衆議院

メインへスキップ



第1号 平成18年2月28日(火曜日)

会議録本文へ
本分科会は平成十八年二月二十三日(木曜日)委員会において、設置することに決した。

二月二十八日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      渡海紀三朗君    根本  匠君

      森  英介君    山本 有二君

      加藤 公一君    坂口  力君

      徳田  毅君

二月二十八日

 森英介君が委員長の指名で、主査に選任された。

平成十八年二月二十八日(火曜日)

    午後二時三十七分開議

 出席分科員

   主査 森  英介君

      上野賢一郎君    清水鴻一郎君

      渡海紀三朗君    根本  匠君

      牧原 秀樹君    山内 康一君

      内山  晃君    加藤 公一君

      大口 善徳君    坂口  力君

      高木美智代君    徳田  毅君

   兼務 斉藤 鉄夫君 兼務 保坂 展人君

   兼務 糸川 正晃君

    …………………………………

   厚生労働大臣       川崎 二郎君

   厚生労働副大臣      赤松 正雄君

   厚生労働副大臣      中野  清君

   厚生労働大臣政務官    西川 京子君

   会計検査院事務総局第二局長            千坂 正志君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  松谷有希雄君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  中島 正治君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局長)            福井 和夫君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            鈴木 直和君

   政府参考人

   (厚生労働省職業能力開発局長)          上村 隆史君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       北井久美子君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           中村 秀一君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  磯部 文雄君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  水田 邦雄君

   政府参考人

   (社会保険庁運営部長)  青柳 親房君

   参考人

   (独立行政法人雇用・能力開発機構理事長)     岡田 明久君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月二十八日

 辞任         補欠選任

  渡海紀三朗君     上野賢一郎君

  山本 有二君     牧原 秀樹君

  加藤 公一君     内山  晃君

  坂口  力君     大口 善徳君

同日

 辞任         補欠選任

  上野賢一郎君     清水鴻一郎君

  牧原 秀樹君     長崎幸太郎君

  内山  晃君     加藤 公一君

  大口 善徳君     高木美智代君

同日

 辞任         補欠選任

  清水鴻一郎君     山内 康一君

  長崎幸太郎君     山本 有二君

  高木美智代君     太田 昭宏君

同日

 辞任         補欠選任

  山内 康一君     渡海紀三朗君

  太田 昭宏君     坂口  力君

同日

 第六分科員保坂展人君、第七分科員糸川正晃君及び第八分科員斉藤鉄夫君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十八年度一般会計予算

 平成十八年度特別会計予算

 平成十八年度政府関係機関予算

 (厚生労働省所管)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

森主査 これより予算委員会第五分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりました森英介でございます。よろしくお願いいたします。

 本分科会は、厚生労働省所管について審査を行うことになっております。

 平成十八年度一般会計予算、平成十八年度特別会計予算及び平成十八年度政府関係機関予算中厚生労働省所管について、政府から説明を聴取いたします。川崎厚生労働大臣。

川崎国務大臣 平成十八年度厚生労働省所管一般会計及び特別会計予算の概要について御説明申し上げます。

 平成十八年度厚生労働省所管一般会計予算の総額は二十兆九千四百十七億円であり、平成十七年度当初予算額と比較いたしますと千二百三十九億円、〇・六%の増加となっております。これは国の一般歳出の四五・二%を占めております。

 以下、主要施策について御説明申し上げます。

 まず、医療制度改革につきまして、医療制度改革大綱に基づく構造改革の推進、診療報酬改定を行うこととするとともに、三位一体改革など所要の項目を掲げております。

 次に、各分野の内容につきましては、第一に、国民の健康寿命を延ばすことを目標に、生活習慣病対策と介護予防を推進するとともに、それらを支える科学技術の振興を図る健康フロンティア戦略を本格的に実施してまいります。中でも、死亡原因の三割を占めるがんにつきましては、がん医療水準均てん化の促進や、がん対策情報センターの設置など、総合的かつ重点的な対策を推進してまいります。

 また、新型インフルエンザ対策を初めとする感染症対策を推進してまいります。

 第二に、子ども・子育て応援プランの実現に向けて、地域における子育て支援対策や多様な保育サービスの充実、子育てしながら安心して働ける雇用環境の整備、児童虐待防止対策や小児科、産科医療の確保対策を推進するとともに、児童手当について、支給対象年齢の引き上げ等の拡充を図ってまいります。

 第三に、重大な労働災害の発生防止など、安全に働ける環境づくりを推進するとともに、公正かつ多様な働き方を実現するための施策を推進してまいります。特に、アスベスト対策につきましては、建築物の解体時等の飛散防止を徹底するとともに、労災補償を受けずに亡くなった労働者の遺族に対する救済措置として、給付金を支給することとしております。

 第四に、人口減少社会の到来に加え、いわゆる団塊の世代が引退過程を迎えることによる技能継承の問題なども重要な課題となっていることを踏まえ、若年、壮年、高齢といった各世代に必要とされる職業能力の開発、向上を促進するとともに、団塊の世代の高齢化に伴う技能継承問題に対する支援を実施してまいります。

 第五に、若者の職業意識の変化や人材ニーズの変化等を背景としたフリーターの増加傾向の転換を確かなものとするため、フリーター二十五万人常用雇用化プランを推進するとともに、ニート等の自立を支援するための地域における体制の構築など、若者の働く意欲や能力を高めるための総合的な取り組み等を推進してまいります。

 第六に、雇用のミスマッチや地域差の見られる雇用失業情勢等に対応するため、雇用情勢が厳しい地域における創業支援の充実、ハローワークによる個々の求職者の状況に応じたサービスの提供や求人充足に向けた求人者サービスの拡充を図ってまいります。

 第七に、急速な高齢化に対応し、持続可能な介護保険制度を構築するため、予防重視型システムへの転換、新たなサービス体系の確立など、改正介護保険制度を着実に実施するとともに、六十五歳までの雇用の確保等を図ってまいります。

 年金制度については、平成二十一年度までの基礎年金国庫負担割合の二分の一への引き上げに向け、国庫負担割合を着実に引き上げることとしております。

 また、社会保険庁改革については、効率的で質の高い社会保険サービスの実現と国民の信頼回復のため、平成二十年十月目途のねんきん事業機構の発足に向けて、国民サービスの向上、保険料収納率の向上など、もう一段の業務改革、組織改革、意識改革を総合的に推進してまいります。

 第八に、障害者施策につきましては、障害者自立支援法に基づく地域における障害者の自立支援の推進、障害者の雇用及び職業能力開発の推進を図ってまいります。

 さらに、生活保護制度につきましては、生活保護受給者の自立を支援するための施策を一層推進するなど、引き続き適正化を進めてまいります。

 第九に、新医薬品の市販直後の安全対策の推進、医薬品、医療機器審査の充実強化など、医薬品、医療機器の安全対策等の充実や、残留農薬等ポジティブリスト制度の導入、BSE対策の推進など食品の安全対策を推進するとともに、年間三万人を超える自殺を予防するための対策を推進してまいります。

 以上のほか、世界保健機関や国際労働機関等を通じた国際活動の展開、戦傷病者、戦没者遺族や中国残留邦人などの援護対策、原爆被爆者対策、生活衛生関係営業の振興策、ホームレスの自立支援等の諸施策を推進してまいります。

 なお、委員各位のお手元に資料が配付されておりますが、一般会計予算の主要経費別の概要及び特別会計予算につきましては、お許しを得て、説明を省略させていただきます。

 今後とも、国民生活の保障、向上と雇用の安定を図るため、厚生労働行政の推進に一層努力してまいりますので、皆様のなお一層の御理解と御協力をお願い申し上げます。

森主査 この際、お諮りいたします。

 厚生労働省所管予算の主要経費別概要につきましては、その説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

森主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

森主査 以上をもちまして説明は終わりました。

    ―――――――――――――

森主査 この際、分科員各位に申し上げます。

 質疑時間はこれを厳守され、議事の進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。

 なお、政府当局に申し上げます。

 質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。牧原秀樹君。

牧原分科員 自由民主党の牧原秀樹でございます。

 本日は分科会ということなので、少し具体的な質問をさせていただきます。

 私の選挙区であります埼玉五区、旧大宮、与野地区では、現在、タワー型マンションが次々に建設をされ、人口が増加をしている、そういう状況にございます。このような中、本日は、住民の方々にとりまして切実な医療の問題、そして、子供が増加しております、子育ての親にとって重要な保育の問題についてお聞きしたいと思っております。

 まず最初、現在、社会保険庁の改革が進められている、そのように理解をしておりますが、現状の改革の方向性につきまして、簡単に概略を御説明ください。

青柳政府参考人 社会保険庁の改革についてお尋ねがございました。

 社会保険庁につきましては、一昨年来、サービスの質、予算執行のあり方、あるいは保険料の収納実績、こういった事業運営に関するさまざまな問題指摘がなされまして、これにあわせまして、不祥事案も生じたところであり、まずは緊急対応プログラム、それから業務改革プログラムということを策定いたしまして、現在、百二十項目にわたる業務改革、職員の意識改革に取り組んでいるところでございます。

 今後さらに組織の解体的出直しを行うことによりまして、公的年金制度に対する国民の信頼の回復に努めるということにしておりまして、具体的には、社会保険庁を平成二十年の十月を目途に廃止し、公的年金の運営と政管健保の運営を分離した上で、まず、公的年金の運営を担う組織といたしまして、新たに厚生労働省の特別の機関としてねんきん事業機構というものを設置する。また、政管健保につきましては、国から切り離しをいたしまして、全国単位の公法人といたしまして全国健康保険協会という組織を設立いたしまして、都道府県単位の財政運営を基本とした事業運営を行うというような抜本的な改革を行うこととしたいと考えております。

 このために、この国会には、まず、政管公法人につきましては、既に国会に提出をさせていただきました健康保険法等の一部を改正する法律案の中でその内容を盛り込ませていただき、また、そのほかの組織改革、業務改革を推進するための社会保険庁改革関連二法案につきましては、現在、提出すべく準備をしておるところでございます。

 いずれにいたしましても、改革の着実な実現に努めてまいりたいと考えております。

牧原分科員 ありがとうございました。

 社会保険庁につきましては、管轄の病院があると思いますが、現在どのような形態の病院がございますでしょうか。

 そして、実は、私の選挙区でありますさいたま市北区の盆栽町というところには社会保険大宮総合病院というのがございます。これはどの形態の病院か、教えていただきたいと思います。

青柳政府参考人 社会保険庁で管轄をさせていただきます病院につきましては、主に、法律上の根拠規定がどのような法律に基づくのか、それから財源がどうなっているかということで、大きく三つに分類できようかと考えております。

 そのまず第一は、健康保険法の規定に基づきまして、政府管掌健康保険、これは中小企業の方を中心にして被保険者とする医療保険制度でございますが、その被保険者の福祉の増進を図るということを目的としたもので、健康保険の保険料を財源として設置をしたもの、これを社会保険病院と私ども呼んでおりますが、これが五十三病院ございます。

 また、厚生年金保険法の規定に基づきまして、厚生年金の被保険者の福祉の増進を図ることを目的として、厚生年金保険の保険料を財源として設置をした厚生年金病院、これが十病院ございます。

 それから三番目に、船員保険法の規定に基づきまして、船員保険の被保険者等の福祉の増進を図ることを目的とした、船員保険の保険料を財源とする船員保険病院、これが三病院ございまして、この三つに大きく分類されます。

 そして、ただいまお尋ねがございました大宮総合病院につきましては、健康保険の保険料を財源として設置をした社会保険病院に該当するものでございます。

牧原分科員 ありがとうございました。

 今御指摘をいただいた社会保険病院ということにつきましては、私の理解では、平成十四年に今後のあり方について方針が定められて、本年度中にも存続について判断をされることになっている。

 この規定につきまして、だれがどのように今後判断をしていくのか、この点について教えてください。

青柳政府参考人 社会保険病院のあり方につきましては、平成十四年の健保法改正のときを契機といたしまして、その見直しについて与党で御議論していただいたわけでございまして、その結果は、ただいま先生から御紹介のございました、平成十四年十二月二十五日に私どもが最終的に厚生労働省方針として取りまとめをさせていただきました「社会保険病院の在り方の見直しについて」という方針に取りまとめられたわけでございます。

 この方針によりまして、平成十五年度から十七年度の間をいわば各病院の経過措置期間というふうに位置づけまして、その間、経営改善を一生懸命図る。その経営改善の達成状況あるいは収支の状況、それから地域医療における貢献の度合い、こういったものを総合的に勘案しまして、最終的に三つのジャンルに社会保険病院を分けていこうと。そのうちの一つは、単独で経営自立ができる病院のグループ、それから二番目のグループといたしまして、単独では経営自立は困難でありますが、地域の医療にとって重要な病院のグループ、そしてその他の病院のグループということに分類をする。これを分類した上で、整理合理化計画という形で具体的な病院の整理合理化の方針を決めていくということが定められております。

 私どもといたしましては、冒頭に申し上げましたような経緯から見直しが始まったということを踏まえれば、今後、例えば与党において御議論をいただいて、その結果を踏まえて私どもの整理合理化計画を取りまとめてまいりたいというふうに考えております。

牧原分科員 済みません、今の回答をもう一度明確にお願いしたいんですが、取りまとめは、そうすると社会保険庁が判断権者として行われるのか、それと、いつごろをめどに判断が行われるのか、この二点についてお願いします。

青柳政府参考人 この点につきましては、ただいまも申し上げましたように、経緯から申し上げれば、平成十四年の健保法改正に端を発する問題である。したがいまして、この経緯を踏まえれば、私どもは、きちんと与党でしかるべき御議論をいただいた後に私どもが整理合理化計画を取りまとめるという手順が必要になるのではないかというふうに考えております。

 また、そのスケジュールにつきましては、先ほども申し上げましたが、平成十七年度いっぱいはいわば経営改善をするための期間というふうに位置づけられておりますので、経営改善の状況が終了した、すなわち平成十八年度以降に整理合理化計画をまとめるという手順になるものと承知しております。

牧原分科員 ありがとうございました。

 さいたま市の北区、今申し上げた病院があるところですが、ここには十三万人の人口がおります。この多くの住民が使っていたのが、実は二つ病院がありまして、一つがこの社会保険病院、もう一つが大宮医師会病院というものでございます。実は、この大宮医師会病院、後者の方ですが、これは数年のうちにも西区という別の遠くに移転をするという計画がございます。したがいまして、多くの住民にとりまして、この社会保険大宮総合病院の役割が非常に重要なものになります。

 したがいまして、私たちといたしましては、このような事情をぜひ御考慮いただき、存続をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

青柳政府参考人 社会保険病院につきましては、先ほども申し上げましたように、現在、平成十四年十二月二十五日策定の厚生労働省方針に基づいてその対応を進めておるわけでございます。

 しかしながら、一点、委員には特に申し上げなければならないわけでありますけれども、この基本方針の中では、そういったスケジュールなり考え方、進め方とあわせて、今後、例えば病院の運営のみならず、病院の更新、設備投資にも保険料は使わないということが方針として定められておるわけでございます。

 したがいまして、とすれば、今後の施設整備を含めて、基本的に個々の病院がどういう責任において運営するかということをまさに三年間の経営改善計画に基づいて策定をして、経営改善が進んでいるというのが現在の状況なわけでございますので、最終的には、十七年度までの経営実績を評価して、平成十八年度において改めて整理合理化計画を取りまとめる際に、例えば、経営改善計画の実施状況あるいはそれぞれの病院が担っている病院機能、こういったものを踏まえた上で個々に判断をしていくことが必要になるのかなというふうに考えております。

牧原分科員 今おっしゃいましたのは、平成十七年度までの経営実績という話でしたが、先ほど、第二グループとして地域にとって重要なグループというものがあったと思います。私は、ここの北区の病院はまさにこれに少なくとも該当するのではないかと思いますが、この点につきましてはどのように判断されるんでしょうか。

青柳政府参考人 今後の社会保険病院の運営それから施設整備につきましては、先ほども申し上げましたとおり、保険料を投入しないということが前提になっております。したがいまして、個々の病院の経営状況、あるいは、ただいま先生からの御指摘のございました地域医療における貢献度合い、こういったものを総合的に評価した上で整理合理化計画を策定するということが必要になってこようかというふうに考えております。

 現時点におきまして、特定の個々の病院について、これがどうであるということを申し上げるのはやや不適切ではないかということでありますので、個々の病院についてはちょっと発言は控えさせていただきたいと存じますが、いずれにいたしましても、そういった背景事情の中で個々の判断をしていかざるを得ないということについては御理解を求めてまいりたいと思います。

牧原分科員 今のお話というのは、平成十四年度に決められました今後の方針に基づく話だと思いますが、冒頭に質問させていただきました、社会保険庁そのものが改革されるということが後に進められているわけでございます。この社会保険病院の存続問題というのは、社会保険庁改革、これとどのようにリンクをするのか。つまり、この改革問題が後から起こってきたことによって、例えば、平成十四年からのこの方針に基づく検討がおくれたり、あるいは判断権者そのものが変更したりとか、そういう影響が出るとお考えなんでしょうか。

青柳政府参考人 この問題の経緯は、冒頭から申し上げておりますように、基本的には平成十四年の健保法改正に端を発する問題であり、社会保険庁改革と直接にかかわるものでないということは申し上げることができようかと存じます。しかしながら、多額の保険料を病院を初めとする福祉施設に投入してきたというこれまでの社会保険庁の行動様式を改めるということにつきましては、年金に端を発した社会保険庁改革の問題と大きくかかわるものであるということは、また同時に申し上げざるを得ないかというふうに考えております。

 そういたしますと、社会保険病院については、あくまでも、平成十四年十二月の厚生労働省方針に基づいて十八年度に整理合理化計画を取りまとめるという当初のスケジュールに変更があるわけではございませんが、そういった、その後に生起した事情背景をも踏まえて、したがって、社会保険庁改革のスケジュール等もにらみながら、この問題について対応してまいりたいというふうに考えております。

牧原分科員 もう一つ、個別のお願いをしておきたいと思います。

 先ほどの人口増加、特に若い世代がふえて子供がふえているという状況に従いまして、小児医療のニーズが高まっているために、ぜひこの強化を図っていただきたいと思いますが、その点いかがでしょうか。

青柳政府参考人 個々の病院にどのような機能を付与していくかという問題につきましては、先ほど来申し上げておりますように、現在それぞれの病院が地域地域において果たしている役割ということとあわせて、その病院が自立して運営ができるかということを考え合わせなければならないという状況に今置かれているわけでございます。

 したがいまして、整理合理化計画を定めるに際して、そういった個々の病院の置かれている経営状況、それから地域における役割、機能といったものを総合的に判断する中で、具体的な機能の付与なり機能の拡充という問題をきちんと検討させていただくというふうに扱わせていただきたいと思います。

牧原分科員 ありがとうございました。

 そうしますと、ちょっと最後に確認なんですが、今のお話ですと、例えば、個別の病院でどの科をふやすということについても、社会保険庁がこの存続の問題とあわせて判断をしていく、そういうことになるんでしょうか。

青柳政府参考人 従来、社会保険庁が判断しておりましたのは、基本的にはハードの面の充実ということでございました。これは先ほど申し上げましたように、保険料をいわば充当して建物を更新したり大きな設備等を拡充するということがありましたので、そのように考えておりまして、運営そのものについては、一義的には、経営を委託している、例えば全国社会保険協会連合会、こういったところの判断でやっておりました。

 しかしながら、現在、繰り返し申し上げておりますように、三年間の経営改善計画中でございますので、この期間中に余り大きな事業の拡充であるとか変更をするということはその後の事業運営にも大変大きな影響を与えるものではないかというふうに考えておりますので、私どもは、基本的には、そこは三年間きちんとやった上でその先の見通しを立てて、新たな事業拡充等が可能または必要であればその際に判断をするということが必要になってこようかと思います。

 なお、経営主体については、現在、全国社会保険協会連合会に委託をしている方式を改めろというのが十四年十二月時点での基本方針の一つの内容でもございますので、将来のいわば社会保険病院のあり方の問題とあわせて、個々の病院についての機能拡充等が個別に検討されるべきものというふうに考えております。

牧原分科員 ありがとうございました。

 以上で社会保険庁に関する質問は終えさせていただきたいと思いますが、確かに、今社会保険庁等々に関する批判が高まっていて、これ以上の無駄遣いができない、そういう事情がある反面、医療等の問題というのは、人の命、健康にかかわる問題でございますので、ぜひ慎重にいろいろなことを考慮しながらやっていただきたいというふうに思います。

 次に、今申し上げた人口増加に伴いまして、待機児童という問題を心配する声が非常に高まっております。さいたま市に限って言いますと、現在の待機児童は何人で、それが厚生労働省としてどのような水準にあるか、この点についてお伺いしたいと思います。

北井政府参考人 平成十七年四月現在のさいたま市の待機児童の数は二百五十八人となってございます。ちなみに、さいたま市の同時点の保育所に入っておられる児童数は九千七百四十三人ということでございます。さいたま市におかれましては、保育所の整備等を計画的に進められまして、この一年間で認可保育所の利用児童数は五百四十六人増加をいたしまして、待機児童数も前年と比べまして六十八人減少したところでございますけれども、今申し上げましたとおり、なお二百人を超える多くの待機児童がいらっしゃるという認識でございます。

 これは、ちなみに、全国の様子と比べますと、待機児童の多い順番から並べますと全国で二十一位に相当する数字でございますので、引き続き待機児童解消に向けた取り組みが重要なことかと考えております。

牧原分科員 ありがとうございました。

 待機児童につきましては、従来、厚生労働省が待機児童ゼロ作戦というものを展開していて、私の理解では既にその期間は終わったのではないかと思いますが、現在はどのような取り組みをされているんでしょうか。ぜひ待機児童はゼロにしなければならないという目標はみんなが問題意識として持っているものでございますから、この点について御説明をいただきたいと思います。

北井政府参考人 待機児童をなくすための政府の取り組みということでございますが、今お話がございましたように、平成十四年度から三年間、待機児童ゼロ作戦を進めまして、三年間で十五万人を上回る受け入れ児童数の増加を図ったところでございます。その結果、平成十七年四月の待機児童数は二年連続で全国的には減少いたしまして、その効果は着実にあらわれてきていると考えております。

 しかしながら、女性の社会進出を初めとして、いろいろなニーズによりまして保育需要が増大をしておりまして、依然として都市部を中心に待機児童が多く存在しているところでございます。そこで、政府といたしましては、子ども・子育て応援プランにおきまして、待機児童解消を引き続きの最重点課題の一つと位置づけまして、特に待機児童が五十人以上の市町村を中心に、平成十九年度までの三年間で集中的に受け入れ児童数を拡大するという取り組みをしているところでございます。

