衆議院

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第2号 平成16年3月2日(火曜日)

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平成十六年三月二日(火曜日)

    午前九時十五分開議

 出席分科員    

   主査 小杉  隆君

      佐藤  錬君    玉沢徳一郎君

      古川 禎久君    町村 信孝君

      大石 尚子君    大畠 章宏君

      小泉 俊明君    筒井 信隆君

      中根 康浩君    三井 辨雄君

      山井 和則君

   兼務 江渡 聡徳君 兼務 長浜 博行君

   兼務 藤田 一枝君

    …………………………………

   文部科学大臣       河村 建夫君

   文部科学副大臣      稲葉 大和君

   文部科学副大臣      原田 義昭君

   文部科学大臣政務官    馳   浩君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 関   一君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)  銭谷 眞美君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)  近藤 信司君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)  遠藤純一郎君

   政府参考人

   (文部科学省研究開発局長)  坂田 東一君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)  田中壮一郎君

   政府参考人

   (文化庁次長)      素川 富司君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局医事課長)  上田 博三君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局総務課長)  中村 吉夫君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局計画課長)  石井 信芳君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房参事官)  齊藤  登君

   文部科学委員会専門員   崎谷 康文君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君

    ―――――――――――――

分科員の異動

三月二日

 辞任         補欠選任

  町村 信孝君     古川 禎久君

  吉良 州司君     大石 尚子君

  小泉 俊明君     中根 康浩君

同日

 辞任         補欠選任

  古川 禎久君     佐藤  錬君

  大石 尚子君     三井 辨雄君

  中根 康浩君     大畠 章宏君

同日

 辞任         補欠選任  

  佐藤  錬君     町村 信孝君

  大畠 章宏君     小泉 俊明君

  三井 辨雄君     山井 和則君

同日

 辞任         補欠選任

  山井 和則君     吉良 州司君

同日

 第一分科員江渡聡徳君、第七分科員長浜博行君及び第八分科員藤田一枝君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十六年度一般会計予算

 平成十六年度特別会計予算

 平成十六年度政府関係機関予算

 (文部科学省所管)


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     ――――◇―――――

小杉主査 これより予算委員会第四分科会を開会いたします。

 委員室を変更いたしまして、大変御迷惑をおかけいたしました。

 平成十六年度一般会計予算、平成十六年度特別会計予算及び平成十六年度政府関係機関予算中文部科学省所管について、昨日に引き続き質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。古川禎久君。

古川(禎)分科員 おはようございます。自由民主党、古川禎久でございます。

 本日は、大きな部屋に変更になりまして、得をした気分であります。大きな声で元気よく質問させていただきます。

 NHKニュースのトップは、鳥のインフルエンザのニュースです。昨今、この鳥のインフルエンザそれからSARS、口蹄疫、BSE、コイヘルペス、こういう事件の報道が相次いでおります。

 これは、思いますに、食料増産を目的として家禽や家畜、養殖魚というものを大量生産方式によって生産することが進んでくるに従ってより多く、より広範囲に病気が発生するような状況が出てきたということ、あるいはまた、貿易の自由化ですとかボーダーレス化というような状況が進展しまして、犯罪や病気の移動というものが多発化する、国際化するというような状況が背景にあると思います。

 このような状況の中で、海外の動物の感染症やズーノーシス、人と動物の共通感染症というようなものがいとも簡単に我が国の中に侵入してくる、そういう時代になったんだということを改めて認識させられているところであります。

 こういう時代にあって、国民生活を守るためには、海外で発生しました病気について迅速に正確な情報を集めること、あるいはまた水際において鉄壁の検疫体制をしくこと、万が一侵入を許した場合においても拡大を防止するために的確な危機管理体制をしくこと、そのような意味で、今ほど防疫体制が脚光を浴びる時代はない、獣医学というものがその充実を求められる時代はないと考えております。

 また、EU諸国並びに米国やカナダにおきましては、獣医学教育が統一されてまいっております。我が国における獣医学教育もこの基準に合わせて国際化をしなければ、今後、畜産物や動物性食品の検疫あるいは獣医学情報の交換、情報交換ということについても大きな支障が出てくるのではないかと心配をいたしておりまして、その意味でも、我が国の獣医学教育を充実させて国際的に対応させられるようにレベルアップをする必要が生じていると考えております。

 このような時代的な背景を受けて、獣医学教育、充実させるべきだと考えておりますが、この点につきまして、まず大臣のお考え、御所見をお聞きしたいと思います。

原田副大臣 古川委員の御指摘のとおり、だんだん食と安全をめぐる問題が本当に大きな課題となってきておるところであります。

 とりわけ、獣医学教育がその中にあって極めて重要であるということになってまいりました。獣医学教育につきましては、私ども国としてもその充実を図ってきてはいるところでありますけれども、御指摘のとおり、さらに改善の余地があるという意味でいろいろと取り組んでおるところであります。

 昭和五十九年度から、従来の学部四年制教育を現在の六年制教育へと発展させたわけでありますし、さらに、平成二年度からは、一大学では期待し得ないような複雑な分野を統合する形で、大学を相互に補充して幅広い高度な大学院教育研究を行う連合獣医学研究科を整備するなど、各大学において広範な領域にわたる獣医学の教育研究が充実されてきたところであります。

 また、各大学におきましても、獣医学の教育研究水準の向上に努めてきておりまして、例えば、二十一世紀COEプログラム、中核拠点を中心とするプログラムでありますけれども、帯広畜産大学と岐阜大学連合獣医学研究科が拠点として採択されるなど、また、鹿児島大学においては、BSEの原因となる異常プリオンを分解する酵素の発見に向けた取り組みが進められるなど、大きな成果もこのところ見られるようになったところであります。

 国際的な比較でいきますと、例えば、この分野で世界的に著名なミュンヘン大学などでは、学生総数が千四百十二名、教員数も二百八十名。これに比べますと、我が国の国立大学の平均の規模というのは、学生総数が大体二百名前後、教員数が三十名から四十名。個々の大学の規模では確かに欧米諸国に比べて少し見劣りがするというのは、そのとおりであります。国際的にいろいろほかにも比較しますと、ドイツ、オランダ、オーストリア、ベルギー、伝統的な畜産国の獣医学教育の充実が目覚ましいものがありますけれども、我が国も必ずしも、こういう国々に比べれば多少見劣りはしますけれども、世界的には平均的なところにあるのではないか、そんな感じがいたします。

 いずれにいたしましても、新たな感染症の発生、さらには高度かつ実践的な獣医療への社会の期待、こういうものに対して私どもの獣医学教育も相当しっかり対応していかなきゃいけない、こういうように考えております。

 昨年の二月に、このような状況を踏まえまして、文科省におきまして、獣医学教育に関する幅広い関係者を集めた協議会をつくりまして、現在、その中で積極的な検討が行われておるところであります。平成二年に行われました大学の連合の問題、少し統廃合して、より効率的な、より幅広い研究ができないか、こういうことも検討されているところでございます。なかなか意見の一致を見るまでにいっておりませんけれども。

 いずれにしましても、御指摘のように、今の新しい情勢を踏まえてこの分野の強化充実に努めてまいりたい、こう思っております。

古川(禎)分科員 ありがとうございます。協議会で検討が進められておるということも聞いておりますし、また、長年にわたりまして関係の方々の努力が続いておるということにつきまして、敬意を表したいと思います。

 しかしながら、私なりに、現在の我が国の獣医学の状況というものを、諸外国の例と比較しながら自分でちょっと勉強をしてみました。その際、大きく言いまして二点ほど、浮き彫りになった問題点があったと考えております。

 まず一点目は、実務教育につきまして、我が国の場合、不十分ではないかというようなことでございます。

 欧米の獣医学の修業年限はおおむね六年から七年、そのうち専門教育が四、五年、さらにそのうちの二、三年は動物病院や牧場あるいは獣医公衆衛生の現場での実務教育が主体となって行われておりまして、卒業後直ちに獣医師として役立つ、そのような教育が行われております。また、卒業後の教育としまして、インターン制度やレジデント制度、専門医制度も確立いたしております。

 これに対しまして、我が国の場合はと申しますと、今、副大臣おっしゃいましたように、五十九年に四年から六年に修業年限を延長いたしました。しかしながら、その教育の内容におきましては、十分な質的転換が行われていないように感じております。

 例えますならば、専門教育のうち、その三分の二は講義主体の教育になっておりまして、実習、演習のための時間は約三分の一にすぎない。これに対しまして、欧米の場合は、ちょうどこの比率が逆になっておるということもありまして、比較的、実務の教育訓練が劣っているように思われます。したがいまして、基礎獣医学におきましては欧米にはまさるとも劣らないといえども、臨床または応用獣医学、公衆衛生における教育体制というものは不十分だというような感想を私は受けました。

 さらに、インターン制度、レジデント制度あるいは専門医制度というものが、日本の場合は獣医学教育においては設置されておりませんので、そういう意味での支援体制も不十分ではないかと考えております。我が国におきましても、人を診るお医者さんは、そのような研修医の制度、コースというものがあるわけです。それに比べまして、人以外のすべての分野を扱うところの獣医学におきましては、そのような制度がなされていない、準備されていないということは、やはりその不十分さを物語るものではないかと思うわけです。

 そのような意味で、私は、実習のための施設や設備、あるいは実務経験のある十分な数の教員、あるいは動物飼育等が可能になるような研究環境、そのような環境整備、教育のための環境整備を、もっと重点を置いて整備をすることによって我が国の獣医教育の質的転換を図るべきではないかと考えております。この点につきまして、文部科学省の御見解をお尋ねしたいと思います。

遠藤政府参考人 御指摘のとおりでございまして、先ほど副大臣の方から、昭和五十九年に四年制から六年制に延長した、これもやはり、御指摘のような臨床的な教育が不足しているということで、年限を延長してそちらをという趣旨であったのか、こうも思っておりますけれども、それまで、御指摘のように、基礎的な獣医学、研究中心ということでやってまいりましたので、どうしてもやはりその傾向がこれまでも続いているというのが一つの我が国の大きな特徴だと思っております。

 その中でも、生理学、病理学などの基礎獣医学、内科学、外科学などの臨床分野、あるいは食品衛生や家畜衛生などの公衆衛生分野など、幅広い領域にわたる知識が獣医学教育に求められている、こういうことで、この中で実践的な臨床教育を行っているということでございまして、具体的に申しますと、大学基準協会で標準カリキュラムというものを最近作成してございますが、そういったものも参考にしながら、各大学では、例えば獣医内科学臨床実習、獣医外科学臨床実習、獣医臨床繁殖学実習、こういった授業科目を設け、さらには、附属の家畜病院あるいは地域の畜産関係施設などを活用して実践的な実習教育を行っている、こう理解しておるわけでございます。

 具体的には、例えばこれは北大の例でございますけれども、臨床実習科目十六単位、時間数にして大体七百二十時間ぐらいやっておる、こういうことも聞いておりますけれども、まだまだ欧米に比べてそういう意味での臨床が少ないというのはそうであろう、こう思っております。

 それから、卒後の研修のお話が出ました。医師、歯科医師の養成では、従来から、卒後の臨床研修、医師の場合二年、歯科医師は一年ということで長くやってまいりまして、最近、これが法制化されまして、この四月から、医師については、二年間の臨床研修が義務化になる、それから、歯科医師についても、厚生労働省の方で法改正をいたしまして、平成十八年の四月から、一年間義務化される、こういう状況であるということを聞いております。

 御指摘のように、獣医師につきましては、こういう卒業した後の臨床研修が組織的にやられているという状況ではございませんで、それぞれの獣医師が、例えば大動物の関係におきましては、近隣の農業共済団体の家畜診療施設等で行うとか、あるいは小動物関係でございますと、個人動物病院等でいわばオン・ザ・ジョブ・トレーニングという形で知識、技術の向上を図っている、これが現状だろう、こう思っております。

 やはり臨床というのをこれからも大事にし、そういった意味での環境整備を図っていく必要があるだろう、こう思っております。

古川(禎)分科員 ありがとうございます。北大の例も挙げていただきましたけれども、そのような努力が継続されておるということは私も承知いたしておるわけです。

 ただ、先ほど一点目を申し上げましたが、国際的な外国との比較で我が国の獣医学でもう一つ不足しているのではないかと思う点につきましてもう一点申し上げますと、それは、いわゆる学部再編というようなことについてでございます。

 欧米では、教育研究に携わる教員、スタッフの数が学生の約二倍程度というのが普通だと思います。先ほど副大臣はミュンヘン大学の例を引かれましたけれども、一学年当たりに割って計算をしますと、学生に対して教員、スタッフというものはおおむね二倍程度ぐらい、手厚く配置されておるという状況にあろうかと思います。

 日本の場合は、大学基準協会の定める獣医学教育に関する基準におきまして、学生定員数六十までの場合、専任教員数七十二名以上と決められておるわけですが、国立大学、計十獣医学科ございますけれども、これを全部見てみますと、なかなかその基準も十分に満たされていないような状況にあろうかと思います。十八科目あります獣医師国家試験にすら必ずしも十分に対応できていないような、そのような印象も受けるわけでございます。

 今、十あります国立大学の獣医学科につきましては、それぞれ定員が約三十名程度、教員数にして三十名以下、それぞれ小さな組織が点在しておるというような状況だと思います。しかしながら、これを総数としてまとめてみました場合、入学定員は三百三十五名となります。教員数は同じく約二百九十名ということになりまして、これを十ではなくて三つか四つの組織にまとめ直すならば、単位組織当たりの教員不足をスケールメリットによって解消し得るのではないかと。いわゆる獣医学科の統合再編整備という話になろうかと思います。

 ここに、私の地元宮崎の宮崎日日新聞の十日ほど前の記事を持ってまいりました。宮崎大学が獣医学部の九州大学への学部統合の見送りを決めたというような記事であります。従来、幾つかの大学に統合再編を進めよう、促そうというような流れがあったと承知をいたしておりますが、全体的には果たして今どういう状況になっておるのでしょうか。もし把握しておられるようでしたら、御教示をいただきたいと思います。

遠藤政府参考人 御指摘のように、欧米では、州単位で大きな大学が一つあるというような、集約した形で獣医学教育が行われているのに比べまして、日本の場合、特に国立大学、比較的小規模な大学が十ある、こういう状況でございまして、これがまとまれば、いわゆるスケールメリットといいますか、そういうことでの非常に充実した研究教育ができる、こういうことも言われておるわけでございます。

 御指摘のように、スケールメリットという観点からは、学部の再編整備、これは有効かつ重要な手段、こう考えておるわけでございまして、そういう意味で、今御指摘ございましたように、各大学で自主的にいろいろ検討が行われ、進められてきたわけでございます。

 ただ、やはり獣医学科の再編整備ということになりますと、獣医学関係者はもとより、大学、大体、農学部の中にあるわけでございますけれども、農学部あるいは当該の大学、さらには地域社会、統合ということになりますとある意味なくなる可能性もあるわけでございますので、地域社会の理解も得るということが必要不可欠なわけでございます。

 そういうことで、いろいろな検討はされてきましたけれども、はっきりこうだというふうに決まったような形にはなってこなかったわけでございまして、そういう流れの中で、私ども文部科学省でも、再編統合も視野に入れた充実方策ということで、先ほど副大臣から御答弁申し上げましたように、協議会を設け、種々検討を行ってきているというのが現状でございます。

 今、具体的な統合の話、宮崎大学の例もございましたけれども、そういうことで話し合いを進めてきたというふうには理解しておりますが、そういったことで、例えば、西の方でいいますと、鳥取大学、山口大学、宮崎大学、鹿児島大学、四つの大学に獣医の関係の学科があるわけでございますけれども、これを一緒にしてはどうか、例えば九大にという形でまとめてはどうか、さらには、宮崎の方からは、もしまとまるのだったら宮崎の方でキャンパスが整備できないかといったようなお話もございました。

 いろいろなお話もございましたけれども、やはりいろいろ細部を詰めていくとなかなかまとまり切れていないというのが現状だろう、こう思っております。

古川(禎)分科員 ありがとうございました。

 局長おっしゃいましたように、私も現場の話をいろいろ伺ってみますと、なかなか、いろいろな立場のいろいろな思いもございまして、そう簡単には進まないなということを実感いたしております。

 いずれにいたしましても、獣医学教育におきまして、実務教育用の施設や設備の整備あるいは経験豊富な教員を十分に配置されることを願いまして、そして、そのためのあらゆる御支援を御要望させていただく次第であります。

 さて、その上で、一つ御提案と申しますか、一つのアイデアを披瀝しまして、そのようなケースが可能かどうかということにつきまして御見解をお伺いしたいと存じます。

 すなわち、大学とは別に、自治体などが中心となって獣医学の実務教育機関、例えて言いますならば獣医学臨床教育センターのような、そのような名称の教育機関を創設しまして、そして、各大学から、獣医学科から学生をお預かりしまして実務教育を受けさせ単位も与える、いわばその立地の特性を生かして実務教育を請け負う施設をつくってみたらどうか。

 例えば、A大学の獣医学科の学生が専門課程の一定期間をここで実務研修を受けまして、そして単位を取得した後、またA大学の学生として卒業していくというようなイメージ、形態であります。

 このような形態の教育施設が果たして制度的に許されるものなのかどうかということをお伺いしてみたいと思うんです。

 と申しますのは、私の地元は宮崎県都城市でございます。ここは、肉用牛日本一、豚日本一、ブロイラー全国二位という屈指の畜産基地でありまして、多数の一般屠畜場や食肉加工処理施設、畜産廃棄物処理施設、また、圏域内には家畜衛生、公衆衛生機関が多数存在をいたしております。農林水産省の動物検疫所、これは鹿児島空港にありますけれども、あるいは小林市には家畜改良センターというものも近くにありまして、その意味では、獣医師の果たす使命と役割の大きな地域でありまして、実務研修にとりましても適していると考えておるのが一点。

 そしてさらに、市が現在所有しております教育研究施設並びに牧場等を提供いたしまして、それを活用した運営、さらに財政支援も惜しまず行えるという可能性が私の地元においてございます。

 このような地元の立地の特性を生かして、獣医学教育の充実とともに、地域振興も兼ねたアイデアというものを、今、地元の方で一生懸命、汗をかきながら練っておるところであります。

 もちろん、このケースの場合、市の当局と大学当局、これが当事者となるべき話でありますから、文部科学省におかれてどうのということではないのかもしれませんが、しかし、先ほど来申しておりますように、獣医学教育、特に実務教育の充実強化が今喫緊の課題なんだというような観点からしますときに、地域のこのようなアイデア、努力というものは、認められて、要は奨励をされるべきものではないかと私は考えております。

 このようなケース、このようなアイデアにつきまして、大臣、どのような感想を率直にお持ちになるでしょうか。できましたら、一生懸命知恵を絞って獣医学の充実あるいは地域振興に頑張っておる人たちに対して、元気の出るような、エールとなるようなお言葉をいただきたいと思うんですが、よろしくお願いします。

河村国務大臣 古川委員から、獣医学教育にさまざまな御提言をいただき、きょう御質疑いただきまして、敬意を表したいと思います。

 特に、同じ都城御出身でありました堀之内久男先生の後継者ということも伺っておりますが、この問題に対して大変御熱心でございましたし、また、同じ宮崎県の江藤隆美先生も、勇退に当たって、私にも特にこの問題にもっと力を入れるようにと言われております。

 特に、ああいうBSE問題が起きたり、今、鳥インフルエンザが起きてみますと、これはまさに獣医学というのが国際的な問題にもなってきておりまして、これに対応できる教育が必要だ、この点、先ほどもいろいろ御指摘をいただいておりますが、確かに、日本の獣医学がそういう視点を持っていたかどうかということについては、我々、もっと反省もし、そしてその高度化を図る必要がある、私もそれは感じております。

 そこで、今御提言いただいたような研究センター的なもの、各大学には共同利用機関というのも持っていまして、各大学がお互いに利用し合うような機関を持っている、こういう発想で獣医学を高めるという一つの方向だと私は思います。

 今、率直に申し上げますと、結局、財政的な裏づけをどうするかという問題になってくるだろうと思います。これはやはり、我々サイドがきちっと企画して持っていけば、それは獣医学の高度化という観点から、私は不可能なことではないと思っておりまして、これは獣医学全体に及ぶ問題でもございます。それから、獣医学の学部の先ほどお話があった整理統合の問題も含めて総体的に考える問題だろう、こう思っております。

 特に、畜産の最先端地でもあります宮崎県の古川先生からそういう提言をいただいたということを我々も重く受けとめて研究してみたい、このように思います。

古川(禎)分科員 大臣、ありがとうございます。大変勇気づけられるお言葉をちょうだいしました。

 最後になりますが、先日、BSEが米国で発生したのを受けまして、我が国は、米国からの牛肉あるいは牛由来製品の輸入を差しとめました。米国からは、輸入再開を強く求める声が上がっておるわけですが、その中で、日本の主張、すなわち、全頭検査に準ずる安全管理をするべきだという主張に対して、先方が、科学的根拠がない、非科学的だと言い放ったことがございまして、私は、何を言うかというような思いでおりました。

 この異常プリオンを発見することでノーベル生理学賞でしたか、受賞されましたプルシナー教授も言っておられて、新聞にも載っておりましたけれども、米国の方こそ非科学的なんだと。科学的な見地からした場合に、我が国の全頭検査というものが最も正しい、正確だということをコメントしたという記事を読みますときに、私は、大変我が意を得たりという思いがすると同時に、頭ごなしに非科学的であると断じられたことに残念な思いが改めてした次第です。

 すなわち、これは考え過ぎかもしれませんが、我が国の獣医学教育の水準というものが低く見られているのではないだろうかというような、これは思い過ぎかもしれませんが、そのようなニュアンスを感じとったがゆえに、非常に不愉快な思いをしたわけでございます。

 日本人は優秀です。一生懸命頑張れば、あっという間に世界のトップに躍り出るだけの能力を持っていると思いますので、ぜひ国としましても先頭に立って、率先をしていただきまして、我が国の獣医学教育が向上いたしますように、そして、ひいては我が国の国民生活の安全が確保されますように切に望みまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

小杉主査 これにて古川禎久君の質疑は終了いたしました。

 次に、大石尚子君。

大石分科員 民主党の大石尚子でございます。

 きょうは、久方ぶりで河村文部科学大臣とお話し合いできること、楽しみに参りました。ぜひ、前向きな、建設的な御答弁をいただければ幸いでございます。

 三つの課題について御質問申し上げたいと思います。

 まず最初は、我が国の大陸棚画定調査事業を成功させるためにはどうしたらいいかという課題でございます。

 この課題と申しますのは、武力で戦わずして日本の国土を広げることができる話でございます。そして、私たちの日本は、資源がない。人間こそ、人材こそ唯一の資源くらいの気持ちでおりましたが、もしかしたら日本が地下資源大国になれるかもしれないというような、これはちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、大きな夢も描ける話でございます。

 これは、お感じのとおり、大きな外交問題であると同時に、我が国の国民生活を守る防衛問題でもあるわけでございます。

 それで、この問題、概略を申し上げますと、まず、海洋法に関する国際連合条約、いわゆる国連海洋法条約が国連で採択されましたのが一九八二年、昭和五十七年でございました。日本が批准いたしましたのが一九九六年、平成八年。この時期に中国も韓国も批准していたかと存じます。

 実は、うれしいニュースをちょっと見つけました。これはワシントン発二月二十九日共同、「米政府が、発効以来約十年にわたり批准していなかった国連海洋法条約を近く批准することが二十九日までに確実となった。上院外交委員会は既に批准を承認、米政府高官や議会筋は、上院本会議でも数週間内に圧倒的多数で承認されるとの見通しを示した。」こういうニュースを得ました。私は、アメリカが批准していないということで大変危惧いたしておりましたが、ちょっとほっとさせていただきました。

 それで、日本が批准してから今日まで大変時間がかかっているのですけれども、何で今ごろになって皆さんが心配し出したかと申しますと、二〇〇一年、平成十三年の十二月に、この条約に基づいて国連にロシアが調査結果を申請いたしました。これはどういうことかと申しますと、今、二百海里大陸棚、これは認められておりますけれども、その二百海里を超えて日本の大陸棚が続いているということが学問的に証明できれば三百五十海里までは大陸棚を伸ばせる、そういう条約でございます。

 そこで、ロシアがそれに基づいて国連に申請を出したら、これが十三年の十二月でございますが、半年後に却下された、これではまだだめですよと。そうすると、ロシアが出したよりもなお一層高度な、詳細なデータを提出しないと認められそうもない。これが平成十四年、二〇〇二年に却下されたわけでございます。そのときに政府も慌てればまだ話はわかるのですけれども、まだ立ち上がりがなかった。

 そこで、これは私どもの先輩、同僚の方々がいろいろな委員会で質問を続けておりますけれども、その中で、文部科学常任委員会で、昨年の五月二十八日、六月四日と先輩の平野博文議員が大変的を射た御質問をなさっておられます。その中にこういうくだりがございます。

 二〇〇九年、これが実は申請の期限なので、二〇〇九年までに、その五月でございましたでしょうか、それまでに申請しないと、日本の大陸棚が三百五十海里まで伸びていたにしても、そこの地下に埋蔵されているメタンハイドレートとかいろいろな鉱物資源がある、それが日本のものとして認められなくなってしまう。そういう中で、二〇〇九年までにその調査が終了するのかという平野先生の御質問に対しまして、そのとき、津野田海上保安庁次長は、「現在の調査体制では期限内に十分な調査結果を整えるということは非常に厳しい状態でございます」と答弁しておられます。

 そして、そのときに、やはり平野議員は、「特に科学技術的に見ても文科省や、経済的な側面から見ても経済産業省が主導的にそのことに対応していくということが本当は必要だったんじゃないでしょうか。」ということを指摘しておられるわけでございます。

 これは、その後、関係省庁連絡会議、これが二〇〇三年、平成十五年に立ち上がりまして、そして、去年の十二月八日に、内閣官房に大陸棚調査対策室が設置された。何か平野議員の痛烈な質問にこたえるかのごとく感じるのでございますけれども、それで、各省庁挙げて、特に官民共同でこの問題に国家的に取り組まなければならないという動きがやっとここで見えてきたわけでございます。

 そこで、まず、文部科学省として、今年度約二十五億の予算を要求していらっしゃると思います。

 経団連の方も、ことし、平成十六年の二月三日に日本大陸棚調査株式会社を立ち上げて、それで五社が出資して、そして、民間の方の協力体制も整ってきている。

 そういう状況にあるテーマだと思いますけれども、これに対しまして、今年度の予算は、これは内閣官房に調査対策室が設置されたのですが、今の体制でございますと、予算請求はばらばらで、そして総額、国土交通省それから経産省、文科省合わせて百四億ぐらいでございましたか、そういう予算が提案されているわけでございます。

 この問題に対して、文科省として、今、どういう形で参加していて、そして、平成十六年度並びに今後の取り組みについて一体どのように考えておられるのか、簡潔で結構でございますので、まず、これは大臣ではなく坂田研究開発局長でございましょうか、お答えいただければ幸いでございます。

坂田政府参考人 大陸棚の画定調査、大変大事な課題でございまして、今先生御指摘のとおり、いろいろな経過がございますけれども、大体、先生のおっしゃっていらっしゃるとおりでございます。確かに、平成二十一年までに、科学的なしっかりしたデータをそろえまして国連の大陸棚限界委員会の方に提出する必要がございます。

 それで、この大陸棚の画定調査、国全体としてしっかりした体制をつくるために、先生もおっしゃられましたとおり、昨年の八月には、関係省庁の連絡会議というものが内閣官房を中心に設置されたわけでございます。そこで、政府全体といたしまして、大陸棚画定に向けました今後の基本的な考え方というものをまとめました。したがって、私ども文部科学省も、この基本的な考え方に沿いましてこの調査に参加していくということにしているわけでございます。

