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第1号 平成17年2月25日(金曜日)

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本分科会は平成十七年二月二十二日(火曜日)委員会において、設置することに決した。

二月二十四日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      金子 一義君    後藤田正純君

      津島 雄二君    根本  匠君

      辻   惠君    中津川博郷君

      照屋 寛徳君

二月二十四日

 後藤田正純君が委員長の指名で、主査に選任された。

平成十七年二月二十五日(金曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 後藤田正純君

      金子 一義君    谷  公一君

      津島 雄二君    根本  匠君

      宮下 一郎君    市村浩一郎君

      辻   惠君

   兼務 加藤 勝信君 兼務 西村 康稔君

   兼務 大谷 信盛君 兼務 岡本 充功君

   兼務 川内 博史君 兼務 中川  治君

   兼務 中根 康浩君 兼務 中村 哲治君

   兼務 楢崎 欣弥君 兼務 高木美智代君

    …………………………………

   厚生労働大臣       尾辻 秀久君

   文部科学副大臣      塩谷  立君

   厚生労働副大臣      衛藤 晟一君

   厚生労働副大臣      西  博義君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局審査局長)        楢崎 憲安君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 加藤 治彦君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   松元  崇君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           泉 紳一郎君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           大槻 勝啓君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  岩尾總一郎君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  田中 慶司君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局長)            阿曽沼慎司君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            青木  功君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長) 金子 順一君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       伍藤 忠春君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           小島比登志君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    塩田 幸雄君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  中村 秀一君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  水田 邦雄君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  渡辺 芳樹君

   政府参考人

   (社会保険庁運営部長)  青柳 親房君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           和泉 洋人君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局次長)           平田憲一郎君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月二十五日

 辞任         補欠選任

  津島 雄二君     谷  公一君

  中津川博郷君     市村浩一郎君

  照屋 寛徳君     阿部 知子君

同日

 辞任         補欠選任

  谷  公一君     山下 貴史君

  市村浩一郎君     中津川博郷君

  阿部 知子君     照屋 寛徳君

同日

 辞任         補欠選任

  山下 貴史君     宮下 一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  宮下 一郎君     三ッ矢憲生君

同日

 辞任         補欠選任

  三ッ矢憲生君     津島 雄二君

同日

 第一分科員西村康稔君、大谷信盛君、川内博史君、中村哲治君、高木美智代君、第三分科員岡本充功君、第六分科員中川治君、中根康浩君、第七分科員加藤勝信君及び第八分科員楢崎欣弥君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十七年度一般会計予算

 平成十七年度特別会計予算

 平成十七年度政府関係機関予算

 (厚生労働省所管)


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     ――――◇―――――

後藤田主査 これより予算委員会第五分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりました。よろしくお願いいたします。

 本分科会は、厚生労働省所管について審査を行うことになっております。

 平成十七年度一般会計予算、平成十七年度特別会計予算及び平成十七年度政府関係機関予算中厚生労働省所管について、政府から説明を聴取いたします。尾辻厚生労働大臣。

尾辻国務大臣 平成十七年度厚生労働省所管一般会計及び特別会計予算の概要について御説明申し上げます。

 平成十七年度厚生労働省所管一般会計予算の総額は二十兆八千百七十八億円であり、平成十六年度当初予算額と比較いたしますと六千二百六十八億円、三・一%の増加となっております。これは国の一般歳出の四三・九%を占めております。

 以下、その主要施策について御説明申し上げます。

 まず、三位一体改革につきまして、国民健康保険の都道府県負担の導入や地方向け補助負担金の移譲、地方の創意工夫や裁量性を高めるための交付金化等を行うこととするとともに、介護保険制度の構築など所要の項目を掲げております。

 次に、各分野の内容につきましては、第一に、国民の健康寿命を延ばすことを目標に、働き盛り、女性、高齢者といった国民各層を対象に、生活習慣病対策と介護予防を推進するとともに、それらを支える科学技術の振興を図るため、健康フロンティア戦略を推進してまいります。

 第二に、少子化の流れを変えるための次世代育成支援対策を強力に推進してまいります。このため、地域における子育て支援対策や、児童虐待防止対策の充実、待機児童の解消に向けた取り組みを引き続き推進するとともに、子育て生活に配慮した働き方の改革を推進してまいります。

 第三に、働く意欲が不十分な若年者、無業者の増加など新たな課題に対応するための若年者の雇用対策として、若者人間力強化プロジェクト等を推進するとともに、再就職を促進するために企業ニーズ等に対応した職業能力開発等を推進してまいります。

 第四に、雇用のミスマッチや地域差の見られる雇用失業情勢等に対応するため、地域の雇用創造に向けた取り組みに対する支援、官民が連携した効果的な職業紹介の推進などの雇用対策を進めてまいります。

 第五に、持続可能な介護保険制度を構築するため、予防重視型システムへの転換、施設給付の見直し、新たなサービス体系の確立など見直しを行うとともに、サービス提供体制の整備や質の向上等を図ってまいります。

 あわせて、高年齢者等の雇用就業対策について、六十五歳までの雇用機会の確保等を図ってまいります。

 また、年金制度については、持続可能な制度へと見直した昨年の改正で定められた基礎年金国庫負担割合の二分の一への引き上げに向け、国庫負担上乗せの措置を講ずることとしております。

 なお、年金事務費については、国の財政が極めて厳しい状況にあることを踏まえ、効率化を図るとともに、保険料負担の対象となる事務費の範囲を明確にした上で、特例措置を継続することとしております。

 第六に、障害者施策につきましては、地域における自立生活の支援のための制度改革、精神障害者の保健福祉施策の充実、障害者の雇用及び職業能力開発の推進を図るとともに、年金を受給していない障害者への特別給付金の支給を行うこととしております。

 さらに、生活保護制度の適正な実施を図るため、生活保護受給者の自立・就労を支援するための施策を推進してまいります。

 第七に、重大な労働災害の発生防止や賃金不払い残業の解消など、だれもが安心して安全に働ける環境づくりを推進するとともに、公正かつ多様な働き方を実現できる環境の整備を図ってまいります。

 第八に、医療安全対策、救急医療の充実など、安心で質の高い医療提供体制の構築を図るとともに、感染症及び疾病対策を推進してまいります。

 第九に、重篤副作用の早期発見等の予測・予防型安全対策の推進、医療機器審査の充実、血液対策の推進など、医薬品、医療機器の安全対策を推進するとともに、食品添加物の安全性確認や残留農薬基準の策定、輸入食品、健康食品の安全対策の強化など、食品安全対策を推進してまいります。

 あわせて、医薬品、医療機器産業の国際競争力の強化、健康危機管理体制の強化を図ってまいります。

 以上のほか、世界保健機関や国際労働機関等を通じた国際活動の展開、戦没者等の遺族に対する特別弔慰金の支給を初めとする戦傷病者、戦没者遺族や中国残留邦人などの援護対策、原爆被爆者対策、生活衛生関係営業の振興策、ホームレスの自立支援等の諸施策を推進してまいります。

 なお、委員各位のお手元に資料が配付されておりますが、一般会計及び特別会計予算の主要経費別概要につきましては、お許しを得て、説明を省略させていただきます。

 今後とも、国民生活の保障、向上と雇用の安定を図るため、厚生労働行政の推進に一層努力してまいりますので、皆様のなお一層の御理解と御協力をお願い申し上げます。

後藤田主査 この際、お諮りいたします。

 厚生労働省所管予算の主要経費別概要につきましては、その説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

後藤田主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

後藤田主査 以上をもちまして説明は終わりました。

    ―――――――――――――

後藤田主査 この際、分科員各位に申し上げます。

 質疑時間はこれを厳守され、議事の進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。

 なお、政府当局に申し上げます。

 質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。谷公一君。

谷分科員 兵庫区の谷公一でございます。質問の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 ことしは、阪神・淡路大震災から十年になりました。まず、そのときの災害援護資金について、大臣にお尋ねをしたいと思います。

 当時、私も兵庫県庁にいたわけでございますが、全国からたくさんのボランティアの方、そして義援金もいただきました。たしか千八百億円ぐらいいただいたのではないかと思いますが、何しろ被災の程度がけた外れでございましたので、それぞれの被災世帯にはせいぜい数十万円しか行かなかった現状にあったと思います。また、その後、住宅なりあるいは家財道具購入のための生活再建支援金、あるいは、昨年はそれにプラスアルファして居住安定支援金、最高三百万という制度もできたわけでございますが、当時は何もなかった。

 そこで、厚生労働省、当時の厚生省所管の災害援護資金がたくさんの被災者の方に貸し付けられたという現状にございます。五万六千四百二十二人という、六万人近い人に、何と一千三百十億円も貸し付けた。一人頭平均二百三十万円という額であります。

 当時、これはたしか平成七年の春と秋二回に分けて、とにかく何とか生活再建の支援をという被災者の声にこたえる形で、国なり自治体が、この制度をフルに使ってほしいということで一生懸命PRして貸し出しはしましたけれども、しかし、当時から、やはり懸念は少なからぬ人が持っていたかと思います。私もそうでした。返ってくるんだろうか。特例で据置期間が三年から五年に延ばされて、そして五年償還、合わせて十年以内に、十年を最終年限として返さなければならない。大変心配していたわけでございます。

 そこで、そういった情勢を踏まえまして、まず小島局長にお尋ねをしたいと思います。

 今のままの推移でいきますと、借り受け人から神戸市とか西宮市とか、そういう市町への最終返済期限時点での見込み額はどれぐらいになるというふうに見込んでおられるのでしょうか。

小島政府参考人 お答えいたします。

 災害援護資金のお尋ねでございますが、市町村から被災者に貸し付けられました災害援護資金の償還期限については、今御指摘のように十年ということでございまして、阪神・淡路大震災に係る被災者への貸付金につきましては、この三月から順次償還期限を迎えることになります。一番大きいところの神戸市ではこの五月からということになります。

 兵庫県におきます災害援護資金につきましては、償還期限まで半年を残しました平成十六年九月末段階でございますが、貸付総額一千三百八億円に対しまして約三百七十四億円、二九%がいまだ償還されていない状況であるというふうに聞いておるところでございます。

谷分科員 まだ相当額が最終返済期限時点でも残るのではないかと思っております。私の試算というか推測といいますか、今までの傾向から見ますと、その時点で三百億近く残るのではないか。神戸市がそのうち三分の二の百九十億から二百億、残りがその他の市町ということではないかと思います。

 さて、そういうことで、実は五年前から、五年償還といっても、平均二百数十万円借りている、なかなか借りている方にとっては重たい負担になっているということで、少額償還制度という制度を使っております。現在、一万三千人もの方がこの制度を利用しているということであります。

 では、どういう人が利用しているかといいますと、神戸市の場合ですと、収入ベースで大体二百二十万から二百三十万円ぐらいの年間収入の人がそれを利用している。計算上、生活保護の計算のようにずっといろいろモデルで、震災時の二重ローンとか医療費とか教育費などの毎月の生活分を引いて、ではどれぐらい償還可能かと計算すると、出てこない、ゼロということであります。しかし、大体一万円以上は少額償還制度を利用して償還している。六十歳以上の高齢者の場合ではもっと厳しい状況で、平均すると、月七万円程度の年金から、その中で衣食住のすべてと一万円程度の償還をしている、こういう大変厳しい状況であります。

 平均すると、そういう少額償還制度を利用している人が満期でどれぐらい残額があるかというと、神戸市の場合、百八十五万、百八十万から百九十万ということであります。では、連帯保証人に求めればいいんじゃないかというのが理屈でありますが、しかし、現実の連帯保証人の所得の水準というのは借りている人よりもさらに低い、とてもそんなものを求められる状況ではないということであります。

 では、それぞれの自治体は、そういう借り受け、少額償還制度を利用している方にどう言っているかというと、この少額償還制度というのは最終期限までの措置であり、場合によっては最終期限に残高の全額返済を求めることもあり得ると、厳しいことを言わざるを得ない状況であります。大変酷な状況であろうというふうに思います。

 しかし、常識的に考えて、五年前に少額返済を認めた時点で、返済期限が十年、そういう期限は延長が避けられないというふうに判断したと見るのがごく自然ではないかというふうに私は思っているところでございます。したがいまして、借り受け人から市町への最終返済期限後も、それぞれの自治体の判断によりこの制度を継続することは可能であるというふうに、大臣、理解させていただいてよろしいでしょうか。

尾辻国務大臣 それぞれの地方自治体の御判断がどうなのかという御質問でございますから、改めてお答えいたしたいと思います。

 今のようなお話、国から自治体に貸し付けられた災害援護資金の償還について、神戸市からもいろいろ御要望もございます。そうしたことは承知をいたしております。

 ただ、国への償還額を実際に今お話しのようなことで返さずに猶予するような、地方自治体から国へということでいいますと、いろいろまたございますけれども、まずこの仕組みの基礎的なことで申し上げますと、御案内のように、災害とか盗難だとか疾病、負傷の著しい生活困窮などの経済的な理由により、支払い期日に償還金を支払うことが著しく困難な場合には、災害弔慰金の支給等に関する法律施行令に基づき、市町村の判断で償還金の支払い猶予を行うことができる、これはもう御案内のとおりでございますけれども、そういう仕組みになっておるということをまず申し上げたいと存じます。

谷分科員 ありがとうございます。

 実は、なかなか自治体の方は、まず、借り受け人から市町への返済も、最終期限が来てもそのまま継続できるかどうかということは大変疑義があって、はっきりと大丈夫ですということは言い切っていないんです。そういう意味で、今大臣の方から、こういう場で初めて、最終期限が来た後も少額償還制度を市町の判断で認めてよいというふうに答弁していただきましたことを、大変感謝いたしております。

 そしてその次であります。

 では、そうであるならば、今大臣少し触れられましたが、市町と借り受け人との関係はそれで引き続き、今後何年になるのか、あるいは十数年になるのか、返済を求めていくにしても、今度は、これは神戸市そして兵庫県から国に資金を返さなければならない。この貸付金の原資三分の二が国であります。残り三分の一が兵庫県、それから政令市である神戸市ということであります。

 そうしたら、今のままでいくと、神戸市は平成十八年度に、そして兵庫県は十八年度に神戸市を除く市町から兵庫県に返りますので、十九年度に国に、借り受け者からは返ってこないけれども、とにかく返さなければならない、しかもその額が、ざっとした見込みで三百億近い金額を返さなければならない、こういう事態に遭遇するわけであります。したがいまして、そういう償還の回収実績に応じて国庫に償還する、そういうようなことをぜひ考えていただきたいというふうに思います。

 いろいろな自治体、神戸を初め尼崎でも、既に悪質な滞納者を裁判に訴えています、強制徴収の手続に乗り出しています。神戸市の場合ですと十二件というふうに聞いております。そういうことを、自治体の一生懸命に行っている取り組みを思うならば、やはりそういう温かい、いや、何も放棄しろなんということを私は言っているわけじゃないのです、国への償還を借り受け者からの償還に応じてできるような、そういうふうな仕組みに変更していただけないかという要望の質問でございます。よろしくお願いいたします。

小島政府参考人 まず、私の方から制度的な趣旨の説明だけ申し上げたいと思います。

 今先生言われましたように、この災害援護資金につきましては、国が県に貸し付けをする、県は市町村に貸し付けをする、市町村が被災者の方に貸し付けをする。国から県、県から市町村に行く場合には無利子の貸し付けでございます。市町村から被災者の方に行くときには、原則年三%の利率をお支払いいただいているということでございます。

 では、返済するときはどうかといいますと、なかなか市町村で全部の方から貸付金を回収することが困難な場合がございますが、県あるいは国に返還するときには貸付金の全額を償還していただく。その場合には、利率三%を、例えば貸付金回収のための努力の事務費に充てたり、あるいは貸付金を返すときにそれで充当したり、それで三%の利息をそこで各市町村は被災者の方からちょうだいをしているということでございます。

 そういう仕組みの中で、実際に市町村が被災者の方から貸付金を回収した額だけを県あるいは国に返すということになりますと、今までの例から申し上げますと、今までは、いろいろな市町村で災害に遭われて災害援護資金を借りられましたが、期限が来たところは全部、全額国に償還をしていただいておりますので、それの均衡との問題等が生ずるのではなかろうかというふうに考えているわけでございます。

谷分科員 今局長が言われた三%の利子の話ですけれども、実は貸付金の原資三分の二は国から無利子で貸していただける。しかし、残り三分の一は地方、兵庫県なり神戸市が起債を起こして財源を調達しているわけですから、その利息も返さなきゃならない、そういうことがあるということが一つ。

 それからもう一つ、阪神・淡路大震災以外の例では皆返しているのではないかということですが、それはおっしゃるとおりです。しかし、冒頭に申しましたように、国費のベースでいっても全くけたが違うわけです。これは、昭和四十九年、一九七四年から今まで三十年間この制度があって、累計の貸付額は国費のベースで一千百億ですけれども、阪神・淡路で八百八十億です。ですから、ほかの、阪神・淡路までは計算すると大体年九億程度、十億にもいってなかった。そして、阪神・淡路以降は、ほかの制度がいろいろ拡充されたということでわずか四億なんです。ですから、いかにこの阪神・淡路の額が多かったか。そして、被災者への支援が必要だったにもかかわらず制度ができてなかったから、この制度でみんなすがった。

 そういうことも踏まえて、もう一度大臣に、借り受け者から市町に償還される、そういう実績に応じていくようなことをぜひ前向きに検討していただきたいというふうに思うんですけれども、よろしくお願いいたします。

尾辻国務大臣 まず、先ほど申し上げましたように、市町村と借りておられている方との間というのは、これは償還金の支払い猶予を行うことができる、これはまず申し上げました。

 そして、これは先生がお触れになっておりますように、少額の償還など認めておりますから、こうした方々の償還金の支払い猶予の場合が多くなるということも、私どももそういうふうに考えております。

 そこで、その後、国へ返していただくことについてどう考えるかということでありますけれども、局長が理屈は申し上げました。理屈はあのとおりであります。しかし、また一方、先生がおっしゃったような御事情がございます。その神戸市や兵庫県の御事情を踏まえまして、現在、どのような対応が可能であるかについて、関係省庁との間で協議を行っておるところでございます。

谷分科員 ありがとうございます。大変前向きに協議を進めておられるということで、ぜひいい方向に行くようにお願いしたいと思います。

 一つだけ大臣に確認なんですが、先ほどもお話しさせていただきましたが、神戸市は今のままでいくと平成十八年度に予算化しなければならない、兵庫県も十九年度に予算化しなければならない。そうなると、その協議のめどは、今年度中、つまり自治体の予算編成に間に合うのをめどにされる、協議を調えていくというふうに理解させていただいてよろしいでしょうか。

尾辻国務大臣 今お話しのように、平成十八年春には神戸市から国への償還期限を迎えます。このことを踏まえまして、関係自治体の事務執行に支障が出ませんように、神戸市や兵庫県とも十分相談をしながら、年内を目標としてできる限り早く結論を出したいと考えております。

谷分科員 ありがとうございます。ぜひ前向きな結論を出していただくよう、情豊かな尾辻大臣に期待をいたしたいというふうに思います。

 時間も大分たってまいりましたので、次に、児童虐待について一問だけお尋ねしたいというふうに思います。

 なかなか虐待は減りません。平成十二年に児童虐待防止法が施行され、その後もやはりふえ続ける一方であります。昨年は、そういった事態を踏まえて、法施行後の状況も踏まえて虐待防止強化のための法改正をされたところでございます。

 そこで、児童虐待防止対策の課題というのは私はいっぱいあると思います。虐待の予防、早期発見であるとか、相談体制の充実であるとか、それから、今回新たに市町村の役割というのも法律で明記されましたので、そういった市町村の相談体制の充実であるとか、一時保護体制を強化することとか、あるいは児童であるとか家庭の自立支援等々、たくさんあろうかと思います。

 先日新聞報道で、児童福祉司の配置基準を、現在の人口十万から十三万人に一人から、五万人から八万人に一人に改正するというふうにございましたが、そういう方向で今進めつつあるのかどうか。また、きょうは伍藤局長も来ていただいているんですが、これは配置基準ですから、基準なわけですから、何も幅を持たせなくて、今の交付税の算入のように五万人に一人とか六万人に一人とか、そういう考え方でいいのではないかというふうに思うわけでございますが、見解をお尋ねしたいと思います。

伍藤政府参考人 児童福祉司の配置の件でございますが、現在、御指摘のように政令上は十万人から十三万人、こういうふうになっておりますが、実態は、私ども、総務省にも毎年お願いをして、今、交付税上は約六万八千人に一人というふうな配置基準になっておりますし、実態はどういうふうに配置されているかといいますと、都道府県の配置の実態は大体七万人に一人というのが現実の姿でございます。

 こういった状況を踏まえて、長年改正をされておりませんでしたこの政令を、今御紹介がありましたように五万人から八万人に引き上げようということで、今総務省ともいろいろ最終的な協議をしておるところでございまして、児童福祉法がことしの四月の一日から施行されますので、これに合わせてやりたいというふうに考えております。

 幅を持たせるのはなぜかということでありますが……(谷分科員「どうかということです」と呼ぶ)はい、一律に明確な目標を示す方がいいのではないかと……(谷分科員「基準です」と呼ぶ)はい、基準でありますから、そういう御指摘はもっともでございますし、そういう考え方もあろうかと思いますが、片や、この問題をかなり長い間総務省等とも議論しておりましたが、これはそもそも自治体が自治事務として自主的に配置をする職員の問題でございますので、むしろ、こういう国の法令で基準とはいえ何らかのこういうことを指し示すのはいかがなものか、そういった意見もございます。しかし、非常に重要な業務を担う職員の配置であるから、従来どおり法令できちっとある程度の目安は国が示して、こういう業務を底上げするようにしていきたい、こういうことでいろいろ話をしてまいったわけであります。

 地方自治というのを尊重する考え方と、それから国がある程度基準を示すべきだ、いろいろ議論は幅があるわけであります。そういう中で、従来どおり、私ども、現実の姿も踏まえて、自治体がある程度の目安になる姿はやはり法令上きちっと示すべきだ、こういう筋論は頑として持っていくつもりでございますし、そういう方向で今回の政令改正を処理するつもりでございますが、ある程度の幅を持たせて、その中で自治体に自治事務としてある程度の自由裁量のもとで頑張っていただく、こういうところはやむを得ないのかなというのがこれまでの検討経過でございまして、そういう形で五万から八万人にしたいということで今進めているわけでございます。

谷分科員 今のあれでございますけれども、いろいろあるにしても、とにかく昭和三十二年以来だと思いますが、政令改正がいい方向に行かれるということなので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 最後に、尾辻大臣の方に、そういう児童相談所の児童福祉司の配置を初め、人的な面あるいはいろいろな機能面の強化ということは、今後とも残念ながらまだまだ必要になってくると思うんです。そういった方面の取り組みなり決意のほどをお尋ねしたいというふうに思います。

尾辻国務大臣 先生御指摘のとおりに、このところ、児童虐待相談件数というのは増加をいたしております。これに対応するためには、今児童福祉司の増員の話もございましたけれども、そうしたことだけでなくて、児童相談所の機能強化を図ること、これは極めて重要なことであると考えております。

 そこで、平成十七年度予算案におきましては、地域の医師、弁護士、学識経験者などの専門家の援助や児童福祉司OB等を活用して児童相談所の相談機能の強化を図る事業を、児童相談所を設置するすべての自治体で実施できるように拡充を図ったところでございます。また、先般決定いたしました子ども・子育て応援プランにおきましても、児童相談所の夜間対応等の体制整備、虐待対応のための協力医療機関の充実、個別対応できる一時保護所の環境改善を全都道府県、指定都市で実施できることを、今後五年間の目標として掲げておるところでございます。

 今後とも、児童虐待に適切に対応できるよう、児童相談所の機能強化に努めてまいります。

谷分科員 ありがとうございます。

後藤田主査 これにて谷公一君の質疑は終了いたしました。

 次に、楢崎欣弥君。

楢崎分科員 民主党の楢崎です。

 きょうは、日本人初の死亡者が出ましたいわゆる変異型ヤコブ病関連について伺います。

 厚生労働省は、この病気に関する電話相談窓口を二月四日の夜半から開設されたわけですね。その間、期間の延長もされたようですけれども、結局どの程度の相談件数となりましたでしょうか。

田中政府参考人 御指摘の電話相談窓口でございますけれども、二月四日に症例を確認しましたけれども、その夜から二月十三日の日曜日まで専用の電話番号を設けて開設いたしました。その期間の電話相談の総数は千四十二件でございました。

楢崎分科員 相談をされなかった方でも、例えば当時英国に滞在しておられた方々というのは、どういう相談が寄せられているか、かたずをのんで見守っておられると思うんですね。やはり英国に滞在経験のある方からの相談件数が多かったんでしょうか。比率的には全体相談数のどの程度になっていますか。

田中政府参考人 大変残念なのでございますけれども、正確な統計はとっておりません。大体、相談者の大部分が英国滞在歴のある方あるいはその御家族の方というような、英国滞在と関連を持たれる方がほとんどだというふうに御理解いただければと思います。

楢崎分科員 答えられる範囲で結構ですが、内容的にはどんな相談がありましたか。

田中政府参考人 ということでございますので、英国に滞在したことがあるが大丈夫かとか、あるいは、vCJDにかかっているかどうかわかる検査方法はあるのかとか、あるいは、vCJDには治療方法があるのかというような一般的な質問が過半でございました。

楢崎分科員 日本人初の死亡者ということで、国民の方にも大きな衝撃を与えていますし、共通的な不安をお持ちの方も多いと思われますので、情報的なものはこれからもオープンにしていっていただきたい、このように思います。

 それで、この患者さんは二〇〇一年の十二月に発症されたわけですね。当初は、脳波の検査結果から、原因不明の孤発型と診断されたわけですね。しかし、診断データから変異型の可能性が捨て切れない。そこで、要監視体制をとって、死亡後の病理検査で変異型と断定されたわけですね。

 その経過において変異型の可能性を捨て切れなかった診断データとはどんなものだったんでしょうか。

田中政府参考人 本事例でございますけれども、平成十三年に発症いたしまして、平成十六年九月のサーベイランス委員会で、英国サーベイランスユニットとも相談いたしまして、孤発性のクロイツフェルト・ヤコブであるというふうに判断したわけでございます。しかし、変異型クロイツフェルト・ヤコブの可能性も否定できない、病状の経過を見る必要があるというふうにコメントもついたものでございまして、昨年の十二月に亡くなられまして、病理検査等が実施されて、その結果、vCJD、変異型のクロイツフェルト・ヤコブ病というふうに診断されたという経過がある症例でございます。

 この症例でございますけれども、発症の早期に、脳波の検査上、vCJDに特徴的であります周期性同期性放電という、脳波上のある特殊なパターンでございますけれども、その陰性の時期がございまして、臨床所見も非典型的であるということで、vCJDの可能性は否定することはできなかった。つまり、脳波上、vCJDの疑いがあるような所見があったということで、ほとんど孤発型のクロイツフェルト・ヤコブ病であろうというふうに判断はあったんですけれども、そういう所見もあったということで、経過を見る必要があるというふうに判断された症例でございます。

楢崎分科員 そこで、今言われましたように、孤発型に見られる特異な脳波が確認されたにもかかわらず、結果的に変異型であったということですね。これは、診断基準の見直しにつながる話ではないんですか。

田中政府参考人 おっしゃられますとおり、必ずしも典型的な症例ではなかったということで、その診断が、一応は孤発型のクロイツフェルト・ヤコブ病であろうというふうに判断されたわけですけれども、典型的ではなかったということで経過を見ていたというものでございます。

 おっしゃられますとおり、結果においては、脳波上の異常が今までの診断のガイドラインとは違うような所見がありましたので、今後、そういう診断のガイドラインを少し見直すというようなことも必要になるかもしれません。今後、サーベイランス委員会で検討させていただきたいというふうに思っております。

楢崎分科員 厚生労働省は、この患者さんが発症されて以降、状況的なものは今まで報告は受けておられたんですか。それとも、亡くなられた後に知られたんですか。

田中政府参考人 今回の症例でございますけれども、厚生労働省といたしまして、あるいはCJDのサーベイランス委員会が報告を受けたというのは昨年の二月の二十六日の時点でございますけれども、それから後、一応孤発型のクロイツフェルト・ヤコブ病だというふうに診断がされて、そういう形でこの症例については扱われたものでございます。

 そして、本年の二月の三日に病理検査の結果が出て、vCJDが強く疑われるということが言われましたので、二月の四日にサーベイランス委員会あるいは厚生科学審議会の疾病対策部会のヤコブ病の委員会が開催されて診断が確定したという経過を持っているものでございます。

楢崎分科員 厚生労働省は、この患者さんは八九年当時、英国に一カ月滞在実績があり、そのときに感染した可能性が非常に強い、そこを強調されておるようですけれども、滞在場所も含めて、その一カ月間の生活形態というものははっきりしましたか。

田中政府参考人 患者さんの生活状態でございますけれども、現在、CJDのサーベイランス委員会と連携を図りながら、感染ルートについて調査を進めている段階でございます。まだ調査あるいは分析結果はまとまっていない状況でございまして、今の段階ではちょっと御報告できませんので、御理解いただければというふうに思っています。

 ただ、調査、分析結果がまとまり次第、患者本人の特定につながらない情報に関しましては、速やかに公表させていただきたいというふうに考えておりますので、よろしくお願いします。

楢崎分科員 それにしては、調査中ということでしょうけれども、感染は英国滞在時の可能性が強いと断定的に強調し過ぎではないですか。ちょっとおかしいんじゃないですか。

田中政府参考人 あくまで、英国で感染したというようなことは私どもは申し上げておりませんので、英国滞在時の感染の可能性が現時点では有力ではないだろうかというような表現ぶりになっているところでございます。

楢崎分科員 そのように受けとめられない。つまり、強調的に言ってある。つまり、その前提となる根拠がはっきりしないのに英国感染説を強調されるのは、国内感染説を否定したいがための情報操作をしているんじゃないかという疑義も感じるんですが、いかがですか。

田中政府参考人 どういう形で感染するかということでございますけれども、それは、先生も御承知のとおり、BSEの牛を食べた、BSEに感染した牛の危険部位を何らかの格好で摂取したというようなことが一つありまして、そのほかに、観血的な手術とか、あるいは輸血を受けたとか、そういうようなものがございまして、後二者に関しては除外診断をして、これはそういうことではないと。

 そうすると、前の方についてはどういう危険性が考えられるのかということで、そのときに、有力な要素としてやはり英国滞在時の可能性というのが一番考えられるのではないだろうかというようなことで、そこだけとられますと、確かにもう英国と決めつけているんじゃないかというふうに言われるんですが、決して私どもそういうふうに言っておりませんで、幾つかの選択肢を除外していくと最後に残ったのがその辺になるのではないだろうかというような表現で、私ども注意して一応御説明はしているつもりなんですが、ぜひその辺御理解いただけたらと思います。

楢崎分科員 CJD委員会の関係者の方と申しておきますけれども、その方は、一カ月でもかなり高濃度な汚染にさらされた可能性がある、一カ月というのは英国に滞在中という意味ですね、このように発言されているんですけれども、これは厚生労働省関係者の方ではないですけれども、これはどのように受けとめたらいいんでしょうか。一カ月間、朝から晩までハンバーガーを食べていたということですかね。どういうことでしょうか。

田中政府参考人 ちょっと、Aと言いますけれども、A先生に一応確認をさせていただきました。

 先生は、そういう発言をした記憶がないということでございます。また、先生も、そういう発言をするはずもないというような言い方をされております。今回の事例に関して、私が先ほど答弁申し上げましたとおり、感染ルートというのはやはり英国滞在時の可能性が現時点では有力であるというふうに申し上げただけで、感染したのが確実に英国滞在中であるというふうに考えているわけでもないというような話を伺っているところでございます。

楢崎分科員 そのA先生という方は二月四日にそういう発言をされておられると聞いていますけれども、これも、私どもから見れば、英国感染説を強調したいがための話であって、根拠があるとは言えない、そういうふうに僕らは思っていたわけですけれども、一般的にで結構ですが、その他の感染可能性としてはどういうことが考えられますか。

田中政府参考人 繰り返しになりますけれども、BSEの発病した牛を摂取することのほかには、患者の血液による感染、つまり輸血とか、あるいは観血的な医療行為、そういうようなものが一応可能性としては考えられているところでございます。

楢崎分科員 この患者さんの場合は、そういう二次的な感染の疑義はありますか。

田中政府参考人 現時点で調査した範囲では、ほかの方の血液が輸血されたとか、あるいは観血的な医療行為が行われたとかいうようなことは、主治医からの聞き取り、その他幾つかの調査で否定はされているところでございます。

楢崎分科員 我が国でBSEの感染牛が確認されたのが二〇〇一年の九月十日ですね。その翌日に例の多発テロがあって、無差別テロがあって、このBSEの感染が、ちょっとニュースが横に置かれたような状況になったんですけれども。

 私は、農林水産委員会に所属していまして、BSEが発生したのは汚染された肉骨粉輸入の水際防止に失敗した官僚の横着さによる人災だとこれまで指摘してきたわけです。さらには、初めて確認された九月十日以前にも見逃されたBSE感染牛がいるはずだということも指摘してきたわけです。その可能性については食品安全委員会は認めているんですね、五頭から三十五頭の見逃された感染牛がいるんじゃないかと。

 こういうことを考えたときに、むしろ国内感染の可能性というものもあるんじゃないですか。その辺のところを検証すべきではないですか。いかがですか。

田中政府参考人 おっしゃられますとおり、感染ルートとしては幾つかの可能性があるということでございます。現時点で、国内での感染を完全には否定できないわけでございます。

 ただ、主治医からの聞き取り調査の結果を踏まえますと、どうも英国滞在時の感染が有力であるというふうに今の段階では判断しているところでございますが、今後、もう少しサーベイランス委員会の専門家の先生方の意見等よく聞いて、調査も行った上で判断してまいりたいというふうに思っております。

楢崎分科員 英国滞在説を強調されるのはちょっと無理があると思いますよ、私は。

 それで、これまで、BSEが発生した国に通算六カ月以上滞在した人からの輸血とか臓器の提供は受けないとされてきたわけですね。ところが、今回の件で、急遽それが一カ月以上ということに短縮されたわけです。厳しくなるのはいいんですけれども、余りにも場当たり的というような感じがしますけれども、いかがですか。