 そして、予算面におきましては、平成十七年度補正予算と十八年度予算案の合計で大体四百十五億円程度を確保した施設整備費の用意もいたしまして、平成十九年度までに集中的に受け入れ児童数がふえるように努めてまいりたいと考えておるところでございます。

牧原分科員 今おっしゃった受け入れ児童をふやすための手段ということにつきましては、具体的にはどういうことをお考えなんでしょうか。

北井政府参考人 具体的には、やはり非常に待機児童が多い市町村におかれましては、保育所の整備ということがまず考えられるところでございますので、今申し上げましたような予算も用意をいたしまして、ハードの面から国として支援をしていきたいというふうに考えております。

 あわせて、幼稚園の預かり保育の活用であるとか、あるいは場合によりましては地方自治体単独事業の活用などによりましても、そうしたさまざまな資源を活用して待機児童を解消していくということが必要であるというふうに考えております。

牧原分科員 実は、けさも幼児教育小委員会という自民党の部会に出てきましたが、そこで私も質問させていただきましたけれども、認定こども園という話が進んでいると理解しております。この点につきまして、ちょっと御説明をいただけますでしょうか。

北井政府参考人 いわゆる認定こども園の法案でございますが、現在、文部科学省、厚生労働省共管の法案として今国会に提出をさせていただくべく準備を進めているところでございます。

 この認定こども園とはどのようなものかということでございますが、もともと幼稚園は学校教育法による学校として、そして保育所は親の就労などによって保育に欠ける子供に保育を行う児童福祉施設として長年にわたりそれぞれの役割を担ってまいりましたが、幼稚園、保育所とも、ある意味では就学前のお子様の幼児教育、保育を預かるところでございます。

 そうした中で、近年、少子化によりまして、地方を中心に、幼稚園、保育所別々では子供集団が小規模化をして子供の育ちに必要な集団活動の機会が十分得られないというような状況にもなっていたり、あるいは、現在、幼稚園、保育所は保護者が働いているいないによって、実質、利用施設が限定されているということになっておりますが、就労形態が多様化をして、就労を中断したりあるいは再開したりしたときに、継続してその施設をずっと利用することができないというようなことも起こっております。こうした多様なニーズへの対応が求められている中で、今回の認定こども園は、こうしたニーズに対して地方で柔軟に対応できるように新たな選択肢として制度化を図ろうとするものでございます。

 具体的には、幼稚園や保育所などが、保護者の就労の有無にかかわらず、すなわちいわゆる保育に欠けるお子さんにも欠けないお子さんにも教育、保育を一体的に提供するという機能、それから子育ての相談や親子の集いの場の提供といった保護者に対する子育て支援を提供する機能、これを双方備える場合に都道府県から認定こども園としての認定を受けることができるようにする仕組みを設けようとするものでございます。

牧原分科員 今おっしゃっていた認定こども園ですが、今までのものとは大分違う。つまり、二つが分離していたということの問題点を解消しようという動きだと思うんですが、これにつきましては、スケジュール的にはどういうことになるんでしょうか。

北井政府参考人 この認定こども園のそもそもは、平成十五年と平成十六年の閣議決定で、就学前の教育、保育を一体としてとらえた一貫した総合施設の実現に向けて平成十六年度中に基本的な考えを取りまとめ、平成十七年度に試行的な事業を行い、そして必要な法整備を行うことも含めてさまざまな準備を行って、平成十八年度から本格実施を行うという、この閣議決定に基づいて順次準備を進めてきているものでございまして、平成十七年度は、したがいまして、全国の三十五カ所でいわゆるモデル事業、試行的な事業を実施いたしておりまして、その評価について今有識者の委員会で評価をしていただいている途上でございます。

 あわせて、今申し上げましたように法案の提出準備を進めているところでございます。この法案を提出させていただき、そして今国会で成立させていただいた暁には、平成十八年十月からでも施行をしたいというふうに考えているところでございます。

牧原分科員 ありがとうございました。

 そうすると、早ければ平成十八年十月ということですから、本年度中ということになるわけです。

 実は、本年度中といえば、私ごとでございますが、第一子が七月に生まれます。

森主査 おめでとうございます。

牧原分科員 ありがとうございます。

 そのような中、やはり自分も親になるという立場からすると、非常に、子育て、特に幼児教育の大切さというものをつくづく感じるようになり、現在、私の選挙区には四十八幼稚園があるんですが、その四十八の幼稚園を一つ一つ現場を回って、今ヒアリングをさせていただいているところでございます。

 こうした中、いろいろな幼稚園の方からお話を伺うのは、子育て支援が、時に幼稚園側からすると子育て放棄支援になってしまっている、そういう声を聞きます。つまり、親が働くという時代、これは今来ているわけですけれども、それをますます容易にすることが本当に子供にとっていいのか。つまり、私たちは親と子供の関係、これをどちらかというと親側からの立場で見がちである。例えば、お母さんが働くのが早いので保育所ももう少し早くあけてほしい、幼稚園であれば、今二時までですから、二時にはお母さんが迎えてくれるわけですけれども、これを延ばすことになれば、もっと預けられるのであれば、では預けちゃえというお母さんがふえかねない、そういうことも現場では心配する声が上がっております。

 私も全くそのとおりだと思いまして、どんなに働くことが多様化しても、一番大切なのは子供の視点である、そのことだと思っておりますが、この認定こども園、果たして子供の視点から見たときに、何がいいのか、その点について御説明をください。

北井政府参考人 今御指摘のとおり、この認定こども園におきましても、子供のことを最大限に考える、子供の利益を一番優先するということはもとよりなことでございまして、そうしたことは、平成十六年度に文部科学省と厚生労働省の関係審議会の合同の検討会議で検討を始めました際からも、しっかりとそういう認識でもって検討を進めているところでございます。

 そして、いわゆる認定こども園は、親の育児を単に肩がわりするというのではなくて、親とともに子育てに参加をする、親の育児力の向上もあわせて支援をするというようなことで、子供のよりよい育ちを実現するという認識でございまして、その意味で、先ほど御説明申し上げましたように、地域の子育て支援の機能を必ずつけるということも考えているわけでございます。

 それからまた、さらに、教育、保育の点からいいましても、先ほど御説明申し上げましたとおり、親が就労を始める、あるいは中断するということによって、幼稚園、保育所を出たり入ったりしなくてもよいわけでございますから、就学前の時期に一貫した教育、保育を受けることが可能になるという点は、子供の点から考えてもよい点だと思いますし、それから、地方では、幼稚園、保育所別々ではなかなか集団が小規模化しているところを、一つにあわせることによりまして、異年齢の子供たちの健やかな成長にとって大切な集団活動ができるというようなことも考えているところでございます。

牧原分科員 ありがとうございました。

 以上で私の質問は終わらせていただくのですが、御承知のとおり、エンゼルプランというのが行われていて、少子化、子育て問題、特に少子化という問題については、今国民全体として非常に危機感を持っているところであります。

 私は昭和四十六年生まれで、いわゆる第二次ベビーブームの世代でございまして、どうもこの世代は人口が非常に多いので、この世代が親の世代になったときに問題は解消されるだろうという見込みがあったみたいですが、こんなに問題が解決されない。つまり、エンゼルプランというのは少子化対策ということでいうと大失敗だったというふうに私は言えるんじゃないかと思います。つまり、解決しなかったという意味でいうと。

 ですから、私は、少子化、そして子育て問題につきましては、実際に問題を解決する、そして現場の声を常に聞いて、そして、ぜひともこの問題を国民そして我々が責任を持って解決していかなければならないと思っていますので、今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

 以上で質問を終わらせていただきます。

森主査 これにて牧原秀樹君の質疑は終了いたしました。

 次に、上野賢一郎君。

上野分科員 滋賀一区選出の自由民主党新人の上野賢一郎と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 きょうは、医師の確保対策を中心にして質問をさせていただきたいと考えております。

 私の選挙区は滋賀一区というところでございますが、大津市とその隣に志賀町という小さな町がありまして、さらにその北に高島市という市がございます。

 この高島市なんですが、昨年に六町村が合併をいたしまして誕生いたしました新しい市でございます。昔からこの地は、北陸地方とそれから京都を結ぶ交通の要衝となっておりまして、大変長い歴史、伝統がある地域でもございます。この六町村が合併した高島市なんですが、実は滋賀県で一番面積の大きな市でもございまして、五百平方キロメートルあるということでございます。ただ、人口は約五万人を少し超えるぐらいでして、言ってみれば、典型的な過疎あるいは高齢化に悩む町だということでございます。

 この高島市に公立の高島病院という病院がございます。これも設立以来、何十年経過をしておりまして、公立で六町村が組合でこれまで運営していたんですが、今市立の病院となりました。長い間、地域の中核的な病院として非常に地域の皆さんから高い信頼を得て、地域医療に一生懸命頑張ってこられた病院でもございます。

 実は、ここの産婦人科医の先生がこの四月に退任をされるということになりまして、昨年一年間、一年ほどかけまして、その後任者を探すということで高島市長を先頭に地域の皆さん一生懸命頑張ってこられたんですが、ただ残念ながら、まだ常勤の先生が見つかっていない、そういう状況でございます。

 この高島市内には、産科、婦人科が、この高島病院ともう一つ民間の小さな病院がありまして、この二つで大体高島市の出産の約九〇%を診ているという状況でございまして、この高島市の病院で産婦人科の先生がいなくなるということになりますと、大変大きな影響が出る、それが大変心配されるところでもございます。

 実際に、私の選挙区内、大津市まで行こうと思いますと、大変広い町ですから、場合によっては二時間あるいは三時間かかるというようなことがありまして、地域の皆さんは、ぜひ高島市、地元で子供を産みたいと考えていらっしゃる方が圧倒的に多いというような状況でございます。

 この高島市というところなんですが、実は、今、少子化問題に非常に熱心に取り組んでいるところでもあります。各町村ごとに子育て支援センターのような、皆さんが集まってこられるような場所をもう既に設置して、これもまた市長さん、また市役所の皆さんが先頭になって、少子化対策を高島から始めようということで頑張っていらっしゃいます。

 ところが、そうした少子化対策を熱心に進めていらっしゃるわけですが、その前提となる子供さんたちを産んでいただくというような環境が今大変危機的な状況にある。きょうはそうした問題意識から、産婦人科、産科、婦人科の医師の皆さんの確保の問題につきまして、御質問をさせていただきたいと考えております。

 ここ一年ぐらい、いろいろな報道がなされております。全国的に見ましても、例えば岩手県あるいは富山県あるいは沖縄県、そうしたところで、産婦人科の医師の確保ということが非常に難しい状況になっているというような報道、私が調べましただけでもかなりの報道が行われているということでございます。特に過疎ですとか、あるいは離島、そうしたところでその不足というものが顕著になっている、そうした実態があるのではないかと考えております。

 そこで、まず最初にお伺いをいたします。

 この産婦人科の医師不足の現状、この現状と、そしてこれは一体どういう原因でこうしたことが今全国的に問題になっているのか、その原因につきまして、まず御説明をお願いしたいと思います。

北井政府参考人 産婦人科医師の現状についてお答えを申し上げます。

 厚生労働省の医師・歯科医師・薬剤師調査によりますると、平成六年から平成十六年までの十年間に、医療施設に勤務する医師全体では三万五千人ほど増加をしておりますけれども、この同時期に、産科、産婦人科の医師数は、七百九十七人、七・〇%減っております。こうした状況が続きますと、安心して子供を産み、健やかに育てる基盤を揺るがしかねない重大な問題だというふうに考えております。

 その要因につきましては、平成十七年六月に取りまとめられた厚生労働科学研究がございますが、その研究によりますと、労働量や責任に対して報酬が低い、医療訴訟が多い、それから当直とか不規則な診療時間が医師のストレスになっているということなどが指摘されているところでございます。

上野分科員 ありがとうございます。

 報酬が低い、ストレスが多い、医療訴訟が多い、そうしたことが原因だということでございまして、私も、そうした点につきましていろいろ調べてみますと、そうした声が非常に強いということを承知しております。

 その中で、昨年、旭川医科大学の石川病院長さんという方が調査をされた結果、これも雑誌の記事を見ただけでございまして、正確には承知をしておりませんが、産婦人科の医師の数が新生児の死亡数に影響を与えるというような調査結果が出ているということが、とある雑誌に載っておりまして、これは二次医療圏の問題だと思うんですが、産婦人科の医師の方が少なければ少ないほど新生児の死亡数が高くなる、そういう傾向があるという調査結果があると承知をしております。

 こうした事態は、日本はこれまで一生懸命医療の充実に頑張ってこられました、そのおかげで周産期の医療、新生児の死亡率等につきましては世界でも有数の、トップクラスの低さというようなことが、今、日本の医療の現状として言えると思いますが、一方で、こうした産婦人科医の数がだんだん少なくなってくると、そうした面でも非常に危惧される、そういう状況があるのではないかなというふうに考えております。

 先ほども少し申し上げましたが、少子化対策、これは、厚生労働省の皆さん、本当に一生懸命取り組んでいらっしゃるわけでございますけれども、これから本当にこの国が頑張っていくためには、この少子化の問題は最優先で解決をすべき大きな問題だと思いますが、その基盤でもあります安心して子供を産む、そして子供を育てる、その子供を産むというところで産婦人科医の方の医師不足という問題が非常に暗い影を差す、そうした可能性もあるのではないかと考えております。そうしたことに、少子化対策にブレーキをかけかねない、そういう問題だと私自身は認識をしております。

 そこでお伺いをいたします。

 この産婦人科の医師の不足の問題ですけれども、これは政府として早急に抜本的な対策を立てるべき問題だと考えておりますが、それにつきましての御所見をお伺いしたいと思っております。

 さらに、とりわけ先ほど申しましたような高島市の例のように、地域の中核的な公立病院、これについては特段の配慮ということを行っていくべきではないかと考えておりますが、これにつきましての御所見をお願いいたします。

西川大臣政務官 上野先生こんにちは。

 今、こちらで先生の御発言を聞いておりまして、本当に情熱あふれる、すばらしい、フレッシュな新人議員の誕生で、私も、実は先生が一度目のチャレンジのときに地元にお伺いして、そのときのことを思ってとても感慨深く、ぜひ頑張っていただきたいと思います。御質問ありがとうございました。

 今先生が御指摘の産婦人科の不足の問題、厚労省としても大変危機感を持っております。その中で、何としてもこの問題を少しでもいい方向に、とにかく現実を少しでもいい方向に持っていかなければいけない。そういう中で、総務省あるいは文科省と一緒の関係会議の中で、この医師不足の問題をどうしたらいいかということを話し合っております。

 その中で出てきた一つの結論としては、県にお願いして、要するに県の中枢的なところの公立病院を中心に集約化を図っていく、そこにきちんとした安心な産科医療体制を整備していくということが、やはり一つの大きな方向性だろうと思います。

 その中で、やはりそれでもまだ足らないという地域もあります。例えば岩手県その他は県境を越えてやっていかないとほとんどできていないという状況もある中で、当然、地方厚生局としても、県境を越えてさらにブロック化した中での産科医療体制の整備ということが大きな課題だと思っております。そういう中で、そういう一つの県の医療対策協議会等に、当然、地方の大学の医局の方も入っていただいて、現実にいろいろなお話を少しでも実効性のある方向に持っていく、そういう試みをいたしているところでございます。

 今先生がおっしゃいました、高島の中核の病院で産婦人科医がいなくなってしまうという状況にどう対応すればいいのか。そういう中では、広域化の医療体制の中からその地域の病院に定期的に、不定期になることもあるかもしれませんが、医師を派遣していく、そういうことも考えております。

 さらに、厚労省としては、今般の医療制度改革の中で診療報酬の見直しをやっておりますが、その中で、小児科そしてこの産婦人科、救急医療体制への診療報酬をかなりアップして、きちんとめり張りをつけた、やはり本当に大切な分野、不足している分野に医療費、診療報酬をきちんと対応するという措置も行ったところでございます。

上野分科員 西川政務官、どうもありがとうございます。大変お忙しいところ、さらにエールまでいただきまして、大変恐縮でございます。ありがとうございました。

 今の発言を聞きまして、大変心強く感じたところでございます。集約化ということをお話しされました。実は私は、これは非常に結構ないいことだと思っています。

 私が調べました資料によりますと、今、分娩施設が日本全体で六千カ所あるということでございまして、今、出生数が百十万ということで、一施設当たりでいいますと大体百八十件なんですね。そうすると、二日に一件ということになりますけれども、その場合、医師の方が二人ぐらいいらっしゃると仮定をすれば、二日に一件の出産数で二人いるというのはやや非効率な感じがいたしますので、できるだけそうした施設を集約化してやっていくということは、日本全体としては非常にいいと思います。マクロとしては非常に結構なことだと思いますし、ぜひその方向でお願いをしたいと思います。

 一方で、先ほどから申し上げております高島の場合のように、地域医療として成り立たなくなるということ自体が、やはり問題になってくるだろうと思っています。確かに、医師を確保するということはそれぞれの病院の責任でやるべきことでありますけれども、その地域の医療の確保ということに関しましては、やはり国なり県なりがぜひ率先してリーダーシップを発揮してやっていただきたいなと思っております。

 それで、今、西川政務官からも地方厚生局というお話がありました。これも私が調べたところによりますと、例えば、東北六県では、産婦人科につきまして各県が協議会のようなものを立ち上げまして、医師確保対策を各県協力してやっていこうということをもう既に進められているということであります。

 今度の医療法の改正では各県ごとに協議会をつくってやっていこうということでありますが、今御答弁がありましたように、ぜひ、地方厚生局がそのブロックのリーダーシップ、イニシアチブを発揮してもらって、例えば近畿なら近畿の広域的な中で、医師の確保、配置の問題、そうした問題に率先して取り組んでいただければ非常に助かるなと。御答弁も、そういう趣旨で広域の医療体制をしっかりやっていくというお話でございますので、その点も含めてぜひお願いをしたいと思います。

 高島の病院の件に関しましても、またいろいろな情報提供ですとか、便宜供与とか、いろいろなサポートを皆さんからいただけますと大変助かると思っております。よろしくお願いをいたします。

 それで、やや具体的な話になりますが、産婦人科医の先生なんですけれども、大体新人の六割から七割は女性の方だというふうに伺っております。今後もその傾向というのは続いていくのかなという気がいたしますけれども、一方で、女性医師の場合は、結婚をしたり、あるいは出産、育児、そういったことにかかわるということが非常に想定されるわけでございまして、その中で医療を中断したりとか、あるいは方向転換をしたりとか、そういったことも可能性としては相当程度考えられるのではないかなというふうに考えています。

 そこで、この産婦人科医の医師の確保対策、その一環といたしまして、女性医師へのサポート体制につきまして、どういったことが考えられるのかということにつきまして、お伺いをしたいと思います。

 例えば、産休、育児、そうした休暇についてや、あるいは勤務シフトでの配慮、そうしたことも考えられるかと思いますが、厚生労働省としての御見解、お伺いをしたいと思います。

松谷政府参考人 先生、今、御指摘ございましたように、産婦人科の分野では女性の医師が、全体では現在約二割ぐらいでございますけれども、新規参入の方、ドクターを見ますと、約三分の二を占めているということなど、医療全般において女性医師が大きな役割を果たしてきているという状況にございます。

 今、お話にございましたように、女性医師が出産や育児といったライフステージに対応して診療を継続できるようにするということは、国民に十分な医療を確保するという上からも重要な課題だというふうに思っております。

 女性医師が働きやすい環境の整備につきましては、もちろん、一般の女性の場合と同様に、保育所待機児童の解消を目指した保育所の待機児童ゼロ作戦のさらなる推進、あるいは、子ども・子育て応援プランなどに基づく延長保育、休日保育、夜間保育などの多様な保育サービスの提供、それから、育児休業を取得しやすい職場環境の整備など、仕事と子育ての両立支援策の促進など、一般的な施策を進めていくことはもちろんでございます。

 さらに、これに加えまして、従来から行ってございます看護職員の児童を対象とした病院内の保育所の運営費の一部を補助している病院内保育所運営事業というのがございますけれども、これにつきましても、平成十四年度からは女性医師を含む病院職員の児童を補助対象に追加いたしまして、制度の充実を図っているところでございます。

 また、十八年度予算案におきましては、これに加えまして、女性医師のライフステージに応じた就労を支援するための、仮称でございますが、女性医師バンクの設立、あるいは講習会の実施などを初めとする関係予算を計上しているところでございまして、よろしくお願いを申し上げたいと思っております。

 今後とも、こうした施策を通じまして、安定した医療を確保する観点から、女性医師が持続的に勤務できる環境の構築にさらに努めてまいりたいと考えております。

上野分科員 ありがとうございます。

 一般の施策に加えて、特に女性医師を対象にしたいろいろな施策があるということを知りまして、安心をいたしました。ぜひ、現場のニーズ、これからもしっかりと把握をしていただいて、それに的確に対応できるような体制で頑張っていただきたいなと思っております。

 先ほど、政務官の方から診療報酬の話がございました。これにつきまして具体的なことを教えていただきたいと思います。

 先ほど、原因のところで、診療報酬の問題が少し原因になっているというお話がありまして、それに対応されているということだろうと思いますが、その具体的な中身につきまして御教示をお願いいたします。

水田政府参考人 御指摘のように、今、産科医療につきましては、重点評価すべきである、このように指摘をされているところでございまして、先ほど政務官から話がありましたとおり、政府・与党の医療制度改革大綱でも言われているところでございます。

 このために今、平成十八年度の診療報酬改定におきましては、晩婚化に伴う出産の高齢化という背景がございますけれども、これによりますハイリスク分娩の増加、これに対応することとしておりまして、四十歳以上の初産婦さんなどハイリスクの妊産婦に対します分娩管理につきましては、新たに診療報酬上の評価を行うこととしているわけでございます。

 具体的には、二つの仕組みを設けることとしております。

 一つ目は、専ら産科医療に従事する医師が三名以上いる、こういった産科の体制が整っている病院におけるハイリスクの入院に対する加算といたしまして、ハイリスク分娩管理加算というものを新設いたします。

 もう一つは、こうしたハイリスクの妊産婦が入院した場合におきまして、入院先の病院の医師と、それから紹介元の医療機関の医師が共同して診療に当たるという場合に算定できますハイリスク妊産婦共同管理料、こういったものを新設することとしているところでございます。

上野分科員 ありがとうございました。

 ぜひこれからも、またそうした観点から改善、拡充すべき点はないかというような検討をお進めいただきたいと思っております。

 医師確保、最後の点ですけれども、これは大学の教育の問題でございまして、きょうは文部科学省に通告をしておりませんので要望だけしたいと思いますけれども、ぜひ、大学教育においても医師確保という点からやるべきことがあると思うんですね。例えば、奨学金の問題ですとか、産婦人科医の枠をあらかじめ設けたりとか、そうした検討につきましても、ぜひ厚生労働省さんの方から文部科学省さんの方に働きかけをしていただいて、より具体的な検討が進むようにお願いをしたいと思います。これは要望だけにさせていただきたいと思います。