 実際に文部科学省が担当いたしますのは、地殻構造探査というものの一部でございます。これは、海上保安庁と役割分担をいたしまして調査をすることにしております。

 具体的には、この四月に発足いたします独立行政法人の海洋研究開発機構、これが保有しております船舶を利用いたしまして、一隻の船が一年間活動するということと同等の貢献を行うことにしておりますが、実際には、この海洋機構の「かいれい」あるいは「かいよう」、こういった船を利用いたしまして調査をするつもりでございます。予算は二十五億円を十六年度計上してございます。

 十七年度以降の調査につきましては、十六年度までの調査の結果でありますとか、あるいは国連からの情報等、これらを総合的に考えまして、大陸棚調査対策室、これも昨年十二月にできたわけでございますけれども、この内閣官房の大陸棚調査対策室の総合調整のもとで、新たに十七年度以降の調査の計画もつくりまして、それに従って文部科学省としても私どもの役割をしっかり果たしていきたい、このように思っております。

大石分科員 この問題は、いろいろな問題点を内包しているのではないかと思っております。

 それで、特に、ロシアの調査結果が否認されたということは、これはロシアが調査結果を持っていないということではなくて、この調査は軍事機密と関係している。特に、自分たちの国土の周辺を詳細に高度な調査結果によって世界へ披露するということは、学術的な成果とそれから軍事機密を保持しなければならないということとは、これは相反する行為になるために、調査結果の水準というのが大変微妙なものなのではないかと思っております。

 それで、国連の大陸棚限界に関する委員会、ここが調査結果を査定するわけでございますけれども、ここに日本の東京大学の玉木賢策教授がメンバーとして入っておられますが、日本の審査には立ち会うことができない。したがって、どのような結果を出せばこれが通るのか。これは大変微妙な問題で、そして、こういう結果を出せば必ず承認されるとは限らないたぐいの外交問題なのではないかしらと思いますものですから、特に、この調査の精度をどうするかということに関しては、これは文部科学省、特に海洋科学技術センターにいらっしゃる学者さんでございますとか、周辺の方々の総意を結集して、そして、もし仮に国連で要求することが、そこまで要求する必要がないのであれば、日本の学者の総意として国連の方に意見を具申するくらいの構えがあってもいいのではないか。

 そういうことから、文部科学省の役割というのは、大変大きな役割を、これは純粋に学問的な役割ではなくて、むしろ日本の政府に国家戦略を示すくらいの情熱を持ってこの大陸棚画定調査には臨んでいただきたいと私は思っているのですけれども、大臣、いかがでございましょうか。

河村国務大臣 大石委員御指摘のとおり、この大陸棚、外側の限界が広がるということ、さっき御指摘のように、三百五十海里まで。そうすると、日本の国土の約一・七倍について可能性がある、こういう話でございますし、これを認められれば、日本の主権的な権利が効力を生むということでございます。先ほどお話しのように、天然資源、メタンハイドレート等々大変関心も高まっておりまして、これは今おっしゃるような非常に難しい問題もありますが、やはり国策として取り組む課題だ、私もそう認識をいたしております。

 文部科学省としては文部科学省の役割分担をしておるわけでございますが、海上保安庁との連携、関係省庁との連携をしっかりしながら、海洋研究開発機構の能力も最大限活用する、これはもう当然でございます。ぜひ、これから五年以内の期限があるわけでありますが、これは政府全体の取り組みの中で文部科学省として全力を尽くしてこの役割を果たす、これに尽きる、こう思っております。これはもう海上保安庁に任せる、どこかに任せておけばいいという問題ではございません。まず国がきちっとその方針を立てた上で文部科学省はその役割を果たす、こういうことでなければならぬ、こう思っておりますので、そういう思いでこれからさらに取り組んでまいりたい、このように考えます。

大石分科員 ありがとうございます。ぜひそのようによろしくお願いいたします。

 それでは二番目の問題、ユネスコへの世界遺産登録事業に関する国あるいは地域、その双方の連携と責任の分担等についてお尋ねいたしたいと思います。

 これは二〇〇三年、平成十五年の七月の文部科学常任委員会で、当時、河村副大臣でいらっしゃいましたけれども、遠山大臣等に私も初めて質問をさせていただいたその続きでございますので、はしょらせていただきまして、私の選挙区でございます鎌倉市、これが暫定リストに上がっております。それで、平成八年からずっと今日に至るまで地元が一生懸命努力いたしております中、今、鎌倉市の歴史遺産検討委員会等が開かれますと、これは文化庁も来てくださって、それで県の担当者とも同席していただき、文化庁、神奈川県、鎌倉市の大変いい関係のもとに登録に向けたコンセプトの検討を進めているところでございます。

 それで、鎌倉市もこれは大変積極的に、来年度、平成十六年度から市長部局に専任の担当部長を配置して、これは教育委員会から独立させて新しい執行体制をつくって取り組んでいくというような前向きの取り組みもいたしているところでございます。

 そこで、私、この前にも指摘したのですけれども、この日本の文化遺産を世界に登録するということ、これは地域の問題ではない、日本国家の問題である、この事業に対しては国がもっと責任を持つべきではないか、そういう観点から、今まで鎌倉がこの仕事に費やしてまいりました事業費が、これは国、県の補助も含めて一億五千万に及んでおります。このうち、市が分担いたしたのは六千七百余万円なのでございますが、これからがまた問題で、特に最後のユネスコへの申請書というのが、これが膨大なもので、私も現物を見てびっくりいたしたのでございますが、どれくらいお金がかかるかと申しますと、京都の例で八千五百六十二万、奈良の例で五千百六十余万円、それから日光が五千四百九十九万九千円、琉球の場合は何と七千三百七十一万円に及んでいる。これくらい申請書にお金がかかるものなのでございますね。それで、これを足しますと、この前に御指摘申し上げたように、地元負担が軽く一億を超えてしまうわけでございます。

 そこで、せめて、大臣も御地元に石見銀山を抱えておられます。このユネスコへの報告書の作成の費用は、これは国が全額持ってもいいのではないか。鎌倉も大変お台所苦しゅうございまして、鎌倉は一人当たり、これはちょっと古く十二年度の例なのですけれども、納税額が二十二・四万円、そして直接国から返ってきて市民に反映される額が何と七・七万円、要するに三対一の割合で納税額の方が多い市でございますので、ぜひこういうお台所の苦しさも考えていただいて、この件についてはぜひ検討していただきたいと思います。

 時間が押しておりますので、いかがでございますでしょうか、簡単に文化庁の次長さん、それから大臣にお考えをお示しいただければと存じます。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 世界遺産の登録、これは国民全体の問題でもある、また、地元にとって地域の振興面でも非常に大きな意味があるということで、国と地元自治体それぞれ役割分担をしているわけでございますけれども、例えば実態把握でございますとかいろいろな調査、地権者との調整、史跡指定の事務などにつきましては、やはり自治体の協力を得ることが事実上不可欠だということでお願いをしております。また、そういうような面で、準備作業につきまして、推薦書も含めて今まで数件の世界遺産の登録をやっておりますけれども、自治体に負担をお願いしてまいったところでございます。

 国といたしましても、地元自治体のお取り組みに対して、発掘の調査でございますとか、保存管理計画の策定に関する支援、その他いろいろな専門的な指導、助言等を行って、一緒になって登録への推薦のための準備作業を進めておるわけでございますので、今後とも、そういう役割分担をしながら、一緒になって世界遺産登録への準備を進めてまいりたいと考えているところでございます。

河村国務大臣 ユネスコの世界遺産登録については、国民の関心も非常に高まってまいりました。今、十一件ございます。さらに、鎌倉が平成四年に暫定リストに登録されて、それから今日まで至っております。

 今、これについては、次長が説明申し上げましたように、周辺の整備の問題、推薦条件をもうちょっと整えなきゃいけない部分がある。緩衝地帯をどうするか、市街化がかなり進んでおりますからその辺をどうするかという問題が残っておるようでありますが、ぜひ早く整備をしてきちっと登録されるように、我々としても御支援申し上げたいし、期待をいたしておりますし、これは地元自治体との連携が非常に大事でございますので、ぜひその点をきちっとやってもらいたいと思います。

 特に、地方自治体が推薦書までやるということで、今日まで十一件についてはこういう形で来たものでありますから、今、これは大変だ、こうおっしゃること、私は気持ちはわかるのでありますが、この仕組みを変えるかどうか、これはちょっと私も今の時点で即答いたしかねますが、今後の課題として、どう考えていくかという考慮をしなきゃいけない課題でもあるかな、こう思っております。

 地方の問題はできるだけ地方で取り組めるようにということでありますから、総務省の交付税の考え方とか、いろいろな考え方もあるのではないかと思いますが、今そういう要請があるということを受けとめさせていただきたいというふうに思います。

 いずれにしても、鎌倉は、おっしゃるように武家の発祥の地でございまして、実は私の山口県の萩は、山口県は武家を終焉させた土地だ、こういうことで、鎌倉と萩市は姉妹提携をいたしていることは御存じだと思いますが、しかし、資源的にも、鎌倉の資源というのは大変なものがございますので、早く登録できればいいなと私も思っておりますので、国としての支援というもの、国として自治体への支援、連携のもとでしっかりやってまいりたい、こう思っております。

 先生、当事者でもいらっしゃいますので、またいろいろな御指導もいただきながら、早く登録への道をということで、我々も一体となって努力をさせていただきたい、このように思います。

大石分科員 ただいま大臣の御答弁の中に、地方の問題は地方でという意味合いのお言葉がございましたけれども、これは地方の問題ではなく国の問題でございますので、ぜひお願いしたいと思います。

 それで、鎌倉市も文化庁の御協力に大変感謝しておりますし、ぜひこれからも御指導いただいて、早期に登録が実現できますように、そして予算の面も、今までの方には申しわけないかもしれませんけれども、ぜひ前向きに御検討くださいますようにお願いいたしたいと思います。予算と申しますのは、申請書の予算のことでございます。

 最後に、教育の地方分権を進めるに当たって理想とする義務教育の教員の養成のあり方をどうしたらいいのかということ、これに関して、あと持ち時間がわずかになってまいりました。

 趣旨は、これも地元のことで恐縮でございますが、神奈川県の横浜国立大学、これは現在、教員養成をいたしております。二百三十人ほどの義務教育の養成定員を持っている大学でございます。これは、戦前からの師範学校、神奈川県の子弟の教育に当たる人を伝統的に、師範学校から受け継いでというか、師範学校が新制大学に統合されて、横浜国立大学の中に教員養成学部が置かれ、今日に至っているわけでございますが、大学法人化の波とそれからいわゆる統廃合の波にさらされて、横浜国立大学としては、この教員養成を一たん放そうと思った。だけれども、地元の方たちがいろいろと意見を上げておられて、存続を求めるための署名が八万八千を超えて集められている。

 これは、横浜国立大学に教員養成系学部を残す会というのが設立されて、伊倉退蔵名誉教授、この方は横浜国大の名誉教授でございましょうが、その代表のもとにいろいろな活動が展開されていることでございます。

 教育も地方分権していこうというこの時代の流れに、各地域で、例えば都道府県の中で、特に神奈川県などは人口が多うございますし、そして、義務制の教員採用数も、ここのところ、これから当分、年間一千名をはるか超え一千五百名になんなんとする、そういう教員を必要としている県でもございます。そこに教員養成学部がなくなっちゃっていいのか。

 特に、地域とそれから大学との連携のもとに子供たちを責任を持ってみんなで育てていこう、そういう地方分権の時代でございますゆえに、これは何らかの形でしっかりと、今までどうだったからということではなくて、理想的な義務教育の教員を養成できる学部というのを横浜国立大学の中にむしろ育てていかなければ、教育の地方分権は成り立たない課題だと思っております。

 大変あとわずかな時間になりましたので、大臣、恐縮でございますが、この問題に対して国はどのように横浜国大を御指導なさるおつもりであられるのか、また、各都道府県内における教員養成の空洞化のおそれを大変危惧いたしておりますので、大臣の基本的なお考えを最後に伺わせていただきたいと思います。

河村国務大臣 最近の教育をめぐるいろいろな問題の中で、教員の質の向上ということはつとに言われるようになっておりまして、私も、この教員の質の高度化ということをもっと真剣に考えるときに来ているのではないか、こう思います。そういう意味で、国立大学の教育学部といいますか、教員養成コースといいますか、そこが果たしてきたこれまでの役割の大きさというのは、これは非常に大きいと思います。

 特に、義務教育、小学校では五三%が国立大学の教員養成学部から出ておる、こういう現状がございますし、また、地域には地域特性の教育をやってもらう、こういう皆さんの要望も非常に強いことも承知をいたしておりますから、ただ、子供の数が減ってくれば先生の数も減るので、当然、教員養成の定員も減るんだから、どこかとどこかをくっつけたらいいんじゃないか、こういう机上の考え方でこれはできる問題ではないと、私もそう認識をいたしております。

 そういう意味で、国立大学の教員養成学部をきちっと位置づけていくという考え方はしなきゃなりません。これは、それぞれ大学には大学の、特に国立大学は法人化されていろいろな方針のもとでいろいろな考え方をされておりますから、できるだけその独自性というものはこちらは尊重しなきゃなりませんが、事教員養成の重要性といいますか、これはやはりしっかり考えた上で対応しなきゃいかぬ、こう思っておりますし、また、改めて、横浜国大も、そういう意味で、その役割を果たしてこられたし、地域の要請にこたえたい、こういう思いも持っておられるようでありますから、そのことは我々もきちっと受けとめさせていただいております。

 これからは、教員養成の高度化といいますか、これをもっと図っていかなきゃいかぬ、こう考えておりまして、この問題については、まだ省内としてどういう方向だということは具体的な提案を持っているわけではございませんが、私自身としては、教員養成のあり方は抜本的にこの際考える必要があると思います。

 例えば、六年制にすべきだという声もあります。そういうものも受けとめて、これからの教員養成のあり方をしっかり考えてまいりたい、このように思っております。

大石分科員 ありがとうございました。

小杉主査 これにて大石尚子君の質疑は終了いたしました。

 次に、中根康浩君。

中根分科員 おはようございます。民主党の中根康浩でございます。

 今、国会の外周りを見ますと、いろいろな意味で警備が大変厳しくなって、警察官、警備員の方々がたくさんおられるわけでございますけれども、まさに教育、今から御質問申し上げる障害児教育、特別支援教育におきましても、そういうところにこそこういう手厚い人員の配置が行われることを心から願いつつ、ノーマライゼーションあるいはインクルージョン、そういった観点から、ハンディのある子供たちに対する教育のあり方についていろいろとお聞きをしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 障害のある子供たちの教育は、従来、特殊教育ということで、通常学校に付設される特殊学級、それから盲学校、聾学校、養護学校などの特殊学校に在籍することで行われてきました。文部科学省の調査研究協力者会議の最終報告によりますと、これからは、特殊教育から特別支援教育というふうに名前も変わって、これに伴って、文部科学省の担当課も、特殊教育課から特別支援教育課へと変更になっていくというふうに聞いています。

 障害児を特別な存在としてとらえるのではなくて、個性豊かで、一人一人多様な教育的ニーズを必要とする存在としてとらえていく、そういう転換は大変よいことだというふうに思っていますが、またその一方で、どういうふうに具体的に転換をしていくか、特別支援教育というものがどういうものになっていくか、親の間では、こういう変化に対する期待と不安がないまぜになっているというのが実情だと思います。

 特別支援教育へと転換する理由として、従来の特殊教育のあり方にさまざま反省するところがあったからだというふうにも思いますし、そういうことにつきまして、今までの反省点、そして、それを今後どう生かして特別支援教育を充実させていくか、そういったことにつきまして、まず冒頭、大臣の御見解をお承りしたいと思っております。

河村国務大臣 中根委員御指摘のように、このたび、昨年三月になりますけれども、特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議から、今後の特別支援教育のあり方について最終報告を出されまして、いろいろな提言をいただいているところでございます。

 特に、ここ十年といいますか、LD、ADHD児を含むこういう障害が多様化してきた。そして、障害のある児童生徒を取り巻く環境も変わってきておりますし、やはり障害の程度に応じた児童生徒のニーズといいますか、それを、いわゆる特殊教育という観点だけではなくて、児童一人一人の教育的ニーズに合わせていくということが非常に必要になってきた。そして、ノーマライゼーションの考え方、今御指摘のインクルージョンの考え方、障害も一つの個性だという見方、こういう考え方でこの教育を取り上げていかなければいかぬ、こういう転換をしなきゃいかぬということで、特別支援教育という提言をいただいた、こう受けとめさせていただいております。

 これまでのいわゆる特殊学級にかえて、特別支援教室、通常は健常者と一緒にいながら、特別な教育を受けなきゃいかぬというときに別の教育を受けるような仕組み、こういう形で時間をとってやるというようなこと、こういうことも提言を受けておりまして、こういう方式も取り入れなきゃいかぬ、こう思っております。

 こうした特定の児童生徒に対する特別な、専門的な指導、これも要るわけですね。これもきちっと評価をしていかなきゃなりませんし、通常学級に、学習障害を持っている人たち、またADHD、こういう生徒たちに対しても教育的な支援をやろうということを考えながら、特殊学級あるいは通級による指導の機能、こういうものも残しながら、これも全部なくすというわけにいかないだろう、こう思いますが、こういうものを残しながら、これが弾力的にできるような特別支援教室というものをつくっていくべきであろう、このように思っております。

 新しい制度ができることに対しては、期待と同時に不安に思っておられる方もございますから、関係者のいろんな意見もこれからまだ聞いていかなきゃいかぬだろうと思いますね。また、先生のいろいろな御指摘もいただきながら、よりよき制度になるようにという思いで、中教審においても、この問題についてさらに審議を行ってもらいたい、このように考えておるところであります。

中根分科員 今、大臣から、これからしっかりやっていきたいという前向きな御答弁をいただきましたものですから、これ以上聞く必要もないぐらいのことでございますけれども、またこれから一つ一つ具体的にお尋ねしていきたいと思います。

 今大臣おっしゃられたように、軽度発達障害、例えばADHD、LD、自閉症、アスペルガー、こういった新しい障害というものが注目されてきた、そういったことにも対応していかなきゃいけないというところにこの特別支援教育への転換という意味があろうかと思いますけれども、こういう新しい障害、そういう軽度発達障害、ADHD、LD、自閉症、アスペルガー、こういった個性を持っている子供たちが今何人ぐらいいて、どんな割合になっているかということ、そんな数字をちょっとお聞かせいただきたいと思います。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 LDあるいはADHD等、特別な教育的支援を必要とする児童生徒数でございますが、私ども、平成十四年に、通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する全国実態調査というものを行ったわけでございます。ただ、この調査そのものはお医者さん等の診断を得たものではございませんから、直ちにこれらの障害と判定するということはできないのでございますが、そういった可能性がある児童生徒が約六%程度の割合で小中学校の通常の学級に在籍をしている、こういうことを推定いたしております。

中根分科員 六%という数字を多いと見るか少ないと見るかということもあろうかと思いますが、一人一人、一人残らず教育でその個性を生かしていかなければいけないということで、少なくとも多くとも、これをしっかりと取り組んでいくということでございますけれども、今の人員とかあるいは今の文部科学省の予算とかということで少なくともこの六%分は賄えないのかどうかということ、特別支援学級に対する予算的な措置あるいは人員的な配置、こういったものがどうなっていくか、お知らせをいただきたいと思います。

 それは、要するに、今度は今までの特殊学級ということではないものですから、通常学級でそういう子たちにもきちんとそういう特別支援を行っていくということでありますので、担任の先生だけじゃなくて、補助の先生とか副担任とか、そういう形で必要になってくると思います。通常学級でどういうふうに手当てをしていくかということを、予算的なこと、人員的なこと、お知らせいただければありがたいと思います。

近藤政府参考人 昨年の三月に調査研究協力者会議から御報告をいただいたわけでございますが、先ほど大臣からも申し上げましたように、この報告書が出まして、いろいろと、教育の関係者あるいは保護者の方々からも、期待と同時に不安もあるわけでございます。

 それとまた、盲学校、聾学校、養護学校というこの学校種を、例えば盲学校と養護学校を統合するとか、いろんなそういう仕組みを設けてはどうか、こういった御提言もございます。

 あるいは、先ほど申し上げましたような、特殊学級を特別支援教室にと移行していく、この制度設計も、本当に子供たち一人一人の教育的ニーズに対応できるよりベターな制度設計をどうやって組み立てていくか、こういうことでございますので、まだ具体の環境整備の問題、予算の問題あるいは教職員定数の問題等は今後の課題かと思っておりますが、そういった全体の制度設計の中でそういった問題もあわせて検討してまいりたいと考えております。

中根分科員 具体的なことはこれからだということでございますが、親は、保護者の皆さんは、そういったなかなか具体化していかないということに対して不安を感じておると思いますので、慎重に検討していかなければならないことは当然でございますが、慎重な中にも早く具体的なものが見えてくるように、ぜひ要望しておきたいと思います。

 その一方で、こういう新しい障害、軽度発達障害というようなものは、どうしても今、マスコミ等でも取り上げられやすくなっておりますので、そちらばかりに目が行って、今までの知的障害の子あるいは重度障害の子、こういったもともとの特別な支援の必要な子たちに対して配慮が薄くなってしまうということがないようにお願いをしておきたいと思いますが、この辺、確認をしていただけますでしょうか。

近藤政府参考人 もちろん、重度の障害を持った児童生徒一人一人の教育的なニーズに対応いたしまして、これまでもやってまいりましたけれども、さらにしっかりと取り組んでまいりたいと思います。

中根分科員 ぜひ、よろしくお願いいたします。

 それから、そういう新しい発想で障害児教育を特別支援教育ということで実施していく中で、つまりは、一人一人の子供たちの個性を生かしていくために、例えば介護保険のケアマネジャーのような役割を持った人を設置して、障害児一人一人の教育支援プランというようなものを作成する、そういう仕組みとして、コーディネーターなるものが設けられていくとも聞いておりますけれども、そのコーディネーターと言われる人の具体的な役割と、コーディネーターを養成していったり、設置したり、配置をしていったりする予算的な裏づけについてお尋ねをしたいと思います。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 調査研究協力者会議でも、特別支援教育コーディネーターの設置という御提言をいただいているわけでございますが、これも、私ども、この提言をいただきまして、平成十五年度から、特別支援教育推進体制モデル事業を今展開しているわけでございます。

 どういった方々をこのコーディネーターに充てていくか、これは地域や学校ごとにいろいろな取り組みがあろうかと思っておりますが、今このモデル事業で行われております中では、全体的には、特殊学級を担任されている先生でありますとか教頭などを充てている例が多いと承知をいたします。

 いずれにいたしましても、こういった特別支援教育、障害が重度あるいは重複化してまいっておりますから、従来にも増して一人一人の教員の専門性がより高まっていかなきゃいかぬ。そのためにも、国立特殊教育総合研究所でありますとかいろいろな研究所で研修をしていただきまして、そういったノウハウを生かしていただいて、各学校現場でこういったコーディネーター的機能を果たしていただけたら、そんなことを考えているわけでございます。

中根分科員 ぜひ、その点につきましてもよろしくお願いいたしますし、また、個々の、一人一人のプランを策定するに当たっては、そういうコーディネーターという専門の方だけではなくて、当然、障害児本人あるいはその後見役である保護者、こういった人たちもぜひ交えてプランをつくるようにしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

近藤政府参考人 おっしゃるように、特に、乳幼児期の段階から、そして学校、学校を卒業した以降と、生涯にわたってそういった一人一人のニーズを把握した個別の教育支援計画の策定、こういったことが求められているんだろうと思っております。

 したがいまして、当然、こういった問題になりますと、教育関係者、学校関係者のみならず、医療福祉関係者でありますとか、あるいは労働関係者でありますとか、地域のいろいろな方々にも御参加をいただきまして、連携を組むことによって個別の教育支援計画を策定していく、これが大事なことではないか、そのように考えております。

中根分科員 ちょっと現実の問題に目を向けまして、今までのことからちょっと転じてという形になるかもしれませんけれども、例えば、それぞれの地域で、小学校に上がるとき、障害児が二人以上いないと、今までの言葉で言う特殊学級というものが開設をしてもらえない。一人だと、越境して、なるべく近くのよその学区の学校へ通って、そこの特殊学級のあるところに行くという実態があると思うんです。こういう実態だと、障害児が地域で理解をされていく、地域の人と一緒に生きていくという、いわゆるノーマライゼーション、インクルージョンの理念が生かされていかない、地域との関係性が希薄になっていくということもあるわけでございます。

 複数、何人いないと特殊学級が、特別支援学級がつくられないというようなことは、これからぜひ見直していっていただきたいと思います。一人でもその学校で受け入れていただくんだ、そういうことこそが特別支援教育ということの理念の一つだと思いますけれども、いかがでしょうか。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 いわゆる義務標準法におきましては、特殊学級は八人以下の児童生徒で編制することとされておりまして、御指摘のとおり、例えば一人の場合でも、特殊学級を開設することは都道府県教育委員会の判断により可能となっているわけでございます。

 ただ、全体の定数との兼ね合いがございましてなかなか厳しい状況もあろうかと思いますが、先生の御地元の愛知県でも、一人で特殊学級を編制している学級というものは存在をしているというふうに承知をいたしております。

中根分科員 特別支援教育ということを推進していく中でやはり不可欠になるのは、教員の資質向上、あるいは、先ほど大臣や局長さんがおっしゃっていただいているように、医療や福祉や労働関係機関との密接な連携が重要だというふうに私も考えさせていただきます。その観点から、幾つか具体的なことについてお尋ねいたします。

 例えば、長期入院中の難病児や自宅療養中の子供への訪問教育の充実、これをどのようにこれから推進していくか。

 それから、障害児が学校へ通う場合、学校の先生が、親御さんなりなんなりの付き添いがあれば入学を許可しますよ、通学を許可しますよというようなことも具体的にあるわけなんですけれども、そういった場合に、親でなくても、それにかわるヘルパーさんとか介助員とか、親のレスパイトということも含めて、そういった方でも付添人として認められるように考えていただけないかということ。

 あるいは、経管注入とか、たんの吸引とか、そういう医療的ケアが必要な子供に対して、医師とか看護師とか医療関係者、あるいは親本人だけでなくて、学校の先生にもそういう簡単な医療的ケアは実施していただくことができるようにお願いをしていきたいということ。

 さらには、例えば障害児が修学旅行とか遠足に行くときに、だれか親が付き添って行けばいいけれども、そうでない場合はちょっと御遠慮いただきたい、こんなような実態も間々あるわけなんですけれども、こういったことを改善していただく。

 こういった具体的なこと四点につきまして、お尋ねしたいと思います。よろしくお願いいたします。

近藤政府参考人 お答えいたします。

 一つは、難病等による長期入院中の児童生徒に対する教育の充実でございますが、私ども、平成六年に局長通知を発出いたしまして、病気療養児の教育の改善充実方策に努めてきたわけでございます。各都道府県教育委員会におきましては、この通知を受けまして、病院等の理解と協力を得まして、隣接、併設等の形態により、養護学校の分教室を例えば病院の中に設けるとか、訪問教育を実施する、あるいは院内学級というような形で特殊学級の設置をする、いろいろな形態によって就学に取り組んできているわけでございます。

 そういった結果から、障害や病気を理由に、保護者からの要請に応じて就学猶予、免除を受けている子供は義務教育段階の児童生徒全体の〇・〇〇一%、これは国際的に見ても極めて低い状況になってきておると思っておりますが、なお引き続きこういったものの充実には取り組んでまいりたいと思っております。

