衆議院

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第1号 平成21年2月19日(木曜日)

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本分科会は平成二十一年二月十七日(火曜日)委員会において、設置することに決した。

二月十九日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      井上 喜一君    小野寺五典君

      鈴木 恒夫君   田野瀬良太郎君

      逢坂 誠二君    仙谷 由人君

二月十九日

 田野瀬良太郎君が委員長の指名で、主査に選任された。

平成二十一年二月十九日(木曜日)

    午後一時開議

 出席分科員

   主査 田野瀬良太郎君

      井上 喜一君    小野寺五典君

      鈴木 恒夫君    渡部  篤君

   兼務 井澤 京子君 兼務 遠藤 宣彦君

   兼務 赤羽 一嘉君 兼務 上田  勇君

   兼務 高木美智代君

    …………………………………

   文部科学大臣       塩谷  立君

   文部科学大臣政務官    浮島とも子君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 望月 達史君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文教施設企画部長) 布村 幸彦君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長) 清水  潔君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長) 金森 越哉君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長) 徳永  保君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局私学部長) 河村 潤子君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長) 山中 伸一君

   政府参考人

   (文化庁次長)      高塩  至君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官) 北村  彰君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局次長) 大槻 勝啓君

   文部科学委員会専門員   佐久間和夫君

   予算委員会専門員     井上 茂男君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月十九日

 辞任         補欠選任

  井上 喜一君     渡部  篤君

同日

 辞任         補欠選任

  渡部  篤君     井上 喜一君

同日

 第二分科員赤羽一嘉君、上田勇君、第三分科員遠藤宣彦君、第五分科員高木美智代君及び第八分科員井澤京子君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成二十一年度一般会計予算

 平成二十一年度特別会計予算

 平成二十一年度政府関係機関予算

 (文部科学省所管)


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     ――――◇―――――

田野瀬主査 これより予算委員会第四分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりました。よろしくお願いいたします。

 本分科会は、文部科学省所管について審査を行うことになっております。

 平成二十一年度一般会計予算、平成二十一年度特別会計予算及び平成二十一年度政府関係機関予算中文部科学省所管について審査を進めます。

 政府から説明を聴取いたします。塩谷文部科学大臣。

塩谷国務大臣 平成二十一年度文部科学省関係予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 平成二十一年度予算の編成に当たっては、教育、科学技術・学術、スポーツ、文化の振興についての施策を総合的に展開するため、文部科学予算の確保に努めてきたところであります。

 文部科学省所管の一般会計予算額は五兆二千八百十七億円、エネルギー対策特別会計は一千四百六十六億円となっております。

 よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。

 なお、詳細の説明につきましては、お手元に配付しております資料のとおりでありますが、時間の関係もございますので、主査におかれましては、何とぞ会議録に掲載されますよう御配慮をお願い申し上げます。

 以上です。

田野瀬主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま文部科学大臣から申し出がありましたとおり、文部科学省所管関係予算の概要につきましては、その詳細は説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田野瀬主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

田野瀬主査 以上をもちまして所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

田野瀬主査 この際、分科員各位に申し上げます。

 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願いいたします。

 なお、政府当局におかれましては、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。遠藤宣彦君。

遠藤(宣)分科員 福岡一区の自民党衆議院議員の遠藤宣彦でございます。

 私自身、この文部科学省に対しての質問をずっと心待ちに待っておりました。常任委員会を四つと特別委員会一つに入っているものですから、なかなかこちらで、文部科学委員会は差しかえで質問の機会をいただこうと思っていたんですけれども、ようやくきょう、そのチャンスがめぐってまいりました。

 私自身は今、八歳の娘と八カ月の息子がいる、紛れもない現職の父親といいますか、現職のパパをやっております。とりわけ落選中は幼稚園の送り迎えもしたりとか、幸か不幸か子育てにたっぷりかかわる機会をいただいたものですから、教育行政について、我が身のこととして非常に関心を持っております。

 かつてイギリスでブレア首相が登場したときに、何が最も大事だと思いますかという質問に対して、一に教育、二に教育と。言うまでもなく、教育行政というのは国家の根幹でございます。

 よく言われますように、明治維新を迎えたとき、あるいは戦後の復興を果たしたときに、なぜ日本はこれだけ急速に復興と近代化を遂げられたのか、草の根において教育が十分行き届いていたからだということが、内外の指摘では間違いなく言われているところでございます。

 今、決して楽な時代ではない、大きな変動の中にあって、改めて教育あるいは日本の持つ文化のあり方について考えていくべき時期だというふうに思っております。

 今、教育の分野はさまざまあります。家庭教育、地域教育、学校教育、この三つの柱がございますけれども、家庭教育についてはある程度、国家というものあるいは政府というものが、基本的に教育とか社会はこうあるべきものだということのヒントといいますか考えを示していくことが実は重要、そしてまた、教育の機会が教育費の負担とかあるいは経済力の格差で差がないようにすることが重要だと思います。

 さらに、地域教育については、これは学校や幼稚園、保育園などとの連携も必要でありますけれども、地域においては、今、私の周りでは、子ども会育成連合会とか青少年育成連合会とかが、地域行事等を通じて子供の健全な育成に非常に尽力している姿を、私は日々目の当たりにしております。学校と家庭と地域がいわゆる三位一体で教育を行っていかなきゃいけない。

 私の地元ではおやじの会というものがありまして、PTAのOBと現職が地域活動を一生懸命やっている。最近は余り聞かれなくなったことでありますけれども、おやじの背中を見て育つ、親の背中を見て育つという言葉がございますが、親が公のために一生懸命やっている姿を見せるということが非常に教育上喜ばしいといいますか、望ましいことだというふうに思います。

 そして三番目の柱、学校教育。ここから質問に入りたいんですけれども、幼稚園を含めて、教育の一般のあり方、私自身は子育てをしたこともあって、本当に子供を育てていくというのは大変なことだ。少子化対策として子供の諸経費を軽減するとか、あるいは本当に極端な言い方をすると、どんな立場でもどんな経済的事情でも、最後の、大学を卒業するぐらいまで余り負担を感じないようにやっていく必要があるんじゃないか。あるいは、そこに伴う学校の部活動や修学旅行とかの教育的な経費については税制上の優遇をしてあげるとか、いろいろなことをやっていかなきゃいけないと思います。

 さて、私立幼稚園。幼稚園についてひとつお伺いをしたいと思います。

 私も幼稚園の送り迎えをした人間でございますけれども、幼稚園というものが随分変わってきたなと思います。端的に申し上げますと、ただの幼児教育の機関としてではなくて、例えば本当に、今言われていますように保育機能とか、あるいは時によっては防災機能の中心を果たすという複合的な機能、つまり、さらに申し上げると、文部科学省の所管外のことまでとにかく目を配らなきゃいけない。住民とか親にとっては、幼稚園がどこの所管とかということは余り関係ありません。いかに機能的に幼稚園が変わっていくかということを我々は常に頭に置いておかなきゃいけないと思います。

 認定こども園というものができてきました。地域における子育ての支援事業を行う認定こども園がスタートしましたけれども、まだまだ園の数が不十分、ここに対して何をやっていくか。私は、二つあると思います。

 一つは、財源の措置をしっかりしてあげないと、こういった複合的な機能が果たせない。もう一つ、とりわけ私立幼稚園とか、後で申し上げる私学は、やはり寄附というものがすごく重要になってきている。寄附をしやすいような形をいかにするか。そして、機能が大きく広がってきた中で、LDやADHDなどの軽度の発達障害を持つグレーゾーンになる園児が増加している中で、これは本来厚生労働省の所管なのかもしれませんけれども、こういったものに対してしっかりと補助をしてあげなければ、複合的な幼稚園の機能が果たせない。

 このあたりについて、まず大臣の思いといいますか、お考えをお伺いしたいと思います。

塩谷国務大臣 遠藤先生におかれましては、教育の重要さを御理解いただき、また、父親として立派に頑張っていただいておりまして、またいろいろ御指導いただきたいと思います。

 今の御質問、幼稚園については就学前教育、改めて教育基本法や学校教育法の中でも明確にその役割が位置づけられたところでございますが、実際には預かり保育や地域の子育て支援等も含めて、大変大きな役割を担っておるわけでございます。

 その中で、私立幼稚園については、園数として六割、園児数として八割を占めるということで、この数字から見ても大変大きな役割を担っていただいておるわけでして、私立幼稚園の果たしている重要性にかんがみて、文部科学省としても従来より私学助成あるいは税制面での優遇措置の充実などを図ってきているところでございます。

 また、認定こども園につきましても、平成二十年度の補正予算について新たに財政支援を今講じているところでございまして、認定こども園、さらに私立幼稚園も含めて、その振興、支援策をより一層また充実させていきたいと思っております。

遠藤(宣)分科員 ありがとうございます。

 これは幼稚園に限らず保育園でも、親から見れば、本当に小学校に入るまでの教育というのはすごく心配、そしてまた大変だというのが実感であります。

 この中で、かつて、二〇〇一年の春から夏ですか、池田小事件というのがありました。小学校に包丁を持った男が乱入して、児童を殺傷するということがあった。

 最近、学校まで、あるいは幼稚園まででも本当に大丈夫なのかなという思いを多くの親が持っている。本当に子供というのはか弱い存在でありますので、多分、お子さんをお持ちの方は、子供が夜中に熱を出して、特に初めての子供だったら、この病気はひょっとしたら大変な病気かもしれないといって、病院に夜中に連れていくという経験をされた方は決して少なくないと思いますけれども、幼児の安全についてお伺いをしたいと思います。

 先ほど防災の拠点にもなり得るということを申し上げましたけれども、やはりガードマンを雇う幼稚園が出てきたり、あるいは緊急通報システムとか、そういったものを備えなきゃいけないというものが、親からの要望もあって、そしてまた、世上のこういった物騒な世の中になったりということもあって、幼稚園の負担がふえています。

 そして、さらに、今、三十年以内に関東地域で大きな地震が来る確率が九〇%以上。今、浅間山と桜島が噴火を同時にしているような時期ですから、私の福岡においても西方沖地震がありましたけれども、いつ何があるかわからない。となったときに、必ず防災拠点になります。そのときに、防災用品を常備しておかなきゃいけない。こういった、先ほど申し上げたようなさまざまな機能を持ち合わせていくことが求められている。

 さらに申し上げると、子供も、学童保育とか、さまざまな中で、いつどんなけがをするかわからない。けがをして、そこに対しての賠償を求められるということが恐ろしいですから、幼稚園とかが及び腰になっちゃうといけない。こういったものに対しての保険の制度をきちっと整えてあげなきゃいけないんじゃないか、こういうような思いがございますけれども、この幼稚園あるいは保育園を中心とする幼児の安全という面についての大臣のお考えを賜れればと思います。

山中政府参考人 先生、幼稚園における安全対策ということでございますけれども、特に私立の幼稚園におきますガードマンですとか、先生の方から防災用品の備蓄の件がございましたけれども、例えば、急に心室細動があった場合のAEDの設置でございますとか、そういうふうなものについて、どのような状況になっているのかというところを文部科学省でも調査しておりまして、平成十九年の三月末の時点でございますと、全国の私立幼稚園のうち、ガードマンを置いている幼稚園が一二・三%、また、十九年度中に、AEDにつきまして、設置する予定を含めまして、七百八園、八・八%の幼稚園が設置しているという状況でございます。

 文部科学省といたしましては、子供がやはり安全に過ごせる、そういう場所であってほしいと思っておりますので、AEDを初め、あるいはガードマン、そういう安全対策についてもしっかりと、幼稚園、あるいは都道府県でもそういうものについて支援してもらいたいということを促しているところでございます。

 また、御指摘ございました、災害があった場合の給付でございますけれども、現在、独立行政法人のスポーツ振興センターが災害共済給付を行っております。この制度におきましては、幼稚園の園児などの学校の管理下における子供、児童生徒に対して、そういう災害に対する給付を目的としたというものでございますので、例えば支援事業のような形で、園児でない子供、〇―二歳の子供ですとか、そういう方、あるいは幼稚園の教育活動ではない子育て支援事業、これについては、今、直接対象になっていないという状況にございます。そういう場合、幼稚園での子育て支援事業も行っておりますので、今のところ、民間の傷害保険への加入を促しているというのが現状だというところでございます。

遠藤(宣)分科員 ぜひとも、よく、我々政治家の間では、子供は日本の宝とか、教育は将来への投資とか、こういう言葉が使われますけれども、具体的に本当に整えていく時期にあろうかと思いますので、何とぞよろしくお願いいたします。

 さて、私立の幼稚園だけでなくて、公立あるいは保育園も今のことは十分当てはまると思いますので、何とぞよろしくお願いいたします。

 そしてさらに、私立の中学校、高校というのが今多くございますけれども、基本的に、私は、教育というものは市場原理にはなじまない、学校の経営とかですね。もちろん、行き過ぎたものというのはいつの時代もありますけれども、個人の安心、安全とか、あるいは教育の問題というのは市場原理にもともとなじまないと思います。

 そういった中から、しっかりとした経営基盤をつくっていかなければ、普通の会社みたいに、突然経営が悪くなって閉校になりましたとか、生徒が集まらなくなりましたとかという話が起きてはちょっと困る。そんな中から、資産運用の収益への非課税とかいう、こういった要望も寄せられているわけであります。

 私は、自分も私立の中学、高校を出ているんですけれども、母校に聞くと、こんなに今大変とは思わなかったんですね。有名な学校になれば、私、この前、東福岡高校というところと博多女子高校というところに行ってきたんですね。東福岡高校というのはラグビーで優勝して、サッカーとかさまざまなスポーツで非常に優秀な成績をおさめている。さらに、勉強も結構よくて、進学も非常にいい。こんな高校だから随分余裕しゃくしゃくでやっているんだろうなと思ったら、いや、そうでもないんですよという話を聞いた。

 つまり、今、生徒が、親の経済的事情でやめる人間が出てくる、あるいは、建築物とか施設が耐用年数が過ぎて建てかえなきゃいけないとか、こんなようなことがある。有名になればなるほど、例えば大会に出場して寄附金を集めるのも本当にひいひい言う。よく、甲子園の出場校があると、今までは、きっと町を挙げてばっと寄附が集まるだろうなと思ったけれども、そういう時代じゃないからこそ結構大変になっているという話を聞いて、割とショックを受けました。

 学校が成り立つのは、幼稚園と同じで、国の援助と、そしてまた、後で文化の話にもかかわる、文部科学省は基本的に寄附がしやすい社会をつくっていただきたいと私は思っているんですね。寄附で成り立つということは、やはり国家国民が重要だと思っている分野に対して、自分がその思いを込めてお金を出すということがやりやすい社会にしなきゃいけない。こちらのところ、私学に対しても寄附がしやすいような税制の優遇をぜひともしていただきたいというふうに思っています。

 そして、彼らが今大変なのは、耐震建築。私学であろうが、公立であろうが、命に差はありませんので、私、地震はそんな遠くない時期に来るんじゃないかと思っているので、ぜひとも耐震対策についてもきちっとやっていただき、また、親の経済的事情で退学者が出ないような奨学金制度というものをやっていただきたいと思います。

 さらに、昨今、携帯電話の所持についての議論がございました。私自身も郵政省の出身なので、携帯が普及する前に、さまざまな問題が起きるだろうということで、あるところでもいろいろ警告を発したのでありますけれども、基本的に、親が最終的に管理、責任をする。しかし、例えば塾に行く、おけいこごとに行くときには携帯を持たさないと連絡がとれないという、その両面をきちっとバランスをとってやっていただかなきゃいけないというのが一つ。

 そして、もう一つは、今、携帯が普及しているから、逆に、学校から公衆電話が引き揚げられているんですね。携帯を禁止するならば、ぜひ、文部科学省はNTTに対して、あるいは総務省に対して、公の場所においてきちっと公衆電話の設置というものをやってもらいたいということをぜひとも言っていただきたいと思います。

 これが幼稚園あるいは私立の中学校、高校についての私の願いでございますので、ぜひともその観点で御検討いただければと思います。

 次の質問に参りたいと思います。

 今、オリンピックが、東京オリンピックをかけて、十月に結論が出るということがありますけれども、スポーツというものは本当に我々の夢をかき立てるものであります。我々のそれぞれの地域でも体協などがいろいろなところで頑張って、スポーツをこういうふうに盛り上げていますけれども、例えばゲートボール、グラウンドゴルフ、パークゴルフ、高齢者向けのスポーツも非常に盛んなんですね。高齢者の体力維持や健康維持や楽しみになっている。本当にすごい。私なんかは、高齢者の健康維持と目標を持たすために、ゲートボールとかを国体などの種目にだって将来したっていいんじゃないかなというふうに思っています。

