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第1号 平成16年3月1日(月曜日)

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本分科会は平成十六年二月二十五日(水曜日)委員会において、設置することに決した。

二月二十七日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      小杉  隆君    玉沢徳一郎君

      町村 信孝君    吉良 州司君

      小泉 俊明君    筒井 信隆君

二月二十七日

 小杉隆君が委員長の指名で、主査に選任された。

平成十六年三月一日(月曜日)

    午前九時三十分開議

 出席分科員

   主査 小杉  隆君

      玉沢徳一郎君    町村 信孝君

      大出  彰君    小泉 俊明君

      高山 智司君    筒井 信隆君

   兼務 西村 康稔君 兼務 山際大志郎君

   兼務 島田  久君 兼務 西村智奈美君

   兼務 増子 輝彦君 兼務 高木美智代君

   兼務 西  博義君 兼務 古屋 範子君

   兼務 吉井 英勝君

    …………………………………

   文部科学大臣       河村 建夫君

   文部科学副大臣      稲葉 大和君

   文部科学副大臣      原田 義昭君

   文部科学大臣政務官    田村 憲久君

   文部科学大臣政務官    馳   浩君

   政府参考人       

   (文部科学省大臣官房長) 白川 哲久君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           小田 公彦君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          銭谷 眞美君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          近藤 信司君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            遠藤純一郎君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局私学部長)         加茂川幸夫君

   政府参考人

   (文部科学省研究振興局長)            石川  明君

   政府参考人

   (文部科学省研究開発局長)            坂田 東一君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        田中壮一郎君

   政府参考人

   (文化庁次長)      素川 富司君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課長)  谷口  隆君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁原子力安全・保安院審議官)   薦田 康久君

   文部科学委員会専門員   崎谷 康文君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君

    ―――――――――――――

分科員の異動

三月一日

 辞任         補欠選任

  吉良 州司君     小宮山泰子君

  小泉 俊明君     高山 智司君

同日

 辞任         補欠選任

  小宮山泰子君     藤田 一枝君

  高山 智司君     若泉 征三君

同日

 辞任         補欠選任

  藤田 一枝君     中根 康浩君

  若泉 征三君     大出  彰君

同日

 辞任         補欠選任

  大出  彰君     城井  崇君

  中根 康浩君     吉良 州司君

同日

 辞任         補欠選任

  城井  崇君     小泉 俊明君  

同日

 第一分科員西村康稔君、古屋範子君、第三分科員西村智奈美君、高木美智代君、西博義君、第五分科員島田久君、第六分科員増子輝彦君、第七分科員山際大志郎君及び第八分科員吉井英勝君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十六年度一般会計予算

 平成十六年度特別会計予算

 平成十六年度政府関係機関予算

 (文部科学省所管)


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     ――――◇―――――

小杉主査 これより予算委員会第四分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりました。よろしくお願いいたします。

 本分科会は、文部科学省所管について審査を行うこととなっております。

 平成十六年度一般会計予算、平成十六年度特別会計予算及び平成十六年度政府関係機関予算中文部科学省所管について審査を進めます。

 政府から説明を聴取いたします。河村文部科学大臣。

河村国務大臣 おはようございます。

 平成十六年度文部科学省関係予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 平成十六年度予算の編成に当たっては、厳しい財政状況のもとではありますが、我が国が二十一世紀において活力ある国家としてさらに発展し、子供たちが夢と希望を抱くことのできる明るい未来を切り開いていくためには、教育・文化立国と科学技術創造立国を実現することが極めて重要であるとの観点から、教育改革、科学技術・学術の振興、スポーツ、文化芸術の振興にわたる総合的な施策の展開を図ることのできる文部科学予算の確保に努めてきたところであります。

 文部科学省所管の一般会計予算額は六兆五百九十九億二千五百万円、電源開発促進対策特別会計予算額は一千五百三十六億六千四百万円となっております。

 以上、何とぞよろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。

 なお、これらの具体の内容につきましては、お手元に配付しております資料のとおりでありますが、時間の関係もございますので、主査におかれましては、会議録に掲載されますよう御配慮をお願い申し上げます。

小杉主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま文部科学大臣から申し出がありました文部科学省所管関係予算の概要につきましては、その詳細は説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小杉主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小杉主査 以上をもちまして所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

小杉主査 この際、分科員各位に申し上げます。

 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願いいたします。

 なお、政府当局におかれましては、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山際大志郎君。

山際分科員 自由民主党の山際大志郎でございます。

 私は、国民の代弁者として、きょうは、主に文部科学行政に関しまして政府及び文部科学省に質問いたします。

 まず初めに、教育基本法の改正について質問いたします。

 教育基本法は、昭和二十二年に施行されまして、以来、半世紀以上たって一度も改正されたことがない、こういった法律でございます。この間の社会の劇的な変化に伴い、教育基本法も改正するべきではないか、こういった議論が成熟しつつあると私も考えております。

 特に、この間の現状、今の日本の現状を見ますと、日本は非常に大きな問題を抱えている。私も地元等々でお話をしておりますと、家庭も崩壊しているし、地域社会も崩壊している、あるいは学校も崩壊している、このようなことを毎日のように私は有権者の方々から伺っております。

 こういった状況にありまして、国家観あるいは公共に対する心、あるいはまた道徳心、または隣人や家族に対する愛情、こういったものが大きく崩れている。この現状を踏まえた上で、早急に教育基本法を改正しなくてはいけないのではないか、このように私自身考えております。

 昨年の三月に中央教育審議会において答申というものが行われてから一年たとうとしておりますけれども、この間に一体どのようなことが行われてきたのか、そして、この教育基本法を改正するに当たりましてどのようなプロセスをもって我々は進んでいくべきなのか、これは政府の強い意志というものもあわせてお示しいただければと思います。

河村国務大臣 山際委員御指摘のとおりでありまして、この教育基本法、昭和二十二年に制定されて以来五十七年有余、今日、一度も改正されることなくやってまいりました。

 この間、日本の経済社会は大きく変動しております。今の学校教育についてもいろいろな問題が指摘をされておる、この時点でありますから、教育の根本から見直すという動きが出てきて当然でありますし、また、それをやっていかなきゃいけない、このことが重要になってきておる、私も全くそう思っております。

 そういうことで、この教育基本法の改正については、歴代の内閣も教育の構造改革の一環であるという観点でこの問題をずっと取り上げてきておったところでございますが、特に小渕内閣のとき、本格的に、教育改革国民会議が持たれまして、ここで活発な議論が行われて、やはり新しい時代にふさわしい教育基本法が必要であるという話がなされたわけでございます。これを受けた形で、森内閣、さらに現小泉内閣において本格的な取り組みがなされまして、そして、遠山前大臣のもとで中央教育審議会に対して諮問をいたしまして、その答申を御指摘のとおり昨年の三月に受けたわけでございます。

 もうあれから一年たとうといたしておるわけでございまして、新しい時代にふさわしい教育基本法のあり方について、こういう形で答申をいただきました。

 この答申の中では、今日の教育基本法は十一条から成っておりますが、その基本概念といいますか、教育は人格の完成を目指すという基本概念、こういう大事な理念というものは引き続き尊重しながら、さらにこれからの時代に必要なものとして、例えば、個人の自己実現と個性、能力とかあるいは創造性を涵養していく、あるいは社会の形成に主体的に参加する公共の精神とかあるいは道徳心をどうするか、あるいは日本の伝統、文化の尊重、郷土や国を愛する心を養成して国際社会の一員としての意識を持っていく、あるいは家庭教育の役割の重要性、また家庭と学校そして地域社会、この連携を強めていこう、こういうような問題、それからさらに、こういう基本的なことを考えながら具体的に教育振興基本計画をつくっていく必要がある、こういう指摘をいただいたところでございます。

 これを受けて、文部科学省としては、これを法案化して、国会にお出しして議論をしていただく、そのことによってまた国民全体が教育を根本から見直そうという大きな運動にしていかなきゃいけない、こう思っておるところでございまして、そのような取り組みを、これまでも文部科学省も、全国各地で教育改革フォーラムであるとかあるいは政府主催のタウンミーティング等々において、教育基本法に対する国民的な理解、そしてこれを深める取り組みをやってきたところでございます。

 また、与党内におきましても、昨年五月以来、与党教育基本法改正に関する協議会及び検討会が持たれておりまして、教育基本法の改正に向けて議論が今深められております。

 また、中教審答申を踏まえながら、文部科学省としては、国民的な議論をこれからもさらに高めていきたい、こう思っておりますし、また、今与党で行われているこの協議会、この結果を踏まえて、教育基本法の改正をできるだけ早くこの国会にと今は願っておるところでございまして、私ども、総理からも、この与党間の協議についても、大臣としても積極的にこの調整に取り組むようにと言われておりまして、努力をいたしたい、こう思っております。

 教育の憲法と言われる大事な基本法でございますから、慎重な議論は必要でございますが、今の教育の現状を見たときに、早く国会に出させていただいて国民的な議論を起こしていかなきゃいかぬ、このように思っておりまして、積極的な取り組みをいたしたい、このように思っておるところであります。

山際分科員 先日、自由民主党の立党五十年の基本理念の講演におきまして、中曽根元首相から、憲法は体であり、教育基本法は心である、ですから、この二つを両輪として同時にこれを改正していくことが望ましいのではないか、こういった御意見も賜りましたし、私自身も、この教育基本法、本当に重要だと考えております。

 ところが、国民の目から見ますと、どうしても、この改正というもののスピードが非常に遅い、このように見えることも間違いがないことだと思いますので、ぜひなお一層のスピードアップをお願いいたします。

 次に、義務教育費の国庫負担金の一部を一般財源化するという法案が今国会に提出されました。具体的には、公の学校の教師の退職金そして児童手当、これを地方に移譲するという法律案であります。この件に関連いたしまして、危惧するところがございますので、質問をいたします。

 そもそもこの教育というものに関しましては、憲法第二十六条や教育基本法において規定されているとおりに、国民はひとしく教育を受ける権利を有している、このように明記されております。さらに、昭和二十七年に施行されました義務教育費国庫負担法のその目的のところに、「義務教育無償の原則に則り、国民のすべてに対しその妥当な規模と内容とを保障するため、国が必要な経費を負担することにより、教育の機会均等とその水準の維持向上とを図る」このように明記されているわけでございます。

 ところが、今回の法案、政府の三位一体の改革に基づいて、国庫負担金のうちの退職金それから児童手当を地方に移譲するというようなことになります。

 さらには、総務省、財務省、文部科学省、この三大臣の合意によれば、平成十八年度末までの検討課題といたしまして、「義務教育費に係る経費負担の在り方については、現在進められている教育改革の中で義務教育制度の在り方の一環として検討を行い、これも踏まえつつ、「改革と展望」の期間中(平成十八年度末まで)に国庫負担金全額の一般財源化について所要の検討を行う。」このようにあります。

 これに対して、文部科学省からは、義務教育費国庫負担制度の根幹は堅持する、このようにありまして、具体的に、教職員給与費の実支出額の二分の一負担の原則を引き続き堅持、標準法により各都道府県ごとに必要な数の教職員を引き続き確保、あるいはまた、人材確保法に基づく教職員給与水準を引き続き確保していく方針、このようなことですが、私は、これに実は非常に大きな不安を感じております。

 と申しますのも、結局、今回も、財務省と総務省の圧力に抗し切れずに、義務教育費の国庫負担金、一部分ですけれども、一般財源化する、こういった運びになってしまいました。これは、三大臣の合意によって、平成十八年度末までに全額においても検討するという話になっているわけですから、平成十八年度末、終わってみたら、ふたをあけてみると、結局、義務教育費すべて地方に移譲する、このようなことになりかねないのではないか、このような危機感を私は持っております。

 私自身は、憲法にもうたわれていますとおりに、義務教育というものは国が責任を持って、国が主導であくまでも行うべきものであり、財源もある程度は国がしっかりと面倒を見ていかなくてはいけないのではないか、このような考えを持っておりまして、もちろん、文部科学省あるいは政府もそのような考えを持ってくれているのではないかというような考えを持っておりましたが、しかし、この三大臣の合意というものを見ると、その不安というものが尽きないわけでございまして、ぜひもう一度、絶対に国庫負担金を譲らないといった強い意思を表明していただきたい、このように思う次第でございます。

原田副大臣 山際委員から力強いお言葉をいただいたところであります。

 改めて憲法二十六条を読んでみますと、「その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」さらに、第二項では、その保護する子女に対して普通教育を、義務教育を受けさせる義務を負う、しかも、その義務教育は国の責任で無償とする、こういうことを高らかにうたっておるところであります。この憲法の要請によって、国は、知育、徳育、体育、調和のとれた児童生徒を育成し、国民として身につけなければならない基本的、基礎的な資質をすべての子供たちに教育する、こういうことが言われておるわけであります。

 その義務教育を進めていく上において、どうしても維持しなければならないのは、すべての地域においてすぐれた教員を一定数以上確保する、これにかかっておるわけであります。御指摘のように、義務教育費国庫負担制度というのは、そういう観点から、地方性、地方公共団体の財政力の格差にかかわらず、全国のすべての地域において優秀な教職員を必要数確保する、そのことによって、教育の機会均等、さらに教育水準の維持向上が図られるようにされておるところであります。

 御指摘いただきましたように、ただ、この義務教育費国庫負担制度については、この数年、あり方についていろいろな議論がされてきているのは事実であります。昨年六月のいわゆる骨太方針二〇〇三、この内容は、義務教育に関して地方の自由度を大幅に拡大すべきだ、こういうような記述があるわけであります。ただ、どちらかというと財源論が色濃く出ているのも事実でありまして、私たちは、これに対して、教育論としてしっかりこれを議論していかなきゃいけないなということから、昨年の五月に、中央教育審議会にこのことをきちっと検討を依頼しておるところであります。

 私たちは、こういう検討を踏まえながら、しかし、何といっても、冒頭に申し上げましたように、憲法上の要請、国が最終的にきちっと責任を持たなければいけないんだという観点から、当然、必要な見直しは行わなければいけませんけれども、その基本はいささかも忘れることなく堅持しなければならない。

 確かに、各大臣間のいろいろな議論はございます。しかし、その都度、私たちは今のような考え方を申し上げておりますし、これからもその基本の堅持ということはいささかも揺るぐことなく頑張りたい、こう思っていますので、どうぞ委員各位におかれましても、私ども文科省の考え方をしっかりと御支援、御支持いただきたい、こう思っております。

 以上であります。

山際分科員 具体的に、総務省、財務省というものが相手になりますと、どのような形で交渉を進めていけばいいのかということが今この場で示されることではないのかなというふうには考えはするんですが、しかし、外から見ていても非常に力の強い省庁であることは間違いありませんし、財務省主導で、特に財源論という話になりますと今まで押し切られてきた経緯がございますので、これは最後のとりでだと私は思うんです。ここの部分が切り崩されてしまったら、本当に均等なレベルの教育を国民に広く、あまねく提供するということはもうできなくなってしまう。ぜひ、ここの部分をもう一度確認しまして、全力を尽くしていただきたい、このように思う次第でございます。

 少し質問の内容を変えます。

 私自身、選挙区、自分の地元におきまして、いわゆるサラリーマン層の方々がたくさん住んでいらっしゃる事情もあるのかもしれませんが、親御さんたちにお話を伺っておりますと、公立の小学校や中学校、高校、こういった公立の学校に通わせるよりも、経済的にもし余裕があるのであるならば私立の学校にむしろ通わせたい、このようなことをおっしゃる父兄の皆さんが非常に多い、私自身はそのように感じております。

 これにつきましては、感覚的なものとして私は感じているんですけれども、どのような感覚を文部科学省としてはお持ちなのか、お尋ねいたします。

近藤政府参考人 お答えいたします。

 近年、私立の小中学校への進学希望が増加をしているということが巷間言われておるわけでございますが、少し私どもも統計を調べてみましたらば、在校生徒の割合で見た場合には、最近、少子化でございますから全体の児童生徒数は確かに減少しておるわけでございまして、やはり公立学校の児童生徒数は減ってきておるわけでございますが、一方、私立学校に通う在学生の数はふえてきている、若干その割合が増加をしてきている、こんなような状況にあろうかと思っております。

山際分科員 具体的に意識調査という意味で、実数ではなくて意識調査という意味でこれを試みたことはあるのか、教えてください。

近藤政府参考人 特に意識調査はしておりません。

山際分科員 私の地元であります川崎市というところは、東京のベッドタウンですから、まさに私立の学校もたくさんありますし、選択ができる場であるというふうには私も思うんですけれども、経済的に許すならば私立の学校に子供を通わせたい、こういった親御さんの方がずっと多いという感触は、私自身、やはり公の教育そのものに何かしら問題があるのではないかと考えなくてはいけない、このように思うわけでございます。

 そこで、では、なぜ今、公立の学校の評価が低くなってきてしまっているのか。これは、現実に公立の学校に行きたくないという人がいるからには何か理由があるわけでございまして、そういった調査というものはやっているんでしょうか。

近藤政府参考人 特にそういった調査はしていないわけでございますが、一般に、私立の小中学校への進学希望が増加をしていると言われる要因といたしましては、私立学校は独自の建学の精神に基づく個性豊かな教育活動を行っている、あるいは私立学校は多様化する国民のニーズに柔軟に的確に対応した学校経営を行っている、こういったようなことが考えられるのではないだろうか、そういうふうに承知をいたしております。

山際分科員 実は、私自身、御父兄の皆さんとお話をしますと、そういった抽象的なことではなくて、もう少し具体的なことでいろいろと公の学校に対する不満というものが出てきます。

 これは当然お耳に入っていることだと思いますけれども、一番多い不満というのは、先生の質が下がっているということでございます。

 さらには、ゆとり教育というものが進められてきてしまったことによって子供の学力が非常に低下してしまう。これは実際にどうかということではなくて、親御さんがそういうふうに感じている。公の学校に通わせることによって自分の子供の学力が低下してしまう、そういう危機感を持っているということでございます。

 さらに、これは親の都合も多分にあるのかなというふうには思いますが、土曜日、学校がお休みになっていて、これもまた子供の学力を低下させる一因になってしまっているのではないか、このような危機感を持っていらっしゃる方が多くいる。

 私自身、これは実際に親御さんから聞いてきた話でございますけれども、この意見に対してはどのようにお考えでしょうか。

近藤政府参考人 特に公立学校の教員の質が低下をしてきているのではないか、こういう御指摘、あるいはゆとり教育による学力低下、あるいは学校週五日制。

 私ども、例えば学力低下の問題につきましても、本当に学力が低下しているのかどうか、これはやはり、きちっとした学力調査でありますとかそういったもののデータによって御議論をしていただく必要があるのではないだろうか。

 また、学校週五日制につきましても、平成四年度から月一回実施をしたわけでございます。当時、PTAを通じたりしての世論調査をいたしましても、保護者の方々は、学校週五日制について消極的な意見が大変多かったわけでございます。そういったことで、例えば学校週五日制につきましても、ちょうど十年かけて、いろいろな条件整備をしながら、あるいは保護者の方々に御説明をしながら、段階的に実施をしてきた。ただ、まだまだ確かに学校週五日制の導入の問題につきましても私どもの説明が十分でなかったところもあるのではないかと思っております。

 いずれにいたしましても、そういった問題につきましては、しっかりと国民の皆様方に御理解を得べく努力をしながら、一方ではまた、公立学校の活性化にも私ども努力していかなきゃいかぬかと思っていますが、そういった形で、いわゆる公立離れが起きているのではないだろうか、こういった問題への適切な対応をしていく必要があるのであろう、こんなことを考えているところでございます。

山際分科員 そもそも、平成四年から週五日制を導入しようとしたときに消極的な考えを持っている親御さんが多かったというところからいたしましても、なぜ、消極的な意見が多いのに、それを押し切ってまで、十年もかけて平成十四年度からこれを全面的に導入するということをする理由があったのか、そこの部分を御説明いただきたいと思います。

近藤政府参考人 一つは、確かに教員の週休二日制というような問題もございました。それから、これは委員も御案内のとおりでございますが、世界のほとんどの国でもう既に学校週五日制を導入しているわけでございまして、土曜日、日曜日のこの二日間の中で、世界各国ではいろいろな子供たちのための体験活動等も起こっているわけでございます。なぜ我が国の子供だけが土曜日も学校に行かなければならないんだろうか、そういう教育論からもいろいろ御議論があったわけでございます。

 確かに、先生おっしゃるように、その当時、世論調査でも、保護者の方々にアンケート調査をいたしますと、先ほどおっしゃいましたように、学力が低下するのではないだろうか、あるいは、土曜日、子供が盛り場等に徘回いたしまして非行がふえるのではないだろうか、あるいは、まだまだ中小企業では土曜日にお父さん、お母さんは働いているんだと。

 したがいまして、私どもも、これはまず月一回から段階的に実施をし、いろいろな条件を整備しながら、やはり世界の流れでもあるこの学校週五日制を導入していこう、こういうことで取り組んできた、こういった経緯があるわけでございます。

山際分科員 ここで議論をしていても結論が出る話ではないと思うんですけれども、しかし、やはりこれは、今の御答弁を聞いておりましても、世界の趨勢がどうだから我が国の教育を変えるというような説明では到底納得できないわけでございまして、日本という国が戦後これだけ目覚ましい復興を遂げたのも、当然、小学校から高校に至るまで、週に六日学校に行って勉強をするということが貢献していると私は思いますし、世界に対して自慢ができる制度としてなぜ残すことができないのか。

 私は、今の説明ではちょっと納得しかねる部分がございますし、何よりも、私が有権者の方々と、親御さんたちとお話をしているときに、週五日しか行かないというのはやはりおかしいよ、このようなことを皆さんがおっしゃる。これはやはり、私たちは真摯に受けとめて、もう一度見直しをするべきではないか、このように思います。

 また、近年、脳科学という分野の科学が進んでまいりましたけれども、この脳科学という分野におきましても、大体、人間の脳の発達というのは、三歳までのステージと、それから次に十歳以降のステージという二段階に分かれて、十歳ぐらいまではどんどんどんどんと、それこそ詰め込み教育でも何でも、脳は物事を吸収することができるステージだということがわかりつつある。

 こういった科学的知見からいたしましても、私は、少なくとも小学校の低学年まではしっかりと学校において反復学習、読み書きそろばんと言われますけれども、そういったものをするべきなのではないか、このように考えますので、ぜひ週五日制の学校の制度というものはもう一度御検討をしていただきたい、さらには、しっかりと意識調査というものをやっていただきたい、このように思う次第でございますが、いかがでございましょうか。

河村国務大臣 そういう御意見があることは、私も承知いたしております。

 学校五日制の考え方をどうとるかですが、学力の考え方もいろいろな幅がありまして、確かに、小さいときにしっかり脳をたたくといろいろ入ってくるということもあります。

 しかし一方では、私も総理から、これからの教育改革については、知徳体、食育を重視した人間力向上の教育改革を、こう言われております。

 だから、いわゆるエリートをつくるのも必要でありますし、しかし、日本人としてやはり全体のレベルを上げる、そして人間力を高めるという教育も必要でございますので、これからは、むしろ、この土曜日の休みをどのように活用するか。今度、新しい予算に子供の居場所づくりなんということも考えておりますが、私は、この方が非常に重要になってくるのではないか、この中でもっと人間力を磨く教育ができるのではないか、このように考えておりまして、教育を総合的に考える上で、この五日制というものの取り組みをもっともっと真剣に考えていく必要があろう、このように思っております。

山際分科員 確かに、教育の話ですから、学力だけではかることはできない、これはもうおっしゃるとおりでございまして、私もその意見には賛同いたします。

 しかし、二十一世紀に入りまして、国際競争社会というものが非常に激化している状況がございます。中国や韓国の台頭というものもあって、必ずしももう日本はアジアの中でもナンバーワンの国ではなくなってきている現状があります。

 こういった非常に激しい国際競争社会の中で、国際競争力を持った日本人をこれから我々ははぐくんでいかなくてはいけない、こういった責務を負っているわけでございまして、その国際競争力の大もとにあるものは一体何なのか。これは間違いなく基礎学力なわけでございます。

 ですから、私は、基礎学力というものを犠牲にしてしまった上で、人間力であるとか、たくましい日本人であるとかというようなことを議論してもそれは間違っている、このような意見を持っているわけでございます。

 これから二十一世紀、私たちがどのような日本人をつくっていかなくてはいけないのかということを真剣に議論する、その一環といたしまして、もう一度、この部分も考えていただければと思う次第でございます。

 時間がやってまいりましたので、私自身の質問をこれにて終わらせていただきます。ありがとうございました。

小杉主査 これにて山際大志郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、吉井英勝君。

吉井分科員 日本共産党の吉井英勝でございます。

 私、きょうは、最初に宇宙放射線被曝問題について質問をしたいと思います。

 報道等でも紹介されておりましたが、去る二月六日に、河村文部科学大臣に、日本乗務員組合連絡会議と客室乗務員連絡会より、「航空機乗務員の宇宙線被曝防護に関する再度の要請」というのが提出されているということであります。

 私は、九五年の当時の科学技術委員会で、法案審議のときに、ちょうど私なんか大阪の方ですから、東京―大阪間、新幹線に乗りますと、大地放射線を一番受けるのがトンネルの中ですから、新丹那トンネルだとか、被曝線量が一番少ないのは、浜名湖の上ですと大地放射線が水で吸収されておりますから少ない、アメリカやヨーロッパへ行くときの国際線に乗りますと宇宙放射線で非常に被曝線量がふえる、放射線対策というのは、余計なものは受けない、被曝しない、その取り組みが一番大事だということをお話ししたことがあります。ちょうどこの審議で、参議院審議のときには、うちの日本共産党の西山登紀子議員の方がこの問題を取り上げております。

 当時、ちょうどあのときは笹谷さんが局長さんのときですが、答弁の中で、一九九〇年のICRPの勧告採択を受けて、放射線審議会で、国内法にどのように取り入れるか、職業被曝の実効線量の基準と公衆被曝の線量限度、女性の職業被曝の線量限度、作業場所、自然放射線による被曝や内部被曝線量測定と評価など、検討の真っ最中だという答弁でした。航空機乗務員等に関する審議では、データの収集、航空機内での線量レベルの測定方法、その管理など「現在総合的に審議されている」という答弁でありました。

 この九〇年の勧告からすると、十四年たつわけですね。私たちが国会でこれを問題にしたときから九年たっております。ですから、審議会の方でも十年以上ずっと審議をしてきているわけですね。その成果として、今、何がどうなっているのか、最初にこのことを政府参考人に伺っておきたいと思います。

小田政府参考人 お答え申し上げます。

 航空機乗務員の被曝につきましては、自然放射線による被曝のうち、四つのことにつきましては職業被曝として位置づけるということで、国際放射線防護委員会、ICRPの勧告でも指摘されておりまして、我々も重要な課題だと認識しております。

 先ほどの、その放射線審議会の意見具申におきましても、一九九八年の六月でございますが、「乗務員の被ばくが一定の線量レベルを超えることがある場合には、適切な管理を行うことが必要である。」と。さらに、その測定方法、線量評価方法についてより詳細な調査、検討を行う必要がある旨述べている次第でございます。

 このことから、当時は科学技術庁でございましたが、科学技術庁の放射線医学総合研究所などにおきまして、航空機内の線量レベルに関しましては、その測定方法、さらに宇宙線の中心は陽子でございますが、陽子が中性子を引き起こすということで、その中性子の線量評価といったものにつきまして、詳細な調査検討を行う必要があるということで、現在行っている次第でございます。

 以上でございます。

吉井分科員 詳細な調査検討というのは当然なんです。勧告が出て十四年になるんですね。私たちが国会で問題にしまして九年になるんです。ですから、それが九年かかって今のお話では、何か、今一生懸命やっているようなお話ですが、これは余りに遅過ぎるんですね。

