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第2号 平成16年3月2日(火曜日)

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平成十六年三月二日(火曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 谷口 隆義君

      大野 功統君    菅原 一秀君

      鈴木 俊一君    鈴木 淳司君

      津島 雄二君    石毛えい子君

      岡本 充功君    小林千代美君

      鮫島 宗明君    首藤 信彦君

      和田 隆志君    照屋 寛徳君

      山本喜代宏君

   兼務 赤松 正雄君 兼務 白保 台一君

   兼務 高橋千鶴子君

    …………………………………

   厚生労働大臣       坂口  力君

   厚生労働副大臣      谷畑  孝君

   厚生労働大臣政務官    竹本 直一君

   政府参考人

   (内閣府男女共同参画局長)  名取はにわ君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 山口 勝己君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  岩尾總一郎君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局国立病院部長)  冨岡  悟君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局長)  阿曽沼慎司君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局労災補償部長)  高橋  満君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)  青木  功君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長)  太田 俊明君

   政府参考人

   (厚生労働省職業能力開発局長)  坂本由紀子君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)  伍藤 忠春君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)  小島比登志君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)  塩田 幸雄君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  中村 秀一君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  辻  哲夫君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  吉武 民樹君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 水田 邦雄君

   政府参考人

   (社会保険庁運営部長)  薄井 康紀君

   厚生労働委員会専門員   宮武 太郎君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君

    ―――――――――――――

分科員の異動

三月二日

 辞任         補欠選任

  津島 雄二君     鈴木 淳司君

  鮫島 宗明君     和田 隆志君

  首藤 信彦君     石毛えい子君

  照屋 寛徳君     阿部 知子君

同日

 辞任         補欠選任

  鈴木 淳司君     菅原 一秀君

  石毛えい子君     小林千代美君

  和田 隆志君     鮫島 宗明君

  阿部 知子君     横光 克彦君

同日

 辞任         補欠選任

  菅原 一秀君     津島 雄二君

  小林千代美君     岡本 充功君

  横光 克彦君     山本喜代宏君

同日

 辞任         補欠選任

  岡本 充功君     首藤 信彦君

  山本喜代宏君     照屋 寛徳君

同日

 第三分科員赤松正雄君、第六分科員白保台一君及び第八分科員高橋千鶴子君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十六年度一般会計予算

 平成十六年度特別会計予算

 平成十六年度政府関係機関予算

 (厚生労働省所管)


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     ――――◇―――――

谷口主査 これより予算委員会第五分科会を開会いたします。

 平成十六年度一般会計予算、平成十六年度特別会計予算及び平成十六年度政府関係機関予算中厚生労働省所管について、昨日に引き続き質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鈴木淳司君。

鈴木(淳)分科員 おはようございます。自由民主党の鈴木淳司と申します。きょう、当予算委員会分科会で質問の機会をいただきまして、まことにありがとうございました。

 さて、私は愛知県の出身でございまして、愛知県は、来年の三月より六カ月間、世界に開かれた環境博覧会、愛・地球博を開催いたします。ぜひ皆様方のお力添えをいただきながら、また御参加を賜りますように心からお願いを申し上げます。

 その愛知国際博覧会の会場の近くに、きょう私が今から取り上げます愛知リハビリテーション自動車教習所というものがございます。現在の正式名称は、愛知県障害者雇用促進協会付設愛知職業リハビリテーション自動車教習所、通称愛知リハ自動車教習所と申します。今から七年前の平成九年、いわゆる橋本行革に際しまして廃止が取りざたされましたときに、大変な社会問題になり、卒業生を中心に存続運動が展開をされましたので、御記憶の方も多いかと思います。

 その際は、一たんは廃止が決定をしたものの、その後、そうした声を受けて、当分の間、次の運営先が見つかるまで、施設の有効活用ということで、愛知県障害者雇用促進協会に依頼をされ、自来今日まで、障害者、労災患者のための、日本で唯一の公営の自動車教習施設として活動をしてまいりました。

 ところが、ここになって、すべての特殊法人、外郭団体の独立法人化ということを直前に控えまして、またこの愛知リハ存続問題が再燃をいたしておりますので、それに対しての検討状況、政府の方針をお伺いしたいと思います。

 質問に入ります前に、御出席の委員各位におかれましても、ぜひこの問題の所在をしっかり知っていただきたいということでございますので、まず、本教習所の出発の経緯から今日に至るまでの状況について、再度ここで触れてみたいと思います。

 愛知リハ自動車教習所は、業務災害や通勤災害による外傷性脊椎損傷及び下肢に重度の障害を負った方々を対象に、自動車運転免許を取得させることによって健全な社会復帰を援助することを目的に、労働福祉事業団が、労災リハビリテーション愛知作業所の付設施設として、昭和四十六年十月に、宿泊施設を備え、医師の健康管理を伴う施設としては全国唯一の教習所として設置をされました。

 当時は、身体障害者の運転は危険であるといった、障害者に対するもろもろの認識に偏見がありまして、我が国でも初めてとなります公安委員会指定の自動車教習所として承認を受けることは極めて困難な状況にありましたが、約六年にわたる指定前教習での実績にあわせて、障害者に足をといった世論の高まりの中で、昭和五十二年七月には、念願の指定を受けて、全国唯一の障害者専門指定自動車教習所が誕生したわけであります。

 しかしながら、昭和五十九年ごろから労災患者の減少が顕著となりまして、政府は、二回にわたって行政監察を行った結果、廃止を含めそのあり方を見直すこととの勧告がなされました。平成七年二月には、「特殊法人の整理合理化について」の閣議決定があり、平成八年度末をもって廃止されることが決定をされました。

 廃止決定の直後、卒業生を中心に新聞、テレビ等を巻き込んだ存続運動が展開された結果、当時の労働省は、国の事業としてはその役目は終了したものの、残された施設を利用すべく、その機能が有効に活用されるよう検討の結果、障害者の雇用の安定と促進を図ることを目的として、平成九年四月一日から社団法人愛知県障害者雇用促進協会にその管理運営を移管されました。現在、第二十七期生、本科が八名、特科が五名と聞きますが、島根県や岐阜県等から入所されまして、今月中旬の卒業を目指して頑張っておられます。

 しかしながら、本教習所の土地建物を所有する特殊法人労働福祉事業団がこの四月に独立行政法人化をすることに伴いまして、また存続の危機が持ち上がっておりますので、これからお尋ねをいたしてまいります。

 それでは、以上の経緯を踏まえまして、再度確認の意味で、ここで質問をいたしたいと思います。

 まず初めに、平成九年に愛知県障害者雇用促進協会へ愛知リハの運営を依頼した経緯というものはどういうことだったのか、その経緯について改めて確認の意味で示していただきたいと思います。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 この愛知職業リハビリテーション自動車教習所でございますが、ただいま委員からるる御説明があったところでございますが、改めてその経緯につきまして、私どもの方から御説明をさせていただきたいと思います。

 この愛知職業リハビリテーション自動車教習所でございますが、もともとは、御指摘のとおり労災被災者の社会復帰、これを目的といたしまして、昭和四十六年十月に労働福祉事業団が運営をいたします、隣接してございますが、労災リハビリテーション愛知作業所、これの付設自動車教習所ということで設置をされたわけでございます。

 その後、設置後、時が経るに従いまして、入所者自体の数もやや減少を見てきておる、と同時に、入所者の中でも労災被災者の方々の割合、これも大変激減をしておるという事情にございました。また一方で、全国的に見ますと、障害者の方々を受け入れ得る設備を持った自動車教習所、これも増加をしてきたというようなさまざまな事情、問題点につきまして、昭和五十九年及び平成五年の二度にわたります行政監察に基づく勧告、この中でそうした事情なり問題点なりが指摘をされたわけでございます。

 その後、平成七年二月に、政府といたしまして、特殊法人の整理合理化ということが閣議決定をされたわけでございまして、それを受けまして、特殊法人でございますこの労働福祉事業団が直接行う事業としてはもはや存続し得ない、こういう判断をいたしました結果、平成八年度末をもちまして、この労働福祉事業団が運営する施設としては廃止を決定させていただいたわけでございます。

 そうした廃止を決定いたしますそのときにおきまして、御指摘のように、せっかくの施設だから、身体障害者の方々一般を対象とした施設として活用できないか、存続できないかという強い御希望があったことは事実でございます。そうした御希望等々も我々踏まえながら、この施設が持っております機能が有効に活用される方策ということについて、るる検討を行ってまいったわけでございます。

 ただ、障害者の方々一般を対象といたしました自動車教習所として運営を移管し得る適当な機関というものが、なかなか見つからなかったという事情もございました。しかし、そうした身体障害者の方々への自動車教習機能というものを何とか維持できないかということで、検討の結果といたしまして、障害者の雇用の安定と促進、そういう観点から、当分の間、新たな運営主体といたしまして、社団法人愛知県障害者雇用促進協会が総合的に見ますと最適ではないかということで、同協会にお願いをいたしまして、この愛知県障害者雇用促進協会付設の愛知職業リハビリテーション自動車教習所、こういうことで運営をお願いし、現在に至っておるところでございます。

鈴木(淳)分科員 それでは次に、発足以来、二千百八名が入所をしまして、千八百八十名が運転免許をここで取得をしてきた、全国唯一の公的な施設で、宿泊施設を伴う障害者専門の自動車運転教習施設として、この愛知リハ教習所がこれまで果たしてきた役割について、厚生労働省はどのように評価をしておられるのか、それについてお聞かせいただきたいと思います。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 今お答えいたしましたような経緯を経まして、平成九年に、愛知県障害者雇用促進協会に運営を依頼いたしたわけでございますが、今日までに至るこの七年間の中で、当自動車教習所におきまして、約四百二十名余の障害者の方々に対しまして自動車教習を行っていただいたわけでございます。そうした中で、卒業生の皆様方あるいは関係者の皆様方からは大変感謝の声をいただいておるということは、私どもも承知をいたしておるわけでございまして、そういう意味からいいますと、一定の役割を果たしてきたものというふうな認識を持っておるところでございます。

 ただ、平成九年度以来のこの施設の利用者の方々の状況ということを見てまいりますと、例えば、利用者のうち労災被災者の方の割合というものは、平成九年度当時では二四・五%、四人にお一人というような割合だったわけでございますが、直近の平成十四年度というところを見てまいりますと、八%というところまで低下をしてきております。また、卒業された方の講習終了後の進路ということについて、これも最近の状況を見てまいりますと、就職を御希望される方の割合というのが一八%程度にとどまっておるというのが実態でございます。

 今申し上げたような実態ということを総合的に判断してみますと、この施設を公的機関が直接的に関与する形で運営していく必要性というのは小さくなっているのじゃないかというふうにも認識をいたしておるところでございます。

鈴木(淳)分科員 平成九年に一たん廃止決定がなされた際に、労災のみならず一般の身体障害者を対象とした施設としての存続を願う強い要望を受けて、労働省並びに労働福祉事業団として、それまでの機能が有効活用されるよう、教習所の新たな運営主体が決まるまでの当分の間、この当分の間とはおおむね五年程度ということでありますが、その間、障害者の雇用の安定と促進の観点から、社団法人愛知県障害者雇用促進協会に運営を依頼してこられましたということですが、以来七年の月日がたつ中で、これまでその問題の決着が図られなかったことはなぜなのか、それについてお答えをいただきたいと思います。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 平成九年に、この愛知県障害者雇用促進協会に運営を依頼いたしたわけでございますが、それ以来、御指摘のとおり、これは当分の間ということでお願いをいたしたわけでございます。したがいまして、私どもといたしましても、労働政策という観点から、この自動車教習所の運営がどうあるべきか、また今後どうあるべきかというようなことでありますとか、さらには、もう少し広い立場で、障害者の方々一般に対して自動車教習を行います施設としての方策はないのだろうか、さまざまな観点から検討を行ってまいったわけでございます。

 そういう中で、先ほど来申し上げているとおりの、御利用される方々の状況ということを見ますと、労災被災者の割合がわずかな比率になっておる、さらに、就職を希望される方の割合も一八%にとどまっておる等々の状況ということも私ども留意をしながら、関係者とるる協議を行ってまいったわけでございます。

 ただ、一方で、この自動車教習を希望される方々も現実におられたという中では、実態を踏まえたあり方ということと現実に希望者がおられるということで、直ちに本教習所を閉鎖するという判断になかなか至らなかったわけでございます。

 ただ、現時点、現段階という観点で考えますと、先ほど来申し上げているような本施設の利用者の状況等を踏まえますと、やはりこの施設につきまして公的機関が直接的に関与する形で運営する意義というものは、大変残念ではございますが、私どもとしては小さくなっているのじゃないかと受けとめておるわけでございまして、そういう意味でも、そのあり方については早急に結論を出していかなければならないものというふうに受けとめておるところでございます。

鈴木(淳)分科員 私は、一昨年の春でしたが、そこで働く私の友人から、所長さん以下スタッフが、この施設の社会的存在意義の大きさから見て、必死になって何とかその機能存続を図るべく努力をしておられるということを聞きまして、その実情を知るためにお邪魔をしてまいりました。

 当時は、平成九年の存続運動の結果で当分の間とされた五年間の暫定期間が過ぎまして、まさにその先がどうなるかわからない、そうした時期でありましたけれども、私がそこで見ましたのは、教習生の皆さんがお互い助け合いまして、励まし合って運転免許取得に励み、スタッフの皆さんが、まさに親にもまさる愛情でそれをサポートされるという、実に感動的な光景でありました。以来、何度か足を運ぶたびに、改めてその社会的存在意義の大きさを痛感する次第でございます。

 そこで得た私の率直な感想は、労災患者、一般身障を問わず、この施設が単なる自動車教習の域にとどまらず、共同生活の中で、教習生相互が助け合って、励まし合って運転免許の取得を目指す過程そのものが、実は彼らにとって極めて重要な社会生活に踏み出す第一歩でありまして、その意味で、真の社会参画への具体的なステップになっているという確信でありました。

 労災患者や身障者にとって、運転免許の取得機会を残すことは、ある面まさに彼らの生存権的な権利を社会としていかに保障するのか、こういうことになろうかと思うわけであります。

 私が出会いましたある女性の教習生は、こんなことを言っておられました。その方は重度の筋萎縮症で、実はスタッフの方から事前に、いつまで命が長らえるかわからない、こういった状況の方だと聞いておりましたけれども、その方がこんなことをおっしゃっていた。その方は、目を輝かせてこんなことを言うんですね。これまで私はどこかへ行こうとしても、そのときは人に頼まなければ行けなかった、しかし、免許を取ったら、これからは私が人を運んであげられるんだ、連れていってあげられるんだと。私はとても感動しました。

 私は、身障者の方にとって、運転免許というのがまさに社会との接点をつなぐ重要なツールなんだな、こういうことを改めて確信をした次第でございます。

 運転免許の取得が必ずしも就労に結びついていない、こういう指摘があることは聞きます。しかし、我々健常者にとっては当たり前でありますが、行きたいところへ行く、自分の足で行く、そうしたことが、障害者にとってみれば、まさにそれを保障することが障害者に精神的支柱を与える、同時に、そうした機会を与えることが、残すことが、最後に政治に対する信頼を残す、こういうことにつながるのかな、こう思うわけであります。重度の障害者の運転免許取得機会を絶対に奪ってはならないと思います。

 ただ、行政に、後先を考えずに、ただ単に残せと言うのは簡単なことでありますが、しかし、それでは問題の根本的な解決にはなりません。重要なのは、社会の中でこうした機会をどのように位置づけて、どのように存続させていくのか、また、その運営はいかにあるべきかということを真剣に議論することだと思います。そして、本来、平成九年から今日までの間が、実はその答えを見つけるための猶予期間ではなかったのか、こう思うわけであります。

 この問題は、実に難しい行政のはざまにあります。かつての行革の論議の際に、行政監察によって、労災勘定で運営する教習施設でありながら労災患者以外の一般身障を受け入れるということに対しまして、目的外業務運営、すなわち予算流用の指摘がなされまして、平成七年二月の「特殊法人の整理合理化について」の閣議決定を受けて廃止が決まりました。それ自体は決して間違っているとは思いません。しかし、当時は厚生省と労働省が別々でありました。労災患者は労働省、身障者は厚生省の管轄。行政の細分化の中で、縦割りの中で、それはもちろん行政の効率化のためには必要なことだと思います、しかし、その職務に忠実であろうとすることが、実は結果的にはざまにある問題に対処し切れない、こうした事例をここに見るわけであります。

 ところが、現場においては、労災だろうが身障だろうが、そんなことはどうでもいいんです。いかにこうした方々について、運転免許取得機会を保障して、社会参画と就労機会を与えることができるのか、その機能担保をどうするんだということが重要なのであります。幸いにして、今は、厚生省と労働省が一体になりました。上からの発想ではなくて、下から、すなわち現場からの発想でこの問題に取り組む、その視点が必要かと思います。こうした実情をどう救うか、そのためにどう知恵を出すのか、私は、そうした問題に自発的に取り組む行政の感性というものを期待したいのであります。

 しかし、これは同時に、私たち政治の責任でもあります。本来、この種の問題は、行政のスタッフが、職務に忠実、効率的であろうとすればするほど対処できない隘路にある問題でありまして、それを越えるのは、本来、私ども政治の責任、役割であるかと思います。きっちりとここで政治の課題として取り組んでいかなければならない、こう思う次第でございます。

 さて、朝日新聞が地元で二月十六日に報道した記事によりますと、また、現場から聞こえてくる情報によりますと、厚労省は教習所の存続を前提にした民間移譲を考えているようだ、こういうことでありますが、条件を付した上で競売をして、民間教習所に助成金を与えて運営させる方針が検討されているということでありますが、それで果たしてこれまでのような機能が本当に担保されるんでしょうか。

 私は、行革を否定するものではありません。また、民間を否定するものではありません。総論賛成、各論反対が行革を阻む大きな障害であることはよく知っています。また、民間でも立派に障害者を受け入れている教習所の存在を知っています。しかし、それでもなおかつ、全国から愛知リハに集まってこなければならない障害者が多いというのはなぜでしょう。親元を離れて、遠く愛知の地まで来なければならなかったのは、ここでしか教習を受けられない人が多かったからではないか。まさに、民間では受け入れられない重度の障害者、その方の最後のやはり寄る辺ではなかったのかと思うわけであります。

 たゆまぬ行革の推進の必要性は理解するものの、事本件に関しては、効率性あるいは経済性の論理での民間移譲に必ずしもなじむ問題とは思いません。やはりこの問題については、実際の運営がどこであり、国としてきちっと責任を持って対処していくことが不可欠であると考えます。

 民間が施設を運営することは、それ自体が悪いとは思いません。しかし、助成金を与えてそれを一定期間コントロールしていくということだと思いますけれども、それで本当に愛知リハがこれまで果たしてきた役割というものが担保できるのか、採算が絶対にとれないと思われるこの事業を果たして民間が責任を持ってやり得るのか。かつて労働省は、利益の出る事業じゃないので民間委託は不可能だ、こういうことを言っておられました。もし民間になった場合に、果たして教習費用は幾らぐらいになるんでしょうか。やはり、こうしたことで、民間移譲の中で、重度の方々に対する運転免許の取得の機会を、その道を閉ざすんではないか、その疑念がぬぐい去れないのであります。

 私も、実は正解を持つわけではありません。しかし、民間教習所と国と障害者団体が一緒になって運営を協議して、それを受けて民間が実際の運営を担うとか、そうした協議会の仕組みのようなものはできないものでありましょうか。どうしたら機能を保つか、国として責任ある関与ができるのか、社会的にしっかり位置づけられるのかということを、ぜひその点で厚労省の皆様方には知恵を絞ってほしいと思いますし、ともに考えたいと思います。

 さて、坂口大臣は、かつての平成九年の際、それに関与されまして、この問題について随分造詣が深いと聞きます。厚労省のトップとして、今後の障害者問題の先駆けとなる名案をぜひ導き出していただきたいと思います。愛知リハビリテーション自動車教習所の今後のあり方、機能存続について、厚生労働大臣はどのようにお考えか、お尋ねをいたします。

坂口国務大臣 平成九年でございましたか、前回問題になりましたときに、私も、この教習所の皆さん方からいろいろと陳情をお受けいたしました。その当時、旧労働省でございましたが、何とかいい方法はないかと。この皆さん方の思い、そして、障害者の皆さん方が自動車免許を取られるということは、一般の人間が取ります以上にこれは大変なことだということをそのときに申し上げて、知恵を絞っていただいたのが先ほどからのお話のありますような結果でありまして、そして今日を迎えている。平成九年からでございますから、七年たつわけですね。私の頭の中からもすっかり消えておりまして、まことに申しわけないというふうに思っております。

 先ほどもおっしゃいましたように、機能を存続させるということが一番大事なことだろうと思うんです。それで、この機能を存続させるために、どういう主体がこれを受け継いでいくかということが大事になってくる。それから、一番中心は、この機能をどう存続させるかというところから話を詰めていかないといい結果は生まれないというふうに、私も率直にそう思っております。

 先生にもひとつ御努力をいただきたいと思いますし、我々も努力をいたしまして、この機能をどう存続させていただくかという一点に絞って、そして障害者の皆さん方のこの問題を解決していきたいというふうに思っております。私も努力をさせていただきます。

鈴木(淳)分科員 ありがとうございました。

 実は、大変に難しい問題であることは私も理解をいたしております。今回、この問題を調べるに当たりまして、官僚機構の厳格さの中にありましても、何とかそれの道を開こうというふうに一生懸命努力されている官僚の方々がたくさんおられることがよく私はわかりました。とてもうれしく思いました。

 大変難しい問題でありますけれども、いずれにせよ、愛知リハ教習所が果たしてきた役割と機能というものを国としてきちっと責任を持って担保する、そうした方向で進めてほしいと思いますし、障害者が安心をして運転免許取得に取り組める、そうした環境を守っていただきたい、つくっていきたい、そう思うわけであります。

 一つ要望がございますが、ぜひ、現場に足を運んで、現場で物を考えていただきたい、こう思うわけであります。この問題には政治も行政もありません。ともに問題解決に向かって、あるべき社会に向かって知恵を出していきたいと思っておりますので、どうぞよろしく御検討賜りますようにお願いを申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

谷口主査 これにて鈴木淳司君の質疑は終了いたしました。

 次に、石毛えい子君。

石毛分科員 民主党の石毛えい子でございます。

 きょうは、久々に坂口厚生労働大臣に質問をさせていただけますことをありがたいと思います。よろしくお願いいたします。

 きょうは、具体的な社会福祉施設の整備などに関しまして質問をしたいと思いますけれども、その前に少し述べさせていただきたいと思います。

 昨年の十一月の総選挙が終わりましてから一月中、二月に至るまで、厚生労働省の予算編成をめぐりまして、さまざまに、私のところに障害者の皆さんあるいは高齢者福祉にかかわる方々からSOSが飛び込んでまいりました。大臣も御存じのことだと思いますけれども、障害者の方の支援費に関連して、在宅介護、グループホーム、ホームヘルパー事業の基準の切り下げといいましょうか、そうしたことで、これは一応、今のところ白紙撤回というところまで戻りましたけれども、そうしたことが次々に起こってまいりまして、私は野党の所属の議員として、そういうことをいろいろ言われても、一生懸命頑張るけれどもというような日々が続きました。

 そうしたことを通じて思いますのは、予算編成、八月から年末にかけて大変忙しく検討されるとは思いますけれども、もっとやはり当事者の方々、現場の方々と相談をされて合意を形成しながらつくっていくということが大事ではないかということを痛感しておりますので、そうしたことを冒頭に述べさせていただきたいと思います。

 そして、きょうは、社会福祉施設整備の国庫補助にかかわる補助協議基準が見直しになったわけでございますけれども、それに関連して質問いたします。

 この社会福祉施設は、介護保険実施の基盤となる高齢者福祉施設、あるいは、スタートして一年が過ぎようとしている支援費制度の基盤となる障害者福祉施設の整備、推進とも関係する事態だというふうに私は認識しておりますので、この施設整備の国庫補助にかかわる、一月末から二月の初めにかけましてでしょうか、自治体と国との間で補助協議基準が見直しになりましたことについて、何点かお尋ねをしたいと思います。

 まず最初に、今回の見直しの、総括的な視点としてとらえていこうとする場合に、高齢者福祉施設、これはゴールドプラン21で目標値を定めているわけでございますが、あるいは、新障害者プランで障害者福祉施設の整備目標を定めているわけでございますけれども、私は、今回の補助協議基準の見直しがこの整備目標の進捗に照らして壁になるようなことがあってはならないだろうというふうに認識をしておりますので、これらの施設が整備目標に照らしてどのような進捗状況にあるか、現在どこまで来ているかということについてお示しをいただきたいと思います。

中村政府参考人 まず、高齢者福祉施設の整備状況について申し上げます。

 特別養護老人ホームなど高齢者の介護施設の整備につきましては、今先生からお話がございましたように、国の整備計画であるゴールドプランに基づきまして一九九〇年からやってきておりまして、現在のゴールドプラン21はその三回目のプランに当たるものでございます。

 ゴールドプラン21では、目標として、来年度、平成十六年度の整備目標を掲げております。

 典型的な介護施設であります特別養護老人ホームについて申し上げますと、ゴールドプラン21の十六年度での整備目標は三十六万人分でございました。十五年四月の実績が三十四万五百九十二人ということでございまして、十五年四月の達成状況が九五%でございます。十五年度四月以降も補助をしておりまして、現に工事中のものを加えますと達成状況は三十七万二千三百三十人ということになりまして、目標の一〇三%に達しております。十六年度、さらに整備をいたしますので、それはさらに上積みされるというような状況でございます。

