衆議院

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第1号 平成26年2月26日(水曜日)

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本分科会は平成二十六年二月二十四日(月曜日)委員会において、設置することに決した。

二月二十五日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      あかま二郎君    大島 理森君

      薗浦健太郎君    萩生田光一君

      玉木雄一郎君    中山 成彬君

      宮本 岳志君

二月二十五日

 萩生田光一君が委員長の指名で、主査に選任された。

平成二十六年二月二十六日(水曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 萩生田光一君

      あかま二郎君    小林 史明君

      小松  裕君    薗浦健太郎君

      船橋 利実君    堀井  学君

      八木 哲也君    玉木雄一郎君

      細野 豪志君    渡辺  周君

      椎木  保君    田沼 隆志君

      中山 成彬君    宮沢 隆仁君

      宮本 岳志君

   兼務 小川 淳也君 兼務 坂本祐之輔君

   兼務 伊佐 進一君 兼務 岡本 三成君

   兼務 佐藤 英道君 兼務 中島 克仁君

   兼務 井出 庸生君 兼務 畑  浩治君

    …………………………………

   文部科学大臣       下村 博文君

   復興副大臣        谷  公一君

   文部科学副大臣      西川 京子君

   文部科学大臣政務官    冨岡  勉君

   文部科学大臣政務官    上野 通子君

   厚生労働大臣政務官    高鳥 修一君

   政府参考人

   (内閣官房2020年オリンピック・パラリンピック東京大会推進室長代理)

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        久保 公人君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 岩渕  豊君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 麻田千穗子君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 杵渕 正巳君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 水嶋 光一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 下川眞樹太君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          清木 孝悦君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          前川 喜平君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            吉田 大輔君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局長)       川上 伸昭君

   政府参考人

   (文部科学省研究振興局長)            小松親次郎君

   政府参考人

   (文部科学省研究開発局長)            田中  敏君

   政府参考人

   (文部科学省国際統括官) 加藤 重治君

   政府参考人

   (文化庁次長)      河村 潤子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房総括審議官)         生田 正之君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           高島  泉君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           鈴木 俊彦君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房地域経済産業審議官)     加藤 洋一君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁廃炉基盤整備総合調整官)    藤原 正彦君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           佐藤 憲雄君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局次長)           奈良平博史君

   参考人

   (東京電力株式会社常務執行役)          増田 祐治君

   文部科学委員会専門員   久留 正敏君

   予算委員会専門員     石崎 貴俊君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月二十六日

 辞任         補欠選任

  大島 理森君     小林 史明君

  薗浦健太郎君     小松  裕君

  玉木雄一郎君     細野 豪志君

  中山 成彬君     田沼 隆志君

  宮本 岳志君     高橋千鶴子君

同日

 辞任         補欠選任

  小林 史明君     堀井  学君

  小松  裕君     船橋 利実君

  細野 豪志君     山井 和則君

  田沼 隆志君     宮沢 隆仁君

  高橋千鶴子君     笠井  亮君

同日

 辞任         補欠選任

  船橋 利実君     薗浦健太郎君

  堀井  学君     八木 哲也君

  山井 和則君     玉木雄一郎君

  宮沢 隆仁君     河野 正美君

  笠井  亮君     塩川 鉄也君

同日

 辞任         補欠選任

  八木 哲也君     大島 理森君

  玉木雄一郎君     中川 正春君

  河野 正美君     阪口 直人君

  塩川 鉄也君     高橋千鶴子君

同日

 辞任         補欠選任

  中川 正春君     渡辺  周君

  阪口 直人君     三宅  博君

  高橋千鶴子君     穀田 恵二君

同日

 辞任         補欠選任

  渡辺  周君     玉木雄一郎君

  三宅  博君     椎木  保君

  穀田 恵二君     赤嶺 政賢君

同日

 辞任         補欠選任

  椎木  保君     西田  譲君

  赤嶺 政賢君     佐々木憲昭君

同日

 辞任         補欠選任

  西田  譲君     中山 成彬君

  佐々木憲昭君     宮本 岳志君

同日

 第一分科員坂本祐之輔君、第三分科員小川淳也君、第五分科員伊佐進一君、岡本三成君、佐藤英道君、第七分科員井出庸生君、畑浩治君及び第八分科員中島克仁君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成二十六年度一般会計予算

 平成二十六年度特別会計予算

 平成二十六年度政府関係機関予算

 (文部科学省所管)


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     ――――◇―――――

萩生田主査 これより予算委員会第四分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりました萩生田光一です。よろしくお願いをいたします。

 本分科会は、文部科学省所管について審査を行うことになっております。

 平成二十六年度一般会計予算、平成二十六年度特別会計予算及び平成二十六年度政府関係機関予算中文部科学省所管について審査を進めます。

 政府から説明を聴取いたします。下村文部科学大臣。

下村国務大臣 平成二十六年度文部科学省関係予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 平成二十六年度予算の編成に当たっては、東日本大震災からの復旧復興対策を初め、教育、科学技術・学術、スポーツ、文化芸術の振興についての施策を総合的に展開するため、文部科学省関係予算の確保に努めてきたところであります。

 文部科学省関係予算は、一般会計五兆三千六百二十七億円、東日本大震災復興特別会計一千四百五十億円、エネルギー対策特別会計一千百五十二億円となっております。

 よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。

 なお、詳細の説明につきましては、お手元に配付しております資料のとおりでありますが、時間の関係もございますので、主査におかれましては、何とぞ会議録に掲載されますよう御配慮をお願い申し上げます。

萩生田主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま文部科学大臣から申し出がありましたとおり、文部科学省所管関係予算の概要につきましては、その詳細は説明を省略し、本日の会議録に掲載したいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

萩生田主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

萩生田主査 以上をもちまして所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

萩生田主査 この際、分科員各位に申し上げます。

 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願いいたします。

 なお、政府当局におかれましては、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮本岳志君。

宮本分科員 日本共産党の宮本岳志です。

 奈良県において、ランドマークというべき若草山にモノレールを設置するという計画が大きな問題となっております。きょうはそれについて質問をいたします。

 奈良公園も若草山も、大変貴重な文化遺産としての価値を持つ日本の宝だと思うんですね。それを維持するために、先人たちもさまざまな努力を行い、政府も格別の配慮を払うように取り組んでまいりました。

 若草山を含む奈良公園は国指定の名勝であり、若草山の奥に広がる春日山原始林は、一九九八年に日本で九件目の世界文化遺産として登録をされました。

 まず、このことを確認したいと思います。文化庁。

河村政府参考人 若草山を含む奈良公園は、明治十三年、一八八〇年に太政官の内務卿、伊藤博文の開設認可によって設置されたものでございます。その後、史跡名勝天然記念物保存法が成立した後、大正十一年、一九二二年に名勝奈良公園として指定されております。

 春日山原始林は、世界文化遺産、古都奈良の文化財の一部として平成十年に登録をされております。

宮本分科員 国指定の名勝であり、世界文化遺産にも登録をされております。同時に、きょうは国交省にも来ていただいておりますが、若草山は古都保存法による特別保存地区でございますね。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 昭和四十一年に制定をされました古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法、いわゆる古都保存法でございますが、この中で、奈良県奈良市につきましては、我が国往時の政治、文化の中心等として歴史上重要な地位を有する古都として定められております。

 また、この法律に基づきまして、御指摘のございました若草山を含む春日山一帯につきましては、春日山歴史的風土特別保存地区として定められているところでございます。

宮本分科員 若草山モノレール計画は、今お話があったように、国の名勝であり歴史的風土特別保存地区にも指定されており、さらに世界遺産春日山原始林に隣接するバッファーゾーン、緩衝地帯という二重、三重の制限がかかる場所、そこにモノレールをつくる、これが許されるかどうかが問われる問題であります。

 文化庁に聞きますけれども、文化財保護法では、名勝あるいは史跡、天然記念物の現状を変更し、またはその保存に影響を及ぼす行為をして、これを滅失、毀損、衰亡させた場合、どのように定めがございますか。

河村政府参考人 文化財保護法の規定では、その第百九十六条第一項において、「史跡名勝天然記念物の現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をして、これを滅失し、き損し、又は衰亡するに至らしめた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は三十万円以下の罰金に処する。」となっております。また、同条第二項において、「前項に規定する者が当該史跡名勝天然記念物の所有者であるときは、二年以下の懲役若しくは禁錮又は二十万円以下の罰金若しくは科料に処する。」というふうに規定いたしております。

宮本分科員 文化財保護法というものは、今答弁のあった、刑事罰まで定めて、名勝や史跡を保存することを求めております。

 では、聞きますけれども、名勝に指定されている場所に後からモノレールなどの移動施設が実際に建設された例が過去にあったかどうか、文化庁、お答えいただけますか。

河村政府参考人 私どもの承知する限りでは、名勝として指定された後に、モノレール、ロープウエー、エスカレーターが設置されたという事案は存じていないところでございます。

宮本分科員 文部科学省の史跡名勝天然記念物指定基準によりますと、「わが国のすぐれた国土美として欠くことのできないものであつて、その自然的なものにおいては、風致景観の優秀なもの」等とされております。安易な現状の変更が許されないことは当然のことだと言わなければなりません。

 では、次に、国土交通省にお聞きしたい。

 古都保存法に基づいて、国において奈良市歴史的風土保存計画というものが定められております。この計画では、歴史的風土の特性に応ずる行為の規制の大綱というものが地区別に定められておりますけれども、春日山地区の大綱では何に重点を置くと定められておりますか。

佐藤政府参考人 奈良市歴史的風土保存計画におきましては、地区別の歴史的風土の特性に応ずる行為の規制の大綱として、春日山地区については以下のように定められております。「本地区の歴史的風土保存の主体は、春日大社、興福寺、東大寺等の歴史的建造物と一体となる奈良公園の自然的環境の保存にあり、背景となる春日山、御蓋山、若草山等の丘陵とその稜線における建築物その他の工作物の新築等、土地形質の変更、木竹の伐採等の規制に重点をおくものとする。また、春日奥山周遊道路沿道の石仏等の歴史的資産と一体となる原始林については、森林美の保存に重点をおくものとする。」このように定められているところでございます。

宮本分科員 若草山等の丘陵とその稜線における建築物その他の工作物の新築等の規制に重点を置く、こう定められているわけですね。

 古都保存法第三条では、「国及び地方公共団体は、古都における歴史的風土が適切に保存されるように、この法律の趣旨の徹底を図り、かつ、この法律の適正な執行に努めなければならない。」と、国と地方自治体にその任務を定めておりまして、このような計画は古都保存法に照らしても許されないということは明瞭だと思います。

 さらに、世界遺産条約との関係です。

 ユネスコ世界遺産センターのキショー・ラオ・センター長は、奈良県の住民団体がモノレール計画の中止勧告を日本政府に出すよう求めたのに対し、住民団体の懸念などを共有すること、世界遺産条約履行のための作業指針百七十四条に基づき住民団体の懸念の内容を確認するため、奈良県と、締約国、日本政府にコメントを求めると一月二十日に回答をいたしました。

 モノレール計画には世界遺産センターも重大な関心を持つに至った、政府はこのことを知っておりますか、また、それをどう受けとめておりますか、文化庁。

河村政府参考人 お答えをいたします。

 ことしの二月十三日付で、ユネスコ世界遺産センター長名で、我が国のユネスコ代表部大使に対して、古都奈良の文化財の保全状況についてといたしまして、若草山におけるモノレール計画について情報提供を求める旨のレターが出されております。このレターを外務省経由で文化庁で最近受け取っております。

 現在、その照会内容に関する事実関係の把握に努めているところでございまして、今後、しかるべくユネスコに対して回答を行ってまいりたいと存じます。

宮本分科員 ユネスコの諮問機関であるイコモスの日本での拠点である日本イコモス国内委員会、この組織が、ことし一月、委員長声明を出して、この計画について強い懸念を表明しております。

 声明では、文化遺産を破壊するに等しい、こういたしまして、この計画が進めば、危機遺産に登録されてしまうおそれもありますと述べております。危機遺産とは、世界遺産のうち深刻な危機にさらされ、緊急の救済措置が必要とされる物件を示すわけですね。

 今回の奈良県による若草山のモノレール設置計画というのは、バッファーゾーン、緩衝地帯に設置するという計画が既に公表されております。

 そこで、世界遺産条約との関係を聞くんですが、世界遺産条約履行のための作業指針、ガイドライン百三条は、このバッファーゾーン、緩衝地帯についてどのように定めてありますか、文化庁。

河村政府参考人 御質問の緩衝地帯、バッファーゾーンでございますが、世界遺産条約履行のための作業指針では、資産を適切に保存するために必要な場合は、緩衝地帯、バッファーゾーンを設定することと規定されています。

宮本分科員 同じくガイドラインの百四条には、緩衝地帯は、推薦資産の効果的な保護を目的とすると明記されております。ここにモノレールが建設されれば、資産が効果的に保護されないことになるのは明らかだと言わなければなりません。

 この計画は、実は二月十九日に奈良市議会でも取り上げられ、市の文化財課長が、国際イコモスは、世界遺産条約の履行に関する助言や遺産の保全状況を監視するなどの役割を果たすユネスコ世界遺産委員会の諮問機関の一つでありますから、その日本国内の委員会による当該の懸念表明は重く受けとめるべきものであると考えている、示された懸念が現実のものとなり、危機遺産登録、さらには登録抹消などといった事態にならぬよう、慎重な対応が必要であろうと考えると答弁をしております。

 そこで、国交省にお伺いするんですが、先ほどの古都保存法第八条の「特別保存地区内における行為の制限」、つまり、このモノレール建設を含めて行為をさまざまに制限する規定ですけれども、ここで知事の許可という形で書かれているものは、今、奈良市長に委任をされていると思うんです。モノレールの建設計画の許可権限は奈良市長にある、間違いないですね。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 歴史的風土特別保存地区におけます工作物の新築等につきましては、古都保存法第八条第一項に基づきまして府県知事の許可を受ける必要があるわけでございますが、奈良県内の古都におきましては、奈良県事務処理の特例に関する条例によりまして、当該許可事務は市町村が処理することとされておりまして、御質問の若草山における行為の許可については奈良市が行うこととなっております。

宮本分科員 奈良市長が許可しなければ進められない、そして、奈良市は慎重な対応を約束しているわけです。国内法との関係でも、世界遺産条約との関係でも、何重にも非常な慎重さが求められる場所にモノレールをつくろうというこの無謀な計画に、今、さまざまな立場の人たちから厳しい懸念と批判の声が上がっております。

 奈良新聞は、昨年十月十日付の記事で、利便重視は時代に逆行する考えだ、第一に観光客ががっかりしよう、千古の神域に隣接する場所で遊園地まがいの乗り物は不要だと報道をいたしました。

 県が設置した奈良公園地区整備検討委員会の場でも、委員から、モノレールそのものが景観を壊す主体になっているのではないかという意見が出されております。

 著名な脚本家の小山内美江子さんも、若草山にモノレールは似合いません、外国からの観光客もびっくりするでしょう、わざわざお金をかけて他県からの笑い物にならないでくださいとのメッセージを寄せられました。

 文化庁、これは余りにもこの計画は問題が大きいんじゃないですか。

河村政府参考人 個々の御指摘についてお答えできるものではございませんけれども、名勝奈良公園へのモノレールの設置については、景観への負の影響というものが生じることがないように、奈良県に対しては、慎重に検討、対応すべきであるということをお伝えしております。

宮本分科員 ここで、ちょっと大臣に事前にお渡ししているものについて御感想を聞きたいんです。

 小説家の志賀直哉が、昭和十三年に、奈良を去るに当たって書き残した「置土産」と題する一文に次のようなくだりがあるんです。

 東京の日比谷公園、上野公園、浅草公園、大阪の天王寺公園、中之島公園、皆公園にちがひないが、奈良公園を同じ公園の呼名で云ふのは少し間違つてゐるやうな気がして来た。或る広ささへあれば何所にでも作れる公園と奈良のやうな千何百年の歴史を持ち、更にそれ以前からの原始林をひかへてゐる自然の庭のやうな公園は一緒にならない。

 色々な施設は一たん作つて了ふと、今度それを撤廃しようと思つても却々撤廃出来ないものだ。

 新しく何か作る時はかういふ悔いを残さぬやう余程考へて貰ひたい。悪かつたら去ればいいと云ふ風には行かぬものだ。

こう述べておりました。

 このときは道路建設の計画のようでありますけれども、これはまさに大臣、この指摘はそのとおりだと思われませんか。

下村国務大臣 志賀直哉は、昭和の初期に奈良市内に居を構え、そこから美しい若草山の姿を見たとのことであります。

 御質問の文章には、奈良をこよなく愛した志賀直哉が奈良公園に対して抱いていた思いがあらわれておりまして、文化財を大切にしたいという気持ちは共感するものがあります。

宮本分科員 まさに共感するという御答弁もいただきました。

 奈良県は、モノレール建設計画に当たり、環境影響調査の中間報告で、若草山にモノレールを設置しても、環境や景観などの面ではほとんど影響がないとしております。中でも景観については、「主要な眺望点から、施設は視認できないと予測されます。」との報告書を出しました。

 そこで、これも大臣に事前にお渡しをしている地図と写真を見ていただきたいんですね。

 奈良県の市民団体が、モノレールの山頂駅建設予定地点に、駅舎と見立てた目印を立てて、実際に市内各地からどれぐらい見えるかを、見えないというのは本当かどうかを検証したわけです。

 この写真二の、駅舎に見立てた横断幕、これを資料一の地図でAと記号が打たれた若草山の駅舎建設予定地に掲げました。これが市内各地からどう見えるかということを、見えるか見えないかということをみんなで調べて地図に落としたのが、この資料一の地図であります。赤い点が、よく見えたという地点、青い点が、何とか見えたというものであります。例えばB地点、Bと記号が打たれた地点では、資料三の写真のように、そしてCと打たれた地点では、資料四の写真のように、四の方は小さいですが、確かに見えております。写真に撮ると小さくなってしまうんですが、確かに見えている。大臣もごらんになれますね。

下村国務大臣 今お示しいただいた写真だけでは、奈良公園の景観にどの程度の影響があるかどうかを判断することは、ちょっと難しいかなというふうに思います。

 若草山は、文化財保護法に基づいて指定された名勝奈良公園の指定地区内でありまして、今回のモノレールのような施設を設置する場合は、文化財保護法第百二十五条に基づいて、文化庁長官の許可が必要となる場所でございます。

 奈良県から文化庁に対しては、本計画の実施についての具体的な相談は受けておりませんが、もし相談があれば、名勝としての風致景観上の価値に影響を与えることがないよう対応することが必要と考えます。

宮本分科員 当然慎重な対応が求められるわけですが、これは実は長い歴史のある問題でもあるんですね、大臣。

 ここに、奈良県が発行した名勝奈良公園保存管理・活用計画というものがございます。この保存管理・活用計画の資料の七十二ページには、若草山について、「大正から昭和期にかけての奈良公園整備の充実とともに、若草山に登頂、これを眺望台として「ふるさと奈良」の風光を賞せしめるという観光開発が計画され、ケーブルカーの運行やエスカレーターの設置等の検討がなされた」と。

 調べてみると、何度もそういうことが検討されているんですが、これも文化庁に確認しますが、このような計画は、その後、どのような結末に至りましたか。

河村政府参考人 奈良県が作成をしております名勝奈良公園保存管理・活用計画の中に、お話のありました、大正期から昭和期にかけての状況が述べられておりますけれども、それによりますと、「ケーブルカーの運行やエスカレーターの設置等の検討がなされたが、風致破壊や自然保護への影響、また資金調達等の理由により実現には至らなかった。」となっております。

宮本分科員 ことごとく実現には至らなかったんですね。

 大正十一年に、若草山に登山鉄道を敷設する申請が出されております。それも、きょうは歴史的な文書を少し調べてまいりました。

 この大正十一年の申請については、大正十四年十二月十五日付で、当時の鉄道大臣が、鉄道敷設の件聞き届けがたし、こういう却下を申し渡しております。さらに、昭和二年、ここでも再び奈良県知事から、遊覧登山用鋼索鉄道、つまり、これはケーブルカーのことでありますけれども、これの申請が出されたのに対して、国は、当時の内務大臣官房地理課長名で答えておりまして、右は名勝保存上適当ならず同意いたしがたく候と却下をいたしております。

 このように、文化財保護の法整備や、景観や環境保護、そういう観点がまだまだ不十分だった戦前ですら、これは名勝保存上適当ならずと却下してきたというのが歴史なんですね。

 現行文化財保護法の第百二十一条では、「管理が適当でないため史跡名勝天然記念物が滅失し、き損し、衰亡し、又は盗み取られるおそれがあると認めるときは、文化庁長官は、管理団体、所有者又は管理責任者に対し、管理方法の改善、保存施設の設置その他管理に関し必要な措置を命じ、又は勧告することができる。」と定められております。

 文化庁、こういう観点に立って、奈良県が進めている若草山におけるモノレール設置計画に対して、文化庁としてやはり厳しく指導すべきだと私は考えますけれども、文化庁の御答弁をいただきたいと思います。

河村政府参考人 お話に出ておりますように、若草山は名勝奈良公園の指定地内でございますので、名勝としての価値が保存される必要があると存じます。

 奈良県から具体的な内容をお聞きしながら、慎重に検討し、名勝の保存に支障がないように適切な対応に心がけてまいりたいと存じます。

宮本分科員 順調な答弁をいただきましたので、少し早目に終わりそうでありますけれども。

 奈良県が進めている若草山モノレールの計画は、どこから見ても無謀な計画だと私は思います。名勝奈良公園の若草山でこんな計画を許せば、全国の文化財の破壊が進みかねない、国の文化財保護行政の権威が失墜する事態にもなりかねない。政府は、世界遺産センターからも対応を求められているわけですから、これは受け身でなく、名勝、天然記念物、世界遺産保護のために手だてを尽くして、若草山のモノレール計画をぜひともやめさせるために役割を発揮していただきたいというふうに思っております。

 最後に、きょうのこの論戦をお聞きになっての文部科学大臣の御所見をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。

下村国務大臣 この件は今初めてお聞きしたことでありまして、また、奈良県からも相談がないということでありますので、先ほどの河村次長の答弁のように対応するのが適切であるというふうに思います。

宮本分科員 ぜひともよろしくお願いいたします。

 以上で質問を終わります。

萩生田主査 これにて宮本岳志君の質疑は終了いたしました。

 次に、田沼隆志君。

田沼分科員 日本維新の会の田沼隆志です。

 大臣、きょう一日、本当にお疲れさまでございます。二十一人ですか、八時半まで、本当に御苦労さまだと思いますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。

 私は、ふだん、常任委員会は財務金融委員会に所属をしておりますけれども、ただ、もともと、昨年も文部科学委員会に所属させていただいて、私自身が政治の世界に入ったのは、自虐史観から脱却したい、そのためにも硬直化した教育委員会制度を何としても直したいという思いでございますので、きょうもそれ一本で、昨年も教育委員会改革ばかりを大臣にしつこく食い下がって本当に恐縮であったんですけれども、今ちょうど佳境でございますので、また御意見、御議論させていただきたいと思います。

 お手元に、自民党さんの中での教育委員会制度改革に関する小委員会資料ということで、大臣も皆さんも既にごらんいただいていると思うんですけれども、これはまだ出ていないとはいえ、先日来の大臣の御答弁でもあるように、これをたたき台として、与党、政府一体となっての政府案をつくっていくということですので、これはいろいろちょっと懸念があるものですから、現行の制度の問題点を引き合いにしながら、これはC案と言われていますけれども、C案が現行制度の問題点を解決できるものになっているのかどうかということをぜひ議論させていただきたいと思っております。

 私の個人的な感想は、現行とそんなに変わらないように見えてしようがないんです、正直なところ。C案だと、私も市会議員もしておりましたので、大臣も地方議員の御経験があると思うんですが、大きな改革になり得るか、非常に疑問なところもありまして、先日、中田宏議員が二月十七日の予算委員会のときにも大臣にちょっと御説明をしていた中でも、二月七日の産経新聞でのコメント、このC案というのだと、下村大臣のメンツは立てられるが実質的に現行制度と変わらないという、文部科学省の幹部の方のちょっと失礼なオフレココメントがあったということです。

 ただ、私も少しわかるところがあって、実質的にどこまで現行制度から変わっていけるのかが、余り大きな変化にならないんじゃないかという懸念もあります。ただ一方で、まだ未確定なものでもあろうと思いますので、非常に細部の部分で勝負になってくる。

 私がもともと所属していました日本教育再生機構でも、高崎経済大の八木秀次先生も細部が重要であるというふうに言っておりましたし、私もそう思うものですから、ちょっと幾つか議論させていただきたいと思います。

 まず、左上にある総合教育施策会議なんですけれども、主宰は首長で、その下にあります教育に関する大綱的方針、(教育振興基本計画等)ということで、大綱を策定するということなんですけれども、これは、主宰は首長で、構成メンバーに、首長、議会代表、教育長、教育委員、有識者等で構成ということなんです。

 まず、この総合会議の主宰は首長ですけれども、責任者が誰なのかというのが心配でありまして、現行の制度も、もともと今の現行教育委員会制度を改革しようといった動きが出てきている一つの原点は、やはり合議制であって責任の所在がはっきりしない今の教育委員会、この合議制であることに一つの問題点があろうということもあったと思います。

 だからこそ、このC案でも、教育委員会の中では、「新ポスト」とありますけれども、委員長プラス教育長の方が責任者と明確化されたわけで、今までは教育委員長もいて教育長もいたけれども、それが合体ですか、新ポストとなって、教育委員会(執行機関)の中は明確化したわけですけれども、この上の、上かわかりませんが、この総合会議がまたできるのならば、当然、この会議も、責任の明確化をしないとまた同じ問題が起きてしまうと思うんです。

 なので、大臣の見解として、この総合会議の最終的な責任者が誰になるのか。先に言ってしまうと、私はやはり主宰である首長が責任者もやるべきであると思うんですけれども、御見解をお聞きできればと思います。

下村国務大臣 まず、これは与党案、自民党案なんですね。これをもとに今与党で議論をしていただくということですから、私は、本来、これについては、今、説明する時期では率直に言ってないというふうに思います。

 これは、もし、例えば中教審の内容とか、これまで教育再生実行会議で議論された内容であれば私の方から詳細に説明をいたしますが、あくまでも今進行中のものでございまして、この教育委員会の抜本改革案は、今までの経緯は御承知かと思いますが、自民党が野党のときから、やはりこれは問題だと、今の教育委員会制度のあり方について。それについて抜本改革案を提言いたしました。これは、自民党の中にある教育再生実行本部というところで、私が当時本部長をしておりました。政権奪還をして、早速、政府の中に教育再生実行会議をつくり、この中でこの教育委員会制度改革案については提言をしていただき、それを受けて中教審に私が諮問をし、そして昨年の暮れに答申を受けた。

 本来であれば、これは閣法として今国会に出したい法案でございますから、そのまま出しても別に閣法としては問題なかったんですが、ただ、これはいろいろな意見がありますので、与党の中できちっと議論していただいて、政府・与党が一体となってこの教育委員会抜本改革案を今国会でぜひ提出したいという経緯から、与党の中で御議論をしていただくということでスタートしていただきました。

 その中で、今委員がお示しの教育委員会制度の改革案は、自民党の教育委員会制度改革小委員会で提案をされ、そして、先日、自民党の文部科学部会で了承され、これに基づいて、今、与党協議が行われている最中でございます。

 この与党協議の結論が出れば、その結論にのっとって私も答弁できますが、今委員の御指摘にもありましたが、総合教育施策会議をどう位置づけるか、その中で、教育委員会も執行機関でありますが、そのまま存続するかどうかということについては、今議論している最中でございますので、明確な結論がまだ出ておりません。ですから、産経新聞の例も出されましたが、一方で、他紙は全然違う見解を記事の中で書いているところもある。だから、それだけまだ決まっていないことなんですね。ということなので、ちょっとこの詳細については、私は、現段階でコメントする、答弁する状況ではないということを御理解いただきたいと思います。

 基本的に、この自民党の案では、首長が、現行の教育長と教育委員長を一本化した新たな責任者、新教育長、これを直接任命、罷免する、それから、総合教育施策会議において、首長のリーダーシップのもとに教育行政の大綱的な方針を策定するという大枠は、これはもう変更はないと思います。ただし、教科書の採択や教員人事などの事柄については特に政治的中立性が求められるということから、自民党の案では、教育委員会が執行機関としてこれらを取り扱うというふうに位置づけているのではないかというふうに私は理解をしております。

 この案は、政治的中立性、それから継続性、安定性を確保しながら、教育長と委員長を一本化することにより教育行政の責任の明確化を図るということ、それから、民意をより一層反映するために、首長が教育行政に積極的に関与できる仕組みを設けるものである、基本的にはそういう設定であるということで、その方向性は共有できることであるというふうに思います。

 あとは、今後の与党協議の中で総合教育施策会議の位置づけを明確化する、そのことによって、結果的に新たな教育委員会がどの分野における執行機関として位置づけられるか、その議論によって決定されるのではないかと思いますし、それについては見守って、結論が出たら、またそれについて議論をしていただければと思っております。

田沼分科員 結論が出たらちょっと遅いかなと思うんですね、変な言い方ですけれども。大臣も、よくわかります、おっしゃるとおりと思います。ただ、もともと大臣は、本当はA案だったと思うんですよ。A案がいいというふうに御答弁もされておった。それは今は聞きません、いろいろお立場もあるとも思いますけれども。やはり、私も本当に議員になる前から尊敬申し上げる大臣ですので、この首長の関与、権限の強化ということも思われていると思うんです。A案はそういう案でありました。

 ただ一方で、おっしゃるとおり、与党協議が、今週とか聞きますけれども、まだ決まっていないということで、見守りたいというのもよくわかるんですが、ぜひ、うちの党の中田議員も言っていましたけれども、口を挟んでいただきたいな、あるいはチェックをしていただきたい。私の心からの思いです。やはり大臣は本当に尊敬する先輩、同志でありますので、ぜひ、この大事な戦後の教育行政を抜本的に変える改革、そこで骨抜きになってしまってはもう死んでも死に切れないという思いがどうしてもあって、御発言、御答弁いただける範囲は限られると思います、まだ出てもいませんので。ただ、ぜひ、現行制度の問題点を解決できるのか、現行制度の問題点は何なのかというところとつなげて議論したいと思っているんです。

 私がお尋ねしたのは、教育委員会、今の新ポストのあるこの大きな箱ですね、絵の方だと真ん中の執行機関、ここは責任を明確化したけれども、左上の総合会議というのは、責任が明確になっているかちょっとわからない。こういったものがやはり教育行政の中にあってしまってはならないのではないかという見解でありお尋ねだったんですが、これに関しては御答弁は結構ですけれども、私はやはり、もし、総合会議が与党案としてまとまり、それをたたき台に政府案として出てくるならば、そのときには、誰が責任者なのか。主宰は首長というのはわかりました。よろしいと思います。ですが、そもそもの教育委員会制度改革の議論の原点であった責任明確化ということを果たすためには、この会議の方も、教育委員会の方だけじゃなく会議の方も、しなければいけないと思っているということを御理解いただければと思うんです。

 あともう一つ、これもお答えいただければお答えいただきたいんですけれども、ちょっとよくわからないのが、今もそうですけれども、教育委員会は執行機関、この絵の方でも執行機関となっておりますが、教育方針を決めるのが総合会議となっていて、大綱というものを定めるとなっているんですけれども、そうすると、現行の教育委員会制度でも、首長に予算権などを付与する、首長には予算権がある、だけれども、執行は教育委員会がやっているわけですね。この首長と教育委員会との権限の分散、責任の分散ということが今問題だと思うんです。これが変わらないように見えるんですね。やはり、執行機関である教育委員会さんが教育行政を実行する。ただ、総合会議の方で予算関連のことを扱うところなのかはわかりませんけれども。

 どちらにせよ、上の、上位的な位置づけになるようにお見受けする、教育方針、大綱というものを定めるのは教育会議であるということですね。これはどちらが上位になるのか。責任者がまた分散したままになってしまうんじゃないか、現行制度の問題点が余り解決できないんじゃないかというふうに感じるわけですけれども、大臣、現行制度の問題点と絡めてでも結構ですが、何か御見解があればお聞かせいただければと思います。

下村国務大臣 まず、御理解されていて質問されているんだと思いますが、仕組みについては、我が国は議院内閣制ですから、当然、閣法であっても事前に与党審査は必要なわけです。自民党であれば総務会の了解、与党が了解して、そして閣法を法案として出すということであります。

 先ほど申し上げましたように、中教審の答申に沿って与党の中で議論をしていただくということをお願いしているわけですから、途中で私が介入するとかチェックするとか、そもそもそういう仕組みではないということであります。

 それから、与党に任せたら骨抜きになるかならないかは、それは田沼委員のお考えであって、それは信頼関係の中でやっているわけですし、当然、先ほどから申し上げていますが、自民党においても、野党のときから、教育委員会制度については現行制度は問題がある、そういう認識から、抜本改革をすべきだということで今日に至っているわけですから、議論した結果、現行の教育委員会制度とほとんど変わらないということであれば、何のための法改正かということが当然問われるわけで、もちろんそういうスタンスではないというのは、これは与党の担当者の方々も十分認識している中での議論になっているということは、当然のことだというふうに思います。

 それから、先ほど申し上げましたように、この資料でお示しされている教育委員会制度の改革案は、繰り返すようですけれども、これはあくまでも、与党の案、自民党の案を今、自公で議論をされているということですから、私は、詳細については、よくも悪くも、私の思い込みもあるかもしれませんし、また、今後の議論によっていろいろと変わってくる可能性があるというふうに思いますから、現在において詳しく述べる立場でないというふうに思います。

 これが与党の中で了承されたときに、実際に法律案をつくるのは文部科学省の方の役割ですから、総合教育施策会議をどう法律上位置づけるか、それから、新たな教育委員会を執行機関として、既存と違う教育委員会として法律上どう位置づけるか、このことによって、国会に提出をし、そのときに初めて、国会の中できょうのような議論をしていただきながら、その中で、日本維新の会等、他の野党等は、より望ましい案がもしあるとしたら修正案として出されることは国会の中ではあることだと思いますが、政府としては、与党と一体となって、あるべき教育委員会の抜本的な改革案についてベストな案を出したい、そういう準備をしていきたいと思っておりますので、きょうは、田沼委員からいろいろな御意見があればそれもよくお聞きしながら、最終的に教育委員会制度のベスト改革案について法案としてまとめて国会に出したいと思っておりますが、繰り返すようですが、この中身について私が述べる立場ではないということについては御理解いただきたいと思います。

田沼分科員 よくわかっています。その範囲で結構です。

 それで、私が二点申し上げたのは、会議の方、もし会議が出てくるならですけれども、誰が責任者となるのかがはっきりするべきである。それから、教育委員会、執行機関と総合教育施策会議との関係、上下関係といったものが、はっきり役割分担が明確になる必要がある、これも大臣以前答えられていますけれども。こういった細部が非常に重要な議論であると思っていますので、私の見解も含めながら、それが維新の中での賛否とか議論にもかかってくると思いますので、御提案させていただいています。

 その意味で、これは御答弁は結構なんですが、もう一点気になるのが、これも教育委員会の方の議論はあったんですが、総合会議の方でも、構成メンバーが首長、議会代表、教育長、教育委員、有識者と書いてあるんですけれども、これは誰だ、よくわからないなというところがあります。特に気になるのが有識者でありまして、なぜここで有識者が来るのかがちょっと理解しかねると思っております。

 今の教育委員会の中ですと、一応、もともとはレーマンコントロールということで、レーマン、素人、もともと教職でない方々が任命されるという中で、識見があって人格高潔な方というふうに地教行法でも書いていると思いますけれども、今回また、総合会議、これがどういった役割分担、権限になるのか、まだという状況の中ではありますが、構成員がどういった人になるのかというのもポイントだと思っております。これは個人の見解でございます。

 それから、これは御答弁いただきたいのが、教育振興基本計画であります。

 この教育振興基本計画、この絵だと大綱の下に括弧になっていますが、これは現行も存在するものであり、また、私、昨年来、大臣とのこういった質疑の中でもたびたび引用させていただいて、大臣からも踏み込んだ御答弁もいろいろいただいておるものですけれども、この括弧がちょっと気になっていまして、これは自民党の案だからわからないということなら結構なんですが、やはり教育振興基本計画は非常に重要なものであるべきだと考えております。

 当然、やはり改正教育基本法、第一次安倍内閣で誕生させた教育基本法の理念、特に第二条の部分ですね、教育の目標の部分、道徳心、公共心、愛国心、そういったものをきちんと養う、画期的な目標ができたわけです。

 ちょっと確認させていただきたいんですが、昨年の議論でも、この教育振興基本計画、これは必置義務でないというのもありますが、教育基本法の理念に、目標にのっとっていないものを見受ける。下部法令であるわけですから、教育基本法の理念、特に第二条の目標の部分、こういった部分をきちんと踏まえた教育振興基本計画にしなければいけないはずであるということで、私は御質問をさせていただきました。大臣も、そういったものはきちんと徹底するべきである、もっと数値目標も必要であろうというふうな御見解もいただいておったと思います。

 ここに括弧で出てきた、今回のC案の中での教育振興基本計画も、当然、教育基本法第二条の目標に沿ったものである、そうでなければならない、それをきちんと徹底していくということが必要だと思うんですけれども、大臣、御見解をお尋ねできればと思います。

下村国務大臣 それはおっしゃるとおりでありまして、新しい教育基本法が制定されまして、そして、この教育振興基本計画を立てるということが明示されたわけでございます。地方自治体は努力義務ということで、今、四十七都道府県では四十六都道府県がつくられている。しかし、市町村ではまだ六〇%行っていない状況がございます。

 国では、文部科学省が第二次教育振興基本計画をつくっておりますが、しかし、私は、文部科学省がつくっている教育振興基本計画も、先ほど申し上げたように、新しい教育基本法にのっとった理念の中でつくってはいますが、数値目標が入っていないんですね。これは私は、率直に言って十分でないと思っています。五カ年計画の中で具体的に教育振興基本計画を立てるのであれば、五年後にどの程度達成したかどうかということは、やはり数値が明確でなければこれはわかりません。そのことによって責任を持つ。

 実際に地方自治体の教育振興基本計画も幾つか見ましたが、これも、例えば五カ年計画とかがあっても、数値目標が入っていないために、一般市民や、あるいは国民から見て、どれぐらい達成されたのかどうかという客観的な物差しが判断しにくいという部分があるわけですね。

 私は、国の教育振興基本計画においても、やはり今後、数値目標をより明確にする中で、どの程度達成されたかどうかがわかるようなことでなかったら、ただの絵に描いた餅に近いようなことになりかねないのではないかと思いますので、今後はもっと数字に対して責任を持つべきだというふうに思っております。

 しかし、とにかく、教育振興基本計画をつくることによって、方向性ですね、そこの自治体がこれからどのような教育についての振興を図るかを明確にするということは、ぜひ地方自治体においてもしていただきたいというふうに思います。

田沼分科員 全く同意見です。

 あと、私は、第二条をぜひ遵守してもらいたい。これも同じ思いと思うので、御答弁はいただきませんけれども、本当に私は、改正教育基本法をきちんと国内で徹底していければ日本は復活できると思っていますので、ぜひ御検討をお願いします。

 今の、数値目標でしっかり達成できたかどうかを見るということも大変によろしいことと思います。維新の会も、そういった責任のはっきりした統治機構ということも言っておりますし、大臣の取り組みをぜひ応援したいと思うんです。

 ちょっとそれに関連すると、この絵の、C案の中で「任命・罷免」というふうに、新ポストあるいは教育委員に対して任命と罷免があると思うんです。この罷免が重要と思っていまして、これも昨年、大臣と議論させていただいたんですが、神は細部に宿るの二点目が、一点目は総合会議の中身でした、二点目がこの罷免規定だと思っていまして、達成できたかどうかをはっきり見えるようにしたいと、先ほどの大臣の言葉をつなげるならば、この教育振興基本計画を示達する責任があるのは、当然、新ポストにある人として、教育委員会全体なのだろう。要は、執行機関が当然執行するわけですから、教育振興基本計画を達成する責任があると思います。逆に、それができないならば、罷免はわかりませんけれども、あるいは評価が少し下がるとか、減給まではいかないかもしれませんけれども、何かしらの未達成の責任も出てくる。罷免まではいかなくても、教育振興基本計画と評価の仕組みというのはリンクしなければいけないと私は感じているんです。それがもう一つの、二つ目の細部でございます。

 大臣にもその見解をお聞きしたいんですけれども、ただ、この振興基本計画、必置義務でないという現状があるので、必置にしないと評価ができないし、今の私の論理でいえば、罷免をするかどうかというのも、当然、客観的な物差しで見なければいけない。振興計画がなければいけないんじゃないかと思うんですけれども、そういったことも含めて、振興計画がぜひなければならないんじゃないか、それは罷免や評価につながっていくべきものではないかということを思うんですが、大臣の御見解をお聞きできれば。

下村国務大臣 まず、教育基本法の第二条の件ですが、それはおっしゃるとおりだと思います。これは、教育振興基本計画の中で盛るということではなくて、教育基本法というのは教育における憲法みたいなものですから、これはあらゆる教育関係における下部法に関係する部分でもあります。

 その部分で、例えば、昨年暮れ、教科書検定改革プランというのを発表いたしました。これはまさに、新しい教育基本法にのっとった、つまり第二条にのっとった教科書記述であるべきだということがこの中に入っているわけで、この二条というのは、必ずしも教育振興基本計画だけの問題ではなくて、もっと全てに関係するものだということですね。

 それから、この教育振興基本計画は、先ほど申し上げましたように、五カ年計画とか、そういうタイムスケジュールの中でつくられております。

 今回の新ポストである教育長、これは教育委員長と教育長が一緒になったポストですが、この任期二年ということについては、これは今与党の中でも議論されているということですので、ほかの委員は四年ですから、なぜここだけが二年なのかということは今議論されているということです。

 この二年というのは、教育振興基本計画がどの程度達成されているかどうかということで、連動というよりは、首長の教育行政に対する権限を持った政策が新教育長のもとでどの程度達成されたかどうかというトータル的な中で、それが首長の教育の考え方、教育政策と重なっていなければ二年でやめてもらうこともあり得る、そういう意味での罷免要件ということですので、教育振興基本計画というよりは、もっとトータル的な、首長と新教育長との、教育政策や教育行政における、方針における基本的な考え方が履行されるかどうかによる担保として任期二年ということで、されれば留任、そういう位置づけで考えられているのではないかというふうに私は推測しております。

田沼分科員 確かにおっしゃるとおりですね。ちょっと私も見解を改めたい。ただ、振興計画も非常に参考にはなると思いますので、そういった位置づけに。

 時間となってしまいましたので、二点目が罷免規定の問題である。一点目が総合会議である。それから、三点目、ちょっと議論できませんでしたけれども、任期ですね。まさに今言われた、二年でいくのか。それからタイミングですね。首長の……

萩生田主査 田沼君、時間が過ぎておりますので、簡潔に。

田沼分科員 はい。

 この任期が一緒になるかどうかというのが非常にポイントだと思っています。その三点をぜひ注目していきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 よい法案が出てくることを期待して、終わりたいと思います。ありがとうございます。

萩生田主査 これにて田沼隆志君の質疑は終了いたしました。

 次に、細野豪志君。

細野分科員 おはようございます。

 きょうは終日の審議ということで、お疲れさまでございます。

 下村大臣とは文部科学委員会の方で何度か議論させていただきましたので、その継続のテーマについて幾つか質問させていただきたいと思います。

 まず、二点、大臣にお礼を申し上げたいと思います。

 大臣は記憶されているかどうか、ちょっと定かじゃありませんけれども、私、一番初めの質問で、低体重児の問題について、小学校に入る年齢を少し融通していただけないだろうか、柔軟にやっていただけないだろうかということで質問させていただきました。

 早速、年末に事務方の方が説明に来られまして、低体重児の場合には、一年生の年齢に達してもまだそれだけの成熟した状況にない、そういう場合については柔軟に対応するようにということで既にしっかりと通達を出していただいたということですので、心より感謝申し上げたいと思います。これで精神的にもかなり、親御さんも含めて、いろいろな余裕を持ちながら子供を育てることができる、教育を受けさせることができる余裕ができたのではないかと思いますので、早速対応していただいたことに非常に感謝申し上げたいと思います。

 もう一点感謝申し上げたいのは、児童養護施設への見学に行っていただいたということです。福島市内の青葉学園に行っていただいて、そのときの感想なども会見でも言っておられますので、早速御対応いただいてありがとうございます。

 その中で、会見で大臣は、児童養護施設は文科省の所管ではありませんが、非常に学習意欲がなく、持ちにくいという御趣旨だと思います、その後の進学等についても大変なハンディキャップを負っているということを言われていまして、私も全く問題意識としては共有しておるんですが、実際に児童養護施設に行かれて、そのあたりで、できれば一歩踏み出していろいろな政策を考えていただきたいというふうに思うんですが、ちょっとそのあたりについてさらに具体的にお考えになっていることがあれば、ぜひお伺いしたいと思います。

下村国務大臣 私の地元の板橋、自宅のすぐ近くに児童養護施設ができるということについて私もかかわった経緯もありましたし、また、細野委員から文部科学委員会で児童養護施設についての質問を何度もいただいたということもありまして、被災地福島において、ハンディキャップを負っている子供たちがどのような境遇で今生活をしているのかという中、特別養護学校とか、あるいは被災した子供たちを受け入れている浪江小学校とか、一環として、御指摘のように、昨年十二月に福島市にある児童養護施設青葉学園を視察し、子供たちの学習や生活の様子を拝見するとともに、施設職員の方々と意見交換を行ってまいりました。

 この中で、これはじっくり細野委員ともお話ししたいというふうに思ったことは、学習意欲だけでなく、生きる意欲ですね、これをすごく深刻な問題として私は捉えたんですね。

 それは、施設の職員の方々と懇談している中で、十八歳になったら施設を出なきゃいけない、その後、音信不通になってしまう子供も何人かいる。相当追っかけてフォローアップをしたり、場合によっては施設の職員がそこに行って、何日か生活をしながら生活改善をしたりするようにしているけれども、それでも音信不通になってしまっている子もいる、ホームレスになってしまっていないのか心配だという話を言われていました。

 私、地元で夜、散歩をすることがあるんですね。そのときに、三十代ぐらいの結構若い人たちが何人か、まさにホームレスのようにじっと公園にいることがあります。これは既存のいわゆる新宿公園とか浅草のホームレスと違って、聞いたことはありませんが、もしかしたら、そういう児童養護施設にいたような人が、家族とのきずなはもちろんありませんけれども、それ以上に、心の傷を負っていて人との接点をもう持ち得ない、生活困窮者というよりは、もう人との接点を避けて、恐れて、ある意味では病的な精神状態になってしまって、そういうところでいざるを得ないのではないかという思いを持っております。

 そういう意味で、児童養護施設というのは、学習支援も当然必要ですけれども、それ以前に、人が人としてどう生きるかという基本的な、人間関係、愛情ですけれども、そういう部分から考えないと、全国で三万人近くが施設に預けられる、そういう中で、これは大きな我が国のテーマとして考えていかなければならないのではないか、そんなことを感じました。

細野分科員 私も同じことを感じていまして、児童養護施設に入る子供の場合は、今は圧倒的に虐待が多いですから、本当に幼児期に親から否定をされるということになると、やはり人間不信、社会不信、ひいては何のために生まれてきたのかみたいなことを考えることも多いわけですよね。そういう子供を育てて、学校にやって、社会で自立できるようにするというのは、かなりこれはしっかりと対応する必要があるんだけれども、なかなかそれができていないという現状にあるような気がします。

 幾つか私も施設へ伺ってじっくり話を聞いたんですけれども、施設の方々もなかなか苦しい選択をしているのは、十八でほっぽり出すわけにいかないので、二十までは今は融通をきかせてもらえるということですけれども、その先も含めて、もう制度のぎりぎりのところ、例えばその敷地の中にちょっと宿舎みたいなものをつくって、とりあえずそこから通わせるような形で、お金は何とか援助しているとか、その手の話も聞くわけですね。人によっては、支援者の方で、児童養護施設を出た子供の学費を出そうということで個人を支援している人もいる。ちょっとそこはもう限界が来ているかなという気もするんですね。

 さらに、もう一つちょっと気の毒だなと思ったのは、私学の場合には全てケアするということはなかなか難しいので、国公立に限定をされる。国公立に限定されるケースも、下宿ができないので、下宿代は誰も出してくれませんから、そうなってくると、その施設の周りの、何とかみんなで面倒を見れる範囲のところに住んで通える国公立に限定される。

 そうなってくると、地方になると一つとか二つなんですね。たまたまそこに入る学力なり専門分野ができる子は入れるけれども、それ以外の子は、大学進学を考える、選択肢になかなか入ってこない。これが施設の現状だと思います。

 先日も、横浜市が新しい制度をつくったということを申し上げましたけれども、ちょっと聞いてみました。月三万円支給をする制度を導入していまして、これは結構大きいですよ。そんなぜいたくなところには住めませんけれども、三万円あれば、一応住宅は確保できる、ぎりぎり確保できる、もしくはそれのかなりの部分をカバーできるということになりますので、それで学費が無料、もしくは安くなれば、かなり可能性が出てくるんですね。

 私は、そろそろ国全体でもこういうことを考えていい時期に来ているんじゃないかと。つまり、十八で終わりということではなくて、教育の分野についても何らかのサポートを考えるべき時期に来ているのではないかと思いますが、大臣いかがでしょうか。

下村国務大臣 今、大学進学率は、児童養護施設児が一一%ということでして、本当に低いわけですね。

 それから、先ほどちょっと触れられませんでしたが、先日、茨城県の高萩市の市長が来られまして、その市長さんは、御存じですか、(細野分科員「はい、知っています」と呼ぶ)草間市長さんという方でして、児童養護施設出身で市長になられた方。私は、その市長に、先ほどのような事例を話をしたんですね。にもかかわらず、何で立派に市長になられたのかという話を言いましたら、彼は、自分が物心つかないときに、もう親と縁がなくなってしまった。だから、親から負の精神的な障害を受けるような機会がなかったので、逆にそういうトラウマはない。養護施設の中で育まれて育ったので、先ほどのホームレスみたいな、そういうマイナス的なことを思わなくてずっと済んできたということを言われていました。

 ですから、これは同時に、やはり家庭教育といいますか、親学といいますか、人が人として生きるために、子供を育むというのはどういうことなのかということを、改めて核家族化の中で、昔は大家族で一緒に育てたという環境がありましたが、今は若い、例えば母親が一人で子供を育てなくてはいけないという、逆に、ある意味では過酷な教育環境の中で放り投げられているという、社会から孤立した子育てをせざるを得ない、また、そもそもそういうことも習っていない、そういうことを社会全体として考えていかなければならないという部分が、もっと本質的な部分としてあるのではないかということを感じております。

 それからあとは、養護施設の子供たちに対しての学習的な、あるいは教育的なフォローアップですが、おっしゃるとおり、私の地元でも、卒業しても十八歳でほっぽり出すわけにいかないので、隣にアパートをつくってそういう子供たちをフォローアップしておりますが、これはまさに篤志家の方々の本当に個人的な、献身的なサポートによって成り立っている部分で、いつまでもそれに対しておんぶにだっこというわけにはいかない。

 それから、少子化にもかかわらず、そういう児童養護施設に預けられる子供、昔は親なき子だったわけですけれども、今は親がいてもそういう子供がふえているということの中で、やはり国としても、どんな子供に対してもチャンス、可能性が提供されるような施策という意味では、教育によってそれを与えられるということですから、よりそのことに対する環境整備をしていかなければならないというふうに思っています。

細野分科員 大臣が非常にこの問題について強い思いを持って取り組んでいただいているとよくわかりましたので、ぜひ、横浜市の例なども見ていただいて、どういうサポートができるのか、具体的な検討に入っていただきたいと思います。

 次に、オリンピック・パラリンピックのことについて質問させていただきます。

 予算委員会で、私、総理に、東京オリンピック・パラリンピックは、大変これは喜ばしいけれども、被災地が置いてきぼりにならないように最大限配慮してほしいということを申し上げました。

 その私の意見を受けてやっていただいたということなのかどうかはちょっとわかりませんが、早速、下村大臣が、被災地とどう連携をするのかということで、お祭りと組み合わせてやるというアイデアを出されていたり、あとは、聖火リレーなども被災地を通ってというような御発言をされておりまして、非常にいい御提案だと思います。

 まず、お願いしたいのは、特に福島ですね。早目に準備をしないと、福島がオリンピックとうまく連携するというのは難しいと思いますので、県の方もいろいろ考えると思いますけれども、ぜひ前向きに、国の方が一歩踏み込んで連携を考えていただきたい、これは要望です。

 もう一つ、ややちょっと趣の違う質問になるんですが、御答弁は必ずしも求めませんが、森元総理の御発言なんです。

 余り揚げ足取りたくないので、全文をちょっと取り寄せて読んでみたんですね。それこそ、フィギュアの浅田真央さんに対する発言、あれはもうさんざん議論されたので、まあ多分、愛情の裏返しでああいう表現になったんでしょう。ですから、これ以上は私申しません、デリカシーがどうだったかということは別として。

 むしろ、ちょっと私が気になるのが、パラリンピックについての森元総理の御発言なんですよね。ソチ・オリンピックに行かれて非常に疲れたと、開会式に。もう一回、パラリンピックの開会式に行かなきゃならないということを、こういう表現をされておりました。

 もう一遍、またこれ三月に入りますと、パラリンピックがあります。この方も行けという命令なんです。オリンピックだけ行っていますと、組織委員会の会長は健常者の競技だけ行っていて、障害者の方をおろそかにしているんだと、こういうふうに言われるといけませんので、ソチへまた行けというんですね。今また、その日程を組んでおるわけですけれども、ああ、二十何時間以上時間をかけていくのかなと思うと、本当に暗いんですね。

 こうおっしゃっているんです。

 これは、このまま読めばですよ、というか、この文脈からいっても、本当はパラリンピックは行きたくないんだけれども、そう言われちゃいかぬから、しようがなく行くんですというふうにしか読めないんですよ。

