衆議院

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第2号 平成14年3月4日(月曜日)

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平成十四年三月四日(月曜日)
    午前九時七分開議
 出席分科員
   主査 伊藤 公介君
      岩崎 忠夫君    衛藤征士郎君
      萩野 浩基君    蓮実  進君
   兼務 林 省之介君 兼務 遠藤 和良君
    …………………………………
   文部科学大臣       遠山 敦子君
   文部科学副大臣      青山  丘君
   文部科学副大臣      岸田 文雄君
   政府参考人
   (文部科学省生涯学習政策
   局長)          近藤 信司君
   政府参考人
   (文部科学省初等中等教育
   局長)          矢野 重典君
   政府参考人
   (文部科学省高等教育局長
   )            工藤 智規君
   政府参考人
   (文部科学省科学技術・学
   術政策局長)       山元 孝二君
   政府参考人
   (文部科学省科学技術・学
   術政策局次長)      井上 正幸君
   政府参考人
   (文部科学省研究振興局長
   )            遠藤 昭雄君
   政府参考人
   (文部科学省スポーツ・青
   少年局長)        遠藤純一郎君
   文部科学委員会専門員   高橋 徳光君
   予算委員会専門員     大西  勉君
    ―――――――――――――
分科員の異動
三月四日
 辞任         補欠選任
  衛藤征士郎君     岩崎 忠夫君
同日
 辞任         補欠選任
  岩崎 忠夫君     蓮実  進君
同日
 辞任         補欠選任
  蓮実  進君     衛藤征士郎君
同日
 第三分科員林省之介君及び第六分科員遠藤和良君が本分科兼務となった。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 平成十四年度一般会計予算
 平成十四年度特別会計予算
 平成十四年度政府関係機関予算
 (文部科学省所管)


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     ――――◇―――――
伊藤主査 これより予算委員会第四分科会を開会いたします。
 開会に先立ちまして、民主党・無所属クラブ及び日本共産党所属の本務員に御出席を要請いたしましたが、出席が得られません。
 再度事務局をして御出席を要請いたさせますので、しばらくお待ちをいただきたいと思います。
 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
伊藤主査 速記を起こしてください。
 御出席を要請いたしましたが、出席が得られません。やむを得ず議事を進めます。
 平成十四年度一般会計予算、平成十四年度特別会計予算及び平成十四年度政府関係機関予算中文部科学省所管について、前回に引き続き質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。遠藤和良君。
遠藤(和)分科員 おはようございます。公明党の遠藤和良でございます。
 現代は知の時代と言われているわけですけれども、きょうは、現代における大学のあり方等を中心に質問をさせていただきたいと思います。
 私は、大学はまさに知の創造の源泉としての魅力的な場でなければならない、こう思っています。とともに、大学も、社会的な存在として役割を果たす、こういう面があると思うんです。
 総合科学技術会議等で議論をいたしまして、産学官サミットの発足をしたわけですけれども、私は、これは東京だけの話ではないと思うんですね。地方におきましてもやはり産学官の連携というのが大変重要でございますし、日本の歴史を見ても、例えばテレビの第一号が出ましたのは浜松で、実は私の母校なんですけれども、あるいは光ファイバー、あるいは青色ダイオードという新しい発明等も地方から始まっているわけでございまして、それが大きな産業にもなっているということでございますから、地方における産学官の連携というものも大変大切にしていかなければいけない課題であろうと思うわけでございますが、これについて大臣はどういう御所見を持っておりますか、お聞きしたいと思います。
遠山国務大臣 遠藤委員の御指摘のように、これからの知の時代を支えていくのは、やはり大学における知の集積体の活躍が大変期待されるところでございます。そして、日本全体が活性化していきますには、地域経済の再生というものは不可欠だと考えておりまして、地域における積極的かつ主体的な取り組みが重要と考えております。
 その意味で、地域の産業界と地域の大学の頭脳とがうまく結集をして、そして知の時代を創造していく新たな研究開発及び産業化ということがほうはいとして起こってこないと、日本は元気が出ないと思っております。今例示されましたように、今日の日本の特色ある生産の幾つかが地方で研究開発され、そして産業に結びついていったという非常にいい歴史もございます。トヨタだってそうでございます。必ずしも東京周辺でないわけですね。
 そのようなことを考えますと、本当に地域での産学官連携というのが大変大事なことだと思っておりまして、私どもといたしましても、大学自身がもう少し社会貢献し得るように、いろいろな制度改正、規制緩和、あるいはそこでの知的な財産権を形成するためのTLOの承認でありますとかということもやっておりますし、あるいは産学官連携による地域結集型共同研究事業でありますとか、あるいは研究成果活用プラザの設置、運営など、さまざまな施策を展開いたしておりまして、行政の側もまさにこれからもっと力を入れていかなくてはならないと考えているところでございます。
遠藤(和)分科員 アメリカのMITとかスタンフォード大学を見ましても、大学の中に新しい起業家を育成するシステムがある、こういうふうに考えるんですね。インキュベーション機能というんでしょうか、ふ化させてそれを育成していく機能。ですから、大学でいろいろな知識を探求するとともに、それを一つの産業としてふ化させていくために、卒業生がそのまま経営者としての基盤を持っている、そういうところまでノウハウを教える、こういうふうな仕組みになっているようでございます。
 日本は何か、学問だけを教えて、あとは会社に入ってから勉強しなさいというふうになっていると思うんですけれども、その辺の大学の機能を、そうした機能を持たせていくような大学づくりと申しますか、それが必要でないかと思いますが、いかがでしょうか。
岸田副大臣 先生御指摘されました起業家精神を持った人材というもの、そうした人材の育成、我が国におきましては現在のところ十分ではないという認識をまず持っています。
 今の日本の現状を示す一つの話として、この間、こんな話を聞いたことがありました。ある人材獲得会社、ヘッドハンティング会社の幹部の話ですが、今、この就職難にあって、一つのある職種に至っては大変な引っ張りだこ、大変な人気があるという職種があるんだそうであります。それは何かといいますと、社長業なんだそうであります。要は、社長にふさわしい人材、みずから方向性を決めて、そしてみずから判断していく、そして最後に責任をとれる人材、こうした人材が引っ張りだこだという話を聞きました。
 裏返しますと、それだけ日本にそういった人材が少ないということでありまして、起業ということになりますと、そういった人材プラスチャレンジ精神を持った人材ということになるんでしょうが、日本におきまして、そうした人材は本当に乏しいという危機感を持たなければいけないというふうに思っています。
 そうした現状を踏まえて、今、各大学におきましてもさまざまな工夫を進めているところでありまして、インターンシップの実施ですとか、あるいはベンチャービジネスに関連する授業科目、こんなものがどんどんとふえている状況であります。
 平成十二年度の数字でありますが、百三十九の大学で三百三十科目の、起業家精神論あるいはトップマネジメント講座、こうした講座が設けられておりますし、また、こうした経営学部、経済学部の中での科目だけではなくして、起業家を養成するための学部、要は、事業構想学部あるいは起業学科、そうした学部・学科そのものも、こうした起業家精神養成のためにつくられているというような動きがあります。さらには、ビジネススクール等専門大学の設置、こういったものも進んでおりますし、大学の体制としても、こうした起業家、日本のこの現状、大変乏しいと言われている起業家精神を持った人材の養成、こういったものに努めていくよう努力をしている現在であります。
遠藤(和)分科員 大学発ベンチャーと言ったらいいんでしょうか、卒業すると会社に勤めるんじゃなくてみずから起業していく、こういう人をいかに出していくかということが新しい活力の源泉になると思うんですね。
 ですから、例えば工学部の学生が、資金の調達から始まって株式公開できるまでのノウハウ、そういうものを大学時代に勉強して、自分の考えているテーマを一つの業として起こしていくことができる。こういうふうな、一人の卒業する学生さんに照らして、その方が一つの社長さんとして、起業家として育っていけるような仕組みづくり、こういうものが大変大事だと思うんですね。