 そしてまた、地域でバレーボールやソフトボール、ソフトバレー、野球、卓球、インディアカ、バドミントンとか、いろいろなスポーツ大会がありますけれども、今、地域のつながりとか結束が緩くなっている中で、スポーツというものがあることによって地域のつながりというのがすごく深くなっている。こういう意味で、地域対策、地域のそれぞれの治安だとかいろいろな行政の肩がわりをするためのまとまり、あるいは高齢者の健康増進、そして健康維持のためにも、絶対にスポーツというのは、皆様の所管を超えてかもしれないけれども、地域対策であり健康対策だと思います。文部科学省はスポーツということだけで限定されているかもしれないけれども、ぜひとも積極的に外に対して言っていっていただきたい。

 さらに申し上げると、武道というのもあります。道という字がつくものは、必ず型から入って、精神の健全性まで求めるものですから、これは教育に対しても絶対的にいい、日本人の美徳の形成の源になっていると思います。

 こういった観点で、従来の文部科学省が所管しているスポーツという観点を、極力さまざまな複合的な機能に注目していただいて施策を展開していただきたいと考えておりますけれども、大臣のそこら辺についての御所見をお伺いしたいと思います。

塩谷国務大臣 スポーツにつきましては、今委員おっしゃったように、まさに心身とも健全な国民の育成について大変重要だと思っておりまして、この振興は極めて大切だというふうに受けとめております。

 私も地元へ帰ると、必ず毎週いろいろな地域でやっているものを大変すばらしいなと思って、できるだけ顔を出して皆さんにまた激励をして回っているんですけれども、そういう意味で、文部科学省としても、まず、世界で活躍するトップレベルの競技に対しての育成強化、そして、地域スポーツの環境整備、さらには、生涯スポーツ社会の実現、そして、学校体育と運動部活動の充実を通じた子供たちの体力増強等、こういった観点からスポーツの振興に取り組んでおりまして、予算的には非常に少ない予算なんですが、地域と連携してスポーツの振興に取り組んでまいりたい。

 また、オリンピック等も、私は経験した年代ですから、先生の年代等はオリンピックなんか経験していない、あの感動、夢を与えるようなオリンピックあるいはパラリンピックはぜひまた招致してまいりたい。そんな考えで、しっかりとスポーツ振興に取り組んでまいりたいと思います。

遠藤(宣)分科員 私は、オリンピックの前の年にオリンピックの競技場の隣の病院で生まれた人間ですので、オリンピックに対しても相当思い入れがあって、ぜひとも日本でのオリンピックの成功を望んでおります。

 今申し上げたように、従来の文部科学省の所管しているスポーツというものは、言ってみれば、厚生労働省が今扱っているかもしれない健康増進の面においても、あるいは総務省が持っている地域振興の面でも、さまざまな部分で、実は地域地域で物すごい大きな役割を果たしていますので、どうか積極的に支援をしていってあげてくださいということをお願い申し上げたいと思います。

 そして、次の質問に参りますけれども、今度は文化についてお伺いをします。

 私もバックパッカーでいろいろなところの国を回りますけれども、例えばイタリアとかに行くと、ああ、このルネッサンスというのはメディチ家の援助とかこんなので盛り上がったんだな、あるいは、フランスの文化、ブルボン王朝がバックアップしたんだな、こんなことを痛感します。一見、見かけ上、奔放なラテン系のフランス人とかイタリア人。ああいう文化を見ると、やはりこの人たちは相当立派な民族なんだなという思いを持ってしまいます。

 私の選挙区にもいろいろな歴史の文化がございますけれども、結論からいうと、この文化というものは、昨今言われているスマートパワーとかソフトパワーの源だと思います。私もソフトパワー研究会というのをやっているんですけれども、これに対して財政的な援助とか、あるいは先ほど申し上げたような寄附をしやすいようにするということが私は国益につながると思います。

 日本というのは、万世一系の天皇家で連なっている長い長い歴史を持っています。こんな中で、私の選挙区には、板付遺跡という、お米が初めて縄文時代の末期から弥生時代の頭にとれた、そんな遺跡がありますけれども、この文化についてどうとらえるのか。

 要するに、日本のソフトパワーの源泉であって、そして、ああ、日本というのはこんな文化を持っていて、こんな長い歴史を持っているんだということが日本人のアイデンティティーと自信につながるという意味において、非常に教育的効果が高いと私は思います。しかしながら、文化というのは一部の人たちが大事にしているだけだろうというような風潮になりますと、どんどん日本が廃れていってしまう。

 そして、ある部分、文化活動で食っていけるように、同時に知的所有権の保護というものもしっかりとやっていかなきゃいけないと思います。

 また、地域において、文化活動、お茶とかお花とか、私、柄にもなく、初めて和装の、和服の審査員なんかもやったんですけれども、和食とか、日本独自の文化に対しての海外への影響力というのは極めて大きい。クリントン国務長官も明治神宮とかに行っていますけれども、外国から、日本の文化というのはあこがれ。そして、そこの影響力というのは、日本人が思っている以上にはるかに高い。例えば食の分野でも、おすしやあるいは和菓子というものが相当海外で評価をされている。

 自分のことを過小評価することなく、このソフトパワーとかあるいはスマートパワーとしての文化、そして、長い歴史を持っていて、そういう文化を持っているという自信が、教育とかあるいは対外的な日本の威信と尊厳というものを高めるという、その国益の観点からどう評価されるか、そしてまた、これをどういうふうにやっていくか、大臣の御決意をお伺いしたいと思います。

高塩政府参考人 今先生からお話ございましたように、近年、文化芸術が持ちます人々を引きつける魅力ですとか社会に与える影響、いわゆる文化力が国の力、国力であるということが、ソフトパワーというお話がございましたけれども、幅広に認識をされております。

 私ども文化庁におきましても、その文化芸術、先生お話ございましたように、我が国には、古い伝統文化から現代文化に至るまで、すばらしい魅力ある文化があふれておりまして、まず私ども日本人がしっかりとそのよさを認識するということ。それから、さらに、日本の国力ということを考えましても、それを効果的に今発信していくということが必要だと思っております。

 従来から、文化庁でも、外務省や国際交流基金、経済産業省などと連携してそうした取り組みを行っておりますけれども、昨年から、文化発信に関する懇談会という長官の私的機関をつくりまして、その中間まとめをまとめておりますけれども、その中でもやはり、文化発信というのは戦略的に行うということ、それから、これまで行っているさまざまな事業をより効果的に行っていくことなどが指摘されているところでございまして、先生の御指摘を踏まえて、これからも文化庁といたしましては日本文化の効果的な発信に努めてまいりたいというふうに考えている次第でございます。

遠藤(宣)分科員 ありがとうございます。

 過去を見れば、浮世絵が印象派に相当な影響を与えた。にもかかわらず、日本からの文化の流出というのをとどめられなかったことは、私たち、非常に悔いるところが大きいと思います。今、今日より早い日はありませんので、日本の文化というものに対して、これは国力そのものだという認識をまず日本人が共有するということが極めて重要な時期に差しかかっていると思います。

 さて、次の質問は、生涯教育についてお伺いをしたいと思います。

 いわゆる人生八十年という時代の生涯教育。私、これも、地域のいろいろな校区で文化祭に行くんですけれども、素人でこんなものをつくれるんだというぐらいのすばらしい作品がいっぱい並んでいる。人間というのは、それぞれ目標を持って日々学習する人というのは、年齢を重ねてもこれだけ元気なんだなということを痛感します。

 元気で長生きという言葉をいろいろな場所で聞きますけれども、現実に地域を回っていると、生涯教育というのは、大上段に構えることなく、地域地域で本当に、楽しみと、自分自身に対しての自己啓発、こういったものを刺激するようなものにどのくらい接することができるかということが重要だと思います。

 現実に、高齢者が遠くに行けません。身近なところで学ぶしかありませんから、そんなに車に乗って行くわけでもない。歩いて行ける地域地域の公民館とかそういったところで、サークル活動を通じたり、あるいは人との触れ合いの中で教えてもらったり、こういったことが実は生涯教育の現実に今皆さんが求めているコアの部分だと思います。所管は異なりますけれども、老人クラブとかもそうだと思います。地域地域で生涯教育をやっていくということですから、ぜひともこのあたりについて文部科学省の御決意とお取り組みをお聞かせいただければと思います。

清水政府参考人 ただいま御指摘いただきましたように、高齢化社会が進展していく中で、それぞれの地域において、生涯を通じて健康で生きがいのある人生を過ごして自己実現を図っていくということは大変重要になってきているというふうに考えております。

 御指摘のように、公民館における活動でありますとか、あるいはさまざまな学習活動、団体における活動、どんどん活発になってまいりました。先ほど御指摘いただきました学校の関係でのおやじの会というのもまさにその一環だろうと思いますし、それがある部分で、それぞれの生きがいであると同時に、地域におけるかかわり方であり、あるいは新しい意味での働き方につながっていく、そういうものであろうというふうにも思っております。

 私どもとしては、実際上、地域の場ということで市町村の支援は中心になっており、私ども、そういう意味で、いろいろな形で国としてやるべきことを支援させていただいているということでありますが、基本的に、まさに御指摘いただいたような考えのもとに、私ども、この学習活動を特に奨励してまいりたい、このように思っております。

遠藤(宣)分科員 ありがとうございます。

 本当にこの生涯学習、多分、私自身の認識は、文部科学省は今、実際、プラスの面での厚生労働行政までやっているんだと思っているんですね。私は厚生労働委員会にも入っているんですけれども、今、とにかくいろいろな、年金の問題とか医療の問題とかいっぱいあります。それはそれですごく重要なんですけれども、行政というのは人にやはり生きがいや、あるいは元気を与えなきゃいけない。そういう意味で、言ってみれば、厚生労働省でなかなかそこまでいけない部分、文部科学省、ぜひ頑張って、人に生きがいを与える、そして地域に活力を与える、そして安心を与える、安全を与える、こういった攻めの行政をやっていっていただければなというふうに思います。

 今、大きな社会の変動、経済が百年に一度の危機と言われています。実際に、中国もオリンピック後に経済がこれだけ落ち込んできつい、アメリカもきつい、そしてロシアもきつい、EUもきつい。本当にこんな中で、日本は目に見えない大きな波の中で苦しんでいます。後世の歴史の教科書に、二十世紀の終わりから二十一世紀の間に日本は経済的にも社会的にも大きな困難に直面したけれども、その時期にまかれていた教育とか文化という種が後に開花して、そして日本は前と同じように立ち直ることができたというような記述にぜひしていただきたい。

 そういった意味を込めて、文部科学行政のあり方、今正念場だと思います。最後に大臣の御決意をお伺いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

田野瀬主査 時間が参っておりますので、簡潔にお願いします。

塩谷国務大臣 今委員おっしゃったように、文部科学行政については、国家百年の大計という意味で大変重要だと受けとめて、特にこういった経済状況のときには、将来の発展のためにしっかりとまたこの充実を図ってまいりたいと思います。

遠藤(宣)分科員 ありがとうございました。

田野瀬主査 これにて遠藤宣彦君の質疑は終了いたしました。

 次に、井澤京子君。

井澤分科員 自由民主党の井澤京子でございます。

 きょうは、予算委員会の分科会で質問の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。限られた時間でございますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 私の選挙区は、京都六区という、京都・宇治から以南の十二市町村から成ります。京都府下二十六市町村ある中の半分が私の選挙区ということで、大変大きな選挙区を日々駆け回っているところですが、十二市町村、京都府下唯一の村、南山城村までありまして、それぞれ地域が歴史と文化と自然にあふれて大変いい町並みを持っております。

 きょうは、私が事務所を持ち、そして住んでおります宇治市の歴史、文化、伝統についてお伺いしたいと思っております。

 実は、昨年、ちょうど一年前の予算委員会の分科会におきましても、源氏物語の千年紀にちなんで地方自治法施行六十周年関連施策の記念硬貨や記念切手の発行について、あるいは四百年前の太閤堤の史跡指定に向けた取り組みなどについてもお伺いをさせていただきました。その後、昨年の十一月には、文化審議会において、宇治市が文化的景観として重要文化的景観に選んでいただくなど、昨年は、宇治市やその周辺地域にとっては、まさに分岐点とも言えるような大きな節目を迎えた年でありました。

 私も、ふだんは文部科学委員としていろいろと活動させていただいておりますけれども、きょうは、地元の歴史、文化、伝統ということに絞り、御質問をさせていただきたいと思っております。

 まず最初に、太閤堤についてです。

 太閤堤は、私から改めて申し上げるまでもありませんが、簡単に御説明をいたしますと、京阪宇治駅という駅がございまして、その西側一帯に計画された土地区画整理事業という事業が宇治市を中心に進められておりまして、その発掘調査が一昨年の六月から開始され、その調査の中で、宇治川旧護岸遺跡太閤堤が発見されました。太閤堤とは、四百年前、豊臣秀吉が、伏見城築城に伴い、宇治川の川筋のつけかえに関係して築いた堤防のことです。何せ四百年以上前の一五九四年と推測される遺跡になります。

 私も、発見当時、現地を視察しましたが、その余りのスケールの大きさや迫力に圧倒されまして、これが四百年以上前につくられたそのものなのかと。当時はどういう形でその護岸をつくったのか、道路網ももちろんありませんし、人がどういう形でその重い石を運び、河川の土木、河川工学、そういう時代は、ないわけですから、どのような形でそこが築かれたのかというのはかなり工学的にも注目をされていると、昨年の答弁でも文化庁の方がおっしゃられておりました。

 その後、宇治市では、太閤堤の国の史跡指定を目指してこの場所を、世界遺産が宇治にはありまして、平等院の鳳凰堂、宇治上神社、また、昨年指定されましたこの太閤堤の真横には、奈良時代から残るウジノワキイラツコの墓というのがあります。そして、宇治茶はもう御存じでいらっしゃるかと思いますが、宇治茶とも連携連動させて、宇治茶と歴史・文化の香るまちづくり構想というのが宇治市からも発表され、周辺地域を新たな観光集積地の目玉として、歴史まちづくり法なども活用しながら、今後一体的な区画整理事業に向けた計画を策定中と聞いております。また、昨年三月には宇治茶手もみ製茶技術が京都府の指定無形民俗文化財にも指定されるなど、宇治とお茶というものはもう密接に関連して、歴史的にもずっと受け継がれているところでございます。

 先日、二月の十六日に宇治市が発表した平成二十一年度の一般会計の当初予算案では、宇治川太閤堤跡保存活用計画策定として四百万円を予算計上し、この六月には宇治市のまちづくり構想を発表すべく、現在、計画策定中と伺っております。

 このように、太閤堤の史跡指定に向けた取り組みが具体的にされる中で、現在は、この一月に宇治市の教育委員会から意見具申書が文部科学大臣に提出され、国ではその中身について精査中でいらっしゃると伺っております。

 そこで、まず文化庁にお伺いいたします。

 今後、この史跡指定に向けた検討の中で、順調に進んだ場合の今後のスケジュール、また史跡に指定されますと、民間の土地区画整理事業が中止される可能性があります。宇治市がその土地を公有化するに当たり買い取ることになるわけですけれども、それに対して、国がどのような補助、支援をしていただけるのか、お伺いしたいと思います。

高塩政府参考人 今先生御指摘のとおり、宇治川の太閤堤跡の史跡指定につきましては、既に宇治市の教育委員会から意見具申がなされております。

 文化庁といたしましては、この宇治川の太閤堤跡につきましては、我が国でも珍しい、築造の年代と造営主体者がともに判明をしている堤防遺構でございまして、しかも、その築造者が豊臣秀吉という歴史上極めて著名な人物であることが判明しているものでございまして、歴史上の価値が極めて高いというふうに考えております。現在、史跡指定に向けての手続を進める準備をいたしているところでございます。

 具体的には、四月に行われます文化審議会に文部大臣の方から諮問をいたしまして、文化審議会の方において調査審議の上、国指定史跡として価値があるというふうに判断された場合には、大臣への答申というのがなされまして、その後、夏、初夏といいますか七月の下旬ぐらいだと思いますけれども、官報告示によりまして指定というスケジュールを今考えているところでございます。

 また、先生からお話ございました公有化の話でございますけれども、地方公共団体、宇治市がこの史跡指定地を公有化する場合には、現在、事業費の八割を補助するという仕組みがございます。また、その後史跡の保存整備というものを行う場合、今四百万円の予算を予定しているというお話でございましたけれども、国は事業費の五割を補助するという制度がございますので、今後、宇治市の要望を十分に踏まえて、適切に対応してまいりたいというふうに考えております。

井澤分科員 ありがとうございました。

 七月下旬の指定に向けて、また公有化に向けての国からの支援を本当に全力的にお願いしたいと思っております。

 次に、重要文化的景観についてお伺いいたします。

 冒頭に申し上げましたとおり、昨年十一月の二十一日に、文化審議会において、指定をするという発表がありました。京都府内では初めての重要文化的景観、また、都市景観として国内で初めて選定されたというものでございまして、私が説明をするよりは、これをまず見ていただいた方がいいかと思います。

