衆議院

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第3号 平成22年3月1日(月曜日)

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平成二十二年三月一日(月曜日)

    午前十時三十分開議

 出席分科員

   主査 海江田万里君

      津島 恭一君    長島 一由君

      山田 良司君    下村 博文君

      福井  照君

   兼務 馳   浩君

    …………………………………

   文部科学大臣       川端 達夫君

   文部科学副大臣      鈴木  寛君

   文部科学大臣政務官    後藤  斎君

   文部科学大臣政務官    高井 美穂君

   文部科学委員会専門員   芝  新一君

   予算委員会専門員     杉若 吉彦君

    ―――――――――――――

分科員の異動

三月一日

 辞任         補欠選任

  下村 博文君     福井  照君

同日

 辞任         補欠選任

  福井  照君     下村 博文君

同日

 第三分科員馳浩君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成二十二年度一般会計予算

 平成二十二年度特別会計予算

 平成二十二年度政府関係機関予算

 (文部科学省所管)


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     ――――◇―――――

海江田主査 これより予算委員会第四分科会を開会いたします。

 平成二十二年度一般会計予算、平成二十二年度特別会計予算及び平成二十二年度政府関係機関予算中文部科学省所管について、前回に引き続き質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。福井照君。

福井分科員 おはようございます。

 きょうは、質問の機会を与えていただきまして、本当にありがとうございます。

 まず大臣、唐突ですが、予告はしていますけれども、教育の根本目的について、政権交代後初の文部科学大臣とされて今後日本の教育をどういうふうに引っ張っていかれるおつもりなのか、その根本原理、根本目的をまず御紹介いただきたいと思うんです。

 といいますのは、手前みそになりますが、我が自民党のときに、教育の根本目的を考える勉強会というのをつくりまして、そのときにいろいろな大使館に来ていただいたんです。そうしたら、おもしろかったですね。例えば、オランダ大使館の方は、国が小さいので世界じゅうどこへ行っても生き抜けるように一人一人を育てること、これが教育の根本的な目的なんだということをおっしゃいました。それから、アメリカ大使館、これまたアメリカ人らしいですね。一人一人のキャラクターを身につけることだと。キャラクターこそ根本目的である。ドイツ、これまたおもしろいんですね。近代史を教えること、なぜヒトラーを生んだのか、これが根本目的だと。それぞれ含蓄があって、日本もそれぞれの国のそれぞれの目的をやはり吸収しなければならないと思います。

 それから、最近PISAの調査がありまして、リテラシーがだんだん、もう毎年毎年下がっていますね。普通の読解力というリテラシーもそうだし、数学的なリテラシーもそうだし、科学を読み解く力もそうだし、下がっています。

 そのPISAの報告書の表紙に、OECDの教育を考えるミッションの目的、つまりOECD各国の共通する教育の根本目的が書いてあります。それは、ナレッジ・アンド・スキルズ・フォー・ライフなんですね。今までどうしても、読み書きそろばん、知識、知識ということで日本人を指導してきた、啓蒙してきた経緯があります。しかし、これからは、フォー・ライフ、一人一人が人生を生き抜くための、知識も重要だけれども、スキルも要るんだと。

 これは、手に職ということですね。なおかつ、十五歳の少年少女が試されているような読解力ですね。手に職プラス読解力。これは、知識という今までの概念を超えたもの、ナレッジ・アンド・スキルズ・フォー・ライフというものを身につけることこそ今後二十二世紀を生き抜く若人が必要なものなんだということで、OECDが、共通する部分集合ですけれども、十五歳で世界じゅう共通する同じテストを受けさせているということでございます。

 後ほどキャリア教育のことも聞きたいし、地域の経営のこともお伺いしたいので、まず、十分時間をとっていただきましたので考えていただいて、我が日本の文部科学大臣としては日本の教育の根本目的をどういうふうに考えているか、ぜひ教えていただきたいと思います。

川端国務大臣 大変含蓄のあるお話と御質問、ありがとうございます。

 基本的に、資源のない、狭い国土、人口の少ない日本が世界の中でどういうふうに貢献していくのかも含めて、日本人たるものはどうあるべきかというのは教育の根幹にかかわると思うんですが、私は、一番大きく言えば、どの国に限らず、人間として生まれたわけですから、人間が人間らしく一生を充実して全うできる、その根本をしっかりと身につけてもらうというのが教育の一番原点だと思います。

 そういう中で、世界に貢献する知恵を持ち、人間らしくというのが、ありきたりの言葉で言えば教育の根幹にあるんだと思うんですが、大きな教育の目的として言えば、別に自公政権であろうと民主党政権であろうとそんなに認識の違いがあるわけではないと私は思っているんです。

 地球規模でいろいろなことが議論され、課題になってきているときに、振り返ってみると、日本人というのは世界にまれに見るすばらしい価値観と感性と行動、それからいろいろな伝統的なものをつくってきた民族だと私は思います。世界じゅうの中でこれほど自然というものにあらゆる局面で、たとえ本当に寒くても、暑くても、まあ、程度はあるんでしょうけれども、自然に感謝をし、自然の恵みを受け入れて、そして自然とともに生きていくというより生かされているという価値観を持った民族は、日本人は突出していると思うんです。だから、きめ細やかな感性が磨かれ、文化も芸術も食べ物も含めて長い間に日本人らしい価値観と文化芸術をつくってきたし、知識も得てきたというふうに思います。

 ですから、今地球規模でいろいろなことが問題になり、あるいはいろいろな紛争が起こりというときに、改めて日本人が長年先人から持ってきたよさを今の子供たちもしっかりと認識をして、そのよさを生かして世界に役に立つ、そして、それが結果として自分が非常にいい人生を送れたというふうになってほしいというのが、具体策というよりも思いとしての私の基本の考えでございます。

福井分科員 ありがとうございました。

 自然と一体というのは、まさに日本人だけが持っている思想、哲学の根本だと思います。神と人間というふうに対比するんじゃなくて、神々、すなわち自然と地球と人間が一体だと。これは、この前の鳩山総理のアドレスにございましたね。人間圏と地球圏というのがあって、それぞれ命があるんだというようなこともおっしゃっていました。