 私は、やはり実行委員長たるもの、オリンピックも大事だけれどもパラリンピックも大事ですよ、皆さん一緒に見ましょうという、東京でもそういうことをやっていただくキャンペーンの旗振り役が森元総理だと思うんですね。その森元総理がこれを言ってはいかぬだろうと。そこの部分について、パラリンピックの重要性とか、そういう個別の選手の頑張りみたいなものに対する、尊重する面がないんだとすれば、これは委員長としていかがかと私は思うんですよね。

 これは答弁結構ですけれども、特に前段の部分、ぜひやっていただきたいのと、大臣はパラリンピックを大事にしておられると思いますけれども、その意識をぜひ政府として持っていただきたい。この二つの御意見を申し上げて、お答えいただける範囲でお願いします。

下村国務大臣 ぜひ、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、東北、被災地が復旧復興を加速されて、二〇二〇年には世界の人たちが被災地に赴く、そういう環境をぜひつくっていきたいと思います。

 そして、福島県においてそのための対策室をつくったということでございまして、三十数項目にわたる提案をつくられたという話を聞いております、まだ直接は受けておりませんが。ぜひ、できるだけ要望を受けとめて対応したいというふうに思います。

 これは、福島県や東北、被災地だけでなく、ぜひ、東京だけの一極集中を加速させるようなオリンピック・パラリンピックではなくて、日本全体が活力を取り戻すといいますか、さらなる活性化になるような、そういうオリンピック・パラリンピックを、二〇二〇年、開催すべきだというふうに思っておりますし、日本全体が元気になるような、特に東日本大震災の被災地が元気を取り戻し、もっと活性化するような、そういうバックアップをぜひしていきたい。

 そして、それは二〇二〇年だけでなく、もっと、三年、四年前から、既に地元でいろいろな伝統行事をやっている、それが被災されて中断された、それを早く復活して、それに対して、オリンピック・パラリンピックに関係したロゴ等を共通するような、兼務した形でのイベントのような形で、二〇二〇年に向けて、数年前から、被災地が元気を取り戻すような、伝統文化行事を含めた、そういう支援もぜひしていきたいと思います。

 それから、森組織会長の御発言は、私は今、細野委員とは逆にパラリンピックについてもとりました。

 それは、なかなか誤解されやすい発言をされているなというふうには思うんですが、内心は、心情的にはすごく優しい方なんですね。浅田真央選手に対しても、私はソチで、浅田真央選手が女子団体フィギュアの予選のときにやはり目の前で転んだというとき、私も森元総理の隣にいて一緒に話をしたとき、そういう否定的な部分じゃなくて、まさに愛情の裏返しでの発言であるし、同じような思いはパラリンピアンについても持っておられます。

 ただ、確かにやや御高齢でもあるので、ソチに二回も行くのは大変なんだろうなという肉体的なことで言われたんでしょうけれども、それは、パラリンピックを軽視しているとかいうことではなくて、あくまでもそういう自分の体力的な部分で言われたのではないかというふうに思いますが、私には、行くというふうにはおっしゃっていました。

細野分科員 体力的にはしんどいんです、しかしこれは大事なんで行くんですというメッセージなら、私もそうとるんですけれども、最後、暗いなで締められると、ああ、行きたくないんだなととるのが普通だと思います。

 この議論は、もうこれ以上、余り建設的に深まりませんのでおきたいと思いますが、福島の方はぜひよろしくお願いします。

 同じく福島にかかわる質問なんですが、私は、福島の復旧復興の最大の鍵の一つは教育だと思っています。私自身が政務にかかわらせていただいたときから、文科省の三役とも連携をしながら、やはり福島に子供たちが戻ってこれるようにするという意味で、教育の充実をしっかりやろうということで取り組んできました。

 来年の四月には双葉郡の広野町に中高一貫校ができる、まずは高校からということで、来年の四月ということで三億円の予算をつけていただいています。

 これは県立高校ですから、国がなかなか前面に出にくいということは重々承知をしながら、私は、踏み込んでいただきたいと思っているんです。私自身は、国立でいいんじゃないかと思っていた時期もありますので。

 その面で若干幾つか懸念をしていることがありますので、お尋ねしたいと思います。

 まず一つは、高校だけつくっても、なかなかそれは人を引きつける要素にはならないだろうと。特徴ある教育もなかなかやりにくい。例えば、スポーツであるとか芸術であるとか国際性であるとか、そういったことでも特徴のある学校にしようというような方針が出されていますが、なかなか難しいと思うんですね。

 ですから、できるだけ早い段階で中高一貫にすべきだと思うんですが、それについて、時期の見込みをどう見ておられるか、これは局長でも結構ですので、まずお答えいただけますか。

前川政府参考人 昨年七月に、双葉郡の八町村の教育長あるいは県の教育委員会、福島大学、さらに文部科学省も加わりまして、福島県双葉郡教育復興ビジョンがまとめられたわけでございます。

 その中で、新たな中高一貫の学校を設置するとというビジョンが盛り込まれたわけでございますけれども、今、このビジョンの実現に向けまして、昨年十一月に設けられました福島県双葉郡教育復興ビジョン推進協議会におきまして、その具体化に向けた検討が毎月会合を重ねて行われているわけでございます。文部科学省からは、この協議会には、生涯学習政策局担当の審議官と初等中等教育局担当の審議官が毎回出席して一緒に協議しております。

 御指摘の新たな高等学校でございますけれども、これは、福島県の教育委員会においては二十七年四月開校を目指して現在準備中であるということでございまして、文部科学省としては、二十六年度の予算案におきまして、当面の校舎として使用される施設の改修経費として三千三百万円、さらに、教育活動に必要となる机、椅子、電子黒板、書籍等の設備、備品を整備するための経費といたしまして二億九千八百万円を計上してございます。

 御指摘の中高一貫をどう実現するのかということでございますが、これは確かに、設置者である福島県の教育委員会が検討することではありますけれども、私どもといたしましては、この復興ビジョンの中で併設型の中高一貫という方向性が明確に示されておりますので、できる限りその方向性に沿って実現を目指してまいりたいというふうに考えているところでございます。

細野分科員 ちょうど私、子供が中学生なものですから、何となく高校の受験というのは身近に感じるんですけれども。

 例えば、来年の四月に入る高校ということになると、進学するかどうか、どこに行くかどうかという目標は大体もう春か夏ごろには決めて、準備するわけですよね。それでいうと、どういう学校になるのかというイメージがちょっとまだ見えていないというのは、子供が集まらない要素になると思うんですね。ですから、いつの時点で中高一貫校になるのか、また、どういう教育をするのか、そこをとにかく急いだ方がいいと思いますね。

 もう一つは、住居の問題もありますから、このビジョンのイメージ図には寮と書いてあるんですけれども、寮も早目につくった方がいいと思います。できれば来年四月には寮もできていて、例えば、一年後、二年後帰ることを考えている人が、ことしは帰れないけれども来年は帰るので、安全なところであれば寮から通わせようというようなことを考える親御さんがいるかもしれませんね。寮をできれば四月にスタートさせられるように準備した方がいいと思うんですよ。

 避難している方々と話していて常に思うんですけれども、学校に一回入ると、その学校に通い続けますから、戻るきっかけが失われるんですね。そこも含めて、来年の四月には寮も出発できるような取り組みをした方がいいと思うんですが、文部科学省の御見解はいかがでしょうか。

前川政府参考人 この学校に併設する寮の問題でございますけれども、先ほど申し上げました教育復興ビジョンの中でも寮の設置ということがうたわれております。

 もともと、このビジョンの考え方として、双葉郡から県内県外の各地に避難している子供たちが戻ってきて入学できる学校という構想でございますので、寮というのは非常に重要な部分ではないかというふうに認識しております。県の教育委員会におきましても寮の設置につきましては検討しているということでございますので、その検討状況を十分注視していきたいと思っております。

 県の教育委員会の方では、中高一貫校に関する検討協議会というものを設けまして、具体的な構想をつくっているというところでございますが、この検討協議会の方にも、文部科学省からは、初等中等教育局担当の審議官が毎回出席いたしまして、その状況をフォローし、また助言もしているという状況でございますので、県と一緒になりまして進めてまいりたいというふうに考えております。

細野分科員 確認ですけれども、文部科学省としては、中学校についても一年おくれぐらいではつくるべきだというふうなお考え、寮としても来年の四月にはできればつくるのが望ましいというお考えということでよろしいですか。

前川政府参考人 私どもといたしましては、双葉郡教育復興ビジョンを踏まえて実現していくということが望ましいというふうに考えております。その中に併設型の中高一貫、また寮を設置するという内容が含まれておりますので、できる限りその方向で実現してまいりたいというふうに考えております。

細野分科員 大臣、今、局長がかなり踏み込んで、今の状況で言える範囲でおっしゃったんだと思うんですけれども、この学校は、意識としては国立の中高一貫校のつもりで対応していただきたいと思うんですね、前にも質問申し上げましたけれども。ですから、多様な、そして非常に特徴のある前向きな教育環境を整える意味でも、しっかりとした体制をつくるべきだし、民間からも知恵をかりるべきだと思うんですね。

 再度、その辺の意欲について一言いただけると幸いです。

下村国務大臣 細野委員も関係大臣をされておられたわけですから、福島に対する思いは人一倍持っておられると思います。

 その上で、我々もぜひ加速度的に福島の復旧復興に向けた対応をしていきたいと思いますが、これからのことを考えると、第一義的には、やはり地元におられる皆さんが、つまり福島の方が、自分たちの双葉郡を教育環境的にどうしたいのかという、そこに住んでいる、あるいは住んでいた方々が、まず、ふるさと双葉郡の教育環境をどうするかという強い思いを持たないと、国が国立的な教育施設を準備しても、それは仏つくって魂入れずみたいになってしまったら意味がありませんから、そういう教育施設を充実することによって、一旦移ってしまった子供たちをそのことによってふるさとに呼び寄せる、呼び戻すという燃えるような強い思いを、ぜひ教育関係者の方々あるいは地元の方々がまず持ってもらうということは重要なことだと思います。それをさらに加速させるような、そういう支援はぜひしたいと思います。

 だからこそ、この協議会に文部科学省から生涯局の審議官や初中局の審議官が委員として参加をしているということは、これは国の取り組みとしてはあり得ないことですから、それだけ文部科学省としても、地元から上がってきたら対応するということじゃなくて、自分たちも一緒に参加して、国もこれだけやりますよ、しかし、地元の方々が燃えるような教育復興に向けた情熱を持たないと一緒にできませんということですから、その辺は手を携えてやるようにしっかり進めたいと思います。

細野分科員 福島の現状というのは、やはり原発事故を受けて、マイナスの部分がかなりあると思うんですね。教育の充実というのは、このマイナスをゼロにするという発想ではだめで、プラスに持っていくぐらいの力をここで示さない限り、それこそマイナスの部分はまさに埋まらないと思うんです、逆に。それは、非常に充実した教育環境という意味では、やはり福島県だけでは難しい面があると思うんですね。

 ですから、こういうことができるんじゃないかとか、こういうサポートができるんじゃないかというのを文部科学省の方から、国から前向きに提案をしていただいて、もちろん、意欲を持つのは、福島の方が意欲を持っていただくのが一番望ましいことですけれども、提案をぜひしていただいて、引っ張っていただきたい。これは大臣にも前川局長にも申し上げておきたいと思います。

 そろそろ時間がなくなってきましたので、最後に一つだけ。

 私は文部科学委員になったこともありますので、芸術文化の振興ということで、個別にいろいろ公演を見てみたりして、実際にいろいろなことにかかわっておられる方々とお話をする機会を最近持つようにしています。歌舞伎であるとか文楽であるとか能であるとか、そういったところですね。

 もともとそういうことに関心はあるものですから、いろいろな方から改めて話を聞いてみて、なるほどなと思わされるところが非常に多いんですけれども、その中で一つ気になったのは、そういう分野でいうと必ず名前が出てくるのが芸術文化振興会なんですね、芸文振というものですけれども。

 正直言うと、ちょっと余り評判がよくないんですね。芸術家の方からすると、行政組織というのはなかなか評判がよくなりにくいという面があると思うんですけれども、ここは改めて質問したいと思うんですが、芸文振の現状についてどう思っておられるか、一言だけいただけますか。時間も来ているようですので、短くで結構です。

    〔主査退席、あかま主査代理着席〕

下村国務大臣 一言だけというのはなかなか難しいんですが、まず、福島の問題は、先ほど申し上げたように、審議官がそれぞれ二人入っていて、これは国として、いろいろなメニューとして、国が今やるべき提案なりメニューはお出ししています。積極的にこれはかかわっていきたいと思います。

 それから、芸文振については、そういう関係者から評判が悪いということであれば、それは謙虚に受けとめて、どこがどう問題なのかということについて私もよくお聞きしながら、改善に向けて努力をしていきたいと思います。

細野分科員 ありがとうございました。

あかま主査代理 これにて細野豪志君の質疑は終了いたしました。

 次に、宮沢隆仁君。

宮沢(隆)分科員 日本維新の会、宮沢隆仁であります。この間の予算委員会では、どうもお世話になりました。

 本日は、テーマは、大学改革だけで質問させていただきたいと思います。

 実は私、いつかは文部科学委員になって、この大学改革の件を質問させていただきたいと思ったんですが、意外と早くその機会が訪れて、非常にきょうはハッピーであります。

 なぜこの問題意識を持ったかといいますと、私はもともと医者なんですが、大学病院にいることが多くて、約三十年間の医者生活の中で三分の二ぐらいは大学におりました。その中にいますと、やはり教授のあり方とか学内のガバナンスのあり方とか、そういうものに多々疑問を感じたことがある。

 それからもう一つは、実は厚生労働委員をやっていたんですが、そのときに、昨年、ディオバン事件というのを扱いまして、これは、資料をお配りしていると思うんですが、簡単に言いますと、臨床研究における利益相反問題ということで、ここではノバルティス社という製薬会社が主に焦点になっているんですが、その根底には、やはり、そういう製薬会社から医学部教授たちに、奨学寄附金ということで多額のお金が、この絵にありますように、五つぐらい大学が並んでいますけれども、億単位のお金が流れていたわけですね。

 この奨学寄附金というのは、使い道は限定されないで、かなり自由に使えたお金。もっと深掘りすると、このお金は結局、ある意味、捏造というか、うその論文をもとにして販売された薬の利益から流れているという解釈もできるわけですね。

 そうすると、やはり医学部教授の倫理観というのがここで大きな問題になってくると思いまして、私も、医者生活の中で、製薬会社がやっている、派手に宣伝している薬の学会とか会合に何回も行ったことがあるんですけれども、ちょっと異様なムードだなと感じたことも何回もあるんですね。そういうところからの問題意識。

 それから、私、二十二、三年前に、ドイツで二年間、研究生活を送ったことがあるんですが、そこでドイツ人の研究者から聞いた話の中で、ドイツの中では、自分の母校の教授になることというのはめったにないというお話を聞きまして、ある意味、そういう文化なのと、ある程度コントロールされているというようなお話を聞いたんですね。

 そんなことがあって、日本の教授のあり方とか大学のあり方というのをもう一回考え直さないといけないんじゃないかということで、きょう、こちらに参加させていただきました。

 それで、実は、この質問をするに当たって、レクを文部科学省の方から受けて、「大学のガバナンス改革の推進について」、これをいただいて、まだ完全には読んでいないんですが、レクの内容からいっても、私がこういうふうに変えてほしいと思っていたことをどんどんぶつけたら、意外にも、かなり進んでやっておられるというのがわかりまして、ちょっと拍子抜けしちゃったんですけれども。

 したがって、本日は、質問に沿って、これから文部科学省がやられようとしていることを確認するような形になるかもしれないんですが、そこで、二、三、私の意見も述べさせていただきたいなと思います。

 それで、最初の質問は、現時点での教授会のあり方、あるいは教授のあり方というのをどのように見ておられるか、あるいは今後どうされようとしているのかという観点で、まずは、学生の教授に対する評価というのを私はぜひ入れていただきたいなと思っているんですが、その点も含めて、ちょっとコメントをいただければと思います。よろしくお願いします。

吉田政府参考人 最初に、教授会のあり方の部分から申し上げますと、お尋ねの教授会は、ただいま、学校教育法の九十三条におきまして、教育研究に関する重要事項を審議するために置かれております。ただ、その審議事項の内容は必ずしも明確ではございませんで、予算配分や執行に関する事項など、大学の経営に関する事項まで広範に審議される場合もございますし、また、審議機関であるにもかかわらず、実質的に決定機関という形で運用されている場合もあるなど、学長のリーダーシップを阻害しているという指摘もあるわけでございます。

 文部科学省では、先ほど御紹介いただきました中教審の審議のまとめ、これも踏まえまして、教授会の役割を明確化するために、所要の法令改正を行うべく、ただいま準備を進めているところでございます。

 さらに、学生による教員評価のお話がございました。

 教員の授業に対しまして学生による評価を実施するということは、教員が、授業内容、方法の改善点を見出し、教育の質の向上を図るために有効な手法の一つであるというふうに考えております。

 平成二十年に、中央教育審議会答申、「学士課程教育の構築に向けて」というまとめの中で、大学に期待される取り組みとして、教員の業績評価として教育面を一層重視することとされ、学生による授業評価の結果を教員みずからの評価に反映させることが求められてきたところでございます。

 この学生による授業評価というのは、着実に今定着をしつつございまして、現在、大学全体で取り組んでいる大学が九四%、七百八大学に上っているところでございます。

 教員の評価は、教育業績、研究業績のほか、大学運営や地域貢献に関する業績なども含めまして、各大学が主体的に多様な評価方法、基準を定めて行っておりまして、学生による授業評価の結果を教員の業績評価に関連づける、こういった取り組みも見られるところでございます。

 文部科学省としては、各大学の取り組み、工夫をまたさらに積極的に促してまいりたいと思っております。

    〔あかま主査代理退席、主査着席〕

宮沢(隆)分科員 どうもありがとうございました。かなり精力的にやられているようで、非常に結構だと思います。

 今のお話の中で、学校教育法九十三条のことがちらっと出たんですが、これは、この間、国際基督教大学の理事長の北城先生から、これはぜひ変えてほしいというお話を受けたんですが、変える方向で今動いているのでしょうか。よろしくお願いします。

吉田政府参考人 御指摘のとおりでございまして、今、教授会の役割を明確化すべく、法律の改正を考えているところでございます。

宮沢(隆)分科員 よろしくお願いいたします。

 それから、その改正は非常に結構だと私は思うんですが、首長の選挙、権限と同じで、学長が非常にいい方、あるいは非常に斬新な改革をしてくれる方であればよろしいと思うんですが、例えばお金を使い込んだり、全く学生や教職員が意図しない方向にどんどん進んじゃうとか、そういう独裁的な方向に行っちゃったときの抑止力みたいなものが必要だろうと思うんですけれども、例えば首長であればリコール制度とかいうのがあるんですが、そのようなシステムというのはつくる予定はおありでしょうか。

吉田政府参考人 学長の解任ということに関しましては、国立大学法人及び公立大学法人につきましては、その学長の職務の執行が適当でないため、当該大学の業務の実績が悪化した場合であって、引き続きその職務を行わせることが適当でない、こういう場合には、学長選考機関の申し出によりまして、それぞれの任命権者が解任を行うことができる、こういう規定が、国立大学法人法並びに地方独立行政法人法の中にございます。

宮沢(隆)分科員 一応、歯どめ措置はされていると思ってよろしいですね。わかりました。

 先ほどの教授のお話に戻るんですが、これは日本の大学を出た方なら十分わかっていることだろうと思うんですけれども、名立たる大学の教授の出身校はその母校である確率が非常に高いですね。それは私立も同様だろうと思います。大体八割から九割を母校出身者が占めているというのが日本の大学教授のあり方だろうと思うんです。

 これはインブリーディングと称するらしいんですが、これも諸外国と比較すると、逆に、ある意味異様な状況のようで、例えばドイツとかフランス、アメリカも多少そうみたいなんですけれども、内部昇進禁止の原則というのが、制度としても存在するし、いわゆる文化としても存在するようなんですけれども、これを断ち切らないと、日本の大学はいつまでたってもグローバル化もできないだろうし、本当の意味での一流にはなれないのかなと思うんです。

 この内部昇進禁止の原則というものを、この中に盛り込んであるかどうか、ちょっと私は確認していないんですが、どのようにお考えか、ちょっとお聞きしたいと思います。

吉田政府参考人 大学における母校出身者の関係でございますけれども、基本的に、大学におきましては、大学教員にふさわしいすぐれた人材を確保して、多様な経歴や経験を持つ者が切磋琢磨しつつ、その能力を高め、大学における教育研究を活性化させるということが必要でございます。

 文部科学省におきましては、任期制の導入ですとか、あるいは教員採用における公募制の推進、あるいは大学の組織編制の柔軟化、こういったことを通じまして、教員の流動性を高めるというための取り組みを進めてきております。

 これは学校教員統計調査の結果でございますけれども、大学の専任教員のうちでその大学出身者、これはその大学の学部出身者あるいは大学院出身者というところまで含まれますけれども、その大学出身者の占める割合、これは平均でございますから各大学によっては違いがあるかもしれませんが、平成元年の時点では三八・一%という形になっておりまして、平成二十二年の統計では三二・六%に低下をしているところでございます。

 大学の若手教員あるいは研究者などの流動性を高め、キャリアパスの多様化を図る取り組みの支援を引き続き進めるとともに、特に国立大学につきましては、年俸制の導入など、人事給与システムの一層の弾力化を支援することとしているところでございます。

宮沢(隆)分科員 今の三十数%云々というのは、全教員ですね。教授だけに限ったことではないですよね。(吉田政府参考人「はい」と呼ぶ)それは、全教員の場合と、教授だけに限った場合とでのいわゆる大学のあり方に対する影響力は全然違うと思うんですね。やはり、教授の中で母校出身者がどのくらいいるかというデータの方がずっと重要だと思います。

 私、ある本を読んでちょっと勉強したんですが、例えばフランスなんかは、全国コンクール方式と称して全国単位で公募したり、自分の大学ではなくて他大学の教授に評価をさせるとか、かなり工夫を凝らして、いわゆる内輪の人事にならないような工夫をしているんですね。

 一つ私がちょっとクレームをつけるとすれば、今のところですかね。やはり、同じ大学出身者の中でのお手盛り人事みたいなものが、これこそ変えないと、私は、日本の大学は変われないと思いますので、ここはもうちょっと審議して検討していただければと思います。

 それから、今の話に通ずるんですが、いろいろな大学のランキング、世界的なランキングというのを私きのうざっと見てみたんですが、分野ごとにもちろん異なるんですけれども、例えば百の大学をリストアップした中で日本の大学はどのぐらい入っているかというのをざっと見てみると、まず数えられる程度しか入っていない。

 大体、トップテンは、アメリカ、イギリス、ヨーロッパの大学が入っていまして、韓国なんかも日本と同程度ぐらいに頑張っているんですね。それで、分野によっては全く百に入っていないところもありましたし、逆に十以上の大学が入っているところもありました。そういうのをざっと見ると、日本の大学というのは、まだちょっとグローバル化し切れていないんじゃないかなというのが私の印象です。

 では、その原因は何かというのを考えてみたんですが、例えば、私がドイツにいたときに経験したのでは、ドイツの医学部の教授は、かなり国籍は多彩なんですね。もちろんドイツ語が話せることが前提なんですが、例えばトルコだとかイランだとかインドネシアという方もいましたし、恐らく国籍を取った上で教授になっているんだろうと思うんです。そういう発想はちょっとまだ日本にはないんじゃないかなと思うんですが、外国人を教授に招聘するということに関して、文部省の今後のスタンスをお聞きしたいと思います。

吉田政府参考人 御指摘のように、大学のグローバル化を進めていく上で、外国人教員の採用を促進するということは非常に重要な課題だ、こういうふうに思っております。

 今、現状を申し上げますと、大学におきます外国人の本務教員数は、平成二十五年度の段階で四%程度ということでございます。

 これは、先ほどドイツの例を御紹介いただきましたけれども、外国の有力大学におきまして、例えば、ハーバード大学でございますと二九・五%であったり、イギリスのケンブリッジ大学ですと四〇・五%であったりということで、押しなべて、外国の有力大学では少なくとも二〇%程度以上の外国人教員比率ということでございまして、外国人の比率を高めていくということは大きな課題でございます。

 文部科学省といたしましては、これまで、大学の国際化のためのネットワーク形成推進事業、これは通称グローバル30と申しておりますけれども、それを通じまして、大学の取り組みを支援してきたところでございます。

 この事業に採択されました十三大学におきましては、外国人教員数が、事業開始前の平成二十年から平成二十四年度にかけまして、一・三倍にふえてきております。実数にいたしますと、約二千四百人から三千百人という形に推移をしてきております。

 また、国立大学の関係では、昨年十一月に国立大学改革プランというものを策定いたしました。平成二十七年度終了時点までに若手、外国人に対しまして千五百人分の常勤教員ポストを政策的に確保することを目指すという目標を掲げているところでございます。

 さらに、平成二十六年度からは、外国人教員や外国で学位を取得した教員の積極的な採用など、国際化を徹底して進めるスーパーグローバル大学への重点支援を開始することとしているところでございます。

 いずれにしても、グローバル化というのが大学の大きな課題でございますので、外国人教員の任用につきましても積極的に取り組んでまいりたいと思っております。

宮沢(隆)分科員 今の、外国人教員のパーセンテージ、ちょっと興味深く聞いたんですが、日本は今四%ぐらいですね。一〇とか二〇%を今後目指すという理解でよろしいでしょうか。

吉田政府参考人 先ほど、数の上で、国立大学につきましては、今後、千五百人分の常勤ポストをまずは目指していこうということで、一〇%、二〇%というところまではもう少し時間がかかるかもしれませんけれども、いずれにしても、その割合をふやしていきたいと思っております。

宮沢(隆)分科員 わかりました。

 やはり、日本の教授の競争意識を高める意味でも、外国人教授をふやすというのはいい政策だろうと思いますので、ぜひ積極的にお願いしたいと思います。

 それから、次に参りますが、日本の大学そのもののあり方についての質問なんです。

 国立大学、名立たる私立大学、ざっと見ますと、総合大学が多いですね。それで、何でも扱うという大学が多いんですが、逆に言うと、個々の大学に特徴がない。特徴があるとすれば、地理的な特徴ぐらいしかないというふうに言えなくもないんですけれども。

 そこで、いわゆる学部のスクラップ・アンド・ビルドをもっと積極的に行って、個性のある大学をふやす、新設するにしても、ある地方にこういう特性を持った大学をつくるとか、そういう考え方で大学のマネジメントをしていくという考え方はいかがでしょうか。

吉田政府参考人 各国公私立大学がそれぞれの個性や特色を明確にして、その強みを十分に発揮して、魅力ある教育研究、地域貢献などの活動を展開していくことが重要であるというふうに思っております。

 国立大学につきましては、全大学につきまして、各専門分野ごとに、強みや特色、あるいは社会的な役割といったものを明確にしていただくということで、ミッションの再定義という取り組みを行っていただいているところでございます。それをもとにしまして、昨年十一月に、国立大学改革プランという形でそれをまとめたところでございます。

 これを一つ土台といたしまして、平成二十六年度予算案でも、そういった教育研究組織の再編成等を含めた機能強化を推進する大学につきましては重点的な支援という形で推進を促進しよう、こういうふうな考え方でございます。

 また、高等教育の非常に重要な部分を占めております私立大学につきましても、私学助成などを通じまして、教育の質の向上、あるいは地域再生の核となる大学の形成、また産業界や他大学等と連携した教育研究、グローバル化への取り組みなどについて全学的、組織的に取り組む私立大学等についての重点的な支援を行おうというふうにしております。

 また、先ほどもちょっと触れましたけれども、スーパーグローバル大学等事業ですとか、あるいは大学教育再生加速プログラム、あるいは地(知)の拠点整備事業、これは国公私を通じた事業でございますけれども、そういった競争的な資金による財政的な支援、こういったものも、その個性や特色の発揮に役立てさせていただきたいと思っております。

 今後とも、私どもとしては、基盤的な経費や競争的な資金による財政支援を通じて、各大学の強みや特色を生かした主体的な取り組みを支援し、全体として多様なニーズに応える質の高い高等教育が実現できるように努めてまいりたいと考えております。

宮沢(隆)分科員 わかりました。方向性は非常に私の考えに沿っているもので、結構だと思います。

 この次は、大学生そのもののことでちょっとお伺いしたいんです。

 昨今の大学生の実力ということで、テレビでもよく出ているのは、韓国とか中国のいわゆるハングリーな学生たちに比べるとやはりどうしても劣るのではないかという印象があるんですが、まずは、大学生というのは、本来、大学に行って勉強するものだろうと思うんですね。であれば、入学試験はある程度緩いものにして、ただ、ある程度の実力がないと入れないようなレベルに設定した上で、卒業は相当勉強していないとできないというようなシステムにするのが本来のあり方ではないかなと思います。

 それから、同時に、そういう、安易に入れて安易に卒業できるような大学のあり方もちょっと考え直してもいいんじゃないか。はっきり申し上げると、以前、田中真紀子さんが大学を認可するとかしないとかということで、ニュースで騒いでいたのを一国民として見ていたんですが、半分は正しいことを言っているかなと私も思ったんです。余りに大学がふえ過ぎている、安易に大学生をどんどんつくっているというふうに、一国民としてそういうふうに見えたんですけれども、その辺の、学生のクオリティーコントロールという意味で、どのようにお考えなのかをちょっと確認させてください。

吉田政府参考人 確かに、今、大学生の質の確保というのが重要な課題になってきております。

 これはある一つの統計でございますけれども、大学生が平均的に一日に勉強する時間は四・六時間程度であって、これは、今の大学設置基準などでは百二十四単位を大学、四年制の場合には取得するということになっていますけれども、これはほぼ一日に八時間程度の学習時間といったものを想定しておりますから、そういったものに比べますと、日本の大学生の学習時間というのはやはり少ないかなという感じがいたします。

 やはり、学生がきちっと学習することを確保するために、これは教育再生実行会議でも指摘されておりますし、また、ただいま、中教審の高大接続部会などでも議論されておりますけれども、きちんとした成績の評価、これはGPAですとか、そういった手法を使った、厳格に成績を評価する仕組み。それから、卒業認定に当たりましてもそこをきちんとしていく、そういった仕組みを導入するということが必要であろうというふうに考えております。

宮沢(隆)分科員 学生のクオリティーコントロール、ぜひよろしくお願いします。

 では、最後に、下村大臣にお答えいただきたいんですが、ちょっとお金のことも絡みますので。

 大学生の授業料というのをちょっと調べてみたんですが、日本の場合は、大体、国立大学が五十万から六十万ぐらい、年間ですね、私立大学だともちろん百万、二百万、学部によっては何百万というところもあるんですが、フランスは年間二万一千円、ドイツは年間約四万九千円をとりあえず払えば、ある程度の実力があれば大学で学べる環境にある、しかし卒業は相当大変であるというお話を文科省のレクでもお聞きしたんです。

 私は、心情的には、これから十年、二十年、三十年先を見ると、今の若者には社会保障費の関連で相当な負担をかけてしまうことになるだろうと思うんですね。それであれば、せめて勉強するための資金ぐらいは国がほとんど面倒を見てあげてもいいんじゃないかなという気がしているんですが、そのかわり、大学生になるからには勉強をしなければいけない制度あるいは環境にしてしまうということですね。

 その辺の、学生、若者に対するお金の使い方に関して、ちょっと下村大臣の哲学をお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。

下村国務大臣 これはおっしゃるとおりだと思います。

 文部科学省が調べた中で、高卒と大卒の、たかだか四年間ですけれども、生涯年収獲得の差が、九千万の違いが出ているというデータが出ております。

 広い意味では、やはり教育投資というのは、その人にとっての将来に対する社会保障でもあると思うんですね。そのことによってチャンス、可能性を広げていくという意味では、やはり経済的なハンディキャップによってそれを克服できないというのは、その人にとっても将来を狭めることでありますが、同時に国にとっても、貴重な一人一人の財産を、やはり可能性をなくすということになってくるわけでありまして、できるだけ、意欲と志、能力があれば、大学まで含めて、経済的なハンディキャップなく進学できるような可能性をつくっていくように努力することが、これは私は国の責務として今後捉えていくべきことだというふうに思っております。

宮沢(隆)分科員 前向きな御返答、ありがとうございました。

 これで終わります。どうもありがとうございました。

萩生田主査 これにて宮沢隆仁君の質疑は終了いたしました。

 次に、小林史明君。

小林(史)分科員 自由民主党の小林でございます。

 このたびは、質問の機会をいただきました皆様に心から御礼を申し上げたいと思います。

 私自身、前職は企業の人事の採用担当をやっておりました。私自身も、この業界を目指す、政治の世界を目指したのは、その中で、高等教育、特に大学教育、ここに対して強い疑問を感じたところからでございます。

 下村大臣初め文科省の皆様、今、大学改革に大変力を入れていらっしゃると思いますけれども、その中で、事業の改革もしくはガバナンスの改革、大変注視をされているというふうに感じております。

 一方で、我々人事をやっていた人間からすると、もう少し出口から考えていただくという観点も必要なのではないか、そういう思いできょうは質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、ことしから来年にかけて就職活動の時期というのが変更となるというふうに確定をしております。これは四大臣から各経済団体に申し入れをして、四月から八月に変えていこうじゃないか、こういう後ろ倒しが決まっているわけでありますけれども、こちらの意図はどのようなものか、お伺いしたいと思います。

吉田政府参考人 就職採用活動時期の後ろ倒しの関係でございますけれども、我が国が今後も持続的な発展を図っていくためには、一人一人の能力を高め、グローバル化した社会で活躍できるような人材育成体制、これを抜本的に強化していくことが重要でございます。

 この活動時期の見直しに関しましても、少なくとも学部の三年次までは学生が学業に専念をし、多様な経験ができる環境を整えるとともに、また、海外留学からの帰国者の就職環境の改善を図るということも重要な視点でございます。

 こういった観点から、大学などからの強い要請を踏まえまして、昨年、安倍総理から経済三団体に対しまして、平成二十七年度卒業・修了予定者から、広報活動時期を卒業・修了年度に入る直前の三月一日以降にし、また、採用選考活動につきましては八月一日以降に開始をするということで、これは日本再興戦略の中で決定をされたところでございます。

小林(史)分科員 ありがとうございます。

 そういった意味があっての後ろ倒しだというふうに私も把握をしておりますし、では、それを実際の、本来の意図どおりに実現をしていくために、考えなければいけないことが何点かあるというふうに感じております。

 お配りしている資料を一枚おめくりいただきまして、資料二というところ、二〇一六年卒、就職環境の変化という資料でございます。

 これが、ことし、二〇一五年卒のスケジュールと二〇一六年卒のスケジュールを書かせていただいております。ことしは四月から選考開始というふうになるわけですが、来年からは八月から選考開始になります。この間の期間をしっかり学業に当ててほしいというのが本来の意図だと思いますが、実際に、企業の採用の現場からすると、この期間、本当に学業に専念できるような環境ができるかというと、少し疑問がございます。

 企業からすると、なるべく優秀な学生に早くアプローチをしたいというふうに考えます。そしてもう一つは、この倫理協定を守る企業はもちろん同時にスタートするわけですが、守らない企業も多くございます。それは、日本国内もそうでありますが、外資系の企業なんかは特にそうであります。

 この競争下の環境の中でどういうことが起こってくるかというと、恐らく、リクルーターなどの大学の先輩が大学に入ってきて学生に接触をする、こういった形も入ってまいりますので、本当に学生が学業に専念できる環境ができるのか、一つ懸念がございます。

 そして、もう一つ認識をいただきたいのは、中小企業の採用活動に対する影響であります。

 本来であれば、大企業が四月から就職活動を始める。採用が終わった結果、恐らく五月から六月にはその採用活動は終了いたします。その後に中小企業が学生をまた集めて、採用活動を行っていくわけですけれども、これが四カ月後ろ倒しになった結果、この期間が非常に短くなるということであります。

 一方で、学生にとっても再チャレンジの期間が短くなる、この懸念があるということをぜひ御認識いただいて、何かしらの対応を引き続き検討いただきたいというふうに考えております。

 これは余談でございましたけれども、先ほどの趣旨のとおり、しっかり勉強いただいて、社会で活躍できる人材、特にグローバルに活躍できるたくましい人材を育てるということが重要だというふうに言われております。といった中で、社会で活躍するための人材をしっかり育成するという意識のもと、できれば、経営者であったりとか地域の企業、こういったところと連携した教育改革が必要と考えますが、御見識いかがでしょうか。

吉田政府参考人 学生が社会で活躍するために必要な能力を培うために、大学において地域や企業と連携をした教育を行うことは大変重要でございます。

 各大学におきましても、地域のNPOや企業と連携した問題解決型の授業の実施ですとか、あるいは、企業と連携したカリキュラムの策定、また授業の一環としてインターンシップの実施、こういった取り組みを地域や企業の協力を得て進めているところでございます。また、その関係で、社会のニーズと大学教育のマッチングですとか、あるいは、学生の主体的な学びを引き出すための取り組みなども進められているところでございます。

 文科省におきましては、学生が学業に取り組んできた成果が地域や企業においても適切に評価されるよう、GPAなど厳格な成績評価の導入などとあわせまして、先ほど申し上げましたような、地域や企業と連携した大学教育について、さらにその取り組みを促進してまいりたいというふうに思います。

小林(史)分科員 ありがとうございます。ぜひ積極的に取り組んでいただきたいと思います。

 といいますのも、文科省の調べでも、採用に対して大学生に期待する素質、態度、知識、能力というものの中で、大手の企業、たくさんの方々からいただいたアンケート結果で一番大きかった、文系、理系共通の大学生に期待するものということで、論理的思考力や課題解決能力を身につけること、これを期待されているというふうにあります。さらには主体性、こういったものも期待をしているということです。

 私自身も地元の中小企業の経営者の方とたくさんお話をしますが、やはり多くあるのは、答えのある問題に対して回答するのは大変得意なんだけれども、答えがない、課題発見型、課題解決型の取り組みに対しては非常に弱いというのが現実ですので、ここをぜひ強化していただきたいという要望があるということをお伝えしたいと思いますので、ぜひお取り組みをいただきたいと思います。

 そういった中で、先ほどの宮沢委員の中でもありましたが、学生のクオリティーコントロールというお話がありました。この観点が非常に重要だと思っていまして、クオリティー、さらに深掘りをするとモチベーションコントロールなんだろうというふうに思っているんです。

 今取り組んでいらっしゃるのは、大学の授業をしっかり見直そうじゃないか、強化をしていこうじゃないかということであります。ただ、それは学生が非常に主体的に、積極的に授業に取り組むという前提のもとで成り立つことだというふうに思っていますが、実際の現場はなかなかそうはなっていないというのが現実であります。

 資料をちょっと一枚おめくりいただきまして、学生、大学、企業の関係性というものを概念図で示させていただいております。

 先ほども、学生が大学に入学したら一生懸命勉強するような環境を整えるべきではないか、こういうお話がありましたけれども、では、なぜ今そうなっていないのかということを概念的に示しますと、このような、じゃんけんのような形になっております。

 学生はどこを見ているかというと、就職を目的とするならば、自分の志望企業を見ています。なので、企業にとって自分の何が評価されるのか、ここが一番重要な形になって大学生活を送っているという現状です。

 一方で、企業はどこを見ているかというと、学生はもちろん見ているんですが、大学を見ています。それは、早期に優秀な学生にアプローチをしたいので、なるべく大学に入り込んでいって、説明会などに入っていきたい。これも数が限られているものですから、ある大学に説明会に入れるか入れないかというのは大変大きな影響を与えます。

 一方で、大学はどこを見ているかというと、私の所感からすると、学生の方を向いて、なるべく授業にしっかり取り組んでほしいという形で、だんだんサービス業化しているような感覚を受けます。教授の評価としても、どれだけの学生が履修をしているかということが評価になった場合、余り難しい授業をやりますと、今度は学生がそれを履修しなくなっているというのが現実です。実際に、ある大学では、どこの授業が単位が取りやすいか、このマニュアルが販売をされている、こういう現状もあるぐらいであります。

 下村大臣は群馬から大変意欲を持って早稲田大学に入学をされた、こういう経緯もありますので、意欲のある学生の立場ということだと思いますが、現実、なかなかそうではない学生が多い中で、学生に対して意欲を高めるという意味では、企業の採用に関する意識というのを変えていくのが重要ではないかというふうに考えております。

 現実、今どういったもので学生が評価をされているか、文科省の認識をお願いしたいと思います。

吉田政府参考人 現在の企業の採用の傾向につきましてお話を申し上げますと、近年の企業の採用選考におきましては、これは主に大企業を中心としたものでございますけれども、第一段階として、学生にエントリーシートなどを提出させた後、いわゆるウエブテストと言われるような、一定の適性検査を実施するということが多うございます。

 そのウエブ検査の中では、性格ですとか能力、この中には、先ほどの言語運用能力ですとか論理解析能力ですとか、そういったものも見られるわけですけれども、こういったウエブテストなどの適性検査を実施いたしまして、これは書面審査で絞り込みを一定行います。

 その後、面接などの段階になってくるわけでございますけれども、そこの際によく聞かれることといたしましては、学業あるいはサークル、ボランティア活動、アルバイト経験など、学生時代に積極的に何に取り組んだかということ、また、リーダーシップを発揮した経験があるかというふうなこと、こういったものを重視しながら、各企業の求める能力、適性を身につけた人材であるかを評価し、採用されているというふうに認識をしております。

小林(史)分科員 ありがとうございます。その認識のとおりだと思います。

 ということは、企業は学生に何を聞いていくかというと、要は、課外活動をどれだけ頑張りましたかということをメーンで聞いているんです。これは先輩たちから後輩にも伝わっていきます。俺たちはあの会社を受けたときにこういうことを聞かれたよということが伝わっていきます。そのときに、大学の授業は何を頑張りましたか、どれぐらいの評価をとりましたか、これが全く評価をされていないというのが現実であります。

 これはその企業が悪いのかというと、そうでもないというふうに私は考えています。というのは、その大学の授業の評価がどこまで信頼性があるのか、これもわからないからこそ、結果的に何をやっているかというと、独自で、お金をかけてウエブのテストをやります。SPIであったりとかSHLという、これは民間企業が開発した学力テストであります。こういったものを受けていただいて、そして、面接できる数は決まっていますので、上から五千人、一万人会おうじゃないか、こういう形で面接をしているというのが現実です。

 こういった中で、学生に対して企業がこれを求めているという現実が続く限りは、学生のモチベーションというのは、大学の授業ではなくて、大学の中で行われる課外活動、もしくはボランティア、留学経験、こういったところに意欲がどうしても向いてしまうというのが現実だというふうに考えております。

 一枚おめくりいただきまして、その結果どういうことが起きているかというのを、こちらも概念図で大変恐縮ですけれども、あらわしております。

 要は、企業が、左側です、課外活動のみを評価するものですから、学生としては、課外活動に力を入れて、楽に単位が取れる授業を望むというふうになっています。

 一方で、その結果、大学としては、特に教授としては、自分の授業をなるべく多くとっていただかないと評価に響く、こういうこともあろうかと思いますので、なるべく受けやすい授業を提供していく、その中で、できれば単位が取りやすい形で提供していくということをやります。

 結果的には、その授業のレベルが落ちていくとともに、その授業の評価というのもまた曖昧になっていきます。これは企業にとって、その評価が信頼できないものになっていくというのが現実であります。

 そしてまた、授業の質が低くなることで、レベルの高い学生も授業離れが進み、結局、課外活動に取り組む学生がふえていく。そして、そこを評価する企業がまたふえていく。

 こういう負のスパイラルが回っているというのが今の現実であります。

 その結果、どういうことが現実に起こっているのか、もう少し詳しく述べますと、次のページであります。

 先ほども少し述べましたが、企業にとっては大学の成績は信頼できないということで、なるべく多くの募集者を募って独自の選考をしているというのが現実です。実際に、募集の百倍以上募集者を募っていくということで、さらに、もっともっとたくさん優秀な学生を集めたいということで、倫理協定より早くアプローチをしていく。それの一つの活用として、インターンシップが活用されていますけれども、これはいいことだと思いますが、それ以外にもさまざまな手法でアプローチをしているというのが現実です。

 さらに言うと、倫理憲章の時期によって、企業にとって大変不公平感があるものにもなっているというのが現実であります。

 加えて、これは企業内の話ですけれども、私の企業は違いましたが、いろいろな話を聞くと、実際になっているのは、人事担当者の評価が志望者数で評価をされているということですので、採用する気がなくても、とにかく多くの大学に広報をして数多く集めるということになっているのが現実であります。

 あとは、就職ランキング。これは、広告をどれだけ出したかによってランキングが変わるわけですけれども、ここに企業がお金をかける、こういうことにもなっています。

 結果的にどうなるかというと、有名企業に多くの学生が集まって、エントリーシートを書くのも大変なわけです。そこに労力をとられて、実は、本来、魅力を発揮すべき中小企業、人材を求めている地域の企業に学生が集まらない、こういう現実も起こっています。

 加えて、下の方ですけれども、企業の面接する労力は限度があるので、内定を出せる確率の高い学生を多く集めたいということ、これは企業にとっては当たり前の感覚だと思いますが、その結果どうなるかというと、ウエブテストの点数が高い学生、これは、ある意味、有名な大学に偏りますし、結果的に、入社している学生の数を、過去を追っていくと、有名大学が多くなるわけであります。なので、確率が高いところにアプローチをしていく。そして、確率の低い大学は、これはもうエントリーシートで落としてしまって、面接や、場合によっては説明会にすら進めないというのが現実の状況であります。

 加えて、もう一つ、七ページ、次に進んでいただきたいと思います。

 少し話が行ったり来たりして申しわけないですが、大学の授業の評価というのが企業にとって曖昧であるがゆえに、そして世間一般にも曖昧であるがゆえに、こういった弊害も起こっています。

 というのが、これは二十五歳以上の大学入学者の割合の各国比較でありますけれども、日本は格段に低くなっています。これは学び直しが非常に少ない結果だろうというふうに把握をしております。

 これも、日本では、MBA以外においては、大学に戻って学び直した結果キャリアアップができるというイメージが、残念ながら、一般の人にもそして企業にもありません。

 本来、大学の授業に意味がある、評価があるとするならば、何々大学のマーケティングを学び直してきた、こういう人はうちは積極的に採用しようじゃないか、それは、東京だけではなくて、広島かもしれない、群馬かもしれない、北海道かもしれない。こういう、各大学の特徴ある授業が評価をされれば、こういったことが起こってくるはずなんですが、それが今、評価が曖昧なゆえに、こういった現実になっているということも御認識をいただきたいというふうに思います。

 では、どういうふうにすべきかということですが、冒頭にも申し上げましたが、要は学生のモチベーションをとにかく上げていくということも大事なのではないでしょうかということであります。もちろん、授業の質も上げていく、これが大変重要でありますが、それを受ける学生のモチベーションを上げる。

 そのためには何が一番特効薬になるかというと、企業の採用の仕方なのであります。要は、企業に大学の授業の評価、これを活用することを必ずやっていただく。そうすると、学生は大学の授業に対して真剣に取り組むようになります。大学の授業に真剣に取り組むようになれば、今度は教授も真剣にいい授業を提供することができる。レベルの高い授業を提供することができる。

 そして、大学は、いい授業を提供するようになれば、それが企業から評価されるようになり、ブランドになっていきます。それは、先ほど申し上げたように東京の大学だけではありません。地方の大学にとってもいいブランドができ上がってくるわけです。広島大学の工学部はすばらしいじゃないか、こういうのがあって初めて地域の大学の魅力も出てくるんだというふうに思っております。

 それによって、また学生は面白い授業がふえるということでさらに意欲的になっていく、こういう正のスパイラルが起こせるのではないかというふうに考えております。

 ちょっといろいろなお話をしましたけれども、こういったことが、我々現場からすると必要な観点、大学改革に対してもう一つ加えてもいいのではないかという観点でございます。

 これまでのお話をお聞きいただいて、下村大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

下村国務大臣 おっしゃっていることは、大局観としてはその通りだと思いますが、順番がちょっと違うんじゃないかというふうに私は思って聞いておりました。

 小林委員はNTTドコモの出身ということですが、NTTドコモが、本当に大学の今の評価、それを尊重して学生を採るのかということについては、私は多分採らないんじゃないかと思うんですね。つまり、象牙の塔にやはり大学は成り下がっているのではないかと、あえてそういう言い方をするんですが。

 やはり、社会の必要なニーズに合った、大学は教育と研究ということですが、本当にそういう教育をしているのかどうかということが問われると思います。それが結果的に、相対的に世界における我が国の大学の地盤沈下にもつながっている部分があって、日本国内だけの他大学との競争ではなくて、今、学生は、まさにグローバルな発想で、日本国内においても行きたい大学は必ずしも国内の大学じゃなくて、世界の中でどこを選ぶかという時代に、もうステージが次に移ってきていると思うんですね。

 そういう中で、就職においても、企業は、そういう本当に真に自分の企業に必要な人材をどう採るか、それは単に国内だけではなく、世界という視野の中でより優秀な人材をそれぞれの企業がどう採るか、そういう時代の中、大学の評価をもっと企業が尊重すべきだということではなくて、そもそも企業が求めるような人材育成を大学教育の中でどうするかという、大学側がやはり今問われているのではないかというふうに思います。

 それだけ、学生を送り出す大学が改めて教育内容の改革にさらに努力をし、先ほど大学ガバナンス改革というのがありましたが、ガバナンス改革、それから教育のその中身、そのことによって真に必要な人材を、これは企業だけじゃありませんけれども、社会に対してどう送り込むかということについて、大学がしっかり検討していただかないと、生き残っていけない、もうそういう時代であるということを大学側にはぜひ認識してもらって、結果的にそれが、社会に有能な人材を送り出すための教育研究機関としてあってほしいというふうに思います。

 相対的なお話については、おっしゃるとおりだというふうに思いますが、まずは大学が自己改革をどう進められるかが問われていると思います。

小林(史)分科員 ありがとうございます。

 本当におっしゃるとおりだと思っていまして、私がこの道に進んだのも、その思いが一番強かったわけであります。なので、ぜひ大学の内容を、やはり社会で活躍できる内容にしていただきたい。ただただ暗記をするとか、専門性ももちろん重要なんですが、では、どこに向かって専門性を深めていくのか。これは、キャリアビジョンを描いた上で本来は選択をしていくべきだと思いますが、こういった部分もまだまだ教育が足りないというふうに思っています。

 ただ、加えてぜひお考えをいただきたいのは、そういった授業を提供するようになったときに、それに対して学生がどれだけ意欲的に取り組んでいくか、ここのモチベーションをどうやってコントロールするかということも同時に取り組んでいただきたいというふうに思っているんです。

 大学は、ぜひ変わらなければなりません。ただ、企業はそれを育ててくれるのをただただ待っていて、それに文句をつけるだけでいいのか、ここの態度も改めなければいけないのではないかと思うんです。

 要は、学生を育成するということは、もちろん大学の責任でもありますけれども、その中に実はステークホルダーとして企業も参画をしているんだという認識を持っていただいて、そういう学生を評価するんだというメッセージングをしっかり出していただくということが大事だと思うんです。

 要は、こういう大学でこういう授業を受けた人を私たちは求めているんだ、こういうメッセージングがあるからこそ、学生はそういう企業に入りたいから大学のこういう授業を受けたい、そしてこういう人間になっていきたいというモチベーションも湧いてくるんだと思うんです。

 そういった意味では、ぜひ全力で大学の改革を進めていただくとともに、同時に、こういった企業への強力な働きかけもお願いできないかなというふうに考えています。

 これは、非常に難しい話ではなくて簡単な話だと思っていまして、要は、企業さんが早く大学の成績評価をとっていただくとか、五分でいいので、面接で、大学の授業は何を頑張ったか聞いていただくだけなんです。それだけで学生に対して非常に大きな波及効果があります。あの企業は大学の授業について聞く、それだけで授業に対しての意欲は一段階変わってまいります。

 そして、もう一ついいことがあるのは、現時点で、もしNTTドコモが大学の評価を今すぐ採用基準にできるかというと、できません。それはやはり評価が曖昧だから、信じられないからというのがあります。

 ただ一方で、本当に正直に彼らが答えてくれるならば、苦手なことに対してどうやって取り組むかという姿勢は知ることができます。何を頑張ったかという質問をたくさんするわけです。苦しいとき何をやったか。これは、やりたいことに対してどれだけ意欲的に取り組むかという答えは出てくるんですが、苦しいときにどれだけ頑張るかというのは、わからないんです。現実、入社して三年ですぐやめていくような社会人が多いというところですが、こういったところの評価にもつながると思っておりますので。

 就職の時期をおくらすに当たって、四大臣から申し入れがありました。こういった形で、できれば経済団体に対して、まず第一歩として、この成績評価、せめて成績表を最初にとりませんか、こう言うこと。もしくは、五分だけでいいので聞きませんか、こういう申し入れだけで学生として大きく変わってくる。

 ぜひ、ここを御理解いただいて御検討いただければというふうに思っております。なかなか難しいところかもしれませんけれども、これは本当に影響があることだというふうに御理解をいただければと思っております。

 次に、今度は、大学の教育、その前の教育内容自体について、少しお話を移したいというふうに思っております。

 お伺いしたいのは、国際バカロレアについてであります。こちらについても私は強い関心を持っております。

 先ほどありましたとおり、多くの社会から、やはり生きていく能力が必要だと。課題に当たっていく、そして課題を発見していく、もしくはグローバルに多文化の中で生き抜いていく、こういう力をつけていく上で、この国際バカロレアは大変意味があるものだというふうに思っておりますが、この国際バカロレア教育を日本国内で推進していく意義について教えてください。

下村国務大臣 その前に、さっきの御意見は、どこかやはりひっかかるんですね。国が就職の後ろ倒しをお願いするということは、学生がやはり大学でできるだけ長い間勉強する時間を確保してあげたいということで、それで、結果的にそれが社会や企業のためになるということで企業に後ろ倒しをお願いしました。