 老人保健施設も重要な施設でございますけれども、ゴールドプラン21の十六年の見込みが二十九万七千人分でございまして、十五年四月の整備状況が二十六万三千六百人ということで、約八九%でございます。工事中の分、それから十六年度予算分を加えますと二十九万二千人程度になるということでございまして、ほぼ達成、九八%の達成状況になるのではないかと思います。

 このほか、施設だけではございませんで、訪問介護とかグループホーム、グループホームは介護保険では在宅に位置づけられているものでございますけれども、そういった目標も定められておりまして、訪問介護や痴呆性高齢者グループホームのいわゆる在宅系のものは既に十六年度の目標値を超えているというような状況でございます。

 なお、ケアハウス等、若干目標に達しないものもございますけれども、伸びの方は、おかげさまで、対前年度比で見ますと二けたの伸びというふうになっておりますので、今後整備が進むもの、こういうふうに認識いたしております。

塩田政府参考人 障害者福祉施設の整備につきましては、これまで、平成七年度から十四年度までを計画期間とする障害者プランに基づきましてサービス基盤の整備を図ってきたところでありますが、今後は、平成十五年度を初年度とする新障害者プランに基づき整備を進めることとしております。

 平成十四年度末時点におきます障害者施設の整備目標の達成状況でありますけれども、授産施設、福祉工場については目標値約六万八千人分に対して七万二千五百五十二人、デイサービスセンターについては目標値約千カ所に対し千百六十四カ所となるなど、大半の施設は目標を上回っているところであります。

 十五年度を初年度とし、十九年度を目標年度とする新障害者プランにつきましても、現在のところ、おおむね順調に整備が進んでいるものと考えております。

石毛分科員 とても特徴的なのは、高齢者福祉にしましても障害者福祉にしましても、二十四時間入所施設につきましては目標を達成しているか、あるいは目標をオーバーしているかというような状況だということは、今お示しいただいた推移で確認させていただけたかと思います。

 そこで、今回の社会福祉施設の国庫補助にかかわる補助協議基準の見直しでございますが、これはどのような経緯で登場することになったのでしょうか。そして、主な変更の内容はどのようなことなのでしょうか。その点を簡潔に御指摘いただけたらと思います。

中村政府参考人 今回の高齢者介護施設等の国庫補助の整備基準についてでございますが、まず予算について申し上げますと、十五年度、今年度の高齢者の介護施設の整備費につきましては九百七十四億円でございました。今御審議いただいています十六年度予算案では、若干単価が下がっておりますので、九百三十一億円を計上いたしまして、その整備に当たることといたしております。そういった意味では、予算額といたしましては、十五年度と十六年度、当初予算におきましてほぼ同じ額の予算を計上させていただいているという状況でございます。

 それでは、そういう状況のもとで、都道府県に私どもがお示しいたしました補助について協議をいただくわけですが、その協議の際にこういう方針で協議をお願いするというものが今度変更になったわけですが、その変更した理由ということについて御説明申し上げます。

 先ほども申し上げましたように、かなりゴールドプラン21は前倒しして施設整備については達成されてきた状況にございますけれども、これは、国の方の経済対策の観点もあり、我々の方も、高齢者介護施設について御要望が大きいものですから前倒しして整備したい、そういうことがありまして、ここ数年間、補正予算も含めまして対策をしてきたという経緯がございます。また、毎年補正予算を組まれましたときは、本体予算と一体的に切れ間なく事業をするということでかなり前倒しをしてきたということで、今年度、十五年度においてもその前倒し分を加えまして整備をしてきたということでございます。

 例えば、十四年度の補正予算分と一緒に十五年度についても整備をさせていただくということで、十五年度に新規に整備をいたしました施設数というのは、かなり前倒し分も加えまして大きくなっております。

 御承知のとおり、今年度、十五年度におきましては、そういった意味での補正予算の計上は行わない、こういうことでございましたので、十六年度分につきましては、いわば整備ベースについては、ここ数年とは違いまして通常整備のペースになるものでございますので、都道府県に対しまして、整備の協議枠といたしまして、私ども、十五年度に例えば特別養護老人ホームを整備し、十六年度継続して、工事に時間がかかるものですから、二年継続して整備するというようなものがございますので、協議枠といたしまして、まず、十五年度の継続分の整備は十六年度分についてもお受けする、それから、十六年度の新規分は、ただいま申し上げましたような通常整備ペースになるものですから、十五年度新規整備分の三分の二の範囲内でお願いしたいということを通知したところでございます。

 こういう経緯でございます。

石毛分科員 障害者施設についても御説明はございますでしょうか。

塩田政府参考人 障害者福祉施設の整備につきましても、財政的には大変厳しい状況にありまして、来年度につきましては継続分とか新障害者プランを優先的に対応するということが必要であろうと思っております。

 現在、都道府県から出された要望についてのヒアリングを行っておりますが、真に必要な場合に限定するとされておりました入所施設の要望もかなり出てきておりますが、これについては真に必要な場合だけに限定することによって、新障害者プランを優先的に採択できるよう努力したいと思っております。

石毛分科員 今の高齢者施設に関する局長の御説明で、十五、十六、二年度分は受けるけれども十六年度からの分については三分の二というこの御説明が、いつごろ都道府県、市町村に情報として伝わったのかという関係もあるかと思いますけれども、十六年分の申請に関しまして十五年度から協議に入っていて、そして、今までと同じようにといいましょうかそうした推移で準備を進めてきた自治体は、一月が明けまして、突然、十六年分につきましては三分の二にとどめますというようなこと。それから、後ほど触れたいと思いますけれども、特定の施設に関しましては、補助基準額の考え方と申しましょうか、それが大幅に変わりまして、そういう施設を十五年度から都道府県と協議をしていた基礎自治体ないしは社会福祉法人等は大変な困難に直面したということ。これは局長も情報としてキャッチしていただいているかと思いますけれども、きのう質問取りのときに来られた方が情報をよくキャッチしている都道府県はかなりそのあたりを認識して協議をしてきているというようなことをおっしゃいましたけれども、私が出会っています自治体は、都道府県、市を含めまして、その情報のキャッチ力が弱かったのかどうかよくわかりませんけれども、そのあたりにつきまして、局長、何かお言葉はございますでしょうか。

中村政府参考人 先生から今お話のありましたような御意見なりそういったことは、多くの都道府県の方からも私のところにも寄せられておりますので、先生の御指摘は私の方からあながち間違っているとかそういうことはないということを申し上げるつもりはございませんが、私どもの方からの御説明をさせていただきますと、最近の国の財政状況や、それから施設整備、特に施設整備の達成状況がよくなってきているということ、それから、釈迦に説法みたいな話で恐縮でございますが、介護保険において、できるだけ在宅を重視し、施設の中でも地域密着型のグループホームとかそういう居住系のサービスを重視するというような最近の方向からいきますと、施設整備についてはかなり厳しい状況になるということは、十五年の二月や三月の担当者の部長会議や課長会議のところでも申し上げており、十六年度は相当厳しい状況になるというお話はしていたわけでございますけれども、ここ数年、経済対策もあり補正予算などで非常に潤沢な補助をするという状況が続いたこともあり、残念ながら、都道府県や政令市、中核市の御担当の方はそういったお話を本気にしなかったというのが背景にあろうかと思います。

 いつこういう状況についてお伝えをしたかといいますと、十五年度の補正予算の方針が確定いたしましたのは十一月、十二月と、それで、経済対策も本当に行われないということが決まったのはそういう時期だというふうに私ども認識いたしましたので、年末にとりあえず――とりあえずと申しますか、先ほどの協議枠の方針についてちょっとでも早く御通知することが大事だと思い、通知し、一月に全国の担当部長会議がございますので、そのときにも改めてお伝えをした。また、二月に担当課長会議がありましたので、もちろんそのときには皆さん大変深刻に受け止めておられ、そういった状況が先生のお耳に達したのではないかというふうに思っております。

石毛分科員 何か、私は、国の皆様も御苦労されているわけですけれども、自治体のこれにかかわった皆様は随分消耗な苦労をされたものだなという思いがしております。

 これはここでとめますけれども、ちょっと具体的に、実際地元であるいは私の関係しているところで大変困っておりますことを一つ指摘したいと思います。

 それは、先ほど中村局長の御説明の中にちょっと触れていられたかと思いますけれども、実は高齢者のデイサービスセンターで、入浴部門と給食部門を併設しているそのデイサービスセンターの補助基準額が、これはほかの高齢者施設に比べまして格段に低くなっている、こういうことがございます。

 それで、私はある自治体から、十六年度、二〇〇四年度にぜひ設置をしたいということで協議に入っておりますその施設、もう時間がありませんから簡単にしますけれども、国の補助額が、試算によりますと、約四千万円の減額です。それから、都の補助額が、これは都の関係というか自治体でございますので、都の補助額が、介助浴加算、単独で三百七十万の加算をつけるというふうに言っておりますが、トータルでは二千三十万の減額で、国、都合わせて六千万余の補助基準額の減ということになります。これを何とかしなければならない、こういう状況になってきているということなんですね。ここはどんなに苦労しても、市単でしているいろいろな事業をそれこそもう一度整理統合し直して財源を捻出して、そして来年度、どこかの時点の補正で組んで実現していきたいというふうに話しておられましたけれども。そうできるところはいいわけですけれども。

 もう一カ所、社会福祉法人のやはり入浴部門と給食部門を持っているところが、どうしても道路工事の関係で移転をしなければならなくなったということで、伺いましたところ、ざっと言いますと、約一億五千万円ぐらいかかる建設費のうち五千万円ぐらいが自己負担増になってしまうと。本当に困る、何とか借金を、どうしたらいいかというようなことが、一月末ぐらいでしょうか、私のところに入ってまいりまして。今一生懸命何とかそのお金の捻出をしているところで、何とか協議はつけなければいけない。もうそろそろ協議はつけた時期だというふうに思いますけれども。

 ここで私がお尋ねしたいのは、こうした特段の経緯の中で生じた特段の自己負担増に関して、例えば福祉医療機構からの特別融資と言ったらいいんでしょうか、融資増大というようなことが考えられないんだろうか。それに加えまして、その部分の利子負担を国が肩がわりするというような、そうした方向性をとっていただけないだろうか。

 ちょうど昨年、局長の御説明にございましたように、これまでは景気対策も含めて施設を増設していくということと、それから、十六年度以降といいますか十七年度以降通常に戻しますという、この端境で起こった、ある種のエアポケットに入ってしまったといいますか特別の事情だと思うんですね、その特別の事情で、補助額をもとに戻していただきたいというのが一番の私の要請ですけれども、戻せないものだったらば、何かそれにかわる代替措置がとれないか、とっていただけないかというお尋ねでございます。

    〔主査退席、鈴木(俊)主査代理着席〕

中村政府参考人 まず、今問題になっておりますデイサービスセンターの単価の見直しの基本的な考え方について申し上げますと、基本事業という、何か例えるのはあれですけれども、デイサービス本体の整備費がございます、それに、整備の基準としては入浴部門がつけばかさ上げをし、給食部門がつけばかさ上げをする。例えば、基本事業が三千三百万円だとしますと、入浴と給食がつくと倍の六千七百万円くらいになるというのがこれまでの基準でございました。それから、基本事業も平米数によって、百六十五平米以上とか、さっきの三点セットでやりますと三百四十平米以上と、倍くらいの平米になりますので非常に高くなっていた、こういう状況でございます。

 今回大幅に下がったではないかという御指摘をいただいていますのは、これは全部の施設共通でございますけれども、基本単価が三・五%下がったほか、今のかさ上げする方式をやめまして、もう基本事業一本に補助をするという方式に変えさせていただきましたので、先生おっしゃるような大幅な引き下げになっております。

 これは、お金がないからしたのだろうという御指摘を受けるかもしれませんが、それだけではなくて、実は最近のデイサービスセンターについても、プールみたいな入浴施設をつくっているのはむしろ訓練にならないんじゃないか、普通の御家庭では個浴のおふろに入っているわけだから、そういった意味でもああいう大規模な施設を改めるべきじゃないか、それから、大人数で画一的なデイサービスをやるというのは余りいい方向じゃないんじゃないかというようなことで、これは審議会の方でもそういう御意見が出て、むしろ施設整備のあり方があるべきデイサービスとか本当に理想のデイサービスからずれているんじゃないかという御指摘もありましたので、お金がないという動機はともかくとして、そういう整備方針に今回改めたということでございます。

 この変わり目のときに云々というお話もわからないわけではありませんし、そういった意味では私どもも期待されていた方に対して申しわけないという気持ちもありますが、逆に、デイサービスについて申し上げますと、補助を受けないでデイサービスを整備されている営利法人の方など三〇%くらいがデイサービスのシェアを占めてきておりますので、介護保険の運営という意味では、社会福祉法人もそういう補助を受けないデイサービスも、いわば在宅サービスについてはイコールフッティングでやっていただいているということもあるわけでございますし、収益状況を見ましても、デイサービスの収益状況は非常によくて、十五年四月の改定でもデイサービスについては介護報酬を四%引き下げさせていただいて、まだ私どもはきちんと運営できるというふうに思っておりますので、見込みが違ったという意味でのおしかりは甘受いたしますけれども、どうかそこのところは工夫でもって乗り切っていただきたい、こういうふうにお願いしているところでございます。

石毛分科員 工夫で乗り切るには余りにも大きな変化だと思います。私がいただきました、自治体の側がつくっております比較表ですと、五三%減ですから、これは計算の仕方もいろいろ面積やら何やらであるのかもしれませんけれども、都市部で五三%減ですから、工夫の域を超えていると思います。

 それで、もう時間もなくなってしまいましたので、大臣にお尋ねしたいと思います。

 私は、今の局長の御答弁の中で、デイサービスセンターがプールのようなおふろを持ってという表現があったというふうに伺いましたけれども、私の地域のデイサービスセンターは、地域を十のエリアだったかと思いますけれども、分けまして、比較的小規模の、そして、その地域になじむような畑があって、そこでとれた作物を、近隣の子供たちからさまざまな方がいらっしゃってそれを食するお祭りをするとか、本当にコミュニティーにあるデイサービスセンターとして機能している。そのデイサービスセンター、ぜひ大臣にも一度視察をしていただけたらというふうに、この際ですから御要望申し上げますけれども。

 地域の中にデイがあって、そこでひとときを送りながら、そこに入浴機能があって、給食機能があって、願わくばそこにショートステイもあるというのが、コンパクトな、厚生労働省もこれからの方向性として小規模多機能型ということを出されていて――私は、それはサテライトである必要はない、サテライトであってもいいけれども、サテライトでなくてもいいと。私がおります自治体は、サテライト型というよりは、単独型の、地域型のそうしたデイサービスをつくってきている。それは、ある意味、都市でそれほど大きな施設をつくらない、つくらないというのはちょっと言い過ぎなんですけれども、それも検討するけれども、地域に密着した施設ということを考えていくということでいえば、私は、多機能の高齢者デイサービスセンターやあるいは在宅複合型施設がふえていくということがこれからの施設体系として望ましいのではないかと。

 にもかかわらず、その小規模多機能型の施設が今回のこの特例の手だてによって非常に厳しい状況に置かれているということについて、ぜひ御認識いただきたいし、何らかの方向性をお示しいただきたいというのが大臣への最後のお尋ねでございます。

坂口国務大臣 高齢者の問題につきましても障害者の問題につきましても同じでございますが、これは余り好ましいことではなかったわけですが、当初予算と補正予算と両方あって、いつも補正予算の方で上乗せが続いてきたという経緯がございました。これは、この皆さん方だけではなくて厚生労働省の中にも、ことしもまた補正で何とかなるのではないかという期待感みたいなものがあったことは私も事実だと思うんですが、その期待に反しまして、それがだんだんとそういうものは組み込まれないということになってきて、さあ大変だということに現実問題はなったわけでございます。さりとて、それでは当初予算にそれが全部今度はオンされて組めるようになるかといいますと、当初予算は当初予算で上限が設けられていてなかなか身動きができないということが続く。そうした中で知恵を絞らなきゃならないわけでございまして、でき得る限り知恵を絞って、そして、そこの中で何を一番中心にしていくかということで重点的にやっていかなきゃいけない。グループホームのようなところにはできるだけ重点を置いてというので今回も予算を組ませていただいているわけでございますが、そうした変化の中で、今御指摘をいただきましたように、現場ではいろいろ御苦労をいただいているケースが多々あるということを私もよく存じておりますし、その中のまた代表的なものをきょうはお示しをいただいたというふうに思っております。

 ここはなかなか全体として厳しい面はございますけれども、いろいろと御意見を十分に拝聴して、御相談に乗らせていただいて前に進むというふうに私たちも努力をしたいというふうに思っております。

石毛分科員 お忙しいと思いますけれども、ぜひ現地に御見学においでください。そのことをお願い申し上げまして、終わります。

 ありがとうございました。

鈴木(俊)主査代理 これにて石毛えい子君の質疑は終了いたしました。

 次に、赤松正雄君。

赤松(正)分科員 公明党の赤松正雄でございます。

 大臣、連日大変に御苦労さまでございます。極めて重要な年金法案でありますとか、あるいは、大臣が御就任される直前にできたんですか、この介護保険の仕組みというのは、そういったこと、極めて重要な課題が山積しておるときに、前の厚生労働大臣がだれだったか忘れるぐらい長期にわたってやっておられる、大変に御苦労さまだと思います。

 私の方から四、五点、御質問をさせていただきたいと思います。

 まず第一点目は、今もお話があったんだろうと思いますけれども、介護の問題であります。

 介護という極めて重要な課題が家庭のいわゆる親子関係の中で処理をされてきた、そういう段階から、介護の社会化というか、社会全体でこの極めて重要な課題をしっかり取り扱っていこうという流れが今定着しつつあるわけですけれども、その定着の流れの中で、言ってみれば今まで光が当てられていなかったそういう部分に光が当たったということによって、さまざまな問題も同時に噴出している。つまり、私が思いますのに、今まで伏せられたものが、光が当たることによって、言ってみれば光と影の双方が出てきたというふうなことが言えると思います。

 光という部分でいえば、この介護制度の導入によって、今まで家庭の中で大変に親子関係の中の桎梏といいますか、大変に厳しいテーマを押しつけられて困っていた方々が、この新しい制度の導入によってそういう部分から解放されるということがあるわけですけれども、一方、影の部分という観点から申しますと、要するに、端的に言えば、高齢者に対する虐待というふうな部分の問題が幾つか出てきている。我が党の浜四津敏子代表代行が参議院で、高齢者への虐待を防止するための法律、高齢者虐待防止法というふうなものをやったらどうか、そういう提案をされたわけですけれども、まず第一点目は、そのことに関連することを申し上げたいと思います。

 私の友人でも、こういう今の介護の流れの中で、全く異業種から、このいわゆるグループホームというものを経営したいという格好で、それまで建設業者であったのに、突然、たまたま持っていた会社の広い施設、それをグループホームにつくりかえるということで、にわかづくりのそういう施設もふえたりしておりまして、数字を見ますと、二〇〇〇年三月末に二百六十六カ所だったグループホームの施設が、ことし一月末現在で四千三百七十四カ所と、四年で十六倍にもふえている。

 これは、先ほど申し上げました光と影という部分でいえば、それまでそういうことに関心がなかった人が一生懸命取り組んでいるといういい部分ももちろんいっぱいあると思いますが、同時に影も生み出してきて、かなりずさんな形でお年寄りを取り扱っているというケースも、そんなにたくさんはないと思いますが、部分的には出てきているというふうなことがあろうかと思います。

 そういう中で兵庫県は、新しい年度に、在宅介護センター、ホームヘルパー、ケアマネジャーを抱えます在宅介護にかかわる県内の全事業所、三千七百の事業所を対象に独自調査を行うということを決めました。全県レベルでこういったことをやるというのは極めて珍しい、こう言われておりますが、一方、厚生労働省も、虐待が多いと言われる、今私が申し上げましたグループホーム、もちろんいいところもいっぱいあるわけですけれども、比較的そういう懸念もあるということのために、監視強化を目指して全国四千四百カ所に上る施設をチェックしていこう、こういうふうなことで方針を発表された、こんなふうに聞いております。

 先ほど申し上げました我が党の高齢者虐待防止法の提案というものに関しまして、先般も小泉総理大臣に質問をしたところ、小泉総理大臣のお答えというのは、「老人福祉法に基づき、施設に保護することなどにより対応しておりますが、虐待の態様や発生要因はさまざまであります。その実態把握を急ぐとともに、その結果を踏まえ、必要な対策を講じてまいりたい」、こういうふうに、積極的といえば積極的かな、おざなりといえばおざなりかな、何かよくわからない、普通の答弁をされているんですが、ぜひ坂口大臣に、このあたりのことについてもう一歩踏み込んだ御答弁をしていただきたいなと思うんですが。先に局長ですか。

中村政府参考人 先生から今お話のありました虐待の問題ですが、結論から申しますと、私どもも、兵庫県が来年度調査していただくということですが、今年度、私どもの方で全国調査をいたしております。兵庫県さんの調査は、私どもの調査票も見ていただいて、さらに県として充実した調査をされるということでございます。どういう調査をしているかといいますと、全国二万にわたります在宅介護支援センターとかそういう在宅のお年寄りに接することの多い人に対しまして、虐待の状況について調査をしているということでございます。

 先生お話ありましたように、実は虐待というのは、各国によって違いますし、どこに重点を置くかでかなり視点が違ってまいります。よく言われています、法律をつくったらどうかと言われています虐待の方は、どちらかというと家族による虐待ということで、児童虐待やドメスティック・バイオレンスの系統に近いわけですけれども、例えばスウェーデンなどでは高齢者虐待というのは施設の問題としてとらえられておりまして、サラ法という法律がつくられたりしております。それは多分、スウェーデンでは高齢者と家族の、子供の同居率が数%にすぎない、アメリカでは一〇%くらい、日本はほぼ半数の方が同居されているという、各国の事情といいますか、日本のアジア的な家族形態といいますか、高齢者介護をどういうところに依存しているかによって、虐待の問題もかなり違ってくるんだと思います。

 今、先生からお話がありましたグループホームや施設の虐待というのは論外でございまして、これは法律をつくるまでもなく、我々の方がきちんと取り締まっていかなきゃならないということでございまして、例えば、特別養護老人ホームや介護施設では身体拘束は許さないということを基準でも書いておりますし、やむを得ずする場合にはその理由を記載しておかなきゃならない。記載していなくて身体拘束しているような場合は施設の取り消しになる、こういう強い態度で臨んでおります。

 グループホームなどは大変ふえておりますので、よいサービス形態だとは思いますけれども、少人数で逆に閉じこもりがちになる、閉鎖的になる、虐待が起こるととめどもないことになるということで、重点的にやろうということで来年度は全施設に指導に入る、こういうことは先生からお話のあったとおりでございます。

 総理の答弁は、ただいま申し上げました意味での、家族の方の高齢者の虐待というのが問題になっておりますので、ここのところはまず実態把握をした上で、法律による対応が必要かどうか、そういったことも考えていこうということでございます。

 ちなみに、そういう家族の虐待をお救いするのは、やはり行政ということになります。家族から離す必要がありますので、老人福祉法でそういったことで入所の措置ということができるようになっております。これは、家族から保護するために入所する措置という機能もあります。

 もちろん、家族から虐待を受けていなくても、お一人で困っているので、本人は入るということについて余り自覚がない場合でも入所措置するということがありまして、介護保険施行後、私どもの統計では百四十人の方を行政的に入所措置しておりますが、家族の虐待、無視は五十八名という統計はあるわけでございます。

 したがって、家族の虐待から守るといった場合も、最後に残った手段としては入所措置ということがあると思いますので、そういったことが十分機能しているかどうか、そういうことも含めて、まず実態をよく把握する必要があるということで、今、十五年度調査したところでございますので、近く結果が出ると思いますので、取りまとまりましたら、また御報告を申し上げたいと思います。

    〔鈴木(俊)主査代理退席、主査着席〕

坂口国務大臣 なかなか高齢者に対する虐待の問題というのは、多分、表に出にくい話なんだろうというふうに思います。

 子供の問題もなかなか表に出にくいところがございますが、しかし、子供が虐待を受けますと、あざがある、あるいはまた大変けがをしているといったようなことからこれは出てまいりますけれども、老人に対する虐待といいます場合には、そうした身体的な虐待もありますけれども、精神的な虐待もあったりして、言葉による虐待みたいなものもあったりして、なかなか表に出にくい話ではないかというふうに思います。

 調査をしましたときに、調査の仕方にもよりますけれども、お若い皆さん方に聞いておれば、うちは虐待していますと言う人はいないわけでありまして、これは結果にもなかなか出てきにくいなという気は率直にいたしております。

 それで、家庭の中も、夫が妻に対する虐待、あるいはまた子供に対する虐待、そしてまた今度は高齢者に対する虐待と、一体全体、家庭の中で何が起こっているのかというようなことになってくるわけで、一つ一つ別々に、それじゃこれは子供に対する虐待の法律、高齢者に対する虐待の法律、夫が妻に対する、妻から夫というのもあるかもわかりませんけれども、そういうように別々につくっていていいのか、あるいはそこはもうひっくるめて考えなきゃならないのかといったことも私は率直にあるというふうに思っております。

