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第1号 平成28年2月25日(木曜日)

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本分科会は平成二十八年二月二十二日(月曜日)委員会において、設置することに決した。

二月二十四日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      衛藤征士郎君    小林 鷹之君

      菅原 一秀君    野田  毅君

      緒方林太郎君    濱村  進君

      赤嶺 政賢君

二月二十四日

 菅原一秀君が委員長の指名で、主査に選任された。

平成二十八年二月二十五日(木曜日)

    午前八時開議

 出席分科員

   主査 菅原 一秀君

      衛藤征士郎君    神田 憲次君

      小林 鷹之君    國場幸之助君

      武井 俊輔君    野田  毅君

      藤原  崇君    宮路 拓馬君

      山田 賢司君    井出 庸生君

      石関 貴史君    緒方林太郎君

      福田 昭夫君    濱村  進君

      赤嶺 政賢君    大平 喜信君

   兼務 若狭  勝君 兼務 小山 展弘君

   兼務 中川 正春君 兼務 笠  浩史君

   兼務 浮島 智子君 兼務 樋口 尚也君

   兼務 足立 康史君 兼務 丸山 穂高君

   兼務 小沢 鋭仁君

    …………………………………

   財務大臣         麻生 太郎君

   法務大臣         岩城 光英君

   外務大臣         岸田 文雄君

   内閣府副大臣       福岡 資麿君

   財務副大臣        坂井  学君

   農林水産副大臣      齋藤  健君

   外務大臣政務官      山田 美樹君

   最高裁判所事務総局総務局長            中村  愼君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  澁谷 和久君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  市川 正樹君

   政府参考人

   (内閣府沖縄振興局長)  藤本 一郎君

   政府参考人

   (警察庁警備局外事情報部長)           松本 光弘君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局総括審議官)          小野  尚君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            森田 宗男君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 佐々木聖子君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          萩本  修君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    小川 秀樹君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    林  眞琴君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    片岡  弘君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  岡村 和美君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  井上  宏君

   政府参考人

   (公安調査庁次長)    杉山 治樹君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   山崎 和之君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 水嶋 光一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 大菅 岳史君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 竹若 敬三君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 山田 重夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 大鷹 正人君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    金杉 憲治君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    能化 正樹君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 井上 裕之君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    佐藤 慎一君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    迫田 英典君

   政府参考人

   (国税庁次長)      星野 次彦君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           伯井 美徳君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局科学技術・学術総括官)          神代  浩君

   政府参考人

   (文化庁文化部長)    佐伯 浩治君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           飯田 圭哉君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           中山 峰孝君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           吉本 明子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           堀江  裕君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           伊原 和人君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部長)           福田 祐典君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局次長)           苧谷 秀信君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           山北 幸泰君

   政府参考人

   (水産庁資源管理部長)  浅川 京子君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           小林 洋司君

   政府参考人

   (国土交通省国土政策局長)            本東  信君

   政府参考人

   (国土交通省航空局航空ネットワーク部長)     和田 浩一君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 早水 輝好君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 小川 晃範君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局次長) 谷井 淳志君

   参考人

   (日本銀行発券局長)   岡田  豊君

   法務委員会専門員     矢部 明宏君

   外務委員会専門員     辻本 頼昭君

   財務金融委員会専門員   駒田 秀樹君

   予算委員会専門員     柏  尚志君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月二十五日

 辞任         補欠選任

  衛藤征士郎君     宮路 拓馬君

  野田  毅君     神田 憲次君

  緒方林太郎君     福田 昭夫君

  濱村  進君     真山 祐一君

  赤嶺 政賢君     本村 伸子君

同日

 辞任         補欠選任

  神田 憲次君     國場幸之助君

  宮路 拓馬君     衛藤征士郎君

  福田 昭夫君     緒方林太郎君

  真山 祐一君     濱村  進君

  本村 伸子君     塩川 鉄也君

同日

 辞任         補欠選任

  國場幸之助君     武井 俊輔君

  緒方林太郎君     福田 昭夫君

  塩川 鉄也君     大平 喜信君

同日

 辞任         補欠選任

  武井 俊輔君     山田 賢司君

  福田 昭夫君     石関 貴史君

  大平 喜信君     赤嶺 政賢君

同日

 辞任         補欠選任

  山田 賢司君     藤原  崇君

  石関 貴史君     井出 庸生君

  赤嶺 政賢君     真島 省三君

同日

 辞任         補欠選任

  藤原  崇君     野田  毅君

  井出 庸生君     緒方林太郎君

  真島 省三君     斉藤 和子君

同日

 辞任         補欠選任

  斉藤 和子君     藤野 保史君

同日

 辞任         補欠選任

  藤野 保史君     宮本  徹君

同日

 辞任         補欠選任

  宮本  徹君     赤嶺 政賢君

同日

 第一分科員若狭勝君、中川正春君、小沢鋭仁君、第二分科員小山展弘君、丸山穂高君、第四分科員浮島智子君、樋口尚也君、第五分科員笠浩史君及び第六分科員足立康史君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成二十八年度一般会計予算

 平成二十八年度特別会計予算

 平成二十八年度政府関係機関予算

 (法務省、外務省及び財務省所管)


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     ――――◇―――――

菅原主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりましたので、何とぞよろしくお願いいたします。

 本分科会は、法務省、外務省及び財務省所管について審査を行うことになっております。

 なお、各省所管事項の説明は、各省審査の冒頭に聴取いたします。

 平成二十八年度一般会計予算、平成二十八年度特別会計予算及び平成二十八年度政府関係機関予算中財務省所管について、政府から説明を聴取いたします。麻生財務大臣。

麻生国務大臣 平成二十八年度一般会計歳入予算並びに財務省所管の一般会計歳出予算、各特別会計歳入歳出予算及び各政府関係機関収入支出予算について御説明申し上げます。

 まず、一般会計歳入予算額は、九十六兆七千二百十八億円余となっております。

 この内訳について申し上げますと、租税及び印紙収入は五十七兆六千四十億円、その他収入は四兆六千八百五十八億円余、公債金は三十四兆四千三百二十億円となっております。

 次に、当省所管一般会計歳出予算額は、二十五兆七千五百七十三億円余となっております。

 このうち主な事項について申し上げますと、国債費は二十三兆六千百二十一億円余、復興事業費等東日本大震災復興特別会計への繰り入れは五千七百二十七億円、予備費は三千五百億円となっております。

 次に、当省所管の各特別会計の歳入歳出予算について申し上げさせていただきます。

 国債整理基金特別会計におきましては、歳入歳出いずれも二百一兆五千三百九十九億円余となっております。

 このほか、地震再保険等の各特別会計の歳入歳出予算につきましては、予算書等をごらんいただきたいと存じます。

 最後に、当省関係の各政府関係機関の収入支出予算について申し上げます。

 株式会社日本政策金融公庫の国民一般向け業務におきましては、収入一千七百十六億円余、支出一千六十八億円余となっております。

 このほか、同公庫の農林水産業者向け業務等の各業務及び沖縄振興開発金融公庫等の各政府関係機関の収入支出予算につきましては、予算書等をごらんいただきたいと存じます。

 以上、財務省関係の予算につきまして、その概要を御説明申し上げた次第であります。

 なお、時間の関係もございまして、お手元に配付しております印刷物をもちまして詳しい説明にかえさせていただきますので、記録にとどめていただきますようよろしくお願いを申し上げます。

 以上、御審議のほどよろしくお願い申し上げます。

菅原主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま麻生財務大臣から申し出がありましたとおり、財務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

菅原主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

菅原主査 以上をもちまして財務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

菅原主査 この際、分科員各位に申し上げます。

 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。

 なお、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。濱村進君。

濱村分科員 おはようございます。公明党の濱村進でございます。

 きょうはトップバッターということで、麻生財務大臣にもお出ましいただきまして、大変にありがとうございます。

 予算委員会の審議を私も予算委員としてずっと座って拝見しておりましたけれども、我々公明党は、税と社会保障一体改革三党合意を受けまして、その中から給付つき税額控除、そして総合合算制度、さらには軽減税率、この三つの手段の中から低所得者対策はどれを選ぶのかということで、自民党、公明党、与党としてしっかりと議論をした上で軽減税率を採用してきたという経緯がございます。

 この軽減税率について、いろいろな話がございました。さらにこの予算委員会でも、当然財務金融委員会でも審議されておるところではございますけれども、予算委員会においてもしっかりと明確にして、そしてまた、国民の皆様、事業者の皆様の不安であったり、どうなるんだろうというような懸念を少しでも払拭できるような、そういう審議にしてまいりたいというふうに思っているところでございます。

 まず冒頭にお話し申し上げたいのは、免税事業者の皆様においてどのような影響があるのかということでございます。

 この軽減税率制度ですが、当初いきなりインボイスを入れるのかというと、決してそうではございません。請求書保存方式の経過措置があるわけでございます。一〇%に引き上げというのは平成二十九年の四月に行え、それはそれとしてやるんですけれども、その段階の納税事務というのはどのようなものになっているのかというと、四年間の間でございますけれども、区分記載請求書等保存方式がとられる。これは何なのかというと、今、現行採用されているような請求書に、八%なのか、あるいは一〇%なのか、その印をつけてくださいね、そういったものでございます。

 この経過措置がとられることによって、免税事業者というのは平成二十九年四月から課税事業者との取引を継続して行えるかどうかでいうと、恐らく実態的にはほとんど変わらないということでございますので、免税事業者の皆様が、消費税が一〇%に上がったからといって、即座に取引から排除されるということは理論上ないというふうに考えるわけでございますけれども、いかがでございましょうか。

坂井副大臣 ただいま議員御指摘のように、インボイス制度は、四年間の準備期間を設けて平成三十三年四月導入ということでございますが、それまでの間は、現行の請求書等保存方式を基本的に維持するとともに、売り上げまたは仕入れの一定割合を軽減税率対象であるものとすることができる特例を設けるということにしております。

 ですので、免税事業者からの仕入れについても引き続き全額仕入れ税額控除が認められることになりますので、免税事業者が平成二十九年から直ちに課税事業者との取引から排除されることはないものと考えております。

 なお、この制度の導入に当たりまして、事業者の取引に影響が生じ得ることから、今般の税制改正法案の附則において、政府は、インボイスの導入に係る事業者の準備状況及び事業者取引への影響の可能性などを検証しつつ、必要な対応を行うこととしておりまして、しっかりと事業者への対応を行ってまいりたいと思っております。

濱村分科員 ありがとうございます。

 課税事業者からしてみれば、仕入れ税額控除ができるかどうか、これが非常に大事なポイントであるというふうに思うわけでございまして、引き続き仕入れ税額控除ができるので、免税事業者の皆様も安心して取引をしていただける、そういう状況がしばらく続くということでございます。

 さらに詳しく見ていきたいと思いますが、きょう、資料をお配りさせていただいております。

 ちょっとこの資料の御説明をさせていただきたいと思いますが、まず、これは何を書いているかというと、免税事業者から課税事業者への取引、いわゆるBツーBの取引を記載しております。

 これはどういうケースを想定しているかというと、スーパー、これは課税事業者です。農家さん、大がかりにやっているというわけではなくて、家庭菜園にちょっと毛が生えた程度で、たまにとれた野菜を売りたい、それを地元のスーパーで扱ってもらうというようなケース。

 よくスーパーとかでも、地元野菜のとれとれ市とかというような形で、地元の野菜ですのでどうぞ皆さん買ってください、お味もよろしいですよというような形で棚を設けて、特設的にやったりすることがあるかと思うんですね。大体そういったケースを想定している。定常的に、常日ごろから大がかりにやっているので流通として途絶えることはありませんよというようなことを想定しているわけではございません。つまり、農家はあくまで免税事業者、そんなに大きな規模でやっていないということです。

 そこで、まず、先ほども申し上げたとおりですが、四年間の経過措置という時代あるいは現在はどうなっているのかというのを一番上の段に書いてあるわけです。

 農家さんから納品いたします。売り上げは七千五百六十円。大体こういうぐらいの値段にしておこう、一かご七千円とかというような形で納品されたりします。スーパーはどのように処理しますかというと、仕入れ伝票においては、仕入れは七千五百六十円で、そのうち消費税額は五百六十円だと。これは割り戻し計算をしている。百八分の八を掛けて、税額分を計算いたします。さらには、売り上げ、利益をちゃんと乗せなければいけませんので、一万八百円で売りますよ、かごの野菜を大体一万円で売りますというようなケースですね。消費税額分については八百円です。

 こういったときに、消費税の計算につきましては、預かり消費税が八百円で、控除できる税額は五百六十円ですので、二百四十円をスーパーが納付するという形になります。これが基本形です。

 その上で、平成三十三年四月から三十六年の三月の三年間、これはさらにインボイスが導入されるわけでございますけれども、経過措置がございます。税額控除でございますが、この控除税額について、百八分の八の計算をしているだけでよいかというとそうではなくて、さらに掛ける八〇%という税額について、課税事業者は仕入れ税額控除ができるという特例がさらに三年間あります。

 さらにその次の三年間、平成三十六年四月から三十九年三月までの三年間は、さらに百八分の八掛けることの五〇%の仕入れ税額控除ができますよというのが特例措置でございます。

 そして、いよいよ三十九年四月以降、これは十年以上の将来になるわけでございますけれども、農家はインボイスを発行できません。なぜならば、免税事業者という前提を置いていますので。免税事業者ですので、インボイスではないんだけれども、これまでどおり、一応、請求書なるものをしっかりと用意して納品しているという前提で書かせていただいております。

 これはスーパー、課税事業者からすればどうなるかというと、仕入れ税額控除、控除税額はゼロ円になるわけですので、納付額が八百円となる。スーパーさんからすれば、多少消費税の納付額がふえてしまうことで利幅が減ってしまうじゃないかということで、これによって、免税事業者の皆さんが課税事業者との取引において排除されるのではないかという御懸念があるわけでございます。

 確かに、事実上、理論上はこのとおりなんです。ただ、これはビジネスなんです、商取引なんですね。そういう意味においては、ほかに無策なんでしょうかということを私は申し上げたいんです。

 その上で、次のページをごらんになっていただきたいんです。

 最後の、インボイス制度が導入され、経過措置もなくなった状態のところでございますが、このときに免税事業者の皆さんはどういう対応をとられるでありましょうかということなのでございます。

 そもそも事業者というのは、利益をしっかりと出していって事業を拡大させていくというのが目的なわけでございます。その目的を達成するために自分たちがどうすればよいのかということを考えなければいけない。

 これは確かに、三年後までにやってくださいねと言えばちょっと焦るかもしれませんが、十年先なんです。十年先なので、それまでにビジネス上の選択をしっかりと考えた上で選択してくださいということになるのであろうかというふうに思いますし、資料にも書かせていただいているわけでございますが、やはり事業者の本来の目的は事業収益を拡大することです。であるならば、課税事業者になることを目指してしっかりと売り上げを拡大していくぞというような選択をとることも一つの選択肢であろうかと思うわけでございます。

 そしてまた、価格調整力、こうしたものもかえって向上していくんじゃないかというふうに思うんです。これはどういうことかというと、地物の野菜です、新鮮ですし、そしてまた野菜臭さも残っているぐらいのいい野菜ですよというようなことで、商品自体に魅力があります。その商品自体の魅力、こうしたものを磨いていくというのが価格調整力の向上につながるかというふうに思うわけですね。

 あるいは、課税事業者と比較してみてもどうでしょうか。価格面での優劣においては、消費税分だけ調整が可能なんです。どういうことかというと、この農家の方が課税事業者であれば、七千円で入れるしかないんです。しかしながら、免税事業者であれば、この五百六十円分というのは調整可能なんですね。

 勝手に五百六十円と言っているんですが、そもそも、これを課税事業者の方は七千円で売らざるを得ませんけれども、その五百六十円の幅の中で価格を調整する。スーパーと、取引条件を少し変えましょうやというような議論ができるわけです。こういったことを行うことによって本来事業というのは成り立っている、取引というのは成り立っているというふうに思うわけです。

 そういう観点でいいますと、インボイス制度が導入されるからといって、即座に取引から排除されるわけではないというふうに思うわけでございます。事業者はさまざま苦労をされるというのは確かにあります。これはあるんです、負担をおかけするというのはあるんですけれども、免税事業者が、インボイス制度が始まるからといって、即座に取引から排除されるようなこともかなり限定的であるというふうに思うわけでございますが、大臣の御所見をお伺いしたいかと思います。

麻生国務大臣 濱村先生、これは国会議員の頭にもよくわかるようなレベルに、商売をしたことのない人の頭にもわかりやすく解説してあるので、私も仕事の方からこの世界に来ましたので、この意味はわかります。これはよく書けておると思っております。

 まず基本的に、軽減税率が、複数税率と言われるものの中では、いわゆる適正な課税というものを確保していくためには、よく言われる区分記載がされた請求書というものを保存しておかなきゃいかぬ、通称インボイスという制度の導入が必要であるというのは世界じゅう皆同じなので、日本においてもこれは必要であるという答えははっきりしているんです。

 軽減税率の導入から四年間という準備期間を設けております点とか、また、それまでの間に今の請求書保存方式というものを基本的に維持できるということと、売り上げまたは仕入れの一定割合を軽減税率の対象であるものとすることができるような特例を設けることにしております。

 そういった意味では、御指摘のように、四年間の準備期間というものは免税事業者からの仕入れについても引き続き全額仕入れ税額控除が認められることになりますので、平成二十九年度から直ちに課税事業者との取引から排除されるということはちょっと常識的には考えられない。何かほかの理由をくっつけるかもしれませんけれども、それが理由にはならぬと思っております。

 なお、このインボイス制度なるものの導入に当たりましては、事業者の取引に影響が生じるということから、今般の税制改正法案の中に附則をきちんとつけておりまして、インボイスの導入に係るいわゆる事業者の準備期間とかその状況、また事業者の取引への影響の可能性などを検証しつつ、必要な対応をとり行うというふうに附則にきちんと書かせておりますので、しっかりとした事業者への対応ということになるのであって、今ここで書かれているのは基本的に正しいものだというふうに思っております。

濱村分科員 ありがとうございます。

 今大臣からおっしゃっていただいたとおり、免税事業者と課税事業者との関係をこれからも制度導入に向けてしっかりと見ていきながら、うまくアジャストしていくということは必要なのでございますけれども、基本的には、免税事業者が取引から排除される、これはかなり限定的であるということが確認できたかというふうに思います。

 当然、免税事業者で農家の方、こうした方々が、そうはいっても、大手スーパーさんが取り扱ってくれへんようになったんやとかというようなことはあり得るかもしれませんが、さらに言えば、簡易課税方式をとっているような事業者さんにその野菜を持ち込むということも可能だったりするわけです。そういう形でいろいろな方法は考えられるわけでございますので、これはしっかりと事業者の皆さんの不安も払拭していきたいというふうに思うわけでございます。

 実は資料2というものもございまして、卸、これはお菓子の卸売業者さんを想定して書いているんですが、課税事業者さんです。一方で、駄菓子屋さんに納品しますよということで、免税事業者というようなものも資料としておつけさせていただいております。

 こういった取引、実はこれもBツーBなんです。駄菓子屋さんは確かにCに売るわけですけれども、課税事業者と免税事業者、お菓子の卸売と駄菓子屋さんの取引を書いているわけでございますが、これは実はずっと変わりません。ですので、影響ありませんということなんです。それをちょっと一言申し上げたいなと思って、これも資料としておつけさせていただいております。

 時間の限りもありますので、次の質問に移りたいと思います。

 消費税の納税事務の効率化についてお話をさせていただきたいというふうに思います。

 これは一月十三日の予算委員会でも私は取り上げさせていただきましたが、世界銀行とプライスウォーターハウスクーパースのペイイングタクシーズ二〇一六という調査、これによると、現状、複数税率を導入していない日本においても、企業が消費税の納税にかける時間は、複数税率を導入しているEUの各国、イギリス、フランス、イタリア、こういった国と比較いたしましても長いという指摘があるんですね。

 一方で、EUというのは電子インボイスを導入しております。これは納税事務の負担が相当程度軽減されているというふうに思うわけでございますが、各国でどのような仕組みを導入されているのか、現状について確認をしたいと思います。

井上(裕)政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘の電子インボイスですけれども、これは電子的なフォーマットで発行、保存されるもので、紙のインボイスのかわりに使用されるものでございます。

 こうした電子インボイスでございますけれども、先生おっしゃったとおり、イギリス、ドイツ、フランスを初めとするEU諸国において広くその利用が普及してきております。仕組みとしましては、インボイスの発行者が誰であるかきちんと証明がなされて、それから、インボイスの内容が変更されないような方法をとって、一定の必要とされる記載事項を含む取引の内容を電子的なフォーマットで記載するという要件とされているものだと承知をしております。

 なお、こうしたインボイスがEUで普及してきております背景は、EUで、EU各国の取引の効率化とまさに事務負担の軽減の観点から、先生おっしゃいましたとおり、EU各国の電子インボイスのルールの統一といった、長年にわたるインボイス、電子インボイスの普及促進に向けた取り組みがあったというふうに承知をいたしております。

濱村分科員 EUにおいて電子インボイスを導入し、一方で紙のインボイスも一応まだ残っているというふうには承知しておりますが、こうした取り組みをしながら、EUについてはルールを統一しながら効率化を行ってきたということでございます。

 ただ、インボイスを日本にも制度として導入するわけでございますが、日本は世界的に見ればインボイスは後発なんです、後発組。後発組は後発組のメリットがあるんです。ですので、世界で最も効率的なインボイス制度を導入していただきたいなというふうに思うわけでございます。

 日本でも、EUのような取り組み、電子インボイス自体は台湾であったり韓国とかであったりとかでも行われているわけでございますが、こうした取り組みを参考にしながらインボイス制度の導入を進めるべきではないかというふうに思うわけでございますが、いかがでございましょうか。

井上(裕)政府参考人 お答え申し上げます。

 インボイスの導入を機に、事業者の納税事務負担の軽減をしっかり図っていくべきであるという御趣旨だと思います。

 我々としましても、平成三十三年四月から導入されますインボイス制度におきましては、一定の要件のもと、こうした電子的なインボイスの発行、保存を認めるということとしております。これによりまして、経理事務のシステム化が促進されまして、事業者の方の納税事務負担の軽減につながることが期待されると考えております。

 こうしたものも含めまして、軽減税率制度の円滑な導入のために、中小企業庁等関係省庁と連携してしっかり対応してまいりたいと考えております。

濱村分科員 日本においても電子インボイス、電子的にインボイスを保存していくことを認めるということになりますので、しっかりこの点は促進されるであろうということを期待いたすものでございます。

 私はサラリーマン時代にそういうこともやっておりましたので、伝票一枚一枚をどうやって削れるかとか、検品の作業をどうやって軽くできるかというようなことをやっておりましたので、この分野、制度を導入するというのは、決まった制度であればしっかりとやりますというのが事業者の態度であるというふうには思うわけでございますが、一方で、どういう形で落とし込めばいいんでしょうかというのは、結構細かいところがございます。そういう意味では、非常に細かいところは実務屋さんの意見というのが非常に参考になるかと思うんですね。

 予算委員会の審議等を見ておりましても、どうやら、何かチェーンストアの協会の方から意見を聞きながら質問をされているというようなことをおっしゃっておられる方もいたんですけれども、私からしてみれば、そんなものは事務方の方でしょうと。現場の取引でどういうことをやっているかというのを全然御存じじゃない方が、こういうケースが理論上あるかもしれませんということでケースを書いておられる。現場は、そういうものに対して工夫をするんです。

 ですので、実務屋さんをしっかりと巻き込んでの御議論をしていただき、そしてまたそれを丁寧に聞き取りながら、政府としてしっかりと導入に向けて取り組んでいただきたいというふうに思うわけでございますが、御所見をお伺いしたいと思います。

坂井副大臣 ただいま委員の御指摘の、現場を知っている方々の話をしっかり聞けというのは、まさしくそのとおりだなと思って伺わせていただきました。

 軽減税率制度の導入に向けて、やはり円滑に準備を進めるためには、各企業における経理担当のみならず、システムベンダーやレジメーカーの実務者などの方々にもこの制度の内容をよく理解していただく必要があろうかと思っております。そのため、何よりもまずは政府において、システムベンダーやレジメーカーを含め、事業者に対しまして軽減税率制度の周知を図るとともに、相談にも丁寧に対応していかねばならない、こう思っております。

 こういった事業者の準備支援の一環といたしまして、二十七年度の補正予算におきましても百七十億円計上しておりますが、これは中小企業団体等による小売事業者への周知や対応サポートのための体制の整備のためというところでございます。また、事業者団体や自治体等の御協力をいただいて、中小企業団体に属さないという企業もたくさんございますので、こういった企業に対しましても周知、サポートするための工夫をしていく予定でございます。

 委員が御指摘のように、政府も、関係省庁や関係団体と連携をしながら、また同時に、システムベンダーやレジメーカーなどを含む事業者の皆様方の御意見も丁寧に伺いながら、しっかりと対応を行ってまいりたいと考えております。

濱村分科員 ありがとうございます。

 この制度導入において、実はもう既に事業者の皆さんとかの現場の声を聞いていただいておるんですね。どこかというと、税額控除の計算の仕方、これは割り戻し計算を残しますと。本来であればインボイスは積み上げの話だけなんですが、割り戻し計算を残すということで、今、事業者さんは処理ロジックを変えなくても済むんです。これは結構クリーンヒットでございまして、非常に評価されるべきものであるというふうに思います。

 いずれにいたしましても、この軽減税率制度、我々公明党が旗を振ってまいりましたので、しっかりと導入まで責任を持ってやってまいりたいと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

菅原主査 これにて濱村進君の質疑は終了いたしました。

 次に、小山展弘君。

小山分科員 民主党の小山展弘でございます。

 きょうは、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

 先日は、麻生大臣、いろいろ失礼いたしました。共通の知り合いがおりまして、竹中さんのことについて質問したときに、そのときこそ麻生大臣にお伺いをするべきだったんじゃないかと言われまして、ああ、そうだなと思いました。

 きょうは、実は金融担当大臣にお尋ねしたいと思ったことがあったんですが、なかなかそういう機会が少ないというようなことの仕組みもわかりまして、いろいろな盲点があるななんということも思った次第ですけれども、余り大臣に直接お尋ねする機会が少ないかもしれませんが、よろしくお願いします。

 最初に、消費税引き上げ分の五%について、この使い道についてお伺いしたいと思っておりますが、二〇一二年の三党合意のとおり、社会保障に使っておるというようなことになっておりますでしょうか。

麻生国務大臣 いわゆる税制抜本改革法によりまして、改正後の消費税及び、消費税のほかに地方税もありますので地方税において、消費税率の引き上げが五%から一〇%ということによって増収分は約十四兆円ぐらいになろうかと存じますが、これを全額社会保障の充実、安定化、いわゆる年金とか医療とか介護とか子育てというものに充てるということとされております。御存じのとおりです。

 具体的には、消費税の引き上げによります増収分を活用して、基礎年金国庫負担の二分の一、今まで赤字になる部分ですけれども、これを引き上げて三兆二千億。また、子ども・子育て、医療・介護、年金の分野ごとにメニューを示した社会保障の充実に約二兆八千億円。そして、消費税引き上げに伴います社会保障費の増加分がありますので、その分に約八千億。問題の、後の代にツケ回すというか、いわゆる赤字公債を発行して埋めておりました分の負担のツケ回しの軽減に七兆三千億円程度を実施する枠組みとなっておりますので、現実問題としては、全額社会保障の充実に充てるということになっております。

小山分科員 予算委員会の本委員会では、どうしてもテレビが入ると、いろいろな大臣とみんな何か激しい応酬みたいになるんですけれども、三党合意も守られて、この政権の一貫性、以前、甘利大臣に、ちょうど一年前に新しい公共について今どうなっていますかということで伺ったら、自民党さんの方で、共助社会ということで内閣府の方で受け継いでいただいているということです。

 そんなことで、鳩山内閣のときにあれはできたものですけれども、そういった一貫性の部分もあるということもいろいろなところで私も地元ではお話ししているんですが、この三党合意に基づいて消費税が社会保障に使われていくように、これからもぜひお願いしたいと思っております。

 それと、二〇一二年の自民党さんの政権公約の中に失われた国民所得五十兆円奪還プロジェクトというものが記載しておりまして、これについて、どういうような内容のもので、今これに基づく政策というものがあるのかということでお尋ねしたいんですが、これは特に省庁の方からはお答えするところがないということで、ここのところは今後の課題なのかなとは思っておりますけれども、これを、政務官や、きょう来られている議員の方でもしお話ができればお尋ねしたいと思います。

 その一環の中で、財務省と日銀、民間が参加する官民協調ファンドを創設し、基金が外債を購入するなどさまざまな方策を検討しますという部分もあるんですけれども、この官民協調ファンドというのは今現在どのようになっておりますでしょうか。

坂井副大臣 今委員御指摘の官民協調外債ファンドでございますが、確かに、政権交代前に当時の経済状況を踏まえて検討されたさまざまな政策のうちの選択肢の一つでございましたが、現時点では創設されておりません。

 これは、政権交代後、金融、財政、構造改革、この三本の矢の政策を一体的に推進し、デフレ、円高といった経済状況に改善が見られておりまして、以前総理も答弁をされておりますけれども、こうした経済状況のもとでは同ファンドの必要性は低くなっていると考えているからでございます。

小山分科員 お話しにくいことをお話しいただきまして、ありがとうございます。

 いろいろな予算委員会の議論を見ていましても、一〇〇%公約実現ということは難しいと思いますし、また公約達成がゼロということもない、多分その中間にいろいろなものがあるのかなと思っております。

 先日の野田さんと安倍さんのお話を伺っていても、デフレ下では実質GDPが上振れて出ますし、インフレ下では名目GDPの方がいい数字が出やすい。実際には、悪い数字があるから全部を切り捨てるとか、今後の見込みのところは、よくなっていくのか、あるいはそこから失速していくのか、これはいろいろな識者によっても考え方が違いますので、多分、悪い数字があるからといって全部を切り捨てるのも間違っていると思いますし、悪い数字があることを全部認めないということでもないと思います。

 本当は、今ある問題について今後どのように解決していくかということが、足の引っ張り合いではなくて、もっと議会で、それこそ審議会とかああいうところではなくて議論されていくように、これは野党の側にも相当な責任があると思っているんですけれども、そういう委員会審議になっていくように私も努力をしていきたいと思っております。

 きょうは、そういう大きな話ではなくて、ちょっと分科会らしいお話で、お尋ねしていきたいと思っていることがあります。先日、東芝のことで、証券取引委員会のことは伺ったんですが、新日本監査法人のことについて、きょう伺いたいと思っているんです。

 ここに籍のある社員さんが、政府に出向している方が結構いらっしゃるということで伺っているんですが、どのぐらい今いらっしゃるでしょうか。

森田政府参考人 お答え申し上げます。

 新日本監査法人が把握しているところによりますと、新日本監査法人を退職し政府に任期つき職員として採用された者は三十五名であるというふうに聞いております。

小山分科員 きのう、質問通告の後に、ちょっと一個確認したいと思うことがありまして、もし御無理でしたら、これはいいんですけれども。

 任期つき、期限つきの就職ということで今省庁にいらっしゃる、その中には戻る方もいらっしゃるんですね。結果としてなのか、転籍をして、一旦やめて来ているんですけれども、戻る方もいる。中には、退職金をもらわずに省庁に来ていたりとか、あるいは健康保険組合の健康保険は残ったままで来られているということで、やはり戻る方も中にはいらっしゃるわけですよね。あるいは、戻ること前提で省庁に今お勤めになられているという。

森田政府参考人 お答えいたします。

 我々としまして、政府の任期を終えた後どのようにされるかということにつきましてはそれぞれだというふうに考えておりまして、その条件がどういうふうになっているかということにつきまして、今、私として承知していることはございません。

小山分科員 退職金ももらっていない、それから健康保険組合もやめていないということであれば、やはり戻ることが一定程度前提だということで、これは事実上の出向ということ、転籍というよりも出向だと思っているんです。

 新日本監査法人さんから金融庁に出向している方が二十名程度いらっしゃるということで伺っております。この中には、公認会計士の資格を持って来られているとか、あとシステムの関係の方とか、そういう方がいらっしゃるということで、役所の方から伺っております。

 新規業務停止処分を受けている監査法人から金融庁が出向者を受け入れている。金融機関さんとかいろいろなところから受け入れているので、受け入れていること自体がよくないということではないと思うんですが、新規業務停止、業務改善命令を受けているところが今でもずっと続いているというのは、ここはちょっといろいろ判断はあるとは思うんですけれども、見方によっては、節度がない、あるいは癒着を疑われる可能性もあるんじゃないか。

 新日本監査法人の方も、これだけの大きなことがあったわけですから、自粛をすべきではないかなということも感じるんですけれども、そこは新日本さんへの私の考えということになるので、そこについての答弁ということではないんですが、新日本監査法人から転籍者というか、期限つきの職員を受け入れているということについて、どのように認識されていますでしょうか。

小野政府参考人 お答え申し上げます。

 先生からただいま御指摘ございましたように、新日本監査法人を退職し金融庁に任期つきの職員として採用されている者は、現在十八名おります。これらの任期つき職員につきましては、公認会計士としての専門性、金融実務の経験、あるいはシステム分野の専門性などに着目して採用しているものでございまして、新日本監査法人という組織に着目して採用しているものではございません。

 また、これらの任期つき職員につきましては、新日本監査法人に関する業務は担当させておらず、上司の指揮命令に基づき業務に従事しているところでございます。加えまして、国家公務員法に基づく守秘義務あるいは信用失墜行為の禁止など、厳格な服務義務が課されているところでございます。

 金融庁におきましては、引き続き、その職務遂行に外部から疑惑や疑念を抱かれることがないように万全を期してまいりたいと考えております。

小山分科員 ぜひお願いいたします。

 先ほども申し上げましたとおり、退職金をもらわずに、また健康保険もやめずに、事実上の出向というか、戻ることを前提で来られている方もいらっしゃるということなので、もちろん、新日本に対する業務についていないというのはそのとおりだと思っておりますけれども、中には、政府に出向して仕事をする中で、結果として実質的な営業になっているんじゃないかというようなことを話す方もいるようですので、そこは疑念を抱かれることがないようにぜひ御留意いただきたいと思います。

 それで、この新日本の本質的なところを少し伺っていきたいんです。

 東芝の決算について監査証明を出したということで、これはホームページなんかでも出ているんですが、結局のところ、東芝の会計というものの不適切さを見抜けなかったんでしょうか、あるいは見逃したんでしょうか。このことについてお尋ねしたいと思います。

福岡副大臣 今回の新日本監査法人に対する行政処分に係る調査によりますと、同監査法人は、東芝のガバナンスへの過信によりまして、東芝側の説明に対して批判的な観点からの検証を十分に実施できなかったこと、監査チーム内での情報共有や連携がうまく機能しなかったことなどにより、東芝の財務書類への虚偽記載を見抜けなかったと認定されているものと承知しております。

小山分科員 見抜けなかったと。あるいは、異変に気がついていた公認会計士の方もいたんだけれども、上司との連絡というか連携、報告とかそういったことができていなくて、また上司の方でも、まあ東芝だから大丈夫だろうというようなものがあって、結果として、そのことに監査証明を出してしまったということなんです。

 しかし、聞くところによりますと、これは役所の方からちらっと、役所のどなたとは言いませんけれども、売上原価がマイナスだったというんですね。売上原価がマイナスなものがあるわけがないわけでありまして、私は、この報告も、実はわかっていたんだけれども上司に報告していなかったということで、全体としては見抜けなかったんだけれども、でも、気づいていたということは、見抜いていたというか、おかしいと少なくとも思った人がいたわけですね。だから、うまい報告書を書いたなとは思うんですけれども。

 しかし、実際、公認会計士とか税理士さんとか、あるいは私自身も拙いながら銀行員としての経験もありますけれども、信用金庫の職員さんなんかに聞いても、財務と税務のプロである公認会計士が、東芝も大きい企業だ、いろいろな手を使ったというふうになっているんですが、言ってみれば、在庫の調整とか売上原価を過小に出しているとか、古典的な手口なんですね。

 そういう手口を本当に見抜けなかったということが、副大臣、こういう報告を、妥当性がないとは言わないんですが、本当にそうなのかなと信じられますか。

福岡副大臣 委員御指摘のとおり、今回の新日本監査法人の監査は極めて質の低いものであったというふうには認識しておりますが、今回の処分に係る調査においては、故意に見逃したというようなことは認定されていないということでございます。

小山分科員 確かに、カネボウのときみたいに公認会計士が粉飾を指導したとか、これは極めて悪質だと思うんですけれども、そういうことはなかったということで、そのとおりだと思います。むしろ、ある程度変だなということを担当レベルでは気づきながらも、どうしようかということだったんじゃないかと思うんです。

 いろいろ、監査法人で働いたことのある公認会計士さんなんかに聞くと、監査法人のシステムというか制度上の問題があって、お客さんが監査、検査の対象なんですね。ですから、どうしても、営業をして、そこが特に東芝さんなんかになると相当な、一千万単位の報酬が入ってきますから、だからなかなか強いことが言えないと。お客さんがイコール監査の対象であるということに一番構造的な問題があったのではないかということで、余りこういうことを言うといけないかもしれないですが、氷山の一角だと。

 これは大なり小なり、もちろん法令を犯すほどのものでなければいいんですけれども、それはどうしても判断がつきかねるものがある。だけれども、かなり規模も大きくなると問題だと思うんですけれども、これは氷山の一角じゃないか。

 この中で、例えばこういう意見を言う方がいて、全ての株式会社で上場しているところから社会保険の保険料みたいに取って、それを監査法人の収入の半分とか三分の一ぐらいに充てれば、もうちょっとお客さんに強く言えると言うんですね。あるいは、これは投資家のためにやっているわけですから、投資家から少しずつ金融税みたいな形で集めて、それが監査法人の収入になれば、もっとお客さんにこれはおかしいですよと言いやすくなる、そんな意見も聞いたんです。

 こういった、監査法人が粉飾を見抜けないとか見逃したというようなことを防ぐために、政府は新たな施策としてどんなことを今検討されているでしょうか。

福岡副大臣 委員御指摘の御議論がこれまであったということは承知をしております。

 企業の会計監査に関しましては、ガバナンスを強化するという観点から、これまでも、平成十七年の会社法の改正におきまして企業の監査役会に会計監査人の報酬の同意権を付与するということをさせていただいたり、昨年適用を開始いたしましたコーポレートガバナンス・コード、これによりまして、監査役会が外部会計監査人を適切に評価するための基準を策定することを求めるなどの対応を行わせてきていただいているところでございます。

 さらに、今御指摘がありました今後の会計監査のあり方につきましては、金融庁におきまして、会計監査の在り方に関する懇談会というものを開催させていただいておりまして、今まさに有識者に御議論をいただいておる最中でございます。その意見を踏まえまして、信頼性を確保していくために必要な取り組みを進めてまいりたいと考えております。

小山分科員 私も、たくさんの会社がありますので、再発が全くゼロということではないかもしれないですけれども、ここはできる限り抑えていく、そして巨額な粉飾決算が出ないように、ぜひ制度を整えていっていただきたいと思います。

 私も実は青年会議所で、去年の十二月に卒業いたしまして、会計士の方とか会計のことなんかも、いろいろセミナーもありまして、そういったところで勉強する機会もありました。

 突然で申しわけないんですが、もし御答弁いただけるようでしたら、今の新日本監査法人が見抜けなかったというようなお話とか、あるいはそういう報告とか今後の再発防止策といったところについて、特に、本当に会計士の方が見抜けなかったんだろうかということについて、もし御感想がありましたらお願いできればと思います。

麻生国務大臣 それが給料をもらっている相手だから、商売している相手だからということになると、これは社外重役だって、外から来ているけれども、あんたは給料をこの会社からもらっているんでしょうと言われたら、その人だってなかなか言いにくくなっちゃう。だから、コーポレートガバナンスとか、いろいろなことをやっていますよ。

 ただ、やはり一番は、本人の持っている矜持の問題とか資質の問題とか人間性の問題とか、いろいろなところにかかわってくるんだと思います。やはり信頼性を確保していくというのは、なかなか、弁護士資格があるからとか会計士の資格があるからというだけの話じゃなくて、一番のところは、やはり本人の持っている人間性とか資質とかいうところになっていくんだと思います。

 いずれにしても、こういったものは不断の取り組みをやっていかないと、どうしても、長くなると、何となくということになりますので、それは監査される側の会社の方も同じようなものなんだと思いますので、やはりそこのところは両方の努力が要るなという感じがします。

小山分科員 突然お尋ねして済みません。ありがとうございました。

 私も麻生大臣のおっしゃるとおりだと思います。そのことで、これから農協法のことで少し、これは余り非建設的な話じゃなくて、あと十分ほど質問させていただければと思っているんです。

 去年の農協法の改正でいろいろな御議論があった中で、多分一番大きく変わった部分というのは、実質的には、全国監査機構という農協の監査をする部署が全中から外れて、全国監査機構による特殊な監査というものがなくなった。全国監査機構も監査法人になるというところが一番大きかったと思います。

 このことについて、実は内部監査だとかいうような話もあって、確かに全中の組織から分離するということは大事だったのかなとは思うんですけれども、全国監査機構は、賦課金という形で会費のように集めておりまして、今、小泉さんが要らないと言っているということで、一回だけで、あれは本当はそうは思っていないよというようなことも聞いたりもしていますが。

 全国連からより多くの負担金というか賦課金もある中で、先ほど申し上げた、お客さんがイコール監査の対象ではということから、少し切り離されているということで、公認会計士経験の方も、いい仕組みだというお話もあって、また、公認会計士が全部監査するわけではないんですが、農協監査士という、私の出身の農林中金とかそういったところへ、あるいは全中とかそういうところから農協の経営に詳しい者とか、粉飾決算で稟議書いて痛い目に遭った人間とか、そういう人間が集まって、これは本当に適切だろうかというような、相当職業的倫理観というのは高かったんじゃないかなと思うんですが、そこがなくなってしまうと。中には、これは野党の議員も含めて、何か公認会計士よりも劣るかのような話もあったんです。

 ここは、これまでの間に監査を担ってきた全国監査機構が農協の粉飾決算を見抜けなかったり、意図的に見逃した、見抜けなかった事例があることは伺っています。また、一件、組合員から、あんたらが見抜けなかったから困るじゃないかということで訴えられた例もあるということです。

 これは、例えば、全国監査機構を含む全中に対して、業務改善命令ということは一律に論じられませんが、それに準ずるような必要措置命令とか、そういった指導が行われた事例というのはあるんでしょうか。

齋藤副大臣 農協の監査を行っております全国監査機構は、小山委員御指摘のように、全中に置かれている組織であります。

 正確に申し上げますと、全中に対しては、農協法に基づきまして、農林水産大臣は、必要措置命令、これは第九十五条第一項です、業務停止命令、これは第九十五条第二項です、それから役員改選命令、これも第九十五条第二項でありますが、これを発出できるということにされておりますが、これまで全中に対しましてはこれらの命令を発出したことはございません。

小山分科員 先ほどお尋ねする中で、全く見抜けなかったとかということがゼロではないと。しかしながら、平成十年度の決算から監査を担ってきて、極めてその数は少なかったと思っております。

 これは先ほど申し上げたとおり、銀行員出身の者とか、本当にずっと内部でやってきた詳しい人とか、あと公認会計士も当然入っておりますので、なかなか、この歴史の中では、当時の林大臣も評価しているとおりで、質の高い監査をしてきたのではないかというふうにも思っているんです。

 こういう、それなりの一定の評価をする監査水準をしてきた、一定程度の職業的倫理観もあるという全国監査機構を、しかも、今、必要措置命令とか業務改善命令、一律には論じられないといっても、出されたことがないというものを、法改正の後にこの新日本監査法人の問題が出てきたんですけれども、これはあえて質問することではないかもしれないんですけれども、本当に今変える必要があったんだろうか。今現場から考えてうまく機能していた仕組みを、もちろん、部分的には変えるところがあったかもしれませんけれども、何か最近、対案、対案という話が出るんですけれども、現状維持で現在うまくいっているものを無理に、変えるために変えるというようなことは僕はあってはならないと思います。

 そうだったとは言いませんけれども、本当にこの部分は変える必要があったんだろうかということをお尋ねしたいと思うんですが、いかがでしょうか。

齋藤副大臣 先生御案内のように、公認会計士監査の制度は、全中監査の制度と比べますと、幾つかの重要な相違点があろうかと思います。

 まず、監査人の資格は、公認会計士は国が実施する試験の合格者であるということ。農協監査士は農林水産省令に基づいて全中が実施をする試験である。

 また、監査人の監督につきましても、公認会計士は公認会計士協会及び金融庁の監督を受けておりますけれども、農協監査士は全中を通じて農林水産省の監督を受けているということになっております。

 また、監査の独立性につきましても、公認会計士監査は法律により規制をしておりますが、全中監査は全中の内部ルールで規制をしているということでございます。

 また、全中の監査は、監査を受ける農協みずからをメンバーとしているということもありまして、従来から、外部監査とは言えないのではないかという指摘があったのも事実でございます。

 そして、信用事業も大きく行っている農協も多々あるということでございますので、今回の改正農協法において、全中の監査の義務づけを廃止して公認会計士の会計監査を義務づけるということにしたところでございまして、委員とも大分議論させていただいたところでございます。

小山分科員 農協監査士の資格が国家資格でないところとか、あるいは、組織として全中というところから外出しをするというようなところは、私も、かえって批判を受けないようにするために必要だった部分ではないかと思っております。

 実は、ドイツとかフランスの、向こうにも協同組合というのがあるんですが、ここの監査というのは監査連合会というところがやっておりまして、必ずしも公認会計士監査ではないんですね。それと、何よりも、今までうまく機能してきた制度であったというところで、そこをもう少し評価していただいて、そちらの方向で法改正あるいは制度の改革ということをお考えいただいてもよかったのではないか。これはなかなか本委員会でも質問できるタイミングも少ないものですから、きょう、分科会の場でちょっとお尋ねをさせていただいた次第でございます。

 今後、監査法人ということに全国監査機構もなっていきますので、今度は金融庁所管になっていこうかと思いますから、ぜひ今後とも、そういったことも含めて、より公正な監査になっていくように御尽力いただきたいと思います。

 それと、そろそろ最後になろうかと思いますが、この監査費用、これはずっと検討中ということで伺って、多分きょうも検討中ということではないかなと思っておりますけれども、監査費用が今までに比べて、今まで農協監査士が農協全体を見るよということでやってきたんですが、これからは公認会計士が入るということになりますと、それぞれの分野で、経済事業で公認会計士のチームが必要とか、信用事業で必要とか、そんなこともちょっと私も聞いておりまして、二倍から三倍ぐらい、場合によっては四倍になるんじゃないかということも言われております。

 この部分を配慮するということになっておりますが、ただ、実際には、これは血税を入れるわけにはいかない。その配慮の金額もわからないんですが、どういうような形で配慮したりあるいは支援をするようなことになっていくのか。そういったことももしお答えできれば、含めて御答弁いただければと思います。

齋藤副大臣 委員御指摘のように、改正農協法附則の五十条で、公認会計士監査への移行に関しての配慮事項としまして、農協の実質的な負担が増加することがないこと等を規定いたしております。

 この配慮規定を踏まえた対応は、これは従来から何度も御答弁させていただいておりますけれども、これまでの農協の負担がどれくらいかを確認する必要がありますし、会計監査人監査となった場合の負担が切りかわった場合にどの程度になるかを精査していく必要があろうかと思っておりまして、農協の負担が実質的に増加しないよう、公認会計士協会等とも協議をしながら、さまざまな方策を検討していかなくちゃいけない、今そういう段階でございます。

 いずれにいたしましても、この附則をつくるに当たりましては、全中含め関係者と大激論の末に固まってきた対応でございますので、重く受けとめて、しっかりやっていきたいと思っております。

小山分科員 質問時間が来ましたので終わりますが、最後の配慮のところで、税金を入れるということになったら、会計士の方の仕組みともそごが出てくるものですから、なかなか、どこから引っ張ってくるか結構難しい課題だと思いますけれども、またぜひ御尽力いただいて、附則も十分に満たせるように、どうぞよろしくお願いいたします。

 以上で終わります。

菅原主査 これにて小山展弘君の質疑は終了いたしました。

 次に、福田昭夫君。

福田(昭)分科員 民主党の福田昭夫でございます。麻生大臣とは一昨年の分科会以来でありますけれども。

 政府は昨年、経済・財政再生計画を策定いたしましたが、早くも赤信号が点滅をしております。二〇一八年度、平成三十年度のプライマリーバランス赤字の対GDP比マイナス一%程度は必達、二〇二〇年度、平成三十二年度のプライマリーバランス黒字化目標堅持の実現が怪しくなってきております。

 そこで、経済再生と財政健全化の両立について私の考えを述べながら、麻生大臣の御所見をお伺いしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 まず、経済再生と財政健全化の前提条件についてであります。

 一つは経済成長の要因についてでありますが、よく、我が国の経済を成長させる要因は、個人消費六割、設備投資最大二割と言われておりますけれども、この要因を満足させるためにはどうしたらよいというふうに大臣はお考えになっているか、お伺いをしたいと思います。

麻生国務大臣 GDPを構成しております要因は、個人消費、設備投資、政府支出、基本的にはこの三つなんだと思いますが、なかんずく大きいのは個人消費で、約六割を超えております。設備投資が残り二十数%で、その他もろもろ、ほかにも純輸出とかいろいろありますけれども、政府支出というのがその次に来るところだと思っております。

 いずれにしても、個人消費が出ていくためには、やはり長い間、長い間というのは、正確には多分、一九八九年の十二月に株価が三万八千九百十五円をつけましたので、あれが株の最高値、それがどんと下がって七千円、今、一万五、六千円というところまで来ていますので、簡単に言えば、日本人全体は、動産でいえば半分近くどころか四分の一ぐらいまでに財産がなくなった。というのは、貧しくなったということです。不動産も財産ですけれども、不動産も、九〇年、九一年まで上がっていましたけれども、九二年からどんと下がって、六大市街化地域の平均価格で約十五万円ぐらいになりまして、百万円が十五万円ぐらいまで下がっておりますので、これまた六分の一ぐらいに下がったということになりますと、貧しくなったということで、個人としては、自分の持っております動産、不動産という資産が減った。

 今回の資産のデフレーションによる不況というものの一番の根幹はこれだと思いますが、基本的に、デフレというものを、過去七十年間、我々はやったことがない。世界じゅうやったことがないんですが、やったことがないものですから、当然のことで、デフレへの対応などというものはやった経験者がいませんので、やはりデフレ対策という経済政策が失われたというのが、失われた二十年と言うけれども、何が一番失われたかといえばそれなんだと思っております。

 したがって、今回政権に復帰するに当たって、我々で考えた、当時の自民党総裁といろいろお話をさせていただいて、我々は、不況というものから脱却、その不況の中身は資産のデフレーションによる不況というものですから、これまでの経済対策というのは基本的に間違えた。はっきりしていると思います。日本銀行も間違えた。政府ももちろんです。

 したがって、済みません、日本銀行さん、金融政策を変えていただきます、政府側も財政政策を変えていただきますということになって、それが第一の矢とか第二の矢とかいろいろな表現になっていますけれども、そういうのを変えて、今やっと第三の矢のところまで来て、そこが民間の景気回復というところにつながっていく第三の矢になるところなんですが、やはりこの三年の間、結果として、金融が緩んだおかげで、円がいろいろな形として、デフレ対策のため金融の緩和によって円が安くなる、また、企業も経常利益が史上最高、労働者も、いわゆる雇用が史上空前、給料も上がった等々のことになって、確実になってきたのがこの三年間だと思います。

 受け取る側にしてみれば、やはり二十数年間ずっといったものが、一年やそこらで、来年は大丈夫か、去年はいった、ことしもいいけれども来年は大丈夫かという話になるところに持ってきて、海外のあれを見ると、急に中国がどんとなってきたり、爆買いなんというものはそのうち終わることになろうと思いますけれども、いろいろなものが形が変わってきております。そういう状況の中にあって、企業側としてはこれまで資産のデフレーションを食ったものですから、企業として見ればやはり債務超過になっていたんだと思いますね、会社用語で言えば。

 だから、全然金を貸してもらえないし、結果的に自分で金をためて自分でやる以外に手がないというので、内部留保がどんどんどんどんたまっていっているという背景は多分それなんだと思いますが、その分だけ給料に出ていないんですよ。これだけ経常利益がふえながら、人件費は昨年は約三兆円ぐらい下がっていますし、去年は四兆円上がっていますので、プラス一兆しかふえていないんですから、給与は。給料が上がったといったって一兆ですよ。

 だから、そういった意味では、やはりきちんとそういったものがふえていくということにならないと、福田先生、全体として景気がいいという感じを持って、ああ、これなら安心してといって消費につながっていくところにはならない、私はそう思います。

福田(昭)分科員 何か、きょうの質問、全部答えをいただいたような気がいたしますけれども。

 しかし、大臣、政府が政労使会議などを通して大企業の皆さんに賃上げとか設備投資を要請いたしておりますけれども、私はそれだけでは足りないんだと思っています。それはどうしてかというと、経済の再生と財政の健全化をするためには二つの前提条件があると私は思っているんですね。その一つが雇用形態の是正だと思うんです。もう一つは不公平税制の是正です。この二つをちゃんとやらない限りは、経済も財政も絶対よくなりません。

 まず、その雇用形態の是正ですけれども、昨年政府は、労働者派遣法を改悪して、もしかすると派遣労働者として生涯勤めなくちゃならないような法律の改悪をいたしました。

 御案内のとおり、今や、雇用労働者の約四割を超える人たち、二千万人は非正規雇用労働者です。年収二百万以下の労働者をたくさんつくってしまうと、当然、所得税もそんなに納められない。あるいは、年金保険料、医療保険料、四十歳からですけれども介護保険料も、これもそれほどの額は納められない。ましてや可処分所得はほとんど残らないわけですから、個人消費を拡大するというわけにもいかない。やはりこうした非正規雇用者をふやしたのではだめだと思うんですね。やはり、普通のまともな給料をもらえる正規雇用者をふやして、中間所得層をそれこそ最大化するということが、実は、経済を活性化させ、そして財政も健全化させる、私はそういうことにつながっていくと思っているんですね。

 ですから、そういう意味では、雇用形態、働き方を、やはり非正規雇用はできるだけ廃止、縮小する。それこそ、今までのように、専門二十六業務だけは、それぞれ価値の高い労働ですから、それなりの報酬をいただけますから、それ以外はできるだけ廃止、縮小する。それこそ、非正規雇用労働者を景気の調整弁に使うなどという経営はやめさせるということが日本の経済と財政を健全化させる、そういうふうにつながっていくと私は思うんですが、いかがですか。

麻生国務大臣 今言われました中で、少なくともこれまでのところ、国民のいわゆる賃金というかそういったものの全体であります総雇用者所得というのは、名目、実質ともに増加しておりますのはもう御存じのとおりなんだと思いますし、雇用の所得環境というのはそれなりに改善はしていっていると思います。

 御指摘の非正規雇用の回復の点ですけれども、これは、高齢者の再雇用というものも、各企業、人手が足りないせいもあって結構積極的にやられましたし、女性の労働参加というものもありましたので、景気の回復に伴って、まずは、企業はそろそろと、正規ではなくて非正規で雇用をふやしていくというところから増加していっているんだと思いますのが一点。

 同時に、働き方が随分多様化してきている。インターネットとかいろいろなせいもありますけれども、そういったものもあるんだと思いますが、今、結果として、不本意ではあるけれども正規の雇用にならない、不本意ながら非正規でいるという方は、この八四半期連続して低下をしておりますので、そういった意味で、今、実質一五%から一六%ぐらいというところになっているんだと思っております。

 結果として、二〇一五年、昨年では、正規雇用の労働者数が約八年ぶりに増加をしておるなどで、先生の指摘した数字とは少し違っていると思っております。

 さらに、現在、非正規雇用労働者の待遇改善というものを含めた働き方につきまして一億総活躍国民会議で議論をされているところだと思いますけれども、その成果を盛り込んだニッポン一億総活躍プランというのも近々取りまとめられるものと思っております。

 いずれにいたしましても、中産階級とか中間クラスの所得というものをきちっと育てておかないと、金持ちと貧しいだけということになりますと、二極化というのが極端なことになってくると非常に問題になるんだと思いますので、そういった点については引き続き丁寧な対応をしていかねばならぬと思っております。

福田(昭)分科員 やはり非正規雇用者がどんどんふえるような状態では経済はよくならないのが一つだと思いますし、それから、不公平税制も、税の基本は、これは釈迦に説法ですけれども、担税力のある人、担税力のある企業から応分の負担をいただく、しかも所得と資産と消費からバランスよくいただくというのが税の基本だと思います。

 しかし、平成元年に消費税を導入して以来、所得税については、当時、十五段階、そして課税上限額が八千万超、七〇%というものを、五段階、六段階に引き下げてきた。しかも、課税上限額は一千八百万超、税率四〇%という大幅な引き下げをやってきました。それは、新自由主義の考え方、市場原理主義の考え方で、頑張った人が報われるのは当たり前だから同じにしろということで、累進性をフラット化してきたわけです。

 それが、二十七年度は、四千万超でしたか、四五%というのが入りましたけれども、しかし、こうした所得税の累進性は、やはりまたもとに戻さないとだめだ。私も七〇%という税率はさすがに高いと思いますので、そこまでは行かないにしても、例えば、一千八百万超に、三千万、五千万、七千万、一億と、最近は一億まで取る経営者もおりますから、一億超を課税上限額として、その税率五〇%が高いかどうか。住民税一〇%を合わせて六〇%ですね。課税所得一億であれば、毎年四千万手元に残るという話なんですが、これが高いか安いか、頑張った人に対する報酬として高いか安いかという議論をして、所得税についてしっかり累進性を確保するということが、やはり日本の経済と、さらには財政の健全化をすることにつながっていく、こう思っているんですね。