 これは、私が、その指定を受けた発表があった直後に、宇治橋から宇治川の上流域に向かってこの一帯の景観が重要文化的景観であるという写真を写しました。見ていただければ、十分にすばらしい景観だということをわかっていただけると思います。本当に、平安時代、山紫水明を思わせるような宇治川流域の景観、そしてこちら、宇治上神社と平等院という世界文化遺産が宇治川の両側にございます。宇治というのは、伝統産業が宇治茶でありますので、宇治茶の生産と販売が重層的にずっと今まで積み重ねられて、そこがまた複合的に、文化的景観の一つの選定の基準になったとも言われております。このように、自然と文化が融合して複合的な景観を生み出したことが重要文化的景観の選定理由だと伺っておりました。

 その後、先週十二日に正式告示をされた中、私も実はこの景観の近くに住んでおります、今までの歴史の中、実際私たちも日常生活をしている中で、それが文化になるというのは大きい意義ではないかと思います。これこそ生きた文化財であり、生かし続けていかなければならないと思っております。重要文化的景観に選定されたということで、今後は、観光客のさらなる誘致や、あるいは地域活性化の観点からも地域経済には大きな影響があるものと思います。

 その後、ちょうど二月の十六日に京都新聞で、重要文化的景観を記念してということで特集の記事が出されました。久保田宇治市長のあいさつに始まりまして、地元の茶業関係者、あるいは病院から教育関係者に至るまで、歓迎のムードで、このような記事もありましたことを御報告させていただきます。

 これまで、文化庁の担当者の方が何度も宇治市に足を運んでいただいて、地元の関係者ともいろいろと意見交換を重ねていただいたことには、この場をおかりして改めてお礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございます。地元では、文化庁の担当者が来ている、来ているということがかなりうわさになっておりまして、皆さんにも元気を与えていただいているのではないかなと思っております。

 そもそも、平成十六年に文化財保護法の改正というのがあり、改正後、都市の文化的景観についても対象とされるようになったと伺っております。全国で二千三十二件もの調査をする対象の箇所があり、その中でも六十六件が文化的景観に選択されたと伺っております。やはり、これからも都市の文化的景観をさらに保護する必要があると思います。

 そこで、浮島文部科学大臣政務官のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

浮島大臣政務官 井澤委員におかれましては、常日ごろから、伝統文化そして芸術の面でもさまざま御指導いただき、本当にありがとうございます。

 今委員御指摘のとおりに、歴史と伝統が息づく都市の文化的景観をさらに保護する必要があるのではないかということは、本当に私も大切なことだと思っております。

 文部科学省といたしましても、地域における人々の生活や生業等を通じてつくり出されてきた景観を重要文化的景観として選定をし、その保護を図ってきたところでもございます。これまでは、重要文化的景観につきましては農山漁村地域の景観を中心に保護が進められてきたところでございますけれども、歴史的、伝統的な特色を示す都市や産業地域における景観についても文化財として保護を図っていくことが重要であると考えているところでございます。

 こうした観点から、文科省といたしましても、本年二月、宇治の文化的景観を、都市における初めての重要文化的景観として選定をさせていただいたところでもございます。

 また、文科省といたしましても、今回の宇治の文化的景観の選定のさまざまな経験、本当にすばらしい経験をさせていただいたんですけれども、経験を生かしつつ、今後とも、このような、都市における文化的景観を守り後世に伝えていくという取り組みをしっかりと進めていきたいと考えているところでございます。

    〔主査退席、小野寺主査代理着席〕

井澤分科員 浮島政務官、ありがとうございました。

 これからも引き続き、伝統文化を引き継いでいくということで、またお力添えをいただきたいと思っております。

 さて、次の質問に移らせていただきます。

 御存じの方もいらっしゃるかと思いますが、イタリア、トスカーナ州にオルチャ渓谷という、世界遺産として農村の景観が文化的景観に登録をされ、高い評価を受けている地域があるそうです。イタリアのトスカーナといえばワインをイメージされる方もいらっしゃるかと思います。この農村風景の中に、歴史的建造物と、モンタルチーノという世界的に有名な地域銘柄のワインの生産地として、そのブランド力がこの景観に登録されたことによってさらに強化をされていると聞いております。今回の宇治市においても、歴史的建造物と宇治茶というブランド強化にそのまま置きかえることができるのではないかと思っております。

 宇治市においては、今後さらに、重要文化財が集中する地域について重要文化的景観の選定に向けて準備を進めているようです。

 特に白川地区という地域がありまして、平等院の奥の院と呼ばれる、平安時代の白川金色院跡の国史跡指定に向けて、今地域の皆様方がいろいろな形でまちづくりを行っているところでございます。宇治市のまちづくり条例に基づいて白川地域のまちづくり協議会が第一号に認定されまして、住環境に配慮した地区計画づくりを進めていらっしゃいます。

 昨年の十一月に、私も、白川まちづくり協議会の皆様方が催されました白川金色院平安ロマンの夕べという行事に伺わせていただきました。五千人もの方が訪れた。これも本当に、地域のまちづくりの皆様方がお金を集めて自分たちで企画をして進められたというような運動も起こっております。このようなイベントを開催することによって、有形無形の歴史遺産や白川ブランドのお茶を活用したまちづくり、さらに重要文化的景観の追加選定を目指した地域ぐるみでの積極的な活動を行っていらっしゃっております。

 先ほど、ワインとお茶を置きかえましたが、これが白川の玉露、白川区のまちづくり協議会の皆様方と地元のお茶の生産の皆様方が一緒になってつくった、これが一つの、白川玉露というお茶のブランドでございます。御紹介をさせていただきました。

 では、早速質問に入らせていただきます。

 宇治市が重要文化的景観の第一号に選定されて、改めてその価値はどこにあったのかということ、そして、重要文化的景観の保護推進事業として宇治市が三百万円の予算を計上しておりますので、具体的に、宇治市として今後どのような取り組みが可能になるのか、そして、国はどのような支援を今後していただけるのか、お伺いしたいと思います。

高塩政府参考人 御質問のございました宇治市の文化的景観につきましては、宇治川に代表されます自然景観を基礎としながら、その歴史の中で重層的に発展した、宇治地区の市街地とその周辺に点在する茶園によって構成される茶業に関する独特の文化的景観として非常に価値が高いということが評価されまして、去る、本年二月十二日に、都市の文化的景観としては我が国として初めて重要文化的景観として選定を行ったというものでございます。

 宇治市におきましては、今回の重要文化的景観としての選定を契機といたしまして、今後、文化を生かした観光の促進や宇治茶のブランド力強化に向けた取り組みなどを検討しているというふうに伺っておりますけれども、文化庁といたしましても、そうした取り組みが文化的景観の保護の充実や地域の活性化につながることを期待いたしておるところでございます。

 文化庁といたしましては、この重要文化的景観につきましては、その調査、それから計画策定の事業、さらに、重要文化的景観の保存のために必要と認められている物件の修理、修景、復旧等いわゆる整備につきまして、都道府県または市町村が行う事業につきまして、二分の一、五割の補助を行うということにしております。

 宇治市に対しましては、この選定以前の平成十九年度には、いわゆる調査について、また二十年度については、いわゆる保存計画の策定について、その事業費の二分の一を支援しておりますけれども、今お話のございました二十一年度について、宇治市からは、追加の調査、計画策定さらには案内板の設置などの整備等につきまして三百万円の事業を予定しているということ、お話がございましたけれども、これにつきましても二分の一の補助を私どもは行いたいというふうに考えております。

 今後とも、宇治市の要望を踏まえまして、この文化的景観の保護につきまして必要な支援を行ってまいる考えでございます。

井澤分科員 ありがとうございます。

 せっかく全国で第一の重要文化的景観に選定をしていただきました。これは、次のまた千年、十年、二十年ではなく次の百年、千年に向けて、この重要文化的景観を残していかなければならないということを御認識いただいているかと思います。引き続き国の方からも支援をしていただき、この第一号をモデルケースとして、この景観選定が全国各地に広がり、それが、地域活性化、地域の観光や経済産業の活性化につながるような御支援を長期的な視野で御検討いただきたいと思っております。

 では、次に、もう一問だけ重要文化的景観についてお伺いをしたいと思っております。

 第一次として、今回二百二十八ヘクタールの地域が、宇治橋から上流部分について景観を選定していただきました。そのほかにも、宇治市では今後、太閤堤も含めた地域まで重要文化的景観に含まれるように、追加選定に向けた申し出を検討していると聞いております。

 第二次で、茶畑が点在する、先ほど御紹介しましたこの白川のお茶があります白川地区、そして第三次では、宇治川に沿って上下流部分の宇治地区の拡大、そして第四次では、黄檗山万福寺、御存じでいらっしゃると思いますが、黄檗地区、東宇治の方も含めて追加指定としていただくよう、地域住民との話し合いも含め、準備を進めていることは文化庁も御存じでいらっしゃるかと思います。

 文化庁にお伺いいたします。

 それぞれの地区による今後の追加申し出が行われた場合に、重要文化的景観の追加選定の見通しについて、現段階でわかっている中、どのような形に今後なるのか、お考えなりスケジュールをお聞かせいただきたいと思います。

高塩政府参考人 宇治市におきましては、現在、選定いたしました宇治地区を中心とします今回の選定の範囲の拡大ということにとどまりませず、先生お話がございましたように、いわゆる茶畑が広がる、南の白川地区、さらには、これは北になりますけれども、黄檗山万福寺を中心とした地区も含めて選定範囲に広げまして、文化的景観としての価値をさらに高めていくために調査を進めておるというふうに伺っているところでございます。

 文化庁といたしましては、これらの地域につきましても文化的景観として評価し得る可能性は高いというふうに考えておりますが、今後、宇治市からの追加選定の申し出に基づきまして、適切に対応してまいりたいというふうに考えております。

井澤分科員 ありがとうございました。

 これからも文化庁の御担当者を初め皆様方にぜひ現地に入っていただき、今までは、世界遺産や重要文化財というのは、一つ一つ単体での選定であったと思います。私から改めて申し上げるまでもありませんが、全体とした景観を一つの景観として国で選定をする、それは重要なことであると思います。これは、引き続き文化庁の御担当者の方も宇治市に入っていただき、これからも調査を引き続き続行していただきたいことを、私からも改めてお願いしたいと思っております。

 最後に、ずっときょう、大臣、お座りいただいておりまして、このやりとりも聞いていただいていたかと思います。先ほど遠藤議員の方からも、伝統文化を守るということが国力、ソフトパワーが国力になるというようなお話もあり、私も、議員の話を聞きながら、私が質問することと随分重なってくるんだなというような思いでおりました。

 先ほども見ていただきましたように、私は、宇治橋からこの景観を見ますと、今国会で行われているような騒々しいことや、あるいは、今社会で悲しい事件や事故が起きているというようなことを本当に忘れさせてくれるようなここは景観でございます。この景観というものは、ここに立ちますと、私も悠久の歴史の自然の中で生かされているというようなことに気づかされ、これが一つの歴史観であるんだなと。これは教育にもかかわってくると思います。

 また、このような景観を見ますと、この景観を守り続けるために、例えばごみは落としてはいけない、落書きはしてはいけない、美化ということも意識づけるきっかけになるのではないかと思います。環境面についても、環境公共教育という部分にもつながっていくのではないかと思います。

 そして、これからの十年、百年先、平等院の神居御住職のお話を伺ったときに、これから千年先を見詰めて自分たちは考えていかなければならないということを私は伺って、それがずっと頭の中にあります。これからの千年ということを考えると、都市の景観や美観、東京に戻りますと、これだけ空が見えない高層ビルに囲まれた中で生活をしている。これからは、こういう都市観というのではなく、歴史、文化、伝統を次の千年に受け継いでいくというようなことも必要ではないかと思っております。

 大臣、きょうの私の質疑を聞いておられまして、この景観も見て、まだ何か京都には大臣になられて来ていただいたことはないと聞いておりますが、大臣の御感想なりお考えなりをお聞かせいただければと思っております。よろしくお願いいたします。

塩谷国務大臣 ワインもいいし、お茶もいいし、何か非常に気持ちよくなりまして、ぜひ宇治にもお伺いしたいなと思っております。

 文化的景観、私ももう十年前ぐらいに、景観条例をつくるべきだというようなことで仲間といろいろと勉強もさせてもらったし、やはり、文化というものが歴史の一つのあかしとして積み重なっていく中で本当の豊かさというものがあるんだと思っておりますので、我が国も戦後、どちらかというと、新しいものだけを追いかけて、古いものの方を切り捨ててきたような感じがします。経済的には大変な発展もしてきたんですが、果たしてそれで本当の豊かさを感じているかというと甚だ疑問があり、ある面では、経済がある程度のレベルまで来て、やっと文化に目が向いてきたかなという時期だと思っておりまして、ぜひ、我々、本当にかけがえのない文化財的な景観あるいは文化財そのもの、それをしっかりと継承して、今後もまたいい文化として発展させていく必要があると思っております。

 この前、ちょうど先ほどお話に出た源氏物語千年紀の式典に私は京都へ行ってまいりまして、大変すばらしい天気の日で、紅葉にはちょっと早かったんですが、京都のよさを少しでも感じたところでございまして、また機会があったらぜひ行きたいと思いますが、これは国民こぞってそんな意識を持って文化を大事にして、今後の我が国の発展に向けて、役所としても努力してまいりたいと思っております。

井澤分科員 ありがとうございました。

 京都にまた今度お越しになられるときには、宇治を初め、私の選挙区にはたくさんのいい歴史、文化、自然が薫る地域もございますので、ぜひ御案内をさせていただきたいと思います。

 きょうはどうもありがとうございました。以上で質問を終わります。

小野寺主査代理 これにて井澤京子さんの質疑は終了しました。

 次に、渡部篤君。

渡部(篤)分科員 自由民主党の渡部篤であります。

 文科省の皆さん方には、予算委員会の分科会、二回、いわゆる会津大学に関連した公立大学について質問しました。

 会津若松の市会議員に三十歳でなりました。二期やりました。県会議員、四期やりました。戊辰戦争以後、会津の人たちは、高等教育機関をどうしてもつくりたい、その願いがありました。文科省、総務省のおかげで県立の会津大学ができたわけであります。

 一九九三年に創立された県立会津大学は、コンピューター理工学科に特化した公立大学で、既に三千名の卒業生を送り出し、就職率もほぼ一〇〇%を維持し、確かなソフトウエア技術を持った人材として、産業界、社会の期待にこたえて活躍しています。

 創立時から国際化されており、現在でも、教員九十六名のうち、いわゆる外国人教員は三十六人を数え、講義は日本語、英語のいずれもよく、したがって、外国人留学者の多い大学院の講義の大半は英語で行っています。

 また、学生が核となっている大学発ベンチャーも、認定したものが十一件あり、地域の産業振興にも大きな貢献をしているところであります。

 会津大学学生の特徴は、コンピューターリテラシーに強いということに加え、まさにグローバルに活躍できる人材育成を実施しているということであります。

 しかし、今回の金融危機から発生した経済危機は、地方に大きな影響をもたらしました。会津地域についても、半導体企業のスパンション社は倒産寸前となり、雇用問題が拡大しつつあります。このような金融危機の発生原因の一つが、コンピューター技術とインターネット技術による情報の瞬時の流通であるとするならば、会津大学もその責任の一端を担っていることになりますが、使い方の是非の議論はともかく、人材育成は日本の将来にとって重要であることは変わらないと思います。

 今回の危機は、首都圏一極集中がそれを拡大しているように見えます。海外ではその緩衝地帯となっている地方が、日本の場合、既に破綻していることが、国民の将来展望をますます暗くしているように思われます。地域を活性化する拠点として、地方にある国公立大学の役割は今こそ重要であると考えられますが、その点に関連して、以下質問をしたいと思います。

 会津大学への県の経費は約五十億円であります。県の一般予算の〇・六%に相当し、大きな負担となっています。現在、国立大学は八十六校、学生数六十一万、公立大学は七十五校、学生数十三万とありますが、公立大学は地域振興の拠点であり、国策として地域振興を掲げるのであれば、国からの支援強化があってしかるべきと考えますが、総務省、文科省のお考えをお伺いいたしたいと思います。

徳永政府参考人 先生御紹介ございましたように、公立大学は、各地域で高等教育の機会を提供し、また、理工系のエンジニア、あるいは看護師、医師など必要な人材を育成しているわけでございます。大変重要な役割を担っていると私ども認識をしております。

 そういう公立大学の財政支援ということにつきましては、平成十五年までは医科大学、看護大学等に対し経常費の助成を行っていたわけでございますが、国と地方の財政に係る整理合理化という中で、こういったものを廃止してきているわけでございます。