阿曽沼政府参考人 英国滞在歴の制限の期間の問題でございますけれども、二〇〇〇年の時点で、米国あるいはカナダ等の六カ月以上の英国滞在者からの献血の制限というものを参考にいたしまして、血液事業部会の安全技術調査会に意見を聞きまして、六カ月という形で設定をいたしました。

 今回、新たにvCJDの患者さんが出まして、現在のところ、英国滞在歴一カ月だと聞いておりますが、現在知られている英国滞在歴のあるvCJDの患者さんの中では最も短い英国滞在歴となりました。

 したがいまして、正確な渡航歴等が判明し、専門的な検討が行われるまでの間におきまして、より予防的な安全確保措置といたしまして、暫定的に英国滞在歴一カ月以上の献血者の献血というものを制限するというふうにした次第でございます。

楢崎分科員 先ほども言いましたように、厳しくなるのはいいんですけれども、どうも、これもまた感染ルートの英国滞在説を強調したいがための措置というふうに私はとらえているんですけれどもね。

 ちょっと参考のためにお伺いしますけれども、その死亡された患者さんの発症状況と病状等を見たときに、今我が国に若年性痴呆症の患者さんがおられると思いますけれども、この患者さんについてもう一度調べ直す必要というのが出てくるのではないでしょうか。いかがでしょうか。

田中政府参考人 最近は痴呆と言わないで認知症と言うらしいので、認知症というふうにお答えしますけれども、五十歳未満の若年性の認知症を呈する疾患として、変異型のクロイツフェルト・ヤコブ病と鑑別を要する代表的な病気というのがアルツハイマー病でございます。

 一般的に、アルツハイマー病というのは、同じような五十歳前後に記憶障害とか見当識障害で発症して、失語、失認、失行等の巣症状を呈するということでございます。

 一方、変異型のクロイツフェルト・ヤコブ病は、うつや不安などの精神症状や痛みを特徴とする特有な感覚障害で始まって、そして、認知症のほかに神経症状、ミオクローヌスとか失調症、そういうような神経症状を呈するということで、同じ認知症、痴呆を主症状としますけれども、両者の症状は臨床的にはかなりはっきり分けることができます。そして、MRIの所見も明らかに違っておりまして、両者を誤認する可能性というのは非常に少ないというふうに考えているところでございます。

楢崎分科員 この問題は、機会がありましたらまたやらせていただきますけれども、感染ルートについては、決めつけないで、あらゆる可能性を考慮した調査をしていただきたいと思います。

 次に、混合診療問題についてお伺いします。

 大臣にまずお聞きしたいんですが、混合診療解禁について賛否両論あるようですけれども、厚生労働省としての基本的な考え方をこの問題について聞かせていただきたいと思います。

尾辻国務大臣 今般の改善策は、保険外負担のあり方を根本的に見直し、安全面に十分配慮しながら患者の切実な要望に迅速かつ的確に対応したものである、こういうふうに考えております。

 そして、その改善策によりまして、例えば乳がん治療により摘出された乳房の再建術など規制改革・民間開放推進会議が主張しておられました十五の具体例のうち、医師、看護師等の手厚い配置を除く、このことだけはもうしばらく検討しようということになったんですけれども、それを除きます十四についての対応を可能にしたという点で、いわゆる混合診療をそういう意味では解禁した、こういうふうに考えております。

楢崎分科員 ちょっと今よくわからなかったんですけれども、わかりやすく言っていただきたいんですけれども、結局、この解禁については賛成なんですか。それとも、原則禁止で、例外的な容認でいくということですか。

尾辻国務大臣 私は、この議論が始まりましてからずっと言い続けてきたことが一つあります。それは何という表現をしていたかというと、ポジティブリストでいきましょうと。ネガティブリストという、全面解禁して、ポジティブリストもこんな場合だけだめですというのは私の考え方ではありません。あくまでも、こういう場合はいいですというそのいい例をふやしていく、ポジティブリストをふやすということでやりたい、こういうふうに言っておりまして、そのとおりに解決されたというふうに思っております。

 これを、いろんな表現をなさるので、どういう表現がいいかなと思うんですが、解禁された項目が多くなった、まさにポジティブリストがふえたということでは、解禁したという表現も、そういうふうに表現すればそのとおりでもありますというふうに申し上げたところでございます。

楢崎分科員 わかりました。

 混合診療問題についてはまだ私もよく理解できないところがあるものですから、教えていただきたいんですけれども、保険診療を小さく、保険外診療を大きくする、つまり、国民の健康を考えるという優しさに欠けるのではないかという意見があるんですけれども、これについてはどのようにお考えでしょうか。

水田政府参考人 お答えいたします。

 今般の改善策の考え方でございますけれども、基本的には必要かつ適切な医療は保険診療により確保するという国民皆保険制度の理念というものを基本に据えたものでございます。

 したがいまして、今回の措置の内容を説明させていただきますと、差額ベッドなどの患者選択同意医療、仮称でございますけれども、こういったものは別といたしまして、それ以外の併用可能とされた先進技術等につきましては、将来的な保険導入のための評価を行う保険導入検討医療、これも仮称でございますが、と明確に位置づけまして、むしろこういった新技術につきまして保険導入手続を透明化、明確化した、こういう措置を講じたということでございます。

楢崎分科員 もう一点お伺いしたいんですけれども、解禁後にある病気に効果がある新薬が開発されて、それに保険が適用されなかったらどうなるんだと難病患者の方で心配されておられる方があるんですけれども、そういう問題についてはどのようにお考えですか。

水田政府参考人 先ほど申し上げましたような国民皆保険制度の理念を基本に据えたものでございますので、医薬品が薬事法上の承認を得た場合には、速やかに保険診療において使用できるようにするという基本的な考え方そのものについては変更はございません。

楢崎分科員 では、これで終わります。

後藤田主査 これにて楢崎欣弥君の質疑は終了いたしました。

 次に、市村浩一郎君。

市村分科員 民主党の市村でございます。これから三十分いただきまして、質問させていただきます。

 実は、一番最後の方にと思っていたんですが、ちょうど今楢崎委員が混合診療のことをおっしゃっていましたので、引き続き混合診療についてちょっとだけ議論させてください。

 先日、私、内閣委員会で村上大臣に、混合診療解禁だということを所信で述べられましたので、どういう意味ですかということをお尋ねしました。それで、村上さんとしては、自分は混合診療は解禁されたと考えているというお話だったんですが、その村上大臣のお考えに尾辻大臣も同意されますでしょうか。

尾辻国務大臣 今もお答え申し上げましたけれども、混合診療が認められるものをうんとふやしました。そして、規制改革・民間開放推進会議が言っておられた、十五あったんですが、こんな場合があるじゃないか、だから混合診療を解禁すべきだという御主張でありましたから、一つずつずっと検討しまして、申し上げたように、今度、十五のうちの十四は混合診療がいいですというふうに言ったわけでありますから、それをどう表現するかなんですが、村上大臣は解禁したとおっしゃるし、私も、そういう意味で解禁されたということを否定はいたしませんという立場でございます。

市村分科員 まさに今、どう表現するかということはおっしゃいましたけれども、やはり表現は大切だと思います。

 特に、この混合診療という言葉は、厚生労働省さんはあえて使ってなかったというふうにはお聞きしているんですが、最近になっていわゆる混合診療ということになってまいりまして、それはそれで厚生労働省さんの主張もわかるんですけれども、ただ、これまで混合診療という言葉で議論してきた経緯があることは事実ですね。それで、例えば、厚生労働省さんの考えとしては、多分、私の受け取っていたニュアンスとしては、混合診療は解禁反対だということ、いわゆるをつけようがつけまいが、混合診療という言葉を使っていらっしゃったのは事実だし、それについて解禁は反対だというふうにされてきたわけです。ですから、そうした言葉遣いをされてきたのでありますから、突然、混合診療解禁といった流れというのはちょっと、やはりなかなか一般国民も私も理解できないところがありました。

 だから、ぜひとも言葉というのは大切にしていただきたいということがあります。やはりそれによって、厚生労働省さんたちはいいかもしれないけれども、それで迷惑をこうむる人も実はいるということを御理解いただきまして、ぜひとも、言葉遣い、言葉ということは大切にしていただきたいし、さっきの十四項目の解禁については、私もそれはいいと思います、それは別に反対しないんですが、やはりそれを混合診療の解禁と表現されるのはいかがかなと思いますが、いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 その辺の言い方でありますと、全面解禁には私は反対だと言っておりまして、今回のことも、全面解禁であるかどうかと言われると、全面解禁ではありません、こういうふうに言っておるところでございます。

市村分科員 この問題につきましてはこれ以上は申しません。ただ、言葉ということだけは大切にしていただきたいということを最後にもう一回だけお願いします。

 それでは、介護保険についての質問をさせていただきたいと思います。

 今回、ことしは介護保険法の見直しを進めていくということでございまして、恐らく予算案の後にこうした議題が大きくクローズアップされていくと思います。

 その中で、私も昨年、介護保険の三施設につきまして、この辺はなかなかわかりにくい、複雑である、もともと見直すといいますか整理統合するはずだったのが残っているということで、決算行政委員会のところでこういう質問をさせていただいた経緯があります。

 なぜ今回、改正案の中にこの三施設の見直しが入っていないのか。また、検討はされたのか。これだけ、ちょっと事実を教えてください。

 せっかく大臣が手を挙げていらっしゃいますから、お願いします。

尾辻国務大臣 それでは、私からお答えいたしたいと思います。

 これは若干経緯のある話ですから、経緯を申し上げたいと思います。

 介護保険制度は、制度がスタートいたしましたときに、医療保険で賄われていた老人病院の一部、それから老人保健施設を介護保険制度のもとに入れるとともに、今度は、本来福祉施設として位置づけられていた特別養護老人ホーム、それを介護保険施設として位置づけたわけでございまして、制度発足のときに、こうしたいろいろな、こうなっていたのをこうするとかというような位置づけをやったものですから、介護保険においてはこの三施設が介護保険施設として位置づけられたわけでございます。これは先生御案内のとおりでありまして、今そのお話をなさったわけであります。

 介護保険の創設時におきましては、申し上げたように、ともかくこれらの三施設を介護保険施設としてまず位置づけるということを最優先したものですから、今お話しのように、施設のあり方についてどうあるべきかというのはずっと議論をしてきたわけでございます。

 この議論をしてきた過程で、施設の機能別に言いますと、まず、日常生活を支援する機能、これが特養だといってもいいわけでありますが、こうした機能が一つある。それから、在宅生活の復帰を支援する機能、これは老健施設だと……(市村分科員「大臣、なぜ今回の見直しに反映されなかったのかだけ教えてください」と呼ぶ)はい。

 それでは、そうした議論をずっと続けてきたということでありまして、それらの施設のあり方を議論してきて、今後でありますけれども、指定基準や介護報酬の見直し、こうした三つの施設の課題、いろいろあるものですから、今申し上げたような機能別の課題がありますから、そうしたものの見直しは行っていくべきだというふうに考えております。

市村分科員 ですので、当初は、やはりいろいろ、突然変えるというのもなんだから、そういった意味では、現実に即して一応残しておくということは理解できなくもありません、突然変えるというよりも。ただ、もう介護保険も設立されてしばらくたちまして、しかも今回、大きな見直しだというときに、これはやはり積み残された課題だというふうに思いますので、ぜひともこうしたことも含めて見直しの対象に入れていただきたい。今まで議論した経緯はあるということですので、その議論した経緯をぜひとも今回の改正の中にも取り込んでいただけたらというお願いをさせていただきたいと思います。

 もうこれはここでおしまいです。

 きょう、特に私が介護保険について一番議論したかったことがこれからでございますが、今回、介護保険の大きな改正案の特徴としては、予防を重視するということでありまして、この理念は大変私は理解をしております。しかし、その理念を実現するために、どうも制度が何かえらい複雑になっていないかという印象を私は強く持っておりまして。

 本来、介護保険というのは、市町村が保険者となって、介護サービスの民間事業者の育成を通じて介護の選択肢を広げるのが目的だったはずなんですね。しかも、あのときの、介護保険が導入されたとき、私も当時の雰囲気、空気を感じたときに、これは地方主権、地方分権のモデルだというような形、まあ口さがない人は、いや、国がもう手に負えなかったから地方に押しつけたんだと言う人もいましたけれども、それでもやはり、これは地方主権のモデルなんだ、まずここから地方主権のあり方を模索できるんだ、こういう雰囲気があった、空気があったというふうに私は感じております。

 ところが、今回御説明いただきましたこの改正案を見ますと、今度、例えば地域包括支援センターとかいうのができまして、しかも、これをつくった後、省令だとか通達で結局厚生労働省の意向がかなり反映されるような制度になっているんじゃないかと思うんですね。もともと、地方自治、地方分権のモデルだと言っていたのに、何か今度は、反省は必要だと思います、いろいろな問題が出てきたから、その反省をしていろいろ新しく制度をつくり直す、改善していくことが必要だと思いますが、えらく極端といえば極端にふえたような印象をどうしても持たざるを得ません。

 それで、この地域包括支援センターなるものをつくることに関しまして、私はそういう印象を持っているんですが、大臣、いかがでしょうか、私のこの考えにつきまして。私は、だから、制度がえらく複雑になっているんじゃないかというふうな感じです。

尾辻国務大臣 お話のように、介護保険制度をつくりまして五年たちましたから、この五年間のいろいろな見えてきた課題というのがございます。いろいろな課題ありますけれども、そうした中の三点、まずその課題を申し上げます。

 一つは、さまざまな問題を抱えている人に対する支援事業というのが一つ。それから、ケアマネジャーの問題、特にケアマネジャーが抱える悩みに対する対応とかいろいろ、ケアマネジャーの問題が一つある。それから、おっしゃったように、今度のことはとにかく予防を考えておるわけですが、その予防も、全然支援、介護を必要としない方が支援や介護を必要とするというようなことにならないようにという、まずそこでの予防、それから軽度の方が重度にならないようにという予防、この二段階の予防を考えておりますが、そうした中で、軽度の方々に対する介護予防の管理。

 あえてこの三点を申し上げましたのは、この三点を今度の改正法の中で包括的支援事業として位置づけて、そこでこの問題点の対応をしたいというふうに思ったということを申し上げたわけでございます。

 いずれにいたしましても、この包括的支援事業というのは市町村にお願いする事業でございますから、基本的には市町村の事業だということを申し上げるわけであります。そして、お触れになりました、その事業を実施する地域包括支援センターは、こうした、申し上げたようなことに対応していただくために、市町村に、何回も言いますが、市町村にやっていただくということでございます。

 ただ、一定レベルを全国的に維持していただきたいというふうに思うものですから、省令等で定めたこともありますけれども、それはあくまでも一定レベルを維持していただきたいという思いで言っているだけでありまして、実施主体が市町村である、そのことに変わりはない、こういうふうに考えております。

市村分科員 大臣はそうおっしゃるんですが、これまでも、今の制度の中でもかなり省令等で、厚生労働省の通達とか省令でかなり自由度を縛っている部分があるというふうには聞いております。そして、かつまた、ここでこういうふうな制度をつくっていきますと、より市町村が主体といいながら、結局は、実質上は厚生労働省がそれなりの形で縛りをかけていくということになるんですね。実際の現場の市町村の声を聞いても、もうたまらないということなんです。これまでもいろいろな制度改革があって、その中で振り回されてきたということもあって、またこんな制度を入れて、こんな複雑になってたまらないという声もあるんですね。

 ですから、もともと介護保険というのは、先ほど申し上げたように、あれだけ、地方自治のモデルなんだ、いわゆる地方分権のモデルなんだと。私は、ここは堅持していただきたいと思うんです、この流れは。ただ、これまでいろいろと問題は起こった、確かに不正受給みたいなこともあったということも聞いております。それはそれで改善しなくちゃいけないことだと思いますが、しかし、だからといって、先ほど申し上げたように、どうも振り子がこっちから百八十度振れるような印象を与えるような、こんな制度にするのではなくて、やはりその理念は、もともとの理念は守りつつ、しかしそうした不正は正していく、こうした考えで私はやっていただきたい、こう思っているんですね。

 その辺についても、大臣、これはどうでしょうか、大臣も複雑になったと思われませんか。ちょっと印象だけ、ごく簡単に大臣の印象を教えてください。私は複雑になっていると思っているんですが。

尾辻国務大臣 複雑になったかならないかというふうにお尋ねになると、複雑というか、ふえた部分がありますから、制度としてつけ足したような部分がありますから、それを複雑になったというふうに表現すればそういう表現、さっきから表現の話が出ていますが、表現できないこともないかなとは思いますけれども、基本的には、よりよいものに向けて、いろいろな問題点が五年間で出てきたからつくり直した、そういうものだというふうに考えております。

市村分科員 もちろん、よりよいものにするということは私も大賛成であります。ただ、結果として、この制度を入れたから本当によりよいものになるかどうかということは別でありまして、私は、これはよりよいものにならないんではないかなという印象を持たざるを得ないんです、この制度を入れたとした場合。むしろ、今までのようにケアマネジャーが直接、ある種権限を持っていけるような制度の方がまだましだ、現行の方がまだましであります。

 ただ、それがいろいろな問題を起こしていることも事実だと思います。それはそれで十分に検討し、そういう不正が起こらないようにしていくことは重要なんですけれども、結局、情報を持っている方、権限を持っている方は分散していた方がより情報というのは出やすくなるんですね。こうなると、多分いろいろな形で弊害が出てくる。どういう弊害が出てくるかというと、例えば、情報を一部の人が握る、そして余り悪いことは外へ出さないというような、こういうことに大体なりかねないんです、こういうセンターをつくると。

 だから、嫌かもしれないけれども、やはり情報を持っている人がたくさんいて、その人たちからたくさん情報が出てきて、それはこういうことを管理する主体からすると嫌かもしれません、いろいろ文句を言われて、嫌なことも言われて。しかしながら、それを受けとめて改善していった方が私はよりよい方向へ向かうというふうに思っております。これはこの介護だけじゃなくて、一般的にそう思っております。ですから、余りこういう支援センターなどのような形で、しかも厚生労働省が省令、通達でがちがちにするというのであるというのは余り、本来の趣旨からも好ましくないと私は思います。

 ですから、これについては、まだこれからもいろいろな形で国会内で厚生労働委員会を中心にいろいろ議論されるとは思います。私は別の委員会ですのでなかなかこの議論に加われないかもしれませんが、一国会議員としてそういう印象を持っている者がいるということはぜひとも御認識いただきたいと思っております。ちょっとまたこれについて。

中村政府参考人 今先生からいろいろ御懸念の御指摘がありましたけれども、先ほど大臣から御説明申し上げましたように、介護保険、五年やってみまして、困っていることでとケアマネジャーさんのお話がありましたが、ケアマネジャーさんは困っている、もうあっぷあっぷしている、それを支援するためにやるということで、そういうケアマネジャーさんのよさとか、そういったことをまさにプッシュするために市町村が引き過ぎた部分がある。それから、介護保険の中と外の問題もありますので、さまざまな悩みを抱えていらっしゃる方は、介護保険の悩みもありますが、その他の悩みもある。それをみんな介護保険に、どうも市町村の方は、措置から契約だということで、余りに事業者さんの方に頼り過ぎた嫌いがある。他方、事業者さんの方の掘り起こしの問題もあると先生御指摘がありましたけれども、さまざまな問題がありますので、そういったことをやっていこうというのです。

 私ども、介護保険のよさをもっともっと発揮するためにこのシステムを提案しておりますし、むしろ、市町村の方からの御要望もいただいた点でございますと、例えば軽度の人がふえていることの対応を何とかしてほしいということ、そういったことでございますので、また国会で御審議いただきますけれども、どうぞよろしくお願いをしたいと思います。

市村分科員 またこれから、まだ審議があると思いますので、その中でまたいろいろ具体的になってくると思います。こういうのは五年後を見ていただければ結果が出ていますので、私は、必ずしもいい方向になっていないんじゃないかなという感想を持っております。では、これについてはここでもうやめます。

 今度は、特別養護老人ホームでノロウイルスによると思われる死者が多数出たケースについて若干質問、議論をさせていただきたいと思っています。経過とか状況はもう皆さん御存じだという前提で議論しますので。

 その中で、議論の中で、結局、こうしたことがもう再発しないようにしなければならないということだと思っています。今回の福山の例だけではなくて、これまでもやはりそうした施設で大量に感染し、大量に死者が出る、大量という言い方じゃあれなんですけれども、複数の死者が出るということはあったわけでございまして、今回のケースは、一度に七人という大きな死者が出られたわけです。六十六名中七名が死亡するという、一割以上の方が一時期に死亡した。原因はまだ特定されていないようでございますけれども、実質一割以上の方が亡くなられたというのが事実であります。

 こうしたことが再発しないようにするにはどうすればいいか。その中で、いろいろ議論しておりますと、配置医師というものの存在、あと、協力病院というものの存在が出てまいりました。特にきょうは、配置医師について少し議論をさせていただきたいと思います。

 特養の配置医師なんですが、今回は、この福山の件については理事長さんが配置医師だったということなんですが、これは、配置医師は健康保持のための適切な措置をとらなければならないとした「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」、これは省令です、この「健康管理」に違反しているのではないかという疑いがあるんですが、これについてどういう御見解でしょうか。

中村政府参考人 先生御指摘ありますように、介護老人福祉施設の指定基準でございます。この指定基準は、先ほど来話に出ています厚生省令でございまして、まさに一定の質を確保するために指定基準をお願いしているわけですが、老人福祉施設の医師、看護職員は健康保持のために適切な措置を講じなければならない、こういうこととされております。

 今回の件、必ずしもまだ最終結論ではないと現地の方でも言っておりますが、専門家によります調査委員会を福山市で設置されまして、十人の専門委員の方が議論をされております。その中で、この施設では、亡くなられた七人の方全員にさまざまな医療行為、検温を行ったり脱水症状を防ぐための点滴が継続的に行われた、こういうようなことから、調査委員会の方では、死因との因果関係は特定できないが医療に問題があったとは言えない、こういうふうにされているところであります。

 このような経過を踏まえますと、指定基準第十八条に違反があったとまで言うことは、適切であったかどうかのことはさておくとして、困難ではないか、こういうふうに考えておるところでございます。

市村分科員 ということは、違反をしていないということだと思うんですが、では、それであれば、この省令の中の「健康保持のための適切な措置」の健康保持というのはどのように定義されているんでしょうか。

中村政府参考人 一つは、常に、高齢でさまざまな要介護の方が入っておられるわけですので、健康状況の把握、特に慢性疾患の指導管理のような日常的な医学的管理、それから、今回のように、さまざまな突発的な状態に遭った場合に、みずからの判断、あるいは協力医療機関の医師の応援を求めたり、あるいは他の医療機関に通院、入院させるなど、状況に応じてさまざまな措置をとっていただくということを期待して健康管理というふうに申し上げております。

市村分科員 ちょっとまた議論する前に、実態として、配置医師の勤務実態とか報酬、それから業務内容というのはどういうものなんでしょうか。そして、こうしたことについて全国的な調査というのは行われたことがあるんでしょうか。ないとすれば私は行うべきだと思いますが、いかがでしょうか。

中村政府参考人 まず、実態について申し上げますと、指定基準では、特別養護老人ホームにつきましては医師を配置する、こういうふうにされております。ただし、特別養護老人ホームの配置基準で、常勤を求めている職種につきましては、常勤ということが明記されております。これに対して、医師についてはそれが明記されておりませんので、特別養護老人ホーム、一九六三年からこの制度をやっておりますが、非常勤でよい、こういうふうにされております。

 私ども、介護報酬を定めるための実態調査とかいったことをやっておりますけれども、常勤の医師がおられる施設は五%、それで、非常勤のお医者さんがほかには配置されている。非常勤のお医者さんのことを常勤換算してみますと、大体二七%、常勤医師にすると全施設に対して二七%程度の配置状況になる、こんなふうに把握しているところでございます。(市村分科員「大体の報酬は」と呼ぶ)

 報酬は、非常勤の方の報酬を調査いたしておりまして、月額十七万円、非常勤の先生に払われております。この方が常勤医師だとすると月百二十万円程度になりますので、この水準は、常勤医師の配置を義務づけております老人保健施設の常勤の医師の方、また介護療養型の医療施設、これは病院でございますね、ここは平均的に、常勤の医師一人とほかのお医者さん、合わせて三人いなきゃならないと言われておりますが、そこの常勤のお医者さんの給与と同じ水準というふうに考えております。ただし、非常勤の方なので、平均すると、実際の支払いは月に十七万円くらいになっている、こういうことでございます。

市村分科員 結局、配置医師は常勤じゃないということですね。

 だから、今回のケース、結局、本当に適切な対応がされたかと。今回は理事長がたまたま配置医師だったということがあるんですが、にもかかわらず七人の死者を出すということであります。

 今後、特養、実はきょうは余り申し上げたくなかったんですが、結局、特養では医師に見せていないんじゃないかという疑問の声だってあるんですね。特養に入ると、もうそっちでやっているんだから医者なんかに見せなくていいみたいな、そういう声もあるんですから、ぜひとも、今後こうしたことが繰り返されないように、やはり配置医師のあり方とか協力病院との提携のあり方とか、こういうのを見直すといいますか、通達も出ているようですから、しっかりと、こういった感染病で多数の死者が出ないような、本当に改善を進めていただきたいと思うわけでございます。もう一点だけちょっと質問したいことがありますので、きょうはここまでにして、また改めてやります。よろしくお願いします。

 最後に、医薬品業界のことについて質問したいと思っております。

 私がちょっと調べた、取り寄せました資料を見ますと、どこどこのどういう薬かということはここであえて申し上げませんが、特許が切れた後も、後発メーカーが、大手が、特許が切れたにもかかわらず薬品の後発品を出さないという事実がどうもあるようでありまして、この結果どうなるかといいますと、結局、競争相手が出てこないわけですから、薬価が高く設定をされたままずっと売れ続けるわけです。特許が切れているんですから、出せばいいんです。出していないんですね。どうもこれはカルテルの疑いもあるのではないかということであります。

 それで、結局、この結果どうなるかといいますと、薬価が高いまま推移していきます。だから、恐らく後発品が出ると二割から三割薬代が安くなるというふうに言われていまして、今大体国民の薬代は五兆円から六兆円の間だと言われていますが、例えば五兆とした場合、二割薬価が下がった場合、一兆円なんですね。つまり、一兆円、国民の懐から出ていくお金が減るということでありまして、これは大変ゆゆしき問題であろうと私は思っています。

 その実態があるのかどうか、そうした問題があるのか等々につきまして、公正取引委員会はきちっと把握されているのかどうか、このことを最後にお聞きしまして私の質問を終わらせていただきますが、公正取引委員会、よろしくお願いします。

楢崎政府参考人 医療用医薬品の市場においてカルテルがあるかどうかという御質問でございますけれども、個別の事案にかかわる問題でございますので、コメントは控えさせていただきたいというふうに思います。

市村分科員 確かにいろいろあるんでしょうけれども、そういう問題があることぐらいは、公取じゃなくたって、一国民として認識されているということでよろしゅうございますか。今私がここで申し上げましたから、ああ、そういうことだったのかとかでもいいですから、御感想をちょっとだけお願いします。

楢崎政府参考人 私どももカルテルの審査をしている立場でございますので、個人的な印象というのは、コメントは避けさせていただきたいと思います。

市村分科員 あともう一分ありますから、では、私はもう公取を信頼して、万が一こういうカルテルがあったとした場合、きちっと取り締まっていただくということをやっていただけると私は信頼しておりますので、ぜひともお願いします。この問題につきましては、細かいことはまたこれからやっていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 では、これで私の質問を終わります。ありがとうございました。

後藤田主査 これにて市村浩一郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、中村哲治君。

中村(哲)分科員 おはようございます。民主党・無所属クラブの中村哲治でございます。

 人格者の尾辻大臣や西副大臣にこのようなことを申し上げるのは非常に心苦しいんですが、自民党、公明党がおととし参議院で強行採決した心神喪失者等医療観察法の施行をことしに控えまして、各地で新施設に対する反対運動が起きています。私の選挙区においても、国立病院機構の松籟荘で同じような反対運動が起きております。まさに、私たち民主党が主張してきたとおり、新法により精神障害者に対する差別や偏見が助長されてきている、そういった残念な結果になっています。

 この差別や偏見の社会的な背景には、精神病者を地域から隔離していくというかつての精神医療政策の誤りがあったと私は感じているところでございます。医療観察法に基づく問題というのは、対症療法も必要なんですが、その根本的な解決は、この精神医療をどこに持っていくのかということを考えていかなくてはならない、私はそのように感じております。

 そこで、きょうは日本の精神医療についての方向性をお尋ねさせていただきたいと思います。

 まず、大臣、今後の日本の精神医療はどのような方向に持っていくべきだとお考えでしょうか。

尾辻国務大臣 我が国の精神医療を振り返りますと、今お話しのように、歴史的に、入院処遇を中心にして施策が講じられてきた、とにかく入院してもらおう、そういう考え方で来たという経緯があることはそのとおりでございます。そこで、最近、それではよくないということで、精神医療の質的向上も図らなければいけませんし、特に早期社会復帰をしていただこう、そういう方向で考えなければいけないという方向転換が図られてきました。しかし、まだその成果が十分であるとは言えません。

 こんな現状を踏まえますと、今後の精神医療につきましては、今申し上げましたように、入院医療中心から地域生活中心へ、この基本的な考え方に基づいて、精神医療の質的向上も図りつつ、入院患者の皆さんにできるだけ早期に退院を実現して、地域生活に移行できる体制を構築することが必要だ、基本的にまずそう考えております。

 このために、患者の病状等に応じてより適切な医療が行われるための精神医療の改革、それから障害者も地域で安心して暮らせるための地域生活支援の強化、今お話しになりましたけれども、精神疾患や精神障害者に対する国民の理解を深めるといったような取り組みを総合的に進めて、精神医療のさらなる質の向上を図る必要がある、こういうふうに考えております。

中村(哲)分科員 今大臣がおっしゃった方向でぜひ進めていただきたいと思います。総論はいいんですけれども、各論に入ってくるとなかなかこれが、果たして今大臣がおっしゃったとおりに進んでいるのかなということが課題になってくると思います。

 具体的に少しお話をさせていただきたいと思います。ここからは西副大臣とのお話になるというふうに思います。

 まず、医療法の人員配置では、一般病院の場合は入院患者十六名に対して医師一名となっております。また、これは大学病院や救急の場合でも同じような基準になっているというふうに、精神病院においても、聞いております。しかし、一般の精神病院においては、入院患者四十八名に対して医師一名となっております、この差、十六対一というのと四十八対一というのはなぜなのか。

 これは、現場のお医者さんにお聞きしたところ、精神科の治療というのは薬を中心に行う、そして薬が脳内に届くというのにはかなり時間がかかる、ブラッドブレーン・バリアというそうですけれども、脳が化学物質を受け入れない、そういったバリアがある、そういうお話でした。そのために、薬はある程度飲んでいかないと脳に届かない、そして治療効果があらわれない、そういったことが言われておるので、いわば日にち薬的な要素が精神医療にある、だから差があるんですという話は現場のお医者さんからお聞きいたしました。

 しかし、なぜ十六対一と四十八対一、三分の一なのかなと。そこの具体的な根拠は何なのか、その理由をお聞かせください。

西副大臣 障害者施策の中でもとりわけおくれているという精神障害者の問題についてお取り上げをいただいて、感謝をいたします。

 お尋ねの配置基準の件ですが、一般的には、精神障害者の多くが、御指摘のように積極的には医療を必要としない、お薬を中心とした慢性患者である、こういうふうな理由で、一般病床と比較して緩やかな標準数というふうになっているということでございます。

 平成十二年に第四次の医療法の改正が行われまして、そのときに、精神病床におけるお医者さんの数の標準が決められました。大学の附属病院、それからもう一つは、内科、外科、産婦人科、眼科等の百床以上の病床を有する大規模な病院の中に精神病床がある、こういう場合につきましては、精神病の症状だけではなくて合併症状を持つという患者さんもおられるだろう、こういうことで、医療を提供する標準を、一般病床と同様の水準を確保するという意味で、十六人というふうに決めさせていただきました。

 したがって、それ以外の精神病床につきましては、精神医療に求められるニーズそれから整備の状況、それから医療資源の量を踏まえまして、四十八人ということに決めているところでございます。

    〔主査退席、根本主査代理着席〕

中村(哲)分科員 私は、十六対一、四十八対一、三分の一なのはなぜかという理由で、結局理由としてお答えになったのは最後の、文章でしたら一行分ぐらいの話で、そこを本当は詳しく聞いていかないといけないんですけれども、それと関連する話として、では果たしてその四十八対一は全部、日本全国守られているのかな、そういう話とあわせて四十八対一が適切なのかというのは考えていかないといけないわけです。

 それでは、この四十八対一という基準を満たしていない病院はたくさんあると私は聞いているんですが、全国で、満たしている病院は全体の何割なんでしょうか。また、国立病院の場合は何割満たしているんでしょうか。

西副大臣 先ほどの四十八人の件について、若干個人的な所感も申し上げたいと思うのですが、実は私の母親も同じ精神症状がございました、もう亡くなりましたけれども。精神病床にいるんですが、乳がんの手術をしまして、そのときには大学病院の精神病棟に入らせていただいて、私も一緒に行ったのですが、随分御厄介をかけるという意味で、大規模な病院の中に附属する精神病床というのはそういう役割も大いに果たしていただいているんだろうなと思って、そういう実感を私自身も持っているところでございます。四十八人とは関係ありませんが、十六人にしているという意味では、それなりの大変大切な役割を果たしているというふうに申し上げたいと思います。

 お尋ねの件でございますが、平成十五年度の医療法第二十五条に基づく立入検査がございまして、そのときには、約九割の精神病院において医師の配置標準が一応満たされているというふうに聞いております。

 なお、国立病院につきましては、同じく十五年十月の調査によると、すべての精神特例承認施設において医師の配置基準はすべて満たされているというふうに報告を受けております。

中村(哲)分科員 結局三分の一の理由というのはお答えになっていないのですけれども、今御報告があった、全体の九割の病院で基準を満たしている、国立病院の場合は一〇〇%満たしているというお話でございました。それは、昨年十二月二十日に出された「医療法第二十五条に基づく立入検査結果(平成十五年)について」、そういう資料であると思います。

