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第1号 平成16年3月1日(月曜日)

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本分科会は平成十六年二月二十五日(水曜日)委員会において、設置することに決した。

二月二十七日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      大野 功統君    鈴木 俊一君

      津島 雄二君    鮫島 宗明君

      首藤 信彦君    谷口 隆義君

      照屋 寛徳君

二月二十七日

 谷口隆義君が委員長の指名で、主査に選任された。

平成十六年三月一日(月曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 谷口 隆義君

      大野 功統君    大前 繁雄君

      加藤 勝信君    鈴木 俊一君

      津島 雄二君    宮下 一郎君

      内山  晃君    鮫島 宗明君

      島田  久君    下条 みつ君

      首藤 信彦君    都築  譲君

      中川  治君    村井 宗明君

      吉田  泉君    照屋 寛徳君

   兼務 井上 信治君 兼務 滝   実君

   兼務 谷  公一君 兼務 辻   惠君

   兼務 上田  勇君 兼務 高木美智代君

    …………………………………

   厚生労働大臣       坂口  力君

   厚生労働副大臣      谷畑  孝君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  岩尾總一郎君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  田中 慶司君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長) 太田 俊明君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)  伍藤 忠春君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)  小島比登志君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)  塩田 幸雄君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  中村 秀一君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  辻  哲夫君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  吉武 民樹君

   政府参考人

   (社会保険庁運営部長)  薄井 康紀君

   政府参考人

   (環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長)   南川 秀樹君

   厚生労働委員会専門員   宮武 太郎君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君



    ―――――――――――――

分科員の異動

三月一日

 辞任         補欠選任

  津島 雄二君     加藤 勝信君

  鮫島 宗明君     島田  久君

  首藤 信彦君     都築  譲君

  照屋 寛徳君     東門美津子君

同日

 辞任         補欠選任

  加藤 勝信君     大前 繁雄君

  島田  久君     吉田  泉君

  都築  譲君     村井 宗明君

  東門美津子君     照屋 寛徳君

同日

 辞任         補欠選任

  大前 繁雄君     宮下 一郎君

  村井 宗明君     内山  晃君

  吉田  泉君     下条 みつ君

同日

 辞任         補欠選任

  宮下 一郎君     津島 雄二君

  内山  晃君     中川  治君

  下条 みつ君     鮫島 宗明君

同日

 辞任         補欠選任

  中川  治君     首藤 信彦君

同日

 第二分科員滝実君、第三分科員上田勇君、高木美智代君、第六分科員井上信治君、谷公一君及び第七分科員辻惠君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十六年度一般会計予算

 平成十六年度特別会計予算

 平成十六年度政府関係機関予算

 (厚生労働省所管)


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     ――――◇―――――

谷口主査 これより予算委員会第五分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりました。よろしくお願いを申し上げます。

 本分科会は、厚生労働省所管について審査を行うことになっております。

 平成十六年度一般会計予算、平成十六年度特別会計予算及び平成十六年度政府関係機関予算中厚生労働省所管について、政府から説明を聴取いたします。坂口厚生労働大臣。

坂口国務大臣 おはようございます。早朝から恐れ入ります。

 平成十六年度厚生労働省所管一般会計及び特別会計予算の概要につきまして御説明を申し上げます。

 平成十六年度厚生労働省所管一般会計予算の総額は二十兆千九百十億円でありまして、平成十五年度当初予算額と比較をいたしますと八千百二十三億円、四・二%の増加となっております。これは国の一般歳出の四二%を占めております。

 以下、その主要施策につきまして御説明を申し上げます。

 第一に、急速な少子化の進行等を踏まえ、次世代育成支援に重点的に取り組むこととしております。このため、子育て家庭支援対策の充実を図るとともに、待機児童ゼロ作戦の推進、児童虐待防止対策の充実、不妊治療の経済的支援、新たな小児慢性特定疾患対策の確立などの施策を推進してまいります。

 第二に、少子化等社会経済情勢の変化に柔軟に対応できる長期的に安定した年金制度の構築を図るとともに、雇用と年金の接続を強化し、六十五歳までの雇用の確保や中高年齢者の再就職等を促進します。

 課題となっておりました基礎年金の国庫負担割合の引き上げについては、平成十六年度より着手することとし、現行の三分の一の負担に年金課税の見直しによる初年度の増収分を加えた額を計上しております。

 なお、国民年金等につきましては、今年度と同様に、特例として平成十五年の消費者物価の下落分でありますマイナス〇・三%のみによる年金額の改定を行うこととしております。

 また、介護保険制度の安定的な運営を確保し、介護サービスの質の向上や適正化の推進等を図ります。

 第三に、依然として厳しい雇用失業情勢及び構造改革が加速される中での雇用への影響に対応し、早期再就職を強力に促進するとともに、地域の自主性を生かした雇用創出の促進、産業・職業別の労働移動支援等、失業者の特性に応じたきめ細かな雇用対策を推進してまいります。

 第四に、今後の時代を担う若年者の対策として若者自立・挑戦プランを推進するとともに、労働者個人が主体的なキャリア形成を図ることができるような条件整備や再就職促進のための効果的な能力開発システムの構築を図ってまいります。

 第五に、多様で柔軟な働き方を可能とする環境を整備するとともに、賃金不払い残業の解消などだれもが安心して働ける環境づくりを推進してまいります。

 第六に、平成十六年度から始まる医師の臨床研修必修化の円滑な実施を図るとともに、医療安全対策、救急医療の充実など、質の高い効率的な医療提供体制の構築を図ってまいります。

 さらに、第三次対がん十カ年総合戦略などの健康づくり施策を推進するともに、SARS等の感染症対策の充実を図ってまいります。

 なお、診療報酬改定につきましては、薬価等を引き下げる一方、現状の厳しい経済社会情勢を反映する中で、医療の安全、質の確保を図る観点から、必要な改定を行うこととしております。

 第七に、新障害者プランに基づき、地域における自立支援等を推進するとともに、支援費制度の着実な実施、精神障害者の保健福祉施策や障害者雇用及び職業能力開発も推進してまいります。

 また、ホームレスの自立支援等基本方針を踏まえた施策を推進するとともに、良質な福祉サービスを提供するための体制整備を進めてまいります。

 なお、生活保護につきましては、国民の消費動向や社会経済情勢などを総合的に勘案した生活扶助基準等の改定を行います。

 第八に、市販後安全対策の充実強化、審査体制等の整備、血液の安定供給の確保など、医薬品、医療機器の安全対策等の充実を図ってまいります。

 また、国民の健康保護の観点から、新食品衛生法等に基づきまして、残留農薬基準の策定や食品添加物の安全性確認、輸入食品等の安全対策の強化など食品安全対策を推進してまいります。

 第九に、最先端科学の活用によります疾病の予防と診断、治療法を開発するとともに、医薬品、医療機器産業の国際競争力を確保するなど、科学技術の振興を進めてまいります。

 以上のほか、世界保健機関や国際労働機関等を通じた国際活動を展開するほか、戦傷病者、戦没者遺族や中国残留邦人などの援護対策、原爆被爆者対策、生活衛生関係営業の振興策など、諸施策を推進してまいります。

 なお、委員各位のお手元に資料が配付されておりますが、一般会計及び特別会計予算の主要経費別概要につきましては、お許しを得て、説明を省略させていただきます。

 今後とも、国民生活の保障、向上と雇用の安定を図るため、厚生労働行政の推進に一層努力してまいりますので、皆様のなお一層の御理解と御協力をお願い申し上げる次第でございます。

 ありがとうございました。

谷口主査 この際、お諮りいたします。

 厚生労働省所管予算の主要経費別概要につきましては、その説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

谷口主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

谷口主査 以上をもちまして説明は終わりました。

    ―――――――――――――

谷口主査 この際、分科員各位に申し上げます。

 質疑時間はこれを厳守され、議事の進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。

 なお、政府当局に申し上げます。

 質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。加藤勝信君。

加藤(勝)分科員 おはようございます。

 この分科会、はえあるトップバッターを務めさせていただきます自由民主党の加藤勝信でございます。

 大臣におかれましては、お忙しい中、おつき合いいただきましてありがとうございます。きょうは気候は幾分寒いようでありますけれども、ひとつ熱気のある議論を展開させていただければと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 まず、冒頭でありますけれども、今お話がありました少子化対策の関係で、若干大臣の御見解をお教えいただきたいと思うのであります。

 特殊出生率の議論はもう既にいろいろ議論されているわけでありますが、私も地元で福祉関係の学校で少し講師なんかをさせていただく中で、今少子化ということになれば、子供をどれだけ産むかという話になります。

 子供を産んでいただくのは女性ということになるわけでありますけれども、ちなみに二十歳から四十歳の女性が対象であると仮に仮定をしたときに、その人口というものが一九七〇年、八〇年、九〇年、そして二〇〇〇年にかけては、大体千八百から千九百万人でずっと推移している中で出生率が落ちてきた。しかし、これから見ますと、厚生労働省の推計等によりますと、二〇二〇年には千四百万になっていく。それでどんどん女性が総人口の減少以上に減っていくということになりますと、私はこの五年あるいは十年という期間が少子化対策にとって大変重要な期間ではないか、時間ではないかという強い危機感を抱いております。

 子供がふえるということは社会、経済が活性化することはもとよりでありますけれども、この国会でも議論があります国民年金等の保険料についても、粗い計算でありますけれども、特殊出生率が〇・一上がると将来の保険料率が大体一・〇ぐらい引き下げることができるというような試算もあるわけであります。

 御承知のように、少子化の原因としては、一つは、子供を持つと非常に経済的な負担が大変であるということがあります。それからもう一つは、特に女性を中心に、特に仕事を持っている方、結果的に、どうしても子供を育てるために一時引退しなければいけない。そして、戻ろうとしてもなかなか本来の正規の社員になれずに、どうしてもパートになっていってしまう。結果的に、例えばですけれども、同じ年齢で、同じような学校を出て、片や子供がいる人といない人とを比べると、日本の場合、生涯の賃金に相当差があるという、大きく二つの問題が指摘をされておるわけでありますし、特に後者の問題は雇用環境、いろいろこれまでも展開をしていただいております。これはちょっと時間がかかるんじゃないかなという私は気がするだけに、前者の経済的な支援というものをしっかり展開をしていただいて、子育ての費用負担というものを、しっかりと軽減を図っていかなければいけないというふうに思うわけであります。

 特に、この少子化対策というのは、ある意味でデリケートな問題でありまして、御承知のように、子供を産むとか産まないとか、これは個人の権利とか考え方にゆだねられるべきものでありますけれども、言われておりますように、理想としている子供の数と予定をしている子供の数が違う等々という実態もあるわけでありますし、やはり社会にとって、この少子化というのは非常に重要な問題であるわけであります。

 また同時に、私どもが今いるということは、私の父親、母親、あるいはそれぞれの先祖がそれぞれ子供を生み育ててきているから今があるという、そういう認識に立てば、もっともっと声高にこの少子化を訴えていってもいいのではないか。あるいは数値目標として、出生率をこの時代にはこのぐらいまで上げるんだという強い意気込みをぜひ御展開をいただきたいな。今、少子化対策基本法等、あるいは先般、次世代育成支援対策推進法、こういったものの整備もなされているわけでありますし、それに基づく大綱をどうするかという議論も展開されているわけでありますから、ぜひ、そういう意味での強いひとつメッセージを大臣の方からお出しいただきたいなというふうに思うわけであります。

 所信表明では、この国会では年金改革が一番ということで、まず、持続可能で安定的な社会保障制度の構築というのが第一項目になっておりますけれども、第二項目では少子化への対応、それから、先ほどお話しいただきました予算については、むしろ少子化が前面に出てきている、それなりの意気込みを感じるわけでありますけれども、多分、そこの少子化の現状に対する強い危機感を持っておられると思いますが、そうした認識とこれからの意気込みをまずお示しいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

坂口国務大臣 今加藤先生から少子化対策に対しますお話をちょうだいをしたわけでございますが、やはり話の大きさと申しますか、重要性から申しますと、やはりこの少子化対策が、厚生労働省関係の施策だけではなくて、国全体の施策の中の最重要課題の一つというふうに私は思っております。このところがどう展開するかによりまして、経済におきましても、あるいはまた社会全般につきましても、大変大きな影響を与えるわけでございますから、ぜひともここはひとつしっかり取り組んでいかなければならないわけでございます。

 御指摘いただきましたとおり、まことにデリケートなところがございまして、これは押しつけるというような形になってはいけないわけでございまして、それぞれの人あるいはまたそれぞれの御夫婦が自発的に子育てというものに対し、あるいは生み育てるということに対して、お取り組みをいただかなければならないものというふうに思っております。しかし、生み育てたいけれども、なかなか生み育てられる環境にないというふうに御指摘いただくということになりますと、それはやはり政治に課せられた課題ということになってまいりますので、非常に責任は重いというふうに私も自覚をいたしているところでございます。

 昨年は、次世代育成支援対策推進法というのを成立をさせていただきまして、そして地方公共団体や企業におきましても、実効性のある行動計画と申しますか、それぞれの立場から対策をお立てをいただくことを決めまして、ここにスタートしたわけでございます。

 それぞれのところでしっかりとしたお考えをもとにして、そして将来への行動計画をおつくりをいただく。それをだんだんと結集していきまして、国は何をなすべきか、あるいは都道府県は何をなすべきかといったようなことにつきましてももう一度整理をしなければならないというふうに思っているところでございます。

 いずれにいたしましても、働く女性がこれからふえてまいりますし、またふえていただかなければ、もうこの少子化の影響が出てまいりまして、労働力人口が十年先には三百九十万人ぐらい減ってくるわけでございますから、どういたしましてもこの皆さん方にやはり働いていただかなければならない、女性の皆さん方にも働いていただかなければならないわけでありますから、子育てと仕事が両立できる社会の構築というのは、これは最も重視をしていかなければならない課題であると考えているところでございます。地域におきます子育ての問題と、そして職場におきます仕事との両立の問題、これはあわせて進めていかなければならない重要課題であると考えております。

 児童手当の支給対象の年齢を小学校三年生まで引き上げるという法案も出させていただいておりますし、あるいはまた児童虐待防止対策の充実でありますとか、それから不妊治療に対しましても、初めてでございます、経済的支援をするといったようなことも今回のこの国会に提出をさせていただきます法律の中に入れさせていただいたところでございます。

 御指示いただきましたことにつきまして、我々も鋭意努力を重ねたいと思っているところでございます。

加藤(勝)分科員 ありがとうございます。

 そして、今お話があった児童手当の関係でありますけれども、私のところも実は子供が四人いるものですから、直接この関係に触れたことがあるんですが、制度の案内を見せていただいて、それなりに広報はされていると思うのでありますけれども、実際、所得制限を除いた、対象の方のうち全員が本当に支給を受けているんだろうか、あるいは出産直後に、順調に育っていれば余裕があるんでしょうけれども、いろいろ子供さんに病気等があったり、家族に何かあったりすると、ふと忘れることがままあるのではないかな。そうすると、今の制度を見ておりますと、認定請求書を出さないともらえない、しかも認定請求書を出した翌日から対象になるということで、例えば半年とか一年、ああ、出すのを忘れたなと思ったら、前の、済みませんといってもだめだというのが今の状況のように聞いております。

 それから、この手続の中を見ましても、同じく市町村の方で対応していただけているのであるならば、こういう資料が本当に要るのかなという気もするわけであります。

 せっかく今回拡充をするわけでありますから、もっと使いやすい、認定請求書をできれば出さなくても大体皆さん対象になってもらえるような、あるいは出すにしても非常に簡便な、あるいは場合によっては、出し忘れていても、そこに相当な事由があればさかのぼって支給していただけるような、何かそういう工夫をしていただきたいと思いますけれども、いかがでございましょうか。

伍藤政府参考人 児童手当の支給についての事務的な取り扱いでございますが、児童手当は、これはサラリーマンと自営業者によりまして所得制限の額が違いますとか、それから費用負担の構成も異なっておりますので、個別にその時点で認定をして支給をするということになっております。これは社会保障制度の一つの手当として、ほかの児童扶養手当とか特別児童扶養手当とか、すべて各種手当類に共通する仕組みでございまして、ここは、この手当だけをどうこうするというのはなかなか困難かなというような気がいたしております。

 ただ、出生届の際にその制度を周知するリーフレットを配ったりとか、今委員から御指摘ありましたようないろいろな広報でありますとか、あるいは各種健診のときに認定請求書とか広報を行うとか、いろいろな手だてで市町村は今工夫をしておるところでございますので、支給漏れのないように、これからも一層工夫をしていきたいというふうに考えております。

加藤(勝)分科員 いずれにいたしましても、子供を抱える、特に母親、あるいは親の立場に立って、ひとつ運営をお願いしたいと思います。

 それからもう一つ。小さい子供を持つと、すぐ病気になるわけであります。乳幼児医療費の無料化ということで各市町村それぞれ取り組んでおられるわけでありますけれども、私の地元の岡山で調べても、かなりばらつきがあるわけであります。そしてまた、その費用負担というものもなかなか市町村にとっては重たいものになってきている。そういうことから、市町村の関係者からはぜひこの乳幼児医療の関係も、確かに制度として先般から三歳未満の自己負担が、一般は三割に対して二割になっているという意味で御配慮はあろうかと思いますけれども、ひとつもう一段踏み込んだ対応をとってくれないかと。

 少子化社会対策基本法第十六条にも、子供の医療に係る措置を講ずる、これは「国及び地方公共団体は、」となっておりますけれども、書かれているところであります。いろいろ財政事情あろうかと思いますし、きょうの問題というわけにはいかないかもしれませんけれども、この乳幼児医療の問題、ひとつ国としてももう少し積極的に取り組んでいただきたいと思いますけれども、御見解のほど、お願いいたします。

伍藤政府参考人 乳幼児医療制度につきましては、ただいま全国すべての市町村で、何らかの形で医療費の軽減制度あるいは無料化制度を実施しておるというところでございます。御指摘ありましたように、各県によって若干この制度が異なりまして、三歳児までやるところ、あるいは六歳児まで実施をするところ、それから小学校や中学校まで実施をするところというふうに、各県によって状況は区々ではございますが、すべての市町村で何らかの制度が実施をされておるということは御指摘のとおりでございます。

 これを国の制度で取り上げるべきではないかということ、以前からいろいろ議論があるところでございますが、こういった医療をどういうふうに保障していくかということにつきましては、その政策的な面と、それから医療費の負担をどう公平に分かち合うかということで、受診者にも一定の御負担をいただくというようなことを基本に進めてきておるわけであります。

 国としては、こういった中で、特に手厚い援護が必要な未熟児とか障害児、こういったところについては既に公費負担を実施しておるところでございますし、それから、先ほど医療保険の中でも御指摘のありましたように、通常三割のところを二割負担に引き下げて実施をしておる、こういったことで対策を打っておるわけでございまして、これを全面的に実施するということはなかなか巨額の費用負担も必要になるというようなこともございますし、政策的な観点からどういうふうにこれを考えていくべきかということは、少し長期的に検討すべきことじゃないかなというふうに考えております。

加藤(勝)分科員 また、子供を抱え仕事をするということだと保育所の問題があるわけでありますけれども、今回の三位一体改革の一環の中で、国庫補助の見直しで、公立保育所の運営費の一般財源化、これが予定をされているわけであります。一方で、厚生労働省あるいは政府が主導で、各市町村で公設民営化による保育所、これを中心に、待機児童ゼロを図れということでいろいろと指導をされている。

 そうした中で、今回の公立保育所の運営費の一般財源化の中で、公設民営の保育所がどういう取り扱いになるか。私の地元の市町村でもいろいろと議論があるようでございますけれども、その裁定としては、公設の方へ入るんだ、公設の部分をもってして公立保育所と同様の扱いだというふうにお聞きをしているわけでありますけれども、先ほど申し上げたように、公設民営のこの民営のところを中心に推進していこうという意味合いの中で、これからさらにいろいろこの問題、議論がある部分もあろうかとは思いますけれども、ひとつ現行の制度を前提とした中で、公設民営の保育所に対するいわば国の責任といいましょうか、そういうことを含めて、その取り扱いについてさらに御検討をぜひお願いしたいと思っておりますが、いかがでございましょうか。

伍藤政府参考人 一般財源化に伴います財政負担の問題でございますが、御指摘のありました公設民営という保育所の形態でございますが、これは、運営だけを業務委託で民間に委託するということでありまして、条例でその保育所の運営を規定する、それから何かあった場合の責任とか財政負担、これを最終的に責任を負うというのは自治体が責任を負う、こういった点においては公立公営の場合と変わらないわけでございまして、そういった観点から、今回、公立民営の場合も一般財源化の対象にする、そのかわりに、財源措置はきちっと移譲して財源措置を行う、こういう仕切りにしたわけでございます。

 それから、関連して、公立の保育所を建物として貸与する形態がございます。これは、普通財産として貸与して、運営はすべて、委託を受けるといいますか、借りる側の民間の社会福祉法人なり運営主体が責任を持ってすべて運営をする、これは民営というふうに位置づけておりますので、同じ公立でつくった保育所を運営する場合も、条例に位置づけて最終的に自治体が責任を持ってやるのか、あるいは、単に建物を物として貸して、あとは民間がそこで運営するか、こういうところで区分けをして、財政負担の区分も明確にしたところでございます。

加藤(勝)分科員 今、介護保険の見直し、施行後五年ということで、二〇〇〇年の四月施行でありますから、ことしがその時期に当たると思いますけれども、この見直しに当たって、不正な請求がいろいろ新聞にも出ております、いろいろ摘発もされております。これは当然やっていただかなければいけないと思います。あるいは、今議論がありますように、要支援あるいは要介護度一の方がかえって介護度が重くなってしまっている、制度として、自立化を図っていない部分があるんじゃないかと。この見直し、こういうことも徹底的にやっていただいて、費用がどんどん増大していく中で、ある意味ではむだなというか不正というか、そういった部分についてはしっかりカットして、効率化を図っていただきたいというふうに思うわけであります。

 それと並行いたしまして、施設介護サービスにおいて今三つの形態があるわけであります。いわゆる特養と言われる特別養護老人ホーム、老健と言われる老人保健施設、そして病院における介護療養型医療施設、それぞれ区分されて一応制度としては分かれているということになっているわけでありますけれども、利用する側から見ると、どれも何か同じような感じがするということでありますし、この辺の指摘は、高齢者介護研究会の報告でも、それぞれの果たすべき機能と実態が合っていないとの指摘がある、こんなことも盛り込まれているわけであります。

 そして、さらに、私も地元の福祉関係の方に聞きますと、特に、老健施設について医師の常勤が求められているということであります。何か病院併設の場合は非常勤でもいいということでありますけれども、他方、入所者の医療費は、丸めという言い方が適切かどうかわかりませんが、介護保険として支払われる中に入ってきている。ですから、通常の診療であればその中でやってもらうということになると、基本的には施設持ち。そのため施設では、医者は一方では抱えなくてはいけない、一方で懐を考えると、医療費は抑制したい、そういう状況の中で種々いろんな問題も起きているというような指摘がなされているわけであります。先ほど申し上げましたように、入所者の状況が、特養に入っている、特養の場合は医師は非常勤ということでありますから、余り変わらないのにという不満といいますか、ぜひその辺を考えてほしいという議論が出てきているわけであります。

 当然、制度がありますから、それにのっとって運営をしていくべきであることは当然だというふうには思うわけでありますけれども、今回の見直しに当たりまして、そうした三施設の実情、あるいは使っている方の実態、あるいは運営の実情、こういったものをしっかりと御認識いただいて、制度設計というものをもう一回再設計をしていただきたいというふうに思いますけれども、お考え、いかがでありましょうか。

中村政府参考人 介護保険の見直しの問題で、二点御指摘をいただいたと思います。

 最初の、むだや不正の排除、これは当然のことでございまして、私どもも、きちんとした良質なサービスが住民の方に届くよう目を光らせてまいりたいと思います。

 そういったことから、いろんな意味での適正化、これは医療保険の方でもやっておりますが、介護保険がそういった医療保険などに比べて緩いことがないように頑張りたいと思いますし、また、保険者である市町村の方が使いやすいシステムを開発いたしまして、実は今月から稼働させているわけですが、各都道府県の国民健康保険団体連合会、国保連の方で介護給付適正化システムというのをつくりまして、動かし出しております。

 これを使っていただきますと、都道府県や、それから保険者である市町村の方で、いろいろな意味で、サービスの使われ方がデータとして出されるということで、事業者さんに対します御指導や、あるいは御注意申し上げるということにかなり有効ではないかと思っておりますので、そういった工夫も介護保険の方でして、国民の方の期待を裏切らないようにやってまいりたいと思っております。

 二点目の、介護保険の方の三施設の問題でございます。

 これはもうかねてから、三つの施設、介護保険をつくるときに医療保険の方から引っ越してこられた施設もありますし、老人保健法でやってきた施設、それから特別養護老人ホームのように老人福祉法でやってきた施設を、とりあえずは介護保険という屋根の下に入っていただくということで、平成十二年四月から動かしておりますが、その三つの施設の機能の分担がどうなのか、そういったことをもう一回整理し直す必要があるのではないかという御議論も根強くありますので、今、見直しの議論の中で、よく検討をしていただきたいと思います。

 ただ、基本的な考え方としては、特別養護老人ホームは生活の支援をさせていただく施設、老人保健施設はやはり在宅に復帰させるためのいわばリハビリテーション中心施設、それから介護療養型医療施設は重介護でまた医療のニーズも相当に高い方ということで、現に、入っておられる方の要介護度を見ましても三施設それぞれ異なりますし、介護療養型医療施設が一番高く、特別養護老人ホームはその次で、老人保健施設はやや中度の方が多いなど、こういう実態もございます。

 もう少し丁寧に見ますと、例えば五年以上入所されている方は、特別養護老人ホームは三割くらいおられますけれども、老健施設ではほとんどいないとか、いろいろ特色がございますので、やはりその辺をよく見きわめ、医療との関係などについても十分考えながら、見直しの検討を進めさせていただきたいと思います。

加藤(勝)分科員 ありがとうございます。

 最後に一つ、障害者支援制度でございますけれども、これまでもそれぞれの委員会等で議論されております。障害者の方、あるいは関係者の方から、その予算の確保等々でいろいろ心配、御懸念があるわけであります。所信表明で、支援費制度については、より安定的かつ効率的な制度になるようさらに検討を進めると、大臣の御決意が示されているわけでありますけれども、御心配されているそうした障害者の方々、関係者の方々に安心していただけるよう、再度大臣の決意を御披瀝いただきたいと思います。

坂口国務大臣 昨年支援費制度を始めさせていただきまして、全国津々浦々、障害者の皆さん方が御利用をいただけるようになった、これは非常によかったというふうに思っております。

 今まで熱心にお取り組みをいただいておりますところとそうでないところとの格差が非常に大きかった。ここが、格差がなくなってくると申しますか、今までおやりいただいていなかったところもおやりいただけるようになってきたということは大変うれしいことでございますが、それに合わせて財源もまた必要になってきたということでございます。

 今後、この財源を恒久的にどう確保していくかということを考えていかなければならないというふうに思っておりまして、ことしも、他の予算に比較をいたしますと、ホームヘルプサービスなどのところにつきましては格段の予算がついたわけでございますが、しかし、全体といたしますと、これはまだまだ不十分な点もございますしいたしますが、一般財源だけでこれをやっていけるかどうかといったことも検討をしなきゃならない時期に来ているのではないかというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、我々、社会の中で、障害者の皆さん方とともどもに生きていかなければならない、手を引いてはいけないところでございますので、熱心にここは取り組んでいかなければならないと思っているところでございます。

加藤(勝)分科員 どうもありがとうございました。大臣の積極的な政策運営を期待しております。

 終わります。

谷口主査 これにて加藤勝信君の質疑は終了いたしました。

 次に、島田久君。

島田分科員 私は、きょう国会議員として初めて質問に立たせていただきます。国事行為の大事さというものを認識しながら国民一人一人の願いを実現するために努力をしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず最初に、坂口厚生労働大臣にお伺いをさせていただきます。

 幼保一元化の厚生省所管事項についての基本的なことについて、まずお伺いをさせていただきたいと思います。

 骨太方針の二〇〇三によれば、就学前の教育、保育を一体としてとらえ、一貫した総合施設を二〇〇六年度までに検討するということでありますが、その検討状況とコンセプト、あるいはスケジュール等について、まずお伺いをさせていただきます。

坂口国務大臣 島田先生から今御指摘をいただきました、幼保一元化と申しますか、別な言葉で総合施設と呼んでおりますが、これはもう前々からいろいろ市町村からは御指摘のあったところでございます。特に、市町村におきましては、保育所と幼稚園とが別々に存在することに対する違和感、あるいはまた、一方でお子さんが減り、一方でふえている、そのときにその建物等もなかなか共有して使えないといったような御指摘、さまざまな角度から御指摘のあったところでございます。御承知のとおり、厚生労働省と文部科学省と分かれて持っているものですから、縦割り行政の代表のように御指摘をされてきたといったようなことでございます。

 それで、今回、一貫した総合施設をつくっていこうということで大体話がまとまってまいりまして、十七年度からそのモデル地域を全国で何十カ所かやらせていただいて、そして十八年度から正式にスタートをさせるという方針で今進めているところでございます。したがいまして、来年から導入しようと思いますと、それなりの準備もしておかなければいけませんので、今やっているところでございます。

 基本的な考え方としましては、子供の視点に立って、就学前の子供に対して質の高い保育、教育を提供する、これは一つの大きな柱だ、それからもう一つは、子育て家庭の視点に立って、地域の多様な子育てニーズにおこたえをするということだということ。そして、待機児童をゼロにしていく。これらのことを基本的な一つの理念にしながら今後進めていきたいというふうに思っているところでございます。

 ことしじゅうに考え方、そしてまた市町村ともよくお話をさせていただきまして、どういう形でこの総合施設というものを新しくつくって、今までの保育所、幼稚園というものとの関係をどのように整合性をとらせていくかといったことにつきましてのお話し合いを進めて、整理をさせていただきたいと考えているところでございます。

島田分科員 今大臣のお話のように、相当大きなこれからの課題があると思うわけでありますから、幾分基本的なことについてお伺いをしたいと思っております。

 最近、特に社会的なニーズによって、幼稚園がどちらかといったら時間外保育的な要素の強さとか、それから、本来ならば保育に欠ける児童というのが保育所の基本的な考え方でありますから、それらのことを基本的に統合をしながら時代のニーズに合った方向性、総合的な施設をつくっていくということについてのさらなる細かいことについて、基本的なところの考えだけまずお示し願えますでしょうか。

伍藤政府参考人 保育を取り巻く環境でございますが、御指摘のとおり、いろいろ就労の状況等が大きく変わってきておることは事実でございます。

 一つは、パートタイム労働など就業形態が非常に変化をしておるということが一つでございますし、もう一つは、共働き、専業主婦と分けました場合に、子育てに非常に悩んでおるという家庭はどこかというと、むしろ専業主婦家庭の方が多いといった今日的な事情もあるわけでありまして、こういったことを保育とか幼稚園の教育を考える場合にどういうふうにくみ取っていくかということが一つの大きな観点ではないかというふうに思っております。

 そういった観点から、今保育に欠けるという点の御指摘がございましたが、保育行政につきましても、例えば一定の曜日だけ預かる保育でありますとか、一週間のうち一時的に預かる保育、あるいは休日だけお預かりする保育、こういうさまざまな形態の保育に今既に取り組んでおるところでございまして、そういった観点では、保育に欠けるというところも随分柔軟に社会の変化に応じて保育行政を展開してきたというふうには考えておりますが、なお、これから総合施設等を考えるに当たりましても、今申し上げましたような、社会の情勢に柔軟に対応できるような視点というものをきちんと持ちながら検討を進めてまいりたいというふうに考えております。

島田分科員 それで、今お話しのように、これは具体的に詰めていくと、保育園の持っている機能、それから幼稚園が持っている機能を統合していく場合に、例えば、保育所の場合は一日というのが大体流れとしてある、それから、幼稚園の場合は、集団生活に適応する力というのは大体四時間であるというような、そういう設置基準などありますけれども、それらの機能を調整するというところがなかなか難しい問題があると思うんですが、総合施設という中で、どういう形でその辺のところを折り合いをつけていく考えなんでしょうか。

伍藤政府参考人 既に、例えば先行する自治体では、そういう観点から幼稚園と保育園の事実上の統合保育に取り組んでいる事例もございますが、そういったところでは、保育所は保育指針というものに基づいて保育をやっておりますし、幼稚園は幼稚園教育要領というのに基づいてやっておりますが、これも今まで累次の改訂を経まして、かなり近いものに大体なってきておるわけでございます。

 例えば、今御指摘のありましたような年長児の部分につきましては、五歳、六歳児となりますとやはり教育的要素というものもある程度取り入れてやっていかなきゃいかぬ。これは今の保育所の保育指針というものにおいてもそういった観点を取り込んでおりますので、そういった年齢に応じた保育なり教育がきちんとなされるように、いいところはお互いに取り入れていこう、こういうことが基本的なスタンスではないかというふうに考えております。

島田分科員 今お話しのように、それらの調整を考えると、例えば保育園なんかの場合ですと調理室を廃止するということなどを含めて、具体的になると、これからの子供たちの健康というのを考えた場合に、調理室を廃止するということなどはなかなか問題点があるし、それらのことも子供たちに具体的な中で見せながら、あるいはそれらのことをきちっと学べるような施設というものはどうしても保育所としては必要です。幼稚園にしても、例えば集団生活に適応する力が四時間であると言われる。それらのことを調整しながらよりよい保育をしていかなきゃならない。

 そういう基本的な理念の中で、保育の一元化ということについて、まず現在の段階でのお考えをお示し願えませんでしょうか。

伍藤政府参考人 先ほど申し上げましたように、これまでかなり教育内容、保育内容については近いものになっておるという実情を踏まえて、これからお互いにいいものを取り入れてやっていこう、こういう基本的なスタンスでありますが、今御指摘のありました調理室だけがかなり際立って対照的な、幼稚園は今までは短時間の教育ということで調理室がない施設が多いわけでありますが、保育所は長い時間子供さんをお預かりするということで、調理室は一応必置ということになっております。

 この問題について規制改革の観点からいろいろ議論がなされておることも事実でございますが、基本的に私どもは、これからは幼稚園においても預かり保育といったことでかなり時間が長時間化していく傾向に今ございますし、それから、総合施設になりますと、これはもう乳幼児から預かるわけでありますから、こういった長時間保育などのサービス、それから低年齢児につきましては一人一人、アレルギーでありますとか離乳食でありますとか、こういった個別対応ということも必要になってくるわけでありますので、調理室というのはこういった子供の健全保育という観点からは必要ではないかなというふうに考えておりますが、いずれにしても、幼稚園と保育所を統合した総合施設というものを考えていく際には一つのポイントになるところでございますから、よく実態を踏まえて、これから基準をつくる際によく研究していきたいというふうに思っております。

島田分科員 私は幼稚園の先生方と一緒に北京に幼稚園の研修にちょっと行ったんです。日本の幼児教育の方が進んでいるのかななんてちょっと思ったんですけれども、あっ、これはというような思いはちょっとしたことがあるんです。その一つの例は、日本の場合は年齢によって、三年保育、二年保育というような形の保育のやり方をとっていますけれども、あそこのは、一人っ子政策の中で、年齢ごとの混合のクラスをつくって一つのクラス編制をして、新たなる幼児教育のあり方を研究しているところが見えたんですね。

 ですから、そういう点のいろいろなことを考えた場合、幼保一元化ということについて、日本の幼児教育のあり方として、本当にこの時期にきちっとした方向性を定めていかなければおくれちゃうんじゃないかなというような思いをしたところなんです。

 そういうことですから、厚生省、あるいは文科省として、省庁間の縦割りで、片方は学校教育法、片方は児童福祉法という法律の中で現実には進んでいる、それを一体化していくというのはなかなか難しい問題があると思うんですけれども、しかし、今の子育て支援とかそういう基本的なことを考えても、今はそういうこだわりをしているときではなくて、総合施設をつくるという、いいきっかけですから、ぜひその辺のことについて、なかなか難しい問題があるというような気がしますけれども、いかがでしょうか。

坂口国務大臣 これは私も御指摘のとおりだと思うんですね。いつまでも今までの保育所、幼稚園という考え方の尾を引っ張っていてはだめだと思うんです。せっかくここで総合施設という新しい立場からつくるわけでありますから、お子さん方の立場、御家庭の立場というものを中心にしてどうしていくかという。やはり、もう過去を捨てて新しいものをここでつくるんだという気持ちでやっていかないと、今までのものを引きずっておりますと、姿形は変えておりますけれども、またぞろいろいろのものをお互いが引っ張り合うというようなことになってしまう。

 ですから、これは、この施設をどこが中心になってやっていくかということにもかかわってくるわけでございますけれども、できる限り今御指摘を受けましたような方向で、過去のものを引きずらないで、ひとつ本当に新しい立場でつくり上げていくということにしなければいけない、そんなふうに私も思っております。

島田分科員 それともう一点、大臣にお伺いさせていただきたいんですけれども。

 今の財政状況の厳しい中ですと、やはりどうしても基本的な方向性が定まる前に、先ほども言った保育所の例えば調理場を削減するとか、どちらかというと本当に幼児教育で必要なものについて、今までの流れというものは先行して議論が進んでいくような気がしてならないものですから、財源を含めて国の責任は明確にして、将来の日本の社会構造からいっても人口構造からいっても子育て支援ということを何としても、やはりその中心は幼保一元化という、そういう新しい方向性の中できちっと位置づけていただきたい、国の責任を明確にしていただきたい。

 ぜひ坂口大臣の今後の決意をもう一度聞かせていただいて、国の責任をできれば明確にさせていただければ幸いと思います。どうぞよろしくお願いします。

坂口国務大臣 調理をする場所、その他の問題もございますが、例えば東京都の千代田区あたりでは、もう一緒に試みとしてやっていただいているわけですね。ただし、三歳までは保育所扱いとして、そこから上は幼稚園扱いみたいなことにして、そして小学校と同じに、ずっと続けておやりになっている。

 そこで、一番ひっかかってきますのが、保育に欠けるという一言でありまして、そうしますと、欠けない子はそれではどうするかということで、そこは千代田区が負担をしてお持ちになっているといったようなことがございまして、こうしたことをどう整理をしていくかということをやらないといけない。幼稚園の方はそんなことを言わずに、これは全部いけるわけであります。

 そうしますと、保育所の方も、そういう、欠けるとか欠けないとかと言わずに、みんな一緒にできるということにしなければいけない。そうしますと、もちろん、全部するということでありますから、財政的には厳しくなるということは、これはあり得る話でございます。しかし、その辺のところは整理をしながら、前向きに子供たちをどう育てるかということを中心にしてやはり考えていかなければいけないというふうに思っております。

 それと、スタートをするときには今までの幼稚園、今までの保育園というものを一方で残しながらやっていくということになるわけでありますから、それらとの関係も整合性を保っていかなければなりません。全体としてここは前向きに進めていくということでなければいけないと思っております。

島田分科員 今大臣から御答弁ありましたように、子育て支援を含め、幼児教育の基本でありますから、幼保一元化ということを前向きに、国の責任を明確にしながら、ぜひ今御発言のとおり実施ができますように、今後もこれらの問題を事あるごとに追及させていただきながら、よりよい施設をつくるために努力をしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いをしたいと思います。

 続きまして、私の地元の問題なんですけれども、実は、地元のあきる野市に北海道からムツゴロウ動物王国が移動してくるということで、犬や猫に寄生するエキノコックスが運ばれて、寄生虫が蔓延をするというような新聞記事、情報等がありまして、市民の安全と健康の観点から、エキノコックスのような動物由来感染症に私も関心を持って、それらのことについて、動物感染症とは何なのか、あるいは最近の現状と背景などについて、御説明願えればと思います。

田中政府参考人 人と動物に共通した感染性の疾病につきましては、人獣共通感染症あるいはズーノーシスとも呼ばれております。これらの用語ですと、人から動物に感染するというような疾病も含まれることも考えられますので、厚生労働省では人の健康問題という視点を重視しまして、動物由来感染症、こういう用語を使っているところでございます。

 現在、世界では、従来知られていなかった新興感染症が次々と発見されております。その多くが動物由来の感染症でございまして、それらの中には感染力が非常に強かったり、あるいは非常に重症化したりするというようなものがございます。有効な治療法がまだ開発されていませんエボラ出血熱あるいはマールブルグ病、それから昨年起こりましたSARSとか、あるいは今問題になっております高病原性鳥インフルエンザ、こんなようなものもこの中に含まれるわけでございます。

 これらの動物由来感染症が今日問題となってきました背景には、まずは非常に大量の輸送機関というのが発達しましたので、世界規模で膨大な物と人が行ったり来たりするというようなこと、それからさらに、人口が非常に増加しまして、経済活動も非常に高度化してきたというようなことで、自然環境との接触の仕方がずいぶん変わってきたというようなことも影響しているのかもしれません。また、さらには、動物性食品の生産体制の効率化、大型化、こういうようなことも影響しているというふうに考えられております。