 それから、医療ケアの問題でございますが、特に、通常、養護学校におきまして、付き添いの保護者または看護師により、たんの吸引ですとか経管栄養等の医療的ケアが実施をされているところでありまして、養護学校において医療福祉関係機関と密接に連携した適切な対応が求められている、こういうふうに認識をいたしておりまして、実は平成十年度から、厚生労働省と連携をいたしまして、養護学校における看護師と教員の連携のあり方と医療的ケアに関する実施体制の整備を図るための調査研究も行ってきているところでございます。さらにこういった成果を活用してまいりたいと思っております。

 また、介助員の配置についてのお尋ねがございました。介助員の配置につきましては、これは各地域の教育委員会において基本的には判断をされる事柄ではございますけれども、例えば、平成十三年度補正予算によります緊急地域雇用創出特別交付金というものがございますけれども、こういったものを活用いたしまして、介助の補助を社会人を活用して実施する、こんなようなことも可能なのではないだろうか。そういったいろいろなものを活用していただくということも一つのありようかなと考えております。

 また、遠足や修学旅行の問題の御指摘もございました。こういった問題につきまして、やはり、一人一人の子供たちの障害の程度、状態、こういったものに応じた適切な配慮ということが大事だろうと思っております。

 文部科学省では、盲学校、聾学校及び養護学校への就学奨励に関する法律というものがございまして、保護者が負担するいろいろな経費につきまして、都道府県または市町村が支給する場合に一部を補助する、その中で、遠足や修学旅行の費用についても対象にしているところでございます。こういった方々の保護者負担の軽減とこれまたちょっと別の観点かとは思いますけれども、そんなような施策も講じているところでございます。

中根分科員 もう一度、特別支援教育本体の方の話に戻りまして、盲学校、聾学校、養護学校、これを特別支援学校へとこれから転換していくということでございますけれども、なかなかちょっと具体的なイメージとしてわいてこないんです。先ほどの大臣、局長の話の中にも随時出てきたような気もしていますけれども、もう一度、どんなイメージのものになっていくのか、今までのそれぞれの学校はどうなるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

近藤政府参考人 平成十五年三月の協力者会議の報告では、障害の重複化、あるいは障害種ごとの児童生徒数の変動等に伴いまして、盲学校、聾学校、養護学校という従来の学校種を超えた弾力的な学校の設置形態も可能にしてはどうかと。

 この考え方は、少し誤解があるんでありますけれども、盲学校、聾学校、養護学校すべて統合しようとする方向での提言ではございませんで、従来の障害種ごとの教育課程を維持しながらも、設置者の判断で、地域によっては例えば盲学校と知的障害の養護学校を一つの学校として設置する。視覚障害と知的障害が重複しているというお子さんもふえてきているわけでございますから、盲学校と知的障害養護学校を一つの学校として設置して、そういう重複した障害への対応を図っていこう。決して障害種ごとの教育の水準を下げようとするものではない。そのあたり、やや一部の保護者の方々からも、不安に思っていらっしゃる方がいらっしゃるわけでございますが。

 ただ、これは協力者会議の報告でございますので、さらに私どもはいろいろな関係の方々の御意見を中央教育審議会でお聞きいたしまして、最終的な制度設計を固めてまいりたいと考えております。

中根分科員 次に、私どもの地元の愛知県のことについてお尋ねをしたいと思います。

 愛知県に安城養護学校というものがあるのは御存じだと思いますけれども、この安城養護学校は、小、中、高等部合わせて四百五十名以上という全国一のマンモス校ということになっておりまして、図書室をつぶしたり音楽室をつぶして教室にするという、かなりよくない、劣悪な環境の中で子供たちあるいは先生たちが過ごしているということでございますけれども、実態をどのように把握しておられるでしょうか。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 愛知県教育委員会から聞いたところでございますけれども、愛知県立安城養護学校の児童生徒数が年々増加をしておりまして、同校の過密化を解消するために、岡崎市内に知的障害の児童生徒のための養護学校を建設する等の内容の意見書が、岡崎市議会から提出をされているというふうにお伺いをいたしております。

 また、愛知県教育委員会におきましては、こういった課題に対応すべく、養護学校の課題の解決に向けた調査でありますとか、あるいは新たな養護学校の設置について現在検討をされている、このように伺っているところでございます。

中根分科員 御承知のとおり、安城市というところにあるわけなんですけれども、その地域で一番大きな町は岡崎市というところで、この岡崎市から約百三十名ほどこの安城養護学校に通っておられるということもあって、ぜひ岡崎市内に養護学校の設置をという地域からの要望は大変期待の高いところでございますので、県の仕事だということではありましょうけれども、国としても一人一人の子供たちにしっかりと光を当てていくというその観点から、有意義な御指導を賜りますようにお願いをしたいと思います。

 もう一つ、この岡崎市内に国立の愛知教育大学附属の養護学校というものがあって、こちらが一学年三人ぐらいしか毎年受け入れていない、もう少し安城養護を補完するような機能をこの愛教大の附属養護学校に持たせることはできないかということについて、いかがでございましょうか。

遠藤政府参考人 御案内だと思いますけれども、附属学校でございますけれども、附属学校というのはその大学での研究に協力をするということ、それから教育学部の学生、その学生の教育実習の実習に当たる、こういうことで設けられておりまして、愛知教育大学におきましてもそういう観点で、ここには障害児教育教員養成課程というのがございます。入学定員が二十五人でございます。

 そういう課程を持っているということで養護学校が置かれておるわけでございまして、この養護学校には小学部、中学部、高等部、全部それぞれございまして、教員数が校長を入れて二十八名と聞いております。

 そこで、小学部なんですけれども、実は複式の編制でございまして、三学級しかない。複式でいきますと、一学級は一学年三名の六名、そういうことで、これは公立学校もそうなんですけれども、そういう観点で三人しか入れていない、こういう事情にあるということでございます。御理解をいただきたいと思います。

中根分科員 間もなく時間が来ると思いますので、質問のような、要望のようなことを幾つか申し上げておきたいと思います。

 障害児は、やはり、何につけても本当にしっかりと見守って、ゆっくり、じっくりと見守ってあげることが大切。一つ一つを習得していくのにやはり時間がかかる。そういった意味で、例えば、修業年限を義務教育の六年と三年の合わせて九年ということではなくて、その前後一年ぐらい足して十年とか十一年とかというような形で、しっかりと、子供たちがゆっくり安心して学べるような、そういう制度もつくれないかなというふうに、これは一つのアイデアとして申し上げておきたいと思います。

 それから、障害の有無にかかわらず、すべての子供たちが社会にとってかけがいのない存在として認められていく。効果があるからとか、役に立つからとか、何々のためにとかという教育のあり方ではなくて、まさに、例えばヨーロッパだと、障害児教育のレベルというものがその国の文化一般のレベルを示すバロメーターだというようにも言われているようであります。

 日本のこの教育も、特別支援教育という、その枠だけでやるという考え方ではなくて、もうとにかくだれ一人見捨てない、一人一人みんな大切にしていく、そういう観点から、この障害児教育というのはすべての教育のある意味では原点だ、この障害児教育を見詰め直していけば、本当の、健常児の子供たちの、今、引きこもり、不登校とかいろいろな問題がある、そういったことの解決の糸口も見出していける、こんなふうに思っておりますので、この障害児教育ということについて、ぜひともまた力を注いでいただけますように。

 また、現場の先生たちも、障害児担当の先生は普通学級のクラス担任を持てない一ランク下の先生だというような見られ方もしているやに聞いております。ぜひとも、この障害児教育を担当している先生こそ一ランク上だというぐらいの、そんなような位置づけといいますか、文部科学省の中においてもそういう御配慮もいただけますように。

 そういう空気になっていく、そういう社会になっていく、教育のあり方になっていく、そんなようなことを心から願いつつ、質問を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。

小杉主査 これにて中根康浩君の質疑は終了いたしました。

 次に、三井辨雄君。

三井分科員 民主党の三井辨雄でございます。

 このたび二回目の議席を与えていただきまして、昨年は、河村大臣が副大臣のときに質問をさせていただきました。今度は大臣のお立場ということで、きょうは、医学教育の問題、そして国立大学附属病院の問題について質問させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 まず最初に、国立学校設置法施行規則の省令改正でございますが、第十八条の削除というのは大変問題になりました。平成十四年、国立大学の独立行政法人化に向けてということで、文部科学省は、国立大学病院の組織改編を行おうということで、薬剤部を規定した条文を削除して、そして第十七条に組み込んだことによりまして大変な問題が起こったわけでございます。これによって、当時の全国の国立大学の附属病院の薬剤部あるいは輸血部、そして放射線部等において実は大変な混乱を生じたことは記憶に新しいことと存じます。この問題が私のところに持ち込まれ、始めてから二年たつわけでございますけれども、いよいよこの四月から、病院組織も含め、国立大学が独立行政法人として運営されることになっております。

 この問題について、私は、厚生労働委員会での質疑でも、さらに、河村大臣が当時委員長を務めておられました文部科学委員会でも取り上げてまいったわけでございますけれども、河村大臣には、この問題につきましては当時から大変御理解をいただいておりまして、また非常に励ましをいただいたということに感謝している次第でございます。

 その年の、平成十四年の八月には、文部科学省の担当者と折衝の上に、薬剤部の存在は従来どおりとする文部科学省としての通知が出されました。また、私がこの問題で十一月に提出しました質問主意書に対して、答弁書において、会議録がないので答えられないという回答をしながらも、実際には議事録が存在していたという大変な重大な誤りがあったわけでございます。これはもう決してあってはならないことだと思いますけれども、その後、遠山前大臣が私のところに陳謝に参ったわけでございます。

 まず、この国立大学病院をめぐる省令改正にかかわる事実経過、また、文部科学省としての考え方について確認しておきたいと思います。この部分については政府参考人の方からお答えいただきたいと思います。

遠藤政府参考人 今御指摘ございましたように、平成十四年の四月の国立学校設置法施行規則の改正におきまして、御指摘の薬剤部を規定しておりました十八条を含めて、国立大学病院の組織の規定の整理を行わせていただいたわけでございます。そのことによりまして、薬剤部の位置づけ等につきまして、関係者に誤解を与え、さらには心配をおかけしたわけでございまして、大変今遺憾に思っておる次第でございます。

 これは薬剤部の実体の変更ではない、こういうことで改正の趣旨の周知徹底を図らせていただいたところでございまして、規定改正後も国立大学病院の基本的な組織であるという薬剤部の位置づけはいささかも変わっていない、こういうふうに私どもも承知をしておりますし、今後のチーム医療におきまして、医薬品の専門家集団として、国立大学病院の薬剤部の役割、ますます重要になってくる、こう認識をしている次第でございます。

三井分科員 今御答弁いただきましたように、あってはならないことでありますし、今後ますますこの薬学教育というのは、局長も御存じのとおり、大変重要な問題でございます。

 次に移らせていただきますが、ここで、質問に当たってきょうはどうしても触れておきたいのが、国立大学病院の問題だけではなくて、薬学教育の六年制という今日までなし得なかったまさに重要な課題が、この国会でようやく日の目を見ようとしている点であります。

 先ほど申し上げましたように、ちょうど一年前、この分科会で河村当時副大臣に質問をさせていただきました。当時、私の質問に対しまして、中央教育審議会の御議論をいただきながら、来年の国会には法案が出せるのではないかという期待を持っているという御答弁をいただきました。大変前向きな御答弁をいただきまして、本当に、日本全国の薬学を希望する、あるいは薬剤師の皆さんにとっては大変な朗報でございました。こういう力強い河村大臣の御答弁がきっかけとなりまして、薬学教育問題がその後飛躍的に進展した。

 まさに、学校教育法の一部改正法案が今国会に提出されるわけでございますけれども、そういう薬学教育がようやく実現しようとする中で、これは関係者にとっては本当に、先ほども申し上げましたように、獣医師さんの六年制もそうでございました。そういう意味では、時間が余りにもかかり過ぎたなという感じも実はするわけでございます。諸外国においてはこの薬学教育に対しても本当にもっと早くから取り組んでおりますし、そういう意味では随分遅くなったな、こういう愚痴みたいなことを一つ申し上げますが、しかし、このたび河村大臣に本当に御尽力いただきまして、心から御礼を申し上げたいと思います。

 この後、この法案は各委員会で十分に審議をさせていただきまして、改正案が成立するまで私もしっかりと取り組んでいかなければならないと肝に銘じているところでございます。

 この間の経緯につきまして、大臣も本当に私どもの御理解をしていただきました。本日は、大臣としてのお立場から御所見を聞かせていただきたいと思います。

河村国務大臣 改めて一年前のことを思い出しておりますが、それ以前からも三井議員はこの問題について大変前向きに、積極的にお取り上げいただき、また御提言もいただき、そういうものを我々受けとめさせていただいて、いよいよ薬学教育六年制、今国会に法案を出させていただく、学校教育法等の一部を改正する法律案という形になります。また、厚生労働省側も出してくる、こういうことになりまして、これがいよいよ実現の方向へ来たわけでございます。

 私も、今日の医療技術の進展、特に医薬分業の話もございます。そうした中で、いわゆる薬学教育をいかに高度化するか、そして、医療人の一環としてまさに薬剤師の皆さんの資質が問われておる。ましてや医療、人の命にかかわってくる大事な問題でありますから、そして、世界の情勢を見ても日本の薬学教育というのがおくれをとったのではないか、こういう思いで、私は、これは急がなきゃいかぬ、こういう思いにもなりまして、ぜひ早期にという思いで、いよいよ今国会へ出させていただきます。

 特にそういう大きな意義を持つ薬剤師でございますから、単なる調剤師、薬を調剤できればいいというだけではなくて、やはり豊かな人間性を問われる、また倫理観も問われる。そういう教育もしっかり薬学教育の中でやっていかなきゃなりません。そういう意味で、私は、六年制でやっていくというのは意義がある、このように思っておりまして、この法案を早期に通させていただいて、薬学教育の充実に努めてまいりたい、このように思っておるところでございます。

 さらに、四年制の問題もありまして、いろいろな御意見もいただいております。創薬研究者、そういう部分に対しての御要望もありますから、当面、二本立てのことも考えておりますが、ともかく、薬剤師を目指す教育、これを六年間みっちり勉強していただいて、薬剤師としてのこれからの社会的要請にこたえていただきたい、こういう思いでいよいよ法案に取りかかるわけでございまして、ぜひとも濶達な御議論とともに御支援をいただければありがたい、このように思います。

三井分科員 どうもありがとうございます。

 本当にこの間の御苦労というのは、まさに私が当選当初、河村大臣が文部科学委員会の委員長であられたときから十八条の問題を含めて質問させていただいてきたわけでございますけれども、まさに今御答弁いただきましたように、活発な議論をしていただいて、そしてこの六年制、一貫ということを我々は主張してきたわけでございますが、今大臣から御答弁ございましたように、研究者あるいは創薬という立場でということであれば、またこれもやむを得ないかなということも感じているわけでございます。

 そこで、次に質問させていただきます。

 国公立、私立大学の病院における医療事故の特徴と発生件数の推移についてお伺いしたいと思います。

 独法化後は、国立大学の内部組織は基本的に各大学で組織編成されるということを聞いているわけでございますけれども、特に国立大学病院においては、やはり国民の視点に立った、良質なおかつ安全な医療を積極的に推進することが私は必要だと思っております。しかし、相変わらず病院においての医療事故が多発しているというのが現状でありますし、私は、文部科学委員会やあるいは厚生労働委員会において、繰り返しこの医療事故の問題には取り組んでまいったわけでございます。

 この三、四年間を見ていますと、かなり医療事故に対する危機感というんですか、また検討も進んでいると受けとめておりますが、国公あるいは私立大学病院において具体的に医療事故対策がどのようにとられているのか、あるいは、この間、医療事故の特徴とその発生件数についてはどのように推移しているのか、お尋ねしたいと思います。

遠藤政府参考人 最初に医療事故の発生件数でございますけれども、私ども文部科学省に報告されたもの、平成十四年度では四十一件、平成十五年度では二十七件でございます。中身を見ますと、平成十四年度で申しますと、手術に関する事故が十八件、これが最も多く、次いで薬剤関連の事故が十三件、処置に関する事故が四件、こういうことでございます。この傾向は平成十五年度も同じでございます。いずれも、手術に関する事故、薬剤関連の事故が多いという点が特徴であろうか、こう思っております。

 医療事故への対策でございますけれども、大学附属病院におきまして事故のない安全な医療を提供していくためには医療安全対策が極めて重要な課題である、こう思っておりまして、国立大学附属病院、ここでは、一つには、医療安全管理部など専ら事故防止を担当する部門を設置し、さらには専任のリスクマネジャーの配置をするなど、体制を整備させていただいてございます。それから、病院間を相互に訪問して安全管理体制の点検を行う相互チェックということもやらせていただいておりますし、医療事故防止のための研修事業、これもやらせていただいている、こういうことでございまして、医療安全の体制確保に向けたさまざまな取り組みを進めているというふうに理解しております。

 また、公立、私立大学の附属病院におきましても、専任の安全管理者を配置すること、安全管理を行う部門を設置することなど医療法で義務づけられておりますから、各大学病院におきましてしっかりと安全管理の体制を確保する取り組みが行われている、こう承知をいたしておる次第でございます。

三井分科員 今御答弁いただきましたように、私はこの資料をいただきました。特に薬剤、注射薬、輸液等に関する医療事故というのが全体の三割と。しかし、これはあくまでも、ここに書いてございますが、各大学から医療事故として文部科学省に報告があった事例ということでございますね。ですから、まだまだ報告をされていない事故というのはたくさんあるということでございますよね。民間病院のデータをとりますと、大体、薬に関する事故というのはまさに六割近い事故があると。まさに、冷やり、はっととかを含めて、大変そういう薬剤に関する事故が多い。

 まさにこういうときこそ、やはり病棟薬剤師ですとかあるいは薬剤師が薬の専門家としてもっと、先ほど大臣から御答弁いただきましたように、質の高い薬剤師というのが必要になってくるということだと思っております。

 そこで、時間もございませんので、次、独立行政法人化後における国立大学病院薬剤部の機能について御質問させていただきます。

 今、医療事故の問題もございました。また、この事故の割合が三割ということもいただきました。こうした医薬品に関連した事故防止のためにも、薬剤師の専門性の一層の活用が必要である、薬剤師の業務を支える薬剤部全体のさらなる強化が必要であると考えております。

 そこで、私どもも、実は民主党の薬学教育制度問題ワーキングチームを昨年の一月に立ち上げたわけでございますけれども、この当時、昨年も質問させていただきましたが、東京大学の附属病院に視察に行ってまいりました。まさに現場を見てきたわけでございますけれども、薬学における実務実習の重要性や、あるいは、医療現場におけるそれぞれの職能が互いに連携を図りながらチーム医療を行っているという大変な経験を私もしてまいりましたが、まさにこういうことが理想であるということも実は考えているわけでございます。

 そこで、昨年の私の質問に対して当時の遠山前大臣が、法人化後も病院の中で薬剤師の果たす役割が一層重要になっており、薬剤部の位置づけはますます重要になりこそすれ、後退することはない、また、そういうことを確認しながら新制度に移っていくべきだと回答しているわけでございます。

 医薬品に関連した医療事故を防止するためにも薬剤師の役割は極めて重要であり、そのためには、法人化後も、従来どおり、医療現場における医と薬の役割分担が明確な組織として薬剤部を機能させることが必須であると考えますが、河村大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。

河村国務大臣 私からも改めてさきの遠山大臣の御答弁を再確認させていただきますが、私も、国立大学病院の薬剤部というのが、まさにこれは基本的な組織の一つとしての位置づけでありますから、国立大学法人化後においても薬剤部の位置づけというものは変わらない、このように考えておりますし、またその役割はますます高まる、こういう認識でおりますので、さきの遠山大臣の考え方をさらにきちっと私も確認をさせていただきます。

三井分科員 次に、実務実習の受け入れの重要性と今後の取り組み方、スキームについてお伺いしたいと思います。

 薬物療法を行う最も重要な役割を担う処方せんの書き方についてでございますが、現行の医学教育の中での教育あるいは指導というのは大変不十分である。このため、処方せんの書き方が大変現場では混乱しておる。また、書き方の不備に起因する事故も多いわけですね。

 医療の安全の観点から、やはり国立大学の病院薬剤部における実習を通して、この処方に関する医学部の学生への教育あるいは指導は極めて重要であると考えるわけでございます。さらに、薬学教育六年制への移行に際しまして、薬学部における薬学生の長期実務実習に関しても、国立大学の病院薬剤部が率先して学生を受け入れるべきだ、また、教育指導をしていかねばならないと私は思います。

 今後、学校教育法改正に基づき具体化が進んでいくと思いますけれども、現在の実務実習の実態はどのように行われているのか、あるいはまた、それに対して今後の長期実務実習をどのようなスキームで進めようとされているのか、お考えをお尋ねいたしたいと思います。

遠藤政府参考人 現在の実務実習でございますけれども、二週間から大体一カ月というのが実情でございます。これではとても足りない、こういうことで、六年になりましたら半年やる必要がある、こういうことで今進んでおるわけでございます。

 今御指摘ございましたように、薬学教育における実務実習、これは、調剤や服薬指導等の薬剤師の業務を実際に体験することによりまして、医療の現場において薬剤師の果たすべき職責の重要性を認識させるとともに、医療人としての職業倫理を身につけさせるものでございまして、その充実を図ることが大変重要だ、こういうことでございます。

 その実習の場、薬局と病院ということになるわけでございますけれども、病院ということでございますと、やはり国立大学附属病院の薬剤部が医学部の学生あるいは薬学部の学生に対する臨床教育の場としての役割、使命をこれまでも果たしてきたわけでございますけれども、さらに一層の活用が必要である、こう考えておる次第でございます。

三井分科員 確かにこの実務実習というのは、今までも六年制の問題については大変な大きな課題だったわけでございますけれども、実務実習というのは、本当にこれから受け入れ体制がしっかりできるのか。

 ちなみに、私は初めて薬学教育協議会実務実習調整機構というのを聞いたわけでございますけれども、こことの連携について、ちょっと資料を取り寄せたんですが、病院・薬局実務実習調整機構を設置して、中央調整機構と全国で八ブロックごとの地域における実務実習というもののあり方が調整されていると聞いているんですが、それぞれの地域において、また当該の国立大学病院の事情によって若干の温度差があると。

 いずれにしても、長期実務実習の実施に当たっては国立大学病院が積極的に当然かかわらなきゃならないんですが、文部科学省としては、望ましい方向性なり、今後どうかかわっていくのか、お聞きしたいと思います。

遠藤政府参考人 国立大学の附属病院でございますが、これまでも、先ほど御答弁申し上げましたように、実習ということで、重要な役割を果たしてきております。これまでも、自分のところの学生はもとより、病院を持てない大学の学生の実習施設としての役割も果たしてきたところが多いわけでございます。

 今、全国八地区で地区の調整機構を設けてその実習を円滑にしよう、こういうことで進めておるわけでございますので、国立大学の附属病院も、ほとんど参加をすると言っておりますけれども、引き続きこういったところで今言ったような一定の役割を果たしていくということが望ましいと考えてございまして、私どもとしても、各国立大学の附属病院に対しまして、地区調整機構への参加も含めて、実務実習の場を積極的に提供するよう機会をとらえて促していきたい、こう考えております。

三井分科員 ぜひ、附属病院と今の調整機構とのしっかりした連携をとっていただきたいということを御要請申し上げたいと思います。

 そこで、今度は、この実務実習あるいは教育の人員を確保するという観点から御質問させていただきたいと思います。

 今お聞きしましたように、実務実習に関するスキームは御説明いただきました。また、薬学六年制に向けて、薬剤部における教育指導体制が確立されていることは何としても必要であるということは考えるわけでございますけれども、文部科学省の大変な御努力によって、昭和五十一年でしょうか、薬剤部長の教授化が実現したということでございます。医学と薬学の連携のもとに、臨床薬学の教育指導が可能になったということの経過がございます。

 今後ますます高度化する医療に対して、国民の医療の安全を守るというためにも、ますます、医学部の学生と薬学部の学生との臨床教育の場として薬剤部の役割が非常に重要になってくると私は思っております。しかしながら、広範でまた多岐にわたる薬剤業務でありますから、その中での教育指導を円滑に行うためには、教育者の人員ですとかあるいは人材を確保するという観点からの薬剤部の整備もますます私は必要になってくると思っているわけでございますけれども、河村大臣にお考えをお聞かせ願いたいと思います。

河村国務大臣 教育指導という観点からも、この国立附属病院の薬剤部の機能というのは非常に必要になってきておる、大事だ、私はこういうふうに思っております。

 新医療の研究開発とか高度で専門的な医療の提供は当然のことでありますが、こうした医療従事者の教育、養成の役割をどうこれから果たしていくかということでなければなりません。特に、御指摘のように、医学、薬学部、両方、この学生指導という役割があるわけでございます。特に附属病院の薬剤部においては、薬剤部等の学生の臨床実習の受け入れ、これは受託実習生でありますが、それから、幅広い実務経験のための現職薬剤師の研修も受け入れていくということが必要になってきております。実際にそういうことが、病院研修生あるいは実務受託研修生として受け入れているわけでございまして、これをさらに積極的に受け入れながら教育指導に取り組む、これが大事だ、このように思っております。

 特に、国立大学は、御案内のように四月から法人化するわけでございます。これによって、先ほど東大の例もお挙げになりましたが、内部組織の拡充整備、これは各大学法人が独自で取り組んでいかなきゃなりません。判断をいただくわけでございますが、文部科学省といたしましても、附属病院の薬剤部が持っておる教育、人材養成機能といいますか、これが十分ひとつ発揮できるようにという観点で、各大学法人の実情も踏まえながら、また各大学法人の御意向というものも対処しながら、御指導申し上げなきゃいけない点については御指導申し上げますし、いろいろな情報を差し上げる、こういうことによって適切に対応してまいりたい、このように考えております。

三井分科員 大臣おっしゃるとおり、今、実際に現場へ行ってみますと、臨床薬剤師というのはなかなか少ないんですね。また、基礎薬学もやりながら臨床もやるという、大変限られた人員の中でやりくりしているというのが実態だと思うんですね。ですから、例えば実務実習においても、やはり現場をよく知っておられる教員とか、あるいはそういうきめ細かい配慮がこれから必要かな、こういうぐあいに考えております。

 時間でございますので、最後に、簡単に御答弁願いたいんですが、今度は、薬学教育における第三者評価機関、細かく申し上げませんが、この方向性と評価基準、それから評価システムの組織について、現状はどうなっているのか、お考えをお示しください。

遠藤政府参考人 二月の十八日に、中教審の答申、薬学教育の改善充実ということで六年制の方向を打ち出した答申をいただきまして、その中で、今御指摘の第三者評価についても、質の高い薬剤師養成のためにはそういうことが必要だ、こう提言をされておりますし、そのための組織あるいは評価の基準、方法について十分な検討をしなさい、こういうふうに言われました。二月十八日でございますから、その方向で具体的にやっていきたい、こう思っております。

三井分科員 どうもありがとうございます。

 最後に、国立大学病院は、やはり特定機能病院として国の最高水準にあるわけでございますから、その先端医療あるいは重要な役割を担うという部分では、病院組織が一丸となって国民の命を守り、そして健康を確保するという観点から、独立行政法人化によって国立大学病院の関係部局に不満の残らないように、また、わずかでも医療現場に混乱が起きないような環境をぜひともつくっていただきたいことを大臣に申し上げまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

