衆議院

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第2号 平成25年4月15日(月曜日)

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平成二十五年四月十五日(月曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 萩生田光一君

      あかま二郎君    石原 宏高君

      遠藤 利明君    大岡 敏孝君

      古賀  篤君    渡海紀三朗君

      藤井比早之君    宮川 典子君

      山下 貴司君    椎木  保君

      新原 秀人君    中山 成彬君

      浮島 智子君

   兼務 赤枝 恒雄君 兼務 菅野さちこ君

   兼務 新開 裕司君 兼務 八木 哲也君

   兼務 小川 淳也君 兼務 寺島 義幸君

   兼務 笠  浩史君 兼務 田沼 隆志君

   兼務 大熊 利昭君 兼務 柏倉 祐司君

   兼務 穀田 恵二君 兼務 玉城デニー君

    …………………………………

   文部科学大臣       下村 博文君

   文部科学副大臣      谷川 弥一君

   文部科学大臣政務官    義家 弘介君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  福浦 裕介君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  岩瀬 充明君

   政府参考人

   (総務省人事・恩給局長) 笹島 誉行君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 岩尾 信行君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房長) 前川 喜平君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文教施設企画部長)      清木 孝悦君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          合田 隆史君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          布村 幸彦君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            板東久美子君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局私学部長)         小松親次郎君

   政府参考人

   (文部科学省研究振興局長)            吉田 大輔君

   政府参考人

   (文部科学省研究開発局長)            戸谷 一夫君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        久保 公人君

   政府参考人

   (文化庁次長)      河村 潤子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           鈴木 俊彦君

   文部科学委員会専門員   久留 正敏君

   予算委員会専門員     石崎 貴俊君

    ―――――――――――――

分科員の異動

四月十五日

 辞任         補欠選任

  渡海紀三朗君     石原 宏高君

  中山 成彬君     岩永 裕貴君

  浮島 智子君     濱村  進君

同日

 辞任         補欠選任

  石原 宏高君     宮川 典子君

  岩永 裕貴君     河野 正美君

  濱村  進君     江田 康幸君

同日

 辞任         補欠選任

  宮川 典子君     藤井比早之君

  河野 正美君     新原 秀人君

  江田 康幸君     濱村  進君

同日

 辞任         補欠選任

  藤井比早之君     大岡 敏孝君

  新原 秀人君     木下 智彦君

  濱村  進君     上田  勇君

同日

 辞任         補欠選任

  大岡 敏孝君     山下 貴司君

  木下 智彦君     馬場 伸幸君

  上田  勇君     斉藤 鉄夫君

同日

 辞任         補欠選任

  山下 貴司君     古賀  篤君

  馬場 伸幸君     椎木  保君

  斉藤 鉄夫君     古屋 範子君

同日

 辞任         補欠選任

  古賀  篤君     渡海紀三朗君

  椎木  保君     中山 成彬君

  古屋 範子君     國重  徹君

同日

 辞任         補欠選任

  國重  徹君     遠山 清彦君

同日

 辞任         補欠選任

  遠山 清彦君     浜地 雅一君

同日

 辞任         補欠選任

  浜地 雅一君     浮島 智子君

同日

 第一分科員穀田恵二君、第二分科員大熊利昭君、柏倉祐司君、第三分科員赤枝恒雄君、新開裕司君、小川淳也君、第五分科員菅野さちこ君、八木哲也君、田沼隆志君、第七分科員寺島義幸君、笠浩史君及び玉城デニー君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成二十五年度一般会計予算

 平成二十五年度特別会計予算

 平成二十五年度政府関係機関予算

 (文部科学省所管)


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     ――――◇―――――

萩生田主査 これより予算委員会第四分科会を開会いたします。

 平成二十五年度一般会計予算、平成二十五年度特別会計予算及び平成二十五年度政府関係機関予算中文部科学省所管について、前回に引き続き質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。浮島智子君。

浮島分科員 おはようございます。公明党の浮島智子でございます。

 本日は、長時間にわたっての分科会、本当に御苦労さまでございます。どうか最後までよろしくお願いいたします。

 まず、私の方からは、教育予算の拡充についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 子供たちの大切な命を守るため、通学路の安全確保と、そして耐震化の促進が今求められております。政府の通学路の安全点検では、約七万カ所で何らかの対策が必要であるということが判明しました。また、学校の耐震化は約八五%まで進捗をしましたけれども、天井や照明などの非構造部材、それがまだまだ進んでいないということが現実でございます。また、我々公明党は耐震化率一〇〇%を目指すと今掲げておりますけれども、学校施設の長寿命化、これを図ることが大切だと思っております。

 また、昨今深刻化するいじめ問題、また体罰の問題、そして通学路で相次いだ交通事故等は、決して看過できる問題ではございません。子供たちが伸び伸びと安心して、そして安全で、そういう環境をつくっていくことが重要であると思っております。

 また、子供たちが伸びやかに健やかに育つためには、今の子育て世代に限らず、今後親になる若い世代の方々への支援も大切だと思っております。

 我々公明党では、今、就学前三年間の幼稚園、そして保育所、認定こども園の幼児教育の無償化、また奨学金制度の拡充、先週も我が党の岡本委員の方からもございましたけれども、奨学金の無利子化、そして延滞金の利率の引き下げなど、また全公立中学校への給食の導入など、これが必要ではないかと考えているところでもございます。

 しかし、経済状況がすごく厳しい中でございます。でも、このような子供たちに対する予算そしてお金というのは、未来への投資でもあり、経済成長にもつながっていく。私は、国づくりは人づくりが大切であると思っております。

 そんな中で、今現在、中教審において、第二期教育振興基本計画の策定に当たっての議論が行われていると伺っておりますけれども、より教育の充実を図っていくためには財源が必要であり、その財源の公的支援としてはOECD並みの公的支援をする必要があるという素案が報じられているところでもございます。

 また、大臣は、去る四月三日、日本記者クラブの会見で、教育関係予算の拡充のため、財源の確保に向けて新たな教育目的税の創設も視野に検討すると発言をされておりますけれども、この大臣の発言された真意をお伺いさせていただきたいと思います。

下村国務大臣 浮島委員御指摘のとおり、人づくりは国づくりであり、教育への投資は、個人だけでなく、社会の発展の礎となる未来への投資でございます。教育にどう投資するかが日本の未来を決定すると言っても過言でもないというふうに思います。

 現在、中央教育審議会にて第二期教育振興基本計画の審議が進められておりますけれども、その中では、欧米主要国を上回る質の高い教育の実現を図るために必要な教育投資のあり方などについても検討が行われております。

 教育投資を充実するためにはその財源の確保が重要な課題であり、税制によるものも含め、さまざまな方法を考えていく必要がこれからさらにあるというふうに考えます。

 このため、現在、省内の関係者を集め、意見交換を行うなど、検討を進めているところでございます。

 御指摘の教育目的税については、他国の税制の状況なども参考にしながら、私案として申し上げたものでもございます。

 教育再生を進める上では必要な予算を確保していくことが必要であり、今後とも、文部科学省は責任を持った対応をしていく努力をしていく必要があるというふうに考えております。

浮島分科員 まだまだ財源が、予算が少ないというところもございますけれども、どうか大臣のお力で子供たちの教育のために全力を注いでいただきたいとお願いをさせていただきたいと思います。

 また、財源論についてはしっかりとこれからも議論をしていかなければならないと思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。

 次に、命を守るという観点から、公共施設の中で四割を占める学校施設の耐震化の推進、そして防災機能の強化についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 さきの総選挙における我が党の公約では、東日本大震災からの復興と福島の再生に全力を注ぐとともに、想定される首都直下地震、そして南海トラフ巨大地震などに備えて、国民の命を守る緊急の課題として防災・減災対策、また老朽化した社会インフラをしっかりと建て直していこう、そんな観点から防災・減災ニューディールと打ち出させていただいております。

 我が党は耐震化、これにも全力で力を注いでまいりました。また、先日、自民党と公明党では、防災・減災に関するプロジェクトチームで議論を重ねまして、国内の防災体制強化に向けた基本法案の要綱について合意を得たところでもございました。

 学校は児童生徒が日中の大半を過ごす学習そして生活の場であり、安心して学校の教育活動が行えるようにすることは最低限必要なことだと私は考えております。そして、一たび地震など災害が起きた場合には、東日本大震災のときにも見られたように、学校施設は児童生徒の命を守るだけではなくて、近隣の方々、多くの方々の避難場所として利用されるなど、地域の防災拠点としても重要な役割を持っていて、その安全性の確保、これが重要であります。

 文科省の調査によりますと、公立小中学校の施設の耐震化率は、平成二十四年四月現在で、全体の八四・八%、そして平成二十四年度当初予算の執行後の耐震化率は約九〇%、補正予算の執行後は約九三%、そして今回の二十五年度予算案の予定事業の執行後は約九四%まで進捗すると伺っているところでございます。

 しかし、一方で、各自治体による取り組みの状況の差が大きくあるのも現状でございます。また、先ほどもお話しさせていただきました非構造部材、これもおくれているのが現状でございます。

 一刻も早く学校の設置者が耐震化を一〇〇%できるように、国として強力にバックアップをすべきだと思っておりますけれども、今後の耐震化の完了の見通しも含めて、御見解をお伺いさせていただきたいと思います。

下村国務大臣 御党の主張する防災・減災ニューディール政策はすばらしい考え方であるというふうに思います。それを一番最初にしていかなければならないのが学校施設でございます。

 学校施設は児童生徒の学習、生活の場であると同時に、御指摘ございましたが、地域の避難場所としての役割も果たすもので、安全確保の観点から、天井材、照明等の非構造部材を含めた耐震化が極めて重要であると考えます。

 公立学校施設の建物本体の耐震化については、文部科学省としては、平成二十七年度までのできるだけ早い時期に完了させることを目標としているところであり、御指摘ございましたが、平成二十四年度補正予算及び平成二十五年度予算において、自治体の要望を踏まえ、必要な耐震化予算を確保しており、平成二十五年度予算執行後の耐震化率は約九四%となる見込みでございます。

 一方、自治体の中には耐震化率が五〇%にまだ満たない、そういうところもございまして、耐震化がおくれておりますような自治体に対しては、文部科学省職員が直接訪問して助言を行うなど、働きかけを強化しているところでもございます。

 また、非構造部材の耐震対策については、特に致命的な事故の起こりやすい屋内運動場のつり天井等について、建築本体の耐震化とともに、平成二十七年度までの速やかな完了を目指すとともに、その他の非構造部材についても点検及び対策を速やかに実施するよう、地方自治体に要請しているところでございます。

 文部科学省としては、耐震化完了の目標達成を目指して、非構造部材の耐震対策も含め、自治体からの要望を踏まえつつ、必要な支援を行ってまいります。

浮島分科員 ありがとうございます。

 ぜひとも二十七年の早い時期に完成をさせていただきたいとお願いをさせていただきたいと思います。

 また、各自治体の現場からは、とてもまだまだ厳しい、財源の補助をしっかりしてもらいたいという声もいただいておりますので、どうかよろしくお願いいたします。

 また、地震のような災害はいつ起こるかわかりません。先週の土曜日も、朝五時三十三分、また淡路島の方で起きてしまいました。私もすぐ現場の方に行かせていただきましたけれども、やはり早急な対策が必要だと思いますので、ぜひともよろしくお願い申し上げます。

 また、次に、耐震化の早期実施に加えまして、学校施設の整備の際には防災機能を強化する観点が必要だと私は思っております。

 東日本大震災でも、学校施設が実際に避難所として利用されまして、ピーク時には約六百校以上が応急の避難場所となったと伺っております。でも、この応急避難場所では、備蓄してきた物資の不足が生じてしまったり、水も途絶えてしまう、また電気も途絶えてしまうという観点から、当日はとても寒かった、雪が降っていた、津波もありました、ぬれた中で身にまとうものがない、毛布とかもなかったもので、カーテンを外して、カーテンを巻いて過ごしたという話も伺っております。

 こうして防災機能がまだまだ整っていないという中で、学校施設の防災機能の向上のために、水や毛布、また非常用のトイレ、これもしっかりと備蓄体制を整備していかなければならないと思います。また、貯水槽や自家用の発電設備等もしっかりと整備をする必要があると思っております。

 また、備蓄をお願いすると、備蓄ばかりしていて、これがどんどんたまっていってしまう、これをどうしたらいいかという声も伺います。

 私がそこでいろいろな方にお話を伺ったのは、例えば、お米を備蓄していく。お米はアレルギーが少ない、そして常時使っていくことができる。また、ミルク、三日間飲み物があれば大丈夫というふうにも言われております。でも、ミルクはアレルギーがあるということでございますけれども、今は、お伺いしたところによると、牛乳アレルギー用ミルクというのもある。そういうのを備蓄して、それを使いながらそこにまた補充をしていく、そんな観点も考えてみてはいかがかと私は思っております。

 また、学校の給食施設、これも現場のお声をいただいたんですけれども、学校の同じ棟内にある給食室であれば一緒に耐震化ができる、でも、棟内から外れていると、給食室だけは耐震化ができないという現場の話を伺いました。

 そこで、私は、給食室というのは、インフラが途絶えたときもそこにいることもできます、また、インフラが戻ったときには炊き出し等ができる大切な場所だと思っております。こういう校舎や敷地の内外を問わずに、しっかりとした耐震化を進めていくべきだと思いますけれども、この点においての御支援はどうなっているのか、また、学校の給食施設の耐震化についての御見解をお伺いさせていただきたいと思います。

清木政府参考人 先生御指摘のとおり、学校施設は地域住民の避難所としての機能も果たすことから、防災機能の強化は大変重要でございますが、御指摘のとおり、必ずしも十分に機能が強化されていないという現状がございます。

 このため、文部科学省といたしましては、防災機能強化事業という事業を平成二十四年度に創設いたしまして、公立学校に貯水槽や自家発電設備、備蓄倉庫、トイレなどを整備する際に補助を行っているところでございます。

 また、備蓄品につきましては、地方交付税の算定に含まれているところでございまして、教育委員会と防災担当部局がよく連携をいたしまして、地域の実情に応じて備蓄を進めていくように促してまいりたいと考えております。

 なお、給食施設に関しましては、御指摘のとおり、学校内にございます場合には校舎等と一体的に耐震化の整備に対して支援を行っているところでございます。

浮島分科員 備蓄体制もしっかりとしていただきたいと思います。

 学校の子供たちだけではなくて、地域住民の方々もいらっしゃいますので、しっかりとした体制をとっていただきたいと思いますし、また、学校の給食、これも内外問わずしっかりと耐震化を進めていっていただきたいと再度またお願いをさせていただきたいと思っております。

 また、次に、防災教育のあり方についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 学校への通学時に事故に巻き込まれて命を落としてしまったという悲しいこともありましたけれども、こんなことは二度と起こしてはならないことでもございます。児童生徒が危険を予測して、危険の回避能力を高めるための防災の教育、これが私は必要だと考えております。

 四月十一日の予算委員会の公聴会で、群馬大学理工学研究院教授の片田先生が、国土強靱化より国民強靱化が必要である、そして、防災は人を死なせないということに特化すべきであるという、防災教育の重要性をおっしゃっておられました。私も全くそのとおりだと思いました。防災というのは、人を死なせない、そういうことが必要であるというふうに思っております。

 そこで、教員養成課程の中に防災のことを入れることも大切ですし、防災教育や避難訓練等をより一層推進し、防災意識の向上を図っていく、これが必要であると思います。でも、その際に、地域にしっかりと根差して、実践的な避難訓練等が行われるよう、また、学校の関係者のみならず、外部からの助言がしっかりと受けられる体制を構築することが大切であると思います。まだ二割ぐらいしか助言を受けられていないということも伺っております。

 この防災教育、また防犯教育、これをしっかりと教科の中に取り入れていくべきと思いますけれども、この教科にしていくということのあり方について、また体制をしっかりとしていくということについての御見解をお伺いさせていただきたいと思います。

久保政府参考人 防災教育に関しましては、平成二十四年四月に閣議決定いたしました学校安全の推進に関する計画の中で、危険に際してみずからの安全を守り抜くための主体的に行動する態度を育成する、共助、公助の視点から、安全で安心な社会づくりに貢献する意識を高めるといった教育が必要である旨が盛り込まれているところでございまして、教科につきましても、今後、さまざまな角度から検討するということになってございます。

 文部科学省では、昨年度から、児童生徒等からみずから主体的に行動する態度を育成するための新たな防災教育の手法の開発、普及を支援いたします実践的防災教育総合支援事業を実施いたしております。また、教師用の防災教育参考資料を改訂、配付いたしまして、各学校における防災教育の指導時間が確保されるように促してきているところでございます。

 さらに、本年度でございますけれども、研究開発学校を指定いたしまして、防災を含む安全教育のあり方について具体的な研究を進めていきますとともに、平成二十五年度予算案におきましても、引き続き、実践的防災教育総合支援事業を盛り込んでいるところでございます。

 文部科学省といたしましては、これらの取り組みを踏まえまして、今後とも、子供の安全を確保するため、防災教育を初め、交通安全や防犯教育を含めました学校における安全教育の充実に取り組んでいきたいと考えてございます。

浮島分科員 ありがとうございます。

 私は、公明党の女性防災会議のこども・学校支援対策検討グループというものの座長をさせていただいておりますけれども、子供たちの声、子供たちの意見というのはとても大切でございますので、しっかりとした防災教育をしていただきたいと思っております。

 また、今、子供防災会議というのも開かれているところもありますけれども、子供たちの視点、大人からは見えない、子供の背から見て、ここはちょっと高過ぎるとか、低過ぎるとか、いろいろな意見がございました。私も一回参加をさせていただきましたけれども、大人では気づかない観点もたくさんありますので、子供たちにしっかりとした教育をしていっていただきたいと思います。

 人に言われて、ああ、ここが危ないからここに行ってはいけないんだ、こうしなければいけないんだということではなくて、子供たちがみずから考えて命を守るということがとても大切だと思っております。

 実は、阪神・淡路大震災のとき、うちの劇団の子供たちもそうですけれども、たくさんの子供たちがさまざまな体験をしました。そこで子供たちが私に言ったのは、先生、毎日枕元には靴を置いて寝るんだよと言われたんです。私、初めはわからなかったんですけれども、何でと聞いたら、阪神・淡路大震災のときに、もう真っ暗だった、いろいろなものが倒れて、もうガラスで歩けなくなった、そのときに一番困ったのが靴だった、靴さえあれば歩くことができる、だから、どんなことがあっても、先生、枕元には靴を置いて寝るんだよというふうに言われました。そうやって子供たちが体験したこと、こういう外部のいろいろな声もしっかりと受け継いでいかなければならない。

 そんな観点からも、土曜日、また淡路の方で地震がありましたけれども、私もすぐに現場に行って子供たちと会ったときに、すぐに枕元に靴があったから安心だったと。その子はまだ小学生だったんですけれども、お兄ちゃん、お姉ちゃん、また先輩方から、どんなことがあっても靴は置いておきなよと言われたから靴を置いておいたと言っておりましたけれども、そういう防災に対して、防犯に対しての教育が必要だと思いますので、どうかよろしくお願い申し上げます。

 また、次に、学校の耐震化も一〇〇%していかなければなりませんけれども、同様に、文化財、これの耐震化をしっかりしていかなければならないと私は思っているところでございます。これまで継承されてきた貴重な文化財が失われてしまうということは防がなければなりません。

 でも、実際に耐震化や補修の工事をするとなると、この文化財、実は、私も調べて驚いたんですけれども、民間の所有者の方が多くて、この所有者の費用負担が足かせとなり、なかなか耐震化工事に踏み切れないというお声をたくさんいただきました。

 私も、実は、奈良県にある赤膚山元窯の有形文化財の視察に行かせていただきました。ちょうど視察に行ったときに、近くの幼稚園生がもう何十人もそこに来ていて、その窯を見学するとともに、自分たちみずからそれをしっかりと正座をしながらつくって、ここに入れたらこういうふうにきれいに焼けるんだね、これはいつ誰がつくったの、いろいろな素朴な質問をしておりました。

 こういう有形文化財でございましたけれども、しっかりと守っていかなければならないと思ったんですけれども、その後、そこの方とお話をさせていただきましたら、実は、この赤膚山の元窯、初代に、約一七〇〇年代の後半に赤膚山に引っ越して移住をした方がこの大型の登り窯を築いた、その大型の登り窯に、約五十年前に鉄骨の柱でスレートの屋根を取りつけた、しかし、これが金属の腐食をしてきて危険な状態になっている、また、スレートからの雨漏り、また、登り窯も雨漏りが生じている、登り窯自体も土がぽろぽろ落ち始めてきているが、修復ができない状況である、また、昭和初期に築かれた中型の登り窯は、阪神・淡路大震災の際に少し崩れるという被害に遭ったけれども、保存に取り組んで頑張っている、でも、朽ちてきているのが今の現状である、この登り窯は木材の柱であって、腐食してきており危険な状況になっている、だけれども、これは有形文化財ということで自分たちは守っていかなければならない、でも、とても苦しいというお話がございました。

 登り窯の例でいいますと、瓦や粘土でできておって、構造も特殊であって、専門的な知識や技術が必要になると思います。また、一軒ごとに異なると思います。

 先日も、総理が、予算委員会で、文化財について政府としてもしっかりと守っていきたいという御答弁をなさっておられましたけれども、この文化財の耐震化に対する支援の現状と、現行の支援は文化財保護に十分なものであるかということの御所見をお伺いさせていただきたいと思います。

河村政府参考人 文化財である建造物が地震被害によって人の命や安全に重大な影響を与えるようなことがないように、また、その文化財的な価値が損なわれることがないように、耐震診断と耐震補強が重要であるというふうに考えております。

 そこで、重要文化財建造物の耐震診断指針を策定いたしますとともに、所有者が行う耐震診断への支援というものを行っております。耐震診断の結果、補強を要するというふうに判断されました重要文化財については、文化庁の文化財調査官を中心とする専門家が補強方法についての専門的な指導助言を行うとともに、補強に係る経費についての国庫補助を行っております。

 この国庫補助のやり方は、建物の大規模な修理を行いますときにあわせて行う場合と、それから、緊急に耐震だけを行うという両方ができるようになっておりますけれども、今年度、二十五年度予算案におきましては、文化財の特に緊急防災性能の強化について大幅な増となる額を計上いたしております。

 しかし、まだまだ残っている棟数も大変多くございますので、これから、所有者への防災意識の啓発を含めまして、さらに補助についても、適切な支援になりますように、加速化、推進を図ってまいりたいと思います。

浮島分科員 ありがとうございます。

 日本の大切な宝でもあり、観光という観点からも大切な文化財でありますので、どうか全力でサポートしていただけるようにお願いをさせていただきたいと思います。

 最後に、障害者スポーツの推進についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 先月、日本障害者スポーツ協会から、今後の障害者スポーツの普及、振興方針や目標をまとめた、日本の障がい者スポーツの将来像(ビジョン)が発表されたところでもございます。

 これには、スポーツの普及拡大、競技力の向上、社会の活力の向上を三つの柱として、二〇二〇年、二〇三〇年を目指したゴールを掲げて、アクションプランを設定されているところでございますけれども、二〇三〇年までの目標の一つに、パラリンピックの国別金メダルランキングにおいて、夏では世界のトップファイブ、冬ではトップスリーになることが掲げられているところでもございます。

 今回、障害者協会がこのようなビジョンを出されたのは、私はまだまだ障害者スポーツに対しての国民の関心が低い、そんな背景もあるのではないかと思っております。

 協会としては、二〇一一年、スポーツ基本法の施行、昨年のロンドン・パラリンピックの開催、そして現在、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックの招致への取り組みがあることを背景に、今こそ訴えるべきであると考えられたそうでございます。私も、今以上に障害者スポーツを重視し、そこにしっかりと支援を拡充していくということは大切であると思っております。二〇二〇年オリンピック・パラリンピックの東京招致のためにも大切なことだと思います。

 また、障害者スポーツの推進のためには、今文科省と厚労省に二つに分かれてスポーツ行政をされておりますけれども、これをしっかりと一元化していく必要があると思います。そのためにも、このスポーツ基本法の附則にも書かれている、スポーツ庁の設置、これを積極的に進めるべきだと思いますけれども、御見解をお伺いさせていただきたいと思います。

下村国務大臣 障害者スポーツについては、スポーツ基本計画に基づき、年齢や性別、障害等を問わず、広く人々が、関心、適性等に応じてスポーツに参画することができる環境を整備することを基本的な政策課題として推進を図っているところでございます。

 具体的には、平成二十四年度から健常者と障害者のスポーツ・レクリエーション活動連携推進事業を開始し、地域において障害者と健常者がともにスポーツ、レクリエーション活動を行うための企画、運営等に関するマニュアルの開発や、また地域における障害者スポーツ、レクリエーション環境の実態把握など、厚生労働省など関係省庁との連携を図りつつ取り組みを進めているところでございます。

 スポーツ行政の一元化、スポーツ庁の設置については、昨年十二月の組閣時の総理からの指示書におきまして、スポーツ庁の創設も含めた諸政策の推進が示されているところでもございます。

 平成二十三年度に施行されたスポーツ基本法の附則において、スポーツ庁等の行政組織のあり方の検討が規定されていることから、これまで文部科学省では、関係行政機関で構成するスポーツ推進会議の設置、障害者スポーツを含め、厚生労働省など関係省庁との連携強化を図るための定員増を行うとともに、スポーツ庁のあり方に関する調査研究を進めているところでございます。また、現在、福井副大臣のもとで、関係職員を集め、スポーツ庁のあり方等に関する議論を進めております。

 今後とも、障害者スポーツを含め、スポーツ施策の総合的な推進を図ってまいります。

浮島分科員 ありがとうございます。

 我が党も、二〇〇八年十月に、当時の塩谷大臣の方に、スポーツの振興に関する申し入れの中で、スポーツ庁の設置並びにこれからの推進を前進していただきたいということを申し入れもさせていただいております。私もこれからも全力で頑張ってまいりますので、どうかよろしくお願いいたします。

 本日はありがとうございました。これで質問を終わります。

萩生田主査 これにて浮島智子君の質疑は終了いたしました。

 次に、石原宏高君。

石原(宏)分科員 東京三区の衆議院議員、石原宏高です。本日は、予算委員会の第四分科会で質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 今回質問に立たせていただいたのは、いじめ撲滅を私自身の選挙公約にうたったことから、衆議院選挙の際、昨年、都内でいじめを苦に自殺した御子息のお父様が私の選挙スタッフに声をかけられまして、選挙期間中だったから会うことはできなかったんですけれども、その後、ことしに入って私の事務所を訪問されました。そのお父様は、自分の子供の死を無駄にしたくないという思いで、本当に心のうちを私に話してくださいました。私は、国会で継続的にいじめ問題について質問することで、少しでもいじめを解消するために、この機会を、予算委員会の与党の理事の御許可をいただいて、質問に立たせていただきました。

 実は、新人議員時代にも、教育基本法の議論の際、やはりいじめの問題が顕在化いたしまして、この分科会でいじめ問題に関して質問をさせていただきました。いじめ問題は、何度も顕在化するものの一向に解消されることがなく、本当にいたいけな子供たちが犠牲となっています。社会全体が一丸となって、いじめの撲滅を目指して行動しなければなりません。そんな思いで質問をさせていただきます。

 まず初めに、一つ、少しまとまっておりますが、いじめ対策として、警察OBやカウンセラーの設置等が行われています。私の選挙区の品川区では、区のカウンセラーが週一日、都のカウンセラーが週一日、合計二日間配置されています。カウンセラーの設置により、いじめがなくなるといった効果が出ているのか、ちょっとお聞かせをいただけますでしょうか。

 また、カウンセラーに直接お子さんたちが話をしに行こうとすると、やはり同じ学校の中にいますから、いじめている子たちがそういうのを見て、いじめが激化するんじゃないか、そんな危惧が考えられます。生徒が帰宅後、電話で相談する等の対応はあるのでしょうか。一部の教育委員会では、いじめ対策一一〇番のようなことを行っていますが、全体の教育委員会でどれだけこのような対応が行われているのか、お聞かせください。

布村政府参考人 お答えいたします。

 児童生徒がいじめなどの悩みを速やかに相談できるよう、スクールカウンセラーなどによる教育相談体制を整備することは重要なテーマで、また、実際、各学校でも大いに相談にあずかっていただいているという状況でございます。

 そのため、文部科学省におきましては、これまでも、スクールカウンセラー等を配置する都道府県に対しまして補助を行っており、平成二十五年度予算案においては、スクールカウンセラーを公立中学校全校に配置できるように、また、公立小学校につきましては、約六五%の学校に配置可能な経費を計上させていただいており、より一層の配置の拡充に努めてまいりたいと考えております。

 また、先生御指摘のとおり、いじめ問題に悩む子供たちあるいは保護者の方々が、いつでも、全国どこからでも相談ができる体制の整備は、重要な課題でございます。

 文部科学省におきましては、平成十九年から、夜間、休日を含めた二十四時間いじめ相談ダイヤルを、全国一律のダイヤル番号により、整備を進めてきているところでございます。

 今後、児童生徒がいじめなどの悩みを速やかに相談できるよう、また、ほかの人からもわからないような工夫をしていただきながら、教育相談体制の整備充実につながるように、国としても努めてまいりたいと考えております。

石原(宏)分科員 済みません、ちょっと追加で。

 事前のレクを受けている中で、この二十四時間いじめ相談ダイヤルの相談が、実は、いじめの問題を取り扱っている件数が少なくて、親同士の問題とか、先生と親のコミュニケーションの問題とか、そんな話を聞いたんですけれども、実際に、いじめで悩んでいるというのは、相談の中で何割ぐらいあるんでしょうか。

布村政府参考人 このいじめ相談ダイヤルにつきましては、全ての児童生徒に、〇五七〇―〇―七八三一〇、悩み言おうという電話番号を、昨年度もお伝えいたしましたし、繰り返しお伝えしております。

 今、ちょっと正確に、いじめの相談の割合が幾らかというデータは持ち合わせておりませんので、改めて後ほど先生の方にお伝えさせていただきたいと思います。

石原(宏)分科員 いじめをなくすためにも、教職員の人間力の向上、そのための研修が必要ですが、どのような取り組みをされているのか、お聞かせいただきたいと思います。

 実は、自殺されたお子様のお父様は、お子さんの名前を黒板に書かれて、何々君死ねと書かれていたということを事前にお子さんに聞いていたんです。実は、保護者面談でその話を先生にしたところ、その先生がはぐらかしちゃって、非常に後悔されているのは、もっと突っ込んでその先生に問い合わせをすればよかったと。また、もしかすると、二十四時間いじめダイヤルみたいなことを知らなくて、ほかの方に相談をする機会がなかったんじゃないかと思うんです。

 実は、そのいじめを苦にして自殺されたお子さんの担任の先生というのは、専科の先生で、十年ぶりに、久しぶりに担任を持たれた。ちょうど今、団塊の世代の方々が一斉に教職員をやめられていて、教員不足という話がありますけれども、その中で、専科の先生で、十年ぶりに担任をされたということで、実は、新人研修みたいなものは東京都でも行われておりますけれども、ちょうど今、団塊の世代、多くの方が抜けている中で、そういういじめに対する教育について、ベテランの先生なんかもしっかりとその研修を受けているのかどうか、そのことをあわせてお聞かせ願えますでしょうか。

下村国務大臣 私も、三月に長崎県の五島列島に車座ふるさとトークで行ったとき、そういうところでもいじめはあると。しかし、ある学校で、そこでは、早期発見、早期対応というのを、学校ぐるみで、一人の教師に任せないでやることによって成功しているという事例を聞いたことがございます。

 御指摘のように、いじめ問題については、教員がその兆候をいち早く把握し、迅速に対応することがやはり必要だというふうに思います。そのため、まず学校で、児童生徒の間のいじめのサインを見逃さないようにすることが必要不可欠であり、学校現場の教員等は、未然に防ぐとの意識のもと、しっかりとアンテナを張って、児童生徒が発するサインに対する感性を高めていくことが必要であると思います。

 このため、これまでも、国の独立行政法人教員研修センターにおいて、いじめの問題等への対応の中核となる指導主事や教員を対象にした、いじめの予防と対応に係る研修を行っているほか、平成二十五年度予算案においては、全国六ブロックで行う、いじめ問題に関する指導者養成研修を予定しております。

 これらの研修では、例えば、授業での発言を冷ややかにされたり無視されたりするとか、清掃時間に一人だけ離れて掃除をしているとか、持ち物や掲示物等にいたずらや落書きをされている等の、児童生徒が発する具体的ないじめのサイン等の早期発見の取り組みや、また、いじめられた児童生徒への対応、また一方で、いじめた児童生徒への対応、さらに、いじめの態様等別の指導の留意点など、具体的な早期対応の取り組み等の生徒指導の実践に即した研修を行っているところでございます。

 さらに、教員のカウンセリング能力の向上を図るため、スクールカウンセラーによる校内研修を実施する経費も計上しており、これらの取り組みにより、引き続き教員の資質向上に努めてまいります。

石原(宏)分科員 本当に、お子さんの身近にいる先生がいち早くいじめの実態に気づいてそれを解消するということが重要だと思いますので、引き続き研修の充実をよろしくお願いいたします。

 三つ目の課題ですけれども、子供たちへのいじめに関する教育について教えていただきたいと思います。

 実は、自殺されたお子様をいじめていた少年は、十一歳の時点で、大人にばれないように、陰でやる、急所を外す、泣くまでやらない等、陰湿な暴力の振るい方を知っていたという話をそのお父様から聞きました。そして、そのことを、自殺の聴取みたいなのがあったときに、自慢げに教員に説明する状況だったそうです。

 かつて私が分科会で質問をした際、いじめの定義についてお聞きして、その当時は、「一、自分より弱い者に対して一方的に、二、身体的・心理的な攻撃を継続的に加え、三、相手が深刻な苦痛を感じているもの。なお、起こった場所は学校の内外を問わない。」という定義を聞きました。分科会の事前のレクで、この定義は、平成十八年度に、「当該児童生徒が、一定の人間関係のある者から、心理的・物理的な攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じているもの。」に定義が修正されたという話を聞きました。

 ただ、私がこの話をお父様から聞いたときに、この少年が、過去のいじめの定義というものを何となく知っていて、先生にばれないようにとか、陰でやるとか、泣かないようにとか、こんな感じでいじめを繰り返していたんじゃないか、そんな恐ろしさを感じたところであります。

 やはり、子供に対するいじめの教育というのは非常に大切だと思うんですけれども、その内容についてお教えください。

布村政府参考人 お答えいたします。

 いじめの根本的な解決につなげるためには、まずは、子供たちに規範意識や社会性、思いやりの心などの豊かな人間性を育む道徳教育の充実が一つ重要な課題でございます。

 小中学校における道徳教育は、道徳の時間をかなめといたしまして、学校の教育活動全体を通じて行うということになってございます。例えば、小学校一年生では年間三十四時間、小学校第二学年から中学校三年生までは年間三十五時間を標準時数として学習指導要領上定めているところでございまして、その道徳の時間をかなめとして、各教科ですとか御家庭との連携を図りながら、子供たちの人間性を豊かにする、特にその中でも、思いやりの心などの育みを学校として取り組んでいただいているところでございます。

石原(宏)分科員 やはり、先生の教育、そしてお子さんの教育というのは非常に重要だと思います。

 これは私の私見でありますけれども、せっかく、心のノートという道徳のすばらしい教材を文部科学省においてつくっていただきました。今、下村大臣のもと、道徳教育の見直しを行われていて、心のノートがなるのかわかりませんが、教材化という話も報道で聞いておりますけれども、ぜひとも私は、心のノートのようなものを教材化して、しっかりと道徳教育に充てていただきたいと思うんですが、済みません、ちょっと質問があれしますが、文部大臣、それに対して。

下村国務大臣 御指摘のように、教育再生実行会議の第一次提言の中で、いじめ、体罰等をなくすための方策の一つとして、道徳の教科化というのが提言されました。これを受けて、文部科学省の方で、早速、道徳を充実させる懇談会を立ち上げまして、我々が政権奪還をした後、補正予算で、心のノートについては小中学生全ての子供たちに配付することにいたしましたが、印刷等の関係で、実際に配付されるのは七月からでございます。

 しかし、それだけでは十分であるというふうには言えないと思いますので、来年の四月からは、心のノート全面改訂版の中で、今委員御指摘のことも踏まえまして、しっかりとこの中に入れるようにしていきたいと思います。

石原(宏)分科員 ぜひ道徳教育の充実に努めていただきたいと思います。

 四つ目の質問になりますけれども、自殺されたお子様のお父様は、教育委員会や学校に隠蔽体質があるのではないかというふうに感じられております。これはやはり、お子さんが自殺したときによく親御さんが感じるところだと思うんですけれども、その理由に、教育委員会が行ったいじめの調査に対して、公表されている内容がかなり限定的である点があるのではないかというふうに思います。

 文部科学省では、いじめが起こって、教育委員会がそのことを調査してまとめた調査内容等についての公表内容について、どこまで開示するか等、指導されているのか、また指針等があるのか、もしあればその点をお聞かせいただきたいと思います。

 また、お父様が隠蔽体質と考える他の点として、このお子さんのケースでは、男子生徒が六名、そして女子生徒が七名関与されたということが、どこまで載っていたかはあれなんですが、そういう話を聞いているそうです。その子供たちが自殺を出したいじめに関与していたようなことが、中学生だったんですけれども、進学先の高校に昔のように内申書のようなことで報告されるのかどうか、報告されないとすれば、なぜされないのか。

 また、学校内では、いじめに関与した子供について、担任が変更になった場合、これはもちろん引き継がれると思うんですが、そういうことがしっかりと行われているのかどうか。

 また、これはしようがないことだと思うんですけれども、いじめに関与した子供の氏名は公表されないのが私も妥当だと思うんですが、法務省にも来ていただいているんですが、名前が公表されない法的な根拠、これをちょっとあわせてお聞かせいただけますでしょうか。

布村政府参考人 先に文部科学省の方からお答えさせていただきます。

 いじめを起因とする、あるいはいじめが疑われる自殺の案件が起きた際には、先生御指摘のとおり、保護者の方々の意向にできるだけ寄り添って学校、教育委員会が対応していただくということを基本としてございます。

 具体的には、平成二十二年度に、児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議を設置いたし、その調査研究の取りまとめの中でも、子どもの自殺が起きたときの調査の指針を取りまとめて、いじめ問題に関する調査委員会における調査方法や報告書の公表等の考え方を示していただいたところでございます。

 これを踏まえて、平成二十三年六月一日の通知におきまして、「調査結果の外部に対する説明や公表等に当たり、調査の実施主体は、当該児童生徒、遺族、在校生及びその保護者など関係者のプライバシーや心情にできる限り配慮するよう努める必要があること。」という形で通知を出させていただきました。

 これを受けて、各学校、教育委員会においては、これらの通知の内容を踏まえて、万が一、児童生徒の自殺等の事案が起きたときには、主体的に背景調査を行い、その個別具体の内容を子細に検討した上で、当該児童生徒、遺族、在校生及びその保護者など関係者のプライバシーや心情にできる限り配慮をしながら、いじめの態様やかかわった児童生徒の人数などの調査結果の公表をするよう努めているというふうに承知してございます。

 それから、もう一点お尋ねがございました、生徒の記録の引き継ぎでございますけれども、原則として、一人一人の児童生徒の状況に応じ的確に生徒指導を行っていくため、児童生徒の問題行動の状況について適切に記録、管理をし、進級時などには引き継いでいくことが必要であると考えてございます。多くの学校におきましては、児童生徒の個別の指導記録を作成することにより、継続的な児童生徒理解を図る取り組みが行われているという実態でございます。

 文科省におきましても、昨年十一月に公表いたしましたいじめ問題に関する緊急調査におきまして、学校に対しまして、指導上配慮を要する児童生徒の進級、進学または転学などに際して、学級担任などの教員間での引き継ぎは適切になされているかということを質問項目として調査を行い、「指導記録等の資料を用いて引継ぎを行っている。」と回答した学校は、約八割という実態でございました。

 この調査結果に基づき、文科省といたしましても、児童生徒の進学あるいは転学に際しましては、学校間、教員間の適切な引き継ぎを行うよう指導させていただいたところでございます。

岩尾政府参考人 いじめに関与いたしました子供の氏名の公表に関する一般的な法的根拠というわけではございませんが、犯罪に当たる行為をしたことなどによりまして、非行少年として少年法の対象となる少年につきましては、少年法六十一条に規定がございます。「家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。」という規定がございます。

 この規定は、少年の犯罪に対する出版物への記載内容などを制限することによりまして、少年の特定に関する情報が広く社会に伝わり、少年の社会生活に影響を与えることを防ぎ、その更生に資することを趣旨とする規定であると承知しているところでございます。

石原(宏)分科員 自殺をされたお子様のお父様は、自殺に導いた子供たちが厳罰に処されても仕方がないのではないかというふうに思われておりました。

 現在、未成年の処罰の対象となる十四歳を引き下げるといった、そういう議論はあるのでしょうか。過去、処罰の対象年齢が引き下げられた経緯があれば教えていただきたいと思います。また、十四歳以下の子供が処罰にならないのはどのような考え方なのか、そのように考える根拠を教えていただきたいと思います。

 また、事前のレクで、十四歳未満でも、十二歳以上であれば少年院に移送されるケースがあると聞きました。どのようなケースが該当するのか、また、どのような手続で、誰が申し出をして、どこで決めて移送されるのか、お教えいただけますでしょうか。

岩尾政府参考人 まず最初に、現段階で、法務省におきまして、刑事責任年齢の引き下げを特に検討しているわけではございません。

 現行刑法が成立したのは明治四十年でございます。それ以降、刑事責任能力が認められる年齢が引き下げられたことはございませんが、少年法におきまして、刑事処分をすることができる年齢が引き下げられたことはございます。

 すなわち、刑法におきましては、犯行時十四歳以上の少年については刑事責任能力があるとされておりますが、平成十二年に成立した改正少年法、これは平成十三年四月一日に施行されたわけでございますが、その施行以前は、家庭裁判所は、十六歳未満の少年につきましては検察官送致の決定をすることができないとされておりまして、家庭裁判所が処分を行うときに、十六歳未満の少年につきましては刑事処分をすることができなかった状態でございました。しかしながら、先ほど申し上げました平成十二年の改正少年法によりまして、家庭裁判所が処分を行う際に、十六歳未満の少年でありましても検察官送致の決定を行うことができるようになり、犯行時十四歳以上の少年については全て刑事処分をすることができるようになったわけでございます。

 また、刑法四十一条において、先ほど申し上げていますとおり、刑事責任年齢が十四歳とされておりますのは、十四歳未満の者は、一般的に精神的成熟が不十分であるために、行為の是非善悪を弁識する能力、またその弁識に従って行動する能力が未熟であることや、年少者に対する福祉的措置の必要性や刑事政策上の効果などを考慮したものであると考えられております。

 この刑事責任年齢のあり方につきましては、刑事司法全般において成長過程にある若年者をいかに取り扱うべきかという基本的な考え方にかかわるものでございまして、その引き下げにつきましては、十四歳未満の少年の成熟度や、特に、場合によっては初等教育を終えていない者に対して刑罰を科し得ることとすることの必要性、相当性などの観点から、慎重に検討されるべき問題であると思われるところでございます。

 それから、少年院に送られるような手続についてのお尋ねについて、一般的な手続の概要を申し上げます。

 まず、被害者からの被害届や目撃者の通報、警察官の現認などをきっかけといたしまして、十四歳未満の少年で犯罪に当たる行為をしたと疑うに足りる相当の理由のある者を認めた場合、警察官において、必要に応じて、事件の調査をいたします。その結果、少年の行為が、殺人や傷害致死のような一定の重大な罪に当たるものであると認められるときや、家庭裁判所の審判に付することが適当であると考えられるときには、事件を児童相談所長に送致しなければならないとされております。児童相談所長等は、送致を受けた少年につきまして、家庭裁判所の審判に付することが適当であると認めた場合に家庭裁判所に送致いたしますが、先ほど申し上げましたような一定の重大な罪に当たる場合には、原則として家庭裁判所に送致しなければならないとされております。

 事件の送致を受けました家庭裁判所は、調査を経た上で、事案により、少年を、少年院送致、児童自立支援施設等送致、または保護観察といった保護処分に付することができます。このうち、少年院送致の保護処分につきましては、決定の際に十四歳に満たない場合には、特に必要と認めるときに限るとされております。

 このような手続によりまして、おおむね十二歳以上の者は少年院に送致される可能性があるところでございますが、どのような場合に少年院に送致されるかというのは、一概に申し上げることは困難でございます。家庭裁判所におきましては、少年が再非行に及ぶ可能性など、さまざまな事情を考慮して判断されているものと承知しております。

石原(宏)分科員 済みません、残り四分になりました。

 最後に、いじめ問題とは違うんですけれども、国費による外国人留学生、日本人留学生について質問いたします。

 文部科学省では、高校生の一年程度の留学に対して年間四十万円の補助を行っていますが、都道府県を通じて行っています。しかし、対象に政令指定都市が含まれないため、都道府県が取り扱いを行わないと政令都市の子供が対象から外れてしまいます。政令都市を対象にすることができないのか、お伺いいたします。

 また、これは問題意識でありますけれども、学生の双方向性の留学等の推進を文部科学省は行っていますが、平成二十五年度予算案では、日本人学生の海外留学促進費が三十六億円に対して、外国人の留学生の受け入れは二百九十四億円と、約十倍弱になっています。やはりこのことを見直す必要があるんじゃないか。

 また、日本人の場合は、長期留学で一人当たり二百万円、短期留学で一人当たり三十万円となっていますが、外国人の場合は、学費とか滞在費とか、かなりの補助があると思います。このアンバランスをどうお考えか、最後にお聞かせいただけますでしょうか。

布村政府参考人 先に、高校生の留学についてお答え申し上げます。

 文部科学省では高校生の留学促進事業を行っているところでございまして、平成二十四年度は三十三都道府県において実施がなされています。これは都道府県の実施になりますけれども、政令市にお住まいの高校生も、都道府県を通じて申請することは制度上は可能でございます。

 一方で、都道府県・政令市独自に高校生の留学経費を支援する事業も行っておられますので、本事業の対象を政令市まで含めるかどうかについては、地方自治体における取り組みの実態を踏まえ、今後検討させていただきたいと考えております。

板東政府参考人 大学の留学生の双方向交流につきまして、簡単にお答えを申し上げたいと思います。

 先ほど委員御指摘のように、予算額の違いというのがあるわけでございますが、主としてその理由としては、日本人学生を留学させる支援の経費につきましては短期のものが中心になっておりまして、短期が一万人に対しまして長期が二百人しかないということが大きな原因になっております。

 今、日本人学生の留学というのが非常に少なくなってきているということは、グローバル人材育成の観点から大きな問題意識を持っているところでございまして、今後その充実に努めてまいりたいというふうに思っておりますし、今、産業競争力会議や教育再生実行会議におきましてもこの問題は重要な課題として議論されておりますので、それも踏まえながら、充実に努めていきたいというふうに思っております。

石原(宏)分科員 ありがとうございました。

 時間が参りました。

 繰り返しになりますが、いじめ問題がなくなるまで常に国会で取り上げ、いじめゼロの社会をつくれるように社会全体で取り組む必要があることを主張させていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

萩生田主査 これにて石原宏高君の質疑は終了いたしました。

 次に、赤枝恒雄君。

赤枝分科員 東京比例の赤枝恒雄と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 私のような開業医が、尊敬する下村大臣にこの場でお話を伺っていただけるとか要望できるというのは夢のような話でして、オーバーなようですけれども、本当に生きていてよかったというほどの感動であります。きょうはどうぞよろしくお願いをいたします。

 私は、医師になって四十五年、六本木で開業して三十五年になります。その間、バブルのころからでしょうか、手おくれ状態で来る子供たちが非常に多くて、本当に知識がない。おなかが痛いと言ったらもう赤ちゃんの頭が出ているとか、ヘルペスが広がり過ぎていてもう自分じゃ歩けないと彼氏に負われて来るとか、それから、コンジロームといういぼがあるんですけれども、外陰部から広がって、あれはちぎっても痛くも何でもないので、ちぎってちぎって、どんどん膝まで広がっているというような、知識がないとか手おくれという状態の子供が非常にふえてきたように思いました。それで、一九九九年四月一日から、何か街角で子供たちが相談できるような場所があればいいんじゃないかと思って、街角相談室という名前で、それも夜九時からハンバーガーショップで毎週木曜日、十四年前からずっとやってきました。

 そこで知り得た僕の知識は、開業して病院の中にいたのとは現実は全然違って、不特定多数とコンドームなしでセックスをするのがいけている、格好いいということで、非常に大変なことになっているんじゃないかと思って調査をしたわけですね。

 そうすると、百二十五人ぐらいの調査では、もう八一・六%が何らかの性病にかかっていたという驚くべき事実に、これはどうにかしなきゃいけないということで、私のガールズガード運動、つまり、性交渉は圧倒的にやはり男性主導で行われるので、女の子を守ろうよという運動を私は考えて、表紙をめくっていただいて一ページ目に絵が出てくるんですが、ガールズガード運動というのを提唱して始めました。

 今からして思えば、この一九九九年というのは、非常にとんでもない、我々、ウエルカムじゃない年だったんですね。

 とりあえず、ピルが解禁されたということですね。今まで、ピルが解禁されると性病がふえるんじゃないかと言われたときがありましたが、それでも、やはり世界の趨勢はこうだということで、日本でもピルは解禁しろということで、中ピ連とかいろいろな団体がピルを解禁した。

 それから、バイアグラなんというのは、これはEDの薬でありながら遊びに使われることが結構多くて、これもよく効くんですよ。よく効くから、アメリカでそれが売れていると、ネットで日本で導入して、ネットで導入したものが、薬剤が不均等な、薬がたくさん入っていたり少なかったり、効く効かない、いろいろな薬の差があって、日本でも死者が出ちゃったんですね。死者が出ちゃうのでこれはいけない、ここまで人気のある薬なら日本でも発売しちゃえということで、日本人の治験がないのにバイアグラが発売された年がまたこの年です。

 もう一つ怖いのは、子供の携帯が、今までテレクラを通しておやじに接触していたのが、直にインターネットにつながった年なんです、これは。ここから第二次援交ブームが始まるんです。このころ、ちょうど日本経済は非常に落ち込んでいる時期に、コギャルが、ギャルがいっぱい、おやじからもらったお金でブランド物を買いあさって日本の経済を支えた、そこまで言われている時代ですね。

 その左の上は、性教育というのはなかなか学校の先生もできない、家庭でもできない、地域はもちろんできないということで、子供に教えて子供が伝えるというピアエデュケーターの養成講座というのを始めたんですね。これは五年ぐらいやりました。これは小学生から大学生までいました。

 その左下に、こういう相談室を、喫茶店の中でテーブルを借りて、これを置いてやっています。こういうところでは、とにかくコンドームつけろ、コンドームつけろということで、もう私は六本木では、六本木のコンドーム人間と呼ばれているんです。だから、「ワンピース」のルフィを御存じかどうかわかりませんが、私は六本木のルフィと呼ばれて、コンドーム人間とも言われているんですが、それぐらいコンドームはずっと配り続けてきました。

 これに書いてある全ての運動は、どこからの援助ももらっていないです。これは自力で全部やってきました。

 それから、保証つきコンドームを、コンドームに保証をつけたらどうなの、売れるんじゃないかと。つまり、破れたときには、妊娠し、このまま継続したい人にはお祝い金の三万円を上げる、それから、どうしても産めない人には十万円を上げる、こんな保証をつけたんですよ。これをオカモトとやって、こんな保証をつけたら誰でも買うでしょう、百円のコンドーム。全然売れなかったですね。

 それから、フェラチオをするとコンドームのゴム臭が嫌だと言う人がいて、子供たちが言うんだから、それならフレーバーの、フルーツの味をつけたらどうだろうと、フルーツの味をつけて売り出した。これも全然売れない。

 今売っているのは、性病チェックができるコンドーム。これはドン・キホーテでも薬店でも売っていますが、ガールズガードというコンドームを売っています。これはオカモトさんに頼んで、中に薬が入っているんですけれども、性病の人がこのコンドームをつけると、しみて痛いんです。これで性病チェックができる。これは今はちょっと売れているんですが、いろいろなコンドームをとにかくつけてもらいたいということです。

 それから、エイズの無料検査というのが左の一番下。エイズの無料検診、これは十五分でわかる、すぐそこで待っていてもらってわかるという。

 特に新宿でも、エイズ検査は、した後に一週間待たされるんですね。長いところは二週間待たされる。南新宿の東京都がやっているエイズ検査所も、待っている間に怖くなっちゃって、結果をとりに来ない人がいるんですね。ですから、すぐそこで十五分待っていてもらってわかるという無料エイズ検査、これは夜のクラブでやっております。おとといも渋谷でやって、いまだに六本木と渋谷だけは続けております。

 エイズ検査の待っている間の十五分の間に、いろいろな性教育というか、そういうことも言うんですが、やはり、コンドームというものの値段が高過ぎるということがあるんですね。

 信じられないかもしれませんが、今の若者は、高校生レベルで彼女と二人で一晩五回やります。うそみたいでしょう。これは本当なんですよ。学校の教師がいて、女の子がいて、そうだよな、俺、きのうも五回だよなと言うぐらいに、本当に五回。五回だと五百円です、コンドーム。その五百円という価値観が、これは、吉牛が二杯食えるんですね。吉野家の牛丼が二杯食える。吉野家の牛丼二杯と一晩のコンドームと考えると、価値観が全然違う。それならば、外出しすればいいだろうということですね。

 コンドームの値段が高過ぎる。これは、大臣、どうにか、将来、補助金を出していただきたい問題なんですよ。高過ぎる。百円は高過ぎると私も思います。そういう話も出てくるわけです、こういうところでは。

 それから、医師が何を言ってもだめ。聞いていない。ところが、長渕がこう言っているとか、いろいろなタレントが言っているということによって、聞いてくれるんですね。ですから、私は、今はタレント教育をやっています。タレントから言わせている。

 この間、私、ずっとやっていましたが、残念ながら飯島愛さんは亡くなりましたけれども、今では、高田純次さんとか有森裕子さんとか石野真子ちゃんとか浅田美代子さんとか、こういうタレントさん、鶴瓶さんもいつも来てくれます。こういう人たちと一緒に、こういう活動を支えてもらっています。

 それで、こういう活動をやって、また、ラジオ、この真ん中にあるラジオ、これがすごいんですよ。このラジオが、文化放送で十年間やったんです。普通、ラジオ番組は六カ月で終わりなんですよ、六カ月。私のこのラジオ番組は、金曜日の深夜二時から三十分やるんですけれども、リスナーはほとんど中学生です。余りにも人気番組で、十年続きました。これはすごかった。

 この結果はやはり出ているんですね。このラジオ番組を始めた次の年から、十代の人工妊娠中絶が見事に右肩下がりに下がっています。これは厚労省の人がいたら証明してもらえますが、十代の人工妊娠中絶はきれいに下がり始めました。今もずっと下がっています。