 一方では、平成十四年度から、国公私立大学すべてを通じてすぐれた教育研究活動に対する各種の競争的な財政措置を講じてきております。そういったものを毎年毎年拡充してきておりまして、平成二十年度におきましては、大学改革支援事業で二十四件を採択し、そういった支援が二十七億円に達しているわけでございます。御紹介ございました会津大学につきましても、これまで数件採択をさせていただいているわけでございます。

 文部科学省といたしますれば、今後とも、こういう競争的資金というような施策を通じまして、公立大学に対する支援の充実、そういったことに努めていきたいと思っております。

望月政府参考人 公立大学の運営に要する経費でございますが、各地方団体の実態等を勘案しながら、普通交付税の基準財政需要額に算入をいたしております。

 具体的には、文科系の公立大学におけます学生一人当たりに要する経費として算出をいたしました単位費用を基礎といたしまして、学部や学科ごとに異なります財政需要を反映させました補正係数を用いて算定を行っております。

 大変厳しい財政状況の中で、地方には歳出の抑制努力が求められておりますが、この一方、御指摘のように、地域振興の観点からも公立大学の重要性につきましては十分認識しているところでございます。今後とも、両者のバランスをとりながら、各公立大学の運営に係る経費につきまして的確に交付税措置を講じてまいりたいと考えております。

渡部(篤)分科員 高等教育に対する公財政支出の対GDP比率は、OECD加盟国中、日本が最低と言われていますが、OECDでは平均一・一%に対して日本は〇・五。文科省はその増額に努力していることは承知していますが、ちょっとお聞きしたいのは、この公財政支出の積算の中に公立大学用の金額が含まれているか否か、お聞きしたいと思います。

徳永政府参考人 私どもの方がさまざま算定をいたしますときには、国から公立大学に対しまして、先ほどのような競争的な資金を通じた国庫補助、さらにまた、地方財政措置による公立大学への地方支出、こういったものが算定された数字でございます。

渡部(篤)分科員 つまり、県立大学の経費が交付税の積算根拠となっているということですね。

 文科省は、私から言わせれば、国立大学と私学助成をしている私学には関心があるが、公立大学への関心が薄いのではないか。高等教育への国の戦略の中に公立大学をどのように位置づけているのか。私は、県任せであるとか地方公共団体任せではなくて、国家戦略として公立大学に対するそういう戦略的なものはどうなのか、お聞きしたいと思います。

徳永政府参考人 先ほども冒頭に先生から御紹介ございましたように、現在、公立大学は、短期大学も含めて九十九校に達しているわけでございます。大学数という意味では国立大学を既に上回っておりますし、学部学生の数も十二万九千人、全体の五%弱ということになっておりまして、私どもとしては、公立大学は高等教育を担う重要な役割を果たしていると認識をしております。

 そういうことも踏まえまして、現在では、さまざまな大学に対する支援方策の中では、国公私立大学といういわば設置形態によらずして、全体を通じた競争的資金、これを拡充していく、そういった政策を展開しているところでございます。また、今後、中央教育審議会の議論の中でも、当然公立大学といったことについても議論をしたいと思っております。

 私どもとすれば、公立大学を視野に入れて高等教育政策を今後とも展開していきたいと思っております。

渡部(篤)分科員 ここで、国の財政支援と公立大学の法人化についてお伺いしたいと思うんです。

 公立大学の法人化については、平成十六年四月一日に地方独立行政法人法が施行され、既に三十九校が法人化されています。先行した国立大学独立法人は、将来民営化を目標とする、運営交付金を定率減額すると私は思っているのでありますが、文部省の人に聞けば、厳しい財政事情のもとで減額しているということであります。まあ、それはどっちでもいいんですが、結果として、国立大学運営費交付金は年一%減額され、私学助成予算も同様に年一%減らされている。国立大学法人と私立大学は不安に包まれています。研究については競争的資金が若干増額していますが、この基盤的経費の減少の大学教育への影響を私は心配していますが、教育に対する真水支援額はどのようになっているのか、お伺いしたいのであります。

徳永政府参考人 国立大学法人に対する運営交付金は、先生御承知のように、人件費、物件費等の区分あるいはその使途を特定しないいわゆる渡し切りの交付金となっておりますので、実際に例えば教育がどうなっているのか、幾ら使われているのかということは特定することは困難でございます。

 ただ、私ども、いわば予算の積算におきまして考えますと、例えば附属病院の分でございますとか附置研究所の分、あるいは特別な研究プロジェクト等を除きまして、二十一年度の予算案におきましては、学部、大学院の運営に必要な経費としておよそ七千百億円余りを計上しているところでございます。御指摘のように、十六年から五年間でそういった七千億円に相当する額は百七十二億円減額をされているわけでございます。

 そういう意味では、大変厳しい状況でございますが、私ども、国立大学が果たしている役割、そういったことは大変重要だと思っております。今後とも、ぜひそういう基盤的経費の確保に努力をしたいと思っておりますし、また、各法人におきましてもそれぞれ、外部資金を確保する等、あるいは諸経費を節減するといったことの中で、きちんとした教育研究活動ができるように御努力をいただきたいと思っております。

渡部(篤)分科員 私は、国立大学の法人化、あるいは私学に対するマイナス一、基礎研究のお金が少なくなっているのではないか。物理とか数学とか、ノーベル賞をたくさんもらったからこれはすごいなと思っていますが、今日本の高等教育で基礎研究の部門が少なくなって、応用研究というか産業にすぐ直結するもの、さっきから競争社会に対応するようなものにはお金を出すというんですが、基礎研究というのは競争社会とどうなのか、私はやはりそこら辺が大きな課題だと思います。

 確かめたいのは、国は公立大学に対しても同様の減額を要請しているのか。例えば会津大学は、私の記憶では、交付税積算額は二十五億円。財政危機の中できついですよ、福島県がそれだけの交付金を渡すのは。これは、法人化されて交付金で渡しているわけですが、それはどのようにお考えなのか、お聞かせ願いたいと思います。

徳永政府参考人 公立大学につきましては、会津大学のように地方独立行政法人化している場合の運営交付金、あるいは法人化していない場合の運営費、いずれにつきましてもどのように算定するか、これは、それぞれの地方財政措置といったものをもとにして、設置者である地方公共団体の権限と責任において判断をしているところでございます。文部科学省といたしましては、そのような金額の決定に対して何ら要請を行う立場にはございません。

渡部(篤)分科員 これは、財政が厳しい中で交付税で、一般財源で来るわけですから。我が会津にとっては、戊辰以来の夢でしたよ。ロシアからどんな優秀な、ノーベル賞をもらえるような先生が来て、そして、世界一のコンピューターの大学をつくりたい。総務省、文科省から応援していただいていますが、もっともっと応援していただかなければ私はだめだと思っています。

 次に質問しますが、大学の期待されている機能は、日本を支える高等教育が第一と考える。しかるに、日本の大学教員の大半は、興味ある自分の研究の実施に大きな関心を寄せ、教育はむしろ余分な仕事と考えるという文化があります。会津大学の経験によれば、約四割の外人教員は、まず教育、余った時間で自分の研究を、これを常識としています。そこで、効率のよい教育方法を常に探し、みずからコースウエア、つまり教材を工夫してつくっているんです。

 その点では、先進国はもとより、インド、中国よりも日本はおくれています。研究が、人類の知の拡大、並びにイノベーションを通じて産業力強化、それに最先端技術教育に間接的に重要であることは承知していますが、既に確立した分野の教育をしっかり実施するところにもっと支援すべきではないかと考えます。

 文部省にお聞きしたいのは、教育と研究に関する支援のバランスについてどのように考えているのか、お伺いします。

徳永政府参考人 私どもも、教育の重要性ということは十分認識をしております。中央教育審議会等におきましても、これまで、例えば大学院において、今先生御指摘のように、とかくそれぞれの研究室においていわば学生に研究を手伝わせるというような形での教育ということが往々にして行われたわけでございます。これについては、今先生から御指摘いただきましたようなコースウエアということを中核に、きちんとした体系的な教育活動を行うということを進めていきたいと思っておりますし、また、そういったことを財政的にも支援しているわけでございます。

 また、後段に御指摘いただきました、例えば私どもの競争的な経費の中で科学研究費補助金は二千億円弱でございますが、一方で、教育活動を主とする大学教育改革支援経費は七百億円余りだといったことのバランスをどう考えるかということでございます。

 私ども、金額の上では研究活動に係る競争的経費の予算額が非常に大きなものとなっておりますが、そのことは決して教育というものを軽視しているというのではございません。あくまでも、教育活動あるいは研究活動それぞれに要する経費を十分に勘案した上で、財政的な制約はございますが、そのもとで必要な予算を計上しているものでございます。

 繰り返しになりますが、私どもといたしますれば、十七年には中央教育審議会の答申の中での大学院教育、また、昨年の十二月にも学士課程、学部教育に関する答申が出ました。こういったことを踏まえまして、教育活動の充実といったことにこれからも鋭意努力をしていきたいと思っております。

渡部(篤)分科員 国立大学とかあるいは公立大学の法人化を順調に進めるのであれば、みずから計画を立てて、資金をみずから調達する仕組みを積極的に支援する必要があると私は考えます。

 米国やイギリスのトップレベルの大学は、それぞれ財団を持ち、大学経営の自由を確保しています。日本では、計画を立てても、実施のための資金となれば国に支援を頼らざるを得ず、しかも単年度予算です。大学学長に権限を集めたとしても、物、人、金の有効利用の裁量は不可能なのが日本の大学の現状だと思います。

 日本では、私学はそれに挑戦しているわけでありますが、法人化した大学も自立の精神が必要であり、そうなれば公的資金も生きてくるように思うのでありますが、いかがお考えなのか、お伺いします。

徳永政府参考人 先生御指摘のように、大学がいわば自立的に教育研究活動を展開していくために、法人がそれぞれ資金を調達するという手段を拡大していくことは大変重要だと思っております。

 そういった観点から、既に国立大学については、長期借り入れ、あるいは債券発行を単独で行えるような制度改正をしているわけでございます。一方で、公立大学法人制度におきましては、現在、余裕金の資産運用のほか、寄附金等による株式の保有が可能でございます。

 こういう資金の運用ということにつきましては、あくまでもその財源が地方公共団体からの財源によっているわけでございます。業務を安定的に運営するということがまず第一でございまして、その資金運用についても安全資産に限定をしております。しかしながら、一方では、今先生御指摘のような問題もございます。今後、適切な資金調達のあり方ということにつきましては、基本的には業務の安定的運営という視点が大事でございますが、そういった事柄について、関係省庁とも一緒になって研究をしていきたいと思っております。

渡部(篤)分科員 例えば、ハーバード大学では二兆円、慶応、早稲田は一千億円台の資金を財団を通じて集めている。そういうことによって、学生のための教育も本気になれるし、産業界との連携もよくできる、私はそう思うんですよ。これは、法人化された国立大学、公立大学で十二分に対応していただきたいと思います。

 次に、学部教育の強化についてです。

 日本では、初等中等教育に対して文部科学省は努力をしており、また大学院教育も研究面での支援を強化しています。しかし、学部教育についての現状は空白と言ってよいのではないか。若者の生涯の基盤は、大学入学直後から二年までの、夢と新鮮な気持ちにあふれた時代の体験で決まると言ってよいと思います。文部科学省も最近になってそれを再認識し、学士力向上と言うようになってきていますが、システム化されていません。

 米国、イギリスは、学部教育でその大学に個性の継承を図っている、カレッジ制度。大学院はプロ養成のための専門教育であり、人格形成、基礎学力は学部教育でつくられる。学部教育が充実すれば高校教育も生きてくると思います。

 例えば、高校と大学の学部の連携といった構想はいかがなものなのか。現状の高等専門学校の発展にもつながるのではないかと私は思います。大学が高校まで視野に入れた中等初等教育支援に積極的になれば、国民は高等教育機関である大学への国の財政支援に本当に関心を持つし、支持してくれると思うんです。これについてどう思うか、お伺いします。

徳永政府参考人 御指摘のように、私ども、これまで、いわゆる学部における教育といったことについては、さまざまな施策の面で不十分な面があったということは否めないと考えております。

 先生御指摘もございましたように、学士力ということに関して、昨年十二月に中央教育審議会の答申をいただいたわけでございます。そういう中では、広く社会の各分野において、専門的な知識、技術を備えてその活動を支える多様な人材を育成していく、そういう観点から、学部教育がとても重要であるということの御指摘をいただいております。

 私どもも、そのような認識に沿いまして、例えば、各大学において、それぞれの学科ごとに体系的なカリキュラムを編成する、あるいは成績評価基準につきましても厳格な成績評価や卒業認定を行っていただく、あるいは分野別のモデルカリキュラムを作成していただく、あるいはまた、そういった目的に即したすぐれた教科書をつくっていただく、こういう大学関係者等による自主的、自律的な取り組みといったことも支援していきたいと思っております。このために、二十一年度予算案におきましても、大学教育・学生支援推進事業という形で百十億円の予算を計上しているところでございます。

 また、後段、先生御指摘いただきました大学から初等中等教育への支援といったこと、さまざまございます。私ども、まず何といっても教育学部等においてすぐれた教員を養成するということがその基本であろうと思っておりますが、それ以外にも、大学と高等学校が具体的な教育活動を通じて連携をしていく。例えば、大学が高等学校以下の教育に対して積極的に支援をしていく、あるいは高校生を対象とした公開講座を行っていく、こういったことは、児童生徒の知的関心を高めること、あるいは、大学自身がその使命をきちんと認識し、さらに教育研究を発展していく上でも重要と考えております。

渡部(篤)分科員 私は、地域振興と地方大学、大きなテーマだと思います。

 地域振興は焦眉の課題ですが、公立大学については、既に県内の複数の公立大学の統合により六つの大学が生まれています。福島県でも、県立医科大と会津大学が統合する選択肢も一般的にはあろうと私は考えます。他方、地方の国立大学法人は、地域貢献なしでは競争の中で存立が厳しいと言われています。例えばですが、会津大学と国立の福島大学を統合するということは考えられないのか、お伺いします。

徳永政府参考人 大学を統合するというようなことにつきましては、まず当該大学における主体的な検討が重要でございます。もちろん、設置形態を超えた統合というようなこと、それはなかなか難しい面もございますし、可能であること、あるいは可能でないこと、さまざまあろうと思っておりますが、私どもからすれば、まず関係大学におきまして主体的に検討いただき、その上で大学関係者から具体的に話があれば、その時点でどのような方策が考えられるのか、そういったことについて検討していきたいと思っております。

 また、当然、統合というようなことに至らないまでも、設置形態にかかわらず、地域の大学間で連携を進めることは重要でございます。私どもといたしますれば、単位互換など従来から行ってきました連携協力に加えまして、平成二十年度からは、大学間の戦略的な連携を支援する事業といったことを展開しておりまして、二十一年度予算においても、これを六十億円まで拡充しているところでございます。また、昨年には、複数の大学により共同で教育課程の編成を実施する制度といったことを創設したところでございます。

 今後とも、各大学が地域の実情に応じてさまざまな連携協力といったことに取り組めますよう、制度的、財政的に支援をする方策について、私ども積極的に検討していきたいと思っております。

渡部(篤)分科員 外形統合そのものについてはいろいろな議論があると思いますが、文部科学省は、研究については、国公私立大学を通した共同利用・共同研究拠点制度を開始しています。教育施設についても、人的、物的資源の共同化や有効利用の促進が必要として中教審で検討されているそうですが、私は、もっとしっかりとした議論を進めていただきたいなと思います。

 次に、中教審の新たな諮問として、「中長期的な大学教育の在り方について」の関連諮問の内容の一つ、人口減少期における我が国の大学の全体像のテーマの一つに、全国レベルと地域レベルの人材養成需要に対応した大学政策が挙がっていますが、文部省はどう考えているのか、この諮問をした理由をお伺いします。

徳永政府参考人 これはもう冒頭から先生がさまざま御指摘いただいたことの繰り返しになるわけでございますが、やはり大学は、国あるいは地域それぞれの観点から多様な人材養成にこたえております。そういった中では、国全体で計画的に人材養成を進めるべき分野はございます。その中でも特に、例えば教員でございますとか医療、保健人材など地域の公共サービスを担う人材、そういったさまざまな養成機能があるわけでございます。

 こういう中で、我が国の人口が今減少局面を迎えておりますし、そういう中で国の政策として、あるいは地域振興施策の一環として、人材養成、研究開発をどうしていくのか、そういったことの中で国立大学と公立大学それぞれに期待される役割が極めて大きいと思っております。

 このような観点から、今後、国立大学と公立大学の役割分担をどうしていくのか、あるいは、国立大学と公立大学それぞれがそれぞれの役割分担を果たしながら発展をしていくためには大学政策がどうあるべきなのか、こういったこと、まさにきょう先生からいろいろ御質問いただいたようなことを踏まえまして検討していきたい、そういうことで諮問を行ったわけでございます。