 一方で、大学の評価を企業がぜひしっかりと評価しろということを国が大学に言うことについては、それは企業からしたら余計なおせっかいだと、私は率直に言って思いますよ。

 つまり、どんな人を採用したいかどうかは、やはり企業の判断なんですね。その企業が生き残るかどうかということについては、いかに企業にとって優秀な人材を集めるかということについては、その企業のそれぞれの判断で、それを国が、大学の成績をぜひちゃんと評価しろということを、企業側に就職協定と同じように申し入れするというのは、私はちょっと違うんじゃないかというふうに思います。

 それは、やはり、まず大学側が努力してもらいたいということもあると思いますし、もちろん企業も、大学の四年間の学生がどんなことを学んだかということは正当に評価してもらいたいと思いますが、ただ、学校の成績をもっとしっかり企業が評価しろということを国が言うことは、ちょっといかがなものかというふうに率直に思います。

 それから、国際バカロレアの件でありますけれども、国際バカロレアは、これからの我が国を支える人材の育成の観点から非常にすぐれたプログラムであり、これは、日本再興戦略において、国内の認定校等を二〇一八年までに二百校、現在十九校ですけれども、大幅に増加させるなどの目標を掲げております。

 この国際バカロレアを我が国の高校等に導入する意義は大きく三つあると思います。

 一つは、その教育理念や手法が課題発見、解決能力、それから論理的思考力、それから英語力を含めたコミュニケーション能力など、グローバル化に対応したスキルを身につけさせることを重視し、学習指導要領が目指す生きる力の考え方とも多くの点で合致をしている。そして、我が国におけるグローバル人材育成に直接的な効果があると考えているという点であります。

 それから、二つ目には、国際バカロレア資格は、国際的に通用する大学入学試験として、海外の有力大学において、入学審査等に広く活用、重視されている点であります。

 これまでの日本の高校生にとっては、日本の大学に入学してから海外留学するというのが普通でありましたが、国際バカロレアを通じて、高校卒業から直接海外大学に入学するという選択肢が広がるということであります。

 最後に、我が国の初等中等教育及び大学教育改革に資するという点があると思います。

 国際バカロレアの特色的なカリキュラムや、双方向型の授業などの手法が我が国の学校現場で広く実践されることは、特に、高校の質の一層の向上に寄与すると考えられるほか、また、多様な人材の確保が図られ、我が国の大学の活性化に寄与するものであるというふうに考えておりまして、その推進に積極的に取り組んでいきたいと考えております。

小林(史)分科員 本当にありがとうございました。時間が過ぎましたので、最後、一言だけということで。

 就職の件、正直にお話をいただいて、正面からお話をいただきまして、ありがとうございました。国際バカロレアについてもう少しお伺いしたかったんですが、一点だけ、これも御要望というか、御検討いただきたいというのが、どうしても、グローバル教育というと、地域の保護者の方にとっては、大事な子供たちを育てたら海外に出てしまうのかとか、また、東京に出ていっちゃうんじゃないか、こういう意識につながるところがあります。

 本来は、生きる力をつける大変重要な教育だと思いますので、正しい認識を日本じゅうに広めていただく、こういう部分での取り組みもぜひお願いをして、私からの質問を終わらせていただきたいと思います。

 本日はありがとうございました。

萩生田主査 これにて小林史明君の質疑は終了いたしました。

    〔主査退席、あかま主査代理着席〕

あかま主査代理 次に、小松裕君。

小松分科員 自由民主党の小松裕でございます。本日は、質問の機会を与えていただきましたことに感謝を申し上げます。

 きょうは、スポーツに関連する事項に関して、オリンピックの強化策、また、長野オリンピック、十六年たっているわけでありますが、そのレガシー、施設の有効活用などについて質問させていただきます。

 ソチ・オリンピックが閉幕いたしました。御存じのとおり、日本選手団は、合計八個という、海外で行われた冬季オリンピックでは過去最高の成績を残した。また、メダルをとることができなかった選手たちも、我々に大きな感動を与えてくれました。

 最高の滑りで満足のいく演技から涙した上村愛子選手、そして、ショートプログラムでの失敗をしっかりと受けとめて、わずか一日で体も心も立て直して最高の演技をした浅田真央選手、七度目のオリンピックでついに個人のメダルを獲得して、まだまだ上を目指したいというコメントをした葛西紀明選手、本当に胸を打ちました。やはり一流選手はすばらしいなと改めて感じた次第であります。

 我が地元長野出身の選手たちも大活躍いたしました。本人がしゃべりましたのでお話しするわけでありますけれども、直前の入院そして病を乗り越えてスキージャンプ団体で銅メダル獲得に貢献した飯山出身の竹内択選手、そして、ノルディックの複合個人で二十年ぶりのメダルを獲得した渡部暁斗選手など、スポーツの価値、そしてスポーツのすばらしさを改めて実感した大会だったと思います。

 三月七日からは、引き続いてソチ・パラリンピックが開催するわけでありますけれども、再び日本人選手たちの活躍を応援したい、その気持ちであります。そして、これからも、スポーツの力を社会の力にする、この取り組みに力を注いでいきたい、そのように改めて感じる次第であります。

 それでは、今回のソチ・オリンピックでありますが、選手たちの活躍の陰にはさまざまな要因があったというふうに思います。細かな分析はこれからということになるんだろうと思いますけれども、国として、今回のオリンピック、どのような支援を行ったのか、また、これからの冬季オリンピックに関してのスポーツの強化に関してどのように考えているか、お聞かせください。

下村国務大臣 小松委員は、国会議員になる前、国立スポーツ科学センタークリニック長もされていたということで、今回のことについても貢献をされたのではないかというふうに思います。

 御指摘のように、今回のソチ・オリンピックは、メダル獲得総数それから入賞総数ともに長野大会に次ぐ史上二番目の成績であり、高く評価できる結果だと考えます。これまでの各選手、各競技団体の努力、それから競技力向上施策がこのような結果になったということについて、評価をしたいというふうに思います。

 文科省としては、これまで、日本オリンピック委員会への補助、それから国立スポーツ科学センター、ナショナルトレーニングセンターなどの整備を通じて、各競技団体が行う選手強化策に対する支援を行ってまいりました。

 また、今回のオリンピックは、国の実施するマルチサポート事業の一環として、冬季大会としては初めて、スポーツ医科学、情報面等からの総合的な選手をサポートするための拠点であるマルチサポートハウスを設置した大会でもありまして、私がソチに視察に行って一番最初に行ったところがその場所でもございました。

 このマルチサポートハウスでは、各競技団体からの要望や冬季競技の特徴を踏まえ、メディカルケアや疲労回復のための温浴、映像分析による選手等へのフィードバック、それから、用具整備を初めコンディション調整や疲労回復等に配慮した食事の提供など、サポートがきめ細かく行われておりました。

 さらに、文部科学省では、女性アスリートの競技力向上を図るため、女性アスリートの産後、子育て期のトレーニングサポートなど必要な支援を行っているところでありまして、母親がアスリートとしてやっていくのは大変なので、ぜひ続けてほしいといった選手の声、これは、きのう、文部科学省の大臣室に報告に来られたときにカーリングの小笠原選手が直接私に対して言ったことでもございます。こういうふうな取り組みも今回の成績につながったのではないかと思っております。

 今後は、JOCや各競技団体において、今回の結果について具体的な分析、検証等を行うこととなるというふうに聞いておりますが、それを踏まえつつ、国としても、国立スポーツ科学センターやナショナルトレーニングセンターなどの選手強化の環境の整備、マルチサポート事業等について、今後のさらなる強化充実、さらには助成金のあり方等についても、多角的に支援体制について考えてまいりたいと思います。

小松分科員 大臣、私のことまで御紹介いただきまして、ありがとうございました。

 私は、八年間、国立スポーツ科学センターのクリニックでスポーツドクターとして選手たちをサポートするということをやってきたわけでありますけれども、それで、自分がその力になった、そんなことは全く思っていないんですが、ただ、私自身、選手たちをサポートする、そしてたくさんの結果を残して、そしてそれをたくさんの人が見て、日本人みんなが、スポーツはすばらしいな、スポーツの価値を感じて、それを社会の力にする、そのことを目的に八年間そこで仕事をしてまいりました。

 今お話があったマルチサポートハウスも、オリンピックではロンドン・オリンピックで初めて設置されたわけでありますが、私もロンドン・オリンピックに日本選手団の本部ドクターとして帯同いたしました。同時に、選手村のすぐ近くにあったロンドンのマルチサポートハウス、そこも利用させていただいて、明らかに選手たちの力になったなというふうに感じているところであります。

 このような強化の取り組み、それは単にメダルをたくさんとるということだけではなくて、それが最終的に国民のためになる、そういった意識で強化をぜひお願いしたいなというふうに思っております。

 強化策に関しましては、メダル獲得のための選択と集中、そんな言葉も今回報道では幾つか出てまいりました。そういった観点も大事であるとは思いますけれども、一方、さまざまな選手たちに接してきた私としましては、やはり、スポーツ本来の意義や、そして長い目で見た強化策、こういったことを考えた場合には、裾野に対する支援というのも大変大事なのではないかなというふうに考えておりますし、そういったことこそ国が手を差し伸べるべきことなのかなと感じています。

 今回のソチ・オリンピックでは、そり競技、ボブスレー、スケルトン、これは余りいい成績を残すことができなかったわけでありますけれども、このようないわゆるマイナー競技の選手たちが、厳しい環境、そして十分な資金もない中で一生懸命頑張ってきたという姿も見てまいりました。

 今回のソチ・オリンピック、スケルトンで、越和宏さん、監督としてオリンピックに行ったんですが、三回のオリンピックに出て、中年の星と言われて一時話題になった越選手であります。今でも覚えているんですが、国立スポーツ科学センターのクリニックでオリンピックに行く前のメディカルチェックをするんですが、Tシャツがワッペンだらけなんですね。つまり、あれだけマスコミに騒がれても、資金を集めることができずに、そして自分でいろいろな会社を回ってお願いして、その会社のワッペンがもう山ほどついている、その姿を今でも思い出すわけであります。

 スケルトンの選手たちが練習をしますのが、私の地元である長野市浅川にありますボブスレー・リュージュパーク、スパイラルであります。ここは、十六年前の長野オリンピックの会場として使われたわけでありますが、アジアで唯一の中核拠点として、将来のジュニアの育成、そして競技力向上のためのナショナルトレーニングセンター競技別強化拠点に指定されているわけであります。

 また、本当に長野でいろいろな方と接して感じるんですが、十六年前の長野オリンピック、この心の遺産、レガシーがずっと引き継がれているなということをさまざまな場面で感じます。

 このスパイラルでも、近隣の住民の皆さんが中心になって、地域の宝であるこのスパイラルを守るために、そして盛り上げていくために、さまざまな活動をしておりますけれども、浅川スパイラル友の会といったものを組織しまして、地域の小学生たちと一緒に草刈りをしたりとか掃除をしたりとか、そういったボランティア活動を続けているわけであります。

 また、長野市にはもう一つ、スピードスケートの会場だったエムウェーブという場所があるんですが、そこでも、エムウェーブ友の会の皆さんが今でも活動を行っています。

 昨年の暮れ、ソチ・オリンピックのスピードスケートの選考会がこのエムウェーブで行われたんですが、そのときに実際に会場に行ってまいりました。やはり印象に残っているのが、エムウェーブ友の会の皆さん方が、例えば駐車場の整理だったりとか受付だったりとか、つまり、その大会を見ることもできないのに、一生懸命裏方としてボランティア活動を支えている。

 お話をしますと、長野オリンピックでボランティア活動をした、これが日本のスポーツを支えているんだ、日本の選手たちを我々が支えているんだ、そういう気持ちで、十六年がたってもこのボランティア活動がずっと引き続いているわけであります。また、一校一国運動というものが長野オリンピックから始まりましたけれども、それもいまだに続いています。

 こういった、オリンピックから十六年たった今でも脈々と引き継がれる長野オリンピックのレガシー、これをさまざまな場面で感じるわけであります。

 二〇二〇年に東京オリンピック・パラリンピックが決定いたしましたけれども、二〇二〇年で終わりにするのではなくて、その遺産、心の遺産ですね、レガシーをどうやってつなげていくか、こういったことも、スポーツの力を社会の力にするために大事なことであるなというふうに感じるわけであります。

 このように、冬季のオリンピックの種目の強化のため、そしてオリンピックのレガシーを引き継いでいくため、このためにスパイラルやエムウェーブなどの既存の施設をしっかりと支援していくということも大事ではないかなというふうに考えるわけでありますけれども、その点についてどのようにお考えでしょうか。

久保政府参考人 オリンピックのレガシーを引き継いでいくことは大事なことだと思いますし、それから、マイナー競技に対する支援というようなことも大変大事なことだと思っております。

 一般的に、オリンピックに向けての選手強化という意味では、JOCあるいは競技団体において具体的な強化計画を策定して、戦略的に競技力の向上に取り組んでいるところでございますし、それを踏まえながら、国におきましては、メダル獲得が期待される競技を指定しまして、マルチサポート事業などを実施しているところでございます。

 この事業の選定に当たりましては、オリンピックの期間ごとに、こういう競技を指定するとメダル獲得が近いということを第三者により選定しながら、その後で、具体的に種目が決まった後は、レガシーも踏まえて、それからいろいろな状況も見ながら、公募によって具体的なものを決めていくわけでございます。

 そういう意味で、ナショナルトレーニングセンターの競技別強化拠点施設ということで、東京のナショナルトレーニングセンターだけにおさまり切らないものを、各地で、それぞれのレガシーも踏まえながら、既存施設を利用していくということを施策としてとってきているわけでございます。

 今後、選手強化に当たりましては、そういう意味で、質の高いトレーニングを積むことができますように、今先生おっしゃられたようなレガシー、既存施設も十分活用しながら、関係機関、団体と連携協力して選手強化に取り組んでいきたいと考えているところでございます。

小松分科員 ありがとうございました。

 遺産というと、何となくオリンピックの負の遺産のようなことがマスコミでよく騒がれることがあるんですが、やはりすばらしい遺産がいっぱいあると思うんですね。

 そういった施設に関しては、地元としては、財政も苦しいという状況の中、施設の維持に四苦八苦している、こういったような状況も実際はあるわけでありますけれども、選手の強化のため、そして、オリンピックの遺産を負ではなくてすばらしいものとして捉えて、そしてこれは、財政的というよりも、地方も国もお互いに知恵を出し合って、既存の施設をどのように活用していくか、こういった有効活用をしていくためのことを一緒に考えるということがとても大事なんだろうなというふうに考えております。

 そのためにも、今後、国としても、手を差し伸べてというか、お金の面だけではなくて、知恵を出す、こういった強化にも結びついて、地元が考えろというのではなく、お互いに考えて知恵を出し合っていく、そんなことが必要じゃないかなというふうに思っておりますし、また、私自身も、その間に入ってしっかりと取り組んでいきたいというふうに思っております。

 最後に、夏のオリンピック・パラリンピック強化に関すること、高所トレーニングのためのナショナルトレーニングセンター、これに関して質問をさせていただきます。

 現在、我が国は、競技別強化拠点になるんでしょうか、ナショナルトレーニングセンターとして、高所トレーニング施設は二カ所指定されていると思います。飛騨の御嶽と蔵王ですか、この二カ所が指定されていると認識しております。

 しかし、私もトップアスリートにずっとかかわってきたんですが、陸上であるとか水泳の選手が強化のために高所トレーニングをするということがあるわけでありますが、日本のその施設を使っているという認識が余りないんです。実際には、アメリカのボルダーであるとかフラッグスタッフ、そういったところに行って高所トレーニングをする。フランスにも、フォンロムーというんですね、そういうところでも選手たちが高所トレーニングの練習をしていたというふうに記憶しております。実際、遠征費も含めて多額な費用負担になるわけでありますけれども、これは、適当な高所トレーニングの施設、拠点が日本にないということであるというふうに感じておりました。

 高所トレーニングというのは、それだけの効果を上げるためにはある程度の標高がなければいけませんし、それから、しっかりとした施設もなければいけません。宿泊施設も含めて、人が集まって長く住める環境がなければいけないわけであります。

 また、私もこれにちょっとかかわったというか、二〇一二年、ロンドン・オリンピックの前に、ダーレオーエン選手という北島選手のライバルだった選手ですけれども、フラッグスタッフの高所トレーニング中に急死したという事件がありました。日本でも、中国での高所トレーニングで大学生が急にお亡くなりになるという事故があったというふうに記憶しておりますけれども、高所トレーニングの施設というのは、ただ施設があるだけではなくて、医学的にもしっかりとそれをフォローできる、そういった体制が必要なわけでありますし、実際、ダーレオーエン選手の急死した後には、高所トレーニングにドクターについてきてほしい、こういった依頼を水泳連盟から受けたこともありました。

 そういった意味で、そういった施設、それから、これから東京オリンピックを開催する、また、交通の利便のいいところに日本の高所トレーニング施設をつくるということが作戦としては大変大事なのではないかなというふうに考えています。

 東京オリンピックを迎えるに当たって、その年の前からたくさんのスポーツ関係者が日本にやってくることが予想されますし、世界からトップアスリートや関係者を日本に呼び込むための施設にもなる。つまり、日本人選手が日本で高所トレーニングをするだけではなくて、世界じゅうから高所トレーニングのために日本にやってくる、こういったことが大事でありますし、これは、政府が進めるインバウンドにも合致するのではないかなというふうに考えております。

 実際、長野県は高所が多いですから、長野県内でも高所トレーニング拠点をつくろう、こういった動きもあるわけでありますけれども、このような現在の日本のNTCとしての高所トレーニング施設の現状、そして、日本として新たに拠点を整備する必要性があると私は考えておりますけれども、その点についてどのように国として考えるか、お答えください。

久保政府参考人 今先生御指摘の高地トレーニング施設、御指摘いただきましたように、現在、日本には、飛騨御嶽高原高地トレーニングエリアと蔵王坊平アスリートヴィレッジ、これは山形県でございますが、それを高地トレーニングのナショナルトレーニングセンターの競技別強化拠点として指定いたしまして、トップレベル競技者が同一の活動拠点で集中的、継続的に強化活動を行うような環境を現時点では整備しているところでございます。

 二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、さらにそれを充実したり、新たなところにつくりたいという意欲のある自治体、熱心に活動されておられまして、私もお会いさせていただいた自治体もございます。今後、国内にそういった高所のナショナルトレーニングセンターを新たに設置していくことについてどう考えるかということにつきましては、もう少し、アスリートの意見、あるいは、その維持費を含めて自治体でどういうふうに全体の収支バランスがとれるか、さらに、強化策としてどういうふうにそれぞれの陸上なり水泳なりでお考えか、さらに、費用対効果も考えた上で、今後十分検討していく必要があるとは思っております。

 関係機関、団体の意見も踏まえる必要がございますので、国内の高地トレーニングエリアを活用しながら、今後、関係機関、団体と連携協力した上で選手強化に取り組んでまいりたいと思いますけれども、この問題につきましては、お時間をいただいてよく詰めさせていただきたいと思うところでございます。

小松分科員 ありがとうございました。

 高所トレーニングのNTCは二つあるわけですけれども、たしか蔵王に関しては標高がそれほど高くなかったというふうに記憶しておりますし、本格的にトップアスリートが高所トレーニングを積むことができるような環境、そして今、日本の二つの高所トレーニング施設にはプールがないですよね。そんな関係で、一昨年、競泳もロンドン・オリンピックで大変たくさんメダルをとったわけでありますけれども、競泳の選手たちの高所トレーニングの拠点ということも含めて、先ほどもお話ししましたが、日本の選手だけではなくて、世界じゅうのアスリートが日本にやってくる、そういった環境をつくる土台が日本にはあると思います。先ほどお話ししたように、医療の面に関しても、高所で安心してトレーニングができる、この医療環境に関しても日本の医療はトップレベルであります。そういったことをぜひ作戦として考えていただきたいなというふうに思います。

 時間が少し余りましたので、今回のソチ・オリンピック、私が考えたスポーツの課題を幾つかちょっとお話をして、質問を終わらせていただきたいと思います。

 本当に、今回も、たくさんの報道、選手たちのすばらしさを報道してくれたと思います。しかし、ずっと選手たちと接していますと、本当にオリンピックの時期だけなんですね。つまり、特に冬の競技というのはなかなかマスコミが取り上げることがない。四年に一遍のこの時期だけ取り上げる。彼ら、彼女たちのすばらしさをしっかりと伝えるということも私は大事なのかなと。これは、国として何ができるか、私も考えてみたいと思いますけれども、スポーツの力を日本の力にする、こういったことに向けて、スポーツのすばらしさをしっかりみんなに知ってもらう、こういう広報的なことも大事だなというふうに改めて感じました。

 そして、先ほども越選手の話をしましたけれども、私も、オリンピックその他、五回オリンピックに帯同いたしましたけれども、世界の選手たちそれから指導者と話をしていて一番感じますことが、スポーツ選手、オリンピック選手が諸外国では大変リスペクトされているんですね。一回オリンピックに出ただけで、本当に、経済的な面だけではなくて、尊敬されている。それが日本ではまだ少し足りないのかなというふうに考えます。

 それに関しては、やはりスポーツのすばらしさとかスポーツの価値というのを社会がまだ認識していないという面があるんだろうなと。ですから、そこら辺も我々の仕事でありますけれども、スポーツの価値をみんなが理解する社会、これをつくっていかなければいけないというふうに思います。

 一九六四年、昭和三十九年に一回目の東京オリンピックがありました。そのときは日本じゅうが熱狂したわけでありますけれども、一回前の東京オリンピック・パラリンピック招致のときに、たしか支持率が五五%だったと思います。つまり、四十年近くたって、あれだけ盛り上がった支持率がそこまで下がってしまった。それこそが、スポーツの価値を何となく認識できない社会になってしまったのかな、そんなことも感じるわけでありまして、二〇二〇年、先ほどもレガシーというお話をしました。オリンピックを開催したら終わりではなくて、それから先も、スポーツの力を社会の力にする、この取り組みは必要だと思います。高齢化社会、健康長寿という面に関しましても、スポーツの力は大変大きいと思います。

 東京オリンピック・パラリンピック、オリパラを契機に、これから、スポーツ庁の設置を含め、国としてしっかりと力を入れていただくことをお願いして、私自身もそれにしっかりと取り組むことをお約束して、私の質問を終わりにさせていただきます。

 ありがとうございました。

あかま主査代理 これにて小松裕君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

あかま主査代理 休憩前に引き続き会議を開きます。

 主査が所用のため、その指名により、私が主査の職務を行います。

 質疑を続行いたします。玉木雄一郎君。

玉木分科員 民主党の玉木雄一郎です。

 きょうは、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 文科大臣には、いつもお忙しいところ、予算委員会でもお世話になりまして、ありがとうございます。

 私は、下村文科大臣が青少年の育成にとりわけ熱心に取り組んでおられることについては、心から敬意を表したいと思いますし、尊敬を申し上げております。その意味で、きょうは、子供の健康のことについて、二、三、質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 実は、私の地元の選挙区にある三木町というところで、これは一九八七年からでありますけれども、四半世紀も前になりますけれども、そのころから子供の血液検査による健康診断ということをされておられます。これはもともと校医だった松原先生という方が始められて、最初は公的なお金を出してもらえなかったもので自費でこれを出して、血液をとった後のちょっとした食べ物なんかを出したり、いろいろなことをして、自分が診ている子供たちの健康状態の把握というものを科学的に進めてこられた、そういう取り組みを長年されておられます。そういったことが少しずつ広がりまして、今、小中学校、三万五千八百名程度のデータ蓄積が行われているということであります。

 このデータを見ますと、驚いたことに、一九・五%、小中学校ですよ、子供の約二割が高脂血症だったというデータが出ております。そして、六・七%が肝臓の機能、つまり、肝機能に異常があるという子供たちが一割弱いるということであります。

 ただ、子供のうちですから、こういう結果をお父さん、お母さんに見せると、これはいかぬということで、食生活の改善なども、親御さんも協力をいただいて、一生懸命、子供の健康を守ろうということで、今まで意識しなかった御家庭の中での、食事を少し変えたり、食材を変えたりとか、そういったことをすることによって、三カ月も親も一緒になって家族ぐるみで取り組むと、四割ぐらい、半分ぐらいの子供たちはその状況がたちどころに改善するというようなことも出ているようであります。

 ただ、放っておくと、そのまま、脳卒中になったり、心筋梗塞になったり、大人になってからもそういう予備軍としてなってしまいますので、やはり子供のうちからそういった現状のチェックとそして対策を打っていくことが必要だというふうに思います。

 最近出た本で、子供の食卓の写真を撮って、今こういう子供の食卓になっているんですよということを、私、ちょっと本を見たことがあるんですけれども、お菓子だけとか、コーラとちょっとした菓子パンだけとか、まあ、全部が全部そうじゃないんですけれども、最近、お父さんもお母さんも忙しくて、十分、朝食をつくって子供と一緒に食卓を囲むといったようなことがやはり少なくなってきているんだというふうに思っております。

 ただ、先ほど申し上げたように、子供のかなりな人数がいわゆる生活習慣病あるいはその予備軍になっているということは、私は非常に大きな問題だというふうに思っています。特に肝機能に異常があると、我慢ができなくなったり、疲れやすくなったりして、机にずっと向かうことができないとか、あるいは切れやすくなるとか、場合によっては、それが最近問題のいじめとかそういったものの遠因にもなっているのではないのかというような分析や調査もございます。

 そこで、私の地元の香川県では、二十四年度、昨年度から予算をつけまして、全県で小学生の血液検査による健康診断ということを実施するようになりました。

 実は、香川県は讃岐うどんを食べますので、うどんというのは小麦粉と塩と水でつくりますので、非常に食後の血糖値が上がりやすいというようなことも言われていて、実際、成人の糖尿病のワースト一位、二位をいつも争っているというようなこともあります。もちろん、うどんが悪いわけじゃないんですが、やはりバランスよく食べないとか、どうしてもうどんだけに偏ってしまうということがあって、県全体として糖尿病をどう克服していくのかということも大きな課題です。

 私、財務省にいたので、医療費の話をすると、やはり一人、糖尿病患者、特に人工透析を始める患者が出ますと、地域における財政負担もこれはもう膨大なものになってくるわけですね。

 ですから、そういうトータルで国民全体の健康、あるいは、これから高齢化社会における医療費ということを考えても、子供のうちから、子供が一体どういう健康状況にあるのか、そして、そのことに対して家族ぐるみで、地域ぐるみで、それを生涯の一つの対策として早いうちからみんなで考える、そういう対応をとっていくことは、極めて私は意味のあることだと思っているんですね。

 そこで、大臣にお伺いしたいんですけれども、もともと三木町という小さな町で始まった取り組み、そして、これが今、香川県に広がりつつあるということなんですけれども、こういった子供の生活習慣病あるいは健康状態について正確に把握する、そして、それに対する適切な対策を打っていくという観点で、全国規模でこうした子供の血液検査といったことを取り組むべきだと考えるんですけれども、その点について、大臣のお考えはいかがでしょうか。

下村国務大臣 今、玉木委員がおっしゃったように、香川県で血液検査をされているということについては、その結果を踏まえて、注目に値することだと思います。

 ただ、財務省御出身ということですから、費用対効果の中でどうなのかということについては、やはり慎重に考える必要があると思います。

 そういう観点から申し上げれば、文部科学省的に申し上げますと、知育、徳育、体育と、食育が今入っていますが、食育をすることによって、いかに生活習慣病をなくすかという観点が、より健康的な生活を送っていく上で、長期的に見て効果が上がることではないかというのは、一つの考え方としてはあるのではないかと思います。

 それから、もう一つは、最近の文部科学省の調査によって、今、中学生の女子生徒の四分の一は、一週間のうちの運動時間がゼロ分なんですね。全く運動していない。これが、将来生活習慣病になる可能性が非常に高くなる要因だと思うんですね。

 ですから、本当は、クラブ活動、運動部、部活に入ってスポーツをやれば一番いいんでしょうけれども、しかし、文化系のクラブ活動もありますから、全部が全部運動部というわけにはいかないかもしれませんが、一週間に運動する時間がゼロ時間が二五%もいるということは、これはやはり問題だというふうに思います。もっと運動を習慣化させるような、そういう学校としての取り組みが必要ではないかと思います。

 今の御指摘ですが、学校における血液検査については、平成二十四年五月に今後の健康診断の在り方等に関する検討会を設置し、御議論いただきました。昨年十二月にまとめられた意見書において、血液検査を全国一律で行うことは困難であるとの結論が出されました。その理由は、学校の健康診断は学校生活を送るに当たり支障があるかどうかのスクリーニングであるため、血液検査はその枠を超えている、それから、医療行為である血液検査を全国全ての学校で行うこととするのは現実的でないなどの意見が出されたということであります。

 費用対効果ということでは分析されておりませんが、文科省としては、こうした状況を踏まえると、学校の健康診断において全国一律に血液検査を実施する状況にはないと認識しております。

玉木分科員 大臣、私も、この今後の健康診断の在り方等に関する検討会の意見というのを見せていただきました。血液検査のところは、今大臣がおっしゃったように、全国一律に行うことは困難だというふうに書いてあるんですけれども、さっき費用対効果の話をされましたけれども、例えば香川県全部でやるときに、県の予算として使うのは一千二百万円なんですね。高級車一台もかからないぐらいのお金でできるということなので、かつ、その効果といえば、その子供のその先の人生全てを、ある意味、そこでちゃんとしたことによって正しい食生活を身につけるとか、あるいは、お金の話ばかりして恐縮なんですけれども、そういった医療費の抑制に結果としてつながっていくとか、広い観点からしたら、私は、むしろ費用対効果は非常に高い事業じゃないかなとも思うんですね。

 ただ、文科省の観点からいうと、学校教育の中で医療行為を入れていくということについては、これはなかなか、確かに難しい側面もあるのかもしれませんけれども、少し省庁の垣根を取り払って、厚生労働省的な観点や、あるいは財務省とか、あるいは地方自治を所管しておられる総務省とか、こういう、少し省庁の縦割りを超えて考えると、実は非常に効果があるし、効果的な、ある意味、安く上がる取り組みではないのかなということも思うわけであります。

 私も今、中学生の息子がいる親なんですけれども、やはり、何を食べるのか、どうやって食べるのか、誰と食べるのかということは、大きな教育という意味ではすごく大切なことではないかなというふうに思うんですね。

 ですから、今、食卓が荒れていることが家庭の乱れであり、そして、そのことがひいては社会の乱れにつながってくるのかなというふうに思っております。基本的なエチケットやマナーやルールや規律といったようなことは、やはり食卓を囲むこと、一緒に食卓を囲んでいる人に不快な思いをさせないというふうなことも含めてすごく大切だと思うので、食をどう改善していくのかということが、今おっしゃったような食育ということも非常に大事だと思うんですね。

 ただ、その前提として、データがあれば、食育ということをより効率的、効果的に進めていくこともまたできるようになってくると思うんです。食育というのは、私も大賛成でありますけれども、では、そのことを通じて一体具体的にどういう効果が上がったのか、あるいは、それがなければ生じていたマイナスをどうやって防ぐことができたのかということは、やはりエビデンスがあって政策的なものを打っていった方が効果が高いというふうに私は思っておりますので、これは、下村大臣のリーダーシップ、また関係大臣のリーダーシップでぜひ進めていただければなというふうに思います。

下村国務大臣 エビデンスということですが、厚生労働省的に言えば、子供に対する血液検査を全国一律に展開することについて、現時点でエビデンスが不足しているという見解を聞いております。

 ぜひ玉木委員にはお願いしたいんですが、費用対効果ということであれば、香川県で血液検査をした結果、相当年数がかかる話ですから、若年層といいますか、二十とか二十代で実際にどの程度医療費関係が減ったのかとかいうようなデータを香川県の方で調査していただいて、その関連の中でこれだけの効果があるという実証的な部分が出てくると、相当説得力が出てくるのではないかと思いますし、そういうこともあわせてお願いできればというふうに思います。

 また、食育については、おっしゃるとおり、食べるマナーだけでなく、バランスよく、どう体に、健康にいい食べ方をするか、それから、孤食、自分で一人で食べている、今そういう子供が多い中で、できるだけ、みんなそれぞれ忙しいんですけれども、少なくとも週に一回や二回は家族全員で食卓を囲むような、そういう習慣づけというのは大変重要なことだというふうに思いますし、そういうことも含めて、トータル的な食育として進めていく必要があるというのは御指摘のとおりだと思います。

玉木分科員 ありがとうございます。

 小さな香川県ですので、調査能力も、あるいはサンプル数も少ないなと思うので、むしろ国としても、それは厚生労働省ともよく連携をとってやっていただければなというふうに思っております。

 ちなみに、過去、厚生労働省の予算で、千葉県、富山県、鹿児島県の高校生千三百人を三年間調査した結果、約四割の子供たちが生活習慣病あるいはその予備軍だというような、これは厚生労働省の調査であります。

 ですから、こういったものが、少しサンプル的に一部分であったりとかばらばらとやられているものがあるので、やはりこういったことを少し省庁横断的に一度サンプルをしっかりととってみるということは私は非常に大事だというふうに思いますので、ぜひ、子供の健全な育成ということを支えていくという観点から、これは引き続き、大臣にも関心を持っていただいて、取り組んでいただければなというふうに思います。

 続きまして、ちょっと健康に関する話に移りたいと思います。

 同じく地元の話で恐縮なんですけれども、今、三木町の松原先生が血液検査を始めたということを申し上げましたけれども、同じ三木町に香川大学の農学部というのがございまして、そこの何森教授が長年研究をされてきた希少糖というものがございます。

 漢字で書くと希少糖、レアメタルが有名なんですけれども、レアなシュガーなんですね。自然界にほとんど存在していない糖質でありまして、非常に存在が少なくて有名な糖として、虫歯にならないようなキシリトールという糖質等もあって、これは世界じゅうで、虫歯の予防効果だということで非常にヒットした糖でありますけれども、同じように、自然界には余り存在していないんだけれども、そういったさまざまな効果があるということで最近注目されているのがこの希少糖でございます。

 これは何で注目されているかというと、普通、甘いものを食べると、さっきの糖質もそうですけれども、食後の血糖値が上がるわけですね。この希少糖は、むしろ血糖値の上昇を抑制したり、脂肪の蓄積を防いだりする効果があるということで、この少子高齢化、みんながダイエットをしようというような、健康志向のある中で、夢の糖とも言われております。

 この希少糖について、大臣、通告はありませんけれども、今までお聞きになったことはございましたか。

下村国務大臣 いや、ありませんでした。

玉木分科員 希少なので余り知られていないので、これは、いかに希少なレアなものをメジャーにしていくかということがこれから大切かなというふうに思っていますけれども、さっきの健康の話の延長でいきますと、本当に糖尿病を患っている方あるいはその予備軍の方というのは非常に多いので、これをどうしていこうかということは、これからの国家戦略としても大きいと私は思っているんですね。

 この希少糖は、正式名称はD―プシコースというふうにいいまして、自然界にほとんど存在しないということで希少糖ということなんですけれども、先ほど申し上げた香川大学の何森教授が、これまで四十年以上にわたって研究を続けてこられたんですけれども、今から二十年ちょっと前の一九九一年、キャンパスの中にあった、たまたまとった土の中から偶然見つけた新種の酵素が、自然界にほとんど存在しない希少糖の大量生産を促す酵素ということで、大きなブレークのきっかけになったわけであります。

 それまで、アメリカの会社が少量生産して、一グラム五万円とか、物すごい高かったわけです。ただ、この酵素を発見したことによって、大量生産の道が初めて開かれるということになったわけですね。

 先ほど申し上げたように、血糖値の上昇を抑えたり、あるいは脂肪の蓄積を抑制したりということで、しかもノンカロリーということで、夢の糖で、私もその高いものを少しなめてみたことがあるんですけれども、甘さが少し普通の糖より抑え目で、ちょっと爽やかな感じがするので、これは商品としても、うまくやればヒットするなというふうに思います。

 まずお聞きをしたいのは、これは、実は国からも長年にわたって科学技術の研究として御支援をいただいていた、その結果が一つあらわれているという側面もございます。少しデータ、ファクトを確認したいんですけれども、これまで、希少糖の研究に対して、いつごろから、トータル今どれぐらい研究開発費の支援、援助を国としてしていただいていたのか、この点について教えていただければと思います。

川上政府参考人 文部科学省の支援の内容につきまして御説明申し上げます。

 先生、先ほどから何森教授の名前をお出しになっておりましたが、何森教授が長年取り組んだ大学の成果を、香川県が中心になりまして、産学官が連携してこれを実用化していこうということで進められてきたわけでございますけれども、文部科学省といたしましては、まず、平成十四年度から五年間、知的クラスター創成事業で総額二十三億七千四百万円の御支援をしてございます。

 そして、知的クラスターが終わりましてから一年置いて、平成二十年度から三年間、今度は都市エリア産学官連携促進事業というのがあるわけでございますが、ここにおきまして総額五億三千百万円、総額で二十九億円の支援を行ってきたところでございます。

 この支援によりまして、研究はかなり進展をしたというふうに評価をされてございます。例えば、希少糖に関する香川大学発ベンチャーが設立され、希少糖の量産体制、一般向けの先行販売開始が進むなど、実用レベルの開発段階まで来たというような評価がなされているところでございます。

玉木分科員 ありがとうございます。

 今、御答弁を事務方の方からいただいたように、国としても支援をいただいたということで、これは香川県民としても感謝を申し上げなければいけないと思うんです。

 私、注目しているのは、こうした、今後大きな発展の可能性のある事業が地方の大学発で出てきているということはすごく意味があることだと思っていまして、もちろん、国家戦略特区とか、上からこういうものをどおんとやろうということも科学技術の研究においては大事かもしれませんけれども、地域の大学、知の拠点としてそれぞれにあるそういった、特に地方にある国立大学なんかで出てくる開発の芽を逃さず酌み取って、それにまた産官学のそういった連携もとりながら適切な支援を及ぼしていくということは、私、この希少糖は大変うまくいったのかなというふうに思っています。

 これから、日本の本当の成長戦略というのは、こういう新しい研究開発、しかもそれがビジネスにつながっていく、そして、それが健康とかそういう社会に存在している問題を直接解決していけるようなものを支援していくということが極めて大事だというふうに思っておりますので、ぜひ、ボトムアップ型で出てくる研究シーズを逃がさないようにつかまえて育てていくということを、これは文科大臣、科学技術の司令塔ということで、つくることももちろん大事だと思うんですけれども、それぞれにある地域から出てくる研究開発のニーズということをしっかりとつかまえて、そして、適切な支援をしていただけるようにお願いできればというふうに思っておりますけれども、大臣、これはいかがでしょうか。

下村国務大臣 それはおっしゃるとおりだと思うんですね。

 ですから、あらゆるレベルで、産学官の連携の中で、なかなか研究、シーズレベルで、それが実際ニーズになるかどうかわからないような部分については、そういうマッチング等を工夫しながらバックアップする体制をさらにしていきたいと思います。

玉木分科員 それで、これはかなり商業ベースにもう乗り始めていまして、テレビなんかでも取り上げられて、かなり品切れ状態とか売れ筋になってきているんです。

 これは、先ほど申し上げたように、いろいろな今日本の社会が抱えている健康とか高齢化に対して、非常にいい解決策を提供することができるし、結果として、産業にもつながっていくし、新しい成長産業の種にもなるというふうに思うので、こういったことをぜひ進めていくことに引き続き、事業化が済んだら今度はもうこれは経産省の世界です、初期の段階は文科省ですといってまた縦割りが出てくるのではなくて、末永く見守っていただくということを文科省にもしていただきたいなというふうに思います。

 というのは、先ほど、三木中学校で健康診断、血液検査の話をしましたけれども、香川大学農学部のある三木町にある平井小学校という小学校で、この希少糖を使ったシロップをデザートにかけて、給食でこれを食べる。今度はお浸しに使っていこうとか、いろいろな取り組みを学校給食の中でも取り入れよう。

 単にそれが健康にいいだけではなくて、自分たちの地域でこういう、場合によっては世界に通用するような発明が行われて、自分たちがこうして享受できるんだということがまた誇りにつながりますし、郷土を愛する気持ちにもつながっていくので、こういう学校給食での利用であるとか、そういったことについても取り組んでいけば、どんどんどんどん広がっていくのかなというふうに私は思っております。

 それに関して、きょうは経産省にも来ていただいているので、少しお聞きしたいんですけれども、これは成長戦略としてもすごくいいと思うんですよね。

 だって、例えば、虫歯の発生を抑制するという糖が出てきて、多分キシリトールの市場というのは、世界的にもう数兆円産業になっていると思いますよ。片や今度は、この希少糖は、もう世界的な、私だって気になりますよ、これから、健康、特に糖尿病にならないか。あるいは、その予備軍だと言われる人は、今、三十代の糖尿病の人あるいは予備軍というのはふえているんですよね。

 ですから、もう三十代、四十代のころから健康に留意して、将来、病気にならない、あるいは医療費がかからないようにしていくためにも、これは単に文科省とか研究開発ですとか、あるいは健康だからといって厚生労働省ととどまらないで、オール・ジャパンで、とりわけ、新しい成長産業の芽を見つけて支援しようとする経済産業省としても、事業化が見えてきてもなお、やはりこういったものは国家戦略として、健康増進産業という新しいカテゴリーをつくるぐらいの気持ちで応援をしていくことが非常に私は意味があると思っているんですけれども、この点について、いかがでしょうか。

加藤(洋)政府参考人 経産省に対しまして多大なる御期待をしていただいて、身に余る光栄でございます。

 まさに委員御指摘のとおりでございまして、キシリトールの例は、経営学の言葉で申しますとバリュープロポジションといいまして、今までない価値を新しい商品の中に体化して、そして商品性を上げていくということだと思います。

 この希少糖類につきましては、先ほど御指摘ありましたように、既に四百品目ぐらい市販されているということで、かなりの広がりを持ってきているわけでございますけれども、しかしながら、地域の企業にとりましては、販路の開拓でありますとか商品性をさらに上げていくということがすごく大事なことでございますので、例えば、この希少糖類に関しましては、私どもで、平成二十四年度の補正予算の中で、地域力活用市場獲得等支援事業というのを措置させていただきました。そして、香川県の商工会連合会さんの方で高松市内にアンテナショップを設営されまして、この希少糖類の製品のPRをされる、それを御支援申し上げたところでございます。

 それから、これも御指摘いただいておりますけれども、肥満を抑制する効果等々ございまして、長寿社会における健康問題に資するということでございます。

 今、事業者さんの方で特定保健用食品の表示許可の方を消費者庁の方にお出しになっておられまして、これの審査中と聞いております。とれますと、先ほどのキシリトールと同じように、商品の中に一つの新しいそういう価値がある意味ではオーソライズされていくことにもつながっていくということでございまして、そういうことを踏まえて、販路開拓のための支援措置をさらに私どもとしても進めていくといったようなことが非常に大事ではないか、そういうことで、関係機関とも連携しながら、普及促進に私どもとしても尽力してまいりたいと考えております。

玉木分科員 時間になりましたので終わりますけれども、下村大臣、本当に子供の健康というところにぜひひとつ注目をして、私は、下村大臣が道徳とかを進めておられるのは正直賛同しております。しかし、子供の心と体が健全でなければ、教科を単に入れるだけでは本当の意味での子供の心というのは育っていかないと思うんですね。ですから、今、食卓が乱れていると言われていることが多いと思いますので、そういったところにもぜひ文科大臣としてもこれまで以上に配慮いただいて、先ほど申し上げたような子供の血液検査の全国展開も含めて、引き続き検討していただきますことをお願い申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

あかま主査代理 これにて玉木雄一郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、小川淳也君。

小川分科員 民主党の小川淳也でございます。

 玉木委員と同じく、香川県から参っておりまして、私の家庭内の食卓にも希少糖のシロップを置いております。常に調味料として使うんですが、大臣、ぜひ今度、お土産がてらお持ちさせていただきたいと思いますので、ぜひ御愛用のほどお願い申し上げたいと思います。

 昨年、文部科学委員会でお世話になりました。そのときに教育委員会制度改革を議論させていただき、そして今般、委員会を離れましたけれども、野党案の提出者として引き続きこの問題にかかわらせていただく。昨年もお伺いしたんですが、一年たちましたし、いろいろ動きもあるようですので、ちょっと基本的なところをお聞かせいただきたいと思います。

 まず、昨年の十二月に中教審の方で教育委員会制度の改革案が示されたようであります。我が党の案も、正直近いところもありますので、必ずしも政府案、中教審案だけというわけではないんですが、少し平たい目で議論させてください。

 中教審案は、教育委員会を諮問的な位置づけにしているというふうに受けとめております。なおかつ、教育行政に責任を持つ教育長が、ある意味、知事や市長の部下としての位置づけになる。この辺、非常に、権限と責任の明確化という意味では一つの考え方だと思いますが、一方で、もう一つの要請である政治的な中立性という観点からしますと、やや心配される構図でもあるのかというふうに感じております。

 そこで、先週出されました自民党さんの小委員会の案でありますが、引き続き教育委員会を執行機関のままに置くということが前提になっているようにお見受けしております。それから、責任の所在という意味では、教育委員長と教育長を一つの者に委ねる、統合する。これは、責任、権限の所在のあり方の改善策としては一つの案という気がいたします。さらには、議会の代表者や首長さんとの間で、総合教育施策会議ですか、こうした横断的な会議体を設ける。他党の案で非常に恐縮なんですが、私どもからすれば他党の案なんですけれども、ある意味、中教審案よりも穏健で、なおかつバランスのとれた案を提示されたなというふうに受けとめています。

 大臣、この自民党案、先週出たばかりでありますが、中教審案と比べてどのように受けとめておられるか、まずお聞かせいただきたいと思います。

下村国務大臣 御指摘のように、中教審の案は、いわゆるA案、これは、今御指摘があったように、教育委員会を執行機関から諮問機関、そして、首長が権限、責任を持って教育長の罷免、任命権を持つということですが、しかし、中教審の中でも、これは政治的中立性が担保されるのかという危惧の中でB案も提案されたということでございます。

 自民党の中で小委員会をつくって、これについて、今国会で閣法として出す法律案について御議論いただきました。自民党の中にもいろいろな意見があるということですね。これは、政府・与党が一体となって法律案を国会に出す必要があるというふうに考えて、与党の中で議論していただくことをお願いしました。その中で、自民党案の中で今御指摘のような案が出てまいりました。

 ただ、これは非常に概括的な案でありまして、詳細については今与党の中で協議をしている最中でございます。その中で、御指摘の総合教育施策会議、それから教育委員会も、執行機関ではあるけれども、以前の教育委員会と同じ性格を持つというよりは、総合教育施策会議とどうすみ分けをするのかということが今後の与党協議になってくるのではないかというふうに思います。

 ただ、今後、今の御指摘の自民党の改革案ですが、一つは、教育長とそれから教育委員長が一本化する、このことによって教育行政の責任の明確化を図る。それから、民意をより一層反映するために、首長が教育行政に積極的に関与できる仕組みを設ける。こういう方向性については、これは私も、ぜひそういう方向性でという思いを持っておりますので、そういう中で、さらに今後、詳細については与党の中で議論されるというふうに思います。

 議論の結果を踏まえて、文部科学省として、法制局と相談して、どう具体的に総合教育施策会議それから教育委員会を法律の条文の中に書き込むかという作業がその後出てくるかと思いますが、最終的には、一番ベストな案を国会に提出し、そして、既に民主党それから日本維新の会からもこの教育委員会抜本改革案についての議員立法案が出されていますから、国会の中で積極的な御議論をしていただきながら、よりいい教育委員会制度改革案について、ぜひ国会で決めていただきたいと考えています。

小川分科員 ありがとうございました。

 個人的には、現在時点において大臣の御所見、御所感がA案に近いのか、あるいはB案なのか、そして自民党案に対してどういう感想をお持ちなのか、極めて興味深いところではあります。しかし、今の慎重な御答弁を拝聴していましても、これから与党内の議論を見守られるということでしょうから、ここにとどめたいと思います。

 やはり、私自身も、政治的な主張というのは、百八十度異なるものから、非常に特徴的な主張をされる政党も、日本国内にもさまざまな政党があります。都度選挙で選ばれた、もちろん一定の民意を受けて地域行政の責任を担われるということは当然でありますけれども、そうはいっても、一時、いっときの政治姿勢によって、教育内容、あるいは子供たちに与えるさまざまな、勉学に限らず思想的背景も含めて影響を必要以上に及ぼすということに対しては、やはり謙虚な姿勢が必要ではないかという気がいたしております。

 そこで、ちょっと斜めからの質問になります。

 国内にはさまざまな政党の背景を持った首長さんがおられることも事実でありまして、仮にA案、一番首長さんの影響がダイレクトに及ぶ仕組みをとった場合は、恐らくですが、自由民主党さんあるいは大臣御自身の感性からしても、かなり対極にある主張をされる首長さんもおられると思います。そういう方々が教育に対して一定の姿勢を示されるということも、広く、容認という言い方が当たっているかどうかわかりませんが、そこは寛容なる思考でもってこの中教審案を議論するということでいいのかどうか。そこをちょっとお聞かせいただきたいと思います。

下村国務大臣 どんな制度でも、パーフェクトな制度はないと思うんです。この制度になれば全てが解決して全てがうまくいくということではなくて、どんな制度改革をしても、やはり改善点というのは常にあるものでありますから、この案だったら間違いなく、抜本的な、戦後における教育行政における課題が新しい教育委員会で全て解決できるというような案にするような努力は今する必要があると思いますが、しかし、中教審が出されてきたA案、それからB案、それから与党で協議をしていただいていますから、ぜひこれは、協議中ですので、ベストに近づけていただきたいと思いますが、これによって全部解決するというのはなかなか難しい部分があると思います。

 今の御指摘の部分は、そういうこともあるので、自民党案の中でも、当然、議員の選挙区の状況によって、A案についてはやはり賛否が分かれているというのは、それは地元のそういう選挙区事情によるところがあるものですから、このことによって必ずうまくいくということではないので、しかし、もしA案ということであれば、中教審でも議論になっていましたが、やはり政治的中立性をどう担保させるかということが課題である案であるということは、間違いない事実だと思います。

小川分科員 ありがとうございます。ある意味、安心をいたしました。

 やはり、まさにそこだと思うんですよね。地域の政治事情によって極めて制度設計が変わってくるということ、あるいはそのことに対して賛否が余りにも分かれるということ自体が、構造として、教育の内容なり方向性に、影響を限定的にしなければならないというところが、やはり議論の一つの出発点になければならないんだろうと思います。またこれは追って文部科学委員会の中で、野党案の提出者として、ぜひ積極的に議論に参加をさせていただきたいと思います。

 加えて、昨年もお聞きしたんですが、先ほど玉木委員の方から、道徳の教科化については評価しているというお話がございました。確かに、いじめ問題を初めとして、校内での生徒、あるいは場合によっては先生方も含めた倫理観、モラルの問題、公共心、さまざまな奉仕の心、自己節制、いろいろな価値を学校教育においても重んじていかなければならないということについては、私自身も当然賛同、賛成であります。

 ただ、一方、先ほどの教育委員会の議論にも絡むんですが、果たして為政者の側がどれほど完全な存在であり、道徳観や価値観を含めてそれを一方的に教えられる立場であるのかという観点から議論しますと、少しそこには、同様に、謙虚な姿勢といいますか謙抑的な姿勢が一方で必要ではないかという気もいたしております。

 そこで、一年たって、いろいろと答申案も出たようであります。最終的に、道徳の教科化については今後どういう方向感で臨まれるのか、その概要をお述べいただき、今私が申し上げたような観点から注意すべき点についても、ぜひあわせて述べていただきたいと思います。

下村国務大臣 二月の十七日に、中央教育審議会に対して、道徳に係る教育課程の改善等について諮問を行いまして、道徳の時間を特別の教科として位置づけること等についての検討をいただくことにいたしました。

 これは今後の検討課題ですが、昨年、教育再生実行会議で、道徳について、第一次提言を受けました。これを受けて、文部科学省の中で道徳教育の充実に関する懇談会を立ち上げまして、心のノート、民主党政権のときは使われていませんでしたが、自民党政権のときに使われていた心のノートを、二十四年度の補正予算で手当てをしてすぐ使うようにいたしましたが、私はこれは十分でないと思いまして、この四月からは、「私たちの道徳」という、お持ちになっていますか。そうですか。それをぜひ読んでいただきたいと思うんですね。これを読んでいただいて、小川委員が本当に危惧されるような、児童生徒の内心の自由に踏み込んだ内容になっているのかどうかということですね。

 私は、そういうような、何か国家主義的な教育ということではなくて、これは、国とか民族とか、それから時代を超えて、人が人として生きるために必要な規範意識や社会性、思いやりの心など、豊かな人間性を育むということを観点として、一人一人が自分に自信を持って、また、社会の責任ある構成者として幸福に生きる基盤をつくる上で不可欠なもの、そういう観点で、とりあえず教材としてつくりました。

 これについても、かつての道徳の中では、指導書の中で、例えばこの道徳の教材のこの物語はこういうふうに読んで受けとめるべきだというようなことを、一方的に、講義授業の中で教師が述べるという指導書だったんですが、これも、道徳の時間に、例えばその物語を読んで子供たちがそれぞれどう感じたかという中で、あるべき道徳というのを子供たちみずからが考える。その中で、道徳というのは、一つのとり方だけでなく、いろいろな、多様なとり方がある、それが反社会的、非社会的なとり方でなくて、あるべき形ということであれば、その道徳の中で、そういうことを子供たち同士に議論させるという視点の中での教材として位置づけました。

 もちろん、この教材は、今後、道徳が特別な教科として位置づけられた場合は、中教審の答申によりますが、できましたら、ほかの教科書と、つまり、ほかの教科の教科書と同じように教科書として位置づける。その場合は、民間から、いろいろなところから、これこそは目指すべき道徳の教科書だというもので参入していただいて、その中から、検定、採択という形で、よりいいものをそれぞれの教育委員会が判断していただくような形。