 ちょっと麻生大臣の答弁が長いものですから、質問を先に行きますけれども、そうすると、やはり雇用形態の不公平と、さらに税制の不公平、この二つをしっかり是正するということが前提でないと、日本の経済と財政はよくならないと思うんですよね。

 例えばでありますが、日本の富裕層と大企業が一%だったとします。一%の富裕層と大企業だけでは経済の再生と財政の健全化はできないと思うんです。確率の理論に大数の原則というのがありますけれども、まさに、そういった意味では、より多くの中間層がたくさん最大化をして、そしてその人たちに、それから中小企業にも頑張ってもらって税金も納めていただく、社会保険料も納めていただく、そういう体制をつくらないと、かつて一億総中流時代という時代がありましたけれども、そういう時代をもう一度つくらないと日本の経済も財政もよくならない、こう私は思っているんですけれども、いかがですか。ちょっと質問通告になかったかもしれません。

麻生国務大臣 基本的には、今、我々の周りを見ましても、中産階級というものが確立している国というのはどこですかと言われて、即答できる国はありませんですな、私の知っている範囲では。

 やはりアメリカの場合はさらに極端に開いてきていると思っておりますけれども、比較対照の問題だと思いますけれども、日本の場合は、その点がかなり、極端な差がなく、アメリカみたいなものでもなく、ヨーロッパみたいなものでもなくて、随分その点は、先進国の中では中産階級の力がまだまだありますし、また、中小企業につきましても、韓国みたいに、大企業かそれ以外かというような感じで、大企業だけで全GDPの六割ぐらい持っているというような極端なことでもありませんし、そういった意味では、日本の場合は、中産階級また中小企業というものはそれなりの存在感を持っているところだと思っていますが、今おっしゃるように、かつてに比べてそこらのところが随分なくなってきたのではないかという御意見は、間違いなく正しいんだと思います。

 例えば、相続税の話にしても所得税の話にしても、このたびの税制で変えておりますので、そういったところを少しずつ変えていかねばならぬところだと思っております。どの程度がいいのかというところは、これはなかなか意見の分かれるところだとは存じますけれども、今言った段階で、少し是正の方向に動きつつあるという状況にあるんだと思っております。

福田(昭)分科員 今のままでいきますと、日本は確実にアメリカを追っかけているわけです、基本的に。だから、そこをやはりしっかり是正してやっていかないと日本の経済と財政の再建というのができないんじゃないかなと思っています。

 そこで、経済の活性化と税収の確保策についてということで、ちょっと御提案をしてみたいと思います。

 一つ目ですけれども、平成二十七、二十八年度税制改正に見る法人税率の引き下げと増減税同額についてであります。

 法人税率は下げましたけれども、しかし、法人税額そのものは実は同額で、引き下げていないんですね。ほぼ同額ということです。

 その見直しの中身を見ると、やはり受取配当金の不算入制度の是正だとかそんなことで、二十七年度も大きく四項目ほどあって、二十八年度も四項目ほどあります。しかし、それを見ると、二十七年度、二十八年度を見ても、例えば、繰り延べ欠損金の制限の強化だとか、あるいは法人事業税の外形標準課税の拡大、これを二十七年度にやって、二十八年度はそのさらなる拡大、見直しをやっているわけですね。そうすると、法人税率を下げて、しかし法人税額は同額だということで、課税ベースを拡大するという形でやっているんだと思いますが、しかし、税収は減らしたくないから、こういう言ってみれば小手先のことをやっているわけですよね。

 こういうことをやっていくと、例えばですけれども、法人税率を二五%にするといったときに、これ以上下げるということになったときに、では代替財源はどうやって確保するのか、ましてや、軽減税率一兆円をやって六千億穴があいちゃった、それをどうするのかというふうになったときに、どうやって税収を確保していくのかということが心配になってくるわけですね。

 そうした中で、二番目に、法人税の欠陥による税負担格差の是正による増収想定額の試算というのがあります。資料の一をちょっとごらんいただきたいと思いますが、これは、中央大学名誉教授の富岡幸雄先生がまとめた表であります。

 法人税等負担格差是正による増収想定額というんですね。ちょっと表を一つはしょっちゃったものですからわかりにくいかもしれませんが、実は、富岡教授が、資本金別に、一千万円以下とか資本金の階級別に、要するに法律どおりちゃんと負担をしているかどうか、実際にどれだけ負担しているかというのを計算してみたんですね。その表がこれなんです。その差額を、格差をちゃんと税金として納めてもらったらばどれだけの税金が入るかというのを、法人三税で、地方税二税も含めて試算をしてみたんですね。

 資本金別にやってみたら、ちょうど五億円以下、これが一番税率どおり税金を納めているんですよね。資本金一千万以下だともっと率が下がっていく。そして、五億円からさらに十億円、百億円となると、さらに下がっていっちゃう。こういうことで、一番山は五億円以下、資本金が少ない方も税率どおりは納めていない、それから大きい方も、十億、百億の方も納めていないというのがあって、それに基づいて試算してみると、何と、法人三税で五兆三千億からの税収がふえるよということなんです。そういう試算の表であります。

 それからその下は、今度は資料の二でありますが、せっかく国民の皆さんに消費税をお願いしても、平成元年から平成二十六年までの二十六年間ですけれども、累計で消費税収が二百八十二兆円ありました。しかし、法人税の減税は二百五十五兆円ありました。そうすると、差し引きしますと、税収としてはたった二十七兆円しか実はふえていないということなんですよ。

 ですから、本当に、消費税を福祉目的税としてお願いしてきた、特に、今回の消費税を五%から一〇%に上げるに当たっては、年金、医療、介護、子育ての四経費に充てるということでやってきましたけれども、今までどおりでいくと、せっかく消費税を上げても法人税の減税でほぼ全部消えてしまう、こういうことになっちゃうんですよね。これで本当にまともな税制改正なのか。

 さらに、これで、極端な話、法人税率をさらに下げていく。そうすると、その分は消費税で補うんだ、こういう形に実はなっちゃうんですよね。

 ですから、こういう税制改正というのは本当にまともな税制改正なのかということを考えると、先ほどもちょっと申し上げましたが、富岡先生のこの試算、これは参考にすべきだと思っている。

 簡潔に申し上げますと、富岡先生の理論は、課税ベースを拡大すれば、税率一本で、例えば課税ベースが六百だったとすると、掛ける三五%だと二百十の税金になる、しかし、租特だとかそういうのを全部やめて課税ベースをちゃんと千にすれば、例えば二五%であっても二百五十の税金が入る、単純にすると富岡理論はそういう理論なんですよね。ですから、法人税も、全ての特典はやめて単純に税率二五%にしても、実は法人三税の税額はふえるよ、こういう理論なんです。ぜひ財務省としてもそういうことを検討すべきじゃないかなというふうに思うんです。

 ちょっと早口でわかりにくかったかもしれませんが、財務大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

麻生国務大臣 まず最初に御指摘になりました法人三税の減収額二百五十五兆という数字は、これはいわゆる法人三税、法人事業税、法人住民税、そして法人事業税の平成元年度の税収と平成二十六年度までの税収の差額を積み上げられたものだと考えられますが、この同じ時期に実施されました制度改正によります法人税の減収額は合計七十兆だと思いますので、その意味では、差額の二百数十兆は、制度改正よりも景気要因などによるところの方がよほど大きいとまず考えております。

 それから、今提示された試算の中で、詳細を承知しているわけでありませんが、いわゆる租特や受取配当金の益金不算入制度といった制度を全て廃止すれば五兆円ですから、五兆円を超える財源が確保できるという話ではないかということだとお見受けしました。

 しかし、受取配当金の益金不算入制度というのを例に引きますと、これは子会社に課税される法人税と二重課税になりますからね、おわかりだと思いますけれども。二重課税を避けるための制度ですから、こうした制度を全て廃止するということはちょっと現実的ではないので、二重課税のきわみということになろうと思いますから、五兆円を超える財源というお話にはちょっと賛同いたしかねると存じます。

 また、他方で、財務省として、特定の企業に利用される各種の制度の影響によって課税ベースが狭くなっていた面があることはもう十分認識をいたしております。

 こうしたことを踏まえまして、今回の法人税の改革に当たりましては、今、福田先生からも御指摘のありましたように、欠損金の繰越控除制度の見直しとか、生産性向上設備投資促進税制を縮減する、廃止するといった租特の見直しなどをやって課税ベースの拡大を図っておるところでありまして、法人課税をより広く負担を分かち合う構造へ改革するということは必要なことだと思っております。

福田(昭)分科員 ぜひしっかり富岡先生の提案は検討すべきだと思うんです。なぜかというと、多分、これから手詰まりになると思います。法人税率をさらに引き下げるということになると、手詰まりになってしまうと思うんです。そういうことから考えると、やはり富岡先生も元国税庁の役人ですから、税制のことはよく知っている。もう九十歳、私の遺言だということで、「税金を納めない巨大企業」という本を書きました。そういう意味では、財務省の大先輩が書いた本です。ですから、これはぜひ参考にすべきだと私は思います。

 時間がなくなってきましたので、次に、アベノミクスの大胆な見直しについてちょっとお話をしてみたいと思います。

 旧三本の矢の評価もしないうちに、いつの間にか新三本の矢に移ってしまいました。しかし、私は、一昨年、分科会で麻生大臣と議論して、今すぐ日本の財政が破綻するような状態にはないということを確認いたしましたけれども、しかし、このまま放置しておけばいずれそういう時期もやってくるということを確認し合ったわけであります。

 そうした中で、やはりアベノミクスは大きな間違いをたくさんやっている。私は具体的に五つ挙げておりますけれども、今回は一つだけ申し上げたいと思います。

 我が国にとって金融緩和と財政出動の効果は大きく違うということを認識しないで、大胆な金融緩和、異次元の金融緩和に入ってしまった。ですから、御案内のとおり、日銀がいっぱいお金を出して、三百五十兆円から出しても、三分の二、二百五十兆円超が当座預金に眠っている。

 したがって、三分の一弱しか市場に出回っていないということで、今回、日銀総裁は、もうこれ以上当座預金に積ませないぞということでマイナス金利を導入したわけです。その影響というのは、これからさらに悪くなるのかよくなるのか、時間とともにはっきりしてくると思っておりますが、しかし、私は、決してよくならないというふうに思っております。

 そうした中で、政府の、安倍総理の経済政策ブレーンの内閣官房参与の本田悦朗氏が、日銀が始めたマイナス金利政策は決して奇策ではない、しかし、当面、中国経済の停滞が続くと見られ、それがマイナス金利政策の効果を打ち消し、日本経済に衝撃を与える可能性も否定できない、したがって、平成二十八年度の予算が成立したら、すぐに財政出動を伴う景気対策を考えるべきだ、こう言っているんですが、これはもうアベノミクスが失敗したという話じゃないですか。どうですか、大臣。

麻生国務大臣 私、本田さんという人をよく知らないので。お友達かもしれませんが、私、ちょっとこの方、よく存じ上げぬ方なので、失礼ですけれども、外務省におられたときに下におられたという以外、外務省を途中でやめているんですから、余り関係ない人なのかなと思わぬでもないんですが。

 私どもとしては、マイナス金利の話ですけれども、これは、量と質、量というのは大量の国債購入、質というのは、CPを含めましてREITとかいろいろなものの質を変えていく、そういったものにマイナス金利を加えたという意味で、いわゆる追加的な金融緩和というものが可能なスキーム、枠組みというのはつくったものなんだと思っているんですが、いずれにつきましても、こういったものが十分に議論をされてやられたものなんだと思っております。

 また、今、一部に弱さが見られるという話なんだと思いますけれども、正直申し上げて、海外のリスク回避の動きというのは非常に顕著なんだと思っておりますので、そういった意味では、我々としては、リスクというものは、国内の内容を幾らきちんとしても、海外要因によって与えられる影響というのは当然大きなものなのであって、それによって市場が変動するというところはよく見ておかなきゃいけないとは思いますけれども、日本経済自体が悪いかといえば、少なくとも経常利益が過去最高ということになっているのを見ましても、いろいろなところを見ましても、そういった意味ではファンダメンタルズはしっかりしていると思っております。

 そういった意味で、基本的には、今、需要を何とかとか、いろいろな話をされておられるそうですけれども、私どもとしては、今、予算というものをやっている最中ですから、この予算を、平成二十七年度の補正予算を確実に実施していく、平成二十八年度の予算を早く通過させて、現実問題として早くそれを執行していくというのがまず景気対策としては一番なんだと思っております。

 それから、金融の話と財政の話は違うという話は間違いありませんので、金融だけ伸ばせば景気がよくなると言った竹中平蔵なんて人、まだ生きておられると思いますけれども、こういった方々もおられたのは確かですけれども、それが当たらなかったことは事実ですから、はっきりしております。

福田(昭)分科員 済みません、時間がなくなりましたので、最後にまとめたいと思います。

 私が大変心配しておりますのは、昨年の正月でありましたけれども、世界的な大投資家のジム・ロジャーズがこう言っているんですね。過度な円安政策は間違いだ、自分の国の通貨をこんなに下げて繁栄した国はない、やがて安倍総理は日本を破壊した男として歴史にその名前を刻まれるだろう、こう言っているんですが、いよいよそれが近づいてくるかなということで、大変心配をいたしております。

 したがって、麻生大臣、アベノミクスを大臣が見直すことはできないかもしれませんが、見直さなければ、本当に日本の沈没がもしかするとということもあるので、せっかくこれだけ世界一の金持ちの国なんだから、ここはしっかりやる、それはやはり金融緩和じゃなくて財政出動でやった方がいいということは甘利大臣とずっと議論してきたんですが、甘利大臣は、残念ながら、財政規律があるからできないといってやりませんでした。

 しかし、金融緩和した三百五、六十兆円の三分の一の金、百兆円の金を五年間しっかり投入したら、今ごろ日本の経済は相当よくなっていると私は思っておりまして、そういう意味では非常に残念ですけれども、ぜひ、そういう意味では、日本の経済と財政を破綻させないように申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

菅原主査 これにて福田昭夫君の質疑は終了いたしました。

 次に、丸山穂高君。

丸山分科員 おおさか維新の会の丸山穂高でございます。

 麻生大臣また坂井副大臣、そして事務方の佐藤局長初め、連日、私との議論におつき合いいただきまして、ありがとうございます。あしたもあるんじゃないかという話もあるんですけれども、毎日余りにお顔を拝見するせいで、けさ、夢に大臣が出てこられまして、質疑を佐藤局長も一緒にさせていただいている状態の夢を見ました。

 それぐらい、きのうも、おとついも、きょうも財務金融委員会で質疑させていただいているということは、私としては、しっかり国民の代表として、疑問に思われていることが多い中でそれを伺っていく、そしてそれを明らかにしていくのが仕事だと思いますので、まだまだ長い時間あると思いますけれども、おつき合いいただきますよう、お願い申し上げます。

 前振りはこのあたりにしまして、きょうも税制の話をお伺いしていきたいんですが、きのうのお話の最後に少し時間がなくて切れてしまった、インボイスの導入によって、特に、現時点で免税事業者と言われる、免税されている小規模の事業者さんが窮地に陥ってしまうんじゃないか。

 具体的には、仕入れ税額控除の対象外ということになってしまって、取引がされないようになってしまう。特に、佐藤局長も、BツーCとかは大丈夫だけれども、BツーBの企業さんに対して非常に大きな影響があるということは御答弁もされているんですけれども、また、帰り際に少し麻生大臣ともお話しさせていただいて、この点、大臣も非常に問題意識をお感じになっているなというのは強く感じたんです。

 一方で、きのうの答弁でも、これまでの答弁でも、正直、役所側が問題意識を感じていながら、では、免税事業者の方々が窮地に陥るときに何ができるのかということに対して、具体的な言及がございません。あるのは、まず、時間がありますので、施行までの時間の間にしっかりとウオッチする、見ていって、事業者さんに何かしら起きないかどうかヒアリングをして、それで何かあったらそのときに考えるというような言いぶりに聞こえるんです。

 このあたり、今の状態からまず問題意識は感じていらっしゃるということで財務省さんとしてよろしいのかどうか。そして、それに対して、そう感じていらっしゃるのであれば、なぜ今から何かしら具体的な対策がとれないのか。そこについてお答えいただけますでしょうか。

    〔主査退席、小林(鷹)主査代理着席〕

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 昨日申し上げた答弁を繰り返すのもどうかと思いますけれども、一応考え方を整理させていただきます。

 御指摘のとおり、インボイスを導入いたしますと免税事業者が取引から排除されるんじゃないかという懸念があるというお話でございまして、それに対しまして、BツーBの要するに事業者間取引というような場合には影響が生じ得るというふうに想定できるでしょうけれども、例えばそうでない事業者それぞれの態様がございますので、いろいろな事情が生じるだろうというような認識でございます。

 その中で、事業者の実情に応じた対応を行っていただくということになりますので、まず基本的に、事業者自身がみずからの置かれた状況を踏まえまして課税事業者への転換の要否を判断するというようなことが出てくるんだろうと思っております。

 それで、制度的な対応ということがまず重要だと思っております。インボイスの導入ということにつきましても、三十三年四月からということで、四年間の期間を置いた形でまず準備期間を置いているということと、それから、インボイスが導入された後、六年間にわたりまして免税事業者からの仕入れについても一定の仕入れ税額控除を認めるということ。これは具体的な措置でございますので、まさに排除の問題というものが少なくとも六年間緩和するという状態で、一挙に排除されるということがないような手当てをしているということで、制度上の手当てとしては、そういう意味で、インボイスの導入の前と後ろにわたりましてとりあえず制度上の手当てということをさせていただいております。

 その上で、一方、事業者に過大な負担をしょっていただくわけにいかないということでございますので、まず、そういう制度の我々の考え方というのをしっかりと周知する必要がある、これが恐らく起こすべき最初のアクションだろうと思っております。

 それに伴いまして、各事業者がどのようなお悩みがあり、問題があるかということはいろいろな声も出てきましょうから、そういうことも含めて、さらに何がしかの対応が要るかどうか、こういうこともその声を聞きながら考えていく必要があるだろう。その趣旨は、今回の法案の附則にも盛り込むことによって、しっかりと検証していきなさいというふうに一応政府の義務として入れてございますので、しっかりと対応するつもりで今後やっていくということかと思います。

丸山分科員 おかしいですね、佐藤局長。夢の中ではもっと歯切れのいい御回答をいただいていたんですけれども。

 きのうの繰り返しをまずはおっしゃっていただいたという理解なんですけれども、その今の内容が私は問題だというのをお伺いしていまして、何かといいますと、これも少し先ほどの繰り返しになります。

 今のお話を要約させていただきますと、まず事業者自身がやってくれよというお話がありまして、その中で、価格への転嫁の対応も含めてそれは検討してくれというお話があったような気がします。そして、年数を置いているので、その意味で制度的な手当てをしている。その中で、もちろん最初は周知ということを事業者にして、その中で何かしら声が出てくるだろうということで、今じゃわからないので、その出てきた段階で対応するというのが今のお答えの趣旨だと思うんです。ただ、今の段階でも既に、BツーBの事業者さんに対して何かしら問題が起きるだろうというのはわかっていらっしゃるんですね。それはイエスかノーか。よろしいですか。

佐藤政府参考人 今申し上げましたように、特にBツーB取引のところに起こり得るであろうというふうには想定できるということでございますが、同じBツーBであっても、それぞれの事業者が、例えば納入先の事業者が簡易課税制度であるかどうかとか、いろいろ取引先の状況によっても変わります。したがいまして、たくさんいらっしゃいます免税事業者におきましても、一律にどういうことが起こるかという捉え方も非常に難しいところがございます。

 新しい制度でございますので、まず、そういう我々が想定し得る範囲の中で制度的手当てをしているということを評価いただいた上で、今後出てくる問題については、きちっと取り込みながら必要な対応を行っていくことが必要であろうというふうに思っております。

丸山分科員 お話ししているのは対症療法的にやられるということだと思うんですけれども、問題は、役所は別に潰れるわけじゃないので、対症療法的にやるというのは、問題なくやるためには一番いいのかもしれません。

 しかし、現に、今のお話を事業者さんが聞いたら、じゃあ俺らが潰れてから考えるのか、潰れるまでやってくれないのかと。でも、問題意識は、今のお話で、潰れる可能性がある、問題が生じる可能性があるというふうな理解でいらっしゃるのにもかかわらず、予防対処、予防をしないで、そのための何か手を打たずに、起こってからやりますよというのは余りに、事業者さんからしたら、どういうことやねんと。

 しかも、それは制度で、何か景気のあれがあって潰れるとか事業者自体が悪くて潰れるというか、制度が変わることで窮地に陥るわけですから、それに対して何かしらの予防策が打たれるのが通常の考え方だと思うんですけれども、きのう大臣とも、余りに役所が民間的思考ではなくて役所的思考なんじゃないかなと少し雑談ベースで話させていただいて、今聞いてすごくそれを思い出したんです。

 現に、問題意識として、いろいろな事態事態がある、事業者さんによって状況が違うというのはおっしゃるとおりです。しかし、ある程度分類なりカテゴライズなり、もしくはこういう事態が起こり得るだろうというのは容易に想像できると思うんです。先ほど来申し上げているように、具体的には免税事業者さんが事業者間取引から排除されるという事態は容易に想像できると思うんですけれども、そんな想像の、ある程度こういうのがある、こういうのがあるというのも挙げられないという理解なんですか。

佐藤政府参考人 類型化すると、例えばBツーB取引とBツーC取引、大きく分けて二つあった場合に、例えば買い手が、BツーC取引であれば、免税業者から買っても別に消費者は不利益はございませんので、排除という問題は非常に起こりにくいであろう。BツーBになりますと、その可能性はないわけではない。しかし、例えば売り手の側が簡易課税制度を持っているかどうか。そうすると、簡易課税制度であれば別にインボイスがなくても仕入れ税額計算できるということもありますので、その辺がどういうことになるかというふうな、さまざまなことは想定ができるんだろうと思っています。

 ただ、非常に事業態様が広いし幅がありますので、類型化しても、それが本当の正しい類型かというのもなかなか見きわめることが難しいというのが実際でございますので、その点を御理解賜りたいと思っております。

 それから、インボイス制度の導入でございますけれども、それを二十九年四月からいきなりということではなくて、三十三年四月からということで準備期間を置いているということは、事業者の方も準備するということもございますけれども、政策対応についてもその間にできる限りのことをやっていくということも十分あるわけでございます。

 ですから、我々、今想定できる範囲でそういうふうな制度を置いたりとかいうことにしておりますので、追加的に何かあれば、できるように対応していくということでございます。

 いずれにしても、制度の内容を、例えば今申し上げたように免税事業者がみんな困るというようなことでもないということも含めまして、ちゃんとした実態把握あるいは理解を進めていくことから物事が始まっていくのかなというふうに思っております。

丸山分科員 ちょっとだけ前進したような答弁だったような気がしますけれども、政府の側もこの期間内に追加的にやっていくことはやっていくという御答弁がございました。

 そういった意味で、この期間にまず周知をして、悠長にやっている場合ではないと私は思います。

 そういった中で、きちんと、優秀な財務省の皆さんですから、できればある程度想像できる部分はどんどんやっていただいて、そして、もう既に起こってしまったのでは遅いので、可能性があるのであれば、予防策も含めて具体的にこの期間内に先手先手を打っていただけるという理解でよろしいのか、御答弁いただけますか。

佐藤政府参考人 その精神でやりたいと思います。

丸山分科員 ありがとうございます。

 ぜひしっかりとやっていただきたいと思います。一事業者でもこの制度が変わることで潰れてしまうということが少なくなるように、財務省の方も考えていただきたいと思います。

 大臣、お伺いいただいて、どのようにお感じになりますか。

麻生国務大臣 先ほど、先生が入ってこられる前、濱村先生という方の資料に出ていましたので、これを一回、役人が考えたのと違って、公明党の人の考える、あの方は多分民間の経験者であるのだと思いますけれども、あの方の資料の話は物すごくわかりやすく書いてありましたので、役人もこれぐらいうまく書けといって話をしたんです。この話は先生の話とは全然違う見解が出ていますので、参考になると思います。

 いずれにしても、今、初めてのことをやりますので、我々としては、その間いろいろな問題が出てくるんだと思っておりますので、そういったような問題は今この段階で霞が関でそれを想像できるかといえば、商売をした経験がない者がほとんどですから無理ですよ。通産省でも無理だと思うけれども、通産省はやれると言っているから、本当におまえらやれるのかよ、私はそう思っていますよ、おなかの中で。面と向かっても言いますけれども。

 実際そうやれると言ったからここまで来たんですから、そういった意味ではやってもらおうと思っていますが、現実、スタートさせて、一年か二年かやってみて、その上で、ああ、こういう問題、ああいう問題と、多分我々が想像している問題とは違った問題が出てくる。我々が思っているよりもっと違う問題が出てくる。

 例えば、先生はよく御存じでしょうけれども、税金が発生するというのは、幾ら発生すると思っているんですかと言うと、みんな、純益が八百万以下の人は税率が違うんだということすら知っている人はいませんものね、全然。びっくりするぐらい知らない。全然違いますよ、それは。パーセントの比率が納税業者の企業と八百万以下の企業では全然違うんですよと話したら、ああ、そんなものなんですかと言う。周知徹底という意味からいったら、今まで払っていない方に関してはまずそこから始めないかぬという話ですから、少々時間がかかるんだと思います。

 いずれにしても、先ほど佐藤の方から答弁いたしておりましたように、いろいろな面に関して柔軟に対応するという話をしておりましたので、現場でいよいよ始まったときにそれに柔軟に対応していかねばならぬと思っております。

丸山分科員 大臣からもお言葉がありましたので、しっかりやっていただきたいと思います。

 次に、軽減税率の話をしていますとやたら出てくる痛税感という言葉がございまして、余り今まで痛税感というのは、もちろん出てくるときもありますが、ここまで痛税感という言葉が出てきた国会はないかなというふうに思うんです。

 この痛税感の緩和という意味で、常々思っているところが一つありまして、これは財務金融委員会で聞けなかったので予算分科会で伺いたいんですけれども、いわゆる外税、内税の表示方法についてなんです。

 以前のこの議論のときに、表示によって価格が高く見えるというのは、人間の心理として、数字の見え方というのはもちろんあると思います。そうした中で、今回、二十九年に消費税が一〇%に上がる、その後、三十年の四月ですか、特例措置がなくなりますので、表示方法が、外税つまり消費税を外に出してよかったのが内税になるタイミングがございます。実際の税額上昇分以上にこれもまた、次のタイミングでかなり、痛税感という意味では、痛税ではないんですけれども、でも税ですね、消費者の方にとっては、あれ、また上がるのみたいなイメージにすごくつながりやすい、景気に与える影響は非常に大きいんじゃないかなと感じているところなんです。

 このあたり、財務省として、この延期というのは重ねてあり得るのかな、外税としてしばらくやってもいいよというのもあり得るかなというふうに思うんですけれども、どのように考えていますか。

坂井副大臣 財金の委員会でもこの観点からの質問は今までなかったかなと思って聞いておりましたけれども、消費税の総額表示義務、要は内税表示でございますが、これは、消費者の利便性に配慮して、消費税額を含めて幾ら払うのかということが一目でわかるようにするための制度であります。

 一方で、消費税率引き上げに当たって、転嫁対策の一環として、転嫁対策特別措置法に基づいて、消費税率引き上げ前後の期間、具体的には平成三十年の九月末までということでございますが、それまでに限って、今申し上げた総額表示義務、いわば内税を表示する形での義務が免除されているところでございます。

 これは、先ほど転嫁対策と申し上げましたけれども、要は、幾ら商品の価格があって、消費税が幾らかかっているかということをはっきりさせることによって、いわば全体の金額が上がっても商品の金額が上がっていないぞということをはっきり示すこともあろうかと思いますが、こういった状況でございます。

 期限到来後でございますが、基本的には事業者に総額の表示を求めることが適当であると考えておりますが、これは、事業者の価格転嫁の状況等のさまざま調査をしたりヒアリングを行って、今後検討を行っていく必要があろうかと考えております。

 なお、総額表示、内税表示というものと、税別価格表示、外税での表示というものは、価格表示は変わり得るものの、実際の消費税の負担額も支払い総額も一応変わるわけではないということであって、要は、内税表示の方が上がったなと思う方もいれば、外税表示の方が大変だと思う方もいるのではないかなというような状況ではなかろうかと思っております。

丸山分科員 副大臣、つまり調査をして、そして検討する可能性もあるということでよろしいでしょうか。

坂井副大臣 実際の状況を踏まえて検討を行っていく必要があるということは認識をしております。

丸山分科員 ありがとうございます。

 状況を見ないといけないと思いますし、景気の状況も、もちろん全体もありますし、消費者の動向というのもあると思いますので、しっかり調査をしていただきたいと思うんです。

 済みません。これは通告で数字を言っていないので、なければいいんですけれども、ちなみに、現時点でどれぐらいの割合が外税を使って、どれぐらいが内税を使っているかみたいなものは財務省さんは把握されているんでしょうか。事務方で構いません。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 そういう数字はちょっと持ち合わせておりません。

丸山分科員 調査もされていないということでよろしいですか。今持っていないということですか。

佐藤政府参考人 手元にない状態です。

 調査をしているかどうかはちょっと確認をしないといけませんので、改めて先生には御報告したいと思います。

丸山分科員 済みません。これはもちろん通告がなかったので、そのお答えでも仕方ないと思います。

 しっかり調査いただいた方がいいなというのはやはり思いますし、今、局長も大きくうなずいていらっしゃいます。消費税の議論を今していますけれども、次のタイミングで必ずこれは出てきますし、そのときの景気状況やもしくは消費者の皆さんの動向を見たときにこの外税、内税の問題という議論は出てきますので、今のうちからしっかり調査も含めてやっていただくことは大事だと思いますので、よろしくお願いします。これは余り財務委員会の方で聞けなかったので、この分科会の機会を利用させていただいて伺いました。

 もう少し時間がありますので、次の質問をさせていただきたいと思います。

 所得税法の方がなかなか重たくて、東日本の復興のための特例公債法のお話が余りできないんですけれども、その方から少しお伺いしていきたいと思います。

 復興に関しての財源をどう充てていくかという点で、復興財源確保法で、JT株、たばこの株と東京メトロ、地下鉄の株式の売却収入や国有財産の処分によってできた収入、税外収入ですね、これを復興財源に充てるというふうに規定されています。しかし、JT株は売却が進んでいるというふうに確認していますけれども、東京メトロ株の方が全然進んでいないんじゃないかなというふうに思うんです。

 まず、この売却の現状はどうなっているか、確認できますでしょうか。

迫田政府参考人 お答えをいたします。

 東京メトロ株式は国と東京都が保有をしておるわけでございますけれども、東京地下鉄株式会社法によりまして、国それから東京都はできる限り速やかに売却をするというふうに定められております。また、重ねまして、復興財源確保法におきまして、平成三十四年度までに生じた国の東京メトロ株式売却収入は復興財源に充てるというふうにされているわけでございます。

 それで、国の保有しております東京メトロ株式の売却に当たって、一つは、民営化して経営を効率化するという趣旨がまずこの議論の出発点でございますので、そういうことを踏まえますと、国とともにこの会社の株式を保有しております東京都が同時に売却をするということが重要であろうと思っております。

 そこで、現状でございますけれども、東京メトロの主務官庁でございます国土交通省が東京都に対しまして株式売却に向けた働きかけを行っているなど、幅広い観点からの調整が行われているものと承知をしておりまして、いずれにしても、財務省としては、国土交通省と東京都の間で早期売却に向けての調整を進めていただくことが必要であろうというふうに考えておるわけでございます。

丸山分科員 迫田局長、今のお話を要約しますと、国交省と東京都がもたもたしているから、財務省としてはそれをつついていくということなんでしょうか。つまり、今の話では全く進んでいないというのは事実で、それはどうして進んでいないと言えるのかというのを、局長、お答えいただけますか。

迫田政府参考人 国が持っている株式を売却するにはそれなりの環境整備が必要なわけでございまして、この場合、特に東京都も半分近くの株を持っておりますので、そこの帰趨ということになるわけでございます。

 一つ申し上げておきますと、去年の十月でございますけれども、当時の太田国交大臣が閣議後の記者会見で、これまでも東京都に対しまして早期の株式売却に向けた働きかけを行ってきたところでありますが、引き続いて東京都との調整を図っていきたいと考えておりますというふうにおっしゃっております。

 実は、同日、舛添東京都知事の定例の会見がございまして、その席では舛添知事の方から、二〇二〇年を前にして、東京メトロを含めて、地下鉄全体のサービスを向上させる必要がある、そこに全力を挙げるべきであるというようなコメントもしておられるわけでございます。

 いずれにいたしましても、まず、主務官庁の国土交通省と、今申し上げたような考えをお持ちの東京都できちっとやっていただきませんといけないのではないかと思っております。

 その意味は二つございまして、一点目は、まず議論は行革の話としてスタートしておりまして、特殊法人改革ということで、国も東京都も早く売却をしろということになっているわけでございます。それが、例えば国だけが売っていわゆる半官半民みたいなものになったときに、その行革の趣旨が徹底をされるのかという点が一つございます。

 もう一つは、実際に売る場合に、東京都は持ち続けるというふうな中で、市場における投資家目線がどういう評価をするかというのがあるんだろうと思っております。

 私どもとしては、国民共有の貴重な財産でございますので、売り出しのときには適正な価格で評価をしていただくということが極めて大事になるわけでございますけれども、法律上は半官半民ではなくてきちっと民営化しますというたてつけの中で、東京都が引き続き保有し続ける、そういう会社の株というものが投資家目線としてどういう評価をされるのかというところは私どもとしては非常に気になるところでございまして、法律の趣旨からしても、それから正しく適正な価格で評価をしていただくためにも、やはり国と東京都がともに売却を行うことがまずは非常に大事なことであろうというふうに考えているわけでございます。

丸山分科員 丁寧にお答えいただいた感じはするんですが、内容を要約すると、東京都が前になかなか進まない、一緒にやらなきゃ意味がないというお答えだったんです。

 何を伺いたいか。スケジュール感が今のお話の中に唯一あったのは、東京都の舛添知事が二〇二〇年を目途にいろいろ考えなきゃいけないと言うぐらいしかスケジュール感が出ていないんですけれども、今、財務省として、法で決められているこの売却をどのようなスケジュール感で考えられているのか、その御答弁をいただけますか。

迫田政府参考人 国の持っております株式の売り出しの衝に当たる我々は実はいろいろな課題を抱えておりまして、先日も財務金融委員会での御質問がありましたけれども、日本郵政の株も、これも復興財源に当たるわけでございますけれども、去年の十一月から十二月にかけて一・四兆円のみ確保しているわけでございまして、これも三十四年度までに四兆円程度を確保するというのが一応のフレームになっておりますので、では日本郵政の株はどうするんだというお話とか、あるいは東京メトロをどうするんだというお話があります。

 一方、委員御案内のとおり、民間でもいろいろな大型のIPO案件というのが出てくるわけでありまして、その辺のスケジュールを全体としてどういうふうに見ていくかということについて言いますと、なかなか定めがたいところがあるわけでございます。

 要は、東京メトロの株について言いますと、そういう具体的なスケジュールに入る前の段階で、今いろいろと調整が国交省を中心に進められておりますので、その状況も見て、そして全体状況も考え合わせながらスケジュールを置いていく、こういう手順になろうかと思っております。

 ちなみに、私ども、国交省に全てお願いをしているというわけでも必ずしもなくて、国土交通省とはよく連携をとらせていただきながら、環境整備ということに向けて尽力をしておるということはつけ加えさせていただきたいと思います。

丸山分科員 必ずしもスケジュールは決まっていないと言っていただくのにかなりお時間をとられ、さすがだなと思ったんですけれども。今のは皮肉ではないんです、済みません。素直に思ったんです。

 逆に、スケジュール感が決まっていない中で、東京都の知事が二〇二〇年の東京オリンピックに言及されているわけですね。これは、財務省としても一つのタームポイントだとお考えになっていますか。

迫田政府参考人 先ほど御紹介をしました舛添知事の定例会見を直接私は聞いておりませんので、流れを後で字面で見ておるわけでございますけれども、東京オリンピックを前に交通体系をいろいろと考えなくちゃいけないんだ、どうもそういう御趣旨のようでございまして、その二〇二〇年というのが具体的なメトロ株の売却ということのスケジュールとリンクさせた形で御発言されているかというと、これはややわかりにくいところがあります。

 ただ、いずれにしても、原点に返りますと、法律のスタートラインはなるべく早くということでありますし、国と東京都がともにということでございますし、ましてや、委員御指摘のとおり復興財源にかかわるものでございますので、いずれにしても、売却が現実のものとなって進むように、まずは環境整備をきちっとやっていきたいというふうに考えておるわけでございます。

丸山分科員 質疑時間の終了が来ましたので、またの機会に譲りまして、私の質問を終わりにします。ありがとうございました。

小林(鷹)主査代理 これにて丸山穂高君の質疑は終了いたしました。

 次に、足立康史君。

足立分科員 おおさか維新の会の足立康史でございます。

 正確にいただいている時間を十分理解していなかったものですから、通告をさせていただいているのが一つのテーマだけになっております。そういう意味では、時間にある程度余裕がありますので、じっくりいろいろ御指導をいただきたいと思っています。

 基本的には財務大臣にお願いしているわけですが、若干煩雑な議論になるかもしれませんので、特段何か申し上げない限りは事務方でおっしゃっていただいて、大臣、また大所高所から御指導いただけたらありがたい、こう思っています。

 きょう私が取り上げさせていただきたいのは、きょうは分科会を三つ担当していまして、ちょっと資料を用意する間もなかったんですが、取り上げさせていただきたいテーマは、何度か予算委員会でも取り上げましたが、例えば、今月の二十二日に、民主・維新クラブというんですか、の井坂委員が、免税事業者から仕入れを行った企業が、免税事業者の分の消費税も負担することになって利益が減るというような現象というか仕組みを取り上げて、そういうことがもしあるのであれば、結局、当該企業は免税事業者からの仕入れを避けるようになるのではないかと。それは、本来、税制というのは中立であるべきところが、仕入れする者が仕入れ先を選ぶときに免税事業者から課税事業者にシフトする、そういうふうにマーケットをゆがめるんじゃないかという指摘がありました。

 その指摘は多分そうだと思うんですが、まず、そうだということでよろしいですか。どなたでも結構です。

    〔小林(鷹)主査代理退席、主査着席〕

麻生国務大臣 これは、足立先生、いろいろなケースが起きてくると思っています。先生がおられなかったときに、これは公明党の人の出した資料なんですけれども、あちらの説明は、さすが役人じゃないだけあって、地場産の業者の実態を結構よう知ってはりますなという感じで、私ら商売を知った方から言わせていただくと、よう書けていると思いましたので、役人には、こういうわかりやすい資料をつくれという話をしたので、ちょっと後で先生に聞いていただくのも一つの方法かと思います。

 いずれにしても、私どもとしては、まずは、複数税率というのを導入するということをやります以上は、いわゆる適格請求書等保存方式、通称インボイス方式というものを導入する必要、これは避けられぬなと思っております。

 他方、御指摘のように、この方式を導入しますと、免税事業者からの仕入れにつきましては仕入れ税額控除ができないということになるために、免税事業者が取引業者から排除されるのではないかという御懸念、またあるいは課税選択というものを余儀なくされて、結果として、適格請求書等の発行とか、また税額計算などなど、多大な事務負担を負わされることになるのではないかということを懸念する声が上がっているということだと思います。これも我々は十分承知をいたしております。

 ただ、同時に、この方式を導入される事業者への影響というのは、先ほど冒頭に申し上げましたように、えらいさまざまでありまして、例えば、納入業者が簡易課税を適用しておられるというようなケースの場合には、納入先の事業者にとりましては適格請求書を必要としないことから、免税事業者が取引から排除されるということにはならぬと思っております。

 また、免税事業者が課税選択を行う場合でも、簡易課税の利用ということによりまして事務負担を軽減するということになるんだと思いますが、少なくとも、みなしで仕入れをするということもありますので、みなしですと、業種によって違いますけれども、卸売だったら大体九〇%ぐらいはみなしということになりますし、不動産だったら四〇%とか、業種によって違うんですけれども、そういったことで、事務負担を軽減することも十分に可能だと思っております。

 さらに、請求書というものをやらされる場合には、税額というものが極めて明確になります。したがって、価格転嫁がしやすいということにもなるんだと、私ども、そういう指摘を、これはある地元の業者から聞いたんですけれども、やりやすくなるわいと言われたので、ああ、なるほどなと思ったんです。

 いずれにしても、取引から排除されるのではないかという御懸念があることは確かですから、免税業者に、こうした事情というものを必ずしも御理解いただいていないところもいっぱいありますので、私どもとしては、こういったことを丁寧にやっていく必要があるんだと思っております。

足立分科員 大臣みずから、ありがとうございます。

 このテーマのそれなりの重要性を大臣も御認識いただいての御答弁だと思いますし、おっしゃっておられることは私もわかります。ただ、もう少しこれは深めていきたいと思うんです。

 簡易課税の話は今大臣からおっしゃったとおりだと思いますが、それはちょっとおいておいて。これは事務方からで結構ですが、従来、免税事業者というのは大体何者あるのか、まずそれだけ。

井上(裕)政府参考人 お答え申し上げます。

 免税事業者の数でございますけれども、全事業者が約八百万の事業者というふうに承知しておりますけれども、うち、課税事業者が約三百万事業者でございまして、免税事業者の方は約五百万事業者、これは国勢調査からの推計でございますけれども、約五百万と承知しております。

足立分科員 ありがとうございます。

 八百万、三百万、五百万と。これはそういうことだと思いますし、免税事業者についてはその大宗が個人事業者であるということでもありますので、いわゆる経済規模として取り上げている議論が大変な議論だと喧伝することは、またそれはそれで間違いだと思いますが、我々はどうしても、永田町、霞が関にいると、そういうふうにマクロで捉えて、当該事業者は無視できるぐらい小さいというような議論も一部にあるかもしれませんが、その事業者にとっては結構深刻なテーマでありますので、これはマクロでこれぐらいのマグニチュードがあるということを十分承知した上で、その上で個別のミクロの状況にもしっかりと対応していく丁寧なハンドリングが必要であると私は思っております。

 そうした観点から申し上げれば、免税事業者は五百万者。個人事業主もいますから、会社だけではありません。その五百万者のうち幾らかはBツーBではない。先ほどの濱村委員の資料でもそれは整理されておられるようですが、私も全くそういう整理は大事だと思います。

 要すれば、免税事業者がどこに納入するか。それがBであれば、ビジネスであれば、その当該納入先が仕入れ税額控除ができるかどうかということが大事になるが、その先が、納入先がコンシューマーであれば、それは仕入れ税額控除の問題は問題にならないわけでありますから、全くこれはこの問題の対象ではない。これは、御指摘というか、濱村委員も恐らくおっしゃった。後でまた勉強をさせていただきたいと思いますが、それはそうだと思います。

 それから、それ以外のところで、では、インボイスを起こして課税事業者になるよという方もいらっしゃるでしょう。それはそれで御判断だと思います。また、納入先から、このままだと仕入れ税額控除ができなくて困るよ、だから、ちょっとあなたが課税事業者になりなさいというようなプレッシャーがある程度働くかもしれません。働いても、いやいや、俺はとにかく免税事業者だから、もう切るなら切ってくれといって踏ん張る事業者もいるかもしれません。そういうふうにいろいろある。

 大きく言うと、従来、五百万者の免税事業者の中には、コンシューマー向けのグループもあるでしょう、それから踏ん張る人もいるでしょう、あるいは課税事業者に移っていく免税事業者もいるでしょう。

 さらに言うと、これはまたきょうの夜、夜というか最後のパーツで農水大臣にも別途この議論をさせていただきたいと思うので、やりますが、加えて、農産物の流通等の形に配慮して、そういう無条件販売委託みたいなことをする。農協みたいなものですね。農協みたいなところを介してBツーBで取引をするようなケースは、仕入れ税額控除ができるように措置がされているということであります。

 今、私が、ざっと素人ながら整理をさせていただきました。こういうような、コンセプトとしては大体これぐらいのバリエーションがあるという私の理解は正しいでしょうか。もし、聞かれて、いや、それは根本的に間違っているよとか、あるいは、整理学としては大事な、マグニチュードが大きい、こういう議論が抜けているよというようなことがあれば、ちょっと教えてください。

井上(裕)政府参考人 お答え申し上げます。

 先生おっしゃいましたとおり、全体、五百万事業者の方でございますけれども、それぞれ、さまざまな状況でございます。

 一つは、まさに先生おっしゃいましたように、事業者間取引を主にされている方なのか、あるいは対消費者の取引をされておられる方なのかということであります。

 これは、納税義務がない消費者の方であれば、免税事業者の方から購入しても特段の影響がないわけでございますので、その方々は関係ありませんというのは、まさにおっしゃるとおりであります。

 加えまして、取引相手の方、BツーBの方でありましても、取引相手の方が例えば大手企業なのか、取引相手の方そのものが免税事業者だったり、課税事業者のような中小事業者の方であれば、相手方も免税ですし、ないしは相手方も仕入れはそもそもみなし仕入れ率の計算をされますので、そういった方の場合は影響がないということだと思います。

 最後に、課税事業者の選択をされるというケースも、まさに先生おっしゃいましたけれども、そういったケースもあろうかと思います。それも、課税事業者となるための必要な記帳等の準備がどの程度整うのかというようなことによってもさまざまだと思いますので、一概に分けることは難しいですけれども、今申し上げたとおりでありまして、まさに先生御指摘のとおりだと考えております。

足立分科員 ありがとうございます。

 したがって、私も、分科会で余り言うと怒られるんだけれども、民主党さんが予算委員会で何か鬼の首をとったかのようにこの話を取り上げて、軽減税率に伴ってインボイスを導入すること自体が大変なことなんだと喧伝することには反対です。だから、私は濱村委員と同じ立場であります。そういうことで、まさに重箱の隅だと思います。思いますが、まさにこれがどれだけのマグニチュードのある議論なのかということは、政府がちゃんと説明をしていく必要があると思うわけであります。

 そこで質問ですが、では、今御一緒に整理をしていただいた、幾らかあるわけですが、免税事業者五百万者は、それぞれ、大体、どこにどれぐらいの事業者が。

 五百万というのはでかいですからね。五百万、でかいでしょう。八百万事業者、これを、個人事業者も入れて八百万のうち五百万と言うのもまたミスリードであることは十分に承知をした上で、この免税事業者五百万というのは、大体どれぐらいがBツーCで、どれぐらいが、今御説明あったところでいうと、免税事業者に仕入れているのか。あるいは、どれぐらいが特例と、特例とは言わないのかな、農産物等を想定している、何かややこしいんですが、競り売りまたは入札の方法により行われるものその他の媒介または取り次ぎに係る業務を行う者を介して行うものである場合などなどについてに該当するのかとか。

 これは、農業の分野は農林大臣に聞きますが、このマグニチュードについてどういう御見識を政府はお持ちか、ちょっと御紹介を。

井上(裕)政府参考人 済みません、突然のお尋ねなので、細かく申し上げることはあれですけれども。

 五百万者のうち、まず、先ほど先生おっしゃっておられました、個人か法人かという意味でいいますと、大体個人事業者が四百三十万事業者ぐらい、残りが法人の事業者の方、これが免税の事業者の内訳だと考えております。

 それから、先ほどお話がありました、どれだけの方が対消費者の取引かというのは、全体の取引の総額とかいうとまた別ですけれども、個々人の事業者がどれだけBツーCでどれだけBツーBになっているかというところに関しましては、済みません、詳細なデータを持っておりませんので、その点に関しては、マグニチュードという意味では確たることを申し上げることはできないわけですけれども。

 ちなみに、私、業種別の数字は今手元に持ってございまして、業種別で申し上げますと、免税事業者は大体五百万でございますけれども、サービス業関係の方が約三割でございます。それから、農林水産業関係の方が二割弱、一九%ぐらい、建設業関係の方が一三%ぐらい、小売関係の方が一〇%ぐらい、あと細かいところはあれですけれども、そんな数字を把握してございます。

足立分科員 結局、TPPのときもそうなんですが、民主党みたいな政党が日本の国会にいるものですから、どうしても政府は試算を出すとかいうことに抑制的になります。それは結局、揚げ足をとったりレッテルを張ったりするからで、だから出すのを抑制するんですけれども、これからは、民主党とかのああいう議論を排除して、むしろ、濱村先生のような御見識のある、公明党さんのような立派な政党、与党と、そして我々のような、国民をだますような、そういう言論ではない、本当はどうなっているんだということをちゃんと議論できる国会にしていきたいと私は常々思っています。

 そういう観点からいうと、例えばTPPの試算も、こういう前提で計算するとこうなるよと言っているのに、こうなると言っているじゃないかとか、いや、それは前提を置いて議論したんですよということを飛ばしてテレビでやるわけですね。僕はそういうことをしませんから。

 ぜひ、財務省の事務方におかれては、これはやはり一定の試算が要るんじゃないかと。試算というのは、例えばこういうふうに仮定するとこれぐらいだというふうに推計することができるという一つの推計もあるよとか、何か数字がないと。今あった五百万者のうち、どれぐらいがコンシューマー向けでどれぐらいが課税事業者に移るか、これだって、アンケートをとって推計したらできるわけですね。

 それから、これは農水省に言うつもりですが、百七十万者ぐらいある農業従事者は、もうほとんどが免税事業者だと思います。きょうは農水省に来ていただいていますね、ありがとうございます。きょう私が言っている話は、きのうも説明していますね。大体、農業分野のそういうマグニチュード、ちょっとわかる範囲で御紹介ください。

山北政府参考人 先ほど財務省の方から御報告がありました統計とは若干出どころが違うということは御理解をいただきたいというふうに思いますが、二〇一〇年の農林業センサスによりますと、消費税の免税事業者である売上高一千万円以下の農業経営体、これは百五十五万経営体ということでございます。百五十五万経営体ですから、全農業経営体が百六十八万経営体ということでございますので、その大体九割ぐらいが免税事業者ということでございます。

足立分科員 すると、百六十八万のうち、先ほどのデータはもとデータが違うということだから、先ほど財務省からは、これは農林水産も全部入れてかな、二割とおっしゃった。アバウトな数字ですから、まあどうでもいいんですが、それはまた統計が別の統計ですね。農水省がとっている統計では、百六十八万者のうち百五十五万者が免税事業者であると。

 その百五十五万者のうち、どれぐらいがさっき言った農協とかそういう媒介者がいるケースに該当すると思われますか。

山北政府参考人 同じくセンサスからの統計でございますけれども、二〇一〇年で、実際に農産物を販売したという経営体のうちで一千万円以下の経営体、これは百三十七万経営体ございますけれども、そのうち七割が農協を通じて農産物を売っているということでございます。

足立分科員 これは、きょう、農水大臣を筆頭に開いていただく別の分科会でもやるんだけれども、ここにわざわざ農水省にも来ていただいてやっているのは、せっかくの機会ですから、財務大臣にも、釈迦に説法とはいえ、この点を改めて御認識いただきたいと思ってやっているわけです。

 今あったように、七割がそういうものだと。では逆に、七割以外のところは、まさにきょう議論したような問題、これを仮に問題だとすれば、そういう問題に直面するわけです。

 今まで農協等は、農協が媒介することによって仕入れ税額控除に資するために、免税事業者のかわりに、免税事業者が請求書を発行するのは大変だし、いろいろややこしいから、農協がまとめて請求書を発行していた。それは、今までの当該請求書の発行は、単に免税事業者の手間を代替するだけだったんです。基本的には、面倒くさいでしょう、農協がかわりにやってあげますよ、それだけの話です。

 ところが、これからは、要は、免税事業者か課税事業者かというところで、先ほど大臣からも御答弁いただいたような大きな課税上の違いが出てくる中で、今回の消費税法の改正の体系は、農協がかわりに領収書、インボイスを発行すれば、その先の事業者は仕入れ税額控除ができることになるわけです。すると、これは農水省でいいですよ、税額控除されるということは、税務当局に入る税収は減りますね。減りますねというのはまた変で、要すれば、本来ふえるというたてつけのところに、たまたま農協が媒介することで控除されるわけです。減るとかふえるというのは言い方が変だな、控除されるわけです。

 ちょっとややこしいかもしれませんが、もう時間もなくなってきたんですが、では、事務方、今みたいな議論というのは、今回の消費税の増税と軽減税率の導入、一〇%に上げるけれども一部は除きますよと。特に食品とかは除くわけですから、農業は関係あります。一〇%に上げて、一部の品目については軽減税率にしますよ、ここで何兆円の税収が上がるが、軽減することによって一兆円が減りますよ、こういう議論ですね。

 このマクロの試算の中にきょうの議論は勘案されているんですか、されていないんですか。

井上(裕)政府参考人 お答え申し上げます。

 軽減税率導入の減収額一兆円というのを申し上げていますけれども、これは、食料品が一〇%に上がらないで八%のままであることに伴う、全体が一〇%に上がった場合と比べた減収額として一兆円の話がございます。

 先ほど来先生がおっしゃっておられます話は、もともと現状でも仕入れ税額控除ができている方が今後についても仕入れ税額控除ができるということでございますので、そこに関しては現状と今後で何も変わらないわけでございます。なので、そこは減収額云々の議論はございません。

 さらに申し上げれば、恐らく先生がおっしゃっておられますのは、その後、十数年時間がかかるわけですけれども、インボイスの導入に伴って仕入れ税額控除ができなくなる、本来できなくなることに伴う額がどのぐらいあるのかとか、そういった議論のことをおっしゃっておられるかと思いますけれども、そこに関しましては、先ほどちょっと申し上げましたけれども、取引の形態でありますとか、どのぐらいの方がどういった影響を受けるのかということについて、今現在、ちょっとまだきちんと計算したものはございません。

足立分科員 五百万者の免税事業者がもし課税されたら全部でどれぐらいという議論はないんですか。

井上(裕)政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の軽減税率それからインボイスの話は事業者免税点制度そのものの廃止の話ではございませんので、ちょっと別の話にはなりますけれども、これまでも国会等々で答弁をさせていただいておりますけれども、事業者免税点制度を仮に廃止した、この一千万の事業者の方がなくなったという場合の計算について、一定の前提を置いた機械的な試算は今までも申し上げておりまして、これは五百万事業者の免税制度そのものがなくなったケースですけれども、その場合は、国税分で約三千五百億円程度の増収額が出るということです。

足立分科員 もう終わりますが、大臣、結局こういうことだと思うんです。

 今、ちょっと明確に御答弁がなかったかもしれませんけれども、もともと今、何兆円の増収というのがありますね。それは、こういう議論は基本的に関係ないわけです。一〇%に上がって、幾らかのものが八%のまま据え置く、軽減する。そこで、税収の議論をしているんだけれども、それ以外に、免税事業者が課税されるようになることに伴う増収というのがあるわけです。

 もちろん、さっき慎重に三千五百億円というのを紹介されましたが、僕もこれは慎重に議論すべきだと思うし、決して民主党のように、その数字をひとり歩きさせるつもりは全くありませんよ。ありませんが、五百万者、三千五百億円、これは地方税も含めたらもっと、四千五百億円ぐらいあると思います。その四千五百億円のうち幾らかが増収になるんです。でも、それはあえて、面倒くさいから言っていないわけです。でも、なるんです、幾らか。

 でも、それがどれぐらいかということぐらいは数字を出してもらった方が、いや、前提を置いたらいいと思うんですよ。これは前提を置いてでいいので、何かそういう数字、来週の月曜日にまた集中審議があるので、そこまでに何か試算は出せませんかね。前提を置いていいんですよ。

 大臣、言っていることはわかりますよね。五百万者、三千五百、四千五百億円、そのうち、非常に、もう無視できるぐらい小さな議論だということか、いや、結構、一千億円ぐらいはあるんだよなということか。それぐらいはないと、これはちょっとなかなか、どうでしょうか。

麻生国務大臣 これはなかなか難しいんだと思いますが、先生、前提を置かせていただくという前提で、極端な話でわかりやすく言えば、それがもし仮に六千億あれば、六千億の税源は探さなくていいという話をしているんでしょう。簡単に言えばそういうことだよね。

 さすがに六千億出てくるなんという話は、ちょっと私の想像を全然超えていますけれども、少なくとも、益税を払っていない方が今までおられるはずですから、それは私の地元なんかでよく聞きますから、そうなんだと思いますよ。

 だけれども、その人たちに言っているようなことは二つありまして、一つは、あなたのところ、益税というのは八百万円以上の純利益がなければ、税金は税率が違いますから、みんな、四〇%か五〇%か、違う違う、そうじゃなくて、あれは一八%でええんやからということすら知らない。ほとんど知らない。なぜ知らないかといったら、今まで払っていないからですよ。僕はそう思う。だから、一八%でええんやで、ああ、そんなもんでっかという、簡単にはそういう話。

 それを足して、六百万者だ四百万者だ三百万者だ、掛け何十万でも結構な額になるという話なんだと思いますので、これをどういう基準、前提で計算するかというところはちょっと頭が痛いところなので、いろいろ前提条件を置いた上でやってみないといかぬところなんだろうなと、ちょっと簡単にはいかぬかなという感じがしますが、これは正直言って、今まで結構話題になったところであります。ありますけれども、これは現実問題として、まずその中の割り振りから、形態からもう一回調べ直さないかぬので、ちょっと簡単にはいかぬなという話をしていますので、四年間ありますので、その間いろいろやっていかないかぬだろうなという話はしています。