 ですから、ぜひ、文科省にスポンサーになってもらって、このラジオ番組をまた始めたいというふうに思っているんです。これは、いずれ、文科省提供の性教育番組というのがあってもおかしくないのかなと思います。

 ところで、こういうふうに性感染症が広がっているわけですけれども、二ページ目をちょっとごらんになってもらうと、性行動は、昔は、女の子がこんな、性行動が男の子を上回るということはあり得なかったわけですけれども、今、肉食系だとかいう言葉にはやされて、女の子も強くなって、四五%ぐらいの高校生はもう経験している。男の子が五〇%ぐらい。でも、中学生ももう五%とか、統計によっては一二%の中学生がもう経験しているとかいうのもあるんですが、低年齢化しているわけですね。特に、小学生のこういう援助交際が出てきているから、そういう意味でも低年齢化している。

 これは、ゲイの人がいるので、やはり男の子は低くなっているけれども、結局は、ゲイの人も入れると体験率は同じぐらいということらしいですね。

 三番目です。これが困った問題です。三ページ目。アダルトビデオは、これは大人の娯楽なんですよ。大人の娯楽だから、子供は見ちゃいけない。絶対見ちゃいけない。これは大人の娯楽で、つくられたものというのがないわけですね。どこでも教育を受けていないと、子供が見たら、性行為はこういうふうにするんだ、アナルセックスも大丈夫、三Pでも大丈夫。こんなことが普通のように子供たちは思ってしまう。

 これは、監督がいて、女優が演技をさせられて、だから、街角相談室にいた子供は、きのうの夜のアダルトビデオの女優さんの声をまねしていますよ、きゃあと大きな声で。きのうの女優さんのあの声、すごかったねと。そんな声をまねする、そんなところまで来ている。

 だから、これを見たらどうなるのというのが次の四ページ目にあります。

 ほぼこの数字は当たっていると思うんですが、実際に見たら性行動、性衝動が起こるわけで、これが六六%ぐらいの子供が、やりたくなった、やってしまったという行動に移っているわけです。

 朝日新聞によりますと、今の女子高生の二十人に一人はレイプされているんですね。これも朝日新聞に出ていますよ。二十人に一人の高校生がレイプされている。その相手は、ほとんど彼氏だということです。

 五ページ目に行きますと、これは私が調べた、水曜日と木曜日の夜に、街角を歩いてふらふらしている子供に、検査を受けたらどうなんだ、検査を受けているかと言うと、受けていないと。そういう子供たちに、こういう病院を紹介して、六本木の九つの病院の、クリニックのどこでもいいよ、行って検査を受けたらこれは無料だよというので受けてもらった結果が、百二十五人の中の何と八一・六%が何かしらの性病を持っていたという恐るべき数字で、これで僕はびっくりしたわけです。

 では、普通にお勉強している高校生はどうか。六ページ目ですね。

 真面目にお勉強している子、これはnが二百三十二人ですが、これは、都内のほとんど格式ある高等学校、九つの高等学校ですけれども、そこの養護の先生から生徒に渡してもらって、綿棒でおり物を採取して、自己採取というんですが、これで送ってもらったら、同じですね。お勉強している女子高生も同じようにいろいろな病気を持っている。

 それで、七ページは、これは私がやった検査じゃなくて、厚労省が班研究でお金を出してやってもらった検査ですね。これは今井先生に対してお金を出してこういう研究をやってもらった。これは二回目ですけれども、全国的なすごい調査なんです。

 これは無症候で、症状がない。おり物が多いとか、例えばおしっこが近いとか痛いとかいう子供たちを集めたわけじゃないわけです。一般の高校生におしっこをちょっと調べさせてくれると言ってとったおしっこを調べた結果。それも、全国の九校のレベルにある高校。でき過ぎる学校じゃない。できない学校じゃない。レベルにある、九校の症状のない子供たちのおしっこを調べたら、男性が六・七%も持っている。女性は九・五%も持っている。世界の成人の平均が一%ですから、日本は異常な性病大国ですね、これは。世界では成人の一%です。

 クラミジアは何で怖いかというと、このクラミジアは症状が一切出ない。それで、これは今不妊症の原因になるというのもわかっていますから、不妊症のほとんどの原因はこのクラミジアなんですね。世界では、このクラミジアにかかっているのを知らないで出産して、毎年二百万人の赤ちゃんが失明しているんです。

 エイズの検査は子供たちはやらせてくれないので、エイズの若い子供たちの状況というのはわかっていないんですが、ここまで非常に性感染症が広がっているということに対して、下村大臣、ひとつまず御感想、これは何か、性感染症がこんなに広がっているのは教育がされていないんじゃないか、性教育というのは必要なんじゃないかというふうに私はもう絶対思うわけですが、大臣の御見解をお伺いさせていただけますか。

下村国務大臣 赤枝委員が医師として第一線でいろいろと御苦労されているということについては前から承知をしておりましたし、もう十年ほど前でしょうか、自民党の部会でも先生に来ていただいて、実態についてお話をしていただいたことがございました。

 そのときと同様、あるいは、もしかしたらそのとき以上にきょうの資料等の具体的なお話は非常にショッキングな話でもございまして、恐らくこれは、私だけでなく、中高校生を持っている親御さんもほとんど知らない話であるというふうに思いますし、残念ながら、こういう実態は実態として、きちっと、親御さん、もちろん学校の先生もほとんどこういうような状況については知らないというふうに思います。

 六本木だけの特別な状況ということでなく、今のお話ですと、地方と東京ではちょっと違うかもしれませんが、しかし、東京においては、ある意味では当たり前の現象になっているような状況があるかもしれないなということを、改めて今説明を聞いて感じたところでもございます。

 児童生徒が、自己の行動に責任を持って生きることの大切さや人間尊重の精神に基づく人間関係のあり方などについて学習することは、生涯を通じて健康で活力ある生活を送るための基礎を培う上で極めて重要なことであり、そういう意味からも、性に関する情報があふれる現代社会において、学校において改めて性に対するしっかりとした指導を行うということは大変重要だというふうに、今お聞きして感じているところでございます。

赤枝分科員 非常に深刻に受けとめてくださっておりますし、どんどん性教育を進めていかなければいけないというふうな決意というふうにお伺いをしました。

 それで、性教育が現在、小学校、中学校、高校とかで何か重点的なポイントを持って行われているかどうか、性教育の現状みたいなものを担当官からお話をいただけるとありがたいんですが。

久保政府参考人 学校におけます性に関する指導は、児童生徒が性に関して正しく理解し、適切に行動をとれるようにすることを目的に実施されておりまして、体育科、保健体育科を中心として、特別活動や道徳を含めた学校教育活動全体を通じて指導することとしております。

 各学校における指導に当たりましては、発達段階を踏まえること、学校全体で共通理解を図ること、保護者の理解を得ることなどに配慮することとしておりまして、加えまして、性的な発達への適応につきましては、個々の児童生徒間で発達の差異が大きいことなどから、事前に集団で一律に指導する内容、集団指導と、個々の児童生徒の抱える問題に応じて個別に指導する個別指導とを区別して指導するなど、計画性を持って実施することとしております。

 これは、体育科、保健体育科におけます科学的な知識、理解の定着、特別活動におけます心身ともに健康で安全な生活態度の形成、道徳における異性を尊重する姿勢の育成など、集団指導として行われる内容と、保健指導、生徒指導など個別指導として行われる内容を組み合わせることが性に関する正しい理解や適切な行動の習得に最も効果的だという考えに基づくものでございます。

赤枝分科員 今のお答えの中で私が非常に注目したのは、性教育が今、講堂で、総合学習の中とか、指導者はいないんですが、そういう団体で大きなところで男女共同で性教育というのが行われているわけですけれども、今のお話だと個別にも対応しているというようなお話をいただいたので、性教育というのはおっしゃるとおり個人差が非常に大きいわけですね、性のことなんか聞きたくない、話したくないという子がいる一方で、もう全て知っている子供というのが同じ学年にいるわけですから、これからぜひ個別指導というところを中心に進めていただきたいというふうにお願いをします。

 我々産婦人科医会は全国に何千人いるんでしょうかね、その産婦人科医会が中心になって、三十五年前から性教育指導者セミナーというのをやってきたんです。性教育指導者セミナーというのは五百人の養護の先生を毎年夏に集めて教育してきたんです、三十五年。何とその三十五年前の第一回のテーマが、今の中高生の性がおかしいという。まさに三十五年前から今の中高生の性がおかしいと言われ続けていて、今や小学生が援助交際をしている子がもう普通に何人かいるわけですね、うちに患者さんもいますが。

 そういうふうに性教育が進まないのはどうしてだろうと。これはちょっと時間がないので私の方からもう指摘させていただきますが、やはり性教育という学問が必修にならないのかと。これは、スウェーデンでは、一九五六年からもう必修科目で義務教育になっているわけですし、北欧の子供たちもこういう扱いで性教育をちゃんとされているわけですね。

 日本の悪いところは、いろいろな先生がいろいろな場所で教えるけれども責任者がいないんですよ。この性教育の責任者がいないということは最大の弱点ですね。つまり、この生徒がどれだけの知識を持ったのか、この生徒がどれぐらいのことをわかっているのか、チェックが何もできない、言いっ放しということがあって、その総合学習の中の、何かあれはどこの学校でも一回はやれというふうに文科省で決めているんでしょうかね。学校はいろいろ呼ばれますけれども、大きな講堂で年一回ぐらいは呼ばれるんですけれども、あれでは徹底できない。

 だから、性教育の必修化ができないのであれば、せめて責任者、これはつくるつもりはないでしょうか。

久保政府参考人 学校における健康教育の中で行われます性教育指導、これは、先生おっしゃられたように、教科で行われますもの、特別活動で行われますもの、それから個別の指導で行うものと、いろいろございます。

 責任者という意味では、保健体育の先生が指導者になっておったわけでございますけれども、平成二十一年に改正されました学校保健安全法におきましては、新たに、養護教諭その他の職員は、相互に連携して、健康相談または児童生徒の健康状態の日常的な観察によって、児童生徒の心身の状況を把握し、健康上の問題があると認めるときには、遅滞なく、当該児童生徒に対して必要な指導を行うとともに、必要に応じ、その保護者に対して必要な助言を行うものとすると規定されたわけでございます。

 したがいまして、今後新たに養護教諭その他の職員は相互に連携して保健指導を行う、学校が全教職員の共通理解のもと、全体で取り組むことが重要になったわけでございまして、その意味では、校長を中心としました各学校による体制整備が一層推進されていくべきものであると認識いたしておるところでございます。

赤枝分科員 時間がないので、ちょっと御指摘させていただきたいのは、連携してやるというのは今までどおりのことで非常にだめなんです。

 とにかく、子供たちは何があっても養護の先生のところにそういう相談に行くわけで、養護の先生から病院の方に連絡がある、そういうパターンが多いので、養護の先生の数をぜひふやしていただくということと、養護の先生がどこかでチェックをする、テストとか問診でもいいんですが、アンケートでもいいんですが、何人かとって、子供たちの性の知識のレベルを確認していくような手だてをぜひ考えていただきたいと思います。

 それからもう一つ、一番大事な問題がありまして、これは八ページ目をぜひごらんになっていただきたいんですけれども、性の自己決定権と書いてあります。世界における性的同意年齢、これについて、法務省の方来ていらっしゃいますか、御説明ちょっとお願いいたします。

    〔主査退席、あかま主査代理着席〕

岩尾政府参考人 性交同意年齢と言われているもの、これは、刑法におきましては、暴行または脅迫を用いずにわいせつな行為をした場合であっても強制わいせつ罪が成立する年齢、これは十三歳未満とされておりまして、これに違反した場合には六カ月以上十年以下の懲役に処する旨の規定がございます。また同様に、暴行または脅迫を用いない姦淫によっても強姦罪が成立する年齢を十三歳未満とされておりまして、これを犯した者については三年以上の有期懲役に処する旨規定されております。

 一方、児童福祉法三十四条という規定がございまして、これは十八歳に満たない者、すなわち児童に淫行をさせる行為を禁止しておりまして、これに違反した者については十年以下の懲役もしくは三百万円以下の罰金に処し、またはこれを併科する旨の規定がございます。

 さらに言いますと、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律におきましては、児童等に対償を供与し、またはその供与の約束をして、当該児童に対し、性交等を行うことを児童買春として禁止しておりまして、これに違反した者については五年以下の懲役または三百万円以下の罰金に処する旨の規定がございます。

 このように、刑法以外の児童の保護に関する観点から定められた法令によりまして、児童に対する淫行が処罰されることとされておりますことから、我が国の法制上は、刑法で規定されている十三歳という年齢が性交に同意することができる年齢とされているというわけではないと承知しております。

赤枝分科員 これは、つまり十三歳にならない者に同意の上で性行為をしても強姦になるということです。

 ですから性の同意年齢というふうに一般的に言われるわけですが、そうすると、十三歳までにいろいろな知識を与えられているのか、例えば二次性徴と向き合って性の価値観とかが形成されているのか、それから、自分の性行動に責任を持って、望まない妊娠や性感染症を予防できるような知識、性の自己決定ができるのか。十三歳になるまでに、こういうものが形成されていないとだめですよね。

 また、十三歳になるとそれが形成されるはずということでこの法律は成り立っている。しかし、現実はこうじゃなくて、今の大学、本当に超有名な、東大にも行きました。東大の秋の大学祭にも呼ばれて行きますけれども、ここで性感染症を五つ言える人はいるかと言うと、早稲田で一人いましたかね。エイズ、梅毒、淋病、クラミジアぐらいはほとんど言えると思っていたら、大学生でも言えない。

 だから、ましてや、十三歳で、自分が今まで親の言うとおりにやってきて、全てのことに対して自己決定なんかしたことがない子供たちが、十三歳になって初めて、あなた、するかしないか決めていいよと言われたって、こんなのわかりはしない。

 僕は、この十三歳を、やはり自分で自己決定のできる、これは諸外国、書いてあります。諸外国はほとんど、八十九カ国が十六歳になっているわけです。この十六歳という意味は大きいと思います。この三年間の間で性に関するいろいろなリスクとかを勉強して、ここで考える。だから、日本の法律でも、十六歳になったら結婚できるというふうになっていますけれども、この十六歳に合わせて、十三歳を十六歳に引き上げるというのはいかがでしょうか、大臣。

下村国務大臣 突然の御質問でございまして、今お聞きしていて、確かにそういう部分があるかなというふうに思いました。

 ただ、なかなかこれは、先ほどからの答弁の中にもありましたが、子供によって、家庭によって、これについての意識というのは相当違いがありますから、集団指導がなじまない部分、先ほどのコンドームの装置の問題もありましたが、きちっと教えた方がいい部分もあるかもしれませんし、一方で、余りそういうことをすることによって、何かフリーセックスを促進するようなことでけしからぬというふうに抗議する団体もやはりあるわけですね。

 ですから、その辺での我が国におけるコンセンサスづくりということで、性教育そのものについて、先ほどからも御指摘がありましたが、果たして教えられる先生がきちっといるのかどうかということになると、養護教諭でしょうけれども、まず、その養護教諭等に、できたら、先生に、全国養護教諭を集めて、今の現場の状況について講演をしていただくのが一番適切かなというふうに、先ほどの御質問を聞いていて感じたところでございます。

 年齢等については、私あるいは文科省だけの問題ではなくて、政府全体として取り組むべきことだというふうに思いますし、性的自己決定権を含めて、ほかの問題もあわせて、幾つにおける年齢かというのはトータル的な政策の中で判断することであるというふうに思いますが、しっかり勉強させていただきたいと思います。

赤枝分科員 温かい御回答をいただきまして、これからもやる気が出ました。大臣、ありがとうございました。皆様、ありがとうございました。

 最後に書いてある九ページ目が私の思いですから、これは後で読んでいただければ。これは、一つの暴力だ、知らない子供に対して性行為をすることは暴力だというふうな僕の思いでございます。

 きょうは、本当にありがとうございました。これで終わります。

あかま主査代理 これにて赤枝恒雄君の質疑は終了いたしました。

 次に、宮川典子君。

宮川分科員 おはようございます。山梨一区の宮川典子でございます。

 きょうは、予算委員会の分科会で、人生初の国会での質問ということですので、大変緊張しておりますけれども、三十分間、ぜひ御指導いただければと思います。

 私は、前職が私立の中高、自分の母校で教師を五年間しておりました。英語の教師でありましたけれども、その現場におりましたときに、大変悲しい出来事もあり、また、教育というのが、どれだけ子供たちにとって、また大人にとっても希望であるのかということを現場で感じてまいりました。

 私が教師をしている五年間、その中で、私は生徒を二人自殺で亡くしております。一人は、自分が最後に勤めた年に、自分の学年の生徒を、線路への飛び込み自殺で亡くしております。

 でも、その子たちが自分の最期の言葉として残した手紙の中に何を書いていたかというと、今、日本という国は努力をしても報われない社会である、自分たちがどんなに努力をしても、大人の背中を見ていると、努力は報われないということが目の前でわかってしまう、そういう中で努力していくことに疲れてしまったと言葉を書いている、そのことに私は、一大人として、一教師として、大変ショックを受けました。

 私たちは、教育の現場で子供たちに、夢を持て、努力は必ず報われる、だから一緒に頑張ろうということを、常日ごろ、毎日のように子供たちに訴えかけております。しかしながら、その一方で、子供たちは、苦労する自分の親の姿、そして社会で頑張っても報われない人の姿を見て、自分たちの将来はどうなるんだろうと本当に大きな不安を抱えているんだということ、その現実が私の目の前にそのときには大きく打ち出されたように思います。

 そこで私が思ったのは、教育の現場をよくすることは一教師としてもできるかもしれません。しかし、子供たちが学校を出た後、自分たちが一生懸命努力をして身につけた能力を社会の中で生かすときに、その社会がその子供たちにとっていいものでなければ、そして努力が報われる社会でなければ、彼らに私たちが現場で教えている、努力は報われる、頑張ろう、勇気を持とうという言葉は非常に空虚であるというふうに思いました。

 今も、私の仲間が現場で一生懸命に子供たちの教育に携わっております。その現場の先生たちの子供たちに対する素直な情熱が決してうそに終わらないようにするのが、我々政治家の仕事ではないかなと思っております。

 私も、浪人生活も経験しながら、今回衆議院で初当選をいたしまして、こうして質問の機会をいただきましたが、常に基本は、現場の先生たちをどうするのか、そして、ひいては、子供たちの未来をどういうふうにつくっていくのかという主軸を忘れずに、きょうは質問させていただきたいと思います。

 まず一つは、今、内閣の中でも教育再生実行会議、また我が与党の中では教育再生実行本部が開催をされておりますが、その中で話題になっている、特に現場のお父さん、お母さんが非常に興味を持っている話題について一つ。その後に、学校の先生たちをこれからどうやって養成、採用、研修していくのかという観点について数問、質問させていただきたいと思います。そして最後は、いじめの問題、また体罰の問題等で現場が非常に今揺れております。その中で、先生たちの評価制度について御質問をさせていただければと思います。

 まず一点ですが、第二次安倍内閣が発足をしまして、その中で、経済を取り戻す、外交を取り戻す、そしてもう一つ、教育を取り戻すという大きな指針が出されました。このことに関して、私も、ずっと教育改革を訴えてきた立場として、本当に子供を持つ親御さんが今の内閣に対して大きな期待をしているというのは、実感をするところであります。

 その中で、毎日いろいろな報道がなされておりまして、きのうは、教員の試用期間をつくるという話であるとか、先日は、入試にTOEFLを導入するであるとか、さまざまな教育政策が動いていくだろうという最初のスタートラインが国民の皆様にもよく見えているところではないかなと思いますが、特に、小さい、小学校、中学校のお子さんを持つ親御さんたちの中で常に話題に上がるのが、道徳教育の話であります。

 私は、常日ごろ、道徳は教科化するべきだということで訴えておりますけれども、多分、戦前の修身をもとにして、戦後も道徳を教科化するべきではないかという議論は、今まで、多々、いろいろなところでされてきたというふうには思います。

 しかし、現場にいる、中学生を担任していた私としては、道徳教育というのは、現場の先生にとっては一番逃げたい授業なんです。

 それはなぜかというと、小中を担当するときに、現場の先生たちは一応、道徳の指導法であるとか、道徳というのはこういうことを教えればいいということを教職課程の中で教わってきてはいます。しかしながら、私たちの専門性を担保する免許が道徳教育にはないというのが非常に大きな問題ではないかなと思います。

 多分、一年間で数十時間、道徳の授業がありますけれども、恐らく一部は、学園祭の準備に使われたり、体育祭の準備に使われたり、テスト前は自習の時間に使われたりというのが現状だと思います。これは決して学校の先生だけを責められるものではなくて、子供たちにとって何を本当に道徳で教えたらいいのか、そして、自分たちの専門性というのをそこで発揮するだけに、担保する免許がないということに対しての自信のなさというのも実際にあると思います。

 例えば、大学を卒業して二十三歳で子供たちに道徳規範を教えるというのは大変難しいことではあります。何をどう教えるのか。例えば、席を譲りましょうとか、何かがあったときには人助けをしましょうというのは、これはあくまでもルールであって、道徳教育というのは、その中で生まれる良心の呵責であったり、自分が善悪の判断をするときにどちらを選ぶのか、そして、選んだ後、自分はどういうふうに感じるのかということをしっかり子供たちの中に植えつけていく、とても重いものだと思います。

 しかし、それでありながら免許がしっかり担保されていないということに関して、私は、現場のたくさんの先生方と今までも話をしてきて、子供たちの道徳離れではなくて、やはり一番現場で問題なのは、教師の道徳離れが起きていることではないかなと思っております。

 この道徳の教科化ということは、一つの目玉として、これから内閣の中でも、また与党の中でも進んでいくものではないかと思いますけれども、教師の道徳離れを進めてしまっている、免許の担保がないという点に関して、ぜひ御所見をいただきたいと思います。私の意見としては、教科化をし、しっかりと専門的な免許を付与すべきだと思います。

 道徳は、評価にできない、数値にできないものではありますので、教科化という、一つ評価をしなければいけないという側面からは難しいかとは思いますが、免許の立場からいって、免許を付与するという側面からして、今後どのような御方針をお考えなのか、御答弁いただきたいと思います。

布村政府参考人 お答えいたします。

 まず、道徳教育については、先生御案内のとおり、昭和三十三年の教育課程審議会答申を踏まえて道徳の時間が新設され、教科ではなく教育課程の一領域という形でスタートいたしました。その際の指導要領にも、道徳の指導については、「これまでの「教科以外の活動」など、その他必要な事項をじゆうぶんに考慮し、学年の児童発達段階に応じた方法を講ずるようにすること。」ということで、道徳の時間をかなめとして学校教育全体を通じてとり行う、そういう意味でのほかの教科との専門性の違いから、免許制度は設けられてきていないというのが現状でございます。

 また、一方で、本年の教育再生実行会議の第一次提言におきまして、道徳の特性を踏まえた新たな枠組みにより教科化することが提言されたということを受けまして、文部科学省に設置した道徳教育の充実に関する懇談会におきまして、その教科化に向けた具体的なあり方について御議論いただくということで会議がスタートしたところでございます。

 教員免許状につきましては、教科や教職に関する専門性を担保するためのものという制度でございます。このため、道徳が新たな枠組みにより教科化される場合には、どのような専門性が求められるのか、あるいは、教員養成課程においてどのようなカリキュラム、あるいは大学教員を調える必要があるかという課題が出てまいりますので、それらを検討した上で、道徳の免許状の創設の必要性の有無を判断していくことが今後求められるわけでございます。

 今後は、今回の懇談会におきまして十分に検討をいただきたいと考えているところでございますが、それを受けて、文部科学省においてもまた検討する必要があろうかと考えているところでございます。

宮川分科員 ありがとうございます。

 やはり子供たちと教師にとって道徳の時間が一番心が通い合える、そういう時間になるというのが私は一番重要だというふうに思いますし、人間同士として意見が交換できるような授業を構築することができるというのが現場にとってはとても重要なことではないかなと思います。

 ぜひ、私も党の教育再生実行本部の一員として、これからも、この道徳の教科化に向けて、また免許の付与については自分自身も取り組んでいきたいと思っております。

 続きまして、大学教育における教職課程のカリキュラムについての質問を申し上げます。

 今の道徳教育の話にも少し通ずるところがありますが、今、大学の教職課程の中で、単位を取れば免許が付与されるというシステムが続いております。

 ただし、私がこの中で思うのは、今、私自身も当時感じておりましたけれども、教職課程の中で、どうしても高い専門性であるとか指導の高いテクニックというものが求められる中で、実際、実は教師にとって一番大切なものを学ぶ機会というのが少なくなっているのではないかなと思います。

 例えば、私は大学で教育学を専攻しておりましたので、教育哲学であるとか教育史であるとか教育心理学であるとか、教育とは何ぞや、子供とは何ぞや、人間とは何ぞやということをしっかり学ぶ機会を与えられました。

 しかし、今現場に出ている先生たちの多くは、教育学部を出た人間ではなく、また教育学を専攻した人間ではなく、例えば経済学部であったり法学部であったり工学部、理学部を出ている、そういう先生が多くいます。その方たちが大学のカリキュラムの中で、いわゆる人間について学ぶところ、また、人生の哲学について学ぶようなところ、子供という存在について学ぶようなところが大変削られているんじゃないかなと。一般教養で哲学、倫理、そのあたりが大きく削られているのと同様に。

 そういう先生方が現場に出ると、多分、現場に出る先生は、子供というのは常に素直でかわいい存在である、だから絶対に大人には反抗しないから、子供が好きだから学校の先生になるという方が多いと思うんですが、そういう一面もありながら、子供というのは非常に残酷であって、私たち教師というのはその残酷な目に、厳しい目に常にさらされているわけであります。ですから、その現実にぶつかったときに、私も経験がありますけれども、隣で泡を吹いて倒れてしまったり、学校に来るのが怖くて家から一歩も出られなくなったり、そうやってメンタルヘルスを害していってしまう先生方も現場にはたくさんおられます。

 そのためには、やはり、教師としてしっかりとした教科指導の能力、またさまざまな専門性も必要ではありますけれども、自分が一教師として人間をどう捉えるのか、子供をどう捉えるのか、そして人生というもの、教育というものをどう捉えるのかという哲学的な部分というのがカリキュラムの中に足りないと、結局、現場で大きなつまずきにつながってしまうのではないかなと思います。

 ですので、これから、専門性よりも、むしろ私は、こういう哲学、倫理、人生観、また教育観を磨き上げるようなカリキュラムが必要だと思います。ぜひこれを教職課程の中で、文科省の指導力を発揮して、教育力、教師力を高めるための施策を打っていただきたいと思いますが、この問題についてどのように捉え、またどのように拡充していく御方針があるのか、御答弁をお願いします。

布村政府参考人 お答えいたします。

 教員養成課程の編成に当たりましては、まず、教員として必要な幅広く深い教養及び総合的な判断力を培い、豊かな人間性を涵養するよう適切に配慮することが教育職員免許法の施行規則に規定がございます。

 このような考え方のもと、平成十年には、使命感を持ち、子供の悩みを受けとめられる、真に教員にふさわしい人材を育成する目的で教育職員免許法の改正が行われました。

 具体的には、教職の意義や教員の役割等を学ぶ教職の意義等に関する科目の新設という形で、従前の教科に関する専門的な科目よりも、教職に関する、教員としての人間性を幅広くするという科目を重視する方向での法律改正が行われ、具体的には、先ほど申し上げました教職の意義に関する科目の新設などが図られたところでございます。これらの科目の履修を通じ、子供に向き合うための人間観などについて学生に考えてもらうことが期待されているところでございます。

 また、その改正に際しましては、各教科の指導法等に関する科目の充実が図られており、これは単に指導のテクニックを学ぶためのものではなく、児童生徒の学習意欲の喚起を図るということも重視した内容にしたところでございます。

 このような形で、教員養成課程の全体を通じて子供と向き合う力を育成、養成していくことは重要と考えております。

 文科省といたしましても、引き続き、各大学、教員養成系の大学におきまして人間観などが深まっていくような教員養成課程が編成されるよう促してまいりたいと思いますし、学生の方々にも、大学の時代には教育あるいは生き方について大いに語り合っていただければというふうに思います。

宮川分科員 ありがとうございます。

 もう一つ、それにあわせて教員養成の制度についての問題でありますけれども、大学の教職課程を経て、大学から免許を付与されて、それぞれの都道府県の地方の採用試験を受けて教師になるというのが今の流れでありますけれども、私は、教師力の低下、質の低下というのが叫ばれる大きな原因として、この養成課程で、単位さえ取れれば免許が取れてしまう、その中でチェック機能が全く果たされていないというのが大きな問題だと思います。

 例えば、私の出身校であります慶応義塾大学は教職課程を二年生から専攻しますけれども、二年生の春、秋、三年生の春、秋と大変厳しい試験がありまして、その学内試験に通らないと免許を付与されない。三年生の秋で通れなかった時点でもう既に教職課程から追い出されてしまうというぐらいに厳しく査定をされます。その教職課程でお金も登録するわけですが、試験もクリアできない人には免許を出すことはできないというふうに言われて、大変厳しく指導されておりました。

 しかしながら、そういう大学というのは全国探してもほぼないと言って過言ではないのではないかなと思います。やはり養成段階でしっかりとした教師力また指導力をつけるためには、今申し上げたような教職課程の修了時に学内試験を課すであるとか、また、安易に教職課程の単位が取れないようなシステムをしっかりつくりまして、それぞれの学内でチェック機能を働かせるべきだと思います。

 これについては、教職課程を持つ国公私立の大学について、文部科学省として今後どのような指導をしていくという検討があるか、御答弁いただきたいと思います。

布村政府参考人 先ほど先生から慶応大学の例を御紹介いただきましたけれども、教育実習につきましては、教育実習先の確保に当たって、地元の教育委員会、学校や附属学校と連携協力していただいている大学、また、学生が最低限の知識、技能を有していることを確認した上で実習に送り出すというような取り組みを行っている大学が存在してはおりますけれども、全ての教員養成系の大学でできているわけではないという実態と認識しております。

 そのため、まず、大学における成績評価につきましても、客観性及び厳格性を確保するよう大学設置基準に明示がなされています。このことは教員養成課程においても当然に求められるものであって、教員養成課程を置く大学においては厳格な成績評価を行っていただくべきというのがまず大前提としてございます。

 そして、その成績評価の方法につきましては、各大学の判断により適切に工夫がなされるべきものではございますけれども、例えば、学生が教育実習を受けるに当たり、最低限の知識、技能を有していることを確認するための実力テストを課すなどの取り組みを行っていただいている大学も、先ほど御紹介いただいたように存在はいたします。

 文科省におきましては、このような積極的な取り組みを行っている事例について、各大学への周知を行っているところでございます。

 また、教員は、高度な専門的な職業として、十分な専門的な知識、技能を備え、子供たちの発達段階に応じ適切な指導をしていくことが求められております。このことを踏まえると、先生御指摘のとおり、安易に単位が修得できることがあってはならないものというふうに考えております。

 文部科学省といたしましても、各大学において厳格かつ適切な成績評価が行われるよう、引き続き指導をしてまいりたいと考えております。

宮川分科員 ありがとうございます。ぜひそのような指導をこれから大学に向けても続けていただきたいと思います。

 養成課程で免許が取れました後の話でありますが、先ほど申し上げましたように、現在は、都道府県で採用試験を受け、それで採用され、配属をされていくというシステムがとられております。しかしながら、このシステムだと、都道府県ごとの教師力の不均衡、また学力の不均衡につながる、そういう問題が起きやすくなるのと同時に、以前数県で問題になりましたが、採用に関しての不祥事もずっと続くのではないかなと言われております。

 私の地元山梨県でも、なぜかそういう問題が年々年々ずっと続いているのではないかと。ある一定の組織の人たちの子弟は採用されるけれども、一生懸命勉強してきた人たちは、学力ではないところでさばかれてしまう、採用がされないというような問題も、現実問題として起きております。

 であるならば、そういう不祥事を起こさない、そして都道府県ごとの教師力の不均衡を起こさないためにも、まずは、高い専門性を担保するために、教職の免許を私は国家試験制度にするべきだというふうに考えております。そして、その試験に通った、ある程度の、一定のレベルを通った先生方を、国家公務員として、希望する都道府県に配属するというシステムにこれから変えていくべきではないかなと思っております。

 これが、まず、大きな教師力を担保することであり、また、都市部に住もうが地方に住もうが、高い力を持った、専門性を持った先生方に指導されるという意味で、本当の国民皆学、子供たちにとっての一番のレベルを担保すること、そして底上げにつながるのではないかと思いますが、この国家試験制度、そして国家公務員として都道府県に配置をするという制度について、どのような今後の可能性があるのか、御答弁をお願いします。

布村政府参考人 まず、現行の制度でございますけれども、教員には一定の専門性を担保する必要があるということから、現在は、国から認定を受けた大学のみが教員免許を取得できる課程を設置し、教員を養成することができるという仕組みになっております。

 先生御指摘のように、教員免許状の取得に際して国家試験を課すことにつきましては、教員としての能力をより保証するための一つの方法と考えられるところでございますけれども、免許状の種類ごとの問題作成、あるいは試験実施体制などにつきまして慎重な検討が必要であると考えられるところでございます。

 参考までに、昨年の八月の中央教育審議会答申の中でも、審議会の中で、国家試験の導入を検討すべきという御意見が出ておりましたけれども、答申の段階では、「国家試験の導入については、様々な課題があることから、中長期的検討課題とする。」ということを提言いただいたという事実もございます。

 一方で、全ての教員を国家公務員として国が採用することとか、本人の希望や居住地などを踏まえて都道府県に配置するということとした場合には、都道府県ごとの地域性、あるいは都道府県ごとに必要とする教員数ですとか、合格者が希望する勤務地との乖離が生ずるのではないかとか、必要な教員数を確保できない地域が生ずる可能性があるのではないかという課題が考えられ、慎重な検討が必要と考えているところでございます。

 文部科学省といたしましては、全国どこの地域においても一定以上の水準を持つ教員を確保できるように、教員の養成の段階、採用の段階、また免許制度などにつきまして、今後、必要な改革に取り組んでまいりたいと考えております。

宮川分科員 ありがとうございます。

 確かに、試験体制の構築であるとか、また地域とのミスマッチが起こらないようにするということであれば、今後、検討しなければいけない課題があると思いますが、私は、これに関してはライフワークとして取り組んでいきたいというふうに思っております。

 そして、免許制度、採用された後の研修のあり方についてでありますが、現在、公立でも私立でも、一年目は期間採用ということで、その一年現場で働いて、もし、教師として不適格である、ちょっと教師としては能力が足りない、また子供たちの指導力が足りないということであれば、ある意味では、そこから採用されない、正採用されないというシステムが導入をされております。しかしながら、これは形骸化していると私は実際に思っていまして、一年間でも、教師は恐らく不適格かそれとも適格であるかということはすぐわかるはずでありますが、たとえ不適格だと周りから見えていても、そのまま正採用になってしまうという感じでどんどん進んでしまっております。

 私は、人員を整理する制度としてというよりは、不適格な方には別の道を、適格な方にはもっとしっかり現場で働いていただけるような制度を、厳しいですけれども、つくっていくべきだと思います。

 その中で、これはあくまでも私見ですが、二年間の仮採用期間を経て、その間に民間企業であるとか別業種、また現場でたくさんの経験をして、それを踏まえた上で、そこで適性をしっかりはかられ、二年後に正採用になるのかどうか、もう一度試験を受けるインターンシップ制度を導入するべきではないかなと思っておりますが、この導入について文部科学省はどうお考えか、御答弁お願いいたします。

布村政府参考人 現行制度として、指導が不適切な教員の人事管理システムというものが制度として別途存在しておるということをまず申し上げさせていただきます。

 その上で、教員の採用につきましては、公立学校の場合には、一般の地方公務員と異なり、全て一年間の条件つき任用期間とされ、この期間、良好な成績で勤務した場合に正式採用されるということになってございます。

 各都道府県・指定都市教育委員会などにおきましては、条件つき採用期間中に、初任者研修として、一年間の職務の遂行に必要な事項に関する研修を行う一方、教員評価などを用いて当該教員の勤務成績を総合的に評価し、評価結果に基づいて必要な措置をとっているところでございます。

 平成二十三年度の例でございますが、一年間の条件つき採用期間を経て正式採用とならなかった教員は三百十五人、採用者全体の一・一一%という実態となっております。

 文部科学省といたしましては、問題のある教員が教壇に立つことのないよう、初任者研修の充実や条件つき採用制度の適正な運用について指導を行っているところでございます。

 また、先生からインターンシップ制度についての御指摘がございましたけれども、教員としての適性や職務遂行能力の有無を判断する一つの方策と位置づけられると考えられます。文部科学省といたしましては、さまざまな関係者の御意見なども踏まえながら、適性のある、すぐれた教員の確保方策について検討をしてまいりたいと考えております。

宮川分科員 ありがとうございました。

 ぜひインターンシップ制度の検討をよろしくお願いいたします。

 では、最後に大臣に御答弁をお願いしたいんです。

 今、いじめであるとか体罰であるとか、教育現場で先生方も大変揺れ動いております。その中で、今の教員の評価制度というのは、例えば、いじめが十件起きたら、その十件という数で、発生した件数で評価されてしまうというのが私は大変問題だと思っております。

 本来、教師がはかられるべきは、例えば、その十件あったいじめ問題を一年間で何件まで減らすことができたのか。例えば、A先生は五件、B先生は十件、一年後に、A先生は五件まだ解決できない、しかしながら、B先生は十件あったものを残り二件までしっかり解決することができた。この解決をする力がある先生というのが、現場で、また子供たちにとっても求められる人材ではないかなと私は思います。

 しかしながら、今はそうではなくて、だからこそ、隠蔽体質が起きたり、先生方が、今自分たちが目の前にしている子供たちの現実に向かうことができないのではないかなと、これは現場の代弁者として思うところがあります。

 これからの子供たちにとって、問題解決をする能力のある教師こそ求められるというふうに私は思っておりますので、教師を取り巻く環境であるとか評価制度については早急に手を入れるべきではないかなと思います。それに向けての大臣のお考えを、ぜひとも最後にお聞かせ願いたいと思います。

下村国務大臣 宮川委員が山梨で教員として、また教育に対して大変関心を持っておられることに対して、ぜひこれからも先頭に立って対応していただきたいと思います。

 今、教員の問題がありましたが、御指摘のように、教員評価の実施に際して、問題を隠さず、迅速かつ適切な対応が評価されるよう留意する必要があると思います。

 文部科学省としては、この点について、いじめの有無やその多寡のみを評価するのではなく、日ごろからの児童生徒理解、未然防止や早期発見、いじめが発生した際の、問題を隠さず、迅速かつ適切な対応、組織的な取り組み等が評価されるよう留意する必要があるとの旨、各教育委員会に対して通知等で指導しているところでございます。

 今後とも、各教育委員会や学校において、この教職員のいじめ問題への適切な対応が評価されるような教員評価の運用が行われるよう、今、現状は必ずしもそういうふうな状況でないと思います、しっかりと指導してまいりたいと思います。

宮川分科員 ありがとうございました。

 質疑の時間を超過してしまいましたけれども、教育に向けて精いっぱい頑張りたいという新人議員の熱意に免じてお許しをいただき、今後とも御指導いただきたいと思います。

 本日はありがとうございました。

あかま主査代理 これにて宮川典子君の質疑は終了いたしました。

 次に、八木哲也君。

八木分科員 自由民主党の八木哲也でございます。

 委員長の御指名をいただきましたので、本日は、中山間地活性化のための文化的アプローチというテーマについて質問していきたい、こういうふうに考えております。

 今国会で、安倍総理は、施政方針の中で、「日本は瑞穂の国です。息をのむほど美しい棚田の風景や伝統ある文化。若者たちが、こうした美しいふるさとを守り、未来に希望を持てる強い農業をつくってまいります。」と述べられました。

 美しい棚田の風景とは中山間地域の風景であります。そこに根づいた伝統や文化を守っていくこと。そのためには、中山間地の農業や林業を、なりわいとしていけるような強い産業として育てることが将来につながっていくことであるという意味であると考えますし、強い農業は、ただ単に広大な平地だとか利便性のいい田畑、それだけではなく、棚田を守ってこそ初めて強い農業になっていくんだと私は思います。

 そういう意味からいたしまして、総理の施政方針をお聞きしまして、文部科学省としましては、中山間地の活性化、文化を守るということに対してどのように考えられておるのか、所見を伺います。

下村国務大臣 伝統文化を継承していくことは、我が国の歴史、文化等の正しい理解と将来の文化の向上とともに、地域の活性化のためにも重要であります。

 御指摘のように、その地域で守り伝えられた棚田等の風景や田植え等と結びついた民族芸能を受け継いでいくことは、農村における集落の継承、発展のためにも大きな、大変重要な意義があることだというふうに考えます。

 文部科学省においては、地域の人々の生活、なりわい等により形成された棚田などの文化的景観について、平成十六年より重要文化的景観として選定する制度を創設し、保護を行っているところでございます。また、今日まで守り伝えられてきた地域の多様で豊かな文化の後継者育成や、その体験機会の充実など、文化を活用した地域活性化に向けた取り組みに対する支援を通じて、各地の伝統文化の保存、継承を行っているところであります。

 今後とも、地域における伝統文化が後世に守り伝えられるよう、引き続き関係施策の充実に努めてまいります。

八木分科員 どうもありがとうございました。

 総理の言っている美しい瑞穂の国、その文化を守っていくということだと思います。ぜひともしっかりやっていただきたいと思いますが、実際、現実問題とすると、多くの問題を抱えておるわけでございます。

 中山間地の活性化をするということは日本としても大きな、大事な要素であるというふうに思っておりまして、この活性化のために二つの方法があるのではないかというふうに考えております。

 一つは、まずそこで生計が立てられる、なりわいが必要であります。すなわち、農業とか林業が自立できなければなりません。しかし、現実的には非常に厳しく、過疎化が進んでいることは皆さん御承知のとおりだというふうに思っております。

 二つ目の視点としますと、中山間地と都市との交流人口の増加による活性化が大切であると思います。

 ここに一つの例があります。私は、昨年夏、十日町市へ、越後妻有アートトリエンナーレ、大地の芸術祭を見に行きました。山合いの至るところに現代アートが展示され、全国からたくさんの見学者が訪れておりました。この事業に対して文化庁は一億円の補助金を出しておられますので、その評価も当然していることと思います。

 大地の芸術祭の定量評価及び定性評価及び経済効果、この観点についてお聞きしておきます。

河村政府参考人 お答えを申し上げます。

 大地の芸術祭、越後妻有アートトリエンナーレは、お話しのように、新潟県十日町市におきまして、里山を舞台とする地域内外のアーティストによる作品制作、展示や地域住民との交流、アートをテーマにしたさまざまなイベント開催などを行う取り組みでございまして、平成十二年から三年ごとに、これまで五回開催されてきております。

 平成二十四年に開催された第五回トリエンナーレの効果について、定量的には、百二の集落が運営に参加し、四十四の国と地域から三百十組のアーティストが参加し、五十一日間の開催期間中に、来場者が約四十九万人に上るなどの効果があったと聞いております。

 また、定性的な効果については、トリエンナーレそのものへの内外からの参加、来場に加え、アーティストと地域住民との交流、運営への地域住民の協力、さらには対外的な情報発信等が行われることによって、この地域の文化の振興や社会の活性化に大きな効果があったと伺っております。

 さらに、このトリエンナーレの経済的効果については、作品制作費や、この事業に関連して実施された道路、公園整備などの建設投資と、来場者による支出などの消費支出を合わせて、約四十六億五千万円の波及効果があったとも聞いておりまして、経済的にも大きな効果があったものと承知をいたしております。

八木分科員 今お答えいただきましたように、そういう交流人口の増加という切り口から見たときに、非常に大きな効果があった。十日町市は六万人ぐらいでございまして、六万人のところに四十九万人の人が訪れたということでありますし、その作品を通じ、また、インフラ整備もする中で、四十六億円の経済効果があったということは非常に大きな活性化の一つであるというふうに私は認識しておるわけであります。

 こういう財産を十日町市も当然のことながら今後続けていかれると思いますけれども、これは一つの成功例であります。全国中山間地全てがこのようにいくとは思いません。中山間地住民の抱えている問題点という総務省の調査では、一番目に、祭りや伝統行事などの地域文化の保存、継承活動が五二・三%と断トツでありました。すなわち、集落固有の祭りや伝統行事が消滅していくことへの危機感がその地域に住む人たちにとっては大きいのであります。総理の言われる伝統ある文化がまさに危機にあるということは事実だ、こういうふうに思っております。

 このアンケート結果についてどのように思われるのか、また、どのように対応しようとしているのかお聞きしておきます。

    〔あかま主査代理退席、主査着席〕

河村政府参考人 それぞれの地域において今日まで大切に守り伝えられてきた地域の伝統文化は、その地域の歴史、文化などの理解に欠くことができない貴重な財産でございます。次世代にしっかりと継承していくことが重要だというふうに存じます。

 このため、文部科学省、文化庁としては、地域の多様な伝統文化の保存と継承を図るために、平成二十五年度予算案においては、文化遺産を活かした地域活性化事業に三十四億円を計上しております。こういった事業によって、地域の伝統文化の後継者の養成や、子供たちが地域の伝統文化に触れる体験事業に対する支援を行うことといたしております。

 今後とも、地域における伝統文化の保存、継承が図られるように、施策の充実に努力をしてまいりたいと存じます。

八木分科員 施策の充実はしっかりやっていただきたいと思いますが、やはり現実、厳しい部分は否めません。

 私が今住んでいるのは豊田市でございまして、豊田市といえば自動車のある工業都市、こういうふうに思われがちでございます。しかしながら、農業も非常に盛んな町であります。平成十七年に近隣六町村と合併し、九百十八平方キロと大きな町になりました。この広さは東京都の約三分の二の面積であります。中山間地も多くて、七割が森林であります。したがって、そこでは過疎化がどんどん進んでおるような状況があります。例えば、合併したある地域では、この合併以来、七年間で一五%も人口が減少しているわけであります。

 中山間地の活性化は豊田市においても大きな問題でありますし、先ほど言いましたように、中山間地の活性化における地元の住民の皆さんの、集落固有の祭りや伝統行事が消滅していくことへの危機感は同じであるわけであります。

 そういうことからしたときに、豊田市は、中山間地の中で、江戸時代から農村歌舞伎というものが非常に盛んでありました。私が市会議員であったころに、今残っておる農村舞台を全部調べました。一つ一つ歩いて調べましたけれども、実に七十八棟残っておりました。多分これは農村舞台としては日本一の数になるのではないかな、こんな思いがしておるわけでございます。これも私は地域にとって大きな財産だと思っております。

 この数字を聞いて、これは豊田市特有の財産、こういうふうに思われるのか、やはりこれは国の財産ではないのか、こういうふうに思われるのか、その辺の解釈、感想をお聞きしておきたい、こういうふうに思っておりますが、いかがでしょうか。

河村政府参考人 日本の各地域には、江戸期から行われている伝統的な地芝居が今日まで継承されていることに加えまして、その地芝居の上演に必要な農村舞台も多く残されております。

 豊田市にも大変数多くの農村舞台が残存しているということは私どもも存じ上げておりまして、これは地芝居が地域の方々に愛され、上演が盛んに行われてきたという様子を示すものだというふうに思います。

 このような地域の伝統文化については、私ども、今後も後世に継承されるべき貴重なものではないかというふうに感じております。

八木分科員 後世に残すべき貴重なものだ、こういうことについては国としても文化的に宝だ、こういうふうに理解しますが、よろしいですか。そういうふうに私は感じましたので、よろしくお願いしたい。

 これは豊田市の例で言いましたけれども、実は佐渡にも能の舞台がたくさんありますし、そして淡路、徳島、あちらの方にも浄瑠璃の舞台はたくさんあるわけであります。

 私どもの農村舞台、淡路にしましても佐渡にしましても、たくさんあるにはあるんですけれども、やはり時代の流れといいますか、そういうところでちょっと方向が変わってきた。それは何かというと、農村舞台も、娯楽の移り変わり、経済の発展の仕方によって、特にテレビの普及に反比例して、それに過疎化が重なって、七十八棟ある農村舞台のうち、今では現実的に数棟しか利用していない、こういう状況でありまして、ほかのところはただ建っているだけというような状況があります。朽ちていくのを待っているような、そんな状況もあるわけであります。

 都市住民の方から見たときには、これはすばらしい財産だ、こういうふうに言うわけでございますけれども、しかし、そこに住んでおる人からすれば、見なれた風景でありまして、朽ち始めていけば迷惑な施設なんです。いつ壊そうか、こんなことを思っておる施設であります。

 そこで、私も、こういうことはいけない、これは財産だ、こういうふうに思っておる一人でございましたので、仲間と一緒に、豊田市が六十周年を記念したときに、それらの農村舞台を使って何かやろうということで、全部で二十九カ所を使いまして、演劇や音楽や現代アートなど、農村舞台アートプロジェクトというものを企画し、実行いたしました。農村舞台の床の下に入って、回り舞台というのがあるわけですけれども、そのかじ棒をみんなで回したら、回った、回ったと喜んでいただいたおじいさんがおったわけでございますが、五十年ぶりに回ったのを見た、こんなことで、ずっと使われていなかったということであります。このおじいさんの笑顔は私も忘れることができません。

 七十八棟の農村舞台は確かに貧相なものもありますけれども、そこで演じられてきた農村歌舞伎はすばらしい伝統でありますし、文化であったはずであります。現在では四つの歌舞伎保存会がありますけれども、農村舞台を使って公演しているのは一カ所だけになってしまいました。

 今は、国は、大切なものを国宝、そして重要文化財建造物、有形文化財建造物、伝統的建造物群保存地区などと、いろいろ指定はしておられます。しかし、この七十八棟全体の農村舞台文化圏としての認定制度というものはないように思います。国が認定することによって中山間地域の活性化の糸口にもなるはずでもありますし、先ほど大臣がお答えになりましたように、棚田の風景というものも指定しておられる、こういうことがありまして、やはりそういうものは日本としての原風景であるということから指定されたんだ、こういうふうに思います。

 例えば、こういう農村舞台文化圏のような指定、認定の制度の考え方があるかどうか、その辺をお聞きしておきたい、こういうふうに思います。

河村政府参考人 豊田市で行われました農村舞台アートプロジェクト、ほんの一端でございますけれども、私も記録映像で拝見をいたしました。

 農村歌舞伎のような、地域に潜在している文化財、これは民俗芸能として非常に重要なものでございますし、また、その舞台であります農村舞台、こうしたものも大変貴重なものであると思います。こうした全体の保存、継承を図りながら町づくりに生かす、そうした方策がないかというお尋ねであろうかと存じます。

 文部科学省、文化庁といたしましては、今お話しになりましたさまざまな指定、選定に加えまして、新たな手法として、歴史文化基本構想を市町村が策定するということが実は効果的ではないかというふうに考えております。

 歴史文化基本構想と申しますのは、市町村が、文化財の類型ですとか、国、県、市などが指定をしているかどうかということにかかわらず、地域にさまざまに存在しております文化財を、その周辺環境をも含めて全体的に捉え、どのように保存、活用していくかという方針を定めるものでございます。

 文部科学省、文化庁としましては、これまで二十地域における三年間のモデル事業を経まして、昨年、市町村がこうした歴史文化基本構想を策定される際のガイドラインを作成し、お示しをいたしました。また、策定のための調査費を支援する仕組みも設けているところでございます。

 この歴史文化基本構想においては、お話のありましたさまざまな文化財、これは指定などの有無にかかわらず、このような多様に地域に存在する文化財の中で、歴史的な面や地域的な面から関連性を捉えてグループとして見る、関連文化財群というものを設定して保存、活用するという仕組みも入れております。

 御指摘の愛知県豊田市の農村舞台についても、地元におかれまして、この関連文化財群として歴史文化基本構想に位置づけるということも一つの有効な方策ではないかと存じます。

 こうした歴史文化基本構想に基づきまして、都市からの人を呼び込んできておられます、例えば兵庫県篠山市の丹波篠山のような取り組みもございます。

 文化庁としては、さらにこの構想を観光振興や地域活性化にもつなげていくような、こうしたことのために、どのようなことをさらに私どもとしても御支援していけばいいかということについて積極的に検討してみたいと考えております。

八木分科員 ありがとうございました。

 ただいま各市町において歴史文化基本構想、これをきちんとつくって、活性化といいますか、そういうことに寄与したらどうだ、こういうお話でありますし、また、関連文化財群としての位置づけもきちんと明確にするべきではないか、こういうお話がありました。

 私は、やはりここに、国といいますか文部科学省の方がきちんと関与することも大事なことで、できれば文科省のきちんとした指定制度の中で位置づけていただきたいな、こういうふうに思っておるわけでございます。

 なぜそういうことを言うかといいますと、実は、私の家の近くに約六百坪の小さな湿地があるんです。矢並湿地というんですけれども、その小さな湿地が、希少な植物が自生しておるものですから、その植物を地域の人と集落の人が見れば、見なれた雑草なんです。雑草なんだけれども、学者がこれは大事だと言うから、みんなで一生懸命保存活動をやってきました。それが、昨年、ラムサール条約に登録されたんです。みんなびっくりしておるんです、こんな小さいところでもラムサール条約に登録されるんだと。これが、村といいますか、その集落の人たちには物すごく大きな誇りになって、さらに保存活動をしっかりしていこう、次の世代につなげていこう、こういう活動が出てきておるわけであります。

 近くに矢並小学校なんという四十二人の小さな学校もあるんです。今までは保存活動に参加しておりませんでしたけれども、こういうことがきっかけで、校長先生が率先して、小さくても光れば世界へ通じるんだということで、子供たちを非常に激励して、それで、子供たちも、全校生徒がその湿地の保存活動にことしから参加してくれるようになったんですね。それは、すなわち、次の世代へつながっていくということなんです。

 したがいまして、認められる、お墨つきをいただくということは、違った意味かもわかりませんけれども、大事なツールだ、こういうふうに私は思っておりまして、このことが認められることによって、地域にとって誇りであり、次の世代へつなげていこうと思う気持ちになりますので、ぜひともその部分においてさらに研究をしていただきたい。

 できれば、何とか群という、重要文化財なんという大層なことは言いませんが、少なくとも、その地域に住んでいる人たちが、ああ、国が認めてくれたんだ、我々もこれを守っていかなければいけないという状況をつくっていきたいと私は思っておるわけです。そういうふうに思っておるんですけれども、現実的には、やはり過疎化のために疲弊していくんです。ですから、そこで何とか歯どめをかけていきたい、それを活性化につなげていきたい、こういうふうに考えているわけであります。

 豊田市の例で申し上げましたけれども、いろいろ全国調査すれば、そのようなものはたくさんあると思います。それらを生かして中山間地の活性化をしようとする場合、文部科学省も積極的な応援をしていただきたい、そういうふうにお願いしておきたいと思います。それは、総理が言うところの、日本は瑞穂の国で、息をのむほど美しい棚田の風景や伝統ある文化、これを守っていくことでもあるからであります。