 それから、特別なというのは、つまり、絶対評価、相対評価というのはなじまない。これは、教師が、例えば一人一人の児童生徒に対して、その生徒のいい点を記述的にどう書くかとかいうようなことについて、今後、中教審で議論していただきたいというふうに思っておりますが、小川委員が危惧されるような点で道徳を導入するというつもりは全くないということでございます。

小川分科員 ありがとうございます。

 確かに、おっしゃるように、非常にバランスのとれた内容だなというふうに、私も、これは、こういう御質問を申し上げている以上、一方的、一次的判断をする権能は私自身にもないという前提でお尋ねすべきだと思うんですけれども、それにしても、小さいころから道徳の教科、時間ってどうだったかなと思い出しながらきょうに備えたわけでありますが、非常に一人の人間として胸を打たれるような話ですとか、あるいは、模範にすべき先人のいろいろな生き方ですとか、そういうものを教わった時間だったなという気がしております。

 ただ、少し社会的な観点で、大臣、御賛同までいただけるかどうかはあれなんですが、今御答弁の中でおっしゃった道徳教育の意義、これは大臣の諮問書の中にも記されている文言でありますが、道徳教育の意義は、国や民族、時代を超えて普遍的なものであるというくだりがあります。今、大臣が御答弁になられた一節と符合する表現、これは確かにそうだと思うんです。

 しかし一方で、時々の道徳観は、恐らくその国や民族、あるいは時代背景、さまざまなことによって、その必要性なりは普遍的なのかもしれませんが、よって立つべきところは若干なりとも変化してくるものなのではないかという気がいたします。

 その意味で、一つ、社会政策として多様性を尊重するということが、実は最大の生存戦略ではないか。これは社会制度もそうです。あるいは、こうした価値観教育もそうかもしれません。ある意味、多様性を尊重していくことが最大の将来に向けた生存戦略だというような意味合いも含めて、ぜひ、これは大変深い議論になりますけれども、今後とも、大事な論点として扱わせていただきたいと思っております。

 それで、大臣、まさにこれを持っていますかというお尋ねをいただきまして、持っているわけでありますが、ぜひ、あわせて大臣に御紹介したいのが、ひょっとしたら、きのう事務局の皆さんとの打ち合わせの中で指摘しましたので、お耳に入っているかもしれませんが、これは、北欧、スウェーデンの社会科の教科書であります。

 確かに、この道徳教科書、教材の中にも、「社会に生きる一員として」という大きな一節があるんですね。御自身のこともそうだし、他者のこともそう、しかし社会の一員だという大きな一節があります。

 恐らくその観点から、これから日本社会として子供たちにどういうことを教えていくかというのは、思想、信条にかかわることももちろんそうかもしれませんが、もっと実務的な観点からぜひ子供たちに対する教育を広げて深めていく必要があるのではないかという意味で、ちょっとだけお時間をいただいて御紹介させてください。

 これは、目次をぱらぱらとめくりますと、例えば、犯罪ということがどういうことか。大臣、お持ちですか、ありがとうございます。

 目次の一章の二を見ますと、犯罪とは何かというような節があります。それから、おめくりいただいて、二章は、自分自身の哲学的な思考を支えるような教科内容になっています。

 おめくりいただくと、この辺から興味深いんですが、アルコールとどうつき合うか、麻薬の問題をどう考えるか、そして、働いて収入を得るということはどういうことか、さらに、物を買う、それからクレジット、クレジットカードを使う、クレジットで物を買う、そして広告とどう向き合うか。さらに四章は、市議会、地域社会とのかかわりです。さらに最終章に至っては、離婚、病気、あるいは年を重ねるということ。

 これらは、人生全体を、個人の物語として、あるいは社会とのかかわりにおいて、いろいろなリスクを含めて等身大で伝えようとしている努力が非常に見てとれる。私、小さいころを振り返ったときに、この観点から教育を義務教育課程において受けたことはなかったなという気がすごくした部分であります。

 関連して、今後のいろいろな教育方針、大きな問題をお考えいただくに当たっては、こうした観点もどこかで議論したなということをぜひ頭の片隅に置いていただきたいと思いますので、御紹介だけ。

 コメント、ございますか。

下村国務大臣 委員から指摘をされて、私もけさちょっと見させていただきましたが、どちらかというと、これは道徳というよりは、社会科、公民、我が国ではそういう位置づけだと思います。

 多分同じような問題意識だというふうに思いますが、自民党の中でも、これは中学生版ですけれども、高校における公民という新たな教科をつくって、そして、公民としてどうあるべきかということを、別に国がこういうふうな義務があるとか言うレベルだけじゃなくて、権利も含めて、人が人としてどうこの日本社会で生きていくかということを公民としてきちっと教えるべきではないか、こういうことが自民党の中でも提言されていまして、それを受けて、今後省内でも検討していきたいと思います。

 それから、道徳ですけれども、我が国ほど多様な価値観を容認している国はないというふうに思うんですね。私は、今後のあるべき道徳ということを考えると、日本というのは特定の宗派とか宗教にとらわれない国なわけですね。ほかの国は何らかの国教に影響されたりしていますけれども、個々にはそれぞれ宗教、宗派を持っておられると思いますが。ですから、道徳については、古今東西の宗教を含めたいいとこ取りができると思います。

 ですから、今後、日本であるべき道徳の教科書ができて、それがほかの国でも活用できるような、そういうモデルとなるような道徳の教科書をぜひ目指していくことが、日本における、多様な価値観がある国だからこそできるというふうに思います。

 それから、済みません、さっき、公民でなくて、新たな教科としての公共というのが自民党の中で提案されているということで、公民というふうに言ったということなので、公共に訂正させていただきます。

小川分科員 大変丁寧な御答弁をありがとうございました。

 本当にこれは議論がなかなか、どこかに終着するということはもしかしたら永遠にないような課題かもしれませんが、だからこそ、国会を初めとして前向きに、建設的にぜひ今後とも議論させていただきたいと思います。

 最後、もう時間が限られましたが、青少年の保健医療についてちょっとお伺いさせてください。

 先ほど玉木委員から御指摘があったと思いますが、香川県内で子供向けに、生活習慣病の予備軍をきちんとスクリーニングしていくという取り組みが積極的に行われているということは御紹介いただいたと思います。なかなか、見解として、これを直ちに全国にということではないのかもしれませんが、これもまた一つの知恵としてぜひ頭の片隅に置いていただきたいということをお願い申し上げ、お尋ねはもう絞りたいと思います。

 私自身も、地域の医療機関で小児科医療に携わっておられる先生から具体的な御指摘をいただいています。

 子宮頸がんのワクチンは再開される方向だということが最近報じられました。その事実関係を教えてください。そして、このお医者様の主張なんですが、現在、女児を対象にしているこの予防接種、これは性感染症とも絡む話であるだけに、なおさら男児にも接種すべきではないかというような提言をいただいております。そこで、それについてどう考えるか。さらに、既に男児に対しても接種している国が先進国であると思いますが、その事実関係。

 最後に、ちょっと時間の関係でまとめてのお尋ねで恐縮ですが、せんだって、日本社会で成人男性に風疹がはやるということがありました。大臣も御記憶だと思います。これはまさに三十五歳から五十一歳の男性、これは私該当するんですけれども、小さいときに風疹の予防接種を受けなかったということが影響しているのではないかと言われています。そうしますと、今、子宮頸がんワクチンを女児だけに接種し、男児には接種していない現在の状況が、後々いろいろな影響もあり得ると思いますが、ちょっとこの辺を整理して、絡めて、もうあと三分ぐらいしかありませんが、簡潔に御答弁いただきたいと思います。

高島政府参考人 お答えいたします。

 子宮頸がんの予防ワクチンでございますけれども、御存じのとおり、去年、定期接種化を法律改正でさせていただいたんですけれども、副反応の話が出まして、六月から積極的な勧奨を取りやめているという状況でございます。

 この扱いにつきましては、今、厚生科学審議会の副反応部会で検討いただいております。この中では、いろいろ問題になった症例をよく調べるということで、ずっと六月以来、症例を調べたり、それから海外の事例を調べたり、ワクチンが二剤あるんですけれども、その比較をしたり、そういった調査をしてまいりました。それから、患者を診察している医師などからも御意見を聞いて、今、論点整理を行っている段階でございます。

 それで、一月にも論点整理を行ったんですが、まだいろいろな御意見があるということで、まさにきょう午前中には、海外の学者も含めまして、意見交換会というのをやっております。それから、きょうの午後には審議会を開きまして、またこの扱いにつきまして御議論をいただく予定にしております。

 今後でございますけれども、このワクチンの副反応につきまして審議会の中で報告書をつくっていただきまして、それを踏まえて、積極的な勧奨を再開するかどうか、これを検討していきたいと思っております。

 それから、今は子宮頸がんワクチンにつきましては女性だけに、女児だけに打つということにしております。これは、去年、定期接種としたときに、今現在、日本で若い女性の子宮頸がんの発症がふえているという中で、定期接種化するべきという御議論だったんですが、基本的には、子宮頸がん自体は女性が発症するがんでございますので、当然、女性をまず対象として打つということにしたわけでございます。

 海外での事例でございますが、子宮頸がん予防ワクチンと言われますが、これはHPVワクチンといって、ヒトパピローマウイルスを防止するワクチンでございます。このワクチンは、女性に対しては子宮頸がんにも効きますけれども、男性に対して、尖圭コンジローマ等ということで、性感染症なんですけれども、これも対象になっております。ということで、海外では打たれておりますけれども、子宮頸がんの予防という観点では、日本では女性を対象にしたということでございます。

 一つ、このワクチンは、日本では女性だけを対象に薬事法上の承認がなされていますので、男児に打つということになりましたら、そちらの方の手続もまた必要になってくると思います。

小川分科員 ありがとうございました。

 これは、直ちにということはなかなか難しいかもしれませんが、先ほどの生活習慣病検査と同様、ちょっと長期的なスパンでよくよく状況を御確認いただきたいと思います。

 大臣、本当は時間があればちょっとお尋ねしたかったんですが、この間、ソチ・オリンピックが閉会しまして、私ども一同、非常に大きな感動と興奮を選手の皆さんにいただきました。

 少し驚いたのが、葛西選手が、ビジネスクラスで帰りたかったという御指摘があったんですね。私は、全くそういうことに無頓着だったんですが、ほとんどの選手の方々が行きにエコノミークラスで行かれて、大変長距離のフライトになりますので、果たしてそれでベストコンディションで試合に臨めるのかなということもちょっと気になったりしました。

 もちろん、予算も若干かかることではありますが、東京五輪に向けていろいろな御検討をされる中で、そういうことに関心を持った国民も、ひょっとしたら多かったかもしれないなという気がいたします。

 ここも少し問題意識としてお持ちいただくことをお願い申し上げまして、終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

あかま主査代理 これにて小川淳也君の質疑は終了いたしました。

 次に、中島克仁君。

中島分科員 みんなの党の中島克仁です。

 本日は、質問の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 私は、山梨県の出身で、地元でございまして、今回の雪害、文部科学省には、雪害の交通事情で入学試験を受けられなかった学生の方々のために特段の配慮を御要請等をしていただきまして、本当にありがとうございました。まだちょっとはっきりしていないところもあるかと思いますけれども、今後もぜひ御配慮を要請のほど、よろしくお願いいたします。

 私は、職業はもともと医師でございまして、党の中でも、社会保障、医療や介護を含みます社会保障を専門にやらせていただいておるわけですが、私は、父が高校の教員でもございました。その後、政治家になって、自民党の参議院議員をやっておったわけですが、母も、盲学校の教師をずっとやっておったということで、私は、地元においては、出身高校の校医をやったりとか、看護学校、高校の看護科の授業に行ったりとか、いろいろそういう医療面での教育ということも非常に関心を持っております。

 きょうは、こういう機会の中で、率直な感想というか、本当に基本的なことから、下村大臣の胸をかりると言ってはなんなんですが、お聞きさせていただきたいというふうに思います。

 まず、資料の一枚目、これは改めて出すまでもないものなのかもしれませんが、来年度、平成二十六年度の文部科学関係予算案の構成、円グラフにして出されているものです。

 これは、総額五兆三千億円余り、国公立に対する予算と私学に対する予算配分に随分隔たりがあるなと率直に私は感じるわけです。

 私立学校に対する助成金は、平成二十六年度予算案では、九年ぶりに増額となっている。四千三百五十七億円、全体の八・一%余りですけれども、例年、この配分についてはそれほど大きな変化はないということでございます。

 先ほども申しましたように、率直に、私学に対する助成が少ないんじゃないかなと私は思うわけですが、大臣の御見解をまずお聞きしたいと思います。

下村国務大臣 まず、今回の雪害被害によって大学受験ができなくなってしまった学生に対する救済措置ということで、文部科学省は、改めて、七百八十三大学、全ての大学に対して、十分な対応をするようにということを通知いたしました。

 その結果、ほとんどの大学が対応していただきましたが、残念ながら、四大学が、特別そういう配慮をしないという回答がありましたので、昨日、改めて、もう一度再検討してほしいということを局長名で要請をしているところでもございます。

 それから、この資料一のことについては、おっしゃるとおりだと思います。

 私学助成については二分の一を目指して公財政支出を行うということですが、実質的にはとてもそこまで行っている段階ではない。特に、大学においては一〇%ちょっとぐらいしか行っていないということがありますので、今後、公私間バランスも含めて、私学に対する公財政支出についてはもっとしっかりと対応しなければいけないというふうに思っています。

中島分科員 雪害の被害に対しましては、先ほど申し上げたように、本当にありがとうございます。

 今の御答弁の中で、二分の一という話も出ました。現在、大学、短大、幼稚園は約八割が私立ということになっておりますし、高校も約三割が私立が母体ということの中で、その私立学校の収入は、大学、短大、高等学校でちょっと違うんですけれども、私学の収入のうちの大体五〇から七〇%が生徒の保護者から、要するに、入学金や授業料ということになっておるということなんですね。

 こういう観点からいくと、子供たち目線からいきますと、教育を受ける機会均等、公平性ということからいきますと、例えばですが、私学で独自性を持った学校に行きたいんだけれども、テストで不合格になってしまって行けないということならいたし方ないにしても、その前の段階で、経済的な理由でチャンスさえも与えられないということが起こり得るのではないかと思うんですね。

 これは、高校の学校の学費でいきますと、恐らく県によっても多少異なるかもしれません。平成二十二年度から実施された公立学校の授業料の無償化と、私立学校の生徒へは就学支援金の支給制度が実施されていますけれども、私立学校の生徒、これは山梨県の場合ですが、就学支援金が月額九千九百円として、年額十一万八千八百円支給。県によって違うと言いましたが、これは生徒一人当年額でいきますと、地元山梨では三十四万円程度。そして、初年度の納付金が七十五万円の学校ですと、授業料の補助、先ほどの就学支援金が約十二万円として、六十三万円の差になります。そして、初年度の納付金が百二十万円だと、百万円以上の差になるということでございます。

 先ほども言いましたように、やはり教育の機会均等、公平性という意味でいきますと、その機会さえ与えられないこと、先ほどもお答えいただいたので、それに対する御見解もお聞きしようと思ったんですが、何とか是正していかなければならないという大臣のお答えでしたので、そのような認識だということで理解をさせていただきたいと思います。

 そして、先ほど言った、私立の学校でやはり生徒や保護者の方への負担、その格差が生じているということになりますと、大学におきますと、学部によっても随分差があるんですね。

 三枚目の資料は、「私立大学の各学部における初年度納付金平均額の推移」というものでして、この左下の医歯系学部、これは棒グラフを見ていきますと、年々下がっていると言っても、単位的にほかの学部に比べても非常に高いんですね。平成二十四年度ですと四百七十万円余り。ほかの学部の大体三倍から四倍ぐらいかかるわけですね。そうなっていきますと、先ほども言ったように、一方では、国公立の医歯薬系の学部と私立の医学部、これは偏差値にも随分差があるんです。

 というのは、なぜそんなことを言うかというと、私は実は私立の医学部出身なんです。高校は県立高校でして、私よりも正直たくさん勉強して私よりも成績がよかった子が、残念ながら、国公立の医学部までには達しなかった。一方で、私は、先ほど言ったように、両親の経済力があったために私立の医学部に行けた。そういったことになっていきますと、これはかなり公平感に欠けるんじゃないかと。

 今、一方では、医師不足、医師不足というよりは医師偏在、そんな中で、プライマリーケア医、地域に残ってそういう家庭医をするような医者が足りないと言われている中で、純粋にそう思っている子たちがそのチャンスさえ与えられないというのは、非常に公平感に欠けるのではないかなと。一例を挙げれば医歯薬系ということなんですが、その辺について大臣はどのようにお考えになるか、お聞かせください。

下村国務大臣 まず、高校の公私間格差については中島委員がおっしゃるとおりでありまして、そのために、昨年の臨時国会において、高校授業料の見直し法案を成立させていただいたわけでございます。これによって、公私間格差をさらに是正していこう、特に私立の学校に通っている低所得者層については今まで以上に厚い支援金給付をするということと、新たに給付型奨学金を創設するということを設けたわけでございます。

 今御指摘の私立大学の医歯学部の授業料は、おっしゃるとおり、他学部に比べて大変に高いということで、それだけやはり経済的なハンディキャップで、学びたいけれども学べないという学生がたくさん出てくるような状況というのは本当に是正しなければならないと思います。

 私立大学からすれば、少人数教育の必要性から、学生一人当たりの教職員が特に医歯学部系は多い、それから、実験、臨床等の面で充実した設備等が必要であるということで、他学部より教育費がかかるということであります。私立大学等経常費補助金においては、こうした事情に応じて、他学部よりも多くの額を配分しているところでありますが、まだ十分ではもちろんないわけであります。文科省としては、さらに、奨学金それから授業料の減免等の充実等に努めたいと思います。

 今後、医歯学部の学生の経済的負担の大幅な軽減を図っていくためには、新たに、高校はことしの四月からスタートいたしますが、大学における給付型奨学金の創設、それから、最初に問題提起がありましたが、私学助成のさらなる抜本的な充実など、高等教育予算の大幅な拡充が前提となるわけであります。

 非常に厳しい財政状況でありますが、今、文部科学省の中でも教育における公財政支出を充実するための勉強会を始めておりまして、意欲と志、そして能力があれば、どんな家庭の子供であっても、医歯学部も含めて、チャレンジして学べるような環境づくりのための条件づくりについて、今、文科省でも研究しているところでありますし、できるだけ早くそういう国になっていくような構造改革に向けても取り組んでまいりたいと思います。

    〔あかま主査代理退席、主査着席〕

中島分科員 ありがとうございます。

 先ほども言ったように、私は毎週土曜日は地元に帰ってまだ医者もやっているんですが、十年前に開業した診療所で、その当時まだ小学生だった子たちが高校に入ったり、そんな中で、勉強が好きそうな子には、私の地域は医師不足でもありまして、医者なんてどうだというふうに勧めると、ほとんどの子供たち、親御さんが、最初から、いや、無理だと。経済的にとてもじゃないけれども、医学部なんて最初から頭に入っていないと。いや、そんなことはないんだよ、そうでなければ国公立。いや、そこまでのあれはないしと。

 でも、決して成績のいい子が医師になるということではなくて、やはり、子供のときの体験、おじいさん、おばあさんを最期みとったとか、そういう経験の中から、医師が足りない地域で私は医者を目指したいんだ、そういう子たちにぜひチャンスを与えていただきたい。これは医師だけではなくて、いろいろな分野において、成績がいい子たちに幅が広がるというよりは、志を持った子たちがぜひその目的を達せられる、結果的に淘汰されてしまうことはあるかもしれませんが、しかし、そのチャンスはぜひ与えていただいて、今、そういう力強いお言葉もいただきましたので、そのようにぜひ取り組んでいただきたいと思います。

 一方で、今は国公立と私学ということだったんですが、もう一方で、私立大学も含めた大学と専修学校ですね、ここにもやはり格差があるのではないかなと。

 専修学校に対する予算配分は、先ほど一ページ目の構成図からいきますと、私学助成関係予算、四千三百億円余りの中に含まれるものになっておりまして、全体からいきますと、専修学校への補助金、助成費というのは、施設費、備品費合わせて全体の〇・〇二%程度というような配分になっております。これは、大学への補助金と比較して大変少ないなと。

 これも、専門学校ということになりますと、今、四大学を卒業した後、今の雇用状況から、なかなか正規雇用に至らない、非正規雇用の問題等もあるということの中で、私の地元にも専門学校があって、その専門学校を卒業した子供たちの就職率、高いところですと、ほぼ一〇〇%正規雇用。要するに、地域によって必要な人材、必要な専門職をしっかりと育て上げるという意味では、非常に有用なものだと思うんですね。

 安易に、普通科へ行って、四大学へ行って、そういうものをつくり上げた結果、就職が決まらないという子たちが今たくさんいる中で、一方では、四大学に通いながら専門学校へ通い、資格を取りながら就職に備えるという、そんなことも伝えておられる中で、これは、その重要性、やはり予算配分としてしっかりとつけるべきではないかなというふうに私は感じるわけですが、これに対しての御見解をお願いいたします。

西川副大臣 御質問ありがとうございます。

 中島先生と全く思いは共有しております。特に今、いわば学力の非常に低い大学生の問題とか、そういう中で、本当に学問をしたくて大学に行く子と、そこまではないんだけれども、とりあえず大学へ行っておこうか、そういう風潮を何とかもっとしっかりと変えていきたい、そういう思いは非常にありました。

 実は、自由民主党の党の部会の中の議論でも、それは大変大きな議論として、皆さんで充実した議論をしてきまして、ぜひ、専門的な方向に行く子供には、いわゆる知識教育だけでなくて、もっと、専門の誇りを持った、いわば、物づくり、職人かたぎ、そういう誇りを持った社会的な風潮をつくり上げることが大事だ、本当にアカデミックなものに進んでいく子供と、文科省としても大きく方向を示すべきじゃないか、そういう議論もありました。

 その中で、私も、当時、党の専門学校の副主査をさせていただいておりまして、ぜひ専門学校への予算をふやせという答申もしたんですね。その後、副大臣をさせていただいたものですから、専門学校への予算獲得には文部省挙げて随分頑張ったつもりなんですが、大変厳しい査定の中で。ただ、本当に何年ぶりかでアップをかち取りまして、三十八億という、三十一億から八億ということで、額自体、全体の額は少ないんですが、今までに比べるとかなり予算がふえたかなということで、ささやかではあると思いますが、そういう思いを酌んでいただきたいなと思います。

 その中で、今、実は、高校から専門学校に行く子、あるいは専修学校も片方でありますけれども、それとプラス、やはり社会人の、今先生が御指摘になったように、大学に行きながら専門を身につけるという人や、一度大学を卒業して社会人になった人がプロとしての勉強をしたい、あるいは女性の学び直しとか、そういうことでもって非常に需要が高くなっておりますので、我が国の職業教育の中核として、これからも本当に専修学校、専門学校の重要性を踏まえまして、しっかりと取り組んでまいりたいと思います。

中島分科員 その重要性を認識しておられるということですので、それに見合ったやはり予算配分を今後ぜひ検討していただきたいと思います。

 それと同時に、これは二枚目の資料なんですが、これは進学率の推移ということで、ちょっと細かくて見づらいんですけれども、日本の大学進学率というのは四九・九%。諸外国に比較してちょっと低いんじゃないか、そのようなことも言われておるわけですけれども、今の専門学校、その地域によっても、その職種によっても、その専門性、即戦力として生み出す。高校を卒業した後、上級学校へ行くという観点からいけば、もちろん、諸外国のユニバーシティー、カレッジとかいろいろなさまざまな形態の中で、この進学率にやはり反映させていくべきじゃないか。何も、四大学に行った人たちが上級学校へ進学という意味合いではなくて、やはり専門学校、そういうものに対しても、しっかりと進学率というところに反映させるような位置づけと、先ほどの予算配分も含めてされていくような検討もしていただければなというのは、これは率直な意見といたしまして言わせていただきたいと思います。

 私立、公立、予算配分を見て、先ほど冒頭に話をした内容で、今お答えをいただきましたので、また私としても文科のそういう部分に対してはこれからも積極的に取り組んでいきたいなというふうに思っております。

 きょうも恐らくさまざまな委員会は、教育委員会改革とそれについてということで、私、実は、地元でもよくしている、山梨県で教育委員長をやられた方にもよくお話を聞いておりまして、その辺についても、公平性という観点からちょっとお話を聞かせていただきたいと思うんです。

 今、与野党の中でも教育委員会改革を煮詰められてきておって、鋭意議論の最中ということですが、大津のいじめの問題をきっかけに、首長の権限を強めて、そのような問題があったときに迅速な対応ができるようにと。その趣旨としては非常に私も賛同するところであります。

 ただ、これも率直な疑問といたしまして、教育委員会というのはどうしても国公立に絞られてしまって、当然、私学においてもいじめの問題等はあるということの中で、やはり抜本的に教育委員会、その名前すらどうなのかなというふうに思うわけですが、抜本的な感覚からいきますと、私学も含めた子供たちのためのそういう組織づくり、そういったものが必要なんじゃないかなと私は思うわけですが、大臣の御見解をお願いいたします。

下村国務大臣 まず、進学率ですが、ここに、中島委員が指摘された資料二のところ、これは、おっしゃるとおりに、高専とか専門学校、短大を入れれば七七・九%ですが、これは別に、入れないということじゃなくて、国際標準並みに大学で比べたときに、OECDで我が国がこの数字と。

 ほかの国が高いのは、専門学校等が二年制ではなくて例えば三年制になっているので、大学でもカレッジ等で三年制のところもありますよね。そういう基準に合わせると我が国はそうなるということで、日本が入れて七七・九と言っても、国際基準の中でどうなのかという物差しの中での話ということでございます。それにしても、大学進学率は低いということは事実でございますから、高等教育の質と量をさらに高めていく必要はあると思います。

 それから、教育委員会でありますけれども、現在、各学校の設置主体は、公立学校は、地方公共団体が設置し、教育委員会が管理運営を行う、それから国立学校は、各国立大学法人が設置し、管理運営を行う、それから私立学校は、建学の精神に基づき各学校法人が設置、運営し、各都道府県知事が所管する、そういう構成になっています。

 今回の教育委員会制度改革は、いじめによる自殺事案など教育現場で深刻な問題が起きた場合において、公立学校の設置者たる教育委員会が十分に対応できていない状況を契機として問題提起されたものでございます。

 地方教育行政における権限と責任を明確化し、全国どこでも責任ある体制を築くため、この教育委員会制度の抜本改革をするということでありまして、いじめ問題について国立大学の附属関係の学校や私立学校がどう対処するかということは、それぞれの設置主体の対応ということでありますが、教育委員会というのはそういうたてつけだということについて、制度の問題であるということについては御理解いただきたいと思います。

中島分科員 その件については私も理解はして、あえて質問させていただいたんです。

 冒頭に言いましたように、子供目線、子供の感覚からしてどうかということからの御質問とすれば、これはよく漫画であるように、教育委員会に訴えてやるという何か捨てぜりふみたいなものがありましたが、これは私立の学校の子には通用しない捨てぜりふということになってしまう。

 そして、今こうやって言われておるわけですが、私立の学校は、それはそれぞれでやりなさいという体制の中で、先ほど言った形態的なことは十分、今まで歴史的な背景も含めていけば、もちろんそうだとは思うんです。

 ただ、本気でいじめの問題やそれによる被害をこれから防ごうということであれば、先ほど言ったように、教育委員会改革であれば、組織形態からすればそういうことになるわけですが、もっと統括的に、そういったものをちゃんと国公立、私立も関係なく撲滅していくんだ、そういう意味での組織づくり、教育委員会改革とはちょっと違うのかもしれませんが、そういったことも必要なのではないかなという意味であえて御質問させていただきました。

 ちょっと戻るんですが、先ほどの進学率、その理屈もよくわかっていた上でだったんですが、ちょっと私が言い忘れたことがあって、大学と専門学校の違いということになっていきますと、例えば看護学校ですね。看護大学もあります。一方では、看護専門学校もあります。同じ職種を生み出すのに、大学があり、専門学校がある。

 そういう意味で、例えば進学率というところで、同じ看護師を目指して、看護職になっていく人材を育てる中で、非常にわかりづらくなるんじゃないかなということも含めながら、その進学率のあり方というのは、もちろん国際基準があってということはわかりますけれども、今の御説明をぜひ国民の皆さんにも、大学へ行くばかりが、なぜか進学率として捉えがちな部分もあるんじゃないか。

 そこで、いや、専門学校に行くより、まずはやはり大学に行って、その後というような発想から、結果的に、四大学に行ったけれども、専門性が保てなく就職がなかなかできない。そうであれば、最初から地元に残りたい、地元に残って看護師をやりたいんだという子たちには、積極的に、専門学校に行って即戦力としてやっていけるような環境、そういう認知というか、そういったこともしていただきたいなということで、私もそれはちょっと説明が足りなかったんですが、そういう意味で御質問させていただきました。

 時間ももうないんですが、教育委員会改革については、先ほどの、もっと広い範囲の議論をもっとやってもいいんじゃないかなというところでありまして、うちの党としますと、今回、首長の権限を強めながら対応を迅速にする、その首長の判断にも委ねながら、選択制、首長の権限で教育委員会という組織自体も置かない、別な組織としてやりたい、そういったことも含めて首長の権限を強めていくということは、我が党としてはそういう訴えをしているわけです。

 ほかにもちょっと教育委員会については御質問しようと思ったんですけれども、委員会等始まりましたら、私も出させていただいて、またその辺を質問させていただきたいと思います。

 もう一点、最後にちょっとお聞きしたいのが、これは教育委員会も私学も公立とか全く関係ない話なんですけれども、よく高校野球のときに、高校野球の部員が不祥事を起こして、甲子園に出場できなくなった。これは、主催している朝日新聞とか、そういう所管がありますからそれはいたし方ないのですが、例えば対外試合六カ月停止とか、そういったことも含めて、これは高野連が非常に権限を持っている。

 これは正直言いますと、私だけなんでしょうか、非常に違和感を感じるんですね。高校生活はもちろん三年間しかない中で、例えば百人部員がいる、幽霊部員のような部員が不祥事を起こしたために、ずっと真面目にやっていた部員までもそういう処置を受けてしまう。逆にこれは教育上どうなんだと私はそういう事柄があるたびにいつも思うわけです。

 この高野連、まあ、高野連と名指しでそこだけ言っているわけではないのですが、代表的に、そういったことが多々ある、そういうものに対する、強い権限を持ち過ぎているのではないかなというふうに思うわけですが、大臣の御所見をお願いいたします。

萩生田主査 下村文科大臣、時間が来ておりますので、簡潔に。

下村国務大臣 高校野球それから大学野球を統括する日本学生野球協会では、日本学生野球憲章を定めており、日本高等学校野球連盟に加盟する高等学校野球部の指導者または部員が、同憲章に違反する行為をした場合には、日本学生野球協会が当該野球部に対して処分を行うことができるというふうなものがございます。

 御指摘のような対外試合の出場停止などの処分については、このように、各高校が自主的に高野連に加盟し、遵守することとされる憲章に基づいて、学生野球競技の統括団体である日本学生野球協会が行う処分ということでありますので、これはその組織の中に入れば当然従ってもらうというものであるというふうに思います。

中島分科員 済みません、時間が過ぎてしまって。

 高野連さん、特待生の人数まで決めているということもありまして、そういったことで、今回、教育改革ということであれば、そのようなことも今後御検討いただきたいと思います。

 時間が過ぎてしまって大変申しわけございません。ありがとうございました。

萩生田主査 これにて中島克仁君の質疑は終了いたしました。

 次に、畑浩治君。

畑分科員 岩手の衆議院議員の畑浩治でございます。よろしくお願いいたします。

 まず、やはり復興の観点から何点かお聞きしたいんです。

 かなりローカルな話で恐縮ですが、私の地元、岩手県の沿岸の北部、この前の被災地の一つであって、普代村というところがございます。そこに神楽がございまして、鵜鳥神楽といいますけれども、これの国重要無形文化財指定の見込みについてお伺いしたいと思って、本日来させていただきました。

 実は、復興は、物をつくるとか町をつくるとか、こういうことも重要なのでありますけれども、やはり、地域の文化を復興に生かす、心の復興といいますか、地域の誇りを取り戻させる、こういうことを生かしながら復興していくことが大事だと思っております。そういうことで地域の誇りを持たせる。そのためには、やはり地域の再建に欠かせない柱というのは、祭りとか地域の文化だろうと思っております。

 この中で、普代村沿岸北部には鵜鳥神楽というものがございまして、これの国重要無形文化財に対する熱意というか依頼というか、要望が大変大きいところであります。

 実は、似たような神楽で重要無形文化財になっているのが、宮古市、これはやはり沿岸の真ん中ぐらいにありますけれども、普代村のちょっと南にある。これが国の文化財になっております。この宮古の、黒森神楽というんですが、専門家が言うには、この黒森神楽と文化的な価値は同等であって、これが指定されていないのは何でだろうなという話があります。地元でも、そういうことで、鵜鳥神楽が指定されていないことはちょっと違和感を持って受けとめられている。震災の復興の象徴として、ぜひとも指定して地元を勇気づけてほしいという声がございます。

 専門家に聞くと、文化財的価値としては申し分ないというか問題がないというのは聞くし、事務方からの話を聞いても、そこのところは否定されなくて、問題は巡行の状況ですね。要は、文化財ですから、これはいろいろなところを回って伝承していくということが大切なんだそうであります。その巡行の状況がどうかということを言われます。

 実は、三年前に震災が起こった後、震災が起こったのでやむを得ないんですが、巡行はされていなかったということで、昨年五月に復興特別委員会でちょっとその点を取り上げましたところ、時の谷川副大臣から答弁をいただきました。こういうことだそうでございます。

 「鵜鳥神楽は、東日本大震災の影響により、平成二十四年及び平成二十五年の巡行を自粛している」と聞いていると。「鵜鳥神楽は、権現舞など五十三演目を伝承し、広域を長期間にわたり巡行する点に価値があることから、文部科学省としては、保存の措置を講じる必要があると考えており、来年以降、巡行が再開された際には、伝承状況を確認して、適切に対処してまいりたい」という前向きな答弁をいただきました。

 その後、巡行を再開しておりまして、この一月二十五日には東京の国立劇場で鵜鳥神楽の演目が出されたということで、これは皇太子御夫妻にも、ありがたいことで、御臨席で見ていただいて、勇気づけていただきました。その後も、二月も数カ所、三月も数カ所ということで、いよいよ地域の周辺も巡行が本格化しているところであります。

 そういうことを踏まえまして、現時点での、鵜鳥神楽の国重要無形文化財指定に向けての評価というか、その点を大臣にお伺いしたいと思います。

下村国務大臣 昨年、私、大槌町に行きました。これは畑委員の地元、選挙区に当たるかどうかは知りませんが、ここで、大槌の小学校に行きましたら、郷土の無形文化財等を大切にしようということで、獅子舞等、地域の方々に指導してもらいながら、子供たちが一緒に演じる、それを見させていただきました。

 東日本大震災という大きな被災の中で、逆に郷土愛に目覚めて、そして、伝統文化を大切にしていこうということを大槌町挙げて子供たちに伝えていこう、そういう取り組みをしていることに対して大変に感動いたしました。

 御指摘の鵜鳥神楽でありますが、今お話ありましたが、権現舞など五十三演目を伝承し、広域を長期間にわたり巡行する点に価値があるということから、文部科学省としては、保存の措置を講ずる必要があると考えており、巡行先での伝承状況の調査を行い、その調査結果を踏まえて、重要無形民俗文化財指定の可能性を検討していきたいというふうに思います。

 ぜひ、オリンピック・パラリンピック、二〇二〇年に向けて、文化芸術、日本全体の中で活性化するような形の中で、このような鵜鳥神楽等についても、二〇二〇年だけでなく、何年か前から、オリンピック・パラリンピックに向けたジョイント、地方における伝統、文化芸術まで含めて、企画をしてやっていきたいと思っておりますので、そういう中で、いち早い復旧復興に向けた取り組みの象徴としてもこれを活用するように、ぜひ畑委員からも地元に話をしていただければと思います。

畑分科員 ありがとうございました。

 まさに、最近、道徳とか愛国心の議論もありましたが、私は、地域、身の回りを愛せない人間は愛国心を語る資格がないので、まず身近なところに誇りを持てるかというところだと思います。

 きょうはちょっと議論が違いますが、道徳等も、人をいじめるというのはもちろんいけない、しっかり教育しなきゃいけませんが、その前提として、身の回りの人を大事に、地域を大事に、地域を愛せよというところからやはり始めるべきだと思っておりまして、そういう中で、地域の文化というのは、誇らしく思えれば本当に地域の振興にもなりますし、人の心の教育にもなると思いますので、こういう地域の文化を生かしながらの文部科学政策もまたよろしくお願いしたいと思います。

 次に、話ががらっとかわりまして、今度は最先端の科学技術開発研究というところでございます。リニアコライダーについて議論をさせていただきたいと存じます。

 このリニアコライダー、ILCですが、御存じのとおり、全長三十キロを超えるような地下トンネルをつくって、そこで粒子をぶつけて、宇宙の誕生の謎に迫るという基礎研究であります。これについて、これから日本の基礎研究なり技術開発研究を引っ張るものであって、非常に大きな波及効果が科学的にも技術的にも経済的にもあると思っております。

 そこで、今回、来年度予算案で、これは国として初めてなんでしょうか、国際リニアコライダー計画に関する調査検討費五千万が計上された。国としても調べるということを、第一歩を始めたなと思って、大変評価したいと思います。この五千万の調査検討費の趣旨について伺います。

小松政府参考人 お答えを申し上げます。

 平成二十六年度予算案におきまして、今お話のございましたとおり、国際リニアコライダーに関する調査検討費というものを五千万円計上させていただいております。

 この趣旨でございますけれども、国際リニアコライダー計画、いわゆるILC計画でございますが、これに関しましては日本学術会議から提言が出ておりまして、これを踏まえまして、文部科学省において将来的な実施の可否判断を行う、そういう際の情報、データの収集、分析を行うというものでございます。

 具体的な活動といたしましては、有識者の意見なども踏まえるようにいたしながら、コスト面あるいは技術面でのフィージビリティーであるとか、それから、今おっしゃられました技術的、経済的波及効果等の分析などにつきまして、専門的、技術的な所要の情報、データの収集、分析を行うという趣旨でございます。

畑分科員 実はこれは、昨年八月には、研究者による国際リニアコライダーの国内候補地の立地評価会議があって、そこで国内候補地として北上サイトを最適とするという評価結果がまとまって公表されておりますが、これはこれとして、今後、今言ったように、調査費をとってしっかり検討していくという中で、この国際リニアコライダーの誘致としてはどのような方針で対応していくのか、そして、行程等もあると思うんですが、どのような行程で検討していくか、その辺のところの見込みをお答えいただきたいと思います。

下村国務大臣 御指摘のように、昨年、国際リニアコライダー計画を推進する研究者によって立地評価がなされたことは承知をしております。

 しかしながら、本計画は巨額の経費を要するものであることから、その実施の可否判断に当たっては、一つは、我が国の科学技術・学術コミュニティー全体での議論が必要である、そして二つ目には、米国、欧州における大型実験計画などの国際的動向等を踏まえた検討を行うことが必要であるというふうに認識をしております。

 このため、国際リニアコライダー計画の実施の可否判断に向けた諸課題について、二、三年かけて集中的な調査検討を進めるべきとの日本学術会議の提言を踏まえ、文部科学省は必要な調査検討を進めていくこととしております。

 また、同計画に関心を持つ国、機関との間で、計画の持つ科学的意義や諸課題を議論し、同計画の実施の可否判断に必要となる情報を得ることが重要であるというふうに認識しております。

 そのため、まずは、素粒子物理学分野で実績のある米国、欧州との間でさまざまな機会を活用して情報交換を行っていくこととしておりまして、米国とは私とモニーツ・エネルギー省長官との間でことしの一月に、また、欧州とは事務レベルで、継続的な情報交換の実施について合意したところであります。

畑分科員 ありがとうございました。

 これは、調査をしながら恐らくネックになるのが、率直に言うと費用負担の部分だと思います。これは正直、余り前のめりになると、負担の部分のところがどうかと。結局、そういう中で負担の部分をどうやって交渉していくかということだろうと私は事務方と議論して思っております。

 その辺は国際交渉ですから、なかなか簡単ではないというか、全額出すのならどうぞということなんでしょうが、そこはしっかりと交渉していくということはもちろん大事で、なおかつ、八千億と言われておりますこの費用も、本当にそれぐらいかかるか、しっかり精査も必要だし、これはいろいろしなきゃいけないと思うんですが、そこは、どのような条件が満たされたら誘致活動に入れるか。端的には費用の部分かなと思っていますが、その辺も含めてちょっとお答え願いたいと思います。

小松政府参考人 お尋ねの点でございますけれども、国際リニアコライダー計画の実施の可否判断に当たりましては、先ほど申し上げましたように、日本学術会議で詰めていくべき点を指摘されているわけでございますけれども、要点を少し述べますと、今の経費負担のお話以外に、まず、海外の研究施設でも今さまざまな計画がございます。こういったものを見据えた上で、国際リニアコライダー計画の研究の明確な指針がどのようにできるか、これは国際的なお互いの相談ということがございます。

 それから、先ほど御指摘のございました予算の枠組み、これは、大臣から申し上げましたように、科学技術・学術分野でのさまざまな御議論を踏まえなければいけない。

 それからまた、経費負担につきましては、国内だけではなくて、国際的な経費負担の枠組みと国内の体制のあり方、これにつきましては、実際の、学術的に意義のあるリニアコライダーの建設にかかる期間や、それから運転に入りましてからの必要な人材、人員、ほかにもさまざまあろうかと思いますが、こういった点につきましての見通しがまず明確に得られることが必要というふうに考えられております。

 先ほど申し上げましたように、私どもといたしましては、こうした提言を踏まえて、今回の予算案に必要な費用を計上させていただいておりますので、これらの課題につきまして、まずしっかりと調査検討を行っていくということが必要な段階と考えております。

畑分科員 二、三年かけてそういう調査をして検討していくということで、大体私が聞いているところのリニアコライダー誘致計画というか、いろいろな国際的な行程と大体合っているのかなと思いますので、まさに二、三年ということで、しっかりやっていただきたい。

 先ほど大臣から答弁がありましたが、私も、まさに、日本で調査するだけじゃなくて、国際的な枠組みでの意見交換、政府間協議というか、必要だと思っておりましたが、先ほどの大臣の御答弁で、米国とは大臣が協議をされた、そして欧州は事務レベルでやられているということをお聞きしまして、その辺も始まっているんだなと思いまして、その点、前向きに進んでいるなと思いました。

 欧州も含めてまた閣僚間でやるということも必要でしょうし、アメリカともしっかりやっていくということで、ぜひともその辺の協議をしっかり進めていただいて、しっかりネゴをしながら合理的な形で誘致活動に入れればいいなと思っておりますが、御尽力よろしくお願い申し上げます。

 次の論点というか、議論に入らせていただきます。

 東京オリンピック・パラリンピックでございまして、この東京オリンピック・パラリンピックが六年後に開催されることになりまして、大変すばらしいことで、日本国民を勇気づけることだと思っております。

 被災地の立場からいうと、この東京オリンピック・パラリンピックが被災地の復興につながることが重要である、そして、つながるだけではなくて、できるだけ被災地を巻き込んだ形で行われればいいなという思いがございます。

 よく聞かれるのが、ちょっとこれはネガティブな言い方ですが、被災地では、オリンピックは六年後と決まっているんだ、めでたいことだ、ただ、被災地復興というのは何年後かわからないじゃないかと。いや、集中復興期間があるし、急いでやっているんですが、オリンピックと違って何年というのがはっきりする世界じゃないので、だから、復興が何年後か見えない。それどころか、人材や資材不足で、復興はオリンピックにとられてますますおくれるんじゃないかというようなことを言われる人も多くて、大変不幸なことだと思っております。

 正直、そういうことで、被災地ではオリンピックに複雑な思いを持っている人も多いということで、そこは、そうじゃないんだよ、いや、被災地にもいいことだし、復興した被災地を見てもらうことにもいいし、そして、被災地を勇気づける形でも行われるんだ、そういうことは私も言っておりますが、そういう形で実際行われるようになれば大変いいなと思っております。

 例えば、今までの議論の中で、東京オリンピック、競技をやったらどうかという話の中では、これは都市開催のオリンピックですから、競技というのは、事前にスポーツ団体、競技団体とネゴしてやりますということではなかなかできないというのはそうだと思います。であれば、例えば、何らかの競技というか、合宿とか予選でもいいんですが、こういうのは被災地で行うことができないかということ。

 あるいは、聖火ランナーなんですけれども、被災地の復興の状況を見ていただくとすれば、福島の関係でちょっと議論が出ましたが、これは別に福島だけではありませんで、ずっと長い距離を走るわけでしょうから、東北沿岸を走っていただくとか、そういう聖火ランナーを企画するとか、あるいは、被災地の人を巻き込むというのであれば、一つは、被災者の人を優待とか無料で招待というのもあるんですが、それは別にそういうことではなくて、むしろ、一緒に運営しようよと。つまり、被災者の人に、ボランティアとしてかなりの人を登用して運営スタッフになってもらう。そうすると、我々は一緒にオリンピックを支えているんだという形で誇りも持てるだろうなと思って、まさに心の復興という意味でもいいのかなと思っております。

 そういう形で、被災地が東京オリンピック・パラリンピックに組み込まれているんだ、こういうふうなことが思われるような運営というか企画というのは必要だと思うんですが、いかがでしょうか。

下村国務大臣 ぜひそういうふうにしたいというふうに思います。

 競技は、これは開催都市ということで決まっておりますから、東京でやるということでありますが、スポーツだけの、また一過性ではなく、さらに、二〇二〇年というのは決まっているわけですから、東日本大震災の復旧復興が加速度をつけて、二〇二〇年には世界じゅうの方々が東北、被災地を訪れて、こんなに早く復旧復興したんだということを見ていただけるような、そのことについて政府が全力を挙げて取り組むことが必要であるというふうに思います。

 事前の合宿とか、それからあと、サッカーにおいて予選は、これはそれだけのスペース、体制が整っている宮城でやるという計画にもなっておりますが、ぜひ、四十七都道府県、そして特に東北、被災地が、自分のところはこういう受け皿がある、あるいはこういう国と接点があるというようなことを出していただきながら、できるだけ、事前合宿や事前練習や、そういう形で、それぞれの地方で、被災地で開催できるような、そういう取り組みについて国の方もぜひバックアップをしていきたいと思います。

 それから、聖火リレーのコースも、きのう自民党の青年局が来まして、畑委員の地元の、どちらかというともうちょっと上の、青森あたりから岩手、それから宮城を通って福島まで、海岸線が全部で七百キロあるそうですけれども、海岸線が復旧復興したということを見てもらうために、そこを聖火コースにぜひしたらどうかという提案がありました。

 これは、基本的には、被災地をぜひ聖火リレーコースに入れたいと思いますが、どのコースにするかは、それはそれぞれの都道府県の要望があるでしょうから、盛岡は通さなくていいのかとかいう話もあるでしょうから、それはそれぞれの自治体と相談してやるにしても、しかし、地元が盛り上がる形での聖火リレーコースをどうするかということについては、当然一緒にぜひ考えていくべきことだというふうに思います。

 その際、被災地の方々にボランティアとして参加していただくということは、これは競技大会だけでなく、今お話をさせていただきましたようなこと、それから、できたら、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピックと同時に、文化芸術の部分でも盛り上げていきたいと思いますので、それは、数年前から、先ほど冒頭申し上げましたが、地方でそれぞれやっている伝統文化、芸能等とオリンピックのジョイント的な形での名目でしていただきながら、そこにそれぞれの地域の方々がより多くボランティアとして参加してもらえるような形で、二〇二〇年に向けて日本全体が活性化するような、そういう企画をぜひしていきたいというふうに思いますので、ぜひ岩手県でも、そういう取り組みの、県で推進室等をつくっていただいて、準備をして、もしかしたらしていただいているのかどうかわかりませんが、畑委員からも言っていただきたいと思います。

畑分科員 ありがとうございました。大変前向きな答弁をいただきました。

 まさに、本当に日本というのはいい国です。それで、日本の地方にはいい文化があって、本当に郷土愛に燃えた、いい人々が住んでいる地域だと思います。そういう人たちの力を総結集して、東京オリンピック・パラリンピックをやっていく。それがまさに、表面上のおもてなしとか、そういうのではなくて、本当に心からのおもてなしになるのだと思いますので、そういう形でしっかりと私たちも被災地としてともにやらせていただきたい、頑張らせていただきたいと思っております。

 もう一つ、復興の関係の質問で、復興副大臣、谷副大臣に来ていただいております。ありがとうございます。

 東京オリンピックの開催準備のために資材とか人がとられているというような声がありまして、資材や人件費の高騰が起こっている。そういう人件費、資材費の高騰については、制度上しっかり見てもらって、それは上乗せしていただいて、リアルタイムでやっているわけですが、まさに不足しているという資材と人員の確保、これがちゃんとなされるのかどうかというのは、ちょっと不安が地元であるところであります。

 これをしっかり確保して、問題なく復興もやっていくんだぞというところの対策と、その辺の見通しをお伺いしたいと思います。

谷副大臣 御指摘の資材また人員不足につきましては、そういう懸念を払拭するために、根本大臣のもとに、住宅再建・復興まちづくりの加速化のためのタスクフォースであるとか、あるいは施工確保に関する連絡協議会で、相当思い切った、他の地方とは違う取り組みを、委員御承知のとおり取り組んでいます。取り組んで、そしてそれなりに効果は上げているかと思います。しかし、そうはいっても、復興の事業の進捗状況をしっかり見ながら、今後とも頑張ってまいりたいと思います。

 復興の加速化ということは、先ほど来議論がありますように、国家目標である東京オリンピック・パラリンピックの成功に不可欠なものだ、必ずオリンピックまでに復興をなし遂げる、そういう強い思いで今後とも全力で取り組んでまいりたいと思います。

畑分科員 ありがとうございました。

 しっかりと、被災地に心配のないような形で、喜ばれる形でやっていく、本当に、このことがまさに日本の発展になると思います。被災地の復興なくして日本の復興なしと言われますが、これがまさに、被災地の復興とオリンピックがちょうど同じようなタイミングになりますので、ここは、お互いウイン・ウインになれれば本当にお互いがハッピーだし、被災地の人も、オリンピックに俺らは尽くしたんだ、こういう誇りが本当に生まれてくると思いますので、そういう形で政策の推進をよろしくお願いしたいと思います。

 終わらせていただきます。本日はありがとうございました。

萩生田主査 これにて畑浩治君の質疑は終了しました。

 次に、椎木保君。

椎木分科員 日本維新の会の椎木保でございます。

 下村大臣におかれましては、大変お疲れのところだと思いますけれども、きょうはひとつよろしくお願い申し上げます。

 私は、教員経験という観点で、きょうは特別免許状とチームティーチングについて御質問させていただきたいと思っています。本日は十分な質疑時間をいただいておりますので、具体的な答弁をいただければありがたいと思います。

 初めに、先般、下村大臣の所信表明にもございました少人数教育の推進、教職員等の指導体制充実、養成、採用、研修の各段階を通じた教師力の向上に関しまして、特別免許状について所信表明があったかと思いますけれども、その特別免許状について幾つかお聞きしたいと思います。

 二〇〇二年の中教審答申の「今後の教員免許制度の在り方について」では「特別免許状の活用促進」という柱立てが設けられていたかと思いますけれども、下村大臣、この文部科学省の基本方針は、特別免許状の活用促進ということでは変更ないんでしょうか。

下村国務大臣 この特別免許状は、すぐれた知識経験等を有する社会人を教員として迎え入れることにより、学校教育の多様化への対応やその活性化を図るために創設されたものであるわけです。

 文科省としては、この制度趣旨を踏まえ、これまで特別免許状の授与の促進を都道府県教育委員会に対し働きかけてきたところであり、今後もその方針に変わりはございません。

椎木分科員 平成二十四年度の全国の公立学校の教員採用試験の結果なんですけれども、十八万二百三十八人が受験して、合格者は三万九百三十人、競争率は五・八倍、受験者の一七%しか採用されていない。これは、非常に極めて厳しい、狭き門という認識は、私だけじゃなく、大臣、副大臣も一緒かと思います。逆に言いますと、十五万人近くの人たちが、教員免許状を持っていながら教壇に立てないという現実であると思います。

 こうした状況下で特別免許状の活用促進を図っていくということについて、改めてお聞きしたいと思います。

西川副大臣 特別免許状の制度をつくったそもそもの背景が、いわゆる教職免許を取って教職を目指してきた先生以外に、一般の社会から広く人材を集めて、もう少し幅の広い知識も子供たちに与える機会がやはり必要ではないか、そういう議論もあった上で、特別免許状という制度をつくられたわけでございます。

 これは、特に、都道府県で与える権限を持っております。都道府県の、もちろんその県内だけで通用する免許ということで、一応十年の有効期限がございます。担当する教科の専門的な知識経験または技能を持っている人、それと社会的信望があり、教員の職務を行うのに必要な熱意と識見を有している、そういう評価のもとに都道府県内で行っているものでございます。

 平成二十三年度においては、全国で三十九件の授与ということで、ある意味では少ないかなという気がいたしまして、この十八万人の教職を目指している人たちに対する影響というまでには至らないのではないのかな、そういう認識を持っております。

椎木分科員 いや、これは私は非常に問題だと思いますよ。

 要は、教員免許を持っている人が教壇に立って、なおかつ特別免許状を持っている先生に教壇にさらに立っていただいて、付加価値をつけるという意味では、私はこれは非常によろしい制度だと思うんですよ。

 ただ、大学生のときに、普通のカリキュラム以外に教職課程もとって、なおかつ最後に、教師の資質という部分で教育実習まで行って、そういう教師を天職だと思っている先生が、これは私はデータを文部科学省からいただいたんですけれども、例年大体十八万人なんですね。それが、十五万人近くが免許を持っていながら採用されない。そういう中で、教職課程もとっていない、どこで専門性が担保されているかもわからない、そういう先生が教員免許を持っている先生を退けて教壇に立つということが、非常に私は疑問でならないんです。