足立分科員 大臣、ありがとうございます。

 また私は月曜日のテレビ入りで質問に立ちますので、ちょっと大臣の顔色を拝見しながら、適切にまた質問させていただきたいと思います。

 一言。農水向けには、これは農協を通した方がみんながハッピーになるという仕組みだと私は理解しているので、これは農協の取り扱いに係る大変重要なテーマだと思っています。これはきょうの別の分科会で取り上げさせていただきます。

 きょうはありがとうございました。

菅原主査 これにて足立康史君の質疑は終了いたしました。

 次に、神田憲次君。

神田分科員 おはようございます。自由民主党の神田憲次でございます。

 本日は、予算委員会第三分科会での質問をお許しいただき、心から感謝申し上げます。

 また、本日、坂井副大臣にもお見えいただいておりまして、坂井副大臣には、記憶をたどりますと、国土交通大臣政務官の折に、リニア中央新幹線の件では大変お心遣いいただきました。本日、また今、財務金融委員会の方でも、副大臣として連日の御対応に改めて感謝申し上げます。

 さらには、本日、財務省、国税庁から政府参考人としてお運びいただいておりますが、御多用の中で御答弁にお時間を割いていただいておりますことに御礼を申し上げます。

 さて、私は、二十五年以上税理士業務に従事してまいりました。そして、その税理士の経験を持ってこの立場に立たせていただいております。国会で法律や政省令としてでき上がる徴税行政と現場との、業界としてもいろいろ取り組んでおる税理士業務との間の実務的なギャップ、これを感じることが多々ございます。

 納税は国家の根幹を支える重要な行為であるわけなんですが、一般的に、できれば税金は少なく済ませたい、もっと申し上げますと払いたくない、こんな気持ちが納税者の側にあるのもまた事実でございます。だからこそ、納税者に対して、私たち税理士と国税庁、さらには税務当局が互いに意識し合いまして、適正かつ円滑に申告、納税という事務をなしていただくための工夫と努力を常に問いかけ、そして全力で続けていかなければならない、このように感じております。

 国税庁レポートの最新版である二〇一五年版では、国税庁の使命ということで以下のように述べられております。「国税庁の使命は「納税者の自発的な納税義務の履行を適正かつ円滑に実現する」ことであり、その使命を果たすため、納税者サービスの充実に努める」こと。

 一方で、税理士法のまさに第一条、税理士の理念は、「税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそつて、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。」このように書かれております。

 これからの質疑が納税者サービスの向上に資することを願いつつ、本日は、こうした観点から、税務実務上、日々の流れで問題と感じておりますことを当局にお伺いさせていただきます。

 まず最初に、税の電子申告についてです。

 現在、納税者側から見れば、国税庁が運用されておりますe―Tax、それと、自治体別に若干異なるわけですが、地方税当局が所管するeLTAX、この二つの電子申告が存在します。これはそれぞれ独立したネットワークなんですが、申請方法や書式の記載方法、それから申告可能な時間、こういった点におのおの違いがございます。納税されます法人担当者からも、混乱するという話を聞くことがございます。

 特に混乱を受けますのが、受け付け可能時間の問題で、国税のe―Taxは、確定申告期の一月中旬から三月中旬までは二十四時間稼働、それ以外の通常期は平日の八時三十分から二十四時まで。一方でeLTAXは、国税のe―Taxの運用時間に対して、地方税の方が利便性が高い状態が存在します。

 ちょうど今この時期、確定申告の真っ盛りでございます。我々業界にとっても一年で最も忙しい時期の一つなんですが、できれば、このe―TaxとeLTAXの運用なんですが、四六時中と申しますか、全ての時間、一年三百六十五日二十四時間というような形の運用が可能という御答弁をいただきたいものですが、現状では、予算面のことも踏まえて、その辺はなかなか難しいかとも存じます。e―Taxにおきましてもできる限り柔軟に対応していただけますよう、国税庁と総務省でその運用についての足並みを御調整いただくこと、この点は可能でしょうか。

 さらには、添付書類の件なんですが、eLTAXの方は、添付書類を画像データで添付して届け出ることが可能ということになっています。しかし、e―Taxには、今のところそのような運用はなされておりません。来年、二十八年の四月から順次可能とすべく準備中ということであることは承知しておりますが、今後の見通しをお聞かせいただけますでしょうか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 e―Tax、eLTAXの受け付け時間に関してでございます。

 e―Taxの受け付け時間、先生御指摘のとおり、所得税の確定申告書の提出時期につきましては、土日も含め二十四時間受け付けるということで、手厚い措置をとっているわけでございますけれども、一方、eLTAXに比べまして、例えば、五月、八月、十一月の最後の土日、これは、eLTAXは受け付けておりますけれどもe―Taxは受け付けていないといったような違いがございます。

 こういった違いについて、納税者利便を図るためになるべく統一的な取り扱いをしていく必要があるのではという御指摘でございますけれども、納税者の利便性向上策につきましては、御指摘のe―Taxの受け付け時間も含めまして、予算措置等々も加えて引き続き検討を続けていきたいと思っております。

 それから次に、添付書類の電子的な提出につきまして、例えば、契約書の写しなどの法人税申告に係る添付書類につきましては、先ほど先生からも御指摘ございましたとおり、平成二十八年四月から、イメージデータにより電子的に提出することを可能とする予定でございます。この点につきましても、今後引き続き、納税者の利便性向上を図りつつ、その普及、定着に取り組んでまいりたいと考えております。

神田分科員 ありがとうございます。

 政府の大きな方針として、納税者の利便性の向上のための電子申告制度の充実ということに現在も取り組んでおられているということは十分理解しております。

 その上で、同じ観点から、国税の納付に関する事務についてお伺いしたいと存じます。

 現在、地方税については、パソコンで作成した書式でも、納付については、取扱金融機関での納付が可能となっております。国税は、いわゆる納付については一定の決まった書式でしか納付できません。なぜそのような違いがあるのか、御説明いただけませんでしょうか。そしてまた、国税についてもパソコン作成の書式で納付できるようにしていただくことは可能でしょうか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 国税の納付書につきましては、金融機関の窓口納付で使用される場合、国税当局と日本銀行の双方における収納事務を効率的に行うために、日本銀行において納付書の内容を読み取り、データ化しております。このため、国税の納付書につきましては、機械による読み取り処理が正確に行われるよう、日本銀行の規格に合った色、用紙の厚さ、それから紙質のものを使用することとしておりまして、御指摘のありましたパソコンで作成した納付書を使用することは困難であることを御理解いただきたいと思います。

 他方で、国税庁としては、納税者の利便性向上を図る観点から、紙の納付書を必要としない納付手続であります電子納税を導入しておりまして、その普及拡大に努めているところでございまして、御理解をいただければと思います。

神田分科員 ありがとうございます。

 なかなか難しいことは十分理解いたしますが、ICTを活用した利便性の高い申告や納付手段の充実に取り組むという趣旨からいたしますと、これは御一考いただければ幸甚でございますし、本年が、オンライン手続の利便性向上に向けた「財務省改善取組計画」の最終年としての仕上げの年でもございます。また、行政の効率化の観点からも、御検討いただければ幸いでございます。

 それでは、次の質問に移ります。

 昨年十二月二十二日の政府与党政策懇談会で、安倍総理は、安倍政権前と比べて税収が十五兆円ふえ、国債発行額は十兆円減った、成果は明白だ、自信を持ってこの道を皆さんと進んでいきたいという旨のお話をされました。

 野党からは、アベノミクスの成果など砂上の楼閣だという批判もあるわけなんですが、税収増が経済回復の確かな指標であることを否定する方々はいないわけです。

 二〇一四年春の消費税の引き上げがあったわけですが、消費税一%の引き上げで約二兆円から二・五兆円の税収アップとおおむね見積もられておりますので、消費税増税分を上回って、平成二十五年度の四十三・一兆円から、二十六年度、五十兆円、さらに平成二十七年度の五十四・五兆円と、税収が順調にふえておりまして、アベノミクスの効果は確かにあると確信しております。

 要因としてすぐ想定できますのは、堅調な企業業績による法人税収増、株式配当の増加、それから、まだまだ十分とは言えませんが、賃上げ効果による個人の所得による税収の伸びなどなどですが、一方で、国税庁の税務当局による効果的な課税の推進の取り組みが功を奏してきているのではないかと感じております。つまり、滞納を未然に防ぎ、それから、現在ある滞納を整理へ向けて推進する取り組みが、一方でこれらも実を結んできたのではないかと感じております。

 もちろん、経済環境がよくなったことに伴って、滞納を余儀なくされていた方々が納税できるような状況になってきておるということもあるとは思います。

 そこで、具体的な数字をお示しいただきたいのですが、平成二十四年度から平成二十六年度の各年度における滞納残高を教えていただけますでしょうか。これは、税目別、つまり、法人税と所得税、それから、当局がよくおっしゃる、預かり金的性格を有すると言われるところの源泉所得税、消費税の各税目で御教示いただければと存じます。

星野政府参考人 御指摘がございました源泉所得税、あと、申告所得税、法人税、消費税について、過去三年間の年度末における滞納残高を申し上げます。

 まず、源泉所得税、平成二十四年度が二千四百二億円、二十五年度、二千百四十五億円、二十六年度、千八百七十七億円。

 申告所得税、平成二十四年度、三千五百二十億円、二十五年度、三千三百二十億円、二十六年度、三千八十二億円。

 法人税、平成二十四年度、千六百三十五億円、二十五年度、千四百十九億円、二十六年度、千二百六十七億円。

 最後に消費税でございます。平成二十四年度、三千九百六十億円、二十五年度、三千五百六十四億円、二十六年度、三千四百七十七億円となっておりまして、いずれも前年度より減少しているところでございます。

神田分科員 ありがとうございます。

 やはり、今お伺いいたしました費目ごとの分析というところからも、アベノミクスの効果が上がってきているのではないかと実感できるかと存じます。

 先ほどの質問では、税務当局の効率的な課税、徴収への努力によって滞納残高が減っておるという話を承りましたので、この後は、適正な課税と徴収という点において質問させていただきたいと思います。

 さきの日曜日に、こんな記事が新聞各紙に載りました。これは、IBM側の勝訴確定、最高裁が課税千二百億円を取り消した。この記事の内容ですが、IBMの持ち株会社が、連結納税制度を利用して、米国のIBMから購入した日本IBM株の一部を日本IBMに売却、その際に出た損金を連結計上して日本IBMの営業黒字と相殺したことが約三千九百九十五億円の申告漏れと指摘されて、本税、追徴分合わせて千百九十九億円の課税処分をされたケースです。

 同じくこういった課税処分を取り消されたケースとして、旧武富士創業家の贈与税のときの千三百三十億円という大変大きな金額。そして、これらの大きな金額は、税理士業界でも、今月の武富士のおかげで税収がマイナスになるなんという話をした記憶がございますのですが、法人税法百三十二条の二の解釈について、現在もヤフー株式会社が係争中であると認識しております。

 IBMのせいなのかもしれませんけれども、このところ、税務訴訟において税務当局側が敗訴するケースというのが、イメージだけなのかもしれませんが、多いように感じております。過去三年間で結構ですので、この税務訴訟の発生件数と当局側の敗訴の件数を教えていただきたく存じます。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 直近三年間における税務訴訟の発生件数でございますが、平成二十四年度が三百四十件、二十五年度が二百九十件、二十六年度が二百三十七件となっております。

 次に、直近三年間における国側が一部または全部敗訴した件数は、平成二十四年度が二十四件、二十五年度が二十四件、二十六年度が十九件となっております。

 これらの敗訴件数が判決のあった件数に占める敗訴割合でございますが、平成二十四年度が六・三%、二十五年度が七・三%、二十六年度が六・八%となっております。直近三年間における敗訴割合はおおむね同水準で推移しておりまして、それ以前との比較で見ても、近年、特に敗訴割合が高くなっている状況にはないものと認識をしております。

神田分科員 ありがとうございます。

 やはり近年、企業形態、取引形態が大変複雑化しておりまして、脱法行為との線引きも難しいかとは存じます。しかしながら、自由な経済活動を担保する観点からも、税務当局による裁量課税の可能性を疑わせるようなことは、まずもって避けるべきだと感じております。

 今さらながらなんですが、税務行政はすべからく租税法定主義でありますし、地方税についても地方税条例主義が妥当と考えられるのが通説でございます。租税法定主義はすなわち課税要件法定主義でありますし、それから税要件明確主義でありますし、さらには合法性の原則でありますし、手続保障の原則でもあります。常に明確であるべきでありますし、この点においては一点の曇りも許されないと存じます。

 現場の税理士といたしましては、納税者から税務調査の話を伺いますと、先ほどのようなケースも踏まえて、課税という観点では少々行き過ぎた調査が行われるというところもあるようなことも聞きますので、大変心配しておるところでございます。慣例的処理で行ってきたものも、税務当局から突然不適切と指摘されるということもあるやに聞いております。

 納税者にとって予見不可能な課税事務というのはすべきではないと考えておりますが、予見可能性の担保についてはいかがお考えでしょうか。

星野政府参考人 ただいま先生から、課税の裁量ですとか課税の原則、予見可能性等々について御指摘がございました。

 一般論として申し上げますと、税務調査においては納税者の事業実態等の把握に十分努めることとしておりまして、納税者の帳簿書類や関係者からの聞き取り等で確認された個々の事実関係に基づき、法令等に照らして適正な課税に努めているところでございます。

 また、納税者の予見可能性を高めるために、国税庁では、税法の一般的な解釈についてその法令解釈通達の公表を行っているほか、個別の取引についての税務上の取り扱いにつきましては、納税者の方々から事前の相談に応じているところでございます。

 今後とも、適正、公平な課税の実現のため、適切に対処してまいりたいと考えております。

神田分科員 ありがとうございます。

 税務当局への信頼というのは、国家への信頼を支える重要な柱であると考えます。今も言われておるのかどうかわかりませんが、調査というのは、まず相談があって、その次に指導があって、三番目のステージとして調査だ、こんなふうに言われてきたものでございます。そうした意味からも、徴税に対する不信感が高まるようなことがあってはならないと考えておりますので、今後も適正な課税をよろしくお願いしたいと存じます。

 それでは、次の話題に移らせていただきます。

 消費税の軽減税率に関して、インボイス導入後のあり方について質問させていただきます。

 これはあくまでも個人としての意見なんですが、インボイス導入後の仕入れ税額控除の要件として、従来は帳簿またはインボイスというふうな表記であったものが、帳簿及びインボイスということになっております。帳簿もインボイスも保存を義務づけることとされております。

 仕入れ税額の把握ということでしたら、実務上はインボイスがあれば十分なわけです。インボイス制度導入の最大の懸案事項がやはり事業者の事務負担の増大であることを考えてみましても、インボイスのみの保存で仕入れ税額控除を認めることはできませんでしょうか。

坂井副大臣 済みません、先ほど私の名前に触れていただいたそうで、大変失礼をいたしました。

 御指摘のインボイス制度導入後の仕入れ税額控除の要件ということでございます。

 考えなければいけない点として、正確かつ適正な税額計算や事後的な検証のためには取引の網羅的な記録が必要であること、また、自動販売機などの場合はインボイスが交付されない、こういうことでございますが、このような場合に帳簿への記載のみで仕入れ税額控除を今現在認めているということなどを踏まえれば、仕入れ税額控除の適用を受けようとする事業者は、インボイスのみならず、帳簿の保存も必要だと考えております。

 なお、帳簿の保存は現行においても仕入れ税額控除の要件となっていると認識をしておりまして、事務負担がふえるものではないのではないかということでございまして、御理解をいただければと思っております。

神田分科員 わかりました。

 帳票保存義務という点においてはなかなか難しい点があろうかと存じます。そういった意味からも、よりよい申告について、やはり日本という国が中小事業者によって支えられているという事実が厳然として存在します。そういった観点からも、もし考慮の余地があれば、この点、再考いただければと存じます。

 もう一つ、インボイス制度において心配なことがございます。

 これは、財務金融委員会等で他の委員の先生方からも既にたびたび御確認をいただいておるんですが、いま一度確認しておきたいと存じます。

 先ほど来も話が出ておりますように、消費税の免税事業者の数、法人では八十五万者程度あるなどと言われておりますが、この八十五万者というのは全事業者数に対する割合が約一〇%程度で、やはり、今後四年間の準備期間を踏まえてインボイス制度を導入する際に、そのためのPOSレジスターの購入であるとか、そういったシステム的な導入について、確かに助成制度もできておりますが、現実には、ざっくり申し上げると、これらは本当に、お父ちゃん、お母ちゃんの会社、ないしは従業員が三人、五人程度の法人だと思われます。

 本当に日本の中小事業者というのは、俗に零細事業者というふうに呼ばれるわけなんですが、このことを考え合わせても、インボイスの導入において免税事業者が商取引から締め出されるおそれはないのかという点でございます。副大臣のお考えを聞かせていただきたいと存じます。

坂井副大臣 委員の御指摘のお声は我々も承知をいたしております。

 しかし、インボイス導入に関しましての事業者への影響はさまざまでございまして、例えば、納入先事業者が簡易課税を適用しているような場合には、納入先事業者は適格請求書等を必要としないことから、免税事業者が取引から排除されることはないだろうと考えられますし、また、免税事業者が課税選択を行う場合、簡易課税の利用によって事務負担を軽減することも可能であろうと思います。

 また、さらには、適格請求書等は税額が明確になりますことから、価格転嫁がしやすくなるのではないかという指摘もあるところでございまして、取引から排除されるのではないかといった御懸念は、免税事業者にこうした事情を必ずしもよく御理解いただいていないこともまた一因となっているのではないかと今考えておりまして、政府といたしましては、周知徹底を図る、また、先ほど指摘をされましたように、しっかりとした四年の準備期間を設けるとともに、適格請求書等保存方式導入から六年間、免税事業者からの仕入れについて一定の仕入れ税額控除を認めるというようなことといたしているところでございます。

 いずれにいたしましても、事業者に過大な負担を負わせることなくインボイスの制度を円滑に導入するためには、事業者の実情に応じた対応を行っていくことが重要だと考えております。そのため、附則にも、事業者の準備状況及び事業者取引への影響の可能性などを検証しつつ必要な対応を行うこととしておりまして、御懸念のような状況が起きないよう、しっかりと事業者への対応を行ってまいりたいと考えております。

神田分科員 ありがとうございました。

 税務当局もですし、それから、我々の立場であるところの税理士業界自体も、免税事業者の皆さんにそこら辺の周知徹底、十分な説明を図っていかなければならない、いずれにしても連携をとっていかなければならないというふうに感じております。

 あと一問、消費税の不正還付のことをお伺いしたかったわけなんですが、時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

菅原主査 これにて神田憲次君の質疑は終了いたしました。

 次に、笠浩史君。

笠分科員 民主党・維新の会の笠でございます。

 きょうは、国税当局、また坂井副大臣も、お忙しいところありがとうございます。

 きょうは、ちょっとワインの国際基準等々についてお伺いをさせていただきたいというふうに思っております。

 昨今、日本にもすばらしいワインの生産者が出てきているところでございまして、外国でも賞を受賞するようなすばらしいことや、あるいは、私もワインを愛好しているんですけれども、海外の日本の大使館等々の公邸なんかでも、特に白ワインなんかは今、よく日本ワインを出されるところが非常にふえてきたなというふうに感じております。

 ワインというのは、日本は、やはりヨーロッパあるいはアメリカなどに比べるとまだまだ国際的なブランド力というものについては一歩おくれているところがあるのかなというふうに思っておりますし、これは国際商品でありますし、あるいは競争も非常に熾烈をきわめているところでございます。

 今後、ワインの生産国として日本が世界に認められる、国際的に評価をされるために、この日本ワインの品質を法的にしっかりと保証していく、そのことによって国際的な評価が高まっていきまた輸出もふえていく、あるいは国内においても、国内で消費されるワインの三分の二ぐらいはまだまだ輸入ワインということで、日本ワインというものをこれからどうやって国内においても消費をふやしていくかということも大きな課題であろうというふうに思っておりますので、そういう観点から幾つか質問させていただきたいと思います。

 まず最初に、日本において日本ワインの定義というものが長くなされていなかったというふうに承知をしているわけでございますけれども、どこでどのように定められているのかということをお答えいただきたいと思います。

    〔主査退席、小林(鷹)主査代理着席〕

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 従来、日本では、法令に基づくワインの表示ルールがなかったことから、国産ブドウを原料に使用したワインと輸入果汁を原料に使用したワインの違いがわかりにくいなどの問題が存在しておりました。

 こうした中で、酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律に基づきまして、国際的なルールを踏まえたワインの表示ルールでございます果実酒等の製法品質表示基準を、国税庁として、昨年十月三十日に定めたところでございます。

 この表示ルールにおきまして、国産ブドウのみを原料に使用したワインを日本ワイン、輸入果汁を原料に使用したワインなどを国内製造ワインと定義し、その違いを明確にいたしました。

 このことにより、日本ワインの国際的な認知度の向上が図られ、消費者の商品選択も容易になると期待しているところでございます。

笠分科員 今お答えがあったように、昨年の十月三十日、告示をされたということで、私は、これはいろいろな関係の皆さん方の長年の悲願であったわけで、このことは大きく評価をしたいというふうに思っております。

 そして、果実酒の製法品質表示基準を今回制定したということになるわけでございますけれども、この意義というものを端的にお答えいただければと思います。

星野政府参考人 今回、ワインの表示ルールの制定に当たりましては、ワイン製造業者の方々に与える影響等を踏まえまして、各地域で製造業者の方々に対する説明会を開催するとともに、個別の質問に対しても丁寧に対応し、その結果といたしまして非常に現実的な表示ルールが制定できたのではないかと思っております。

 この表示ルールの制定によりまして、今後、国内の製造業者がこのルールに基づいたワインづくりをしていくということで、日本におけるワインの基盤が安定してつくられていくというふうに期待しているところでございます。

笠分科員 今、いろいろと広報、あるいはいろいろな丁寧な説明というものもやっているということなんですが、今回は三年間の経過期間を経て施行されるということになるわけですけれども、今回の表示制度は従来のものとはかなり大きく異なって、ラベルの大幅な改正、あるいは場合によってはブドウ栽培地の変更、新設や、醸造、瓶詰施設の新設などが必要となるような事態というものも予測されるわけです。

 そしてまた、罰則も規定されているわけですね。もちろんそれにはいろいろなステップがありますけれども、罰金であったり、あるいは一番厳しい措置としては免許の取り消しというものもあるわけで、当然ながら、やはりこれは混乱なく移行していかなければならないということを考えているわけでございます。

 その点、今、例えばいろいろな問い合わせ、あるいはそういった御意見等々があるのか。あるいは、さらには消費者に対しても周知徹底というものをしていくことが、今、スーパーや量販店なんかでワインを買われる方も多いわけですけれども、今はそのラベルについても、これまで定義がなされていなかっただけに、非常にわかりにくさがあると思います。そういったことの消費者向けのPR、周知徹底について、特段今講じられている措置等がございましたら御説明をいただきたいと思います。

星野政府参考人 今回のワインの表示ルールにつきましては、先ほど申し上げたとおり、策定の過程におきまして丁寧に対応してきたところでございますし、また、先生御指摘のとおり、三年間の経過期間を設けて、その間に十分な対応を図ってまいりたいと考えておりますが、ルールの制定後、このルールをできる限り広く周知徹底していくために各地におきましてシンポジウムや説明会の開催を行うなど、あらゆる機会を通じて内容の周知徹底を図っているところでございます。

 また、ワインの表示ルール制定後、製造者の方々から例えばラベル表示についての個別の相談もございまして、こうした相談等につきましても引き続き丁寧に対応してまいりたいと考えております。

 また、これ自体は製造者のルールでございますけれども、こういったルールが図られているということにつきましては、いろいろな機会を通じて消費者の方々にも周知を図ってまいりたいということで、その対応を現在進めているところでございます。

笠分科員 国内製造のワインについては、もちろん国産のブドウを原料として日本の国内で製造された、いわゆるこれが日本ワインということになるわけですけれども、これは一割強というふうに伺っております。ほかはほとんど、その九割ぐらいは海外の原料を使用して日本国内でまさに製造している。そういった点がございますので、やはりまたそれによってこのラベルの種類というもの、表示の仕方というものも変わってくるということでございますので、ぜひ今後も、わかりやすい、そういったところの広報、周知徹底を図っていただきたいというふうに思っております。

 これはワインに限らずだとは思うんですけれども、ワインも含めて、特に地理的な表示制度というものが非常に重要であるというふうに私は認識をしておるわけでございます。この地理的表示制度のメリットというものをどのように考えておられるか、お答えいただきたいと思います。

星野政府参考人 先生御指摘になられました地理的表示制度のメリットでございます。

 酒類の地理的表示制度は、ある特定の産地に特徴的な原料や製法などによってつくられた酒類だけがその産地名を独占的に名乗ることができる制度でございまして、その効果としては幾つか考えられます。

 まず地域ブランド確立による他の製品との差別化、それから地理的表示を付した産品は一定の品質が確保されているということによる消費者の信頼性の向上、またブランドとして海外でも通用することによる輸出拡大への寄与、また行政が模造品の取り締まりを行うことによる地域ブランドの保護といったようなことが挙げられるのではないかと考えております。また、国際交渉などを通じまして、外国に対しても日本の地理的表示の保護を求めていくことが可能でございます。

 このように、地理的表示制度はさまざまなメリットを有しておりまして、日本ワインを初めとした日本産酒類のブランド価値の向上を図る上で、その活用が有効であると考えております。

笠分科員 私も全く同じ認識でございます。そして同時に、ワインというものは、単に日本のワインがどんどん消費されるということだけじゃなくて、ワイン産業というのは本当に裾野が広い、そして、私は、実は農村や地域の活性化にもつながっていくんじゃないかという期待を寄せているところでございます。そして、今もお話がありましたように、輸出の促進、国際的に通用するブランド力というものをやはりきちんとつけていくためには、この地理的表示制度というものが大いに寄与していくことになろうかと思います。

 今後、この日本のワインに関する産地表示等をどのように国際的に説明していくか、特にこの点に力をぜひ、これは国税庁だけではなくて、もちろん外務省なんかとも連携をしながらということになっていこうかと思いますけれども、そういった国際的に説明していく必要性、あるいは何か戦略等がございましたらお答えをいただきたいと思います。

星野政府参考人 国産ブドウのみから醸造されたいわゆる日本ワインでございますけれども、冒頭先生が御指摘になられましたとおり、近年、国際的なコンクールで受賞されるほど高品質なワインが登場しております。

 今るる御説明をいたしました日本ワインの表示ルール、また地理的表示制度の明確化等々を通じまして、日本ワインのブランド価値の向上を図るための制度整備を行っているところでございます。

 日本ワインブランドを国際的に広めていくために、まずは国内外のさまざまな機会を活用して日本ワインの特性や魅力の発信を行い、日本ワインの国際的な認知度を高めるとともに、TPPなどの国際交渉を通じて、外国のワインに課される各国の関税の撤廃に努めるなど、輸出環境整備を進めているところでございます。

 国税庁といたしましては、今後も、日本ワインの特性や魅力を発信するとともに、各省連携を図るとともに、関係業界にも協力を依頼して輸出環境整備を進めていくことによって、戦略的に日本ワインブランドを広げてまいりたいと考えております。

笠分科員 例えばEU、欧州の方ではワインの生産並びに消費も大変多いわけでございますけれども、ここで言うEU法では、地理的表示ワインでないと産地名の記載は認められず、地理的表示のないものは市場における競争で圧倒的な不利になるというようなことで、それぞれの地域あるいは国で決められているワイン法というものには若干内容はそれぞれ違いはあるわけでございますけれども、やはり地理的表示にしっかりと指定をされ、そして日本における地理的表示というものの、きちっと国際社会、国際マーケットに対する説明というものにはぜひ引き続き力注いでいただきたいと思います。

 国税庁長官がこの地理的表示というものは指定をすることになっているわけですけれども、ある意味では知的財産権ということになろうかと思いますけれども、山梨が指定をされたのが二〇一三年七月ですか、これが最初でございました。北海道等々幾つかのところが、指定を目指していろいろな形で取り組みを進められているということでございます。

 今後、地域でもワインを製造することに非常に力を入れているところが日本各地で今出てきておりますけれども、ぜひ多くの産地が、もちろんそのためには品質の保証から、先ほど次長が御説明されたような、そこには厳しい基準があるわけでございますから、どんどんこれを指定していくということにはもちろんならないし、そうなるとまた目的が全く違ってくるというふうに思いますので、そこはあれですけれども、山梨に続いてこういった地理的表示に指定をされること、そういったブランド力をつけていくということが私は望ましいんじゃないか、そういうところを大いにやはり目指してもらいたいというふうに思っておるわけですけれども、その点についていかがか、お答えください。

星野政府参考人 国税庁としては、先生御指摘のとおり、日本ワインのブランド価値の向上を図っていくために、地理的表示制度の活用が有効であると考えております。

 他方、酒類の地理的表示制度は、ある特定の産地に特徴的な原料や製法などによってつくられた酒類だけがその産地名を独占的に名乗ることができる制度でございまして、製造業者だけではなく販売業者にも影響が及ぶなど、排除性が高い制度であることにも留意が必要であると考えております。

 また、個別地域を地理的表示として指定するには、地域の気候風土と地域で製造される酒類の特性とのつながりやその確立が重要でありまして、このような点について検討していく必要があろうかと考えております。

 いずれにいたしましても、各地域から地理的表示の指定に関する相談があった場合には丁寧に対応してまいるなど、日本ワインのブランド価値の向上を図っていくために地理的表示制度の活用を考えていきたいと考えております。

笠分科員 私は、今回告示としてこういったことが定められたことは、冒頭申し上げましたように、大きく評価をいたします。ただ、私は、できましたらやはり次のステップとしてワイン法というものを制定していくことを検討すべきではないかというふうに考えております。

 やはり重要なのは、ワインの定義、あるいは原産地呼称、さらにはラベルの表示ルール、こういったことがこれまで日本では不十分だったことが、外国で日本ワインが正当に評価されていなかった大きな原因の一つではないかというふうに考えております。やはり多くのワインを生産している国々ではそれぞれ、各国内容はさまざまではありますけれども、ワイン法というものが制定をされている。

 そういったことで、今後、今回を第一歩としながら、ワイン法を制定していくということを検討するお考えがあるのかどうか、これはぜひ副大臣の方にお答えをいただきたいと思います。

坂井副大臣 ワインに関しまして委員からいろいろな御指摘、また御提案も含めてお話を伺っておりまして、なるほどなと思うと同時に、海外に向けてのアピールにもなりますが、国内の消費者に対しても、表示ルールがしっかりして周知をすれば国内で購入をする際の消費者にとっての情報がふえる、ふえることによって、生産者にとっても付加価値のつけ方、つけようという工夫の仕方が出てくるのではないかな、地方創生という動き等も含めて、なるほどなと思って、感心をさせていただいて聞いておりました。

 ワイン法の制定ということでございますが、まだスタートしたばかりということでもございますので、実際にこの制度が適用されるまでの三年間の経過期間も踏まえつつ、ワインの表示ルールの定着を図るべく、まずは周知徹底にしっかりと取り組んでいく一方で、その周知を努力していく中でワインの表示ルールが定着していくと思いますので、その状況も見ながら、海外では制度をつくっている、ワイン法という法をちゃんと制定しているということを頭に置きながら、日本ワインに関して新たな課題が明らかになった場合には、また改めてさまざまな角度から検討していくことにしたいと考えております。

笠分科員 私は、今一定の前向きな答弁が得られたというふうに思うんです。

 もちろん私は日本酒も焼酎も国内の生産酒ということでは大好きでございますけれども、ただ、本当にワインの場合は、例えば値段についても、同じブドウ種を使ったとしても五百円のものもあればウン十万円するような、やはりこの価格差というものが日本酒やあるいは焼酎等々に比べれば圧倒的に大きい。それだけに、にせものというとちょっと変ですけれども、そういう偽造品があってはならないし、あるいは本物というものをしっかりとやはり守っていく、あるいはそれをきちっと消費者にもわかるように徹底していく。そして、海外へ向けては日本のブランド力というものを発信していくというようなことが大事でございますし、食品、農産物の中でもそういった意味では最も厳格に規律されている商品ということで、各国がこのワイン法というものを制定している。その大きな背景には今申し上げたようなことがあろうかと思います。

 今、告示から始まって、表示ルールも制定をされました。ですから、このことをしっかりとまずは定着させながら、いずれはそういった点の検討をお願いしたいというふうに思いますし、我々もその点は研究をしていきたいと思っています。

 ぜひ副大臣、もう一度御答弁をお願いします。

坂井副大臣 委員の御指摘のように、今後もさまざま検討し、また工夫をしていくということは引き続きやはりやっていかなければいけないことだと思っております。

笠分科員 それともう一点、いろいろな表示基準ということも含めて、ワインにはさまざま、今申し上げたような国際的な一つの基準というものが定められているわけですけれども、その中でも、OIV、国際ブドウ・ワイン機構というものがございます。ヨーロッパのほとんどの国はそこにも加盟をしているということでございます。日本のワイン用ブドウでは、黒ブドウのベイリーAと白ブドウの甲州がこのOIVによってリストに今登録をされているというふうに承知しております。このことが実は日本の甲州ワインの世界的な評価につながっていった要因の一つではないかというふうに私は思っておりますけれども、残念ながら、我が国はまだこのOIVの方には加盟をしていないというふうに伺っております。

 日本のワインを国内はもちろん世界に売り出していくために、今申し上げたワイン法の検討とともに、私はこのOIVにやはり加盟をすべきではないかというふうに考えているところでございますけれども、なぜ加盟をしないのかということ、あるいは加盟をしたときに幾らぐらいの負担金というか分担金が発生をするのか、その点をお答えいただきたいと思います。

坂井副大臣 これまで国税庁におきましては、きょうのこの質疑におきましてもいろいろなことが触れられましたけれども、日本ワインの発展のためにさまざまな取り組みを進めてきたところでございます。

 このOIVの活用また参加をするというようなことでございますが、加盟の要件として、毎年分担金を拠出する義務が生じます。今、推定というか算出をしますと大体一万九千三百ユーロ、日本円にすると二百六十万円程度ということでございますが、その拠出金を出して加盟することによって得られるメリットや、実際にそのメリットをワイン業界が必要と感じていて、どのように活用できるのかというようなことも当然考えていかなければいけない、こう思っております。先ほどから話がありますように、日本ワインが表示ルールなり定義がスタートしたところでございますので、これらの周知をしっかり進めながら、一方では業界の皆様方とも話をし、これは検討してまいりたい、このように考えております。

笠分科員 この分担金というのは恐らく、加盟することになれば当然税金から使われることになるわけですから、二百六十万というのが安いのか高いのかというようなことについて言うつもりはございませんけれども、それぐらいの分担金であれば、これからしっかりと海外市場にも打って出ようというようなときには、これは加盟していくメリットの方が非常に大きいのではないかというふうに私は認識をしております。

 それで、ちょっと国税庁の方にお伺いをしたいわけですけれども、今いろいろな関連の団体の皆さんともということがございましたけれども、たしか二十五年ぐらい前、国税庁の方に、日本ワイナリー協会、あるいは北海道、山梨、長野、山形でしたか、要するに関係の製造業者の皆さん方を含めたところから、五団体でこの加盟を求めるような要請がなされたというふうに思っておるわけでございます。

 私が伺っているところではまだその返事が来ていないということなんですけれども、それはどういった判断から返事をされないのか、あるいはまだ今加盟するに至っていないということなのかを国税庁の方にお答えいただきたいと思います。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生が御指摘になられましたOIV加盟を求める業界からの要望というものでございますけれども、何年か前にそういったことがあるということについては承知をしておりますが、OIV加盟を求める声については、現状においては、ワイン業界全体としてその必要性をどのように捉えているのかということについては確認をすることが重要だと考えておりまして、今のところ、ワイン業界全体としてOIV加盟を求める、そういうことが統一されているという認識を私どもは持っておりません。

 ただ、いずれにしても、きょうの議論を踏まえまして、今後、そうした点について引き続き検討を続けてまいりたいと考えております。

笠分科員 OIV側も日本の加盟というものについては非常に歓迎をしたいという意向も持っておるようでございますし、恐らく、これは酒税ですから、通常は多分、海外でいうと日本の農林水産省に当たるような役所が所管をされているのかもしれませんけれども、やはり税から日本のお酒の方は入ってきているというようなところもあります。私はそこを、所管をかえろとかそういうことは全く申し上げるつもりはないんですけれども、ぜひ、税の観点だけでなく、やはり日本ワインというものをしっかり普及させていく、海外にきちんとした形で売り出していくということのためにも、私は、この加盟というものを少し真剣に、もちろん業界団体の中にもいろいろなお考えの方もあられるかもしれませんけれども、少しその辺をぜひ整理していただいて、前向きに検討していただけるように副大臣に要請をいたしたいと思いますので、お答えをいただきたいと思います。

坂井副大臣 先ほど国税庁からの答弁にもありましたように、きょうのこの質疑のさまざまな御指摘等も踏まえて、検討を進めていきたいと思っております。

笠分科員 時間が参りましたので終わらせていただきたいというふうに思いますけれども、きょう幾つかワインについて、本当に今、北海道なんかでもすごいですよね。全国各地でワイナリーが頑張っているということもございますので、国内はもとより、海外に日本ワインの地位をしっかりと確立ができ、そしてそれがどんどん海外でもやはり消費されるような、そういうブランド力を身につけるようにぜひ取り組んでいただきたいということを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

小林(鷹)主査代理 これにて笠浩史君の質疑は終了いたしました。

 次に、國場幸之助君。

國場分科員 ありがとうございます。自由民主党の國場幸之助です。

 本日は、貴重な機会をまことにありがとうございます。

 まず、二千円札について質問をしたいと思います。

 私は沖縄県の選出でありまして、いつも財布の中には二千円札が、八千円掛ける三、二万四千円分入っております。

 どうして八千円掛ける三かといいますと、私は地元に、金曜日の夜に沖縄に帰りまして日曜日の夜の最終便で東京に上がるんですけれども、その間に地元の地銀の本店で二千円札をおろすわけなんですが、八千円でしかおろせないんですね。一万円でおろしますと、一万円札が出てくるんです。

 ですから、八千円で、二千円札優先というボタンを三回か四回ぐらい押すんですね。そうしますと、二千円札が四枚単位で出てくるんです。そのたびに、週末であり夜ですから、ATMで百八円の手数料を取られるので、最近フィンテックの議論が盛んになっておりますが、やはりこういう金融機関の既存の自分のお金すら、引きおろしするときに手数料が高いんじゃないかという声も、そのようなフィンテックの議論につながっていくと思います。まあ、きょうはその議論はしません。

 二千円札の議論をしていきたいんですが、ことしの五月に、三重県の方で伊勢志摩サミットがあります。二千円札というものは、二〇〇〇年というプレミアムを記念しまして、そしてまたミレニアムを記念して、なおかつ、沖縄サミット、九州・沖縄サミットというものは、今まで東京の方で開催されていたサミットが、初めて地方で開催されることになりました。

 ちょうどそのときには、全国で八つぐらい候補地があったかと思います。ところが沖縄県は、警備の面や治安の面、台風も含めて、利便性も含めて、一番採点は低かったと聞いておりますけれども、当時の小渕総理と野中官房長官が、やはりお二人とも戦争に対する、沖縄に対する思いが強く、遺骨収集も小渕総理は学生のころからなさっていたと聞いております。そういう強い思いのもとで、この沖縄の地が、これから二十一世紀、沖縄と日本をつなぐ、日本とアジアをつなぐ最大のかけ橋になっていくんだという思いも込めて、九州・沖縄サミットの首脳会議を沖縄の方で開催することが決まりました。それも、残念ながら小渕総理は他界されまして、森総理が見事にその役割を果たしたわけであります。

 今、沖縄と本土とのかかわりは、基地問題やさまざまな面で、多くの課題があると思います。地方開催の伊勢志摩サミットが日本で開催されるというこの時期に、二千円札の普及というものを、単なる紙幣という観点ではなく、やはり沖縄は日本も含めて一つなんだという、そのことを、ある意味、世論を喚起する意味でも、二千円札の普及というものを見直していただきたいんですけれども、まず、その点に対する答弁をお願いしたいと思います。

岡田参考人 お答え申し上げます。

 二千円札の流通につきましては、小口決済手段の多様化、効率化を通じまして、国民の皆様の利便性の向上をもたらすものというふうに認識をしております。例えば、国民の皆様が支払いや受け取りをされる際に、お使いになる銀行券の枚数を節約するといった効果があるものと考えております。

 こうした中、日本銀行では、関係者と連携をいたしまして、流通促進のためのさまざまな取り組みを行ってきているところでございます。例えば、パンフレット等の作成、配布などを通じまして、二千円の広報を行ってきております。

 私どもでは、今後とも、二千円券を含めました日本銀行券の円滑な流通に努めてまいりたいというふうに考えております。

坂井副大臣 実は私も自分の地元で、ささやかながら二千円札を使うことを実践しております。

 ちなみに、両替は、衆議院の第一議員会館の両替機にしかこの辺はありませんので、私も、地元の銀行に行って二千円札に両替しようとしても、両替機に入っていないという状況でございます。

 確かに、普及していくのは難しいし、自分が実際に二千円札を使うときに、使える自動販売機も、最近ふえてはきましたけれども、実感としては半分程度というようなことでもございますので、日銀の方が御答弁されましたが、一緒に考えてまいりたいと思っております。

國場分科員 坂井副大臣そしてまた岡田発券局長、本当にありがとうございます。

 岡田局長、これは岡田局長の印鑑ですよね。だと思います。わかります。もちろん財布の中には二千円札が入っている、この場で準備してきたと思いますけれども、常にその心を大事にしていただきたいなと思います。

 しかし、現状としては、なかなか二千円札が普及していない、流通していないという実態があります。

 日本という国は、ある意味カードより現金に対する信仰が強いのか知りませんけれども、それが流通しているかと思いますが、二千円札がなかなか普及していない理由というものをまずお聞きしたいと思います。今の現状ですね。

岡田参考人 お答え申し上げます。

 二千円券の発行は、二〇〇〇年の七月に開始をいたしました。

 その後の発行高の推移でございますけれども、二〇〇〇年度末が一・二億枚、二〇〇一年度末が二・三億枚、二〇〇二年度末が四億枚、二〇〇三年度末は四・八億枚となりましたが、その後減少いたしまして、二〇一一年度末以降は一億枚程度で推移をしております。

 二千円券の発行高が伸びない背景でございますけれども、二のつくお金というものが日本ではなじみが薄く、その使い勝手のよさといったものがなかなか浸透していかないといったことが背景にあるのではないかというふうに考えております。

國場分科員 その上で、例えばATMでお金をおろすときに、また自動販売機を活用するときに、なかなか対応できていないという実態もあると思います。

 私はいつも、最初に二千円札を使うのは、浜松町の駅から赤坂の議員宿舎に、タクシーに乗って使うんですけれども、みんなびっくりします。大体、十何年ぶりに見たとか、中には一万円札と間違えておつりをたくさん出す方もいらっしゃって、もちろん二千円札ですということで訂正するんですけれども、本当に見たことがないという現実の状態があります。

 ですから、伊勢志摩サミットを契機に、この年を契機に、どうか二千円札のキャンペーン、できることをやっていただきたいんですけれども、具体的に何をしていただけますでしょうか、二千円札の普及のために。

岡田参考人 二千円札の発行に関しましては、繰り返しになりますけれども、広報などの手段を通じまして、これからも広報に努めてまいりたいと思っておりますし、また、二千円札を含めまして、日本銀行券の円滑な流通のために努力をしてまいりたいというふうに考えております。

國場分科員 今までの広報とか取り組みでは、利用量というものが激減しているという答弁がありました。ですから、そのままでは同じような状態が続いていきますので、二千円札の普及のためにどのような新たな取り組みができるのか、この点についてお答えください。

岡田参考人 二千円札の普及に関しましては、これまでも、関係者と連携しましていろいろな努力をしてきておるところでございます。

 今後とも、地道な努力を続けてまいりたいというふうに考えております。

國場分科員 申しわけありません、これは何か答弁を聞かないと、私、地元に帰れないものですから。

 今までの取り組みでは普及しないわけです。私も一生懸命自分で努力をしております。しかし、自分だけではなかなかできませんので、日本銀行、そしてまたこのサミットを契機に、そして今……(発言する者あり)そうですか、ありがとうございます。いろいろな取り組みで、これは政府が一丸となってやっていかなければいけないと思いますけれども、何か新しいことを始めるという、希望の持てるような答弁を一言ぐらい言ってもらえませんか。

岡田参考人 そうした先生御指摘の点も踏まえまして、二千円券の認知度が上がっていくように、これからも努力をしてまいりたいというふうに思っております。

國場分科員 ぜひともよろしくお願いします。

 続きまして、未婚、非婚の母子世帯に対する寡婦控除の適用についてお尋ねをしたいと思います。

 沖縄県は、出生率が日本で一番高い県ではありますけれども、相対的貧困率、特に離婚率も高い県でありますので、非常に深刻な情勢でございます。最近、子供の貧困というものが大きな社会問題、政治問題となっておりますが、中でも沖縄県が一番深刻な実態にある、私はこのような認識を持っております。

 きょうは野田先生もお見えでございますけれども、税調のときに野田先生の方からいつも示される一つの統計があります。

 OECDの国の中でも、三十四カ国ありまして、日本という国は唯一、六十五歳以上の人口が二五%を超えている国であります。その一方で、十五歳未満の、つまり若年の、若い人口がわずか一二%台しかいないという実態がありまして、それは今、日本とドイツしかありません。

 ドイツの方は、いろいろな政治課題を抱えつつも、移民政策等で、外国人労働者の活用で潜在成長率を引き上げるための努力をしているんですが、一方、日本の方は、日本政府も移民政策をとらないということを示しております。そうであれば、一人一人の全ての子供に対して、やはり日本の将来を担っていく宝として、何らかの、できることの全てをやっていく、私はそのことが大事だと考えております。

 もちろん、今母子世帯の中にも、死別の母子世帯や離婚の母子世帯、未婚、非婚の母子世帯といろいろな種類がありますけれども、その中でも、いろいろな事情の中で、結婚という今の民法の制度をたどることがなく子供を授かったお母さん、子供たちが今、大変経済的な困窮状態にあります。それは、寡婦控除が適用されることがないということなんです。

 今は死別の離婚の数より未婚、非婚の母子世帯の方が統計ではふえてきておりますので、寡婦控除の適用というものに対して今どのような状態になっているのか。それは国会でも何度かいろいろな方から質疑がされていると思いますけれども、最新の状況というものの報告をお願いしたいと思います。

坂井副大臣 寡婦控除についてのお尋ねでございました。

 平成二十八年度与党税制改正大綱において、家族のあり方にもかかわる事項であることや他の控除、配偶者控除とか扶養控除とかとの関係にも留意をしつつ、また、制度の趣旨も踏まえながら、所得税の諸控除のあり方の議論の中で検討を行うとされているところであります。

 未婚の母を含め、所得の低い人や子育て中の人に対する税制上の配慮のあり方については、平成二十八年度与党税制改正大綱に示されているとおり、所得税の諸控除のあり方の議論の中で検討を行うべきと考えておりまして、与党における検討も注視しつつ、検討を行ってまいりたいと考えております。

國場分科員 副大臣、ありがとうございます。

 寡婦控除というものは、寡婦という定義が所得税法に定義されている内容でありまして、これを改正することは極めて困難であることも理解をしております。

 一方、沖縄の方では、みなし寡婦控除ということで、これは、市町村が独自に寡婦とみなして、公営住宅に入居する際の優遇措置であるとか保育料であるとか、さまざまな取り組みを展開しております。

 これは全国的にも少しずつ広がってきていると思いますけれども、今、国土交通省の方が、公営住宅法に基づいて、母子世帯について記載される箇所は、通常の、未婚や寡婦というものの区別をなくすようにということで、国から地方自治体、地方公共団体への通知という形で、優遇措置の浸透を図る取り組みがなされていると聞いております。

 これを国土交通省のみならず、やはりそのようなみなし寡婦控除を地方公共団体の方にも、所得税法の改正ではなく、できることはあると思います。そういう点についてのお考えをお聞かせください。

坂井副大臣 地方創生やそれぞれの地方で自治を確立する上で、こういった工夫や取り組みというものが行われているということの一つだと思います。

 みなし寡婦控除は札幌や千葉や川崎などでも行われているということでございまして、こういうやり方、制度というものを紹介しつつ、各地域にも検討していっていただきたいと思っております。

國場分科員 今、子供の貧困対策に関する大綱の中でも、目的、理念の中で、子供の将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないように、貧困の連鎖が広がらないように対応し、教育の機会均等を図るとか、また、全ての子供たちが夢と希望を持って成長していけるような社会の実現を目指しという理念が含まれております。この中は、全ての子供という概念だと私は思います。

 子供たちの経済格差というものが世界で最も深刻な社会問題となり、もちろん自由主義社会ですから、格差が出ることはしようがないと私は思います。問題は、いろいろな事情の中で競争原理から残されている子供たちやその母子世帯のお母さんに対して政府が何ができるのか、その部分が非常に今問われているテーマだと私は思いますので、何とぞ、寡婦控除のみなしも含めて、未婚や非婚の母子世帯に対する対応というものを強く要望したいと思います。

 また、先ほど副大臣からも答弁が若干あったかと思いますけれども、昨年の自民党の税調の中で長期的な検討課題となっております、ベビーシッターの費用や認可外保育園料を特定支出控除の対象にしてほしいという点についてのお考えをお聞きしたいと思います。

 特に、私の地元の沖縄県は、待機児童の率が日本で一番深刻です。これは戦後の特異な保育の行政の一つの帰結なんですけれども、認可園より認可外の方がはるかに多いんですね。その中で、離婚率も高くて、子供の相対的貧困率も深刻なわけですから、先ほどのデータでも示したように、死別の母子世帯、離別の母子世帯、そしてまた未婚や非婚の母子世帯の中でも、未婚、非婚の母子世帯の方々への支援の一環としても、やはり認可外保育園の保育料やベビーシッターの費用というものを特定支出控除にしていただきたいんです。

 もちろんこれは自民党の税調というものが非常に重要な役割を果たしていくんですけれども、政府としてのお考えも答弁として求めたいと思いますので、よろしくお願いします。

坂井副大臣 若年層、低所得層に配慮する観点や子供を産み育てやすい環境を整備する観点から、税制の見直しを不断に行っていくということは重要であろうと思っておりますし、また、今指摘をされましたベビーシッターや無認可保育所に係る支出についての所得税控除、実は今回、厚労省からも要望が出ている内容でもございます。

 先ほど委員からも触れられましたが、与党の税制改正大綱において、要は検討するということになっております。さまざま、委員御指摘の論点も含めて、子育て支援に係る税制のあり方については、与党の検討も注視をしつつ、歳出面での対応との関係を整理しながら考えてまいりたいな、こう思っております。

 税の控除のみならず、児童扶養手当とかで、要は手当としての対策などもことしは入れておりますので、第二子、第三子の手当が倍増しているというようなことも踏まえてお考えいただければと思います。

國場分科員 ありがとうございます。

 続きまして、沖縄振興開発金融公庫の役割についてお尋ねをしたいと思います。

 ちょうど私は昭和四十七年生になりまして、沖縄が本土に復帰をした世代の生まれなんですね。ですが、私より一つ先輩方はドルを使っていた世代でもあり、沖縄に旅行、訪問するたびにパスポートも必要だったという、話には聞くんですが、私が、生まれたころから日本国憲法が適用される、沖縄の初めての環境の第一世代となっております。

 沖縄振興計画は十年スパンの計画なんですけれども、沖縄振興開発金融公庫は、政策金融の面で、沖縄の発展とともに歩んできた非常に大きな功績がある公庫であると我々は理解をしております。

 しかし、沖縄というところは、いろいろな、格差も含めて、今の子供の貧困も含めて、離島も、有人離島が三十九あるんですね。東西千キロ、南北四百キロと広大な海洋面積を持っているのは、その離島の島々に、いろいろな課題を抱えつつも、生活をしている日本国民がいるからである。そこに対する手当てというものも、振興計画や、沖縄振興開発金融公庫は、沖縄特有のさまざまな金融サービスも含めて貢献をしているわけでございます。

 特に、今、安倍政権になりまして、沖縄の位置づけというものを、単なる中央との格差の違いを埋めていくというテーマではなく、沖縄こそ、アジアと日本をつなぐかけ橋として、さらにはイノベーションの拠点として、日本経済の牽引役として、多くの可能性というものも凝縮をしているわけでございます。その可能性とさまざまな課題、矛盾というものが凝縮されている沖縄の中でこの政策金融公庫があるということは、非常に限られた金融資源しかない沖縄ですので、非常に大きな役割を負うようになってきていると思うんです。

 今、沖縄振興計画のちょうど折り返し地点に近づきつつあるこの時期に、改めて、この沖縄公庫の役割というものをどのように評価しているのか、その点についての答弁をお願いします。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 沖縄振興開発金融公庫につきましては、委員の御指摘のとおり、沖縄振興を金融面から支援するために、地域限定の政策金融機関としまして、沖縄の地域特性に応じてきめ細かく機動的な資金供給を行うことにより、国の財政措置と並び、車の両輪といたしまして重要な役割を果たし、これまでの沖縄振興を支えてきたところであると考えております。

 具体的には、沖縄公庫では、観光リゾート産業の振興や離島活性化、先ほど先生からも御指摘がありました子供の貧困問題など、沖縄の地域的な政策課題に応えるため独自の出融資制度を持っておりまして、その制度を活用しながら、地域に密着した政策金融の推進に取り組んでおります。

 今後とも、沖縄の地域的な課題を踏まえ、沖縄公庫の政策金融を通じ、沖縄振興にしっかり取り組んでまいりたいと考えております。

 以上です。

國場分科員 ありがとうございます。

 局長の答弁に本当に尽きると思います。特に、沖縄公庫というものは、日本公庫と同様の制度もありますけれども、沖縄の特有の地域的な諸課題に対応できるような、さまざまな独自制度というものも含まれております。

 いろいろなすぐれた制度がありますけれども、特に離島、過疎地域における、進学する際の教育資金の貸付利率の特例であるとか、やはりこれは経済格差の、親の経済所得によって、また、生まれた離島とか場所によって教育のチャンスを失わないような特別のさまざまな取り組みもしておりますので、どうかその公庫の理念というものを大事にしていきながら、今後とも沖縄振興の両輪として応援をしていただきたいなと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 続いて、スイッチOTC薬の控除の導入についてお尋ねをしたいと思います。

 今、日本の財政再建を考える際にも、どれだけ超高齢社会、超少子化に対応できるのか、このことが今の日本の財政の、二〇二〇年のプライマリーバランスの黒字化も含めて、大きなテーマであると考えております。

 これはマクロのレベルでは、医療費、年金、医療、介護、子育て支援、そういったものへのまさに最適化、適正化、効率化というものが求められてくると思うんですけれども、これをミクロの個々人に置きかえていきますと、どれだけ自分自身が自助努力によって、セルフメディケーションという概念もそうだと思いますが、安易に公的医療機関にかかるのではなく、自分自身の健康状態というものを絶えず意識して、そして極力公的医療機関にかかることがないような万全の注意を払っていくということに尽きると思いますが、別の言葉で置きかえますと、健康寿命と平均寿命とを縮める、そういう大きな役割もあると思います。

 今回のスイッチOTC薬の控除の導入に関して、いろいろな議論があったと思います。これを導入することによって受診の抑制につながるんじゃないのかとか、さらには、慢性の病などはみずからの判断ではなく医師の定期診断が必要となるわけでありますけれども、そういう患者さんに対しても過度の抑制を強いることになるんじゃないかとか、いろいろな課題もあったかと思いますが、やはり私は、これだけ日本全体の財政状況を考えたときに、そしてまた個々人が、日本の医療制度がすぐれているがゆえに、若干そこに依存し過ぎていたような側面があったかと思います。

 そこを、みずからの健康はみずからが責任を持つんだ、そういうような価値観の転換をもたらす第一歩が今回のスイッチOTC薬の控除の導入につながっていくと思いますけれども、この制度の意義や、そしてまた目指す理念というもの、私が半分ぐらい今しゃべったかもしれませんが、政府側としても、よろしくお願いします。

飯田政府参考人 お答えいたします。

 ただいま議員から御指摘がありましたように、我が国は、急速な少子高齢化、そういう意味で医療を取り巻く環境が大きく変化をしているところでございまして、健康寿命と平均寿命とを縮めるとか、国民の健康の保持、医療の効率的な提供ということが非常に重要になっていると厚生労働省としても認識をしております。

 御指摘のありましたスイッチOTC薬控除は、そういう観点からいたしましても、各種検診や予防接種を受けている、一定の取り組みをしている方、そういうことを対象にいたしまして、スイッチOTC薬を購入した場合に、その購入費用、年間十万円を限度としておりますが、一・二万円を超える部分について所得控除を受けられるというものでございます。

 厚生労働省としましても、本税制の活用により、今申し上げましたように、適切な健康管理のもとで、疾病の予防への取り組み、それからスイッチOTC薬の使用を促進していくことのようにセルフメディケーションを推進していくことで、医療需要の増大を抑制しつつ、医療費の適正化も図りつつ国民の健康を増進する効果があるというふうに考えておりまして、引き続きこういう取り組みを支援してまいりたいというふうに思っているところでございます。

 以上でございます。

國場分科員 飯田審議官、ありがとうございます。

 今の審議官の答弁の中では、セルフメディケーションの推進のためのスイッチOTC薬控除の創設によって、例えばどの程度の医療費の削減効果があるのかという部分は答弁に含まれていなかったような気がしますが、大体、概算でもいいんですけれども、これから導入される制度でありますが、試算等があればお聞かせください。