小杉主査 これにて三井辨雄君の質疑は終了いたしました。

 次に、藤田一枝君。

藤田(一)分科員 民主党の藤田一枝でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 本日は、地産地消と学校給食というテーマで、学校給食への地元農産物の利用拡大ということについて幾つかお尋ねをしてまいりたい、このように思っております。

 さて、大臣は学校給食を召し上がったことがございますでしょうか。恐らく召し上がったことがおありだろうというふうに思います。そしてまた、そのときの印象というのは、なかなかバランスがとれていておいしい給食だ、昔とは随分違う、こんな印象を持たれているのではないかというふうにも思います。

 ただ、そのときに、その食材がどこでとれたんだろうか、そこまで思いをはせていただけましたでしょうか。今、食材の中身を一つ一つ見てまいりますと、本当に全国各地から取り寄せられてまいりますし、国際色豊かだ、国際色に富んでいる、そんな実態が実は見えてくるのでございます。こうした実態を背景にいたしまして、今、学校給食へ地元農産物をたくさん取り入れていこうじゃないか、こういう取り組みが年々進んできているわけでございます。きょうはその辺についてぜひお尋ねをしてまいりたいと思うんです。

 まず、消費者と生産者の距離を縮めるということは、非常に農業、農村というものの理解を得ていくためにも大切なことでございます。そしてまた、地元農産物を使用しての学校給食の実施というのは、今盛んに提唱されています地産地消というものを進めていく上でも、私は、大変有効な取り組みであろうというふうに考えております。

 そして同時に、学校教育の面から見ましても、教育の一環である学校給食、ここが大変大事でございます。

 学校給食は教育の一環でございます。これをぜひしっかりと踏まえていただきたいわけでございますけれども、この教育の一環である学校給食にとって、生産者の顔が見える、身近なところでできた食材を使用していくということは、食の安全、安心の上からも当然にして重要でありますし、加工食品であるとかあるいは冷凍食品であるとか、こうしたものがはんらんをしているこの飽食の時代に、食べ物の大切さ、あるいは食材が持っている本来の味、こういうものを学ぶことができる、まさに生きた教材でありまして、さまざまに活用できる無限の可能性をこの取り組みというものは持っていると私は考えております。

 したがって、今後さらにこの取り組みを拡大させていく必要があるというふうに思うわけでございますけれども、まず、この点についての大臣の基本的な認識についてお尋ねを申し上げたいと思います。

河村国務大臣 私、昨年九月二十二日に小泉総理から文部科学大臣の指名を受けました。そのときの指示書の最初に書いてあったのが、これまでの教育の知徳体教育プラス食育を重視した人間力向上の教育改革に努められたしと。食育という言葉がそこにありまして、私も、いよいよこの食育ということが教育の根幹に入ってきたということで、来たなという思いをしたわけでございます。

 私自身、子供のころに、大変田舎でありましたから、学校給食の、そういう子供のころの経験はないのでありますが、子供四人を通して、学校給食のありがたさ、一方では、子供四人のうち二人がアトピー性皮膚炎になりまして、今度は逆に食べることの重要さ、そういうことをひしひしと感じておるわけでございますので、この問題についても、ひときわ高い関心と、これを進めるために努力しなきゃいかぬ、こう思っております。

 特に、今御指摘がありましたように、食育、いわゆる学校給食の中に地域の地産地消の考え方をしっかり取り入れる、これも私、大事だと思います。地域の産物が入ってくるということによって、子供たちは、もちろん食べ物が豊かになっていくでしょうし、地域の産業とか文化とか、そういうものにも関心を持たせることができる、まさに教育としての教材にもなるということがございます。

 それから、やはり農業の方々がどんなに苦労されているかということもここでは学ぶ必要があると思います。場合によっては、実際のお芋がとれる現場に行かせるとか、そういうことをしっかりやらなきゃいかぬ。体験学習もございますが、そういう意味での学校給食の食材のあり方。それから安全性。日本の食べ物は安全性が高いんだ、こういう教育も学校給食を通じてできるのではないか、私はこう思っております。

 学校給食の中に地産地消の考え方をしっかり取り入れていく、私は、非常に意義がある、こう思っておりまして、学校給食指導の手引におきましても、地域の産物の活用についてということを入れておりますし、平成十六年度の予算案におきましても、地場産物の活用事例集の作成のための経費も計上させていただいております。

 まさに食育は人間力向上につながるものでもございます。そういう意味で、学校給食を初めとした関連教科あるいは特別活動、あるいは学校の教育活動を通じて、食育をこれからもどんどん推進していく、こういうことで、学校内における指導体制の整備についての制度的な検討も今始まっておるところでございます。

 文部科学省といたしましても、子供たちが将来にわたって健康な生活ができるように、特に食習慣をどのようにきちっと位置づけていくか、これはこれからの習慣病にもかかわってくる問題でございます。そういう意味を含めて、学校給食における地産地消、さらにトータルとしての食育の充実に努めてまいりたい、このように考えております。

藤田(一)分科員 ありがとうございました。大変心強い御答弁をいただきまして、食育の推進が人間力の向上につながっていく、学校給食に地産地消をしっかり取り入れなければいけない、この大臣の御答弁、本当に心強く思うところでございます。

 それでは、少し実態的な問題について御質問をさせていただきたいと思います。

 今農水省の方では、食の安全、安心、あるいは食料自給率の向上という観点から、学校給食を通した地産地消の取り組みを食育推進国民運動の中に位置づけておられます。そして、既に地場産給食と体験学習に対する補助事業を始めておられるわけでございますけれども、その内容と実績について簡単に御説明をいただければと思います。

齊藤政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のように、食生活の多様化とか外部化に伴いまして、食と農をめぐる諸問題がいろいろ顕在化しておるわけでございます。こういう中で、子どものころからみずからの食につきまして考え判断する能力を養う食育の推進ということは極めて重要なことであるわけでございます。また、とりわけ学校給食は子供たちの食生活の中で重要な役割を果たしておるわけでございまして、この学校給食の中で地場農産物を活用したり食料の生産過程を体験することというのが、子供たちの食と農への理解を深める上で非常に重要であるというふうに認識しておるところでございます。

 こういうような事柄を踏まえまして、このような観点から、農林水産省におきましては、関係府省等とも連携をしながら食育を推進することとしておるわけでございますが、その一環として、食育実践地域活動支援事業というのがございまして、この中で、子供たちに対しまして、地場農産物を使った学校給食を活用して、地域食材の生産、流通とか伝統的な食文化等に対する関心を持たせるための取り組みを進めております。また、地元の食品産業の見学とか作業体験を通じまして、地域における食料生産過程、それから食の安全についての理解を促進するための取り組みなどの多様な活動を総合的に展開することとしているところでございます。

藤田(一)分科員 現在、農水省が今年度から始められたこの事業、地元の農産物を活用していく活動を進めていく上では大変効果のある取り組みであろうというふうに思うんですが、ちょっと細かいことを確認させてください。

 この補助事業は食材の補助にも使うことができるということでございますよね。いかがでしょうか。

齊藤政府参考人 この補助事業につきましては、地域の食材等を利用した学校給食の体験に対しまして、一人一食当たり百円を上限として補助することができるというふうになっております。

藤田(一)分科員 ありがとうございました。

 農水省では、例えば、米の消費拡大の一環として、米飯給食を拡大しようというような働きかけもかねてから取り組んでいらっしゃいますし、そのために給食食器の補助を行うとか、いろいろと学校給食に対して積極的にかかわっていらっしゃる、アプローチをされている、こんな印象を実は私は持っております。

 ところが、文科省の方に参りますと、例えば、先ほどちょっとお話が出ておりましたけれども、食育推進プラン、新年度の予算の中では事例集の作成というものが確かに上がってきております。ただ、この中で、食育推進事業の中に学校給食が明確に位置づけられているというふうにはなかなか見えてこない、非常に一般的に流れてしまっているんではないか。学校を中心とした食育推進事業というような形で、ではこの中にどう本当に学校給食が位置づけられるのか、そこが見えてきていないというふうに思うわけでございます。

 その辺はなぜなのか、ぜひお聞かせをいただきたいと思います。

田中政府参考人 文部科学省におきましても、先ほど大臣がお答えされましたように、学校給食というものが子供たちの教育の上で大変大きな役割を果たしておる、そういう中でまた地場の産物を使うことが非常に有効であるということを認識しておるわけでございまして、そういう意味では、学校教育全体の中で食育を推進する中で、地場産品の活用についても積極的に取り組んでおるところでございます。

 御指摘のような学校給食に対する補助制度という観点から申し上げますと、私どもといたしましては、各小中学校におきまして、学校給食施設を整備するあるいは改築するといった場合に、その学校給食施設の整備に係る補助金を出しておるところでございますし、また、給食の食材につきましては、これは保護者の負担ということになっておるわけでございますけれども、経済的に困窮しておられるような家庭におきましては、要保護あるいはこれに準ずる準要保護の児童生徒の御家庭に対しては、そういう給食費の助成を市町村が行った場合に、これを国としても補助するというような事業も行っておるところでございます。

 また、私どもの食育推進プランの中では、平成十三年度から食生活学習教材の作成というのをやらせていただいておるわけでございますけれども、具体的には、小学生、中学生に、食生活を考えようというようなことで子供用のパンフレットをつくりまして、その中で、地場産品と申しますか、地域の産物と郷土の料理を調べてみましょうとか、こういうことで、学校給食の中において地域の産物がより活用され、そして給食の場等においてその学習が行われるように、促進するための教材も作成しておるところでございます。

 以上でございます。

藤田(一)分科員 いろいろお答えをいただいたんですけれども、先ほど大臣が御答弁をくださった、学校給食の中に地産地消をきちっと位置づけていかなければいけない、学校給食にいろいろな地元農産物を利用することで安全性の追求というものも考えていかなきゃいけない、こういう本当にすばらしい心強い御答弁をいただいていることと今のお話を比べますと、やはり非常にギャップがあるんです。

 私も、学校給食の現場にいたこともございますし、それから県議会の場に籍を置いていたこともございます。そのときにいつも感じるんですが、例えば、さっきちょっと触れました農水省の方の補助事業の学校給食食器の問題でございます。

 この問題についても、県の中で結構縦割りでございまして、教育委員会の方から積極的にこんな学校給食食器の補助事業がありますよなんという説明は全然ないんですね。これは農政の方でやっているというお話で、なかなかそこがかみ合っていかない。いつも学校給食というものが本当に真ん中にきちっと位置づけられて、そしていろいろなことが展開されるということではなくて、何となくばらばらに、今のお話を聞いていても、なかなかそれは、施設の整備は当然そうでしょうし、基本的にこの食育推進事業の中でどう学校給食を位置づけようとしているのか、活用して、そのことを通してどう子供たちに教育の場としての学校給食を提供しようとしているのかというところがやはり見えてこない。ここが一番もどかしいところなんです。

 教育委員会レベルでは、これは後でも申し上げようと思うんですけれども、いろいろやろうと思っても、文科省が動かなければ動かないんですよ、残念ながら。これが今のシステムなんです、状況なんです。だから、せっかくここで、食生活に関する教育の充実ということで食育推進プランということをお出しになっていらっしゃる。それならば、やはり学校給食をここできちっと真ん中に位置づけて、それを活用して地域の中にもそのよさを伝えていくということがあっていいんじゃないか。そういうわかりやすい御答弁を期待していますが、いかがでございましょうか。

田中政府参考人 御指摘いただきました、学校を中心とした食育推進事業でございますけれども、これも、学校と地域と家庭、この三者が一体となって連携協力しながら食に関する推進事業を行っていただくということでございまして、例えば、生産者や流通業者の方々の協力によって給食の時間に生産や流通に関してお話をしていただく、あるいは、学校栄養職員が中心となって地域の食材を活用した親子料理教室をつくってみる、あるいはまた、アレルギー等の子供たちのための特別メニューを学校栄養士さんたちが中心となってつくり、その講習会を実施するといった形で、学校給食を中心に据えて、連携を図りながら食育推進事業を推進してまいりたいと考えております。

藤田(一)分科員 いろいろおやりになるということはわかるんですけれども、食育の教育をそこでやると。しかし、実際の学校給食の食材が、先ほど申しましたように全国あちこちに散らばっていたり国際色豊かでは、これは始まらないわけでございます。そこが問題でございまして、この問題というのは本当に以前から総論賛成なんです、総論賛成の域をなかなか脱し切れない、こういう実態がございます。

 学校給食というのは、やはり家庭の調理とは違います。小規模な学校といえども、大量調理であるとか、あるいは時間内の調理だとか、あるいは給食費一食二百三十円、二百五十円程度、そういう費用における制約もあります。衛生管理などの面もございます。そういう意味では、いろいろな制約を受けているわけです。ですから、どうしても学校側あるいは教育委員会側に消極姿勢というのが見られてしまうんです。

 しかも、もう一つネックになっていたのは、給食物資の購入に当たっては、全国学校給食会という、一括購入システムというものが今まで存在をしておりました。最近大分変わってまいりましたけれども、この学校給食会を通しての食材の購入というものが自由裁量というものを阻んでいた時期もあったわけでございます。

 そういった意味で、現在実施をしている、これは全国各地で本当にいろいろな形、部分的導入、あるいは全部を一生懸命やっているところ、あるいは総合学習という形で取り入れているところ、いろいろありますけれども、いずれにしても、現在少しでも実施をしているところというのは、生産者そして調理員、学校栄養士、こうした関係者の努力によって実現をしているということなんです。そこがなければ、その努力によって何とかやっている。システムとしてでき上がっているわけでは全然ありません。あるいは、極端に言えば教育委員会の反対を押し切って、とにかく教育委員会はしようがない、あそこはいろいろやっている、もう目をつぶっておこう、こういうような状況の中でやられているというのが実態なんです。

 今、いろいろな形で状況が変わって、学校給食を取り巻く状況あるいは食というものをめぐる状況が変わってきているときに、どうやったら推進していけるのか、そのシステムということを具体的に検討する時期に来ていると私は思っています。

 先ほど申しましたように、教育委員会あるいは学校レベル、文科省が動いてくれないと本当に動けないんです。どうか、この事業、大事だというふうに先ほど大臣はおっしゃってくださった。だったら、ここで一歩踏み込んで、そして本当に、食育推進プランという形で今回新規事業も出しているわけですから、どうか一歩踏み込んで、地元農産物の利用拡大ということに向けた具体策を検討していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

河村国務大臣 御指摘の点、私もわかります。

 これは、文科省が号令一下という形よりも、やはり地域に特性がありますから、できるだけ地域の特性を生かすようにしなきゃいかぬと思います。この重要性は我々十分認識をいたしておりますから、そのことについての認識を、文部科学省からいえば教育委員会の皆さんにもっと認識をしてもらうことが必要だろう。これはもうきちっとやらなきゃいかぬ、こう思います。

 と同時に、農協を初めとする生産者側もかなり御協力をいただかなきゃならぬことがありますね。せっかくあれが食べたいと思ったって、高いと言われるとなかなか難しい問題もございますし、また、物はそれにふさわしくそろわなきゃいけません。スポット的にはできるとして、そういう機能的な連携をしなきゃいかぬと思うんですね。

 米飯給食の問題があったときに、農水省は米飯給食に対する予算を二百億くらい持っていたんです。学校給食に米をしっかり食べていただきたい、安くしましょう。ところが、予算がなくなったといって、それを打ち切ったんですね。こういうこともありまして、牛乳については今まだ補助はあると思いますが、やはり学校給食を大事にしようということであれば、お互いの連携をしっかりとらなきゃいけないだろう、こう思いまして、私は、農水省ともそうしたきちっとした定期的な懇談会を持つなりして、お互いに連携をとり合ってやっていかなきゃいかぬだろうと思います。

 ただ、地方によっては、例えば長野県では、一年のうちの三日間だけでありますけれども、地域食材の日ということにして、地域食材の日に、県産の食材を一〇〇%献立して、そしてその上に郷土食を、その地域で自慢できる食材を、メニューを必ず一品加える給食をやっている、こういう取り組みもしておられるようであります。

 そういう先進的な取り組み等も御披露しながら、それぞれの地域で特性を生かした地産地消の学校給食を進めていただけるように、我々としてもしっかり組織的な取り組みを当然やらなきゃいかぬ、こう思っておりますが、地域でもそういう思いで取り組んでいただく必要があろう。今度は学校栄養士の皆さんも学校栄養教諭になっていただいて、そういうことの役割を十分果たしていただく期待を寄せておるところでございます。

 今の藤田委員の御指摘を踏まえながら、もっと全国的に、きちっとトータルとして学校給食の中に地産地消の考え方をしっかり取り入れていくということについて一層力を入れてまいりたい、このように思います。

藤田(一)分科員 大臣の方から非常に総括的に、今後しっかり農水省とも連携をとりながらというようなことでいろいろお話をいただいたので、余りそこから先に細かいことをお尋ねするのもどうかなというふうには思って、今後の取り組みに期待をしなければいけないと思うんですけれども、残念ながら、本当に今の学校、教育委員会レベルというか現場レベルでは、学校給食というのがなかなか真ん中に座ってこないんです。

 学校というのは今大変忙しくて、そしてそれぞれの授業でやらなきゃいけないことがある。一方では、ゆとりの時間ということでいろいろなことが入ってくる、総合学習が入ってくるということで、大変現場は苦労しています。私は、そのとき、今のこの学校現場を取り巻く状況、あるいは子供たちを取り巻くいろいろな難しい状況のときに、食ということが非常に大事だというふうに思うんです。

 食べるということは人間の基本的な営みでございますから、そこがしっかりしなければいけない。そういうことをどこで体現させていくのかというのは、やはり学校給食の場。もう要らないという意見もあると思います、学校給食はもう要らないんだという意見もあると思いますけれども、やはりそうではなくて、こういう難しい状況だからこそしっかりとそこを位置づけて、そしてそこで生きた教育をするということが非常に大事なことなんだろうと思います。

 ところが、実際の現場を見ていますと、給食の時間というのはどんどん圧縮をされていくんです。そして保護者の意識も、お昼にお弁当を持たせるよりも給食があった方がいい、こんな意識になっているのも現実問題としてあるだろうと思います。

 こういうものを全部変えていくというのは本当に大変なことでありますけれども、そのためにも、私は、学校給食ということを通して、特に地域ということを考えたときに、生産者の顔が見えるということ、このジャガイモはだれがつくっているんだ、どこどこの、だれさんのおじいちゃんがつくったんだよ、お父さんがつくったんだよ、こういう関係が見えてくるということは非常に大事だというふうに思うんです。

 ところが、今、総論的には心強い御答弁をいただいているわけでありますけれども、実態としてはそういうふうになかなかなっていかない。そして大量調理がどんどん進んでいますから、ちょっと大臣の御答弁にもありましたけれども、安定的に規格のものがそろわなきゃ困るというような話になってしまうということで、議論がいつもすれ違ってしまいます。

 私の地元の福岡県では、今、一生懸命地元農産物を給食に入れようということで努力をしておりまして、県内で、農協であるとかあるいはいろいろな生産者グループであるとか一緒になりまして、協議会というものをつくっています。利用促進推進協議会というようなものをつくって、二十五ぐらい今現在できているんです。ただ、そこで一番消極的なのがやはり学校現場、教育委員会なんです。そこが問題になっている。

 もっと給食というものを、余り画一的にとらえないで、例えば規格が少しふぞろいでもできるんです、やろうと思えばできるんです。統一献立にしないで少し細かく分ければ、食材がばらばらでもできるんです。いろいろな工夫があるんです。そういうところまで考えて、この地産地消ということをあえて学校給食の中に入れることが大事だというふうにお考えいただけるんだったら、そのあり方まで含めてきちっと議論ができるような、そういう体制というかスタートを切っていただきたいと私は思います。

 先ほど大臣の冒頭の御答弁で、指導体制も含めて検討を始めなきゃいけないんだというふうにおっしゃっていただいていますので、ぜひその辺の具体的な、私がさっきから具体策と伺っているのは、総論ではなくて、具体的に一歩踏み出していただきたい。先ほどの農水省の食器の補助がお金がなくなったら打ち切られちゃったなんということ、ばらばらではいけないわけですので、そういうことも含めて、何か今回、せっかくあるわけですから、その辺でひとつ具体策を検討していこうということで、お答えをいただけるものがあればお聞かせいただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。

河村国務大臣 おっしゃるとおり、我々文部科学省としても、一つの指針のもとで全体的に取り組めるような仕組みをつくっていく必要がある、もっとそれを徹底する必要があろうと思います。

 と同時に、私は学校も、今後学校栄養士が教諭になられたら、それによって指導力も違ってまいりますから、そして恐らく保護者の皆さんも巻き込んでといいますか、一体となって、学校給食、それぞれ特色あるものに取り組んでいただいて、そして地域で自慢できる学校給食をやっていく。こういう運動が展開できるように我々も取り組んでまいりますし、あわせて、生産者の皆さんあるいは農業関係団体、一体となって、そういう協議会的なものをもっともっと強めていけば、私は、必ず地産地消の動きというのは高まってくる、このように思っておりますので、御指摘を踏まえながら対応をしっかり図っていきたい、このように思います。

藤田(一)分科員 ありがとうございました。

 ぜひ指針というものはつくっていただきたいと思います。そういうことを通して現場が動いていくということになると思いますので、そういった取り組みをぜひ積極的にお願いしたいと思います。

 私は、学校給食に地元農産物を使っていくということは、子供たちに安全でおいしい野菜や果物を届けたい、あるいは食べさせたい、こういう目的意識がないとやはりできないことだというふうに思っています。文科省はともすると学校給食業務の運営の合理化の方に力がこの間入ってきているのではないかな、そんなふうにも思うわけでございまして、どうか情熱を持って、文科省にあっては地元農産物の利用促進、そしてまた農水省にあっては供給拡大に取り組んでいただきたい。

 そして、私は、この地産地消と学校給食というのを私自身のテーマとして活動をしてまいりたいと思っておりますので、また次の機会にお尋ねをするときには、さらに前進をしている、実態的に前進をしているということを心から期待いたしまして、質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

小杉主査 これにて藤田一枝君の質疑は終了いたしました。

 次に、山井和則君。

山井分科員 民主党の山井和則です。これから三十分間質問をさせていただきます。

 河村文部大臣におかれましては、昨年十二月十八日の宇治小学校での傷害事件のときに、いろいろ、いち早く対応していただきまして、本当にありがとうございます。また、政務官、副大臣を経て、今回満を持して大臣になられたということ、また、今までから、スペシャルオリンピックなどの知的障害者の方々の支援の活動も非常に力を入れてこられたということで、非常に敬意を表しております。

 そこで、きょうは、前回、副大臣であられたときにも一度質問をさせていただきましたが、障害児の方々の学校への門戸開放ということについて質問をさせてもらいたいと思います。もちろん小中高すべてに、そしてあらゆる障害の方々、子供たちに門戸を開くべきでありますが、きょうは、特にその中で、高校への知的障害のある子供たちの門戸開放ということについて、絞って質問を前半させていただきたいと思います。

 資料を二つ、調査研究校になっております大阪の阿武野高校の「共に学びそして育つ」という資料、それともう一枚、新聞報道も資料としてお配りをさせていただきました。また、きょうは、知的障害のある子供たちの保護者の方々も傍聴にお越しになっております。

 私も、学生時代、福祉施設でボランティアをして以来、かれこれ二十年ぐらい福祉の問題に取り組んでおりますけれども、つくづくおかしいと思うのが、やはり社会の中には数%の障害のある方々がおられる、しかし、学校教育の中では往々にして、そういう障害のある方々が、正直言って排除されているということがあります。

 やはりそういう教育現場の中で接したことがない、その子供が大人になったときに、障害のある方々と接して、どう接していいのかわからない、自分と違う人たちだということで近づきがたく感じるということは、ある意味で、残念ながら、そういう傾向も出てきて仕方がないと思うんですね。そういう意味では、本来、障害のある方々と交流して過ごすのが健全な社会なわけですから、早急に、障害のある子供たちが一般の児童とともに学べる体制というのはつくっていくべきだと思います。

 そこで、まず最初にお伺いしたいんですが、高等学校への知的障害のある子供たちの入学について、もっと門戸を開くべきではないかと考えますが、大臣、いかがでしょうか。

河村国務大臣 基本的に、知的障害者の皆さんも、健常者の皆さんが一緒に学べる場というもの、ノーマライゼーションの考え方、そういう方々が何%かあって自然だという考え方、私は、これは理念としてとうといものだというふうに思っております。

 ただ、障害のある生徒が高等学校に入ってこられた場合に、健常者と一緒の場合の問題については、これはどうなんでしょう。今度の特別支援教室の考え方等もありまして、本人にとっても、高校教育ですから、高校教育を受けるにちゃんと履修できるかどうかという点も、これはやはり配慮の中に含まざるを得ないと思うんですね。だから、特別教育を受けなきゃいけない部分は別の時間をとらなきゃいけないようなことがございます。その辺をどう考えるかということは、やはり判断せざるを得ない状況があります。これを単なる排除と考えるのか、本人のためにとってどちらがいいのかという考え方。

 しかし一方では、健常者の方にとっても、こういう方があって、ともに学んで、またそのことから逆に、それを一つの個性として見て、教えられる部分もあるんですね。教育的な観点も非常にあります。

 だから、そういうことを総合的に考えていかなきゃなりませんので、後期中等教育の中での積極的な社会参加、自立、これができるような教育を考えていくという点からいきますと、これは健常者と一緒の形のもの。そして、我々の方で今進めておるのは、養護学校の高等部の整備を図っていかなきゃいかぬ、こういう課題も抱えております。

 これは保護者の皆さんのいろいろな御要請もあるわけでございまして、それを受けとめながらこの対応をしていかなきゃいかぬと思っておりまして、押しなべて、高校教育の中でこれをどういうふうに取り上げていくか。

 私は、低学年のときと違って、高等部に行くほど、本人のそうした専門的な教育を受ける部分も出てくるんではないだろうか、こう思っております。今、文部科学省の総合的な考え方としては、養護学校高等部の整備をまず考えなきゃいかぬだろうという考え方に立っておりますが、一面、山井委員御指摘のような観点からの教育、これをどういうふうにしていくかということについて、我々はやはり総合的な判断を持って、受け入れについては考えなきゃいけないだろう。

 私も、どこまでこれを受け入れることにするのか、押しなべても、そういうものがあって、その中でも教育を一体としてやると考えるのか、やはりこれは考える課題だろうと思いますね。私は、その考え方の、許容の範囲というのがあってしかるべきだという考え方を持っておりますが、現実に学校現場でどう取り入れていったらいいかということについては、やはりいろいろな考え方を整理しなきゃいけないんではないか、このように思っております。

山井分科員 今、大臣の答弁の中で、一般の高校に行くことが知的障害のある子供たち本人にとっていいのかどうか、学校についていけるのかどうかというような趣旨のこともありました。

 私は、そこで思いますのは、やはりこれは選択の問題だと思うんですね。御本人さんや親御さんがそれを望まれるならば、やはり選択肢として、そういう選択肢はあるべきだ。もちろん、御本人や親御さんが養護学校の方がいいと判断されたらそれでいいんですけれども、今の問題点は、もしその場合、御本人や親御さんが普通学校に行きたい、高校に行きたいと言っても、その選択肢がないということなんですね。

 現在は、そのケースは、調査研究校としては大阪府で六校、大体二十人ぐらいしかないわけですけれども、例えば、横須賀でのある調査がありまして、そこで知的障害のある子供たちの保護者に聞いたところ、四人に一人、二五%の保護者は、やはり高校は普通高校に通わせたいというふうに考えているわけですね。裏返せば、七五%はそう考えていない。その考えていない方は養護学校に行ってもいいけれども、やはり四人に一人の保護者はそう考えているんだったら、その選択肢があってしかるべきではないかと思います。

