせいただければと思います。

萩原政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいまの人権擁護推進費でございますが、それを大きく分けまして、人権啓発活動等委託費と人権啓発活動等補助金に分けられるわけでございます。

 人権啓発活動の委託費と申しますのは、法務省が実施している人権啓発活動の中央委託事業と、それから地方委託事業、この二つでございまして、この概要でございますが、中央委託事業というのは、国が行う人権啓発活動が円滑に実施でき、かつこれをサポートし、そして地方公共団体が行う人権啓発活動を側面から支援、援助する、そういう観点から、公益財団法人人権教育啓発推進センターに人権啓発活動を委託する事業でございまして、具体的な事業としては、人権に関する啓発教材の作成、資料の収集、提供、講演会、研修会等の開催や啓発に関する調査等を行っております。

 地方委託事業でございますが、これは、国が全国的に一定の水準の啓発活動を確保する観点から、地方公共団体を委託先としまして幅広い啓発活動の実施を委託する事業でございまして、具体的な事業としては、講演会、研修会の開催のほか、資料作成、そして、スポットCM、インターネットバナー広告、地域総合情報誌広告掲載などを実施しております。

 もう一つの、補助金の関係でございますが、先ほど申し上げました公益財団法人人権教育啓発推進センターが人権教育啓発に関するナショナルセンターとしての役割を担うために、センターの運営に関する人件費や業務運営に必要な物件費の一部を補助するものでございます。

 この根拠法は、まず、センターに対する中央委託費等補助金でございますが、これは、人権教育及び人権啓発の推進に関する法律第七条に基づいて策定された人権教育・啓発に関する基本計画、これをよりどころとしてセンターに交付しております。また、地方委託費は、ただいま申し上げました人権教育及び人権啓発の推進に関する法律の九条に基づいて、地方自治体に交付しております。

 最後の、事業の評価ということでございますが、これは、法務省では、まず世論調査、そして講演会、シンポジウム、研修などにおけるアンケート結果等を踏まえまして、いずれの経費についても効果的かつ適切に事業が実施されていると評価しているところでございまして、今後も適切な実施を十分確認するよう努めてまいりたいと考えております。

 以上でございます。

西田分科員 ありがとうございます。

 人権というものについては、昨年の法務委員会でも一度大臣とお話をさせていただいた記憶がございます。あのときは、ハンナ・アーレントを引き合いに出したかなと私は思うわけでございまして、大臣からも映画のお話をいただいたことを記憶しているわけでございますけれども。

 人権というのは、人権とは何ぞやといったものが非常に曖昧なまま、いろいろな政策がなされているのではなかろうかというふうに私は思います。

 人権とは、言うまでもなく、国民の権利であるというふうに私は思います。国民の権利であるからこそ、国家があって、そしてさらには、その国家の中で発展してきた法秩序があって初めて保障されるものが国民の権利であり、それを人権と国内向けには定義しなきゃいけないものだというふうに思います。

 混同しやすいのが、いわゆる国際政治における人権でございますけれども、それは、いわゆる国民の権利がいまだ制定されていないか、もしくは何らかの理由で国民の権利が失われたか、あるいは、今、国民の権利がようやく発達しているか。そういった、この日本のように国民の権利が確立した国とは違って、やや不幸にも、国民の権利がまだ確立していない、そういった国の人々に対して、道徳心とか倫理的な見地から、せめて生存の保障だけはしてあげましょうと内政干渉に近いことを行っていくこと、これが国際政治における人権ではなかろうかと思いまして、よく言われている国際政治における人権、最低限のそういう生存の保障とほとんどイコールに等しい人権と、国内で議論される国民の権利としての人権とは、きちんと峻別をして考えないと混同してしまうというふうに私は思うわけでございます。

 国民の権利、これは我が国においては、長年の歴史や伝統の中できっちりと培われてきた正義の中に自由が保障されているわけでございますけれども、そういった前提に立って国民の権利を考えたときに、果たして、法務省が今行っている人権擁護、つまり国民の権利の擁護のための活動といったものがどこまで妥当なのかということを考えるわけでございます。

 いただき物ですが、ここに「平成二十五年度版 人権の擁護」という冊子がございます。先ほど局長に御答弁いただきましたような、さまざまな啓発活動やそういうセミナー等の取り組み、あるいは、みんなの人権一一〇番、子どもの人権一一〇番、女性の人権ホットライン、インターネット人権相談受付窓口とかいった、こういうコールセンター等の御紹介もされているところでございますし、恐らく予算でも、そういったコールセンターの運営費も計上されているのではなかろうかというふうに思うわけでございます。

 さて、これを読み進めていきますと、まず最初に「主な人権課題」というのが出てくるわけでございます。十七項目ございます。最初は「女性」でございますね。何が書いてあるかといいますと、女性に対する暴力はいけませんということが書いてあるんですね。当たり前なんですね、こんなこと。女性に対してであろうが、男性に対してであろうが、子供に対してであろうが、高齢者に対してであろうが、障害者に対してであろうが、暴行すれば、これは傷害でございますから、こんな当たり前のことを書いて啓発活動をやっているということになっているわけでございます。

 一方で、女性に関しては、大臣、男女共同参画基本法の紹介もしてあるわけですね、内閣府の所管だと思うんですけれども。先ほども言いましたけれども、法の支配を貫徹することが信条とされている谷垣大臣におかれては、男女共同参画基本法第四条、我が国の伝統や慣習を真っ向から否定するように読み取ることができるような第四条を持つ男女共同参画基本法なんて、まさしく法の支配を揺るがすものではないかと恐らく問題意識をお持ちなのではないかと拝察するわけでございますけれども、それはともかく、女性、子供、そして障害者、そして高齢者とか、さまざまな人権問題があるというふうに紹介をしてございます。

 ページをめくっていきますと、先ほどの啓発教材、「デートDVって何?」というのが出てくるわけですね。「デートDVって何?」という、これが何というふうに思うわけでございますけれども。私は、これは動画を見てみました。

 まあ本当に余計なお世話でございまして、三組のカップルの話が出てくるわけですね。大臣はこれをごらんになったことがございますか。ぜひ一度ごらんになってください。恋人間の痴話げんかでございますよ。女性が男性に嫉妬をして、例えば大学生のカップルなんですけれども、ゼミでほかの女性と話しているのが気に食わないからゼミに行くなとか、バイトに行くとバイト先にかわいい子がいるから、あなたが行くのは心配だから行くな、あげくの果てには、携帯電話のメモリーを全部消去したというドラマがまずあって、それに対して、これは精神的苦痛を与えるんだとか解説がされております。

 さらには、例えば女性に対して、つき合っている男性が、ミニスカートが好きだからミニスカートをはいてほしい、ショートカットが好きだからショートカットにしてほしい、これも精神的苦痛を与えるおそれがあるとか、まあ本当に、どこまで個人の嗜好や恋愛に対してまでいちゃもんをつけるのかというふうな印象を持つDVDでございまして、余計なお世話を通り越して、私は背筋が寒くなる思いをするわけです。

 ジョージ・オーウェルの「一九八四年」、大臣は恐らく御存じですね。国家権力が個人の私生活のありとあらゆるところにまで介入して、個人の自由を奪っていくさまを皮肉にもつづったジョージ・オーウェルの小説でございますけれども、まさにそれを思い起こすものでございました、この「デートDVって何?」というDVDが。

 私は、そういう余りにも個人の嗜好や本来政府が介入する必要がないところにまで、こうして、やれ人権だという旗を正義のごとくはためかせて介入していくこと、これはやはり、ハイエクが言う隷属への道につながっていくものではなかろうかというふうに思うわけでございます。

 個人の努力もしくは才能、もしくは幸運に恵まれて、そして個人が自由を担保していくこと、こういった当たり前の状況を侵害していくのは、何も行政が私生活に介入するというのが先にあるわけじゃない。私は、これは、私たちが求めるから、私たちが求めて、国家権力に私生活に介入する権力を与えてしまうからいけないんだというふうに思います。逆に、人権の擁護というのがそういった国民意識の啓発につながっているのであれば、私は、断固こういったことはやるべきではないというふうに思います。

 大臣の御所見をいただいて、質問を終わりにしたいというふうに思います。

谷垣国務大臣 今のお話を聞いておりまして、やはり世の中には、自分の権利主張が強烈な余り、何でも人権だ人権だということを言い募り、周囲の者がもううんざりしてしまうというような、人権疲れといいますか、そういう現象も全くないわけではないと私も思います。今の委員の御議論は、そういう実情、実態を踏まえての御議論かなと思います。

 他方、人権の状況というのも、ある意味で日々に変化しているというところが私はあると思うんですね。例えば、先ほど来の御議論のようなヘイトスピーチというものをどう捉えるか。

 それから、児童虐待なんというのは、もうひどいのはまさに犯罪そのものでありますけれども、こういったもの、もちろん、犯罪であるものは犯罪として取り締まらなければいけない。

 しかし、単に私人間の問題を家庭の問題だと放置しておくには余りにも悲惨な例も我々は見聞きいたします。そこに、本来、家庭の問題に余り国家が入るべきではないというのは私もそう思いますが、そういうところに、今までの刑事罰にするという手法と違った、何かもう少し違った手を差し伸べられないかというようなことは、私、児童虐待の問題なんかではしばしば感ずるんですね。

 だから、ある程度、今までの手法で対応の仕方がはっきりしてきているものは、委員のおっしゃったとおり、余り国家が不必要なところまで入っていく必要はない。ところが、どう解決していいのかわからないような問題が日々生じている。それに対応していくにはどうしたらいいかという視点はなきゃいけないだろうというふうに思います。

 私は、法務省のやっている人権擁護行政というのが、いろいろな御議論があると思いますが、そういう、今までの手法では十分解決できない、それでもみんなが悩んでいるような問題にはどう対応していこうか、そういう工夫をしながら積み重ねていく、そういう面も必要ではないかと思っております。

西田分科員 大臣、御答弁ありがとうございます。

 おっしゃったように、本来であれば個人の力で解決しなければいけない問題、あるいは、これまで家族や地域社会が処理してきた問題、これを国家に依存するというのは、これはやはり、私、隷属への道につながっていく、警戒が必要だというふうに思います。そういった意味では、私は、この人権擁護行政、中身を見てみました。いろいろなつくられた資料等も見てみますと、果たしてどうかなというもの、多うございます。ぜひ、大臣、一度ごらんになっていただきたいというふうに思います。

 そして、この政策的な面でのめり張りをつける意味でも、やはりこういった補助金や委託費、私は五〇%削減を提案いたします。それと、冒頭に申しました庁費、間接経費についても二割削減、これをしっかりと提案させていただいて、質問を終わりにさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

金田主査 これにて西田譲君の質疑は終了いたしました。

 次に、樋口尚也君。

樋口分科員 公明党の樋口尚也でございます。

 昨年に引き続き、谷垣大臣に質問をさせていただきたいというふうに思います。

 昨年も、保護司の負担軽減や活動経費の増額、これをお願いしたところでございます。大臣からは、できるだけ負担軽減をして、やりがいを持って活動していただけるように工夫をするというお約束をいただいたところでございます。

 そして、報道で見ましたけれども、昨年の十月の十二日に、大臣が横浜の緑区で保護司の皆さんと懇談をされた、こういうことも拝見をさせていただきました。私も、現場の声を踏まえまして、またしっかりとフォローをしていくという意味で、まず保護司のことについてお伺いをしたいと思います。よろしくお願いいたします。

 初めに、昨年も伺いましたけれども、保護司が減少しているという現状と聞いておりますが、今の現状、そしてその背景について御説明をいただきたいと思います。

齊藤政府参考人 お答えいたします。

 保護司の数ですが、本年一月一日現在におきまして、現在員四万七千九百十四人でございます。過去五年間連続して減少しておりまして、約千人減少しているというところでございまして、定員が五万二千五百人ですが、充足率は九一・三%というふうになっておりまして、保護司の安定的な確保が最重要課題の一つとなっております。

 その原因は、種々考えられるんですが、私どもも分析しているんですが、やはりその一つは、従前、保護司さんがおやめになったとき、その保護司さんの個人的なつながりで後継者の方を紹介していただく、こういう形で次の方が次から次に来ていたというのが実態だったんですが、やはり最近、地域のつながりが、きずなが薄くなってきたというようなこともあって、そういう形での後継者の確保がなかなか難しくなっているというようなこともあると思います。