 その点について、もう一度御答弁をお願いします。

西川副大臣 その点については、関連する国家資格を有すること、あるいは全国規模の競技大会などに出て入賞成績を有している、あるいはすぐれた技能を有すること、そういう一定のいろいろな要件もあるわけですが、当然これは、各県教育委員会で面接をして、推薦をきっちり受けた人が、しっかりとしたそういう判断のもとにされるわけですから、教員免許を受けて受かった人に劣るということにはならないのではないかと思います。

椎木分科員 では、お聞きしますけれども、専門性というのはどういうところで担保されているんでしょうか。

西川副大臣 例えば、各経済活動をずっとした中での一つの経済的知識とか、そういういろいろな、それぞれの職業、物づくりの分野で非常にすぐれて、ずっと、かなりの分、何十年やってきたとか、そういうことに関しては引けをとらない。そういう意味で、やはり、教育の一つの概念かもしれませんが、ある分野を本当にしっかりやってきた人というのは、あらゆるいろいろな局面で通用するということはあると思います。

 もちろん、この特別免許状がもっとすごく多くなって本当に影響を受けるようなことは、ちょっとどうかなと私たちも思いますが、今のような数字であれば、それは一つの教育の現場での、いろいろな多様性ということで、子供にいい影響を与えていると思います。

椎木分科員 では、今の御答弁ですと、昨年のデータでいけば、十八万人のうち十五万人が教職の免許を持っていて採用されない。そういう人が採用されなくても、特別免許状を持っている人で十分補完されているんだ、そういう御理解でよろしいでしょうか。

西川副大臣 その足らない部分を補完しているという立場ではないと思います。

 十八万受けて三万人が実際に教職の免許を取ったということで、一人でも多くの方に受かっていただきたいことは事実でございますが、もちろん、需要と供給の関係もあるでしょうけれども、その中で、補完という意味ではなくて、さらにその上にバラエティーに富んだ知識も必要ではないかという意味だと思います。

椎木分科員 私が何を申し上げたいかというと、これは下村大臣にも臨時免許状で何度も質問させてもらったことなんですけれども、やはり、教員を天職だと思っている先生が採用されない。それで、教職課程も経ていない、教員免許を持っていない、こういう人が教壇に立つ。これが果たして本当に、子供の立場からして、親の立場からして、プラスなのかな、そう考えるんですよ。

 免許を持っている人、情熱のある人、教師というのは天職なんですよ。古い言い方かもしれませんけれども、教育は人なり。これは、今でも言い継がれていることだと思うんです。だから、そういう意味で、免許状を持って天職と思っている先生をとにかくまず確保して、それで、なおかつ強化すべき点については特別免許状の先生を採用するというところが適切じゃないかなという趣旨で私は質問させていただきました。

 では、先ほど、この特別免許状の有効期限は十年という御答弁をいただきましたけれども、更新制度はあるんでしょうか。

西川副大臣 普通の教員免許と同じように、更新制度はあります。

椎木分科員 それは、どういう内容の更新の中身になっているでしょうか、教えてください。

西川副大臣 これは、普通免許状所有者と同様に、十年に一度、免許状更新講習を受講して更新を行っております。

椎木分科員 では、特別免許状で採用されている皆さんの採用基準というのは、どういった基準なんでしょうか。

西川副大臣 繰り返しになりますけれども、先ほど申し上げましたように、特別免許状の授与に当たっては、各都道府県教育委員会の教育職員検定の具体的な基準は、各都道府県教育委員会ごとにかなり異なっているんですが、三年から十年以上の実務経験を有すること、それと、先ほど申し上げました、関連する国家資格を有すること、全国規模の競技その他の入賞成績を有していること、すぐれた技能を有すること、以上のようなことを勘案して、教育委員会で面接あるいは書類その他で選考して決定しております。

椎木分科員 教員採用試験の選考は、これは先生も御存じだと思いますけれども、一般教養、教職教養、専門教科、論文、面接等々で、本当に一般的な知識があるか、専門的な知識があるか、さらに教師としての資質があるか、こういうことを、本当に厳しい倍率の中で選考されているんですよ。今の答弁を聞いていますと、何か特別免許状の先生は非常に優遇されているような気がしてならないんですけれども、それは私だけの認識でしょうか。

西川副大臣 もちろん、教職免許を受ける、希望する人たちと全く同じような経験というんでしょうか、試験を経ていないということは事実ですが、だからといって、教えること、例えば職場で長く一つのことをきっちりやっていたら、当然、後輩へ教えること、さまざまな技術の教え方、いろいろな経済活動の中での教えること、そういうことで、さまざまに、同じように教えるテクニックはやはりあると思うんですね。

 その中で、もちろん、それを全面的に広げてしまってはそれは問題ですが、先ほど申し上げたような一定の条件をつけて、その上で教育委員会がきっちりと面談、しっかりした書類審査その他をしてする分には、そう遜色はないと思います。

椎木分科員 余り突っ込み過ぎますと私の教育観が出てしまいますので、この辺にしますけれども。ただ、顕著な業績とか地域に対する貢献とかスポーツの結果などで、そういう先生たちが秀でている、大変すぐれている、そういう英知とか経験を教育現場にというのは、私もこれは大賛成なんですね、必要だと思います。

 ただ、教職につけない人が十五万人近くいるというところがやはりどうしても私は、先ほども申し上げましたけれども、本当に教わる側の子供たちの気持ちに立って、親の気持ちに立ったら、免許状を持っている人が十分確保されないからそういう特別免許状を持っている人とか臨時免許状の人を充てるというのが、私はやはり本来のあるべき姿じゃないかなという気がしてならないんです。

 やはり、特別免許状の活用促進よりも正規の免許を持っている人たちの雇用が私は優先じゃないかなと思うんですけれども、これについてはいかがでしょうか。

下村国務大臣 今、西川副大臣から答弁がありましたように、三十九件ですから、これが本当に職種を席巻するほどの数とは私は思いませんし、特別免許状を持っておられて学校現場で活動することによって、普通免許状の方々にとって刺激的なプラス効果になってという部分もあるのではないかというふうに捉えるべきではないかというふうに私は思います。

 グローバル化に対応した教育など新たな教育課程に対応し、学校教育の充実を図っていくためには、広くすぐれた知識、経験等を有する人材を集める、そして学校教育に登用していくということは、これは私は必要なことだと思います。

 このため、都道府県教育委員会等において、普通免許状所有者に加え、特定の資格や経歴等を有する社会人を対象に特別選考を実施し、特別免許状を授与して採用する取り組みを促進していただきたいと考えております。

 このような観点から、現在、文科省においては、都道府県教育委員会において特別免許状の授与が適切に進むよう、授与に当たり行う教育職員検定において確認すべき具体的事項について、全国指針の作成を進めております。

 今後とも、教育委員会に対しては特別免許状制度の積極的な活用を働きかけ、学校教育の多様化への対応や活性化を図っていくことによって、誇りを持って、椎木委員も元学校の先生ということで、誇りを持っておっしゃって、また御質問をされておられるんだと思いますが、学校のそういう普通免許状、私も普通免許状を持っていますけれども、そういう先生方へプラスの刺激になるようなことが、結果的には子供のためにも学校のためにもなるのではないかというふうに思います。

椎木分科員 ちょっと言い方を和らげまして、特別免許状についてはこれで終わりたいと思いますけれども、やはり、いじめの問題とかも含めてなんですけれども、教員を志す人というのは、大体、中学校を卒業するか高校を卒業する段階ではほぼ気持ちも固まって、大学時代というのは、ここで勉強して早く卒業して教壇に立ちたい、そういう情熱といいますか思いが蓄積されて、採用試験に臨んでいるわけですよ。そういう人たちが教壇に立つことによって、子供たちの朝の顔色とか昼間の勉強の様子、生活の様子、そういうところを毎日毎日積み重ねていく中で、全体の子供たちの様子を把握しながら一人一人の子供たちの心までケアして、だから、私は、そういう先生をふやすことがいじめを少なくしていくということにつながるのかなと。大臣、これが私の教育観なんですけれども。

 そういう意味では、特別免許状を私は否定しているわけではなくて、やはりそういう先生をより多く採用していけるような方向に持っていきたいということで、まずそちらを優先していただきたいという思いで質問はさせていただいたところです。決して否定しているわけではありませんので、それは御理解いただければと思います。

 次に、チームティーチングについて取り上げさせていただきます。

 私、教員の後、教育行政、教育委員会に十三年勤務していましたので、今度は教育行政の立場でこの事業にはかかわっていたんですけれども、これらの事業はいつごろ導入されて、今日までどういう経過でどういう成果が上がったというふうな文科省としての御認識なのか、答弁をお願いします。

西川副大臣 仰せのチームティーチングは、いわば子供のいろいろなグループ学習、そういうところから一緒に、先生方も、やはり多人数のをした方がいいとか、そういう現場のいろいろな思いから多分その発想は出てきたんだろうと思います。

 そういう中で、予算措置としては、平成五年度から始まった第六次教職員定数改善計画において、当然、少子化の中で、国家予算的には人数を減らせというような圧力の中で、よりきめ細かな教育を、きっちり教育現場で教えることを達成するということからの、一つのそういう理念として、第六次教職員定数改善計画の中で一万六千人の改善を図ってきた。これが一番そもそもの最初でございます。

 それで、平成五年から大体六年の予定でいたんですけれども、これをさらに二年延ばしまして八年全体で、第六次のときに一万五千九百三十一。そして、平成十三年から十七年のとき、第七次改善計画で、二万二千五百プラスで三万八千四百三十一、そして今、平成二十五年までで四万一千五百二十三人を確保してまいりました。

 そういう中で、具体的に、実は、全国学力調査その他で、チームティーチングとそうでないところとの差というんですか、その成果というのが、はっきりした数字ではなかなか出にくいんですが、多分、低学力、学力の低い子供たちの底上げという点ではかなりの効果があっているのではないか、そういう認識を持っております。

椎木分科員 これは、私が教育委員会に長く勤めていたときも、保護者からは大好評です。学校長にも非常に、教職員の負担軽減という意味でも大変好評でした。

 今回、私がやっていたときから年数がたっていますので、改めてちょっとお聞きしたいんですけれども、現状、どのように行われているのか。小中高ともに一律なのか、それとも小中高で違うのか、小中だけなのか。そういうところを一点お聞きしたいのと、あともう一点、きめ細かなとよく言われるんですけれども、きめ細かな教育というのは具体的にどういうことなんでしょうか。

西川副大臣 例えば、国語の授業なんかでは一八%ぐらいなんですね。算数の授業では五八%導入しているということで、教科によって、ちょっとわかりづらい、そこをつまずくと次に進めないというような、その教科によってかなりチームティーチングの利用度というのは違ってくると思いますので、そういう教科ごとにとか、それともちろん達成度ごとにという、そういうこともあると思います。

 ちなみに、今のは小学校の数字ですが、中学校でももちろんこれをやっておりまして、中学校の二年生では、国語の授業で約一五%、数学の授業で約四八%の学校でこれを推進しております。

椎木分科員 きめ細かな教育というのはどういうことなのか、もう一度。

西川副大臣 一言で言うと、全体に全部同じように教師側が一律に発信するということが、ある意味では大まかなということになるんでしょうか。やはり子供たちの達成度、そういうところもしっかり目を配りながら、興味の状況なども見ながらということでしょうから、それは、一人の教師がするよりは、やはりチームを組んで、いろいろな場面で何人かの教師の意見も集約しながら授業というのが行われたら、よりきめ細かな授業になるのではないんでしょうか。

椎木分科員 TTはアシスタントティーチャーと違いますから、教員免許を持っている方が当然採用されているということですね。(西川副大臣「はい」と呼ぶ)

 では、この予算措置の件でちょっとお聞きしたいんですけれども、いただいた予算案の資料から読み取ることがちょっとできなかったんですけれども、具体的な予算措置がどのようなものなのか、各自治体の負担割合というのはどういうものなのか、御答弁お願いします。

西川副大臣 先ほど申し上げました、例えば、平成二十六年度の予算案で申し上げますと、四万一千二百十七人分の三分の一が国庫負担、三分の二が地方負担ということでの予算措置でございます。

椎木分科員 これは、全国都道府県、各市町村、それぞれに配置される事業なのか、それとも申請に基づいて配置が決まるものなのか、その辺を教えてください。

西川副大臣 これは、各市町村、都道府県レベル、教育委員会の申請に基づいて配置されております。

椎木分科員 今の御答弁は、小中の内容ですかね。高校は含まれていない。

西川副大臣 はい、小中でございます。

椎木分科員 これは、平均でも結構なんですけれども、例えば、一校当たり何名ぐらい予算措置されて配置されているんでしょう。

西川副大臣 四万一千のうち、小中合わせて三万一千校に配置されております。

椎木分科員 結局、これは、一つの都道府県内の市町村に全て、最低一人とか二人とか配置されている事業ではないんですか。

西川副大臣 当然、要望に応えてですので、きちんと全部に配置されているということではありません。

椎木分科員 わかりました。

 私は、選挙区は千葉県なんですけれども、教員、教育行政にかかわっていたのは茨城県で、その茨城県の教育研修センターがチームティーチングについて報告書をまとめているんですね。

 その内容をちょっと拝見したら、メリット、デメリットがやはりそれぞれあって、メリットは、教員同士が指導力を高め合える、一方でまた、子供の理解を深められる。

 デメリットについても報告書でまとめられているんですけれども、文科省では、デメリットという部分についての検証といいますか、内容の方の取りまとめはできているんでしょうか。

西川副大臣 残念ながら、メリットの方はかなりいろいろまとめていますが、デメリットの検証はしておりません。

椎木分科員 これは、何をもってメリット、デメリットを調査したんでしょうかね。その調査の手法とか中身を教えてください。

西川副大臣 そもそも、やはり指導体制が教師全体として総合的にその学校の中でチームとして効果を発揮されている。例えば、共通の理念のもとに共通の理解が深められるとか、そういう、ある意味では抽象的な理由だろうと思います、現実にこれを導入したときには。ただ、その結果として、子供たちの学力底辺層でかなり上がってきたというようなあれは見られますので、これはやはり効果があるのではないか。

 それで、教師間のある意味では協力体制というか、気持ちの上でのまとまりというか、そういう効果はすごくあると思いますので、正直、メリットの方だけを検証してきましたけれども、御指摘のように、デメリットについても今後少し検討してみるようにいたします。

椎木分科員 今の西川副大臣の答弁の中で、学力的な成果のメリットもあるという御答弁があったと思うんですけれども、これは、資料か何かでまとめたものを今後いただけますでしょうか。

西川副大臣 これは各教育委員会の聞き取りの中で把握してきておりますので、きちんとした数字にはまだなっておりませんので、もしどうしてもということですと、ちょっとお時間いただかないといけないと思います。

椎木分科員 私は、決して意地悪な質問をしているわけじゃないんですよ。だから、冒頭申し上げましたように、これは非常に保護者からも各学校の学校長からも大好評なんですよ。それはやはり、一人よりは二人の方がいいという単純な発想はもちろんありますし、子供が今までの一人の担任制よりも非常に理解ができるようになったと。まあ、ある意味ではフィーリングなんですけれども。

 ただ、本当にこれが西川副大臣が御答弁いただいたように学力的に計数で成果が上がっているのであれば、私はどんどんこれを推進すべき事業だなというふうに認識していますし、これは地方は大変喜ぶと思います。だから、そういう意味で、本当に成果が学力向上という意味につながっているのであれば、聞き取りの内容を取りまとめたものでも結構ですので、ぜひ本当にいただければと思います。

西川副大臣 先生御指摘のように、要は、聞き取りでこの成果の検証をしておりますので、親から好評だとか、そういうことはかなり出てきているんですね。だけれども、数字として、学力テストでチームティーチングをいろいろやった県が大分上がっているとか、そういう具体的な数字は、正直、手元に入ってきておりませんので、その辺の検証の難しさというのは今感じているところでございます。それが現状です。

椎木分科員 私は、副大臣が、学力面でも成果が上がったという御答弁をいただいたので、では、その裏づけとなるものを下さいということで申し上げている話で、それが、いや、実際はないんだよとなっちゃうと、では、さっきの答弁の成果というのは何なんだろうと。

下村国務大臣 ないということじゃなくて、委員も御承知だと思いますが、PISAの調査によって、我が国は、OECD諸国においては事実上、学力が、読解力、科学リテラシーでは一番、数学では二番ですね。これはゆとり教育以降の話ですが、その客観的な分析としては、チームティーチングとか習熟度別クラス編制、こういうことが、それぞれの都道府県の教育委員会の分析の中、得点が上がった評価だろうという中で、文部科学省の方でもそういうふうに分析をしております。

 ですから、この点数が上がったのが、イコールチームティーチングだけとは言えない部分がありますが、チームティーチングにおける学力の向上というのは、このPISAの調査なんかでは明確に出ているというふうに分析しています。

椎木分科員 最後にちょっと下村大臣に、下村大臣の応援団として一言お願いしたいんですけれども、先ほど言った教員免許の取得者の採用枠の拡大とか、この成果のあるチームティーチングの拡大、これについても大臣のときにぜひ推進していただきたいなと思うんですけれども、それについて、一言御所見があったらお願いします。

下村国務大臣 子供にとって最も成果、効果が上がる方法について、常に極めていくように努力していきたいと思います。

椎木分科員 ありがとうございました。

萩生田主査 これにて椎木保君の質疑は終了いたしました。

 次に、佐藤英道君。

佐藤(英)分科員 北海道選出、公明党の佐藤英道でございます。

 下村大臣初め、文部科学省の皆様方に質問をするのは初めてでございます。どうぞよろしくお願いをいたします。

 総理は、第一次政権の百六十五国会の所信表明演説で、教育の目的について、志ある国民を育て、品格ある国家、社会をつくることとされ、吉田松陰が、わずか三年ほどの間に、若い長州藩士に志を持たせる教育を行い、有為な人材を多数輩出し、松下村塾が明治維新胎動の地となった事実を通しまして、家族、地域、国、そして命を大切にする、豊かな人間性と創造性を備えた規律ある人間の育成に向け、教育再生に取り組むと述べられております。

 現在、精力的に教育再生に取り組んでおられる中で、道徳の教科化や教育委員会制度の改革など、ともすると、あらぬ誤解を招きかねない改革のテーマでもございます。

 現在、与党間で闊達な意見交換を行っている最中でありますが、そうした誤解を解くという意味で、まずは、この二つの改革を進めるに当たって、大臣の御留意をされている点についてお伺いをしたいと思います。

下村国務大臣 全く誤解だというふうに思います。

 まず、道徳教育の教科化をめぐって、国が児童生徒に特定の価値観を押しつけることにつながるのではないかという声が一部あるということは承知をしておりますが、そういうことは全く考えておりません。

 これは、国境を越え、民族を超え、歴史を超えて、人が人として生きるための規範意識、社会のルール、それを子供たちの発達段階に応じてきちっと教えるということは、逆に、その子供にとって、生きていく上で最も大切なことであるというふうに思っております。

 そのために、この四月から心のノートという教材を全面改訂して、「私たちの道徳」という教材に変えましたが、これをぜひ佐藤委員もごらんになっていただきたいと思いますが、これを見ていただければ、国家が特定の価値観を強いるとか、あるいは国家主義的な道徳観における教育が教えられるというようなことが全く杞憂であるということが、国民の皆さんに理解していただけるのではないかというふうに思います。

 さらに、道徳教育において、かつては教師が一方的に教えるというようなことがありましたが、児童生徒が多角的な角度から考えたり議論をするということの中で、今回の「私たちの道徳」についても、例えば物語を通じて子供たちに考えさせる。教師の指導書においても、この物語はこういうふうに読み取るべきだとか、あるいはこういうふうに解説すべきだということを、特定の価値観として指導書に書くということではなくて、生徒が議論する中から、いろいろな、多角的な角度から、あるべき道徳とは何なのかということの教材として活用できるような、みずから判断して行動する力を育てる、こういう視点から意識した教材にもなっていて、そして、そういうふうに使っていただきたいというふうに思っております。

 文科省としては、今後、道徳教育の現状を踏まえ、道徳教育にかかわるさまざまな方々の御意見も伺いながら、その具体的なあり方については、去る二月の十七日の中央教育審議会に「道徳に係る教育課程の改善等について」で諮問を行いました。道徳の時間を特別の教科として位置づけることについての検討をいただきたいというふうに思っておりますが、今のことを踏まえ、中教審の中でも議論を深めていただきたいというふうに思っております。

 また、今般の教育委員会制度の改革においても、教育行政における責任体制を確立するということと、それから、政治的中立性、また継続性、安定性を確保するための制度上の措置を講ずることが必要であるというふうに考えておりまして、そのために、中教審の方で答申をいただきましたから、閣法としては、それをすぐ国会に政府として提出することも、法案としてはあり得る話でありますが、これは、与党の中においても、自民党、御党、公明党の中においても、いろいろな議論が今までもございましたので、これは改めて与党の方で議論をしていただいて、そして、まとまったら、それをもとに法案をつくって、国会に提出をし、より政府・与党が一体となって、ベストの教育委員会制度改革案を法案として出したい、そういうスタンスで今お願いしているところでございます。

佐藤(英)分科員 どうぞよろしくお願いしたいと思います。

 次に、大臣も大変に御尽力をされていらっしゃいますパラリンピックの成功についてお伺いをしたいと思います。

 私たちにスポーツの喜びと忘れがたい数々の感動を残して、一昨日、冬季オリンピック・ソチ大会が閉幕をいたしました。と同時に、来月七日から冬季パラリンピックが開幕をするわけでございます。

 選手の皆さんには、四年間の御努力の成果を遺憾なく発揮されることを心から期待したいと思いますが、今回のパラリンピックは、開会式こそNHKでライブ中継されますが、競技のライブ中継は、残念ながら、ごく一部をBSなどで放送されるほかは、有料の衛星放送に限られているようでございます。二〇二〇年には、ぜひとも、パラリンピックもオリンピックと同様に原則ライブ中継をしていただきたいと思っているところであります。

 このライブ中継に象徴されるように、オリンピックとパラリンピックは、まだまだ別々の大会のように見える部分があります。内閣官房のオリンピック・パラリンピック推進室長の平田竹男早稲田大学教授は、この二つの大会の垣根を取り払って、オリパラと呼ぶことを提唱されておりました。私も、この提唱に賛同して、オリパラ、東京オリパラと呼んでおりますけれども、このオリとパラの格差を縮めてオリパラにしていく作業こそが我が国に必要な施策ではないかと考えております。

 この東京オリパラは、世界に対して、東京、日本をアピールする絶好の機会でもありますが、また同時に、世界から日本という国が評価されるということも忘れてはならないのではないでしょうか。そうした点で、私は、パラリンピックの大成功をいかにしてなし得るかという観点を通じて、日本人が本来美徳としてきた他者への思いやりといたわりの精神を、大臣もよくお言葉にされている視点でありますけれども、広く世界に発信していく機会と捉えていくべきだと考えております。

 二〇一二パラリンピック・ロンドン大会は、帰国したパラリンピアンがそのおもてなしの心を高く評価する大成功の大会であったとよく言われております。これは同時に、英国の紳士的価値観、騎士道精神がいまだに強く英国社会に根を張っていることを感じさせたのかもしれません。

 スポーツマンシップは、選手、スタッフだけではなく、ボランティアなど大会スタッフはもちろん、観客、関連企業、メディア関係者など、パラリンピックにかかわる全ての人に共通して必要でありますし、そうしたスポーツマンシップは日常の中で培っていくことも非常に重要なことであると思っております。

 例えば、視覚障害者や車椅子の方、ベビーカーの子供連れのお母さんに対する声かけや、お年寄りや小さな子供、障害をお持ちの方などに電車やバスで席を譲るなど、いつの間にか日本人ができなくなってきている本来当たり前の行動を、この七年で再び当たり前にしていくための具体的な取り組みも必要ではないかと思っております。また、声のかけ方や車椅子の押し方など、具体的なやり方についても、海外の方が多数訪れられるオリパラまでには、簡単な外国語でもできるようにしていかなければならないと思います。

 こうしたソフトの面、ハート、心の面でのバリアフリーの充実強化策について、政府広報や、運送事業者を初め各方面に具体的な協力要請を行うなど、早急に取り組みを開始すべきと考えますが、御所見並びに現在の取り組み状況についてお伺いをさせていただきたいと思います。

麻田政府参考人 パラリンピックに向けて、ソフト面でのバリアフリーの充実強化策ということで御質問であったと思います。

 バリアフリーの推進に当たりまして、ハード面の取り組みのみならず、国民誰もが、支援を必要とする方々の自立した生活を確保することの重要性について理解を深めまして、自然に支え合うことができるような、そういう心のバリアフリーを推進することも重要であるというふうに認識をいたしております。

 内閣府の調査がございまして、外出の際、困っている障害者、高齢者、妊婦や子供連れの人たちを見かけた際に手助けをしますかという質問をいたしました。この回答といたしまして、手助けをするという方、それから、どちらかというと手助けをするという方の割合が、平成二十四年度で七五%になっておりますが、その割合は、決して高くはない状況でございます。

 内閣府におきましては、オリンピック・パラリンピックに向けてということに限らず、平成十四年度から、バリアフリーやユニバーサルデザインの推進に関しまして、心のバリアフリーの推進の面も含めまして、例えば、功績のあった方々を表彰して、その先進的な取り組み事例をホームページに掲載する等、情報提供を行っております。

 今後とも、心のバリアフリーの重要性につきまして、関係省庁とも連携をしながら、広報啓発に取り組んでまいりたい、このように考えております。

佐藤(英)分科員 今お話のあった心のバリアフリー、大臣今言われました道徳の時間におきましても、こうした心のバリアフリーについてもぜひ取り上げていただければなと思うところでございます。

 次に、ハード面でのバリアフリーの推進についてお伺いをいたします。

 東京都が二〇一一年に行った調査によれば、通勤通学に段差などのバリアがあると答えた方は五五%に上ります。こうした状況に対して、都は、四年後までに都内全域をバリアフリー化すると打ち出し、現在その整備を急いでおります。私は、国もまた二〇二〇年を目指した移動円滑化の明確な指針を打ち出してはどうかと思いますが、いかがでしょうか。

 羽田空港からオリパラ会場となる東京ビッグサイトまで、実際に車椅子で移動すると、通常三十分の移動が倍の一時間を要するということでありました。また、下村大臣と太田大臣が車椅子で羽田から国立競技場まで実際に移動されようとしたと伺っております。警備上の問題で見合わせられたとのことでありますけれども、両大臣とも、やるまでもないほど整備の必要性が高いことがわかったとおっしゃられたと伺っております。

 今後、こうした障害者の視点で、障害者の感覚を体感する機会を提供していってはどうかと思います。そうすることによって、点字ブロックの上に自転車をとめたり、エレベーターで障害者を優先しないなどのマナー違反の改善にもつながってくると思います。御所見を伺いたいと思います。

奈良平政府参考人 お答え申し上げます。

 二〇二〇年のオリンピック・パラリンピックにつきましては、前回の開催と異なりまして、パラリンピックがあることに大きな意義があるものと考えております。パラリンピックに向けまして、公共交通施設等のバリアフリー化が図られることが大変重要だというふうに考えております。

 国土交通省では、バリアフリー法に基づく対策をこれまで進めてきておりますが、二〇一一年三月に、バリアフリー化を義務づける対象施設を拡大するなどの同法に基づきます基本方針を充実強化いたしまして、二〇二〇年度を目標として対策を進めているところでございます。

 また、このようなハード面の整備にあわせまして、議員御指摘のとおり、障害者の感覚を体感する機会をふやすということによりまして、いわゆる心のバリアフリーがしっかり進められることも重要であると認識しております。

 国土交通省といたしましては、障害者の視点で、障害者の感覚を実際に体験していただくバリアフリー教室を開催することなどを通じまして、国民に対し、高齢者、障害者等に対する支援や協力の理解を深める努力をしているところでございます。

 いずれにいたしましても、今後、バリアフリー化に向けた取り組みにつきまして、パラリンピックに向けて十分な対応ができるようにするとともに、その対応が、その後の我が国の高齢化社会に対応した、あらゆる人に優しいまちづくりにつながっていくよう、努力していきたいと考えております。

佐藤(英)分科員 ぜひ、下村大臣におかれましては、太田大臣と力強いタッグを組まれまして、心のバリアフリー、そしてハードのバリアフリー、何とぞよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 次に、パラリンピアンの競技環境の整備について伺ってまいりたいと思います。

 競泳の金メダリストでパラリンピアンズ協会の会長を務める河合純一氏は、障害者は健常者の未来の姿であるとして、年をとれば視力が衰え、足腰が弱る、私たちの姿は健常者の皆さんの未来を暗示していると述べられております。障害者が健常者と同じように生活できる環境の整備は、健常者の将来にとっても重要なことだという、大変示唆に富んだ言葉だと思いますが、スポーツを楽しむための環境整備も同様に進めていかなければならないと思います。

 現在、障害者がスポーツを楽しむ場は、残念ながら限られたものとなっていると思います。総合型スポーツクラブについては、その四割に障害者の方が在籍しておりますし、障害者スポーツセンターについては、専用が三十三カ所、民間やNPOなどの運営も含めれば少なくとも百十六カ所程度まで広がってきておりますけれども、地域の運動施設では、床が傷つく、用具がない、けががあったときなどの責任問題を恐れ、なかなか容易には借りられないのも実情であります。

 パラリンピアンズ協会の調査によれば、パラリンピックの選手たちが、オリンピックよりも劣る事柄として、一位に財政的問題、二位に競技施設を挙げています。競技環境、強化の環境整備により、スター選手が生まれ、その結果スポンサーが安定化し、財政的安定がさらに環境整備につながるというよいスパイラルを生み出していくために、文科省の積極的な関与が欠かせないと思っております。

 積極的に障害者が地域の施設を使用できるような環境の整備を推進するためにも、各市町村に対して、文科省からガイドラインを提示して、適切な管理運営方法や用具整備について積極的な働きかけを行ってはどうかと思います。

 あわせて、来年度、パラリンピックを初め障害者スポーツの所管が厚労省から文科省に移管されることを踏まえて、ナショナルトレーニングセンターや国立スポーツ科学センターがパラの選手でも広く使われるようになることを強く期待しているところであります。この取り組みについても御見解をいただければと思います。

久保政府参考人 それでは、二点御質問をいただきました。

 まず、地域のスポーツ施設等の整備でございます。

 平成二十三年度に全面改正、制定されましたスポーツ基本法におきましては、障害者スポーツ推進の理念が規定されたところでございまして、御指摘のとおり、地域のスポーツ施設を障害者がより円滑に利用できるようにするということが、障害者のスポーツ参加を促進する上で大変重要であると考えております。

 地域の障害者のスポーツ参加に関しましては、けがが発生するのではないかという周囲の不安、さらに指導者、用具の不足が阻害要因となる場合もあるということを伺っているところでございます。

 そこで、文部科学省では、平成二十六年度予算案におきまして、新たに、障害者のスポーツ参加における安全確保に関する調査、地域スポーツクラブにおいて障害者スポーツ指導者の招聘や用具の整備を行うモデル事業に係る経費を計上しているところでございます。

 御指摘のガイドラインの制定も含めまして、さらなる地域の障害者スポーツの参加促進策につきましては、今後実施いたしますこの事業の成果や地域のニーズも踏まえまして、厚生労働省、さらにJPCなどの関係省庁、団体とも連携して検討するなど、障害者スポーツの一層の推進を図っていきたいと考えております。

 第二点目の、ナショナルトレーニングセンター等の利用についてでございますけれども、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けまして、また、来年度からパラリンピック競技も文部科学省で一元的に所管することとなることを踏まえまして、オリンピック、パラリンピックともに選手強化を推進していく方針でいるところでございます。

 ナショナルトレーニングセンター、国立スポーツ科学センターにつきましては、本来、オリンピック選手のメダル獲得を支援する観点からもともと設置されたものではございますけれども、近年、パラリンピック選手の利用につきましても、宿泊施設であるアスリートヴィレッジにバリアフリー対応の宿泊室を整備いたしましたり、競技団体間で調整しながら、可能な範囲で既に御利用の開始をいただいているところでございます。

 さらに、平成二十五年度の補正予算、平成二十六年度予算におきましては、パラリンピック選手の利便性の向上を図りますために、自動ドアの設置、それから国立スポーツ科学センターの宿泊室の一部及び陸上トレーニング場管理棟のバリアフリー化などの改修工事に必要な経費を計上したところでございます。

 今後、パラリンピック選手のナショナルトレーニングセンター及び国立スポーツ科学センターの利用を含めまして、オリンピック、パラリンピック双方の選手強化につきまして、日本オリンピック委員会、日本パラリンピック委員会、各種競技団体、関係機関、団体等と連携協力しながら、トレーニング環境の整備に取り組んでまいりたいと考えております。

佐藤(英)分科員 どうぞよろしくお願いしたいと思います。

 次に、文化芸術振興策についてお伺いをいたします。

 下村大臣も西川副大臣も、文化芸術振興に対して大変に御理解があると承知をしております。

 文化庁の来年度予算案は一千三十六億円であります。文科省全体の一・九%、国の予算の〇・一一%となっておりますが、かつての大平研究会、「文化の時代」報告で、国家予算の〇・五%まで引き上げるとされた目標が、三十年以上たった今でも達成にはほど遠い状況であります。英国〇・二〇、フランス一・〇六、ドイツ〇・三九などと比べると、日本は大きくおくれをとっている状況であります。内容的にも、文化財保護が六割を占めており、文化芸術関係は四割にとどまっているわけであります。

 支援についても、地方公共団体予算は減少傾向、企業メセナも下げどまりの傾向にある中で、国が音頭をとって文化芸術振興策に先駆的な取り組みを行っていただければと思っているところであります。

 中でも、地域の活性化に文化芸術が資する役割は、私も北海道に住んでおりまして、非常にこの力は大きなものであると実感をしているものであります。また、全国の各地域に文化と芸術の実りを届けることは、地方の生活を豊かにし、健全な青少年の育成に不可欠であると思うのであります。

 特に、平成二十四年から始まった地域発・文化芸術創造発信イニシアチブ事業は大変に画期的な取り組みであると、私は北海道から、もう心から称賛をさせていただいておりました。今年度二十九億四千万が来年度は二十五億二千万円と、四億二千万の減額となっているわけであります。概算要求では増額を要求したものの、大変残念なことに、結果は減額となってしまったわけであります。

 さまざまな事情があるとは思いますけれども、従来から、文化芸術に係る行政評価の方法が、他の行政評価と同様に効率性重視の評価ではなく、文化芸術領域にふさわしい行政評価手法の確立が必要と言われておりますが、来年度も地方の各団体から大変に強い希望が寄せられておりますこの地域発・文化芸術創造発信イニシアチブ事業について、私も、ぜひとも再来年以降、増額をお願いしたいのであります。今後の方向性についてお示しをいただければと思います。

西川副大臣 先生御指摘のとおり、日本の文化予算は大変低うございます。その中で、ささやかですが、今年度、三億ふえたということでございますけれども、実は、大臣以下、本当に、文化庁の予算をもっとふやそうと、フランス並みの一・一%までいかないにしても、とにかく少しでも予算獲得に頑張ろうということで、庁内に文化予算捻出プロジェクトチームを、私が主査になりまして、今いろいろと検討しておりまして、財務省だけを当てにするのではなくて、民間の会社その他にも足を運んで協力を要請しようじゃないか、そんなことを、今いろいろな知恵を出している最中でございまして、一生懸命頑張っているというところは御理解いただきたいと思います。

 その中で、今回の地域発・文化芸術創造発信イニシアチブ、これは平成二十四年度から開始したもので、多分、佐藤先生の御地元でも、サッポロ・シティ・ジャズというイベントをやって、大変好評を得ているということをお聞きしておりますけれども、その中で、実は、地域から数がどんどん上がってきております。二十四年度九十一件、二十五年度百四十件、二十六年度百九十四件ということで、今回の予算の攻防でもかなり厳しい面があったのは事実でございますが、その中で、こう申してはなんですが、内容に大変ばらつきがあることも事実です。

 そういう中で、これから、しっかり地元との意見を交換しながら御指導していくことも含めまして、やはり内容のいいものには少し傾斜配分というか、そういうことも含めて、本当の地域発・文化芸術創造発信イニシアチブをすばらしい結果が得られる方向に持っていきたいということで、一生懸命、これからも前向きに頑張って応援をしていきたいと思っております。

    〔主査退席、あかま主査代理着席〕

佐藤(英)分科員 ありがとうございます。ぜひよろしくお願いします。

 最後に、奨学金についてですけれども、これはもう下村大臣初め文科省の皆様方に感謝の思いを込めて、最後に質問とさせていただきます。

 公明党が長年、制度の充実を進めてきた奨学金制度、中でも無利子枠の大幅な拡充が来年度予算案に盛り込まれました。無利子奨学金の来年度の事業費は三千六十八億円と、今年度比で約百五十六億円増、貸与人員も二万六千人増の四十五万二千人と、過去最大の人数になりました。また、学生など若者が海外に留学するための給付型の奨学金についても、長期留学が五十人増の二百五十人に、短期留学が一万人増の二万人に給付することになったわけであります。

 さらに、この数年社会問題化していた、奨学金利用者の約一割が経済的な事情等で返還できなくなっているという問題に対しても、延滞金の利率を一〇%から五%へ引き下げるほか、返還期限猶予年限を五年から十年に延長するなど、返還困難者の救済策としてもきめ細やかな内容の施策を行うことが決定し、大変に高い評価を得ております。

 その上で、年々手厚くなっていく奨学金制度の中で、私は何といっても無利子奨学金の貸付枠のさらなる拡充を求めてまいりたいと思います。現在想定される無利子枠の一年生に対する人数はおおむね十四万人弱でありますが、それに対して応募が十八万人以上であります。これまでも成績や年収等の要件をクリアしていながら採用されない希望者が数万人程度出ているという事実に対して、こうした状況を一日も早くクリアしなければならないと思っております。

 最後に、奨学金の無利子奨学金貸付枠のさらなる拡充、できることなら希望者全員に無利子で貸与していただければと思います。今後の取り組み、御決意をお伺いして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

吉田政府参考人 意欲と能力のある学生が経済的理由により進学を断念することがないように、大学等奨学金事業の充実が重要であることは論をまちません。

 先ほど委員の方から御紹介いただきましたように、平成二十六年度の予算案におきましても、無利子奨学金の貸与人員の増、あるいは延滞金の賦課率の引き下げなどなど、真に困窮している奨学金返還者への救済措置の充実を図ったところでございますし、また、海外留学への支援事業の充実も図ったところでございます。

 私どもとしましては、意欲と能力のある学生たちが安心して奨学金の貸与が受けられるように、基準を満たす希望者全員に無利子奨学金を貸与することも含めまして、文部科学省として大学等奨学金事業の充実にしっかりと取り組んでまいりたいと存じます。

佐藤(英)分科員 ありがとうございました。終わります。

あかま主査代理 これにて佐藤英道君の質疑は終了いたしました。

 次に、堀井学君。

堀井分科員 自由民主党の堀井学です。

 本日は、平成二十六年度予算案審議に際し、第四分科会におきましての質問の機会を与えていただきましたことに心から感謝申し上げたいと思います。

 最初に、私の地元、北海道九区の話なんですけれども、選挙区の広さは東京から新幹線で名古屋まで行くぐらいあります、東京から仙台間あります。四市十四町ありまして、経済や一次産業、さまざまな諸課題があるわけでありまして、課題が多い選挙区だけに、これまで党の文部科学部会や文部科学行政にかかわる会議には、実は思うように出席することがかなわず、下村大臣を初め副大臣、政務官、文部科学省の皆様、さらには党文部科学部会の役員の皆様に大変申しわけなく思っているところでございます。

 このたびのソチ・オリンピック開催に際しましても、日本選手団の団長を務める橋本聖子参議院議員からは、私はソッチで頑張るから、あなたはこっちを頑張りなさいということを承っており、国会審議に専念するように指示を受けておりました。きょうは、第四分科会の質問に立つ機会をいただけるということで、満を持してやってまいりましたので、どうぞよろしくお願いをしたいと思います。

 ソチ・オリンピックにもたくさんの地元選手が参加をしておりましたし、私自身も元選手として、選手の気持ちに立って質問をさせていただきたいと思います。選手の気持ちという点に関しましては、この時期に私が質問しないで誰が質問するのかという強い使命感を持っております。きょうは、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて、その成功の鍵について、また代表選手の育成強化策について、さらには競技参加者の裾野を広げ、次代を担う子供たちに夢を与えるスポーツ振興策などについてお伺いをしたいと思います。

 ソチ・オリンピックの余韻もまだ冷めやらぬ中でありますけれども、日本選手団はきのう無事帰国をされました。大臣のもとにも帰国の報告があったと存じております。今大会のメダルの獲得数は、冬季としては長野オリンピックの十個に次ぐ史上二位、海外で開催された冬季オリンピックでは最多となる八個のメダルを獲得しました。惜しくもメダルに届かなかった選手も含め、数々のドラマが生まれ、選手たちの活躍、そのひたむきな姿は、多くの国民に勇気と感動を与えてくれました。今日までの選手の努力、監督、コーチ並びに競技団体など関係者の皆様の長年にわたる御尽力に、心から敬意を表したいと思います。

 そこで、まず大臣にお尋ねいたしますが、日本選手たちのこのような活躍について、政府としてはどのように評価をしていらっしゃいますでしょうか。

下村国務大臣 スピードスケートのメダリストの堀井委員ですから、多分、本当はソチにも行って応援をしたかったのではないかというふうにも推察をいたします。また、スピードスケートで今回メダルをとれなかったというのはちょっと残念でしたが、しかし、このソチ・オリンピック競技大会において、それぞれ全力で取り組まれた日本選手、メダルをとれた人、とれなかった人問わず、選手の皆さんに、本当に心から敬意を表したいと思います。それだけ日本選手が最後まで諦めず、それぞれ全力で競技に取り組む姿勢、これに日本人の多くが感動し、勇気と、そして自分も頑張ろう、そういう情熱をもらったのではないかというふうに思います。

 今回の大会では、御指摘のように、金メダル一個を含む合計八個のメダルを獲得した。これは長野大会に次ぐ史上二番目の成績、国外では最高獲得メダルということで、高く評価できると思います。さらに、国民からすると、残念ながらメダルをとれなかった選手も大変感動を与える、全力を尽くしたということで、すばらしい努力をされたのではないかと思います。

 二〇二〇年の東京開催が決まって最初のオリンピックで、このような日本選手の大活躍により、六年後の大会に向けて最高のスタートが切れたのではないかと思います。今後、JOCや各競技団体において、今回の結果について具体的な分析、検証等が行われるというふうに聞いておりますが、それを踏まえつつ、二〇一八年平昌大会、それから二〇二〇年東京大会に向けて、夏季、冬季ともにさらなる競技力の向上に取り組んでまいりたいと思います。

堀井分科員 大臣からもさらなる競技力向上というお話がございました。これに関して、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックの大成功という、いわば基準と申しますか、その成果をどのように認識していらっしゃいますでしょうか。また、国民にとって、真に東京オリンピック・パラリンピックが成功した、東京でオリンピック・パラリンピックをやってよかったと思えるには何が必要と考えていらっしゃいますでしょうか。

 国民の視点からの成果と、開催国の政府としての成果について、大臣の御所見をお聞かせいただきたいと存じます。

久保政府参考人 東京オリンピック・パラリンピック成功にとって、政府の視点、国民の視点、それぞれの観点、何が必要かということでございます。

 二〇二〇年の東京大会につきましては、まず、安全、確実に大会を運営するということは第一でございますけれども、政府といたしましては、日本社会全体を元気にし、さらなる発展を目指すための大きなチャンスと捉えることが重要であると考えております。

 また、二〇二〇年東京大会の成果は、前回の一九六四年東京大会がそうでありましたように、人々の心の中にレガシーとして永続的に生き続け、人々の心の持ち方を変えて、社会を変え、さらには日本全体がさらなる発展に向かう原動力となることが期待されるところでございます。このため、東京だけのイベントとすることなく、日本全国に波及効果を生み出しますとともに、おもてなしの心や、我が国の強みを世界に向けて最大限アピールしていくことが重要であると考えております。

 また、国民の視点ということで申し上げますれば、今回のソチ・オリンピックでも見られましたように、アスリートの活躍は、国民に誇りと喜び、夢と希望をもたらし、国民意識を高揚させるものでございます。メダルの獲得はその一つのあらわれでございますけれども、世界のトップを目指して戦う選手一人一人にドラマがあって、そのみずからの限界に挑む姿勢には、国民に勇気と感動、そして自分たちも頑張ろうという気持ちを与えてくれるものだと思います。

 大会の成功には、こういった日本選手の活躍、大会開催後のレガシーとして何を残すことができるのかということが大きく関係してくると考えますので、政府といたしましては、大会関連施策や選手強化に、組織委員会等とも連携しながら、しっかりと取り組んでいく必要があると考えているところでございます。

堀井分科員 ぜひともそのお考えのもとに全体で取り組みを進めていただきたいと思います。

 次に、オリンピック・パラリンピックは、夏季が二〇一六年リオデジャネイロ、冬季は二〇一八年平昌での開催となります。また、我が国では二〇一七年に札幌で冬季アジア大会、二〇一九年にラグビーのワールドカップが開催を予定され、そのほかの競技種目も国際大会がメジロ押しでありますが、政府としては、どのような方針で選手を育成し、強化をし、競技力向上を図っていくお考えなのか、お尋ねしたいと思います。

 例えば、平成二十六年度予算案には、トップアスリートの強化支援策として、マルチサポート戦略事業が盛り込まれております。この事業は、科学、栄養学、心理学、生理学などの複合的な観点からアスリートを支援し、また、我が国が誇る科学技術を結集して、用具やトレーニング器具の研究開発を実施するなど、トップアスリートにとって大変手厚い内容になっております。また、ソチ・オリンピックでも設けられたマルチサポートハウスは、選手の皆さんにも大変好評だったと伺っております。

 二十六年度が新規の予算ということで、昨年夏の概算要求時にはまだ東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まっていない時期でしたので、若干遠慮ぎみな予算要求だったのではないかと拝察をいたしますが、まずは二十六年度の成果を精査しながら、二十七年度概算要求ではさらに内容の充実強化に取り組むべきと考えますが、いかがでしょうか。

久保政府参考人 オリンピック選手の強化につきましては、JOCあるいは各競技団体において現在強化戦略プランを策定して、競技力の向上に取り組もうと思っているところでございます。これに連動して、政府も連携して取り組んでいきたいと思っているところでございます。

 今御指摘のマルチサポート事業につきましては、この状況を踏まえまして、オリンピック競技大会等でメダル獲得が期待される競技を対象といたしまして、アスリート支援、さらに研究開発等につきまして、多方面から専門的かつ高度な支援を戦略的、包括的に実施しているものでございます。

 この事業の対象競技の期間は、競技団体の強化育成サイクルあるいはサポートの継続性等に鑑みまして、原則としてオリンピックサイクルの四年間としながら、強化戦略プランや潜在的な能力を有する選手の状況も踏まえて、必要に応じて二年ごとに中間見直しを行うことといたしております。

 また、この事業の実施に当たりましては、効果的に機能するように、各スタッフが選手や指導者のニーズ等をもとに競技団体と調整しながら、それぞれのサポートを計画的、継続的に展開しているところでございます。

 御指摘のように、昨年、概算要求時には東京オリンピック・パラリンピックがまだ来るかどうかわかっておりませんでしたので、一定の枠の中でやりました。それから、将来的な選手の育成計画をまだJOCも立てていないところでございましたけれども、今後、二〇二〇年に向けて、あるいはその後に向けて、政策的な、戦略的なプランをJOCと連携しながら立てて、十分なそれの支えとなるような予算要求をしていきたいと思っているところでございます。

堀井分科員 大会期間中、よく国の予算が少ないなどと言われておりましたが、ここ最近はしっかりサポート体制も充実されておりましたし、まだまだそのほか補っていかなくてはならない点もあるかと思います。私も、予算がしっかりつくように努力を図ってまいりたいと思っております。この事業も大変賛同いたしますので、よろしくお願いしたいと思います。

 さらに内容を充実し、成果を上げていくために、一点だけ指摘をさせていただきたいと思います。

 マルチサポート戦略事業のターゲット競技種目の指定は、単年度ごとの成績に基づく評価になっていると思いますが、オリンピックでメダルを獲得した競技種目には、四年間継続して支援を実施してはいかがでしょうか。

 と申しますのも、一度メダルをとった選手は、さらに上のメダルをとる期待が高まるわけであります。マスコミの報道や国民の期待が高まる中で、選手個人は、意識しないようにしてもそれなりにプレッシャーを感じることになります。

 外国人選手の中には、一年から二年、競技は続けながらも国際大会には出場せず、四年間でピークを合わせる選手もいます。その代表例が、今回、お隣韓国の金妍児選手がそうだったと思いますし、ノルウェーやオーストリアのスキー選手なども、二年間完全に休んで出てくるという選手がたくさんおります。

 日本の場合は、毎年毎年成績が求められ、そしてそこにランクをつけられるということで、肉体的な負担と精神的な負担が大きくなり、かえって長く競技を続けられなくなるケースもあると思います。

 これは、JOCや各競技団体などとさらに改善点を話し合ってみる価値があるのではないかと考えますので、これは質問でございません、ぜひ御検討していただければと思います。

 次に、マルチサポート戦略事業でトップ・オブ・トップをつくり上げていくと同時に、私は、競技人口の底辺を拡大していくことも重要だと思います。高い山を築くためにはその裾野を広げていくことが重要で、いつかオリンピックに出て金メダルをとりたいと夢見る子供たちがその夢を着実に実現するためには、日本じゅうの可能性を秘めた全ての子供たちにチャンスを与えることが重要だと考えております。

 東京オリンピック・パラリンピックの開催までの期間はあと六年となります。ソチ・オリンピックで最年少メダリストとなったスノーボード男子ハーフパイプの平野歩夢選手は十五歳でありましたから、六年前で考えると九歳、小学校四年生。フィギュアスケート男子金メダリスト羽生結弦選手は十九歳、六年前では十三歳で、中学校二年生の年になります。

 六年後の東京オリンピック・パラリンピックを見据えると、二十六年度予算案に盛り込まれた二〇二〇年ターゲットエイジ育成・強化プロジェクトは大変重要なプロジェクトだと考えます。その意図するところをお伺いしたいと思います。

久保政府参考人 二〇二〇年のオリンピック競技大会で活躍できる人材を今から発掘、育成していくことが我々にとって重要な使命だと考えているところでございます。

 そのため、平成二十六年度から新規事業といたしまして、今先生御指摘の二〇二〇年ターゲットエイジ育成・強化プロジェクトの実施を予定しているところでございますが、この事業は、二〇二〇年にちょうど活躍が期待される若い年代の競技者を対象といたしまして十分なトレーニングの実施、二点目といたしまして、日本人が本来得意とする分野の競技種目で将来メダル獲得の可能性のある競技種目の育成強化、三点目といたしまして、タレント発掘・育成コンソーシアムの体制整備、これらを総合的に行いますことによりまして、重点的、計画的な発掘、育成、強化を図るものでございます。

 この事業を活用しながら、二〇二〇年東京大会に向けて、若い年代の競技者の発掘、育成、強化を国として支援してまいりたいと考えているところでございます。

堀井分科員 これも東京開催が決定する前に考えた予算であると思いますので、先ほどと同じように、二十七年度は拡充していきましょう。ぜひよろしくお願いをいたしたいと思います。

 私自身の幼少期の経験から申し上げると、トップアスリートとじかに触れ合うこと、またオリンピックの舞台に立つ夢を持ち続けることが、その後の競技生活に大きな影響を与え、支えになったことは言うまでもありません。

 一つの例として、オリンピックを目指す全ての子供たちのために、全国の小学校、中学校、高校、大学、競技場、スポーツ施設などにポスターを掲示してはいかがかと考えます。例えば、東京オリンピック・パラリンピックは君の輝く場所であるとか五輪のマークをそこのポスターに掲示するなど、子供たちの心に響く、心に届くメッセージで、全国で頑張っている子供たちへの夢への挑戦を後押ししてはいかがかと提案をいたしたいと思います。

 もう一点、これも御答弁は結構です、課題に触れさせていただきたい点がございます。

 全国にスポーツの裾野を広げていくためには、地方公共団体の取り組みも不可欠と考えております。

 残念ながら、各都道府県、市町村において、スポーツ振興は、特に競技力向上に充てられる予算は縮小、削減の一途をたどっていることが、これは事実であります。地方財政も厳しい中ではありますが、真っ先に削減されるのはスポーツなのかと思うと寂しい気がいたします。

 地方の予算の使途については国が主導することは難しいことは承知をしておりますが、真の競技力向上を図るためには、国、都道府県、市町村が一体となって取り組む必要があることも、改めて指摘をさせていただきたいと思います。

 次に、選手と選手をサポートする企業とのマッチング事業についてお伺いをいたします。

 先ほど地方の財政が厳しいことにも触れましたが、財政状況が厳しいことは民間企業も同じことが言えます。

 今回、二十六歳でオリンピック初出場、三十歳で初出場と、大学卒業後にアルバイトをしながら夢を果たした選手がいます。恵まれない環境のもとで、諦めずに挑戦し続けた涙ぐましい選手たちがいました。

 一方、長引くデフレ不況の中で、競技者として日本のランク上位に位置しながらも、活動の場を失い、競技をやめざるを得なくなった選手たちを私は知っております。この選手たちがもう少し競技を続けることができていればと思うとまことに残念なことであるんですが、国の直接的な支援だけでなく、選手と選手をサポートする意思のある企業とのマッチングがより効果的に機能していればと思っております。

 この点について、何か御見解があればお願いしたいと思います。

久保政府参考人 我が国の選手強化に当たりましては、企業の支援は不可欠でございまして、今回のソチ・オリンピックの好成績の背景にもこのような多くの企業の方々の御支援があったものと考えております。