 次に、テーマを変えまして、看護師さんの人員配置の問題につきましてお伺いをいたします。

 昨年、国立の医療センターを同僚議員数名と深夜に視察に参りまして、看護師さんの深夜の勤務実態につきまして調査をしてまいりました。そこで、厳しい環境の中で、日夜、真摯に取り組んでいらっしゃるお姿に心を打たれたところでございます。

 本当に皆さん頑張っておられるんですが、一方で、夜間の人員配置につきましては、正直言って、若干の不安を感じるところでございます。何十人もの方を少ない人数で見るというようなことが日常的に行われているのかなというような感想を持ちました。

 ただ、現実の問題として、今、診療報酬上では、たしか二対一というような最高のカテゴリーがあったかと思いますが、それに縛られてなかなかそれを超えた人員配置ができないというようなこともあるのかと思いますし、あるいは、それを超えてやってしまうと、かなり経済的な負担が生じてしまうので、なかなかできないというようなことがあるのかなと思っております。

 実際に、看護職員の配置は、あるデータによりますと欧米諸国に比べても手薄だというようなデータもありますので、その点も踏まえてですが、診療報酬上での人員配置、これにつきまして、手厚い人員配置を行いやすいような形で一定の配慮をすべきではないかと考えますが、これについての御見解をお伺いしたいと思います。

水田政府参考人 御指摘のありました急性期入院医療につきましても、政府・与党の医療制度改革大綱に沿いまして、その実態に即した看護配置について、診療報酬上の重点的な評価を行うことが必要である、こういう認識に立っているわけでございます。

 まず、全体に看護配置を厚くするというお話がございました。その中で、また夜間の配置を厚くするということがございました。

 そのために、一つの出発点といたしまして、平成十八年度の診療報酬改定におきまして、医療現場の状況を踏まえまして、一般病棟入院基本料につきまして、先ほど御指摘ありました現行二対一の配置、これを上回ります一・四対一、こういう看護職員配置に係る評価を新設する、こういっためり張りをつけた看護職員配置を評価することとしてございます。

 その上で、夜間についてでございますけれども、夜間の看護職員の配置につきましては、二人以上の看護職員による夜勤体制とすること、それから看護職員一人当たりの月夜勤時間七十二時間以内であること、こういった前提がございますけれども、各施設において一定の範囲で弾力的な運用を認めることとしてございます。

上野分科員 ありがとうございます。

 また、そのような方向での検討をこれからも進めていただきたいと思います。

 なお、これに関連しまして、これは質問項目に挙げておりませんでしたので、また要望という形にしておきたいと思いますが、特別養護老人ホームあるいは老健施設等におきましても、同じような実態が実はあるのではないかと考えております。

 先日も、私は市内のいろいろな介護施設を積極的に見て回るようにしておりますが、その中の幾つかの、ある方とお話をしておりますと、その特別養護老人ホームでは、現行の基準であると三対一というところでございますけれども、それを二・二対一程度まで手厚く人員配置をしている。ただ、そのことによって人件費が高騰、経営を圧迫している、よりよいサービスをしようと思えばなかなかできないというような状況があるというふうにお伺いをいたしました。

 そうした実態につきましては、私も引き続き勉強して、調査をしていきたいと思いますけれども、それにつきましては、また別途の機会を設けて議論をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。これは要望だけにとどめさせていただきたいと思います。

 最後になりますが、地域包括支援センターの件で一つだけ、やや技術的な問題ですので非常に恐縮なんですが、お伺いをしたいと思っています。

 この四月からいよいよこのセンターがスタートするということでございまして、介護予防事業の地域の拠点として本当に皆さん期待されているところだと思っております。

 ただ、先般、一月の二十六日に示されました指定居宅介護支援に要する費用の算定に関する基準では、センターが居宅介護支援事業所へ委託できる介護予防支援業務につきまして、ケアマネジャーの一人当たりの受託件数が八件、これが上限だというような提案がされた、決定がされたんでしょうか、というふうに聞いております。突然こうしたことが示されたというようなことだと思うんですが、委託というのをそもそも前提にしていた市町村からすれば、非常に困惑するというか、そういう声が上がっております。

 ちなみに、私の地元の大津市なんですが、全体として約二千五百件程度の件数を想定していたんですが、市内のケアマネジャー全員集めても二百人にしかならないということで、二百掛ける八で千六百、差は九百ですね、ですから千件ぐらいの分についてはこれから直営でやる、そういう準備を慌てて今始めているということでございます。

 一方、予算措置をもう議会の方に提案しておりましたので、今度は議案の修正とか、非常にそうしたことに追われているというようなことがありまして、事務的な話かと思いますけれども、そうした問題で現場の市町村では非常に困惑した対応になっているというような情報も聞いております。

 こうした方針を示すのであれば、予算編成にかかわることですから、できれば前年の秋ぐらいにはお示しをいただきたいと思いますし、このあたりの経緯と、それから上限設定の考え方、八名にされたその考え方、それをあわせてお伺いをしたいと思いますし、あわせて、経過措置期間が半年ということになっていると思いますが、この延長の可否につきましてもぜひ御説明をお願いしたいと思っています。

磯部政府参考人 先生今御指摘のとおり、地域包括支援センターにおきましては、要支援者に対します介護予防支援を行うことになっておりますが、その一部を居宅の介護支援事業所に委託ができるということになっております。

 本件につきましては、今の状況からもおわかりのように、介護予防支援の問題とそれから居宅介護支援の問題と両方がございまして、そのあり方につきまして、昨年の秋から社会保障審議会の介護給付費分科会でずっと御審議がなされていたところでございます。

 そこで、やはり居宅介護の方の支援、そちらにつきまして、要介護者のケアマネジメントを十分に行う必要があるということで、要支援者につきましての介護予防支援の方の受託を制限すべきであるというような御意見が出てきたところでございます。そうしたことで、介護予防の方の支援につきましての件数制限を設けるということで、やや時間を要してそういう結論になったところでございます。

 そして、この上限の設定につきましては、今の分科会で御議論が出まして、やはりいろいろな運用上の配慮も要るだろうということもございますし、そういう形も含めまして、新予防給付のケアマネジメント業務自身の業務量の軽減ということを定額化等によりまして図るということが一つ。

 それから、地域包括支援センターの人員配置につきましても、こうした業務に携わる人材をより確保しやすくするといった観点から、経験のある看護師等に相当広げまして、一定の措置を講ずるということによりまして、できるだけ円滑な事務の実施に向けて配慮をしていきたいというふうに考えております。

 今後とも、関係自治体の施行状況を見守りながら、制度の円滑な施行に向けて取り組んでいきたいと考えております。

上野分科員 時間になりましたので、最後に一点だけ要望して終わりたいと思います。

 今、具体的な例として取り上げさせていただきましたけれども、このスタートに際しまして非常に困惑したり手間取ったりしている市町村が必ずあると思うので、そこに対する目配りというか配慮というか、それはぜひ厚生労働省さんの方でお願いをしたいと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

森主査 これにて上野賢一郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、大口善徳君。

大口分科員 公明党の大口でございます。

 きょうは、まず、歯の健康と医療費の関係についてお伺いしたいと思うんです。

 香川県が、老人医療費適正化に関する検討委員会を設置して、香川県歯科医師会と香川県国民健康保険団体連合会と共同研究をいたしまして、昨年の七月に、高齢者における歯の健康と医療費に関する実態調査、残存歯数及び歯周病の程度からという調査結果を発表いたしました。

 この調査結果を見ますと、八十歳以上で二十歯以上となっている割合は一九・七%、約五人に一人の割合でございます。次に、残存歯数と歯周病と診療費の関係を見ますと、残っている歯が多いほど、歯周病では程度が軽いほど、平均診療費が低い傾向が見られます。また、残存歯数と疾病の関係を見ますと、残存歯数が多いほど、平均診療日数、診療費ともに短く、低くなっている、こういう傾向がございます。

 八十歳以上で二十本以上自分の歯を有することを目標とした八〇二〇運動が提唱されていますが、疾病の分類によって若干のばらつきがありますけれども、十九歯以下に比べて二十歯以上の方が、診療費、診療日数ともに低く、短い傾向があります。

 次に、生活習慣病と残存歯数、歯周病との関係を見ますと、生活習慣病の治療に当たって、残存歯数が多いほど、一件当たりの平均診療費や平均診療日数が低く、短い傾向があり、歯周病の程度で見ても、重くなるほど、平均診療費や平均診療日数が高く、長い傾向が見られます。

 また、厚生労働省の委託補助事業として、財団法人八〇二〇推進財団の委託を受け、日本病院歯科口腔外科協議会が実施し、平成十六年一月に発表した病院歯科における口腔ケア実施に関する実態調査を見ましても、慢性期疾患患者や急性期疾患患者及び周術期の患者などに対する有用性が確認され、病院経営における口腔ケアの動機づけとなる調査結果が出ております。

 これらの結果を総合してみますと、歯や口腔内の健康が、他の疾病の予防や、平均治療日数、平均在院日数の減少などにより、医療費の削減に貢献するということがわかってまいりました。川崎大臣の御感想をまずお伺いしたいと思います。

川崎国務大臣 今、大口委員が御指摘いただきましたことについては、歯の健康と体全体の健康、大きく関連性がある、そんな調査研究が行われているということは承知いたしております。また、大口委員がこのことについてしっかり御研究をいただいているということも知らせていただいております。

 医療費の適正化、ことしの医療制度改革の大きな課題でございます。その中において、予防というものが大きく位置づけられているところでございます。そういった意味では、歯科保健医療の分野においても、八〇二〇運動を初め、疾病予防、健康増進を目指した歯科保健医療の充実が必要である、こういう認識は持たせていただいております。

大口分科員 大臣が御認識にもありましたように、昨年の十二月、政府・与党の医療制度改革大綱におきましても、予防重視の項の中で、「高齢期の健康確保のため、八〇二〇運動を推進する。」こういう記述があるわけでございます。

 この八〇二〇は、健康と長生きの条件だということがわかっていますし、また、医療費の削減に貢献するということもわかっているわけです。そういうことで、生涯にわたって歯の健康を維持するため、歯科の定期検診というのが極めて重要ではないかと私は考えておりまして、四十歳以上の歯科検診、厚生労働省としてどう取り組んでいくか、また、どう取り組んでいるかということをお伺いしたいと思います。

磯部政府参考人 老人保健事業におきます歯周疾患検診につきましては、平成七年度から導入されまして、その後、対象年齢を拡大してまいりまして、現在、四十歳、五十歳、六十歳及び七十歳の節目の年に検診を実施しているところでございます。

 また、平成十八年度からは、介護保険法の改正によりまして、新たに地域支援事業が設けられましたが、その中の介護予防事業におきまして、六十五歳以上の方について口腔機能の向上のための事業を実施するということとしておりまして、今までの老人保健事業における歯周疾患検診と相まちまして、さらに実施していきたいというふうに考えております。

大口分科員 今局長がお答えになった中で、四十歳、五十歳、六十歳、七十歳の部分は市町村でやっておって、それは補助でやっているわけですが、八万から九万人ぐらいしかやっていない、こういうことなんですね。やはりこれでは、私は現状厳しいと思うんですよ。そのあたり、どうお考えですか。

磯部政府参考人 数字の評価はなかなか難しいところでございますが、近年の流れを見ますと、十二年度四万六千人ぐらいが受診されていたところが、十五年度におきましては八万二千人、実施市町村数でいって一八%程度だったものが三六%程度まで来たということで、それなりの努力をしているというつもりでございます。

大口分科員 次に、私は、昨年五月二十三日、私は静岡県なんですが、静岡県長泉町にある県立静岡がんセンターに坂口元厚生労働大臣とともに視察させていただきました。

 同がんセンターは、治療前のトレーニングと手術後早期のリハビリテーションシステム、そして術前術後の口腔ケアを導入し、治療合併症や後遺症の減少、医療費の削減、そして患者の心のケアで実績を上げております。特に術前術後の口腔ケアを実施することで、合併症発症の率の減少や入院日数短縮、大体平均三日から四日の短縮ができている、こういう大きな効果を上げています。

 また、同がんセンターでは、頭頸部がんの再建手術、これは患部除後の機能回復という形で、術後合併症の発症率について、頸部から洗浄チューブを入れて洗浄する、そういう口腔ケアを行った場合、合併発症率が一六%、行わない場合は六四%ということで、口腔ケアで合併症率を四分の一に抑える、こういう成果があらわれているわけでございます。

 このように、合併症や後遺症が減り、入院日数が短くなり、国民総医療費の削減につながる。視察のときに、同センターの山口総長が、術前トレーニングや口腔ケアが、合併症減少だけでなく、病気に立ち向かう患者さんのファイティングスピリットを高め、患者さんの心のケアにも極めて重要である、こういうお話もしていただきました。

 そして、昨年の十一月十日、大臣に、私ども公明党といたしまして、がん対策プロジェクトチームが、国民の声を反映したがん対策の推進に関する提言、こういうものを提案させていただきまして、大臣にもこの静岡がんセンターのことをお話しさせていただきました。

 術前術後の口腔ケアや治療前のトレーニングや手術後早期のリハビリテーションシステムを、今後整備される都道府県がん診療連携拠点病院や地域がん診療連携拠点病院に積極的に導入していくことが必要ではないか、こう思います。さらに全国に広げていけるよう本格的に検討すべきである、こういうふうに考えるわけでございますけれども、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

川崎国務大臣 まず、がんの診療連携拠点病院でございますけれども、今はがんの拠点病院という形でお願いしており、四十七都道府県の中で四十の都道府県が参加をしてもらっている。逆に言えば、七県が抜けているのが現状でございますけれども、新しい制度の枠組みの中で、今各都道府県に打診をいたしておりますけれども、基本的には、この構想に乗ってもらうということで話し合いが進んでいるところでございます。そのネットワークができ上がりますと、国立がんセンターがまず頂点になって、そして各県の拠点へ連絡をしていく、またそこが流れていくという中で、全国の医療技術、特にがんに対する医療技術が均てん化を図られるという施策をことし推進してまいろうと考えております。

 その中で、今大口議員の御指摘は、一つは、がんセンターで研究開発したものを広く流す。一方で、静岡の県立がんセンターで開発されたものが今度は上に上がっていって、そこからまた、情報センターから下へ流れていくようなステップをとれる。先ほども議論しておりまして、国立がんセンターと県立がんセンター、人的にはつながっておりますので、十分この話も聞いておるだろうと思いますけれども、大口委員からの御示唆、御指摘でございますので、私どもの方からも、県立がんセンターと国立のがんセンターがしっかり連携をとりながら、その成果を各地域に広げられるようにということで、相談をさせるように指示しておきます。

大口分科員 今、大臣から大変前向きなお話を賜りました。やはり山口総長も非常にこのシステムに自信を持っておりまして、何とかこれが全国に広がれば、本当に患者さんにとっても幸せなことでありますし、また、国民医療費の関係においてもこれはすばらしいことでもあるということで、本当にチームを組んでこういうことをきちっとやっていくということを、大臣のリーダーシップで広げていただきたい、このように思っております。

 次に、今回の診療報酬改定についてちょっとお伺いをさせていただきたいと思うんですが、かかりつけの歯科医の初診料そして再診料について廃止され、それで、かかりつけの強化のため、歯科疾患総合指導料一と歯科疾患総合指導料二が新設されました。

 この廃止と強化の理由、こういう形に組みかえた理由について、そして、これによって本当にかかりつけというのが強化されるのか。特に、歯科疾患総合指導料については条件面で縛りがきついという意見もありますが、これによって実効が上がるのか、お伺いしたいと思います。

水田政府参考人 お答え申し上げます。

 かかりつけ歯科医初診料それから再診料についてのお尋ねでございますけれども、これは、歯科診療に係るインフォームド・コンセントを評価したものでございます。

 ただ、一方で、この初再診料につきましては、歯科医療機関の約九割が届け出を行っておりまして、その意味では、患者への情報提供が普及、定着した、こういうふうに考えられるわけでございます。他方で、この初診料を算定するために、文書による情報提供の実施ということが算定要件の一つになっているわけでございますが、実際には、文書による情報提供をしないでこれを算定している医療機関があるということの調査結果も出てまいりました。そういうことを総合的に判断いたしまして、今回の診療報酬改定においては廃止することとしたものでございます。

 一方で、かかりつけ歯科医の機能の評価を今後どうするかということでございますけれども、先生御指摘ありましたとおり、今回の改定におきまして、患者の同意に基づく総合的な治療計画の策定、それから、患者に対する文書による情報提供等を総合的に評価するということを目的といたしまして、歯科疾患総合指導料、これを新たに設けまして、これによりまして、全体の治療計画を示して、その治療計画に即した個々の一連の指導管理につきましては評価を充実する、こういう改定をしようとしているわけでございます。

 この治療計画の内容につきましては、かかりつけ歯科医初診料における経験を踏まえて、患者に対する説明とその同意が確実に確認できるようにしなきゃいかぬということを考えてございまして、患者の署名を求めるということとしてございます。実効性を上げるためには、やはり患者さんにしっかり確認をしていただく、参加をしていただくということが必要なわけでございます。

 その一方で、これが障害になるんじゃないかという御意見もあるかもしれません。そのあたりにつきましては、改定内容につきまして、説明会の開催等によりまして、普及、定着にまず努めていきたい、このように考えてございます。

大口分科員 最近の研究によって、高齢者における誤嚥性肺炎のメカニズムから、口腔ケアにさまざまな予防効果、すなわち、口腔と咽頭の細菌数の減少、それから、嚥下するまでの時間の短縮、そしてまた口腔機能の改善による食欲の増進、栄養状態の改善、それが免疫機能の向上につながっている、こういう誤嚥性肺炎の予防に対する効果があることが明らかになってきました。

 高齢者に対する歯科診療は非常に重要であると私考えるわけでございます。平成二十年度に創設される後期高齢者医療制度において、高齢者の歯科診療報酬についてどのような方向性でいくのか。今私が述べたようなことも十分考慮していただければありがたいな、こう思っておりまして、大臣の、方向性についてのお考えをお伺いしたいと思います。

川崎国務大臣 既に法案を提出させていただきました。四月ごろから御論議いただくことになるだろうと思いますけれども、医療制度改革の法案が成立いたしましたならば、平成二十年度から、後期高齢者医療制度、七十五歳以上ということで、新しい制度をスタートさせていただくことになります。

 後期高齢者医療制度ができ上がりましたならば、後期高齢者の心身の特性に配慮した新たな診療報酬体系をつくっていかなければならないだろう。今その検討に入っているわけでございますけれども、一つは、まさに先ほどの議論で、八十で二十本残っていればいいわけですけれども、多数の歯を喪失した状態でそしゃく機能を保全、回復する技術、また在宅で寝たきりの状態にある後期高齢者に対する在宅歯科診療の評価など、後期高齢者に係る歯科診療の課題にいろいろな分野から、きょうお聞かせいただいたことも含めて、取り組んでまいりたいと考えております。

大口分科員 本年四月から、新たな介護保険制度の中で、新規に創設されました通所系の介護予防サービスとして、日常生活の基本動作がほぼ自立し、状態の維持、改善可能性が高い軽度者を対象とした口腔機能の向上、いわゆる口腔ケアサービスが実施されることになりました。

 このような中で、これからの介護保険制度をよりよいものにするために、二点お尋ねさせていただきたいと思います。

 一つは、新たな介護保険制度において、介護予防を目的とした口腔機能の向上、いわゆる口腔ケアサービスが創設されましたが、通所介護事業所等の通所系サービスとしての位置づけであり、中重度の要介護者が主に利用する介護老人福祉施設等の施設サービスでは、口腔ケアに係る介護保険報酬は設定されておりません。従来から、口腔ケアは、こうした施設入所者など中重度の要介護者の肺炎予防にも大きな効果が認められているところでありますし、これは軽度の方を対象とした介護予防の効果に劣らず重要なものである、こういうふうに考えるわけです。

 これからの介護保険制度は、すべての要介護者が必要な口腔ケアサービスを享受できる制度とすべきである、こういうふうに考えております。厚生労働省の見解をお伺いしたいと思います。

磯部政府参考人 介護保険施設におきましては、現在、特別養護老人ホームそれから老人保健施設におきましては、入所者の方の歯科医療の確保あるいは歯科医学的な健康管理といった観点から、協力歯科医療機関というものを指定基準上設置する努力義務を課しているところでございます。

 本年からは、これに加えまして、介護療養型の医療施設につきましても協力歯科医療機関を設置する努力義務を求めるということなどを通じまして、施設におきます歯科診療あるいは歯科保健の向上に努めていきたいというふうに考えております。

大口分科員 今、介護療養型についても今回拡大をするということであります。努力義務でありますけれども、本当にこれは、療養型についてはこれからまた見直しが大きくあるわけでございますけれども、しっかりとこれについても徹底をしていただきたいというふうに思っております。

 そしてもう一つ、新たな介護予防システムが効果的に機能し、口腔ケアサービスが円滑に提供されるためには、地域包括支援センターの介護予防ケアマネジメント、これが重要になっていくと思います。

 しかし、この地域包括支援センターには口腔保健の専門職種が配置されておりません。そこで、介護老人福祉施設等に嘱託歯科医師を必置とし、そして、入所者を対象とした口腔ケアサービスに係る助言を行うとともに、地域包括支援センターに対する助言や支援をあわせて行うことにより、軽度者の方から中重度者の方まで、連続的かつ効果的な口腔ケアを実施する、そういう体制を制度化すべきである、こう考えるわけでございます。これから介護予防はこの地域包括支援センターという新たな仕組みに基づいてやっていくわけでございますけれども、この点について厚生労働省の御見解をお伺いしたいと思います。

磯部政府参考人 先生御指摘の、地域包括支援センターにおきます口腔ケアの問題でございますが、現在考えておりますのは、市町村の判断によりまして、歯科医師が地域包括支援センターの運営協議会の構成員となりましてその運営に関与するといったことが考えられるのではないか。それによりまして、歯科医師が地域包括支援センターに対する助言あるいは支援を行っていくということも考えられるのではないかと思っているところでございます。

 また、介護予防事業から予防給付に至りますまで、効果的かつ継続的な口腔機能の向上に関する取り組みを実施する観点から、サービス提供事業者等の運営基準におきまして、歯科医師等との緊密な連携を図るようにといった運営基準を考えておりまして、そうした方向で努力していきたいというふうに考えております。

大口分科員 今、るる、いろいろな研究発表ですとか、あるいはそういうものの結果を紹介させていただいて、とにかく、介護予防システムの中でどう口腔ケアというものを定着させていくかということが本当に私は大事だと思っておるんですね。

 ですから、今、運営協議会に歯科医師を参加させるということもお話ありましたけれども、では、必ず歯科医師が参加できるような形になるんでしょうか。

磯部政府参考人 そこは、介護保険自身が自治事務でございまして、地域包括支援センターの設置につきましては、市町村の判断ということでございます。

 また、運営協議会につきましても、その意味では、地域包括支援センターあるいは市町村の判断によって、置く、置かないということが決められるというふうに理解しております。