 それ以外に、同様に、地域のきずなが薄くなってきていて、保護司活動がなかなかやりにくくなっている、仕事自体もやりにくくなってきているというのも一つの原因ではないかというふうに考えているところでございます。

樋口分科員 ありがとうございます。

 私も、保護司の皆様に何人もお会いをして、お話を伺ってまいりました。やはり、大臣も昨年からお会いになっていらっしゃると思いますが、高齢化が非常に進んでいるということもありますし、次の方が見つからないといったような問題もあります。

 大臣にも一言、通告しておりませんが、保護司の皆様に対する現状の御認識について伺ってもよろしいですか、なぜ減っていくのかという点について。御所見をお願いします。

谷垣国務大臣 保護司は、申すまでもございませんが、要するに、ボランティアの方々に、収容されていた方々の更生、復帰のお手伝いをしていただいている。私は、よく我が国の先輩たちがこういういい制度をつくってくださったなと思います。それで、保護司の方々のお話を伺いましても、非常にある意味で意気に感じて、やりがいを感じていただいているのはありがたいことだと思います。

 他方、今のように、だんだん定員が満たせないとか、それは高齢化もあると思いますが、例えば昔はやはり地域の名望家みたいな方、かなり自分のお住まいなども広くて、ある程度、観察対象者のお世話をするゆとりもあったんでしょうね。それが、もう皆、住居も狭い、そうすると相談に乗るにも場所がないとかいうようなこともございます。

 それから、やはり地域社会のきずながだんだん薄れてくるというようなことになりますと、観察対象者との、何というか、地域社会と切れたような人もかなり大きくなってくる。そういう中で、かつて、不幸な事件で、保護司の方の家に火をつけるというようなこともございました。

 そういうような、仕事の負担からくる被害というものはできるだけバックアップをしてあげるとか、それから、先ほど申し上げたような、ボランティアでやっているんですが、それがむしろ出費になっているというような状況もないわけではありませんね。そういったようなことにも目配りをして、少しずつ手当てをしていくということ、これはやらなきゃいけないんだろうと思っております。

樋口分科員 ありがとうございます。

 お会いしてお話を聞くと、お金じゃないんだという、今大臣からおっしゃっていただきましたような強い使命感を持って、地域のために誇りを持って取り組んでいらっしゃる姿勢に、本当に頭が下がる思いでございました。そういう保護司の皆様をどうしていくかという点で少し伺ってまいりたいというふうに思います。

 まずは、この保護司が活用する施設として、更生保護サポートセンターがあります。ここは、保護司や保護司会が地域で更生保護活動を行う拠点として設置をされ、保護司の処遇活動に対する支援、関係機関との連携による地域ネットワークの構築等に使われているところでございます。このセンターの役割が非常に大きいというふうにおっしゃいますし、私も極めて大事だというふうに考えます。

 このセンターの増設、そして、それを含めた保護司候補者の確保のための方策について御説明をいただきたいと思います。

齊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今もう先生御指摘なさったとおり、更生保護サポートセンター、保護司活動の拠点でございます、つくらせていただいたところ、私も大分回らせていただきましたが、つくってよかったなと、非常に便利だと、面接場所もありますし、先ほど大臣も答弁されましたが、なかなか今マンション等で家に連れてきにくいという方もおられます、そういう方の面接場所もあるし、会議ができる、ほかの更生保護団体との連携も図れるということで、非常に今好評でございます。

 本年度予算で、全国で八百八十六ある保護区のうち二百四十五カ所に設置させていただいております。さらに更生保護サポートセンターの拡充を図りたいと思っておりまして、来年度の予算案の中には、さらに百カ所の増設についての必要な経費を盛り込ませていただいているところでございます。

 さらに、保護司さんの確保につきましては、平成二十年から全国に保護司候補者検討協議会というものも設置しています。昨年度で全保護区に設置しております。ここは、その委員に、自治体の方とか自治会の方とか、地元の方に随分入っていただいていて、こういういい方がいますよといったような情報なども提供していただくようにしております。

 そういう形で保護司の適任者の確保に努めていきたいと思っております。

樋口分科員 ありがとうございます。

 二百四十五カ所を、さらに百カ所というお話でありますけれども、ぜひ、私どもも積極的にサポートしてまいりたいと思いますので、さらなる増設を心からお願いしたいというふうに思います。

 続きまして、法務省さんが独自の就労支援事業として行っていらっしゃる自立更生促進センターや就業支援センターの運営、これについてお伺いをいたしたいと思います。

 現状についてまず教えてください。

齊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 自立更生促進センター、就業支援センター、いずれも国が設置して運営しているセンターでございます。ここにおきましては、保護観察官が直接濃密な指導監督、手厚い就労支援などを行っているというところでございます。

 名前は二つに分かれていますが、就業支援センターでは、例えば農業関係とか、そういうふうな方面の指導をして、そちらの方へ行ってもらうというような形の指導をしておりますし、自立更生促進センターの方では、例えば特別な問題を抱えている人に対する処遇などを行うことを目的としているというところでございます。

 就業支援センターにつきましては、現在、北海道の雨竜郡の沼田町に一つあります。それから、茨城県のひたちなか市に一つあります。それから、自立更生促進センターにつきましては、北九州市に一つと、それから福島市に一つ置いております。

 具体的な運営状況ですが、例えば就業支援センターの一つであります茨城県のひたちなか市のセンターでありますと、全国の刑務所等から農業をやってみたいという方、仮釈放になった方に来てもらって、農水省さんとか厚労省さんとも連携いたしまして、施設の中で農業技術を教える。さらに、近隣の篤志家の農家の方がおられまして、そういうところへ委託して、具体的な農業の勉強をしていただき、そこで勉強された方の中には、地元の農業法人に就職されたり、帰って農業に就労されるという方も出てきているところでございます。

 また、北九州の自立更生促進センターでは、薬物依存が強い者に対する処遇などについて力を入れてやっているというところでございます。

樋口分科員 ありがとうございます。

 昨年、大臣に御質問したときに、安倍総理から就任直後に言われた、再犯率を下げるということが課題だというお話もいただいたところでありますけれども、行き場のない刑務所出所者の再犯防止、これを進めていくためにも、このセンター、今四つということで御説明いただきましたが、例えば建物を改良してとか、新築をしなくてもできるような建物ではないかというふうに見受けられるんですけれども、そういう意味で、増設の必要があるのではないかと思いますけれども、その点、いかがでしょうか。

齊藤政府参考人 お答えいたします。

 先生おっしゃるような面もあろうかと思います。

 ただ、この四つのセンターをつくるとき、なかなか、ちょっと地元の方との関係もございまして、もちろん随分御理解いただいておりまして、今随分御支援いただいているんですが、そういうことで、さらに地元の皆様の御理解を十分得つつ、この四つの施設の現在やっている運営内容をさらに充実していきたい、まずそれを一生懸命やらせていただきたいというふうに思っているところでございます。

樋口分科員 よくわかりました。

 次に、協力雇用主、この制度についてお伺いをいたします。

 協力雇用主とは、犯罪、非行の前歴のために定職につくことが容易でない保護観察対象者や更生緊急保護対象者を、その事情を理解した上で雇用し、改善更生に協力する民間の事業主さんのことでございますけれども、現在、この協力雇用主に登録をされている事業者の数及び協力雇用主さんの事業所に就職した刑務所出所者の人数、どのくらいでしょうか、教えてください。

齊藤政府参考人 お答えいたします。

 平成二十五年四月一日現在で、全国で協力雇用主さんとして登録いただいておりますのは一万一千四十四事業者でございます。そして、この時点で雇っていただいている刑務所出所者の数は八百七十九人ということでございます。

樋口分科員 昨年は、職親プロジェクト、大阪の千房の中井社長がおやりになっていることについてもお尋ねをさせていただきましたけれども、この協力雇用主制度、今、一万一千四十四分の八百七十九というお答えでありますけれども、この雇用を拡大していくために、協力雇用主さんに対する支援を充実することが必要だと考えますけれども、いかがでしょうか。

齊藤政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおりでございまして、やはり、前科があるということをわかりながら雇いましょうという、協力雇用主さんにおける雇用を拡大するというのが一番大事なことだというふうに思っております。

 法務省では、平成十八年から、厚生労働省と連携いたしまして、刑務所出所者等総合的就労支援対策というものを始めさせていただいております。

 いろいろなメニューがあるんですが、例えばその一つはトライアル雇用というものでして、これは厚労省さんの予算なんですが、協力雇用主さんが刑務所出所者を雇用していただいた場合、いろいろな条件があるんですが、三カ月間、一カ月四万円を協力雇用主さんに支援するという制度がございます。

 それから、これは私どもの予算でやらせていただいているんですが、身元保証制度、雇用してもらった者が、いろいろ業務上、協力雇用主さんに迷惑をかけたり被害を与えたという場合、最大二百万円まで補償するという制度がありまして、その事業を行っているところに対しまして補助金を出すということをさせていただいております。

 さらに、これは本年度からの話なんですが、私どもの予算をつけていただきまして、職場定着協力者謝金というものをつくっていただきまして、これは、更生保護施設にいる刑務所出所者を協力雇用主さんが雇用していただいた場合、大ざっぱに言いまして、三カ月で大体七万円弱ぐらいの協力謝金をお支払いするということです。

 これは、どういう理由でお支払いするかというと、実際に仕事をしていただいて、オン・ザ・ジョブ・トレーニングでいろいろ教えていただく、それから生活指導なんかもしていただく、そういう状況について協力雇用主さんから保護観察所に報告もしていただく、保護観察所はその報告をもとにまたその処遇などに活用する、そういうことに協力していただくという謝金で、三カ月で七万円弱出させていただいているというところでございます。

 来年度の予算案につきましては、この職場定着協力者謝金を、今は約三カ月間なんですが、約六カ月間、大体十二万円ぐらいまで拡大していただけないかと、そのための経費を計上させていただいているところでございます。

 それ以外に、近年、地方公共団体の中で、公共事業に関して協力雇用主さんに優遇措置をとるようなところも随分出てきています。こういうものもさらにどんどん広めていって、協力雇用主さんに対する支援を強めていきたいというふうに思っております。

樋口分科員 謝金の制度、すばらしいと思いますので、ぜひ拡充方、六カ月にということでございますが、全力で応援をしてまいりたいと思います。

 最後にお話しいただいた、公共工事の入札についてお伺いをしたいと思います。

 協力雇用主さんを優遇する仕組みを導入している地方公共団体が近年増加をしているというふうに聞きますけれども、現在どれぐらいあるのか、また、この制度を導入する地方公共団体の拡大を図ること、そして国においてもこの制度が活用できないのか、導入すべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。

齊藤政府参考人 お答えいたします。

 地方公共団体におきまして、地方公共団体発注の公共工事に関し、何らかの形で協力雇用主さんに対して優遇措置を講じているところは、県レベルも含めまして、全部で三十四にまで上っています。これは、おかげさまで、数はどんどんふえております。

 それから、このような制度の導入は、実際に落札していただけるという面でも非常に効用がありますし、また、それを超えて、こういう制度を導入していただくということ自体が、地方公共団体や社会の皆様に、協力雇用主さんが一生懸命やっておられるということを伝える一つの手段にもなりますので、さらに一生懸命広げていきたいというふうに思っております。

 法務省におきましても、法務省が行う施設整備における競争入札に関し、優遇措置の検討を進めているところであります。

 一生懸命やっていこうと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

樋口分科員 ありがとうございます。

 これから拡大をしていくために、法務省さんが必死になっていろいろなところを回ってというお話を伺いました。さらに地方公共団体に公共入札制度を進めていく。

 国の工事がたくさんありますけれども、これについても、大臣、ぜひ、横横の連携と、どうしたらできるのかということを検討いただいて、そしてやるべきだ。今、公共工事、人が足りないということの現状もございます。やらなければいけないこともたくさんあります。この点、大臣、一言、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 実は、数日前、刑務所におられる方を五十年間にわたって実際に雇用してくださった企業に表彰状をお贈りいたしました。

 それで、五十年、御苦労はたくさんあったと思うんですが、五十年前どうしてこういうことを始められたのかと聞いたら、まことに率直なお答えで、人手不足です、こういうことでした。ただ、人手不足というだけでなかなかそれは続くはずがありません。当時の、五十年前の高度経済成長の中でそれなりの必然性はあったんだと思うんですが、やはり志というものがおありだったから五十年間続いたんじゃないかと思います。

 ただ、志だけでやれやれと言われてもなかなかできませんので、今いろいろ御議論のあったような点を我々も少しでも工夫して、推し進めていく努力を惜しんではいかぬと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