 そこで、私が気になっているのは、派生な質問ですからお答えになれなければなれないとおっしゃっていただいて結構なのですけれども、北海道や東北の場合は十五年度の場合六八・四%、十四年度の場合は六五・九%。確かに一年間で二・五%のポイントは改善しているのですけれども、全国の横並びで見た場合に、突出して北海道、東北というのは数字が低い状態になっているわけなのですね。だから、そこもあわせて四十八対一や十六対一というのを考えていく必要があるのじゃないか。何のために十六対一、何のために四十八対一なのか、そこを、こういった地域の状況もあわせて考えていかないといけない、私はそのように考えておるのですが、もしお答えになれたらで結構ですけれども、西副大臣、どのようにお考えでしょうか。今後検討しますということでも結構ですから、お答えください。

西副大臣 ちょっと今御指摘の表を拝見いたしますと、確かに極端に北海道、東北は低いということで、今、実は初めて確認をさせていただきました。

 現状については、全国大体九〇%程度いくところが多い中で、どうしてこういうふうに極端に少ないのかということの原因は、私もにわかには承知しておりません。確認を早速させていただきたいと思っております。

中村(哲)分科員 実際、現場のお医者さんの話を聞くと、実際は六割ぐらいしか達成していないよとか、国立病院でもいっぱいこの基準を達成していないところがあるんだよと、実はこの調査自体が正しいのかどうかという疑問が現場のお医者さんから出されていたりするのです。だから、これはでも厚生労働省の皆さんの仕事を疑うわけにはいきませんから、どうなのかなとは思うのですけれども、そこも実は大きな問題であるということを御指摘だけさせていただきたいと思います。

 それでは、四十八対一、今、基準として仮に定められているわけですから、ここを守れないような基準のところというのは何らかのペナルティーを科すなどして、ここに一日も早くたどり着いていく、そういった何らかの仕組み、例えば診療報酬を、九割しか人員が配置できていないのだったら九割に減らす、八割だったら八割、やはりサービス量がそれだけ低下するところには比例して診療報酬を落とすべきではないかなと私は思うのですが、実際、医療保険の方はそうなっていなくて、サービス量が低いけれども、例えば六割減ったとしても報酬は六割までは減らない、そういう話になっているのですけれども、その点はいかがお考えでしょうか。

西副大臣 御指摘の件、入院の基本料について申し上げますと、これは実は、お医者さんの標準の数と、それから看護師さんの標準の数、これは双方を縦横に、それぞれの充足率を基準にして、先生がおっしゃるような評価をある程度いたしております。その双方が相互に、医療法で定める標準数を一定程度欠いている、こういう場合には、その程度に応じた減額措置を適用しているところでございます。

 医療法に基づいて立入検査をした結果によれば、精神病院における医療法で定める標準数、先ほどの標準数でございますが、おかげさまで、若干でございますが充足率は向上しておりまして、先ほど申し上げましたように統計上九割という、先生、これ自身に疑義があると言われれば、ちょっとそのことはさておくとして、九割というところまでいっておりますが、この充足率を入院の基本料というものに反映させているということが、ある意味では充足率の向上に有効に作用しているというふうに考えているところでございます。

中村(哲)分科員 今の御答弁、私もきのうの質問取りのときに、これ、どう答えましょうと。いや、どう答えましょうと言われても、こう答えたらいいんじゃないですかという御提案をさせていただいたんですが。

 では、それならちょっと数の話をさせていただいて、今、お医者さんの数と看護師さんの数と双方でとおっしゃいましたので、例えば、お医者さんが七割、看護師さんが七割などのケースにおいては医療報酬は何割カットされるのか、それについて具体的な数字をひとつお答えください。

西副大臣 済みません、具体的なところの準備はできていなかったものですから。

 八〇%までが一応それぞれについて合格ライン、最低の合格ラインということでございまして、お医者さんも七〇%、それから看護師さんも七〇%の充足率ということになりますと、一二%の減額というのが今の仕組みでございます。

中村(哲)分科員 私が申し上げたいのは、医療サービスが七割程度しかないのに報酬は八八%払っていいんですかという話なんです。

 そして、八〇%でも一〇〇%の数をクリアしているのと同じことになるというふうにおっしゃいましたから、四十八対一を八掛けしてみてくださいよ。何人になるんですかね。約二割アップぐらいはいいわけですよね。だから、六十対一ぐらいでも大丈夫という話になるわけです。果たしてそれでいいのかなと。そのペナルティーのかけ方というのはそれでいいのか。

 だから、六十対一で精神医療がきちっと全うできるというふうにお考えなのであれば、一〇〇%合格ということで保険医療の診療報酬をお支払いになってもいいと思うのですけれども、それでは六十対一というのはどういう医療水準なのかということを、今後厚生労働省の中で検討していく必要があると思うのですね。四十八対一と十六対一を比べるときに、それでは、実は保険医療では六十対一まで許されるんだというところも含めて検討していただかなくてはならないということを御指摘させていただきたいと思います。

西副大臣 実は、病床数が多い場合ですとパーセントは余りきいてこないのですが、一人が多いか少ないかによってがたっと落ちたりという、いろいろなケースがありまして、私も正直、若干緩いんじゃないかという、個人的には思ったところです、これを見せていただいて。

 ただし、私のぱっとした印象ですので、省内といいますか、またいろいろな関係のところで御議論があるかと思いますが、とりあえず印象だけ申し上げたいと思います。

中村(哲)分科員 大臣、今の具体的な議論を一つお聞きいただいたんですけれども、結局、その基準や、また、基準に合わせたお金の問題がやはり出てきます。

 今よく聞く話として、精神医療の向上のためには、ほかの医療と比べて低いと言われている精神医療の診療報酬を、少なくともほかの医療並みには引き上げるべきなんじゃないか、そういうお話をよく聞くんですけれども、その点については、大臣、いかがお考えでしょうか。

尾辻国務大臣 入院基本料の話だと思いますので、お答えいたします。

 まず、そもそも入院基本料はということを申し上げなきゃいけないんですが、ちょっとかたく言いますと、療養環境の提供、看護師等の確保及び医学的管理の確保等の基本的な入院医療の体制を総合的に評価しておる、こういうことになるわけですが、今繰り返しておられるように、看護婦さん何人いるの、お医者さん何人いるの、そういうことを考えて入院基本料を定めています、こういうことであります。

 その中で、精神病棟の入院基本料は一般病棟よりも低く設定されておる、そのとおりなんですが、これはもう今まさに先生が御指摘のとおりに、お医者さんの数なんかが少ない、だから、お医者さんの数が少ないんだから入院基本料は少なくていいんじゃないの、こういう考え方で少なくなっておるわけでございます。あとは、それでいいかどうかという今後の議論だと思いますので、きょうの先生の御議論なども大いに参考にさせていただいて、今後、我々検討したい、こういうふうに思います。

中村(哲)分科員 かなり前向きな発言をいただきまして、ありがとうございます。

 ベッド数でいうと、精神医療は全体の医療の約四分の一、二五%を占めていると言われております。しかしながら、医療費については五%ぐらいしかかけていない、そういった確実なデータがあるわけですね。お医者さんの話を聞くと、いや、僕もね、家を引き継がぬとあかんかったから精神科をやったけれども、これは金のことを考えたらばからしくてやっていられないよと。金のことだけではなくて、やはり社会的な偏見、差別も強い領域ですから、ある程度使命感を持ってやらないとできない部分もあるんですよね。

 そこで、使命感を持っているけれども、やはりここまで差がついてしまったら、年収は大体三割ぐらいは少ないというふうにお医者さんの話を聞いておりますので、そういう実態があるのかどうか。きょうは質問通告していませんでしたから、お医者さんの給料の話は調査をまだされていないと思うんですけれども、現実、精神科のドクターの意見を聞いていただきたいな、勤務している上で何か不都合なことがないのかな、そういったヒアリングをぜひ省としてしていただければと思います。

 それから、もう少し具体的な話を、これは大臣にぜひしていただきたいんですけれども、お医者さんの数は先ほどの話で基本的に考えられておるんですが、看護スタッフの場合は、先ほど言った薬の関係とはまた違う要素が出てきます。看護が必要、手間をかけなければいけないということであると、これは一般の病床と同じような基準にすべきなんじゃないかな、私はそのように考えているんですが、実は、今、精神医療の場合は看護師さん等のスタッフは四対一になっています。これは、普通の病院では三対一ですので、若干設置基準が低いのが精神医療になっています。

 手はそんなに、同じようにかかるんじゃないかなと思うんですが、ここはやはり三対一に引き上げていくということが必要だと考えるんですが、大臣、いかがお考えでしょうか。

尾辻国務大臣 まず、申し上げますけれども、平成十二年に第四次医療法の改正を行いました。この改正でどういうことを決めたかというと、大学病院とか、それから大きな病院と一言で申し上げておきますけれども、百床以上の病院というふうに考えていただいてもいいんですが、そういうところの精神病床については、合併症を持つ患者に対して医療を提供する機能なども考えなきゃいけませんから、一般病床と同様の水準を確保するために、今おっしゃった三人に対して一人と同じにしていますということをまず申し上げました。そのときに、それ以外のところに対しては、六人に一人だったのを四人に一人にせめて改善、改善というか数字を上げましたというふうに、今、まず現状を申し上げたところであります。

 ただ、四対一であるということの事実は御指摘のとおりでありますから、今後、また医療法の改正も続いていきますから、そうした中で精神病床における人員配置についても検討してまいりたいと考えております。

中村(哲)分科員 ありがとうございます。

 一冊、本を紹介させていただきたいと思います。講談社から出ております、野村進著「救急精神病棟」、そういう本があります。その三百四十五ページにこういう記述があります。少し読ませていただきたいと思います。「「慢性精神病患者は病院の固定資産」 こんな守銭奴の極みのような言葉が、病院経営者のあいだでは公然と語られ、患者をなるべく長く入院させて「抱え込んだほうが儲かる」という、医の世界にあるまじき思惑が広がっていく。」このような記述であります。

 今、精神病院は古い病院もたくさんあります。精神病院というのは、非常に、社会的入院で退院が難しい、そういうことがありますので、結局、入ってしまったらその病院から動かないわけですよね。ずっとそこにいさせられる。

 よく聞く話として、これは厚生労働省は、そんなことありません、絶対ありませんとおっしゃるんですけれども、畳敷きのところに五十人まとめて寝かされている、そういうのを本当にないと言えるんですか。ありません、ありませんとおっしゃるんですけれども、いや、おれ知ってるよという声も聞くわけですよね。

 実際、本当にないのかということを考えると、やはり、清潔な病院であれば僕は古いも新しいもないと思うんですけれども、古い病院は古いなりの病院である可能性もあるわけですよね。医療法においては、古い病院では一人当たり四・三平米でいい、新しい病院では六・四平米必要ですよということが決められているらしいんです。建てかえというのは簡単にできませんから、そういう基準もあるのかなと思うんですが、一定程度前向きな努力をしていって、患者さんのクオリティー・オブ・ライフ、療養環境を整えようとしている病院には、何らかのインセンティブを与える必要があるんじゃないかなと。

 まあ、それは考え方ですから、必ずしもそうとは言えないかもしれない。利益誘導につながっていってもいけませんし、ここは難しい話なんですけれども、少なくとも雑魚寝でとかいうような異常な状態がないようにはしないといけない。すごいピンからキリまで環境が違うと思うので、そこを少なくともちょっと緩和していくというか、そういった努力が、だから、これはお医者さんの数と看護婦さんの数とかとまた違うレベルの話ですから、別の取り組みが必要だと思うんですよ。その点について、大臣、いかがお考えでしょうか。

尾辻国務大臣 先ほども、気になりましたから、私も、本当にないなと言いました。

 そのときに説明をしてくれた説明をそのまま言いますと、少なくとも昔みたいにがばっと畳の部屋に詰め込んでいるという状況はない、これはありませんと。ただ、畳の部屋の方がいいという患者さんもいたりするので、畳の部屋が残っていることは事実で、また、その畳の部屋に何人かの人がいるというのは、部屋があることは、これは事実だというふうに言っておりました。

 ただ、そうしたものをだんだん改善、そうしたものというのは、畳の部屋がいいという人が畳の部屋にいるということは悪いことじゃありませんけれども、大人数の部屋をつくるということはよくありませんし、改善をしていかなきゃいかぬ、こういうふうに思っております。

中村(哲)分科員 もう時間が少なくなってまいりましたので、最後の論点に入らせていただきたいと思います。

 医療観察法ができた背景というのは、池田小学校事件があったと言われております。しかし、この池田小学校の事件の宅間死刑囚のケースというのは、医療観察法が施行されてもこの件は再発は防止できません。再発の防止は、やはり鑑定、簡易鑑定で詐病が見抜けなかった、そういった状況を改善していくような国としての取り組みが必要である。これは本質的にはそうであるということは、皆さん、本音ではもう理解していただいていると思うんです。

 そこで、きょうは、最後に、塩谷文科副大臣にも来ていただいておりまして、その話をあわせてお聞きさせていただきたいと思います。

 この鑑定ということを、やはり公正に、どこに行っても、全国どこで起きる事件であっても同じような鑑定が受けられるような、そういった司法精神医学の研究、そして、実際にその鑑定をするための意見を述べられるようなセンターを、私は厚生労働省が中心となってつくるべきだと考えております。この点について大臣にお聞きしたいのと、塩谷文科副大臣には、こういった動きが大学病院の中で起きていると聞いております。大学病院の中でそのセンターをつくろうとしている動きに対して、文科省としてどのようにお考えになっているのか、その点についてお聞かせください。

西副大臣 今お尋ねの、我が国の司法精神医学のレベルアップの件についてでございますが、これは、先ほど御指摘の刑事責任能力の鑑定という大変重要な面も当然のことながら、我々これから進めようとしております、患者さんの病院から地域という流れ、それからさらには新しい治療法という意味でも大変先進的な精神医療が求められるという意味でも、大事なことだというふうに考えております。

 そのために、平成十五年の十月に、省内の国立精神・神経センターの精神保健研究所というのがございまして、その中に新たに司法精神医学研究部というものを設置いたしました。この中では、臨床、疫学、社会学、心理学などを合わせた総合的な観点から、例えば裁判所における鑑定事例を収集しそれをデータベース化するという方法など、精神鑑定のあり方に対する研究を進めているところでございます。

 今後、これらの研究成果の蓄積を通じて、刑事責任能力の鑑定の標準化、それから鑑定の質の向上、これを含めて、司法精神医学の充実のために全力で頑張ってまいりたい、こう思っております。

塩谷副大臣 お答え申し上げます。

 今委員お話しのとおり、二〇〇三年七月に心神喪失者等医療観察法が制定され、これら心神喪失者等に対する鑑定や入院による治療は、適切な社会復帰の推進等に携わる人材育成が急務になっているところでございまして、これらの心神喪失者に対する適切な診断、治療方法等について教育研究を行う司法精神医学の分野の充実は大変重要であると認識しているところでございます。

 こういう中で、国立大学法人千葉大学においては、社会精神保健教育研究センターを設置して、精神障害者や心身喪失者等の重大犯罪の診断、処遇判定、治療、社会復帰などの司法精神医学に携わる人材の育成を図ること等を予定しておりまして、この十七年の予算にもその計上をしているところでございます。

 我が文科省としても、今後、このような各大学における社会的重要課題に対した教育研究の取り組みについて必要な支援をしてまいりたいと思っているところでございます。

 以上でございます。

中村(哲)分科員 時間が参りました。

 今の両大臣の御答弁というのは、まず研究をしっかりしていくということだというふうに実感しております。その後にはしかし、やはり鑑定そのものをしっかりしていくという、次の段階に入っていかないといけない、そのことも指摘させていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

根本主査代理 これにて中村哲治君の質疑は終了いたしました。

 次に、西村康稔君。

西村(康)分科員 自由民主党の西村康稔でございます。きょうは少子化対策についてぜひ議論させていただければと思っております。

 いろいろなところで最近、やはり少子化対策をやらなきゃいけないというふうになっておりますけれども、年金問題、福祉の問題、すべての問題の基本的な背景になることでありまして、将来日本の活力を維持するためにもぜひこの少子化対策をやらなきゃいけないと思っているところであります。諸外国でも、一たん下がってもその後また対策を講じて上がってきている。オランダが有名でありますけれども、一・四台に下がって、また一・七台まで持ち返している、あるいはフランスは一・八から九ぐらいで安定的になっている等々、それなりの政策をやっているからこそ高い出生率を維持しているんだろうと思いますけれども、まず国際比較、我が国の家族政策分野への支出、これのGDPに対する割合は諸外国と比べてどの程度のものなのか、お答えいただければと思います。

伍藤政府参考人 我が国の家族政策分野への対GDPに占める割合、外国との比較でございますが、二〇〇一年のOECDの基準で比較をいたしますと、我が国は〇・六%でございます。アメリカが〇・三八%で我が国よりは低いということでありますが、ヨーロッパ諸国、ドイツは一・九九、イギリスは二・二三、フランス二・八一、それから北欧のスウェーデンは二・九二と、いずれも我が国より高い水準というふうになっております。

西村(康)分科員 ありがとうございます。

 よく知られた数字ではありますけれども、日本より低いのはアメリカぐらいしかなくて、大体日本の三倍から四倍、五倍の支出をしているわけでありまして、これだけが原因ではないと思います。アメリカも支出は低いけれども、出生率はそれなりに維持していますから、この支出だけではないと思いますけれども、それでも少し大胆に施策を今打つべきじゃないか。

 児童手当もことしの予算から小学校三年生までにしましたけれども、これもちょっと伸ばしただけでありますので、いわゆる日本的な小出し小出しで少しずつ出していくということで、世の中に余りインパクトを与えるようなことになっておりませんので、ぜひ大胆に、小出しでない骨太の施策を今こそやるべきじゃないかと思いますけれども、大臣、ぜひ御決意のほどを聞かせていただければと思います。

尾辻国務大臣 今のお話というのはよく指摘されるところでございます。特に、お話しになりましたように、日本の家族政策分野への支出が非常に小さいのではないか、いろいろな数字が出ておりますけれども、今の一つの例でGDP比でいってもやはり少ないということは言えるわけでありまして、この御指摘は多いところでございます。

 そこで、少子化対策、よく申し上げておりますけれども、私どもは、エンゼルプランから新エンゼルプラン、そして今度の子ども・子育て応援プラン、こういうふうにプランをつくってまいりました。

 最初はどうしても保育の充実みたいなことばかりに頭がいっていたんですが、そんなことではとても少子化対策はできない、もっと大きくやらなきゃいけない。これは今の先生のお話のとおりでありまして、私どももそういうふうに考えておりますということをまず基本に申し上げるところであります。

 そして、この新しいプランでは、やはり御指摘のとおりに、社会保障給付についても、まず、今高齢者の給付というのは非常に大きな部分を占めておりますから、これを子供の方へシフトするという見直しというのは考えなきゃいけないと思っておりまして、いろいろそこからくる施策はありますけれども、一々細かな施策は申し上げません。大きく言いますと、社会保障全般の今一体的な見直しをしておりますから、こうした中で、今御指摘のような面について十分検討していきたいと考えております。

西村(康)分科員 ぜひ大胆な施策を打っていただければと思います。その際も、やはりコストがどのぐらいかかるのか、その財源をどこから手当てするのかという議論と、それからそれぞれの施策の効果がどのぐらい見込めるのか、これはなかなか難しいんだと思うんですけれども、諸外国の施策も参考にしていただきながら、コストと効果を見きわめながら大胆な施策をぜひ打っていただければと思いますが、その幾つかの施策について議論していきたいと思うんです。

 一つ目に、児童手当ですけれども、小学校三年生までにしたということでことしの予算は少しふえていると思うんですが、本年度の予算と来年度の予算と、この金額をお教えいただければと思います。

伍藤政府参考人 児童手当の給付総額で申し上げますと、十六年度予算で約六千三十億円、それから来年度の、平成十七年度予算案では約六千四百二十億円を予定しておるところでございます。

西村(康)分科員 六千億強の予算を組んでおられるということであります。少子化の白書も内閣府で出されておりますけれども、アンケート調査を見ても、やはり子育て、教育にお金がかかり過ぎるというのが圧倒的に、本当はもう少し子供を持ちたいけれども理想の数よりも少ない理由の第一が、このお金がかかり過ぎるということでありまして、児童手当も少し工夫ができないかということで、世帯数で見てみますと、一人の子供がいる世帯数が約五百五十四万世帯ですね。それから、二人子供がいる世帯が五百五十九万、ざっと五百六十万ですね。三人目になると百六十一万に減るわけですね。四人以上になると、これはもう二十万世帯ということでぐっと減ります。

 本当は理想の数は持ちたいんだけれども、それより現実は少ない。その理由は経済的な理由だということからすると、一人の五百五十万世帯がもう一人、経済的な余裕ができて産めればその分ふえるわけですし、二人いる五百五十九万世帯がもう一人頑張って、本当は持ちたいというところですから、実はうちも三人いるんですけれども、もう一人持ちたいなと思うんですが、これはなかなか、都合もあるので、それは余談ですけれども。

 そのところで、例えば、まず今の制度を倍額にする、第一子、第二子、今五千円ですけれども、これを一万円にする。それから第三子以降を二万円にするということで、もし仮にそういう予算の制度にすれば、幾らの支給総額になり、追加的に幾らの財源が必要になるか教えていただければと思います。

衛藤副大臣 御指摘のケースにつきまして試算しました結果、十八歳までの延長、そして金額を倍にする、今の五千円、五千円、一万円を倍にするということになりますと、三兆八百億円というぐあいに見込まれるところでございます。

 以上でございます。

西村(康)分科員 そうですね、小学校三年生までと言わず、フランス並みに十八歳までにして、さらに金額を倍にしたときに三兆円で、プラス約二兆四千億必要になるということですけれども、さらに、第一子は産んでいただいて、第二子のときに一子と二子の分二万円もらえる。二子産まないと児童手当が当たらない。さらに、第三子以降を産んだ場合に思い切って五万円与えるということにした場合、幾ら必要になるか。これも試算を教えていただければと思います。

衛藤副大臣 四兆一千百億円でございまして、そうしますと、追加財源としては三兆五千億になるということになります。

西村(康)分科員 第一子、第二子一万円、第三子以降二万円で三兆円。それから、第一子ゼロ、第二子産んで初めて一子、二子の分の二万円がもらえる、第三子以降五万円と大胆にすれば四兆円ということで、いろいろな試算があり得ると思うんです。何が効果的か、これはよく議論しないとわからないと思いますけれども、六千四百億ということしの給付総額、これを少ないと思っているんですけれども、少し大胆に、年齢を引き上げたり金額を引き上げたりすることも含めて議論できればと思います。いずれにしても、財源の議論はちょっと後でさせていただきますので。

 それから二つ目に、人工妊娠中絶が年間三十万件を超える数字があります。この理由も、いろいろな理由があるので、細かいところはよくわかりませんけれども、基本的に、やはり経済的にきついということだと思います。そういう方が多いと思います。

 その中で、出産一時金で、一時金だけではもちろんだめなので、先ほど申し上げた児童手当も含めての手当てが必要だと思いますけれども、一時金を仮に三十万円から大胆に百万円に引き上げたときに、これも財源としてどのぐらい必要になるのか。それから、そういう大胆なことをぜひ検討していただきたいと思いますけれども、御意見をいただければと思います。

西副大臣 お答え申し上げます。

 現行の三十万円を百万円とした場合ということでございます。今、一兆一千八百億円の予測になっております。つまり、現行に対して八千二百億円の増額ということになると思います。

 現行三十万円に対してぽんと百万円ということで、委員の積極的な少子化対策、よくわかるんですが、もちろん御異論あるのかもしれませんが、全体としての社会保障の中での少子化対策のバランスということを考える必要があるのではないかというふうに今思っているところでございます。

西村(康)分科員 ぜひ引き続き御検討をしていただければと思いますけれども、理想の子供の数を持たない二つ目の理由は、高齢であるからということが二番目に来ておりまして、これは結婚の晩婚化も理由の一つだと思いますし、高齢出産に対する不安が強いんだろうと思います。

 一番が経済的な理由、二番目が高齢によるということで、理想の数の子供を持てないということのようでありますけれども、そうすると、高齢出産に対して、この面でも大胆な支援、特に不安な方が多いと思いますので、心理的、身体的なケアも含めて、この点の支援を充実させるべきじゃないかと思いますけれども、この点についてのお考えをお伺いしたいと思います。

衛藤副大臣 高齢出産、三十五歳以上の出生数は十五万人ぐらいと言われております。全体としては約一四%ぐらいということでございますけれども、出産年齢が高くなりますと周産期の死亡率あるいは低出生体重児が生まれる率が上昇いたしまして、やはりハイリスク出産になるというぐあいに言われているところでございますので、そういう意味で、今、私どもとしてやらせていただいているものは、周産期医療ネットワークの整備を推進するということが主体でございまして、これは周産期医療体制の充実に努めまして、そして出産についての安全、安心をより確保してまいりたいというぐあいに思っているところでございます。

西村(康)分科員 ぜひ、心理的な負担、心配だと思いますので、相談できる窓口、今おっしゃられたネットワークを充実させていただいて、安心して高齢者の方でも産んでいただける体制をしっかりととっていただければと思います。

 それから次に、育児休業給付のことなんですけれども、十七年度予算案において給付費と件数をどのぐらい見積もっておられるのか、まず事実関係をお伺いしたいと思います。

青木政府参考人 育児休業給付の平成十七年度予算における積算でございますが、給付費総額といたしまして九百十八億円、それから件数、月平均の受給者、八万四千人と見込んでお願いをしているところでございます。

西村(康)分科員 年間百十万件ぐらい生まれてくるわけでありまして、それぞれのお父さん、お母さんが仕事をしておる中で、育児休業をとられる件数としては八万件ということでありますから非常に少ない。これは、休暇をなかなかとらないということで言われておるわけでありますけれども、金額的にも九百億強ということで、この点もさらに充実をさせるべきじゃないか。

 これは、諸外国と比べても低い水準じゃないかと思いますけれども、給付の水準が一応、給料の四〇%となっておりますけれども、これはいろいろ雇用特会の中での理屈があるんだと思いますので、なかなかこれを引き上げるというのは理論的に難しいのかもしれませんけれども、何か工夫の余地がないのか。スウェーデンでも八〇%ですし、非常に高い水準でありますので、何か工夫の余地がないか。あるいは、引き上げられない理由として、どんなふうなことを財政当局から言われておるのか、そのあたりを含めてお答えをいただければと思います。

青木政府参考人 ただいまお触れになりましたように、育児休業給付の給付率は、平成十三年度から四〇%ということになって、それまで二五%でありましたが、そういうことになっております。

 これは、やはり制度の性格として、本来の、本業の方は失業給付を出すことでございまして、そちらの給付の方は、先生御案内かと思いますが、平成十五年に厳しい保険財政の中で、いわゆる一般の失業者の方々の給付率を原則的に五〇%と、ちょっと我慢をしていただきまして、もちろん保険料の方もまた負担をいただくなど、大変御苦労をいただいております。

 一方、この給付金の給付につきましては、育児休業のときに、これも先生御案内のとおり、社会保険の労使の保険料が労使負担免除される、したがってとられた方の分も免除になっておる。そういうようなことを勘案すると、実質給付率というのは五〇%ぐらい。そうなりますと、失業者に対する給付と継続給付であるこの育児休業給付と均衡を保つと、雇用保険制度としてはこのレベルが精いっぱいかなというふうに考えております。

西村(康)分科員 理屈としては失業のための給付が基本ということで、これもわからないではないんですけれども、いみじくもおっしゃいましたけれども、平成十三年ですかね、二五%から四〇%へ上げられた。余りきいてないわけですね、結局、出生率落ちていますから。先ほどの小学校就学前から小学校三年生までにしたという、これも小出しにちょっと出した。二五%から四〇%にちょっと上げたというのを、しかも時期をずらしてちょっとずつちょっとずつやっても、これは全くきいてないわけであります。

 ぜひ、大胆にがつんというものを、みんながこれは安心して子供を産めるなというのを検討していただければと思います。財政上の、財政当局の理由もよくわかりますし、制度上の理由もよくわかりますけれども、何とか欧米並みに八〇%に、まあ八〇%、大胆に言えば四〇%を八〇%にするという、倍、育児休業のときも給料がしっかり八〇%もらえるという仕組みをつくれないかと思うんですけれども、場合によっては新しい制度の創設も含めてぜひ御検討いただければと思いますけれども、お答えをいただければと思います。

衛藤副大臣 仰せのとおりでございまして、実は、二五%になるときに、制度導入で、これは当時プロジェクトを自民党の中につくりまして、とにかくスタートしようということで、そのとき使ったのが実は失業保険を使いました。そこを、七年からスタートしまして十三年にやっと二五を四〇%にできた。ところが、失業本体の給付の方が五〇になって、それは保険料つきでありますから、実質は、今のところこの育児休業手当の方がよくなるような状態になるところまで来ておりますので、先生仰せのとおり、これ以上ふやすということになりますと、やはり別途の検討をする必要があるというぐあいに思っております。

 そういう意味では、私ども、この最後に検討規定というものを検討課題として入れさせていただいているところでございますけれども、やはりもっと財源を探しながら、どういうぐあいにやるかということについて検討する必要があるんじゃないのかと思っております。

 ただ、ちなみに欧米が八〇%ということでございますけれども、先ほどからお話しのように、アメリカにおいては、アメリカはむしろ低福祉・低負担という国でありますので、アメリカ、イギリスはこういう制度については全くありません。それから、フランス、ドイツは、比較してみますと、いろいろな差はありますけれども、日本の方がちょっとまだいいぐらいなのかなという感じでございまして、北欧のスウェーデンやノルウェーの方はいわゆる八〇%相当。ただ、日にちの方はこんなに長くはないですけれども、そういう形でございます。そういう意味で、その検討をぜひやはりやっていかなきゃいけないというぐあいに思っております。

 ただ、その前に、やはりやるべきことは、むしろ取得率、これが、先ほどお話ございましたように、まだ百十一万人生まれる中から八万人ということでございますから、取得率をいかに上げていくかということがやはりどうしても必要ではないのかというぐあいに思っているところでございます。

 同時並行でやらなきゃいけませんけれども、この取得率を上げるために、やはり職場の理解をどう拡大していくのかということ、それからやはり仕事と家庭の両立を図りやすい雇用環境をどう整備していくのかということが極めて大きな問題でございますので、今私どもは、この育児・介護休業法の円滑な施行に努める。そして、次世代育成のための行動計画を策定しまして、企業における環境の整備をやる。そしてまた、こういうぐあいに頑張ってくださっているファミリー・フレンドリー企業の一層の普及促進をやっていきたいということで、この促進、環境整備に努めているところでございます。

 ぜひ、とるのが当たり前、とれるのが当たり前、とるのが当たり前というように一刻も早くしていきたいというぐあいに思っているところでございます。

西村(康)分科員 ありがとうございます。ぜひ、取得率のアップ、社会のそういう雰囲気をつくっていくということをまず第一にやっていただいて、その上でさらに、給付水準のアップ、新たな制度も含めて、検討を深めていただければと思います。

 それから、乳幼児医療のことなんですが、実は私も公務員でありました折に東京都江戸川区の官舎に住んでおりまして、江戸川区は非常に出生率が高いんですね。東京都の中でも一番高い部類で、一・三あるわけであります。それで、渋谷が〇・八とか非常に低い中で一・三と高いわけですけれども、そのときに私の妻などがよく、どこの町が住みやすいかというのをインターネットでやったり、あるいは口コミで広がっているんですが、そんな話をしていたことを覚えているんです。江戸川区は乳幼児の医療を無料化していまして、こんなことが若い奥さん方の間で、あの町は住みやすいからあそこに引っ越そうとか、あるいはあそこに住んで子供を産んで育てようとか、そういう口コミでうわさが広がっていくということがあったようであります。

 前にもどこかでお話をしたかもしれませんけれども、渋谷が低くて何で江戸川区が高いのかとか、県別によってまたあると思いますし、ぜひそんな分析も、制度によってどういう効果があるのかということも含めて、またしていただきたいと思います。

 この乳幼児医療、これも大胆にやるとすれば、中学校に就学する前、小学校の間ぐらいはもう全部医療費は面倒を見るというようなことを仮にやったとすれば、これもアイデアとして時折言われる話でありますけれども、仮にやったとした場合、どのぐらいの財源規模が必要であるのか、そしてそういった考えについてどんなふうにお考えなのか、お答えいただければと思います。

衛藤副大臣 ちょっと今試算しておりませんので。――ありますか。では、先に。

伍藤政府参考人 小学校まで、十三歳未満で計算してみますと、今自己負担が全体で三千九百億円でありますから、これを公費で負担するということになります。

西村(康)分科員 そのことについてどんなお考えなのか、お答えをいただければと思います。

衛藤副大臣 今、国といたしましては、未熟児や障害児といった援護につきまして、医療費の公費負担を実施しているところでございます。それから、厳しい保険財政の中で、少子化対策で何とかやろうじゃないかということで、やっと医療費の一部負担を三割から二割に引き下げたところでございまして、これももっと、やはりできれば一割とか低減したいと思うのでありますけれども、やはり医療費全体の財源の問題、今厳しい医療財政の中でどうするかというところをちゃんと検討していかなきゃいけないというぐあいに思っています。

西村(康)分科員 御指摘もごもっとものところでありまして、全体、財源をどうするかというのが一番の問題でありまして、財源さえあればいろいろなことができるわけでありますので、その財源の議論を、残りちょっと短くなりましたけれども、したいと思います。

 さまざまな人的控除なんですけれども、十六年から配偶者特別控除が廃止となりました。引き続き配偶者控除は残っているわけでありまして、あと百三万円を超えても百四十一万円まで段階的に控除できるという仕組みでありますけれども。

 考えてみますと、夫の収入が低い世帯で、奥さんも一生懸命働いてそれなりに稼がなきゃいけないという世帯は、奥さんがその百三万円あるいは百四十一万円を超えて働かざるを得ないとすれば、この控除は、御主人の方は控除を受けられなくなる。逆に、所得の高い人は、奥さんは働かなくてもいいものですから、八百万とか九百万ある人は、奥さんはそんな働かなくていいという世帯はこの控除を受けられるという、何となく変なことになって、不公平感があるんじゃないかと思うんです、実際に使っている人を分析してみますと。