 このため、今後、我が国の国際競技力の向上を図っていきますためには、先生御提案いただきました企業と選手とのマッチングの推進は非常に重要であると考えております。

 これにつきましては、現在、JOCにおいて、トップアスリートの企業への就職支援に関しますトップアスリート就職支援ナビゲーション事業、アスナビを行っておると聞いているところでございます。

 今後、この事業につきまして、周知徹底を図りますとともに、企業、選手双方にとって、より一層利用しやすいものとなりますよう、JOC、関係団体等に対して検討を促していきたいと思っておりますし、このマッチングを含めたキャリアサポートにつきましては、国もやらなければならない施策としてスポーツ基本計画にも書かれております。

 したがいまして、文部科学省といたしましても、可能なサポートのあり方につきまして、さらなる検討をしていきたいと考えているところでございます。

堀井分科員 JOCのアスナビというものがあることは承知をしております。そこに申し込んで、うまくサポートを受けられた選手たちもいました。しかし、私みたいな成績の者が申し込んでいいものだろうかと思う選手がいたり、逆に、大企業が入ってくるものだと思って、中小企業の方々が、私みたいな企業がそこにサポートをすると申し込んでいいのだろうかとか、もしくは、小規模の企業者を十社募ってオリンピック選手を一人サポートできないであろうかというような、さまざまな意見が出ておりますので、そうした、複数でも対応できるとか、どの規模であればとか、選手とのマッチングをより充実強化を図っていただくと、やはり、二十六歳とか、またはレジェンドと呼ばれる葛西君のように四十一歳でメダルをとるような選手を日本で支えることができるのかと思いますので、このマッチングをよくしていただいて、充実強化を図っていただいて、取り組んでいただきますようにお願いを申し上げたいと思います。

 次に、冬季オリンピック・パラリンピックは、二〇一八年、平昌開催の後、恐らく、北米大陸やヨーロッパ大陸での開催を経て、またアジア大陸で開催されることが予想されます。サイクルは順不同で決まってはいないんですが、二〇三〇年の開催都市は恐らく二〇二四年ごろに決まると考えられます。東京オリンピック・パラリンピック開催から四年を経たときになりますが、東京オリンピック・パラリンピック開催でさらに機運を高め、一九七二年の札幌、一九九八年の長野に続く三度目の冬季オリンピックを日本で招致することも考えられますが、この点について政府の見解はいかがでしょうか。

久保政府参考人 我が国で国際競技大会を招致、開催しますことは、単に競技力の向上のみならず、広く国民、市民のスポーツへの関心を高めて、スポーツの振興や地域の活性化につながるものでございます。また、スポーツを通じた国際的な交流や貢献は、国際相互理解を促進して、国際平和に貢献するなど、大変意義深いものであると考えております。

 こうしたことから、文部科学省といたしましても、スポーツ基本計画に基づきまして、国際的な情報収集、発信や国際的な人的ネットワークの構築を通じまして、国際競技大会の積極的な招致や円滑な開催を支援することといたしております。

 御指摘の冬季オリンピック・パラリンピックの招致につきまして、これは意義深いことであるとは思っていますが、まず、開催を希望される自治体がおありになることが前提でございまして、それが出てこられましたならば、その招致、開催につきまして国としても必要な支援をしてまいりたいと考えているところでございます。

堀井分科員 今、北海道札幌市が機運が非常に高まっておりまして、ことし一年の機運の醸成次第では開催を考えたいというようなこともちらほら聞かれております。実際に、札幌市長、そして北海道庁の環境生活部長、それに所管する部長さんが、今回、ソチの視察に開会式から六日間ほど赴いたようであります。私自身も、北海道全体の機運の醸成を図り、開催自治体の理解を得ることができれば、しっかりサポートしていきたいと思いますし、その際には政府の御支援を、御協力をお願い申し上げたいと思います。

 三月七日からはソチでパラリンピックが開催されます。オリンピック同様に、日本選手団の活躍に期待をいたしたいと思います。

 また、平成二十七年度からのスポーツ庁の設置も決まっておりますので、国を挙げてオリンピック・パラリンピックの競技力向上のために施策に取り組んでいただきますようにお願いをしたいと思います。

 実は、きょう一番言いたいことは、これは質問ではございません。語らせていただきたいと思います。

 私は、日本開催の長野オリンピックに出場させていただき、メダルを期待されながらも惨敗した一人でありますから、こうした経験や体験は、これからの世界と戦う日本代表選手に生かすことができればと強く思っております。

 自国開催に出場する選手にとってのメリットは、一般的にホーム、アウエーと表現されておりますが、ホームでの試合環境、観客は自分の味方になります。これが最大の強みであると思います。時差解消が要らない、さらには食環境も万全に整っている、または、なれ親しんだ練習環境、これがメリットと言えるんだと思います。

 一方で、これは時としてであります、時としてマイナスに転じ、デメリットとなるおそれのあるものは、殺到する報道メディア、常に報道陣がいることによるストレス、または若年者のCM出演、集中する国民の期待などが考えられます。

 こうした選手にかかる重圧や心身的なストレスをどのようにして解消するか、これは重要な課題であると私は考えております。自国開催のオリンピック経験と政治に携わる者の一人として、選手が本来持っている力を最大限発揮できる環境をつくることが私の使命とも考えております。

 今後とも、日本のスポーツ振興に全力で取り組んでまいることをお誓いをし、少し時間を余しましたけれども、質問を終わらせていただきたいと思います。

 本日はありがとうございました。

あかま主査代理 これにて堀井学君の質疑は終了いたしました。

 次に、船橋利実君。

船橋分科員 自由民主党の船橋利実でございます。

 本日は質問の貴重な機会をいただきまして、まことにありがとうございます。また、大臣におかれましては、長時間の審議、まことにお疲れさまでございます。

 さらには、公明党の佐藤先生、そして今ほどの堀井先生、私と、北海道が三人続いておりますけれども、よろしくおつき合いのほどお願いを申し上げる次第であります。

 まず初めに、子ども・子育て支援新制度についてお尋ねをいたします。

 子ども・子育て支援新制度の目的は、単に認定こども園、幼稚園、保育所を通じた共通の施設型給付を創設するということではなく、消費税の引き上げによる社会保障財源の確保を前提に、幼児教育、保育、子育て支援の質、量の充実を図ることであります。

 そのためには、消費税率の引き上げにより確保する〇・七兆円以外に、〇・三兆円を上回る財源が必要であります。まだ消費税率の引き上げも未確定の部分もございますけれども、その財源の確保の見通しについてお聞かせをいただきます。

    〔あかま主査代理退席、主査着席〕

岩渕政府参考人 御指摘の点につきましては、一昨年の社会保障・税一体改革に関する自公民三党合意や、子ども・子育て関連三法に対する参議院の附帯決議におきまして、幼児教育、保育、子育て支援の質、量の充実を図るためには一兆円超程度の財源が必要であり、政府は財源の確保に最大限努力するものとする旨が盛り込まれているところでございます。

 これを受けまして、昨年六月に少子化社会対策会議において決定いたしました少子化危機突破のための緊急対策におきましても、子ども・子育て支援の質、量の充実を図るための財源として、消費税率の引き上げにより確保する〇・七兆円を含め一兆円超程度の確保に努める旨明記しているところでございます。

 政府といたしましても、〇・三兆円超の財源を確保いたしまして、子ども・子育て支援の充実を図っていくことが必要であると認識しておりまして、引き続き財源確保に努めてまいりたいと存じます。

船橋分科員 次に、新制度の中で特に問題と考えておりますのは、現在九四%の幼稚園で実施しております預かり保育の問題であります。

 支援法十九条第一項第一号の、学校教育のみを受けるいわゆる一号認定子供は、預かり保育という保育をこれまで受けていますけれども、新制度では、第一号には教育のみで保育は含まれておりません。したがって、一号認定子供は預かり保育の時間について施設型給付は受けられないということに制度的にはなるわけであります。これは二号認定子供と比較をして極めて不公平であると考えますけれども、どのような認識をお持ちか、お聞かせいただきます。

前川政府参考人 先生御指摘のとおり、現行の私立幼稚園の九四%におきましていわゆる預かり保育が実施されておりまして、私立幼稚園は、パートタイムなど就労している保護者の子供の受け入れ先としても重要な役割を果たしているという現状がございます。

 こういった現状を踏まえまして、新制度におきましては、幼稚園型一時預かり事業を創設いたしまして、幼稚園または認定こども園が一号認定子どもに対し教育標準時間を超えて預かり保育を行う場合には、市町村から幼稚園型一時預かり事業の委託を受けて実施し、対応することとしているわけでございます。

 先生の御指摘の問題点があるわけでございますけれども、文部科学省といたしましては、子ども・子育て支援新制度におきまして、一号認定子どもに対する施設型給付と並んで、幼稚園型一時預かり事業の一体的な充実を図って、先生方のまた御指導をいただきながら、しっかりと支援してまいりたいと考えております。

船橋分科員 今ほど御答弁があったように、これまでの預かり保育については、市町村が行う一時預かり事業の方に移行していくということでありますけれども、その場合に、施設型給付との財源上の格差が心配されるわけであります。

 また、現在幼稚園で行われている預かり保育が必ず市町村において対応してもらえるものかどうかということを考えますと、その仕組みづくりというものが必要と考えますけれども、認識をお聞かせください。

前川政府参考人 この点に関しましても、先生御指摘のとおりでございます。

 文部科学省といたしましては、新制度における幼稚園の幼稚園型一時預かり事業の充実にしっかりと取り組んでまいりたいと考えているところでございます。

 特に、市町村が幼稚園に対しまして幼稚園型一時預かり事業の委託を確実に実施していただけるように、各種会議等の場を通じて国の示す基準や単価等について十分周知するとともに、関係省庁と協力、協議しながら、具体的な仕組みについてさらにしっかりと検討してまいりたいと考えております。

船橋分科員 この点は極めて重要な点でありますので、しっかりとした取り組みを求めさせていただきたいと思います。

 そうした中で、この一時預かりという呼称の問題でございますけれども、何となく人と荷物を同列に扱ってしまっているような印象を拭えないわけであります。こうした呼称については解消すべきと考えますけれども、見解をお聞かせください。

生田政府参考人 お答えいたします。

 一時預かり事業につきましては、お母さんのけがだとか、あるいは病気、冠婚葬祭など突発的な事情に対応するために、保育所などにおきまして一時的にお子さんをお預かりする事業でございます。根拠としては、児童福祉法の第六条の三第七項にございまして、法律上の用語として規定されてございます。

 また、この預かりという言葉につきましては、一般的にお子さんをお預かりする際に使われる用語と承知しておりますけれども、この一時預かり事業につきましては、保育所などの施設基準ですとか配置基準に準じた形で運営されているということもございまして、お子様を大切にお預かりするという趣旨で用いられているということでございます。

船橋分科員 ちょっとよく意味がわからないんですけれども、法的な位置づけ上のこともあるということではありますけれども、こうした点は、今度、幼稚園の関係者の皆さん方が新しく入るわけですから、そうした皆さん方の声もよくお聞きをいただいた中でお考えいただいた方がよろしいのではないかというふうに指摘をさせていただきます。

 次に、国立幼稚園のことについてお尋ねいたします。

 国立の幼稚園は認定こども園に移行しないというふうに聞き及んでおります。このことについて、関係者からは、国が民間の幼稚園などには認定こども園への移行を進める一方で、国立幼稚園は現行のままであるということに疑問の声が上がっておりますけれども、見解をお聞かせください。

前川政府参考人 国立大学の教員養成の学部等につきましてですが、附属の幼稚園を持っているというケースが多いわけでございます。この附属の幼稚園は、幼小の連携でありますとか、就学前の教育のあり方などにつきまして、先導的な教育内容の研究あるいは学生の教育の実習を行う場、そういった機能を持っておりまして、大学の学生の教育の質の向上に役立っている、そういう現状にございます。

 この国立大学の附属幼稚園につきまして今後その形をどうしていくか、これは基本的にはそれぞれの大学が考えることでございますけれども、これまでの教育研究上の役割をさらに積極的に果たしていただくということが必要でございます。その中で、認定こども園への移行につきましても、その大学を取り巻く地域の実情等を考慮しながら、各大学で十分検討していただきたいというふうに考えているところでございます。

船橋分科員 今ほどのお考えが私も正しいんだと思います。

 ただ、いわゆる幼稚園関係者と意見交換をされている際に、国立幼稚園に関してはそういうふうに移行しないというふうにはなから言い切ってしまっていたような場面があって誤解を招いているというふうに思っておりますので、関係者に対しては、同じ扱いの中で御検討いただくことだということで御説明いただければと思います。

 今後の対応ということでお尋ねいたしますが、今後決定されるであろう公定価格についてであります。

 国の公定価格を踏まえて市町村が公定価格を検討していくということになりますと、公定価格の公表時期がおくれるということが心配されます。それが次年度の園児募集に影響を与えていくということが危惧されるわけでございますけれども、今後の対応としてお聞かせをいただきたいと思います。

下村国務大臣 私立幼稚園が新制度への移行を適切に判断し、園児募集を円滑に行うためには、御指摘のように、公定価格や利用者負担等の情報等をできるだけ早くお示しすることが重要であるというふうに思います。

 公定価格については、本年三月末までに、国の子ども・子育て会議において骨格の取りまとめを行っていただき、国として、四月以降できるだけ早い時期に、主な項目についての公定価格の見込み額である仮単価の提示を行いたいと考えております。その上で、市町村に対し、できるだけ速やかに、国の基準等に沿って施設型給付や利用者負担の見込み額を定めていただくよう働きかけてまいりたいと思います。

 今後も、引き続き公定価格の検討を鋭意進めるとともに、適時に必要な情報提供を行い、新制度の円滑な施行に向けて取り組んでまいりたいと思います。

船橋分科員 ありがとうございます。

 次に、学校教育と職業訓練の関係についてお尋ねをいたします。

 近年、技術革新の進展、少子高齢化の進展などの中で、経済社会の発展を支える物づくりを担う技能労働者を育成する職業能力開発が求められております。特に、即戦力、高度な技術、技能等を求める傾向が高まる中にありましては、職業能力開発行政が重要になっていると認識をしております。

 一方で、公共職業能力開発施設における職業訓練の実施に当たりましては、官民の役割分担に配慮して、民間の教育訓練施設との競合を避けることも必要であります。

 職業能力開発促進法第三条の二第二項において、「職業訓練は、学校教育法による学校教育との重複を避け、かつ、これとの密接な関連の下に行われなければならない。」とされています。

 また、厚生労働省は、平成十年三月三十一日付及び平成二十六年二月十日付で、公共職業能力開発施設と専修学校等との調整等について通知を発出し、公共職業能力開発施設における職業訓練の実施に当たっては、引き続き、官民の役割分担に配慮して民間教育訓練機関と競合させることが重要であり、官と民とが相まって人材の育成を図っていくことが必要としております。

 そこで、お尋ねをいたしたいのでありますけれども、民間教育機関との競合を避けるために、都道府県立の公立職業能力開発施設の設置、改廃、公共職業能力開発施設に関する広報活動、職業能力開発施設の名称等の検討、公共職業能力開発施設の授業料等の検討を行うように、平成十年三月三十一日付及び平成二十六年二月十日付の文書で通知しておりますけれども、これらの推進状況についてお聞かせください。

生田政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のように、公共職業能力開発施設での職業訓練の実施に当たりましては、官民の役割分担に配慮して、民間の教育訓練機関との競合を避けるということが重要でございます。重複、連携等に十分配慮しながら、官と民が相まって我が国経済発展の基盤をなす人材の育成を図っていくことが必要であると考えてございます。

 このような考え方に従いまして、例えば離職者訓練につきましては、平成二十四年度で見ますと、二十五万人中の二十一万人、八三%が、専修学校など民間教育訓練機関が担っているという状況でございます。

 委員御指摘のように、平成十年三月に、公共職業能力開発施設の設置、広報活動、名称、授業料などに関する留意事項を都道府県などに周知したところでございますが、今月の十日に、引き続きその趣旨を改めて周知徹底するため、都道府県宛てに通知を発出いたしました。

 今後とも、地域の実情を踏まえつつ、都道府県などに対しまして、この通知の趣旨が徹底されるよう協力を依頼していきたいと考えてございます。

船橋分科員 ありがとうございます。

 ただ、平成十年に出されて、また二十六年に今回改めて出されたということは、今ほどお答えありましたけれども、思うように進んできていなかったという状況があるからではないかというふうに推察するわけでありますけれども、改めて、今後どのような対応をとっていかれるお考えであるのか、もう一度お聞かせいただきたいと思います。

生田政府参考人 公共職業能力開発施設と専修学校などの調整につきましては、例えば、県によっては、専修学校などと協議の上、その要望を踏まえまして、既に、競合する訓練科を廃止するという対応をしているところもあると伺っております。例えば、北海道では、平成二十五年度末までに苫小牧の高等技術専門学校の自動車整備科を廃止するという予定でございます。こういったことが非常に重要だと思っております。

 今後とも、中央レベルで、全国専修学校各種学校総連合会などの関係団体とも意見交換を図って対策に生かしていくという考えでございますし、地域の実情も踏まえまして、官民の役割分担に配慮して、通知の趣旨がきちんと実行されるように、都道府県に対して協力を依頼していきたいと考えてございます。

船橋分科員 今ほど北海道のことも引き合いに出していただきまして、大変ありがとうございます。

 ただ、北海道が進んでいったのは、私は前職が道議会議員でありまして、このことをずっとやっていました。ずっとやっていましたので、それで全国的に比べると進んでいるということなんですが、まだ不十分なんです。北海道が比較的進んでいる方で、全国的には、まだおくれているところが、うまく調整機能が働いていないというところがたくさんあるという現実もございますので、ぜひ国としての必要な対応を今後ともやっていただきたいということを求めさせていただきます。

 次に、金融教育などについてお尋ねをいたします。

 現在、高校生に対しまして、公民科、家庭科の授業の中で近時の金融状況や金融商品などについて教えていると聞いております。金融についての学習は経済社会における基礎となるものでありますから、現代社会においては非常に重要なものであります。

 また、次々と新しい動きもありますので、常に新しい情報で学んでいくということも重要であります。したがって、新しい動きを取り入れた使いやすい教材の提供や外部の専門家の派遣が有意義であると考えます。

 そこで、金融教育について、現状としてどのようなことに力を入れておられるのか、また、今後どのような考え方のもとに進めていかれるのか、お聞かせください。

前川政府参考人 初等中等教育におきまして金融に関する基本的な知識を身につけるための教育を行うということは、非常に大事なことであるというふうに考えております。

 このため、児童生徒の発達段階を踏まえまして、学習指導要領に基づいて、社会科、公民科、家庭科におきまして、小学校におきましては、金銭の大切さや、物の選び方や買い方について、中学校では、金融などの仕組みや働き、消費者の基本的な権利と責任、また高等学校では、金融の制度、またその動向などについて、指導を行っているところでございます。

 さらに、こうした取り組みを促進するために、金融広報中央委員会、これは事務局が日本銀行でございますが、この金融広報中央委員会と連携いたしまして、同委員会が実施しております教師用指導資料や高校生向け教材の作成に協力をしたり、また、教員のための金融教育セミナーへ講師を派遣したりしているということがございます。

 今後とも、関係省庁、関係機関との連携協力を図りつつ、金融に関する教育に努めてまいりたいと考えております。

船橋分科員 ありがとうございます。

 次に、高齢化社会が進んでいく我が国におきましては、社会保障制度や生命保険、損害保険ということについても、正しい判断が将来できるように、若いうちから教えていくことが重要ではないかと考えますが、この点についての御認識をお聞かせください。

前川政府参考人 御指摘のように、社会保障制度についての理解、これも初等中等教育において重要なことだと考えております。このため、児童生徒の発達段階を踏まえまして、学習指導要領に基づいて、社会科、公民科、家庭科といった教科において指導が行われております。

 小中高等学校を通じまして、社会保障制度の意義や役割を指導しておりますし、また、高等学校においては、生活における経済の管理や計画といった点について指導を行っております。各学校におきましては、社会保険労務士などの外部の専門家から直接話を聞いたり講義を受けたり、こういう取り組みも進んできているところでございます。

 さらに、厚生労働省あるいは関係団体と連携いたしまして、年金をテーマにしたエッセーの募集というようなことでありますとか、あるいは、高校生向けの社会保障教育の教材につきまして全国の教育委員会に周知を行っているというような取り組みをしております。

 今後とも、関係省庁や関係機関との連携協力を図りながら、社会保障制度等に関する教育に努めてまいりたいと考えております。

船橋分科員 ありがとうございます。

 次に、労働などに対する基本的事項ということでお尋ねしたいのでありますけれども、社会に出る、労働する、仕事を選ぶなどの基本的事項については、できるだけ若いうちから教えていくことが必要と考えます。

 現在、全国の九八%の中学校で、三日間程度の職場体験活動を行っております。それに加えて、実際に職場体験に出る前に、仕事を理解するための学習、職場体験後の体験結果の発表なども行われております。

 高校ではインターンシップを実施しておりますが、インターンシップを実施している普通科高校が七四%であるのに、そのうち、在学中に一回でもインターンシップを体験したことがある生徒の割合は一八%にとどまっておりまして、参加率が非常に低い状況にあります。

 また、小中学生におきましては、男子はスポーツ選手、女子は保育士や幼稚園の先生が人気職業でありまして、高校になると、男女とも、学校の先生、公務員、医師、看護師、薬剤師、理学療法士などの師、士のつく職業に人気があるという調査結果があります。「十三歳のハローワーク」などを見てみますと、人気の職業をずっと並べていって、私ども政治家というのは百番目までに入っていないという状況があるわけでございますけれども、こうした調査結果を見ていきますと、さまざまな職業についての情報が十分に知られていないということがあるのではないかと思うわけであります。

 そこで、今後、このような、社会に出る、労働する、仕事を選ぶなどの基本的事項について学校でどのように指導していけばよいとお考えであるのか、お聞かせをいただきたいと思います。また、世の中に数多くある職業に関する情報提供のあり方についても、どう取り組まれていくお考えか、お聞かせください。

前川政府参考人 学校で学ぶ子供たちは、いずれ学校を出て、社会に出て、職業につくわけでございますので、職業に関する教育は非常に重要であると考えております。

 平成十八年に改正されました教育基本法におきましては、教育の目標といたしまして、「職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。」を示しております。また、これとともに、学校教育法におきましても、義務教育の目標といたしまして、「職業についての基礎的な知識と技能、勤労を重んずる態度及び個性に応じて将来の進路を選択する能力を養うこと。」ということが定められているところでございます。

 これらの目標を踏まえまして、学校におきましては、児童生徒一人一人が主体的に進路を選択、決定できる能力や態度を培い、みずから勤労観、職業観を形成していけるように、各教科や総合的な学習の時間、あるいは特別活動を初めとする教育活動全般を通じまして、キャリア教育の視点からの指導を充実していくことが重要であると考えております。

 各学校におきましては、こうした観点を踏まえまして、教育活動の全体を通じた体系的、計画的なキャリア教育の実施に努めているわけでございますが、例えば、先生御指摘のあったような職場体験活動、インターンシップ、またその事前事後の指導の実施、さらに、地域の職業人による講話、学校図書館の職業コーナーを活用した調べ学習、こういった取り組みによりまして、社会における多様な職業について生徒の理解を深める活動を行っているところでございます。

 文部科学省といたしましても、こういった活動についてさらにさまざまな支援を行い、児童生徒一人一人が職業についての理解を深め、それぞれ個性に応じてよりよい進路、職業の選択ができるように、こうしたキャリア教育の取り組みを推進してまいりたいと考えております。

船橋分科員 その場合、教育現場の中で知る機会、学ぶ機会をつくっていくということも大事なんですけれども、保護者の問題も私はあるのではないか、こう思っています。

 子供たちが進路を選んでいく、例えば進学をする場合でも、将来的にどんな職業につきたいかということを念頭に置きながら学校を選んでいく、あるいは専門学校を選んでいくということになるわけでありますし、その後も、最終的にどんな仕事につけばいいのかということを決めるときに、影響力があるのは誰か、保護者の中でも一番誰があるのかということがありますが、大抵の場合は母親なんだそうです。残念ながら父親ではないということが数字的には出ているということも聞いているわけでありますけれども、やはり保護者の皆さん方にも、子供たちの将来、どういう職業がいいのかということについて知っていただく機会というものを、子供たちも必要でありますけれども、ぜひ保護者に対しても情報提供する機会というものをおつくりいただきたい、こう思っております。

 最後に、地域の科学技術の振興についてということでお尋ねいたします。

 近年、国の地域科学技術関係予算は毎年削減をされておりますが、我が国の科学技術の発展を図るためには、それを支える地域イノベーションの推進が必要不可欠でありますことから、国においては、これまで各地域で培ってきた取り組みをさらに発展、融合させる支援制度の充実や、関係予算の総額確保が必要であると考えます。

 例えば、北海道では、北海道大学におきまして、ライフサイエンス研究を中心とした十五の施設が集積し、先端的な医療技術や医薬品の開発や、食が有する生体機能性に着目した健康科学と医療の融合など、人間の総合的な健康の維持増進、回復を目指すヘルスイノベーションの展開に取り組んでおります。

 この取り組みは、これから日本が世界を先導していく国になるために非常に重要なものではないか、こう思うわけでありますけれども、しかし、その根幹をなすべき地域の科学技術振興のための地域イノベーション戦略支援プログラム予算は、平成二十二年度から毎年削減され続け、平成二十五年度は、平成二十二年度に比べ約五五%減となっております。

 また、原則、一都道府県に一地域の採択という制度になっているため、事業終了後、新たな事業の提案が難しいケースがあるというふうにも聞いております。さらに、このプログラムに挙げられている支援メニューの内容では、人材育成や大学等の知のネットワーク構築がメーンでありまして、科学技術振興の中核と考えられる研究開発を支援するメニューが乏しいのが現状であります。

 そこで、伺いますけれども、地域におけるイノベーションを推進するため、各地域で培ってきた取り組みを無駄にすることなく世界と競争し得る拠点地域を形成するため、地域における研究開発の推進等に必要な支援が必要と考えますが、これについての認識をお聞かせください。

川上政府参考人 北海道につきましては、北海道大学の成果を中心に、北海道が非常に頑張っていただきまして、長い間、地域科学技術の支援を私どもさせていただいてきました。

 数年前に事業仕分けなどがございまして、地域の問題は地域で解決する、そういうような方向性の中で、地域科学技術の予算は、確かに先生御指摘のとおり減少したという経緯がございます。

 そして、特に、研究開発直接の経費ではなくて、人件費であるとかそういうものに重点化をしていくというような流れもございました。それにつきましては、各地域からいろいろ御意見も頂戴しているところでございますが、ちょうど平成二十五年度から、今度は新しい取り組みとしまして、産学の関係者が一つ屋根のもとで集まり、世界と競争し得る研究開発拠点を形成するという、センター・オブ・イノベーション事業というのに新しく着手してきているところでございます。これまでに十二の中核拠点と将来の拠点候補になる十四のトライアル拠点を採択し、ちょうど全国さまざまな地域において拠点の活動を開始したという段階に来てございます。

 北海道につきましても、先生御指摘のヘルスイノベーション、こういったテーマでトライアル拠点に採択をさせていただいているところでございます。ぜひ、しっかりした拠点をつくっていただいて、数は限られますが、選ばれるように御尽力いただければというふうに思うわけでございます。

 こういうようなことによりまして、産学が連携して、各地域にありますすぐれた研究シーズを育てて、社会に還元するというところまで結びつけるようにやることは重要だと思ってございますので、引き続きしっかりと取り組んでいきたいと思います。

 よろしくお願いいたします。

船橋分科員 ありがとうございました。終わります。

萩生田主査 これにて船橋利実君の質疑は終了いたしました。

 次に、渡辺周君。

渡辺(周)分科員 民主党の渡辺でございます。

 それでは、早速質問に入らせていただきます。

 私は文部科学の委員会はなかなか所属したことがないものですから、いろいろ尋ねようと思っていることを、もうちょっと時間があったらいっぱいしたいところでありますが、三十分という限られた時間ですので、幾つかの項目にわたってお尋ねをいたします。

 まずお尋ねしたいのは、最近報道されているようなことの中でぜひとも伺いたいんですが、「アンネの日記」が図書館で今破かれているというか、カッターで切り刻まれているのか、いろいろなことで、これは連日被害が報告されています。

 東京の西部の方と、一番ひどかったところが杉並区で、そして最近のニュースではたしか横浜でも、「アンネの日記」などが三百数冊にわたって切りつけられている、あるいは破損されているということでございます。

 これは、図書館に入るということを、なかなか図書館の警備の中で、怪しいやつは入ってきていないのか、あるいは本を読んでいるところを余りしつこく巡回して、本来の図書館というものになじまないんじゃないかなということで、各図書館も大変苦労していると思うんですね。

 そこでお尋ねしたいのは、今回のことを受けて、今、文部科学省としてどういう対応をしているのか、あるいは今後していかなければいけないと考えているのか。

 もちろん、警察の捜査は別ですけれども、図書館というものの持っている公共性といいますか、開放性というものを守りながらも、続けてこういうことがないようにどうしていくかということについて、今の取り組み、そして、これからの取り組みについての考え方を伺いたいと思います。

下村国務大臣 「アンネの日記」は、私が中学生のころは必読書のように読まれたものでございまして、そのときの記憶があるものですから、オランダに行ったときに、アンネの隠れ家を探して見に行ったことがございます。

 御指摘のように、公立図書館は、国民の教育と文化に寄与するため、さまざまな種類の幅広い図書を蔵書しており、多くの人々の利用に供しているところであります。そういう図書館が所蔵する貴重な蔵書が大量に破損されたということは、これはもう許されるものではなくて、まことに遺憾であります。

 現在、警視庁において捜査本部を設置し、鋭意捜査を進めているところであります。都内の図書館では、関連図書を職員の目の届きやすいカウンター周辺に移したり、館内の見回りをふやすなどの対策を講じているというふうに承知をしております。

 文科省としても、東京都教育委員会を通じて被害状況の把握に努めるとともに、今御指摘ありましたが、横浜市においても同様の被害、これはまだ一冊ということでありますが、報道されているということから、この被害拡大の防止を図るため、全国の教育委員会に対し注意喚起をしてまいりたいと思います。

渡辺(周)分科員 いろいろなやり方があるんだろうと思います。

 ぜひ注意喚起、といっても、来館者に対して、捜査機関じゃあるまいしというところもあるでしょうから、じろじろと誰何するような目ではなかなか見ることはできないだろうなと。それは、ぜひ万全の警備も含めて、もうこれ以上の被害がないようにしていただきたいと思うわけです。

 といいますのは、この問題は日本でも大変大きく報じられておりますが、大臣も御存じのとおり、海外のメディアも大変関心を持っておりまして、ぱっと見ただけでも、BBCであるとかニューヨーク・タイムズであるとかさまざまな、イギリスのABCであるとか、いろいろな報道が出ています。そしてまた、ユダヤの団体も、このことについては胸を痛めている。イスラエル大使館は、例えば毀損された分の三百冊ですか、寄附をしたいというような申し出があったりしています。

 何でこんなことをする人間がいるのかなと私なりにあれこれ考えてみます。これは、一つには、やはり愉快犯といいますか、世の中に騒動を起こしたい、少し尋常でない考え方を持った人間が、たまたまこの本をターゲットにした。あるいは、アンネ・フランクに関係するシリーズ、中にはアウシュビッツのいわゆる収容所も被害に遭っている。あるいは、そのことに触れた方の本も被害に遭っているということも確認されています。

 ですから、このこととあわせて、もう一つは、本当に思想的な考えを持って、いわゆる反ユダヤというのか、あるいはネオナチというのか、そういう人間が、本当に思想的に何かに駆られてやっていることなのか。

 あるいは、もっとうがった見方をすると、何かこういうことをすることによって、日本ではナチスのあの大虐殺を否定するかのような人間が日本にいるということにおいて、対外的に日本の名誉をおとしめようと。だから、結局そういうことにつながると私は思うわけですね、こういうことが出ますと。

 ですから、それだけに、これは警察とも協力して、我が国は、アンネ・フランクに代表されるナチスの虐待、あるいはナチスの大虐殺、ホロコーストも認めない、何よりも、ヒトラーの行った民族浄化という名前のジェノサイドに対してはもう絶対許さないという姿勢をしっかり見せていただきたいと思いますし、それがわかるような形で対外的にぜひ発信をして、日本の教育行政を担当する大臣が非常に胸を痛めている、そして警察当局とも話をして、このことについては徹底して、犯人を特定して捕まえるんだということは、やはり私たちは、これはちょっとそれますが、リトアニアの領事であった杉原千畝さんが、六千人の命のビザを書いて、先日もちょっとテレビで紹介されていました。杉原千畝さんが、ヒトラーから逃れてきたユダヤ人たちのために、もう最後の最後、ソ連に追い立てられて、ロシアに追い立てられて、そこの領事館を離れるまで、駅のホームでも最後までビザを書き続けた。この人の美談というのは、リトアニアという国では全員が教科書で学ぶということをこの間テレビでもやっていました。

 実は、この杉原千畝さんの奥さんは私の地元の沼津の方でございまして、杉原千畝さんは岐阜県の御出身ですが、外務省を追われて、職を転々とした後、日本に帰ってきたときに、戦後、沼津に、私どもの地元にしばらくいらっしゃったんですね。奥さんの地元、実家のある沼津に住んでおりました。そのことは、実は、亡くなった杉原幸子さん、奥様に直接聞いたお話なんですけれども。

 こういう方がいて、ユダヤ人の世界では、我々の先祖を救った杉原千畝、皆さん方はセンポと呼びますけれども、この人が、この日本人一人が、六千人のユダヤ人の、ヒトラーの魔の手から逃れる日本通過のビザを書いた。もちろん、日本に来て、日本からアメリカに渡るときにもいろいろな方の協力があったわけですけれども、我々は、その尊敬される杉原千畝の母国でもございます。この国でこういうことはあり得ない、また、そういうことがあっても、本当に一部の尋常ならざる人間がそういうことをしているのか、あるいは何かの意図を持ってしているのか、そういうことについては徹底してやるということを、ぜひ対外的にもメッセージとして出してほしいんですね。

 警察が捜査しているから、何とか警戒しながら捕まる日を心待ちにしているのではなくて、対外的に、少なくとも、杉原千畝の母国である日本が、このナチスのやった蛮行を認めることはない、こんなものを肯定する日本人はいないということを、ぜひいろいろな言葉に訳して、文部科学大臣としてのメッセージを出していただきたいと思うんですけれども、いかがですか。

下村国務大臣 先ほど申し上げましたように、「アンネの日記」というのは、これは我々が中学生のころは必読書であったということを申し上げましたが、日本は、人権について、ユダヤ人の問題においてもそういうふうに捉えている。

 また、杉原千畝のお話がありましたが、これは、出身が早稲田大学ということで、渡辺周委員にも御協力いただきましたが、我々、早稲田出身の国会議員が寄附を集めて、そして、早稲田大学のキャンパス内に杉原千畝の記念碑を建てて顕彰するということをしたわけでございます。

 これを受けて、イスラエル大使館も、ぜひ協賛、協力したいということを言ってこられた中で、杉原千畝の子孫の方々も、その関係者がNPO法人をつくって、岐阜県にも記念館がありますが、そういう形で連動し、それを日本がやっているということについて、ぜひイスラエルにも来て話をしてほしいということがあって、残念ながら、ちょっと時間がなくて、早稲田出身の国会議員が何人かで行く予定が、なかなか行けない状況でありますが。

 そういうことをしっかりと、ユダヤの関係の方々、イスラエルの方々、もちろん世界の方々に対して示していく必要があるというふうに思います。ですから、今回の出来事が、そういう間違ったメッセージとして世界に伝わるようなことがあってはならないわけでございまして、その辺、捜査当局と、よく状況を把握しながら、的確に判断をし、世界に対して間違ったメッセージが日本から行かないような対応に対して、私もできることについてはしっかり対応してまいりたいと思います。

渡辺(周)分科員 大変、同じ考えを持っていらっしゃるということで、非常に心強い思いがいたしました。

 今、間違ったメッセージにならないようにと。この対外的な発信ということは、私は常々、何かがあるたびに、日本人の美徳というのは、善意というのが、正しいことは黙っていてもきっとわかってくれるはずだ、世界の誰もが理解してくれるはずだ、我々が一生懸命努力していれば必ずかなうように、おてんとうさまが見ている、そんな思いの中で日本人は生きてまいりましたが、善意を、逆に言うと、つけ込まれてプロパガンダに使われる、反面でそういうこともあるわけでございます。

 このことについて、ぜひちょっとまた大臣にも、これはもう既に国会ほかでも、予算委員会等でも質疑されていることですが、今、このアンネ・フランクの日記は世界の記憶遺産というものになっているわけでございます。ユネスコにある世界遺産、このことに対して、いわゆる慰安婦をあわせて、これも世界遺産に残すべきだということを、ユネスコの事務局長が訪韓した際に、二月ですけれども、このアンネ・フランクの日記を引き合いに出しながら、韓国の女性の長官が、趙允旋というんですかね、女性家族部の長官、この方が、一月末にアングレームというところで国際漫画祭をやったときに、その後、こういうことを言い始めた。つまり、ホロコーストに慰安婦を重ねている。韓国は、今そういう活動をしているわけでございます。

 この点について、これは全く別の問題であって、先般の予算委員会における石原信雄元副長官の発言にもございました。本当にいろいろすり合わせをしながら、最後まで裏を、確証、確認をとれたわけではないけれども、実はああいうことになったと。

 実は、私どもも同僚の議員と、もう随分前ですけれども、石原さんがお務めになっていた、一番町にある、ある財団の理事長をやっていらっしゃったときに会いに行きまして、当時の談話のいきさつについても伺うことができました。ただ、外に出さないでほしいという形で当時はヒアリングをしたものですから。そのときはやはり韓国との関係改善を優先的に考えて、ある意味でいえば、情況証拠がない中で、客観的なものがないけれども結論を急いだ政治的産物であったということは、そのときに伺ったわけです。今回も、そういう意味では、日本の善意がああいう形になってしまったということで、今もこのことが尾を引いているわけでございます。

 そして、世界に慰安婦の像がつくられる。そして、漫画展に行ったら、世界の中で日本の漫画は、クール・ジャパンの一つの、日本人が世界に売り出す、そして世界の若い方も、ヨーロッパに私も行きましたけれども、コスプレをする若いティーンエージャーたちがいたり、日本の漫画やアニメが大好きだという、ショップもあるんですね。ちょっと違和感を感じるぐらいに、ここまで好きな人たちがいるのかと思いましたが。そういうところで、日本の漫画ではなくて、韓国が、いわゆる慰安婦のことを、政治的テーマを本来ならしないと言っていたのが、これは普遍の人権問題だと言って、やったわけですね。

 このことを考えると、また、ユネスコに対して、その慰安婦の記録というものがどんな形で残っているのか。石原さんのお話を聞くと、ないからあのような曖昧なものを出した。しかし、それを認めてしまったということが全ての発端でありますけれども、例えば、ユネスコが慰安婦の記録みたいなものを、韓国が言うように「アンネの日記」と同様に世界の記憶遺産として残すのだということになるようなことがあってはならない。それだけに、ぜひここは、こうした動きに対してやはりしっかりとしたメッセージを出していただきたい。

 今回、当事者の方がこう言われた。そのことについて、恐らく世界の方も理解しづらいと思うんですよ。だって、確証がなくてはっきりとしないのに、では、なぜ謝ったのか、謝ったことが認めたことですよねと。そもそも、なぜ慰安婦というものがあったと言うんですかと言うと、だって、謝ったじゃないですか、あったから謝ったんでしょう、普通、ないことを謝らないでしょうと言われると、いやいや、日本人は、ここは俺が頭を下げて丸くおさまるのなら、俺の頭なんて安いものだとか、ここは俺の顔を立てて、これで何とか終わりにしてくれやと言って、日本人型の解決の仕方というのは我々の日常生活の中であると思うんです。

 部下がへまをやって、上司が来て、あの偉い人が来て頭を下げて、ここはひとつ私の顔に免じてと言ったら、もうわかったわかったとなるんですね、日本人同士なら。ところが、そうならないというところが、外交の冷徹な現実でございます。

 いろいろたくさん話をしましたけれども、この漫画展もそうです、利用されています。ここでまた、いわゆる日本の名誉をおとしめよう、そして我々が黙っていると、どんどんどんどん、あたかもそれが全て事実のように広められてしまう中で、例えばユネスコに対してもやはり毅然とした態度をとっていただいて、実際、日本が今わかっている限りのことはしっかり伝えるべきだと思うんですけれども、大臣、いかがですか。

下村国務大臣 これは、ある意味では、日本国内の常識と外交上の常識というのは相当違うところがありまして、私も第一次安倍内閣の官房副長官のときに、従軍慰安婦というのはその後にできた歴史的用語で、慰安婦そのものを否定しているわけではないけれども、しかし、従軍慰安婦については、今、渡辺委員が御指摘のように、石原元官房副長官を自民党の中でも日本の前途と歴史教育を考える議員の会でお呼びしてお話を聞いたとき、今国会の話と同じようなことを当時から言われておりましたので、それに基づいて、私、当時、外交記者クラブで発言したことに対して、物すごくバッシングを受けたことがございました。同じように、直近では、大阪の橋下市長がこの慰安婦問題を取り上げて、日本国内もそうでしたけれども、世界の中からバッシングを受けたという経緯がございます。

 ですから、今回の韓国のユネスコ登録についても、外交的に、これはアメリカ等の関係を含めて戦略的に捉えていかないと、反論するのは簡単にできることではあるんですが、それが国際世論の中でどう捉えられて、それが我が国にとって結果的にどういうふうに有利な展開になりながら、韓国が登録しようとしていることに対して、世界の支持が得られるかということをトータル的に判断しながらやっていかないと、けしからぬ、主張は、それは間違っている、日本の主張が正しいということについて、国際世論をどう味方にするかという戦略、戦術を持ってやっていかないと、ただの反論が逆に我が国に対する批判になることもあり得ることであるというふうに思います。

 ですから、これは、ユネスコ担当は文部科学省ではございますけれども、極めて政治的な判断も要することでもあると思いますから、官邸それから外務省と相談しながら、結果的に我が国にとってマイナスにならないような、しかし一方で、世界に対して、我が国の主張がいかに正しいかということについて戦略を持った対応をしながら、韓国に対しては安易な対応をしないということをぜひ主張していく必要があるのではないかと思います。

渡辺(周)分科員 ぜひ、そういう意味では、これはもう、世界の各地にこの像をつくって、いろいろなところで日本の名誉をおとしめる、そのことについても、我々は言うべきことはしっかり言って、突きつける事実はしっかり突きつけて、しっかりとしないと、日本の国というものがどんどんどんどんプロパガンダの中でイメージをつくり上げられてしまうというふうに思うわけです。

 そこで伺いたいのですが、このアメリカの像がつくられたことによって、先日も地方議員の方々が行かれました。その中で、例えばいじめられている子供、在外の邦人子弟が日本人学校で登下校のときにそういうことでいじめられたことがあるのかとか、あるいは、中には、パブリックな、公的な学校へ行っている子供もいるでしょうし、インターナショナルスクールへ行っている方もいるでしょう。そういう中で、例えば、日本の子供たちがいわれなき理由で何かいじめに遭っているとか迫害されたとか、そういうことはあるのかないのか。その点についていかがですか。

下川政府参考人 お答え申し上げます。

 慰安婦像設置によって現地の在留邦人の子女に対するいじめ等があるとすれば、極めてゆゆしき問題でございますので、到底看過できるものではございません。

 外務省としましては、在外公館を通じて、現地の在留邦人とも連携しまして、関連情報の収集に努めているところでございまして、仮にそうした事実が確認された場合には、即座に適切な措置を講じる考えでございます。

 他方、現時点においては、在外公館に対する報告、そういった子女に対するいじめというものは確認をされておりません。しかしながら、引き続き情報収集をし、適切に対応していきたいというふうに考えております。

渡辺(周)分科員 これはまた外務委員会でもやりますけれども、こういうことがあって、例えば、地元のメディアでどんなことが報じられているか。特に、カリフォルニアへ行きますと、非常に力を持っている、発言力を持っているいわゆる韓国系の住民がいっぱいる。そんな中でどういうことが例えば運動として起きているのか、どういうことが報じられているのかということにやはりぜひ目配りをしていただいて、そのことによっていわれなき非難をされるようなことが、例えばいる子供たちにとってないように、あった場合には厳重に抗議をする。

 そしてまた、もっと言えば、対外政策を、今言われているこういう問題については、日本の正式見解はこうですということがやはりわかるような仕組みを、ぜひホームページ等にしっかりと書いていただきたい、また英語やフランス語やドイツ語やスペイン語でいろいろ書いていただきたい、そのことを、それはまた改めてお願いしたいと思います。

 もう時間がなくなってまいりました。

 日本史の必修化について、これはもうぜひやるべきだと私も選挙のときに必ずずっと言ってきました。

 萩生田さんの地元の八王子で私が新聞記者をやっているときに、地元の子供たちと一緒に韓国に行ったんですね。そのときに、地元の交流事業で行ったときに、向こうでそういう博物館に行くんです。そうすると、日本の先人たちが韓国の先人たちにどんなことをしたかといういろいろなお話を聞くと、子供たちはぼろぼろ泣くんですね。何てひどいことをしてしまったんだ、日本人の先祖はと。そんな中で、残念ながら、子供たちはまだそこまで歴史の勉強が行き渡っていなかったので、一方的に言われて涙を流した、そういうシーンに私も立ち会ったことがあります。

 ほかの国は自国の歴史というのは必修ですけれども、日本の場合は選択で、私は実は、高校のときに理科系にいたものですから、理科系のコースをとると、選択で、世界史はとったんですが日本史はとらなくてもよかったんです。なぜかいろいろ進路変更をしながら新聞記者になってしまって、そのときに、日本史も勉強していなくて俺は大丈夫かと思いながら、でもなったんですね。今もこうしていますが、慌てて、その後、自分も関心があったから、いろいろな本を読みました。

 そういう意味では、日本史の必修、日本人として、まず何が日本の国にあったということを、特に近現代史を知ること。例えば、昔々の話は、後で教養で大人になってから関心がある人が勉強したらいいとは思うんです。だけれども、やはり明治以降の話というのはしっかりと、今もまさに戦後の処理のことも含めて出ている。今はこれが政治問題だ。

 どんなに留学生をこれからふやす方針を、私もユーチューブで大臣たちが踊っている姿も見ましたけれども、そのことはさておき、結果的に、語学がどんなに上達しても、中身を知らなかったら、今いっぱいいる留学生たち、中国や韓国の留学生もアメリカにたくさんいますよ、ヨーロッパにもいるでしょう、彼らの中に入ったときに、やはり互角に、お互いの近隣国同士が歴史の認識を、あるときにはディベートもしなきゃいけない。そういう日本人が外国に行くのならいいんですけれども、ただ物見遊山だけで、何となく自分探しで海外留学だけをしても、余り身にならないんじゃないか。

 そういう意味では、日本史の必修化、あわせて歴史力を向上するということについては、大臣、ぜひいつかは実現するように働きかけてください。特に近現代史を、絶対ここを手厚くするというふうに思うんですが、そこについては大臣のお考えはいかがですか。

下村国務大臣 おっしゃるとおりです。

 ただ、適切な近現代史をきちっと教えてもらう必要があると思いますので、そのために、昨年暮れに教科書検定改革プランを発表いたしました。これは、新しい教育基本法にのっとって、まず学習指導要領の中で、近現代史について、歴史教育についてきちっとした記述をしてもらいたいということを前提条件として設定させていただきました。

 そして、今すぐ変えるべきものとして、これは、学習指導要領解説改訂の中で、領土教育、尖閣、竹島問題について、これは小中学校できちっと教えられていません。特に尖閣については全く教えられていませんから、今委員から御指摘がありましたように、韓国や中国に行っても、日本の子供たちはそれに対して何の議論もできない。反論どころか、そもそも基礎的な知識がないので議論もできない。こういう問題がありますので、これは、中学校では平成二十八年から、高校では平成二十九年から、領土教育について明確に記述ができるような改訂をしたところでございます。

 その上で、高等学校の教育課程で日本史を必修化するということについては、これは次期学習指導要領改訂の大きな検討課題として問題提起をしております。

 御指摘のように、日本史の必修化というのは、逆に、これからグローバル化社会の中で、日本人としてのアイデンティティー、日本の歴史や文化に対するしっかりとした教養、これを身につけなければ、世界の中で、英語は、語学は単なるツールですから、英語がしゃべれてもそれで真の国際人になれるわけではありませんので、真の国際人になるためには、逆に、今まで以上に日本のことをよく学ぶ必要があると思います。

 そのためには、日本の歴史もしっかりと学ぶということは必要であるというふうに考えておりまして、今後、教育課程全体のあり方の中で検討を進めてまいりたいと思っております。

渡辺(周)分科員 もう時間もなくなりました。最後に一問だけ。

 ぜひそのことを、実現を早期にしていただきたいし、早く結論を出していただきたいと思います。

 舛添知事がソチから帰られて、東京都民が全員英語をしゃべれるようにというようなことを彼はおっしゃっていました。もちろん、話すことはいいんですけれども、話せるにこしたことはないんですが、ただ、やはり中身についても、本当に日本のことを話ができるような日本人がどんどんふえるべきだと私も自戒を込めて申し上げているところでございます。

 さて、最後に、我が党の小川議員も先ほど、午後に質問したみたいですが、ジャンプの葛西選手が、メダルをとったらビジネスで帰らせてくれというのを聞いてびっくりしたんですね。これはどうなっているんですか。行く方々が、選手が、まあ帰りはチャーター便で帰ってきて、もちろん早くに帰ってこられた方もいるけれども、あれを聞いたら、JOCの方に国からエコノミーの補助が出ていると言うんですよ。

 でも、私、これから戦おうという人に対して、やはりエコノミーで行くというのは、これはどうなんだろう。随行の方がビジネスクラスで行って、肝心の戦う人はエコノミーで乗るというのは、これはどうなのかな。これぐらいのところは、ほかを削ってでもふやしてあげるべきだと思います。それで、最大限の環境の中でできるようにするべきだと思います。

 それからもう一つ。これは、今さら森さんのことをあれこれ言うつもりはないです。きのう、浅田真央さんが一言、外国特派員協会で言うのを聞いて、よく思います。これは、もし御感想があればと思いますが、頑張って戦った人、浅田さんが、やはり自分だって失敗したくて失敗したわけじゃない、最大限のことをやった結果、そうなってしまったと。

 その中で、戦っていない人が、あの銀盤の上で戦った人たちに対して後から言うのは簡単ですよ、ああすればよかった、こうすればよかったと。だから、やはり戦ったアスリートに対しては、戦わないでいた人が後から茶化すべきじゃないだろう、そんなふうに思います。そういう意味では、これからトップアスリートをつくるような御努力もぜひしていただきたいと思います。

 もし最後に何か御意見がありましたら、このオリンピックを終えて、何か思いがありましたら、一言聞いて、終わりにします。

萩生田主査 下村文部科学大臣、時間ですので、簡潔にお願いします。

下村国務大臣 まずはエコノミーの件ですけれども、国からJOCの補助において、エコノミー単価としておりまして、JOCのみならず、他の団体補助についても同様であり、これをビジネスクラス単価とすることについては、財政的には難しい部分があります。

 競技団体、選手に負担を求めず、JOCが三分の一を負担しているという状況があります。競技団体や選手が負担せざるを得ない状況となっているというような状況について、これからどう考えるかということがあります。

 現在、JOC等から強化費等の自己負担の軽減を求められているところでありまして、我が国のトップアスリートが存分に活躍することができるよう、常によりよい方策を目指して検討しながら、国としても必要な支援を行ってまいりたいと思います。

 森組織会長の発言については、浅田真央選手が適切な発言をされたのではないかと思います。

渡辺(周)分科員 終わります。

萩生田主査 これにて渡辺周君の質疑は終了いたしました。

 次に、岡本三成君。

岡本分科員 公明党の岡本三成です。

 御質問の機会、ありがとうございます。どうかよろしくお願いいたします。

 きょう一日、可能な限りこの委員会、拝見をしておりましたので、できればかぶらない質問をさせていただきたいと思っておりますけれども、きょうお伝えしたいメッセージを明確にするために何点かはかぶってしまいますので、御容赦いただければと思います。

 本日は、全編を通しまして、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックの大成功へ向けた私なりの御提案を申し上げたいと思って、ここに立たせていただいております。

 その上で、今回、まだこれからソチはパラリンピックが始まるわけですけれども、オリンピック自体は大変な大成功で、日本の選手団のメダル数もそうですけれども、メダルをとれなかった方々も大変な感動を私たち国民に与えてくれたわけですけれども、大成功だったということを大前提に、二〇二〇年、よりよい祭典を達成するために、今回のソチ・オリンピックで改善点、ここをもっとこうすれば二〇二〇年はよりよいものにできるというふうな改善点について、大臣、何かお考えがありましたら、お言葉をいただければと思います。

下村国務大臣 御指摘のように、今回の大会は、金メダル一個を含む合計八個のメダルを獲得し、これは、長野大会に次ぐ史上二番目、国外では最大の獲得ということで、高く評価できるというふうに思います。

 また、岡本委員から御指摘ありましたが、メダルの獲得の有無にかかわらず、オリンピックのトップを目指して戦う選手一人一人それぞれにドラマがあって、そして、みずからの限界に挑む姿勢、これは、国民に勇気と感動を与えて、そして、自分たちも頑張ろう、こういう気持ちをくれたのではないかと思いますし、大変な成果、効果があったのではないかというふうに思います。

 ただ、なかなか、例えばマイナースポーツについては、メダルをとったスノボーなんかも、選手が相当苦労されて、国内で競技施設もない、また、コーチがいないということで、みずからカナダに行ったりとか、それからドイツに行ったりスイスに行ったり、こういう形ですごく苦労されたということを、きのう日本に帰国をされて、最初に文部科学大臣室、私のところに来られたときに、そういうお話をされました。そして、羽生選手からは、自分は被災地の代表という思いも持って一生懸命頑張ったけれども、東北にはスケートリンクで競技する場所がない、ぜひこういうことを充実させるように国がフォローアップしてほしいという要望もいただきました。