 私、手元にちょっと資料があるんですけれども、一九九九年に大学発ベンチャーが各国でどのぐらいあるかというんですけれども、これは文部科学省の資料ですけれども、米国が二百七十九、それからドイツが六百五十、それからイギリスが四十六、日本が二十六というふうに、かなり日本は数が少ないわけでございます。
 こうした面で、もっともっと日本から、日本の大学からベンチャーがどんどん育っていくような仕組み、これは社会的仕組みも含めまして、やっていかなければいけないと思いますけれども、この辺に対する考え方はいかがですか。
遠藤(昭)政府参考人 お答えいたします。
 先生御指摘のとおり、アメリカとかドイツ、イギリス、ここら辺のベンチャーの一年当たりのできる会社数、これは大変、三けたになっているんですが、我が国はまだ残念ながら一けた台から二けた台というところなんです。ただ、ここ三年間ぐらい見てみますと、同じ二けたでもかなりな数ふえてきておりまして、過去三年間で百六十六社ぐらいが創設をしている。急激に伸びてきておるわけでございまして、こういった傾向は今後も続くだろうというふうに私ども期待をしております。
 それらを促進するためには、先生もお話しになりましたように、大学発ベンチャーを生み出すいろいろな、先生が先ほどおっしゃったインキュベーションの施設とか、いろいろな環境をつくってやるとか、あるいは人材の育成とか、組織の強化を図るとかというふうなことをやって、さらにこれらの数を伸ばしていきたいなというふうに考えております。
遠藤(和)分科員 具体的に大学発ベンチャーの成功事例を、これはやはり全国の大学に教えていくというんですか、広報していくというか、こうした仕事も大事だと思うんですね。あるいは、外国の例でこういうふうな例がありますよと。こういった先駆的な取り組み、そういうものをどんどん大学の中に、あるいは社会の中に、あるいは地域の中に伝えていって、それが大学が新しい産業を生み出していく大きな源泉になる、それがまたその地域の産学官連携して新しいビジネスチャンスを生んでいく、こういうふうな仕組みをつくっていかないと日本の経済の活性化というのはなかなか難しいのではないか、このように思うわけですけれども、そうした取り組みについて教えてください。
遠藤(昭)政府参考人 御指摘のとおりでございまして、産学連携、先ほど申し上げましたいろいろな取り組みがありまして、成功しているものもございます。それで、こうした機運を盛り上げていくためには、成功した例とか、あるいはこういう研究内容をこの大学ではしておりますよということを、できるだけ広く国民の方にPRしていくということは非常に有効な方法だと私どもも考えております。
 それで、例えば産学官連携につきましては、「産学連携NOW」という冊子をつくりまして、いろいろな機会にこれを説明したり配布をいたしておりますし、また、昨年の十二月には文部科学省のホームページに産学官連携コーナーというものをつくりまして、国立大学の共同研究センターの活動状況がそこですべてわかるというふうな紹介もやっているところでございまして、こういった取り組みをもう少しさらに充実をしていきたいなというふうに考えております。
遠藤(和)分科員 話を変えます。
 トップ三十という、私はこれはかなり野心的な挑戦だと思うんですけれども、そういう構想が発表されました。このトップ三十というのは何を意味しているのかなという議論があるわけですけれども、例えば何を評価するのか。機関を評価するのか、課題を評価するのか、あるいは組織を評価するのか、この議論がありますね。どういうねらいでトップ三十ということを考えているのかということを聞きたい。
 それから、科研費のあり方ですけれども、これは総額も少ないんだけれども、日本の場合は審査件数が十一万件、アメリカは三万件ということで、余りにもこの科研費が小さくばらまかれておりまして、そして一人の研究者が三つも四つもやる。本当に何をめり張りをつけて研究するかという話になっていなくて、何か教育の助成費のような形になっているのではないか。もう少しめり張りをつけた配り方とかそういうものをしていかないと、新しい大学発ベンチャーとかあるいはトップ三十という構想と合わないのではないかな、このように思うんですけれども、それを総合的にどう調整していきますか。
岸田副大臣 済みません。一つ目のトップ三十の意味するところについて、私の方から申し上げさせていただきます。
 この施策ですが、昨年六月に打ち出しました大学の構造改革の方針という、この方針に基づくものであります。そのねらいですが、第三者評価による競争原理の導入、これがポイントであります。この第三者評価による競争原理の導入により、国公私を通じたすぐれた教育研究拠点に重点支援を行い、こうした拠点に重点支援を行って世界最高水準の大学の育成をねらうというのがこのねらいになっております。
 この三十という数字がちょっとひとり歩きしたようなところがあるんですが、この三十という意味は、六百数十ある大学のうち、約五%、三十程度は世界最高水準に育ってほしいというシンボリックな数字でありまして、この三十大学のみを優遇するとかあるいは序列をするとかいうような意味ではありませんで、あくまでも学問分野別に第三者評価を行って、それぞれ重点評価するということであります。ですから、この三十に入る大学は決して固定化するものでもありませんし、絶えず変動し得る仕組みになっております。
 こういったことから、現在は名称を二十一世紀COEプログラムというふうに呼びまして、この施策を進めているところであります。そういったトップ三十の意味するところを盛り込んだ施策であることを御理解いただきたいと存じます。
遠藤(昭)政府参考人 科研費の御質問でございますけれども、確かに、申請件数は十一万件というふうに、アメリカなどと比べますと大変多くなっておりますが、実際に採択されますのは、新規で来るものは大体二十数%というぐらいになっておりまして、そこで絞られているのですが、確かに、小さい額のもあるというのは御指摘のとおりでございます。
 急激にはいきませんが、これは文系とか何かの場合が結構額が小さいものが多いものですから、こういう形になっているという面もあるのですが、十四年度の予算要求でも、それをできるだけ大きな額にしていくというふうな改善はしていきたいというふうに思っているのが一つでございます。
 それから、一人が三つとか複数を受けているじゃないかという御指摘ですが、全体を見ますと複数を受けている方は少ないんですが、それも、例えば種目を分けていまして、これとこれはダブっていいですよ、しかしこれはだめですというふうに、ちゃんと節操を持ってやれるように仕組みを考えておるところでございます。
 それから最後に、めり張りをつけるべきではないかという点でございますが、これにつきましては、特定領域とかいろいろな種目で、かなり額の大きいものを最近は幾つかつくっております。それと、文系用のために小さな額も用意するというふうに、ちゃんと、額は少なくて全部ばらまくんだというのではなくて、めり張りをつけて、重点のものにはお金を大きく出す、そうじゃないものにはある程度小ぶりのものを出すというふうに分けてやるようにいたしておりますが、さらにこれら、めり張りをつけるように努力をしたいと思います。
遠藤(和)分科員 トップ三十の基準が、いわゆる大学のランクづけではない、そうではなくて、その大学が行っている研究課題に対して、その研究課題が世界性があるかどうか、そういうふうな意味での研究課題の中身を問う、ですから、いつも毎年順位は変動する、こういうふうな理解でよろしいでしょうか。トップ三十の意味ですね。
 トップ三十は政策的に何をねらっているのか。そのことによって、やはり大学がお互いに競争するというか、そういう中に身を置く、そしてみずから、すばらしい、中身のある研究課題を持って、それを絶えず世界に問いかける、そういうふうな緊張関係の中で大学が運営されていく、こういうことを目指しているんだ、こういうふうに私は思うのですが、どうですか。
遠山国務大臣 まさに、委員御指摘のように、日本の大学は幅広い専門分野でありますとかあるいは幅広い機能を持っておりますけれども、ここでねらいとしておりますのは、本当に国際的な競争力を持つ、そういう大学ということで、研究拠点というのを前面に出しながら、しかしそこできちんとした人材育成も行われているかということをもちろん視野に入れて、そして既存の、これまでの成果ということだけではなくて、これから世界の水準を抜くような教育研究拠点として育っていくかどうかということについて着目をしようということでございます。
 これは文部科学省自身が選ぶのではなくて、専門家の目によって選ぶこと、文部科学省の外にそういう審査のボディーを設けること、それから分野も、十の専門分野にわたってこれから選んでいくということでございます。しかも、三十というのはシンボリックな数字と副大臣からも答えてもらいましたけれども、分野によっては二十でもよし四十でもよしということで、その辺は柔軟に対応しながら、心は教育研究についての世界的な拠点ということを実現していく、そのための制度にしていきたいというふうに考えております。