 そういうことからすると、むしろこれをやめてしまって、財源として使って、本当に必要なところに手当を支給するという方がいいんじゃないかと思うんですけれども、財源として、仮にこの配偶者控除制度をなくした場合、どのぐらいの財源が出てくるのかと、こういった考え方についてどんなふうな御見解か、あわせて教えていただければと思います。

加藤政府参考人 今御指摘のございました配偶者関係の控除をやめた場合の増収額でございますが、約七千億円程度と考えております。

 この配偶者控除につきましては、十六年から配偶者特別控除を廃止して、いわゆる従来は二階建てだったのを一階建てに是正をさせていただきました。さらに、この問題については、政府税制調査会でも、問題意識を持って引き続き議論すべしという御指摘をいただいております。

 これにつきましては、やはり従来の考え方は専業主婦家庭というものを標準世帯として考えて、それをベースに家族、家庭としての税負担という議論を行ってまいりました。昨今、やはり共稼ぎ夫婦がむしろ専業主婦世帯を上回ってくる、それから、今先生も御指摘になられましたが、女性の就労の選択というものが税制によってゆがめられているおそれもある、こういった問題の指摘がございます。

 したがいまして、引き続き、私ども、税制のあり方として議論をしていくことが適当と考えております。

西村(康)分科員 ぜひこれも検討を進めていただければと思います。

 もう一つ、扶養控除なんですけれども、これも、いろいろ制度を見てみますと、上乗せされている部分がまずありまして、十六歳から二十三歳まで、これは高校生、大学生で教育費がかかるということだと思いますけれども、特定扶養控除ということで控除額が二十五万円分割り増しをされている。それから、七十歳を超えた高齢者の扶養家族がいる場合に、これも割り増しとして十万円分割り増しされている。

 考えてみますと、高校生、大学生の部分、確かにお金がかかるわけですけれども、ここは奨学金制度とかでも対応できないことはないと思いますし、それから高齢者についても、介護保険ができて、こちらの方で対応することもできるわけでありますので、少なくともこの部分は要らないんじゃないか。

 それから、二十三歳から七十歳までの人で扶養家族がいる場合も、これも控除される。これも、昨今、フリーターであるとかニートと言われる人たちがふえて家族として養われている。もちろん、その人たち自身に原因があるかどうかは別として、本来、働いて自分で稼いでもらって、社会で一定の役割を果たしてもらって、それが生きがいになるというのが理想だと思いますので、そういうことからすると、二十三歳から、恐らく二十代、三十代で独身の人たちが家に、お父さん、お母さんのすねかじりをしているんじゃないかと思うんですけれども、その分も控除するというのも、これもいかがなものか。

 むしろ、これもなくして、本当に必要な人のところに支給をしてやるという方が制度としては公平でありまた効率的じゃないかと思うんですけれども、この扶養控除につきましても、もしなくした場合どのぐらいの財源規模になり、そして、そのような考えについてどういうふうにお考えか、教えていただければと思います。

加藤政府参考人 今御指摘の上乗せを含めて、全体の扶養控除の減収額は一・七兆円程度ございます。

 御指摘のように、この扶養控除というのは、やはり納税者の担税力を考えた場合に、扶養義務があって、しかもその扶養義務の対象の方が稼得されていないという事実を踏まえてこの制度を行っておるわけでございますが、これも政府税調等で、やはり扶養という控除の考え方というものをもう少し整理する必要があるのではないか、特に児童の扶養の問題と、それから先生御指摘のような一般的な、かなり大きな、いわゆる年齢のいった方の扶養というのはやはり違う、そういう面の政策的な問題意識というのを持つべきだということも政府税調の方でも議論されておりますので、これも所得税のあり方の問題として引き続き議論したい。

 それからさらに、やはりこの問題は、税制論だけではなくて、所得控除にするか税額控除にするか、さらには手当との関係をどう考えるか、やはり広範な議論が関係省庁とも必要だと思いますので、その辺もぜひ税制当局としても問題意識を持ってまいりたいと思います。

西村(康)分科員 時間が参りましたので終わりますけれども、今御指摘があった配偶者控除あるいは扶養控除、もし全部なくしたとしたらこれで二兆数千億出てくるわけでありまして、全部なくすのはなかなか難しいのかもしれませんけれども、そんなことも含めて、ぜひ大胆な議論をしていただければと思いますし、それから、今回、以上の質問をさせていただきましたけれども、非常に厚生労働省の中で多岐にわたって、各局いろいろなところにわたって、それぞれからいろいろな意見交換を事前にさせていただいたんですけれども、ぜひ、これはやはりまとめて、統括して、少子化対策室がありますけれども、ばらばらに縦割りでやっているとみんな、それこそ小出しの施策になってしまいますから、ぜひ大胆な検討を引き続きやっていただければと思います。

 ありがとうございました。

根本主査代理 これにて西村康稔君の質疑は終了いたしました。

 次に、大谷信盛君。

大谷分科員 民主党・無所属クラブの大谷信盛でございます。

 きょうは、三十分で、三点に絞りまして大臣に御質問させていただきたいと思っております。一つが、エステティック産業、美容の分野でございます。もう一つが、美容の分野でも理容師、美容師さん、その資格というものがあって、無資格の方もやられているんじゃないかというような懸念がございますので、これも安全の面から御質問させていただきたい。あともう一つは、高齢者福祉の問題の中で、本年、介護保険の改正の中でも含まれておるんですけれども、小規模で多機能な、通いを中心とした、時には泊まれるというような施設を地域につくっていく、これはとてもすばらしいことだと思っているので、ぜひとも頑張っていただくためにも、中身をしっかりと詰めていきたいというふうに思っております。

 まず、エステティック産業なんですけれども、これは美容ですから当然厚生労働省の管轄だというふうに思いますけれども、現時点でどれぐらい店があるとか、どれぐらいの売り上げを持っているんだとか、今どういう規模にあるのかというような把握はなされているのかどうなのか、教えていただけますでしょうか。大臣、しょっぱなは大臣で。

尾辻国務大臣 今、私は手元に数字がございませんので、局長からお答えさせていただいてよければ、させます。

田中政府参考人 エステティックというものでございますけれども、そもそも、言葉の定義が必ずしも定まっておりませんで、どこまでがその範囲に含まれるのか非常に難しいところでございます。

 関係団体の報告によりますと、店舗数については約一万店舗でございます。それから、従業者数につきましては四万人から五万人というふうに言われております。また、売り上げ、これも民間の調査データでございますけれども、四千億円程度ではないだろうかというような数字を私ども把握しているところでございます。

大谷分科員 今、民間のデータですけれどもという言葉が出ましたけれども、全部今のは民間のデータですか。自分のところのデータじゃなくて、民間のデータですか。四千億円、僕は本当はもっと高いんじゃないかなと思っているんですけれども、美容の部門は厚生労働省の部門ですから、今後この産業について、しっかりと役所として調べるというか、理解をしていこうという姿勢はございますでしょうか。

田中政府参考人 今申し上げましたのは、あくまでエステティックに関します数字でございます。理容と美容、ちょっと今手元に数字がございませんけれども、恐らくもう一けた上の兆の単位の、少なくとも、従事者数も十万、二十万の単位でございますので、売上高も恐らく兆の単位になっているのではないかというふうに思っております。

大谷分科員 今、質問に答えてもらえなかったんですけれども、やっていく気があるのかないのかなんですけれども、今までやってこなかったということはわかりました。ぜひともこれからやっていただきたいと思っているんです。でも、できないよと多分局長は思っていると思うんですよ。

 なぜならば、簡単です、理容師さん、美容師さん、これは資格試験があります。ですから、しっかりと数が把握できます。しかし、エステの場合は、民間の学校に行かれて、民間の学校が出しているような資格でない資格が出て、それでいろいろな意味で美容のサービスをして、それの代価をいただいて売り上げということになります。だから、把握できないということなんですよ。そこに僕は、今どんどんどんどんこれは産業として大きくなったらいいと思っていますし、経済産業省なんかは健全育成を目指して御指導なさっておられますけれども、そんな中、やはり厚生労働省としては安全ということを考えていかなきゃいけないというふうに思っているんですね。

 例えば、アートメーキングという言葉がございますが、これは若い女性にはさほど人気はないのかもしれない。しかしながら、一定の年齢をとっていきますと、まゆ毛とかが薄くなっていくわけですね。そんな中で、韓国なんかではかなり普通に皆さんがやられているというふうに聞いていますけれども、色をつけて落ちないようにする、二、三年たてば落ちるんですけれども、そんな美容もどんどんはやってきている。これについての安全性はどのように認識し、どのように指導なさろうとしているのか、まず教えていただけたらというふうに思うんです。

岩尾政府参考人 アートメークや入れ墨を含めた、針先に色素をつけながら皮膚の表面に墨等の色素を入れる行為というのは、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ、人体に危害を及ぼし、また及ぼすおそれのある行為であります。当該行為を医師免許を有しない者が業として行えば、医師法第十七条違反と考えております。

 こういう行為を医師以外の者が行うということを容認すれば、たとえ条件つきであっても、皮膚の衛生の問題ですとかそういうことがあり、公衆衛生上の悪影響がないとは言い切れないので、私ども、適当ではないと考えております。

大谷分科員 現状ですと、結構皆さんおやりになられているようでございます。

 多分、今の店舗数や云々かんぬんのことから察して余り現状を御理解していないのかなというので、私の方からお伝え申しますが、例えば、三十万、五十万円を払って三日間講習を受ければ、ある意味、技術を学んだということで、技術者としてエステティックサロンでこれを施されているわけです。抜き打ちに十軒電話してみました。十軒ともアートメーキングをおやりになられていました。安全は必ず保証いたしますという言葉がございました。私は女性ではありませんので行けませんし、うちの女性の関係者が調べてくれたわけですけれども。

 そんな状態で、かなり多く、そのかなりの多くがどれぐらいなのかというのが知りたいんですけれども、多くの方がこれを我が国で利用されておられます。そんな中、行政が、規制がついてきていないんですよね。そこにしっかり規制をつくらなければ国民生活の安全性というのは守れないんじゃないかなと思っています。

 時間がないので私の案を言いますと、これはやはり一つの美容ということで位置づけて、医師法に違反している云々かんぬんと言う前に、安全を考えたならば、これはほっておいても現実はずっとみんなやっているんですから、美容ということで、技術者の評価だとか一種の資格だとかというようなものをつくって、新しい枠組みの中で安全性を保つようなことをしなかったらいけないのかなというふうに思っておりますが、その点についてはいかがお考えでしょうか。

尾辻国務大臣 まず、美容業そのものについて申し上げますと、国民の生活の向上に不可欠なものであると認識いたしております。

 いろいろ今お話しいただいていることにも関係してきますけれども、パーマ液や化粧品等を人の身体の一部である毛髪だとか皮膚に直接使用するわけでありますから、これは人の身体の安全及び衛生に直接かかわるという点で適切な公衆衛生上の規制が必要である、美容業はそういうものだと思います。

 今のお話の、ではエステティックに関するものをこの美容業の規制の中で考えてみるのか、今ちょっとお答えいたしましたように、医師法その他、医療という立場から見て規制するのか、いろいろこれは議論があるだろうと思います。ただ、先生御指摘になっておりますように、実態と法の整備との間にかなりずれがあるのかなと思いながらお話を伺っておりましたので、よく実態を見ながら検討してみたいと思います。

大谷分科員 大臣、ぜひとも、安全性にかかわることなので、まずは厚生労働省の中で議題としてのせていただいて、議論をしていただきたいというふうに思います。

 実態は、かなり美容ということで認知をされておりますので、そういうことも踏まえた上でぜひともやっていただきたいというふうに思います。また改めて、委員会もしくはお役所の皆さんとこの問題については引き続き協議をさせていただきたいというふうに思います。

 あと、美容師さん、理容師さんの免許のことなんですけれども、昔は、資格を取るのにインターン制度がございましたので、無資格者の方が髪を切り、サービスを施し、そして料金を取るということが多くあった。インターン制度がなくなってからはそれがなくなったというふうにどうも厚生労働省さんは認識をなされているようでございますけれども、現実は、聞いてみますと、どうもそうじゃない、結構いるというようなことを言うんです。その辺の把握ができているのかできていないのかと役所の皆さんにお聞きしますと、やっていませんとは言いませんでしたが、府に任せています、県に任せていますと。県、府に聞きましたら、市に任せていますということなので、自分で調べさせていただきました。

 後でお渡ししますけれども、大阪市以外のいわゆる近郊都市、衛星都市というふうに言われますけれども、そこですと、平成十五年度で六人おられました。私の選挙区の中でも三人おられました。

 いわゆる衛生検査ということで保健所の方が行かれますね。そのときのチェック内容として、施設数に間違いがないのかとか衛生面を監視する、あと無資格者への指導ということで、いるかいないかも一応チェックしているんですけれども、行政区によったらほとんどこのことはしていないんですよ。来て、まあ顔見知りですから、ああという感じで、ちゃんとやっていますね、衛生上やっていますねというだけで終わっているんですよ。

 ただ、最近非常に店舗数も多くなっています。そんな中、学校を出て資格を受けると、いい地域で七割、大体六割から七割の確率で合格をされる。しかしながら、二年間同様に学校に行ったけれども通らない人が、その中では三割、四割おられるわけですよね。でも、それは学校が面倒を見るのか、自分がお友達、ネットワークを伝って勤めるのかはわかりませんけれども、やはり働く先は、将来美容師になりたいから美容院に勤めるわけですね。髪を切ってしまいますよ。もしそれがまかり通っているのだとしたら、一体資格というのは何なんだという話になると思うので、そこのところをどう考え、認識をされているのか、一言いただけたらというふうに思っております。

田中政府参考人 理容所、美容所に対します立入検査で資格の有無というのはチェックしているわけでございます。平成十四年度には、理容所は三万七千五百九十三、あるいは美容所は五万九千二百四十八ということで、保健所の方から立入検査をして資格の有無等チェックしているところでございます。

 残念なことに、その結果、実際に都道府県が具体的にどのような指導を行ったのかというようなことについては報告を求める形になっていませんので、理容師、美容師以外の者がどのような業を行っていたのかということに関します統計はございません。ただ、十四年度におきまして、理容師、美容師以外の者が理容や美容を業として行っていたことの理由によって都道府県知事等が理容所、美容所の閉鎖を命じた例はございません。

 ということで、私どもとしては適正に行われているんではないかというふうに考えているところでございます。ただ、先生のおっしゃられるとおり、必ずしも私ども十分実態を把握していないということがございますので、今後とも、実情については把握すべく努力していきたいと思っています。

大谷分科員 手が回っていない、努力していくという御答弁だったですね。それは手が回らないと私も思います。だから、新しいことを何か考えなきゃいけないと思うんですね。その一つの方法として、御提案申し上げます。

 今、資格を取りますと、いわゆる賞状でもって、国家試験を通りましたよという免状が来るわけですよね。私の行っている理容店なんかはそれを壁にかけて飾ってあったりします。しかし、今の美容院はなかなかファッショナブルになっていまして、額に入れて飾っているようなところなんてほとんど少なくなってきましたよね。だれが持っているか持っていないかわからない。大の大人がそれを、いるかいないか、多分少ないんだと思います、それをチェックしに行くようなことなんてむだだというふうに思います。

 今皆さん方が首からつるしておられますIDみたいなものの、小さい、いわゆる車の免許証のようなものにして首からかけるというようなことが免許証だということになったら、これはコストなくして、一見して、資格があるのかないのかというのがお客様にしっかりとわかりますよね。そんな、ほとんどコストのかからないようなやり方でできるというふうに思うんですけれども、この案についてはいかがお考えでしょうか。大臣、局長という順番でお願いいたします。皮膚感覚でどうぞ。

尾辻国務大臣 今お話しになっておられるようなことというのは、カリスマ美容師なんということが話題になったときも私自身も大変気にしておりました。そして、あのときはそんなことが話題になったものですから、何だ、カリスマ美容師と言われている人が資格がない人がいるじゃないかというようなことも話題になったりしました。

 そういうことで、私も大変気にはしておった件でございます。そして、今非常に具体的な御提案をいただきました。ぜひ、関係の皆さんの御意見を聞きながら、そういったことを検討してみたいというふうに思います。

田中政府参考人 大臣が申し上げましたので、いろいろ意見は確かにあるんではないかと思います。常時携帯を課すというと新たな規制になりますし、それからほかの制度、免許制度はたくさんございますけれども、その制度とのバランスの問題もございますので、一律そういうことが本当にいいのかどうか、もう少しさまざまな意見について伺っていきたいというふうに考えております。

大谷分科員 そうですね、バランスが大事ですよね。でも、バランスというのは、みんな均一、並行、一緒で前に進むということはなくて、どこかが先に出たらどこかが下がったりということで、どこかが飛び出ないと物事は変わらないのでありまして、バランスと強調されるならば、自分が一回どこかで飛び出てほかのも飛び出すような、そんな推進という観点から物事は考えていただきたいというふうに思います。

 次の課題に移ります。

 高齢者福祉でございます。

 小規模多機能型居宅介護、これは今回の法案の中で入ってくるというふうに思うのですけれども、今、お聞きいたしますと百件ぐらい日本にあるということでございます。それを今回介護保険のサービスの対象にするということによって、もっとふえていくだろう。それも、今は基準というものがありませんから、小さな家にいたりとか、寒いところにいたりとか、みんな同じ部屋で寝ていたりとか、個室がなかったりとかと、いろいろあるので、それはしっかり基準をつくるということでございますけれども、私は、本当にすばらしいことだというふうに思いますし、私の地域に一つでも多くこういう場所がふえていったらいいなと思っておるのです。

 ここに数値目標をつくるつくらないというような議論は合わないのかもしれない。しかしながら、どんなイメージ、高齢者福祉の中でこれはどんな役割を果たしていくのか。大きなところがあってそれを補完するものなのか、いやいや、在宅というものがあって在宅をさらに補完するものなのか、その高齢者個人の人生の喜び、またその御家族の方の負担軽減、また家族の結びつきというものができるようにしていくのか、外交用語で言うところの戦略ですね、どんなものを描いていらっしゃるのか、一度お聞きしたいと思います。

尾辻国務大臣 今のお話、私から基本の部分だけをお答え申し上げます。

 私どもは、やはり在宅を中心に考えたい。在宅から通いという、あるいは一時的な泊まりというような、短期間の泊まりとかいうことを考えておるわけでありまして、基本をまず申し上げますと、在宅を基礎に考えておるということを申し上げます。

中村政府参考人 先生から戦略というお話がございました。大臣からも申し上げましたとおり、在宅を強化したい、こういうことでございます。

 御承知のとおり、高齢者の介護、政策としては、最初に施設の整備から始まりまして、九〇年代に特に在宅重視と言われ、介護保険制度は在宅重視を基本にしているということでございます。五年間たちまして振り返ってみますと、まだまだ重度の方が在宅で暮らし続けることが困難な状況もある、もっと在宅の強化ということが言われておりますし、とりわけ痴呆改め認知症の高齢者の方々が大変深刻な問題にあるということがわかっております。

 戦略のもう一つとしては、できるだけ、広い単位ではなくてきめ細かな、市町村、市町村の中でもさらに生活圏域、そういうところで在宅を支援することをつくりたい、それが特に認知症の方々については重要なのではないか、そういうことを基本として組み立ててまいりたいと思っております。

大谷分科員 わかりました。

 一つ二つ、御要望を申し述べさせていただきたいというふうに思います。

 今年の法案の議論の中でも出るでしょうし、これからまた運営の中で裁量があるんだというふうに思います。今、僕の手元にあるのは、平成十六年十一月十日、全国介護保険担当課長会議資料というのを参考に見せていただいて、読ませていただきました。そんな中で、基本的仕組みの中で、市町村は一定の範囲内で指定基準及び報酬の変更を行うことができるというふうに御指導をなされています。

 地方に非常に大きな裁量を渡していただきたいなというのが一つでございます。地域によっては、地域というのは市町村じゃないですよ、その市の中の地域ですよ、最初から立ち上がったところは、やはり築三十年、四十年のおうちが多いです。これはバリアフリーに中はなりにくいです。でも、その地域には高齢者の数が多かったりいたします。だから、ここの家はだめなんだという基準ではなくて、そんな家でも、市町村の安心、安全の規定の中でできるんだというような、非常に柔軟なものにさらになるように進めていただきたいということが一つ。

 そしてもう一つは、結局ペイしなかったらこれはふえないわけでありますから、いろいろなサービスを保険の対象とできるようにしていただきたい。また、市町村の大きな判断をそこに入れていただき、地元の判断というものを入れていただくような形でぜひとも運営をしていただきたいというふうに思っておるのですが、そのことについてはどんなコメントがございますか。

中村政府参考人 今先生の御指摘のような方向で、今提案させていただいております法律も構成されております。

 すなわち、もともと介護保険は地方分権ということでやってまいりましたけれども、事業者さんの指定は、今までは都道府県知事でございました。都道府県では大き過ぎる、こういうことで、今度のサービスにつきましては、市町村長さんに全部、指定から監督から、また立ち上げから関与していただくし、権限を持つというふうに考えております。

 そういったことで、先生、市町村でも大き過ぎて、その地域地域があるというお話がありました。まさに多様なものであると思いますので、できるだけ市町村の基準の面でも、それから、成り立たなければならないというお話がありましたので、介護報酬と呼んでおりますが、その面でも、市町村ができるだけ弾力的にできるようにというふうにやってまいりたいと思いますし、今、築三十年、四十年というお話がありましたが、こういう時代ですから、まさに住みなれたということがキーワードでございますので、新たに建てるより、古いおうちの持つ力というのもあると思いますので、できるだけ既存の資源を使っていただけるように、そういった意味でも、画一的な基準ではなく、そういうことがわかるのは地域の方だと思いますので、地域の方で御判断を願いたい、そういうことができるようにしてまいりたいと思っております。

大谷分科員 今局長が示されました方向性、しっかりと市町村に位置づけるように、市町村を指導するなんという言葉はおこがましいと思いますので、連携をとっていただけるようにお願いをいたすとともに、その連携度合いをしっかりと議員としてチェックさせていただき、時に提言、時に激励叱咤をさせていただきたいというふうに思っております。

 大臣、きょうは三つのテーマについて議論をさせていただきましたが、まさに前向きに考えていくこと、また、考えるに値することという答弁をいただきました。しっかりと議員として、これからも、連携、行政のチェック、提案していきたいというふうに思います。

 これにて質問を終わります。

根本主査代理 これにて大谷信盛君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

後藤田主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。宮下一郎君。

宮下分科員 自由民主党の宮下一郎でございます。

 きょうは、大臣、よろしくお願いいたします。

 先般、二月五日になりますが、地元で、午前と午後、二会場にわたりまして、私、障害者団体の皆様と御懇談させていただき、さまざまな御要望を聞く機会がありました。

 また、このバッジはそのバッジなんですけれども、いよいよ、あしたから八日間、私の地元長野県でスペシャルオリンピックスがスタートいたします。そういうこともありますので、きょうは、障害者福祉に重点を絞って質問をさせていただきたいと思っております。

 まず最初に、身体障害者の等級判定でございますけれども、今の等級判定表を見ますと、内部障害の二級というところが大きく空欄になっておりまして、いわゆるエイズのみ二級として内部疾患では定められております。

 実際、いろいろな障害の方がこういう認定を受けられると、その医師によって三級になったり二級になったり一級になったりということで、どうも公平でないんではないかというような意見もあるようでございます。それからまた、この等級表に関しては、恩給法では障害ということで恩給の障害の補償が受けられます片眼の視力のない方について、この障害の等級表から全く外れておりまして、一切障害者としての政策が受けられないというような格好になっております。

 こういうことを受けまして、障害の認定というのは、そもそもいろいろ選択肢もあると思いますけれども、こうした体系について今後見直すお考えがあるのかないのか。また、今回の自立支援法では、これに関連して、どのように障害を判断されるのか、お聞かせいただきたいと思います。

塩田政府参考人 今度の国会に障害者自立支援法案を提出させていただいておりますけれども、この新しい法律は、現在の身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、精神保健福祉法、各法の対象とされていた方々につきまして、統一したルールでの福祉サービスを行うという趣旨の法律であります。サービスの利用に当たりましては、それぞれの個別の法律に基づく等級にかかわらず、新しい法律に基づきまして、個々の身体状況などによってその障害の程度を判断して、サービスの適否なりを決めるという仕組みになっているところでございます。

 御指摘ございましたように、法律によりまして障害の程度とか認定の基準が異なっているわけでありますけれども、それぞれ経緯があったり、それなりの定着をしているということでありまして、御指摘にあったような御要望でありますとか、いろいろなところから見直すべきだという御指摘をいただいているところでございます。

 しかしながら、一方で、障害間の全体的なバランスをどうするかとか、あるいはほかの施策への波及ということもございまして、なかなか難しい問題もございます。今後、いろいろな方の御意見を聞きながら、医学の進歩等の状況を見ながら、これまでも検討しておりますが、有識者の、専門家の研究会も設けておりますので、引き続き検討を進めてまいりたいと考えております。

宮下分科員 きょうは国土交通省の皆様にもおいでをいただいていると思います。次に、障害者の公共交通に係る料金割引制度についてお伺いをしたいと思います。まず適用範囲から、それから次に運用の面で、改善の余地があるのではないかという御意見が多く寄せられております。

 まず、適用範囲についてですけれども、例えば有料道路でありますとかJR、ともに、精神障害者の皆さんや軽度の知的障害者の皆さんは料金の割引が受けられないという状態になっております。今回の障害者自立支援法案におきましては、三障害を統合的に取り扱うといいますか支援していこう、そうした法案が出されているわけでございますので、そうした面でも、こうした精神障害者の皆さん、それから知的障害者の軽度の皆さんもあわせて割引を受けられるようにしていただくのが自然なのではないか。そういうふうに、適用範囲をぜひ広げていただきたいというのが一つでございます。

 それからもう一つ、運用についてですけれども、有料道路では、障害者の皆様が団体で移動する場合、障害者の皆さんしか乗っていないバスであっても、全員障害者の皆さんが乗っていても、割引は受けられない。これは、登録車で個人車じゃないといけないというようなことの制限があってそうなっているわけですけれども、一方、登録車以外では割引は受けられないということなので、田舎へ行きますと一家で何台も車を持っているわけですけれども、特定の車で移動しなければ割引が受けられない。きょうは娘さんに送ってもらうとか、そういった場合には一切受けられないというようなことでございます。

 また、JRでは、乗車距離が百キロ以上になった場合には割引があるけれども、近くへ行ったときは一切割引がない、こういうのもやはり抜本的に改善していただきたいという要望が強く寄せられております。

 こうした公共交通をめぐる状況について、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

平田政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、身体障害者及び知的障害者に対します公共交通機関の割引運賃につきましては、各事業者の自主的な判断に基づきまして、割引によります減収を他の利用者の皆さんの負担によって賄う形で行われているものでございます。具体的には、JR、民営鉄道、バス、高速道路につきましては、基本的には五〇%の運賃割引が行われているところでございます。

 委員御指摘の、精神障害者に対します運賃割引の拡充措置につきましては、基本的には各事業者の自主的判断にかかわる事項でございますが、国土交通省といたしましては、従前より、各交通事業者に対しまして、また事業者団体などに対しまして、機会あるごとに割引に対します理解と協力を求めてきたところでございます。

 このような中で、札幌市それから仙台市など、公営交通事業者ではございますが、約三十の都市におきまして、精神障害者に対します実質的な割引を実施しているところでございます。

 いずれにいたしましても、精神障害者の皆さんに対します割引制度の導入でありますとか身体障害者などのへの拡大につきましては、先生御案内のように、輸送需要の低迷など各交通事業者を取り巻く環境が厳しさを増している状況ではございますが、私ども国土交通省といたしましては、引き続き各事業者の理解と協力を求めていきたいと考えております。

宮下分科員 次に、身体障害者の皆様を取り巻く施設整備とかサポートする体制についてお伺いしたいと思います。

 今、特に身体障害者の皆様なんですけれども、介護する方が高齢になって、場合によっては介護している方が亡くなられてしまったり、障害者自身で何とか生き抜いていかなければいけない、そういった状況もふえてきております。

 ところが、身体障害者のグループホームというのは現在認められておりません。これはやはり身体障害者の皆さんからも、ぜひ私たちにもグループホームをつくって国としてサポートしてほしいという要望がございますので、それを一点申し上げます。

 それから、グループホームで寝泊まりするところはできても、やはり、日中、生き生きと活動していただくというのがノーマライゼーションの本旨だと思うわけでございますけれども、小規模作業所とか共同作業所、それから小規模の授産施設とか、こういったところがまだまだ非常に少のうございまして、NPOの皆様とか社会福祉法人の皆様とか、いろいろな方が一生懸命取り組んではいらっしゃいますけれども、まだまだ不十分だという状況かと思います。ぜひ、日中活動の場の確保を図るという意味でも、国としてなお一層の財政支援をお願いしたいということが二点目でございます。

 それから三点目ですけれども、そうした共同作業所や授産施設、そうしたところでトレーニングをして、これは一般の企業でも十分働けるというような方についてはどんどん就職をしていっていただきたいわけですけれども、それをサポートする体制がまだまだ足りないということでございます。

 障害者の就業・生活支援センターというのが各県に大体一カ所か二カ所しかないわけで、非常にそこから離れた皆さんは、ただでさえ障害を持っておってそこに行きにくい、サポートが受けにくい、もっと近くにあればいいのにということで、私どもの地元にもないものですから、ぜひそういう就業・生活支援センターの拡充をお願いしたい、こういった声も強くございました。

 以上、三点について、御要望をお伝えして、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

塩田政府参考人 まず、一点目の身体障害者の方々のグループホームについてお答えをしたいと思います。

 今度の障害者自立支援法案におきましては、障害の種別を問わないという形で在宅のさまざまなサービスの再編を行うことになっております。今度の法律では、比較的軽度の方を対象としたグループホーム、それから、介護が必要な重度の障害者を対象にしたケアホームという二つのジャンルを設けることになっております。

 法制度上は、身体障害者についてもグループホームの対象になるということでありますけれども、身体障害者の方々自身からグループホームについては二つの意見がありまして、先ほど先生の御指摘にあったように、自立するための住まいの確保という観点からグループホームが必要だという方々と、一方で、プライバシーの問題とか生活の縛りができるので好ましくないという意見の方もおられる。さまざまな御意見がありますけれども、国会で成立した場合のことではありますけれども、新しい制度、法律もできることでありますし、関係者の意見を聞いて、身体障害者の方へのグループホームが必要かどうか、どういうものが考えられるかについて検討して答えを出したいと思っております。

 それから、障害を持つ方々の日中の活動の場、先生がおっしゃられました小規模作業所とか共同作業所とかデイサービスとか授産施設とか、大変重要な役割を果たしているところであります。

 今度の法律の中でも、どこの市町村でも、NPOでも、空き店舗とか空き教室を活用して、いろいろな形でそういう日中活動の支援ができるような仕組みをつくったところでありますし、小規模作業所についても、就労型でありますとか就労継続型とか、もっとレベルの高いものに移行できるようなことも考えているところでございます。

 さらに、本年度までは小規模作業所の予算は一割カットしておりますが、来年度予算案では、一割カットを凍結するだけじゃなくて、今申し上げましたような新しいレベルに移行するためのモデル事業などの予算も計上していただいているところでございます。

 日中活動の場の確保に全力で取り組んでまいりたいと思っております。

宮下分科員 きょうは尾辻大臣にもお出ましいただいておりますので、ぜひ大臣にも一問お聞きをしたいと思います。

 今回の自立支援法案では、障害者の皆様に応益負担を求めるというのが大きな議論になっております。その中で、その負担をだれがするのか。当事者がするのは当然としても、当事者にその能力がない場合、その世帯の中でだれかが、負担できる人があればするのか、それから、世帯が別であっても、実際その障害者の皆さんのお世話をしている方がそこまで負担をするのかというような議論がございます。

 やはり、高齢の御兄弟とかお母様、世帯が分かれてもサポートしていらっしゃる方もいらっしゃるわけですが、そういった方も、サポートだけでも非常に時間も制約を受けますし、それぞれの生活も今景気がなかなか厳しい中で苦しい。そんな中で、お世話もする上にさらに負担も追いかけてくるというのではちょっとやっていけないというような切実なお声も聞かせていただきました。やはり障害者の皆様は、これは受益を受ける本人に限定して負担をするような仕組みにぜひしてほしいということでございました。

 それからもう一つ、当事者に負担を求めたとしても、そもそも障害基礎年金が少ないとかいうこともありますので、できれば障害基礎年金をもうちょっとふやしてもらえないか。それから、先ほどの生活支援センターのようなことも含めてですけれども、就労施策の拡大をもうちょっと充実させてほしいということでございます。

 現在の生活水準を見る限り、障害を持って、その方と一緒に暮らしておられる世帯は、生活保護を受けておられたり、また、ほかの家族からの支援を受けたりという結構ぎりぎりのところで生活をされている方々も多いと思います。やはり生活の保障という面で抜本的な見直しが必要なのではないかと思いますが、大臣として、今後の障害者の皆さんの所得保障についてどのようにお考えなのか、ぜひお聞かせいただきたいと思います。

金子政府参考人 前の御質問に関連いたしまして、就業・生活支援センターについてお答え申し上げるのが欠けておりましたので、補足して御説明申し上げたいと思います。

 障害者の就業・生活支援センターにつきましては、先生御指摘いただきましたように、障害者の身近な地域で就業と生活の両面を一体的に支援するということで、平成十四年にこの制度ができたわけですが、今七十九センター設けられております。

 実績も上げているところでございまして、障害者の身近なところで対応できるということで、引き続きセンターの整備等を進めているところでございます。十七年度の予算案におきましては、設置箇所を拡充いたしまして、計九十カ所を計上させていただいております。

 御指摘のように、それぞれの地域におきまして、障害者の就労の状況や支援ニーズを十分踏まえまして支援が展開できますよう、十分意を払いまして今後の体制の整備に努めてまいりたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。

塩田政府参考人 障害者自立支援法案におきます利用者負担の問題の考え方について御説明したいと思います。

 支援費制度では利用者負担は本人または扶養義務者ということになっておりましたが、新しい法案では利用者負担自身は御本人のみということでありますけれども、低所得者対策を講じる際の、世帯の所得の認定範囲の問題で扶養義務者の問題が出るということでございます。