 これからさらにメダルを獲得していくためには、より早い時期から選手を養成するような環境、特に今回、ナショナルトレセンの効果もすごくあったと思いますが、これをさらに充実させるということと、それから、いわゆるマイナースポーツについて、切り捨てるということではなくて、メダル獲得の可能性がある部分については積極的に国がバックアップするというようなトータル的な部分。

 それから、これはソチ冬季オリンピックが始まる前の日に、橋本選手強化本部長、今回の団長から言われたことだったんですが、今まで国が各競技団体に対して三分の二負担をしておりましたが、残りの三分の一を競技団体で補填できないために辞退をするとか、場合によっては、選手個人に負担をさせるとかいうようなことでないと捻出できないということで、このことによって、結果的に、国がせっかく三分の二出してくれたとしても、フォローアップできないために十分に活用できない、ぜひこれについては改善してほしいという話がありました。

 これは貴重な税金ですから、全額ということになると、後のやはり、不正があるかどうかを含めたチェックもありますから、とりあえずは三分の二は維持しながら、二〇二〇年までの時限的な期間の中で、残り三分の一をさらに別の名目で強化、フォローすることによって、事実上負担がないような形での、メダリストを目指して、選手たちに対する強化を国として施策として考えていく必要があるのではないか、そんなふうに考えています。

岡本分科員 ありがとうございます。

 今、大臣、二〇二〇年までの準備において、どういうことを国としてサポートしていきたいかということを主にお話しいただきましたけれども、もう一つ別の角度から、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピックが終了した後、日本国民から、また世界の人から、どういうオリンピックだったというふうに評価をされたいと思って準備をされるか、どういうオリンピックにしたいかということを、たくさん思いはおありになると思うんですが、簡潔に、できれば一言二言で表現できれば、ぜひお願いいたします。

下村国務大臣 これは簡潔に言っても誤解されるんですが、私は、オリンピックの歴史を変えるような二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックにしていきたいと。

 それは、端的に言うと、日本は、剣道、柔道というふうに、一つのスポーツを通じて人の生きる道まで昇華する、そういう崇高な精神性があると思うんですね。柔道、しかし、ブラジルでいったらブラジリアン柔術ですね。あくまでもテクニックなんですね。テクニックではなくて、そういう道をきわめていく、そういうところまで昇華するような、まさに日本的なそういう崇高な精神を二〇二〇年のオリンピック・パラリンピックで世界に発信していく、それこそ、オリンピック憲章でうたわれているそのものの精神に共通するものではないか。これをぜひスタートさせるきっかけにしていきたいというふうに思います。

岡本分科員 ありがとうございます。大賛成です。

 その上で、私は、おととし国会議員になるまで、二十年以上海外の企業で働いていまして、それがゆえに海外でオリンピックを経験したことも何度かありますし、また、勤めておりましたのが金融機関でしたので、オリンピックの財務アドバイザーとして、オリンピックをビジネスとして考えたときに携わったこともあります。

 その意味で二つ、私は、ぜひこういうオリンピックにしたいなということに関して御提案を申し上げて、ぜひ大臣の御答弁を頂戴したいんです。

 一つは、オリンピックをゴールではなくて、そこを新しいスタート地点にして、世界じゅうの人が日本に継続的に来るような出発点にするというのが一つ目。二つ目は、オリンピックとパラリンピックを、同様に世界の人が注目をして同様に評価をしていくというような、本当の意味で、オリンピックがメーンであってパラリンピックがその次に来るということではなくて、同じフィールドの中で世界が注目をして評価をするようなイベントにしたいというのが二つ目のポイントなんです。

 そして、一つ目のポイントはどういうことかというふうに申し上げますと、過去の歴史のオリンピックの多くは、実は、オリンピックが行われた年がその国に対する観光客がピークでして、イベントがなくなってしまえばどんどん落ちてしまっているんですね。私は、二〇二〇年、政府の目標ですと二千万人を目標として、二〇三〇年三千万人、十年間で五〇%上げるわけですから、単純計算で二〇二〇年から毎年五%、観光客が本当にふえていくような出発点にどうしたらできるかということを考えているんです。

 例えば、ロンドン・オリンピックというのは、ある意味参考になりまして、このロンドン・オリンピックのときは、ロンドン二〇一二フェスティバルと名づけられた一大イベント、これはスポーツだけではなくて文化、芸術イベントをイギリスじゅうで行いまして、これはオリンピックの始まる一カ月前から十二週間ぶっ続けで、全ての文化事業は六百件、イベント総数千二百件、開催場所九百カ所、その間にいらっしゃった参加者は一千二百万人ということで、このロンドン・オリンピック以上のものをやりたいんです。

 ロンドン・オリンピックの何が参考になるかというと、例えば、北京オリンピックのとき、その次の年、二〇〇九年には中国全体への世界からの観光客はマイナス一六%です。そうですよね、オリンピックのときにみんな行くわけですから。二〇一二年のロンドン・オリンピックの後は、その次の年、二〇一三年にイギリスへの観光客はプラス七%ふえているんですね。つまり、それを起点にさらにイギリスに興味を持たれた方がイギリスじゅうにリピーターとして帰っている。

 であるがゆえに、この東京オリンピック・パラリンピックに関しましても、そのような見地で、スポーツに加えて、文化、芸術の一大イベントを日本じゅうで行って、そして、来てくださった外国人の方々にリピーターになってもらうような流れをつくっていくということをぜひ御提案させていただきたいと思っているんですが、いかがでしょうか。

下村国務大臣 おっしゃるとおりで、ぜひそのようにしたいと思っています。

 もともと、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックの招致が決定する以前から、政府としては、昨年初めて外国人観光客が一千万人を突破いたしましたが、二〇二〇年には二千万、そして二〇三〇年には三千万という計画がありました。

 オリンピック・パラリンピックが決まったことによって、私はぜひ前倒しをするような目標設定をすべきだというふうに思いますが、それができるかどうかは、オリンピック・パラリンピックを単にスポーツの祭典の一過性にするのではなくて、文化、芸術を含めて、そして二〇二〇年だけの話ではなくて、もう何年も前から、オール・ジャパン、全国津々浦々、これは既存の伝統文化的な行事、イベントを含めてそこにジョイントさせることが必要だというふうに思います。

 先日も、文化庁にブリティッシュカウンシルの担当の人に来ていただいて、今、岡本委員がおっしゃったようなノウハウについて、イギリスでどうやったかということについては、関係者を集めて状況を聴取いたしました。これをさらに大規模化して、そして、できたら四、五年前から少しずつ、これは、既存の文化芸術について、全国津々浦々でやっているわけですから、我が国は。それが日本の世界に対する強みだというふうに思うんですね。

 昨年は、和食が世界遺産、無形文化遺産に登録されましたが、この和食も、郷土料理、それぞれ地域地域によって違いますし、また四季折々で特色がありますし、そういうおもてなしの精神を含めて、ぜひ、世界の方々が日本に何度も足を運んで行ってみたい、また、その話を聞いて、いろいろな人たちが口コミで広がっていくような、そういう仕組みをぜひ考えていきたいと思っています。

岡本分科員 ありがとうございます。

 例えば、諸外国で、イギリスやアメリカで働いていますときに、同僚の外国人の出張者が東京や日本に出張に行ってその母国に帰ってくると、例えばニューヨークに帰ってくると、決まって、日本はすばらしいところだ、安全だし、空気がきれいだし、人はフレンドリーだし、食事もおいしい、また行きたいと。プライベートのバケーションでも行きたいという方がたくさんいらっしゃいました。一方で、どこというわけではないですけれども、ほかのアジアの国へ行って、空気は悪いし、食事はおいしくないし、人はつっけんどんだし、もう二度とバケーションだけではあそこには行きたくないという国もたくさんあるんです。ですから、一度経験していただければ、リピーターになってもらえることに関しては全く疑いを持っていないんですね。

 その上で、御提案なんですが、今大臣おっしゃったように、和食がユネスコの無形文化遺産、すばらしいことだと思います。ですから、きょう、ほかの委員の方の質問でもありましたけれども、このような日本独自の、いろいろな地域にある文化的な、芸術的な価値を前面に押し出して、外国の方に東京以外にも行っていただくような機会をつくる。これはすばらしいことなんだと思うんですけれども、私は、一回経験をしていただければ、別の理由でもまた日本に来たいという方がたくさんいらっしゃることに確信を持っていますので、世界じゅうのエンターテインメントをこの二カ月ぐらいの期間、全部日本に集めてくればいいと思っているんですね。

 例えば、東京近郊でオリンピック・パラリンピックのゲームを楽しんだ後に、夜は、飛行機で札幌に飛ぶと、札幌ではベルリン・フィルがコンサートをやっている、また、ブロードウェーのミュージカルをやっていれば、トップミュージカルが福岡でやっている。または、食の祭典も、日本食だけで、すばらしい、クオリティーが高いのはわかっていますけれども、ミシュランの三つ星シェフを全部日本に集めてきて、日本の食材で、京都の食材を使ってフレンチの祭典をやったりですとか、または沖縄映画祭をカンヌ映画祭並みにやったりですとか、もう世界じゅうのエンターテイナーを日本に集めてきて、それで日本を経験してもらうことによってリピーターを、もちろん、日本の今持っている力でも十二分に魅力はあるんですけれども、世界の芸術を全部日本に集めて一大エンターテインメントの期間にするというような企画もぜひ発想として取り入れて考えていただければと思いますけれども、いかがでしょうか。

下村国務大臣 おっしゃるとおりでありまして、ぜひそれも考えたいと思っています。

 オリンピック・パラリンピックのときには、世界じゅうからトップアスリートが約一万人集まりますが、トップアーティストに一万人ぐらい集まってもらう。それも、単にオリンピック・パラリンピックの期間だけに限定しないで企画をしていく必要があるのではないかと思います。

 昨年九月にサマー・ダボス会議に私が行ったとき、シュワブ会長から、ぜひ二〇一七年に日本でスポーツ・ダボス会議を開催したい、日本政府がぜひバックアップしてくれという話がありました。それを受けて、ことし一月に安倍総理がダボス会議に出席をしたとき、安倍総理から、我が国は、スポーツ・文化ダボス会議について、政府が企画をし、支援をする用意があるということを発言していただきました。

 つまり、スポーツだけでなく、岡本委員がおっしゃったように、文化も含めて、二〇一七年に、千人、二千人の方々、世界トップレベルのスポーツや文化関係の方々に集まってもらって、二〇一七年に議論して、そしてそれを二〇二〇年に向かって企画をしていく。

 それで、二〇二〇年には、今委員がおっしゃったようなことを含めて、日本全国津々浦々で、そういう芸術的な文化的な行事、イベントにトップアーティストもジョイントして、それを見に、国内だけでなく海外からも観光客が訪れる、そういうことをぜひ考えていきたいと思いますので、御協力をよろしくお願いいたします。

岡本分科員 ありがとうございます。

 その上で、国内の移動の費用は比較的、諸外国と比べて高いので、これは御答弁を求めるわけではありませんけれども、オリンピック・パラリンピック担当大臣として、例えば、パスポートの入国のスタンプでわかりますから、ある一定期間、確実にオリンピックのために、ごらんになりにいらっしゃったような方が、そのパスポートとオリンピックのチケットを持っていれば国内の公共交通に関して割引が受けられるようなことに関しても、総合的に考えると、将来のリピーターとなっていただける可能性を考えると費用対効果は高いと思いますので、総合的に、参加する側に立って御検討いただけるとありがたいなと思います。

 もう一つ、オリンピックに対して御提案を申し上げますのは、今、総理が、よく日本をこういう国にしたいということをおっしゃるときに、世界で一番ビジネスがしやすい国、そのとおりだと思います。また、世界で一番女性が輝いて活躍できる国、そのとおりだと思うんですけれども、私は、この二〇二〇年の、オリンピック・パラリンピックが終わった後に、世界じゅうから、日本は最も障害を持った方が生き生きと生きられる国、そのインフラが整った国だというふうな評価を受けられるような祭典にしていけたらなというふうに思っているんですね。

 実際に、先ほど申し上げたように、そういうことはないにせよ、どうしても、報道される量も違うようなこともあって、オリンピックがメーンでパラリンピックがその後についてくるような印象を持っていらっしゃる方が実際は多いのではないかなというふうに思うんですけれども、先日、マラソン走者だった増田明美さんがこういう発言をされています。前回の東京大会では新幹線や首都高の開通が記憶に残ったが、七年後は、つまり二〇二〇年は、ハードと心の両面でバリアフリーが進んだと記憶される大会になってほしい。そのとおりだと思います。

 その意味で、どのように、パラリンピアンの方、またそれをサポートされるコーチのような方々に対して事前にサポートをしていくかということが重要だというふうに思います。

 加えまして、これは開催国日本だけでは決められないと思いますが、例えば、IOCやIPCの方々とともに議論する中で、私はこういう場面を見てみたいなと思うんです。

 今は、オリンピックが終了した後にパラリンピックが行われますよね。予選は、いろいろな時間の調整もあるので、さまざま、別にやったとしても、例えば、陸上競技や水泳競技や柔道で、オリンピックの決勝戦の後に、その場でそのままパラリンピックの決勝戦が行われる。ですから、世界じゅうでごらんになっている方は、一連の流れとしてそのスポーツを、健常者の方と障害を持った方のスポーツの結晶をごらんになれるというふうな、本当の意味で、準備も、そしてその大会も同じ土俵で発信をしていって、同じように光を当てていくようなイベントにできたら、すばらしい、画期的なことですし、その後、世界にも、私たちが何を考えているかというメッセージを発信できるのではないかなと思います。

 それは一例ですけれども、先ほど申し上げたように、同じように準備に十分な力を割いて、同じように本番でも光を当てていくというようなことに関して、大臣、どのように思っていらっしゃるか、御所見をいただければと思います。

下村国務大臣 それは、昨年の臨時国会でも、いろいろな委員から国会でそういう御質問なり御意見をいただきましたので、その後、組織委員会を立ち上げることになる準備の段階で、組織委員会の調整会議、ボードメンバーは、オリンピック・パラリンピック担当大臣である私と、森組織委員長と、それからJOC、JPCの会長、それから東京都知事がなるということで、JOCそれからJPCの会長とそのことを相談いたしました。

 ただ、残念ながら、これは、今御指摘がありましたが、IOCそれからIPC等の、ある意味ではもう決まりがあって、日本が勝手に、では関係者で意見が調整できたからそうしようということは、もうできない。もしそういう変更、それは実際変更できないんですが、ただ一部的に何かやるにしても、それぞれの国際会議で議論をしてそこで議決をして了承してもらわないと変えられないということで、一国の判断で勝手に変えられるものではまずない。それぐらい、これはもうシステム的に重いものだということがありました。

 ですから、今の提案はなかなか難しいんですが、ただ、象徴的に何か一つぐらいは、おっしゃるとおり、何か一つできないかということについては、ぜひ考えて、そしてそれぞれのIPCなりIOCなりそういうところで提案をして、そして場合によってはそこで理事会決議をしてもらうようなことを考えていくぐらい、ハンディキャップのある人もない人も一緒になってスポーツを楽しむ、堪能するというところを日本からスタートさせたというのを、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピックのムーブメントの一つにしたいという思いを持っております。

岡本分科員 ありがとうございます。

 安倍政権のうたい文句は、岩盤規制にドリルで、そのドリルから何人とあっても逃げることはできないというふうに総理もおっしゃっていましたので、難しいところはあると思うんですが、今まさしく大臣おっしゃったように、たった一つでもいいんです。象徴的に、今までよりも一歩進んだ形で、ぜひパラリンピアンの方々に光が当たるような取り組みをお願いできればと思います。

 その上で、先ほどオリンピアンの方々に対する北区のナショナルトレーニングセンターのお話があって、あの施設が、今回のソチ・オリンピックの代表選手の方々に対しても大変な事前の準備の場所として貢献できたということも私はよく認識しております。

 その意味で、パラリンピアンの方々に対する事前のトレーニングの施設に関して、既にさまざまな御検討がなされているように伺っております。十分な準備ができるような施設をサポートさせていただくことによって、十分な活躍の場をサポートしていきたいという、これは大賛成なんですけれども、幾つか候補に挙がっている施設があるというふうに伺いました。私も実は、その一つであります所沢市にあります国立リハビリテーションセンターに二月の十八日にお伺いをいたしまして、総長以下スタッフの方々、また、そこで治療を受けていらっしゃる方等々にお目にかかってお話を伺ってまいりました。

 その中で痛感をいたしましたのは、実はそこに、ロンドン・パラリンピックのゴールボールで優勝のシュートを決めた安達阿記子さんがコーチの方とトレーニングをしていらっしゃったんですね。私も実際にゴーグルをつけて一緒にプレーをさせていただいて、大変なスポーツだなということを実感したんです。

 そのゴールドメダリストの安達さん、そしてコーチの方から直接伺いましたけれども、そういうトレーニングセンターをつくってもらうのは大変にうれしいけれども、それが単なる運動施設ということではなくて、精神的な面のサポート、また栄養面のサポート、さまざまな面からサポートできるような施設を期待したいということに加えまして、私たち選手、そしてコーチの、どういうものを期待しているんだという声をもっと直接的に、これはパラリンピック協会からいろいろなコミュニケーションの中で聞いているのはよくわかるんですけれども、直接、選手の方々も、もしお伝えできるのであればいろいろな意見を伝えたいというふうなお声もありましたので、お伺いしたいなと思ったんです。そのような機会をぜひ大臣のもとでもつくっていただきたいなと思ったんです。

 その中で、この所沢のリハビリテーションセンター、三十六年の歴史がありまして、それがあり、この歴史の中で、医学的にも精神的にも栄養的にも、またそのパラリンピアンの方々が使われるような器具に関しても、テーラーメードでつくれるような設備もあって、本当に充実しているんですね。

 そこで私も一緒にトレーニングを受けたりいたしましたけれども、どういうふうな設備をパラリンピアンの方々のトレーニングの施設として考えていらっしゃるのか、そして、どういうサービス、サポートを提供して、今どういうふうな検討の状況になっているのかということに関しまして、お伺いできればと思います。

下村国務大臣 御指摘がありましたように、所沢のリハビリテーションセンターについては、これはJPCの鳥原会長から御要望を受けております。そういうこともありまして、内閣府のオリパラ室も視察に行きました。また、文科省においては、櫻田副大臣それから冨岡政務官も現地に視察に行っているところでございます。

 御指摘のように、この二十六年度から障害者スポーツの所管が厚労省から文科省に移管されたということで、文部科学省が今まで以上にしっかりとオリンピック・パラリンピック選手の強化を一元的に実施するということで、オリンピックだけではなくパラリンピック選手の強化についてもトータル的に、指導者の育成とかサポートのあり方も含めて、これらの関係団体等と連携しながら検討を進めていくということが必要であるというふうに思います。

 ただ、幾つか所沢のリハビリテーションセンターについても課題もあるということでもありますし、それから、もちろんこれは鳥原会長だけではなく、あらゆるレベルのパラリンピアン、あるいは障害者の方々からも、いろいろな御要望、意見は、直接、間接的含めて積極的にこれからも聞いていきたいというふうに思います。

 その中で、ナショナルトレーニングセンター、西が丘にありますが、ああいうふうに一カ所だけというよりは、やはり体のハンディキャップ、それから医療関係等の附帯設備の問題もあるので、できたら一カ所というよりは全国数カ所で、そういう既存の医療施設と連動する形であればもっとありがたいと。ですから、規模は一カ所で大きくというよりは、地域性に合った、そういうパラリンピアンが活用できるようなトレーニングセンターという話も、結構いろいろなところから出ておりますので、それをトータル的に判断し、しかし、二〇二〇年というふうに決まっていますから、それに間に合うような、少なくとも一年前には完成してトレーニングができなかったら意味がありませんから、そういう逆算の中で考えていきたいと思います。

岡本分科員 ありがとうございます。

 これは、所沢の国立リハビリセンターであっても、空きスペースもありますけれども、よりよいものにするためには、今の施設に追加して何か建設をしなければいけないようなところが候補地のほとんどなんだと思うんですね。

 それで、今、大臣、一年ぐらいはトレーニングをしなきゃとおっしゃいましたけれども、せっかくつくるんですから、そこで何年も準備をしていただきたいと思っているんです。例えば、来年度の予算で出したとしても、建設、その後補修したりすると、二〇二〇年ですから、もう三年、四年しかトレーニングできないようになりまして、物すごいスピードで予算もつくりながら準備をするべきだと思うんです。今し方、最低一年はトレーニングが必要でしょうというふうなお話がありましたけれども、これは来年度時にでも決めて、そして建設するべきところはやって、トレーニングの期間というのは三年なり四年なりがっちりトレーニングしていただけるような環境をつくるというふうな御準備のスピードにしていただくことというのは、できないでしょうか。

下村国務大臣 頭だけのスケジュールでは可能ですけれども、しかし、現実問題として、例えば今、国立競技場の建て直しをしようとしていますが、これも、相当急いでも、実際は二〇一九年のラグビーのワールドカップに間に合うようにいかにこれからつくるかという今ぎりぎりの段階ですから、ましてや、今後ゼロから考えるとなると、相当スケジュール的には大変な作業だということについては御理解いただきたいと思います。

岡本分科員 ありがとうございます。

 済みません、法務省の方、来ていただいていたんですが、時間となりましたので、こちらで終了させていただければと思います。

 どうか大臣、よろしくお願いいたします。

 ありがとうございます。

萩生田主査 これにて岡本三成君の質疑は終了いたしました。

 次に、坂本祐之輔君。

坂本(祐)分科員 日本維新の会の坂本祐之輔でございます。よろしくお願いいたします。

 第二十二回オリンピック冬季大会が閉幕をいたしました。まず冒頭、選手が活躍をされるために温かい御支援をいただきました下村文部科学大臣を初め文部科学省の関係の皆様方に深く敬意を表するものでございます。本当にありがとうございます。

 すばらしいオリンピックでした。国民の期待を背に受けて選手が出場いたしました。私たちは、必ず金がとれるだろう、多くの国民もそう思った選手もいらっしゃる。自分こそが金をとる、そう確信をして努力をされた選手もいらっしゃったと思います。改めて、メダルを獲得された選手に心からお喜びを申し上げたいと存じます。

 そして、メダル獲得がかなわなくても、私たちがテレビ報道等でその放映を拝見させていただく中で、小さいころから夢に見ていたオリンピック大会に出場して、家族に支えられ、そしてコーチ、監督に支えられて、日々たゆまぬ努力をされてこられた選手のすばらしいあのパフォーマンスを拝見したときに、涙を流す国民の方々も多くいらっしゃったと思います。

 まさに、オリンピックの持つその力、価値、それはスポーツの持つ力、価値と同じであります。私たちに、夢、そして感動、勇気を与えていただいたのではないかと思います。

 この冬季オリンピックが閉幕をされて、大臣にその総括を一言お伺いさせていただきます。

    〔主査退席、あかま主査代理着席〕

下村国務大臣 感想としては、坂本委員が今おっしゃったとおりであります。

 今回の大会は、金メダル一個を含む合計八個のメダルを獲得し、合計二十八種目で入賞を果たしました。両成績ともに、長野大会に次ぐ史上二番目の成績、海外では最高の成績ということで、高く評価できると思います。

 また、御指摘ありましたが、メダルのあるなしにかかわらず、オリンピックのトップを目指して戦う選手一人一人にそれぞれドラマがあった。そして、みずからの限界に挑むその姿勢、これは国民に、本当に勇気と感動、そして、自分たちも頑張ろう、そういう気持ちを与えてくれたものであったというふうに思います。

 今回の大会における日本選手団の活躍は、このようなスポーツが持つ本来の力を改めて感じることができたものだというふうに思います。スポーツの力で日本全体を元気にし、活力ある社会を生み出せるよう、引き続きスポーツの振興に全力で取り組むことによって、四年後の平昌、そして二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピック、その前にはリオがありますけれども、それぞれについて、もっと国が、選手の皆さんが十分全力で実力を発揮できるような環境づくりのためのサポートをしてまいりたいと思います。

坂本(祐)分科員 大変心強いお言葉をいただき、まことにありがとうございます。

 海外での冬季オリンピックの成果、最多のメダル八個、これは、金一、銀四、銅三、一九九二年のフランス・アルベールビル大会以上のメダルの獲得をいたしました。

 そして、年齢別に見ても、四十代が一人、三十代が一人、そして二十代が二人、十代が三人という、事冬季オリンピック大会においては最年長の方の取得と最年少の方の取得がありました。幅広い年齢層で活躍をされておりますけれども、しかしながら、スキーの部門においても、十六年ぶりの、長野オリンピック以来のメダルということになっています。

 これから、メダル獲得に向けて多くの選手がみずから切磋琢磨して、みずからのわざを鍛え抜いていくんだと思いますけれども、長期的な展望に立った戦略をしっかりととっていくことが必要だと思います。特に雪の競技では、Xゲームと言われるような新しい競技もことし初めてスタートいたしました。

 これは久保局長にお伺いをさせていただきますけれども、次なるメダル獲得に向けての戦略をお聞かせいただきたいと存じます。

久保政府参考人 二〇二〇年の東京大会に向けた選手強化に当たりましては、基本といたしまして、まず、選手の育成強化計画をJOC、各競技団体が策定して、その結果に基づきまして、必要なところに国が支援をしていくことが一つございますが、さらに、文部科学省といたしまして、国といたしましては、二〇二〇年東京大会に向けて、若い年代の層の方々がいずれ活躍できるようにするために育成強化を行うということは大変重要であると考えておりまして、二〇二〇ターゲットエイジ育成・強化プロジェクトを平成二十六年度予算に計上したところでございます。

 また、スポーツ医科学、情報等、多方面から専門的かつ高度な支援を行いますマルチサポート事業につきましては、文部科学省に設置いたしました選定チームにおいて、メダルが期待される各競技をターゲット競技として指定いたしまして支援を行っているところでございますけれども、これにつきましても、いろいろな見直しを行いつつ、充実を図っていく必要があると思っております。

 今後とも、二〇二〇年東京大会において我が国のトップアスリートが存分に活躍することができるよう、オリンピック、パラリンピック双方の選手強化等につきまして、競技団体、JOC等関係団体とも連携しながら、一体となって選手強化に取り組んでいきたいと考えております。

坂本(祐)分科員 ありがとうございます。

 スポーツ、これは、鍛錬をして技術の向上、わざの向上を磨く、それには、みずからが鍛えるだけではなくて、ただいまお言葉にもありましたように、医科学の点からも支援をする必要がある、すなわち、トータル的な支援が必要だというふうに思います。

 先般から、大臣のお話には、ナショナルトレーニングセンターを増設してそのような支援を行っていきたいというお言葉をいただいております。

 現状では、冬季スポーツでは、スケートリンクが今減少しつつあります。これはもちろん、景気の状態、経済の動向等があるのでいたし方ない。しかし、そこからすばらしい選手が輩出をしている。スキー場も、今の景気の状況では、年々減少しつつあります。スキー人口も、以前一千八百万人いた方が、今では七百万人から八百万人に減っております。

 むしろ、スケートリンクも、国で支援できるものであれば、やはりそういった施設を設けることができないか。あるいは、例えば大都市の札幌市の中央部にハーフパイプをつくって、そこで多くの人に演技をしてもらう、練習をしてもらう。それを見る市民が、そのことを見て、自分もやってみたいな、スポーツっていいな、楽しそうだな、こういうことでのスポーツ文化に対する意識の向上が図れるのではないか。そのことが健康管理につながっていくということであれば、まさにこれはすばらしいことであろうと思います。

 そういった施設面での応援をどのようにされるかということを、大臣の御所見をいただきたいと存じます。

下村国務大臣 きのう、選手たちが帰国をされて、そして大臣室に直行していただきました。せっかく来ていただいたので、一人一人、国に対する要望等について、あったらぜひ話をしてくれという話をしたら、皆さんが、今委員がおっしゃったようなことをみんな要望されました。

 羽生選手は、自分は被災に遭って今まで使っていたスケートリンクが使えなくなった、今、東北ではスケートリンクがもうない、自分はぜひこれを続けたいと思って、また、そういうコーチがいないということでカナダに渡ったけれども、ぜひ東北にスケートリンクを、国として協力してもらいたいという話がありましたし、また、ほかの選手からもそれぞれ同様の発言がありました。

 競技人口がやはり減ってしまっているということも、継続できない経済的理由とともに、そういうスキー場とかスケート場という問題がありますが、今後、強化選手の施策も含めて、そういう施策についても考えていかなければならないというふうに思います。

 具体的にどこにどんな形ということについてまだ検討しているわけではありませんが、関係競技団体等と、あるいはJOCとよく相談しながら、できるだけ選手の皆さんが、まずは、冬季であれば平昌に向けてベストの状況がつくれるような体制を、国が何がなせるかということについてしっかり検討しながら、より充実に向けて進めてまいりたいと思います。

坂本(祐)分科員 ありがとうございます。

 羽生選手が、カナダで一人寂しさに耐え、しかし、母国日本の多くの応援をしていただいている方のために頑張るんだとおっしゃっておられた、その姿も私も拝見をさせていただきました。

 我が埼玉県でも、スケートリンクは公設のものはありません。学校で運営をしているものはありますけれども、やはり莫大なお金がかかりますので、そういった点、もし都道府県でつくるような流れがあれば、あるいは市町村でつくる、これは難しいかもしれませんけれども、大きな自治体であればそれも可能だと思いますので、そういったところにしっかりと支援をしていただけるような体制を組んでいただければありがたいというふうに考えております。

 今、岸記念体育会館には、競技団体二十九、スポーツ関係団体十五、合わせて四十四のスポーツ関係の団体がそこに事務所を構えております。岸記念体育会館も、先般の大地震のときには地下の体育館が使えなくなりました。築五十年が経過しておりますので、いずれ新しい事務所がそれぞれの競技団体に求められていくのではないかというふうに考えています。

 あの岸記念体育会館にはJOCや日体協や競技団体の事務所がありますけれども、そこに記者クラブもあって、それぞれのスポーツ団体の情報が把握できたり、あるいは情報交換ができるというメリットがあると思うんです。私は、いずれ霞ケ丘競技場が完成する、これに並行して、できれば併設をして、敷地が少ないかもしれませんけれども、そういった競技団体が一つのところに集まるような支援ができれば、分散は恐らくデメリットに通じるのではないかというふうに考えておりますので、家賃も、その方が厳しい財政状況下の中では競技団体も大いに助かるのではないかと思います。

 これらについて、霞ケ丘競技場完成に並行して競技団体等の事務所を一緒に建設することが可能かどうか、一緒でなくても、それらの可能性について、御所見があればお伺いをさせていただきたいと存じます。

久保政府参考人 今回のオリンピック等を契機といたしまして、国立競技場の改築に当たって岸記念体育館をどうするかという問題は、日本体育協会も関心を持っていろいろな検討を行っておられるのは存じ上げております。

 そしてまた、国立競技場の周辺にいろいろな機関が集まってくれれば、確かに一体となって情報発信できることになるということは、私どもも賛同するところでございます。

 ただ、現実に競技場の中に入ることを考えた場合、いろいろな競技ですとかイベントがあった場合には動線の確保とかの関係で人が入れなくなったりいたしますので、それ自身はなかなか難しい問題があるというマイナス面もトータルで考えながら、当面は国立競技場の改築をいたしますけれども、岸記念体育館の建てかえにつきましてもいずれ問題になってまいります。

 これは、関係者は問題意識を持っておりますけれども、岸記念体育館そのもののあり方と関連しながら、そこに入っておられるいろいろな諸団体の結集のあり方、今後それは、同会館を所有されます日本体育協会とも私ども連携をとりながら相談していきたい問題だと考えているところでございます。

坂本(祐)分科員 いずれの時期に必ず事務所はどこかに移らなければならない、そのときが来ると思いますので、ぜひ、最も効果的に、そして実質的にそれぞれの競技団体を応援できるような仕組みを、御支援をお考えいただければと願っております。

 さて、二月十八日の予算委員会で我が党の西野議員からも御指摘を申し上げました、JOC補助金の競技団体自己負担分の三分の一の部分につきましては、その予算委員会でも、下村大臣より、改善に向け前向きな御答弁をいただいたところでございます。ぜひともその方向で進めていただきたいと、私からも御要望を申し上げさせていただきます。

 分科会でございますので、少し細やかな部分の御質問を申し上げさせていただきたいと存じますが、また、JOCの補助金とは別に、日本スポーツ振興センター、JSCからも、競技団体は助成金という形で競技力強化に向けた支援をいただいております。

 こちらは、四分の三はJSCで助成をして、四分の一は自己負担ということでありますけれども、この助成金も先ほどのJOCの補助金と同様の課題を抱えておりまして、各競技団体とも自己負担分になるその捻出に苦慮しておりますので、このJSCの助成金につきましても、JOC補助金と同じように、自己負担分の国庫負担といった形での対応がお願いできるかどうか、大臣にお伺いをさせていただきます。

下村国務大臣 まず、国の経費の負担でありますが、三分の二、国費を充当し、残り三分の一を競技団体が負担するということになっているわけでありますが、この自己負担分の捻出について苦慮している競技団体が少なくないという状況でございます。

 オリンピック競技大会等において我が国のトップアスリートが存分に活躍することができるよう配慮、工夫する必要があると思いますし、これは、ソチ冬季オリンピックが始まる前に、橋本団長から、ぜひこれを考えてほしいという話がありました。それを受けて、三分の二については現状維持のままで、そして、二〇二〇年という時限的な形で、残りの三分の一は別の形での国の支援策を考えて、事実上は国が一〇〇%フォローするような形等を検討していきたいというふうに思っております。

 JSCについては、これはJSCの河野理事長等と相談しながら、今後のあり方について検討してまいりたいと思います。

坂本(祐)分科員 前向きな御答弁をいただきまして、ありがとうございます。

 このJSCの助成金につきましては、JOC補助金に比べて実は使途制限が厳しいわけでございまして、使いにくいとの声が、いただいている団体からはその意見が出ているところでございます。

 この件につきましても、現状、助成金の使用に関していろいろな決まりがあるのはわかるわけでございますけれども、JOC補助金と同じ程度に使途制限を柔軟にしていただきたいと存じますが、これは局長からお答えをいただきたいと思います。

久保政府参考人 JSC、日本スポーツ振興センターの競技団体に対する助成につきましては、現在、JSCから直接各個別の競技団体に対しまして、強化合宿や大会開催に係る個別の事業ごとに必要な経費を助成しております。

 他方、JOCの補助金は、JOCから各競技団体に対し、競技団体が行います国内外の強化合宿やチーム派遣等の事業に必要な経費の総額を一括配分しております。このため、現状では、それぞれの各事業ごとの流用は、JOC補助金の場合は可能でございますけれども、JSCの場合はできないという、そういう違いがあるというのは承知しております。

 それ以外にも多分いろいろな違いはあるわけでございまして、我々は基本的に、どうやったら選手が使いやすいようになるかという観点に、それはJSCもJOCも我々も同じ観点の上に立って、いろいろな見直しを行っているところでございます。

 ただ、いろいろな制度の問題があったりいたしますので、それは常に、できない部分はあるかもしれませんけれども、可能な限り選手の立場に立った、使い道のいい補助金の使途ができるように、JSC、JOCとも連携をとりながら検討していきたいと思っているところでございます。

坂本(祐)分科員 この点に関しましても大変に前向きな御答弁をいただいて、まことにありがたく存じます。

 さて、さらに実務的で細かいことで恐縮でございますけれども、重要かつ根本的な問題でございますので、この際御指摘させていただきますが、JOC補助金、JSC助成金の会計の問題についてです。

 まず、要点を申し上げますと、会計の仕組みが厳しく、融通がきかないところがあって、本来、補助金、助成金の対象経費になるものが、使い方次第で対象外経費になってしまう。対象外経費ということは、結局自己負担になってしまうということでございますので、会計処理に柔軟性を持たせていただきたいということであります。もちろん、その分、事後の監査等はしっかりと厳しくする必要があると思います。

 例えば、選手の移動の航空券の領収書を例に挙げますと、日本の旅行代理店を通じて購入をして領収書を発行してもらえば、これは補助金、助成金対象経費になります。しかし、海外の大会の開催地で航空券を購入して、その国で発行された領収書は、その形態によっては補助金、助成金対象外経費になってしまうことがあると聞いております。

 そして、この問題点を踏まえて、競技団体の会計全体に置きかえると、競技団体の会計実務をしている方の話によれば、例えば、JOCの補助金を活用する際、表向きは、三分の二の補助金、三分の一は自己負担となっておりますけれども、実際には、そのときの現場での領収書のもらい方や使い方次第では、もともとは補助金対象経費だったものが対象外経費になってしまって、自己負担分がふえて、結果、実質的に補助金と自己負担、団体が負担する場合もありますけれども、その割合が半分ずつになってしまうということがあるということでございます。

 この会計の仕組みの状態で、JOCの補助金を活用する際の三分の一の自己負担分を国が負担していただいて、表向き三分の三を出していただいたとしても、対象外経費による自己負担分が残ってしまいますので、この点につきましては、各競技団体が補助金、助成金を最大限活用できるかどうかの最も重要な問題であると考えております。

 この問題は極めて実務的な問題でもありますので、文部科学省には、各競技団体の会長や強化担当者ではなく、会計実務担当者の話をよく聞いていただいて、補助金、助成金の仕組みのあり方、会計処理のあり方を各競技団体が活用しやすいように調整していただくことができればと願っております。本来の目的は、おっしゃるように競技力の向上でありますし、また、その本来の目的を達成するためにどうあるべきかという視点でお考えをいただきたいと存じます。

 また、優秀な選手がいることによって国際競技団体から国内の競技団体へ支給される補助金があるわけでございますが、国際競技団体から国内の競技団体に補助金が支給される場合、その国際競技団体から受け取った補助金の分については、JOC補助金またはJSCの助成金が削られてしまうのが現況です。競技力の強化という観点から考えると、その分はさらなる競技力強化のために使われるべきものであると考えております。優秀な選手がいる競技団体には国際競技団体から補助金が支給されるために、JOCの補助金とJSCの助成金が削られて、そうでない競技団体にはJOCの補助金とJSCの助成金がしっかり支給されてしまうという状況は改善すべきだと思います。

 大臣もまさに、二月十八日の予算委員会において、この補助金の課題について、今後、オリンピック競技大会等においても、我が国トップアスリートが存分に活躍できることができるような配慮、工夫というのは必要であると認識している、JOCそれから競技団体等と緊密に連携して、現場の実態を十分把握した上で、常に、よりよい方策を目指して検討しながら、効果的な選手強化予算が確保できればと答弁されております。

 ぜひ、文部科学省の担当レベルでも、その大臣の御意向に従って対応していただきたいと存じますが、局長のお考えをお伺いいたします。

久保政府参考人 文部科学大臣のお考えは、もちろん私どもそれを十分に受けて対応すべきものだと思っております。

 もともと、できるだけ使い勝手のいい形にするということが前提でございますけれども、さまざまな問題が起きたりいたしますと、より厳しくする部分が出たりして、ふぐあいが出たりする部分がございます。あるいは、もっと理解すればうまく対応できる部分もございます。それをしないために複雑になったり、損をしたりする部分もあると思います。

 これは他方で、競技団体のガバナンスなり、会計処理のノウハウのあるなしの問題もありますので、そういうものを共有して、使い勝手がいい形にどう持っていくかというのは、やはり文部科学省も、各競技団体、JOCとも協力しながら考えていくべき問題だと思いますので、大臣の基本方針を念頭に置きながら、私ども、その方向で競技団体の具体的な話ももっと把握して、より制度運用ができるようにしていきたいと考えているところでございます。

坂本(祐)分科員 当然、補助金、助成金をいただく団体の責務というのもあろうかと思います。現場の声をお聞きになっていただいて、よりよい改善に向けてお考えをいただければと御要望申し上げます。

 さて、インクルーシブ教育について一点お伺いをさせていただきます。

 日本国憲法第二十六条に、全ての国民、すなわち障害のあるなしにかかわらず教育を受けることができる、また、障害者基本法第十六条にもそのように記されております。

 私は、市長在職中十六年、ノーマライゼーションのまちづくりを行ってまいりました。それは、障害がある人もそうではない人も、ともに暮らしを分かち合える社会、もし障害をお持ちになったとしても、自分が今生まれたところで、今自分が住んでいるところで、生きがいを持ってしっかりと生きていくことができるノーマライゼーションの社会をつくる、そのお互いを思う優しさがきっと明るい豊かな社会をつくる、これが全ての政策の基本理念として掲げさせていただいた課題でございます。

 障害をお持ちの御家族の方々から、そのような御要望をいただきました。お兄ちゃんやお姉ちゃんが行っている近所の小学校になぜ僕が行けないんだろう、そして、妹や弟が行っている学校に、なぜ自分はバスで隣の町の養護学校、今は支援学校ですけれども、通わなければいけないんだろう、そういったお話を聞いたときに、障害のあるなしにかかわらず、家族が一緒に食事をして、一緒にお風呂に入って、一緒に寝て、一緒に過ごしていく。障害のある子とない子とを就学支援(指導)委員会で振り分けてしまう、むしろ、人生の入り口で障害のある方とそうでない方を分けてしまうのは、私は間違っていると考えています。

 そのスタートの部分が思いやりのある社会実現のために何としても必要。だからこそ、十年ほど前はまだこのような制度ができていませんでしたけれども、東松山市ではその制度を単独に改変させていただき、全ての小学校に、中学校に、どんな障害をお持ちのお子さんでも通うことができるシステムに変えました。

 そして、年数がたってまいりました。インクルーシブ教育推進への取り組みが大きく変わりつつあると私は考えております。このことについては大変に評価を申し上げております。このインクルーシブ教育推進への取り組みの現況をお聞かせいただきたいと存じます。

前川政府参考人 去る一月二十日に、我が国は、障害者の権利に関する条約を批准したわけでございます。この条約におきましては、障害のある方々がその能力を最大限に発達させ、自由な社会に効果的に参加することを可能とするという目的のもとで、障害のある子供と障害のない子供がともに学ぶ仕組みとしてのインクルーシブ教育システム、障害のある方々を包容する教育制度という理念が提唱されておりまして、これに向けた取り組みが非常に重要だと考えております。

 このインクルーシブ教育システムの構築に向けましては、平成二十三年の八月に障害者基本法の改正が行われておりますが、文部科学省といたしましては、昨年の八月に学校教育法施行令の改正を行い、就学の取り扱いについての考え方を改めたところでございます。

 具体的には、障害のある児童生徒の就学先の決定につきまして、従前、特別支援学校への就学を原則とし、例外的に小中学校への就学を可能としていたわけでございますが、これを改めまして、新たに、個々の障害の状態等を踏まえまして、総合的な観点から就学先を決定する仕組みとしたわけでございます。その際、保護者の意向を可能な限り尊重することとしたわけでございます。

 文部科学省といたしましては、この制度改正を踏まえまして、引き続き、インクルーシブ教育システムの構築のための特別支援教育の充実に取り組んでまいりたいと考えております。

坂本(祐)分科員 ぜひインクルーシブ教育をしっかりと推進していただいて、思いやりと優しさのあふれる社会実現のために、教育行政の発展を御期待しております。

 終わります。

あかま主査代理 これにて坂本祐之輔君の質疑は終了いたしました。

 次に、井出庸生君。

井出分科員 結いの党、信州長野の井出庸生です。本日は、よろしくお願いいたします。

 きょうは、原子力損害賠償について、第三者、公正中立な立場からこれを所管している文部科学大臣にお話を伺います。また、参考人の各皆様にもお越しをいただいております。

 きょうは私、この質問をつくるに当たり、多少の憤りを感じておりまして、失礼のないように質問させていただきたいと思いますが、失礼がありましたら、若さに免じてお許しいただければと思います。

 早速、質問に入らせていただきます。

 まず、あの震災そして原発事故から間もなく三年となりますが、この三年、特にADRが始まってから、ADRが示した和解案が打ち切りとなって、それが東京電力の方で和解案を拒否して打ち切りとなった件数は、これまでにどれぐらいあるのか。また、打ち切りとなった事案の中に占めるその割合はどのくらいなのか。もう一つ、件数が幾つもあるようでしたら、東電側が拒否をした主な理由についてお答えください。

田中政府参考人 お答えをいたします。

 原子力損害賠償紛争解決センター、ADRと言ってございますけれども、が申し立ての受け付けを開始いたしましたのは平成二十三年九月でございます。九月から昨日までの間に、ADRが示した和解案、これを東京電力が拒否したことにより打ち切りになった件数というのは十五件ございます。これは、ADRで既済件数七千二百八件ございます、その〇・二%というところに当たるというふうに承知をしてございます。

 また、ADRでの和解仲介手続の内容につきましては原則非公開ということでございますものですから、公開するためには当事者間の同意ということが少なくとも必要でございますものですから、個別の理由について回答を差し上げるということは差し控えさせていただきたいというふうに思いますけれども、これらの申し立ては、東京電力の社員あるいはその家族の方々からの申し立てというふうに承知しているところでございます。

井出分科員 今、社員、家族からの申し立てを拒否したものが十五件あるというお話でした。

 私がADRのホームページを見たところ、ことしの一月末現在で打ち切りが七百二十八件あると。ですから、ここから十五件を除いたものに関しては、では東電側からの拒否ということではないということでよろしいですね。この十五件ということで。はい、わかりました。ありがとうございます。

 今回、今お話のあった、東京電力の社員また家族が賠償の和解案を拒否されてしまった、また、これまで賠償金を受け取ってきたが、さかのぼって返還をするように求められている、そういった新聞記事をこれまで見てきて、それをもとにきょう質問をさせていただきたいと思って、新聞記事も資料として持ってまいりました。

 新聞記事の資料の一枚目、毎日新聞、ことしの二月二十三日なんですが、「東電賠償国指針守らず」と。これはどういうことかといいますと、紛争審査会の方でつくっている賠償の指針、この指針は、例えば、警戒区域及び計画的避難区域にいる方が避難をしている、そのときの精神的な損害、月額十万となっているんですが、これが、避難の指定が解除をされた後、解除後一年間は当面の目安として支払う、そういう指針になっているんです。

 ところが、私がきょう問題としたいのは、東京電力が社員に対して独自の基準をつくって、私もよくわからないのできょう質問に立っているんですが、社員が原発の近く、被災地、そういった区域の中に持ち家を持っていたのかいなかったのかで、持ち家を持っていればいいんですけれども、社宅とか借り家にいてそこから避難をした、当然、原発の近くにいるので危険な作業にもかかわった社員もいるんですが、なぜか引っ越しが完了した時点、場合によっては仮設住宅に引っ越しが完了した時点で、例えばこの一年という紛争審査会の指針と関係なしに賠償を打ち切って、さかのぼっての返還請求ですとか和解の拒否というものに至っているようです。

 資源エネルギー庁にお願いをして東電が社員向けにつくった基準というものを求めたのですが、それで出てきたのがこの黒塗りの紙、「本賠償(精神的損害や避難・帰宅等に係わる費用)の終期の考え方(住居を所有している場合)」、二枚目「(住居未所有で社宅に入居していた場合)」、三枚あるんですが、右上には「社員限り」、一番下には小さい字で「関係者限り」「目的外利用禁止」と。

 これは、私、何とかぎりぎりで中身を把握いたしまして、中身は、こういう形で黒塗りで示されましたので、そういう配慮できょう私も示しはしませんが、細かくどういう住居実態だったかによって基準を分けている、そういうことになっております。

 まず、東電にお伺いをしたいのですが、これを社員向けにつくって社員の賠償基準として運用してきたことは事実かどうか、そして、これを公表してこなかったのはなぜか、お伺いします。

増田参考人 増田でございます。お答えいたします。

 中間指針におきましては、避難等対象者の範囲というのは、避難指示等により避難等を余儀なくされた方という考えが示されているところでございます。したがいまして、精神的損害への賠償有無につきましては、被災された方々が避難を余儀なくされた状態であるか否か等によって判断しておりまして、今先生が御指摘のような、転居の事実のみをもって終了するような扱いとはしておりません。また、当社独自の基準を設けているわけではございません。

 それから、資料の開示について御質問がございましたけれども、今御指摘のあった資料につきましては、転勤が前提の就業状況や、あるいは居住形態等々の実態を踏まえまして、社員向けの説明用に作成したものでございます。社宅ですとかあるいは単身寮の利用ですとか、いわゆる一般の方々にはなじまない、まさにうちの会社独自の内容がかなり織り込まれておりまして、そういう意味では、逆に、これを開示することによって、一般の方への誤解、混乱を招くおそれがある、かように考えておりまして、開示は今のところしてございません。

 以上でございます。

井出分科員 今の御答弁を伺いますと、当社独自の基準ではない、そういうお話ですと、一般の方にも住居の区別、社宅は関係ないとしても、持ち家、持ち家でない、借り家、家族の実家、そういった基準が適用されるのかどうかというところが一点。

 もう一点は、その中で社員向けにこの資料を作成して説明をされたということは、やはり事実上、東電の社員には独自の基準をつくられているという理解に私はなると思うんですが、いかがでしょうか。

増田参考人 社員とその御家族につきましては、私ども、詳細に転勤等々の就業状況ですとかあるいは居住実態をいろいろなデータによって把握することができます。それに対しまして、一方で、一般の被災された方々につきましては、そのような詳細情報、これを全て把握することははっきり言って困難でございます。

 したがいまして、結果として社員と異なる結果となるケースはございますけれども、基準を変えてやっているというところはございません。

 よろしいでしょうか。

井出分科員 そうしますと、東電の社員のことは居住実態もよくわかっているから、この基準でやっていく。現実的に、東電の社員、家族と、それ以外の被災者と、明らかな差別がこれからも続いていくということでよろしいのか。

増田参考人 ただいま先生の御指摘がありましたが、私ども、社員の資料等々、わかる範囲で、当然これは基準に照らし合わせて、過剰な賠償というのは当然これはあってはならないことですし、ましてや、社員が一般の方々より多くの賠償金額を受け取る、これはあってはならないことだと思っています。

 あくまで、社員の方でも一般の方であっても、適正な基準にのっとり、同じベースで賠償をお支払いする、そのような形で臨んでいるところでございます。

井出分科員 社員や家族だったら、一般の被災者よりも少なくてもいいということをおっしゃっているんですか。

増田参考人 決してそういうことではございません。

 まさに被害の実態、多分これは一人一人、全て皆さん、被害の実態というのは違うと思います。そういう意味では、社員の方々でありましても、その実態を、先ほど、持ち家ですとか社宅ですとか、いろいろな形態がありましたけれども、これは恐らく百人百様、それぞれ皆さん違う内容でございますし、賠償の場合はまさに細かいところまで含めて聞いておりますので、一概に、書類を見て審査して終わりというわけではございません。

 何か御疑問のある場合には、社員の方でもしっかりとお話を聞かせていただいて、それに応える、そういう意味では、一般の方々と同じというふうに考えております。

井出分科員 社員の居住実態、勤務実態はよくおわかりだと思うんですが、この新聞資料にお示しをした、五ページ目、一月四日の毎日新聞の記事なんですが、「高線量作業 耐えたのに 若手続々退社 悔し涙」と。賠償を打ち切った社員が、あの危険な現場で作業をしていた人間がいることも当然知っての上での賠償の打ち切りだと思いますが、それでよろしいですか。

増田参考人 知ってといいますか、一つ、今先生がおっしゃられた、いわゆる高線量作業ですとか、そういったものが必ずしも賠償対象者だけではございませんし、広く私どもの社員全員がかかわっているところでございます。

 そういう意味では、一方で、そういう方々への配慮につきましては、必ずしも賠償だけではなくて、社宅ですとか、あるいは、まさに職場の環境、その他いろいろな、もちろん給与等々もございますし、まさに福利厚生等々の中でそうしたモチベーションをしっかり上げていく。

 先生御案内のとおり、私どもの会社は今若手が結構やめておりますけれども、そういった面も含めて、しっかりと社員の声を受けとめて、今言ったような福利厚生等々も含めて反映をしてまいりたいというふうに思っております。

井出分科員 社員や家族、その和解の件数、冒頭の件数を聞けば、社員と家族の件だけ和解の打ち切りがある。そういう事実がある限り、社員の士気をどうやって高めていくのかというのは、私は大いに疑問を感じております。

 そして、今回の、今東電が社内限りでやっている話は、資源エネルギー庁は説明を受けていると。記事によれば、容認をしていると。

 この賠償のルールをつくられている文科省、大臣は、この事実を把握されておりましたでしょうか、また対応をとられたか、伺いたいと思います。

下村国務大臣 御質問の東京電力の「本賠償の終期の考え方」については、文部科学省としては直接把握しておりませんが、当初、事務方が本件を直接所掌している経産省に確認したところ、経産省は、御質問の東京電力の考え方を把握しており、東京電力に対して、転居の事実のみをもって避難終了とみなしたり賠償の打ち切りとせず、原子力損害賠償紛争審査会が策定した指針の趣旨に沿って、個別具体的な事情に十分配慮するよう指導しているとのことでありました。

 文科省としては、今後とも、東京電力が指針の趣旨に沿って、迅速、公正かつ適正な賠償を行うよう働きかけたいと思います。

井出分科員 今お話ありました迅速、公平というのは、大臣が今国会で述べられた所信の中にも書いてあると思います。

 しかしながら、東電側が和解を拒否して打ち切りになったのは、十五件全部、東電の社員と家族だと。

 また、私はどうしても理解ができないんですが、審査会の示している基準は、その区域のいろいろな指定が解除になってから一年を目安と。持ち家かどうかなんということはどこにも書いてないんですよ。幾ら、東電の社員の居住実態がわかるから、一般の人がわからないからと。現実的には、これからもこのことを東電は続けていくのではないかと私は思っているんですね。きょう、違うと言ってもらえれば、もうそれで質問をやめてもいいぐらいなんですが。

 東京電力は、ホームページで、損害賠償について、和解仲介案の尊重というものを言ってきております、三つの誓い。また、審査会の指針もあり、大臣も所信の中で「和解の仲介の体制強化を図り、迅速、公平かつ適正な賠償が行われるよう万全を期してまいります。」とおっしゃっておりますが、私は、これは明らかに対応が、社員と家族、そうでない被災者と異なっていると思うんです。