大口分科員 市町村が判断するというわけでございますけれども、ただ、その中で、やはり今、口腔ケアのことについて重要だということを御認識だと思うんですね。大臣もそういう御答弁もされました。そういうことからいきますと、やはり、この地域包括支援センターの運営協議会のあり方について、厚生労働省としてのお考えがあってしかるべきと思うんですが、どうでしょうか。

磯部政府参考人 地域包括支援センターの運営協議会の設置につきましては、その設置基準あるいはその構成員等につきましての連絡をしておりまして、その中で、介護サービス及び介護予防サービスに関する事業者及び職能団体等を構成員とするということで、その中に医師等と並びまして歯科医師を入れ、そうした連絡をしているところございます。

大口分科員 我が党の口腔ケア・歯科医療を考える勉強会、福島豊座長、私は事務局長で、勉強会をやっておりまして、平成十六年の十二月の十四日に、前任の尾辻大臣に対して、口腔ケアの普及に関する要望書、これを出させていただきました。

 その要望書は、一つは、ケアマネジメントにおいて口腔ケアのニーズが適切に把握され、ケアプランに反映されるための方策について検討を行い、指導等所要の措置を講ずること。これが一。

 二に、老人保健事業の見直しに当たって口腔の健康状態の評価が行われ、口腔ケアのニーズが適切に把握できるよう検討を進めること。

 三番目に、介護予防マネジメントにおける高齢者のアセスメントなどの評価に当たって、口腔ケアのニーズが適切に把握されるよう、口腔機能を反映する評価項目の導入や簡易なチェックリストの活用など適切な取り組みを進めること。

 四、歯科訪問診療に対する患者ニーズに適切にこたえることができるよう、居宅療養管理指導のあり方について必要な見直しを行うこと。

 五、主治医意見書について、専門的口腔ケアのニーズが適切に評価されるよう、そのあり方について所要の検討を行うこと。

 六に、専門的口腔ケアに係る人材の養成において、歯科衛生士の資質向上は重要な課題であり、修業年限の三年制への移行に伴う養成施設の整備に当たり財政的支援の充実を図ること。

 この六項目を要望したわけでございます。

 厚生労働省としての対応をお伺いしたいと思います。

磯部政府参考人 御要望事項の一それから五につきましては、ケアマネジメントにおきまして、口腔ケアのニーズが適切にケアプランに反映されるように、認定調査の調査項目におきまして、その手引で、食事形態の違いにより介護の手間の状況が異なる場合や、食べかすや歯垢の付着、口腔内の炎症及び義歯の汚れ等により介助の状況が異なる場合には、その状況を記載するように徹底する、それから、主治医の意見書におきましては、その様式及び記載の手引におきまして、摂食、嚥下機能低下の評価や口腔清潔に関する事項の記載の徹底を図ることといった充実を行ったところでございます。

 それから、二点目につきましては、先ほど申し上げましたように、介護予防事業におきまして、口腔機能の向上を位置づけているところでございます。

 それから、三につきましては、介護予防ケアマネジメントにおきまして、口腔機能に関する適切なアセスメントを実施するため、基本チェックリストを作成するとともに、老人保健事業の基本健康診査の項目として、口腔内の視診それから反復唾液嚥下テストを追加するといったことを考えております。

 最後に、四点目でございますが、歯科訪問診療に関する居宅療養管理指導につきましては、今回の介護報酬の見直しにおきまして、歯科医師の情報提供のあり方、それから歯科衛生士等のサービスの提供方法につきまして見直しを行ったところでございます。

大口分科員 どうもありがとうございました。

森主査 これにて大口善徳君の質疑は終了いたしました。

 次に、保坂展人君。

保坂(展)分科員 社会民主党の保坂展人です。

 まず、川崎大臣に伺いたいんですけれども、金融危機、九七年にございました。それ以来、雇用が大変な状況だということで、歴代政府は、雇用対策ということで、何度もの手当て、対策をしてきたと思いますが、おおよそ総額幾らぐらいの雇用対策をされているかということについてお願いします。大臣にお願いします。

川崎国務大臣 私も閣内にいた当時もございますけれども、補正予算でずっと対応してきたと思っております。

 平成九年以降、概算として二兆四千億くらい使ってきた、このように承知しております。

保坂(展)分科員 そうした予算の多くが雇用保険の中の三事業に振り向けられていると思います。この雇用保険という名称も、かつては失業保険と言っていました。雇用保険三事業を含んで雇用保険という名前になっていますが、これらの事業が果たして適正に行われているかどうかということで、幾つかテーマを上げて質問を続けたいと思います。

 まず、京都につくられた私のしごと館、こちらはかなり大規模な、五百億円以上かけてつくられた。この運営状況の中で、いわば収入の方がそれほどはないということで、発足当初は、いわゆる交付金、二十一億円ほど、これを使わざるを得なかったと。これが少し圧縮はしているとはいっても、交付金に頼ってやっていかざるを得ないような、私の試算によれば、建設費とこういった交付金、そろそろ六百億円近くになるのかなという感じを持っているんですが、この運営面の見通しについて、機構の方から来ていただいていますので、一言お願いします。

岡田参考人 私のしごと館は、御承知のとおり、中高生を中心にして、いわゆる雇用の意識を啓発するということで作成したものでございまして、年間三十万人以上の来訪者がありまして、また、アンケートの結果をとりましても、仕事について考える非常にいいチャンスであったというふうな評価をいただいているところでございます。

 私も、今後の大きな課題といたしましては、費用の削減であるというふうに考えておりまして、これについては、十六年度と比べまして、十七年度では約一割、十八年度では二割という抜本的な削減策をつくりまして、現在鋭意推進しているところでございます。

 今後につきましても、一層の費用の削減を図る中で、若い人たちの就職意識を高める重要な施設として効率的に運営をしてまいりたいというふうに考えております。

保坂(展)分科員 理事長に重ねて伺いたいんですが、質問予告の際にデータを持ってきていただいたんですね。

 平成十五年と平成十六年のデータ、私のしごと館入館者数は、平成十五年で二十八万七千、十六年で三十六万。こちらの紙はそうなんです。もう一つの方で、私のしごと館事業経費執行状況及び利用状況というのがございまして、これは展示・体験とライブラリィと分けているんですが、こちらの方だと、平成十五年の方が三十三万になっているんですね。

 これはちょっと確認なんですが、この入場者のカウントの仕方についての質問なんですけれども、要するに、しごと館には幾つかのゾーンがあるわけですね。例えば、Aというゾーンに入った方、Bというゾーンに入った方、それらを集合して出されているのか。つまり、いわゆるダブりがあるのかどうかということについて、算出方法だけ。

岡田参考人 今お話がございました初年度二十八万、次三十六万というものは有料入場者数でございますので、これは入場料金を払った方のカウントでございます。

 一方で、もう一つの方の資料につきましては、いわゆる利用者という把握をしておりますが、おっしゃるように幾つかの施設がございますので、それについてはそれぞれの施設を利用した人をカウントしておるということで、合計いたしますと人数はもっと多く、四十万人を超える人数になっております。

保坂(展)分科員 そうすると、本当に入場した実質人数というのはわからないんでしょうか。

岡田参考人 実質人数は、さきにお話がございました有料、お金を払って入場した人ということで把握できているものだというふうに思っております。また、それ以外に無料のいろいろな体験ゾーンがございますので、それらにつきましてもさらに人数がふえる。なかなか、幾つかの施設は自由に行けるようになっておりますので、一人が幾つを体験したかというのはちょっと把握しにくいという状況でございますので、御理解いただきたいと思います。

保坂(展)分科員 大臣にも後ほど御見解を伺いたいんですけれども、錦糸町にアビリティガーデンという施設がございます。こちらの施設の方で、かなり大がかりな計画だったと思いますが、AGネットセミナー、これは、衛星放送を使って全国百二十五カ所の会場でいわば能力開発のセミナーが受けられる、こういった施設だったわけなんですが、昨年、問い合わせなどをしたところ、受講者の方も一会場当たり非常に少ないということで、きのう伺うと、どうも今年度中に撤退するというようなことで、ちょっと驚いているんです。

 かなりの金額をかけてこういった設備をつくっているわけですけれども、ちなみに、こちらのAGネットに係る設備経費のところ、双方向コミュニケーションシステム、これは、中央のセンター分と地方分とを合わせると、ざっと七億くらいになるでしょうか。こちらの方は、どういった工事契約というか設備契約ですかね、どういった契約形態で、どういう会社の物品を入れられているのか、お答えいただきたい、機構の方に。

岡田参考人 双方向システムの件につきましては、急な御質問でございましたので、今事実を調べております。わかり次第、先生の方に御説明いたすつもりでございます。

 なお、このAGネットを閉鎖いたしましたのは、建設しましてから八年ほどかかりまして更新の時期に参っておる、あるいは、設備でも、一部修理などもするのに非常に不便であるというような状況になっております。しかも、運営費用も三億近くかかっておりますので、これらは廃止するという決断をいたしまして、今の事業はそれぞれの地域で効果的に展開してまいりたいというふうに思っております。

保坂(展)分科員 大臣に伺いたいんですけれども、全国で百二十五カ所で見られるわけですね、現在あるものは。きのう聞いたところだと、今検討中で最終結論ではないそうなんですが、こういった十三億円もかけて立派な放送設備をつくって、百二十五カ所、地方で見られて、そしてまた、流れている番組、講座に参加ができる、そういういわば当時のハイテク技術を利用してのネットワークなんですね。

 今のお話を伺うと、それはもうやめるということなんですが、仕事がなかなか見つからない若い人たち、あるいは三十代、四十代でも、いろいろな形で雇用のミスマッチでなかなか仕事が見つけられない、あるいは自宅にこもったりニートと言われているような若者たちもたくさんいます。例えば、その若い人たちと仕事という大きなテーマで、思い切ってそういう若い世代に任せて運営させると、多分いろいろなことを考えて、このネットワークで生きるんじゃないかと思うんですね。今はもう全部やめてお払い箱ということのようですが、いかがでしょうか。

川崎国務大臣 先ほどから数字が出ていますとおり、どうも毎年七万人程度でしょうか、残念ながら、初期期待したほどの数に上っていないという御指摘をまずいただいた。一方で、こういう機器というのは割合時代の変化が激しい。八年たって、今言われた若者が使おうとしたときに果たして最新鋭の機器であろうかという問題もあるんだろうと思います。一方で、職業能力開発総合大学校に、使えるものは動かしていこうという発想のようでございます。

 いろいろ総合したときに、やるという決断、一方でやめるという決断、継続をするという決断、いろいろな種類があると思うんです。しかしながら、正直、いろいろな御批判の中で、一つ区切りをつけてまた次の考え方を進めようということだろうと思います。保坂委員は、本来、この決断をする前にもうちょっとうまく使っておいたらよかったのになという御指摘だろうと思います。そういうのも、これからのいろいろな問題に生かしていかなきゃならぬ。もちろん、こういうものをやった経験というものをどこかで蓄積しながら次のステップに使わなきゃならぬと思いますので、御意見は御意見として賜っておきたいと思います。

保坂(展)分科員 先ほど、川崎大臣、しごと館の話をお聞きして、なかなか苦戦しているわけですね。大変大きな規模のものなんですね、これは。やめるといっても他の施設に転用のしようがないようなものです。恐らく、こういうものも、子供たち自身とか若者たち自身の企画やアイデアというものをもっと本当は立ち上げ段階から入れればよかったというふうに私は思いますし、これからでも遅くはない。実際に、確かにAGネットで、通信衛星で、一会場当たり十人ぐらいで聞いて何をやっているんだという指摘をしました。

 しかし、撤退の仕方も知恵を出してほしい。結局、これでお金をかけてしまったわけで、相模原の方に運んでいってしまうと、これはもう通信のネットワークは切れてしまうわけですね、単なるプロジェクター、単なる映像のカメラということで。私ども、テレビや放送関係の友人も多いので、五、六年や六、七年で陳腐化してしまうのかというふうに聞いたら、いやいや、そんなことはと。

 もちろん、だから、使えない機械も一部はあるでしょうけれども、最終決断はしていないようですから、よく、無駄のないように、特に若い世代の仕事へのアクセスというテーマは大テーマだと思うので、検討はしていただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。

川崎国務大臣 基本的には方針を決めたようでありますけれども、そういう御意見があったということは、私自身、頭の中に入れておきます。

保坂(展)分科員 続いて、雇用促進住宅。これも私調べますと、大変歴史が古くて、炭鉱離職者の方たちの対策ということで、当時、私どもの先輩たちが炭鉱離職者対策ということで整備されてきたものが今大変な規模になっているわけですね、十四万という規模で。これまで一兆円近い公費が投入されて、維持費も三百六十億程度かかる。

 さて、ちょっと厚労省の方からまず答弁していただきますが、ここに厚労省の職員が何か入っていたということで、これは一覧表をつくっていただきましたけれども、実は、この雇用促進住宅、職安の所長が、この人はよかろうということで入れる権限者なんですね。この職安の職員の方たちが、労働局職員で軒並み入っていらっしゃって、中には十五年住んでいた方もいる。どういう事情なのか。十五年というのは、どこで、何でそんなに長く住んでいたのか、答弁していただけますか。

鈴木政府参考人 労働局の職員で雇用促進住宅に入っていた者、これについては、昨年四月一日現在で十八名ございました。現在はすべて退去済みでございます。

 その中で、今御指摘がありました、十五年以上入居していた者がおったという指摘でございますが、御指摘のケースは、山形労働局のハローワークの上席職業指導官でございますが、転居を伴う人事異動が生じた際に家族同伴で入居できる宿舎のあきがなかったということから、本人が雇用促進住宅を探して入居したものというふうに承知をしております。

保坂(展)分科員 厚労省、これはよくないことでしょう。どうですか、一言もないので。

鈴木政府参考人 雇用促進住宅の入居要件は、まず、移転就職者のためにこの住宅ができたものでございます。ただ、あきがあった場合に員外利用できる規定も法律上ございます。そういう中で、職業の安定を図るために住居の確保を図ることが必要であると公共職業安定所長が認めた場合には、そういったものも入居できるということになっております。

保坂(展)分科員 大臣、雇用促進住宅に労働局の方が十五年も住んでいる、そういう場合もあり得るんだという答弁ですが、指摘されて退去しているということは、やはりよくないということを認めているかと思って聞いたんですが、そのようでもないようですので、ちょっと大臣の見解、いかがですか。こういうことはやはり正して――いや、大臣に聞いているんです。今お聞きしたので、時間がありませんので。

鈴木政府参考人 これは、今までの取り扱いがそういうことで、あきがあった場合にそういった取り扱いが認められていた、そういうケースでございます。

保坂(展)分科員 ちょっともう一言機構から聞いて、また大臣に伺います。

 機構の方も五十二人いるんですね。機構は、この雇用促進住宅を預かっている、また具体的な管理は、雇用振興協会ですか、こちらの方にやらせているということですが、こちらの方もかなり長いこと、品川八潮、これは場所がいいですね、大変人気も高い、安い。十五年いた機構の職員がいるんですね。どういう方ですか。どういう事情ですか。

岡田参考人 役職については、係員でございます。したがいまして、入居するについて特別な便宜を図ったというようなことではございません。御理解いただきたいと思います。

保坂(展)分科員 川崎大臣、雇用状況が厳しい中で、この雇用促進住宅を管理する、運営をしている側の機構の職員もこうやって入っていたんですね、今、出ましたけれども。そして厚労省関係のハローワークの方もいるというようなことで、やはり襟を正していただきたい。

 そして同時に、この雇用促進住宅というのはまだ空き室もたくさんあるわけですね、場所によっては。周知も図っていただきたい。姿勢をお尋ねしたいと思います。

川崎国務大臣 一般の方々をできるだけ優先すべきであろうという立場は、保坂委員と同じでございます。ただ、今言われたように、一方、あいていて、転勤してきてとりあえず入れという措置はあるんだろうと思いますね、あいている場合は。その方が有効利用になりますから。ただ、優先はやはり一般市民というのを頭の中にきちっと置いておくべきであろう。

 また、言われますとおり、あきがあれば、もう少しPRをしっかりして、市民の皆さん方に入ってもらうというような対応をしていくというのは当然のことであろう。しかし、それでもあいている場合に、どうしても使っちゃいかぬかというふうになると、そこはきちっと自分でわきまえた上で決断をしなさいよということであろう。

 結果として、指摘されて出たということは、ちょっとわきが甘かったなという批判を受けざるを得ないんだろう、こう思います。

保坂(展)分科員 やはり雇用促進住宅というのは一般の勤労者あるいは就職をしたい人に向けてのものなので、ここは機構の方も、しっかり反省して、そういうことのないようにしていただきたいんです。

 続けて、たくさんの補助金がつくられた中で、これは厚労省の方に聞きましょうか、中小企業雇用創出人材確保助成金、こちらの方の不正受給が非常に多かったんですね。一部暴力団の資金源にもなっていると報道もされておりました。

 昨年、私は十億円ほど未収があると聞いているんですが、現在どうなっているでしょうか。

鈴木政府参考人 中小企業雇用創出人材確保助成金、これの不正受給の問題でありますが、この不正受給の総額につきましては、平成十一年の一月に制度がつくられました。その後、平成十七年十二月末日までに約三十億八千六百万円となっております。

 また、これらに対する回収状況につきましては、これも昨年十二月末現在で、回収済み額が約四四・二%、十三億六千四百万円、回収予定を含めると六四・九%で二十億四百万円というふうに承知をしております。

保坂(展)分科員 四四・二%回収しているということは、逆に、残余は未収であるということですね。

 これはだれが被害者なんですか。この不正に対してだれが被害を受けたということで考えているんですか。

鈴木政府参考人 これは、雇用保険三事業から助成金として支払われている。これが効果を上げて使われる分にはいいんですが、不正受給となりますと、事業主が保険料として出したものが有効に使われていないということになるというふうに認識をしています。

保坂(展)分科員 この辺はちょっと厚労省の認識が一面的だと思うんですが、確かに事業主ですよね。しかし、雇用保険全体はやはり勤労者、働く人々を支えていく社会保障システムですから。つまり、その大事な公金からいわば不正に抜かれちゃった。大変な額です。これは、残りの額というのは、例えば告訴、告発しないんですか。しない理由は何なんでしょう。

鈴木政府参考人 内訳は、もうちょっと具体的に申し上げますと、全体の不正受給額のうちで、回収済み、これは申し上げました。それから回収予定が二〇・七%、それから返還交渉中が一四・三%、その他、債務者の死亡とか行方不明とか、それが二〇・八%ございます。

 これらのうち、二〇・八%、これは回収が極めて困難なんですが、それについても何か回収できる手だてはないかということで、専門家を含めて相談しておりますが、その上の、返還交渉中一四・三%、これについては、専門家と相談しながら、具体的にどういう形でやるのがいいのかということで、個別案件に従って、いろいろ返還に向けて実際作業をしている段階でございます。

保坂(展)分科員 大臣に伺いますが、これは、全くでたらめの社員の名前を書いて請求したら振り込まれちゃったという、この制度自体も非常にわきの甘さがあったんですね。これが不正に、今、かなり長いことやっていますけれども、全く回収できないものもあるわけですね。

 ところが、警察は捜査していますけれども、被害に遭った、この公金を預かっている役所や、あるいはこれも機構が関係あるんですかね、の側が何かずっとだらだらやっている。被害に遭ったら遭ったで、告訴、告発ということを考えないのか。いかがですか。

川崎国務大臣 今の答弁ぶり、わかりませんけれども、私のところのペーパーは、専門家の活用による、法的措置を含む厳正な対応という回答になっています。したがって、やらせます、きちっと。

保坂(展)分科員 これは厚労省にお聞きしますが、私は、厚生労働大臣管轄下の年金で大変広報が無駄になっているじゃないかというのを去年取り上げました。私が確認しただけで、国民年金のパンフレットだけで二百種類前後ですかね、同じ内容です。そういうことがあってはいけないでしょうということで、ことし簡素化したと伝え聞いているんですが、こちら、雇用保険の制度周知のための広報費、これは本省分、地方分含めてどうなのか。そして、そこにダブりや無駄はないのかということで、いかがですか、どのぐらいの予算なんでしょうか。

鈴木政府参考人 雇用保険制度のうち失業等給付に関する広報予算額、これは、平成十八年度予算案では、中身はリーフレットの配布等でございますが、三億三千三百万円でございます。このうち、本省分と地方分というお尋ねがありましたが、三億三千三百万のうち、本省分が二億三百万、それから地方分が一億三千万でございます。

保坂(展)分科員 川崎大臣にお願いですが、雇用保険の制度周知、周知はしなきゃいけないんですが、その広報費ということで、同じようなものを表紙を違えたりしてやっていては困るので、これはきちっと出していただいて、契約形態は随意なのか、ちゃんと競争入札をやっているのかも含めて、資料を出すよう指示していただけますか。

川崎国務大臣 基本的に隠すような資料ではないであろうと思います。

 いずれにせよ、雇用保険にいたしましても、年金にいたしましても、できるだけ透明化をしながら、国民の理解を得ながら進めていくという方針には変わりありません。

保坂(展)分科員 ちなみに、この雇用促進住宅というのを、私ども周囲の人に聞いても、ほとんど知らないんですね。こちらは、こういうパンフレットがありますが、これは答弁はどちらですかね、機構ですか。これはどのくらいつくっていますか、印刷は。幾らぐらいかかっているんですか。

岡田参考人 今ごらんいただいているものがパンフレットでございまして、これにつきましては、十七年度につきましては十五万部作成いたしております。費用は約百万ということでございます。それ以外にポスターもつくっておりまして、各施設に張り出すなどしてPRをしておるところでございますが、これは八千枚でございます。これらを全部合わせまして、十七年度の経費は二百六十万ということになっております。

 なお、ちょっとお時間をおかりして恐縮でございますが、先ほどの雇用人材確保助成金に関する告訴等の問題でございますが、内容が、事業主と労働者が共謀したりして非常に悪質なもの等につきましては、私どもも告訴もいたしておりまして、現に十七件については告訴をいたしております。

 それから、先ほど私のしごと館につきまして、カウントの仕方が二種類あるというふうに御説明いたしました。入場者と、それから複数の施設を使った延べ人員ということで申し上げましたが、入館者数の方には有料者以外に無料の入場者も入っておりますので、御理解いただきたいと思います。その点を訂正いたします。

保坂(展)分科員 時間なので、最後に一問いいですかね。厚労省の方にお願いしたいんですが、先ほど、川崎大臣に冒頭答えていただいた、大変な額の予算が組まれて、雇用保険三事業の各種補助金などになりますね、項目化されて。ところが、これは廃止されてしまうものも結構ありましたね、ここの経年で見ると。そうすると、廃止されたものが労働保険特別会計にまた一応、雇用安定基金ですか、こちらに戻った額というのは何か集計されていますか。一応予告してあるんですが、どうでしょうか。