 原則は、ほかの社会保障制度と同じように、生計を一にしている世帯の方全員の所得を見るということが原則になろうかと思っておりますけれども、障害者団体あるいは地方自治体の方から、障害者の自立という観点から、障害者御本人の所得だけを見るべきだという御意見が出されておりますし、大変大事な御指摘だと思っております。

 一方で、民法上の扶養義務がありますし、例えば、配偶者についてまで生計を一にしていても対象から外すのはどうかという御意見でありますとか、あるいは、医療保険や税制で扶養控除の対象にしている方まで生計を別の扱いをすることについてはバランス上どうか、そういった御意見もありますので、これからいろいろな関係者の御意見を聞いて、法案の趣旨であります障害者の自立という観点から検討して答えを出したいと思っております。

尾辻国務大臣 このたび、障害者の皆さんに負担をお願いするということは言っておるところであります。そのときに、よく応益負担じゃないかというふうに言われるんですが、私どもは、応益負担と、それから今までお願いしてきた応能負担、この両方のミックスをした考え方で負担をお願いしたいということで申し上げているところでありまして、生計を一にする世帯全体でといったような、そこをどうするのかというのは今部長よりお答えしたとおりでございます。ただ、この辺については、今部長も言いましたけれども、よく皆さんの御意見を伺った上でまた検討をしたい、こういうふうに思っておりますから、ぜひ皆さんの御意見をいただきたいと思います。

 最後に、所得保障のことについてのみ、私から少しつけ加えてお答え申し上げておきたいと思います。

 障害者の皆さんの生活実態というのは、これは多様でありますけれども、多くの方々がやはり生活保護だとかそれから家族の支援によって支えられているということが、これは少なくないわけでございまして、障害を持つ方々が地域で自立生活を営む上で、所得保障という、これは大変重要なことである、これは私どももそのとおりに認識をいたしております。

 障害者の皆さんの所得保障としては、福祉と雇用が連携した就労支援に積極的に取り組むことにより、その適性に応じて障害者が働けるようにしていくことを一つの重要な柱として、今後、私どもも皆さんの就労に力を注いでまいりたいと考えております。

宮下分科員 もう一度国土交通省の皆様にお伺いをいたします。

 公共的な施設整備のお話なんですけれども、まず、障害者の皆様の場合、公営住宅に入居されているケースも多いわけなんですけれども、既存の住宅も含めて考えますと、バリアフリー化されている住宅の比率が大変低い。地元の皆さんの感覚では三十軒に一軒ぐらいしかないんじゃないかなと言っておられたんですけれども、新しい住宅は多分よくなっているんだと思うんですけれども、既存住宅の改修を含めて、やはりバリアフリー化を公営住宅の場合は特に進めていただくことが必要なのではないかと思います。

 また、不特定多数の皆さんが出入りするいわば公共的な、商業施設も含めて、そういった公共的な大きな施設については少しずつバリアフリー化が進んできているわけですけれども、特に古いものでありますとか規模の小さい施設では、例えばスロープの傾斜がきつ過ぎるとか、逆にスロープが長過ぎて怖いというようなことがあったり、まだまだ障害者の皆様からすると改善してほしいなという点が多くあるようでございます。こういったことを踏まえてハートビル法というものも施行されたと伺っておりますけれども、今後どのように取り組んでいかれるのか。

 以上、公営住宅の件と、それからハートビル法の運用等々についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。

和泉政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘のように、障害者が地域で安心、自立した生活を営むことを支援するために、公営住宅、なかんずく公営住宅における取り組みを推進することは極めて重要だと認識しております。

 そのため、公営住宅においては、平成三年度から、バリアフリー住宅を標準仕様として順次供給してきておるとともに、既存の公営住宅について、手すりの設置、段差の解消、エレベーター設置などのバリアフリー化に資する改善事業を推進してきております。今後とも、この点につきましては積極的に取り組んでまいる所存でございます。

 次に、一般の建築物のバリアフリー化についてでございます。

 委員御指摘のように、平成六年にハートビル法が施行されました。この段階では努力義務を課すだけという状況でございました。これを平成十四年に改正しまして、不特定多数の者が利用する建築物で二千平米以上のものについては基礎的な水準を義務づけるということをいたしました。加えて、既存の建築物につきましても、二千平米以上の増築、改築、用途変更等を行う場合には義務づける、こういった形でハートビル法の中身についても強化をしてまいったところでございます。

 加えて、そういったものを支援するために、現時点で税制とか低利融資等の支援措置を講じておりますが、加えて、平成十六年度に、まちづくりの一環として、まちづくり交付金、こういったものをつくりました。その交付金の中で、提案事業という形でこういった一般民間建築物のバリアフリー化支援についても支援することが可能でございますので、こういったものを積極的に使ってまいりたい、こう考えております。

 また、現在、ユニバーサルデザインという考え方に基づきまして、個々の施設が備えるべき基準のあり方や建築物と公共交通機関の相互の連携強化などを目的としまして、学識者あるいは障害者団体などで構成するユニバーサルデザインの考え方に基づくバリアフリーのあり方を考える懇談会を設置し、いろいろと検討をいただいたところでございます。この御意見を踏まえまして、国土交通省に設置しましたユニバーサルデザイン推進本部におきまして、バリアフリー施策の一層の推進に向けた今後の取り組み方策を、この六月をめどにまとめる予定でございます。

 今後とも、ハートビル法等の適正な運用に努め、積極的にバリアフリー化を進めてまいりたいと考えております。よろしくお願いします。

宮下分科員 次に、これは精神障害者の団体の皆様からの御要望だったんですけれども、統合失調症などの判定に当たられる医師の方でありますとか、また、障害者の皆様をサポートしてくださる精神保健福祉士と言われる方々がいらっしゃるわけですが、地域によっては非常に数が少ない、サポートがなかなか受けにくい、早急にもっとふやしていただけないか、また、こういった資格を含めて、専門的知識を有する方がやはりもっと地域にいてほしいというような御意見がございました。

 それからもう一点、今の障害者の福祉支援といいますか自立支援の中では、今回、三障害を統一的な枠組みでサポートしようということになったわけですが、そこに入れない方々がいるというのも知りました。高次の脳機能障害とか症状がいま一つ安定をしていない方とかは障害認定が受けられないということでそのサポートも受けられない、それから難病の方とかでも、病状によっては、治療過程というふうに判定されるんだと思うんですけれども、障害者としてのサポートが受けられないというようなことがあるということでございますので、こうした難病でありますとか高次脳機能障害などの方々もぜひ障害者の自立支援法の枠組みに取り込んで、障害施策全般をより充実させていただきたいということでございます。お考えをお聞かせいただきたいと思います。

塩田政府参考人 まず、精神保健福祉分野の専門家の養成の問題でありますけれども、精神科の医師につきましては、平成四年一年間で九千八百七十三人の精神科の医師が育っておりますけれども、平成十四年には一万三千百七十二人と、最近は精神科医の大きな伸びを示しているところでありますし、今後とも、精神科の医師の需給状況等を踏まえつつ、必要な医師の確保に努めてまいりたいと思っております。

 また、精神保健福祉士でありますけれども、平成十年に制度が創設されました以降、資格を持つ方が年々増加しておりまして、平成十七年現在で二万一千八百六十五人となっております。今後とも、そうした方の養成に努めてまいりたいと思っております。

 また、それ以外のスタッフの方も含めまして、障害者の自立を支援するスタッフの育成が重要な課題と考えておりまして、障害者自立支援法案の中でも、そうした人材の育成を都道府県の事業として位置づけておりますし、都道府県の障害福祉計画の中におきましてそういった人材の確保とか資質の向上についての具体策を定めるというようなことを考えているところでございます。

 それから、質問の後段にありました高次脳機能障害の方とか難病の方が引き続き制度の谷間に置かれるのではないかという問題でございますが、こうした方々にも必要なサービスが提供できるような方策を考えなければいけないと思っておりますが、今度の障害者自立支援法案は、身体障害、知的障害、精神障害について、三つの障害についてサービスの一元化を図るという趣旨でありまして、そういう意味ではまだ第一歩ということでありまして、今後、支援を必要とする方々に対してサービスがきちんと提供できるような仕組みについて、引き続き検討させていただきたいと思います。

宮下分科員 最後に一問だけ、大きなお話でございますけれども、障害者団体の皆様方には、新しくスタートした支援費制度、予算が毎年足りないというような状況も踏まえて、できれば介護保険と統合して、大きな枠組みの中で安定した支援財政のもとで運用していってもらえるともっと安心なんだけれどもという声もございました。この点について、今の検討状況等々、お聞かせいただければと思います。

中村政府参考人 今先生のお話にありました、介護保険制度を障害者の方が活用すること、あるいは、障害者施策と今の介護保険の両方の対象にならない先生から御指摘のあった方々、私どもは制度の谷間と呼ばせていただいていますが、そういった方々にどう対処すべきか。

 これは介護保険の見直しの中でも大変大きな課題になりまして、介護保険の立場からは、被保険者、それから給付を受けられる方の範囲、こういう問題設定になっております。五年前、介護保険がスタートしたとき、介護保険法がその前につくられたときからの課題であり、五年後の見直しで検討を加えるべきものとされておりましたので、検討してまいりましたけれども、いろいろな御議論があり、引き続きこの点については検討するということで、今回国会に提出させていただいております介護保険法等の一部を改正する法律案において、被保険者、受給者の範囲につきまして、社会保障に関する制度全般についての一体的な見直しとあわせて検討を行いまして、平成二十一年度を目途として所要の措置を講ずる旨、附則に出させていただいたところでございます。

 こういった枠組みの中で、先生が提起されました問題、介護保険の立場からいえば年齢の問題もございますが、そういったこともろもろについて検討をしてまいりたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いをいたします。

尾辻国務大臣 介護保険の中で障害者の皆さんのことをどう考えるかということは今局長がお答えしたとおりでありますが、あと、支援費に触れてもお話しになりましたから、そのことを一言だけでお答え申し上げておきたいと思います。

 このところ、支援費は非常に額がふえてまいりまして、私ども毎年苦労してまいりましたけれども、十七年度予算では義務的経費の中で位置づけましたので、それだけは前進したということだけを申し上げておきたいと思います。

宮下分科員 ありがとうございました。

 以上で質問を終わらせていただきます。

後藤田主査 これにて宮下一郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、中川治君。

中川(治)分科員 民主党の中川治でございます。

 私は、大阪十八区でございまして、十二年間大阪府議会議員をやっておりました。かれこれ七年ぐらいになりますでしょうか、大阪に青テントがちらほら出始めたころからいろいろ相談を受けまして、取り組みを始めてきたところでございます。そういう意味で、きょうはホームレス問題を中心にしてお聞きをしたいというふうに思います。

 全国でざっと二万五千人、そのうち大阪に一万二千人ぐらいというのが実態のところかと思います。現在のホームレスの現状ということについてどう把握をされているか、まず大臣のお考えをお聞かせいただきたい。

尾辻国務大臣 今お話しいただきましたように、全国でのホームレスの数は二万五千人ぐらいだというふうに見ておりますけれども、大阪府の数は、私どもの調査といいますか、確認しております数字では七千七百五十七人でございまして、東京都の六千三百六十一人、こういったところが全国の中でもホームレスの多いところでありまして、数のばらつきはあります。ただ、すべての都道府県でホームレスが確認をされておる、こういうことでございます。

中川(治)分科員 厳密にホームレスというふうに言ったら、まあ八千人かなという話もあるんですが、いろいろな対策が必要な人も含めたら、どうも一万二、三千人にはなるかな、我々はそんなふうに思っております。これはこれで一つおいておきたいと思います。

 大臣、失礼ですけれども、どこか視察は行かれましたか。

尾辻国務大臣 私自身がホームレスの現地視察ということで行ったことはございません。

 ただ、例えば、我が党の中に東京都ホームレス議員連盟というのがございまして、保坂議員がメンバーでございます。その保坂議員と、それから大阪府議会の中にザ・ホームレス・フォーラムというものがあるんだそうですが、そうした皆さんだとか、あるいは大阪市議会の中にも自民党ホームレス問題研究会というのがあるそうでございまして、そうした皆さんがおいでいただいたりして、いろいろなお話はさせていただいたことがございます。

中川(治)分科員 大変お忙しいかと思いますが、また機会を見つけて。

 タイプがいろいろあるのですね。私も、民主党の大会がありましたので、その帰りに北九州の方も視察に行ったり、これは四、五百人というケースですから、非常に計画的に行政とキリスト教の教会の方がタイアップされて、非常にアフターケアを綿密にされて、僕も学ぶところがあったなというふうに思います。それから、東京の新宿のところで非常に熱心に取り組んでいるところもありますし、それと、大量に定住している大阪の西成地区の、三つもとは申し上げませんけれども、我が田に水を引くようですが、全国で一番多い西成地区については、ぜひ機会を見て視察をしていただけたらありがたい、そんなふうに思います。

 もう一つは、ホームレスの自立支援法ができてから、いろいろな取り組みがずっとありました。医療的なもの、あるいは福祉的なもの、あるいは住居をどうするかということについても、大阪なんかでも、シェルターをつくったりいろいろなことをやってまいりました。

 それから、働いて自立をしたいという方がざっと半分というふうに言われているんですけれども、大阪でも、二千人から三千人ぐらいの方は非常に意欲を持っておられる。そういう人を何とか仕事につけていこうということで、これについては、実は受け皿とかそれを支援するための組織というものについては、ホームレス自立支援法以降、お金が出てきたんですけれども、はっきり言って、肝心の仕事については、かつての失対事業の反省といいますか、頑固に失対事業は絶対せえへんのや、こういうことでされてきました。まあ、それはよしとしましょう。

 ただ、幸か不幸か、そのころに緊急雇用創出基金というのが出てまいりまして、これも多分、これをホームレスの就労対策に使ったら趣旨が違うといって怒らはるんだと思いますけれども、地元の行政も賢いですから、正面切ってそうではなくて、あいりんの日雇い労働者の何とかだというふうないろいろな形で、実は大阪府、市で合わせて六億円から六億五千万円ぐらい、ひょっとしたら七億円ぐらい活用をしておりました。

 この事実については御存じでしたか、まあ御存じだったと思いますけれども。

尾辻国務大臣 まず、緊急地域雇用創出特別交付金そのものについて申し上げますと、もう御案内のとおりでございますが、平成十六年度末までの構造改革の集中調整期間中における緊急かつ臨時的な雇用就業機会の創出を図ることを目的として、都道府県や市町村の創意工夫に基づいて実施をお願いした事業でございます。ただ、この事業は十六年度末をもって終了することとしております。

 その使い道でありますけれども、大阪府、大阪市においても、地域のニーズを踏まえ、創意工夫に基づくさまざまな事業を企画、実施されており、私どもはそのように理解をしておるわけでございますが、今お話ございましたように、その中でホームレスを対象として道路清掃等の就業機会の提供が行われていましたことは私どもも承知をしておるところでございます。

中川(治)分科員 実は、週一回なんですよ。シェルターに入っている人がざっと千人、これが自立をさせる当面の目標なんです。非常に労働意欲が強い方というふうに御理解いただいたらいいと思います。

 この人たちに最低週一回は働いてもらおうと。それで手に入るお金が五千三百円なんですね。これは、宿代が要りませんから、週一回働いて五千三百円で、七で割って、まともな生活はできませんけれども、それで何とか飯を食いつないで次の週に行く。要するに、五千三百円を握り締めたときに、もっと働きたいなという意欲を何とか持たせたいということで、週一回は絶対死守をしようということで、これは大阪府、市も、週一回働いて五千三百円自分で稼いでもらう、これを何とかやろうということでやってまいりました。

 これが、緊急雇用基金が活用できなくなるということになりますと、大変なことなんですよ。今それで地元の行政は七転八倒、大騒ぎでございます。こういうことで、私は、週一回の就労事業が困難になった場合、就労意欲の大幅な減退ということにつながりはしないか、今までつくってきた働きたいという意識、意欲をこの三月以降大きく後退させてしまうんじゃないかという心配をいたしております。このことについては、ちょっと一言御感想をいただきたい。

尾辻国務大臣 申し上げておりますように、緊急地域雇用創出特別交付金というものは、緊急かつ臨時的な措置でございましたので十六年度末をもって終了する、このことは申し上げたところでございます。ただ、それが、先ほど来先生お話しのようなことで、ホームレス対策としても使われてきたということは私どもも承知をいたしております。

 さあそこでどう考えるんだということになるわけでございますが、ホームレス対策につきましては、平成十七年度、今御審議いただいております予算案の中で、新規施策として、地方公共団体等で構成する協議会に委託して、臨時的、軽易な仕事の確保、提供等を行うホームレス就業支援事業を盛り込んでおります。今御心配のありましたような、ホームレスの就労意欲が減退して自立を妨げることにならないよう、この事業を実施する協議会において仕事の確保、提供に努めていただきたいと考えておるところでございます。

中川(治)分科員 私も、府議会議員でしたので、こちらでは野党なんですけれども、地元へ帰ったら与党なものですから、実は、法律が通る前から、こういうものがあるから早く準備しようということで、形も決めてスタッフも決めて、ちょっと気が早いですけれども、もう四月一日から一気にいくぞということに準備は整えております。就業支援事業、大阪では大阪ホームレス就業支援センターというのを、たしかもとの保健所か税務署でしたかを活用してそのセンターをつくろうということで確保しております。

 ただ、実際は、わかりました、そうしたら、さあここへ仕事を出しましょうということになるかどうか。それが緊急雇用基金のかわりになるのかな、そんな即効性があるのかということですけれども、どのぐらいのめどでお考えなのか。即効性があるとはまさかお答えにはならないと思いますけれども、この見通しについてちょっとお聞きしたい。

尾辻国務大臣 数字でもってこういう見通しということを申し上げることはできませんけれども、この事業は、今少し申し上げましたけれども、地方公共団体のほか経済団体等も協議会の構成員になっていただきますし、事業に要する経費として就業機会の開拓を担当する者の人件費も確保しておりますから、仕事の確保のための活動が円滑に進むものと考えております。

中川(治)分科員 大阪では、これを機会に千人、二千人、西成・あいりん地区の場合は、自立した人も出るんですけれども、そのしりからまたふえてくる。そうすると、やはり地元のNPOの人もだんだん何やっているんやという気持ちになるので、もう登録制にしたらどうや、個人カルテ制にしたらどうやということを思い切って、これはホームレスを差別するのかというふうな議論も一部にはあるんですけれども、そういうことも含めて、自立への段階をきちっと踏んでいこうというふうなことをやっていこうと私たちは思っております。ぜひいろいろな意味で御支援をお願いしたいというふうに思っております。

 ところで、この緊急雇用基金がなくなります。もうこういう勘違いをされている方は少ないと思うのですけれども、私はいつも、これはちょうど横山ノックさんが知事のころ、もう十年ほど前です、全国知事会なんかに行くと、ホームレス問題、ああ、大阪の問題やと。我々はそのときに三千何人を調べまして、どこに住民票がありますかということを調べました。そうしたら、大阪にあるのは三分の一なんですね。山口県の方でもこれだけ来ていただいています、北海道の方もこれだけ来ていただいています、私は知事に、知事会で言うたりなはれということで、あの人は一人一人に言うて回ったようです。ああ、なるほど、全国の問題なんやなと。

 これを大阪府と大阪市だけで面倒見るというのは殺生ですやろという思いをもう一遍やはり共有してあげてほしい。今、この週一回の仕事をやろう、大阪府は何とか三億出しますと言って、商工労働部長はあちこちやっています。私も一緒になって、教育委員会はどんな仕事出せるんや、土木部はどんな仕事出せるんや、そうしたら、河川の仕事、しようがない、これを出そうかと。これも出すのは難しいですよ。国は随契だめとなっていますから、この目を盗む手だてをどうするかとか、いろいろなことを考えながら回していくのですけれども。

 こういうことをやはり大阪府や大阪市任せにすべきではないというふうに思いますし、自立と就労への課題というのは、私はひとり厚生労働省だけの問題ではないと。ホームレス自立支援法にもそううたっております。改めて、大臣、どういうふうに思っておられるか、ひとつお答えをいただきたい。

尾辻国務大臣 今の三分の二は大阪以外の地域の御出身であるという話は、先日、大阪府議会の皆さんや大阪市議会の皆さんがお見えのときもお聞きをいたしました。数字としてはそうなんだろうなというふうに思います。

 そこで、では、それに対して国がやるのか地方がやるのかという話になるわけでございますが、三位一体の改革のときにも随分私は申し上げました、社会保障というのは国と地方が手を携えてやらなきゃいかぬことだと思いますということを申し上げたのですが、まさにこうしたこともそうだと思います。

 ですから、国と地方の双方がそれぞれ努力しなければならない問題だと考えておりまして、基本的には、先ほど来お触れになっておりますホームレス自立支援特別措置法の定めるとおりに、総合的な取り組みは国がやらせていただきますし、また、地域の実情に応じた取り組みは地方公共団体で担っていただこう、こういうふうに考えております。

中川(治)分科員 総合力で対応していくということなんですね。自立のための就労、就労といったって、本当の意味で毎日働くという場合と、とりあえず今ホームレスの皆さんに主に必要なのは、今、この週一遍も含めて、これは就労訓練なんです。障害者でいえば授産所みたいなものをつくってやるのと同じような、例えば就労訓練事業みたいなものを新しい概念として、これは失対事業ではなくて、そういうものをどうできるかというふうなことも、きょうは御答弁いただこうとは思っていません、ぜひ御検討いただきたいな。

 就労訓練事業、障害者の授産事業と同じようなものがまず必要なんですね。それを何とかできないかということをぜひ御検討いただきたいということだけ、ぜひ、これは切にお願いを申し上げておきます。私は、これをやっていただいたら、二度と厚生労働省には逆らいませんから。ぜひこれはひとつお願いしたいということ。

 もう一つは、厚生労働省として、就労対策への協力ということで、これは非常に難しいのですけれども、他の省にぜひ働きかけをしていただきたい。国の出先、いろいろなところに仕事がいっぱいあるんですね。ホームレスの皆さんが、不熟練の方々ができるような仕事がたくさんあります。そういうものを何とか出していただけないかというふうなことも含めて、ぜひ他の省庁への働きかけを、今までそういうことをされてきたことがあるかどうか、これからもぜひやっていただきたいということをお聞きしたいと思います。

尾辻国務大臣 これは、冒頭に先生御自身がお話しいただきましたけれども、かつての失業対策事業に対する私どもの反省といいますか、ございます。したがって、そういう意味で、失業対策という仕事出しをするとでもいいますか、そのことは避けたいという思いがあることは、先生もお触れになりましたし、私どもも率直に、そう思っておりますということは申し上げます。

 ただ、そうした中で、それは、そういうことは反省としてやらぬと思っていますけれども、しかし、今、ホームレス対策というのは大事なことでありますし、ぜひ、皆さんの仕事、しかも、ならし運転みたいな仕事にまずついてという、それは非常に大事なことだと思いますから、私どももお手伝いできることがあればお手伝いすべきだというふうに思っております。そういう意味で、関係地方公共団体や協議会の意見もよく聞いて、今後取り組んでいきたいと思います。

 また、そうした中で、他の省庁への働きかけはどうしてきたかというようなこともございますけれども、先ほど申し上げたようなこともあるものですから、まず民間企業での雇用促進を図りたいと思ってまいりましたために、他の省庁へ今まで働きかけたことはございません。このことでお願いしたことはございません。ただ、今後、やはり私どもはいろいろな働きかけを各所にしなきゃならぬと思っておりますから、申し上げたように、関係地方公共団体や協議会、よく意見を聞いてみたいというふうに思っております。

中川(治)分科員 本当は、厚生労働省としてもできることあるやないか、こう言いたいんですけれども、ぜひこれも御検討をいただきたいと思います。

 確かに、これは会計法の枠がございまして、随契はだめだということになっているんですけれども、やり方はいろいろあると思います。

 私どもも、実はこの二月に近畿地方建設局、それから阪神道路公団、それから都市再生機構の西日本支社、今度は三月に道路公団の西日本支社にも行くんです。これも、大きな顔して仕事をよこせということではなくて、何とか協力してくれ、方法はどないでも考えますさかいに協力してくださいと。それから、御社が無理であれば子会社がありますわな、子会社は会計法に縛られていないはずやと。株の関係もないと向こうは言い張ってはるんやから、ぜひ協力する方法を考えていただきたいというふうなことで、我々も、もう仕事であれば何でもいいというふうなことで、道路のために買っておいてほったらかしになっている道路公団の敷地もあります、そこにはいっぱい草も生えとる、そういうことも含めて幾らでもあるやないか、ぜひ協力をしていただきたいというお願いをこれからもやっていこうと思っております。

 これは、実は国土交通委員会で、きのう北側大臣にも、会計法を盾にして、公平性、競争性あるいは透明性、これを呪文のように唱えたら、社会貢献、そこから解放されるというふうに考えている人が多過ぎる、情けないと思いまへんかという話を、真剣にやはりこれは考え直さなければいかぬところだと私は思っております。

 ここが一つのポイントではないのかなというふうに思っておりますので、ぜひ大臣の方からも、閣議とかいろいろなことがあったら、一番安上がりでやろうと思ったら、今手っ取り早いのはやはり公共の関係なんですよ。ぜひお力添え、発言等お願いをしたいなというふうに思っております。ぜひお願いを申し上げます。

 それから、最後、ちょっと時間の関係もありますので、障害者雇用のことについて一つ御質問をさせていただきたいと思います。

 障害者雇用に大きな役割を果たしている特例子会社という制度がございますね。これは非常にいいことで、シャープさんだとか、かんでんエルハートだとか、大阪も大手の企業が相次いで取り組んでおります。

 ただ、そういう大手のところはもうほとんどやっていただいておりまして、今度は地域で就労支援事業をやろうというようなことで始めてきて、企業としても盛り上がってきた。そうすると、うち一社でそんなものしんどいわというのがあるんですよ。そうすると、地域の有力企業、大手ではないけれども、三社ぐらいが共同出資して特例子会社をつくって、例えばの話で私は申し上げたんですけれども、出資比率に基づいて雇用した障害者をカウントできるというふうな制度も場合によっては柔軟に対応するということを考えていただけませんかということなんでございますけれども、お答えいただけましたら。

尾辻国務大臣 特例子会社でございますけれども、近年、設立が急速に伸びております。そして、障害者雇用の促進に極めて大きな効果を上げております。したがって、この制度というのはうんと活用していただいて、障害者の雇用に役立っていけばいいというふうに思っておるところでございます。

 ただ、この特例子会社の制度というのは、親会社が子会社を経営的に支配することで子会社が親会社と同一の会社であるとみなせる場合には、特例的に合算して親会社の雇用率を算定できることとした制度であります。改めて理屈を言わせていただいたわけであります。

 それはもう十分おわかりの上でではありますけれども、そこで、先生の御指摘の案があるわけでありますが、お聞きした範囲での私どもの問題点だけまずは言わせていただきたいと思います。

 障害者雇用の場を創出するという観点からは有効な面がありますけれども、出資する企業が複数であるため、子会社を親会社と同一の会社であるとみなすことができない、最初に申し上げた理屈に照らし合わすとそこが問題になるということと、また、子会社において障害者の解雇等のさまざまな雇用に関する問題が生じた際の責任の所在が不明確にはならないだろうかとか、いろいろな問題もありますということを申し上げて、いずれにいたしましても、特例子会社制度というのは、私どももこれを大いに活用していただきたいと思っておりますから、さらなる活用の観点から今後検討を加えさせていただきたい、こういうふうに思います。

中川(治)分科員 ぜひお願いをいたします。

 質問をはしょりましたので、ちょっと五分ほど時間がありました。

 率直に言いまして、府議会時代は、大臣、私は福祉の中川とずっと言われていたんです。それがなぜ国土交通委員でずっといようというふうに思ったかといいますと、ホームレスの雇用の問題とか、それから障害者の雇用の問題にずっと取り組んできました。結局、それを事業としてやっていけるような仕事を出せるところは一体どこだろうか、それはやはり公共事業なんですよ。公共に山ほどあるんですね。国土交通省には福祉雇用のネタが山ほどある。

 だから、公団、公団じゃないですよね、今機構住宅ですね、機構住宅なんかも、地区内の清掃は共益費でされておりますから、数百億円です。二百億円以上あると思います。どんな形でやっているか、発注の仕方はさまざまです。それから、一年間で十三万軒ぐらい入れかえがあるんですね、八十万軒のうち。そうすると、ふすまだけでも六十億円、かなりいい値段で特定の会社に出ています。

 僕は、特定の会社にいい値段で出すのが間違いやとは言わへん。それだったら、ふすま福祉工場をつくるから、ホームレスと障害者とで一緒の経営で就労訓練してやるから、そこへ発注してよというふうなことを、就業支援センターができたので、本気でふすま工場をつくろうかということを今やっています。あるいは、畳でも同じです。

 あるいは、道路公団であれば、春夏秋冬、ポイントポイントにはみんな花を植えかえてはるんです。この業者はどないになっているか。もう何十年も前から指定業者で、何かやはり大小、各種あらゆる利権の中に沈んでいるというのがあると思うんです。僕は、それを胸張って福祉に生かせと。そういう意味では、国交省は福祉雇用の宝の山だと。

 だから、私、議員をやっている間はずっとここにおったろう、それで福祉雇用のネタを掘り尽くすのが僕の仕事やというふうに思っておりますので、応援団を派遣していると思って、これからひとつ御認識をいただきたいというふうに思っておりますし、そのための受け皿を、やはりそうすると、いろいろな形で、大小さまざま受け皿を柔軟にしていただかないとなかなか難しいんですよ。そういう意味で、これはあきまへんか、これはどうですかと、いろいろなことをこれからもお聞きをさせていただきたいと思いますので、ぜひそういうときに柔軟に対応できるようなことをやっていただいたらありがたいなというふうに考えております。

 ぜひ、そういう意味で、私は、ホームレス問題もそうですけれども、障害者や高齢者の自立、就労ということについては、特にずっとこだわってやってまいりました。ですから、先ほどの会計法をどうやるか。大臣、御存じかどうかわかりませんけれども、大阪は、大阪府庁も大阪市役所も、それからありとあらゆる市と府の病院、これは全部今知的障害者が清掃をやっています。知的障害者が清掃するということが入っていなかったら入札できない仕掛けにしました。条例で決めました。

 そうすると、国の出先機関だけが障害者が働いていないんです。ちょっとけったいでしょう。だから、郷に入ったら郷に従ったらどないですかと去年も同じこの場所で坂口大臣にお聞きをしたんですが、やはり会計法があるんですね。

 そういう意味で、果たしてそんなことでいいんだろうか、それだったら地域の福祉雇用に協力をしてもよいというふうに考え方を変えた方がいいんじゃないのかな、そんなふうにも思っております。またこれはこれで決算か予算の分科会で御質問させていただきたいと思いますので、今後ともひとつよろしくお願いを申し上げます。

 いずれにせよ、ホームレスの方は優しく温かく、何とか地元は必死で頑張っておりますので、見守って御支援いただきますように心からお願いを申し上げます。ありがとうございました。

後藤田主査 これにて中川治君の質疑は終了いたしました。

 次に、中根康浩君。

中根分科員 こんにちは。お疲れさまでございます。民主党の中根康浩でございます。

 三十分のお時間をいただきまして、問題意識を持っている点につきまして議論させていただきたいと思います。

 時間がふんだんにあるわけではありませんので、前置き的なことはすべて割愛をさせていただいて、ひとつこれは、大臣、副大臣あるいは自民党、与党の政治家として心にとめておいていただいて、また今後いろいろと考える材料にしていただければということなんです。

 昨年の臨時国会で無年金障害者に対する新しい法律ができて、ことしの四月から特定給付金が支給されるということになったわけなんですが、もしそのときに知っていれば、そういった議論の中に加味をしていくべきだったのかもしれないんですけれども、私にこの話が来たのは本当に一月ほど前でして、こういった事例もあるということで、実は最初に話を聞いたり読んだときは、一体これのどこにどういう問題が潜んでいるかということははっきりわからなかったんですね。

 文書に従って若干御紹介を申し上げますと、Aさんとしておきます、Aさんという人が二十になったのが昭和六十一年の一月、このときは、ここは名前を出してもいいと思いますけれども、愛知大学という大学に在学中でした。このときに、Aさんは、年金に入らなきゃいけないというふうに思って、地元の岡崎市役所の窓口に行ったら、大学生だったら年金に入る必要はないという意味合いのことを言われて、ああそうですかということでそのまま帰宅をした。Aさんは、そのまま大学へ四年間通って、卒業して、地元の印刷会社に就職をした。昭和六十三年の四月に厚生年金に加入をした。

 その後、平成元年の二月に交通事故に遭ってしまったんですね。交通事故に遭った結果、障害の状態としては、四点杖、車いす及び補助用小道具を常時使用していて、ADLはほぼ全介助、他に重度の失語症、高次脳機能障害があり、記銘力が低下し、労働能力はなく、これ以上の機能回復は期待できないという障害認定を受けるに至ったということなんです。

 障害者になったものですから、障害年金がもらえるかと思って申請をしたところ、Aさんの年金加入記録としては、二十になったときから障害認定を得るまでの間の三十六カ月であった、実際にAさんが保険料を納めていたのは、印刷会社に就職してから九カ月間の九カ月であった。すなわち、三十六分の九しか保険料を納めていないので、被保険者期間の三分の二を満たすことが必要であるという年金受給資格に該当せずに、障害年金を受け取ることができないという一連の経過なんです。

 ここに問題があるのは、まず一つは、岡崎市役所の方が、大学生だったら年金に加入しなくてもいいよと。こういったことは水かけ論になりますから、本当のところははっきりわからないんですけれども、一体このやりとりの中にそのほかにどんなやりとりがあったかということなんですが。

 実はこの大学生というのが、Aさんは愛知大学の夜間に通っていたんですね。私も実は知りませんでした、夜間とか通信教育の場合だと当時も強制加入に、当時、一般といいますか昼間の大学生の場合は任意加入の時期だったんです。ところが、夜間の学生とか通信教育の学生は強制加入の時代であった。したがって、Aさんは、大学生、二十になって厚生年金に入るまでの要するに学生の期間の間、本来、強制加入として保険料を納めていなければならない。すなわち、Aさんは、未加入ではなくて未納の状態で学生期間を過ごしてしまったということに結果的になってしまっているわけなんですね。