 これは、私はやはり何らかの対応をしていただきたいと思っておりますが、大臣いかがでしょうか。

下村国務大臣 原子力の損害賠償については、文科省としては、被災自治体からの御意見、御要望を踏まえまして、昨年末に、住宅の損害や避難指示が長期化した場合の精神的損害等に関する中間指針第四次追補を策定するなど、順次指針を策定してきたところでございます。

 指針策定のたびに、私の方から東京電力社長に対して、指針に従って、迅速かつ適切な賠償の実施及び被害者に対する誠実な対応を徹底するよう、文書によりまして要請をしております。

 あわせて、原子力損害賠償紛争解決センターにおいて和解の仲介を実施しておりまして、弁護士を四百五十人まで規模を増強するなど、体制強化等によりまして、当初約八カ月を要していた審理期間はおおむね半年以内まで短縮しております。現在も、審理期間のさらなる短縮を実現するなど、被害者の方々に対する迅速な賠償が実現するよう取り組んでいるところでございます。

 これらに加え、関係省庁が連携して東京電力に対する指導等を行った結果、二月二十一日現在、個人への本賠償約一兆七千億円を含め、賠償の総額は約三兆五千億円に達するなど、賠償は着実に進捗しているというふうに認識しております。

 今後とも、さらに迅速、公正かつ適正な賠償が行われるよう、万全を期してまいりたいと思います。

井出分科員 東京電力に伺いたいのですが、東京電力は、先ほど私申し上げましたように、三つの誓いで、和解仲介案を尊重すると。ただ、しかしながら、その十五件、それも全部社員とその御家族なんですよね。それは、結果としてそうかもとおっしゃられるかもしれませんが、私は、やはりこういう社内向けの文書があってそういう結果になっているのではないかと思っております。

 また、これまで国会にいらっしゃった各社長も、和解案を尊重する、指針に基づいてですとか、和解案を踏まえてと、これも一回や二回じゃないですよ。恐らく何十回この答弁をしていると思うんですけれども、社員に今やっているその実態について、一般の人と同じ賠償の仕方を考えることが、対応を変えることが今からできないのかどうか、端的にお答えください。

増田参考人 弊社といたしましては、まさしく今の中間指針にのっとりまして、被災された方がまさに避難を余儀なくされた状態であるか否か、これは先ほどから申し上げておりますように、社員であること、一般の方々と全く変わるところはございません。

 そういう意味では、ちょっと行き違いがあるのかもしれませんが、私どもとしては、全く同じ、まさに基準にのっとってやっているということで、弊社、事故により被害を受けられた方には同等な扱いで対応させていただいている、かように考えているところでございます。

井出分科員 今のお話ですと、対応は変わらないのかなと思うんですが。

 賠償金をさかのぼって返しなさい、そう言われた人の中には、新聞記事をいろいろ見れば、避難のときに必要な家電とかそういったものは通常費用として出ると聞いておりますが、そういった家電の費用まで返せと言われた、そういう記事も見ております。そうした、私からすればあんまりだと思うような中身なんですけれども、それでも御対応は変わらないと。

 それは私は、ADRの和解仲介案、しっかりとそれを尊重するというところが、尊重をもっと守らなければいけないとかそういう方向に持っていかなければ、今の東電の方の御答弁だと、いつまでたっても変わらないのではないかと。

 このADRは、金融取引の世界でもそういう裁判以外の紛争解決制度があって、こちらの場合は、特別調停案について、金融機関に受諾義務が法律であるように聞いております。ですから、この原発のADRについても、もっと和解仲介案を遵守しなければいけない、従わなければいけないといった方向の制度改正、法改正が必要になるのではないかと考えますが、大臣いかがでしょうか。

田中政府参考人 東京電力におかれましては、総合特別事業計画で、まさに先生御指摘のとおり、三つの誓い、そのうちの一つが和解仲介案の尊重ということを掲げておられます。これを経済産業省、内閣府、文科省、認可してございます。

 東京電力におかれては、この三つの誓いをきちっと徹底してやっていかれるということを我々としても期待しているところであります。

井出分科員 原発の事故の対応ということになると、一般的にこれまで国会で言われてきているのは、東電が一義的な責任を持って、ただ、何かあってはいけないように国が前面に立ってというのが、汚染水対策とかあらゆる分野でのスタンスだったと思います。

 文部科学省と東京電力の賠償における責任関係というのを少し私なりに、きのういろいろお話させていただいて考えたんです。やはり文部科学省は、公正中立な立場から賠償のスキーム、ルールづくりをやっていく。それをしっかり守っていただくように文書を出したりもしているというお話もさっき大臣からございましたが、ルールづくりと、私は審判役だと思っておりまして、東電と被災者が当事者であって、資源エネルギー庁が東電の実際上の指導をしているかと思うんです。

 この問題、今、東電はこの対応を変えるおつもりがない。資源エネルギー庁も、説明を受けてそのままにしている。だったら、ルールづくり、審判の役を負っている文部科学省、大臣が、やはりきちっとレッドカードを突きつけなければ、見守っているだけでは変わらないと思うんですが、大臣いかがでしょうか。

下村国務大臣 今回の事故により生じました原子力損害に関して、これは事故と相当因果関係が認められるものは、全て原子力損害賠償法に基づいて東京電力に賠償の責任があります。

 本件については、内閣府及び経産省は、東京電力が最後の一人まで賠償を貫徹することなどを明記した総合特別事業計画を認定する責任を有し、また、経産省は、電気事業者を監督する責任を有する立場から、東京電力が適切な賠償を行うよう指導監督を行っているわけであります。

 文科省は、原子力損害賠償法に基づき、原子力損害の範囲の判定等に関する指針の策定と、損害賠償に関する紛争の和解の仲介を行っているなど、関係する府省がそれぞれの立場から原子力損害賠償に携わっているという立場であります。

 文科省としては、引き続き、和解の仲介の体制の一層の強化を図り、被災者に寄り添った迅速、公正かつ適正な賠償が行われるよう万全を期してまいりたいと思います。

井出分科員 東電が和解を拒否しているのが十五件あって、全部社員と家族に関することだと。その状態が適切だと大臣はお考えなんですか。

下村国務大臣 その十五件の個別具体的な状況を把握しておりませんので、ここで即答することはできませんが、しかし、当初申し上げたように、東京電力に対しては、転居の事実のみをもって避難終了とみなしたり、それから賠償の打ち切りとせず、これは原子力損害賠償紛争審査会が策定した指針の趣旨に沿って、個別具体的な事情に十分配慮するよう指導しているところでございまして、そういう趣旨にのっとって東京電力は対応していただきたいと思います。

井出分科員 把握をされていないから即答はできないと。私は、文部科学省がこれまでやっていただいた指導が、東京電力の方のお話を伺っていると、指導が行き届いていないと感じざるを得ません。

 ですから、やはりこの問題を把握されていないのであれば、公正中立な立場からしっかり調べていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか、大臣。

下村国務大臣 いや、私個人に聞かれたと思ったものですから、文科大臣としての私は、その十五件の内容について、個別具体的な事情については把握しておりませんが、しかし、機関としては適切に今対応しているというふうに思います。

井出分科員 きょう質問をさせていただいて、今の東電のお答えですと、改善が見込めるのかなというところ、私は非常に不安なんです。今、適切に対応という御答弁がありましたが、そこをどうしても、改善に向けた結果を出していただきたいんですが、もう一度御答弁をお願いいたします。

下村国務大臣 東京電力に対しては、指針の趣旨に沿って、さらに迅速、そして公正かつ適切な賠償を行うように努力をしてもらいたいと思います。

井出分科員 迅速が公正公平なものを欠くことのないように、くれぐれもしっかりと賠償をやっていただきたいと東電にお願いして、また、しっかりと指導をお願いしたいと思います。

 終わります。どうもありがとうございました。

あかま主査代理 これにて井出庸生君の質疑は終了いたしました。

 次に、伊佐進一君。

伊佐分科員 公明党の伊佐進一です。

 本日は、このような質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。また、本当に長い長いこの分科会の中で、大臣また皆様、お疲れの中であると思うんですが、最後までおつき合いいただければと思います。

 まず一点目なんですが、地域型保育の話をさせていただきたいと思います。

 といいますのは、今回、子ども・子育て新制度という中で、この地域型保育というのが位置づけられました。これまで国から財政的な支援がなかった、例えば小規模保育、十九人以下の保育所であったりとか、あるいは、保育ママと言われるような五人以下の保育所であったりとか、そういったところが、まさしく今、待機児童解消を加速化させていくんだという中で大事な役割を担っていくということで、今回、公明党も長い間これを主張してまいりまして、地域型保育という名前で制度の中に位置づけていただきました。

 本日質問させていただきたいのは、せっかくこうして位置づけた地域型保育なんですが、もしかすると、このままいくと、無保険状態、保険のない状態の保育を生み出す結果になるかもしれないという話、何らかのところで手を打たなければいけないんじゃないか、そして、実はこの手を打てるのは文科省なんだというお話をさせていただきたいと思います。本日は、そういう観点で質問させていただきます。厚労省の方からも、高鳥大臣政務官の方にお越しいただきました。お忙しい中、分科会の方を抜け出ていただきまして、ありがとうございます。

 まず最初に、厚労省の事務方の方にお話を伺いたいんですが、この保険の制度、今、現行の仕組み、保育所の保険の仕組みがどうなっているかということ、どういう制度でカバーしているのかということと、そしてまた、今回の新制度でその範囲がどう拡大されるかということについて、簡潔に御説明願えればと思います。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、現行の保育所でございますけれども、これにつきましては、独立行政法人の日本スポーツ振興センターが行っております災害共済給付制度の対象になっております。したがいまして、保育所の管理下で事故が起こった場合につきましては、災害共済給付制度でカバーされているということでございます。

 また、一昨年八月に、子ども・子育て関連三法が成立いたしました。そこで、幼保連携型認定こども園が、学校と児童福祉施設両方の法的位置づけをあわせ持つ施設として規定されたということなどに伴いまして、日本スポーツ振興センター法が改正をされて、新たに認定こども園が災害共済給付制度の対象になったところでございます。

伊佐分科員 そうなんです。ありがとうございます。

 この制度、保育所のこの保険というのは、実は文科省の所管するスポーツ振興センター、ここの独法の中で、附則で位置づけられている。これまでの学校とか幼稚園とか保育所というものに加えて、今回、この認定こども園、ここも対象にしましょうということで拡大されました。

 ところが、先ほど私が申し上げた地域型保育というものは、これは実は、今回の拡大の対象に入っていない状況なんです。つまり、一周回おくれで議論して、今回法的に位置づけていただいたということで、今、公的な保険の対象になっていないというのが現状です。

 そこで質問なんですが、恐らく公的な保険の対象となり得る判断として、例えば、その施設が法制度上できちんと位置づけられているかどうかとか、あるいは基準があるかどうかとか、あるいはその基準の遵守をしっかりと確認できるかどうか、こういうような観点で認めてきた。恐らくそういう意味で、今まで認めてきたのはいわゆる認可保育所というものだけだった。ところが、今回新しい制度でそういう位置づけをつくったので拡大をした、こういうことだと思います。

 そこで、この地域型保育について、では、今認められた、認可保育所、あるいはそれと同等な、例えば認定こども園であったりとか、そういうものと同様に、ちゃんと法的な位置づけあるいは許可基準というものがあるのかどうか。いやいや、そうじゃなくて、この新しい地域型保育というのは、やはり認可保育所等と比べてまだまだ管理が甘くて、一段劣るということなのかどうかということについて、もう一度事務方の方から説明をいただければと思います。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 子ども・子育て支援新制度におきましては、保育所や幼稚園、認定こども園を対象とする施設型給付、先生御指摘の施設型給付に加えまして、小規模保育、家庭的保育、居宅訪問型保育、そして事業所内保育を新たに市町村による認可事業と位置づけまして、児童福祉法上に位置づけたところでございます。

 こうした地域型の保育給付の対象を位置づけまして、こうした多様な施設や事業から保護者が適切に選択ができる、そうした仕組みにしております。

 そこで、この地域型保育の対象となります事業の認可基準等でございますけれども、これにつきましては、内閣府に設置をされております子ども・子育て会議におきまして御議論をいただきました。その中では、この基準につきまして、現行の保育所等の基準を踏まえて、質の確保された適切な保育が提供できる基準、こういうことで取りまとめがなされたものと承知をいたしております。

伊佐分科員 ありがとうございます。

 もちろん、基準の中身はそれぞれ違うんでしょうが、しっかりとした管理という点、あるいは国の関与あるいは自治体の関与というものがしっかりとなされるという点では同様だという答弁だったかと思います。

 では、現場で今何が起こっているかということなんですが、この地域型保育、先ほど申し上げたように待機児童解消加速化プランの中で重要な位置づけをいただいた、まずこれからどんどんふえていくだろう、そう思われます。ところが、結局この公的な保険の対象になっていない、自分たちで保険を民間会社と交渉してやりなさいよということになりました。そこで、各個別の保育所は、それぞれ民間の保険会社と交渉する、あるいは幾つか集まって民間の保険会社と交渉するということになりました。

 ところが、今現状をお伺いしていますと、その保険の内容たるや、当然、この公的な保険には全く劣ってしまう。例えば、保険金もそうですし、掛金もそうですし、補償の内容もそうですし、補償を受けられる条件とか、あらゆる点で、民間と民間の話になってしまうと、当然、公的な保険と差が開いてしまっている。

 今回の制度の中で、当然、地域型保育に対しても保険加入を義務づけるということになっていますが、今のままでいくと、結局、何とか保険は民間の保険会社と結んだものの、補償が十分じゃなかったりとか、そういうようなことが起こり得るんじゃないか。あるいは、最悪の場合、無保険の保育所、地域型保育というものが生まれてくるんじゃないかというような懸念が、今現場には物すごくそういう声が上がっております。

 そこで、高鳥政務官にお伺いしたいのは、今のこういう状況に対して、厚労省がどのように考えているか、そういうことについてお伺いしたいと思います。

高鳥大臣政務官 伊佐委員にお答えを申し上げます。

 子ども・子育て支援新制度におきましては、実施主体である市町村が、認可施設・事業者の中から、施設型給付や地域型保育給付の対象となる施設・事業者を確認することとされております。

 確認を受けた施設・事業者が遵守しなければならない運営基準におきまして、事故発生時の対応につきましては、事故が発生した場合、保護者、市町村に対する速やかな報告を行うこと、その際、事故発生時の状況、処置等に関する記録をとること、賠償すべき事故が発生した場合、速やかに損害賠償を行うことといった措置を講じる内容で、子ども・子育て会議での議論が取りまとめられたところでございます。

 この運営基準を踏まえまして、厚生労働省といたしましては、地域型保育の各事業者に対しまして、損害賠償保険に加入しておくなど、運営基準に従い速やかに損害賠償ができる体制を整備することを求める方向で検討したいと考えております。

 なお、委員御指摘の独立行政法人日本スポーツ振興センターが行う災害共済給付につきましては、地域型保育事業をその対象にするかどうかにつきまして、文部科学省とよく相談をしてまいりたいと考えております。

伊佐分科員 政務官、ありがとうございます。

 確かに今おっしゃったとおりで、保険を求めるというところですね。その後どうなるかというのは、文科省と相談しますということだったと思います。

 そこで、文科省、大臣に質問させていただきたいんですが、今回のこの子ども・子育て、新しい制度の中で、この地域型保育というのが、待機児童を解消していくという中で非常に重要な位置づけをこうして与えられた。これからふえていくだろうというこの地域型保育の施設に対して、例えば、今あるこの日本スポーツ振興センター法の附則を改正することも含めて、何らかのこの公的な保険というものに対しての措置を与える必要があるのではないかと思いますが、文科大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

下村国務大臣 御指摘のように、待機児童を解消するためにこの地域型保育を充実させるということは、我が国の政策としては非常に重要なことであるというふうに思います。

 しかし、この災害共済給付制度でありますが、これは、御指摘のように、独立行政法人日本スポーツ振興センターが行っているわけでありますけれども、これは学校の管理下で起こった災害に対し給付を行うという趣旨でつくられたものでございます。さらに、この設置者や保護者の共済掛金により運営されているということがありまして、設置者や保護者の理解をまず得る必要があると。それで、その災害共済給付制度全体に与える影響を考えて判断する必要があるということがあります。

 具体的には、給付の要件である施設の管理下の範囲を明確にするため、地域型保育事業について、保育所と同等の施設としての法的位置づけを明確にする必要がある。二つ目には、現在検討されている客観的基準の内容と、実際の事故の発生状況の詳細な検討等が必要であるということでありまして、その辺、既存の設置者、保護者に対してそういう条件が理解されないと、これはなかなか簡単に合意をするというところまでいかない部分があるということであります。

 この趣旨というのは理解できますが、そういう課題をどうクリアするかということがまず先決問題としてあると思いますので、今、高鳥政務官から答弁がありましたが、厚労省と連携して検討してまいりたいと思います。

伊佐分科員 ありがとうございます。

 大臣おっしゃっていただいたとおりで、恐らく、もう当然この場ですぐに即答できる話ではないと。当然、その設置者等を含めた方々の理解を得たりとか、あるいは全体のこの運用の影響というものを考える必要があると思うんですが、ただ、先ほど申し上げたとおり、この位置づけとしては、きちんとした法的な位置づけはあって、しかもその基準なり、あるいは基準の確認なりというものはされていると。恐らく、そういう意味では、では、今回認めていただいた認定こども園と大きな差があるのかというと、私は決してそうじゃないと思っておりますので、ぜひ引き続き御検討をいただきたい。

 こうした制度のひずみが、結局、子供たちの保育の現場、子供たちのところにそれが全部しわ寄せが来るようなことがあってはならないと思いますので、ぜひまた御検討いただければと思います。

 高鳥政務官、ありがとうございました。御退室いただいて結構です。私、次の分科会でまた質問させていただきます。ありがとうございます。

 それでは、次は、がん教育について質問させていただきたいと思います。

 昨年の五月、公明党のがん対策推進本部で、がん教育についての要望を下村大臣にさせていただいて、本当にありがとうございます。本当に迅速に動いていただきまして、心より御礼申し上げます。

 文科省ですぐに、がん教育について検討会をつくっていただきまして、そこでずっと検討いただいて、やっと先週十七日に、がん教育についての報告書というものを取りまとめていただきました。

 がんについて、もう言わずもがなですが、三人に一人が今がんで亡くなる時代で、二人に一人ががんにかかる時代と言われています。その中で、当然、御家族とかあるいは親戚まで含めると、他人事じゃない。恐らく、今そこにある危機といいますか、がんとどう向き合うかというのは、非常に重要な国民的な課題と言ってもいいと思います。

 そこで、がん教育という話なんですが、今、がん教育と言われるもの、実際にさまざま行っていただいている先行事例というのがあります。例えば群馬県、小学校六年生を対象にしてがん教育が行われている。あるいは、名古屋市も小中高生を対象に行っている。神奈川、千葉では既に予算計上した、こういうふうに伺っております。

 こうした、がん教育、確かに、今、先行でやっていただいている取り組みは本当にすばらしいんですが、一つ心配事がありまして、それは何かといいますと、がん教育といったときに、その目的、目標は何なのかというのが実は結構ばらばらであるかもしれないな、どういう目的でやるのかというのをしっかりと認識を持っていただく必要があるんじゃないかなと思っております。

 大臣にも御尽力いただいた今回の検討会の報告書、この中でどう書かれているかといいますと、がん教育の基本的な視点として、「いのちの大切さを育む、がん教育」なんだというふうに明記されている。がんに関して正しく理解できるようにすること、そして命の大切さについて考える態度を育成する、こう書かれています。

 つまり、単に教師ががんという病気を教えるんじゃないんだと。そうじゃなくて、例えば、さまざまな方々、医療従事者の方々とか、あるいは、がんを経験された方々とか、そういう方に来ていただいて、子供たちとの間で交流をしていただいて、そういう中から、命の大切さというものであるとか、あるいは他人への思いやりとか、こういうようなものを育んでいく、こういう視点が報告書に記載されております。

 こういう本当にすばらしい記述をいただいたと思うんですが、あとは具体的に、では、どうやってこれを進めていくかということになってきます。

 今国会の本会議、冒頭、我が党の井上幹事長の方からも質問させていただいて、安倍総理の方から、がん教育について、全国展開を着実に進めていくという答弁をいただいております。

 文科省は新年度からモデル事業を開始するという話も伺っておりますので、ぜひ、まず、このすばらしい報告書をしっかりと全国に周知していただく。例えば、市区町村の教育委員会までしっかりと配付していただくとか、こういうことをやっていただく中で、また、この総理の答弁を受けて文科省としてどういうふうに取り組むのかという決意をお伺いしたいと思います。

冨岡大臣政務官 伊佐委員の質問にお答えします。

 今委員おっしゃったように、総理の答弁を受けまして、私たち文科省もやはり全国展開を進めていこうというように思っております。

 具体的に申しますと、平成二十六年に新たにがんの教育総合支援事業を実施することにしております。その中では、文部科学省内に有識者から成る検討会を設置し、今後のがん教育のあり方について検討を行うとともに、地域の実情を踏まえたモデル事業の実施などを予定しております。

 今後、平成二十五年度に公益財団法人日本学校保健会に設置した検討委員会の報告書を全国の都道府県、市町村に周知するとともに、そこに掲げられている命の大切さ、これは委員が強調されておりましたけれども、そういった、がん教育という視点を基本とした、全国にがん教育を周知、展開させる予定にしております。

伊佐分科員 ありがとうございます。

 このがん教育については、検討会の設置に始まり、そしてこうしたすばらしい報告書もつくっていただいて、そしてまた、既に来年度の予算もこうして確保していただいている。文科省の本当に御尽力いただいていますことを、心より御礼申し上げます。

 次の質問ですが、子供たちの文化芸術活動に対する支援の質問をさせていただきたいと思います。

 これまで公明党は、この文化政策に対して非常に力を入れてまいりました。まず、二〇〇一年の五月に、我が党より文化芸術提言というものをつくらせていただきまして、二〇〇一年十二月に文化芸術振興基本法、この策定まで引っ張っていった。また予算についても、初めて文化庁予算が一千億円をその機会に超えたというようなこともありました。

 その中で、本日取り上げたいのは、先ほど申し上げたこの子供たちの文化活動に対して国がどういう支援をしていくかという点です。

 文化力というのはもうソフトパワーの中でも一番の代表みたいなものですが、文化活動というのを通じて、これは単なる文化じゃなくて、子供たちの例えば発想力を伸ばしていくとかコミュニケーション能力を育成するとか、こういうさまざまな力があるというふうに言われております。

 我々は、二〇一〇年に「新たな文化芸術振興ビジョンへの提言」という新しい提言もまとめたんですが、その中でまた新たに、子供たちと文化のかかわりについての提言をさせていただいております。例えば、年一回、全ての小中学校で実演芸術家の公演を行うという提案をさせていただいたりとか、あるいは、伝統文化、芸能の教育の推進という提案をさせていただいております。

 そこで質問ですが、子供たちが文化に触れる、こういう機会をいかにつくっていくかということで、この我々の提言も重視しているところですが、こうした文化庁の取り組みについてお伺いしたいと思います。

河村政府参考人 お答えを申し上げます。

 次代を担う子供たちがすぐれた文化芸術や伝統文化に身近に触れて体験することは、お話がありましたように、子供たちの豊かな感性、情操や創造力、コミュニケーション能力などを育む上で大変重要であると考えております。

 このため、文部科学省、文化庁では、子供たちに一流の芸術団体や芸術家による質の高い芸術を鑑賞、体験する機会、これはワークショップなども含めてですけれども、こうした機会を提供する事業、文化芸術による子供の育成事業を実施しております。平成二十六年度予算案においては、国からの事業として、義務教育期間中に二回の鑑賞、体験機会を提供できるように予算の増額を図っていこうとしております。

 これからも、子供たちの豊かなソウゾウ力、これはつくる創造力も発想する想像力も両方ですけれども、これらを育むために、この事業の実施それからまた地域の御協力も得まして、子供たちの芸術鑑賞、体験機会をふやしていきたいと存じます。

伊佐分科員 ありがとうございます。

 一流の芸術に子供たちが触れていく、我々の提言でも重視して書かせていただいたことに対して本当に着実に進めていただいていることを、心より御礼申し上げます。

 一方、もう一つ別の角度の話がありまして、それは、子供たちがいろいろさまざまな一流の芸術に触れるという機会とそこに対する支援というのが一つ。もう一つの側面は、子供たち自身が、自分たちが文化活動をする主体者になる、例えば音楽活動をするとか演劇をするとか、自分、子供たちが主体者となるような文化活動にどのような支援ができるのかというのももう一点あると思います。

 例えば、一例を申し上げると、私の地元の門真市というところで、門真市音楽協会というNPO法人がありまして、そこでやっていることは、地域の文化芸術活動、特に音楽の観点で、企業を回ってスポンサーを探して寄附金を集めて、そこで地域の芸術活動を一生懸命されていらっしゃる。地域の文化活動を盛り上げていただいております。この音楽協会の方々が、まさしく子供の文化活動こそが大事だということで、子供たちのために、子供たちが演奏者になるオーケストラをつくろうという話で、今、一生懸命踏ん張っておられます。

 小学生から高校生まででジュニアオーケストラをつくって、音楽というものを通して教育の向上とか、地域のきずなとか、地域愛とか、そういったものを深めていこうという取り組みをしていまして、その音楽協会の方々の努力もあって、地域の劇場もバックアップしてくれて、あるいは芸術家の方々もバックアップしてくれているという状況です。

 質問させていただきたいのは、こうした、芸術に触れるという観点では先ほど伺いましたが、子供たち自身が主体者となって行う文化活動に対して、国が支援していくことも重要だと考えますが、文科省の御意見を伺いたいと思います。

上野大臣政務官 伊佐委員の質問にお答えいたします。

 子供たちが主体となって行う文化芸術活動、それを推進するのも極めて重要と私たちは考えております。

 地方公共団体が企画するすぐれた文化芸術の創造発信事業に対して支援を行うということで、平成二十四年度から、地域発・文化芸術創造発信イニシアチブという事業を実施しているところでございます。その中で、例えば、先生もさっきおっしゃられましたが、ジュニアオーケストラの演奏会など、子供たちが主体となって文化芸術活動を行う事業に対しても支援を行っているところでございます。

 また、独立行政法人日本芸術文化振興会の芸術文化振興基金においても、広く我が国の文化芸術の振興または普及を図るための活動に支援しておりまして、その中でも、子供たちが行う文化芸術活動について支援をしているところでございます。

伊佐分科員 ありがとうございます。

 こうした地域の努力とか、こういう一生懸命な取り組みに、国としてもぜひ御支援いただければと思っております。

 次の質問ですが、これも文化関係なんですが、クール・ジャパンという言葉、実はもう十年ぐらい前からずっとクール・ジャパンというふうに言われておりますが、ところが、十年間ずっと言われ続けていた割には、なかなかこれまで、つい最近までは十分な取り組みというのが行われてこなかったと私は認識をしています。

 例えば、漫画、アニメ、そういったコンテンツというもの、あるいは世界遺産にもなった和食でありますとか、ファッションであるとか、あるいは伝統文化とか、こういうありとあらゆるものがクール・ジャパンの対象になっていくわけなんですが、最近やっとクールジャパン戦略担当大臣というものも設置していただいて、また官民で協力して、昨年五月にはアクションプランというものもつくっていただきました。

 大分力を入れて進み始めたんですが、実は私は、ちょっと心配になることが一つありまして、それは何かといいますと、クール・ジャパンというので、当然、日本で創造した、クリエーターがつくったものを世界に発信していくわけですが、最近の議論を聞いていますと、どうも発信のところばかり議論が寄っているような気がするんです。つまり、文化をつくっていく、コンテンツをつくっていく、そういうところの議論が、実は、今の現状をもう一度見直さなきゃいけないところが多々あるんじゃないかなという問題意識を持っております。

 その一つが、著作権法の話です。

 コンテンツをつくり出す著作権者と言われる方々を守る、クリエーターを守るのが著作権法ということですが、今、世界の物すごく速い技術的な進歩に、なかなか日本の著作権法の法体系自体が追いついていないというところがあるんです。

 いろいろありますが、その一つが、私的録音録画補償金制度というものがあります。

 これは何かというと、これができたころは、まだコピーをするものが例えば紙媒体だったりとかあるいはテープレコーダーだったりとかという時代に、やっとデジタル方式というものが出始めました。デジタル方式にすると、当然、簡単にコピーができる、しかも大量にコピーができる。これは大変だということになって、デジタル方式を使っているようなデジタル技術について、例えば、一つ一つ政令で指定します、DVD―Rとか何とかレコーダーとか、そういうものを指定していって、その一つ一つ指定された機械とかあるいは媒体に多少のお金、補償金というのを上乗せして、その上乗せされた補償金をメーカーが著作権者に配分するという制度をつくりました。

 ところが、この政令指定しているものが非常に古いんです。今、我々が音楽とか映画を何で楽しむかというと、例えば、アイパッドという方がいたりとか、あるいはスマホと言われるもの、あるいはパソコンというもので楽しむわけですが、実は、これは全部対象になっていないんです。

 では、どういうものが対象になっているかというと、昔あったMDとかあるいはビデオカセットとか、こういうものが対象になっているままで、新しいものがなかなかつけ加わっていない。しかも、テレビに至っては、今は全て地デジ化されました。地デジ化されたものは全部対象外なんです。

 というような状況で、今のこの技術の進歩になかなか政令があるいは法制度が追いついていない。これからますます、例えば、クラウド環境になって、新しい権利保護あるいは利用の制度をつくっていかなきゃいけない、クリエーターを守って、あるいは利用者の利便性を確保しなきゃいけないという状況の中で、まだまだこの日本の著作権法制度というのはそうした状況に追いついていないということじゃないかと思います。

 そこで、質問ですが、この私的録音録画補償金制度の見直しも含めまして、クリエーターをどう適正に守るのか、あるいは権利者と利用者のバランスをどうしっかりとっていくのかという、制度をどう変えていくのか、どう見直していくのかということについて、文化庁の、文科省の御所見をお伺いしたいと思います。

    〔あかま主査代理退席、主査着席〕

上野大臣政務官 伊佐委員御指摘のとおり、現行の私的録音録画補償金制度には問題点がございます。

 文部科学省も、文化庁としても、クリエーターに適切な対価が還元されることは、文化の発展の観点から重要であるともちろん認識しております。

 そして、私的録音録画補償金制度の見直しを含むクリエーターへの適切な対価還元については、今期文化審議会著作権分科会における検討事項の一つとされており、昨年十一月、この課題を専門的かつ集中的に議論するためのワーキングチームを設置し、検討を進めているところでございます。これは、今までに二回開催されました。平成二十五年十一月一日、そして平成二十六年、ことしになって、二月ということでございます。

 今後、このワーキングチームにおいてさらなる検討を行い、関係者の合意に向けた議論を通じて、クリエーターへの適切な対価還元に係る制度構築に努めてまいりたいと思っております。

伊佐分科員 ありがとうございました。

 クール・ジャパン、世界に向けて発信するんだといっても、発信するものがなくなればもう元も子もありませんので、ぜひ積極的な御議論をいただければと思います。

 以上、終わります。ありがとうございました。

萩生田主査 これにて伊佐進一君の質疑は終了いたしました。

 次に、八木哲也君。

八木分科員 ただいま御指名をいただきました自民党八木がトリを務めさせていただきますので、よろしくお願いしたいと思います。

 きょうの質問につきましては、科学技術教育の振興というテーマにおきまして質問をさせていただきたい、こう思っております。

 福沢諭吉は、欧米列国との差は科学技術の差である、この差を埋めていかなければ欧米に追いつけないと考えておりました。

 そこで、福沢諭吉は、明治元年に「窮理図解」を出版し、国民の科学に対する見方を啓蒙いたしました。今でいうところの理科の教科書で、小学校の高学年程度の内容でありますし、福沢諭吉は、今の日本の科学技術立国を予見していたのだと思います。

 今申し上げました「窮理図解」という本は、実はこの本でございます。これは、私が学生時代、神保町の古本屋で見つけまして手に入れたものでございます。参考になれば、下村大臣も見ておいていただきたいと思いますので、質問を聞きながら、ぺらぺらと見ておいていただきたいと思います。

 そして、今、日本の置かれている立場は、まさに科学技術立国としてやっていかなければいけないのではないか、こういうふうに思っておるわけでございますが、この確たる位置を確保しなければならないにもかかわらず、現在の科学技術教育を取り巻く状況は、憂慮すべき点が多々あると認識しております。

 そこで、自民党は、教育再生実行本部でいろいろな議論をしておりますが、そのうちの一つにグローバル人材育成があります。英語教育、理数教育、ICT教育、それらに重点を置く考え方がまとまっております。

 私は、市議会議員から国政に出てまいりましたが、市議会の約十四年間、この科学技術教育振興について私のライフワークのように取り組んでまいりましたけれども、地方における教育委員会の壁は非常に厚く、思うような進展がなく、歯がゆい思いをした経験もございます。そこで、今回この質問に立ちまして、一歩でも前進ができれば幸いなことと思っております。

 さて、本題に入りますが、新学習指導要領というものが改訂されました。小学校では算数が百四十二時間、理科が五十五時間、英語が七十時間ふえました。そして中学校でも、数学が七十時間、理科が九十五時間、英語が百五時間ふえました。そのほか国語等もふえましたけれども、今回は科学技術教育でありますので、特に理数について質問をまとめていきたい、こういうふうに思っております。

 そこで、最初の質問は、新学習指導要領になりましてどのようないい結果が出てきたのか、影響が出てきたのか。算数、数学、そして理科の学力調査をしておりますので、その結果、及び、課題がそこにあるならば解析等をしていただき、その結果を御報告いただきたい。あわせて、それは国際比較してどのような感じになっておるのか、お聞きしておきたい。まず、この現状についてお聞きいたします。

下村国務大臣 ありがとうございます。福沢諭吉がこういう本を書かれたというのを今初めて教えていただきました。今となると相当難しいかなと。現代語訳すれば多分それほど難しい内容じゃないと思うんですが、ちょっと見させていただきました。

 今の御質問でありますが、昨年の十二月に公表されたPISA二〇一二の結果では、OECD諸国中、科学的リテラシーについて一位、数学的リテラシーについては二位、ちなみに読解力についても一位、こういう結果が出ました。この科学、数学両分野においては、下位層の割合が減少し、上位層の割合が増加するなどし、我が国にとって過去最高の結果でございます。

 これについてはさまざまな要因が考えられますが、いわゆるゆとり教育から脱却し、学習指導要領に基づく基礎的、基本的な知識、技能と、思考力、判断力、表現力など、確かな学力を育成するための取り組みなどが成果を上げた原因の一つであるというふうに考えます。

 また、全国学力・学習状況調査では、平成二十四年度に初めて理科を追加して実施いたしましたところ、観察、実験の結果などを整理、分析した上で、解釈、考察し、説明することなどについては課題があるということがわかりました。

 文部科学省としては、これらの結果を踏まえ、学習指導要領をより一層定着させることなどによりまして、科学的な見方や考え方の育成などにさらに力を入れてまいりたいと思います。

八木分科員 確かに、ゆとり教育からの脱却、そして授業をふやして一生懸命いろいろなことを教える、これが学力の向上につながっておるということは言うまでもない、こういうふうに思っておりますし、また、それが国際的に見ても優位な位置にある、こういう思いがいたします。

 しかしながら、やはりそこにも課題がたくさんあるような気がいたしておりまして、OECDなどの調査によりますと、成績はいいんだけれども、理科を学ぶ意義だとか、それを使った有用性の意識がやはり低いのではないか、また、理系職種の希望者の割合が小さい、こういうことがよその国と比べて現実にあるわけでありまして、やはりそこへも一歩踏み込んだ解決方法をやっていかないといかぬのではないかな、そんな思いがしまして、これは今後の課題にさせていただきたいと思います。

 さて、自民党内で、教育委員会のあり方について、市長と教育長及び教育委員会の立ち位置について、権限と責任の明確化などの活発な議論が今展開されております。いろいろな意見があるんですけれども、私は、そのことも重要ではありますが、大切なことは、やはり教育の一番の現場は学校であると思います。先ほど下村大臣が、授業をしっかりやって成績が上がった、こういうことであります。

 現場が一番大事だ、こういうふうに思っておりまして、となりますと、学校での教育をよくしていかなければならない。そうなったときに、学校の現場を一番よく知っておる人、そういうリーダーの資質が重要ではないかというふうに思っておるわけでございます。すなわち、校長の権限の拡大、そこの責任感の強さ、このことをしっかり議論しなければいけないのではないか、こんなことを思っておるわけです。

 そして、学校は経営していかなければなりませんので、当然のことながら、PDCAを回していかなければいけない。そうしたときに、PDCAを回せるだけの期間というのが要るわけであります。

 これは豊田市の例で言わせていただきますと、豊田市では五十七歳までしか校長に昇格できないようになっております。というのは、退職まで残り三年あるわけでございますが、少なくとも三年ぐらいなければきちんとした学校経営はできていかない、責任とか権限とかそういうものもきちんと発揮できていかない、こんなような思いからだ、こんな思いがしております。

 やはり校長が一年や二年では経営はうまくいかない、こういうふうに思っておるんですけれども、私は、少なくとも四年ぐらいPDCAを回して、ワンサイクル、ツーサイクル、三サイクル、四サイクルぐらい回して初めて、学校の、学力初めいろいろな、授業についても同じことでありますけれども、そういう成果が見えてくるのではないか、そんな考えを持っておるわけでございます。

 そうしたときに、校長の権限の拡大と責任の強化、そして任命の最短期間基準というものを、最後、校長になったとき、最低でもあと何年なければいけないよ、そういう最短の期間基準、こういうものが必要であるような気がしておるんです。その件について、教育委員会としてはそういう規律はありませんけれども、その辺の考え方についてどのように考えているのか、お聞きしておきたいと思います。

前川政府参考人 御指摘のとおり、子供や地域の多様な実情に応じて質の高い教育を実現するためには、校長がリーダーシップを発揮いたしまして、その権限と責任においてしっかりとした学校運営を進めるということが非常に大事でございます。そのために、私ども、教育委員会に促しまして、学校の裁量の拡大などを進めてきているところでございますが、その際に、学校評価や学校の情報提供の充実を図るなど、学校がより積極的に保護者等に対する説明責任を果たすことも重要だと考えております。

 校長がこのようなリーダーシップを発揮して充実した学校運営を進めるためには、やはり一定の在任期間が必要であるということは先生御指摘のとおりだと考えております。現在、小中学校の教員の年齢構成が、五十代が非常に多いという状況になっておりまして、自然に放置いたしますと、順繰りの人事のために、短い期間で多くの人に回していくというようなことになりかねないという問題がございます。

 現在、公立学校における校長の平均的な登用年齢が約五十四歳であるということになっております。こういった問題に対応するために、三十五の都道府県・指定都市の教育委員会におきましては、校長の選考試験の受験資格に上限を設けるというようなことをいたしまして、各教育委員会において、一定期間にわたって学校経営を見渡すことができるような校長登用に努めているという状況がございます。

 文部科学省といたしましても、教育委員会のこういった取り組みを情報提供するなどいたしまして、校長として資質、能力ある人材を一定期間確保できるように、各教育委員会に対し、引き続き指導してまいりたいと考えております。

八木分科員 ありがとうございます。

 まさに、順繰り人事、これを排していかなければいけないというふうに思います。一番影響が出るのは子供たちでございますので、その辺、しっかり文科省の方からも指導いただきたい、こういうふうに思っております。

 次に、教育委員会における科学技術教育の振興についてであります。

 実は私、都道府県の教育委員会の組織、そして中核市以上の都市の教育委員会の組織を調べてみました。そうすると、科学技術教育振興に関する部署は、県も中核市以上も実はないんですね。当然、豊田市にもないわけでございますけれども、科学技術という言葉が部署的にあるのは、経済部だとか産業部だとか、どっちかというとお金にまつわる、そういう部分になってしまう。そこに私は問題があるのではないかという認識を持っておるわけです。

 文科省の資料を見てみましても、文化振興については、文化振興部だとか、そういう課だとか、スポーツ振興については、スポーツ振興部だとか課というのがある。

 グローバル人材を育てていかなければいけない、理数教育の刷新を掲げて、確かな日本の科学技術の立ち位置をしていかなければいけない、こういう急務のあるときに、科学技術振興のために科学技術振興部課というものの設置が要ると私は思うんです。そういうことをすることによって、行政と学校教育がお互いに補完といいますか、支え合いながら、そういう科学技術教育をしていかなければいけない、こういうふうに思っておるんです。

 現実の話はどうなっているかというと、その科学技術教育の振興等については生涯学習みたいなところになっておるんです。生涯学習になっちゃうんですけれども、物すごくファジーになってしまう、ちょっと概念がまた変わっていってしまう、こういうふうになってしまいます。

 したがって、教育委員会の制度についてのところの中に、教育委員会の事務の中に、学校教育の振興、生涯学習・社会教育の振興、芸術文化の振興、文化財の保護、スポーツの振興、こういうふうにあるだけなんです。だからつくらないんです。ですから、そこに科学技術振興という項目を入れないと、つくらなくていいというふうになってしまう。つくってもいいんですけれども、つくらなくていいというふうになってしまう。

 ですから、そこにきちんと位置づけをすべきではないのかというふうに思いますけれども、その点についてお伺いしておきたい、こういうふうに思います。よろしくお願いします。

前川政府参考人 科学技術の振興、これは、我が国全体といたしましても、またそれぞれの地域にいたしましても、発展の原動力であると考えております。そのため、次の時代を担う科学技術の人材を育成していくということは非常に重要であると考えておりまして、初等中等教育段階からの理数教育あるいは科学技術教育の充実が非常に重要であると認識しております。

 ただ、これまでの制度のもとでは、教育委員会は、高等学校までの学校を所管するという執行機関でございまして、地方教育行政法上、大学につきましては首長部局が担当する、こういう仕切りになっているということもございまして、大学振興、あるいは産業振興との関係の深い科学技術に関する行政は、首長部局で担っているというのが現状でございます。

 理数教育あるいは科学技術教育を進める上では科学技術振興との関係が非常に大事だと考えておりますので、私どもは、教育委員会が所管する科学技術の人材育成ということにつきまして、首長部局の担当部局とも十分連携を図るように今後とも促してまいりたいとは考えております。

八木分科員 それはちょっと違うのではないかなという思いがしておるわけです。

 やはり、芸術文化だとかスポーツ振興、これらも、生涯学習というんですか、一生を通してやる部分と学校の部分があるわけです、共存しておるわけですよ。ですから、科学技術においても位置づけは同じだと思うんです、私は。

 私がこのことを何で言わなきゃいけないのかというと、やはり日本が科学技術立国として標榜していかなければいけない、ですから、そこにきちんとした位置づけを明確にしていかなければいけないのではないかという私の認識でありますので、再度その件については御考慮いただきたい、このように思っております。

 次に、学校教育の現場の問題点、こういうことについてちょっと質問しておきたいと思います。これは関連がありますので、三点質問いたしますが、一括してお答えいただいて構わないと思います。

 科学技術振興機構と国立教育政策研究所が調査した結果から私は質問いたしますが、小学校で理科専科の教師の配置が二七%、小学校の学級担任の五〇%が理科指導を苦手と感じておる、また、理科がおくれている子供に対して七四%の先生が補充の授業を行わずに教えっ放しになっておる、こういう状況であります。これはアンケートの結果でございます。

 そして、理科の専科教師の配置は、各都市間、二七%といえども非常にばらつきが大きいわけでありまして、それは、県ないしは市の教育委員会の意識の差かもわかりません。

 といいますのは、豊田市の場合、九%しかないんです。私、調べましたら、極端な学校では、三十人先生がおって一人もいない、こういう学校もあるわけでして、それではどうやって理科を教えるんだ、こういうことになるわけであります。それはそれなりに工夫はしておりますけれども。

 そうすると、やはりここできちんとしていかなければいけないのは、理科の専科の配置基準と、そして先ほど言いましたように、余り得意ではないよ、こういう人たちのために指導力の向上をどのように今後対応していくのか、その件について伺いたい。これが一点目です。

 理科で大切なことは、やはり、観察、実験、これを充実することだ、こういうふうに思っています。時間が、特に小学校の場合は五十五時間もふえておるわけでございますので。

 それで、私、実は、小学校の教科書を取り寄せまして、全部見てみたんです。六年生の理科で体のつくりと働きという項目がありまして、魚の体の内部の調べ方、こういうのがあるんですね。

 これは、フナの解剖を、しなさいとは言っていません、これは補助的な部分でございますので。やるのだったらこういうふうにやりなさいよ、こういうことが書いてあるんです。

 それではどのぐらい学校がやっておるかと調べてみたんですね。そうすると、全国ではありませんが、豊田市の場合で七十五校のうち五校しかやっていないんですよ。やっていないところは、こういうふうですよと言って教えるだけなんですね、絵を見て、これが心臓だとか腸だとかいうふうに。今はデジタル教科書があるものですから、それを見れば解剖は一目瞭然かもわかりませんけれども、それは違うよな、こういうふうに私は思うんです。

 といいますのは、私の小さいころはカエルをやったんですね。今はカエルをやらないんです。なぜやらないか。足が四つというのか、手足が人間と同じようにあるからかわいそうだ、こういうふうになるんですね。ですから魚の絵になってきたんです、調べると。ちょっとそれも違うなという思いがして、やはり、カエルならカエルでもいいんですけれども、きちんとそういうことも目で見て確認できる、そういう体験が必要ではないか、そんな思いがしておるわけです。

 そういう中で、これと反対の意味合いがあるんですが、実は、豊田市に西広瀬小学校という四十九人しかいない小さな学校があります。ここの前に矢作川という一級河川が流れておる。その川の水をとってきて、毎日透明度をはかっておるんです。当然のことながら、季節が来れば植生物や何かも観察したり、とったりする。

 それが、実に何日続いておると思いますか。多分、今言うと皆さんびっくりすると思いますけれども、大臣もびっくりすると思うんです。きのう電話したんですけれども、きょうで一万三千七百五十二日、すなわち三十八年も続いておるんです。それは、正月だろうがお盆だろうが関係なしに、日曜日だろうが関係なしに、毎日続いておる。

 これはすごいことだと思うんです。休むことなく継続しておる。まさに継続は力ということがわかると思いますし、川というものから、子供たちは非常に大きなものを体感しておると僕は思うんです。それが財産になっていくのではないか。こういうことを聞いたら、大臣、すぐ大臣表彰ぐらいの感じだと僕は思うんですね。まあ、これは機会があればの話ですけれども。本当に僕は敬服しておるんです。親の代からやっておることになるんです。

 そういう学校もあるという、要は、体験する、観察するということをしっかりやっておる学校もあるということを記憶にとどめておいていただきたい。

 それで、観察、実験の比重を多くすべきだ、こういうふうに思っておるんです。そうしたときに、指導が五十五時間もふえたんだから、どのぐらいのウエートでやりなさいよ、こういうような指導があるのかどうか、その辺のことを聞いておきます。

 最後の三つ目になるんですけれども、理科室の充実と、実験、観察等の教材予算、こういうことをお聞きしておきたい、こういうふうに思います。

 というのは、理科室の設置基準は、文部科学省の基準では、学級数に応じて特別教室の総数と総面積は示されておる、理科室の設置については明記されておりません。すなわち、特別教室の枠内で教育委員会の判断で決めなさい、こういうことなんです。ですから、観察、実験を重視するならば、理科室の設置基準、こういうものを特別教室の枠から外してきちんと位置づけるべきだ、こういうふうに私は思っておるんです。

 少なくとも、中学校の場合、一学年五学級ぐらいあるところは、一週間は五日でございますので、学年で一室、計三室ぐらい要ると思うんです。ところが、これもまた調べると、そのぐらいの規模の学校でも一個しかないところもある、二個しかないところもある、三個持っておるところもある。すばらしいんです、三個持っておれば、順繰りに学年ごとで実験をやれますので。

 そういう、ばらばらなんです。それは、特別教室という枠の中でおさめなさい、こういうことですので、ばらばらになってしまう。そういうことから思ったときに、やはりその基準を明確にすべきではないか、こういうふうに思っています。

 それともう一つ、先生の問題があるんですけれども、先生の中で、小学校では、理科の実験だとか観察に、四三%の先生、中学校では七六%の先生が、自腹で教材を買って熱心にやっておるんですよ。自腹がいいか悪いかは別にして、私は、熱意だけに任せておく問題ではない、こういうふうに思っておりまして、その辺の教材費としてしっかり予算を二十六年度につけていくべきだというふうに思っております。

 その点について、以上三点、よろしくお願いしたい、こういうふうに思います。

前川政府参考人 まず、理科専科教員の配置の問題でございますけれども、特に小学校における理科の専科指導というのは非常に重要であるというふうに認識しております。

 このため、これまでの定数改善におきましても、理科の専科教員の配置に努めてきたところでございまして、特に平成二十三年の義務標準法の改正におきまして、専科教員の配置のための加配措置の根拠規定を設けたところでございます。その後の定数改善によりまして、平成二十六年度の予算案におきましては約九百人の予算定数を計上してございます。

 ただこれは、加配ということで、手を挙げたところにつけるということになりますので、先生おっしゃったとおりに、ばらつきが出てくるという問題はございます。

 専科指導を行う教員の配置につきましては、加配措置により配置されているもののほか、小学校でありますと、理科が得意な先生と余り得意でない先生がいらっしゃる。そういう場合に、得意ではないという先生の担任の学級の理科の授業は得意な方の先生がやるというような、授業を交換するというようなことも一つの工夫であると考えております。また、小中の連携をするという中で、兼務発令された中学校の教員が小学校で授業を行うというような工夫も行われているところでございまして、私どもといたしましては、教職員の体制の整備を今後とも図りながら、理科の専科指導が充実していくように、また定数の確保などに努めてまいりたいと考えております。

 教員の指導力につきましては、教員の理科の観察、実験の指導力向上を目的といたしまして、各学校の研修等で中核的な役割を担う教員の資質を向上するための研修、こういったことに力を入れております。また、理科の観察、実験を支援する補助員の配置も必要ということで、そのための取り組み、さらに、理科の観察、実験授業の質の向上を図るための機器、器具等の設備整備の支援、こういったことに努めてきているところでございます。

 観察、実験の充実ということはおっしゃるとおりでございます。

 平成二十年及び二十一年に小中高の学習指導要領の改訂をしておりますけれども、その中で、授業時数をふやすとともに、国際的な通用性あるいは小中高の学習の円滑な接続といった観点から必要な指導内容の充実を図ったわけでございますけれども、その際に、観察、実験を重視する、さらに、レポートを作成したり論述を行う、自然体験など、必要な時間を十分確保するために授業時数もふやしたということでございますので、このふやした授業時数をぜひ観察、実験等に使ってもらいたいというふうに考えているところでございます。

 フナの解剖のお話がございましたけれども、やはり、小学校の先生の中には、生きたフナをさわったこともないというような先生もいらっしゃるわけでございまして、そういったことを改善するためにも、理科専科教員というものを配置していくということが必要ではないかというふうに考えております。

 理科の特別教室のお話でございましたけれども、確かに、特別教室ということでくくってしまっておりますものですから、理科だけということでどれだけという基準がないということでございますけれども、この点につきましては今後の検討課題ではないかというふうに考えております。

 教材を自腹で購入している教員がいるというお話でございますが、なかなか、教材費と申しますのが、国費が入っておりませんでして、基本的には交付税措置のもとで設置者である市町村が一般財源で賄っているという状況がございますものですから、その財政力、あるいは当該市町村教育委員会の姿勢によって、教材費が多くついているところもあれば、余りついていないところもある、こういった状況があるのは事実でございます。そういったことで、どうしても教員が自腹でやらなければならないという事例も生じていると思いますが、今後とも、総務省とも連携いたしまして、教材費の充実に努めてまいりたいと考えます。

八木分科員 最後のまとめにしたいと思います。

 自民党では、グローバル人材育成ということで、英語教育、理数教育、ICT教育、こういうことは重要だということで進めておりますけれども、それだけで本当にグローバルになるかといったら、やはり問題があるのではないかな、こういうふうに思っておるんです。

 その根底にあるのは、日本語を大切にして、日本の歴史、文化などの教養が必要、こういうふうに思っておるんですが、あるとき、豊田へ帰ったときに、過疎の二十一人の学校へ行ったんです。明和小学校というところが山の奥にあるんですけれども、ここの学校の廊下に、「今月の暗唱お題」、こういうのが張ってあるんですよ。

萩生田主査 時間を過ぎていますので、簡潔にお願いします。

八木分科員 はい、簡潔にやります。済みません。

 その中で、低学年、奥の細道、要は一、二年生、奥の細道。中学年、三、四年生が百人一首から。高学年は曽根崎心中です。これを、一年、二年が、これだけ一カ月の間に暗唱するんです。三、四年生はこの十首を暗唱するんです。五、六年生は、曽根崎心中なんて、小学生で心中物を暗唱するんです。これは日本語として美しいからなんです。

 こういうことがやはり根底には大事じゃないのか、こういう思いがしておるんです。そういう子が、将来大きな財産になると僕は思う。そういう子が芽生えて理科をやったり何かすることによって、やはりグローバル人材になっていくのではないのか、こんな思いがしております。

 そういうことからして、グローバル人材の根底にそういうものがあるんだということについて、大臣、もしも所見があれば最後にお聞きして、終わりたいと思います。

萩生田主査 もう時間が過ぎていますので……。

下村国務大臣 真のグローバル人材になるためには、真の日本人が求められると思います。真の日本人になるためには、しっかりとした国語力を学ばなければならないと思いますし、また、そのようにしてまいりたいと思います。

八木分科員 どうもありがとうございました。

萩生田主査 これにて八木哲也君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして本分科会の審査は全て終了いたしました。

 この際、一言御挨拶を申し上げます。

 分科員各位の御協力を賜りまして、本分科会の議事を終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午後八時六分散会


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