遠藤(和)分科員 ここら辺で、ちょっと個別の具体的な話を聞きたいのですけれども、徳島県に鳴門教育大学という大学があります。これは、上越と兵庫と鳴門に教員のための大学院大学をつくるという構想のもとに設立された大学ですけれども、今、新しい構想、未来構想をこの大学が発表されました。それによると、四国の中の教育学部を全部ここに集めてきて、教育学部を持った大学院大学、いわゆる教育専門の大学に衣がえをしよう、一言で言えばこういうふうな構想だと思いますけれども、この構想について文部科学省はどう評価をされているのか。
 あるいは、私自身の感じでは、設立したときの趣旨とその構想は若干の乖離があるのではないか、要するに、大学院大学という設立趣旨に照らしてみると、若干設立構想は変化があるのではないか、このように感ずるわけですけれども、それについてどのように考えているのか、お聞きしたいと思います。
岸田副大臣 今先生お話しになられましたように、鳴門教育大学、昭和五十六年度に、上越教育大学あるいは兵庫教育大学と並んで、地方公共団体からの派遣制度に基づく現職教員を大学院修士課程に受け入れるということを目的として設立された教育大学であります。
 当時は、そうした趣旨の大学は非常に限られていたわけですが、その後、さまざまな大学でいろいろな工夫や努力を積み重ねて、現在では、ほとんどすべての教員養成学部に修士課程が整備されておりまして、それらの大学におきまして、職務に従事しつつ大学院に入学する現職教員の受け入れ、こういったものを積極的に進めております。ですから、そういった変化に基づきまして、こうした鳴門教育大学を初めとする新教育大学、現職教員の受け入れ数が年々減少しているということになっているわけです。
 ですから、当初、先ほど申し上げましたような目的のもとにこの新教育大学ができたわけですけれども、環境の変化にさらされているということは事実だと思います。そうした環境の変化の中でどうあるべきなのかという議論が行われて、そして、今御指摘にありましたような鳴門教育大学におきましては、四国教育大学構想、四国に四つ置かれております教員養成学部を一つに再編統合する構想を提案されているわけです。
 まず、この構想につきましては大変関心を持って見守っております。ただ、一方、他の大学では別の構想を持っておられるというのも事実であります。ですから、この四国の関係大学におきまして今まだ議論、検討をされている段階だと思いますので、まず一義的には関係大学におきます議論、これをしっかり深めていただきまして、その議論を見守っていきたいと思っております。それぞれの大学の主体性をまず第一義的には尊重しなければいけないというのが文部科学省のスタンスであります。
遠藤(和)分科員 それから、徳島大学の方についてもちょっとお聞きしたいのです。
 この徳島大学の医学部というのは大変歴史のある学部なんですけれども、そこの附属病院が今大規模な改築中です。実は、その隣に県立中央病院というのがございまして、これも改築構想があるわけですね。それで、医学関係者の中では、これは国のものと県のものが隣り合わせでございまして、しかも両方ともが病院の改築の時期を迎えている、これはぜひ一緒に、同じ場で議論をしていただいて、国と県とが一体になった総合的なメディカルセンターのようなものに機能していくようにしていくべきではないのか、こういうふうな建設的な意見があります。
 このまま、要するに徳島大学の医学部の病院と県立中央病院が何の連携もなしに勝手にやっていきますと、同じ診療科が両方ともある、診療科がないのもあるとかそういう形になると、口の悪い人は、コンビニが二つ並んでいるようなもので、両方とも倒産するぞ、こういうふうなこともおっしゃる方がいるわけですね。
 したがって、こういうふうに大きな病院が改築を同じ時期にしているというのは、ある意味では千載一遇のチャンスである。したがって、この機会に国と県と地元の医師会の皆さんがよく話し合いをして、それぞれの病院の持つ機能を特化して連携をしていく、補完をしていく、そして総合的なネットワークを結んでいく、こういった役割を果たせるようなものに変えていったらどうか、こういうふうな考え方が提案されているわけですけれども、それについて文部科学省はどうお考えでしょうか。
工藤政府参考人 御指摘のような観点、まことに大事なことと思ってございます。
 ただ、残念ながら、国と地方公共団体、それぞれ設置者といいましょうか、管理者が違うことによる隘路は若干あるわけでございますが、ただいま国立大学の法人化ということを検討する中で、これまでのしがらみをさらに解き放ちながら、相手の目線でといいましょうか、患者さんあるいは国民の方々、受験生等の、相手の目線でもっと連携協力するいろいろな仕組みを考えていこうじゃないかということを検討しているのが一つございます。
 他方で、今お話ありました具体の徳島大学附属病院と県立中央病院との関係でいいますと、いずれも大変中核的な医療機関としてこれまでも実績があるわけでございます。これまでも、例えば難症患者は大学病院の方で重点的に受け入れるとか、大学病院が有しております設備を利用した手術等の必要な患者さんを中央病院から大学病院の方に受け入れるとか、あるいは中央病院での手術に大学病院の医師を派遣するとか、いろいろな形で相互に連携協力はし合って、あるいは機能分担を模索しているところと承ってございます。
 今お話ありました県立中央病院の新築構想を契機といたしまして、昨年の十月から、県と県立の中央病院、それから市民病院、さらには大学病院の四者で、これからのそれぞれの病院間の連携のあり方について協議を開始していると承ってございます。さらに、今お話ありました医師会等のほかの方々も交えながら、より県民あるいは市民に親しまれる、そのためになるような病院づくりに成果が出ますように私どもも期待しているところでございます。
遠藤(和)分科員 質疑時間が終了いたしました。どうもありがとうございました。
伊藤主査 これにて遠藤和良君の質疑は終了いたしました。
 次に、岩崎忠夫君。
岩崎分科員 自由民主党の岩崎忠夫でございます。
 本日は、我が国の産学官連携の今日的必要性と、知的クラスター創成事業についてお尋ねをいたしたいと思います。
 先月、信州大学繊維学部キャンパス内に、研究交流促進法に基づきます共同研究施設であります産学官連携支援施設が完成をいたしました。この種の産学官連携共同研究施設は、北海道大学に次いで全国で二番目の施設でございます。既に完成前から十七の共同研究室は予約で満杯、早くも共同研究室の建て増しを求める声が後を絶ちません。
 その背景には、我が国の地域経済が、長引く不況、地方財政の悪化によりまして大変疲弊しており、その再生が喫緊の課題でありますこと、また、その再生には地域の特性を生かした成長性のある新規分野を開拓する産業、企業の創出が不可欠でありますこと、また、最近におきます中国への工場移転に伴います産業空洞化に対処して地域産業が生き残るためには、産学官連携による研究開発型の新規産業の創出に期待するよりほかない、こういう地域のせっぱ詰まった切実な声があるのでございます。
 我が国経済は近年、慢性的な需要不足にありますが、イノベーションこそが経済発展の原動力であります。需要不足を打開いたしますためには、イノベーションと需要との好循環をつくり出す必要があると言われます。そのため、大学等の知的資源を活用しましたイノベーションの創出が不可欠であるとして産学官連携への期待がいやが上にも高まっているのでございます。
 米国では近年、情報技術やバイオテクノロジーなどの分野で大学の研究が産学連携を通じて実用化に結びつき、そして国の産業競争力の向上に大きく貢献したと言われておるわけであります。また、バイ・ドール法の制定を機に、大学側に産学連携を推進するインセンティブや環境がつくり出され、米国の大学では、学術的研究の基本は堅持しつつも、企業と協力し現実のニーズに合った研究が行われていると聞いているところであります。
 ところが、我が国では、これまで産学官の連携が必ずしも十分に行われておらず、共同研究の増加などの動きは見られますものの、研究成果を活用しての新産業の創出にはまだまだ結びついていないと指摘されているのでございます。
 そこで、青山副大臣にお伺いをいたします。
 我が国の産学官連携は欧米諸国に比較しておくれていると言われますが、どこに問題があったとお考えでございましょうか。また、ただいまは地域経済の厳しい状況の一端を申し上げましたが、国際競争力強化のみならず、地域経済への貢献などの観点からも、産学官連携の今日的意義と今後とり得べき改善方策についてどのように考えておられるのか、御教示を賜りたいと思います。
青山副大臣 御指摘のとおりでございまして、我が国における産学官連携の実績というものは、近年、相当な成果、実績を上げてきました。しかし、全体的にはなお欧米に比べて日本はまだおくれていると私は理解しております。
 その理由には幾つかあると思いますが、一つは、これまで大学側においても産学官連携に対して必ずしも積極的ではなかったことが一つあると思います。それから、これまでの産学官連携というのは、研究者個人と企業との個人的な連携が中心でございまして、例えば大学側と産業界側というような組織的な関係は余りなかったように私は理解しています。