 ここに、一つのポイントとしては、岡崎市役所とのやりとり、市役所の方が、大学生ならという言葉のほかに、昼間の学生さんですか、夜間の学生さんですかという確認がきちんと行われていたならば、まずこういった問題は生じなかったのかもしれない。

 それから、去年も未納、未加入の話はいろいろ話題になりましたけれども、学生が年金という意識が、今みたいに話題になっていなくて、余りない時代に、本人に、昼間の学生だったら任意加入、夜間の学生だったら強制加入、こういったことを峻別といいますか判断する十分な知識とか環境が整っていたかといえば、それをこのAさんに求めるのは非常に酷であったであろうというふうに推測ができるわけなんですね。

 だから、大臣、御答弁をお願いするというよりも、こういう事例もあるということですね。無年金に至るにはいろいろな理由があったり、いろいろな環境があるわけなんですけれども、まさに谷間といいますか小さな穴だったと思うんですが、そこにすっぽりと運悪く落ち込んでしまったこのAさんのような場合の無年金状態。これは、だから、ことしの四月から始まる特定給付金、これにもやはり該当しないわけなんですね。

 この法律ができたことをマスコミ報道で知って、Aさんの親御さんは喜んで市役所に問い合わせをして、事情はこれこれこういう内容なんだけれども来年から給付金をもらえるかねというふうに尋ねたところ、あなたのような場合はもらえないと言われて、ぬか喜びで本当にがっくりしちゃったと。いわゆる未加入ではなかった。今度の特定給付金に該当する人が、未加入の人については該当するけれども、未納の方については該当しないという内容になっているものですから、この特定給付金にも該当しない。

 例えば、今、介護保険の改正がこれから議論されていくわけなんですけれども、せめて介護保険でも使えればということですが、これもまた、今度改正されたとしても、いわゆるエージフリーということにはなっていきませんので、介護保険の活用も難しい。

 親御さんももう七十の後半になって、全介助のお子さんを、しかも、この方の交通事故は、自分が違法運転したりとかということじゃないんですね。横断歩道を歩いていたら乗用車が飛び込んできてはねられちゃったという、すべてにわたって運が悪いんですね。本当に気の毒なんですけれども、こういった無年金の方もいらっしゃるということでございますけれども、大臣、何かお感じになることがあったら御意見を賜ればと思いますが、いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 お話を伺っておりまして、本当にお気の毒なケースだなと思いながらお聞きをいたしておりました。

 ただ、法律というのは、非情といいますか、一遍つくってしまえばそのとおりにしか運用できないわけでございますから、では、この方に今の法律を当てはめられるかというと、これまた当てはめるわけにもいかないというのも一つの事実でありますし、こういうケースのときにどう考えればいいのか、あるいは、今、答弁しろとおっしゃって、どういうふうに申し上げればいいのか非常に困るというか、言葉に困るわけでございますが、今後我々も、本当にみんなで努力して、こういうケースをつくらないようにしていかなきゃいかぬなと改めて思いますということを申し上げます。

中根分科員 こういう席での御発言としてはぎりぎりの御発言をいただいたということとして受けとめたいと思いますが、不服申し立てとか審査請求あるいは再審査請求をしても、法にのっとって判断をすれば、どんなふうに申し立てをしても、やはり年金はもらえないという状況になっているようでございます。

 特定給付金の制度も、福祉という考え方のもとに五万円あるいは四万円が支給されるということでございますので、今回はこのことに含まれないかもしれませんが、またこれは将来的な見直しの中で、党派を超えて、こういった本当にお気の毒な方について救いの手を差し伸べていく仕事をお互いにしていきたいなというふうに思いますので、どうぞ、どこか心の片隅に、記憶の片隅におとどめおきをいただきますようにお願いを申し上げたいと思います。

 次は、くどいようでございますけれども、障害者虐待の問題について触れてみたいと思います。

 先日の予算委員会でも、大臣から障害者虐待防止についての前向きな御答弁を承り、本当に私個人としても感激をしておりますし、このことについて関心のある民主党の議員は、一様に大臣の御発言に注目をして、本当に理解のある大臣であるということで喜んでおるところでございます。

 これからこれも議論が始まろうとしているといいますか、党内的にはもちろんいろいろ勉強させてもらっているんですけれども、障害者自立支援法、この中にも、第二条あるいは四十二条、五十条というようなところに、障害者の虐待の防止あるいは権利擁護、市町村の責務というような文言を盛り込んでいただいておるということに感謝を申し上げたいと思いますけれども、問題は実効性ですね。

 虐待がいけない、虐待は許されざることであるということはもうだれもが思うことですが、いろいろな諸事情の中といいますか環境の中で、虐待というものが現実に起こってしまうというのも事実でありますので、その実効性ある法的な整備、社会的な環境をどうつくっていくかということだと思います。

 そういった中で、先日、私自身も参加をさせていただきましたけれども、厚労省の中に知的障害者の虐待について考える勉強会を立ち上げていただきました。三回シリーズで行っていただくということでございますけれども、参加をさせていただいて、本当に有意義なものであるということも痛感をさせていただきました。

 改めて、この勉強会というものの最終的な目指すところ、当然、単に勉強すればそれでよしということではないというふうに思いますので、将来的に、例えば虐待防止法とか、あるいは、虐待を防止する、抑止する、そういう中核機関をつくっていくということを視野に入れながらの勉強会なのかどうかということがまず一つ。

 それから、これはぜひ大臣あるいは副大臣にお答えをいただければと思いますけれども、順番が逆になるかもしれませんが、虐待がいけない、いけない、許されないという中でも、悲惨な虐待事件というものが次々と発生をする、発覚をしてくる。障害者に対する体罰とか虐待とかというものが生まれる土壌というものが一体どこにあるというふうに考えておられるか、これが二点目ですね。

 それから三点目といたしまして、自立支援法の中にある市町村の虐待防止やあるいは権利擁護の責務、それからそういったことに反した場合は事業の取り消しを行うことができるというような規定があるわけなんですけれども、この自立支援法の中に盛り込まれた虐待防止の幾つかの規定で、本当に実効性をもって虐待を防止する、あるいは、実際に虐待が行われたときに、それを早期に発見して被害者の権利を回復する、そういったものにつながっていく、つなげていくことができるかどうか。あるいは、それができない、この自立支援法の中の内容ではまだまだ不十分だということであるとするならば、一体どういったことが不十分であるか。何をさらに行っていかなければならないか。こういったことについて、まとめて三点お尋ねをさせていただきますので、それぞれお答えをいただければと思います。

尾辻国務大臣 それでは、まず私から一番基本のことだけをお答え申し上げて、そしてあと、それぞれ担当の局長、部長から答えさせていただきたいと存じます。

 かねて私は言っておるんですけれども、社会保障の果たすべき役割というのは、人間が生涯尊厳を持って生きていく、その役割を果たすべきだと言っております。そして、昔は揺りかごから墓場までと言ったけれども、最近ではお母さんのおなかの中から考えないといけないなというようなことも言っておるわけでありますが、まさしくそう考えております。その最低限の条件というのが、虐待があってはならないということだというふうに思っております。

 そして、そのための、今言っていただきましたけれども、先生も御参加いただいた勉強会を立ち上げたところでございます。この勉強会が何を目指すかというのは、まさに勉強会の、すばらしいメンバーの皆さんが集まっていただいておりますから、そこのところですばらしい答えを出していただきたい。私どもはそれを尊重させていただいて、また我々の施策につなげていきたいと思っておりますということを、基本をまず申し上げて、あと、虐待の原因とかなんとか御質問ありましたけれども、それはそれぞれ担当から答えさせていただきたいと存じます。

塩田政府参考人 まず、虐待がなぜ起こるかということですけれども、幾つかいろいろな要素があると思いますけれども、一つは、障害の問題についての国民の理解が十分でないとかあるいは根強い差別、偏見があるということ。それは、残念ながら、施設のスタッフの中にも一部あるということだろうと思います。

 それから二つ目には、障害者へのいろいろなサポートが必ずしも十分ないということで、例えばお母さんとか特定の人に負担がかかっている、その結果虐待が起こるということもあると思いますし、また残念なことですが、施設の職員の援助の技術が必ずしも十分でないとか、あるいは、仮に虐待が起きた場合の第三者の関与とか評価のシステムが十分機能していないとか、いろいろな要素があると思っております。

 そういったいろいろな問題について、有識者から成る検討会の場でいろいろな角度から御意見をいただきまして、その議論に沿って、その結果に基づいていろいろな対策をとっていきたいと思っております。

 それから、この国会に提案しております障害者自立支援法案の中で、市町村の責務として、虐待の防止でありますとか、あるいは事業者の方々が障害者の人格尊重とかいろいろなことに反した場合の指定の取り消しとか、いろいろな条項は盛り込んでおりますけれども、御指摘がありましたように、その条項を具体化するためのいろいろなものもつくらなくちゃいけないと思っております。

 例えば、施設内での虐待防止あるいは早期対応のマニュアルでありますとか行政がすぐ対応できるようなマニュアルは最低限つくりたいと思っておりますが、それだけにとどまらず、今御指摘があったように、現行の制度で十分対応できないのであれば、また違った新しい制度の枠組みとかシステムとか、そういうものも視野に入れて御議論をいただいて、その結論に沿って必要な対応をしていきたいと思っております。

中根分科員 ぜひ、塩田部長、村木課長さん初め関係者の皆さん、本当に誠意を持ってこの虐待問題について取り組んでいただいていると私どもも痛感をさせていただいておりますので、この勉強会で得られた成果は最大限尊重して行政に反映をしていっていただきたいというふうにお願いをさせていただきたいと思います。

 特に、知的障害者に対する施設内における虐待というのは、今塩田部長からも御説明があったような理由、あるいは、まだまだ施設あるいは在宅、それぞれの福祉サービス、社会基盤が十分整っていない中で、そこの施設で虐待をされたからといってすぐにかわりの施設に移ることができない。刑事事件のようなものに発展をしたとしても、本来被害者である、被害者側の味方になってもらうべき親の会のような人たちが、この施設がなくなっちゃったらうちの子供は一体どこへ行ったらいいんだということの中で、味方になってくれるはずの親の会の人たちが加害者側の味方になってしまうという、本当に悲惨なといいますか深刻な状況に陥ってしまって、だれも救われないという状況ができ上がってしまうわけです。

 本当に、親亡き後という言葉がよく使われるんですけれども、障害を持った子供、この子たちを、虐待が平気で行われるようなこの社会に、日本に置き去りにして自分だけ先立つことができない、安心して旅立っていくことができないという、残念ながらそういう現状があるわけでありますので、親として安心して先立つことができる、障害を持った子供たちであっても、安心して、この日本ならば、ここに置いていってもみんなからかわいがってもらえる、尊重してもらえる、その子らしく、この子らしく生きていくことができて幸せをつかむことができる、そういう国にお互いにしていきたいというふうに思っております。

 民主党といたしましても、障害者の問題、虐待の問題、いろいろ切り口はたくさんあるんですけれども、まずは、知的障害者の施設、施設内の知的障害者に対する虐待問題についてターゲットを絞って、今その防止法、防止対策として実効性あるものがどのようであるべきかということを検討させていただいておりますので、またどうぞいろいろとアドバイスをいただければというふうに思います。

 それから、もう本当にわずかになってまいりましたけれども、厚生保険特別会計のことについて一つ触れておきたいと思います。

 特別会計予算書の二百二ページを見ますと、グリーンピアとそれから年金住宅融資事業に係る財政融資資金への債務を年金積立金から取り崩して一括返済するという内容の記載が書かれているわけなんです。ここを見ますと、積立金から取り崩して年金勘定に六兆五千三百十七億円入れているわけですね。この説明欄を見ますと、「保険給付費等」とあって、この内訳は、多分、保険給付費に二兆円余りを充当する、それから「等」というのは、年金住宅融資とそれからグリーンピアに使ったお金を財政融資資金へ一括償還するための四兆二千億円がそこに含まれているというふうに読み取ることができると思うんです。

 まず、この予算書のあり方なんですが、私も本当に素人なものですから予算書を読み解いていくのに非常に苦労するわけなんですけれども、特にここの部分だけを申し上げますと、「保険給付費等」というふうにあるんですけれども、実はこの「等」の方が額としては大きいんですね、四兆円。保険給付費の方が二兆円というふうなことになっているわけです。

 「等」の中に非常に大きな額、重大なことが紛れ込んでいるということは、この国会に来て本当にそういうことはたくさんあるということは実感をしておりますけれども、少し不親切さを感じますし、不誠実さを感じるということも否めません。見ると、予算書には十分なスペースもあるわけですので、骨太の方針というものにも、予算書というものに対する説明責任をきちんと果たしていくというようなことが記載をされておりますものですから、予算書の書き方、技術的なことで申しわけありませんけれども、来年度以降、ぜひもう少し親切なものに改めていただけますようにお願いをしたいんですが、いかがでしょうか。

青柳政府参考人 技術的なことでございますので、私の方からお答えをさせていただきます。

 今お話にございました点は、厚生保険特別会計年金勘定における積立金よりの受け入れという事項でございます。これは、厚生保険特別会計法の第八条四項の法律の規定によりまして、年金勘定の歳入に不足が生じる分を積立金から受け入れるということでございまして、例えば、特定のものに充てるために積立金を取り崩すというような形で一対一対応しているものではございません。

 したがいまして、これは御存じのように保険給付費や基礎年金の拠出金、それから今お話のありました年金住宅融資事業等の廃止に伴う財政融資資金からの借り入れの繰り上げ償還金等の資金財源を含む業務勘定への繰り入れ、こういったものすべてを足し合わせたときに、歳出に対して歳入が不足するということで積立金を受け入れるということでございますので、予算書の説明欄についてはわかりにくいという御批判があったようでございますが、今申し上げたような、つまり、歳出のところで一番大きな支出規模を持っているところの保険給付費を代表例として記載している、こういう形をとらせていただいております。

 なお、先生御存じのように、次の二百三ページをごらんいただきますと、歳出のところは細かに出てございますので、例えば今の繰り上げ償還の分についても、何か特に隠し立てをしたとかわかりにくくするということで書いていないということは、あわせてお読みいただければおわかりいただけるかと存じます。

中根分科員 ありがとうございます。あっちこっちめくったりしているとだんだんわかってくるんですけれども、そこだけ見るとなかなかわからないんですね。

 それで、六・三兆円。厚生年金特別会計と国民年金特別会計からの積立金の取り崩し分を合わせて四兆四千四百三十六億円、これを年金資金運用基金に入れて、もともと基金に存在していた一兆八千五百六十四億円と合わせて財政融資資金へ一括償還をする、その額が約六・三兆円。その六・三兆円の内訳というのは、元本が約五・五兆円で、補償金が〇・八兆円、八千億円というようなことになっているわけなんですけれども、まずこの補償金の八千億円の根拠というものをお尋ねするということと、それからこの年金住宅融資というシステムの中で、逆ざやの中で利子補給がずっとされているんですけれども、この利子補給を行うということによって年金財政に穴をあけ続けてきたんではないかということに対する厚生労働省の御見解。

 時間がありませんので、全部まとめて質問だけしてしまいます。

 それから、繰り上げ償還後は、年金資金運用基金は独法化されて、運用に事務を特化する。それから、年金住宅融資の債権の管理、回収は、独立行政法人福祉医療機構が実施をするということですが、なぜ、この管理、回収に福祉医療機構が選定をされたのかということ。それから、福祉医療機構は、恐らく今までのシステムと同じように転貸法人とか住宅金融公庫とかそういったところに業務を委託すると思うんですけれども、そのあたりの正確なところはどうであるかということ。

 それから、年金積立金から四・四兆円を取り崩して一括返済をする。それで、福祉医療機構が果たしてどれだけ回収できるかが問題なんです。もし四・四兆円分が返済されたとしても、新たな回収委託料、手数料がそこに発生して、結局、その分は年金に穴をあけることになるかもしれないということなんですけれども、その辺はちょっとおいておくとしても、回収しなければならない融資残高は今どれぐらいあって、そして、もし焦げついてしまったら、これは最終的に国民負担となるのか、あるいは税金で穴埋めをするのか、積立金で穴埋めをするのか、だれがどういうふうに穴埋めをするのかということ、そういったあたり、一連のことをお知らせいただきたいと思います。

渡辺政府参考人 今たくさんの論点をまとめて御質問いただきましたので、ちょっと順繰りに、うまく当てはまりますか、努力いたしますので、よろしくお願いいたします。

 冒頭、年金住宅融資に係る繰り上げ償還に伴い補償金〇・八兆円、八千億円の支払いがどうしてあるんだろうかというお話がございました。

 この補償金は、繰り上げ償還を行う際の利息に相当するものでございまして、財政融資資金の貸し付けが利ざやを取らずに収支相償うように運営されているものですから、財政融資資金への繰り上げ償還時に支払うことが取り決めとなっております。

 これは財政融資資金におけるルールとして、そうした繰り上げ償還によって得られないこととなる利息から繰り上げ償還により得た元本分を今後国債で運用することにより得られる利益額を差し引いて算定されて、私ども、その算定された額をお支払いする、こういうものでございます。

 その大もとになります中にグリーンピアの話と年金住宅融資の話がございましたが、とりわけ年金住宅融資関係の繰り上げ償還そのものに関連いたしますが、それに先立って、そもそも、住宅融資というのはどういうものなのか、年金資金との関係はどうかというお尋ねが最後にもございました。

 これは御承知のように、年金積立金を被保険者へ福祉還元、すなわち、福祉のための運用部分を大幅に拡充すべきという国会の附帯決議などが昭和四十年代から五十年代にかけて頻繁にございまして、その上で、関係の法律の改正も経て、事業が昭和五十年代から行われてきたものでございます。

 先ほど焦げつきの話もおっしゃっていただきましたので申し上げますが、まず基本形は、あるいは事業の中心的なパターン、先生おっしゃいましたように、各地の公益法人が行う年金融資資金の資金を年金資金運用基金が融通する、こういうものでございますので、年金資金という目から見ますと、当該公益法人から、当該公益法人に貸し付けた資金が返却されるかということがポイントになってまいります。年金住宅融資と申しますと、どうしても、個人がちゃんと払うかというふうにすぐ感じてもらうわけでございますが、メーンとなっている事業のパターンは、当該融資主体からの返済が滞るか滞らないかというところででき上がっております。

 公益法人からの返却につきましては銀行保証をつけておるということでございますので、基本的に焦げつきというケースがなかなか発生しないのでございますが、公益法人が実際に個人に融資する際にも保証機構がくっついて、それで保証をするということになっているんですが、中には、保証人だけで、保証機構なしでお金を借りてというケースの中に一部焦げつきというものが発生してきた経緯はございます。大変多額の資金の貸し付けを行ってまいりましたが、直近の年度で申しまして約三億円程度、こういうふうに見ておるところでございます。

 それから、一部は住宅金融公庫さんのあわせ貸し部分にこの年金資金の委託がなされていくという部分もございまして、委託費につきましては、例えば十七年度予算でいいますと七億三千万円程度の委託費が住宅金融公庫さんの方に出ているというのがございますが、この住宅金融公庫さんの方につきましては、そちらから年金資金の方にきちっと返却していただくという方式によっておるものでございます。

 それから、年金資金運用基金が十八年四月をもって、さきの法律改正により独立行政法人に変わる際に、その趣旨が、年金積立金の管理運用業務に特化し、その専門性を生かすということでございますものですから、グリーンピアは廃止しますが、年金住宅融資、これも新規貸し付けはもう廃止しておりますけれども、既往の債権の回収業務というものが残ります、それを、従来から福祉施設や医療施設に対する融資業務を行っております独立行政法人福祉医療機構において引き継いでいただくということを法律上明記させていただきました。この引き継いでもらったお仕事も、基本的には、先ほど申しました直接融資主体である各地の公益法人からの資金回収業務を行っていただく。こういうものでございますので、特に融資業務になれているということが理由でございますが、その回収業務といいますか資金回収の主体が他の福祉医療機構という独立行政法人に移ることにより焦げつきがふえるんじゃないか等の不安が生じるということは、全くないものというふうに考えております。

 おおむね、以上のところでございます。

中根分科員 ありがとうございました。以上で終わります。

後藤田主査 これにて中根康浩君の質疑は終了いたしました。

 次に、岡本充功君。

 配付資料がございます。それを許可します。

岡本(充)分科員 民主党の岡本でございます。

 本日は、昨年の分科会に引き続いて、薬価のことを少し御質問させていただきたいと思っております。昨年の分科会でも、また機会を見つけてお伺いをしていきたいというふうにお話をさせていただきました。

 薬の価格というのは非常に国民の皆さんにとっては不透明な部分がありまして、言い方は悪いですけれども、値段のないおすし屋に行ったようなものなんですよね、診療報酬というのは。しかもお任せコースなんですよ。お任せで、板さんに頼みますよといって、ネタがある程度出てきて、出口で、はい、一万六千円ねと言われたら、一万六千円か、値切るわけにもいかず、しようがない、一万六千円払って帰ってくる、こういうような現状があります。こういった感覚を持っている国民の皆さんが多いということは否めないと私は思っているんですね。

 それで、私は、前回の分科会でも御質問させていただいた。薬価の価格決定のプロセスを透明化する必要があるんじゃないか、そういった私の質問に対して当時の坂口大臣が、

 だれからもわかりやすい、医療従事者の皆さん方が患者の皆さん方に、これはこういう理由でこう高いんだとか、これはこういう理由で低いんだとか安いんだとかいったようなことがもう少し明らかに説明していただけるような体制を確立したいと思っているところでございます。もう一年ぐらいかかるんだろうというふうに思っております

というふうに御答弁いただいております。

 それからちょうど一年ぐらいたったわけなんですけれども、その進捗状況について御説明いただけますでしょうか。

水田政府参考人 技術的なことにつきましてまずお答え申したいと思いますけれども、まさに診療報酬につきまして、例えば医療技術につきましては、難易度、時間、技術力等を踏まえた評価を進めるということを方針として決めているわけでございまして、現在、まさに診療報酬調査専門組織というところで具体的な客観的なデータの収集というものを行っているところでございます。

 例えば、診療報酬調査専門組織の医療技術評価分科会におきましては、先ほど申し上げました、手術、難易度及び時間に係る調査、手術件数とアウトカムに係る調査等を行っておりまして、本年度中に調査結果が取りまとめられる、こういう予定でございます。

岡本(充)分科員 その中で、当時の辻保険局長さんからの当時いただいた御説明では、補足説明として、薬価の決め方には類似薬価を参考にする、こういった方法がある、これが今お配りした資料のとおりですね。例えば、上のは高脂血症のお薬です。そして下は高血圧の降圧薬ですね。一般的に大変よく使われているお薬です。恐らく、この委員室の中に見える方の中にも服用されている方も見えるかもしれませんけれども、極めてよくあるお薬であります。あえて特殊なものではないものをお出しさせていただきました。

 こういう形で、極めて似た薬価になっている。それで、最初の一剤目はどういうふうにして決まるんですかといったら、原価計算方式だという御答弁をいただいた。原価の計算にはどういったものが入っているのか、その部分については、残念ながらその部分が明らかにできない、薬価算定専門組織で査定するんだ、そして中医協に諮ってこの薬の価格が決まるんだというお話でした。

 まず、類似薬価方式という形でいいますと、二番目に出てきたお薬も、三番目に出てきたお薬も、はっきり言いますと、例えば最初のお薬との価格差で勝負をしたいという製薬会社がいても、薬効が似ているんだからあなたの薬はこの値段にしなさいよ、こういうふうに国が指導するということであっては、やはり、日本は一応経済社会は市場主義でございますから、そういった意図が反映されないのではないか、こういうふうに思うんですね。もちろん、改定の折には変わりますよ。最初です、最初二年間。どういうお薬の値段になるか、そのときにそういうふうな決定になっていると私は思う。

 ですから、例えば製薬メーカーによっては、うちは値段で売りたい、値段で勝負するんだ、こういうところがあったら値段で勝負してもらえばいいわけですし、もちろん画期的な、私は、降圧薬でもこういうところがすばらしいんだ、こういうような売りがあれば高い値段でも売れるでしょうし、そういった意味でいいますと、類似とはいいながら、若干ずつ、お薬、確かに名前が違っているとおり、少しずつ違うんです。

 私も製薬メーカーの方からいろいろ話を伺っています。どの薬がどうだ、例えばこの薬は腎機能の保護機能がついているんだ、同じ降圧薬のお薬でも、これには腎臓の機能を保護する機能がついているからうちのはちょっといいんですよ、こういうふうに売り込みに来られる。だったら、おたくのをちょっと高くしたらどうですか、こう言ったら、いやいやいやと。こういう話になるんですね。

 それが今の薬の薬価の決定のあり方だということをぜひ大臣に知っていただいて、類似薬効のものは同じ薬価にしていく、こういうほぼ横並びにしていくというような方式については少し見直すという御決意はありませんでしょうか。ぜひ大臣から。

尾辻国務大臣 薬、私も、正直に申し上げて素人なものですから、よくわかりません。ただ、前に医療保険をどうするかというチームをつくって随分検討いたしましたときに、日本型参照価格制というのをいろいろ勉強してつくろうとしたこともございました。そのときに、今先生がお話しいただいたようなことも随分議論したような記憶があるんですが、ただ、素人なものですから、今また、そのころの記憶があるというだけで、今の先生のお話を改めてお聞きしながら、いろいろなことがあるなと。

 とにかく、それについてもっと勉強させていただいて、自分なりの考え方をまとめていきたいというふうに思っております。

水田政府参考人 一言補足をさせていただきますと、類似薬効比較方式の場合でも、有用性等が高い場合には、それぞれランクに応じて、画期性加算でありますとか有用性加算の一、二と段階をつけて評価をするというような仕組みになっているところでございます。

岡本(充)分科員 ただ、今、加算についても、国が決めた加算であって、製薬メーカーさんの意図が反映されたものとなり得ないということだけは指摘させていただきたい。

 そして、原価計算方式について言うと、これは大変特殊なお薬が多かったりというか、特異な薬になってきて、なかなかこの中で使ってみえる方はいないかもしれませんけれども、例えば、抗がん剤分野でいうと高い薬が多いです。生物製剤と言われるものは高い。例えば、抗がん剤の一種、悪性リンパ腫というのに使うリツキシマブというお薬がある。これなんかは、一バイアル、一瓶で大体二十五万円を超えます。これが大体一月二回、場合によっては三回使う人もいる。このバイアル三本使ったら幾らになるかは大体わかるわけです。こういうような、もちろん画期的なものでありますから値段がある程度高いのはいたし方ないとしても、これは極めて高い。

 もう一つ、私が非常にかねがね疑問に思っているのは、輸血もそうです。輸血も実は極めて高い。血小板、血漿、こういったものは、実は極めて高い値段設定になっております。今、若干変わったかもしれない。私が現役でやっていたころは、血小板の多い、単位数で二十単位、例えば二十単位というと十五、六万円する。そして、お願いしておいて万一その患者さんの血小板の数が上がって血小板が要らなくなったというと、キャンセルできないんです。そのお金はまるっとかかってくるんですね。二十万円近い、十六、七万だったと思いますけれども、はっきり覚えていない。

 こういうような仕組みがあって、残念ながら医療費はどんどん高くなる。抗がん剤治療をやっている方は血小板が下がります。そのときに血小板輸血をすることで血小板の止血機能が回復するわけなんですけれども、止血機能が戻るわけなんですけれども、しかし、それに対してかなりのコストがかかっているということをぜひ御認識いただいて。

 原価計算方式といいますけれども、私は、この中にはかなり言い値に近い部分があると思っています、ここは。製薬会社から、研究費がこんなにかかったんですよと。では、何でそれだけ研究費がかかるんだという話をさせていただくために、きょう、実は文部科学省の審議官の方に来ていただいているんだと思いますけれども、来ていただきました。

 私は、それについてはこのような考えを一つは持っています。披露させていただきますと、要するに、今の研究システム、残念ながら、いい薬をつくる、新しい薬を日本でつくる、こういった仕組みがなかなかできていない。その根源はどこにあるかといったら、やはり医学教育の中にも問題点があると思うんですね。

 医学部に行った学生の多くは、もちろん今はほぼ一〇〇%研修に行く。その後どこに行くかといったら、臨床に進むわけですね。一部は、優秀な方は厚生労働省の中にこうやって入ってみえるわけなんですけれども、私の同級生も一人入りましたけれども、多くは実は臨床に行っています。社会医学と言われる、例えば公衆衛生だ、予防医学というようなところに進む人は極めて少ない。公衆衛生学、予防医学といったようなところに行って医療統計をやり、そして医学的な統計の知識を持ってきちっとした研究をし、新薬を開発する、こういった専門知識を持った人間、先生また教授含めて、数が少ないというような現状があります。

 この認識について、文部科学省の方からのコメントをいただきたいと思います。

泉政府参考人 今先生御指摘になられました問題は、いわゆる治験の問題の一環かというふうに考えるわけでございますけれども、近年、日本の製薬企業におきましても、治験を国内よりも外国、欧米で先行させるようなケースが増加しておりまして、いわゆる治験の空洞化といったようなことが指摘されておるところでございます。

 こういった状況を踏まえまして、平成十五年の四月に、私ども、厚生労働省の方と合同いたしまして、全国治験活性化三カ年計画を策定したところでございます。この計画の中におきます問題意識といたしまして、治験の実施体制について、医師や治験コーディネーターといった治験関係スタッフの充実、あるいは治験の管理センターの整備といった、ソフト面、ハード面、両面にわたります実施体制の強化が重要であるというふうにしております。

 今先生御指摘になられました医療統計あるいは社会医学といった分野の治験に関する専門家の養成、確保、あるいは不足の解消といったことがこの治験の実施体制の充実ということにおいて重要な課題の一つであるというふうに認識しているところでございます。

岡本(充)分科員 今御答弁いただきましたけれども、もう一つ確認しておきたいんですけれども、私が今述べさせていただいたような医療費が高くなる理由の一つは、やはり日本でいい薬を開発するような制度ができていない、結果的に海外でやった薬を日本に導入せざるを得ないから、その結果、言い値、値段についても、余りはっきりわからないけれども、そうなんだろう、研究開発費がこのくらいかかったんだろうと、放らつな値段を言われるわけではありませんから、それをうのみにしてしまっているような環境があるんじゃないかと私は推察しています。なかなか教えてもらえませんから、確定的なことは言えませんけれども。

 ただ、そういったような現状、日本で今ランダマイズド・クリニカル・トライアルをやっても、これが欧米のいい雑誌に載って、そしてエビデンスをしてきちっと確立をされるかというと、残念ながらこれがまだ難しい現状にもあります。積み重ねが必要です。長期的なスパンが必要ですので、ぜひこれから積極的に取り組んでいっていただきたい、そういうふうに思うのですけれども、御決意をいただきたいと思います。

尾辻国務大臣 先ほど、日本型参照価格制を提言させていただいたときの話を申し上げましたけれども、そのころ確かに、私の記憶では、日本の薬で海外で売れる薬は五つぐらいしかないというようなことを言っていたような気がします。ただ、その後、随分日本の薬も海外にむしろ売れる薬が出てきて、今のところそんなに、私の認識では、薬のレベルでいうと日本のレベルもかなりのものだというふうに認識をいたしておりますし、医療技術も同じようなことが言えるんじゃないかなというふうにも認識はいたしております。

 ただ一つ、やはりペースメーカーなんかがよく言われますけれども、ああした医療機器についてはまだまだ日本が、今おっしゃるように、医療費が高くなるような面を持っているんだというふうにも理解をいたしておるわけであります。

 ただ、今、先生のお話などをもう一回よく勉強させていただいて、そうした面、とにかく日本の医療技術を上げる、また日本の薬のレベルも上げる、そして、そういうことで少なくとも日本の医療費が高くならないように努力をする、これは大変重要なことだと思いますし、それに向けて努力をしてまいります。

岡本(充)分科員 そういった中で、先ほど話した長期的な話です。短期的にどうするかといったら、残念ながら今育っていない現状の中では、優秀なそういうランダマイズド・クリニカル・トライアルをできる研究者を日本へ招聘する、もしくは日本が日本に来たくなるような環境をつくっていかなきゃいけないんじゃないか。

 今回、実は規制改革・民間開放推進会議の第一次答申で、「我が国の国家資格を有する外国人医師・看護師の就労制限の撤廃」などという項目がどうも結論を得ているようでございます。そういった中で、この中で、医師国家資格を有する外国人医師については、六年間を上限とする研修、または僻地における勤務のみが認められているが、このような就労制限を撤廃するべき、平成十七年度中に措置というふうになっています。

 きょうは医政局長も見えていると思いますので、これについて今後どういった形で厚生労働省として前に進めていくのか、それについてちょっとコメントいただければと思います。

岩尾政府参考人 規制改革会議の方からそのような指摘を受けておりますので、私どももその年度内に方策が出るよう内部で検討しておりますので、そういう方向で対処することになるかと思っております。

岡本(充)分科員 余り前向きな答弁じゃなかったですよね。

 私は、必ずしも外国人医師をたくさん入れろと言っているわけではない。何しろ今の日本でも、くどいようですけれども、いい薬がつくれる、こういった環境を整備していっていただきたい。それが一つは薬価の抑制、そして今大臣が言われた医療器材の価格抑制。日本の技術がいいのは、薬も、そして確かに医療材料もいいものが入ってきています。しかし、どれも値段が高い。そういったことが一つ医療費の高騰につながっているということだけを指摘させていただきたいと思います。

 そして、次の話に移るのですけれども、地域医療の問題です。恐縮でございますけれども、地元の話でございます。

 それぞれ各地で同じようなケースがあると思うのですけれども、残念ながら地方における医師不足というのは今でも深刻なものがございます。私の地元の市民病院でも、産婦人科の先生が足りなくて、したがって産婦人科を閉鎖せざるを得ないだとか、また、私が行っておりました病院でも同様に医者の数が足りなくて困っているというような話がある。いかに医師の偏在を解消して、適材適所というのはなかなか難しいのですけれども、その人的資源の配分を行っていくか。今までの、医局に人事を頼る、こういったものからの脱却が求められていると思っているのですけれども、残念ながらまだそれが余りうまく進捗していないやにも見受けております。