樋口分科員 大臣、ありがとうございます。

 続いては、高齢の出所者についてお伺いをしたいと思います。

 高齢の出所者、これから確実に増加をしてまいります。そのことを見据えて、身元引受人のいない高齢の出所者の受け入れ先を確保することが必要ではないかと思います。

 法務省としてどのような取り組みをされているのか、お伺いしたいと思います。

齊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 法務省におきましては、厚生労働省、さらにそれ以外の関係機関と連携いたしまして、平成二十一年から特別調整という制度を実施しております。

 これは、高齢・障害者で行き場のない方、そういう方がおられます。そういう方が刑務所にいるということで矯正の方から連絡をいただきますと、私どもの保護観察官が刑務所に行っていろいろ本人の事情などを聞く。さらに、その一方で、厚生労働省が予算を出していただいて、全国に地域生活定着支援センターというのをつくっていただいています。北海道は二つで、あと各都道府県に一つずつあるんですが、そういう方について、観察官もいろいろ面接して、この方はやはり福祉につないだ方がいいなという方については、そこへ連絡し、その地域生活定着支援センターにはそういう福祉関係の専門家の方がたくさんおられます、いろいろな福祉関係団体とかも知っておられます、そこがさらに福祉にいろいろつなぐ。

 もし時間的な関係で福祉にすぐつなげない場合は、私どもが担当しています更生保護施設に一度入れる、そういったような形で、行き場のない高齢・障害者を受け入れるということをさせていただいています。

 平成二十四年度に刑務所等を出所した特別調整対象者六百二十五人のうち三百五十三人につきましては、刑務所在監中に福祉施設への入所等の必要な福祉的支援を確保することができております。

 引き続きしっかりやっていきたいと思っております。

樋口分科員 引き続きよろしくお願いをしたいと思います。

 次に、薬物使用者の支援についてお伺いをしたいと思います。

 薬物乱用で刑務所に収監されている受刑者に対し、弁護士会などと連携をして、薬物の恐ろしさを語るボランティアの方がいらっしゃいます。固有名詞は差し控えますけれども、今からお話しする内容は、そのボランティアさんから直接お伺いをした内容であります。

 刑務所の集会室に、薬物による受刑者が数十人集められたそうであります。そこで、その講師のボランティアの方が受刑者に対してこのように言われました。今から皆さんに質問をします、ここで皆さんが何を語ろうが、どんな意思表示をしようが、新たな罪に問われることもないし、そして刑期が延びることもありませんから、正直に安心して答えてくださいと。そして、皆さんにこういうふうに聞いた。出所したら、また薬をやりたいと思っている人は手を挙げてください。そうすると、そこにいらっしゃった全員の方がおずおずと手を挙げる、こういうことがあったという話を聞きました。

 私はこの話を聞きまして愕然といたしました。言うまでもなく、懲役刑の目的の一つには矯正がございます。再犯防止を図るとともに、生活習慣などの健全化や職業訓練を通じ、社会への復帰を目指しているわけであります。刑務官はもとより、矯正局の皆様が大変な思いで受刑者の更生と社会復帰に取り組んでいますが、これでは全く報われないことになってしまいます。

 私が、この話をこの間お会いした保護司の方にお話しいたしました。そうしたら、その保護司の方はこういうふうにおっしゃったんです。それはそうですよ、受刑者の皆さんは指折り数えて出所の日を待って、そして、その唯一の希望は、また薬をやることだと思っているんです、こういうふうに教えていただきました。

 薬物の魔性に一度はまり込むと抜け出せない、抜け出すことは極めて困難でございます。厚生労働省の統計によれば、最近、薬物事犯の検挙者数はわずかながら減少傾向にあると伺っていますが、反対に、覚醒剤事犯の再犯率は年々増加傾向、もしくは高どまり傾向にあります。この数字からも、薬物から抜け出すことの難しさがよくわかります。

 大臣、済みませんけれども、今お話を聞いて、一言いただければと思います。

谷垣国務大臣 おっしゃるように、薬物から足を洗うというのは非常に難しいことじゃないかと思いますね。

 そこで、今、刑務所の中で、やはり再犯防止というには、それぞれみんな、どういう罪を犯したかによって矯正のプログラムは違いますので、薬物に関しても、いろいろな最近の知見を取り入れましてプログラムをつくってまいりました。試行錯誤もたくさんございますけれども、そういうものを何とか活用してやっていきたいと思っているんです。

 ただ、反面、最近、非常にある意味では希望の見えることも伺いまして、それは、昨年、法務委員会で海外視察をされたときに、アメリカのある団体、刑務所で服役された方々の矯正をやっておられるところで、そこは、設置をされた方以外は全部元受刑者だというんです。衆議院の法務委員会で行かれたところの対応してくださった方は、御本人自身がかつては薬物中毒で、薬の売人もしていた。それがすっかり、その運動を始めて、その中で立ち直って、今では薬物を克服していく指導者になっているというお話を伺いまして、なかなかそんな事例ばかりではないと思いますけれども、いろいろな努力の中にそういう希望もあるんだなと思っております。

樋口分科員 大臣、丁寧な御答弁、ありがとうございます。

 厚生労働省に伺います。

 我が国には、薬物関連障害に対応する精神科医療機関が極めて少ない、さらに、薬物依存症に対する治療プログラムを持つ施設はもっと少ないというふうに聞いています。

 薬物絡みの犯罪を減らすためには、医療機関のサポートがどうしても必要であります。国として施設を設置することなどを含め、積極的に取り組むべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、現在、日本の中で依存症の治療回復プログラムを行っている医療機関の数、さらに言えば、その中の薬物依存症の治療を行っている医療機関の数というのは、まだまだ非常に少ないという状況にございます。

 こうしたことから、厚労省といたしましては、医療機関も含めて、依存症対策のあり方につきまして検討会をつくりました。その検討会の中で幾つか提言をいただきまして、例えば、本人が気軽に依存症に関する相談ができる体制の整備だとか、あるいは医療機関、行政、自助団体の連携体制の確保、さらには、必要な医療を受けられる体制の整備等の柱を掲げまして、それを踏まえて、例えば治療プログラムの策定などの具体的な提言をもらった、こんな状況でございます。

 厚労省では、この提言を踏まえまして、平成二十六年度から、全国五カ所程度の医療機関を依存症治療の拠点機関として位置づけ、さらにはその中の一つを全国の拠点機関と位置づけた、こういうことをやろうと思っていまして、そうした仕組みの中で、例えば治療プログラムの開発だとか、あるいは依存症に関する専門的な相談支援の体制づくり、こうしたことをモデル的に実施をしていきたいと思っています。

 こうしたモデル事業の実施を踏まえながら、先生御指摘ございましたように、必要な治療ができる医療機関の拡充を含めて、依存症対策のさらなる推進にしっかりと取り組んでまいりたい、こういうように考えております。

樋口分科員 この薬物事犯者の処遇については、保護司さんも大変な御苦労をなさっていらっしゃいます。国として、保護司さんが薬物事犯にかかわる負担軽減についても、ぜひとも今後検討を進めていただきたいというふうに思っております。

 保護司を主に聞いてまいりましたけれども、私も身近に何人も保護司の先生方がいらっしゃいます。本当に頭の下がる思いでいっぱいでございますけれども、最後に、全国で活躍なさっていらっしゃる保護司の皆様へ、大臣から激励の言葉をいただいて、質問を終わりにさせていただきたいと思います。

谷垣国務大臣 先ほど申し上げたように、先輩たちの御努力で、本当にボランティアとして、こういう一度罪を犯した方々の社会復帰のために努力をしていただく、これは本当にありがたい制度だと私は思っております。

 そして、繰り返しになりますが、それぞれのお話を伺いますと、本当に心を打たれることが多いんですね。今の薬物のお話もそうですけれども、中には随分一生懸命努力したけれども結局うまくいかなかったという挫折感をお持ちになることも多いだろうと思います。しかし、例えば、三月十一日の被害の後、自分の担当した観察対象者がどうしているかと思って一生懸命捜した、そうしたら、その人間が、なかなか連絡がつかなかったんだけれども、震災復興のための手助けを一生懸命やっていたとか、そういうのに、やはりやってよかったなという思いでやっていただいている。本当にありがたいことだと思っております。

 今後とも、保護司の皆様の活躍と申しますか御尽力に我々も報いていきたいと思いますが、こういう再犯を減らして安心、安全な社会をつくっていくための御努力を心から多とし、また、お願いをしたいと思っております。

樋口分科員 終わります。ありがとうございました。

金田主査 これにて樋口尚也君の質疑は終了いたしました。

 次に、山田賢司君。

    〔主査退席、中山(泰)主査代理着席〕

山田(賢)分科員 私、自由民主党兵庫七区選出の山田賢司でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 まず、谷垣大臣におかれましては、自民党が下野している際に、谷垣元総裁のもと、自民党を再生するということで全国で公募を行いまして、私がこういった場に立って質問ができるのも、谷垣大臣が当時総裁として自民党の再生に御尽力いただいたことと深く感謝を申し上げます。

 それでは、早速質問に入らせていただきます。

 私は、今回、法務省を中心に御質問させていただきますが、日本人の名誉を取り戻すということに関連して質問させていただきます。

 まず、ある特定の人種や国籍、こういった方を捉まえて誹謗中傷したりあるいは憎悪をあおる、いわゆるヘイトスピーチというのが行われたりしますが、このことについて大臣の御所見をお伺いできますでしょうか。

谷垣国務大臣 ヘイトスピーチというのは何なのか、まだ必ずしも法律学上の概念としてきちっと定義をするというところには至っていないのかなと思いますが、ごく常識的に言えば、例えば人種間の対立をあおったり、そういうことによって差別意識を助長されるというようなものをヘイトスピーチと言うのかなと思っております。

 これが、必ずしも今、日本社会の中で幅広く行われているとは思っておりませんが、それぞれ特定の地域で、やはりいろいろな、かなり過激なといいますか過剰な行動があるのも事実でございまして、これはやはり日本が品格のある、まあ品格という言葉がいいのかどうかはわかりませんが、やはり我々は国家として品格のある国家でありたいと思っておりますが、そういう観点からすると、決して放置しておいてよいものとは思っておりません。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 私も全く同感でございまして、批判を行うのであれば、論理的に、事実に基づいて批判するべきであって、国籍だ、人種だということを捉まえて、ましてや、節度のない言葉を使って批判することは不適切だと考えております。

 ヘイトスピーチということは、何も日本人が他国の人を捉まえて言うことだけではなくて、昨今では、他国によって日本人に対するヘイトスピーチなんかも行われておるんですけれども、これについて、大臣、どのようにお考えでしょうか。

谷垣国務大臣 先日も、そこにおられた、もう一人の山田さんが予算委員会で、アメリカでアジア系の方々から日本人の子弟がいじめられる例があるようなお話を伺いました。

 私自身も、アメリカで生活をされた方々から、悩みは、やはり子供が非常に、そういう意味で、おまえらの国は一体何をやったんだということでいじめられるという話を聞きまして、そして、ここから先が、そういう表現をしていいのかどうかわかりませんが、親が見てもびっくりするほどのナショナリストになってしまっていると、俺たちの国はそんなそしりを受けるような国ではないぞということなんでしょうね。

 私は、こういうヘイトスピーチが出てくる背景にはさまざまなことがあると思いますが、やはり自分の国の過去の伝統におおらかな自信を持つということが、夜郎自大的な誇りを持つことじゃなしに、おおらかな誇りを持つということが必要だろうと思います。

 それからもう一つ、私つくづく最近感じますのは、やはりそれぞれの国にはそれぞれの国の歴史、元気あるいはそれぞれの国の誇りというものがあるだろうと思います。これはなかなか他国には、場合によっては理解されないことがあるかもしれない。しかし、その国の国民は、やはりそういう歴史なり自分の国の成り立ちに誇りを持っていくということは必要なことですし、避けて通れないことだと思うんですね。

 ただ、これは、日本というだけじゃなく、いろいろなことを見ますと、そういったことが、では、よその国から見たらどう見えるかということもやはり考えながら、これは日本もそうですし、ほかの国もそうだろうと思います。自分たちの主張は自分たちのレーゾンデートルからすれば必要なことかもしれないけれども、他国から見たら、あるいはよその文化圏の人から見たらどう見えるかということも考えなきゃいけないと思います。