 今後、国内におきます調査研究を推進するとともに、国際協力を通じました世界的な取り組みを進めていくことが不可欠ではないかというふうに考えているところでございます。

島田分科員 このエキノコックスそのものは北海道だけで感染しているということを聞いているんですけれども、今まだ日本の、本土というのでしょうか、こちらには感染がされていないということを聞いているんですね。ですから、そういう面では、北海道からこちらに移動する前に、事前のところで予防対策をとればそのことが防げるということを聞いているんですけれども、その辺のことについての、移動する場合に、その事前あるいは移動した後に対する、そういうことが感染しないような体制づくりというものについて、どんな形で行うというお考えですか、お伺いいたしたいと思います。

田中政府参考人 本件につきましては、厚生労働省といたしましては、既に関係の都道府県と連絡をとっておりまして、調整が進んでいるというふうに聞いております。必要に応じまして、十分に衛生対策が図られるように御指導申し上げていきたいというふうに思っております。

島田分科員 大量に移動してくる場合に、移る前と移った後に対する対応の仕方なりを、ガイドライン的なものを何かつくって、当面は北海道だけで防げるわけですから、事前のところでやはりぴしっとした対応というものをすべきだろうと思うんですね。

 そして、その大移動が終わった後の動物王国に対しても、何らかの、終わった後に対する検査体制あるいはチェックなどをするような何かガイドライン的なものをつくるべきだと思うんですが、その辺はどうお考えでしょうか。

田中政府参考人 たまたまといってはあれなんですけれども、昨年秋、感染症法を改正いたしまして、新たに、動物等の取扱業者に対しまして、動物等が感染症を人に感染させることがないように、感染症の予防に関する知識及び技術の習得、それから動物等の適切な管理を講ずるように努めなければいけない、こんなような責務規定を創設したところでございます。

 この規定の徹底を図るために、先生御指摘のガイドライン、今作業中でございます。これを早急に作成いたしまして、動物等取扱業者への普及啓発というのを進めていきたいというふうに考えているところでございます。

島田分科員 特に、実態的なものはもう進んでいますので、今の御答弁のようにできるだけ早く、ぜひガイドラインをつくっていただいて、全体の体制づくりのためによろしくお願いをしたいと思っております。

 最後に、主査、大臣にちょっとこれを示させていただいて、実はここに、これは全部アメリカ産の種なんですね。これは春まきの種なんですけれども、これだけの種類があるわけですね。まだまだたくさんあるし、日常私どもが食べている種なんですね。

 これをなぜここで今示させていただいたかといいますと、実は、日本でも大発生、厚生省が敗訴をしたと言われた例のカイワレ大根の種がアメリカ産で、日本と同じものがアメリカでも大発生をして、そしてそのDNA鑑定をした結果、どうもそのカイワレ大根の種が日本の種とよく似ているということなんですね。

 私も最近家庭菜園などをやってみてびっくりしたことは、本当に、日常私どもが食べているものについて世界各国から種が入ってきているんですね。

 DNA鑑定をしてみたら、アメリカ産であった。それが同種類。ただ、カイワレ大根そのものがそのものであったということは必ずしもはっきりされたわけではないようでありますけれども、しかし、現実には、DNA鑑定して、米国産の種と同種類であったというようなことは、一応科学的に厚生省の分析結果で出ているようでありますので、ぜひその辺は、これは管轄は農林省のようでありますけれども、しかし、その全体の種について、食品安全という立場からどういう影響が出てくるかということについても、ぜひ厚生労働省としての研究体制を含めて十分な体制をとられることを要望させていただきまして、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

谷口主査 これにて島田久君の質疑は終了いたしました。

 次に、谷公一君。

谷分科員 谷公一でございます。

 昨年初めて当選させていただきまして、きょう、こういう機会を与えられたことを感謝いたしているところでございます。

 最初に、通告はさせていただいてなかったんですが、この週末に、私の地元兵庫県で、隣の京都府と兵庫県で大きな鳥インフルエンザのあれがございまして、いろいろ私も農林水産省なりあるいは兵庫県庁の方と連絡をとったり、状況把握に努めたわけでございます。

 まだはっきりしないところもあるんですが、どうも一つの問題として、土曜日に、京都府庁の方から兵庫県庁の衛生担当課の方に、小売店に鶏肉が流通している可能性を知らせる内容のファクスを送った。しかし、受け取った兵庫県庁の方は、閉庁で人数が少ないということもあったかもわかりませんが、ファクスが裏向きのまま放置されて、翌日の午前十時に初めて気づいたというのが、幾つかの新聞で報道をされております。自治体間の連携の悪さという典型例のように報じられているところであります。

 こういう危機管理のときの対応といいますのは大変難しいということは、実は私も兵庫県で防災局長を務めておりまして、なかなか難しいという、言葉で言うほど、結果責任を、結果的に責めるのはやすいんですけれども、当事者としては大変難しい面があろうかと思います。

 ただ、いずれにしても、こういう大変不安に思っているようなことについて、やはりまだまだ危機管理意識、あるいは起こったときに何をなすべきか。私が防災局長のときは、国連の明石次長の、最悪に備え、そして最善を尽くすということをいわば座右の銘として、職務を務めたわけでございます。

 そういう面で、やはりまだまだかなという思いをいたしているところでございますが、大臣の所見を、まずこの点についてお尋ねしたいと思います。

坂口国務大臣 牛のBSE、そして鶏のインフルエンザと続いてまいりまして、モウ、ケッコウと言った人がおりますけれども、本当に国民の皆さんもそんなお気持ちではないかというふうに思います。

 京都で起こりましたこの鳥インフルエンザの件、大変残念なことでございますし、非常に通報がおくれたということで、これは業者の方の問題もございますけれども、それを今度は受けました行政の方も、これはいろいろと御指摘をいただくようなところもあるのではないかというふうに私も思います。

 昨年、SARSのときに、台湾の医師が日本に旅行に参りまして、関西から四国に向けまして旅行をしたということがございました。このときにも、都道府県のいろいろの御意見というものがなかなか一致いたしませんで、これは非常に困ったわけでございます。

 例えば、お泊まりになったホテルなり、あるいは食事をされたところを公表するかしないかといったようなことにつきましても意見が異なったというようなことがございまして、昨年、感染症の法律を出していただいて、そして国の方も一定の関与を増すということにさせていただいたわけでございますが、やはり、都道府県をまたがりますときの連携というのが非常に大事だと思いますし、そして、その意見の調整をすることが大事だと思うんですね。やはり、ここがなかなかスムーズにいきにくいところが、去年の経験からいたしまして、私は確かにあると思っております。

 したがいまして、これからも起こり得ることでございますから、ただファクスを流すというだけではなくてちゃんと電話でも連絡をするとか、あるいはまた、そうしたときにお互いにそれに対してどう対応をするかということを、隣の県同士が違うことをやっておりましてもこれはいけませんので、歩調を合わせてどうするかといったことの、緊密な、そして緊急の連携をどう進めるかということの訓練と申しますか、そうしたことをもう少しやはりやっておかないと、緊急時に対応できないなという気がいたします。

 そういう問題のときに、国としてそこにどう対応させていただくかということも含めて、これはもう少し議論をする余地があるというふうに考えている次第でございます。

谷分科員 それでは、今後の取り組みを期待いたしまして、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 まず、介護保険制度について何点かお尋ねしたいと思います。

 平成十二年四月から始まりまして、昨年の四月に保険料の見直しと報酬の改定がありまして、介護保険制度はいわば一巡したということが言えるのではないかと思います。法の附則で、施行後五年をめどに制度の見直しをするということで、政府においても社会保障審議会において、また我が自由民主党においても、既にその見直しについて議論を始めているところでございます。

 そういう状況の中で、まずお尋ねしたいのは、制度の持続可能性についてということであります。

 二〇〇〇年、平成十二年は三・六兆円の総費用であった。それが平成十五年度の予算ベースで五兆四千億円。これが、今から二十年後の二〇二五年度には二十兆円、GNP比三・五%という試算がたしか厚生労働省から出されているかとも思いますし、また一方、保険料についても、制度発足当時二千九百円が、三年後は一三%上がって約三千三百円、その三年後には四千四百円というふうに言われる方もいますし、さらにその三年後の平成二十一年は五千八百円、そして、先ほどの二〇二五年度、二十兆円に達するときは月に一万一千円になるんじゃないか、そういうふうな試算も既に出されているところでございます。

 そうならば、いや、本当に安定した持続的な制度として大丈夫かなと。確かに介護保険制度は、保険と税の組み合わせということで、私自身は、市町村の福祉の責任あるいは力を養う上でも、大変すばらしい制度であったというふうには思っております。ただ、今後の少子高齢化の進展などを思うと、やや暗い気持ちになるといいますか、本当に大丈夫かなと考えているわけでございますが、まずその点についての御所見をお伺いしたいと思います。

坂口国務大臣 これは私も、どうしたらいいという結論めいたものを今持ち合わせているわけではございません。しかし、介護の面におきましても、それから高齢者医療の面におきましても、ここは高齢社会の中でふえていくことだけは間違いのない事実。そこをどう、どの程度に抑えていくかということはあり得るといたしましても、ふえていくことだけは間違いのない事実で、減ることはない、これはもう動かないことでございますので、それに対しましてどのように今後対応をしていくかということだろうというふうに思っております。

 介護の問題も、非常に御利用いただく皆さん方がふえてまいりまして、これは非常にありがたいことでございますけれども、しかし、財政的には非常に厳しくなってきている。ことしは年金の御議論をいろいろいただくことになっておりますが、年金の中からこの保険料をちょうだいするというやり方をしているものでございますから、多くの皆さん方は、年金が下がったというふうにおっしゃる。それは、年金そのものが下がっているわけではないんですけれども、介護に対する保険料を引くものですから、下がったという印象を非常に強くお持ちになっているという現状がございます。

 きょうは津島先生もお見えいただいておりますが、ここは、介護と税の組み合わせをどうしていくかということが一方におきましてはあるというふうに思います。

 あわせまして、介護の必要な人たちに対して、それをどのようにしていくかということだろうと思います。

 一番ふえておりますのは、御指摘いただきましたとおり、要支援とか要介護一とか、非常に軽いところがたくさんふえて、そして、ここにリハビリ等を行って、ここがよくなっていくんだったら、これはいいわけでございますけれども、その人たちにリハビリ等をやらせていただいておりますけれども、結果としてはその人たちが悪くなってきているというこの現実、ここを一体どうするのかということだろうというふうに思っております。

 言うならば、坂道を転がり落ち始めた人たちを、転がり落ち始めますと、少々はそのスピードを緩めることはできたとしましても、やはり転がり落ちていってしまう。だから、転がり落ちるまでにどうするかということをもう少しやはり考えてやっていかなきゃならないのではないかというふうに、私見でございますけれども、先日来思っているところでございまして、そして、いよいよ介護の必要な人たちには、それは当然のことながらやっていかなきゃならない。

 もう少し、予防の面で打つ手はあるだろうというふうに思っております。生活習慣病だけではなくて、ほかの病気、リューマチでありますとか骨折でありますとか、そういったことで非常に介護の必要な人になっていく可能性がございますので、そうした面をこれから十分に気をつけながら、そして、本当に必要な人に対して介護を行うといったようなことをやっていく必要があるのではないかというふうに思っている次第でございます。

谷分科員 今大臣が御指摘されました介護予防の大切さというのも、私も素人ながら、いろいろお話を聞くとそういうふうに思います。ぜひ、その面での力を入れていただくようにお願いしたいと思います。

 それで、介護保険の今後について、障害者福祉との統合というお話というか主張をする方が大変ふえているように思います。障害者にとっても非常に不幸だ、非常に不安定な制度であるので安定している介護保険と統合するのが現実的だ、また、これによって、若い世代も含めて障害者への国民の理解とか連帯が深められるのではないかという主張です。

 しかし、一方で、障害者団体からも、いやいや、高齢者と障害者とでは必要なサービスが違うと。ですから年金のように二階建てにせざるを得ない、仮に統合すると。そういう、制度が複雑だということもあるし、それに、そもそも、今四十歳から二十歳に引き下げると、今の国民年金と同じように若者の保険料を徴収するということが大変難しくなるのではないか、また年金と同様、空洞化が進むのではないかという議論もございます。

 私自身も、まだこれという考え方を固めているわけではないんですけれども、しかし、どうも議論が、支援費制度が十五年度から始まったわずか一年で、何か財政、お金の問題が先行してこういう方向というのはどうかなと。もう少し、あるべき福祉の姿あるいは将来の見通しもきちんと持った上で、統合するかどうかということについて議論を深めるべきではないかというふうに考えているわけでございますけれども、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

坂口国務大臣 ここは、御指摘をいただいたとおり、余り安易に考えてはいけないと私も思っております。

 介護の場合には、いわゆる職域連帯でいろいろと保険料をお出しいただくということにつきましても、かなり理解がされているというふうに思います。しかし、障害者の問題も同じように、職域で企業に負担をしてください、そこで働く人だけに負担をしてくださいということが本当に言えるのかどうかということに対する御意見を言われる方もございます。そこは少し、やはり職域だけでそこをお互いに負担をし合うということには一つの限界があるのではないかという御意見がございまして、私もその意見には、これは傾聴に値するというふうに思っております。

 今後の社会保障全体にかかわる問題でございますが、そうして職域でお互いに負担をしていくべき問題と、そして、もう少し幅広く、国民全体の連帯の中で負担をしていかなければならない問題と、そこはある程度区別をしながら、これから考えていく必要があるのではないかという気がするわけでございます。

 同じ介護ということになるものでございますから、障害者の問題とあわせてやれば一番スムーズにいくのではないかという御意見が大きいことも事実でございますが、現場におきまして、そういう介護をするということにつきましては、それが効率的に行われる可能性もあるというふうに思っておりますけれども、それに対する財政的な裏づけをどのようにしていくかということについては、私は十分な配慮が必要ではないかと今思っているところでございます。

 今後、諸先生方、あるいはまた各党の御意見も十分にちょうだいをしながら、ここは決めていかなければいけないというふうに思います。

谷分科員 ありがとうございました。

 そんなにゆっくりというあれでもないんですけれども、私自身も、また自民党内などでいろいろな議論に参加して、論議を深めていきたいというふうに思っております。

 それでは、次の質問に移らせていただきます。

 施設整備のことについてであります。社会福祉施設の整備費の補助金でございます。たくさんの補助金があるんですけれども、きょうは、障害者の補助金に絞って御質問をさせていただきたいというふうに思います。

 正直な話、なかなか入所施設の補助金について厳しい状況にございます。私の地元の選挙区でも、それぞれいろいろな事情があろうかと思いますけれども、統合、市町合併を控えている。市町合併の目玉事業として、知的障害者の施設、琴弾の丘というような施設も、四町が一つの市になる、新しい市の福祉に力を入れたいということで、スタートにふさわしい事業として、知的障害者の施設、デイサービスを併設した施設を計画する、そしてその財源として合併特例債を活用しよう、そういうふうに何年も前から計画している。それがこういう厳しい補助の状況に直面している。

 一方、また同じ近くの地域では、病院の改築、精神病院の改築を進めている。それで、その中の精神病棟を減らして、精神病棟を減らすけれども、そのかわりにそういう精神障害者のいろいろな施設をつくるということが、精神病棟を縮小するいわば条件だった。それがまたなかなか厳しい。

 それぞれ、私の選挙区だけではなくて、こういう障害者関係の施設というのは、関係の皆さんが何年も前から一生懸命計画して、そして自治体も、こういう厳しい財政事情のもとではありますが、思い切ってといいますか、相当腹をくくってやろうというふうに燃えているときに、なかなか補助金がいただけないということは、大変厳しいものがございます。

 そういったことについての御配慮といいますか、そういう声をどういうふうに受けとめておられるのかということを、厚生労働省の方にお尋ねしたいと思います。

坂口国務大臣 具体的な問題はまた局長の方からも答弁があるかもしれませんが、全体として見ますと、医療の分野の中で、やはり精神障害者の皆さん方の分野が一番おくれていることだけは確かだと思います。

 ここを整備しなければいけないわけでございますが、病院の整備もさることながら、回復された皆さん方の受け皿のところができていない。社会の中で、退院された皆さんを受け入れて、そしてお互いにその人たちに対して手を差し伸べる組織といったものも必要になってくる。そうしたことが今まで非常に少ないものですから、精神病院にいわゆる社会的入院というような形で何年も何年もずっと入院をされている、そうしたことがございまして、約七万人はおみえになるのではないかというような数字もあったりするわけでございます。

 したがって、ここは何とかそれぞれの地域において知恵を絞っていただいて、その受け皿づくりというものを進めていかなければいけないというふうに思っているわけでございますが、今お話をいただきましたように、施設整備につきましても、財政的に非常に厳しい折から、ここをそう大々的に拡大をしていくということになっていないことも、御指摘のとおりでございます。

 全体の医療の中で見ますと、先ほども申しましたように、ここが最もおくれている部分であることだけは間違いないというふうに思っておりますので、ひとつ、少ない予算ではございますけれども、この分野につきましては、今後も重点的に進めていかなければならないのではないかというふうに考えているわけでございます。

 これは、全体としての大きさの問題でもございますけれども、いわゆる医療という枠内での配分の問題でもございまして、おくれておるところにはやはりより多く配分をしていくという考え方が必要ではないかといったように考えているところでございます。

谷分科員 それでは、年金の問題も質問をしたかったんですけれども、時間が少なくなりましたので、児童虐待について一つお尋ねをしたいと思います。

 実は、児童虐待、私も個人的に大変苦しめられたといいますか、平成十二年、私は、兵庫県庁の健康、福祉、環境という非常に幅広い分野を担当する総務課長をしておりまして、児童虐待防止法が施行された年でございます、尼崎で、子供が親に運河に投げ捨てられるという大変な事件がありました。そして、その後もいろいろそういう事件があって、それで、一体、児童相談所の体制はどうなっているのかということで組合に責められまして、徹夜交渉を何度となくやって、私がとにかく責任者でございましたから、最終的に腹を固めたのが、二十数年ぶりに専門職採用を再開するということでした、児童福祉司の。井戸知事までとにかく個別に頭を下げに行って、六名の専門職採用を認めてもらいました。

 翌年から徐々に二人か三人ぐらいになるのかなと思いましたら、翌年はちょっと、防災局長、先ほどお話しさせていただいたポストにかわりましたのであれでしたが、引き続き、ずっと六人です。それほど児童虐待が深刻化して、体制の整備というのが求められているということであります。

 しかし、現場の状況を見ると、まだまだ質なり量が足りないというふうに思います。今般、議員立法で虐待防止法の改正というのを進められているところでございますが、私はそれはそれとして大変いいことだと思いますが、ただ、現場のそういうプロの職員の質、量の充実なしに、いわば絵にかいたもち、もっと言えば、法律をつくっただけで自己満足してしまうのではないかというふうにも危惧しているところでございます。

 そういう意味で、まずそういう認識といいますか、児童相談所の体制充実への取り組みについてお伺いしたいと思います。

伍藤政府参考人 児童虐待に対します児童相談所の体制について、質、量ともに拡充を図るべきだという御指摘、そのとおりだというふうに考えております。虐待相談件数が十一年度と比べただけで現在二倍程度にふえておりまして、急増しているわけであります。こういったものにどうやって対応していくかということを、私どもも真剣に考えております。

 まず、量の問題といたしましては、それでも低いというおしかりを受けるかもしれませんが、ここ数年、交付税の中で、標準団体、人口百七十万人程度の県を一応予定しておりますが、こういった標準団体、平成十一年度、十六名の児童福祉司でございましたが、毎年この充実を図って、十五年度は二十三名体制、十一年度から比べますと、当時の十六名から七名増加いたしまして、二十三名まで今ふやしてきております。

 これに伴って、現にそれぞれの都道府県が、これを上回る配置をしておる県もありますし、まだこれに達していない県もありますし、私ども、これを公開して、少なくとも、私どもが標準と考えております交付税措置程度は最低限として配置をしていただくように、県にお願いをしておるところでございます。それぞれ都道府県によって認識の若干の差があるということも事実でございます。こういった形で充実をしてきておりますので、十六年度もさらに若干の積み増しをしたいというふうに考えております。

 それから、質の面においても、専門の虐待防止センターというものを設置いたしまして、そこで全国の相談所の職員でありますとか施設の職員の研修をやっておるところでありますので、こういったことをなお一層充実していきたいというふうに考えております。

谷分科員 十六年度も過去数年と同じように二人ぐらいのまた増員を、ぜひとも総務省と十分お話をしていただいて充実していただくよう要望いたしまして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

谷口主査 これにて谷公一君の質疑は終了いたしました。

 次に、都築譲君。

都築分科員 民主党の都築です。

 貴重なお時間をいただきましたので、早速、質疑に入っていきたいと思います。

 まず最初に、ハンセン病問題の最終解決を進める国会議員懇談会に入っておりまして、先年、坂口厚生労働大臣の御決断と御活躍によって、国家賠償の問題についても一応の決着がついたわけでありますが、ただ、その後の状況を患者さんたちの団体からお聞きをいたしますと、まだなかなか進んでいない、こういう状況がございます。

 それで、今回、特に私ども議員懇談会として要望を受けましたのが、どんどん高齢化が進んでおられるわけでありますし、また、一般の家庭の中に復帰できる状況ではないということで、療養所の中で何とか快適な老後を過ごしていただくという観点からは、痴呆とかそういったものが進行する方たちもおられるだろう、こういう状況の中で、不自由者棟における夜間看護体制を強化してほしい、三交代制を強化してほしいということで要望されておるんだけれども、なかなか看護師の増員というものが認められない。厚生労働省として、例えば、平成十六年度については夜間看護体制強化ということで四十人の定員増を要求してもらったけれども、実は、病床減に伴う減員が五人、定員削減が二十七人、合計三十二人で、差し引き実質八人しかふえなかった、こういう状況になるわけです。

 定員削減というのが、総定員法ということで定員管理が行われている、こういう状況でありまして、私自身、ちょっと調べてというか、資料を拝見してびっくりしたんですが、実は、平成十一年度、十二年度については定員削減は十五人だったんですけれども、平成十三年度以降、定員削減が二十八人ということで、ほぼ倍増しておるわけでありまして、幾ら定員増を要望しても、定員削減が何でこんなに倍増して減らされてしまうのか。結果としては、平成十四年度はそれこそ大きく取り上げられた年度でございましたから、定員が実質三十人増員という形になっておりますけれども、ふえていないということで、大体、せいぜい九人とか八人とか十人とか、そんなことになってしまうわけであります。

 ここのところについて、ぜひ何とか患者さんたちの御要望といったものを満たしていくことはできないのか、そういう予算のやりくりというものはできないのかということについて、御見解をお伺いしたいと思います。

    〔主査退席、鈴木(俊)主査代理着席〕

坂口国務大臣 ハンセン病療養所の問題につきましては、私も幾つか訪問させていただきまして、いろいろの御意見をお伺いいたしました。

 やはり、一番多く出ましたのがこの不自由棟の問題でございまして、中には、看護師さんをもっと配置してくれというところがございますし、中には、看護師さんよりも介護の人をふやしてほしいというふうにおっしゃったところもあったりいたしまして、若干違いはございましたけれども、押しなべて、不自由棟に対する対策というものにつきまして御意見があったことだけは一致していたというふうに思っております。

 できるだけここはふやしていかなきゃならないと私たちも思いまして、三交代制実現に向けて今進めているところでございますが、全体としての人数も年間二、三百人ぐらいずつ減少していくという状況でございます、これは元患者さんの数でございます。しかし、私も行きまして、最後のお一人になるまで、これは、皆さん方が御希望になります以上、療養所で生活をしていただけるように、国としては責任を持ってやりますと約束をしたところでございまして、三交代制はぜひ実現をしていかなければならないというふうに思います。

 確かに、御指摘いただきますように、増員をしますけれども、一方におきまして、全体の定数是正によりまして減らされているのが現実でございますが、できる限り、ここの分野につきましては、ほかの少々のところを削ってでもできるだけふやしていくと申しますか、三交代制が実現できる体制に向けて努力させていただきたいと思います。

都築分科員 ぜひ大臣のまた御努力をお願いいたしたいと思います。

 それで、きょうは、岸和田の児童虐待事件で、また大変大きく児童福祉の問題が取り上げられております。虐待に関しては、それぞれ議員立法の動きもありますので、また後日に譲りたいと思いますが、私自身、幾つか児童養護施設といったものを拝見させていただいて、実はかなりショックを受けました。特別養護老人ホームとか、今高齢化が進む中で大変施策が手厚く講じられて、そういったホームはそれこそ近代的なマンションのような状況になっておりますが、今児童養護施設は、それこそ戦争直後とか、あるいは戦前から設置されている大変古い老朽化した施設の中に子供たちが、ぎゅう詰めという表現が適切かどうかわかりませんが、かなり手狭な状況の中で生活をしている。

 こういう状況を見ますと、もっと本当に何とかならないのかな、こんなふうに思っておったら、去年の十月ですか、社会的養護のあり方に関する専門委員会報告という報告が出されて、今年度の予算では大幅に児童福祉関係の施策の充実が図られる、こういうことでございました。

 ただ、私自身、きょう御質問をしたいのは、今そういうさまざまな社会問題が起こっているという状況の中で、政策のプライオリティーをどういうふうに取りまとめていくのか。政権を担う政党あるいは野党に置かれている政党との見解の違いということで、最後はやはり私たち民主党が政権をとらないと大胆に政策が進むということはないのかな、こういう感じがございますが、その一方で、政府の中でも厚生労働省として、こういった部門にもっと目を向けてくれということで予算要求をやっていると思うんですね。

 政府の中における厚生労働省の立場、あるいは厚生労働省の中でもさまざまな局があって、児童家庭局がこういう主張をやっているんだけれどもなかなか振り向いてもらえない、あるいは、児童家庭局の中でもさらにこの児童福祉の所管の課の要望する予算というものが十分ついていかない、そういう状況の中でのプライオリティーを決断するのは、やはり私は政治の、政治家の決断であろう、こう思うわけでありまして、そういった観点。

 さらにまた、もっと、大平正芳元首相ではありませんけれども、座右の銘として、一利を興すは一害を除くにしかず、こういうことで、あれもこれもやりたい、いいことばかりあるんだといっても、それをやっていたら最後の負担は全部国民に行ってしまうわけですから、どこかむだなところ、不要なところをスクラップしていく、そういう努力といったものをもっとやっていく必要があるのではないか、それもまた政治の決断ではないのか、こういうふうに私は思うわけでありまして、きょうは、そういったところを一つ一つちょっと細かいところまで立ち入ってお聞きをしていきたい、こんなふうに思っております。

 まず最初に、先ほど申し上げた専門委員会の報告、本当に立派な、多岐にわたる、そしてまた精緻な議論の上での報告だ、こう思うわけでありますが、そこに盛られているその施策、充実のための具体的な計画というのはお持ちなんだろうか。また、今年度一年限りで、ぱっと花は開いたけれども翌年からずっとしぼんでいってしまうというのでは、そういう状況では私は今世の中ないだろう、こう思うわけでありまして、長期的な、中期的な計画といったものを持って、着実にこの児童福祉の向上、改善といったものを図っていく計画をお持ちなのかどうか、そこをお聞きしたいと思います。

坂口国務大臣 ここは大変残念なことでございますけれども、対象の児童が非常にふえてきている、倍々ゲームでふえてきている。したがいまして、どの児童相談所にお邪魔をいたしましても、倍々ゲームで担当しなきゃならない児童がふえてくるものですから、多少人員的な増加があっても、あるいはまた制度の充実があっても、追いついていかないというふうに多くの皆さん方がおっしゃるわけでありまして、まことにそれは残念なことでございますけれども、それが現実でありますから、この現実を直視して、これからどうやっていくかということになるんだろうというふうに思っております。

 御指摘いただきましたように、社会的養護のあり方に関する専門委員会におきまして御報告をいただきまして、これを受けたことしは初年度だろうというふうに思っておりますが、これも、あれもこれもというふうになかなかいかないものでございますから、その中で、ことしはいわゆるグループホーム型の児童養護施設というものをもう少し充実させていかなければならないということで、ここを中心にいたしまして、今まで四十カ所でございましたが、これを百カ所にふやしていくというような計画を持って予算に臨ませていただいているところでございます。

 大きい施設にたくさんの皆さんがお入りいただいているというのも、それはある意味ではまた一つの行き方かもしれませんけれども、しかし、より家庭的にお子さん方に成長をしていただくということからいきますと、やはりグループホーム型のところが非常に大事ではないか、あるいはまた、里親をどうふやしていくかということが非常に大事ではないかというふうに認識しているわけでございまして、今後もこのグループホーム型のところをさらに拡充をしていくという考え方のもとに、今進めているところでございます。

 今後につきましても、さらに充実を図ってまいりたいと思っております。

都築分科員 私も大臣のお考え方に賛成でございまして、今回の報告は、いわばケア単位を小規模化して、できるだけ家庭的な環境の中で生活をしてもらう、あるいはまた里親というものを普及させていくとか、あるいはまた自立のための支援とか、そういう観点でございますから、ぜひその方向での施策を進めていっていただくことが何より大切だ。

 というのは、いろいろな児童虐待の事例などを見ますと、よく言われるのは、児童虐待の拡大再生産というか、結局、自分自身が小さいころ児童虐待を受けて、そのまま親になって、家庭といったものを十分わからないまま子供が生まれる。そうすると、どうしていいのかわからないまま、やられたことを自分の子供にやってしまうというケースが多いような話をお伺いすると、特に本当に今児童養護施設に入っている子供たち、何らかの理由で親が離別をした結果、引き取ってもらえないとか、あるいはまた実際に児童虐待を既にもう受けていて、そういった子が今既に半分近くになっているというふうなお話を聞くと、今大臣が言われたような方向でぜひ施策の充実を進めていくことが、子供たちの将来の人生を、本当に充実して生きていくことが一番大切でありますけれども、同時にまた、社会に対して本当にいろいろなまた問題を起こすことのないようなものを小さいころから教えていくということでも大変大切じゃないか、こう思うわけであります。

 ただ、問題は、今言われたように、確かに倍々でふえていくような状況の中で、どういうふうにやっていくのか、その予算規模をどうするんだというふうな話になると、極めて私はやはり心もとないものがある、こう思うわけであります。

 これは、それこそ岸和田所轄の大阪府の中央子ども家庭センターの所長さんが、二月二十六日の朝日新聞の記事で書いておられましたけれども、要は、そういった福祉についての体制といったものが十分にない。それからまた、東京の育成園の理事長さん、長谷川さんという方がこれまた新聞に書いておりましたけれども、欧米と比べて圧倒的に日本のこういう児童対策の予算というのは少ないんだ、二分の一とか三分の一という状況である、こんなふうに言われております。

 欧米の個人主義に立脚した家庭観といったものと、日本の今までの共同体的な発想での家庭とは違うかもしれませんが、ただ、日本もこれだけ生活様式が西欧化して、例えば住居一つとっても、私は岸和田の事件などを見ると、あの本当に閉じられたマンションの一室の中で、あのマンションが完全にふさがれてしまうような部屋でなければ、青いビニールシートを敷いて、あの子供をあそこに寝かせてほうかっておけるような状況だったんだろうか。昔の日本の、長屋とは言いませんけれども、普通の家だって、音が漏れる、あるいはにおいが漏れる、こういう状況だったら、周りの人たちの発見だって早かったんじゃないか。

 それほど生活様式というのは激変をして、そしてまた、さまざまな情報が飛び交う中でますます孤立を深めていくような状況も起こっているということを思うと、やはり、今までどおりの発想ではなくて、少し残念かもしれませんけれども、西洋のような児童虐待の件数が多い状況といったものも踏まえながら、しっかりと対応していく必要があるんだろうと思うんです。

 それで、ちょっと前置きが長くなって恐縮ですが、今回予算措置を大変充実させる、こういうことでありましたけれども、私は、相変わらず児童擁護施設に支払われている予算の単価といったものがまだまだ少ないんではないのかな、こんなふうに実は思うわけであります。

 例えば、被虐待児個別対応職員、これが配置をされるというようなことでございます。これは一人当たり三百三十万円、国が二分の一、都道府県が二分の一、こういうふうな状況でありますけれども、三百三十万円は、これは国の負担分二分の一で、では全体で六百六十万円ですかと聞いたら、いや、これが全額です、こういうことですけれども、三百三十万円でこれだけの難しい業務を担うような人たちが本当に雇えるんだろうか。初任給だったらまだわかりますよ。二十万円で十二カ月、ボーナスが四カ月ぐらいついて十六カ月、三百二十万円というと大体ぴったりくるかなというふうな感じでありますけれども、でも、これにまた社会保険料とかいろいろな何とか手当とか、いっぱい乗っかってくることを考えると、これで本当に人が雇えるんだろうか。

 それこそ、児童福祉司のところでこれはいずれまた触れようかと思っていたんですが、例えば、大学で児童福祉の問題を勉強してきたって、すぐ使えるわけじゃない。やはりいろいろな相談に乗れるのは七、八年、虐待問題を取り扱うには二十年ぐらいの経験が要るんだというのが実際に今までやってこられた人で、ではそういった人たちが三百三十万円で雇えるのかとか、そういったことを考えると、圧倒的に、やはり人材を確保しようとする、そういう予算規模になっていないんじゃないかというふうに思うんです。

 そこら辺のところについて、予算単価の充実、あるいはまた補助率の向上というのは、なかなか今の仕組みの中では難しいかもしれない。特にまた、悪口で恐縮ですが、三位一体の地方いじめのような、補助金を削減して、税源も渡さずに、あるいは国の統制を強める、こういうふうなことになってしまうと、ますます、福祉を担う地方自治体、あるいはまたそれを担う社会福祉法人といったものが十分機能できないんじゃないか、そういった点についてもっと手厚い対策を講じていくべきではないか、こんなふうに思うんですが、御見解を伺いたいと思います。

谷畑副大臣 都築先生のおっしゃるとおり、やはり児童虐待におきましても、先ほどの質問の中にもありましたように、相談が全国で二万三千七百三十八件という、本当に急増している、そういう状況における児童相談員あるいは勤務をする児童福祉司というのは、余りにも少な過ぎる。そういう意味では、量と質を高めていくためにも、ぜひひとつ私どももしっかりと頑張りまして、その財源確保等を含めて全力投球をしていく必要があるのではないか、このように思っておるところです。

 今後とも、ぜひひとつ力強い御指導をお願いしたいと思います。

都築分科員 そういうことで、ぜひ、我々も強く要望してまいりますから、政府の方も一生懸命、財政当局の中でプライオリティーづけ、そういったものを努力していただきたい、こう思うんです。

 ただ、それで予算がついたら、ではそれにマッチングする人材というのはいるんだろうか。今までの問題は、実は児童相談所とかそういったところは、それこそ十年、二十年前だったら、割と、閑古鳥が鳴くと言ってはいけないんですが、それほど重要な業務を担うような場所ではないというふうなことで、一般の行政職員が児童福祉司というふうな形で行ったりなんかしていたわけですね。ところが、実際に、ではそういった人たちで本当にやり切れるのかというふうな状況もあるわけですし、そういった能力を持った人、資格を持った人、適性を持った人といったものが、では本当に確保できるのかということを思うと、そういったものを私はもっと養成をしていくことが必要ではないのかなと。

 だから、そういった職務に必要な能力、資格、こういったものはちゃんとマッチングするんだろうか、マッチングしないんだったら、職員の養成計画はあるのかということをお聞きしたい、こんなふうに思います。

谷畑副大臣 私、岸和田の児童虐待につきまして、二月の五日、現地を調査させていただきまして、非常に衝撃を受けておるわけでございます。肉親と一つのマンションで同居をしながら死の寸前まで、餓死をさせていく、こういうことが人間としてできるのだろうかという、非常に衝撃を受けたわけであります。

 その中で、いろいろとお話を聞きますと、もちろん、近所の人々も、ひょっとすれば虐待じゃないか、あるいは学校におきましても、虐待じゃないか、こういうことであったわけですけれども、残念ながら、児童相談所は、弟さんの不登校について相談を四十数回行っているわけですけれども、結論としては、児童相談所としていわゆる立入調査をして救出ができなかった、こういう事実があるわけであります。

 その中で、今、都築先生が指摘されましたように、そこには、そういう量と質といいましょうか、やはりその問題をしっかりととらえて、この問題は立入調査をしなきゃならないという、ここへ至るところのプロセスを担っていくのは、そこにおられる児童福祉司の役割が非常に大きい、そういうふうに実は思っているわけであります。

 そういう意味では、やはりこの研修といいましょうか、今先生おっしゃいましたように、複雑な家庭状況の中で相談を受け、そしてその中で、でき得ましたら家庭が少し立ち直っていけるということも前提に立ちながら相談していくわけですから、非常に高い質が問われていく、こういうふうに思います。

 そういう観点から、任用におきましても、ただ単に心理学を修めたというだけじゃなくて、やはりこれから少し、経験を積んできた人々の採用とか、あるいはまた、一定の実務経験などを経験された保健師だとか保育士だとか、そういう幅広い人材を登用して、そして質の高いものをしなきゃならないということ。

 そして、最後に先生が御指摘したように、八年から二十年かかるということですから、やはりこれから新しく入った人たちとの関係を、さらにキャリアを積んでいくという、この研修というのは非常に大事だと思いますので、私どももしっかりとそういう研修を、都道府県自身もしっかりしておるということも聞いておりますけれども、さらにそれを強化していく必要がありますし、国もそういうことについてさらに強化をしてまいりたい、このように思っています。

都築分科員 ぜひお願いをしたいと思うんです。児童相談所の問題、それからまたさらに児童養護施設というふうな問題、いろいろございますけれども、児童養護施設の方の体制もぜひ充実を図っていっていただきたい、こんなふうに思うわけです。

 それで、先ほど大臣が言っておられましたグループホーム化というふうなのも、ちょっと悪賢く考えれば、私は、うまく使っていくことができるんじゃないのかと。本当に純粋に善意でグループホーム化をやらなければいけないという趣旨は、先ほどの大臣が言われたようなことだと僕は思いますけれども、例えば、多くの児童養護施設の方、あるいは児童相談所の方たちも、児童養護施設で大体平均十年ぐらいの勤続期間しかないんだろうと思います。余りのオーバーロードに燃え尽きてしまって退職していくような、本当にやる気に燃えた人たちが、実はそうやって早々と退職していくようなケースもある。夢が持てないんですよね。

 ただ、グループホームという形でこれから進めていくということになれば、大きな、例えば五十人から六十人、七十人の施設の中、それこそ子供が六人、あるいは男親役、女親役というような形でうまくやっていくようなところには、またそれなりの措置をしっかりとやっていく仕組みをつくっていくことが、逆に私は、職員の皆さんの負担も軽減する。また、職員の皆さんも、実際に二十人の子供を一遍に見るというんじゃなくて、それなりに目の行き届いた子が成長していく過程といったものをちゃんと見届ける、そういった夢も持てるようになるのではないかというふうに思うわけでありまして、グループホーム化を進めるということで、これは圧倒的に、これから本当に進めていく必要のある施策だろうと思うんです。

 ただ、お話を聞くとどうも、間仕切りするかどうかは別として、一つの施設の中で実はグループにするんだというようなお話だと、これはちょっと、その程度で本当にいいんだろうか。家を一軒借りるとか、アパートを借りるとか、それぐらいのことをやって、ちゃんと家庭といったものの形を整えるようなことをやらないかぬのじゃないか、こう思うんですが、いかがでしょうか。

    〔鈴木(俊)主査代理退席、主査着席〕

谷畑副大臣 先生おっしゃるとおりだと思うんです。児童虐待を受けまして、そしてまたいわゆる施設に入所をするということになるわけですけれども、本来ならやはり、家族の愛情の中で、そういう家庭的な中で育てていくということが非常に大事なことだと思いますけれども、結果としてはそういう施設に入ってしまう。

 ところが、従来は、公立だとかさまざまな状況の中で、どうしても大きな施設の中で集団生活ということになってしまって、集団生活の中では、これはまた家庭とはまるきり状況が違う。そして、ある時期になりましたら、その施設を必ず年とともに退所していくわけで、そしてまた一般社会に戻っていくわけですから、そういう意味ではやはり、できる限り家庭に近い状況、グループホームは一番そういうことになると私は思います。予算という関係もあろうかと思いますけれども、そういう家庭の味というものをそこでしっかりと学んでいく、そういう中で社会に巣立っていただくということが一番大事だと思います。

 今後とも、そういう方向で私どもはやはり取り組んでいかなきゃならないのではないか、こういうふうに思っております。

都築分科員 ぜひそこのところをお願いしたい。

 あわせて、もう時間がなくなりますが、今度は里親の問題を取り上げたいと思うんです。

 この里親というのは、それこそ、その家庭の中に子供が入っていくわけであります。ただ、お話を聞いてみると、日本ではまだなかなか普及をしていない。そしてさらに、これから充実をするんだということで、では、公的支援の中身はとお聞きをしましたら、例えば月三万円ぐらいしかというようなお話も聞くと、これで本当にその子供たちを引き受けてやっていくだけの負担に見合うような支援なんだろうかな、こういうこと感じるわけであります。