 それで、航空機乗務員等に関する審議では、データの収集、航空機内での線量レベルの測定方法、管理など「現在総合的に審議」としたその結果として、今、例えば季節による問題もあれば、緯度の高さによる問題だとか、路線による問題だとか、データはそれぞれ変わってくると思うんですね。データはどういう収集をされて、それを踏まえて国内の法律や規則の中で航空機乗務員の宇宙線被曝を職業被曝だときちっと位置づけるということになったとすると、例えば、たしか今、妊婦の方の場合は腹部のところで、これは二ミリシーベルト、ドイツは一ミリシーベルトですね、ですから非常に基準が甘いわけですね。だから、こういうものを線量基準も明確にして、どういうふうに今やっていこうとしているのか、ここのところが非常に大事なわけであります。

 これについてはどういう状況ですか。

小田政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどの、どのような調査ということでございますが、特に放射線医学総合研究所におきまして、まず研究経過でございますが、まず、国内線につきましては、モデルによる計算と実測値の比較を評価いたしておりまして、国内線の片道では平均値は二・五マイクロシーベルト以下というふうに推定されております。また、主要な国際線についても、六十航路程度でございますが、被曝線量を実測してございまして、例えば成田―パリでは約十二時間の飛行経路で三十八マイクロシーベルトといったような値が得られておりまして、現在、個人モニター、線量計につきまして中性子モニターを開発中でございます。技術的にはほぼ完成してきておりまして、小型化、長時間使用のためのバッテリーの開発なども行っているところでございます。

 さらに、先ほどの線量の算定につきまして、先ほどの緯度あるいは太陽のソーラーフレアといったようなものの状態で左右されるわけでございますが、さらにこの実測データをふやすということで、この点につきましては大変時間がかかるということでございまして、そのために、モデル計算、計算によってその線量ができるようにするということで、モデル計算の精度向上といったことに今努めている段階でございます。

 放射線医学総合研究所の方につきましては、平成十七年度までにその防護のためのガイドラインを検討して提案する予定と聞いておりますので、そういったものを受けまして、放射線審議会で必要な議論をし、関係府省と連絡をとりながら十分この対処をしたいと考えてございます。

 以上でございます。

吉井分科員 二〇〇五年までのお話も今あったわけですけれども、放射線発生装置とかあるいは放射線源を置いて実験をするような場合というのは防護する対策をとれるわけです。しかし、航空機内の宇宙線防護というのは簡単な話じゃないわけですね。そうすると、一人一人の乗務員の方の線量測定と記録管理をきちんと行って、トータルの被曝線量が基準値を超えたら、一定期間は被曝しない場所でとか被曝の少ない路線だとか、いろいろな健康管理に取り組まなければいけないというのは当然だと思うんですね。

 今のお話は〇五年までのお話なんですが、例えば、今度、放射線障害防止法一部改正なんかも検討をしておられるわけですが、そこでは、こういう職種、職業被曝ということをきちっと位置づけ、そして健康管理に必要な線量の基準もきちんと明確にするとか、そういうことは考えているんですか。

小田政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま先生が御指摘いただきました放射線審議会の提言の中で上っております規制の除外と免除といった考え方につきまして、いわゆる基準の下限値を定めるということで、これにつきましては、規制の基本となるということで優先的に議論すべきだろうということで、特に国際的にもIAEAが提言してございますので、それに基づきまして放射線審議会の方で精力的に審議いただきまして、その提言を一昨年いただいておりまして、それにつきまして、今回法律に改正するべく、今、政府内で準備している段階でございます。

 その議論の中では、航空機乗務員の被曝の問題につきましては、その次の長期的課題、今現在調査している段階であるということで、それを踏まえて議論をするということになってございます。

吉井分科員 長期的課題ということなんですけれども、大臣も聞いてはって大体おかしいなとお感じだと思うんですよね。

 十四年前なんです。このICRP九〇年勧告の中では、はっきりしているんですが、今出ておりました規制の除外についてももちろんあるんですが、同時に、規制除外されない自然放射線という中には、ジェット航空乗務員、旅行会社等の添乗員も職業被曝の範囲にきちっと入るんだということで、もう十四年前に出ているんです。何か、今度少しちょこちょこっといじくって、それから長期的課題でというふうな、そんな話じゃないんですね、十四年間という長期にわたって取り組んできた話ですから。

 私は、これは大臣、一般公衆の被曝限度は年間一ミリシーベルトですが、これに対して国際線の乗務員の方の場合は、大体年間、人によるにしても、八百時間の勤務として、高度一万メートル以上を飛び続けると約三ミリシーベルトの被曝ということになるんです。今、問題によくなります原発労働者の平均年間被曝線量が一ミリシーベルトぐらいなものですから三倍と、物すごく多いわけですね。しかも、女性の方、妊婦の方のそういう被曝をどうして低減するかとか、その考えたことをやはりこのICRP勧告を受けて法律できちんと書いて、航空会社に対しては、乗務員の被曝低減化とそのための被曝線量の測定、記録、管理、防護対策をとるように義務づけていく。やはり今、そういう取り組みというものが国際的にも進んできているときですから、日本としてもそれをやる必要があると思うんですね。

 ここは大臣の方に政治的にきちんと判断をして臨んでいただきたいと思います。大臣、どうですか。

河村国務大臣 吉井委員御指摘の点でありますけれども、今、審議官から御答弁申し上げましたように、今国会での法律案提出予定の中では、国際原子力機関等に定められた規制対象外の下限値を定めるというところでありまして、放射線障害防止法の改正を行うということにいたしておるところでございますが、今御指摘のパイロット、いわゆる航空機乗務員の職業被曝、特に自然放射線の問題、これについては確かに御指摘の問題がありますので、これは、国際動向、それから、さらに調査する点もございますし、それから、厚労省、国土交通省との関係もございまして、この連携をとりながら、ここ一、二年のうちにきちっとしたガイドラインを出したい、こう思っておるところでございまして、この問題について、そういう意味で前向きに取り組んでいかなきゃいけない課題だ、このように認識いたしております。

吉井分科員 前向きに取り組むというお話は、悪いけれども、九年前にも国会で、当時の大臣もやはり言うてはるわけです。

 それで、十四年間ずっと、関係省庁間で連携をとって取り組んできたはずなんですね。しかし、これがおくれているから、私は、この際、きちんとした取り組みをやってもらいたいと思うわけです。

 特に、生涯をパイロットとして空で働く方、客室乗務員として働く方たちは、長期被曝の蓄積、そして人体への影響と対策というものが明らかにされていくことも願っておられますし、さっきもお話ありました、太陽活動が活発になるときの宇宙線の航空機乗務員への影響はどうなるとか、そのときにどう被曝線量を少なくするようにするとか、これは国際的にも協力して取り組んでいくということも必要な課題でもありますが、同時にやはり、これは国として必要な解明に全力を尽くして取り組む、当面の職業被曝の問題はきちっと法律、規則を整備するということとあわせまして、そういう必要な解明に国として全力を挙げて取り組む。それも、こういう航空機の時代ですから、本当に速やかに解明ができるような、そういう力を入れた取り組みというものを大臣に求めておきたいと思います。

河村国務大臣 御指摘の点も踏まえて、関係省庁とのしっかりした連携のもとで取り組んでまいりたい、このように思います。

吉井分科員 次に、高速増殖原型炉「もんじゅ」について。

 これは日本の高速炉の研究開発ということにかかわってくる問題ですが、国と核燃料サイクル開発機構は高速炉「もんじゅ」の再開を今急いでいますね。工事費はこれから工事する分で概算百八十億ぐらいですと一昨々日お話を伺っておりますが、高裁判決で、「もんじゅ」の設置工事を国が許可したことを無効としています。今、国の方は最高裁で争うということでやっているわけですが、裁判の行方というのはだれもわからないわけです。

 現在は、高裁では無効となっています。係争中なので無効とも決まっていないんだということで、そういう論理で工事再開しようというわけですね。最高裁で無効判決が確定すると、これから新たに百八十億投ずるとすれば、これまでも使ってきていますが、百八十億円が新たにむだになる。そういうむだな工事を行ったときには、だれが責任をとることになるのか。これはサイクル開発機構の理事長なのか、あるいは進めようという国の政策判断をする側なのか。この点についてはだれが責任をとることになるのか、伺っておきたいと思います。

坂田政府参考人 裁判は、先生も御案内のとおり、国側の当事者は経済産業省でございますけれども、昨年の高裁の判決以降、判決の内容については私どもから見まして受け入れることはできないという立場から、最高裁に上訴がなされたところでございます。

 私どもとしては、国側の主張が最高裁におきまして適切に御判断されるもの、このように考えてございます。

吉井分科員 期待を込めながら、しかし、最高裁で無効が確定したときには百八十億はパアになる、だれも責任はとらないということで今進んでいこうとしているところに問題があるというふうに思うわけです。

 アメリカが高速増殖炉に取り組んだのは第二次世界大戦のころから戦後早い時期にかけてですが、アメリカの場合には、プルトニウム生産炉という核戦略があったわけですね。それが一九五三年、ちょうど半世紀前ですが、原発開発の民間移行という方針を出してから、軽水炉中心に進んでいきました。それとともに、高速増殖炉は、経済性と技術的困難が明らかになって後退してきました。これらのことは、アメリカの戦後の原子力開発の歴史などを研究している人たちの著したものなどでもよく紹介されております。

 ここで、大臣、私、余り込み入ったことをお聞きするんじゃなくて、端的に伺っておきたいと思いますのは、実は高速増殖炉でやるという場合は、問題は二つあるんです。

 プルトニウムの循環利用の問題。プルトニウムというのは、非常に毒性の強いものなので、扱いも厄介ならば、それをさらに再処理するというのはますます危険になる。ダーティープルトニウムの発生など、大きな問題があります。一方、ナトリウムというのは、火災を起こしやすいとか、構造材を腐食するとか、あるいは炉心事故につながるという問題などを持っているものです。だからアメリカも技術的困難という判断をしたわけですが、今、私は、政治がどう決断するかということは、この場合、非常に大事だと思っているんです。

 既に、「もんじゅ」開発を中心として、旧動燃以来、ナトリウムの研究やら高速炉の研究など、全部合わせますと動燃の事業費は四兆円を超えているわけですが、最初、例えば原子力船「むつ」を計画したときは六十億で始まったんですね。しかし、これが千二百億ほど、二十倍に膨れ上がったんですね。やはりどこで決断するかというのは物すごく大事なことなんです。

 ですから私は、今、プルトニウム循環方式というやり方は、その路線が、安全性に問題もあれば、矛盾を深めて破綻しておりますから、「もんじゅ」というこの原子力の研究開発の方向、高速増殖炉の「もんじゅ」でのやり方については中止する、そういう決断をするときだと思いますが、この点は大臣に一言伺っておきたいと思います。

河村国務大臣 エネルギー資源の乏しい日本が、また、ヨーロッパのように電力を融通し合うことができない、電力を輸出入できない、こういう状況下にありますので、長期的なエネルギーの安定供給をいかにするかというのは非常に重要なことであります。

 そういう観点で、原子力委員会が原子力長期計画を出しております。原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画でありますが、使用済みの燃料を再処理し回収される、有用物質と言われるプルトニウムそれからウラン、これを有効利用していくことが基本的に必要であるということでありまして、特に、原子力発電をより長期的に利用していく、この上で重要であるというふうに指摘を受けておるところでございます。

 文部科学省といたしましても、この原子力長期計画に基づいて、核燃料サイクル開発機構を中心に、プルトニウムの利用に関する研究開発を実施いたしておるところでございます。吉井委員が今御指摘のような、かなり高額の予算も要するという問題も確かにあるわけでございますが、エネルギーの安全確保という点で、これはやはり着実に研究開発を続けていかなきゃいけない課題だと思っております。

 フランスの原型炉フェニックスが二〇〇八年までということになっておりまして、フランス側からも「もんじゅ」の再開に期待する声も寄せられておりますし、MOX燃料を使うという方向で今進めておるわけでございまして、そういう観点から、吉井委員から御指摘がございましたが、文部科学省としては、これは着実に研究開発は進めていかなきゃいけない課題だ、このように私は認識いたしております。

吉井分科員 私、エネルギーが重要という点では考えは一緒なんです、エネルギーそのものは。その点で、例えば再生可能エネルギーについての研究開発に、「もんじゅ」に投じている分をそちらに振り向けてもっと力を尽くすというお話ならよくわかるわけですが、破綻したものを見通しのないままにそれ行けどんどんやっていくやり方は、これはやめるべきだということを重ねて申し上げます。

 実は、「常陽」や「もんじゅ」のMOX燃料の製造過程にかかわる問題なんですが、日本は、乾式じゃなくて湿式にいっているんですね。

 アメリカでは、一九五八年にテネシー州で、濃縮ウラン液が水とともにドラム缶に入っていて八人が被曝したという事故がありました。一九六四年のロードアイランド州のウラン加工工場でも同様の事故が発生しました。

 つまり、濃縮ウラン等を水とともに置いておきますと、中性子が出たときに、高速中性子がエネルギーを落として熱中性子という連鎖反応を一番起こしやすい状態になるものですから、だから臨界管理が問題になってくる。非常に難しい。そこで、この事故以降、人為的ミスで臨界事故につながらないようにと、各国は今、乾式法に切りかえていっているんですね。

 しかし、日本は、ジェー・シー・オー事故であったように、一八・八%という高濃縮ウラン製造を湿式法でやらせる。これをジェー・シー・オーにやらせたことが事故を引き起こすことにもつながってきました。なぜ乾式法じゃなくて湿式法なのか、改めて伺いたいと思います。

坂田政府参考人 先生の今のお尋ねは、ジェー・シー・オーの事故というものを踏まえてのお尋ねであろうと思います。

 まず、申し上げるまでもございませんが、ジェー・シー・オーの事故の原因といいますか、これは、裁判でもその点については議論がなされたところでございますが、裁判の判決では、この臨界事故と申しますのは、事業者の方が原子炉等規制法等の法律に違反をいたしまして、長年にわたるずさんな安全管理の体制のもとでウランを取り扱った、つまり、被告人会社の企業活動そのものが問題でございまして、その点が今回の事故に至ったということが確定してございます。

 御指摘の、ウラン加工につきましての湿式法それから乾式法の問題でございますけれども、先生も御指摘のとおり、湿式の場合と乾式の場合で確かに臨界に至る量には差がございます。しかしながら、湿式でありましても、適切な臨界管理の方法というものが当然あるわけでございまして、それに従いましてきちんと核燃料物質の取り扱いが行われれば、全く安全にこれを行い得るものでございます。この点がジェー・シー・オーの場合は全くずさんな取り扱いをしていた、そのことによって事故の発生に至った、このように承知をしてございます。

吉井分科員 私、企業が責任なかったなんということはもちろん言っていないんです。企業は当然責任あるんです。しかし、大事なことは、国として、各国は湿式じゃなくて乾式で、臨界管理で失敗しないように、事故が起こらないようにということで乾式法でやっているときに、日本は湿式法でやらせていった。それはなぜなのかとなりますと、結局それは、実は再処理工場建設のところからかかわってくるわけです。

 一九八一年に、日米再処理交渉共同声明でもうたわれているように、要するに、分離したプルトニウムが、ウランそしてプルトニウムを分離して、別々に分離して、化合物じゃなくて単体の形でというのが欧米等で、特にイギリス、フランス等でやられてきたわけですが、その分離方式から、ウランとプルトニウムを溶液で、そして混合転換へと。なぜなのか。そこに、アメリカの核不拡散という政策がかかわってきました。そういうアメリカからの、当時のカーター政権からの強い圧力のもとで、日本は海外にないやり方をとることになっていった。

 別に、ウランについては粉末状態で受け入れておいても問題ないわけですが、そのときに動燃が、高濃縮の硝酸ウラニルという、臨界事故を起こしやすい形状での発注にこだわった。

 そこが動燃の方の問題でありましたし、一方、国の安全審査では、硝酸ウラニル溶液をクロスブレンディングする均一化工程は許可申請そのものがなかったんですから、申請がなければ、本来、許可外の工程で均一化法は違法とするべきなのに、当時、二〇〇〇年の私への答弁書の中では、均一化は違法行為とは言えないと、実はその自分の間違った部分については合理化しているんですね。

 均一化のために溶液の量をふやす。均一化というのは、バケツ同士であっち入れたりこっち入れたりするわけですが、当然、臨界管理が危険な状態になるわけですが、動燃がジェー・シー・オーに均一な硝酸ウラニル溶液を求めていたから違法行為じゃないんだということを国の方は強弁する答弁書にしてしまった。

 そこで、大臣、もう時間があと二分ほどになってきましたから、私、最後に大臣に伺いますが、ややこしい話はちょっと置いておきまして、湿式法による再処理だとかウラン転換という話は難しいかもしれないんですが、しかし、原子力の研究や利用に当たって、国と特殊法人、独立行政法人は、民間企業以上に、発注や安全審査や認可に当たって、本来、臨界事故を招かないウラン燃料の形状や生産工程を考えるべきである、この姿勢だけはこれからやはりきちんと国としてとっていくべきだと思うんです。最後に、この点だけ伺っておきます。

河村国務大臣 安定したエネルギーを確保する、その意味で、原子力発電の必要性というものは私は重要なものだと思っておりますが、今委員の御指摘の点については、やはり国民にとってこのエネルギーが安心で安全なものである、これは大前提でございますから、この安全管理に努めるという観点に立って、委員の御指摘の点も踏まえながら最大注意を払っていかなきゃいけない、このように考えております。

吉井分科員 終わります。

小杉主査 これにて吉井英勝君の質疑は終了いたしました。

 次に、高山智司君。

高山分科員 民主党の高山智司です。

 きょうは、大学の役割ということで、私自身、一浪して東京の私大を出まして、その後、普通の企業に勤めて、働きながら専門学校にいろいろ行っていたという一般的な日本人だという立場から質問をさせていただきます。

 まず、日本の大学の役割としては、私としては、研究機関としての役割と教育機関としての役割、大きく分けて二つあると思います。その中で、特に、日本ではやはり教育機関としての役割というところにほとんどの国民の人がかかわると思いますので、そちらを重視してきょうは伺いたいと思います。

 まず、教育機関としての学校の役割としては、私は、学生の方の自分の職業の準備のためという点と、もう一つは、みずからが学びたいから学ぶんだということで学校に行く、この二点が重要だと思います。

 そういうふうに考えますと、国が教育に関与をするのは、初等教育、小学校、中学校までは責任を持って関与するべきだと思いますけれども、高等教育に関しましては、学生の教育機関に対するアクセス権だけを国が保障して、あとは、より奨学金などを充実させることで足りるのではないかというふうに私は考えております。

 そこで、河村大臣に伺いたいのですけれども、私学助成金というのは憲法の八十九条違反だというふうにも一時言われたこともありますし、再度伺いたいのですけれども、私学助成金の制度と、また何を基準にして補助金を出しているか、この点を伺いたいと思います。

原田副大臣 委員御指摘のように、我が国の私立学校の役割、これは極めて大きいものがございます。歴史的にもそうでありますし、現状もそうであります。ちなみに、大学生の七五%、高校生の三〇%、幼稚園児については八割、こういうような大きな比重を占めておるわけでございます。そういうことで、憲法上にもしっかりと評価をされまして、今日まで私立学校に対する国の関与が進められてきておるところであります。

 特に、昭和四十五年度からは、一般管理費、経常費に対しても予算補助という形で国の参加がなされておるところでありますし、また、私立学校の財政的な危機がしばらく続きましたので、昭和五十年に私立学校振興助成法が議員立法の形で成立されたところであります。この法律では、私立学校の教育条件の維持向上、さらには、児童生徒、学生が私立学校に在学する過程での修学上の経済的な負担の軽減、もちろん私立学校の経営の健全性、こういうものを高めるために、この法律に基づく予算化がいよいよ本格化したところであります。

 このため、来年度、十六年度におきましても、三千二百六十二億円の私立大学等への経常費補助に加えまして、私立高等学校等経常費助成費等補助一千二十八億円、これを計上しておるところでありまして、全体としては、一・四%増の四千五百五十五億円の措置をお願いしておるというのが現状でございます。

高山分科員 今、副大臣の方から説明していただきましたけれども、私としてちょっと伺いたかったのは、今の私立学校に対する私学助成の現状という点では、十分といいますか、十分以上のものがあると思いますけれども、まず、そもそも私学に対する助成というのは、国から公の機関でないところにお金を出すということで、違憲の疑いがあるんじゃないかという意見も随分あったと思うんですけれども、その点に関しまして、いまだに私学助成というのは続けられるべきだというふうにお考えかという点を大臣に伺いたいと思います。

河村国務大臣 憲法第八十九条の問題、高山委員もお調べとは思いますけれども、これについてはこれまでもいろいろな議論がされてきたところでございますが、昭和五十四年の三月十三日の内閣法制局長官答弁を基準にして、政府の確立した解釈は、学校教育法、私立学校法あるいは私立学校振興助成法によって学校法人には解散命令あるいは各種の監視規定がありますから、この規定を受ける観点からいえば、第八十九条に言う公の支配に属しているという考え方に立って、憲法違反ではないという形で進めてまいりました。

 さらにこれを進めるのかどうかというお話でございますが、今私学が果たしてきている教育の役割の大きさというのは今副大臣からも御答弁申し上げたわけでございまして、こういう観点からいけば、私は、私学が国民にとってやはり教育の機会均等を与える一公的機関としての役割を果たしていくという観点から考えれば、私学を支援していくという立場、これはこれからもとっていく必要があるというふうに思っておるわけでございます。

 このとり方にはまたこれからいろいろありましょうが、まさに私学を自由にして、義務教育段階は今御指摘のような段階であって、あとは、それぞれの個人の自己責任といいますか学ぶ責任、それによってやればいいということでありますが、私学がやはり成り立っていく点がございますから、これを全部任せるということになりますと、授業料の問題等々も出てくるわけでございまして、まさに教育の機会均等という問題も出てまいりますので、そういう観点から私学助成というものをやってきておるわけでございます。

 一方、奨学金をさらに充実しながら、個人的な、そうした観点からも支援をしていくという方向も今とられておる、御存じのとおりであります。

高山分科員 ありがとうございます。

 その奨学金の点につきましてはまた後で伺うといたしまして、今度、国立大学も独立法人化させるということで、運営交付金というのが出るそうですけれども、こちらは今の私学助成金とは性格が異なるものなんでしょうか、それとも同じ部分もあるのでしょうか、大臣に伺いたいと思います。もし大臣でなければ、政府参考人の方でも結構です。

遠藤政府参考人 この四月から、国立大学につきましては、国の附属機関から、国立大学法人ということでスタートする、こういうことでございます。

 これまで、国立大学につきましては国の予算ですべて賄ってきたということでございますが、基本的にはそういうことで、国立大学でございますから、必要な教育研究の運営に要するお金は運営費交付金という形で予算を、今お願いしておるところでございますけれども、そういう形で支出をしていくということになろうかと思います。

高山分科員 この国立大学の運営交付金というのは、私学助成とは趣旨や基準というのは異なるという理解でよろしいのでしょうか。もう一度お願いします。

遠藤政府参考人 私学助成は補助金でございますから、基本的には、各学校法人の方から補助金の申請を受けまして、一定のルールに基づきまして、それに対する補助金を出すという形でございます。

 国立大学の運営交付金につきましては、もちろん概算要求、予算要求という形で文部科学省の方に出していただきますけれども、基本的には、補助金という形ではなくて、国立大学の教育研究等々の必要な経費はこれだけということで措置をさせていただく、こういうことでございます。

高山分科員 ちょっともう一回。くどいようで済みません。

 そうしますと、例えば、私学助成の補助金を出す基準というのは、細かいところではどういうことで出しているんでしょうか。要求があれば満額もう全部出しちゃうものなのか、それとも何かを基準に査定をしていくものなのでしょうか。

遠藤政府参考人 経常費補助金、一般の経常費補助金と特別の経常費補助金がございます。一般の経常費補助金につきましては、学生数あるいは教員数、こういったものに基づきまして出させていただいておるわけでございますし、それから、特別の、こういう教育プロジェクトをします、こういうことで、ほかとは違ってこういうことをやっておりますということについては、それも一応項目がございますけれども、その項目に該当しておれば、その項目についての算定をした特別の経常費補助というのをやっている、こういう仕組みになっておるわけでございます。

高山分科員 そうしますと、大臣にちょっと伺いたいんですけれども、今のお話を聞いて、私学もいい教育をするにはすごくお金がかかるので私学助成を出す、いい研究、いい学問をやるためにはお金を出す。国立大学も同じようなことだということで、やはりいい学問、いい教育をするためには学費だけでは賄えない部分があって、それを国費で。いろいろな形があるでしょうけれども、賄う必要があるという点では同じだというような気がしたんですけれども、それは大臣、いかがでしょうか。

河村国務大臣 基本的には国費が出ていく、補助金であろうと運営金であろうと出ていくことは事実でありますが、私学の場合には私学振興助成法に基づきまして、しかし、私学は建学の精神それから私学の独自性を生かさなきゃいけませんから、これは二分の一まで、経常費の二分の一までということが私学振興助成法の中にうたってございます。それ以上になりますと、これはいわゆる私学の本来の存在価値というのはどうだという議論もございますし、そういう点が、国立大学、法人化したといえども、国立大学法人と私学の大きな違いだ、私はこう思っております。

 そういう観点でありますが、いずれにしても、国がそれを支援していくということについては、これは、広い意味では同じ考え方に立っておることは事実でありますから、そういう御指摘が生まれるのも当然かというふうに思います。

高山分科員 それでは、美容師の専門学校ですとか料理の専門学校、いわゆる各種学校に対します国からの補助金というのは何か、どんな形で出ているのか教えてください。これは専門の方でいいです。

銭谷政府参考人 現在、私立の専修学校につきましては、いわゆる経常費につきましては、これは都道府県の方で措置をいたしております。

 国からは、いわゆる助成措置といたしましては、一つは、私立の専修学校の施設整備についての補助金というものがございます。それからもう一つは、私立の専修学校が非常に新しい教育の試みをしたり、あるいは、現在非常に時代的要請の強い教育活動を行うといったような事業につきまして、これを国がモデル事業というふうに指定いたしまして、申請があったものに対して、そういう教育関係の事業に要する経費に対する助成という、この大きく二つの助成を現在国では行っております。

高山分科員 その専修学校に対します助成の規模というのは、やはり私立大学やあるいは国立大学なんかに対する規模よりは少ないものなんでしょうか、それとも同程度、要するに学校のかかる経費の中での割合なんですけれども、それはどの程度のものなんでしょうか。これはちょっと突然だったんですけれども。

銭谷政府参考人 現在の助成額は、施設整備などが約十二億円強、それから、いわゆる教育関係のモデル事業に対する助成が十三億弱という状況でございます。これは、私立大学全体に対する助成に比べますと、率としては非常に小さい率になっております。何%というのは申し上げてもよろしいんですけれども、非常に率としては低い率になっております。

高山分科員 私は、今回、大学の研究機関としての側面よりも、実学を学んだり、学生が自分で選んでいい学校へ行っていい学問を受けたいという観点からきょう聞いておりますので。そういった観点からしますと、今の例えば高校生、中学生に将来どういう職業につきたいかと聞いた場合に、今みんな、ゲームデザイナーだとかファッションデザイナーとか、あるいはシェフになってレストランを経営したいだとかカフェをやりたいとか、そういった人がふえていて、むしろ、有名大学に行くというのは、受験の得意な生徒が行くというような現状になっていると思います。

 それで、学校の評価というのは非常に難しいんですけれども、あえて評価するとすれば、卒業生を受け入れる実社会がどう評価しているかということと、あるいは、実際にそこで学ぶ学生がどういうところで学びたいかということが一番確かなものだと思うんですけれども、その観点からすると、私は、今の高校生が将来どういう職業につきたいとかいう観点からすれば、今の、現在ある大学というのはほとんど学生のニーズには対応していないんじゃないかというふうに思います。

 というのは、例えば、早稲田大学カフェ学科とか慶応大学デザイン学科とかというのがどんどんどんどんできているならまだしも、そういう部分は、専門学校のファッションデザイン学科だとかあるいは調理師の学校だとか、そういうところにみんな行っているわけです。