飯田政府参考人 委員御指摘ありましたように、医療費の削減という観点は非常に重要だというふうに思っておりますが、この税制の効果がどういうふうに直接、医療費、例えば診療費用でありますとか調剤に係る費用でありますとか、そういうのは個々のケースによってかなり異なるところがございまして、具体的試算という意味では非常に難しいというふうに考えておりますけれども、いずれにしましても、自主的取り組みを促進するという新たなアプローチの一歩であると思いますので、本税制を活用してそういうセルフメディケーションを支援して、医療費の適正化を図っていきたいというふうに思っているところでございます。

國場分科員 わかりました。

 これはある意味、国民に対する意識の改革というものも含まれていると思いますので、ぜひとも、この推進がうまくいくように、万全の取り組みをお願いしたいと思います。

 それでは、軽減税率についてお尋ねをしたいんですが、終わったそうなので、ちょっと質問ではないんですけれども、軽減税率は今、私も財務金融委員会に所属をしておりまして、低所得者への痛税感を緩和するか否かということで、いろいろな議論があります。

 しかし、私が思うのは、軽減額で見るのか、軽減率で見るのか、そこがすごく大きな一つの争点であると思いますし、なおかつ、来年の四月から導入が決まっている以上は、事業者や国民の負担がないような、その取り組みをいかにしていくのか、そのことが大切だと思いますので、いろいろな課題がありますし、いろいろな議論があります。しかし、低所得者の方々が安心してこの制度に対する万全の取り組みができるように、私も全力で頑張っていきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 きょうの質問の柱は、二千円札の話でありました。本当に、坂井副大臣や岡田局長も二千円札を使っているということがきょうわかって大変にうれしいですので、私もまた地元に帰って、日本国はやはりすばらしい国である、そういうふうにアピールしていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

小林(鷹)主査代理 これにて國場幸之助君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして財務省所管についての質疑は終了いたしました。

 午後一時に本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

菅原主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 外務省所管について政府から説明を聴取いたします。岸田外務大臣。

 ないの。ないんでしょう、岸田外務大臣となっているけれども。ないですね。

 それでは、早速、質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。武井俊輔君。

武井分科員 自民党の武井俊輔でございます。

 きょうは、貴重な機会をいただきました。また、日ごろ大変お世話になっております岸田外務大臣にこうして質問ができますことを大変光栄に思っております。どうぞよろしくお願いをいたします。

 さて、早速でございますが、第一問目でございます。

 私は宮崎県の出身でありますが、我が郷土の偉人でもございます、外務大臣を務めた小村寿太郎という人がおります。もうよく御存じかと思います。

 この小村寿太郎という人は、宮崎県、今の日南市に当たります飫肥藩という大変小さな藩の出身でありまして、また、家が非常に借金を抱えて大変苦労しながら、陸奥宗光に認められて身を立てたという人であります。関税自主権の回復等もそうですが、何よりも、やはりポーツマス条約の全権大使ということでございました。

 この小村寿太郎がポーツマス条約を締結して帰ってまいりますと、非常に歴史に名高い日比谷焼き討ち事件などもあったり、また、家が投石を受けたりとか、奥さんもそれで本当に精神的にも大変つらい目に遭われた、そういったようなこともあったわけであります。やはり時の世論というのは非常に激情的なものであったり、そしてまたメディアも、当時は非常に、英霊にわびよといったようなことで大変厳しいものであったわけですが、小村は一切そういった言いわけをせずに、外務大臣として職責を果たしていったわけであります。

 こういった意味では、今本当に、アジアをめぐる情勢等でも非常にさまざまな世論が国内、海外にもあるわけでありますけれども、外交というのは、そういったようなものを乗り越えて常に冷静に臨んでいかなければならないということを、改めて、小村の歴史を踏まえても感じるところが多いわけであります。

 まず、大臣にお伺いをいたしたいと思いますが、大臣は、小村寿太郎という人をどのように評価されているか、そしてまた、大臣の先輩として小村の生きざまというものをどのように感じておられるか、お伺いしたいと思います。

菅原主査 武井先生、ちょっとお持ちください。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

菅原主査 速記を起こしてください。

 外務省所管につきまして政府から説明を聴取いたしたいと思います。

 大変恐縮です。質問が始まっていながら、申しわけございません。

 岸田外務大臣。

岸田国務大臣 平成二十八年度外務省所管予算案について概要を説明いたします。

 平成二十八年度一般会計予算案において、外務省は七千百四十億一千百四十七万円を計上しています。これを前年度と比較いたしますと、約四・二%の増額となっております。

 このうち外務省所管のODA予算は、対前年度比約二・四%の増額の四千三百四十一億八千六百八十四万九千円となっており、六年連続の増額となっております。

 平成二十八年度予算案の作成に当たっては、国際協調主義に基づく積極的平和主義を具体的に実践する外交を引き続き展開していくとの考えのもと、G7伊勢志摩サミットの開催等を見据え、以下申し上げる四本の柱を掲げ、めり張りをつけた上で必要な予算を計上いたしました。

 第一の柱は、在外邦人の安全対策強化及び情報収集機能強化です。シリアにおける邦人殺害テロ事件等を踏まえ、日本人学校の安全対策支援の拡充等、在外邦人の安全対策強化のための施策を強力に推進していきます。

 第二の柱は、戦略的対外発信です。今年度に引き続き、日本の正しい姿の発信、日本の多様な魅力のさらなる発信、親日派、知日派の育成、在外公館における発信の強化等のための必要経費を計上しております。

 第三の柱は、積極的平和主義に基づくグローバルな課題への貢献です。平和構築、女性、軍縮・不拡散、開発、環境・気候変動といったグローバルな課題に積極的に取り組みます。

 第四の柱は、経済外交、地方創生です。経済連携のさらなる推進を初めとして、地方を含む日本経済の再生と発展、日本に有利な国際経済環境の創出に資する取り組みを強化します。

 また、これらの諸課題を実現するために、外交実施体制の抜本的な強化とODAの飛躍的な拡充に取り組みます。外交実施体制については、欧米主要先進国並みの体制の実現を目指し、在外公館五公館の新設と定員九十名の純増を含めた必要経費を計上しております。

 ODAについては、開発協力大綱のもとで、国益に資する開発協力を一層戦略的に実施していきます。

 以上が、平成二十八年度外務省所管予算案の概要でございます。

 菅原主査を初め、委員各位の御支援と御協力を心からお願い申し上げます。

 なお、時間の関係もございますので、主査におかれましては、お手元に配付しております印刷物を会議録に掲載されますようお願いを申し上げます。

 以上です。

菅原主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま岸田外務大臣から申し出がありましたとおり、外務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

菅原主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

菅原主査 以上をもちまして外務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

菅原主査 ここで、大変恐縮ながら、また質疑に入らせていただければと思います。

 質問いただいたので、大臣、答弁よろしいですか。

岸田国務大臣 小村寿太郎外務大臣について御質問をいただきました。

 小村大臣は、第十八代と二十三代の外務大臣であったと承知をしております。ちなみに、私が百四十三代目と百四十四代目だと聞いております。

 委員御指摘のように、ポーツマス講和条約あるいは関税自主権の回復などに取り組まれたわけですが、あわせて、日露戦争前の日英同盟の締結などにおいても大きな功績を上げられ、評価されたと承知をしております。

 そして、こうした取り組みの中で日比谷の焼き討ち事件等を経験する中で、決して言いわけをされなかった、こういった御指摘もありました。

 私も、物の本で読んだこととして、小村寿太郎外務大臣、言いわけをしないということのあらわれでしょうか、決して日記をつけなかったというお話についても聞いております。しっかり職務に努め、評価は他人に任せるということであるかと思います。

 明治期における大変大きな功績を残された外務大臣であったと認識しておりますし、委員の郷土宮崎においても大きな尊敬を集めておられることと存じます。

 以上です。

武井分科員 ありがとうございます。

 宮崎県も毎年、小村寿太郎国際塾みたいな形で、外務省にもいろいろ宮崎の子供たちがお邪魔したりとか、いろいろな小村の顕彰といったようなことも取り組んでおるんですが、やはり日本外交においては大変大きな役割を果たした方であるわけでございます。

 外務省にこれは一つお願いでございますけれども、外務省の敷地に行きますと、陸奥宗光先生の像なんというのがあるわけです。ぜひ小村寿太郎も、別に像をつくってくれということではないんですが、いろいろとまた外務省の中で、改めてこの役割について、さまざまな顕彰のあり方というものをお考えいただきたいなと思っております。

 やはり世論に、先ほど日記のお話もありましたけれども、本当に厳しい中、小村がこの日本において果たした役割というのを改めて、今こういう厳しい国際情勢だからこそ、考えることも多々ございます。どうぞよろしくお願いしたいと思います。

 さて、自民党が政権に復帰をしまして三年三カ月なんなんというところでございます。私ども自民党がいわゆる下野をしていたという時期とほぼ同じようになってきたわけでございます。岸田外務大臣は、その間一貫して外務大臣を続けてこられたわけでございます。

 外交というのは、今の現状の課題解決ということもそうですけれども、常にやはり歴史の評価を受けるというものでもあろうかと思います。

 外務大臣も会長でいらっしゃいますが、私ども宏池会の中興の祖であります大平正芳先生、本人もいろいろなことを書かれましたし、著作もあれば、いろいろな評価の本も多数あるわけですけれども、大平先生の書籍、また御本人等を含めても、やはり外務大臣であったときのさまざまな交渉、また、外務大臣としての判断というものが非常に大きく書かれているわけでありまして、そういった意味では、外交というものをつかさどってきたことへの御本人の思いの強さということも改めて感じるわけであります。

 そういった意味で、これだけ時間もたってきておるわけでございますから、岸田外交というものをどう整理してといいますか意識してこれから臨んでいくのかということも、実績もこれだけ積み重なってきているわけですから、大変重要ではないかと考えております。

 昨年の日韓合意にいたしましても、もちろんこれは安倍政権の地球儀を俯瞰する外交、そしてまた非常にバランス感覚のある外交の中であるわけですけれども、私は、やはり岸田外務大臣の存在というものは大変大きかったというふうに思っております。

 これは岸田外務大臣の後援会の季刊誌ですか、ホームページにありましたので、ちょっと見させていただきました。

 ここに、今の日本の立場と責任は、一国だけとの関係を考えればよいのではなく、それが二国間外交の場であったとしても常に国際社会を意識しての外交に努める必要がある、外務大臣はこういった思いを書かれていらっしゃるわけです。

 まさにこういったバランス感覚、そしてまた、二国間だけではなく、それが全体としてどう影響するかといったようなことも考えながら、先ほどの小村寿太郎ではありませんが、いろいろな意見がありながら、それを乗り越えていく。まさにそういった岸田外交のスタンスで、そしてまた、その一つの真骨頂のあらわれであったのではないかと思っておるわけでございます。

 そういった意味で、岸田外交というものを、哲学として何を残して、そしてまた、どういう思いで、何を伝えていこうと。今はまだ、もちろん職責アイ・エヌ・ジーであるわけですけれども、どういった思いで臨んでおられるか、ぜひお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 私も、外務大臣を三年二カ月務めさせていただいています。その間、百四カ国の外務大臣と二百五十回近い外相会談を行うことがありました。

 その中で心がけてきたことですが、まず、基本として、私は、日本外交の三本柱として、我が国外交の基軸であります日米同盟の強化、近隣諸国との関係推進、そして我が国の経済再生に資する経済外交の推進、この三つを掲げさせていただきました。この日本外交の三本柱を中心に日本の国益を増進する、これがまず大事だということを申し上げてきました。

 しかし、あわせて、この三本柱を中心に国益を増進するだけでも日本の外交は不十分だということも申し上げてきました。こうした三本柱を中心に国益を増進することとあわせて、グローバルな課題、中東ですとか軍縮・不拡散ですとか、気候変動ですとか感染症ですとか、こうした国際社会のグローバルな課題にも日本はしっかり汗をかく、そのことが日本の信頼性につながり、そして日本の存在感につながり、ひいては日本の国益にもつながってくる。こうした考え方のもとに、グローバルな課題において汗をかくことも重要だ、こういったことで外交に取り組んでまいりました。

 委員が御指摘になられましたように、地球儀を俯瞰する外交、全体のバランスも大事だと思っておりますし、そして加えて、特に重要であると考えますこと、日本の国際環境を安定させるために大事だと思いますのは、近隣諸国との関係であります。中国や韓国との関係をもしっかり安定させなければならない。そういった中にあって、御指摘の、昨年十二月の慰安婦問題に関する日韓合意も意義があったというふうに考えているところでございます。

 ぜひそういった思いで、しっかり引き続き外交に取り組んでいきたいと存じます。

 評価は後世に、また他の方々にお任せをいたします。

武井分科員 ありがとうございます。

 もちろん評価は歴史が判断するものではありますけれども、こういった岸田外務大臣の非常にバランス感覚のある外交への取り組みというものは、やはり安倍政権、安倍総理がいらっしゃって、また岸田外務大臣がいらっしゃって、まさに外交がこの両輪で、またそれが本当に日本の今の地位を高めているということになっている、改めてそういった思いを強くしておるところでございます。またぜひとも、今後ともいろいろな発信をお願いしたいと思います。

 さて、去年、大変厳しい議論を経まして平和安全法制が成立をいたしたわけであります。私も委員でございましたので、大臣もさまざまな答弁で大変御苦労があったことと思います。私は、現行憲法下においてこの法案が成立したということ、これはこれで大変重いことだと思っております。

 もちろん我が党でも憲法改正の議論というのは当然進んでいるわけでありますし、時代に応じた改正というものは必要であろうと考えるわけですけれども、一方では、やはり一部保守派と言われるような人たちの中では、現行憲法、なかんずく九条が日本をだめにしているんだみたいな、非常に激しい意見も聞かれるわけであります。

 ただ、東南アジア、先ほど近隣諸国のお話もありましたけれども、日本が非常に高い評価を受けることに、やはり日本の戦後の平和国家としての歩みというものが大変大きかったというふうに思っております。

 そういった意味で、これからの議論はまたこれからあるわけですけれども、外交において、また近隣諸国、また世界との関係において現行憲法の果たしてきた役割みたいなものを、実際に外交の現場の最前線にいらっしゃる大臣としてどのようにお感じになっておられるか、またこられてきたか、お伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 我が国は、かつての大戦の大きな反省に基づいて、戦後、平和国家としての誓いを立て、そして平和国家として歩んできました。今日までの戦後の我が国の歩みは高く評価されてきたと思いますし、今、実際高い評価を得ていると思っています。

 こうした我が国の平和国家としての歩みを形として示す上において、我が国の平和憲法と言われる憲法は役割を果たしてきたと私は思っています。こうした平和憲法の存在、役割も念頭に、また今後、未来に向けてさまざまな憲法議論も行っていかなければならない、このように考えます。

武井分科員 ありがとうございました。

 ですから、本当に、今お話がまさにあったとおり、大きな役割を果たしてきたということは、私たちは大変重く受けとめなければいけない、今の大臣のお言葉を大変重く受けとめなければいけないと思っております。そういった思いを踏まえた上でこれから議論もしていかなければいけないということも改めて感じるわけであります。

 続きまして、ヘイトスピーチについてお伺いをしたいと思います。

 これは一義的には法務省が所管でありますし、法務省がいろいろな対応もしているわけであります。今、大阪府での条例化というような動きもあるわけでありますし、安倍総理も明確に、こういったようなことは我々自身がみずからを辱めている、これは予算委員会の答弁であったかと思いますが、そういったようなことも述べておられるわけであります。

 しかし一方で、書店なんかに行きますと、中国とか韓国のことをここまで書けるのかみたいな、嫌韓本というのがあるんですかね、嫌韓、何とか韓と、よくこんな言葉を持ってくるなみたいなのが並んでいるわけであります。そういった意味では、昨年日韓合意があったわけでありますけれども、ああいったような動きとか、また一部の雑誌なんかを見ても非常に挑発的な言葉も並んだりするわけでありまして、やはり一抹の不安を感じるというのも事実であります。

 もちろん、これは憲法で自由が保障されているわけですから、それを政府がいいとか悪いとかと言えないというのはそのとおりでもあるわけでございますけれども、やはり一方で、国交を前に、まさにさまざまな連立方程式を解くように進めていかれる中で、こういったようなことがあるのは大変残念だという思いをいたしております。

 そういった意味で、まさに日本の外交の責任者として、こういったようなこと、まさに総理の弁をかりれば、非常にみずからを辱めているということであろうかと思いますけれども、外務省として、こういったヘイトスピーチ等についてどのようにお感じになっていらっしゃるか、また、どのようなことを外交の中で発信していく必要があるのか、していくべきであるのか、見解をお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 我が国は、外交を進めるに当たって、自由、民主主義、あるいは基本的人権、さらには法の支配、こうした基本的な価値を重視しながら外交を進めてきました。これからも、人権分野等において積極的な役割を果たすよう、しっかり取り組んでいきたいと考えます。

 そういった立場から考えますと、御指摘のヘイトスピーチは、一部の国ですとか一部の民族を排除しようとするような内容が含まれております。その点は大変遺憾なことであると考えます。こうした態度はあってはならないのではないかと私は考えます。

武井分科員 ありがとうございます。

 大臣からもそういったお話をいただきました。まさに思いは共通であるかと思いますが、そういったようなことは本当に、国内そしてまた外交的にもやはり望ましくないんだということは、これまた法務省等々とも連携して、さまざまな発信また啓発を外務省としてもぜひお考えいただきたいとお願いしたいと思います。

 それから、ちょっと別にかわりますけれども、実は昨年、ミャンマーに行ってまいりました。大臣も二回ほど大臣になってから行かれたということで、御案内のとおり、今大変急速な発展をいたしておりまして、アジアのラストフロンティアなどというふうに言われておるわけであります。

 ミャンマーもいろいろな課題、何よりも政権がかわったとかということがあるわけですけれども、例えば少子高齢化なんというのも日本よりも急速に進んでいるといったことで、実は介護の現場なんかも見させていただいたんですが、大変衝撃を受けました。水準も大変低いということで、何か看護師さんよりもお医者さんの方が多いとか、私たちとしては常識で考えられないような、これからそういう非常に大きな困難があろう。そういう意味では、まだまだ日本が果たすべき役割というものがこのミャンマーという国にたくさんあるんだなということを改めて感じてまいりました。

 私なんかは個人的には鉄道が好きなものですから、行くと、昔の日本の国鉄とかで走っていた車両なんかがたくさんあって、同じ絵柄で走っているんですね。何で色を塗らないんだと言うと、いやいや、日本の絵柄で走っているのが価値があるんだ、これが信頼なんだと。改めて、そういった意味で、まさに日本が培ってきた信頼というものは、この国に、本当に国民の皆さんに感じていただいているんだなということを感じたりもしてきたわけであります。

 そういった意味で、ミャンマーは、御案内のとおり、ちょうど行ったときは選挙の真っただ中であったわけですけれども、政権がかわって、一部にはいろいろと不安に感じておられる方もいらっしゃったりするわけですけれども、ミャンマーがこのような形で大きく政権がかわったことで、いろいろと投資等も含めて不安にならないようにということは努めていかなければいけないと思うんです。

 そういったミャンマーの政治体制といいますか、政権の交代というものの与える影響、そしてまた、今、非常にいい流れはあると思いますので、しっかりと、その辺に水を差さないような取り組みが必要ではないかと思いますが、見解を求めます。

大菅政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、ミャンマーでは、昨年の十一月に開催されました総選挙におきまして、アウン・サン・スー・チー議長が率います国民民主連盟、NLDが過半数の議席を獲得いたしました。本年三月末にはNLDによる新政権が発足する、こういった見通しでございます。

 今回の選挙がおおむね自由かつ公正に実施されましたことは、現政権、テイン・セイン大統領が進めてこられた政治改革が大きな成果を上げたということの証左でございまして、我が国としても高く評価をしておるところでございます。こういったことは、昨年十一月、マレーシアで行われましたASEAN関連首脳会議の機会にも、安倍総理からテイン・セイン大統領に直接お伝えしたところでございます。

 現在、選挙に勝ちましたNLDと現政権及び国軍の間で円滑な政権移譲に向けた協議が行われている状況でございます。我が国としましては、円滑に政権交代が行われ、新たにできますNLD政権のもとで、さらにミャンマーの民主化と諸改革が進展することを期待しております。

 ごく簡単に我が国の対応を御紹介させていただきたいと思います。

 まず第一に、昨年の選挙に際しまして、笹川陽平ミャンマー国民和解担当日本政府代表を団長といたします選挙監視団をミャンマーに派遣いたしました。またその後も、現政権や国軍に対して、円滑な政権移譲の重要性を訴えてきております。一月下旬に来日しましたワナ・マウン・ルイン外務大臣に対しましても、岸田大臣からそういった働きかけをしたところでございます。

 第二に、今後我が国としては、これからできますNLD新政権を全力で支援していくという方針でございます。昨年、選挙の直後に、十一月に訪日いたしました、我が政府が招聘いたしましたニャン・ウィンNLDスポークスマンに対して、それから本年一月に来日しましたNLDの経済委員会一行、こういった機会に、岸田大臣からも、こうした我が国の姿勢、すなわち新政権を全面的に支援していくということを伝達しておるところでございます。

 また、現地の大使館レベルでも、NLDの関係者との間で頻繁な対話を行っておるところでございます。

武井分科員 非常に精力的に取り組んでいただいていることはよく承知をしているわけですけれども、ただ、いかんせん、アウン・サン・スー・チーさんは大統領には法的にもなれない、憲法上なれないというようなこともあって、権力の移行ということでもいろいろな不安も一部にあるようですから、ぜひその辺は遺漏のないように取り組んでいただきたいと思います。

 私はもともと、議員になる前は観光業出身でございましたので、観光の関係者の皆さんともお話をしまして、ちょっと資料を一枚お出ししています。

 これは自分で行って撮ってきたのだったらいいんですけれども、ちょっと写真は手に入れたものでありますが、これはガパリビーチという海岸です。実は、ミャンマーというところは観光資源に大変恵まれていまして、海のきれいさでいっても、これは本当に東南アジアの中でも屈指じゃないかというような、非常にすばらしいところであります。

 ただ、見ていただいてもわかるとおり、大変のどかで、のどかでというか、何もないというような感じであります。今、少しずつ観光開発も進んでいるようでありますけれども、やはりミャンマーの皆さんからすると、このすばらしい資源をしっかりと観光地として日本の皆さんにも知っていただきたいというようなことで、非常に強くお話を聞きます。例えば東南アジアの、タイのプーケットであるとか、ペナンであるとかピピ島であるとか、いろいろなところがあるわけですけれども、客観的に見て、それにまさるとも劣らないような非常にすばらしいところであるかと思うんです。

 観光庁というのはどうしても、日本に来てもらうというようなところでやるのが役所の仕事でございまして、そういった意味で、やはりこのミャンマーの振興という意味で、観光をしっかりと応援していくということは大変大事なことではないかと思うんです。外務省としてもぜひ積極的に取り組みをしていただきたいと思うんですが、見解を求めます。

大菅政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、ミャンマーには、外国人にも人気のガパリビーチ、それから世界的にも大変著名な仏教遺跡がございますバガン遺跡群等、豊かな観光資源がございます。現在のミャンマー政府も、ホテル・観光省という役所を置きまして、ミャンマーへの外国人観光客の誘致に熱心に取り組んでいるところと承知しております。

 我が国としましては、この仏教遺跡が存在いたしますバガン市を対象に、観光開発の体制整備、それから観光人材育成といった分野で技術協力を実施しているところでございます。この結果を踏まえて、バガン市の観光振興のための戦略、計画をまとめたバガン観光開発計画、こういったものを作成する予定としております。

武井分科員 これは本当に東南アジア屈指のリゾート地になれる素材も、また仏教遺跡も含め、たくさんあるなというふうに思っております。日本に非常に期待をされている部分が大きいと肌で感じてまいりましたので、ぜひ引き続きよろしくお願いしたいと思います。

 最後にいたしますが、実は私、宮崎出身ですが、地元出身の外務省の職員の方というのがたくさんいらっしゃって、特に若い人、大変優秀な方がいらっしゃる。以前イラクで亡くなられた井ノ上一等書記官は宮崎出身であったわけでありますけれども、本当に日本の国益をかけて、郷土の仲間もたくさん頑張っているんだなということを感じるわけであります。

 今、今度、十八歳選挙権等もあって、若い人たちにどう国のこととかに関心を持っていただくかということを改めて感じる機会が多いんですけれども、そういった中で、やはり地元の高校生とか若い人たちに、特に外務省の人、若い外交官とか世代の近い人たちが直接話をしていくというのは、本当に、モチベーションといいますか、国のことを考えるであるとか、また、今、内向きだといったような批判も一部にあったりするわけですけれども、そういった意味で、国際的な視座を養うという意味でも大変有益なことだというふうに思っております。

 外務省として、こういったようなことにより積極的に、若い外務省の外交官、また官僚の皆さんに、それぞれ地元に帰ってもいろいろな発信をしていただいて、意見交換していただく。国益、また外交に対して理解いただくという意味でも大変重要ではないかと思うんですが、そういった取り組みについて外務省としてどのようにお考えか、お伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 高校生初め若い方々に外交や国際問題に関心を持っていただくことは、大変重要だと考えています。

 その中で、外務省としましては、外務省から人を派遣する取り組みとしましては、平成七年度から、外務省の若手職員を高校等に派遣して、そして国際情勢や外務省の役割について職員自身の経験も踏まえて話をさせていただく、こうした高校講座という取り組みを行っています。平成二十六年度で四万二千人を対象に実施をいたしました。

 また一方、外務省に来ていただく取り組みとしましては、平成十六年度から、小中高校生を対象にして小中高生の外務省訪問という事業を実施しておりまして、平成二十六年度は約一千五百名の方に参加をしていただきました。

 そして、先ほど委員の方から少し御紹介がありましたが、お地元の宮崎県の日南市教育委員会が、めざせ小村寿太郎国際塾という取り組みをしておられます。こうした取り組みにも外務省として協力をさせていただいている。

 こうした取り組みをさせていただいている次第でございます。引き続き、積極的に取り組んでいきたいと考えます。

武井分科員 非常に取り組みがあるわけですけれども、なかなか知名度として、まだまだ知られていない部分が多いな、また、来られる学校とかもちょっと決まっているようなところもあるような話も聞きますので、ぜひ、より幅広く、多くの皆さんに告知をしていただきたいと思います。

 岸田外交のますますの深化と発展を心から願いまして、質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

菅原主査 これにて武井俊輔君の質疑は終了いたしました。

 次に、大平喜信君。

大平分科員 日本共産党の大平喜信です。

 私の地元、中国地方には、山口県の岩国市に、沖縄県以外で唯一のアメリカ海兵隊の基地があります。きょうは、岩国基地で目の前に迫っている艦載機の移駐の問題を中心に質問いたします。

 米軍岩国基地では、一九九七年から二〇〇七年にかけて、沖合二百十三ヘクタールを埋め立てて、滑走路を海側に一キロ移設する工事、いわゆる沖合移設事業が行われ、二〇一〇年五月から新滑走路の運用が始まっております。

 防衛省に確認ですけれども、滑走路沖合移設事業の目的は何だったんでしょうか。

谷井政府参考人 お答えいたします。

 岩国飛行場につきましては、同飛行場の北側に石油コンビナート等の工場群があり、運用上及び安全上の大きな制約を受けてきたこと、また、市街地が近接し、騒音問題が生じていたことから、昭和四十六年以降、累次にわたって山口県あるいは岩国市から滑走路の沖合移設を強く要望されておったところでございます。

 このような状況を受けまして、同飛行場の運用上、安全上及び騒音上の問題を解決し、同飛行場の安定的な使用を図るため、滑走路を沖合へ千メートル移設を行ったところでございます。

大平分科員 滑走路の沖合移設は、安全上、騒音上の問題解決のために行われました。住民の皆さんも、これで少しは騒音の被害が軽減するのではないかと期待もいたしました。しかし、実際はどうか。周辺住民の皆さんは、私は直接伺ってお話を伺いましたが、沖合移設後もほとんど騒音は変わらないと怒りをあらわにしておられました。

 二〇一〇年から始まったこの新滑走路の運用によって、騒音問題は改善されたんでしょうか。

谷井政府参考人 お答えいたします。

 防衛省といたしましては、岩国飛行場及び同飛行場周辺の二十カ所におきまして航空機の騒音自動測定装置を設置しております。それによりまして騒音状況の把握に努めているところでございます。

 その測定結果によりますれば、新滑走路への移設後一年間と移設前の三年間を比較すると、WECPNL、これは航空機騒音のうるささをあらわす評価値でございますけれども、この値が、一部の島嶼部では横ばいまたは若干の増加の傾向が見られていますものの、全体としてはおおむね減少傾向となっており、同飛行場の騒音の軽減が図られているものというふうに考えております。

大平分科員 増加もあるんですよね。この間、大幅に改善されているといいながら、沖合移設を行った後も全く改善されていない。

 実際に、私は、基地から約一・五キロの岩国市尾津町に住む六十代男性のお宅を訪ねてお話を伺いました。その方は、沖合移設後から騒音の記録を手のひらサイズのノートにつけ続けておられました。その記録を私も読ませていただきました。少し御紹介したいと思うんですね。

 三月十三日火曜日二十一時四十二分、雷鳴のような轟音。電話の会話を遮り、テレビの音をかき消すほどの大きさ。五月二十一日木曜日十三時四十分、岩国駅上空、縦横無尽、時折大音響。十一月十六日月曜日朝四時三十分、プロペラ機のエンジン音で目が覚める。大きな音ではないが、脳に響く。

 こうした記録がずっと続いて、今やそのノートも九冊目になっていましたよ。

 また、別の方。国が住宅防音工事の補助をしている指定区域内の旭町に住む七十代の男性は、沖合移設後も威圧感ある軍用機特有の音の聞こえ方はほぼ変わらないとお話をされ、膵臓がんを患って自宅療養をしていたときも、横になっても寝つけず、安静とはほど遠く苦痛だったと述べ、今も治療を続けておられます。

 岸田大臣にお伺いしたいんですけれども、大臣の地元、私の地元でもある広島のすぐお隣の岩国でこうした実態が起きている。大臣も大幅に改善がされているとお考えでしょうか。

岸田国務大臣 まず、こうした騒音の問題は地元の皆様方にとりまして大変大きな問題であり、深刻な問題であると考えます。そうした問題意識があるからこそ、岩国の飛行場の滑走路の沖合移設事業が行われたと認識をしております。

 こうした移設事業が行われるなど、さまざまな動き、取り組みを通じまして、全体として地元の皆様方の不安にも応えるべく、引き続き努力をしていかなければならない課題であると認識をいたします。

大平分科員 資料を配付しました。一枚目をごらんください。

 これは、岩国市に寄せられた航空機騒音の年ごとの苦情件数のグラフです。新滑走路供用前の三年間の年平均が千五百六十五件、新滑走路供用後三年間の年平均が千七百八十二件。苦情件数で見れば、むしろ沖合移設後の方が多くなっているのであります。二〇一三年度単年で見れば、苦情件数は二千件を超え、過去十年で見ても最高の件数となっております。この一件一件に周辺住民の耐えがたい苦痛が込められているんだということを私ははっきり述べておきたいと思います。

 今でさえこうした状況であるのに、その上に、来年、二〇一七年にも厚木基地から空母艦載機が移駐されようとしております。

 そもそも、沖合移設工事が行われている二〇〇五年に突然艦載機移駐計画が発表され、まさに住民の皆さんにとっては寝耳に水でした。これ以上の基地被害は絶対に認められないと猛反対をし、二〇〇六年には艦載機移駐の是非を問う住民投票が行われ、投票者の九割近く、岩国市内全有権者の過半数が艦載機移駐に反対と明確な意思を表明されました。

 地元の住民がこうした意思を示しているのに、なぜ艦載機を岩国に強行しようとしているのか、大臣、お答えください。

岸田国務大臣 空母艦載機の移駐先として岩国飛行場が選定された理由ですが、まず一つは、先ほど来質疑の中で出ておりますように、岩国飛行場においては、騒音あるいは安全上の問題を改善するために滑走路の沖合移設事業が行われました。

 そして、岩国におきましては、米軍の空中給油機KC130をローテーションで海上自衛隊鹿屋基地及びグアムに展開して訓練等を実施する措置を講じることによって、空母艦載機の移駐が行われたとしても現状より著しく悪化することはない、こういった判断があったものと承知をしています。

 そして、あわせて、抑止力維持の観点から、統合的な米海軍そして海兵隊の航空戦力を同一基地に集約し柔軟な運用を可能にする、こういった点も重視されたと承知をしています。

 我が国及びアジア太平洋地域における米軍の抑止力を維持するため、米空母及びその艦載機の長期にわたる前方展開能力を確保するという意義もあると聞いております。

 今申し上げましたような諸点を勘案し、岩国飛行場が選定されたものと認識をしております。

大平分科員 今の大臣の答弁は、結局、沖合移設をして被害が軽減されたんだから、多少機数や騒音がふえても沖合移設前の状況と同じぐらいなんだから我慢せよ、そのように、周辺住民の皆さんの気持ちを逆なでするような答弁だと言わなければなりません。

 沖合移設は騒音被害の軽減のためだと言いながら、気がつけば新たな移駐計画によって米軍機百三十機近くが配備される巨大出撃基地にするという計画となっており、まさに住民の皆さんからすれば、だまし討ちそのものであると言わなければなりません。

 改めて防衛省に確認しますが、二〇〇六年の2プラス2最終報告で岩国基地に移駐、配備されるとされた機種と機数をお答えください。

谷井政府参考人 お答えいたします。

 厚木飛行場から岩国飛行場への空母艦載機の移駐については、平成十八年の日米ロードマップにおいて、FA18、EA6B、E2C及びC2が移駐することを確認しており、移駐機数につきましては、当時米側から五十九機の航空機が岩国飛行場へ移駐するとの説明を受けております。

大平分科員 その移駐によってどのぐらいの騒音が起こるのか。

 現在、住民に説明をしている騒音予測コンター図で想定をしている一日の標準飛行回数は何回ですか。

谷井政府参考人 防衛省におきましては、自衛隊の飛行場では、民間空港とは異なりまして、日々の飛行回数の変動が大きいという事情がございます。そのため、飛行回数につきましては、一年間の飛行回数に時間帯による重みづけを行った後、一日の飛行回数の多い方から数えて一〇%、三十六日目でございますけれども、に当たる日の飛行回数を一日の標準飛行回数としてWECPNLを算出しております。

 平成十八年に作成いたしました岩国飛行場における航空機騒音予測コンターにおける米軍再編後の標準飛行回数につきましては、三百八十九回と予想しております。

大平分科員 今の答弁をまとめた資料を配付しております。二枚目につけております。しかし、ここで示されている標準飛行回数から、既に現在、幾つも変更点があります。

 右下の黄色い囲みのところ、岩国から厚木へ移駐とされている自衛隊機P3などの十七機は岩国にとどまっているので、五十六回減るとなっている、この回数は減らない。右上の緑の囲み、普天間から岩国へ移駐とされているKC130は、ここでは十二機とされていますが、十五機へとふえています。間違いありませんね。

谷井政府参考人 お答えいたします。

 平成十八年当時と比較をいたしますと、まず、海上自衛隊につきましては、地元の御要望も踏まえまして、EP3、OP3、UP3及びU36Aの飛行隊が岩国飛行場に残留したことにより、合計十七機が増加しております。また、KC130空中給油機につきましては、米側の運用上の理由により、普天間飛行場から岩国飛行場への移駐機数が十二機から十五機に変更されたことから、三機が増加しております。

大平分科員 その二つの変更を加味しますと、ここでもともと防衛省が想定されていた、再編後三百八十九回とされている一日の標準飛行回数はどのぐらい増加することになりますか。

谷井政府参考人 お答えいたします。

 平成十八年に作成いたしました岩国飛行場に係る航空機騒音予測コンターにおいて予測した米軍再編後の標準飛行回数につきましては、岩国飛行場から厚木飛行場へ移駐する海上自衛隊の岩国残留により、五十六回増加することになります。また、普天間飛行場から岩国飛行場へ移駐したKC130の機数が十二機から十五機に増加したことから、五回増加することになります。

 したがって、米軍再編後の標準飛行回数につきましては合計六十一回の増加ということになります。

大平分科員 六十一回ふえて、約四百五十回になります。一日の飛行回数が三百八十九回から四百五十回へと増大します。大変な増大ぶりです。

 それだけではありません。さらに、厚木から移駐される予定の、この表では百三十回と書いてある、現在五十九機と言われている艦載機の機種と機数に変わりはありませんか。

谷井政府参考人 お答えいたします。

 厚木飛行場から岩国飛行場への空母艦載機の移駐につきましては、平成十八年の日米ロードマップにおいてFA18、EA6B、E2C及びC2が移駐することを確認しておりまして、機数につきましては五十九機が移駐するというふうに説明を受けています。

 一方、空母艦載機の移駐につきましては、米側とさまざまな協議を行っておるところでございまして、移駐する航空機の機数や機種につきましては、米側の運用上により変更があり得るということでございますので、その協議の中で、移駐する前の適切な時期までに米側に確認してまいりたい、こういうふうに考えております。

大平分科員 変更はあり得るという御答弁でした。

 しかし、先ほど答弁にもありましたが、この間のアメリカの運用の変更によって、現在厚木基地に配備されている移駐予定とされていた機種、機数もですね、既に変わっております。

 例えば、この表にもありますけれども、FA18ホーネットは現在全てFA18スーパーホーネットにかわっており、さらに、EA6Bプラウラーも、FA18スーパーホーネットをベースにしたEA18Gグラウラーにかわっている。間違いありませんね。

谷井政府参考人 厚木におけます空母艦載機の航空機につきましては、FA18スーパーホーネットとEA18Gというものにかわっておるということでございます。

大平分科員 間違いないとの御答弁でした。

 スーパーホーネットは、今現在岩国市民を騒音被害で苦しめているホーネットと比べても、騒音の被害は大きくなる、音の大きな戦闘機なんですね。つまり、防衛省がつくられて今住民に説明をされておられるこの騒音予測コンター図、あなたたちが当初の想定でつくったこの表から既に大きく変わっている、ふえている、大きくなっているんですね。

 機種と機数だけではありません。騒音の予測をするためには、さらに米軍機の飛行経路も重要な要素となります。

 ここで示されている標準飛行経路というのは、どういう想定をしているんですか。

谷井政府参考人 お答えいたします。

 平成十八年に作成いたしました岩国飛行場に係る航空機騒音予測コンターにおきまして、米軍再編後の標準飛行経路につきましては、滑走路の沖合移設事業に係る環境影響評価の際に想定したものを用いております。

大平分科員 その飛行経路は、日米で公式に合意されているものですか。

谷井政府参考人 お答えいたします。

 米軍再編後の岩国飛行場の飛行経路につきましては、滑走路の沖合移設事業に係る環境影響評価の際に想定した飛行経路と同様のものとなる見込みでございまして、このことについては日米間で確認をさせていただいております。

大平分科員 公式に合意はされていますか。お答えください。

谷井政府参考人 文書等で合意をしているものではございません。

大平分科員 つまり、飛行経路も、今回の艦載機移駐に伴って確定したものでもなければ、現在の飛行経路にあってもアメリカと公式に確約したものではありません。通常であればこのように飛ぶだろう、アメリカはこう飛んでくれるに違いないというだけにすぎない話なのであります。

 私は手元に昨年八月八日の地元紙中国新聞の記事を持っておりますが、ここには「低空飛行 広島市街地で多発 飛行コース多様化か」という見出しのもとに、米軍機が市街地を五機、六機と編隊を組んで縦横に飛び回っている様子を、広島市南区にお住まいの住民の方のリアルな証言に基づいて書かれております。

 今や、標準飛行経路、標準なんというものはなくて、飛行経路というのは極めて多様化しているのが実態であります。つまり、機種や機数、あるいは飛行回数はふえている。そして、飛行経路も不明確であるにもかかわらず、いまだにこの資料、予測コンター図を示しながら、現状よりも著しく悪化することはない、騒音の増加はないと住民の皆さんに説明をする。極めて不誠実な態度であり、こんなもので住民は誰も決して納得しないということははっきり述べておきたいというふうに思います。

 さらに、岩国市民の皆さんの不安は、艦載機の移駐だけではありません。二〇一七年には、F35Bステルス戦闘機も岩国に配備されようとしております。

 岸田外務大臣は、二〇一五年四月の2プラス2共同発表において、「二〇一七年に米海兵隊F35Bを日本に配備するとの米国の計画を歓迎した。」と述べておられます。なぜこの受け入れを歓迎したのですか。

岸田国務大臣 米海兵隊のF35Bの配備については、二〇一三年十月と、そして御指摘の二〇一五年四月の日米2プラス2の共同発表において確認をしています。

 なぜ歓迎するという発表を行ったのかということでありますが、米軍がより高度な能力を有する装備品を我が国に配備することは、日米同盟の抑止力を強化し、日本及びアジア太平洋地域の安全に寄与するものであると考えております。そうした考え方に基づいて、この2プラス2に際しまして、歓迎するという共同発表を行った次第であります。

大平分科員 とんでもありませんね。

 F35Bというのは、今現在岩国に配備されているFA18ホーネットと比べても音が格段に大きい。アメリカの本土でも配備反対で基地周辺住民が裁判に訴える事態にまでなっている戦闘機であります。つまり、これを岩国に配備するのかしないのか。岩国に艦載機移駐に加えてF35の配備まで行われれば、想像を絶する爆音被害が起こることは疑いありません。

 どうしてこんなことが歓迎できるというのか、お答えください。

岸田国務大臣 歓迎するという言葉の意味は、先ほど説明させていただいた次第であります。

 そして、F35Bにつきましては、先ほど紹介させていただきました二〇一三年及び二〇一五年の日米2プラス2共同発表において、二〇一七年に我が国に配備が開始されること、これは確認しています。

 ただ、それ以外、配備先も含めて、詳細については引き続き日米間で協議をしていくことになると承知をしております。まだ正式な通報等は受けていないと承知をしています。

大平分科員 在日米海兵隊の航空基地は、普天間と岩国しか日本にはありません。普天間に配備できないとなれば、残る選択肢は岩国しかないではありませんか。来年にも配備をしようと言っているのに、そんな無責任な態度は決して許されないと私は言わなければならないと思います。抑止力の一言で住民にさらなる爆音被害を押しつけることは決して認めるわけにはいかないとはっきり申し上げておきたいと思います。

 さらに、こうした岩国基地による被害は、基地周辺だけではありません。岩国から飛び立った戦闘機による飛行訓練によって、現在も、広島県北部、島根県西部などを中心にすさまじい爆音被害がまき散らされております。今度の艦載機移駐によって、こうした地域への被害もさらに広がることが懸念をされております。

 こうした地域への被害の影響調査や関係自治体への説明は行っているのでしょうか。

谷井政府参考人 防衛省におきましては、低空飛行に係る騒音の問題につきまして苦情を受けた場合には、米軍に対し飛行の有無等の事実関係を問い合わせるとともに、機会あるごとに、飛行訓練について地域住民に与える影響を最小限にとどめるよう米側に申し入れているところです。

 また、防衛省といたしましては、島根県知事あるいは広島県知事からの御要請を踏まえ、まずは、米軍機の飛行に係る苦情が多数寄せられている地域の騒音を把握する目的で、平成二十五年九月から島根県浜田市及び広島県北広島町に騒音測定器を設置し、試行的な騒音調査を実施しているところであります。

 空母艦載機の移駐後につきましても、引き続きこういった調査を実施するとともに、移駐後の運用につきまして米側に確認した内容や運用の実態を踏まえて、必要に応じて関係自治体に丁寧に御説明していきたいというふうに考えております。

大平分科員 いや、答弁になっていないですね。艦載機移駐によってどれだけ被害が広がるかという懸念が広がっているんです。移駐後にどれだけ影響があるかというんじゃ遅いんですよね。

 つまり、オスプレイの配備のときにも、不十分ではありましたが環境レビューが行われました。今回はそれすらもやっていない。大変無責任な姿勢であると言わなければなりません。

 私は、先日、島根県に伺って、米軍機が繰り返し上空を飛行し、大変な爆音被害を受けているあさひ子ども園を訪ねました。園長先生からお話を伺いました。戦闘機の音が聞こえたら、直ちに外遊びを中断して子供たちを部屋に避難させる。子供の命や人権をないがしろにして何が防衛か、何が抑止力かと言いたい。

 また、浜田市旭支所の担当者の方からもお話を聞きました。住民の皆さんからは、小学校から帰ってきた子供がおびえて、落ちつきがなくなり、宿題もできないような不安定な状態、保育園の子供が泣き叫んだなどの声がたくさん寄せられている、こういうお話を伺いました。

 岸田大臣に改めて伺いたい。大臣は、この現状が果たして、今答弁もありました、最低限の影響にとどめられているというお考えでしょうか。

岸田国務大臣 まず、外務省としましても、地元の方々からさまざまな苦情が寄せられていること、これは承知しておりますし、こうした問題は地元の皆様方にとりまして大変大きな問題であるということは認識をしております。

 その上で、一般論として申し上げるならば、訓練等を行って搭乗員の技能を維持する、あるいは軍隊の機能を維持する、こうしたことは日米安全保障条約の目的を達成するために重要なことであります。しかしながら、重要であるとはいいながら、米軍は全く自由に飛行訓練を行っていいというわけではなく、我が国の公共の安全に妥当な配慮を払って活動すべきであるということ、これはもう当然のことであると認識をいたします。

 この与える影響は最小限になっていると認識しているのかという御質問をいただきました。

 今申し上げました認識、考え方に基づいて、外務省としましても、地元の皆様に対する影響を最小限にとどめるよう、日米の合同委員会等の場を通じましてしっかりと申し入れを行っていかなければならない、このように考えます。ぜひこうした認識で努力を続けていきたいと考えます。

大平分科員 決して妥当な配慮は行われておりません。園長先生のお話をもう一度繰り返します。子供の命や人権をないがしろにして何が防衛か、何が抑止力かと言いたい、この言葉を本当に私は受けとめて帰ってきたところです。

 今でさえ、こうした耐えがたい苦痛を強いている中で、岩国基地にさらに艦載機が移駐され、F35が配備されれば、中国地方全土の被害は一体どこまで広がるのか。しかし、政府は、米軍の運用の問題だとしてその最低限の調査も説明もしようとしない。低空飛行訓練は直ちに中止、艦載機移駐もF35配備も決して認められないということを重ねて訴えまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

菅原主査 これにて大平喜信君の質疑は終了いたしました。

 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺分科員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 私は、米軍基地にかかわる環境汚染の問題について質問をいたします。

 沖縄県企業局は、一月十八日、米軍嘉手納基地周辺の河川を水源とする北谷浄水場で高濃度の残留性有機汚染物質PFOSが検出されたことを明らかにいたしました。二〇一四年二月から昨年十一月までの間に、一リットル当たり平均三十ナノグラム、最大で八十ナノグラムのPFOSが検出されております。沖縄県内のほかの浄水場では、一ナノグラムが検出されているにすぎません。嘉手納基地内の井戸群で千八百七十ナノグラム、基地内を流れる大工廻川で千三百二十ナノグラムが検出されていることから、発生源は嘉手納基地の可能性が高いとしております。

 北谷浄水場は、北谷町、沖縄市、北中城村、中城村、宜野湾市、浦添市、那覇市の計七市町村を供給先とする県内最大規模の浄水場です。県民の命と健康にかかわる極めて重大な問題であります。

 まず環境省に伺いますが、PFOSとはどのような化学物質ですか。人や動植物が摂取した場合にどのような影響を与えますか。御説明いただきたいと思います。

早水政府参考人 お答えいたします。

 通称PFOS、パーフルオロオクタンスルホン酸でございますが、これは有機弗素化合物の一種でございます。水や油をはじくという性質を持っておりまして、過去には、半導体工業での表面処理剤や泡消火剤などの用途に広く使用されておりました。

 このPFOSの有害性でございますけれども、動物実験で繰り返し投与した場合に、その濃度によっては、死亡する、あるいは体重や臓器の重量が変化するなどの知見が得られております。

赤嶺分科員 このPFOS、ストックホルム条約第四回締約国会議での指定決定を受け、日本でも、二〇一〇年からですか、化審法の第一種特定化学物質に指定をされているわけですね。

 それで、沖縄の地元紙に、京都大学の小泉昭夫教授のコメントが出ておりました。現時点のPFOSの値で浄水場から取水を停止する必要はないだろう、ただ、PFOSは環境中に長期残留し、体内に蓄積する期間が非常に長く、半減するまでに約四年から七年かかる、特に、妊娠中の女性が長期的に摂取し血中濃度が高くなれば、子供の成長がおくれるなどの発達毒性が出ると言われている、このように指摘をしております。

 PFOSは国際的に規制措置がとられてきていると聞いていますが、例えばアメリカやイギリスなどでは、いつごろから、どのような規制措置がとられているんですか。

早水政府参考人 お答えいたします。

 環境省などにおきまして過去に行った調査の結果によりますと、米国では、環境保護庁が二〇〇三年から、PFOSの製造、輸入、使用につきまして一部用途を除き禁止をするとともに、二〇〇六年には、これら用途につきましても自主削減計画を策定し、企業による自主的な削減を促しております。

 英国でございますが、二〇〇四年から、PFOSを〇・一%以上含む日用品の使用や、金属メッキ、半導体関係のPFOSの使用を制限しております。

 その後、EUでは、二〇〇八年から、EU域内でのPFOS使用製品の販売、輸入、使用を禁止しております。

 なお、今先生からも御指摘がございましたが、PFOSは、二〇〇九年に、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約締約国会議におきまして、製造、使用などの制限の対象物質に追加されておりますので、この条約の締約国におきましては、二〇一〇年までに所要の措置が講じられていると承知しております。

赤嶺分科員 締約国、アメリカやイギリス、かなり早くから、輸入の制限や、販売や使用の禁止が行われてきているわけです。

 経産省に伺いますが、日本国内でPFOSの製造や使用、輸入が禁止されたのはいつですか。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど先生から御指摘ございました平成二十一年五月のストックホルム条約締約国会議におきまして、新たにPFOSを制限の対象物質とすることが決定されたわけでございます。

 これを受けまして、平成二十一年十月でございますが、その国内担保法でございます化審法の施行令を改正いたしまして、平成二十二年四月から、同法に規定する第一種特定化学物質としてPFOSを指定いたしまして、一部の例外を除きまして、国内での製造、使用、国内への輸入を禁止したところでございます。

赤嶺分科員 先ほどアメリカやイギリスの例を説明していただいたんですが、既に二〇〇〇年代の初頭から国内法で製造、使用、輸入などを禁止していましたが、日本が本格的に取り組み始めたのは、今御説明があったように約十年おくれなんですね。何で十年もおくれてしまったんですか。

小林政府参考人 国内の製造実態等があったことと、それから、ストックホルム条約の状況を見守っていたということであろうというふうに思っております。

赤嶺分科員 日本で判断するというよりも、世界の動きをいろいろ見ていたというような感じでしか受けとめられないわけです。

 厚生労働省に伺いますが、沖縄県企業局の発表文書を見ますと、水道水における規制値の状況について、現在まで目標値の設定がなされていないとのことであります。文書の中で基準値として示しているのは、アメリカの暫定健康勧告二百ナノグラムという値や、ドイツの三百ナノグラムという値であります。

 アメリカなどで飲料水に関する暫定基準値が設定されているにもかかわらず、なぜ日本の国内では何の基準値も設定されていないんですか。

福田政府参考人 お答えいたします。

 PFOSについては、米国や英国で飲料水に関する暫定健康勧告等が設定されていることは承知をいたしてございます。一方で、WHOの飲料水水質ガイドライン値は設定されていないという状況にございます。

 こういった中、厚生労働省では、平成二十一年四月から、PFOSを水道水質に関する要検討項目に位置づけておりまして、専門家から成る検討会におきまして情報また知見の収集に努めている、そのような状況でございます。

赤嶺分科員 伺っていて、やはりこれは人の健康や安全にかかわる問題であります。危険性が証明されてから対応するのでは手おくれだと思うんですよね。おそれのある段階で対応するという姿勢が必要ではないかということをまず指摘しておきたいと思います。

 そこで、防衛省に伺いますが、沖縄県は、一月二十一日付で、沖縄防衛局長に対し三点の要請を行いました。一つは、嘉手納基地におけるPFOSの使用を直ちに中止し、適切な対策をとるよう米軍に働きかけること、二つ目に、PFOSの使用履歴を明らかにし、対応策を示すよう米軍に働きかけること、三つ目に、県による水源水質検査のための基地内への立ち入りとサンプリング採取を認めるよう米軍に働きかけること、以上三点であります。

 飲料水の問題であることから、沖縄県が早急な回答を繰り返し求めたのに対して、二月十七日になってようやくアメリカ側から回答がありました。どのような内容だったんですか。

谷井政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十八年一月二十一日付で沖縄県から要請のあったお問い合わせに関する二月十七日付の米軍からの回答要旨について申し上げれば、まず一つ目といたしまして、沖縄県企業局は、既存の合意に基づいて、引き続き生産井戸においてサンプルを採取するために立ち入ることができる、二つ目に、嘉手納飛行場は、過去において、有機弗素化合物、PFOSを含む製品を調達していたこと、三つ目、PFOS含有の水成膜泡消火薬剤は、現在は米国や日本国において調達することはできないこと、四つ目、第一八航空団は、ほとんどのPFOS含有水成膜泡消火薬剤を取りかえたところであり、今後も引き続き、残存するこれを非PFOS含有製品に取りかえる作業を実施すること、五、嘉手納飛行場は、水成膜泡消火薬剤といった製品については、業界の標準的な慣行に従って使用していること、六つ目といたしまして、最後でございますけれども、PFOS含有の可能性のある物質が漏出した場合、嘉手納飛行場消防隊等がその漏出をせきとめ、環境にさらされる危険を抑えること、そのような場合、米側当局は、現行の合同委員会合意の定めるところにより通報すること、そうした場合の立ち入りについては、平成二十七年の環境に関する協定により決定されることといった内容になってございます。

赤嶺分科員 外務大臣に伺います。

 アメリカ側の回答によりますと、嘉手納基地ではほとんどのPFOS含有水成膜泡消火薬剤を取りかえた、このようにしています。ところが、その一方で、今の回答の中で、業界の標準的な慣行に従って使用している、こう述べております。

 ほとんどの消火剤をPFOSを使用していないものに取りかえているのであれば、PFOS含有の消火剤を使用する必要はないはずです。日本国内で使用が禁止されている有害物質の流出が続くことは許されないと思います。事は飲料水にかかわる問題です。

 アメリカ側に政府として使用の中止を求めるべきだと思いますが、いかがですか。

岸田国務大臣 先ほど防衛省から回答がありましたように、二月十七日、米側からの回答において、嘉手納飛行場におけるPFOSを含む泡消火薬剤の大部分はPFOSを含まないものと交換しており、今後も引き続き交換していく、こういった説明があったわけですが、これを踏まえまして、先日、二十三日ですが、米側に対しまして、PFOSを含有する泡消火薬剤の使用の可能な限りの抑制、そしてPFOSを含まない製品への早期転換を求める、これは当然のことですが、あわせて、PFOS含有の可能性のある物質が漏出した場合の封じ込め措置等の対策に一層万全を期してもらいたい、こうした要請を行った次第であります。

赤嶺分科員 この要請についてもまた伺っていきますが、先ほどの回答文の中で、これは防衛省に伺いますけれども、業界の標準的な慣行に従って使っている、このように米軍は答えております。これはどういうことでしょうか。

谷井政府参考人 お答え申し上げます。

 米軍からの回答にある業界の標準的な慣行というものの意味するところは必ずしも明らかではございませんけれども、一般論として申し上げれば、例えば、国内法においては、PFOS含有の泡消火薬剤の消火器等につきましては、技術上の基準、これは訓練等で放出した泡消火薬剤の回収ということでございますけれども、それに従って使用すること等の内容に相当するのではないかというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、米側に対して、業界の標準的な慣行の内容については確認させていただきたいと思っております。

赤嶺分科員 回答の中身を防衛省がわからないというのであれば、これはもう回答になっていないですよ。

 経産省に伺いますが、例外的にPFOSの使用が認められる場合が日本の国内でもあります。それはどういう場合なのか。その場合、保管や漏出した場合の対応について基準があると思いますが、どのような基準が定められているんですか。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 化審法では、他の物による代替が困難であって、かつ、使用されても人の健康や動植物への被害を生ずるおそれがないと確認される場合に、不可欠用途、エッセンシャルユースとして第一種特定化学物質の使用を認めているところでございます。

 PFOSの場合は、ストックホルム条約も踏まえまして、三つ、エッチング剤の製造、半導体用のレジストの製造、業務用写真フィルムの製造に使用することが認められております。

 その保管、あるいは漏出した場合の対応でございますが、これは化審法の省令により定められております。

 まず、保管についてでございますが、密閉式の構造の堅固な容器であって、浸透しにくい材料を用いて製作されたものにおさめ、その容器は屋内に保管し、漏出を防止するため、床面をコンクリートとする等の措置を講ずることとされております。

 また、漏出した場合についてでございますが、管理責任者に通報するとともに、漏出拡大の防止のために必要な応急措置を講ずること、あるいは、布等で拭き取った場合に、布等を密閉できる容器に保管すること等が定められておるところでございます。

赤嶺分科員 日本の国内で使う場合でも限定された業種になっていますし、使い方についても非常に厳重な基準が定められて、例外的に使われる場合があるとしても、漏出を避けるための措置が義務づけられているということであります。

 防衛省に伺いますが、米軍は、日本の国内法令で定められているような保管や、漏出した場合の回収措置をとっているんですか。

谷井政府参考人 お答えいたします。

 先ほどの回答でもございましたけれども、米軍は、PFOS含有の可能性のある物質が漏出した場合、嘉手納飛行場消防隊等がその漏出をせきとめ、環境にさらされる危険を抑えるといったことを行っているというふうに承知をしております。