 それからもう一点は、企業が独力で、自力でこれまで研究開発を相当進めてきました。いわゆる自前主義であったと考えておりますが、現下の経済社会情勢はなかなか厳しくて、なかなか独力では研究開発が難しいし、せっかくある大学の研究成果というものをぜひ活用していきたいという機運が今出てきておりまして、そういう意味で、これから、反省点は反省点として踏まえて、大学の発展にとっても産学官連携というのは非常に重要でございますし、経済社会にとっても連携はぜひ進めていかなければならないと思います。
 大学においても、これまでのような教育であるとか研究であるとかということをさらに充実していくことは当然でありますが、経済社会のニーズにできるだけこたえていく研究開発を進めていかなければいけないということをしっかり受けとめまして、そのための、例えば産学官連携のための組織を強化していく、強めていく、それから、産学官連携を進めていくための人材を養成していく、育てていく、こういうところに力を注いでいきたいと考えています。
岩崎分科員 どうもありがとうございました。
 産学官連携の機運が社会的な要請とともに大変高まってきたということであります。今後さらに努力を続けていただきたいと思う次第であります。
 そこで、二、三、産学官連携の具体化に当たって問題となります点について伺ってまいりたいと思います。
 我が国の大学と企業の間の共同研究、受託研究は確実にふえてきておるわけでありますが、まだまだ本格的なものにはなっていないと言われておるわけであります。こうした共同研究や企業に対する技術移転がこれまでどのようになっているのか、あるいは今後どういった課題があるのか、お伺いをいたしたいと思います。
遠藤(昭)政府参考人 これまで、共同研究等あるいは技術移転の関係につきましては、平成十年に、いわゆるTLO法の改正によりまして、研究成果の特許化を進めるという、技術移転機関なんですが、そういった制度をつくりました。また、昭和六十二年から、国立大学に共同研究センターというものを順次つくるという整備をしております。さらには、民間との国立大学教官等の兼業規制の緩和等々の措置をやってきております。
 その結果、共同研究の件数で見ますと、過去十年間で約五倍に増加しておりますし、TLOも二十六の機関で承認がされております。徐々にというか、今かなり伸びてきているというふうに考えております。
 今後の課題でございますが、これらの取り組みをさらに強化するということ、それと同時に、やはり大学発ベンチャーを生み出すような環境整備、それから、目ききとか言われますコーディネーター人材の育成確保、それから組織の強化、そういったあたりに力点を置いていきたいなというふうに考えております。
岩崎分科員 どうもありがとうございました。
 これから、共同研究、受託研究を超えて、さらに大学ベンチャーまでというのを見据えて取り組んでいく必要がある、こういう御指摘でありました。
 先ほど紹介いたしました信州大学繊維学部キャンパスに建設されました産学官連携の支援施設を拠点としまして、県内外の企業二百社で産学官連携により新技術を製品開発につなげますために、技術相談や交流を行う組織、ARECプラザというのが発足をいたしました。
 こうした共同研究や技術移転機関などにおきまして、情報の交換、交流の場がつくり出されていきますことは、産学相互の価値観共有の観点からも大変好ましいことでありますが、さらに進みまして、産学官のシーズとニーズのマッチングのためには、大学と民間との人材交流の流動化をさらに促進させる必要があると思うわけであります。
 そこで、産学官の人材交流の活発化、研究者の流動性を高める方策についてどのように考えておられるのか、お伺いをしたいと思います。
遠藤(昭)政府参考人 産学官の連携の実を上げていこうというためには、やはり人材の交流が本当に大事だと思っております。
 このため、平成九年には任期つき任用制度を導入いたしました。それからまた、公募制度の活用によりまして、民間人を大学教官に積極的に登用いたしましょうということにも努力をいたしております。さらに、平成十二年度には、国立大学教官が企業の役員兼業をできるように規制緩和を図ったということなど、かなりな制度改正に努めてきております。
 徐々にではありますがふえてきているんですが、まだまだ実績は十分とは言えませんので、さらに、規制緩和などを行いまして、この人材交流の活性化が図られるように努力していきたいと思っております。
岩崎分科員 大学と民間との人材交流の活発化、活性化にさらに一段と御努力をお願いしたいと思います。
 そこで、大学等におきます研究成果の産業界への技術移転の促進によります新規産業の創出は、我が国の産業競争力の観点からも大変重要だと指摘されておるところでありまして、とりわけイノベーションの進展にベンチャーの果たす役割は、米国の例に見られますとおり大きなものがありますが、我が国の大学発ベンチャーの例はまだまだ少ない現状にあると言われているわけであります。
 ベンチャーの育成は、我が国の新産業の創出のみならず、大学等におきます研究の活性化の点についても大いに役立つものと言われておりますが、今日まで、我が国におきまして、大学発ベンチャーの創出を妨げているような要因はどこにあるのか、また、今後、大学発ベンチャーの創出を活性化させるためにどのような条件整備が必要だとお考えなのか、お伺いをしたいと思います。
遠藤(昭)政府参考人 先生御指摘のとおり、我が国の経済活性化を図っていく上で、大学発ベンチャーを次々とつくっていく、そういう環境整備を図るということは、これからの我が国社会にとって大変重要であると思っております。
 この点につきましては、我が省では、科学技術・学術審議会というのがあるのですが、そこに産学官連携推進委員会というものを設けまして、昨年七月に中間取りまとめを行っております。そこでは問題点を指摘しておりますが、一つは、アドバイザーなどのベンチャー企業を支援する人材が不足している、それからもう一つは、起業支援あるいはセーフティーネットなど、ベンチャー企業を支える仕組みの整備が十分できていないということなどが指摘をされております。このため、大学内のベンチャー育成システムの整備とか、あるいはスタートアップ時点の支援、これの施策に取り組むことが重要だとされております。
 そこで、早速十三年度の一次補正、二次補正、ここにおきまして、大学発ベンチャー企業の創出を目的としましたインキュベーション施設、これを十三大学、予算をとっていただきまして措置をしております。さらに、十四年度予算におきましても、大学発ベンチャー創出を促進しようということで、研究助成、お金を出したりあるいは人を派遣したりというふうなこと、あるいは大学の共同研究センターへの産学官のコーディネーター人材派遣支援、そういったことなど体系的な措置を講じているところでございます。
岩崎分科員 文部科学省におかれても、大学発ベンチャーの育成のために、インキュベーション施設の整備その他さまざまな条件整備を行っておられるということ、大変心強く思う次第でありまして、今後ともさらに力を入れていただきたいと思う次第であります。
 これまで産学官連携の推進状況について伺ってまいりましたが、我が国の産学官連携のスピードは、頑張っているとはいえ、いまだしの感がぬぐえません。
 我が国の産学官連携の最大の障害は、大学側において、共同・受託研究、特許の取得、ベンチャーの起業等が研究者の評価の対象になることが少ないということが言われておりまして、産学官連携のインセンティブが弱いことにあると言われておるわけであります。
 我が国の産業競争力の強化、地方の産業空洞化対策などからしましても、今求められておりますのは研究開発に基盤を置いた新産業の創出であります。また、産学官の連携の強化であります。事態は待ったなしの状況でありまして、施策にスピードが必要であります。
 アメリカの産学連携の成功の例を引くまでもなく、お隣の中国でも、教育改革の柱に大学内に付設した校営企業による産学連携と研究成果の産業化への加速を掲げまして、経済発展の原動力にいたしているということであります。
 産学官の連携を実効あらしめるためには、大学の組織、人事、教員の身分、予算、財務会計、評価システムなど、大学の教育システムを産学官連携を円滑ならしめる観点から一新し、これを弾力化、柔軟化する必要があります。そのためには、産学官連携をこの際国策として取り上げまして、国策としての産学官連携を進める観点から各般にわたって大学改革を行う、こうする必要があると思われますが、遠山大臣の御所見を賜りたいと思います。
遠山国務大臣 大学には教育研究の非常に重要な機能がありますのと同時に、やはり社会貢献というのも非常に重要でございます。その角度から、近年、非常に大学側の取り組み方も改善を重ねてまいっておりますけれども、これからの日本の経済的な発展、あるいは地域の活性化というようなことを考えますと、さらに大学側の取り組みを加速していく必要があると思います。もともとの大学の機能そのものをより発揮してもらうためにということを前提にしながら大学改革をこれまで進めてまいっておりましたが、委員御指摘のような視点も非常に重要だと思います。