 あるいはまた、里親の皆さんの要請とか、里親の皆さんが抱える問題の相談とか、そういった体制もしっかりとやっていくという施策まで講じていただく必要があるんじゃないか、こう思うんですが、そこら辺についてお話をお伺いして、また御決意もお伺いをして、私の質問を終わりたいと思います。

谷畑副大臣 グループホームも大事だろうけれども、もっとやはり、いわゆる民間の力をおかりするという意味でも、里親というのが一番、より家庭に近いということで、力を入れていきたいと思います。

 先生が御指摘されましたように、まだまだ制度としては実は充実をしておりません。そういうことの中で、平成十六年度の予算案という状況の中で、里親の養育負担を軽減するため、児童相談所から里親をサポートする者を派遣する事業を新しく創設することにしておりますし、また、養育技術の向上等を図るため、里親相互で援助をし合う事業も創設をしようとしているところでございます。今国会に提出した児童福祉法改正案においても、里親の監護権等を明記するなどをして里親の位置づけをより明確にし、里親の増加につながるよう努めているところでございます。

 どうぞ、先生、また温かい御指導をひとつお願いしたいと思います。

都築分科員 では、終わります。ありがとうございました。

谷口主査 これにて都築譲君の質疑は終了いたしました。

 次に、上田勇君。

上田分科員 おはようございます。公明党の上田勇でございます。

 きょうは、個別具体的なことも含めまして、医療問題を中心といたしまして、何点かにわたりまして質問をさせていただきますので、どうかよろしくお願いをいたします。

 最初に、睡眠時無呼吸症候群のことについてお伺いをいたします。

 この言葉は、従来、余り耳なれなかったんですけれども、列車運転手の居眠り事件をきっかけに一躍有名になりまして、同時に、それを大変悩んでいる患者の皆さんも多いということも知られるようになったわけでございます。

 この睡眠時無呼吸症候群の治療法として、歯科医が中心となりまして、口腔内にマウスピースのような装置をとりつける、そういう簡便でコストも安い手法があるわけでありますが、これまでは保険の適用外となっておりました。今回の診療報酬改定で新たに保険適用となったわけでありますけれども、そういう意味で、この装着には従来五万円とか六万円とかかかっていて、これが全部患者負担になっていたという意味からは、非常に朗報であるというふうに考えているところでございます。

 そこで、この治療法の内容、それから有効性につきまして、厚生労働省としての御見解を伺いたいというふうに思います。

辻政府参考人 御指摘の口腔内装置を用いた睡眠時無呼吸症候群の治療でございますが、これは、睡眠中に一定の、今御指摘のマウスピースのような形態をいたしました口腔内装置を用いまして、下のあごを前方に出して気道を広げるという形での治療法でございまして、その有効性につきましては、この治療を行った患者の約七割に、呼吸停止回数の軽減、日中の眠気の減少等の改善が見られたとの報告を学会から受けたところでございます。

 これを受けまして、平成十六年度診療報酬改定におきまして、中央社会保険医療協議会におきまして、十分専門家の御議論を経た上での御議論を踏まえまして、睡眠時無呼吸症候群の確定診断が可能な医療機関で口腔内装置治療が有効であると診断された患者さんにつきまして、当該医療機関よりの情報提供に基づきまして、歯科医療機関が今御指摘の一定の口腔内装置を装着するという治療を行った場合に、診療報酬上の評価を行うこととした次第でございます。

上田分科員 ありがとうございます。

 専門家の方々からは、随分前からこの有効性につきましてはいろいろと指摘があったところでございまして、今回、保険の適用となったということは非常に前進だというふうに思っております。そういう意味では、この睡眠時無呼吸症候群に悩んでいる方も大変多いわけでありますので、引き続きそういったことの知識の普及などにも努力をしていただきたいということを要望させていただきます。

 次に、今度は前立腺がんのことについてちょっとお伺いをしたいというふうに思うんですが、最近、この前立腺がんの患者さんが非常に増加をしておりまして、専門家の中には、食生活の欧米化の問題であるとか、そういったことから今後十年ないし二十年の間には何倍にもふえるんじゃないかというようなことを予測する人もいるわけでございます。

 今、老人保健事業ではがん検診が行われておりますけれども、その検査項目にはこれは含まれておりません。検査も比較的簡単で、それから早期発見に有効な前立腺特異抗原、PSAと言われるんですか、の測定によります前立腺がん検診を追加してはどうかというようなことを多くの専門家から私も伺っているところでございます。

 聞くところによりますと、海外ではこうした検査は非常に一般化しているということでありますし、また、国内でも自治体で幾つか独自に行っているところもあるというふうに承知をしておりますが、このPSA測定によります検診をがん検診の検査項目に追加するべきではないかというふうに考えておりますけれども、厚生労働省としての御見解を伺いたいというふうに思います。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 前立腺がんの検診についてでございますが、前立腺のがんは、今先生御指摘のとおり、欧米で中高年男性に大変ふえておりますし、米国では男性のがんで最も多いと聞いております。

 日本でも、死亡者数を見ますと年ごとにふえておりまして、八千人を超えているというような状況で、がん対策の中でも大変大事な問題だと思っております。

 ヘルス事業の方で、老人保健事業の方でがん検診をやっております。国としては、特に各市町村が事業を推進できるように、がん検診の評価、科学的知見、それから適正な実施方法について基準を定め、お示しをしているということでございます。

 前立腺がんを追加するかどうかについては、まさにこれから検討していく必要があると思いまして、現在、厚生労働省の方で、さまざまがん検診について問題がございますので、昨年の十二月から検討委員会を設置いたしまして、検討をすることといたしております。当面は、まず、非常に御指摘が多い乳がん検診、子宮がん検診のことをやっておりますけれども、それが済みましたら他のがんについても議論をするということで、特に、座長は国立がんセンターの総長の垣添先生で、前立腺がんの専門家でございますので、よく議論をしていただきたいと思っております。

 なお、平成十二年に私どもが研究調査いたしましたときの研究班の報告では、前立腺がんの検診については、今のところ、その効果についてエビデンスがないというような報告もいただいておりますので、いろいろな議論があるんではないかと思いますので、そこのところはまさに専門家の御議論を踏まえ、欧米の最新の状況も踏まえてよく検討していただきたいというふうに考えております。

上田分科員 ありがとうございます。ひとつ、今後前向きに御検討いただければというふうにお願いをいたします。

 次に、今度、有床診療所にかかわりますことにつきまして、何点か御質問させていただきたいというふうに思います。

 有床診療所は、非常に身近なところで、また質の高い医療を提供しているという意味で、私は大変医療制度の中では重要な役割を担っているものだというふうに考えております。

 そこで、医療法の第十三条では、有床診療所の入院、これは「やむを得ない事情がある場合を除いて」ということが書いてありますが、四十八時間を超えてはならないというふうに定められております。その根拠、これまでいろいろと御説明もいただいたんですけれども、もう一つよく理解できない面もありますし、法律そのものに時間単位で規定するというのは、何かいかにも厳格過ぎるような感じがいたします。特に、有床診療所の中でも外科系統のところでは、四十八時間をほとんどの場合超えているというようなことも伺っているところでございます。

 そこで、やはり医師の診断をもっと尊重することとして、法律でここまでこういうような規制をかけるというようなことは緩和の方向で見直しを検討するべきではないかというふうに考えますけれども、御見解、いかがでしょうか。

岩尾政府参考人 有床診療所の一般病床の問題ですが、病院と異なりまして構造設備、人員配置などの基準が設けられていないということから、入院患者に適正な医療を行うという観点で、やむを得ない事情がある場合を除き、入院期間に一定の制限が設けられているところでございましたが、この「やむを得ない事情」という規定について、先生御指摘のように、解釈が明確でないという指摘がございました。

 先月末、医師の専門的な判断を尊重し、医師が患者に適切な医療を提供する観点から病状等を十分に把握した結果、当該診療所において引き続き治療を受けることが適切であると判断した場合もやむを得ない場合に該当するという通知を発出したところでございます。また、ことしの一月二十九日に取りまとめられました医療分野における規制改革に関する検討会の報告書におきましても、医療に関する規制の将来のあり方の一つとして、有床診療所のあり方を見直すということも考えられるという指摘も受けております。

 私ども、今後の課題として受けとめているところでございます。

上田分科員 ありがとうございます。多分、実態上は今御答弁いただいたことでしようがないものだというふうに考えますけれども、今の御説明を聞くと、じゃ、なぜ法律にわざわざ時間まで規定するのかということになると、どうもちょっと普通ではないというか一般的ではないような気がいたします。

 そういったことは、一定期間というのをむしろ通達みたいなもので、おおむねの考え方としては四十八時間程度だというようなのが一般的な法律のつくり方ではないのかなというような感じがいたしますけれども、このことも、ぜひこれから、そういった実際の診療に当たられる医師の方の判断をもっと尊重するような形で法律の制度また文言についても御検討をいただきたいというふうにお願いいたします。

 さらに、有床診療所で入院をした場合の診療報酬でありますけれども、先ほど御答弁の中で、病院に比べると随分と要件が今緩いというようなこともありましたけれども、しかし、この診療報酬を見てみますと、一日当たりの報酬が病院の半分以下でありまして、著しく低い水準になっております。今回の診療報酬の改定で、一定条件のものについて一部改善されたというふうには承知をしておりますけれども、その格差というのは依然として極めて大きいものがございます。さらに、そうした実態に合わせた形での改善を図っていく必要があるというふうに考えておりますけれども、その辺の御見解を伺いたいというふうに思います。

辻政府参考人 ただいま御指摘ありましたように、有床診療所につきましては、部屋の面積等の施設設備面の状況あるいは入院治療に係る医師、看護師等の従事者の配置、こういったところにつきまして異なるところがございますので、したがって、診療報酬も異なる扱いになっているということでございます。

 標準数につきましても、病院に比べれば著しく基準が緩和されている、あるいは配置につきましては、入院業務の従事者数と外来業務の従事者数が明確に区分されていない、こういうような非常に大きな差があることから診療報酬体系に差があるわけでございますけれども、今回、有床診療所につきましては、十六年度の診療報酬改定において、一定の役割を担っているものという意味で、夜間緊急時の対応体制を強化する観点から医師二人以上あるいは夜間に看護職員を配置していることといった手厚い人員配置に着目した形で、有床診療所入院基本料につきまして新たな加算を新設するなどの評価を行ったところでございます。

 今後の展望といたしまして、基本的には、今医療機能というのは機能分化を図っていく、それぞれの医療にふさわしい、病院の機能、診療所の機能といった医療機能の分化を図っていくという方向で議論されておりますことから、有床診療所につきましても、今後、いわば地域における病院との役割分担を含めた機能の状況を踏まえながら、適切な評価に努めてまいりたいと考えております。

上田分科員 またひとつ今後とも御検討のほどよろしくお願いいたします。

 次に、国民健康保険の財政のあり方につきまして、若干何点か御質問をさせていただきたいというふうに思います。

 国民健康保険の財政というのはどこの市町村でも大変厳しいわけでありまして、赤字になっているわけでございます。国民健康保険の場合には、医療費にかかわります二分の一については国が負担をするというような制度になっております。ただ、その二分の一のうち一定の部分については、これは調整交付金というような形で、一律で配分するんではなくて、いろいろな要素を勘案して配分するというような方式がとられております。

 その国保の国の負担の中の普通調整交付金について見てみますと、私の地元であります横浜市では、この普通調整交付金、昭和三十六年の制度創設以来、ずっとゼロになっているということでございます。また、お隣の川崎市でも同じようなものでございます。

 ところが、これは平成十四年度で、厚生労働省の方からいただいたデータを見ますと、同様の規模の政令市であります、例えば大阪市、これは平成十四年度二百七十二億円の普通調整交付金が交付をされている、京都市では九十二億円、神戸市では八十七億円、福岡市では八十一億円となっております。

 これはどうも、何か余りにも配分の方法が不公平なのではないかというような感じがいたしますし、どういうような基準で算定をされているのか疑問に思わざるを得ません。こうした著しい格差が生じているその理由、まずお伺いしたいというふうに思います。

辻政府参考人 国民健康保険財政につきましては、ただいま御指摘の普通調整交付金がございますが、これにつきましては、基本的に、地域により医療費や被保険者の所得の状況等に違いがあることから、これを調整しようとするものでございます。

 具体的には、まず、市町村において実際にかかった保険給付費をもとに算定した調整対象需要額、いわば調整交付金で調整しようとする対象となる医療給付費でございますけれども、この給付費から、当該市町村の医療費や所得の水準をもとに算定した理論上の保険料収入額、いわば取るべきと理論上考えられる保険料収入額、これを控除した差額分を調整交付金として交付することとしております。いわば、ある程度医療費に対応するものの、基本的には、住民所得の低い市町村により多く出る仕組みになっております。

 御指摘の横浜市や川崎市につきましては、今指摘の政令市で所得水準がトップツーでございまして、他の市町村に比べて被保険者の所得が高いこと等から、結果として、調整対象需要額に対して、今申しました理論上の保険料収入額が上回っているため、普通調整交付金が不交付となっているところでございます。

上田分科員 こうした交付金を交付する際に、例えば大都市と町村で差があるとか、そういったことというのは比較的わかりやすいわけでありますけれども、ほぼ人口規模も構造も似ているような政令市の間でこれほど差が生じるというのは、これは算定方法に多分根本的な、構造的な問題があるんではないかというふうに感じておるわけでございます。

 今の御説明を伺いますと、この配分方法では、医療費の支出が多い方が配分されるということでありまして、配分額が多くなると。そうすると、今、厚生労働省も含めて、医療費の伸びを何とか抑制しようというような努力をされている中で、それを効率化して医療費の伸びを抑制すると、今度は交付額が減額をされるというようなシステムになっているんではないかというような感じがいたしました。

 これはどうも、今、厚生労働省としてお進めになっている政策の基本的な方向とも一致をしないんではないかというような気がいたします。こうした今の配分方法をとっておりますと、これは、医療費の総額を抑制していこうという、効率化、合理化を図っていこうというようなインセンティブが働かなくなるんではないかという気がいたします。

 今後、どの地域でも医療費がさらにふえていくということは予想されるわけでございまして、どうも、その中でなるべく医療費の支出を合理化していこう、抑制をしていこうというようなことをすればするほどペナルティーがかかるような仕組みというのは、これはもう既に今の現状には合わなくなっているような感じがしているわけでございます。

 そこで、ここは一つ大臣にお伺いをいたしますけれども、今のこうした交付金の算定の方法というのは合理性がなくなっているんではないかというふうに思いますので、これは見直しを御検討いただきたいというふうに思いますけれども、御見解を伺いたいというふうに思います。

坂口国務大臣 ここはいつも横浜の中田市長さんから御指摘をいただいているところでございまして、そのお話を聞きますごとに、私も、ここは少し見直さなきゃいけないかなというふうに今まで思ってきたところでございます。

 きょう先生から御指摘いただいて、確かに、大阪市のように医療費の高いところに対して調整金がついて、医療費については高くないところがつかないというところがあって、医療費を公正に配分をするというためには多少やむを得ない面がありますが、しかし、平均値よりも医療費をたくさん使うところに行って、そうでないところに行かないというのも、これも何か不合理な気もいたします。ここはひとつ見直しさせていただきますので、少しお時間をいただきたい、そんなに長くはかからないというふうに思いますから、この見直し作業にかからせていただきたいというふうに思います。

上田分科員 大臣の方から、御検討いただけるということでございますので、大変にありがとうございます。

 これはどこも本当に財政に余裕があるという状況であれば問題にはならないんだというふうに思いますけれども、今は、この横浜市も含めますすべての市町村、国民健康保険については財政が非常に逼迫をしている現状でございますし、また、今後、財政という意味からいうと、なかなか改善されるというようなことはないわけでございますので、もちろん、これを全国一律に配分をするということになりますと、それぞれの市町村の財政力の問題とか出てくるので、国においてある程度の調整をするということは私も否定するものではありませんけれども、今お話をいただきましたことも踏まえて、前向きに御検討いただきますことを御要望させていただきます。

 次に、これは今までの話と全く違う分野での話でございますけれども、最近、美容師さんとか理容師さんが、老人ホームなどの施設で、これはボランティアでやる場合もありますし、委託をして仕事をされることもあるんですけれども、そういう活動が非常にふえております。そうした中で、これは地元の業界の方々から、そういった施設を訪問すると、自分の店では免許を持っているというのを表示できるけれども、そういったところに行くと、本当にそういう免許、資格を持っているかどうかというのを証明するものがない、そうすると、これは実際に御利用いただいている高齢者の方にとってももっと安心できるように、何かそういうふうな証明するものがあったら便利なんではないかというようなお話を伺っております。例えば携帯用のカードであるとか証明書などがあると、お客さんも安心できるし、非常に便利なんではないかというような御要望を伺っているところでございます。

 これは、以前、こうした団体の方から御要望をいただいたときに、厚生労働省の方にもどういうような御見解でしょうかということをお伺いをしたことがございます。そのときに、そうしたお話も伺ったので、これから関係団体などともいろいろと意見を聞いた上で検討させていただきたいというようなことでございましたのですけれども、そこで、現状、厚生労働省として今どういうようなお考えか、お伺いをしたいというふうに思います。

田中政府参考人 理容師、美容師の国家試験に合格した者に対しましては、指定登録機関におきまして、理容師名簿、美容師名簿に登録した場合に、それぞれ免許証明書を交付することになっております。当該の証明書は、御要望のように携帯用にはなっておらないというのが現状でございます。

 厚生労働省としましては、このような高齢者等に対する理容、美容サービスの実態、それから今回の御要望の趣旨を踏まえまして、今後、関係者の意見をよくお聞きしながら、さらに検討していきたいというふうに考えております。

上田分科員 御検討いただいているということでございますが、そんなに難しい話でもないので、イエスかノーなのか、そう時間がかかるものでもないのではないかというふうに思います。もう相当な期間、御検討いただいているということでございますので、今いろいろな意見の調整があるのかどうか、やはりそういうようなものは必要ないとか反対であるというような意見もそういう関係者から出ているんでしょうか、どうなんでしょうか。

田中政府参考人 この趣旨に関しましては、非常に尊重するというか非常にいいことであるということは皆さんお認めになることだと思うんですけれども、ただ、免許証の扱いの問題というのが、多少ほかの制度との関係、調整等ございまして、その辺のところを少し関係者間でいろいろと調整をしているというところでございます。

上田分科員 わかりました。大体そういうコンセンサスもできているようでございますので、ひとつ早急に、また前向きに御検討いただければというふうに思います。

 若干時間は早いですけれども、予定した質問は終わりましたので、以上で終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

谷口主査 これにて上田勇君の質疑は終了いたしました。

 次に、村井宗明君。

村井(宗)分科員 民主党の村井宗明です。よろしくお願いします。

 本日は、富山型デイサービスなどと全国的に呼ばれている小規模多機能型デイサービス及びショートステイの問題についてお尋ねしたいと思っております。

 坂口さん、あなたは私にとって父と同じ世代です。ちょうど親子ほどの年の差です。老後はお子さんやお孫さんと一緒に住みたいと思われますか。それとも、高齢者だけの施設で住んでいきたいと思われますでしょうか。高齢者は子供と一緒に住むことによって生きがいや幸せを感じる、そういった論文が出ています。そして、多くの論文では、子供とお年寄りが一緒に住むことによって痴呆になりにくい、そういった統計も出ています。

 これまでの福祉は、行政の縦割りによって、高齢者は高齢者だけ、障害者は障害者だけ、そして子供は子供だけ、そんなふうに縦割りで分けられてきました。そして、特に障害者は、隔離と誤解されるように山奥や郊外に障害者だけの施設がつくられてまいりました。しかし、今、住宅地の中にある民家を改造した小規模な家庭的な施設で、赤ちゃんからお年寄りまで障害の有無にかかわらず受け入れる、そういったサービスが全国的に広がりつつあります。

 富山型などと全国で呼ばれる小規模多機能型の施設のポイントは二つです。一つは、民家を改造した家庭的で小規模な施設であること。二つ目は、赤ちゃんからお年寄りまで、障害の有無にかかわらず受け入れるというノーマライゼーションであることです。

 富山県では、高齢者介護施設に障害者や障害児を一緒にデイサービスに受け入れる試みが、全国に先駆けて実施されつつあります。そして、二十五団体ぐらい、そういった施設が今広がりつつあります。介護保険導入前に、最初に富山県が支援して、そして今全国にどんどん広がっていることから、いわゆる富山型デイサービスなどと言われるようになり、全国からもたくさんの人が研修に来るなど、非常に注目を集めています。地元の北日本新聞や富山新聞でもこの取り組みが連載されていて県民的に注目が集まっており、私自身も、この課題に取り組みたいと思い、当選後、今まで約五十の介護施設を回り、じっくりと話を聞いてまいりました。

 特区において、高齢者のデイサービスに身体障害者だけでなく知的障害者や障害児も受け入れることを認めていただいた坂口さんや厚生労働省の皆様方の御理解に深く感謝を申し上げるとともに、その仕事ぶりを高く評価しています。また、今般、昼間のデイサービスだけでなく、短期入所、ショートステイでもそういった高齢者と障害者の受け入れを一緒にしていくことを認めてほしいという思いを持ちました。

 私たち富山県が、国の構造改革特区の第四次募集に富山型福祉サービス推進特区として手を挙げたところ、二〇〇四年度三月ごろから特区ではなく全国的な規制緩和として認められる見通しになったということ、本当に心から感謝を申し上げます。

 そこで、まず、厚生労働省の老健局長にお伺いいたします。

 このいわゆる富山型デイサービスのような福祉の形、つまり、高齢者や障害者や障害児がともに集い共生していく形についてどのようにお考えでしょうか、御感想や評価をお尋ねしたいと思います。

中村政府参考人 今先生からお話がありました富山型デイサービスということについてでございますが、まず定義をはっきりさせた方がよろしいと思いますので、先生と重なるかもしれませんが、御説明をさせていただきます。

 富山県において民間の先駆的な事業者さんが始められたサービスで、高齢者、身体障害者、知的障害者、それから児童の方、その中には障害児の方も含まれますし、言葉はあれですが、いわゆる健常児の方も含まれる、そういう障害の種別や年齢を超えて一つの事業所でケアをするデイサービスを実施されてきた、これが全国からも注目され、たまたまけさの日経新聞でも報道されておりますが、いわゆる富山型と言われております。

 これまでの私どもの方の取り組みも少し御説明させていただきますと、介護保険創設以前から、平成三年から、実は、障害児ではなくて六十五歳未満の身体障害者の方、成人の身体障害者の方が高齢者のデイサービス事業を利用する場合には、高齢者の方も、老人の方も、措置制度の時代でございましたけれども、いわゆる相乗りを認めている、こういうことはやらせていただいてきたわけでございます。しかし、今お話にありました知的障害の方についてはまだ相乗り制度がなかったということでありまして、そういった中で、富山市や富山県、地元の方で制度外のところに助成されてきた。

 介護保険が始まったときに、私ども、介護保険で基準に該当する部分は介護保険の指定事業所として、また身体障害者の方をそのときに基準上カウントするというような相乗り制度は一般化されてきましたけれども、まだ全国制度としては一般化されていない中で、こうやって富山県の方でやられて、今回特区ということでそれではやってみようじゃないかということで、いわゆる富山方式を特区の方で位置づけましたところ、各地からも申請があり、二十件くらいですか、特区が認められている、こういうふうな状況であると認識しております。

 年齢や種別を超えてケアすることについては、とにかく、住みなれた地域で生活を続けていく、それから、高齢者につきましても、要介護認定で該当された方の半数がいわゆる痴呆性高齢者、要は痴呆の障害を持っておられるというようなことから見ますと、環境の変化が変わることに非常にダメージを受けますので、住みなれた地域で暮らし続けていくことがいいというので、今先生からお話がありましたなじみの居住空間、民家改造の利用とか、それから小規模でなじみの人間関係とか、そういったことが大事であるということは十分認識しております。

 相乗り、障害や年齢を超えてということは非常に結構なことだと思いますけれども、それが例えば同じ施設でやられるのがいいのか、ノーマライゼーションと申しましても地域全般で支えていくということなので、一つの施設でやるのがいいのかどうかについては、実は専門家の中でも一般化できるかどうかまだいろいろな声があるところでございますから、よくその辺は御意見を伺いながら、私ども、本当に先進的にやっておられるところの成果は大きいということは承知しておりますが、一般化いたしますといろいろな方が入ってこられるという問題もありますので、全国に広げるような場合につきましては、特区の精神がそうでございますけれども、よく検証をしてやっていく必要があるのではないかというふうに考えております。

村井(宗)分科員 今高く評価していただいたこと、本当に心からうれしく思います。

 そして、今おっしゃられたように、今後は全国的な規制緩和、そして、高齢者のデイサービスに身体障害者だけじゃなく知的障害者や障害児も受け入れていくことが本当にいいのかどうなのか、そして大丈夫なのかということの実施状況、とりわけ現場の実態について十分調査、確認していただきたいと思います。

 そして、この検証作業を進めていただき、もしうまくいくようだったら、特区だけでなく全国的に広げていただきたいと思うんですが、どうでしょうか。

中村政府参考人 富山型と申しますのは、先生から御説明ありましたように、デイサービスでございます。

 御要望の中には、住むところあるいは暮らし続けるところでも御一緒にという御要望があるわけですが、デイサービスですと昼間の時間だけですからあれですが、三百六十五日、二十四時間御一緒ということになると、さらに慎重な対応が必要だと思いまして、実は私どもも新しいケアのあり方について調査研究を、今年度、十五年度からいたしておりまして、私どもの名前として未来志向研究プロジェクトというのを行っております。

 いろいろなテーマでやっておるわけですが、その中で高齢者の方と障害者の方、障害者の中にも身体障害の方、知的障害の方、精神障害の方がおられますので、テーマの一つと考えておりまして、平成十五年度では全国四つのプロジェクト、地域的には宮城県、岐阜県、北海道などで、それぞれ障害者のホームヘルプサービスだとか精神障害者の方の問題ですとか、宮城県ではまさに富山型を住み込み型でやったらどうなるかというようなことについて調査研究事業を始めているところでございます。

 また、介護保険制度の見直しの中でも、先ほど来からの議論でもなっておりますように、高齢者施策と障害者施策とのあり方、統合の問題ですとか、さまざまな統合の是非などについても重要な議論になっているところでございますので、そういった観点からも、先生おっしゃいますように検証をし、ゴーであればゴーでございますし、まずい点があればそこのところはどうやってそれこそ困難を回避していくか、あるいはマイナス面を回避するためにどうしたらいいか、そういったことを検討していく必要があると思いますので、知見の収集をよく行いまして、よりよいケアのあり方について検討してまいりたいと考えております。

村井(宗)分科員 というわけで、未来志向研究プロジェクトによってデイサービスの分野に限ってはまず研究を進めていただき、実施状況によっては全国的に広げていただくということになるという御返事、本当にありがたく思います。

 そして、次に、さらにショートステイの問題に踏み込みたいと思っております。二床から二十床ぐらいまでの小規模な高齢者介護施設における障害者の短期入所受け入れ、このことについてお尋ねしたいと思います。

 今回、私たち富山県からの、今申し上げた特区申請の内容について、特区だけでなく全国的にショートステイについての規制緩和を進めていくという方針を打ち出されている厚生労働省の御英断に敬意を表したいと思います。

 具体的には、規制特例提案事項管理番号一〇五七〇一〇において、事業者が保護者と緊密な連絡をとり、利用者へのきめ細かな配慮が行われている場合など、利用者に対する適切なサービスが行われている場合にはという条件がついて、小規模な高齢者介護施設における障害者の短期のショートステイを受け入れてくださるということです。この条件の具体的な基準、そして実施上の留意点など、塩田障害保健福祉部長にお尋ねしたいと思います。

塩田政府参考人 今回、富山県、富山市の御提案に基づきまして、障害者の方々が介護保険制度上の基準該当短期入所生活介護事業所を利用することを四月より可能としたところでございます。

 この場合、高齢者を対象とする事業所を、本来利用対象じゃない障害者の方々が利用されるということでございますので、利用者に対するサービスの提供につきまして、事業者が保護者などと緊密な連携をとり、利用者へのきめ細かな配慮を行うなどの措置を講ずることを実施の条件といたしたところでございます。

 具体的な条件ですけれども、例えば知的障害者の方の中には、コミュニケーションをとる際に、例えば何々してはいけないというような表現をされますと自傷行為を誘発するようなこともあるやに聞いております。そういったコミュニケーション上の注意が一つございます。また、自閉症の方々は言葉による情報を苦手としておりまして、写真とか文字とか絵とか、そういう視覚を中心としたコミュニケーションを図る必要などがございます。こういった点につきまして、細心の注意を払っていただくようなことが必要ではないかと考えております。

村井(宗)分科員 今おっしゃられたように、知的障害者のコミュニケーション上の注意、自閉症の方への視覚上の注意などということができているかどうかを判断される判断者はどなたでしょうか。

塩田政府参考人 最終的には、実際にその場でケアとかされている方々の判断になると思います。

村井(宗)分科員 行政側ではなくて、そのケアをされている方々が、適切なサービスができているというふうに判断される、そして認められるということでしょうか。

塩田政府参考人 まず初めには、一応行政もいろいろお話を伺って判断することが必要かと思いますが、最終的には、現場において障害者の方々への細心の配慮がなされることが必要だと考えております。

村井(宗)分科員 では、行政と現場において判断されるということですが、全国的にも二床から二十床ぐらいの小規模な介護施設はたくさんありますが、そのうち、大体、おおよそですが、何割ぐらい認められそうでしょうか。

塩田政府参考人 特に何カ所とか制限しておりませんので、よく実態を聞きまして適切に対応したいと思います。

村井(宗)分科員 それでは、話を移らせていただきまして、今盛んに議論されている問題ですが、介護保険と障害者支援費の統合についてお伺いしたいと思います。

 マスコミの方の情報が先行していて、どこまで決まっているかというのはまだわかりませんし、いろいろ難しい問題を含んでいると思いますが、現時点での検討状況や厚生労働省の考え方をお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

塩田政府参考人 介護保険と障害者の支援費制度の統合の問題でございますが、障害者施策は、介護の問題のみならず、就労とか住まいの問題とか、幅広い観点から議論することが必要であると考えております。

 こうした観点から、社会保障審議会障害者部会を明日からスタートしていただきまして、これからの障害者保健福祉施策の全体の体系でありますとか制度全体のあり方につきまして御議論をしていただくことにしております。その中で、介護保険との関係も含めて精力的な意見交換をしていただきたいと考えております。

 また、介護保険法の附則におきまして、障害者の福祉にかかわる施策等との整合性に配慮して、被保険者及び保険給付を受けられる者の範囲など制度全般について、介護保険法施行後五年を目途に検討することとされております。現在、社会保障審議会の介護保険部会におきまして、介護保険の見直しが論議されているところでございます。

 支援費制度を初めとする障害者施策と介護保険制度との関係につきましては、これらの議論を踏まえつつ、さまざまな機会をとらえまして、関係者の方々、これは障害者団体もございますし、地方自治体、企業の関係の方、事業者の方々、国民各層の幅広い意見をお聞きしながら、慎重に、これからまた精力的に検討してまいりたいと思っております。

村井(宗)分科員 ありがとうございます。それでは、その際に、できるだけ統合を行う場合は、障害者への不利益が生じないように十分な配慮をお願いいたします。

 次に、そういった形で今小規模な介護サービスについて議論を進めてまいりましたが、特にNPOが運営する場合の小規模な介護サービスについてお伺いしたいと思います。

 小規模の介護サービスの運営は、社会福祉法人ばかりでなく、最近はNPO法人などが多数参入してきております。地元の富山県でも、先ほど答弁でおっしゃられたように、先進的なNPO法人が富山型デイサービスの重要な担い手となっています。地域のニーズに密着した良質な事業を提供しているNPOの取り組みをより推進する方策についてお伺いいたします。

 特に、現在話題となっている小規模多機能サービス拠点について、老健局長さんから御説明を願いたいと思います。

中村政府参考人 お答えを申し上げます。

 まず、先生のお話は二点あったかと思います。NPOの方々などが介護保険にいろいろ参入されておられる、そこを、社会福祉法人だけではなくてそういった方々に対して介護保険の担い手になってもらうべきではないか、こういう御指摘。そういった中で小規模多機能サービスが議論されているけれども、どうなんだ、こういうことだと思います。

 御承知のとおり、介護保険制度では、特に在宅サービスにつきましては、事業者の方のいわば主体の制限と申しますか、例えば医療法人でなければならないとか社会福祉法人でなければならない、そういうことは一切規定しておりません。したがいまして、NPOの方々、あるいは農協、生協の方々、あるいは営利法人の方々の参入は自由になっております。

 いろんな分野、例えば訪問介護、ホームヘルパーさんの事業などは、そういった意味でかなり営利法人やNPO法人の方が入っておられますし、それから小規模というお話がありましたけれども、グループホーム、これは介護保険を始めましてから、介護保険前は全国に二百六十六カ所ありましたんですが、現在は四千カ所を超えるというようなことで大変爆発的にふえておりますが、そこのかなりの部分は営利法人の方あるいはNPOの方が担っていただいているという状況でございますので、そういった意味で、介護保険の方は参入問題についてはかなりオープンで、ほかの福祉や医療の分野にないほど開かれているというふうに思います。

 逆に、それだから問題も多いという御指摘もありますし、残念ながら、介護保険がスタートして、問題があって指定取り消し事業所の多くの部分が営利法人であるという問題も生じておりますので、我々、その辺は兼ね合いを考えながらきちんとやってまいりたいと思います。

 そこで、お尋ねの小規模多機能サービス拠点ということでございます。

 先ほど来先生からお話がありましたデイサービスなどもそうでございますが、どうも介護保険をやってみまして、先ほどちょっと御説明させていただきましたが、痴呆性高齢者の方も多いというようなことで、できるだけ地域に多くの拠点をつくってサービスをしていった方がいいんではないか、こういう議論が起こってまいりました。というのは、他方で在宅サービスが相当ふえておりますけれども、引き続きやっぱり施設に入りたいという施設入所希望も非常に強いということであります。

 そこを分析していきますと、我々専門家の方であるいは施設の専門家から見ても、施設入所ほどではないけれども非常に在宅での暮らしが御不安に思って施設希望もまだまだ高いということで、昨年、高齢者介護研究会という研究会で御審議願ったんですが、在宅において三百六十五日、二十四時間必要なときは介護サービスが届くんだ、こういう介護の安心を高めることがやはり在宅での高齢者の方を支えている御家族に対する支援にもなりますし、障害を持っても在宅で暮らし続けたいと言っておられる高齢者の方を支援することになるんじゃないか。

 そこで、三百六十五日、二十四時間安心のサービスということになりますと、自分のところはデイサービスだけだ、あるところはホームヘルプだけだ、あるところはショートだけだ、こういうことではなかなか調整もうまくいきませんし、また高齢者の方も、最初は通って、なじみになったデイサービスセンターからヘルパーさんに来てもらう、またぐあいが悪くなってきたら週に何回かはそのなじみになったデイサービスセンターに泊めていただくということで、痴呆性高齢者の方々なんかが非常に弱いと言われています環境の変化、人間関係の変化にいいサービスができるじゃないか、そういったことから小規模多機能サービス拠点が必要だという議論が報告書の中でも出ております。

 具体的には、日中の通いや一時的な宿泊、緊急時や夜間の訪問サービス、さらに、宿泊じゃなくて、非常に心身の状況が弱ってきた場合には、居住するというか入居サービス、こういったものが一つの施設、拠点でできるようなサービスがいいんじゃないのか、それは例えば富山型デイサービスに居住の部分をつくるとか、そういったことによって実現されるんではないかということでございまして、そういう提案がされております。

 したがって、基本的には日中のデイサービスが核になって泊まり部分まで広がるとか、あるいは有床診療所、医療機能で頼ってこられる機能を持っているところに泊まりの施設をつくるとか、そういったことで、いろんな地域の実情あるいは地域の特性、そういうことに応じながら弾力的なサービス提供拠点が整備できないかというのが課題になっている。

 これは、言うはやすくして、制度といたしますと、基準をつくらなきゃなりませんとか、どういう報酬を設定するかとか、課題が相当多いわけでございますので、我々、結論を申し上げますと、現在各地で自主的に行われている取り組みについてよく研究させていただいて、どういうことが基準なり報酬で担保できれば事業として成り立つのかというようなこともよく考えまして、これから行おうとしております介護保険制度の見直しや、それから再来年にございます介護報酬の改定などにおいて、本当に実現可能な案ができるのであればそれを実現してまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。

村井(宗)分科員 ありがとうございます。

 坂口さん、今老健局長さんがおっしゃられたとおりです。アンケートによれば、家族は施設に入ることを望んでおられます。しかし、当事者である高齢者は住みなれた地域で暮らすことなどを望んでいます。坂口さん御自身は、入院モデル、医療モデルなどと呼ばれる郊外の大規模な施設で住みたいですか。それとも、生活モデルなどと呼ばれる住みなれた地域で民家を改造した小規模な家庭的な施設で住みたいですか。また、お子さんやお孫さんも一緒に住み続けたいと思いますか。それとも、高齢者だけの施設で住みたいと思いますか。

 それでは、質問に入らせていただきます。これらの富山型などと呼ばれる小規模多機能サービス拠点を推進すべきと私自身は考えているところですが、坂口厚生労働大臣はいかがお考えでしょうか、お伺いいたします。

坂口国務大臣 これからの介護の問題につきましては、多機能、小規模、住みなれた地域、これらはキーワードになると思っておりますが、この富山型の場合には、それらをすべて含んでいる。役所からいろいろなことを、あれをやれ、これをやれというのは、なかなかうまくいかないことが多いわけでございますが、私が言うのは変でございますけれども、なかなかうまくいかないわけでございますが、地域からつくられてきた、地域において芽生えた制度である、ここは非常にそういう意味で大きな意味を持っているというふうに私は思っております。

 したがいまして、これはそれぞれの地域でもう実験済みでございますし、いろいろの面でうまくいかないところは直されて、そしてやはり地域に合った方法になってきているというふうに思いますから、だから、このモデルが示されましたときに、全国からぜひ自分のところもそれを利用したいという人が多く出てきたんだろうというふうに私も思っておりますし、大変歓迎すべきことだというふうに思っております。

 その富山県の先見性に私は敬意を表したいと思いますし、こうした行き方が幾つかまた違う場所からも出てまいりまして、そうした特徴を生かしたものが、幾つかを選択できるようになると、もう一つこれは前進するのではないかというふうに思っております。

 ぜひこの富山型デイサービスを参考にさせていただいて、そして全国多くの地域でこれが活用されるようになることを期待したいと思いますし、またそれに対して支援を申し上げたいと思っております。

村井(宗)分科員 ありがとうございます。坂口厚生労働大臣には、今後の介護保険の見直しについて全国の先進的な地域の取り組みを反映した上で、さらに介護保険制度を発展させていただければと思っております。

 冒頭でも申し上げましたように、富山型デイサービスでは、家族的な小規模事業所が高齢者も障害児も障害者も一緒に受け入れて、お互いに助け合う環境をつくろうと努力しています。高齢者の痴呆症に関する研究を見ても、子供と一緒に暮らしている高齢者の方が、高齢者だけで暮らしている方よりも痴呆になりにくい傾向が見られるようです。

 そこで、将来的な検討課題として御提案したいわけです。高齢者と障害者の合流の次の段階として、子供も受け入れていただければと思っております。特に、今学校の空き教室がどんどんふえてきています。また、少子化に伴う小学校の統廃合によって、あいている小学校なども出てきています。そういった学校の施設の有効利用によって、新しい介護施設を受け入れていただくことなども検討していただければと思っております。

 以上、私見を御提案させていただき、時間が参りましたので、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

谷口主査 これにて村井宗明君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。

    正午休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

谷口主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。大前繁雄君。

大前分科員 私は、自由民主党の大前繁雄でございます。

 私は、障害者の問題をいろいろお聞きしたいんですが、特に就労の問題を中心にしてお聞きしたいと思います。

 私たちが若いころといいましたら大体昭和三十年代から四十年代なんですけれども、そのころ、障害者が通り抜けなければならない人生の壁というのは三つあるということがよく言われました。教育、就職、そして結婚という三つの壁がございました。これは大体ポリオが障害者の中心を占めていた時代なんで、比較的軽い障害者を対象にした壁なんでございますけれども、最近は障害も多様化してまいりまして、むしろポリオ的な軽い人たちは健常者に近い存在として取り扱われまして、新しい壁として、まず療育、訓練といいますかリハビリといいますか、療育が、生まれてから第一の壁、それから第二の壁が教育、そして第三の壁が、学校を卒業してから、養護学校などを卒業してからの就労の場、この三つの壁を、障害児、障害者は乗り越えていかねばならないと言われております。