 それからもう一つ、自己主張するときには、やはりその国それぞれ、さまざまですから、いろいろな言い方があると思うんですが、こういうグローバル化時代には、よその国の人に、よその文化の人にわかるような論理を持って自分たちの誇りを説明していかなきゃいけない。そういったようなことをお互いに少し考える必要があるんじゃないかなと。

 余り閣僚としての答弁ではないかもしれませんが、そのように思います。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 他国の方に御理解をいただくというのはもちろん、わかるような説明、本当に大事だと思っております。

 ただ、大変残念なことなんですけれども、日本の国内においても、我が国において、日本や日本人をおとしめるような、こういう表現、言動、これに対しては野放し状態になっておりまして、これをやめさせようといろいろ批判すると、これは表現の自由に対する重大な侵害だと言われて、逆に日本を褒めるような表現、あるいは他の中国や韓国なんかを批判すると、右傾化だとか軍国主義に逆戻り、あるいは差別だといった、こういうような風潮があるんですけれども、私は、このダブルスタンダードは大変問題だと思っております。

 これは、ただ、民間の中のことでございますので、大臣にあえて御質問することではないので、こういったことも含めて理解をいただけるようにしたいと思っております。

 次に、実務的なことで教えていただきたいんですけれども、我が国の刑法では、個人に対する名誉毀損のみならず、法人いわゆるコーポレートに対する名誉毀損というのも、これは刑法二百三十条の名誉毀損罪の対象となっておりますが、日本国に対する名誉毀損というのは、刑法の名誉毀損罪の対象になるんでしょうか。

林政府参考人 刑法の名誉毀損罪における名誉の主体でございますが、一般に、行為者以外の自然人及び法人その他の団体を含む、こう理解されております。

 そして、名誉毀損罪につきましては、判例によれば、社会上の地位または価値を他人により侵害された場合に成立する、こういうことになっているところでございます。

 しかし、国が名誉毀損罪の被害者である人に該当するか否か、あるいは刑法上保護すべき国の名誉としてどのようなものを観念できるかということにつきましては、これまでそうしたことについて言及した判例などは見当たらず、お尋ねの点につきまして、法務当局として見解を申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 では、実際に名誉感情を害された、そういう日本国民に対する名誉毀損罪というのは成立するんでしょうか。また、あるいは民事上、民法七百二十三条に基づく救済の対象になるのか教えていただけますでしょうか。

林政府参考人 まず、刑事の面についてお答えいたしますが、もとより、犯罪の成否というものが、捜査機関により収集された証拠に基づき個別に判断される事項でございますので、成否そのものについてのお答えは差し控えさせていただきますけれども、一般に、刑法、この名誉毀損罪の構成要件の人となりますと、これは判例によれば、特定したるものなることを要す、いわゆる、その人が特定されることが必要となっております。

 したがいまして、その名誉毀損罪が成立するためには、そういった特定の人に対して公然と事実を摘示して、その名誉が毀損される行為がなされれば、名誉毀損罪が成立するということになると思います。

深山政府参考人 次に、引き続き、民事の関係で、御指摘があった民法七百二十三条に基づく救済の対象になるかという点についてお答え申し上げます。

 民事上は、一般論として、この民法七百二十三条が規定する名誉というのは、人がその人格的価値について社会から受ける客観的評価、すなわち社会的名誉を指すというふうに解釈されております。

 したがいまして、いわゆるヘイトスピーチによってこういった社会的名誉が害されたと評価される場合には、日本国民という形で言われた場合であっても、民法七百二十三条に基づく救済の対象となり得るものと思います。

 ただ、これは、具体的な事案に応じて、そういう言い方でその人の社会的評価が害されたと言えるかどうかということにかかっているということになります。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 要は、特定できれば、その方の名誉が害されたと言えれば、その救済の対象になるという理解でよろしいでしょうか。はい。

 それでは、続きまして、外務省にちょっとお尋ねをしたいんですけれども、現在、韓国の朴大統領を筆頭に、韓国政府及び韓国の民間団体が一丸となって、世界じゅうに我が国をおとしめるようなディスカウント・ジャパン活動を行っているんですね。こうした活動というのは、単なる事実の広報とか嫌がらせという次元を超えて、我が国の信用を失墜させるような組織的、計画的な破壊活動と認識して、危機感を持って厳正に対処すべきと考えるんですが、いかがでしょうか。

下川政府参考人 お答えいたします。

 韓国は、もともと基本的価値と利益を共有する重要な隣国でありまして、北朝鮮問題への対応を初めアジア太平洋地域の平和と安定のために良好な日韓関係が不可欠であるというのが基本的な我々の認識でございます。

 にもかかわらず、韓国政府や一部の民間の団体が、過去の問題を初めとしました日韓間の懸案について、一方的な立場に基づいて事実と異なる主張を展開しているということは事実でございまして、極めて残念なことであるというふうに思っております。こうした行為は日韓関係のためにならないというふうに考えております。

 そういった状況に対しまして、過去の問題を初め日韓間の懸案に関しましては、韓国側に対して、累次にわたり、日本の立場やこれまでの取り組み、努力というものを説明し、それらをしっかり受けとめて正しく理解するように働きかけているところでございます。

 我が国としましては、先ほどのような基本認識も踏まえまして、大局的な観点から、重層的で未来志向の関係を構築できるように粘り強く努力してまいりたいというふうに考えております。

山田(賢)分科員 累次にわたり粘り強く申し入れをしていただいているということなんですけれども、我が国に対する侮辱行為に対して国際法上どのような対抗策がとり得るんでしょうか、教えていただければと思います。

下川政府参考人 お答え申し上げます。

 一般的に、国際法上、国家が他国の行為や政策を非難ないしは批判すること自体は禁じられておりませんで、こうした行為に対し、国際法違反行為であるとして何らかの対抗措置をとるということは困難であるというふうに考えられております。

 他方で、先ほど申し上げましたとおり、韓国が、過去の問題を初めとする日韓間の懸案について、一方的な立場に基づき事実と異なる主張を展開していることは事実であり、残念であると考えますので、日本側のこれまでの立場や努力というものを累次にわたって説明して、それをしっかり受けとめて正しく理解するよう、引き続き働きかけていくようにしたいと考えております。

山田(賢)分科員 実際に、現在、米国のグレンデール市を初め、米国各地でいわゆる慰安婦の像というものが設置されて、事実無根の説明に基づいて、在米の日本人の方々が嫌がらせを受けたり、あるいは子供たちがいじめに遭っているということ、こういった被害が現実に生じているんですけれども、こうした被害を防止するために、外務省としてどのように対応するのか。当然、先ほどのように粘り強く要請してまいりますといった抽象論ではなくて、具体的にどのような救済策をとっていただけるのか、とっておられるのか、教えていただければと思います。

下川政府参考人 お答え申し上げます。

 慰安婦像設置などに伴いまして、現地の在留邦人の方々の子女に対するいじめがあるとすれば、これは極めてゆゆしい問題でございまして、到底看過できるものではございません。

 外務省としましては、在外公館を通じまして、現地の在留邦人の方々とも連携して関連情報の収集に努めておるところでございまして、仮にそうした事実が確認された場合には、即座に適切な措置を講じていきたいというふうに考えております。

山田(賢)分科員 済みません、適切な措置というのをもう少しわかりやすく教えていただければと思います。

下川政府参考人 例えば学校でいじめやヘイトクライム等が行われているという事実が確認された場合には、例えば教育機関等への申し入れ、抗議、あるいはヘイトクライムオフィサーや警察への通報、相談、さらには在留邦人の方々を集めた日本人安全対策委員会等の開催、そういったようなことが一例として考えられると思います。

 いずれにしましても、在外公館において引き続き情報収集に努めまして、何らかのそういう被害の状況が確認されましたら、適切な措置を即座にとってまいりたいというふうに考えております。

山田(賢)分科員 日本人は、謙虚で礼節を重んじる文化があるので、百のうち一つでも間違いがあったら、済みませんと謝っちゃうところがあると思うんですね。ところが、相手は、百間違っていても絶対に百合っているというような、こういう方々と普通に話をしていても、多分どうやっても負けてしまうというか、日本人が悪いということになってしまうと思うんですね。条約は守らないとか、盗んだものは返さない、事実をでっち上げてでも人を批判する、こういった相手に日本人と同じように接していても、日本が悪いということになってしまいますので。

 中国や韓国のように事実をでっち上げてまで相手を批判することは当然やるべきではないと思うんですけれども、実際に中国や韓国が行った乱暴ろうぜきといった事実をきちんと、内外に本当のことを知らしめてやらないといけないんじゃないかな、このように思うわけですけれども、マスコミはもちろん、政府においても、ややもすると、中国や韓国、朝鮮に都合の悪いことを言ってはいけないというような雰囲気があるように思うんですけれども、政府の中で、中国や韓国、朝鮮の悪事というのは、事実であっても、これは公の場では言ってはいけないという何か合意はあるのでしょうか。

下川政府参考人 お答えいたします。

 我が国としまして、特定の国や地域について言論を制限する、そういったようなことを他国と合意しているというようなことはございません。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 そうしますと、ちょっと具体的に教えていただきたいんですけれども、例えば中国の文化大革命とか天安門事件、あるいは韓国の保導連盟事件というのがあったと思うんですが、これの犠牲者数というのは、それぞれ幾らでしょうか。

下川政府参考人 ただいま御指摘のありました個別の事案について、日本政府としてお答えする立場にはございませんが、中国側の発表によりますれば、例えば文化大革命では三万四千人以上、そして天安門事件では約三百人の中国人が犠牲になったというふうにされております。

 また、韓国の事案ですけれども、韓国の政府機関である真実・和解のための過去史整理委員会が発表しました報道資料によれば、保導連盟事件の際の犠牲者数は四千九百三十四名であるというふうにされております。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 私は、お互いの国民がやはり正しく事実を把握して、お互いに憎しみ合うようなことがないようにしないといけないと思っておるんですね。

 現在、中国、韓国もそうなんですけれども、日本に対する憎悪を増幅させるような政策がとられているように思うんですね。こういったこと、むしろ自分たち同胞の命を奪った人は誰なのかということをちゃんと教えてあげて、事実に向き合うようにすべきではないか、このように考えております。

 中国国民に対しては、よく南京事件で、日本軍によって何百人から何万人、何十万人殺されたというようなことを一生懸命広報しているんだけれども、文化大革命で中国政府が言っているだけで三万四千人、大躍進政策では四千万人とかいう人が殺されたと。本当に自分たち国民の命を奪った人たちはこの人たちですよ、中国共産党であり、毛沢東であったんじゃないのということを教えてあげて、それでも私たちは憎しみ合うべきではないと。

 韓国にしても、何かあたかも日本軍が強制連行して慰安婦を連れていったようなことを言うけれども、それは朝鮮の業者がだまして連れていったんだということ、さらには、保導連盟事件のように、五千人近くの自国民を殺しているんだ、これが、朴大統領のお父さんの朴大統領の前の時代に行われたことだ、こんなことも含めてきちんと言った上で、事実と正しく向き合って、両国の国民の真の相互理解につなげるべきではないか、このように考えるんですが、いかがでしょうか。

下川政府参考人 ただいま御指摘ありましたように、日中関係、日韓関係、厳しい局面にありますが、そういう状況にあるときだからこそ、さまざまなレベルで交流や対話を着実に積み重ねていくことが大切であるというふうに考えております。そうすることで、相互理解が深まり、協力関係を発展させることができるというふうに考えておるところでございます。

 そういう観点からも、今御指摘ありましたように、日中及び日韓の国民が歴史的事実や認識について相互理解を深めるということは非常に有意義というふうに考えておりまして、日本政府としましては、中国、韓国との間で幅広い分野での交流を進めることを通じて、日中及び日韓関係を発展させていきたいというふうに考えておるところでございます。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 それでは次に、総理が靖国参拝をされたこと、これを捉まえて、近隣諸国、とりわけ中国、韓国の批判があるんですけれども、これについて、よくA級戦犯が合祀されているからだという言い方をするんですけれども、これについては、法的にどうなんだということをいろいろ言いたいことがあるんです。

 日本は、我が国は、東京裁判の判決を受け入れているということですので、裁判を蒸し返したり、これで処刑された方々を、何で自国民を殺したんだということで損害賠償したりとか、そんなことはやらないし、できないと思うんですけれども、しかし、国際的に裁かれたということと、国内的にこれが犯罪者なのかどうなのかということは全く次元の違う問題だと思っておるんですね。