赤嶺分科員 私は、この辺を疑ってかからなきゃいけないと思うんですよ。回答をそのままうのみにしていて県民の命と安全が守られるかという問題が、それをよく示す例として、嘉手納基地での泡消火剤の漏出事故に関して、ジャーナリストのジョン・ミッチェルさんが情報公開で入手した資料を提供していただきました。

 資料によりますと、例えば、去年五月二十三日に、酒に酔った米海兵隊員が嘉手納基地内の消火装置を作動させ、四百ガロン、つまり一千五百リットル以上の消火剤を噴出させる事故を起こしております。この消火剤は、南側滑走路横の草地に及び、南西方面から海に流れたとされています。

 ところが、担当者が事故を報告したメールには、二十四時間以内に泡が消えることを願っているという記述があります。消火剤を漏出させる事故を引き起こしていながら、回収などの対策は何もとっていなかったということなんですね。

 防衛省はこういう事故があったことを把握しておりますか。

谷井政府参考人 御指摘の報道については承知をしております。

 防衛省といたしましては、報道された事案について、米側に対し事実関係を照会中でございます。

赤嶺分科員 つまり、防衛省には連絡が、事故の通報はなかったということですか。

谷井政府参考人 お答えいたします。

 報道にある昨年五月の泡消火剤の流出に関する米側からの通報はございませんでした。

赤嶺分科員 だから、漏れ出しても、日本の国内法の基準に基づいてやっているかといえば、それもやっていない。二十四時間たったら泡は消えるだろう。

 ミッチェルさんによりますと、この漏出した消火剤はJET―X二・七五%という種類で、がんや、神経系、生殖機能の障害をもたらすおそれがある化学物質とのことであります。

 外務省に伺いますが、日米合同委員会合意で、このような有害物質を漏出させた場合は日本側に通報することが義務づけられているのではないかと思いますが、いかがですか。

山田政府参考人 お答えいたします。

 合同委員会で合意をいたしました事件・事故に関する通報手続の中におきまして、環境に害を与える事件が発生した際には米側として通報するということが規定されております。

 また、最近、日米地位協定に基づきつくりました環境管理の分野における協力に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定、この協定の中におきまして、環境に影響を及ぼす事故、すなわち漏出が現に発生した場合には通報があることを想定して規定されております。

赤嶺分科員 そんな取り決めがありながら、何で通報がなかったんでしょうかね。

 去年の五月二十三日の漏出事故について、どのような事故だったのか、なぜ通報しなかったのか、消火剤を回収する措置はとったのか、これをアメリカ側に確認し、報告することが必要だと思いますが、外務大臣、いかがですか。

山田政府参考人 米側に対しましては、昨年五月の泡消火剤の放出に関する事情も含めまして、情報の提供を引き続き求めてまいりたいと思います。

赤嶺分科員 情報の提供なんてないんですよ。大事な事故でも漏れなくやっているかといえば、そういうことをやっていない。

 沖縄県企業局は、二十二日に今月の測定値を公表しております。六つの測定地点全てで前回の測定値を上回っていて、PFOSが検出される状況が続いています。一体何で汚染物質の流出が続くのか。汚染源を特定するためには、使用履歴を明らかにさせるとともに、基地内への立ち入りとサンプリング採取が不可欠であります。

 基地内への立ち入りについて、アメリカ側の回答は、PFOS含有の可能性のある物質が漏出した場合に、アメリカ側当局は、現行の日米合同委員会合意の定めるところにより通報する、そうした場合の現地視察とサンプリングのための立ち入りについては、平成二十七年の日米合同委員会合意「環境に関する協力について」により決定される、このようにしています。ところが、今回のPFOSについては、アメリカ側から事故の通報はありません。

 外務大臣に伺いますが、環境補足協定を見ると、基地内への立ち入りは、アメリカ側から事故の通報があることが前提になっています。今回のケースでは協定に基づく立ち入りはできない、そういうことですか。

岸田国務大臣 現時点では、米側に情報提供を求めている段階です。よって、現時点においては、PFOSの漏出について確認がとれていないため、環境補足協定にあります環境に影響を及ぼす事故が現に発生した場合として、立ち入り申請の対象として判断することは困難であると認識をしております。

 引き続き米側に確認をまず求めていきたいと考えます。

赤嶺分科員 これでは、全ての判断を米軍側に委ねているようなことになってしまいます。これでは、外務大臣、今度の環境補足協定、従来の日米合意と変わりませんよ、立ち入れないのであれば。

 そもそも今回のPFOSの漏出は、環境補足協定に規定する環境に影響を及ぼす事故に該当するのかしないのか、この点は外務大臣はどのように認識していますか。

岸田国務大臣 環境補足協定にあります環境に影響を及ぼす事故が現に発生した場合の立ち入り申請に当たっては、米側からの情報提供が端緒となっていると考えます。

 ただし、米側から通報がない場合であっても、日本側として環境汚染を疑う場合には、別途、既存の日米合同委員会合意に従って、米側に、調査要請あるいは立ち入り許可申請、こういったことを行うことは可能であると認識をしています。

赤嶺分科員 継続的にずっとPFOSの値が高く出てきているわけですよ。

 私も、嘉手納基地の中を流れている大工廻川、基地のそばで見てきました。一番高い値が出ている。これはもう嘉手納基地のPFOSの使い方に問題があることは事実なんですね。疑いようのない事実です。河川の調査も求めています。

 防衛省は、具体的にどのような手続に基づいて沖縄県による基地内への立ち入りを実現しようとしているんですか。そのまま米側の判断に委ねて、あるいは申し入れたけれどもアメリカ側から何の回答もないといって放置しておくんですか。県側が求めているサンプル調査を直ちに実行させるべきではないかと思います。いかがですか。

菅原主査 防衛省谷井地方協力局次長、申し合わせの時間が来ていますので、手短に。

谷井政府参考人 お答えいたします。

 米側からの回答を踏まえまして、関係省庁とも連携し、適切に対応してまいりたいというふうに考えております。

赤嶺分科員 終わりますけれども、こんな環境汚染、しかも、飲料水にかかわる問題を解決できないようでは、これで主権国家かというようなことが疑われる事態であります。県の立入調査、サンプル採取を強く求めて、質問を終わります。

菅原主査 これにて赤嶺政賢君の質疑は終了いたしました。

 次に、小沢鋭仁君。

小沢(鋭)分科員 予算委員会の分科会、外務省並びに関係省庁に何点か質問させていただきます。

 まず、きょうの主な論点は、昨今の国際情勢を見ると、IS初めある意味では大変厳しい状況になっている。しかし、同時に、イスラム文化圏、こういうふうな大くくりで考えると、世界の中ではかなりの人口を占めている。特に、アジア諸国の中でも、インドネシアを初めとしてイスラム教の宗派の人口は極めて多い。経済界の皆さん方も、そういった意味では、いわゆる紛争、国際問題、こういう観点が一方ではありながらも、そういったイスラム文化圏の皆さんたちとどういうふうにつき合っていくのかということが極めて重要だ、こういう認識があって、かなりいろいろな会社がそれなりの調査を始めている。こういう話の中で、政治としてやるべきことはあるのではないか、こういう観点で質問をさせていただきたいと思っています。

 まず、主題に入る前に、それに関連するんですが、昨年の安保法制について一点、大臣から所感を聞かせていただきたいんです。

 私は、分裂前の維新の党でありますけれども、維新の党としてはこの安保法制の方向性に関しては賛成、しかし、やり過ぎで、問題が幾つかある、こういう立場でした。

 具体的に申し上げますと、いわゆる存立危機事態において、経済的事象が含まれていて武力行使ができるというのは、これは幾ら何でもやり過ぎだろうということ。それから、重要影響事態等において、地理的概念を取っ払って、地球の裏側まで行って、そして極めて戦闘に近い後方支援をやれるという話は、これはある意味では、いわゆるテロの相手方からしたら日本を敵対国とみなす、そういうきっかけになるのではないか。

 そういう意味では、昨年のあの安保法制は、いわゆる伝統的な安全保障対策という意味では効果があった、もう一方の昨今のいわゆるテロ対策、テロに対する安全保障という意味では逆にその危険を助長してしまう嫌いがあるのではないか、私はこう思っておるんですが、大臣の所感をお聞かせください。

    〔主査退席、小林(鷹)主査代理着席〕

岸田国務大臣 まず、昨年の平和安全法制ですが、平和安全法制の目的は、あくまでも我が国の国民の命や暮らしを守り、そして国際社会の平和や安定にしっかり貢献していく、こういったことであります。

 そして、内容におきまして、まずは国際法との関係において、国際法に合致し、そして正当性のあるものであると考えていますし、加えて、平和憲法との関係において、他国、各国の対応と比べましても、極めて抑制的な対応であると認識をしています。

 加えて、平和安全法制全体を見た場合、テロとの関係を念頭に見た場合、例えば危険にさらされたNPO要員に対する駆けつけ警護等が可能になるとか、それから邦人救出という観点が盛り込まれているとか、あるいは国際平和協力活動に参加することによって破綻国家の出現を防ぐとか、こういった内容も含まれています。

 こういったことを考えますときに、我が国としてテロの危険に対しても幅がある行動ができるという点もあると思いますし、テロの危険を高めるといった性格のものではないと考えています。

 やはりテロとの関係を考えた場合には、テロの背景に格差とか貧困があるというようなこと、さらにはテロの温床となるような社会の出現を抑えるために我が国としてどのような平和的な貢献を行うことができるかとか、そうした幅広い視点で取り組みを行うことが重要なのではないかと考えます。

小沢(鋭)分科員 前半部分の大臣の答弁は、当事者ですから当然そういう話になると思いますし、後半部分は私がこれから聞いていこうと思っている格差の問題とか貧困の問題でありますので、また話を進めていきたいと思います。

 主題に入っていきたいんですが、その前に、ちょっとここのところ、新聞でアメリカの大統領選挙の話が大変話題になっていますね。日本の政治にも大変関係する話がいっぱい出ています。特にTPPに関しては、今、民主党側も共和党側もみんな反対だ、こういう話がある。それから、安全保障に関して言えば、共和党のトランプさんが大変物騒な発言をしていて、日本が攻撃を受けたら我々は即座に助けに行かなければならないが、米国が攻撃されても日本は我々を助ける必要はないと、日米安保への不満を示していると。

 これも何十年も前に聞いたような話だな、こうは思うんですけれども、こういう話が出てくるということは、まさに日米安保そのものも変わってくる、こういう話にならざるを得ないわけですよね、もしこういう方が大統領になれば。そういった準備を外務省はしているんでしょうか。

岸田国務大臣 アメリカ大統領選挙の状況については大きな関心を持って見ておりますが、ただ、今、現時点では、各候補者の発言は政府の発言ではなくして個人の発言ですので、日本国政府としてこの発言についてコメントするのはちょっと控えておかなければならないのではないかと思います。

 そして、御指摘の日米安全保障体制についてですが、我が国にとりまして日米安全保障体制は外交、安全保障において大変重要な枠組みであり、日本と米国はそれぞれ適切な役割分担を行っていると考えています。

 そして、これも随分、たびたび言われていることですが、日米安全保障条約五条と六条の関係を見ましても、それぞれがバランスのとれた役割を担っている、義務を負っているというふうに認識をしています。

 安全保障環境は厳しさを増しています。日米同盟の役割はますます重要になってきていると思います。ぜひ、多くの関係者の理解を得ながら、抑止力をさらに強化していくべく取り組んでいかなければならないと考えます。

小沢(鋭)分科員 大臣は相変わらずの優等生の答弁でありまして、トランプさんほどやれとは言いませんけれども、若干刺激的な発言もぜひしていただければいいのかな、こうも思います。

 中身に入っていきたいと思います。テロ対策とソフトパワーの活用について、こういう論点でいきたいんです。

 まずテロ対策でありますが、その前に、それに関連する難民の問題。ヨーロッパでは今、大変な課題になっています。

 まさにEUの枠組みが壊れるかもしれない、こういうきっかけにさえなりそうな百万人を超える難民の問題、こういう話になっているわけですが、日本の場合も相当難民申請があって、昨年の難民申請は最多で七千五百八十六人、こういう申請が出ています。

 ただ、私もかねてから緒方さんの話を聞いたりしていて、日本は難民申請に対して大変厳しい、先進国としての役割をもっと果たすべきだ、こういう意見を何度も聞いてきていて、そういう意味では、そういう政治的な運動に私も参加してきたつもりなんですが、昨今のヨーロッパの状態を見ると、ある意味ではテロの予備員の人たちが紛れ込んできたりしている。そういう話もあると、ここはどういうスタンスでいったらいいんだろうか、こういう思いがあります。

 今、政府はこの難民問題に対してどういうスタンスをとっているのか、お聞かせいただきたいと思います。

佐々木政府参考人 お答えをいたします。

 法務省は難民認定手続を担っておりますけれども、日本に来られて難民申請をした方のうち本当に庇護する必要のある方々については、できるだけ迅速に難民の認定手続をとりまして、できるだけその立場を安定させるということに努めてございます。

 一方で、昨今でございますけれども、今委員から御指摘もありましたように、難民認定申請がふえているという中で制度の濫用あるいは誤用的な申請をする外国人の方もふえておりまして、ここにつきましては、この制度を活用する人たちの在留をできるだけ短く切るというめり張りをつけた対応をしているのが現状でございます。

小沢(鋭)分科員 今の法務省の御答弁は、ある意味では経済的要因で偽装難民というようなお話がある、こういう話なんだろうと思うんですね。それはそれでしっかりと対応してもらいたいと思います。

 ただ、確かに、認定が昨年二十七人で、前年より十六人ふえたという話ですが、この二十七人とかは、百万人の規模等を考えると、何か桁違いというか桁々違いみたいな話でありまして、こういったところも今後の政府の課題として大臣にはぜひまた御検討いただきたい、こういうふうに思います。

 そこで、経済的偽装の話はまだ危険度は低いのでありますが、難民や留学生を装いテロ関係者が入国する、こういう話になってくると危険度が一気に増すわけであります。私のところに入ってきている話でも、直接的ないわゆるテロをするかしないかではなくて、いわゆる資金収集というような話の関係者が日本にかなり入っている、こういう話も伝わってくるんですが、そういったところを政府は把握しているんでしょうか、あるいはどういう対策をとっているんでしょうか。

松本政府参考人 まず、難民や留学生にテロリストなどが紛れ込んでいないかというお尋ねでございますけれども、これにつきましては、警察といたしましても、従来から多大な関心を持って情報収集などを行ってきたところでございます。

 ただ、具体的な事例の有無などにつきましては、今後の情報活動や捜査に支障を及ぼすおそれがございますので、お答えを差し控えさせていただきたいと存じます。

 こうした事案への対策についてでございますけれども、まずは、テロリストなどが紛れ込まないように、水際対策を徹底することが肝要であると考えております。そのためには入国管理局や税関などとの連携が必要ですので、警察といたしましては、こうした関係当局との間で最大限情報を共有するように努めております。

 このような水際対策につきましては、現下の厳しい国際テロ情勢に鑑みますとさらに重要性が増していくものと考えておりますため、今後とも一層取り組みを強めてまいりたいと考えております。

 また、その他のテロ対策といたしまして、警察といたしましては、外国の治安情報機関と緊密に連携して、テロに関する情報を収集また分析すること、重要施設や大規模な集客施設などに対する警戒警備の万全を期すこと、爆発物の原料をテロリストの手に渡さないために官民一体で取り組むこと、このような諸対策につきまして、引き続き強力に推進してまいりたいと考えております。

小沢(鋭)分科員 具体的な事案は当然、手のうちを明かすということですから、言えないというのはわかっておるんですが、官邸にドローンが発着したという案件もありましたよね。くれぐれもそういったミスが起こらないように万全を期していただきたい、こういうふうに申し上げたいと思います。

 そこで、先ほど大臣からもお話があった、いわゆるテロを根絶していくためのある意味では貧困対策、教育対策、そういった問題であります。

 アメリカの学者でジョセフ・ナイさんという方がいますね。ソフトパワー、こういう言い方をもう一九九〇年くらいからしているわけでありますけれども、ある意味では外交戦略の中で、先ほど冒頭申し上げたようないわゆるハードパワーの安全保障政策と同時に、このソフトパワーのところも戦略的に使っていくということが極めて重要だ、こう思います。大臣もそういう御発言でありました。

 しかし、日本のODAを見ますと、物すごく落ちているんですね。むちゃくちゃ落ちているんですね。そういった意味で、ソフトパワー的な昨今の予算に関して、どんな状況か御説明いただけますか。

竹若政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、テロの根絶には、貧困対策や、教育分野での支援を通じた過激主義を生み出さない社会の構築が重要であり、我が国の開発協力におきましても、これらの分野における支援を重視してきております。

 御質問のソフトパワーに係る予算についてでございますが、ODAを通じた貧困対策、教育、保健などを含む開発分野での貢献としまして、平成二十八年度予算政府案におきまして約一千三百五十七億円を計上しております。平成二十七年度の同様の分野は約一千三十三億円でございましたので、約三百二十四億円の増額となっております。

小沢(鋭)分科員 大臣、どうですか。少ない、こういうのが私のまず直観的な印象であります。

 安倍政権の積極的平和外交でしたっけ、平和主義でしたっけ、そういった中ではこのソフトパワーという話は大きな柱になるべき問題だ、こう思うんですが、増額を検討するというような御意思はございますか。

岸田国務大臣 我が国の外交にとりまして、ODAというものは大変重要なツールであると認識をしております。

 ODA大綱も開発協力大綱という新しい大綱に衣がえをし、我が国としまして、ODAを中心とする開発協力のあり方について改めて考え方も整理したところであります。

 その中にあって、予算が少ないという御指摘がありました。

 日本が厳しい財政状況の中で結果として予算の額が減っているという指摘は、御指摘のとおりだと思います。だからこそ、限られた資金を有効に使わなければなりません。そのために国民の理解も得なければなりません。そして、この資金の使い方としても、政府はもちろんしっかり役割を果たさなければいけませんが、民間ですとかNGOですとか、さまざまな関係者がそれぞれの役割を果たすことによって結果として大きな効果につながる、こうしたODAのあり方を考えていかなければならないのではないかと存じます。

 予算の増額についてもしっかり努力したいと思いますが、質においてもしっかり努力をしていきたいと考えます。

小沢(鋭)分科員 まさに、今大臣がおっしゃっていただいた点は大変重要だと思いますね。

 私は環境政策をずっとやってきているんですけれども、いわゆる温暖化の国際会議のときに、今おっしゃったようなNGOとか、そういう皆さんたちが環境政策の中では大変重要な役割を果たすんですね。

 COP15が私が経験したところですが、そのときに、いわゆるNGOの皆さんたちも、その派遣団の中のオブザーバー的なといいますか、それで入れようといったときに、外務省は反対したんですね。

 ですから、そういった意味では、外交分野、今大臣がおっしゃったそういった分野でNGO的な人たちと連携をとっていくという御発言は極めて重要ないいポイントだと思いますので、後ほどまたさらに具体的な話を聞かせていただきますが、ぜひお進めいただきたい、こう思います。

 そこで、イスラムの問題に入らせていただきます。

 ISの邦人殺害テロだとか、あるいはいろいろな紛争事件等があってイスラムへは負のイメージがあるんですけれども、冒頭申し上げましたように、イスラム文化圏といいますかイスラム教徒の皆さんたちの勢力は世界で第二位、二一〇〇年には、今の人口状況でいくと、キリスト教を抜いて世界一位になっていく、こういう予想があるようなんですが、イスラムとの関係でいうと、ソフトパワーという話はどのくらい出しているんですか。

竹若政府参考人 御指摘のとおり、途上国の貧困対策や教育支援は、グローバルな課題の解決に向けて日本が貢献していく上で不可欠な取り組みでございます。

 先ほど申し上げましたとおり、ODAを通じた貧困対策、教育、保健等を含む開発分野での貢献として、本年度予算においては約一千三十三億円、来年度政府予算案においては約一千三百五十七億円を計上しております。

 各地域への支援額につきましては、本年度予算については執行が完了しておらず、来年度予算については現在国会にお諮りしており、その執行を今後検討していくところでございます。現時点で具体的な額につきお答えすることは困難でございます。

 いずれにせよ、我が国としては、途上国の貧困対策や教育支援を引き続き重視していく考えでございます。

小沢(鋭)分科員 貧困対策、教育支援、こういう話で、特に教育支援に関しては、もう皆さん御案内のとおり、マララさんというパキスタンの少女の話がございました。二〇一四年には最年少でノーベル平和賞を受賞した方ですね。教育を受けたい、こういう主張を国連でもされて、各国、ある意味では大変しっかりした対応をしている、こういうことであります。

 同様の話というのが、大臣、幾つか当然あるわけですね。マララさん一人の話では当然ないわけでありまして、ここに新聞があるんですが、これは二月二十三日の東京新聞の夕刊、「空爆より、教育を下さい」「パキスタンの十二歳少女 世界に訴え」、こういう話がございます。それから、二月二十一日の毎日新聞の「世界の見方」では、アシュラフ・アリさんという方が、まさにそういった話が必要なんだという、この人は弁護士のようですが、そういう意見論文を書いていますね。

 先ほど大臣がおっしゃった、NGOの方々とも協力をしてということでいいますと、「空爆より、教育を下さい」、こう言っているナビラさんのところは、私の中学校時代の野球部の後輩なんですけれども、イスラムの研究所をつくっております宮田さんという理事長がこのナビラさんのまさに教育支援のプロジェクトを立ち上げてやっているんですね。私もささやかながら協力をさせていただいているんですけれども、例えばこういう教育支援の仕組みに資金は活用できるんでしょうか。

岸田国務大臣 御指摘の基金については、詳細をお伺いしなければ具体的なことを申し上げることはできないとは思いますが、やはりさまざまな立場の方々がそれぞれの立場でできることをしっかり取り組むことは大変重要であると認識をいたします。政府も、政府の立場から、紛争の影響を受けている国や地域の子女への教育の実施は大変重要だと認識をしております。

 今年度の補正予算においても、ユニセフ等の国際機関を通じて支援の実施を決定したところであります。ぜひ、政府としても、やるべきことはしっかりやらなければならないと思っています。

 御指摘の、民間の方々を初め関係者の皆様方の努力も、それぞれ尊重しなければならないと思います。それぞれがそれぞれのできることをしっかりやっていく、こういった姿勢を大事にしていきたいと考えます。

小沢(鋭)分科員 まさにそれぞれが、こういう話でありますけれども、当然、日本の政府が日の丸というものをしっかりと掲げてやっていくことが、私が冒頭申し上げたテロに対する安全保障政策の大変重要な手段になっていく、こう思うわけでありまして、ぜひ政府には率先してそういったプロジェクトをバックアップしていただきたい、こう思っているところであります。

 そして、その際には、先ほど大臣のお話にもありましたが、ユネスコとかユニセフとかそういった国際機関を通じての活動においても、日本人は謙虚なものですから、さりげなくさりげなく、こういう話があるのかもしれませんが、しっかりと日の丸が見えるような活動をしていただくことが必要だと思いますが、その点はいかがでしょうか。

竹若政府参考人 御指摘のとおり、我が国の協力が顔の見える援助となることは重要でございます。

 そのため、政府としましては、開発協力の現場におきまして、例えば青年海外協力隊、日本のNGO、国際機関の邦人職員など、日本人の参画を確保するよう努めております。

 また、供与機材や施設への日章旗ステッカーの貼付、支援物資の引き渡し式での日本のプレゼンスの確保、現地メディアによる現場視察など、海外におけるODAの広報にも積極的に取り組んでいるところでございます。

小沢(鋭)分科員 時間ですから終わりますけれども、冒頭申し上げましたように、イスラムという言葉を聞くと、どうしてもテロとか紛争とかそういったことに連想が飛んでしまうんですけれども、申し上げたように、今や世界で第二位の人口を持つイスラム文化圏、こういうことでありますので、そういった極めてまともな皆さんたちとしっかりと交流をしていく、このことはぜひ政府としても前向きに検討いただきたいと思いますし、ナビラさんのこのプロジェクト等の話はまた大臣には個別によく聞いていただくようにお願いをしたいと思いますので、そのこともお願い申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

小林(鷹)主査代理 これにて小沢鋭仁君の質疑は終了いたしました。

 次に、宮路拓馬君。

宮路分科員 自由民主党の宮路拓馬でございます。

 私にとって予算委員会の初めての質問ということで、大変緊張しておりますが、何とぞよろしくお願い申し上げます。

 では、早速質問に入らせていただきたいと思います。

 週末、鹿児島に、地元を回っているときにインターネットのニュースで知ったところでございますが、韓国で開催予定であった東日本大震災復興の関連イベントが中止になったというニュースでございました。その対象の県の中に鹿児島も含まれておりましたものですから、私もそのニュースについて関心を持って注目しておったところでございます。

 まず、そもそも、今回のイベントの開催の趣旨をお答えいただけますでしょうか。

山崎政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のように、二月二十日、二十一日に、韓国のソウル市で、日本の復興等をPRするための事業、エクスプローラー・リアル・ジャパン・イン・ソウルを開催することを企画しておりました。

 本事業は、東日本大震災から五年がたった現在、復興した被災地の現状を韓国の方々に知っていただくことを念頭に企画したものでございます。外務省と被災地等の地方自治体とが連携した形で、地方の実情、魅力を総合的に発信することを意図したものでございました。

 外務省及び実施団体としては、本PRイベントを実施すべく、韓国政府や、本PRイベントの会場を所管するソウル市城東区とも種々の調整を行ってまいりました。しかしながら、直前になり、区当局から本件イベントを中止すべきとの通報を受け、イベントを確実かつ安全に実施する見通しが立たなくなったことから、中止との判断に至ったものでございます。

宮路分科員 イベントの趣旨については、復興のPR、そして日本の産品の安全性を知っていただくということ。そして、今回中止に至った経緯として、地元自治体の反対ということでございました。

 私も、報道で知る範囲では、当該ソウル市、担当の当該区においては、原発事故発生地の生産物の無料配布や販売は適切ではないといったような区の担当者からのコメント、また市民団体からは、原発事故で放射能に汚染された食べ物を食べさせるのかといったような反発があったというふうに聞いております。

 それらを勘案して、最終的に、イベントを安全かつ確実に実施できないということで中止の御判断をされたものというふうに承知をしておりますが、その後、週が明けて、恐らく月曜日から通常の勤務が始まるわけですが、その際にとった我が国としての対応について御説明をお願いします。

山崎政府参考人 本件イベントの中止をするようにという通報を受けた際に、在韓国日本大使館を通じて韓国政府に、開催できるようにという申し入れを行っております。しかし、残念ながら、ソウル市城東区側が、直前まで韓国政府も働きかけを行ったと承知しておりますけれども、最終的に同区の判断が覆ることがなかったということでございます。

 その後、今週になりまして、二十二日月曜日でございますけれども、ソウルの日本大使館を通じて改めて韓国政府に対して、本件イベントについては、きちんと準備を重ねてきたにもかかわらず、直前になり地元当局の通報により中止ということになったことについて極めて残念である旨申し入れるとともに、日本産の水産物等に関する現在行われている輸入規制についても、一刻も早く撤廃をしてほしいということを改めて申し入れております。

宮路分科員 ただいまの答弁の中で、日本産の水産物の輸入禁止、禁輸について、その解除もあわせて申し入れたというふうにございましたけれども、鹿児島も我が国が誇る水産県の一つでございます。私も大変その禁輸措置についても関心を持って見ているところでございますが、最近WTOに提訴をしたといったような話も聞いているところでございますが、今のWTOの状況について御説明をお願いします。

金杉政府参考人 お答え申し上げます。

 韓国によります日本産水産物の輸入禁止措置につきましては、我が国としてパネルの設置要請をいたしました。それが、昨年の九月二十八日にパネルが設置をされまして、その後、パネリストの選定手続が進められておりましたけれども、今月八日、WTOの事務局長によりまして三名のパネリストが決定されたところでございます。

 今回このようにパネルが構成されたことによりまして、今後、パネルによる本格的な検討、議論が行われることになりますので、我が国としては、パネルにおいて早期に結論が得られるように鋭意対応してまいりたいと思っております。

 以上でございます。

宮路分科員 この水産物の禁輸につきましては、我が自民党の部会においてもこれまで議論していたところでございますし、国としてとり得る措置、二国間協議のみならず、今回のパネルの設置に至るまで、粛々ととるべき措置を講じているというのは大変評価できるところだと思います。

 がしかし、その根底にあるのは何かということをやはり考える必要があるのではないかと思っております。

 今回のイベント中止も、先ほど申し上げたとおり、原発事故で放射能に汚染された食べ物を食べさせるのか、あるいは、公の場所で原発事故発生地の生産物の無料配布などはとんでもない、そういったいわば韓国の国内の声があって、やはり韓国政府としてもそうした国民の声を無視するわけにはいかない。したがって、禁輸措置の解除に軽々に、軽々にというか、そちらの方に行くことができない、そういった事情があるのではないかというふうに推測するところでございます。

 やはり何といっても、そうした風評の払拭というのが求められているものだと思います。我が国は科学的な検査をしっかり行って、現にこれまで輸入規制を撤廃した国々は、資料によりますと、震災発生以降十六カ国に及んでいる。カナダ、ミャンマー、セルビア、チリ等々、豪州、タイ、ボリビアまで含めると十六カ国に及んでいる。しかしながら、最も重要な隣国である韓国がまだそうした輸入規制の撤廃に至っていないということは、やはりそうしたところをしっかり対応していく必要があるというふうに考えております。

 昨日の外務委員会の外務大臣による国際情勢に関する報告の中でも、「戦略的利益を共有する最も重要な隣国である韓国とは、さきの日韓外相会談で、慰安婦問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認したことを踏まえ、日韓関係を未来志向の新時代へと発展させます。」と力強くお言葉をいただいたところでございます。

 私も、大学時代、韓国語を第二外国語として選択しておりました。そしてまた、韓国にも当然訪れたことはございますし、韓国人の友人もたくさんおります。そうした、隣国ですから、ともに歩まないといけない韓国において、やはり日本の水産物が禁輸されているということは非常に残念なことであろうと思っております。

 我が国が今回のイベント開催等を通じて、残念ながら開催することはできませんでしたが、こうした取り組みによってそうした風評の払拭を図るというのはもちろんですが、やはりそうした重要な隣国である韓国にも、我が国の食品が安全だということを韓国側からもぜひ国民の方に訴えていただきたいというふうに思っているところでございますが、その点について政府のお考えをお聞きできればと思います。

岸田国務大臣 韓国政府による日本産の水産物等の食品輸入規制についてですが、これまでも、外相会談あるいは次官級協議、さらには局長級協議、日韓ハイレベル経済協議、こうしたさまざまな機会を捉えて、この措置の早期撤廃を強く求めてきました。

 先ほどWTOにおける取り組みは説明させていただきましたが、このWTOにおいて協定のルールにのっとって誠実に対応する、これがまず大事だと思います。しかし、WTOにおける結論を待つことなく、韓国政府には引き続きしっかりこの取り組みを促していきたいと考えております。早期に撤廃するよう、しっかりと働きかけも並行して行っていきたいと考えます。

 あわせて、委員の方からも御紹介がありました。国際社会、世界各国においても、日本産の水産物を初めとする食品規制については、この規制を緩和する、あるいは撤廃する、こうした動きが見られます。世界のこうした動きにおいても、しっかりと我が国として撤廃に向けて努力をしていかなければならないと思いますが、そうした成果が、韓国に対しましてもこの問題に関する理解を深めてもらうことにつながるのではないかとも考えます。

 ぜひ、全体としてしっかりとした取り組みを行って、結果を出していきたいと考えます。

宮路分科員 恐らく、国同士の関係はいろいろな問題があるかもしれませんが、国民同士は非常に強くつながっているというのが日韓であろうと思っています。

 そして、先ほど申し上げたとおり、今、日韓関係は、大臣あるいは総理の御努力もありまして大変改善してきているところでございます。この流れを大切にしつつ、やはり我が国にとって食品の安全を隣国にしっかり理解していただくというのは大変大事なことでありますし、我が国の誇りにもつながることだろうと思います。ぜひ、その点、外務省を挙げて御対応いただければ、このように思っております。

 続いて、今、TPP大筋合意を踏まえ、我が党におきましても、国内対策、特に農林水産業の対策に全力で取り組んでいるところでございますが、その中で、やはり今回のTPPを攻めのチャンスとするという意味で、輸出の拡大、輸出の促進にも今取り組んでいるところでございます。

 その中で、私は鹿児島でございます。きょうは大分の衛藤先生もいらっしゃいますが、やはり九州といえば焼酎、そしてまた、今回、和食が世界遺産に登録されたということで、非常に日本の酒類、これも当然食事とともに楽しんでいただくものでございます。大変輸出も伸びているということでございますが、これを機に、さらにさらに大きく拡大していく必要があると考えております。

 そのような中、外務省が日本の酒類の輸出拡大についてどのような取り組みをされているのか、この点をお聞かせいただければと思います。

岸田国務大臣 日本産酒類の二〇一五年の輸出額ですが、約三百九十億円を記録いたしました。四年連続で過去最高を更新しております。海外における日本産酒類の人気が高まっているということを実感しております。

 外務省としましても、各国の大使公邸等におきまして会食やレセプションを行う際に日本産酒類を提供する、あるいはPRする、こういった取り組みを進めて、在外公館を最大限に活用しながら日本産酒類の輸出促進に積極的に取り組んでいるところです。

 また、昨年十二月には、五十八カ国の在外公館等に食産業担当の日本企業支援担当官を設置いたしました。新たに設置した食産業担当も活用しながら、日本産酒類を含む農林水産物、食品の輸出促進により力を入れていきたいと考えます。

宮路分科員 外務省におきましても大変多様な取り組みを進めていただいているということでございます。

 その中で、平成二十八年十二月二十五日の外務省の在外公館向け日本酒の購入に係る単価契約という入札説明書、こちらにあるんですけれども、先日これについてお聞きしたところ、今、大変日本酒の使用がふえている、特に在外公館における日本酒の使用頻度がふえていると。その際、一回一回業者から見積もりをとっていてはなかなか時間がかかってしまう、あるいは手間がかかってしまうということで、入札方式を採用することによって迅速に、かつ安価にそうした必要となる日本酒を調達できるということで、こうした取り組みを進められているということでございました。

 ただ、残念だったのは、やはり日本酒ということでありまして、我が国酒の一つである焼酎がここに文言として入っていないことでございます。これについてもお聞きしたところ、今のところ入札をかけるほどの引き合いがないというところもこれあるんだということでございましたが、やはり鹿児島の焼酎のつくり手にとっては、外務省の正式な文書に焼酎、そして薩摩本格焼酎と入っていることがどれほど勇気づけられるか、あるいはまた、それに基づいて国際的なそうした場で使用されている、それがどれだけつくり手にとって誇りになるか。それはやはり、私が想像する以上の思いを地元の焼酎づくりの関係者の皆さんは抱いていると思います。

 ぜひ焼酎についても、日本酒がこれだけ拡大しておりますので、外務省もより一層力を入れていただきたいと思っておりますが、今、外務省の焼酎の消費あるいは輸出拡大について取り組まれている現状について御説明いただければと思います。

山田大臣政務官 お答え申し上げます。

 外務省では、これまでも、在外公館を最大限に活用しながら、日本産酒類を初め日本産品の海外展開支援に取り組んできているところでございますが、焼酎についても、大使公邸でのレセプションですとか在外公館の文化行事などの場でPRを行ってきております。

 例えば、去年の九月には、在英国日本大使館で薩摩藩留学生の渡英百五十周年を記念する事業を実施しました際に、薩摩焼酎を約一千二百人の参加者に紹介いたしました。

 そして、昨年の十月には、在ドイツ日本大使館の大使公邸において奄美の黒糖焼酎を紹介するレセプションを開催し、レセプションの後に多くの蔵元が輸出契約を結ぶことができたとの報告をいただいております。

 また、まさにきょうですけれども、全国商工会連合会と鹿児島県商工会連合会が主催して、ヨーロッパとの「酒と食の文化交流事業」イン鹿児島が鹿児島市で開催されていると伺っております。このイベントには、ドイツ、フランス、EUなど欧州各国の大使館関係者や食産業関係者が招待をされておりまして、外務省からも国際貿易・経済担当の鈴木大使を派遣しているところでございます。

 外務省としては、引き続き、全世界の在外公館を積極的に活用しながら、焼酎を含む日本産酒類の海外展開に力を入れてまいりたいと思います。

宮路分科員 今、大変いいことも紹介をしていただきました。

 鹿児島は薩摩藩、鹿児島の我が地元、串木野の羽島というところから、最近「あさが来た」で話題でありましたディーン・フジオカ演ずる五代友厚、そうした五代友厚も含めた薩摩藩英国留学生が薩摩藩を旅立っていった、その百五十周年がちょうど昨年に当たりました。そして、二年後は明治維新百五十周年ということで、今、それに向けて鹿児島県もさまざまな取り組みをしているところでございます。

 薩摩藩と英国のつながりでいきますと、薩英戦争、我々鹿児島人は、あの大英帝国に戦争を挑んだという、これは一つ誇りに思っているところでございますが、あるイギリス人から言わせればジャストトラブルだったらしいんですけれども、それは見解の相違というところであろうと思います。がしかし、御存じかわかりませんが、パリ万博におきましては、江戸幕府とともに、当時、薩摩藩が日本を代表して、薩摩切子であるとか薩摩焼であるとか、あるいは薩摩焼酎を出展したというふうに私も聞いております。

 百五十年前から世界に挑んでいた焼酎が、当然、日本といえばまずは日本酒が来るんでしょうが、やはり国酒の一つでございます。ぜひ、焼酎の海外における消費拡大により一層取り組んでいただき、それが輸出の拡大につながり、そして、願わくばこの入札説明書に、在外公館向け日本酒及び焼酎と、まあ、最近はワインもウイスキーもなかなかいいものが我が国においてはできているということでございますので、決して焼酎だけにこだわるわけではございませんが、そうした日本産酒類のより一層の海外への普及拡大に努めていただければありがたいな、このように思っているところでございます。

 きょうは、大変緊張の中、質問させていただきましたが、大切なTPP大筋合意を受け、やはり輸出に大変、地元の農家あるいは食品関連の皆様方の期待も高まっております。そのような中での韓国における食品輸入規制の撤廃に向けた動き、あるいはまた酒類を初めとする日本産品の海外での消費拡大、輸出促進について、外務省も今一生懸命取り組んでいただいているということをお聞きすることができました。

 私も、それをまた地元に戻って皆さんにお伝えすることによって、さらに地元の農家の皆さんを初め食品産業にかかわる皆さん方が、これからも自信を持って、そして誇りを持って取り組んでいただけるように、頑張ってまいりたいと思います。

 本日は、どうもありがとうございました。

小林(鷹)主査代理 これにて宮路拓馬君の質疑は終了いたしました。

 次に、山田賢司君。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。私は、自由民主党の山田賢司でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。また、役所の皆さんも、突然の質問通告にもお応えいただきまして、本当にありがとうございます。

 では、早速質問の方に入らせていただきたいと思います。北朝鮮問題について御質問させていただきたいと思います。

 言うまでもなく、我が国の国民の生命、自由を守るということは、国家の最大の責務でございます。

 ことし一月六日の核実験、そして続く二月七日の弾道ミサイル発射、こういった相次ぐ暴挙の中、二月二十三日、一昨日ですが、北朝鮮は、韓国及び米国への先制攻撃を行うとの発表を行ったと聞いております。国際社会の再三にわたる忠告を無視して核ミサイルの開発を続け、これを牽制しようとしたら先制攻撃を行うという、とんでもない話でございます。この中には、米国本土のみならず、アジア太平洋地域の米軍基地も攻撃対象と聞いております。

 私たちがどれだけ平和を願おうと、現実にこういう国が存在しております。本件に対する大臣の御所見をお伺いできますでしょうか。

岸田国務大臣 まず、ことしに入りまして、一月六日、北朝鮮が核実験を行いました。そして、引き続き二月、弾道ミサイルの発射を行いました。こうしたことは、我が国にとりまして重大な脅威であると同時に、国際社会全体にとりましても、安心や安全にとって大変大きな脅威となります。断じて容認することはできないと考えています。

 そして、今後の動きにつきましても、引き続きしっかりと注視をしていかなければならないと考えます。予測につきましては、不透明性が高まったということすら言われています。ぜひあらゆる事態に対応できるように、米国を初め関係国とまずは緊密に連携することが大事だと思いますし、平素から、安全保障の分野においても、日米あるいは日米韓、こうした関係国の間での協力体制をしっかりと整備していくことの大切さも感じているところです。引き続き緊張感を持って情勢を見守っていきたいと考えます。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。ぜひよろしくお願いいたします。

 また、核兵器やミサイル等、これらが我が国に対する脅威であるということは当然なんですけれども、それ以前に、今現在も我が国の国民の生命、身体の自由が現実に脅かされている、侵害されている、これが北朝鮮による拉致問題でございます。

 一昨年五月のストックホルム合意を受けて、我が国は、同年七月に制裁の一部解除を行いました。その際、北朝鮮は拉致問題について、過去の経緯はあるものの、いま一度調査を行ってその結果を通報し、生存者がいる場合には帰国させるという約束を行いました。行動対行動の原則ということが当時言われましたが、先方は、当初は一昨年の秋をめどに通告を行うと言いながら、何一つ具体的な行動を行わず、いたずらに時間を引き延ばしているだけであった。

 こういったことから考えて、このストックホルム合意は意味があったのか、どのように評価されているか、大臣、御見解をお伺いできますでしょうか。

岸田国務大臣 まず、我が国は、北朝鮮問題につきまして、対話と圧力、行動対行動の方針のもと、日朝平壌宣言に従って、核、ミサイル、そして拉致、こうした諸懸案を包括的に解決していく、こうした方針で取り組んできました。

 そして、その中にあって、拉致問題は、全ての拉致被害者の帰国を果たさなければなりません。事柄の性質上、どうしても対話の部分が必要となってきます。よって、圧力の部分においてもしっかり対応しながら、一昨年、ストックホルム合意によって一年四カ月ぶりに対話の扉をあけることとなりました。要は、それまで北朝鮮は、拉致問題は解決済みというかたくなな態度をとっていたわけですが、その北朝鮮が、閉ざしていた交渉の扉を開く、こうした意味はあったと考えています。

 ただ、残念ながら、その後一年半たち、調査の結果は報じられておらず、加えて、先ほど議論にもなりました、核実験があり、弾道ミサイルの発射がありました。我が国としましては、これに対して明確な強いメッセージを発出しなければならないということで、我が国自身も独自の措置を発表しましたし、国連安保理におきましても強い決議の採択に向けて努力をしている、こうしたことであります。

 こうしたしっかりとしたメッセージの発出は行っていきたいと思いますが、ただ、拉致問題における対話の意味合いを考えますときに、我が国から対話の窓を閉ざすことはすることなく、引き続き全力で問題解決に取り組んでいきたいと考えています。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。ぜひよろしくお願いいたします。

 ここで外務省の事務方の方にお尋ねをしたいと思います。

 対話と圧力で解決していくという方針のもとでは、国際社会との連携が何より重要になってくるかと思っております。

 国連人権理事会では、拉致を含む北朝鮮の人権状況について決議なども行われて、拉致は人道に対する罪という位置づけをして、北朝鮮を国際刑事裁判所、ICCに付託するというような議論もあったかと思っておりますが、これは今現状どうなっているのか、そして進めるためには何が必要であるのかをお聞かせください。

水嶋政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年十二月、国連総会本会議におきまして採択をされました北朝鮮人権状況決議、これは、国連調査委員会、COIの勧告に基づきまして、北朝鮮の事態の国際刑事裁判所への付託あるいは制裁の範囲に関する検討などを通じて、安保理に適切な行動をとるということを促してございます。

 さらに、同決議は、一昨年十二月に安保理が北朝鮮の人権状況等に関する議論を行ったことを歓迎しつつ、安保理が本議論に継続的かつ積極的に関与することを期待するものとなっております。

 こうした決議を受けまして、昨年十二月に安保理で人権状況を含みます北朝鮮の状況が包括的に議論された際には、複数の安保理メンバーから、ICCへの付託の検討の意義についても発言がございました。

 今後の具体的フォローアップにつきましては、いかなる方法が効果的なのか、安保理メンバー、あるいは北朝鮮人権状況決議の共同提出国でありますEUを含む関係国と協議してまいりたいと考えてございます。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 今まで、対話と圧力と言いながら、実質的な圧力をかけてこなかったという現状もあります。今般、政府におかれては、圧力強化をやっていただくという発表もありました。対話を真摯にやろうという日本の誠実な態度、この誠意が無視され続けてきた。これは、大変じくじたる思いがございます。

 国際社会と連携して、安保理決議、今回、核、ミサイルについての決議を出すというのであれば、ぜひ拉致を理由とした安保理決議が出されるようにお願いをしたいと思います。そしてその際、今ございました国際刑事裁判所への付託、これも含めて安保理で決議していただけるように、ぜひお願いをしたいと思います。どうか、一刻も早い被害者の帰国実現に向けて政府全力を挙げて取り組んでいただきますように、改めてお願い申し上げます。

 では、続きまして、竹島問題についてお伺いしたいと思っております。

 我が国の領土と主権が長らく侵害されている、この問題の一つがこの竹島問題でございます。

 二月二十二日は竹島の日であり、私も先日、島根県が主催する竹島の日の式典に参加してまいりました。ことしは、式典に参加するだけではなくて、前日から島根県の方に入りまして、隠岐島の住民の方々、あるいは漁業関係者、地元県議会の方々を含めて、竹島返還運動に取り組んでおられる多数の方々との討論会にも参加し、切実な生のお声を聞かせていただきました。これを踏まえてお伺いさせていただきます。

 まず、竹島の日の式典を政府主催でやらないのはなぜなのか。実は、この質問、この分科会で昨年三月にもお伺いしたんですが、当時の御回答は、諸般の情勢を踏まえて適切に対応ということでございました。地元自治体、島根県が取り組まれるというのはもちろんなんですけれども、本来、領土問題というのは国の責任で解決すべき問題です。政府においては、従来より、竹島が紛れもなく我が国の固有の領土であり、韓国が不法占拠しているということを正式に表明しているんですから、これ以上気を使う必要はないのではないか、このように考えますが、竹島の日の式典を政府主催で行わない理由をお聞かせいただけますでしょうか。

市川政府参考人 お答え申し上げます。

 これまで一貫して竹島問題の解決に御努力、御尽力されてこられました島根県、島根県議会を初めとする関係者の皆様に心から敬意を表したいと思っております。

 竹島ですが、御指摘のように、歴史的事実に照らしても、かつ国際法上も、明らかに我が国固有の領土でございます。政府としましては、竹島の領有権の問題に関する我が国の立場を主張しまして、問題の平和的解決を図る上で有効な方策について不断に検討してきたところでございます。

 いずれにいたしましても、政府による竹島の日式典の開催については、諸般の情勢を踏まえて適切に対応してまいりたいと考えております。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 その諸般の事情がわからないというのがやはり現地の皆さんの声でございます。もう本当にこれは繰り返しで、毎年この話をしても、政府はお立場があってなかなか言いにくいのかもしれません。外交上の問題があるんでしょう。

 ただ、先ほど申し上げましたように、何をやったって常に文句を言うんですから、政務官を派遣しても文句を言うのであれば、やはり堂々と日本国主催でやっていただきたいと思います。

 また、この式典に関連して、毎年、この竹島の日の式典に合わせて韓国の活動家が来て、抗議活動あるいは妨害活動を行っております。同じ人物が来ているということなんですね。

 我が国の主権を脅かそうという主張を行うことがわかっている人物をなぜ入国させているのか、入国不許可にできないのか、この辺ちょっと教えていただけますでしょうか。

佐々木政府参考人 個別の事案に関してではなくて一般論としてのお答えになってしまって恐縮でございますけれども、我が国に上陸しようとする外国人から申請があったときは、入管法に定める上陸のための条件に適合しているかどうかを審査することとなってございまして、こうした審査の結果として、当該外国人がこの条件に適合している場合には上陸を許可することになっております。

 他方、例えば、我が国で違法行為を行おうとしていることが明らかな場合や、過去に犯罪を犯し、一定の刑罰に処せられたことがある者、我が国政府を暴力で破壊したり公共の施設を不法に破壊することなどを企てる者など、入管法に規定されております上陸拒否事由に該当すると認められる場合には上陸を拒否することになります。

 これが入国審査の仕組みでございまして、私ども法務省といたしましては、関係法令に定められた手続にのっとって、引き続き適切な審査に努めてまいります。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 適切にということなんですけれども、そもそも外国人の政治活動というのはどの程度認められるのかということでございます。

 外国人であっても、当然、表現の自由というのは認められるべきということは理解しておりますし、政治活動も、例えば環境問題をやられるだとか子供の貧困だとか女性の地位向上、こういったことを堂々と主張されるのは別に理解できるんですけれども、明らかに我が国の主権を侵害しようという主張をする、我が国の主権を脅かそうという政治活動ですね、これをやることがわかっている人物、これを再入国拒否というか入国不許可にはできないものなのでしょうか。改めてお伺いできますでしょうか。

佐々木政府参考人 先ほどお答え申し上げましたように、日本に入国して明らかに違法活動を行うという場合は上陸拒否事由に該当いたしますけれども、外国人が合法的に自己の思想信条を表明すること、これは入管法上の上陸拒否事由には該当しないものと考えてございます。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 では、続きまして、漁業者の方々からの切実な声として、日韓漁業協定というものがあって、そこで暫定水域が設けられている、この話についてお伺いしたいと思います。

 隠岐島の島民の皆さんあるいは島根県の漁業関係者の方の切実な思いとして、とにかくもう一度竹島周辺で漁をしたい、漁ができるようにしてくれ、こういうお声がございました。

 現在、竹島周辺十二海里に近づくと、韓国当局が警告をしてくるということでございます。これ自体けしからぬ話なんですけれども、それだけでなく、もっと広範な地域、日韓漁業協定に基づいて、広範な海域が暫定水域という形で設定されている。

 ところが、この暫定水域というのは、日韓双方の漁業者が漁ができて、ただ、取り締まるときに、日本の漁業者は日本政府が、韓国の漁業者は韓国の政府がそれぞれ取り締まるということになっているんです。建前はそういうことなんですけれども、日本の漁業者さんというのは、資源管理にも配慮して、お行儀よくルールを守って漁をされている。他方、韓国の漁業関係者は、乱獲をしたり、あるいはカニかごを捨てていったり網を投棄したりということで、漁場が荒らされてしまって漁にならない、こういう悲痛な声がありました。

 こういった実態を踏まえて、どんな救済措置あるいは改善策があるのかということを教えていただけますでしょうか。

浅川政府参考人 お答え申し上げます。

 日本海の暫定水域におきましては、ズワイガニの資源状況が悪化するとともに、韓国漁船による漁場の占拠、また漁具の放棄などにより日本漁船の操業に支障が生じているというのは先生御指摘のとおりでございます。

 我が国は、協定発効以来、毎年の日韓漁業共同委員会などにおいて暫定水域の資源管理や漁場利用について韓国政府に対して問題解決を図ることを強く求めてまいりましたけれども、韓国政府は長年政府間の協議に応じてきていない、そういう状況にございます。

 しかしながら、漁場の利用ということに関しましては、昨年の日韓漁業共同委員会において、日本海の暫定水域における漁場の交代利用のための、政府及び民間漁業者で構成される官民協議会を立ち上げようということで合意したところでございます。この合意に基づきまして、これまで、この官民協議会の開催を含めて韓国側と鋭意協議を進めてきているところでありまして、引き続き韓国側との協議に粘り強く取り組んでまいりたいと考えております。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 私は、領土の保全には、やはり生活実態が何より重要だと考えております。もちろん竹島の日の式典というのも大事なんですけれども、それをやったからといってすぐに返ってくるわけでもないと思います。しっかりと広報活動をやって国民の幅広い理解を求めていくこと、このことと、生活実態を確立していくこと、この両輪が大事だと考えております。

 外務省におかれても、英語とか韓国語、多言語で、動画やチラシなど、竹島の歴史、経緯といったものをホームページに掲載していただくなどの広報に努めていただいております。また、海外に対して多言語で発信するというのは大変重要な取り組みだとは考えます。

 一方で、国内の関心がまだまだ盛り上がっておりません。竹島奪還に向けた強い世論を喚起するためには、もっと多くの国民の皆さんに知っていただく必要があると考えております。ただ、式典だとか資料の掲示というのは、関心のある人には見てもらえるんですけれども、全く関心のない方に興味を持ってもらうというのはそもそも至難のわざで、もう一工夫要るのかなと考えております。

 例えば、昔の隠岐島の漁師さんの暮らしぶりなんかを描いたドラマをつくって、はやりの人気俳優さんなんかに出演してもらって、ふだん竹島に関心のない方も、そのドラマを通じて、本当にこの周辺で隠岐島の方々、島根県の方々が生活をしていたんだ、こんな生活実態を理解してもらう、このことが、ああ、竹島はやはり日本の領土なんだなというような理解を深めることにつながるのではないかなと考えております。

 また、さらには、町おこしとか地域おこしといった観点から隠岐島や竹島に関心を持っていただくことも重要なのではないかなと考えております。

 竹島では、話を聞くと、バケツサイズの大きなアワビがあったりとか、おいしい岩ノリがある、こんな話も聞いております。これこそ、こういった地域の名産品を竹島ブランドといったものでプロデュースすることによって、食あるいは観光、文化といった面から、領土と大上段に構えるのではなくて、そういった、身近に、おいしいね、これはどこのものなの、これは竹島のだよというような形で幅広く理解を深めていく、このことが大変重要なのではないかな、こういうふうに考えております。このことが竹島問題の認知度向上につながっていくのではないかと考えております。

 生活の基盤を充実させて生活実態を確立させること、これが最大の領土保全だと考えております。そこで、隠岐島だけに限らないんでしょうけれども、国境に接する離島の振興策について政府の取り組みをお聞かせください。

本東政府参考人 離島振興につきましては、離島振興法に基づきまして、国土交通省を含む関係府省によりまして、交通ですとか生活基盤の充実、あるいは産業の振興、定住の促進、こういったことに取り組んでいるところでございます。

 具体的に申しますと、例えば、国土交通省におきまして、離島活性化交付金という予算を所管しております。この交付金を活用いたしまして、離島の定住促進を図るために、特産品の開発ですとか、そういったものの海上輸送費の支援、あるいは島の活性化のための交流事業の促進、こういったことについての支援を行っているところでございます。

 もう少し具体の事例ということで申し上げますと、島根県隠岐の島町の事例でございますけれども、島の特産品でありますサザエ、イカ、こういったものを本土へ輸送する際の海上輸送費の支援、あるいはいろいろな映画とかテレビのロケに来たりいたしますので、そういったものを通じた隠岐の島町のPR、こういったものについての支援を行っております。

 引き続き、離島振興のために必要な施策を総合的かつ積極的に実施してまいりたいというふうに考えております。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 地方創生の観点からも安全保障の観点からも、ぜひとも離島の産業振興そして生活基盤の充実に力を入れていただきたいと思っております。

 ちなみに、私の地元には離島とか国境離島とかはないんですね。漁業もそんなに盛んなところではないんですけれども、日本国の利益ということでございますので、ぜひよろしくお願いいたします。

 引き続きまして、そういった取り組みも大事なんですけれども、幾ら言っていても竹島は返ってこない。話し合いで解決するというのはもちろん重要なんですけれども、相手がそもそもこの話に乗ってこないということであれば、やはり司法的解決が何より重要ではないかと考えております。

 そこで、これも再三議論になっているんですけれども、国際司法裁判所への単独提訴を行えないのはなぜか。もちろん、国際司法裁判所というのは、強制管轄権を相手側、韓国が持っていないので、幾ら日本が訴えても出てこないんですけれども、日本側から単独提訴、せめてこれぐらいできるだろうというのが多くの方々の声でございました。武力で取り返せとか、そういう声もあるんですけれども、そこまでしないまでも、多くの常識的な方々は、国際司法裁判所に持っていくことぐらいやったらどうだ、こんな声がありましたので、政府の御見解をお聞かせいただけますでしょうか。

大菅政府参考人 御存じのとおり、国際司法裁判所との関係では、我が国は、過去三回にわたりまして、国際司法裁判所による解決を韓国側に提案してきております。古くは、いわゆる李承晩ラインが一方的に設定された一九五二年の二年後である一九五四年、次いで一九六二年、最も最近におきましては二〇一二年八月、国際司法裁判所に合意付託するという提案を韓国側にしております。これに対して、これまでいずれも韓国側に拒否をされてきているということでございます。

 竹島問題につきましては、国際法にのっとり冷静かつ平和的に紛争解決するという考え方が基本でございます。そういった観点からさまざまな検討、準備を進めているところでございます。今後、種々の情勢を総合的に判断して適切に対応する考えでございます。

 竹島問題は一朝一夕に解決する問題ではございませんが、韓国側に対して、受け入れられないものについては受け入れられないとしっかりと伝え、大局的観点に立って冷静に粘り強く対応していく考えでございます。

山田(賢)分科員 済みません、今、肝心なところがよく理解できなかったんですけれども、合意付託を求めているという言い方をされて、合意付託を求めても、相手が合意しなければしようがないわけですね。

 私がお伺いしたのは、単独提訴というのはできないのか、もしくはそれをやると何か不都合があるのか、この辺ちょっと教えていただけますでしょうか。

大菅政府参考人 御指摘のさまざまな対応というのはあり得るのだとは思いますけれども、まさにさまざまな検討、準備を進めているというところでございまして、今後、種々の情勢を総合的に判断して適切に対応するということでございます。