 いずれにしましても、その本来の機能の発揮と、さらに社会貢献というようなことを念頭に置きながら、現在、大学の構造改革の大きな動きが進んでおります。これは、昨年の六月に、大学(国立大学)の構造改革の基本的方針というのを出しましたけれども、それに基づきまして、国立大学の法人化、いろいろなマネジメントのあり方の改善、あるいは第三者評価による重点的な投資などのいろいろな改革が今進んでおりますけれども、特に、法人化に絡みまして、今委員が御指摘いただいたようなさまざまな改善がこれから図られるのではないかと考えております。
 一つは、大学ごとに法人化をすることによって、組織、業務などを弾力化することで、産学官連携など多彩な事業を大学の戦略的判断で実施できるようにするということがございます。それから、教職員の兼職、兼業等の規制を大幅に緩和することによって、研究成果等の社会への還元を一層促進するような仕組みとする、そのような方向で検討が進められているところでございます。
 もちろん、産業のしもべとなってはいけない、大学の本来的な機能はございますけれども、より大学自体の活動を活性化することによって貢献していくという姿勢がさらに強まっていくことが望まれますのと同時に、産業界側も、やはり大学の本来の機能を尊重しながら、そして連携をとっていく、そのような社会に私は転換していく必要が非常にあるのではないかと考えております。
岩崎分科員 どうもありがとうございました。
 遠山大臣におかれましては、これから大学の構造改革に本当に真剣に取り組むということでありますが、その中で、やはり産学官連携という視点を大いに念頭に置いて取り組んでいただきたいとお願いを申し上げたいと思います。
 そこで、ちょっと視点が変わりますけれども、国立大学の研究開発費には、今どういった種類があって、おおむねどういった基準で各大学に配分されているのか、簡潔に一言でお答え願いたいと思います。
工藤政府参考人 国立大学の研究開発に必要な経費というのはいろいろございまして、私ども役所の方で用意している予算と、それから外で用意されて、それで大学に入ってくる予算とがございます。
 大きく言いますと三つでございますが、一つは、何しろ研究費の中心は科学研究費補助金でございまして、御案内のとおり、今御審議いただいている予算では、千七百三億円御用意しているところでございます。それから、外からのお金としましては、企業あるいは外国、さらには他省庁で御用意しているお金としていろいろございまして、それは結果でございますので、どれぐらい入ってくるかというのはありますが、平成十四年度の特別会計予算で予定しております歳出ベースで見ますと、千三十六億ほどでございます。
 それから、私どもで直接御用意しております教育研究経費としまして基幹的教育研究経費というのが二千二百二十億ほどございますが、前二者が競争的資金として、実際にそれぞれの審査機関において審査され、配分されるのに対しまして、この基盤的な教育研究経費といいますのは、研究だけじゃございませんで、教育部分、それから管理運営部分もありますのでなかなか区分しがたいのでございますが、各大学別の規模等に応じて配分させていただいております。
岩崎分科員 平成十四年度の地域科学技術関連政府予算は、新たに知的クラスター創成事業等の予算が認められたことによりまして、二百十二億円と、前年度から五割の大幅な伸びになっておりまして、大変これは歓迎すべきことであります。また、昨年三月に策定されました今後五年間の科学技術基本計画におきましても、「地域の研究開発に関する資源やポテンシャルを活用することにより、我が国の科学技術の高度化・多様化、ひいては当該地域における革新技術・新産業の創出を通じた我が国経済の活性化が図られるものであり、その積極的な推進が必要である。」と正しく指摘をされておるわけであります。
 私は、今後我が国の科学技術が、二十一世紀中に起こり得るさまざまな環境変化や技術革新、あるいは従来技術の陳腐化等に対応して着実な発展を遂げてまいりますためには、地域のポテンシャルを生かした多様な科学技術の振興を図っていくことがそのかぎになると考えております。多様性、多様な地域科学技術の発展こそが、あらゆる環境変化に耐えて我が国科学技術が発展していくキーポイントだと考えております。大臣の御所見を賜りたいと思います。
遠山国務大臣 委員御指摘のように、まさにさまざまな角度からのこの問題への振興の姿勢が大事だと思っておりまして、地域の個性やポテンシャルを活用した施策を展開しているところでございます。
 これまでも、産学官連携によります地域結集型共同研究事業の推進、あるいは全国七カ所におきます研究成果活用プラザの設置、運営、あるいは、研究コーディネーター、目ききでございますけれども、これの派遣による、企業ニーズを踏まえた研究成果の育成等への支援を行ってきているところでございますが、平成十四年度におきましては、さらに新たに二つの、ポテンシャルの高い地域を対象として、大学等を核として研究機関や企業の研究開発能力の集積を図る知的クラスター創成事業、それから、地域の中小都市に着目して、自治体の主体性、個性発揮を重視した上で、公募方式による都市エリア型の産学官連携事業を新たに実施することとしております。このように、さまざまなメニューを今実施しようとしております。
岩崎分科員 私が申し上げたいのは、とにかくこの多様な科学技術の発展こそが今後の我が国の科学技術の発展に大変重要であるということでありまして、今後ともよろしくお願いを申し上げたいと思う次第であります。
 私は、今大臣がお挙げになりました知的クラスター創成事業こそが、平成十四年度政府予算中、大変出色のものだと考えているわけであります。国立大学の研究費全体から見たらその一%にも満たない経費が、全国の大学関係者、自治体関係者、商工団体の皆さんから大変熱いまなざしを向けられているのであります。それは、産業空洞化に悩む地域経済活性のかぎをこの知的クラスター創成事業が握っていると見られているからにほかなりません。それだけ、産学官連携による研究開発型の新規事業の創出が地域経済に必要だとされているということであります。全国からたくさんの知事さん、市長さん、大学の学長さん、地域の経済界の方々が文部科学省に日参していると思います。その姿は、実に新産・工特の指定、テクノポリスの計画承認以来の出来事であります。
 ちなみに、新産・工特の指定は、昭和三十七年に決定されました全国総合開発計画の拠点開発構想を具体化したものでございまして、これにより、過密過疎に歯どめをかけ、国土の均衡発展を図ろうとしたものであります。主として重厚長大型の産業を念頭に、昭和三十九年から計二十一地区が指定されました。また、テクノポリス構想は、高度技術に立脚した工業開発を軸に、産学住が有機的に結合した新しい地域づくりを行おうとするものでございまして、軽薄短小のハイテク産業を念頭に、昭和五十八年から二十六地域の計画承認がなされました。
 そして今日、日本の産業競争力強化と地方の産業空洞化対策の必要性を背景といたしまして、この知的クラスター創成事業が時代の要請として登場したものと私は考えているのであります。そこに地域産業の多様な発展を通じた我が国経済の再生、発展の期待がかけられていると思うのであります。
 私は、この知的クラスター創成事業は、国策として研究開発拠点の選定を行おうとするものでございまして、時代を画する事業としてその今日的意義は大変高いものと受けとめておるわけでありますが、こうした知的クラスター創成事業の今日的意義についてどのように受けとめておられるのか、青山副大臣にお伺いしたいと思います。
青山副大臣 御指摘のとおりでございまして、産業の空洞化が我々にどういう決意をさせたか、つまりこのことは、日本の経済的な国際競争力を非常に弱めてきておる、政治にとっても行政にとっても経済にとっても決して名誉なことではない、そのためには、せっかく大学における研究開発の成果というものを、あるいは、知の蓄積されたものを経済社会に活用していくことが今非常に必要だということがあると思います。
 それから、我が国独自の技術を開発して、そして研究開発型の企業を育てていくということが今必要だというふうに理解しておりまして、平成十四年度から知的クラスター創成事業を進めていきたいと思っております。この考え方は、技術分野を特化、特定いたしまして、そして大学が中心になってきて、核となってきて、地域の研究機関やあるいは研究開発能力を持った企業、そういった集積を図っていく、それが知的クラスター創成事業であると。
 恐らくもう理解していただいておりますから御説明を申し上げる必要はないかもしれません。もう時間がないから、御理解いただいておると思いますので、ぜひ私は、これからこの知的クラスター創成事業を進めて、地域の研究技術開発の重要な柱にしていきたいと考えております。
岩崎分科員 ありがとうございました。
 現在、知的クラスター創成事業の実施地域の内定に加えて選定作業を進めておると思うわけでありますが、私は、この知的クラスターの選定基準は、これまで問題提起してまいりましたとおり、個性ある多様な地域科学技術の振興を図っていく観点から、全国各地に個性ある多様な知的クラスターの創成を図っていくこととすることが望ましいことだと考えておるのでございます。