 そこで、事務方に、いま一度、刑罰法規の基本について教えていただきたいんですが、罪刑法定主義、あるいは遡及不可罰の原則、そしてさらにデュープロセスの原則というものを一度教えていただけますでしょうか。

林政府参考人 まず、罪刑法定主義でございますが、一定の行為を犯罪とし、行為者を処罰するためには、あらかじめ成文の刑罰法規によって犯罪と刑罰とが規定されていることを要する、こういった原則をいうものと承知しております。その実質的な内容としましては、遡及処罰の禁止、類推解釈の禁止、刑罰法規の内容の適正の原則などが含まれております。

 そのうちの遡及処罰の禁止でございますけれども、これにつきましては、何人も、実行のときに適法であった行為については刑事上の責任を問われないという、この原則を指しておりまして、日本国憲法第三十九条においてもその旨が規定されていると承知しております。

 また、お尋ねのデュープロセスについてでございますけれども、これにつきましては、日本国憲法三十一条が、「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」と規定しておりまして、この規定は、デュープロセスあるいは適正手続の保障を定めたものと理解されていると承知しております。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 おっしゃったように、何人も、裁くためには、あらかじめ定められた法律によって適正に処罰されなければならない。東京裁判というのは、もう皆さん御承知のように、事後法によって裁かれた方々。これを、今さら判決を蒸し返そうということではありませんけれども、日本国政府の取り扱いとしては、これは刑務死ではなくて公務死、公務に殉じた人だったということを改めてここで確認しておきたいと思います。

 そして、さらに、そういった経緯もあって、かつて、戦後、東京裁判の後、日本弁護士会を中心に、いわゆる戦犯の方々の赦免、釈放を求める署名活動、こういったことが行われて日本国で四千万人を超える署名を集めた、国会においても四度にわたってこの赦免、釈放という決議がなされた、こういった形で名誉が回復されたというふうに理解しております。

 にもかかわらず、亡くなられた方々をあくまで、あたかも極悪犯罪人であるかのように、A級戦犯だ、こいつらが戦争責任があるんだみたいなことを言っておとしめる方々がいらっしゃいます。

 ここでちょっと確認したいんですけれども、死者の名誉に関して、刑法二百三十条の二項では、虚偽の事実を摘示して名誉を毀損した場合にも処罰の対象となる、こういう旨の規定がありますけれども、虚偽の事実を摘示して個々の英霊を犯罪者としておとしめるということは名誉毀損に該当すると考えますが、いかがでしょうか。

林政府参考人 もとより、その犯罪が成立するか否かということにつきましては、証拠に基づいて個別に判断されるべき事柄であると考えております。

 一般論として申し上げますと、刑法におきましては、死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ罰しない旨、規定されているところでございます。ということは、虚偽の事実というものが摘示されて死者の名誉を毀損することとなった場合には、そういった場合には名誉毀損罪が成立し得るものと考えております。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 続きまして、信教の自由に関してです。

 昨今、総理に靖国神社に参拝させていない人たちにあたかも信教の自由があるかのように言われていて、それがあるんだったら、参拝してほしいという人たちの信教の自由もあるはずですけれども、それは別としまして、一番大事なのは、英霊に対して尊崇の念を表したいという、総理の参拝したいという気持ち、これが信教の自由として保障されるべき重要な権利だというふうに理解しております。

 そして、政教分離の観点から、総理が別に国民に、みんな靖国神社に行けと参拝を呼びかけているわけでもなくて、特定の宗教を援助、助長、促進、あるいは圧迫、干渉なんかせず、静かに参拝するということは政教分離の原則には反しないと考えているんですが、なぜか靖国神社だけが問題となっている。

 こういったことについて、谷垣大臣、恐れ入りますが、閣僚として御感想、御意見をお聞かせいただければと思います。

谷垣国務大臣 委員のお問いかけなんですが、私は、記者会見で御答弁するときもそうですが、特に国会で答弁するときは法務大臣として答弁しているつもりでございます。昨今は、個人としての意見を軽々におっしゃる方がいて、取り消されたりいたしますが、私は、閣僚としては、そういうようなことがしばしば起こるのはよくないと思っております。

 今の問題は、要するに、閣僚は、やはり政府の見解であるということを言わなければいけない。そして、法務行政に関してであれば、閣議決定していなくても、自分がここは主管の大臣ですから自信を持って御答弁できますが、今の御質問に対しては、実はなかなか答えにくいんです。個人としてお答えするというのもいけないでしょう。したがいまして、政府が今までどういうふうに答弁をしてきたかということだけを申し上げたいと思います。

 それは、靖国神社に内閣総理大臣が参拝することは、法的な観点から申し上げれば、内閣総理大臣の地位にある者であっても、私人の立場で靖国神社に参拝することは、憲法との関係で問題を生じることはない、従来から政府はこのように答弁をしてきたということだけを申し上げたいと思います。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 靖国に関連しまして、A級戦犯も含めて、GHQのマッカーサー元帥が実は靖国神社の焼き討ちを戦後計画したことがありました。

 そのとき、終戦直後にローマ法王庁の駐日代表、バチカン公使代理も務めたブルーノ・ビッテル神父さんという方がいらっしゃって、この方がマッカーサーに対して、いかなる国家も、その国家のために死んだ人々に対して、敬意を払う権利と義務がある、そして、今、靖国神社は神道の単なる霊廟ではなくて国民的尊敬のモニュメントだ、神道、仏教、キリスト教、ユダヤ教、いずれの宗教を問わず、国家のために死んだ者は全て靖国神社にその霊が祭られることを進言する、このように述べて、靖国神社の存続を答申した。キリスト教のローマ法王庁の代表であった方がこう述べられた。

 そして、これに対してGHQも、靖国神社というのは戦没者の英霊を宗教のいかんを問わず平等に祭っている、それゆえ、これを日本国民の民族的尊敬のモニュメントとして認め、存続することを許すという指令を出して、これが存続した。

 こういった歴史的事実を日本国民、そしてさらには海外にももっと発信して理解してもらう。決して戦争賛美だとか、そういう軍国主義の賛美のモニュメントではないということを発信していくべきだというふうに考えますが、外務省の方、御見解をお聞かせください。

下川政府参考人 お答え申し上げます。

 宗教法人であります靖国神社に関しましては、政府としては見解を申し上げることは差し控えたいと思います。

 ただ、いずれにしましても、政府としましては、必要に応じて、今後とも、国際社会の正しい理解を得るべく、対外的な広報活動を強化し、効果的な発信に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 確かに、一宗教法人のことを政府が一生懸命あれするのは別なんですけれども、どうしてもこの問題がえてして外交問題に発展したり、実際に他国の国家元首がこれを批判したりだとか、あと、ディサポイントと言ってみたり、こういったことが行われておりますので、やはり、どういうものなのかということ、そして過去にはどんな発言があったか、こういうことはしっかりと伝えていくべきではないか、このように考えております。これからも、日本の名誉をきちんと守るために、政府挙げて御尽力いただければと思います。

 本日は質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

中山(泰)主査代理 これにて山田賢司君の質疑は終了いたしました。

 次に、藤原崇君。

藤原分科員 自由民主党の衆議院議員の藤原でございます。

 本日は、予算委員会第三分科会ということで、質問の機会をいただきまして、まことに光栄でございます。

 昨年も谷垣法務大臣には質問をさせていただきました。私も山田先生と同様に、前谷垣総裁のころに支部長として御選任いただきまして、今こうして質問をさせていただいているというのは本当に光栄なことだなと思っております。

 そういう中で、本日は法務省に対する質問ということで、私の方で最近、こういう点がこれから取り組んでいく必要があるのではないかという点、大きく分けまして主に三点、質問をさせていただきたいと思っております。

 まず第一点は、東日本大震災に関して、それの復興に絡めて、私が最近感じていることをまず最初に申し上げさせていただきたいと思っております。

 私は岩手県の出身でございまして、岩手県の中でも内陸の方なので、なかなか被災地までは、車で二時間、もう少しかかってしまいますので、そんなに頻繁に行くことはできないんですが、なるべく被災地に入るようにしている。そういう中で、多くの住民の方からやはり御不満として出てくるのは、震災の復興が進んでいないんだということ、これは率直な気持ちでお聞かせいただくことは非常に多く感じております。

 なぜそういうふうになってしまうのかなということでよく考えてみますと、よくお話をしてみますと、やはり目に見える形で建物が建たない、目に見える形で公園だとか堤防だとかそういうのができてこない、そういうのができてこないと、震災からの復興が進んでいるという実感がなかなか得にくいのではないかなというふうに思っております。

 それで、これは今、被災地に関連して非常に大きな問題になっているんですが、なぜ例えば公共事業が進まないのかというふうに申し上げますと、最初の質問にも絡むのですが、まずは、登記というのが必ずしも完全ではない。地籍の調査というのがそんなに終わっていないので、一度流れてしまうと、どこまでが誰の土地で、どこからが誰の土地かというのがなかなかわからない、それを最初からまたはかっていって確定をさせていくという作業をまずはやらなければいけない。

 では、それが終わったらそれでいいのかというと、今度は登記を見てみると、例えば、ひどい例だと、大正じゃなくて明治、あるいはその前の何とか左衛門とか、そういうような登記名義人、あるいは住所が満州とか樺太とか、そういう戦前の登記から全く更新がされていない土地がたくさんある。

 そういうふうになると、もうこれは大臣御承知のとおりだと思うんですが、その昔の方の相続人全員から判こをいただかなければいけない。それが二代、三代と続いてしまえば、判こをいただくべき相続人の数というのが簡単に百人、二百人になってしまう。それで、やはりその一人一人をちゃんと当たらなければいけないんだということで、これが震災の復興がちょっと手間取っている一つの要因になっているというふうに言われています。

 これについては、根本大臣初め復興庁の皆さんのお力で、これは非常によく進む、具体的には、土地収用というのを、任意交渉というのをなるべく短くして、ある意味、緊急事態として土地収用を使っていくというので対応していくということなんですが、私がやはり今回の震災で感じたのは、登記あるいは地籍調査というのはしっかりとやっていく、そういうふうにしていかなければ、もしかしたら、また今度は東海あるいは南海という震災が来る可能性がある、そのときにまた同じように、地籍の調査が終わっていない、登記が戦前のままでとまっていて非常に大変だということになる、これは非常によろしくないことかなと思っております。

 その関係で、まずは法務省の方にお聞きをいたします。

 そのように、登記が実体と一致していないこと、これはどうしてもあるんですが、これについて、例えば相続のときに登記をちゃんと更新させることを促す、例えば相続から二年以内であれば登記手数料を半額にするとか、いろいろな方法で登記をちゃんと更新していくことを促すことが、これから先、一つ求められるのではないかなと思っておるんです。

 法務省さんの方で、権利と表示を一致させる、そういうことを促す制度をつくる必要性についてどう考えているか、そのような取り組み、制度研究をしているかという点について、まずお聞かせいただければと思っております。

深山政府参考人 今お話がありましたように、被災地における用地買収に際して、土地の所有権の登記名義人と実体上の権利者が一致していない事例があって、そのことが一つ問題になっているというのはもちろん承知しております。

 ただ、これも釈迦に説法でございますが、不動産の権利に関する登記というのは、民法百七十七条の規定を受けて設けられている、いわゆる対抗要件制度でございます。

 したがって、私的自治の原則のもと、所有権等の物権を取得した者において登記をしなければ、その権利取得を第三者に対抗することができない、この限度で公示方法として機能している、こういうものでございます。

 言いかえますと、権利を取得した者が積極的に望まない場合にまで権利の所在を公示させて、第三者から容易に把握できるようにする、こういう機能を果たそうという制度ではもともとないという本質がございます。

 そのため、権利に関する登記につきましては、申請を義務づけるということができないのはもとよりなんですけれども、今御提案のあった、申請をすることに利益を付与するなどして申請を促すことにつきましても、その反面として、権利を取得した者に、事実上、登記申請を強制することになるのではないか、あるいは、登記をしなかった者に不利益を与えることになるのではないか、こういったことが不動産登記制度の本質にそぐわない面があるということで、これを実現する制度を構築するというのは非常に困難だと思っております。

 したがいまして、先生の問題意識は非常によく理解しているつもりなんですけれども、現時点で御指摘のような制度研究をしているかと言われると、していないと言わざるを得ないところでございます。

藤原分科員 ありがとうございます。

 おっしゃるとおり、明治時代から非常に歴史のある条文でございまして、それに関する蓄積もたくさんございますので、まさかいきなり義務づけるとか、それは難しい話だと思いますが、やはり今回の震災の経験、まだまだ復興も取り組まなければいけないんですが、それと同時に、次なる震災に備えてというので、なかなか難しい問題はあると思うのですが、例えば少し研究、あるいは私的にでもちょっと研究をしていただければと思っております。