 文部科学省として、このような農村舞台群などの地域の財産を生かした、また、先ほど申し上げました佐渡の能楽堂舞台群というのも私は調べましたけれども、そういうものを全体として生かした中山間地活性化のための事業に対して、具体的な支援として、本年度、二十五年度、どのような事業を積極的に考えているのか、中山間地を活性化するんだ、こういう事業をするんだということが具体的にありましたら、お知らせいただきたいと思います。

河村政府参考人 国民の皆様が、その居住する地域にかかわらず、文化芸術を鑑賞し、参加し、創造する機会を確保することは、改めて申し上げるまでもなく、重要であると存じます。また、地域における文化振興が観光振興、地域活性化に大きな効果を発揮するということもそのとおりであろうと思います。

 このために、文部科学省としては、一つには、音楽祭や美術展の開催などのような地方公共団体が行う地域活性化の取り組みを支援する、事業名で申しますと、地域発・文化芸術創造発信イニシアチブというものに二十九億円を計上しております。越後妻有の例はこの事業の御活用でございました。

 それから、二つ目に、獅子舞とか虎舞のような、例えば地域に伝わる伝統芸能の振興のために、その後継者養成や用具の修理などを通じて地域を支援する、文化遺産を活かした地域活性化事業については三十四億円を計上しております。

 これらを通じて、中山間地域を含めた地域の文化の活性化を御支援したいと考えている次第です。

 また、市町村の文化財を広く捉えてビジョンを作成する、先ほど申し上げさせていただきました歴史文化基本構想の策定と活用、そして、委員御提案の国の関与のあり方についても積極的に検討させていただきたいと存じます。

 今後とも、地方自治体、地元の皆様と連携を図り、地域の文化振興に努力をしてまいりたいと存じます。

八木分科員 積極的な政策をよろしくお願いしたい、こういうふうに思っておりますが、先ほどの越後妻有アートトリエンナーレ、これで調べますと、一億円を文化庁としては予算計上されておったわけです。それが、経済効果ということをお聞きしたときに、四十六億円という経済効果を言われました。すなわち、一億円投入することによって、ほかの関連もあるにはあるんですけれども、そういうものが四十六倍にふえてきておるという現実はあると思うんです。

 したがいまして、今回の予算をつけていただいたということでありますが、それも、少なくともそれだけの事業ではないと私は思っておりますし、中山間地からすれば、それ以上、もう十倍も二十倍も効果があることでありますので、そういうところにもしっかり目を注いでいただいて、中山間地の活性化のためにさらに御尽力いただければありがたいと思います。

 先ほど申し上げました豊田市も、実は大いなる田舎でございます。面積の七割が森林という中山間地を抱えて、過疎化の進んでおるところでありますので、工業だけではなく、中山間地を守っていくことが私は豊田の文化を守ることだと思いますし、これは日本の文化を守っていくことだ、こういうふうに思います。

 さらに御指導、御鞭撻をお願い申し上げまして、私の質問とさせていただきます。どうもありがとうございました。

萩生田主査 これにて八木哲也君の質疑は終了いたしました。

 次に、藤井比早之君。

藤井(比)分科員 兵庫四区の藤井比早之でございます。本日は、予算委員会第四分科会で質問させていただくこと、本当にありがとうございます。

 まず、私の方からは、公立学校施設の耐震化についてお伺いさせていただきたいと思います。

 一昨日四月十三日五時三十三分、兵庫県では、阪神・淡路大震災以来となる震度六弱という淡路島中心の地震が発災したわけでございますけれども、まさに、東日本大震災の教訓を踏まえるまでもなく、地震大国日本の防災対策の推進、耐震化、もうこれは喫緊の課題でございます。

 特に、児童生徒、学生の皆さんが、安全で安心した環境で思う存分学び、育っていただくために学校施設の耐震化が不可欠であるというのは、これは論をまたないと思います。

 安倍政権の一丁目一番地である日本経済再生に向けた緊急経済対策の三つの重点分野、その一つは復興・防災対策でございます。公立学校施設の耐震化はまさに復興・防災対策の柱でございますけれども、この緊急経済対策に基づいた二十四年度補正、そして二十五年度予算の総額、そしてこれによる耐震化の進捗状況についてお伺いいたしたいと思います。

清木政府参考人 耐震化についてのお尋ねでございますが、平成二十四年度補正予算におけます公立学校施設の耐震化関連予算といたしましては千百十九億円を計上いたしておりまして、公立小中学校において約二千棟の耐震化が実施され、この補正予算執行後の耐震化率は約九三%になる見込みでございます。

 また、二十五年度当初予算案におきましては九百六十一億円を計上いたしておりまして、公立小中学校において約千二百棟の耐震化が実施され、予算執行後の耐震化率は約九四%まで進捗する見込みでございます。

藤井(比)分科員 ありがとうございます。

 まさに第一次安倍政権でも、十八年度補正予算などで公立学校の耐震化が随分進みました。また、スクール・ニューディール構想の推進など、政権を追われる前から、自民党・公明党政権は一貫して公立学校の耐震化を推進してまいりましたけれども、しかしながら、いまだに進んでいないというところは、自治体の財政難によってなかなか苦しいというところが結構多いと考えております。

 したがいまして、この意味においても、地方自治体負担分に対する財政支援というのが重要だと思いますけれども、特に、このたびの緊急経済対策における二十四年度補正、そして本予算の地方負担分に対する財政支援策についてお伺いいたします。

清木政府参考人 公立学校施設の耐震化事業に係ります地方財政措置についてでございますが、これは東日本大震災以降充実化されておりまして、また、他の事業より優遇された措置が講じられているところでございます。

 例えば、Is値〇・三未満の耐震補強事業の場合でございますと、事業費の三分の二が国庫補助の対象でございますが、残りの三分の一の地方負担に対しまして地方財政措置が講じられまして、最終的な実質的な地方負担は事業費の約六・七%程度となりまして、地方公共団体の負担が大幅に軽減されているところでございます。

藤井(比)分科員 ありがとうございます。

 今、すばらしいお答えをいただきました。六・七%、本当に少ない負担で耐震化が進むのではないか。まさに私の地元でも、安倍新政権の発足により、公立学校施設の耐震化が進むんだ、そういう喜びの声を随分耳にしております。いまだに公共投資悪玉論がまかり通る中で、公立学校施設の耐震化は、まさに意義のある、意味のある公共投資ではないかと高く評価されるのではないかというふうに確信いたしております。

 さきに述べましたように、公立学校施設の耐震化が喫緊の課題であるということは論をまちません。公立学校施設の耐震化の今後の見通しについて、ぜひとも下村大臣の決意をお聞かせいただきたいと思います。

下村国務大臣 学校施設は、児童生徒の学習、生活の場でもあると同時に、地域の避難所としての役割も果たすために、安全確保の観点から、耐震化を進めることは極めて重要なことでございます。

 公立学校施設の耐震化については、文部科学省としては、平成二十七年度までのできるだけ早い時期に完了させることを目標としております。平成二十五年度予算執行後の耐震化率は約九四%となる見込みでありまして、耐震化は着実に進捗しているものと認識しております。

 一方、自治体の中には、耐震化率が五〇%に満たないなど、耐震化がおくれているところもあり、そのような自治体には、文部科学省職員が直接訪問して助言を行うなど、働きかけを強化しているところでございます。

 文部科学省としては、耐震化完了の目標達成を目指して、自治体からの要望を踏まえつつ、必要な支援を行ってまいりたいと思います。

藤井(比)分科員 ありがとうございます。

 今、下村文部科学大臣から、二十七年度までのできるだけ早い時期に耐震化を完了させるとの力強い決意を表明していただきました。ありがとうございます。国、地方あわせて公立学校の耐震化に向けて予算が確保されるよう、強く要望させていただくところでございます。

 なお、さきに、自治体の財政難により耐震化が進まないのではないか、進まない例があるというお話をさせていただきましたけれども、学校の態様によりなかなか進まない例があるんじゃないかというふうに認識いたしております。木造校舎の取り扱いでございます。

 特に、木造校舎の老朽改修についての財政支援、そして木造校舎への改築について、これは別に、今、鉄筋とかであっても、木材利用を進めるという意味での木造校舎への改築について、国と地方とあわせた財政支援の面についてお伺いさせていただきたいと思います。

清木政府参考人 御指摘の木造校舎につきましては、児童生徒の教育の面で、やわらかで温かみのある教育環境を創出するという点がございますし、また、中には文化的な価値を有するものもございまして、これを、耐震補強を行うことで、古い木造校舎を継続して使用していくというのも意義があることというふうに考えております。

 公立学校施設の耐震化につきましては、木造、非木造を問わず大変重要なことでございますので、原則では三分の一である補助率につきまして、先ほども申し上げましたが、地震防災対策特別措置法によりまして、いわゆるかさ上げ措置が講じられておりまして、例えば、倒壊の危険性の高いものにつきましては、耐震補強は三分の二の国庫補助ということになっているところでございます。

 また、先ほども申し上げました地方負担分につきましても、地方財政措置を充実してきたところでございまして、地方負担の軽減が図られているところでございます。

 文科省といたしましては、木造も含めまして、学校施設の耐震化につきまして、地方公共団体からの要望を踏まえて必要な支援を強化してまいりたいというふうに考えております。

藤井(比)分科員 ありがとうございます。

 今、法のかさ上げとか、そういう話もございました。今伺いましたのは、木造校舎の老朽改修と、それから木造校舎への改築ということでございます。

 ただ、このかさ上げというのは、木造か否かということに限ったことではないというふうに理解させていただいております。今まさに残っている木造校舎を、現状のままといいますか、現況を失うことなくいかに耐震化するかというのは、実は課題が多いのではないかというふうに認識しております。現況を失うような大規模改修を行ったり、また改築した方が安上がりだという声を聞くのも現実でございます。

 私、彦根市で副市長を務めておったんですけれども、一緒に湖東定住自立圏というのを組んでおりました隣の豊郷町、この豊郷小学校旧校舎は、昔、耐震改修をめぐって解体計画も出てきたりとか、随分騒動になったんですけれども、昭和十二年に竣工された、ウィリアム・メレル・ヴォーリズ設計のすばらしい校舎でございます。

 結果的には、保存運動が盛り上がり、また多額の寄附も集まったということもありまして、現役の小学校ではないんですけれども、新たな複合施設として再出発しております。今や、実は、アニメの「けいおん!」の聖地ということで、一大観光名所となっております。

 また、私の母校の西脇小学校、昭和九年から十一年にかけて竣工された三棟の木造校舎がいまだ現役でございます。今や、テレビドラマや、また映画の「火垂るの墓」とか複数の映画撮影、またCM撮影とか、そういったものに、現役の校舎でありながら使われているというものでございます。

 このような木造校舎は、実は、これから本当に文化財としての価値も有してくるんじゃないかというふうに考えております。このような文化財的価値を有する木造の耐震化につきましては、現況を損なうことなく維持するというものについては、そういった文化財的価値を維持し続ける改修等に対しては、補助単価のかさ上げなど、ちょっと有利な財政支援をぜひ検討していただきたい、このことは要望とさせていただきたいと思います。

 それでは次に、公立学校施設の空調設置、トイレの改修についてお伺いさせていただきたいと思います。

 新しい学習指導要領の実施に伴う総授業時間数の確保といった観点も踏まえ、夏季の休業日の期間に授業日を設定する場合、教育環境改善のために、公立学校施設の空調設置の必要性は以前よりも増していると理解しております。また、最近は九月になっても随分暑かったりする中で、子供さん方が本当に快適な中で思う存分勉強に集中していただけるという環境が必要なんじゃないかと思っております。

 また、先ほど下村大臣も、公立学校施設は避難所としての性格も有すると御答弁いただきました。まさに、公立学校施設は、災害時には地域住民の応急避難所としての役割を果たす、また、災害弱者の皆様を初め、避難者の皆様が一定期間生活をされるということもあり得るかと考えております。そういう中で、生活環境の確保というのが必要なのではないかと考えます。

 したがいまして、公立学校施設の空調設置やトイレの老朽改修、洋式化が必要と考えますが、こうした空調設置、トイレの改修について、二十四年度補正、そして二十五年度予算における国と地方をあわせた財政支援についてお伺いさせていただきたいと思います。

清木政府参考人 御指摘のとおり、児童生徒の学習環境の改善などの面から、公立学校施設におけます空調設備の整備やトイレの洋式化などの改修は、大変大事なことであるというふうに考えております。

 空調設備の設置やトイレ改修につきましては、従来から、公立学校施設整備費の中に学校施設環境改善交付金というのを設けまして、それによりまして支援をしてきているところでございまして、また、当該事業に係る地方負担分につきましては、起債措置が可能となっているところでございます。

 特に、平成二十四年度補正予算事業におけます当該事業の地方負担につきましては、地域の元気臨時交付金による支援の対象となっているため、地方公共団体の負担がさらに大幅に軽減されているところでございます。

 今後とも、空調設備あるいはトイレの改修につきまして、地方公共団体からの要望を踏まえまして、必要な支援を行ってまいりたいというふうに考えております。

藤井(比)分科員 今、二十四年度補正で裏に地方の元気交付金もつくというお話もありました。地方の元気交付金は文科省の交付金ではございませんけれども、そういった裏も含めて実質的な自治体の負担がどれぐらいになるのか、その点、より詳しくお聞かせいただければありがたいと思います。

清木政府参考人 空調設備、トイレの改修につきましては、まず、公立学校施設整備費の三分の一の補助がございます。残り三分の二が地方負担でございますが、先ほどお尋ねのございました二十四年度補正予算事業におけます地域の元気臨時交付金が、地方負担分の総額の八割が対象となるわけでございまして、この臨時交付金は、どこに使うか、どこに充てるか、これはそれぞれの地方公共団体の判断でございますけれども、仮に八割が対象になってそれを全て充てるということになりますと、最終的な実質的な地方負担は、恐らく一割程度というかなり軽減された状態になるというふうに考えております。

藤井(比)分科員 済みません、ちなみに、もう少し細かい話で恐縮なんですが、残りの一割は、これは起債対象になって、また、その裏も補正予算債の対象になるのかとか、その辺をちょっと教えていただければと思います。

清木政府参考人 最終的な残りの負担、これは起債対象にはなると思いますが、地方財政措置は講じられておりませんので、自己負担ということになると理解しております。

藤井(比)分科員 ありがとうございます。

 今、負担額は一割を切るのではないか、また、そこに対して起債も充てられるのではないかと。これだけ有利なものというのはなかなか見られないことではないかと思いますので、まさに安倍新政権の緊急経済対策によって、各地に、各小中学校に空調設置やトイレの改修、老朽化対策が、洋式化が行われる、まさに安倍新政権の経済対策のおかげであるというふうに理解させていただきます。

 このような形で、このたびの安倍新政権、意味のあることに公共投資を行う。公立学校の耐震化はまさにその目玉であると思います。このような目玉の耐震化によりまして学校環境がすぐれたものとなって、お子様方が、皆様方が元気闊達に学びを進めていただけることを本当に心から願っておるところでございます。

 今、箱の話をさせていただきました。外の箱の話をさせていただきました。いかに魂を込めていくかというところが重要でございます。学校、教育環境を整備すること、このことは極めて重要なんですけれども、そこで子供たちに何を、魂を教えていくのか。このたび、安倍新政権、まさに教育再生が一つの柱だと思います。経済再生、外交、防衛、そして教育、まさに教育を取り戻すことが安倍新政権に課せられた使命ではないかというふうに理解しております。

 下村文部科学大臣も大臣所信で述べられておりますように、今の子供さん方は自信がない、自己肯定感が低い。財団法人日本青少年研究所のアンケート、意識調査におきましては、特に高校生ですけれども、これは年によって調査年次が違いますのでいろいろありますが、二〇〇九年三月の報告書におきましては、自分がだめな人間だと思う、よく当てはまる、まあ当てはまるを含めて、中国では一二・七%、アメリカでは二一・六%というところ、自分はだめな人間だと思うという日本の高校生が六五・八%にも上る。また、二〇一二年四月の報告書では、日本の高校生、自分がだめな人間だと思う、よく当てはまる、まあ当てはまるが八三・六%にも上るという極めて深刻な数字が出てきております。

 やはり、自己肯定感がなければ、人生を豊かに、そして幸せに暮らしていくことはできないんじゃないか。そもそも、ペスタロッチの教育論とか、そういうのを鑑みても、やはりこの自己肯定感の低さは異常なんじゃないかと思われるんですけれども、まさにこれから、魂の部分ですね、教育再生、これに向けた大臣のかたい決意をぜひ伺わせていただきたいと思います。

下村国務大臣 御指摘のように、六六%近い子供たちがそのまま大人になったとしたら、世の中の大半の人が自分はだめな人間だと思うような国に未来も将来も夢もないわけでありまして、これから日本がよみがえるような国になれるかどうかということは、まさに教育であるというふうに思いますし、一人一人が自己肯定感を持つ、自分という存在が世の中にも役に立つ存在である、これを教育によってしっかり担保させるということが必要であるというふうに思います。

 そのために、全ての子供たちにチャンスを与え、それぞれの子供の持っている能力をしっかりと引き出して、子供に自信や可能性を与える、そういう教育をしていくことがこれからの教育改革において非常に重要なことだというふうに思います。同時に、我が国の伝統や文化等について、日本そのものに対して誇りや自信を持てる、そういう教育もしていかなければならないというふうに思います。

 こういう状況を変えていくために、改めて教育再生実行会議をつくりまして、ここで、世界最高水準の学力の育成を通じ、また、道徳教育等規範意識、そして自己肯定感、また社会性や思いやりの心など豊かな人間性を育む、そういうものをしていくために、教育再生実行会議の中でしっかりと対応していくということが必要だというふうに思います。

 第一次提言では、いじめ、体罰についていかに対応するかということについて提言をしていただきました。その中の一つとして、道徳の教科化、それから、これから国会で御議論いただきますが、いじめ防止対策基本法に資するような提言もその中に入れていただきました。

 そして、きょう午前中は、官邸で、教育委員会の抜本改革案についても提言をしていただきました。教育制度の根本的な部分がこの教育委員会、これをどう変えるかということが問われてくると思いますし、また、大学教育における、質、量ともにどう充実させるかということも、きょう、その後、早速、教育再生実行会議で議論をしているところでもございます。

 大学教育を抜本的に変えるということは、大学入学試験を含めまして、高校以下の教育も変えるということにもつながってくるわけでございます。土曜授業の復活というのも提言をしておりますが、これは単に子供に対して負担をふやすということではなくて、もともと、今、ゆとり教育から、現在の学校教育も充実教育に大分シフトしてきてはおりますが、それでも、昔から比べると、まだまだトータル的な学習教科量というのは少ない状況であるわけでございまして、子供たちにただ学習量をふやすということだけでなく、それ以上に意欲とやる気を喚起させるような充実した学校教育を考えるという意味で、土曜授業の復活等も提言しているところでございます。

 ぜひ、平成二十五年、安倍第二次内閣において、この教育再生においても、後々、再生元年だと評価されるような意欲的な教育改革に積極的に取り組んでまいりたいと思います。

藤井(比)分科員 ありがとうございました。下村大臣からすばらしい決意をお伺いさせていただきまして、本当にありがとうございます。

 先ほどちょっと、道徳の教科化というお話もありました。私自身は普通の県立高校の出でございますけれども、兵庫県立小野高校といいます。旧制の中学校でもあり、また、かつては藩校の流れをくむということもありまして、一応、校訓に、蜻蛉魂、トンボ魂と書くんですけれども、というのがございます。何でトンボやねんというふうによく言われることがあるんですけれども、これは、蜻蛉洲(あきつしま)の魂ということで、私の理解では、基本は、大和魂を教えるのを、戦後、蜻蛉魂と言っているというふうに理解しております。また、明・浄・直ということで、明(あか)き、浄(きよ)き、直(なお)き誠の心を教えるという形で、そういうような教育も行われております。

 私自身は、秋田県や岐阜県、そして滋賀県の彦根市といったところに勤務しておったんですけれども、秋田県は学力テストでも非常に高い秋高の伝統であったり、また、岐阜県においては、斐太高校は白線流しで有名な独特の教育観を持っております。また、彦根藩の伝統のある彦根東。そういった皆様の教育方針を聞くにつけ、私立は非常に、校訓とか、そういう教育がございますが、しかしながら、旧制中学や地域においても、かつてはその地域において誇りを持って生きていける、そのような教育がなされていたのではないかというふうに私は感じております。胸を張って校歌を歌う旧制中学の皆様がいらっしゃった、その伝統を脈々と受け継いでいる教育というのがあるのではないか。

 そういう、地域から誇りを取り戻す、そのような教育について大臣はどうお考えか、ぜひとも教育論について大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

下村国務大臣 私も、群馬の高崎高校というのは旧制中学でございまして、群馬でも、どこの大学を出たというよりは、どこの高校を出たというのが地域においてはその人物の評価につながる。評価というのは、それだけの伝統文化の誇りの中できちっとした教育をされてきた、受けてきた、そういう意味で、誇りを持って同窓生が評価しているというところがございます。

 委員御指摘のように、今も御発言ございましたが、旧制中学等の伝統文化、全国の中でも、今でも受け継がれているのが随分あるんだなと改めてわかったところもございました。こういう旧制中学を母体とする学校などにおいて、古くからの校是や校訓を踏まえつつ、その伝統に根差した特色ある教育活動が行われているということは、大変意義深いことであるというふうに思います。

 今後とも、新学習指導要領に基づく教育の実施を通じて、児童生徒に、郷土の歴史や伝統と文化を尊重し、郷土を愛する態度が育まれるように取り組むことが必要であると思いますし、また、道徳の教科化についても、来年四月から心のノートの全面改訂版をつくる予定でございますが、同時に、それぞれの自治体でも、郷土の偉人、それから郷土の歴史を通じて道徳教育に取り組んでいる、すばらしい副教材もあります。こういうことも、文部科学省が提唱しながら、それぞれの地域の中で、その地域を育むような心の教育も含めて推進するように対応してまいりたいと思います。

藤井(比)分科員 ありがとうございます。

 大臣、私、両親も祖父も曽祖父も、皆、学校の教員でございまして、このような形で文部科学大臣と質疑をさせていただける、これほどうれしいことはないというふうに感じております。

 先ほどおっしゃったように、郷土の歴史とか、そういう点におきましては、例えば金沢において伺ったのが、歴史の教科書に、前田利家とかは、地図で関ケ原でとか、一行出てくるか出てこないかなんだけれども、加賀の百姓一揆は何行も書いてあるとか、ただ、本当の意味での今の金沢の歴史を考えたときに、誰が本当に一番大切な方だったかとか、そういうところがわからないんじゃないかという御意見を聞いたこともございます。

 まさに、郷土の中から、誇りを持って日本のために有為に活躍していただける、世界に羽ばたける人材というのを、この安倍新政権の教育再生においてなし遂げなければならない、そのように本当に思わせていただきます。

 私自身は、今言ったように、公立の学校環境の中で育ってきたという者でございますけれども、今この場に立たせていただいているのも、一つはちょっと、中学校の恩師の思い出というのもあると思います。

 私自身は、高校は理系に行っていたので、かつ、親戚一同を見渡してみても政治家は一人もいないので、このような場に立つというのは本当に想定外のことでございますけれども、かつて中学校の恩師に、これは担任の先生ではないんですけれども、ちょっと生意気でもあり、ちょっと反抗したこともあって随分目をつけられておりまして、最後、その方が、もともと鹿児島の方なんです、薩摩川内の、薩摩へこ、そして薩摩隼人なんですけれども、最後に引っ越しのときに、おまえ来いと言われて、引っ越しの手伝いをさせていただきました。そして、いきなり家宝の刀を出されて、戊辰戦争と西南戦争を戦い抜いた刀だと。

萩生田主査 藤井君、いいお話なんですが、時間が終了していますので、簡潔にまとめてください。

藤井(比)分科員 済みません、時間が延びまして。わかりました。

 この刀に誓えと。日本を立て直すために、よみがえらせるために、おまえがそういう男になるというのをこの俺の家宝に向かって誓えと言った先生がいるんです。今この場に立たせていただいているのも、そういうところがあるのかなと。

 まさに、公教育の中でも、人生を変える恩師という方がこれから必要なんじゃないかと思っております。そのことを紹介させていただいて、もう時間も参りましたので、質問とさせていただきます。

 本日はまことにありがとうございました。

萩生田主査 これにて藤井比早之君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。

    正午休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

萩生田主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。笠浩史君。

笠分科員 下村大臣、どうもお疲れさまです。民主党の笠浩史でございます。

 きょうは、分科会ということもございますので、少し個別具体的なテーマについて御質問させていただきたいと思います。

 まず一点目は、実は色覚検査というのがかつては行われておりました。私も小中学校とそれを受けた記憶があるわけでございますけれども、これは、検査表を用いての検査が、昭和三十四年から、幼稚園、小中学校、高校、大学の全学年で義務づけられておりました。その後、昭和四十九年からは、小学一、四年生、中学一年、高校一年、高専の一、四年生として、そしてさらに、平成七年の四月からは小学校四年生のみとし、学校保健法施行規則の改正で、平成十五年度からは、学校の定期健康診断の必須項目からは削除をされたという経緯がございます。

 この検査の全面廃止に当たっては、各方面からのさまざまな議論があり、また、当時、パブリックコメント等々もいろいろと寄せていただいた中での決定だったということでございますけれども、まず、この検査の全面廃止に至った理由について御説明をいただきたいと思います。

久保政府参考人 色覚検査につきまして、色覚異常の有無及び程度を明らかにすることを目的に、昭和三十四年度から平成十四年度まで、学校における定期健康診断の必須項目として実施してきたところでございますけれども、色覚異常についての知見の集積によりまして、色覚検査において異常と判断される者であっても、大半は支障なく学校生活を送ることが可能であること、それから、文部科学省といたしましても、手引を作成し、色覚異常を有する児童生徒への配慮を指導してきたことなどによりまして、平成十五年度からは、色覚検査は学校における定期健康診断の必須項目から削除されたところでございます。

 ただし、必須項目からの削除に伴いましては、その後も、学校における健康相談において、色覚に不安を覚える児童生徒及び保護者に対して、事前の同意を得て個別に検査、指導を行うこと、色覚異常検査表など検査に必要な備品を学校に備えておく必要があることなどについて留意することといたしまして、必要に応じ、適切な対応ができる体制を整えるよう指導してきているところでございます。

笠分科員 今局長からも答弁ありましたように、これは平成十四年の三月二十九日に、当時のスポーツ・青少年局長名での通知が出されております。

 そして、その留意事項の中で、今局長がおっしゃったような、検査表を必要な備品としてしっかり備えておく必要がある、あるいは、これはもちろん本人並びに保護者の同意が必要となるわけでございますけれども、適切な対応をしていくということがこの留意事項に付されております。

 現在、文科省として、例えば、学校の保健室にこの検査表がきちんと配備をされているのかどうか、あるいは、実際にどれくらいの学校で色覚検査を受けているお子さんがおられる、要するに、その検査が、希望したり、あるいはぜひ受けたいんだというときに、実際に行われているといった、そうした状況について、都道府県教委なりを通じて把握をされるということをこれまで行ってきたのか、その点をお答えいただきたいと思います。

久保政府参考人 設備の常備につきましては、平成二十三年度に調査いたしておりまして、保健室において色覚異常検査表を常備している公立学校は、小学校で八八%、中学校で八二%、高等学校で八二%ということでございました。

 なお、学校や教育委員会等における色覚検査の実施数については把握していないところでございます。

笠分科員 この留意事項の中では、かなり具体的なことを書いてあるんですね。

 この色覚検査表は、汚れを避けるため、検査表を指でなぞらせないこと、また、光による変色を避けるため、使用時以外は暗いところに置くこと、特にその保管に留意するとともに、少なくとも五年程度で更新することが望ましい等々あるわけでございますけれども、ちょっと今のような状況では、実際のところ、現場でどうなっているのか。

 例えば、この検査を受けたいという、今、八八%と八二%というお話ありましたけれども、これを備品として配備していないところについては、例えば地域の眼科の主治医の先生方と協力をするような形でその検査が受けられるような状況になっているのか、そういった点についてはどのように認識をされているか、お答えをいただきたいと思います。

久保政府参考人 八割から九割の学校において検査表が備えつけられている。それ以外のところにつきましては、状況によっては、今先生おっしゃったように、医師あるいは保健所と連携して検査を受けられるようになっているという状況がございます。

 ただし、平成十四年に通知を出して、文部科学省といたしましても、保護者の事前の同意を得ながらではございますけれども、個別に検査、指導を行うなど、必要に応じ、適切な対応ができる体制を整えることが求められてございますし、そのように指導してきているところでございますので、ぜひ各地域におきましては適切な対応を準備していただくように意を用いてまいることが必要だと考えております。

笠分科員 私がきょうこのことを取り上げておりますのは、実は、私もかつて、ある知り合いの方から、実はパイロットを目指しておられたんですけれども、全く色覚に異常があるということを本人が、もちろん保護者の方も気づかずに、今はもう就職に際して色覚の検査というものは、いろいろな同じような状況で、いろいろな差別の問題だったり、いろいろなこともあるということで、これはほぼ撤廃されているわけですね。

 しかしながら、一部の職業においては、その特性といいますか、やはり色覚というものが異常であるとなかなか難しい職種というものが残っているわけですね。

 先ほど申し上げたように、ちょうどことしで検査が廃止されて十年がたつわけです。つまり、この色覚検査を受けずに育った世代が就職の時期を本格的に迎えていくということになり、先般、二月二十七日の毎日新聞の朝刊でもこの問題が取り上げられておりました。

 色覚に異常があっても生活に支障はございません。また現在、就職に対しては、今申し上げたように、採用の制限を受けるということもほとんどない。平成十三年の十月の労働安全衛生法令の改正によって、雇用時の色覚検査は原則廃止をされております。

 ただ、この毎日新聞のケースでは、これは消防士の採用試験直前に、十八歳の男子生徒が眼科に行って、やはりそのときに色覚異常を知って、採用試験では再検査に回された。ただ、この男子生徒、最終的には補正眼鏡の使用を認められて合格をしたということでございます。

 やはり、今申し上げたような、パイロットであったり、あるいは消防士、自衛隊、警察官など、今後さらに少なくなっていくとは思いますけれども、やはり一定の制限がある職種がある、あるいは、色を専門に扱うような業種では何らかの配慮がやはり必要になってくるケースもあるんだというふうに思っております。

 大事なことは、やはり本人がその色覚であるということを全く知らずに、就職活動、あるいはみずからの進路決定などに際して初めて知る場合も考えられるということで、その時点で子供たちがショックを受けたり、あるいは自分の進路を変更しなければならないというような懸念というものがあるわけなので、私自身としては、何とかこれは、例えばもとのようにこの検査をもう一度やりなさいということではなくて、義務づけるということではなくて、やはり学校現場に対する改めての周知徹底。

 あるいは、例えば身体検査の健康診断のときに、これは本人が希望すれば受ける体制が整っているわけですから、例えば小学校四年でもいつでもいいですけれども、何らかの学年のときに、もう少し丁寧に、そういった検査を受けることができますよというような形での、保護者並びに本人に対してもそういったことで喚起していくというか、そういう周知をしていくというようなことをいま一度考えていただいた方がいいのではないかと思いますけれども、その点は大臣にちょっと見解をお伺いしたいと思います。

下村国務大臣 私の子供のころは色覚検査がありましたので、きょう委員から質問されるまで、その後これが中止になったということは存じ上げておりませんでした。

 確かに学校生活の中では色覚異常というのはほとんど影響ないことではあると思いますが、毎日新聞の記事のように、いざ就職になって初めてわかったということはやはり遅い、本人からしてもそういう思いがあると思います。

 お聞きしても、今の御提言のように、義務教育期間の中で一度受ければわかることでもあるのではないかというふうに思いますし、何らかの形で、一回は学校にいる間に検査が受けられるような形をとったら、社会に入るとき、よりスムーズに就職活動と準備ができるのではないかなと私も感じました。

笠分科員 ありがとうございます。

 ちょっと私も、今回いろいろなことを調べておりますと、これは全て先天性なんですよね、ほとんどのケースが。それで、色覚異常の人は、日本人の場合、男性で約五%、二十人に一人、女性で〇・二%、五百人に一人いるということで、今、例えば四十人学級としたら、クラスに一人ぐらいのひょっとしたら色覚にこういう異常を持っているお子さんがおられる。ただ、日常生活に何ら支障もありませんし、そのことは、ある意味ではお子さんたちもしっかりと自分自身の個性として認識をして、そういったことを知らずに育つということではなくて、知った上でしっかり向き合っていくことが大事なんだというふうに思っております。

 それと同時に、日常生活に支障がないだけに、本人だけじゃなくて、保護者の方もなかなか気づかないというケースが非常に多いわけですね。日本眼科医会の調査が平成二十二年、二十三年度に行われた資料がございますけれども、やはり、五〇%、半分ぐらいの人が高校段階ぐらいで知らなかったという、要するに、保護者、本人が、異常があるということを全く知らなかったという方々がおられるということでございますので、そういったところはぜひとも何らかの形で、今大臣から前向きな答弁をいただきましたので、もちろんこれは同意が必要ですし、プライバシーをしっかりと守っていくということを大前提とした上で、取り組みをいただきたいと思います。

 そして、もう一つ、ちょっとこれは局長の方にお伺いをしたいんですけれども、局長通知の中で、「教職員は、色覚異常について正確な知識を持ち、常に色覚異常を有する児童生徒がいることを意識して、色による識別に頼った表示方法をしないなど、学習指導、生徒指導、進路指導等において、色覚異常について配慮を行うとともに、適切な指導を行う必要がある」ということがございますので、かなり学校現場における色についてのバリアフリーというものは進んできております。

 しかし、改めて文科省としても、それをしっかりと、そういった子供たちがきちんとした学びができる環境づくりという意味からも、さらにこのバリアフリーを進め、あとはやはり教職員への啓発ということも大事だと思いますので、その点をやはり事務的にも、ぜひ都道府県教育委員会を通じて、何らかの機会に徹底をしていただければと思いますけれども、いかがでございましょうか。

久保政府参考人 色覚異常に関しましては、児童生徒及び保護者が自発的に気づかない場合もある、おっしゃるとおりだと思います。学校におきます色覚検査に関する取り組み等につきまして、児童生徒及び保護者、さらには教職員に周知することは重要であると考えております。

 文科省といたしましては、今後さまざまな会議あるいは研修会等いろいろな機会を捉えまして、あるいは機会を捉えた通知も含めまして、いろいろな情報が児童生徒、保護者、それから教職員に周知できるように対応していくべく努力させていただきたいと思います。

笠分科員 きょうは、大臣と局長の方からも今後について答弁をいただきましたので、ひとつ対応の方、よろしくお願いをいたしたいと思います。

 次に、心理職の国家資格推進についてお尋ねをいたしたいと思います。

 心理職の国家資格化の創設については、今日、うつ病、自殺、虐待など国民の心の問題や、あるいは不登校、発達障害など発達、健康上の問題は非常に複雑かつ多様化しております。しかしながら、こうした問題に対し、他の専門職とも連携をしながら心理的にアプローチする国家資格が我が国にはまだないというのが現状です。欧米諸国を初め、ほとんどの先進国においては心理の国家資格があり、さらには、世界的に共通の基準をつくるための努力がされているという状況にあるわけです。

 我が国でも、国家資格によって裏づけられた一定の資質を備えた専門職が必要ではないかというふうに私は考えております。特に、東日本大震災によって、今、心のケアというものが大きな課題となっている中で、また、これは非常に中長期的にもこのケアというものは続けていかなければなりません。国民の心の健康のためにも、国家資格を創設して、誰もが安心して心理支援を受けられるようにすべきだと思います。これは、たしか自民党の昨年の総選挙におけるマニフェストの中でも、この心理職の国家資格化の実現を掲げておられたと思います。

 下村大臣にお伺いをしますけれども、政府として、この実現に向けて具体的に今何か取り組んでおられるのか、あるいは、この実現について大臣自身がどのようにお考えかをお聞かせいただければと思います。

下村国務大臣 臨床心理士の方々については、教育分野では児童生徒等へのカウンセリングを行うスクールカウンセラー等としても御活躍をいただいており、また、東日本大震災においても、被災した児童生徒等の心のケアについて大きな役割を果たしていただいているところであります。

 臨床心理士等の心理職を国家資格化することについては、関係団体及び関係議員を中心に検討を進めていただいているものでございます。私も自民党の勉強会、何回か出たことがございました。まだその時点では調整がつかないということでありました。

 今後、この議連等を中心としてまとめていただきたいと思いますが、文部科学省としても、議論の動向を注視しつつ、専門性の確保された国家資格化が実現されるよう、厚生労働省と緊密に連携して必要な協力を行ってまいりたいと思います。

笠分科員 確かに、これまで、私も政務官のとき、あるいは副大臣のときにも、関係の団体の皆様方からもいろいろな御要請、また御意見も賜りました。

 これまで、主に三団体、関係団体間の調整が難しかったりして、かつては文科省と厚労省とそれぞれに法案を出すというような動きもあったようでございますけれども、これが実現をされなかったということで、ただ、平成二十三年の十月に、この関係三団体の臨床心理職国家資格推進連絡協議会、医療心理師国家資格制度推進協議会、日本心理学諸学会連合が一つにまとまって資格法を要請していくことになり、昨年には、今大臣も参加をされていたということですけれども、自民党、そして私ども民主党でも、それぞれに議員連盟が発足をしております。

 そして、今月には、こうした将来の国家資格化を視野に入れながら、将来の研修機能などを担うことを目的に、一般社団法人日本心理研修センターも設立をされて、昨日、私も御案内いただいたんですが、ちょっと日程の都合で行けませんでしたけれども、設立記念フォーラムも開催され、文科省、厚労省からも講演をされたというふうにも伺っておりますので、これは、できれば超党派で議員立法を目指してまずはやっていく方がやはり現実的なのかなという気もしております。

 ただ、いずれにしても、やはり、これは文科省のみならず、厚生労働省とのさまざまな調整がございますので、受験資格をではどうしていくのかとか、いろいろまだまだ詰めていかなきゃいけない点はたくさんあると思いますけれども、ぜひ大臣には重ねて御尽力をいただき、これを何とか国家資格化できるように、私どもも頑張りますので、ぜひとも御支援をいただきたくお願いをしたいと思いますので、一言だけ、よろしくお願いいたします。

下村国務大臣 ぜひ、議連でまとめる方向にしていただければ、政府として、厚生労働省と相談しながら、国家資格化に向けて努力をしてまいりたいと思います。

笠分科員 次に、医師の確保と医学部の新設について幾つかお伺いをいたしたいと思います。

 本当に、かつて医療崩壊というものが叫ばれた中で、地域の医師確保をどのようにしていくのか。特に、医師の偏在の解消。あるいは、現在、医学部生の約三割が女性でございます。ただ、残念ながら、女性のお医者さんの場合は、育児で休職あるいは離職をせざるを得なくなったり、また、その後、復職をするにも、やはりいろいろな問題がある、課題があるというふうに承知をしております。

 高齢化が進んでいく中で、今後の医療需要に対応した人材育成というものをどうしていくのかなど、本当に課題が山積をしておるわけでございますけれども、私どもも政権を担当しているときには、これは自民党政権時代からも行われてきたことですけれども、これまで、医学部の地域枠などを活用した定員増ということで対応をしてまいりました。

 今後の医師確保のための大臣の基本的な考え方をまずお聞かせいただきたいと思います。

下村国務大臣 超高齢社会への対応や地域の医師不足の指摘がある中で、地域医療の現状を踏まえた医師確保対策を行っていくことは非常に重要であるというふうに認識しております。

 文部科学省においては、厚生労働省と連携して、平成二十年度より医学部入学定員の増加を行っており、特に平成二十五年度からは、被災地の要望を受け、入学定員の上限者を百二十五名から百四十名に引き上げ、東北地方の医学部のさらなる定員増を可能といたしました。

 また、地域の医師確保のためには偏在解消の取り組み等もあわせて実施する必要があることから、地域医療への従事を条件とした奨学金や選抜枠の活用をしたり、また、被災地の医科大学における医療人材養成への支援をする、あるいは女性医師等の離職防止、復職支援の推進等を行っております。

 医学部の新設について、特に東北地方における新設については、推進派の方々からも、また反対派の方々からも、大臣就任直後から、両サイドから再三の要請がございます。

 中長期的な医師確保対策として医学部新設が必要だという意見もある一方で、医学部の新設により、教員確保のために医療現場から医師が引き抜かれるということで、地域医療の崩壊をもたらす懸念があるなどの慎重な意見もそれぞれあるところでございます。

 医学部の新設については、さまざまな御意見も伺いながら、これまでの定員増の効果や、また社会保障改革全体の検討等を踏まえつつも、厚生労働省とも連携しながら、大局的に判断していく、そういう時期であるというふうに思います。

笠分科員 平成二十年度から医師確保対策として入学定員をふやして、ちょうど今年度末、平成二十五年度末で、初めてこの定員枠をふやしてから以降の学生さんが卒業していくというときにもなります。

 これは局長の方にお伺いしたいんですけれども、やはり、定員増による学生がこうやって初めて卒業していくということで、今後、卒業生が地域で、地域枠の卒業生がどういう動向、どういうふうな形で医療現場に入っていくのか、またあるいは、それによって都道府県等における医師数の分布などをかなりきちんとした形で検証していく必要があると思いますけれども、その点の検証について具体的に取り組む方針がございましたら、局長の方でお願いいたします。

萩生田主査 どなたですか。(笠分科員「では、いいです」と呼ぶ)答弁はいいですか。

笠分科員 私ども、地域の医療確保対策に基づいて御質問したつもりだったわけですけれども、きょうはちょっと時間がないので、また改めて委員会の中でやらせていただきたいと思います。

 先ほど大臣がおっしゃったように、幾つかの県で医学部新設を求める声がございます。ただ、特に、本当に被災地域の医学部を新設したときの、やはりあれだけの東日本大震災を経験し、そして今後のことを考えたときに、ある意味では、東北に一つの新しい医学部をつくる、そういった希望があることは私も理解できますけれども、現実にそれを実行に移そうとすると、特に岩手医科大や東北大学、福島県立医科大など、やはり、大学病院関係者は、先ほど申し上げたように、教職員に振りかえることで、逆に今ぎりぎりの地域医療が崩壊するんじゃないかという非常に強い懸念を示されておりました。

 ただ、いずれにしても、この偏在をしっかりと解消していくためには、特に地方においては、大学病院、あるいは医学部と自治体、さらには地域医療の現場の皆さん方の一つの協力関係というもの、あるいは、そこでどういう連携ができるのかということでは、大学がやはりある意味での基盤づくりというものをしていく必要があるのではないかと私は思います。

 こうした点についても、ぜひ文科省として、大学現場に対して、どういう形であれば現実的なそういう枠組みがつくっていけるのかという、連携強化へ向けての取り組みをぜひお願い申し上げたいと思います。

下村国務大臣 特に被災地においては、そこに特化した形での要望もありますし、同時に、今全国でもいろいろなところで同様の医学部新設についての要望がございます。

 また、その中で、委員から御指摘がありましたが、これは国立大学あるいは私立大学含めて、統廃合のような形で医学部をトータル的にできないかとか、地域全体の中で協力した形で新設できないかというようなところもありますので、必ずしも既存の大学あるいは新規の大学ということでなく、おっしゃったように、地域ネットワークの中でのそういう考え方もあります。

 これは、大学だけでなく、医師会等いろいろな既存の団体等の声もありますので、これは厚生労働省と一緒になって考えるべきことであるかというふうに思いますが、しかし、国民の立場に立って、今必要なことは何かという視点で、文部科学省としても検討してまいりたいと思います。

笠分科員 ちょっと時間の方がもう迫ってまいりましたので、最後に一つ。

 実は、我々のときも、文科省と厚労省と検討会議を開き、さまざまな専門の方々からもいろいろな議論をしていただいたわけですけれども、短期的なことは、医学部の定員増というようなところの必要性というところまでは行けても、では本当のところ、両論ある中で、医学部の新設やあるいは医科大学の新設というものが必要かどうかということについてはまだなかなか結論が出ていないというような状況でございますので、先ほども申し上げたように、またこれからいろいろな検証をして、やはり一番大事なのは、地域の、今医師が不足しているところの深刻な状況をいかに解消していくのかということが大事だと思いますので、ぜひ大臣には、その点はまたリーダーシップを発揮していただいて、我々も、また委員会等々を含め、いろいろな提言もさせていただきたいと思いますので、これからも、医師養成のあるいは医師確保の問題については、またぜひ力を入れていただきたいというふうに思います。

 そのことをお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

萩生田主査 これにて笠浩史君の質疑は終了いたしました。

 次に、小川淳也君。

小川分科員 民主党の小川淳也でございます。

 大臣におかれましては、きょうは夜八時半まで大変長丁場の御審議、本当にお疲れさまでございます。心より敬意を表させていただきます。

 私、文部科学委員会に初めて所属をさせていただきます。それなりに教育問題について関心、興味はございますが、何分にも知識と経験は大臣に比べますと十分ではありません。その意味では、ぜひ胸をおかりしながら、いろいろと御指導いただきたいと思っております。

 基本的に、こういう感覚を私は持っています。これまで、経済成長期、人口増大期を前提にした、暗記、あるいは速やかに効率的にたった一つの正解にたどり着くことを求める教育から、課題設定をし、問題解決能力を磨く、答えは一つじゃない、自分なりの正解を生み出す、表現力を増す、こういう教育へと、大きな優先順位、価値観を切りかえることが必要なんじゃないかという観点に立って、それぞれこれから各論の議論、御指導いただきたいと思っております。

 ちょっと本題に入る前に、きのう、青森の市長選挙と郡山の市長選挙、投開票が行われました。今、内閣支持率も非常に高いですし、調子がいい。そういう中で、特に郡山では、事実上自民党さんが支援された現職が敗れた。この二つの結果、御存じか御存じでないかもありますけれども、どういうふうに評価されるか、ちょっと政治的に御見解をお聞きしたいと思います。

下村国務大臣 きょうはちょっと、新聞がないものですから、結果は存じ上げておりません。ただ、地方の首長は、これは政党選挙ではありませんし、人物がどんな実績があったかということだと思いますので、安倍内閣あるいは自民党の支持と必ずしも直接関係するものではないと思います。

小川分科員 模範の御答弁だと思います。

 ただ一方で、こういうことも報道されています。例えば郡山については、除染の問題を含めて、市民のいら立ちが現職に対してあるんじゃないかというような報道があります。そして、青森に関しては、TPPを含めて十分な善後策の提示、総合的な安心感が出切れていないんじゃないかという報道があります。

 無関係だという御答弁は一応この場でそれとして受けとめますが、そこに政権としてのある種の謙虚さのようなものがにじみ出てくると、より一層この政権は手ごわく、手がたいというふうに、私は野党の立場から見ているわけなんです。

 そこで、第一次安倍政権のときに、たしか大臣は、官房副長官として、最側近の一人として御勤務でいらっしゃった。第二次安倍政権、六年たった今、文部科学大臣として最も御専門の分野で活躍をされている。

 いかがですか、第一次安倍政権と第二次安倍政権を比較されて、変わっているところ、変わっていないところ、かつてよかったけれども今もいいところ、しかし、かつての反省に立って現在改善したところ、いろいろお感じになっているところがあるんじゃないかと想像しています。率直に。

下村国務大臣 それは、最初に委員がおっしゃいましたが、我々は、謙虚さを旨としていこうということは第二次安倍政権の大きなキーワードだというふうに思います。一度失敗しましたから。第一次安倍内閣は失敗したと思っています。

 それはいろいろな状況がありますが、しかし、幾ら自分たちが考えていることが正しい、正義だと思っても、民主主義というのはやはりコンセンサスが必要ですし、あえて敵をつくる必要がないところで敵をつくってしまったようなところも第一次安倍政権のときにはあったのではないかというふうに思います。

 特に、今の状況というのは、ますますこの日本が、歴史におけるターニングポイントでもあると思うんですね。この日本が衰退のままアジアの四流、五流国になる成り下がってしまうのか、もう一度日本が再生できるか。これは経済再生だけではありません、教育再生も含めてですが、国民が、この国に生まれてよかった、そして日本はすばらしい国だと思えるような、よみがえるような日本にできるかどうかという、今、いろいろな意味でぎりぎりの歴史的な転換期にあるというふうに思います。

 そういう中で、できるだけ多くの、野党の議員だけでなく、国民の皆さんからも理解をしていただくことをしていかなければ、真の改革はできないというふうに思いますし、そのためには、政権における姿勢としての謙虚さとか、それから、国民の皆さんから、野党の皆さんからも期待を持ってもらえるような政策運営については、十二分に注意しながら、配慮しながら、しかし、やるべきことはやる、そういう姿勢で、少なくとも第一期のときよりは今の方が慎重に対応しているということは言えるのではないかと思います。

小川分科員 よい御答弁をいただきました。

 私、この間、本会議場で、同旨のこと、少し言葉が乱暴だった面もあるんですが、お尋ねしました。それで、第一次安倍政権の失敗を、率直に失敗とおっしゃった。私たちは言えた義理じゃないんですね、本当は。私どもも、三年前、あれだけの期待をいただきながら、それに十分応えられなかった。その呵責は、もちろん今でも負っていますし、これからも負い続けることになると思います。

 しかし、現在の安倍政権、自民党政権を拝見していて、ある種、謙虚さとか民意に対する恐れ、慎重さには、極めて安定感、手がたさ、手ごわさを感じていますし、むしろ、私たちが学ばなければならないものの最大の要素の一つだというふうに、それこそ謙虚な気持ちで拝見しております。

 それとの抱き合わせの中で、もう一つ、少しひっかかる点、これは第一次安倍政権のときもそうでした。当時必死だったのは、やはり、防衛省への格上げ、憲法改正の国民投票法、そして教育基本法の改正。憲法観、あるいは国防の問題、あるいは教育、あえて申し上げます、やや国家主義的な色彩の、においのする教育、こういうものが当時も現在も変わっていないなという印象を受けています、その地金の部分がですね。

 それに関連して、この間、予算委員会で、総理も下村大臣も、学習指導要領の見直しに言及された。きょうも、午前中ですか、教育委員会制度の抜本的な見直しを教育再生実行会議が提言しておられる。これは大いにやるべきだと思います。

 しかし、冒頭申し上げた、私の中での教育に対する大きな価値観の変更は、高度成長期に成り立った大企業のサラリーマンを育てる教育から、むしろ、成長を前提としがたい時代にあっての、自分の中の思考能力とか表現能力を高める教育へという、大きな価値の転換なりコンセプトの変更があっての諸制度の議論というふうに持っていくべきであって、そこに何か復古主義的な色彩とかあるいは強制的な香りとかいうものがあっては、これはやや危険を感じる人たちも出てくるんじゃないかと思います。

 そこで、お尋ねします。

 学習指導要領を含めた教科書検定、何が問題で、どう変えようということを、頭の中でも結構です、考えておられるのか。これはやや機微に触れるお尋ねなんですが、その背景にある大臣の戦争観について、どんなお考えをお持ちなのか、またそれはなぜなのか、そういったところを前半ちょっとお聞きしたいと思います。

下村国務大臣 いろいろな御質問がたくさん入っていたというふうに思いますが、端的に申し上げて、まず、第一次安倍政権において、我々は政策的に失敗したとは全く思っていません。手法の問題等で敵をあえてつくったというところはあったかもしれませんが、しかし、第一次安倍政権でやった政策について、それはそれで短期の中でよくそれぞれ実現できたというふうに思っておりますし、逆に、政策については、我々は何ら恥ずべきことがないというふうに思います。

 ただ、その手法の問題で、与野党に対するより丁寧な説明等がもっとあった方がよかったということと、それから、失敗といいますか挫折、要するに、短期間で、一年ちょっとで終わったというのは、やはりそれは挫折であるというふうに思っています。

 それは安倍総理の健康の問題もありましたし、第一次安倍内閣で、失言等いろいろなことがあって、結果的に次から次へと閣僚がやめざるを得ない状況が出てしまったということが安倍内閣の支持率を下げたということにもつながってきたと思いますし、結果的にそれが短命になってしまった、我々が考えている以上に短命になってしまったという部分があったと思いますので、そういう手法の問題で反省すべき点は多々あるというふうに思います。

 しかし、政策の部分は全くぶれておりませんし、これからも、やり遂げられなかった部分については、問題があるというか、逆に、これから日本がなすべきことをきちっとできていなかった、そういう挫折感を持っておりますので、それを一つ一つ達成していくことは大変重要なことであるというふうに思います。

 それが、例えば教育再生という言葉も非常に誤解されるんですが、特定のある過去の、端的に言えば、例えば戦前の国家主義的な教育を復活させるとか、そういう意図は全くないんですね。

 そもそも、教育再生というのはもっと本質的な意味で捉えておりまして、例えば、教育を英語で言えばエデュケーションですけれども、エデュケーションはもともと、ギリシャ語の引き出すという意味が語源としてあるわけですね。つまり、一人一人が持っている潜在的な能力をいかに引き出すか、それこそが教育の本質的な役割であるというふうに思いますが、そういう本質的な役割、つまり、一人一人の持っている能力を引き出して、そして、その人が自分にはそれだけの能力や力があるということについての自己充実感と自己評価と、同時に、それが個人の自己満足だけでなく、社会に対して貢献することによって、自分は社会にも役に立っている、そういう仕事を得るということは、人生における価値観を、幸せという価値観を得るためにも大変重要なことだというふうに思うんですね。

 そういう本来的な教育、それを教育再生というふうに申し上げているわけですけれども、それをしていくという意味で申し上げているわけでございます。

 同じように、道徳の教科化というと、今言われたような特定の価値観とか特定の国家観を押しつけるがごとくのイメージをとっておられるように、今の質問でもちょっと聞いていて思いましたが、そういうことではありません。

 道徳というのは、国家の価値観を押しつけるということではなくて、我々は、もっと、国境を越えて、民族を超えて、また歴史を超えて、人が人として生きる規範意識とか、社会のルールとか、人の道ですね、それはやはり発達段階に応じてきちっと子供たちに教えていくべきことだろうというふうに思います。

 それをきちっと教えていないということが、ある意味では教育の放棄にもつながってくることであるということで、これも、道徳の教科化というのは、何か特定の時代の価値観を持った教育をもう一度復活させるということでは全くないということを申し上げたいと思います。

小川分科員 ずばり歴史観に関して申し上げますと、昨年の十一月の自由民主党さんの教育再生実行本部の取りまとめ、教科書検定・採択改革分科会、松野先生が座長、「多くの教科書に、いまだに自虐史観に立つなど、問題となる記述が存在する。」という記述があります。それから、いわゆる近隣諸国条項については見直すというふうに結論づけられております。