渡部(篤)分科員 次の質問に移ります。

 外国から日本に留学生がどのくらい、三十万人とか目標だなんて聞いているんですが、日本の外国に留学する人たちがどのくらいいるのか。私は驚きました。十万人かなと思ったら、もう八万人を下がっています。

 例えばフルブライト留学とか、あるいはいろいろな留学制度があって、この国を支えてくれる人たちができたわけですが、どうなっているのか。日本から外国に行って、勉強して日本に戻ってくる、そういう人たちが八万人以下というのは、これは文部省としてどう考えているのか、お伺いします。

徳永政府参考人 私どもは、昨年来、留学生三十万人計画ということで、海外から日本に来る留学生をふやすという計画もつくっております。一方では、当然、先生御指摘のように、より多くの日本人学生が海外留学を経験するということも望ましいと考えております。そのために、私どもでは、奨学金の給付、貸与、あるいは留学生情報提供、そういった取り組みを行っております。

 具体的に申し上げれば、二十一年度予算におきましては、海外留学支援として九百人分、十億円の奨学金の給付ということを計上しておりますし、あるいはまた、日本学生支援機構が行う海外に留学する学生に対する奨学金の貸与事業として三千四百人分、三十八億円の予算額を計上しているわけでございます。

 このほか、さまざまな情報提供、相談といったことも行っておりますが、ぜひ、国際的に活躍できる日本人の育成のため、私どももそういった数がふえるということについて努力をしていきたいと思っております。

渡部(篤)分科員 やはり、日本の若い人たちが海外に雄飛して勉強してくる、「坂の上の雲」ではありませんが、どこかの国が目標になる時代ではないかもしれないけれども、志を高くしてそうやって海外に勉強に行く人たちがふえることが、この国の国力につながると私は思っています。

 それから、最後に私は、大臣、日本は今やエリート教育が必要だと思います。日本は、国際的にはレベルの高い平均値人間よりは、世界的に見てトップグループが弱い日本の教育システム改革、これは高等教育の最大の課題だと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

塩谷国務大臣 きょうは、我が国の大学教育についていろいろ御質問いただき、また心配をいただいていること、本当にありがとうございます。

 確かに、平均的なレベルの高い人が多いということで、そういう中でエリート教育等のトップ層の人材育成が課題である、まさにそういうことも私どもは考えて、大学教育をこれから充実させていかなければならないと思っております。基本的に、大学の質が問われてくる時代でありますから、さらに質の向上も含めて、国際的に活躍し、また社会の各分野で指導的な役割を果たす人材を育成するということが重要な課題と思っております。

 そういう中で、私ども文部科学省としましては、世界的な教育研究拠点としての機能を備えたすぐれた大学の重要な育成、支援に努めているところでありまして、二十一年度予算においても、一つは各分野において世界トップレベルの教育研究拠点の形成、二つ目には英語による授業や外国人教員の比率を高める等の国際化拠点の整備、そして三つ目に大学院での体系的な教育カリキュラムへの改革の支援など、重点的にそういった課題に取り組んでまいりたいと思っております。

 今後とも、大学におけるすぐれた取り組みに対する重点的な支援を通じて、トップレベルの人材育成に努めてまいりたいと考えております。

渡部(篤)分科員 エリート教育というのは、ノーブレスオブリージュ、例えば国家のために、日本の国のために自分の人生をかける、国のことを考える、そして国のために自分の人生をささげる人、そういうエリート。東大が世界で十八位とか、そういう数字じゃないんですよ。そういう志の高い人たちをこの国で養成していかなければ、日本の国力は向上にならないと思います。

 最後に、会津大学、戊辰戦争から百四十年たちました。市会議員、県会議員、代議士になって、これは体が不自由になる前も、分科会で何回も叫んでいます。文科省と総務省で、大きな力で地方の公立大学を支えていただきたいと思います。そのことを心からお願いして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

小野寺主査代理 これにて渡部篤君の質疑は終了しました。

 次に、高木美智代さん。

高木(美)分科員 公明党の高木美智代でございます。

 塩谷大臣に初めて質問をさせていただきます。

 本日は、拡大教科書の推進と特別支援教育につきまして質問をさせていただきたいと思います。

 まず、拡大教科書につきましてですが、障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律、教科書バリアフリー法が昨年九月から施行されまして、施行令におきましては、平成二十一年度において使用される教科用特定図書等から適用するとされております。この拡大教科書普及に向けましての現在の取り組み状況、また推進状況をまずお伺いしたいと思います。

 附則の第二条では、高等学校、特別支援学校に就学する児童及び生徒については、検討を行い、結果に基づいて所要の措置を講ずる等と、高校段階に対する取り組みにつきましても書いてございますが、その取り組み状況を伺わせていただきたいと思います。

金森政府参考人 視覚障害のある児童生徒のための拡大教科書の普及促進は、教育の機会均等の観点から重要でございまして、必要とする児童生徒に拡大教科書が速やかにかつ確実に給与されるよう措置することは喫緊の課題と考えております。

 拡大教科書の普及充実につきまして、文部科学省におきましては、昨年四月に設置をいたしました拡大教科書普及推進会議におきまして、その具体的方策について関係者による検討を進めていただき、昨年十二月、主に義務教育段階を対象とした第一次報告が取りまとめられたところでございます。

 現在、文部科学省におきましては、この報告に基づきまして、教科書発行者による自社版の拡大教科書の発行を促進するため、拡大教科書の標準規格を策定、公表いたしますとともに、拡大教科書の作成作業に資するよう、ボランティア団体等に対する教科書デジタルデータの提供を開始するなど、必要な取り組みを進めているところでございます。

 また、高校段階における拡大教科書の使用状況につきましては、教科書発行者や民間事業者から発行された拡大教科書はいまだございませんで、現在利用されているものはすべてボランティア団体の作成によるものでございます。全国盲学校長会が昨年十一月に実施した調査によりますと、高等部本科普通科に在籍する弱視生徒三百三十七名に対しまして、ボランティア等が作成した拡大教科書を使用している生徒は二十一名、約六%でございました。

 この高校段階における拡大教科書の普及のあり方につきましては、先ほど申しました拡大教科書普及推進会議の中に高校における弱視生徒への教育方法・教材のあり方ワーキンググループを設置いたしまして、現在精力的に審議を行っているところでございます。

高木(美)分科員 ありがとうございます。

 実は、高校の拡大教科書につきましての陳情を受けました。高校の第一段階といたしまして、盲学校高等部につきまして早急の実施をお願いしたいという要望でございます。高等部、三百数十名でしょうか、対象は二百数十名と詳しい数字は把握できておりませんが、いずれにしても、高校段階の全検定教科書数になりますと九百八十三点あるわけでございますが、盲学校は全国で四十六点に統一をしているという話も承知しております。できないことはないのではないかと考えております。やはり、高校時代の一年間といいますのは、人生を決める大事な時代でございます。そういう観点からお願いをするものでございます。

 これはもう既に大臣御承知かと思いますが、ある高校二年生の「拡大教科書について」という文章でございます。この高校生の方は、普通小学校に通っていらっしゃって、学年が上がるにつれて教科書の文字がどんどん小さくなっていく、これでは中学生になったとき周りのみんなに勉強はついていけるのだろうかと不安に思い、盲学校への入学を決意しました。

 中学生になり、私は感動と驚きに包まれました。太く大きい文字、シンプルでわかりやすい図、見るもの見るものが、ルーペや眼鏡を使うことなく、楽に、そしてはっきりと見えました。これなら私でも思う存分勉強できる、今までのように目が疲れることはない、私はうれしい気持ちでいっぱいでした。私も健常者と同じ条件で教科書を見ることができるようになったからです。しかも、拡大教科書は補助具なしで読むことができます。見ることではなく、勉強内容に集中することができるようになりました。

 そして、その方が昨年の四月、高校生になるのですが、高校では拡大教科書が配付されませんでした。教科書を開いてみると、小さい、細かい、見にくい文字が連なっているだけでした。何だか小学生のころに逆戻りしたような気分です。私にとっては深刻な問題でした。想像してみてください、あなたが読んでいる文字がいきなり細く、小さく、肉眼で見ることが不可能な世界になったらと。全盲でも、完全に見えるわけでもない、弱視という立場。これから私たち弱視はどのように学べばよいのでしょうか。もう一度拡大教科書を読むことができる日を私は切に願っています、こういう高校生の方からの文章でございます。

 まず、こうした盲学校の生徒に対しまして配慮をお願いしたいと思いますが、大臣のお考えを伺わせていただきます。

塩谷国務大臣 ただいまの生徒さんの文章、本当にその実態といいますか、障害者の方の率直な御意見をいただいたわけでございます。

 先ほどもお答えしましたが、文部科学省においては、高校段階における拡大教科書のあり方を検討するために、平成二十年の四月に、拡大教科書普及推進会議の中で、高校における弱視生徒への教育方法・教材のあり方ワーキングチームを設置して検討しているところでございます。

 現在のところ、正直言って、まだ全く対応はできていないというのが現状でございまして、これにつきましては、ワーキングチームの精力的な審議を踏まえて、今後、拡大教科書の普及に向けて必要な措置を講じてまいりたいと考えております。

高木(美)分科員 恐らく、いわゆる本科、普通高校の使用実績というのは、先ほどありました二十八名ということでしょうか。少ない人数かと思いますけれども、盲学校高等部には取り組みの実績がこれまであるわけでございます。それをむしろ活用しながら、私は、実証的研究、こういう意味からも、ここで一歩大きく踏み出していただきたいと願うものでございます。その際、当然高校生の意見が反映されるということが一番大事でございますので、それぞれ読みやすいポイント数もございますけれども、まずこの盲学校から、実証的研究という意味も含めまして、お取り組みを重ねてお願い申し上げるものでございます。

 また、あわせまして、法第七条また施行令についての通知にも詳細にありましたが、発達障害、またその他の障害のある児童及び生徒につきましても、拡大教科書のあり方や効果的な指導方法等について実証的研究を行う、こういうことが記載されておりました。発達障害の親の方たちからもこういうお話を多く伺うわけで、そこで法律にも盛り込まれ、施行令、通知等にも盛り込まれたと承知しておりますが、確かに、読み飛ばしが少なくなるとか、また、図がわかりやすいとかという声は既にいただいているところでございます。

 こうした発達障害に対しましても、今後どのように進めるおつもりか、大臣のお考えを伺いたいと思います。

塩谷国務大臣 ただいまの発達障害の生徒さんにつきましては、今おっしゃったような学校教育法の改正においても、特別支援教育を行うことが明記されたわけでございまして、先ほども申し上げましたが、現在、必ずしも十分と言えない状況でありますが、支援体制の整備を進めてまいりたいと思っております。

 特に、教員研修の充実や個別の教育支援計画等を作成して、各学校の特別支援教育体制の整備を図ることが重要だと考えておりまして、これらの取り組みを推進するための事業を実施しているところでございます。

 以上でございます。

高木(美)分科員 大臣、大変何度も恐縮でございますが、この教科書バリアフリー法、平成二十一年度からということで、この盲学校の生徒さんたちも大変楽しみにしていらっしゃる。モデルケースという形等を含めまして、大臣の裁量で、ぜひここへの配慮をお願いできればと思っております。

 ぜひ、平成二十一年という、これは一つ、教科書につきまして障害者に対するバリアフリーが実現するという意義もありますので、私は、きょうはこれは大臣に質疑通告はしていないのですが、一度盲学校等に視察にお越しいただきまして、そこで直接生徒さんからの要望、それは小学校でも中学でも高校でも構わないんですけれども、一番望ましいのは、大臣の配慮で高校への、高等部へのバリアフリーの教科書が実現できた、そこに大臣がお越しになるというような形が一番美しいのではないかと思っております。

 やはり今、障害者に対する意識の変革を国を挙げてどう行っていくか、ここが大事なポイントでございまして、大変誠実に、また、まさにまじめに取り組んでいらっしゃる大臣でいらっしゃいますので、ぜひとも、そういった点も今後御検討いただければと思っております。これはまた御検討ということでお願いできればと思います。

 続きまして、特別支援教育につきまして質問をさせていただきたいと思います。

 今、お子さん一人一人のニーズに応じた特別支援教育の推進のために、文科省におかれましても体制整備を急がれていると承知しております。その中に、例えば、センター的機能を持つ特別支援学校、そこに依頼をすれば指導助言が受けられる、こういうシステムを今総合的に整えられているところですけれども、こうした点につきまして、これも現場の方から、要請をしないと来てもらえないのではないかといったお声もあります。こうしたシステムの進捗状況がいかがか。

 そしてまた、その中に、公立の幼稚園、ここは対象とされております。しかし、私立幼稚園、また、保育所につきましては、公立、私立ともにその対象に入っていないと私は承知しておりますが、今後、こうした幼児教育を総合的に含めまして、どのように対応されるお考えか、方向性を伺わせていただきたいと思います。

金森政府参考人 平成十八年の学校教育法の改正によりまして、特別支援学校におきましては、在籍児童等の教育を行いますほか、幼稚園や小学校、中学校、高等学校などに在籍する障害のある児童生徒等の教育につきまして助言や援助を行うセンター的機能について法律上に明記されたところでございます。

 これを踏まえ、特別支援学校におきましては、幼稚園や小学校、中学校、高等学校等に対しまして、指導、支援の方法や障害の状況の実態把握等の相談を行いますほか、学校や地域で特別支援教育に関する研修会や講演会などを実施しております。文部科学省といたしましても、来年度予算案におきまして、特別支援学校のセンター的機能の充実を図ることといたしております。

 このようなセンター的機能による支援の対象につきましては、公立学校に限られているわけではございませんで、私立学校についても対象となっております。

 また、御指摘のございました保育所につきましては、学校教育法上は支援の対象として明記はされておりませんが、私ども、都道府県などに対する通知の中で、学校と同様に助言や援助に努めるよう通知を出しているところでございます。

 さらに、保育所や私立学校に対する支援につきましては、文部科学省が都道府県に委嘱して実施をいたしております発達障害等支援・特別支援教育総合推進事業におきまして、私立幼稚園や保育所も支援の対象としているところでございます。

 引き続き、特別支援学校のセンター的機能の充実を含め、特別支援教育の推進に取り組んでまいりたいと存じます。

高木(美)分科員 重ねて二点、今の御答弁で伺わせていただきたいんですが、要請があれば指導助言を受けることができるのか、それとも巡回方式で回ってきてくれるのか、これが一つです。それからもう一つは、保育所ですけれども、公立、私立ともに対象になるのか。この二点を重ねて伺わせていただきます。

金森政府参考人 お答え申し上げます。

 センター的機能につきまして、学校教育法上の規定を御紹介申し上げますと、学校教育法第七十四条には、「特別支援学校においては、」「幼稚園、小学校、中学校、高等学校又は中等教育学校の要請に応じて、」「幼児、児童又は生徒の教育に関し必要な助言又は援助を行うよう努めるものとする。」というふうに規定されてございます。したがいまして、法律上は、学校の要請に応じて必要な助言や援助を行うという規定になってございます。

 それから、幼稚園につきましては、公立、私立ともその対象にいたしているところでございます。

高木(美)分科員 ありがとうございます。

 ここの「要請に応じて、」というところがネックでございまして、果たして要請がどの程度あったのか、また、それに対して特別支援学校がどこまでこたえることができているのか、ここにつきまして精査をしていただきながら、ここで実効性が上がるかどうか、私は大事なポイントであると思っておりまして、それについての検証とか、また、調査をされるとか、そうしたことは今お考えとしてはおありなんでしょうか。

金森政府参考人 特別支援学校がこのセンター的機能を十分発揮いたしますためには、単に受け身の姿勢でその要請を待っているということではなくて、それぞれの地域で、小学校や中学校や高等学校、また幼稚園がどのような状況にあるのか、常に実態を把握しながら、必要な助言、援助に努めていくという姿勢が大切だと考えております。

 私どもも、こうした法律ができまして、特別支援学校におけるセンター的機能がどの程度、十分に発揮されているのか、また、それぞれの幼稚園や小学校、中学校、高等学校の要請にこたえているのかどうか、こういったことにつきましては、関係の方々の御意見などもお伺いしながら、適切なセンター的機能の発揮と、またそのセンター的機能の充実ということができますよう取り組んでまいりたいと考えております。

高木(美)分科員 これは、恐らくもうそろそろ三年という形になります。私はやはり、三年たちまして、実態が地域でどのようになっているのか、この実態調査をしていただければと思っております。当然、その中には、地域との連携であるとか、また、福祉、教育、医療、こうした総合的な連携であるとか、さまざまな課題が浮かび上がってくるのではないかと思っております。当然、そこは教育面から文科省として掌握をされる。