 松井孝典先生のいわば思想だと思いまして、その松井先生のお言葉は、究極の人間の目的というのは知ることであると。ただ命をつなぐだけだったら微生物でいいので、こうやって知的生命体として一つの人間圏を築いてきたということは、人間が何なのか、宇宙とは何なのかということを知ることだ、これが人間の属としての目的だというのが松井先生、それを引いたのが鳩山総理のアドレスだったので、これはまさに、文部科学省こそ霞が関で一番大事、文部科学大臣が一番大事ということをおっしゃっているのに等しいなと思って、きょうはちょっと質問に立たせていただいて、まさに自然と一体ということをおっしゃいました。

 それで、ジオパークというのがあるんです。これは世界遺産と同じでユネスコが指定するんですけれども、ジオロジーのジオですね。これは日本には一個もないんですけれども、世界じゅうにいっぱいありまして、特に今中国で急増していまして、指導者が地質学者だったものですから、まあ、そんなことを言ったら怒られますけれども。

 きのうも地震があり、津波がありました。まさに地球は動いておりまして、二十世紀の最大の発見、量子力学も相対性理論も、それから乱流という渦の力学もそうなんですけれども、プレートテクトニクス、もともと大陸は一つで、今は離れ離れで、また一つになるんですね。プレートという何百キロという岩盤の厚いもの、岩盤の底の方の、マントルに行く途中の層というか板状のものがありまして、そのプレートが動いている。それが大陸を動かしていて、五千万年ぐらいしたらオーストラリア大陸が日本にどんとぶつかって、一億年したらアメリカが中国大陸にどんとぶつかってというのもほとんど予想されている状態。

 日本はユーラシアプレートの最東端にあるわけです。地震が起こるのは、フィリピン海プレートとか太平洋プレートと日本の下にあるユーラシアプレートとがともに地球に引っ張り込まれようとして、そのひずみが時々ぴょんとはねて、ひずみが解放されて地震のエネルギーになる。だから、海溝性の地震は百年に一回、百五十年に一回必ず起こるということが言われておるわけです。

 せっかく、これは逆手にとらないといけないんです。何百年かに一回必ず起こる地震、あるいはそれを証明する、室戸岬なんかに行くとすごいんですよ。とにかく、ぐじゃぐじゃの地層がありまして、そして、糸魚川でもいろいろな地域でも、水晶は出てくる、火成岩はある、いろいろな岩がある。

 ですから、地質を学ぶ、それから地球は動いている、自然と人間とは一体である、人間は生かされているんじゃなくて、とにかくいじめられ続けてきている。全球凍結というのがありまして、地球というのは何億年に一回氷に覆われるんですね。だから、地球は全然人間に優しくないんです。だから、無理やり一生懸命必死で生きているんだ。だけれども、自然とは一体だということを学習するためのまさに天然のパビリオンが日本列島。それを生かさない手はないので、今準備作業が始まっています。洞爺湖もそうですし、糸魚川もそうですし、我が高知県の室戸もそうなんですけれども、ジオパークは、世界じゅうからお客様を招く、いわば観光、貿易外収支の経済基盤、産業基盤になり得るわけでございます。

 たまたま高知県も、これから一生懸命やろう、まだ余り大きく足を踏み出していないというときに、そして経済がこういうときに、文部科学省としても、地域経済そして日本の経済を発展させる成長戦略がもちろんあって、ジオパークについてこういう援助あるいは指導をすることができる、そしてするんだということを、きょうできればするんだというところまで聞かせていただければありがたいんですけれども、ジオパークについてのコメント、では、後藤政務官からお願いします。

    〔主査退席、津島主査代理着席〕

後藤大臣政務官 どうも、福井先生、御質問ありがとうございます。

 先生、事実だけまず確認をさせてもらいたいと思います。

 世界ジオパークは、ユネスコ条約ではなく、ユネスコの本部の中にある機関でありますけれども、世界ジオパークネットワークという中での指定行為になっています。私もちょっと確認をしたんですが、日本では十一カ所がジオパークのネットワークを持っていて、そのうち三カ所は昨年の、ちょうど選挙の最中だったので御記憶が不案内かもしれませんが、八月の二十三日に、洞爺湖有珠山、糸魚川、島原半島ということで三カ所、世界ジオパークということで日本ジオパークの十一カ所の中から認定をされております。昨年の十一月に、さらに山陰海岸が世界ジオパークの申請の候補地になりました。先生の御地元の室戸も、この十一カ所の日本ジオパークの認定地域には当然なっております。

 昨年も、その審査会のときに、先生おっしゃったように幾つか論点があったようでありますが、これも経産省の産総研が事務局で主体になっているということでありますが、もう少し広域で、室戸地域だけではなくやった方がいいのではないかということと、あと受け入れ体制をどうするかということが若干まだ、問題ではないものの少し工夫の余地があるというふうなことだと理解をしています。

 先生御案内のとおり、史跡等総合整備活用推進事業であるとか保存整備であるとか、室戸にももう昭和三年から、室戸岬並びに室戸岬の亜熱帯樹園ということが名勝天然記念物ということで指定をされておりますので、そういう事業を例えば活用していただきながら受け入れ体制を整備していくであるとか、例えば、環境省の部分での事業を使っていただきながら、国立公園にもなっておりますから、その受け入れ体制を充実していただくとか、そういうことも含めて工夫をしていただきながら対応をしていただくことが必要ではないかなと。

 ただ、先生おっしゃるように、地質遺産を保護、研究するだけではなく、先ほどお話をいただいたように、自然と人間とのかかわりを理解するということは非常に大切なことでありますし、またそれが教育現場にも活用ができる、さらには新たな観光資源として地域の振興にも活用できる。あらゆる角度から新しいシーズとして、ぜひこれからも関係省庁も連携をし、また先生の方からもいろいろな御提言をいただきながら、受け入れ体制の整備であるとか広域化ということも含めて支援をできる部分はしていきたいというふうに考えております。