 この内容については大臣も同じ御見解ですか。

下村国務大臣 昨年十月に発足した教育再生実行本部、私は本部長でありまして、そこで、今の御指摘のことを含めた五つの分科会がありました。松野さんには、その教科書検定の分科会の座長をしていただきました。私は本部長でございますので、その取りまとめをしたという立場でございます。

小川分科員 そうすると、文部科学大臣御就任後も内閣の重要閣僚として同じ認識をそのまま引き継いでおられるというふうに理解をいたしますが、これはまたちょっと時間のあるときにじっくり、私も、この分野に関してそれほど十分な知見、知識を持ち合わせている自信がきょうの段階ではありません。しかし、国内に与える影響もそうですし、対外関係も含めて、極めてセンシティブな話題だというふうにはわきまえているつもりであります。

 ここはある種、道徳観にも関連しますが、自発的に持ち得る郷土愛とか愛国心と、何か政府や教育機関から教えられた愛国心なり郷土愛、これをやはり混同してはならないというふうに強く感じます。

 その意味で、例えば道徳観に関しても、大臣は非常に道徳的感性を備えられた政治家の先輩だというふうに私は拝見しておりますが、これは、大臣が受けられた教育課程の影響ももちろんあるかもしれません。けれども、むしろ、大変困難な家庭状況の中で物ともせず大臣をお育てになられたお母様、そしてその中で、苦学をされながら、さまざまな友人との出会い、いろいろな公的機関からの助け、こういったものを全て糧とされて今日に至っている大臣の、育たれた、育まれた全ての環境、どちらが大きな影響を受けているのか。あるいは、もっと言えば、大臣が小学校、中学校御在学中に道徳という教育科目が教科化をされていれば、下村博文という政治家はより道徳的になったのかどうか。

 私は、そういう切り口から物事を考えていったときに、今とろうとしておられるアプローチに対しては、実効性があるかないかも含めて、やや疑問を感じる立場であります。もっと言えば、思想とか信条、あるいは信教の自由というのは、憲法的価値体系の中でも最上位に位置する自由権であります。そうすると、政府なり国家がここに踏み込むことに関してはやや抑制的でいるという姿勢そのものが、近代の憲法価値観的民主主義社会においては非常に大きな価値であります。

 こういうこともあわせて、ぜひ謙抑的に御議論いただくことがここは必要じゃないかという気がしてなりませんので、あえて指摘をさせていただき、今後、ぜひ文部科学委員会本体での議論を含めて御指導いただきたい点であります。どうぞ。

下村国務大臣 例えば憲法、それから宗教ですね、こういうのと教育というのを一緒に考えておられるのではないかと思います。

 教育というのは、私は、それぞれの自由な価値観の中で学ぶべきレベルの教育と、例えば義務教育というふうに、そもそも国が、学習指導要領、教科書、こういうものを明確にすることによって、発達段階に応じて学ぶべきものはきちっと学ばせる、これは近代国家として必要なことだというふうに思います。それを、強制的だとか、あるいは、その子のそのときの関心に合わないということで、もしそれぞれの生徒の自由な状況に置かれたら、これは社会の中で適応しない子供をどんどんつくっていくということになってくると思いますね。

 社会というのは、特定の国家における、価値観における社会ではなくて、人間というのは社会的動物でもあるわけですから、一人で生きていくことはできないわけですから、人が人として生きていくために学ぶべき、またその社会の中で知っておくべき情報、これを教育の中できちっと教えるということは、近代国家として必要なことだというふうに思います。

 これは、あるときは強制しなければならないことだと思います。それが義務教育ですね。つまり、例えば、小学校一年生から中学三年生の九年間は、六歳から十五歳までは必ず学校に行って学ばなければならない。憲法にも書いてあるわけですが、日本国として、日本国だけでなく近代国家はどこでもこういう学校教育を義務として課しているわけでありまして、学ぶべきことを学ばせるということは必要なことだと思います。

 その中で、私は、道徳については、子供のころ、もっと学校教育で学ぶ場をつくってもらいたかったなと率直に思っているんですね。教育は知育、徳育、体育と言われますが、しかし、実際に、徳育がその三つの中の一つの重要な分野として学校教育の中で自分は習ってきたかというと、ほとんど習わないまま来てしまったというふうに思っております。

 小学生のころ、むさぼるように図書館で偉人伝を読んだ時期があったんですね。偉人伝を教えるということは、特定の人の価値観を国民に教えるとかそういうことじゃなくて、どんな偉人であっても、最初から人生で大成功して、大天才でうまくいったということではなくて、まさに天才と言われる人であればあるほど、あるいは偉人と言われる人であればあるほど、それだけ、人の何十倍も、人生の中で、苦難の中で、苦闘の中で、失敗もたくさん重ねていく中で物事を達成した。だからこそ、偉人と言われたり、結果的に天才と言われるような実績なり発明をつくった人だと。

 そういうことを学ぶことによって、人は、あるいは、学ぶというのはまねぶとも言われますけれども、人の生き方、なるほど、人生というのはこういうことをすることによって、偉人伝をそれぞれが学ぶことによって、自分の生き方そのものに未来が見えてくるとか、生きる勇気が湧いてくる。こういうことは、それは数学、英語も必要ですけれども、しかし、道徳的な部分の中で、人が生きるためのエネルギーといいますか心の燃焼というか、そういうものを提供する貴重なものだというふうに思います。

 ですから、道徳というと、人によって解釈が、古びたようなイメージで捉えるのであれば、もっと本質的に、例えば人間学というふうな形で、それぞれの発達段階に応じて、もっと本質的なことを教えた方がよりいいのではないかというふうに私は思っているぐらいであります。週一回の授業というよりは、週三回も四回も、もっと、人が幸せに生きるということはどういうことなのかということを、今、誰も教えてくれないんですね、子供たちにとって。しかし、それは子供だけじゃなくて親の世代も同じです。

 私は、そういうものをきちっと教えるべき時期に、こういう先行きがわからない、見通しがつかない時代であるからこそ、逆に求められているし、問われているのではないかとさえ考えているところでございます。

小川分科員 一定程度理解いたします。しかし、算数の技術や英語の文法と違って、道徳観、価値観、あるいは場合によっては思想信条につながる部分については、極めて一義的、一律には教え込みにくい部分であり、それぞれが相対的な感受性を持つ部分であり、それぞれに、趣味あるいは育った背景、さまざま多様であり得るということに対する謙虚さとか繊細な感覚はあわせて持ち合わせるべきだと思います。その点は指摘させていただきたいと思います。

 ちょっと時間があれですので、この道徳という観点に直接関連するかどうかあれですが、年末から昨年度末にかけて、教職員の方が、退職金が減らされるから、途中で学級課程を放棄して駆け込み退職するという事例が多々ありました。

 これは時間の関係で指摘にとどめますが、一万四千人の三月末退職予定者のうち、約千名近い方がこういう行動をとられた。これは、道徳的に非難することは簡単かもしれません。しかし、そもそもこれは私どもにも責任があるわけですが、退職手当の減額を開始する時期の設定を含めて、社会制度を設計した側が、やはり、人間のモラルと経済合理性、本来はこれが両立するような制度設計をすべきだった。しかし、そこに生まれたそごがこういう形であらわれ、社会的に非難の対象となった。これは私は、先生方のモラルに帰着させてはならない課題だという反省を込めて、余り国会で議論になっていませんので、指摘だけさせていただきたいと思います。

 ちなみに、消防職員の方々は一%にも満たない、教育課程の方々は七%近い方々が予定時期を早めて退職しているという事実だけ、ちょっと確認させていただきたいと思います。

 全体として、伝統文化を重視するというのはさきの教育基本法の改正でもそうでしたし、また、現在も、大臣が一つの大きな課題として背負っておられる。

 そこで私、これは地元で要請を受けていますので、ちょっと具体的に、高松市の、茶道に励んでおられる横倉先生、宮崎先生、川原先生初め複数の方から、学習課程を考えるに当たって、子供たちに茶道教育をより普及させてほしいという要請をいただいています。私は、一理あると思います。現在の学習指導要領ですと、柔剣道、それから和装、こういったものは明記されているようですが、茶道とか華道とか、文化的要素はまだまだ貧弱な気がします。

 大臣、この点、ぜひ前向きな御答弁をいただけたらありがたく存じます。

下村国務大臣 先ほどの先生の退職の件は、感想ということですから私も深くは申し上げませんが、ただ、担任等を持っている先生は、あと一カ月ということでしたら最後までやってもらいたかった、これは記者会見でも申し上げました。また別の機会に、時間があれば詳しくお話を申し上げたいと思います。

 日本の伝統文化、茶道、華道、こういうことを子供たちに教えることは、大変重要なことだと思います。

小川分科員 ありがとうございました。

 さっきお聞きしたところですと、学習指導要領の見直しがどうも十年に一回ということのようですので、次が平成三十年前後かと思います。ちょっと先の話になりますが、茶道、華道といったものについても、日本人の基本的な素養の問題としてぜひ積極的に取り入れをお願いしたいと思います。

 もう一点、せっかくの分科会ですので、地元に関連した政策課題をお尋ねします。

 四国八十八カ所巡礼というものが、一つの歴史的、文化的遺産として、有形無形のものも含めてでありますが、存在します。私も香川県を選挙区としておりまして、複数、たどれば、空海、弘法大師発祥の真言宗関連のお寺さん、あるいは、その巡礼の道中、道すがらのお接待の文化、地元では、巡礼のけさを着た方々がよくつえをついて歩いておられます。これをぜひ一つの世界遺産としてという要請が、希望が、願いが長らくございます。

 現在、十二の文化遺産と四の自然遺産が我が国からは登録されているようでありますが、その他にも、富士山を初めとしたそうそうたる自然遺産、文化遺産が潜在リストに入っている中で、ぜひこの四国八十八カ所についても前向きに御研究、御検討いただきたいと思いますが、この点いかがでしょう。

下村国務大臣 香川、徳島、高知、愛媛の四県が共同で、四国八十八カ所霊場と遍路道を世界遺産の候補として提案し、推薦のための準備を進められていることは承知をしております。

 世界遺産に推薦するためには、ユネスコ基準に基づき、一つに、普遍的な価値の証明、二つ目に、価値を保護するための法的措置や体制の構築が必要であります。

 四国八十八カ所霊場と遍路道については、一般民衆による霊場巡礼の生きた文化を継承するものとして価値が高いものでありますが、霊場巡礼といった無形の文化をどのように有形の文化財で価値を表現するのか、また、全長千四百キロメートルにわたる壮大な巡礼道を具体的にどのように保全するかなど、基本的な課題が一方であるというふうにも承知しております。

 しかし、文部科学省としては、引き続き、この四県の取り組みを技術的、専門的な側面から支援しながら、こういうものについて、私自身は、まさに世界遺産にふさわしい価値があると思います。それを世界の方々にわかっていただくような理論武装等々、法的準備等をきちっとしていただくということについて、文科省としてしっかり支援をさせていただきたいと思います。

小川分科員 ありがとうございました。

 私もまだ、八十八カ所、ほとんど行けていないんです、もう地元の近いところに厄よけで行くぐらいで。ぜひ、大臣も一度、時間ができましたらお運びをいただきますことを御期待申し上げまして、きょう、大変大きな話から地元の話題まで真摯に御答弁いただいたことに感謝を申し上げて、質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

萩生田主査 これにて小川淳也君の質疑は終了いたしました。

 次に、寺島義幸君。

寺島分科員 民主党の寺島義幸でございます。

 ふなれでございまして、不行き届きの点があろうと存じまするけれども、お許しをいただきたいと思うわけでございます。

 早速、質問に入らせていただきたいと存じます。

 初めに、体罰の現状についてということでございます。

 昨年末、大阪市の桜宮高校におきまして、バスケットボール部の顧問から体罰を受けた生徒が自殺をした事件があったわけであります。

 文部科学省は、一月の二十三日に、各都道府県教育委員会等に対しまして、体罰の実態把握を行うよう通知がなされたわけであります。

 これらを受けて、私の地元の長野県の教育委員会においても、実態把握の調査が行われました。三月の二十九日には、第二回目の中間報告が発表されたわけでございます。

 それによりますと、長野県でありますが、県教委が体罰と確認したのは、小学校で十件、中学校で三十件、高校で八件ということでありまして、私自身もややびっくりしたような次第であります。まあこういう時代でありますので。

 長野県内におきましても、話題になりましたのは、岡谷市の岡谷東部中学校の女子バレー部におきまして、男子の教諭が部員の足を折るなどの体罰を加えていたということが判明をしているわけでございます。

 長野県といたしましても、ことし、文部科学省から新たに伊藤教育長をお迎えいたしまして、この問題にしっかりと取り組んでいただいていると思うわけでありますが、体罰の根絶というのは、もちろん長野県に限らず、全国的にも大事な課題であろうというふうに思っているわけでございます。

 そこで、まず初めに、全国的な体罰の現状について、その実態の把握の状況についての認識をお伺いいたしたいと思います。

義家大臣政務官 お答えいたします。

 文部科学省では、例年、公立学校に対しまして、体罰に係る懲戒処分等を受けた教職員数の調査を行っております。平成二十三年度は四百四名となっています。

 また、現在、本年一月の、委員御指摘の桜宮高校の事案を受け、全国的な体罰の実態を把握するために、国公私立の学校を対象とした調査を実施しているところでありまして、このうち、第一次報告として、平成二十四年四月から平成二十五年一月までの体罰の状況について報告を求めていたものについては、現在取りまとめ作業を行っております。例年よりも多くの体罰事案が把握されている状況ではありますが、結果については今週中に公表したいと思います。

 しかし、いずれにしましても、社会問題化したらふえ、そして話題に上がらなくなったら減るというようなことを、これはいじめ案件もそうですけれども、繰り返して行われているわけでありますが、しっかりと、抱え込まず、実態が正確に把握できるような体制というものを整えていくことも大切であると考えております。

寺島分科員 おっしゃられるとおりと思うんですね。

 どこまでが体罰なのかというのはなかなか、それぞれの方々の考え方もあろうと思うわけでありますので、そのとおりだと思うわけであります。アンケートというか、把握の仕方によって数字が変わる、話題があるから変わるというようなことがあってはならないというふうに、私も当然のことながら思っております。

 それで、学校現場における指導について、当然のことながら、教育法第十一条において、校長及び教員は、教育上必要があると認めたときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒に懲戒を加えることができる、ただし、体罰を加えてはならない、こうなっているわけであります。ということは、一定の行為について、懲戒として認められている部分もある、こういうことであろうと思います。

 そこで、懲戒と体罰の違いについて、先ほど申し上げたようになかなか難しいのかもしれないんですが、どこまでの範囲が懲戒で、どこからが体罰となるのか、確認の意味で具体的な判断基準を教えていただきたいと思います。

 そしてまた、文科省が行っている全国調査が、この体罰と懲戒の違いを踏まえた内容となっているのかどうか、これもあわせてお伺いをいたしたいと思います。

義家大臣政務官 お答えいたします。

 懲戒については、学校教育法において、校長及び教員が教育上必要があるときに行うことが認められている、教育上の指導の一環でありまして、一方で、児童生徒に肉体的苦痛を与えるものであってはならないという取り決めであります。

 これまで、文部科学省の大臣の定め、施行規則の第二十六条に懲戒について定められているわけですけれども、これは主に、懲戒の場合、退学、停学、訓告等、これは通常の義務教育学校ではできないものとして掲げられており、また、では法的効力の伴わない懲戒とは何なのかというと、その解説書でも、単に叱ったり、授業中一定の時間立たせるなどというような、この程度の解説しかなかった中で、どこまでが懲戒の範囲内なのかということを、教育現場の中では実践に基づいた肌感覚でというようなところも部分的にあったかのように思います。

 このたび、これについて整理した通知を出しましたが、具体的にはこのようなものが懲戒の範囲であるという形で、注意、叱責、居残り、別室指導、起立、宿題、清掃、学校当番の割り当て、文書指導、このような具体的例を示したところであります。

 一方、体罰は、懲戒のうち、その内容が身体的性質のもの。すなわち、身体に対する侵害を内容としているもの。具体的には殴る、蹴る等です。それと児童生徒に肉体的苦痛を与えるようなもの。具体的には正座とか直立等特定の姿勢を長時間にわたって保持させる行為、これが体罰に当たる線引きであるということを明確に発出しています。

 平成十九年二月の通知によって示したものでありまして、体罰の調査に当たっても、各学校、教育委員会は、この考え方に即した調査結果を報告いただくものと考えております。

寺島分科員 ありがとうございます。

 お聞きしますと、私なんか、小さいころ、しょっちゅう懲戒をもらっていたような気がするわけでありますけれども、体罰と懲戒の違いというのは結構微妙なんだなという部分も理解をいたしたわけであります。

 そこで、これは日ごろ考えることでありますが、懲戒というのは恐らく教育の一環として行われるんだろう。私どもも、小さいときによく立たされたり、バケツを持って立たされたり、いろいろしましたから、今思えば、先生がいろいろなことを教えてくれるんだなという意味で、教育の一環なんだろうというふうに私は理解をするわけでありますが、ただ、懲戒によらない指導というのが本当は一番大事なのかなというふうに思っています。

 そういう中で、承りたいんですが、懲戒によらない児童生徒への指導のあり方についてであります。

 一定の範囲で教育上必要な懲戒が認められているということでありまして、逆に、場合によっては教師も毅然たる態度で指導を行う場合もあるんだろう、それもある意味で私は重要なことだろうというふうに思います。

 私は、安易に懲戒に頼るような教育であってはいけないということが前提にあるわけであります。そのためには、やはりお互いを認め合うような寛容さでありますとか、自分が、私たちが、生きているのではなくてむしろ生かされているんだよ、家族や周りの人や社会や自然の恵みによって生かされているんだよというような認識をきちんと持つというか、そういう価値観を醸成できるような子供を、親も含めてでありますけれども、育む教育を日ごろから積み重ねていくということが、結果において、この次の質問にも関係ありますけれども、不登校だとか体罰だとかそういうことを減少させる大きな要因だろう、私はこんなふうにも実は思っているわけであります。

 そんなことを踏まえて、このような児童生徒の指導により、懲戒によらないで児童生徒への教育を行うことが大事だと思っておりますので、そこで、下村大臣の御見解をお聞かせいただければありがたいというふうに思います。

下村国務大臣 教育の目的は人格の陶冶でありますので、究極的な教育が達成されたとき、一人一人がすぐれた人格を陶冶する、そういう人物になり得る、そのための教育だというふうに思います。

 ですから、委員が御指摘のように、確かに懲戒によらない教育ができれば、それは本当にベストの状況だというふうに思いますが、なかなか……。

 そもそも教育は、子供は天使の心を持っているところもありますが、一方で悪魔のような心を持っている部分もあって、子供だけじゃありませんが、大人もそうですけれども、それをいかにコントロールするかということになると、私の立場から、例えば懲戒ももしだめだということになったら、教師としては現実的な指導において相当混乱するし、教育における統制がきかない部分もあるでしょうから、そういう意味で、文部科学省としては、懲戒は認める、しかし体罰は認めないという線引きをしているわけでございます。

 しかし、懲戒は、教育上の必要が認められる場合に児童生徒を叱責処分するということであって、制裁の性格を持つものでありますから、教育的配慮のもとに行わなければならないという配慮はやはりすべきことだと思います。

寺島分科員 わかります。わかりますが、ちょっと私の言い回しが悪かったのかどうかわからないんですけれども、懲戒が全ていけないと言っているわけではない、僕がそう思っているわけではないんです。

 例えば何かあって懲戒をいただいたときに、その児童生徒が、やはり、怒られて自分が悪いんだ、こういうふうにしっかり思うことが多分大事なことだと思うんです。それが改善につながっていく。その前段として、日ごろから先生との触れ合いの中で、そうした先ほど前段で申し上げたような価値観の醸成を日ごろから積み重ねておけば、恐らくそういう先生のお叱りをいただいたときに、ああ、僕、怒られているんだな、直さなきゃいけないんだなと思うことが効果のある懲戒だと思うんですね。そういう意味で申し上げたので、ちょっと言い方が悪かったのかもしれないんですけれども、失礼をいたしました。

 そうなりますと、では、先生方にどういう指導をしていったらいいんだ、研修していただいたらいいんだというようなことに相なるんだろうというふうに思います。

 もちろん、体罰はいけないことで、体罰の防止には、当然のことながら教育委員会において研修であるとか教員向けの指導資料などの作成が行われて、やっていらっしゃると思うんですが、特定の教員が抱え込んだりすることのないような組織的な指導というものを徹底することが大事なのかなというふうに思っています。

 そこで、文科省において三月十三日に体罰禁止を徹底する通知を出したと聞いておりますが、今後における体罰防止のための教員への指導、研修の充実についてお伺いをいたしたいと思います。

義家大臣政務官 お答えいたします。

 まず、体罰の防止については、児童生徒と向き合って教育ができる指導力、それから教員の服務規律の確保、この両方が必要であろうと考えております。

 例えば、先生御地元の長野県などにおいては、体罰根絶のためのセルフチェックシート等も配付されながら、どのような指導、そして信頼関係を生徒たちと醸成していくかということの後押しを教育行政の方でも行っておりますが、文部科学省としましては、本年三月十三日に発出した通知においては、教員等は、指導に当たって、先ほど委員からの御指摘そのものですが、児童生徒との信頼関係を築くことがまず重要であると。

 先ほどの御質問のように、懲戒しても懲戒されたことさえ理解していないようでは、これは指導の意味が全くなくなってしまう。その前提としての信頼関係が大切であり、日ごろみずからの指導のあり方を見直し、指導力の向上に取り組むこと。さらには、児童生徒の規範意識や社会性の育成を図るよう、決して体罰によることなく、粘り強い指導が必要であることを指導しているものであります。

 加えまして、学校教職員向けの生徒指導の参考資料の作成、配付と教員の資質向上を図るための支援を行っておるところでありますが、突き詰めれば、委員が何度も御指摘いただいている、やはり生徒との信頼関係、ここに最後はたどり着くところであろう。その意味でも、教師と生徒の教室における、あるいは特別活動における関係性、これをしっかりと深めていくような支援を行ってまいりたいと思っております。

寺島分科員 そうなりますと、お話をいただいたように、児童生徒と教師が向き合う、触れ合う時間をたくさん持たないかぬ、こういうことになるのかなと思っています。

 そうなると、教職員定数の改善はどうなんだ、こういうふうになってくるんだろうというふうに思います。学校の先生も、聞くと、会議、会議で忙しくてなかなかみたいな話も聞くわけでありまして、体罰とか不登校とかいろいろな諸問題を解決するためには、本来、教員の指導を充実させなければならないという観点から、先ほどお話しのように、本当に先生との信頼関係を醸成するためにも、教職員の定数の改善ということが大事だろうと思います。

 民主党は、御案内のように、教員確保に力を入れてきたわけでありまして、四十人学級から三十五人学級へということでありまして、一年生については法律で決めましたけれども、二年生については予算措置をした、こういうことであります。

 そこで、教員の定数改善に向けてのお考えをお伺いします。

義家大臣政務官 お答えいたします。

 三十五人以下学級、つまり、教師の数をしっかりとふやし、多様化する生徒たちに向き合う体制を整えていこうという考え方は、まさに共有するものであります。

 とはいえ、一方で、現在、小学校の平均学級数二十四・五人、中学校の平均学級数二十八・六人というような状況にあります。また、単に数をふやすのではなくて、そのふやされた人たちがどのような役割を担っていくか、そしてどのような質を担保していくかということも議論の中の非常に重要なことであろうと思います。

 私も教育現場出身、高校の教師でございましたが、よく、生徒と向き合う時間がないという声を聞きますが、教師は、基本的に一時間目から六時間目までずっと授業をしているわけですから、少なくとも授業においては生徒と向き合っているわけですね。問題は、個別具体の問題案件や悩みの案件についてじっくりと向き合ってあげる時間がなかなかとれないという実情の声、これは全くもって肌で理解するところであります。

 その上で、例えば生徒の問題行動など、生徒指導上の課題が多い学校については児童生徒支援加配等も行っておりますし、これは生徒指導に一定程度専念できるような教師の加配ですけれども、例えば平成二十五年度の予算では七千八百七十七人を手当てしているところであります。

 どの部分にどのような支援が必要であるのか、これはトータルとして、委員の意見もしっかりと踏まえながら進めてまいりたいと思っております。

寺島分科員 ぜひ積極的にお願いをしたいということを要望しておきます。特に、お話がありましたけれども、先生の役割分担ということも大事だろうというふうに思っています。

 時間があれですので、次に参ります。不登校問題についてであります。

 平成二十三年度児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査によりますと、小中学校における不登校児童生徒は、全国で小学校が二万二千六百二十二人、中学校が九万四千八百三十六人、合計十一万七千四百五十八人となっております。我が長野県におきましても、小学校で四百三十四人、中学校が千六百八十二人、合計で二千百十六人、こうなっているわけでございます。長野県も全国劣らず不登校の子を結構抱えているんだろうというふうに理解をいたしておるわけであります。

 大変地元のことで恐縮でありますけれども、そうした中、一つ御紹介をしたいわけでありますが、私の長野県の佐久市において、ある小学校の例であるわけでありますが、教育プラットホームという取り組みをしております。不登校問題への対応として、佐久市の望月の地域において、もちづきっ子学びの支援隊として、望月教育プラットホームを平成十七年三月に設立いたしまして、活動をしております。学校、保護者、地域の全員が学び合い、協力し合い、力を合わせて、地域の宝である子供のよい育ちを願って、いろいろな具体的な取り組みをいたしております。

 先ほど議論にありました、大臣からも、教育はエデュケーション、引き出すというようなお話もいただきました。まさに引き出す教育ということも大事でありますし、また、お互いが学び合う、お互いを理解し、お互いの気持ちをわかり合った上で教育を進めるということもまた大切ではないのか。

 そして、実は、この取り組みは六年になるわけですが、不登校はこの学校はゼロなんです。六年間ゼロ。まさに希有なことでございまして、この取り組みは、ある意味で、私は、本当にすばらしい取り組みをしてくれているのかなというふうに思っていまして、そうした実績の成果として、この望月教育プラットホームといういろいろな、さまざまな取り組みの成果として、小中学校が落ちつきを穏やかに取り戻して、少し中学なんかは荒れていたわけでありますけれども、そういう学び合いによって不登校児童生徒が中学でも激減をしたというふうに聞いておるわけであります。

 地域における住民と学校とのオープンな触れ合いでありまして、このような取り組みに見られるように、学校と家庭と地域社会とが連携協力をして不登校問題の解決に当たるというのはまさに重要なことであろうというふうに思っています。

 文部科学省におきましては、このようなすぐれた取り組みだというふうに思いますが、聞きますと、韓国から二回も視察にも来ているということでありまして、こういう取り組みを広げていくことも国として必要なのかな、こんなふうに思います。そこで、この取り組みに対する御所見と、不登校問題の解決に向けた国の対応について、大臣の見解をお伺いしたいというふうに思います。

下村国務大臣 望月教育プラットホームは、平成十七年三月、長野県佐久市望月地区において、地域の教育の発展に寄与するとともに、子供の安全と健全な育ちを支援するために設立された団体であり、地域の学校に対する授業改革の支援や子供の安全支援などの活動を行っているというふうに承知をしております。

 不登校を初めとする生徒指導上の問題への対応に当たっては、学校と家庭、地域、関係機関との連携が重要であり、その点で参考になるのではないかというふうに思います。

 ただ、先生から御質問があって、文部省でさらに参考にしたいと思って、望月中学校の方に確認をしましたら、確かに、最初のころは不登校児が二十人から二十二人だったそうでありますが、最近の調査では、学校の調査ですと、ゼロではなくて、二十四年度が六名、二十五年度が現在七名となっているということだそうですが……(寺島分科員「中学、それは」と呼ぶ)中学校です。(寺島分科員「小学校。小学校はゼロです」と呼ぶ)先ほど小学校はゼロと申されたのですか。そうですか。

萩生田主査 寺島君、指名をされてから発言してください。

下村国務大臣 いずれにしても、効果があるということだと思います。不登校を初めとする生徒指導上の問題への対応に当たって、しっかり参考にする必要があると思います。

 また、御指摘があったように、二十三年度の国公私立の小中学校における不登校児、生徒数は約十一万七千と依然としてかなりの数でございまして、教育上の大きな課題であります。

 不登校への対応については、これまで、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等の配置の拡充による教育相談体制の充実、二番目に、不登校児童生徒の学校復帰に向けた指導、支援を行う教育支援センター、これは適応指導教室でありますけれども、これの充実を初め、不登校等の対応策についての実践的調査研究を支援する取り組みの推進を図ってきたところでございます。

 また、現在、不登校生徒に関する追跡調査を実施しており、平成二十五年度においては、結果の取りまとめ、分析を行った上で、不登校の児童生徒に対するより効果のある支援策を検討する予定でございます。

 文部科学省としては、これらの取り組み等を通じて、不登校児童生徒の学校復帰や社会的自立に向けた適切な支援を行ってまいりたいと思います。

寺島分科員 委員長、済みません、失礼しました。

 済みません、望月小学校が不登校ゼロなんですね。

 それで、オープン教室でございまして、きょうみたいなこういう机で勉強するのが大体僕らも普通ですけれども、そこは、コの字型で、グループに分けて、お互いが学び合うことによって、お互いの気持ちを分かち合えてという活動をずっとしていて、その結果、本当にいい成果を出している小学校なので、ぜひもう一度よくお調べいただいて、参考になればというふうに思っております。

 済みません、時間がありませんので、次に参ります。

 最後に、文化芸術振興策についてであります。

 平成十三年、文化芸術振興基本法が制定をされているわけです。政府は、この法律に基づきまして、平成十四年以降に、文化芸術の振興に関する基本的な方針を策定されておられます。平成二十三年に閣議決定をされました第三次文化芸術に関する基本方針に基づいて、文化芸術立国を目指して、文化芸術の振興が進められているわけでございます。

 そこで、お伺いするわけでありますが、第三次の基本方針、社会を挙げて文化芸術振興をしていくんだ、こういうことが一つにあるわけであります。

 例えば、これもまたローカルで失礼ですが、私の地元の上田市におきましては、文化の薫る創造都市を目指してとの理念のもとで、平成二十六年のオープンを目指して、文化施設の整備を進めております。これからの世の中は、物の豊かさから、物ももちろん大事なんですけれども、心の豊かさを求めていく時代ではないかということを基本理念として私も持っていますし、その市長も友人でありますので、この間お話をしましたら、全く価値観が同じであるわけでありまして、そういった意味からも、地域の文化交流施設を中核として文化交流を図って、心の豊かさを醸成していくことが大事であろうというふうに思っております。

 国としても、このような地方における文化芸術振興の取り組みに対し、最大限の支援を行う必要があると考えますが、所見をお伺いいたします。

谷川副大臣 お答えします。

 世界を挙げて、すさまじい、いわば生産性を高める競争をしているんですが、そうすると、どうしても、合理化してコンピューターを入れ、ロボットを入れると、人が余ってきます。そういう意味では、失業というのは先進国の病だと僕は思っております。

 そういう意味で、どうしても、今までなかった、心を耕す仕事をぜひ広げていきたい。そういう意味では、国民がその居住する地域にかかわらず、文化芸術を鑑賞し、参加し、創造する機会を確保することは、非常に重要であります。

 また、地方における文化振興は、観光振興や地域活性化に大きな効果も発揮するものであります。

 このため、文部科学省では、音楽祭や美術展の開催等、地方公共団体が行う地域活動の取り組みを支援する「地域発・文化芸術創造発信イニシアチブ」、獅子舞や虎舞のような地域に伝わる伝統芸能の振興のため、後継者養成や用具の修理等を通じて地域を支援する、文化遺産を活かした地域活性化事業等を通じて、地方における文化芸術振興を支援しているところであります。

 今後とも、地方自治体と連携を図り、地方における文化振興に努めてまいりたいと思っております。

寺島分科員 ありがとうございます。

 時間がありませんので、一つ質問を飛ばさせていただきます。大変恐縮でございます。

 大臣に最後お伺いをいたしたいわけでありますが、となりますと、文化振興予算、簡単に言うと、もっとちゃんとやった方がいいんじゃないか、こういう話がございまして、二十五年度予算案では一千三十三億円計上されたということで、過去最高額と言っていますけれども、御案内のとおりの最高額であるわけでありまして、ほかの先進国から見れば、そんなにはないと。

 ちょっと余計なことなんですけれども、寄附ということも僕は大事だと思うんですね。日本の制度は、寄附をすると税金がかかるみたいな世界で、税制もちゃんと見直していかなければならないのかななんて思っているわけであります。

 それはちょっと余談といたしまして、国際的に見ても、例えば、二〇一二年をとれば、フランスの予算は国家予算に対して一・〇六%、ドイツが〇・三九%、日本は〇・一一%、こうなっているわけであります。

 文化芸術立国を目指す、こういうふうに高らかにうたっておられて、とてもすばらしいし、先ほど、心を耕すという答弁もいただきまして、心丈夫なわけであります。

 そうした観点からも、文化産業、文化予算の大幅な増額というのがある意味では大事なのかな、こんなふうに私は思っているわけでありますが、大臣の御見解をお伺いします。

下村国務大臣 御指摘のように、平成二十五年度の文化庁予算は一千三十三億円、過去最高額、対前年度比一億円ちょっとでありますが、しかし、ここずっと一億円程度ちょっとふやしていったところでありまして、本当の文化芸術立国ということであれば、予算はまだまだ全く足らないというふうに思います。

 これから、安倍内閣の中で、経済再生とともに教育再生、その中には文化芸術立国、この大幅な予算を計上することによって国民に心の豊かさを提供するという意味では大変重要なことであるというふうに思っておりますし、ぜひ二十六年度以降、大幅な予算が獲得できるように、御支援をよろしくお願い申し上げ、その先頭に立って頑張りたいと思います。

寺島分科員 ありがとうございました。

萩生田主査 これにて寺島義幸君の質疑は終了いたしました。

 次に、新原秀人君。

新原分科員 ありがとうございます。

 それでは、本日は、ゆとり教育を脱却し、今後の教育ということでお聞きしたいと思います。

 まず、ゆとり教育を脱却し、いわゆる次の新しい教育に向かっていると聞いていますけれども、現場ではまだゆとり教育の余波が残っているといいますか、まだイメージ的に、競争させない、競争は悪だというような、そういった、まだちょっと現場では残っているような雰囲気なんですけれども、そういった点、ゆとり教育は既に脱却されたと、まず大ざっぱに、どのように思われておるでしょう。

    〔主査退席、あかま主査代理着席〕

下村国務大臣 委員御指摘のように、現場はまだ具体的にそこまで意識が進んでいない部分があるというふうに思います。

 ただ、ゆとり教育がやはり緩み教育になってしまっているのではないか。象徴的な例が、今お話ありましたが、例えば運動会でも順位をつけないということ自体、やはり極端である。一人一人の個性があるように、当然、教育によって違いがあっても当然だし、一人一人の能力をいかに伸ばすかという意味で、ゆとり教育からの脱却といいますか緩み教育からの脱却、これは現場でも意識としてはあるのではないかと思いますし、具体的な学習指導要領等を通じながら、一人一人の個性を伸ばすような教育に早く転換していくような施策を文部科学省が先頭に立ってやっていくことが、今我が国の教育界において必要なことだと考えております。

新原分科員 ありがとうございます。

 私もそのように考えていまして、やはり子供たちに競争はさせていかなければならないし、それによって切磋琢磨して子供たちはそれぞれ自分の得意な分野で伸びていくと思っています。算数、国語、英語だけが彼らのいわゆる特色、彼らの能力ではなくて、もちろん体育なり、音楽なり、美術なりも彼らにとってすばらしい能力なので、そういったこともやはり区別なく、差別のないような形で認めていってあげなければならないと思います。

 そういった中で、これは新聞報道ですけれども、東京大学でも推薦入試を認めるような方向をされているということであります。私の個人的な意見ではありますけれども、例えば北島康介選手なんというのは、勉強する時間を削ってまで、オリンピックの水泳で一生懸命練習していた。そういった方が今度勉強したいといったときに、やはりある程度、もちろんセンター試験はある程度点数はとらないといけないと思いますけれども、そういった音楽なりスポーツなり、そういった方が東大とかに入りやすくなる。もちろん卒業する努力が必要だと思いますけれども、門戸についてはそういった形で認めていくことが、いわゆる四教科、五教科と、それからいわゆる体育、音楽、そういう芸術やスポーツの能力についての差を、やはり垣根を取っていくことかなと思っているので、ぜひとも東京大学の方でもそういった推薦入試というのもやはり徐々に取り入れていただきたいな、いい方向であるなと、私はそういった報道では感じております。

 そういった中で、ゆとり教育以来掲げられていました、生きる力というふうにあるんですけれども、その生きる力と、そういった学力とか競争とかいうところとは、非常に、余り連想しにくい。生きるのと、頑張るといいますけれども、生きるというと、ただ何か生きていくというようなイメージがあるんですけれども、そのあたりの定義なりニュアンス的にはどのように大臣はお考えになりますか。

下村国務大臣 まず、東大入試は、もうおっしゃるとおりだと思います。我が国のように、学力だけの一発勝負の入学試験をしている国は、もうほとんどありません。ぜひトータル的な意味で入学試験制度も考えていくべきときに来ているのではないかというふうに思いますし、東大入試のあり方については、文部科学省もぜひ応援したいというふうに思っております。

 そして、文部科学省が掲げる生きる力、それから学力とは何かということですが、学習指導要領が目指す生きる力は、確かな学力、豊かな心、健やかな体という知徳体のバランスのとれた力というふうに定義づけております。

 今後の変化の激しい社会においては、特に、みずから課題を発見し解決する力、他者と協働するためのコミュニケーション能力、物事を多様な観点から論理的に考察する力などを生涯にわたって高めることが重要であると考えられます。

 このため、新学習指導要領においては、確かな学力として、一つには、基礎的、基本的な知識及び技能、二つ目に、知識、技能を活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力等、三つ目に、主体的に学習に取り組む態度の育成を特に重視しているところでございまして、それが生きる力、また確かな学力の定義であります。

新原分科員 ありがとうございます。

 私もそのように、生きる力ということ自体のニュアンスはちょっとわかりにくいんですけれども、その考え方なりについては私も同感いたしまして、やはり頭がよいだけでは社会では生きていけないということが、結構昔に比べてそういったことが社会にすごく理解されてくるようになりまして、やはり学歴だけでは会社も採ってくれないというふうな、そういったことは非常によい方向に向かっていると僕は思います。

 そういった中で、今言ったように、社会で生きていく力を根本的に身につけていくという方向で生きる力ということは、非常に今のニュアンスではいいと思います。ただ、生きる力という言葉自体、漠然として、私にはちょっとわかりにくいなというふうには個人的には思っています。

 そういった、社会で生きていく、個人として学校を卒業して一人で生きていける、そういった力をやはり若い学校の教育の間から磨いていかなければならないと思いますし、そういった方向で生きる力という本来の力を磨いていただきたいと思います。

 そういった中で、四月八日に自民党さんの成長戦略に資するグローバル人材育成部会というところで提言されていた目標というのがありますけれども、言ってみたら非常にすばらしいといいますか、かなりいい、すばらしい目標なんですけれども、本当にこのようなことを文科省としてもやっていく方向なのか、その辺のお気持ちをお聞かせいただきたい。

    〔あかま主査代理退席、主査着席〕

下村国務大臣 御指摘の自民党教育再生実行本部の成長戦略に資するグローバル人材育成部会の提言については、その目標を含め、同党における議論の成果としてまとめられたものと承知をしております。

 成長に資するグローバル人材育成のためには、大学の国際通用性や学生の語学力向上を図ることが重要であります。この提言は、欧米の大学院入学レベルの英語力を有した学生を一定数輩出するという与党としての強い意欲を示すものというふうに受けとめております。

 この提言を真摯に受けとめ、教育再生実行会議などにおける議論も踏まえつつ、実効性のある施策を推進してまいりたいと考えております。

新原分科員 ありがとうございます。

 こういった今の時代に、我々が生きていた時代よりも本当にグローバルといいますか、世界が日本に対して非常に近くなってきたというか、世界に出ていかなければ、日本という国は今後伸びていかないと思います。もちろん英語、アジアでいったら中国語なりも非常に必要な時代になっておりますので、本当に我々の時代よりもそういったことを文科省として積極的にやっていただいて、海外の大学そして企業に日本人が頑張って就職し、頑張って上がっていくといったことをやっていかなければ。今、日本が世界からちょっと孤立しつつあるというのは、やはり英語力、一生懸命やってこなかった。東アジアの国でも伸びている中国、韓国にしても、やはり英語教育ということを非常に一生懸命やってきたと思います。

 だから、こういった方向で英語教育、そしてタブレット等についてIT教育、そういったことをやっていくこと自体がまさに今後の子供たちに世界で生きる力を与えることだと思いますので、ぜひともそういったことを、もちろんお金はかかると思いますけれども、そういったお金はどんどん使っていくべきお金だと思いますので、頑張って進めていただきたいと思います。

 次の質問に移りますけれども、そういった中で、義務教育という問題についてちょっとお聞きしたいんです。

 義務教育というのは、僕自身はこう思っているんです。どんな御家庭に生まれても、どんな地域に生まれても平等の教育を受ける、そういったシステムであり、そういった権利が子供たちにある、それが義務教育だと思うんですね。

 だから、そういった意味で、日本全国、どこの地域に生まれても、どのような家庭に生まれても、もちろん地方に行くと東大に行く人は少ないですけれども、そういったところからも輩出されてきたり、本当に貧しい家庭の方からもそういったいい大学に行くような方も今まで出てきた。

 そういった中で私が懸念していますのは、土曜日の授業というのを何か条例で決めればできるようなシステムに今なっています。土曜日の授業を条例で決めて、例えば東京、福岡等はもう始めていますし、私は兵庫県神戸ですけれども、そういった話はしていません。つまり、神戸で生まれた子と東京や福岡で生まれた子と授業日数が違うということは、これは義務教育という方向、義務教育というシステムから逸脱していく方向ではないかと非常に懸念します。

 だから、どうせするんだったら、全国的に始めていかなければならないと思います。なぜなら、小中高は県の区割りを出て受験することはなかなかないですけれども、大学に行くと、県の区割りを越えて、もちろん、どこに行くかわからないような受験になります。

 だから、生まれた地域によって差が出るような懸念のある今のシステムといいますか、条例で決めればできるというのはちょっといかがなものかと思うんですけれども、その点、大臣のお考え方をよろしくお願いします。

布村政府参考人 お答えいたします。

 義務教育につきましては、先生御指摘のとおり、国で九年間の義務教育を制度化しております。

 教育全般はもとより、特に義務教育において国の責務として、教育の機会均等、それから一定の教育水準の維持確保という観点から学習指導要領というものを定めて、それで一定の授業日数、授業時数を確保していくことということを全国的な共通の基準とさせていただいており、その上で、各地域地域の地方公共団体におかれまして、地域の特性に応じた創意工夫を重ねていただく、そういう制度になっているというふうに考えております。

 その中で、土曜日の授業につきましても、現在の学校週五日制ということを前提に、その趣旨を生かしながら、土曜日に当たって、地域の大人の方々あるいは保護者の方々の御参画をいただいて、体験的な活動あるいは地域を調べる学習など、それぞれの特性を生かしながら土曜日を活用しようという取り組みが、先ほど先生からも御指摘がありましたように、東京都を初め幾つかの都道府県でスタートしているところでございます。

 そのような取り組みが土曜日のより有効な活用になり、学校教育活動全体につきましても意義があるのかどうかということを、文部科学省としても、各都道府県の動きを受けとめ、この三月から省内に検討チームをつくり、既に先進的な取り組みを行っていただいている都道府県あるいは市町村の教育委員会から実施状況をお伺いさせていただきながら、今後、土曜日を活用した教育活動の情報の収集を経て、課題の整理を今しようとしているところでございます。

 引き続き、土曜授業の推進に向けた国としての検討をまず今進めているところでございますので、今後そのような方向で、都道府県、市町村の実態も把握しながら、検討を重ねていこうとしているところでございます。

新原分科員 ありがとうございます。私もそのように思います。

 ゆとり教育のときに学習指導要領をかなり削減したはずなんですよね。今、ゆとり教育を脱却して、指導要領をふやして勉強することをふやした。つまり、授業数が足らんのちゃうかと思うんですね。それならば、月一回でもいいから土曜日を復活させて、いわゆる授業数をふやしてやっていくことでないと、逆に、今までの時間内に、学習指導要領がふえて、つまりそれを詰め込もうとすると、子供の落ちこぼしといいますか、落ちこぼれと言ったらだめですね、こちら側が落ちこぼしてしまうということなので、落ちこぼしの生徒をつくってしまうことにならないかと私はすごく懸念しております。

 だから、土曜日の授業をやはり今後もう一度検討していくべきではないか。それによって、授業数がふえることによって、言ってみれば、ちょっと成績がついていけない、そういった子のフォローもできますし、塾に行く必要もない子も少しはふえるかもしれない。だから、そういった意味でも、今の子育てしているお父さん、お母さんにとっても、土曜日の授業、いろいろな方にお聞きすると、それは本当に助かるわと言われております。

 そういった中で、土曜日の授業がなくなってから、スポーツも音楽も美術も、まあ美術もいろいろあるんですけれども、そういったことをできるという意味では、オリンピックで通用する選手なりもふえてきて、そういった意味もあると思うんですよね。だから、全部の土曜日やっていくのがいいのか、一日か二日、土曜日授業を復活するのがいいのか、やはりそういった選択をできることも考えていかなければいけないと思っています。そういう意味での、よきゆとりというものはやはり求めていかなければならないと思いますし、そういった面で検討していただきたい。

 そういった中で、一番課題が残るのは、ほな先生の勤務時間はどうなるねんということを、いろいろ皆さん言われるといいますか懸念されていますけれども、私は、昔みたいに、夏休みやったら夏休みに当番で来てもらって。子供が来ていない職員室で、もちろん研修とかもあるんですけれども、皆さんが週五日座っている、先生方が座っているということ自体に僕は違和感を感じます。それやったら、バケーションをとってもらって、その分、週一日土曜日に出ていただいて、夏休みは交代で、休みをちょっと多くとってもらえばいいのではないかなと思います。

 だから、土曜日の授業をふやすことによって、何か今のいわゆる条例のシステムでは、どうしても先生のそういった人件費というのは高くなってしまうので、そういったこともお金をかけずに工夫をすれば何とかなるのではないかなと思っておりますので、その辺も含めて御検討をいただけましたらと思います。

 そういった中で、次に移らせてもらいますけれども、もう一点、土曜日の授業に関連して。

 授業数が足らないということの実例として、どうしても運動会それから音楽会前になると、言ってみたら授業をかえて、音楽会や運動会の練習をするんですよね。その中で一番最初に削られるのは何かというと道徳とか。一番多いのは道徳なんですよね。

 今のこの世の中を見ていまして、ゆとり教育というのは競争させないで、それ自体が何か道徳教育みたいな、考え方がそうみたいな感じでなっていましたけれども、僕自身は、やはり子供たちは競争して、ある程度、その中でもどうしてもできない子供がいる、それをやはり強き者が弱き者を守るという、セーフティーネットという意味での道徳教育ということはしっかり、今後、ゆとり教育を脱却する意味でも、していかないといけないと思います。

 だから、そういった意味でも、授業数をふやすということをやはり考えていかなければならないと思いますけれども、その点、もし大臣、何かありましたら。

下村国務大臣 おっしゃるとおり、ゆとり教育ということで、我々が子供のころから比べるとトータル的に三割削減されて、そしてゆとり教育からの脱却ということで一割はさらにふえました。教科書でいうと一五%ぐらいは実際ふえましたが、しかし、かつてのときから比べるとやはりまだ足らないわけですね。そのために土曜授業等の復活も必要ではないかという視点で、今お答えがありましたように、省内で検討チームをつくっているところでございます。

 世界はもっともっと厳しいグローバル社会の中で、よくも悪くも過酷な競争原理の中で、今人類は直面している中、日本だけが一国鎖国主義のような形で何の競争もしないで生き残っていけるかというと、そんなことはないわけです。日本社会そのものもそうなっているわけですね。ですから、子供たちにおいても、日本社会の中で、つまり学校を卒業して以降もそれぞれの分野でそれぞれの能力を生かしながらたくましく生きていけるための教育をきちっと身につけさせてあげるということは当然必要なことだというふうに思います。

 ただただ詰め込みの、意味のない過酷な競争原理ということは排すべきだというふうに思いますが、しかし、一人一人が本来持っている能力をもっともっと引き出すための教育をきちっと子供たちに提供する、そしてその中でたくましく育てていく、育っていくような環境をつくっていく、これは我が国の今後の教育のあり方として絶対必要なことであるというふうに考えております。

新原分科員 大臣、ありがとうございます。

 そうですね。生きる力じゃなくて、たくましく生きる力を、そのように僕もつくっていただきたいと思うんですね。たくましくという言葉が非常に何か死語になるというか、昔、ハムの宣伝で、わんぱくでもいい、たくましく育てという、ああいう時代から、今は何かゆとりという形になっていますので、たくましく育つ力ということをもっと意識して、文科省としても頑張っていただきたいと思います。

 そういった中で、我々日本維新の会は、地方分権ということで、言ってみたら道州制をしていこうという考えでございますけれども、しかし、義務教育という点から考えると、やはり国が一つの方向性を持ってするところと、そして現場、道州制で、いわゆるそこの地域でやっていくことと、分けて考えないといけないと思います。

 だから、学習指導要領等についても、きっちりしたことについてはやはり全国統一でそれはどんとやっていかないと、先ほどの私の話にもありましたけれども、義務教育というのはどの地域に生まれても、どんな家庭に生まれても平等に受ける、そういった権利がある、子供たちをそういうふうに教育していくということが今までの日本を僕は伸ばしてきたと思うんですね。つまり、生まれてきた子供たちには平等のチャンスを与える。だから、そういった意味でも、やはり義務教育という押さえるところは、国がある程度放してはならないところだと思うんですね。言ってみたら、これは地方分権には僕はそぐわないことだと思います。

 だから、そういった考え方、今、教育委員会等の問題も含めてありますけれども、国が引っ張っていく、文科省が引っ張っていくところはどおんと引っ張っていってもらって、その中で、道州制の中で必要なところ、いろいろなことについて、現場の話ですよね、それは人事のことになるのかどういったことになるのかわからないですけれども、いわゆる一本筋の通った考え方等については国がやはり手放すべきではないと思いますし、国がやっていかなければならない。

 その点、どのようにお考えですか。

下村国務大臣 自民党の道州制の基本法案の中にも、実は義務教育の位置づけは明確に述べられておりません。維新の会でもどれぐらいのことが述べられているかどうか、私、承知しておりませんが、ぜひ維新の会においても、道州制議論の中で義務教育のあり方については御議論していただきたいと思います。

 今御指摘がありましたが、義務教育というのは憲法でも明記されていることでありますし、国が責任を持つべきことだというふうに思います。そのために、予算の問題、それから、全国津々浦々、教育レベルを一定水準以上確保するための学習指導要領等、明確に遵守をしてもらう必要もあるというふうに思いますし、地域間格差が義務教育における格差になってはならないと思いますので、そういう意味では国がしっかり責任を持つ必要があると思います。

 ただ、人事となると、今、都道府県は県費負担ということになるわけですし、また、国庫負担といっても実際は三分の一でありますから、ではこれを全額に戻すのか、それから人事は国家公務員にするのかということについては、道州制の中でまだ明確な議論になっていないというふうに思うんですね。

 これはぜひ御党においても積極的な議論をしていただきたいと思いますが、まず、文部科学省が守るべきものとしては、やはりきちっと、予算については地域間格差をつけない、それから、教育におけるそういう学習指導要領等、基準は明確に守っていただく、また、学力差もつかないような一定レベルのバックアップはする。その上で、それぞれの自治体が、これは今の義務教育における地方自治法の中の位置づけでありますので、教員の問題、それから設置主体は市町村ですから、これについては、では全て国立でいいのかということになると、これはいろいろな議論があるということでありますから、道州制の中でも積極的に国会の中でぜひ御議論をしていただきたいと思います。

 文部科学省は、とにかく国がやるべきことは最低限守る、そして維持するという姿勢で臨みたいと思います。

新原分科員 ありがとうございます。

 我々も、そういったことを、道州制でやるべきことと国がやるべきこととはやはり違うので、そういった中での義務教育ということは、まさに義務教育のいわゆる指導要領等についてはもう国がやっていかなければならないと思っています。教育委員会等、それからいわゆるそういう人員等については、そこまでするとやはり国が今度は大きくなり過ぎますので、その辺も含めて、今後党に持ち帰って議論させていただいて、日本のすばらしいこの義務教育ということを、守るところは守っていかなければならないと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。

 以上で終わります。ありがとうございました。

萩生田主査 これにて新原秀人君の質疑は終了いたしました。

 次に、田沼隆志君。

田沼分科員 日本維新の会の田沼隆志でございます。

 大臣とは三度目の質疑でございますが、済みません、しつこくて申しわけないんですけれども、また教育委員会制度でお願いします。

 私の目標は脱自虐史観でございまして、そのためには、この教育委員会改革は何としてもやらねばならないと思っておりますので、この切実なる思いを御容赦、御理解いただき、前向きな御答弁をお願いいたします。

 あと、お配りの手元の資料、このオレンジの資料をお持ちしたんですが、先日の予算委員会で大臣から、ちょっと資料が違うという御指摘でしたので、私がちょっとつくってみたものでございます。イメージの補助で、直接は使いませんので、御理解いただければと思います。

 けさ、教育再生実行会議で提言を総理に提出されたとのことで、大臣も含め、これまでの御苦労に敬意を表させていただき、そもそも大臣、きょうは一日、朝から夜まで、本当に御苦労さまでございます。また、内容としても、教育長に責任を一元化するという点は評価をさせていただきたいと思っております。

 しかしながら、これまで再三私も申し上げているとおり、やはり踏み込みがもう少し欲しいなと。安倍総理が三月二十二日の実行会議で、首長が政策を問い、同意を得ても、実行できないのはおかしいのではないかと素朴に思うという御発言があったと思うんですが、この問題がやはりどこまで解決できているだろうかと思います。

 お手元のこの資料でも、結局、左側に市長の箱がありますけれども、市長が緑の線で選任をしているわけですね、教育委員さん、それから教育長さん。しかし、ここの部分で政治的中立性に過度に、私たちからいえば、過度に配慮をしている結果、行政委員会として独立しているわけですね。となると、「口出し不可」とありますけれども、現行では民意を反映できない仕組みとなっていると思います。それが、本質的には今回の実行会議案でも同様と思うからで、だから踏み込みがもう少しと思うわけでございます。

 恐らく、メンバーの皆さん、大臣も含めてでしょうが、いや、そうじゃないんだ、今回の提言は、首長の意向を教育行政に反映できるんだ、教育長の任命と罷免もあるんだから、民意は反映できるんだという御意見なんだろうなと思うんですけれども、やはりこの実効性がポイントになってくるかと思います。