 しかも、これから日本がどういうところで付加価値を創造していい人材を育てていくかと実際考えてみると、やはり有名シェフだったりカリスマ美容師とか、どっちかというと今までは大学に行かなかったようなジャンルの人たちがどんどんどんどんこれから活躍するだろうし、それが結構日本の生きる道だと思います。

 そういうところから考えますと、今の私学助成金というのはむしろ過去の実績で、去年までは早稲田の法学部は千人だったから千人分出す、あるいはそういう出し方で出しているんじゃないかと。つまり、私学助成をやることで、国の方で逆に、将来伸びるべき分野じゃないところに何かお金を出してしまっているというような気がいたします。

 そういった観点からも、一番自分の将来に対して真剣に考えている学生に対する奨学金をもっと充実させるべきだというふうに思っておりますけれども、現在の奨学金というのはどういうものがあるのか、それを教えてください。

遠藤政府参考人 学生あるいは生徒に対する奨学金が一番大きいのは、日本育英会が行っている奨学金でございます。この十六年四月から日本学生支援機構となりますけれども、この奨学金が一番大きいわけでございまして、平成十六年度の予算案におきましては、九十六万五千人、これは大学生だけじゃなくて高校生、大学院生も全部入っていますけれども、九十六万五千人に対しまして六千八百二十億円の奨学金を貸与する、こういうことで予算としてお願いをしてございます。

 このほかの奨学金としまして、私ども、四年に一度、育英奨学事業実態調査ということで調査を行っておりますけれども、平成十一年度の結果によりますと、地方公共団体あるいはいろいろな公益法人、大学、こういったようなところで約三千四百の実施主体があるわけでございまして、ここで、数でいきますと、二十四万人に対しまして六百三十五億円の奨学金が給与あるいは貸与をされているというふうに理解しております。

高山分科員 今の奨学金についてですけれども、これは国費が出ている部分はあるのでしょうか、伺います。

遠藤政府参考人 日本育英会の奨学金でございますけれども、無利子貸与事業と有利子貸与事業の両方ございます。有利子貸与事業につきましては財投のお金で融資をしているということがございますし、無利子の方については利子補給金という形で国費を一部措置しておる。基本的には貸したお金を返していただく、循環していくというのが基本でございます。

高山分科員 大臣にまたしつこいようで伺いたいんですけれども、とにかく、学生なりこれから学ぼうという人の立場に立って、これからもっと奨学金を充実させていくべきだというのが私の意見なんですけれども、今聞いた額からしても、明らかにこれは奨学金より私学助成だったり運営交付金の方が大きいと思うんです。この割合を今後大幅に変えて、いわば、今大学の教員だったりという人たちは、学ぶということでいえば、終わっちゃっていると言うと変ですけれども、学生よりはそのことに対する真剣度が自分は低いと思います。

 ですから、真剣度の高い学生の奨学金を充実させるというように、今後、国の施策を転換するようなお考えはありませんでしょうか。

河村国務大臣 転換と申しますか、私も基本的には、学びたい、しかし経済的な理由もある、あるいは親にも迷惑をかけたくない、こう思って学ぶ意欲を持っておられる方については、奨学金は希望したらもらえるようにすべきだ、こう思っているんです。国の財投の関係も、今財投も厳しくなってきているわけでありますが、しかし、これはお貸ししたら返してもらう、循環するものですから、実質出ていく金というのは、少々ふやしたってこれは返ってくるものですから、そう大きな問題はありませんから、私は、もっとこれを思い切ってふやして、そして行くべき方針は、これからも強めていく必要があろうと思っております。

 それから、先ほど高山委員も御指摘ありましたが、学ぶ問題については、私は、いろいろな選択肢がふえていくということはいいことだと思います。ただ、いわゆる学問として学ぶ人たち、そしてそのまま研究に入っていく人たちもいますし、しかし、おっしゃるように実学に入っていく人たちもいます。一回大学や短大に行った人が、今もう一度専門学校へ行って実学を学びたいということに気づいて行かれる人もいる。

 だから、いろいろな学ぶ形というものはあっていいと思いますから、それで、私学というのは、そういう点では、そういう学生のニーズにこたえていくということができますから、そういう意味で、私学は、例えば最近は映画なんかも、そういう方面へ進みたい人がふえてきておりまして、まだ日本では、中国や韓国に比べて、そういう受け入れが少ないのではないかという指摘もございます。

 そういうことも踏まえて、私は、私学というのは、学生のニーズがあればそれに応じてそういう学科をつくっていく、そういうことができるわけでございます。それをさらに機動的にしたのが専門学校でやっておるんだと思います。しかし、その中で、やはりいろいろな学問の裏づけを持ってさらにそういう世界へ入っていくということも必要でありましょうから、いわゆる学ぶ姿というものは、基本的なことを学びながらさらに実学をつけていく、こういう形が理想ではないか、私はこう思っております。

 いずれにしても、個人の学ぶ意欲というものをできるだけ支援するというのが文部科学省の役割だと思いますから、そういう意味で、奨学金を充実していくということは私は非常に大事なことだ、このように認識いたしております。

高山分科員 ありがとうございます。奨学金の充実に関しては、非常にありがたい御意見をいただきました。

 ただ、もう一つ伺いたいのは、やはり私学助成あるいは国立大学に対する運営金という点なんですけれども、教育の中立性といいますか、よく税の中立性とかいう言い方をしますけれども、学生は、大学を選ぶより専門学校を選ぶ方が損なわけですよ、今は学費が高いし、いろいろかかりますから。

 そういう意味でいうと、将来の希望を選択する上で、少なくとも、どういう道を選んでも学生の負担は同じにするべきというふうに考えますけれども、そういう教育の選択の中立性という観点から、今ちょっと大学というものに国の補助、応援が偏り過ぎていないかという点を大臣に伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。

河村国務大臣 確かに、先ほど局長が答弁いたしましたように、専修学校、専門学校等々に対する国の支援というものが十分でないという点もございます。

 専修学校、専門学校については、今、これは県の知事の認可でいいことになっておりまして、そちらの支援も一体となってやっていただくということになっております。私は、この比重を増していくということは必要なことだというふうに思っておりますが、全体の中でどう取り組んでいくかということであろうというふうに思っております。御指摘の点は踏まえてこれからも取り組んでいかなきゃならぬ、こう思っております。

 今の国立大学、さらに私立大学、この充実という点もいろいろな角度から強く求められておる点もございます。そして、さらに高度な大学院まで行く人もおるわけで、これもまさに、ただ学問でなくて実学を学ぶ専門職大学院をつくっていこうと。ロースクールも今度できるようになりました。あるいは、恐らくこれから医学の方面はメディカルスクールという構想も出てくるでしょう。そのような総合的な教育政策の中で位置づけていくことが必要であろうと思っております。

 奨学金とあわせて、バウチャー制度という考え方もありまして、これについても今いろいろ研究がされておるわけでございますが、まだこれが一つの位置づけとして定着をいたしておりません。そういうことがあることも我々承知をいたしておりますけれども、国の全体の予算の枠の中でどのように位置づけていくかということが大事でございますので、今の御指摘の点を踏まえながら、まさに実学についても、こういう方面に進みたい学生に対する支援ということもしっかり考えていく必要があろう、このように思っております。

高山分科員 ありがとうございました。

 今は学生が大学を選ぶ、大学というか教育機関を選ぶんだという観点から、国立大学、私立大学、専門学校の順で得だな、国立大学が一番得で、私立大学が次、専門学校が一番損だなという点をきょうは指摘させて、指摘というか、非常にこんなに大臣経験者の方が多い中で生意気なんですけれども、させていただきました。

 もう一つ、教育機関を評価するという点で、実社会といいますか企業からの評価ということで、現在、大学やらそういう専門学校やらに企業がドネーションというか寄附講座をどの程度しているか、また、これは今後ふやすように国としても税制等の措置で優遇していくおつもりなのかを伺います。これは大臣にお願いします。

河村国務大臣 冠講座、こう言われておりますが、寄附者がその名前を冠しておやりになるような形、今、寄附講座が、国立大学においては、この一月現在は三十七大学、百四十九講座ございます。これは平成元年に比べますと六倍にふえておると聞いておりますし、また私立大学も、寄附講座を持っているのが、四百六十三法人のうち七十九法人が持っておるというふうに聞いておるところでございまして、年々ふえております。これに対しては、各経済団体に対して、寄附の促進の要請をしながら、また税制上の優遇措置も受けておりますので、これを要請いたしておるところでございます。

 さらに、これも余り難しいことを文部科学省が言うべきものでないということで、届け出ていただければもういいということで、事前協議があった、こういう寄附講座が来ているけれどもどうだろうかというようなことが以前は行われておったのでありますが、そういうことでなくても、届け出制に改めるということで、寄附講座をできやすくもいたしております。

 それから、今度いよいよこの四月から国立大学も法人化をいたしますから、それぞれの大学の独自性に基づいて寄附講座が促進をされるだろう、こう思っておりまして、これは、国立大学を初めとして各大学の活性化につながるいい一つのあり方だ、こう思っておりまして、この促進をさらにしたいものだ、このように考えております。

高山分科員 ありがとうございます。

 あともう一つは、では奨学金につきまして、企業が奨学金というんでしょうか、つくっているというような例、あるいは、今後、そういうふうに企業が学生に対します奨学金をどんどん出せるような環境にしていくという方向はあるのでしょうか、伺います。

遠藤政府参考人 私、先ほど育英会以外で三千四百の実施主体でいろいろな奨学金の貸与、給与事業が行われていると申しましたけれども、その中で、公益法人ということでいいますと、実施主体、約千の公益法人。公益法人は、実質的には企業が、企業自身でそのままの形で奨学金事業をやるというよりも、公益法人を設立しまして、そこを通して奨学金事業をやっているという形が多いわけでございます。税制上のこと等いろいろあると思います。ぜひそういうことで、応援をしていただきたいと私ども思っております。

高山分科員 ありがとうございました。

 私は十年前に学校を卒業しましたけれども、実際まだ後輩とも結構つき合いが続いておりますが、大人の方から見ますと、今の学生はやる気がないような、ぼうっとしているような人が多いように思われるかもしれませんけれども、結構熱い人も多くて、学ぼうという意識が非常に高いので、ぜひ大学、また大学以外でも、学ぼうと思った人が思い切り伸び伸びと学べるように国の方で政策をしていただきたいと思います。

 きょうはどうもありがとうございました。終わります。

小杉主査 これにて高山智司君の質疑は終了いたしました。

 次に、西村智奈美君。

西村(智)分科員 民主党の西村智奈美でございます。初めて文部科学大臣初め皆様に質問させていただきますけれども、よろしくお願いいたします。

 先ほどの高山委員の御質問の中にも出てまいりました国立大学法人、この運営費交付金についてからまずお伺いをしたいというふうに考えております。

 国立大学、昭和二十四年に新制国立大学としてスタートしてから随分長い時間がたちましたけれども、今お伺いしたところですと、大学の数は短大を含めて全部で八十九、非常に多くなったなという印象でございます。いずれにいたしましても、戦後の時期に、自主、自律の精神で地域に根差した大学をつくろう、そういう高い志のもとにそういった多くの大学ができてきたんだというふうに私は理解をしております。

 最近の国立大学をめぐる法人化の動きは本当に急でございまして、例えば、自主、自律の研究とそして教育を望む立場からは、もう少し学長のリーダーシップを発揮できるようにしてほしいですとか、予算が弾力的に使えるようにしてほしいという点からの改革が求められてきたことと承知をしております。

 一方で、これからは少子化で、財政も厳しい折、行政改革の一層の推進、これを求める声も強かったということは承知をしております。小泉内閣におきまして、構造改革の実現方法として、大学の構造改革の方針、これが出されたわけでございますけれども、ここで国立大学の法人化が明記をされた。昨年の二月に国立大学法人法が国会に提出をされて、七月に可決成立をされたという流れであろうかと存じております。

 実は、私も国立大学の、それも地方の大学の卒業でございまして、非常にこの国立大学のありようについては関心を持ち続けております。

 私が卒業しましたのは新潟大学でございます。日本海側で最大規模の大学でして、とりわけ日本海に面しているという点から、県内の上越教育大学ですとか長岡技術科学大学ですとか、そういったところと連携して、また日本海側の他の大学とも連携をして、日本海をめぐるさまざまな研究、学際的研究を行ってまいったところでございます。環日本海学会、これは日本学術会議にも登録をされておりますけれども、この設立総会は実は新潟で開催をされました。

 そういった非常に特色のある研究教育を行ってきたところでございますけれども、また、この流れは今も続いておりまして、先日、実は国会にその新潟大学の留学生たちがたくさん訪れてくれました。

 非常に驚いたのは、中国からの留学生が多いというのは日本海側の大学の特徴なんですけれども、今までは東北三省からの留学生が多かったんです。そして地方に帰って、地方政府の公職につくということだったんですけれども、北京からの留学生が非常に多かった。これから国際社会の中で中国が果たす役割、非常に重くなってくると思いますので、これはいい兆候だなと思いました。つまり、彼らは母国に帰った後に、新潟を第二のふるさと、日本を第二のふるさとと言ってくれる。そのことは中国と新潟、中国と日本との友好関係にもつながっていくのではないかというふうに考えています。

 こういったところで、まず大臣に所見からお伺いをしたいと思いますけれども、このように、地方の大学、小規模な大学、たくさん多様性を持っております。新制国立大学としてスタートした国立大学が目指している理念は依然として変わらないものというふうに思いますけれども、これからの国立大学法人に求められる役割、これについてまず所見を伺いたいと思います。

河村国務大臣 大学法人法案成立に当たりまして、私も、遠山大臣のもとで副大臣としていろいろな議論に参加をさせていただいて、答弁もしてきたわけでございます。

 今大学に期待をされていること、特に国立大学においては、全国各県に地方大学もあって、そしてそれぞれの教育のセンターとしての大きな役割も果たしております。特に地方大学はそういう面がございます。そして同時に、教育の機会均等という考え方から立っても、学費等についても、経済的な理由で大学に進めないということのないようにという点もあって、まさに授業料についても十分な配慮もされておる。

 こういう国立大学をこれからも守っていかなきゃいかぬということで、これを法人化するという意味は、一方ではしかし、さはさりながら、国費を使って運営されますから、その国費に対しての適切な活用というものも必要になってきます。そういう面での運営のよろしきを得なきゃならぬ、こういう問題もございまして、これまでの文部科学省の仕組みの中の一機関を外に出して、そして法人化してそれぞれ独立をしていただいて、基本的には国が支援をするのでありますが、それぞれの大学が独自性を発揮していただこうと。今、新潟大学のように日本海側にあって、新潟大学だからできるという教育もあろうと思います。そういうものをしっかり果たしていただく。

 こういう意味で、法人化をして、そしてみずから大学が考え、そして学生の方向を向いて教育をやっていただく、あるいは研究に取り組んでいただく。こういうことが自由濶達にできるようにということで法人化をしていただく。同時に、これは世界との競争もあるわけでございまして、これから国立大学がやはり世界に対しても発信できるような教育もやっていただきたい、こういう期待感もあります。

 そういう意味を含めて法人化に踏み切ったわけでございまして、これによって、しかし、大学そのものが、まさに角を矯めて牛を殺すということになってはなりません。支援すべきことはきちっと支援をしていく。効率化を図るべきところは効率化も図っていただく。しかし、教育の根幹は国がきちっと支援をいたします。独自性を大いに発揮していただきたい。もちろん、公務員の身分も今度、みなし公務員ということで、外れますから、国家公務員の適用も外れますから、今問われている産学官の連携も自由にやっていただけるようになるであろう、こういう期待感を持ってこれからスタートするわけでございます。

西村(智)分科員 そこで、今大臣の方から、国際的な競争の中でやっていける大学、あるいは産官学の連携のそのかなめとなる大学、こういった国立大学法人が目指すべき姿というものをお示しいただいたわけでございますけれども、財政的な裏づけがやはり私は不安でございます。

 運営費交付金の算定ルールを拝見いたしました。一般管理費、これを算定するときに、毎事業年度の前年度分に効率化係数がマイナス一%、これが毎年かかっていく、こういうことであろうかと思うんですね。これは六年間、中期目標計画中続くということであろうと理解をしておりますけれども、果たして、このマイナス一%ずつで本当に今大臣がおっしゃったような大学運営が学長のリーダーシップのもとに行えるのかどうか、私は不安なんですけれども、そのあたりついてのお考えをお聞かせください。

原田副大臣 委員御指摘のように、運営費交付金の算定ルールというのは、文部科学大臣と財務大臣との間で決まっておるところでございます。

 先ほどから、大学法人化に係る基本的な認識、すなわち自主、自律の動きをしっかり促進する、同時に、大学側にも責任を持ってもらわなきゃいけない、しかし教育の本質を忘れてはいけない、こういうことでございますけれども、御指摘のように、算定するに当たりましては、経営改善努力という形で今一%ずつの効率化係数がかかってきております。

 しかし、この中からも、大学設置基準等に基づいて必要とされる教員の給与、これはもう絶対に削減してはいけないというようなことから、約三千七百億円、来年度は初年度になりますけれども、そういうものを外すとか、あわせて、各大学の努力に応じた教育研究費用、これについては、申し込みによって特別教育研究経費として、場合によっては増額するというようなことも見込んでおりますし、また、受託研究などの外部資金の増があっても、従来は、その分稼いだんだから少なくていいだろうというようなことにしておりましたけれども、これから自己収入の増収努力がきちっと報われる、こういうような仕組みにもしております。

 いずれにいたしましても、教育研究の特性に配慮したこれからの運営費交付金の配分の仕方が既に決まっておるところでありまして、もとより学校側の責任も大変大きい、努力もきちっと評価する、こういう形になっておるところであります。

西村(智)分科員 もちろん、大学の自己収入増加のための努力はしていただきたいと思いますし、それはまた適正に報われなければいけないというふうに思います。

 今の御答弁の中にも特別教育研究経費という言葉が出てまいりました。新しい研究教育ニーズに対応して運営費交付金を増額できる仕組みであるというふうに掲げられておりますけれども、この性格についてお伺いをしたいというふうに思います。

 運営費交付金の増額を見込んでいるということでございますけれども、これは、はっきりと増額するということ、つまり増額を前提とした文言として理解してよろしいのでしょうか。それとも、ここにこう言葉として挙げてはおきましたけれども、実際にはどうなるのかわからない性格のものなのか、そのあたりについて答弁をお願いします。

原田副大臣 これは、増額も可能であるということでございます。

西村(智)分科員 国立大学法人法が成立いたしましたときに、衆議院と参議院で附帯決議がございます。いずれも、運営費交付金の算定に当たっては、透明性と公正性のある基準に従って必要な運営費交付金を措置するように努めること、こういうふうにございますけれども、ぜひともこのルールを遵守していただきたい。中期目標期間中、少なくともこの六年間はしっかりとこの算定ルールあるいは附帯決議の中身というものを重視していただきたいと要望させていただきたいと思います。

 続きまして、子どもの居場所づくり新プラン、文部科学省の新年度事業の目玉事業だそうでございまして、これについてお伺いをさせていただきます。

 平成十六年度に、公立小学校七千校、そして十七年度には一万四千校、ここにおいて地域子ども教室、これを設置するという御提案でございました。私、これを見ましたときに、やはり厚生労働省の事業との関係が気になったところでございます。

 もとより、この地域子ども教室、これが目指すところは、地域の大人の協力を得て、多彩な体験活動や地域交流が展開できるように、家庭、地域、学校が一体となって取り組む、こういう内容というふうに伺っております。一方、例えば厚生労働省が実施をしております学童保育、こちらの方は、共働き、一人親家庭などの小学生の放課後及び土曜や長期期間休み中の、学校休業日の生活を保障すること、そして、そのことを通じて、親が働き続けること及びその家族の生活を守るという役割がある。これは実際に、制度上もその性格上も、全く違うものでございますね。

 ところが、子供や保護者の側から見るとどうか。例えば、保護者の方々が働いていないとしても、その日は用事がある、どこかに子供を預けなければいけないというときに、ではどこがあるかといったときに、地域子ども教室がそこにできていたとしますと、学童保育でも地域子ども教室でも、御家族や子供にとっては、恐らくどちらも同じ受けとめ方をするんだろうというふうに思うんです。ただ、家庭に子供が一人でいないということを支える、子供の居場所をつくるという意味では、どちらも受けとめ方は同じではないかというふうに思うんですね。

 実際に、民主党のずっと主張しております待機児童をなくすための幼保一元化、これとも考え方は軌が一になるんですけれども、実際にこういった学童保育との連携、本当にこの両者の垣根というのは現場の受けとめとしてはかなり低いものがあるんですけれども、これについてはどのようにお考えでしょうか。実際にもう、昨年夏ごろ提案されていたときにそのことは少し指摘をされておったようですけれども、見解を伺います。

河村国務大臣 鋭い御指摘だと思うんですが、しかし、私もあの学童保育を見ていて、ではあそこに教育的要素が全くないかというと、そんなことはないんですね。あそこで宿題をやったりなんかして、先生のOBが行っているし、私はかねてから、この教育問題をやるときに文部科学省に対しても、あれをじっと見ていていいのということは言っていたんです。やはりもっと考える必要がある。しかし、せっかくあれは制度化されて、むしろあれに対する期待も高まっている。しかし、これはむしろ低学年ですよね、あそこでは。では高学年をどうするのかということも考えようということが今回の居場所づくりのヒントになったことは、私は間違いないと思います。

 そこで、これはしかし、もっと大人にも大きく参加をしていただかなきゃなりません。ボランティアの皆さんにも助けていただかなきゃならぬ。それはやはり地域の教育力が非常に落ちているということでありますね。これをいかに高めるかということについても、一緒にこれでそれを補うことができないか、これに参加していただくことによって地域が子供を守り育てる機能をもっと発揮できないかということで、かなりそういうことに期待する部分もありまして、これからの運営のよろしきを得なきゃならぬわけでございまして、そういう意味では、学童保育の持つ意味と共通した部分もあるんです。ありますけれども、さらに地域の教育力を高めるという、もっと開かれた、広い部分も含めて、この居場所づくりというのを考えてまいりたい。

 したがって、いろいろな教室とか対外的な体験活動とか、いろいろなことも含めて、スポーツも含めて、広くこの中で子供を預かりながら一緒になって大人たちと遊んだり、勉強したり、そういうものを広くやっていきたいというのが、この子どもの居場所づくりのねらいであります。

西村(智)分科員 学童保育との連携ということについては、今後とも、ぜひとも検討を進めていただきたいということは要望いたしたいと思いますけれども、一方で、例えば学童保育もない、あるいはこういった地域子ども教室などは設置することも難しい、こういう地域も出てくるのではないか、実際に出ているのではないかということを懸念いたしております。

 実際に私が伺ったお話でありますけれども、ニュータウンができた、新しいおうちがたくさんできて、そこに小さな子供を連れた若い御家族がたくさん移ってきたけれども、近所には、学校が遠い、空き教室もないために学童保育もない。そして、では例えばこういった地域子ども教室ができるかといえば、新しい町内であるがゆえに、なかなかそういった隣近所の連携ですとか、いわゆる大臣がおっしゃる地域力でしょうか、そういったものがまだまだ醸成されていない、こういった地域もあるのではないかというふうに考えます。だけれども、本当はそういった地域にこそ、地域と家庭と学校との一体となった取り組みが必要なんではないか。

 私は、提案なんですけれども、地域や学校が恐らくこの地域子ども教室などについても手を挙げてくださるのを待つというスタイルになるのかというふうに思います。例えばどういったやり方ができるのかということ、例示を挙げまして、いわゆる政策誘導的に設置を促すようなことをさまざまなケースを想定して行っていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

河村国務大臣 御指摘のような地域があるだろうと思います。ぜひ、各市町村には社会教育委員等もいらっしゃるわけでございまして、そういう方々にもこういう政策をしっかり我々の方もPRして理解をいただいて、そしてそういう全然ないところについては、町内会等は、いずれそれは新しいコミュニティーもできていくでしょうから、そこへやはり入っていって、こういう形で、十分な予算ではないけれども、もし講師を呼んだりするのならちょっとした謝金も出るような仕組みができたということでつくっていただくような働きかけは必要だろうと思いますね。各県通じ、市町村の教育委員会、また社会教育委員の皆さんにも十分この点を御理解いただくようにしたいというふうに思います。

西村(智)分科員 次に、「日本映画・映像」振興プラン、少し飛びますけれども、そちらの方を伺いたいと思っています。

 いわゆる先進国の中で、日本はさまざまな映画の撮影などが最も困難な国だと言われてきたんだそうでございます。公的なバックアップが海外の他の国に比べてなくて、受け入れの窓口もわかりにくくて、おまけに、加えてさまざまな規制があるために自由な撮影ができないということだったそうでございますけれども、最近、地方自治体、商工会議所、NPOなどが一体となりまして、ロケハンへの支援があちこちで行われているところでございます。

 全国フィルム・コミッション連絡協議会、FCと呼んでいるそうでございますけれども、ここに、全国の協議会に加盟しているFCがもう六十を超える状況になった。実は、また新潟の話で恐縮ですけれども、先日、新潟市で、地方の組織が全国にお声がけをした形としては初めてフィルムコミッションのシンポジウムが行われまして、大変に好評であったということでございます。

 そこで、お伺いなんですけれども、この六十を超えるフィルムコミッション、乱立をきわめたという話もございます。ここ三年くらいで急速にできてきて、力のあるところはそれ相応成果を上げておりますけれども、内実は、少ない予算と少ない人手、運営は困難をきわめているところが少なくないというふうに聞いております。

 そこで、新年度、こういったFCへの活動支援の取り組みとしてどのようなことをお考えになっておられるのか。映像の、映画文化の振興というだけではございません、経済効果も大きいということも言われておりますこのロケハン、フィルムコミッションへの支援、どうお考えなのか、お伺いいたします。

稲葉副大臣 今西村委員からのお問い合わせの件でありますが、改めて申し上げるまでもなく、映画に限らず、いろいろなフィルム映像は、私たちの日本の文化の創造の原点でもあり、また、その創造された文化を各国民の皆さんあるいは世界に対して発信する一つの装置、手段と認識しております。

 そういう面においては、私たちの日本独自の文化が創造され、醸成されてきたということについて、映画、映像の持つ役割というものを十分私たちは評価すると同時に、その活動についてできる限りの支援をしていくべきだと、委員と同様に思っております。

 特に、御経歴を拝見させていただきますと、さまざまなボランティア活動をなさっている中であるいはこういったロケハンのサポートもされてきたかもしれませんけれども、新潟県においては、妙高高原町、そして糸魚川において団体がつくられているというふうに承っております。

 これからももっともっとその団体の活動に対して、私たちとしましても、できる限りのサポートをする、あるいはサジェスチョンをさせていただくということに意を払っていかなければならないものと思っております。

 特に昨今、さまざまな情報が錯綜しておりますので、その情報を各団体で、あるいは活動される主体で整理していただくこともお願いしていきたいと思っておりますが、特に、私たちとしましては、その限られた予算の中で、国の予算はもちろん、地方公共団体の予算もそうですし、あるいは活動する主体の予算にも限りがあるでしょうから、お互い、団体及び私たちのその目的の推進のためにどれだけのことができるか、さまざま検討してまいりたい、かように思っております。

 特に、来年度におきましては、フィルムコミッションの予算については、映画関係の二十五億の総額の中で約六千七百万円計上させていただきました。このことについては、それぞれの考えの中で、足りない、もっと出せ、こういうお考えもあるやに思いますが、国として精いっぱい、この予算に対して、文科省としては成立させることを努力しますし、さらに今後も、皆さんの御意見を参考にさせていただきながら、公共団体と協議をさせていただきながら、映画の振興に、さらに、フィルムライブラリー等を含めて、我々のこれからの文化を正しく伝播、伝えていく、その中に私たちが存在するという、このことをしっかりと念頭に置いて文科省も取り組んでまいりたい、かように思っております。