 これまでの国立大学に対する研究開発費の配分と同じような考え方で知的クラスターの選定を行い、研究開発費の配分を行うというのであれば、我が国の地域政策史上、まさに今日的要請にこたえて時代を画する事業になろうとするこの知的クラスター創成事業の名前が泣くことにもなりかねません。
 尾身科学技術政策担当大臣もその所信表明の中で、「産業の空洞化により疲弊の度を強めている地域経済を再生させるため、地域の大学の頭脳で中小企業の活力を生かして、世界に通用する新事業や新製品を生み出すことが必要」であると強調しているのであります。
 私が先ほど例に挙げました信州大学の繊維学部と工学部の周辺には、かつて電子機械部品製造業が集積し、日本のシリコンバレーと称されていたような特色ある地域がございます。このような地域は、今中国との激烈な競争にさらされておりまして、こうした地域では、新興工業国では追いつけないような大学の基礎研究をもとにした産学連携以外に生きる道がございません。
 このように、全国の地方国立大学及び周辺の研究開発型企業の中にも、サンショウは小粒でもぴりりと辛い、こういう、分野を特化して個性ある研究開発に秀でた地域が幾つもあるのでございます。こうした芽を摘み取らない意味からしましても、産業空洞化に悩む全国各地の研究開発拠点整備の一つの類型ないしモデルとして、もちろん競争力があり、有望地域でなければなりませんが、そうした分野に特化して個性ある地域も、これを知的クラスター創成事業の実施地域として幾つか取り上げていく、こうすることが知的クラスター創成事業の今日的意義、本来の目的にも合致すると思いますが、大臣の所見をお伺いして、質問を終わりたいと思います。
遠山国務大臣 知的クラスターの選定に寄せます各地域の熱いまなざしを背景とされた先生の大変熱のこもった御議論でございました。
 まさにそのような方向でやるべき事業だと思っております。目下、各地域からのヒアリングを実施いたしますとともに、外部有識者から技術的な助言も得て厳正に評価を行っているところでございますが、評価に際しましては、やはり研究開発ポテンシャルや産業化の有望度、さらには事業の実施主体となる中核機関の事業運営の能力でありますとか、自治体独自の取り組みなど、総合的な角度から誤りなく判断をして、将来の日本の活性化につなげる事業として育てていきたいと思っております。
岩崎分科員 どうもありがとうございました。
 これで質問を終わります。ありがとうございました。
伊藤主査 これにて岩崎忠夫君の質疑は終了いたしました。
 次に、林省之介君。
林(省)分科員 おはようございます。
 自由民主党の林省之介でございます。
 今お二人の委員から、いわゆる大学を中心とした問題、産学官の協同の問題のお話がございました。私は、そのもとになりますところの、初等中等教育を中心にこの四月からいよいよスタートいたします週休二日制、それに伴ういわゆるゆとりの教育というものに対して、今まさに教育の世界にも、あるいは御父兄の世界にも、御父母の世界にも、大変な心配が出てきているように思われます。
 各マスコミあたりを見ましても、いろいろな特集を組んだりして、いわゆるゆとりの教育が学力低下につながりはしないか。私などもよく心配をすることの一つに、子供たちに自主、自立の時間を与えて、そしてそれが大いなる学習効果を生んでいくのであれば、まさに本当にこれが理想的な教育だというふうに思うわけでありますけれども、どうもまだまだ日本の教育の現状、あるいは家庭教育を見ましても、そういう子供たちの自立心というのは養われてはいない。十分にという言い方がいいかもしれませんが、十分には養われてはいない。したがって、それこそ中国のことわざにありますように、これは大学の一説だったと思いますが、小人閑居して不善をなす、いわゆる青少年犯罪がどこで多く発生をしているか、時期的にいつ多く発生をするかというふうなことを簡単に見ましても、これはどうしても休み中、休暇中が多くなるわけであります。まさに閑居して不善をなすようなことが現実に起こっているわけでございます。
 そういう中で、授業時数を減らし、そして自由な裁量のもとでまさにそれぞれ個に対応した教育をしてください、これがきちっとできれば何の心配もないでしょうし、これは理想的な教育ができるということになるわけでございますが、教育には必ずや評価が伴わなければならないと思います。いわゆるこのゆとりの教育が実践をされ出して、文部科学省としては、どういう形で、あるいはどういう項目を中心といいますか、どういう分野を中心にその評価をなさるのか、そのことについて大臣の御所見をお伺いいたします。
遠山国務大臣 四月から新しい学習指導要領の実施が始まります。長年準備をしてまいって、いよいよこれからでございまして、ただ、そのねらいが必ずしも十分に理解されておりませんで、いろいろな心配の声が出ていることも承知いたしております。しかし、新しい学習指導要領は、基礎、基本をしっかり充実して教えた上で、みずから考え、みずから行動する、そういう主体性を持った子供を育てよう、それによって確かな学力と豊かな人間性を備えた、また健やかな体を持つ生きる力、そういったものを養っていこうということでございまして、それ自体は明確にこれからの二十一世紀の教育のあり方を示すものではないかと思っております。
 ただ、そのねらいがしっかりと受け取られて実現されませんと、委員御指摘のような危懼にもなってしまうということがございます。そこで、私どもとしましては、新しいねらいというものをしっかりと各地のいろいろな教育関係機関ないし保護者にも伝えるようにいたしておりますし、そして、特に週五日制になることによって、小人閑居して不善をなすということにならないようにという御指摘でございますが、週五日制にするということは、ある程度の時間の自由さの中で、自然体験でありますとか社会奉仕体験でありますとか、あるいは家族が一緒に行動することによって、これまでなかったような人間的なつながりもしっかりとさせていく、あるいは地域の伝統文化を学ぶ、さまざまな活用の方法があると思います。そこのところをきちんと実現されるようにしていく必要があろうかと思っております。
 学校での学力ないし学校での教育機能のチェックといいますか評価をどう考えるかという御質問でございますけれども、私どもといたしましては、今進めておりますのは、各学校がみずから教育活動等学校における活動について評価をしてみる、自己評価ですね、それをまずやっていただくということを考えておりますし、それから学力の面では、少し客観的なデータが必要でございますので、今年度から継続的に全国的な教育課程実施状況調査を実施することにいたしておりまして、この一月から二月にかけて、小学校高学年及び中学生を対象として四十九万人規模の抽出調査を実施したところでございます。
 私といたしましては、これを一回にとどめないでできるだけ継続的に行うことによって、教育課程の基準の検証を行っていく。そのことによって、学力についてもきちんと担保をし、そして子供たちが先ほど御指摘のような本来的な教育の成果を得られるように、各学校段階及び教育委員会はもとより、私どもとしても、そのことについて十分留意をし、ねらいがきちんと達成されますように努力をしてまいりたいと思っておるところでございます。
林(省)分科員 今、大臣のお言葉を聞きまして、大臣も随分と御心配もいただいているんだなと。たしかこの一月の十七日に、確かな学力の向上のための二〇〇二アピール「学びのすすめ」というふうなことを発表もしていただいております。
 確かにいろいろな不安なことがあるけれども、前を向いて、新しい日本の学校教育のあり方を、これはみんなでしっかりと見守って、そしてその成果について、こんなものは恐らく一カ月、二カ月で出るようなものじゃないと思います、一年、二年、場合によっては五年、十年の長い期間で見ていかなければいけないんだろうと思うんですけれども、これは失敗したというふうなことで、えらいこっちゃと気がついたときには本当に取り返しのつかないことになっているわけでございますから、できるだけ細やかな、いわゆる日々の調査といいますか、日々の監視というとこれはちょっとまた皆さん方からおしかりいただくかもわかりませんので、しっかりと目を届かせていただいて、必要に応じた措置をとっていただきたいなというふうに思うわけでございます。
 そのような中で、大臣も、また文化審議会への諮問をなさっていらっしゃいます。国語が大事だ、文化の継承と創造に欠くことのできないものとして国語を位置づけておられて、これは非常に大切なことだろうと思いますが、この国語教育などは、今、このゆとりの教育の中で私は心配するのは、国語の時間だけじゃなくて全体の時間が削られているわけでありますけれども、日本人として必要な、まさに文化の創造にもかかわってくる、あるいは継承にかかわってくるその国語力を子供たちがどのあたりで一番身につけているのかということを考えますときに、この国語の時間の減少というのは非常に私は心配するわけですね。
 その分はゆとりの時間のところで補っていけばいいじゃないですかということになるわけですが、こういう教科指導というのは指導者によって随分と差が出てくるものなんです。ですから、あることに大変深い知識を持っておられる教員だと、例えば自分の得意な分野のところにわっと子供たちを引っ張っていく。それがすべてけしからぬとは申しません。しかし、ゆとりの時間というのが非常に偏った指導になりはせぬかなという危惧を私は抱くわけであります。いわゆる教師の専門性がそういうところで妙に発揮をされていかないかなと。そして、一番時間をかけて、豊かな日本人としての感性、特に語感を中心とした感性を養わなきゃいけない国語の授業の減少あたりは、非常に心配するところがあるわけです。