 まずお尋ねしたいのが、先日の四月十日の私の質疑で、大臣は、首長は教育長の上司に位置づけられるという御答弁だったんですけれども、それで間違いはないでしょうか。

下村国務大臣 現行制度においてですか。(田沼分科員「はい」と呼ぶ)

 現行制度においては、ここにありますように、実際、教育長は教育委員の人たちから選ぶという形ですよね。しかし、実際のところは、首長が教育長を任命しているということですので、実態的には上司だと思います。

田沼分科員 それでは、新制度、今回の実行会議案ではどうでしょうか。

下村国務大臣 新制度については、これは今までも、もう今回三回目でございまして、委員のこの教育委員会にかける情熱には本当に敬意を申し上げたいと思います。

 ただ、今までも何回も発言させていただいておりますが、教育再生実行会議で、きょう総理に提言を提出いたしましたが、ここでは一定の方向性について提言をしていただく。詳細は、来週にでも中教審に、この教育再生実行会議の提言に基づいて、教育委員会の抜本改革についての諮問をいたします。ここで議論をしていただき、年内に答申を受けたら、この法案化に向けて、関係省庁と相談しながら、文部科学省で法律案をつくっていきたいというふうに思っておりますので、きょう教育再生実行会議で提言されたことがそのままそっくり法案化になるかどうかということについては、実態的には中教審で議論していただくということですので、既に結論が出ているというわけではございません。

 それを前提に申し上げたいと思うんですが、きょうの教育再生実行会議の中では、教育長は、現状のように、直接教育委員から選任するということではなくて、首長が教育長を任命する、罷免も教育長に対して首長がすることができる、任命も罷免も同意人事として議会も担保し得るということでございまして、今までとは違って、教育委員から教育長を選ぶということとそれが違うというところでございます。

田沼分科員 了解いたしました。

 その上での、上司に位置づけられるという御答弁もあったのかと思いますけれども、上司という言葉が適切かはあれですけれども、大臣が言われたように、やはり最大の力というのは人事権であろう。人事的な評価ですとか任免ですとか、罷免もそうですね、そういったものがあるからこそ、上司というか、ガバナンスがきくんだと思うんです。

 この新案、これから中教審でさらに詳細設計されるということですけれども、首長が教育長の上司になるならば、当然、人事権も行使することになろうかと思うんですけれども、それも御確認、よろしいでしょうか。

下村国務大臣 首長が教育長を任命するということは、つまり、首長が人事権を持っているということであります。

田沼分科員 了解しました。

 このときに、罷免についてちょっと気になることがありまして、先日の質疑で大臣が、ちょっとぼそっと言う感じだったんですけれども、自分が自信を持って任命した教育長さんを罷免するというのは、本来余り想定されないのではないかという御発言があったと思うんです。

 その辺、微妙なところのようで、重要なことのような気がしまして、といいますのは、罷免を余り想定されないということになると、一歩間違えると、一度任命したら四年間同じ教育長でいくことをある意味前提としているようにも聞こえなくもないわけでございまして、問題もないのに罷免だ罷免だと振り回すのもおかしいですけれども、しかしながら、想定されないということを前提とするのもちょっと行き過ぎのような感じを受けたわけでございます。

 罷免にかかわるのは、一体的に必要になってくるのが人事評価になろうと思うんです。罷免するというのはその理由が必要でしょうし、それは、人事評価、満足できないということだと思うんです。

 御確認させていただきたいのは、任期中に教育長さんに対しての人事評価をするのかしないのかというところはどうでしょう。

下村国務大臣 ぼそっと言ったわけではなくて、教育再生実行会議の中で、ある委員からそういう話が出たという紹介を申し上げました。

 それはもっともな話ではあると私も思うんですね。つまり、首長が、この人こそが教育長としてふさわしく、そこの自治体における教育については責任を持ち得る人だという思いからその人を任命するわけですし、さらに、それは議会における同意人事なわけですね。それだけのことをしていて、実際に、教育の責任者として第一線で依頼したにもかかわらず、途中で罷免せざるを得ないというのは、これは本来、よっぽどのことがない限りはあり得ない話で、普通は、それは例えば刑事事件とか、何らかのそういうふうな問題のときであろう。政策上、やってみたけれども、自分の考え方と違うから罷免するということは基本的にはあり得ない話だろうということが、教育再生実行会議の中で、ある委員からの意見として出たということでございまして、そういうことはあり得る。

 しかし、そういうこともあり得るということで、罷免も置いておいてもいいのではないかということですが、政策上、首長と相反することをするので途中で罷免するというような人を制度上そもそも首長としては選任をしてほしくない、そういう思いはあります。

田沼分科員 よくわかりました。

 ただ、そこがポイントとも私はまだ思っておりまして、この議論でふと思うのが、やはり日銀の総裁人事に関連しての議論でございまして、日本銀行は、一定の独立性を認めつつも、今回初めてでしょうか、共同声明で二%の物価安定目標を設定したわけですけれども、これは、誰が総裁としてふさわしいかということと同時に、総裁として達成してもらいたい目標を設定したというところが非常に画期的であろうと私は思っておりまして、議運での聴取のときも、今回副総裁になられた岩田先生などは、二%できなかったらもう責任をとるということまで言われていたと思うんです。

 こういう可視化というか、目標がはっきり設定されて、それがちゃんとそこに近づいていけているかどうかということをその四年間の任期の中で断続的に見ていく、そういう評価システムというのがやはり同時になければならないのではないかというふうに強く私は思うわけです。それで、先ほど、人事権という話もさせていただいた次第でございます。

 この評価システム、成果報告システムをこの教育委員会制度改革においても導入すべきではないかというのが私の強い思いでございまして、その点、前回の十日の質疑で大臣にもう既にお尋ねしたと思うんですが、大臣の御答弁が、各自治体で教育振興基本計画で目標設定をするのがよいのではないかという御答弁をいただいたと思います。私も同感でございます。

 ただ、この教育振興基本計画が、これは努力義務なんですよね。策定が全自治体になっていないという実態がございます。それこそ、文科省のホームページに載っておったんですけれども、全国の自治体千七百以上ある中で、教育振興基本計画を策定済みの自治体はおよそ半分強ということでございます。五二・二%ということでございまして、まだ策定されていない自治体がかなりある。

 つまり、教育長さんが達成すべき目標というものが今のところない自治体が多い。この教育振興基本計画がそもそも目標となっているかというのもありますけれども、自治体によって策定されていないところも随分あるというのを私はまず心配するんです。

 教育振興基本計画の策定を、この際、必須として、国として、目標設定してくださいと義務づけをして、さらに、目標設定したら、達成するのは当然教育長ですと、教育長が達成する責任がありますということも再度徹底をするべきじゃないかと考えるんですけれども、御見解をお伺いできればと思います。

下村国務大臣 そもそも、政府と日銀は、別に日銀は政府の下部組織ではありませんから、独立性が担保されているからこその日銀で、同じような位置づけではないというふうに思います。

 それから、今回、教育長は首長が任命し、罷免権を持つ、そこに教育長の責任と権限を明確化させるということでございます。その中の目標設定を年度別に設ける場合の一つの例として、教育振興基本計画ということを申し上げました。努力義務ということで、実際、四十七都道府県で今四十三府県、それから政令指定都市では二十のうち十八がこの教育振興基本計画を策定しているということでございます。

 これは、今委員が御指摘のようなことを首長が教育長に対して明確的に、例えば任期四年の中で年度設定でするということであれば、私が申し上げたのは、既に教育振興基本計画があるから、それを有効に活用したらどうかということを提案いたしました。ですから、同じような問題意識を首長が持っておられるのであれば、努力義務ではあるわけですけれども、逆に、ぜひこれは、やはりすべきことだというふうに思うんですね。そういう意識を持っている首長であれば、すべきことだというふうに思います。

 そもそも、努力義務ですから、それぞれの自治体でも、やはり、こういうような教育委員会の新たな制度設計ができる中、あわせて、教育振興基本計画については明確に、それぞれの自治体にもつくっていただきたいということを私の方からも申し上げたいと思います。

田沼分科員 ありがとうございます。

 大臣の方からも言っていただけるということで、大変力強い思いをいたしました。

 小さな自治体さんとかが中心だと思うんですけれども、なかなか策定できていないところもあろうと思いますけれども、この教育委員会制度、特に評価システムが重要なんだということをセットで設計していっていただければ、あるいは徹底をしていっていただければ大変うれしいなというふうに思います。

 あと、ちょっと関連して、この振興基本計画の現状にも、私、ちょっと疑問がございます。

 先日の質疑で、大臣は、数値目標化も必要だと思っているという御答弁をいただいて、それも大変よいと思います。ただ、今、国の第二次案が議論されていると思いますし、私は千葉市なので千葉市の振興基本計画もじっくり見たんですけれども、教育基本法の精神が見えないんですね。

 もう私もこれは何度も言って本当に恐縮なんですが、検定も採択もそうなんですが、もうどこもかしこも教育基本法の精神を徹底してほしいと非常に思っています。すばらしい法だと思っているんです。ただ、それがなかなか浸透していない。ないがしろになっているんじゃないかというぐらい憤りがございます。

 第二条に関しては、目標の部分で、道徳心ですとか、公共心とか、愛国心の涵養も目標とされ、すばらしいと感動したわけです、第一次安倍内閣において。ただ、それが振興基本計画ではほとんどないです。くまなく見ましたけれども、ない。特に愛国心がないんですね。多分、これは、国を愛するというとイデオロギーだという誤解があって、現場の作成する部署の皆さんが避けられているんだと思います。千葉市はそうは言いませんけれども、実態はそうだったと感じます。ほかの自治体も幾つか見た限りでもそうでございまして、これは非常に残念な現状だと感じております。

 検定の見直しについて、先日、大臣が、教基法の精神を生かすように見直すという御答弁をいただきましたけれども、この教育振興基本計画の策定においても同じように徹底を促していただけるとうれしいんですけれども、御見解をお尋ねします。

下村国務大臣 委員御指摘のように、教育基本法が改正され、新学習指導要領もつくられたにもかかわらず、それに関係する下部法令が全く変わっていないと言わざるを得ない状況がやはりあると思います。

 これは、安倍内閣がやはり第一次で短命に終わったという、我々にとっては最大の痛恨なことでありまして、第二次安倍内閣ができたわけですから、本来の改正教育基本法にのっとった下部法令等が全てにおいて徹底されなければ、これは法治国家として成り立たないわけでありますし、ぜひそういうふうなことを今後徹底してまいりたいと思います。

田沼分科員 力強い御答弁、ありがとうございます。

 ぜひ、振興計画策定においても、もうこれ以上は聞きませんけれども、徹底ということで進めていただきたく思います。

 ちょっとまた話を戻させていただきまして、実行会議案に関してなんですけれども、教育委員会委員さん、教育委員さん自体は残るというふうに報道ではありました。教育長の諮問機関とそれからチェック機関の役割を持たせるということでございましたけれども、先日の大臣の御答弁で、諮問機関のみのような受け取りもできる御答弁もあったんです。

 ちょっと確認したいんですが、諮問機関とチェック機関の両方を持つということでよろしいでしょうか。お答えいただければと思います。

下村国務大臣 教育再生実行会議の方で、教育委員会の機能について、教育長に対し大きな方向性を示すとともに、教育長による教育事務の執行状況に対するチェックを行うこととすること、教育委員については、広い視野を持って我が国の将来を思い、未来を担う子供の育成を熱心に考え行動できる者を人選すること、教育委員会で審議すべき事項、教育委員の任命方法等の詳細な制度設計については中教審での専門的審議を期待、こういう提言をいただいたところでございます。

田沼分科員 わかりました。ありがとうございます。

 となると、ちょっと一つ懸念があるのが、執行状況のチェックという部分、二個目の部分ですね。現状の教育委員さんは、たびたび文科省でも指摘があるように、名誉職化というか形骸化をしているというところがあろうと思います。ですので、今回、教育長さんが首長の任免による責任者に一元化するという中で、例えば学校教育部長とか指導課長とかいろいろな部署の方々もごそっとそちらに移ると思うんですけれども、そうすると、教育委員さんのもとに事務局機能が残るのかどうかがちょっと気になっていまして、誰でもそうかもしれませんが、特に今形骸化が進んでしまっている教育委員さん五人ないしは六人の方々が教育事務の執行状況チェックというのは、その方たちだけではかなり難しいと思います。

 となると、チェックするための事務局が必要なような気もしていまして、月一、二回しか来ないままだとやはりチェックというのは難しいんじゃないかという気もして、その事務局機能が一部残るようにも思えるものですから、その辺で何か御検討があれば教えていただければと思います。

下村国務大臣 詳しくは中教審で議論しますので、これは私の教育再生実行会議に出席した中でのイメージとしてちょっと申し上げたいと思うんですが、月に一回、二回、非常勤の方が教育委員として集まっていただくということは多分変わらないというふうに思います。それについて、特に批判があったわけではありません。

 ただ、その中で、例えばいじめ問題とかそれから教科書採択とか、それがどの程度できるかどうかについては、これは詳しい議論は教育再生実行会議の中では展開されませんでした。ですから、教育行政においても、もっとタイムリーに対応すべきところは教育長のもとというよりは首長部局で、今まで教育委員会がやっていた部分をそちらの方にシフトするということも相当出てくるというふうに思います。

 教育委員会の位置づけは、中長期的なそこの自治体における教育のあり方について、例えば諮問を受けて検討するとかいうようなことに特化すべきではないかというような議論も、この教育再生実行会議でありました。

 今後についての詳細は中教審で議論をされることになりますが、少なくとも首長が教育長に対して任命責任と罷免責任は持ちますが、教育委員会のあり方も、現状のまま、そのままの機能を残すということではないということでございます。

田沼分科員 ありがとうございます。了解しました。

 中教審の設計の段階で、またぜひ議論させていただきたいと思います。

 一応、我々維新の会は、やはり責任の明確化が理念でございますので、そういった外部機関というのは、専門家の方に教育長が意見を聞くというのはとても必要だと思いますが、教育委員さんが必要であろうかということに関しては疑問があるということはお伝えさせていただきたく思います。

 話をもう一度そもそも論的に戻して、私たち維新の会は、行政委員会としての独立にやはり疑問というか反対なわけでございまして、実行会議の案ですと教育長さんに一元化とはありますけれども、今大臣言われたように、ある程度、教育委員会事務局がそちらに移るということも、あるいは首長部局に移るということもあろうと思いますが、やはり完全に首長、教育長、事務局というふうに一元化をすべきだと考えております。

 そもそも、まず現場の、大津の越市長も、この間、二月でしたか、大臣のところに御訪問されたということで、やはり、私たちと同じように、教育長は首長のもとに置くべきだという御提案をされたと報道で聞いておりますし、安倍総理の思い、冒頭申し上げた、選挙で選ばれた首長の思いが教育行政に反映できないというのをやはり改善するためにも、行政委員会としての独立は改めるべきだと考えております。

 そもそも、教育基本法に政治的中立性の確保という言葉がございませんし、教育委員会という言葉も出てきません。第十四条で、一応、党派的な教育は禁じているわけですけれども、一方で、同時に、政治的な素養というのは尊重されなければならないともされているわけでございまして、少なくとも、教育への民意の反映というのは禁止をしていない現状がございます。

 つまり、現在の教育委員会制度が、政治的中立性を確保するんだ、首長からの独立だということは、基本的にその法的根拠があるんだろうか、少なくとも教育基本法には定められていないと考えるわけでございまして、それがさらには行き過ぎて、民意を受けた首長の教育政策まで拒否しているという現状と私たちは理解をしております。

 これは繰り返しですが、私も市会議員でしたので、本当に現場で教育政策を言っても、全て教育委員会にブロックされてしまう、首長さんはブロックされてしまう、我々議会人も余り突っ込めないという現状がやはり残ってしまっているのを何とかしたいというその一点なんです。

 繰り返しですけれども、法的根拠があるんだろうか、少なくとも基本法には定められていない、民意を受けた首長の教育政策まで今は反映できなくなっている。そもそも論ですけれども、これは憲法の定める民主主義の原理、これに反するのではないかとすら思っております。

 今回の実行会議の案、きょうの提言で、教育行政に民意を反映させられるようになると大臣はお考えになるかどうかをちょっとお聞きできればと思います。

下村国務大臣 まず、教育の政治的中立性でありますけれども、これは教育基本法第十四条第二項に「法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。」という規定をしているなど、多数の者に対して強い影響力を持ち得る教育に一党一派に偏した政治的主義主張が持ち込まれないことを意味するということが教育の政治的中立性ということでございます。

 この中で、まず、首長が、例えば選挙のときに、有権者に対して、自分が首長になったらこういう教育を行いたいということについて、これまでの教育委員会のあり方でいうと、任期のずれによって、自分がその教育行政をしたいと思っても、自分が任命できるのは、最大四年、任期でずれがあるわけですね。つまり、自分と同じような考え方の人を教育長や教育委員に任命するについてはタイムラグがあるということですが、今回は、同じ時期に任命なり罷免できるということで、教育長については、首長の教育に対する思いを共有する人を教育長としてみずから選ぶことができますので、それは選挙のときの約束等を行うことは可能であるというふうに思います。

 ただ、そのとき、教育委員会全体も同じようになっていった場合、つまり、教育委員会を廃止なりした場合ということですけれども、我々はなぜ教育委員会が必要だと思っているのかということについては、やはり一方で、これは前も述べましたが、我が国は、地方自治においては、有権者が首長とそれから議会の議員を選出するわけですけれども、その二元制の中で、首長というのは、ほかの国以上に、ヨーロッパの国以上に、大統領制の、全面委任をするという強大な権限を持っているわけですね。ですから、その首長がどこの党派の人がなるかということが、教育において、よくも悪くも直結をするということになってくるわけですね。

 例えばの話ですけれども、非常に……

萩生田主査 大臣、質疑時間が過ぎていますので、簡潔に。

下村国務大臣 はい。

 例えば、左の首長がなった。しかし、それは、その首長は有権者が選んだんだから、そういうことをやってもいいということが本当に言えるのかどうかということの中で、やはり教育においては、誰が首長になっても、やりたい政策は別ですけれども、しかし、政治的な中立性ということは担保しておく必要があるのではないか、そういう視点でございます。

田沼分科員 時間となりましたので、もう少し議論をしたいですけれども、また改めて。

 議会もありますので、私は二元制であっても、十分リスクヘッジといいますか、できると思いますけれども、またそれは改めて御議論させていただければと思います。

 以上で質問を終わります。

萩生田主査 これにて田沼隆志君の質疑は終了いたしました。

 次に、大熊利昭君。

大熊分科員 みんなの党の大熊利昭でございます。

 本日は分科会ということで、ふだんお目にかかっていない分野の文科省関連のところということで、よろしくお願いをいたします。

 まず一番目に、待機児童問題、待機児童対策ということで、私もこの辺のところはエキスパートではないものですから、文科省さん管轄ということで通告を申し上げたところ、いや、これは厚労省なんですということで言われましたが、やはり、何省ということではなくて、政府一体となってという観点でよろしくお願いしたいんです。

 特に、私の出身といいますか、東京のような都市部では、このいわゆる待機児童問題がなかなか深刻になっているわけでございますが、その一方で、例えば横浜市のように、過去、数年前までは非常に深刻であったものの、この数年の対策によってかなり改善し、場合によっては、来年度ですか、待機児童がゼロになるのではないか、そういう予測までなさっているという自治体もあるようなのです。

 この横浜も含めて、それ以外も含めて、自治体での成功事例はどのようなものがあるのか、御教示いただければと思います。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 待機児童の解消に向けましては、各自治体とも、地域の実情に即しましてさまざまな工夫をしていらっしゃいます。その中で、やはり成功事例ということになりますと、代表的なものは、今先生御指摘になりました横浜市の事例であるというふうに承知をしております。

 横浜市では、御案内のように、市長の強力なリーダーシップのもとでさまざまな取り組みを展開してございますけれども、特に、第一に、国の施策などを最大限に活用していただいて、それから、独自に、土地を有効活用したい土地の所有者の方と、それから保育所を整備したいと希望する事業者とのマッチングをするというような工夫、これによりまして、平成二十二年度から三年間で一万人分もの認可保育所を整備したということがございます。

 このほか、保育を利用する方の個別のニーズにもきめ細かく対応するという観点で、利用者に合った保育サービスを結びつける、いわゆる保育コンシェルジュというものを各行政区に置いていらっしゃるというようなことなど、さまざまな工夫によりまして、今御指摘ございましたように、全国でかつて最も多かった待機児童が大幅に減少しているというふうに承知をしております。

大熊分科員 ありがとうございます。

 そうしますと、逆にといいますか、例えば私の地元の東京都の中央区など、引き続き改善がないわけなのでございますが、なぜ、そういう自治体がある一方、だめなと言うと語弊がございますが、対策が進んでいない自治体があるのか。今の御説明でいうと、リーダーシップがない、または、かつ、土地の有効活用の仕組み、仲介の仕組み、これが進んでいない、こういう理解でよろしいのでしょうか。

鈴木政府参考人 成功した事例とそうでない事例の間にはさまざまな要因があると思いますが、今先生御指摘のように、一つは、やはり自治体はさまざまな行政ニーズを抱えていらっしゃいますので、その中で、保育所の整備なり待機児童の解消というもののプライオリティーをかなり高くしていただく。これはやはり首長さんのリーダーシップによるところが大きいと思っております。

 このほか、やはり都市部になりますと土地の有効活用ができない。これは各自治体でさまざまな事情がございますので、一定の定式的なあり方というよりは、自治体の状況に合わせてそれぞれの施策をどう工夫していくか、そういった工夫についての一歩踏み込みというようなものも、それぞれの自治体で差を生んでいるような大きな要因ではないかというふうに捉えております。

大熊分科員 確認も含めてなのですが、そうすると、はっきり申し上げて、成功していない自治体は優先順位を高く置いていない自治体であるファクターが大きいと最初に言われましたので、そういう理解をしてよろしいでしょうか。

鈴木政府参考人 若干誤解がございましたらおわび申し上げたいんですが、幾つかある事情の中で、やはり各自治体でのプライオリティーというのは大きな要因ではあろうかと思いますが、それが第一かどうかとなりますと、それぞれの自治体においてそれぞれ事情が違うのではないだろうかというふうに思っております。

大熊分科員 そうするとやはり、第一は何かというふうに伺いたくなるわけでございますが、それに対しては、いや、それぞれの自治体でそれぞれの事情があるとお答えになるんだろうと思います。でも、それですと、国としてどういう状況なのかという分析がなされていないということになると思うので、あえてもう一度同じことをお伺いしたいと思いますが、よろしくお願いします。

鈴木政府参考人 整理して申しますと、やはり、都市部に待機児童が多いというのは一つの現象であると思っております。そうしますと、やはり先生御指摘のございました土地の問題、それから既存施設を有効活用していくことが重要になってまいりますけれども、その既存施設のあきぐあいの問題、それから、当然、財源の問題もあるわけでございまして、この財源の問題につきましては、御案内のように、消費税、安定財源ということを視野に置きまして、子ども・子育ての新制度というものがさきの国会で成立をいたしておりますので、こういったことからも、その財源の問題については多少事情が変わってまいるのかなというふうに考えてございます。

大熊分科員 幾つかのうちの一つの土地の問題、既存の施設の有効活用ということで、私のような素人の発想なんですが、一方で、小学校なんかは、私の地元なんかでは、あきの小学校だったり教室だったりというのが結構あるんですが、この転用の可能性、あるいは転用を考えるとした場合の問題点、越えなければいけないハードル、もちろんハードの面だけで申し上げております、人間の面、ソフトの面、それは別途あるんでしょうけれども、あきの小学校を利用する、こういうところについて、ハードルも含めて教えていただければと思います。

鈴木政府参考人 今先生御指摘のように、既存資源という面で申しますと、小学校などの余裕教室の活用というのは一つの非常に大きな力になると思っております。厚生労働省の方でも、施設整備費、改修費あるいは賃借料の補助というものをさせていただいておりまして、また一方で、文科省さんの方で、余裕教室を活用いたしました保育所整備を進めるために、実際に整備を行った先駆的な事例を整理なさって、進めるための留意点をまとめたような調査研究もあると承知しております。こういった先進的な事例などにつきまして、私どもも、機会を捉えて情報発信をしてまいりたいと思います。

 その中で一つ言われておりますのが、いわゆる、小学校になりますと、教育委員会を初めとします教育部局、保育所になりますと福祉部局でございますので、まず、自治体の中の両部局がそれぞれのいろいろな情報を共有して、例えば保育所整備なら保育所整備ということに向けて計画的に取り組んでいくということが非常に大きなポイントになる旨、先ほどの調査研究の中では触れられているというふうに承知をしております。

大熊分科員 ありがとうございます。

 ぜひ、中学なんかでも、小学校は結構あきがあると思いますので、具体的に一つでも二つでもいい事例がつくれないものかなというふうに思います。実際に施策としてつなげていくには、国、自治体の皆さん方の連携等いろいろな部分はあるんだろうと思いますが、一つでも二つでも、御指導いただきながら何かいい事例をつくっていければというふうに強く望んでいるところでございます。

 続きまして、実務的な教育というような部分についてお尋ねさせていただきます。

 この質問をさせていただく背景なんですが、私、議員になる前、金融業界におりまして、金融機関に勤めていた期間と、自分で投資の会社をやっていたという時期があります。そのときに、日本で言ういわゆる一流大学の大学生にインターンで来ていただいた、あるいは一方、日本国籍じゃない、いわゆる外人の大学生、年齢的には社会人になったばかりぐらいの人にインターンで来ていただいた中で、日本人の学生さん、私もそうだったんですが、数学は結構まあまあできるものの、エクセルなどのいわゆる表計算ソフトですね、これの能力が非常に低いもので、実際に仕事をさせてみると、やはり外国から来ている人の方が実務的に物すごく役に立つ。数学自体の能力はどうかというと、日本の学生の方ができたりするんですが、コンピューターのスキル、エクセルのスキルがないがゆえに、実際に仕事が前に進まないということで、これはいろいろな側面がありますが、日本の金融機関の競争力がずっと余りよくなかったというのは、この辺の人的な部分も大きく影響があるんじゃないかなと思って、この質問をさせていただいているところなんです。

 高校生ぐらい、あるいは大学の教養程度、理科系の人は自分でやったり、何かの機会で覚えてしまうと思うんですが、特に文科系の方ですね、この能力が、今でも多分、諸外国に比べて著しく低いんじゃないかなと。これについてどういうふうに考えていらっしゃるか、ぜひ教えていただきたいと思います。

布村政府参考人 お答えいたします。

 学校教育の中で、社会生活や職業生活とのつながりを意識した学習、先生おっしゃられるところの実務的な教育を深めていくことは、重要なテーマと考えております。

 高校段階の学習指導要領におきましては、公民科や家庭科などにおきまして、金融教育に関する記述が今回の指導要領の改訂で充実をしたところでございます。一方でまた、数学においては、統計やデータ分析などに取り組むことなども重視をしたところでございます。

 あと、学校において、地域や学校の実態も踏まえつつ、御指摘のような形で、数学、金融、あるいは表計算ソフトを活用した教育活動という取り組みを進めていただくことも、有意義なことと考えているところでございます。

 今後、そういった観点も、取り組みがより進むように、また、その充実につながるように、努めてまいりたいと考えております。

大熊分科員 具体的に、例えば高校三年生の文科系の方の標準、ないし、まあまあできると言われるようなレベルの方で、表計算ソフトというのは高校を卒業した段階でどのぐらいできることが求められて、あるいは実際にどういう状況なんでしょうか。どの程度のことができるのでしょうか。

布村政府参考人 数学において、先ほど申し上げたような形で、より実践的なものに使えるように、統計あるいはデータ分析ということが取り組む内容として位置づけられているところでございますけれども、どこまで生徒が高校の段階で実践に生かせるように、あるいはどこまでの能力が身についているかというところは、今、一概に申すことはなかなか難しい状況でございます。

大熊分科員 ということは、文科省さんとしてもなかなか把握はできていない、現場の先生なりというのも把握ができていない。

 そもそも授業時間というのは、エクセルならエクセルのスキルについて、例えば高校二年なら二年で一週間にどのぐらいあるものなんでしょうか。

布村政府参考人 数学の授業時数は一定の何単位という定めがございますけれども、その中でエクセルが何%の割合で実施されているかというところまでは把握はできていない状況でございます。

 一方で、工業科などの専門教育においては、そういう実務的なレベルの教育活動はかなりきちっとやっていただいているのではないかと考えられます。

大熊分科員 やはり私、門外漢ながら、僣越ながら、実務的な教育なのか数学そのものかというのを分けること自体がおかしいと思うんですよね。

 例えば、数学を学ぶ、それと同時に、コンピューターを使ってグラフを描くなり分析をする、これはもうセット、今や、読み書きそろばんのそろばん、現代のそろばんだと思うので、実務的なものと数学そのものというふうに分けるのではなくて、一体のものとしてやっていかないと、そもそも、やはり大学を卒業した段階で、さっき最初に申し上げたような、日本人の学生と、それから、諸外国から日本に来て金融業界を目指そうという学生さんとの明白な差になっているので、これがやはり、冒頭申し上げたとおり、日本の金融機関の競争力の差になっていると私は思っておりますので、ぜひそこのところを根本的にいろいろと御検討していただいたらどうかなというふうに、僣越ながら申し上げます。

 関連で、インターンの制度なんですけれども、先ほど若干申し上げましたが、就職、採用の関係で数日間インターンをするというようなケースというのはあるみたいですけれども、そうじゃなくて、もっと、実際に仕事をしてみるということ、やはり一カ月以上、具体的に言うと、アメリカの大学生なんかは、七月、八月とか、二カ月ぐらいたっぷり働くわけなんですが、こういうことをやることによって、大学生も、自分がどういう業務、どういう会社に合っているんだろうかとか、そういうことが肌感覚でわかる。

 ちょっと何回か面接して、運よくか、あるいは実力があって、会社に入れた。でも、入って二、三年したら、やはり合わないからやめてしまった。第二新卒というんでしょうか、そういうようなことを起こりにくくするためにも、こういった長期にわたるインターン制度というのは非常に有益なんじゃないかなと思うんですけれども、この辺について、現状、どういう状況なのか、教えていただければと思います。

布村政府参考人 先ほどのエクセル、表計算ソフトの話に少し触れさせていただきますと、今、高校の段階では、情報という教科が必履修科目として位置づけられております。その中では、例えば、ワークシートを用いて、ひとり暮らしをする際の収入と支出に関するシミュレーションを実施したという高校の実例も伺っておりますので、情報という教科の中で、金融と教育とのつながりを持ったような形の表計算ソフトというものについても高校段階でも実施をいただいているということをつけ加えさせていただければと思います。

 それからもう一つ、インターンシップについてでございますけれども、中学校の段階では、中学校二年生を中心に、できるだけ五日間の職場体験活動という取り組みを全国的に実施いただいております。

 一方で、高校の段階で、先生おっしゃられたような長期間のインターンシップというのは、職業系の高校であれば、デュアルシステムということもございまして、高校に在籍しながら企業の職員としても在籍をし、両方兼ねながら実習を重ねる、そういうシステムも工業高校などでは既に実施されておりますけれども、高校全体での割合となると実際低く、特に普通科の高校も入れていくと、参加する生徒の割合が一七%という実態もございますので、そういった面でのインターンシップの実施状況というのは、まだまだこれからしっかり取り組んでいただく必要があるという実情かと思います。

大熊分科員 あるいは、大学生の方の理科系については、例えば薬剤師さん系の学部については結構長期間のインターンの制度というのがあるみたいで、薬剤師の国家資格を取ればそのまま薬の関係の会社に就職するという、非常にスムーズな状況があるというふうには伺っておりますが、先ほど申し上げたとおり、一番数の多い、影響力も多い文科系の大学生の皆さんですね、こちらについても、やはり長期間のインターンの制度、諸外国、特にアメリカなんかでやっているような、そういう制度を入れることによって大学生が社会人対応にできる、そういうノウハウと力がつくんじゃないかな、そういうふうに思うんです。

 こちらについても、現状は、余りというかほとんどない、そういうことなんでしょうか。

下村国務大臣 大学等におけるインターンシップについて、特に単位を付与する授業科目として実施されているインターンシップ体験学生は、大学では一・八%の参加率、参加学生が四万五千九百十三人ということで、少ない数字でございます。

 今後、例えば東京大学を初め十二大学が秋入学を考えておりますけれども、ギャップターム等を使って、このようなインターンシップ的な活動を政府としてバックアップする仕組みをぜひこれから考えていきたいというふうに思いますし、また、できるだけ早いうちに、大学の就職活動については、活動時期をもっと後にしていただく、八月以降に就職採用試験等を各企業にお願いをするような要請をしていきたいというふうに思っておりまして、今、政府の中で取りまとめをしております。

 そういう中で、ミスマッチ等を起こさないために、インターンシップ等を活用しながら、しかし、就職期間は短くするというような組み合わせをすることによって、学生のうちからできるだけ実社会の中で経験を積むようなインターンシップ制度については、ぜひ積極的に取り組んでまいりたいと思います。

大熊分科員 大臣、ぜひよろしくお願いいたしたいと思います。

 最後に、先ほどの東大の文科系の人たち、非常にできが悪いですから、こういう人たちは、もともとの能力はあるはずなのに、多分、プログラムがないからなんでしょうか、そういう人たちが金融機関に入っていくわけですから、日本の金融機関の、特に若手の分析能力がやはり欧米の金融機関よりもないというのは、こういうところに大きく原因があるんじゃないかなというふうに思っておりますので、ぜひよろしくお願いいたします。

 続きまして、あと十分でございますが、いじめ問題。

 これは、当初の、金曜日の夕方の通告にはなかったんですが、週末のニュースを見ておったら出ておりましたので、急遽、月曜、きょうの朝追加させていただきまして、申しわけございませんでした。

 カナダのハーパー首相が記者会見で言っておられまして、かの地でも、高校生のいじめの問題、いじめに起因する自殺ということが大変な社会問題になっているようでございます。その中で、カナダのハーパー首相が非常に強い調子で、本当に強い調子でおっしゃっているのは、いじめという表現、英語ではもちろん違う言葉、単語なわけですが、そういう言い方ですと、犯罪というニュアンスが直接入ってこないと。もう犯罪なんだ、クリミナルアクティビティーなんだということをはっきり認識できる言葉を使っていじめ問題を語る。

 例えば、私、それを聞いて思ったのは、いじめと言うんじゃなくて、いつも、日本じゅう、大臣も官僚の皆さんも、我々もみんな、いじめ犯罪とか、あるいは学校犯罪(いじめ犯罪)とか、常に全ての場で言っていけば、テレビでも、メディアでも、ツイッターでもフェイスブックでも、こういう場でも常に言っていけば、言葉の持つ力というのは強いと思うんですよ。耳から入る、新聞でも文字で書いてある、常にいじめに犯罪がくっついているということで、これが明確に犯罪なんだということが、我々の中に、全員の中に入ってくる。そういうふうに、カナダのハーパー氏もそれを強くおっしゃっておられるんです。

 表記の問題です。たかが表記なんですが、されど表記ということで、これは場合によってはインパクトが結構あるんじゃないかなと思っておりますのですが、大臣のお考えをお聞かせ願えればと思います。

布村政府参考人 先生御指摘いただいたカナダのハーパー首相の件につきましては、御指摘をいただいた後、私どもも確認をさせていただきました。

 カナダにおいて、十七歳の少女が少年四人から性的暴行を受け、その写真がインターネット上で拡散したことを苦に自殺された事案についてでございます。この事案について、ハーパー首相が、この事件はいじめではなく犯罪行為であると明確に意思表示をされたものと承知してございます。

 いじめにつきましては、その態様により、人権を侵害したり刑罰法規に抵触する可能性がある行為であるという認識は文部科学省としても有しており、犯罪行為と認められる行為につきましては、そうでないいじめと区分して対応することが必要であると考えております。

 児童生徒の行為が犯罪行為として取り扱われるべきと認められるときは、早期に警察に通報、相談するよう指導をしているところでございます。

 また加えまして、現在、犯罪行為として取り扱われるべきと考えられるいじめ事案を具体例を用いて示すなど、いじめと犯罪の定義について明確にするよう、大臣からの御指示をいただき、今、検討し、速やかに都道府県、市町村に通知をしたいというふうに考えているところでございます。

大熊分科員 そういうことで、全てが犯罪とは限らないということなのかもしれませんが、ぜひ、そうでない場合、つまり犯罪だと考えられる場合について、特に、いじめ犯罪、常に犯罪という言葉が入ってくるということで、語感からそこが人々の間に、国民全員の間に広がっていく、そのような形で御検討いただければというふうに考えているところでございます。

 続きまして、次に、国際化を踏まえた教育プログラム、先ほどの例とちょっと近い部分もあるんですが。

 まず、英語教育なんですけれども、先ほどと同様、高校三年生、あるいは中学三年生、義務教育終了時点でありますけれども、どの程度英語が使える状態を目標としているのか。

 具体的に言うと、中学三年が終わりました。ハワイやロサンゼルス、海外旅行に行って不自由のないレベル、そういうような非常に素人的にわかりやすい目標でいうと、どういう目標と考えていけばよろしいでしょうか。中学三年終了の段階、高校三年終了の段階でそれぞれどうなのか、ちょっと教えていただければと思います。

布村政府参考人 現在、英語教育につきましては、コミュニケーションの手だてとしての外国語、英語という位置づけのもと、中学校においては、学習時間を大幅にふやしています。また、高校段階では、この四月から、本格的に英語による授業という展開も、高校の英語の授業で展開していただくという流れにしてございます。

 その上で、生徒の到達の一つの目標として、例えば中学校の卒業の時点では、英検でいうと二級ぐらいであったと思います。それから、高校の段階では英検の二級あるいは準一級というレベルで目標を設定して、できるだけそういう外部の英語の検定制度を活用して客観的な評価をし、できない場合でも、教員の方々に、どの程度までそれに近い状態か評価いただくという形で、できるだけ生徒の方も目標を持って英語教育に取り組めるように、そういう環境を教員の方々と一緒になってつくっていこうという取り組みを進めているところでございます。

大熊分科員 英検二級が受かるレベル、そういう切り方もあるのかもしれませんが、もっと具体的にわかりやすく、旅行に行っても不自由のないレベルとか、ビジネスの英語でのやりとり、交渉で問題のないレベルとか、それから、実は一番難しいのが日常会話だと思うんですが、これがほとんど不自由のないレベルとか、そういうわかりやすい目標設定をぜひしていただけないものかなというふうに思います。

 たしか、TOEICだかTOEFLだかは、そういうような説明書きがあったやに、違ったら済みません、思うんですが、わかりやすい目標設定ですね。それはいかがでしょうか。

布村政府参考人 先ほどの英検の数字を少し訂正させていただきながら、御説明をさせていただきたいと思います。

 中学校卒業段階では、初歩的な英語を聞いたり読んだりして話し手や書き手の意向などを理解したり、初歩的な英語を用いて自分の考え方などを話したり書いたりすることができるという目標のもと、英検であれば三級程度以上ということを掲げてございます。

 それから、高校段階では、英語を通じて情報や考え方などを的確に理解したり、適切に伝えたりすることができる、英検であれば準二級から二級程度以上という目標を掲げているところでございます。

 先生がおっしゃられたTOEIC、TOEFLの関係は、英語の教員に求められる英語力として示させていただいてございます。具体的には、英検準一級程度、あるいはTOEFLの五百五十点、TOEICの七百三十点以上という形で目標を掲げて、それを一つの目標、励みとして生徒あるいは教員に取り組んでいただこうとしているところでございます。

大熊分科員 ちょっと時間もなくなりましたので、ぜひ、もうちょっとわかりやすい、どういう場面で使える英語か、例えばこういうような議論ができるまでの英語とか、そういうような、もうちょっとリアル感を持った形でお示しいただければありがたいなというふうに感じておるところでございます。

 残り少ないのですが、ぜひこれはと思いまして、次に、日本企業あるいは日本人そのものが海外に行く機会が大変多くなっているわけでございますが、特にイスラム圏に仕事その他で行ったり、そういった機会が多くなってきているわけでございます。

 私もかつてイスラム圏の人と一緒に仕事をしたことがありまして、日常生活から何から、もう習慣、考え方が非常に違うわけでございまして、これはやはり、イスラム教の理解なくしてはまさに理解不能というような状況だろうと思うので、こういった基本的な知識、別に、イスラム教に皆さん改宗しましょうとかそういう意味ではなくて、宗教を教育として学ぶんだと。特にイスラム教、ほかの宗教もそうですが、これについて、ちょっと簡単にお考えをお聞かせいただければと思います。

布村政府参考人 教育基本法の改正に際しましても、宗教教育に関する規定を書きかえて、宗教に関する教養を身につけることが重要であるという改正があったところでございます。

 それも踏まえて、例えば中学校の歴史的分野の中には、「「宗教のおこり」については、仏教、キリスト教、イスラム教などを取り上げ、世界の文明地域との重なりに気付かせる」という形で、「宗教のおこり」のところでは、イスラム教については必ず中学校の歴史で取り上げるという取り扱いになっており、それ以外でも、世界史の中でも、イスラム圏の位置づけが従前よりは重視された規定になっているところでございます。

大熊分科員 まだまだこれは続けたいんですけれども、時間となりましたので、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

萩生田主査 これにて大熊利昭君の質疑は終了いたしました。

 次に、柏倉祐司君。

柏倉分科員 みんなの党の柏倉祐司でございます。よろしくお願いいたします。

 まず最初は、教育再生における規範意識というものに関して質問をさせていただきたいと思います。

 規範意識というのは、自分が属している集団ですとか社会の認識だというふうに思うわけでございますけれども、その意識からルールやマナーを身につけることができる、そういう属性意識だというふうに言いかえることもできるかと思います。

 とすれば、中学生になれば自然と、友人や学校、こういったものに対する属性意識は身につけられるわけでございます。そして、地域、故郷といったものは、社会人になれば自然と、地域のコミュニティーに入ったり、自分の故郷を外から眺めてみたりということで、絶えず意識せざるを得なくなってくる、自然と意識をしてくるものだというふうに、自分の経験に照らしても思うわけでございます。

 そこで、私が質問させていただきたいのは、国に対する規範意識をどのように醸成していくのか。これは歴史教育とは切り離してまず論じさせていただきたいんですが、国というのは、やはり伝統、文化だけではなくて、その国力、そして歴史というものをもってみずからの位置を明らかにするものであるというふうに考えております。

 そして、規範意識を醸成する、文科省さんの今学校で使われている心のノートというものがございます。規範意識を学ぶ上で、わかりやすく解説をして、非常に使いやすい、そういった印象がございます。

 ただ、国、国家というものの規範意識がどのようにこれで醸成されるのかというと、私、これに目を通して少し疑問に思うところがございました。それはどういうところかと申しますと、確かに、日本の伝統、すぐれた伝統や文化について学ぼう、そして、あなたは頼りになる後継者である。伝統、文化に関しては非常に精緻な解説、そして写真も載っていてわかりやすいんですが、国家というものをどこで考えさせられるのか。ちなみに、きょう添付してあるのは、国家というものを考えるというところで切り口になっている心のノートでございます。

 それで、なおかつ、この記載を見ますと、「ふるさとを愛する気持ちをひとまわり広げるとそれは日本を愛する気持ちにつながってくる。」という記載がございました。

 先ほど冒頭に申しました、国家意識を考える上で、歴史というものをやはり子供に認識してもらう、日本の歴史というものに対して興味を持ってもらう、その先にはプライドを持ってもらうということがあるかと思うんですが、まずここでは、歴史に対する興味というものをやはり涵養するべきであるというふうに私は考えております。

 そういった立場からこれを見ますと、ふるさとを愛する気持ちの延長線上に国を愛する気持ちがある、これは当然かもしれませんが、こういった空間的な切り口のみが書いてあって、時間軸を無視した書き方をしている。これはもちろんうがった見方かもしれませんが、歴史というものを考えさせる記載がないんですね。

 しかも、この百二十四、百二十五というところにあります、下から二行目、「日本を愛することが、狭くて排他的な自国讃美であってはならない。」というような記述がございます。

 これは、偏狭な歴史教育ですとか偏った思想、信条をここに書いてあって、その後にこの文言が書いてあれば、バランスのとれた書き方かなと思うんですが、この記載に関しては、これが唐突に出てくる。ちょっと、自国愛、自国の歴史というものに興味を持つ、自分の国というものにプライドを持つということを考えますと、ややこれは自国愛というものをゆがめる可能性のある記載なのではないかなというふうに疑問を感じざるを得ないわけでございます。

 そこで、日本というものの歴史を子供が初めて認識をする、興味を持つというところの心のノートのあり方、規範意識の醸成の仕方、それをどのようにやっていくかというところをやはり真剣に見詰めていかなければいけないのではないかと思います。

 やはり、日本というのは天皇陛下をいただく悠久の歴史があるんだ、この一言は、ぜひ心のノートに入れていただきたいと思います。これは決して思想、信条に関係するような文言ではございませんし、客観的な事実でございます。こういった事実を、しっかりと子供にも小さいころから認識をしてもらう、日本の歴史に興味を持ってもらう、こういったところがやはり規範意識を醸成する第一歩ではないかと私は思います。

 そこで、大臣にお伺いいたしますけれども、規範意識を醸成する上で、国、国家というものをどのように位置づけていくのか、歴史教育とはまた一線を画して、具体的には心のノートにどういうふうに前面に押し出していくのか、これをまずお伺いしたいと思います。さらには、やはり歴史というものを考えるときに、どの辺まで書いたら歴史教育で、どの辺までは規範意識なのか、ちょっとこれは通告していないので申しわけないんですが、もし、そういったところ、大臣、御所見があれば聞かせていただきたいと思います。

    〔主査退席、あかま主査代理着席〕

下村国務大臣 御指摘のように、心のノート、これはキャッチフレーズはそれぞれありますが、そのキャッチフレーズが、例えば「我が国を愛し その発展を願う」。具体的に「我が国」というのはどういう国なのか、発展を願うために、では、自分はどうしたらいいのかというようなことが詳しく書かれていないというふうに思います。

 この程度の内容であっても、民主党政権のときには、この心のノートそのものが配付されていなかったんですね。これは、政権奪還をして、補正予算でこの心のノートを全ての小中学生に配付するということになりましたが、印刷が間に合いませんので、実際に配付されるのは七月からでございます。

 ただ、委員御指摘のように、これで十分だとは考えておりません。そのために、今月、文部科学省の中に、道徳教育を充実させるための懇談会を立ち上げました。この懇談会の中で、今の御指摘の点も踏まえた、子供たちによりわかりやすい形で道徳がきちっと教えられるための教科化の一つの目途として、来年の四月から心のノートの全面改訂版を出したいというふうに思っております。その中で、このキャッチフレーズ的な言葉を、それぞれもっと補足する中で、明確に書き込むことが必要だというふうに思います。

 ただ、歴史教育と、それから道徳教育というのは、おのずと違う部分がございます。歴史教育は歴史教育として、我が国の歴史を、光の部分もあれば影の部分もあるということをより正しく歴史として教えていく必要があるというふうに思いますが、道徳教育の中では、日本ならではの、国柄といいますか、やはり人にそれぞれ性格があるように、日本は日本としてのほかの国と違う存在があるわけでございます。その一つが、今委員が御指摘の、皇室というのもほかの国にはない制度でありまして、それはそれとして事実として客観的に書くということは、これは別に特定の思想とかを何か植えつけるとか強制するということではなくて、日本の事実を事実として正しく書く、それを正しく事実は事実として知ってもらうということも必要だと思います。

 どう書くかというのは、歴史の中でどう書くかということもありますし、また、道徳ということにおいては、これはなかなか、皇室をどう書くかというのは難しい問題でありますけれども、しかし、国柄として、日本はこういう国なんだ、そういう国を愛す、すばらしい国なんだということで、どう書き込むかということについては、今後、その懇談会等の議論によるところだというふうに思いますが、いずれにしても、この心のノートの全面改訂版をぜひ来年から生徒に配れるように準備をしていきたいと思っています。

柏倉分科員 ぜひ、前政権下で停滞した真の教育というものを取り戻していただきたいと思います。その上で、天皇陛下というものを中心とした文化、こういった側面も日本には必ずございますので、それを道徳と多少なりとも連動させて、ぜひ心のノートに反映させていただきたいと思います。

 それでは、具体的に、道徳教育総合支援事業で外部講師を派遣するというようなことで予算を本年度つけてございますけれども、どのような外部講師をお考えになっているのか。特に、国家の規範意識というものを醸成する上でどのような方に外部講師として来ていただくのか。現在進んでいるところまでで結構ですので、お教え願えればと思います。

布村政府参考人 道徳教育総合支援事業につきましては、各自治体における特色ある道徳教育の取り組みを促すという観点から、保護者や地域の方々との連携、あるいは外部講師の派遣、多様な道徳教材の活用、教員研修の実施など、さまざまな取り組みについて支援するものでございます。

 これまでも各地域で、地域に根差した道徳の教材、あるいは地域の偉人の方々を扱った偉人伝という教材の活用をしていただいた例もございます。

 また、外部講師につきましては、具体的にどのような講師を招聘するかにつきましては、当該事業を実施される自治体あるいは学校で選んでいただくということになりますけれども、規範意識、あるいは郷土や国を愛する心を持つことにつながるように、例えば、地域の伝統文化を長年にわたって担っておられる方、地域の歴史を研究されておられる郷土史家の方、あるいは、日本の伝統文化を継承しておられる、例えばしめ縄とかしめ飾りづくりの方を地域の講師としてお迎えするという形で、さまざまな工夫ができるものでございますので、そういった道徳教育の目標に即した適切な取り組みがなされることを期待しているという事業になります。

柏倉分科員 言葉は悪いんですが、偏った思想をお持ちの外部講師さん、これは選ぶことはないと思いますけれども、こういったことがないようにぜひ配慮していただきたいと思います。

 それでは、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 本年度の、教育情報化、情報通信技術を活用した学びの推進というところの四億円の予算を計上していることに関して質問をさせていただきたいと思います。

 言うまでもなく、昨今のデジタル教育というのはもう世界各国で進んでいるわけでございます。デジタル教育の差が教育の差になり、国力の差になる、そういうことまで言われているわけでございますけれども、やはり、韓国なんかと比較しても一歩おくれをとっているのかなというような印象がございます。

 地方自治体では、独自にタブレットを配ったりして、アイパッド等のものを配ってデジタル教育というのを盛んに進めているということを聞いておりますけれども、まだまだ、国がどこまでやるのか、どれぐらいの重要性を持って進めていくのかというところが見えてこないというのが実情かと思います。

 以前、事業仕分けというところで、これが文科省、総務省オーバーラップするということで議論になったということを記憶しておりますけれども、こういった重要な、本当に時間を争うような案件は、多少の行政の非効率があっても、とにかく結果を求めて前に進めるという姿勢が必要であるというふうに私は考えております。

 そこで、具体的に質問をいたします。

 実証研究を行うということでございますけれども、この四億円という予算を使って、どれぐらいの規模、要は、どれぐらいの地方自治体で、どれぐらいの小学校、中学校でもって実証研究を行うのか。そして、その効果判定を、どれぐらいのタイムラグとメルクマールをもって行っていくのか。それについてぜひお願いいたします。

合田政府参考人 先生御指摘のように、学校におきますICTの活用によりまして、動画、音声等を用いてわかりやすい授業を実現する、子供たちの基礎的な知識、技能の習得や課題解決力の育成を図る上で非常に重要な課題というふうに認識をしてございます。

 御指摘の事業でございますけれども、総務省と連携をいたしまして、二十三年度から、全国二十校、小学校十校、中学校八校、特別支援学校二校で、学びのイノベーション事業として、学校における効果的なICTの活用を推進するための実証研究を実施してございます。二十五年度は、その三年目、最終年度になるということでございます。

 したがいまして、その効果につきましては、全体の取りまとめにつきましては、二十五年度、今年度に行うこととしておりますけれども、これまでも、児童生徒の意識調査とか、あるいは教員の意識、指導力等を把握するための調査を行って、中間的な検証を行ってきております。

 それによりますと、ICTを活用した学習に対する児童の意識につきまして、コンピューターを使った学習はわかりやすい、あるいは進んで授業に参加することができたといったような、全二十項目にわたります調査を実施してございますけれども、二十二年度末、二十三年度末とも、全ての項目について、七割以上の児童が肯定的な評価をしているという状況でございます。

 また、教員の自己評価につきましては、指導力につきましては、ICT活用指導力のチェックリストというものをつくってございまして、二十二年十月と二十三年度末を比較いたしますと、いずれの項目でもその指導力が向上しているといったような効果が見られたところでございます。

 文部科学省といたしましては、引き続き、教育上の効果につきまして検証を行いながら、その成果を踏まえて、ICTを活用した指導モデルの作成や、授業で利用しやすいデジタル教材の開発に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

柏倉分科員 全国で二十校ということですね。

 やはりこれはどんどん進めるべきことであるということで、これでは予算、規模ともに極めて不十分ではないかなというふうに思います。

 やはり、都道府県で最低一つの拠点で行う、そして、この成果を蓄積して、三年後、五年後には標準的な教育ツールにする、それぐらいの意気込みといいますか、危機感を持って進めるべきだと思います。

 特に、予算に関してですけれども、ヒアリングをしますと、地方財政措置で各都道府県は進められるだろうとおっしゃるんですが、やはりこれはそれ以外に、国の重点予算として計上していただきたいと思います。

 それでは、時間の関係で、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 次は、平和教育について、戦争遺跡と平和教育という切り口で質問させていただきたいと思います。

 絶対に戦争は二度と繰り返してはいけない、これは全人類、日本人の共通の認識であると思います。

 私ごとになりますけれども、うちの祖父二人は戦争に行きました。幸いにして二人とも生還できたんですけれども、子供のころ、戦争でどれだけつらい思いをしたか、残酷な目に遭ったかというのを聞かされました。

 そういったところがベースになって、やはり戦争というものは悲惨なものだ、いかぬというふうに子供心に認識するわけでございます。ただ、こういった語り部というのも、これはずっと我々に生の声を聞かせてくれるわけではございません。人間には寿命がございます。

 ただ、戦争遺跡というものは、私は、物を言わない語り部ではないかというふうに思います。やはり、人の命のとうとさ、平和の重要性、これを語る戦争遺跡をいかに大切に守っていくかというところ、これは、文化庁の領域だけではなくて、やはり全日本、オール・ジャパンで考えて推進をしていっていただきたいと思うわけでございます。

 そこで、資料には配っておりませんが、一つの記事を紹介させていただきますと、去年の六月に、台湾の、中華民国の最高監察機関、監察院が、第二次世界大戦の日本海軍の震洋特攻隊基地を確認して、市政府に史跡保存を要請しているというようなニュースがございました。外国にして、日本の戦争遺跡といいますか、こういったものを保存してくれるという話は非常にありがたいと感じ入るものがございました。

 なぜこの記事を冒頭に紹介させていただいたかと申しますと、いろいろな戦争遺跡はございますが、その象徴として特攻隊に関する戦争遺跡、これをきょうは例として論じさせていただきたいということで、まずこの記事を紹介させていただきました。