鈴木政府参考人 雇用保険三事業、一応予算を組みまして、それに基づいて事業執行いたしますが、それが余った場合、これは、雇用安定資金の方にそれが積まれるという仕組みになっております。

 例えば平成十六年で見ますと、収入に比べて支出がありまして、差し引き剰余が一千三百一億円ございました。これは安定資金に積まれる、そういう仕組みになっております。

保坂(展)分科員 時間で終わります。ありがとうございました。

森主査 これにて保坂展人君の質疑は終了いたしました。

 次に、清水鴻一郎君。

清水(鴻)分科員 京都三区から参りました新人の清水鴻一郎でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 大臣もお忙しいだろうと思って、必ずしも大臣ではなくても結構ですと言うと本当に帰ってしまわれて、ちょっと悲しいですけれども、やらせていただきたいと思います。

 まず、本来、今医療制度改革ということで、医療費の適正化というようなものが大変大きな仕事になっているわけでありますけれども、日本の医療というのがではどうなのかということを見ますと、いわゆるWHO、世界保健機構では、世界百九十一カ国中、総合評価は日本の医療が一位という評価をしていますし、平均寿命や健康平均寿命も世界一でありますし、乳幼児の死亡率も北欧に次いで非常に低い、トップレベルにあるということでございます。大変日本の医療は好成績を上げている、世界一と言ってもいいのではないかというふうに思うわけであります。

 しかし、では、医療費は本当に、ほかの国の何倍もかけて結果がいいのかということになりますと、日本の医療費は、もちろんいろいろな見方があるので一面的には言えないと思いますけれども、OECD加盟の先進国三十カ国中では、いわゆる総医療費の対GDP比というのは第十七位ということで、決して高くないわけであります。つまり、比較的安い医療費で世界一の医療を達成しているということが言えるのではないかなというふうに思っています。

 そういうことをまず前提に置きまして、大臣がいらっしゃったらその辺のところをどう思われているかお聞きしたかったんですけれども、いらっしゃらないので、質問に入らせていただきたいと思います。

 そういう中で、日本の平均在院日数が比較的長い、あるいはベッド数が多いということが指摘されまして、例えば、療養型病床群を削減していくということが今法案として提出されようとしておるわけであります。

 今、確かに平均在院日数というのは、各国の比較というのがありまして、これも厚生労働省さんの方からもらったデータでありますけれども、日本が三六・四、ドイツが一〇・九、フランスが一三・四、イギリス七・六、アメリカ六・五ということであります。

 日本の場合は、すべての病床をカウントした上で、つまり、平均在院日数が五百日を超える、あるいは六百日を超える医療型の療養型病床、あるいは介護型の病床をカウントした上で、平均在院日数三六・四。恐らく今、一般病院の平均在院日数は、しっかりしたデータではまだ二十日ぐらいだと思いますけれども、近々のデータでは恐らく十八日とか二十日を切ってきたのではないかなというふうに思っております。

 それで、ではどうかといいますと、これは、よく病床の定義というのを読みますと、これはもっと詳しいのは、ちょっと調べてもらったのは英語とかいろいろあって詳しいものがあったんですけれども、それぞれの国で、例えば公的な施設のみでカウントしているというのがイギリスであったり、あるいは、長期介護のものはドイツなどは除くとか、いろいろな前提がありまして、必ずしもこれだけで日本の平均在院日数が長いということではないのではないかなというふうにも思います。

 この辺のところ、やはり、いわゆる世界的な比較をする場合には、定義をしっかりさせないと比較にならないのではないかということを指摘しておきたいと思います。

 それから、いわゆる療養型病床群の話になりますけれども、医療保険適用の療養病床が二十五万床、それから、介護型が十三万床、合わせて三十八万床というベッド数があるわけですけれども、それを、医療区分、医療のニーズが高い方々だけを入れればそれで済むだろうということで、そういうカウントの中で十五万床ということにしようと。つまり、二十三万床のベッドを削減して、その方たちを老人保健施設でありますとかケアハウス、有料老人ホーム、あるいは在宅というところに行っていただこうということであります。

 もちろん、いろいろな意味で、本当に今の三十八万床が適正かどうかというようなこともしっかりと検証をする必要はあると思います。ただ、そのデータになっているのが、たった一回行われましたアンケート等の調査でありまして、医師による直接指導は半分近い人たちがほとんど必要ないんじゃないかというデータが一方にあるわけですね。

 しかし、また一方のデータでは、少なくとも容体の急変の可能性は低いけれども、一定の医学的管理を要する、そういう人たちを入れると七割を超えるという一つの報告もあるわけですね。ということは、実際に、医療監視下に置かなくてもいいというふうに考えられる人が三割ない、二八%であったり、あるいは二九%。つまり三割弱だけは本当に医療の監視下に置かなくてもいいということになるのではないかなと思うわけですね。

 そうすると、やはりこれをいきなり今、介護保険をつくったとき、私も第一回の介護保険のケアマネジャーの試験も受けさせていただきまして、ペーパーケアマネジャーかもしれませんけれども、実はケアマネジャーの資格も取らせていただいた。そのときに、やはり一番、医療と介護というのは、なかなかきちっとここまでが医療でここまでが介護だということは、仕分けが難しい。

 だから、切れ目のない医療と介護を連結してやっていくために、そしてまた一般病院を急性期に特化していくために、これだけのものが社会的入院等も含めて、ある意味では医療ニーズを満たしていく。

 つまり、医療が中心だけれども介護が一定必要だ、あるいは介護が中心だけれども医療が一定必要だということのために、たった六年前、二〇〇〇年にそのことをしっかりと決めて、そして、それぞれの役割、つまり老人保健施設は面積も一人当たり八平米というような面積で、少し居住性を高めて、リハビリ等も必須にして在宅を目指そうという、中間施設というような位置づけも含めて定義があったと思います。そして、やはり病院とは一定の違いがある、そういうふうにされた。

 老人保健施設は、御存じのように、医師一人ということでございます、施設長、医師一人。一人ということで、三百六十五日、二十四時間、医療を提供することは不可能でございます。

 その意味も含めて、私が今申し上げましたように、少し次のプランをしっかりと論議した上で、ではこれだけは老健に転換して、老健を、例えば今のままの老健の形でするのか、あるいは、例えば老健AというのかAとBというのかどうかちょっとわかりませんけれども、老健にもう少し医療の厚さを加えたものにしていくとか、あるいは外づけで、外から医療を提供できるようなしっかりとしたシステムをまず構築する。それから廃止するということを決定しても決して遅くないし、結果がもしこの結果であっても、それだけの十分な論議がされて、今の入院患者さんにも安心感を与えた上で、つまり六年先に廃止していく。

 その間に経過措置もとるわけでありますから、それだったら、どうしてもう少し論議がなされなかったのかな、その辺も含めて回答、答弁をいただけたらありがたいなと思います。よろしくお願いします。

磯部政府参考人 療養病床の再編につきましては、今委員御指摘のとおり、やはり入院しておられる方々の安心というのは非常に重要だと思っております。医療療養病床に入院しておられる医療区分の低い方々につきましても、御指摘のように、急変の可能性があるという方々も含めまして、医療療養病床におきましても、今後六年間、介護保険の移行準備病棟というような類型を設けるということとしております。

 また一方、介護保険制度におきましては、平成二十三年度までの六年間は介護療養病床を制度としても存続させますし、また、経過的な類型も用意する。

 そして、さらに、今委員御指摘のとおり、健康保険法等の一部を改正する法律案におきまして、入所者の状態に応じてふさわしいサービスを提供する観点から、老人保健施設等の基本的なあり方、それから、入所者に対する医療の提供のあり方等につきまして検討を行う旨の附則が盛り込まれているところでございます。

 そうしたことに基づきまして今後検討を進めてまいりますが、いずれにせよ、療養病床の再編に当たりましては、入院あるいは入所されている方々の不安を招かないように、十分な対応を行ってまいりたいと考えております。

清水(鴻)分科員 今お答えいただきましたように、六年間、やはり経過措置といいますか、経過の病棟も置いて、その先にある一定の方向を、つまり経過病棟みたいなものが、病院と呼ぶかどうかとかは別問題でありますけれども、そのすき間をきちっと埋めていく。つまり、今現在いらっしゃる入院の方々がちゃんと、適材適所というと言葉が悪いですけれども、一番その人にふさわしい、あるいはその人の療養あるいは介護に最も適したところに受け皿をちゃんとつくっていくということを今後検討していくということは附則でつけていただきました。

 その附則の中でしっかりと検討をしていくということで、六年たったら、今のこれは経過措置だから、例えばいきなり老健という形じゃなくて、老健のあり方も含めて、つまり老健にもう少し医療的なニーズにこたえられるようなものも含めて、老健そのものの存在の形も含めて検討していくというふうに理解してよろしいでしょうか。

磯部政府参考人 もちろん、附則で設けられておりまして、これから検討を進めていくということでございますので、先ほど申し上げましたように、老人保健施設の基本的なあり方、それから入所者に対する医療の提供のあり方につきましても、含めまして検討を行っていくというふうに考えております。

清水(鴻)分科員 では、一応検討をして、検討するわけですから形がわからないのは当然かもしれませんけれども、一番安心できる形にしていただくということと、その経過の間、今、医師が二人とかそういう形で経過病棟というのが提示されていますよね。経過措置ということで、医師二人、看護八対一、介護四対一、こういうものは、つまり、今、医療保険適用の療養病床あるいは介護保険適用の病院が、経過措置の間は希望すればそこに位置づけられるということで理解していいんでしょうか。すべて、すべてといいますか、希望すれば中に入っていける。つまり、残る十五万床がありますよね、それ以外のところも、希望すれば、少なくとも六年間はここに存在し得るということで理解してもいいんでしょうか。

磯部政府参考人 まだこの経過措置につきましては具体的には審議会の、例えば、介護でありますと介護給付費分科会等において検討をしておりますが、基本的には、そういう介護の施設が介護の医療の療養型に移る、あるいは医療の療養型がまたその医療の経過措置に移るというような意味で、その経過措置に入っていくということは可能になるのであろうと考えております。

清水(鴻)分科員 これも何か幾らかに制限するということになれば、また大変、今建物もやっと整理できて、六年前に開設した新しい介護療養型の病院もあるわけであります。そういう人たち、その介護療養型、あるいは、そういう療養型の医師としてそれを選んでいくというのもなかなかやはり決心が要りまして、急性期は医師としてある意味でやりがいがあるけれども、療養型、加齢現象のある中で、どうしてその人たちをリハビリしながら、あるいはどう治療していくのかということをやっていく高齢者医療というのもなかなか大変な医療であります。

 その辺のところは、その方たち、そしてまた何よりも国民、患者さんに不安のないようにしていただきますことを希望いたしまして、この質問は、介護療養型につきましては、終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。

 次に、これから特に長期的、中長期的なあれとして、生活習慣病対策というのが大変重要であるという位置づけがされておるわけです。これは全く私も同感でございまして、何としても、生活習慣病、糖尿病や高血圧あるいは高脂血症の方々がどんどんふえるという今の状況は避けていかねばいけないし、予防していかねばいけないと思うわけであります。

 健康フロンティア戦略ということで千二百九十九億の予算も入っているわけでありますけれども、ただ、今、特にメタボリックシンドローム等も随分厚労省も取り上げられていますし、実際、メタボリックシンドロームの方々の心筋梗塞の発症率は八倍であるとか、場合によっては三つあると三十倍であるとか、いろいろな報告もあるわけでありますけれども、ただ、基準値が必ずしも一定ではないというふうに現場では聞くわけですね。

 特に脂質。つまり、中性脂肪あるいはコレステロールですね。いわゆる正常値というものですね、基準値といいますか。だから、ある健診機関では逆にかなりたくさんの高脂血症なりが出てきてしまうとかということも指摘されていますし、また健診が、特に会社等の健診になりますと、必ずしも朝一で朝の空腹時にきちっと時間がとれるというわけでなくて、昼から、午後から健診車が来て健診をするというようなことで、つまり、昼食後にとる。それによって中性脂肪あるいは血糖値が高く出て、いわば必要以上に多くの方が生活習慣病予備軍とカウントされているというような実態もあるのではないかということが指摘されているんですけれども、その辺のところの認識はどうでしょうか。

中島政府参考人 ただいまの生活習慣病対策における健診での基準値の問題でございますけれども、これは、ただいま御指摘のように、現在は方法あるいは採取の時間等々につきまして必ずしも一定の基準で評価されるということになっておらない実態はあるかと思います。

 今後、生活習慣病対策を進めていく上では、そういった面でもどのように共通して比較が可能なのかというようなことにつきましても検討して、国としても示せるものについては示していきたいというふうに考えております。

清水(鴻)分科員 それからもう一つは、健診でひっかかった方たちがいわゆる二次検診に行ったそのリターン、つまりその報告、実際二次検診に行かれたかどうか、あるいは二次検診に行って戻ってくる、その率が五割ぐらいしかないのではないかという指摘があるんですけれども、その辺の現状というのは把握されておるでしょうか。

 会社の健診もあるでしょうし、基本健診というようなものもあるかもしれませんけれども、その辺はどうなんでしょうか。

中島政府参考人 健診後の受診者の動向につきまして、現時点で必ずしも私ども十分把握できていないという状況がございます。

 しかしながら、今回の医療制度改革におきまして、生活習慣病対策を徹底するという観点から、医療保険者に予防のための健診、保健指導を義務づけるということとしておりますので、今後、こういった問題についても、十分なデータを採取いたしまして取り組んでまいりたいと思っております。

清水(鴻)分科員 その辺のところは、確かにこれは厚労省の方で出しているデータでありますけれども、健診結果で異常が見つかった項目が多いほど十年後の患者さん一人当たりの医療費は高くなる、異常なしの者と主要四検査項目異常ありの者では約三倍というような指摘もあります。

 だから、これはやはり、ここのところをしっかりやればまたほかのところに少しお金もちゃんと使えるかもしれないという希望もありまして、ぜひこの健診事業、そしてその結果を、ただやりっ放しになるということが一番もったいないと結構現場の先生も言っているんですね。何か一万円ぐらいかけてやっているんだけれども、結果的には、半分ぐらいは二次検診に行かないし、結局やりっ放しだ、かえって医療費の無駄遣いになっているんじゃないかという指摘もありますので、その辺のところ、きちっと二次検診、あるいはそのことが、もし異常が見つかれば予防や治療につながるようなシステムをしっかり構築していただきますことをお願いしたいと思います。

 それから、生活習慣病の関連でありますけれども、今度、いわゆる禁煙指導というのが医療費の評価に新設をされたわけであります。疾病であるとの位置づけが確立されたことを踏まえて、ニコチン依存症と診断された患者さんのうち、禁煙の希望がある者に対する一定期間の禁煙指導について評価の新設ということがあるわけでございます。

 ただ、専任の看護師を置かねばいけないという項目があるようでありますけれども、これは、例えばある先生がしっかりと対面して患者さんとやるときに、専任の看護師の必要性というのはいかがなものでその必置義務になったのか、よく理由はわからないんですけれども、いかがでしょうか。

水田政府参考人 禁煙の保険適用につきましては、先生御指摘のとおり、中医協におきまして議論の上、今回診療報酬の評価を行うことにしたわけでございます。

 ただ、この過程で、やはり中医協におきましても相当な議論がございました。すなわち、禁煙指導に保険料財源を充当することについて国民のコンセンサスが得られていないのではないかという慎重な意見も強かったわけでございますけれども、そういう議論を背景といたしまして、この新たな診療報酬の評価におきましては、対象患者について要件をきっちりする、それから実施保険医療機関の要件もしっかりする、それから評価の対象とする禁煙指導の要件、これも一定の限定のもとに評価をする、そういう形でスタートをしよう、その上で、さらに保険導入の効果について検証した上であり方について議論を深めていく、こういう限定、縛りがかかったものでございます。

 そのうちの実施保険医療機関に係る要件の一つといたしまして、先生御指摘の禁煙治療に係る専任の看護職員を一名配置しているということが設けられているわけでございますけれども、この理由といたしましては、対象となります禁煙治療は十二週間にわたって計五回の禁煙治療のプログラムでございまして、基本的に同じ看護職員が対応することが継続的な治療管理の観点からも望ましいということで、看護職員の専任というものを求めたものでございます。

 ただし、これはあくまでも専任ということでございまして、専従とは異なりまして、禁煙治療に従事しないときには他の業務に携わることも可能であるということでございますので、この点、御理解を賜ればと思っております。

清水(鴻)分科員 わかりました。ただ、開業医の先生で何人かの患者さんを自分が直接指導して、今おっしゃいました十二週間、計五回の禁煙治療を必ず自分が直接対面で行うという、そんなにたくさんやるわけではない。例えば何人以上であれば、専任看護師を置かねばいけないという規定があってもそれは当然かと思いますけれども、かかりつけの人でやめたいという方のためにそういう禁煙指導をやろうということでされる場合に、例えば開業医の先生の場合、必ずしも看護師さんも常勤でいるかどうかということもわかりませんし、そういう実態の中でせっかく取り組もうとしても、直接医師が対面するのにどうして必置だという、例えば人数が何人以上だったら専任看護師を置け、それなら理屈は通ると思うんですけれども、それはいかがなものなんでしょうか。

水田政府参考人 先ほど申し上げましたように、この禁煙指導に関する保険適用は大変議論があったところでございまして、当初、やはり厳格、厳密な形でスタートをさせたい、このように思っております。

 その上で、結果の検証ということはすることになっておりますので、その点で必要な措置はしていきたい、このように考えております。

清水(鴻)分科員 わかりました。これは最初の取り組みでありますので、おっしゃったように、厳格にということも含めてあるのかもしれませんけれども、現実に今いろいろな地域があります。大変過疎のところもありますし、そういうところでやる場合に、看護師さんが必ずしも常勤でいらっしゃるかどうかというようなこともあると思うので、この辺は軌道に乗って、もしそういうことであれば、その辺のところは将来考えていただきたいというふうに希望しておきたいと思います。

 それから、次の質問に移りますけれども、六十五歳以上の要介護の原因というので一番多いのは脳血管障害でございます。つまり、死亡原因というのは、悪性新生物、がんが一番で、二番は最近は心疾患でございます、三番が脳血管障害ということになりますけれども、寝たきりになる、つまり要介護になる原因というのは脳血管障害が圧倒的に多いわけであります。

 それで、今大学でスーパーローテートの研修医制度が始まって、この三月ですか、その第一期生といいますか、それが今度終わろうとしているわけです。確かに、脳卒中等はある意味では必修項目という形に挙げられているわけですけれども、外科系、内科系等を回って、そして実際に日本で、脳卒中のプライマリーケアに当たる、つまり一番最初の初期医療に当たるのは脳神経外科が中心でやっております。

 だけれども、脳神経外科はその場合に必修、つまりローテーションの必修になっていないために、実際には脳卒中の患者さんを一人も診ないままに研修を終わるという実態があるようでありますけれども、その辺のところはどうお考えでしょうか。

松谷政府参考人 先生御指摘のとおり、脳卒中は寝たきりの主要原因でございますので、大変重要な疾患だと思っております。診療で遭遇する可能性が高くて、すべての医師が適切な診療ができる必要がございますので、臨床研修におきましても経験すべき疾患の一つに位置づけているところでございます。

 御承知のとおり、臨床研修は、将来専門とする分野にかかわらず、医学及び医療の果たすべき社会的役割を認識しつつ、一般的な診療において頻繁にかかわる負傷または疾病に適切に対応できるように、基本的な診療能力を身につけるということを目的に必修化されております。

 したがいまして、臨床研修において経験すべき疾患の一つとして脳卒中は挙げられているわけでございまして、その初期治療に参加すること、それから、入院患者を受け持ちまして、治療方針等についてレポートを提出するということを必修としているところでございます。臨床研修において基本的な研修はなされることができるというふうに考えてございます。

 先生御指摘のように、実際に経験ができなかった場合どうするかということにつきましては、この研修の審議会におきましてまた議論を進めていきたいと考えております。

清水(鴻)分科員 ちょっともう時間もないので深く言いませんけれども、やはり二年間のスーパーローテーションというのも、例えば小児科を最初志望しようと思った人が、実際にいろいろ回る中で六割になるとか、つまり、ちょっとだけ見る、三カ月だけ見るということで、学生時代もローテーションを当然するわけですね、すべての科を。今度三カ月だけ行って、ちょっとしんどいなと思うところだけ見て、その真髄がわからずに、結局それをやめてしまうというようなことになれば、これはかえってある意味でマイナスになるのではないのかなと。

 実はきのう、私のめいで、このスーパーローテーションをもうじき終わろうとする弟の娘がいるので聞きましたら、かなりの友達が最初行かなかった皮膚科に行くとか、つまり、やはりいろいろなそういう、ちらっと見ることがかえっていいのかどうかというのは、今度、スーパーローテーションのことについては十分検討していただきたいなと思いますので、そのことだけ希望して、もう時間がないのでこの質問は終わります。

 あとちょっと、どうしても質問しておきたいことがあります。

 今度、いわゆる認定こども園も含めて、保育のあり方等が変わるというか一つの試みがあるわけです。保育というのは、児童福祉法に基づいて子供たちの育ちを保障しているものであります。特に、今度の総合施設の問題点としては、四つの類型が提示されています。いわゆる幼保連携型、それから幼稚園型、保育所型、地方裁量型、この四つのうちで国の設置基準を満たしているのは第一類型の幼保連携型のみでございます。したがって、これは国の補助金も出されるというものになります。

 しかし、第二から第四までは基準を満たさなくても都道府県が認定するということになって、地方の裁量によってはばらばらな基準の施設ができてしまう可能性があるんじゃないか。さらに、第二から第四までは、自由裁量部分については直接契約、園と保護者が直接契約を結ぶということで、国や地方公共団体は一切関与しないとなるために、園同士での格差や逆選択、つまり、手のかかる子あるいは障害を持った子供を入園拒否するというようなことが生じるのではないかということが現場で大変心配されておるわけです。

 もしやるなら、第一類型の幼保連携型以外はすぐには不必要なのではないかというような御意見もあるんですけれども、いかがなものでしょうか。

北井政府参考人 いわゆる認定こども園の法案につきましては、現在、法案を準備しているところでございますけれども、今のところの私どもの考え方といたしましては、認定こども園は、さまざまな、多様なニーズへの対応をきちんとするために、地方の裁量を生かしながら、しかし、教育、保育の質という点からもきちんと最低線は守りつつ、新たな選択肢として設けようというものでございます。