 かつて、国立国語研究所の阪本一郎さんが、日本人の平均的な語彙数、理解語彙というのですが、いわゆる言葉を聞いてその言葉の意味がある程度にわかる、あるいはその言葉の使い方が、大体こういうふうにその言葉を使えばいいということがわかる、これは理解語彙でありまして生活語彙ではないんです。国語教育の理想というのは、理解語彙を生活語彙に高めていかなきゃいけない。生活語彙というのは、自由自在にその言葉が自分の言語生活の中で使えるというのが生活語彙だというふうに言われているわけですけれども、その理解語彙が平均的に日本人成人はおよそ四万八千語でございます。
 その四万八千語の理解語彙を持つ日本人がそれをどこで多く習得しているかといいますと、小学校の五年生、六年生、中学校の一年、二年、この四年間でおよそ二万二千語を平均的に習得しているわけであります。この多くの言葉を、およそ半分近い言葉を習得するあたりのところで時間ががたっと削られてくる、特に国語の時間が削られる。
 私は、国語というのはあらゆる教育のもとになっているんだと。いわゆる国語を、日本語をベースにして、他の教科にしても、極端に申せば英語教育にしても日本語をベースにして教えられているわけであります。したがいまして、国語力の低下、PISAの調査なんかを見ましても、日本の子供たちのいわゆる読解力といいますか、これがうんとトップレベルのところでは、少し全体のよさから見れば悪い、そして中間的なところというのが、いわゆる平均レベルのところでは日本人の子供たちというのは非常にいい状況にあるけれども、トップレベルが少ない。これが先ほどの産学官の話なんかにもかかわっていくんだろうと思いますけれども、優秀な人材を育てることに支障を来してくるんじゃなかろうかなというような気がいたすわけでございます。
 いわゆる基礎教育の部分、ここをしっかりとやっておきませんと、もう少し言わせていただきますと、国語教育をしっかりと中心に据えた基礎教育をしっかりとやっておかないと、必ずやいろいろなところで、それこそ理科離れ、数学離れなんというようなことも言われておりますけれども、我々自民党の方でも随分と、理科離れについてどうすればいいんだろうというふうな議論を重ねてまいりました。しかし、一番のもとになるところの、豊かな創造性を生み出していくところの、すべて日本語で発想をして、日本語で表現していっているわけです。現行の国語教育を見ていますと、これは私はもう随分と偏ってしまっているというような気がしてしようがありません。
 国語教育というのは、いわゆる文法ですとか語彙ですとか語法ですとか音韻ですとかといった言語事項をベースにして、現行の国語教育は四本柱と言っていいんですね。大きくは二本です。表現と理解であります。この表現と理解が音声言語と文字言語に分かれるものですから、言うならば四本柱で成り立っていると言っていいわけであります。
 この四本柱で成り立っている現行の国語教育はなぜ偏っているかといいますと、何をしているかというと、文字言語による理解の学習指導、要するに、答案用紙を見て、それに適する答えを書ければいいという教育に偏り過ぎているわけであります。したがいまして、残りの三つがほとんどなされていない。例えば、人の話をきちっと聞く、こういう訓練の場面は一切ありません。ほとんど行われていないと言っていいと思います。あるいは、自分の思いを人前で語る。作文なんというようなのは多少されております、多少はされておりますけれども、これも指導者によって大いに偏りがある。自分の考えを人前で音声言語によって表現する、文字言語の表現も少ないんですけれども、音声言語の表現なんてもっと不足しているわけです。
 こういうものを補っていくのが私は読書であろうと思っているわけです。お願いしておきました質問事項、もう大臣がそこまで、今回の週休二日制、ゆとりの教育についてお考えをいただいておりますから、そちらの方はもうぶっ飛ばしまして、後の方のところを少ししっかりと聞かせていただこうと思うんです。この不足する部分を補うのが、まさに国語教育では読書なんですよ。
 ところで、これはちょっと質問の通告には出ておらなかったんですが、大臣は、子供たちに本を読ませる方法といいますか、読書をさせるために教育現場で何をどうすればいいかというようなことを、ちょっと個人的な御見解で結構でございますので、こういうふうに読ませればいいんじゃないですかというのをちょっとお聞かせいただけませんでしょうか。申しわけありませんが、お願いいたします。
遠山国務大臣 私も委員の御指摘に大賛成でございまして、やはり幼いときにすぐれた文章を音読し、そして覚えてくれれば、これは随分人生が豊かになるんじゃないかなと思っております。その意味で、やはり読書は非常に大事だと思っています。単に読み飛ばすというのではなくて、声を出して大声で読みながら、そして友達なんかとも共感を交わしながらそれを覚えていってくれれば大変いいなと思います。
 それから、かるたでありますとか百人一首でありますとか、あのようなものも、ひょっとしたときに使うことによって精神的に何か安寧を得たり、一つかなり鋭く切り取って納得することができるとか、いろいろな効果がございます。
 いずれにしましても、本を読む、本の中には、多くの場合ですが、その著者の日ごろの思考が凝縮しております。それを自分で考えようと思ったら大変なことでございますけれども、そういう本を読むということによって世界が広がりますし、それはファンタジーの世界が書かれている本もございますが、そういったものを読むことによって感性が豊かになっていく。
 そのようなことを考えますと、国語、国語力といいますか言語力といいますか、それはその人間の思考ないし想像の基本ではなかろうかと思っておりまして、本を読むということは大変大事。
 その意味で、学校では、これは各学校の取り組みの仕方あるいは教員の取り組みの仕方によって随分違いますけれども、工夫によっては大変いい教育がなされているところがございます。ぜひ多くの学校及び多くの教員もそういういい事例を活用されながら、子供たちに、読むこと、書くこと、語ること、きちんと表現すること、ディスカッションすること、そういったことの力をつけてもらいたい、それがまさにみずから考える力、みずから判断する力の基礎になるというふうに考えているところでございます。
林(省)分科員 ところが、読んでくれない子供たちというのがたくさんいるわけですね。そして、仮に学校教育の場面で読書指導をしようとしますと、子供たちに例えばこれを読みなさい、読みました、こう言ってくれたとしまして、これを本当に彼が、これは疑ったらいかぬのですけれども、教育の場面ですから。しかし、本当にこの子がこの作品を読んだのかなということを、我々、教員が知る方法というのは恐らく二つぐらいしかないんですよ。ではその内容について語ってごらんなさい、あるいはその読書感想文を書いてみてくださいということをしない限り、読みなさい、読みました、本当に読んだのかなということを確認する方法というのはないわけでございます。
 そういうところで、どうしても子供たちにある一定の読書をさせよう、こういたしますと、いろいろなことを教師サイドとしては考えざるを得ないというのが教育現場における現状でございます。
 私も読書指導についてはいささかの経験を持っておりますけれども、私が対象とした子供たちというのは偏差値的には六十以上、そういうある意味では優秀な集団でございます。この子供たちでもまず読んでくれません、中学生ですけれども、読まない。
 では、読ませなきゃいけないとすると何をするかというのは、もう強制しかないわけであります。それを成績に反映させるとか、あるいは読まなきゃおしりぺんぺんするとか、極端に言えばそれぐらいなつもりであるところまで読書指導をしていかないと、あるところまでいけばほっといていいんです、あるところまではそういう形で引っ張っていかないと、まず読書というのはできません。そういう意味で、今この中教審の答申の中にも朝の十分間読書というふうなことが出てきておりますけれども、これは非常にいいことだろうと思いますね。
 子供たちに読書意欲を喚起する方法としてとられる方法というのは主として四つでございます。これは、よく幼いころなんかにお母さんに絵本を読んでもらったりとか、おとぎ話を読んでいただいたというような、これはいわゆる読み聞かせと言うわけですが、そのほかにストーリーテリングですとかブックトークですとか、あるいは読書会、大学あたりでは輪読会と言っておりますけれども。
 そんな中で非常に効果があるのは、私の経験ではブックトークなんですよ。このブックトークという方法は、はまれば抜群の読書意欲を喚起いたします。これは、例えば一つの図書についてのエピソード、あるいはその図書と自分とのかかわり、作家とのかかわり、何だっていいわけでありますけれども、そういう一つの図書について、実はこの本はこんなんなんだよということを子供たちに語る。そして子供たちが、おお、そんなんだったら一遍読んでみようというふうなことで読書意欲をかき立ててくれる。