 同様に、国交省さんにお聞きをしたいのですが、地籍調査、これは全国的に取り組んでいらっしゃると思うんですが、私も、各市町村に出している国交省のパンフレットを読ませていただきました。なかなかまだ進んでいないところもあると思うんですが、それについて、やはりこの震災を踏まえてどうお考えかというところをお聞かせいただければと思います。

江口政府参考人 お答え申し上げます。

 地籍調査によりまして土地の境界を明確化するということは、土地取引の円滑化、まちづくりの推進、それから被災地における復旧復興の推進などにとりまして極めて重要であるというふうに考えております。

 先ほど先生御指摘のとおり、今後、南海トラフ地震あるいは首都直下地震等の大規模災害による甚大な被害が想定をされております。そういった中で、地籍調査推進の重要性というものはますます高まっているというふうに認識をしております。

 それから、東日本大震災の被災地でございますけれども、これも先生御指摘のとおり、地籍調査がおくれている、そういう地域もまだまだございますので、復興支援の観点からも地籍調査の推進というものが必要であるというふうに考えております。

 国土交通省といたしましては、平成二十五年度の補正予算あるいは平成二十六年度の当初予算案におきまして地籍調査に関します所要額を計上いたしますとともに、特に大規模災害が想定される地域におきまして重点的に調査を実施するということで、地籍調査の推進に積極的に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

藤原分科員 ありがとうございました。

 先日、復興特別委員会の方で根本大臣の方から、復興と同時に、やはり復興の経験を次なる災害に生かす、そういう時期もこれから来なければいけないというお話がありました。そういう意味で、社会的インフラである登記、これに関しては、ぜひとも実体とある程度の一致、これに向けての努力はお願いをしたいと思っております。

 続きまして、矯正施設における写真撮影等の問題について質問をさせていただきます。

 これは、最近、私の方もよく新聞等で、新聞といっても、日弁連等で出している機関紙等で見る問題なんですが、これについてちょっとお尋ねをしたいと思っております。

 具体的には、刑事施設、警察署あるいは拘置所などの中で、弁護士というのは被告人あるいは被疑者の方と接見をするということなんですが、そこは一応、秘密交通権ということで誰にも見られない状態でやっておりますが、その中で写真撮影をすることについて、これが許されるのか許されないのかという問題が最近では非常に、法務省というか、弁護士業界というか、そういうところで一つ議論になっているところでございます。

 これについては、是非の論争というのはここでするべきことではないと思っていますので、その点には触れないでおきますが、法務省の方において、この写真撮影等について、今まで判明している分で何件くらい写真撮影等が行われたケースがあったのか、また、そのうちの何件かについては弁護士会に対して懲戒の申し立てをかけたということなんですが、そういう懲戒まで至った理由というのは何なのかというところを具体的に教えていただければと思っております。

西田政府参考人 お答えいたします。

 まず、件数でございますけれども、刑事施設における弁護人との面会時に、弁護人等が携帯電話とかカメラ等を持ち込んで写真撮影を行った事案につきましては、網羅的な数字を把握していませんのでお答えは難しいところでございますけれども、ただ、必ずしも写真撮影等を行った事案でないものの、携帯電話とかあるいはカメラ等の撮影機器を持ち込んだり、持ち込もうとしたときに、刑事施設の職員が当該弁護人に持ち込みを遠慮いただくように説明するなどして対応したケースにつきましては、現場施設から当局に報告がございましたので、それについてはデータがございます。具体的に申し上げますと、平成二十一年度以降は約三十件ございます。それがまず一点目でございます。

 次に、どういった場合に弁護士会に懲戒請求したかという御質問でございますけれども、懲戒請求を行う事例につきましては、個別具体の事案に応じまして、外部交通に関する規定を潜脱するなど、特に悪質と認められ、弁護士の責任を問うべきものと認められる場合がこれに該当するものと承知しておりまして、少し具体的に申し上げますと、例えば、面会室で撮影した映像を使いましてビデオレターを作成して、未決拘禁者と第三者との間で不正に連絡させようとしたようなものがございます。

藤原分科員 ありがとうございました。

 例えば、私はそのころはよく存じ上げてはいないんですが、昔であれば、いわゆる接見指定の問題等で、弁護士会と法務省矯正局になるのかもしれませんけれども、検察庁になるかもしれませんが、非常に対立していたということは聞いたことがございます。それに関しては、やはりいろいろな裁判でも出ているんです。

 これは一般論としてなんですが、私、弁護士から議員という立場になって思うのは、やはり相互理解というのが本当に大事だなと思いました。考え方が合わない方ともおつき合いをするというか意見の交流をするんですが、やはり、定期的に顔を合わせていくと、見解の対立がある中でもある程度お互いに、落としどころではないですけれども、いい意味での新しい解決策が出る、あるいはいい意味での関係が築ける、そういうこともあるんだなというのを、私、議員を一年間やって思いました。

 そういう意味で、私、東京で弁護士をやっていたんですが、例えば弁護士会で研修をやったりすると、裁判官の方が講師でいらっしゃることはあるんですけれども、東京の場合ですと、検察官の現役の方というのはそういう場にいらっしゃることは余りなくて、それは、いい悪いではありませんし、組織としてどういうふうなスタンスかというのもあるんですが、本質的に刑事手続の重要な両当事者になるので、やはり、対立関係に立ちつつも意見交換等によって相互理解を図ること、このことはこれからすごく大事になるのではと思っております。

 まずは検察庁の方にお聞きしますが、今までそのような取り組みというのはなさっていたんでしょうか。これについては、刑事施設を管理する矯正局についても、今回の問題ではなく一般論として、そういう取り組みをなさっているかという点についてお尋ねをします。

林政府参考人 まず、検察庁の現状につきまして率直に申し上げますと、検察庁と弁護士会との意見交換というのは比較的活発に行っております。

 まず、例えば、全国の地方検察庁におきましては、各地の弁護士会及び裁判所との協議会を定期的に開催しておりまして、実務上の諸問題について意見交換というものを行っております。また、そのほかにも、定期的ではないにしても、各庁においては、必要に応じて、弁護士会と個別のテーマで意見交換会を実施したり勉強会を開催するなどして、相互の理解に努めているところでございます。

 また、今後とも、検察当局におきましては、こういった弁護士会との相互理解に努めまして、刑事手続における弁護人の担う役割というのも検察の側から十分に理解しつつ、その職責を果たしていくものと承知しております。

西田政府参考人 それでは次に、刑事施設の方からちょっと御説明いたします。

 刑事施設の方につきましても、弁護士会と相互理解を深めることというのは非常に大事だと思っておりまして、実際に、実務上、いろいろな場面がございまして、話し合いをして解決した方がいいんじゃないかという諸問題が生じております。

 したがいまして、各弁護士会とは必要に応じましてそういった協議をやらせてもらっておりますし、また、当局といたしましても、同様に、日本弁護士連合会、日弁連の方とも意見交換会とか勉強会とかいったものを開催して相互理解に努めているところでございまして、今後も引き続き同様の取り組みをしてまいりたいというふうに考えております。

藤原分科員 ありがとうございます。

 やはり、私、ちょっと今回の件で率直な感想として思ったのは、懲戒までいくというのがなかなか穏当なあれではなかった、どうしてその前でお互いの中でうまくできなかったのかなという気持ちがちょっとあったんですね。

 もちろん、これは、個人的なそれぞれの弁護士の行動、立ち振る舞いの問題なのであれなんですが、私、弁護士会の方々ともまだ行き来は多少あるんですが、やはり相互理解という意味では、執行部の方々とはある程度あるのかもしれないんですが、なかなか実務的に動いている人たち、これは弁護士会の問題になるかもしれないんですが、なるべく裾野も広く、幅広くやって、お互いに研さんを積んでいくことというのがこれから必要になるのかなと思っております。

 谷垣大臣にお尋ねをしたいんですが、今お話をした、弁護士あるいは検察官、もしかしたら裁判官も含めてなんですが、この法曹三者の相互理解、これはこれからますます重要になってくるのではと思っておるんですが、その点について大臣の御見解をお聞かせいただければと思っております。

谷垣国務大臣 私も、弁護士会、それから検察といいますか法務・検察、それぞれ、矯正を担当したりいろいろございますが、法務・検察当局、あるいは裁判所も含めて、あるときは法廷で対峙しなければならないし、裁判所にもいろいろ対峙、対峙と言うといけないかもしれませんが、いろいろなことでやっていかなきゃならないので、私は緊張感を欠いちゃいけないと思うんです。

 ただ、やはり、よい司法行政、法務行政、あるいは全体の司法システムをつくっていく上では、お互いの協議というものは避けて通れないだろうと思います。できるだけそういうことは積み重ねた方がよいのではないか。

 私自身も、弁護士をやっておりましたのは東京の会でございますから、大きな会ですから、どういうふうに検察庁と弁護士会が連携したのか、実はよくわかりませんでした。ただ、私も法務大臣になりまして、日弁連の会長であるとかそういう方々からいろいろお申し入れがあるときは、できる限り協議を御一緒する、こういうことは必要だなと思っております。今後とも、そういう考えで臨んでまいりたいと思っております。

藤原分科員 ありがとうございました。

 おっしゃるとおり、相互理解を深めるための定期的なつながりというのが、ある意味でなれ合いというか、そういうふうに見られないことは非常に大事ですし、緊張関係を持った中で、よりよい司法行政のために、ぜひともこれからもそういうお互いの交流というか意見交換等の場を設けていただければと思っております。

 最後に質問する大きなテーマとしては、今行われている司法制度改革についてお尋ねをさせていただきたいと思います。

 これは、昨年の法制審か何かの会議に基づいて、ことしの通常国会に、司法制度改革、主には司法試験の点について法案が出される予定になっておりますが、そのうちの第一点として、まず受験資格について、今まで五年三回だったものを五年五回に変えるという法案が出ておりますが、これについてお尋ねをします。

 このことによって、合格率については、受験生が一時的に増加する結果、少し下がるのではと思うのですが、この点について、どのようになるかというのをシミュレーションはしているんでしょうか。その結果についてお答えいただきたいということと、そのことが司法試験制度、法曹養成制度にどのような影響を与えるかという点についての見解をお聞かせいただければと思っております。

小川政府参考人 お答えいたします。

 今国会にまだ提出予定でございますが、御指摘いただきましたとおり、受験回数制限につきまして、三回の回数制限を撤廃して、五年の受験期間内に毎年受験できることとするという内容のものがございます。

 この改正によりまして司法試験の受験回数制限が緩和され、司法試験の合格率がどう変動するかということにつきましては、受験回数制限を緩和することによりどの程度の受験者数が増加するか、また、各年度の法科大学院修了者数のほか、司法試験の受験者数あるいは合格者数の推移、さらには五年の受験期間を使い切らずに途中で受験を断念するといった受験者数の動向など、諸般の要素が影響を及ぼすものであることからいたしますと、現時点でその変動の割合を明確に予測することは困難であると思われます。

 ただ、そのような前提のもとで、例えば、今回の改正法の施行後も司法試験合格者が現状と同じく二千名程度で推移すると仮定いたしました場合、平成二十五年で二六・七%でありますいわゆる単年合格率につきましては、最大で二〇%程度まで低下するものの、その後は徐々に回復するというシミュレーションの結果がございます。

 いずれにいたしましても、受験回数制限を緩和して五回まで受験できるとすることは、法曹を志願しやすい環境につながるものと考えられるということではないかというふうに認識しております。

藤原分科員 ありがとうございました。

 一時的には下がるけれども、ある意味で受け控え等をなくすというのは、受け控えというのは必ずしも健全な状態ではないのではないかというのは私も思っておりますので、まさしくそのとおりなんだろうと思っております。

 それと同時に、司法試験の科目についても、一部について削減をするということが内容となっております。これは私の個人的な考えなんですが、やはりそのことについての影響というのも慎重に考える必要があるのではと思っております。