福井分科員 ありがとうございました。

 戦略性が必要だから伺ったんです。これは国家戦略室で扱うべきテーマだと思うんです。しかし、経産省じゃなくて文部科学省でやってほしいと思ったのは、木村尚三郎先生が喝破したのは、とにかく世界じゅう不安なときに民族大移動が起こるんだそうですよ。だから、大航海時代も不安な時代だったと。今、すごく不安なんです。これからもっと不安になる、文明の衝突がありますから。ですから、もっと人々が世界じゅうを歩き回るようになる。

 その目的は知ることなんです。先ほど言いました松井先生がおっしゃったように、知ること。なぜ生きているか、人間とは何か、自分とは何かを知ることにある。それで、自然を学ぶ、その自然の中で自分を学ぶ。知りたいという要求を、この日本列島は、先ほど言いましたユーラシアプレートの一番最東端という位置に存する、地震もある、台風もある、すべての災害を身に受けている、その歴史もある、だけれどもサステーナブルな文明を築いてきた。これを見に来ないはずがないので、ぜひ戦略的に省としてお取り組みをいただきたいというふうに思います。

 もう一つ、今度は真正ユネスコ。

 四国のみちというのを私たちは抱えていまして、世界遺産、今度は平泉でもう一回チャレンジしていただくそうですけれども、これも、観光客、貿易外収支を稼ぐのに重要なツールになります。

 もし四国のみちが世界遺産に指定されたら、世界で初めてになるんです。これはどうしてかというと、フランス、スペインの街道はキリスト教徒の踏み締めた道なんです。熊野古道がありますけれども、これは山岳信仰のための道なんです。道は今まで二つしかない。今度、道としては三つ目だけれども、もちろん四国八十八カ所だから、仏教の、特定の宗教はお寺としてはあります。

 しかし、四国八十八カ所をめぐる四国のみちというのは宗教と関係ないんです。およそ何億人、何十億人という人が、仏教徒でなくたって、キリスト教徒だって、ムスリムだって踏み締めたんです。みずからの人生を悩みながら、人間関係に悩みながら、家族関係に悩みながら、会社に悩みながら。

 その一般庶民が主人公の世界で初めての世界遺産になるんです。これが四国のみち。ウエーティングリストにまだ載っていませんので、物すごく飛ばさないといけませんが、何とかこれも、四国全体でももちろん頑張りますけれども、自立しろとだけ言われてもこれはだめなんです、もうやり尽くしていますから。だから、これは地域主権のこれからの民主党政権だ、これからの政権だと言われても、もうやり尽くしていますから、これはちょっと霞が関の御紹介、指導、助成、援助、あるいは政務三役の関係の審議会でもつくっていただいて、それでドライブしていただくということで、国家戦略としての取り組み、世界遺産をもっとドライブするという、指定してもらうというのが一つ。

 それから、もし間に合わない場合は、アジア版の世界遺産、アジア版の世界遺産というのはちょっと自己矛盾ですけれども、しかし、これはちょっと政務官が得意なところですけれども、これからの成長はアジアですから、これから中国、韓国、インドネシア、マレーシアと一緒になって成長していくという、ことし、来年の世界もそうですけれども、何十年、これから百年、二百年はもうアジア。そのときに、やはり貿易外収支、観光客のそれぞれの移動をそれぞれの国が誘致し合うという戦略は当然要ると思うんです。それを何でユネスコに任せないといけないんでしょう。どうしてジオパークの事務局に任せないといけないんでしょう。

 これは、アジア版、だから東京オリエンテッドでやろうというふうにきょうおっしゃっていただければすごく助かるんですけれども、とにかく、世界遺産、四国のみちについてぜひ元気になるようなコメントをいただきたいと思います。

後藤大臣政務官 四国のみちはもっと勉強したいと思いますが、せんだって大臣から、新しいこれからの文化芸術を審議するために、実は文化審議会にも川端大臣のもとで諮問をしております。その中で、今先生おっしゃるような文化財を地域資源としてもっと観光や地域の活性化に使えないかという視点や、そして十二月三十日の新成長戦略の中にも、これは六月までに具体化をしていきますが、やはり文化財、地域の持つそれぞれの資源をもっと生かした形で、地域が元気になるようなことで文化財や文化の源というものをできるだけたくさんの方に伝えていく、それは当然海外の方ももちろんでありますが。

 先生がおっしゃった四国のみちも含めてできるだけそういう新しい成長性のあるもの、そしてできるだけ多くの方に見てもらうことによって地域が元気になる視点、そういうものも文化審議会や新成長戦略の中に入れ込みながら、御趣旨にすぐ四国のみちが対応できるかどうかは別としても、そういう視点も含めながら積極的に対応していきたいというふうに思っています。

福井分科員 ありがとうございました。

 今おっしゃっていただいた文化財ですけれども、財団法人の文化財建造物保存技術協会というのがございまして、もうすぐ姫路城がすっぽり覆いますけれども、いわば宮大工さんの公的な集団というのがございます。今、事業仕分けもありますし、天下りがどうしたこうしたという財団法人、社団法人の整理というのがありますけれども、これをまさかつぶしたりとか、日本から宮大工をなくするようなことはないでしょうねという確認をさせていただきたいと思います。わざわざ二十年に一回遷宮をするというのは、あれは技術を継承するためだけなんですね。それだけに、あれだけのお金を使って伊勢神宮が周りの神社まで含めて遷宮をするということ。

 それから、地域の取り組みもあるんです。金沢市では、金沢市営で宮大工さんの大学をつくって、金沢城の修復をオン・ザ・ジョブでやっているんですね。それはどうしてかというと、当時の金沢市長さんが、京都から宮大工を連れてきてどうして金沢城をつくらなくちゃいかぬ、この加賀百万石の伝統がどうしていつ途切れたかなということで、途切れちゃったんです。それで、途切れないように若い大工さんを今育てようとしているという地域の取り組みもあるぐらい。

 これから、今まさに政務官が、後藤さんがおっしゃっていただいた、文化財こそまさに日本の誇りになるわけですから、これをまた世界じゅうの人が見に来るというときに実際つくる人がいなかったら、それがクリティカルになって、十年でつくれるところが百年、二百年かかるということになれば何の意味もないわけでございますので、ぜひ、文化財を修復する、あるいはつくる技術、技術者の継承について、コメントがありましたら教えていただきたいと思います。