 地域に参りますと、高齢者に対する虐待は大変な数に上っているということを言う人がおりまして、そうしたことがもし事実であるとしますならば、高齢者も含めた虐待の法律をつくるというのは、私は一つの方法ではないかというふうに思っております。

赤松(正)分科員 大臣から示唆に富んだお話を聞かせていただきました。それもこれも、私は、介護保険制度の導入ということがあって、今までやみに伏せられたような問題が一挙に出てきたんだろうと思いますので、これは社会挙げてこういった問題に対してしっかり取り組んでいくということが大事だろうかと思います。今の御答弁で御趣旨はよくわかりました。

 次に、介護の予防という問題につきまして、ちょっと今私がいろいろ御託を並べちゃったもので大分時間がたってしまいましたので、前段をはしょりますが、要するに、厚生労働省がこの介護保険制度のこれからの改革という流れの中で、要支援あるいは要介護一、つまり介護の度合いの低い段階の人たちに対して、従来の在宅サービス対象から外して、かわりに介護予防サービスを新設する、こういうふうな姿勢でいらっしゃるということに報道を通じて接触したわけです。

 これは、私もさまざまなそういう施設にお伺いしたり、あるいはそういった問題を強く意識しておられるお医者さんにお会いしたり、あるいはまた、介護とは直接関係ありませんが、人間にとって必要な筋肉を強化する、そういう側面で若い人を対象にしている施設といいましょうかセンターといいましょうか、そういったところの人々とお話をしていて、要するに、老いから若きに至るまで、人間の筋力といいますか筋肉といいますか、そういう部分をしっかりと鍛える、筋力を向上するトレーニングというものが老いも若きも両方にとって非常に必要であるという指摘をいろいろなところから受けておるところでございます。日ごろからそういったトレーニングを実際にしている専門トレーナーをつけて行うということは非常に理想だ、なかなか急には、一気にはいかないかと思いますけれども、そういった意見を聞く機会が多いわけです。

 そういった観点から、今、厚生労働省で検討されている介護予防サービスというものの中に、ぜひとも、検討されていると思いますが、筋力向上トレーニングというものを重視していただきたいというふうに思いますけれども、この観点についてのお答えをお願いいたしたいと思います。

坂口国務大臣 軽度の方でありましても介護の対象になっているわけでありますが、なかなか軽い人たちの介護というのが余り効果を発揮いたしておりませんで、介護を受けていただく方は非常にふえているんですけれども、その人たちに対する結果というのは余りよくなくて、坂道を転がるようにだんだん悪くなっている。

 それは、介護のやり方に問題があるのか。それは、これをしてあげます、あれをしてあげますというふうに、そばからいろいろのものをしてあげることがその人のためになるのではなくて、その人自身がどういうふうに、体を動かすことによって、してもらえるかというふうにしなきゃ本当はいけないんだろうと思うんですが、そこがいいかどうかということをもう一遍検証しなきゃならないというふうに思っております。

 それから、時期も少しかかるのが遅いのかな、もう少し前段階のところでやはりやらなきゃいけないのかなという気もいたしております。その辺の見直しをやらせていただきたいというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、筋力の向上トレーニングというのは大事な話でありまして、現在も介護予防のために、市町村の介護予防の取り組みに対する補助の対象にいたしております。今後、これは強化をしていきまして、御自身の力で生活をしていただけるような、その御自身の力をどう維持していくかということだろうというふうに思っておりまして、強化をしたいと思っております。

赤松(正)分科員 これからさまざまな提案もさせていただきたいと思いますけれども、ぜひよろしくお願いいたします。

 次に、この分科会、私、大臣にこうやって質問するのは一年に一回でございますけれども、昨年のこの場所で、いわゆる自動除細動器のお話を取り上げさせていただいて、大臣の方から、早急に、ことしの夏、つまり去年、平成十五年夏までには結論を出したい、こういうふうな御答弁をしていただきました。

 その後、去年の十一月に、一般の人も使用できるようにするため、その使用条件を決める検討会を設置した、こういう報道に接することができました。その検討会では、これまで二回識者からのヒアリングを行っておられると聞いておりますけれども、その設置経緯と状況について、簡単に局長の方からお願いをいたしたいと思います。

岩尾政府参考人 御指摘の委員の質問を受けまして、昨年の九月、四つの条件、すなわち、医師等を探す努力をしても見つからないなど、速やかな対応を得ることが困難である、それから、使用者が対象者の意識、呼吸がないことを確認している、使用者がAEDの使用に必要な講習を受けている、使用されるAEDが医療用具として薬事法上の承認を得ていることなどを満たした場合において、非医療従事者がAEDを使用することは医師法第十七条違反にならないという政府方針を示しました。

 昨年の十一月に、医学専門家を初め、心疾患の救命救急の問題にかかわる関係学会を含む有識者から成る、公開の非医療従事者によるAEDの使用のあり方検討会を立ち上げて、安全にAEDを使用するために必要な講習の内容など条件の具体化、普及啓発を進める方法について、関係者のヒアリングをしております。

 第一回目は、兵庫県の県立健康センターで、河村先生という方、地元の一般の方、高校生などを対象に幅広くこのAEDの普及講習をやられている先生、それから飛行機会社の健康管理室の方で、飛行機の機内で心停止に至った事例の救命措置あるいは予後などについてのヒアリングをしているところでございます。第三回目が再来週、十八日に開かれますが、あと数回の検討で進めているというところでございます。

赤松(正)分科員 再来週に三回目が行われて、あと数回というお話がございましたけれども、いつまでも検討ばかり重ねているわけにはいかないでしょうと思いますので、さらにもう少し詳しく、いつごろまでに結論を出される予定か、今後のスケジュールを聞かせていただきたいと思います。

岩尾政府参考人 実は、この非医療従事者によるAED使用の問題につきましては、第三次の構造改革の特区提案にも出されておりまして、これが十六年度中に措置をするというように政府決定しております。したがいまして、私どもとしては、十六年度の前半を目途に結論を得たいというように考えております。

赤松(正)分科員 ぜひともその流れで、早急に、しっかり検討した上で結論を出していただきたいと思います。

 さらに、今、そういった流れを確実なものにするために、たくさん人が集まる場所で急に心臓の発作を起こしてどうこうというケースがあって、そこにおけるこのAEDが非常に効果を発揮するということが指摘されているわけですけれども、なかなかまだ一般的にはその認知度は低い、そんなふうなことが言えようかと思います。したがって、先ほどのような厚生労働省の検討、そして結論ということとは別に、一般市民に対するAEDの取り扱い講習会という観点も早急に認めていただきたいという要望が私のところにも寄せられております。

 そういった意味で、AEDを普及、拡大していくために、職種ごとの、例えばホテル関係者とか、あるいは飛行機関係者とか、そういった職種ごとのAED講習会を開催することが有効だ、こういう指摘をする向きがありますけれども、この点について厚生労働省の取り組みいかんをお聞きしたいと思います。

岩尾政府参考人 御指摘のような職種ごとに必要な講習があるのではないかということも、この検討会の中での議論がございます。どの程度の時間、どういう内容にというようなことで議論いただいております。

 私どもは、それぞれの職種の特性を考慮した講習が適切に行われて、最終的には非医療従事者によるAEDの使用というのが普及できるよう、積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

赤松(正)分科員 ぜひともよろしくお願いいたします。

 次に、無年金障害者の問題でございます。

 この問題は、国民年金の加入が任意だった時代に障害を負った人々の問題、現在、全国に十二万人を超える人たちがいる、こう言われていますが、この問題については、坂口厚生労働大臣が非常に積極的な御発言をされたというふうなことが過去にありまして、大変に皆さんの期待というものが高まっているところでございます。

 一昨年、特例として障害基礎年金の半額程度を年金にかわる形で支給してはどうか、こういう案を出された、いわゆる坂口試案でありますけれども、これについて、今までの経緯、私が改めてここで言うまでもなく大臣がよく御存じなわけですけれども、実態が不透明なので、一昨年の九月に大臣に要請を行ったときに、三月までということは十五年度の三月まで、つまりこの三月ということ、その段階までに調査して全貌を明らかにしたい、こういう発言をされた。

 十五年の五月に、この問題について、この三月に調査をしました、それを集計中です、間もなく、この六月、つまり十五年の六月ごろには集計ができ上がるだろう、そんなふうに思っています、それを踏まえて今後どうするかということについて詰めて考えたい、そういう御答弁があるわけですけれども、以来数カ月たっているわけです。

 試案実現のために坂口厚生労働大臣も努力をされているものと認識しておりますけれども、その答弁をなさって以後、今日までのいわゆる検討状況、取り組み状況について、かいつまんでお答えを願いたいと思います。

坂口国務大臣 これは、昨年この調査をしたものでございますけれども、実は少し調査の数が少な過ぎたものですから、もう少し調査の対象を広げてほしいということを言っているところでございます。

 昨年まとめましたものでは、障害年金を受給していない障害者は、受給している者に比べまして、当然のことでございますけれども、相対的に所得の低い人が多い、生活保護を受けている割合が高い。もう一つは、障害者の置かれている経済状況はかなり幅がある。技術を身につけて十分な生活をしておみえになる方もございますし、そうでない人もおみえになるということで、非常に幅があるということがわかってまいりました。こうしたことは、現在の無年金障害者の皆さん方の実態の一部だろうというふうに思っております。

 さて、それで、これを今後どうしていくかの問題でございまして、一つは、年金に入っていなかったんだからこれは年金から障害者年金を出すというわけにはいかないという話、一方におきましては、これは普通の障害者として扱えばいいのではないかという話、そうしたことで、少し谷間になる話でございまして、両方からいろいろの御意見があって、厚生労働省の中におきましても、いささか谷間になりかねない話でございます。しかし、この問題は決着をつけなきゃいけないというふうに思っております。

 中身も、本当に掛けなければならないのに掛けなかった人と、掛けることができなかった人、あるいはまた、掛けても掛けなくてもいいという選択制であったがために掛けなかった人、さまざまでございますから、私は、少しその辺のところは整理をした方がいいというふうに思っております。整理をいたしまして、可能なところから決着をしていくということにしないといけないというふうに思っている次第でございます。

赤松(正)分科員 ぜひとも整理をされた上で決着を図っていただきたい、谷間に入ったままついに上がってくることができなかったということがないようにしていただきたいと思います。

 最後に、精神障害者の社会復帰施設の整備費の問題について、もう時間が余りありませんので、これも既に質問の方向性については御指摘してありますので、わかっていただいているかと思います。

 要するに、兵庫県の特異性、つまり、ほかの都道府県の精神障害者社会復帰施設整備の進捗状況と、うちの方は阪神・淡路の震災に直面したということがあって、震災復興優先のために若干他府県よりは整備がおくれているということから、整備状況が少しおくれている。例えば、小規模の通所授産施設やショートステイを除いた数でいえば、人口十万人当たり一カ所強ぐらいにとどまっていて、自治体によっても大分形態は違いますけれども、例えば栃木県の三・二カ所とか新潟の三・三カ所、あるいは大阪の一・八カ所に比べても兵庫県の場合は極めて低い、そういう状況があります。

 兵庫は、ぜひとも、そういったおくれを取り戻すべく施設をしっかりつくっていっていただきたい、こういう要望を厚生労働省にもしているようですけれども、例えば、十六年度中のこの施設、十一施設要望、こういったものについて、ぜひ、そういう兵庫の過去の経緯を勘案していただきまして、しっかりと前向きに取り組んでいただければありがたい、こう思うんですけれども、大臣、この点いかがでございますでしょうか。

坂口国務大臣 だれも立たぬようでありますから私が申し上げたいと思いますけれども、いずれにいたしましても、この障害者の問題、特に精神障害者の問題は、医療の世界の中では最もおくれている部分でございますので、ここは他の分野よりもより精力的にやっていかなきゃいけないというふうに思っております。

 医療の中で、一方の方に回しますと一方の方は足らなくなるという、なかなか難しい問題もございますけれども、しかし、この精神障害の問題には積極的に取り組んでいくという決意で今やっているところでございます。

赤松(正)分科員 いろいろ御多難な状況でありますけれども、よろしくお取り組みをお願い申し上げます。

 以上で終わります。ありがとうございました。

谷口主査 これにて赤松正雄君の質疑は終了いたしました。

 次に、小林千代美君。

小林(千)分科員 民主党の小林千代美でございます。

 本日は、二点お伺いをしたいと思います。

 まず一点目は、DV防止法のことについてお伺いをしたいと思います。

 実は、私は、先日も法務委員会の方でこのDV防止法について質問をさせていただいたわけでございますが、二〇〇一年の秋にこのDV防止法というものが施行されてから、家庭内暴力という、家庭の中で行われてきて表にされることがなかなかなかった配偶者間の暴力というものが、社会的な問題に取り上げられるようになったということは、私は、この法律が大変大きな役割を果たしたものだと思っております。

 しかしながら、残念ながら、まだ配偶者間の暴力で苦しんでいる方がたくさんいらっしゃる現状がある。この法律をより実効力のあるものにしていかなければいけない、そういった意味から、今国会にこの改正案というものが、骨子が出されているところでございますが、特に厚生労働省の皆様方には、配偶者暴力の被害者の方々の自立支援という観点から、本日は質問をさせていただきたいと思います。

 被害者の自立支援に対する厚生労働省の取り組みなんですけれども、特に、命からがら逃げてきた、生活も家も仕事もすべて捨てて逃げてきた被害者の方に対する積極的な自立支援というものを行っていただきたい。特に、経済的な自立支援のための雇用対策というものは、その一番最初に必要なものと私は考えているわけでございますが、この雇用対策について厚生労働省としてはどのように取り組んでいるか、お考えをお聞かせください。

伍藤政府参考人 DV対策の中で、被害者の自立支援というものは大変重要な問題だというふうに認識をしております。私ども厚生労働省では、被害者に対して、まず婦人相談所におきまして、保護、あるいは自立のためのいろいろな相談に応じておりますが、自立のための直接の支援として、公共職業安定所におきましても、DV被害者を含めた方々に対してきめ細かな職業相談あるいは職業紹介を行って、就職の促進を図っているところでございます。

 それから、そういう被害者の方に婦人保護施設あるいは母子生活支援施設に入所をしていただくケースもございますが、こうした場合には、こういった施設からどういうふうに社会へ出ていくかということがこれまた大きな課題でございますので、こういった施設からの退所後の自立に向けた就業面あるいは生活面での相談、援助をこういった施設で行えるような体制を今整備しているところでございます。

 こういったことを通じまして、自立支援に向けた取り組みを一層強化してまいりたいというふうに思っております。

小林(千)分科員 就業支援のみならず、保護施設から出た後の例えば住宅支援ですとか職業支援に、ぜひ引き続きこれからも積極的に取り組んでいただきたいというふうにお願いを申し上げます。

 そして、被害者当事者なんですけれども、障害を持っているから、より家庭の中で虐待を、暴力を受けてしまう、あるいは高齢になった方が暴力を受けてしまうというふうに、障害者である高齢者であるといったようなところでダブルに被害を受けていらっしゃる当事者の方も多くいるわけでございますけれども、今、こういった方々が、婦人相談所に相談に行きたくても、そこの施設がバリアフリー化されていないためになかなか相談に行くこともできないという環境にあります。

 また、各自治体が委託をしている民間のシェルターなんかもあるわけなんですけれども、このシェルターに入るためには、自分の身の回りのことは自分でやらなければいけないという前提があるがために、高齢者の方々や障害を持った方がシェルターを利用することができないという現状もあります。

 こういった高齢者の方、障害を持った当事者の方々が利用できるための婦人相談所、そういった窓口などのバリアフリー化ですとか、あるいは、自治体が委託をしている民間のシェルターと連携をさらに強めていくために、自治体任せではなくて、ぜひ、国としても積極的な予算配分をするべきではないかと思いますが、どのようにお考えでしょうか。

伍藤政府参考人 一般施策として、障害者対策、これも重要な課題でございます。そういった観点で、各省庁連携をして、障害者施策、バリアフリー化といったことに閣僚会議も設置をして取り組んでおるところでございますが、こういったDV対策の中で、第一線の窓口となる婦人相談所等のバリアフリー化という御指摘でございます。

 いろいろな施設の改築とか大規模修繕、こういったときに、できるだけこういった方々のニーズにもこたえられるように、エレベーターを設置いたしますとか、スロープを設置するとか、いろいろなことで、今、工事をする際にはそういった観点にも配慮して施設の建設整備等に当たるようにしておるところでございます。

 それから、一般的なDV対策関係者に対するいろいろな研修等を通じましても、こういった障害者に対する対応についてきめ細かな対応がとれるように、こういったことの認識も深められるようなことで、指導あるいは研修等の実施に努めておるところでございます。

小林(千)分科員 一つ質問に答えていただかなかったんですけれども、市町村あるいは自治体が委託をしているシェルター、民間シェルターに対する予算づけといいますか、お金は国として支援できない方向なんでしょうか。

伍藤政府参考人 民間のシェルターに対しましては、現在、委託費ということで運営費の補助は実施をしておりますが、公的施設でないこういった分野まで、民間の、民間ベースで取り組んでおる施設整備まで直接にすぐ支援できるかどうかということは、少し検討してみないと……(小林(千)分科員「自治体に対して」と呼ぶ)シェルターで、民間のシェルターに委託して、委託を実施しておるわけでございますから、民間のシェルターの整備ということではないんでしょうか。

小林(千)分科員 いえ、自治体が業務委託をしている民間シェルターに対してという意味です。

伍藤政府参考人 だから、民間の施設、建物ですから、そういったものの施設整備に直接国庫補助ができるかどうかというのは、施設整備体系全体の中で少し検討を要する点がいろいろあろうかなというふうに思っております。

小林(千)分科員 各自治体から委託を受けて行っているところも、大変財政状況の厳しい中で運営をしているところも多くございます。ぜひとも自治体任せにしないで、これは国としても積極的に取り組んでいただきたいと思います。

 続いての質問なんですけれども、私は実は地元が札幌でございまして、札幌市の方から平成十五年の十二月九日に、DV防止法の改正と社会環境の整備を求める意見書、こういった意見書を厚生労働大臣あてにも提出をしたところでございます。

 内容といたしましては、被害者の自立支援を公的責任として明確化して、都道府県、市町村と役割分担を明らかにして充実してほしい、また、障害者、高齢者、外国籍を持った被害者などの人権に配慮をして、セーフティーネットをしっかりと機能充実させてほしい、民間支援団体の役割を認識、評価し、財政支援を充実してほしい、五点ほど要望書が、札幌市からも出されたわけでございます。

 きっと、ほかの自治体からもこのような意見書は出されていることと思いますけれども、どういった内容が出されており、また、こういった意見書というものがどのように扱われ、反映をされているか、ぜひお答えください。

伍藤政府参考人 例えば、平成十五年度におきまして、DV関係で私どもの省に寄せられた自治体からの要望は、八府県市、五団体からの十三件でございます。

 多くは、婦人相談所の体制の整備といったような要望が多いわけでございますが、その中に、一つ、最近、DV被害者が子供を同伴して相談に訪れる、あるいは施設に入所する、こういったケースが非常にふえておるので、婦人相談所の一時保護施設において、こういった同伴の乳幼児のケアを行う体制を確立してくれ、こういう具体的な要望がございました。この点につきましては、今年度の十六年度予算案におきまして、保育士を配置するような、必要な施策に反映をさせたところでございます。

小林(千)分科員 ぜひ、こういった一番地元で取り組んでいらっしゃる方々の声というものをしっかりと反映して、さらに充実した法になるように、ぜひ努力をしていただきたいというふうにお願い申し上げます。

 続いての質問に移らせていただきます。年金について、特に女性と年金についてお伺いをさせていただきます。

 今回の年金改革法案で、パート労働者の年金加入の拡大というものが見送られたわけでございます。昨今のパート労働事情と申しますと、この経済状況の中、正規雇用の社員が首を切られて、その正規の社員の方がやっていた仕事をパート労働者が行っていく、そういうパート労働者がふえていっているという実情もございます。

 また、この中で、雇用の二極分化というものが進み、正規雇用者との格差が増大をしているという面もあります。また、国民の皆さんが抱いている年金不安につきましては、私がここで改めて申すまでもないと思っております。

 まず最初に、今回のこの年金改革法案の中で、パートの加入拡大が見送られた理由について、お伺いをしたいと思います。

坂口国務大臣 できましたら、パートの皆さん方の年金につきまして、その一端を開きたいというふうに初め思っておりました。しかし、非常に多くの中小企業の皆さん方からの反対でございますとか、初め予想をしていなかったのは、パートで働いておみえになる皆さん方からの反対がたくさん寄せられたということがございまして、大変残念でございましたけれども、これはもう少し議論を深めてから実施に移した方がいいのではないかということになったわけでございます。

 年金それ自体から申しますと、パートで少ない所得で働いておみえになりますパートの皆さん方の方が、本当は年金としてはかなり優遇されるわけでございます。現在の制度でいきますと、例えば、平均十万円であった、ずうっと十万円だったという方には約九〇%ぐらいの年金が出るわけでありますから、九万円ぐらいの年金になるわけでありまして、いわゆる所得の高い人に比べますと低い段階のところの年金の率は非常にいいようになっている。

 しかし、それでは、それに見合うだけの保険料を出していただくかといえば、これは当然所得も少ないわけでありますから、保険料も少ない。出していただきます保険料の割にはいい年金が支給できるというふうに私は思っていたわけでございますが、こちらの若干説明不足ということもあったのかもしれませんし、パートの皆さん方はしかし反対だという署名をたくさんお寄せいただいた。もう少し議論を重ねる必要があるのではないかというふうに思っております。

小林(千)分科員 理由といたしまして、今大臣は、二つ、経済界といいますか、経営者側の認識と、そしてもう一つ、当の当事者とも言えますパート労働者の方の認識ということで答えていただいたわけでございます。

 今、パート労働者のほとんどの方々は多分第三号被保険者、いわゆるサラリーマンの妻という方々が、年収百三万なり百三十万の中で雇用調整をしながら働いている。現在負担を負っていない方々にいわば新たな負担を求めていくわけでございます。

 こういったパート労働者の方々にこれからどう理解を求めていくべきなのか。そしてもう一つは、経済界といいますか、経営者側、事業主の方々に対して、厚生労働省として、理解をしていただくためにどのように指導していくのか、教えていただきたいと思います。

坂口国務大臣 これは今後の皆さんとの間のお話し合いにもよるというふうに思っておりますが、経過的な措置というのもやはり大事なんだろうというふうに思います。そして、産業界全体におきまして、やはりパートの皆さん方も入っていただける、加入していただけるような環境をつくっていかないといけないわけでありまして、年金だけが孤立しておるわけではありませんから、年金を取り巻きます環境も変えていかなければならないんだろうというふうに思っております。

 そうしたことをお願いしながら、そして、年金にはできるだけ多くの皆さんがお入りをいただけるようにしなければならないというふうに思います。

 確かに、三号被保険者の方が非常に多いわけでありますから、その皆さん方にしてみれば、保険料を出さずに今まで年金の中に入っているわけでありますから、改めてその保険料を払うということに抵抗感があるのかもしれないというふうに思います。しかし、三号被保険者の形で入っていただきます年金額は、これは六万数千円という非常に限られた年金でございますから、やはりもう少しいい年金の給付を受けられるようにしようということになりますと、やはり多少御負担はいただくことがありましても、それはお入りをいただく方がいいのではないかというふうに私は思っております。

 ここは、三号被保険者の問題という、年金制度の根幹にかかわってくる問題でございますので、これをどういうふうにしていくかという問題も絡んでくるというふうに思います。過去の経緯を見ますと、三号被保険者ができましたときに、それまでには一万五千円ほどの家族年金みたいな形のものがございまして、そしてそこを拡大して、御本人、いわゆる御主人の方ですけれども、御本人の方の額を少し縮めて、そしてそこにこの三号被保険者の分を入れ込んだという経緯等もございますので、そうしたことの御議論を十分にいただかないと、これはなかなか次に進めない課題だというふうに思っている次第でございます。

 済みません、今言ったのは加給年金です。申しわけありません、家族年金じゃなくて加給年金。

小林(千)分科員 今、第三号被保険者という方は、国民年金、自分では保険料を支払わないで、現在のところ六万幾らですか。その国民年金が、自分の個人の年金も今回かかるということになると、より手厚い年金を受けられるのだから、その部分の負担をということの御説明がありましたけれども、現在実際にパートで働いていらっしゃる方々の多くは、今お金が必要だから働いているのであって、その方々の本音の気持ちで言えば、二十年後三十年後の年金の例えば十万何万というものよりも、今実際に、生活で月々三千円なり四千円なりあるいは五千円なり負担がふえていくということに対して大変大きな不満を抱えていらっしゃる、これが本当のところの本音だと思うんですけれども。

 先ほど大臣が、パートの方々に理解をしていただくために経過措置が必要というふうにおっしゃっておりましたけれども、どういった経過措置を考えていらっしゃるんでしょうか。

坂口国務大臣 これはこれから決めることでございますから、私が余り先走って言ってもいけないというふうに思いますが、それは保険料にいたしましても、保険料の額を経過的な措置をとりながらいくということもございましょうし、それから、導入するに当たりましても、経過的な措置をとりながら導入をしていくということもあるだろうというふうに思っております。時期それから保険料の掛金の額、そうしたものについて、やはり経過的な措置というものが必要になるのではないかというふうに思っております。その具体的なことをどうするかは、今後の課題であると思います。