 守るべき戦争遺跡はたくさんあり、特攻隊関連の遺跡が特別であるというわけではございません。いろいろな戦争遺跡が平和教育に資するということは重々承知はしておりますが、命と平和を考える上では象徴的な存在ということで、特攻関連の遺跡に関する質問をさせていただきたいと思います。

 まず、具体的な質問に先立ちまして、戦争遺跡と平和教育のあり方、総論ではございますが、大臣にこの御所見を伺えればと思います。

下村国務大臣 平和に関する教育については、学習指導要領に基づき、小中高等学校を通じ、主として社会科において、日本国憲法の平和主義や世界平和の重要性などについての学習が行われているところであります。

 その際、戦争に関する遺跡などを含め、児童生徒が地域や国土に残されているさまざまな遺跡や文化財、博物館や史料館などを直接訪ねて調査したりすることは、児童生徒の意欲や学習効果を高める上で、意義のあることと考えております。

柏倉分科員 ありがとうございました。

 それでは、具体的な質問をさせていただきたいと思います。

 本土の特攻隊の基地というのは幾つかございます。知覧、万世、鹿屋、国分、串良、出水、指宿、大分宇佐、宮崎、都城などがあるわけですけれども、指定文化財という観点からは、現状はどうなっておりますでしょうか。

 添付いたしました資料四枚目に、これは、去年の七月の、ある団体の戦争遺跡の文化財登録一覧でございます。

 線を引いておりますが、これを調べますと、国の登録文化財として知覧関係の遺跡があるようでございますけれども、その他の特攻関連の指定がない、登録がないという現状になっております。これは、いろいろな戦後のインフラ整備の過程で、残念ながら消失してしまうということはあるかと思うんですけれども、その辺も含めまして、現状、なぜ知覧だけが国登録文化財ということなのか。その他の特攻関連の遺跡の文化財指定の状況、それを御存じでしたら教えてください。

河村政府参考人 特攻隊関連のというのは、なかなかその範囲が確定しにくいものですから、断定的に全国の数などを申し上げにくいんですけれども、国の指定とか選定とか登録ということがなされました文化財に限って申し上げれば、今御指摘にありました登録有形文化財としての旧陸軍知覧飛行場の防火水槽、旧陸軍知覧飛行場弾薬庫、旧陸軍知覧飛行場着陸訓練施設鎮碇というその三つとなります。

 これらの文化財の登録の場合は、指定でも同様なんですけれども、地方公共団体からの御意見の具申を受けまして、国の文化審議会で審議を行った結果、登録基準を満たすことが認められますと登録ということになります。

 なお、その登録という仕組みは、国や地方公共団体による指定を受けていないものについて、緩やかな規制と保護措置をいたしまして、指定制度を補うというものですので、県や市で指定を受けているものは登録の取り扱いはいたしておりません。

 ただ、議員のお尋ねが、国の指定とか登録というものをもっと進めていくべきではないか、指定も含めたことだというふうにもし解釈させていただきますならば、御指摘の戦争遺跡を含めまして、明治以降の近代遺跡は、近世までの遺跡に比べて、まだ十分な保護が進んでいないというのが現状だというふうに私どもも認識をいたしております。

 そこで、戦争に関連するものも含む近代の文化財の所在などを系統的に把握するための調査を文化庁としても実施をいたしております。それも活用していただきながら、国としての史跡指定ですとか登録をするためには、地方公共団体において、さらに文化財の価値としての調査研究、測量等を実施し、地権者の同意を得て意見具申をしていただく、こういう手続になります。

 私どもとしても、指定、登録に向けた助言とかあるいは調査費の補助ということを通じて地方公共団体の取り組みを御支援してまいりたいと考えております。

柏倉分科員 ありがとうございました。

 ぜひ積極的に勘案していただきたいと思います。

 知覧飛行場のすぐそばに特攻平和会館というのがあるんですが、そこは、維持費よりも入館料の方がはるかに上回っているということです。近くに武家屋敷もあって、私も何度か行きましたけれども、観光スポットとしても非常に活況を呈している。そういうことで、戦争遺跡をいま一度検証して、地方自治体ときっちりと情報共有、連携をして、平和教育プラス地域活性化の観点から、生き返らせるといいますか、生まれ変わらせる、そういった戦争遺跡に対する国のスタンスも必要ではないかというふうに思います。

 それでは、時間の関係で、最後の質問をさせていただきます。

 ユネスコの世界記憶遺産というものがございます。資料の先ほどのところの次につけておるんですけれども、ここにある、特攻隊で散っていった英霊の遺書、これをユネスコの平和遺産に登録しようと南九州市が手を挙げているということでございます。

 世界遺産は、国枠、地域枠とあるようでして、地域枠の方で手を挙げるということですが、これは、私は、平和教育に資するという意味で圧倒的な価値があるものであるというふうに考えています。どうでしょうか、国でこれを後押しするようなことは考えられないでしょうか。

河村政府参考人 ユネスコ記憶遺産の推薦について、ユネスコは、政府機関だけではなくて、自治体、NGOを含む団体、個人からの申請も可能というふうに定めております。

 南九州市の場合、市がみずから、御自身の意思を持って、この市にある知覧特攻平和会館の所蔵資料の登録を目指して推薦準備作業を行っているというふうに承知をいたしております。

 こういう地域における申請に向けた取り組みが、その地域の方々を含めた資料に対する理解を深めることに資するというふうに期待をいたしておりまして、国としましては、地方からの御要望に基づきまして、情報提供や助言という形で御支援をしてまいりたいというふうに考える次第でございます。

柏倉分科員 時間となりましたので、質問をやめさせていただきます。

 本当にきょうはどうもありがとうございました。

あかま主査代理 これにて柏倉祐司君の質疑は終了いたしました。

 次に、玉城デニー君。

玉城分科員 生活の党の玉城デニーです。

 きょうは、予算委員会の第四分科会、大変長い時間ではありますが、大臣、どうぞまた質問等、ぜひお願いを申し上げたいと思います。

 さて、まず、教育制度の改革に関する件からお伺いいたします。

 下村文部科学大臣は、委員会の大臣所信で、第二次安倍内閣は、経済再生と教育再生を内閣の最重要課題であると述べられ、人づくりは国づくり、日本の将来を担う子供たちは国の一番の宝であり、教育は国の根幹を形づくる最重要課題であると述べられています。

 教育は国の根幹をなす最重要課題、このことに関しては、国会においてそのための役割と責任を果たしていかねばならない我々議員が共有する高い価値観でもあるということは明確であるというふうに思います。

 大臣はまた、所信におきまして、二十一世紀の日本にふさわしい教育体制を構築し、教育の再生を実行に移すための議論を進める教育再生実行会議にも触れておられます。規範意識や自主性、社会性を育む道徳教育の抜本的な充実、いじめに向き合う責任体制の整備、適切な指導の徹底を進めるということだというふうに思います。

 さて、では、ここで伺いますが、先般、教育再生実行会議が行った第一弾の提言の中に、道徳の教科化が挙げられております。これを踏まえ、大臣としてどのような教育的な方針で道徳の教科化を位置づけていきたいというふうにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。

下村国務大臣 御指摘のように、教育再生実行会議の第一次提案の中で、これはいじめ、体罰に対する対応の提言の中の一つとして、子供たちの規範意識が低下しているのではないか、そのための一つの手だてとして、道徳の教科化が提言されたところでございます。

 教育は、知育、徳育、体育というふうに言われておりまして、徳育についてはこれまで学校全体の中で子供たちに対して指導するということが言われておりました。ある意味では、給食そのものも道徳的な観点から指導するという視点を持つということは大変重要なことであるというふうに思います。

 しかし、肝心かなめの道徳という授業が、週一度ございますけれども、それが学校行事等に使われたり形骸化しているのではないか。そもそも、それぞれの学校の現場の先生が創意を工夫されている部分はたくさんありますが、教科書が別にあるわけではありませんから、どういう指導をしたらいいかということが難しい。そのために、地方自治体等が副読本等を使って行っているというところもあるわけでございますが、これについては心のノートが本来ございましたが、民主党政権のときに、これが事実上は冊子としては配付されないということになりました。

 この心のノート等を有効に活用しながら、しかし、今の心のノートでも十分ではないと思っておりまして、全面改訂しながら、より子供たちに規範意識、世の中の社会のルールやマナー等を教えることが大切ではないかと提言されておりますし、それをぜひ実行に移していきたいと思っております。

玉城分科員 心のノートの件に関しては、またこの後で質問をさせていただきたいと思います。

 本当に、大臣おっしゃいますように、道徳教育は心を養う科目であるということは論をまたないところであります。

 しかし、個人の生き方とその価値観を学びつつ、では、学校や家庭、地域とつながりをこの道徳の教科でどのように学ばせたいというふうにお考えでしょうか。

下村国務大臣 道徳については、学習指導要領が具体的にありまして、それぞれの目標項目がございます。

 この中で、例えば友達と仲よくするとかいう中で、これを使って家庭でも、持ち帰って親も一緒に学ぶことができるような、親子でそのことによって会話が弾むような、そういうことをぜひ考えていきたいというふうに思いますし、これをぜひごらんになっていただければ、特定の国家の価値観を押しつけるものではないということはおわかりになっていただけるというふうに思います。

 これは、国境を越えて、歴史を超えて、人が人として学んでおくべき、ある意味では人の生き方、社会のルール、規範意識、そういうものでございまして、特定の国家の価値観等を強いるというものでは全くございません。

玉城分科員 道徳の教育について国家の価値観を強いるものではないということで、心のノートの方でも触れさせていただきますが、広くこの日本という国の暮らし、歴史や文化がどれだけ多くの今のなりわいを形づくっているかということは、私たちも沖縄に住みながら、北海道から沖縄までのこの南北に長いそれぞれの気候、地域、風土に合ったその心の学び方というものはあってしかるべきだというふうに思います。

 そして、それが例えば日本全体で選手が活躍をする、あるいは秀でた方が名のある業績で後世に名前を残していく、それが日本人の総体としての誇りにつながるというようなことは、これはやはり、今の大人である私たち、これから子育てをする若い人たち、そして今まさに学び盛りである子供たち、全ての世代を超えた共通の大きな目標であるということは、大臣のおっしゃるとおりだと思います。

 一方、では、道徳を教科にしようという場合に当たっては、これまでにもさまざまな検討の経緯がありつつも、例えば価値観の押しつけにならないかですとか、あるいは心のありようは学校では評価できないのではないかというふうな、さまざまな批判的意見もありました。道徳を教科化すれば、それが例えば本当に個人の尊厳に合わせた、社会の規範に照らす人格の形成にしっかりと寄与するものになるかどうか、見解を伺いたいと思います。

下村国務大臣 御指摘のように、例えば沖縄では通用するけれども東京では通用しないとか、そういう価値観は、これは道徳ではないと思います。沖縄であっても東京であっても、先ほど申し上げましたように、日本であってもほかの国であっても、現代であっても過去においても、やはり人の生き方として学ぶべき道、これを道徳というふうに我々は位置づけたいというふうに思います。

 特定の国家の価値観を強いるものではないということの中で、今後道徳の教科化の中でどういうような取り組みをしていくかということでございますが、一つは、道徳教育の充実に関する懇談会の中で議論をしていただくことではありますが、今、心のノートを七月から配付いたしますが、これが十分な冊子ではないと思っております。そもそも教科書でもございません。これをもっと充実させて、先ほどもちょっと申し上げましたが、家に持って帰って、親が読んでもなるほどこれは非常に勉強になるねというような、家庭教育でも使えるようなものを目指していきたいというふうに思います。

 その中で、評価という話もございましたが、これはそういうような物差しでもありますから、ほかの教科のように相対評価にも絶対評価にもなかなかなじまないだろうというふうに思います。しかし、違う形で、全く評価しないということではなくて、学校の通知表でも、一般の教科については左側に一、二、三、四、五であるとかいろいろなランクがありますが、右側の方には学校の先生がいいと思うところに丸がついたりとか、そういう評価もあるわけですね。ですから、他の教科と違う評価のあり方は今後検討してもらう必要があるというふうに思います。

 それから教員についても、これも免許となるとなかなか時間もかかります。大学における指導教員をどうするのかとか、それから大学の教員養成課程における道徳をどう位置づけるのかということがあるし、それを待っていたら十年以上先の話になってしまいますので、あり方としては教員をどう位置づけるかというのは今後の議論ですが、今の学校の道徳の授業の中で全ての先生が活用できる、そういう冊子としての位置づけとして、まずは心のノートの改訂版をつくっていきたいと思っております。

玉城分科員 ありがとうございます。

 では、その心のノートについての質問をさせていただきたいと思います。

 文部科学省が二〇〇二年から全国の小学校、中学校へ配付していた道徳の副教材であった心のノートなんですが、大臣がおっしゃいましたように、前の民主党政権による事業仕分けで教材配付を取りやめ、ウエブ掲載というホームページでの掲載の形にしておりました。安倍政権の方針に沿う形で、平成二十四年度の予算に約六億三千万円、平成二十五年度の予算には八億三千万円を予算案で計上しておりまして、小学校、中学校へ再び配付するということになっております。

 この心のノートに関しまして、先ほど大臣もおっしゃいましたが、心の成長記録として保存ができるという意見、あるいは、保護者が見てどういう指導をしていらっしゃるんだなということがわかりやすいという意見があるほかには、答えが誘導されているようにも感じるでありますとか、あるいは、身近な事柄を話し合うことの方がより考え方の成長になるという意見など、小学校、中学校のそれぞれ学年が上がっていくと、この心のノートに対しての捉え方もやはり子供たちさまざまだなという意見があるようでございます。

 このように、以前から賛否がさまざまで、その検証すらまとまっていないというふうなお話がある中で、大臣はどのようにお考えになっているか、お聞かせください。

下村国務大臣 先ほど申し上げましたように、今月、道徳教育の充実に関する懇談会を立ち上げて議論を始めたところでございます。その中で、実際に心のノートを作成された方々もそのメンバーの中に入っておられますので、広く、作成された方々からも改めてこの心のノートのいいところ、悪いところ、課題等をよく精査してもらう必要があるというふうに思います。

 心のノートは、本来、児童生徒が身につける道徳の内容をわかりやすくあらわし、道徳的価値についてみずから考えるきっかけになるよう作成された教材であり、道徳の時間を初めとして、特別活動や総合的な学習の時間、家庭での生活など、さまざまな場面における活用を促したところでございます。

 しかしながら、児童生徒の書き込み欄が中心であるなど、道徳の教材として必ずしも十分な内容ではないなどの課題があるというところもございまして、文部科学省に設置した、今申し上げた道徳教育の充実に関する懇談会において、その全面改訂について検討を始めたところでございます。

 改訂の方針については今後懇談会で本格的な議論をいただくということになりますが、文部科学省としては、これまでの心のノートのよい面は継承しつつ、例えば、先人の残した名言や偉人の伝記、伝統文化に関する読み物資料の追加など、道徳の時間の指導においてより活用しやすく、効果的な内容、構成などとするための具体的な改善案をまとめていただくことが必要であると思います。

 その中で、先日の懇談会でも、ただ一方的に読み物としてあるだけでなく、子供同士が議論をしながら、話し合いながら、より自分の考えを深掘りをしていく、そういうものも必要ではないかというような議論もあったところでありますし、ただの教科書的な位置づけではなくて、今までの、人と比較するわけではなくて、自分自身の心をさらに深く見詰めるために記入するような部分もやはり必要だというふうに思いますし、いろいろな角度からよりよいものを目指し、来年、二十六年度から使用できるような改訂作業を進めたいと考えております。

玉城分科員 ありがとうございます。

 そのためにも、心のノートの中学生版のノートをプリントアウトして私は読ませていただきましたけれども、どう思っていますかという書き込みが、多いというよりも、やや物足りないといいますか、書いてしまって、そこから先が行かないというような。そういう、もっと自由闊達な考え方があってもいいのではないかと思うんですが、そのためには、やはり地域の文化やあるいはボランティアなどの積極的な、体験的な道徳の観念を習得するということも重要なのではないかなというふうに思っておりますので、それもまた、ぜひ今後の子供たちの成長過程の中に取り入れていってほしいなというものであります。

 さて、土曜日の授業について質問をさせていただきたいと思います。

 下村大臣は所信の中で、土曜日授業の実施について、平成二十五年度予算案において、土曜日授業に活用し得る約七千人の指導員のための経費を計上し、推進のための課題を整理して進めていくと述べていらっしゃいます。

 そもそも、学校週五日制の導入は、旧文部省や中教審がゆとりを重視して学習指導要領へ導入して始まったものであるんですが、第一次の安倍内閣時代に、当時に、このゆとり教育の見直しが着手された、そういう経緯がございます。

 そこでお伺いいたしますが、この土曜日の授業を進めていく意義はどのようなものであるかということを伺いたいと思います。

下村国務大臣 子供たちに知徳体のバランスのとれた生きる力を育むための方策の一つとして、土曜日のより有効な活用について検討することが必要であると考えております。このため、三月に省内に検討チームをつくり、検討を開始したところであります。

 土曜授業を実施する際には、御指摘のあった教師の負担という点に関しては、例えば、当該土曜日は子供たちのためにしっかりと勤務をしていただきつつ、夏休みや冬休み等の長期休業期間中に振りかえて休みを取得してもらう、教職員の休養や自己の研さんの機会としていただくよう、そのようなめり張りのある勤務体系とするなどの措置が必要だと考えております。

 また、土曜授業を一層推進していくためには、その考え方等を家庭や地域にもしっかりと説明し、理解を得ていくことも重要であるというふうに考えております。

玉城分科員 やはり家庭の負担というものが、この場合、心配が大きくなってくるのではないかと思います。公立の学校ではもうこの週五日制が定着し、土曜日を、ある意味でいうと、子供たちの例えば学習の面、あるいはスポーツなどの面、自分の教養の面に向けていって、土曜日休みのお父さん、お母さんは子供たちと一緒にそれを支えてあげるという、そのPTA活動が、この土曜日が大変充実しているという状況もあるわけですね。そういう状況の中での家庭の御父母の方々が不安に思っていらっしゃることに対して、大臣はどのようにお考えでしょうか。

下村国務大臣 御指摘のように、例えば東京都を初め幾つかの自治体では、既に土曜の有効活用をしている自治体もございます。この中で、土曜寺子屋塾のように、地域の方々あるいは父母の方々等が一緒になって学校で子供たちの総合学習的な観点からやっているところもございます。

 必ずしも土曜日に通常授業の教科を持ってくるというよりは、そういう土曜ならではの有効な活用の仕方もあるというふうに思いますし、これも、毎週ということでなく、月に二回とかいう考え方もありますし、最初からがちがちに固めているということではなく、その辺は、それぞれの自治体の成功事例、それから御父母の御意見等をよくお聞きしながら、トータル的に、有効な土曜授業のあり方について検討してまいりたいと思います。

玉城分科員 ありがとうございます。

 では、続いて、改正教育基本法の理念について大臣のお考えを伺いたいと思います。

 第一次安倍内閣の二〇〇六年に改正された教育基本法第二条一号に「幅広い知識と教養を身に付け、」「豊かな情操と道徳心を培う」、第二号では「職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養う」とし、第五号では「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養う」とございます。

 先ほど来大臣がおっしゃっているように、我が国のみのことだけを考えているのではないというふうなことがこの教育基本法にも込められているのではないかと思うんですが、そこで、大臣も所信で、教育再生実行会議の提言を踏まえ、教育基本法の理念に基づき、世界トップレベルの学力と規範意識を備えた人材を育成すると述べていらっしゃいます。

 その一方で、気になるのは、現状では、例えば大学を卒業しても、自分の思う環境で力を発揮することができない厳しい雇用情勢でありますとか、あるいは、最高学府を卒業して以降の自分の将来設計が思うようにいかず、伝統文化を尊重する心のゆとりさえ持てない大学生時代の学生が多いという中で、この教育基本法の理念がどのように生かされて、どのように社会に貢献していくとお考えなのか、ぜひお考えを聞かせていただきたいと思います。

下村国務大臣 御指摘のように、改正教育基本法では、教育の目標として、個人の能力の伸長、創造性、公共の精神、社会の形成に参画する態度、伝統と文化を尊重し、それらを育んできた我が国と郷土を愛し、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度などを育成することが新たに規定されたところでございます。

 このことを踏まえて改訂された新学習指導要領におきまして、全ての教育活動を通して、記録、要約、説明、論述などの言語活動を重視し、子供たちの思考力、判断力、表現力等を育てること、つまり、今まで、例えばこんなような教室で、先生が真ん中にいて、生徒は先生の授業をただ聞いているだけ、受け身だったわけですが、そういう受け身から、みずからの思考力とか判断力、表現力をどう高めていくか、そういうものが新たに学習指導要領の中に入った。

 それから、理数教育を重視し、科学的思考力を育てること。理数についても非常に今、前に比べると弱くなっている。

 そして、外国語によるコミュニケーション能力を育てること。残念ながら、大学まで含めたら十年勉強しても、英語は、書けるかもしれないけれども話すことができない、苦手な日本人が多い。

 それから、我が国の郷土の伝統や文化について理解を深め、そのよさを継承、発展させること。外国に行っても、日本のすばらしい伝統文化をきちっと語ることができない日本人が多いということをよくお聞きになっていると思いますが、そういう部分があると思います。

 それから、道徳教育を充実させること。

 こういうことが特に重視されているところでございます。

 今後とも、こういう点に留意しながら改正教育基本法の理念に基づく教育の充実に努めることによりまして、先ほど委員が御指摘されたような、子供たちの目の前における課題がクリアできるような、たくましい人間力を育てていくことが求められていると思います。

玉城分科員 ありがとうございます。

 では、最後、時間まで、沖縄県八重山における教科書採択問題について質問させていただきます。

 沖縄県石垣市、竹富町、与那国町で構成する八重山採択地区協議会において、中学校の公民教科書をめぐる問題について伺いますが、この問題の発端とこれまでの経緯と現在の状況についてを簡潔に確認させていただきたいと思います。

布村政府参考人 八重山教科書採択問題の経過でございますけれども、新指導要領に基づく中学校の教科書につきまして、石垣島、竹富町、与那国町の三市町で同一の採択地区を形成されております。

 平成二十三年八月に、中学校社会科の教科書の採択について、各教育委員会で採択すべき教科書についての選定の答申が行われたところでございますけれども、その後、竹富町のみが、中学校社会科公民分野の教科書について、答申とは異なる教科書を採択するということを町として決定されたところでございます。採択地区協議会の役員会において再協議を行いましたけれども、調わなかったという状況でございます。

 その結果として、無償措置法あるいは教科書発行法に照らして違法な状態が続いているという状況でございます。

 ことしの三月一日には、義家政務官が竹富町を直接訪問され、無償措置法にのっとり、協議の結果に基づいて教科書の採択を行うよう指導をし、また沖縄県の教育委員会に対しましても、竹富町を適切に指導するよう指導をしたところでございます。

 また、その後、文科省から、沖縄県の教育委員会や竹富町教育委員会に、義家政務官が訪問し指導した後の対応状況を確認する文書を流し、指導をしたところでございます。

 竹富町の教育委員会から四月十一日付で発送された文書が、本日、文科省の方に届いたところでございますけれども、三月一日の義家政務官による指導以降、県の教育委員会との協議を経て、今年度も東京書籍の公民教科書を配付することを確認するという経過、及び、無償措置法十三条四項の違反あるいは発行法に基づく需要数報告ができていないことについては、県の教育委員会と協議を重ねながら、さらなる協議を検討するという旨記載されていたところでございます。

 この回答がまだ届いたばかりで、私ども、今ようやく聞いたところでございますので、今後の対応につきましては、回答の内容を精査した上で、引き続き指導するということになろうかと思います。

玉城分科員 やはりこの問題は、同一地区内で同一教科書の使用を定める教科書無償措置法と、採択権は市町村にあるとする地方教育行政法との整合性がとれていないということが、問題の深刻性を増しているわけですね。

 先ほどおっしゃいましたように、三月一日には義家政務官が、竹富町教育委員会、県教育庁で、八重山採択地区協議会の答申結果に基づいて採択し直しなさいということで指導をしたというふうにあります。

 文科省では、この二つの違う法律に存在する矛盾に関して、国が介入するということはあってはならないことだと思いますが、どのように解決していくという方向をたどろうとお考えでしょうか。

布村政府参考人 教科書の採択につきまして、義務教育の教科書については、無償措置法十三条四項におきまして、共同採択地区においては、採択地区内の市町村の教育委員会が、協議をして種目ごとに同一の教科用図書を採択しなければならないという規定を設けてございます。

 この無償措置法十三条四項は、教科書採択の権限を定めた地教行法二十三条六号の特別の定めという位置づけになります。したがいまして、共同採択地区を構成する市町村教育委員会は、採択権限を行使するに当たりましては、無償措置法に従い、協議の結果に基づき種目ごとに同一の教科書を採択いただかなければならないという法律上の構成になりますので、その無償措置法に従って竹富町の教育委員会を継続的に指導しているところでございます。

玉城分科員 地元の、沖縄の新聞の報道によりますと、慶田盛教育長は記者団に対して、違法性があるという文部科学省の解釈を私たちは肯定しておりません、何ら瑕疵はございませんと強調し、やはり地方教育行政法にのっとった地方教育委員会の教科書採択権を主張なさっているということです。さらに、四月からの教育課程は二月末で決まっていて、一日たりとも子供たちの教育を停滞させることは許されないと述べ、年度途中で教科書を変更すれば学校現場に混乱が生じるという見解も示しているところでございます。

 ですから、このことに関しては、実は、教科書を採択する協議会の会議の持ちようそのものに、お互いに、勘違いあるいは瑕疵そのものが地域にあったのではないかということが、今日までずっと続いてきている状況でございます。

 ぜひ大臣、お伺いいたしますが、こういう問題に限らず、全国のさまざまな教育上の課題に対して取り組んでいくためには、やはり、地域に開かれた、地域に根差した、子供たちの学びと成長に寄与するための教育委員会として、国の指導よりも、地域の主体的なあり方について、しっかりと文科省でも考えていく、位置づけていくというふうにしてはいかがかと思いますが、そのお考えについて最後にお伺いしたいと思います。

下村国務大臣 まず、竹富町はこの無償措置法については違法状態ですから、これについては沖縄県の教育委員会も文部科学省の指導については理解をしていただいていると我々は思っておりますし、引き続き、沖縄県の教育委員会を通じて、竹富町に対しては、やはりルールはルールとして守っていただきたいと思っております。

 ただ、将来の課題として、地方教育行政法と無償措置法のこういう問題についてどういうふうに整合性を合わせるかということについて今後議論していくことは必要なことだと思いますが、これはこの竹富町と別の問題として今後検討する課題であると思います。

 もう時間が限られますので、開かれた教育委員会のあり方については、来年、通常国会で教育委員会の抜本改革案をぜひ法律案として出したいと思っております。その中で、改めて中央教育審議会等でも議論をしていただきながら、これから法案として出してまいりたいと思っております。

玉城分科員 どうもありがとうございました。

 以上で終わります。

あかま主査代理 これにて玉城デニー君の質疑は終了いたしました。

 次に、椎木保君。

椎木分科員 日本維新の会の椎木保でございます。

 本日、私は、過去に小中学校、高校で教鞭をとり、茨城県鹿嶋市教育委員会で勤務してきた経験に基づいて質問させていただきます。

 初めに、教員免許状ですが、教員免許状には普通免許状、特別免許状のほか、臨時免許状があります。普通免許状は平成二十一年度より更新制が導入され、その制度の目的として、教員として必要な資質、能力が保持されるよう、定期的に最新の知識、技能を身につけることで、教員が自信と誇りを持って教壇に立ち、社会の尊敬と信頼を得ることをうたっています。一方では、普通免許状を有する者を採用できない場合に限り、臨時免許状が授与され、教壇に立つ先生もいらっしゃいます。

 そこで、私は、臨時免許状についてきょうはお聞きしたいと思います。

 全国で臨時免許状を授与されている教職員数は、小学校、中学校、高等学校、それぞれにおいて推移はどうなっているでしょうか。御答弁をお願いいたします。

布村政府参考人 臨時免許状の授与件数の推移についてでございますが、小学校については、平成十年度、千三百二十七件、平成十七年度、二千八百八十件、平成二十二年度、三千二百八十六件、中学校につきましては、平成十年度が千七百九十五件、十七年度が千九百八十八件、二十二年度が二千三百五十八件であり、小中学校につきましては増加傾向にございます。

 高等学校につきましては、平成十年度が二千九百十八件、平成十七年度が二千四百二十一件、二十二年度が二千七百八十件であり、多少増減はありますけれども、ほぼ横ばいの状況となってございます。

椎木分科員 小学校については、ただいまの御答弁のとおり、平成十年度では千三百二十七件に対して、最新のデータである平成二十二年度では三千二百八十六件と二倍以上になっていますが、文部科学省としてこの事実についてはどのような認識をお持ちなのか、答弁をお願いします。

布村政府参考人 小学校の臨時免許状につきまして、平成十年の千三百二十七件から平成二十二年の三千二百八十六件と約二・五倍の増となってございます。

 その理由につきましては、例えば、平成十四年に教育職員免許法が改正され、中学校または高等学校の免許状のみを有し、小学校において特定の教科を担任する専科担任制度が拡充され、これら専科の教員に対する小学校の臨時免許状の授与件数が増加したことなどが制度上推測されるところでございます。

 小学校教員の確保の必要性などにつきましては、各都道府県によってさまざまでございますけれども、文部科学省としては、適切な人事配置あるいは採用上の工夫を行った上で、やむを得ない場合に臨時免許状を授与することが適当であるというふうに考えております。

椎木分科員 ただいまの答弁を平たく言いますと、小学校においては、小学校の免許状を持っていない者が教壇に立っているということでよろしいんでしょうか。

布村政府参考人 具体例で少し御説明させていただきますと、低学年における複数配置教員を進める都道府県がございまして、複数担当教員、チームティーチングのもう一人の担任ともう一方のT2という方々について、なかなか小学校教諭の免許状取得者を確保できないという場合には、中高の免許状を持っている方に臨時免許状を出している、そういう実例ですとか、臨時的任用講師を採用する際に、小学校教諭免許状を持っている適任者がいないために、中高の免許状を持った方々に小学校教諭免許状を持っているという、地域地域の実情に照らして都道府県の教育委員会で御判断されているというのが実態でございます。

椎木分科員 私は実際に中高の社会の免許を持っているんですけれども、過去に、小学校の免許を持っていない中で、小学校の三学年の担任をした経験があるんですよ。これは私だけじゃないんです。

 初等教育というのは一番大事なときなんですよ。免許状の取得者は全国的にも数いるはずなんですよ。ところが、各都道府県の教育委員会は免許状を有していない者を教壇に立たせているんですよね。これは生徒や保護者はわからないんですよ。免許状を持っていると思っているんですよ。そういうのを一切公表もしない中、小学校の免許を一切持っていない者、何ら教職課程も経ていない、経験のない者が小学校の教鞭をとっているんですよ。これで学力の低下という議論になるんですかというのを私はまず申し上げておきます。

 あわせて、今度は中学校の方の話をさせていただきます。

 都道府県別では、中学校と高等学校の臨時免許状の授与件数の多い順は、平成二十二年度ベースで、鹿児島県、栃木県、和歌山県、宮崎県、千葉県、広島県、茨城県となっています。ちなみに、一位の鹿児島県は四百六十五件です。逆に、一方、岐阜県は小中高それぞれゼロ件です。

 このような状況は計画的な採用、配置ができないものと考えますが、文部科学省の所見をお願いいたします。

布村政府参考人 臨時免許状授与件数の中学校の状況は今先生御指摘をいただいた数値になろうかと思いますけれども、法律上は、先生最初に御指摘もございましたけれども、普通免許状を有する者を採用することができない場合に限り、教育職員検定に合格した者に授与するという都道府県の教育委員会の判断があるところでございます。

 小学校につき、また中学校におきましても、十分な適任者が得られない、そういう状況の中で、都道府県によって判断され、臨時免許状を授与しているという実態になろうかと思います。

椎木分科員 私は、文科省の指導が悪いとか、そういうことは一切申し上げるつもりはありません。下村大臣を初め義家政務官の、今の政務三役としての役割についても私は本当に敬意を表しています。ただ、教育委員会の形骸化というところにやはりメスを入れる意味で、今ちょっと質問させていただいているんです。

 今の中高の答弁を聞きましても、結論だけ言いますと、社会の免許状しか持っていない人が数学を教えたり国語を教えたり、その数がこれだけいるということなんですね。ただ、実際に教職員の免許を持っている人はたくさんいるわけですよ。採用試験を受験している方もたくさんいるわけですよ。その上で、常勤講師、非常勤講師を都道府県教育委員会に登録している人もたくさんいるんですよ。

 私が申し上げたいのは、なぜ、そういう教員免許を有している人を採用しないで、免許状がない人に臨時免許状を交付して教壇に立たせるんですかということを申し上げたい。

 加えて、生徒と保護者は専門教科の先生に教わっているという意識しかないわけですよ。まさかこの先生が数学を教えていて免許を持っていないなんて、夢にも思っていないわけですよ。そういう保護者や生徒の信頼を失墜している中で、教員が生徒や保護者に尊敬されることもないでしょうし、これは学力低下の大きな要因だと私は思います。そして、これは教育委員会制度の形骸化の大きな原因だと思います。

 あわせて、今の答弁について、このような御発言があったかと思うんですね。臨時免許状は、普通免許状を有する者を採用できない場合という御答弁だったと思うんですけれども、では言い方を変えますけれども、普通免許状を有する者が採用できない場合というのは、具体的にはどのようなケースなんでしょうか。臨時免許状はどのような手続を経て授与されているんでしょうか。答弁をお願いします。

布村政府参考人 普通免許状を有する者を採用できない場合としましては、都道府県内に特定教科の普通免許状を保有する者が少ない場合、あるいは、僻地や離島で、年度途中で休職する教員の補充などを普通免許状保有者で行えない場合などが想定されております。

 このほか、少人数指導や特別支援学校における自立教科などに対応するために採用の必要性が増加しているため、普通免許状を所有する者を採用できない例があるところでございます。

 各都道府県におきましては、地域や学校の事情に応じ臨時免許状を授与しているものと考えておりますけれども、安易な活用はせず、できる限り普通免許状を保有する者を採用するよう努力を続けていただきたいと考えております。

椎木分科員 簡単に言いますと、普通免許状を有する者を採用できない場合に限りなんですよ、この臨時免許状が授与できるのは、都道府県教育委員会が交付できるのは。

 実際、免許状を持っている人はいるんですよ。講師で登録している人もたくさんいるんですよ。教員採用試験で、一生懸命勉強して受験されている人もたくさんいるんですよ。免許状を持っている人、講師になりたい人、これから教師を目指している人がたくさんいる中で、何でこれだけの数を臨時免許状で対応しなきゃいけないんですか。専門教科ですよ。大学でのカリキュラムも教職課程が全然違うんですよ。

 そういう中で、いかにも簡単に都道府県の裁量で臨時免許が出て、本来数学の免許を持っている人は採用されずに、数学とは全く無縁の人が他の教科を持っているからといって採用されている、そういう実態なんですよ。

 どうですか。私の言っていることで違いがあれば答弁をお願いします。

義家大臣政務官 委員におかれましては学校現場の実態をよく把握していただいていると思いつつ、さらなる影の部分ですね。

 例えば、私は高校の教員でしたが、二〇〇〇年以降、情報という教科がいきなり教科として採用されたわけです。当時、私の勤務している学校は、当然のことですが、情報の教員免許を持っている教員はおりませんでした。しかし、それはやらなければならない。代替措置として、数学の教師が教育大学に夏休みにずっと通って情報を学び、そして臨時的に教える等々の対応を行ったところであります。

 小学校についても、先ほど初中局長の方からもありましたが、僻地、離島等での休職者等が出た場合、そこで働いてくれる、そこで頑張ってくれるという人の採用が実は非常に困難をきわめるのが現実であります。教員を志している方の多くは、教員採用試験の後ならいいですけれども、その前だとなかなかそういうところには赴任しない。登録してあっても、打診してもなかなか決まっていかないという現状もあります。

 それから、一校当たり数人というような場合、あるいは十数人というような場合のときに、それぞれ各専門の教科担当を置いてしまうと、週の持ち時間が数時間で、かなりあいてしまうというような問題等も発生する中で、苦肉の策として、特に離島や僻地を抱えているところでは臨時免許状の授与件数が非常に突出しているという状況です。

 一方で、授与件数、東京などは小学校ゼロ、中学校ゼロでありますし、しっかりと対応できているところもある一方で、そういう問題性を抱えているところがあることと承知をしております。

椎木分科員 それでは、私の経験論で二つ目の事例をお話ししますと、私は平成元年と平成三年に中学校で講師をしていました。免許は、先ほど申し上げましたように、中学校の社会です。平成元年には、社会科の免許でありながら、保健体育と技術・家庭を担当させていただきました。平成三年には、期間としてはわずか三カ月ですけれども、数学の担当をさせていただきました。これは、三学年、受験を控えた一番大事な残り三カ月の時期です。

 本来、こういうケースというのは考えられないんですね。ただ、私は、当時、教諭を目指して勉強していましたので、専門教科外であっても、日本の未来を担う子供たちのために一生懸命勉強して教えよう、そういう姿勢ではやってまいりました。ただ、私は全く専門外なんですよ。専門外で体育や技術・家庭、数学を実際教えてきたんですよ。

 結果的に、今振り返ってみますと、もう本当に私もちょっと驚くべき実態なんですけれども、後で若干触れさせていただきますけれども、臨時免許状を私は交付してもらっていないんですよ。臨時免許状なくして、教科外で数学や体育や技術・家庭を教えてきたんですね。そういった場合、教育職員免許法第二十二条に抵触するんですよ。いいですか。「相当の免許状を有しない者を教育職員に任命し、又は雇用した場合には、その違反行為をした者は、三十万円以下の罰金に処する。」二項では、「第三条の規定に違反して、相当の免許状を有しないにもかかわらず教育職員となった者も、前項と同様とする。」これは時効もないんですよ。ということは、私、今から三十万罰金の処罰をされちゃうんですね。

 私は、こういう実態が今も、この臨免の中に含まれているか含まれていないかは別にして、実態として全国都道府県でこういう問題は多いと思うんですね。私は当時です。当時、私の周りにもこういう方はたくさんいました、たくさんという一般論になってしまいますけれども。私は、後々、教育行政で十三年経験があるんですけれども、教育委員会にいたときに、やはりこういう現実的な部分にも直面しています。

 私は、こういった都道府県の裁量の中で、免許がある人を、あえて免許がない人で採用している、なおかつ、臨時免許状も交付しないまま、授与させないまま教壇に立っている先生がいるということを申し上げているんですよ。これを私は問題視している。

 これについて、臨時免許状の授与される、教育職員免許法第五条第六項の規定についてお話しさせていただきますと、教育職員検定で審査されているわけですね、臨免の授与、交付については。その教育職員検定では、受検者の人物、学力、実務及び身体について、受検者が免許状を与えるにふさわしい人物かを総合的に判断するとあるんですよ。

 具体的には、どのような基準で、誰がどのような方法で判断されているんでしょうか。また、その判断には客観性があるんでしょうか。答弁をお願いします。

布村政府参考人 お答えいたします。

 臨時免許状に係る手続についてでございますけれども、都道府県によって少々の違いはございますけれども、おおむね以下のような形で進められております。

 まず、学校の設置者であります市町村教育委員会や私立の学校が、臨時免許状を授与する候補者を、まず、都道府県の教育委員会や市町村教育委員会に講師として登録している者や、あるいは他教科や隣接校種の免許状を有する者、あるいは看護師等の特定の免許、資格を有する者の中から探してこられます。

 その上で、適任者が見つかりますと、市町村教育委員会や私立学校が都道府県の教育委員会に対しまして教育職員検定及び臨時免許状授与申請書を提出するという手続になり、当該申請書には、普通免許状保有者を採用することができない理由や、対象者の資質、能力などを記載した書面、履歴書、大学の卒業証明書、成績証明書、健康診断書などが付されているところでございます。

 都道府県の教育委員会におきましては、これら提出された書類や面接によりまして教育職員検定を行い、合格者に臨時免許状を授与するという手続をとっているところでございます。

 これらも、法律の規定に基づいて行われている教育職員検定でございますので、極力、客観性、公平性を保って審査をいただいているものと考えられるところでございます。

椎木分科員 今の答弁ですと、書類の審査と人物評価をあわせて面接をしているとありますけれども、これは、全国都道府県、みんなやっていますか。これは調査しての答弁ですか。その点、確認させてください。

布村政府参考人 全ての都道府県というよりは、幾つかの事例、都道府県における教育職員検定の実態を踏まえて答弁をさせていただきました。

椎木分科員 そうですよね。私の知っている都道府県でもこんなことを一切やっていないところがありますので、あえて質問させていただいているんです。

 私が何を申し上げたいかというと、教育職員検定できちんと専門性を担保しているのかということを言いたいんですよ。

 何度も言っていますけれども、社会の免許しかない私が数学を教えるんですよ。私は面接なんか受けていないですよ。書類も出していないですよ。知らないところでそういう臨免の手続が行われていたか、行われていないのか。本人は知らないですよ。ただ、私が申し上げているのは、私だけじゃないと言っている。

 これだけ今、ゆとり教育の、ある意味、負の遺産といいますか、学力低下の一つの要因とも位置づけられているわけですよね。しかし、私が申し上げたいのは、専門教科を専門の先生に教鞭をとらせないのであれば、学力低下は当たり前でしょうということ。

 しかも、客観的な審査基準もないんですよ。今答弁があったように、面接云々をやっているところもあるでしょう。ただ単純に書類の申請書だけ出して、都道府県教育委員会が、じゃあ、いいよ、一年間やれ、三年間やれと。無免許の人が教壇に立っているんですよ。

 これについては、都道府県教育委員会が安易に臨時免許状を、先ほどの質問の、これだけの数、小中高、交付しているのかどうか、客観的な基準できちっと教育職員検定を実施しているのかどうか、専門性は担保されているのかどうか、これはぜひ文部科学省で全国都道府県を調査していただきたいと思うんですけれども、大臣、答弁いただけないでしょうか。

下村国務大臣 委員の言われるところももっともなところもございます。

 ただ、先ほど、島嶼の事例等、政務官もお話がありましたが、いろいろな地域事情による部分もあるのではないかと思いますし、それから、もう一つは、特別免許状等で、つまり免許を持っていない人も、自治体等が、教育委員会等が判断して、教えられるというような制度があるわけですね。これは臨時免許とはまた別の次元の話でもありますけれども。

 そういう意味で、生徒児童にとってよりよい先生であれば、結果的にそれが免許を持っていなくても、その自治体が例えば特別免許状のような形で提示をすればよしとする制度も一方であるわけですね。

 ですから、臨時免許状がどういう形で活用されているかどうかについては精査したいと思いますが、それが一概に全て違法とか違反とかいうような形で片づけられない、それぞれの地域のいろいろな特性もあるというふうに考えますが、検討すべきことであるということを、今お聞きして、感じさせていただきました。

椎木分科員 ありがとうございます。

 検討というより、まず調査していただいて、私は結果的に違法性がないということを信じたいわけですよ。ただ、教育職員検定というものが非常に曖昧な基準で、しかも専門の教科の先生がたくさんいらっしゃる中で免許を持っていない先生が教壇に立つというのは、これはやはり、生徒に対しても、保護者に対しても、私は日本の教育の信用失墜につながる大きな原因だと思うんですね。

 今、下村大臣の御答弁、また、これまでの予算委員会の御答弁も聞いていまして、私は、大臣のときじゃないと教育委員会の形骸化というのも直せないと思うんですね。そういう意味で、閉会中審査で中田議員がお話ししたとおり、私も維新の会の一員として、大臣を支えて、今教育委員会制度を抜本から見直すべきだと思っているんですね。

 私は、結論として何を最後に持っていきたいかというと、これだけ都道府県の教育委員会が適正配置とか計画的な採用をしないから、もうこういうところから形骸化しているんですね。だから、学力の低下も招くだろうし、いじめの問題にもつながるんですよ。

 これは、義家政務官も経験があるから、多分、私のお話は理解いただけると思うんですけれども、私も小中高をやってきたんですね。特に中高というのはホームルームは本当に時間が短いんですよ。ほとんどが、教科指導の中で子供たちに専門的な知識を教えて、なおかつ、人に対する思いやり、道徳、こういう気持ちを育ませるんですよ。それが、専門教科の免許状がない人がそういう指導ができるわけないでしょう。

 これが、文科省の管轄じゃないわけですよ。都道府県の裁量なんですよ。だから、都道府県が裁量権を逸脱しながら、ちょっと言葉は悪いですけれども、安易に教育職員検定をして、自分たちの裁量で臨時免許状を乱発しているというところを調査してもらって、そういうところに歯どめがかかれば、やはり学力低下の問題も、大きく学力向上につながると思いますし、いじめの問題、生徒たちのいろいろな悩みを教科担任の先生方が酌み取れると思うんですね。私はそういう趣旨で申し上げているんです。

 非常に時間がない中なので、もう一方の観点からいくと、冒頭私が質問させていただいたように、普通免許状は二十一年度から更新制が導入されているわけですね。一方で、臨時免許状というのは結果的にはざる法になっちゃっているわけですね。

 ただ、保護者とか子供たちにとっては、教壇に立つ先生は一緒なんですよ。教諭も講師もないんですね。先生なんですよ。その先生から専門的知識を学んで、先生を尊敬する心をつくって、そして、みんなが日本の将来を背負って立つ人間として成長していくんですね。

 それが、今の臨免が各都道府県ごとにまちまちで、客観的基準もなく、専門性の担保もない中で授与されているということは問題でしょう。だから、臨免の方も普通免許状の更新制とあわせて見直すべきじゃないですかということですね。

 検討ということで大臣の方から御答弁いただいたので、これは私の方であえて聞き直すことなく、検討イコール調査をしていただけるという前提に立って申し上げますけれども、これは本当に、私も教職課程の中で教員免許法なんというのはやっていないんですね。大学で履修していないんですよ。ですから、学校長から、あなたは社会だけれども、体育をやりなさい、数学をやりなさいと言われれば、やるんですよ。結果的に違法だ、そういう経験なんですね。

 現在もこういう状況が一部の都道府県であっても行われているのであれば、これはやはり今の下村大臣のときに、ぜひ調査をした上で改善を図っていただきたい。

 私は別にこれを大きな社会問題にしたいとか、野党が与党を責めているとかじゃないんですよ。大臣と義家政務官、私は本当に尊敬していますよ。文科委員会も私は希望して入りました。

 中田議員の話をもう一度繰り返しますけれども、私も中田議員と一緒に少しでもお役に立ちたいと思っています。そういう意味では、やはりこういう教育委員会の形骸化の、しかも子供たちの学力ですよ。

 最後、超過しちゃって申しわけありませんけれども、もう少しだけ。済みません。

 親は自分たちの食べたいものも我慢して、飲みたいお酒も我慢して、いろいろなものを節約して子供たちのために教育費を家計で捻出しているわけですね。そういう保護者の気持ちを酌んでいただいて、ぜひ、免許があるなしを公表しながら、本当にきちっとした教育を進めていけるようにお願いしたいと思います。

下村国務大臣 改めて、文部科学省としては、臨時免許状は、普通免許状を有する者を採用することが困難な場合に限り、例外的に授与するという趣旨、それを都道府県に徹底することによって、真にやむを得ない場合に限り、臨時免許状の授与や免許外教科担任の許可を与えるよう、改めて都道府県に対して指導してまいります。

椎木分科員 時間を超過して申しわけありませんでした。

 決して大臣や政務官を責めるという趣旨ではございませんので。一緒に頑張りたいという趣旨ですので。

 どうもありがとうございました。

あかま主査代理 これにて椎木保君の質疑は終了いたしました。

 次に、大岡敏孝君。

大岡分科員 自民党の滋賀一区選出の大岡敏孝でございます。

 新人でございますが、きょうは、下村大臣そして谷川副大臣、お話ができるのを楽しみに伺いました。

 私は選挙区が大津でございまして、大津といえば、例のいわゆるいじめ自殺事件で有名になってしまいました。何とかこの汚名を返上したいということで、大臣、副大臣とも力を合わせて、いじめをなくしていく、このことに力を割いていきたいと思います。

 まず最初に、このいじめ関連から質問をさせていただきたいと思います。

 二十五年度予算で、いじめ対策等総合推進事業が計上されております。この迅速な対応は高く評価をしたいのですが、この中身について、従来の延長ではなくて、今回の予算から新しく、これまでできなかったけれども、こういうことができるようになった、この予算を使って具体的にどのようにいじめをなくしていくお考えなのか、まず教えていただきたいと思います。

布村政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、いじめにより今も毎日悩み苦しんでいる子供が全国におられます。こうした子供たちが安全で安心できる学校生活を送れるよう、国としても、都道府県、市町村と一緒になって手だてを講じていくことが、教育におけるさまざまな課題の中で最優先で取り組まなければならない課題であるという認識を持ってございます。

 御指摘のいじめ対策等総合推進事業につきましては、例えば、いじめの兆候をいち早く把握し、迅速に対応するための教員研修の充実ですとか、幅広い外部専門家を活用して学校のいじめ問題への対応を支援したり、いじめ問題を第三者的な立場から調整、解決する取り組みですとか、あるいは、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、二十四時間いじめ相談ダイヤルなどの教育相談体制の充実や、警察などの関係機関との連携強化を促進する早期発見、早期対応の取り組みという形で、これまでもすぐれた取り組みをなされてきたところのものを参考にしつつ、今回のいじめの事案の反省の視点にも立って、より開かれた学校として、外部の専門家の方々との連携、地域の方々との連携、そういう視点からの事業を展開していただけるように要求をさせていただいているものでございます。

大岡分科員 ありがとうございました。

 これは本当に、具体的にどのように使うかというのが肝でございますので、大臣の思いが現場にまで落ちるように、しっかりと都道府県、市町村にお願いをしていっていただきたいと思います。

 次に、このいじめの報告書につきましては、恐らく大臣もお読みいただいたのではないかと思います。この中にはいろいろな指摘がございまして、中には私と意見を異にするものもございますが、非常によい指摘というのもちりばめられております。その中から三点、一つは教師の多忙化、二つ目は教師の勉強不足、認識不足、そして三点目としてカウンセラーの運用、この三点については非常によい指摘があったと思いますので、これを取り上げて質問をしたいと思います。

 まず教師の多忙化ということでございますけれども、これは構造的に学校運営の問題が出てきているのではないかと私は考えております。例えば、欧米であれば、教員というのは教育をやる。しかし、日本に来ると、先生というのは万能選手で、教育もやるし、給食代の集金もやる、もう何でもやらないといけない。このような状況になっていることが教員の多忙化を生んでいるのではないか。

 さらに言いますと、例えばヨーロッパでは、教員とその他の事務員の割合が、学校を十とすれば、教員六に対して事務員は四。これに対して日本はどうなっているかというと、教員八に対して事務員が二。極めて教員に偏っているのが一つの原因ではないかと考えております。

 こうした学校運営のあり方を見直すべき時期が来ているのではないかと思いますけれども、この方向性について大臣はどのように考えておられるか、教えていただければと思います。

布村政府参考人 大津市の第三者委員会の報告書にもございましたとおり、学校の教員の多忙化の解消というのが、現在の学校の抱える課題の一つになってございます。実際にも、学校教育に求められるものが多様化、高度化する中で、質の高い教育を行うという観点からは、教員の多忙を解消し、子供と向き合う時間を確保するということが重要な課題でございます。

 このため、文部科学省におきましては、教職員定数の改善措置をこれまで毎年講じてきておりますし、二十五年度予算案におきましても、いじめ問題への対応や特別支援教育の充実などに八百人の教職員定数の増、あるいは学校サポートのための指導員等派遣事業ということで、地域の方、外部の方々に学校教育活動に御協力をいただく、七千人という非常勤の枠を要求させていただいているところでございます。

 それ以外にも、行政サイドからお願いする調査を減らすこと、学校の情報化、事務の共同実施、先生がおっしゃられたように教員以外のスタッフをふやすという取り組み、あるいはボランティアによる学校活動の支援という、さまざまな工夫をして教職員の多忙化の改善につなげて、教員が子供一人一人と時間をかけて向き合える体制づくりに、都道府県、市町村と一緒に取り組んでいるところでございます。

大岡分科員 いやいや、そういうことを聞いているのではなくて、先生が忙しいから先生をふやすというのに限界があるのではないかと申し上げておりまして、学校運営のあり方を、やはり先生は先生で教育に特化する、事務は事務屋に任せる、こういう考えはないかと伺っております。

布村政府参考人 その点につきましては、先ほど教職員定数の改善と申し上げましたけれども、その中には、事務職員という形での数をふやして、学校スタッフ、スタッフ職員をふやすという取り組みも、まだ全国的に全ての学校にというところには至っておりませんけれども、そういう観点からの取り組みも進めているところではございます。

大岡分科員 ちょっと後ほどまた指摘をしたいと思いますが、次に移りたいと思います。

 続きまして、教師が勉強不足である、極めて認識不足であったという指摘もございました。これは、今後の研修、あるいは新しい教員を養成する教育学部あるいは教育大学、そういったところの指導のあり方をどのように見直す考えか、教えていただければと思います。

布村政府参考人 今回の大津の事案も含めて、教員が、子供たちの状況に常にしっかりアンテナを張って、児童生徒が発するサインに対する感性を高めておく必要があるという御指摘が報告書にもございました。そこはもう御指摘のとおりかと認識しております。

 そういった観点から、教員の研修を通じまして、早期発見、早期対応につなげるだけの教員の資質を高めるということを重要なテーマとして、例えば独立行政法人教員研修センターにおきましては、いじめの問題への対応の中核となる指導主事、あるいは各県の中心となる教員を対象として、いじめの予防と対応に係る研修を行ってきておりました。

 今年度からは、それを、つくばの一カ所のみならず、全国六ブロックで同じような形のいじめの予防と対応に関する研修を行い、その研修を受けた方々が地域に戻って各学校の教員にそれをお伝えいただくということを通じて、教員の資質を高めていただきまして、しっかりとアンテナを張って子供たちの発するサインに気づくという感性を高めるという教員を、各学校のお取り組みも通じてふやしていくということが、一つ大きなテーマとして取り組んでございます。

 それ以外にも、カウンセリング、子供たちの相談体制の充実ということで、スクールカウンセラーの配置、そしてその配置されたスクールカウンセラーを通じてカウンセリングマインドを個々の先生方が持っていただく、そういう学校における研修の充実にもつなげていきたいというふうに考えているところでございます。(大岡分科員「教育大学や教育学部。新人の。新しい先生」と呼ぶ)