西村(智)分科員 六千七百万円、これは恐らくデータベースの作成に多くは充てられるのではないかというふうに想像いたしておりますけれども、現場の声は、おおよそ総合すると、こうでございます。やはり規制が多過ぎる。例えば、道路などで撮影するときに占用許可をとりに回らなければいけない。公共施設、それぞれの所轄の官庁のところに回らなければいけない。こういったロケハンの障害になるのは、やはり第一に、何といっても規制であるということが上がってきております。この改革について、言いかえれば、関係省庁との連携についてどうお考えなのか。

 と同時に、六十を超えるFCのほとんどはできて三年でございますので、まだまだ試行錯誤を繰り返していることは容易に想像ができます。組織の足腰の弱さに加えて、ノウハウがまだまだ未熟であるということなんですけれども。そういったところをかんがみると、例えば、全国的なノウハウを共有するための仕組みあるいは研修の装置、装置という言い方が正しいかどうかわかりませんけれども、そういったものが必要ではないかというふうに考えるんですけれども、これについての見解をお伺いできればと思います。

稲葉副大臣 おっしゃられるとおり、あるいは規制について、映画製作者あるいはフィルムをつくられる方々からしてみれば、もう少し柔軟な対応を、こうお望みかと存じます。

 しかし反面、ロケハンに限らず、いろいろな事業を各地方で展開していくその過程において、例えば一つ例を出させていただきますが、トライアスロン、村上で行われております。このトライアスロンについても、当時の民間の団体でボランティアでやっていた当初は、確かに警察の許可等さまざまな規制がかけられておりまして、それが、公共団体が受け持つようになって比較的その許可が出やすくなった、そういう経緯もあります。

 しかし反面、やはり選手の安全性とかさまざまなことも勘案すればある程度の判断はやむを得ないものと思いますが、できる限り、今規制緩和の時世でございますので、このことも、十分検討させていただく案件かと思っております。

西村(智)分科員 終わります。ありがとうございました。

小杉主査 これにて西村智奈美君の質疑は終了いたしました。

 次に、高木美智代君。

高木(美)分科員 公明党の高木美智代でございます。

 本日は、文部科学省が屋外教育環境整備事業で支援されております校庭の芝生化について質問をさせていただきます。

 公明党は、マニフェストでも提示しましたとおり、緑化保全また環境教育、エコスクール事業などを積極的に推進しております。中でも、校庭の芝生化につきましては、砂じんの飛散防止、また児童生徒のけが防止、運動の誘発や景観の改善など、さまざまなメリットが予測をされております。特に、太陽熱を吸収し、ヒートアイランド現象を緩和するなど、環境負荷の低減に対応した施設づくりの点からも大いに期待をされるものでございます。

 例えば、千葉県の市川市では、学校緑化推進事業の一環として、緑豊かな学校づくりを目指し、小学校校庭の芝生化を八校、また屋上緑化を五校実施し、その結果、児童が積極的に外遊びをするようになり、また校庭でのけがも減少、校庭の砂じん防止、防音効果も上がるなど、大変メリットが多く、保護者また地域社会にも大変喜ばれていると伺っております。

 さて、これは国庫補助の対象事業として平成七年度よりスタートをしまして、平成十八年までの期限で、対象は公立の小中高等学校、盲・聾・養護学校、幼稚園などとなっております。この補助金につきましては、屋外運動場については二千万から九千万円、運動体験広場については五百万円から一千万円の範囲と伺っております。

 そこで、これまでにこの補助金によりまして、全国で何校の芝生化が進んだのでしょうか。また、新年度の予算は幾らでしょうか。また、過去からの予算の推移と申請件数につきましてお伺いをいたします。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 屋外教育環境整備事業によりまして、校庭に一定の規模、三百平米以上でございますが、芝張りを行っている学校数は、平成九年度から調べてみたわけでございますけれども、十四年度までの間に二百四十三校でございます。

 屋外教育環境整備事業におきます校庭芝生化の国庫補助申請の件数は、今申し上げました平成九年から十四年度間では実施校の数と同じでございまして、これまでの間は市町村等の御要望にこたえることができた、こういう状況でございます。

 予算でございますが、屋外教育環境整備事業のうち、校庭の芝生化に資する屋外運動場の予算でございますが、平成十五年度の予算額は三億三千万円でございまして、平成十六年度予算案におきましても前年度と同額の三億三千万円を計上させていただいているところでございます。

高木(美)分科員 それでは、屋外運動場と運動体験広場の違いについてお伺いをいたします。

近藤政府参考人 私どもは、たくましく、心豊かな子供たちを育成するために、屋外教育環境の充実を図る屋外教育環境整備事業を実施しておるわけでございます。この事業には、今申し上げましたような校庭の芝生化の事業も入っているわけでございますが、それ以外にも、例えば自然体験できる観察の森ですとか学校ビオトープ等を整備する屋外学習施設、あるいは災害時の避難場所としての防災緑地、防火水槽等を整備する防災広場、こういったものを国庫補助の対象として実施しているところでございます。

高木(美)分科員 運動体験広場といいますのは、これは学校の中庭等のことでしょうか。お願いいたします。

近藤政府参考人 学校の中庭でございます。

高木(美)分科員 そこで、屋外運動場の補助基準でございますが、先ほど答弁の中で、三百平米以上という御発言がございました。私は、補助基準は事業費のみで決めている、整備面積につきましては特に制限が設けられていないというふうに伺っております。

 そこで、屋外運動場につきまして、二千万から九千万、このように決められた理由につきまして、あわせてお伺いをいたします。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 補助基準として、事業費ベースでの下限額を決めておりまして、今先生御指摘のように、屋外運動場は一件当たり二千万円以上、上限は九千万円、こういうふうにしておるわけでございます。これは、私どもの考え方といたしましては、小規模な小学校、例えば六学級、この標準的な屋外運動場面積が大体四千五百平米、これを前提といたしまして、その場合に、舗装や排水にかかる工事費が大体二千万円相当、こういうことから、こういった状況を踏まえまして、下限額を事業費ベースで二千万円以上、こういうふうに定めた経緯がございます。

高木(美)分科員 この事業費でございますが、国が三分の一負担、また地方で三分の二負担となっておりまして、地方にとってみましたら、大規模な事業費は、今財政状況も大変厳しくなってきております自治体からは、負担が大きいという声もございます。しかも、今芝生が大変改良され、安くなっているという話も聞いております。

 特に、校庭が一カ所しかないという学校の場合は、工事期間中の体育の授業が制限をされるために、単年度ですべてを施行するのは大変難しい、複数年事業としなければならない、こうしたものも中にございます。これが単年度で区切られていましては、補助対象基準額、今お話ありました最低二千万という、ここを満たすことができない、そのために補助金が受けられない、こういう、断念をしているという学校もあるようです。

 これをもう少し使い勝手をよくするために、例えば、下限になっております二千万を一千万円以下にまで引き下げるということはできないのでしょうか。そうすれば、例えば、今年度はこの半分をします、また来年度は次のここの半分をします、そのように何年かかけて実施することも可能だと思っております。

 ヨーロッパではほとんどが芝生化されているとも伺っております。こうした補助の対象を広げていきましたらば、もっと多くの学校に芝生化を実現することができるのではないかと思いますが、御見解を伺います。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 公立学校の補助整備に当たりましては、国と地方の適切な役割分担の観点から、一定以上の規模を擁する事業について国庫負担あるいは国庫補助を行うこととしておるわけでございまして、委員御指摘のように二千万円の下限額を引き下げるということ、やはり少しいろいろと難しい課題はあるんだろうと思っております。ただ、委員御指摘の点も踏まえまして、私ども、市町村等、関係者からの御要望をお聞きしながら、少し研究をしてみたいと思います。

高木(美)分科員 ぜひ推進する方向でお願いをしたいと思います。

 そこで、お伺いしますが、文部科学省としましては、こうした学校の芝生化、全部で約四万五千校あるとも伺っております。その中で、先ほどお話ありましたように、二百四十三校が今既に実施をされている。何校ぐらいを、大体、例えば、ことしは何校ぐらい、また来年度は何校ぐらい、何年か先にはどのくらいというような、そのような目標はお持ちなのでしょうか。お伺いいたします。

近藤政府参考人 実はほかの委員会でも、耐震化施設の整備について、年次計画を立てるべきではないかというような御質問もいただきました。この校庭の芝生化の実施、これもまた学校やその設置者である地方自治体がさまざまな点を考慮して判断をする事柄だろうかと思っておりまして、国としてなかなか、年次計画を定めまして、その整備を図っていくというのは難しい問題があるんだろうと思っております。いずれにいたしましても、私ども、地方自治体からの要望を踏まえながらこの問題について対応してまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。

高木(美)分科員 私は、この校庭の芝生化といいますのは、子供たちのためにも大変すばらしい施策であると思っております。実は、ある学校区で父兄に呼びかけたそうです。芝生の維持管理のために一家庭約二千五百円援助してもらえないか、このように呼びかけたところがございまして、そこのほぼ全家庭が喜んで賛同をしてくれた、特におうちに庭のない方、そういう方が真っ先に賛同の意をあらわしてくれたという、こういうような報告も聞いております。昔から、学校の校庭は児童の遊園、公園、こういう伝統から見ましても、まさに緑のじゅうたん、こういう皆さんの思いがございます。こうした地域の方たちの要望は予想以上のものがあると、このお話を聞いて思いました。

 しかし、先ほどの答弁にもありましたように、この八年間で芝生化が進んだ学校が二百四十三校、恐らく全体の〇・五%という比率ではないかと思っております。それはなぜかということでございますけれども、その一つが、先ほど申し上げましたように、この屋外教育環境整備事業、これが単年度事業であるということでございます。そして、もう一つの理由が、維持管理に手間がかかるという、このことが挙げられると思います。かつて日本でも芝生化が試みられた期間がございました。しかし、維持管理が面倒である、また知識が浅いということもありまして、あっという間に消失をしてしまいました。

 そこで、公明党女性委員会では、一月末、千葉大学大学院の浅野義人教授を講師にお招きしまして、校庭の芝生化、メリットと課題というテーマでセミナーを開催いたしました。

 この専門家の教授がおっしゃっていらしたのは、やはり、芝生化を進めるためには、土壌基盤と利用する芝草の種類、また維持管理、この三点が大切になると。例えば、芝草の種類も、夏芝を中心にする、そしてそれが冬に枯れることを考えて少し冬芝をまぜる。芝の刈り高、高さも、普通二センチぐらいに低くしているところが多いわけですが、五センチぐらいの高目にしますと、児童たちの踏む圧力、踏圧に耐えられる、こういう具体的な工夫例を示していらっしゃいました。こうしたことで管理の労力もコストも驚くほど低くできます、また教員の負担感も軽減できるというお話も伺いました。

 中には、学校の招きで行かれてみると、校長先生と教頭先生が真っ黒に日焼けをしていらして、どうしたのですかと質問をすると、芝生の維持管理が大変で、毎日、一日の三分の一ぐらいの仕事時間を水まきに費やしていらっしゃるという、こうした例も紹介されておりました。

 そこで、質問でございますが、こういう、例えば成功例、そしてまた堅実に取り組んでいらっしゃる自治体の紹介をぜひ行っていただきたいと思いますが、この点はいかがでしょうか。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 先生今御指摘のように、校庭の芝生化に当たりましては、芝生についての専門的な知識や技術が求められるとともに、刈り込みでありますとか除草といった維持管理を適時適切に実施することが必要でございまして、そのことがまた学校やその設置者にとって負担となっている、こういうことも言われているわけでございます。

 しかし、一方、こういった方に対しまして、学校の教職員や児童生徒だけでなく、PTAやボランティア等、地域の人々の協力のもとに取り組むことによりまして、学校と地域社会との連携を深める契機となった、こういう事例も私ども多く承知をしているわけでございます。

 そこで、今手元に持ってまいりましたけれども、こういった「緑豊かな学校づくり 屋外運動場等の芝生化・植栽」、余り表紙はすばらしくはございませんけれども、こういったような資料もつくりまして、都道府県の教育委員会等にも配付をし、参考にさせていただいておるところでございます。

 こういったものも活用していただきまして、こういったものがさらに進んでいくことを期待しているところでございます。

高木(美)分科員 そこで提案でございますが、例えばアメリカでは、校庭の芝生専門の管理センターが学区内を巡回して管理作業を請け負っている、また、そこでさまざまアドバイスもしている、こうした定期巡回管理システムというような、このような仕組み、もしくはそうしたチーム、これを持っているようでございます。できましたら、日本でもこのようなシステムをぜひ取り入れたらいかがかと提案をいたします。研究、検討をしてみてはいかがかと思います。

 少なくとも、やはり基幹的な維持管理作業につきましては、今お話ございましたように、専門機器、また技術を擁する専門家の組織、ここに委託できれば、校庭の芝生化も大きく進むと思われます。この点について、お伺いをいたします。

近藤政府参考人 今ちょうど持っておりました資料の中に出てまいりましたが、東京都の板橋区の、これはある小学校の事例でございますが、ここでは板橋区が民間業者に委託をいたしまして、区内の学校を一括管理し、一年に一度剪定を中心に行っている、こういったようなことで、用務員さんの負担の軽減でありますとか、そういったいろいろな事例があるわけでございます。

 こういったものも、一つの事例として各県にお配りをしておるところでございます。こういったものもまた参考にしていただけたらと思っておるところでございます。

高木(美)分科員 ありがとうございます。

 やはり先ほどお話し申し上げました、何といいましてもやはり、コストもかかり、またこうした維持管理、手間暇ももちろんでございますが、やはりコストのかかることでございます。この後のまた維持管理のための費用等を考えますと、まずやはり、先ほど申し上げましたとおり、最初の、芝生化にする段階での補助金の基準額の引き下げ、ぜひここに焦点を当てていただきまして、工夫をしていただきまして、どこの校庭も、例えば半分ぐらいはそうした芝生化をしたい、残り半分はもっと子供たちが自由に遊べるような今のままにまたとっておきたい、いろいろな要望があるようでございます。

 そうした自由な校庭づくり、そうしたことにも対応できますように、ぜひこの点につきまして、先ほど答弁をいただきましたが、また検討を重ねてお願いを申し上げます。

 そこで、最後に大臣にお伺いをいたします。

 文部科学省としましては、学校教育の一端としての校庭の芝生化を今後どのように推進をされるお考えか、また御決意をお伺いしたいと思います。

河村国務大臣 私も、校庭の芝生化を進めて、子供たちができるだけ外に出て跳んだりはねたり寝っ転がったりしてくれる姿というのはすばらしいと思っています。各県あるいは市町村教育委員会でも、これにかなり今積極的に取り組もうとされておりますので、これをぜひ進めたいと思っておりますし、またこれは環境教育面からも意義がある、こう思っております。

 ただ、残念なことに、政府全体として国庫補助金の削減、縮減がございまして、公立学校の施設整備費が平成十六年度においても総額百四十億円の減になっておりまして、しかし、校庭の芝生化に対する要望が多いものでありますから、昨年より下げないようにということで、同額を確保するのが精いっぱいであったという事情もございます。

 しかし、芝生化には、先ほど言ったように、地域といいますか、保護者の皆さんとか、学区を全体で盛り上げる方々にも参加をしていただくということも必要であろうと思います。おっしゃったように、管理団体があって、そういうところへお願いするというのも一つの方法、それからPTAとかそういうところが一体となって、一緒になってやっていただくということも大事だろう、こう思っておりまして、地域の教育力を高めることにもなるのではないか、こう思っております。

 子供たちの芝生をみんなで管理するという動きが出れば、それはそれでまた意義がある、こう思っておりまして、これからも教育上の効果とかあるいは環境保全上の効果、こういうものをしっかりPRしながらこの芝生化に努めていきたい、このように思っております。

高木(美)分科員 大変ありがとうございます。

 今大臣がお話ししてくださいましたとおり、私はやはり学区全体を盛り上げていくというこの効果ははかり知れないと思っております。特に今、児童虐待であるとか、また子供の連れ去りであるとか、やはりそうした陰に、地域で子供たちを育てていこうという意識が大変薄くなっているというこの懸念がございます。そうした点からも、やはり学校をみんなでつくり上げていく、また、自分たちの学校がこんなに整備をされていく、やはりそうしたものは地域の方たちにとっても大変これは安心と、またそこから、何か災害があっても、そこに行けばいいのだ、そういう信頼につながっていくと考えます。

 私はかねてから思っておりましたが、今、高齢者に向けての施設の整備であるとか、こうした税金の使い方、大変手厚くございます。これはもちろん、今の方たちがこの日本をつくってきてくださった、ここへの恩恵として当然のことであると思いますが、一方、やはりこれから日本の未来を担って立つ大事な宝である子供たちにも、もっと税金の使い道を配分していくべきではないかと考えております。

 そのような意味で、今大臣の答弁をお伺いをいたしまして、やはりさらに文部科学省、また頑張っていただきまして、予算をぜひたくさんまたおとりいただき、また私もそのように頑張ってまいりたいと思いますが、そうして、環境が守られ、また子供たちが安心して勉強できる、そうした学校づくりにさらに尽力をしてまいりたいと思っております。本日はありがとうございました。

 少し早いですけれども、これで終了させていただきます。ありがとうございました。

小杉主査 これにて高木美智代君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

小杉主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。西村康稔君。

西村(康)分科員 自由民主党の西村康稔でございます。

 きょうは、世の中が大きく変わってきている、変化している、あるいはさまざまなニーズが生まれてきている中で、いろいろな制度を見直さなきゃいけない、それは、日本の経済、社会を活性化していく、それから、将来を担う人材を育てていくという視点で、いろいろ制度を見直していかなきゃいけないという観点から、幾つか質問をさせていただければと思います。

 まず一点目に、構造改革特区の関連です。

 先週、内閣委員会で若干質問をさせていただきまして、その継続、延長線上のお話なんですが、特区で、株式会社も学校ができる、それからNPOも学校設立ができるということでお認めいただいて今やっているわけですけれども、いろいろ見てみますと、株式会社の方は、対象に特に限定がなく認めている。一方でNPOの方は、不登校児あるいは学習障害児ということで限定があるということで、株式会社とNPO、どっちがどっち、NPOもいろいろ悪いことをするNPOもありますけれども、都道府県がきっちり認可をしてやっていますので、株式会社に認めてNPOに認めないというのはおかしいんじゃないか。

 これは特区全体というか制度全体に言えることなんですけれども、つまみ食いをしていくと全体としてバランスがとれなくなることはよくあると思うんです。そういう視点で、NPOの学校設立に当たっても、幾つかニーズがあるというふうに伺っていますので、ぜひ限定せずに、株式会社同様、幅広くその対象を認めたらどうかと思うんです。

 先週、金子大臣にお伺いしましたら、河村大臣ともお話をされて、いろいろ相談をされているというふうに伺いましたけれども、ぜひ大臣のお考えをお聞きできればと思います。

河村国務大臣 株式会社、NPO、両方からそういう要請があったことも事実です。ただ、NPOについては、一つは財政的基盤が非常に弱いという点もあって、株式会社のメリットは、お金を集めやすいとか財政基盤を持っているというようなことを前提にしておりましたから、そういう面で、特にNPO法人については、今までNPOとして実績を持っているところからまず見ていこうじゃないかということになったわけですね。

 そこで、LDとかADHDに対応する、そういうことでは実際に実績を上げているところもあるので、こういうところが具体的にその経験を生かしてやりたいということであれば、これを特区としてまずやっていただくということは結構ではないかというふうになっていったわけです。

 そういう意味で、これからNPO法人についても、我々としてはまさに範囲を広げることについてやぶさかではないのでありますが、具体的に、今回NPOもいいということになったんですけれども、現実にそれでは出てきたかというと、出てきていなかったんですね。株式会社は出てきたんですけれども、NPOは結局出てこなかったんです。

 まず、なぜ出てこないのかということも含めて我々研究しなきゃいかぬのですが、それは、範囲がここだけだから、もっと広げれば出るよということもあろうと思います。それで、第五次の提案の中にもそういうことがあるようでございますから、金子特区担当大臣とも、一度皆さんの御要望もしっかり聞いて、そして対応していったらどうだろうか、こう思っております。

 そこで、NPO法人でこういうLD児とかADHD児に対応しておられるところに対しても、いかがですかという話をしました。御相談もあった。しかし、財政的基盤、私学助成を受けたいんだ、こうおっしゃるんですね。この私学助成については、株式会社もそうなんですが、憲法八十九条のこともあり、一概にそこまで行くにはなかなか大変だから、そうすると、むしろ学校法人がそれを受けられるので、学校法人の資格を取るのをもっと規制緩和して、例えば校舎は借りてもいいんだとか、そういうことでありますから、それでも検討されたらどうですかということを、実はそういうことも含めて今検討いただいているNPO法人もあるようです。

 特に、御案内のように、特区は市町村が申請主体ですから、ここをもっとしっかり話し合っていただいて、そこが、よし、やろうということになりませんと、一団体だけでは、この仕組みはそうなっておりません。それを含めて、ぜひNPO法人も、そういう希望を持っておられるところは、市町村ともしっかり話し合っていただきたいということが大事なことだと思います。

 と同時に、第五次でいろいろ、英語教育だけをやりたいとか出てきておりますから、一度御要請を聞く機会を近々のうちにつくりたいということを金子大臣と話し合っております。

西村(康)分科員 ありがとうございます。

 制度そのものが、自治体、市町村と調整をして、市町村に申請をするという形ですので、これは今の制度上やむを得ないんですけれども、市町村との調整がなかなかうまくいかないところも多々あるというふうに伺っております。これは制度全体のお話でありますので別の議論ですけれども、ぜひニーズを踏まえていただいて、前向きに検討していただければありがたいな、そんなふうに思います。

 それから、同じく特区で認められた公設民営のスタイルですね、いわゆるチャータースクールのようなもの、これについては、とりあえず幼稚園と高校について認められたということなんですが、幼稚園と高校に限定した理由、それから、いろいろ法制局その他で審査をされていると伺っていますけれども、どんなふうに今取り組みが進んでいるか。これは局長ですか、お願いします。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 先生御案内のとおり、昨年九月の構造改革特別区域第三次提案に対する政府の対応方針におきましては、幼稚園教育に関する保護者の多様なニーズですとか地域の実情に対応するとともに、多様な高等学校教育の選択肢を提供する観点から、幼稚園と高等学校を対象として公立学校の民間への包括的な管理運営委託について検討することが決定されたところでございます。

 そこで、私どももまた中央教育審議会でも種々この問題を検討したわけでございますが、特に公の施設一般を対象とした指定管理者制度によって何とかこの包括的な委託ができないであろうか、これもまたなかなか法制局との関係の中でもいろいろ議論があるところでございますし、そもそも指定管理者制度というのは、施設の管理の委託を対象としたものであって、学校における教育活動等の包括的な委託については法制上なかなか想定がしにくいのではないかとか、まだまだ実は法制上の課題が多々あるわけでございます。

 そういったことから、今回、この幼稚園と高等学校についての管理運営の委託につきましては、さらに法制上の課題を詰めていこう、こういうふうに考えているわけでございます。

 なお、義務教育諸学校もその対象とすることにつきましては、やはり義務教育制度は国家の存立そのものに不可欠な根幹的制度でありまして、国、地方公共団体は、憲法に定められた義務教育をすべての国民に確実に保障する責務を負っている、こういう義務教育の性格にかんがみまして、幼稚園や高等学校以上に慎重に検討する必要があるんだろうと考えております。

 ただ、いずれにいたしましても、私どもは、政府の対応方針を踏まえまして、この構造改革特区についての提案の趣旨を実現するためにはどういった方法が望ましいのかということを含めまして、法制上の課題についてしっかりと検討してまいりたいと考えております。

 以上でございます。

西村(康)分科員 ぜひ知恵を出していただいて、法制局、なかなか難しいとも聞いておりますけれども、まずは幼稚園、高校で、特区でありますから、小中もそうなんですけれども、特区でやってみてだめならだめ、いいところはいいところで全国展開するという趣旨の制度だと思いますので、ぜひ知恵を絞っていただいて、いい制度ができるように頑張っていただければと思います。

 次のテーマに移ります。

 二つ目に、大学関連、産学連携についてお伺いをしたいと思うんです。

 かつては、国立大学の先生は、国のために研究しているんだ、自分の成果、民間の企業のためにやっているんじゃないというような思いの方も多かったように思いますけれども、その後、規制緩和もされて、いろいろな自分の成果を民間企業で生かしていただいて、どんどんどんどん実用化されていくということで、いろいろデータを見てみますと、ここ十年で五百社以上の大学発のベンチャーが生まれているようでありますけれども、今、兼業規制の緩和がどの程度進んでいるか。

 国立大学の先生について、民間企業、自分が起業する場合、あるいは、既にある企業の役員になるようなケースでアドバイザーとしてやっていくというようなケースの場合、多々あると思うんですけれども、規制緩和はどの程度進んでいるか。局長、お願いします。

白川政府参考人 お答えいたします。

 先生御質問の兼業の関係でございますけれども、国立大学教官等に対する兼業制度につきましては、先生御指摘のように、これまでも累次、規制緩和が行われてきたところでございます。

 例えば、平成九年四月から、民間企業での研究開発と技術指導に従事する場合の兼業がまず可能になりました。また、平成十二年四月からは、TLO、技術移転事業者でございますが、TLOや研究成果活用企業の役員、さらに株式会社の監査役の兼業が可能となりました。さらに、昨年の四月からは、先ほど御議論ございました構造改革特区内における勤務時間内の兼業が可能となったところでございます。

 さらに、ことしの四月一日から国立大学は法人化されるわけでございますけれども、そういたしますと、国家公務員法等の規制が適用されないということになりますので、国立大学法人みずからが、産学連携活動や地域社会への貢献といったことにつきまして、みずからの理念や目標に沿って、教職員の兼職、兼業のルールを就業規則等において定めることができるようになる、そういう状況でございます。

西村(康)分科員 アメリカと比べましても、大学発、大学の先生が新しい事業を起こしていく、あるいは新しい事業を起こすのを手伝っていくということはまだまだ少ないように思いますので、ぜひ引き続き、兼業をできるだけ認める、もちろん本業に差し支えのない範囲なんでしょうけれども、お願いをしたいと思います。

 兼業の方は大分認められてきたんですけれども、いろいろなお話を大学の先生に聞いてみますと、国立大学を一たんやめて、研究に従事するために、理化学研究所初め独立行政法人になっていますけれども、国の研究所に任期つきで、三年とか五年とか限って行きますね、その後また大学に戻るというケースもあるようですが、そのときに、年金の計算とか退職金の計算とか、うまく現状に対応していないというか不都合が生じるケースがあるというふうに伺っております。

 これは現状どうなっているのかお伺いをさせていただいて、もし今後制度改正できるのであれば、自由なとまでいかないにしても、研究者の移動に関して、その障害とならないように、日本全体の研究開発の実績を上げていくためにもこれはぜひ必要なことだと思いますので、そのあたりの現状と今後の取り組みについてお伺いをしたいと思います。

田村大臣政務官 先生おっしゃられますとおり、研究者の流動性といいますか、それを維持していくためには、退職金の通算等々、大変大きな問題であろう、そういうふうに認識いたしております。

 現状というお話がございましたが、現在の国立大学、例えば職員の在任期間、在職期間といいますか、それに関しましては、国のそれぞれの機関でありますとか地方公共団体、こういうところの機関に移る場合に関しましては通算ができるというふうになっております。また、国立大学の職員が復帰を前提としておる状況においての独立行政法人等への移動に関しましても、在職期間の通算ができるというふうになっております。

 民間の場合なんですけれども、民間の研究機関の場合に関しましては、基本的には通算ができないというふうになっておるんですけれども、教育公務員特例法におきまして、基本的に、退職せずに休職という状況で共同研究を行うという場合に関しましては、不利にならないようにこれを引き継ぐことができるというふうになっております。