 具体的に、この認定基準というものは、文部科学大臣と厚生労働大臣が協議して定める国の基準を参考にして、都道府県で条例で定めていただくというようなことにしたいと思っておりますので、そうしたことからすると、教育、保育の内容、あるいは職員配置や施設整備等について、何でもかんでもこれに当たるというようなことはないようになるというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、今般の認定こども園は、多様なニーズに的確に、柔軟に対応できるようにするというものでございますので、これまで役割を長年にわたって果たしてこられた幼稚園、保育所というものが、すべてこうしたものに統合される、統合しなければならないというわけではなくて、それぞれの御懸念のようなことはないと考えますし、また御懸念がないようにしていかなければならないというふうに思っております。

清水(鴻)分科員 ちょっと時間がないのでもう深く言いませんけれども、どうかその辺のところ、現場の声もしっかり聞いていただいて、混乱のないように、そして実際には子供たちのためになるように、また、今までやられた施設の方々にも安心してもらえるような移行をしていただけるようなことをお願いしたいなと思います。

 もう時間がないので、あと一つは不妊治療の問題なんですけれども、不妊治療は、実際問題、今までの年間十万円を二年間ということが五年間に延ばされたということは、大変朗報、いいことなんですけれども、現実には、いわゆる体外受精あるいは顕微授精というものにかかる費用は、一回すれば三十万から五十万ぐらい実際はかかる。例えば年にせめて二回やりたいとすれば、十万円ではとても足らないということですよね。

 これはもう限られた時間しかありませんし、そして、子供が欲しい、あるいは、やろうというトライする短い期間、不妊に気がついて、そして妊娠可能な期間というのはそんなに長くありませんので、このことに対しましては、もう答弁は要りませんけれども、ぜひ、より充実した制度にしていくようにお願いしたいなと思います。

 最後、一点だけ。年金の未払いの問題で、いわゆる特に医療保険の……

森主査 清水君、時間が過ぎておりますので、結論を急いでください。

清水(鴻)分科員 ああ、済みません。

 では、これはまた厚生労働委員会等で質問させていただくことにしまして、きょう、もし来ていただいていたらまことに申しわけないと思いますけれども、また未払いの問題のことも、余り縛っていって何だかんだと、国が、こうしないと罰則、罰則ということではなくて、信頼関係の中でしっかりと、必ずしも未払いが多い業種でないところに余り規定を決めていくということでないような、信頼関係の中に運営されるようなことを期待したいと思います。どうぞよろしくお願いします。

 ありがとうございました。

森主査 これにて清水鴻一郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、高木美智代君。

高木(美)分科員 公明党の高木美智代でございます。

 私は、不妊治療、生殖補助医療について質問をさせていただきたいと思っております。

 不妊症に悩むカップルは十組に一組と言われておりまして、何らかの不妊治療を受けているという方は三十万人というふうに推測をされております。日本産科婦人科学会が二〇〇二年に出生数を調査されまして、それによりますと、体外受精によって国内で生まれた子供は、二〇〇二年までの累積で十万人を超えました。さらに、二〇〇二年単独では、年間出生数百十五万三千八百五十五人のうち、体外受精によって生まれた子供は一万五千二百二十三人と、全体の一・三%を占めておりまして、これは七十六人に一人、このような数字に当たるようでございます。

 ちなみに、これはデンマークの数字でございますけれども、我が国は全体の一・三%が体外受精である、デンマークでは六%近いというデータもございまして、これを単純計算いたしますと、日本で不妊治療が進んだ場合、例えばあと五万四千人ぐらいふえる、こういう単純な計算になるわけでございます。

 いずれにしましても、今、晩婚化でございますので、出産の高齢化が進んでいる、こういう現状を見ますと、子供が欲しいと願うカップルに対しまして、医学技術の手助けは必要不可欠な時代に入ってきているということを大変痛感しております。

 こうした、子供が欲しいと望むカップルが子供を何らかの形で授かることができる、このことに対しまして、これは大変大事な子育て支援であり、また少子化対策ではないかと思っております。ちなみに、不妊治療を望むカップルは、条件が整えば、恐らく経済的な条件であるとか仕事の条件であるかと思いますけれども、百万人とも言われております。

 厚生労働省におかれましては、先ほども質問にございましたとおり、不妊治療費の助成適用を今二年間から五年間まで延長する、このようにされておりまして、これに対しましては、多くの方たちから感謝の声をいただいているという状況でございます。

 そこで、まずお伺いしたいのは、不妊治療の助成の所得制限の引き上げについてでございます。

 今、六百五十万未満というふうになっております。所得制限がこういう状況でございますと、大体こういう不妊治療を望む方は、夫婦共働きという世代でございます。そこが六百五十万では、どうしてもこれは該当しなくなってしまう。しかし、かかる経費は年間五十万とも百万とも言われております。

 また、これとあわせまして伺いたいのは、助成の範囲の拡大についてでございますけれども、今、現状は体外受精と顕微授精のみ、このようにされております。ただ、大分県では人工授精も認めている、こういう現状もあると聞いております。

 この二点につきまして、まず答弁をお願いいたします。

北井政府参考人 御指摘のとおり、子供を生み育てたいという希望を持ちながら、なかなか子供ができない夫婦に対する支援は大変重要なことだと考えております。

 今お話がございましたとおり、現在、体外受精と顕微授精について、平成十六年度より特定不妊治療費助成事業を実施しておりまして、当初は一年度当たり十万円を限度に二年間ということで出発しましたけれども、来年度予算案で、この支給期間を五年間に引き上げさせていただくという御提案をしているところでございます。

 所得制限につきましては、厳しい財政状況の中で、制度発足のときに、やはり経済的理由から十分な治療を受けられない御夫婦への支援であることを踏まえて、一定の制限を設けたものでございまして、参考としたのは児童手当の給付率八五%ということでございまして、妻の年齢が二十五歳から四十四歳の夫婦の世帯収入で、その世帯数の八五%がカバーされる額を算出してやっているものでございます。

 また、助成対象につきましても、人工授精は入らずに、体外受精と顕微授精ということを対象にしておりますが、これも、人工授精が一万円程度になるのに対して、残りの二つは一回当たりの医療費が大変高額でございますことから、助成対象の重点化を図ってやっているということでございます。

 いずれにいたしましても、今後の制度のあり方については、事業の利用状況であるとか、実施主体である自治体の関係者あるいは医療関係者の御意見も踏まえなきゃいけないと思っておるところでございます。

高木(美)分科員 ありがとうございました。

 スタートしたばかりで恐縮でございますけれども、先ほども時間との闘いであるというお話もございました。やはり、団塊の世代のジュニア世代、この方たちに対して今どのような手当てを施していくか、その意味では、先送りではなくて前倒しで実施することも大事ではないかと思います。ぜひとも、今後の利用状況を検証いただきまして、また適切な措置をお願いしたいと思います。

 あわせまして、もうこれは関係者から大変強い御要望でございます、不妊治療を保険適用にお願いできないか、このことにつきまして御見解を伺います。

水田政府参考人 不妊治療の保険適用の問題でございますけれども、これは我が国の医療保険制度においての基本的な考え方ではありますけれども、やはり、疾病あるいは負傷の治療に関しまして、有効性、安全性、普及性等の確立した技術について保険適用するということがこれまでしてきたことでございます。

 したがいまして、不妊治療につきましても、ホルモンの異常でありますとか、あるいは子宮、卵管の機能障害、こういった身体の異常に対する治療につきましては保険適用しているところでありますけれども、一方で、人工授精あるいは体外受精につきましては、原因疾患との関係が必ずしも明らかでなく、疾病の治療と言えるかどうかという点でありますとか、あるいはその成功率が必ずしも高くないということを考慮いたしまして、保険適用とはしていないところでございます。

 こうした事情を踏まえて、先ほど来のお話ありましたとおり、公費助成の仕組みができたものと承知しておりまして、不妊治療の保険適用につきましては、こういった点を総合的に踏まえながら、慎重に検討する必要があると考えてございます。

高木(美)分科員 これは、今御答弁にありましたとおり、検証がなかなかまだなされていないという経緯も伺っております。後ほどまた質問とあわせて申し上げさせていただきたいと思いますが、やはり、今実態がどのようになっているのか、また、このことによりましてどのような効果が生まれているのか、まず実態調査から適切な調査をお願いできればと思っております。そのことに基づいて、ぜひとも、公費助成等々、総合的に含めて、不妊治療といいますのは、大変進んでいるようで、ただ光の当たらない、そうした分野でもございます。御検討をお願いしたいと思います。

 次の質問でございますが、新薬のセトロタイドというのがございます。これは、高齢の患者の方であるとか難治性不妊症患者の方に対しまして効果がある、またそして体への負担も少ないと言われておりまして、既に八十九カ国で許可をされていると伺っております。

 日本でのこの新薬セトロタイドの許可の見通しについてお伺いいたします。

福井政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の、不妊治療に用いられます医薬品、酢酸セトロレリクス、これは一般名でございますけれども、予定販売名、セトロタイド注射用ということで承知をいたしておりますが、これにつきましては、本年一月二十六日に開催をされました薬事・食品衛生審議会の医薬品第一部会において審議がなされまして、承認して差し支えないとの結論をちょうだいいたしたところでございます。

 現時点におきましては、この結果を三月の同薬事分科会に報告をいたしました上で、四月中に承認される見込みであるというぐあいに考えております。

高木(美)分科員 大変力強い答弁をいただきまして、ありがとうございます。恐らく、このことによりまして負担が軽減されるとお喜びの方はどれほどいらっしゃるかと思います。

 その際、セトロタイドが四月中に承認されるというこの流れが最終決定した場合でございますけれども、今、このセトロタイドにつきましては、海外で広く自己注射が行われております。今、我が国でも、糖尿病についてのインシュリンの自己注射は既に行われているところでございます。こうした求めるお声の多い方たちは、仕事を持っていらしたり、またこうした不妊治療の通院のために遠距離を通っていらっしゃる。交通費だけでも大変な金額である。注射のために会社を抜け出す、また注射のために遠距離を通う。これは大変負担の軽減になるのではないかというお話もございます。この自己注射につきまして、御見解を伺います。

松谷政府参考人 注射につきましては、一般的に言いますと、いわゆる医行為でございますので、これを反復継続する意思を持って行う場合には、法律上、医師、看護師等の資格を有する者でなければならないということにされているわけでございますが、一方、セトロタイドがどのような用法、用量によって承認されるかにもよりますけれども、一般的に申し上げますと、承認時の用量や用法を遵守するとともに、十分な患者さんの教育などを行った上で自己注射するような場合につきましては、公衆衛生上の危害の防止という医師法の趣旨にかんがみますれば、糖尿病の自己注射と同様に、違法性は阻却されるのではないかと考えております。

高木(美)分科員 大変にありがとうございます。ぜひとも円滑に進めていただきますように、心よりお願いを申し上げたいと思います。

 次に、不妊治療のカウンセリングにつきまして御質問をさせていただきます。

 まず、不妊治療相談センターの今の設置状況と役割についてでございますけれども、どうしても、病院に行きまして、そこにも窓口はございますが、そこで相談をしますと治療ありきのカウンセリングになる、こういう多くのお声でございます。むしろ中立的な立場から、例えば子供を持たない夫婦の生き方の選択があるということとか、また、こうした不妊治療によりましてどのようなリスクが想定されるのか、心理的な、身体的な負担を含めましてきめ細かくカウンセリングを提供すべきだと考えております。また、質の高いカウンセリングをお願いしたいとも思っております。この不妊治療相談センターにつきましてお伺いをさせていただきます。

北井政府参考人 不妊に悩む方々に対しましては、的確な情報を提供し、専門的な相談に応じられる体制を地域において整備することが重要でございますので、保健所でありますとか女性センター、公立病院などにおきまして、専門医などが不妊に関する医学的な相談や心の悩みの相談などに応じます不妊専門相談センター事業を行っているところでございまして、実績は、今全国で五十四カ所ということになっております。

 それで、子ども・子育て応援プランにおきましては、平成二十一年度までにすべての都道府県、指定都市、中核市、これは合わせますと九十五ほどになりますけれども、九十五まで設置を目標としているところでございまして、未設置の自治体に対しましては、引き続き情報提供をして、早期に設置されるように促していきたいというふうに考えております。

高木(美)分科員 これは通告を申し上げていないんですが、そうしたカウンセリングの方たちへの、質の向上といいますか、定期的な研修というのはどのようになされているのでしょうか。おわかりの範囲で結構です。

北井政府参考人 センターにおきます専門医あるいは助産師、看護師さん等の研修についてでございますけれども、かなりの都道府県におきましてみずから実施をされておる研修もございます。私の手元にあります数字では、三十三の都府県市でみずから研修を実施しているということになっております。

 それから、国の事業といたしましては、日本家族計画協会に委託をいたしまして、不妊専門相談研修を年十回ほど行っておりまして、この研修に各地のセンターの相談員さん等をお招きいたしまして研修をして、相談、指導の一層の質の向上に努めているところでございます。

高木(美)分科員 ありがとうございます。

 特に、不妊治療を望む方たちの心情といいますのは、どうしても周囲から、結婚した、子供はまだなの、そういう本当につらいお声がけにさらされているという状況もございます。そうした点も考慮していただきまして、ぜひとも、こうした研修につきましては、心理的なところまできめ細かく行き届きますような研修をお願いしたいと思います。

 その上で、患者の方たちが一番知りたいと思っていらっしゃることは、一つには病院の情報公開があります。どこの病院が安全なのか、またどこの病院が質の高い医療を提供してくれるのか、そして成功率が高いのか、そのためにどこに行けばいいのか、こうした情報でございます。

 今回の医療制度改革の中にも、患者本位のということで、情報公開についてるる盛り込まれておりますけれども、ただ、がん等の病気になりますと、もともと重篤な患者の方と、初期の患者の方と、ステージの差によりましても当然生存率が異なる、そういう状況がありますので、これを一概に情報公開するというのはかなりの検討を要するとも認識をしております。ただ、不妊治療といいますのは、ある程度出発の条件は同じではないかと思われます。この情報公開についてお考えを伺います。

松谷政府参考人 先生御指摘のとおり、今国会に提出いたしました医療法等の一部改正法案におきましては、患者さんによる医療に関する選択に資する一定の情報につきまして、医療機関から都道府県への報告を義務づけて、都道府県がそれをわかりやすく地域住民に公表する制度を創設することといたしてございます。これは、医療に関する情報提供を推進して、患者さんあるいは国民による医療に関する適切な選択ということを支援していくということは非常に重要だという観点から御提案申し上げているものでございます。

 この制度におきまして、都道府県への報告の対象となる一定の情報につきましては、その具体的な範囲について今後検討することとしてございますけれども、不妊治療の実施等につきましても、医療の内容に関する事項の一つとして検討の対象としていきたいと思います。今先生御発言のような要件等もその考慮の対象になるのではないかと思っております。

 また、この制度におきましては、都道府県は、報告のあった情報をインターネットなどを通じて広く公表することといたしてございまして、その情報は、不妊専門相談センター等関係機関におきましても幅広く活用していただけるものと考えております。

高木(美)分科員 ぜひとも、今御答弁いただきましたとおり、推進を心よりお願い申し上げます。

 重ねまして、不妊治療の質の向上についてでございます。

 今、医療の質の中身につきましては、産科婦人科学会の自主規制に任せているという状況でございます。ただ、よく聞きます話は、大変傷ついたという方等のお声でございますけれども、中には、病院によりましては、商業主義に走っていたり、また、果たして治療の効果を上げてくれているのかという疑問を持たれるような病院もあるやに伺っております。こうした不妊治療の実施が広がる一方で、各診療機関における倫理規定が不明でぜひ調査をしてほしい、こういうお声もございます。

 翻って、産科婦人科学会の会告等も拝見をいたしましたけれども、今、施設基準というのも特に決められてはいないという状況と認識をしております。果たして治療が適切に行われているのか、またそれを指導する機関もない。むしろ、あくまでも自主的な管理に任されているという状況でございまして、質を高めるための工夫や努力が患者さんにとっては待たれるところでもございます。中には、病院によりましては、独自の基準をつくって、それをインターネット等に公開をしながら、あえて厳しい認定基準に挑戦をしているというような病院も伺っております。

 産科婦人科学会がこれまで会告としてずっと出していらっしゃいますけれども、これを、例えば国としてもしくは学会として、もう一度ガイドラインを総合的にまとめる、こういうことをお考えなのかどうか。また、質の向上につきましてどのように今後進めていかれるおつもりなのか、まずこのことを伺いたいと思います。

北井政府参考人 今お話しのように、不妊治療の技術というのは、近年急速に技術進歩しておるところでございますし、また不妊治療自体も急速に普及をしてきている途上にあるわけでございます。そうした中で、やはり不妊治療を実施する医療機関につきましては、高い技術のもとに十分な理解と倫理観を持った、そういう対処ができる医療機関であることが求められると考えております。

 しかし、今までのところ、確かにそうした自主規制というのは産婦人科学会の会告によっていたところが多いわけでございますが、厚生労働省といたしましては、不妊治療の安全性や医療の質の向上を図るために、現在、厚生労働科学研究におきまして、不妊治療を実施する医療機関が具備すべき設備や体制について調査を行って、知識の集約を図っているところでございます。三年間の研究でございますので、もう一年度かかるかと思いますけれども、そうした知見を踏まえて、不妊治療を実施する医療機関の基準等についても今後議論をしていきたいというふうに考えております。

高木(美)分科員 ありがとうございます。

 局長に重ねてお伺いしたいんですが、今、三年間こうした知識を集積して、もう一年この集積についてはかかります、その上で知見等に基づいて検討しますというお話でございましたけれども、そうしますと、大体いつごろを目指していらっしゃるのか、あらあらのタイムテーブルで構いませんので、教えていただければと思います。

北井政府参考人 そういう知見の集約を踏まえて、さらに関係の学会、関係者等とも十分詰めなきゃいけませんので、今のところ、議論を始めたいということでございまして、例えば、必ずしも、今、国がみずからの基準をつくるというようなところまで私どもは詰め切っているわけではないのでございますが、十八年度中にまとまると思いますこの研究班の報告を踏まえて、早急に議論を始めたいというふうに思っております。

高木(美)分科員 今の早急にという、このことは大変大事な点ではないかと思います。どうか何らかの措置を早急に講じていただきますようにお願いしたいと思います。

 本来は、こうしたことを全部含んで、生命倫理法であるとかそうしたものが制定されまして、それに基づいて総合的に整備される、そういうものではないかと思っております。それが確かに望ましいというふうに思うんですけれども、ただ、生命倫理法というこの法につきましても、制定を目指すのは楽観できない現状にあるということもよく認識をしております。

 その上で、この治療の質の向上、そしてまたそれに伴います倫理規定の問題につきまして、大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

川崎国務大臣 今、高木委員から、不妊治療の重要性、また問題点等るる御質問をいただき、私も横で答弁を聞かせていただいて勉強させていただきまして、ありがとうございました。

 若い夫婦に我々どうやって応援をしていくか。一つは経済的な支援、雇用の面での支援、それから保育での支援、こんなのを三つの柱と考えておりましたけれども、医療の側面からの不妊治療もある意味では四つ目の柱かな、こんな思いで聞かせていただいたところでございます。私自身、実は八年かかりましてね、子供、そういった意味では同じ心境に立ったこともございますので、もう少し応援できないだろうかと。

 今回、予算で、十万円、二年から五年ということで拡大をさせていただきましたけれども、御指摘のあった、保険を適用するということは、多分坂口大臣の時代からずっとお考えいただいていて、なかなか抜けない課題でございました。何か方法はないのか、もう少し勉強したいなと思っています。

 しかしながら、もう少しこの問題について応援をしなきゃならない時代を迎えているのではなかろうか。六月に与党として考え方をまとめていきたい。公明党さんはその前にたしか御提案をいただくとも聞いております。そういった中でこの不妊治療問題というものをしっかり位置づけながら、どこまでやれるかというのを厚生労働省として真剣にやっていきたい、こう思っておりますので、また委員の御協力のほどお願い申し上げたいと思います。

高木(美)分科員 ただいまの大臣の力強い御答弁を伺いまして、大変心から感謝申し上げる次第でございます。

 実は、不妊治療につきましてもさらに検証をお願いしたいというふうに思っております。医学界の中でも、不妊治療によってむしろ低体重児とか障害児であるとか、そういったお子さんがふえるのではないかという懸念を持つドクターもいらっしゃいます。また、反面、そうではなくて、例えば体外受精等においても、良質の受精卵を摘出するのでかえってそこは適切にできる、こういうドクターもいらっしゃいます。

 そうした、一つ一つやはりこれは医学的な検証も必要でございますし、今、医療の側面というお話もございました。ぜひとも総合的に、これを若い女性の問題、若いカップルの問題というのではなくて、むしろこれをぜひとも大きく取り上げていただきまして、若いカップルが安心してこうした治療を受けられる、このような体制づくりをお願いしたいと思います。

 もう時間も迫ってまいりましたが、今、着床前診断、このことにつきまして、るる話題になっておりますこの対象の拡大につきましてどのようにお考えになるか、また、着床前診断に限らず、生殖補助医療の法制化につきましてどのようにお考えになりますか、この点につきましてお伺いをいたします。

北井政府参考人 現在、産科婦人科学会におきまして、着床前診断の適用対象拡大に係る議論が行われていることは承知しているところでございまして、これまで重篤な遺伝性疾患を持つ患者に対する臨床研究に限定しておりました着床前診断の適応を、習慣流産にも拡大するという方向で検討が進められているというふうに承知をいたしております。

 厚生労働省といたしましては、臨床研究の話でございますので、学会の判断を尊重したいと考えているところでございまして、今後とも学会の議論を見守ってまいりたいと考えております。

高木(美)分科員 もう一つ、生殖補助医療の法制化につきましてお願いいたします。

北井政府参考人 恐れ入ります。

 知見が十分でございませんので、ちょっと正しいお答えができかねますので、申しわけありませんが、法制化についての方向づけについては今ちょっと答えることができません。お許しいただきたいと思います。

高木(美)分科員 ぜひとも、ヒト胚の取り扱いも含めまして、生殖補助医療の法制化につきまして総合的な御検討をお願いしたいと思います。

 最後に、先ほど大臣より御答弁いただきましたけれども、少子化につきまして、そしてまたこのような若いカップルに対しまして、大臣のお考え、また御決意を最後に伺いまして、終了させていただきたいと思います。

川崎国務大臣 昨年の暮れに、百六万六千人の子供が生まれて、亡くなられた方が百七万六千人、一万人、人口減少社会に入った。それを一つのきっかけとしながら、少子化問題に対する議論というのは非常に高まってまいりました。我々だけで考えているのではなく、国民全体の考え方の中でまとめていかなきゃならぬ。そういう意味では、産業界の皆さん方やいろいろな有識者の皆さん方にもお入りいただいてこの議論をいたしております。

 そういった中で、先ほど申し上げましたように、この不妊治療の問題というのも大きなウエートを占めるものだな、こういう認識をさせていただいておりますので、先ほどからお話しいただいておるように、そう時間をかけるわけにはいかないという認識の中で頑張ってまいりたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。