後藤大臣政務官 事実だけ。二十二年度の予算で審議していただいている部分で、先生が今御指摘の部分の文化財の保存修理、防災施設の充実ということで、前年度より十億増の百八億円を実は文化財の保存修理、充実というところに予算を計上させていただいています。先生御指摘のそれを支える人材というものは当然一番大切な部分でもありますので、予算確保がある程度できれば当然そこで人も存続をする。これは、どちらが先かということではなく、その大切さということは私たちも非常に理解をしております。

 そういう意味で、先ほどの文化審議会の諮問の中にも、その人材をこれからどうするかと。これは、例えば若い芸術家だけではなく、文化財をこれから将来にわたって保存し、また修理をしていく、修復をしていくという方々に対してもどういうふうにしていくかということを、中間報告はできたら夏までには得ながら、あと一年くらいで将来のあり方というものを、人のあり方、またこれからの将来の、先ほどの地域の活性化という新しい視点も含めて、トータルとして、国として、また自治体として、個人個人の国民として、どういう役割を持つかということも含めて積極的に人材育成についても考えていきたいというふうに思っております。

福井分科員 ありがとうございました。

 冒頭予告しましたキャリア教育、ちょっと簡単に御紹介いただきたいと思いますけれども、五年で五万人つくるというキャリアカウンセラー、やっと五万人できました。これは小泉構造改革の時代だった。アメリカに百万人いるけれども、日本にまだ五万人しかいない。そして、それはほとんどハローワークにしかいません。

 いろいろな高校で、いろいろな地域でキャリア教育の実験が行われておりますけれども、これはまさに散発なんですね、もう余りにも離れ離れで。それをネットワーク化して、すべての参加者がすべての情報を共有し、そして同じ志を持って動いて初めて次のレベルに行くわけですね。いわば創発をする、発明できる、発見できるその状態になるわけです。だが、そのネットワーキングが全くないんです。厚生労働省と文部省のネットワーキングも、もちろんない。それから、いろいろな実験高校のネットワーキングもほとんどない。文部科学省としての、やる気がないとは言いませんけれども、問題意識がこの七、八年で倍増したかというと、そうでもないということなので。

 しかし一方で、農業、介護は人手不足です。一方で、高校の卒業、今回、この四月からぶらぶらするのは多分二割ぐらいいるでしょう。こういう社会的な問題を抱え、この現下の最大問題、雇用問題に直面しているのにもかかわらず、文部科学省としてキャリア教育を日々こういうふうにやっているんだという発信もないという状況なので、この機会ですから、文部科学省として、人生が大事、仕事が大事、手に職が大事というふうに先ほどおっしゃっていただいたわけですから、今こういうふうにやっているんだ、そして今後こうするんだというコメントをぜひ御紹介いただきたいと思います。

    〔津島主査代理退席、主査着席〕

川端国務大臣 御指摘のキャリア教育の必要性は、フリーターがどんどんふえる、あるいは新卒者が一年たったら何割もまた仕事をかわってしまっている、ニートという人までいっぱいいるという状況の中で、一番もとにあるのはどうも、将来何になりたいかという意識がどんどん希薄になった若者が多くて、余り目的がはっきりしない中で高校あるいは大学にいるということの中ですから、何になりたいかということがないと、専門的に勉強する意欲とか手に職をつけるという意欲とかが非常に薄くなる。

 そして、よく青い鳥症候群と言われるように、何かの仕事についても、きっと僕にはほかの仕事がいいのがあるはずだみたいなことがあるということで、現に今内定率が非常に悪いんですけれども、例えば国立の工業高専なんかは二十倍とかの求人率とかですね。そうすると、工業高専を出て自分でこういう分野に行きたいという意欲が非常に高くて勉強しているという子は企業もぜひとも来てほしいというふうに、やはり今の雇用の問題にも全部直結していて、非常にアンバランスな状況があります。

 同時に、大卒でも内定率は悪いんですが、一流企業に行きたいということで求人率が高くない。一方で、中小企業でやはり将来を支える人材に来てほしいというのに全然来てくれないというふうなミスマッチもある。

 そういう中で、やはり教育課程において、職業とは何か、それから大きくなったら自分の能力に応じて仕事をすることが社会人としての責任でもあるということの根本的な教育と、それから専門的な知識、技能の習得というのは一貫してやらなければいけないというのは、もう先生御指摘のとおりであります。

 今、中教審に既に諮問がされておりまして中間報告を受けている段階なんですけれども、やはり、各段階に応じた部分で中に入り込んでいるのは、教育課程との連携というものが一番大事であるというのは指摘をされていまして、個々には、キャリアガイダンスを充実しろとかいうことをカリキュラムに入れなさいとか、指導は全部してきているんですが、なお工夫はまだいっぱい必要だと思いますので、また折に触れていろいろと御示唆をいただければありがたいと思っています。

福井分科員 ありがとうございました。

 時間が参りましたけれども、では、御指摘だけさせていただいて、答弁は結構ですので。

 統計学の国民的啓蒙について必要じゃないかという、多分そんな質問をしたのは戦後私が最初で最後だと思いますけれども、これはどうしてかというと、八月三十日の感想は、とにかくリテラシーなんですよ、スイングもありましたけれども。スイングとリテラシー。リテラシーはメディアリテラシー。メディアリテラシーの逆の意味で、いろいろアンケートをする。

 例えば、きょうの日経でも四五から四三に下がるとかいって決定論的に書いてありますけれども、すべての数字は、アンケート結果にしたって、きのうの津波の予報にしたって、ある一定の幅を持ってしか予測できないので、その統計数字についてはカイ自乗検定とかT自乗とかいろいろ検定の手法があるので、メディアの情報流出とは言いません、情報を出す側の方にも、幾ら文科系とはいえ、これは統計学を勉強してもらわなかったら国民が誤解すると思うんです。ですから、ソーティングの数によって信用する幅がある、四五が四三に下がったとは言えないとか。