小林(千)分科員 私は、社会保障制度あるいは税制度というものは中立公平なものでなければいけない、これは大前提だろうというふうに思っております。

 今の年金モデルというものは、男性が四十年間働き続けている、女性は四十年間専業主婦でいる、これが年金モデルとして採用されているわけなんですけれども、残念ながら、今の家族形態あるいは働き方がどうなっているかといいますと、多分このモデルケースに当たる方は三割もいないだろうと思うんですね。特に、女性の皆さんは、人生のライフスタイルあるいは働き方というものが大変大きく変わってきております。例えば、学校を卒業した後で就職をする、結婚をする、離婚という選択をするかもしれない。仕事の働き方についても、フルタイムで働いたりパートタイムで働いたり、こういう中でこの年金というものは、特に女性の年金は大きく左右されるのが現状ではないかと思っております。

 こういった人生の選択に対して、中立公正な社会保障制度は私は必要なものであるというふうに思っているんですけれども、厚生労働省の方でこの件についてはいかがお考えですか。お答えいただきたいと思います。

坂口国務大臣 これは今お話がございましたとおり、女性の働き方というのはライフスタイルの中で非常に変化が大きいわけですね。男性に比べて際立って大きくなっております。その変化が大きいがゆえに、この三号被保険者制度をやはり継続すべきだという御意見も実はあるわけでございます。ここは大変難しいところだというふうに思いますけれども、そう思います。

 それで、今お話しになりましたように、配偶者が家庭にいるという家庭というのはそんなに多くなくなってきているというお話は、それはそのとおりかもしれないというふうに思います。

 ここをモデルケースで五〇%以上というふうに決めておりますのは、この部分というのは、他の組み合わせ、例えば御主人も奥さんも両方とも働いておみえになる、あるいはまた独身で働いておみえになる、さまざまなグループがあるというふうに思いますけれども、一人割りにいたしますと、この三号被保険者をお持ちのグループというのは年金額が一番少ないんですね。だから、一番少ないところ、このモデルを五〇%にする。

 だから、一人割りにすれば、ほかのところの方がいいんですね。だから、その一番低いところをどう決めるかということが非常に大事なことだというふうに私は思っております。

小林(千)分科員 一人割りにしたときにどうなるか、これは大変重要な観点であると思います。

 しかしながら、残念ながら、現在の年金制度というものが、個人単位というよりも家単位ということが前提になっている。その中で、女性の中でも専業主婦論争ですとかあるように、第三号被保険者、あるいは自営業でやっている方の妻はどうなのか、あるいは働いている人はどうなのか。一号、二号、三号の間で女性の中でも大きく意見が分かれているというのは私も認識しているところでございますし、社会保障制度の公正化ということでいったら、私たち民主党はマニフェストの中で、保険料方式ではなくて税方式にした方が、より個人の人生選択に対して中立な社会保障制度になるだろうというふうに提案をしているわけでございます。

 ぜひとも、これからのこの、特に国民の皆さんが重要に考えている年金に対して、より将来に対して安心を持てる、そして自分がどんな人生を選んでも左右されることのない公平中立な税制度というものをつくっていただきたくお願いを申し上げまして、私の質問を終了させていただきます。ありがとうございました。

谷口主査 これにて小林千代美君の質疑は終了いたしました。

 次に、菅原一秀君。

菅原分科員 自民党の菅原一秀でございます。

 昨年の十一月の衆議院選挙で初めて当選をさせていただきまして、本日国会で初めての質問をすることになりました。初めての質問が国民生活に最もかかわりのある厚生労働関係であり、しかも、大臣におかれましては、いついかなる質問が来ましても、嫌な顔一つせず、にこやかに真摯な御答弁をされていることに大変敬服をする中、年金案件に絞ってお尋ねをさせていただきたいと存じます。

 私は民間企業のサラリーマンの出身でございまして、サラリーマン時代から、厚生年金を初めとする年金に大変な関心を持ってまいりました。ましてや、当選をさせていただき、国民の皆様とじかに触れ合う中で、この一月、二月には五百件以上の新年会に顔を出してまいりましたけれども、やはり、どの会合に行きましても、一番の関心事はこの年金問題でございました。

 御案内のとおり、大臣が読んでおられるかどうかわかりませんが、「代行返上」という小説も発売と同時に大変な売れ行きを示しておりまして、これは企業年金をテーマとした小説でございますけれども、国民にとって年金問題が非常に大きな関心事であり、また国の根幹をなす大きなテーマであることは言うまでもないわけでございまして、私は、その意味におきまして、この年金の改革について幾つかお尋ねをしたい、こう思っておるところでございます。

 まず、保険料と給付の問題につきましては、もう既に議論が百出をいたしております。今回の、二〇一七年以降保険料が一八・三〇%、給付下限五〇%というこの一つのメルクマールが示されているわけでございますが、ややもすれば財政上のつじつま合わせという声もある中で、やはり私は、この年金制度そのものの哲学というものをもっとしっかり国民に示していく、こういう必要があるのではないかと思っています。

 もちろん、国民側からすれば、自分は一体年金を幾らもらえるんだろうかということが一番の大きな関心事でございまして、基礎年金の国庫負担割合が三分の一から二分の一にということが既に決定をしている中で、この財源問題も当然、今はまだまだ議論がし尽くされておりませんので、この点についてもしっかりしなければなりません。

 また、この年金については、先ほども申し上げたように、国家百年の大計と申しましょうか、国民にしっかりとした説明責任を果たしていく中で、相互理解をしながら、本当に国民のための年金制度の維持ということを求めていく、これが必要ではないかと思っております。

 もちろん、ここにいらっしゃるどなたも、百年後に生きている方は一人もいないわけでございますが、大事なことは、百年後にも責任を持つ国会の議論が今こそなされるべきであって、そして私どもがその責任を負っているということではないか、こう思っておるところでございます。

 そういう意味において、この年金の今の不信感、年金に対する不信あるいは信頼の醸成ということについて、どういう方向性を示していくのか。重箱の隅をつっつくような議論、時には必要かもしれませんが、それに終始をすることではなくて、また、びほう策を繕う、あるいはびほう策に追われるということだけではなくて、年金制度制定以来のうみをある意味では国民の皆様の前にすべてさらけ出す、そして骨太な年金制度を再構築していく、そういう必要が今こそ私はあると思っています。

 あのスウェーデン、今回厚生労働省がモデルケースに一部したわけでございますが、スウェーデンでさえ、十年という年月をかけてこの年金の議論を重ねてきたわけでございますので、今回の改革法案については徹底した議論を重ねるとともに、常に日常的にこの年金については議論を重ねることが大事だと思っておりますが、まず、骨太な年金に関する哲学というものについて、大臣の御所見を賜りたいと存じます。

坂口国務大臣 ありがとうございます。年金につきまして大変な御努力をいただいておりますことに、敬意を表したいと思います。

 今お話ございましたとおり、今日までの年金にはいろいろの経緯がございます。確かに、国民から不信を招く原因の一部をつくってきたことも私は事実だと思っております。ここで過去を清算し、そして将来を見て、どうするかという話をしないといけない。過去の清算の問題と、将来に対する構築と、あわせてここは行わなければならないというふうに思っております。

 年金というのは、本来は、自分のためというよりも、現在の高齢者のために今自分たちは掛金を行い、そして自分たちの問題は次の世代がそれを引き受けてくれるというのが本来の趣旨だというふうに思っております。しかし、人間でございますから、そう神様、仏様みたいなことばかりは言ってはおれませんので、自分の年金が一体どうなるのかということに強い興味あるいはまた不安、そうしたものをお持ちになることも当然だというふうに思っております。

 そうする意味では、骨太にどういう負担をしていただいて、どういう年金を確立するか。これも、負担と給付、財源的にいえば負担と給付以外ないわけでございますから、どういう負担をし、どういう給付をするかということを決めなければならない。それも、普通、人口構成が変わらないのであればいいわけでございますけれども、世界に先駆けた少子高齢社会というものを迎えて、その中で年金をどう構築していくか、こういうことでございますから、今後予測されるような少子高齢社会の中でもたえ得る年金制度の確立というものが、今求められているというふうに思っております。

 そうした意味で、モデルケースをお示し申し上げながら、そして皆さん方に、しかしここまでは御負担をお願いしなければならないということを申し上げているわけでございまして、それが、負担の方では一八・三〇%までは徐々に、一七年までかかってひとつ引き上げをお願い申し上げたい、そしてモデル年金の方は五〇・二%というところは確保をさせていただきます、こういうことを申し上げているわけでございます。

 ただし、これからの社会のつくりをどう変えていくか。例えば、女性が働かれる場をもっと整備をしていく、あるいはまた、女性が子育てのときにもやめずに仕事を続けていただけるような体制をつくり上げていきますとか、それから、高齢者の皆さん、六十歳代の皆さん方にももっと働いていただけるような場所をつくっていくとかいったような、そういう改革が行われれば、一八・三〇%まで行かずに五〇%程度の年金は維持できるようになる。

 将来、一八・三%まで行かずに、例えば一六%ぐらいでも達成できるといったときに、そのときに、それは一六%から上げずに、もう年金を五〇%までにとどめるのか、それとも、一八%までは上げていって、そして年金の額をふやしていくのか、そうしたことの決定というのは、これは将来の方がお決めになることだろうというふうに思っております。現在は、私たちは、一八・三%そして五〇%というモデルケースをお示し申し上げているところでございます。

菅原分科員 今言われたそのモデルケースをお示しになられて理解を得るということなんですが、巷間言われますように、若年層の年金の未納の問題、国民年金保険料の四割が未納であり、若年層に至っては五割という大変厳しい状況になっているわけでございまして、強制徴収という御努力をされており、そしてまた、議論の中では、免許証やパスポートを交付しないというような大変厳しい措置というものも考えられているようでございますけれども、一方で、公的年金制度というのは、先ほどお話ありましたように、老後の保障のみならず、やはりいざというとき障害年金や遺族年金という一つの特典的なものもあるわけでございまして、自分が例えば中途障害を患ったり、あるいは人生の伴侶を亡くしてしまったり、自分がその立場あるいは事態になってみて初めて年金のありがたみを実感する、こういうこともあるのではないか、こう思っております。

 私も実は、十二年前に父親が人の借金の保証人をしまして、会社も家も全部一度失ったという経験がございます。しかし、その後に父も母も年金だけはいただけた。そういう大変な年金に対するありがたみを親が実感した者の家族として、こうした部分について、ある意味では、その内容も知らないままに今の若年層が年金に対する不安感や不信感を抱いている、こういう経緯もあるんだと思います。

 これはなぜかというと、やはり、確かに負担と給付という一つのメルクマールを示さなきゃいけない。しかし、ややもすればその数字が先行し過ぎてしまって、年金の意義や重要性、こういったものがなかなか本当にメッセージとして届いていないのではないかな、こう思っております。

 例えば、スウェーデンの年金の改革のときは、やはり基礎年金を廃止して、二階建ての部分をなくして所得比例年金一本にして、生涯所得と年金額を結びつきを強めることによりまして、言ってみれば賦課方式と積立方式を合体させた中で、納めた保険料がきちっと国民に返ってくるという、スウェーデンにおいてはそれが国民に非常に一つのメッセージとして伝わったということが評価されているわけでございます。

 その意味において、やはり数字のみならず、これからの年金制度の体系論といいますか、所得比例一元化ということも含めて、もちろん、今の現行制度でいくのか、あるいは二階建てをやめて今申し上げたような所得比例一元化ということにするのか、あるいは厚生年金と共済年金の一本化というような論議もありますので、こういったことも含めて体系論ということがぜひ必要になってきますので、この点についても御所見をいただければ、こう思っております。

坂口国務大臣 これは、今後大きな議論をしていただきたいというふうに思っております。その中で、今後決めていかなければならないことは幾つかあるんだろうというふうに思います。

 今回出しましたのは、所得と負担、どの制度にしても所得と負担はもうついて回るものでございますから、ここをまず決めていく。そして、この次に決めなければならない問題というのは、現在の厚生年金は世帯単位になっておるわけでございますが、世帯単位でいくのか、それとも個人単位にするのかといったことを、これは議論していただかなければならないというふうに思っております。

 個人単位にするということになりますと、いわゆる女性の年金の問題にこれは絡んでくるわけでありまして、そうすると、女性と男性との間の賃金格差を一体どうしていくか、どうここを改革していくかといったことを、これはもう議論をあわせてしていただかなければならないことになるというふうに思います。

 また、個人単位にするということになりますと、所得の把握の問題も出てくるというふうに思います。女性で御商売をなすっている方なんかは少ないかもしれませんけれども、個人単位にし、そして年金を一本化していくというときには、所得の把握をどうするかといった問題が出てまいります。

 ですから、私は、この個人単位にするかどうかということがこの次の大きな課題である。個人単位にするということであれば、そうすると、現在の第三号被保険者の皆さん方の保険料をだれが払ってくれるのかという問題にもなってくるわけであります。これも歴史的な経緯もあってなかなか難しいところだと思いますけれども、そうした問題もある。そうした問題を引き続き議論していく。

 それから、スウェーデン方式のお話が出ましたが、それも選択肢の一つだというふうに私も思っておりますけれども、現在の年金制度は、現在と将来、世代間でのいわゆる助け合いをするわけであります。そうしますと、同じ世代の中でも私は助け合いをしなきゃいけないと思うんですね。世代間で助け合いをしているのに同じ世代の中で助け合いをしないというのは、私はよくないというふうに思っております。

 そういたしますと、所得比例でたくさん納めた人は大きな年金になります、少ない人はもう少ないんですという、その中での所得の再配分がないという形は、私は少しよくないのではないかというふうに思っている次第でございます。

菅原分科員 大臣のお考えはわかりました。いろいろな角度から議論を今後とも深めていくことが大事だと思いますので、よろしくお願いいたします。

 年金の不信をいかにして払拭するかというテーマに絞ってまた考えますと、やはり先ほど来、自分が幾らもらえるのかということと同時に、自分の納めた保険料がどこに行ったのかということも、一つの国民の率直な疑問だと思うんですね。

 その中で、既に閣議決定をいたしております全国十三カ所のグリーンピア、これにつきましても既に廃止が決まっておりまして、十七年度までに期限どおりにしっかり廃止という方向で進めていただきたい、こう思っております。

 御案内のとおり、十三カ所のグリーンピアの過去の利用率、利用者というと、よく四千二百万、四千二百万という数字が出てまいりまして、確かに、四千二百万人利用したのかと思うと大変多くの方が利用されたんだな、こう感ずるんですが、じゃ、累積の年金加入者と比べてみますと、計算すると利用率がたった三%。本当に、これが民間の企業であれば経営陣一掃というような事態になるわけでございまして、やはり官あるいは特殊法人の運営のあり方、今後このような、二度と同じ過ちをしないように独立行政法人への衣がえ等々進んでいるわけでございますが、この点についても申し上げておきたいと思います。

 また、年金の福祉還元事業の一つとして、これまでの住宅融資事業、これについても十七年度までに廃止をする、これも大変大切なことだと思っております。

 そして、やはり忘れてならないのが、厚生年金会館を初めとする全国の二百六十五あります福祉施設。マスコミ報道等で既に御高承のとおりだと思うんですが、我が自由民主党の年金資金運用・福祉施設改革推進ワーキンググループという、回を何度となく重ねて先般まとめが出たわけでございまして、今後、この与党協議を通じてこれが一つの方向性を示すものだ、こう思っておるわけでございます。

 このワーキンググループというのは、私も一年生ながら何度か出させていただいて、非常に、本当に自民党がこれだけ今までの特殊法人にメスを入れるものなのかなというぐらいに議論を重ねてきたわけでございまして、政権与党の中にそうした改革の動きが出てきたということが、私は一年生として大変うれしく思っております。

 そして、施設の廃止あるいは売却ということについてもこのまとめの中で方向性を出しているわけですが、この施設については、御案内のとおり、年金制度についての理解や信頼を得る上で歴史的な一つの役割を果たしてきたということも確かにあろうかと思います。とはいえ、民間の感覚、基準で照らし合わせますと、九七%が赤字ということになっておりまして、やはり大変高いコストの構造、あるいは天下りの受け皿になっているような状況、温床、こういったことも事実でありますから、政策的な意味合いが薄れてきている中で今なお現存しているグリーンピアと同様に、この二百六十五カ所の施設については即刻廃止、売却の方向に向けて努力をしていただきたい、こう思っております。

 もちろん、厚生年金病院などは、当然、今入院していらっしゃる患者さんもいらっしゃるわけですし、おのおのの経営実態が黒字で運営しているところもあるやに聞いております。また、地域の事情、病院がない地域についても、やはりその辺も勘案をしながら、最終的な判断ということが必要なのかと思うんです。

 いずれにしても、年金の保険料は、給付のための原資であって、今後の整備費あるいは委託費というものに使われない、使わせないということが大切なことであって、その意味においては、委託先の公益法人についても、今後、廃止、売却の必要があるんじゃないか、こう思っておりますので、この点について御所見があれば伺えれば、こう思うんです。

坂口国務大臣 私が一番最初に国会に当選をさせていただきましたそのころは、こういう施設をつくれつくれの大合唱でありました時期でございまして、私も責任の一端を感じているわけでございます。しかし、時代は変わりました。潮目も変わりました。そして、こうした役割というのは、一定の役割は果たしたというふうに私も思っております。

 したがいまして、こうした福祉施設等につきましては、例外なくこれを整理していくという方向性の中で、そして順番をつけて、それをどうしていくかということを考えていくときだというふうに思っております。今お話しいただきましたように、年金病院のように、多くの患者さんを抱えて大活躍をしてくれているところもあるわけでございますので、こうしたところを、みんな同じように、きょう言って、あしたからなくしていくようなことにはなかなかできにくいというふうに思いますけれども、手順、順番というものもありますし、そうした背景も今後考えながら、しかし、これはなくしていく。

 ただし、過去のように、日時を決めてやるというのはいいんですけれども、そのためにたたき売りをするというのも、これまた後に禍根を残すことになりますから、そうしたことにならないようにするためにどうするかということを注意していかなければならないというふうに思っております。

菅原分科員 聖域なくといいますか、例外なく見直しをするという力強い御答弁、そしてまた、あらゆる面での責任も果たしていくということでございまして、大変ありがたい御答弁だと思っております。

 さらに、年金資金運用基金、御案内のとおり独立行政法人に生まれ変わるわけでございますが、この市場運用について、これまでも何度となく御議論がございました。

 二〇〇一年から本格的な市場運用が始まって以来、毎年毎年、大変な赤字を生み出してきたこの運用でございますけれども、昨年度末には六兆円を超える累積損失を発生させているわけでございまして、国民の声は、やはり、私たちの保険料が給付に使われるのであればいざ知らず、市場運用に回されて、しかもそれが大変大きな、六兆を超える損失を出しているということの怒りといいますか、もう怒りを通り越した思いを持っているんではないかな、こう思っているわけであります。

 もちろん、さらにそのことが、年金制度そのものへのいわゆる不信感の増幅にもつながっているわけでございまして、損失を出した場合の穴埋めということを考えますと、企業年金でいえば、その企業のいわゆる事業収益、あるいは資産を売却して穴埋めできるんですが、御案内のとおり、年金資金運用基金はたしか資本金が一億円。一億円の資力ではとてもとてもこの穴埋めはできないわけでありますから、この点についても、やはりさらなる議論が必要だと思います。

 もちろん、平成十五年度の上半期においては二・四兆円の黒字の運用益を出しております。しかし、何だか、六兆円累積があって、あるいは、あるときには二・四兆円運用益が上がった。国民から見ると一つのマネーゲームのようなイメージ、これが、本当に私たちの保険料がどこに行っているんだという不安、不信というものにもつながっているわけであります。結局、それがまた給付カットになって保険料が上がるというような構図になるとすれば、これは最悪のシナリオになるわけでございますから、こうした堂々めぐりの流れというものを食いとめていかなきゃいけない、こう思っております。これについてもお尋ねをしたいと思います。

 時間がないので、さらに積立金の運用につきましても、今度、独立行政法人をつくることとしましても、積立金の運用については極めて透明性を高めなければいけないと思っております。

 かつてマスコミで、日経だったと思うんですが、デフレ対策の一環としてPKO目的で市場介入をするというような、これは報道だけの先行だったと思うんですが、こうした疑念も払拭するためにも、年金の積立金の運用に関して、今後、やはり民間主導の第三者機関というものを設置する、そしてまた、それによってしっかりとしたチェックをしてもらう、こういうことが大事ではないか。

 もちろん、積立金は、そうはいっても、中長期的に見れば将来の年金給付の大変大事な貴重な財源でありますから、今後、安全かつ効率的に運用をしていくためにも、国債の満期保有を含めた、例えば現行のポートフォリオの見直し等々、やはり運用の基本方針というものをしっかり見直しながら進めていくということが大事ではないか、こう思っておりますが、この点について御所見をいただきたいと思います。

坂口国務大臣 財政運用も大変大事になってまいりました。

 今までは、財投にほとんどお預けをして、一部だけを運用していたわけでありますけれども、間もなくすべて返ってくるわけでございますから、その額は百四十数兆円、あるいはまた、これからそれがふえるかもしれません、そうした額でございますから、よほどこれはしっかりしていかないといけないというふうに思っております。今までは厚生労働省の関係の中でやっておりましたが、少し厚生労働省とは離れたところで、本当の専門家によってこれはお願いをした方がいいというふうに思っております。

 ただ、過去の問題につきましていろいろの御批判がありますし、そして、大変大きな穴をあけたのではないか、そういう誤解も実はあるわけでございますが、御案内のとおり、過去におきましては、一部、株式運用をいたしておりましたけれども、ほとんどの部分は財投の中にあったわけであります。

 したがいまして、自主運用の始まりました昭和六十一年からこちら、この十数年の間だけを見ましても、収益としましては七十五兆円の収益になっておる。年平均にいたしまして四兆円何がしか、四兆四千億ぐらいになりますかね、そのぐらいのプラスにはなってきている。決して全体としてマイナスになっているわけではないわけでございます。

 しかし、これから、返りますと、全責任を持って運用をしていかなければならないわけでありますから、ここは国民の皆さん方にもよく御理解をいただけるような形でやっていきたいというふうに思っている次第でございます。

菅原分科員 大変丁寧な御答弁、ありがとうございました。

 最後になりますが、これは直接、厚生労働の範疇ではないかと思うんですが、国民の年金を議論すると同時に、その大前提としては、やはり議員年金、この問題について、我々は、みずからが隗から始めよということで議論しなければならない、こう思っておりまして、私も、選挙前のマニフェストにも掲げて、これまで取り組んでまいりました。

 現職の議員が議員のOBを支えていくということでございますが、そこに七二%もの国庫負担割合がある、こうした問題。あるいは、いびつといいますか、国会法において、退職金を別に定めるとしながら、国会議員互助年金法において定めるところの中で年金をいただくという、非常にわかりにくい、合わせわざのような状況が今ありますので、この辺の整理も必要かと思います。

 したがって、本当に国民の感覚に見合った議員年金に徹底した見直しが必要だと思いますが、大臣というお立場よりも、政治家として、大臣の御答弁も最後にいただければ、大変ありがたいんです。

坂口国務大臣 議員年金につきましてもいろいろの御批判があるところでございます。タウンミーティングに行きまして、皆さん方の御意見の中で、議員年金のことが出ましたときに拍手が一番多かった。これは万雷の拍手で、発言された人は取り囲まれたということがございまして、そういう意味では、国民の皆さん方が議員年金に非常に大きな関心をお持ちになっている、これは事実だというふうに思っております。

 しかし、私は、議員も年金がなければ老後やっていけませんので、議員にも年金が必要だということは感じておりますけれども、現在の年金制度は改革をした方がいいというふうに思っている次第でございます。

谷口主査 これにて菅原一秀君の質疑は終了いたしました。

 次に、山本喜代宏君。

山本(喜)分科員 社民党・市民連合の山本でございます。大臣には大変御苦労さまでございます。あと午前中、最後ですので、よろしくお願いいたします。

 私は、まず最初に、パート労働者の待遇改善ということについてお伺いしたいと思います。

 今現在、パート労働者は一千二百万人を超えるというふうに言われております。コストの削減あるいは雇用調整を容易にするというふうな企業のニーズもありまして、最近では、若年者のパートの比率が大変ふえてきている、いわゆるフリーターというふうな社会現象もあるわけでございます。

 平成五年にいわゆるパート労働法というのが施行されているわけでございますが、この間、パート労働者とフルタイム労働者の待遇改善というのがどの程度進んできているのか、まず最初に、政府のその点に対する認識をお伺いしたいと思います。

伍藤政府参考人 パート労働者と正社員との給与格差の問題でございますが、最近の傾向を見ますと、大まかな傾向としては拡大する傾向が見られるということでございます。その背景といたしましては、職種構成の変化でありますとか就業調整の影響など、いろいろな要因が影響しているのではないかというふうに考えております。

 正社員が行ってまいりました役割の一部を担うなどの基幹的役割を果たすパートタイム労働者がふえておるというのも最近の特徴でございまして、こういうパートタイム労働者と正社員との賃金、処遇の格差につきまして、個別企業ごとに見ますと、合理的な説明がなかなか難しい、こういった事例もいろいろ見られますので、その処遇が必ずしも働きに見合ったものになっていない面もある、こういったような現状であるというふうに認識をしております。