 なお、国立大学が法人化をいたします。国立大学法人同士はどうなるんだという話がこれから課題になってくるんだと思うんですが、これに関しましては、それぞれ、その在職期間を通算できるような、そんな話し合いをしていただいて、そして通算できるような形で検討いただくということで、今相談をさせていただいております。

西村(康)分科員 ありがとうございます。

 研究者の流動化ですけれども、自由な研究をしていく、自分自身にとって一番いいところに移りたいというときに、その支障とならないように、あるいはしり込みしないように、ぜひ引き続き制度設計をしていっていただければというふうに思います。

 大学のいわゆる研究開発、特許を初めとして知的財産に関連して、次のテーマなんですが、いわゆる著作権、知的財産の中で、ソフト、コンテンツについて。

 ソフトの国際収支、貿易収支をいろいろ調べてみますと、全体では輸出が二千九百億円ぐらいありまして、これは十四年ですか、輸入が二千億近くあって、合計九百億円ぐらいプラスなんですけれども、ゲームが圧倒的に多くて、ゲームひとりで二千五百億ぐらい稼いでいます。ゲームを除けば一千六百億円ぐらい赤字になるということで、映像、音楽その他、ソフトについては非常に赤字であります、輸入超過ということで。

 これから製造業がどんどん海外展開をして、中国初め国内から外へ移っていく中で、これから、資源も何も持たない我が国としては、やはり知的財産で食べていく、知的財産を積極的に海外にも売っていく、その一つが特許であり、もう一つがソフト、コンテンツであると思うんです。特に音楽について、アジアに輸出をするとそれが安い値段で返ってくるということで、非常に輸出しにくいということもよく伺っておりまして、今般、議員立法でコンテンツを振興する法案も用意されておりますし、また著作権法の改正で対応されるというふうに伺っております。

 この点、ぜひ積極的に輸出振興を進めていただければと思うんですけれども、今取り組んでおられる振興策についてお伺いをできればと思います。

田村大臣政務官 先生おっしゃられますとおり、日本の音楽コンテンツ、アジアで潜在的に大変な人気がある、こんなふうに我々も理解いたしております。

 今、ライセンス生産という形で、向こうで日本の音楽コンテンツ、CD等々売られておるわけでありますけれども、基本的に物価が確かに違うものでありますから、それが現在還流してきておるのが大体四百六十五万枚と言われておるんですけれども、値段が、大体こちらで二千五百円から三千円するものが、二千円以内で売られる。そういうことを考えますと、確かに先生おっしゃられますとおり、どうも、日本の権利者のいろいろな権利という意味で支障が生じるであろう。これから日本の音楽を通じての文化振興といいますか、文化の交流という意味も含めまして、そういう意味では、これを何とかしていかなきゃならない。

 業界の方では、二〇一二年ぐらいには七千万枚ぐらいまで、このまま海外でどんどんどんどん日本の音楽コンテンツを売っていくと、還流するおそれがあるんじゃないかなんというような、そんな声も聞こえるわけでありまして、今回、著作権法の一部を改正する中で、その還流を防ぐという手だてをぜひともさせていただきたいな、こんなふうに思っております。

 どうか御協力いただきますように、よろしくお願いいたします。

西村(康)分科員 ぜひ、音楽ソフトも海外で人気でありますし、それから、日本の文化をアジアを中心に理解していただくという意味でもチャンスでありますし、韓国も門戸を広げているようでありますので、ぜひ対応措置を、著作権法を通していただいて頑張っていただいて、海外に向けての輸出振興という形をこれからも頑張っていただければというふうに思います。

田村大臣政務官 失礼いたしました。先ほど四百六十五万枚還流と申し上げましたけれども、還流は六十八万枚で、四百六十五万枚が海外で売られておるということでございます。訂正させていただきます。

西村(康)分科員 ありがとうございます、御丁寧に言っていただきまして。

 もう一点、音楽CDについてはそういうことで著作権法で対応されるということですけれども、映画、映像ソフトが物すごく輸入超過、特にアメリカからたくさん入ってきているんだと思うんですけれども、映画、なかなかこれは、どういう人材を育てたり、あるいは国際的に通用する作品をつくっていくというところで難しい点もあるかと思うんです。かつて私も、通産省におりました折に、映画祭をやったり、あるいは流通のマーケットをつくったり、あるいは当時、海外との合作を進めていこうというようなこともやっておったんですけれども、国際的に通用する、海外で通用する作品をつくるという意味では、海外と一緒につくるということも一つのテーマだと思うんです。合作もたくさんふえて、特にアジアとの合作もふえてきているようであります。

 映像、映画を振興する、これは文化振興、産業振興、両方ありますけれども、文科省として、日本映画を振興していくという、どんな振興策をとっておられるか、ぜひお聞かせいただければと思います。

田村大臣政務官 最近、日本の映画、海外で大変注目をされてきております。きょうはアカデミー賞ということで、「たそがれ清兵衛」が外国語映画部門、どうかなと、まだちょっと結果がわかっていないんですけれども。そのほかにも、例えばアニメーションの映画が非常に今アメリカ等海外で人気がございまして、今宣伝を盛んにやっておりますが、「イノセンス」でありますとか、また「遊戯王」、この「遊戯王」は日本の国内では映画化されておられませんでして、アメリカで映画化が先に進んだというちょっと変わった映画なんですけれども、大変人気が高まってきております。

 こういうことを考えましても、日本の映画をいかに海外に発信していくか、これは我々といたしましても大変大きな課題である、こんなふうに思っておりまして、例えば、今文化庁といたしましては、映画製作への支援ということで、海外の映画祭に出展するような映画、これの字幕等々の製作に対する支援でありますとか、また、国内で開かれます国際映画祭、こういうものに対しての支援でありますとか、こういうようなことを行わさせていただいております。

 一昨年五月に映画振興に関する懇談会というものを設置いたしたんですけれども、やはりこの中におきましても海外展開への支援が大変大きなテーマの一つになっておりまして、例えば昨年の五月のカンヌ映画祭でありますとか、また本年二月のベルリン映画祭、こういうところに日本語映画のブースをつくったりいたしておりまして、そういう意味で、積極的に海外に日本の映画の情報発信をしていく、こういうことも行っておるわけであります。

 来年度の十六年度予算におきましても、「日本映画・映像」振興プランということで、二十五億円ほど計上させていただいておりまして、こういう予算を利用いたしまして、ぜひとも、先生おっしゃられますとおり、日本の映画というものを海外に広めてまいりたい、このように思っております。

西村(康)分科員 ぜひ頑張っていただいて、繰り返しになりますが、産業振興、製造業はもちろん頑張ってもらわなきゃいけないんですけれども、海外に行く中で、やはりソフト産業、国内で頑張っていただくという意味、それからもう一つは、日本の文化をやはり海外に幅広く知っていただいて、日本シンパをつくっていくという意味でも大事なことだと思いますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 最後のテーマに移りますけれども、奨学金、日本育英会でやっておられる奨学金の制度につきまして御質問させていただければと思います。

 未来を担う人材を育てるという意味で、あるいは、すべての人に、経済的に恵まれない人も含めてチャンスを与えてあげるという意味でも大変大事な制度だと思います。実は私も、大学進学のときにこの制度を使わせていただきまして、通産省に就職してから返済をいたしました。ぜひ子供たちにもチャンスを与えてあげたいという意味で、この制度、もっとうまくできないかなというふうに常々思っておりまして、幾つか御質問をさせていただきたいと思うんです。

 一つは、昨今、景気が低迷する中、失業されたり、給料が減ると言われる方もたくさんおられると思いますし、あるいは、頻繁に起こっています災害で一時的に収入がなくなるという方もおられると思います。そんな方々の御子息に対して制度をつくられて、緊急的に奨学金を与えるという制度ができていると思いますけれども、現状どのぐらいの金額で、それで十分賄えているのかどうか、どのぐらいニーズがあるのか、あるいは、それを踏まえて来年度どんなふうに対応しておられるのか、お伺いできればと思います。

遠藤政府参考人 奨学金の事業につきましては、学ぶ意欲と能力のある学生が、経済的な面で心配することなく安心して学べるようにということで、これまで毎年充実を図ってきたわけでございますが、近年では、貸与基準を満たす希望者はほぼ全員に採用している、こういう状況にあります。

 平成十六年度の予算案でございますけれども、事業費規模で、一千三十億円の増を図っておりまして、六千八百二十億円、こういう規模でございます。人数にいたしますと、約十万人増の九十六万五千人、こういうことで予算案をお願いしてございます。

 また、御指摘ございましたように、保護者の失職、災害、病気などによりまして家計が急に悪くなったというような場合が多々あるわけでございますけれども、そういう場合でも勉学を断念することがないようにということで、無利子で貸与を行う緊急採用奨学金という制度を設けまして、年間を通じて随時受け付けをしてございまして、これまで希望者全員に貸与してきたという状況にございます。平成十六年度の予算案におきましても、所要額として、一万人分、額にいたしまして九億円ふやしまして、四十億円を計上している、こういう状況でございます。

西村(康)分科員 ぜひ引き続き、すべての人にチャンスが与えられるように、お願いをしたいと思います。

 一点、これも人によってよくいろいろな言い方をされるんですけれども、全体の収支というか返済率というか、普通は就職してからまじめに返すんだと思うんですけれども、これがよくないと言う人もいれば、ちゃんと返していると言う方も、ちょっとその年度によってとり方が違うのかもしれませんけれども、返済はどのぐらいちゃんとされているかどうかについてお伺いできればと思います。

遠藤政府参考人 どれを分母にしてどれをということで率はあれなんですけれども、基本的に、平成十四年度末までの返還状況でございますけれども、累計でございますけれども、返還をしてもらう必要がある額、この累計が約一兆九千四百億円でございまして、これに対して、返済をしていただいている額が約一兆九千億円でございまして、未返済四百億ということでございますから、そういう単位で計算をしますと、返還率九八%ということでございます。

西村(康)分科員 ということで、ほとんどの人が返しておられる、九八%の方が返しておられるということで、制度として非常にうまく使われている制度だと思います。

 今後、どんなふうにして財源を確保していくのかを含めて、これは私の常々思っているアイデアなんですが、一つには、お金持ちの成功された方が、最後、相続税で持っていかれるよりかはこういう奨学金の基金に寄附をする、そういうときに税制上の優遇措置があるというようなこととか、あるいは、年金制度におきましても年金の積立金があるわけですけれども、これは子供たち、教育費の手助けにもなりますので、次世代を育てるという意味でも年金の積立金を活用するとか、あるいは、今御答弁にありましたように、きちっと返済をされているということですので、例えば郵便貯金なんかを活用するとか、いろいろな財源の確保の仕方があると思うんです。ぜひ、そんないろいろなアイデアを結集していただいて、この奨学金制度を充実させていただければと思います。

 この点、どんなふうにお考えなのか。これは馳政務官に、政治家としての思いをお聞きできればと思います。

馳大臣政務官 それぞれの団体においても奨学金制度を充実してやっておられるということも承知いたしておりますので、この財源の確保について、すべてがすべて国で面倒見るということもいいのかどうか、また、各団体がやっておられる奨学金を、税制等でバックアップしながらやって、さらに拡充していただくのがよいのか、そういったことも研究しながら、より一層充実できるようにはしていきたいと思っております。

西村(康)分科員 ありがとうございます。

 奨学金は、最後は返すということですので、国が補助金的に与えるというものでもありません。苦しいときにいただいて、将来頑張って働いて返すという大変いい制度だと思いますので、ぜひ引き続きの充実を図っていただければと思います。

 ありがとうございます。これで質問を終わります。

小杉主査 これにて西村康稔君の質疑は終了いたしました。

 次に、島田久君。

島田分科員 民主党・無所属クラブの島田久でございます。

 私は、国会議員になりまして教育問題については初めての質問でありますし、また、幾分教育にかかわる者としての責務を感じながら質問させていただきたいと思います。

 きょうは、完全学校週五日制と地域の教育力の充実と、特に体力の低下の問題等についてお伺いをさせていただきたいと思うわけであります。

 完全学校週五日制の趣旨は、実施に当たりまして、都道府県に対して、事務次官通達の中で、児童等の「家庭や地域社会での生活時間の比重を高めて、主体的に使える時間を増やし、「ゆとり」の中で、学校・家庭・地域社会が相互に連携しつつ、子どもたちに社会体験や自然体験などの様々な活動を経験させ、自ら学び自ら考える力や豊かな人間性、たくましく生きるための健康や体力などの「生きる力」をはぐくむ」とあります。

 制度が実施されてから二年になると思うわけであります。ただ、その評価について、幾分考えが分かれているような気もするんですけれども、この制度についてのお考えをまずお伺いさせていただきたいと思います。

河村国務大臣 最近の教育をめぐるいろいろな諸情勢を考えてみて、学校の教育力はもちろんでありますけれども、地域の教育力、さらに家庭の教育力をいかに増すかということが大きな課題になっておるわけでございます。この完全週五日制の導入についても、そういう視点が強くあったと思います。

 ただ、これは昨年導入したばかりでありまして、この成果を問うということについて、まだ評価しづらい点もあるんですが、導入した時点から今日で、アンケートといいますか家庭調査等をした段階では、どうも保護者側は、土曜日が休みになったことによっての成果といいますか、まだそういうものがもう一つ感じられない、そういう感じですね。

 その保護者の意識というと、どうも、公民館や児童館や青少年施設とか文化施設、そういうところでは催し物、行事がふえたというのは四割だし、子供会や地域のスポーツクラブとかPTAの活動が盛んになったかと言われると、三割ぐらいの人しか感じないというような状況がございます。しかし、現実には九〇%の市町村が土曜日に学校外における体験活動を実施しておられるのでありますが、こうしたギャップがあるわけでございます。

 そういう点がどうも、地域の教育力の充実に向けて、その実態・意識調査をしますとそういう結果が出ている。したがって、さらにこの体験活動の充実といいますか、あるいは情報提供、これに努めていく必要があるということを私も率直に感じております。

 と同時に、今度は子供たちに、同じ平成十四年十一月に意識を調べてみますと、子供たちの意識は、家でゆっくりできるのでうれしい、家族の人と話をしたり外出ができるというようなことで、子供たちはおおむね歓迎、こう言っておるようでございます。

 そういう点で、ややもすると、まだこれは家庭内の評価にとどまっていて、これが地域の教育力の発展にまでいっていないという懸念がございますので、この点をさらに課題として考えていかなきゃいかぬ。

 今回、文部科学省は子供の居場所づくりというのを打ち出しました。これも、やはり大人と子供一体となって、もちろん、地域や全体で子供を守り育てる、安心、安全な学校づくりにも寄与してもらいたいというようなことがありまして、こういう予算も今お願いをしているような状況下にございます。

 地域の教育力がすぐ、五日制によって一朝一夕にできるものとは考えておりませんが、土曜日を活用して、居場所づくりを初めとする社会体験活動とかスポーツとかレクリエーション、いろいろなところへ子供たちが大人とともに参加する時間をつくっていって地域の教育力を盛り上げていきたい、これはある程度時間をかけて取り組まなきゃいけない課題であろう、率直にそのような感じを持っております。

島田分科員 私どもの地域の中で時々学校の近くを通りますと、子供たちが本当の意味でグラウンドで、昔ですと遊び回ったり、地域の人たちと交流したりしている場が学校であったような気がしたりしているんですけれども、最近、鉄棒があるのかないのかわからないような感じがするんですね。そして、お母さんたちに聞いてみると、四十人学級でありながら、鉄棒につかまれる子が三人ぐらいきりいない、ただつかまるだけですね。それだけ体力が最近の子供たちは衰えているというような気がしてならないんです。

 このような学校の状況にあって、地域社会の中の現実的なそういう姿の中で学校の果たしている現在の役割、あるいは、地域の中でどんな学校が提供している場になっているんでしょうか。その辺のお考えを聞かせていただけますでしょうか。

田中政府参考人 ただいま先生の方から、子供たちの体力が低下しているのではないか、学校で、運動場とかそういうところで子供たちが元気に遊んでいないのではないかというような御指摘をいただいたわけでございますけれども、先生御指摘のように、近年、子供たちの体力が低下しておるわけでございまして、文部省が毎年実施しております体力・運動能力調査によりますと、子供たちの体力というのは昭和五十年ごろから横ばいになりまして、昭和六十年ごろからは長期低落傾向にあるというような状況にあるわけでございます。

 私どもといたしましては、子供たちが、スポーツのみならず、体を動かす機会を充実させることが大変重要だろうと考えておるわけでございまして、これは、学校教育の中のみならず、家庭や地域においても、さまざまな活動の中で子供たちが体を動かすことによって体力を向上していくことが非常に大事だろうと思っておるところでございます。

 したがいまして、学校教育の中でも、そういう子供たちが地域や家庭に帰って体を動かすような活動ができるように、そういう動機づけを学校でやるというようなことも大事だろうと思っておりますし、また、子供たちが自由に学校に来て自分たちの好きな遊びをできるように、学校開放を進めることも大変重要だろうと考えておるところでございます。

 以上でございます。

島田分科員 調査結果では低下するという、体育の日にいつも、調査をされ、発表をされているわけですね。

 今そういう中で、その調査に基づく結果についてのお話がちょっとありましたけれども、よりそれを、地域の例えばいろいろな団体とのかかわり合いの中で、あるいは、学校五日制になればなるほど、学力に対する、あるいは学校に対するいろいろな面で地域の協力関係も必要になってくると思うんですけれども、そういう点に対してどんな考えを今、その調査結果について、どうあったらいいと思われているんでしょうか。

田中政府参考人 ただいま先生御指摘いただきましたように、体力が落ちてきておりまして、若干その中身を申し上げますと、親の世代と子供の世代とを比べまして、三十年前と現在の十歳の男子の五十メートル走で見ますと、親の世代では九秒一〇だったのが、平成十四年度調査は、三十年後の今の子供は九秒三一ということで、〇・二一秒遅くなっております。また、ソフトボール投げで申し上げますと、三十年前は三十メートル四十投げられたのが、今の子供は二十六メーター五十八ということで、三・八二メートルも低下しておるというような状況にあるわけでございまして、先ほど申し上げましたように、本当に子供たちが、学校のみならず、家庭や地域で体を動かし、スポーツに親しむ機会を充実していくことが必要であろうと考えておるところでございます。

 文部科学省といたしましては、平成十六年度には新たなモデル事業を実施させていただきまして、子供たちの体力あるいは運動能力の実態をそれぞれの地域で把握していただきますと同時に、子供たちの生活習慣等も、何時に寝ているのか、テレビゲームを何時間ぐらいやっているのか、あるいはテレビをどのぐらい見ているのか、就寝時間は何時で、睡眠時間は何時間ぐらいなのかというようなこと、生活実態も踏まえた上、ではその子供たちの体力を向上させるためにはどうすればいいのか各地域でいろいろ検討していただきまして、それを実践して、またその実践によってどういう結論が出たのか調査いたしまして、それをまた翌年度の実践に結びつけるといったようなモデル事業を全国でやらせていただきたいというように考えておるところでございます。

島田分科員 モデル事業を実施する場合、どうしても指導者が必要だと思うんですね。諸外国ですと、その指導者について、各市町村に登録されたり、いろいろな指導者の養成機関みたいなものが必ずあって、それと一体化されている事例が多いんですけれども、そのモデル事業を実施する場合に、そういう指導者養成、体育協会だとか地域の中でいろいろな形で行われているようでありますけれども、その辺のことについて、基本的な方向性は定められているんでしょうか。

田中政府参考人 先生御指摘のように、多分、学校の部活動の中でも子供たちが減ってきておりまして、先生の数も減る。そういう中で、では子供たちが望むような部活動がなかなかできない。それは、子供が少人数になることにもよりますし、そういうスポーツを指導できる指導者がいないというようなこともあるわけでございます。

 私どもといたしましては、子供の少ないことに対しましては、二つの学校あるいは地域のクラブと連携して、子供たちがしたい部活動ができるような手だてを探るということが一方でございますし、もう一方では、それでは、地域にそれぞれ当該スポーツの指導者がいるんではないか、そういう地域の人材を発掘いたしまして、地域の人材に学校の部活動にかかわってもらう。

 あるいは、今、各地域で総合型のスポーツクラブというものを我々育成させていただいておるわけなんでございます。そういう中で、今、子供たちが望むような特定のスポーツ少年団があって、特定のスポーツをする子供たちのためには、全国三万五千ぐらいのスポーツ少年団がございますけれども、今度は各地域で、子供からお年寄りまでがそれぞれ自分の好きな種目を、自分の力量に合った程度のスポーツを親しむことができるようにということで、総合型の地域スポーツクラブの育成というのもやっておるわけでございます。そういう中での地域の指導者を活用することが非常に重要だろうと思っておるところでございまして、各県あるいは市町村におきましては、そういう指導者を確保するために、登録制度でございますとかそういうことで、指導者バンクみたいなのをつくりまして、その充実に当たっておるところでございます。

 私どもといたしましても、今後、そういうスポーツクラブを振興する上でも、また部活動を振興する上でも、指導者の発掘、研修、そしてそのデータベース化、そういうものに取り組んでいきたいと思っておるところでございます。

島田分科員 特に、五日制の中でやはり子供たちが本当に体力を高め、どちらかといったら本当にどんどんどんどん低下する傾向にある、こう言われているわけでありますし、そのためにはやはり、学校教育だけではない、地域の中で何としても教育力を高め、あるいは地域の中にいろいろなクラブ活動ができていき、子供たちが本当に、ボランティア活動を含めて、いろいろな活動に取り組んでいくということが五日制を実施する前提として大事な一つの方途だと私は思うんです。

 その辺の整備そのもの、あるいは体制そのものがおくれている中で五日制というものが進行してきた過程があるし、本質的なことで少し、何か五日制の完全実施というものが、どちらかといったら労働問題から入って、途中で教育問題にすりかわったとは言いませんけれども、重要な教育問題の本質的なところに突き当たっていったということは大事だと思うんです。

 そういう面で、地域におけるそういう施設あるいは指導者等を含めて、クラブ活動あるいは地域における指導者の養成など、まだまだ不十分であるような気がしてならないんです。今度は、地域における、大きな施設をつくるという意味ではなくて、個々の小さいクラブだとかそういうものに対して指導する上において、施設あるいはそれらに関連するクラブの運営等についてなかなかみんな苦しんで、サッカーとか野球は今いいんですけれども、そうではないいろいろなクラブというものがもっともっと発展をしていくということが重要なような気がしてならないんです。

 そういうことについて、やはり何らかの方向性をぜひ国の方として出していただきたいなと思うんですけれども、その辺のお考えをお聞かせ願えないでしょうか。

田中政府参考人 全体的な学校五日制の取り組みは後で生涯局長の方からお答えさせていただきたいと思いますが、私の方からは、今先生ございましたような地域の総合型のスポーツクラブの育成に関して申し上げれば、私ども、平成十二年の九月にスポーツ振興計画というものをつくらせていただきまして、平成十三年度から平成二十二年度までの十年間でこの計画を推進していこうとしておるわけでございます。

 その中で、少なくともその十年間で、各市町村に一つはそういう総合型の地域スポーツクラブをつくらせていただきたい。特に、行く行くは中学校ごとにそういう総合型の地域スポーツクラブを整備したいということで、これまで、平成七年度からモデル事業を行いまして、お手本になるようなクラブ育成に取り組んできておるところでございます。

 今のところ、まだ全国五百五十八市町村で八百三十三の総合型の地域スポーツクラブが育成されているというような状況でしかないわけでございますけれども、来年度、平成十六年度からはさらにこれを計画的に進めさせていただきたいということで、来年度は、総合型地域スポーツクラブ育成事業費ということで、約十億円の予算計上もさせていただいておるわけでございます。

 本当に地域で子供から大人まで、家族そろって、あるいはおじいちゃんと一緒に、あるいは子供たちだけでも結構なんでございますけれども、そういう形で、スポーツやいろいろな活動に親しめるような地域づくりをしてまいりたいと考えておるところでございます。

銭谷政府参考人 五日制全体の環境整備の問題について、一言だけ御説明をさせていただきます。

 五日制の趣旨は、先ほど先生からお話ございましたように、学校だけじゃなくて地域、家庭一緒になって子供を育てよう、特に、子供たちが自由に使える時間を生み出して、そこで子供たちにいろいろな体験活動とかスポーツを含む諸活動をしていただこう、こういうことが大きなねらいであったわけでございます。環境整備ということになりますと、どこまで整備するのが十分かという問題はございますけれども、現在、大きくは三つぐらいのことを心がけております。

 一つは、現にある社会体育の施設、あるいは学校などを含むさまざまな施設を開放して、子供たちに活動の場として提供していこうというのが一点でございます。それから二つ目は、事業自体を教育委員会や各種の団体などが展開して、それに子供たちに参加してもらおうということをやっております。それから三つ目には、こういう活動の場がありますよという情報提供をしっかりやっていこうということで、今取り組んでいるわけでございますけれども、それが十分かどうかということについては、今後さらに私どもその充実を図っていかなければいけないというふうに思っているところでございます。

 なお、文部科学省では、教育関係だけの取り組みではなくて、これは各省庁全体にまたがる活動の場の整備ということで、平成十四年度の完全学校週五日制に合わせまして新子どもプランというものをつくりまして、例えば農林水産省ですとか国土交通省とか、そういう各省庁がそれぞれの分野で、河川とか農村との交流とかいろいろな事業を持っておりますので、そういう事業ともあわせて子供たちにいろいろな活動の機会を提供する、そういう事業も行っているところでございます。

 なお、十六年度からは、先ほど大臣からお話がございましたように、子どもの居場所づくり新プランということで、さらにこういった関係の子供の体験活動の場を強化していこう、こういうふうに思っているところでございます。

島田分科員 その第一のところの学校のところですね、文科省の持ち場でありますけれども。学校開放という場合に、いろいろな規制があって、なかなか学校の開放そのものは必ずしもうまくいっているとは言えない側面がどうもあるような気がするんです。やはりもっと学校の授業そのものに直接、あるいは学校そのものの直接な活動に影響を及ぼさない範囲を含めながら、学校開放のあり方というものに対してどんな考えを持っているか、基本的なところをお伺いしたいと思います。

田中政府参考人 地域の方々が本当に健康で体力を保持増進しながら生活していくためには、地域でいろいろなスポーツ活動に親しむことが大切である。そういう中で、学校というのはまさに身近な体育・スポーツ施設でございますので、これを、学校教育に支障のない限りではございますけれども、積極的に開放していくことが重要であろうというふうに考えておるところでございます。

 そういう観点から、私どもといたしましても、夜間照明をつけますとかあるいはクラブハウスを整備する、そういうのに必要な予算につきまして補助、助成するといったようなことで、これまで学校開放の促進に努めてきておるところでございます。

島田分科員 それで、完全学校五日制の基本的な考えと関連して、最近どうしても子供たちは家の中に閉じこもったりテレビを見がちであったり、なかなか完全五日制そのものの具体的な成果というものが、まだ評価をするとかということじゃなくて、やはり親たちが悩んでいることが多いような気がするんですね。

 そういう点について、現在において、評価の問題は別に、具体的に、例えばさっき言われたような体験学習ですか、あるいは地域の中における学校開放にしても、障害がいろいろあってなかなか予定どおり進まない側面があるような気がするんですけれども、その辺はどうお考えでしょうか。

銭谷政府参考人 学校週五日制を実施しました後、子供たちの土曜日、日曜日の過ごし方について、いろいろな調査を文部科学省自身が行ったりあるいはPTAなどが行ったりしておりまして、その状況を見ますと、完全学校週五日制になって土日の過ごし方が充実をしているというふうに答えている向きもあるわけでございます。その場合の理由の多くが、やはり何といっても、家族で一緒に過ごす時間がふえた、それから、読書とかそういう時間がふえたというふうに答えているのが多いわけでございます。

 一方、完全学校週五日制時の土日の過ごし方について余り肯定的でない答えをしているケースを見ますと、どうもうまく、時間の使い方がわからないとか、結局は、先ほどお話もありましたテレビを見たりゲームをしたりして過ごしてしまうというような答えが多いという結果も出ているわけでございます。