 また、一般の高校でなく養護学校の高校に自分の子供を入れたいという保護者に関して、なぜそう選びましたかというアンケートに対しても、五五%、半数以上の方が、受け入れているところが養護学校以外にない、選択の余地がないというふうに答えているわけですね。私は、やはり公的責任として、選択肢は当然つくるべきであると考えております。

 それで、大阪府で今、調査研究が行われておりまして、そのことについて、ちょっと時間が押してきましたので、私が、どういうことになっているか、読ませてもらいたいと思うんです。

 例えば、大阪の松原高校の二年生の知的障害のあるお子さんは、こういう感想文を書いておられます。これは一般の高校に通って、「私は、学校が楽しいと思っている。一番楽しいのは休み時間が楽しいなと思っている。それは友達がいっぱいいるからです。」「体育の時とかも「いっしょにいこう」とかいってもらえたり、私がなやんでいるときに、「どうしたん?」と聞いてくれたりするので、嬉しいです。みんなに知ってもらいたいのは、私は、みんなのようにたくさんおしゃべりはできません。でも友達と一緒にいるだけで楽しいと言うことです。」ということを御本人さんが書いておられます。ある意味で、勉強についていけなくても、やはり高校に行って楽しいと。それで、このお子さんは、「将来は、保育士になりたいという夢があります。夢をかなえるのはむずかしいかもしれません。みんなも応援してください。」ということを書いておられます。

 次に、それに対して、クラスメートの人はどう書いているか。西成高校という調査研究校の一年生です。「私とCちゃん」Cちゃんというのは知的障害のあるお子さんなんですが、「私とCちゃんが出会ったのは、この学校へ入学してからです。最初はしゃべりかけるのがむずかしかった。しゃべってもオーム返しが多くて、話し方がちがうのかなと思いました。でも、しゃべっていくうちにだんだん話し方もわかってきて、しゃべるのが、今では、たのしいコミュニケーションをちゃんとできている感じで、しゃべる事だけでなく、一緒にご飯を食べたり、遊んだりしてすごく楽しいです。」「それに、勉強も教えあいをするし、たのしいです。私らがCちゃんに英語や数学を教えてあげ、Cちゃんは、私が思っているだけかはわからないけど、障害者関係や福祉関係を、おしえてくれないけど、気持ちが伝わってくるような気がします。これもCちゃんとであったおかげかなと思います。」やはり学んでいられることが非常に多いわけですね。

 また、保護者はどう思っておられますかというと、ある保護者は、Yさんのお母さんです。

 中学校を卒業して高校は、私の子供はどうするかという話になって、普通高校に行けるはずがないからいいと思っていましたが、受け入れ高校があると聞き、入学しました。「クラスのみんなと一緒に過ごす一日は、息子にとってよい刺激で、自分もみんなと同じように勉強したり、話をしたりするのが楽しいようです。そんな姿を見ると、入学させて本当によかったと思います。体調のことや、みんなと同じ勉強ができなくても、クラスの中にいるだけでも、本人なりの成長をしていってくれると思います。」「この先も受け入れのできる学校をふやして、一人でも多く息子と同じように学校生活を送ってほしいと思います。」これが保護者の思いです。

 それとともに、その担当となった教員の方のコメントです。

 障害のある子供が親から殺されたり、また虐待を受けたりするということは今でも多い。もしも、この調査研究校のように、クラスに知的障害のある仲間がいたという生徒が障害者の親になったとしたらどうだろうか。私の考えだが、最悪の事態にはならないと思う。「福祉の時代になり、本校の生徒も多く、福祉の職場を進路として選ぶようになった。しかし、そのような生徒の多くは、在学中に障害のある生徒と積極的にかかわったり、ボランティアなどに参加したりして、そこから進路を考えるようになった」ということを書いておられます。

 かく言う私も、大学時代、酵母菌の研究者をしていたんですけれども、学生時代、ボランティア活動で福祉施設でボランティアをして、そこで子供たちと出会って、福祉をよくするために政治家になろうとまで決意をしたわけなんですね。

 そういう意味では、本人も喜んでいる、親御さんも非常に喜んでいる、クラスメートも非常に多くを学んだと言っている、教員の方も効果は大きいと思っている。これだけ多くのいい効果が出てきたら、それはやはり、全員とは言いませんけれども、中には本人や保護者の中で、大阪だけじゃなくて私の地域にもこういう学校に行けたらいいなと思われるのは当然だと私は思うんですね。

 例えば、横須賀では、三年間ぐらいこういう運動をされても、まだまだこういう調査研究校という制度はスタートしないわけです。また、文部科学省の重点施策実施五カ年計画の中でも、成人国民の五〇%に共生社会を周知させるという目標を定めているわけですけれども、こういう意味でも、一緒のクラスにいるというのは非常に重要だと思います。

 そこで、結局、地元の教育委員会や学校と話してもなかなか進まない。そのためには、やはり文部科学省が、こういうのはいいことだという方向性を示していく必要があると思います。改めて河村大臣、いかがでしょうか。大臣、お願いいたします。

河村国務大臣 今、例をお引きになりましたそういう現場で、知的障害のある人たちと健常者との交流の中で、学びがあると私は思いますよ。これは、それぞれの教育委員会あるいはその学校においての校長の感性の問題だと思いますね。判断をしていただかなきゃなりません。

 私は、全国一律にという、今そこまでいくのはまだ、受け入れの方があるかもしれませんが、それぞれの県あるいは地域において受け入れ地域をつくっていく、そういう希望のある方はそこへ。そして、やはりそういうことに理解のある、まあ、最初のうちは、今全体がまだそういうことになっていないこともありますから、先進的な取り組みも参考にしながら、全国的にそういうことを展開していって、希望される方があれば、それぞれの教育委員会、少し広域になってもしようがないと私は思うんですが、受け入れ学校があるということは望ましいことではないか、私はこう思います。

 今の御指摘の点を踏まえて、現実に調査研究もいたしておりますし、大阪府の取り組みもございます。そういうものをぜひ我々の方もこの段階を踏まえて検討してみたい、こういうふうに思います。

山井分科員 先日、河村大臣の所信の中でも、吉田松陰の「意を決して之を為す」という言葉を引いておられましたが、やはりこれは文部省のリーダーシップ、そして文部科学省のリーダーシップということは河村大臣のリーダーシップに一にかかっていると思います。ある意味では、これは日本の社会の一つの悲願であります。やはり障害のある方々と共生社会をつくっていく。ぜひとも、河村大臣のリーダーシップを発揮していただいて、大阪しか調査研究校がないというのではなくて、全国の都道府県で調査研究校があるというふうにやっていっていただきたいと思います。

 それで、質問が前後しますが、局長にお伺いします。

 ちょっと時間に限りがありますので、最初の質問をはしょりまして、このような知的障害のある子供たちの高校への受け入れを学校教育法の中に明確に位置づけるべきではないかということと、同時に、きょうの資料にもありますが、知的障害のあるお子さんたちをどれぐらい学校に受け入れているかという全国のデータがないんですね。このデータをぜひとも収集して、公表してもらいたいと思います。この二点、お願いします。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 知的障害児受け入れを法律上明確に位置づけてはどうか、こういうお尋ねでございますが、特に障害のある生徒の高等学校への入学につきましては、それぞれの高等学校の校長が、生徒の障害の程度等を考慮しながら、当該高等学校の教育を履修できるに足る能力、適性等があるかどうか、こういう観点から判断すべきものであろうかと思っておりまして、知的障害のある生徒の高等学校受け入れについて法律上位置づけるということまでは私ども今考えていないわけでございます。

 それから、現在、私ども、高等学校に在籍する知的障害者数の数につきましては把握をしていないところでございます。この実情につきましては、少し各県からいろいろとまたお話などを承ってまいりたい、こういうふうに考えております。

山井分科員 ぜひとも、その調査結果を教えていただければと思います。

 時間がありませんので先に進みますが、私は、やはり気になるのは、これは学校の校長先生や地域の教育委員会の判断だけの問題ではないと思います。繰り返しますが、これだけいい結果が既に出ているわけです。それで、五年、十年先じゃなくて、実際今、一般の高校に進みたいとおっしゃっている親御さんなりお子さんがいらっしゃるわけですよね。五年後、今から入れますよと言っても遅いわけです。

 やはり、そういう意味では、選択肢を確保するというのは国の責任であると私は思っております。ですから、そのことは地方任せにせずに、国のリーダーシップをぜひとも発揮していただきたい。この問題、私は今後も取り組んでいきますので、よろしくお願いいたします。

 次に、宇治小学校の傷害事件のことに移らせていただきます。

 十二月十八日に、包丁を持った男が宇治小学校に乱入し、小学校一年生の児童二人に切りつけ、けがを負わせた。実は、私の家の近所であります。これに関しては、マニュアルの限界、人手が必要であるということ、機械化の限界ということなどが明らかになっておりました。池田小学校の事件も含め、こういう事件が最近頻発しているわけですけれども、文部科学省として、このような再発防止をどのように考えておられますか。大臣、いかがでしょうか。

河村国務大臣 宇治小学校のケース、その前の池田小学校のケース、池田小学校の事件が起きたときに、再びこういうことが起きないようにということを考えてやったはずですけれども、まだそういうことが起きているし、現実にはまだ、子供たちの登校、下校のときにいろいろ問題も起きているという現状がございます。

 これではということで、御案内のように緊急アピールも出しまして、マニュアルをもう一度確認してもらう。しかし、これは学校によっても、地域性が非常にございますので、それぞれの地域で取り組んでいただかなきゃいけない部分はたくさんございます。まず、学校側も努力する、それから家庭も気をつけなきゃいけませんし、子供たちにそういう意識を持たせる、地域社会それから関係機関との連携、やはりこれはどうしても地域ぐるみの取り組みというのが不可欠になってきております。

 私もその後、そういう問題で視察もしたりしておりますが、私が行くところはそういうモデル校的なところでもありますから、かなり地域的な取り組みができております。そういうものを一つの模範にして、全国がそういう取り組みをしていただく。ある学校ではもう、登校、下校間の地域マップもあって、ここのところが危険だとかそういうことまで取り組んでありまして、全体として学校の安全、安心、取り組みがされておるように思います。

 また、小野国家公安委員長に対しましても、改めて、学校の安全対策について警察との一体感、絶えず見回りをしていただくとか、特に都会の繁華街に近いところとか商店街に近いところとか、そういうところについてはそういう意識を持っていただいて、連携強化をしていただくというようなこともさせていただいて、お願いもいたしたりして、やはり組織的にといいますか、そしてそれを継続的にやっていく。

 大抵、事件が起きた場合には、やっていたんだけれども、このときたまたまだったというようなことが、継続的に行われていないということがございます。残念ながら、本当はそういうことがなくてしかるべきなんでしょうけれども、現実は、そういうふうなことも言っておられません。現実に起きておりますから万全を期さなきゃいかぬ、こう思っておりまして、我々も、絶えず通達を出しながら、そして、学校側も、そういうことを専門的に考える先生も置いて、絶えず継続的にこういうことができるような仕組みをもっとつくっていく必要があろう、このように考えております。

山井分科員 本当に、そういう継続可能な体制、マニュアルづくりが必要だと思っております。

 それについて、具体的に二つ、この宇治小学校の事件の教訓として、現場から上がっている声として、提案をしたいと思います。

 まず、すべての教師に携帯用の緊急ブザーを持たせるべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。教室にインターホンをつけるというような提案もありますが、児童がいたずらをしたり、また、それでは運動場での事件に対応できないので、携帯用の緊急ブザーが必要と考えますが、いかがでしょうか。

 また、次に、小学校一、二年生のクラスには、防犯上の観点から、教師を加配する、補助教員をもう一人つけるべきと考えますが、いかがでしょうか。今回の宇治小学校の事件が不幸中の幸いでしたのは、宇治市では、小学校二年生の一学期までは補助教員を配置しているわけですね。つまり、教員が二人いたから今回最小限に被害を食いとめられたわけで、もし教員が一人だったらと考えたら、私も背筋が寒くなるわけであります。

 このことと、時間に限りがありますので、もう一つ一緒に質問しますと、今回のような事件の被害児童への補償問題、将来的な相談窓口についても一緒にお聞きします。

 現時点では、二人の児童は、その後元気に小学校に通っていますが、今後いつまたフラッシュバックやトラウマなど後遺症に苦しむかわからないわけで、このことについて一番御両親も心配をされておられます。また、これは、それを目の前で見たお子さんのショックに関する後遺症も一緒であります。これに関しても、治療費は出ているわけですけれども、このような被害児童への補償の責任と、将来も含めた相談窓口はどのようになるのか。申し上げたいのは、一生、体の傷だけじゃなくて心の傷をその子供も御家族も負っていかれるわけですから、そのことへの御配慮をお願いしたいと思います。

田中政府参考人 お答えを申し上げます。

 ただいま大臣の方からお答えがございましたけれども、全国の学校は、その設置されている地域の安全の実態、あるいは学校の規模、学校の施設の形状、それから、地域の関係機関や団体などの協力体制、状況がさまざまであるわけでございまして、子供の安全確保のためには、それぞれの学校におきまして、この文部省の作成いたしましたマニュアルや、あるいは緊急アピールなどを踏まえながら、各学校や地域の実情に応じた安全確保の対策を講じていただくことが大切だと考えておるところでございます。

 そのような観点から、ブザーを教職員に携帯させたり、あるいは警備のための人を配置するといったことも一つの方策として考えられるわけでございますけれども、具体的にどのような措置を講じていくかは、基本的には、各設置者におかれまして適切に対応していただきたいというふうに考えておるところでございます。

 また、事件の補償でございますけれども、これは事件の補償という意味ではございませんけれども、学校の管理下において児童生徒がけがをする、あるいは事件、事故に遭うといった場合には、日本体育・学校健康センターにおきまして災害給付制度を実施しておるところでございまして、今回の事件に関しましても、医療費につきましては、その経費が、今手続中でございますけれども、給付されるようになっておるところでございます。

 また、後遺症についてのお尋ねでございますけれども、これからまた何らかの形で後遺症が出てきたような場合、まずはそれぞれの学校に相談していただくことが適切であろうと考えておりまして、各学校におきましては、それぞれ、そういう相談に当たる担当責任者を明確にしていただくことが必要ではないかと考えておる次第でございます。

 以上でございます。

山井分科員 そのあたり、国のリーダーシップをぜひとも発揮していただきたいと思っております。

 もう一つは、もうこれは時間がありませんので質問ではなく要望にしますが、そういう学校の安全管理という視点でも、教育基本法もしくは学校教育法のような法令の中で、学校の防犯担当者、つまり安全管理者を明らかにすべきではないかと考えます。現状では、学校長が安全管理の最終責任者になっていますが、実際問題としては、校長はそう簡単にその任務に時間を割けないわけですので、そういうことを要望したいと思います。

 あと五分になりましたので、厚生省から来てもらっておりますが、痴呆予防のことを二点質問したいと思います。

 介護予防に今後厚生省は非常に力を入れていかれるということで、これは時宜を得たすばらしいことだと思います。

 少し気になるのが、筋力トレーニングなどの寝たきり予防メニューというのはさまざまなんですけれども、何か、痴呆予防のメニューというのは余り明確ではなくて、聞いてみると、市町村に任せて、具体的なメニューが余りないというように、消極的に思えるんですが、いかがでしょうか。

 もちろん、痴呆には多くの種類があって、予防できるものとできないものもあるわけですけれども、このような痴呆予防について今後どのように進めるつもりでしょうか。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 痴呆性高齢者の実態、これにつきましては、これまで必ずしも明確ではなかった面がございますけれども、介護保険制度の実施に伴いまして、要介護あるいは要支援認定該当者の約半数が、痴呆の影響によって何らかの見守りや介護を必要とする方である、こういうことが明らかになっております。

 したがいまして、私ども、今後の高齢者介護にとって、痴呆対策の推進、これは非常に重要な課題であると考えておるところでございますけれども、お尋ねの痴呆予防、これにつきましては、いまだ確立した対策が見出されてございません。現時点では、さまざまな試みが実践されている段階にあるということで認識しております。

 また、昨年、有識者から成ります高齢者介護研究会の議論の中でも、痴呆予防、これが取り上げられておりますが、その際の御指摘といたしましては、以下のようなことでございました。

 現在、痴呆予防として確立した方法はないものの、痴呆をできる限り早期に発見をして、本人と介護者の生活の質の維持を図るとともに、ハイリスクグループや既に痴呆症状を有する高齢者に対しては、環境の変化を避けて、住みなれた地域での生活の継続を支援する、こういうサービスを効果的に活用することで、痴呆の発病や進行をできる限り遅延あるいは緩和させることが重要である、こういう御指摘をいただいております。

 痴呆介護予防につきましては、今後とも、先駆的な取り組みへの支援や予防効果の科学的な検証を進めながら、効果的な対策の確立に向けてさらに努力してまいりたいと考えております。

 以上でございます。

山井分科員 まだ効果的な方法が確立していないということですが、十年以上前からいろんな取り組みが行われているわけで、もうちょっと厚生省も対策を急いでほしいと思うんです。

 その中で私が要望したいのは、健常者対策では余りにも膨大な人数になるわけですから、費用対効果からいっても普及には無理があると思いますので、ついては、発病の一歩手前の水際、つまり前期痴呆の状態に絞って予防対策を立てるのが有効ではないかと思います。

 今、一部の自治体で成果を上げている方法、つまり、ある程度早期痴呆の方々をスクリーニングし、その方々に早期痴呆予防教室に行ってもらうという方法を普及すべきではないかと思います。これは、痴呆の進行をおくらせる効果があると報告されたり、また、長期的には介護保険の財政の節約にもなるというふうに期待されております。

 このような早期痴呆予防教室の普及をすべきだと思いますがいかがでしょうかということと、このことに関して、寝たきり予防だけではなく、もっと痴呆予防に関して啓発のキャンペーンをやるべきではないかと思います。この点についてはいかがでしょうか。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 一般的な施策よりも、スクリーニング等でハイリスクグループをとらえる、こういう観点の対策についての御指摘がございました。

 私ども、先ほど申し上げました高齢者介護研究会の御議論の中でもこうした考え方の御紹介があったということで承知しておるところでございますけれども、ただ、先ほども申し上げましたが、痴呆予防、これにつきましては、現時点では、まだ確立した方策が見出されてございません。効果的な予防策を模索している段階であるということでございまして、御指摘の点につきましては、例えばハイリスクグループのスクリーニング方法、こういった点を初め、具体的にどのような組み立てがあり得るのか、これをさらに検討する必要があると考えております。

 それから、もう一点の御指摘でございますが、私ども厚生労働省での具体的な取り組みといたしましては、痴呆に関する諸要因の解明、こういった点につきまして、十三年度から推進しておりますメディカル・フロンティア戦略、この一環としての研究事業を行ってございます。

 また、今年度からでございますけれども、将来の高齢者介護の姿を念頭に置きました未来志向研究プロジェクト、これをスタートさせたところでございまして、例えば、市町村の介護予防事業の一環として行われます痴呆発病予防のための調査研究でありますとか、試行的な取り組みにつきましては、これを活用することで、今後、支援を図っていきたいと考えておるところでございます。

 以上でございます。

山井分科員 すぐ終わりますから、ちょっと河村大臣に一問だけ、一言だけ申し上げたいんです。

 先ほどおっしゃった局長の答弁では、何か、各地方自治体で考えてくれたらいいということなんですけれども、やはり知的障害者が高校に行けるかどうかというのは、大阪では行けるけれども神奈川では行けないとか、余りばらばらではだめだと思うんですが、そのあたりの御見解、大臣、いかがでしょうか。

河村国務大臣 大阪での取り組みをいろいろしていただいておりますから、これをぜひ、我々としても、どういう形がとれるのかということは、やはりこれは、全国ということになりますと、その辺をしっかり踏まえておきませんといけません。

 しかし、おっしゃるように、あそこはいい、ここは悪いということは、それはやはり全国的にやるとなれば、受け入れ、どこかに行けば受け入れ先があるんだという、この選択肢を広げるということは必要なことだろう、私もそういう認識を持っておりますので、そういう考え方で研究をさせていただきたい、こういうふうに思っております。

山井分科員 どうもありがとうございました。

小杉主査 これにて山井和則君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

小杉主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。佐藤錬君。

佐藤(錬)分科員 自由民主党の佐藤錬でございます。初質問でありますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 国家百年の大計は教育にありという言葉があります。今、歴史的な大転換期を迎えて、さまざまな分野で改革が行われておりますが、何よりも増して、その根本は教育改革にあると思います。資源の乏しい我が国にとっては、人こそが唯一の資源であり、財産であります。

 教育の改革というと、子供の教育に目が向けられるわけでありますが、実は、親や家庭、そして社会のあり方が見直されておるということだと思います。また、教育は学校でという考え方もありますが、それも誤りであって、一番大切な教育環境は家庭である。こうした誤った認識を教育改革で根本的に直していくべきだと思います。少子化が進む中、数少ない貴重な子供たちの教育を真に意義あるものとしなくては、私たちが目指す国家は存在し得ないものと思います。

 教育改革をなし遂げることによって、一人一人の国民が品格と知性を備え、確固たる歴史観や文明論に裏づけられた将来の国のあり方や意思を明確にあらわすことで、誇りある国日本の姿を示すことができると思います。それはまた、私の政治のテーマである活力ある倫理国家、つまり、元気で道徳心あふれる日本人を実現する道でもあると考えております。

 さて、きょうは初質問でございますので、教育の基本である教育基本法について、大臣及び原田副大臣に御質問をさせていただきたいと思います。

 昭和二十二年、憲法と同時に施行されました現在の教育基本法。一年前の中央教育審議会の答申にありますように、戦後の教育を反省し、いろいろな社会の変化また教育上のさまざまな問題点を指摘した上で、このたび答申がなされ、もう一年が経過しようとしております。

 まず、現在、文部科学省において、この教育基本法の改正について、どのように改正すべきとお考えになっておられるのか、お聞きしたいと思います。

河村国務大臣 佐藤委員が議席を得られてイの一番の初質問で教育改革を取り上げられたことに、敬意を表したいというふうに思います。

 御指摘の教育基本法の改正の問題でございます。

 戦後の我が国の教育はこの教育基本法によってやってきたと言って過言でないわけでございますが、これは御指摘のように、昭和二十二年から五十七年間、一度も見直すことなく今日が来た。そして、今の教育の現状を見たときに、いろいろな教育に対しての問題点が指摘されております。これにいかにこたえていくかということになれば、やはり教育の根本にさかのぼってこれを考えていく、そして改革をしていく、これは当然のことであろう、また極めて重要なことであろう、私もそう思っております。

 そこで、この教育基本法の改正につきましては、歴代の内閣は、教育の構造改革の一環である、こういう考え方でこの問題に取り組んできたところでございます。特に、小渕内閣の時代において、教育改革国民会議が総理の私的諮問機関として持たれ、本格的な教育基本法の改正に対する議論も行われまして、そして、この時代にふさわしい教育のあり方をこの際きちっと位置づけるべきである、こういうお話があったわけでございます。これを受けて、森内閣、そして現小泉内閣において、中央教育審議会にまさに二十一世紀にふさわしい教育基本法のあり方についてという諮問がなされ、前大臣のもとで、昨年三月、答申をいただいたところでございます。

 その答申においても、これからの教育のあり方は何を考えていったらいいのか。特に、教育基本法が、御案内のようにわずか十一条の短い法律でありますけれども、その中に、教育の最大の目的が人格の完成である、こううたわれております。このことそのものは、この理念というのは非常に大事な理念でありますけれども、さはさりながら、そういう基本理念を持ちながら、現実の教育現場で行われていることは、まさにこの人格の完成ということができていないことがいっぱいあるわけでございまして、こういうことを考えたら、今の時代にふさわしい教育基本法として何をさらにつけ加えるべきなのか、また何が欠けているか、こういうことを考えながら理念を打ち出していかなきゃいかぬということに基づいて答申をいただいたところでございます。

 その中でも、これからの教育のあり方としては、個人の自己実現と個性と能力と創造性、これが涵養できるような教育。あるいは、社会の形成に主体的に参画する公共の精神とか、あるいは道徳心をどういうふうに養成するかとか、また日本の伝統文化の尊重、兄弟や国を愛する心、それがあって初めて国際社会の一員としての意識ができる、こういう考え方に立っていくべきであろうという指摘。

 さらに、家庭教育の重要性、この役割。教育基本法では、家庭教育というのはわずか社会教育の一環としてしかとらえてありませんが、この重要性をもっととらえるべきだ。そして、学校、家庭、地域社会の連携そして協力が必要である、こういう指摘。

 さらに、そういうものを踏まえて、まさに国家百年の大計というものを踏まえながら、今の教育のあり方、特に、教育振興基本計画を策定する、これの根拠になるべきものであろうという考え方に立って、教育基本法の改正についての議論が、答申が得られたところでございます。

 そこで、我が文部科学省といたしましては、これは教育の憲法にかかわる大きな問題でございますから、国民的な議論も深めながら、また与党の協議も得ながら、早くこの問題を国会に法案として出させていただいて、そして国民的な議論の中で、国会での議論を通じてこの改正に取り組んでまいりたい、このように考えておるところであります。

佐藤(錬)分科員 ありがとうございました。

 総務庁が調査をしたデータを一部手元に持っておりますが、これは高校生の意識調査ですか、国際比較があります。

 「自国人であることに誇りをもっている」という問いに対して、タイやフィリピン、ブラジル、アメリカ、スウェーデン、イギリス、韓国、フランス、そして日本と続いておりますが、タイなどは九九・八%に対して、日本は七七・一%という結果が出ております。また二つ目に、「自国のために役立つと思うようなことをしたい」という問いに対しても、タイは九八・七%、日本は四九・三%というような結果が出ております。

 ほかにもいろいろなデータが出ておりますが、すべて、日本人のみずからの国に対する誇りだとか、それから国家のために、公共のために尽くしたいというような精神が非常に薄くなっている感じがいたします。やはり、この国に生んでもらってありがとう、そして生きたあかしをこの国に残したいというような気概、精神というものが、まことに我が国の青少年には薄いなという感じがいたします。

 このような、以前の日本人には見られたこういった精神、気概というものが現在なくなっているということについて、こういう日本人の美徳というものがなぜ失われてきたのか。そのような点についてどのようにお考えでありましょうか、原田副大臣にお尋ねいたします。

原田副大臣 ただいま佐藤委員が指摘されました調査、そのとおりでありますし、私の手元にもう一つ二つ資料がございます。

 例えば、親に反抗することをしてはいけないことだと考える中学生は、日本は三七%に対して、アメリカ、中国は七十数%であります。さらには、家族、伝統を重んじる心の低下。先祖をたっとぶかどうかということについて、たっとばないと答えた人が、昭和二十八年には五%だったんですけれども、平成十年には一二%に上っておる。さらには、公共を支える意識の希薄さ。ボランティア活動をしているか、こういう質問に対する青少年の答えは、日本は二・七%に対して、アメリカは二〇・七%ボランティア活動をしておる。しかくかように、青少年の意識調査、国、社会に対する意識調査を見ますと、事ごとに、議員が今指摘されましたように、誇りとか公共に対する関心、こういうものが非常に薄くなっているのではないか。

 ただ、こういう、自国の歴史や文化に誇りが持てない、親や目上への敬愛や感謝の念、家族や友人への愛情が希薄である、こういうものはひとり子供だけ、青少年だけの問題かというと、私は、決してそうではないと思うんですね。私に引き直しましても、では、国家への意識、社会への意識、参画意識、私は政治家ですから平均よりは高いと思いますけれども、それでも大人全体としてどうかと言われると、私は、いろいろ課題はあろうかと思います。