 その中の結婚につきましては、もうほとんど今の障害者については話題の対象外になっておりまして、軽い人にとっては話題になっておるのでございますけれども。また、教育につきましては、昭和五十四年度の義務制の施行以来、日本の国では、障害者に対しては十分行き渡っているという。療育についても、通園事業が進みまして、問題がない。やはり取り残された問題が就労の問題。就職といいますか、福祉施設へも含めての就労の問題だと言われているんですね。これが、長い間当局の皆さん方も努力してこられたんですけれども、なかなかうまくいかないというわけですね。特に、最近の平成の大不況のあおりを受けまして、障害者のリストラあるいは就職難、就労難が続いているわけでございます。

 そこで、まず、障害者の雇用率の達成状況についてお聞きしたいんです。

 バブル期には随分と、国や都道府県などはもちろんのこと、民間企業でも法定雇用率を上回る事業所がかなりあったと言われておりますけれども、それが最近、障害者がリストラされるとか就職先がないといった相談をよく受けるようになっているんですね。私も、地方議員をしておりまして、大体、景気というのは就職の相談を聞いていたらわかるなと思っているんです。景気のいいときはまず就職の相談というのはないですからね。就職の相談がだあっとふえてきますと、ああ、非常に景気が悪くなっているなということを実感するんでございますけれども、最近の雇用率達成状況の推移について、まずお伺いしたいと思います。

太田政府参考人 障害者の雇用率達成状況についてのお尋ねでございますけれども、平成になってからのこの十数年のトレンドを見てまいりますと、まず、平成の初めのころ、平成二年度、三年度、いわゆるバブルのころの実雇用率が一・三二%でございましたが、その後、少しずつ上昇を続けまして、平成十一年度から十三年度までは、一・四九%まで上がってまいりました。ただ、平成十四年度におきましては、厳しい経済情勢、雇用情勢を反映いたしまして、〇・〇二%低下しまして一・四七%になりましたけれども、平成十五年度におきましては、前年度から〇・〇一%回復しまして、一・四八%となっているところでございます。

 このように、長期的に見ますと実雇用率は少しずつ改善してきておりますけれども、近年は横ばい傾向にありますし、また、依然として法定雇用率の一・八%を下回っているということでございまして、障害者を取り巻く雇用情勢、厳しいものがあるというふうに認識しているところでございます。

大前分科員 今お聞きいたしますと、むしろ最近の方が雇用率が高まってきて、横ばい傾向が続いているというような御説明があったのでございますけれども、しかし、考えてみますと、実際の一般の失業率というのが随分と最近は高くなっていますから、そういう中での横ばいということは、同じく、障害者についてもリストラが行われたり、厳しい就労状況が続いていると判断していいんじゃないかと思っております。

 そこで、これに関連をいたしまして、雇用納付金制度についてお伺いしたいんです。

 法定雇用率未達成の事業所には、申告によって一人五万円納める納付金制度というのがございます。ところが、いつも私は奇妙に思っていたんですけれども、これは罰金じゃなくて、申告によって納付するということになっているんですね。なぜこれを罰則扱いにしないのかという点、また、申告せずに納付を免れる事業所もあると思うのでございますけれども、その場合、どのように徴収をしておられるのか、この二点についてお聞きしたいと思います。

太田政府参考人 障害者の雇用納付金制度についてのお尋ねでございますけれども、この納付金は、障害者の雇用に伴います経済的負担に着目しまして、そのバランスを調整いたしまして、経済的側面から事業主の障害者の雇用に関する社会連帯責任の履行を求めるために徴収しているものでございます。

 このように、この納付金というのは、事業主間での経済的負担の調整を行うものでございまして、一方、一般的には、罰金というものは反社会性の強い行為に対する制裁として賦課されるものでありまして、両者は性質の異なるものであるということでございます。納付金につきましては、経済的負担の調整ということでございます。

 それから、もう一つは、具体的に、納付の義務でございますけれども、常用雇用労働者数三百一人以上の事業主はすべて申告書を提出する義務がありまして、申告してこないところ、未申告の事業主につきましては、すべて調査いたしまして、徴収機関が納付金額を決定した上で納付告知書を送付することになっております。さらに、滞納している事業主に対しましては、期限を指定して督促を行う等の手続を経た上で、国税滞納処分の例によりまして、これを強制的に徴収するということにしております。

 収納率でございますけれども、平成十四年度におきましては、九九・八%と極めて高い収納率になっているところでございます。

大前分科員 収納率が一〇〇%近いということで、雇用率未達成事業所が納める納付金の総額というのは相当な額に達すると思うのでございますけれども、現在までの納付金の累計額とその使途、使い道ですね、その内訳並びに累計残額の管理の方法についてお教えいただければと思います。

太田政府参考人 平成十四年度におきます障害者雇用納付金の収支実績でございますけれども、収入が約二百四十六億円でございます。支出が百八十九億円でございます。最近、ちょっと剰余金が、積み立てがふえておりまして、剰余金の累計額が三百八十九億円でございます。

 この剰余金につきましては、積み立てた上で、将来の雇用対策に用いることにしているものでございます。

大前分科員 どこで管理をしておられるんですか。基金的なものがあっているのかどうか。

太田政府参考人 剰余金の運用につきましては、障害者の雇用促進法で運用方法が決められておりまして、基本的には、国債、地方債等の有価証券の取得あるいは銀行等への預金ということで管理を行っているところでございます。

大前分科員 貯金とか国債とかいう以外には、一切ほかには流用していないんですか。その点についてお聞きします。

太田政府参考人 基本的に、法律に定められたとおりの運用でございますので、ほかには一切運用は行っておりません。

大前分科員 私がこういうことを聞きましたのは、先日、障害者の保護者団体の総会がありまして、そのときに、こういう問題に詳しい、れっきとした大学の先生が講演をされたんですけれども、その中で、すごい額の納付金の累計残があって、それも、言ってみれば年金の福祉施設、グリーンピアみたいな、ああいうようなのと同じように、労働福祉会館とかそんなところへ使っているんじゃないかという疑いを持っているというようなことをはっきり言われたので、私は妙なことをおっしゃるのだなと思ったけれども、一度聞いてみようと思いまして聞いたんです。そういう事実は全く、可能性としてもあり得ないということですね。

太田政府参考人 納付金の使途につきましては、障害者雇用促進法におきまして、法律上定められております。大きく二つに分けられまして、一つは、雇用義務数を超えて身体障害者または知的障害者を雇用する事業主に対しまして調整金を支給するということで、その経済的負担の平等化を図るということが一点でございます。それから二つ目は、障害者を雇用するために作業施設とか設備の整備を行う事業主に対しまして助成金を支給しております。

 このように、納付金の使途につきましては、法律上、障害者の雇用を促進するための事業に限定されているところでございます。したがいまして、一般的な福祉施設に使うということはございません。

大前分科員 今も御説明があったんですけれども、納付金につきましては、徴収をされる理由から考えて、当然、全額、障害者の就労対策、雇用対策に使われるべきだと考えるのでございますけれども、三百八十九億という残は少し大きいような気がいたします。特に、今のような深刻な不況で、障害者の雇用に難渋している状況でございますので、もう少し思い切って就労対策に使ったらどうかと思うんですけれども、この問題についてどのようにお考えか、お聞きします。

太田政府参考人 この納付金の使途につきましては、御指摘のとおり、全額、就業対策に使うべきでございますし、実際、そのように使われているものでございます。

 最近ちょっと剰余金が、積み立てがふえておりますけれども、これは、過去には積立金が著しく減少して助成金の支給等にも非常に苦労したという時期もあるものでございますので、その性質上、大体一年から二年分程度の積立金は必要ではないかと考えております。

 ただ、大分積立金も出てまいりましたので、今年度から、一定数以上の障害者を雇用する事業主に支給されます調整金、報奨金につきまして額の引き上げを行っております。また、助成金制度についても、より事業主の利用が進むよう見直しを行ったところでございますので、かなり支出の方も今年度以降ふえてまいるのではないかと考えております。

 それからさらに、今後の課題とされております精神障害者の雇用支援策あるいは在宅就労に対する支援策の拡充も検討しているところでございますので、こういう対策につきましても納付金の活用を図ってまいりたいと考えております。

 いずれにいたしましても、せっかくいただいた納付金でございますので、雇用対策に有効に使わせていただきたいと考えております。

大前分科員 例えば、私、オーストラリアとかああいうところに行きますと、大体、一般の人の失業保険の受給というのは二年とか、あるいは北欧なんかに行きますと四年ぐらい支給しているんですね。我が国の場合は、一般の失業保険の給付期間というのは長くても一年未満でございますけれども、セーフティーネットという意味から、少々額を抑えても長くすべきだという考えを僕は持っているんです。せめて障害者だけでも失業保険の受給期間を長くするとか、そういうような原資としてこの納付金を使うというのも一案じゃないかと思うんですけれども、そういうことは将来的に考えておられるかどうか、お聞きしたいと思います。

太田政府参考人 この納付金制度は、先ほど御説明申し上げましたように、事業主間で経済的負担の調整を図るというものでございますので、いわば、雇用義務を果たしていない事業主から納付金を徴収いたしまして、障害者雇用で相当の努力をしている事業主に調整金あるいは助成金として還元するというのが制度の趣旨でございます。したがいまして、事業主間でいただき、それを還元するという仕組みでございますので、なかなか障害者本人に対する支給というのは制度上難しいのではないかというふうに考えているところでございます。

大前分科員 弾力的に、今後いろいろ知恵を絞っていただきたい、そういうことを要望しておきます。

 次に、これも障害者の雇用、就労と絡む質問なんですけれども、障害者の基礎年金問題についてお聞きをしたいと思います。特にその等級決定について、非常に障害者の間で不満というのが寄せられておりまして、そういう問題をお聞きしたいと思うんです。

 先ほども申し上げましたとおり、私は、三年ほど前に北欧諸国を訪ねまして、向こうの福祉システムというのをつぶさに勉強させていただいたんですけれども、一番強く感じましたのは、障害者とか高齢者といった福祉対象者に対して、北欧諸国が、我が国のような標準対応ではなくして、徹底した個別対応を行っているという点ですね。例えば、ホームヘルパーの派遣につきましても、我が国の場合は、介護保険制度で若干個別対応的色彩は強くなっておりますけれども、やはり標準対応的色彩の方が勝っておりまして、これに対して、北欧では、対象者個々人の実態をつぶさに調べて、聞いて、それで必要と認定されますと、どんなにお金がかかっても徹底した対応を個人ごとに行うということですね。その結果、日本ではとても考えられないような、障害者とか高齢者に対する二十四時間、一日じゅうホームヘルプサービスを行う、ホームヘルパーを張りつけるといったことも当たり前のように行われているわけですね。

 ところが、我が国の場合には、先ほど言いましたとおり、標準対応的色彩が極めて強い。あなたは一級だからこれですよ、あなたは二級だからこれですよというような対応ですね。そういう標準対応的色彩が極めて強くて、特に障害者の福祉対策については、標準対応の弊害がこれまでから強く指摘されているところでございます。

 例えば、障害者の年金を例にとりますと、我が国の場合、標準対応をとっておりますので、脳性麻痺で身体障害者手帳四級ぐらいの人を想定していただいたらいいと思うんですけれども、そういった障害者の場合、年金等級は大体一、二級には該当せずに、身体障害者手帳の等級に近い判断で、結局、障害基礎年金は受給できないわけなんですね。脳性麻痺の障害というのは、ここにおられる方なら皆御存じだと思うんですけれども、軽い場合、軽度と言われましても、全身に満遍なく麻痺がある、障害があるので、一般事業所での就職というのはまず難しいんですね。だから、仮に生活、身辺介助は自分でできて、そこそこ歩いたり、場合によっては車の運転免許を取れるぐらいの、装具をつければですよ、取れるぐらいというような人でも、なかなか就職というのは難しいわけですね。そういう障害者、中軽度の脳性麻痺の障害者は、結局、学校を卒業してから就職もできない、そして年金ももらえない、無収入で困った状況に置かれる、そういう人がたくさんいるわけなんですね。

 一方で、例えば、交通事故なんかで下半身がだめになったような人たち、この人たちは中途障害ですから、ばんばん仕事ができますね。上半身はもう元気いっぱいですからね。ところが、身体障害者手帳は一級ですから、大体、年金等級でも一級をもらえるわけなんですよ。就職もできる、そして一方で年金ももらえるということで、非常に恵まれた状況になるわけなんですね。

 こういうケースの場合、北欧だったら、恐らく、個別対応を行いますので、脳性麻痺の、満遍なく麻痺のあるような障害者だったら、仕事ができないということで、無条件に年金が支給されると思います。

 私は、先ほど言いました、交通事故で中途障害になった人に年金を支給するなということは決して言っているわけじゃないので、そういう人たちには当然支給していただいて結構なんですけれども、一方で、年金ももらえない、就職もできない、こういう困った、中軽度の脳性麻痺のような障害者の人たちにも、当然年金を支給してあげるべきだと思うんですね。障害基礎年金の等級決定については、大体は生活能力、身辺介助ができるかどうかということを基準にして今決められているようでございますけれども、やはり稼得能力といいますか、就労能力を加味してといいますか、それを基準にして考えていくべきだと思うんですけれども、この点についてのお考えをお聞きしたいと思います。

坂口国務大臣 障害者の等級につきましては、いろいろ御議論のあるところでございまして、過去におきましては、手が御不自由でありますとか、指が御不自由でありますとか、あるいは目が見えないといったような、そういうことを中心に、外見から見えるところで決めてきたわけでございますが、最近は、内部臓器の障害の皆さん方にもこの障害の等級をつけるということになってきたものでございますから、こちらはつけて、なぜこちらにはつけないかというような対比の問題もございますし、外的な障害と内部障害との間の格差の問題もあり、さまざまな議論が今されているところでございます。ですから、いろいろ御指摘いただくのも、私は当然のお話だと思いながら聞かせていただいていたわけでございます。

 もう一つは、今お話にございましたように、障害者が就労いたしますときに、就労しにくさによってこの等級が決まっているわけではなくて、そのときの生活を基本にして決まっているものでございますから、そこは、就労に対してできるできないということとかなり格差はあるんだろうというふうに思います。

 かなり重い方でも仕事のできる方がございますし、それほど等級は高くない、低いんですけれども仕事はなかなか難しいという方もあったりいたしまして、その辺の整理は必要だと思うんですが、ただ、就労というものと障害というものを考えましたときに、その就労のどういうことをするかということによって、できるできないというのが決まってくるものですから、その仕事の中身と、そして、この障害者の障害程度というものとの関係で非常に複雑になるものですから、基準がなかなかつくりにくいということが一つはあると思うんですね。非常に難しいお仕事をなさる場合と、簡潔明瞭な仕事をする場合と、同じ障害者でも、その到達度と申しますか、そういうものは違うものですから、そこに難しさがございまして、なかなかそこは進んでいないというのが現状でございます。

 しかし、初めにも申しましたとおり、障害の程度もさまざまに、障害の中身もさまざまになってきましたし、内部障害の問題も一度整理をしなきゃならない時期に来ていることは確かだというふうに思っておりまして、いろいろな角度から今ちょっと検討をしてもらっているところでございます。

大前分科員 ぜひとも実態に合うように、今大臣がおっしゃられましたように検討をしていただきたいと思います。

 成人に達するまでの保護者に支給される特別児童扶養手当については、やはり障害児の生活能力といいますか、身辺介助能力、身辺介助の難易度とかそういうことによって等級が決められるのは当然ですけれども、やはり、本人に支給される年金というものは、所得稼得能力といいますかね、そういう就労能力といった点で要素をぜひとも加味してあげないと、本当に、そこそこ一人前なんだけれども就職できなくて年金ももらえないという障害者が、町中にそこらじゅうに困っているという事態を改善できないと思いますので、ぜひともよろしくお願いしたいと思います。

 それで、これは先ほどの納付金の問題でお聞きをしましたので、大体お答えは想定はできるんですけれども、やむを得ずに、年金等級が支給対象になる二級までに入らずに、かつ就職もできない、こういった障害者に対して納付金制度を活用するというお考えはないかどうか、お聞きしたいと思います。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど来御説明申し上げておりますが、この納付金制度は事業主間での経済的負担の調整という仕組みでございまして、雇用義務を果たしていない事業主からいただいて雇用について頑張っている事業主の方にお戻しする、還元するという仕組みで、事業主間での調整ということでございますので、なかなかこの制度の趣旨からいたしますと、就業できない障害者本人に対する生活保障に用いるのは困難ではないかというふうに考えているところでございます。

大前分科員 私は兵庫県で県会議員をいたしておりましたときによくこの問題を取り上げまして、当時の労働部と福祉部とがお互いうちの領域じゃないということでドッヂボールをされて困ったんですが、このたび厚生労働省になって一本化されて垣根も取り払われましたので、こういった労働と福祉の垣根も非常に低くなったと思いますので、そういう点を考慮していただいて、今後よりよい障害者の福祉対策を進めていただきたいと思います。

 それで、この問題について一言だけ提案みたいなことを申し上げておきたいんですけれども。

 先日朝日新聞でも障害者の雇用が行き詰まっているという記事がございましたけれども、国としてもある程度発想を変えまして、施設とか事業所とかの大規模なハード面を整備しなければならないような事業所ではなしに、西宮市で清掃サービス企業組合というのがございまして、これがお年寄り一人と障害者二人、知的も精神も身体も全部含めまして障害者二人とお年寄り一人を組み合わせまして、公園とか河川とかの清掃作業、これは何もハードの施設は要らないんですよね。掃除する用具さえあったらいいんですね。それで随分と障害者を雇用しておりまして、雇用奨励金も随分もらっていると言っておりましたですけれどもね。

 これは、日本全国にたくさんの公園があり河川もあるわけですから、そういうところで障害者とかお年寄りをセットにして活用していくという方法もぜひとも参考にしていただいて、この障害者の雇用問題の解決に資していただきたいと思います。

 最後に、もう時間がなくなりましたので、社会福祉施設整備費にかかわります国庫補助減額というのが今地方自治体で随分大きな問題になっておりますけれども、これが十六年度以降についても何とか、特に私のおります兵庫県なんかからは何とかしてほしいという声があるんですけれども、十五年からの継続事業の場合にはどうなるのか、その点だけお聞きしてもう質問を終わりたいと思います。

塩田政府参考人 十六年度の障害者の施設整備の予算は大変厳しい状況にございますが、継続的な事業については優先的に採択できるよう努力したいと思います。

大前分科員 十五年度については全く減額しないということですね。

塩田政府参考人 平成十五年度におきます障害者施設の施設整備の国庫補助内示につきましては、十四年度からの継続事業分につきましては十五年度四月十一日、十五年度の新規事業分につきましては五月九日に国庫補助内示を行ったところでございます。十五年度国庫補助内示分にかかわります必要な予算は確保されておりますので、事業者側の整備計画の変更等事業遂行が困難となった場合など、特別な事情がない限り、一たん内示したものを取り消すことはありません。

大前分科員 以上で終わります。

谷口主査 これにて大前繁雄君の質疑は終了いたしました。

 次に、内山晃君。

内山分科員 民主党の内山晃でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 本日は、社会保険事務所の年金相談業務のあり方、年金知識の普及促進、障害年金について、この三点についてお尋ねを申し上げたいと思います。

 年金受給者が二〇〇二年度末三千七十六万人となり、前年度より百二十五万人増加したと、社会保険庁がまとめた社会保険事業概況報告で明らかにされました。年々増加する年金受給者に対する社会保険事務所の年金相談業務はますます重要となっております。増加する年金受給者に対して、今後どのように対応するのか。また、年金相談を希望する勤労者の多くは、平日は仕事のため、社会保険事務所に出向くことは大変困難であります。現に、配偶者等がかわりに相談に出向いていくことが数多く見受けられます。

 そこで、土曜も日曜も年金相談を受けられるような、ニーズに即した行政サービスの拡充を図る必要があると考えますが、坂口厚生労働大臣のお考えをお聞かせください。

薄井政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘ございましたように、社会保険、年金を受け取っておられる方、実受給者ベースで申し上げまして三千万人を超えた、こういう状況でございます。そしてまた、これからいわゆる団塊の世代が年金受給世代になってくるということでございますので、これらに対応いたしまして相談件数というのもふえてくるというふうに私ども考えております。

 これに対応いたしますために、私どもとしては、全国三百十二カ所の社会保険事務所、それから社会保険事務所のいわば分室と言っていいかと思いますけれども、年金相談センター、こういうふうなところを設けまして相談に対応させていただいているところでございます。正規の職員だけでは対応できない部分につきましては、謝金職員の活用、年金相談員等を活用するということで相談に対応させていただいているところでございます。

 土日もというお話がございました。土曜日、日曜日ということを考えますと、年金関係の記録を保管しておりますオンラインのシステムの関係あるいはそのための体制というのがございますのでなかなか一挙にというのは難しいところではございますけれども、例えばインターネットを通じまして自分の年金見込み額の試算ということの申し込みも受け付けられるように先般させていただきましたし、そのほかインターネットでの簡易見込み額試算とか、こういったこともさせていただきまして、できるだけアプローチができるようにというふうなことでこれからも努力させていただきたいと思っているところでございます。

坂口国務大臣 この年金に対する相談というのは大変大事になってまいりました。今お話ございましたように、なかなか日中には行けないという方も非常に多いわけでございます。お若い皆さん方に対しましては、インターネット等を通じましてお申し込みをいただいて、それに対してお答えをできるようにしているわけでございますが、高齢者の場合に、そうインターネットが自由に使いこなせるというわけでもございませんので、そういう皆さん方に一体どうするかという問題、これは残るだろうというふうに思っております。

 駅等の一室を借りて相談所を設けたりという、いわゆる分室と言っておりますけれども、そういうようなのも全国で七十一カ所ぐらい今つくっているわけでございますが、これからそうしたところをふやしていって、そして、一番身近で気軽に御相談をしていただきやすいようにしていくということが一つの方法ではないかというふうに思っております。

 ただ、相談を受けましたときに、本家本元の、コンピューターに入っておるものですから、そうすると土曜も日曜も回さなきゃならないというところがあって、そこを一体どうするか。土曜日、日曜日等で御相談を受けた場合にそれをちゃんと後で御報告できるような形にするか、そうしたこともあわせて考えていかなきゃならないというふうに思っている次第でございます。

内山分科員 予算措置の問題であれば土日も回せるということですけれども、それでは、もし土日に回させようとすれば、一体いつごろから検討なさるのか、ちょっとお尋ねをしたいと思います。

薄井政府参考人 コンピューターシステムの関係で申し上げましたのは、例えば昼間はいろんな仕事が動いております。相談の方、あるいは裁定請求の方、そういった仕事をやっておりますが、それ以外の時間、例えば夜も、いわゆるまとめてやる処理とか、そういう格好で動いておりまして、その間はなかなか新しい入力とかができないという部分もございます。

 ただ、相談ということであれば、情報を見るだけという部分もございますので、その辺も含めてちょっと研究をしてみたいと考えております。

内山分科員 時間軸をちょっと聞きたいんですけれども、研究ではなくて、いつごろまでにというところの目安を聞きたいと思います。

薄井政府参考人 本件につきましては、いずれにいたしましても、単にそのシステム周りの話だけではなくて、人員体制面、そういった議論もございます。そこら辺も含めまして十分検討させていただきたいということで、今の時点でいつどうこうということはなかなか申し上げにくいということは御理解をいただけたらと思います。

内山分科員 とある社会保険事務所では、一日四百名も来る、そして、朝の一番に申し込みをしてもお昼ごろまで相談を受けられない、また、お昼近くに行きますと、もう午後の分も受付が終了している、こういった現状が実際あるわけです。年金受給者にそういう長時間を待たせる、また二回も三回も行かなければならないという現状が実際あるわけでありまして、年間百万人以上を超えている受給者があるわけですから、これはやはり早急に検討をして予算措置をとってもらいたい、こう思います。

 それでは、次の質問に行きます。

 同じく、社会保険事務所の年金相談員の知識に非常にばらつきがあるという問題があります。担当者によっては異なる回答をよこします。年金受給者に不利益があってはならないと思います。

 そこでお尋ねをいたしますけれども、年金相談員になるにはどのような資格や採用基準を設けているのか。また、改正法や何かがあります。新しい知識の研修はどのように習得をさせているのか、そしてその評価というのはどのように行っているのか、坂口厚生労働大臣にお尋ねをしたいと思います。

薄井政府参考人 年金相談に携わっております正規の職員以外の職員、非常勤の職員ということで、全体で千五百名ぐらいの方に委嘱をして、年金相談あるいは社会保険の相談ということに当たってもらっております。

 これらの方の中で、シニアクラスとジュニアクラスと言っていいのかもわかりませんけれども、基本的には社会保険関係の仕事をかなり長く経験された方、私どもの職場第一線で仕事をしてきた人というのも一つのグループになりますけれども、シニアな方について申し上げますと、地方の社会保険事務局なりあるいは社会保険事務所に勤務した期間が合算して二十年以上の方、あるいはそれと同等の知識をお持ちの方、これは、企業等でそういうふうな仕事をされた方もあろうかと思いますし、それから社会保険労務士の資格をお持ちの方というのもあるかもわかりませんが、そういうふうな方がシニアな方ということでございます。

 それから、一般的な相談に対応される方につきましては、私どもの関係の仕事の経験が五年以上、あるいは民間におきます経験、社会保険関係業務の経験ということでいきますと八年以上の方、こういう方にいわゆるジュニアな意味の相談員ということで委嘱をさせていただいております。こちらの方も、今申し上げましたような機械的な要件だけではなくて、それに準ずるようなふさわしい知識、技能を有する方につきましては委嘱をさせていただくということで対応させていただいております。

 もちろん、これらの方々につきまして、やはりきちっとした研修ということが必要になってくるわけでございます。基本的には現場におきます各種研さんということが重要になってまいりますけれども、中央におきましても、毎年五回ほどの機会を設けまして研修会を開催する、これは全員が参加できるというわけではございませんけれども、そういうようなことなどを通じまして、委嘱の資質の向上ということに努めてまいってきているところでございます。

 これらの方々、委嘱時におきます能力評価、あるいは委嘱後におきます研修の充実ということを通じまして、資質の向上に今後とも努めてまいりたいと考えております。

内山分科員 仮に不向きだと思われるような相談員がいた場合には、これはやはりおやめいただくとか仕事を外すとかということをするんでしょうか。

薄井政府参考人 基本的には委嘱でございますから、恒久的にということではございませんので、これはケース・バイ・ケースではございますけれども、その方について、適任でないということになれば、これは委嘱がその後引き続いてはできない、こういうことになろうかと考えております。

内山分科員 関連ですけれども、平成六年改正法というのがございます。年金の受給の多様な方法が今あるわけでありますけれども、実際に六十歳から報酬比例部分を受給する普通の方法と、そして老齢基礎年金の一部繰り上げ、または全部繰り上げで受給する、この三つの選択肢を説明できる相談員というのはまずいない、説明を受けられないというのが現状だと思うんですね。その辺はどうつかんでいらっしゃいますか。

薄井政府参考人 確かに、六十歳からの選択肢、一部繰り上げ、全部繰り上げ、それは個々の方でどちらをお選びになるかということで将来の受給に大きく影響してくるわけでございます。計算上もいろいろなケースがございまして、複雑になるわけでございますけれども、私どもとしては、この法律が施行されるに当たりまして、基本的にこういうふうなケースがあるというふうな、一種の相談のマニュアルになるようなものを示して第一線にも伝えているところでございまして、もしそこら辺が不行き届きのところがあれば、改めてそこの徹底を図りたいと考えております。

内山分科員 年金相談に行きますと、加入者の年金加入歴、そして平均標準報酬月額、それから年金見込み額、こういったさまざまな情報があるわけでありますけれども、一般の方が相談に行きますと、制度共通年金見込額照会回答票という、これの取り扱いが非常にさまざまでありまして、希望をしても渡さないところ、そして年金計算のもととなる平均標準報酬月額等の打ち出しをしたプリントを出さないという社会保険事務所もあったり、見込み額を手書きで書いたメモで渡す程度だというところもあります。これは、たしか去年の分科会でも見込み額の回答票の取り扱いについて基準がまちまちだという質問が出ていたと思いますけれども、今の取り扱い、現状どうなっているか、お答えいただきたいと思います。

薄井政府参考人 御質問の制度共通見込額照会回答票ということでございますけれども、いずれにいたしましても、それも含めました年金の相談者に対します個人記録の交付についてでございます。

 今御指摘ございましたように、国会の方でも御指摘があったところでございまして、私どもとしては、昨年二月に、そういった御議論も受けまして、社会保険事務局あるいは社会保険事務所に対しまして、年金相談者の求めに応じて適切に対応するよう周知徹底を図ったところでございます。

 なお、従来の年金相談業務の実施要領というのがあるわけでございますが、その中では、出力帳票を交付しても差し支えないものとする、こういう表現がございました。差し支えないものとするという表現でございますので、あいまいな表現であったという御指摘もあろうかと思いますので、昨年の十二月に、少し今のからはタイムラグがございますけれども、実施要領等の全面改正を行いまして、そこら辺の疑義が生じないよう、お求めがあればきちっと出すというふうな指導をさせていただいているところでございます。

内山分科員 そうしますと、全国津々浦々の社会保険事務所では同じ取り扱いをするということで認識を持っていいわけでしょうか。

薄井政府参考人 基本的にはそのように考えておりますが、もし問題があるようであれば、改めてそこは周知徹底を図りたいと考えております。

内山分科員 次に、都道府県によって社会保険事務所の使用する用紙が異なることがあります。これはなぜ異なるのか。非常に得喪関係の手続で不便を感じています。なぜ同じ国の制度なのに用紙が異なるのか、お尋ねをしたいと思います。

薄井政府参考人 健康保険それから厚生年金保険、さまざまな届け出書がございます。これらの中で、施行規則、厚生労働省令でございますけれども、そちらで様式が定められている届け出書、それから国民年金の裁定請求書など全国的に幅広く使用される約百三十の届け出書につきましては、これは全国統一の様式になっているところでございます。なお、これらの届け出書につきましては、今電子政府ということでございますので、インターネットによっても入手可能なようにさせていただいております。

 ただ、一方で、御指摘ございましたように被扶養者の認定届など一部の届け出書につきましては、各事務局ごとに様式に若干の相違があることも事実でございます。これらにつきましては、今後、事務局の実態を把握いたしました上で、できる限り様式の統一を図っていきたい、かように考えております。

内山分科員 早急に改善をお願いしたいと思います。

 同じく、社会保険の適用をしますと社会保険協会なるものに幾らか費用を払います。これはどういう扱いなんでしょうか、お尋ねをします。

薄井政府参考人 社会保険協会は、社会保険事務所の組織ということではなくて、各都道府県ごとに法人化をされておりますが、事業主さんの集まりということでございます。私ども社会保険業務にさまざまな場面で協力をしていただくような活動を実施されているところでございます。

 ただ、基本的にはそういう社会保険協会、私どもの社会保険事業の普及啓発とか、あるいは保険料を納めましょう、こういうことを事業主さんの間でお互いに相互認識を持っていただくということで、私どもにとってもありがたい活動をしていただいているわけでございますけれども、私どもの方で、その協会に入っていただくというふうな性格のものではないというふうに考えております。

内山分科員 その件は、私も厚生労働委員会ですので、また別のところでお尋ねをしたいと思います。

 坂口厚生労働大臣にお尋ねをいたします。

 大臣は、三月より、五十八歳に達した人に対し年金データを知らせるサービスを行う、こう述べられておりますけれども、どのようなデータをどういう手段で通知するのか、お伺いをしたいと思います。

薄井政府参考人 この三月の中旬から、年金受給が近づかれました五十八歳の到達者、これは受給資格を満たしておられる方ということでございますが、こういう方に対しまして年金の加入記録をお知らせすることといたしております。

 内容的には、厚生年金の場合で申し上げますと、働いておられた会社、適用事業所ごとの加入期間と月数、それから国民年金について申し上げますと、加入期間と保険料納付済み月数、そして免除の月数、こういうものなどを予定いたしているところでございます。

 なお、これらのいわゆる五十八歳の方への通知が届きました後、それをごらんになって希望される方に対しましては、年金の見込み額はこうだということを提供するサービスもあわせて開始をしたいと考えているところでございます。

内山分科員 先日、とある方の、ホームページで求めたという、年金見込み額の回答を見せていただきました。回答には、加入した月数と年金額が書いてありましたけれども、実は全部の加入期間のお給料の平均、平均標準報酬月額がこれは記載されていないわけでありまして、自分で検算をしようと思っても計算できない。ですから、この辺は、ホームページまたはこれから五十八歳受給者に対する照会に対しても、ぜひ平均標準報酬月額等の計算の基礎となる数字を明記していただきたいと思いますが、その取り扱いについてはいかがでしょうか。

薄井政府参考人 現在の年金見込み額試算、今御指摘のような形でございます。それから、スペースの関係もございますので、この三月に予定をいたしております見込み額のお知らせには、確かに標準報酬月額という表記はございません。

 ただ、さまざまな御指摘を受けながら、これは初めての試みでございますので、どのような改善が考えられるかというのは、これは検討していきたいと考えております。

内山分科員 ぜひその辺は明記をしていただきたいと思います。

 次に、得する年金等の、歪曲した年金情報というのが週刊誌等で報じられております。年金受給者は、どれが正しい情報か、判断に戸惑っている現状があります。(発言する者あり)はい、そうですね。そういった週刊誌が、売らんがためのあおり記事というのを見出しにつけて、非常に出ていまして、これはおかしいなと私も思うんですが、国は今後、国民に対してどのように年金知識の不信感を払拭していくのか、お尋ねをしたいと思います。

坂口国務大臣 これは総論的なことを申し上げさせていただきますと、確かにこのごろさまざまな年金に対する出版物がございまして、そして、ちょっと見ただけでも大変な間違いだなというものが堂々と出回っているわけでございます。そうしたものが出回りますと、国民の皆さん方はそれを真実だというふうにお思いになるケースも私はかなりあるんではないかというふうに思っております。

 正しい知識をどう国民の皆さん方に与えるかということが一番大事なことでございまして、そこは、我々ももう少しこれは見直さなければいけないんですけれども、いろいろのことをお聞きになりたいときに、さまざまな分野で、ここの分野はあちら、この分野はこちらということではぐあいが悪いわけですので、ワンストップサービスで、そして年金のことがわかるようにしなければいけない。お若い皆さん方でございましたらインターネット等でワンストップサービスでできるようにしてごらんをいただけるようになると思いますが、さて、問題は、先ほども申しましたとおり、高齢者の場合でインターネット等をお使いにならない方に対してどのように対応するかということだろう、特に高齢者の方の方が、その必要度と申しますか、それが高いわけでございますので、その皆さん方に対して、懇切丁寧にそこをお知らせができるようにしなきゃいけないというふうに思っております。

 それは、いろいろ今考えておりますし、まとめたいというふうに思っておりますが、先ほどからのお話がございますように、さまざまな場所で、できる限り懇切丁寧にお答えをするという場所をふやしていくということが一つ大事だろうというふうに思います。一つは、駅なりなんなり、非常に行きやすい場所で、日時を問わずあるいは曜日を問わず御相談に乗れるようにするといったようなことを通じてやっていく、そうしたことが私は大事ではないかというふうに思っております。

内山分科員 年金は、旧法と新法とが絡みますので、非常に複雑な、パズルのような形になっております。恐らく、省の担当者でもすべてに精通するのはなかなか少ないんじゃないかな、こう思うんですけれども、こういうところがこのまま、改正法ができたりしますとますます年金をわかる者がいなくなってしまう、一体どこに聞いたらいいのかという、こういう実態があるわけであります。

 そこで、私は、今の複雑化した年金制度というのに正しくこたえることができる専門家の育成を早急にした方がいいんじゃないか、こう考えているわけであります。仮に、国が認めた公認の年金相談業務ができる公認年金相談員なんというものを創設し、お墨つきを与えて、民間の年金相談業務や何かに当たらす。例えば、小中学校や大学等に年金の教育のために派遣する、そういった資格を一定基準としてつくるべきだろうと私は思うんですけれども、厚生労働大臣、その新しい資格の創設、年金受給者の専門家の創設について、御意見をいただきたいと思います。

坂口国務大臣 それも一つの方法ではないかと私も思いますが、そのときに、どういう人にその資格を与えるかといった問題にもなってくる。それは一つの、専門家としての地位を与えるのかどうかといったような問題もありまして、なかなかここは難しい面もありますけれども、本当に年金のことをおわかりいただいて、きちんと皆さん方に御説明をいただける人を何人つくるか、そのためにはどういう養成をその人たちに行うかといったようなことになってくるというふうに思いますから、大体、こういう資格を持っている人、その人ならばこれは大丈夫だというような人を、どういうふうに全国に位置づけていくかということに多分なるんだろうと思います。一遍ひとつ検討したいと思います。

内山分科員 今現在、年金の専門家といいますと社会保険労務士ですね。できれば社会保険労務士の中から、より年金に詳しい者を抽出するような、公認年金相談員制度みたいなものをぜひつくるべきだろうと私は思います。ぜひ、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 次に、時間がありませんので、障害年金の関係で質問をしたいと思います。

 国民年金、厚生年金の障害年金を請求する際、診断書の作成で、医師による診断書作成医療機関における初診時カルテ。初診時が、カルテの保存期限の五年、または廃院をしてしまっているために証明がもらえないというケースがかなりあります。特に多いのが糖尿病でございます。糖尿病というのは、患って障害が出てくるまで十年近くかかります。そのときに初めて、ではかかった病院を探し当てて行ったら、もうカルテがなかった、または町医者で廃院していた、そういった方を現に数多く私は目にしております。

 そういう方の年金請求は、一つは事後重症という、請求を出した翌月からもらうという方法もあるのは十分存じておりますけれども、当然、被保険者期間中に初診があって認定日扱いでもらえる資格があるにもかかわらず、そういう医療機関の証明がとれないために、本来もらえるものが受給できないという方が結構いらっしゃる。再審査請求まで行けばこちらの意を酌んで受給できることになる可能性もあるかもしれませんけれども、もっと初期の段階で、本来さかのぼって給付すべきものは、そういった証明がなくても推測して出すような優しい年金受給制度をつくることができないだろうか、手続上やれないだろうか、大臣にお尋ねをしたいと思います。

薄井政府参考人 今御指摘ございましたように、障害年金は、初診日の時点で厚生年金保険なり国民年金被保険者であった、こういうことが一つの要件になるということで、初診日の状態、初診日がいつであるかというのは一つの大きな判断要素になるわけでございます。

 御指摘のように、初診日から非常に長期間を経て裁定請求をされる方、これは当然おられるわけでございまして、その際には、現在、診断書を書かれた医療機関があって、その医療機関で初診のときもある、こういうふうな状態であれば問題が少ないことが多いと思いますけれども、そうではなくて、初診時の医療機関におきますカルテに基づきます発病なりあるいは初診を証明する医師の証明がとれないということもあり得るわけでございます。こういうふうな場合には、その最初の医療機関というのは廃院なりあるいはカルテが残っていないということでつかまえられなくても、さかのぼれるところの一番古い受診医療機関におきます医師の証明、こういったものを見させていただく、あるいは傷病の性質なり御本人が記載されます病歴の申し立て書、こういったものから初診日なり障害認定日というふうなものを総合的に判断するという取り扱いにいたしているところでございます。

 いずれにいたしましても、実態に即した障害認定が行われるように、今後とも努力をしていきたいと考えております。

内山分科員 いや、現実はやはりそういう取り扱いはしないんですね。診断書に受診記録によるというようなものがなければ、本人の申し立てというようなところに書きますと、まず通らない。

 そして、病院の先生が、やはり中には心ある先生もいまして、本人の意を酌んで推測で書いてもらったりします。しかし、業務センターから再度医師に問い合わせがあったりして、撤回するケースがあるんです。ですから、医師も板挟みになって困っているケースがあるんですよ。その辺の判断基準を、こういうケースは推測できるんだという仕組みをつくるべきだと私は思うんです。なかなか難しい判断だと思いますけれども、現に糖尿病や何かで初診日がとれなくて、本来もらえる五年さかのぼることができずに、事後重症で受給しているというケースは結構あります。そこはやはり一日も早く改善をしていただきたいと思います。

 次に行きます。

 ちょっと先ほどの問題に関連しますけれども、民間金融機関の、銀行ですけれども、年金相談会というのは、社会保険労務士を活用して、親切丁寧な対応で、年金受給者に非常に喜ばれている現状があります。同時に、社会保険事務所の年金相談窓口の混雑緩和にもかなり寄与していると思うんですね。これが、銀行がやらないとなると、もっと今の社会保険事務所に足を運ばなきゃいけない人たちが来るわけです。

 しかし、正しい年金の知識を持った社会保険労務士がきちっと対応しているのにもかかわらず、そこの社会保険労務士が裁定請求書を預かり、社会保険事務所に持っていきますと、その事務所の窓口では一定数量以上は受け付けない、こういった実態があるわけです。せっかくプロが書いていく。そうすると、あなたの持ち込みは三件以上は受けませんよ、五件以上は受けませんよ、そういった社会保険事務所独自で決めをつくっていること自体、非常に非効率だと思うんです。そこはやはり何とか改善をしていただきたい。