 今までのところは、完全学校週五日制になりまして、家の中、家族とのかかわりということがどうも関心の中心のように私は受けとめております。

 私ども、先ほど申し上げましたように、完全学校週五日制というのは、家族の教育力、これにも期待しましょうということと同時に、地域の教育力に大変期待をして、地域の教育力を高めるということで、先ほど来先生からお尋ねのあるようないろいろな活動をし、特にスポーツとか文化活動には力を入れてきたわけでございます。この辺の取り組みは行政も各種の団体もそれぞれの地域社会も一生懸命やっているわけでございますけれども、若干地域格差があるのと、まだ経験が必ずしも深まっていないという面があろうかと思いますので、私ども、地域での教育活動について、今後さらに充実を図っていきたい。

 なお、あわせて、家庭においても、非常に肯定的に五日制をとらえている家庭は、やはり親が子供の過ごし方に関心を持っている、配慮をしているというケースの家庭では非常にいい結果が出ているわけでございますので、家庭教育の振興ということにも力を入れていきたいというふうに思っております。

島田分科員 最後に大臣にお伺いさせていただきたいんですけれども、今お話がありましたように、家庭にも教育力を高めるためにということで、お母さんたちが悩んでいるのは、今までのように学校ではなかなかしつけをしてもらえない。そのために、地域や家庭の中でしつけの問題はより取り組んで、自分のところでも何とか子供のしつけなどの問題について取り組んでいきたいんだけれども、なかなかそのことについてわからず、悩んでいる。

 それで、どこに今子供たちが、たくさんクラブの中に集まっているかというと、割に、柔道とか空手とかそういうところに、地域の中のクラブに集まる傾向になっているんですね。そういう面から考えたりしますと、やはり地域における教育力を高めるために、そういうことを含めて、全体の地域のクラブ活動などを盛んにしなきゃいけない。

 ですから、従来の国体なども、そういう地域の体育のクラブ活動の力を高める上にも、見直す方向などを含めて、ぜひ国体も、そういうものについてもきちっと、何か指導者を含めて力を高めるような指導を含めて、今後の完全学校五日制について、大臣の所見をぜひお伺いをさせていただきたいと思います。

河村国務大臣 島田委員から、学校五日制の導入に伴って、その活用をもっと強めるべきだということで、示唆に富んだ御指摘もいただいたと思います。

 島田委員は、特に体力向上という観点からこの問題を掘り下げていただいたのでありますが、私は、最近、ゆとり教育で学力低下というような話も盛んにありますけれども、これも心配なことだし、こんなことがあってはならぬと思います。それ以上に、体力が低下しているということの方をもっと私は重視しなきゃいかぬ、こう思っております。

 そういう意味で、この五日制をどういうふうに活用するかというのはやはり大事なことだ、こう思っておりまして、この政策をもっと充実していかなきゃいかぬ、こう思っております。それには、学校の開放という問題もございます。いろいろな課題があると思います。

 さっきおっしゃったように、柔道に入っていったとかあるいは野球に入っていったとか、そういうスポ少へうまく入っていった人たち、これはまだいいと思うんですね。そういうところにも入れない人たちもいっぱいおる。そういう子供たちを、どうやって居場所をちゃんと見つけてやるか、これがこの土曜日の一つの大きな課題だ、この五日制の課題だ、こう思っておりますので、導入してまだ日は浅いのでありますが、この政策を充実することによって、子供たちの健全な育成といいますか、そういうことも含めて、この政策を強化するということにさらに取り組んでまいりたい、このように感じております。

 ありがとうございました。

島田分科員 この問題については、私どもも大きな責任もありますので、文科省の皆さんと大臣のお力をかりながら、私ども、一生懸命取り組んでいきたい、そんなふうに思っておりますので、今後ともよろしくお願いします。

 ありがとうございました。

小杉主査 これにて島田久君の質疑は終了いたしました。

 次に、大出彰君。

大出分科員 民主党の大出彰でございます。よろしくお願いいたします。

 きょうは、質問通告もしておきましたが、いわゆる国士舘大学の留学生寮建設の不可解なところといいますか、正式には住所が神奈川県横浜市青葉区鉄町千七百六十番地の加藤建硝跡地、ここに、簡単に申し上げますと、留学生寮を建てる建設業者がおりまして、留学生の寮が建ち上がったときには国士舘の側が一括借り上げてくれるんだということを言って地域住民にも説明をし、さらには、横浜市の建築確認がおりるときにもそういう説明で実はおりているんですね。

 ところが、どうも経過を見てまいりますと、必ずしもそうではなくて、学校関係者の一部が、横浜市に対してもそういう計画があるんだと認めている部分があったり、後になってそれがそうではないと否定をしている部分もありまして、大変不可解なところがございます。新聞報道などもされておりますので本来なら私が質問しなくてもいいのかと思ったんですが、もともとそこに住んでおられる方が質問しろ、こういうことでございます。

 それはなぜかといいますと、一つは、そういうアジアの留学生をお招きするのならばいい施設ではないかと思ったわけですね。そこで、いいではないかと思っていたら、どうも内容が全然違うのではないか、学校側が、国士舘大学の留学生を受け入れることもなければ寮として借りることもないと言っているようだとなってきますと、どうなっているんだと住民が騒ぎ始めまして、もともと私のところにお願いに来た方は、この青葉区というところと川崎とのちょうど境目にあるんですね。川崎の方は、日照権違反にはなりませんが日当たりが悪くなるものですから、そちらの住民の方はそちらの住民で、建たない方がいいなと思っておられるわけですね。

 それ以外の方々でも、ある程度、留学生という、学生さんたちが、アジアの方々が来るならば、生活環境についても一応納得がいくから構わないと思っていた。ところがそうではないとなると、最終的には一体何が建つんだろうか、そしてどんな人が泊まることになって出入りをするのかということで実は騒ぎになっておりまして、質問をすることになったわけでございます。

 そこで、いろいろ質問の通告をしておりますが、一番最初に、住民等に配られました、あるいは私がいただきました資料の時系列のものがございますので、横浜市のやりとりのところだけちょっと読ませていただきたいと思います。

 「加藤建硝跡地建設計画について」ということで、昨年の十一月二十日に周辺住民として説明会の開催を地域の自治会長さんに申し入れたところから始まっております。

 十二月七日に業者の方が説明会を開催したんですね。そのときに、業者さんの代表取締役と建設会社の事務所の者二名と、それから地元側は八家族、十人ぐらいが集まったということから始まっております。

 そして、十二月八日には、この町の自治会長さんの名前で市に対して、「総合的にとても良い説明会であり、鉄町としても協力を惜しまない」という内容の文書が市に出されていたんですね。ところが、これはおかしいなということになってきたものですから、後に撤回をいたしているんですが、そういう経過がありました。

 そして、少し飛びますが、十二月の十九日になりまして、市の方に国士舘大学の法人事務局長、現在の事務局長でございますが、その方が横浜市役所を訪問いたしまして、建築局の建築相談室の課長補佐という方に、この業者が地元に説明されている内容は事実と異なる旨を説明したようでございます。これは、横浜市に対して国士舘大学が正式にこう説明をしたということだと思うんですね。

 ここがおかしいんですが、そう説明をしましたという経過があるんですが、十二月二十五日にまた業者が、今度は横浜市の建築局の建築相談室課長補佐、先ほどの方のところに出かけまして契約書を見せたんだそうです。その契約書は、そこの課長補佐さんがおっしゃっているのは、要するに国士舘大学とその業者との、寮を借り上げます、そういう契約書だと思いますが、その契約書を見せて、課長補佐さんの方は何とおっしゃっているかというと、「全部を見せてもらえなかったが、法人の理事長印が押してある契約書があり、建築終了後、学校が一括して借り受ける予定の契約内容が書かれていた。」というんですね。それ自体をいただいたわけじゃないんですね。見せてもらったというんですね、後にその業者はそういう証明書を見せたみたいなことを否定しているようでございますが。

 それだけで済むならば、大学はそういう留学生を受け入れる施設を借り受けないと言っているわけですから、本当ならここで建築確認がおりるはずはないんです。

 ところが、ここで、不可解なんですが、大学院のもとの、おやめになった事務長という方に横浜市が電話確認をしているんですね。電話確認をしたところ、「同様の趣旨の事を聞いた。」ともとの事務局長さんがおっしゃったということなんですね。そこで、「この内容が異なるという、明確な証明が出来ない限り、」先ほどの課長補佐さんでしょうけれども、「審査終了通知は発行する。」ということを言っていたわけですね。現実に矛盾があるにもかかわらず、十二月の二十六日の日に市の方から審査終了通知書が交付されたんですね。そして最終的に、ことしになったら、一月二十八日に建築工事はもうスタートしている、こういう段階なんです。

 非常におかしな話だなという一番のところは、横浜市とのやりとりの中で、十二月二十五日の段階で、当大学の事務長さんが十九日の段階で既にそういう計画がないと言っているのに横浜市の側は建築確認までおろすようなことになっているという、この間の不可解なところが実はございます。

 この辺について、結論的には決まっているんですね、横浜市の建築確認の問題ですから。しかしながら、国士舘大学ということで、全く内部の方が一人でやっておられることであれば、これは事故ということになるんでしょうかね。ところが、どうもそうではない。二転三転、時系列的に見ますとおかしなところがございますので、この点ついて、当然横浜市も、あるいは文科省の方も事実関係を調べるようにということ、報道されておりますが、事実関係を調べてしかるべき対応をとっていただくというのが最終的な結論でございます。

 そこで、まず最初に、文科省と住民のやりとりが、時系列的に言ってどんなことがあったのか、ちょっと教えていただきたいんですが。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 先生御指摘の本件につきましては、実は、本年二月の上旬に住民の方から、この計画があるのかないのかということについてお問い合わせがございました。それが唯一、地元の方々等と文部科学省との接触でございます。

 私どもは、この問い合わせを受けまして、学校法人に早速報告を求めたわけでございます。その報告が二月十二日にございまして、概要だけ申し上げますと、学校法人としては一切関与していない、俗な言い方でございますが、全く寝耳に水の話だったというあらまし、内容の報告をいただいておるわけでございます。

 ただ、その報告の中には、関与が疑われる職員がおるようであって、事情聴取を進めているけれども、なおその関与の状況の詳細は不明であるので調査を続けているということでございましたので、私どもは引き続き、詳細な事実関係の調査を依頼して、報告を求めているという段階でございます。

 それ以外の地元との私どもの接触はないわけでございます。

大出分科員 二月の上旬にあったというだけなんですね。そうですか。はい、わかりました。そうですね、文部省についてはそうかもしれませんね。

 では、質問通告どおりでございますが、文部省と地元の市議の方も調査等をなさっておられて、そしてほかの政治家の方もお伺いになっているようでございまして、文部省については、その政治家の方は、政治家の方々がいたとすれば、何かおっしゃってこられたでしょうか、時系列的にお願いしたいんですが。

加茂川政府参考人 先ほどお答えをいたしましたように、私どもと地元関係者等と接触がございましたのは、唯一、地元住民からの問い合わせだけでございます。

大出分科員 政治家等その他のあれはないということですね。――はい。

 いろいろな方からいろいろお話が出て、いい意味でだと思いますが、私は、いろいろ別の方の、市会議員さんは当然、市の話ですからかかわるのは当たり前でございますし、住民の皆さんに、調査をし報告を、有益なことをなさっているわけですが、その後にいろいろなことで政治家の方の名前が出てきたりしたものですから、どういうかかわりをしておられるのかというのをちょっと聞いてみたのでございます。ないというならばそれで結構でございます。

 そして今度は、住民だけなんですか、文部省さんと業者さんとのやりとりというのはございませんか。

加茂川政府参考人 全く接触がございません。

大出分科員 そこのところも、住民の方々はいろいろおっしゃっている方もおられて、業者の方から文部省にも物を言ったんだというようなことも実は聞いておりまして、その辺が、もしどんなことをおっしゃったのかというのがわかればと思いまして。一説によると、文部省の方が少し恫喝をされたというようなことを、聞いただけでございますよ、聞いただけでございますが、そういうようなことがあって、一体どういう業者なのかなとちょっと思ったものですから。そうでございますか。

 では、その後に、横浜市と文部省とのやりとりというのはございますか。

加茂川政府参考人 市との接触もこれまで一切ございません。

大出分科員 なかなか、ただいま調査中というのは非常に質問もしづらいものでございますけれども、それはしようがないのでございますが。

 ただ、先ほど申し上げたように、地元等の説明会に出されている資料を見ただけで、当の大学の現在の事務長さんが市の方に出かけていって、そんなことはありませんと言っているわけなんですね。そうだとすると、市の方はそこで建築許可をおろすというのはおかしな話なんですね。

 それで、電話をしているんです。学校の方に、国士舘の方に電話をしているんですけれども、前の理事長さんが出ているんですね。前の理事長さんに聞いても話にならないんですが、二人いた場合には、二人いるのはおかしいということは言わなきゃいけませんし、ネーミングが違っているんだとすると、現理事長の話を優先するべきだと思うんですね。ところがそうなっていなくて、明確な証明ができないからおろすんだという、この辺は市に聞くことでございますけれども、大変不可解に思っていまして、なぜこんなことが起こったのかということ。

 そのほかにもう一つ言えるのは、国士舘大学の事務局長さんが横浜市に行くのであれば、学校としてはこうであるという文書か何かを最初に出せばそこでばっちり決まるわけですよね。普通なら、おかしいではないか、こうなるはずなんですが、それもないというところが非常に、何でそういう経過に進んでいくのだろうかというふうに実は思っています。

 そのときに、最初にも申し上げましたけれども、前の事務長さんだったという人が、一応、同趣旨のことがあるんだということを言っているわけですね、要するに借り上げるという計画はあるんだということを業者に言っているわけなんですよ。そうすると、少なくとも前の理事長さんだという方は何らかのかかわりをしているわけであるし、知っていることになるわけですね。

 それが、唯一、その人が個人的に、前の事務長さんがやったのであれば、これは大学は知らないことでございますから、事故ですね。悪人はそれはいますから事故でありますし、住民の方にしたら、詐欺罪ではございませんが、だましたことになりますし、市に対してもだましたことになるんですね。建築確認をおろすために、おりやすいようにといいますか、そういう配慮をしたんだということなんですよね。

 しかし、もしそうでないとしますと、なぜかというと、即座に学校の方から文書か何かでそんなことはないんだというふうに横浜市に出ていれば、建築確認をおろすにもちゅうちょしたはずなんですね。ところが、おりている経過から見ますと、どうもその辺がちょっと解せないなというところがございます。

 もしそのことが、大学がちゅうちょした理由が、大学の中でそういう計画みたいなのがあって、あるいは、業者と大学がもし知り合いだったりなんかしまして大学名をお貸しになったということがあれば、これは一つの事件になってしまうわけですね。

 ですから、今は調べている最中だということで、これ以上の質問というのはなかなか難しいことでございますが、まずは、何が建つのか、そしてどんな人たちが出入りするんだろうかというのをひとつ、そちら側にもお出しをいたしましたが、住民の方々が、どんなうちが建つかという設計図をいただいているんですね。その設計図を見ていただければわかるんですが、この共同住宅、ここはマンションは建ちませんので共同住宅、六階建てでございます。そして七十九室ということになっております。

 しかし、これを見てみてびっくりしたんですね。何でびっくりしたかといいますと、四人部屋なんです。二人部屋もございます。四人部屋で、トイレが各部屋にはございません。トイレは共同トイレです。そして食堂もございません。さらにおふろも見当たりませんという設計図なんです。確かに、日本とアジアの留学生との物価の問題等あるかもしれませんが、えっ、今どきこういうことがあるのかなと実は思いながら、ちょっと不思議な建物だなと思ったんですね。これはそちらに出してありますから、事実でございまして、これは住民等が配られた、あるいは業者から手に入れた話でございます。

 その中で、一番最初に業者さんが地域の住民の方々に、説明会に当たりまして、お出しになった文書があるんですね、そちらにもお渡ししてありますが。もともと国士舘大学にこのアジア学科を開設しようという動きがないというのは文科省さんの方もお認めになっているんですね。二十一世紀アジア学部二十一世紀アジア学科が開設されていたわけですよね。こっちの方は開設されていたんですね。ところが、新たに開設するという届け出は国士舘大学からはないというお考えですよね。

 それで、事実確認といいますか、その中に最初何と書いてあるかというと、「アジア学科とは、アメリカ(セントジョーンズ大学)、中国(北京師範大学)、などの各諸国にある名門大学を卒業した生徒達の中から、優良な生徒を抜擢し、東都六大学をはじめ、国士舘大学を筆頭に、日本の伝統文化(江戸文化)、習慣、行事などの研究を目的とした学科であります。」と学校の説明が出ておりまして、「私達は、」この業者の話ですが、「平成十六年八月より国士舘大学大学院アジア学科の始業に合わせ、」これは、今申し上げたように、こういう学科はないということでございます。その「始業に合わせ、諸外国からの留学生が安心して、勉学に徹する生活環境を作るべき事を目的とし、」この辺の目的は新聞にも載っていることでございます。「近隣の皆さまへも気持ち良く学生達を受け入れられるように努力する次第でございます。尚、」ここからが問題なんです。「尚、学生寮は最新のコンピューター管理システムにより二十四時間体制で管理し、アメリカ合衆国に本社を置く、世界一の安全対策管理を誇る」、名前は出しませんが、何とか「社にてセキュリティートレーニングを受けた管理員が二十四時間常駐致します。」と書いてあるんですね。

 その後が一番問題なんですが、「国士舘大学大学院アジア学科」はありませんが、「の生徒のみが使用できる施設」、「のみが使用できる」と。現実にはこういう計画がないわけですから、ここの生徒はゼロということでございます。「施設として、部外者の立ち入りは厳禁とします。」と書いてあるんですね、わざわざ「部外者の」と。何か私がちょっと語るに落ちるのかという気がするのは、この後に、「交通手段として、皆様にご迷惑にならぬよう、最寄駅までのシャトルバスの運行も行う予定でございます。」こう書いてあるんですね。

 こういう、国士舘の留学生は受け入れることはないということでございますし、四人部屋で、おふろがなくて共同トイレしかない、それで外国人ということになると、地域の方々は、外国人労働者がお入りになるんじゃないかとか思ったり、オウムか何かを入れるんじゃないか、こういう話になっているんです、現実には。

 ですから、この設計図も見まして、これは明らかにおかしいのではないかということで、横浜市についてだったら、当然、新たに説明をするだけではなく、この建築確認はよかったのかということをもう一回検討してもらわなきゃならないでしょうし、国士舘大学に対しては、もとの事務長の方がどうかかわったかということと、真相究明とともに、大学自体のかかわりといいますか、それをやはり究明していただかないと困ると思うんですが、どうでしょうか。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 先生御紹介の資料等については、私ども、実は詳細を承知しておりませんが、手渡ししていただきましたものを読ませていただきました印象としましては、学校法人の説明とは全く合致しない部分ばかりでございまして、なかなか合点がいかないというような印象でございますけれども、私どもの承知しておる文書等でございませんので、なかなかコメントをするのは難しいということを御理解いただきたいと思っております。

 ただ、今先生のお話にもございました前事務長の関与ということにつきましては、関与を疑われる職員が一名いるという学校法人の報告もございます。先ほど申しました。なお、詳細について、本人からの事情聴取を行っているようでございますが、不分明なところもございまして、積極的に法人が事実解明に努めるよう、私どもも働きかけてまいりたいと思っております。

 なお、一点、学校法人の意思表示が文書等で不明なために混乱が起きているのではないかという趣旨の御質問がございましたが、確かに、市当局に学校法人が文書等で、この事件についての遺憾である旨または事実と違っている旨、意思表示はしておりませんが、業者に対しましては、文書をもちまして、全く事実が異なっておる、または、このまま法人の立場がないがしろにされた場合には法的措置も辞さないという厳しい意思表示がなされておりますので、念のため申し添えたいと思います。

大出分科員 そうでしたか。私はそれは聞いておりませんで、もし違うのであれば、そしてまた元事務長という一個人が加担をしているのだとすれば事故でございますので、これは当然、不法行為その他の請求を学校の方から業者にすべきだろう、そう思っております。

 そして、今おっしゃったように、事実関係をまだ調べている途中であるということでございますので、私の方からは、それを究明していただいてしかるべき対応をお願いする、こう言うしかないと思いますので、とりあえずは、この問題についてはここで、よろしくお願いしますということを申し上げて、この問題を終了いたします。

 そして、次に参りますが、あともう時間がございませんが、定番で、義務教育費についての質問を通告しておきました。

 これは当然、私も総務委員会におりますので、総務委員会の方の側からも問題になる話でございましたけれども、どうも総務委員会にいるときの感覚とここにいるのとちょっと違いまして、というのは、いわゆる義務教育費国庫負担を堅持するということで、全額という言葉がよく出てくるんです。総務省の方はなかなかそういう言葉は、総額の方が多く出てきまして、ちょっとニュアンスが違うんですが。平成十六年度は何とか義務教育費国庫負担の堅持をしながら、しかし、附則の二というのがありますよね、あの部分で、どうも十八年度までの間にちょっと変わってくるんではないかという心配がございます。

 そこで、なぜその心配をするかといいますと、諸外国の例を、実は〇三年の三月三日の日に総務委員会でこの問題を取り上げようと思ったんですが、当時、強行採決があるとかいうふれ込みがありまして、私の時間を安住議員が質問してしまったものですから流れてしまいまして、そのときの前提だけをちょっと言わせてもらいます。

 心配をしているのは、アメリカの例なんですが、どうしても義務教育費その他を詰めていくんですね。少なくしていく傾向がアメリカの中にありまして、そうすると、何をするかというと、やはりお金を集めたいものですから、企業のいろいろな広告をとったりとか、企業の援助を受けるという方向にどうしても流れていくんです。

 そこで、私の方から少し申し上げますが、学校教育に企業が広告その他でかかわるかかわり方というのは三つほど実はあるんですね。一つは、教材とか討議用の素材として、現実の企業広告が資料として掲載される場合というのがあるんです。二つ目は、雑誌中の企業広告、つまりは教科書の裏側に広告を出すというようなこと、これが二つ目なんです。それから三つ目は、実在メーカーの製品の購入費を計算させるなど、いわゆる問題文自体に広告効果が付加されるというようなやり方があるんですね。例えば、イラクの教科書に一カラシニコフ、二カラシニコフというような、子供がピストルを計算してやるようなものでございまして、そこの製品のチョコレートだとかそういうのが出てきて、五足す三は八だとか、そういうことですね。そういうようなやり方があるんです。

 日本の場合にはそんなことはないだろうということが前提なんですが、非常に心配をしているのは、アメリカを見たら、かなりそういうことをやっているんです。それだものですから、心配で、私は質問しているんです。

 例えば、エディー・バウアーというアパレル業者がアメリカにありまして、ここは学校との関係でどんなことをやっているかというと、ナショナル・ジオグラフィー・ビーという、全米の児童が地理の知識を競うコンテストの後援をするんですね。これ自体は構わないですね。学校の方からすれば、ああ、これは競争させれば子供たちは地理の勉強になるから、それに対して特定のアパレル会社が後援をする、こういうスタイルが一個あるんですね。

 そうかと思いますと、これなんかは、ピザハットというピザ屋さん。ブック・イットという、これは義務教育の方の対策、ブック・イット・ビギナーズ、これは義務教育前の方々を対象としているんですね。どういうことをやるかというと、一定量の読書をすると、そこにそのピザ会社がただでピザを上げるんですね。表彰もする。これは確かに、アメリカというのは学区になっていて、学区でやることでございますが、一定量の読書をしてくれるのならピザをもらってもいいし表彰されてもいいなと。この辺はまだいいんですね。ただ、問題はありますね。

 ほかに、例えばゼネラル・ミルズというシリアル、コーンフレークの会社ですが、ここはどんなことをするかというと、まずは、そこの会社のクーポン、ベルマークみたいなものですね、クーポンを送ると、学校にお金が寄附される。これは六万ドルまで寄附されるんですね。ここに書いてあります。そういうことですね。これ以上は、時間がありませんから。

 あとは、その他いろいろありまして、キャンベル・スープなどという会社は、ラベルを送ると、コンピューター、スポーツ用具、音楽用品等が学校に与えられる。要するに、これで子供たちが一生懸命これを買うことになるわけですね。

 一番きわめつけなのは、ハーシーチョコレートというのがございます。ハーシーの教育用プログラム、チョコレート・ドリーム・マシン、小学校一―三年生対象です。これは、チョコレートのでき方、健康への影響、これが算数、科学、地理の教科書に登場してくるんですね。会社名がそのまま出てくるわけです。

 これだけにしておきますが、もう一個だけ言いますが、学区でございますので、コロラドスプリングス第十一学区の収入というのがございます。ここは、コカ・コーラからネットで年間四十八万五千七百五十八ドルいただいているわけですね。要するに、これと提携して、コカ・コーラを宣伝するといただけるということなんですね。そこまで来てしまっていて、その弊害は何かというと、契約書の中にどんなことが書いてあるかというと、例えば、コカ・コーラかペプシのカレンダーを教室に張りなさいというような契約を結んだりするんですね。

 こういうことが起こってしまうので、義務教育費的なものが、今はよろしいようにも見えるけれども、ここがもし切り刻んでいくようになってくるとこういう荒廃が起こるのではないかということを心配して、義務教育費の国庫負担の堅持ということを貫いていただきたいということを大臣に申し上げたいんですが、御答弁お願いします。

河村国務大臣 義務教育費国庫負担制度の堅持については、今大出委員が御指摘されたようなことを日本では、そこまで考えたことはありませんが、アメリカのように、すべて自由に各州に任せるとか、国がもうほとんど関与しないということになると、そういう問題が起きるわけですね。これも過剰関与はいけませんけれども、やはり国の教育の根幹を、特に義務教育については持つという、この考え方は、この義務教育費国庫負担制度の根幹にあると思います。

 このことはきちっと維持して、そして、日本は今財政論的な議論が盛んでありますが、やはり教育論できちっと位置づけた上でやりましょうと。特に、十八年度までに一般財源化も含めて検討する、こうなっていますから、三大臣合意もありますが、これをきちっと十八年度までに検討はいたします。検討いたしました結果、やはりこれは守るべきだというのが我々の主張です。これを貫いていきたい、このように思います。

大出分科員 ひとつ、全体の教育の方を、財政再建だけでなく教育の方を考えながらやっていただけるということでございますので、期待をしながら、私たちもチェックをしながら、いい教育制度にしていっていただきたいと思います。

 時間ですので、これで質問をやめます。ありがとうございました。

小杉主査 これにて大出彰君の質疑は終了いたしました。

 次に、増子輝彦君。

増子分科員 民主党・無所属クラブの増子輝彦でございます。

 きょうは朝から、大臣、長時間御苦労さまでございます。私の最も敬愛する政治家の一人であります河村大臣ときょうこういう形で質疑ができることを、大変うれしく、また光栄に思っておりますので、よろしくお願いをいたしたいと思います。

 限られた時間でございますが、幾つかの質問をしたいと思っておりますので、端的にお答えをいただければ大変ありがたいと思っております。

 大臣、今回、平成十六年二月十八日の中教審の「薬学教育の改善・充実について」の答申がございました。その中で、薬学教育制度を見直して、薬剤師養成のための薬学教育について、学部段階の修業年限を四年から六年に延長する学校教育法等の一部を改正する法律案が今国会で出されているわけでありますけれども、現行の四年の薬学教育では十分ではなく、特に臨床にかかわる実践的な能力を養うというような目的も含め、今回、六年の教育を必要としているということにあわせて、研究者養成など多様な人材の養成を目的とするために四年間の学部・学科の存置も認めるという内容になっております。

 今回の改正の趣旨、目的等、どう見ても、私は、六年制一本化にすることの方が薬学を学ぶ者にとって、そのほとんどが薬剤師になるという目的で実はこの教育を受けているわけですから、今回の六年あるいは四年というこの二本立てはむしろ混乱を招くのではないだろうか、と同時に、場合によっては薬学教育の質の低下まで招くのではないかと心配をいたしているのですが、どのような所見をお持ちでしょうか。