 それから、きのうの津波にしても、平均二メーターだけれども、小さいときは一メーター、大きいときは三メーター、そういう幅があるんだ、それも信頼度が九五%しかないんだとかで、そういうことはややこしいから出さないというふうなことじゃなくて、ややこしくても今から、とにかくメディアの方から国民にそういうふうに説明しなければならないと思うんです。それを指導するのは文部科学省しかないので、きょうちょっと陳情をして、指摘をさせていただいて、質問を終わらせていただきたいと思います。

 きょうは、本当にありがとうございました。

海江田主査 これにて福井照君の質疑は終了いたしました。

 次に、馳浩君。

馳分科員 最初におわびをいたしますが、委員長、実はぎっくり腰をやりまして、椎間板ヘルニアでありまして、立ったり座ったりがちょっときついものでありますから、座ったまま質問をいたしますので、当然、大臣、副大臣、政務官にも、座ったまま心落ちついて答弁いただければ結構でありますので。

海江田主査 それでは、馳浩君に着席を許可しますので、挙手はしてください。

馳分科員 お礼申し上げます。

 きょうは、スポーツ政策についてお伺いいたします。

 まず大相撲の話題であります。朝青龍問題でありますが、日本相撲協会からの報告書の経緯、引退に至るまでの経過報告、また元横綱朝青龍関の暴行の事実はあったのかどうか、今回の処分のあり方等について文部科学省としてそれでよしとするのかどうか、この点をお伺いしたいと思います。

川端国務大臣 どうぞお大事にしてください。

 元朝青龍関の問題について、十五日に日本相撲協会から中間報告を受けました。そして、先般、理事会がもう一度、その後開かれまして、最終的にこの件に関してのしっかりとした報告をしたいということでありますので、現在最終報告を待っているところでございます。

 中間報告をいただいた部分をまず御報告しますと、協会として厳正な対処を行うために事実関係を確実に把握する必要があり、二月一日の理事会で調査委員会を設置することを決めた。二月四日の理事会における調査委員会からの報告後、元朝青龍本人からの事情聴取は不可欠であること、迅速な対応が必要であるとの判断から、理事会に高砂親方と元朝青龍の出席を要求、元朝青龍から事情聴取後、本人からは、泥酔状態にあって覚えていない、しかし暴力を振るっていないと断言するということで、泥酔していたら覚えていないはずなのに暴力だけは振るっていない等々ということでいうと、発言は信憑性に欠けるという認識を理事会として共有しました。協会としては、いわゆる知人と言われる第三者への接触ができないとか断られたとかいうことで、調査能力に限界があるので、処分に踏み切るには、しっかりやろうとしたら相当の時間が必要になる。しかしながら、一つ、場所中にもかかわらず深夜まで飲食し騒ぎを起こした今回の事態は横綱として相ふさわしくない言動である、二番目、こうした不祥事は過去にも何度も繰り返されており一向に改まる兆候が見られなかったということを受けて、理事会として引退勧告を行うことを決意したが、最終的には、勧告を行う前に本人みずからが引退を表明し、理事会は受理をした。今後、生活指導部が中心となり生活の指導、情報が正確に伝わる対策の検討をするということを中間報告としていただいております。

 横綱というのは、大相撲の最高位の人でございます。文部科学省としては、最終的には、冒頭申し上げたように、近々に最終報告を理事会として提出されるということですので、それを受けて判断をしたいと思いますが、このような最高位の横綱が引退をする事態を招いたということは極めて深刻な問題だと受けとめておりまして、最終報告を受けて、また我々として、指導官庁としてどう対応するかは決めていきたいと思っております。

馳分科員 相撲はもともと神前相撲という言い方もされておりまして、我が国の歴史や伝統と密接不可分の文化と言ってもいいと思いますし、競技という言い方よりも、私たち日本人にとっての守るべき国技、こういうふうな位置づけがされていると思うんですね。

 したがって、そういう観点に立って、ただ興行する大相撲とかそういう意味ではなくて、また役員構成をしている日本相撲協会というものではなくて、やはり日本人が大切にしてきた文化である国技の相撲の代表者としてふさわしい振る舞いであったり、また協会の透明性のある運営が必要である、私はこういうふうな指導を求めたいというふうに思っております。その上で、最終報告を得て、大臣として、処分なのか、また今後の指導なのか、記者会見を含めて対応していただきたいと思います。答弁は結構です。

 次の質問に移りますが、次の質問は鈴木副大臣にお願いしたいと思います。

 スポーツ仲裁機構について質問をいたします。

 スポーツ仲裁機構の役割の重要性についてその認識をお示しするとともに、現在の運営状況について、年間の仲裁処理件数、仲裁の効果、また処理に当たっての弁護士費用の負担、そして機構運営における財務状況、こういったところをお示しいただきたいと思っています。私は、その目的は、安定的な機構の運営が重要だと思いますし、アンチ・ドーピング機構とあわせて、国庫補助の重要性の認識もぜひお示しをいただきたいと思います。

鈴木副大臣 日本スポーツ仲裁機構は、日本オリンピック委員会、日本体育協会、日本障害者スポーツ協会の三者を設立母体といたしておりまして、スポーツ界の総意で発足をしたものでございます。

 その目的は、競技者が安心して競技に専念する環境を整備し、競技団体の運営の透明性を高める、この二つの目的を持っております。まさに競技も運営もフェアプレーでやれるかどうか、こういうことでございます。

 それで、平成十五年に発足をいたしまして、これまでに二十六件の紛争事案を処理いたしております。年間の処理事案といたしましては平均四件。それから、仲裁判断が行われた事案が十八件、判断を下すには至らなかったのが八件。それから、相談に応じた事案ということでいうと八十四件、こういうことでございます。

 それで、費用のことでございますけれども、弁護士などに仲裁人を務めていただいておりますが、これに支払われる経費が一事案当たり原則五万円、非常に安いわけでありますが、今年度で申し上げますと、延べ九人の方々、四十五万円が支払われている。これは事実上ボランティアに近い額だと思います。

 この機構の年間予算は約一千九百万円でございまして、JOC、体協、障害者スポーツ協会から三百万円ずつ負担をしていただいておりまして、加えまして、国からの委託事業、ドーピング調査研究でございますけれども、委託事業をしておりますが、運営費に対する国庫補助は行っていないというのが現状でございます。