 そしてまた、それぞれの、今また厚労省も同じような形で考えているようですけれども、これまた今申し上げさせていただきますが、そうしたことも含めまして、今、子供たちにとって、どうすることが一番一貫したライフステージに応じた支援ができ上がるのか。また、迷うことなく、こっちのセンター、あっちのセンター、いろいろなところがあって、どれを選べばいいのかではなくて、ワンストップで、ここできちっと相談できる、そこに行けば医療も福祉も教育もつながっていくことができる総合的なシステムをつくり上げることが必要ではないかと思っております。

 ぜひ、局長、この実態調査をどこかの時点で検討いただければと思いますが、いかがでしょうか。

金森政府参考人 特別支援学校におけるセンター的機能がどのような形で発揮されているのか、また、それが十分であるのか、どういう形でそれを把握していくのかも含めまして、よく検討してまいりたいと存じます。

高木(美)分科員 ぜひしっかりとした検証をお願いしたいと思います。

 実は、今申し上げましたとおり、厚労省も同様に、子供発達支援センター、名称はいろいろで、東京の場合は子ども家庭支援センターとか、さまざまな名称になっておりますが、ネットワークをつくり上げることを検討しているようです。

 私も、今、党の福祉委員会委員長も務めており、障害者自立支援法改正の与党PTの基本方針を取りまとめたところでございます。中でも、子供のためには相談支援体制を拡充して、今申し上げました、地域での福祉、教育、医療との連携を図らなければいけない。

 また、特に放課後型デイサービス、これを今回創設したいということで盛り込ませていただいたのですが、これは養護学校も含めまして、放課後の障害児また生徒向けの居場所づくりで、これは恐らく放課後だけではなくて、土日とか夏休みとか、長期間にも対応するものを考えてまいりたいと思っておりますが、就学前から高校卒業時ぐらいまで対象に検討をしているところでございます。この実施に当たりましては、また御協力をお願いさせていただきたいと思います。

 その中に、例えば保育所を支援するために出かけていって、ここは出ていって、助言指導に当たる、これを個別給付でやっていってはどうか等も、私ども提案をさせていただいております。

 ただ、今、文科省がつくり上げてくださっている発達障害等支援・特別支援教育総合推進事業というこの大きなネットワークと、それから、こういう子供たちのライフステージに応じた支援体制、ここがしっかりとかみ合っていくということが大事であると思っておりまして、この支援体制をどのようにつくり、充実させていくか、文科省と厚労省とよく連携をとっていただきまして、後で二重行政とかという形にならないように、今のうちに、私も厚労省にも申し上げさせていただきますが、整理をお願いできればと思っております。

 例えば、先ほど少しお話がありました個別教育支援計画につきましても、今、厚労省の方は、個別支援計画、これを発達障害等の障害があるとわかった時点でサポートする仕組みから計画をつくり始めよう、こういうことも考えております。

 ライフステージを平たく考えましても、大体、幼児期、そこは厚労省が主軸になって、そしてそこを文科省が例えば幼児教育等でしっかり支えていただく。そしてまた、今度は就学期になりますと文科省が主軸になって、ここの後の、地域との連携とか、また放課後も含めまして、そういうところはまた厚労省が支えるとか、就労時になると再びまた厚労省が主軸に戻るとか、こういう形になると思うんです。

 個別支援計画と個別教育計画と二種類、一人のお子さんにつき二つあるというのではなくて、この両面から一つきちっとつくれるというような、あくまでもお子さんにとって、御家族にとってどうあるべきかという、ここにしっかりと視点を置いた支援の形を考えていただければと思っておりますが、このことにつきまして大臣のお考えを伺わせていただきたいと思います。

塩谷国務大臣 大変重要な御指摘をいただいたわけでございます。

 障害のある子供に対して、やはり何といっても一貫した支援が必要でありますので、ここは、私どもは私どもで、今、個別の教育支援計画というものをやっておりますが、厚生労働省とやはりしっかりと協力して、二つではなくて一つの、まさにライフステージを、一人の子供に対しては一つのライフステージに合った支援計画をつくることが大事だと思いますので、今後、十分に厚労省と連携をとって、そのような方向で今後検討してまいりたいと考えております。

高木(美)分科員 ぜひ大臣の在任中に障害児のこうした一貫した支援に対しまして体制整備がすっきりとできますことをお願いさせていただきます。

 さらに、最後の質問になりますが、発達障害者のこれは生徒児童を含めまして、支援につきまして伺わせていただきたいのですが、中学校で特別支援教育に携わる先生方から要望がありました。主に特別支援学級を担当されている先生方でございます。発達障害児の就労のために、物づくりなど特性を生かした訓練ができるような高校の受け皿づくりを進めていただきたいという強い要望でございます。

 養護学校に行くにはIQが高過ぎてなじまない、結局、行く場がなかなかなくて、定時制に行く生徒が最近見受けられる。そうすると、やはり周りに迎合してしまいまして、それは定時制がそういう雰囲気だというのではなくて、本来は違う性格の生徒さんがピアスをやってみたりとか入れ墨を彫ってみたりとか、そういう姿が見受けられます。やはり、そういうお子さんというのは障害者手帳を持っていらっしゃらない。定時制を卒業しても、技術がないから行き場がない。むしろ、手帳を持っていらっしゃる生徒さんの方が就労までのサポートを今手厚く受け始めていますというお話もあります。発達障害を持つ児童及び生徒がどのような経過をたどっているのか、今、そのお子さんに対する具体的な支援がどのように必要なのか、その調査をして検討してもらいたいという御要望もありました。

 また、もう一つは、学校にいらっしゃる方たちですので、地域での発達障害児者の人数というのは急速に増加をしています。しかし、その理解というのは、以前に比べれば進みつつあるけれども、教員につきましても、やはり特別支援学級といったら、どっちかというと少し低いというような認識がまだあります。発達障害理解のための研修を教員に義務づけしていただけないか、例えば夏休みなどを使って受講できるようにできないだろうか、教員自身にこうした差別意識を変えていただきたいのだ、こういう要望でございます。

 私は、重ねて大臣にお願いなんですが、例えば、今そういう一般の普通校と特別支援学校、これを書類で見ますと、大体、交流と書いてあるんですね。交流というのは、異なる質のものが交わるから交流というわけであって、本来であれば合同学習というような言い方がふさわしいのではないか、こういうある福祉大学の教員の方のお話でございますけれども、こうしたところから一つ一つ点検をお願いできればと思っております。

 まず、発達障害のお子さんたちの高校での受け皿づくり、一貫した、就労に至るまでにどのようなことができるのか、お考えを伺わせていただきたいと思います。

    〔小野寺主査代理退席、主査着席〕

塩谷国務大臣 発達障害の生徒については、先ほども申し上げましたが、この支援体制について、個別の教育支援計画を作成すると同時に、各学校の支援教育体制の整備を図っているところでございますが、特に就労等の問題につきましては、これもやはり厚生労働省、ハローワーク等と連携をとって、そのあり方についても研究をしているところでございまして、今委員おっしゃったような、もう少し実態調査をしっかりして、一つ一つ丁寧に進めていかなければならないと思っているところでございます。

 同時に、先ほどの教職員を対象とした研修につきましても、義務ということにはなっておりませんが、平成十八年度で約四五%、そして十九年度は五六%の教職員が研修を受けているということで、さらにできるだけ多くの教員がこの研修を受けていけるように努力をしてまいりたいと思っております。

高木(美)分科員 恐らく、欧米ですと、例えば障害を持つお子さんが通常学級に行くかどっちに行くかとなったときに、まずスペシャルエデュケーション、こちらをしっかり受けて、手厚く受けて、その上で通常学級に行きましょうと。そうすると大体、父兄の方たちは、そんなに手厚くしてくれるんですかとなるんですが、日本の場合は、とにかくまず通常学級に入れてください、あっちに行くのは嫌です、こういうお考えがやはりまだまだ多いようでございまして、そこにはやはり教員の方の持っていらっしゃる意識、そしてまた指導されるそのスキルの高さというものも大事であると思っております。

 私は、障害を個性と認めて、そしてそれぞれが能力を発揮できる自立と共生社会を何としてもつくってまいりたいと思っておりまして今取り組ませていただいておりますが、その中での一番の肝要になりますのは教育の世界でございますので、また今後とも大臣初め文科省の皆様にはさらなるお取り組みをお願いいたしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

田野瀬主査 これにて高木美智代君の質疑は終了いたしました。

 次に、上田勇君。

上田分科員 公明党の上田勇でございます。

 きょうは、塩谷文部科学大臣、大変お疲れさまでございます。私の方から何点か質問をさせていただきたいというふうに思います。

 初めに、認定こども園について質問させていただきますが、従来から、幼児教育と保育を一体的に実施してほしい、そういう要望というのは利用者側の方からもかなり多かったわけであります。

 実際、多くの民間施設では、保育所でも幼児教育の要素を積極的に取り入れてきておりますし、また、文部科学省の調査でも、私立幼稚園では九割ぐらいで預かり保育も実施している。事実上、そういう意味では、民間施設を中心といたしまして一体的な実施が行われてきているわけであります。

 政府でも、幼稚園と保育所の連携を図るという方針を示してきてはおりましたけれども、幼稚園は文部科学省、そして保育所は厚生労働省の所管、そういう縦割りの壁もあって、制度の内容、また地方公共団体の方の担当部局も違いますし、補助制度や手続も異なっていたので、なかなか一体的にうまく運営ができてこなかったという実態がありました。

 平成十八年に認定こども園が制度化したんですが、依然として、縦割りの弊害のためいろいろな問題があって、なかなか思うように進んでこなかったという実態があります。利用者のニーズの非常に高い事業であって、積極的に推進をしていっていただきたいというふうに考えておりますが、文部科学省の方針を伺いたいというふうに思います。

 また、これまで、こうした問題を解消するため制度の改善に取り組んでいるというふうに承知もいたしておりますし、先般成立いたしました第二次補正予算では、安心こども基金の中に、この事業促進をしていく予算が計上されております。そうした最近の取り組みも含めて御答弁をいただければというふうに思いますので、よろしくお願いをいたします。

塩谷国務大臣 認定こども園につきましては、かねてから、保護者や地域の多様なニーズに柔軟に対応するために、平成十八年十月より、認定こども園制度が創設されてスタートしたわけでございます。

 文部科学省としては、この制度を推進すべく、厚生労働省と連携して、特に今上田委員がおっしゃったように、なかなか両省でうまくいかなかった点も実際にずっとあるわけでございまして、それを何とか解消して、より認定こども園に対する推進をしてまいりたいと思っておるところでございまして、今お話があった平成二十年度の補正予算においてはその財政措置を講じたところでございます。

 具体的には、今のお話にございますが、安心こども基金の一環として、認定こども園となるための施設整備費、これは、建物とか調理室、教室、建物と一体となったエアコン等の整備でございます。また、幼稚園型、保育園型認定こども園の認可外部分、これは保育所的機能あるいは幼稚園的機能への事業費の支援を措置したところでございます。

 また、新たな財政措置につきましては、認定こども園の施設整備費について、従来の幼稚園、保育園に対する施設整備費補助制度を超えて一本化をすること、そして認定こども園の新たな事業費について、この補助制度も一本化すること、そして、補助要項あるいは補助割合、さらには申請窓口、申請交付スケジュール等を統一するなど改善を図ったところでございます。これによって、認定こども園に対して、幼稚園、保育所の枠組みを超えた新たな財政支援を講ずることにより、認定こども園の一層の整備を図ってまいりたいと考えているところでございます。

上田分科員 ありがとうございます。

 実際にはもうかなりそういう教育と保育の一体化が進んでいて、利用者のニーズも高い事業であります。今回、かなり制度の改善も行われ、積極的に推進をしていくという予算も確保されているわけでありますので、ぜひ、これをさらに積極的に進めていただきたい。また、これまでいろいろ指摘されてきました、文部科学省と厚生労働省、連携もかなり改善されてきたというふうに承知をいたしておりますので、引き続き、連携をよく進めていただきたいというふうに思っております。

 次に、放課後児童対策についてお伺いをしたいというふうに思います。

 仕事と子育てを両立していく上では、小学生のいる家庭では、やはり小学生の放課後の居場所を確保していくということが非常に重要であります。平成十九年に、文部科学省と厚生労働省の連携のもとで放課後子どもプランが策定をされています。

 ただ、現状を見てみますと、放課後児童クラブの受け入れの定員も不足をしているという感じを受けております。また、多くの家庭では、子供が就学前は保育所で預かってもらえるので仕事ができる、小学校に入った途端に、どこに預かってもらえるのか、預かってもらえるような施設が見つからない、そういう悩みをよく聞いております。さらに、多くの放課後児童クラブでは、施設がかなり老朽化している、設備も残念ながら劣悪なところも多い、指導員の不足、また資質にもいろいろな意見が指摘をされております。そうした多くの課題を抱えているのが今のいわゆる学童保育の現状だというふうに考えております。

 保育所の整備も重要であり、現在、待機児童ゼロ作戦に基づき推進が行われておりますが、その後の受け入れ先の整備が不十分だと、本当の意味で、一貫した仕事と子育ての両立の支援にはならないというふうに考えております。放課後児童クラブについて、質それから量ともに不十分であるというふうに思いますので、ぜひ積極的に整備を推進していくべきでありますし、また、家庭の負担の軽減についても、これからいろいろな配慮が必要だろうというふうに考えております。

 厚生労働省の所管でありますので、方針を伺い、また、新年度の予算では、そういった点、制度の改善や予算の拡充、相当推進をしていただいておりますので、そうした取り組みも含めて御答弁いただければというふうに思います。よろしくお願いいたします。

北村政府参考人 お答えを申し上げます。

 放課後児童クラブでございますが、女性の就労の希望の高まりなどを受けまして、年々利用のニーズが高くなってきております。子育てと仕事の両立の観点から、放課後児童クラブの一層の充実が必要ということを考えておるところでございます。

 このため、先ほど委員の方からもありましたけれども、平成二十年二月には新待機児童ゼロ作戦を策定いたしまして、今後三年間を集中重点期間といたしまして、放課後児童クラブの登録児童数の増加を図る、そのための取り組みを進めていくというふうにしているところでございます。

 具体的に申し上げますと、平成二十年度第二次補正予算に計上されました安心こども基金、この中に、放課後児童クラブの設置促進事業を盛り込んでおります。また、二十一年度予算案におきましては、放課後児童クラブ室を新たに設置する際の創設費補助の箇所数あるいは単価の増を図るというふうにしているところでございます。

 今後とも、放課後児童対策、これは質、量ともにでございますけれども、より一層の努力をしてまいりたいというふうに考えております。

上田分科員 ありがとうございます。

 今申し上げました認定こども園それから放課後児童クラブ、ともに、補正予算や新年度の予算で、積極的に推進をしていく予算が計上されているわけであります。これはぜひ、そういう意味で、積極的に推進をしていただきたいというふうに思います。

 それで、私の地元などではよく聞く話なんですが、今、学校法人が運営している幼稚園の多くが、実際子供の数が減少しているという現状の中で、預かり保育などを実施してきた施設、余裕が出てきているケースがある。そういったところを有効に活用し、また若干の整備を行いながら、放課後児童クラブを運営しようとする要望がかなりございます。

 一般に、今行われている学童保育の施設に比べると、施設面でもかなりいい水準にあるというふうに考えておりますし、また、利用者側も、預かり保育などで預かってもらっていた子供たちが、そのまま学校に上がってからも利用できるという意味で、利便性も高い、そういう状況があります。

 そういう意味で、そうした幼稚園などを活用した放課後児童クラブ、積極的に推進をする、支援をしていくべきであるというふうに考えますけれども、御意見を伺いたいというふうに思います。

北村政府参考人 お答え申し上げます。

 放課後児童対策につきましては、新待機児童ゼロ作戦を踏まえまして、放課後児童クラブの登録数の増加を図るための取り組みを進めることとしております。このため、小学校、あるいは先ほど委員から御指摘の幼稚園の空き部屋などを活用いたしまして、放課後児童クラブの設置促進を図っていく、こういうことも必要なことであるというふうに考えております。

 こうした観点から、平成二十一年度予算案におきまして、小学校の空き教室、あるいは御指摘の幼稚園の空き部屋などを活用いたしまして放課後児童クラブを実施する場合の改修費につきまして、大幅な箇所数の増を図るといった充実を図ることとしているところでございます。

 このようなことにつきましては、全国の自治体の関係者を集めました会議などの場を通じて、積極的に活用を促していくように周知を徹底してまいりたいというふうに思っておりますし、また、今後とも放課後児童対策のより一層の充実を図ってまいりたいというふうに考えているところでございます。