山田(賢)分科員 当然、外交ですから、種々の事情とかいろいろなものを考えて総合的に判断しないといけないのはそのとおりなんですけれども、このやりとりを聞いた人は、何だ、何にもやらないんじゃないかとしか思わないわけですね。何か不都合があってだめだ、もしくは、こういうことがあるからできないのだけれども、これは外交上言えないんだということは、それはそれでしようがないのですけれども、今の、総合的判断でということで言われると、要するに、やらないんだけれども一々そんなことは説明できないよというふうにしか聞こえないんですね。

 一つ参考にしたいなと思ったのが、去年もお伺いしたんですけれども、フィリピンというのは、南シナ海における中国の領海侵略というのか領土の主張、これに対して、国連海洋法条約に基づく仲裁手続、これに付託をされました。当初、領有権に関することというのは管轄権に入らないんだという話をしておりましたけれども、結局、ふたをあけてみたら、国連海洋法条約に基づく仲裁の管轄権があると認められた部分があったんですね。

 もちろん、岩かどうかだとか大陸棚かどうか、これは竹島には使えないと思うんですけれども、例えば、周辺海域の環境だとか航行の自由に対する危険を根拠としてフィリピンの主張は認められたわけですね。同じように、竹島周辺海域の環境保護あるいは航行の自由に対する危険ということを理由に国連海洋法条約に基づく仲裁裁判に持ち込むということは、選択肢として十分あり得るのだと思います。

 これを仲裁裁判に持ち込むと、今度はかえって我が国の不利益になるようなことが何かあるのかどうか、教えていただけますでしょうか。

大菅政府参考人 御指摘のフィリピンによります南シナ海の問題に関する国連海洋法条約上の手続としての仲裁裁判、これにつきましては、まさに竹島問題とは別ですけれども、南シナ海の問題を、法の支配に立脚した国際秩序の維持発展に資する形で解決する方法ということで、我が国としても、このフィリピンのとっております手続を支持しているところでございます。

 同様の手法を竹島問題に適用するかどうか、この点につきまして具体的にこの場でお答えするということは、やはり竹島問題に関する我が国の今後の対応に影響を及ぼし得るということから、この場では差し控えさせていただきたいと考えております。

山田(賢)分科員 もちろん、平和的に解決するためには粘り強い交渉というのが重要なんですけれども、粘り強く話し合っても、相手がそもそもここに問題はないんだと言っていて、取りつく島がないわけですね。そうすると、国際世論を幾ら喚起したって、いや、これは日本が言っているだけだよ、相手にしないよと言われてしまえば、それでお手上げになってしまうわけですね。

 だとするならば、武力でとるなどというのは別としまして、平和的に解決するのであれば、司法の場に引きずり出すしかないわけでございますね。やはり、幾ら言っても聞かないのであれば、相手が嫌でも話し合いのテーブルに着かざるを得ない、こういう場に持ち込むことが必要だと考えております。

 いろいろな方法はあるかと思いますが、大臣、もしよろしければ、その点についての御感想、御意見をお伺いできますでしょうか。

岸田国務大臣 まず、我が国の立場ですが、竹島は、歴史的事実に照らしても、また国際法的にも、明らかに我が国固有の領土です。韓国による竹島の占拠、これは、国際法上何ら根拠がないまま行われている不法占拠である、この立場は、これまでもたびたび明らかにしておりますし、これからもしっかりと表明していかなければならないと思います。

 その上で、それをどのように国際社会にも理解してもらい、そして何よりも韓国との間においてどのように解決をしていくのか、これを考えていかなければなりません。

 国際社会に理解してもらうことにつきましては、委員も御案内のとおり、外務省も、ホームページ等でさまざまな工夫を行っておりますし、さまざまな印刷物を用意するなど、さまざまな機会に説明を行っているところです。こうした国際社会の理解を背景に、韓国とも問題解決に向けてしっかりと努力をしなければなりません。

 その具体的なやり方について、委員から今、直接、具体的に御質問をいただいたわけですが、これは、今この場で我が国の対応を具体的に申し上げるのが韓国との関係において適切なのかどうか、この点も踏まえながら我が国の対応を説明していかなければならないと存じます。

 さまざまな御指摘をきょうもいただきました。ぜひ、御指摘を踏まえて何をするべきなのか、しっかり検討を続けたいと思います。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 冒頭申し上げましたように、国家の最大の責務というのは、国民の生命、自由、そして財産を守るということでございます。どれだけ我々日本国民が平和と安全を願っても、やはり国民を連れ去って返さないやつがいて、島をとって返さない、あるいは日本の領土を脅かそうという国が現実にございます。ぜひこれも、全力を挙げて、国民の生命、自由、財産を守るように取り組んでいただければと思います。

 本日はどうもありがとうございました。

小林(鷹)主査代理 これにて山田賢司君の質疑は終了いたしました。

 次に、浮島智子君。

浮島分科員 公明党の浮島智子でございます。

 本日は、分科会、本当に、大臣を初め関係者の皆様、大変にお疲れさまでございます。

 私の方からは、本日は、海外における日本人学校の安全、安心、そして在外公館についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 まず日本人学校に関してでございますけれども、私は昨年、文科委員会の視察でトルコ・イスタンブールの日本人学校を視察させていただきました。そこで一つ驚いたのは、その学校の校門を入っていくにはマフィアの家の横を通っていかなければならないんです。ちょうど子供たちが下校したすぐ後にマフィアの撃ち合いが始まったということで、子供たちには何もけがはなかったんですけれども、学校の中が銃弾の跡で穴だらけでございました。

 私もその状況を自分の目で見て本当に驚いたのと、恐ろしいなというのを感じたところでございましたけれども、地域によっては、このように銃撃により損傷を受ける学校もありましょうし、また地震の影響を受ける学校も多くあると思います。

 そこで、日本人学校の耐震化や老朽化対策等を強力に推進していただきたいと私は思っているところでございます。

 外務省におかれましては、シドニー方式、新築や増築を援助の対象にされている、また耐震化、老朽化は対象ではないということで伺っておりますけれども、特別の修繕費として一部の改修とかそういうところは援助をしているということも伺っているところでございます。

 そこで、今回の予算規模、また対策を進めていくことに対しての御所見をお伺いさせていただきたいと思います。

    〔小林(鷹)主査代理退席、主査着席〕

能化政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のありました耐震化の必要性等の建築基準につきましては日本人学校の所在する国、地域により異なりますので、耐震化や老朽化対策に係る工事費そのものは政府援助の対象としておりません。

 一方で、児童生徒の健康、安全に影響を与えるような校舎建物等の劣化を速やかに修繕できるようにということで、校舎を所有し、かつ校舎に対する政府援助を受けていない小規模で運営基盤の脆弱な日本人学校に対して修繕費の一定額を援助しております。また、より抜本的な対処を要するケースにおきましては、児童生徒数の増加に伴い、学校が校舎等を購入もしくは新増築する場合に、銀行からの借り入れ金の一部を援助しております。

 外務省といたしましては、こういった制度を活用しながら、日本人学校に対する可能な限りの支援を継続してまいる所存でございます。

浮島分科員 済みません。予算規模を教えていただけたらと思います。

能化政府参考人 最初に申し上げました、小規模で運営基盤の脆弱な日本人学校に対する修繕費につきましては、二十七年度、一千万円ということで計上しております。それから、いわゆるシドニー方式でございますけれども、建設、購入に当たっての費用の支援ということでございますけれども、こちらは、平成二十七年度、三・一億円ということで計上しております。

浮島分科員 ありがとうございます。

 今御答弁いただきましたように、地域で違いがさまざまあると思いますけれども、全力で進めていただきたいと思っております。

 と申しますのも、昭和五十三年の二月、当時の法制局の長官が、我が国の公立学校とは性格を異にする在外教育の施設に対しての御答弁でございますけれども、義務教育に関する憲法第二十六条の規定には直接適用はならないけれども、しっかりと憲法第二十六条の精神に沿うものであるということも御答弁をいただいているところでございますので、外務省におかれましても、しっかり最大限の努力をするようにお願いさせていただきたいと思います。

 次に、建物のハード、このしっかりと命を守るという観点もそうですけれども、私は、同時にソフトの方もしっかりしていかなければならないと思っております。

 今、世界に目を向けますと、テロ等、残念でございますが、このイスタンブールの日本人学校の件もそうでございますけれども、いろいろなことが起きてしまっているのが現状でございます。

 今、WHOの方で、学校の安全につきまして、教職員、児童生徒、保護者、警察、消防等、地域の人々が協力をして組織的かつ持続可能な取り組みが展開されている学校を認定して、その取り組みを発展、高めようという制度で、国際的認証活動の一つとしてインターナショナルセーフスクールというのを推進されています。

 在外の日本人学校にもこのような取り組みを行っていく必要があると私は考えているところでございますけれども、今まで以上に警察や消防といった地域の行政機関との連携が必要になってくると思います。また、外部の警備の必要もあると考えております。既に在外公館との連携、サポートはとられていると思いますけれども、私はさらなる取り組みが必要と考えて、この御質問をさせていただきたいと思っております。

 そこで、日本人学校の安全確保への取り組みについて、外務省と文科省の御所見をお伺いさせていただきたいと思います。

能化政府参考人 お答え申し上げます。

 安全対策は極めて重要でございます。外務省といたしましては、特に、昨年初頭のシリアにおける邦人殺害テロ事件を受けまして、支援の強化に取り組んでおります。

 具体的には、同事件の後直ちに、在外公館を通じて、在留邦人への注意喚起、日本人学校との連携強化及び治安当局に対する日本人学校の警備強化の要請を行いました。

 また、平素より、在外公館が日本人学校と緊密に連絡をとり合い、各館所属の警備対策官による日本人学校への安全対策に関する助言を行っております。

 さらに、日本人学校が雇用する警備員雇用費に対する財政支援を行っておりますほか、施設内に警報器、監視カメラ等の警備機器を設置し、事件、事故等を感知した際には最寄りの警備会社や治安当局に自動通報するシステムを導入している日本人学校に対しましては、その維持管理費の一部を援助しております。

 文部科学省と連携いたしまして、日本人学校へ派遣される教員に対する研修におきましては、外務省の警備専門官による安全対策に関する研修を実施することも開始しております。

 今後とも、先生御指摘のような方法を初めとしまして、さまざまなアイデアをいただきながら、日本人学校等の安全対策をさらに強化すべく取り組んでまいりたいと考えます。

伯井政府参考人 お答え申し上げます。

 多くの企業等が海外に進出いたしまして海外の日本人学校等で学ぶ子供も増加している中で、こうした子供たちが安心、安全に教育を受けられるように国としても最大限の援助を行うことが必要であるというふうに認識しております。

 文部科学省といたしましては、在外教育施設に在籍する子供たちや派遣教員の安全確保のために、危機管理や安全対策資料の配付であるとか、あるいは派遣教員に対する警備、自宅の防犯手当の支給等の取り組みを行っているところでございます。

 さらに、先生御指摘のとおり、海外で安心、安全に生活するための基盤整備として、日本人学校が関係の機関としっかりと連携して取り組みを進めていく体制を構築することも重要であるというふうに認識しているところでございまして、引き続き万全の体制で取り組んでいきたいと思っております。

浮島分科員 ぜひとも外務省と文科省の連携を密にしていただきたいと思います。

 なぜ私がこのような質問をさせていただいているかといいますと、今、さまざま状況が変わってきております。なので、瞬時に知らせることがやはり大切だと思っております。

 今までのように対策をとっていくのもとても重要なんですけれども、例えば何かが学校で起こった、そして学校内から公館に行く、そして地元の警察に行く等々、そこからまた住民に知らせるとか、だんだん遅くなっていってはいけない、やはり瞬時にやっていくのが必要ではないかというふうに思っております。

 私は、大阪教育大学附属池田小学校にも視察に行かせていただきました。不審者が入ってきて生徒を刺してしまったという事件があったところでございますけれども、私がそこを視察させていただいて、そこではインターナショナルセーフスクールの認定もとりました。

 だけれども、この認定をとるのが日本国内ではとても大変だと。なぜかというと、全部英語なので、英語の資料を取り寄せて、それを日本語に全部訳して、そこでまたやりとりをして、また、認証していただくのも、向こうから来ていただいて、そしてすごくお金もかかってしまうということで、なかなか日本国内ではWHOがやられているインターナショナルセーフスクールが広がらない。

 でも、状況が変わってきているので、子供たちを守るのでこういうサポートが必要だということで、独自のセーフティープロモーションスクールというのをされました。それで今、日本でも幾つか認定がなされているところでございますけれども、私が行って驚いたのは、本当にボタン一つで全てのところに瞬時に、今こういうことが起こったということが知らされるようになっております。

 このシステムを見まして、これからいろいろなことが起こっていく中で、日本人学校が先頭に立ち、日本の子供たちはもちろん、向こうに住んでいる日本人の方々、邦人ももちろんそうですけれども、いわば地域の方を守っていく、日本人学校が先頭に立って子供たちそして地域の方々を守るということを示していくのもとても重要だと思いますので、どうかこの点、瞬時に対応できるということも御検討いただきたいと思います。

 大臣、この件に関して一言コメントをいただけましたらと思います。

岸田国務大臣 委員からの御指摘は大変重大な御指摘だと受けとめ、また関心を持って聞かせていただきました。

 我が国においても、こうした学校での安全等に対しましてしっかり意識を持ち、国際的な水準等も考えながら取り組んでいかなければならない課題だと考えます。

 御指摘のさまざまな制度等もしっかり参考にしながら、我が国としてどのような対応をとっていくのか、外務省としても、また政府全体としてもぜひしっかり取り組みを考えていくべき課題だと認識をいたします。

浮島分科員 ありがとうございます。ぜひともよろしくお願い申し上げます。

 次に、特別支援教育と教員の配置についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 日本人学校にも知的障害、身体障害、また発達障害等の子供たちが通学をしております。

 そこで、日本人学校に通学する特別支援を要する児童生徒の数、そして教員の対応、特別支援教育の実施の状況等はどのような現状になっているのか。また、保護者は、特別支援教育を国内での公立学校と同じように、きめ細やかな実施を望んでおられます。学校の安全確保のためにも、相応に対応できる人数、人材が必要だと私は考えております。そのような状況に対応するため、教員の配置を一層充実する必要があると考えますが、文科省の御所見をお伺いさせていただきたいと思います。

伯井政府参考人 お答え申し上げます。

 まず現状でございますが、日本人学校等に在籍する児童生徒数は平成二十七年四月現在で約二万人でございまして、このうち特別な支援が必要な児童生徒数は五百十五人となっております。これにつきましては、六年前の四月当時では百二十五人でございまして、大幅な増加という状況でございます。

 こうした児童生徒に対するきめ細やかな支援を我々としても対応していくということで、平成二十七年度におきましては、特別支援対応ということで六人の派遣教員の増員をいたしたところでございます。さらに、平成二十八年度予算案におきましては、特別支援対応七人を含む計十四人の派遣教員の増員を予定しているところでございます。

 今後とも、在外教育施設で学ぶ児童生徒の教育環境の向上という観点で、とりわけ特別支援教育への対応をきめ細やかにできるよう、しっかり教員派遣の充実に努めてまいりたいと考えております。

浮島分科員 ありがとうございます。

 財源も厳しい中だと思いますけれども、ぜひともよろしくお願いいたします。この間も、トルコのイスタンブールの学校でも保護者の方々から、やはり精神的な問題がとても多くある、教員定数をしっかりと確保してもらいたいという御要望もいただいております。本当に切実な声だと思いますので、どうかよろしくお願い申し上げます。

 次に、在外邦人の芸術家と在外公館との交流についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 私は、国際的な文化交流基盤の強化のために、在外公館の文化的機能を強化するべきであると強く思っているところでございます。

 在外公館におきましては、これまでも文化芸術分野を担当する部署があり、当該国において日本人の文化芸術活動を支援してきたと思っております。日本人の文化芸術活動は、日本の国の価値を飛躍的に高める効果がございます。しかしながら、まだまだ外国の方に効果的にPRができていないのではないかというふうに私は感じております。

 そこで、御提案なんですけれども、在外公館において文化芸術分野の振興施策の責任者を明確にすることが必要ではないかと思います。例えば、在外の文化芸術専門官を設置してこの文化芸術振興策を強力に推進すべきと考えますけれども、外務省の御所見をお伺いさせていただきたいと思います。

山田大臣政務官 お答え申し上げます。

 一般的に、在外公館におきましては館長を中心に日本文化のPRに積極的に取り組んでおりますが、通常、各在外公館には広報や文化に関係する業務を担当する部署が設けられており、その中に広報文化担当者が配置されております。特に海外の主要都市におきましては、公使や参事官クラスを含む人員を当該部署の長として配置しつつ、複数名の班員による体制となっております。これらの担当者は、海外在住の邦人芸術家との連携も含めて日々業務に当たっているところでございます。

 御指摘の、文化芸術担当官を指名すべきとのお考えにつきましては、対外的に在外公館の担当者の存在を明らかにして、海外在住の邦人芸術家の方々と在外公館の広報文化担当者がより緊密に連携しやすくすることを意図するものと考えますが、そのような御趣旨を踏まえ、引き続き体制の強化に努めてまいります。

 また、海外在住の邦人芸術家の方々については、在外公館における文化事業に御協力をいただいている場合が多く、さまざまな機会に在外公館との交流を図っているところです。

 海外在住の邦人芸術家と在外公館との連携それから定期的な交流が図られるよう、浮島議員の御指摘を踏まえ、努めてまいります。

浮島分科員 ありがとうございます。

 今御答弁いただいて、複数の方がいらっしゃるとおっしゃられておりましたけれども、私は、担当の方により、また各国により違いが多く出てくると感じているところでございます。オリンピック・パラリンピックも決まりました。文化プログラムも開催されます。在外公館というのは日本をアピールできるすばらしい場所だと思いますので、どんどん日本人の方々を巻き込んでいきながら宣伝をしていただきたいと思っております。

 私がどうしてこの専門官をということを申し上げさせていただいたかといいますと、実は、今御紹介にもありましたけれども、日本文化の紹介事業が実施されている。これは在外公館と常時連絡をとり合って活動されているということで、私はいろいろなお話を聞いております。また、各国に日本人会の組織もあり、そして在外邦人の交流も行われている。これもわかっております。しかし、在外公館に把握されていない芸術家もたくさんいると私は思っております。

 と申しますのは、これは一つの例なんですけれども、私の知っている若いバレリーナが海外で活躍しております。十数年同じところに住んでいて、そして今はバレエ団に入って、バレエ団のトップスリーとして、ドゥミソリストとして今踊られています。その件に関して外交官、職員の方にお尋ねしたら、日本人がバレエ団にいるなんて全然知らなかったと言われました。私もちょっとショックを受けたところでございました。

 なぜそうやって知らないかというと、私もそうでした、私も実は香港に一番初めに行かせていただいて、香港でプリマバレリーナとして踊らせていただいたときに、日本人会とかそういうのに自分からは所属をしません。なので、大使館や領事館に行ってお話しすることもなかなかないですし、住んでいる日本人の方々と交流することもなかなか少なかったです。だから、多分、そういうつながりが薄いというところもあると思うんです。

 この方々が実はこういうところに入っていながら、私がなぜいろいろなところに出られるようになったかというと、私はみずから領事館には行かなかったんですけれども、その当時の総領事、松浦晃一郎さんが、日本人の人がプリマバレリーナとしてこの香港で踊っている、お会いさせていただきたいということで、領事館の方から御連絡をいただき、そしてお会いさせていただきました。そこでいろいろなパーティー等々催し物があると御招待をいただき、そしてそこの方々、海外の方々と交流をさせていただくという、このつながりを持っていきました。なので、どういう日本人がどういうところでどういう活動をされているかというのがちゃんと把握されていたと私は思うんです。

 今回のバレリーナは一つの例でありますけれども、一つではなくて、いろいろなケースを私は伺っているところでございます。なので、まだまだこういう知られてない方々がたくさんおられると思うんです。

 先ほど御提案をさせていただきました専門官、また今強化をしていただけると思うんですけれども、この担当の方々を中心に、しっかりと文化人、芸術家との連携を強めて、定期的な交流を進めていくべきではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 日本文化をPRする上からも、海外在住の邦人芸術家の方々との連携は大変重要であると考えます。

 これまでも、日本文化のPRももちろんですが、こうした芸術家の方々を支援させていただく、こういった観点からも、在外公館においてさまざまな日本文化紹介事業に参加していただく、あるいは逆に、そうした芸術家の方々が取り組んでおられるイベントを日本としても支援させていただく、こういった取り組みは行わせていただいていると認識をしています。これが十分かどうかという部分については、しっかりとまた検討、吟味していかなければならないと思います。

 ぜひこうした取り組みはより充実させていかなければならないと思いますし、こうした取り組みを行っていること自体をしっかり広報宣伝することによってお互いの連携がよりスムーズにいくような仕掛けも考えていくことが大事なのではないか、このように認識をいたします。

浮島分科員 ありがとうございます。

 今の広報宣伝をどんどんやっていただくと同時に、やはり待ちの体制ではなくて、こういう方がいるというのも進んで探していただけたらと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 また、先ほど初めにも、日本人の文化芸術活動は日本の国の価値を飛躍的に高める効果があると私は申し上げさせていただきました。在外で活躍する文化人、芸術家の方々を顕彰するとともに、その方々に、日本国を海外、世界の方々によりよく知っていただきたいと私は思っております。

 そんな観点から、海外でお住まいになり、文化人そして芸術家として活動されている方々に例えば文化芸術大使として交流、活動していただくことも大変必要だと思いますけれども、この件に関して御所見をお伺いさせていただきたいと思います。

岸田国務大臣 海外在住の邦人芸術家の方々と連携させていただく上において、日本文化をPRさせていただく上において、今御提案いただきました文化芸術大使の創設は効果がある考えではないかと受けとめています。大変貴重な御提案だと思います。

 ただ、実際それをやろうとした場合、海外には多くの芸術家の方々がいます。その中でどの方に委嘱するのかとか、それから国によって、分野によってニーズはさまざまだと思います。どのようなニーズに応えるべくこうした大使の委嘱を行うか、こんなことも考えなければいけないのではないか、たちまち今お話を伺いながら感ずるところです。そういった点もぜひ検討した上で、可能かどうか検討させていただきたいと考えます。

浮島分科員 ありがとうございます。

 今大臣もおっしゃった、基準が難しい、あるいは各分野いろいろ難しいという点は私も承知をいたしておりますけれども、ぜひとも御検討のほどよろしくお願い申し上げます。

 次に、国際交流基金についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 私は、国際交流基金は、文化芸術交流、日本語教育、日本語研究・知的交流の三つの交流事業を実施されているということは承知いたしております。また、文化交流事業では日本の文化、芸術を世界に向けて発信していく、すばらしい活動をしていただいている取り組みだと思っております。

 また、私は、日本をどんどん売り出していく、日本のすばらしさを知っていただくということも重要でございますけれども、逆に、日本にいる芸術家にもいろいろなことを学んでもらいたいということを今考えております。

 それはどういうことかと申しますと、海外にいるすばらしい海外の文化人、芸術家の方々に日本においでをいただく、そして日本の方々と触れ合っていただいていろいろ教えていただく。この文化芸術交流も大切な取り組みと思っておりますし、また、アジアセンターでASEANの文化人、芸術家を日本に招いておるということも承知をいたしております。でも、今はASEANだけだというふうに伺っております。

 私は、ぜひこの二十一カ国、二十二の海外拠点を活用して、世界じゅうから文化人、芸術家にある一定の期間日本に滞在していただき、文化芸術交流を進めていただきたい。また、日本から海外に留学生として一人一人を送り出す、これもとても大切でございます。でも、留学できない方々もたくさんおられます。この留学できない方々も、すばらしい才能を持った方がたくさんおられます。そんな中で、海外の一流の文化人、芸術家の方々にお越しいただき、そしてその方に直接触れる、一度にたくさんの日本人が触れていただき勉強できる機会をつくることがとても大事だと思っておりますけれども、御所見をお伺いさせていただきたいと思います。

佐伯政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国の文化芸術水準の向上を図るためには、その担い手となります、すぐれた人材の育成が大変重要でございます。

 このため、文部科学省では、海外の大学や芸術団体における研修の機会を提供するとともに、日本のみならず世界の専門人材との交流の機会を設け、新進の芸術家などを育成する次代の文化を創造する新進芸術家育成事業や、海外からクリエーターを招聘し、研修、ワークショップ、創作活動や我が国のクリエーターとの交流を実施するメディア芸術クリエーター育成支援事業、さらには、我が国の芸術団体と外国の団体とが国内で行う舞台芸術の国際共同制作公演などを支援する国際芸術交流支援事業を進めております。

 また、国内外の芸術家等が一定期間我が国に滞在し、さまざまな交流を通じて創作活動などを行います取り組みを支援するアーティスト・イン・レジデンス活動支援を通じた国際文化交流促進事業や、さまざまなシンポジウムなどの開催を進めているところでございます。

 文部科学省といたしましては、まさに国際交流基金はさまざまなノウハウあるいは組織を持っていらっしゃいますので、こういった国際交流基金を含めました関係省庁、関係機関と緊密に連携いたしまして、今後とも、我が国のすぐれた芸術家の育成に資する国際交流を積極的に進めてまいりたいと考えております。

浮島分科員 ありがとうございます。ぜひとも連携をとって進めていただきたいと思います。

 あと、実は研究者について質問をさせていただきたいと思ったんですけれども、ちょっと時間が迫ってきてしまったので、一点だけお願いをさせていただきたいと思います。

 研究者もそうなんですけれども、しっかりと連携をとっていっていただきたい。向こうに出て一生懸命研究されている方がたくさんいらっしゃいます。でも、なかなか研究体制また相談体制等々が整っていないということもございますので、しっかりとした相談体制の構築をしていっていただきたいときょうはお願いさせていただきたいと思います。

 最後に、一点だけ大臣に御質問をさせていただきたいと思います。

 私は、きょう、在外公館の大切さ、重要性というのをお話しさせていただきました。国際的な文化交流基盤の強化のために、在外公館の文化的機能を強化するということはとても重要なことだと私は思っております。

 実は、昨年の八月、安倍総理にも御提案をさせていただきました。先日、二月五日の予算委員会でも安倍総理に御質問を再度させていただいたところでございますけれども、安倍総理による未来へのタクトといって、この国会議事堂の中で総理に指揮をしていただく、オーケストラを奏でるということで、文化プログラムのいよいよスタートだ、オリパラに向けてのスタートだということでやっていただくという御提言をさせていただき、総理からも御答弁をいただいたところでございます。

 これは、私、日本だけではなくて、これの大きな意味というのは、やはり今からオリンピック・パラリンピック、この東京に向けてリオが終わってからスタートするぞという、その意味での文化プログラムのキックオフイベントが十月、京都と東京で開催がなされます。その前に、総理に、この国会から、日本、オール・ジャパンでオリパラを進めていこうということで、総理の未来へのタクトというのを御提言させていただいております。

 その中で私が重要と考えているのは、ネットの配信もそうなんですけれども、各国の日本大使館等を使って、そこにやはり来ていただく、大使館にいろいろな関係のある方々に来ていただく、また日本人の方に来ていただいて、この国会で奏でる音楽と同じものを世界各国の大使館で奏でてもらう。そういうことによって一斉に、これからオリンピック・パラリンピックが始まるぞというのを世界が注目するのではないかという観点から、総理にも御質問をさせていただいたところでございます。

 在外公館というのは、安全、安心を初め、さまざま仕事をしてくださっております。でも、その中で、私は、文化、芸術また学術、こういうものを、日本のすばらしさを世界にアピールできる、または広げられる最高の場所だと思っておりますので、どうか大臣が先頭に立って、この場を活用して日本というのをどんどんアピールしていっていただきたいと思います。

 最後に大臣の御所見、御決意をお伺いさせていただきたいと思います。

岸田国務大臣 未来へのタクトという御提案について、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックへ向けて、日本の思いを発する上で大変魅力的な取り組みだと認識をいたします。そして、それを在外公館を使って世界に発信するということについてどう考えるかという御質問かと思いますが、在外公館というものは、言うまでもなく、海外において、邦人の安心や安全はもちろんですが、さまざまな情報収集やさまざまな活動の拠点でありますが、あわせて大切な情報発信の拠点でもあると存じます。

 我が国が世界に向けて二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックに対する思いを発信する際に、世界における大切な在外公館を活用するという考え方は当然あるべき考え方であると思いますし、ぜひ活用を検討していきたいと存じます。ぜひ、何ができるのか、検討を指示したいと思います。

浮島分科員 ありがとうございました。終わります。

菅原主査 これにて浮島智子さんの質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして外務省所管についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

菅原主査 次に、法務省所管について政府から説明を聴取いたします。岩城法務大臣。

岩城国務大臣 平成二十八年度法務省所管等予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 法務省は、法秩序の維持、国民の権利擁護などの任務の遂行を通じて、国民の皆様の安全、安心な生活を守るとともに、国民生活を取り巻く状況の変化に応じた新たな政策課題に取り組むため、現下の厳しい財政事情のもとではありますが、所要の予算の確保に努めております。

 法務省所管の一般会計予算額は、七千四百二十億一千七百万円となっております。

 また、復興庁所管として計上されている法務省関係の東日本大震災復興特別会計予算額は、十三億五千七百万円となっております。

 何とぞ、よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。

 なお、時間の関係もございますので、主査におかれましては、お手元に配付してあります印刷物を会議録に掲載されますようお願い申し上げます。

菅原主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま岩城法務大臣から申し出がありましたとおり、法務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

菅原主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

菅原主査 以上をもちまして法務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

菅原主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。若狭勝君。

若狭分科員 自由民主党の若狭勝でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 まず、最近の話ですが、市役所などに爆破予告というのが立て続けになされております。法務省はもとより治安を守るという最大の役所でございますので、こういった爆破予告という案件についてはどのような視点で臨むか、あるいはスタンスとしてどのようなものを持っているかということについて、まずお聞かせ願いたいと思います。

林政府参考人 御指摘の爆破予告でございますけれども、その態様はさまざまな類型が想定されるところでございますけれども、一般に、こういった爆破予告によりまして、国民の生活や業務等の平穏といったものを脅かしかねない悪質な行為であると認識しております。

 したがいまして、検察当局においても、こうした事案に対しましては、法と証拠に基づきまして、刑事事件として取り上げるべきものがあれば、適切に対処していくものと考えております。

若狭分科員 こういう爆破予告をされながら、しかし実際は爆破しなかったということになりますと、だんだんいわゆるオオカミ少年みたいな形になって、みんなが要するに気が緩む、危機感が薄まるといったときに本当に爆破がされるということになりますと取り返しがつかないので、まさしくこういう、実際は爆破設備を設けなかったという事案においてもやはり厳しく罰すべきだというふうに私も思いますので、その辺はよろしくお願いいたします。

 続いて、今現在、刑事訴訟法の改正案というのが参議院においてこれから審議されようとしていると思います。前回の通常国会において、この刑事訴訟法の改正案は衆議院において成立しました。

 この刑事訴訟法の改正案というのはいわゆる通信傍受の拡大等も含まれているわけですが、そういった観点で、私がかねがね不安に思っているのは、今の日本の法整備のもとでは、四年後のオリンピック・パラリンピックに向けてのテロ対策としては非常にお寒いという実感があります。

 その観点で、そうした通信傍受の拡大も含めて、刑事訴訟法等の改正案についてはこの国会で必ず成立させないと、やはり施行期間までに三年ぐらいありますから、オリンピック・パラリンピックまでに間に合わない。成立しても、オリンピック・パラリンピックの際の事前のそうした封じ込めというのが必ずしもできなくなってしまうおそれもあると思うんです。

 その辺の関係で、法務省として、今、刑事訴訟法等改正案についての考え、スタンスというのは、こうしたテロを見据えたという意味合いにおいてどのようにお考えか、お聞かせ願いたいと思います。

岩城国務大臣 お話がありました刑事訴訟法等の一部を改正する法律案ですが、現在の捜査、公判が取り調べ及び供述調書に過度に依存した状況にある、このような認識のもと、こうした状況を改めて、より適正で機能的な刑事司法制度を構築しようとするものであります。

 これによりまして、これまで以上に、人権保障を全うしつつ、犯罪の全容を解明して適正な処罰を実現することが可能となり、また、暴力団犯罪や特殊詐欺等の社会問題化している犯罪や、おただしのありましたテロ犯罪を含む組織的な犯罪に効果的に対処することができ、ひいては世界一安全、安心な日本をつくることにつながるものと考えております。

 そこで、このように、この法律案は極めて重要な意義を有するものでありますので、速やかに成立させていただけるよう全力を尽くしてまいりたいと考えております。

若狭分科員 法務大臣の今のお言葉、非常に心強く思います。

 ただ、この刑事訴訟法等の改正案が成立して、通信傍受も拡大されたとしても、やはり現状において、テロ対策としては私は非常にお寒い限りであるというふうに思っているところでございます。

 少し歴史を振り返りますと、平成十六年に、いわゆる武力攻撃事態対処法というのが成立して、その中に、原発施設への大規模テロ等に関して、それを想定した形で、いわゆる緊急対処事態というのもその法律の中に盛り込まれたというのは御承知のとおりだと思うんですね。それ以後、警察庁が平成十六年ころにテロ対策推進要綱というのを出して、その要綱の中で、今後、テロ対策として有効な法整備をしなければいけないという意見を出しているんです。

 しかしながら、平成十六年から今に至るまで、結局何の動きもなく、具体的なテロ対策というものが手だてされず、法整備もされずに今のところ来ている。私とすると、まさしくお寒い限りだという実感を抱いているんですね。

 そこで、やはり、今現在の法律でカバーできるところはカバーするんですが、カバーできないところは、テロ対策法として、それなりの法律をいろいろと検討していかなければいけないのではないか、そのように私は思っているんです。

 ですから、これは、法務省だけの問題ではございません、警察庁とか内閣官房とか横断的に考えなければいけないのですが、やはりオリパラを一応焦点に置いて、それまでにもう少し、どうしても必要な法整備というのは今のうちにきちんといろいろと検討して、できるなら早いところテロ対策法をきちんと成立させるということが必要だと思うんです。

 この辺について、法務省の考えというのはどのようなものか、お聞かせ願いたいと思います。

岩城国務大臣 ただいまお話がありました二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催に向けまして、一層の危機感を持ちながら、国際社会と緊密に連携し、政府が一丸となってテロ対策に取り組んでいかなければならないと認識しております。

 テロ対策を確実に進めるためには、その前提として、テロを未然に防止することの重要性に対する国民の認識、理解が必要であるとまず思っております。

 そこで、政府としては、テロ対策の強化等に関し、国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部が決定した内容を公表し、国民に周知するなどしていると承知をしております。

 御指摘のありました、テロを未然に防止することの重要性に対する国民の認識、理解を深めるという意味でのテロ対策基本法の制定にはいまだ至っていないわけでありますが、テロ対策は情勢の変化に応じて常に的確に検討していくべきものでありますので、今後とも、関係省庁において必要な検討を行ってまいりたいと考えております。

若狭分科員 非常に方向性としてはありがたいお話だと思います。

 法務省において、特に入管においては、いわゆる水際作戦ということで、かなりいろいろなことを工夫して、相当の進歩、進捗があるというふうに承知しております。

 ただ、今現在、二つの視点、つまり二つの車輪といいますか、それを考えなければいけない。

 一つは、テロリストの情報がある、あるいはテロのそうした何らかの前歴があるといった者に関して、確実に水際作戦で封じ込めるという視点。もう一つの車輪は、そうしたテロ情報が全くない、いわばテロリストの予備軍の予備軍みたいな形で全く情報が把握されていない者に対して、そうした者がテロを敢行するおそれも抱きながら、その情報のない人間に対しても、どのように封じ込めていくか。これがやはり今後のテロ対策としては重要だと思うんです。

 特に、後者の、情報がないという面に関しては、いわゆる成り済まし入国というのがあるんです。これは、例えば中国の国が正式に旅券として発行している、しかし、そこに記載されている者は日本に入国してくる当の本人ではない、氏名とかが全く別人である。しかしながら、中国政府が正式に発行しているから、なかなかそれを入国の時点で封じ込める、あるいは水際で押さえるということが難しいのではないかと私は思っているんです。

 その辺の、成り済まし入国についての今後の取り組みとか、どのようにお考えかというのを入管当局、局長の方から教えていただきたいと思います。

井上(宏)政府参考人 他人名義で正規の旅券を取得して、他人に成り済まして入国する者に対する対策についてお尋ねがございました。

 当局におきましては、テロの未然防止の一環といたしまして、平成十九年から、我が国に入国しようとする外国人に対しては指紋と顔写真の提供を義務づけて、これらの個人識別情報を活用した入国審査を実施しております。既に、制度の導入から平成二十七年末までに約六千二百人の入国を阻止しておりまして、この中には成り済ましの事案も一部含まれておるものでございます。

 また、平成二十七年度の補正予算におきまして顔画像照合機能の活用強化のための予算措置がなされまして、これにおきまして、テロリストの顔画像を収集した上、顔画像ブラックリストというものをつくりまして、上陸審査時に照合して発見することを進めていくということをしておるところでございます。

 ただ、これらの情報がある場合、委員御指摘のとおり、いずれもこれらの手法が有効に活用されるのは、もとになる何がしかの情報がある場合でございまして、テロの未然防止の観点では、この水際対策情報の活用が、まずもって、基本として非常に重要なものでございます。

 そこで、入管当局におきましては、昨年十月に、出入国管理の情報活用の中核的な組織として出入国管理インテリジェンス・センターというものを設置いたしまして、水際対策に係る情報の収集、分析の強化を図っておるところでございます。現在、同センターにおきましては、テロリストに関する情報収集等のために、国内の関係機関との情報連携強化、また外国関係機関との情報共有のための枠組みの構築等を進めておるところでございます。

 今後とも、関係省庁とも連携しつつ、テロに係る情報収集を鋭意進めることによりまして、水際対策をより一層万全なものとすべく努めてまいる所存でございます。

若狭分科員 ただいまのお話ですと、成り済まし入国も一部阻止したというお話でございましたけれども、それはきちんと解明されたということでしょうか。

井上(宏)政府参考人 他人名義の旅券を使ったわけではございますけれども、指紋の同一性の照合で前に別に退去強制の歴があるとかいうことがわかって、それまでは、指紋照合するまでは他人に成り済まして何度でも来られていたという実情がございますが、そのようなものは完全に阻止できるようになり、また、一般的な予防効果で、一度退去強制を受けると来る人は格段に減った、そのような効果もあると理解しております。

若狭分科員 今お話ししていただいたように、何らかの退去強制歴とか何らかの情報がある人間を水際で封じ込めるというのは、ある意味、前に比べたら相当の進捗、進歩があると思います。

 ですから、その辺について私も非常に入管当局には信頼を寄せているんですが、実は、これは入管当局あるいは警察庁の人もなかなか口が裂けても言えないとは思うんですが、やはり難しいところは難しい。ある意味、ある一部においては、今のところお手上げみたいなところがあるのではないか。

 それは当局としてはなかなか言えないんですが、私は自分の専門家としての話になるわけですが、もしそういうような状態だとしたら、そこにもっと重点的に予算と人間を投入して、さらに一層いろいろなことを整備しないと、そうした情報のない人間とか成り済ましとかいうものにはなかなか太刀打ちができない。やはりそういうような意識を持つべき、そして、予算と人員をきちんと確保するという方向に進んだ方が私はいいと思うんですね。

 ですから、皆さんからはなかなか口が裂けても言えない、万全を尽くしますと言うぐらいのことだと思うので、私の議員の立場として、ある意味、危機意識を皆さんに持ってもらう、国民に持ってもらうためにあえて言うんですが、外から見ていると、一生懸命やってくれているから安心だというふうな思いを持っていただくのは大事なことですけれども、でも片方では、どうしても、情報のない人間をどうするかといったら、そんな簡単な話では決してないんですよね。

 だから、そこを、もっともっと重点的に人と予算を投入するなり、あるいは、それこそ法務省だけじゃなくて、全庁挙げて、官房も含めて、やはりもっともっとさらに推進して、工夫をしていくという必要性があろうかと私は思います。

 これについてはお答えはいただかなくて結構なんですが、とりあえずそういうような意識で皆さんもやっていらっしゃると思うので、なお一層それを推進していただければというふうに思います。

 続いて、いわゆるオウム事件のことについてちょっとお話しさせていただきたいと思うんです。

 私も今、国会議員の中のオウム対策議連の事務局長をさせていただいておりまして、この間、公安調査庁長官のところにも陳情に行かせていただきました。

 やはりオウム事件というのは、テロ対策を考える上においては非常に参考になるというふうに思うんです。地下鉄サリン事件あるいは坂本弁護士殺人事件にしても、恐らくその前から、周りの人、付近の住民は、何となくおかしいというような思いを抱いていた。そして、各捜査当局あるいは関連当局においても、何となく怪しげだと思っていながらも、横の情報連絡とか、あるいは住民からのそうした情報をきちんと徹底収集できなかったことが、ああいう悲惨な大きないわばテロ事件を起こしてしまったというふうに思うんです。ですから、非常に学ぶべきところが多いと思うんですね。

 オウム事件に学べと私は最近よく言っているんですが、その観点で、なお一層、公安調査庁にはそうした視点でいろいろと情報収集に努めていただきたいと思うんです。

 若干話はずれるかもしれませんけれども、オウムもこれからやはりどういう動きをするかわからないという観点で、きちんと住民連絡会で、公安調査庁とか警察庁とか地域、役所も含めて、四者会議とか四者協議とかいうのをもっともっと進めていくことが必要だと思っているんですが、そうした取り組み、四者協議会の設置とかということについて、公安調査庁の方の見解を教えていただければと思います。

杉山政府参考人 公安調査庁では、オウム、当該団体に対する調査業務の充実強化を図るとともに、その当該団体の施設が所在する地域の住民の恐怖感、不安感の解消、軽減に役立てるということを目的として、かねてから住民との間での意見交換会を実施してきたところでございます。

 その中で、幾つかの地域におきましては、これまでも、警察や自治体を含めた四者が一堂に集まった会議を開催しておりました。昨年からは、住民あるいはオウム真理教対策議員連盟などからの要望も踏まえまして、これらの取り組みをさらに強化すべく、各地においてこういった四者会議の開催に向けた準備を進めているところでございます。

 先生おっしゃるように、情報共有あるいは対応の検討というところに役立つものにしていこうということで進めてまいります。

若狭分科員 次に、話はかわりますが、いわゆる再犯防止に関しての話でございます。特に薬物事犯。

 これは私も、かねて検事をやっていたときに所管部長をやっていた関係で、薬物事犯あるいはその再犯防止ということについては、並々ならぬ思い入れがあります。実際に今、ある更生保護施設の役員もさせていただいているんですが、法務省としては、犯罪に戻らない、戻させないという標語のもとで、再犯防止に相当力を入れていただいておると承知しております。

 特に薬物事犯というのは、かねて自分が所管部長をやっていたときというのは、暴力団事件と外国人事件それから薬物事件というのは、ひたひたと、日本社会のそうした、要するに皆が気づかないうちにだんだんむしばんでいって、気がついたときにはもう手おくれだ。いわばあなたも覚醒剤中毒者、こっちも覚醒剤中毒者ということが起きてきたら、日本社会というのは本当に疲弊化してしまうとか劣ってしまう。そういう思いで、薬物事犯というのは、国としてもその対策に相当力を入れなきゃいけないということをかねがね思っていました。

 今、保護局においては本当に並々ならぬ努力をしていただいていると思うんですが、特にそうした薬物事犯の再犯防止という観点で、一番大事だという視点はどんなものでしょうか。お聞かせ願いたいと思います。

片岡政府参考人 お答えいたします。

 まず、薬物の再犯防止の点を御指摘いただきました。

 まず、一番大きいのは、本年六月までに、刑の一部の執行猶予の制度が施行になります。これによりまして、薬物事犯者は、いわゆる初犯者、刑務所への初入者のみならず、累犯者であっても、一部執行猶予のもとで保護観察がつく。そして、その保護観察は、一年から五年という年単位の長期のものでございます。

 これまでの仮釈放に比べると非常に長期の保護観察が続くということで、そこで、それに対応するために新たな専門的処遇プログラムを義務づける等ありますし、それから、施行になりますと保護観察対象者自体の数がふえることになりますので、それに対応することができるための保護観察の実施体制、あるいは処遇内容の強化等を求めていく必要があると考えております。

 また、薬物事犯者につきましては、再犯のみならず、若い人を中心に、薬物に手を出さないという観点で、広報が必要になってくる。これは法務省のみならず関係各省庁でも取り組まれているところですが、特に、法務省が所掌する社会を明るくする運動においても、既に積極的に広報に取り組んでいるところでございます。

 その中で、保護司の皆さんが、全国各地で小中学校等を訪問しまして、非行防止のために、薬物乱用、薬物の恐ろしさというものを学生に教えていただいているということでございまして、この一年間の実績だけを見ましても、全国で千九百八十二回開催していただきまして、参加延べ人数が十万八千六百七十五人となっております。

 民間のボランティアあるいは保護司さんの方々から非常に力強い支援、御協力をいただいておりますので、今後とも、役所による広報も含めまして、薬物乱用防止に向けまして、広報もしっかりと力を入れていきたいと思っております。

 以上でございます。

若狭分科員 ありがとうございます。

 今のお話で、必ずしも保護局だけの話ではないのかもしれませんが、私は、やはり小学生ぐらいから、薬物、特に覚醒剤なんかの害悪というのを周知徹底して教えていくことが大事ではないか。

 昔、覚醒剤やめますか、人間やめますかという標語があったんですね。これは今は余り使われなくなっている。人間やめますかという言葉自体が非常に強過ぎるのでということで、覚醒剤絶対だめとかいうような標語になっていたりするんです。

 でも、やはり小学生ぐらいに周知徹底させるときには、覚醒剤やめますか、人間やめますかというのは心に非常に残るんじゃないかというふうに思います。そうした小学生ぐらいの人に、そのころから覚醒剤とか薬物に対する問題意識というのを強く周知徹底させることが大事ではなかろうかというふうに思っておりますので、そうした観点でもまたひとつ力を入れていただければと思います。

 時間で、最後でございますが、昨年十二月に、最高裁判所が夫婦別氏についての、合憲判決を出したわけですが、その際に、最高裁の判決の中に、選択的夫婦別姓制度に「合理性がないと断ずるものではない。」そういう制度について、その制度のあり方については、「国会で論ぜられ、判断されるべき事柄にほかならないというべきである。」という判決内容になっております。

 本日、私は最高裁にも第一分科会でこの質問をさせていただいたんです。最高裁の方も、最高裁判所の判決内容にその言葉があって、それは文字どおり国会で論じていただきたいということであろうという趣旨の答弁をいただきました。

 法務省においては、二十年ちょっと前に、法制審議会で夫婦別氏について答申がなされていると承知しております。その観点で、少なくともこれは国会において議論すべき点だとは思うんですが、法務省としても、今述べたこの判決の文言、言葉は文字どおりそのとおりだということでよろしいかどうかだけを確認させていただきたいと思います。

岩城国務大臣 先般の最高裁判決におきまして、選択的夫婦別氏制度の導入の是非については、お話がありましたとおり、国会で論ぜられ、判断されるべき事柄であるとの指摘がされております。

 したがいまして、私といたしましても、この問題についての国会における議論の動向を関心を持って注視していきたいと考えております。

若狭分科員 以上をもちまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

菅原主査 これにて若狭勝君の質疑は終了いたしました。

 次に、樋口尚也君。

樋口分科員 公明党の樋口尚也でございます。

 岩城大臣、朝から晩まで、終日、大変お疲れさまでございます。委員の先生方におかれましても、大変お疲れさまでございます。

 きょうは大事な時間を頂戴しました。二つ質問をさせていただきたいと思っています。

 一つはヘイトスピーチについて、そしてもう一つは、訪日外国人がふえていらっしゃるということで、CIQ、特にきょうは出入国管理について、この二点、お伺いをしていきたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。

 まず、ヘイトスピーチについて御質問を幾つかさせていただきたいと思います。

 私ども公明党で、この一月、二月、全国の法務局に、韓国の在日本韓国民団の皆様と一緒に訪問させていただきました。そして、法務局各地で御相談をさせていただいて、ヘイトスピーチの現状についてどういうふうに思っていらっしゃるのかということを聞いていただく、こういう機会をいただいたわけです。大変ありがたい機会でありまして、本当にその対策をやっていただいている人権擁護の皆様と、また、民団の方がどういうふうに思っているのかという意見交換をさせていただく場ということで、非常に有意義でございまして、関係をいただいた皆様に感謝を申し上げたいというふうに思っております。

 その際にも、一番の話題は、やはりこの法務省さんがつくられているポスター「ヘイトスピーチ、許さない」、このポスターが非常にいいと。ヘイトスピーチの集会に行っても、カウンターでこれをみんなで大きく掲げて、黄色一色にして、やはり人権侵害はだめだということで掲げて頑張っているんだというお話をされている方もいらっしゃいました。

 まず最初にお伺いをしたいと思いますが、法務省のこの「ヘイトスピーチ、許さない」というポスターにあるヘイトスピーチの定義について教えていただきたいと思います。

岡村政府参考人 いわゆるヘイトスピーチについて、その概念は必ずしも確立されたものではないと理解しておりますが、当局がヘイトスピーチに焦点を当てた啓発活動の対象として念頭に置いておりますのは、特定の民族や国籍の人々を排斥する差別的言動でございます。

樋口分科員 ありがとうございます。

 この「ヘイトスピーチ、許さない」のポスターにも最初に、特定の民族や国籍の人々を排斥する差別的言動がいわゆるヘイトスピーチだ、このように書いてあるわけであります。

 ヘイトスピーチについては、さまざまな認識の違いというものがあるんだというふうにも思っています。

 昨年、私ども公明党の國重議員が国会でも取り上げて、そして、公明党から当時菅官房長官に申し入れをして、そして予算をいただいて今調査をしていただいているヘイトスピーチの実態調査、それが三月に上がってくるということでありますから、この実態調査の内容をつぶさに見てみなければ実態はわからないという認識に立っております。

 今、各法務局の管内におけるヘイトスピーチに関する人権相談の件数を各エリア別にまず教えていただけないでしょうか。

岡村政府参考人 法務省の人権擁護機関では、全国の法務局、地方法務局において、ヘイトスピーチに関するものを含むあらゆる人権問題について人権相談に応じているところでございます。

 当局では、平成二十五年から、各法務局、地方法務局に対して、ヘイトスピーチに関する人権相談について情報提供を依頼しております。相談の内容としては、ヘイトスピーチに関する啓発や規制のあり方についての意見もございます。

 そして、平成二十七年十二月三十一日現在までの各法務局管内の人権相談数は、東京法務局管内で八十件、大阪法務局管内で二十二件、名古屋法務局管内で十二件、福岡法務局管内で十九件、そのほかの法務局と合わせまして、全国では計百四十六件となっておりますが、この件数が平成二十五年二月から昨年十二月三十一日までの相談件数でございます。

樋口分科員 ありがとうございます。

 新しい情報をいただきました。

 今はまさにヘイトスピーチに関する相談の件数ということを教えていただいたということでよろしいですね。東京で八十件、愛知で十二件、大阪二十二件、その他ありまして、全国でこの三年間、百四十六件相談を受けていただいたということで、大変いいことだというふうに思っております。

 一方で、ヘイトスピーチがどのぐらいあるのかということについては、先ほど言いました三月末の実態調査の結果を待ちたいと思いますが、昨年の十一月二十日までの三年間、平成二十五、二十六、二十七の三年間でどのぐらいあったのかということをちょっと申し上げたいと思います。これは韓国民団調べでございます。それによりますと、東京ではこの三年間に三百五十六件のヘイトスピーチ、先ほどありました愛知では九十三件、大阪では二百三十九件、そして福岡では二十九件、その他のところと合わせますと、三年間で一千八十六件のヘイトスピーチが散見される、こういうデータ、調べをしているわけであります。

 まさに、数については今後の調査をいろいろ待ちたいと思いますけれども、全国、三年間で一千件以上、東京では三百五十六件ですから、約三日に一度ヘイトスピーチが行われた、平たく直せばそうなりますし、大阪では四、五日に一度ヘイトスピーチが行われている、こういう実態も、調査もあるわけであります。

 こういう中にあって、今教えていただいた、百四十六件相談があるということは非常にいいことだとは思いますけれども、相談件数がやはり少ないのではないか。この百四十六件の中でも、ヘイトスピーチの啓蒙がどうか、いいのか悪いのかということが非常に多いというふうにも聞きました、現場で。まさにヘイトスピーチの被害に遭われた方が御相談されているかというと、そうではないという実態もあるわけであります。相談がなければ、当然法務局さんも動くことはできないわけでありますから、私は相談をするということは非常に大事なことだと思っています。

 このポスターの中でも、みんなの人権一一〇番で、「お悩みの方はご相談ください。」こう書いてあるわけですね。ですから、このポスターを見て相談しようと思っていただく、心の痛みを持っている方はそれで相談していただいたらいいと思うんですが、相談件数が余り伸びていないということではないかとも思うわけです。

 そのために、周知徹底方法、例えば、ポスターがより多くの皆さんの目に届くように、もっと周知徹底して張っていかなければいけないのではないかと思いますけれども、その点に関して御答弁をお願いします。

岡村政府参考人 法務省では、平成二十六年十一月以降、これまでの外国人の人権をテーマにした啓発に加えて、ヘイトスピーチがあってはならないということを御理解いただきやすい形で示しました、より効果的な各種啓発広報活動に積極的に取り組んでまいりました。

 このうち、委員に御指摘いただきました啓発ポスターについては、昨年度に約一万六千枚、本年度は三万枚を作成し、全国の法務局、地方法務局を通じて、地方公共団体や公共交通機関などに配布しております。

 なお、ポスターの配布による啓発活動については、当省のホームページ上にデザインデータを掲載して、ごらんいただける状態にしておりますとともに、適宜御活用いただけるようにいたしております。

 ヘイトスピーチに関する啓発活動については、委員に御指摘いただきましたポスターの活用方法を含め、さまざまな御意見を踏まえつつ、より啓発効果の高い活動となるよう工夫して、引き続き取り組んでまいりたいと考えております。

樋口分科員 ありがとうございます。

 安倍総理に、去年、私どもの國重委員が質問をしたときがちょうど一年前、二月二十三日でございますけれども、そのとき総理はこうおっしゃいました。

 こういうヘイトスピーチ発言があること自体、極めて不愉快、不快であり、残念であります、そういう発言をすること自体が、実はみずからをおとしめることになり、そういう発言が行われると日本をおとしめることにつながる、私はこのように思いますとおっしゃった後で、いわゆるヘイトスピーチへの対応としては、現行法の適切な適用のほか、啓発活動により差別の解消につなげていくことが重要であると考えていらっしゃると。まさに啓発活動が重要だということでございます。

 私、一つ提案で、大臣、これは通告しておりませんけれども、感想だけ聞かせていただければと思いますが、この啓発が大事だという中で、今、ポスターは三万枚、また、ホームページからダウンロードして使っていただくこともできる。非常にいいことでありますけれども、加えて、やはりどこかで重点的にやっていかなければいけないのではないか。

 世界の、国連では十二月十日が人権デーでございます。その前の一週間、日本では十二月の四日から十二月の十日までが人権週間ということにはまっているわけでございます。まさにその週間には各省を挙げて、例えば国交省の鉄道局だったり文科省だったり、各自治体、総務省と各企業の皆様にもお願いして、人権のポスター、また、このヘイトスピーチを許さないといったようなポスター、さまざまな人権に関するポスターを集中的、重点的にやっていく、国を挙げて取り組んでいくべきではないか、このように思いますけれども、御感想があれば、ぜひ一言お願いします。

岩城国務大臣 おただしのとおりだと思います。

 やはり多くの方々に、ヘイトスピーチを許さない、そして人権の大切さを理解していただく、そのために啓発活動に取り組んでいるわけでありますけれども、漫然とやっても効果がなければしようがないわけでありますので、今委員から御指摘のありましたとおり、期間を区切って集中的に行うとか、いろいろな工夫をこれから考えていきたいと思っております。

樋口分科員 ありがとうございます。

 人権週間に向けて、それまでにそういう環境もつくり、そこで仕上げていくという形が望ましいと思いますので、ぜひ御検討をいただければというふうに思っております。

 二〇二〇年は、東京オリンピック・パラリンピック競技大会でございます。我が国の人権状況を改善するために、ヘイトスピーチの問題を含め、さまざまな人権課題に取り組んでいかなければいけない、こう強く思いますけれども、御所見を伺います。

岡村政府参考人 委員御指摘のとおり、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催に向けて、国内の人権状況をより向上させるために、法務省の人権擁護機関としては、人種、障害の有無などの違いを理解し、自然に受け入れ、互いに認め合う共生社会、すなわちユニバーサル社会を目指す必要があると考えております。

 このうち、外国人の人権については、ヘイトスピーチの問題等の課題がありますところ、外国人に対する認識や理解を深めることによって偏見や差別をなくし、外国の方との間の心理的な障壁を解消する、心のバリアフリーの実現を図るために、必要な啓発活動を実施してまいりたいと考えております。よろしくお願いいたします。

樋口分科員 ありがとうございます。

 心のバリアフリー、本当に大切なことだと思います。各地の法務局を回らせていただくと、その法務局ごとに工夫した人権のポスター、大阪ではセレッソ大阪さん、サッカーチームと一緒にやって、外国人との共生社会、まさに心のバリアフリーを訴えているポスターなどがありました。各法務局が一生懸命そういうポスターもつくっていらっしゃるというふうに思います。一層こういう啓発活動が進んでいくように、私たちも頑張っていきたいというふうに思っております。

 ヘイトスピーチに対する取り組みについて、法務大臣の決意をぜひ伺いたいというふうに思います。

岩城国務大臣 特定の民族それから国籍の方々を排斥する差別的な言動は、人としての尊厳を傷つけたり、あるいは差別意識を生じさせることにつながりかねないものと認識をしております。こうした言動は極めて残念であり、あってはならないことだと思っております。