 先日御説明いただいた中で、地域における医療対策協議会、こういったものが各県に置かれている、そして、北海道や島根県ではうまくいっているという事例はお伺いしました。では、愛知県において、現状、この協議会がどのような活動をしてどのくらい機能しているのか、御報告が多分厚生労働省に行っていると思いますので、お伺いしたいと思います。

岩尾政府参考人 地域における医療対策協議会の開催については、昨年の三月三十一日付で、都道府県に対して開催を促す通知を発出いたしました。

 愛知県におきましては、第一回の会議が昨年の十二月に開催されまして、県内における医師の確保等に関する現状分析等を議題に審議を行ったと聞いております。三月にも開催が予定されていると聞いておりますので、この委員会で、現状分析を踏まえ、医療機能の分化、連携の推進、必要な医師の確保や医療機関への配置等について協議を行い、対応策を考えていくということですので、愛知県でそのような取り組みが行われていると考えております。

岡本(充)分科員 ただ、ここは愛知県の議会ではありませんから、深くはお聞きしても論点がずれるかもしれませんが、現状をお話しさせていただくと、今でも、市民病院の設置者たる市長さんが医局に出向いて、何科の先生が欲しいだとか、もしくは、何とか先生を大学に戻さないでくれだとか、こういったお願いをされているという現状は続いています。

 もちろん、大学側も意地悪で人を出さないわけでもありません。それは、確かに人材も足りなかったり、また、それぞれ、無理やり異動させるわけにはいきませんから、その各医師の意向が尊重されたりというようなところもあります。

 そういった大変難しい面は持っておりますけれども、この協議会で、メンバーを見させていただきました、大学の医者も入っています、医師会も入っています、そして医療を受ける立場の人たちも入っておりますけれども、実際に、例えばある大学の教授がそういう要請を受けても、自分の科でないよその科の先生のところに行って、あなた行ってちょうだい、こういう話はできないということは、ここで指摘をさせていただきたいと思いますし、結論として、この協議会がうまく機能して医師の偏在の解消につながるとは私は考えにくいということを指摘させていただいて、ぜひ、この問題、また来年も私は伺っていきたい。

 薬価の問題もあわせて、私は進捗状況を来年もお聞かせいただきたいと思うのですけれども、ぜひ、この一年前向きに取り組むという御決意を、ちょっと大臣の方からお聞かせいただけませんでしょうか。

尾辻国務大臣 今、中医協をどう見直すかという有識者会議も立ち上げました。こうした中で今後の議論を進めていきながら、また、中医協のあり方、私どもなりに検討いたしますけれども、多くの検討を加えていく中で、今御提言いただいたといいますか御指摘いただきましたさまざまなことについても、しっかり答えを出していきたいというふうに考えております。

岡本(充)分科員 中医協の問題も私は指摘をさせていただきたいと思っているのです。

 中医協のあり方を考える、そういった協議会をつくられて、大臣みずから議事進行役をとられている、私は本当に大変な御苦労だと思います。

 ただ、結局厚生労働省の大臣である尾辻大臣が、ほかの方と協議の上ですけれども、人選をされ、そして話を進めていく中で、客観性や透明性が失われないようにしていただきたい。要するに、結論はもちろんありきじゃないと私は信じておりますけれども、そういった流れに流されないようにぜひしていただきたいと思っているのです。大臣のホームページを見ましたら、規制緩和の適切な実施、国民の側に立った議論が必要だと思います、積極的に取り組んでまいります、こう書いてありますので、ぜひ積極的にお願いをしたいと思っています。

 ここまでは建設的な話だったのですが、ここからちょっと話ががらっとかわります。申しわけありません、質問の通告をしていない部分が入っております。

 実は、本日、私の質問主意書に対する答弁をいただきました。これは、先般開かれました牛の月齢判別に関する検討会、厚生労働省も農林水産省と共同で開催をいたしておりますけれども、こちらについて、牛の枝肉の生理学的成熟度に関する研究というのが出ました。本日、この答弁書をいただいたんですけれども、こちらの中のこの答弁書の内容について、牛の「枝肉の生理学的成熟度に基づく牛の月齢判別の方法の取扱いに関しては、検討会の報告書を踏まえ、現在厚生労働省及び農林水産省において検討を行っているところであり、現時点において、お尋ねの事項についてお答えすることはできない。」ということで、三問が、答えが全部これで終わっています。

 確かに、今検討されているのでしょう。それで、きっといい検討をされているんだと思います。ただ、私は、この質問書の中で一番最初に指摘をさせていただいた、ここから先は質問通告していませんので、答弁はなかなか難しいかと思いますのでちょっとお話をさせていただくと、米国農務省の最終報告、この最終報告の中で、牛の月齢の判別について、この質問の中でも問わせていただいているんですが、どのようにしてこの牛が何カ月かと判断をしたのかということについて、どういうふうにして月齢を推定したのかという問いに対して、「当該研究の最終報告書にそれぞれ記載されている。」とだけ答弁が来ています。

 しかし、この中には、私が聞きたいのは、どういうふうにして牛の月齢を判別したのか。つまり、出生証明なのか、種つけをしたのか、はたまた私が聞いているところによると、牛がだあっといる牧場の中に、雌牛がいる牧場の中に雄牛を入れたその日から勘案して、恐らくこの日ぐらいに子供が生まれただろう、この程度の推定から、いろいろな推定方式があるやに聞いております。

 それで、今回の答弁、これは一応内閣の方で出されています。尾辻大臣も恐らくはこの決裁にかかわられていると思いますので、ぜひお聞きをいただきたいんですけれども、牛の月齢判別についても、残念ながら、この中で、詳細な、今こういうふうな推定でどうしてこの月齢だと思ったかということについての記載がありません。また、どういう文献を参考にして、普通は、こういう科学的な文書、論文には必ず参考文献、これに先立ついろいろな研究があって、その研究のもとにこの論文を出しましょうと。私も論文を出したことがあるからわかるんです。こうやって、いろいろな論文があって、それをいろいろ勘案しながら自分の研究の方式をつくってデータを出してくる、これが科学的な証明の方法だと思いますけれども、こちらの方についてはそういう論拠となるべきものがないという現状もあわせて御指摘させていただきたいと思います。

 ここまでのところで、大臣、何かちょっとお答えできることがあったらお答えいただきたいんですけれども、ありますでしょうか。

尾辻国務大臣 今、牛肉の安全性につきましては、国内のことをどうするかということをまず議論いたしております。そこで食品安全委員会に諮問をいたしておるわけでありまして、まだその答えも出ておりません。その後で、では、アメリカからもし輸入を再開するとすればどうするんだという議論を始めることになっておりますから、大変そっけない答弁書になったのかなと思い、今先生のお読みになった答えの方を聞いておったわけでありますけれども、今の段階でお答えするとすれば、やはりそういうお答えの仕方しかないところであるということだけは、まず御理解いただきたいと思います。

 今後、議論をする中で、これは全部、私どもは、それをどういう議論をするかというのは外に出しながら議論をいたしますし、また、科学的な知見が必要でありますから、これは最終的には食品安全委員会に御判断いただきたくお願いをするわけでありますから、そうした手順を次々に踏んでいくつもりでございます。そうした中で、先生の御意見とか、そうしたものも十分また私どもは聞かせていただきながらやっていきたい、こういうふうに考えます。

岡本(充)分科員 ここは大臣も、いろいろお立場もおありですから、そうはっきりとはお答えできないと思います。今のようなお答えになるんだと思います。

 ただ、私の質問主意書で、例えばどういうふうにして月齢を判別したのか、最終報告書をどのように理解しているのか、こういった科学的な話についてはお答えいただけるはずなんですよね、最終報告書を検討したわけですから。厚生労働省としてまだ知らないという話じゃなくて、もうお受け取りになられていて、既にこの検討会に出されているわけですから、やはりもう読まれているはずだと思います。

 そういった中で、厚生労働省として、もしくは内閣として、日本政府として、この最終報告書をどう評価するかという評価はやはりしておいていただくべきじゃないかということについてはいかがですか、大臣。

尾辻国務大臣 もちろんそれは私どもがやるべきことでございまして、今後、しっかりそうした作業は進めていきたい、手順をきっちり踏んでいきたい、こういうふうに考えております。

岡本(充)分科員 ということであれば、この子細な研究内容についてもう一度問わせていただきたいと思いますので、もう一度きちっと検討した上で、根拠を含めて回答いただけますでしょうか。

尾辻国務大臣 再度のお尋ねがあれば、それはそれで私どもは真剣にそのお尋ねに対して答えをさせていただきます。

岡本(充)分科員 ぜひ、本当ははっきりと言っていただきたかったですけれども、お答えをきちっとした形で出していただきたい、それは強く言っておきますし、またこれはいろいろな場で私も今後とも取り組んでいきたい。

 本当に残り時間が少ないので、一つだけ指摘させていただきます。

 実は、昨年の十二月八日、きのうの農林水産委員会でも取り上げられたんですけれども、「アズ・チェアマン・オブ・ザ・ナショナル・ジョイント・カウンシル・オブ・フード・インスペクション・ローカルズ」、こういったタイトルで始まる、つまりは、ナショナル・ジョイント・カウンシルのチェアマンとしてこういった提言をしたいんだ、こういう意見書が農務省の方に提出されております。大臣も御存じだと思います。この中に書かれておる一節をぜひ最後に御披露させていただいて、大臣の所見を伺って終わりにしたいと思います。

 この検査官が、この合同会議のチェアマンがこういった提言をしている。要するに、プラント、工場の従業員は、三十カ月以上の牛の全頭の頭部及び枝肉を正確に認識しマーキングしているわけではないんだ、そして、多くの部位がSRMとして取り除かれなければならないことがわからず、これらの高リスク部位が食品供給に入っています、これが一点目。

 二点目は、ライン上のインスペクター、査察官は、プラントの、工場の従業員が輸出条件に合わない製品を通過させたのを目撃しても、それをとめる権限がないんだ、こういうふうにも指摘しています。要するに、現場の声としてこういう声を、はっきり言うと直訴したわけですね。

 こういう現状、いろいろな工場がもちろんあるでしょう、さまざまだと思いますけれども、そういう現状がある、こういった状態だということをぜひひとつ頭に入れていただいて、今後の対応をとっていただきたいと思います。

 大臣に最後一言だけ言っていただいて、終わりにしたいと思います。

尾辻国務大臣 そうした問題提起をされたことは事実でございます。したがいまして、そのことについてもちゃんと調査もしなきゃいけませんし、場合によっては現地も見なきゃいかぬだろうというふうに思っておるわけでございまして、先ほど来申し上げておりますように、そうした丁寧な手順を踏んでいきますということだけはしっかりとお約束をさせていただきたいと思います。

岡本(充)分科員 終わります。

後藤田主査 これにて岡本充功君の質疑は終了いたしました。

 次に、加藤勝信君。

加藤(勝)分科員 自由民主党の加藤勝信でございます。

 きょうは、国民健康保険の話と、そしてケアマネジャー、介護保険に係るいわゆる介護支援専門員、俗称ケアマネと呼ばれておりますけれども、ケアマネジャーさんの二件を中心に質問させていただきたいと思います。

 まず、国民健康保険、いわゆる国保の保険料徴収、収納の関係でありますけれども、ここ最近、新聞等にもよりますと、保険料の収納状況、まあ、国民年金に比べればすこぶる高いということになるのでありましょうけれども、かなり低下傾向にあるということが指摘をされております。この保険料の収納状況あるいは滞納世帯数の状況の推移、この辺の、この五年、十年、十五年ぐらいのタームの中でどんな動向になっているのか、お示しいただきたいと思います。

水田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、国民健康保険制度におきます収納率の推移でございますけれども、直近の平成十五年度の保険料収納率は過去最低で、九〇・二一%となったところでございます。これを、過去をさかのぼってみますと、平成十一年度、五年前は九一・三八%でございまして、それ以降、各年、徐々にではございますけれども、低下傾向を示しているということでございます。

 一方で、滞納世帯数、これは平成十六年度で約四百六十万世帯でございまして、全体の約一八・九%になっているということでございます。これは毎年六月一日現在で一カ月滞納をしているという世帯の数でございます。

 これも過去をさかのぼってみますと、平成十一年には一七・一%だったわけでございまして、毎年少しずつではございますけれども上がっている、上昇しているということでございます。過去をさかのぼってみますと、以上のとおりでございます。

加藤(勝)分科員 今、収納状況、十一年度ありましたけれども、教えていただきました平成二年、ちょうどバブルが崩壊した直後は九四%ぐらいあったということでありますから、じわじわじわじわと落ちてきているな、そんな実感がするわけであります。

 申し上げるまでもなく、国民健康保険料というのは基本的には市町村が収納事務をいわば行っているというわけでありまして、収納に直接当たっている市町村長さんから、私どももいろいろ回ると、ちょっと制度的な手当てをしてほしいということをいろいろ御陳情いただくわけでありますが、まずその議論に入る前に、これまで収納状況の低下傾向が見られる中で具体的にどういう措置をとられてきたのか、その辺の状況を教えていただきたいと思います。

水田政府参考人 国民健康保険制度におきまして、当然ながら保険料の収納確保というのは極めて重要な課題でございまして、私ども危機感を持って取り組んでいるところでございます。

 現在の収納確保対策の努力、どういうところに力を入れているかという具体例でございますけれども、一つには、口座振替の推進あるいは徴収員による徴収の強化がございます。それから、被保険者の方に自覚を持っていただくという意味で、滞納された方に短期被保険者証の発行あるいは資格証明書の活用、こういったことをしてございます。それから、被保険者の方に支払っていただくその利便性を向上させるために、コンビニを使って保険料の支払いができるようにする、こういった収納率向上に向けたさまざまな取り組みを進めているところでありまして、先ほど御報告申し上げましたように、平成十六年、九〇%ぎりぎりのところに来たということも含めまして、先般、総合的な収納対策を取りまとめまして、国、それからそれぞれの保険者におきましても国保収納対策緊急プランというものを策定していただけるようお願いをしているところでございます。

加藤(勝)分科員 それで、きょう申し上げたいところに入っていきたいと思うんですが、基本的に国民健康保険料については、納付義務者というのは世帯主ということになっております。保険料の算定については世帯割、人員割、世帯全体の所得、場合によっては資産、こんなものを勘案して保険料が算定されているというふうに聞くわけでありまして、そうした中で、世帯主というのは一般的にその家のあるじということになりますが、おじいさんという方が結構多いというふうに聞くわけであります。そこに自営の方が、若い方がおられる。そうすると、所得は、おじいさんはあって国民年金の受給ぐらいでしょうか、若い人はそれなりの所得がある。

 そういう状況のときに、要するに世帯主である、この場合でいえば、納付の義務者は、いずれにしても決して全額を払うほどの負担能力はないという状況に置かれている。他方、世帯の構成員である例えば息子さんは、サラリーマンであればもちろん違う保険の形になるわけでありますけれども、そうでない、自営、いわゆる国保の対象になれば、所得はあるけれども、義務者じゃない、自分のことじゃないぞという認識が結構強い。逆に言えば、納付意識が当然欠如している。この辺のアンバランス。

 そして、さらにお話を聞くと、今、滞納に対してさまざまな対策がなされておりまして、一年ぐらいたつと、特別の事情があるかないかを判断して、まず保険証を返してもらう、先ほどお話がありました短期のものを発行する。場合によってはそれも、次の段階に入れば、本来ならば三割の自己負担、したがって七割分が給付をされるわけでありますけれども、その分も含めて窓口で全額払う、そうして事後で精算をする。それからさらにいけば、その分も含めて相殺をされる、こういう過程に行くわけでありますが、そういう形で保険料の支払いを促すというのも一つの方向だと思いますけれども、もう一つはやはり、直接そこへ行って、財産を差し押さえ等して徴収をしていく、こういうのもひとつ私は重要な方向ではないか。

 実際、市町村長さんに聞くとやはり、いただいた資料を見ると、かなり厚生労働省さんの指導もあってそういう措置をとっておられるようですが、ただ実際、特に小規模になればなるほどその家の事情もいろいろわかり、また、結果的に全額負担だといっても、全額負担できるぐらいならばそんなに滞納することもないわけでありまして、結果的には、医療機関が診療を拒否するというわけにはいかないわけでありますから、診療はします、そして結果的にその医療機関にどんどんどんどん未払いのお金がふえていってしまう、そういう状況を直接見ている現場の市町村長さんからいえば、余りこれも使える手段とも決して言えないな、そういう認識があって、むしろ財産あるいは所得に直接差し押さえたり踏み込んでいきたい。

 しかし、さっき申し上げたように、今の現状では世帯主さんの財産しか対象にならない、所得しか対象にならない、そこに非常にもどかしさを感じておられる声を大変強く聞くわけでありますけれども、そうした差し押さえの対象というんでしょうか、そういったものを、世帯主さんの財産に限らず、世帯全員とまではいかないかもしれませんけれども、一定範囲に拡大をしていくという意見というか意向に関して、大臣、どんなふうにお考えでしょうか。

尾辻国務大臣 先ほど来お述べいただいておりますように、国民健康保険制度におきましては、保険料収納の確保、これは極めて重要なことでございます。

 そこで、まず、現行の仕組みの中で何ができるかということを考えまして、局長よりも御報告を申し上げました国保収納対策緊急プランというのを策定して、今努力をしておるところでございます。

 これは現行の仕組みの中でやれることをまずやろうということでありますが、それにとどまらずにさらなる収納対策を考えなきゃいけないというので、専門家を交えた研究会等で検討いたしております。その検討しておる中の大きな一つが、今お話しいただいておりますところの、世帯主のみが負っている納付義務を世帯員である被保険者にも課す連帯納付義務のあり方、これは今研究会で検討いたしておりますので、答えを近く出したい、こういうふうに考えておるところでございます。

加藤(勝)分科員 御検討いただいているということで、大変心強いところであります。

 実際、私が考えるに、先ほど、滞納者に対してだんだん対応が厳しくなっていく、最終的には十割で、仮に医療機関で払われた、それの三割部分は病院ということになるんでしょうが、七割部分で滞納保険料を相殺するというようなレベルまであるというふうにお聞きをするわけであります。

 そうすると、世帯主が受診をしたというときはともかくとして、世帯の構成員が受診をし、しかも、その人が自分の、ポケットマネーというのは変ですが、自分のお金で払ったんだ、そうすると、そのお金で、本来、三割を除いた七割は世帯の構成員に返ってくるはずのものが、相殺できるわけですね、今の話でいくと。したがって、今でも一部は理論的にはやれているというわけでございますから、そこはひとつ拡大をしていただかなければならないというふうに思いますし、またそういう中で今のすべてのストーリーが世帯主を中心につくっておりますから、ほかにも見直さなければいけないということがあるのではないかと思います。

 さらに、長期的にいえば、これから社会保障、全般的に、家族単位、世帯単位から個人単位という流れも出てきているわけでありますので、世帯単位でやることのよしあしもよく吟味をしていただいて、ほかの制度とのバランス等も考えていただきながら、やはり個人単位というものを考えていくことも将来的には必要になってくるのではないかというふうに思います。

 それから、近々にお答えを出していただくということでありましたけれども、これは介護保険とも密接につながっている部分もございますので、一国保だけではなくて介護の世界にもつながっているということで、ひとつ早急に御結論を出していただきたいというふうに思います。何かあれば。

尾辻国務大臣 今お話しいただいておりますことは、社会保障全体の見直しの中でいろいろな議論をしておるところでの一つの議論でございます。

 今度の障害者の支援法の中でもその辺が議論になるんですが、御本人に負担していただこうということもあるし、世帯で考えるべきだという考え方もあるし、またその中で、税制上にいろいろな扱いがあるじゃないか、だから世帯の中で考えるということも当然あるんじゃないのとか、いろいろな議論がございますので、そうしたものをまた整理して答えを出していきたいというふうに考えております。

加藤(勝)分科員 よろしくお願いをしたいと思います。

 次に、介護支援専門員、いわゆるケアマネジャーの件について御質問をさせていただきたいと思います。

 先日、きょうですか、介護保険事業状況報告というのもちょうだいをいたしまして、その中身を見させていただきました。居宅サービスの利用者、当初は百二十四万が二百三十五万、やはり倍増もしている。そうした中で、いわゆる居宅介護支援事業所に対する費用、結果的には、ケアマネジャーさんのケアプラン等の作成に充てられるために介護保険から出ているお金が二千億ということでありますから、居宅介護サービス全体が二兆数千億でありますから、一割ぐらいがそれに充当されている。金額的にもそれだけのボリュームがある。

 同時に、介護保険制度の中で、私は、ケアマネジャーさんの位置づけというのは大変重要なものがあるというふうに認識をしております。また、それだけの役割を担っていただくということが、介護を受ける方あるいは介護を受ける方を抱えている家族にとっても大変心強い存在でもあるわけであります。

 そうしたさまざまな高い期待があるわけでありますけれども、この五年間を振り返ると、介護保険全体にも今いろいろ見直しの法案も出されておりますし、また議論されておりますが、そうした中で、ケアマネジャーさんのあり方といいますか状況について、いろいろやはり、評価もある一方で問題点も指摘をされているというふうに聞いておりますが、ケアマネジャーの現状についてどういう問題点があるか、御認識をされているのか、その辺を示していただきたいと思います。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生からお話ございましたように、ケアマネジャーの制度は介護保険制度導入に伴いまして創設されたものでございます。大変大事な役割を果たしておりまして、利用者さんにかわりまして、その状態や生活環境を踏まえてサービスプランを作成する役割を担っているということで、介護を要する高齢者の在宅での生活を支援するためのいわばキーパーソン、こういうふうに考えております。

 創設された制度でございますが、五年間で定着して、その意味では大変評価が高い面がございますが、現状はかなり問題も指摘されております。

 一つは、居宅介護支援事業所の九割が、介護サービスをみずからも提供している事業所と併設されているということで、利用者にかわってプランを作成するというわけですが、独立性、中立性の確保が課題となっているということでございます。

 それから、プランをつくり、サービスを担当されている事業者さんとサービス担当者会議を開催する、また利用者の主治医との連携が大事になるわけですが、そのサービス担当者会議の開催が徹底されていない。主治医との連携が不十分。このために、サービスに偏りがあったり、利用者さんが本当に必要としているサービスが提供されていないということがあるんじゃないか。

 特に、この五年間の介護保険の制度の中では、軽度の方が在宅の場合特にふえているということがありますが、その方々のケアプランが十分かどうか、こういった方々の状態を踏まえたものになっていないので、軽度の方には特に期待されております状態の維持や改善につながっていないんじゃないかといったことが指摘されております。

 また、ケアマネジャーさんは大変悩みも多くて、いろいろケアマネジャーさんにアンケートをとりますと、自分の力量に不安があったり、あるいは少人数で活動されておりますので、相互に忙しいということで、相談相手がいなかったり、また利用者の中には支援する際に大変難しいケースもあるわけで、そういったケースに当たりますと、大変忙しい中にさらに拘束されてしまう、こういったことが問題点として指摘されております。

加藤(勝)分科員 そういう問題点の中で、やはりケアマネジャーが期待されている役割を果たしていくためには、いろいろな工夫をしていかなきゃいけないというふうに私は思っておるんですが、まずその前に一つ、今の居宅介護支援事業所に介護を必要な方が、まずそこへ出かけていって、プランをつくってもらったり云々かんぬん、そういう中で、すべては在宅事業所がするというふうになっておりまして、ケアマネジャーがという部分、Aというケアマネジャーさんの存在というのは割と希薄なような気がいたします。

 そういう方にある意味ではもっと責任を持っていただかなきゃいけないし、そういうマネジャーさんの存在そのものがもっと前に出てくるような制度にしていただくということも私はひとつ必要だというふうに思うわけであります。

 同時に、今の御指摘のように、併設が九割以上。実際、逆に言うと、併設がないという割合が、この四、五年の中で若干高まってはいっても六%少々ということでありますし、また先ほどの併設の有無と利用率を単純に比較してはいけないかもしれませんけれども、やはり併設があると通所介護とか通所リハビリの利用率が非常に高い、こういう数字も出てきている。

 そういうことは、ケアマネジャーに対する評価というものをある意味ではゆがめてしまうというか、どうもあそこはそういう施設が隣にあるから、それと関係があるからそういうサービスを組み込んでいるんじゃないか、こういうふうにも見られるわけでありますので、私は、やはりそこの独立性を高めていくということが、逆に言えば、事業としての公正中立性といったものを高めていくことが大変重要であるというふうに思うわけであります。

 実際に地元でも、いろいろなお話を聞かせていただくと、かなり意識を持った方が、そういう独立系の中でも本当に一生懸命頑張っておられる、そういう姿にも触れるわけでありますが、ただ頑張れ、頑張れと言っているだけでは一つの方向に行かないわけでありますから、やはり報酬面も含めて、これは今回の見直しではない、時期が違うかもしれませんが、報酬面も含めて、多分、厚労省さんのお立場からいっても、独立性を高める方向というのは一つの望ましい方向だというふうにも思いますので、ひとつ報酬面も含めた制度的な意味で、そういう流れをより後押しするというか、そういう対応をしていくべきではないかというふうに思いますけれども、御所見をいただきたいと思います。

西副大臣 委員御指摘のとおり、介護支援の制度におきましては、ケアマネジャーの存在が大変大きいものがございます。それだけに、先ほど御指摘のように、独立性をますます高めていく、もちろん責任も持っていただくと同時にそれなりの立場も保持していただくということは、基本的には大賛成でございます。

 このために、今回の介護保険制度の見直しでは何点かの改正を考えております。

 一つは、お一人のケアマネジャーさんが担当していただいている標準の数なんですが、現在五十人というふうになっております。これを適切なケアマネジメントができる人数に少し見直しをしたい、もう少し人数を減らして充実をしていただきたい。同時に、独立性を高める方向で、報酬も含めて、当然人数が減るわけですから、報酬を含めて見直しをする、これが一点でございます。

 続いて、それぞれの居宅介護支援事業所に所属するケアマネジャーの皆さんの届け出をはっきりさせる。今までは事業所が表にという御指摘がありましたけれども、その点をはっきりさせて、それから、そのケアマネジャーごとにケアプランの内容を評価させていただく。こういうことによってお一人お一人を浮かび上がらせていく。

 それから三点目は、それぞれのケアマネジャーの資質をさらに高めていただく。そのために、五年ごとの資格の更新制度を導入する、そして定期的に研修をする。こんなことによりまして、独立性の確保と、それから同時に資質の向上、またその報酬等についての見直しについて今回は取り組んでいく、こういう予定にしておるところでございます。

加藤(勝)分科員 ぜひそういう方向で取り組んでいただき、やはりこの介護保険制度というか、介護の世界で大変重要な役割を持っているんだ、国もそういう期待をしているんだということが実際に仕事をされている皆さんにも伝わっていくということをひとつお願いをしたいなと思います。

 そういう中で、今回の介護保険制度の見直しにおいて、各自治体に地域包括支援センターという名称、これは仮称と言うべきかもしれませんが、それが新しく設けられることになっております。見直し全体においては、いわゆるこれまでの介護と並行して、新予防給付と呼べばいいんでしょうか、そういう二つに分かれておりますが、新予防給付においては、この地域包括支援センターが、いわゆる介護給付における居宅介護支援事業所というんでしょうか、そんな役割を担うのかなとおぼろげに見えてくるわけでありますが、それは、これからの具体的運用をどうしていくかという、またある意味では新しい世界というか新しい分野でもありますから、それはさらに議論させていただきたいというふうに思うわけでありますけれども。

 同時に、介護給付の部分において、この地域包括支援センターの役割、いろいろな文言を読んでおりますと、包括的、継続的なケアマネジャーに対する支援ですかね、何かそんな文言も散見をするわけでありますけれども、この地域包括支援センターと居宅介護支援事業所あるいはいわゆるケアマネジャーとの関係を一体どういうふうに位置づけておられるのか、その辺をちょっと教えていただきたいというふうに思います。

中村政府参考人 今先生からお話がありました地域包括支援センター、今回の改正法案で提案させていただいておりますが、そのことについて御質問の点についてお答えをさせていただきます。

 まず、高齢者の方が在宅で生活を継続するためには、もちろん先ほどお話に出ましたケアマネジャーさんがケアプランをつくる介護保険の介護サービスがあるわけでございますが、それだけでなく、医療サービスとの組み合わせ、あるいは介護保険以外のさまざまな日常的生活援助のサービス、あるいはボランティアの方々との調整、そういったことが必要になると思います。

 ケアマネジャーさんはケアプランをつくられる、介護保険の中のお仕事をされるわけですが、どうしてもお忙しい。それは、そういった周辺とのつなぎまで引き受けさせられてと言っては言葉があれですが、引き受ける結果になって、本来のケアプランの作成などがうまくいかないということもございますので、一つには、この地域包括支援センターは、そういった住民の方の総合相談、御支援をするということで、ひいてはケアマネジャーさんの負担軽減も図ろうというのが一つのポイントでございます。

 もう一つは、ケアマネジャーさん自身を御支援するということで、ケアマネジャーさんがケアプランをつくる際、先ほどもちょっと支援困難な利用者の方もいるということがありましたけれども、そういったケアマネジャーさんに対して応援できるような、いわばケアマネジャーさんの支援部隊という役割をもう一つ担う、そこのところが御指摘のございました地域包括支援センターと居宅介護支援事業所あるいはケアマネジャーさんとの関係になると思います。

 この地域包括支援センターは、したがいまして、もう一つ先生から御指摘がございましたように、介護予防のマネジメントも担うということで、もう一回繰り返しますと、いわば住民の方のソーシャルワーク、それから介護予防マネジメント、ケアマネジャーさんの支援、この三本の柱を、業務を行うわけですが、その業務自体、包括的支援事業と法律では呼んでおりますが、それは市町村の事業として位置づける、その事業を実施する機関として地域包括支援センターをつくっているということでございますので、居宅介護支援事業所との関係でいえば、居宅介護支援事業所の力強い応援団、サポーターと位置づけられるのではないかと考えております。

加藤(勝)分科員 いずれにいたしましても、新しい、まだ五年間ということもありますけれども、逆に言えば五年間ここまでやってきたわけでありまして、そういう中でまた新しい制度がそこに組み込まれる。しかし、そこにはこれまでやってこられた、例えば今議論させていただいておりますケアマネジャーという方々がおられるわけでありますので、どうか、先ほど、最初に申し上げたその期待に対するバックアップとともに、やはり新しいものが入るとどうなっていくんだろうかと、いろいろな不安も感じるわけであります。

 それから、一くくりにケアマネジャーと言っても、居宅の場合と施設の場合とでまた役割が違うわけでありますし、今回さらに主任ケアマネジャーとか、あるいはこの地域包括支援センターにおけるケアマネジャーさんがどういうふうに関与するか存じ上げませんがという、それぞれの組織というか分野分野でケアマネジャーさんもおられるわけであります。それが全部ケアマネジャーさんという名前になっているわけでありますけれども、どうかそういう皆さんの声というものをぜひ的確に反映してこれからは施策を進めていただきたい。

 お話を聞きますと、全国団体的なものも構成されているというようにも聞いているわけであります。また、各県ごとにもいろいろとそういう団体もあって、今申し上げたさまざまなケアマネジャーさんの意見の集約も図っていただいて、この介護保険、あるいはこれから行く新予防給付、こういった分野も含めて、ケアマネジャーさんの期待というものをしっかりと実現していくためにも、そういう声を聞きながら、見直しと、また着実な施策の遂行をぜひとも図っていただきたいと思います。よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

後藤田主査 これにて加藤勝信君の質疑は終了いたしました。

 次に、川内博史君。

川内分科員 民主党の川内でございます。

 尾辻大臣、そして西副大臣には、大変お疲れのところ、あと私を含めて二こまでございますので、ともにドミニカのことを尾辻大臣とも西副大臣ともやっております。きょうは、ドミニカ・トライアングルでしっかり議論をさせていただきたいというふうに思います。

 きょうは、大きく三つのことを聞かせていただきたいと思います。障害者情報アクセスと著作権についてという一つの分野、さらに学童疎開船武州丸の件、三つ目が遺骨収集事業についてでございます。

 まず、障害者情報アクセスと著作権についての分野から聞かせていただきたいと思いますが、大臣、厚生労働省さんは昨年秋に、今後の著作権法改正要望事項として、障害者の皆さんの情報アクセス、著作物に触れたいというその御希望にこたえるために、四つのことを文部科学省に対して御要望をされていらっしゃいます。

 私は現在、衆議院の文部科学委員会の民主党の筆頭理事を務めさせていただいておりまして、知的財産権、とりわけ著作権法については、私のライフワークと言ったら大げさかもしれませんが、一生懸命勉強させていただいております分野でございます。尾辻大臣と協力して、障害者の皆さんが著作物にアクセスをしやすい環境をしっかりとつくっていきたいというふうに思っておりまして、中山文部科学大臣に大臣の方から、このことは何としてもやるぞということを、きょうは四つ、やるぞ、やるぞ、やるぞ、やるぞ、もう一つやるぞと言っていただかなければならないんですけれども。

 まず一つ目でございますが、視覚障害者の方々のための録音図書の作成に関して公衆送信権を認めるということについて、大臣の御見解を承りたいと思います。

尾辻国務大臣 まず、視覚や聴覚に障害のある方々にとって、さまざまな情報が円滑に入手できることは、これはもう生活していく上で欠かせないことでありますから、著作権を不当に侵害することのない範囲で、これはない範囲でとはっきり申し上げなきゃいけませんが、しかしその中で、こうした障害のある方々が情報を入手しやすくしていくことが極めて重要だと考えております。まず、基本的にそう考えておるということを申し上げます。

 そこで、具体的に、録音図書の公衆送信権についてのお話がございましたから、そのことについて申し上げたいと思います。

 御指摘の録音図書をインターネット等で配信することにつきましては、現在、点字図書について認められていることもあり、視覚障害者の方々が自宅などで聞くことができれば、視覚障害者の方々のさらなる情報入手の機会の拡大につながり、視覚障害者の方々の福祉の増進に寄与すると考えております。

川内分科員 ありがとうございます。

 続いて、字幕に関する翻案権の制限というものについて、大臣の御見解を賜りたいというふうに思います。

尾辻国務大臣 率直に申し上げますけれども、次に、字幕、手話の付与、公衆送信権についてもお尋ねいただくとお聞きいたしておるものですから、そのことを率直に申し上げたんですが、今のお尋ねの件、字幕の翻案権とそのこととはほとんど同一の考え方になるものですから、一緒に答えさせていただいてもいいか、次のお尋ねですから……(川内分科員「結構です。では一緒に答えていただいて」と呼ぶ)申しわけありませんが、もし別にお聞きいただくと同じ答えになりますということになるものですから、率直にそこまで申し上げたわけでございまして、それでは、そこまでお尋ねいただいたということで、両方について全く同じ考え方だということを申し上げて、答えを申し上げます。