上田分科員 ありがとうございます。ぜひよろしくお願いをいたします。

 御要望をさせていただきますと、やはり放課後児童クラブを運営するというのは、なかなか運営費の方が、財政的にはかなり厳しい状況もございます。そういった意味でもさらに充実をしていただく御努力をお願いしたいというふうに思います。

 次に、今こういう、経済情勢が急速に悪化をする中で、大学生の就職状況が非常に厳しくなってきております。その点について御質問させていただきます。

 先日、私も、地元の神奈川大学を訪問させていただいて、就職担当部署、担当者の方から現在の就職状況などについて現状を伺い、意見交換を行いました。また、その後、大学の四年生や三年生、それぞれ数名からいろいろな話も聞いてまいりました。

 神奈川大学では、卒業生約三千六百人程度というふうに言っておりましたけれども、その中で、ことし就職が内定したのが約八割、いろいろな事情があって一〇〇%にならないということではありますが、大変厳しいということでありましたし、また、内定の取り消しに遭ったのが二十一名いたということでありました。ことしの就職状況というのも大変厳しいんですが、さらに来年の情勢というのは一段と厳しくなってくるのではないか。大学側も学生も大変不安に思っておりました。

 これはもう文部科学省だけで解決できる問題ではありませんけれども、文部科学省としてもぜひ、大学等とよく連携協力をとっていただいて、そうした学生の就職支援、万全の応援をお願いしたいというふうに思いますが、ひとつ御決意を伺いたいというふうに思います。

徳永政府参考人 先生御指摘いただきましたように、就職内定取り消し問題を初めといたします学生の就職状況につきましては、私どもといたしましても、昨年十二月から現在に至るまで、大学の就職支援の現場を実際に訪問する、あるいは地方大学の状況を把握するためのブロック会議を開催する、こういったことを通じまして実態把握を行っており、事態の深刻さを認識しております。

 文部科学省では、平成二十一年度予算案におきまして、各大学における、一つには、学生相談体制強化のための取り組み、また二つ目には、学生への就職情報提供を充実するための取り組み、あるいはまた、学生の社会への適応能力を向上させるための取り組み、こういう、各大学におきます就職支援の強化を含む総合的な学生支援事業、こういったことの充実を図る観点から、平成二十一年度予算案の中で、大学教育・学生支援推進事業百十億円のうち二十四億円程度を計上しているところでございます。

 私ども、今後とも、大学と、あるいは大学関係団体と十分連絡を保ちながら、学生に対するきめ細かな支援が行われるよう努力していきたいと思っております。

上田分科員 ありがとうございます。

 今、経済の状況が非常に悪くなってきている。足元の情勢が急速に悪化をしたというだけじゃなくて、先行きがなかなか見えないという中で、企業側もどういう採用をするのか非常に迷っているし、それに対応して、大学側も対応に苦慮している現状であります。ぜひ、その辺は文部科学省としてもさらに支援の体制を充実していただきたいというふうに思います。

 大学や学生と意見交換をした際に、ことし、四年生で内定取り消しなどに遭ったりして就職がうまくいかない場合に留年する学生が多いという話を聞いたんですね。これは、大学側も、こうした事情を配慮して、就職留年のために、安い学費で籍だけ置いておけるような卒業延期制度というものを導入したというようなことも聞きました。

 よく考えると何かおかしな話でありまして、ただ、これは、企業側が余りにも新規卒業の採用にこだわっているがために、いったん卒業してしまうと今度は中途採用扱いになってしまうので、求職をする学生の方からは非常に不利になってしまう、だから留年をして、新卒として就職活動に入るということを言っておりました。ただ、よく考えてみるとおかしな発想でありまして、こうした企業側の対応というのもぜひこれから是正に、これも文部科学省だけの話ではありませんけれども、ぜひ努力をしていただきたいというふうに思います。

 また、その際、大学側からの意見として、就職活動が非常に早まっている、早期化している、それが大学教育にも影響が出ているというような話も伺いました。まだほとんど専門分野について勉強する前に職業を選択するということになりかねない、就職活動で授業にも出られないケースが多くなる、また、そういうようなことで大学教育に弊害が生じているというような、これは大学側からのお話がございました。

 こうした現状について、教育の立場から文部科学省としてはどういう認識をお持ちか、お伺いしたいというふうに思います。

塩谷国務大臣 ただいまの点につきまして、我々としましても大変憂慮しているところでございまして、特に、学生の就職・採用活動が早期化あるいは長期化している、その分、大学の教育に影響が生じていると受けとめております。最近の雇用情勢の悪化に伴う学生の不安の心理がより一層また就職活動の早期化を招いているような状況もありますので、学生が本来行う、勉学に励む状況をいかに回復することができるかが課題だと思っております。

 大学と企業が連携協力して、秩序ある就職・採用活動が行われることが、学生はもとより企業にとっても望ましいことでありますので、このような関係者の合意を尊重しつつ、就職・採用活動が良識ある形で行われることが重要だと考えております。

 大体三年の、もう中ごろぐらいから始まって、今、四年にはもう決まるような状態でありますから、本当に、専門の勉強がなかなかはかどらないというのが現状だと思いますので、今後、実態をよく、それぞれの大学、企業側にしっかりと伺った中で、具体的な対策を考えてまいりたいと思っております。

 つきましては、早急に、大学団体関係者から成る就職問題懇談会、これは一応三月の十二日を予定しておりますが、開催をして、それぞれの意見を伺うと同時に、また、経済団体との意見交換会も、機会を今検討しているところでございますので、両者の意見を踏まえた上でこの改善に努めてまいりたいと思っております。

上田分科員 ありがとうございます。

 今塩谷大臣からも答弁にあったように、これはもう企業側にとってもいろいろな弊害があるのでしょうし、大学側にとっては教育という面から弊害があるんじゃないかというふうに思います。

 企業からすると、新卒採用に余りこだわり過ぎると、まだ学生の専門教育の内容とか成果といったことも評価できないわけでしょうし、本当に正しい、本当にふさわしい人材を採用できるのかという点で課題も残るんじゃないかというふうに思います。また、学生側からすると、大学教育で最も重要な専門教育のときに身が入らないということがあります。そうすると、どうしても大学教育自体が空洞化してしまうというか、結果的には我が国の大学教育のレベル全体に対する低下というようなことも考えられますし、国際競争力にも影響してくるんじゃないかというふうに思います。

 そういう意味では、どこかでこういう実態を改めていく必要があるというふうに考えておりまして、今大臣の方から、前向きに取り組んでいただけるというようなことでありましたので、ぜひよろしくお願いをしたいというふうに思います。

 最後に、小学校における外国語教育についてちょっとお伺いをしたいというふうに思います。

 昨年三月に学習指導要領が改訂をされまして、五、六年生から、週一こま外国語活動を行うということになりました。国際化時代でありますので、これは評価できる取り組みではないかというふうに思っております。

 文部科学省のホームページを見てみますと、その「目標」として、言語や文化について体験的に理解を深めるとともに、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育成し、コミュニケーション能力の素地を養うことを目標とするというふうになっております。いろいろと難しい言い方でありますが、多分これは、日常的にいろいろな会話ができて、それに、憶することなく外国人と話をしようという態度を養おうというようなことだろうというふうには思っております。

 中学、高校でも従来から英語教育が行われております。これらの英語教育の目標とやはり一体的にとらえて、小学校の段階、中学段階、高校の段階、そうした各段階ごとに、いつまでにどういうような能力を身につけていくのか、そういったことを明確にしながらこの外国語教育を行っていくことが重要なのではないかというふうに思っております。そういう意味では、ここで、小学校ではどういうことを目標として取り組んでいくのか、その点のお考えを伺いたいというふうに思います。

 さらに、語学教育というのは、よく、早く始めた方がいいんだ、だからなるべく早い時期から始めた方がいいということも聞きます。今、幼児向けの英語教室なんというのもたくさん行われておりますし、そうするとかなり成果が上がっているというふうなことも言われております。どうせやるなら低学年から始めてはどうかというような意見もありますけれども、こうしたことに対してのお考えも含めて御答弁をいただければというふうに思います。よろしくお願いをいたします。

金森政府参考人 小学校における外国語教育の目標について御答弁申し上げます。

 新しい小学校の学習指導要領におきまして平成二十三年度から導入することといたしております外国語活動は、中学校や高等学校などにおける外国語科の学習につながる、コミュニケーション能力の素地を養おうとするものでございます。

 その「目標」といたしましては、御紹介ございましたように、「外国語を通じて、言語や文化について体験的に理解を深め、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り、外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しませながら、コミュニケーション能力の素地を養う。」ことをその「目標」としているところでございます。

塩谷国務大臣 外国語教育をもっと早くからということでございますが、ことしから、五、六年において、週一こまの導入をしたところでございまして、このことにつきましてはいろいろな御意見がある中で、私どもとしましても、平成二十年度予算案には英語教育改善のための研究費を計上しておりまして、小学校の低学年あるいは中学年の英語教育など、英語教育のあり方についてさらに研究をしてまいりたいと思っております。

 それと、私個人としては、やはり中学校以上の英語教育、外国語教育につなげるために、その教育の内容のあり方も研究をしていかないと、やはり文法主体となっている今の状況では、なかなか、受験英語みたいので、結果的にはしゃべれない我々の状況がつくられてきたわけでございますから、そういうことも含めて研究する必要があると思っております。

 麻生総理が、英語ではなくて英会話という授業にしたらどうかという御意見もあったりして、それも一つのあり方かなと思っておりますが、いずれにしても、今後我が省として、英語教育のあり方についてさらに研究してまいりたいと思っております。

上田分科員 ありがとうございます。

 今回、新しい取り組みとして、国際化時代に私は非常に評価できる改正だというふうに思っております。内容は、これから始まる話でありますから、やりながら改善をしていくということもあるんだというふうに思いますけれども、ぜひさまざまな角度から御検討いただき、これは相当そういう意味では機動的な対応も必要だというふうに思いますので、ぜひまた文部科学省、大臣にもリーダーシップをとっていただいて、重要なことでありますので、ぜひ進めていただきたいというふうに思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

田野瀬主査 これにて上田勇君の質疑は終了いたしました。

 次に、赤羽一嘉君。

赤羽分科員 公明党の赤羽一嘉でございます。

 きょうは、まず、学生の就職協定問題について質問させていただきたいと思いますが、先日、予算委員会の集中審議でこの点について質問させていただきました。塩谷大臣からは、まさに今の学生における就職活動については早期化、長期化をし、学生生活という点では憂慮すべき事態であって、就職協定の復活を目指して私も働きかけたいと、大変はっきりとした御答弁をいただきまして、私、大変感激をいたしました。

 当日から翌日にかけての各種マスコミの報道も大変大きく取り上げて、私は、最近、率直に言って余りいいことのない麻生内閣において、国民の立場に立った、本当に何とかしなければいけないといったことについて、いつも靴の上からかゆいところをかいているような話ではなくて、やはり大臣が方向性を目指してはっきり決意を示す、そしてそのもとで官僚の皆さんが作業をするということは大変あるべき姿だと思いましたし、そういった角度でこの問題、私たちも党内に就職問題のPT、プロジェクトチームをつくりまして、立ち上げたところでございます。公明党としても頑張ってまいりたいと思いますので、ぜひ御指導をお願いしたい、こう考えるところでございます。

 それで、先ほど上田議員もこの問題を取り上げられて、随分やりとりもございましたので、若干省かせていただきたいと思いますが、まず、今後の就職活動のあり方ということで、先ほど御答弁あったように、早期化、長期化は望ましくない、こういったことで、経済団体ですとかさまざまなところに働きかけていただけるというふうなことだったと思います。そのことについての御決意と、その際にぜひ確認していただきたいのは、私は、新卒至上主義というのをやはりどこかで改めるきっかけをつくらなければいけないんではないか。

 例えば、わかりやすく言いますと、就職が内定できなかった、そうしますと、四年生で卒業できるのに、わざわざ二単位だけ残して、五回生として四年生をもう一回やる。そうすると、私の友人にも随分いましたけれども、ほとんど勉強しないんですね。大学にも来ない。二単位だけ取ればいいだけですから。そうすると、新卒扱いで就職活動をする。もう一人は、例えば家庭の経済事情なんかがあって、もう一年留年することはできない。卒業する。一年間ある会社で暫定的に仕事をするとか、あとはNPOの活動をするとか、いろいろな経験をする。

 しかし、その二人の学生が就職活動についてどう評価されるかというと、現状は、二単位残して五回生でふらふらしていた人の方が有利なんですよ。これは全くおかしな話だし、学生という観点から、大学を修了できているのに、わざわざそのために一年間残るということは、先ほど上田議員からも指摘がありましたが、全くこれは本末転倒のおかしな話であって、本当に経済状況がこれだけ激変しておりますし、企業側も多分、採用の仕方というのを真剣に考えるときだと思います。午前中、私、実は経団連との会合を持ちまして、そういったことも申し上げました。

 この大変な経済状況の中で、就職協定の復活というか、あるべき姿をつくろうとするときに、その大きな項目の一つに、新卒至上主義を何とか改めろということをぜひ申し上げていただきたい。

 そのツールとして、厚労省というか内閣府が鳴り物入りで去年四月から、実質的には夏から使っていますジョブカード、このジョブカードは、使い勝手が悪いところもあるかもしれませんが、大学側においても企業側においても、公認の履歴書というか、その人のキャリアの国公認の履歴書みたいな位置づけにして、経団連や日本商工会議所には全部これでやってくれ、大学側もこれでアプライできるようにしよう、そういったことの提案というのをだれかするべきじゃないか。

 このジョブカードが非常に権威を持てば、卒業しても一年間、こういったことをやっていたということが記載をされ、新卒ではなくて既卒だけれども無駄にしていなかったな、本当にキャリアアップできているねということで、それが新卒至上主義を改める第一歩になるんじゃないか、私はそう考えているんです。

 その点も含めて、あるべき姿の就職制度をつくるための塩谷大臣の御決意、お考えをお聞かせいただきたいと思います。よろしくお願いします。

塩谷国務大臣 先日の予算委員会での質問のときにもお答えをさせていただきましたが、現状の就職・採用活動については本当に大変問題があるということで、その点では問題認識を共有して、そして委員のいろいろな御指導にもよって、これからその改善を進めてまいりたいという決意でございまして、大学関係者あるいは経済団体関係者としっかり話し合いをして進めていきたいと思っております。

 就職協定等が今回どのような話になるか、まだこれからの話ですが、ある面では罰則とか、あるいはそういった企業の名前を公表するとか、いろいろな方法があると思いますが、できるだけ実効性のあることを考えていかなければならないと思っております。

 特に最近は、大学等が質の向上を求められておりますので、まだ勉強していない者をどう採るのかというのはまことに矛盾した話になってきますし、そういったところで、企業としても、やはり優秀な、しっかり実績を持った生徒を選びたいということは一番の目的だと思いますので、そんなこともしっかり話をして決めてまいりたいと思っております。

 それから、新卒至上主義というお話がございました。実は、私の息子も就職浪人で一年、何単位か取って、その後就職した経緯がありますので。

 確かに、考え方として、大学で何をやったかということだけではなくて、やはりそのほかにもいろいろな経験等も含めて、そういったものをしっかり公認の履歴、ジョブカードの話が出ましたが、そういうことを明記して、それを判断として就職・採用活動が行われることがあり方としては非常にすばらしいあり方だと思っております。

 したがって、今後、そのジョブカードを、就職を希望する本人、それから大学、企業、この三者がしっかりと活用できるような体制が整うことが大事であると思いますので、このことについてもあわせて検討してまいりたいと思っております。

赤羽分科員 大変前向きな決意、本当にありがとうございます。

 大学側からすると、学生生活としては今のは憂慮すべきだと思っていると思いますが、一方で、やはり学生を受け入れてもらわなきゃいけないという弱みもあると思うんですね。ですから、そういう意味では、なかなか大学側から直接物を申しにくいということもあると思いますので、現在、文科省の御指導の中で、就職採用情報交換連絡会議というのも持たれていると思いますし、そういったことで、ぜひ塩谷大臣の思いとリーダーシップを発揮していただきたいと強くお願いするところでございます。

 それはこれからの、来年以降の就職活動のことでございまして、本当に問題なのは、今、この四月から社会人になろうとする人が内定取り消しになって、どうなっているかということが大変問題であると私は認識をしております。

 きょう、厚労省にも来ていただいていると思いますが、現在、内定取り消しで、本当に知りたいのは、再就職できていない人、また、内定取り消しだけじゃなくて、内定取り消しには至っていないんだけれども、企業からはウエーティングしろとか、何かさまざまな連絡があるというようなことも数値としてつかまれているようですので、そういった学生の数とその現状についてどのような認識をされているのか、端的にお答えしていただきたいと思います。