 私もロースクール出身ですが、ロースクールのときにある教官から口を酸っぱくして言われたことがございます。

 ロースクールというのは学部と違って実務家をつくるところだ、言うなれば車の自動車学校と一緒なんだよ、仕事をするための技術を教えるところですよ。そうすると、民事訴訟法、刑事訴訟法という手続は、あなた方は検察官、裁判官、弁護士、どれになるのかはわからないけれども、全て裁判をやるんだから、手続法の知識というのはいわば車を運転するときの道路交通法みたいなものだから、これはしっかりと知識で暗記というか記憶をしていかないと、そもそも、信号がどうだとか、左折優先だとか、そういうことがわからない人に車を運転させちゃいけないのと同じように、ちゃんと手続法の知識がない人というのは法曹になるときに非常に苦労するからしっかりとやってくださいということを言われて、私は、そのとおりだなと今でも思っております。

 もちろん、司法試験に出る出ないというのは本質的には関係のないところなんですが、やはり受験生としてみると、司法試験の択一から消えてしまった結果、手続法について、択一的な知識、それこそ裁判の進め方とかそういう実務的な知識というのはなかなか手が回らず、昔の言葉で言うと論点的な勉強ばかりをしてしまうのではないか、そして、修習に入ったとしても、修習一年間ではなかなか知識の補完というところまでは手が回らないんじゃないかなという点について、ちょっと危惧をしているんですね。

 そういう意味で、論文試験の中で例えば知識問を取り入れるとか何か対策がとれるのかというのと、手続的な知識を学ぶインセンティブが失われたのではという点についてはどのようにお考えか、お答えいただければと思っております。

小川政府参考人 今御指摘いただきましたとおり、本改正案では、短答式試験につきましては、法曹にとって最も基本的かつ重要な分野と言える三科目、憲法、民法、刑法の三科目に限定することを内容としてございます。

 これは、基本的な法律科目をより重点的に、とりわけ法学未修者について重点的に学習させるという法科大学院教育のあり方と司法試験を連携させ、基本重視の試験とすることを目的とするものでございます。

 御指摘のような訴訟法についての関係でございますが、まず、いずれも司法試験の論文式試験における出題科目となっているということに加えまして、これらの分野に関する基本的な知識については、いずれも法科大学院において必修科目などの形で学習が求められているほか、無論、司法修習の中でも臨床的に学習する機会もあるなど、法科大学院を中核とするプロセスとしての法曹養成制度全体を通じて涵養することが十分に可能ではないかというふうに認識しておるところでございます。

 また、論文式試験のあり方でございますが、司法試験の具体的な方式、内容等に関しましては、昨年七月の法曹養成制度関係閣僚会議決定におきまして、「司法試験委員会において、現状について検証・確認しつつより良い在り方を検討するべく、同委員会の下に、検討体制を整備することが期待される。」と指摘されております。

 司法試験委員会におきましては、この決定を踏まえ、これまでに幹事を選任し、司法試験の具体的な方式、内容などについての検討を現在進めているところでございます。この検討の中で、論文式試験の出題のあり方などについても議論が行われていくものと承知しております。

藤原分科員 ありがとうございました。

 新司法試験で合格した弁護士は、一つの矜持、プライドというのは、うまく解けたかどうかはわからないんですけれども、非常に多くの分野を勉強して、ある程度、従来以上、広く知識をやったんだというところを一つ、やはりそれなりに自負は持っている先生方も多いと思っておりますので、この点については、ぜひよりよい制度設計をお願いしたいと思っております。

 最後に、今このように司法制度改革が進んでいるところでございます。通告とはちょっと違うところも出てしまうんですが、私、先ほど実は待機している間に、弁護士が今何人ぐらいいるのかなというのを調べてみました。私で登録番号が四万三千台ということで、正確な数字はわからないんですが、今、四万九千六百までは行っているということで、三年間で六千ぐらいふえたということで、この司法制度改革でふやしていくというのでかなりふえてきております。

 そういう中で、新しい若い先生方も今必死に現場で、刑事なのか民事なのか、あるいはそれ以外の分野でも、弁護士として活躍をなさっております。そういう新しい若い法曹の先生方、そして、これから法曹を目指す法科大学院生、法学部生あるいは修習生に対して、大臣の方から一言、励ましではないんですが、何かメッセージをいただければと思っております。

谷垣国務大臣 私も藤原さんと同じように弁護士としてスタートをしたんですが、三十年国会におりまして、もう法律はほとんど忘れてしまったというのが実態でございます。

 ただ、三十年いろいろな日本の政治や国際社会を見ておりまして、法の支配ということが、これは日本だけではありません、それぞれの国において、法の支配を確立していくということがいかに大事なことかということを痛感しております。

 その意味は、法の支配、まあデュープロセスという言葉もございますが、法の支配という中にはやはりプロセスの中での議論を重んじていくということが一つあると思いますね。それから、もう一つは、例えば国家を支配する党は法の上に立っているというのでは法の支配ではないんだと思います。やはり、権力者といえども法の支配に服する、こういうような意味合いがあると思います。

 そして、国際社会を見てみますと、そういうことを努力している国とはお互いにつき合いやすい、安心してつき合えるということがやはりあるのじゃないかと思います。そういうことが世界平和をつくっていく上でも役立つのではないか。

 もちろん、法の支配というのは高い、大きな問題でございますから、例えば、立法府におる者も、行政府におる者も、もちろん司法部におる者もみんな努力しなきゃいけないことであります。そして、事柄は決してそういうところだけに、広い国民的な努力が必要です。だけれども、コアになるシステムはやはり法曹三者が努力をしなければいけないんだと私は思いますね。

 ですから、今、法律家を目指して頑張っておられる方々は、そういう仕事を担っていただく、それで、法律学はローマ法以来の伝統のある学問でございますから、いろいろきちっと専門的知識を身につけるのも簡単ではございませんけれども、それと同時に、今のような役割を担っていくための高い志を持ってやっていただけたらと。余り偉そうなことを言うと、おまえはできているのかと言われてしまいますので、このぐらいにさせていただきますが、そんなことを思っております。

藤原分科員 ありがとうございました。

 おっしゃるとおり、この司法制度改革というのは、ある意味、これからの国の基本になるものでございますので、谷垣大臣初め法務省の皆様方には、ぜひすばらしい制度にしていただければと思っております。

 これで質疑を終わらせていただきます。

中山(泰)主査代理 これにて藤原崇君の質疑は終了いたしました。

 次に、武部新君。

武部分科員 自由民主党の武部新です。

 きょうは、長い時間、大変御苦労さまです。きょう私が最後の質問者ということでありますので、よろしくお願いいたします。

 本日は、外国人技能実習制度について質問させていただきたいというふうに思います。

 私は外国人技能実習制度というのは非常に意義のある、大切な制度だというふうに思っています。私自身も、父の後を継いで、ベトナム議連ですとかモンゴル議連ですとか、アジアの議員連盟の役員の末席に加えさせていただいているんですけれども、日本にいらっしゃったり、あるいは私どもがお伺いしたりして、アジアの新興国の指導部の皆様方と会談をする、お話をさせていただく機会があるんですけれども、彼らがお話しされるには、日本からの投資というのも非常に求めているものではあるんだけれども、投資のみならず、やはり日本の高い技術を我が国に移転したい、そういった非常に高い関心が技術移転にあります。あらゆる産業分野に高いレベルの技能者、技術者、これを自分の国が経済発展していく上では非常に必要としているんだというようなお話をよくされます。

 まさにアジアの新興国においては、技術者、技能者ということが自国の発展、アジアの発展につながっていく上で、日本がこういうような外国人の技能実習生を受け入れて、しっかりと教育して、実習していただいて、技術を身につけていただいて、そして自国にまた持ち帰っていただくということは、日本が国際社会に貢献する上で非常に大事なツールであり、また、外国からも非常に評価されている制度だというふうに思っております。

 それで、もともとこの技能実習制度は外国人研修制度から始まりまして、平成二十二年の七月に改正されて現在に至っておりまして、三年後の見直しの期間が来ております。今は、第六次出入国管理政策懇談会外国人受入れ制度検討分科会というところでまさに技能実習制度の見直しに着手されて、今、関係者の方のヒアリングをお聞きになって、本格的に検討がスタートしたというふうに承知しております。

 また、政府の方の産業競争力会議におきましても、この技能実習制度も議論の対象になっておりまして、外国人受け入れ環境の整備、それから技能実習制度の見直しの検討を行い、平成二十六年年央までに方向性を出すという決議もされております。

 そこで、改めて外国人技能実習制度の意義について政府のお考えをお聞きしたいのと、また、今まさにまだスタート段階だというふうに思いますけれども、本制度の見直しの検討状況についてお聞きしたいと思います。

榊原政府参考人 お答えいたします。

 技能実習制度につきましては、委員御指摘のとおり、我が国で培われた技能等の開発途上国への移転を図り、開発途上国の経済発展を担う人づくりに寄与することを目的とするものでございます。

 しかしながら、一部の監理団体や実習実施機関におきましては、制度の趣旨を逸脱した不正な受け入れを行っている例もあると認識しております。また、技能実習制度のあり方については、各界において、それぞれの立場からさまざまな意見があるものと承知しております。

 このような現状を踏まえまして、まずは不適正な受け入れを防止し、制度を適正化する措置をとり、また、これとあわせまして、例えば、優良な受け入れ機関につきましては、従来より一段高い技能を習得するために、技能実習期間を延長することの可否についても検討していく必要があるものと認識しております。

 法務省におきましては、昨年十一月に、法務大臣の私的懇談会である出入国管理政策懇談会のもとに分科会を設けまして、技能実習制度の見直しについて検討していただいているところであります。同分科会におきまして十分御議論いただき、本年年央をめどに、技能実習制度の見直しについて一定の方向性を出したいと考えております。

 以上でございます。

武部分科員 ありがとうございます。

 意義については、恐らくは同じ、大変我が国の国際社会への貢献について重要な意義を持っているということのお話はいただいたんだと思います。

 ただ、やはり問題になっていますのが、いろいろなニュースとかでも、技能実習生が不当な扱いを受けているですとか、賃金が未払いですとか、そういった事件も取り扱われておりますので、いかに適正な受け入れをし、適正な技能実習を受けていただくかということにも大変議論があるんだというふうに思います。

 一方、確かに、国際社会に対する人材育成という観点の大切な制度であるのと、もう一つ、我が国の経済状況、特に地方の労働事情をちょっと考えてみますと、非常に少子高齢化が進んでおりまして、人口減少が特に地方の方、地域の方が著しく進んでおります。

 それから、昨今、新聞でも報道されておりますが、二〇二〇年に東京オリンピックがあって、東日本大震災からの復興事業もあり、また公共事業も今アベノミクスでふえていて、果たして建設業にかかわる技術者が二〇二〇年まで足りるのかというような報道も新聞でもされております。職種によっては労働力が足りなくなってきているんじゃないか、そういった懸念もあると思います。

 今は建設業のお話をさせていただきましたけれども、私の北海道なんですが、北海道で研修・技能実習生を五千人程度受け入れておりますけれども、そのうちの三千人、六割を超す実習生の方が水産加工に来ていただいております。なぜかといいますと、北海道の水産加工業の求人の充足率というのが三割程度なんですね。また、私の地元であります北見市でいいますと、二百五十何人の水産加工業からの求人に対して、マッチングしたのが二十五名程度ですから、一割に満たないぐらいなんです。

 要は、水産加工業というのは立ちながらのお仕事が大変長い時間あるので、それと、魚介類を扱いますから、そういったことも懸念されて、なかなか求めても人が来ない、そういった敬遠される傾向にあります。先ほども言いましたけれども、また、アベノミクスで今北海道の求人倍率も非常によくなってきていまして、一倍をようやく超えるような仕事が出てきた、ちゃんと雇用もできるようになってきたという中にあって、さらにやはり水産加工業なんかは敬遠されたりしている状況にあります。

 それから、農業もそうなんですけれども、農業においては、全国農業会議所の試算によりますと、外国人実習生の農業分野における在留人数は二万二千人程度と推定しておりますけれども、農業経営体の日本人が常時雇用されている数というのが十五万四千人でありますから、農業で雇用されている人のうちの一四%が外国人実習生ということになります。これは相当の数が実習生に労働力を頼っている、そういった地方の実情もあります。

 そういった意味で、人口減少が進んでいって労働力が不足している地方、特に水産加工業や中小企業など、あるいは、先ほども申し上げましたけれども、農業の現状について、労働不足についてどのような把握をされているか、お願いいたします。

    〔中山(泰)主査代理退席、主査着席〕

宮野政府参考人 お答えをいたします。

 まず、地方における労働力需給の状況でございますけれども、有効求人倍率で見ますと、平成二十五年十二月時点で、全国では一・〇三倍、議員の地元であります北海道では、上昇傾向にはございますけれども、〇・八七倍という状況になっております。