 今、スポーツ仲裁の今後のあり方、これは非常に大事だと私は思っておりまして、現場の声にも耳を傾けながら、これまでも議論され、これからも議論してまいりますスポーツ基本法案の中でも重要な論点の一つだというふうに考えております。

 文部科学省は、今、スポーツ立国戦略というものを検討したいと思っておりますので、その議論の中でもこの支援のあり方を検討してまいりたいというふうに考えております。

馳分科員 ここは政治家としての議論になると思うんですが、アンチ・ドーピング機構にしてもスポーツ仲裁機構にしても、スポーツのフェアプレーの精神、こういったものを担保し、また、オリンピック代表にかかわる問題とか、やはりいろいろトラブルというのは起きますよ。それは、いきなり裁判の場所に持っていくというよりも、当事者が入って仲裁を進める形がやはりふさわしいと思います。

 そこで、これをJOCとか体協とか、こういったくくりの中に入れておくままにした方がよいのか、それとも、アンチ・ドーピング機構にしてもスポーツ仲裁機構にしても、やはり第三者的な機関として独立させる、独立させるんだけれども、実は今ほど鈴木副大臣が運営費は出していないとおっしゃったんですが、機構を円滑に運営していくに当たって一定の関与が必要という認識のもとに、やはり少しは負担をするというふうな考えのもとで、私はここを独立させてやった方がいいように思っているんですね。

 これは、物事を決定する決断についての話を聞いているんじゃなくて、この考え方について、現在の、現状の見解をぜひお示しいただきたいと思います。

鈴木副大臣 済みません、ちょっと先ほどアンチ・ドーピング機構についての御答弁が漏れておりましたので。

 財団法人日本アンチ・ドーピング機構についても、教育、研修、人材育成事業については国からの委託、それからドーピング検査費用についてはスポーツ振興くじ助成を行っておりますけれども、運営費に対する国庫助成は行っておりません。

 もちろん、これからの議論でありますし、スポーツ立国戦略あるいは与野党の御議論の中でこのあり方の御議論を深めていただきたいと思っておりますけれども、基本的に第三者機関として、要するにJOC、体協とは別の機関でつくっていくというのが、これはスポーツ界の総意として、現在のところ、一般財団あるいは財団法人アンチ・ドーピング機構、JSAAの方は一般財団法人ですけれどもJADAの方は財団法人、こういうことになっているわけでありますから、この考え方はやはり尊重すべきだというふうに思います。

 しかし、委員おっしゃるように、では、独立してこの機能を充実していくということになった場合には、現在の財政基盤で、それに携わっていただいている方がほとんどボランティア同然の状況でやっていただいている。ここはスポーツ基本法の中できちっとこの位置づけを、まず非常に大事なものであるという位置づけを御議論の末していただいて、そして、それが安定的に発展をしていくためにはどういった財政支援のあり方をしていったらいいのか。

 国からの助成というものも案の一つだと思いますし、それから、今、新しい公共を考える円卓会議の中で税制、特に寄附税制の議論をしておりますけれども、こうしたところに対する寄附等々については格段の配慮をするとか、いろいろなアイデアはあり得ると思っておりますので、そうしたものをあわせて考えていくべきだと思っております。

 とりわけロンドン・オリンピックに向けましては、アンチドーピングについての国内体制というものをきちっと整備することが強く求められておりますので、そうした観点からもこの議論を深めてまいりたいというふうに考えております。

馳分科員 鈴木副大臣は昨年十二月、スポーツ法学会で、スポーツ基本法の必要性については認められ、およそ一年間の審議を経て、来年の通常国会には基本法を提出したいという大まかなスケジュールをお述べになりました。改めてそのことを確認するとともに、スポーツ界から非常に期待、要望の多いのが、スポーツ行政を充実するためのスポーツ庁の設置ということになるんですね。ただ、これはなかなかハードルが高くて、内閣として組織の改廃にかかわってくる問題でもありまして、これは政治的にどう取り扱っていくかという問題にもなろうかと思っておりますし、同時に、スポーツ権という文言をどのように法律の中に落とし込んでいくかという議論もされております。

 今後のスケジュール、それからスポーツ庁、そしてスポーツ権の定義、三つですが、現状の準備状況と、また、できる限りで結構ですから、こういう方向でやりたいというお考えがありましたら、お示しをいただきたいと思います。

鈴木副大臣 私のスポーツ法学会の発言はあくまで個人的な思いということでございますが、馳委員とも御一緒に私も超党派のスポーツ基本法の議論に加えさせていただいた者として、そういう思いは強く持っているところでございます。

 省といたしましては、先ほども申し上げましたけれども、スポーツ立国戦略というものを検討するということはスケジュールにのっておりまして、早速にヒアリング等々も進めていきたいというふうに思っております。この中での議論の進捗ということではございますけれども、なるべく早い段階でそうした議論を深め、そして進めていきたいという思いは持っております。

 その中で、論点は、先ほどお話がございました仲裁の問題、ドーピングの問題、それから加えまして、今御指摘のありました組織体制、そしてスポーツ権、こういうあたりが最終の詰めがあるのかなというふうに思っております。

 スポーツ庁につきましては、政府内に一元的に推進をする、とりわけパラリンピックとオリンピックがそれぞれ別の省庁になっているということについては、超党派での議論の中でも問題意識を共有していたことでございます。特に現場関係者の皆様方からこういう声があることは十分に私も承知をしておりますし、スポーツ立国戦略の検討の中で、国民の視点あるいは競技者の視点、現場の視点に立った観点から議論を重ねてまいりたい、このように思っているところでございます。

 それから、スポーツ権につきましては、もちろん批准義務というのはございませんけれども、ユネスコの「体育およびスポーツに関する国際憲章」というのが一九七八年に出されておりまして、その第一条では「体育・スポーツの実践はすべての人にとって基本的権利である。」こういうふうなものがございます。それから、EUにおきましても、一九九二年に新ヨーロッパ・スポーツ憲章というものが、こうしたものを受けてそういう憲章がつくられております。スポーツ基本法という議論でございますから、こうした憲章的な色彩というものも持つわけでありますので、こうしたユネスコの動向あるいは国際的な動向を踏まえて御議論を深めていきたいというふうに思っています。