高木(美)分科員 ありがとうございました。

 以上で終了いたします。

森主査 これにて高木美智代君の質疑は終了いたしました。

 次に、斉藤鉄夫君。

    〔主査退席、根本主査代理着席〕

斉藤(鉄)分科員 公明党の斉藤鉄夫でございます。どうかよろしくお願いいたします。

 私は、がんの放射線治療の質問と在外被爆者の質問、この二つ行わせていただきます。

 まず、がんの放射線治療についてでございます。

 公明党の中にがん対策本部というものができまして、私も、勉強のためにそこに入って、いろいろな方からお話を伺いました。そうしたところ、日本の放射線治療が非常におくれているという話を聞きました。

 実は私、理学部の出身で、卒業論文と修士論文は放射線をはかって論文を書いた。放射線取扱主任第一種という資格も持っておりまして、それでは、この放射線治療が日本でおくれているんだったら少し私勉強してみようということで勉強を始めたところ、大変大きな問題が横たわっているなということを感じた次第です。きょうは、それを大臣にも聞いていただき、また問題提起をさせていただきたいと思います。

 がんの治療には、これは釈迦に説法ですけれども、手術で切り取るという外科的方法、それから抗がん剤等の内科的方法、化学的療法とも呼ばれておりますが、それから放射線治療、この三つがあるそうでございます。

 アメリカ等では患者の六〇%は放射線治療を受けているということで、この放射線治療がかなり進んでおりますが、日本は大変おくれている。患者さんの二〇%程度というふうに聞きました。

 その理由は、これまで日本は胃がんというものが多くて、これは切り取って治すというのが最もいいそうですので、その外科的手法が主流だったということで、これはよく理解できるんですけれども、これからいろいろな生活の変化に伴って多様ながんの種類が生じてくる。そういうものに対して、日本も、放射線治療が適しているがんの部位というのもたくさんあるということがわかってきております、放射線治療を拡充していかなくてはいけないのではないか。

 それから、もう一つ非常に強く感じましたのは、いわゆる緩和ケアということについてこの放射線治療というのが非常に大きな役割を担っているということも勉強してまいりました。

 こういう観点から質問させていただきたいと思います。

 がんの放射線治療の特徴は三つあって、一つは低侵襲性、体そのものを余り傷めないということ。だから、ある意味で、高齢の方にも、また体力が大変弱っている方にも適用できる。それから二番目に、臓器の機能や形態の温存。切らないわけですから、例えば喉頭がんにしましても乳がんにしましても、そのまま形態を温存できる。治療後のクオリティー・オブ・ライフが非常に高いものになる。それから、安い。私、重粒子線とか陽子線とか、巨大な加速器を使うイメージがありましたので高いものだと思っておりましたら、リニアックやいわゆる密封小線源のものもたくさんございまして、基本的には安いものだということを勉強しました。

 こういう三つの特徴を持っているこの放射線治療なんですけれども、先ほど申し上げましたように、日本では大変おくれている。

 人口百万人当たりの放射線腫瘍医、放射線治療のお医者さんですけれども、アメリカに比べると五分の一でございます。リニアックや治療施設、施設そのものは半分ぐらいでございまして、遜色はあるんですけれども、それに対して、お医者さんそのものは五分の一、それから放射線技師さんも三分の一程度で、大変おくれている。これをまず何とかしなきゃいけない、このように思うんです。

 これは医学教育とも関連しますけれども、厚生労働省の立場から、この専門医の不足、これに対してどう考えているのかということをまずお伺いしたいと思います。

中島政府参考人 ただいまの放射線の関連の医師及び技師が不足しているのではないかという御指摘でございますが、ただいまお話にもありましたように、我が国のがん治療におきましては、これまでの経緯もこれあり、放射線治療の専門医、放射線技師の数が十分とは言えない現状にあるのは御指摘のとおりであろうというふうに認識しております。

 このため、がん医療の水準均てん化の推進に関する検討会の報告書を踏まえまして、国立がんセンター等における医師、放射線技師等、がん専門医療者指導に対する研修コースの新設でありますとか、がん診療連携拠点病院の医師や診療放射線技師等の研修の拡充などに努めているところでございます。

 がんの専門医や診療放射線技師等の育成につきましては、関連学会におきましてもさまざまな取り組みがなされておるところでございまして、こうした学会等との連携を図りつつ、がんの専門医療従事者の育成、確保に努めてまいりたいと考えておるところでございます。

斉藤(鉄)分科員 この点、ぜひよろしくお願いいたします。

 放射線治療そのものを行うお医者さんの養成や集中化ということも必要だと思いますし、また、均てん化というお話がございましたが、お医者さん全体にこの放射線治療に対しての知識を持ってもらって、例えば、このがんだったら、またこの部位だったら、また患者さんがこういう状態だったら、緩和ケアということも兼ね合わせてという面も含めて、放射線の方が適当だという知識を持っているお医者さんも少ないというふうに聞きました。そういう意味での対応をよろしくお願いいたします。

 それから二番目の質問ですけれども、アメリカと比べて最も大きな違いは、実は、フィジシストの違いでございます。

 アメリカでは、お医者さんと、お医者さんの数に匹敵するいわゆる博士号や修士号を持った理工学出身者の人たちがいて、この人たちが、例えば、放射線が当たったときにその放射線が体内でどういう挙動をするかというのはモンテカルロ計算をするわけですけれども、そういうことをきちんとやって、それを支えるまた技師さんがいる。このいわゆるフィジシストと言われる理工系出身の、ある意味では、格とすればお医者さんと同格の人たちがアメリカでは同数いて、その人たちが計画を立てる。

 ところが、日本はその人たちが全くいなくて、人口百万人当たり日本は〇・三人、アメリカは九・一人、英国、ドイツ等でも八人とか六人とか。この人たちがいない。ここの部分を育てる。実際、放射線を扱うわけですから、お医者さんとともに放射線のことをよくわかった、また放射線のいわゆる物質内挙動のことをよくわかった人たちが計画を立てなきゃいけないんですけれども、ここをどう育てるかということも大変必要だと思うんです。

 国立弘前病院等、事故が多発しました。この事故の多発も実はそこに原因があるのではないかと言われておりますが、ここの部分、どのようにお考えでしょうか。

松谷政府参考人 放射線治療につきましては、治療を行うお医者さん、医師が、医学及び理工学などの知識に基づきまして人体へ放射線照射を行う診療放射線技師など放射線治療分野における専門的な医療従事者との連携のもとに、患者さんの状態に応じた適切なチーム医療を行うことによりまして、この分野における治療の質の確保が図られているというふうに考えてございます。いわばチーム医療をしなければならない分野だというふうに考えてございます。

 御指摘の医学物理士でございますが、これは日本医学放射線学会が認定をしておる資格でございます。また、これとは別に放射線治療品質管理士というものが、これも、日本放射線腫瘍学会など五団体が合同で創設をいたしました放射線治療品質管理機構というものが認定をしている資格がございます。この辺は、一昨年、全国で頻発した誤照射事故などにもかんがみて、こういう形の資格が認定されるようになってきたということでございます。これらの医学物理士あるいは放射線治療品質管理士につきましては、医師や診療放射線技師など、放射線診療に関係する職種とともに、チームの一員として事故防止のために鋭意努力していただくべきものと考えてございます。

 しかしながら、今御指摘の両資格につきましては、学会認定でございますので、さらに関係団体等において類似する資格等が存在しているということから、なお整理が必要な資格であるというふうに考えてございます。

 いずれにしても、一昨年、全国で頻発いたしました誤照射事故につきましては、その後の医療機関における事故防止のための努力の結果、適切に対策がとられつつあるというふうに認識してございますけれども、引き続き、関係職種の連携によりまして安全で安心できる医療の提供ということを期待しているところでございます。

 先生御指摘のとおり、この関係の職種につきましては、まだまだ研修を続けなければなりませんし、その数もふやさなければなりません。また、お医者さんの放射線治療に対する認識というものについても、まだまだ啓発をしていかなければならない状況にあるということは御指摘のとおりでございまして、厚生労働省としても引き続き努力してまいりたいと思っております。

斉藤(鉄)分科員 日本の医療界で一つこれからの課題だなと思うのは、いわゆる理学、工学を出た人たちが、本来、お医者さんとまず協力して活躍しなきゃいけないと思うんですが、その人たちの場がないんですね。アメリカではそういう場があって、かなり高い待遇も与えられている。日本は、大体、メーカーにいらっしゃって、非常に安い給料で非常に働かれているんですけれども、日本もそういう人たちがある程度の待遇を持って、立場も与えられるような立場になれば、医学そのものの発展にも非常にいいと思うので、ぜひ考えていただきたい、このように思います。

 それから、この放射線治療をやっていらっしゃる先生方のお話を聞くと、大きな問題点として、講座もそもそも非常に少ないんですけれども、その講座があっても、放射線診断学、いわゆる放射線を使って診断をする、がんがどこにあるかとか、そういう診断学と同じところに押し込められていて、大体ボスはそちらの方なんだそうです。治療の方はその日陰にいる、ここも一つ大きな問題だと。放射線とついているから一つところに押し込められるんだけれども、診断と治療は全く違うものだ、ここをぜひ改めてほしいという生の声も聞いたんですが、これはどうでしょうか。

中島政府参考人 ただいまの御指摘でございますが、がんの医療を推進する上で、手術それから化学療法と並びまして、放射線療法は、またこれらをあわせて治療するというようなこともございまして、大変に重要な治療法であると認識をしておるところでございます。

 このため、現在、がん診療連携拠点病院という整備を進めておりますが、その指針におきまして、診療体制として、放射線治療の専門的知識を有する医師の配置、それから、特に放射線治療をその拠点病院の専門分野に掲げる場合の、専ら放射線治療に従事する診療放射線技師の確保などをその指針の中に掲げているところでございます。

 今後とも、専門的な放射線治療を担うことが可能ながん診療拠点病院の全国的な整備を進めてまいりたいと考えております。

斉藤(鉄)分科員 そうなんですけれども、治療と診断というのは違うと思うんですね。放射線を使って診断をする、これは非常に大事な分野ですけれども、それで治療するというのとは全然違いますから、そこをぜひ分けて考えて、かつ、治療のところをたくさん支援する必要があるのではないかという趣旨でお話しさせていただきました。

 それから、理学、工学、医学、この三者が協力して日本の医療の質を高めていくというのがこれからの私はポイントだと思いますが、その中で、医薬品の承認が遅いという話はよく聞くんですが、医療機器の承認も非常に遅いというお話を聞きまして、先日、朝日新聞で「七不思議 ニッポンの医療機器」と七回シリーズで出ておりまして、私も読みましたけれども、承認が一番早いのがヨーロッパ、次が米国、日本はぬきんでて遅い、このように書いてございました。放射線治療の場合、まさに物理医療機器が道具になるわけでございまして、ここの承認を早くするということが非常に大事だと思います。そのスピードを上げるということ。

 それから、お話を聞く中で、ガンマナイフとCTを組み合わせるというふうな新しい機器を、先ほど話が出ました、診断と治療を同じ機械の中に組み込むという場合、CTはCTでもう認められている、ガンマナイフはガンマナイフで認められている、しかしそれを合体したものは全く新しい機器とみなされて、またすごい承認に時間がかかる。欧米では、そういう既存のものを組み合わせた場合は非常に早いんだそうです。そういうところも不合理ではないかというふうな生の声も聞いたんですが、この医療機器の承認を早くするというのは、日本の医療レベルを上げるという意味でも、それから医療産業の振興という意味でも大変重要だと思います。

 日本の医療機器は中古品市場だという声もこの新聞に出ておりました。この点については、いかがでしょうか。

福井政府参考人 お答え申し上げます。

 新しい医療機器につきましては、これは審査を担当いたしております医薬品医療機器総合機構でございますけれども、ここにおきまして、安全性の確保を前提としつつ、より迅速な承認審査を進めるべく審査体制の整備等に取り組んでいるところでございます。

 具体的に申し上げますと、医学、工学等の専門的知識を有する審査担当者を順次増員いたしてきておりますとともに、研修を通じまして担当者の資質の向上、あるいはチームで審査を行うチーム審査制の実施など、より効率的に審査を行うことができるようにしてきているところでございます。

 また、医療機器の承認申請を行う企業におきまして申請資料をできる限り早く用意できるようにするとともに、総合機構におきまする審査が円滑に行われますよう、厚生労働省におきまして、医療機器の種類ごとに、申請に必要な資料の内容等をより詳細に示した承認基準の作成を順次進めているところでございます。

 さらに、企業による革新的な医療機器の開発の促進、承認審査の円滑化を図るため、今年度からでございますけれども、革新的な医療機器の実用化に必要な留意点などをまとめました評価指標ガイドラインの作成を開始いたしたところでございます。

 こうした取り組みを通じまして、新しい医療機器の審査の迅速化が図られるよう努めてまいりたいと考えております。

斉藤(鉄)分科員 どうか、日本の産業力そのものにも直接響いてまいりますので、よろしくお願いいたします。

 最後に大臣にお聞きをいたします。

 現在、この放射線治療は日本で年間十七万人だそうです。しかし、今後高齢化が進み、二〇一〇年には二十五万人になる、そして、アメリカと同様に、五〇%、六〇%という人が緩和ケアという分野も含めて放射線治療を受けるようになれば、二〇一五年には大体五十万人に達する、このように厚生労働省の研究班の報告書にもございます。それを担うお医者さん、そして、先ほど言いましたフィジシスト、そして技師の方、これがもう全然不足している状況ということで、ぜひ対処をお願いしたいと思います。

 また、予算委員会の総括質疑でうちの政調会長の井上が、いわゆる緩和ケアという考え方を、根治が無理だったらその瞬間からいわゆるホスピスという考え方ではなくて、治療の初期から緩和ケアということも考えた治療体系に直していくべきではないかということもあって、そうなりますと、いよいよこの放射線治療というのが大きな比重を占めてまいります。

 大臣のお考えをお伺いいたします。

川崎国務大臣 まず、がん治療の技術について、特に放射線と抗がん剤、この分野については我が国はおくれている、人員的に足りないという認識を、局長も答弁いたしましたように、はっきり認めた方がいいんだと思うんです。さあ、それではどうするんだというところに移ってきている。ですから、問題意識がそれではどうするんだというところへ移ってきたと思っております。その中に、今委員が御指摘いただいたように、必ずしも医学者だけではなくて理工なり工学の方からのアプローチもあるよ、こういう御指摘をいただきました。まさに複合的にがん治療というものをどう考えるか、全体を構築しなきゃならぬだろうと。

 その中で、もうそろそろ出てくると思いますけれども、国立のがんセンターを独法化する、ただし、今政府が言っているような、公務員の数を減らして効率化をするという概念ならば私はやらない、こういう回答をいたしております。

 これは、民間と力を合わせながら、がんセンターの機能もより大きなものにしたい、予算もたくさん出したい、そういう位置づけでがんセンターをこれから育てていきたい。いろいろありますけれども、だれかがトップランナーで引っ張らなきゃならぬ。もちろん、いろいろな大学の医学部があるんだろうと思いますけれども、やはり厚生労働省としては、国立のがんセンターをまず引っ張り上げて、その山をできるだけ高くして、そして地域の拠点病院にこういう治療法ということでしっかりやる、また、その人たちががんセンターへ来て研修ができる、新しい技術を習得しながらまた地方へ戻るという形の中で、新しいがん治療の姿というのをつくっていかなきゃならぬ。そういう意味で、がんセンターを中心としながら、地域の診療拠点病院というものとタイアップしながらやっていきたい。

 それには、正直、公明党さんと力を合わせながら予算もふやしていかなきゃならぬという問題も抱えると思いますので、どうぞ御支援のほどお願い申し上げたいと思います。

 一方で、政調会長から御質問をいただいて、緩和ケアの問題についてお答えを申し上げました。もう既にそこでお答え申し上げましたので、そこにもいらっしゃいましたのであえて申し上げませんけれども、緩和ケアの大切さというものも、同時に私ども進めてまいるつもりでございますので、このことについても御協力をお願い申し上げます。

斉藤(鉄)分科員 大臣の大変心強い御答弁をいただいて、私も一緒になって頑張っていきたい、公明党も一緒になって頑張る、この決意を表明させていただきます。

 次に、在外被爆者の問題で、私は超党派の在外被爆者に援護法を適用する議員の会の事務局長をやっておりまして、その立場で質問させていただきます。

 平成十三年八月一日、当時の、いらっしゃいますが、坂口厚労大臣から在外被爆者に関する検討会が設置されました。そして、同年十二月十日に取りまとめた報告書には、共通の認識として「居住地によって援護の程度に差をみることは不合理である」と書かれております。この見解は今も厚生労働省の基本的な方針として変わりはないでしょうか。

川崎国務大臣 平成十三年十二月に取りまとめられた在外被爆者に関する検討会報告書において、「人道上の見地からは、その現在の居住地によって援護の程度に差をみることは不合理であるというのが、各委員共通の考え」と述べていることは私ども承知しております。

 一方、外国にお住まいの被爆者の場合には、国によって医療制度や社会経済情勢が異なり、また、そもそも日本の主権が及ばない中での援護となることから、国内にお住まいの被爆者と全く同じ援護策ということになると、難しい面はあると思っております。しかしながら、実施可能なものから逐次取り組みを進めることが肝要である、このように考えております。

斉藤(鉄)分科員 ありがとうございます。

 平成十四年、在外被爆者支援事業が開始されましてから三年余り経過いたしましたが、まだ多くの在外被爆者が被爆者健康手帳の交付を受けることができておりません。被爆者健康手帳の交付を望み、申請書を都道府県知事あてに提出しながら、被爆六十年以上経過し確認審査が進まず、交付されていない実情が多数あります。とりわけ、韓国被爆者の場合は、約三百人が申請書を提出したまま審査が前に進んでいないようでございます。

 この問題に対しまして、我々も一生懸命議連としても動きまして、在外被爆者の居住国に担当職員を派遣して、特に韓国の場合ですが、面談審査する方策が検討されているということでございました。担当職員の海外現地派遣に関しては、韓国だけでなく、ブラジルやアメリカの被爆者からも同様に強い要望が寄せられております。

 厚生労働省として、現在どのような姿勢で取り組まれているのか、また具体的な状況はどうなっているのかということについてお聞きしたいと思います。

中島政府参考人 ただいまの御指摘につきましては、旅費あるいは滞在費の支給を受けて日本に来られて被爆者健康手帳の申請をしようとする在外の方につきまして、旅費等の支給対象となる方かどうか、すなわち手帳の交付の見込みがある方かどうかの審査、いわゆる事前審査と言っておりますが、これに時間がかかっているのかどうかというような御趣旨かと承っております。

 この点につきましては、平成十四年度に手帳の交付の渡日支援事業の開始に伴いまして非常に多くの申請があったことによるものと考えてございますけれども、広島、長崎、四県市にも御協力をいただきまして、未処理の件数は、平成十六年の十月末で六百二十七件あったものが、昨年末には四百九件と、このうち韓国の件数は三百六十五件でございますけれども、大分減少してきているというところもございます。

 お尋ねのブラジルあるいはアメリカにつきましては、韓国と同様の対応をとるということには困難な面もございますけれども、広島、長崎の四県市が現地の健康相談事業を実施する機会を利用いたしまして何らかの対応ができないか、四県市の考え方についてもお聞きしてみたいと考えております。

斉藤(鉄)分科員 厚生労働省が本当に工夫しながら前に進めていただいているということは、我々も十分認識しておりまして、その御努力に心から敬意を表しているものでございますが、当事者の方々も大変お年をとられて、生きている間に何とかという思いも我々に伝わってくるものですから、引き続き御努力、どうかよろしくお願いをいたします。

 平成十四年十月から在外被爆者保健医療助成事業が始まりました。その助成金には上限が設けられておりまして、通院治療の場合は一人当たり十三万円、入院治療の場合は一人当たり十四万二千円となっております。ところが、実際に助成事業が実施されてみますと、各国の状況に適合していない点が少しずつ明らかになってきました。

 私も、先日韓国に、在外被爆者を招いての広島交響楽団のコンサートを企画いたしまして、行って、そのときにいろいろな方に御意見を伺ったんですが、韓国では、被爆者の治療の内容によって上限枠を超える被爆者もいれば、超えない被爆者もいる、個々人当たりの上限枠ではなく、韓国全体の予算枠の中で有効に使えるようにしてほしい。これも非常にリーズナブルな要望だったので、こういうことも考えていただきたいな。

 それから、アメリカの場合は、民間保険に加入することによって医療費がカバーされるケースが多い。日本政府は、アメリカの被爆者に対しては、医療費の自己支払い分を医療助成事業の対象としているために、民間保険に加入している人はみずから保険料を負担することによって本来受けられるはずの支援の金額が減るという矛盾が生じております。

 ブラジルの場合は、民間保険に加入しなければ十分な医療を受けられないということから、その保険料、加入の助成を行っているんですが、経済的に余裕のある人は自費で足りないところを補って保険に加入しますけれども、余裕のない人は保険に加入できない、結局支援は何も受けられないというふうな状況があるそうでございます。

 このように、各国の状況に合わない問題点が指摘されていますが、その改善をぜひ図っていただきたいということで、これまでのこの支援、医療助成事業の実施の状況と、今後、このような問題点があるということを踏まえて、どのように対処されるかということを最後にお伺いいたします。

中島政府参考人 ただいま御指摘の事業につきましては、在外被爆者の方々がそのお住まいの国で医療機関にかかったときの医療費、この自己負担でございますけれども、これを助成するというものでございます。在外被爆者の高齢化の進展に照らしまして、平成十六年度にスタートさせたというものでございます。

 この事業の創設に当たりましては、在外被爆者の方々の御意見も十分に聞く必要があると考えまして、担当官を韓国、米国、ブラジルに派遣いたしまして、現地の被爆者協会への説明を行うとともに、その御要望も伺ったところでございます。

 その結果、御要望を踏まえまして、例えば韓国につきましては、助成対象とする医療費の範囲を韓国の医療保険の範囲にとどめることなく、日本の医療保険の範囲まで拡大をする。例えば、強い要望のございました入れ歯とか人工関節、MRIの検査なども助成対象とするというようなこととともに、予算額と実際の助成額の差につきましては、大韓赤十字社が被爆者に対しまして実施する健康診断、健診事業の財源に充てることができるというようなことといたしましたほか、ブラジル等南米につきましては、民間医療保険に加入しなければ十分な医療が受けられないという事情に配慮いたしまして、特例として、医療費の自己負担ではなくて、民間医療保険の保険料を助成対象とするなどの措置を講じてきたところでございます。

 この事業につきましては、本格的な実施からようやく一年が経過をしたという段階でございまして、具体的な実施状況につきましては、今後注視をしてまいりたいと考えております。