 それと同時に、一般の方が二時間も三時間も待って非常に初歩的な質問をするのであれば、プロに窓口を一つあけて、どんどん書類を通過させるような専門の窓口をつけるべきだと私は思うんですけれども、その二つについてお答えをいただきたいと思います。

谷口主査 薄井運営部長、簡潔に御答弁をお願いします。時間が来ておりますので。

薄井政府参考人 今御指摘ございましたように、社会保険労務士さんが申請書をお持ちになった際の取り扱いについては、ちょっと今私初めてお聞きしましたので、よく確認をしてみたいと思います。

 それから、いま一点、いわゆるプロの方が申請書を書かれる、そういうふうな流れというものを考えてはどうかという御指摘でございます。それについては、どういう形が一番いいのか、そこら辺も研究をしてみたいと思います。

内山分科員 時間になりました。ぜひ窓口をつくっていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

谷口主査 これにて内山晃君の質疑は終了いたしました。

 次に、井上信治君。

井上(信)分科員 自由民主党の井上信治でございます。

 私も昨年初当選させていただきまして、本日、初めての質問でございますが、厚生労働委員でもございますので、坂口大臣、谷畑副大臣そして以下の皆様方には、今後とも御指導、御鞭撻のほどをよろしくお願いいたします。

 私、本日は、少子高齢化に関する問題についてお伺いしたいと思います。

 この少子高齢化でございますが、とにかくこれから、今は少子高齢化、大変重要な問題ですが、これが時代とともにますます深刻になっていく。そういった意味では、私は三十代でございますが、私のような若い世代が本当に真剣になってこれから取り組んでいかなければいけない、そんな思いを非常に強く持っております。

 そしてまた、今年度も、次世代育成支援の対策関連法案ということで、昨年度に続き厚労省の方でも御努力をいただいているようですが、私から見ますと、正直、もう少し施策を充実していっていただきたい、そんな思いを持っておるところでございます。

 少子高齢化が進むことによって、当然のことながら総人口がどんどん減少していく。これに対して私は大変な危機感を持っておるところであります。平成十四年の国立社会保障・人口問題研究所の発表によりますと、これは最も低位の推計の場合でございますけれども、二〇五〇年には九千二百三万人、そして二一〇〇年には四千六百四十五万人ということで、二一〇〇年には今の三分の一近くの人口に減ってしまうという大変ショッキングなデータも出ております。

 こうした中で、当然のことながら、人口が減少すれば、これは経済成長率が落ちる、そして国力が低下するということで、大変な問題だと思いますけれども、この問題に関する大臣の御所見を伺いたいと思います。

谷畑副大臣 今、井上信治先生の指摘のように、我が国はまさしく急速な少子高齢化が進行しているわけでございます。晩婚化、未婚化の進行ということで、このデータを見ますと、二十五歳から二十九歳の未婚率ということで、男性が昭和五十年には四八・三%だったものが平成十二年には六九・三%と、非常に未婚率が深化しております。また、女性も同じく、昭和五十年には二〇・九%、平成十二年には五四・〇%ということであります。また、夫婦の出生力の低下ということも、これも先生御存じのように、今日一・三二%という状況でございます。

 まさしく急激なスピードで少子化が進んでおります。まさしく活力というものも経済的な面においてはなくなってまいりますし、また、社会制度におきましても、深刻な状況、年金、介護保険制度、すべて大きな影響を受けてまいる、こういうことでございます。私も、ただ単に厚生労働省というだけじゃなくて、やはり国の基本政策としてしっかりと位置づけをしてこの少子化問題に取り組んでいかなきゃならない、このように実は思っておるわけでございます。

 そのために、私ども、この間、子育てと仕事の両立の支援ということをしっかりとこれから政策としてフォローしていくということと同時に、男性を含めた働き方自身を見直していかないと、会社人間で、働く、働くということで子供を育てる余裕がない、こういうことではだめでございまして、ぜひそのあたりを抜本的に見直していかない限り、やはり出生率そのものも高まっていかないんじゃないか、こういうふうに実は思っております。

 また同時に、昨年、次世代育成支援対策推進法ができましたので、これに基づきまして、地方公共団体等含めて、あるいは企業におきましても、しっかりと行動計画を策定して実施していくことが非常に大事じゃないか、このように思っております。

 また、今国会におきましては、せっかく子供が生まれまして、そしてまた男女共同参画社会の中で夫婦共働きというのが非常に多いわけでありますから、働きながら子供が育てられるような、そういう環境をつくっていかなきゃならないということで、児童手当法の改正をいたしまして支給対象年齢を引き上げる、あるいはまた児童虐待防止対策の充実強化、また、子供が育てられやすいような、育児休業制度をさらに利用しやすい仕組みにつくっていく、こういうことを含めての育児休業・介護休業法等の改正案をも今国会に提出をいたしておるところでございます。

 私どもも、昨年成立しました少子化社会対策基本法に基づいて、本年五月をめどに改めて政府として大綱を策定することになっております。引き続き、総合的、効果的な対策の推進に最大限努力をしてまいりたい、このように思っております。

井上(信)分科員 ただいまの谷畑副大臣の御決意を伺いまして、大変安心するとともに、しかし私が心配しておりますのは、その決意あるいは政策が、いま一歩国民に浸透していないのではないかなと。原因を考えますに、やはり、政府がいろいろな対策をとってはおりますけれども、実際のところ、その成果といったことが目に見える形で出ていない、そういうことがあると思います。

 ですから、その成果を出すためには、やはりある程度何か具体的な目標といったものが必要だというふうに考えておるところであります。例えば、先ほど申し上げた総人口の減少に関して、どの程度のところで歯どめをかけるとか、あるいは特殊出生率とか、そのような指標的な目標というものを何か御提示いただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

坂口国務大臣 もう谷畑副大臣のおっしゃったとおりなんですが、ややもいたしますと、この少子化対策というのは厚生労働省の対策になってしまう可能性がある。ここはもう、省の枠を超えた日本全体としての少子高齢対策でなければならない。だから、すべてのことの根幹にかかわってくるところだという取り組みが今後問われてくるだろうというふうに思っております。

 目標をどう掲げるかということで、これは大事なことでございます。しかし、余りここを強調し過ぎますと、いわゆる、産む、産まないは個人の自由だという話にまたなってきたりと、大変デリケートなところでございますが、結婚なすった方が平均してお二人ずつ子供をお産みになるということになりますと、合計特殊出生率は大体一・三二になるんです。結婚しない人もおります、結婚しても生まれない人もおりますということなものですから、平均して二人ずつ生まれますと、それで一・三二になるということでございますから、少なくとも、結婚なすった方がお二人ずつ産んでいただけるような環境整備というのは、まず第一段階としてぜひ整備しなきゃならない。

 一つの我々やる側の目標として、まずそういうことを踏まえて、そして次に皆さん方がどう判断をしていただけるかということをまつということではないかというふうに思っている次第でございます。

井上(信)分科員 まさに大臣が今おっしゃったように、私もこの少子高齢化の問題というものは、やはり個人の価値観の問題といいますか、ライフスタイルあるいは結婚観の問題というものが一番根底にあるものだというふうに考えております。

 厚生労働省あるいは政府の施策を見ていますと、どうしても、ほとんどが経済的な施策に限られているということで、もちろん、子育てや教育にお金がかかるということで、これはぜひ援助していただかなければとは思っておるんですけれども、価値観の多様化に対応した、その部分に対しての施策ということは何かお考えなんでしょうか。

谷畑副大臣 井上先生も指摘されていますように、少子化問題というのは日本の基本政策にとってみても非常に大事だということは、これはもうだれしもが認識をするところでありますけれども、だからといってこの問題は、決め手というのか、こうすれば出生率が上がって、そして未婚率がどんどん下がって解決をするというのは、正直な話、そんな単純なものじゃないというように思います。しかし、だからといって何も手を加えないということになりますと、これはますます少子化が進んでいく、こういうように思います。そういう意味では、非常に難しい問題だろうと思います。

 しかし、いずれにしましても、地道に、いろいろな角度で、できることについてしっかりと私どもはやっていかなきゃならない。この間も副大臣会議の中で、この少子化問題が一番大事だということで、それぞれの部署の副大臣が報告をし合って、そして対策をしていこうということで、第一回目の議論をしてきたところでございます。私どもも、さらに高い問題意識を持ってやってみたいと思います。

 その中で、先生の御質問の中で一つ今感じられることは、やはりまず家庭をつくって、そして子供を育てること、夫婦で家庭の中で子供を育てて、そして、それが一番、仕事で疲れたときのいやしにもなるだろうし、また自分の人生の生きがいになるということ、いわゆる家庭の生活の基礎といいましょうか、こういうものがいいものだということをあらゆるところで経験をしていくということが非常に大事じゃないか、私はこういうふうに実は思っております。

 そういう意味では、先ほど言いましたように、男女が協力をして家庭を築いて子供を生み育てることの意義を、やはりしっかりと教育、広報啓発ということで促進をしていくことが非常に大事じゃないか、そういうふうに思っています。

 それとまた、最近、核家族ということで、いわゆるおじいさん、おばあさんがおられて、若い夫婦がおられて、そして子供さんがおられて、孫さんがおられて、ひ孫さんがおられるという、そういう大家族というものがなくなっておりまして、子供と身近に接触をして、成長というものはいかに楽しいものかということを経験することが少なくなってまいりました。そういう意味では、中学生あるいは高校生のころから乳幼児と触れ合うという機会を教育の中でどういうふうにつくっていくのか、これも非常に大事なことじゃないかなと実は思っております。

 最後に、各地方自治体においても、昨年成立をしました次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画の策定ということが進められておるわけでありますけれども、これらにおきまして、地域の創意工夫という点も非常に大事じゃないか、こう思います。

 以上です。

井上(信)分科員 私も、確かにこれは個人の価値観の問題ですので、それをいわば強制するような、産めよふやせよ的な発想というのは、これはもう絶対にとってはいけないとは思うんですけれども、そもそも、個人の選択をするための前提条件としての知識がない、情報がないということに関しては、きちんと政府が情報提供をすべきだと考えております。

 私の地元も、東京の郊外ですが、小さな子供がいる、いわゆるニューファミリーが多いわけです。そういった御夫婦なんかにも伺うと、もともと出産しようと思ってしたわけではない場合にも、やはり出産してみると、実は、子供を持つことの幸せ、子育ての楽しさというのを本当に実感している、そんな声も聞くものですから、そういう意味では、そういった環境整備というのは、これは政府なり自治体の役割だと考えておりますので、今後ともよろしくお願いいたします。

 それから、先日、ちょっとある資料をいただきまして、私も驚いたんですが、これは世界銀行の一九九七年版の資料です。女性のフルタイムの就労率の上昇と出生率の上昇との間に比例関係、相関関係があるという結果が出ておりまして、従来、女性の社会進出が進むとどうしても晩婚化あるいは少子化が進んでしまうということが定説のように思っておりましたので、それと若干矛盾するのではないかなというふうに考えます。この相関関係について、厚労省としてはどのようにお考えなのかをお聞かせください。

谷畑副大臣 今先生指摘されましたように、私も、正直な話、びっくりしたわけであります。

 男女共同参画社会というのが進んでいくと、出生率というのは少し低くなるんじゃないか、正直な話、私自身もそう思っておりました。しかし、先生が今指摘されますように、主要国の女性の社会進出度と出生率の相関関係ということを見ますと、女性の労働力率の高い国については、同時に出生率も高い傾向にある、こういうことで、私も実は、先ほど言いましたように、驚いております。先生の指摘しているとおりでございます。

 しかし、これも、それぞれの国の文化というのか、あるいは歴史といいましょうか、それぞれの男女共同参画社会という歴史の中で、子育てができる条件づくりというものを相当長い時間をかけて取り組んできた、そういう結果もあろうかと思いますので、ただ単に、女性が社会進出してフルタイムで働くということが、自動的に出生率が上がっていくものでは決してないのではないか。だからといって、男女共同社会への参画というものが出生率を下げていくものだ、こういう決めつけにも、このデータから見ても、ならないんじゃないか。

 だから、いずれにしましても、男女共同参画社会、女性もフルタイムで働く、そういう形の共働き社会においても子育てができるように、保育所の充実だとか、あるいはファミリーサポート等を含めて地域社会が子供たちを支えていく、また協力をする、そういうところのサポートも必要だと思うし、また、育児休業法を充実して支えていくことも必要だし、先ほど言いましたように、男性の働き方、女性の働き方も含めて子育てができる働き方、こういうあらゆる政策をしっかりとまぜながら出生率を上げていくことが非常に大事じゃないか、こういうふうに思っております。

井上(信)分科員 私も、副大臣のお考えを聞いて安心いたしました。やはり、男女が共同参画していくということは大切な施策でありまして、そしてまた、少子化を改善していく、出生率の向上を図るというのも大切でございますから、この両立が実現するような、そんな施策を引き続きよろしくお願いいたしたいと思います。

 次に、不妊治療の問題を質問させていただきます。

 この不妊治療の問題、先ほどは、産みたくないと思う方に産めと言うのは、これは個人の自由の侵害であろうということでしたが、この不妊治療というのは産みたいのに産めないという方ですから、これは非常に深刻な問題であって、これに対する支援というのは、これはもうぜひとも行政の側でもしていかなければいけないというふうに私は考えております。

 データによると、子供を持ちたいのに子供に恵まれない夫婦は十組に一組ほどいる、不妊に苦しむ女性が三十万人弱いるというようなことが出ております。私も三十代で、ちょうど出産をする世代なものですから、周辺の友人、知人なんかの状況を見てみましても、もっともっと多いんじゃないかなというのが実感のところでございます。

 やはりこの不妊ということ、なかなか言い出しにくいということもありますので、データだけで御判断するのではなくて、その背後にはもっともっと大勢の方が苦しんでおられるという認識のもとに、今後も施策を充実していただきたいと思います。

 そして、例えば排卵誘発剤の幾つかに保険適用が認められた、あるいは、本年四月からは年間十万円を上限とした不妊治療の治療費の助成が始まるということで伺っておりますけれども、これはまだまだ全く不十分ではないのかなというのが私の印象でございます。

 実際に、人工授精であれば一回数万かもしれない、しかし、体外受精となると、本当に一回三十万程度の費用がかかる。それも、一回で効果があるというのはまれでして、通算にいたしますと、実際のところ数百万の費用がかかっているというのが現実であります。ですから、それに対して年間十万円が限度というのではいかにも不十分ではないかなというのが私の印象でございますけれども、その点についてのお考えを伺いたいと思います。

坂口国務大臣 ことし初めて、不妊治療を受けておみえになる皆さん方に対する支援をいたしたわけでございますが、確かに、現実的には一回五十万とか、中には八十万とか、非常に高い額を要求するところもあったりいたしまして、そういたしますと、本当に十万、二十万で足りるのかという話になってくるというふうに、私も率直にそう思っております。

 ただ、治療をしてくれる医療機関に対しても、少し要請をしなきゃならないというふうに思うんです。そんなにいろいろの機材、器具が要るとか何かということではなくて、本当の技術料オンリーでございますから、本当はもう少し安く不妊治療というものができなければならないんではないかというふうに私は思っております。

 これは、大学病院でありますとかあるいは国公立の病院というところは割にやっていないんですね。私は、公立病院は今度独法化されますけれども、そうしたところでも不妊治療をもう少し手がけるべきだと思うんです、今一生懸命そう言っているんですけれども。そして、そういうところでもう少し、どれだけが適切かわかりませんけれども、二十万なら二十万とか、もっと安い値段で対応ができるという体制が、私はもう少しできるんじゃないかと。大学病院でも、慶応大学ではおやりいただいておりますけれども、ほかのところは余り聞かないんですね。

 ですから、国公立、大学病院といったようなところも不妊治療をもう少し熱心にしていただいて、そして、もっと安く皆さん方に対応できるようにするということも考えなければいけないんではないかというふうに思っている次第でございます。

 いずれにいたしましても、現状に任せておきますとだんだん上がっていくばかりでありまして、それでは現実にお若い皆さん方が対応できないことももう十分考えられますので、その点にも今後ひとつしっかりと配慮していきたいというふうに思っております。

井上(信)分科員 大臣の御答弁を伺いまして、私も大変心強いと感じます。私も全くそのとおりだと思いますので、そういった公立病院に対する指導助言も含めて、今後もこの不妊治療の促進について御尽力をいただきたいと思います。

 続きまして、育児休暇の件でございます。

 現在、育児休暇の取得率といったものが、男性で〇・四%弱、あるいは女性で五十数%と、非常に低いといった現状がございます。厚労省の少子化対策プラスワンの中で、目標値としてそれぞれ一〇%、八〇%という数値を掲げておられるようでございますけれども、この対策についても、私はもう少し充実していただきたいなという思いがございます。

 そして、次世代育成支援対策推進法の中で、三百一人以上を雇用する事業主に対しては、育児休暇のための行動計画作成と届け出を義務づけられたということですけれども、三百人以下の事業主に対しては努力義務しか課されていない、あるいは、実際にこの義務を担保する担保手段としては罰則なしの勧告しかないということで、これでは実効性に乏しいのではないかなということを思っておりますが、お考えを伺いたいと思います。

谷畑副大臣 仕事と子育ての両立をしていくに当たっては、先ほどお話を私も述べさせていただきましたように、もちろん、保育所に子供を預かっていただける、あるいはまた、おじいさん、おばあさんが近くにおられて手伝っていただける、あるいはファミリーサポートというかそういう形で助けていただく、こういう制度が充実しない限りは不可能であります。

 うちの家内もずっと保育所のおばあちゃんとして二十八年間勤めて、私も一緒に共働きをやってきた経験で、子供というのはゼロ歳から二歳、三歳までよく病気をします。すぐ熱が出てしまいます。ある日突然として熱が出てしまいますと保育所は預かっていただけないということで、もうほんまに四苦八苦します。

 そういう意味では、やはり育児休業の制度というのは非常に大事なものだと思いますので、今回法改正で一年半を可能にするということにしておりますし、また今回は、男性一〇%、女性八〇%ということで、できましたらそういう目標を定めていきたいということであります。

 しかし、先生が指摘しますように、女性労働協会の平成十二年の調査を見ますと、「職場の雰囲気」ということで四三%の方が利用できなかった、あるいは「仕事が忙しかった」ということで二二%、「仕事に早く復帰したかった」ということで二五・七%。いかに職場の雰囲気で、制度はあってもとりにくいということですから、とりわけ中小零細企業においては非常に難しい状況があろうかと思います。

 私も、企業を含めて社会全体が育児休業がとりやすいように、そういう雰囲気を逆につくっていく、そういうことでさらに社会全体で取り組みを促進していくことが非常に大事じゃないか。また、国、地方自治団体及び企業等による行動計画をしっかりと策定をして、そうしてそれをとっていけるという、そして女性八〇%、男性一〇%というところにしっかりと目標を定めて前へと前進していきたい、そういう強い決意でおるところであります。

井上(信)分科員 私、まさに副大臣がおっしゃるところに問題意識を持っておりまして、今回の改正法におきましても一年間を一年半に拡張するということが行われるようですが、しかし、実際には、育児休暇の期間であるとか日数であるとか、そういったことよりも、むしろ、それがきちんと消化できていない、その消化率のところに問題があるというふうに考えております。

 ですから、消化率の改善ということをしないままにいたずらに制度を拡充すれば、むしろ、育児休暇をとりやすい環境できちんととる人たちと、とりたくてもとれない、そんな職場環境にいる人たちとの間で二極分化が行われてしまう、これはむしろ不公平になってしまうということで、改悪ではないかなというような心配をいたしております。

 そういった意味では、もう一つ、やはり男性と女性とで育児休暇の取得率が全然違うということです。これは、もちろん、女性は御自身が出産されるということで当然のところもありますけれども、むしろ、これからやはり男性がきちんと子育て、育児に参加していかなければいけない、こういう世の中でありますから、ここの取得率がまた大変格差があるということも大変な問題だと思っておりまして、ここをきちんと向上させられるような、そんな施策をぜひ打っていただきたい、そんなふうに思っております。

 いずれにいたしましても、少子高齢化の問題というのは本当になかなか非常に難しい問題だと思います。今の時代の流れの中で、社会が成熟していく中でどうしても進行してしまうという面がある反面、その改善を強制することができない個人の価値観、ライフスタイル、人生観の問題だということで、これをいかに政治が、行政が誘導していくかというところは大変大きな問題だと思いますので、これはぜひ、先ほど大臣もおっしゃったように、厚生労働省の枠にとどまらず、政府全体としてどのような方向にこれからの国家のあり方というものを考えて導いていかれるかといった、そんな骨太の、本当に大きな改革をこれからやっていただきたい、そんなふうに考えておるところであります。

 大変ありがとうございました。

谷口主査 これにて井上信治君の質疑は終了いたしました。

 次に、辻惠君。

辻分科員 民主党・無所属クラブの辻惠でございます。

 私は、昨年秋、立候補するに当たって、地元の西成のあいりん地域をめぐりました。あいりんセンターの前で街頭演説を行い、三角公園を初めとした釜ケ崎の地域を自転車等で何度も回りました。

 この釜ケ崎の地域は、二万人と言われる単身の日雇い労働者の集まる町であります。そして、その中で、日本で今二万五千人ぐらいいると言われる野宿者のうち、大阪に七千七百人、そして大阪市内に六千六百人というふうに聞き及んでおります。その半分ぐらいの方々が釜ケ崎地域に野宿をしておられる。

 実際、釜ケ崎を回ってみて、就労の機会がなくて昼間からお酒を飲んだりしている人もいるし、語りかけてみても反応がいま一つはっきりしない、非常にある意味では個人の尊厳が侵されている、そういう人々がいるという事態を目の当たりにしました。

 私は、この問題はやはり日本の貧困の問題である。そういう意味におきまして、今大阪は失業率が全国で第二位と言われていて、経済の活性化を図らなければいけないと言われておりますが、ある意味で、その一つの象徴としてこの釜ケ崎の問題をどのように解決していくのかということが問われているというふうに、私はこのことが私にとっての職務であろうというふうに思います。また、この問題の解決を通して、働く人々の人間の尊厳をどのように回復していくのか、このことについても考えていきたいというふうに思っております。

 そこで、本日は、この野宿者、ホームレスの問題についてお伺いをさせていただきたいと考えております。

 この問題につきましては、二〇〇二年の八月七日に施行されておりますホームレスの自立の支援等に関する特別措置法という法律がございます。この第五条で国の責務がうたわれており、第三条でホームレスの自立支援等に関する施策の目標ということが規定されております。そして、この法の要請に基づいて、ホームレスの自立の支援等に関する基本方針というものがつくられています。

 これは二〇〇三年七月と伺っておりますが、この基本方針の第3の「1 基本的な考え方」というところの中に、次のようなくだりがあります。「特に、ホームレス対策は、ホームレスが自らの意思で安定した生活を営めるように支援することが基本である。このためには、就業の機会が確保されることが最も重要であり、併せて、安定した居住の場所が確保されることが必要である。」と述べられております。

 この認識について、大臣はいかがお考えになっておられますでしょうか。

谷畑副大臣 先生、今大阪の釜ケ崎の実態についてお話をされました。私も大阪でありますのでよく知っておりますし、ちょうど私が大学生のころ、山谷ブルースという歌がはやりました。私、これは得意な歌でございまして、フォークソングの始まりでありますけれども、そういうことで、あるキリスト教団体のボランティアで、いわゆる冬を越せないというときに、私も学生でありましたけれども、そういう支援闘争のボランティアで参加したりして、それなりに課題はよくわかっておるわけでございます。

 今先生申されましたように、やはり、民主党の鍵田前衆議院議員が私どもと一緒に厚生労働委員会におられましたときに、平成十三年の六月に議員立法としてこのホームレスの自立支援法案というのを提出されました。そういう中で私どもも、鍵田先生とももちろん相談もさせていただきながら、与党として、私ども自由民主党、公明党、そして当時保守ですか、三党の関係で平成十四年に与党政策責任者会議でホームレス問題についての議論をしまして、そういう中で、与野党ともどもに議員立法としてホームレスの自立を支援する法律を平成十四年に成立させていただいたところであります。

 この中ではっきりと申し上げておりますのは、やはり、自立を支援するということですから、居住だとか雇用だとか、こういうことについては非常に大事なことだ、こういうことに位置づけをして取り組んでおる、こういうふうに思っております。

辻分科員 この基本方針の中で、「各課題に対する取組方針」ということで、今副大臣おっしゃったように、就業の機会の確保についてとか、安定した居住の場所の確保について等方針が述べられておりますが、現時点で厚生労働省の予算に基づいて行われている対策の概要を、簡略にお伺いしたいと思います。

谷畑副大臣 厚生労働省といたしましては、昨年七月に策定をしましたホームレスの自立の支援等に関する基本方針ということに基づきまして、一つは、宿泊及び食事の提供、生活相談・指導、職業相談等を行うホームレス自立支援事業や、ホームレスの健康状態の悪化の防止等のため緊急一時的に宿泊場所を提供するホームレス緊急一時宿泊事業、いわゆるシェルター事業と申しておりますけれども、それらの事業を行っておるところであります。

 さらに、平成十六年度におきましては、入浴等のサービスを提供することにより衛生状態の改善を図るホームレス衛生改善事業や、保健所等による健康相談等を行うホームレス保健サービス支援事業の実施を行っております。

 また、ホームレス対策の一層の充実強化を図るという立場から、予算額におきましては、平成十五年度は二十七億円に対して平成十六年度予算案では三十・二億円、対前年度比一一・六%増ということで、これも与野党しっかりと頑張りまして、私どもその一員として参加を当時したわけでありますけれども、そのようにして増となってまいりました。

 ホームレスについては、その一人一人の置かれた状況をよく把握し、それを踏まえて対応していく必要があると考えており、今後とも、地方公共団体とも連携を図りつつホームレス問題の解決に向けて努力をしてまいりたい、このように思っています。

辻分科員 今おっしゃられましたように、平成十六年度の予算案として三十億一千八百万円上がっております。ただ、その内容として、自立支援事業等の拡充に約二十億、そして、保健衛生の向上ということで三千五百万、就業機会の確保ということで九億四千八百万円なんですね。

 先ほど冒頭で、この基本方針の特に重要な点ということで、「ホームレスが自らの意思で安定した生活を営めるように支援することが基本である。」最も重要なのは就業の機会が確保されることであるということになっております。

 今、予算の使われ方を見ますと、就業の機会の確保は九億四千八百万、三十億のうちの三分の一弱ですよね。ですから、もう少し就業機会の確保の方に力点のある施策が行われてもいいんではないかというふうに考えるわけでありますが、いかがでしょうか。

谷畑副大臣 もちろん、就労ということが非常に大事なことでありますけれども、景気の動向ということがあり、あるいはまたホームレスの人々の平均年齢ももう六十近いということもあったりして、また、生活そのものがいわゆる不規則ということもあったりして病気になったりして、そういう関係で、就労する者が率として高く上がっていくということにはならないわけであります。

 しかし、私どもも、職業相談ということ、あるいは生活相談、そういうことを含めて、宿泊だとか食事を提供するだけじゃなくて、そういうことについて、その専門員もそこに巡回しながらきめ細かく取り組んでおる、こういうことでございます。さらにまた努力をしてまいりたいと思います。

辻分科員 就業機会の確保ということで、ホームレス自立支援職業相談員の配置とか、ホームレス就業開拓推進員の配置、日雇労働者等技能講習事業、そしてホームレス等試行雇用事業ということで挙がっておりまして、具体的な就業の機会を国の直接的な責任において保障をするということがやや弱いように思うんですね。試行雇用事業というのも、臨時的なものというか一時的なもののようなので、そういう意味で、完全就業というか、そういう就業の機会についての国の施策として具体的にもう少しお考えいただけないのか、どのような点であればお考えいただくことが可能なのか、その点はいかがでしょうか。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 現在の就業機会の確保としましては、緊急地域雇用創出特別交付金事業がございまして、地方公共団体におきまして、緊急かつ臨時的な雇用就業機会の創出として実施しているものがございます。

 ただ、恒久的ないわば公的就労事業につきましては、これまでの経験から、事業の非効率性とか就労者の滞留等の問題が生じるおそれがあるということで、国の雇用対策としては現在はとっていないところでございます。

 したがいまして、ホームレスの方々を対象としたものにつきましても、国の雇用対策としましては、やはり民間企業における雇用の促進を図っていくことが基本ではないかというふうに考えているところでございます。

坂口国務大臣 この雇用対策につきまして、ホームレスの皆さん方の置かれている立場というのは多種多様なんだろうというふうに思うんですね。ですから、それに対応するように御相談に乗っていかないといけないというふうに思っております。

 交付金制度は、これは十六年で一応もう終わりになるわけでありますから、恒久的なものでありませんので、今後それをどうしていくかということを今から少しずつやっていかなきゃいけないというふうに思います。そういう意味では、この平成十六年度というのはそうした移行期だというふうに思っております。

 やはり、非常にハローワーク等で御相談のしてもらいにくいところもあることはよく存じておりますけれども、そうしたところも、いわゆるホームレスの皆さん方に対する対応というものも手がけて、そして徐々にそうしたところも御活躍をいただけるようにしていかなきゃいけないと思いますし、我々も、そうしたホームレスの皆さん方に対応できる人というものをつくっていかないといけないんだろうというふうに思っております。

 十六年でもう一応この交付金制度は切れますから、十七年度からはそれをどうしていくかといったこともあわせて、今年中に検討したいと思っております。

辻分科員 まさに、緊急地域雇用創出特別交付金、これが平成十六年度で切れるということになっていますね。大阪においては、この交付金をもとに高齢者の特別清掃事業とかをやっているわけであります。

 確かに、雇用の創出といったときに、働く人々の側が、事務職員でリストラをされた人とか、いわゆる建築労働とかそういう現場労働で流れてきた人とか多種多様である、それに即応した雇用を準備することはなかなか難しいという御指摘ももっともなわけでありますけれども、この基本方針で、筋としては仕方がないのかなというふうに思うんですけれども、「民間団体との連携を図り、」ということで、民間団体を通して雇用の創出を図っていく、そういうやや間接的な対応になっているわけですね。やはり、今の雇用の状況とか経済の不況の状況、リストラがなお増大していくという状況の中で、民間の団体にそれを基本的にゆだねてしまうということだけでは、矛盾が解決されない点があるのではないか。

 そういう意味で、国の立場における雇用の創出ということについて、一歩踏み込んでいただきたいと思うんですけれども、そういう考え方、そういう姿勢については、十七年以降持って臨もうということでお伺いしてよろしいんでしょうか。

坂口国務大臣 そこも大事なところだと思います。

 ハローワーク等でいろいろの層の皆さん方を抱えているわけですから、なかなかそれを全部振り向けるわけにはまいりませんけれども、その中でホームレスの皆さん方に対してどうするか。その人専門にそういう対応のできる人を少し養成すると申しますか、そういう人を選んで、そして対応する、そして民間の皆さん方との橋渡しもそういう皆さんがするといったようなことにしていかないと、ほっておきますとなかなか民間の皆さん方も取っつきにくいというようなこともあるだろうと思いますから、その辺のところには我々の方も対応をできるようにしていきたいというふうに思っております。

辻分科員 この緊急地域雇用創出特別交付金について、同じ形で継続していただくのか、いずれにせよ、名目なり形は変えても、その実質について継続、さらには拡充していっていただきたい。今の大臣のお言葉では、単に民間にゆだねていただけではなかなか問題が解決しないので、そういう視点が重要なんだ、厚生労働省としてもそういう立場に立って十七年以降考えていくんだという姿勢を御表明いただいたというふうに受けとめさせていただきたい、このように思います。

 それで、一方で、先ほどちょっと御紹介させていただいた十六年度ホームレス対策予算案という三十億一千八百万円の件でありますが、この基本方針の後、各地方自治体において実施計画ということを発表して、具体的に自立支援の実施計画に取りかかっております。

 そういう意味におきまして、この平成十六年度の三十億という予算は、その地方公共団体の行う実施計画を概観した上で、具体的にそれをどのようにさらに評価して伸ばしていくべきなのかという観点で出てきた予算の額ではないというふうに思いますので、十七年度以降、この三十億円という予算について、倍増、三倍増、十倍増していただく方向でぜひともこれはお考えいただきたいと思いますが、その点はいかがでしょうか。

小島政府参考人 今先生お尋ねの実施計画でございますが、今現在、各自治体におきまして実施計画の策定を準備中でございます。一番進んでおりますのが大阪府大阪市というふうに聞いております。それに続きまして名古屋市ということで、各自治体で進んでいるわけでございますが、私ども、それができました段階で、十六年度につきましては、もちろんお認めいただきました予算で最大限のバックアップをいたしますし、また、計画ができ上がった段階では、それに基づきまして必要な予算を確保してまいりたいというふうに考えております。

辻分科員 大阪の実施計画を含めて、地方自治体の実施計画の現状で把握されている内容、そして、その中で雇用の創出について評価すべき点、さらに改善すべき点、その点についての御意見について伺わせていただければと思いますが、いかがでしょうか。

小島政府参考人 実施計画の案は、現在、先ほど申し上げましたように各自治体で策定中でございますので、まだ私どもも詳しい内容を承知しておりません。できました段階で、私どもで協議をしてまいりたいというふうに考えております。

辻分科員 インターネット等で素案等は既に出ていると思いますので、正式な御発言ということにはならないのかもしれないですけれども、お気づきの点等があれば、可能な範囲でお聞かせいただければと思いますが、いかがでしょうか。

小島政府参考人 今、公開の協議を行っているところでございますので、私どもとしても、それを見まして、気がついたところがあれば、各自治体と協議をしてまいりたいと考えております。

辻分科員 どうも基本方針が、民間の施設とか民間団体との連携とか、また地方公共団体を通して雇用の確保等にという基本姿勢になっている点について、いかがなものかと私は思っておりましたけれども、きょうの質疑を通して、国の側も同等の立場でというか、より責任ある立場でこの問題について踏み込んで対処していかなければいけないという御発言をいただきました。

 また、十七年度以降の交付金の問題についても、そして予算についても、かなりこれは期待できる内容で御検討いただけるものだと思います。この問題は、ある意味で、日本の経済を活性化させていくに当たってどうしても乗り越えなければいけない、解決していかなければいけない問題だと思いますので、ぜひともその点、善処をよろしくお願いしたいというふうに思います。

 そこで、具体的な雇用の確保ということについてはこの程度でとどめますけれども、リストラがさらにどんどん進んでいって、一向に、なかなか減らないというか、だから、そういう野宿者となることを防止するための予防策等についてはどのようなお考えをお持ちなんでございましょうか。お聞かせ願えればと思います。

坂口国務大臣 そこが一番大事なんでしょうね。私もそう思います。

 しかし、現実にホームレスになられた皆さん方の理由は千差万別、それぞれの事情があって、なっておみえになるんだというふうに思いますから、一つか二つの予防策をして、それで減るというわけにもいかないんだろうというふうに思いますが、結局のところは、委員も御指摘になりましたように、安定した社会をどうつくっていくかということが一番の基本にあって、そしてその中で、やはりバラエティーに富んだ対応をしていかなければならないんだろうというふうに思います。

 一つは、非常に経済的に厳しい状況が続いたということも、確かに私は原因の一つになっているだろうというふうに思いますから、経済を再生させる、経済をもう少し立て直していくということは、それは当面の課題として一番大事なことであり、そのことによっていい影響を与えるということはあり得るだろうというふうに思いますが、それだけでいいかといえば、恐らくそれだけではいけない。経済的な問題だけではなくて、全体としての社会の仕組みそのものも、やはりホームレスを生み出していくような制度というものであってはならない。

 ですから、事業に失敗をする、しないというようなこともあるわけでございまして、一度失敗して、もう一度立ち直れるような、そういう仕組みというのはまだ十分に日本の国の中ででき上がっていないという側面もあるんではないかというふうに思いますから、そうしたことも含めて、新しい対応が迫られているというふうに感じる次第でございます。

 そうしたこと以外にも、家族的な崩壊の問題でございますとか、あるいはまた、地域あるいは企業の中でのいろいろの問題等もあろうかと思いますけれども、一番大きな問題は、そうした経済並びにそれにまつわって立ち上がることができないような状況というものを、どうこれから克服できる社会にしていくかということが、予防という意味では私は一番大きいのではないかというふうに思っている次第でございます。

谷畑副大臣 大臣が答えておられますので、それ以上はないと思うんですけれども、ホームレスにやむなくなってしまって、それからいわゆる長期化してしまうと、なかなか脱出できないというのがある。だから、ホームレスになって、その初動というのか一、二年の間に、就労だとか、一般社会で働いたり居住の場所を確保したりして、そういう中でスムーズに立ち直っていけるということが非常に大事だと思います。まず、早い段階が非常に大事じゃないか。

 そして、先ほども言いましたように、平均年齢が六十歳近いということで、どうしても生活が不安定な中でリズムが狂ってしまうということで、病気になることが多い。そういうことで、居住に当たっての支援も大事な支援だと思います。そういう点もしながら、また、時には医療を受けられること、あるいは社会の福祉を含めて容易な形で受けられる、そういうことで、両面の形でやはりやっていくことが非常に大事じゃないかな、このように思っています。

辻分科員 きょう、私が冒頭で、この問題は社会的貧困の問題であるということを申し上げました。同時に、人間の尊厳を回復すべき問題でもあるんだというふうに申し上げました。雇用の創出をすることによって、就労の機会を確保すること、そして居住も確保すること、また、差別をされ、暴行の対象になったり、そういうことに対して人権を擁護する、守っていくことも重要だと思います。

 私が西成、釜ケ崎の地域を回って感じたことは、冒頭でも申し上げましたけれども、どうも精神的に反応が、通常と言うと語弊があるのかもしれませんけれども、反応が遅いというか、ある意味で、何か社会性を奪われてしまっている、非常に大きなトラウマにとらわれている、そのような感じを持つわけであります。そういう意味におきまして、福祉とか就労の問題と同時に、そういう精神的なケアの問題ということが重要なのではないかというふうに思うわけでありますが、この点について、何か具体的に考えておられること、具体的に施策として実行されているようなことはございますでしょうか。

小島政府参考人 先生の御指摘の点、大変重要だと思うわけでございますが、基本的にはやはり、保健所におきます精神的な面を含めました相談、健診事業というものを充実すべく、十六年度予算案におきましても一千万の事業費の増額ということを計上しておりますので、保健所と各自立支援センターあるいは市町村と連携を持って、そういった面につきまして施策の充実を図っていくということを考えているわけでございます。

辻分科員 私は、このホームレスの問題について、今後もみずからの、ずっと背負って解決していかなければいけない課題だということでかかわっていきたい、このように考えております。

 そのような観点に立って、ぜひとも平成十七年度以降の交付金についても、継続、拡充をしていただきたいし、予算についても倍増、三倍増、四倍増していっていただきたいというふうに強くお願いいたすものであります。

 そして、何よりも、雇用の創出ということが最も重要であると基本方針でうたわれていること、このことにかんがみて、従前の失業対策ということについては失業対策法が、九八年でしょうか、廃止になったというふうに伺っておりますけれども、やはり国の立場でもう一歩踏み込んだ雇用の創出をお考えいただくという意味で、第二失対法的な、そういう失対事業というものをぜひともお考えいただきたいということを最後にお願い申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

谷口主査 これにて辻惠君の質疑は終了いたしました。

 次に、宮下一郎君。

    〔主査退席、鈴木(俊)主査代理着席〕

宮下分科員 自由民主党の宮下一郎でございます。

 本日は質問の機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。何とぞよろしくお願い申し上げます。

 長野におきましては、二月の二十七日から昨日まで、知的障害者のスポーツ大会であります第三回スペシャルオリンピックス日本冬季ナショナルゲーム・長野が開催され、きのう閉幕したところでございまして、これは来年開かれる世界大会のプレ大会ということでございますけれども、二十七都道府県から、また海外十一カ国から、選手の皆様、コーチの皆様、千人以上の皆様がお集まりになりまして、それを約五千人のボランティアの方々が支える、非常に盛り上がった大会でございました。

 この中で、障害者の皆様の懸命に取り組む姿が多くの皆様に感動を与えると同時に、また障害者福祉について考えるよい機会にもなったのではないかなと思っております。

 そうしたことも受けまして、本日は、知的障害者の皆様を含めた障害者福祉のあり方について、またそれに関連する項目について、幾つかの視点から御質問をさせていただきたいと存じます。

 まず、支援費制度についてお伺いをしたいと存じます。

 支援費制度は、昨年四月から導入された制度でございますけれども、これまでの措置制度にかわりまして、みずからがサービスを主体的に選択できる制度だという意味で大きな前進であったと思っております。これまでには受けられなかったサービスも受けられるようになった、サービスの幅が広がったということで、特にホームヘルプサービスの利用が急増しておりまして、これは障害者の皆様にとりましては、福祉の向上という面では大変よいことであると思いますが、一方で、この制度設計上多少問題があるのではないかという面がございまして、地方自治体の皆様方からは、サービスを支える財源が苦しい、足りなくなりそうだというような問題が発生していると伺っているところでございます。