 先般、委員も御承知だと思いますが、日本学生野球憲章が六十年ぶりに全面改正をされました。そこの改正を見させていただきましても、こうしたスポーツ権という考え方を受けて、野球部員の教育を受ける権利と学生の野球をする機会の保障という、学生野球ということに対象は絞っておりますけれども、かつまた自主的な策定ということでございますけれども、まさにこのスポーツ権というものを踏まえた改正になっているかなというふうに思っておりまして、こういうことを促進していく、そうした議論をしてまいりたいというふうに思っているところでございます。

馳分科員 私ども自由民主党、また公明党、みんなの党としても、既にスポーツ基本法は準備をしておりますし、国会にも提出をいたしますが、しかし、その議論と、やはり政府が中心となって取り組んでいかれるという作業は注意深く見守りながら、より中身がよいものとなるように期待をしているということをまず申し上げたいと思います。

 ちょっと予算関連でお伺いいたします。ナショナルトレーニングセンターの宿泊施設、足りないということでまたさらに建てるということなんですが、ちょっと注文をつけておきたいんです。

 私も何度も足を運びました。あれは、オリンピックの写真をよく撮って提供してくださっているフォート・キシモトさん、あそこからのスポーツ競技者の写真はたくさんあるのですが、どこへ行っても、図書館もなければ、インターネット設備もなければ、視聴覚のための部屋もなければ、もちろんミーティングルーム等はございますけれども、いかにも箱物だなという印象であります。

 スポーツ選手の競技力向上の一番のポイントとなる部分というのは、やはりモチベーションのところだと私は思っています。ここではエリートアスリートの事業などもやっておりまして、小中学生も、ジュニアの選手も参加できるような施設となっております。

 絵画、彫刻、そういった美術品、図書の充実、またそういったプログラムの充実によって、ただスポーツさえやっていればいいのではだめよと。そして、あれだけ大変な厳しいストイックな中で自分を鍛え、またチームプレーに徹し、よい成績を上げていこうとするには、やはりそれなりの精神的な強さ、また教養も必要ではないか。また、文化、芸術的な感性を磨き上げる、こういった事業も含めて、そういった施設の充実も必要だなと、私は何度も行くたびに残念に思っているんですね。

 したがって、こういうことも踏まえて、施設の充実、設備の充実に取り組んでいただきたいと思っておりますが、副大臣、どうぞ。

鈴木副大臣 私も何度か行っておりますが、おっしゃる趣旨は共有できる部分もございます。ただ、一応、図書学習室とインターネットと研修室はあることはありますので申し上げておきたいと思います。

 今、委員御承知のように、今年度から二カ年で増築をしております。二十三年の三月末の完成でございます。今回の増築は宿泊施設等々も含んでございまして、エリートアカデミー生が長期滞在できる宿泊室、そこで机を配置したり学習できる環境といったものを整える計画になってございます。

 きょうの御議論も踏まえ、またスポーツ自体も、もうフィギュアで国民の皆さんも記憶に非常に新しいと思うんですけれども、やはり芸術的要素、感性といったものも非常に重要な要素でございまして、何かこれが別物というよりも、今御指摘のありました絵画や彫刻や音楽や写真という芸術的な要素というのはいろいろな意味で大変大事な要素だというふうに思っておりますので、ナショナルトレーニングセンターの設備更新に向けましては、そういう視点も入れて整備をしていただくように、私どもの方からもお願いをしてまいりたいというふうに思っております。

馳分科員 いわゆる国母問題について、これもちょっと指摘をし、大臣の指導を仰ぎたいというふうに思っています。

 実は、オリンピックの期間中、橋本聖子団長から相談のメールも来まして、私は、大変重要な問題であるけれども、やはり選手を守るのが団長の役目ではありませんかというふうに相談に乗りましたが、あとは橋本団長の判断で、全日本スキー連盟からは辞退をさせると強硬に申し入れてきたけれども、出場させ、八位入賞という結果に終わった。

 これは、オリンピアン、あるいは我が国が税金を使ってトップレベルも含めてスポーツの環境整備を整えるということをやっている観点からいっても、私は許してはならない態度だったと思うんですよ。ドレスコードというのは時と場所においてきちんとすべきだ、そういうことは社会的ルールじゃないですか。その点は、やはり国母君も間違えてはいけないなと。自分らしさということとドレスコードは意味が違う。本当は、現場にいたコーチ、監督がすぐ指導すべきであったという問題だと思うんですよね。

 きょう、今、閉会式をやっていますよね。私たち、真央ちゃんの旗手の姿も見ることができず残念ではありますが、必ず選手団は帰ってきて解団式にもう一度みんな集まり、また入賞者は、大臣、副大臣、政務官等にごあいさつに行くと思います。改めてそのときに、選手に対してというよりも、選手団長やまたJOC、体協の皆さんに対して、やはり文部科学省は教育を所管する場所でもあり、国民の思いとしても、今後とも、指導もするけれども、今回のことは許されることではないんだよ、こういう御指導をいただきたいと思っておりますが、大臣、いかがでしょうか。

川端国務大臣 この問題については、過日の予算委員会でも、下村先生からも御質問をいただきました。認識としては、馳先生と私は全く違いはありません。

 日の丸を胸に行動するというドレスコードを場所によってしっかり守らなければいけないのはもう当然のことでありまして、それは個人のファッションとは別問題。同時に、やはり、周りに関係者がいて、それがきちっと管理監督できなかったことが私はむしろ問題の一つではあろうかというふうに思います。

 私が大学に入ったときが東京オリンピックでした。そのときには、日本選手団は白のブレザーに日の丸をつけて、整然と並んで行進をしました。そのときに多分、よその国は自由に入ってきたというので随分違うなと思ったんですが、この前、岡崎選手が旗を持って、最近の入場式は、服装は一緒だけれどもみんなフリーにやりますね。そうすると、行進自体でも、やはりそれだけ時代が変わると変わるものだなと。もうすぐ高校野球がやってきますが、ここはやはりきちっと並んで、あれはオリンピックの入場行進とは随分違う。