 要は、青少年へのそういう期待は、みんなやはり国家全体の縮図がそこにあらわれているのではないかなと。私は、こういう視点でこの問題にも臨まないと、ただ子供が悪い、青少年がおかしい、最近の子供たちはと言うわけには決していかない、こういうふうに思っているところであります。

 今の日本、御指摘のように、従来からの伝統的な価値観が大きく揺らいでいる。倫理観や社会的使命、そういう考えが喪失し、正義、公正、安全への信頼が失われている。本当に私は、危機感を持たなければならない、こういうふうに思っているところであります。それゆえに、教育の分野でももちろん大切であります。また、国全体として、本当にこの国際社会の中でどう生きるべきかということをしっかり議論して、その上に立ってこの教育の問題も取り扱わなければ、ただここだけ扱うというわけには、私は、決してちゃんとした回答は出ないような、そんな感じがするわけでございます。

 そういうことで、ただいま大臣からも、教育基本法の現状、またこれからについてもお話がございましたけれども、その一つ一つが憲法の中でも、ちょうど今、憲法改革議論も積極的に行われているところであります。自由民主党のみならず、各党も本格的に取り組み始めたところでありますし、衆参両院においてもきちっとした組織でこれが議論されておるところでありまして、私は、そういう意味でこの教育の役割というのは極めて大きい、こう思っているところであります。

 お話がありましたように、中教審答申の中でも明確に指摘されましたように、公共の精神、道徳心、自律心の涵養、日本の伝統文化の尊重、郷土や国を愛する心、こういうものも含めた教育基本法の改正というものを急がれるべきではないか、私はこう考えているところであります。

 いずれにしましても、二十一世紀を担う心豊かな青少年、日本人を育成するということが大事だと思っております。

佐藤(錬)分科員 今、日本の自衛隊がイラクに派遣されておりますが、一般のお母さん方の声が、聞こえてくる声が、最近の日本人の若い者のだらしなさというか、男は男らしくという感じが薄れておった中で、久しぶりの日本男児を見たような気がするといって、非常に奥さん方からそういう声を耳にします。

 そういったことを思うにつけ、戦前の私たちの先輩には、公のためにみずからを犠牲にしても尽くしていこう、また、国を愛し、誇り高い国民性というものを私たちの民族、日本民族は生来持っていたと思います。それが、戦後、今教育を受けた、私も戦後の教育を受けた一人ですが、だんだんだんだんと若い層に行くにつれ、そういった気概というもの、精神というものが失われていっておる。

 この現状はなぜか。それは、経済的な発展と社会の安定等いろいろなまた理由もあるでしょうが、やはりその根本の原因を突き詰めていくと、教育基本法に基づく戦後の教育に何か欠陥が、問題があったのではないかというふうにも思います。

 大臣の御所見を伺いたいと思います。

河村国務大臣 今佐藤委員が心配されているような今日の教育のいろいろな問題点、これはすべて教育基本法に欠陥があって、そこに問題があるんだという考え方、私はそういう考え方ができないこともないと思いますが、それ以上に、やはりあの中にある、例えば、短い言葉ですが、人格の完成という、このことそのものが教育現場でできなかった、戦後のああした時代でありますから。教育基本法は日本人の手でつくった、憲法とは違う立場をとりましたけれども、しかし、まさに占領下にあった日本であります。そういうものが色濃く戦後の教育の中にあった。だから、まさに人としていかに生きるべきかとかそういう重要な点が教育の中心になくて、全然なかったというわけじゃないでしょうが、隅にあったということは紛れもない事実だと思いますね。

 ただ、一方では、豊かになりたい、いい教育を受けて、いい学校に行って、いい就職をして豊かになろうという思い、経済を豊かにしようという、国民はまさにそこに向かって走っておった。その中で、そういう大事な面が教育の根幹から落ちておったということは、私は、否めない事実だというふうに思うんです。

 しかし、現実に、今のこの社会を見ていると、物すごい大きな変化が来ておるわけでございまして、現実に少子化はこんなに進んできた。進学率も、あの当時に比べれば、高校だって、半分以下だったのが今は九七%にもなっておりますし、大学だって、あの当時、昭和二十五年でも一〇%だったのが今は五割近くなっております。このような大きな変化の中で、やはりこの時代にふさわしい教育を考えていく、これはもう当然なことになってきたというふうに思っております。

 また、現実に、今の青少年たちが学校生活に満足と答えているかどうか。さっきもいろいろな統計がございましたが、こういうのを見ても、日本は四二・一%、しかしイギリスはもう七五・八%、やはりちゃんとそれに満足感を感じている。このようなことが今日の教育の荒廃と言われる現状の中にある。

 このようなことでありますから、私は、教育基本法にただ責任をかぶせるだけではなくて、これを今の時代にふさわしいものに変えていくということこそ今まさに我々がやらなきゃいけないことだ、このように考えておりまして、これをこれまで怠ってきたこと、これは大きな反省点に立たなきゃなりません。

 日本人としての自信と誇りを持つ、そういう教育をやはりやっていかなきゃいかぬ。まさに、戦前の日本人としてよかった面、そういうものをもう一度我々検証しながら、もう一度取り戻していく。ただそれが戦後に戻るんだということではなくて、今日の平和国家をつくってきた日本人としての誇りを持ちながら、教育を国民とともに考えていく、そういうときに今来ておる、このように考えておるわけです。

佐藤(錬)分科員 確かに、子供だけの状況ではなくて、親も含めた社会全体の国民意識というものが変わってきたなという感じがいたします。

 このような状況になったのは、やはり戦後の行き過ぎた平等教育だとか、日教組のいわゆる組合活動のやり方、我々もその現場でいろいろな問題が起きてきましたが、そういったことに原因があるんじゃなかろうかなと思います。戦後のそういった教育基本法に基づいた教育の現場での指導の仕方にも問題があったんじゃないかという気がいたしますが、大臣はどのようにお考えですか。

河村国務大臣 特に敗戦直後、余りに個をないがしろにして国のために死すという形、これが戦争に走ったんだという思い。それを今度は、もっと個を大事にすべきだ、こういう議論に変わっていった。そして民主主義国家をつくっていかなきゃいかぬ。こういう観点の中から、平等主義といいますか、確かに御指摘のように行き過ぎた平等主義、あるいは画一的なこういうものがあったと私は思いますね。

 よく例とされて、例えば運動会においても、スタートして、最後のゴールのときには一緒に手をつないでゴールしろとか、こんなことが現実に教育現場であったということが指摘されておるわけでございます。このような画一的な過度の平等主義といいますか、そういうものがやはり人間の個性というものを失わせたといいますか、まさに時代に対応できなくなった、こういう問題があろうと思います。

 ともかく学校教育にすべて任せるということになってしまって、学校教育が家庭教育と同じような、子供に対するしつけとかなんとか、それは無理なことなんでありまして、こういう面もあった。それから同時に、地域の教育力が非常に低下をしたということ。このような点がまさに戦後の教育の反省点になければならぬ、こう思っております。

 中央教育審議会の中にも、まさに今、青少年が夢や目標を持ちにくい状況にある、そのために規範意識とか道徳心とか自律心が低下をしているんではないかという指摘もございますし、また一方では、いじめとか不登校とか中途退学、学級崩壊、こういうさまざまな問題も起きておるので、この点をやはりきちっと対応しなきゃいかぬということ。

 特に今、我々が問題とし、また心配をしなきゃいけないのは、よく学力低下、学力低下と言われるのでありますが、今の時点で学力試験をやって、世界と比較してみて、日本ががたんと学力が落ちているということは決してないのでありますが、それ以上に心配なのは、学ぶ意欲を失っているということが指摘されております。例えば、学習時間が極端に世界に比べて少ないとか、そういう問題点が今あります。

 このような全体の問題点を、もちろん学校が一義的にこのことを是正するために最大努力をしなきゃならぬ、当然でありますけれども、一方、教育の構造改革という面から考えるならば、やはり教育の根幹である教育基本法から直していって、そして今の時代にふさわしいものに変えていくことによって是正をしながら教育の再生を図る、こういうことでなければならないんではないか、このように思うわけであります。

佐藤(錬)分科員 ところで、これから二十一世紀の新しい将来に向かって、やはり教育がしっかり改革をして、日本人の子供たちをこの少子化の時代の中にあってしっかりと育てていく、これがなければ日本の将来はないと思います。そういった観点から、大臣は、新しい時代に向かっての教育というものはどういう人材を育てるべきなのか、またどんな日本人を目指していくべきなのか、大臣のお考えがあれば承りたいと思います。

河村国務大臣 今の、これからの教育において、私は昨年、小泉総理から指名を受けましたときに、これからの教育改革は、やはり人間力向上、こういう観点で取り組むべきだ、こう言われております。特に、これだけ豊かさを求めて走り続けた日本が、一応の豊かさといいますか、世界のトップクラスの経済大国と言われる豊かさをかち得た。しかし一方、その中で失ったものは何なのかということ。特に、心の問題、豊かな心の問題。したがって、物の豊かさと心の豊かさのバランスをいかにとっていくかということがこれからの教育の根幹になければいけないんではないか、こう思います。

 そうした中で、これから二十一世紀に向かって、日本がまさに活力ある、そして自信と誇りに満ちた国家をつくっていく、また創造力に満ちた、まさに国民が生き生きとした日本の社会をつくっていく、そういうための教育をつくっていく、そうした人間像というものをどういうふうにつくっていくかということを考えていかなきゃなりません。

 この答えは中教審の答申の中にも示されておるわけでございますが、まさに豊かな心と健やかな体を備えた人間をつくっていくんだということ。あるいは、まさにこれからの新しい時代、科学技術創造立国を目指す、知の世紀を迎えて、そうしたものに太刀打ちできる人間をつくっていく、人材をつくっていく。さらに、公共の精神といいますか、かつてケネディ大統領が就任されたときに、国家に何をしてくれるかを求めるだけでなくて、自分は国家に何ができるかということを考えよと言われた、あの精神、そういうものをもっと日本の中に植えつけていかなきゃならぬ。まさに公共の精神といいますか、そういうものに参画できる日本人をどういうふうにつくっていくかという課題、これもございます。そして、伝統文化を重んじながら、そして国際社会に生きていく、品格のあるとさっきおっしゃいましたが、教養のある日本人の育成に取り組んでいく。

 私は、特に戦後、敗戦という大きな衝撃を我々は受けたわけでありますが、その中でここまで立ち上がってきた、そしてこれだけの経済大国、平和国家をつくってきた、このことに我々はもっと誇りを持たなければいかぬと思うんですね。ややもすると、日本のやったことはすべて悪いんだと、やや日本人は自虐的過ぎるんではないかという指摘もございます。そういうものを払拭して、やはり我々はここまでやってきたということにもっと自信と誇りを持って、世界に向かって、まさに憲法の前文にあります名誉ある地位を占めよう、こういう努力をこれからしていく必要があろうと思いますから、そうした日本人をこれからつくっていく、こういう教育を目指すべきだ、このように考えます。

佐藤(錬)分科員 確かに、今大臣がおっしゃったような精神を持つためには、宗教心というか、宗教的情緒の涵養といいますか、特定の宗教を教えるんじゃなくて、客観的な、神仏を敬い親に感謝するといういわゆる宗教心を子供たちにしかと教え込んでいく、そういった教育が必要なのではないかというふうに私は思います。

 先ほど、タイがもう九九%という、こういったトップ、世界で最もすぐれた精神を持った子供たちが育成をされておるのを見ても、やはりこのタイという仏教国の教えが行き届いておるんじゃなかろうかというような気がいたします。

 さて、原田副大臣にお尋ねをしたいわけですが、今大臣がおっしゃったような、二十一世紀の次代を担う日本人の育成、そしてこれからの日本をしょって立つたくましい人材を育成するために、具体的にどのような対策を講じるおつもりなのか、教育文化立国実現に向けた具体的な教育改革の取り組みをお伺いできれば幸いでございます。

 そして、最後に大臣の、教育基本法改正に向けて、もう答申が出てから一年が経過しようとしているわけですから、精力的に、ひとつ今国会に提出するという決意のほどをお伺いして、質問を終わりたいと思います。よろしくお願いします。

原田副大臣 佐藤委員から力強い、私どもは励ましと受け取っておりますけれども、まさに、誇りある国家、活力ある経済、そして安心できる社会、これを国全体として追求しなければならないと私は思っておりますし、また、それを教育の分野に引き直しますと、先ほど大臣からも答弁が一部ございましたけれども、人間力をどうやって高めていくか、これに尽きる、そして最終的には円満な人格を完成させるということではないかと。

 一昨年の八月に人間力戦略ビジョンということを文部大臣から発表されたところであります。これは、小泉内閣が発足して、骨太方針というのがいろいろ大議論されました。最終的には、日本を活性化させるためには六つの大きな目標を立てた。その第一番目、一丁目一番地がこの人間力向上だ、こう書いておるわけでありまして、それを文部科学省また多くの皆さんと相談した上で、最終的には五つの重点項目を立てたところであります。

 第一は、何といっても教育基本法の改正に精力的に取り組むということでございますし、第二に、子供の安心、安全な居場所づくり。新しい予算制度の中でもこれをぴしっと取り組みまして、地域と学校の教育力の再生に取り組む、こういうことでございます。第三に、信頼される学校づくりのために、義務教育制度、教育委員会の制度をもう一回原点に振り返って見直そうということでございますし、第四に、確かな学力をつける。国語教育、英語教育、理科数学教育、こういうことについてもしっかり取り組まなきゃいけないわけであります。また第五に、専門家の育成、複雑多岐になるさまざまな分野の専門家の育成やキャリア教育の充実に取り組む。

 この五点を挙げましたけれども、こういうものから敷衍されますように、本当にあらゆる問題についてたえ得るようなたくましい人間力をつけさせるというのが、これからの教育また教育行政の目標だろうと思っています。

小杉主査 時間が過ぎておりますので、一言だけ、大臣。

河村国務大臣 教育基本法、私ども、できるだけ早くこの国会に法案を出させていただいて、そして国会の濶達な議論の中で、さらに国民全体でこの教育改革を考える動きが欲しい、こう思っております。今与党間で逐一協議をいただいておりますので、それを待って法案化いたしたい、このように考えております。

 いずれにいたしましても、佐藤委員の御協力もいただきながら、ぜひ教育基本法の改正に取り組んでまいりたい、このように思います。よろしくお願いします。ありがとうございます。

佐藤(錬)分科員 どうもありがとうございました。

小杉主査 これにて佐藤錬君の質疑は終了いたしました。

 次に、大畠章宏君。

大畠分科員 民主党の大畠章宏でございます。

 教育行政を中心としながら、特に子供たちの問題を中心として質問をさせていただきます。

 河村文部大臣は、まさに教育行政をずっと勉強するというか研究して、教育政策一本で政治活動をやってこられて、このたび文部大臣に満を持してなられまして、今の時代に一番重要なのが教育政策の充実でありますから、そういう意味では、なるべくしてなったんじゃないかと思っておりますが、ぜひ日本の教育環境というのを一変するために御尽力を賜りたいということを冒頭に申し上げておきます。

 とはいいながら、日本の子供たちを取り巻く環境というのは非常に荒れてきていまして、河村大臣や私なんかが育った時代とは全く異なる社会環境の中で子供たちが大きくならなきゃならない。非常に子供たちにとっては不幸な社会の状況であることは、まず間違いないと思うんですね。

 そこで、この日本の社会が今どういう環境にあり、子供たちがどのような影響を受けているかということをまず最初にお伺いしたいと思います。

 その現象として、最近の不登校あるいは中途退学の実態について、おおよそ過去五年間の推移というのはどういう状態にあるのか。さらに、まとめてちょっとお伺いしますが、少年犯罪の実態はどういう推移をしているのか。また、最近とみに注目されております児童あるいは子供の虐待というものの社会現象はどういう状況にあるのか。まとめてこの三つについて、関係の方の状況報告をお願いしたいと思います。

馳大臣政務官 答弁させていただきます。

 まず不登校に関してですが、国公私立の小中高校における不登校児童生徒数は、平成十四年度で十三万一千人です。これは平成三年度から調査開始しました中で初めて減少いたしました。七千五百名ほど減少しております。しかしながら、十三万一千人の不登校児童生徒がいる。その理由に関しましても、学校生活上の問題であったり家庭生活上の問題であったりするということで、さらに分析いたしますと、多様化してきている理由があるということでございますので、一つ大きな問題であるということの認識は持っております。

 それから、児童虐待に関しましては、実はさきに予算委員会において河村文部大臣が答弁いただいておりますけれども、早急に全国の小中学校における虐待の実態を調査するということで速やかに今調査に入ったところでございまして、また、四月には新年度も始まることでございますから、恐らく、そう遠くない、今月中にでも一つの児童虐待の実態というものが小中学校の方から上がってくるものと承知いたしております。

 以上です。

大畠分科員 少年犯罪の問題についてはいかがでしょうか。

関政府参考人 平成十五年に刑法犯を犯しまして検挙されました十四歳以上の少年は十四万四千四百四人でありまして、過去五年間の推移を見ますと、平成十二年の十三万二千三百三十六人を底にいたしまして、その後三年連続で増加しております。成人を含めました刑法犯総検挙人員の約四割を少年が占めております。

 また、路上強盗、ひったくり等の街頭犯罪におきましては約七割を少年が占めておりまして、特に、平成十五年に強盗で検挙されました少年は千七百七十一人と、昭和四十二年以降では最悪の状況になっております。

 また、十四歳未満の触法少年について過去五年間の推移を見ますと、平成十一年の二万二千五百三人から一たん減少したものの、平成十三年の二万六十七人を底に再び増加しておりまして、平成十五年は二万一千五百三十九人となっております。

 次に、児童虐待に係る児童の被害の状況でありますが、平成十五年中に警察で検挙いたしました児童虐待事件に係る被害児童数は百六十六人でありまして、前年に比べますと十三人減少いたしておりますが、死亡いたしました被害児童数は四十二人になりまして、前年に比べますと三人ほど増加しています。

 このように、児童虐待につきましては依然として深刻な状態が続いておりまして、また、最近では大阪府の岸和田市におきまして大変痛ましい事件が発生するなど、ゆゆしき事態にあるというふうに認識しております。

大畠分科員 今、馳大臣政務官からも御答弁いただいたし、きょうは原田文部科学副大臣もおいでで、みんな教育問題については熱心な方ばかりでございますが、今御答弁をいただきますと、やはり社会的に非常に深刻な状態になってきている。

 私も省庁の皆さんから資料をいただきましたが、例えば、平成十四年度、児童相談所における児童虐待相談処理件数ということでは、三十九万八千五百五十二件という膨大な件数が上がっていますし、それから不登校児関係では、今おおよそお話がありましたが、小学生で二万五千八百六十九人、中学生が平成十四年度で十万五千三百八十三人という統計資料もいただいております。そして今、少年の犯罪問題では千七百七十一人、あるいは二万一千五百三十九人というような数字も具体的には出されておりますが、さて、これに対してどうするかなんです、大臣。

 それで、いろいろお話を聞いていますと、まず、児童相談所というのが全国で百八十二カ所ありますが、これは、要するに昔ともう社会環境が変わっちゃったんですね。現場の声を聞きますと、圧倒的に、児童相談員の方もたくさんの案件を抱えているものだから、これは大変なんです。もちろん、今回、両親が子供に食事を与えないというので強制的に入ろうと思ったら入れなかったというので、今度法改正して入れることになりますが、いずれにしても、この児童相談所という機能を今の社会の状況に合わせて大改編をする必要があるんじゃないですか。

 不登校の問題もございますが、厚生労働省が児童相談所を所轄、それからスクールカウンセラーというのは文部省の所轄なんですね。これは、現場で聞きますと、やはりどうもお互いに同じような範囲をやっているんだけれども、違うんですね、所轄が違うからといって。

 ここで、例えば児童相談所とスクールカウンセラーの連携を組んでみたり、ネットワーク化して総合的に子供たちの対応をしないと、ただ単に文部省管轄あるいは厚生労働省管轄、警察管轄で、それぞれがやっていればいいというんじゃなくて、かなりのネットワークを組んで総合的にやらないといけない状況に来ていると私は思うんですが、ここら辺について。では、馳政務官ですか。

馳大臣政務官 私、大畠先生おっしゃるとおりだと思っておりますし、今現在でも、こういった、地域で連携をとって学校も福祉関係者もあるいは弁護士なども入って虐待に対応しましょうとやっているのが、三千二百九ある自治体の中で九百七十六ほどだったと思います。地域のネットワークに関しましても、やはり九百七十六ある連携をとっているところでさえも濃淡があるようでございますから、まさしく先生おっしゃるように、虐待問題に対応して、学校はこうだ、福祉施設や児童相談所はこうだというすみ分けではなくて、連携をとりながら、情報交換をし合いながら、一番いいのはやっぱりマン・ツー・マンで、そういった不登校児が虐待が原因ではないか、こういったことも勘案しながら対応していくことが今後の対策の重要な問題であるというふうに思っております。

 また、児童相談所の現行の問題に関しましては、厚生労働省の方から答弁に来ておりますので、お願いいたします。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま大畠先生の方からお話がありましたように、児童虐待の問題は大変深刻な状況になっております。

 そこで、私ども社会保障審議会の児童部会で一年ほど検討してまいりまして、やはりこの問題に対応するためには、基本的に現在の要保護児童対策をきちんと見直さなきゃいけないんじゃないだろうかということで結論を得まして、去る二月の十日には、一つは、御指摘のありましたような児童相談所を含めまして、地方自治体におきますこの問題に対応するための体制整備の内容になっておりますけれども、御指摘のありましたネットワークにつきまして法制化をしようということで中身を盛り込んでございます。

 また、従来、児童相談所ということでやってきたわけですけれども、児童相談所だけではなかなか対応できないので、市町村にも対応を求めていこうということで、市町村にも一定の役割を求めながらこの問題について対応するような法改正を提案させていただいているところでございます。

大畠分科員 いずれにしても、子供たちの、複雑な社会環境の中でとにかくどうやってやるかというのは、もう各省庁の問題じゃなくて、国を挙げてやらなきゃならない問題なんだと思うんですね。

 ですから、厚生労働省もさまざまな課題で大変だと思うんですが、教育にそろそろ特化してやらないと日本の国は崩れますね、これはやはり大ごとですよ。だからぜひ、さまざまな制約があると思うんですけれども、児童相談所の中における役割、あるいはネットワーク化、あるいは充実。相談員が非常に疲れ果てたんではなかなかこれはできません。だから、従来の社会状況とは一変しているという意識を持って、この児童相談所の充実。あるいは文部省のスクールカウンセラーとの連携、あるいは警察との連携も図って、児童相談所だけでは対応できないんだと私は思うんですね。だから、新たなネットワーク化をして、それぞれができることをきちっとやろうというので、それは新たなことを考えていただかないとならない段階まで入っているということを指摘しておきたいと思うんです。

 そこで、警察庁の関官房審議官もおいでであります。何か戻らなきゃならないという話を聞いているんですが、一つ、実は少年を処罰するというのは、そういうときにはやらなきゃならないんですが、今回、十六歳以上を十四歳以上に法改正しましたね。それで対応していますが、しかし、この問題、罪を犯した人をどこかに閉じ込めちゃえばいいというだけでもないんですね。したがって、どうやって子供たちを更生させるかということも一方で考えておかないと、悪いことをしたら捕まえて牢屋に入れちゃうというだけでは済まない形にこれは数字的になってきています。

 例えば、昨年五月、神戸家庭裁判所で、新聞少年十九歳を暴行死させたとして送検された加害者少年十七歳に、審判廷で配達員の父親と対面する機会を与えた。涙を流し、深々と頭を下げた。すると、近寄ってきて少年の肩をたたきながら、君も頑張れよ、将来線香を上げに来てほしいとお父さんが言った。少年が更生しやすいような一こまであった。そういう意見陳述があったという話を聞いております。

 ですから、悪いことをしたらとにかく何か処罰しなきゃならない、それは一つなんです。しかし、その子供たちをどうやって更生させるかということを同時並行的に考えておかないと、私は、この問題、要するに再犯ですとか何かありますから、やはりそういう少年をいかにして更生させるか、そういうことも努力をしていかなきゃならないと思うんですね。この問題について関官房審議官はどういうふうに考えておられますか。

関政府参考人 少年が犯した犯罪につきまして、悪質であって非常に重大であるという犯罪につきましてはきちっとした刑事的な処理をするということでありますが、そういった少年につきましても、あるいはもっと、重大な犯罪を犯していないような少年につきましてはもちろんのことなんですが、少年が犯罪の初期的な状況、あるいはそういう状況から立ち直るということで、立ち直らせるためのいろんな私どもとしての支援、それは警察だけということではなくて、また地域のボランティアの方とか、少年が犯した犯罪の被害者も含めましたいろいろな方々との連携協力のもとに、少年の立ち直りというものについても一生懸命やって、現在もやっておりますが、もっともっと力を入れてやってまいりたいというふうに考えております。

大畠分科員 つまずいた少年を切るのではなく、個々に事情を聞いてやり、しかるだけでなく、少年の気持ちをよく聞いてやって、厳罰化が先に立つような、いわゆる逆送になる前に、非行少年との信頼関係をつくってやりたい、こういうことを発言されている弁護士の方もおられるんです。

 とにかく、何か複雑になってきていますから。ですから、何でもかんでも厳罰化すればいいというのではなくて、同時並行的に、その少年だって未来があるんですから。さっきのお父さんのように、自分の息子が少年に殺されちゃった、しかし、ごめんなさいと涙を流して一生懸命謝っている少年には、後で線香を上げに来てくれよという、その一言が少年を更生させる大変重要な環境づくりだなと思うんですね。

 ですから、そういうことも考えていかなければならないと思いますので、警察庁の方でもあるいは文部省の方でも、十分連携をとって、とにかくネットワークを使って、子供たちをどうやってさまざまな問題から脱出させることができるか、そして、真っすぐ人間として伸びるような環境をつくるか、そういうことをぜひ警察庁の方でも努力をしていただきたいということを申し上げて、何か用があるそうですから、どうぞ退席していただいて結構です。また、この問題は別な日にでもお話を聞かせてください。

 さて、そういう状況でございますが、文部大臣、結局、きょうは予算分科会ですから予算の話を少しさせてもらいたいんですが、どうも、スクールカウンセラーとか、これは厚生労働省じゃない、子供たちのところが非常に手薄になっている。大臣も一年一年だんだん年をとっていくんです、これはだれでも同じですから。私たちもいずれこの世を去りますよ。そのときに、日本の国を支えるのは子供たちなんです。その子供たちが、曲がっちゃったり、何か変なふうになっちゃったら、日本の国自体がだめになっちゃうんですね。

 だから、私は、予算が厳しい中でありますけれども、こういう子供たちを真っすぐにさせようという事業に対しては、やはり大臣、重点的に、少なくともスクールカウンセラーあたりは強化をして、各校に、スクールカウンセラーの人が疲れ果てないように、いつでもおいでという、そういう環境のところまで児童を取り巻く相談事業というものは充実させなければならないと思うんですが、どう考えておられますか。