河村国務大臣 薬学、特に薬剤師を六年制にするというこの方針について、増子委員御指摘のような議論があったことも事実でございます。ただ、これはまさにこれから、薬剤師といいますか薬学教育の高度化ということはずっと言われ続けてきたことでありますから、この方向そのものについては、私はこれで、当然今もうそういう時期に来ている、こう思っております。

 この四年制の部分を残すかどうかの問題でいろいろ意見を聞いたり調査いたしますと、やはり薬学教育によって進路が、薬剤師として進む人、それから大学院に進む人、いわゆる創薬へ進む人、これは四年制でも進む人もいるというこの現状が現実にあるということですね。これを踏まえて、そして薬剤師についてはもう、薬学教育といいますか薬剤師コースの高度化といいますか、薬剤師の医薬分業の進展等々今の現状を見たときに、三師会と言われる医師会、歯科医師会、薬剤師会、この一体化の中で、医師、歯科六年制、そして薬剤師もそうしていこうという一体化の中で六年制をしいたわけであります。

 ただ、四年制が残るということが薬学教育のその後の質を低下させるのではないか、今こういう御指摘がございましたが、私は、四年制が、さらに二年の大学院に進まれる方、この保障がちゃんとあるわけでございまして、この時点でいわゆる薬学分野での研究者養成に対する社会的ニーズがやはりまだ高い、こういう点も配慮して、四年制からさらに大学院へ進むコースをつくってそうした研究者養成の道も開いておくという意味で、四年制を存置することが必要であるという結論に至ったわけでございます。

 この改革が、いわゆる医療薬学教育の充実と、それから基礎薬学と創薬学に関する教育を充実させようという双方の目的を持ったものである、この点にぜひ御理解をいただいて、結果的に、その教育課程を分けることによってそれぞれのこれまで以上の質の高い人材を養成していく、こういう方向でなければならぬ、また、それを図っていこうとしている、こういうことで御理解をいただきたいと思います。

増子分科員 そういう観点を理解できないわけではございませんが、私は、やはり六年制一本でいいのではないのかというふうに考えているところでございます。

 ところで、現在、新たに開設を予定している薬科大学、薬学部はどのぐらいの数があるのか、そして、それについてどの程度認可申請の事前協議が進められているのか、教えていただきたいと思います。

遠藤政府参考人 十七年度に薬学部を開設するというためには、本年の六月の末か九月末までに設置認可の申請を行う必要があるわけでございますが、それに向かって、事務的に事前相談に来ている大学は八大学でございます。この事前相談と申しますのは、認可申請に係る事務的な手続につきましてどういう書類が必要かといったような、そういう相談を受けておるものでございまして、申請の内容自体については、申請された後に、大学設置・学校法人審議会において御審査をいただくということになろうかと思います。

増子分科員 いずれにしても、薬学部あるいは薬科大学の申請がこれからさらにふえてくるものと予想されますけれども、私は、平成九年で何か薬剤師がピークになり、それ以降は薬剤師の皆さんがどんどんどんどん、職につけなくなって、大変な状況になってしまうという予測もあるわけであります。かつて、歯学部、歯科大学が同じような道を歩んで閉校に追い込まれた、あるいは定員割れを来し、私立の歯学関係も大変厳しい経営環境にある、そのような二の舞になるのではないのかなという心配も実はいたしているわけでございます。いずれにしても、文部省が私立大学等にしっかりとした指導をしながらやっていかなければならないと思っております。

 そういう中で、私学補助というものが現実に行われているわけでありますから、当然、今後新設される大学や学部等も含めて補助が行われることになっていくわけでありますが、今日まで、平成十一年から十五年までの間に、私立の大学あるいは短大等にどの程度の助成金といいますか補助金が行われたか、総額で教えていただきたいと思います。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 私立大学等経常費補助金の予算額についてお答えをいたしますが、平成十一年度は約三千六億五千万円、平成十二年度が三千七十億五千万円、平成十三年度が三千百四十二億五千万円、平成十四年度が三千百九十七億五千万円、そして平成十五年度、これも予算額でございますが、三千二百十七億五千万円でございまして、これを総計いたしますと、一兆五千六百三十四億五千万円となるわけでございます。

増子分科員 実は大変なお金が補助金という形で出されているわけであります。この国民の税金が私立大学でどのように使われているか、まさに国民の血税でありますから、今後についても、文部省がしっかりとこの辺の使い道といいますか、まさに教育の観点から私はしっかりと指導していかなければならないと思っております。

 ところで、仙台市青葉区に東北文化学園大学というのがございますが、ここには過去五年間に幾らの補助金が出されているんでしょうか。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 補助金額として確定をしておりますのは平成十四年度まででございますので、恐縮ですが、平成十年度から十四年度まで、すなわちこの五年間についての額をお答えいたしたいと思いますが、学校法人東北文化学園大学には総額で三千二百四十三億円のこの五年間での合計額の補助金が出ております。

増子分科員 三千二百億ですか。何か間違いじゃございませんか。

加茂川政府参考人 済みません。大変失礼をいたしました。けたを間違えてしまいました。

 三億二千四百三十万円でございます。大変失礼をいたしました。

増子分科員 やはり大変な四年間での補助金でございます。

 平成十五年度は三億を超える補助金が出されるというふうにも聞き及んでおりますけれども、この学校法人東北文化学園大学の前理事長であった堀田正一郎氏が、ことしの一月二十日ごろ、二〇〇〇年度から三年間の理事長の個人所得分について、仙台国税局から所得税法違反の疑いで大学事務室や理事長室など五カ所が強制調査、いわゆる査察を受けたという事実を確認されているのか。また、昨年秋にはこの法人が仙台北税務署の任意調査も受けて、会計資料の記載ミスなどの指摘を受けたということについてのあわせて確認をしているかどうか、お答えください。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 先生御指摘の国税当局から査察を受けたという事実の確認を、大学法人からの報告でいたしてございます。

 ただ、もう一点、会計資料の記載ミスの指摘を受けたという部分につきましては、法人に確認をいたしましたけれども、法人側の説明によりますれば、これは事実誤認である、事実に即していないという報告をあわせて受けておるところでございます。

増子分科員 これは、私今申し上げましたとおり、仙台北税務署の任意調査を受けたというふうに聞き及んでおるわけでありますが、この辺は、極めて、法人に対しての調査でありますので、しっかりと確認を私はしていただきたいなと思っておりますので、この件について、ぜひお願いを申し上げたいと思います。

 ところで、この東北文化学園大学が、この調査を受けた後、文部省に来てその事実関係について報告をしたというふうにも報道されておりますが、その際に、今話が出ましたとおり、法人が、会計資料の記載ミスの指摘を受けた事実はない、法人とのかかわり合いもないと説明したということでございましたけれども、もしこのような事実があるとすれば、これはやはり、先ほど、三億二千万を超える国民の税金が払い込まれているわけでありますから、この辺についてはきちっと確認をする責任が文科省にはあると私は思いますが、いかがでしょうか。

加茂川政府参考人 先生お話しのように、学校法人からは二月の五日に報告がございました。その際に、二点ポイントがございまして、今回の理事長、今では前理事長になるわけでございますが、所得税法違反の事件については大学とは一切かかわりがないということでございますし、それから、何より、前理事長が自分から、大学とは一切かかわりないものとして、迷惑をかけたとして辞任を申し出られて、現在は新理事長が選任せられておるということでございます。

 事実の解明につきましては、事柄の性格上、国税当局、税務当局の査察調査等の結果を踏まえなければ私どもとしても動けない事情もございます。ただ、多額の補助金が出ている学校法人に対してでございますので、きちんと事実究明は学校法人に求めていきたいと思っておりますし、私どもも鋭意そういう対応をとりたいと思っております。

増子分科員 前理事長の堀田正一郎氏に対しては、文科省としては、この法人との関係も含めて、直接この件についてお会いになって話をされたという事実はあるんでしょうか。

加茂川政府参考人 前理事長とは直接接触をしておりません。先ほど申しました二月五日の報告は副理事長が参りまして、前理事長のお考え等も私どもに報告があったわけでございます。

増子分科員 その副理事長さんはどなたさんですか、報告に見えられた副理事長は。

加茂川政府参考人 この場で固有名詞を挙げるのは支障があるかと思いますが、現在の副理事長でございます。現任の副理事長が二月五日に当方に報告に参ったということでございます。

増子分科員 この大学の役員構成を拝見いたしますと、かつて文部省に在籍をされていた方が副理事長としておられるというふうに確認をいたしておりますが、間違いございませんか。

加茂川政府参考人 はい。そのとおりでございまして、私どものOBが現在の副理事長として在任している事実がございます。

 ただ、就任等の経緯につきましては、私ども承知をしておらない次第でございます。

増子分科員 この方はかつて文部省の審議官を務められて、ワールドカップ招致のための室長もされた方だと認識をいたしております。あわせて、平成十年の参議院選挙比例区に自由民主党公認として出馬をされたというふうに聞き及んでおりますが、間違いございませんか。

加茂川政府参考人 私もそのように記憶いたしております。

増子分科員 東北文化学園大学には、先ほども話がございましたとおり、経常費補助金として三億二千万を超える国民の税金が使われているわけであります。堀田前理事長の個人の容疑とはいえ、事実上のオーナーであり、法人との関係がまさに表裏一体、密接であります。法人のお金は自由になる立場にあったというふうに私どもは認識をせざるを得ないわけであります。この補助金が不正流用されたり、個人財産の秘匿や蓄財に使われたり、あるいは一部では政治家への資金として流れたというようなうわさも実は出ているわけでありますけれども、この査察等を含め、やはり国民の税金がここには使われているわけでありますから、これは徹底的に調査をして、真相といいますかその内容を明らかにする責任が文科省にあるのではないかと私は思っております。

 もしそのような事実が万が一あった場合に、どのような措置をとり、この大学にどのような責任を追及するのでしょうか。お答え願います。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 先生御指摘のような事実関係については、現在調査中でございますので、確認ができておりません。

 確認ができておりませんが、万一ということで御質問でございますので、万一いわゆる不正経理でございますとか違法行為等がありました場合には、私ども、厳正に必要な調査を行って対処をする。一般論で申し上げますと、不正経理等があった場合には、経常費補助金の不交付でありますとか返還でありますとか、そういった厳しい処分も含めて対応してきたのがこれまでの例でございまして、何より国税当局の査察結果を待ってから必要な報告等が学校法人から参ると思っておりますが、そういったことも踏まえまして、総合的に検討、対応してまいりたいと思っております。

増子分科員 この東北文化学園大学は、福島県郡山市に来年四月の薬学部新設を目指して、現在文科省と許可申請の事前協議中だと聞いておりますが、事実でしょうか。

遠藤政府参考人 東北文化学園大学から昨年の十二月に、薬学部の設置構想を持っている、そして設置基準や書類の記載方法等事務的な手続をどうしたらいいのか、こういったような相談があったというふうに承知しております。

増子分科員 先ほど冒頭に大臣にお聞きをいたしました。今回の学校教育法の改正によって六年制の教育制度に移行していくということ、あわせて四年制も引き続きやるということであります。そして、既に八つの新しい申請が行われ、さらに、一部の方々から、関係者からお聞きすれば、既に十七に上る新たな大学が薬科及び薬学部の申請をすると言われております。

 今回のこの脱税容疑あるいは法人とのかかわり合い、私どもにとっては極めてわからない部分が多いわけであります。先ほど来申し上げておりますとおり、私学には補助として大学関係に一兆数千億円を超える国税が使われているわけであります。今、それでなくともこれだけ不景気が長引き国民生活が苦しい中で、この税金の使い方というものがまさに問われている時代に、こういった容疑がある大学が新たな学部を、大学をつくるということになっていくならば、もちろんそこにまた国民の血税が実は注入されていくわけであります。ここの部分をしっかり文科省としても、事前協議という、事務的なものというものは言葉だけでありまして、事実上、申請事前協議というものが行われていくわけでありますから、しっかりとした指導をしていくことが私は肝要かと思っております。

 今回、郡山市に進出をしてくる、新しい学部をつくるということについては、郡山市民の税金が九億円、実は市から、開設準備費という名目でしょうか、そういう形で今議会でこれが議決される可能性もございます。そして、福島県も五億円のやはり県税がここに、同じような名目を含めて、教育振興ということでありますけれども、注入されていくわけであります。あわせて国税が入っていくわけでありますから、よほどこの事実解明がなされなければ、来年の四月に開校目的だというこのタイムスケジュールに合わせてやっていくということよりも、むしろ税金の正しい使われ方が行われていくということの方が重要であり、またそれが国民に対する責任だと私は思っております。

 この件についてのお考えをお伺いいたしたいと思います。

遠藤政府参考人 御指摘のように、税金はきちんと使われ、また私学も適正に運営をしていただくというのが私どもの基本だ、こういうふうにも思っております。

 ただ、設置の事前の、私、今相談と言いましたけれども、中身まで踏み込んでというよりは、手続的な問い合わせといった程度でございますので、そういうことにはお答えをしているという状況でございます。

増子分科員 そうはおっしゃいますが、もう既に、土地は三十年無償提供、あわせて工事会社も決まっているような話、あるいは、先ほど申し上げたとおり、市民、県民の税金が十四億円とりあえずここに出されるということを含めれば、単なる事務的なものということだけで済ますものではないのではないかなというふうに私は認識をいたしているわけであります。

 続きまして、もう一つお伺いをいたしたいと思います。

 この大学は、既に進学の決まっている仙台の高校の学生に大量に受験をしてもらう、そしてその受験料を高校が肩がわりをして後で返還をするという事実があったと報道されておりますが、間違いございませんか。

遠藤政府参考人 この高校というのは仙台育英高校と聞いておりますけれども、これを所管しております宮城県から私どもも報告を聞きました。

 宮城県の方で高校から事情を聴取したということでございまして、その内容については御指摘のとおりでございまして、受験料につきましては、保護者から生徒を通じて高校が預かって一括して大学に支払い、その際、高校が預かり証を発行した、そしてその預かり証と引きかえに受験料相当額を生徒に渡したということでございまして、その財源は関連の任意団体である教育振興会から補助として出した、こういう報告を受けておる次第でございます。

増子分科員 このような事実がある。大学側で依頼をするということの行為の中で、高校が断れない事情が何かあったんでしょうか。このようなことが行われるということは、私は、教育上の観点からいたしましても、まことに不見識である、教育にかかわる者として、断言すれば失格ではないかというふうに思っておりますが、大臣いかがでしょうか。

河村国務大臣 増子議員から今御指摘のあった、東北文化学園大学へ大量受験させた問題であります。

 確かに御指摘のように、この報告、事情聴取した範囲で聞きますと、合否決定前に利害関係者と接触していることがあった、合格圏にありながら合格対象者を除外しておった、あるいは結果として見かけ上の志願倍率を上昇させているというようなこと、入学者選抜の手続が不適切である、こういうようなこともあって、こういう扱いといいますか、これはもう絶対にやめてもらわなきゃいかぬということで強く求めております。

 御指摘のように、教育現場としてはこれはあってはならぬことだと私も思っておりますので、こちらから指導事項を出しておりますから、この是正状況も見ながら厳正に対処してまいりたい、そのように考えております。

増子分科員 この件も、実は大学の副学長が記者会見で、少子化で受験が減ることを心配したとその依頼理由を述べているようであります。

 受験倍率を上げなければならない理由は何なんだろう。まさに大学そのものの経営が大変なわけであります。ですから、憲法で私学に対しての公金を支出するということは禁じられているにもかかわらず、このような形で一兆数千億のお金が、事実上私学には国民の税金が支出されているわけであります。ですから、よほど文科省はしっかりと私学に対する指導をしていかなければならないのではないか。

 と同時に、こんなに作為的に受験倍率を上げたことについては何ら責任が問われないのか。と同時に、脱税容疑あるいは今回のようなこの大量受験の問題、まさに私は、教育上の観点からすれば、社会的に、道義的に、教育的に問題の多い大学と言わざるを得ません。

 そういう観点から、このような大学に対して、文科省としては調査の結果を待ってからというような答弁が先ほどございましたが、しかし、既に新たな大学を郡山市に薬学部という形の中で新設、開校しようということになれば、またまた税金が入っていくわけでありますから、先ほど申し上げたとおり、これに対して文部省として、大学に対してどのような責任を追及していくのか、あるいはどのような徹底した指導をしていくのか、ここがまさに国民の税金を正しく使うという観点からも極めて重要なことだと思っております。

 この点について私はもう一度、教育そのもののあり方や、あるいは税金の使われ方や、あるいは私ども政治にかかわる者が国民の皆さんの血税というものを正しく使うことこそがまさに我々の責任でありますから、今申し上げたことを含めて、河村文部大臣にもあわせてこの件について御答弁をいただきたいと思います。

河村国務大臣 大学、私立大学を含めて、いわゆる公教育としてその役割を果たしていただかなきゃならぬ。その段階において、その教育的信頼にこたえられないような現状があるということになれば、これは厳正に対応していかなきゃいかぬ問題でございまして、まして、増子議員御指摘のように、私学助成という形で国の国家予算を入れておるわけでありますから、この期待にきちっとこたえる経営をやっていただく、これは当然のことだろう、こう思っております。

 この問題につきましては、査察の問題も含めて、報告もいただきますが、こちらから指導した点もございます。厳正に対処いたしたい、このように思います。

増子分科員 では、最後に一つ。

 今大臣からもお話がありましたとおり、私は何も恣意的な意味でこの話を質問させていただいているわけではございません。あくまでも税金の使い方、そして教育上の観点からも、ぜひ幾つかの問題のある大学についてはしっかりと指導していただき、それも余り悠長なことをおっしゃらないで、速やかにこの指導というものをしていただき、追及すべき責任は、責任をしっかりととるような方向でやっていただかなければ困る。

 先ほど申し上げました、文科省OBの方がこの大学にいるから何かそこに便宜的なものが図られたのではないかとか、あるいは何かそこに特別な配慮があったのではないかという疑惑を国民に持たれることは、決して、教育上の観点や、文科省においても得策ではないし、いいことではないということでございますので、ぜひ、ここのところを速やかに明らかにして、徹底的な解明と、場合によっては、責任問題が生ずれば速やかに責任の所在を明確にしていただきたいということをお願い申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

小杉主査 これにて増子輝彦君の質疑は終了いたしました。

 次に、古屋範子君。

古屋(範)分科員 昨年初当選をさせていただきました公明党の古屋範子でございます。

 本日、初めての委員会質問でございます。まだ緊張しております。

 きょうは、私が当選以来取り組んでおりますLD、ADHD、高機能自閉症など軽度発達障害を持つ子供の支援策についてお伺いしてまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、現在、核家族化や少子化が進み、昔、家族や兄弟関係の中で学んできた生活の知恵や技術、地域社会の中で身につけてきたそのようなソーシャルスキル、社会的な機能を子供たちは失いつつあるというふうに感じます。例えば、自分の周りにさまざまな人がおり、自分自身もその社会の一員であるというような自覚をしなければいけないという機会がどうしても減ってきていると思います。それが近年、落ちつきがなく集団になじめない、また、特定の学力が極端に低いといった子供の問題が学校現場で表面化してきており、軽度発達障害に起因すると言われるケースも少なくありません。

 先週、二月の二十八日、私ども公明党女性委員会で、この発達障害に関します公開セミナーを行いました。全国から多数の応募がありまして、当日も、教育関係者、地方議員、またお母様等々、大変熱心な参加者が集ったわけでございます。

 このLD、ADHD、高機能自閉症などの障害を持つ子供の存在は、これから個性を尊重する教育のあり方を考える上で貴重なモデルであり、また、人が人として自信を持って生きていくには、その人らしさを失わずに、自然な接し方で、お互いに、さまざまな人がいて、違いがあってもよいのだというようなことを学び合っていく教育が必要であります。このような子供たち一人一人の個性を認め、またその差異、違いを認め、育てる教育の原点、そうした教育の扉を開く大切なかぎになると私は考えます。

 この発達障害を持つお子様たちについて、河村文部科学大臣に、その御認識をお伺いいたします。

河村国務大臣 古屋議員がこの発達障害児の問題に取り組まれて、いよいよ国政の場でこの問題を取り上げていただくことに、心から敬意を表したいというふうに思います。

 この問題が日本の教育現場で顕在化したのは割と最近のことなんでありますね。したがって、まだまだいろいろな面でこれの対応について十分でない面がある。これにいかに取り組んでいくかということが私は大事な課題である、このように認識をいたしております。

 そこで、文部科学省としても、発達障害を含む障害のある児童生徒一人一人の教育的なニーズにちゃんと応じた適切な教育的支援をしていくということで、このたび、特別支援教育、こういう名前で支援を本格的に行おうといたしておるわけでございます。

 これは、地域とか学校での支援体制をさらに構築していただかなきゃなりません。そのために、特別支援教育推進体制モデル事業というものを導入いたしておりまして、LD、ADHD等の体制整備のためのガイドライン、これをつくる、さまざまな取り組みを今進めておるところでございます。また、中央教育審議会においても、特別支援教育制度のあり方について特別委員会を設けて審議をいただく、こういうことにもなっております。

 発達障害のある児童生徒に対する特別支援教育、これはまさに一人一人を大切にする教育ということでありますから、この教育の推進についてさらに充実してまいりたい、このように考えております。

古屋(範)分科員 次に、早期発見と相談体制の整備についてお伺いいたします。

 子供の行動におかしいところがあると真っ先に気づくのは親であります。原因を考え直そうとしてもうまくいかず、しつけができていないと周囲から責められたり、絶望的な気持ちになってしまうことが発達障害児を持つ家族に共通しており、子供の育て方が悪かったと自分を責めてしまう親御さんも少なからずおります。

 これらの軽度発達障害を持つ子供たちは、親の育て方が悪いとか、また、もともと不機嫌でいら立ちやすい性格だといった単純な原因によるものではなく、適切な診断、治療が必要であり、その障害をよく理解している人々によって障害を克服できると言われております。そのために、早期発見が大事であり、特に乳幼児健診の充実が必要であると考えます。

 本日の神奈川新聞にも、その乳幼児健診の様相が、昔と大きく変わり、その様相も非常に騒がしくなっているという記事が載っておりますけれども、この乳幼児健診等での早期発見、また早期療育へのシステムを確立し、これら保護者がさまざまな問題にどんなふうに対処すればいいのかを相談できる体制を整備拡充すべきであると考えますが、厚生労働省さん、いかがお考えでしょうか。

谷口政府参考人 お答えを申し上げます。

 自閉症やADHD、LD等の発達障害をお持ちのお子さんとその親御さんに見合った支援というものを行っていくためには、早期に状況を的確に把握することが大変重要である、このように考えております。

 これまでも、母子保健の取り組みの中では、先生御指摘のように、乳幼児健診におきまして乳幼児の情緒でございますとか行動等の問題を早期に発見いたしまして、保健医療従事者による経過観察、それから発達相談及び指導等を行ってまいったところでございます。

 しかしながら、保健医療関係者も含めまして国民全体の理解がまだ残念ながら十分とは言えず、診断できる専門家や適切な療育指導ができる機関も少ない等の課題が指摘をされております。関連する保健、医療、福祉分野での対応の向上が求められているところだというふうに理解をいたしております。

 このため、厚生労働省といたしましては、これまでも、厚生労働科学研究事業の中で、保健サービスの充実を目指しました保健指導手引書を作成いたしまして実際に指導に当たる保健師を支援しているほか、平成十四年度からでございますが、自閉症・発達障害支援センターの整備を行う等によりまして、早期発見による適切な支援を行っていくための対策の充実を進めているところでございます。

 さらに、現在、省内関係部局はもとより、文部科学省さんとも共同いたしまして、医療、福祉、教育等の関連領域の御専門家ですとか保護者の方々との勉強会を現在行っておりまして、このような子供さんに対する適切な支援のための連携のあり方等につきまして、幅広く意見交換を進めているところでございます。

 今後、こういった取り組みにつきましてさらに検討を深めてまいりたい、かように考えておるところでございます。

古屋(範)分科員 御努力の様子を伺うことができましたけれども、次に、発達障害支援のための人材確保についてお伺いいたします。

 発達障害児支援のためには、医療また福祉、教育、労働などに関係する専門家、例えば児童精神科医また心理専門家、保健師、専門的知識を持つ教師など、多くの人材の確保が必要でございます。中でも児童精神科医は、欧米先進国に比べ大変少ないと言われております。

 公明党ではこれまで、小児医療、精神医療等に対する診療報酬の改善を求めてまいりましたけれども、このたびの診療報酬の改定では、診療報酬本体部分がプラス・マイナス・ゼロと変わらない中で、この小児医療また精神医療が重点的に評価されることになりました。これは、私どもの声を反映していただいたものというふうに認識しております。しかしながら、診療報酬の引き上げだけでは児童精神科医等の確保はできないというふうに考えます。

 そこで、あらゆる機会を通して人材確保の啓発を行うとともに、児童精神医学の専門家、また臨床心理士等を養成する大学やその他の教育機関を充実し、その上で活躍の場を確保していくことが大切というふうに考えますけれども、この点についてお伺いいたします。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 LDあるいはADHD等の発達障害に対応していくためには、先生御指摘のとおり、多くの専門家の支援が必要であると考えております。

 文部科学省におきましては、これまでも、特別支援教育推進体制モデル事業を通じまして、学校外部の専門家に教育相談や巡回指導等の支援をいただけるような仕組みづくりを行うとともに、日本小児神経学会ですとか日本児童青年精神医学会を含む専門家による特別支援教育ネットワーク推進委員会を組織いたしまして、都道府県等において、専門家のネットワークを形成するための支援を行っているところでございます。

 一方、これらの発達障害に関する専門家の養成確保につきましては、大変これは大きな課題でございまして、今後、厚生労働省とも協議をしながら、また大学における取り組みが進むよう、私どもとしても努力をしてまいりたいと考えております。

古屋(範)分科員 次に、この特別支援教育の具体的な支援の進め方についてお伺いいたします。

 この障害児教育については、昨年三月に文部科学省の専門家会議が「今後の特別支援教育の在り方について」との最終報告をまとめております。

 これらの支援について、日本では法律上の定義もなく、欧米に比べおくれていると言われております。この最終報告によって、通常学級に在籍する軽度発達障害を持つ子供たちへの支援が大きく期待をされているところでございます。

 この報告書によりますと、盲・聾・養護学校など特別な場での教育を軸としてきた従来の特殊教育から特別支援教育への転換が進むことになるわけでありますが、なぜ特殊教育から特別支援教育への転換が図られたのか、この間の経緯を簡単に御説明ください。

 また、そこで焦点となるのは、新たな対象となりますこのような発達障害児、児童生徒への具体的な支援の進め方でございます。今年度より、先ほどもお話に出ました特別支援教育推進体制モデル事業が、四十七都道府県、約二千五百校の小学校、また約千の中学校でスタートしておりますが、この具体的な支援の進め方について、文部科学省の御説明をお伺いいたします。

近藤政府参考人 昨年の三月に、文部科学省の調査研究協力者会議が「今後の特別支援教育の在り方について」という最終報告を出したわけでございます。

 これは、LDあるいはADHD、そういった発達障害の児童生徒に対する教育的な対応でありますとか、それから、児童生徒の障害の重度、重複化に対応した盲・聾・養護学校のあり方をもう一度根本的に見直しをして、考えていくべきではないであろうか。

 今、先生も御案内のように、いろいろな障害が重複をしてきた子供がふえてきております。これまでは、盲学校、聾学校、養護学校と、ある意味では学校種別の、そういったそれぞれの学校で対応してきたわけでございますけれども、それを例えば一つの、これはその報告書では仮称でございますけれども、特別支援学校というような制度にいたしまして、そしてもう少し総合的な対応ができないであろうか。