 ただ、これを職種別に見てみますと、委員から御指摘のございました、北海道における水産加工業、農業の有効求人倍率を見てみますと、水産物加工工では一・四二倍、農業の職業では一・三五倍と、求職者の数よりも求人の数が多い、求人超過の状況となっております。

 以上でございます。

武部分科員 ありがとうございます。

 今お話しいただいたとおり、北海道の声も、ようやく戻ってきたところにあっても、農業も水産業も、一・三倍、一・四倍を超えるという求人で、人を求めてもなかなか人が来てくれないというような、非常に苦労をしております。

 それと、漁業でいいますと、私のオホーツク海におきましては、ホタテとかサケとかなんですけれども、去年も非常に活況でして、過去最高の水揚げ高を上げている漁組が結構あるんですが、彼らが今心配しているのは、水産高を上げることはできるんですけれども、揚げてきた魚やホタテを加工場がなかなか受け付けてくれない状況がある。要するに、持ってきても労働力が足りないので回せないということで、せっかく海にあるのにとってこられないということで、加工業も大変なんですけれども、漁業を営んでいらっしゃる漁師の方々も非常に心配されているという状況にあります。

 特に、地方におきましては、今言ったように、労働力が不足していて、例えば水産加工業も、このままだと地元では人が来ないので、それでは海外に加工場を出そうかとか、そうすると、水産業も漁業も農業も地方にとっては中核産業ですから、中核産業となっている産業を自分たちの地域から人のいるところに出さなきゃいけない、工場を持っていかなきゃいけないというようなことにつながりかねないという懸念を持っているわけです。

 そうすると、当然また雇用の場が失われていくわけでありますので、一層また地方の過疎化が進んでいく、そういう悪循環になっちゃうんじゃないかということに対する危機感が非常にありまして、技能実習生を受け入れている企業それから団体、そして、北海道もそうですけれども、地域からも、この見直しの検討の中で、ぜひとも受け入れ人数を拡大してほしいですとか、あるいは、今三年の実習期間を五年に延長していただけないかという声が非常に強くなっております。

 先ほど地域と言いましたけれども、北海道の道議会も全会一致で意見書を提出されていまして、「外国人技能実習制度の見直しに当たっての意見書」、これを衆議院、参議院、そして政府にも御提出いただいておりますけれども、その中、ちょっと引用させていただきますが、「制度の見直しや評価に当たり、こうした地域の声にも真摯に耳を傾け、今後においても、技能実習制度及び特区制度が受け入れ企業と実習生の双方はもとより、地域にとって、経済の活性化に寄与し、生産活動と適正な実習活動に、より効果的に図られるよう検討が進められることを強く要望する。」ということを御提出していただいています。

 もちろん、やはり実習生の待遇を、ちゃんと適正に受け入れて実施をしていただくというのが大前提ではありますけれども、しかしながら、こういった地方やある産業においては非常に重要な労働力になっているということを含めて、見直しに当たっては進めていただきたいと思います。

 また、次に、本制度なんですけれども、海外からの技能実習生にとって日本で技術、技能、知識を習得することが本人のキャリアアップ、先ほども言いましたけれども、母国の経済発展に資することが大前提ではあります。そして、このせっかくの我々が誇る外国人の実習制度について、やはり我々がちゃんと適正に、そして円滑に運用していくということが、国際社会からも、また送り出している国からの信頼も高めることになるというふうに思います。

 それで、先ほど来お話がありましたけれども、平成二十二年の七月に改正入国管理法が施行されました。その中の大きなテーマといいますか主眼を置かれたのが、技能実習生の法的保護を強化するというのが大きな改正点だったというふうに思います。研修生から実習生に切りかえて、ちゃんと労働基準法の適用をさせるというようなことを行いました。

 改正後、恐らく非常に監視体制も強化されていらっしゃると思いますので、いわゆる不正行為等について、その状況はどうなっているか、お尋ねいたします。

榊原政府参考人 不正行為の状況についてお答え申し上げます。

 不正行為を通知した機関数につきましては、改正前の平成二十年に過去最も多い四百五十二機関となっておりましたが、平成二十一年の入管法改正により現行制度が施行されました平成二十二年は百六十三機関となり、平成二十年と比較いたしまして三分の一に減少しております。

 その後、平成二十三年は百八十四機関、平成二十四年は百九十七機関、平成二十五年につきましては、現在集計中でありますが、概数として約二百三十機関と増加傾向に転じております。

 なお、不正行為の内容につきましては、各年とも賃金不払いなどの労働関係法規違反が最も多くなっております。

 法務省といたしましては、このような現状を踏まえまして、関係機関と連携し、不正行為を防止し、技能実習制度が適正に運用されるよう引き続き取り組んでまいりたいと考えております。

 以上です。

武部分科員 ありがとうございます。

 改正の効果というのは出ているんだというふうに思います。実習生の法的保護についての強化も一定程度なされている。

 肝心なのは、今の不正行為の中で一番多いのが、不正行為の中にも程度差と言ったら変ですけれども、やはり制度の趣旨をちゃんと理解して、賃金を払うですとか労働条件をちゃんと整えてあげるということは、これは本当にしっかりとやらなければいけない条件であるというふうに思います。ですから、受け入れ側の方、監理団体も含めて、実習受け入れ企業も含めて、その趣旨をちゃんと理解してもらうということが肝心であります。

 もう一つは、海外の方の送り出し機関も、失踪という不正行為もありますから、来る実習生が、ちゃんと技術を習得するという意欲を持って、そして自国の発展のために尽くすんだ、そういった熱意を持った、意欲を持った実習生をどうやって見きわめるかということも大事なことでありますし、また、その送り出し機関もさまざまな機関がありますので、その信頼性をどうやって確保していくかということも、またこれは大事だと思います。

 それと、監理団体や実習実施機関の受け入れ機関について、やはり助言指導、それから相談などのそういった支援もしっかりと充実させることがこの不正行為を減少させる大きな役割を果たすというふうに思いますので、その点も今の検討されている見直しの中で実施されているものだと思います。

 これはお答えがなくても結構なんですが、個人的な考えとしましては、やはり適正な運営を行っているかどうかというのを一目でわかるような仕組みというのも大事じゃないかと思う。

 例えば、JITCOがやるのか、政府がやるのか、都道府県がやるのかは別として、認証指定みたいなものをして、ここは大変ちゃんと適正にやっていらっしゃるから信頼度の高い受け入れ機関ですよ、あるいは送り出し機関ですよというようなこともやれば、間違った、そういう不正行為をするような監理団体ですとか、そういったところを避けて実習機関も受け入れることができるですとか、あるいは、そういったところとうまく連携して、相談しながら実習制度をちゃんと適正にやっていくとか、そういったこともトラブルを抑えることができるんじゃないかというふうに思います。

 そこで、本制度を適正かつ円滑に推進するためには、JITCOと送り出し機関並びに監理団体等の受け入れ機関の連携強化が、先ほども言いましたけれども、今言ったような強化が重要だというふうに思いますけれども、現在またどういった取り組みをされているか質問させていただきます。

榊原政府参考人 お答えいたします。

 JITCO、すなわち公益財団法人国際研修協力機構は、技能実習制度の円滑かつ適正な実施を図るため、技能実習制度推進事業を行う法人であり、その役割は重要であると認識しております。

 JITCOと監理団体や実習実施機関との間の連携につきましては、JITCOは、毎年約一万の実習実施機関等を訪問して技能実習状況を確認、指導するとともに、技能実習制度の正しい運用の周知徹底を図るため、監理団体等を対象とする講習会やセミナーを開催しております。法務省は、これら講習会等に講師等を派遣し、協力しているところでございます。

 続きまして、JITCOと送り出し機関との連携でございますけれども、JITCOは、技能実習生の送り出し、受け入れ業務を適正、円滑に行うため、十五の国との間で合意文書を交わし、定期協議などを通じ、技能実習制度に係る問題点を共有し、その解決に向けての協議等を行っております。

 いずれにいたしましても、法務省といたしましては、JITCOと連携し、JITCOが監理団体等に対し適正に指導、支援等を行っていけるよう努めてまいりたいと考えております。

 以上です。

武部分科員 ありがとうございます。

 今も非常にさまざまな連携をとられて活動をしていただいているんだというふうに思います。しかし、不正行為のニュースが出ると、かなりショッキングに捉えられておりまして、本制度に対する批判もやはり上がってくるのは事実であります。

 ただ、私の地元の話を見たり聞いたりしていますと、受け入れ企業の会社の社長さん、それから従業員さんは、実習生のことを非常にかわいがっていらっしゃって、地域のお祭りに連れていってあげて一緒に焼き肉を食べたり、あるいは、私のところは車を使わないと買い物にも行けないところですから、休みの日にその受け入れた実習生さんを車に乗せて買い物に連れていってあげたりという、実習生の皆様方が地域に溶け込んでいただけるように、あるいは、ホームシックなんかにもかかるでしょうから、そういったことがないように非常にケアをしてあげている、企業、団体の皆さん方が努力している部分もあるんですね。むしろそっちの方が多いはずだと思います。

 実習生さんにお話を聞いても、実習生さんの実習の論文大会なんかがあって、優勝した方の論文なんかを読んでみますと、家族のようにかわいがっていただいて、日本の技術を習得することができた、いい経験をさせていただいたということも書いていますし、特に、単純に技術や技能を習得するのみならず、日本の企業に勤めてみて、日本の仕事の進め方とか、あるいは業務管理のシステムとか、トータルで日本の企業に所属してみてよかったな、日本の企業のことを勉強できたなという感想を持つ方も多いです。

 それから、もう一つ、特に日本の文化や日本人の優しさとかに触れて、より一層日本のことが好きになったという感想を持っていただく方も多いわけで、恐らくそういったデータなんかもお持ちであるんだというふうに思うんです。

 それで、特に地方で多く受け入れている外国人の実習生さんですから、地方にとってみても国際交流を果たす役割を担っていただいているし、日本をまた評価していただく、日本ファンをふやしていくという意味でも、これは大切な役割も担っているんだということも理解していただきたいです。

 また、もちろん不正行為というのをゼロにするための努力というのは引き続き厳しくやっていかなきゃいけないんですけれども、それよりももっと多く、温かく実習生を迎えて、技術、技能を教えている、そういった企業の努力もあるんだということを冷静に理解していただきたいというふうに思いますし、そういったことにマスコミの皆様方も、何かエスカレートしたような報道じゃなくて、よりしっかりと、こういった部分も技能実習生のいい側面があるんだよということも含めて、そういったことの理解にも努めていただきたいというふうに思います。

 最後に、私のオホーツク地域は、構造改革特区によって、外国人の技能実習生の受け入れの人数をふやしていただいています。これは、外国人技能実習生受け入れ促進を図る構造改革特区ということで、受け入れ人数を、五十人のところは本来三人のところを六人にしていただいたりしているんですけれども、この構造改革特区、それぞれの特区について評価をなさっているというふうに思いますけれども、この外国人の受け入れを促進している構造改革特区についてはどのような評価をされているか、お尋ねしたいと思います。

富屋政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの外国人技能実習生受入れによる人材育成促進事業における特例措置は、常勤職員五十人以下の中小企業等が外国人技能実習生の実習実施機関となる場合の、受け入れの人数の枠の上限を三人から六人に拡大するものでございます。

 本特例措置につきましては、平成二十三年度に構造改革特区推進本部の評価・調査委員会において評価を実施したところでございますが、その際には、本特例措置は技能実習生派遣国における人材育成に寄与し、地域における国際貢献意識の向上につながるなどの効果が認められました。その一方で、外国人技能実習制度自体に起因する弊害が生じているということも認められたということでございます。

 この時点での評価では、いわゆる全国展開をこの特例措置についてするのではなく、地域性の強い特例措置として、特区において当分の間存続させるということで、特区として事業を実施していくという整理になったところでございます。

金田主査 武部新君、時間が限られております。

武部分科員 ありがとうございます。

 非常に地域性のある問題ではありますけれども、特区も含めて、この外国人の技能実習制度についての見直しについて、よく海外のニーズと地域のニーズを勘案した上で見直しを進めていただきたいと思います。

 質問を終わります。ありがとうございました。

金田主査 これにて武部新君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして法務省所管についての質疑は終了いたしました。

 これにて本分科会所管の審査は全て終了いたしました。

 この際、一言御挨拶を申し上げます。

 分科員各位の御協力によりまして、本分科会の議事を終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午後八時五分散会


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