大槻政府参考人 お答え申し上げます。

 本年三月学校卒業予定者の採用内定取り消しにつきましては、全国のハローワークが一月二十三日現在で確認できた限りでの概数でございますけれども、中身としては、ハローワークが現在指導中のものも含めまして、千二百十五人、二百七十一事業所で該当がございます。このうち、大学、短大、高専の学生数は八百四十三人となっております。

 また、採用内定取り消しを受けられた学生等のその後の状況についてでございますが、この点につきまして、文部科学省の方で調査をされた数字でございますけれども、一月五日現在の数字で申し上げますと、内定取り消しをする旨の通知を受けた大学、短大、高専の学生のうち、他の企業等から既に内定を受けた方が約三六%、現在就職活動中とする方が約五三%というような状況であることを承知いたしておるところでございます。

 この就職活動を継続中の方につきましては、一日も早い就職先の内定決定に向けまして、ハローワークと学校が緊密な連携を図りつつ、きめ細かく支援をしてまいりたい、かように考えておるところでございます。

赤羽分科員 就職については民間と民間の契約というようなことで、なかなか行政が踏み込めない線があるということはもちろんよく認識をしております。しかし、これはある意味では異常な事態でして、内定取り消しというのはあってはいけないことが起きている、そういった特別な状況なんだという認識で、厚生労働省と文部科学省と経済産業省ですかね、その三者で、内定取り消しになった人が下手をすると高学歴フリーターみたいなことになりかねないわけで、それは一人も出さないという決意でぜひ取り組んでいただきたい、こう思うわけでありますが、局長、どうでしょうか。

大槻政府参考人 内定取り消し問題につきましては、ハローワークにおいても特別相談窓口を設置し、また、関係の産業界の団体等に対しまして大臣、副大臣等から直接要請をすることも含めて、内定取り消しの防止ということについて要請をしてまいったところでございます。

 また、一月には、企業名の公表というようなことも含めました制度の創設をいたしました。これも内定取り消しのその後の状況等を見ながら、該当事案があれば公表に踏み切ってまいりたいと考えているところでございます。

 また、やはりできるだけ予防を図るということが大事でございます。これは十二月から適用いたしておりますけれども、内定取り消しを何とか我慢していただいて、やらずに、入社された学生さんを、仕事はないんだけれども、例えば休業をしていただく、その間に教育訓練などをしていただくといった形で何とか雇用を確保していただく場合に、雇用調整助成金を適用するということにもいたしたところでございます。

 こういった制度を十分周知して、何とか内定取り消しに至らないように努力をしていただきたいということを企業にも強く訴えてまいりたいと思っておりますし、残念ながら内定取り消しになった場合につきましては、そういった学生さんを雇用される事業主の方に奨励金を新たに支給するというようなことも制度化いたしましたので、こういったものも活用して、できる限り早い就職決定ができますように行政として努力してまいりたいと考えております。

赤羽分科員 今回の一連の雇用対策の中で新しい制度ができたわけですから、ぜひそれを漏れなく、フル稼働できるように、厚労省にまずお願いしたい。

 それで、文科省の事務方にもお願いしたいんですが、要するに、厚労省というのは恐らく全部情報がハローワーク経由なんですよ。ということは、私は、ハローワークに来ていない声、取り消しまでにはいかないけれども、何か給料を下げるとか、企業側からの直接アプローチということは数多くあって、学生だと裁判を起こすなんてなかなか知恵が回らないし、相談するべきところというのはやはり大学の学生課しかないと思うんですね。

 その辺は、全国いろいろ回っていただいているというふうに聞いておりますので、ぜひ文科省としてできることも遺漏なきように頑張ってもらいたい、こう思うわけであります。三月末まで余り期間もありませんけれども、局長から御決意のほどを聞かせていただきたいと思います。

徳永政府参考人 ありがとうございます。

 私ども、昨年来、大学の就職支援の現場を訪問させていただきましたり、先生御指摘いただきましたように、地方でのブロック会議をやっているわけでございます。

 そういったこと、さらにまた、先ほど厚生労働省の方からも御答弁ございましたが、私どもの方で一月五日現在の状況調査をいたしまして、例えば、内定取り消しには至っていないけれども、企業から内定辞退の示唆あるいは自宅待機、そういった連絡を受けた者が、大学、短期大学、高等専門学校で四百五十六名もいたというようなことを、実態を把握しているわけでございます。

 現在、私どもは大学に対しまして、とにかく土曜、日曜あるいは長期休業中も含めて、きちんと学生に対してきめ細かい対応がとれるように、あるいはまた就職先の確保に向けた支援、さらにはまた留年を希望する者への特別措置の検討、そういったことを、支援をお願いしておりますし、また、二十一年度の予算におきましても、大学教育・学生支援推進事業という中で二十四億円程度の予算を計上いたしまして、こういった体制、大学の取り組みを支援するということにしております。

 どうぞよろしくお願いいたします。

赤羽分科員 どうもありがとうございます。

 あと、経済状況が悪くなっているとよく出てくるのは、学費が払えなくなって進学をあきらめるとか、入学金が払えずに、せっかく合格しても大学はやめるとか、こういった例というのは結構出てくるんですね。

 そういった意味で、さまざまな奨学金制度というのはこの十年間随分充実をしてきておりますし、今、緊急採用奨学金制度ですか、お父さんがリストラになっても、急遽、いつでもだれでも借りられる、こういった制度もつくっていただいて、枠も相当あるというふうに聞いておりますので、先日の予算委員会で自由民主党の方から出てきた、そういった例で学校をやめたというようなことは一件も出ないように、ぜひ制度徹底も、せっかくつくった制度ですし予算もついていますから利用していただきたいということ。

 同時に、私はずっと入学金に対する奨学金制度ということを実は予算委員会で毎回毎回取り上げておりまして、その結果、今三十万円の入学時貸与金額がいよいよ五十万円まで、これはバリエーションを持って実行できるということであります。

 これは、やむを得ない部分もあると思うんですけれども、入学金を払うのは入学する前、二月とか三月で、奨学金をもらえるのは五月とか六月になる。現状は、つなぎ融資というんですかね、入学時必要資金融資というのが労金で設定されていますけれども、大学の入学でどたばたしているときにこの融資を申し込むとか、なかなか煩わしいという話もよく聞きます。

 私は思うんですけれども、奨学金の入学金相当の貸与額を申し入れをして内定をもらえた人については、大学側は、今の独法の日本学生機構かな、そこから内定をもらった学生については、実際五月か六月に奨学金が出るわけですから、そのときまで入学金は猶予されるような、そういったことをぜひ提案されると随分状況も違ってくるのではないかな、私はそう思うんです。今そうするとかということじゃなくて結構ですけれども、そういったことも入れて柔軟に、経済状況の変動に対応する柔軟な制度もぜひ御検討いただきたい、こう思うわけですけれども、大臣、よろしくお願いします。

塩谷国務大臣 経済的な理由により就学困難な学生に対して、既に各大学等において、入学金等学生納付金の減免や徴収猶予等の取り組みは現在行われているものと承知しております。

 御提案のように、入学時特別増額貸与奨学金内定者に対しては、当該大学がこの増額貸与奨学金が交付されるまで入学金の納付時期を猶予することは、経済的理由により就学困難な学生等に対して就学機会を確保する上で有効な手段だと思っておりますので、各大学においてこのような措置を導入するように、さらにまた検討を促してまいりたいと思っております。

赤羽分科員 世界で第二の経済大国で、親がリストラになったから進学をあきらめなきゃいけないとか、入学金が用意できないから大学進学できないみたいなものというのは余りにも寂しい話だと思うし、あってはならないことだと思いますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 次に、全然違う話なんですけれども、これは地元の話なんですけれども、我が兵庫県は県立高校の入試日が実は公立の中学校の卒業式の後なんですね。ですから、三月十五日ぐらいに卒業式がありますと、県立高校の入試というのは三月の十八日ぐらい。私は、自分は東京育ちなんですが、今神戸で子供が二人おりまして、三月十五日に中学校の卒業式があるけれども、その段階でどこに行くか決まっていない。私立に行く子たちはもう決まっているから伸び伸びしているんですけれども、卒業式で、公立を受ける子たちはどこに行くかも決まっていない。おまけに卒業式の後に謝恩会みたいなことをやって、親の立場としては、あさって試験があるのに何やっているんだと。大体これは非常に僕は違和感を感じました。

 多分、そんなルールというのはないんだと思うんですけれども、兵庫県にも聞いたんですけれども、何となく、はっきり言うと惰性でやっているんですよね、従来こうなっているからみたいな。近隣の県もそういう県が多いですみたいな話なんです。

 私は、中学校三年間いろいろやっていて、試験があって、その後どこに決まるかが全部わかって、それで巣立っていくという方が、やはり本人たちにとっても、その家族にとっても、そっちの方が望ましいと親の一人として思っておりました。

 ただ、こういうことというのは、県議会でも、うちの県議会議員にも言うんですが、県議会議員というのも大体地元で育っていますので、それが当たり前だと思っている人が多いんですね。だから余り話題にならなくて、この辺について、余り議論もされていないと思うんですけれども、文部科学省として、議論があればどういった議論があったのかというのを、短くで結構ですし、なければ、少し議論ぐらいして検討していただきたい、こう思うんですけれども、いかがでしょうか。

金森政府参考人 公立の高等学校の入学者選抜は、設置者である教育委員会が入学者選抜実施要綱等で定めた上で実施されているところでございまして、御指摘の兵庫県立高等学校の入学者選抜につきましては、兵庫県公立高等学校入学者選抜要綱により、平成二十一年度における学力検査は三月十三日、合格発表は三月十八日に実施すると聞いております。

 また、兵庫県内の公立中学校では、卒業式を三月十一日または三月十二日に行う予定であると聞いております。

 兵庫県教育委員会によりますと、このような方式は昭和二十六年度から実施されておりまして、中学校三年間の学習の成果を重んじることは中学校教育の充実を図るためにも重要であるという基本的な考え方に基づき、中学校の全教育課程が修了したことを前提に、中学校の卒業式後に学力検査を実施することとしているとのことでございます。

 県立高等学校の入学者選抜と中学校の卒業式の日程がこのような関係になっておりますのは、兵庫県のほか、大阪府、三重県などにおいても同様でございまして、このような入学者選抜の日程につきましては、設置者である教育委員会で御判断いただくものと考えているところでございます。

赤羽分科員 委員長の田野瀬先生も教育にかかわっていらっしゃって、多分おかしな話だと、おかしいと思いますよね。卒業式を経ないと高校を受験する資格がないみたいな説明というのは、私も同じことを兵庫県の教育委員会に聞きましたけれども、全く理解できない。それは全く子供の立場じゃないんですよ。学生の立場じゃない。だって、卒業するのにどこに行くかわからないなんて、それこそ卒業式とは何ぞやということの議論も逆にぜひしていただきたいし、今の答弁は、権限がないからということでしようがないかもしれないけれども、ぜひ話題ぐらいにしていただきたい、こう思いますが、大臣、感想を含めてどうですか。

塩谷国務大臣 私もこの話は初めて聞きまして、そういうところがあるということを知ったわけですが、昭和二十六年からやられていたのがずっと今日まで続いているから余り議論にならない、地元ではそういう状態であると思いますが、今委員おっしゃったように、子供の立場から考えてみますと、やはり卒業式にはすべて進路が決まっているというのが一番いい卒業式のあり方だろうと思っておりますので、ここは一度ぜひ地元でまずは議論をしていただければと思っております。いろいろな意見が出てきたら、それに私どももまた検討してまいりたいと思います。

赤羽分科員 さすがに兵庫県の教育委員会も大臣の御答弁を無視するわけにいかないと思いますので、議論が始まると期待しております。

 次に、これももう一つ私がずっとここの委員会で言っていることなんですが、実は、私が小学校の四年生から六年生のときに、私の恩師で茅原先生という音楽の先生がおりまして、日本人である以上、和楽器を通した邦楽の教育をしなければいけないということで、琴を習いました。そこそこ弾けるようになりまして、私は、そのときに日本の文化のすばらしさということを学ぶことができましたし、社会人になって商社マンとして海外に駐在いたしましたので、これは本当にそのときに日本人のアイデンティティーを持つことができた大きな原点であったと思います。

 それで、教育基本法の改正の議論のときに、愛国心についていろいろな議論がありました。そのときも質問に立ったんですが、国を愛するということは非常に抽象的なので、日本の文化、伝統を愛するというか誇りを持ち、自分がそれを知っているということがすごく大事だということで、ぜひ邦楽教育を学習指導要領にちゃんと書くべきだ、こういったことを申し上げておりました。

 その結果、実は、大変うれしいことに、平成二十年の告示から小学校、中学校における学習指導要領で明確に書かれておりまして、三学年を通じて一種類以上の楽器の表現活動を通して、生徒が我が国や郷土の伝統音楽のよさを味わうことができるよう工夫すること、それとか、楽器の指導についてはというところで、和楽器というものを明確に入れていただいています。これは大変大きな前進だと思います。

 そもそも、日本の小中学校に、ピアノやオルガンがない学校というのは一校もないんです。全部にあります。しかし、琴のある学校というのは本当に少ないんです。こういうことというのは少し見直すべきなんじゃないか、こう考えておりまして、そういうことについていろいろ提案をしてきて、その結果指導要領が変わった。そして、現場では多分、指導者の問題もあるし予算的に楽器をどうするかということもあるんだろうけれども、そういった問題はあるにしても、現状は現場でどう変わっていっているのかということの御報告を聞かせていただきたいと思います。

金森政府参考人 和楽器につきましては、先生からかねてより御指導いただいているところでございますが、改正教育基本法におきまして伝統と文化の尊重が規定されたことを踏まえ、昨年改訂いたしました中学校学習指導要領では、御紹介ございましたように、和楽器の指導につきまして、三年間を通じて一種類以上の楽器の表現活動を通して、生徒が我が国や郷土の伝統音楽のよさを味わうことができるよう工夫することと指導の趣旨を明確化いたしまして、その充実を図ったところでございます。

 また、教材の関係でございますが、新学習指導要領の円滑な実施のための教材整備緊急三カ年計画というのを平成二十一年度から二十三年度にかけて策定いたしまして、この中で、和楽器の整備も推進していくことといたしているところでございます。

 このような取り組みを通じまして、和楽器や邦楽の指導の充実に努めてまいりたいと考えております。

塩谷国務大臣 まさにその点は、これから学校で日本の伝統の和楽器についていろいろ学習したり習ったりすることは大事だと私も思っていまして、特にまた先生の琴の演奏も聞かせていただきたいと思いますが、例えば地元でも、太鼓なんかが結構学校に普及しているんです。

 今、予算の面でどうするかということですが、どうしても安いものを全部入札で買ってしまう。それは多分中国の輸入のもので、本物をいかに置けるかということも考えていかなければならない。これはこれからの課題として、やはり日本伝統のものを、いいものをしっかり体験するということが大事だと私個人は思っていまして、そういうこともあわせてまた今後検討していきたいと思います。

赤羽分科員 残念ながら時間となったので質疑は終了いたしますが、要するに、私は、今のことに兼ねて言いたいのは、やはり公立学校の教育の充実というのをもうちょっと国としてしっかりやるべきだと。そういった意味で、公立の小中学校に琴が全部あったって別におかしくないわけです。そういった予算というのは、今後の需要創出策の中でぜひ文科省としても提案をしていただきたい。

 同時に、今、耐震化を全力で国の制度も変えてやっていただいておりますが、耐震化と同時に、きょうも後でこの資料をお見せしますが、公立小中学校のITのインフラ整備。これは耐震化の工事のときにLANも敷設工事を一緒にやらないとなかなか進まない。目標値が定められていて、なかなか、大体目標のまだ半分ぐらいなので、こういったこともあわせてやってほしい。

 加えて、我が党でずっと言っておりますが、太陽光のパネルについても全小中学校に、これは全小中学校につけるというのは大変だなと思いましたけれども、一校当たりの工事というのは二千万円ぐらいなんですよ。三万二千校ですと六千五百億なので、考えてみるとそんなに大した金額じゃない。それで、二千万ぐらいというのは、変な話ですけれども、地元の景気対策について結構効果的な、適度な額だし、加えて、やはり環境の数値に対しても効果がある上に、環境教育ということで物すごく意味がある。加えて、震災とか災害があったときは避難所になりますから、そこに蓄電ができているということは防災対策にもなる。そして、先ほど言いました地元の景気・雇用対策にもなる。

 一石三鳥になるので、この際文科省として、景気対策の時期が来ると思いますので、経済対策の時期が来ると思いますが、そのときを利用して、利用してというか、いい意味でとらまえて、公立学校の充実ということで、太陽光パネル、ITインフラの整備、そして、先ほどの邦楽の和楽器の整備等々もぜひ充実させていただきますよう強くお願い申し上げまして、きょうの質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

田野瀬主査 これにて赤羽一嘉君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明二十日午前九時から本分科会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時散会


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