河村国務大臣 大畠委員おっしゃることに私も全くうなずきながらお聞きしておりました。

 これは、子供だけの問題ではなくて、むしろ大人社会がもっと考えなきゃいけない問題です。ということは、我々、当面の行政の責任者としてはそこへもっと力を入れろという励ましと叱咤激励をいただいたのでありますが、例えば、今回の文部科学省の予算で、子供の居場所づくりというので七十億、それだけで新規につけさせていただいた。これはまさに、放課後あるいは土曜日も使ってということでありますが、大人が、あるいはボランティアで、子供たちと一緒に遊んだり、あるいは一緒に時には勉強したり、文化活動に参加したり、スポーツに参加したり。まさに、自分の居場所がない子供がたくさんふえてきた。厚生省予算では学童保育というのもございます。放課後、低学年の子供たちを預かる施設、空き教室を利用する、そういうのもございますが、それの、むしろそこから上の学年を対象にもいたしておりますが、これにはまさにそういう思いが込められております。

 自分たちが帰ったって保護者がいない、そうするとまた町へ出てしまう、そこでよくない大人にひっかかってしまう例が現実に起きておりますが、これは、大人社会が子供たちを守り育てるという機能が発揮されませんとなかなかうまくいかないのでありますが、これをぜひ醸成いたしたい、こう思っております。既にいろいろな形でそういう仕組みをつくって、何とか教室、子供教室、いろいろな教室を持っておられる、そういうものをもっと活性化させよう、こういうねらいがあるわけでございまして、まさに、子供の非行、あるいはそうした倫理観を欠く行動、これはやはり大人の責任だ、こういうことで取り組んでいかなきゃいけないだろう、こう思っております。

 一義的には、もちろん学校がそういうものもきちっと教育をするということが必要になってくることは当然でありますが、今の現状を見ておりますと、やはり、大人社会もそういう倫理観を失っているということ、これがやはり大きく子供たちに影響しているということでございますから、何も文部科学省の責任をそっちへ転嫁するつもりは全くありませんが、一体となって考えていく。

 それで、家庭も協力をいただくために、まさに子供のためのノートをつくる、家庭教育手帳をつくる、そういうものをしっかり見ていただく、そういうことをやっていかなきゃならぬでしょうし、それをずうっと進めていきますと、もっと、親たるは何か、親の教育をやってくれという声がまたこっちにはね返ってきます。

 こういう社会現象が現実にあることを踏まえながら、一義的には学校教育の中においてやれることをやる、そして、地域社会、大人を巻き込んで子供たちの育成を図っていく、こういうことを文部科学省もこれから取り組まなきゃいけない、こう思っておりまして、その一歩を今踏み出したところであります。

大畠分科員 大人の責任、社会の責任、確かにそういうことは踏まえてやらなきゃならないんですが、これは文部大臣の責任もありますからね。文部大臣の責任として、これは今見ると、平成十五年度でスクールカウンセラーの配置校が七千、予算額は大体四十億というんですが、全国で学校というのは七千ぐらいしかないんでしたか、全国で何校あるんでしたか。(河村国務大臣「高校を入れれば全部で四万」と呼ぶ)四万校だとすれば、これは五分の一か六分の一ですね。

 これは、少なくとも全校にカウンセラー一人ぐらい、だから、これは四十億でしょう、四、五、二十、二百億ぐらいあればできるわけですよ。安いものですよ。子供の教育のために、二百億で、どこの学校にもカウンセラーがいます、そしてみんな、子供がいろいろいじめられたりあるいは悩んだりしたときには、学校に、保健室と同じように行けばカウンセリングを受けられる。だって、五、六校に一校しかないというんじゃ、これは文部大臣の責任として、もうちょっと頑張ると言っていただけませんか。やりますと言っていいぐらいですね。

近藤政府参考人 数字の話でもございますから、私から答えさせていただきますが、特に公立の中学校でこういったいろいろな、不登校でありますとか問題行動が多く起こっているわけでございます。そういうことから、公立中学校が約一万校あるわけでございます、それを、年次計画でもって全校配置をする。そういうことから、平成十五年度は七千校でございました、十六年度は八千校、そして十七年度には公立中学校一万校、こういう年次計画で整備をさせていただく。

 したがいまして、来年度はすべての公立中学校、ごく小さな規模のものは除くわけでございますが……(大畠分科員「小学校はどうです」と呼ぶ)小学校は、公立中学校に配置をされたスクールカウンセラーが出かけていきますとか、それから、本年度から特に小学校につきましても相談員、こういうものを若干つけさせていただきまして、子供たちのそういういろいろな悩みに、地域の方々が、あるいは学校の先生のOBなどがそういった相談に当たる、こんなものを新規で計上させていただいているところでございます。

大畠分科員 教育問題は非常に、待ったなしになっていると私は思うんですね。ですから、さっきちょっと申し上げましたけれども、二百億ぐらいで全校に、小学校も中学校も全部カバーできるのであれば、安いものですよ、このぐらいは。私はそう思うんですね。

 ですから、十六年度、十七年度で、十七年度は中学校全校に配置しますと言うだけじゃなくて、これは大臣の責任として、本来はそういうところに集中して投資すべきじゃないかなと私は思うんですが、いずれにしても、さらにこれは充実を要請しておきます。

 それから、学校の教育と社会の役割、親の役割、いろいろあるんですが、先ほど言いましたように、日本の社会がどうも私たちの想像を超えて変化し始めていますから、これに対応するのには、従来の学校教育だけではカバーし切れない。

 そういうところは、さっき先生のOBとか何かという話がありましたが、NPOでも立ち上げて、不登校の人はおいで、学校にどうしても行きたくない、親にも言えない、先生にも言えない、スクールカウンセラーにも言えない、いじめられているんだというのだったらだれでもおいでと。そういう教育関係のNPOが行動を開始し始めています。私は、メンツは捨てて、そういう市民の自発的な行動については、文部省としてもそれを認めてNPOの支援に入る。だれでもいいんですよ、子供たちのためになるような組織ができるのであれば。それも、営利目的じゃない。そういう情熱的な人が、社会経験を積んだ人が中核でNPO活動をというのだったら、それも一つだと思うんです。

 全寮制の子供のそういう学校を、何も一足す一は二とか、二足す二は四とか、積分が、微分がということじゃなくて、人間がどうやって生きるかということを学ぶ。そういうものはひょっとしたらNPOの方が向いているのかなと思うんですが、文部省、この教育分野におけるNPOに対してどのように考えているか、お伺いしたいと思います。

原田副大臣 NPOは、御承知のように、柔軟かつ機動的に活動を展開する、そういう目的のために、このところ非常に数が多くなってきておりますし、その活動の分野も幅広くなってきております。法人として、今、一万五千団体が認証されておりまして、社会教育、学術、文化、芸術、スポーツ、もうほとんどあらゆる分野で、また、きょうは例えば虐待の問題も出ましたけれども、従来の行政ではなかなかとり得ない分野、福祉分野、ここでこのNPOの活動が要請されておる、こういうことでございます。

 そういう意味で、教育分野、文部科学行政の関連におきましてもNPOの活動を、しっかり連絡をとりながら、必要なものはNPOの皆さんの協力を得る、こういうことに今積極的に取り組んでいるところでございます。

 例えば、平成十四年から、総合的な学習時間、学校のこまの中に総合学習時間というのが取り込まれましたけれども、例えばこういうところにもNPOの先生方が、専門家が入ってきていただきまして、学校の教師と一緒に協力し合いながら学級を運営する、こういうことも相当積極的に取り組まれておるところであります。

 今大畠議員が言われましたように、学校ないし教育機関として取ってかわるようなNPOはいかがかということについては、まだまだ研究の余地があろうかと思いますけれども、申し上げましたように、少なくとも文部科学省としては、NPOの特性、能力を十二分にこれから活用しなければならない、こう考えておるところであります。

大畠分科員 今答弁がありましたが、多分それは文部省がいろいろ書いたものなんだと思うんです。

 いずれにしても、事実として、小学校で二万五千八百六十九人が不登校なんですよ、中学校では十万五千三百八十三人が不登校なんです。統計に上がっているということは、疑似のものも入れるともっと大きいかもしれない。ここのところをどうするかということをやらないと、卒業の期限が来たら卒業証書を出して出しちゃうというだけじゃだめなんです。

 さっきも話したように、何でもどこかへ、自分のテリトリーから離れちゃえば、もう見えなければいいというんじゃなくて、その子供たちがこれから大人になっていくんですから。その子供たちがどういう人生を送るかということを考えると、大臣、もうとにかくあらゆるものを使って子供たちを真っすぐ育つような環境にやっておこうかということをやらないと。

 大畠さん、今度渋谷を見てほしいと言うので、私は今度渋谷の夜の町を歩いてみますよ。正直言って援助交際なんという言葉は全く、何というか、転進とかなんかと、これはごまかしているので、まさに売春そのものなんですよ。援交をやっているとかやっていないとか何か子供たち同士でやっているというんだけれども、それは完全な売春ですよということをもっと明確にしなきゃいかぬ。

 言ってみますと、教育問題に関して、大臣、もうこれは緊急事態になってきているんですよ。そのくらいの気でやらないと、日本の国は崩れていきます。ですから、私は、ぜひこの予算問題でも、現実の姿、学校教育だけじゃなくて社会にも広がり始めているところを、ネットワークを組んで、子供たちをどう救って真っすぐさせるかということを文部大臣を中心としてやっていただきたいということを強く要請して、時間が来ましたので、終わります。

小杉主査 これにて大畠章宏君の質疑は終了いたしました。

 次に、長浜博行君。

長浜分科員 長浜博行でございます。質問の機会を与えていただき、光栄に存じております。

 今の大畠さんの非常に情熱的な、熱の入った質疑を拝聴させていただき、私の問題に入る前に、今の問題を、私のきょうの質問というのは、極めて、システマチックな問題といいますか、今のいじめや何かの問題とはちょっと違いますものですから、別に考えたところがありますので御意見を伺えればと思うんです。

 ちょうど週末に、長野でスペシャルオリンピックスというのが開かれました。大臣はよく御存じだと思います。私も、ちょっとこれに関係をしている関係で、開会式等出させていただきましたが、今回の週末のものは長野大会ということで、来年、世界じゅうから、スペシャルオリンピックスということで集まってこられます。集まってこられる方は、染色体の関係等々含めて精神に若干の障害がおありになる方のオリンピックなんです。日本だとパラリンピックの方が、これは身体に若干の障害がおありになる方のオリンピック、パラリンピックは有名であるかもしれませんが、欧米ではこのスペシャルオリンピックスの方が、かなり存じ上げている方が多いのではないかと私は思っております。

 そういった中で、別にふだん悪いことをしているわけではありませんが、この政治の世界の中でくたくたになりながら、その開会式に出て、障害のある方々、スポーツは、ルールはわかっているんでしょうけれども、お一人ではできません。それをサポートして、地元の小学生あるいは中学生たちが、何というんですか、単純な言葉はちょっと安っぽいんですけれども、非常に感動を覚えた。どこに登校拒否をする、あるいはどこに非行などする余裕があるのか。そういったことができない方々がこんなに一生懸命努力をされ、そして、それを目の前にしたときに、やれることは自分の手でやっていこうと。

 大変、そういう意味では、長野県知事は出ておられましたけれども、地元の小中、あるいは、オリンピックスですから世界じゅうから来年は来ます。そういった中において、そういった方々の援助、補助を、できることなら何でもやってあげるというようなことが、私は、将来の日本人という言葉を大畠さんが使われておりましたけれども、正しい日本人の将来像をつくっていくためにも、あるいは、安易に言われている子供の非行とか登校拒否とかそういう状況を、これは批判を覚悟であえて言いますが、本当に何というぜいたくな悩みを持っている国なんだというようなことを感じたものですから、これは別に通告もしておりませんから、御感想があれば、大臣、いかがでございましょうか。

河村国務大臣 さきに長野で大会、プレみたいな感じでやったわけですね。私は残念ながらよう行きませんでしたが、長浜先生が行かれたということで、その感想を聞かせていただいて、私もうれしく思っております。

 この大会、特にボランティアの方々がすごいですね。まさにボランティアの方々があって初めて子供たちの自立と参加というのが可能になっていく。したがって、今度の日本の大会では、オリンピックよりもたくさんの人が集まるというのは、まさにそれを応援する人たちがたくさんいるということ。さっき、非行問題は全体でやっていかなきゃいかぬとおっしゃった、それの一つの象徴的なものだし、ああいうところにいろいろ参加する、多くの方々が参加するということは、私はそれなりに意義があることだと思っております。

 これも、文部科学省も、サッカーくじですか、そういうものがもっと売れればそういうことで協力をしたいとか、いろいろな要請もいただいておるところでございまして、スペシャルオリンピックス、しかも、オリンピック以外にオリンピックという名前が使えるのはこの大会だけだ、特別な意味を持っております。日本ではパラリンピックの方が有名でありますが、世界的には本当に、おっしゃるように、アイルランドあたりは国の予算だけでも六十億からかけてやっておる。そういう点では、私は日本の意識はまだ成熟していないのではないか、こういうような思いも抱いております。

 ぜひ来年の大会、成功に向かって、我々議連もございます、先生も御参加いただいていると思いますが、よろしくお願いいたしたいと思います。感想も聞かせていただいて、ありがとうございました。

長浜分科員 予算の分科会ではございますが、予算をつけるという発想ではなく、ぜひ教育の場としてそういった大会等々を活用していただければということもあわせてお願いをいたしたいと思います。

 さて、新聞をこの間見ておりましたら、これは奈良県の教育委員会でございますが、二月二十六日付の新聞を私は見ました。一、二年生に英語を教えることを決めた。これは正規の授業時間外に実施をする。

 いわゆる総合的な学習の時間というのは御承知のように三年生からでありますから、そういったものとは色合いがちょっと違っている。教育の特区の認定を受けて導入されるケースなどはあるが、自治体が独自に実施するのは聞いたことがない、これは文部科学省教育課程課のコメントということでここには紹介をされているわけでございます。学習指導要領で正規の授業時間を英語に当てることはできないため、そして三年から始まる総合学習につなげる意味合いというようなことで載っているわけであります。

 そこで、はたと私は考えたわけでありますが、この義務教育という問題、憲法にも書かれているところでありますけれども、義務教育、小学校における教育の中で、何をもって義務となすか。

 小学校では微分積分は習いませんでしたが、私も微分積分は、文科系ですけれどもやりました。しかし今、日常生活の中で微分積分が大変役に立ったと思われることは正直言って余りございません。それより私が痛感をすることは、きょういらっしゃる先生方は問題はないと思いますけれども、国際会議に出たときに、どうしてもっと流暢にしゃべれないのかなと。

 このごろ、六カ国協議で、中国の王さん、外務次官ですか、出ますが、彼は日本語ぺらぺらですからね。通訳で、一応ああいう場でございますから、当然自分の国の言葉でしゃべって、相手がそれに答える。しかし、そんなものは、通訳を通さないでも、下手な通訳よりよっぽどあの方は日本語が全部できますから、その間、考える時間を得ることができる。非常に外交の状況の中においても有利な条件を得ているんではないかな。

 私も長らくサラリーマンをやっておりましたけれども、私が在籍したような会社では当時では考えられませんけれども、英語の試験があって、それに通らないと課長になれない、そういったことで随分悩んでいる同級生がいるのに、同窓会なんかに行くとびっくりしました。私のころは、私も体育会でありますけれども、とにかく体が丈夫で、上の言うことは何でも聞く、そしてどんなつらいことでもやり遂げる、こういうのが非常に就職にとっては有利な条件でありまして、ですから、私のような体育会系はどこへでも就職できるというような状況でありました。多分そのときのニーズだったんでしょう、それがいい悪いということではありませんけれども。

 今の状況から、これから将来のこと、特にインターネットが発達をする状況の中で、ホームページ等々を見てもおわかりになるように、どうでしょうね、七割から八割ぐらいはオリジナルは多分英語でしょう。日本の中で随分インターネットが盛んだと言われても、たかだか限られた一億二千万のパイの中で日本語という特定の言語を使ってやっていることでありますから、あのときもっと英語を勉強しておけばなあということを感じておられるサラリーマンや政治家や、あるいは官僚の皆さんも多いのではないかなというふうに思うわけでございます。

 私の昔の同僚で、今は神奈川の知事になっていますが、松沢君が、中学校における英語教育じゃなくて、小学校における英語教育の必要性を本まで書いて大分熱心にやっておりました。私も小学生の子供が二人おります。この子供たちが、勉強しろと言っても、英語を勉強ととらえると、漢字の書き取りとか計算練習帳と同じように、英語の勉強というふうな、勉強と同列で考えるとなかなかやってくれないのはよく理解をしておりますが、将来、お父さん何であのときこう言ってくれなかったのと言われるものの順位づけをすれば、なぜ早い時期に英語の必要性を認識させてくれなかったのかと言われるように思えてならないわけでございます、それは微々たる私の経験からでもございますが。

 小学校から英語を義務教育にする。シャワーのように、八歳ぐらい、小学校一年生、二年生、そういった段階から音で覚えさせていく。書けないけれども、識字率のことをきょうは言うつもりはありませんけれども、諸外国の中においても英語を勉強したから英語がしゃべれるわけではなくて、周りにあるから何となくしゃべって、そのうち覚えていく。子供の日本語を見たってそうです、書けなくてもしゃべれるわけでありますから。

 そういった意味で、偏狭なナショナリズムとか、あるいは独特な、アメリカに屈するというような議論とか、大体アメリカでも使っているのは米語かもしれませんが英語と言われる種類のものでございますから、そういった観点からドラスチックに、学問としての英語ではなくて道具としての英語ということで、小学校から義務教育化するお考えはございませんでしょうか。

河村国務大臣 私も長浜委員おっしゃるような共通の思いもございまして、これはこれから本格的に考える課題だと思っておりまして、実は先般、文部科学省内部にも早速検討を命じたところでございます。

 どの時点で必修化するかは別といたしまして、今の時点でいつをということもまだいきませんが、研究開発学校を設けておりまして、現実に今小学校一年生からやらせている学校もあるんです。学校の先生は、なかなか大変だ、こうおっしゃいますが、私は必要だと思います。ただ、一方では、審議会の国語部会からは、いや、その前に国語が大事であるという指摘もいただいております。私は、両方しっかりやったらいい、こう言っております。

 私自身の経験からしても、私、子供四人のうち二人を私立の小学校へやりますと、英語を小学校でやっています。その子と中学からやった子と、やはり差があるんですね。ヒアリングや何かで当然出てくる。これは歴然としているわけで。ではその小学校から英語をやったその子供が国語力がだめかというと、そんなことはないんです。やはり、ちゃんとやればやれる。私もそういうことを思っておりますので、これは私は、これからの時代、子供たちにとって必要な、能力というよりも自然に身につかせるために必要なことだと考えております。

 小学校で必修にするにはどういう点をどういうふうにしていったらいいのか。当然、小学校から必修になってきますと、今のやっている中学の英語のやり方というのは全部変えていかなきゃいかぬですね、高校も変わっていくだろう。どっちかというと我々が習った英語は、中学、高校と、まさに文法や読解力、そっちの方を重点にやってきましたから、私自身、まさにその日本の英語教育の欠陥をそのまま身につけたようなものでありまして、国際会議に行って残念な、副大臣は達者でありますけれども、そういう思いを抱いておりまして、共通の認識を持っております。

 そういう意味で、遅きに失したと言われれば、既に中国、韓国は取り組んでおるわけでありますから、この問題に正面から私は取り組んでまいりたい、このように思っておりまして、十六年度中に一つの、これから、小学校における英語教育のあり方も含めながら、初等中等教育における外国語教育の充実改善、総合的な検討を行って、この十六年度中をめどにして基本的な方向性をまず取りまとめてみたい、このように思っております。

長浜分科員 大臣が御理解をいただけているので少しは心が安らいだ気がしますが、おっしゃられたとおり、時間がかかるんですよね、すごく。ではその教員養成システムをどう変えていくのか等々、やってみなければわからないんだけれども、国家百年の大計じゃないですけれども、所要の成果をおさめるために大変時間がかかりますので、ある意味でこれは、明治の時代に英語を母国語というか第一言語にしちゃおうと言ったような政治家もいるぐらいでありますから、長い課題ではありますけれども、国際社会の中で取り残されないために、そもそもが伝統的な学習の時間といいますか、新学習指導要領の売りだったものは、売りだったものはと過去形にしちゃいけない、売りは、生きる力をはぐくむためじゃないですか。

 だから、生きる力をはぐくむために必要なのは、やはり国際社会の中でも活躍という高い次元のレベルの問題ではなくて、英語ができれば、例えば、こんな狭い日本の中でうじうじしたくない、外へ出たい、じゃ出ればいいじゃないか、出て活躍すればいいじゃないかといっても、いや、言葉が通じない。逆に言えば、言葉さえ通じれば、それじゃ自分は、日本の独特の社会の中で生きていくそういうものには適応できないかもしれないけれども、自分に合う場所があるかもしれない。

 将来においての選択の幅とか、あるいは今盛んに悩んでいるところの中高年者の転職の問題も、語学の制限の中によって転職の場を日本の国の中に求めざるを得ないという状況になっていますから、言葉ができる方は世界各地のどこへでも、極端な話、御意思があれば、ツールを持っていれば、道具としての英語を使えればそれができるわけでございます。

 ぜひ、そういったすべての基本の中において、何回も申し上げますように、道具としての英語を、英文学とかいうことではなくて道具としての英語を早く子供の時代から身につけられるようにしないと、後世の、親御さんといったらいいのか、子供といったらいいのか、後世の次の政治家からといったらいいのか、今でもおくれているぐらいですから、早急にやらなければいけないのではないかなというふうに私は感じております。

 時間がありませんので、シンガポールの例等もお話をしたいところでありますが、きょうはその程度にさせていただければというふうに思っています。

 ちなみに、これは通告してありますので聞かないと用意をされている方に失礼に当たりますので、TOEFLという、世界で留学するときに必要な英語の試験がありますが、これの置かれている日本の状況はいかがでございましょうか。

近藤政府参考人 お答えいたします。

 私どもが持っています最近のデータでは、TOEFLのスコアで公表されているデータとしては、受験者の国籍別スコアより、日本人の平均点はアジア三十カ国中二十八位と承知をいたしております。

長浜分科員 言葉を失ったわけでございますが、そういった状況であることもぜひ御認識をいただければというふうに思います。

 それから、急に身近な問題に参ります。

 私は千葉県の柏市というところに住んでおるわけでありますが、千代田線で国会議事堂から行って終点でございます。乗りかえなしで便利なところでありますが、いつも毎年我が女房殿が、小学校、二人子供がおりましたので苦労する問題というか話題になるのは、一体一クラス何人になるのかなという問題です。百五十九人ですとこれは四クラスですよね。それから、それより二人多い百六十一人になると、これは五クラスになるわけですよね。間違いがあれば後で御指摘をいただければというふうに思うんですが。この二人のために、二人のためにというか百五十九と百六十一という数字でありますが、お母さんたちが大騒ぎをするわけでございます。

 柏というのは、もとは田舎でありましたが、今は千葉県でも県庁所在地の千葉市などよりも乗降客の多いところでございます。そうすると、駅前に巨大なマンションが突然として建つわけであります。そういったマンションが都内に住むのよりはお安いのでございましょうか、ちょうど小学校の年齢の子供を持つ御夫婦、御家族が越してこられる。そうすると、運動会をやっても、例えば私の住んでいる明原町会、隣の何とか町会と同じ待遇で、何とかマンションが、その何とかマンションの何とかをとって何とかチームというのが一つできちゃうぐらい、そのぐらい教育の現場に影響を与えるのが新しいマンションの建築なのでございます。

 さらに言えば、越境の問題というのが、規制緩和の問題等々を含めてかなり緩和されました。それは一面においていいことだというふうに思いますが、私のところのように駅前の大変便利のいいところに小学校がありますと、そこに集中をする。ナンバリングから言っても、柏第一小学校、一小と言うんですけれども、そういうのが好きな若いお母さんたちが多いのかどうかわかりませんけれども、越境してわざわざそこへ行く。迎えに行くのが駅から近くて便利だからとかいろんな理由があるようでございまして、ときには行政区を越えて、隣の市からも来ちゃう、こういう状況です。電車がつながっていますからね、大変便利なところで。

 それで、生徒数が大変、この四月の前の時期には大騒ぎをする状況が展開をされますし、さらに言えば、二年に一回クラスがえなんですね。だから、小学校一年生の子供が、三年生になって、わあい、新しい友達ができたと喜んでいる。三年生の子供は、三年、四年同じクラスで過ごしていくはずなのに、四年生になる瞬間に大きなマンションが二本ぐらい建とうものなら、さっきの四クラスから五クラスということで、全面的なクラスがえに陥って、せっかく仲良くなった何ちゃんと離れなければならない。

 大人からすれば大した問題じゃないんですけれども、こういった問題から登校拒否とか、本当かよというふうに言いたいんですが、本当にそういう問題があるんですけれども、どのぐらいその実態を認識されておられますでしょうか。

原田副大臣 ただいま委員がお話しになったケース、全国的に今少子化がむしろ心配されておるようでありますから、どっちかというとケースとしては少ないのではないかなとは思いますけれども、しかし、現実に都市部においてはこういう問題が起ころうかと思っております。

 御承知のように、学校の、また学級の編制については、基本的には都道府県ないし市町村の教育委員会に任せてきておるというのが結論でございます。義務教育標準法に基づきまして、一学級四十人を標準として従来から学校の教員の総数が国の基準で決められておるわけでありまして、その範囲内で、実際の学級編制というのは、市町村のいろいろな観点から、学校の実情、教育的な配慮等々弾力的な運用をするように、こういう指導を行ってきたところでございます。

 ただ、二年に一度というわけにはいきませんで、そのちょうど切れ目のいいときに、転出入は当然のことながら学期のいつでも起こり得る話でございますが、今お話がありましたように、ふえた場合に、場合によっては学級を分割しなきゃいかぬというときも、教育のプロセス、時期、こういうものを十分配慮しながら本来は分けられておるということであると思います。

 しかし、今お話がありましたように、学区の自由選択制も大分普及をしてきましたし、突然に今のような話が出てくるのも現実でございますが、あくまでも私ども文科省としては、都道府県に、また市町村に対して、しっかりその辺の実情を踏まえながら、子供の教育への影響を最小限にするような形で行うように、こういう指導をしておるところでございます。

長浜分科員 この間の本会議でも、いわゆる総額裁量制の問題とか、それから今御説明がありましたような地方分権、地方のことは地方でやっていったらどうだ、こういった大きな流れの中でのことでありますが、この世界では激変緩和というのが多々使われる、さまざまな政策、法案の中で使われる部分もありますので、こういった問題についても、それは地域の問題で、確かにおっしゃられるとおり多いか少ないかと言われれば、子供が少なくて困っているというところが多いでしょうから、私のようなところというのは特異な部分かもしれませんけれども、先ほどの大畠さんの質問ではないですけれども、それだけ、逆に言えばいわゆる非行の問題も多いんですね、不思議なことに。

 当たり前といえば当たり前ですね、子供の数が多いほど多分その非行の問題も統計的には多いはずでございますので、ぜひ子供たちの心の問題、こういった小さな問題にも、決まりは決まりだといってばさっとやらずに、細かい配慮をいただければというふうに思うわけでございます。

 最後に、これは委員長も大変御関心の高いテーマで、私は一こま前、今、経済産業の分科会で同じ質問をしてきたのでございますが、サマータイムの問題について御質問をさせていただきます。

 サマータイムはCO2の削減のためにどのぐらい貢献をできるか、このサマータイムの議論が出た当初においてはこういった部分もあったのかもしれませんが、別に私はそうは思っておりません。