 そこで、法務省としては、今後も一人一人の人間としての尊厳が守られるような社会を実現するために、引き続き粘り強く、かつ地道な啓発活動、先ほど御指摘のありました集中的な啓発活動も含めまして、そういったことに取り組んでいきたいと思っております。

 さらに、人権相談等を通じて人権侵害の疑いがある事案を認知した場合は、人権侵犯事件として立件し、適切な救済に努めてまいりたい、そのように考えております。

樋口分科員 ありがとうございます。

 大臣、決意を聞かせていただいて大変うれしくも思いますし、ぜひ私たちも頑張っていきたいというふうに思いました。

 これも通告しておりませんけれども、私は、ヘイトスピーチという人種差別は許さないという理念を定めた理念法の制定ということについては、やはり前向きに取り組んでいくべきじゃないか、こういう意見を持っているわけでございますが、そのことについて、それも選択肢だと強く思っておりますけれども、大臣の御感想があれば、ぜひ聞かせていただきたいと思います。

岩城国務大臣 その御指摘につきましては、国会での議論を注視してまいりたいと考えております。

樋口分科員 ありがとうございました。ヘイトスピーチについては以上でございます。

 続きまして、訪日外国人旅行者の出入国管理について、何点か伺いたいというふうに思います。

 昨年、観光立国推進に向けた政府のこれまでの取り組みにより訪日外国人は急増しまして、平成二十七年には過去最高の一千九百七十三万七千人というふうになったわけでございます。もう二千万人の峠が見えてきたというところまで来たわけでありますが、これから我が国を訪れる方々の受け入れ環境の整備がさらに急務になってくるというふうに考えるところであります。

 平成二十六年七月に総務省が公表しました外国人旅行者の受け入れ環境の整備に関する勧告において、その勧告の中には、成田空港、中部空港及び一部の地方空港における審査待ち時間の長期化が指摘をされていたわけでありますが、これらの空港の審査待ち時間の現状について、まずお伺いをしたいと思います。

井上(宏)政府参考人 まず、委員御指摘の総務省の勧告でございますが、これは、法務省に対しまして、審査待ち時間の一層の短縮を図るために、審査場の間における入国審査官の機動的な配置により一層努めることなどが勧告されたところでございます。つまり、成田空港でありますとか、ターミナルが幾つかございまして、片っ方のターミナルは忙しいけれども片っ方が暇なときに、こっちの審査官をこっちに持っていけ、それを機動的にやりなさいなどのかなり細かい御指摘、勧告を受けたところでございます。

 法務省におきましては、もちろん、当該勧告を踏まえまして入国審査官の機動的な配置に努めておるところでございますが、そのほか人的、物的体制の充実強化にも鋭意取り組んでおりますが、何分、訪日外国人旅行者数が想定をはるかに上回るペースで増加しているという現状もございまして、平成二十七年、昨年の最長審査待ち時間、各空港ごとに最長の平均値を計算しているわけでございますけれども、主要四空港で申し上げますと、成田空港は十八分、羽田が二十四分、中部が二十六分、関西空港が三十八分という実情でございます。

 また、地方空港につきましては、昨年は特に年二回の緊急増員をいただくなど人的、物的体制の整備に努めましたが、空港ごとに、実は空港の大きさでございますとかフライトプランの問題でありますとか、さまざまな制約がございます。

 それで、勧告で取り上げられていた幾つかの空港につきましては、例えば、福島、茨城、富山、小松、この四空港で見ますと、審査待ち時間は最大十九分の短縮のような効果もあるのですが、他方、大分、鹿児島、那覇、この三空港ではむしろ長時間化しております。特に、那覇空港は外国人入国者数が四年前と比べて何と四・七倍にも増加しているということもありまして、二十四分も長くなってしまいまして、そのような現状にございます。

樋口分科員 ありがとうございます。

 各空港別に教えていただきました。さまざま課題があって、とりわけ急増しているということですから、これから三千万人を目指すということになってくれば、ますます待ち時間が長くなってしまうのではないかという懸念もあるわけであります。

 観光立国実現に向けたアクション・プログラムにおいては、入国審査に要する最長審査待ち時間を二十分以下とする政府の目標があります。この政府目標は二〇一六年度までにというふうに定めているわけでございますが、法務省としてどのような取り組みを行っているのか、教えていただきたいと思います。

井上(宏)政府参考人 委員御指摘のアクション・プログラムにおけます目標値を達成すべく、法務省におきましては、さまざまな取り組みを行っておるところでございます。

 基本になるのは、やはり人的体制の整備がどうしてもございます。

 本年度は、入国審査官二百二人の増員措置を年度当初にいただいたほか、二十七年度の七月と十二月にそれぞれ三十五人と五十七人の緊急増員という、期の中間における増員措置もいただいたところでございます。

 そのように、人をふやすことは、審査官だけではなくて、各審査場において列を整序するとかいろいろな準備を促すとか、ブースコンシェルジュといいますか案内役をかなり配置いたしまして、円滑な進行に努めるなどのことをしております。

 さらに、物的な面では審査ブースを、審査官をふやしても、入るブースがなければ仕方がありません、関西空港などは既に全部のブースを開いても長い時間がかかる状況になってございまして、今は正面を向いているブースの向きを変えることによって、横向きと言っていますけれども、ブースの幅を節約することによって一・八倍とか二倍近いブースをつくる、そのような増設の努力などもしております。

 さらに、二十七年度の補正予算におきましては、バイオカートといいまして、今、審査ブースの中でとっている指紋と顔写真、これは結構な時間がかかるのでございますが、それを準備行為として、行列をしている、審査を待っている列の最中に、別の機動的なカートにその機械を乗せまして、とる。前もって準備的に指紋と顔写真をとっておくことによって、審査ブースにおける審査の時間を三割くらい短縮できるのではないかということで、そのような取り組みも進めております。

 さらに、二十八年度の予算におきましては、基礎的なところで、入国審査官百六十二人の増員のほか、これは自動化の推進でございますが、出入国管理上のリスクが低い旅行者につきまして、自動化ゲートの対象とする制度の導入を進めることにしてございます。

 つまり、外国人の入国につきましては、今、自動化ゲートを使える者は、日本に既に在留している、再入国の許可の場合だけなんですが、例えば、ビジネスマンで何度もリピートして入国するような人で、問題がないということが事前の審査で確認できた人は、一々対面の審査ではなくて、自動化ゲート、指紋の確認をすることによって通れる、そのような機械化もどんどん進めてまいりたい。

 非常に速い勢いでふえている訪日外国人に対応するためには、普通の増員だけでは到底賄い切れませんので、そういう前もって準備的な行為をする工夫でありますとか、自動化をすることによる審査官の節約とか、さまざまなことをいたしまして、片や、同時に、テロ対策等で厳格さのレベルは維持強化しつつ、なおかつ審査の方も短縮するように鋭意努めてまいることにしてございます。

樋口分科員 ありがとうございます。非常にわかりやすいお話だったと思います。

 私は、関西空港の事例を、ぜひ、宣伝していくというか、しっかりやっていくべきだというふうに思っているんですが、四十ブースのものを縦置きにして八十人の方に対応していただくこと、加えて、バイオカートをしっかり置くということで、さっきありました今三十八分かかっているということが、四十ブース、それが八十になって、バイオカートまで置けば半分以下になるだろう。

 この取り組みが非常に大事だというふうに思っておりますので、ぜひ、海外から来るお客様に入り口でまず満足をしていただくために、出入国管理の大切さというか、これからますます充実をお願いしていきたいというふうに思っています。

 一方で、一部の地方空港では、ハードの整備が間に合わないのではないか、このために、最長審査時間を二十分以下にするということが、達成がなかなか難しいなと。これは、ハード、場所がないといったような問題もあるんだというふうに思っておりますけれども、地方空港、また、空港の施設そのものの拡大をしないと取り組みがなかなか難しいということについて、国交省の見解を求めたいと思います。

和田政府参考人 お答えいたします。

 国土交通省といたしましては、訪日外国人旅行者が円滑かつ快適に我が国に出入国を行えるように、法務省を初めとする関係省庁等と連携をしながら、空港施設面において出入国環境を整えることが重要だというふうに認識をしております。

 このため、平成二十七年度より、新千歳空港や那覇空港のCIQスペースの拡張に取り組むこととしているほか、先ほどお話が出ましたように、二十八年度には、関西空港におけるCIQスペースの拡張予算を盛り込んで、ブースの数を倍増する計画がございます。

 今後とも、より多くの外国人旅行者に快適に日本を楽しんでいただけるように、訪日外国人旅行者の旅行実態、移動実態なども踏まえながら、関係省庁や地方空港を管理する自治体等と連携をして、必要な取り組みを進めてまいりたいと考えております。

樋口分科員 ありがとうございます。

 旭川とか高松とか、スペース的になかなか難しいなというところもあるんだと思いますけれども、ぜひ、スペースの拡充、また連携の強化ということで取り組んでいただきたい。

 今お話がありましたように、CIQというのはもちろん一つの役所でやれることではありませんで、関税と出入国管理と検疫でありますから、財務省、法務省、厚労省、そして国交省一体となって、日本の国のまさに入り口と出口ということで大事なところでございますので、きちんと連携をとってお願いをしたいというふうに思います。

 手元に、イギリスのスカイトラックス社という調査会社が発表しているものがあります。これはザ・ワールド・ベスト・エアポート・イミグレーションということで、全世界五百五十空港の中で、出入国管理のすぐれた空港トップテンというものがあります。

 このスカイトラックス社は、五百五十空港を対象に、百十二カ国、一千三百二万人の旅行者の投票によって決めたという、出入国だけに限ったものでありますが、何と日本は、世界ベストテンの中に四つの空港、四大空港が全部入っている。五位に羽田、六位にセントレア、九位に成田、十位に関空であります。ほかは、香港、台湾、シンガポール、ソウル・仁川、ヘルシンキ、コペンハーゲンと各国一個ずつしかないんですが、日本はベストテンの中に四つも入っているという非常に誇らしい数字であります。

 二〇二〇年に向けて、東京オリンピック・パラリンピック競技大会も控えて、この対外的な評価というものを下げずに上げていく、満足を与えていくという顧客満足の視点からも、今後もしっかりとした対応をお願いしたいというふうに思いますが、最後に、今後の出入国審査体制の整備に関することについて、大臣の御決意をお伺いしたいと思います。

岩城国務大臣 法務省といたしましては、先ほど来説明をさせていただきましたとおり、審査待ち時間をできる限り短くしていくという円滑な入国審査と同時に、テロリストなどを入国させないという厳格な入国管理の両方を実現させる、そういった必要があるとの認識のもと、そのために必要な人的体制の充実や物的体制の強化等に計画的に取り組んでおります。

 引き続き、人的、物的体制の充実強化に取り組むとともに、あわせて、さまざまな新しい技術の導入や各種情報の活用によって、業務の質的向上にも努めていく所存であります。

 そして、昨年の国際空港評価ランキングの入国審査部門において、我が国の四大空港の全てがトップテン入りしているということは本当に喜ばしいことでありますので、今後とも国際的に高い評価をいただけるよう、私たちも努めてまいりたいと考えております。

樋口分科員 ありがとうございます。

 きょうは、ヘイトスピーチに関する問題、ぜひ啓発活動と相談の体制の充実をお願いしたいということと、出入国管理について、ますます、今大臣の御決意をいただきましたように、日本の誇りであると思いますので、皆様のまた御奮闘を心から御祈念を申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 大変ありがとうございました。

菅原主査 これにて樋口尚也君の質疑は終了いたしました。

 次に、石関貴史君。

石関分科員 石関貴史です。よろしくお願いします。

 きょうは、外国人の技能実習制度、この介護分野への拡大が今検討されていて、法案も用意されているということですが、これについてお尋ねをしたいと思います。

 まず最初に、平成二十七年の六月に閣議決定をされた「日本再興戦略」改訂二〇一五、この中に、技能実習制度を変えて介護を対象職種にするということが追加をされているということでありますが、まずは、講ずべき施策として、EPAに基づく外国人介護福祉士候補者のさらなる活躍を促進するための具体的方策を検討する、こういうふうに盛り込まれています。これは二十七年度中に結論を得るというふうにされていますが、検討の状況はどうなっているか、教えてください。

堀江政府参考人 お答え申し上げます。

 いわゆるEPA、経済連携協定に基づきまして、現在、インドネシア、フィリピン、ベトナムから外国人介護福祉士候補者の受け入れを実施しております。

 この外国人介護福祉士候補者につきましては、今御指摘のとおりでございますけれども、日本再興戦略におきまして、そのさらなる活躍を促進するための具体的方策を検討し、本年度中に結論を得ることとされております。

 具体的には、現在、厚生労働省の外国人介護人材受入れの在り方に関する検討会において議論を重ねておりまして、今月十九日には、外国人介護福祉士の候補者の研修を行う受け入れ対象施設の範囲の拡大、研修を修了し介護福祉士の資格取得をされた方の就労範囲の拡大などにつきまして論点整理を行ったところでございまして、二十六日にも検討会を開催し、取りまとめを行っていく予定でございます。

 今後とも、介護福祉士候補者のさらなる活躍促進に向けまして取り組みを進めてまいりたいと考えてございます。

石関分科員 今、取りまとめとおっしゃったんですが、では、予定どおり二十七年度中に結論が出る、こういうことでよろしいですか。

堀江政府参考人 御指摘のとおりでございます。

石関分科員 午前中、ニューギニアの遺骨引き渡しで審議官にお目にかかりまして、あっちもこっちも御苦労さまです。ありがとうございました。

 次に、こういうことが日本で論議をされていて、介護分野に技能実習制度も広がっていく、こういうことを今考えているわけですので、特に東南アジアの諸国で、こういった日本の動きを見据えて、大学の一部には、こういった介護分野の学科が新しく新設をされたりとか、その選抜に日本の民間人が参加したりとか、こういうことが非常に盛り上がっているというふうに聞いています。従来からある送り出し機関も、こういった訓練施設に介護科目を設けるなど、大変盛り上がっているというふうに聞いています。

 ただ、これから法案審議をされていくということだと思いますが、一体いつになったらこれが具体化していくのか、盛り上がっている一方でこういう不安の声も寄せられていて、こういった海外の動きについてどのように政府として御承知なのか、状況を教えてください。

堀江政府参考人 お答え申し上げます。

 政府といたしましては、平成二十七年、二十八年に閣議決定されました産業競争力の強化に関する実行計画におきまして、介護の対象職種追加につきまして、質の担保など、介護サービスの特性に基づく要請に対応できるよう具体的な制度設計を進めるとともに、技能実習制度の見直しの詳細が確定した段階で、介護サービスの特性に基づく要請に対応できることを確認の上、新たな技能実習制度の施行と同時に対象職種への追加を行う方針としてございます。

 政府としては、まずは、技能実習制度の見直しを内容とします技能実習法案の成立に万全を期すとともに、先ほど申し上げました方針に基づきまして、介護職種の追加に向けまして遺漏なきよう準備を進めてまいりたいというふうに考えてございます。

石関分科員 極めて丁寧に答弁をいただいたんですが、僕がもう一個聞いているのは、海外でこういうものに対応しようと準備が非常に進んでいるようだし、だけれども、いつ本当になるのかな、こういう不安の声もあるということですが、こういったことを御承知でしょうか。

堀江政府参考人 この技能実習制度につきましての準備は、先ほど申し上げました技能実習法案の成立とともに介護職種の追加ということはもう公表された方針でございますので、承知してございます。

石関分科員 その承知じゃなくて、海外でこういう動きが、対応しようと、介護に広がるぞということで訓練をしたり、大学に新しくこれに関係する学科が新設されたり、こういうことをお話ししたので、こういう状況をどのように把握されているかということです。

堀江政府参考人 大変失礼しました。

 政府の方針について海外にも知られているという意味で、承知しているということを申し上げたわけでございます。

 また、あわせまして、例えばベトナムから技能実習生を受け入れることに対する要望が出されているというようなこともございまして、そうしたニーズといいますか、取り組みが進んでいることについては承知してございます。

石関分科員 再三申し上げますけれども、随分先行してそれに準備するような動きがあるようですから、政府としても、よくその状況を把握して、対応なり、また周知とか、そういったことをぜひ先に考えてやっていっていただきたいというふうに思います。

 もう一つは、技能実習生の問題の一つは、失踪ですね。実習生として日本に来ている皆さんが失踪するケースがどんどんふえているということで、私が承知しているのは、二十七年度で四千七百人を超えた、こういう話を聞きました。

 失踪多発の主な原因というのはどういうことだとお考えですか。

井上(宏)政府参考人 技能実習生の失踪の原因でございますけれども、失踪後摘発を受けた技能実習生等からの聞き取り調査などを行っていろいろ調べた結果、やはりより高い賃金を得ることを目的として失踪する事例がかなり多い割合であるということがわかっております。

石関分科員 実習の現場が過酷だとかそういうことではなしに、今お答えいただいたような、もっと条件のいいところに行きたいとか、こういう失踪のケースが確かにふえているようでございます。

 いろいろな要因は確かにあるんだと思いますが、ただ、入国して数カ月とか半年以内に失踪するというのは、今御説明あったようなことをあらかじめ企図して入国して失踪している場合というのが十分考えられるのではないかなというふうに思います。

 ただ、費用を受け入れ企業とか監理団体が負担しているわけですよね。これは大体どれぐらいかかるかというと、入国前の事前講習の費用、諸手続の費用、渡航費用、それから国内における交通費、国内における事前講習費。入国の日に、講習費と言われる五万円から六万円相当の当面の生活費を渡されているそうです。また、家賃とか光熱費。こういうのを合わせると二十万円ぐらいかかりますよというふうに聞いているんですが、大体こんなものですか。

井上(宏)政府参考人 日本に来るまでに技能実習生となろうとする者が向こうの国で負担する経費と、日本側の受け入れ機関等が負担する経費と、それぞれありまして、日本側の受け入れ機関、監理団体等が負担すべき経費もケース・バイ・ケースでかなりの差があるように聞いておりますが、交通費の部分、初期の研修のための費用、それから研修期間中の生活費の手当て、そのようなもので相当額のものがかかるということで、御指摘の金額もあり得るところだろうと思います。

石関分科員 大体どれぐらいの幅だとか、こういうことは把握されているんですか。私、幾つかのところから聞き取りをしたり、物の本で読んで、二十万円ぐらいですよということを聞いていたんですけれども、これは法律で決まっていて、受け入れ企業とか監理団体が全額負担するのが基本だというふうに思うんですが、どれぐらいの額だということは政府として承知していますか。

井上(宏)政府参考人 個別の案件ごとに幾らと見ることはございますが、それを全般的にトータルとしては十分に把握してございません。

石関分科員 ただ、そういうものも把握をして、現状が全体としてどうなっているかを知っておくことは必要だと思うんですよ。受け入れ企業とか監理団体が現状どれぐらいの負担をしているかということを把握しないと、施策をこれから介護に拡大をするとか、失踪者がどうなっているかとか、手を打つには現状を知らないとだめだと思うんですよね。どうですか。

井上(宏)政府参考人 御指摘のとおりでございまして、私どもも、失踪した技能実習生の場合に、個別にどのようなところに幾らお金を払ってきたかとか、あるいは、同じところで働いていたほかの技能実習生、送り出し機関が違ったりすることもございますので、そういうところから、幾らかかっているかとか、個別にはいろいろある程度は調査してございます。その辺の調査をさらに充実させてまいりたいと思います。

石関分科員 これぐらいの幅で、例えば中央値がこれぐらいだとか、こういった業種だとこれぐらいとか、多分あると思うんですね。これは、やはり政府として法案も提出しているわけですから、ぜひよく調べて、いろいろなものに対応できるようにしておいていただきたいというふうに思います。

 以前は、送り出し機関の方が、来る相手の国の中の機関が、保証金とか土地とか、これを担保にして契約を結んだ上で入国をしてきたということでしたが、これが実習生の自由を奪っているんじゃないかとか、過酷な労働を強いている原因になっている、こういう批判が随分あって、現実にもあったんだというふうに思います。これは禁止されましたが、それにかわる対応策というか何かがないものですから、やはり失踪がふえているという部分があるのではないかというふうに思います。

 保証金を取ったり土地を担保にすることがいいとは私も思いませんが、ただ、そういった何かの防ぐ方策が全くないものですから、入ってきて、あっちの方がいいということで失踪するという人がふえている側面があるのではないかなというふうに私は思うんですが、どうお考えですか。

岩城国務大臣 失踪者数が増加している、これは本当に法務省としても深刻な事態と認識しております。

 そこで、今もおただしがありましたけれども、新しい制度におきましては、送り出し国の協力を得て、送り出し機関として適切な機関が選定され、制度の趣旨の徹底が図られるようにするなどの対策をとることとしております。

石関分科員 何か新しいことをやらないとなかなか防げないと思いますので、いろいろ現実をよく分析して、これも法案をこれから審議する中で、対応策をぜひ同時に考えていっていただきたいというふうに思います。

 これは事実かどうか、まずお伺いをしますが、三カ年の現在の制度のもとで、三年間の実習期間が終わりました、帰国準備のための休暇の時間がもらえる、この期間に失踪するケースがふえているというふうに聞いていますが、そういうことなのかどうなのか、この事実関係をまずお尋ねいたします。

井上(宏)政府参考人 失踪した時期につきましてはある程度調査をしてございますが、これは、国によりある程度何か個性が出ておりまして、それの分析をしておるところでございます。

 まさに先ほど委員おっしゃられたように、入ってきて割合とすぐにいなくなる、失踪する事例も結構ありますし、一号から二号へ進んだ二年目の前半でいなくなるケースもございますし、今御指摘の、まさに終わる寸前にいなくなる、そのようなケースもございまして、終わる直前にいなくなる者が際立って多いかというと、そんなことはございません。むしろ、一年目あるいは二年目のうちにいなくなっていく者で半分以上になっている、そこは間違いございません。

石関分科員 余り細かく事前に数字を聞いたわけじゃないので、持っているかどうかわかりませんけれども、ただ、三年たっていなくなるという人はやはり何割かぐらいはいるわけですか。あわせて、国別の傾向みたいな非常に興味深いことをおっしゃったので、もし、今答弁できる範囲で、わかれば教えてください。非常にこれは興味深い話だと思いますよ。

井上(宏)政府参考人 済みません、ただいま持ち合わせがございませんので、ちょっと、余りにうろ覚えでございます。

石関分科員 何かそっちの人がいろいろ知っていそうじゃないですか。知っているのなら、出し惜しみしないで、持っているものを出してくださいよ。

菅原主査 あるのかな。(井上(宏)政府参考人「いや、持っていないというサインを……」と呼ぶ)持っているような顔をしていると言われたけれども、大丈夫ですね。ないのね。

 では、もう一回答弁してください、ないと。

井上(宏)政府参考人 通告いただいておりませんでしたので、ただいま手元にございません。

石関分科員 大事なことだと思うので、また別の機会にお尋ねできればしたいと思いますし、よく数字等の分析はしておいていただきたいというふうに思います。

 例えばさっきのケースみたいな、逃げちゃった、失踪しましたということになると、過酷な実習の環境でいたたまれないというのだったら、これは、受け入れの監理団体ですとか企業の問題、割とそういう面が以前は論じられたように思うんですが、こういう、一年目でいなくなっちゃったり三年たっていなくなっちゃうという今御答弁になったとおりのものは、全くケースが違うと思うんですね。

 ただ、こういう場合に、その外国人に対しての罰則というのはどういうものがあるんでしょうか。研修生として入ってきて、失踪しました。この人たち、捕まった場合はどうなっちゃうんですかね。

井上(宏)政府参考人 技能実習生の場合には、特定の事業場において実習をするということになってございますので、そこを離れて別のところで働きますと、これは資格外活動、不法就労ということになりまして、刑事罰の点でいけば不法就労の犯罪になります。

 あと、在留資格の関係でいきますと、本来の活動をしないでほかのことを既にしているような場合、これは現行法ですと三カ月たたないと取り消しができないのですが、単に本来活動をしないだけじゃなくて別の活動をしているような場合には速やかに取り消せるように法改正をする入管法の改正案を国会に提出中でございますので、そのような観点で、在留資格もきちんとして、退去強制できるし、場合によっては、悪質であれば犯罪としての処罰もされ得るということでございます。

菅原主査 罰則に関してはいいですか。

井上(宏)政府参考人 今、不法就労の犯罪になり得るという答弁をいたしました。

石関分科員 では、不法就労になって、それで、どこかで発見されました。身柄を確保されるわけですよね。その後、どうなっちゃうんですか。

井上(宏)政府参考人 まず、もし刑事手続が始まりましたら、刑事手続が終わった後、しかるべく、退去強制などに一般的にはなろうかと思います。

 ただ、刑事手続が行われない程度の犯罪であるような場合には、今のところは、在留資格がもし残っていれば、ただ、もう既に本来の技能実習を続ける意思はないわけですので、任意帰国してもらうようにします。もう既にオーバーステイの状態になっていれば、それはそれで退去強制の手続に進行できます。

 さらに、先ほど申し上げました入管法の改正案で、仮に在留資格が残っていても、既に失踪して別で働いているような場合には、速やかに取り消して退去強制できるように法改正を進めたいと思っているということでございます。

石関分科員 失踪した者に対して、刑事手続に入るのか、今、後段で御説明いただいたような扱いになるのかは、何で変わるんですか。

井上(宏)政府参考人 捜査機関の方が刑事手続を進めるかどうかということで決まってまいります。

石関分科員 今聞いても、刑事手続に進んで処分になった場合でも、強制的に帰国させるとか、そういうことになるわけですよね。

 だから、その間に、失踪して、例えば数年間、別のもので稼いでいた。どれぐらいかわからないけれども、実習生としてよりははるかに多額のお金を稼いでいました、これを現に持っていました。これで捕まった場合は、このお金とかはどうなりますか。

井上(宏)政府参考人 お尋ねの、収益といいましょうか、それが刑事手続の中でどういうふうに取り扱われるかは、ちょっと私の所管外ですので答弁は差し控えになりますけれども、入管的には、それは本人の身柄を返すかどうかというだけのことになります。

石関分科員 恐らく、犯罪収益とかそういうものでなくて、不法であっても、どこかで稼いだものを取り上げるというのはなかなかできないのではないかなというふうに私は思うんですね。

 大臣、どう思いますか。

岩城国務大臣 この件につきましては、ちょっと通告がありませんものでして、済みません、私もお答えを差し控えさせていただきます。

石関分科員 大臣が答えられなくても、秘書官とか役所の人がいて、何かわからないですか、こんなくらいのものは。誰もわからないですか。

岩城国務大臣 申しわけございません、現在のところちょっとお答えできませんので、調べさせていただきまして、後ほど御報告させていただきます。

石関分科員 分科会で大臣をやっつけようと思っているわけじゃないので、私も悪気はないんですが、ちょっと、ぜひどういうことなのか調べて、大臣がおっしゃったように後で教えてください。

 それで、僕が言いたいのは、こうやって失踪して、何か別のことで何年間か稼ぎました。ああ、捕まっちゃった。本国に、自分で帰るのか強制になるのか、帰ります。だったら、失踪した者得みたいなことにならないですかね。すごく厳罰だとか、何か普通以上のことがあれば抑止になるかもしれませんが、今のお話の限りでは、失踪して稼ぎました、これは、素直に今後三年間なり五年間で帰っていくよりも、失踪してしまって、何かでうんと日本の方が稼げるというのだったら、稼いで、捕まったらしゅっと帰っていく。これは逃げた方が得という感じにならないですか、大臣。

井上(宏)政府参考人 入管法の手続の中でいきますと、やはり在留資格のない者は速やかに厳しく退去強制をするということになるわけでございます。

 ただ、不法就労の犯罪の方は、これは捜査機関の方で進めることでございますが、やはり不法就労の長さでありますとか態様に鑑みて、適切な捜査、処罰がなされるものと考えます。

石関分科員 繰り返しになりますけれども、その適切な処罰というのが、帰ってくれということなわけですよ、実際には。やはりそれは、もともと違いますからね、失踪を抑止するための法律や罰則じゃないわけだから。だけれども、ここのところもやはり考えていかないと、さっき申し上げたように、企業や監理団体がひどいということではなくて、今申し上げているのは、本人の理由でもっと稼ぎたいとか、そういうことで失踪する人がふえているというのは答弁にもあったとおりですよね。

 だけれども、これもちょっと事実関係をお尋ねしてから聞きたいんですけれども、だとすると、逃げられちゃった方の受け入れ企業とか、さっき言った二十万円ぐらいもう払っているわけですよ。だけれども、あっという間にいなくなっちゃう。逃げられちゃう場合もあるし。あるいは、失踪者が出ると、こういった受け入れ企業や監理団体に対して役所は報告を求めて、僕が聞いたところでは、失踪者が発生した割合とかそういうものによって、ある種の被害者であるこういう国内の機関が受け入れ停止の処分や業務停止処分を受けることになっているというふうに聞いているんですが、そういうことなのかどういうことなのか、この事実関係が一つ。

 そして、だとすれば、ある種被害者ですよ、真面目に研修を受けてもらって技術移転をしようといって、善意で受け入れた企業や監理団体から、俺はもっと稼ぎたいといって研修生が逃げてしまって、だけれども、こういった機関に対しては何らかの処分が起こる。これは何か不合理だと思わないですか。

井上(宏)政府参考人 まず、質問の前段の、一定以上の比率の者が失踪した場合に処分になるかという点ですが、それは、失踪したことについて受け入れ機関側に責めがある場合の規定でございます。したがいまして、一方的に実習生が勝手に悪いというような場合には、そういう処分は適用になりません。まずそれが一点でございます。

 あと、もう一つ、対策面の考え方としては、やはり本来、金稼ぎのために来るわけではございませんので、技能を習得して持ち帰って活用するという枠組みの中ででき上がっている制度でございます。

 実際、現地において、前の職場の経験とか、あるいは戻った後の就職の予定とか、そういうものも全部一定審査した上で認めているものでございますし、契約段階で、給料は幾らである、家賃は幾ら控除されるみたいなことも、きちんと二カ国語で表示した契約書を使ってやるようにしているわけでございますので、そういうところで、制度をちゃんと理解した者を受け入れるようなことに純化していく。

 それについては、向こうの国でのことにつきましては日本からの行政権限の行使はできませんので、送り出しで向こうの国の方にも協力していただいて、よりよくすることによって不当な失踪を減らしていくことに努めたいと考えております。

石関分科員 何人がとか、さっきちょっとおっしゃっていて、傾向はあるのかもしれませんが、実際、受け入れている方から聞くと、やはりあるんですよね。どこの国の人は失踪の割合が高いとか、もう最初からそれじゃないか、だから今度はこちらの国から受け入れましょうとか、現実に起こっていますから、そういうことも含めて、悪質な研修生というのはとんでもない話ですから、やはり何か抑止する策も同時に考えていく必要があると思います。

 時間がちょっとなくなってまいりましたが、もう一つ、これを介護に広げるとなると、研修生、日本語はある程度しゃべれないと困る。四級だとか三級だとか今ありますよね。だけれども、やはり介護という、ある種、人の生命にかかわる研修になるわけですから、これはほかの適性も考えないと介護の分野に研修生を受け入れるのはちょっと難しいんではないかと思いますが、どうでしょうか。

堀江政府参考人 一般的にはそのとおりだと思います。

石関分科員 縫製とかそういうものとは違うんだと思うんですよ。だから、これは今、何か考えていますか。

堀江政府参考人 必ずしも通告のあった問いでもございませんので、やや一般論になって申しわけございませんけれども、やはり対人サービスを前提とするものでございますので、そうした面からの特性に応じたことにしていかなければいけないというふうに考えてございます。

石関分科員 これも先走ってあれですけれども、法案審査するなら必ず出てきますよ。介護についてはほかの職種と同じでいいのか、これもやはり事前によくよくいい方策を考えておかないと、なかなか法案も難しくなると思います。

 あと、もう時間がないので、二つちょっとまとめてお尋ねをします。

 まず、研修生の皆さんも年金に加入しなきゃいけないんですね。帰国すると、手続をとると一定額は何か戻ってくるようですけれども、こういうことをいつまでやっておくのか。年金がもらえる可能性はないわけですから。三年とか、今後も五年で帰っちゃうわけですよね。ちょっとこの年金について、このままでいいのかということについての考え方を一つ。

 それから、今度、実習制度が介護に広がるということであれば、さっき申し上げた、私のいろいろ聞いたところでは二十万円程度ということですが、受け入れにかかる費用、こういった費用負担について、介護福祉事業者の負担に対する補助とか、そういったもののお考えがあるかどうか。

 年金とこの補助、二点お願いします。

伊原政府参考人 お答え申し上げます。

 年金の加入の話でございますけれども、ILO条約に基づきまして、我が国に居住する外国人につきましては、自国民と同じように社会保障制度を適用するということが国際的にも要請されております。

 そうした中で、滞在期間の短い外国人の方の保険料納付が老齢年金に結びつきにくいという問題につきましては、先進国の間では、各国の間で社会保障協定を結ぶ、あるいは、先進国だけではなくて途上国も含めて結ぶという方向で解決していくのが今の共通認識でございます。

 それからまた、年金制度に加入していただきますと、日本の場合は、老齢年金のほかに、障害年金あるいは遺族年金の対象になりますので、そういう意味でも給付がございます。

 したがいまして、今の法体系では、基本的には社会保障協定を結んでいくという方向なんですが、我が国の場合は、やはり社会保障協定を全ての国とまだ結べているわけではないので、当分の間の措置としまして、先ほど先生がお話しになられた脱退一時金という制度も設けております。

 そういうきめ細かな配慮をしておりますので、やはり外国人技能実習生につきましても我が国の年金制度としていくことが必要と考えております。(石関分科員「補助、補助」と呼ぶ)

菅原主査 もう一つの補助。介護まで広がった場合に、企業とか受け入れ団体が受け入れに二十万程度かかるということに関して、補助の制度があるかないか。

 質問はわかりますか。実習制度が介護の分野に広がった場合に、今、現行で二十万程度の受け入れ費用がかかっていて、それを企業や団体がということでしょう。それについての国としての補助があるのか、今後考えていくのか、検討があるのか、その辺。

 厚生労働省堀江大臣官房審議官。

堀江政府参考人 必ずしも明確な通告があったものではございませんので、やや一般的な答弁になりますけれども、受け入れ企業と実習生との関係ということでございますので、円滑な受け入れが進むような条件づくりは政府の方ではいたしますけれども、金品のやりとりといったようなことは考えてございません。

石関分科員 ありがとうございました。

 この制度をうんと詰めていくと、やはりいずれは、移民政策をどうするかとか、そういう話になっていくと思いますが、研修制度でやっていく、二年ふやして介護にもということであれば、今すぐ答えられないものもあったかもしれませんが、よほど詰めて、そして方策も考えて整理をしておかないと、なかなか法案の審査にたえられないと思いますし、いい制度にはならないと思いますから、よく頑張ってください。

 ありがとうございました。

菅原主査 これにて石関貴史君の質疑は終了いたしました。

 次に、井出庸生君。

井出分科員 維新の党、信州長野の井出庸生です。よろしくお願いをいたします。

 私は、親子、親とか子という、私みたいにたまたま元気に育ててもらうと余り意識することはないんですが、児童相談所ですとか里親の皆さんの話、また児童養護施設などに通っておりますと、親とは何ぞや、子とは何ぞやということを今考えておりまして、そのことについて、きょうは、私自身もいろいろ悩みながらの質問になるかと思いますが、大臣、ひとつよろしくお願いいたします。

 最初に伺いたいのが、実際、社会上、生活上の親という概念、考え方と、法律で規定をされております親という考え方。

 民法で、当然親には親権がございます。ただ、私は、民法の言う親と実際の親というものは大分概念が違うのかなと。例えば、一番わかりいいのは、何かしらの事情で御夫婦がお別れになって、その後、親権のない親の方が養育費用を払うということがあるかと思うんですが、それは親権がなくてもしなければいけないことだと思います。

 まず伺いたいのは、大臣は、当然御自身の御経験の中で親子、教育というものも考えてこられる機会はたくさんあったと思いますし、またさまざまな公職の中で教育、親子関係というものを考える機会もあったと思いますが、法律で言う親と実際の社会通念上の親はどういう違いがあるとお考えか、大変抽象的なので整わなくて結構ですので、思いのたけをお聞かせください。

    〔主査退席、小林(鷹)主査代理着席〕

岩城国務大臣 親子と言われましてすぐ、お答えにならないと思いますが、今ぱっと思い浮かんだのは、私は福島ですから、野口英世とシカという母親の関係がすごく頭の中に残っておりまして、野口英世は、清作と呼ばれた子供のときにいろりに手を入れてしまって大やけどをしてしまう。お母さんはそのことをずっと後悔しながら生きてきた。野口英世はアメリカに渡って研究活動をするわけですが、なかなか地元に帰ってこない。そんなわけで、お母さんが手紙を書くんですけれども、手紙の中に、ちょっとうろ覚えだから多分正確じゃないかもわかりませんが、早く来てくだされ、早く来てくだされ、そういう言い方を何回も何回も重ねた手紙を書いて、野口英世が帰国したときにはお母さん孝行をされたという話を聞いております。そのことが、親子という関係でお話しされて、今ぱっと思い浮かんだものですから余計なことを話してしまいましたけれども。

 それで、法律上の親子関係が生ずる場面というのをちょっとお話しさせていただいてよろしいでしょうか。

 まず、法律上の親子関係には、自然血縁上の関係を基礎として成立する実の親子関係と、それから人為的に親子関係を成立させる養親子関係がございます。

 また、法律上の母子の関係ですが、実の母子関係は子の出産によって生じ、その子を出産した女性が法律上の母となります。

 それから、法律上の父子関係ですが、実の父子の関係は、その母が婚姻していない場合にはその子の血縁上の父が認知をすることによって生ずるが、その母が婚姻中に子を出産した場合には原則としてその夫が父となるというふうに定められております。

 それから、養親子の関係ですけれども、養親子関係は養子縁組の成立によって生じます。養子縁組には、普通養子縁組と特別養子縁組とがあります。普通養子の場合には養親となる者と養子となる者の縁組によって養親子関係が生じますが、特別養子の場合には家庭裁判所の審判の確定によって養親子関係が生ずる、こういうことであります。

 もうちょっとお話しさせていただいてよろしいですか。

 法律上の親子関係が生ずることによる効果でありますけれども、法律上の親子関係が生じた場合には、親子は互いに扶養義務を負い、相続権等を有することになります。また、婚姻中の父母は子に対する共同親権を有する者ですが、父母が離婚した場合や父母が婚姻していない場合には父母の一方が子に対する親権を行うこととされております。

 そして、親と親権者の違いですが、民法上、嫡出子の親権は原則として父母が共同して行い、嫡出でない子の親権は原則として母が単独で行うものとされております。また、父母が離婚する場合にはその一方が子の親権者となる。したがいまして、父または母と子の間に法律上の親子関係がある場合であってもその父また母は子に対して常に親権を有するわけではない、このようにされていると承知をしております。

井出分科員 ありがとうございます。

 冒頭の野口英世の話、そういう心の部分などはまさに法律では書きようのない親子のありようだと思います。

 その後、今、法律の親子について御説明をいただきましたが、円満なというか、親子、お父さん、お母さん、子供がいい関係で、その子供が自立をする、そういう家庭であれば、親権とは何ぞやですとかそういうことを考える機会は余りないんですが、これが、児童養護施設に入っているお子さんですとか、あと、これから政府が進めていこうとしている里親制度ですね。里親制度は今、利用率がなかなか広がらなくて、これからある一定の年数を使って里親を推奨していこうという政府のお考えもあると聞いております。

 実際に児童相談所に行くと、実の親の同意を得なければ、里親は養子縁組ですとかいろいろなことが親権を持っている親に聞かないとできない。法律上は、たしか児童福祉法で、児童相談所の所長は、家裁との手続を踏めば、親権者がいてもその親権者の意向と違うような措置ができるということがあるんですが、ただ、実態を聞いておりますと、実際の親の意向を聞かざるを得ないというのが現状ではないのかなということを、いろいろ視察等を通じて今感じてきております。

 ある親子で何かしらDVとかがあって、児童養護施設にお子さんが入る、一時保護をされる。そのお子さんを、その施設で継続して生活してもらうのか、また里親に出すのか。里親の方が、家庭的な環境の中でお子さんを育てることができるので、特に子供にとってはいいというような話を私は聞いているんですが、ただ、実際里親に預けるとなると、何か子供をとられるようなことを実の親は思ってしまって、里親については一切拒否すると。

 里親にも特別養子縁組と普通養子縁組があって、あとはいわゆる養育里親。必ずしも親権者の同意が必要でないものもあるかと聞いていますが、実際はどうも親の意向を聞く。DVとかでお子さんと離れ離れになった親がそれを拒む、里親だけは絶対嫌だと。それは果たして法律で認められた親権からくるものなのか。

 私はむしろ、先ほどの野口英世とお母さんのお話は大変すばらしい家族のきずなの一例として話していただきましたけれども、その親と子の精神的なきずなというものが、こういう言い方をするのは大変残念なんですけれども、里親制度の推進のちょっとストップの材料になってしまっているんじゃないか。

 ですから、里親制度を進めていく上では、親権者のもう少し法律に沿った何か一定のラインみたいなものがつくれないのか、そこを私は今非常にいろいろ考えておりまして、そのあたりのお考えをまずちょっと厚労省に伺いたいと思います。

吉本政府参考人 答弁申し上げます。

 児童福祉法上は、何らかの事情で実親によって養育がなされないような、保護を要する要保護児童と言っておりますが、そうした子供につきましては、都道府県、児童相談所が施設に入れてそちらで養育する、里親委託する、あるいは養子縁組といった手段もございますけれども。そういう中で、できるだけ家庭に近い環境で、ただ、全て家庭というわけにはなかなかまいりませんので、今お話がありましたように、今、施設にかなり多くの割合が入っていらっしゃる現状を少しずつ、里親ですとか、より家庭に近いファミリーホームと呼ばれているようなものに委託できるような形にしていきたいという計画を持ちながら進めているところでございます。

 それで、今お話がございました、児童を里親に委託するに当たってでございます。

 何らかの形で児童相談所に御相談があって、虐待等で、まず保護しなきゃいけないとなったときには一時保護といったようなことをいたすわけですけれども、その後、その子供を継続的に養育する、どういう方向で、どういうところで養育するかといった判断を行っていくことになってまいります。その際、施設に行くのか里親に行くのか、場合によってはもとの親に戻して親子関係を再統合していくといった選択肢もあるわけで、そのあたりを実態を見きわめつつ判断していくということになります。

 それで、どうしても何らかの施設措置あるいは里親への委託といったことが必要になる場合で、親権者の同意を得られないような場合は、児童福祉法上の定めがございまして、都道府県は、家庭裁判所の承認を得ることによりまして、親権を行う者の同意を得ることなく里親とか施設入所の措置をとることができるといったような仕組みになっているところでございます。

 実態といたしましては、なかなかそういう措置に同意しがたいといった親御さんがおっしゃるようにいらっしゃるのも事実でございますが、まずは、できるだけ状況を御説明して同意を得ていくということを児童相談所としては努めております。それでうまくいかない場合は今のような措置もございますので、それも含めて対応していくといったようなことでやらせていただいております。

井出分科員 今の答弁のお話しぶりから聞いていても大変難しい問題であるということは私も承知をしておりますが、ただ、そうはいっても、実親のもとを離れざるを得ないお子さんを里親に出す、施設に出す、その他の方法がある。今、里親に行くのは一割前後だ、それを今度、何年か後に三割までに持っていきたいというような数値目標を出されているんですが、私の地元の長野県でも、国の方針に沿ってそういう計画をつくっています。

 ですから、逆に、私は、今の難しい事情を聞くと、今まで児童相談所が悩みに悩み抜いて子供の生活環境を選択していたものが、数値目標によって里親に急に預けられるようになるというのもいかがなものかなという、それぐらい非常に関係は難しいものだと思うんです。

 ですから、この問題に数値目標を置くことが果たして逆にいいのかどうかというところも、御所見があればちょっと伺いたいと思います。

吉本政府参考人 議員御指摘のとおり、今、子供がどこに委託されているのかといったことでいきますと、里親あるいはファミリーホームというのは十数%といったことで、施設と、より小さいグループホームと言われているもの、それから里親、ファミリーホーム、その大きく三つの区分を三分の一程度にしていこうというようなことでやっております。

 里親の方がより家庭に近い環境で、ただ、施設にあってもより家庭的な環境でという趣旨で、そういうような移行をさせていこうという計画をつくっているところでございます。

 日本におきましてはまだまだ里親の制度自体が知られていないといったようなこともございますので、まずそうした周知啓発でありますとか、あと、都道府県、児童相談所等が、里親の周知それから掘り起こし、さらには実際にそういう方を登録していただいてマッチングしていくといったような一連の里親委託までに必要なことをやっていけるような仕組みの検討も必要じゃないかなというふうに考えているところでございます。

井出分科員 そういう、大変残念ながら実親と離れざるを得ないお子さんの処遇を考えるときに、一つ、親権の考え方。

 親権というものは、もともとは親子の、どちらかというと最初は主従関係といいますか、子は親権に属するというような考え方で、日本では、民法そのものではないと思いますけれども、ほかの法律で、子供の自立とか子供の福祉のため、そういう概念が入ってきているやに聞いておりますが、実際ドイツでは、かつては親権、親の権利と言ったものを、その表現そのものを親の配慮ということに改めた。それは、親子が、主従関係ではなくて、子の自立、成長のために親がそれをサポートするというような考え方でそういうふうに変わったということなんです。

 その考え方を基軸にすれば、施設に入っているお子さんが成長して自立する、そのお子さんが生活する環境は大人数の施設がいいのか里親がいいのか、それからまた、実親との関係もそうなんですけれども、親と子の主従関係という言葉は余りよろしくはないんですけれども、ちょっとお許しをいただいて、そこの感情的な、親子で仮にDVがあったとしても離れることは絶対に嫌だ、里親には預けたくないといったところも、子の自立、成長、子の環境という考え方を取り入れていけば多少状況は里親制度の推進の方向に向かってくるかなと思うんです。

 民法そのものが大変古いですから親権というものもそのようになっているかと思うんですが、親権について一度やはり法務省としても議論をした方がいいんじゃないかなと思いますけれども、いかがでしょうか。

小川(秀)政府参考人 お答えいたします。

 まず、親権の簡単な説明をさせていただきますが、親権とは、父母の地位から生ずる法的な権利義務の総称でございます。一般に、親権は、子の身上の監護を行う権限、これは身上監護権と言われますが、それと、子の財産の管理を行う権限、財産管理権と言われますものに分かれておりまして、身上監護権には例えば居所を指定するとか職業を許可する、こういった内容のものがございます。

 もちろん、表現としては親権という、権限という形で表現してございますが、実際、親権者は子の利益のためにその監護や教育をしなければならないものとされ、親権を行使するに当たり、子の利益を十分に考慮した上で適切な判断をすることが法的に期待されていることから、親権は、そういう意味では、親子の関係の義務としての側面も有するというふうに解されております。

 実際上も、平成二十三年にも親権の停止を導入した改正などが行われまして、現在、八百二十条も「親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。」というふうに定められておりまして、御指摘がございましたような子の利益、チルドレンファーストともいいますけれども、そういう考え方は現在の親権の制度の中でもかなりの部分取り入れられているのではないかというふうに考えているところでございます。

井出分科員 親と子の法律的な定めと、それを法律では決して書くことができないつながりというものをよく議論して、この里親制度というものはこれから考えていかなければいけないなと思います。

 次に、今度は子供の子の方を考えたいんですが、民法では、未成年は二十歳未満だと。きょうは林さんに来ていただいていますが、少年法は十八歳。また、児童養護施設に入る児童福祉法も、十八歳になったら出なければいけない、特例もあると聞いておりますが。

 今、申し上げるまでもなく、選挙権が十八歳になりました。民法も十八歳にするのがいい、ついでに結婚も男女を十八歳にそろえようと法制審の答申が出ているんですが、もともと、選挙権が十八歳になった、その前段で憲法改正の国民投票を十八歳にしたところから来ています。

 憲法改正の国民投票を十八歳にしようとしたときに、十六歳にしろと野党がその当時言ったわけですね。それはなぜかというと、憲法という根本をいじるんだから、憲法をいじることについては、幅広い国民の意見が入るように十六歳にしよう、そういう主張をしていた。与党は二十歳だった。それが、海外に研究に行ったりしているうちに、年齢は十八歳に落ちついた。

 しかし、野党がそのとき言っていた、憲法は国家の根幹だから特例的にできるだけ多くの人が入るようにしよう、そこが今度はなくなってしまって、海外に行って帰ってきたら、国民投票は十八だ、選挙権も十八だ、海外を見れば成年年齢も十八になっていると。いつの間にか、今度はそろえるべきだという議論が出てきております。

 少年法についてまず林さんに、その後、児童福祉法については厚労省に伺いたいんですけれども、私は、法律、個別に応じた年齢の定義は非常に重要なものであると思っているんですが、そこの認識を共有していただけるかどうか。それぞれ、少年法と児童福祉法について順番に教えてください。

林政府参考人 委員が御指摘されました、例えば公職選挙法におけるいわゆる選挙権年齢でありますとか民法の成年年齢といったものと少年法の適用対象年齢、こういったものは、論理的、必然的に連動しているものではないと考えております。

 他方で、昨年の公職選挙法改正法の附則において、選挙権年齢が満十八歳とされたことなどを踏まえて、少年法につきましても検討を加えるものとされております。

 そういったことから、少年法の適用対象年齢を検討する上では、選挙権年齢でありますとか、一方で民法の成年年齢との関係、こういったことの要素を考慮すべき、これも重要な要素の一つであろうかと思います。

 したがいまして、論理必然的に全部が連動しているわけではないんですけれども、他方で、やはり重要な基本法の一つであります民法の成年年齢との関係でありますとか選挙権年齢との関係というものも、今後、少年法の適用年齢を考えていく場合の重要な要素であろうかと考えております。

吉本政府参考人 児童福祉法におきましては、委員御指摘ございましたように、満十八歳に満たない者を児童というふうに定義しております。

 ただ、里親委託等の措置の対象は原則児童ですので十八歳に満たない者ということでございますけれども、里親委託等の措置がとられていて、知事が必要と認めるような場合につきましては二十歳に達するまでは措置延長ができるといったような仕組みでやっております。

 実は今、社会保障審議会の児童部会で子供の家庭福祉のあり方について専門委員会を設けて検討している最中でございまして、そこでの議論の一つとして児童の範囲、年齢についても御意見が出されておりますが、主なそこでの御意見は、原則十八歳ということですが、十八歳に達した者に対して、継続的な支援を行っていくことが必要な者がいるとすればどのような形で措置していく、対応していくのかといったような方向で検討されているという状況がございます。

井出分科員 今、それぞれの法律についてお話を伺いましたが、選挙権年齢もそうなんですが、民法の成年年齢がどうなるかというところは、今の二法に限らず、これはいろいろな大きな影響があると思います。

 大臣に伺いたいんですが、民法の成年年齢が今二十歳である、それを十八歳にしようという、私はその意見が大きくなってきていると思います。法制審でも意見が出ています。

 確かに、例えば一つ言われている、海外では選挙権も成人年齢も十八でそろっているところは非常に多いんですが、幾つかの国を見ますと、昔は成年年齢が十六歳だったのを十八歳に上げているところがございました。ですから、もともと十六だったものを十八にするのと、二十だったものを十八にするというのは、私は、同じ十八でもこれは全然違う。それで、海外とそろえます、海外と同じようにしなきゃという議論にとっては、この下から行くのか上から下がるのかというのは非常に重要な議論だと思います。

 この民法の成年年齢について、きょうは分科会ですので、自由に御発言いただきたいと思います。

岩城国務大臣 民法第四条では「年齢二十歳をもって、成年とする。」、このようになっております。

 そこで、今委員の御指摘がありましたとおり、諸外国で、十六から十八にしたり、あるいはまた二十から十八に下げたりと、いろいろな動き、動向がございます。

 そして、我が国の現在の状況といえば、先ほど委員御指摘のとおり選挙権年齢が十八になった、そのことにつきまして民法あるいは少年法でいろいろな議論がなされているところでありますが、さまざまな御意見があります。我が国の現状に即して、そしてその年齢に該当する若人にとってどの選択が一番いいのか、その辺のところを、これからさまざまな御議論を踏まえながら、しっかりと総合的に検討していかなければいけない、そのように考えております。

井出分科員 またこれから法務委員会で本格的な議論に臨むに当たり、きょうはいい人間関係ができたと思いますので、またよろしくお願いいたします。

 どうもありがとうございました。

小林(鷹)主査代理 これにて井出庸生君の質疑は終了いたしました。

 次に、中川正春君。

中川(正)分科員 きょうは、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 一般的に、外国人の受け入れについて、ひとつ大臣といろいろな知恵を出し合いながらきょうは議論をしたいなというふうに思っておりまして、その分野で尋ねていきたいと思います。

 まず、技能実習なんですが、分野が拡大されたり期限が延びたりということで、この技能実習の制度を使って外国人を受け入れていくということが今広がりつつある、それでまた法の改正ということでやっていこうということなんだろうと思うんです。

 例えば建設分野で、厳密には技能実習を広げる、延長するということじゃないんだけれども、それの延長線上で枠を広げていこう、あるいは、介護もそういう意味では新しい分野として広げていこうというようなことなんですけれども、これは、基本的には日本の国内で、労働人口も全体として下がっていることもあるんだけれども、特にそういう特定の分野で労働力が不足をしているということが前提になって、こういう形で枠組みを新しくつくったりあるいは広げたりして、その目的のためにこの技能実習制度を使っていこうということだと思うんですが、それは、大臣の認識として、そういうことだというふうに捉えておられますか。

岩城国務大臣 現在の技能実習制度についての私の認識ということだと思われますが、これはもう十二分に御承知のとおり、開発途上国への技能移転を通じた国際貢献であるということ、それを目的とした制度であります。

 そして、残念ながら、一部において、制度の趣旨を理解せず、安価な労働力の確保策として利用する者がいることも事実であります。その結果、労働関係法令違反や人権侵害等の問題が生じておりまして、米国国務省の人身取引報告書等におきましても制度の改善が求められるなど、国内外から問題が指摘されております。

 他方、技能実習は、送り出し国からも積極的な評価を受けている面も当然ございます。

 そこで、この技能実習制度につきましては、抜本的な見直しを行い、問題点等を解決するとともに、制度の趣旨の徹底を図りまして、技能実習制度の一層の適正な活用を図るべきであると認識しており、そういった観点から、そのための法案を国会に提出しているところでございます。

中川(正)分科員 余り事前の通告にこだわらずに、素直に私の話を聞いてください。

 今回そうした幅を広げていくというのは、日本の労働事情を反映しているんだと思うんですよね。素直に見て、政府がそこへ向けて労働力を供給しなきゃいけないという形の中で、この技能実習制度を活用して、そこへ向けてこの制度を入れていこうということ、こういう議論が前提になって、今、一つの、介護とかあるいは建設分野での見直しがあるということだと思うんですよ。それは素直にそうだということになりませんか。これも全く違って、途上国がノウハウを求めているから、あるいはそういうふうに技能実習として日本に期待しているから来るんだということになっていると本当に認識されているんですか。そこなんです。

岩城国務大臣 基本的には、先ほども申し上げました国際貢献という、それから開発途上国への技能移転ということが主たる目的だと考えております。

中川(正)分科員 私は、法務省がもっとしっかり物を言わないといけないと思うんですよ。

 さっき、運用の中で、趣旨とは違った形でこれが運用されている、受け入れ機関や、あるいは、さっき話が出ていましたけれども、失踪というふうなこともあって、運用がなかなか目的のとおりにはいっていない、こういう話はあったけれども、私から言わせたら、間違った運用をしているのは政府だと思うんですよ。

 ということは、言いかえれば、法の目的と実態が全く、本音と建前が違っているように完全にずれているということと、これは国内でもずれているんですが、海外から見たときも、海外から日本にこのプログラムに乗って来ている人たちの本音は何なのかということ、これはもうみんなわかっている。一部は技能ということもあるかもしれないけれども、ほとんどの人たちは出稼ぎなんですよ。だから日本に来たいという、その意識の中でこのプログラムに乗って来ているということだと思うんですね。

 そういう意味では、労働の機会として、いわゆる出稼ぎ労働を受けとめる制度としてこれを位置づけるのか、それとも国際貢献で技術移転だとして位置づけるか、ここのところの整理をしないと、いつまでたっても、この制度で労働供給を何とかつじつまを合わせていこうとしている限り、さまざまな矛盾というのは起こり続けるし、その幅が広がれば広がるほど、この矛盾というのは大きくなってくる。だから、海外から見ても、さっき大臣みずから言われたように、さまざまな批判がこれに対して起こってくる。

 そこに基本があるんじゃないかということ。これを考えていったら、法務省というのは、そういう意味ではそこを整理しなきゃいけない立場にあるんだと。ちゃんと労働力として受け入れるんだったら、そのような仕組みをつくろうよと。単純労働で総枠をつくって、韓国が今やっているように労働許可制というふうな制度を取り込んで、そして働くということに対しての移動の自由という権利もそれぞれの労働者には保障してという、そんな発想が本来法務省から出てこなきゃいけないと思うんですよ。

 それを、さっき大臣の言われるように、政府全体で何とかつじつま合わせをしようとしているんだから、この問題については国際貢献なんだ、法務省がみずからこんなことを言っちゃったら、それこそ法の番人としてしっかり機能していないということになるんじゃないかというふうに思います。それが出発点なんですよ。そのことを指摘しておきたいというふうに思うんです。