 改めまして、その支援費制度を介護保険制度と例えば比較して見てみますと、その性格はより明確になってくると思いますけれども、介護保険制度の場合は、介護度別に利用限度額もございますし、一定のケアプランというようなものに従ってサービスの提供が行われるわけでございますけれども、支援費制度については、今のところ制度上青天井ということで上限がございません。

 また、介護保険は原則一割の自己負担ということでございますけれども、支援費の場合は、所得要件などを勘案しますと、実質的にはほとんどの利用者の方々が自己負担なく御利用いただいているということ。また、介護保険には保険料という財源がございますけれども、支援費は基本的に税金で賄っている。そういうことで、やはり税金、予算に頼らざるを得ない仕組みになっておるということだと思います。

 厚生労働省の皆様方におかれましては、こうした予算に基づいてこの制度を支えていこう、さらに充実させていこうというお考えのもとに、支援費に関する予算を前年比伸ばしていただいているというところで、特にホームヘルプサービスにつきましては、表面上、名目で二三%以上の増加、前年が十一カ月予算でしたので、実質でも一二、三%の増加ということで、財政が厳しくていろいろな施策が切り詰められている中で、これだけの予算を伸ばしていただいているというのは、大変高く評価されるべきものであると思います。

 一方、現場におきましては、この週末地元に行きましてちょっとお聞きしたところでは、例えば地元の飯田市というようなところでは、十五年度は、十四年度対比約八〇%利用がふえている。東京は、報道なんかでは三四%ぐらい増加しているというようなことで、やはり実際の利用の伸びが国の予算の伸びを大きく超えているということでございまして、基本的にこれは国が二分の一、県が四分の一、市町村が四分の一というような予算構成、負担割合ということで伺っておりますが、いずれにしても、国が確保できた予算を超える部分について、もしどうしても政策として実行するのであれば、地方自治体で負担せざるを得ないのではないかという状況になりつつあります。

 一方、ホームヘルプサービスの利用の実態をお聞きしますと、一つには、まだまだ一部の障害者の皆様のみが利用しているということで、これはいいサービスだということが知れ渡りますと、さらに爆発的に利用がふえる可能性も高いと伺っております。

 また、その利用のされ方についても、例えば知的障害者のお子さんの場合、特に養護学校の夏休みとか冬休みとか、そういったときに大きな利用増加の傾向が見られるわけでございまして、これは、お休みになって、毎日通っていた学校が休みになるので、こういったサービスを利用していろいろなところに行ったりという利用形態が多いというふうにも聞いておりますけれども、この点についても、何でも支援費制度で支えるのではなくて、例えば養護学校の校舎を、地域のNPOの皆様や市民団体などと連携しながら子供たちを受け入れるというような、そういった体制整備の中でもっとサポートもできるのではないか、そういった思いもしているところでございます。

 また、財源が限られている中で、基本的には、お申し出があって、それを審査してプランを立てて提供するというような仕組みなものですから、今のままでは、限られた財源で、申し出順に順次サービスを行っていくということになりますと、早い者勝ちというようなことになって、一部の方しかサービスが受けられないという可能性も出てくるのではないか、そうした不安もございます。

 ホームヘルプサービスはいろいろな格好で利用はされているんですけれども、やはりそれなりに分類して考えることも必要なのではないかと思っております。特に、身体性障害、全身性障害の皆様などは、生きていくためにどうしてもサービスが必要だ、上限などを設けられたら生きていけないというような深刻な場合もございますし、一方で、保護者の方々の負担を軽減するためにこの仕組みを使いたいというようなことで利用している場合とか、また、本人の自己実現を目指すような、プールに通ったり、いろいろな趣味を生かして美術館やいろいろなところに行ったり、そうしたことにこういったホームヘルプサービスを使っているという場合もありまして、その実態は多種多様でございます。

 やはり、全身性障害の方々のように、そのサービスがなければどうしても困るという場合には、しっかり、もちろん全額をサポートしていくことが必要だと思いますけれども、一方で、例えば、今までは保護者の方々が週末にお子さんと出かけていたのを、ホームヘルプサービスでお任せした方が、本人も楽しそうだし自分も楽だしいいというようなことで御利用されていたり、また、御本人が自分の趣味を生かすためにそのサポートを受けるというようなことでやる場合には、やはりバランス感覚としては一定程度上限を設けるとか、ないしは介護保険見合いということであれば、一定程度自己負担というのも、家庭の事情に配慮した上で仕組みとして導入していくのも考えられるのではないかというようなことを思っております。

 いずれにしても、せっかくできたすばらしいコンセプトに基づく制度ですので、総合的に勘案して、この制度を持続可能なものとするために、だれが、どのようにコストを負担して、そして支え合うものとするのか、総合的な制度の見直しが必要になってきているのではないかと考えております。一つの案としては、例えば介護保険制度というような他の制度との統合のような施策もプランとしては議論されているというふうに伺っております。

 そこで、この実施一年を迎えようとしております支援費制度の実施状況について、どのような御認識を持っておられるのか、また、今後の制度の運営について、どのような方針で臨まれるのか、お考えを伺わせていただければと存じます。

塩田政府参考人 支援費制度の今後の運営のあり方につきまして、いろいろな御助言、御指摘をいただきましてありがとうございます。

 支援費制度でございますけれども、昨年の四月より、障害者の主体性を尊重し利用者本位のサービス提供を基本とするという趣旨でスタートしたところでございます。御指摘にございましたように、ホームヘルプサービスあるいはグループホームといった居宅サービスが大きく利用が伸びておりまして、制度が着実に浸透しつつあるものと考えております。

 一方で、このようなサービスの利用の増大によりまして、十五年度の居宅生活支援費につきましては、国庫補助所要額が予算を上回ることが見込まれているところでございます。具体的に申し上げますと、ホームヘルプサービスにつきましては、十五年度予算案におきましては、事業費ベースで三割増のニーズの増大に耐えられる予算措置を講じておりましたけれども、実際には全国ベースで六割から七割の増になったところでございます。また、グループホームにつきましても、当初の予想を上回る、ほぼ同じような伸びが見られたところでございます。

 このため、国庫補助基準ベースで国費が全国で百億円程度不足するということが見込まれたわけでありますけれども、制度施行の初年度におきまして、障害者あるいは地方自治体の皆様方に不安を与えることがないよう、緊急避難的に省内の関係予算の流用あるいは節減に努めました結果、国庫補助基準内の所要額についてはおおむね確保できる見通しがついているところでございます。

 また、先ほど先生から指摘もございましたが、十六年度の居宅生活支援費の予算案につきましても、サービスの重要性にかんがみまして、大変厳しい財政状況の中で、特例的に六百二億円、対前年度比で一六・七%増という例外的な大幅な伸びを確保したところでございます。

 しかしながら、今後ともサービス利用の伸びが予想されますわけでありまして、十六年度も今年度同様に財政的には非常に厳しい状況が続くわけでございます。運用上のさまざまな工夫を行うことが必要であると思っております。現在、地方公共団体の方々でありますとか、障害者団体の方々、関係者と具体的な内容について検討を行っているところでございます。

 先ほど先生から御指摘がありましたNPOの活用でありますとか、あるいは障害者間で公平な運用ができますようにする工夫でありますとか、あるいは本当にサービスが必要な人に対するサービスの提供のあり方とか、さまざまな工夫すべき点があると思っております。

 いずれにいたしましても、支援費制度の理念を実現するということが大事でありますので、障害者の方々が安心して必要なサービスの利用ができるよう、当面の課題もございますけれども、中長期的な視点に立って、制度のより安定かつ効率的な運営に努めてまいりたいと考えております。

宮下分科員 次に、小規模授産施設や小規模共同作業所、また精神障害者の社会復帰施設などの施設を通じた支援施策についてお伺いしたいと存じます。

 在宅の障害者の皆様方が通いながら作業を行います授産施設や共同作業所は、これからのノーマライゼーションを考える上で、大変重要なのではないかと考えております。

 障害のある方々には必要な給付をお上げすればいいというのでは、それぞれの方々が生きがいを持って毎日を過ごすことにはならないと思います。みずからの能力を生かしながら仕事をする、その仕事を通じて生きている実感が生まれてくるのではないかと考えております。

 新障害者プランもスタートしまして、国民的な期待も高まっている中で、しかしながらこれらの施設や作業所に対する国庫補助予算は、他の予算同様厳しい財政運営の中で若干ながら削減されてしまっているというのは大変残念なことでございます。障害者の皆様が能力を最大限発揮して、できれば社会を支える側に回っていただくというような発想が必要なのではないかなと思っております。

 また、精神障害者社会復帰施設につきましては、この予算を包含しております保健衛生施設等整備費補助金全体が、平成十五年度以来大きく減少しております。十四年度までは前年度繰り越し予算や補正予算によりましてかなり整備が進められてまいりましたけれども、昨年から補正予算がなかったこともあって、なかなか地元からの要望にこたえ切れていないという状況が続いております。社会復帰施設は、精神障害者の皆様を地域に帰すために最も重要な役割を果たしておりまして、まだまだ設置要望も強いものがありますので、ぜひとも、平成十七年度以降におきましては、当初予算ベースでもさらなる充実をお願いしたいと思っておるところでござます。

 また、こうした施設関係の施策に加えまして、養護学校などを卒業して一般企業で働く方々へのサポートもさらに充実させていただきたいと考えております。ただ、今現実には、地域の中小企業の経営者の皆様方からは、障害者の皆様の受け入れにはできるだけ協力したいけれども、できれば今までおられた養護学校から人的サポートをしていただけないだろうか、ないしはそういった皆さんをサポートする人員を確保するために支援をしてほしいというようないろいろな御要望もいただいているところでございます。

 以上、何点か申し上げましたけれども、いずれにしても、障害者の皆様方が、それぞれの事情に応じてできるだけ働く場を確保して、働くことによって自己実現を図っていただくことが大切ですし、できれば社会に支えられる側から社会をともに支える一員として御活躍いただくということが非常に望ましいと思います。

 そうした意味で、従来の障害者福祉政策というのと雇用政策、せっかく厚生労働省という統合された省庁が誕生したということもありますので、この二つの政策の連携を一層強化していっていただくことが必要であると考えますけれども、御所見をお聞かせいただければと思います。

塩田政府参考人 障害者の方々が地域生活をしていく上では、先ほど冒頭で御議論がありました介護の問題だけじゃなくて、地域の中で働く場を確保していくということが非常に大事だと思っております。

 その中で、小規模作業所なども非常に重要な役割を果たしていると考えておりますが、来年度の予算案につきましては、民間補助金について一律一割カットという大方針のもとで小規模作業所の予算案についてはカットがなされたわけですが、それに見合いで、小規模授産施設について小規模作業所のカット分の整備費の必要な予算を確保したところでございます。

 また、精神障害者の社会復帰施設についても、御指摘のように、七万二千人と言われる精神障害者の方が社会へ復帰する上で非常に重要な役割を果たしているところでございます。厳しい予算の制約の中で、新障害者プランの目標達成に向けて努力したいと思いますし、十七年度以降のあり方についても、制度全体のあり方を見直す中でどんな形で充実できるか、検討してまいりたいと思います。

 それから、雇用と福祉の連携でありますが、御指摘のように、厚生労働省という形で厚生行政と労働行政が一本化したということでありまして、非常に重要なテーマだと考えております。

 去る二月十八日に、厚生労働審議官をヘッドとします省内横断的な、障害者の就労支援に関する省内検討会議というのを設置いたしました。このような場で、一つは、雇用サイド、福祉サイド両面からの障害者の雇用支援策の強化でありますとか、あるいは福祉施設だけじゃなくて企業などでの障害者の働く場の拡大、あるいは福祉的就労から一般就労への移行の促進などの課題について、省を挙げて検討をしたいと考えているところでございます。

 いずれにいたしましても、障害者の自立や社会参加の促進を図る上で、地域の中で重要な役割を果たしている小規模作業所あるいは小規模授産施設等の施設の施策のあり方については非常に大事ですので、この会議などの場におきましても精力的に検討してまいりたいと考えております。

坂口国務大臣 小規模作業所と小規模通所授産施設と両方御承知のようにあるわけでございますが、小規模作業所の方は非常に限定的に予算を見ているものですから、大きくこれを伸ばすということはなかなか困難な情勢にございます。

 それにかえて、授産施設の方はかなりプラスできる予算を組んでいる。ところが、この授産施設の方は社会福祉法人をとらなければいけないとかいろいろのハードルもあって、ここのところは授産施設をつくりやすいように少し規制緩和をして、できやすいような形を考えていかなきゃいけないというふうに思っておりまして、ちょっと検討を命じているところでございます。

宮下分科員 大臣から特に通所授産施設につきまして大変温かい御答弁をいただきまして、本当にありがとうございます。私も、特に通所授産施設の役割がこれからもっと大きくなってくるのではないかなと思っております。

 それに関連して、一つ御質問させていただきますが、今、全国的にも大規模な知的障害者の入所施設から地域へ移行していこうという動きがいろいろございます。私の地元にも西駒郷という名前の大規模な入所施設がございまして、県の方針としましても、この定員を縮小して、この受け皿としてグループホームの整備を進めていこうという計画がございます。全国的にもこうした動きがあるやに伺っておりますが、しかしながら、知的障害者の皆さんの居住の場を単に地域に移行しただけでは甚だ不十分でございまして、むしろ福祉の後退につながる場合もあるのではないかという危惧を持っているところでございます。

 知的障害者福祉にかかわる方々からは、知的障害者の皆さんは、一人一人がばらばらにされますと、例えばどんなに周りが非常に理解があって、いろいろなサポートをしてくれるすばらしい地域の中にあったとしても、サービスを受ける存在としてしか生きられません、しかしながら、知的障害者の皆さんも仲間とともに一緒に作業などを行えば、お互いに助け合ったり教え合ったり、それぞれ自分の持つ能力を最大限発揮して、その作業を通じて社会に貢献することもできる、場合によっては幾ばくかの利益すら上げられる場合もありますということで、ぜひとも通所授産施設の充実をもっと図っていってほしいという声を伺っているところでございます。

 やはり、こうした大規模の入所施設から地域への移行を図る場合には、単に形式的にグループホームをつくるというだけではなくて、そうした施設整備の増加に見合う格好で、例えば定員二十名前後の授産施設を中心とした受け皿をつくって、地域の中で働きながら、仲間と一緒に仕事ができる、また、生活も何人かとグループホームでできるというようなトータルシステムをパッケージとして整備していくことがぜひとも必要であると考えております。

 こうした考え方について、厚生労働省としての御認識を伺いたいと思います。

塩田政府参考人 共生社会の実現という観点からは、知的障害者の方々が、大規模施設ではなくて地域生活に移行するということは大変重要な課題であると考えておりますが、一方で、先生の御指摘のように、本当に地域の中で知的障害者の方々が生活していくためには、介護の場だけではなくて、御指摘のような就労の場といったいろいろな生活ができるための基盤整備が必要だろうと思っています。

 したがいまして、実際の地域移行に当たっては、御本人の御希望とか御家族の御了解とか、さまざまな手だてを講じつつ、丁寧な移行作業が必要であろうと思っております。

 来年度予算でもホームヘルプサービスとかグループホームの充実を図っておりますが、御指摘のように、そういった介護支援だけじゃなくて、就労の場とかいろいろなものを、授産施設を含めまして体系的にトータルで地域の中で知的障害者が生活できるような施策の実現に向けて努力したいと思っております。

宮下分科員 最後に、介護保険制度の見直しについてお伺いしたいと存じます。

 介護保険制度がスタートしてから三年半が経過いたしまして、昨年四月には保険料の見直し、介護報酬の改定も実施されたところでございますけれども、施行後五年たったところで予定されております制度の見直しが、やはり今一番大きな課題なのではないかなと思います。

 スタート以来今日までいろいろな改革もなされて、例えば、当初は不満や不備を指摘されることがたびたびありました要介護度を認定するシステムですけれども、このシステムも、プログラムの改定等に取り組んでいただきまして、今は大分実態に即した認定が行われる制度として改良されてきたということも伺っているところでございますけれども、同時に幾つかの問題も指摘されつつあると思います。

 まず第一に、要支援とか要介護一というような割と軽い分類に属される要介護者の皆様が急増しておりまして、また、同時に、こうした軽度の皆様が時間がたって再認定を受けられるとどんどん重い方に移行していってしまうという事態が問題視されております。この背景には、今まではそういったサービスが一切なくて、自分一人で頑張っておったんだけれども、認定を受けるとサービスが受けられるということで、それまで使っていなかった車いすを利用してかえって足腰が弱ってしまうとか、また一方でホームヘルプサービスをお手伝いさんがわりにしてしまっているとか、いろいろ不適切な介護メニューの提供があるのではないかというような声も聞かれます。

 やはり私は、特にこうした軽度の皆様方には、それぞれの方々の状態を見きわめた上で、可能であればリハビリを中心としたメニューを提供するとか、運営がもう少し工夫できるのではないかなというふうに考えているところでございます。

 第二に、在宅介護を中心に充実、サポートしていこうという趣旨の介護保険制度だったはずなわけですが、実態としては、どうも施設介護を多くの方々が希望していらっしゃるという実態があるということでございます。この背景には、在宅で介護サービスを受けながら頑張っている場合に比べまして、例えば特別養護老人ホームに入所する場合の方が自己負担が少なくて、しかも保険給付の額から見ても多くのサービスが受けられるということで、やはり施設に入った方が得だという考え方が強くなっていることがあると思います。こうした施設と在宅の利用者負担のアンバランスというのも、やはり見直しが必要なのではないかなというふうに感じております。

 また、第三に、先ほど申し上げました支援費制度などの障害者福祉との統合というのもこれから先可能性の一つに考えていくとすれば、同時に、その被保険者の範囲ももっと若い方々から支える制度に拡充する必要があるのではないかなという考え方もございまして、そうなれば、本当に抜本的な構造改革ということになります。

 以上、さまざまな課題が考えられますが、介護保険のさらなる改善につきましてどのように取り組んでいかれるのか、省としてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 先生の方から三点御指摘をいただきました。介護保険制度の見直しは法施行五年後を目途としてするということで、現在、社会保障審議会介護保険部会の方で審議していただいておりますし、また、障害の問題が出ましたけれども、あわせて障害部会も立ち上げて、並行して審議していただくということになっております。

 私どもは、今先生からお話のございました介護予防とリハビリテーションの充実、それから給付の見直し、特に御指摘ございました在宅と施設の給付と負担のバランスを直すこと、それから、法施行当初から課題でございました障害福祉との関係、この辺は法律の附則でも、まず障害福祉等の実施状況をよく勘案して、御指摘にございましたように、給付を受けられる受給者の範囲を見直すとともに、被保険者の範囲の見直しということも課題になっておりますので、そういった被保険者の範囲の問題も含めまして、まさに介護保険部会の方でも、抜本的な見直しということで、そういうことを目指して審議していこう、こう言っていただいておりますので、年内に成案を得まして、できれば来年の通常国会に法案を提出させていただきたい、こういうことで見直し作業をやっているところでございます。

 一番の課題は、支援費制度も同様でございますけれども、大変利用が伸びておりますので、持続可能性が問題になりますし、特に介護の場合には、どこまでを皆で支え合うのか、保険料と税、貴重な財源で支えておりますので、どこまでを支え、どこまでを自助努力でやるのかといったことについてきちんと見きわめていくということが必要になるということで、その意味でも、先生からお話のありました不適正な使われ方などについてはよくよく思いをいたして、制度の見直しに取り組んでまいりたいと思います。

宮下分科員 時間が参りました。ぜひ前向きに、総合的な構造改革という観点から取り組んでいただきたいと思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

鈴木(俊)主査代理 これにて宮下一郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、滝実君。

滝分科員 自由民主党の滝実でございます。

 予算委員会、大臣には、長らくお疲れのところを、きょうは恐縮でございますけれども、針の先ほどの小さな問題にはなるんでございますけれども、三点ほどお尋ねをしてまいりたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げたいと存じます。

 まず一点目は、これは、この十数年来、毎年年末の税制改正のたびに問題になってきた問題なんでございますけれども、社会診療報酬についての個人事業税、法人事業税、これの見直しを、毎年総務省の方から厚生労働省の方に見直しの要請をしていると思うんですね。それに対して、必ず厚生労働省の方から、いや、待ってくれ、こういう御要望を逆にいただいているということでずっと来ているわけでございます。

 そこで、まず最初にお聞きしたいのは、厚生労働省が、見直しを待ってくれ、相変わらず存続させてくれと言う、その理由をお尋ねしておきたいと思うんです。

岩尾政府参考人 先生御指摘の、社会保険診療報酬に係る事業税の非課税措置の件でございます。

 厚生労働省のこの非課税措置についての考え方ですが、医療は、社会保険診療という公定価格制度のもとで、医業の非営利性、医師等の応招義務などの制約のかかる公共性の高い分野であり、民間の医療機関も公立病院同様、地域における社会保険診療を担う公共性の高い主体であること、人件費の高騰等により医療機関の経営状態が依然厳しいということ、また、仮にこれを廃止する場合には、診療報酬上の手当てが求められ、現在非常に厳しい医療保険財政に大きな影響を及ぼすということ、このような理由によって廃止は適当でないと考えているところでございます。

滝分科員 ありがとうございます。私も、そういうことをずっと申してきたんでございます。

 ところが、この問題は、昭和二十六年の実態調査と申しますか、そこから出発してきているというのが本当のところだろうと思うんです、その前からもあるわけですけれどもね。昭和二年の点数制のときも、一点二十銭という時代からこの問題は随分議論してきたと思うんでございますけれども、昭和二十六年に、実態調査をやるべしということの検討会が開かれましたよね。それに基づいて二十七年に実態調査をしたということにはなっているんでございますけれども、実は、そのときには、二十六年の報告書によりますと、公租公課の中には、当然、固定資産税とか事業に伴う税金は入るという見解を二十六年の答申では示しているわけでございます。

 ところが、その後、今おっしゃったように、一点十円の当時の水準を、医師会側は一点二十円の要求をされ、結果的には一点十一円五十銭ないし十二円五十銭でまとめられたということの中で、二十六年の答申では、公租公課の中には固定資産税とか事業に伴う税金は入りますよ、しかし、所得税とか住民税とか法人税とか所得に関連する税金は入りません、こういうような答申をいただいていたものですから、当然のことながら、二十七年の実態調査の中ではそこのところがどういうふうになってきたのかという問題が、この問題の出発点だと思うんでございますけれども、今、その二十七年の実態調査のときに公租公課はどういうような算定をされているか、資料をお持ちですか。

岩尾政府参考人 持っておりません。

滝分科員 政府委員が御答弁をされたい、こういうことなものですから、そこのところは、私どもも、当然政府委員であれば御承知の上だと思って質問させていただいたんでございますけれども、それにこだわるわけじゃありませんから、その問題はさておいて、要するに、この問題は、二十六年の答申では、事業に伴う税金は経費として当然算入されるという大方針を厚生省の審議会ではお出しになっていながら、後々それを全く知らんぷりしてきたというのに実は問題がございます。

 なぜ問題があるかといいますと、私は国会図書館でこの間の事情を調べてまいりました。そうしますと、実に医師会の中でも二通りの流れがあるんですよね。一つは、一点十円から幾らに上げるかというときに、なるべく単価を上げるべきだ、そういう主張の持ち主が医師会の中の一つの勢力をなしていた。ところが、もう一つの勢力は、診療報酬単価の引き上げをすると、公的な医療機関がふえてきて民間の医療機関が圧迫されるおそれがあるから、要するに、この問題は診療報酬の単価の引き上げじゃなくて専ら税金の非課税で闘おう、こういうグループに分かれてきたんですね。

 したがって、今その流れの中でどういうことになってきたかというと、単価の問題で原価計算というようなものはできるだけ避けていこうと。要するに、国民の立場から見ますとつかみ金でもって診療単価の決定をしていこうじゃないかと。したがって、何が公租公課の中に入っているかどうかというのはうやむやにしながら、細かい議論は避けて、むしろ税金の非課税でやっていった方が自分のところにとどまる所得が得だ、こういう御判断をされてきたように私は感じ取らせていただいております。

 したがって、いつまでもそういうような流れの中でこの問題を扱うのはいかがだろうか、こう思いますので、私は、この問題は、もう少し厚生省として問題を整理して臨んでいただきたいと思うんです。

 だから、結論的に申しますと、税制改正のたびに、そういう診療報酬の単価の問題を抜きにして、これだけ存続させるとか、いや、廃止するんだという議論は、これはやはりやるべきじゃないという立場から、実はしゃにむに不公正税制を是正せよという議論には私は耳を傾けないことにしているんでございますけれども、厚生省はもう少しそこのところは誠実に対応していただきたいということだけを御要望させていただいて、この問題は終わりたいと思います。

 それから次に、これも細かい問題で、これは厚生大臣にお聞きさせていただくわけでございますけれども、本題に入る前に、一つ具体的に問題を申し上げたいと思うんです。

 要するに、育児休業を申請いたしますと、厚生年金は、本人はいわば保険料を払わなくても済む、こういうことに制度的に相なっているわけでございます。その条文は、厚生年金保険法の八十一条の二という条文にあるんでございますけれども、この条文の立て方はどういうふうな立て方をしているかというと、専ら事業主はこういう場合には厚生年金保険料を要するに徴収しなくてもいい、そういう単純な条文なんですね、条文としましては。要するに、育児休業期間中の被保険者に係る保険料については事業主は徴収しない、こういう条文になっているんです、法律の立て方は。

 そこで条文上問題になりますのは、これは本題から離れるんですけれども、何が問題かというと、どうもよくわからないんです。法律と同じで、実にテクニックに満ちた表現になっているんです。何がテクニックに満ちているかというと、まず、だれの保険料かということがわからないんです。「被保険者に係る保険料」と言っているんですね。したがって、被保険者、要するに本人ですね、本人そのものの保険料であれば被保険者が負担する保険料というふうに表現すべきなのに、「被保険者に係る保険料」と書いてありますから、事業主の払う保険料も入っているというふうに普通は読むんですね、事業主の負担する保険料も保険料ですから。あえて「被保険者に係る保険料」と言っているものですから、負担すると言っていないものですから、事業主の保険料も入るのかなと。

 こうやって、よくこれを読んでいくと、最後に事業主は徴収しないと書いてあるから、自分の保険料を徴収しないというばかなことはないなと思って、実は、そこでもってはたと考えて、社会保険事務所がおつくりになった手引を取り寄せて私は見ました、これを。これは社会保険協会が、要するに社会保険事務所なんかの協力を得て、これは恐らく厚生省が監修しているんだろうと思うんですけれども、大体、実際の保険料を徴収する事務担当者はこういうのを見てやっているわけですよね。これを見ると初めてわかるんですよ。

 要するに、事業主は一切免除されないんですよね。本人が育児休業をとって、本人は保険料を負担しないんですけれども、事業主は負担し続けるんです。これを読むと、そう書いてあるんです。

 それからもう一つ出てまいりますのが、法律の立て方は、「事業主が、」というふうに言っているものですから、被保険者、本人ですね、本人はどこも出てこないんです、この条文に。ところが、そこになると、にわかにこの事務手続を見ますと、本人、被保険者本人は、育児休業の保険料の免除を受けようとするときには、被保険者が申請書類をつくって、事業主を通じて社会保険庁長官に提出するというので、法律には何にも被保険者のことは出てこないんですけれども、手引を見るとそうなっているんですよ。

 そこで問題になりますのは、これから本題でございますけれども、要するに、そういう状況の中でいろいろ事件が出てまいります。

 どういう事件かというと、本人は事業主に対して、要するに人事当局に対して、育児休業をとりたいと言って申請します。そうすると、当然のことながら、厚生年金でも何でも全部事業主がやってくれるわけですよ、いわば源泉徴収をやっているわけですから、本人は自分でもって申請書を出したりなんかしなくても、要するに、役所の関係の手続は全部人事当局、給与支払い担当者がやってくれる、これがずうっと社会保険料の基本的な事務手続でございます。

 したがって、本人は育児休業を申請しました、そうすると、人事・給与担当者はわかりましたと言っているわけです。給与担当者は、実はこういうのを見ていますから、わかりましたと言って、そのままになっているわけです。いずれ本人から申請書が出てくるだろうと思っているわけです、これをよく読んで手続しますと。

 そのうち、本人はそんなことは知らずに、給与担当者の方に言うておけば、自動的に今までやってくれていますから、それでもって自分の方の申し出は終わっていると思っているわけです。片や、給与担当者の方は、出てこないからほっておくわけです。気のきいた給与担当者であれば、その一カ月後か二カ月後にわかると思いますよ、それは。ところが、実際の担当者は、厚生省のあるいは社会保険庁の優秀なるスタッフと違いまして、余り優秀じゃないんですよ、普通の人なんです。

 私の事務所でも、うちの事務所で何人かは厚生年金に入れていますから、うちの担当に聞きました。知っているかと言ったら、知りませんと言うんです。そんなやかましいことを言うなら僕にこれを見てくれと、この手引を担当者からもらいまして、そんなややこしいことは知らぬ、何かあったらこれを見てくれと言うわけですよ、だから私がこれを持ってきたんですけれどもね。うちの事務所にこれがたまたま何冊かありました。これは平成十年版です。これでやっているんです。

 法律ではいきなり年金の取り扱いは事業主、給与担当者がやっているのに、ここだけは、この手続を見ると、要するに本人が申請書を出してと。こうなりますから、そこで事件が出てきますのは、本人は育児休業の申請をしてちゃんと保険料も免除されると思っているのに、免除が進まない。ようよう調べてみると、担当者が要するに気がつかなかった。担当者は、当然のことながら、本人から出てくるまで何にも行動を起こす必要がないというふうに信じているわけです。そこで食い違いは何かというと、後でもって本人から何で年金で払っちゃったのとなるわけです。そうすると、担当者は、何だ何だ、そんなこと知らないぜ、おまえさんが何か手続したんじゃないのかと言うと、そこから大事件になって、過去に振り込んだものがどうなっているかと。こうなるわけです。

 そこで問題になるのは、今の法律の立て方、それから、この手引を見ると、普通の事務処理能力のある人たちがなかなか気がつかないような仕組みをつくっているわけです。そこでもって基本的に、随分時間がたってから調べてみると、しまったと。こうなって、社会保険事務所に申し出ても、おまえさん、もう時間切れだよ、そんなことにはなっていませんよと。こういう気の毒なことになるわけです。

 そこで、私は、もともと法律の立て方が非常に不正確な立て方をしている、手続も錯誤を生じやすい手続をしているんですから、当然、この事務を請け負っている、中間事務を請け負っている事業主のそういう錯誤を、後から救済するような運用の仕方をしてもらいたいと思うのでございますけれども。社会保険庁は頑として、とにかく事業主を、敵味方に分ければ、敵みたいなつもりでおるわけですね。そういう、僕は、敵味方に分けて、敵のような扱い方をするのはいかがだろうかと。別にごまかしているわけでも何でもない。人間がやることですからね。年金局や社会保険庁の優秀な組織、人間、手厚い中でやっている人間と違って、具体の給与担当者は一人か二人でやっているわけです。しょっちゅう交代する。その中で、錯誤というのは当然起こる。起こった錯誤は一切聞く耳を持たないというのはいかがだろうかと思いますので、ここは厚生大臣に御配慮をお願いしたいというのが、この二番目の問題の趣旨でございますので、大臣の御見解を承らせていただきたいと思います。

坂口国務大臣 聞けば聞くほど難しい話でございまして、私も今、なるほど、そういうことがあるのかということを初めて聞かせていただいたわけでございます。

 確かに、今先生がお読みになりましたように、その条文を見せていただきますと、「事業主が、」というところで、主語はそこになっていることも事実でございまして、したがって、この条文を、専門家の先生がおわかりにならないものを私がわかるはずないので、なかなか難しいなと思いながら今読ませていただいたところでございますが。

 最近は少しわかりやすく書き直しをいたしております。今までは、「申出をした日の属する月からその育児休業が終了する日の翌日が属する月の前月までの期間」、こういうふうに書いてあるわけでございまして、そこを今度は少しわかりやすくしまして、育児休業を開始する日の属する月から、こういうふうにしているわけでございます。ですから、「その申出をした日の属する月から」になっておりますから、これだったらそういうややこしいことは起きにくいのではないかというふうに思いますが。

 過去の問題をどうするかということでございまして、これを今回出させていただいて、これはなるのは十七年の四月からでございますから、それまでの問題をどうするか問題にはなるわけでございますが、今後、そういうことにならないように、ひとつここは改めさせていただきたいというふうに思っております。

滝分科員 これからの問題は、これはどうにでもなるんですよ。問題は、過去の分を返してくれないんです、これ。私はそんな制度はないと思うんです。人間の錯誤とか誤謬とか、それを前提にしない制度というのは僕はおかしいと思うんです、本来的に。事業主は源泉徴収を法律的に義務づけられている。だから、この条文、八十一条の二の反対解釈として、一切聞く耳を持たないというのはおかしいと思う。しかも、事業主は、ここに書いてありますように、説明書を見ると、いきなり本人が出ちゃうんです、事業主の出番がないんです、これ。本人が持ってくると、事業主はそれを社会保険庁長官に進達しますよだから。

 私は、そういうようにするのは、物すごく誤解を招くような仕組みをつくっておいて、つくった本人は、あるいは法制局も非常に厳密な議論をしているでしょうからわかっていると思うんですけれども、一般の事務担当者なんというのは、ちょっと見てそれでもって給与事務をやるんですよね。私の事務所みたいにしょっちゅう担当が変わって、一人しかいないときは、それは知っているかと言ったら、知らないと言うのは当たり前なんですよ。そんなうるさいこと言うならこれ見てくれ、ここにみんな書いてあるから、これ読んで考えてくれ、こういうことでしょう。

 それからもう一つ、社会保険庁の言い方は、八十一条の二の反対解釈だと言うんです。反対解釈というのは何だということですよ。単なるこれは技術的な条文ですから、利害関係が相反するような、敵味方が分かれてやるような条文じゃないのに、反対解釈なんかあり得ないと思うんです。一つの技術的なテクニックとしてそういう表現を使っているに決まっているんですね。

 なぜこういうややこしいことをするかというと、先ほど一番最初に紹介いたしましたように、育児休業になっても、事業主はその分の保険料は、事業主の負担分は払い続けるんです。本人だけが免除されるんです。それを一つの条文で済まそうと思うと、こういうややこしい、非常にスマートな条文にせざるを得ないんです、スマートな条文に。いたずらにテクニックを弄する条文をつくったものですから、結局担当者としては全く理解できないような条文になっている、こういうことだと思うんです。

 私も最初からこの問題にかかずらったときは、育児休業というのは、その間は全部事業主も本人も年金は免除されるのかなと、いわゆる抽象的なざっとしたあれを持っていたんですけれども、この条文を読みまして。ところが、この解説書を読むに至ってはそうじゃないんです。そのぐらいややこしい話を、幾ら法律的に義務づけたと言ったところで、事業主の何百万もの過去に払った分を、事業主、おまえは頭が悪いから、おまえはペナルティーとして六百万払えとか七百万払えというのはひどいんじゃないかという感じがするんですよ。私は、それが国だったらば、国のおやりになることは、全く信頼の置けない国家だというふうに断ぜざるを得ないと思いますので、大変小さな話でございますけれども、大臣の御見解を承りたいと思います。

    〔鈴木(俊)主査代理退席、主査着席〕

坂口国務大臣 結論を先に申し上げますと、一遍ちょっと検討させていただきます。

 それで、事業主の分は、現在はこれはもう免除するようになっているんです。これは平成十二年の改正で、十二年の改正からは事業主の分も免除できるようになっております。

 さかのぼってのお話につきましては、ちょっと検討させてください。

滝分科員 大臣のお言葉をいただきましたので、よろしくお願いいたします。

 しかし、十二年であっても今の八十一の二の立て方は変わらないんですよね。しかも、私の事務所は、十年のこの解説書がいまだに、私の担当者としてはこれでやっているんです。要するに、担当者に、おまえら講習会か何かないのかと言ったら、いや、法律の大改正のときは講習会があります、それ以外はこれだけです、最初もらった、平成十年にもらったままです、こう言うわけですよ。

 だから、それはなかなか手に負えませんよ、うちみたいに二、三人しか対象にならない人でも、若い人は厚生年金に入れてやろうと思って、無理やりに入れて入っているんですからね。それはなかなか社会保険事務所もそこまで手が回らないと思いますけれども、ひとつよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 時間がありませんから、三点目、簡単に御要望だけ申し上げておきたいと思うんです。

 これも細かい話でございますけれども、身体障害者の対象疾病範囲を拡大してくださいという要望は山ほどおありになると思います、世の中いろいろな病気があるわけですから。

 ところが、私どもが地元でもって非常に――レアケースですから、困ってもどこにも相談に行きようのない臭覚障害というのがあるんですね。鼻がきかないというものです。鼻ですから、外から見たってわからないんです、本当は。それから、鼻ぐらいいいじゃないかということもあるんですよね。目とか耳とか口とかというと、これは大変だということになるでしょうけれども、臭覚障害ぐらいはいいじゃないかということになるかもしれませんけれども、家族としてはもう大変なんですね、こういうものは。やはり心配しているんです。

 この具体的な例は、難しい名前で言うと、低ゴナドトロピン性性腺機能低下症。こういうのが根っこにあって、それの一種の発症形態として臭覚障害が起きている。だから、臭覚障害というのは、いろいろな原因があるんでしょうけれども、要するに性腺機能低下症による一つの発症の形だと思うんですね。ですから、余り例がないんだろうと思うんですけれども、しかし、奈良県の県立医大の第三内科の何とかドクターのところに行きますと、治療すれば何とか治るかもしれませんというような見解が示されているものですから、家族は何とかそういうふうなことでやりたいと。

 臭覚障害といえども、家族が一番心配しているのは三点あるんですよね。一つは、腐敗したものを口にしたって、何もにおいを感じませんから食べちゃう。それから、火災が起きて、きな臭いにおいがしたってわかりませんから危ない。それから三番目には、当たり前のことですけれども、人並みににおいがわかるようにはさせてやりたい、こういうことだろうと思うんです。

 家族としては、この子供はいろいろな障害を複合して持っているものですから、これだけ治したってとか、いいじゃないかとかいう医者もいるかもしれませんけれども、家族としては一つ一つやはり治せるものなら治してやりたい、こういうことがあるんですけれども、お聞きしますと、障害者手帳の対象範囲には臭覚障害というのは今まで一件もないというふうにも言われておりますので、何とかこの種のものを取り上げていただけるような議論をしていただけないだろうかな。なかなかレアケースだし、どういう治療方法をするのか、私は素人ですからわかりませんけれども、障害者手帳の範囲の拡大ということについて、厚生省はどういうふうにお考えになっているのかをまずお聞きしておきたいと思います。

坂口国務大臣 障害者の範囲につきましては、御指摘のように、さまざまな問題が来ておりまして、少し整理をしなきゃいけないと思っております。

 今までは、手が不自由でありますとか、指が不自由でありますとか、目が見えないとか、いわゆる体の表面に出ておりますものが中心でございましたけれども、内臓疾患等がだんだんと障害の中に入ってまいりましたり、こちらは入ってなぜこちらは入らないのだというような問題が出てまいりましたり、この問題は整理をしなきゃいけない時期に来ておりますので、いろいろと皆さん方から出ておりますものを総括して今議論を始めているところでございます。

 臭覚障害というのも、確かに、今お聞きすれば一つの障害であることは間違いありませんが、ただ、今先生が御指摘になりましたお話の中で、それを治療をすれば治るという……(滝分科員「かもしれない」と呼ぶ)というものであれば、これは治療をしていただくということが先になるんだろうというふうに思います。

 しかし、そうではなくて固定してしまう、もうそれはどうしてもだめだというものであるかどうかということの見定めが必要でございますけれども、そのあとの問題は、あらゆる種類のものを総ざらい一遍検討をいたしておりますので、その中の一つに入れて検討させていただきたいと思います。

滝分科員 ありがとうございました。時間が参りましたので、質問を終わらせていただきます。いろいろな点について、大変針の先ほどの問題でございますけれども、ひとつよろしく御検討のほどをお願い申し上げまして、終わります。

 ありがとうございました。

谷口主査 これにて滝実君の質疑は終了いたしました。

 次に、高木美智代君。

高木(美)分科員 公明党の高木美智代でございます。

 本日は、女性の健康と命を守るという観点から、乳がん検診について質問をさせていただきます。

 御存じのとおり、乳がんは、現在、我が国で最も増加率が高いがんの一つでございます。三十歳から六十四歳までの女性の乳がんによる死亡率は、がんの中で第一位です。三十人に一人がかかる病気とも言われております。乳がんは早期発見、早期治療が必要であり、早期に診断できれば手術も簡単に済み、形も温存することができます。

 一月二十三日の参議院本会議におきまして、我が党の浜四津代表代行より、特に四十歳代の罹患率が急増しているということから、乳がん検診にマンモグラフィーの導入をしてはどうか、また検診対象年齢を四十歳以上へ見直しをしてはどうかとの質問をいたしました。それに対しまして、坂口大臣より、現在の五十歳以上の対象から四十歳以上になるように努力をしたいとの前向きな御答弁をいただきました。