あかま主査代理 大岡君、もう一度発言を。

大岡分科員 もう一度言いますと、さっきは研修の話で、新しい先生を養成する教育学部、教育大学、こちらのカリキュラムについてはどのように対応されますか。

布村政府参考人 教員の養成課程におきましても、生徒指導という枠を教員養成課程の段階で各学生が学ぶということになってございます。その中にも、いじめに対する指導ということで、資質を高めるという取り組みがなされている実態でございますけれども、全ての教員養成系の大学でその辺がしっかりできているという状況でもない状況でございますので、こういう教員養成の段階から、先ほども申し上げましたような、しっかりアンテナを張って児童生徒が発するサインに対する感性を高める、いじめの予防と対応に不可欠な資質を養う、そういう面にも十分配慮した教員養成を行っていただけるよう、また各大学にもお願いをしてまいりたいと考えております。

大岡分科員 続きまして、カウンセラーの運用についてお話をしたいと思います。

 今回ふやしていただいたということでございますが、残念ながら、運用自体は、カウンセラーさんが来ます、月曜日に来たら次に来るのは木曜日、しかも二時間だけと決まっている。こんなことでは、子供がやはりいつでも相談できるという体制にはならないし、本当のことを打ち明けられる関係にはなかなかならないんですね。さらには、教員との意思疎通、情報交換も活発には行われない。

 したがいまして、まず、この運用につきまして、常勤化をやはり目指していくべきではないかと考えております。あわせて、先ほどの答弁の中にもございましたが、つながりの中で、社会全体でこうしたものをなくしていくという考えであれば、ソーシャルワーカーの必要性というものが、担いというのが非常に大きくなってくると思います。

 実は、まさにほかの行政機関をうまくつないでソーシャルワーカー的な動きをすることが最も学校の先生は苦手としておられるので、この部分をさらに充実強化するべきではないかと考えますが、この辺、どのように考えておられますでしょうか。

下村国務大臣 二十五年度予算案におきまして、スクールカウンセラー及びスクールソーシャルワーカーの配置の拡充を図ることとしております。スクールカウンセラーについては、三十九億円を計上し、全ての中学校に配置する、また、小学校においては六五%について配置する。

 また、スクールカウンセラーを常勤化するということでございますけれども、これは、大変多くの財政負担が生じる、また、高度に専門的な知識や経験を有する人材確保が現在においてはまだ困難である、こういう課題がございます。

 このスクールカウンセラーとスクールソーシャルワーカーの配置について、先ほどスクールソーシャルワーカーの配置についてはちょっと申し上げませんでしたが、これは、対前年度比よりは三・六億円とふやしておりまして、今、都道府県とそれから政令指定都市、中核都市に対して一千三百五十五人配置を予定しておりますが、いずれにしても、まだ十分ではないわけでございます。

 今後も、できる限り地方公共団体の要望を踏まえた配置の充実が図られるよう、必要な予算の確保に努めてまいりたいと思います。

大岡分科員 最後に、やはりいじめの発生を防止していかなければならないということで、道徳教育は不可欠だと思います。残念ながら、この大津の調査報告書の中では、道徳教育には限界があるという書き方をされておりますが、ここは私は意見を異にしておりまして、やはり粘り強く道徳教育をやらなければならない、日本人の規範意識をしっかり育てていかなければならないというふうに考えております。

 そうした中、今、教科化という議論がございますけれども、やはり、教科書で教える、字で教える、いじめをしてはなりません、けんかをしている人たちにはちゃんと勇気を持って仲裁しなければなりません、これを教科書で教えて試験をする。けんかしている人がいますけれども、あなたは仲裁しますか、しませんか。それは、しますと言うに決まっているわけでございますが、こんなことではなかなか、本当に体にしみ込んだ規範意識、道徳教育とはならないのではないかと思っております。

 そんなことであれば、子供同士でいろいろな役割を与えてロールプレーをさせてみるとか、あるいは、社会性のある、あるいは子供のそういった感性に刺激を与えるような映画を見せて、そして、どう思ったか、このシーンについて君ならどうしたかというような教育をしたりとか、そういった柔軟な教育をやはり粘り強くやっていくべきではないかという意見があります。

 さらには、私はこれはおもしろい意見だと思ったんですが、家庭科が大事だと。あるいは家政科が大事だと。やはり、料理をつくる、掃除をする、建物である家をどのように運営するか、さらにはどういう家庭、家族を目指していくのか、それぞれの役割は何なのかということを考えさせることが日本人の規範意識には極めて大事だという意見もございます。

 こうした教科、あるいは、教科にする、しないは別にして、道徳だとか、先ほど申し上げたような家政だとか家庭科等の授業を今後どのように運用していくお考えか、教えていただければと思います。

下村国務大臣 大岡委員は大津が選挙区、地元ということでございますので、ぜひこれは調べていただきたいんですが、あの大津の事件等があった中で、道徳教育の教科化についてはそもそも意味がないのではないか、なぜかといえば、大津の当該中学校は道徳のモデル推進校であったではないか、にもかかわらずあのような事件が起きたということは、道徳そのものが意味をなしていない、こういう批判が実は国会の中でも何回か質問としてありました。

 ただ、そうはいっても、今のような御指摘も踏まえたことも含めて、そもそも道徳がそれほど徹底されていたのかどうか、名前だけのモデル推進校になっていた部分もあるのではないか、こういう検証もしていく必要があるのではないかと思います。

 道徳教育については、学校の教育活動全体を通じて道徳価値の自覚と自己の生き方についての考え方を深め、道徳的実践力を育成することが重要でもあるわけであります。

 このため、道徳教育を進めるに当たっては、おっしゃるとおり、一方的に教え込むということだけでなく、家庭や地域社会との連携を図りながら、さまざまな体験活動などを通じて児童生徒の内面に根差した道徳性の育成を図り、人としてよりよく生きるために必要な規範意識や社会のマナー等に即した適切な行為を主体的に実践することができるよう指導することも必要である。そういう点で、ほかの教科においても、道徳的な切り口から改めて見直すということが、家庭科を含めて、やはり必要なことであるというふうに思います。

 今後、文部科学省の中で、今月から、道徳教育の充実に関する懇談会を設置することになりましたが、そこでもさらに、道徳教育の一層の充実方策について、検討、議論を深めてまいりたいと思います。

大岡分科員 どうもありがとうございました。

 続きましてというか、ちょっと時間がないので、通告してある二つを飛ばして、学校の防災力、子供を守る力について質問をしたいと思います。

 まず、学校施設は、多くの場合、避難所になっているケースがございまして、この構造材においては耐震化が非常に進んでいるものの、非構造部材の耐震対策というのはおくれております。私の取り寄せました資料によりますと、非常に低い数字が出ているわけでございます。

 そうした中、例えば体育館などは、天井が高いので構造材はしっかりしている。しかし、内装品は耐震補強がされていません。それで、天井が落ちてきました、ライトが落ちてきました、バスケットのゴールが落ちてきましたというと、これは死人が出てしまうんですね。

 したがいまして、南海トラフ型あるいは首都直下という地震が想定されているところから、この非構造部材も含めた耐震対策を急ぐべきだというふうに思っておりますが、今どの程度の進捗状況で、今後どのように対応されるのか。

 さらに申し上げると、これから来るであろうと予想されているところはほぼわかっているんですね、首都直下であったり南海トラフであったり。こうしたところを重点的に対応を進めていくべきだと考えますが、この点についてはどのように考えておられますでしょうか。

谷川副大臣 公立学校の構造体の耐震化については、文科省としても、平成二十七年度までのできるだけ早い時期に完成させることを目標にしておりまして、平成二十五年度予算執行後の耐震化率は九四%となる見込みです。耐震化は着実に進捗しているものと思っております。

 ところが、公立学校施設の非構造部材の耐震化実施率は、平成二十四年四月一日現在で三二%にとどまっており、建物本体の耐震化対策と比較するとおくれている状況です。

 このため、文部科学省では、自治体に対し、非構造部材の耐震点検及び耐震化対策の速やかな実施を促すとともに、特に、致命的な事故の起こりやすい屋内運動場のつり天井等について、建物本体の耐震化と同様に、平成二十七年度までの速やかな完了を要請しているところです。

 文科省としては、耐震化完了の目標達成を目指し、非構造部材の耐震化対策も含め、自治体からの要望を踏まえつつ、必要な支援を行ってまいりたいと思っております。

大岡分科員 谷川副大臣、いつも極めてストレートな御意見を出されるので、私も大変頼もしく思っておるわけでございますが。

 そうした中、先ほど申し上げたとおり、来ると言われているところがおくれている。例えば、下村大臣のいらっしゃる東京都、耐震対策は二〇%以下です。私の滋賀県も二〇%以下でございまして、こんなことで果たして地震に強いと言えるのか。さらに、文科省は子供をしっかり守る決意があると言えるのか。私は、こうした危機が迫っているところから集中的に、重点的に行うべきだと思いますが、副大臣、どのように考えておられますでしょうか。

谷川副大臣 南海トラフ巨大地震だけではなく、全国どこでも大規模な地震が発生する可能性があるという認識で、地域を限定せず、全ての自治体に耐震化対策を実施するよう要請しているところであり、今後とも、非構造部材の耐震化を進めていきたいと思っております。

大岡分科員 でも、もしこの後、近く東京首都直下あるいは南海トラフが来て、ほら見ろ、言ったとおりじゃないか、体育館の天井が落ちて子供が死んだじゃないかということがあれば悔やむに悔やまれないわけでございますので、この点も踏まえて、しっかりと対応を進めていただきたいと思います。

 続きまして、学校の子供を守るための施策についてでございますが、例えば、和歌山県では、津波が来るおそれがあるので、子供の座布団がそのままライフジャケットになる、簡単に言うと浮く。したがって、浮くことによって、津波が来たときの生存率が大幅に上がるという施策をしているところがあるんですね。

 しかし、残念ながらこの手の備品は、伺いましたところ、現在、交付税対応と。御存じのとおり、交付税などというのは、色のついていない金、簡単に言うと一般財源ですから、突っ込んだら何に使われるかわからない。そうではなくて、この手のお金というのは、やはり、文科省が責任を持って子供たちを守るんだという意思の通った、つまり、色のついたお金、文科省の思いの入った、しっかりとそのために使われるお金を交付してでも、特に津波が来ることを恐れている地域に対しては施策を進めていくべきだと考えますが、副大臣、ストレートな御意見をいただきたいと思います。

谷川副大臣 先生の御指摘の点、一々もっともですので、大臣ともよく相談しながら、御期待に沿うように努力します。

大岡分科員 ありがとうございました。

 では、もう時間も少なくなりましたので、最後に、退職金減額に伴う駆け込み退職問題に移らせていただきたいと思います。

 昨年の途中で公務員の退職金の引き下げをした関係で、実は、残念なことに、多くの教師が退職金の減額を免れるために早期退職をいたしました。大臣は迅速に意見表明をされた、このことは私も大変高く評価をしておりますが、結果として、三月三十一日を過ぎました、どの程度の駆け込み退職が発生し、このことを大臣はどのように受けとめておられるのか、教えていただきたいと思います。

布村政府参考人 先生御指摘の教職員の駆け込み退職につきましては、教育が教員と児童生徒の触れ合いを通じてなされるものであり、自己の職責や使命感を持って職務を全うすることが期待されていること、あるいは、今回の退職手当条例の改正趣旨を踏まえれば各教育委員会におきまして適切に対応していただきたい旨、大臣の御指示を受けて一月に通知を発出させていただきました。

 しかしながら、結果的に、多くの教員は年度末まで勤め上げていただいたところでございますけれども、相当数の教職員が駆け込み退職をしたという実態になってございますことは、まことに残念な状況でございます。

 例えば、埼玉県におきましても、駆け込み退職者につきましては、教員として百四名、あるいは静岡県でも二百五十四名という多くの退職者が教員の中から出ているという県もございますので、こういった点は、いろいろな事情はあろうかと思いますけれども、子供たちの教育のことを考えると残念な状況かと認識しております。

大岡分科員 違法とは言えないということですから、なかなか省としても対応は難しいかと思うんですけれども、私もこれは極めて残念なことであったと思っております。

 幸い、私のいる滋賀県は駆け込み退職ゼロということでございましたので、これは、いじめ問題もあって気持ちが引き締まっていたのかというふうに、ここはほっとしているところでございます。

 さて、それで、四月一日になりました。これで、三月に、退職金の減額を免れるために駆け込み退職をした。四月一日になったら再任用を受けている先生がいる。つまり、確かにお金は大事です。お金は大事だとテレビでも宣伝している。お金は大事だけれども、退職金の減額を免れて三月に駆け込み退職をした、場合によっては卒業式にいなかった、その先生が、四月一日、再任用の規定に沿って再任用を受けている先生がいる。このことについて、教育上の問題というか、ずるいことをしてはならぬ、子供たちは真っすぐ生きなさいということを教えている先生が、確かにお金は大事だけれども、そういう実態がある。

 まず、このことについて、この数、駆け込み退職をして退職金の減額を免れた上で、四月になったらもう一度再任用を受けて教壇に立っている先生が何人ぐらいいると把握しておられるのか。また、この教師の姿勢と、子供たちに対して生き方を教える、このあり方について、こうした事態を受けて、大臣はどのように考え、今後、大臣としてどういうメッセージを出していかれるお考えか、最後に教えていただきたいと思います。

下村国務大臣 四月からの再任用をどれぐらいされているのかはちょっと把握できておりませんので、改めて文部科学省として調べたいと思います。

 一月からこのような駆け込み退職についてはありました。私は、特にクラス担任等を持っている先生は最後までぜひ勤め上げていただきたいと。これは、自分が退職するとき、一カ月、二カ月前に退職金の問題で途中でやめるということは、多分、教員をやめた後でも一生悔やむことになるのではないか、いろいろな制度の問題はあっても、ぜひ最後まで勤め上げていただきたいということをお願いして、改めて都道府県の教育委員会に対して通知をし、都道府県の教育委員会において、それぞれ、表明している先生に対して、もう一度、三月末まで勤めてもらうようにお願いしたところでございますが、それがこの結果ということは、非常に残念でございます。

 そういう中で、さらに四月からそういう該当する先生が再任用ということについては、改めてその実態も調べ、なぜそうなったかということについて、該当する都道府県の教育委員会に対して確認をしてまいりたいと思います。

大岡分科員 もう時間になりましたので、最後にお願いをして終わりたいと思います。

 いじめの問題から始まって、最後は駆け込み退職ということでございましたけれども、やはり、大人の姿勢というのが子供に伝わっているんだと思いますね。いじめは、たまたま学校で起きた、こうした社会の風潮の一部が噴き出したというものであろうと思っておりますが、事ほどさように、やはり大人がしっかりと姿勢を見せるということが大事だ。さらには、ひきょうなことはしてはなりませんということを、ぜひ文科省としても、また大臣、副大臣として、常に国民にメッセージを出し続けていただきたいと思います。

 こうしたメッセージというのは、残念ながら、駆け込み退職、一度では大臣の思いは伝わらなかったかもしれない。しかし、連続的に出し続けることによって、親にも伝わるし、子供にも伝わるものだと思っておりますので、どうか大臣、こうした国民に対するメッセージ、どうやって日本の子供たちに規範意識をつけていくのかというのは、これは子供だけの問題ではなくて国民全体の問題であるという意識でメッセージを出し続けていただきたいと思います。

 このことをお願い申し上げまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。

あかま主査代理 これにて大岡敏孝君の質疑は終了いたしました。

 次に、菅野さちこ君。

菅野分科員 自由民主党の菅野さちこでございます。

 私は、昨年末の総選挙で福島第三区から立候補させていただき、東北比例ブロックで当選させていただきました。新人でございますのに、本日は質問の機会を与えていただき、ありがとうございました。きょうは風邪を引いておりまして、お聞き苦しい点があるかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。

 私のふるさと福島県は、御承知のように、東日本大震災により、地震、津波に加えて、原子力発電所事故という複合災害に見舞われ、ほかの被災地とは異なる状況に置かれております。

 本日は、三十分という限られた時間ですので、福島復興の問題に直接的あるいは間接的に関連した質問を中心にさせていただきます。

 まず初めに、福島県における東日本大震災からの復旧復興のための支援についてお尋ねいたします。

 東日本大震災から既に二年が経過し、震災により被害を受けた学校施設の統廃合や、避難している児童生徒の人数などに関して、時折、新聞社による調査として部分的に取り上げられているのを目にします。

 しかし、最近では、政府からそういった集計調査結果等の発表が少なくなったという印象がございます。

 そこで、現時点における震災により被害を受けた学校施設の災害復旧事業の進捗状況の全国及び福島県の状況はどのようになっているのか、お尋ねします。

 あわせて、被災した幼児、児童生徒の受け入れ状況について、全国及び被災三県から受け入れた数はどのように変化しているのか、お尋ねします。

清木政府参考人 まず、公立学校施設の災害復旧の状況でございますが、全国につきましてでございますが、国庫補助申請予定の学校数が二千三百七十九校でございますが、そのうち、本年三月末現在において、二千百四十八校、約九〇%が事業の完了済みでございます。

 一方、このうち福島県の状況でございますが、国庫補助申請予定の学校数が五百校のうち三百八十七校が三月末時点で完了済みでございまして、約八〇%という状況になっているところでございます。

布村政府参考人 続きまして、東日本大震災により被災した幼児、児童生徒で、震災前の学校とは違う学校において受け入れた児童生徒数についてでございますけれども、平成二十四年五月一日現在、全国で二万五千五百十六人となっており、平成二十三年九月一日現在と比較し、二百三十五人の減少となってございます。

 その内訳でございますけれども、岩手県、宮城県、福島県の幼児、児童生徒で、被災により他の都道府県の学校において受け入れた数は、岩手県が三百六十人、宮城県が千五百八十七人、福島県が一万二千三百十六人となっており、平成二十三年九月一日現在と比較して、それぞれ、岩手県が四十七人の増加、宮城県が百十五人の減少、福島県が三百九十八人の増加となってございます。

菅野分科員 ありがとうございました。

 新年度を迎えまして、改めて、国において現時点の学校の復旧等の状況や児童生徒等の置かれている状況について調査し、課題等を把握した上で、自治体による施設整備や児童生徒の就学支援、心のケアなど、国による支援の必要性を検討すべきではないかと考えますが、御意見をお伺いします。

下村国務大臣 東日本大震災において被災した地域においては、仮設校舎や避難先等での学習を余儀なくされている子供たちがいるなど、教育現場も復興途上にあり、子供たちが以前と同様、落ちついた環境の中で安心して学べるよう、継続的な支援が重要であるというふうに認識しております。

 文部科学省としては、学校施設の災害復旧状況や被災した児童生徒の学校における受け入れ状況を把握しつつ、学校施設の復旧、そして就学支援などの経済的支援や心のケアの充実、被災地の教育活動への支援などを行っているところであります。

 引き続き、適切な状況の把握と被災地の復旧復興、被災児童生徒への支援に全力で取り組んでまいります。

菅野分科員 下村大臣、ありがとうございます。

 次に、お伺いいたします。

 無形文化遺産の保護と継承についてなのですが、地域に根差した民俗芸能などは、今後も長きにわたって保存、継承されていく必要がありますが、震災により、地域全体が津波や原発事故で壊滅的な被害を受けたような地域もあり、その保存、継承の必要性が強く認識されました。

 そして、民俗芸能などが地域住民の震災復興の力になることで、民俗芸能などが持つ意義が再確認されたところです。

 被災地域では、離散していた被災者たちが地域の民俗芸能などをいち早く復活させたことで、人々が一体となり、自律的な復興につながっている事例もあります。

 御承知のように、福島の相馬野馬追は、壊滅的な被害を受け再開を危ぶまれる、そういう状況の中で、全国からの支援をいただきながら、見事に相馬野馬追をやり遂げたという事例がございます。それを聞いて、私は本当に感動いたしました。

 文化財の保護よりも被災地の復旧復興を優先させるべきであるとの意見もありましたが、地域のアイデンティティーを形成している文化財や民俗芸能などが被災地の復興に果たす役割の重要性が認識されてきたところです。

 原発事故地域住民における無形文化遺産の継承は、地域の住民や土地に根差したものでなくなる可能性もありますが、離散した住民同士が地域のきずなを再確認する意味でも、無形文化遺産として保護していくことが必要と考えますが、文化庁の見解をお尋ねします。

 また、私の出身地でございます福島県田村郡小野町の大倉獅子舞は、地区の塩釜神社に伝わる獅子舞で、新田内長獅子舞、浮金小獅子舞とともに、小野の獅子舞として福島県指定無形民俗文化財に指定されて、八百年余りの長きにわたり継承に努めてきたところです。

 大倉獅子舞のような地域住民が先祖から受け継いだ伝統を大切に守ってきたものであり、このような地域に密着した伝統芸能は、私の福島第三選挙区支部内でもたくさんございます。

 特に震災後においては、この古くからの獅子舞が変わらず舞われていることで、その土地の人の心に未来や勇気を与え、震災復興の礎となっています。

 しかし、地方は、高齢化、過疎化、少子化により、後継者不足が深刻な状況にあります。また、用具の補修や新調など、無形民俗文化財の継承が困難になっております。

 このような無形民俗文化財の伝承は極めて大切だと考えておりますが、どのような対策を考えておられるのか、お尋ねいたします。

谷川副大臣 私も、昭和十六年に五島列島の田舎で生まれ、正月の七日の獅子舞にどれほど心を癒されたかわかりません。

 地域に根差した民俗芸能や祭りなどの無形民俗文化財は、まさに地域の歴史、文化等の理解に欠くことのできない貴重な財産として、極めて重要であると思っております。このような無形民俗文化財は、地域のきずなを強め、被災地の復興にもつながる力を持つものと考えています。

 先生御指摘の、無形文化財の継承を図るため、平成二十五年度予算案において、文化遺産を活かした地域活性化事業に三十四億円を計上し、伝統芸能や伝統行事などの後継者養成や、用具の修理、新調に要する経費に対して支援を行うこととしています。

 今後とも、地域に根差した無形民俗文化財の継承が図られるよう、予算の充実に努めてまいりたいと思っております。

菅野分科員 谷川文部科学副大臣、ありがとうございます。

 次に、原子力損害賠償紛争解決センターの問題点について、何点か質問させていただきます。

 福島の原発事故の被害者と東京電力との間の和解の仲介を行う原子力損害賠償紛争解決センターという組織があります。円滑、迅速かつ公正に紛争を解決することを目的として設置されております。

 ところが、同センターに申し立てをしましても、解決までには平均八カ月かかるとのことです。平均八カ月は円滑、迅速と言えるのでしょうか。少々遅いのではないでしょうか。

 同センターもこの問題点を認識しており、活動報告書で、人員の拡充や審理の簡素化によって四カ月から五カ月程度の解決を目指すとしています。

 人員の拡充は結構なことだとは思いますが、審理の簡素化について、迅速化を目指す余りに被害者の方々の扱いがおろそかになることを懸念します。解決までの期間の短縮化と被害者の方々への丁寧な対応とを両立させる必要があると思いますが、御所見をお伺いいたします。

戸谷政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま先生が御指摘されましたように、原子力損害賠償紛争解決センターにおける処理の期間につきましては、現在、大体平均八カ月ということでございまして、これにつきましては、私どもとしても、ちょっと時間がかかり過ぎるということで、この改善方について鋭意努力したいというふうに思っております。

 このため、今先生もお触れになりましたが、この紛争解決センターの人員の関係につきましては、発足当初は、弁護士の先生方四十五名も含めて総数で六十三名程度という規模でスタートいたしました。ただ、今現在、四月現在では、関係する弁護士の先生方は三百七十名、それから事務職も含めますと五百名、さらに今後、全体として六百名程度の規模まで人員の増強を図りまして体制の強化をしたいというふうに思っております。

 こういう人員の体制の強化によりまして、個々の被害者の方々への対応につきましても、より丁寧にさせていただくことが可能かというふうに思っておりますので、そういった努力を今後とも積み重ねてまいりたいというふうに思っております。

 また、簡素化の点につきましては、実は、簡素化をすることによりまして、被害者の方々の負担軽減、それから審理の促進にもつながるという面もございます。

 例えば、今回、私どもがこの紛争解決センターで受け付けております申込書の様式でございますけれども、そういったものもできるだけ簡素なものにする。それから、とかくこれまで、東京電力の側は、被害の立証に当たりまして相当細かい書類を要求する、そういったようなこともございましたけれども、センターの側におきましては、被害者の方々からの申し立てをお聞きすることによりまして、概算として推定を行うとか、できるだけ申し立ての方々の負担の軽減を図りたいというふうに思っております。

 それからさらには、私ども、今回、弁護士が務めておりますのは調査官という役割がございまして、これが被害者の方々との接点において非常に重要な役割をいたしております。

 実は、このセンターには、当初、個人申し立てという形で、これまでこういう損害賠償請求手続等に全くなれていないといいますか、これまで経験もされていないような方々が多数センターにお申し立てをいただいているわけでございまして、そういった方々に対しましては、この調査官の弁護士が、その申し立て書の記載内容につきまして、必ずしも十分でないものについてよくお聞きをしながら請求書の様式として整えるとか、そういった面につきまして、今後、より丁寧な対応をしていく。

 また、その丁寧な対応が、またさらに解決までの期間の短縮化にもつながるということでございまして、こういったものを両立させながらセンターとして今後取り組むように、私どもとしても指導してまいりたいというふうに考えております。

    〔あかま主査代理退席、主査着席〕

菅野分科員 それでは次に、紛争解決センターの事務所の件でお尋ねいたします。

 東京都と福島県にしかこの紛争解決センターが設置されておりません。その他の道府県に避難され、遠方で事務所を訪れることができない被害者の方々は、郵便、通信という限られた手段でセンターを利用しなければなりません。

 また、活動報告書では、期間の短縮化の目的もあり、書面審理を中心とし、現地で被害者の声を直接聞くことは避け、電話会議システムやテレビ会議システムを活用することとしています。現地での被害者の方々の声を直接伺ってこそ、被害者に寄り添った支援と言えるのではないでしょうか。

 東京都及び福島県以外の道府県へのセンター支所の開設や、書面審理中心ではなく、センター職員を現地に派遣し、対面しての審理の充実化をお願いしたいと思いますが、御所見をお伺いいたします。

戸谷政府参考人 今先生が御指摘のセンターの支所の関係でございますけれども、これまでは、やはり、実際に福島県内に数多くの被害者が現実にいらっしゃるということで、この事務所あるいは支所の開設につきましては、福島県を中心にということでさせていただいております。

 ただ、福島以外の場所につきましても、これまでも、必要に応じ、一部審理を実際開催した例もございます。例えば、遠く離れたところでは、静岡県、愛知県あるいは京都、茨城、それから埼玉等々もございます。

 ただ、最近の傾向につきましては、先生が今御指摘されましたように、今、現実にセンターが抱えている案件が非常に多いという中で、人員をできるだけ効率的に回して成果を出していくという観点から、当面は、センターといたしましては、現地における対面での審理は必要最小限のものにさせていただいているというのが確かに実情でございます。

 ただ、先ほど私の方から申し上げましたように、今現在、その人員の増強、強化に大分努めているということでございますので、そういった中で、今後、処理能力が実際に向上するというのはもう少し後になってから効果が出てまいりますので、さらに効果が出てまいりますので、その時点におきまして、今先生が御指摘の、より丁寧な対応がどこまで可能かということにつきまして、引き続き、センター側とよく相談してまいりたいというふうに思っております。

菅野分科員 そのような形で効率化が図られたときには、人員も整備しながら、他県に避難している方々の心に寄り添った形での対応をぜひしていただきたいと思います。

 次に、時効に関する特例法の早期成立の必要性についてお伺いしたいのですが、時間が限られておりますので、簡潔にお尋ねしたいと思います。

 時効に関する特例法の早期成立の必要性なのですが、原発事故から二年が過ぎまして、損害賠償の時効期間とされる三年が近づいております。被害者の方々には、時効期限が過ぎると賠償が受けられなくなるのではないかと危惧していらっしゃる方もおります。

 そのような折、文部科学省におきまして、センターへの申し立てを訴えの提起とみなして、時効を延ばす法案を検討中と伺いましたが、その点につきまして簡単に御説明いただきたいと思います。

下村国務大臣 御指摘のように、文部科学省では、紛争解決センターにおいて和解の仲介を実施しているところでありますけれども、現在、センターへの申し立ては多数に上っている状況であり、被害者が、和解の仲介の途中で損害賠償債権の消滅時効期間が経過することを懸念し、センターの利用をちゅうちょする可能性がございます。

 したがって、センター利用に関しての時効に係る被害者の方々の不安感を払拭し、被害者にとって利点のある和解仲介手続の活用のために必要な措置を講じることが重要であると認識しております。

 このため、仮に和解の仲介の途中で時効期間が経過した場合でも、最終的に裁判による解決が図られるようにすることが必要であり、文部科学省としては、このための必要な法案を近々、今国会に提出すべく現在検討中でございます。

菅野分科員 下村大臣、ありがとうございます。

 続きまして、英語による授業のことについてお伺いいたします。

 ことし四月から新学習指導要領が全面実施される高等学校におきましては、英語の授業は英語で行うことが基本とされましたが、まず、その趣旨、狙いについて文部科学省にお聞きします。

 それと同時に、時間がなくなりましたので、引き続き次の質問も一緒にさせていただきます。

 こうした英語による授業なのですが、現場の高等学校教員たちには不安が多いとの報道もなされています。全国約五千の高等学校の全てで英語による授業が適切に実施できるのか、また、教員の不安を解消し、適切な英語教育が行われるよう、教員研修などの充実を図る必要性についてお伺いいたします。

谷川副大臣 授業を英語で行う目的は、教師だけでなく生徒も授業の中でできるだけ多く英語を使用することにより、生徒のコミュニケーション能力を養うことにあり、その際、生徒の理解の程度に応じた英語を用いるよう十分配慮をするものとしています。

 文科省としては、既に英語による授業が行われている実践事例を収録したDVDを平成二十二年から二十四年にかけて各学校に配付しました。また、文科省が協力している英語教育向けポータルサイト、えいごネットにおいて、教材や指導案、その他の情報が提供されております。さらに、都道府県において、拠点となる学校を中心に、公開授業、授業研究セミナー、外部有識者による指導助言などによる研修等を支援する授業を実施しております。

 これらの取り組みを通じて、新学習指導要領の趣旨を踏まえた授業が行われるよう支援していきたいと思っております。

菅野分科員 谷川文部科学副大臣、ありがとうございます。

 時間がございませんので、私の英語教育に対する考えを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 これまでも、日本の英語教育における英会話力の強化は以前から議論されてまいりましたが、なかなか実際の授業に活用されてきませんでした。自分の考えや意見を相手に伝えるツールとしての英語によるコミュニケーション能力の獲得は、国際社会の中で極めて大切です。

 同時に、私たちの中に脈々と受け継がれてきた日本人としての資質は、お正月を祝い、春には桜をめで、お盆には御先祖様に手を合わせ、そしてひな祭り、こどもの日、お彼岸など四季折々の生活を普通に行うことで、日本人のアイデンティティーは私たちのDNAと心の中に培われています。

 英語によるコミュニケーション能力を習得すると同時に、日本人としての確固としたアイデンティティーを持った日本人を育むため、年中行事や日本文化についても深く知ることは大切です。英語によるコミュニケーション能力を備えると同時に、日本的なものを極めてこそ国際性があると言えるのではないでしょうか。

 教育は人づくりであるという原点に立ち、英語によるコミュニケーション能力と日本人としてのアイデンティティーを備えた人材を育む、総合的な教育改革、再生を行ってほしいということを最後に申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

萩生田主査 これにて菅野さちこ君の質疑は終了いたしました。

 次に、山下貴司君。

山下分科員 大臣そして政務官、当局の皆様、夕方遅くにお疲れさまでございます。自由民主党の山下貴司でございます。

 私、もともと検事をやっておりまして、その中で少年非行であるとかを扱う少年係もやっておりました。また、弁護士としても、いわゆるモンスターペアレンツの問題にかかわる教師の問題ということにも対応しておりましたし、また実際、三人の子供の父親として、教育には携わってまいりました。また、ワシントンの日本語学校があるんですが、そちらで、副理事長ということで、実際、日本語教育の運営とかそういったこともやっておりました。

 そういった経験から、今回、学校における授業崩壊対策、英語教育の問題と外国人への日本語教育の問題、そして私立高校通学者に対する就学支援金の問題や耐震化の防災機能強化の問題について、本日、質問をさせていただきたいと思います。

 まず、教育を取り戻すと申しますのは、先般の総選挙でも旗印として掲げていた安倍内閣の最優先課題の一つでございます。その観点から、まず、学校教育の再生について質問させていただきたいと思います。

 近年、いわゆる荒れる教室あるいは授業崩壊といった現象が見られております。それが、中学校における校内暴力とかそういうことに限らず、小学校においても荒れる教室あるいは授業崩壊ということが見られるということでございます。

 そういった授業崩壊あるいは荒れる学級ということについて、今の現状と対処方針の大まかな政府としての対応について大臣に御答弁いただければと思います。

下村国務大臣 現在の学校現場では、いじめ問題また特別支援教育の対象となる児童生徒の増加、家庭の経済状況による教育格差など、対応すべき多くの課題を抱えております。

 また、新学習指導要領のもとでは、観察、実験やプレゼンテーション、対話、討議等を取り入れた新しい学びへの技術革新が求められておりまして、今までのような一方的に教師が教えるだけの授業は克服しなければならないという意味で、全ての教科を通じて質の高い教育を実現するという大きな転換期に来ております。

 少人数学級の推進を初め、教師の目が十分に行き届き、一人一人に対してきめ細かく対応できるような環境を整備することは、そういう点からも非常に重要なことであります。今後とも、定数措置について必要な検証を行いながら教職員配置の適正化を計画的に行うなど、きめ細かなしっかりとした対応をしていくことが課題であるというふうに思います。

山下分科員 大臣、ありがとうございます。非常に前向きな御答弁、ありがとうございます。

 大臣御指摘のとおり、やはり一クラス、一人一人の子供を伸ばすためには、従来の四十人学級で同じ内容を学習していくということがそろそろ限界に来ているんじゃないかというふうにも思っております。もちろん、教育の再生のためには、教育内容の問題、これもあると思います。

 ただ、これもまた本日の御質問とは別なんですけれども、体制の問題として、教える側の問題、先生の問題、そして教えられる側の生徒児童の問題、そしてまた親の問題があろうかと思います。教える側の先生の体制については、大臣が御答弁いただいたように、少人数学級の問題もあると思います。

 実際、配付させていただいた資料、これは当局からいただいたものであるんですけれども、教育投資の現状に関する考え方ということで、右側の真ん中から下のあたりに、一学級当たりの児童生徒数というところで、OECDの平均、これは二十一・三人ということであります。ところが、日本では二十七・九人ということで、OECDの平均より多いんですね。

 これは数え方によっても違うと思うんですが、実際、私、アメリカで子供たちが通っていた小学校を見ると、大体二十五人学級ぐらいなんですね。その理由を聞いてみると、二十五人以上は、一人一人の子供たちの個性が見られないということが現地のアメリカ人の先生の回答であったということであります。

 また、諸外国は、習熟度クラスを積極的に取り入れたり、同じ授業の中で習熟度に分けて教えるということも積極的に進めていると思います。

 一方で、従来型の日本のように、四十人学級で同じ学習内容で学ぶということになると、一方で落ちこぼれてついていけない子供を生んで、一方で授業では足りない子供は塾に通ってしまうということを生んでいるということであります。

 ですので、こういった国としての改善策の具体的なところについて、先ほど大臣から大方針について御説明があったんですが、当局の方から、どういうふうな方針で今後臨んでいくのかということについて御説明いただきたいと思います。

布村政府参考人 先ほど、教職員定数の改善の中の一つの大きなテーマでございます少人数学級の推進を中心に大臣からお答えをいただきましたけれども、それ以外として、今先生から御指摘がありましたとおり、少人数指導あるいは習熟度別指導ということで、一人一人の児童生徒の理解度に応じてきめ細やかに指導するということも重要な課題でございます。学級編制という定数措置とは別に、このような形で少人数指導を行うための教員をふやすという取り組みも別途行っております。

 また、それ以外にも生徒指導困難な学校という実情もございますので、そういう学校に対するきめ細やかな教員の数をふやすという取り組みを国として行い、一人一人の児童生徒、あるいは学校のそれぞれの地域の特性、学校の特色を踏まえた教育の展開に資するように、国として支援をさせていただいているところでございます。

山下分科員 まさに当局のおっしゃるとおり、その方向性はよろしいんですけれども、なかなか予算上ふえていかない部分があると思います。教育というのは、米百俵でも言われますように、未来への投資でありますから、やはり教育に対してある程度予算上もしっかりと確保していただかなくてはならないわけであります。その点からすると、文科省としては要求した内容がなかなか認められていないという部分もございますけれども、当局に対してはしっかりと予算請求していただいて、十分な教育環境の確保をお願いしたいと思っております。

 実はちょっと通告に間に合わなかったんですが、昨日、新卒教員のインターン制度について毎日新聞で報道されておりました。これについて、もしお答えいただけるのであれば大臣にお答えいただきたいと思います。全体的な方向性でも結構ですので、よろしくお願いいたします。

下村国務大臣 きのうの毎日新聞では、自民党で昨年の八月の中教審答申で提言された教員養成修士レベル化を凍結し、教員希望者には准免許を与えて、数年の試用期間を経た上で本免許を与えるインターン制度を導入する、その記事が載っていたわけでございます。

 これは自民党の方の議論でございますので、文部科学省のスタンスと同じということではありませんが、しかし、方向性としては重なる部分がございます。

 学校の先生になる希望者の方々がやはり実体験が少ない、そしてそもそも、今の若い世代になればなるほどコミュニケーション能力が非常に希薄になっているという中で、机上の理論だけでなく、実践的な体験を踏むことによってより教師としての力をつける、また本当に自分が向いているか向いていないかをよくわきまえるということは大変重要なことであるというふうに思いますし、文部科学省としても、この自民党の提言にのっとった教師のインターンシップ制度の導入については、前向きに検討してまいりたいと思います。

山下分科員 大臣、非常に前向きな御答弁、ありがとうございます。教師の質の問題、これも高めていくということが、やはり将来の日本にとって必要なことであると思います。ぜひお考えいただきたいと思います。

 次に、今は教える側の問題についてお伺いしましたけれども、教えられる側の問題、児童生徒側の問題といたしまして、実際、小学校の段階で、授業中立ち歩いたりする、あるいは授業妨害をする子供たちがいる。それに対して的確に対応できていない部分もあるんじゃないかという指摘もございます。

 そのことについて、ここはぜひ義家政務官に、御自身の御経験も交えながら、今後の政府の対応についてぜひ熱く語っていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

義家大臣政務官 お答えいたします。

 授業中に歩き回る、あるいは授業妨害をする、俗に言う学級崩壊と言われる現象でありますが、これは全国各地の教室の一部で起こっている事態であります。

 これは、原因を探ればさまざまであります。例えば、発達障害の子供が立ち歩いてしまっている。これは当然特別支援として、しっかりと目が行き届くような指導、専門的な指導というものを必要とします。

 もう一方で、荒れですね。

 私が八年前に横浜市の教育委員として来たとき、多くの学校を回ってきましたが、授業中、受けずに学校内をうろうろしている生徒児童がいるんですね。そこで案内してくれる先生や校長は、ちょっと私は驚いたんですけれども、笑顔で、おい、おまえら、余りちょろちょろするなよと言って通り過ぎるんですよね。つまり、一貫したしつけというものが小学校時代から行われてきたのか。授業中は座って、たとえできなくても、座って背筋を正して授業を受け、叱られたら反省しという当たり前の反復の連続性があったのかどうか。私は彼らを見て、逆にこの子たちは不幸だなというふうに思ったんです。だめなことをだめと言ってもらえない不幸の中で、どんどん自分の人生をドロップアウトしてしまっている現状というものに非常に胸を痛めた、それが今でも起こっていると私は考えています。

 それで、学校崩壊の理由の中の一つ、全てとは言いませんが、理由の中の一つに、教育現場で行われている一般的な席がえがあるんだと私は思うんです。

 多くの教室では、民主的教室運営なんという名のもとで、委員長、副委員長、書記が出てきて、大体くじ引きかなんかで席を決めるわけですね。私はそのたびに、私も教師として生徒に言ってきましたが、どこのサッカーの監督が自分のチームのポジションをくじ引きで決めさせるんだ、どこの野球の監督が守るポジションや打順をくじ引きで決めさせるんだと。今このクラスをしっかりとしたクラス集団にするために自分は責任を負っている、それを考えた上で席がえをしているんだ、自分たちがしっかりととめ合い、高め合うことができるようになるまで、その席がえ編成権は私にあると、よくそんなふうにけんかしました。

 やはり、自主性、自由、個性、それを尊重する一方で、責任、あるべき姿ということが一貫して伝えられていない。だからこそ、道徳教育をどうしていくのかとか、一貫した連続的な指導をどうしていくのかということが今まさに問われているんだと私は思っております。

山下分科員 本当に熱い思い、本当にありがたいと思っております。また、親としても、そういった方向で文科行政が、教育行政がいければという願いでいっぱいでございます。

 ソニーの井深大さんの著書の中に「幼稚園からでは遅すぎる」という有名な本がございます。幼稚園からとは言いませんけれども、今中学校で起きている学校の荒れの問題、これはもう中学校で対症療法としてやるだけではだめで、小学校からしっかりと、政務官が御指摘の、しつけの問題であるとか道徳の問題であるとかそういったことを、学校の先生がしっかりとリーダーシップを発揮して教室を見ていくということが必要であると思います。

 その点に関して、今の政務官の御発言を踏まえて、当局から、今後の具体的な方策についてお考えになっているところがあれば御説明いただきたいと思います。

布村政府参考人 先ほども、教職員の数をふやすという定数改善の中でも少し申し上げさせていただきましたけれども、生徒指導上の問題など、特別の配慮が必要な児童生徒への指導を行うための児童生徒支援加配という教職員の体制の整備にも努めてございます。また、それ以外にも、児童生徒に寄り添う、あるいは相談体制を充実するという観点からのスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの配置の拡充という取り組みも行っているところでございます。

 それから、昨年来のいじめの問題あるいは体罰の問題ということで、生徒指導に関しましては、教員や学校は一人一人の状況をよく理解した上で必要な懲戒を行うこと、あるいはまた、体罰を行ってはいけないという生徒指導上の原理原則といったものにつきましても全ての教員にもう一度改めて認識をいただいて、きめ細やかな生徒指導を行っていただくという取り組みを進めるなどを今行政としても取り組んでいるところでございます。

山下分科員 ありがとうございます。

 こういう学級崩壊の問題は、その原因となっている行動をする生徒児童だけの問題ではなくて、その生徒に手がかかることによって、あるいはその生徒に集中せざるを得ないことによってほかの児童生徒に目が行き届かなくなってしまう、ある意味で犠牲者になってしまう問題でもあるということを御理解の上、積極的に取り組んでいただきたいと思います。

 一方で、これに関連する問題、これは親の問題ですけれども、いわゆるモンスターペアレンツという問題があります。

 実際、私も岡山で弁護士会をやっているんですけれども、その中で、学校の対応に納得しない親御さんが学校に乗り込んできて、夜の十二時まで、担任の先生が土下座するまで粘ってやっている、それに対して教師側が何もできないということが言われております。実際、相談を受けているんですね。あるいは、例えば給食費を払わない親がいた。その給食費を担任の先生が残業して集めていると。その分、先生方はほかの子供に向き合う時間がないわけですよ。

 そういったモンスターペアレンツ問題や親側の問題、不適当な行動をする親に対する対応としてはどのようにお考えなのか。このモンスターペアレンツ問題について、政務官のお考えをいただければと思います。

義家大臣政務官 お答えいたします。

 昨今問題化されているこのモンスターペアレントの問題ですけれども、まず、校長、教頭らが一緒になって対応することが重要であろうと思っております。一人の担任がそれを抱え込んでしまうことによって事態をより悪化している。さらに、教育委員会において、例えば弁護士や臨床心理士、精神科医等で構成した専門チームを設置したりして、組織としてそういう問題に対応するという姿勢が徐々に広まりつつあるところであります。これはしっかりと応援していくべきと思っています。

 一方で、私のもとにも多くの保護者からの相談が直接寄せられるわけですが、例えば、今社会問題化しているようないじめの問題、学校に訴えても訴えても一切聞き入れてもらえず、そして感情的になって乗り込んでいったらモンスターペアレント扱いされてしまったという、非常に、つくられたモンスターペアレントの側面もあるわけですね。

 だから、まずは学校現場が実態をしっかりと理解するということ、そして、教育委員会は組織としてそれに対してどのような対処をしていくのかという備えが非常に必要であろうと思っています。

 さらに、先ほどおっしゃいました給食費の未納の問題ですね。これは全体の約一%に当たる数が未納なわけですけれども、半分の理由に保護者の経済的問題とありますけれども、実は、生活保護による教育扶助及び就学援助制度というものの活用もできるわけですね。やはり、子供にそういうしわ寄せというのをやるわけには絶対にまいりませんので、この辺の周知。

 そして、私は、親としての責任というものはまさに今本当に問われるべきである、まずは親がしっかりと責任を持って我が子と向き合えているのかということ、その責任とは、自分の感情ではなく、果たすべき責任という意味での責任ですが、やはりこれは問うていかなければならない重要な問題だろうなと思っております。

山下分科員 ありがとうございます。

 私も親として、政務官御指摘のところをしっかりと踏まえてやってまいりたいと思いますし、また当局におかれても、先ほどの政務官のお言葉はしっかり実践していただくよう願うところでございます。

 次に、英語教育の問題について伺いたいと思います。

 国際競争力を持つためには、やはり英語教育が不可欠であります。アジアの成長を取り込むといっても、アジアの方々と日本人が話すときには、これは日本語ではなくて英語なんです。ですから、国際競争力を持つためには本当に英語は必要だ。

 しかし、今、日本の教育の現状を見ると、大学を出ても英語はしゃべれない。東大を出てもしゃべれない。霞が関の役人になってもしゃべれないわけですよ。国際会議でもしっかりと発言できない。私も霞が関の役人でしたから、それを実感しておるわけですね。そういったことで、やはり、今後日本が伸びていく成長戦略としても、英語教育がぜひとも必要だと考えております。

 そこで、まず、小学校における英語教育の現状について伺いたいと思います。

 お手元に、諸外国における外国語教育の状況というものを配付させていただいております。これは当局からいただいたものでございますけれども、これを踏まえながら、今の日本における、小学校における英語教育の現状、これを当局から御説明いただきたいと思います。

布村政府参考人 新しい小学校の学習指導要領に基づきまして、小学校の外国語活動につきましては、平成二十一年度から、できる学校からやっていただきたいということで先行実施があり、それを経て、平成二十三年度より、全ての小学校の五、六年生において外国語活動が週一こま開始をされたところでございます。まずは、その目的が十分に達成されるよう、文部科学省としても、教材の整備あるいは教員の資質向上へと支援を図っていくことが重要と認識しているところでございます。

 一方で、平成二十五年度予算案におきましては、研究開発学校や教育課程特例校などの外国語教育に関する先進的な取り組みの収集、分析を行うなど、将来的な外国語教育のあり方に関する調査研究事業を新たに計上したところでございます。

 諸外国における外国語教育の取り組み状況を参考にさせていただきながら、小学校を含む各学校段階での外国語教育の今後のあり方につきまして、その成果あるいは課題の検証を行った上で検討してまいりたいというふうに考えているところでございます。

山下分科員 先ほどの点ですが、やはり、開始年齢、内容、そして予算、日本はほかの国に比べて余りにも少ないんじゃないか、遅いんじゃないかというふうにも思います。

 先ほど局長からお話のありました調査研究事業、これはわずか八百万円です。外国語指導助手の指導力向上のための取り組み、五百万円。一方で、若手英語教員のアメリカ派遣事業が二億四千百万円ということでございます。あと、学校で、英語教育強化推進事業と、外国語活動、外国語教育の教材整備、これは合わせて三億円にすぎない。やはりこれでは、なかなか、ほかの国、中国や韓国、台湾にもちょっと追っつかないんじゃないかというふうに思います。

 ですから、その点について、英語教育の重要性、昔、読み書きそろばんと言われましたけれども、現代の読み書きは、国際社会においては英語の読み書きも含まれるというふうに考えられますので、その辺、しっかり対応していただきたいと思います。

 一方で、大学における英語教育なんですけれども、中国や韓国、これは大学でみっちり英語をやっているんですね。英語をきちんと話せる学生数は日本を上回っているというふうな指摘もございます。

 そこで、配付した資料を見ていただきますと、TOEFLのスコアというので、日本は百六十三カ国中百三十七位、アジア三十カ国中二十八位なんですよ。昔は、日本でTOEFLを受ける人は誰でも受ける、しかし、ほかの国では選ばれた人だけ受けるんだという理由がなされておりましたけれども、そんなことでは説明がつかないレベルなんですよ。

 ですから、そういったことを踏まえて、やはり抜本的な改革が大学レベルでも必要なんじゃないか。今、大企業では、就職を採るのに、日本人の学生ではなくてほかの国の学生を英語がしゃべれるから採るということもあるわけです、日系企業は。

 そういったことも考えて、大学における英語教育について、当局に方向性を示していただきたいと思います。

板東政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生御指摘のとおり、英語教育を初めといたしまして、外国語の力を高めてグローバルに活躍できる人材を育成するというのは、大学教育の非常に重要な目的の一つであるというふうに考えております。御指摘のように、まだまだ、我が国、大学においても、英語教育について改善すべき点はたくさんあるというふうに思っております。

 近年、例えば少人数授業でありましたり、能力別の授業であったり、あるいはネーティブスピーカーの活用などを進めてきているようなところはございますけれども、文部科学省といたしましても、グローバル人材育成推進事業とか、あるいはグローバル30と言われておりますネットワークの形成事業などを通じまして、大学における英語での授業の増加、外国人教員の採用、あるいは日本語教員の教育力の向上など、さまざまな取り組みを進めてきているところでございまして、その一層の充実を図ってまいりたいというふうに考えております。

山下分科員 ありがとうございます。

 続きまして、私立学校通学者に対する就学支援金の拡充という点について伺いたいと思っております。

 公私間格差の解消や、私立高校に通う低所得者への支援といった観点から、公立高校は無償化になった、しかし、私立高校に通う子供たちに対する支援というのが不十分ではないかということについて、やはり、所得制限を含めて合理化して、私立高校に通学する生徒に対する就学支援金、これの拡充にも充てるべきではないか。私立高校に行くのは、お金持ちだから行くのではなくて、公立高校に行きたいけれども、入学試験で残念な結果に終わってしまって私立高校に行っている子供もいる。そういった中で、資金の部分から、授業料の部分から退学を余儀なくされるという子供たちもいるやに聞いております。

 そういった就学支援金の拡充について、大きな方向性について大臣に伺えればと思います。

下村国務大臣 御指摘のように、現政権における高校授業料無償化は公立高校のみでございまして、私立学校はその相当分が引かれているだけでございます。この結果、以前にも増して、授業料でいうと一対四が〇対三で、逆に広がっているという状況が意識としてはございます。

 我々は、これは所得制限を設けて、同じ四千億の中で、その所得制限で浮いたお金で、公私間格差や低所得者層に対するさらに手厚い対応をする制度設計を今考えているところでございます。

山下分科員 ありがとうございます。

 本当に、公私間格差、そして低所得者への拡充ということで、今の大臣の御発言、心強く思っております。当局におかれても、しっかり御検討いただきたいと思います。

 そして、次に、私立学校、公立学校の耐震化、防災機能強化の点について伺いたいと思います。

 公立小中学校の耐震対策については同僚議員から質問があったというふうに承知しておるんですけれども、例えば、私立高校を含む私立学校について、私立高校に限ってもいいんですが、耐震化と防災機能強化対策について、二十四年度の補正、二十五年度の本予算でどのような予算措置がなされたか、その点について当局に御説明いただきたいと思います。

小松政府参考人 お答えを申し上げます。

 私立学校、これは国公立学校とともに、我が国の学校教育を担っております。こういう観点から、その耐震化の促進がまず大変重要なことだというふうに考えております。

 そういう観点から、今までも、耐震対策に対する充実には努めてまいりましたが、とりわけ、お尋ねの平成二十四年度補正予算以降におきまして、一つは例えば耐震改修費、これは今まで上限がありましたんですけれども、それを撤廃する。あるいは、補助事業に対しては、いわゆる裏打ちが必要でございますけれども、この部分についての長期低利融資制度を創設する。あるいはその融資率も、今までですと、全体の事業料の七五%というようなことでございましたが、これを一〇〇%まで融資ができるようにするといったふうに、さまざまな措置を今回新たに講じさせていただいたところでございます。

 今後も、私立学校の要望をいろいろ聞きながら充実に努めたいと考えております。

山下分科員 ありがとうございました。

 最後に一点だけ。先ほど私立学校についてはあったんですが、公立の高校について。

 公立高校については一般財源化されておるんですけれども、一般財源化では、なかなか数千万円では足りない、全面建てかえになると何十年分にもなるかもしれないという部分、御指摘がございます。

 そういった公立高校の建てかえですね。強度が弱いから建てかえをせざるを得ない、補強では足りないという場合、そういった場合に政府としてどういう対応があるのかというのを、簡単に、最後に伺いたいと思います。

萩生田主査 文科省清木大臣官房文教施設企画部長。

 時間が来ておりますので、簡潔に。

清木政府参考人 御指摘のとおり、公立高等学校の施設整備につきましては、一般財源となっているところでございまして、それぞれの地方公共団体の財源で実施することとなっておりますが、一方で、緊急防災・減災事業債という事業がございます。これを活用いたしますと、これは地方負担分の七〇%が交付税措置がなされるということでございますので、実質的な地方負担率は三〇%となるところでございます。このような事業を活用するなどによりまして、さらに高等学校につきましても耐震化を進めるよう促してまいりたいというふうに考えております。

山下分科員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

萩生田主査 これにて山下貴司君の質疑は終了いたしました。

 次に、穀田恵二君。

穀田分科員 日本共産党の穀田恵二です。

 きょうは、ダンスというすばらしい文化について議論したいと思います。

 昨年からダンスが中学校の必修科目となりました。ところが、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律、略称風営法ですね、でダンスをさせる営業を規制の対象としています。これは時代おくれでないかという問題について、私は、昨年六月に質問主意書も出しました。

 レッツダンス署名推進委員会が、ダンス規制法(風営法)の改正を求める署名運動を行い、十五万数千筆集めて国会要請も行っています。

 私は、ダンスの自由を求める立場から質問します。

 まず、大臣に聞きます。ダンスと言う場合、日本舞踊、クラシックバレエ、モダンバレエ、社交ダンス、フラダンス、ジャズダンス、ヒップホップダンス、ストリートダンスなどなど、たくさん種類があり、子供から高齢者まで多くの愛好者がいます。私は、我が国のダンス文化は世界に誇るべきすばらしいものだと考えています。

 ダンスという行為は、文化芸術として尊重され、また、表現の自由としても憲法上も保障されるべき行為であると考えますが、大臣の認識を伺いたい。

下村国務大臣 ダンスは、古来から世界じゅうにおいて老若男女を問わず親しまれている身体活動であり、仲間とともに感じを込めて踊ったり、イメージを捉えて自己を表現したりすることに楽しさや喜びを味わうことのできるものであります。