山本(喜)分科員 今、格差が拡大の傾向にある、処遇が見合っていないというふうな政府の認識なわけでございます。

 確かに、政府の認識に基づいて、今回のパートタイム労働の指針が新たにできました。これによりますと、今言われたとおり、基幹的役割を果たす労働者が増加している一方で、給与の格差が拡大する傾向にあるというふうに、この指針をまとめるに当たっての報告書で確かに言われています。

 実際、厚生労働省のパートタイム労働者総合実態調査、これによりますと、職務、責任が正社員と同じパート労働者がいるというふうな事業所が四〇・七%、それから卸売、小売、飲食店では五八・六%というふうな結果が出ているし、賃金の格差も、厚生労働省の「働く女性の実情」という資料によりますと、一般労働者一〇〇に対して、七八年には七八・四、八割近かったわけですが、九三年には七〇・一、そして二〇〇二年には六四・九というふうに、どんどんその格差が開いてきているわけです。

 そういう問題意識があるからこそ今回の指針ができたとは思うんですが、しかし、この間、指針はたびたび出されているし、平成十二年には、この格差を縮めるための、通常の労働者との均衡を考慮するための物差しというのも労働省で出しているわけですよね。しかし、この十年間実効が上がっていないというのが、この間の調査の結果で明らかなわけです。

 果たして、この指針を出したところで、均等待遇というのは実効が上がるのかどうか、政府の見通しについてお伺いします。

伍藤政府参考人 指針につきましては、昨年の八月に改正を行いまして、昨年の十月から適用したところでございます。

 今回の指針改正の特色でございますが、パート労働者全体を全部一くくりでとらえるのではなくて、職務が正社員と同じかどうか、あるいは、人材活用の仕組みとか運用が同じかどうか、そういった判断を行うことによりまして、パート労働者を大くくりに幾つか分類をいたしまして、その分類に応じた均衡処遇の考え方を具体的に示したものでございます。

 さらに、関連をいたしまして、すべてのパートタイム労働者に対して、正社員への転換に関する条件の整備でありますとか、職務の内容、能力、経験に応じた処遇の実施、あるいは労使の話し合いの促進のための措置を講ずるよう努めることを事業主の責務として追加したところでありまして、広くパートタイム労働者全体を対象としてこういう形で実施をして、まずこの認識を深めていただくというのが当面の課題だというふうに思っております。

山本(喜)分科員 問題は、実効が上がるのかどうかということなんですよね。十年間で格差が拡大しているということは厚生労働省でも認めているわけでございますから、問題は、どう具体的に実効を上げていくのか。

 確かに、職務分類を含めて、比較上、難しい点はありますよ。ありますけれども、全体としては格差が拡大しているという結果でございます。ですから、このまとめの中にも、社会的な浸透状況を含めた実態把握を行っていくというふうにあるわけですよ。実態把握を行っていくということは、要するに検証作業をきちっとやっていくということだと思うんですが、この点はどういうふうな取り組みになっていくのか。

伍藤政府参考人 まずは、昨年、指針を改正したばかりでございますので、いろいろな、あらゆるルートでこれを労使、社会全体に浸透させるというのが当面の最大の課題だと思っておりますので、まず、この段階を踏んでいくということに全力を挙げてまいりたいというふうに思っております。

 浸透状況の実態把握、こういったことについてでございますが、浸透していくにはある程度時間がかかる問題でありますから、一定程度の期間経過した後には、何らかの形で、こういうのがどの程度浸透しているのか、どういう実効を上げているのかということについては、御指摘のような実態把握に努めてまいりたいというふうに思っております。

山本(喜)分科員 パート労働者の労働条件の改善がなかなか進まないということは、やはり、パート労働法三条の事業主等の責務というのが努力義務でしかないというところに根本の問題があるんじゃないかというふうに思うんですが、この点についてはどうでしょうか。

伍藤政府参考人 御指摘のとおり、パートタイム労働法第三条におきまして、事業主の責務として規定されておるわけであります。

 これが努力義務にとどまっておるということでありますが、このパートタイム労働者の公正な処遇ということでいろいろ議論をしていただきます私どもの労働政策審議会、こういったところの議論をお聞きいたしましても、労働側は、処遇格差が拡大しているのは法律のあり方の問題だという御指摘でありますが、一方、使用者側の方は、これはもともと企業の雇用管理という問題であるので、これは労使が自主的に取り組んでいくことが原則だということで、非常に意見の隔たりが大きい問題でございます。

 こういった状況を踏まえて、現実に即した形でまず一歩前進をさせるべきだという考えから、先ほど申し上げましたような指針の改正というものを行い、今浸透に努めておるというところでございますので、まずはこういった努力を積み重ねてまいりたいというふうに思っております。

坂口国務大臣 きょうは、パート労働の問題をお取り上げいただきましてありがとうございます。委員は、農業問題につきまして、いつも予算委員会においてお取り上げいただくのをじっと聞かせていただいているわけでございますが、きょうはパートの問題をお取り上げいただきました。

 確かに、現状を見ますと、パートの労働環境というのは決してよくないと私も思っております。しかし、このままでずっといくかということになれば、景気の動向にも左右されるというふうに思いますけれども、これから間もなくいわゆる労働力人口が減少してまいりますので、私はいつまでもこうした状況が続くとは思っておりません。恐らく、パートとそして正規の労働というものがあれば、多くの皆さんがそれを選ぶようになっていくだろうというふうには思っておりますけれども、当面の問題として一体どうするかという問題は、御指摘のとおりだろうというふうに思います。

 それで、我々もできる限り、パート労働者の皆さん方の賃金、それから労働環境というものを整備して、やはりできるだけ常勤の皆さん方と歩調がとれるように、近づけていく努力をしなきゃならない、それは厚生労働省に課せられた任務の一つだと私たちも思っているわけでございます。どういう法律、それからどういうパート労働の問題にいたしましても、労働側と使用者側、そして第三者的立場の皆さんと三者構成で十分に御議論をいただいて、できるだけ一つ一つ前に行きたいというふうに思ってやっているわけでございます。

 かなり今御議論をいただいて、指針一つ出すにいたしましても、大変な御議論をいただきましてこれを出させていただきました。指針ではなかなか、だめではないかというお気持ちは十分私もわかるわけでございますが、しかし、これを出すことによりまして、かなり雇う側の皆さん方、企業の方も、これはやはりやっていかなきゃならないのだというお気持ちに変わりつつあることは事実だというふうに思っております。

 我々の方の出先機関、基準局等におきましても、いろいろの指導をいたしますときには、こうした指針を踏まえまして御指導を申し上げております。新しく雇われるところはできる限り新しい制度の中でやっていただきたいというようなことも申し上げているところでございまして、これから我々も積極的に努力をしなきゃいけないというふうに思っているところでございます。

山本(喜)分科員 今回、いつも農水委員会ですけれども、社民党は人数が足らないものですから、農業問題だけでは済まないので、いろいろと勉強しなきゃならないので大変でございます。

 今大臣の方から答弁いただきましたが、やはり企業側の論理、これは企業の管理の問題だといいますけれども、実際、労働組合に組織されている人は、パートは二・七%しかないわけですよ。これをこのままに放置しておくという、例えば地方に行きますと、パートと正社員の違いは労働時間が短いことと交通費が出ないことだけだというのですね。要するに、全体が下方平準化に向かっているわけですよ。こういうことを放置していくと、やはり景気の回復に水を差すということにもなると思うんです。

 あとは、要するに、均等待遇に向けた法制化、こういったこともぜひとも検討して、早急に底上げを図っていくという方向にしないと、労働環境が非常に沈んでいくということだと思います。それをまずお願いして、次に、労災保険の民営化の件についてお伺いしてまいります。

 労働者が労働災害に遭ったときにしっかりと補償を受けられるというこの労災保険の仕組み、これは労働者の人権保障という意味を持っていると思うんですけれども、この労災保険が国の業務として行われている意義について、厚生労働省はどういうふうに考えているのか、まずお伺いします。

高橋政府参考人 労災保険でございますが、御案内のとおり、業務上の事由または通勤によります労働者の負傷、疾病、障害、死亡等々に対しまして、迅速かつ公正な保護を図るため、必要な保険給付を行うことを主たる目的といたしておるものでございます。

 同時に、労働基準法上、使用者の履行責任が課されております災害補償、これを確実なものとすることによりまして労働者保護の実効性を確保する、こういう社会政策的見地から、社会保険として国が直接運営をいたしておるわけでございます。

 こうした労災保険を国が直接運営することによりまして初めて、一つは、監督行政、安全衛生行政と一体的に運営されることを通じまして、迅速適正な補償が可能となるとともに再発防止対策にもつながっていくもの、また、加入を強制いたしましたり、また、保険料を滞納しております場合には滞納処分という強制権限の行使が国でありますれば可能となる、こういうことを通じまして労働者保護を図るという目的が達成し得るものである、このように考えておるところでございます。

山本(喜)分科員 労働者の保護ということで、大変重要な位置づけでございます。

 ところが、小泉総理の諮問機関の総合規制改革会議、これが第三次答申を出しましたが、これによると、労災保険を民間に開放すべきだというふうに言っているわけです。この労災保険の仕組みは民間の自賠責と同じじゃないのかというふうに言っているわけですが、果たしてこのまま、厚労省としてこの規制改革会議の答申をどうとらえるのか、まずお伺いします。

坂口国務大臣 規制改革会議はいろいろのことをおっしゃいますよ。もういろいろのことを言っていただきますが、そのとおりお受けをできるものもあればできないものもある、こういうことでございます。

 労災保険につきましては、これは立入調査をしなきゃならないということもございますし、それから、保険料の滞納がありましたら、それに対する処分をしなきゃならないこともあるし、そうしたことを一方で行いながら、そして過労死等非常に難しい判断をしなければならない。これはもう本当に客観的な立場でやっていかなければならないわけでありますから、ここは民間にお願いするわけにはいかない、私はそう思っております。

 少々言われましても、ここは後ろに引くつもりはございません。

山本(喜)分科員 重ねてお伺いすることになると思うんですけれども、十二月二十六日の閣議で、この答申に基づいて三カ年計画を策定するというふうになっているんですよね。これは今の大臣の答弁で果たしていいんですか。

坂口国務大臣 それは出されたものすべてがその中に入っているわけではありませんで、取捨選択をいたしまして、そして、これは行うべきもの、これはできないものという振り分けをして、そして、できるものについては三年なら三年でやっていくということにしておりますので、御心配は要らないと思います。

山本(喜)分科員 労働者が安心して仕事ができるように、ぜひ大臣には頑張っていただきたいというふうに思います。

 次に、新規学卒者の就職状況についてということでお尋ねします。

 一月に数字を出されたわけですけれども、昨年の十二月一日現在の大学、短大、高専卒業予定者の内定率というのが、七三・五%、過去最低というふうなことも言われています。それから、高校生についても大変厳しい状況が続いているわけでございます。この内定状況、その後進んで、改善されてきているのかどうか、今後の見通しについてお伺いします。

青木政府参考人 今春卒業の高校生の皆さん、大学生の皆さんの就職内定状況でありますが、ただいま先生からお話がございましたように、この一月に発表いたしましたが、昨年十一月末時点で、高等学校卒業予定者について六一・四%、これは昨年よりも一・一ポイント上がっております。それから、大学卒業予定者の方につきましては、昨年よりも三・二ポイント下回って七三・五%ということでございます。

 この問題につきまして、特に大学卒業予定者の方についてかなり厳しい状況でありますけれども、過去に一番内定率が同じ時点で低かったのは、平成十一年度でございます。このときが七四・五%でありましたが、その後各般の対策等々を講じまして、最終的に四月一日時点では九割を超える状況まで回復をいたしたということがございます。昨年の内定率は、最終的には、高等学校で九〇%、大学で九二・八%になっておりますけれども、何とかここまで持っていけるように、最大の努力をしてまいりたいというふうに思います。

山本(喜)分科員 政府の発表によりますと、GDPは年率で七%ということで、バブル期並みの成長率ということが報道されています。しかし、実態は、この就職状況、雇用状況も含めて、景気回復の割には雇用不安が依然として続いているということがあるわけでございます。

 この景気回復とそれから雇用、これは今後大変重要になると思うんですよね。今までだと、回復していくにつれて雇用もどんどん伸びていくということでしたが、かなり乖離が出てきているんじゃないか。こういった点についてどういうふうに分析しているのか。

青木政府参考人 景気と雇用の関係でありますけれども、従来言われておりますことは、景気の回復期において雇用にそれが入ってくるのは半年ぐらいかかるというふうな統計結果もございます。

 それは、企業の経営者が新しい方を採用するに対し、確信が持てるまでかなり時間がかかるということであったかと思いますけれども、昨今の状況になりますと、さらに雇用の多様化が進展しております。パートタイマーとかあるいは派遣労働者の方とか、いろいろな形で新規労働力を調達する仕組みになっておりますので、その辺、これからどうなっていくかということが問題でありますけれども、何とか景気の回復に雇用が少しでも足早に追いつけるように、いろいろな対策をしていかなければならないというふうに思っております。

山本(喜)分科員 今、企業のニーズにもよりますけれども、非常にフリーターが増加しているわけですよ。若年の雇用不安、これは将来多量の無年金者を生むということにもなりかねないわけでございます。二〇〇二年の労働経済白書によりますと、フリーターの数は二百九万人という状況、それから文部科学省の学校基本調査によりますと、昨年の高卒者の一〇・三%、それから大卒者の二二・五%が進学も就職もしない無業者になっているということであります。こうした点についてどう分析しているのか。

谷畑副大臣 今山本先生おっしゃいましたように、若年労働者の状況というのは非常に深刻な状況であるんじゃないか、このように思っています。

 私も二つあるんじゃないかと思うんですけれども、今、学卒者の、高校生、大学生の内定率も、高校生の場合は少しポイントは上がっておりますけれども、上がっているといったって六割程度ですから。あるいは大学生だって、これはポイントは下がっておりますし、そういう意味では、今失業率が、この間は四・九でしたけれども、またもう一度戻りまして今五%になっていますけれども、若年労働者の場合は一〇%ということで非常に高い失業率である、これ自身、私は非常に大きな問題であると思っております。

 それともう一つは、就職しましても三年間で、七五三と言われるように、中学生で七割、高校生で五割、大学では三割やめていく、そういうことがまたフリーターにつながっていく、こういうふうに思います。

 私は、やはり、若い人たちが希望とそして夢を持って、将来に向かって希望するところで働くということは非常に大事だと。しかも、働くことによって生きがいというものが出てまいりますし、社会貢献ができますし、また社会全体にとりましても、お互いの年金における助け合いだとか、さまざまな状況があろうと思います。

 私は、今回、この若年労働者の問題に対する就労支援というものを、ぜひ厚生労働省も大きな柱としてやってまいりたいと思います。そのためには、日本版デュアルシステムと言われるように、研修しながらトライアルをして採用してもらう制度をつくったり、ワンストップカフェというか、いわゆる青少年向けの職業安定所における相談窓口をつくって、それを充実していくというようにしたいと思います。

 同時に、若い人たちの意識調査をしますと、将来何になりたいかというのがはっきりしない、ここは大きな問題だと思います。やはりもう少し職業観というものが、小学校、中学校という学校教育の中においてもそういうものを自然と学んでくるというのか、私は、卒業すればこういうことをするんだという意識も大事じゃないか、こういうふうに思いますので、私ども、単なる厚生労働省だけじゃなくて、文部科学省を含めていろいろな関係省庁とも連携をしながら、若い人たちに対する就労を一つ大きな柱として、前向きにひとつ取り組んでまいりたい、このように思っています。

山本(喜)分科員 やはり、若い人たちの就職していないという無業者がふえているという実態は、犯罪の低年齢化というふうなこととも多分一致してくるんじゃないかと思います。そうした意味で、社会不安を抑えていくということのためにも、若年雇用対策、こういったものにしっかりと取り組んでいただきたいということを申し上げまして、私の質問を終わっていきたいと思います。大変ありがとうございました。

谷口主査 これにて山本喜代宏君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

谷口主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。白保台一君。

白保分科員 先日の二十六日に沖縄北方特別委員会が開かれまして、その際に、沖縄県におけるところの認可外保育園の問題について質問をいたしました。そういたしましたところ、厚生労働省の方からも実態についてしっかりと御説明をいただきました。その結果、沖縄担当大臣、それまでは余り沖縄の保育園の問題について認識をしておられなかったようでございますが、初めて実態をお聞きになって、これは何とかしなきゃいけない、そういう認識をお持ちになったようであります。この問題については、ここ二、三年、坂口大臣にも大変御苦労をいただきましたし、また、いろいろと考えていただいたりなどしてまいりましたけれども、なお実態というのが好転をしていかない、こういう状況にあるわけでございます。

 先般の質問を受けて、今また、新しく皆さん方の御要望がありますが、その御要望の中の一つに、認可外保育園の多くは、ほとんど保育士が不足しているような状況にある、それを補おうとしても財政的な事情でもってなかなか難しいしそういう状況にはない、しかし、またそういう状況を放置しておきますと、一人の保育士が抱える園児の数が多いために事故につながっていっていることも多くある、こういう状況でありまして、こういう認可外の保育園に必要な保育士を充ててもらいたいなという声もあるんですが、こういった支援ができるものなのかどうか、まずお聞きしたいと思います。

伍藤政府参考人 認可外保育施設についてのお尋ねでございます。

 保育サービスにつきましては、この安定的な提供あるいは質の確保といった観点から、児童福祉施設最低基準ということで、全国一律の基準で保育士の数でありますとか施設の基準を満たしていただく、こういうことが基本になっておるわけでございます。こういった観点から申しますと、今御指摘のありましたように、認可外保育施設に対しまして保育士等を雇い上げるための費用を直接補助するということはなかなか困難ではないかなというふうに考えております。

 しかしながら、こういったところをできるだけ支援していくという観点から、公立保育所の保育士を認可外保育施設に派遣をして保育内容の向上のための支援指導を行う、あるいは認可外保育施設の保育士にいろいろな研修会にも入っていただいて研修を行う、こういったことを支援する間接的な支援というようなものを通じていろいろ御支援をしておるところでございますし、それから、認可外保育施設そのものができるだけ認可保育所に移行できるような、こういった観点からの補助制度も設けて支援をしておるところでございます。

白保分科員 伍藤局長も、沖縄の実態を考えると、この間から大変きつい質問だと思っていらっしゃると思いますし、また、大臣も大変御苦労なさっておるわけでございます。

 そこで、先般も、特区的な発想でもって何とかやる方法がないのかなということも申し上げたわけでございますけれども、そういった中で、認可と認可外、この壁が非常に大きいものがあって、厳しい状況にあるわけなんです。したがって、その間に何か準認可的なものを特区ということも含めて考えてやっていくことができないかどうかということも、現場にいる人たちにとってみれば大変厳しい状況にあるわけですから、そういう面で考えることはできないのかどうかということについてお尋ねしたいと思いますが、いかがでしょうか。

坂口国務大臣 沖縄の保育所の問題も長い問題になってまいりまして、いろいろの手だてを考えていただくわけですけれども、なかなかうまい手がないというので今日に至っているというふうに思っております。

 一つは、認可保育所にするということは、これは都道府県の負担もふえるということになりますし、沖縄県としても、したいのはやまやまだけれども、すると負担もふえるということもあって、私は、ちゅうちょされる気持ちもよくわかるわけであります。

 それで、保育所のところだけで解決をしようと思いますと、そこはなかなかうまくいかないわけでありまして、沖縄担当大臣もそういうふうに理解をしていただいているのであれば、一遍よくお話しさせていただいて、そして、積極的に認可保育所にしていく、それに対して負担増になるところについては、これは別途何らかのことで考えるということでいかないのかどうか。私は、そういう、もう少し広い範囲の中でこの問題を考えて解決をしていくという以外にないんではないかという気がいたしております。

 一遍、担当大臣ともよく相談させていただきます。

白保分科員 大変厳しい状況にあることはもう十分御存じのとおりでございますので、ぜひ担当大臣ともお話をしていただいて、非常に長い間の懸案事項でございますし、また、子供たちは一年たつと一つ年をとっていくわけで、すぐ大きくなっていく、そういう厳しい中で保育を受ける子供たちというのは非常にかわいそうな状況だと私は思いますし、ぜひお願いを申し上げたいと思います。

 さて、質問は変わりますが、ドクターヘリの問題についてお伺いをしたい、こういうふうに思います。

 ドクターヘリにつきましては、ドクターヘリに入る前に、実はおととい、日曜日でしたか、テレビの番組で、救急救命士、テレビでやっておりましたが、非常に厳しい条件の中で皆さんやっておられて、それで、法的な改正がなされて、その結果として多くの人命を救うことができた、そういったすばらしいドキュメンタリーのような報道番組でございました。あれを見ながら、私も、本当に、人の命というのは非常に大事ですから、そういう面では、救急の医療をやるということは大変なことだなというふうに強く感じました。

 今回、ドクターヘリの問題について質問するわけでございますが、これはまさに一分一秒を争う大変な仕事でありまして、ドクターヘリは、お医者さんや看護婦さんが一緒に乗って救急現場に急行していく、そういう搬送段階から救命処置を行う専用のヘリコプターであります。大事故によるところのけが人の治療や、初期治療がかぎとなる心筋梗塞や脳卒中の患者には大きな効果を発揮しております。我が国では、厚生労働省が一九九九年度より試験的に導入をいたしました。

 救命率の向上には大変な威力を発揮しておりまして、東海大学の救命救急センターでは、ヘリで搬送した四百八十二例を分析いたしますと、ヘリを使わない場合に比べて、死亡例が三〇%から一九%に、障害が残る例が一五%から九%に減少する、こういう大きな効果を上げております。障害が残らず完全社会復帰をした例が三一%から四九%と、非常に大きな結果を残しているわけでございます。

 このようにすぐれたものは全国に配備すべきだ、このように思うわけでございますが、現在までに導入しているのは、岡山、静岡、千葉、愛知、福岡、神奈川、和歌山の七県のみであります。実施主体はあくまでも都道府県であり、国は事業費の二分の一を補助する立場であります。我々も各都道府県に早期導入を促してはおりますけれども、ここでは、国の一層の努力をお願いしたいと思います。

 ただ、都道府県が導入に踏み切れないのは、費用の問題と運用上の規制が多いからだ、このように思います。消防、防災用ヘリを導入している自治体は多くございますけれども、さらなる費用負担には二の足を踏む。また、着陸地点などの規制や飛行制限があって、運用面においてもまだ課題が残されております。

 それで、外国の事例で恐縮ですけれども、我が国とほぼ同じ面積の国土を持つドイツでは、全国を半径五十キロメートルの円で埋め尽くし、五十一の拠点を整備しておりますし、それぞれの中心部の拠点病院に基地を設けて、世界で最も早く体系的、組織的なヘリコプターの救急体制を構築しております。アウトバーンの高速自動車事故による犠牲者を三分の一に減少させております。また、山岳地帯の多いスイスでは、全土で十七カ所にヘリを配備して、国内のほとんど全域に医師が十五分以内に到着できる体制を整えております。

 そういう状況であるということを申し上げて、また、ヘリ一機当たりの年間運航費用というのは約二億円ということでありますし、全国に百機を配備する、要するに、先ほどのドイツの例ですが、五十カ所に配備をすれば、待機用として一機必要ですから、二機ということで百機。そうすると、これは一機が二億円ですから年間二百億円、国民一人当たりの計算でいきますと年間約二百円の負担でできますから、これでいくと完全配備ができるんじゃないかな、こう思います。

 そういう意味では、都道府県が早期に導入できる環境をつくっていただきたい、こういうふうに思うわけでございますが、いかがでしょうか。

坂口国務大臣 このドクターヘリの問題も、各地域の方でかなり取り組みはいただいているんですけれども、なかなか進んでいない。ただ、和歌山の例でございますと、和歌山、奈良、三重と、三県で一機持っているわけで、それでも私はいいと思うんですね。毎日朝から晩まで飛んでおるわけじゃありませんで、緊急の場合に行くわけですから、三県ででもこれでやっていけるということだろうというふうに思っておりますから、近隣の県で協力をしていただいて、そして備えるということであれば、そんなに要らないわけでありますから、そうしたこともこれから検討をしていきたいというふうに思っております。

 まだ和歌山は、去年でしたか、おととしでしたか、そのぐらいでございまして、三県でやらせていただいているという経緯がございますので、例えば四国でしたら四県でどうかというようなお話もできるのではないかというふうに思っておりますので、そうしたことも考えて、日本国じゅうを全体にカバーできるような体制をどうつくるかということだと思います。

 それからもう一つは、例えばおりる場所が、高速道路なんかに日本ではおりたらいかぬことになっておるものですから、そうすると、せっかく近くに行きながら離れたところへおりて、そこへまた運んでこなきゃならないというようなことがあったりして、その辺のところをどうするかということも、これはもう少し詰めていかなきゃならない問題だと思っております。

白保分科員 今の大臣の答弁を受けまして、もう一つ申し上げたいと思います。

 そういった飛行制限の問題や着陸地点の問題等もひとつ工夫をいただきたいと思います。

 実は、私ども沖縄県が復帰をして三十年になりますが、自衛隊の救急搬送が三十年で一千件を超えたんです。私どもは島嶼県ですから、島々に病人が発生してもなかなか搬送できない。そういうような状況の中で、自衛隊が物すごく活動をしまして一千件を超えた、年間三十回ぐらい出動をしているんでしょうか、三十回以上の出動をして大きな効果を上げております。