 この件につきましては、現在、多くの女性が注目をしているところでございます。また、お声も多く寄せられております。こうした女性の疑問に答える意味から、本日は何点か質問をさせていただきます。

 まず、現在の日本人女性を対象とした乳がんの罹患率、死亡率の具体的な数値を伺います。年代によりどのように異なるのか、あわせてお答えをください。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 先生からお話ございましたように、近年乳がんの罹患率、死亡率の上昇が問題になっております。国際比較をまずさせていただきますと、相当、例えば先進国サミットに来ている国などに比べますと罹患率は半分くらいでございますが、アジアの中では最も高くなっている、こんなようなことでございます。

 まず、乳がんの罹患数でございますが、患者さんの数が、一九九六年から九八年の平均値でございますが、三万一千八百九十七人、年齢調整罹患率で人口十万対にいたしますと四十一・八ということでございます。平成十三年度の人口動態調査によりますと、死亡者数は九千六百五十四人、こういうふうになっております。

 どういう年齢層が多いかと申し上げますと、三十代から徐々に上がりますけれども、ピークが四十代と五十代の間になっており、五十代以降なだらかに減少するというのが年齢階級別の罹患率になっている、こういうふうに承知いたしております。

 これから我が国のいろいろな生活パターンがますます欧米化するということを考えますと、例えばカナダと日本を比べますと、やはりカナダの方が倍、アメリカなどもそんなような水準ということを考え、ヨーロッパ、ドイツ、フランス、アメリカを見ましても、がんセンターの統計などによりますと日本の倍程度になっているということでありますので、これから我が国の生活パターンなど、そういったことが欧米化するということを考えますと、その辺の見通しについては慎重でなけりゃならないとは思いますけれども、今後さらに増加する疾病ではないかと思っておりまして、がん対策自体、厚生労働省あるいは政府を挙げてがんの制圧に取り組んでいるところでございますが、そういった中で、女性の健康を守るという意味でも乳がん対策、その他のがんの対策もゆるがせにしてはなりませんけれども、乳がん対策は緊急の課題だ、こういうふうに認識しているところでございます。

高木(美)分科員 今お話を伺いまして、約三万人がかかり、そのうち約一万人が亡くなっている、このように認識してよろしいでしょうか。ということは、年代的にも、今お話にございましたとおり、四十代、五十代がピークである、やはり三十代ぐらいから急上昇を始めている、このように認識してよろしいでしょうか。

中村政府参考人 少し最初の御答弁で落としたことがございますので、それも含めまして補完させていただきたいと思います。

 死亡率の推移でございますが、一九八〇年に人口十万対で七でございましたのが、二〇〇一年、平成十三年では約十一となっているということで、我が国でも確実に上がっているということでございます。

 年齢別の罹患率につきましても、四十代、五十代と申し上げましたけれども、一番高い年代層を五歳刻みでとりますと、やはり四十五歳から四十九歳が罹患率のピークになっている、こういうことでございます、先生から御指摘のあったとおり。五十代はやや下がってまいりますけれども、三十代とは比較にならないということでございまして、四十代、四十五から四十九にピークに達し、それから五十代以降も相当高い、こういうことでございます。

高木(美)分科員 ありがとうございました。

 恐らく、四十代、五十代といいますのは、やはり働き盛りの年代であるだけにがんの進行も早い、またそれだけに早期発見が生存率にそのまま大きく影響するということだと思っております。

 それでは、現在の乳がん検診の方法につきましてお伺いをいたします。どのような方法で検診を行っているのでしょうか。視触診やマンモグラフィー検診、いろいろあるかと思いますが、その割合など具体的にお答えください。

中村政府参考人 がん検診のことについて、まず少し詳しく御説明をさせていただきたいと思います。

 まず、我が国のがん検診でございますけれども、行政の制度としてやられておりますのは、仕組みの枠組みといたしましては、老人保健法という法律が昭和五十七年から実施されておりまして、そこで老人保健事業としてさまざまな検診事業をやっております。今の言葉でいうと生活習慣病対策を含めまして全般やっているわけでございますけれども、その中でがん検診にも取り組んでいるということで、最初に取り上げられましたがん検診は胃がん、子宮がん検診でございます。老人保健法の保健事業というのは、第一次の五カ年計画から数えまして、今日まで四次にわたる計画で実施しているわけでございますが、最初の五カ年計画で取り上げられましたのが胃がん、子宮がんであったということでございます。

 六十二年に今お尋ねの乳がんが肺がんなどと一緒に入りまして、ちなみに平成四年に大腸がんが加えられている、こういう歩みになっておりますので、昭和六十二年から、乳がん検診については、この老人保健法の事業で実施されているということでございます。

 老人保健法の事業というのは、原則は四十歳以上の方、老人保健というのは老人医療のことをやっている法律でございますので、七十歳以上の老人医療費の問題を中心にしていますけれども、やはり高齢者の医療のことを考える場合でも中高年からの健康、ヘルスチェックが大事だということで、四十歳からを基本としております。

 六十二年から乳がん検診を始めたわけでございますけれども、私ども、平成十年にがん検診の実施のための指針というのをつくっております。そういったことで、現在、乳がん検診につきましては、三十歳以上から五十歳未満の方については問診と視触診で行う、五十歳以上の方については、問診と視触診にあわせましてエックス線の検査、マンモグラフィーをする、こういう基準で行われております。

 実施状況でございますけれども、平成十三年度の実績で御説明をさせていただきたいと存じます。

 全国三千二百四十六市町村ございますが、そのうち、乳がん検診を実施されている市町村数は三千百四十九市町村ということで、九七%の市町村で乳がん検診が実施されております。

 対象人口は、私どもの推計では二千六百五十万人程度おられるというふうに思っておりますけれども、受診者、実際に市町村で乳がん検診を受診された方は三千二百七十九万人ということで、対象者として我々が認識している数に占める割合は一二・三%ということでございます。

 低いじゃないかというふうな印象を持たれるかもしれませんが、これでも、制度発足当初は五%程度でございましたのが年々上がってまいりまして、平成五年くらいに一二%に達し、その後、残念ながらずっと横ばいだという状況でございます。

 それで、お尋ねの、それではどういう検診方法か。今、基準では、三十代から五十前までは視触診のみ、それから五十代以降はマンモグラフィーというのを併用するということでございますが、三千二百七十九万人のうち視触診方式のみは二百八十三万人ということで、検診を受けられた方の八六・三%でございまして、マンモグラフィーを併用された方は四十四万八千人ということで、一三・七%ということでございます。まだ、マンモグラフィーを受けておられる方が全体の一三・七%ということでございます。

 そんな状況が、今日の老人保健法に基づきます老人保健事業の中の乳がん検診の実施されている状況でございます。

高木(美)分科員 恐れ入ります。数を、少しけたが違っておっしゃったように思います。人口が二千六百五十万人に対して受診者が三千二百七十九万人とおっしゃられまして、数の訂正をお願いいたします。

中村政府参考人 三百二十七万九千人でございました。大変失礼いたしました。

高木(美)分科員 今、一二・三%というお話を伺いまして、大変低いというふうに思っております。国として、こうした受診について市町村にはどのような指示を具体的に出されているのでしょうか、お伺いいたします。

中村政府参考人 それぞれ部位ごとに実施状況はちょっと違うかもしれませんが、当然、私どもは早期発見、早期治療が大事だということでございまして、ヘルス事業と申しますか、老人保健事業は、検診事業のほかに、健康指導でございますとか訪問指導ですとか、それから、本当にハイリスクの方については、がんではございませんけれども、機能訓練に来ていただくとか、さまざまなメニューがございます。

 検診事業などにつきましては、さまざまな広報を使ってお知らせするとか、例えば市町村の広報でございますとか、町内会に掲示するとか、いろいろな手段を使って広報する。それから、さまざまな検診団体や予防団体がございます。脳卒中やがんや心臓病、それぞれそういった団体がございますので、そういったところからいわゆる健康教育の資料というものを多く出していただいて、なるべく住民の方に徹底するようにということでございます。

 ただし、これは専門家の方からも、乳がんなどについて非常に受診率が低いということは、がん検診のあり方を考える上での最大の問題ではないかということを言われておりますので、我々もこれから大きな課題として取り組んでいかなければならない、こういうふうに考えておるところでございます。

高木(美)分科員 乳がんによる死亡率は日本のみが上昇傾向と思います。アメリカ、イギリスでは、マンモグラフィー検診の普及や検診を進める啓蒙運動によりまして死亡率は減少傾向でございます。厚労省が既にがん検診の検査項目に五十歳以上を対象にマンモグラフィー検診を追加されましたけれども、余りに遅いという感がございます。このマンモグラフィー検診の効果をどのように認識しておられるか、お伺いをいたします。

中村政府参考人 がん検診につきましてはさまざまな問題があるというふうに考えております。それから、知見も日進月歩でございますので、当然のことながら、先ほど申し上げましたように、昭和五十七年から四次にわたる計画で順次検診項目を追加したり、その時々に指針の見直しなどをしてきておりますけれども、常に見直しが必要だと思っております。

 先ほどちょっと申し上げましたように、現在第四次の計画と申し上げましたけれども、これが十二年度から十六年度ということで、まさに来年度が見直しの時期になるということで、私どもも、かねて、十六年度の計画の終了、十七年度の新しい計画の策定に向けて見直しをしなければならない、こういうふうには思っていたわけでございますが、乳がんをめぐりまして、視触診だけでは問題ではないかという御指摘を強くいただきましたので、見直し作業を少し前倒しするということで、昨年十二月に、がん検診に関する検討会、専門家による検討会を立ち上げまして、早速、とりあえず、まず乳がんと子宮がんについて検討を願っているところでございます。

 今はまだ検討中でございまして、来月にも乳がんと子宮がんにつきましては結論を出していただきたいと思っておりますけれども、これまでのところ、乳がん検診につきましては、四十歳代の視触診とマンモグラフィーの併用は死亡率減少の効果があるんではないかということでございまして、今、私どもの基準では五十歳以上が併用になっていますけれども、その年齢を引き下げて。しかも、視触診単独では死亡率は逆に減少の効果はない、視触診単独で死亡率が減少しているという根拠のある効果はない。やっていらっしゃる先生方では、実は発見したとか、そういうことはありますけれども、今、専門家の意見では、単独では効果がないんではないかという方向にまとまりつつあります。

 また、参考までに、今先生の方でアメリカの例を出していただきましたけれども、アメリカでも四十歳以上にマンモグラフィーを実施している。この座長を国立がんセンターの総長の垣添先生にしていただいていますが、垣添先生のお話によりますと、アメリカではこの年齢の女性の受診率は、一、二年に一度ということのようでございますけれども、受診率は七割だというふうに伺っておりますので、本当に効果のある検診方法をきちんと国民の皆さんにわかっていただいて、本当に受診していただくということが最大のがん予防対策だと言われておりますので、そういった意味では、また今月、三月中に結論を出していただこうと思っておりますので、月が改まりましたので今月でございますが、今月の取りまとめを待たなければなりませんけれども、私どもとしては、マンモグラフィーの効果というのはあるんではないかと専門家から御指摘いただいておりますので、そういう方向を目指したい、取りまとめていただいたら目指すべきではないかと考えております。

高木(美)分科員 日本ではこれほど機械化が進んでおりまして、そのような効果的な装置がありながら、いまだに手探りの旧態依然とした視触診のみでは、余りにこれでは医療の後進国と言わざるを得ないと思います。ぜひともこのマンモグラフィー検診を全国に導入していただきまして、早期発見に努力をしていただきたいと思います。

 今お話がございましたアメリカも日本も四十代というお話でございますが、これは三十代からとはならないのでしょうか。その点につきましてお伺いいたします。

中村政府参考人 老人保健法のヘルス事業は四十歳以上を原則としておりますけれども、今の事業は、三十歳以上を対象にして視触診の検診をしているところでございます。

 問題点は、そういう検診事業というのは本当に効果があるかどうかということが課題になるわけでございまして、早期発見早期治療という意味で、死亡率の減少に効果があるということであれば、我々、例えばほかの種類のがんで、三十歳以上じゃなくて二十歳以上であれば二十歳以上ということにも取り組みたいと思いますが、そこは、早ければ早いほどいいということだけではなく、やはり検診を受けられる場合、特にエックス線を浴びるということもございますので、そういった意味での効果とコスト、コストというのは費用の点だけではなくて人体に与える影響とか、そういうことについてもよく専門家の御意見を聞いた上で、私ども、判断させていただきたいと思います。

 とにかく、基本は、専門家からも言われていますのは、検診については、真の意味での効果とコスト、それは、経済的なコストだけではなくて、それに伴う人体に与えるコストみたいなことも含めまして、きちんと科学的に根拠がある方法でやっていきたいと思っておりますので、そこの点は御理解をいただきたいと思います。

 いずれにしても、何歳からかということも含めまして、検討会の御意見をまとめていただきたいと思っておりますので、そこの点については御報告申し上げたいと思います。

高木(美)分科員 それで、このマンモグラフィーの装置についてでございますが、全国で何台設置をされているのでしょうか。また、その装置の基準に適合不適合があると聞いております。どういうことなのか、基準について伺います。またさらに、不適合の装置につきましては、どのような指導を今後行うつもりなのか、お伺いいたします。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもの乳がん検診におけるマンモグラフィーにつきましては、こういうお願いをしております。原則として、日本医学放射線学会の定める仕様基準を満たしているものとし、少なくとも適切な線量及び画質基準を満たすことが必要、こういうふうにお願いをしております。

 そこで、それでは日本全国で使われているマンモグラフィーでこの基準に合っているかどうかということについてマンモグラフィ検診精度管理中央委員会というところで調べていただきましたところ、二〇〇二年の十二月現在で、全国に三千二百九台マンモグラフィーがございましたけれども、基準に適合しているのが千四百八十三台ということで、約半数にはいきませんけれども、半数程度であったということでございます。

 私どもの基準からすれば、千四百八十三台は合格でございまして、残りは問題があるということであります。この残りのものについて、使わない方がいいのか、基準は満たしていないけれども、使い方によって、使わないよりも使った方が効果があるのか、そういったことにつきましては、今検討していただいております専門家の会議の御意見、アドバイスをいただいた上で私ども考えさせていただきたい、こういうふうに思っております。

高木(美)分科員 それに関連しましてお伺いいたしますが、今、新聞などで放射線被害の数値が掲載されております。心配する声も多く寄せられております。このマンモグラフィー検診での影響についてお伺いいたします。

 今、適合不適合というお話があり、不適合につきましては今後検討してというお話がございました。やはりこうした内容もそれぞれの健康にかかわる、命にかかわる大事な内容でございますので、ぜひ経過等もあわせて公表をしていただきたいと思います。

中村政府参考人 先生から御指摘いただきました、御懸念の放射線被曝のリスクと検診による利益とのバランス、先ほどから私、コストコストと申し上げておりますが、いわばリスクとメリットのバランスですが、専門家の研究、報告によりますと、四十代以上の女性でありましたらマンモグラフィーの放射線被曝のリスクは問題ないレベルではないかと。やはり若いときは問題が多いということですので、そういった意味でも、年齢を単純に引き下げるということについてはちょっとためらうところがございまして、そういった乳房撮影を用いる乳がん検診の利益と被曝によるリスク、そういったことについてよくよく考えて、絶対にメリットが多いという方向で基準をつくらせていただきたいと思っております。

高木(美)分科員 わかりました。要するに、リスクとそれから発見されるそこのメリット、このバランスをよく考えて、年代によってということでございますね。

 今後、導入に当たりまして、地方自治体への支援策についてお伺いをいたします。また、この導入につきましては、技術者の養成とかスタッフの確保などさまざま必要と伺っております。この点についてもお答えください。

中村政府参考人 まさに先生御指摘のとおりでございまして、やはり医学でございますので技術が必要ですし、科学的な要素もございます。新しい機械を使うということになりますので、それなりのスタッフの研修なり、そういったことも必要だと思います。

 先ほども申し上げましたとおり、私どもはこの作業を前倒ししてやっております。基準を改めるということは早い方がいいと思っておりますけれども、それをどうやって深く定着し、特に市町村の事業としてやっていただいていますので、しかし市町村はみずからそういうものを持つというのは原則ではないと思いますので、日本の市町村の体制を考えますと、やはりいろいろな医療機関にお願いをしたり検診団体にお願いをしたり、そういうことになると思いますので、まずそちらの方の整備を整えるということが大事だと思います。

 市町村に対します助成ということでございますが、これは申し上げなければならないのは、平成十年に、がん検診につきましては財源的には一般財源化ということで、市町村の自主財源で、あるいは地方交付税で裏打ちするものでやっているということでございます。

 まさに、私どもの方の技術指針が国としては水準を保つための命になるわけでございますので、その技術指針がきちんと実行されるように、この点は市町村の方にも、検診の主体者でありますけれども、よく理解していただくとともに、市町村がお願いしたときに専門家がそういうことができるように、体制整備をしていかなきゃならないと思いますので、そういったことは専門団体ともよく相談しながら進めていきたいと思います。

 また、十七年以降、新しい計画がスタートいたしますので、その際、どういった手だてがあるかということにつきましても、いま少し時間をいただいて検討させていただきたいと思います。

高木(美)分科員 それでは、最後に質問いたします。

 こうした検診を受ける際に、どこに行けばマンモグラフィーの基準に合った装置があり、またそこで受けられるのかどうか、こうした機関につきまして公表はしていただけるのでしょうか。こうした内容を知りたいという皆様からの率直なお声が多く寄せられております。

中村政府参考人 先ほども申し上げましたとおり、先ほどけたを間違えて失礼したんですが、受診者数が該当人口の一二・三%ということで、少ないのが問題になっております。受けていただく方にとって受けやすい仕組み、どこに行けばいいかというのがわかる仕組みというのは非常に大事だと思います。私どもは、どこに行けば基準に合ったマンモグラフィーが受けられるかということについては、まさに一番大事な情報だと思いますので、積極的に公表させていただきたいと思っております。

高木(美)分科員 ありがとうございます。今こうした力強いメッセージをいただきまして、感謝しております。

 やはり、多くの女性の声が国に届き、またその事業主体の市町村まで届き、また検診機関にきちんと届く、具体的に一日も早く実現できますように、私も全力で取り組ませていただきます。

 最後に大臣に、恐縮でございますが、この乳がんの検診につきまして、大臣の御決意を伺わせていただければと思います。

坂口国務大臣 今お聞きしますと、信頼できる台数も千四百八十三台ということで、非常に限られております。もう少し信頼できるマンモグラフィーの数もふやさなければならないだろうというふうに思いますし、もう一つは、やはり四十歳代からにしましても、もう少し検診を受けていただけるようにどうするかということなんだろうと思います。

 私もかつて検診をやっていたことがございますけれども、口角泡を飛ばしてがんの問題を訴えましても、最後に、皆さん受けていただけますかと言ったら、二五%ぐらいしか受けるとはおっしゃらなかったという経験がございまして、愕然としたことがあったわけでございます。どういうふうに皆さんに積極的に受けていただけるような体制をつくるかということも大事でございますので、そうしたことをあわせて行わなければならないというふうに思っております。

高木(美)分科員 ありがとうございました。

 以上で質問を終了いたします。

谷口主査 これにて高木美智代君の質疑は終了いたしました。

 次に、吉田泉君。

吉田(泉)分科員 民主党の吉田泉でございます。私は福島県いわき市の市会議員を経まして、今回初当選をさせていただきました。どうぞよろしくお願いいたします。

 私は、市会議員になったのは七年前のことなんですが、それまで政治とは余り縁のない世界におったんですが、政治を志したというきっかけは、水源地における廃棄物の最終処分場の問題でございました。きょうは私、初めての予算委員会の質問なんですが、まずこの問題から入りたいと思います。

 十年前ぐらい、私の地元、いわき市に水道水をとっている水源河川がありますが、そこの上流のほとりに、川のすぐそばに、一般廃棄物の最終処分場が建設される、廃棄物焼却灰については関東のいろんな市町村から運び込まれるという計画が持ち上がりました。焼却灰は、昔は畑の肥料になったり、安全で大変有益なものだったわけなんですが、今の焼却灰は、大分騒がれていますダイオキシンとか重金属とか、そういう非常に危険なものを含む毒物だという状態になってまいりました。そういう毒物を水源河川のほとりに埋める、これは永久的にそこに残るわけなんですが、それは一体いかがなものかという問題になりました。結果として、県知事が建設の許可を出しまして現在もう七年目ぐらいになりますか、埋め立てが続いております。裁判もありまして、操業差しとめの訴訟が今仙台高裁で行われているという状況でございます。

 福島県も大変心配しまして処分場の周辺の調査をいろいろしていますけれども、住民の危惧のとおりに、非常に高い値のダイオキシンとか、鉛とか、カドミウムとか、そういうものが検出されております。

 それから全国的にもこの十年以上にわたって同じような問題が大変頻発しているという状況でございます。東京では日の出町という大きな問題もございました。それから最近では、山梨県の明野村というところで、山梨県が関与する産業廃棄物の処分場が明野村の簡易水道の取水口の二キロ上流だということで、村長さんが大変心配して、今県知事と村長、この間で激しい話し合いが行われているという状況でございます。

 こういう今の状況を見ても、この十年間、余りこの水源地の処分場問題という問題の事態が改善したというふうには私には思えません。依然としてこの問題が日本の水道行政そして廃棄物行政の最大の問題であり続けているというふうに私は思っております。

 そこで、最初の質問ですが、まず、水道行政の大元締めは厚生労働省でございますが、このような処分場などによる水源汚染の危険性、リスク、そういうものを今現在どのように把握しておられるのか、お伺いいたします。

田中政府参考人 水道水源の水質の保全を図るということは安全な水道水を供給する上で極めて重要でございまして、廃棄物処分場等によりまして水道水源が汚染されるということはあってはならないというふうに考えております。

 このため、水道事業者は、流域の関係機関とも連携しまして、原水の監視を行い、原水水質に応じた適切な浄水処理を行うとともに、浄水の水質検査を行って水道水の安全を確保しているところでございます。

 また、廃棄物の処理及び清掃に関する法律等に基づきまして、都道府県等において適切な措置が講じられることが大変重要でありまして、これらを所管する関係省庁との連携を図り、対処してまいりたいというふうに考えておるところでございます。

吉田(泉)分科員 私が申し上げたような問題意識と同じ問題意識からだと思いますが、平成五年に、水道水源の水質保全に関する有識者懇談会というのが開催されまして、報告書が出されました。それによりますと、水源保全地域というものを指定して、そこで、排水規制をしたりそれから開発規制の道を開くことが必要だという報告書が出されました。それから十一年たったわけでございますけれども、その報告書を受けてその後もどういう法整備がなされて、その結果どういう効果が出てきたかということをお伺いします。

田中政府参考人 平成五年の先生御指摘の報告書、これを踏まえまして、平成六年には水道原水水質保全事業の実施の促進に関する法律、こういう法律が制定されました。水道事業者の要請によりまして、水道原水の水質保全に資する事業が推進される仕組みというのが整備されたと私ども考えているところでございます。これに基づきまして、下水道それから農業集落排水施設、合併処理浄化槽の整備及び河川浄化事業等の水道原水の水質を保全するための事業が実施されておりまして、水道水源への汚染の負荷の低減に役立っているのではないかというふうに考えているところでございます。また、平成九年には廃棄物の処理及び清掃に関する法律が改正されまして、地域ごとの生活環境の保全への配慮を組み込みました施設の設置手続というものが整備されたところでございます。

 今後も、これらの制度等を活用しまして、水道水源の水質の保全につきまして、関係省とも協力しつつ推進してまいりたいというふうに考えておるところでございます。

吉田(泉)分科員 そういう法律の整備もこの十一年間なされてきて、それなりの効果が出ているはずだという御答弁でございますけれども、この全国の自治体においても、この問題は非常に苦労の種でございます。

 いろんなところで自治体レベルの水源保護条例というのがつくられてまいりました。私、福島県ですが、相馬市というところで、きょう電話で確認したんですが、この三月議会に水源保護条例というのが提案される、大体きょう原案がまとまったということでございました。

 例えば、この相馬市の条例の趣旨は立地規制でございます。まず、水源保護の地域を指定する、そこにいろいろな処分場の計画が出てきた場合に、審議会等を経て市長が場合によってはそれを規制対象事業所と認定できる、処分場等の水源汚染の可能性が強いと認定される施設については建設そのものを禁止しようという趣旨の条例だという説明を、今、電話で相馬市から受けました。ただ、市町村レベルでそういうことをやっても、最終的な許認可権というのは、廃掃法上、これは県知事ということでございますので、またここでせめぎ合いが出てくるということになるんだろうというふうに思います。

 それから、ちょっと目を外国に転じますと、特にこの問題の先進的な国はドイツだと言われております。廃棄物そのものを減らすという対策も先進的なんですが、取水口の周辺、つまり水源地域には、汚染源となるような施設の建設を認めない、つまり、立地規制に踏み込んでいるというのが、ドイツを初めとするヨーロッパのこの問題への対応の特色でございます。

 先ほどのお話によりますと、日本の法律上は、まだそこまでは踏み込んでいないということだと思います。しかしながら、最終的には、私は、日本も、相馬市とかドイツで今既に対策がとられているような、水源汚染の危険のある施設の建設そのものを規制していくというのが、我々が目指すべき最終目標じゃないかというふうに思っておりますが、これは、担当が環境省になるかもしれませんが、御答弁をお願いいたします。

南川政府参考人 お答え申し上げます。

 平成十年以降でございますけれども、新しくつくろうと考えます最終処分場につきましては、廃棄物処理法上、環境アセスメントというのを厳しく義務づけております。また、それ以外にも、施設の構造について、技術上の基準、あるいは構造・維持管理基準というものもきちっと決めることになっております。その上で、特にその下流域に水道の取水地点がありますれば、環境アセスメントの中で、水質の予測結果というものをきちんと環境基準などに照らして評価するということでございます。

 また、当然ながら、その際には、地域住民への公告縦覧と意見聴取、それから、関係の市町村長さんからの意見を聞くということで、それを踏まえた上で県知事が総合的に判断をするということでございます。そして、当然ながら、事後的には厳しい排出規制もかかってまいるわけでございます。

 それから、外国でもいろんな例があると思いますが、私、ドイツの取水制限の話はよく存じませんけれども、ヨーロッパでもアメリカでも、日本以上にごみの生埋めというものが行われております。これは、砂漠であるとかあるいは岩塩をとった跡であるというところで、そういった場所が日本に比して比較的多いということから、そうした措置がとられております。

 それと、取水口の場所の問題については、余り知見もございませんので論じられませんけれども、そういった国でも、最近は、埋め立てを減らすために、焼却をして埋め立てのかさを減らそうということで努力をしておるというふうに聞いております。

 いずれにしましても、取水口が近くにあって、それが廃棄物処理施設によって汚染されてはいけないという認識のもと、厳しいアセスメントと排水規制を行っていきたいと考えております。

吉田(泉)分科員 アセスメントと排水規制というものを中心に厳しく対応しているという御答弁だったんですが、改めて私が申し上げたいのは、立地規制なんですね。建設を認めた上でいろいろ排水規制をするというだけじゃなくて、場合によっては、立地規制に踏み切るぞ、建設規制に踏み切るぞと、そういうお考えを出していただいて、大変難しい問題ではありますけれども、いろいろクリアしていきたいと思うんですが、改めて、その立地規制という考えについてはいかがでしょう。

南川政府参考人 このアセスを行う前でございますが、毎年百二十件から三十件、産業廃棄物埋立処分地の許可がございました。アセスメントの制度を導入しましてから、毎年二十件から三十件ということで、激減をいたしております。また、どれだけが取水口に近いかどうかということは、そこまで点検しておりませんけれども、いずれにしても、激減しておって、影響があり得れば非常につくりにくい状況にはなってきているということだと思います。

 私どもとしては、もう少し状況を見きわめた上で、さまざまな検討をしていきたいと考えております。

吉田(泉)分科員 いずれにしましても、私の問題意識は、この水源地の処分場という問題は、半永久的に日本人の健康をむしばみかねない、そういうたぐいの問題である、多くの国民もそういう認識を既に持っていると思います。改めて政府のさらに積極的な取り組みをお願いしまして、別の質問へ進みます。

 二つ目の質問は、柔道整復師の役割という問題でございます。

 私の知り合いに、整骨院の先生、つまり柔道整復師さんがおられるんですけれども、その先生のお話ですと、患者さんのほとんどが、腱鞘炎、五十肩、肉離れ、筋肉の挫傷、それから老人性の変形ひざ関節症、今五つ症状を申し上げましたけれども、この症状を訴えて接骨院を訪ねてくる患者さんがほとんどだということでございます。そして、それに対して柔道整復師独特の施術をする、そして健康保険を請求する。しかしながら、請求すると、厚生労働省からの通達というのがあって、先ほど申し上げた五つの症状については、捻挫か打撲という傷病名にしないと保険金がおりないという問題が頻発しております。したがって、柔道整復師サイドとしては、五十肩のことは肩関節捻挫、それから肉離れなどは下腿部の打撲というように、実際の名前と異なった診断名をつけて保険請求をしているということでございます。

 ところが、そうすると、今度は、請求された健康保険組合、それから社会保険事務所、こういうところからはクレームがやってくる。慢性の五十肩を肩の捻挫と偽って請求しているんではないかと、こういうようなクレームが保険者の方から来る。そんな話がだんだん伝わってくると、今度は患者さんの方も、腱鞘炎とか五十肩は柔道整復師のところに、接骨院に行っちゃまずいのかというような混乱も今起こっている。そういうことで、整復師としては、ぜひ治療の実態に合った傷病名を使いたいんだというようなお話でございました。

 そこで、まず一番最初に、担当の厚生労働省として、今申し上げたような柔道整復師の傷病名表記の問題を、どのように現実を把握しておられるのか、最初にお伺いします。

辻政府参考人 お尋ねの柔道整復に係る施術についてでございますけれども、柔道整復師の業務範囲、これが、今御指摘の骨折、脱臼、打撲、捻挫等とされておりまして、私ども、医療保険の療養費の算定基準上、正確に申しますと、急性または亜急性の外傷性の骨折、脱臼、打撲及び捻挫、それから、急性または亜急性の介達外力、これは間接的に加える外からの力という意味でございますけれども、介達外力による筋または腱の断裂、これはいわゆる肉離れという意味でございますが、これらを療養費の支給対象としております。

 現在、一部の柔道整復師の団体より、腱鞘炎、椎間板ヘルニア、頸肩腕症の傷病名により療養費の請求を行いたいとの要望を受けておりますが、そもそも、これらの傷病に係る施術が柔道整復師の業務範囲に含まれるか否か、ただいま申し上げましたような解釈の業務範囲に含まれるか否かということにつきましての整理も必要でありますことから、私ども、十分かつ慎重な検討が必要であると考えております。

吉田(泉)分科員 今の御答弁にあったように、保険局が平成九年に出した通知で、療養費の支払い対象は、今おっしゃった五つですか、骨折、脱臼、打撲、捻挫、挫傷というふうに書かれている。その結果、柔道整復師の業務範囲というのがその五つに限定されているというような印象を世の中に与えていると私は思うんです。

 そこで、この平成九年の通知及び柔道整復師の業務範囲の法的な根拠は何であるのか、これをお伺いしたいと思います。

岩尾政府参考人 柔道整復師は、柔道整復師法第二条によりまして、柔道整復を業務とする者ですが、施術範囲につきましては、昭和四十五年の柔道整復師法案に係る提案理由説明におきまして、「その施術の対象も、もっぱら骨折、脱臼の非観血的徒手整復を含めた打撲、捻挫など新鮮なる負傷に限られている」とされていることを踏まえて、一般的に、骨折、脱臼、打撲、捻挫等と解釈しているところでございます。

吉田(泉)分科員 法的根拠が、昭和四十五年に法律をつくったときの提案理由説明であるというお話ですが、法律にも書いてあるんですか。

岩尾政府参考人 法律には、柔道整復の定義を定める規定はございません。

吉田(泉)分科員 どうも、そこがもうひとつ腑に落ちないところなんですが、なぜ法律で柔道整復師の業務範囲というのを規定していないんでしょうか。

岩尾政府参考人 そもそも、昭和二十二年にあん摩、はり、きゆう、柔道整復等営業法として法律であったものを、昭和四十五年に、今の法律から柔道整復業に関する部分を分離して、単独法として柔道整復師法を制定したということになっております。

 そのとき、与野党挙げての議員立法だと承知しておりますが、その中で、先ほど言いました説明があったわけです。それを解釈いたしますと、今までのあんま、はり、きゅうというものに関する治療というものと柔道整復というものがそもそも違うんだということで単独法に設定したといたしますと、先生も御承知のように、脱臼とか捻挫というのは、いわゆるスポーツその他、急激な事故ですとか急性の発症した傷害によるものを治すということで、例えばあんまですとかはり、きゅうというような、病態の慢性的に起こるものと違うのではないかということで、昭和四十五年に議員立法がなされたのではないかと推測はしております。

 何にせよ、議員立法ということで出されて、全会一致で可決したという記録のみ残っておりますので、どのような定義づけがなされていたかということは、残念ながら承知しておりません。

吉田(泉)分科員 今の御答弁にあるように、昭和四十五年の提案理由説明の趣旨は、今まで、はり、きゅう、マッサージと柔道整復師は一緒だったんだけれども、それを分けるというときの提案理由説明ということですので、何か、これをもって、保険局の平成九年通知の法的根拠であるというのはちょっと無理があるような気がしているところでございます。

 それはさておいて、一つ別の例を申し上げますと、司法の世界、これは平成十五年の改正司法書士法施行によりまして、例えば、司法書士さんが、弁護士にかわって、簡易裁判所ですけれども、弁論ができるようになった。それから、裁判外で、和解等の調停も司法書士ができるというような法律改正がなされました。これは一つのヒントになるんじゃないかというふうに思うんです。

 つまり、弁護士と司法書士がともに裁判に参加している、そして役割分担をして共存しているわけでございます。ただ、だからといって、弁護士が使っていい用語、司法書士が使ってよい用語、これを資格によって分けるということは、当然のことながら、司法の世界にはないわけであります。

 しかし、医療の世界では、お医者さんじゃないと使っちゃいけないという表記名という規制がある。柔道整復師は、先ほどおっしゃったような五つの表記しか認められない。私は、何か腑に落ちないというような気持ちでございます。柔道整復師、そして例えば整形外科、同じような傷病については共通の表現が認められてもいいんじゃないかな、そんなふうに思います。

 いずれにしましても、この傷病名表記の問題は、最終的には、柔道整復師という業と、あとは、医師、整形外科のお医者さん、業のせめぎ合いの問題を含んでいる。したがって、現実問題はなかなか難しいんだというふうに言われております。私もそうだろうと思っておりますが、これから、大分いろいろと問題になっている柔道整復師と整形外科医師の間の役割分担、できたら、弁護士と司法書士におけるような共存関係が実現できないかなということなんですが、その役割分担はこれからどうあるべきか、お伺いいたします。

岩尾政府参考人 柔道整復、我が国における古来からの伝統医療として、国民に広く受け入れられておりまして、これを担う整復師の方々は、骨折、脱臼、打撲、捻挫等の患者に対して施術を行うことにより、国民保健の向上に御尽力していただいているものと認識しております。

 柔道整復師と医師との役割分担につきましては、例えば、柔道整復師による骨折または脱臼の施術には医師の同意が必要となっているように、柔道整復師が医師との連携を図りながら施術を行うことが重要であると考えております。

 柔道整復師については、医療の一翼を担う者として、引き続き、柔道整復の業務の範囲において質の高い施術を行うとともに、サービスの質の向上に努めていただくことにより、その役割を十分果たしていただくことを期待しております。

吉田(泉)分科員 御答弁の趣旨はよくわかりますが、平成九年の通達も含めて、何か制度の工夫というのが必要じゃないかというふうに思います。いずれにしましても、最終的には、患者さんが自分の考えを基準にして、どの医療を選ぶか、そういう選択の自由といいますか、それが保障されなくちゃいかぬという問題だと思います。

 ぜひ、これからこの傷病名表記の問題の改善に向けて努力をお願いしたいということで、質問を終わります。ありがとうございました。

谷口主査 これにて吉田泉君の質疑は終了いたしました。

 次に、中川治君。

中川(治)分科員 民主党の中川治でございます。

 私は、大阪で三期十二年間、大阪府議会議員をやっておりました。御存じのように、大阪府はこの十年間、全国に先駆けて大変な財政危機に突入をいたしましたし、その中で、ある意味では全国で一番最高レベルの福祉水準を誇っておりましたものについても、並の基準にほとんど見直したということもやってまいりました。あるいは、十年間で一般行政職の大体四人に一人、二五%以上を削減するという計画がもう既にできておりますし、あるいは、定期昇給をとめるという荒わざまでやりました。

 そして、私たちは、その中で同時に、国の方からは、社会保障の構造改革をやっていくんだということでいろいろな形で提案をされました。この社会保障の構造改革というのが、私たちはこれを、施設福祉から在宅福祉への転換、あるいは現金給付からサービス給付への転換、そして保護から自立への転換、そんなふうにとらえました。

 そして、見直すものは見直すけれども、ある意味ではずっしりと重くのしかかってまいりますのは、自立支援ということであります。

 どのようにして本当の意味で自立支援をやっていくのかということを、私も議員のときに府庁の職員の皆さんとさんざん議論いたしました。特に、これから自立支援の時代なんだ、甘えたらいかぬのだ、しかし、やはり自立をしてもらうためには行政がしっかり応援をせないかぬ部分がある、それが何か、そしてその中で行政が果たす役割には何があるのかということを議論しました。

 そして、大阪府では、特に、雇用就労の問題で一番困難だ、難しいと言われている知的障害者の問題をひとつ中心にして議論しようじゃないかということで、もう六年ぐらいになるでしょうか、あらゆる福祉関係を見直すときに、そういう議論をしてまいりまして、自立支援ということでありますから、まず就労の場を提供しようと。

 ただ、当時、競争入札をきちっとやりなさいということが国の方でも決まってまいりました。手心を加えたらいかぬと。

 九九年ですから、今から五年前、大阪府では、大型児童館ビッグバンという児童館ができました。二千万円以上の清掃の物件であります。清掃だけで二千万円以上の物件になる。さあ、これを知的障害者の方の仕事に回そうじゃないか。ところが、いろいろな条件がありまして、これは競争入札に付さないかぬ。我々は、抜け穴はないかということでいろいろ探しました。みんなで知恵を絞って、施設なき授産施設にしよう、授産事業にしようと。要するに、ビッグバンという建物を清掃訓練事業の場として提供するということであれば随意契約が可能じゃないか、法律をいろいろやって、これやったら国は文句言わぬやろうということで始めて、今でもそうですけれども、十二名の知的障害の青年たちが清掃をやっております。入れかわり立ちかわりやっております。これを一番初めに始めました。

 その後は、土木部、国土交通省管轄になろうかと思いますけれども、土木博物館、これも一千万円以上の物件でありますけれども、これも知的障害者の就労訓練事業に提供するということでやってまいりました。

 そういうことで、そんなこんなで、高等技術専門校の清掃、これも回そう、あるいは保健所の清掃、これも回そう、就労訓練事業ということで、昨年度で多分二億円を超えている実態がある。そして、そこで百数十名の知的障害者が少なくとも最低賃金をもらって仕事をする条件を確保しようと。知的障害の青年たち、大体四時間ぐらいが基本ですから、一日三千円近いお金にはなるのかな、そんな形で、最低月六万円ぐらいは出せるような形で仕事を保障していこうじゃないかということをずっとやってまいりました。

 やはり受け皿が要るということで、大阪の育成会、それから大阪市の育成会、あるいは全国的に取り組んできた団体が集まりまして、略称エル・チャレンジ、大阪知的障害者雇用促進建物サービス事業協同組合という団体をつくりまして、そこへ事業委託をしていこうというふうな形で、ある意味では苦肉の策の、国の法の抜け穴を探しながら実験的に始めたのが六年前でございました。既に、ここを巣立って一般の会社に採用された青年たちが、もう六十人ぐらいはいるかと思います。

 私たちがここで困りましたのは、どんどん就労訓練事業というのはできるわけですけれども、訓練が終わった子、一年、大体二年やりますと十分働けるようになるわけでありますけれども、結局はそこから出られない。就労訓練事業をずっと続けるという意味では、大体、授産施設というのは五年をめどにと言っておきながら二十年も続いているという人がたくさんおるわけでありますから、これじゃ今までの授産と同じじゃないかということで、この状況を脱皮しようということでまたいろいろと議論をいたしました。

 そして、去年五月に、大阪府は、当時の太田知事が決断をしてくれまして、大阪府庁の清掃、これは非常に大きな価格であります、一億円、多分五千万円以上の大きな価格で、国際競争入札にかけなければいかぬ物件でありますけれども、これを福祉雇用、要するに、知的障害者を何人雇うかというふうなことを勘案した総合評価入札制度でやろうじゃないかということをやりました。