 今の制度の中でもいろいろな改正点がある。その中で、私は一つ大事だと思うのは、今の制度に乗ったときに、職業を選択していく自由というのは、ここが肝だと思うんですよね。

 さっき失踪の話が出ました。これは、働くチャンスをもらったんだ、そういう発想に立てば、賃金がより高いところへ向いて移動するというのは当たり前の話なんですよ。労働法制の中でもそれは認められなきゃいけない部分なんだと思うんですよ。しかし、今の制度をそのまま適用したら、それは趣旨と違うから法律違反だと捕まえて送還しちゃうんだ、こういう話になる。

 本当に、捉え方によってこれだけ違ってくるということに対して、少なくとも、今の制度でも自由に選べる、移動しようと思ったら移動できるということをしっかりとつくり込んでいかないといけないんじゃないかということが一つあると思うんですね。

 そこについてはどのように考えられますか。

岩城国務大臣 技能実習生には、計画的に知識それから技能をレベルアップしてもらう必要があります。そのため、特定の受け入れ機関におきまして、その受け入れ機関が立てた技能実習計画、それに従って技能等を修得してもらうことが適当でありますので、その計画の途中で実習先を変えることは現在の制度では想定をしておりません。

 そこで、現在、国会に提出しております技能実習法案に基づきまして実施する新しい制度におきましても、最初の三年間は基礎的な技能等を計画的に修得するための期間でありまして、一つの実習先で一貫して学んでいただくことが望ましいために、実習先を変更できる仕組みとは考えておりません。

 他方、その三年の技能実習が終わり、技能実習三号への移行段階においては、技能等の習熟も進み、発展的、応用的な段階に移ることになりますので、一定の要件のもとで技能実習生の希望で他の実習先に移ることを認める、そういった計画にしております。

中川(正)分科員 今の制度はわかっているんですよ。大臣はどう思われますか。

岩城国務大臣 私は、やはり、技能実習の計画に従って一定の決まったところでしっかりと技能や知識を身につけていただく、それが基本的に大事なことだと考えております。

中川(正)分科員 そうすると、労働者としては一切認めないという考え方に立つわけですか。

岩城国務大臣 基本的に、あくまで技能実習、そういったことを主目的にしている、そのように考えております。

中川(正)分科員 いや、そうじゃないでしょう。

 研修の制度と、それから技能実習という制度と、いろいろな議論がこれまであった。その中に、いや、これは、技能実習という国際貢献という枠組みの中ではいろいろな矛盾ができてくるから、少なくとも、労働法制の中にもこれをのせていこうということで、例えば、残業ということについての部分であるとか、あるいはいわゆる最低賃金という部分であるとか、これはみんな労働法制の中にのせているんですよ。

 だから、大臣、間違っていますよ、さっきの答弁は。

岩城国務大臣 受け入れ先には、労働条件は当然のことながら守っていただくことになります。そして、労働者としての権利は保障するわけでありますけれども、いわゆる単なる労働力だけではない、これが制度の目的だと思います。

中川(正)分科員 だから言っているんですよ。

 基本は、移動の自由それから職業選択の自由、ここなんですよ。これが保障されていないから海外から批判の的になる。だから、これは保障したらいいじゃないですか、その部分もというのが私の話なんです。どう思われますか。

岩城国務大臣 私は、やはり、海外からいろいろと指摘を受けていることは、受け入れ先が規則を守らないとか、それからさまざまな不法行為らしきものをしているから、そういったことでの指摘だと思います。

中川(正)分科員 なぜかといえば、ここの職場が、そうした意味で、使用者のいわゆる違法行為がある、あるいは不法行為があるというふうなことがあったときに、労働者の方が、では、そこをやめて別のところへ行きましょう、あるいは賃金がここは低いから別のところへ行きましょうといったときに、それが行けない。行けない状況をつくっているから、そこでさっきのようないろいろな矛盾ができてくる。力関係が全く違うんだから、そこで閉じ込められちゃうんです。この状況というのは労働法制から見たときに問題があるでしょうということを言っているんです。

 そこのところを、大臣、余り答弁書にこだわらずに、素直に見ていただきたい。これは直すことができるんですよ。だから、そこの指摘を一つしておきたいというふうに思います。

 これ以上言っても、なかなか事務方からいいメモが回ってこないということもあるでしょうから、大臣、しっかりそこの認識というのを一遍整理してもらいたいというふうに思います。

 それから次に、難民の関係についてお尋ねをしたいんです。

 今、シリアやあるいは中東からヨーロッパへ向けて大量に難民が流れている。その中で、日本も何が貢献できるかというふうな議論があると思うんですね。

 第三国定住のような仕組み、私もこれは担当させていただいたんですが、ああいう形で受け入れるとか、何か工夫をしてくれないかということが、UNHCR等々含めて国際機関からも日本は要請が来ているというふうに私は認識しているんですが、これについて何か知恵が出ないかということだと思うんですね。

 日本は過去にインドシナ難民をしっかり受け入れた経験がありますけれども、これは大臣としてはどのように思われますか。

岩城国務大臣 難民認定制度についてのおただしだと思われますが、現状におきましても、シリア人の難民認定申請者については、難民認定しない場合でも、本国の事情等に鑑みて在留許可を与えており、人道的な見地からの緊急避難的な、そういった受け入れを行っております。

 そして、永住を前提としない緊急避難的な受け入れ先に関しては、大臣の私的懇談会である出入国管理政策懇談会のもとに置かれました難民認定制度に関する専門部会から、紛争被災民に待避機会を提供する新たな枠組みを設けること、これを求めた提言がなされました。

 この提言を踏まえまして、昨年九月に公表しました難民認定制度の運用の見直しにおいて、我が国での紛争待避機会として在留許可を付与すべき対象を明確にするため、人道配慮により在留許可を行った事案及びその判断のポイント等について今後公表することとしております。

 そういった人道的な見地からの紛争被災民の保護についても、これから適切に対応してまいりたいと考えております。

中川(正)分科員 そういう整理の仕方もあるんだろうけれども、もう一つ私が言いたいのは、これだけ世界の課題になっているときに、それこそ日本が国際貢献するということであるとすれば、インドシナ難民のときのように特別に法律をつくって、その枠組みの中で運用ができないか。

 紛争で逃げてきた人たち、直接的にそれで影響を受けて逃げてきた人たちと、その周辺で経済難民と言われる人たちと、なかなか今の日本の制度の中では、運用が物すごく厳密というか細かくされているために、その周辺の経済難民を受け入れるという枠組みになっていかないんです。だから、これまでの延長線上でやっても、なかなか難民受け入れの人数がふえるということにはならないというふうに思うんですね。

 それだけに、一つ別枠の枠組みが私は必要だというふうに思いますのと、それからもう一つは、別枠をつくるときに、難民というと永住ということが前提になりますよね。だがしかし、日本の世論の中でそれが本当に受け入れられるかどうかという心配もあるんだろうと思います、率直に言って。

 そのときに、例えば期間を限定して、それこそ今の技能実習制度じゃないけれども、三年間、とりあえずのところ日本で受け入れようじゃないかと。最終的には、それぞれの地域の紛争がおさまった時点で本国に帰っていくんだという前提の中での受け入れとかいうふうな、いろいろな工夫がその中でできると思うんですね。そういうことを日本がやり始めれば、恐らく、世界のそうした対応の中でもいろいろなリードをしていく立場に立っていくんじゃないかなというふうに思うんですね。

 そこについて、ひとつ頑張りませんかという私の思いなんですけれども、大臣、どう思われますか。

岩城国務大臣 先生には、第三国定住の問題について本当に御尽力いただきましたことに敬意を表したいと存じます。

 それで、ただいま幾つかの御指摘をいただきました。いずれも大変大きなテーマであります。したがいまして、私どもも検討してまいりたいと思いますが、とりあえず、先ほど申し上げたような取り組みから法務省としては進めていきたいと思っております。

中川(正)分科員 もう一つ、留学生なんですが、これは本来は高度人材の類いといいますか、そういうカテゴリーに入れられるんだと思いますし、いわゆるゼロから日本に受け入れて、日本語の研修だとか、あるいはさまざまな社会的な仕組みをつくって持っていく、そういう形よりも、留学生で来てもらって、みずから日本語を習得して、技術も身につけて、それからどうするかということだと思うんですね。

 その人たちが日本の社会で貢献していく、あるいはまた、彼らも卒業したら日本で働きたいという思いがいっぱいあるにもかかわらず、働ける職種というのが非常に限定をされているということと、それから、それを見つけていくときに時間がかかるわけですけれども、その猶予がないというふうなことが、彼ら自身をモニタリングすると話が出てくるんですよね。

 これは、例えば何のために日本は留学生を受け入れているんだということにもつながってくると思うんです。文科省の方では、とにかく三十万人、四十万人、留学生を受け入れましょうということで、その拡大を模索しているんだけれども、結果として、ただ日本で勉強したことを本国に持ち帰ってそれを活用するんだということだけではないと思うんです、その思いは。彼らが日本の社会の中のダイナミズムの源泉になっていくような、そんな受けとめ方、受け入れ方というのが、やはり国を開いていく、一番開きやすい形になっていくんじゃないかなと思うんです。

 そういう意味で、非常にその職種が限られているんですけれども、これの見直しについてもっと積極的な議論が私は必要だと思うんですが、どう思いますか。

岩城国務大臣 留学生の卒業後の就職の支援についてでありますけれども、大学を卒業し、または専門学校において専門士の称号を取得して卒業した留学生に一定の配慮を行っております。

 具体的に申し上げますと、在留状況に問題がなく、就職活動を継続するに当たって、卒業した教育機関の推薦があるなどの場合に、就職活動のため、最長一年間本邦に滞在することが可能になっております。

 また、就労できる職種の拡大、これまでもこの拡大につきましては、専門的、技術的分野の外国人について積極的な受け入れを進めてきたところであります。

中川(正)分科員 余り答えになっていないんですけれども。

 ある意味、例えば中小企業なんかは、この外国人人材というのは、私の地域でいけば非常に期待していまして、優秀な人たちが来ているので、うちのところを見て、やりたいと。例えば、一般の仕事の営業で歩いてもらいたいとか、あるいは工場の中へ入って中間管理職としてやってもらいたいとか、そういうごく一般的な労働市場へ向けて彼らを入れ込もうとすれば、それはできるんですか、できないんですか。

岩城国務大臣 ただいまのおただしでありますけれども、専門的それから技術的分野の外国人、こういった対象については、我が国の経済社会の活性化に資する、そういった点で、積極的に受け入れることが重要、このように認識しております。

中川(正)分科員 専門的というと、国際的な業務にそれがなっているのかどうかとか、いろいろ条件がついてくるわけでしょう。だから、ごくごく一般的な、例えばスーパーの店長とか、あるいは工場のラインの中間管理職とか、そういうものに就職はしていけるんですかということなんです。

岩城国務大臣 ちょっとよく聞き取れなかったものですから、申しわけございません。

 先ほどの補足という形で説明させていただきますけれども、専門的、技術的分野とは評価されない分野、今おっしゃられた分野だと思いますが、そういった分野の外国人の受け入れにつきましては、ニーズの把握、それから経済的効果の検証のほか、日本人の雇用への影響、産業構造への影響、教育、社会保障等の社会的コスト、治安など、幅広い観点から、国民的コンセンサスを踏まえつつ、政府全体で検討していく必要があると思っております。

中川(正)分科員 もうこれは時間がないので、私の結論から言いますけれども、そういうことも含めて、移民という言葉を今総理も使うことを避けておられます、あるいは一般的にもそういう風潮といいますか気遣いがあるんですけれども、私は、どういうふうにこの国の外国人の受け入れというのを戦略的に考えていくかということについては、移民の基本法的な、これは技能実習にしたって、あるいは日系と言われるブラジル人の皆さんを中心にした出稼ぎという形で来ている人たちについても、これはみんな単純労働ですよ。それから、高度人材と言われる人たちや留学生と言われる人たち、さまざまにあるんですけれども、これをトータルで、どういう入り口をつくって、総量的にはどれぐらいの人たちを日本で許容できるのかというようなことも含めて、この入り口の議論というのはやはり戦略的にやらなきゃいけないと思うんです。これが一つ。

 それから、もう一つは、入ってきた人たちが、やはり、社会統合というか、あるいは多文化共生というか、日本の仕組みの中でしっかりそれをつくって、彼らの権利と、それから日本の中で貢献をしてもらえるような、そういう社会的な仕組み、素地をつくるということ、これがもう一つあると思うんです。

 それぞれの分野で今のようななし崩し的なことをやっていると、結果的には、日本にとっては悲劇を生むだけだと私は思うんです。いろいろな矛盾が出てきて、結局はそれが、日本の移民政策を逆に失敗させる、そのもとだというふうに思うんです。

 そういう意味で、やはりこれは法務省だけじゃなくて、本当は政府全体で基本法をつくっていくということ、これを考えていかなきゃいけないと私は思っているんです。それだけに、法務省の役割というのは本当に大事なんですよ、この分野については。問題が出てきたものを対症療法しているだけじゃなくて、基本的な戦略をやはり政府に対しても打ち出すという役割が期待されているんだけれども、なかなかそこまで意識が行っていないという感じを受けています。というのが、私の、きょう最終的に言いたかったことなんですね。

 そこのところを、もしコメントがあれば、大臣、私、頑張っているからといって、答えてください。

岩城国務大臣 日本再興戦略の改訂二〇一五においては、移民政策と誤解されないような仕組みを含めて検討することとされており、移民を受け入れることを前提として、そういった検討は行っておりません。

 しかしながら、受け入れた外国人の人権の問題、あるいは国民と共生する社会を実現していく視点は極めて重要であると考えております。

 いずれにいたしましても、日本再興戦略に基づく今後の外国人受け入れに関する政府横断的な検討におきまして、法令上の措置の必要性を含め、検討してまいりたいと考えております。

中川(正)分科員 ありがとうございました。以上です。

小林(鷹)主査代理 これにて中川正春君の質疑は終了いたしました。

 次に、藤原崇君。

藤原分科員 自由民主党の藤原崇であります。

 本日は、予算委員会第三分科会ということで、岩城大臣に質問をさせていただきたいと思っております。

 まず、第三分科会、主査の先生初め予算委員の先生方も、大変遅くまで御苦労さまでございます。また、岩城大臣におかれましても、就任以来、予算対応等、非常に精力的に活動なさっていて、心から敬意を表するところであります。

 そういう中で、本日は、第三分科会、法務省所管ということで、私の方から何点か質問をさせていただきたいと思っております。大きく分けますと、登記の問題、弁護士等の育成の法曹養成の問題、そして法曹の民間での活躍の問題、大きく分けてこの三つについてお尋ねをさせていただければと思っております。

 まずは、登記というのは、これは当然、法務局が所管をしているんだろうというふうに思っております。最近、この登記というのが、被災地、東日本大震災の関係で大分問題として議論に出ているなということを、私も議員になって三年間たって感じております。

 今から一年くらい前ですと、私の岩手県なんかでよく問題になっておりました。道路をつくったり堤防をつくったりする、そういうときに、当然、土地をいただかなければいけないんですが、登記を見てみても誰が今の権利者かわからない、こういう状況が散見されております。

 翻って今、福島県では、いろいろな経緯の中で、中間貯蔵施設をつくるということで、環境省の方にも大変御苦労いただいているわけでありますが、同じような問題があるのではないかということで、まずは事実確認をさせていただきたいと思っております。

 環境省にお伺いいたします。

 福島県の中間貯蔵施設の建設予定地、これのおおよその地権者数、そしてそのうち、登記名義人が死亡していて、今の権利者ではない方が登記名義人になっている、そういう事例が何個あるかということを、概数で構いませんので教えていただければと思います。

    〔小林(鷹)主査代理退席、主査着席〕

小川(晃)政府参考人 お答えいたします。

 福島県において、除染に伴い生じる土壌等を保管する中間貯蔵施設についてでございますけれども、この中間貯蔵施設の用地には、登記記録ベースで土地と建物を合わせて二千三百六十五名の地権者がいらっしゃいます。そのうち、本年一月までに死亡されていることが確認できている方はおよそ五百七十名でございます。そのほか、戸籍等の調査ができずに、書面では死亡が確認できていないものの、登記の記載年代などから死亡されていると推測される方が一定程度いらっしゃいます。こういった方々を合わせると、およそ九百名の方が死亡されているものと把握しております。

藤原分科員 ありがとうございます。

 中間貯蔵施設の予定地、二千三百六十五名、一応登記ベースではいらっしゃる、そのうち九百人については既にお亡くなりになっている方ということになります。これは実は、もう少し調べてみると数字は多くなる可能性もあるのですが、確実な数字として、少なくとも九百近くは、登記簿を見ても今の権利者が誰かはわからないということになります。

 田舎に行きますと、しっかりと相続の登記をしているということの方が珍しいということも残念ながら事実でありまして、岩手県の例でいえば、登記簿には、何とか左衛門さんとか、あるいは明治三十何年とか、そういう登記がまだ残っているという地域もありました。

 これが非常に大変な手間がかかるということは、相続が発生してしまうと、子供がたくさんいれば、権利者はネズミ算式にふえていくということになります。戦後のある時期までは家督相続制でしたので、そんなに相続というのは複雑にならないんですが、例えば一世代で子供が三人いれば、ある登記名義人の人が死ねば、三人の人がちゃんと話し合いをして登記を更新しなければいけない。もし登記を更新していなければ、三人それぞれから判こをもらうなり、その三人で遺産分割をまとめてもらわないと、その土地を買うことはできないということになります。

 三人であればいいんですが、これが二世代続くと、三人に三人子供がいるかはわかりませんが、九人になります。三世代ぐらいですと二十七人というふうになってくるわけですね。いとこ、はとこぐらいであれば私も何となくわかりますけれども、三世代も離れてしまうと、はっきり言えば誰が権利者かもわからないし、仮に遺産分割が終わっていなければ、遺産分割をまとめるということもほぼ不可能だろうというふうに思っております。

 聞くところによると、福島県の中間貯蔵施設の予定地においても、必ずしも一世代だけではなくて、二世代、三世代、そのように、相続が更新されていない登記というのがそれなりの数あります。これは非常に大きな問題になると思います。

 登記が更新されていないと、我々の日本は法治国家ですので、権利者のお許しをいただかずに勝手に土地を道路にしたり、物をつくったりすることはできません。登記簿で確認をして、見つからないと、さかのぼって捜していかなければいけない。相続が完了していないのであれば、相続が完了するまで待つか、あるいは個別に判こをもらうか、あともう一つ、土地収用というやり方もありますが、いずれにせよ、非常に時間がかかってしまうということになります。

 これは、二年前でしょうか、以前も少し質問を分科会でさせていただいたんですが、相続の際に登記が十分に更新されていない事案が散見されて、まさしく復興の妨げになっている。これは重要な問題だと思っておりますし、今後、もし万が一同じような震災があったら、同じような問題が出てくるんだろうと思っております。

 これは早急に是正をしなければいけない問題だと思っておりますが、この点について法務省さんはどのように認識しておられるでしょうか。

小川(秀)政府参考人 ただいま御指摘いただきました、土地の所有者が死亡した後も長期間にわたり相続登記がされない結果、登記上の所有者と実際の所有者が異なることとなり、所有者の所在の把握が困難となっているという問題、これは解決すべき重大な課題であるということを認識しております。

 この問題は被災地においてとりわけ顕在化したものでございますが、法務省としては、被災地における権利者の調査の支援ですとか、防災集団移転促進事業の用地取得のための財産管理制度の活用などの取り組みで対応してきたところでございます。

 不動産に関する権利の公示という観点からは相続登記が速やかにされることが望ましいことから、平成二十七年二月には、相続登記の促進に関する記事を法務省のホームページにアップして、さまざまなメリットなどについての理解が進むように取り組んでおります。

 また、現場であります全国の法務局の取り組みも有益であると考えられるところから、市町村に対して、死亡届手続をする際などに相続登記を促すパンフレットの配布を依頼するなどの取り組みを行っております。

 また、二十七年の四月からは、国土交通省によりまして、所有者の所在の把握が難しい土地への対応方策に関する検討会が立ち上がり、法務省もこの検討会に参加して、所有者を探索するノウハウの取りまとめなどの施策について総合的に検討しております。

 法務省といたしましても、この検討会に全面的に協力し、そこでの議論を踏まえて、引き続き関係省庁とも連携して、この問題の解決に向けて取り組んでまいりたいと考えております。

藤原分科員 ありがとうございます。

 以前質問をしたときよりは問題意識を持っていろいろな取り組みをしていただいているなと思っております。

 二つの観点から今の答弁は切り分けができるんだろうと思っております。

 まず一つは、今実際に相続が行われていない登記、これでどうやって用地交渉を進めるか、そういう点についてのお話が一つあった。そしてもう一つは、今後、そういうようなときにしっかりと登記がなされること、そういうように登記を促進するということ、その観点からの取り組み。この二つについて説明があったんだろうと思います。

 今、相続が更新されていないところは、これはもうどうしようもない話ですので、個別に対応する必要があると思いますが、これから相続が起きたときに、多少価値のない土地でもちゃんと登記をしてちゃんとやっていこうと皆さんに思っていただく、そういうふうにやっていただく。

 今のお話ですと、宣伝をしていますというようなお答えだったと思います。宣伝というのはまず第一歩だと思うんですけれども、果たしてそれで本当に、地方の田んぼあるいは山を持っている地主の息子さん方がちゃんと登記をするかというと、第一歩としては大事だろうと思っておりますが、さらに進んだ対応も必要なのではないかなというふうに思っております。

 それで、例えばなんですけれども、相続のときに登記がなるべく促進されるように、多少、税金と言っていいかどうか、税制で優遇措置をとるということも考えられると思っております。相続が発生して二年以内に相続登記をするのであれば、登録免許税あるいは登記の諸費用、司法書士の先生のは別にしても、国に払う手数料については、三分の一とか半分とか、二年以内に登記をすれば安くしますよ、なるべく早く登記をしてください、そういう形で促すということも一つの考え方かなと思いますが、その点についての法務省の見解を伺いたいと思っております。

小川(秀)政府参考人 ただいま御指摘いただきましたのは、基本的には登録免許税の減免措置を設けるということだというふうに理解しております。

 その点につきましては、それによって不動産登記制度に何か問題が生ずるというわけではございません。ただ、いずれにいたしましても、登録免許税などの税制についてはさまざまな議論が必要な分野であると承知しておりまして、基本的には当省の所管外の問題でもございますので、回答としては差し控えさせていただきたいというふうに考えております。

藤原分科員 税制なのでなかなか法務省だけではということだと思うんです。登録免許税はもしかしたら別の官庁になるのかもしれないので、ちょっと私もそこはわからないんですが、ただ、前回、百八十六回国会で質問をしたときには、不動産登記制度の本質に反して困難と思われる、そういう答弁をいただいていて、今回は、それからすると、基本的には税制の問題としてやっていけば、そこで議論をしてくださいということで、非常に前向きに回答をいただいていると思っております。

 これは法務省だけの問題ではないので、私もいろいろなところで議論をしていきたいと思っておりますが、私も国の仕事をして非常に思うのは、法務省の仕事というのは、ともすれば、ほかの、経済産業とか厚生労働とか農林水産と比べると少し地味な印象もありますが、まさしく我々の日本は法治国家であります。登記制度あるいは戸籍制度、さまざまな制度があってこそ我々の社会が成り立っている。そして、ある意味、この不動産の登記制度というのも、今、必ずしも真実な権利関係を反映していない。そのため、例えば、道路を公共事業でやる、これは、被災地以外でも道路をやるというふうになったときに、誰が権利者かわからなくてストップしてしまう。これはさまざまな事業である話であります。

 今は個別で解決をしている問題でありますが、法務省として登記をしっかり適時適正に公示されるようにするということは、何も震災だけではなくて、さまざまな公共事業等においても非常に大きなプラスがあるんだろうと思っております。少しでもそういう改革を進めていくことはこれからの法務省にとって非常に大事なことだと思っておりますが、その点についての大臣の御所見を伺いたいと思います。

岩城国務大臣 先ほど、この問題につきまして、福島の中間貯蔵施設にかかわるお話をいただきました。まさに地元とすれば切実な問題であります。

 同時に、長期間にわたり相続登記がされていない問題は、これは、被災地だけでなく、さまざまな事業等にも当然ネックとなっていることだとは十二分に認識をしております。

 そこで、政府参考人がさきに申し上げましたとおり、これまでもさまざまな取り組みを行ってきているわけでありますが、引き続き、関係省庁と連携を十二分にとって、登記が適切に実態を反映したものとして公示されるよう、しっかりと取り組んでいきたいと考えております。

藤原分科員 ありがとうございました。

 制度としてよりよい制度にすれば、恐らく、さまざまな公共事業の予算とか、そういうところの予算も、手間も時間もぐっと減るということで、非常に効率をよくすることができるということで、非常に大事な問題だと思いますので、ぜひよろしくお願いをしたいと思っております。

 次に、法曹養成の問題についてお聞きをしたいと思っております。

 新しい制度ができてもう十年以上たちましたが、いわゆる法科大学院という制度ができて、そこから、弁護士として、裁判官として、検察官として輩出されるようになりました。実は私もロースクール出身の弁護士ということで、今は参議院に一名いらっしゃるのかもしれませんが、ロースクール出身の弁護士からの国会議員というのは第一号でございまして、余りほかに一番になったことはないんですが、これだけはよかったなというふうに思っております。多分そうだと思います、私はちょっと確認はしたことがないんですが。

 それで、その関係で、この法曹養成、今、必ずしもうまくいっているわけではない。この点についてお聞きしたいんですが、まず、来月、三月の十一日に、法曹養成に関してある一つの動きがあります。三・一一の日でもあるんですが、実はこの法曹養成に関しても一つの動きがあるということで、これは、実は日本弁護士連合会の臨時総会が開かれるということになっております。

 今の日弁連執行部は千五百人まで減らしてくださいということで言っておりますが、一部の急進的な、急進的と言ったらちょっとそれは、私が今の時期に言うのはちょっと問題があるのかもしれませんが、また別のグループは千人まで直ちに減らすべきだということで、今、三月十一日の臨時総会に向けておのおのの陣営が委任状を集めているということになっております。

 私も日本弁護士連合会の会員ですので、当然、委任状が来てどちらかにできるんですが、私は、立場も立場なので、今回は棄権をしようかなというふうに思っております。

 しかし、そういう弁護士の業界の中においても、千五百人だ、千人だと、いろいろな意見があります。そして、昨年、自民党においても公明党さんにおいても、あるいは民主党さんにおいても、さまざまな政党でもこの合格者の問題についていろいろな提言が出されました。さらに、内閣にある法曹養成制度改革推進会議においてもそういう決定が出されました。

 しかし、一つ私が思いたいのは、では、これが出て、実際に合格者の人数というところにどのくらいの影響があるのかなというところをお聞きしたいと思っております。

 法務省にお伺いします。

 司法試験の合格者はどの組織がどのような基準によって判断をするのでしょうか。

萩本政府参考人 司法試験の合格者は、司法試験考査委員の合議による判定に基づき、司法試験委員会が決定しております。その合格判定は、法曹となろうとする者に必要な学識及び応用能力の有無を判定するという観点から、実際の試験結果に基づいて行われております。

藤原分科員 ありがとうございます。

 法務省とは別の司法試験委員会という組織が合議によって判定をする、そして合議の基準は、あくまで、法曹となるのにふさわしい能力が備わっているかどうかという、一定の水準に達していれば合格をさせなければいけないし、一定の水準に達していなければ合格させるわけにはいかないということになるんだろうと思っております。

 そうすると、いろいろ提言について解釈の余地はあるんですけれども、千人であるとか千五百人、そういうような数字を出して提言をしているわけなんです。片や一方で、司法試験の合格者というのは、一応というか建前というか、一応ある一定の基準を超えていれば、それはみんな合格をさせなければいけないし、ある一定の基準に達していなければ、それは残念ながらもう一年ということにせざるを得ないということになるわけです。そうすると、政策的に千人、千五百人というのになじまないというような考え方もありますし、法務省あるいは政府に向けて各政党が提言を出したとして、それにどれだけ実効性があるのかということが問題になると思います。

 このような提言あるいは推進会議の決定、こういうもので合格者について触れられておりますが、司法試験の合格者については、どのような位置づけになって、そしてこの数字についての実効性というのはどう担保されるのでしょうか。

萩本政府参考人 御指摘のありました各政党の提言、あるいは政府に置かれました法曹養成制度改革推進会議の決定、これらにつきましては、先ほど申し上げましたとおり、司法試験の合格者の決定に当たる司法試験委員会や考査委員会議に対しまして、その都度、事務局を通じてその内容を報告しているところでございます。

 また、昨年九月三十日に開催されました第百十五回司法試験委員会におきましては、改めて、法曹養成制度の所管部局であります司法法制部から、司法試験委員会の委員に対しまして、そうした提言や推進会議の決定の内容につきまして説明を行いました。その際、単に提言や決定に掲げられた合格者数をお伝えするだけではなく、それぞれの議論の経過、提言や決定の背景となっている法曹養成制度全体に対する問題意識や今後の方策についても詳しく報告を行ったところでございます。

 その日の司法試験委員会におきましては、そうした報告された事項を踏まえて適正に合格者数を決定していくということが改めて確認されたと承知しております。

 また、平成二十八年、ことしの司法試験考査委員に対しても、そうした提言や決定の内容について説明が行われております。

 その実効性というお尋ねでしたけれども、これらの提言や決定は、実際の試験結果にかかわりなく特定の年の合格者数を特定の人数にすべきというものではなく、その内容は、提言や決定で指摘されている法曹養成制度に関するさまざまな問題状況を含め、総合して理解されるべきものと認識しているところでございます。

 司法試験委員会におきましても、そうした指摘されたさまざまな問題状況も含めた提言や決定の内容を十分踏まえ、今後とも、実際の試験結果に基づいて適正に合格者の決定を行っていくものと考えております。

藤原分科員 つまり、司法試験委員会に法務省としてはお伝えをする、あとは司法試験委員会が御判断をいただくということで、なかなかダイレクトに合格判定をする機関に提言をしているわけではないということになるわけであります。これがこの法曹養成の問題を難しくしている一つの問題だろうと思っております。

 きょうはこの問題はこれくらいにしておきますが、各政党の提言あるいは推進会議の決定を見ると、いろいろな書きぶりはありますが、合格者数等について、おおむね一定の幅に落ちついているんだろうと思っております。これは、法務省さんには、司法試験委員会に適正に趣旨を理解していただいて、しっかり理解をしていただくように、今まで以上に丁寧に説明をしていただきたいということを要望させていただきたいと思います。

 これがまずは法曹の入り口の問題であります。

 次に問題となるのは、弁護士になったけれども就職先もないじゃないかということも実は問題になっております。

 よくよく考えれば、弁護士というのは士業ですので、就職先がなければ自分一人でやればいいでしょうという考え方もあるんですが、さはさりとて、法曹の民間での活躍領域、必ずしも今までの法廷の弁護士だけではなく、企業で働いたり、民間ではありませんが役所に入って働いたり、あるいは国際機関に行って働いたり、いろいろな働き方があると思うんですが、法曹の民間活躍、これの領域の拡大に関して、今まで国はどのような取り組みをしていたでしょうか。

萩本政府参考人 法務省では、昨年まで、法曹有資格者の活動領域の拡大に関する有識者懇談会というものを設置するとともに、その下に、日弁連との共催で、企業における法曹有資格者の活動領域の拡大に関する分科会を設けておりまして、これらの中で、日弁連や経済団体等とともに、法曹有資格者の活動領域のさらなる拡大を図る方策等を検討するとともに、試行的な取り組みを行ってまいりました。

 具体的には、これらの懇談会や分科会での検討を通じて、日弁連において、経済団体と協力して、弁護士の採用に関する企業向けの情報提供会、法曹有資格者を対象とする就職合同説明会等を行うとともに、法務省におきましては、日弁連や経済団体等との連絡、協議を行い、法曹有資格者の専門性を活用することの有用性やその実績等について、情報の共有や発信に努めてまいりました。

 また、法曹有資格者が、そのキャリアの早い段階から、今委員から御指摘のありました、民間といいますか企業も活躍の場であると具体的にイメージする機会を得ることが重要であるとの観点から、最高裁判所とも連携の上、経済団体の協力を得て、司法修習のうち選択型実務修習の受け入れ先の拡大に向けた取り組みを行っておりまして、これまでに複数の企業に司法修習生の受け入れを表明していただいているところでございます。

藤原分科員 ありがとうございます。

 会議をして、情報共有をして、理解をしてもらっています、そして修習先を開拓しましたということなんですが、第一歩の取り組みとしては大事なことだと思うんです。

 まだまだ伸びる余地はあるはずなんですけれども、情報提供をしますとか、あるいはメリットを理解してもらいます、ここからもう一歩進んだ、もっと経済的にプラスなところを政策として出すとか、いろいろなことが考えられると思うんですが、国としてさらに深掘りをするという考えはありませんか。

萩本政府参考人 御指摘のとおりでして、企業内で活躍する弁護士の数は、ここ十年で大幅にふえてはおりますけれども、まだまだ限定的なものにとどまっているというように認識しております。

 法務省としましては、先ほど御紹介しました推進会議決定で、法曹有資格者の活動領域の拡大に引き続き努めるべき、こういうようにされているところでございまして、その決定を受けまして、法務省では、法曹養成制度改革連絡協議会というのを文部科学省とともに開催しておりまして、この中で法曹有資格者の活動領域の拡大も議題として取り上げ、今後引き続き検討を深めてまいりたいと考えているところでございます。

藤原分科員 ありがとうございます。

 文科省との間の連絡協議会、これは三月に法曹の活動領域の拡大に関しての議論を行うというふうに聞いておりますが、この連絡協議会においては、どういうスケジュール感で議論を進めて、最終的にはどのようなところを法務省としては落としどころと考えているでしょうか。

萩本政府参考人 ただいま申し上げました連絡協議会、法曹有資格者の活動領域の拡大のテーマにつきましては、多くの関係機関や団体にも出席を要請しているところでございまして、今後とも必要かつ最新の情報を共有してまいりたいと考えております。

 今後のスケジュールですけれども、特に定めておりませんが、この連絡協議会は、必要に応じ適切な時期に開催していくことを予定しております。

 また、最終的な落としどころというお尋ねでしたけれども、法曹有資格者の活動領域の拡大の問題は、達成すべき数値等を具体的に持っているものではありませんけれども、不断の取り組み、努力が必要であると考えておりまして、今後とも、関係機関の協力を得ながら、必要な取り組みを進めてまいりたいと考えております。

藤原分科員 ちょっと最初ゆっくり話し過ぎてあれだったんですが、ぜひ法務省には、日弁連の問題だということではなくて、法務省も国として、この業務拡大の問題も法曹養成の一環としてしっかり取り組んでいただきたいと思います。

 この問題について、最後に大臣の方から、今後、そういう大臣のリーダーシップも必要と思われる問題ですが、この民間領域の活動拡大についてちょっと御意見を伺わせていただければと思います。

岩城国務大臣 法曹の志願者数を回復させ、質の高い法曹を多数輩出するためには、弁護士を含めました法曹有資格者の活動領域の拡大などの取り組みを速やかに進める必要があると考えております。

 法務省といたしましても、多くの法曹有資格者が社会のさまざまな分野で活躍する状況になるよう、引き続き必要な取り組みを進めてまいりたいと考えております。

藤原分科員 ありがとうございました。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

菅原主査 これにて藤原崇君の質疑は終了いたしました。

 次に、緒方林太郎君。

緒方分科員 この分科会最後のバッター立ちとなります。よろしくお願いいたします。

 岩城大臣、よろしくお願いします。きょうは、ISDSも、特定秘密保護法も、著作権とTPPの関係も何も聞きませんので、御安心ください、大丈夫です。

 まず、私の地元福岡県北九州市にございます福岡地裁小倉支部の件についてお伺いをしたいと思います。

 我が北九州市はかねてから、この小倉支部の地裁昇格に向けて、十年以上にわたりまして運動をいたしております。これはさまざまな理由があるわけでありますが、まず、扱っている件数がとても多いということがございます。

 まず最初にお伺いをいたしたいと思います。今、小倉支部が扱っている事件の件数はどれぐらいでしょうか。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 主要な事件の平成二十六年の新受事件をお答え申し上げますが、福岡地裁小倉支部で取り扱っております民事第一審通常訴訟は千二百四件、刑事第一審通常訴訟は千七十八件でございます。

緒方分科員 全国に地方裁判所はたくさんありますけれども、それよりも件数が多い地方裁判所というのはどの程度ございますでしょうか。

中村最高裁判所長官代理者 今御答弁申し上げました平成二十六年の新受事件数で比較いたしますと、民事第一審通常訴訟の件数が小倉支部より多い地方裁判所本庁は全国で十二庁でございます。また、刑事第一審通常訴訟の件数が小倉支部より多い地裁本庁は十一庁でございます。

緒方分科員 今、わかっていただいたと思いますけれども、全国で、民事で十二、刑事で十一なんです。ということは、大半の地方裁判所よりも扱っている案件が多い、そういう支部だということがありまして、ここからまさに、そこまで多くの案件を扱うのであればやはり地方裁判所としてやっていくことが適当ではないかということで、我々は地元から活動させていただいております。

 そこで、もう一つお伺いしたいと思います。

 現在、小倉支部では扱うことが法令上できなくて、地裁に行かないとやれないもの、それは何ですか。

中村最高裁判所長官代理者 まず、小倉支部で取り扱えない事件でございますが、簡易裁判所からの上訴事件、それから行政事件訴訟に係る事件の事務、この二つの種類の事件については、最高裁判所の規則によって支部で取り扱えないという形になっております。

 それに加えまして、福岡地裁の裁判官会議におきまして、地方自治法二百四十二条の三第二項の規定に基づく特別の民事訴訟事件、それから心神喪失者医療観察法の法律による審判手続、この二つの事件類型につきましては福岡の本庁で取り扱うということになっております。

緒方分科員 大きなもので簡易裁判所の上訴ということと行政裁判、行政事件ということ、この二つが大きいということでありましたが、仮に小倉支部でこの二つを扱おうとすると、どういう手続が必要になりますか、最高裁判所。

中村最高裁判所長官代理者 まず、法制上は、最高裁判所規則の改正ということになります。あと、人的、物的体制という問題がございますが、これにつきましては、既に小倉支部はほとんどの事件処理を取り扱っておりまして、この二つの事件類型を取り扱うといたしましても、その人的、物的体制を大きく変更する必要はないと考えております。

緒方分科員 次の質問に少し踏み込むところだったんですが、二つの方法があって、まさに小倉支部が地裁並みの、今言った簡易裁判所の上訴というのと行政裁判を裁判所規則の改正によって扱えるようにするという手法が一つある、もう一つがそのまま地裁に昇格をするということなんですが、仮に地裁に昇格するというときに、必要な法令の改正というのはどういうものがございますか。

中村最高裁判所長官代理者 法令の改正ということで申し上げますと、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律第一条の改正が必要と考えております。

緒方分科員 わかりました。

 先ほど、人員と予算の話がございました。

 小倉支部が地裁並みの能力を持つことに伴って、仮にそういうふうにするときに、裁判所と法務省の方にも、恐らく検察の方にも多分人員の増加とか予算の増加というものが生じるのではないかなと思います。

 そして、そうではなくて、今言った下級裁判所に関する法律で実際に仮に小倉地裁になるときに、このときは地裁の所長とかそういうのを置かなきゃいけないので、そこで生じる増員、予算の増というものがそれぞれあると思います。

 これについて、どの程度の人員の増そして予算の増というのが想定されるか。これは最高裁の方と法務省の方、それぞれ御答弁いただければと思います。

中村最高裁判所長官代理者 まず、支部のままで事件を取り扱うという関係でございますが、これにつきましては、先ほど既にちょっと申し上げましたけれども、人的、物的体制の変更というのは大きく必要ありませんので、この場合につきましては特段の予算措置は必要がないものと考えております。

 一方、本庁にする場合でございますが、この場合につきましては、新たに所長、事務局長というようなポストをつくらないといけないということのポストの問題、それから新たに設置する役職に対する執務室の整備ということがございます。

 執務室の整備に関しましては、正確な数字というのはなかなか現時点で申し上げることはできないんですが、おおむね二千万円から三千万円程度の改修費用がかかるのではないかと思います。

 一方、人員がふえることに伴う予算の関係でございますが、数の問題につきましては、申し上げましたように、今、体制自体は整えられていると思っておりますので、ポストの問題で、より高いポストを設置する関係で、その関係の人件費の影響額につきましては、これも正確な金額はわかりませんが、数百万円程度ではないかというふうに考えております。

林政府参考人 検察庁の場合で、まず、裁判所の内部規則の改正によりまして小倉支部に本庁と同様の機能を持たせる、こういった場合を仮定した場合につきましては、検察庁においては、この裁判所の規則改正がなされたとしましても、小倉支部管内の事件数等が現状と変わるものではありませんので、特段の予算措置は必要ないと考えます。

 一方で、法改正によりまして小倉支部が本庁化された場合、検察庁の場合は、検察庁法第二条第一項によりまして、法律によりまして各地方裁判所に対応して検察庁を置く、こうなっておりますので、地裁小倉支部が地裁本庁となるのであれば、それに伴って福岡地検小倉支部も当然地方検察庁の本庁となるわけでございます。

 ただ一方で、その際にどの程度の予算措置が必要かということにつきましては、本庁になった場合に特段の予算措置が必ず必要になるというものではございません。あくまでも検察庁の組織体制に関する予算は、本庁か支部かにかかわらず、業務量というものに応じて措置されるべきものでございますので、そのように考えておるわけでございます。

緒方分科員 わかりました。ありがとうございました。

 ここまで大体基礎データがそろったところで、最後に一言だけ法務大臣に御答弁いただきたいと思うんです。

 司法サービスを適切に供給するという観点から、我々はずっとこの地裁昇格運動を頑張ってきています。もう十数年やっておりますが、なかなか実らないわけであります。格別の御高配を賜りたいというふうに思っておりまして、岩城大臣、一言答弁いただければと思います。

岩城国務大臣 小倉支部の本庁化につきましては、これまで、地元の自治体の皆様それから関係団体の皆様方からたびたび要望がなされてまいりました。

 小倉支部は、先ほど来のお話にありましたとおり多数の事件を取り扱っており、裁判員裁判や労働審判も実施されているなど、福岡県ひいては九州地方の拠点都市に設置された裁判所として非常に重要な位置を占めていることについても十分に認識をしております。

 他方で、支部の本庁化につきましては、事件の数や人口だけでなく、裁判所の全国的な組織機構のあり方等にもかかわる問題でもあります。これに関する裁判所の意見等を踏まえて検討する必要があると考えております。

 裁判所においては、従前より、小倉支部が多数の事件を取り扱っていることを踏まえまして、事件処理体制の整備充実に努めてきたものと承知をしております。

 法務省としては、引き続きこのような裁判所の取り組みやその成果を注視してまいりたいと考えております。

緒方分科員 そうなんです。裁判員裁判と労働審判については、これまでのさまざまな要望活動に対応する形で非常に御高配を賜りまして、本当にありがとうございます。

 けれども、先ほど申し上げましたとおり、全国で見ても、上から並べていっても十二番目、十三番目ぐらいのところにいるわけでありまして、これに類する支部があるのは、実は東京都の立川支部。お近いと思いますけれども、立川支部も実は同じ問題を抱えております。

 ただ、立川から東京というのは結構近いわけでありまして、実は我々のところというのは二つの政令指定都市が五、六十キロ離れております。この件は本当に、地元財界も含めて非常に要望が強いということで、今回、問題意識だけはぜひ法務省そして最高裁の方に申し上げさせていただきたいと思います。

 それでは、質問をかえまして、外国人技能実習制度についてお伺いをいたしたいと思います。

 先ほど、移民というテーマのところで中川正春議員も言っておりましたが、この外国人技能実習制度というのは、残念ながら、アメリカからも人権侵害のおそれがあるのではないかという批判を受けたり、そして私も、実際の業務を見ていると、いろいろな形で、この外国人技能実習制度は単純労働なんじゃないかなと思うようなところも実はあるわけであります。

 これは質問いたしませんが、一番大きな世界観としては、そもそも単純労働というものをもっと真正面からやるべきではないか。むしろ、この技能実習制度という複雑な、ある意味、単純労働ではなくて技能実習生ですという、この言葉がいいかどうかわかりませんが、擬制を働かせることによって生じる事務の負担の増加というのは物すごいものがあると思うんですね。そのためにJITCOという組織があったりとかいろいろな方式があって、書類の量も多分すごく多いんじゃないかな。むしろ、技能実習制度というものを設けているがゆえに書類のリクワイアメントが物すごく上がって、結果としてそこのコンサルティング業務みたいなものをやるために新たにJITCOみたいな組織をやはり置かなきゃいけない。若干うがって見ているのかもしれませんけれども、私自身は時折そう感じるときがあります。

 技能をお伝えして、そして本国に戻って、また本国でその業務について技能を伝えてというのが本来の目的ということになっておりますが、ちょっと幾つかの業務については、本当にそうなのかなという疑問も拭えないところがございます。

 ただ、これは法案が上がったときに真摯に議論されるべきものだと思いますので、少し技術的な話をさせていただきたいと思います。

 今回上がってくる法案に、技能実習生の二号から、新しく三号というカテゴリーを設けて、一号、二号で三年終わった後は一カ月以上は本国に戻ってもらって、また戻ってきてあと二年続けることができる。全体で五年になるわけですね。そうすると、三年技能実習して、一カ月だけ帰省すればまた二年やれて、実質五年ということになるわけですが、この五年となることによって、いろいろな懸念が私には生じます。

 例えば、五年も日本にいてしまうと、むしろ日本に物すごくなじんでしまって、本国に帰るのを逆に嫌がってしまうんじゃないか、ここまで日本になじんだからには五年で戻るのは嫌だというふうに思う人がきっと出るんじゃないかと懸念をします。

 そうすると、結果として、五年たつころになると帰国前の失踪とかそういうものが出てくるんじゃないかと思いますが、これはいかがでしょうか。

井上(宏)政府参考人 委員の御指摘でございますが、今まで三年の経験しかなくて、五年になったらどうなるかというのはちょっと予想の話になってしまいますが、三年から五年に、つまり二号から三号に上がれる人というのは、全員ではなくて、技能検定の三級に合格するという、それなりのレベルがちゃんと上がって、さらにその上の試験まで最後は受けなければならない、そこまでして技能を高めようという意識のある人々が五年目まで入っているはずでございます。

 したがいまして、そういう高い意識を持っている人々は、日本になじんだということはあるかもしれませんけれども、制度の趣旨をちゃんと理解して、技能を母国に持ち帰って活用するというふうにしていただくことが期待されております。

緒方分科員 多分、聞いた方も、ちょっと答弁が苦しいんじゃないかなと今思った方は多いと思います。

 逆の問題も実は生じるわけでありまして、この制度のもとでは家族の帯同が認められておりません。家族の帯同が認められていずに日本に三年いて、そして、帰省という言葉がいいかどうかわかりませんが、一カ月帰国して、戻ってきてまた二年と、五年間家族と離れることが求められるわけですね。むしろこれは何か人権問題なんじゃないかなという気がするわけでありますが、いかがですか。

井上(宏)政府参考人 技能実習生につきまして家族の帯同は現在も認めておりませんし、新しい法律においても認めないこととする予定でございますが、それは、まず背景事情の一つは、技能実習生は、一人前の職人ではなくて、技能等の習得を行ってくる立場の人でありまして、賃金が必ずしも家族と生活するために十分なものになるとは見込まれないということがございます。

 あと、この技能実習制度自体、まさにその目的どおり、一定期間後には国に必ず戻るという前提の制度でございますので、その間の家族の帯同を認める必要性は、ほかの一般の在留資格、更新していくことによって長期間日本に在留できるようなものと比べますと、やはり家族の帯同の必要性は低いのだろうなと思っております。

 他方で、技能実習生の方で休暇を利用して途中で一時的に帰国することは今でも可能でございますし、当然できます。

 さらに、今は三年ですけれども、それを四、五年と延ばすときには、そこは、一カ月以上の帰国を義務づけることによりましてそのようなことも配慮いたしますので、家族の帯同を認めないから人権侵害に当たるとまでは言えないだろうなと考えております。

緒方分科員 どうかなと私は今思いましたが、今の答弁そのものは承って、今後の審議に役立てていきたいと思います。

 しかし、自由に国に帰っていいですよ、休みをとって自由に帰っていいですと言っていますが、大体、技能実習されておられる方は、非常に多いケースは最低賃金、場合によっては最低賃金を割るような、割ったら違法なんですけれども、そういうよくないケースが出てきていることも明らかになっているところであります。そういう状態で、例えばお近くの大きな国まで帰るということになると、多分飛行機代だけで十数万使ってしまって、せっかく技能実習で得た報酬についても、それをそこで使うだろうかというと、使わないんじゃないかなと思うんですね。三年間頑張って技能実習でやった方がその収入をあえて一時帰国という形でやるかというと、ちょっと現実的ではないんじゃないかな、私はそう思います。

 質問を続けたいと思います。

 今、技能実習をした方が本国に戻ってその技能を伝えることが目的だというのであれば、三年いて、ある程度、技能検定三級に合格するようなところまでいき、戻って、そしてまた日本に戻ってきて二年というんですが、むしろ、今一カ月以上ということですが、本来の制度のあり方からすると、一旦帰国したときには、本国で相当な期間当該職種に従事することを要件とする方が制度の本義として正しいんじゃないかと思うんですね。日本でこういう業務を三年間やっていました、そして本国に戻って、日本でやっていたことはうちの国でやるとこういうことなんだなというのを学んでまた日本に来るという形にする方が、制度の本義からいうと、多分こちらの方が望ましいんじゃないかと思います。

 一カ月以上というと、一カ月で戻ってくる方がいるわけですから、本当に帰省に近いわけですよ。そうではなくて、自分の三年間の一号、二号の間に得た技能で本国に戻って、ある程度本国の事情も知った上で日本に戻ってきてまた二年やるというのがあるべき姿ではないかというふうに思いますが、いかがですか。

中山政府参考人 お答え申し上げます。

 技能実習の目的は、技能の習得でございます。したがいまして、計画的かつ段階的な技能の習得機会を確保するためには、一貫して技能を学ばせる方が効果的であると思っております。したがいまして、技能実習三号も、前の技能実習二号の段階から一貫して行う方が効果的であると考えております。

 しかしながら、今回の法律によりまして実習期間が延長されることになりまして、実習生が家族と離れている期間が長期化するという問題も生じたりすることに鑑みまして、技能実習三号に移行する前に一旦帰国を求めているものであります。

緒方分科員 その答弁は、今まであった答弁を全部重ね合わせてみると、やはり単純労働としてこき使いたいというふうに、そういう方向にそういう方向に誘導しているようにも聞こえるんですよね。きょうは法案審議ではありませんのでこれ以上詰めませんけれども、恐らく、法案審議のときにその答弁では野党のしつこい質問に耐えられないと思います。もう少し考えていただいた方がいいんじゃないかなと思います。

 ただ、その技能実習三号の受け入れを認められているのは優良団体であります。優良団体というのは、いろいろなことが要件だと思うんですけれども、今、事前のレクで聞いてみると、技能検定の合格率とかそういったものが優良団体の要件だということになっていますが、それだけでは私は不十分だと思います。

 技能検定に合格するだけであればその数字が上がればいいわけですけれども、その中で何が行われているか、その団体が何を行っているかということまでよく見る必要があると思います。例えば、賃金水準、労働時間、年次有給休暇取得率、労働災害、健康状態、さらには失踪、死亡の状況、そういう状況を勘案した上で、それでもそのスクリーニングを超えられるような団体だけが三号を受け入れられるようにするということにしないと、技能検定の合格率だけでやるなんということをやっていると、一枚ぺらっとめくってみると、実はとんでもない団体が優良団体でどんと判こを押されている可能性もあるわけですね。

 今言ったような労働の実態まで見た上で優良団体を判断すべきだと思いますが、いかがですか。

中山政府参考人 この法律を作成する前に、法務省と厚生省とで合同いたしまして有識者懇談会を持っております。その中の報告書に、優良な受け入れ機関の要件について書かれてございます。先ほど先生がおっしゃったような、適切な相談、指導体制の整備、実習生の技能評価試験での一定の合格率などが要件として書かれております。そのほかにも、不適正な行為が行われていないことが前提であるとも書かれております。

 したがいまして、優良要件につきましては、御指摘のとおり、そもそも関係法令の違反がない受け入れ機関とすべきと考えております。

緒方分科員 法令違反していないのは当たり前でありまして、不適正とか法令違反していないことが条件というのは当たり前のことなんです。

 そうではなくて、それよりも、そういうネガティブな要素がないというだけで優良な機関の条件を満たしているというのはおかしいですよ。むしろもうちょっとポジティブに、ここでやるとちゃんと、労働時間もきちっと穏当なところにおさまっているし、賃金もきちっとしているとか、ネガティブなところがないから、あとは技能検定の合格率さえよければいいというのは、ちょっと基準として甘過ぎると思いますよ。この件、もう少し考えていただければと思います。

 そして、外国人技能実習生に係る不正事案が起きるのは、外国人技能実習生というのは企業単独型と団体監理型というのがあります、企業が直接受け入れているものと、例えば協同組合をつくって受け入れるとかそういう団体監理型がありますが、不正が起こっているものの大半は団体監理型であります。

 これは提案でありますが、技能実習生の第三号を受け入れることができるのは企業単独型に限定すべきだと私は思うんです。団体監理型でやっているところが不正ばかりやっているとは私も申しません。しっかりやっているところもたくさんございます。ただ、三年を超えてさらに二年ということになってくると、ここは企業単独型だけに限定するという考え方についていかがお考えですか。

中山政府参考人 先生の御指摘のとおり、団体監理型におきましても、制度趣旨に沿った、適正に運用されているところがございます。また、一定の要件を満たした優良な監理団体等に限って実習三号の受け入れを認めるということは、技能実習の適正な実施へのインセンティブを高めることになると考えております。

 なお、この法案におきましては、関係法令に係る重大な違反など不正行為が認められた場合には、企業単独型、団体監理型の別にかかわらず、不適正な受け入れ機関として排除されることとなっております。

緒方分科員 優良団体というのは、受け入れることができる人員がふえるんですね。そして、優良団体になると、三年が五年で受け入れられるようになる。そうすると、受け入れ人員がふえて、かつ期間が長くなるとなると、優良団体になると実は外国人技能実習生の数が飛躍的に高まると思うんです、受け入れのキャパシティーというか、認められているキャパシティーの部分が。人の数がふえ、そして期間がふえるわけですから、両方高まるということになると、物すごくふえます。結果として、何かいびつなことが起きるんじゃないかなという危惧を持っています。

 過剰にならないように例えばキャップを設けるとかそういった形で、人と期間がふえることによる過剰な増大というのを防止すべきではないかというふうに思いますが、いかがですか。

井上(宏)政府参考人 受け入れ人数枠の拡大の詳細につきましては、法案が成立後に詳細を定めていくことになりますけれども、現在のところは、常勤職員のおおむね二十分の一という基本パターンの中でやっているものにつきまして、おおむね二倍程度にすることが想定され、それは合同の有識者会議でもそのように言われているところでございまして、その結果、委員御指摘のような不都合が生じないような、まさにそういうのに適した団体、実施者を優良なものとして認定し、さらにレベルが上がった技能実習生がそこに入る、そういう制度にして、不適正な運用がなされないようなことを徹底してまいりたいと考えております。

緒方分科員 何となく、不適正にならないからならない、だからならないんだと言っているようにも聞こえるわけでありまして、ここは実際、多分、具体的なモデルケースを挙げていくと、物すごくふえるケースが出てくると思いますよ。これまでの種々の改革にもかかわらず、常勤職員よりも実習生が多いなんというケースはまだ今でも散見されるんですね。そういった事例もあるので、もう少し実態と具体的なモデルケースを入れてみた上でやる必要があると思います。

 最後の質問にしたいと思います。

 現在技能実習生に支払われている賃金ですけれども、通常は同種の仕事をしている実習生との見合いということなんですが、同種の仕事をしている日本人がいないというケースがあるんですね。同種の仕事をしている日本人がいないというときは、正直、架空の賃金表みたいなものをつくって、それを適用しているケースというのがあります。実際あるそうです。その架空の賃金表で定められている賃金というのは、大体最低賃金です。

 こういったことが生じ得るので、これから制度のあり方として、そういう同種の仕事をしている日本人がいないケースのときでも、それが架空の賃金表で、必ず最低賃金になるということがないように、もう少し広く見て賃金のあり方を定めるべきだというふうに思いますが、いかがですか。

中山政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど私からお話しさせていただきました法務省、厚生省合同の有識者懇談会の報告書に、この場合について記述がございます。少し読ませていただきます。「実習実施機関の賃金規定等に基づき、受け入れる予定の実習生と同じ程度の経験を有する者に支払われるべき賃金額を提示することや、経験年数が異なる他の労働者の報酬から類推して、根拠を提示する等、適切な予定賃金額の設定がされていることについて、客観的に合理的な理由を説明しなければならない」とされております。

 したがいまして、具体的な要件につきましては法案が成立した場合に省令で定めていくことになりますけれども、実習生の適正な待遇が確保されますよう、こうした報告書を踏まえて適切に対応していきたいと思っております。

緒方分科員 余り歯どめになっていないような気がしましたが、法案審議ではありませんので、これで終えさせていただきます。

 岩城大臣、二十時までお疲れさまでございました。

 質問を終えさせていただきます。ありがとうございました。

菅原主査 これにて緒方林太郎君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして法務省所管についての質疑は終了いたしました。

 これにて本分科会所管の審査は全て終了いたしました。

 この際、一言御挨拶を申し上げます。

 分科員各位の御協力によりまして、本分科会の議事を終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午後八時四分散会


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