 あるいは、現在特殊学級で教育を受けている子供たちについて、あるいは普通学級の中にLDの子供あるいはADHDの子供たちがかなり在籍をしている、そういう特殊学級だけで今もこういった子供たちに対応していいんであろうか。そこで、これも仮称でございますけれども、特別支援教室というようなものを設けまして、そういう中で、幅広く、弾力的に特別支援教育というものを、一人一人の子供の教育的なニーズに対応した形でやっていくことができないであろうか。

 そういう観点から、報告をおまとめいただいたと承知いたしております。

 この問題につきましては、さらに、盲・聾・養護学校という学校制度、あり方の見直しでございますとか、それから、小学校、中学校における特殊学級というこの制度、仕組みのさらなる弾力化といわゆる制度改正につながる問題でもございまして、この協力者会議は、今後、具体のそういった制度のあり方について検討をしてほしい、こういう御提言でもございますので、先般、中央教育審議会の中に特別委員会を設けまして、さらに幅広い、保護者の方々あるいはいろいろな関係の方々の御意見を伺いながら、今申し上げましたような制度改正についての具体的な検討を進めていくことにしておるわけでございます。

 また、昨年三月のその最終報告を受けまして、特別支援教育推進体制モデル事業、こういう事業を十五年度から実施しておるわけでございます。これは、十六年度にはさらに予算も拡充をいたしまして、盲・聾・養護学校、そしてその推進地域の中の小中学校、これが連携をしながら、また先ほど先生御指摘になりましたように、少し長くなって恐縮でございますが、この問題は、医療、福祉、教育、労働、いろいろな関係の方々が深くかかわるわけでございますので、そういった推進地域の中に連携協議会のようなものを設けていただきまして、いろいろな関係者の方々がいわば知恵と工夫を出していただきまして、一人一人の子供の教育的なニーズに十分対応できるような特別支援教育のあり方を実際に模索していこう、こういう事業でございます。

古屋(範)分科員 やっと動き出したというような感がございますけれども、次に、特別支援教育のあり方についてお尋ねをいたします。

 私は、この特別支援教育は、通常の教育と特別な教育との連続性を重視し、特別な教育ニーズを持つ子供たちを大きく包含するための支援対象と指導の場の拡大であるというふうに理解をしております。

 こうした動きは、一九八九年に国連総会で採択をされました、人権、性、財産などと並んで、障害による差別の禁止を規定している子どもの権利条約、また、一九九四年にユネスコ、スペイン政府の共催で開かれた国際会議で、著しい不利と障害を持つ子供を含むすべての子供がきちんと教育が受けられる、子供中心の教育を展開すべきであることがうたわれましたサラマンカ宣言など、国際的な人権思想の成熟化を反映する流れでもございます。そして、我が国の特別支援教育は、障害の重度化また多様化に対応し、盲・聾・養護学校の質的変化を促す点で、大変に貴重な提言であるとの評価がございます。

 そこで、この特別支援教育のあり方について、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

河村国務大臣 国連の児童の権利に関する条約において、障害のある児童生徒については、自立を促進する、社会参加を容易にする、これによって十分かつ相応な生活を享受すべきであるということが規定をされておるわけでございます。

 また、お話のございました、スペインで平成六年に発せられましたユネスコのサラマンカ宣言、これにおきましても、すべての子供は独自の学習ニーズを有しておって、教育システムは、こうした多様な特性やニーズを考慮して計画、立案、実施しなければならない、このような指摘が入っております。

 文部科学省といたしましても、障害のある児童生徒の自立と社会参加に向けて、一人一人の教育的なニーズ、これに応じた教育を行ってきておるわけでありますが、さらにこれを高めていかなきゃならぬ、さらに、国際的な動き、動向も踏まえながら制度や施策の改善充実に努めていかなければならない、このように考えております。

古屋(範)分科員 ここで、若干、学校現場や保護者の方々の、今起こっている議論を紹介いたします。

 従来の特殊学級に通う子供の保護者の方々は、子供たちがこれまでのように特殊学級での指導を受けられず、やはりこういった発達障害のお子様が大変ふえてきているという現実がありまして、パンクしそうというような声もございますけれども、この軽度発達障害の子供を主流に、そのペースで、支援教室のカリキュラムがそちら中心に決められてしまうのではないかという不安がございます。また、教師の間では、この特別支援教室の実施に当たって、新たな教員配置に費用がかかるために、特殊学級の人員をそちらでも有効に使っていくといいますか、有効活用するねらいがあるのではないかとの不安がございます。

 特別支援教育はぜひとも成功しなければいけない制度でありますので、こうした現場の声に、お答えをいただきたいと思います。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 先ほど申し上げました平成十五年三月の文部科学省の調査研究協力者会議が、いわば特別支援教育への転換を促す、こういうことで、今先生おっしゃいましたように、いろいろと関係者の間から心配なり不安、あるいは期待があるわけでございます。

 特に、これまでの特殊学級にかえまして、特別支援教室の導入について具体的に検討する旨の提言がなされたわけでございますけれども、最終報告では、障害の状態によりまして、従来の通級指導の対象となる児童生徒のように週に数時間のみ特別支援教室で指導を受ける場合ですとか、従来の特殊学級の対象となる児童生徒のように週の相当の時間を特別支援教室で指導を受ける場合とか、さまざまな場合が実は考えられるわけでございまして、私どもは、この特別支援教室の制度は、現行の特殊学級や通級による指導の機能を包含しながらも弾力的な対応を可能とするもの、こういう御提言だろうと思っております。

 ただ、いずれにいたしましても、実はこれは昨年三月の御提言でございますけれども、その後、私どもも、教育委員会の関係者、いろいろな関係者の方々から御意見を伺いましたところ、具体化を望む意見が寄せられる一方、今先生が御指摘になりましたように、新しい制度に対する不安の声も寄せられていることは承知をいたしております。

 そういうことも含めまして、中教審では、関係者のより幅広い意見を伺いながら総合的に審議をしていただき、望ましい、よりよい制度改正につなげてまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。

古屋(範)分科員 次に、専門知識を持った教師の養成についてお伺いをいたします。

 昨年三月、文部科学省がまとめた全国調査では、小中学校の普通学級に在籍する児童生徒のうち学習面か行動面で著しい困難を示す子供の割合は六・三%、また、横浜市が昨年十二月にまとめた調査では、それとほぼ同じ六・五%という結果でございました。これは教師の目を通してでございますけれども、四十人学級に二、三人の割合で軽度発達障害のお子さんがいる、こういう現実がございます。

 この軽度発達障害の子供を受容する学校の体制がほとんど整わず、これもかなりの地域格差が現在あります。担任の教師も、障害に無理解なことから、問題児扱いする深刻なケースも多いと聞いております。一方で、その親たちは、自分の子供の変化に気づいても、相談及びアドバイスを受ける専門医やカウンセラーが少ないために、不安を抱えていて、どうしてよいかわからないという状況で、まずは担任の教師に相談する機会が多くなると思います。

 そこで、父母の理解のもとに、専門的研修を積んだ教師を中心に個別の支援メニューの提供ができるよう、教師の養成を早急に進めるべきであると考えますけれども、この点、いかがでございましょうか。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 先生御指摘のように、障害の多様化、複雑化などに対応するために、障害のある児童生徒への教育に関して教員に求められる知識経験は一層高度化、専門化されていると認識をいたしております。こういったような状況に対応するためには、外部の専門家の活用、あるいは、そのための仕組みの整備にあわせまして、個々の教員の資質の向上を図ることが肝要である、こういうふうに認識をいたしております。

 国立特殊教育総合研究所におきましては、従来からLDに関するリーダー養成研修を実施してきたところでございますが、平成十五年度から、ADHD、高機能自閉症の内容を含む研修に拡充をして実施をしておりますし、また、各都道府県におきましても、特殊研で養成をいたしましたリーダー、こういった方々が地元に戻ってまた研修の講師になるとか、そういった地域の実情に応じた研修の充実も図られつつあるわけでございます。さらに、この特殊教育総合研究所では、発達障害等の実践研究の成果を踏まえまして、教員用の手引を作成、発行しておるところでございます。

 今後とも、関係機関と連携をしながら、先進的な研究、研修あるいはリーダー養成など、教員の専門性の向上を支援するための取り組みを進めてまいりたいと考えております。

古屋(範)分科員 まさに今から、点から面へと広げていく段階かというふうに認識をしております。

 最後になりますが、軽度発達障害を持つ子供たちを理解することは、とりもなおさず個性を理解すること、また人間を広く理解することであると思います。それは、すべての子供たちの個性を尊重しながら自己実現を図る教育に広げていくことにもつながるというふうに思います。そして、将来、子供も、一人一人が、その能力や適性、また趣味や関心、そして何よりも個性を十分に認められながら、それぞれ自由に羽ばたいていくことを私は期待しておりますけれども、教育はそのための準備であり、助走の支援であると考えます。

 現在、滋賀県の甲西町というところでも、独自の支援システムを導入し、こうしたLD、ADHDを含む障害を持つ人を一貫して支援する取り組みを行っております。乳幼児から小中、そしてまたその後というふうな一貫の支援をつくっている町でございます。その町におきましては、学校において、アメリカで法制されているIEPという個人指導計画を作成して支援をしていく予定で、教育委員会要綱が定められております。

 最後になりますが、こうした子供たちが将来社会で自立して生活できるよう、国として早期発見、そして相談、教育、また生活、就労まで、ライフステージという観点から幅広く、横断的、総合的、そしてまた一貫した支援に取り組む必要があるというふうに考えます。現在はまだこれがでこぼこしていたり、また地域格差があると考えます。そのためには、一歩進んでいるアメリカのように、これらに対処できるような子供の教育、医療に関する中心的な柱となる法律、例えば発達障害者支援法というようなものを確立した上で、支援体制づくりを進めていくべきと考えております。

 大臣、ぜひとも前向きな御答弁をお願いいたします。

河村国務大臣 御指摘の点、私も全く同感でございます。

 政府におきましても、平成十五年度において、新たな障害者基本計画におきましても、「障害のある子ども一人一人のニーズに応じてきめ細かな支援を行うために乳幼児期から学校卒業後まで一貫して計画的に教育や療育を行う」、こうなっておるわけでございまして、関係機関が、適切な連携のもとに、役割分担をしながら適切に計画を策定していかなきゃいかぬ、こういうことで今進めております。

 文部科学省もこれを踏まえながら、発達障害児の児童生徒一人一人の教育ニーズに応じた適切な教育をするために、先ほどお話がありました、また御指摘申し上げた特別支援教育推進体制モデル事業等を通じて、学校においても関係機関との連携をとりながら、乳幼児期から学校卒業までを見通した個別の教育支援計画、まさにこの個別の教育支援計画というのが必要だと思いますので、これをさらに促進いたしたいと思っております。

 また、関係省庁、特に厚生労働省との連携も大事でございますから、この関係を密にしながら、そして総合的な一貫性のある支援策といいますか、特に、国連の障害者の十年においての完全参加と平等という理念、ノーマライゼーションの理念、これも教育の中できちっと位置づけながら、国民全体の中で総合的な施策がとれるように、その充実に力を尽くしていきたい、このように考えております。

古屋(範)分科員 以上で質問を終わります。

小杉主査 これにて古屋範子君の質疑は終了いたしました。

 次に、西博義君。

西分科員 公明党の西博義でございます。

 河村大臣、長時間大変に御苦労さまでございます。初めに、小学校における英語教育についてお伺いをしたいと思います。

 大臣も積極的にこの推進を図っておられると聞いておりますが、我が党の神崎代表の本会議質問に対しても、大臣から、小学校における英語教育の導入について前向きな御答弁がございました。そのことを踏まえまして、既にいろいろな御計画があるかと思うんですが、この導入について、初めに、いつごろから具体化をしていこうとされるのか、このスケジュールについて御説明をお願いしたいと思います。

馳大臣政務官 まず現状と、そしてそれを踏まえた今後のスケジュールについてお話し申し上げます。

 総合的な学習の時間で、国際理解に関する学習の一環として、現在、過半数の学校で英会話活動が取り入れられております。また、文部科学省が指定した研究開発学校六十七校や、特区十六自治体において英語教育を必修とするという取り組みが行われております。

 これらを踏まえまして、今後、総合的な学習の時間や研究開発学校の成果の検証、諸外国の事例の検証、これは韓国や中国の一部で行われている実態を踏まえまして、小学校における英語教育のあり方を含め、初等中等教育における外国語教育の充実改善について検討を行い、平成十六年度中を目途に基本的な方向性について中教審の教育課程部会において取りまとめをいただいた上で、その後、小学校における英語教育の導入についての検討に入りたい、このように考えております。

西分科員 今御答弁がございましたように、過半数の学校が何らかの形で既に英語教育に取り組んでいる、こういう状況が生まれてきております。早急に議論をいただいた上で、ぜひ全国の学校が必修の形で実施できるような体制をお願いしたいと思います。

 小学校から英語を教えてほしい、勉強したい、こういう声が高いのは、逆に言いますと、現在の中高における英語教育、私どもも経験がありますけれども、そこの問題があるんではないか、私は逆にそういうふうな思いもいたします。中学校、高等学校における英語教育を改善しなければ、コミュニケーション能力が、せっかく小学校で頑張ってやっていっても今のままではなかなかその上の段階にはつながっていかないんじゃないか、こういう危惧を抱いております。

 そこで、現行の中学、高校の英語教育というものをどういうふうに総括されようとしているのか、また今後どのようにその問題を解決していこうとされているのか、このことについて御答弁をお願いしたいと思います。

河村国務大臣 私自身も英語教育を振り返ってみて、まさに日本の英語教育の欠陥をそのまま引き継いだんじゃないか、ただ、自分の努力を棚に上げてそういうことを言うわけにもいかないと思いますが、確かに実際の授業、中高、大学も含めてそうでありますが、文法、訳読中心の授業であったと思います。

 現実に、英語の先生というとまず文法からという感じで、この前もクラス会をやりましたら、私の英語の先生が参りまして、部分否定と全部否定のことを覚えていますかなんて言い出しまして、エブリワン・キャンノット・ビー・アポインテッド・ア・ミニスターと言って、私のことを、だれもが大臣を約束されていないんだという、これは部分否定だというような、こういう話から入りまして、やはり我々の受けた英語はこうであったという思いをしたんであります。

 これからどうしても英語教育をコミュニケーションができる英語教育に変えていかなきゃいけない。これは、もう国民の皆さんだれもが感じておられるところでありますから、このような形に変えていこうというのがこれからの方向だと思います。

 中学校の段階では、聞くこと、話すこと、音声による基礎的コミュニケーション能力に重点を置く。これは、新学習指導要領はそのように言っておりますし、また高校段階になっては、さらに聞くこと、話すこと、読むこと、書くこと、これは有機的に連携がなければだめだということで、実践的なコミュニケーション能力に重点を置く。このように方向も位置づけてまいりましたから、これからの子供たちというのはかなり能力が高まるというふうに思っております。

 昨年三月に、英語が使える日本人の育成のための行動計画と言っているんですが、こういうことを策定いたしまして、さらに英語教員自身も資質向上を図ってもらわなきゃなりませんし、また、学校にもスーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール等研究開発学校をつくって、そこでそういう成果、普及をやってもらおうということで、またネーティブスピーカーをしっかり活用するというようなことで、これまでの英語教育をそういう意味でいい意味で転換をさせていく。

 そして、今後とも英語でコミュニケーションできる子供たちをたくさんつくっていくということが、まさに国際化時代、また近隣の諸国の動向を見てもまさにその時期に至っている、日本はむしろおくれておるという思いを抱いておるところであります。

西分科員 ありがとうございました。積極的な御発言だと理解させていただきます。

 一方、最近英語熱が大変高くなって、報道によると、小学校から高校までずっと義務教育期間も含めて全部英語で授業をする、こういうところの話も出ておりますが、インターナショナルスクールを卒業した生徒さんにお聞きしますと、逆に、日本にいながらなかなか日本のことがわからない、例えば漢字がなかなか理解できない、こんなことが言われているような嫌いもございます。

 決して水を差すわけではありませんけれども、そういう形で日本語も英語も両方中途半端になってしまう、こんな問題も極端な場合には起こってくるということもございます。また、将来、日本の大学に進学をしたり、途中でほかの学校に事情でかわっていくというようなこともあるでしょうし、さまざまな課題が今後起こり得るんじゃないか、こういうことも若干危惧をしております。

 これらのデメリットの面につきましても、専門家の検討を十分お願いしたいというようなこと、どうしたら理想的なバイリンガルの教育ができるのかということを学問的にもやはり突き詰めて、十分な研究、検討をお願いしたいと思うんですが、その点について御答弁をお願いしたいと思います。

馳大臣政務官 特区では、例えば、平成十七年度に小中高一貫の私立の学校が開設される群馬県太田市の取り組みがあるということは承知いたしております。また、西先生おっしゃいますような、日本の大学への進学のときとか、また各教科の理解が十分深まるのであろうかとか、そういった懸念があるということも承知をいたしております。そこで、国語科での少人数による授業の実施とか、きめ細かい学習到達度の把握を行うことなどの対応が必要になってこようかと思っております。

 特区でございますので、基本的には自治体が主体的に判断されることではありますが、特区制度のやはり評価、検証といったものも我が省としてしなければなりませんので、従来より研究開発学校に関する評価をお願いしてきた専門家の協力を得ながら、この特区のような取り組みが本当に効果のあるものとなるように、必要な助言を行ってまいりたいと思っております。

西分科員 次に、文化的景観保存活用事業について若干お尋ねを申し上げます。新規事業だと思うんですが、今国会、審議される予定になっております文化財保護法の改正案に関係することでございます。

 今回、新たに文化的景観が保護の対象になるということで、大変私も個人的に楽しみにしております。景観法案で整備される棚田、里山の中でも、特に重要な文化的景観を選んで支援していこう、こういう仕組みになっているというふうにお聞きしております。文化庁の文化的景観保存活用事業は、棚田、里山など文化的景観を保存し活用するためのモデル事業を行っていこう、こういう色彩のものだというふうにお伺いしております。

 例えば、この事業で、私も近くに有名な棚田があるものですから、インターネットで二十四時間ライブ中継をして、今、仕組みそのものはできて、富士山もライブ中継とか、田舎の風景のライブ中継とか、いろいろ出ているんですが、そんなことをやってみたらどうかなというふうに考えております。

 地元の和歌山県の清水町に蘭島というちょっと丸い、非常にユニークな棚田があるんですが、その蘭島の棚田を素材にしてフォトコンテストがその棚田だけで開かれる、今、こんな状況にまでなってきておりまして、多くの写真家また愛好家がどんどん詰めかけている。この棚田はいつ写すのが一番いいかというと、水を張ったときに写すのがチャンスだ、こう言われているんですが、いつ水が張るのか、いつお天気がいいのか、こういうことがみんな注目でございまして、そんなことが一目でわかればいいがなと。棚田の景観を楽しみ、そして写真を撮っていただいて、また農作業にも共同で参画していただく、こんなことができればいい、また興味を覚えていただければいい、こんなつもりで、実は先週、私も、棚田振興議連というものを立ち上げるほど今趣味が高じておりまして、そんなこともございまして、今回、この事業、大変期待しているところでございます。

 この事業の具体的な例として、文化庁の方でどういう御計画をされているのかということをお聞きしたいと思います。

稲葉副大臣 ただいま西先生御指摘のように、我々の生活環境の周辺には、さまざまな文化的価値があるものが存在します。特に、私たちが最近注目しておりますのは、残された自然といいますか、今まで、いろいろな地域の開発等によって荒らされてまいりました。しかし、幸いなことに、まだ手つかずで残っているような、おっしゃられる棚田あるいは里山、それから港湾等につきまして、これから手をつけられないように、あるいは今までと同じように我々が保存し、後世に引き継いでいかなければならない、こう思っておるところであります。

 したがって、そのもくろみから、今回、文化財保護法の一部改正を提出するわけでありまして、棚田や里山について、特に重要な価値を見出すものについては重要文化的景観としてその保護対象にしていこう、こういう考えを持っております。

 先生がおっしゃられるような棚田につきましては、先生の御地元の蘭島の棚田はもちろんでありますが、全国にも展開するわけであります。しかし、その紹介についてはなかなかチャンスがない。こんなところから、私たちとしましても、この国会においてこの保護法の改正を提出し、皆さんに御審議いただいて成立させたい、そして十六年度においてはモデル事業をまず実施してみよう、こんなことを考えております。そういった中において、蘭島の棚田はモデル事業にピックアップできるような有力なところじゃないかと、私、個人的には思います。

 しかし、これを将来、十七年度から実施していくには、そのモデル事業を踏まえて、いろいろな計画を策定していかなければなりませんし、同時に、各市町村から条例をつくっていただかなければならない、こういう作業がございますので、我々としましても、各自治体と連携をとりながら、おっしゃられるような方向で、この棚田の保存、あるいは画面による紹介、こういう形をとってまいりたいと考えております。

西分科員 大変に積極的な発言、ありがとうございます。私もまた、私の与えられた立場で努力をしていきたいと思っております。

 次に、歴史の道整備活用推進事業についてお伺いをしたいと思います。

 実は、和歌山県では、ことしの六月に、高野・熊野古道の世界遺産登録、これは文化庁さん大変御尽力いただいているんですが、世界遺産に指定されるという予定になっております。また、その環境整備について積極的に取り組もうとしております。原則として保存することが重要であるこの世界遺産、例えば白神山地なんかもそうですが、という意味合いもございますが、熊野古道が歴史の道としての価値を取り戻すために、今、実はもう随分人工林がふえておりまして、道そのものはまことに古い歴史の道で、大切なものなんですが、環境が若干変わっていると私は思っておりまして、そういう意味で、単なる保全にとどまらずに、人工林に囲まれている、いわゆる昔の大自然に少しずつ戻していく、そういう作業も必要ではないか、こう思っております。国においても、ぜひさまざまな角度で御支援をしていただきたい、こう思います。

 ところで、文化庁の歴史の道整備活用推進事業では、総合計画事業は都道府県、そして具体的な整備事業は市町村、こういうふうに立て分けがなっております。この事業は、二つの、総合計画事業と整備事業の事業主体がばらばらになっておりまして、若干使い勝手が悪いんじゃないか。整備事業を行いたいが、今具体的に、どこでもそうなんですが、連携していくべき市町村が合併問題でいろいろと、ほかの作業でなかなか余裕が出ない、一方では、都道府県は、事業主体にはなかなかこの仕組みではなれないというような問題があるように思います。

 この総合計画事業と整備事業を統合されて、それぞれが主体的に、いわゆる都道府県または市町村が、それぞれが計画をし、そして実施をするということができるように改善をしていただきたいと思いますが、御答弁をお願いしたいと思います。

稲葉副大臣 今一つの事例として、熊野古道を例示くださいましたが、まさしく日本の各地には古い街道あるいはけもの道、こういった我々が気持ち、心をときめかすような人為的あるいは先人がつくってこられた歴史的な道があるわけです。こういった歴史的な道をさらに保存し、これまた後世に伝えていくということが大事なことだと思っています。

 ただ、私、これはあくまでも個人的な感想にもなることなんですけれども、白神山地にしましても、あるいは原始林、原生林、富士山の樹海等にしましても、これまた全く人が入ることを拒絶したり、あるいは手を加えたりすることを拒絶したりすることが果たして後世にこの資産を伝え得る手段なのか、方法なのかということになってくると若干疑問を感じるわけで、これは西先生も御同様だと思います。

 それには、やはり保存のための人為的な力というものも必要であり、これは森にしてみれば下刈りやそれから枝打ちをしなければならないのと同じように、こういった歴史的な資産に対してもやはりある程度の手を加えること、これが大事なことであって、だから、まさに、県が計画を練り、その中身については市町村が実施、整備をしていくというような、今までのすみ分けといいますか、それもあったと思うんです。しかしながら、お互い守備範囲を異にするものですから、そこの連携がうまくいかない。

 そういうことをいろいろ御指摘された結果、私どもとしましては、今回、県はもちろんでありますが、市町村についても最初の計画から練ることができるように、そして整備の主体にもなれるように、両方の権能を兼ね備えられるような法の整備、仕組みを改善しよう、こういうふうに思っております。

 そのためには、若干のいろいろな方々のお知恵を拝借しなければなりませんし、また、少しの時間が必要になってくると思われますので、ぜひ先生からも適切な御助言を賜れれば大変ありがたい、このように文科省は考えております。よろしくお願いします。

西分科員 ありがとうございます。

 要は、それぞれが責任を持って、きっちり整備、迅速にできる体制ができれば一番いいんではないかなというふうに思っております。

 同様に、この熊野古道は、実は、世界遺産は和歌山、奈良、三重のそれぞれの三県にまたがって、こちらの海岸線から、和歌山の田辺から上っていく中辺路の道、それから奈良からの山岳道である奥駈道、それから伊勢から上ってくる伊勢からのコースという三つのコースが連合して熊野古道の、今回文化遺産の指定になるわけですが、この三県がそれぞれまた合同して一つの計画を立てるような、今、基本的には実施主体は都道府県それぞれ個別ということですが、その辺についても御理解をいただければ幸いだと思うんです。その点、いかがでございましょうか。

稲葉副大臣 熊野古道は、特にそれぞれの市町村のみならず、そしてまた県のみならず、日本の国全体のこれは大事な財産でありますから、最終的には、私たちもその中に身を投じなければならないんじゃないか、このぐらいの覚悟は持っております。

西分科員 私が想定する以上の責任のある御答弁をちょうだいいたしました。まさしく世界遺産ですから、国を代表する遺産だという側面からすれば当然のことだろうと思っております。よろしく御尽力のほどお願い申し上げます。

 では、続きまして、高等学校の設置基準のことについて、若干最後に御質問をさせていただきたいと思います。

 先日、政府の地域再生本部は、学校の廃校など公共施設を転用しても補助金の返還を不要とするというような規制緩和の措置を決定いたしました。私もいろいろなところからそういう御要望がありましたが、貸してあげたいけれども、途中で補助金の返還が要るからなかなか進まないというような事例がたくさんあったんですが、このように決定をしていただきました。地域において比較的便利な場所にある施設の有効利用が自治体の判断で今後進んでいくということは、大変結構なことだというふうに思っております。

 ところで、補助金の返還問題のほかに、学校施設の有効利用に当たり、もう一つ支障がございます。それは、高校設置基準が私立学校の使用を妨げるケースがあります。

 小学校、中学校の設置基準第十二条に「他の学校等の施設及び設備の使用」ということで規定されておりますが、高等学校の設置基準には規定がございません。規定がないので、本来、高校でも他の学校の施設を使用することは自由だというふうに解釈ができるかと思うんですが、まずその点についてお伺いをしたいと思います。

馳大臣政務官 先生御指摘のとおり、使用はできますが、何でも自由というわけではございませんで、特別な事情があり、かつ教育上、安全上支障がない限りにおいては、使うことは現行でもできます。

西分科員 ありがとうございます。

 そういう趣旨で小中と同様な明記がされていないんだと思っておりましたが、地方の自治体では、書いていないことで若干不安がありまして、本当にできるんだろうかと気にしている側面もありますので申し上げました。

 都道府県は、この設置基準に基づいて、私立学校の設置認可等に関する審査基準のようなものをそれぞれの自治体で設けております。現実には、高校の場合、他の学校施設を利用して学校を設置しようとしても、この十二条のような規定がないために、都道府県が学校の設置を認めようとしなくてなかなか許可されにくいというようなケースがございました。高校においてこの設置基準も大綱化すべきである、このように考えておりますが、御見解をお願いしたいと思います。

馳大臣政務官 平成十五年度中でありますから、この三月中にでも、先生がおっしゃるように改正に向けて取り組んでまいりますし、また、高等学校設置基準の改正後において、各都道府県における私立学校の設置認可審査基準がより弾力的な取り扱いとなるように見直しについて促してまいりたいと思っております。

西分科員 大臣、副大臣、政務官、それぞれのお立場で責任ある御答弁をちょうだいいたしましたことに心から感謝申し上げます。終わらせていただきます。

小杉主査 これにて西博義君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明二日火曜日午前九時から本分科会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五十八分散会


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