 これについては事前にまた資料をお渡ししているかと思いますけれども、まずこの点について、太田部長、御見解を聞かせていただきたいと思います。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 大阪府が始めました総合評価入札制度でございますけれども、官公需におきまして障害者雇用企業へ配慮することは、障害者の雇用就業を促進するために大変重要な役割を果たすと考えておりまして、この大阪府の新しい制度につきましても、このような障害者の雇用就業に資する制度ではないかというふうに考えているところでございます。

中川(治)分科員 私は、去年の四月まで大阪府議会議員をやっておりましたので、最後に、府会議員をやめるときに、これは多分、四分六で大丈夫だと思うけれども、ひょっとしたら法律違反だ、要するに、競争に違反しておるということで訴えられる可能性があるなというふうなことも話をしながら、ただ、今回は、大阪府は最高裁まで闘うぞという決意だけは固めていただきたい、そんな話をしたことがございます。

 実は今、大阪のビル清掃、ビルメンの業界がてんやわんやでございまして、といいますのは、この大阪府庁それから自動車試験場、大阪府は去年二つやりました。新年度から大阪市が、大阪市庁の本館、中之島の本館ですね、これを同じような方式で入札をやろう、それから大阪市立大学、大阪市立大学の病院、そして総合医療センター。それから、大阪府は来年度は府立五病院を全部この方式でやるんだということになりますと、多分、知的障害者の人たちが百人以上正式に雇用されるということになるんだろうな、そんなふうに思っております。

 先日、二度目の当選を果たしました太田知事が来られまして、そのときに言っていましたのは、去年の七月から府庁本館では知的障害の人たちが清掃している、彼らは非常にまじめに働きますし、人を見たら、朝会ったらちゃんとおはようございますというふうにあいさつをします、公務員というのはなかなか知り合い同士でも声を出してあいさつをしないわけでありますから、府庁本館の雰囲気が変わってきたんです、みんなつられてあいさつをするようになってまいりました、その方がひょっとしたら大きな効果だったかもしれぬ、そんなふうに太田知事は言っておりました。

 私は、こういうことをぜひ、厚生労働省は少なくとも、いろいろな議論がこれから起こってくるかと思いますし、業界の中でもいろいろ議論があります。ですから、ビルメン業界はこの間シンポジウムをやりましたら、大阪府下の大手百五十社全部集まって、シンポジウムに参加をして、必死でメモをとって、そして障害者雇用ということについて勉強し出した。これは非常に大きな効果を生んできたな、そんなふうに思っております。

 そういう意味で、次の質問でございますけれども、こうした状況で、同じように厚生労働省は、やはり、地域の障害者の雇用や就労訓練の場として、まず、みずからの所管の施設を提供する、こういうところに一歩踏み込むことができないだろうかと思っております。御答弁をお願いしたいと思います。

太田政府参考人 障害者の雇用就業につきましては、政府の障害者基本計画におきましても、障害者の自立、社会参加のための大変重要な柱として位置づけられているところでございまして、その中で、官公需において配慮することもその一つの有効な手段ではないかというふうに考えているところでございます。

 厚生労働省としましても、これまでも、官公需の発注につきまして、障害者雇用への配慮を都道府県労働局に通知するなどの取り組みを行ってきたところでございますけれども、今後さらに、官公需の発注につきましてどういう配慮ができるのか、先ほど先生からもお話ございました、国の行う契約の原則であります競争性とか経済性とか公平性等の確保にも留意しつつ、十分検討していきたいと考えております。

中川(治)分科員 実は、去年ですか、国が策定された障害者基本計画、ことしが初年度でございますけれども、ここにも書いてあります、競争性、経済性、公平性を確保すべきであると。

 大阪でも確かに、おっしゃいますように、七年ぐらい前まで非常にひどい状態がありました。例えば、同じような規模の保健所が、清掃の値段が倍ほど違うというふうなことがありました。そして、六年ほど前に、最低価格制度を導入しているからということで、それよりも下の値段で落札してきた業者が裁判をしまして、大阪府は負けまして、それから最低価格を全部撤廃しました。

 撤廃して三年間で、さあ、どうなったかといいますと、値段が物すごく下がりました。大体、平均で今までの半分ぐらいの値段に落ちました。それまでが高過ぎたということもあったかと思いますけれども、余りにもひどい競争が横行した。これについては、総務省の方も、これではあんまりということで、最低制限をもう一度導入しよう、そして低価格調査制度を導入しようというのが去年から始まったわけでありますけれども、私、そのときに調べましたら、大阪府庁の中でも最低賃金違反で働いているおばちゃんがおったというふうなこともありまして、これではだめだということで、もとに制度を変えることになりました。

 ただ、私たち、そのときに大阪府の皆さんとも話をしました。また最低価格制度を導入すれば、また談合が始まるかもしれぬよ、同じようなことをもう二度と繰り返さないようにしよう、そして同時に、同じであれば、知的障害者の雇用に役立つような新しい入札制度をみんなで考えようと。業者の皆さんも含めて、一年かかって、何回も研究会をやってつくり上げたのが今回の方法であります。

 ぜひ政府も、特に厚生労働省の皆さんは温かく見守っていただきたいと思いますし、これからどんどんとそういう形で知的障害者の雇用が進んでいく、清掃という面では進んでいく可能性があります。まだまだ大阪には知的障害者の働く場所が必要だということもございますので、例えば、厚生労働省の所管、大阪にもハローワークというのがたくさんありまして、大阪府庁や大阪市役所や、ありとあらゆるものがどんどん障害者が仕事をしている、国の機関だけは障害者が仕事をしていないというふうなことになったのでは、ちょっと国としても格好が悪いんじゃないかということで、大阪にはしっかりした受け皿がございます。去年からは、精神障害者の社会復帰協もこの事業協同組合に入ってもらうことになりました。そういうことでございますので、モデル事業というふうな形ででも、大阪では、関係のところでぜひ御協力いただきたいなと。

 副大臣がええお答えしはったら……。手前みそで構いませんから、どうぞ。

谷畑副大臣 中川委員におきましては、私と同じく、青年時代、一緒に仲間としてともに行動もしましたし、また、一緒に職場にもおったわけでございまして、きょうのお話を聞いて、やはり昔と同じく非常に元気だな、こう思いながら今の質問を聞いておりました。

 中川先生もよく御存じのように、私も、十三年前に初めて、ふれあいサマーキャンプということで、あれは約三百五十名ぐらい、障害者と健常者の初めての出会いをつくって、琵琶湖でキャンプをやりました。初めての人が障害者と触れ合うということで、そういうことから、すべての駅にエレベーターをということで、そのときの中川知事が福祉条例ということで、大阪府で初めて、日本で初めてスタートを切りました。

 そういうことにおきましても、やはり大阪というのは非常にユニークで、また、障害者の問題についても積極的であったわけでありますけれども、今、中川委員がおっしゃっておりますように、障害者がノーマライゼーションということで私たち健常者と同じようにして暮らしていこうということについては、やはり心のバリアも取らなきゃいかぬし、そういう社会的障害というものを取っていかなきゃならぬ、当然のことだと思います。

 そういう意味におきましては、障害者の自立、社会参加というものの大きな柱というのは、やはり、雇用を拡大していこう、できる限り雇用を、できることについてはその範囲に応じて拡大することが非常に大事だと思います。

 きょう、お話を聞いておりまして、よく頑張ってきたな、こう思っておりまして、私ども厚生労働省も、障害者の問題における一番主管を担う省庁でございまして、私どもも、今の質問につきましてもしっかりと受けとめをして、これから、官公需の発注についても、障害者雇用への配慮を都道府県労働局に通知するなどして、前向きにひとつ取り組んでいかなきゃならぬと思っていますし、また、障害者基本計画を踏まえて、政府全体の検討の中でどのような取り組みを行うことができるか、真摯にひとつ検討をしていきたい、このように思います。

中川(治)分科員 もう結論めいたことを言われましたので、ただ、しつこくまた私は申し上げたいと思うんです。

 例えば、こんなふうに考えていただきたいと思います。知的障害者が、先ほど申しましたように、一日四時間働く、二十日働く、そうすると大体月六万円ぐらいの収入になります。お父さんお母さんが亡くなりますと大体生活保護ということになってしまうわけでございまして、ここでひとつ厚生労働省の皆さんは考えていただきたいんですが、こうやって月六万円稼ぎますと、生活保護は六万円減るのでございます。六万円減ると得をするのは、厚生労働省が三万円、市町村が三万円。いやこれは、我々本当に真剣に議論して、これだけ大阪府は頑張って府は一文ももうからへんのか、こんなせこい話をしておったわけでございます。

 要するに、何を言いたいかといいますと、経済性、公平性ということで、何でもかんでも競争なんだ、こういうことが一般的になっておりますけれども、事この知的障害者や障害者の皆さんに公的な分野での仕事を出すということは、多分、その人件費の三割ぐらいは回り回って国に返ってくる、要するに経費の節約にもなりまっせという、もう最後はそういうことも含めてひとつ検討をしてほしい。

 そういうことも含めて、私は、それが経済的にも自立した、安定して、無理なく、やってみたら確かにそうやな、これを十年、二十年続けますと間違いなく、このごろ知的障害者あるいは障害者の生活保護が減ってきたなということになれば一番いいわけでありまして、ぜひそういう状況をつくり出すためにもこの制度は守っていただきたいな、そんなふうに思っております。

 障害者基本計画というのがございます。ここにはいろいろなことがすべて書いてあるんですけれども、私は、率直に思いまして、各省が何をするのかということだけが書いていない。要するに、こんな建物をつくります、こんなバリアフリーをやります、あるいはここを、こういうものを直しますということをやっています。ただ、各省の施設でそうしたら何人雇いましょう、何も書いていません。

 そういう意味で、まず足元からの第一歩ということを、国を挙げて、一体どれだけの雇用に役立つことができるんだという計画といいますか、指針みたいなものが私はあってもいいんじゃないのかなということも思いまして、これは実は、あしたまた、同じ質問にはならないと思いますが、内閣府の方でも、第一分科会でもさせていただきたいということを申し上げております。

 経費節約のためにも、ぜひ障害者に仕事を回せ、そして、清掃の仕事は五%ぐらい、いや、ひょっとしたら一割ぐらい高い値段で落札をしても後で三割返ってくる、こんなふうに考えていただいて、ひとつ国の、頭のかたい人もいらっしゃいますから、ぜひ説得をしていただきたい、そんなふうに思っております。

 改めて、最後に、こういう取り組みを大阪府では行政の福祉化というふうに呼んでおります。雇用をつくり出すというよりも、行政がみずから雇用の場を提供していこうということが一つでありますし、もう一つは、行政のあらゆる施設を福祉に活用していく。今までも議論でありました、学校の空き教室を福祉に活用しよう、京都府の宇治市の小倉小学校が初めてやってくれました。あるいは、大阪府でいえば府営住宅、公営住宅をグループホームにやろう、あるいは高齢者のグループホームにも活用しようじゃないか、そういうことも含めて、行政全体を地域福祉に貢献をさせていこう、こういうことで今大阪府では取り組んでおります。

 率直に言いまして、例えば、痴呆性のグループホーム、特養というものをつくりますと、もうこれは皆さん方はプロでございますからよく御存じだと思います、大体一人頭の施設整備費が平均九百万円、国は四百五十万出さないかぬ。国基準のグループホームであれば五百万円、国は二百五十万出さないかぬ、大阪府は百二十五万円出さないかぬ。

 ところが、例えば公営住宅を二部屋、壁をぶち抜くことさえできれば、六人ぐらいの小ぢんまりしたいいグループホームが国の補助金もらわぬでもできます。大阪府は、そういうことをする場合には、単独で五十万円、一人頭五十万円の補助金を出しますということを去年から始めました。つまり、これは、百二十五万出すよりは、既存の建物の改修で五十万で済むんやったらもうけもんやという考え方でございまして、これで国から来られた財政課長はころりと賛成をしていただきました。

 そういうことも含めて、ありとあらゆるものを福祉に活用していこうということで、行政の福祉化ということを進めてまいりました。

 私は、国の方でぜひこういうことに一歩進んで協力をしていただきたいというふうに思っておりますのは、例えば、公団の賃貸住宅、全国で約二百万戸ですけれども、大阪では十三万戸近くあるはずでございます。多分、この十三万戸の清掃管理、低木剪定、この事業だけで数億円の事業、つまり、障害者の皆さんができる仕事を公団は今外注に出しているはずです。これを何ぼかでも回してもらえまへんかというのが、障害者のグループの皆さんの切なる願いでございます。あるいは、淀川の河川敷、左岸、右岸、ゴルフ場があります。ファミリー企業に回していたら怒りますで。しかし、そんなことはないと思うんですが、そういうことも含めて、一遍総点検しよう、そして障害者に回せる仕事は回そうじゃないかというのが私たちの目指しているところであります。

 どうか、厚生労働省の皆さんは、温かい視点で行政の福祉化を見守っていただきたいと思いますし、御支援をいただきたい、そういうことも思いまして、大臣の御意見をお伺いしたいと思います。

坂口国務大臣 非常に温かみのあるお話を聞かせていただきまして、ありがとうございました。

 福祉の充実ということはよく言われますけれども、行政そのものを、全体を福祉化していこうという考え方は、まことに立派な考え方だというふうに思っております。

 今お聞きをしておりますと、それも、その中で障害者に対する行政というものを一番中心に据えてやっていこうというお話でございまして、大阪ならではといいますか、大阪で本当におやりになったことで、なかなかこれはどこでもできるということではないというふうに思いながら聞かせていただいたところでございます。

 厚生労働省は、この障害者の問題を含めて福祉の問題に取り組んでいるわけでございますから、みずから進んでやはりそうしたことはやっていかなきゃいけない。障害者の問題、それは、障害者を雇うということをやはり熱心に考えていかなきゃなりません。あるいは、母子家庭の方々を雇うといえば、それは率先してやはり雇用していくということを考えなきゃいけません。そうした立場でこれからも我々ももっとやらなきゃいかぬな、大阪を見習わなきゃならぬなと思いながら聞かせていただいたところでございます。

 さらに大阪府が頑張っていただきますことを御期待申し上げますし、我々も、ひとつできるだけそれを学ばせていただきたいと思っております。

中川(治)分科員 どうも本当にありがとうございます。

 大阪市がやりました総合評価制度の中には、知的障害者を採用するといろいろな点数、得点等をプラスして、ホームレスを採用するつもりがあるか、それで何人雇うということになると一点、二点、三点と加算をされていく、そういうことも今回は実施をされたというふうに聞いております。地方は、いろいろな形で、要するに新たにお金を出して雇用をつくるということができないわけでありますから、いろいろな苦労をしております。ぜひ、そういう点での温かい御協力を今後ともよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 もう時間がございませんので、最後に一つだけ、児童虐待に関して。

 私は、大阪十八区でございます。今有名な岸和田市が選挙区でございますので、開き直って申し上げるわけではございませんが、大阪としては、全国に先駆けてかなり人も配置をしてきたし、そして新しい取り組みをやってきたという自負がございまして、今回こんな形で起こったのは非常に残念でございます。

 しかし、新年度から始まる新しい予算案に、育児支援家庭訪問事業というのがあります。今までの予算を全部足しても、大体ひょっとしたら十倍ぐらいになっているということで、私は大いに期待をいたしております。

 児童虐待問題というのは、児童相談所の人的強化ということも必要ですけれども、私は、府会議員のときには、もう各党全部ふやせふやせと言っていましたので、公務員だけふやすなんてあるかいとたった一人ぐらい言うたらないかぬと思って言ってしまったタイプでございますので、今回もぜひ。

 実は、大阪では三年前から子ども家庭サポーターという新しい制度を、これは太田知事の認定書、知事の認定書を出す大阪府独自の研修事業でございまして、三十八科目、七十六時間、大体三級ヘルパーぐらいの研修をやりまして、母子家庭の子やいろいろな環境の子供たちの状況を知ること、あるいは電話の相談の実習とか対面相談の実習だとか、いろいろなことを地域のボランティアの皆さんを募集してやっております。一回百人で、もう五百人の卒業者ができまして、岸和田の隣の市なんかは非常に盛り上がってやっておるんですけれども、実は今回の制度を見まして、こうした専門的なボランティアを育成するという事業をぜひセットでされたらどうかなというふうに私は思いました。

 特に、事前相談だとかアフターケアなんかでは、こういう皆さんの馬力というのは非常に役に立つものでありますし、ボランティアしたい人はいっぱいいますけれども、やはり、そういう研修制度をしっかり終わっているという人のネットワークをつくっていくということが特に大事ではないのかなというふうなことも含めまして、こういうことをぜひ新制度の内容を深めるためにも御検討いただいて、今、府単独事業でやっておりますので、ちょっとでも補助金がついたらありがたいななんてせこいことも含めて考えて、御提案を申し上げておきたいと思います。

 ぜひ、私より一日先に現場に行かれた谷畑副大臣、最後にお聞きをしたいと思います。

谷畑副大臣 おっしゃるとおり、私も二月の五日、岸和田に視察をさせていただきました。肉親でありながら、同じフロアで暮らしながら餓死寸前まで追い込んでいく、こういうことが人間としてできるのかという、非常に大きなショックを受けた岸和田の事件でございました。

 年間五十二人の幼い児童が虐待で死んでいくということでありまして、ある人から言えば、もう五十二人どころじゃない、二百人とか三百人だと言われております。しかも密室の中で行われるわけでありまして、しかも家庭が崩壊した中での複雑な人間関係。

 そこで、児童相談所というのは御存じのように都道府県と政令都市ということですから、全国で千七百三十三人、児童福祉司ということで配置されておるわけでありますけれども、この相談件数が二万三千七百三十八件ということで、ますます増加しておるということであります。児童福祉法の改正も準備をしておりますし、また、議員立法でさらに児童虐待防止の法案も準備をされているということでありますが、今後とも、この児童相談所だけじゃなくて、やはり、地方の市町村だとかあるいはPTAだとか保育所だとか、そういういろいろなネットワークをしっかりしてやっていかないと対応できないんじゃないか。

 今、中川委員がおっしゃっていますように、そういう大阪の例、家庭サポーターの専門ボランティア、これも非常にいいアイデアだと思いますし、すそ野を広くして、しっかりと取り組みに向けて大いに参考にしていきたい、このように思っております。

谷口主査 これにて中川治君の質疑は終了いたしました。

 次に、下条みつ君。

下条分科員 民主党・無所属クラブの下条みつでございます。

 もう夕方、外は雪も上がっておりまして、大変お疲れのところ、最終バッターでございますので、ぜひすばらしい御政策の意見をいただければというふうに思いますので、大臣以下皆さん、よろしくお願いいたします。

 私は、まず、今第一に御質問させていただきたいのは、国民年金の未加入、未納の問題についてであります。

 平成十年に未加入者が約九十九万人であった。十三年には約六十三万に減っています。したがって、相当加入をしていただいている。これは非常に御省の努力があらわれているんじゃないかなというふうに思っております。

 一方で、国民年金の未納の数でございますが、これは平成十年度二百六十四万人いらっしゃった。これが、未納者が平成十三年には三百二十六万人にふえてしまった、こういうことが数字上で、お出しになっていただいておる中で出ております。そこで、簡単に言えば、納付率でいくと、平成十年では七六・六%だったものが平成十四年六二・八%、要するに納付率がどんどん落ちちゃっているということでございます。

 その中で、もう一つ、ちょっと際立つ資料をお出しいただいたものですから、これについて説明を求めますけれども、未納の占める割合の所得階級の資料が今手元にございます。これでいくと、所得がない方から年収が一千二百万から一千五百万まで、非常に多岐にわたって所得階級の未納率が出ているんですけれども、それを見ますと、所得が低い人だけが未納しているんではない。逆に言えば、所得なしでも四割強は現にきちっとお払いになっている。一方で、一千万から一千五百万も所得がある方が約一割強、未納者になっているという実態があります。

 そこで、この結果を踏まえて、徴収の方法とかアピールに幾つか問題があるんではないかというふうに考えまして、まずはこの辺の御意見を皆さんの方からお聞きしたいというふうに思います。お願いいたします。

薄井政府参考人 お答えをいたします。

 先ほど先生から御指摘ございましたように、国民年金の未加入者、これは二十歳到達者に対しては年金手帳をお送りするという形で適用を進めるということなどもありまして、十年の調査と十三年の調査では、そちらは減少している。ただ、こういう方はなかなかすぐに保険料納付につながらないという要因であるとか、最近の経済状況とか、こういうふうなことも反映いたしまして、未納者の数というのは、おっしゃいましたように三百二十七万人と逆にふえておる、こういう状況でございます。

 また、平成十四年度の保険料の納付状況ということで申し上げますと、納付月数自体は前年度並みの一億三千六百二十七万月ということではあるわけでございますが、免除制度の改正の影響などもございましたし、また、被保険者もちょっとふえてきている、こういう状況の中で、納付率自体は六二・八%、これは現年度の数字でございまして、過年度を入れると少し上がりますけれども、そういう数字になっているところでございます。

 御指摘ございましたように、所得階級で見たときに、確かに高額所得者も保険料を納めておられない方がいる、一方で、比較的低い所得あるいは所得なしという層でも納めているという状況でございますので、これはやはり年金制度に対する御理解というところがどれだけ得られるか、これが納付につながってくる、かように考えているところでございます。

 そういうことで、まずは年金広報なり、あるいは中学生、高校生のころからの年金教育などによりまして、制度に対する理解を深めていただく、自主的に納めていただくというのが一つでございます。

 それから、未納の方につきましては、個々に催告状をお送りするとか電話による勧奨をするとか戸別訪問、こういったことを通じまして地道な納付督励をやっていくなどの取り組みを進めているところでございます。

 それから、十分な所得がありながら、たび重なる納付督励をいたしましてもお納めいただけない方につきましては、強制徴収の実施というのにも着手をしたところでございます。

 それから、今回の制度改正、法案を出させていただいておりますが、その中でも、多段階免除制度の導入であるとか、あるいは若年者に対する新しい納付特例制度の導入など、納めやすい仕組み、こういうふうなものも入れているところでございまして、これらを含めまして総合的に取り組むことによりまして、納付率の向上につなげてまいりたい、かように考えております。

坂口国務大臣 今答弁したとおりでございますが、もう一つは、これは、役所は言いませんでしたけれども、国が集めるようになったということも大きいんです。やはり、市町村にお願いしているのと国がやっているのとでは、それはもう熱意の入れ方が違いますから。

 これは国の責任も大いにありますから、もう一遍やり直すように言っていますから。それは言いませんでしたけれども、僕が言っておきます。

下条分科員 大臣からも御親切な御答弁をいただきまして、ありがとうございます。

 私は、実を言うと、父が厚生労働の方にいましたので、まさに皆さんと一緒に、古川貞二郎事務次官と一緒にやったぐらいの口でございますので、非常に今までの御努力はそれなりに私なりには評価させていただいておりますけれども、一方で、今の立場は、もう少し国民に近づいているという立場になっているのかなと自分では思っております。

 そこで、私なりの考えを一つ申し上げたいと思うんですが、要は、今のやり方について、例えば、今おっしゃった若年層についての徴求については、例えば、コンビニで払えるようになったり、インターネット等、またクレジットを使ってということになると思うんです。ただ、私に言わせていただくと、まだまだちょっと若年層にとっては、年金なんかもらえないんじゃないか、この先どうなるかわからないよ、したがって、払っていない人が多いんだからいいんじゃないか、こういう発想がまだまだ根強いんじゃないかというふうに思っています。

 そこで、私が地元を歩いていて思いますのは、年金をまじめに払っているのがばからしくなるというふうに払う側はおっしゃるんですね。多くの方はまじめに払っているわけですから、その方たちがそういうふうに思っているということは、簡単に言えば、払っている人たちについてはどんどん払いの請求が来る、もっと新しい請求がどんどん来ちゃうよ、でも、払っていない人については、簡単にほったらかしにしても余り請求が来ないよと。罰則もさっき多少おっしゃっておりましたけれども、罰則があるけれども、まだまだ自分のところに押し寄せていないじゃないか、こういう発想だと思うんですね。私は、払っていない方の負担を払っているまじめな方に課していくというのは、少しやはり民主主義と違うというふうに思います。

 そこで、例えばなんですが、これは全く私の私案なんですけれども、毎年国民年金等々に関連する方は確定申告をなさっているわけじゃないですか。その確定申告をしたときに、それは税金の方ですよね、そのときに、社会保険庁と情報をリンクして、払っていない人は、例えば罰則ができちゃうよとか、税金についてもう少し大き目になっちゃうよとか、払っていないけれどもこれは払わないとちょっといけないよということを、確定申告する人に、社会保険庁と財務省、税務署との間で情報のリンクをさせる。

 要するに、簡単に言えば、例えば、皆さんが昼食を食べに来て、この会館では余りセット商品はないんですけれども、ラーメンとカレーライスが食いたい、その二つを一遍に食えば何となく満腹感がありますけれども、セットにすると一遍に頼めるじゃないですか、例えばカツカレー・ラーメンみたいなセットにすると。

 つまり、確定申告の部分の申告と税、六月から払うんでしょうけれども、その部分ともう一つ、年金の部分、払っていないじゃないか、あなた、この部分はきちっと払ってくださいよということを、例えば念書をする、ノーティスする。それによっては非常に税金で罰則があるかもしれないよぐらいのことを、窓口に集まる方に一遍にもしノーティスできるんであれば、一石二鳥じゃないか。

 これは省庁間の連携、情報のリンクになるとは思うんですが、私の私案でございますけれども、こういう形で、少しだけでも、まじめに納めている方が、ああ、こういうことを本当に身近でやっているんだなということを知ってもらうためにもいいのではないかなという案があるんですが、皆さん、いかがでございましょうか。

薄井政府参考人 今お話がございましたけれども、税の方、社会保険料控除というのがございます。国民年金の保険料を納めておられれば、その分、社会保険料控除が受けられるという仕掛けでございます。

 基本的には、申告書にそう書いてあれば、従来は余り厳密にチェックをされないという状況でございましたが、これは国税庁さん、それから総務省さん、地方でもございますのでそちらと両方関連いたしますけれども、やはり、きちっと納めておられるかどうかということをそういうふうな社会保険料控除をする際にはチェックをした方がいいのではないか、こういうことで、お互いにそこは連携をとってやっていこうということで、今準備を進めておるところでございます。

 税の方自体のペナルティーというわけにはいきませんけれども、そういうことなどを通じて、できるだけ納めなきゃいけないんだというふうな空気をつくっていくということも大切であると考えているところでございます。

下条分科員 ぜひ、一つのノーティスをその間口に集まっている方にやれば、非常にその人たちが、例えば千五百万の納めていない人が九・何%もいるなんというのはちょっとどうかなという感じがしますし、やはり二十ぐらいの人にコンビニで払えよと言っても、なかなかちょっと認識がない。それだったら、納めなきゃいけない、税に対しては非常に皆さん真剣度が高いわけですから、そこでもっと深くリンクして、ぜひ連携をさらにとっていただいて推し進めていただきたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。

 次に、続いて年金支給の部分でちょっとお伺いしたいと思うんです。

 厚生労働省の坂口大臣以下の御配慮で、物価スライドの部分が十二年から十四年については一・七%部分据え置きになった。今年度については〇・三%部分だけ削除をする方に乗せていこうと。そして、その一・七%、三カ年部分については、とりあえず物価が上がったときにその分を徴求しようじゃないかというような形で私は法案をお聞きしております。

 そこで、例えば、私も地元を歩いていて、大企業以外はちょっと実際の部分でまだ回復が少し時間がかかるんじゃないかと思います。ただ、あくまでもこれは仮定の話でございますけれども。

 ただ、本当に所得がない、遺族年金または普通の年金をおもらいの一般の方にとっては、最も心配なのは、年金が一体この先どうなっていくんだということだと思います。この三年分の一・七については大変御配慮いただいているので、私どもも感謝しておりますけれども、ただ、この先、では法案の中に、来年度また、大臣、物価が下がってきたときに、それはしようがないな、その部分は一・七据え置いているんだから、全部、では今度〇・八下がったら乗せちゃうよというふうになるのか。

 そこの部分は、あくまでも仮定なのでお答えできないとは思うんですが、ぜひこの場でお答えできる範囲内で、私見として、来年度部分については一体どういう方向感を持っていらっしゃるのか。恐らく私は物価はこのまま、まだ上がらないんではないかなという前提でちょっと御質問したいと思います。お願いいたします。

吉武政府参考人 御説明申し上げます。

 先般国会に提出をさせていただきました物価スライドの特例法案によりまして、平成十五年の消費者物価指数が〇・三%下がっておりますので、この部分につきまして年金額の改定をさせていただくという形にいたしております。

 それから、今先生がお尋ねでございました、これまで特例措置で下げないで来ております一・七%分につきましては、基本的には、これは国民年金法等の一部改正法案の中に盛り込ませていただいておりまして、既に年金を受給している方につきましては、物価が上昇した場合にその中で回収をしていくという考えでございます。

 これは、政府内でも、これまで特例措置につきましては、一・七%分につきましてもできるだけ早く、一挙に回収すべきだという御意見もございましたけれども、しかし、できるだけなだらかに、本来の年金水準にかんがえていくということで、今のような措置を講じております。

 それから、これは好ましいことではございませんが、仮に、それでは十六年度、物価がマイナスになった場合はどう考えるかということでございますが、その点につきましては、この二年間のマイナスの物価スライドの当年度分だけを反映させていただくという考えを法案の中に盛り込んでございます。要約して申し上げれば、下がる場合にはその一年分は引き下げさせていただきますが、一・七%分の解消につきましては物価が上昇する中で解消させていただく、そういう考え方を法案の中に盛り込ませていただいております。

下条分科員 一・七%については大変温かい御配慮だと思いますし、また、できる限り単年度分についても、それしかない方々がたくさんいらっしゃるわけですから、まだまだこれからの法案の中でいろいろ議論が出てくるとは思いますけれども、ぜひ、私の父も年金をもらっている世代ですし、皆さんもそうだと思いますけれども、その人たちにとっての、この日本を支えてきた恩返しというまでではないですが、その部分はぜひ違う部分で対応していただいて、なるべく年金の物価スライドの部分は単年度部分も据え置きで対応していただければというふうに申し上げておきたいと思います。

 次に、基礎年金部分についての御質問をさせていただきたいと思います。

 これは、国庫負担割合を二分の一にするというお話で年金制度改革案が出ておりますけれども、平成十六年度の財源は年金課税の見直しによる増収分で充当をしますと、関連法案の文言は。一方で、十七、十八年度の財源は個人所得課税の抜本的な見直し、平成十九年度については財源は消費税を含む抜本的税制改革の実現ということで私はお聞きしておりますけれども、つまり、簡単に言えば増税ということではないかなと思うんです。

 この辺について、財源の部分の議論はまだ議論中だとは思うんですが、ただ、これからの中で御省としてどういう方向感を今、財務省含めて、この部分についてはどの程度の部分を対応していくとか、案があれば、これから先の話でございますけれども、議論の途中でも構いませんので、ぜひちょっと、今お持ちになっているその財源部分の案についてお聞かせいただければというふうに思います。お願いいたします。

坂口国務大臣 十六年度、それから十七、十八年度と、十九年以降の分につきましては、今お話をいただきましたとおりでございまして、それ以上のことは決まっていないと申し上げた方がいいんだと思うんです。

 十七、十八年度分につきましては現在ございます税制の改正、それから十九年度につきましては、これは新しい税制も含めて議論を拡大して、そこからの財源をつくり出す、こういうことだと思うんですけれども、現在のところ、それ以上のより具体的な案というのはこれから詰めるところでございまして、今その段階でございます。

 しかし、二分の一への引き上げにつきましての道筋は明確に示して、そして年度を設定して、これまでにこうするということを明確にした、こういうことでございます。

下条分科員 やはり、国民が今一番不安がっているのは、基礎年金部分が一体どうなるか、それによってどれだけ確率の高い支給額が保障されるかではないかというふうに思いますので、できる限り明確に、早急に形を出していただきたいというふうに申し上げておきたいと思います。

 ちょっとお時間があと数分なので、次の話題に入りたいと思います。次は、年金の運用部分の御質問をさせていただきたいと思います。

 私の手元に、ここ数年の年金の運用の結果が個社別で全部、申し上げましたらお届けいただきまして、簡単に言えば、平成十三年、十四年について運用受託機関運用実績というのが手元に届いております。幾ら運用を委託して、それが幾らになったという数字は手元に届いていないんですけれども、ただ、全体としては、例えば十五年については、今のところ上半期で二兆何ぼプラスになっているぞ、下期ではどうだというのは表でいただいております。

 ただ、私が一番ちょっと気にしているのは、この委託会社に対しての基本的な縛りが一体どうなっているのかなというふうに思っています。というのは、どうもお話を聞くと、ベンチマークというもので運用の根を縛っている。ベンチマークというのは、要するに、国内株式でいうと、簡単に言えばTOPIXになります。私も、実を言うと、前に金融機関にいて、為替金のディーラーと、そして証券会社も五年間いましたので、その中で株式の運用をしておりましたけれども、その辺の縛りをもう一度この場でちょっとお聞かせいただきたいというふうに思います。

吉武政府参考人 御説明申し上げます。

 年金積立金の特に市場運用の部分でございますが、これから平成二十年にかけましてだんだん大きくなってまいります。そういう非常に大きな資金の運用を行いますので、先生御案内のとおり、基本的にはそれぞれの資産の構成割合を決めまして、その構成割合を中長期的に、これを踏まえまして運用を行うということを基本にいたしております。

 そういうこともございまして、現在の状態で申し上げますと、市場の平均的な収益率を確保することを目標といたしますいわゆるパッシブ運用の比率を、株式については七割、債券については六割程度といたしております。それから、それ以外につきましては、それぞれの株の投資の特性といいますか、いわゆるアクティブ運用というふうに言われておりますが、例えば非常に成長株を中心に運用していただくとか、あるいは安定株を中心に運用していただくということをやっております。

 今申し上げましたパッシブ運用につきましては、市場のベンチマークがございますので、ベンチマークとの比較でこの運用機関の運用成果を評価していくという形にいたしております。

 それから、アクティブ運用につきましては、そのアクティブ運用の何を志向していくかということを年金資金運用基金の方で金融機関と協議をいたしまして、その志向する運用方法との関係で評価をするという形にいたしておりまして、これは単年度によって非常に変動もございますので、基本的には三カ年の成果を評価いたしまして、三カ年非常に成績が悪ければ、場合によっては運用の委託者から取りやめさせていただくということを行っております。

 それから、毎年毎年につきましては、運用の成績評価を行いまして、下位四分の一のところにつきましては資金を一割減らしまして、これをほかの運用機関に配分するというような、そういう評価で行ってきております。

下条分科員 お時間の関係もあるので、私の方でちょっとだけ申し上げたいのは、TOPIXをベンチマーク、例えば株ですね、たくさん言っちゃうとあれなんで株式にしますと、TOPIXというのは例えば下がることもあるわけですね。ところが、御省のベンチマークの評価というのは、TOPIXと追随していればいいじゃないか、簡単に言えばそういうことになっています。つまり、TOPIXがどんどん落ちていけば、何兆円つぎ込んでも、最初に買ったより落ちてもいいよ、極端な話ですけれども。

 ただ、私が思うのは、やはり、手元にもいろいろ資料が来て見させていただいていますけれども、一番は、それだけ委託手数料を払ってプロの人にやってもらうわけですから、やはり罰則も皆さんの方から委託会社にきちっとつけて、もし回らなかったらというふうに縛りをもう少し入れてもいいんじゃないかという感じが一つします。

 それからもう一つは、私が思うのは、運用というのは僕に言わせてもらうとすべて結果です。ですから、百万で買ったものが九十五万になったら、それは負けですよ。百万で買ったものが百十万になったら、その時点で利益を確定して、例えば、一年間持たなくてもいいわけですから、百万でもって百五十万、百三十万、百二十万、百十万になった時点で確定させて、そのもうかった部分については、例えば年金の基金の方に回すとか、年金の支給率をもう少し抑えるための原資にするとか、そういう部分に確定して回していくべきではないか。

 例えば、今この手元にある資料でいくと、一度買ったものをずっとお持ちになっていて、個社別のものが私に届いていますけれども、ほとんど全部マイナスになっていますから、要するに、株式がどんどん落ちれば落ちるほど何兆円にもマイナスになるし、TOPIXが自動的に上がれば、その中で買った部分で対応していけばプラスになって自動的に行ってしまう中でやっていますので、私は、もう少し裁量を、外銀にしろコンサルタント業務を持っているきちっとしたところに投げて、もう少し責任を持たせてもいいんじゃないかなと。

 私も自分が証券会社におりまして運用していましたので、民間でもしお客さんから預かった金を、例えば五億円預かって四億五千にしたら、これは大変なことですから。その時点で僕の首は飛ぶぐらいの話なものですからね。

 そういう意味では、何兆というもののベンチマークとのつり合いより、むしろ確定として、短期間でもいいからいい株にはやはり投資をして、悪い株はTOPIXに入っていてもその投資からすぐ引き揚げる、損切りをしていくことの裁量を与えないと、簡単に言えば、証券会社とか信託にとっては問題は手数料だけですから。銀行預金とは違ったり郵便貯金とは違いますので。彼らの発想というのは、言いにくいですけれども、手数料商売ですから、いただいた何兆で手数料が落ちれば、それで証券会社もしくは信託と皆さんの運用基金との間のディールは終わっているという発想なんですね。これは非常に言いにくいんですけれども。

 ですから、その部分にもう少し指導的な部分を入れて、ともかく確定した時点で利益の部分はどんどん出しなさいと。そうすれば、時価評価でプラマイナじゃなくて、一千億で一千百億になったら百億円もうかっているわけですから、その時点で利益を確定して、その百億は、簡単に言えば、じゃ、例えばの話ですけれども、六十五歳以上じゃなくて七十五歳以上の年金を減らす部分に百億だけ回そうじゃないかというような発想も、確定していれば出てくるというふうに思います。

 その辺はいかがでございますか。

吉武政府参考人 二つの問題がございまして、年金の財政の場合には、今回国会に御提示申し上げております改正法案では、百年間の有限均衡で見ていこうということで、その中に今、積立金の運用の要素が入ってまいります。ただ、百年後の運用というのはなかなか、どういう目標かというのは非常に難しゅうございますので、今のいわゆる資産構成割合で申し上げますと、大体二十五年後ぐらいを見て行っております。

 これは、年金の給付は基本的には賃金に対応してふえてまいります。賃金に対応してふえてまいりますので、賃金よりどれだけ収益がとれるかというのが一応年金の運用の一番の目的になっておりまして、現在の資産構成割合で申し上げますと、賃金は二・五%というふうに想定いたしまして、これに対して一・五%という形でございます。今御提示申し上げています財政再計算法案では、名目賃金が二・一%、これに対して運用収益が一・一という形でございます。

 したがいまして、短期的には、今申し上げました市場の指標に対応しましてそれぞれの金融機関の評価を行っておりますが、全体といたしましては、今申し上げました賃金に対する収益率がどれだけとれているかというのをトータルとして評価することといたしておりまして、これは毎年毎年その結果も公表申し上げております。

 この問題は、現在の状態で申し上げますと運用収益率は確かに非常に悪いんですが、賃金も非常に厳しい状態でございますので、もともと財政再計算で予定をいたしておりました賃金を超える収益率は、実は確保できている状態でございます。多分、十五年も確保できるだろうというふうに思います。

 そういう形で、トータルの運用の基本方針を少し中期的に見ながら、それから当面の、それぞれの委託している金融機関に対しての対応を同時並行してやっておこうという形でございまして、したがいまして、例えば非常に高くても、例えば賃金が非常に高い、あるいは物価が高いときは、高ければいいという評価をしない、そういう形で評価をしてまいりたいと思っております。

下条分科員 時間も来てしまったので、本当はいろいろお聞きしたいことは山のようにあるんですが、ただ、最後にちょっと申し上げたいのは、賃金というのは要するに運用しているわけじゃないということだと思うんですよね、そのときの物価の動きとかありますけれども。運用というのは、委託手数料は厚生労働省が払うのは随分落ちてきていますけれども、百何十億払っているわけです、手数料。

 そうやって手数料を払った上で、国民の貴重な年金部分の運用を任せているわけですから、やはりもう少しシビアな目で見ていただいて、その部分については、もうちょっと損益の確定をもって対応していただくようにお願いを申し上げたいと思いますけれども、最後に大臣の御意見をお聞きしたいというふうに思います。

坂口国務大臣 今ずっと話をお聞きしまして、私はその分野というのはまことに弱い分野なものですから、なかなか十分に理解できたとは言いがたいところがございますけれども、おっしゃる御趣旨は私も十分わかるつもりでございます。

 うちの中にもそれは専門家もおりますけれども、しかし、今おっしゃったような視点でやはり運用しなきゃいけないということは、確かに私もそうだと思いました。よく検討させていただきたいと思います。

下条分科員 どうもありがとうございました。

 ぜひ、皆さんの御努力もあれさせていただきますけれども、よろしくお願いします。きょうはありがとうございました。

谷口主査 これにて下条みつ君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明二日火曜日午前九時より本分科会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後六時六分散会


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