 テレビや映画などについて、会話などでの難解な表現をわかりやすい表現に改めたり、字幕や手話の映像を追加することは、聴覚障害者の方々にとって必要不可欠なことと考えておりますが、これを行う場合に、著作権者の意図を損なわないように伝えるよう注意することが必要であることから、聴覚障害者提供施設において体制を整えて行うこととしたいと考えております。

川内分科員 大臣、そうすると、著作物に手話や字幕を付与し、聴覚障害者のための情報保障をしていくということに関して前向きだ、公衆送信権を含めて前向きだということでよろしいですよね。

尾辻国務大臣 これは、申し上げましたように、聴覚障害者の皆さんにとっては必要不可欠なことだと考えておりますので、ただ、著作権者の意図を損なうとまずいという、そこのところだけを配慮する必要があるということを申し上げたつもりであります。

川内分科員 それでは、四点目でございますけれども、同じく、これは今度は視覚障害者の皆さん方に対してでございますけれども、視覚障害者の方御本人が所有する著作物を本人が読める形に第三者が変換をするということに関して、大臣の御見解をいただきたいというふうに思います。

尾辻国務大臣 著作物を第三者が変換、複製することについてでございますが、現在は、個人が所有する著作物を所有している本人が自分のために録音等の形式に変換、複製することは認められていても、第三者がこうした変換、複製することは認められていないところでございますけれども、障害者みずからこうした変換、複製を行うことが難しい場合もありますので、私的利用に限り、第三者が障害者本人にかわって変換、複製することを認めることが必要であると考えております。

川内分科員 今までお尋ねした障害者の皆さん方と著作物とのかかわりについて、厚生労働大臣として中山文部科学大臣に、ちょうど、文化審議会の著作権分科会、そしてその分科会の下に法制問題小委員会というのが設けられて、これから議論が始まるところであろうというふうに思いますので、文部科学大臣に対して、厚生労働大臣としてこの四点については強く申し入れる、何としても、来年の法改正が必要なものは法改正、そして制度改正が必要なものは制度改正をしてくれということを申し入れるということの御決意をいただきたいというふうに思います。

尾辻国務大臣 冒頭申し上げましたように、視覚や聴覚の障害のある方々にとって、情報を円滑に入手できることは生活をしていく上で欠かせないことでありますから、そうしたものの必要性について、厚生労働省としても事務方から文化庁あてに所見を述べさせていただいております。

 それからまた、その実現に向けては、さらに引き続き私からも申し上げて、文化庁と御相談をしてまいりたい、こういうふうに思います。

川内分科員 ありがとうございます。

 では次に、武州丸という学童疎開船のことについてお尋ねをさせていただきたいというふうに思います。

 学童疎開船の悲劇というと、常に対馬丸が皆さんの俎上に上るわけでありますが、実はもう一隻、武州丸という学童を乗せた疎開船が奄美の海に沈んでいます。この武州丸について、まず厚生労働省の方から、御存じのことをできるだけ詳しく御報告をいただきたいというふうに思います。

大槻政府参考人 お答え申し上げます。

 厚生労働省におきましては、旧陸海軍より旧軍の軍人軍属の人事関係資料等を継承しておるところでございます。

 これらの資料を見てまいりますと、お尋ねの武州丸につきましては、いわゆる海軍指定船と言われる船でございます。記録によりますと、昭和十九年九月二十五日に、疎開する方々、疎開者を乗せまして鹿児島港に向け名瀬港を出発したところで、敵潜水艦の雷撃を受け、薩南諸島近海で沈没した、こういうことでございます。

川内分科員 何人乗りの船で、何人子供たちが乗っていたかというようなことはお手元の資料にはございませんですか。

大槻政府参考人 まず、乗船者数でございますけれども、総数につきましては、私どもの所有しておる資料では総数は不明でございます。

 ただ、わかっております範囲で申し上げますと、海軍軍属たる船員が三十六名、それから海軍軍人である警戒隊員と言われておる方々でありますが、これは不明でございます。それから、疎開者につきましては百五十四名ということでございます。これは名簿等ございませんので、内訳等についてはわかりません。それから、便乗者ということで、陸海軍関係者が二十四名乗船しておったということでございます。

 この事故によります死亡者数でございますけれども、総数百八十二名ということでございます。軍属船員が十一名、警戒隊員が五名、疎開者が百四十八名、便乗者が十八名、こういう記録がございます。

川内分科員 そうすると、子供たちの数については、厚生労働省さんが引き継がれた資料の中にはないということでございますか。

大槻政府参考人 お尋ねの点は、疎開者と言われる方々のことだと思うんですけれども、それがどういう方々で、どういう年齢の方々でという資料は私どもの引き継いだ資料にはないということでございます。

川内分科員 私どもが収集をした資料で申し上げますと、十五歳未満の児童が七十七名、十六歳から五十九歳の婦女子三十七名、男子十四名、六十歳以上の方が十五名、年齢不詳五名という形で、これは国立国会図書館の資料でございます。乗船者のうちほぼ半分が、学童、十五歳未満の子供たちであったということであります。

 太平洋戦争に係る沈没艦船の数というのは三千二百六十隻に上る、これは政府の資料でございますが、と聞いております。米潜水艦による攻撃で沈没した学童疎開船は、先ほども申し上げました対馬丸、そしてまた私が今話題にしております武州丸の恐らく二隻だけであろうというふうに思われます。沖縄の対馬丸については、特別支出金による補償とかあるいは記念館の建設あるいは洋上慰霊など、手厚い慰霊がなされているわけでありますが、この武州丸についてはいまだに洋上慰霊もされておりません。

 慰霊巡拝事業として毎年慰霊の事業が行われているわけでございますし、また、閣議の決定に基づいて疎開を命令されて本土へ向かう船の中で攻撃を受けた、そのときの子供たちの気持ちを思うと、親と離れ離れになって船に乗せられて海の底に沈んでいかなければならなかった子供たちの気持ちを思うと、せめて慰霊ぐらいはしてあげたいというのが私の思いでありますが、大臣の御所見を承りたいと思います。

尾辻国務大臣 お話しいただきましたように、学童疎開船というとまず対馬丸という名前が出てまいります。そして、この対馬丸については、平成十年だったと思いますけれども、洋上慰霊祭をとり行いました。私も参りました。明け方、対馬丸が沈んだところを慰霊船がぐるっと回って、ボーと汽笛を鳴らして、本当に、そのときのことを思いながら今のお話を伺っておりました。

 ですから、こうした船が沈んだあたりの洋上慰霊祭をどうするかというのは、今までも、例えば中部太平洋一帯を回るとかいろいろな形でやってきておりますが、この武州丸という一つの船についていうと、さあ、どうしてできるかなとか、いろいろな問題があることは事実でございますけれども、今後、そうしたものをどういう形で実施していくか、またよく考えてみたいと思います。

川内分科員 ぜひ大臣、ことしすぐやってくださいとか、そんなことを私は申し上げる気はございません。とにかく、厚生労働省として、国として、沈んでいった子供たちの、将来ある子供たちの魂を、できれば大臣が大臣のうちに慰めていただくのが一番の供養になるんじゃないかということを申し上げておきたいというふうに思います。

 それでは、次の遺骨収集の事業について聞かせていただきたいと思います。さきの大戦で戦火に散った方々の遺骨収集事業についてお伺いをさせていただきます。

 まず、米国が、戦闘中行方不明者というそうですけれども、この戦没者の捜索、遺骨収集にどのくらい予算をかけているか、厚生労働省さん、御存じでしょうか。参考人の方に御説明をいただきたいと思います。

大槻政府参考人 お答え申し上げます。

 米国におきます戦闘中行方不明者あるいは戦没者の捜索あるいは遺骨収集に係る機関といたしまして、米国の国防総省捕虜・行方不明者人員調査部という組織があると承知しております。しかしながら、最近における正確な予算の数値等につきましては把握しておりませんので、答えは控えさせていただきたいと思います。

川内分科員 私がいただいた、お調べをさせていただいた資料によりますと、遺骨収集、もちろん先に捜索があるわけですが、捜索と御遺骨の収集に年間四十二億円、さらに身元の確認に二十二億円、合計六十四億円をかけているというふうに聞いております。これは私が調べることですから、正しいかどうかは、もしよろしかったら後で御精査をいただきたいんですけれども、一方、この六十四億円に対して、我が国の遺骨収集並びに身元の確認に国としてどのくらいの予算をかけていらっしゃるか、内訳を含めて御説明をいただきたいというふうに思います。

大槻政府参考人 平成十七年度の予算案におきましては、遺骨収集等事業につきまして年間四億八千万円、遺骨伝達及びDNA鑑定経費につきまして五千四百万円を計上しているところでございます。

川内分科員 大体六十四億円に対して、今の御説明ですと四億八千万と五千四百万で五億五千万ぐらいということで、大変な開きがあるわけでございます。もちろん、アメリカはベトナム戦争やあるいは朝鮮戦争などもされていらっしゃいますから、そのときの行方不明者の捜索などもあるわけで、一概に比べることはできないというふうにも思いますが、しかし、戦場で亡くなられた方々がおうちに帰りたいという気持ちは、これはどんな国でも一緒だというふうに思うんです。

 大臣、米国と日本のこの収集事業にかける予算の差というものをどのように評価されるか、聞かせていただきたいと思います。

尾辻国務大臣 それぞれの国の事情もあるとは思います。特にアメリカの場合は、軍が中心になって遺骨収集はしておるというふうに聞きますから、いわば軍の予算の中でやっている、それと、日本みたいにまさにボランティアで遺骨収集をやってきた国との差というのは、当然予算の額の中でも出てくるんだろうというふうには思います。

 ただ、予算額の差についていえばそういうことでありますけれども、この前も申し上げましたけれども、戦後六十年もたってまだ遺骨収集をやっているというのは悲しい話でありますし、やはりもっと今まで国としてやるべきことがあったのではないかという思いは率直にいたしております。

川内分科員 沖縄県における戦没者の遺骨収集について、日本国内で発見される御遺骨というのは、遺骨とはいいながら、実はまだ墓地埋葬法上は遺体並びに死体という扱いで、火葬し納骨をしなければならないというものでありますが、つい最近まで、沖縄で発見された戦没者の御遺骨について、ある種の法令にのっとらない取り扱いが行われてきていたのではないかということを私は指摘させていただいたのですけれども、政府参考人の方、この辺についてちょっと御説明をいただければというふうに思います。

田中政府参考人 御説明申し上げます。

 沖縄におきます戦没者の遺骨の収集事業でございますけれども、これは御承知のとおり、国の責任と主体のもと、県、市町村も関与して行われてきたものでございます。

 また、沖縄におきます戦没者遺骨は、身元不明の場合が非常に多いというような特殊な事情から、墓地埋葬法に基づく火葬許可証の発行を受けることが極めて困難であるというような事情もございました。

 また、現実には、沖縄におきます戦没者遺骨は、遺族の感情にも配慮の上、丁重に扱われまして、遺骨収集事業に伴います焼骨も円滑に行われてきたのではないかというふうに私ども理解しているところでございまして、遺族等も含めて、社会的にも受け入れられているところではないかというふうに考えております。

 ですから、こうした歴史的経緯から考えますと、沖縄におきます遺骨収集事業について、通常の手続と必ずしも完全には一致していないという現状はございます。

川内分科員 いや、局長さん、局長さんですかね、現状は、もう多分、ペーパーを一月に出されていますから、今この時点では多分一致していると思うのですが、それまでは一致していなかったということだと思います。

 大臣、今、局長さんが、丁重に取り扱いをさせていただいているというふうに御答弁をされたのですが、実は、きょう私が持ってまいりましたこの写真は、沖縄で発見された戦没者の御遺骨が、摩文仁の平和の礎がありますけれども、その公園の一角に財団法人沖縄県戦没者慰霊奉賛会という建物が、これは平和の礎が非常に立派に美しくつくられているんですが、奉賛会のこの建物は、私、この前、館長さんにもお会いしてきましたが、もう古い建物で、古くなっておりまして、その古くなった建物の裏側の小屋みたいなところに、こうして見つかったお骨が一緒くたにされて、白い袋に入れられてコンクリートの上に置かれているという、今、これは一時的ではあってもそういう状況なんですね。

 事務方の皆さんはこれを丁寧な取り扱いだとおっしゃるのかもしれませんが、私はとても丁寧な取り扱いとは思いませんし、また、大臣、もしかしたら御存じかもしれませんが、これは、ペリリュー島で見つかった戦没者の御遺骨を一回現地で火葬するわけでございます。(写真を示す)そのときに、こういう形でむき出しになっていまして、これはどうせ焼くんだから一緒じゃないかと言われれば、もしかしたら一緒なのかもしれませんが、これはちょっと、私は、この国をつくってきていただいた、その礎になった方々のお弔いの仕方としては余りにも悲しい方法ではないかというふうに思っております。

 ちょっと気持ちが高ぶってしまって原稿を読み上げられないのですけれども、私は、大臣が大臣の間に、この戦没者の遺骨収集事業というものを、先ほどもしっかりやるというふうにおっしゃられたわけでありますが、もう一度一つ一つの事業を見直していただいて、何百万という方たちがお亡くなりになり、まだ政府の統計でも百万人以上の方が帰ってきていないという状況を、ことし、戦後六十年の節目でありますから、少なくとも、この六十年の節目に当たって見直す。DNA鑑定ができるものはDNA鑑定をし、御遺族に返す。これは一部はもう既に行われておりますが、できるものはすべてやるというような形。

 そしてまた、身元不明の皆さんは、身元不明の御遺骨としてお一人お一人墓碑銘を建ててお墓に葬る。千鳥ケ淵も平和の礎も、お墓ではなく、法令上は公園という扱いになっておりますので、そういう我が国の先輩方に対しての、私たちが、今を生きる者の私たちの接し方というものをことししっかり考え直すということの御決意をもう一度大臣にいただいて、終わらせていただきたいと思います。

尾辻国務大臣 大変気持ちのこもったお話をいただきまして、一言感謝を申し上げます。

 御遺骨の扱いというのも、本当に少しも尊厳を損なうことのないようにしなきゃいかぬというふうに思っておりますので、そうしたことも、また、沖縄の具体的なお話もありましたから、早速に調べて、決してそういうことのないようなことにすることはお約束を申し上げたいと思います。

 ただ、一つだけ。実は、もう私も何回も何回も遺骨収集も行っていまして、今写真でお見せいただいた御遺骨を焼く場面というのは、自分自身がやってきました。決して言いわけするわけではないのですが、一回に何百柱かの御遺骨を収骨して、一遍焼かないと日本に持って帰れない。ではどうやって焼くかというと、ああいう焼き方しかなかったわけであります。もう泣きながらああやって焼いてきましたが、どうぞ、それはやむを得なかったということだけは改めて御理解をいただいておきたいと思います。

 いろいろ戦後処理、やらにゃならぬことがありますが、遺骨収集もしっかり、そういつまでもやるべき話じゃありませんから、仕上げをしたいというふうに思っております。

川内分科員 ありがとうございます。

後藤田主査 これにて川内博史君の質疑は終了いたしました。

 次に、高木美智代君。

高木(美)分科員 公明党の高木美智代でございます。

 本日は、心から尊敬する尾辻大臣、そしてまた西副大臣に質問する機会をいただきまして、心から感謝をしております。

 昨年、大臣がまだ大臣になられる前でございましたが、健康フロンティア戦略を座長としておまとめいただきまして、私も新米ながら携わらせていただき、本当に多くのことを学ばせていただきました。

 その中にも、女性のがん緊急対策、そしてまた、働き盛り層のがん対策、このことにつきましても盛り込まれておりまして、既に予算措置も終わって取り組んでいただいているところでございます。

 御提案いただきましたマンモグラフィーも、これを聞かれた女性の方たち、大変多く喜びの声をいただいております。あとは、この女性のマンモグラフィーの検診、わずか一二・三%という受診率をこれからどのようにしていくか、しっかりまた地域の方たちと一体となって取り組んでいきたいと思っております。

 最近でございますが、特に近年、子宮がんや乳がん、また男性であれば前立腺がん、こうした手術の後遺症としまして、リンパ浮腫という病気が今クローズアップされております。また、このリンパ浮腫に悩む方が増加をしております。これからぜひともこうしたデータの収集をお願いしたいと思っておりますけれども、これは私の個人的な実感ですが、私の身近な方にもふえておりますし、また、ぜひこのことに取り組んでほしい、こういうお声もふえているという状況でございます。

 まず、このリンパ浮腫という病気につきまして大臣がどのような御認識をお持ちか、お伺いをさせていただきます。

尾辻国務大臣 乳がん、子宮がん等の手術後に発生します今お話しのリンパ浮腫は、手術後の患者の生活の質を低下させる一因になっておると認識をいたしております。

 このリンパ浮腫に対する治療法としては、むくみを抑えるための対症療法として、マッサージや弾性ストッキングの着用等の理学療法が行われておりますほか、薬物療法や外科療法が行われておるところでございます。リンパ浮腫の治療法等については、これまでも患者の方々や医療関係者に対し、国立がんセンターのホームページ等を通じた情報提供を行うとともに、患者の生活の質に配慮した新しい治療法の研究を推進してきたところでございます。

 今後とも、知識の普及や研究の推進を積極的に行ってまいりたいと考えます。

高木(美)分科員 すばらしい取り組み、大変にありがとうございます。

 このリンパ浮腫という病気、なかなか御存じない方もいらっしゃるかと思いますので、少し説明をさせていただきたいと思いますが、例えば、子宮がんとか前立腺がんの手術では、足の部分のリンパ節を切除いたします。また、乳がんでは、わきのリンパ節を切除いたします。そのことによりまして、リンパ液が循環しにくくなりまして、余分な水分がリンパ管を通って静脈に戻るところが、そこがやはりなかなか戻りにくくなっておりまして、ある日突然、足が二倍ぐらいにはれてしまう。しかも、熱を持ちまして、さわると痛くて夜も眠れない、そういう症状が言われております。

 図で、写真で大変恐縮ですけれども、ここまではれる。また、ここまで現実に人間の体として、これは、この方は左足の部分でございますけれども、こんなような実態になってしまって、治療を加えましても、この右の図のような、こういうところまでしか回復をしない、このようなことが伝えられております。

 こうした発症につきましては、手術の後、数年という方もいらっしゃいますし、十年、二十年たってからという方もいらっしゃいますし、また、ない方もいらっしゃいます。一般には余りまだ知られていないようでございます。

 そこで、今御答弁いただきました、国立がんセンターのホームページ等で情報提供をしてくださっていると今お伺いをいたしました。ドクターの中にも、医師の中にも、なかなかこういったことの認識が少ない方もいらっしゃるようで、手術の前にあらかじめ患者さんに教える、こういったことも少なかったようです。

 当然、医学の中でも、がんといいますと、まず命が救えるのか救えないのか、がんを適切に切除することができたのかどうか、こういうところが重視されておりまして、こういうリンパ学自体、医学の中では重要視されていないという現状もあるようでございます。現実に、幾つかの病院に行ってやっとわかった、そういう方も中にはいらっしゃいました。

 こうした発症率でございますけれども、がん手術を受けた方の二〇%から二五%ぐらいというふうに指摘をする医師の方もいらっしゃいます。

 問題は、この治療法でございますけれども、手術や薬はほとんど効果が期待できない。確かに、足がここまではれてしまいますと、手術を施しても施しようがない、こういう状況でございます。したがいまして、先ほどお話ございました複合的理学療法によりまして、むくんだ腕や足を上げる、水分を、とにかく上に上げて、足の先の方に落ちてこないようにする、また、マッサージでリンパ液の流れをよくする、弾性ストッキングや弾性スリーブで圧迫をする、包帯等を巻く、こういうことが言われております。

 やはり一番効果的なのは、弾性ストッキングや弾性スリーブでしっかり押さえる。これをきちんとこの方の症状に合った圧力のストッキング等を使いますと、日常的な動きをすることによりまして、強い弾性によってそれが戻ろうとする、それでかえってマッサージ効果も得られる、リンパの流れもよくなる、このようなことが伝えられております。

 この弾性ストッキングには、押さえる圧力によりましてクラス一から三までありまして、クラス三ぐらいになりますと、四十から五十ミリHg。また、静脈疾患はクラス一の二十から三十ミリHg、これが使われているようで、弾性包帯も同じような状況です。

 しかしながら、症状に合ったものを使いませんと、かえって悪化をすると言われております。しかも、一度発症しましたらなかなか完治することは難しくて、恐らく一生つき合わなければいけないとも聞いております。したがいまして、こうしたものを毎日使用しなければ、また症状がすぐに戻ってしまう。

 ところが、この弾性ストッキングは、いろいろな価格差はございますけれども、普通、一本約八千円。四カ月ぐらい使えると言われておりますけれども、かえなどを入れますと、年間約四万八千円。そこにマッサージ代とか治療代とか、こういうことを含めますと、月二万くらいの負担となってしまう。例えば、五十歳でこうした手術をお受けになる、十年後に発症する、大体六十歳ぐらい、そういう意味では、高齢の方にだんだんふえていると言われてもいるようです。金額負担は、例えば包帯を使いましてもほぼ同様の負担のようです。中には、年金をもらった月にしか治療に行けないという率直なお声もいただいております。

 ところが、現在、弾性ストッキング・スリーブ・包帯等は雑品となっておりまして、保険適用にはまだなっておりません。ぜひ保険適用をという要望のお声が多く届いております。既に、これは使い方は違いますけれども、肺血栓塞栓症の予防につきましては保険適用になっております。

 そこで、お伺いいたしますけれども、このリンパ浮腫につきまして、最も効果のあると思われます弾性ストッキング・スリーブ・包帯などを保険適用にするお考えがおありかどうか、このことにつきましてお答えをお願いいたします。

水田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、新しい医療技術につきまして、それをどのように保険適用するか、その仕組みについて簡単に申し上げたいと思います。

 具体的に申し上げますと、まず、臨床の専門家それから医療経済の研究者等で構成いたします診療報酬調査専門組織の医療技術評価分科会というところがございまして、ここで、学会からのデータ等の資料をもとにしまして、技術の普及性、有効性、安全性、効率性、こういった観点から総合的に検討が行われる、これを踏まえて、中央社会保険医療協議会、いわゆる中医協において議論が行われるという、二段階の審議があるわけでございます。

 お尋ねの弾性ストッキングにつきましては、先生御指摘のとおり、既に、肺血栓塞栓症に対する治療につきましては、ただいま申し上げましたような手順を踏みまして、学会から提出されたデータに基づいて、先ほどの医療技術評価分科会において議論が行われ、中央社会保険医療協議会での審議を経まして、平成十六年度改定におきまして、診療報酬上の評価が行われたところでございます。

 お尋ねのリンパ浮腫に対する弾性ストッキング等を用いた治療につきましても、学会等からのデータ等の提出がなされれば、保険適用について検討が行われる、こういった手順で事柄は進むものと考えております。

高木(美)分科員 それでは、提出をさせていただきますので、ぜひとも前向きな御検討をお願いいたします。

 これは私の推察の域でございますけれども、恐らく、これまでは、がんになられましても、リンパ浮腫までたどり着かずに、再発であるとか、またそういったことで亡くなっていた方たちが多かったのではないかと思います。最近の医学の発達によりましてがんを克服できるようになりまして、長寿になったことによってこのリンパ浮腫を経験をされる、こういう、いわば高齢化によって浮かび上がってきた、また新たな病気の一つではないかと思っております。

 恐らく、これまでリンパ浮腫が取り上げられてきませんでしたのは、やはり一つは、先ほども申し上げましたように、こうしたリンパ医学がどの分野に入るのか、位置づけが医学上も明確にされていない、そのことによりましてリンパ浮腫治療への取り組みが手薄になっている、こういうこともあるかと思います。これまでの医学の常識でいきますと、むくんだらそれは静脈の関係、そういうふうなのが常識だったと伺っております。

 こうした治療法につきましては、またさらによりよい薬品ができるのかどうなのか、またこうした理学療法に頼り続けるのか、今後の研究を待ちたいと思いますけれども、いずれにしましても、がん治療に携わる医師の方たちがこうしたリンパ浮腫につきまして知識を持ってくださる、このことは喫緊の課題ではないかと思っております。少なくとも、手術前の患者の方に対して、もう今の時代におきましては、きちんと説明をしていただいて心の準備を投げかけておくという必要があるのではないかと思います。また、こうしたデータにつきましてもぜひとも収集していただきまして、検討を開始していただきたいと思っております。

 こうしたがん診療を取り巻く状況、また今後の副作用の研究も含めまして、方向性また取り組みをお伺いしたいと思います。

尾辻国務大臣 医療のインフォームド・コンセントにつきましては、医療法において、医師等の医療の担い手は、医療を提供するに当たって適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得ようと努めることとしておりまして、平成十五年九月には診療情報の提供等に関する指針を示し、その周知、普及に努めてきたところでございます。

 その指針におきましては、診療中の患者に対して、処置及び治療の方針、手術等を実施する場合の危険性、実施しない場合の危険性及び合併症の有無等について丁寧に説明しなければならないとしておりまして、リンパ浮腫を初め手術後に起こる可能性のある合併症について手術前に十分説明を行うインフォームド・コンセントは極めて重要である、こういうふうに考えておるところでございます。

 そこで、今いろいろなお話もいただきました。リンパ浮腫の発生メカニズムを初め手術後の合併症に関しては、科学的に未解明な分野も多く、治療法の開発等の研究を推進することは極めて重要でありますので、平成十六年度から開始されました第三次対がん十カ年総合戦略に基づき、がん研究を一層推進するとともに、予防及び医療も含めた総合的ながん対策を推進してまいりたいと考えております。

 申し上げたいことは、がんの医療というのは非常に、まずは患者さんとお医者さんとの間の、まさに申し上げたインフォームド・コンセントというのが必要でありますし、その辺を大事にしながら今おっしゃったようなことに努めてまいりたいと考えますということを申し上げました。

田中政府参考人 大臣が今御説明申し上げましたとおり、インフォームド・コンセントは非常に重要な問題だと思っております。

 また、リンパ浮腫の問題でございますけれども、今、比較的、救命ということに一義的にお医者さん方は関心を持っておりますので、そういう合併症ということについてはどうしても研究もおろそかになりがちでございます。そういうことに対しましても、これから十分研究を進めてまいりたいというふうに考えております。

高木(美)分科員 大変にありがとうございました。私も、こうした悩む方がなくなりますように、しっかり取り組ませていただきたいと思っております。

 それでは次に、女性健康支援センターについてお伺いをいたします。

 女性の体は、一生を通じてホルモンの影響を受けまして、大きく変化を続けます。しかしながら、やはりまだ日本におきましては、女性の医療や健康情報に関するシステムはまだまだ十分とは言えない現状と認識をしております。

 また、最近、働く女性の社会参加が進んでおりまして、職場での精神的なストレス等が体の悩みに及ぼしているという影響も指摘をされております。既に平成八年より生涯を通じた女性の健康支援事業が始まりまして、昨年の健康フロンティア戦略の中にもその趣旨が盛り込まれております。

 特に、思春期から更年期まで、女性特有の、また女性がかかりやすい病気につきまして、男性医師にはなかなか恥ずかしくて相談しにくい、なかなかわかってもらえない、こういう女性が少なくありません。そこで、我が党は、三年前から病院に女性専門外来の設置を推進しまして、地方議会でも取り上げ、既に全国百を超えると認識をしておりますが、こうした病院が急速に、協力をしてくださり、オープンをしております。

 これまで、更年期障害など、なかなかわかってもらえずにたらい回しにされてきた。しかし、それを三十分かけてまずじっくり問診をしてくれる、しかも女性の医師の方が総合的に判断をしてくれる、大変これは好評でございます。やはり女性の皆様がこういう性差に基づく医療を待っていらしたのだなと、大変大きな手ごたえを感じているところでございます。こうした分野もまたさらに取り組んでいただきたいことを、まずお願いさせていただきます。

 そこで、さらにその次の皆様の要望としまして今またお声が寄せられておりますのは、女性専門外来にあえて予約をとって行くほどでもない、でもちょっと相談できるところがあるとありがたい、大変ぜいたくといえば、申しわけないことでございますが、ただ、今本当に女性も忙しく、体力的にも皆さん限界を感じながら社会を支えてくださっているという状況もございます。女性健康支援センターにおきまして相談窓口を設置していただきたい、こういう要望でございます。

 例えば、乳がんと言われました、でもどこの病院に行ったらいいのかがわからないと。そこの相談になかなか乗ってもらえない、お友達に相談してもそこはわからない。しかも、どの病院が高い技術を持っていらっしゃるのか、こうした治療効果をお持ちなのかということ、それを教えてほしい。これは確かにぜいたくなといえばそういうお声かもしれませんけれども、こうしたお声にこたえる機関として女性健康支援センターがあるかと思っております。

 そこで、まずこの女性健康支援センター事業につきまして現状をお伺いいたします。

伍藤政府参考人 生涯を通じて男性とは異なるいろいろな問題を抱えているということは御指摘のとおりでございまして、そういった観点から女性健康支援センターの事業を進めております。

 現在、各都道府県あるいは指定都市、中核市、こういったところの保健所、あるいは病院、あるいは女性センター、こういったところにこの女性健康支援センターを設置してやっておる自治体が、今二十六自治体がございます。平成十五年度においては、こういった自治体で受け付けて相談に乗った件数が、トータルで二万四千件という状況になっております。

高木(美)分科員 ありがとうございました。

 これは、二十六自治体といいますことは、残りの約二十一、二の自治体がまだ未実施であるということで、恐らく半数近くになるかと思っております。そうしたことにつきまして、今後の御指導といいますか働きかけというのをどのようにされるおつもりか、あわせてお願いいたします。

伍藤政府参考人 今申し上げましたのは、私どもの国の補助金を受けてやっているところが二十六自治体ということでありまして、そのほかの自治体は全くやっていないのかといいますと、これはそれぞれいろいろな保健所で、独自に都道府県によって取り組みをしているところがかなりあると思いますので、私どもたまたま統計上は把握をちょっとしておりませんが、そこは必ずしもここだけではないということは御理解をいただきたいと思います。

 ただ、こういった対外的にわかるような女性健康支援センター、こういう形でやるということが、やはり身近にそういう相談窓口があるということを皆さんにわかっていただくことにもつながると思いますし、利用者の利便にも資するということだと思いますので、来年度から母子保健の関係の補助金を統合化いたしますが、この中でもより使いやすいような補助金の形にしてまいりますので、先ほど、専門外来がふえておる、こういう状況も踏まえて、各自治体においてそういう相談窓口の設置ということに積極的に取り組んでいただくように、いろいろな機会を通じて私どもも働きかけてまいりたいというふうに思っております。

高木(美)分科員 ありがとうございます。

 ぜひとも、それぞれ自治体がどのような取り組みをされているのか。相談窓口といいましても、電話相談もあります。また、窓口を設置して、そこで曜日を決めて保健師さんもしくは女性医師の方が受けてくださっているという丁寧なところもございます。そうした、特に女性の健康、先ほど申し上げましたとおり、まだまだ取り組まなければいけない大事な分野と思っております。また、こうした安心感といいますものが、今しきりに少子社会にどう対応するかというお話もございますけれども、やはり安心感を与えていくということが、出産、そしてまたその後更年期等、ずっと女性の長い人生にわたりまして、恐らくどれほどの励ましになるかとも思いますので、ぜひ掌握をしていただきまして、恐らく掌握していただくだけで、その自治体も何らかの取り組みをという、また、それ自体が自治体にとっても後押しになるかとも思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。

 その中でも、やはり皆様から要望が強いのは、電話相談の充実でございます。今、既に保健師さんを配置されまして、開設をしてくださっているところもございます。

 特に、働く女性がふえていますところから、平日の昼間、いわゆる勤務時間九時から五時、保健所はそれで終わり、こうなりましても、やはりそこにはなかなか対応できない。また、土日のいずれかをふやしていただきたい、そういう工夫点のお声もございます。

 また、思春期の若い高校生、中学生も、どこかに自分のそういう悩みを相談したいけれども、どこに相談していいかわからない。ましてや、こうしたところが平日の昼間という電話相談ですと、学校に行っている時間に学校から携帯で電話をする、そういうこともほとんど不可能でございます。

 こうした保健業務は、既に先ほど統合補助金というお話もございまして、区市町村の取り組みに任されている部分も大変大きいかと思っておりますけれども、すべての世代の女性が健康に関する悩みを気軽に安心して相談できる女性健康支援センター、やはりもう一度これの設置を強くお願いしておきたいと思います。

 こうした電話相談等につきまして、また今後の取り組みの御決意を、伍藤局長、お願いいたします。

伍藤政府参考人 具体的に電話相談事業の形でやっているのか、具体的な対面方式でやっているのか、いろいろな形があろうかと思いますが、先ほど申し上げました自治体が独自に取り組んでおる状況の把握とあわせて、どういった方式でやっているのか、それから電話相談事業がどういう効果を上げておるのか、足らないところはどういうところかとかいうことをあわせて、私ども、できるだけこれから情報把握に努めてまいりたいというふうに思っております。

高木(美)分科員 ありがとうございました。

 それでは最後に、大変恐縮ですが、大臣に、こうした女性の健康支援の取り組みにつきまして、一言御決意を伺わせていただきたいと思います。

尾辻国務大臣 きょうは、いろいろなお話を伺わせていただきました。

 改めて申し上げます。

 女性の健康支援につきましては、これまでも、思春期から更年期に至る女性を対象とした専門的な相談を行う女性健康支援センター事業や、地域に身近な市町村保健センターにおける保健指導の推進に努めてきたところでございます。

 今後とも、きょうもいろいろな御提言をいただきましたけれども、そうしたことも含めながら、女性特有の身体的、精神的な悩みに的確に対応できる相談体制の充実に、自治体の理解も得ながら努めてまいります。

高木(美)分科員 ありがとうございました。

 以上をもちまして、質問を終了させていただきます。

後藤田主査 これにて高木美智代君の質疑は終了いたしました。

 次回は、来る二十八日月曜日午前十時より本分科会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時三十四分散会


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