 もちろん、それにも十分貢献することは当たり前ですけれども、本筋としては、日本人のライフスタイルの転換、あるいはゆとりとか、昔はいやしという言葉はありませんでしたけれども、何をもって、個人の幸福と、組織と言ったらいいんでしょうか、国家の安泰というのを一致させていけるかという、そんな大げさな問題じゃないにしろ、経済産業大臣が書いていましたけれども、子供とサッカーをしたりする時間を持つことが政治家としても大変心の安らぎを覚えるというようなことを文章に書いていて、そのことについても質問しましたけれども、学校教育の現場の中において、サマータイムというものはどういうふうに議論の対象として扱われているんでしょうか。

 当初は、これは経済企画庁と通産省、それから環境省でしたか、こういった三つぐらいの官庁での話でスタートしたと聞いておりますが、文部科学省、あるいは以前の文部省の議論でも構いませんので、御紹介いただければと思います。

河村国務大臣 デイライト・タイム・セービングということですから、時間を有効に使えるという意味で、文部科学省の中でも、これによってアウトドア活動、家族の触れ合いとか、あるいはボランティア活動、また子供が屋外で遊ぶことができる、こういうことで歓迎。しかし一方、消極的な意見としては、睡眠不足の子供がふえるんではないかとか、塾通いの子供がふえやしないかとか、こういうことを懸念する向きもあります。

 総じて言えば、このサマータイムを導入することによって、子供たちに対するいろんな面で時間の活用というものができるというので、私自身は歓迎の意を表しておるところでございます。この議論が広く行われることを望んでおります。

 現実には、沖縄と北海道ではかなり時間が違って、夏時間用の夏休みをやったり冬休みをやったりとか、いろいろなことを現実には状況に合わせてやっておりますから、これが変わればそれに応じた対応はきちっとできる、こういうことでございます。

長浜分科員 これも、大臣が御認識を大変深く持っておられるということで、あえて申し上げることはないわけでありますけれども、やはり家庭というものの考え方。私などもそうでありますが、余り褒められたおやじとは言えません。やはり、子供とおやじさん、あるいは、お母さんはしょっちゅういらっしゃるとは思いますけれども、それが触れ合う時間をふやしていく。職住隣接という言葉もあります。あるいは、NPOの問題。それから、リタイアされた後の問題等々を含めて、子供だけじゃありませんね、お孫さんとの問題。近場のNPO法人なり、あるいは職場なりというので第二の人生を始められた。しかし、その残りの時間と言っては何ですが、働く以外の場の中において、気候が許せば、赤道直下なら別でありますけれども、ちょうど日本の緯度、経度の感じからすれば、サマータイムを導入している国は多いですよね。

 そういった状況の中において、ぜひ、教育の観点からも、単に勉強を詰め込むということだけではなくて、太陽が照っている間に親と子のつながり合い、あるいは先ほど申し上げましたようなさまざまなボランティア活動への参加、そういった機会が奨励されるわけでありますから、文部科学省としても、経済産業省とは違った観点から、サマータイムのメリット、デメリットはあるでしょう。しかし、デメリットのためにする議論ではなくて、むしろ今御答弁いただいたような形で、メリットの面を重視するような形で議論を進めていただければ幸いでございます。

 質問をさせていただきまして、ありがとうございました。

小杉主査 これにて長浜博行君の質疑は終了いたしました。

 次に、江渡聡徳君。

江渡分科員 自由民主党の江渡聡徳でございます。

 河村大臣、そして稲葉副大臣、原田副大臣は今退席でしょうけれども、常日ごろ文部科学行政推進のために一生懸命御努力されていることに対しまして、まずもって敬意を表させていただきたいと思うわけでございます。

 私は、大臣初め副大臣に、国際熱核融合実験炉計画についてお伺いさせていただきたいと思っておるわけでございます。

 地上の太陽の実現を目指すITER計画というのは、現在、日本が青森県の六ケ所村に対して、そしてEUがフランスのカダラッシュをそれぞれ建設候補地として誘致活動が展開されているわけでございます。このような国際的な研究施設というのは、現在アジアにないわけでありまして、そういう観点から日本に誘致することは非常に大きいことではないのかな、私自身はそのように考えているところでございます。

 ちょうど昨年の十二月の四日、五日、次官級会議があったわけでございまして、続いて十二月の二十日、ワシントンにおいての閣僚級会議があったわけでございます。このワシントンの会議に対しては、文科省から稲葉副大臣が、そして内閣官房からは細田副長官が出席されて、大変厳しい交渉に当たられたわけでございます。そのときに日本に決まるのではないかと私どもは本当に期待したわけでございますけれども、しかし、副大臣を含めまして政府関係者、大変な御尽力をされたんですけれども、日本に誘致するということはかなわなかったわけでございます。

 その後、報道等によりますと、日仏両国による各参加国への働きかけというのはなお一層過熱の一途をたどっているというふうに聞いているところでございますけれども、このITER計画のことに対しては、技術的な話のみならず、政治や外交を巻き込んだ、まさに総力戦の様相を呈しているというふうに報道等にはなされているわけでございます。

 そのような状況の中におきまして、先月の二十一日にまた次官級会合があったわけでございますけれども、この膠着状態を打開するに至らなかったというふうに聞いているわけでございます。

 これまでも専門家レベル等での討論はもとより、政府・与党におきましても、小泉総理を先頭といたしまして、産学官を含めまして一生懸命、各関係方面に強い働きがなされているものと私自身は認識しているわけでございますけれども、このような膠着状態から抜け出していって、このITERというもの、地上の太陽というものを我が国に誘致するために、今まで以上に多くの関係者の知恵とか、さらなる取り組みの強化というのが必要ではないのかな、私はそう考えているわけでございます。特に、対中国対策、あるいは対ロシア対策というのが大切ではないのかな、そう思っているところでございます。

 そこで、このITERの我が国誘致に向けた今までの取り組み、あるいは今後の政府間協議の見通しというものをどのように考えられているか、お伺いしたいと思うわけでございます。

稲葉副大臣 ただいま江渡議員からは、大変はっきりした御指摘をいただきまして、私どもとしましても、今までの努力にさらに努力を重ねて、ぜひとも日本にITERを誘致し、そしてこれからの新しいエネルギー政策、エネルギーの展開をしていかなきゃならないと思っているところであります。

 今までの経緯につきましては、改めて申し上げるまでもないところでありますが、それこそ、時のレーガン大統領あるいはゴルバチョフ書記長の会談から始まりまして、現在に至っているわけであります。日本においては、一昨年、閣議決定をし、いよいよ日本に本格的に誘致をしようという活動が開始されたわけであります。今後できるだけ早い時期に日本に本体を誘致するべく、いろいろな方面の御尽力をいただいて、当方としても頑張っているところであります。

 しかしながら、御指摘のように、昨年の十二月二十日、あるいはことしのつい先日、二月の二十一日、こういった重要な会合の中から日本に誘致決定を見出すことができなかった。その結果に対しましては、これからも大変努力しなければ、こういったところに気持ちを持つわけであります。

 これから本当にいろいろな政治的な思惑もそこには出てくるでしょうし、あるいは各国から日本あるいはフランスに対して質問をされてまいりましたその一つ一つの案件について、これを片づけて、クリアしていかなければ、日本に、六ケ所村に、そう結論づけることもまだできないような状況にあるわけです。

 ですから、政府間交渉はもちろんでありますが、あるいは技術者、あるいはそれぞれの各国との共通のパイプを持っておられる方々、あるいは産業界、こういう方々にも御協力をいただいて、さらに、日本に誘致をしよう、こういう働きかけを行っているところであります。

 現に、我が方としましても、獅子奮迅の行動を、結城審議官を初めとする役所の方々にもお願いしているところでありますし、今月初旬、もうじきであると思いますが、いろいろなミッションを通じまして、専門家会議を通じまして、これからの打開策を検討しているところでございます。

江渡分科員 今いろいろ伺わせていただいたわけでございますけれども、政府一体となっての取り組み、何とぞお願いしたいな、そういうふうに思っているところでございます。

 核融合エネルギーというものは、未来のエネルギーとも言われております。この核融合エネルギーは、燃料となる重水素というのは、地球上に本当にいっぱいあります海水から生産することが可能なわけであります。核分裂エネルギーに比べまして、私は、本当に安全対策が容易な形のエネルギーではないのかな、そう考えておりますし、また、CO2の発生が本当に少ないというふうにも聞いているところでございます。またあるいは、運転に伴って発生する放射性廃棄物も、今までのように、日本が一生懸命頑張ってつくり上げてきた従来の技術で十分処理ができるというふうなことも聞いておるものですから、本当に環境保全性も高いな、そう考えているんです。ですからこそ、どうしてもこのITER、核融合エネルギーというものを早期に実現してほしいな、まさに夢のエネルギーだな、そう私は考えております。

 ただ、この夢というものを実現させるためには、やはりいろいろな課題があるだろう、そしてまた解決しなきゃいけない課題というものも本当にあるのではないのかなと私は考えております。

 特に、今回、実験炉というもの、日本になるかEUになるかということになるわけでありますけれども、実験炉が建設されて運転されても、なおそれ以上に、その先には実験規模の発電を行うための原型炉というものをつくっていかなきゃなりません。そして、その原型炉をつくった後に、コスト低減というものを一生懸命図って、経済性の向上ということも図らなければいけません。そうした上においての実証炉の建設、運転というものを通じて、まさにこのITER関連に対しての技術の向上というものをしっかりと図りながら、経験というものを蓄積していかなければならないだろう、そう私は思っておるところでございます。

 そして、そのほかに、このITERを建設していくためには十年以上かかると言われておりますし、また、二十年間運転して実験していかなきゃいけない。それらのトータルの試算が約一兆三千億円にも及ぶというふうにも聞いているところでございます。

 そしてまた、我々、この日本にITERを誘致した場合においては、ホスト国としてもかなり相当額の負担を強いられるというふうにも聞いているわけでございますけれども、現在のこの日本の経済情勢の中において我が国がなぜここまで一生懸命ITERを誘致しているのであるか、あるいは、この点に対して本当に十分な説明を行っていて国民に理解を得られているのかどうなのか、やはりこの辺のところというのは一番大事になってくるのじゃないのかなと思っておるところでございます。それゆえに、国民の方々にしっかりと理解を得るための努力ということは、そしてそれを継続していくということは不可欠なことであると私は考えております。

 そこで、河村大臣にお伺いしたいわけでございますけれども、国民に訴えていくべき、ITERをなぜ我が国に誘致するのか、その意義というものについてお聞かせいただきたいと思うわけでございます。

河村国務大臣 江渡議員、さすがに青森県、お地元の出身でありますだけに、大変お詳しいし、まさに今の御質疑、質問の中にも既にその回答を見出したような気もするわけでございますが、私、このITERを所管する文部科学省の責任者といたしましても、ぜひこの実験炉を我が国、六ケ所村に誘致したい、こういう思いでございます。

 それは、先ほど来御説明のように、この実験炉の建設、運転を通じて、まさに人類にとって究極のエネルギーが確保できる。まさに夢のエネルギーと言われました、地上に太陽を持ってこようとおっしゃった、まさにそれが実現できるというのは大変大きなことでございまして、そのことが、我が日本から世界に向かって人類の福祉のために貢献できるという大きなねらいがあるわけでございます。

 そして、この技術というのが、単なる核融合の枢要技術の開発だけじゃなくて、システム全体を統合するという極めて得がたい技術的な経験もできる、ノウハウもできる、こういうことでありまして、その付加価値というものは非常にはかり知れないものがあるだろう、こうも思っておるわけでございます。

 そして、世界に対しても、この核融合研究の発展に寄与することによって、我が国が最先端技術の能力を実証することもできる、こういうわけでございまして、この大規模国際協力プロジェクトを我が国において実行することによって真の国際化の推進にも寄与できる、こういう思いであります。

 と同時に、対中国、対韓国にも特に強調しておるのでありますが、やはりアジアからこの技術を、科学技術を発展させていこう、特に、これからアジアの時代と言われるこのときに、人類にとって一番究極のエネルギー問題をこれによって解決するんだ、こういうことで一体となってやっていこうじゃありませんかということも強調いたしておるようなわけでございます。

 まさに、日本のこれからの科学技術創造立国というのが、この実現というのが一つの大きな国策でございますし、これに向かって貢献をできる、こういうことでございますので、このITERの誘致の意味というのは大きいわけでございますから、江渡議員御指摘のように、やはり国民的な理解もいただく努力をさらにする必要があろう、こう思っておりまして、誘致活動とともに、国民に向けても、さらにこの有意義性を特に強調しながら、理解をいただくようにこれからさらに努力をしなきゃいかぬ。

 大きな国費も投じなきゃいけない課題でもございますので、そういうことが必要であろう、こう思っておりますので、一層江渡議員も御協力いただきますようにお願い申し上げます。

江渡分科員 ただいま大臣から、ITERを誘致するということに対しての意義を聞いたわけでございますけれども、本当に、将来に向けて、世界じゅうの中におけるエネルギーの問題を解決するための大事なものであるということもありますし、また、日本が今目指しております科学技術創造立国の実現のためにも貢献なさる、そして、それだけじゃなくて、これから日本が真の国際化を目指していく上においてのアジアの発展のためにも大変意義があるということで伺ったわけでございまして、私も本当に心強く思っているところでございます。

 私の地元であります青森県におきましても、今大臣の方からお話がありましたとおり、その意義を踏まえまして、どうしても誘致を実現したい、そのために青森県も、政府と一体となって積極的に取り組んでいこうということで、今努力をしているところであるわけでございます。

 また、建設候補地となっております六ケ所村におきましては、我が国の総発電電力量の三割を超えることに至った原子力発電を支えるための原子燃料サイクル施設というものがありますし、また、エネルギーの安定供給に寄与するための石油備蓄基地もあるわけでございます。また、そのほかさまざまな関連企業というものも立地しておりまして、我が国のエネルギー政策に本当に貢献している地域ではないのかなと、私自身はそのように自負しているところでございます。

 また、六ケ所村におきましては、これからの世界市場において拡大が本当に期待されると言われております液晶パネル関係の産業集約というものも図られつつあるわけでございます。前知事のときにですけれども、クリスタルバレー構想ということを打ち上げまして、新たな産業拠点をつくるための努力もしている、そんなような地域が六ケ所村であるわけでございます。

 ですからこそ、今いろいろなお話を聞きましたし、また、今現在、青森県六ケ所村が一生懸命頑張っております、それらの動きと相まって、ITER誘致というものが実現することができるならば、私はかなり高い技術力を有する企業の立地とかあるいは集積というのが今まで以上に促進されるのではないのかな、そう考えているところでございます。

 また、そのような形になりますと、日本国じゅうのみならず世界じゅうから、多くの研究者とかあるいは技術者の方々、さらには多くの見学者の方々も、この日本、六カ所村に来るのではないのかな、あるいは住むような形になるのではないのかなと思っておるわけでございます。

 もとより、私どもの青森県を初めとして、あるいは地元としても、誘致実現による多大な地域振興効果というものをかなり期待しているところであります。特に、今の日本の経済情勢がこうであるからこそ、なおさら、それらのことに対しての波及効果というものを期待するところは大なわけでありますけれども、国として、この辺のところをいかがお考えになっているかということも、お聞かせ願いたいと思うわけでございます。

稲葉副大臣 まさしく、江渡先生がおっしゃられるように、日本に、青森県六ケ所村にITERの建設が実現したとするならば、既に青森県御当局が試算されておられますように、さまざまな面において産業や雇用の創出が図られてくる、かように思っております。

 産業の創出といえば、やはり建設業、そしてITERの研究開発に関連する電気あるいは水力、ガス等といった公共的な事業への波及効果も甚大でありますし、同時に、施設を維持するために、また、運転の管理業務や研究環境の支援等で大きな効果が期待されているところであります。

 青森県の試算によれば、建設から運転、研究開発に至るまでの三十年間で約一兆二千億、そして、人にしてみれば延べ十万人の雇用が創出される、こういうふうに試算されております。そして、その試算の中には多数の関連の研究機関や企業の立地を見込んではおりますけれども、この経済波及効果を現時点で具体的に把握するというのは大変まだ困難な状態にありますので、この件についてはまだ数字の中に織り込んでおられない、こういうことも承っておりますので、さらに大きな効果が期待される、こう考えております。

 同時に、研究者が三十年間にわたって青森県あるいは六ケ所村周辺に居住されるわけでありますから、当然そこには奥様やお子様、御家族も移ってこられる、そして、三十年の間には新しく命の誕生も見る、こんな状況が想像されるわけでありますので、そこには新しい教育機関あるいは居住空間、こういうものを考えていかなければなりませんでしょうし、さらに、大げさかもしれませんが、新しい国際都市六ケ所、この実現が図られてくる、我々が大変羨望してやまないところであります。

江渡分科員 今副大臣から具体的な数字というものはそれほど挙げられなかったわけでございますけれども、しかし、かなりな効果があるだろうというふうに今伺ったわけでございまして、そうなればなるほどこれから一生懸命頑張っていただいて、誘致が図られて、六ケ所村初め、あの地域が本当の国際的な都市になってくれればありがたいなというふうに思っておるところでございます。

 また、今のお答えにちょっと関連しますけれども、特に、海外からの多くの研究者とか技術者が来ることになっているわけでございますけれども、それらの方々への支援というものについて、一点聞かせていただきたいなと思っているところでございます。

 今お話もあったわけでございますけれども、居住とか教育環境の整備というものを進めなければいけないという話でございますけれども、地元の青森県においても、具体的な点で今考えられているわけでございます。

 例えば、住環境におきましては、民間宅地造成や住宅建設等の整備を民間ディベロッパーを中心として整備することは可能であると言われておりますし、あるいは、教育環境については、滞在します研究者等の子供のために、幼稚園から高校まで対象といたしまして、これは青森県がつくったものでございますけれども、仮称で、青森国際学園という国際学校の実現というものを今青森県としては目指しているところであります。

 特に、この地域は、原子燃料サイクル施設に勤務する外国人技術者の子弟に対しての教育の実績というものもあるわけでございます。

 また、ちょうどこの六ケ所村から車で四十分ぐらいのところに位置いたします三沢には米軍の基地があるわけでございます。この米軍の基地の中には、短大を初め、あるいはメリーランド大学とかフェニックス大学の大学院等が設置されていまして、この大学に通う人たちに対しては、青森県では、青い森みらい創造財団というものがございまして、修学事業が展開するための事業というものも行っておりまして、国際的な環境の中、教育機会の提供に対する取り組みを一生懸命青森県は取り組んでおるわけでございます。

 そこで、お伺いしたいわけでございますけれども、今申し上げたような形で、できれば青森県の地元の特色を生かしながら、滞在します研究者の方々とか、技術者の子弟教育につきまして、できれば日本人の子弟とともに国際的な教育を行うような、そういう教育特区というものを設定することができないでしょうか。この辺についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。

坂田政府参考人 ITERが六ケ所村に建設される場合でございますけれども、滞在する技術者、研究者の子弟教育のために、国際的な教育環境の充実は大変重要な課題であると思っております。

 今先生の方から御紹介もございましたけれども、青森県におかれましては、構造改革特区研究開発学校制度、これを活用いたしまして、外国人の児童のみならず日本人児童に対しましても、小学校から英語を授業言語にして教育を行う、そういう国際学校の整備を検討されていると伺っております。

 構造改革特区研究開発学校制度は、地方公共団体が、構造改革特区、特別区域におきまして、憲法、教育基本法等の理念や学校教育法に示されております学校教育の目標を踏まえながら、学習指導要領等の基準によらない教育課程を編成、実施しようとする場合に、これを可能とするものでございます。この制度につきましては、現在十九の自治体が指定を受けております。

 したがいまして、青森県の国際学校の構想につきまして、まだ詳細は私ども承知していないわけでございますけれども、そういう意味で、今直ちに具体的に判断するということは難しいところがございますが、これまで聞いている範囲では、この制度を使いまして実現できる可能性があるものと考えております。

 文部科学省では、ITERに関連いたしまして、地元の自治体から内閣府に特区研究開発学校制度の申請がございました場合には、この制度の趣旨を踏まえて、内閣府ともよく連携をして適切に対応したい、このように考えております。

江渡分科員 ありがとうございました。一生懸命頑張っていただければありがたいなというふうに思っているところでございますけれども、いろいろな形のバックアップをしながら、よりよい形のITER計画というものが進んでいただければというふうにも考えているところでございます。

 続きまして、昨年の十一月二十九日、打ち上げに失敗いたしましたH2Aロケット六号機に関連いたしまして質問をさせていただきたいと思うわけでございます。

 ちょうど昨年の打ち上げ失敗の約一カ月半ぐらい前ですけれども、中国が神舟五号というものを打ち上げまして、世界で三番目となる有人宇宙飛行を成功させたわけでございます。その直後に行われた我が国の基幹ロケットでありますH2Aロケットの打ち上げだったわけでございますけれども、搭載されました衛星、これは日本における安全保障や危機管理の観点からも極めて重要な役割を担う大変重要な情報収集衛星ということだったものですから、私も大いに注目していたんです。しかし、残念な結果に終わってしまいまして、本当に落胆したということもまさに事実であるわけでございます。

 このロケットの打ち上げというのは、今まで一生懸命連続して成功していったとしても、継続して打ち上げを成功していったとしても、しかし、失敗がある。そんな流れの中において、やはりロケットの打ち上げというのは本当に難しいことだなというふうにも私も考えているところなんです。

 特に、諸外国の実績というものを見てみますと、運用初期においては、各国、成功率がそんなに高くありません。一番低いところですと五五%ぐらい、割と高目でも八割強ぐらいというところであるわけでございます。ですからこそ、今日のこの失敗に対して万全の対策を講じてほしいわけでありますし、また強い決意のもとにこの失敗というものを乗り越えていただきたい、そう私は考えております。

 ですからこそ、今回の打ち上げの失敗に関する原因究明というものが、まさにこれからの日本の宇宙開発の行方を左右するという、本当に大きな立場にあるのではないのかなと私はそう考えておりますし、またこの原因究明に対しましては、多くの外部の専門家というものを招いて今審議が行われているというふうにも聞いているわけでございます。

 そこで、お伺いしたいわけではありますけれども、このH2Aロケット六号機打ち上げ失敗に関しての原因究明の状況あるいは今後の再発防止策というのを、そのことについてお答えいただければありがたいと思います。

稲葉副大臣 まさしくこれからの宇宙の開発に当たって、大変私たちが期待しているロケットであったわけであります。残念ながら失敗に終わりましたけれども、今鋭意原因究明に取りかかっているところであります。現在まで、宇宙開発委員会の調査部会において、きのうも開かれましたが、十一回の審議を開いておりまして、大体原因としては、固体ロケットブースター、これの切り離しのときに、どうやらその切り離しに使う導爆線、ここが作動する前に熱によって溶けてしまった、こういったところに原因があるのではないか。さらに、その溶けてしまった原因の中には、そのスカートのようなところのノズル、このノズルの材質に問題があったかどうか。ノズルが異常な変形を来したものですから、その導爆線に破損を来した、そして作動しなかった、そこまでは原因が究明されているところです。

 今現在、海底に沈んでいるロケットブースター、ノズルの一部も含めてですが、回収に当たっているところであります。場所としては大体特定されてきてはいますが、本体の回収にまだ至っておりません。しかし、本体が回収されないとしましても、ある程度の原因が究明されておりますので、さらにその原因を徹底的に明らかにして、早期の打ち上げ再開、これに向けて今鋭意努力をしているところであります。

江渡分科員 できるだけ早い原因の究明をしていただきまして、万全な対策をしていただいて打ち上げていただければありがたいなと思っておるわけでございますけれども、今回の失敗を含めまして、今まで本当に、大事な打ち上げというときになりますと失敗している。どうしても、何か悲しい思いをしたりとか、将来に対しての希望が持ちにくくなっているということも現実であるわけでございます。私は、やはり日本の子供たちに対して、これからの夢とか希望につながるような形で、しっかりとこの宇宙開発というのは進めていただきたいなというふうに思っているわけでございます。

 ただ、こういうことを言うのも、ある意味、日本の予算的な問題とかいろいろなことがあるかもしれませんけれども、しかし、冷静に分析いたしますと、日本のロケットの打ち上げ回数というのは、ほかの国々から比べるとかなり少ないんじゃないのかな、そういうふうにも思っているところでございます。やはり、こういう最先端の技術というものをきちんとしたものにつくり上げていくためには、失敗を乗り越えながら、その失敗というものを糧としながら、やはりあすに向かっての技術の蓄積というものを積み上げていく、この辺が私は一番大事なことではないのかなと思っております。

 ですからこそ、そういう部分においてはその蓄積の部分が弱かった、この辺がある意味では我が国の宇宙開発の技術基盤の脆弱さというものにもつながっているのではないのかなというふうにも考えているところでございます。特に、これからは気象衛星を打ち上げなければいけない、あるいは情報収集衛星も打ち上げなければいけない、大変重要な課題というものが山積しているわけでございますし、また控えているわけでございます。

 ですからこそ、最後に大臣にお伺いしたいわけでございますけれども、今後の宇宙開発の進め方、あるいは取り組み方、この点についてお伺いしたいと思うわけでございます。

河村国務大臣 江渡議員からも御指摘ありましたように、今回のH2Aロケットの失敗、非常に私も残念に思っております。しかし、これにひるんではならぬと思います。宇宙開発の先達でありますアメリカやロシアの歴史を見ても、随分失敗をし、事故にも遭い、それを乗り越えて今日を築いております。そういうことも考えながら、これから、国家予算としても相対的にそういう国に比べると低いわけでありますけれども、それを十分生かしながら、日本の独自の開発に取り組まなきゃいかぬ、こう思っております。

 特にH2Aの部分については世界の最先端を行っていたわけでありまして、あの前回の失敗がなければいよいよ商業ベースにも乗ろうか、こういうところまで来ておるわけでございます。これを高めていかなきゃなりませんし、さらに通信それから放送、気象、地球観測等々、やはり国民の生活にもこの衛星が非常に活用できるという面もあるわけですね。だから、こういう点、それから産業の発展にも大きく貢献をする、こういうねらいもあるわけでございまして、さらに、惑星探査等々をやっていけば、宇宙の起源であるとか、まさに生命の起源にも達する、究明できるというような、大きな知識また夢を抱かせる、子供たちにとってもやはり夢の開発でもございますから、こういう意味で、宇宙開発をやはり国家戦略としてきちっと位置づけてやっていくことが必要であろう、こう思っております。

 当面、今、稲葉副大臣から話がありましたように、今回の失敗をきちっと究明して、そして原因をきちっと突き詰めて、そして信頼を回復して、そしてこの失敗を乗り越えて、まさに夢の開発という意味で、宇宙開発に挑戦的に取り組んでいく、これでなければならない、こう思っておるところであります。

江渡分科員 今大臣から決意を聞かせていただきました。一生懸命頑張っていただければありがたいなと思いますし、また国家戦略としての位置づけというものもきちんとやっていただきたいと思うわけでございます。

 私は、ITER計画にしても、この宇宙開発にしても、どちらも未来に向けての、本当に先端技術に取り組む我が国の挑戦ではないのかな、そう思っているところであります。ですからこそ、何としてもITERを日本に誘致していただきたいと思いますし、また宇宙開発については、今回の失敗ということに決して萎縮することなく、まさに国が、政府が一体となって取り組んでいただければありがたいなと思っているところでございます。

 特に、アメリカあたりは、スペースシャトルの事故とか、さまざま、いろいろな問題点を乗り越えてきたわけでございます。それらのものを乗り越えることによってあすが見えるというわけでございます。ですからこそ、大臣初め文科省の皆様方、そして政府一体となってこれらの問題に対して取り組んでいただければありがたい、そのことを強く要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

小杉主査 これにて江渡聡徳君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして本分科会の審査はすべて終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 分科員各位並びに関係者の皆様の御協力を賜りまして、本分科会の議事を無事に終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午後三時八分散会


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