 こういういろいろな方法がある中で、今まさに提案されているような朝の十分間読書、これは大いに活用していただきたいと思うんです。
 そこで、本当に子供たちが読書生活にがあっと入ろうとしたときに一番のネックになるのは、いわゆる公的な機関における蔵書数の不足であります。
 読書指導をしたら必ず、一生懸命やる先生がおったら必ずその周辺で一番起こる事件は、本屋における万引きであります。どうしても早く読みたいんですよ。友達が読んでいる、学校の図書館の本は一冊しかない。同じ内容のものが例えば少年少女文庫にあるじゃないですかと言っても、いや、今筑摩の何とかの、このカラフルな小型の本しか自分はもう目にないわけです。内容は同じだと幾ら説明しても、その自分が読みたいというカラフルな小型の本にもう殺到するわけです。
 そうすると、同じ図書を何セットも、できれば理想的には用意してやりたい。読みたいときに読みたいものがある、これが一番大事なんですね。それがないと、今言ったようにいわゆる万引き事件などが多発をするというふうなことになるわけでございまして、読書教育をしっかり推し進めようというふうな教師がいたときに一番困るのが、実は蔵書数が足らない。
 そういうことで、過去十年間ぐらいにわたりまして、地方交付税交付金の部分でいわゆる図書費用として恐らく渡されているものが、これが果たしてまともにちゃんと図書になっていっているんだろうかな。あるいは、地域によりますと、学校図書館そのものがはっきり言って完全に本を死蔵してしまっている。
 私も大学の教員のときに、よく教育実習の出向で各中学校だとか高等学校へ参りました。行くと必ず、図書室を見せてください。図書館なんていうような立派なものはありません。中学校ぐらいだと図書室であります。図書室を見せてくれと言うと、校長が、いやもう、日ごろ使っていませんから。戸をあけて入ったらもうカビ臭いにおいがして、本の背中、ちょっと頭をなでるとほこりが積もる。こういう感じで、死蔵されているようなところもたくさんあるわけであります。
 したがいまして、お願いをしたいのは、読書は非常に大事です、読書指導をしっかりとゆとりの教育の中にはめ込んでいってくださいというお願いをし出すと、当然それでは本が要りますよというような話になってくるわけですから、せっかく使われているこの子ども読書推進法、大事な法律でございます。ここで使われている予算を本当に子供たちの本のために使っていただきたい。
 子ども図書館なんかつくってやっているところでも、これはいろいろ調べてみるとぞっとするような利用状況というのもよくあるわけでございまして、それはもうしっかりと、ハードを用意していただくいわゆる行政サイドと、そしてそれをしっかりと利用するように指導するいわゆる教員サイドのしっかりとした息が合っていかないと、必要な本を必要なところで子供たちに提供するということがなかなかしにくくなるわけでございます。
 その辺のところで、この学校の図書館の充実というのが求められていくわけでございます。今年度もそういうための予算というのはつけられていると思いますが、この行方ですね、私はある程度の調査をしていっていただきたいと思うのでございますが、それについてはどんなものでございましょうか。
矢野政府参考人 学校図書館の充実でございますけれども、学校図書館の蔵書につきましては、委員御案内のように、公立義務教育諸学校につきましては、平成十四年度、来年度から五カ年間で毎年百三十億円、総額にいたしまして六百五十億円の地方交付税が措置されることとなっておりまして、これによりまして計画的な整備が一層図られるものというふうに考えているところでございまして、私どもも、こうしたことを踏まえて、その整備充実について指導してまいりたいと思っております。
 また、この子どもの読書活動推進法の成立によりまして、地域の方々の図書の寄贈が増加して、学校図書館の蔵書がますます充実していくというふうに考えるわけでございます。そういう意味におきまして、蔵書の充実とともに、それをより有効に活用していくということが大変大事であるわけでございまして、そういう意味におきましては、学校では、校長のリーダーシップのもとで、司書教諭が中心となって、教員、事務職員あるいは図書館のボランティアが連携協力しながら、学校図書館が読書センターあるいは学習情報センターとしてのそうした機能を発揮して、寄贈図書も含めて、学校図書資料を有効に活用していくことが大変大事であるわけでございます。
 文部科学省といたしましては、そうした貴重な図書が死蔵ということにならないように、それぞれの学校において、学校図書館あるいは図書資料の計画的また有効な利活用が図られ、児童生徒の主体的な読書活動、学習活動が展開されるように、さまざまな施策や指導を通じて促してまいりたい、かように考えているところでございます。
林(省)分科員 ぜひそのあたりのところのしっかりとした御指導をお願いしたいと思います。
 少なくとも、いわゆる日本の国語教育の中でも、これは一つは国語だけが負うべき問題ではないと思うんですけれども、読書指導なる言葉そのものも極めて新しい言葉でございます。これまで、読書の指導をするとか、読書を指導しなきゃいけないというような表現は、国語の中で、いわゆる学習指導要領の中で出てきたわけでありますけれども、実は私もこれはびっくりしたんですけれども、昭和四十二年の小学校の学習指導要領、この改訂が行われたときに、読むことの領域が、いわゆる読解指導的な領域、読書指導的な領域というふうに分かれた。読書指導という言葉そのものはここからでございます。いわゆる四文字の熟語で読書指導というふうに出てきたのは、実はここからなんですよ。それほど、いわゆる読書指導なんというようなのは新しいことでございまして、いろいろな方法で、もちろん、論語の素読あたりから、寺子屋におけるような教育の場面から、いろいろなところで日本の国語教育というのはずうっとなされてきたわけでありますけれども、しっかりと読書指導ということを掲げて、これを大事にしなきゃいけませんよということを言い出したのは本当にまだまだ歴史も浅いということでございます。
 いずれにしても、読書によって、先ほど申し上げた子供たちの理解語彙が急激に伸びます。一年間に百冊以上、いわゆる学校の勉強以外に本を読んだ子供たちの伸びを私は調査したことがあるんですけれども、抜群に伸びまして、一年間でおよそ三万語から四万語身につけます、中学生ぐらいで。それぐらいに伸びまして、それをずっと三年間やってきた子供というのは、理解語彙が大体二十万語ぐらいになります。三年間ぐらいで成人のおよそ四倍ぐらいに伸びます。
 それぐらいに効果のあることでございますから、読書をさせる、そしてこの感想を書かせる、語らせる、非常に多機能的に読書そのものを使っていただきたいわけですね。読んで、はい、こうでした、おもしろかった、楽しかったじゃなくて、それを語る、人前で語る、あるいは感想文に書かせる、これで、先ほど申し上げた四つの柱の何本かができてくるわけでございますから、そういう御指導もあわせて、できれば、推進法と同時に、大臣からの諮問ででも結構ですから、そういうことを総合的に、まさに総合的学習なんですから、読書もできるだけ総合的な学習としてとらえていただくような御示唆もお与えをいただけると、さらにこのゆとりの教育というのが有効に活用できていくのではないかというふうな気がして私は仕方がございません。
 大切な、日本の将来を担う青少年の教育でございます。ぜひ、しっかりと目もつけていただいて、御指導もしていただいて、よりよき学習効果が上がることを心より期待いたすものでございますが、最後に大臣の一言、そういうものを踏まえたゆとりの教育の推進といいますか、ゆとりの教育をできるだけしっかりと文部科学省として指導していきますよということをお聞かせいただいて、私の質問を終わりたいと思います。一言お願いいたします。
遠山国務大臣 大変含蓄のある、内容に深いもののある御指摘でございました。十分、委員の御指摘のようなことを考えまして、しっかり取り組みたいと思います。
 幸いに、子ども読書推進法も成立し、そして、先般の「学びのすすめ」でも朝の読書について触れましたし、また、中教審の教養教育のあり方についての答申にも、そういうことの、読み書きなどの重要性についても触れられました。
 次第にその機運は整ってまいっております。そのことを、その時を移さず、内実ある教育といいますか、そういうものを目指して、心して取り組んでまいりたいと思います。
林(省)分科員 どうもありがとうございました。どうぞ、ひとつよろしくお願いを申し上げます。
伊藤主査 これにて林省之介君の質疑は終了いたしました。
 この際、暫時休憩いたします。
    午前十時四十六分休憩
     ――――◇―――――
    午後五時開議
伊藤主査 休憩前に引き続き会議を開きます。
 民主党・無所属クラブ及び日本共産党所属の本務員の御出席が得られません。やむを得ず議事を進めます。
 他に質疑の申し出がありません。
 これにて本分科会所管の審査はすべて終了いたしました。
 これにて散会いたします。
    午後五時一分散会


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