 これはドクターヘリと直接の関係はありませんが、いろいろなところの連係プレーというのは非常に大事でございまして、先日も日本の最西端でドクター・コトーというテレビのドラマがあって、大変多くの医者が関心を寄せている与那国島という島がありますけれども、その島の町長と話しておりましたら、つい先日、もう少し早く、あと三十分早くその搬送が来てくれたら命が助かったんだけれども間に合わなかった、だから、いつもヘリを置いておいてもらいたいなどということを、まあ無理な話ですが、おっしゃっておられましたけれども。例えば、尖閣諸島なんかは海上保安庁も四六時中飛んでいるわけですね。すぐそばなんです、目と鼻の先なわけです。そういった一人の病人にも緊急に対応していくという場合に、やはり横の連携というものが大変必要であろう、こういうふうに思うわけであります。

 そういった先ほどの飛行制限の問題や着陸地点の問題や、あるいはまた今申し上げたような省庁間の垣根を越えた形で対応できる問題、横の連携等、一人の命を救うためにできる取り組みというものが必要ではないかな、こういうふうに思っておりますが、この辺はいかがでしょうか。

岩尾政府参考人 ドクターヘリ事業の計画的な整備に着手するに当たりまして、先生御指摘の防災ヘリ、あるいは消防ヘリなどの活用も考慮し、また御指摘の自衛隊機の協力をいただくことも含めて、私ども、各都道府県がその地域の実情に応じた救急搬送体制の構築に向けて取り組んでいただくということが重要と思っております。

 そういう中で、関係省庁との連携でございますが、平成十二年の六月から、厚生労働省、警察庁、総務省消防庁及び国土交通省から成る関係省庁の検討会を開催しております。この結果、平成十四年の十二月から、とりあえず高速道路上の離着陸という場合の問題点として、まずサービスエリア、パーキングエリア内の専用ヘリポートへの安全な離着陸へ向けての取り組みをまとめたところでございまして、各都道府県に通知いたしました。さらに、今後本線上への離着陸も段階的に検討したいというように考えております。

白保分科員 一人の命にかかわる問題でございますから、ぜひ御努力をお願いしたいと思います。

 続きまして、若年者の雇用問題についてお伺いをしたいと思います。

 わずかながらでありますが、失業率が改善されて、雇用問題も少しずつ前に進んでいるのかな、こんなふうに受けとめています。

 ただ、高校を卒業した子供たちが、一〇%程度が就職もしない、進学もしない、そういう無業状態にあるというふうに言われておりまして、私の沖縄にも結構多いんですが、東京、神奈川など都市部が非常に多い、こういうふうに言われております。

 この人たちはフリーターというんだそうですが、こういうフリーターという状況が続いていきますと、何年かたつと本人たちも就職しようというふうな形になっていくんだそうですけれども、ただ、会社としては、正社員としてこういったことを経験した人をなかなか採りたがらないということもあったりして、非常に難しい状況にあるわけですね。

 したがって、そういった人たちについて、労働行政の立場からどのように認識をされ、どのようなお考えを持っておられるのか、お伺いしたいと思います。

谷畑副大臣 今先生が指摘されましたように、若年労働者の問題というのは、我が国におきましても非常に大事な問題ということになってまいりました。特に、今先生が指摘されましたように、この失業率の問題におきましても、現在、五%ということで少し好転をしておるわけでありますけれども、若年労働者の場合はなお一〇%ということで、非常に高位で失業率が定着をしておるということがあります。

 それと同時に、今先生がおっしゃいましたように、フリーターという問題につきましても、一九九二年には百一万であったものが、二〇〇二年二百九万人ということで、倍増しておるということでございます。

 これは、二つの点で問題があろうかと思います。一つは、若いときに学んでいかなきゃならない、いわゆるキャリアといいましょうか、知識だとか技能、能力だとか、そういうものが身につかないということがありますし、それから二つ目は、やはり雇用関係、正規の雇用関係じゃありませんから、いわゆる年金を掛けるわけでもありませんし、そういう点、社会保障に大いにかかわってくるということもございます。

 だから、そういうことでありますので、私ども、やはりこのフリーターの問題をしっかりととらえて、いわゆる若年労働者の皆さんの就労をしっかりと支援していこうということで、昨年六月に関係四大臣で若者自立・挑戦プランというものをつくっておりまして、平成十六年度におきましては、日本版デュアルシステムということで、いわゆる企業実習と教育訓練を一体的な形として、社会人にしっかりと正規の雇用で就職できるようにということの支援をやるということになっておりますし、また、地域の主体的な取り組みによる若年者のためのワンストップサービスということで、いわゆる専門の職業相談員を配置して、個別で、就労へ向けて支援をしていこう、こういうことに取り組んでおります。

 いずれにしましても、学校を卒業してフリーターになることを抑制するとともに、フリーターとなっている若年者が安定的な職業につくようにひとつ頑張ってまいりたいなと思います。

 最後に、若い人たちの意識調査をしますと、将来何になるかということを、高校卒業生の方でも大学卒業のばりばりの方でも、何をしていいかわからない、こういうことになっておりまして、職業意識というのか、非常に希薄になっておりますので、これは特に文部科学省等も含めて、職業観の意識を高めていくことも大事ではないか、このように思っております。

白保分科員 そこで、若年者については福祉分野への就業促進を図ったらどうかな、こういうことで申し上げたいのは、先ほど、久しぶりに完全失業率が好転をしてきたというふうに申し上げましたが、その特徴的な傾向として、老人介護などの福祉分野で昨年一年間だけで四十一万人も就業者がふえています。建設業が十七万人減って、サービス業が二十一万人減った。二十一万と十七万を足しても三十八万。四十一万人の方が多いわけですから、そういう面では非常に雇用水準を今高めていっているな、こういうふうに思います。

 ただ、そういう中で、雇用の量的な回復はしてまいりましたけれども、質的な面でいかがかな、こういう面が一面あるわけでございますが、それはそれとして、福祉分野の労働需要は今後ますます増加していくんではないか、こう思います。したがって、多くの若年労働者がこの分野に就業することを望むようになっていけば、高齢者福祉と若年者失業問題の解決につながっていくのではないか、こんなような思いをしておりまして、特に、福祉労働というものはボランティアではなくして正当な労働であるということを若者にしっかりと教えて、魅力あるそういった労働条件や雇用制度を整備していく、政府、企業、労働者一体となってつくる必要があるんではないか、こういうふうに思いますが、大臣の御所見を伺いたいと思います。

坂口国務大臣 フリーターと言われる皆さん方にどう働いていただくかということは、非常に大事な問題でございます。

 その中で、サービス業にどう移行していただけるかというのは、これは介護も含めてでございますけれども、非常に大事な問題でありますが、これは御本人だけではなくて、お父さん、お母さんのお考え方も私は影響するというふうに思うんです、サービス業に行くことに対する抵抗感みたいなものがございまして。

 先日の日曜日の日も、私の方の地域の大きいホテル街、観光地でございますので、そこなんかは、人は何百人でも欲しいと言うわけでありまして、ハローワークに日参するように頼みに行っているけれども、なかなか来てくれる人がいない。それはパートとしか採ってくれぬじゃないかと言ったら、いや、正規で採りますと言うんです。正規で採るんですけれども、ホテルなんかで働くということに対する抵抗感というものがあって、やはりサービス業に対するもう少し誇りというものが持てるような対策というものを国の方がやってくれないことには考え方が直らない、こういうことをかなり言われまして、なるほど、言われてみればそれはそうかな、もう少し我々もそういうことも考えなきゃいけないなというふうに思ったわけであります。

 今御指摘の介護等につきましても、最初は抵抗感がかなり強かったわけでございますが、最近はお若い皆さん方がかなり入っていただけるようになってまいりました。老健施設等に行きましても、特養に行きましても、若い人がかなりふえてきておりますことは非常にいいことだというふうに思っておりますし、もう少しサービス業のところで働いていただける体制をどのようにつくっていくか、これは一つの大きな課題だというふうに思っておりますので、介護の問題も含めて十分検討させていただきたいと思います。

白保分科員 時間がなくなりましたので端的に伺いますが、先般、沖縄の若年者の雇用が非常に深刻なものですから、那覇市内にあるヤングジョブスポットおきなわ、そしてまた、おもろまちジョブセンター、両方行かせていただきました。非常に現状をよく認識しておられて、そこで働いている職員の皆さん方が一生懸命になってやっておられる姿を見て大変感動したわけでございますが、一生懸命頑張っていらっしゃいます。

 しかし、特に沖縄のような問題が深刻な地域というのは特別な取り組みも検討していただきたい、今も一生懸命やっていただいておりますが、なお一層お取り組みをしていただきたい、こういうふうに思っております。

 例えば、専門技能を取得するための助成金を雇用保険に加入していない若者も対象に加えたり、あるいは、現行の教育訓練給付金のような助成金形式じゃなくて、資格条件を緩めて税制上の優遇や育英会の貸し付けのような形での支援をすることはできないかどうか検討していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

坂本政府参考人 求職者の場合には、過去の就業経験がない方につきましても、無料で公共の職業訓練機会を提供しているところでございます。また、長期の公共訓練を受ける場合には技能者育成資金の貸付制度もございまして、このような制度を活用していただいて技能習得にお取り組みいただけますよう、私どもとしても、制度の有効活用を十分周知してまいりたいと考えております。

白保分科員 最後になりますが、障害者支援費制度の状況についてお伺いしたいと思います。同時に、障害児のデイサービスの拡大ということで、中学生、高校生、こういったところにも拡大はできないものかという要望等も強く出ております。そのことも含めてお答えをいただきたいと思います。

 もう時間がありませんのでまとめて申し上げますが、もう一点、新生児の聴覚検査を、三歳と言わないでもっと早いうちからやっておけば、子供たちは言葉を聞きながら覚えていくわけですから、そういった意味も含めて、早くにやれる方向を考えていただいたらいかがかということを、まとめて答弁を求めます。

谷畑副大臣 障害者の問題につきましては、いわゆる措置制度から支援費制度に移行いたしまして、障害者自身が判断をしてホームヘルプ等を含めて利用しているということで、非常に普及もしてまいりましたし、これはこれでいいんですけれども、また逆に、予算の面が膨れ上がってきているということもあって、今度、介護保険の見直しというのが五年に一回ということで、そういう状況の中で、この障害者の支援費の問題につきましても、サービス水準を落とすことなく、そういう保険も含めての議論を広く当該者等含めて地方自治団体とも今行っておるということでございまして、私どもも、いわゆる障害者政策が質を落とすことなく継続されていく、こういう観点から議論を進めていきたい、こう思っております。

塩田政府参考人 養護学校に通っておられる中学生や高校生の夏休みなどの長期休暇中の活動の場の問題でございますが、デイサービスの利用については重要な問題と認識しております。今後、児童デイサービスの役割も踏まえまして、中学生や高校生の障害児にとってどのような対応が適切か検討してまいりたいと思います。

伍藤政府参考人 聴覚障害の問題でございますが、委員御承知のとおり、これは十二年度から試行事業で自治体でやっておるものでございまして、現在十三自治体で実施をしております。

 早期発見というのは重要でございますが、その後の療育体制がきちっと整わないと保護者に不安だけ与えるということになりかねませんので、そういったことをよく見きわめて、この試行事業の成果を見きわめて、どういった形で全国展開を図るべきか、よく研究をしていきたいというふうに思っております。

白保分科員 終わります。

谷口主査 これにて白保台一君の質疑は終了いたしました。

 次に、和田隆志君。

和田分科員 民主党の和田隆志でございます。

 まず、質問に入らせていただく前に、本日、この委員会で分科会の質疑に立たせていただくに当たって、非常に自分自身感慨を持って臨みました。

 まず、きょう御指名いただきました谷口先生には、財務省時代大変お世話になりました。ありがとうございました。坂口厚生労働大臣におかれましても、私自身、政府の中の秘書官勤務を通じまして、常にそばでお声を拝聴しながら、真摯に厚生労働行政に取り組んでおられる姿勢に感銘を覚えておりました。今、与野党の立場はございますけれども、一公務員を経験した人間として、かつ、これから政治家として国民の皆様の意見を肌身に感じながら仕事のできる人間として、建設的な議論をさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 そこで、本日、幾つかテーマを選ばせていただきました。これも今申し上げたことと関係しますけれども、私自身、今四十歳で、いわゆる働く世代のど真ん中にあると自任しております。いわゆる社会保障制度については、この働く世代の方々が、自分の親に当たる世代の方々へ、長年働かれてこられて、そして老後の余生を充実したものにされるように、負担を持ってそれを保障するというような制度としてとらえております。

 その中で、幾つか、国民の皆様方と接しさせていただいたときに、今政府・与党におかれて推進されようという改革の中で、全体の方針はともかく、個別に見たときに、やはりちょっと格差が生まれるのではないか、そういうような点も多々お聞きいたします。そういったところをぜひ一つ一つ、大臣以下厚生労働省の皆様方のお力で小まめに拾い上げていただいて、全体として国民の皆様が納得できるような、そして、そのために将来持続可能な制度としていただけるような努力を払っていただければと思います。

 そこで、具体的な質問に入らせていただきます。

 まず、今社会保障を語るときに、いろいろな制度を改革しようとしておりますけれども、その改革の前提とする世帯の概念がございます。日本において、夫婦二人、子供を持ちながら働いて、その家族がみんな円満に立ち行くように、そして老いては子供に生活を支えてもらいながら余生を充実させる、そのような中での議論の前提として世帯を使っております。

 そして、例えば年金でいいますと、先日教わりましたけれども、モデル年金世帯というふうに呼んでおられるようですが、夫婦二人、子供二人、そして夫婦のうちどちらかが働いておられる、こういったものを標準タイプとして、いろいろな試算や、それから将来を予測する、そういう作業をやっていらっしゃいます。ほかの制度でも大体同じだとお聞きしております。もし違ったところがあれば教えてください。

 そこで、いろいろと政府の中の資料、統計を拝見しますと、総務省統計局が出されている中に労働力調査というのがございます。その中では、夫が働いておる家庭の中で、妻が働いておるかおらないか、それを夫の所得階層別に分類されて集計値が出ております。それをこの前取り寄せて拝見しますと、全体として、どんな所得階層でも、全部を総合計したときに、私がいただいたのは十三年からなんですが、随分前から、既に夫、妻ともに働いていらっしゃる世帯のシェアが高まっておって、過半数になっておる。現在では、十五年直近だと五六・七%になっているようです。

 そんな状況でこの数年推移してきているんですが、これから大改革を行って、将来持続可能な制度にしようとしている社会保障において、今使われているモデルタイプは、申し上げたように、夫婦で子供二人、しかし働いているのはどちらかお一人というのを標準にされておられます。ここについて、これはいろいろと国民の皆様方もこの一、二年で随分この社会保障制度についての御関心が高まっておられて、勉強されておられる方がたくさんいられます、その中からお聞きしたことですが、全体の世帯の分布がこういうふうになっている状況の中では、そろそろモデルタイプを変更してはいかがか、そういうふうな御意見がございましたが、この点について、統計についての御所見なり、それからこれからの方向性についての御所見なり、大臣にお伺いできればと思います。

坂口国務大臣 これは、これから社会保障をどのように考えていくかということの根幹にかかわってくる話だというふうに思っております。

 年金にいたしましても医療にいたしましてもそうでございますが、これは、世帯として考えますときにはどういう世帯を中心に考えるのかということがございますし、もう世帯としてではなくて個人として考えていこうという考え方もあるわけでございまして、基準として考えるのをどこに置いて考えるかということと大変深いかかわりのある話だというふうに思っております。

 年金の場合でございますと、今例をお挙げいただきましたように、御主人が働いて、奥様が御家庭でお子様をお一人なりお二人なりお持ちの、そういうタイプをしているわけであります。確かに、全体としての割合は減ってきているわけでございます。

 しかし、年金を一人当たりにしましたときに、いわゆる三号被保険者の方々はもう含まれているわけでありますから、このモデルを一人当たりにしますと、これは我々が言っておりますのでも二五%ぐらいで、お二人で五〇・二、こう言っているわけでありまして、一人当たりにしますとここが一番低いんですね、割合としては。お一人働いておみえになる方、あるいは御夫婦でそれぞれ働いておみえになる方の一人一人の割合と、それから御家庭に奥様はおみえになるという御家庭とを比較しますと、一人当たりにしますとここが一番低いわけです。その一番低いところでどれだけあるかということをお示ししているという意味では、私は一つの意味があるのかなというふうに思っております。

 しかし、多様化してまいりましたから、それぞれ働いておみえになります場合にはどういうふうなモデルでどうなるかということ、あるいはまた独身でおやりになっている皆さん方につきましては、お一人のときのどういうモデルでどれだけかといったようなことは、やはりきちんとお示しをしなければいけない時期に来ているというふうに思っております。

和田分科員 大臣のおっしゃるように、今採用している概念について、意味がないとは私も思っておりません。当然ながら、それについて諸々の根拠があってのことというのは理解しております。

 ただ、先ほどの繰り返しになりますけれども、全体の五六%超がそういう世帯になっているというときに、今後の社会保障制度を語るというふうに考えれば、軸をどっちに置くかということは、確かに大臣のおっしゃる切り口では、そちらの方で一つ根拠が立つのかもわかりません。先ほど御答弁にもありましたが、諸々の給付と負担というもののバランスを個人単位で考えるという考え方もこの数年高まってきております。

 そういったものを採用していくこととあわせて考えたときに、夫婦という単位が、それぞれ働いておるのがそれだけ割合が高まっているということは、その二人が一緒になる、もしくは、それは余り幸福なことではありませんけれども、一たん別れてしまう、また独身時代が長く続く、そういったことをもろもろ考えていく際に、その状況変化に応じた概念構成をするためには、標準タイプとして、夫婦がともに働いておる、それが別れたときにはその二人が要するに半分になるんだ、もしくは、一人一人が結婚したときに一足す一が二になるんだ、こういうような概念の方が簡単明瞭でよろしいのではないかという御意見があったことを御報告しておきます。

 今後、社会制度改革について、どういう側面でも同じだと思いますけれども、そういう視点を十分に持った上で検討していっていただければ幸いでございます。

 次に移らせていただきます。――済みません、移る前にもう一つ。忘れておりました。

 この労働力調査を拝見しておったときに、一つ気がついたんですが、自分の中にあった常識では、専業主婦の方が多い世帯というのはどういう分布になっておるだろうかと考えてみて調査を拝見したんですが、自分では、夫が所得が高ければ高いほど専業主婦世帯が、片稼ぎ世帯がふえておるのではないか、いわゆる一世帯当たりの生活に必要な所得が大体一定だとすればそういうような結果になっておるのではないかと思って見たのですが、後でまたごらんになっていただければと思いますが、夫の所得階層が低くても高くても、今さっき申し上げたような数値には大勢に変化がございません。

 そして、それは何を物語っているのかなというふうに自分で考えてみたときに、夫の所得が低い世帯におかれては、やはり生活に差し迫ったものがありますから、妻の方がどうしても働きに出る必要がある、これは当然なんですが。高まっていくと同時に妻の方が働いておるパーセンテージが落ちないのは、やはり働く意欲が妻の方に出てきている。それがどんどんこの世の中進んでいるから、いわゆる所得階層にかかわらず共稼ぎ世帯がふえておるんだと思います。

 そこまでは多分常識の範囲で推測がつくところなんですが、一つ、その統計を見ていて、あっと思ったのは、夫の所得が最高位に高いところ、そこで妻の専業主婦である割合がちょうど半分半分です。これは、直前のところで、階層別になっているシェアからすると、専業主婦でいうとふえている。つまり、ちょっと極端な言い方になりますが、生活に余裕が十二分にあるので、働かなくてもいい結果になっているのではないか。その結果、その世帯の部分についても、専業主婦向けにいろいろな施策を打っておられるのが該当することになっている。

 それは施策としてはもうちょっと小まめに切り出す必要があるのではないかなというふうに感じたのですが、今私のお話を聞いていただいて、大臣の御所見があればお伺いできればと思いますが。

坂口国務大臣 今お聞きをしただけで、なかなか即答しかねる部分がございますけれども、御主人の所得の多い少ないにかかわらず、奥さんの方が働いておみえにならない確率がかなりある。これは、一つは、私は多分、子育ての問題があるんだろう、いわゆる仕事と子育ての両立ができないということは、所得のいかんを問わず、やはり降りかかってきているのではないかという気がいたします。しかし、一番所得の高いところになって初めて家庭におみえになる割合の方が高くなるということがある。そうしましたときに、社会保障を考えていきますときに、そこのところをどう考えていくかということが今後問題になってくるだろうというふうに思っております。

 よく諸外国で、子供の数はいわゆる片働きではなくて両働きの家庭の方が多いということが言われますけれども、昨年、厚生白書をつくりますときに、日本におきまして見ましても、日本でもやはりもう既に両働きのところの方が子供の数は多くなっているということがわかってまいりまして、確かにそういう傾向が出てきております。その辺のところの分析をもう少ししないと私もなかなか次のステップに進めないなというふうに思いながら今お聞きをしたところでございまして、私もよく勉強をさせていただきたいと思っております。

和田分科員 ありがとうございます。本当に、恐らく、庶民の立場を一番代表していると自負されている公明党の大臣でいらっしゃいますので、よりきめ細やかな御対応をお願いできればと思います。

 次に移りたいと思います。

 これも、社会保障制度全般を検討していく際にどうしても国民の皆様方にぜひ理解していただきたいという内容ですけれども、去る平成十四年五月に厚生労働省の方が発表された資料に、「社会保障の給付と負担の見通し」という資料がございます、もうお手元にあると思いますが。これには、いわゆる現況にあって、社会保障の給付費と負担がどれぐらいの規模でどのような分担になっているか、それを何らかの前提を置いてずっと将来推計を進めていったときに、二〇二五年度になっておりましたが、二〇二五年度にはどれぐらいの規模に拡大し、その分担割合がどの程度になっておる、このような資料でございます。

 もう当然いろいろな議論が尽くされた上でこの資料を発表されているわけなんですが、ただ、その中でも、どうしても私として疑問だなと思うものがございますので、それを質疑させていただきます。

 いわゆる二〇二五年度の社会保障給付費として、総額の推計が百七十六兆円になっていらっしゃいます。そして、それに見合う負担が百八十兆円あるだろうというような推計をされております。この規模の巨額なことも確かに国民の皆様方によくわかっていただかなきゃいけないんですけれども、実は、この資料を御提示される際に、この資料が将来持続可能な社会保障制度をつくるために皆様方に御提示されるということに立ってみれば、もう少し内容的にいろいろなところを詰めた上で出していただいた方がいいのではないかと思った次第なんです。

 それを具体的に申し上げますが、この給付費の総額の推計に当たっては、当然いろいろな前提を置かれております。名目賃金の上昇率が一%、名目国民所得の伸びも年一%、その程度の前提を置かれておられます。それは、今度は裏打ちするものは何かと考えた場合に、個人や企業が二十何年間かの間活動されて、その国民所得や賃金の上昇率を担保されているわけです。

 しかし、この社会保障については、その給付を賄うために御負担いただく部分が企業や個人に生じておるわけですが、この負担部分を拡大するなり、できるだけ抑えるなり、とにかくそんな議論をしなきゃいけないんですが、その企業収益や個人事業の業績、それらをある程度の前提を置いて、さらに、それに対して負担の担保力があるかどうか、負担を担うだけの能力があるかどうか、そこら辺は、当然推計値なのでしかとした前提を置けないかもわかりませんが、いろいろとそういうものを回してみた上での推計になっているべきと考えますけれども、それがどうも、きのうまでにお話をお聞きすると、そうはなっていないようです。

 そこら辺については、今までの推計の取りまとめの経緯もございましょうが、これからぜひ、社会保障制度を本格的に、年金から始まっていろいろ議論していくに当たって、さらに精緻なものにしていただくための努力をお願いしたいと思いますが、大臣の御所見をお伺いします。

坂口国務大臣 ここはもう先生の独壇場でございまして、私のなかなか及ぶところではございませんけれども、実は、私、こう考えております。

 医療や年金のことをやっていきますときに、さまざまな前提を置きながらこういう値になりますという数値が出てくるわけですけれども、それにはさまざまな前提が置かれている、その前提は細かく見れば見るほどわからなくなってくる、正直なところ。

 それで、やはりそういう前提を置くということは、例えば、二〇二五年なら二〇二五年のときに日本の国がどういう国になっているか、そこに向けてどういう国づくりをするかということと年金なり医療の問題は私はセットの話だと思っておるんです。ですから、自然にこういうふうになりますよということではなくて、いわゆる政策目標というんですか、政策目的なんでしょうかね、ここへ私たちはやる、政府としては責任があります、こういう努力をしますということと政府の年金だとかなんとかというのは、私は裏表の話になってくる。

 だから、今から予測をすることは不可能なことが非常に多いわけですけれども、しかし、経済運営なり産業運営なり、いろいろのことを総合的に、政府としては、ここまで我々は行くようにこれを政策目標としますということと私はセットになる話ではないかというふうに思っております。

 したがいまして、GDPベースでいけば大体どうだ、そのためには労働生産性を一体どれだけ上げていかなきゃならないのか。現状でいきますと労働力人口というのはだんだん減っていくわけでありますから、減っていきます労働力人口に労働生産性を掛け合わせてGDPが出てくるということになれば、よほど労働生産性を上げていかなければ、片方は減ってくるわけですから、全体として維持していけない。そうすると、これを維持していけないと、我々が目指すような年金なりなんなりの額になってこないということになってくるわけでありますので、そのためにはどういう手を打つかといったようなこととこれは私はセットになってくる話だというふうに思っております。