 そういう部分では社会的な変化というのはあると思うんですが、やはり、みんなできちっとこうしてやろうということはしっかり守るのも、ルールというほど大げさではないかもしれないけれども、むしろそれより大きな問題として、スポーツマンとしてしっかり守ってほしかったということは思います。

 ただ、派遣をされた選手でありますから、私も団長ともお話をさせていただいて、団長の方からは、よく話し合っていただいて、悪かったということの中で、とにかく競技に専念できる環境はまずつくってあげようということで、彼も入賞してくれたということはそれなりに力を発揮してくれたのでよかったと思いますが、これからの問題でもありますので、しっかりと、帰ってこられたときに、関係者にも、この問題をよく話し合って、こういうことが起こらないように、みんなでこういうことはきちっとできるような選手団であってほしいということは指導してまいりたいと思います。

馳分科員 一つ私も感想を言えば、私、ロサンゼルス・オリンピックの開会式で入場行進をしたときに、同じレスリングの仲間の富山英明さんという金メダルをとった人なんですけれども、カメラを持っていたというだけで、当時、選手団本部から強制送還されそうになったんですよ。これはちょっとしゃくし定規過ぎるのかなという点と、ほかの国の選手団と比べても、ちょっとこれは軍国主義と間違えているんじゃないかと選手として言いたくなるような状況でありましたが、最終的にそのときには、当時監督だった福田富昭さんが頭を下げておさまったんですよ。

 したがって、国際的な環境もありますが、何度も言いますけれども、やはりドレスコードというものは、これは守られるべきものなんです。この点をちょっと思い出しました。

 最後、あと二つ指摘をし、答弁があれば求めて終わります。

 オリンピックのトップレベルの場合に、マルチ・サポート事業というのを今回新たにつけていただいて、深く感謝申し上げます。これは、栄養、トレーニング、それから戦術、チームをつくって強化力を高めていこうという非常によい事業であり、期待をいたしますが、これはJOCの方から頼まれたので何となく伝書バトみたいなことであれなんですが、予算を執行する決定権を強化の現場にあるJOCの方に持たせてほしい。

 どっちみち、各競技団体にしろ、あるいは体協であったにしろ、体協は関係ないかな、皆相談してくるのはJOCの方なんだと。国際的な状況の情報も踏まえて予算を的確に執行していきたいので、そういう意味では、JOCの方に決定権をぜひ持たせてほしいよという要望がありましたので、こういう重要性とともに要望をお伝えし、最後に、平成十二年にスポーツ振興基本計画がつくられて、ちょうど平成二十二年、もう十年になりまして、平成十八年には中間の見直しも行われておりました。

 新たなスポーツ振興基本計画、できればスポーツ基本法のもとで新たな今後の十年間の基本計画があればよいと私も思っていますので、別にそれは来年でも再来年でも私はいいと思っているんです。十年たったから今やらなければいけないというものでもない。理念があって、それに基づいての計画があった方がよいとまず私は申し上げたいと思います。

 ただ、この十年間の評価。結構、数字の目標がありましたが、私は数字の目標は余り意味がないと思っているんですよ。これによって、いかにスポーツをする、楽しむ、またサポートをする、こういう環境が整えられたか、そして、それを次の時代に残していくことができるか、その階段を文部科学省はきちんと踏まえてきたか、この評価が重要であるというふうに私は思っています。

 以上、マルチ・サポート事業の件とスポーツ振興基本計画の今後の見通し、これをお尋ねして、私の質問を終わります。

鈴木副大臣 マルチ・サポート事業でございますが、競技団体ではなかなか限界がございます、今御指摘がありましたスポーツ医科学、栄養学、情報戦略、それから競技用具の開発などもここで対象としておりますけれども、多方面からの専門的かつ高度的な支援をオール・ジャパンで結集するということでこの事業が成り立っております。

 平成二十二年度予算案におきましては、本年度の六倍強となります十八億八千万円を計上させていただいたところでございます。これをどこの主体が行うかという御質問でございますが、来年度につきましても、これまで同様、一般競争入札で受託団体を決定していくということとしておりますが、本事業の対象種目及び競技者については、受託団体が、文部科学省、それから国立スポーツ科学センター、財団法人日本オリンピック委員会、そうした関係機関等の御意見をきちっと踏まえて決定してまいりたいというふうに思っております。

 それから、スポーツ振興基本計画でございますが、これもスポーツ立国戦略の議論の中できちっとレビューはしていきたいと思います。

 おっしゃるとおり、私も、目標を上回ったとか下回ったとか、このことで一喜一憂すべきではないと思いますが、子供の体力低下傾向というものが極めて著しかった、そこに一定の歯どめはかかった、それから、成人がスポーツをしないということが問題でございましたが、これの実施率が上がったといったこと、それから、オリンピックはメダルがすべてではないと思いますけれども、メダルの獲得率も上がったということは、まず事実として指摘を申し上げたいと思います。

 それと、今回の計画でよかったのは、やはり総合型地域スポーツクラブがこの間大変、数的には充実をした。平成十四年では五百四十一でございましたが、平成二十一年では二千九百五というところに来ております。これは非常に私も、超党派で議論してきましたけれども、よかったのではないか。今後は、いかにこれの中身を充実していくかということだと思います。

 それから、トップスポーツということでは、長年の悲願でございましたナショナルトレーニングセンターが平成十九年十二月に完成をした。そこで、まさにトップアスリートたちが種目を超えて集って、励まし合いながら切磋琢磨しているという拠点ができたということは、私は評価すべきことではないかなというふうに思っております。

 新しいスポーツ基本計画はスポーツ基本法の議論をきちっと踏まえてつくっていきたいというふうに思っておりますので、さらなる御指導と、御助言も賜れば大変ありがたいなと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。

馳分科員 終わります。

海江田主査 これにて馳浩君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして本分科会の審査はすべて終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 分科員各位の御協力を賜りまして、本分科会の議事を終了することができました。ここに厚く御礼申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午前十一時三十七分散会


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