 文部科学省では、スポーツの振興の観点から、学校体育においてダンスを取り扱うとともに、関係法人の設立認可や後援名義の使用許可等を通じてダンスの振興を図ってきているところでございます。

穀田分科員 今大臣が答弁なすったのは、文科省が教員向けに発行したダンス指導のためのリーフレット、この中に書いていますよね。その中に書いているんですが、そのリーフは、今お話あったように、ダンスとはということを一番最初に大きな見出しで「古今東西老若男女が楽しむ身体活動」と書いていて、そのことを多分お読みになったんだと思うんです。

 そこで、文化として、表現として、さらにはスポーツとして、文科省も紹介しているとおり、ダンスとはすばらしいものであります。こうした中で、若者を中心に、ダンスカルチャー、クラブカルチャーと呼ばれる文化が、日本でも、世界でも広がっております。昨年のロンドン・オリンピックの開会式では、著名なディスクジョッキーが登場しています。

 クラブカルチャーというのは、音楽やアート、映像、ダンスなどの身体表現など、総合的な芸術表現の場として、多くのアーティスト、ディスクジョッキーらが、オーディエンス、すなわち観客と一体となってつくり上げたものであります。著名なミュージシャンであります坂本龍一氏は、次のように語っています。クラブはサブカルチャーのハブ、音楽、ダンス、アート、文学、ITなど多くの分野がつながっているとしています。

 日本のクラブカルチャーは世界的にも注目されております。昨年は、二〇一二年ダンスサミット・イン・ジャパンが文科省、外務省、経産省の後援で開催され、受賞者、受賞作品は、クール・ジャパンを象徴するものとして、広く海外にも紹介されました。クラブカルチャーはその中の大きな柱と言えます。

 そこで、大臣、こうしたダンスカルチャー、クラブカルチャーについてどのように認識されているか、見解をお聞きしたいと思います。

下村国務大臣 御指摘の、クラブカルチャー、ダンスカルチャーにおける具体的な活動内容については、残念ながら、詳細は承知しておりませんが、一般的に、ヒップホップなどを含めたダンスは、国民の間で行われる多様な文化の一つであるというふうに考えます。

穀田分科員 多様な文化であることは、それは論をまちません。

 ただ、今お話ししましたように、クラブカルチャーというもので、文科省、経産省、そして外務省が後援した、とても大事なそういうダンスサミット・イン・ジャパンというところが行われて、そこの中の受賞者などが広く世界にもアピールしているという意味では、日本の一つの文化として大きく発信するという意味合いがあるということだけは言っておきたいと思うんです。

 そこで、今お話ありましたように、多様な文化として、それから、一番最初にお話あったように、子供たちの豊かな成長にとっても大事だということで、今の大臣の発言からも、その大切さは明らかかと思っています。

 ところが、こうしたダンスをさせる営業を、風営法では風俗営業として規制しています。私は、全く時代おくれだと考えます。

 関係の条文を資料配付いたしました。見ていただければおわかりかと思います。そこに記しましたように、風営法の第二条で風俗営業を定義しています。その指標になっているのは、接待、それから飲食、ダンスです。その組み合わせで、第一号から第四号、四つの営業形態が示されています。

 一号が、接待、飲食、ダンス。いわゆるキャバレー営業であります。従業員が客と接待としてのダンスを行うことができるということです。二号は、接待、飲食。接待はできるが、客とダンスすることはできない。三号が、飲食、ダンス。今回話題になっている、いわゆるクラブが該当するわけです。四号はダンスのみ。ダンスホールやダンススクールが該当します。

 ここでの接待や飲食、つまり、アルコールはもともと少年には禁止されているものです。一方、ダンスは、先ほどの答弁もありましたが、中学校の必修科目となっていて、文化芸術として尊重されるべきものであります。そのダンスを接待や飲食と同列に扱うことがそもそもの問題であって、さまざまな混乱を招いています。

 私は、ダンスといってもいろいろな種類があって、風営法の対象となるダンスとは何かということについて、昨年六月七日に質問主意書で問いました。閣議決定された答弁書では、男女間の享楽的雰囲気が過度にわたると判断されるダンスが規制の対象になるということでありました。

 そこで聞くんですが、男女間の享楽的雰囲気が過度にわたるダンスとはどのようなものか、明確にしてほしいと思います、警察庁。

岩瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 客にダンスをさせる営業は、適正に営まれれば国民に健全な娯楽を提供するものとなり得るものである一方、利益本位の悪質な業者により不適切な形態で行われるなど、営業の行われ方いかんによっては、享楽的雰囲気が過度にわたり、善良の風俗と清浄な風俗環境を害し、または少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれがあるため、必要な規制を行っているものでございます。

 このような営業に関する規制が行われるダンスにつきましても、この趣旨に即して判断されることとなると考えております。

 具体的に申し上げますと、ダンスホール等の四号営業につきましては、原則として、社交ダンス等に代表されるような、男女がペアとなって踊ることが通常の形態とされているペアダンスを客にさせる営業が規制対象となるものでございますし、ナイトクラブ等の三号営業につきましては、客にダンスをさせることに加え、飲食をさせることを伴うことにより、四号営業の場合よりも問題を生じさせるおそれが大きいことから、ペアダンス以外のダンスをさせる営業も規制対象となるというふうに考えております。

穀田分科員 私が当時質問したのは、男女間の享楽的雰囲気が過度にわたるというのはどういう判断をされるダンスなのかということなんですね。ところが、今もお話あったように、結局のところ、ダンスが問題というよりは、営業の仕方によってはというところに大きなポイントがあるわけですよね。それは全く意味不明だと思うんですね。

 現場で何が起こっているかということであります。ダンスというだけで規制の対象とされていまして、かかとが浮いた、肩が動いた、だからダンスだとして取り締まりを受けているわけです。

 したがって、あらゆるダンスが規制の対象となっているために、先ほどいろいろ説明はありましたけれども、各地で混乱が生じています。

 これは文科省にも関係するんですが、生涯学習の大きな柱として公民館サークルは位置づけられているけれども、そこで行われる社交ダンスについて、高知市は風俗営業に当たるおそれがあるとして警告しているんですね。神戸市では、海の家でのキッズダンスが風俗営業に当たるとされ、一方、フラダンスなどがオーケーとなって、基準が曖昧だとの批判が上がっています。結局、風営法の曖昧なダンスという言葉がひとり歩きしていると思います。

 いつも話としては享楽的雰囲気となるわけでありますが、そこで善良の風俗の保持について聞きます。

 そもそも、大正から昭和にかけて、一般庶民へ社交ダンスが広がりました。そのときに、警視庁舞踏場取締規則が発せられたと聞きます。経営者の身元登録、利用者の身元確認、学生の利用禁止などが定められた。その規制によって、当然、女性客が減少し、風俗営業接客要員としてのダンサー、すなわちチケットダンサーというのが生まれるんですね。

 戦後、風俗営業取締法が制定された際に、ダンスホールで客がチケットを買って店のダンサーと踊るという営業形態が売春の温床になると規制されました。

 このような経過でダンスにかかわる営業が規制されたということは間違いありませんね。

岩瀬政府参考人 お答えいたします。

 客にダンスをさせる営業は、昭和二十三年、風俗営業取締法により、売春防止の観点から規制されることとなったものでございます。

 その後、順次改正がなされまして、昭和五十九年の風営法改正によりまして、善良の風俗と清浄な風俗環境の保持及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為の防止の観点から、現在のような諸規制が行われることになった、そういう経緯であるというふうに考えております。

穀田分科員 それは、今、最初に私が示しました資料の目的のところを一生懸命言ってはったということですわな。

 そもそも、店のダンサーと踊るという形態、つまり、従業員による接待としてのダンスが規制されたことは明らかなんですよ。ところが、現在問題になっているのは、先ほど述べたように、接待のないクラブでのダンス、ペアではなくてシングルであります。

 一九五九年の風営法改正で、三号営業が新たに現行の形で追加されました。当時の国会での論議からは、店にダンサーがいなくても、お客さんが同伴者を連れていってダンスをする形態があるということで規制の対象となったようであります。

 ところが、その後、ゴーゴー喫茶の時代もあり、ディスコの時代があり、今話題のクラブダンスとなりました。このように、時代とともに変わってきた。

 だから、このシングルダンスは、当時、規制の対象として想定していましたか。

岩瀬政府参考人 お答えいたします。

 風営法において規制の対象としております客にダンスをさせる営業につきましては、過去の経緯から見ましても、社交ダンスをさせるものが代表的なものとなるというふうに考えられることでございますが、例えば、昭和二十年代後半には、タップダンスをさせる営業を規制の対象に含めていたものと認められるなど、必ずしも、男女がペアとなって踊ることが通常の形態とされているペアダンスをさせる営業のみを規制の対象として想定していたわけではないとも考えておるところでございます。

穀田分科員 とも考えられるだけで、それは違うんですよ。

 だから、時代によって、先ほども私が紹介しましたが、変わってきているわけです、ダンスというのは。今や多くの子供たちが日常的にダンスを楽しんでいます。こうした時代にダンスを風俗営業の対象にしているということが時代おくれと私は言っているんですね。

 客にダンスをさせる営業が風俗営業として規制の対象となっているのは、当時の営業形態のもとで売春事案が多数発生したという歴史的経過があることは明確であります。

 そこで聞きますが、ダンス営業に伴う売春事案が現在も多発していますか。

岩瀬政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの件でございますけれども、最近、客にダンスをさせる営業が売春に利用されているという例が多発しているという実態は把握はいたしておりません。

穀田分科員 把握していない。だから、売春の温床となっていた時代とは違うということがはっきりした。

 しかも、今、クラブを訪れる目的も、音楽とダンスなどを楽しむためであって、過度の享楽性と言うけれども、何が過度であるかというのは国民の健全な良識と判断に支えられたものでなければなりません。だから、全てのダンスを規制するという風営法自体がおかしいと私は考えますし、ダンスそのものは規制されるべきでないと思っています。だから、この問題を考える際に、接待としてのダンスとそうでないダンスを分けて考えることが大事で、そうすればすっきりするわけですね。

 警察庁は、先ほどのお答えにありましたけれども、風営法の三つの目的、つまり、善良の風俗やいろいろなことを、少年の健全育成に反するおそれがある、これを言っていましたわな。

 そこで聞きますけれども、ダンスという文言を風営法から除くと、少年の健全育成のための規制がなくなるんですか。お答えください。

岩瀬政府参考人 お尋ねのように、風営法からダンスの文言を外した場合ということでございますが、この場合には、今御指摘のナイトクラブ等営業というものにつきましては、飲食店営業としての規制を受けるということになるわけでございます。

 この場合には、現在は一切認められておりません年少者の客としての立ち入りが、これが午後十時まで客として立ち入ることが可能となる、こういう大きな違いがあると思います。

穀田分科員 大きな違いがあると言うけれども、いずれにしたって、深夜における飲食店営業に当たって、したがって、風営法二十二条によって深夜における少年の立ち入りは引き続き禁止されるということは当然間違いないわけですよ。少年の立ち入りは、その意味では、結局どっちにしたってだめなんですよ。

 ダンスという文言を外しても問題ないということなんですね。だから、そういう青少年の指導や補導というのは別の法律、つまり青少年健全育成条例などできちんとやればいいと思います。

 もう一つ聞きましょう。清浄な風俗環境の問題です。

 警察庁はダンスが清浄な風俗環境を破壊するというけれども、果たしてそうか。酔客によるけんかや近隣への迷惑は、ダンスをするしないにかかわらずそういう問題は起こるんじゃないですか。その辺はいかがですか。

岩瀬政府参考人 ダンス営業、ダンスをさせる営業と、その他のダンスをさせない風俗営業の違いについてということでございますが、先ほどから御指摘のありますいわゆる三号営業につきましては、これは、客にダンスをさせることに加えまして、飲食をさせることを伴うものでございます。このダンスをさせることと飲食をさせることを伴うということで、両者が相まって、自制心の弛緩、解放感の高揚等により諸問題を生じさせるおそれがあるものでございます。

 実際に風営法の規制に違反して営まれております三号営業の状況を見てみますと、店内外において暴行傷害事件あるいは女性に対する性的な事件が発生したり、あるいは騒音や酔客による付近への迷惑行為等の苦情が周辺住民等から警察に寄せられたりする、あるいは少年の立ち入りの問題があるというような観点での問題が起きているところでございます。

 実際に、ナイトクラブ等営業につきましては、住民等から、深夜から早朝にかけての重低音の大騒音で近隣住民が安眠できないというようなことであるとか、あるいは、市の騒音担当職員とともに騒音の基準オーバーを告げるけれども無視されてしまう、それから、早朝、クラブ閉店後の酒に酔った若者同士によるけんかや路上での用便、あるいは吐瀉物の散乱、商店のガラスの損壊等の粗暴行為が絶えない等として、警察に対して取り締まり要望が寄せられる例もございました。

 客にダンスをさせずに飲食を提供するのみの居酒屋等、他の飲食店営業と比較して顕著な問題が認められるというふうに考えております。

穀田分科員 顕著な問題が認められるという数字的な証拠はないんですよ。それはダンスをするとかしないとかという話じゃなくて、騒音だとか酔客によって迷惑をかけてはいけないのは当然であって、法令に基づいて対処すべきなのは当たり前なんですよ。

 私は、京都のクラブを何軒か見学してきました。今お話があった騒音という問題も言っていましたけれども、防音対策などを行って、文化としてのダンスとミュージックに誇りを持って頑張っていますよ。

 ある経営者は、クラブを経営している場所が生まれ育ったところだということもあって、地元民として地元に恥ずかしいことはできないということで、地域の祭りでも先頭に立ち、クラブ運営においても、騒音、風紀など、近隣住民の理解を得るべく地道な努力を行っています。

 また、百二名の弁護士、行政書士らによって結成されたレッツダンス法律家の会が、昨年、大阪のアメリカ村のクラブでシンポジウムを開催しています。これには地元自治会関係者も参加し、クラブ経営者と共同で町の浄化と活性化に取り組もうと話し合っています。

 こういう例もあるわけですね。そういう例は大体いつも話をされないんですよね。

 そして今、そういうクラブの問題やナイトクラブの問題を含めて出されました。そういう方々も、大臣、こういう、キープ・ザ・スマイル・アンド・ミュージックということで、健全なナイトカルチャーをめざすアピール実行委員会ということで訴えを行って、暴力、薬物のないカルチャーシーンを目指すとして、店舗の賛同を募っています。こういう努力をしているわけですよね。悪いものは悪いとして、確かにそれはいろいろな形で対処したらいい。だけれども、こういう努力は喜ぶべきことではないかと私は思うんですね。

 ですから、いずれにしても、風俗環境の面からすれば、ダンスのあるなしの問題ではなくて、それは、主に飲酒、アルコールの問題だと私は考えます。

 ダンスの問題でないことは明らかだと思うんですが、その点、大臣はどう思われますか。

下村国務大臣 先週金曜日に、天皇、皇后両陛下が二十年ぶりにダンスを踊られた。その場所に私も同席をしておりまして、大変に、率直に言って、うらやましいし、すばらしいなというふうに思いました。

 国際社会の中で、社交ダンスがある意味では踊れないというのは通用しない、私も踊れないんですけれども、改めて習いたいというふうに思ったところでございまして、それが風俗営業にかかわらず、もっと広くダンスができるような環境づくりができれば、それはそれですばらしいことだというふうに思います。

穀田分科員 それが普通の常識なんですよ。

 それで、要するに、警察庁というのは、昔からの考え方で、これを取り締まり対象にして何とかしようというところに物事の発端があるんですよね。今大臣もお話があったように、今やダンスが世界共通の文化として発展をしていて、その自由な努力ということが本当に大切にされるという時代にならなきゃならぬというものを後押しする必要があるわけですね。そこがないんですよ、あそこは。

 私は、やはり風営法のダンス営業規制というのは、はっきり言って、何度も言いますが、時代おくれだ。それから、ダンスを風営法から外したって、現在起こっている問題については、いろいろいましたよ、さっき、こんな方がいると。それは全部、別の法律も含めて、対処できることは明らかなんですよね。

 ですから、警察庁というのは、ダンスを規制しているんじゃなくて、ダンスの営業の仕方を規制すると言うけれども、結局のところ、何が現場で起こっているかということもお話ししました。あらゆるダンスを対象に恣意的な取り締まりができるようになっていて、結果として何が起こっているか。それは、ダンスの自由、表現の自由、営業の自由を脅かしていると言わざるを得ません。

 そこで、大臣、国会もそういう動きがありまして、私もその一員なんですが、超党派のダンス文化議員連盟もいよいよ旗上げします。その設立趣意書では、次のように書いています。風営法のダンス規制を見直し、ダンスがより多くの国民に愛好される環境を整えるためにと設立の趣旨をうたっています。

 その意味で、風営法の規制対象からダンスを削除するということについては、最後、いかがでしょうか。

下村国務大臣 私の地元、板橋でも、結構いろいろな公的な施設で、ダンス愛好家の方々がいろいろなところでやっておりますし、それによってコミュニケーションや、あるいはその地域の活性化に資しているというところもございます。

 私も今お聞きしていまして、穀田委員のお話は説得力があるなというふうに聞いておりましたが、警察はちょっと管轄外でございますから、私がコメントする立場ではありませんが、しかし、健全な形で、もっともっとダンスが一つの文化として広まるべき国でありたいというふうに思います。

穀田分科員 一九八四年の風営法改正に対する両院の決議があります。それには、「本法の運用に当たっては、職権の濫用をいましめるとともに、表現の自由、営業の自由等憲法で保障されている基本的人権を侵害することのないよう慎重に配慮すること。」とまでわざわざ書いているんですね。

 ですから、そういう趣旨を体してやはり警察庁もやらなくちゃならないし、やはり、文化の自由、表現の自由というのをどう拡大するかという角度で物を見ることが大切だということを指摘し、主張し、これはやはりこの際削除すべきであるということを述べて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

萩生田主査 これにて穀田恵二君の質疑は終了いたしました。

 次に、古賀篤君。

古賀分科員 自由民主党の古賀篤でございます。本日は、質問の機会をお与えいただきまして、ありがとうございます。

 ただいま既に七時三十分を回っております。本当にお疲れさまでございます。下村大臣、谷川副大臣、義家政務官、また文科省の職員の皆様方、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 本日の私の質問は、大きく二つであります。一つは特別支援教育、そしてもう一つは道徳教育についてであります。

 私は、一回生、新人議員であります。前職は財務省職員でありました。十五年間、財務省に所属しておりましたが、昨年の五月に退職いたしまして、政治活動を開始し、十二月の選挙を迎えたわけであります。

 その政治活動の中においては、日々街頭に立ち、演説を行ってまいりました。駅前や道路の交差点、選挙区内のいろいろなところに立って演説を行ってまいりました。

 そうした中において、障害を持った子供たちが両親に見送られ、バスに乗り特別支援学校に通う、そういった光景にも遭遇したわけであります。御両親が笑顔で手を振って子供たちを見送る、そうした光景は、大変心を打つものがありました。

 政治は弱者のためにある、政治は弱者のためにある、それが私の政治家としての信条であります。障害を持った方も含め、多くの方が笑顔で充実した人生を送れるように、私も政治家として精いっぱい取り組んでまいりたいと思います。

 それでは、まず、障害のある子供たちを対象とした特別支援教育についてお聞きします。

 私が朝出くわしました子供たちが通う特別支援学校は、これまでの盲学校や聾学校、養護学校と呼ばれていたものが、二〇〇七年、平成十九年に一本化されたものであります。

 それまでの特殊教育から特別支援教育への転換、これは、障害を持った子供たちにどのように教えるのかといったものから、障害という個性を持った、一人一人の特別な教育ニーズのある子供たちをどう支援するかといった転換であります。

 こうした特別支援学校、また小学校や中学校に設置されております特別支援学級の在籍者数というのは、毎年増加傾向にあります。

 そこで、お手元に届いております資料一をごらんいただきたいと思います。

 この数字は、平成二十三年五月一日時点の数字でございます。右肩にあります義務教育段階の全児童生徒数、これは千五十五万人となっております。このうち、特別支援学校に通う生徒は、約六万五千人、割合にして〇・六二%であります。また、真ん中にある、小学校や中学校の中に設置される特別支援学級、これは、約十五万五千人、一・四七%。そして、通常の学級による指導を受ける生徒というのが、約六万五千人、〇・六二%であります。合計しますと、右にありますように、約二十八万五千人、二・七一%という数字が在籍者数と割合ということになります。

 こうした数字、少子化によりまして、義務教育段階の全児童生徒数というのは減っていっているわけでありますが、一方で、特別支援学校や特別支援学級、また、通常の学級での指導を受ける子供たちというのは、年々増加傾向にあるということであります。

 文科省の方のお話によりますと、その増加理由というのは明らかではないということでありましたが、いずれにしましても、こうした増加する在籍者数に対して、適切な対応が求められるところであります。

 そこで、最初の質問でありますが、文部科学省におけるこれまでの特別支援教育の取り組み内容についてお伺いいたします。

谷川副大臣 特別支援学校の在籍者や小中学校の特別支援学級の在籍者、通級による指導の対象者といった特別な支援を必要とする児童生徒については、この十年間で大幅な増加傾向にあります。

 障害のある児童生徒に対して、その一人一人の教育的ニーズに応じたきめ細かな支援の充実を図ることは極めて重要であると思っており、文部科学省としても、平成十九年度から、特別支援教育を法的に位置づけるなど、障害の重度・重複化や多様化への対応を図ってきました。

 また、これまで、通級による指導の担当教員を初めとする必要な教職員の確保、施設設備の整備に係る国庫補助、地方財政措置による特別支援教育支援員の配置などに取り組んできたところであります。

 文部科学省としては、引き続き、特別支援教育の充実に取り組んでいきたいと思っております。

古賀分科員 谷川副大臣、ありがとうございます。

 文部科学省は、これまで特別支援教育についてしっかりと取り組まれてきたと理解しております。

 ところで、先日、自民党の厚生労働部会において障害者雇用促進法の改正案の議論が行われまして、この法案は今国会に提出予定となっております。

 この改正法案では、募集や採用の機会提供や賃金決定などにおける障害者への差別の禁止、また、企業などに対し、身体、知的障害者の雇用を一定の割合で義務づける法定雇用率の対象について、精神障害者の雇用の追加、そういった改正内容になっております。

 障害者が雇用において差別されない、また、雇用が促進されるためには、経営者の理解、またそこで働かれる方々の理解が不可欠だと考えます。その鍵になるのは、やはり教育だと私は思います。

 障害のある子供たちと障害のない子供たちが教育の場で別々に分かれ、育ち、そして大人になって社会に出て、初めて同じ職場で働くということでは、なかなか相互理解は深まらないのではないかと考えるところであります。

 教育という、まさに社会を学ぶ場で、障害のある子もない子もともに学ぶ、そういった経験が必要だと思います。まさにこうした観点での教育が、これから申し上げますインクルーシブ教育だと思います。

 お手元の資料二をごらんいただきたいと思います。

 現在国会で審議中の平成二十五年度予算においては、インクルーシブ教育システム構築事業というものが予算として計上されております。この事業、右に書いてありますように、十三億八千五百万円という数字がついておりまして、これまでの特別支援教育の予算に比べ、一桁多い予算というふうに伺っております。

 この事業内容を見ますと、例えば真ん中にあるインクルーシブ教育システム構築モデル事業ですとか、左側の上にある早期からの教育相談・支援体制の構築、また、その下にある医療的ケアのための看護師配置や、その下の特別支援学校機能強化モデル事業等の項目が入っているわけであります。

 そこで、次の質問でありますけれども、こうしたインクルーシブ教育の意義につきまして、また、これからのインクルーシブ教育への取り組みの内容につきまして、下村大臣にお伺いいたしたいと思います。よろしくお願いします。

下村国務大臣 インクルーシブ教育システムとは、平成十八年十二月の国連総会で採択された障害者の権利に関する条約において提唱された理念であり、人間の多様性の尊重等を強化し、障害のある者がその能力等を最大限に発達させ、自由な社会に効果的に参加することを可能とするとの目的のもとで、障害のある者と障害のない者がともに学ぶ仕組みとされております。

 こうした理念を踏まえ、文部科学省としても、障害のある児童生徒と障害のない児童生徒がともに学ぶ、そのことを追求するとともに、障害のある児童生徒の自立と社会参加を見据えて、その教育的ニーズに最も的確に応える指導を提供できる多様で柔軟な仕組みを整備することが重要と考えております。

 このような認識に立ち、平成二十五年度予算案において、御指摘のように、インクルーシブ教育システム構築事業を新規に立ち上げ、モデル校における合理的配慮の実践に関する調査研究、事例のデータベース化、特別支援学校の機能強化などに取り組むこととしているところでございます。

 文部科学省としては、これらの事業の実施を通じて、インクルーシブ教育システムの構築に努めてまいります。

古賀分科員 大臣、ありがとうございました。

 インクルーシブ教育は、今大臣から御答弁がありましたように、まさに、障害のある子供とない子供がともに学ぶ教育ということであります。

 そうしますと、現在、特別支援学校ですとか特別支援学級という、障害のある子供たちのための学校や学級があるわけでありますが、こうした枠組みというのは、将来的には減らしていく、減っていくということになるのでしょうか。インクルーシブ教育における特別支援学校や特別支援学級の位置づけにつきまして、御所見をお伺いしたいと思います。

谷川副大臣 インクルーシブ教育システムにおいては、同じ場でともに学ぶことを追求するとともに、個別の教育的ニーズのある子供に対して、自立と社会参加を見据えて、その時点で教育的ニーズに最も的確に応える指導を提供できる多様で柔軟な仕組みを整備することが重要であると考えています。

 具体的には、通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校といった連続性のある多様な学びの場を用意した上で、それぞれの環境整備の充実を図っていく必要があり、まずは、外部専門家の活用も含めて各学校の校内支援体制を確立する必要があると思っております。

 また、特別支援学校は、小中学校等の教員に対する研修協力機能などのセンター的機能を発揮しながら、特別支援学校と小中学校とが連携して域内の児童生徒を支援する体制をつくっていくことが、今後のインクルーシブ教育システムの構築に当たっての不可欠な要素になるものと考えています。

 今後とも、平成二十五年度予算案に計上した各般の施策を通じ、インクルーシブ教育システムの構築に向けた特別支援教育のさらなる充実に取り組んでいきたいと思っております。

古賀分科員 谷川副大臣、ありがとうございました。

 今の御答弁にありました、多様で柔軟な学びの場、もしくはセンター的な機能という御回答もありましたけれども、まさに、連続性のある多様な学びの場ということで、可能な限りともに学ぶということができるように配慮していくことが大変重要な観点だと考えております。

 先ほどの資料二におきましても、インクルーシブ教育システムモデル事業の内容としまして、特別支援学校と小中高において、インクルーシブ教育システムを、特別支援学校と通常の学級の交流及び共同学習の形で追求するとされております。このモデル事業の成果に期待したいと考えております。

 特別支援教育におきましては、それを担う教職員の方の役割も大変大きいと考えております。そうした中で、教職員の方の御苦労、御努力には本当に頭が下がる思いであります。

 年々、特別支援学校や特別支援学級の在籍者数が増加する、また、精神障害などの子供たちがふえる中で、教職員の方の専門性の向上が求められるところであります。また、現状において、発達障害の可能性のある児童生徒の多くが通常の学級に在籍しておりまして、全ての教職員の方について、特別支援教育についての基本的な知識や技能が必要とされるわけであります。

 教育職員免許法におきましては、特別支援学校の教員は、幼稚園、小学校、中学校または高等学校の教諭免許状のほか、特別支援学校の教諭の免許状を有しなければならないとされているわけですが、この法律の附則において、幼、小、中、高の教諭の免許状を有する者は、当分の間、特別支援学校の相当する部の教諭等となることができるとされているところであります。

 また、特別支援学校以外、特別支援学級の担任の方ですとか通常学級における指導を担当する職員、教員については、こうした、免許状を有すること等の法令上の規定がないというのが現状であります。

 この免許状の保有状況を資料三で用意しておりますので、ごらんいただければと思います。少し小さい表となっておりますが、上のグラフをごらんいただければと思います。

 このグラフ、平成二十三年度における特別支援学校教員の特別支援学校教諭免許状保有者の割合がグラフになっているわけであります。一番右が二十三年度の数字になっておりまして、七〇・三%、また、新規採用者の割合が五九・九%となっております。

 また、真ん中は飛ばしていただきまして、一番下、参考と書かれている表がございます。この表は、特別支援学級担当教員の特別支援学校教諭免許状の保有率をあらわしておりまして、一番右、平成二十三年度、小学校、中学校を合計した割合というのが三一%となっております。この免許状の保有率を上げていく必要があるんじゃないかと私は考えております。

 そこで、特別支援教育における教職員の方の専門性の向上、また、今申し上げました特別支援学校教諭免許状の保有率向上のための取り組みについてお伺いいたします。

谷川副大臣 特別支援教育を推進するに当たって、教職員の専門性向上は重要な課題であると考えており、特に、全ての教員が、研修の受講等により、特別支援教育に関する知識、技能の向上、特別支援学校教員については、特別支援学校教諭免許状保有率は七割となっており、その保有率の向上が必要と考えています。

 文部科学省においては、特別支援教育に関する研修の受講による知識、技能の向上について、これまでに、各教育委員会に対し、学校内外での研修の実施による教員の専門性の向上を求めてきたほか、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所において各都道府県の指導者のための研修を実施してきたところであり、平成二十五年度予算案においても、新たに、発達障害に関する教職員の専門性向上のための事業を計上するなど、その充実を図っているところであります。

 また、特別支援学校教諭免許状の保有率向上については、都道府県教育委員会等に対して、特別支援学校教諭免許状取得のための免許法認定講習の受講機会の拡大や効率的な受講の促進等を求めるとともに、文部科学省から大学に対して免許法認定講習の開設を委託し、受講機会の拡大に努めているところであります。

 今後とも、特別支援教育に関する教員の専門性向上に努めていきたいと思っております。

古賀分科員 副大臣、ありがとうございます。ぜひ、教職員の方の専門性の向上を進めていただきたいと思います。

 文部科学省におかれましては、今後、インクルーシブ教育の推進にぜひ御尽力いただきたいと思います。人々が多様なあり方を相互に認め合う全員参加型の社会実現に向けて、私も取り組んでまいりたいと思います。

 次に、道徳教育についてお伺いいたします。

 安倍政権における最重要課題の一つとして、教育改革があります。昨年の総選挙においても、日本を取り戻す、教育を取り戻すということを選挙公約に掲げていたわけであります。政府においては、一月から教育再生実行会議というのを立ち上げまして、現在、下村大臣がこの会議のメンバーのお一人ということになっているわけであります。

 いじめや体罰の問題への対応など、課題山積の教育分野の中にあって、道徳教育の徹底というのも大事な取り組みだと思います。

 そこで、基本的な質問でございますが、そもそも道徳教育とは何か、その意義についてお伺いしたいと思います。

義家大臣政務官 お答えいたします。

 国や民族、そして時代を超えて、人が人として生きていくために必要な規範意識や社会のルールなどは、どこの国でも共通に存在して、共有できるものと思っております。それを、これから社会人として人格形成をしていく子供たちに、その発達段階に応じて丁寧に伝えていくこと、さらには、この日本という国に生まれてきたことに誇りを持ち、そして、先人たちはどのような態度やどのようなあり方を大切にしてきたのかということをしっかりと伝えていくことは、公教育の責任であろうというふうに考えております。

 このため、学習指導要領におきましては、道徳の時間をかなめとしまして、これは道徳の時間のみならず、他教科、あるいは部活動、特別活動も全て含めて、学校教育全体を通じて道徳教育を行うことを定めているところであります。

 児童生徒らがみずからの生き方やあり方をしっかりと考え、共通のルールや規範意識を持って、例えば、代表的なもので言ったら、いじめ問題にどのように向き合っていくのか、そういうところの態度を醸成するために必要不可欠なものであると考えております。

古賀分科員 義家政務官、ありがとうございました。道徳教育の意義、大変わかりました。

 今、政務官からお話がありましたように、小学校の学習指導要領においても、道徳というものの位置づけは、「学校における道徳教育は、道徳の時間を要として学校の教育活動全体を通じて行うもの」ということで、決して道徳の時間だけでいいということではないというふうに理解しております。

 こうした観点に立って、今後、道徳教育の充実を図る中で、では、道徳の時間にどういった教材を用いるかということも重要になってくるわけであります。

 予算の方を見ますと、平成二十四年度補正予算や平成二十五年度予算において、道徳の教材である心のノートというものが入っているわけであります。

 お配りした資料四をごらんいただければと思います。

 「地域に根ざした道徳教育の推進」という中にあって、真ん中に「道徳教育総合支援事業」という枠がございます。その上から二つ目に「「心のノート」活用推進事業」というものが挙げられております。

 この事業、民主党の政権時に、いわゆる事業仕分けの結果、教材は電子データ化されて、印刷物の配付は中止という措置になったわけであります。

 そうした心のノートについて、その位置づけですとか今後の活用方法についてお聞かせいただければと思います。

義家大臣政務官 お答えいたします。

 この心のノート、これは、児童生徒が身につける道徳の内容をわかりやすくあらわし、そして児童生徒が道徳的価値についてみずから考えるきっかけとなるように作成した道徳の教材であります。

 委員御承知のとおり、戦後の教育界では、教職員組合を中心として、道徳教育ボイコット運動というものがかなり全国的に展開されてまいりました。そして、行き過ぎた人権教育の結果、権利には表裏一体、責任もあり、自由にも責任があり、義務があるんだということが、ある種、非常に置き去りにされてきた公教育の問題点、これについて、まずしっかりとどの教師も、大切なこと、こういう切り口でみずから考えてもらおうという趣旨のもとでつくったわけですが、御指摘のとおり、民主党政権においては、ウエブを通じての活用に切りかえられたわけです。

 やはりこれも、個人差があってはならない。例えば、一つのいじめが起こったとき、ある先生は、それはいじりだから仕方がないと言った。ある先生は絶対許されないことだと言った。やはりこのような差異があってはならない。どの先生もしっかりと教えることができるような体制を、公教育として、文部科学省としてつくっていかなければならないという形で予算を計上したところであります。まさに大臣の大いなる決定であろうと思っています。

 さらに、今、大臣の御指示のもとで、この心のノートの全面改訂、より子供たちにしっかりと届くような内容をどのようにつくっていくかという作業を進めております。

 また、地域のそれぞれの偉人というものが存在していて、これは非常に重要なことで、例えば私の地元の津久井なんかでは、尾崎咢堂、これはみんなに知っていただきたい。さらには、生まれた長野だったら、佐久間象山、これもみんなに知ってもらいたい。こういった地域独自の偉人伝等の授業に対しても一生懸命応援していこうという形で予算を計上している次第です。

古賀分科員 義家政務官の思いのこもった答弁、本当にありがとうございます。

 文部科学省が平成二十四年度に実施した道徳教育の実施状況調査によりますと、この調査というのは複数回答が可になっている調査でありますが、道徳の時間に使用する教材として、心のノートが最も多く、小学校で九〇・六%、中学校で八四・九%となっております。一方で、民間の教材会社の読み物資料ですとか、新聞記事、書籍、雑誌等も使用されているという実態もあるようです。

 そうした実態を見ますと、心のノートを使いつつも、地域の題材や時事問題なども教材として使う、まさに今政務官がおっしゃったようなことだと思いますが、そういったことになろうかと思います。ぜひ、現場で活用度の高い、そうした心のノートにしていただきたいと思います。

 次に、資料五をごらんいただきたいと思います。

 これは、ことしの二月の教育再生実行会議における提言、「いじめの問題等への対応について」の抜粋でございます。この中で、真ん中で下線を引いておりますが、道徳教育については、「その抜本的な充実を図るとともに、新たな枠組みによって教科化し、」ということが指摘されております。

 そこで、道徳の教科化についての基本的なお考え、また今後の取り組みについて、下村大臣にお伺いしたいと思います。

下村国務大臣 道徳の教科化については、この資料五のとおりでございます。

 これを受けまして、文部科学省の中に、今月、道徳教育の充実に関する懇談会を設置しました。その具体的なあり方については、今後、本格的にこの懇談会の中でさらに深掘りをしてまいります。

 道徳の教科化の制度設計として、教科については法制上特段の定義があるわけではない、二つ目として、道徳性という人格全体にかかわるものを取り扱う道徳教育の特性などに鑑みれば、必ずしも、既存の教科と同様な形で、教科書、そして専門の教員免許、さらに数値による評価などを取り扱う必要はないというふうに考えておりますが、こうした点も含めて、新たな枠組みによる教科化のあり方について、この懇談会において十分な議論をしていただきたいと考えております。

 今後のスケジュールについては、来年四月から心のノートの全面改訂版をぜひ使いたいと思っておりますので、八月までにはその準備を終了したい、さらに、それ以外のことについても、年内をめどに一定の結論を出したいと考えております。それを踏まえて、文部科学省として、しっかり道徳の教科化について取り組んでまいります。

古賀分科員 大臣、ありがとうございました。お考え、大変よくわかりました。

 時間がなくなってきております。最後になりますが、いじめが大きな問題となる中で……

萩生田主査 時間がもう過ぎているので。

古賀分科員 はい、終わります。

 道徳教育の重要性、大変高まっているところでありまして、今大臣がおっしゃいましたような道徳教育の充実に関する懇談会等での議論を経て、道徳教育がよりよい方向に向かっていくことを期待しております。

 最後に、本日質問させていただきました特別支援教育や道徳教育以外にも、教育は国家百年の計、大変大事な分野であります。教育行政における、下村大臣を初め、谷川副大臣、義家政務官、また文科省の皆様方の御健闘を祈念申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

萩生田主査 これにて古賀篤君の質疑は終了いたしました。

 次に、新開裕司君。

新開分科員 自由民主党の新開裕司と申します。

 本日は、最後の質疑をさせていただく時間となりましたけれども、私にとりましては初めての質問をさせていただく場となります。午前から午後、そしてこの時間に至るまで、本当に大臣初めお疲れのこととは思いますけれども、どうぞ最後までよろしくお願いいたします。

 さて、安倍総理は、経済の再生と同じく、教育の再生、必要性というものを強くうたっておられます。

 私は、経済を取り巻く我が国の環境というものは、国境のない、いわゆるグローバルという大きなくくり、うねりの中で、今後、我々は生き抜いていかなければならない、そういう環境にあるんだろうというふうに考えております。

 だからこそ、より今まで以上に、国家観、日本というのは何なのか、我々が有史以来受け継いできた、日本人の持つ精神性、文化、伝統、それは何なのか。日本が日本であるためにも、このことを強く、教育を通じて、ある意味、道徳などと同じような位置づけで、しっかりと自覚していかなければならない、私はこういうふうに考えております。

 と同時に、国際社会の中でたくましく生き抜いていく、また、日本人の持つアイデンティティーを生かして、世界から必要とされる、活躍する人材を育成していくことも、我が国の発展に寄与するものだと考えております。

 そこで、アイデンティティーといいますか、伝統、精神、こういったものが凝縮されて表現されたものが文化であり、そしてそれを限りなく洗練していく、精度の高いものに成就されたときに芸術と呼ばれる分野に至るのではないか、私はそのように考えております。

 文化には、それぞれの地域のアイデンティティー、歴史、伝統が詰まっているわけです。つまり、文化芸術というものをしっかりと見詰め直していくこと、このことがすなわち我々自身が忘れてはならない、失ってはならないアイデンティティーを私たち自身に教えてくれることにつながる、このように考えております。

 そこで、本日は、文化芸術という分野について御質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 まずは、質問をさせていただくに当たりまして、文化芸術という分野が社会に対して果たす役割、また社会から求められる役割という部分についての御所見を下村大臣にお伺いしたいと思います。

下村国務大臣 我が国には、世界に誇るべき有形無形の文化財や芸術文化が多く存在しており、それは世界に誇るべき国力そのものでも本来あるべきであるというふうに思います。

 文化芸術の振興によりまして、こういう日本の底力、国力をさらに増進して、国民の心豊かな生活を実現するということがこれからますます重要であるというふうに思います。

 文化芸術の振興は、人間形成や活力ある社会構築に不可欠な投資であるとの考え方に立ち、我が国の芸術活動や伝統文化の振興、人材育成や文化の発信などに国家戦略として取り組むことで、これから文化芸術立国を実現していく、また、それこそが日本らしいあり方である、こういう観点から、今後は、二十六年度以降、積極的な予算獲得も考えながら、日本の文化芸術立国の樹立に向けて努力をしてまいりたいと思います。

新開分科員 ありがとうございます。

 文化芸術振興というものについての考え方、まさに私もすばらしい御所見だというふうに思いました。

 そこで、今大臣の方からも所信の一部引用のお話がございましたけれども、文化芸術立国の具体化というものに向けて、所信の中で、昨年成立した、劇場、音楽堂等の活性化に関する法律、また古典の日に関する法律に基づいた施策を推進されるとのお考えを述べられております。また、それに伴って、劇場、音楽堂等を活性化し、実演芸術の振興を図ること、そして、メディア芸術等の幅広い芸術を振興し、そのための人材育成を強化されるというふうにおっしゃっております。

 この劇場、音楽堂等を活性化する法律に至るまでの経緯は、あらかた、平成二十一年度の文化審議会文化政策部会報告書においてもさまざまな点が指摘されているわけなんですけれども、一言で言うと、各地方地方における文化芸術振興基本法の理念からいうところの、いわゆる地域の文化芸術の発信拠点という意味では、それぞれの地域における文化施設、いわゆる三百席以上のホールを持ったところが対象という、こうした施設の半数以上が主催・共催事業として行われているものが年間十日未満であったりだとか、文化芸術団体がいわゆるワンパッケージ、出演料、交通費、それから舞台費等を一括してパッケージ化したものを施設が買いつけて、いわゆる買い取り公演、なかなか自主的に運営していくことが難しい、そういった要因、これは、専門的なスタッフの問題、そして一つのホールが文化芸術の発信拠点というよりも、いわゆる多目的な側面からの運営が主体となっている、こういった経緯でこの法律が成立、施行されたというふうに認識しているんですけれども、改めて、この法律が成立するまでに至ったその背景というものを御説明いただければというふうに思います。

河村政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年、劇場、音楽堂等の活性化に関する法律が成立をいたしましたが、この法律は、超党派の議員連盟によっての御議論を経て、議員立法として成立がされたものでございます。

 ただ、その前には、御指摘のございました文化審議会、あるいは文化庁における協力者会議などで、現在の全国の劇場、音楽堂等における問題点、課題の洗い出しということがございました。

 御指摘がありましたように、建物は先行して全国津々浦々にできてきたという中で、なかなか、人的な組織が十分に伴っていない、したがいまして、そのソフトの事業も十分にできていない、この点を克服して、本当に、その地域、コミュニティーのための、また全国から世界にも発信していけるような、そうした実演芸術を生み出す場としての劇場、音楽堂になるべきだというのが、文化庁でも議論しましたときの問題意識でございますし、また、議員の超党派の皆様方も同じくその問題意識を持ちまして、法律を成立させてくださったものというふうに理解をいたしております。

新開分科員 ありがとうございます。

 私は、今御説明いただきましたとおり、この劇場、音楽堂等の活性化に関する法律、これが成立したことによりまして、地方における文化施設といいますか文化会館の位置づけが、ある意味明確にされた、これは非常に意義のあることだと思っておりますし、これを大いに生かしていくべきだというふうに考えております。

 そこで、今回、二十五年度予算案におきまして、新規事業として劇場・音楽堂等活性化事業予算が計上されているわけなんですけれども、この事業実施における施策効果について御見解をお尋ねしたいと思います。

河村政府参考人 お尋ねの劇場・音楽堂等活性化事業は、昨年の法律の成立を踏まえまして、全国の劇場、音楽堂等の事業の活性化を支援するために予算案に計上いたしました事業でございます。

 支援内容といたしまして、一つには、すぐれた実演芸術の創造発信、第二には、専門的人材の養成、さらに、地域コミュニティーへの普及啓発、加えて、劇場、音楽堂等の間の連携協力などが含まれております。

 従来の類似事業と比べまして、支援額の大幅な拡充を図りますとともに、特に、劇場、音楽堂等の活動ごとにきめ細かな支援を行うメニューや、劇場、音楽堂等の間の連携協力を進める劇場・音楽堂等間ネットワーク構築支援、こういったものを新たに盛り込んでおります。この事業を実施することによりまして、トップレベルの劇場、音楽堂については、創造発信活動がさらに水準向上を目指すことができる。

 また、全国各地の中核的施設におけるそれぞれの特色を生かした多様な活動、また、多くの劇場間の協力、共同による、例えば巡回事業といったことが活発化することによりまして、我が国全体の実演芸術の振興が図られ、各地における実演芸術の鑑賞機会の拡充、ひいては地域住民の交流の機会というものも拡充するということにつながるものと期待をいたし、考えている次第でございます。

新開分科員 ありがとうございます。

 今お話ありましたとおり、この活性化事業を実施することによって、これは、いわゆる文化芸術の発信の場としての、人々がともに生きるきずなを形成するための文化拠点、そして、そのための環境整備を推進していくための第一歩になるというふうに私も考えております。

 そこで、今後、この舞台芸術が地域の文化財産として持続的に発展していくため必要な内容、見解等々について、もう少しこの関連で質問をさせていただきたいというふうに思うんです。

 舞台芸術というものは、いわゆる演じ手、実演芸術家の、演じ手という演奏家としての部分、この表現の重要さ、精度の高さということが求められるのは言うまでもないんですけれども、舞台芸術においてはそれだけではなくて、いわゆる舞台進行に必要な照明であったり、音響であったり、それから舞台制作等にかかわる技術者の存在ですね。そしてまた、公演というものについては、いわゆる企画から制作、マーケティングや営業、広報、こういった分野を担うことのできるいわゆるアートマネジメントに携わる人材の育成、充実も同時に必要であると。

 そもそも、こういった部分の問題そのものが、先ほどの文化審議会の政策部会の報告書にもあるように、地方における文化会館の運営の難しさというものにつながっていたというふうに考えております。

 そこで、この劇場・音楽堂等活性化事業を推進するに当たって、現状、これまでのアートマネジメントの育成に関する取り組みや、それから舞台制作技術者等の育成に関する取り組み等々について、関連の文化芸術団体や他の団体との連携、そういった部分の取り組みについても現状を御説明いただければなというふうに思います。

谷川副大臣 舞台芸術人材の育成については、平成二十一年七月の文化審議会文化政策部会報告書において、優秀な実演芸術家等が国内で継続的に活躍できない、舞台芸術を支えるアートマネジメント人材や舞台技術者の育成が不十分などの課題が指摘されています。

 文部科学省では、これらを踏まえ、優秀な実演芸術家等の国内における活躍の場の充実を図る観点から、平成二十三年度から実施している事業において、芸術文化団体の活動に支援を行っています。

 また、平成二十二年度から実施している事業において、芸術文化活動の拠点である劇場、音楽堂等の事業に支援等を行っており、平成二十五年度からは、劇場、音楽堂等の活性化に関する法律の成立を受けて、支援の大幅な拡充を図ることとしています。

 さらに、舞台芸術を支える人材育成の充実を図る観点から、平成二十五年度の予算案において、芸術系大学等におけるアートマネジメント人材の実践的な育成を行う事業の創設や、全国の劇場、音楽堂等における舞台芸術の人材育成事業への支援の充実を図るための経費を計上するなどの対応を行っています。

 今後とも、すぐれた舞台芸術人材を育成するとともに、活躍できる環境を整備するため、必要な施策の効果的な実施に努めていきたいと思っております。

新開分科員 ありがとうございます。

 本当に、この法律の成立、施行を機会に、地方の文化芸術における発信の拠点としての、今おっしゃったそのアートマネジメントの部分だとか、総合的な対策で地域の振興を図っていく必要があるというふうに思っておりますので、ぜひ引き続きしっかりと私も取り組ませていただきたい、このように考えております。

 もう一つの実演芸術家の育成という部分で、世界で活躍することのできる、いわゆるレベルの高い人材の育成という観点から質問させていただきたいと思います。

 舞台芸術を通じた日本の文化力向上のためには、さきに述べた、レベルの高い実演芸術家の育成が重要であると。この点については、昭和四十二年から実施されております世界で活躍する新進芸術家育成のための海外研修制度というものについて、これまで大きな役割を果たしてこられているというふうに思うんですけれども、今後の取り組みについてのお考えをお聞かせいただければと思います。

谷川副大臣 新進芸術家海外派遣制度については、平成二十二年度に、過去に派遣された研修生を対象として、研修後の活動状況や、研修制度のあり方に関する意見等について調査を行いました。

 その結果、研修後もその分野で活動している者は回答者の九六%を占めるなど、研修の成果が生かされていることがうかがわれる一方、例えば一時帰国を認めてほしいといった、研修期間中の活動の柔軟な取り扱いなどについても要望が出されております。

 また、平成二十一年七月の文化審議会文化政策部会の報告書においては、本派遣制度について、帰国後に研修成果を還元するための支援の充実や、研修期間中の一時帰国の条件緩和等について指摘がなされました。

 文部科学省では、これらの調査結果や報告書の指摘を踏まえ、平成二十三年度より、海外派遣された研修生を対象に、帰国後に成果を披露する公演の開催の機会などを提供する、新進芸術家育成事業を開始するとともに、研修期間中にキャリアアップにつながるような公演、展覧会に招聘された場合の一時帰国を認めるなどの対応を行っています。

 文部科学省は、今後とも、本派遣制度についての成果の検証を行いながら、例えば技量の段階に応じた複数回の研修機会を提供することを検討するなど、世界に通用するトップレベルの人材育成につながるよう、制度や運用の改善に努めていきたいと思っております。

新開分科員 ありがとうございます。

 私がこの場でぜひお話しさせていただきたかったのは、海外研修制度といいますか新進芸術家育成制度、先ほどの審議会の二十一年度の報告書ではこんな指摘がしてあったんですね。

 例えば、国が人材育成に向けた諸条件整備を進めてきた結果、基礎整備は図られてきましたが、分野による発展の歴史の違いなどがあるにもかかわらず、幅広く公平に配分することが求められたため、このままでは人材の小粒化が危惧されるというような指摘がございました。

 それで、今回、新進芸術家育成事業においては、その表現の中で、分野や団体の枠にとらわれず、実力のある指導者等と協力して人材育成プログラムを作成、実施するなど、国が主体となり戦略的な人材育成を行うというふうな表現になっているんですけれども、いろいろな分野でスキームが違ったり、それから歴史、背景が違ったりする中で、私は、分野や団体の枠にとらわれずに、しっかりと、よりすばらしいものにはより重点的に配分措置をしていく、こういうふうに改善されたということについて非常にすばらしいことだというふうに思っておりましたので、ちょっとこの質問をさせていただきました。

 余談なんですけれども、私、学生時代に、文化庁の海外派遣事業なるもので、私の仲間もミラノ等々に研修派遣に行っておりました。

 この派遣制度のすばらしさというものはよく理解しているんですけれども、これが分野分野における底上げというものにつながっているかどうかについての検証というのは本当に難しいものだなというふうにもともと考えておりました。

 ただ、世界を目指す優秀な人たちにとっては、この事業というものは本当に必要とされている事業だと思うんですね。ですから、今後もこの育成プログラムというものは戦略的にしっかりと、我が国の発展に寄与するための優秀な人材の育成のために生かしていただきたい、そんなふうに思っております。

 それから、ちょっと予算の話なんですけれども、平成十三年度に文化芸術振興基本法ができまして、これによって我が国の文化芸術政策というものは推進されてきていると思っております。

 その中で、基本法成立の前後において、文化予算というものの国家予算に占める割合が余り拡充されていない。〇・一一から大体〇・一三パー。二十五年度予算では一千三十三億という数字でございますけれども、二十四年度は一千三十二億。いわゆる芸術の都パリ、フランスにおいては、四千四百億強、これは一・〇六%ぐらいついている。

 文化芸術立国を目指す、また文化芸術が果たす役割、そういった部分から考えますと、今後まだまだ、先ほど大臣の方からもお話しいただきましたけれども、やはり文化予算の拡充、こういったものもしっかりと図っていかなければならないんじゃないかというふうに思いますけれども、この点についての御所見をお伺いできればというふうに思っております。

下村国務大臣 冒頭申し上げたとおり、これから日本が目指すべき方向として、文化芸術立国があるというふうに思います。そのために今、政府の中で、クール・ジャパン、これは文化庁、文科省だけの枠ではありませんが、積極的に我が国のすばらしい部分を世界に発信していく、そしてそれが新たな産業にもなっていく、こういう形で、それぞれの芸術家の個人の努力だけの世界が今までありましたが、トータル的な国家戦略としてバックアップをしていく。

 その中で、芸術文化のこれから果たすべき役割は大変大きいというふうに思いますし、そのためにはかかる資金も当然あるわけでございますから、文化庁としてもしっかりとした予算を組んでいくということでの文化芸術立国であるというふうに思いますし、そのような形をぜひ目指していきたいと思います。

新開分科員 ありがとうございました。

 本当に、私は、文化芸術、こういったものに触れることは、道徳教育と冒頭にもお話ししましたけれども、同じように、文化には郷土のアイデンティティー、そういったものが全て詰まっている、それを学ぶことが我が国の歴史を学ぶことにつながる、こういうふうに思っておりますので、ぜひ今後ともこの予算拡充を図っていただきたいと思っております。

 最後になりますけれども、私が学生時代にお世話になった恩師の先生から教えていただいたことがあるんです。かの有名な小沢征爾という指揮者の方、この方がどうして世界に冠たる指揮者として、追随を許すことなく、名声をかち得るほど優秀な指揮者として存在するのか。これについて、それは日本人の持つ間だ、つまり、言葉からくる習慣、それから音楽に対する解釈、そこに基づく精神性、それから我が国の風土、文化、いろいろなものが積み重なったものが才能というものを通じて表現という形で、より精度の高い、感性豊かな、誰にもまねのできない、日本人の指揮者にしかできないその間というものが世界でも立派に認められている、むしろ憧れの象徴になっている、そういうお話を受けたことがありました。

 最後に私がお話ししたかったことは、日本人の持つアイデンティティー、DNAと申しますか、この文化に秘めた我々の持つ潜在的なものというものを、世界で成功された方も我々と同じ民族としておられるわけですから、ぜひこういったものを次の世代に受け継いでいくためにも、文化芸術、こういったものにしっかりと、社会がグローバル化になればなるほど、日本人としてのアイデンティティーをしっかりと伝えるための文化芸術にこれからもぜひ取り組んでいただきたい、こういう思いでお話しさせていただきました。

 きょうは、本当に最後まで親切に御答弁いただきまして、ありがとうございました。これで終わらせていただきます。

萩生田主査 これにて新開裕司君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして本分科会の審査は全て終了いたしました。

 この際、一言御挨拶を申し上げます。

 分科員各位の御協力を賜りまして、本分科会の議事を終了することができました。ここに厚く御礼申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午後八時三十一分散会


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