 先生御指摘をいただきましたことに十分答えておりませんけれども、私はそこまで能力がございませんのでなかなかよう答えませんが、しかし、そういう目標を掲げてやっていく、その目標とセットにしてやはりこれは責任を持たなければならないことだというふうに私は思っております。

和田分科員 大臣の御答弁の論理構成については全く異存はございません。

 しかし、いわゆる社会保障については、負担の担い手となる個人や企業の方が注目していらっしゃいますので、その方々が、例えばこの推計値を実現しようと、その推計値が成り立つのであれば、逆算していくと、個人や企業の方がどれぐらいな平均値で業績を伸ばしていかなきゃいけないのか。もっと言えば、今般政府が提出される年金改革法案では、ずっと長期にわたって負担部分がスライドしてふえてまいりますが、そんな中で、企業の負担も個人の負担もふえていく、そのふえていく負担に耐えながらも成長していく、そういった姿をぜひ実現したいという政府の意欲もやはりお示ししていただいた方がいいんじゃないかというふうに思います。ぜひ御検討ください。

 次に移らせていただきます。

 ここから先は割と個別の事項にわたりますけれども、同じように有権者の方々から伺ってきたものですので、ぜひお答えいただきたいと思います。

 まず、一番の焦点が当たっております年金でございます。

 年金については、先ほどちょっと議論になりましたが、共稼ぎと片稼ぎとで、将来の人生設計に大きく影響を及ぼすという意見を伺ってまいりました。つまり、今焦点が当たりつつあるのは、年金の基礎年金と報酬比例部分についてどのような人がどのような負担をしているか、将来、老齢となられたときにどれだけの給付が得られるかです。

 もう釈迦に説法で余り詳しくは申し上げませんが、共働きは、二人の負担において二人の給付を受けていく。片働きは、一人の負担において、報酬比例部分を含みますけれども、二人が給付を受けていく。基礎年金については、残念ながら、概念的にはその奥さんでしょうか、だんなさんでしょうか、お一人の方は負担がないけれども給付が行われる。もうその制度については議論の余地はないと思いますが、それは、今までの歴史上、特にそれがおかしかったとは思いませんが、これからは、先ほど申し上げたような経緯もあり、より共稼ぎの方々に重点を置いた配分を実現していただければと思っておりますが、いかがでしょうか。

吉武政府参考人 先生がおっしゃるお話、中長期的にどう考えていくかというお話と、当面の話をどう考えるかという問題があるんではないかと思います。

 遺族年金で申し上げますと、夫の報酬比例年金、老齢年金ですね、に対して妻の報酬比例年金が二分の一以下の水準でございますと、夫の報酬比例年金の四分の三の遺族年金を選択するというのが最も高い選択でございます。それから、二分の一と一の間でございますと、それぞれの半分半分を選択するという形。しかし、現実にこの四分の三を選択しておられる方が八〇%強でございます。それから、二分の一、二分の一を選択される方は一〇%でございます。

 先ほどお話ございましたように、働き方は変わってまいるわけですけれども、その結果が年金の世界に出てまいりますのは六十五歳支給以降の姿になりますので、したがいまして、私どもはその両面を見ながら検討していく必要があるだろうと。

 つまり、将来の共働きの世界を前提にして、来年六十六歳になられる方の遺族年金を前提に調整をいたしますと、端的に申し上げれば、例えば今の四分の三の水準を下げていくということになりますけれども、このこと自体はまた残された遺族の生活の不安定な要因になるということでございまして、その問題は社会保障審議会の年金部会でも御議論をずっとしていただいたわけでございますけれども、さらに引き続き検討が必要だろうというのが私の考えでございます。

和田分科員 今お触れになったのは遺族年金を含めた概念についてですが、よく考えますと、年金の外にある介護保険についても同じようなことが当てはまるんだと思います。

 私がよく有権者の方からお聞きするのは、トータルで見た働く世代の、しかも共稼ぎ世帯の負担が、どんどん割合がふえておるのではないかというふうに聞いておりますので、ぜひ総合的な御検討をお願いしたいと思います。

 次に移ります。

 年金についてもう一つ。いわゆる百三十万円の壁というものが、これから所得税控除の議論が一段落した関係でクローズアップされてくるのではないかという意見がございますが、これについて厚生労働省の今後の対処方針をお聞かせいただけますでしょうか。

吉武政府参考人 三号被保険者問題をめぐりまして、幾つかの先生がおっしゃるような壁があるというふうなことがございます。

 調査で申し上げますと、税の負担でありますとか、あるいは社会保険料の負担ということで就業調整を行っているという方は、パートの方全体の二二%程度でございます。ですから、八割近くの方は就業調整は行っておられない。

 この二二%の方の理由をお聞きいたしますと、所得税の非課税限度額、給与所得控除というふうに考えまして、単身で百三万円でございますので、ここを挙げる方が七割ございます。それから、今お話にございました社会保険におきます被扶養者の概念、これは百三十万円でございますが、これを挙げる方が三割でございます。

 ただ、七割と申し上げましても、二割の方の七割でございますので一六・二%。それから、三割と申し上げましても、二割の方の三割でございますので八%程度ということでございます。

 もちろん、これはずっと議論がされてきておりまして、このことによって女性の就労の選択について中立的ではないという御議論もあるわけですけれども、ただ、そんなに圧倒的多数の方がこのことだけで御自分の仕事の選択をしておられないというのも事実でございまして、この両方をどう考えていくかということになってくるのではないかと思います。

和田分科員 現状についての統計は私も拝見しております。ただ、所得税控除の件は、御存じの経緯で、これからはもっともっとPRがなされて理解が進んでいくと思いますので、次には百三十万円がいろいろと皆様方の御関心になると思います。よく御検討いただければと思います。

 質疑時間が終わりに近づきますので、最後に一つ、保育のことだけお聞きして終わりたいと思います。

 保育の問題については、私も一児の父親でありまして、いろいろ仲間の父親、母親と議論させていただきました。そんな中で、今政府が推進されておられる待機児童ゼロ作戦というのがございます。時間がないので結論部分だけ申し上げますが、その待機児童ゼロ作戦を実現するのに、保育所の定員増加を一生懸命実現されました。そんな中で、実際に待機児童がゼロになっているかというと、どうもそうではないようです。

 この原因を見てみたときに、もう少し細かに定員を配置するなり施設を整備するなりしていただいて、一番焦点になるのはゼロ歳児保育の充実だと思いますが、ゼロ歳児で入れなかった子供の親は就労をあきらめておるという実態がかなり出ているようです。そういった点も含めて、これからぜひ本当の待機児童ゼロを実現していただくような御努力をいただきたいと思いますが、大臣の御所見はいかがでしょうか。

坂口国務大臣 待機児童ゼロ作戦を立てまして今進行中でございますけれども、御指摘いただきますように、毎年毎年、入所していただきます数をふやしていきましても、全然その待機児童の数が減っていかない。これはいろいろあるんだろうというふうに思いますが、一つは、よし、そういうふうに待機児童がゼロ作戦でどこでも入れるようになるのなら私も働こうかというふうに思われる方が、いわゆる予備軍が次から次へと出ておみえになるということもあるんだろうと。したがって、四年、五年やりまして、十五万人なら十五万人、全国で十五万人ふやしたといたしましても、やはり二万人なり三万人なりの皆さん方が後にまだ残ってくるのではないかというふうに懸念をいたしております。

 その中には、確かに、いわゆる二歳児、三歳児の皆さんだけではなくて、ゼロ歳児の皆さん方をどうするかということが一番お困りになっているんだろうと思うんですね、お父さん、お母さんとしましては。そこを預かっていただけるのなら私も早く職業に復帰をしたいというふうに思われる方が、これは私もかなりおみえになるというふうに思っております。

 しかし、ここが一番また手間がかかり、人件費がかかりするところでございますので、財政上考えますと、そこをふやすことは数からいえば非常に効率が悪くなるということもあるわけでございますけれども、しかし、これから先のことを考えますと、やはりゼロ歳児をお受けするということをふやしていく以外には、本当のゼロ作戦にはならないというふうに私も実感しているわけでありまして、そこはこれから苦しいけれどもやっていかなきゃいけないというふうに思っております。

和田分科員 ありがとうございました。私もゼロ歳児を預けた父親として、本当にここの部分は大事だと考えております。ぜひ、今後とも御努力いただければと思います。

 きょうはこれで終わります。ありがとうございました。

谷口主査 これにて和田隆志君の質疑は終了いたしました。

 次に、岡本充功君。

岡本(充)分科員 民主党の岡本でございます。

 本日、私は医療の部分を中心に大臣に基本的にお伺いしていきたいと思っております。

 私も大臣の隣の県で医師をしておりまして、大変近しいお仕事もさせていただいておりまして、私も血液センターに勤めておりました。そういった関係もありまして、先輩としてこれからも御指導願わなければならないと思っております。

 まず、幾つか、私、医師をしておりました当時、そしてまた、選挙を通じて有権者の皆様方にお訴えをさせていただいたことの一部を御質問させていただければと思っております。

 私は、医師としてこれまで勤務してきた経験をもとに、この医療の世界で最近EBM、エビデンスド・ベースド・メディシンという、この話題が大変クローズアップされております。この言葉に対しての大臣のお考え、そしてこの意義、重要性についてどのようにお考えかをぜひお聞かせいただきたいと思っております。

坂口国務大臣 EBMという言葉は、なかなか古い人間にはなじみの薄い言葉でございまして、私も最近ようやくEBMという言葉が一つの概念みたいなもので定着するようになってまいりましたけれども、しばらく暇がかかりました。

 御承知のとおり、医療に携わります者が患者さんに対しまして、一つの病気に対しましても、それに対する考え方、それに対する治療方法、予後の問題等々につきましてさまざまなことを語りかける。一つの同じ病気だから同じことを言うかといえば、全く正反対のことを言う場合もあったりいたしまして、そこが患者さんの側にとりましては非常に不信になる。そして、その方はどうされるかといえば、第二、第三の医療機関を訪れられて、そして、その中の平均値あるいは一番多く語るのは一体どういうことなのかということをそこで見きわめをつけられるというふうになっていると私は思います。そのことがまた医療費を非常にかさ上げすることに結びついているといったようなことを思っておりまして、そういう意味では、一つの病気に対しまして、本当に根拠に基づきますその内容をいかに患者さんに伝えるかということが大事でございます。

 そういう意味から、できる限り現状におきますデータを分析し、それを整えまして、そして、この病気につきましては現在こういう研究データが出ておりますということを、すべての医療機関の皆さん方にごらんいただけるようにして、できる限り最新の知見のもとに患者さんに対して接していただく、お話をしていただく、診断をしていただくということができるようにするということが一番大事だというふうに理解をいたしております。

岡本(充)分科員 今大臣がおっしゃられましたけれども、最新の知見をもとにして、まさに今、日々刻々動く医療の情報をどのように各診療機関そして病院にお伝えしていくかということは、また後ほど聞かせていただきます。それも重要な問題だと思っております。

 そういった中で、このEBMの一つに、重要なポイントとして、ランダマイズドのプロスペクティブなスタディー、こういったものを通じてその重要性を確立していくという概念があると私は考えております。私は、その中で一つだけ今回お尋ねしたい。

 私は選挙中にもお訴えしたんですけれども、私が白血病の治療をしていて使っていた薬、シタラビンというお薬があります。このお薬を大量に投与するいわゆるハイドーズシタラビン療法、この治療方法について、私は当時現場にいて、なかなか治療の承認がおりない、ロードーズ、ノーマルドーズの薬はあるけれども、それをたくさん使うことは御法度、こういうような状態の足かせの中で、多くの患者さんが命を落とされていく、こういった現場を見ました。

 厚生労働省として、ハイドーズシタラビンの有用性を認識されたのはいつごろのことだったんでしょうか。

阿曽沼政府参考人 お答えを申し上げます。

 シタラビンの大量療法につきましては、私どもに平成九年に日本の臨床薬理学会から要望が出されておりまして、遅くとも平成九年の段階で厚労省としては認識していたものというふうに考えております。

岡本(充)分科員 そういった中で、実際にこのハイドーズシタラビンが治療薬として承認申請をされたのは一九九九年のこと、平成十一年のことだったと私は理解しておりますけれども、実際にこのハイドーズシタラビン、承認されたのはいつで、さらに薬価収載されたのはいつだったんでしょうか。

阿曽沼政府参考人 承認の関係について私の方からお答えを申し上げたいと思います。

 御指摘のシタラビンの大量療法につきましては、まず急性白血病につきまして平成十一年の二月二十六日に申請をされておりまして、平成十二年の一月十八日に承認をいたしております。

 それからまた、悪性リンパ腫の関係でございますけれども、当初平成十三年八月三十一日に申請がされましたけれども、申請内容に不備がございましたために申請が一たん取り下げられまして、平成十四年の七月一日付で改めて申請がなされておりまして、その後、平成十四年の十一月十一日付で承認しているという経過でございます。

岡本(充)分科員 実際の、最初のロイケミーに関しては、承認から薬価収載までどれだけ時間がかかっていますか。

辻政府参考人 御指摘のシタラビンでございますけれども、平成十二年一月十八日に薬事法による承認を受けまして、同年四月十四日に薬価基準に収載されております。

岡本(充)分科員 この三カ月という時間はどうして必要だったのか。一刻も早く、そう思ってみえる多くの患者さんがみえて、実際に医療機関でも使いたいと思っていた中、じりじりと待たされ、多くの方が状態が悪くなっていくのを私は目の当たりにしていたんですけれども、この三カ月という時間はどうして必要なんでしょうか。

辻政府参考人 薬価の算定に至るプロセスでございますけれども、薬価の収載希望を受けましてから、まず製造業者からのヒアリングを行う。そして、ヒアリングを行った上での算定原案を作成いたしまして、そして薬価算定組織という組織を経て、その組織での議論を経ましてまず案を決めまして、それについて申請業者の不服があるかどうかを確認しまして、そして最後に中医協総会にその算定案を報告し、了承を経た上で収載するという手続がございます。極力早くすることといたしておりますが、そのために一定の日時が必要でございます。

岡本(充)分科員 薬価の件についてはもう少し時間があれば私も深く伺いたいんですけれども、実際に、世の中にハイドーズシタラビンがリンフォーマに有効だという報告が出たのが一九九七年五月のニューイングランド・ジャーナルの論文で出て、これをもとに恐らく厚生労働省に話が行ったと私は思っています。実際に、これから五年以上の歳月、五年半ですね、経て、日本でようやくこのお薬が日の目を見たという現実がある。事実です。そういったことで多くの患者さんが、実際に使えなかった方がたくさんいる。世界で標準とされている治療薬のうち、まだ日本で使われていない薬が幾らもあるということを私はよく知っていますし、そういった意味で、実はこのシタラビン、もう一つだけ言うと、実は髄注についてはいまだ承認がされていないと私は認識しています。

 薬の使用方法、そしてまたその承認の過程について、私今後ともいろいろお伺いをしていきたいと思っていますが、本日は時間がありませんので、これまでの議論を総括して大臣に御感想をお伺いしたいと思っております。そしてまた、対策があればぜひお聞かせください。

坂口国務大臣 具体的な問題は今局長から答弁をしたとおりでございますが、薬の申請、承認、認可につきましては、いろいろの御指摘が実はございまして、これは、使われます医療機関からもございますし、製薬会社からもございますし、どこに行きましても、もっと早くできるようにしてくれのお話ばっかりでございます。

 その中で、使います医療の側の皆さん方は、この薬を早くしてほしいということを言われましても、それを製造しております方の製薬会社は、それが自分たちの収益に結びつかないというふうに思いますと、なかなか申請をしないというような問題がございます。そこで、厚生労働省の中の薬務局のところに検討会をつくっていただきまして、そこで例えば抗がん剤なら抗がん剤につきまして、今何が一番必要とされているかということをそこで御議論をいただいて、そして現場で治療なすっている皆さん方から優先順位をつけていただいて、ことしはこれとこれとこれを優先的に、課題として申請に載せてほしいというようなのを出していただくという組織をつくりました。それで、そこで出していただきまして、それを優先順位の申請に回す。優先的に回されますと、それは早ければ半年、遅くても一年以内、その間にそれを承認するという一つのルールをつくりましたので、これからはそこでそうした御議論を経ますので、そんなに御迷惑をかけることはなくなるのではないかというふうに思っている次第でございます。

岡本(充)分科員 私も、その優先的な承認のシステムについて大変期待をしておりますし、特に多くの患者さんが待ってみえる分野に対しては、より迅速な対応をお願いしておきたいと思っております。

 さて、次に、今のEBMの普及をどのようにしていくかということでございますけれども、開業医の先生方は、また診療所で経営もされている先生方は、大変今お忙しいのが実情で、そのうちの幾つかは、私、毎月行わなければならない診療報酬請求が大変複雑であるということが一因ではないかと考えています。実際、そういう声をよく伺うんですけれども、診療報酬請求の簡素化について今後行っていかれる御予定があるのか、もしくは、こういった個人でやってみえる病院で、御自身でチェックまでをしなければならない病院に対しての何らかの支援をする方針があるかどうかをちょっとお聞かせいただきたいと思っております。

坂口国務大臣 大枠な話だけ私の方からさせていただきたいと思いますが、これは昨年の三月でございますか、抜本改革の柱を幾つか発表させていただきました。それで、その中の一つに、診療報酬の基本的な見直しを掲げております。ここで今御指摘をいただきましたように、東京都の電話帳のような厚いのを見なくてもやっていけるようにするためにはどうしたらいいかということだと思います。

 これは、だんだん複雑化してまいりますから、そう単純明快にはいかない面もありますけれども、一つは、やはり診療報酬の一番基本とするところ、いわゆる基準を明確にすることだというふうに思っております。だから、非常に難しい病気、軽い病気等はありますから、病気の難易度あるいは必要な時間、それからコスト、そうしたものの幾つかの基準を明確にして、それらの組み合わせによって決定をするということにして、だれからもわかりやすい、医療従事者の皆さん方が患者の皆さん方に、これはこういう理由でこう高いんだとか、これはこういう理由で低いんだとか安いんだとかいったようなことが、もう少し明らかに説明していただけるような体制を確立したいと思っているところでございます。もう一年ぐらいかかるんだろうというふうに思っておりますが、できれば次の医療の診療報酬改定、二年先の改定のときには新しい制度が導入されればなというふうに期待しているところでございます。

岡本(充)分科員 私も大いに期待をしておるところでございます。

 そして、その今の診療報酬の請求、大変複雑だという話の中で、ちょっと関連して、薬価のことで一つだけ聞いておきたいことがあるんですけれども、今薬価の決まる仕組み、先ほど局長の方から答弁がありましたけれども、こちらの方の公式、算定式というもの、もしくは薬価自体について、個別のお薬について教えていただくことができるのか。もしできないのであれば、算定の計算式だけでも提示していただく、公開していただくということができるのかどうかをお聞かせください。

辻政府参考人 薬価の算定式についてのお尋ねでございますが、これにつきましては、これまで中央社会保険医療協議会、中医協におきまして、算定方式がより客観的で透明であるということが各方面から強く求められまして、相当な議論が行われてまいりました。その結果、我が国の薬価の算定方式については、恐らく国際的に見ましても相当客観的で透明度の高いものができたと考えております。

 具体的には、まず新薬の薬価算定に当たりましては、同じ効果を持つ類似薬があるときは、この類似薬の薬価と同じ価格にする、そして一定の要件のもとで、画期的な機能があるとかいろいろなプラスアルファの機能があるときには、その要件に該当すれば一定のあらかじめ決められた加算を行うといったように、類似薬効比較方式と申しておりますが、それでまず大体、類似薬のあるものは決まります。

 そして、そのようなものがないときに例外的に原価計算方式というのを採用いたしておりまして、これについては時間がなくなりますので省略いたしますが、その原価計算方式はどういうルールで算定するかということを、ルールを全部決めております。そして、そのルールに基づきまして、先ほどお話ししました専門家から成ります薬価算定組織というところで、そのルールどおりの原価算定がなされているかということを全部チェックを受けます。そして、そのチェックを受けた上で中医協に諮られるということで、相当精緻に計算方式がルール化されており透明化されておると考えております。

岡本(充)分科員 原価の一つとなる、例えば研究開発費などは、これが大きいと私は思うんです、材料費よりも。これはある意味、申請する製薬会社が出す言い値になっているということはありませんか。

辻政府参考人 細かい話になりますが、もう少し具体的に算定方式を申しますと、薬価は製品製造原価、それから販売費、一般管理費、営業利益、流通経費、そして消費税、この大きなくくりのもとで原価の計算がされますが、今御指摘の研究開発費は販売費及び一般管理費の中に含まれるという理解がされておりまして、それにつきましては、製品製造原価、これについてはさまざまでございますが、申し立てによるさまざまな製品製造原価をいわば申し立てを受けて査定するわけでございますが、それに対しまして一定の比率を掛けるということで、その比率があらかじめ決まっておりまして、それで行うのが一般でございまして、なおかつ、その比率について、さらにその比率が高いんだというときには、その個別の事情をすべて聴取して、薬価算定専門組織で査定をするというプロセスを経ておりまして、放らつに、非常にかけたんだと言うから直ちに認められるという形には研究費についてはなっておりません。

岡本(充)分科員 時間の関係上、また改めた場でこの問題については私も質問させていただきたいと思っております。

 それではもう一つ、私知りたいので、これまた簡単で結構ですけれども、今度消費税が包括で価格表示がされるようになるんですけれども、薬価については、この消費税の分はどのように反映されるのでしょうか。実際に薬局へ卸すときのお金ですね。

辻政府参考人 基本的に、今申しました薬価算定方式のうち、原価算定方式につきましては、今申しましたように、原価の後に消費税がカウントされるという形になっております。

 それから、今までお話しした算定方式でないものにつきましては類似薬効方式となっておりますが、この類似薬効方式という、既存の類似薬のあるものにつきましては、消費税が導入されましたときにその消費税が価格に転嫁をするという部分、診療報酬の薬価に一度算定をいたしております。そういう形で、類似薬の中にそれが入っておるという形で消費税分は評価されております。

岡本(充)分科員 そうしますと、今度逆に、処方するときにはその消費税を実際に患者さんに課しているわけではないんですけれども、その部分について、この四月から薬価自体が上がるということはないというふうに理解してよろしいわけですね。

辻政府参考人 基本的には、この四月から消費税に係る薬価の変更はございません。

岡本(充)分科員 ありがとうございます。

 というところで、薬価の話は大体そこまでなんです。

 続いて、先ほどのEBMの話に戻るんですが、開業医の先生が非常に煩雑な仕事をされている中で、新しいエビデンスやガイドライン、こういったものを周知していただくということがまたなかなか難しいのも事実であると、私、はたで見させていただいていてつくづく思うんです。

 こういった意味で、多くの地域で一生懸命働いてみえる先生方にこういった部分での新しい情報をお届けする、そういった仕組みづくり、もしくは対策は何か今後とられていく予定があるのでしょうか。

坂口国務大臣 このEBMの問題につきましては、今二十種類ぐらいでき上がっております。これはもっと広げていかなきゃいけないというふうに思っておりますが、お金もかかるものですから、人手もかかりますものですから、なかなか難しい。それぞれの医学会の、例えば癌学会ですとか循環器学会だとか、いろいろなところの学会員の皆さん方にお願いをしてお手伝いいただいて、それぞれの学会でおつくりいただいたものを認めていく、それに対してバックアップをさせていただくというようなことも今やっているわけでございます。

 できるだけここの数をふやして、そして開業医の先生方に、簡単にインターネットでごらんいただければそこにすべての論文が出てくるといったような形にしていく、あるいはまた、もう一々全部お読みいただくのも大変でしょうから、そこを簡略に、大体これにはこういうことが書いてあるといったようなことがわかるようにするとか、少し工夫をしていく。それはもう開業医の先生方に全部読んでもらわなきゃならぬということになりますと、だれも見てくれぬようになってしまいますから、そこはできるだけ活用していただきやすいような内容にしていかなければならないというふうに思っておりまして、二十種類にとどまらず、これからもここの部分は少しずつふやしていきたい。

 二十種類で全体の何%ぐらい占めているだろう、二十種類で。(発言する者あり)三〇%。外来の大体三〇%ぐらいはこれでいけるということだそうでございますけれども、重立ったものだけでも、もう少しここはやっていかなければいけませんので、もう少し努力をしたいというふうに思っております。

岡本(充)分科員 今大臣おっしゃられましたとおり、私もインターネットを通じて情報をこれまで得てきておりますし、パブメドといって検索するサイトもあります。そういった意味で、全文検索することは簡単ですし、私がきょう持ってきたこういう資料も、パブメドで落として、ジャーナルから落として持ってくる、それでやって調べておるわけなんです。

 こういったもの、例えばこれを先ほど言ったハイドーズシタラビンの情報でも、これだけあるページを全部訳して読めといっても、多くの先生方に時間をとっていただくわけにはなかなかいかないという意味で、簡潔かつ明瞭に、こういった確度の高いエビデンスがある、例えば先ほど言ったプロスペクティブなランダマイズドスタディーをやったら、解熱剤の小児への使用がインフルエンザ脳症にどういうような影響を与えるかとか、そういったものについて項目別に分けて、わかるようにしていっていただけるとありがたいのではないかと私は考えています。

 そういった意味で今後ともぜひ、しっかりとした情報、確度の高い、信頼性の高い情報に基づいた医療の確立、あの先生がこう言っていたから、どこかの先生がこう言っていたからという、言っていたからではなくて、しっかりとした、統計に基づいた、情報に基づいた医療が進められていくことを私も強く望んでおります。

 そうしまして、残り時間が少なくなってまいりました。

 ここからちょっと話は変わります。

 年金の話を最後に少しお聞かせいただきたいと思っています。

 私も、これまで年金に関心を持って暮らしてまいりました一国民でございましたけれども、年金改革、今回、関連法案が大きな重要法案だと言われております。これについて、きょうなんかでも実は新聞報道で、先送りをするんじゃないか、こういったことを検討しているというようなことが報道されておりましたけれども、ぜひ大臣の意気込みを、年金を改革しなければならないという意気込みがおありだと思いますので、お聞かせいただきたいと思っております。

坂口国務大臣 これは、せっかくこうして出させていただきました法律でございますし、非常に負担と給付につきましては改革が急がれているわけでございます。

 全体としての体制、姿形はどういうふうなものを将来描くにいたしましても負担と給付はついて回るものでございますし、ここを決めなくして先に進むわけにはいかないわけでございますので、この基本にかかわります部分につきましては、ぜひとも、今国会で積極的に御議論をいただいて、そして成立させていただきたいと考えております。

岡本(充)分科員 今改革をするということについては、私ども民主党も、案は違っておりますけれども、変えなければいけない、そういう思いは持っております。私どももこの思いは強いですし、そういった中で、先般の予算委員会、私、聞いておりましたら、自民党の大野議員もこの問題を聞かれていました。年金の掛金を給付のみにしか使わないと大臣にぜひお約束していただきたい、たしかこのように質問されましたところ、これについて、私ははっきりとしたお答えではなかったと思っておりますので、もう一度意気込みをお聞かせいただきたいと思っているんです。

 年金の掛金、これまでいろいろなものに使われてきて損失を出してきた、こういった話もあります。そういった意味で、年金の掛金は給付にのみ使うんだということでよろしいでしょうか。

坂口国務大臣 先日も大野先生にお答えをさせていただきましたのは、年金のことは年金以外にはやらない、こういうふうにお答えをさせていただいたところでありまして、そういう趣旨にのっとって、これからすべてを決着つけていきたいというふうに思っております。

岡本(充)分科員 大変はっきりしたお答えで、ありがたいと思っております。

 そういった中で、大きな損失を出したものの中で、グリーンピア事業の失敗に関して幾つか今議論がなされているところだと思いますけれども、このグリーンピア事業の失敗についての責任の所在はどこにあると大臣はお考えでしょうか。

坂口国務大臣 これは私が国会に出させていただきましたころは、与野党を問わず、福祉還元をすべきである、施設をつくるべきである、こういう意見がほうふつといたしておりまして、衆議院、参議院の国会決議もございます。また、その当時は、社会労働委員会におきましても、これは昭和四十七年でございますが、この委員会の附帯決議にもございまして、支払いをしている人たちに還元をすべきだという趣旨の附帯決議が出たりいたしております。ですから、いわゆる国民の住宅ローンのかわりにするとか、あるいはまた、中小企業で働く皆さん方の休養施設をつくるといったようなことにつきましては、これは国会の意思であったというふうに私は思っております。

 ただ、それ以後の運営がうまくいっていたかどうかということになりますと、必ずしもそこは運営がうまくいっていなかった。初めの方は順調であったんでしょうけれども、時代が変わりまして、民間の立派なものもできてきた。したがいまして、ここの運用がうまくいかなくなったということは事実でございまして、そういうことがありましたので、平成十七年までにすべて売却するということに決定したというふうに理解をいたしております。その間の過去の問題はいろいろございますけれども、そうした経緯を経まして今日を迎えているということは御理解をいただきたいと思います。

岡本(充)分科員 確かに運営がうまくいかなかったというのも事実ですし、そういった部分でしっかりと、今後同じ轍を踏まないような方策をとっていただかないと、年金の大切な掛金の原資がどんどん減っていってしまう、そのことを多くの国民の皆様方が不安視されている。そういった意味で、ぜひこれからの議論の中に生かしていただきたいと思っております。

 本日は、時間になりましたので、これで終了させていただきます。ありがとうございました。

谷口主査 これにて岡本充功君の質疑は終了いたしました。

 次に、高橋千鶴子君。

高橋分科員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 初めに、小児救急の問題について質問します。

 小児科の当直医師が不在だったために小さい命が犠牲になった、二〇〇二年九月の一関市、佐藤頼ちゃんの事件は記憶に新しいところです。御両親と支援する会の方たちが、小児救急体制を拡充してほしいという三万六千人もの署名を国に提出、国会でも話題になりました。また、朝日新聞が二月十五日付で報道した全国自治体病院の調査を見ても、小児科の医師確保が最も困難と答えているように、全国的にも大きな課題となっております小児救急、小児科の医師確保の取り組みを、国としてもこれを踏まえて進めてきたことだと思われます。

 そこで、まず小児救急医療体制の確立について、どのような実施状況になっているかについて伺います。

竹本大臣政務官 お答えさせていただきます。

 昨年九月一日時点での小児救急患者を受け入れる病院の整備状況を見ますと、全国で四百六医療圏のうち百八十医療圏が整備済みであるのに対しまして、先生の御地元の東北六県に限った場合は、五十一医療圏のうち六医療圏に整備がとどまっている、こういうことでございます。これらの背景には小児科医の地域偏在がありまして、地方において小児科専門医の確保が難しい等の理由があると考えております。

 厚生労働省としましては、特に小児科医が少ない地域も含めまして、ITを活用して救急担当医と小児科専門医が情報及び意見を交換しながら治療に当たることができるような小児救急医療ネットワークの構築等の事業に対する補助を行ってきたところでございます。

 さらに、平成十六年度には、約二億円の予算を用意いたしまして、医療関係者が積極的に小児救急医療に従事できるように、地域の内科医等を対象としました小児救急に関する医師研修等の事業を盛り込み、都道府県と密接な連携を保ちながら積極的に実施に取り組んでいく予定をいたしております。

 今後とも、地域における医療関係者等の御意見を十分聞きながら、小児救急医療体制の整備を図り、国民が安心できる医療を提供できるよう努力をしてまいりたいと思っております。

 ただ、先生が御指摘のとおり、人口十万人に対して小児科医が、全国平均で二十六・五人でございますけれども、東北地方では二十二・二人と、大きい差があるのが現実でございます。

高橋分科員 ずっと先までお話をしてくれたようなところでもありますけれども、こうした中で、東北の小児科医師の不足が全国から見ても非常に厳しいという御認識かと思います。

 そうした中で、例えば国庫事業としてやってきた小児救急拠点病院が東北ではゼロであること、支援事業も岩手、宮城、福島に一カ所、秋田に二カ所という状態であります。また、いただいた資料によりますと、常勤当番医がいる医療圏が青森ではゼロ、岩手、秋田、山形が一、宮城五、福島三という状態であります。医療圏別に見ると、当直体制すらないという状態が残されていますが、その点についての御認識を伺いたいと思います。

坂口国務大臣 各地域におきまして、小児科医が非常に不足してきていることは事実でございます。その中でも、今御指摘になりましたように、北海道、東北という地域から、非常に小児科医が足りない、小児科医だけではなくて医師そのものが足りないというお声が届いておりまして、中でも小児科医が不足をしているというお話がございます。ここをこれからどうしていくかということなんだろうというふうに思います。

 先ほど政務官からお答えがありましたとおり、当面の課題としては、内科の先生にでもお手伝いをいただいて、少し小児科の研修を受けていただいて、そして小児科のことをおやりいただくといったようなことをやっていかなければなりませんけれども、将来本格的に小児科の先生をどう確保していくかということをやらないといけないわけでございます。

 国全体として見ますと、もう医師の数は足りているのではないかというふうに言われているわけでございますが、しかし、地域的な偏りがある、あるいはまた、いわゆる専門科、科別の偏りがあるということでございまして、そこをどのように是正していくかということが今後の大きな課題になると思います。ですから、今までトータルでの医師の数ということで、もうこの辺が頭打ちではないかというふうに言われてまいりましたけれども、もう少しきめ細かく、足りない科の先生をどうふやすかということに少し方向転換をしていかないといけないと思っております。

 そうしたことで今後我々も取り組んでまいりますが、それぞれ各都道府県に医学部は存在するわけでございますので、それぞれの地域におきましても、少ない科の先生方をどう確保していくかということについてお取り組みをいただくことができれば大変ありがたいというふうに思っております。

高橋分科員 国立成育医療センター総合診療部救急診療科の阪井裕一先生は、日本小児科学会への提言の中で、現在の小児救急医療の危機を乗り切るための方法は、診療依頼に対して、それが患者からであれ、救急車からであれ、ほかの医療機関からであれ、必ず受けるという基幹病院をつくることであると提言をし、その後なんですけれども、先ほど話をした一関の例について、盛岡や仙台に必ず小児の救急患者を受け付けるという基幹病院があり、直ちにいずれかに搬送できればよかったのではないかと述べております。盛岡も仙台も一関から約百キロ離れておるが、救急車で搬送すると一時間余りだという指摘であります。

 私は、実はそれできょう皆さんに地図を配らせていただいたんです。百キロというのは、この阪井先生がお話をしたわけでありますけれども、仙台市から百キロで、これはちょっと単純な図でありますけれども、円を引いてみましたけれども、東京に照らし合わせてみると房総半島から熱海の先まで入る、中にはさまざまな山脈もある。

 こういうことを、まさかそれは国の認識ではないと思っておりますけれども、百キロ離れていても救急車で搬送する、それだけの距離で拠点病院があればいいという認識ではないですよね。確認をしたいと思います。

坂口国務大臣 今進めておりますのは、いわゆる二次医療圏に一つずつ小児救急ができるような体制をどう確立するかというので進めております。特に大きい病院がないときには開業医の先生方に交代でひとつお引き受けをいただきまして、そして小児救急の担当をしていただくといったようなことを各地域で行っているわけでございまして、医師会の先生方にもかなり御協力をいただいているところでございます。

高橋分科員 医療圏に民間の先生、医師会の先生などいろいろ踏まえて御協力をいただくというお話だったと思うんです。それが、実際、今私が、ちょっとオーバーに見えたかもしれないけれども、この百キロの空白に近いことが起こりつつあるんではないかということでお話をしています。

 二月二十四日付の河北新報で、「小児医療「空白」の危機」という記事が出ました。宮城県県北の三つの医療圏、気仙沼、気仙沼はちょうど仙台から百キロのところにありますが、登米、栗原にある公立病院のうち、小児科医師の常勤医が三人しかいないが、四月からたった一人になるということであります。

 この記事を見て、すぐその日のうちにこの三医療圏の隣にある古川市の男性からメールが来まして、ここでやっている民間の病院が小児科が廃止になって、全体として市民病院の二人の常勤の医師しかいなくなるという訴えでありました。ですから、一斉に仙台に行かざるを得ない、あるいは盛岡に行かざるを得ない、こういう状況が生まれてくると思うんですね。第二の頼ちゃん事件が起こってもおかしくはない、そういう事態ではないかと思うんです。

 ですから、このことをやはりどのように認識するのかということと、国がやっている補助事業、支援事業や、初期救急医療推進事業など今十五地区にとどまっておりますが、箇所を思い切ってふやすなどの対策を考えるつもりはないか、もう一度伺います。大臣にお願いします。

坂口国務大臣 私が答えるということになりますと、余り具体的なことは答えることができませんから大枠の話になりますから、お許しをいただきたいというふうに思いますが。

 先ほど申しましたように、二次医療圏に一つずつはつくっていくという前提のもとに今進めているわけです。ところが、正直言ってなかなか進んでいかない地域がある。そこを一体どうするかということで、余り少ないところにつきましては、隣同士の二次医療圏の二つに寄っていただいて、そこで一つつくるようなことをまずやっていくといったことも今行っているところでございます。

 それぞれの都道府県におきまして、やはり、自分の県、あるいはまたその隣の県とあわせて、あるいは東北全体でいいんですけれども、東北として一体どういうふうに今後していくかというようなお話も多分していただいていると私は思うんですね。自分たちの地域の中で小児科をいかにふやしていくかということも、私はお話をしていただいているというふうに思うんです。これはかなり積極的に取り組んでいただかなければいけない問題でございまして、地域によりましては、自分たちの地域にいかにして小児科医をつくるかといったことについて積極的な対策をお考えになっている地域もございますから、そうしたことを今後しっかりおやりいただかないといけないと思っております。

 国全体として行いますことは国全体としてどうするかという問題になりますので、地域別の問題につきましては地域でもお取り組みをいただかなければいけないというふうに思っております。

高橋分科員 何か次の質問にかかわることが出てきたなと思うんですが、その前に聞きたいことがあります。国としてやるべきことの問題ですけれども、指摘されてきた国立病院の小児救急への参加についてです。

 十四年の十二月四日付で、「小児救急医療提供体制の確立に向けた支援・協力について」ということで、厚生労働省として国立病院にも依頼をしているようですけれども、東北における進捗状況はどのようになっておるでしょうか。

冨岡政府参考人 国立病院・療養所といたしましては、小児科医師の常時当直、それから地域の小児救急医療支援事業などへの参加、こういったことを通じまして地域の小児救急事業にできるだけ協力してきておるところでございます。

 御指摘のございました平成十四年十二月の通知前後の進捗状況を申し上げますと、平成十四年十月時点では全国で五十四の病院・療養所がこのような事業を実施しておりましたが、通知が出ましてから半年後の十五年四月には五十九施設に実施施設がふえてございます。

 しかしながら、東北地方における状況を見てみますと、先ほど来の議論で、小児科医の確保が非常に困難である、それから、地域における小児救急医療体制の整備に向けた取り組みが必ずしも進んでいないという状況があるわけでございまして、こういった背景の中で先ほどの数字を東北地方について見ますと、十四年十月には一、仙台病院で実施しておりましたが、十五年四月時点では福島病院一病院がふえております。

 以上でございます。

高橋分科員 要するに、仙台の病院と福島の療養所一つずつという到達でありますよね。東北においてはやはり非常におくれている。

 一方では国立病院の統廃合を進めている。国立療養所盛岡病院を初め国立療養所の小児科常勤医師そのものが減っているわけですよね。せめてここをしっかりと確保する、こういう点での国の責任というのを発揮するべきではないかと思いますが、もう一度伺います。

冨岡政府参考人 ただいま具体的にお話ございました盛岡病院につきましては、小児科医師の不足の中で、特にそれまで四名おりました小児科医が、大学から派遣という形でお願いしておりましたが、そういったことがままならなくなりまして、小児医療につきまして非常に思うようにいかないという実態があるということは事実でございます。

 そういった中で、全国的には、小児医療の振興ということにつきましては、国立病院・療養所として、先ほど通知の話が出ましたが、取り組みを進めてきておりますが、これから、四月から、国立病院・療養所は国立病院機構ということで独立行政法人になることになっておりますが、今後国立病院機構がどのような医療を推進するかということが議論になっておりまして、そういった中でも、この小児医療の振興ということにつきましては重要な課題として検討しておるところでございます。

高橋分科員 今あえて独法化のお話をされたということは、小児救急のおくれがある、特に東北においては医師不足が非常に深刻である、しかし四月からは独法化だしという点では、国はそういう中でどう責任を果たしていくのか。独法化なんだから責任ないと言っているように聞こえますが、そうではありませんよね。もう一度確認したいと思います。

坂口国務大臣 これは地域の大学病院も含めていろいろお話し合いをいただかなければならないことだと思います。

 大学病院というのは、教育、研究、そして医療、その三つをよく言われますけれども、それにもう一つ、私は地域医療というものが大学病院の抱えております柱だと思っております。地域医療というのが一つの大きな柱だと思っている。しかし、ややもいたしますと、大学病院というところは地域医療のことを忘れてしまう可能性がございまして、それではやはりぐあいが悪いと思うんですね。これは文部科学省の管轄でございますから、私が余り余分なことを言うとしかられるわけでございますけれども、しかし、それは私はかねてからそう思っております。

 ですから、それぞれの地域で、例えば四人も国立病院におみえになった小児科の先生が全部引き揚げられたのか、中には開業された人があるのか、よくわかりませんけれども、やはりそこは大学病院等ともよくお話しをいただいて、そして拠点病院に対しましてはやはり配置をしていただくような話し合いというものがそれぞれの地域でなければならないというふうに思うわけです。

 もちろん国の責任もありますけれども、地域地域でのそうした責任というものも私はあるというふうに思います。

高橋分科員 ぜひ、この小児科医の問題については、大臣おっしゃったように、大学病院、文部科学省とも大いに相談をされて、医師の派遣ができる体制をお願いをしていただきたいと思います。

 それで、次の話題に移りたいと思うんですが、今大臣が大きな柱だとおっしゃった地域医療の問題で、今私は地域医療が後退するのではないかと非常に心配をしていますので、その点でお話を伺いたいと思います。

 そのかなめとなる自治体病院の問題であります。昨年十月に青森市で開いた、全国自治体病院開設者協議会等が開いた自治体病院改革サミットでは、全国、特に地方の自治体病院は今医師不足と経営難で存立の危機に立たされていると訴えています。また、東北の各県にとっては大変羨望のまなざしだった岩手県、県立病院を二十七も持ち、地域医療の先進例として言われてきた岩手県が、今、サテライトシステムの導入などを生かして県立病院の再編を進めるとうたっており、この点について地域から診療所化では対応できないという非常に悲痛な声が上がっています。

 十五年の八月、医療提供体制の改革のビジョン、厚生労働省が発表したこのビジョンでは、「医療計画において、二次医療圏における公的病院等の特定の役割や医療機関相互の連携方策等を定め、地域の実情に則して公的病院等の在り方を根本的に見直し、必要に応じ病床数を削減する。」としておりますが、自治体病院の役割について、また今後の方向性についてどのように考えていらっしゃるのか伺います。

竹本大臣政務官 御指摘の医療提供体制の改革のビジョンでございますが、この中で、自治体病院を含みます公的病院のあり方について、今先生おっしゃったとおり、地域の実情に即して根本的に見直す、必要があれば病床数の削減も行う、また会計基準を見直すことによりまして運営の効率化を促進します、こういったことを盛り込んでおりますが、中でも、公的病院につきましては、地域における医療提供体制の整備を図る観点から、僻地医療、救急医療等の確保において重要な役割を期待しているところでございます。これまでも必要な支援を政府としては行ってきたところでございます。

 また、平成十四年十二月から、中央省庁レベルで公的病院等に関する関係省庁連絡会議を開催しておりまして、この中で、都道府県等の単位で公的病院等や民間医療機関の関係者、医療行政担当者などを構成員とした協議の場を設置いたしまして、地域の実情に応じた公的病院等の役割やあり方の見直し、あるいは民間医療機関との連携の確保、こういったものを図るよう関係者に要請しております。

 要は、病院側と市町村側だけじゃなくて、第三者機関といいますか、民間医院等も含めまして、より総合的な立場で地域の医療はどうあるべきかということを皆さんで話し合おう、こういうことにしております。

 今後とも、関係の省庁とも十分連絡をとりまして、地域における質の高い医療を効率的に提供できる体制が整備できるよう、必要な支援を行ってまいりたいと考えております。

 先ほど先生御質問の小児救急医療におきましても、親というのは子供が病気になるといても立ってもたまらないから、できるだけ専門医に見せたいという御要望がございます。ところが、東北のような遠隔の地ではなかなか専門医が近くにおられない。そこで、その問題をどうするかということでございますけれども、小児科医を適切に配置することが一番ベストな形でございますが、それが十分いかない現状の中で、ITを活用したいろいろな方法を使いまして、小児の専門医から現地における専門外のお医者さんに小児への対応の仕方を教えたり、あるいは研修を実施したり、そういったことでできるだけ現実的にこういった救急医療の体制を組んでいこう、そういうことで政府も予算面でも努力をいたしておるところでございます。

 以上です。

高橋分科員 例えば、青森県の下北地域保健医療圏の再編計画を見ますと、むつ市の総合病院を中核病院として、大畑町と川内町の二つの病院を診療所にするというものであります。この川内町というところでは、病床数が三十で、利用率が半分くらいだということで、ベッド数が削減ということが言われておりますが、いずれは、診療所になれば、一人の医師、あるいは無床化になるのではと住民が不安の声を上げているんです。民間の医師が一人もおりません。中核病院と位置づけるむつ市まで車で一時間、中心部に出るまで三十分、合わせて往復で四時間かかるという状態であります。そうしたところで声が上がっています。

 あるいは、西北五という津軽半島の地域の方になりますけれども、そちらの方では二つの町立病院の縮小、一つ廃止、一つは無床の診療所化などが決まっています。「車のない私たち年寄りには、五所川原は遠過ぎて行けない」という声、「四月から急に産婦人科がなくなると言われた。西郡ではもう産婦人科がないので、仕方なく五所川原にまで検診に来ている。自分で車を運転しているのですごく疲れる。出産が近くなり陣痛が始まったときのことを考えるととても心配になる」、そういう女性の声などが聞かれています。

 このように、今地域医療が本当に危うい状態になっていると思われますが、もう一度大臣の認識を伺いたいと思います。

 それから、総務省に対しては、自治体病院の経営についてどのように指導されているのか伺います。

山口政府参考人 お答えを申し上げます。

 自治体病院に対する支援ということでございます。

 まず、財政的な支援について申し上げますと、自治体病院の財政運営につきましては、経費を経営に伴う収入によって賄う独立採算を原則としておりますけれども、その性質上、すべての経費を料金収入でカバーすることが困難なものもございます。したがいまして、その部分につきましては、一般会計から繰り出すというような措置も行われているところでございます。

 例えば、保健衛生等の一般行政経費、あるいは僻地医療等不採算経費などにつきましては、そういった繰り出しが行われておりますけれども、地方公共団体がそのような繰り出しを行うための所要額につきましては、毎年度、地方財政計画に計上して、地方交付税等による措置を講じているところでございます。

 このような財政的な支援をしておりますけれども、自治体病院につきましては、いろいろお話がございましたように、離島、山間等の僻地医療や救急医療、高度医療といった、他の医療機関では果たすことが困難な分野における役割を担っておりまして、採算面では非常に厳しい状況に置かれているわけでございます。そのため、先ほどの繰り出しとか、そのための所要の財政措置を講じているわけでございますけれども、現下の厳しい経営環境の中では、より効率的な経営に努めていただく、経営の健全化を図っていただくということが必要でありますし、また、経営基盤を強化するという観点から、再編、ネットワーク、そういったような見直しというものも必要なことであろうというふうに考えているところでございます。

坂口国務大臣 総務省からお答えのあったとおりでございますし、もう私の方から余り言うことはございませんが、地方自治体病院というのは、それなりにそれぞれの地域の政策医療というものを担当していただかなければならないわけでありますから、普通の一般病院と違った側面も私はあるというふうに思っております。

 したがいまして、すべて採算性にのっとってやっていけるかといえば、そうした政策医療を持っているがゆえにやっていけない側面もありますから、そこは理解をしなければならないところだと思っておりますが、しかし、自治体病院だけではなくて、公的な病院がすべて赤字というのでは、これはやはりいけないわけでありまして、それぞれの病院も御努力をいただかなければならないというふうに思っている次第でございます。

高橋分科員 今の大臣のお言葉、やはり地域医療を担っている自治体病院が民間の病院とは違った側面を持っている、すべて採算性だけでははかれないということを、本当に大事なお言葉なのかなと思っております。赤字がどんどん進んで再編しなくちゃいけないというふうな話にはなっているけれども、しかし、地域の医療で本当に空白のところがあってはいけない、あるいは、経営を何とかするために極端なサービスの後退があってはいけないということは、指摘をしておきたいと思います。

 最後に一言だけ。二十六日に、三省によって地域医療に関する関係省庁連絡会議が行われて、「へき地を含む地域における医師の確保等の推進について」というのがまとめられました。この中で、都道府県を主体として、医師確保体制など地域における医師採用、確保のための新たなシステムの検討を行うということが盛り込まれておりますが、この中身について一言伺いたいと思います。

坂口国務大臣 そんなに詳しいことはここで決まっているわけではございませんが、今お話がありましたように、総務省、文部科学省そして厚生労働省の間で連絡会議が開かれまして、地域における医師確保のための新たなシステムの検討ということがそこで議論をされ、そしてそこが位置づけられたところでございます。

 大学によります医師の配置システムが大きく変わろうとしております中で、幾つかの都道府県において、都道府県を主体とした医師の採用だとか僻地への配置等を実施、検討しているところがあるということでございます。大学病院がすべて派遣をするのではなくて、そうではない、自分たちで医師をある程度確保しておいて、さまざまなところにそれを配置すると申しますか、そうしたことを自分たちでやろうという試みが、かなりの都道府県におきましてもうでき上がりつつあるということでございますので、そうしたことをこれから進めていくことについて、国の方としてもバックアップをしていかなければならない、そうしたことでございます。

高橋分科員 自分たちでやるということだけが強調されると、また自治体の負担がふえるということになりますので、それに対して国が支援をしていって新たな医師確保のシステムができていくということにぜひ期待をしたいと思いますので、強く要望しておきます。

 ありがとうございました。

谷口主査 これにて高橋千鶴子君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして本分科会の審査はすべて終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 分科員各位の御協力によりまして、本分科会の議事を終了することができました。ここに厚く御礼申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午後三時六分散会


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