斉藤(鉄)分科員 ありがとうございました。

根本主査代理 これにて斉藤鉄夫君の質疑は終了いたしました。

 次に、内山晃君。

内山分科員 民主党の内山晃でございます。

 早速、時間がありませんので、質問に入らせていただきたいと思います。

 いささか古い話でありますけれども、平成十四年九月、千葉県松戸公共安定所にて千葉県我孫子市の日立精機株式会社から提出された再就職援助計画書の受理手続に疑義がありますので、質問をさせていただきたいと思っております。

 少し解説をします。

 日立精機株式会社は、工作機器の製造、販売を行っていた会社で、当時、労働者は七百二十六名を雇用しておりました。業績不振によりまして民事再生法の適用を申請し、工作機械事業を営業譲渡することとなりました。奈良県に本社を置く同業の森精機株式会社が日立精機株式会社の工業部門を吸収することに伴いまして、緊急就職支援者雇用開発助成金を受けることとなりました。

 そこで、お尋ねをいたします。

 緊急就職支援者雇用開発助成金とはどのような助成金であるか、簡単に要件を確認したいと思います。

鈴木政府参考人 緊急就職支援者雇用開発助成金でございますが、これは、厚生労働大臣が雇用に関する状況が全国的に悪化したと認める場合、あるいは雇用維持等地域の指定が行われた場合に、四十五歳以上六十歳未満の再就職援助計画対象者等を雇い入れた場合に、雇い入れ後六カ月間の賃金相当額の一部、助成率でいいますと、中小企業は三分の一、大企業は四分の一の助成を行うものでございます。

内山分科員 この助成金の要件として、新たな再就職先に、会社に面接をして、既に内定をもらっている労働者を、再就職援助計画対象者と後からすることは可能でしょうか。

鈴木政府参考人 内定の場合の取り扱いでございますが、一般的に、営業譲渡に際しては、通常、譲渡契約において労働者の取り扱いについても規定されているということがあることから、こうした労働者を支援対象としない場合には営業譲渡が円滑に行われないことが懸念されるということから、当時、支給対象にしておったのではないかというふうに理解をしております。

内山分科員 それではもう一度、もう一点です。

 再就職援助計画対象労働者証を所持した者でなければ、緊急就職支援者雇用開発助成金の対象とならないかどうか。

鈴木政府参考人 再就職援助計画の対象者の証明書があることがその要件になっているというふうに理解をしております。

内山分科員 具体的で、これは公表できるかどうかわかりませんけれども、もしできなければ結構です。森精機株式会社は、総額どのくらいの支払いを行いましたでしょうか。

鈴木政府参考人 約七千万というふうに聞いております。

内山分科員 日立精機株式会社から再就職援助計画書が提出され、松戸公共職業安定所が受理をした日にちはいつでしょうか。

鈴木政府参考人 そのお話があったのは、九月の二十六日というふうに聞いております。

内山分科員 再就職援助計画書を受理した松戸公共職業安定所の担当者は、だれでしょうか。

鈴木政府参考人 これは平成十四年時点の話ですので、今ここでお答えするのはちょっと難しいことを御理解いただきたいと思います。

内山分科員 実は、私が調べておりまして、当時の産業情報官の実原浩一氏であります。

 私の手元の資料では、日立精機が実際に再就職援助計画書を持ってきたのは九月の十七日、最初に持参をし、最終的に全部そろったのは九月二十六日であると聞いております。しかし、この再就職援助計画書は九月の十日付で受理をしています。これは御存じでしょうか。

鈴木政府参考人 今回の質問のお話があって調べた段階で、御指摘のような事実があるというふうに私どもも理解しております。

内山分科員 これは受け付け日を偽って受理したわけですから、公文書偽造に当たらないでしょうか。どうですか。

鈴木政府参考人 御指摘のように、日付をさかのぼって受理するということはあってはならないことでありまして、現在、そこに、どういう経緯でそういう取り扱いになったか、早急に調べるように今指示をしているところでございます。

内山分科員 この件というのは、実は、私が初めてここで皆さんにお知らせするよりももっと前に内部申告があったわけです。

 日立精機を退職した労働者が十月一日以降の森精機工業に採用面接をした後に、その方の自宅に再就職援助計画対象労働者証明書というのが届きました。そして、その労働者は、何でこんなものが面接終わった後に届くんだろうかという疑問を感じた。近所の国会議員にこの話を訴え、その国会議員から本省の方に話が、平成十五年の七月か八月に届いているはずなんですけれども、確認をしているでしょうか。

鈴木政府参考人 現在調査中で、詳しい状況は今把握しておりませんが、当時、本省と千葉労働局の間でいろいろ議論があったような、接触があったことは把握をしております。

内山分科員 現在、この件に関しましては、千葉労働局管内の職員は実はだれしも知っている、公然の秘密なんです。なぜ処分をされないんだろうか、職員はみんな疑問に思っています。ですから、あえて私はここできょう取り上げているわけであります。

 当時、厚生労働省で対応した者は、厚生労働省雇用開発課田中秀和さんです。現在、埼玉県の労働局の部長さんをやっていらっしゃるんじゃないんですか。どうですか。

鈴木政府参考人 当時担当した補佐がそういった地位にあるということは、把握をしております。

内山分科員 昨日質問通告をしているわけですから、当然その辺は答えられるはずなんですよね。答えていただかないといけませんね。

 千葉労働局とはどのような、本省の田中秀和さんとありましたでしょうか。そのいきさつをお願いします。

鈴木政府参考人 詳細は今調べるように話をしておりますが、先ほどもお話ありましたように、九月二十六日に最終的な再就職援助計画の提出があった、ただ、その受け付け自体が九月十日にさかのぼって受理されている、これについて、当時本省とそれから千葉労働局の間でこの件について話し合いがあったということは把握をしております。

内山分科員 千葉労働局と本省の田中さんとの間に、雇用対策法に基づく再就職援助計画の取り扱いについてという文書が取り交わされています。この中は、十七日に書類を持ってきたけれども、実際に二十六日の日付で受理をしたんだ、そういった詳細が書かれています。

 さらには、当時の松戸公共職業安定所の所長常澄金次郎さんと受理日を偽装した実原浩一氏が、本省の田中課長に呼び出しを受けています。そして、田中課長から、この件に関して処分をどうするのか、そういった話まで進んでいると聞いていますけれども、わかりますか。

鈴木政府参考人 当時、担当は田中課長補佐でございましたが、そういったお話も本省と千葉労働局の間であったというような話は聞いておりますが、今、そこの詳細は調査中でございます。

内山分科員 埼玉労働局にいるんですから、来ればほんの、数時間もかからないところで来るはずです。きょう、私は参考人で本当は呼んでいるんですけれども、やはり来てもらわないと真相が明らかにならないですね。

 松戸公共職業安定所の産業情報官実原浩一氏は公文書偽造、厚生労働省雇用開発課の田中課長補佐は、不正の申告が十五年の六月か七月にあっても担当者を全く処分しなかった、この二つがおかしい。これは両名とも責任をとらなきゃならない問題だろうと私は思っています。どうですか。

鈴木政府参考人 この間の経緯、それから、どういう経緯を踏まえてこういう取り扱いになったのか、今調査中でございますので、調査を踏まえて厳正に対応したいと考えております。

内山分科員 当局の方が資料をお持ちではありませんので、私が時系列的に流れを少しここでお話をしたいと思います。

 まず、日立精機株式会社が民事再生法の適用を申請し、工作機械事業を営業譲渡することになりました。森精機株式会社が就職を希望する社員全員を採用面接し、十月一日付で採用することとなりました。森精機株式会社に対し緊急就職支援者雇用開発助成金を支給するには、日立精機株式会社は、再就職援助計画の申請を所轄ハローワークにまず提出をしなければならない。日立精機株式会社の職員に対し、会社が再就職援助計画書の提出後、再就職援助計画対象労働者証明書を発行するという段取りになります。そして、再就職援助計画対象労働者証明書は、森精機に行くときに、面接時には個々の労働者が持っていなければならない、持参をしなければならない。しかし、渡っていないんです。

 証明書の発行というのは、日立精機は七百二十五人を解雇しますので、これを全部つくるとすれば、恐らく四日から五日かかるだろう。再就職援助計画対象労働者の証明の日付が、九月十日付で証明が発行された。しかし、二十六日に提出をしている。二十六日に受けている。離職した労働者の本人の手元に届いたのが十月の中旬である。採用が決まってから届いた。これは何の書類だろう、こう皆思いますよ。

 松戸公共職業安定所の実原浩一氏は、九月二十六日に受け付けた日立精機株式会社から提出された再就職援助計画書の受け付け日を九月十日と偽り、公文書偽造を行った。千葉労働局もこの事実を確認し、雇用対策法に基づく再就職援助計画の取り扱いについてと題し、文書で、先ほども言いましたとおり、厚生労働省雇用開発課田中課長補佐に報告をしています。そして、千葉労働局のこの文書の中の判断は、日立精機株式会社から再就職援助計画書が提出されたのは平成十四年九月二十六日であり、九月十日にさかのぼって受理した行為は認めることはできないと千葉労働局も判断しているんです。

 日立精機株式会社の再就職援助計画を認めることができないのであれば、労働者に交付する再就職援助計画対象労働者証明書の発行はできないということになるわけですね。よって、森精機株式会社に対し、緊急就職支援者雇用開発助成金七千万は支給できないことになるんじゃないですか。どうですか。

鈴木政府参考人 現在、一つは、なぜ九月二十六日に提出されたものを九月十日ということでやったのか。その詳しい経緯、それから、それが助成金に影響があったのかないのか、そこら辺を含めて今調査をしている段階でございます。

内山分科員 きょうは会計検査院の方にもおいでいただいています。今私が説明をしたとおりが私が把握している事実でございまして、九月の十日になぜ日にちを改ざんする必要があるのか。実際、書類を持ってきているのは十七日なんですよ。それが、不備があって二十六日に再度持ってきた段階で受け付けをした。それをあえて十日にしたというのは、実は、森精機の会社が十一日から面接を始めていた。この事実を担当者は知って日付を調整したんだ、こう私はつかんでおります。

 こういう実態、会計検査院の御意見をいただきたいと思いますが、どうですか。

千坂会計検査院当局者 御指摘の件につきまして、まだ私ども事実関係を十分承知しておりませんので、会計検査の立場から問題とすべき事項があるのかないのか、今後、厚生労働省から詳細な事実関係の説明を徴しまして、具体的な事実関係を解明した上で、委員の御指摘も踏まえまして適切に対処してまいりたいと考えております。

内山分科員 しかも、けしからぬのは、やはり本省の担当者に申告があったにもかかわらず、私がきょうここでこういう話をするまで、千葉労働局の方、そして当時の松戸公共職業安定所の産業情報官、何ら処分をされていない。しかも、田中さんに至っては埼玉の労働局の部長さんになっている。こんなのでいいんですか。七千万円、これは大変なお金じゃないですか。こういう実態があるからこそ、やはり不信感をさらに招くわけでありまして、きちっとやはり引き続き調査をした結果をいただきたいと思います。

鈴木政府参考人 きちんと調査をし、また御報告したいと考えております。

内山分科員 少し力を入れて早くやり過ぎてしまいまして、残す時間がありますけれども、これで終了させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

根本主査代理 これにて内山晃君の質疑は終了いたしました。

 次に、山内康一君。

山内分科員 自由民主党の山内康一でございます。

 きょうは、臓器移植の問題について質問をさせていただきます。

 臓器移植法が施行されましてから三年をめどにして見直しをするとの規定が条文の中にありました。しかし、施行後八年四カ月たった今でもまだ見直しが行われておりません。これは、立法府、行政府の怠慢と言われても仕方がないのではないかと思っております。特に、この臓器移植法案に関しましては、ほかの法案と比較して、直接命にかかわる法律でありますので、大変重要な法律だと言えると思います。臓器移植法施行後八年四カ月たった移植医療を取り巻く現状について、政府としての認識をお聞かせください。

西川大臣政務官 ありがとうございます。

 臓器移植法が施行されて八年たった。その割に見直しも行われず、まだまだ現状はどうなっているんだ、そういう御質問かと思います。

 確かに、移植法が施行されてから、思ったほどの、私自身の個人の見解としては、まだ多くの例が現実に実施されていないなという印象はあります。

 その中で、今までの取り組みとして、脳死判定がされた事例は四十二例、その中で、心臓移植に三十名、肺移植が二十五名、肝臓移植に三十名、計百六十七名の方に移植が行われたという実績が今あります。そういう中で、やはり費用の問題その他で大変高額である、患者負担が非常に大きいということで、今回の医療制度改革において臓器移植がほとんど保険適用になった、そういう意味の環境整備に努めているわけでございます。

 ただ、今回、そういう費用的な面の環境整備はできたのでございますけれども、実は、やはり提供者、ドナーの問題、これが非常になかなか進まない、ドナーの方々にいかに多くなっていただけるか、それが今後の大きな課題だと思っております。

 そういう中で、移植医療に対して、提供してもいいよという方は三分の一ぐらいいらっしゃるんですが、現実にそのカードを持っていらっしゃる方は一〇%ぐらいだということで、いかにこれから国民の皆様に移植医療を周知徹底してわかっていただけるか、理解を深めていただくかということについて、厚労省としても努力をいたしております。そういう意味では、十月の臓器移植推進月間というのを設けたり、あるいはテレビコマーシャルで公共広告機構にお願いして意思表示の今の現実をお訴えしたり、学校教育の中で中学生にパンフレットを配ったり、そんなようなこともしております。

 そういう中で、やはり各自治体でいろいろな取り組みが始まっておりまして、地域、例えば滋賀県、福岡市等で健康保険証にドナーの意思があるということを明記する欄を設けたり、今、徐々にではありますが、ドナーの方々への啓蒙活動の実施が少しずつ動いているというのが現状でございます。

山内分科員 ありがとうございました。後ほど聞こうと思っていたことについてもお答えいただきまして、ちょっと困っておりますが。

 続きまして、現在、移植を待機している患者さん、心臓移植に関しては約八十名、肝臓移植の場合では百人以上、腎臓に関しては一万人以上いらっしゃると承知しております。このような現況を踏まえて、一日も早い臓器移植法の改正審議が必要であり、私も、国会議員として、立法府の一員として積極的に法改正に向けて取り組んでいきたいと考えておりますが、政府としての御見解をお聞かせください。

中島政府参考人 臓器移植法の見直しにつきましては、これが人の生死あるいは個人の倫理観にもかかわる問題であることから、これまで各党や国会等で議論がされてきたところでございます。さきの通常国会におきましても、議員立法による臓器移植法の改正法案が二案提出をされまして、審議に至らず廃案となったという経緯もございます。

 厚生労働省といたしましては、臓器移植法に基づきまして、臓器提供に関する意思がより尊重されるようにするとともに、移植医療につきまして国民の理解を深めていくこと等を通じて、移植医療を適正に実施をし、一層の推進を図っていく考えでございます。

山内分科員 続きまして、近年、特に海外に渡航しての移植というものが大変大きな問題になっております。例えば、WHOの会議などでも、正式な議事録には載りませんが、会議のときに日本に対する非難というか文句ということでよくお話があるのが、日本国内で臓器の提供件数が少ないからといって海外へ患者さんを送り出すというのはフェアじゃないんじゃないか、自分の国の法律で制限をつくっておきながら、海外に患者さんを送り出しているというのはちょっとずるいんじゃないかといったようなことを海外でよく言われるという話を聞きます。

 また、マスコミ報道によりますと、中国で臓器移植を受けている日本人が百人以上、百八名いるという報道がありました。その一部に関しましては、死刑囚の臓器を移植したという話もあります、どこまで事実かわかりませんが。

 その件に関しまして、我が国として、倫理上の観点から、移植医療、臓器移植に関しまして、今こそ先進国としてふさわしいシステムをつくっていく必要があるんじゃないかと考えております。また、今のままでは、諸外国、WHOから非難を受けても仕方ない状況だと思っておりますが、これに関して、政府としての御見解をお聞かせください。

中島政府参考人 ただいま御指摘がありましたように、多くの我が国の患者の方々が、国内で臓器移植が受けられないために海外で移植を受けられている実態があるということは残念なことだというふうに思っております。渡航の費用や手続等におきまして大変な御苦労をされているという状況もございますので、国内においてできる限り多くの方々が臓器移植を受けることができるようしていくことは大変に重要であるというふうに認識をしております。

 このため、厚生労働省といたしましては、移植医療に対する国民の理解を深めるための普及啓発を進めますとともに、医療関係者への啓発活動等、地域における臓器提供のための体制を整備するなど、移植医療の推進に向けて引き続き努力をしてまいりたいと考えております。

山内分科員 国内での啓発活動が重要であるということはよくわかります。

 内閣府やマスコミ等の世論調査によりますと、現在、先ほど西川政務官からお話がありましたが、約三分の一の国民が、自分が脳死になったら臓器提供してもいいというふうに考えているというような調査結果があります。それにもかかわらず、ドナーカードの所持率が約一割にとどまっているという状況があります。せっかく臓器提供してもいいと思っている人がいる割には、実際にその意思表示をきっちりやっている方が大変少ないという状況があります。

 このような現状に関しまして、政府としてどのようにこれまで取り組んできたのか、またこれからどのように具体的に取り組んでいくのか、お聞かせください。

中島政府参考人 平成十六年八月に実施されました内閣府の臓器移植に関する世論調査では、脳死判定後の臓器移植について、提供したいとする人が三五・四%となっております一方で、臓器提供意思表示カードの所持状況は一〇・五%にとどまっているという状況がございます。この世論調査によりますと、脳死判定後の臓器提供の意思があるにもかかわらず、カードを持っていないと答えた者の主な理由としましては、カードの入手方法がわからなかった、臓器移植についてよく知らないからなどが挙げられているところでございます。

 厚生労働省及び日本臓器移植ネットワークでは、これまで、一億枚を超える臓器提供意思表示カード及びシールを作成いたしまして、地方自治体、郵便局、コンビニエンスストア等に配備をすることによりまして、より多くの方に所持してもらうよう取り組んでまいったところでございます。また、昨年から、公共広告機構、ACでございますが、これの協力も得まして、テレビ、ラジオ、新聞等による多角的な普及、広報も行っております。

 さらに、昨年九月に新しいデザインのカードを発行いたしまして、自分の意思を二枚のカードに記入をいたしまして一枚を家族に渡してもらう二枚キャンペーンというようなものを行うなど、さまざまな取り組みを進めてきたところでございますが、今後とも、より効果的な普及方法をさらに工夫するなど努力をしてまいりたいと考えております。

山内分科員 日本臓器移植ネットワークという社団法人によりますと、これまで、臓器提供に関する意思表示をしていて脳死になった方は約千人ほどいらっしゃったというふうに聞いていますが、その中で実際に臓器提供にまで至ったケースというのは、先ほどお話ありました約四十件ほどしかないと聞いております。現行の制度の下でも臓器の提供の意思が可能な限り生かされるように、臓器提供してもいいというせっかくの意思を可能な限り生かしていくように、さまざまな取り組みが必要なんじゃないかと思います。

 例えば、保険証に意思表示の欄をつくるといったこと、シールではなく、実際に保険証の中に意思表示の欄を設けるといった取り組みが効果的なのではないかと考えておりますが、厚生労働省としてどのようにお考えか、お聞かせください。

中島政府参考人 臓器移植法におきましては、臓器提供に関する意思、すなわち、臓器を提供したいという意思と提供したくないという意思、これらは尊重されなければならないとされておるわけでございます。

 しかしながら、臓器移植法が施行されてから昨年の九月まで、約八年間でございますが、臓器移植ネットワークには、臓器提供意思表示カード等を所持していたという情報が千一件提供されておりまして、このうち、脳死下での提供を望まない意思、あるいは意思表示の内容が不明なものを除いたものが七百三十八件ございました。しかしながら、これらについては、さまざまな理由から、実際に法的な脳死と判定されたものは三十九件ということでございます。

 こうした状況を踏まえまして、医療関係者等に対する移植医療に関する一層の普及啓発に努めるなど、臓器提供に関するとうとい意思ができる限り生かされるよう努めるということをやってきておりまして、提供者については、例えば、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の感染を防止するため、一部の欧州渡航歴を有する者からの提供についてこれを見合わせていたところを、移植医療の緊急性、代替性等にかんがみまして、移植希望者が感染リスク等について十分説明を受けた上で同意している場合には臓器提供を可能とするなどの見直しを進めたところでございます。

 御指摘ありました保険証の問題につきましては、臓器提供意思表示欄を保険証に設けるということに関して、各保険者の判断によりまして意思表示欄を設けることができることとされておりまして、現在のところ、一部の健保組合、あるいは滋賀県、福岡県の市町等で行われておりますが、こうした取り組みによりまして、臓器提供に関する意思表示を行うことができる機会がふえるとともに、臓器提供に関する意思が確実に尊重される場合が多くなることが期待できるというふうに考えております。

山内分科員 今の質問の続きになってまいりますが、また、臓器提供に関する意思を、例えばオンラインで登録するといった取り組みも効果的なのではないかと思っております。臓器の提供に関する意思をより生かせるような仕組みづくりということに関して、政府としての見解を再度お聞かせください。

中島政府参考人 これまで厚生労働省及び日本臓器移植ネットワークにおきましては、臓器提供に関する意思を表示するものとして臓器提供意思表示カードやシールの配布を行い、普及啓発を行ってきたところでございます。

 しかしながら、カードの所持率は一〇・五%ということ、カードを持っていないより多くの方々に所持していただけるよう、カードの効果的な普及方法が求められております。またさらに、カードを持っている方でも、家族がそのことを知らなかったためにカードが発見されずに本人の意思が不明なままとなってしまうケースや、カードの記載が不備のため意思が生かされないケースがあるということなどから、御指摘のような、カードやあるいはシールを持っていただくために、臓器提供に関する意思をオンラインで登録、確認するシステムも効果的であるというふうに考えております。

 このため、厚生労働省といたしましても、平成十八年度予算案に、臓器提供に関する意思表示の機会を拡大して、より確実に臓器提供の意思を生かすための、臓器提供意思登録システムの構築のための費用を盛り込んでいるところでございます。

山内分科員 続きまして、現在、腎臓以外の臓器の移植を受ける場合、例えば心臓なら約三百万円ほどの高額な負担が患者にかかってしまいます。今回、診療報酬改定において脳死下での心臓移植等について保険適用することとされ、移植医療が大きく前進するものと評価しております。

 この決定がなされた中央社会医療協議会、中医協が、どのような議論の過程を経て今回の保険適用することとなったのか、経緯についてお聞かせ願います。

水田政府参考人 心臓移植等につきましては、先生御承知のとおり、これまで高度先進医療の対象ということでございまして、入院料等には保険適用がされるけれども、移植に係る手術料はすべて自己負担となるということでございます。

 それにつきましては、今回の診療報酬改定におきまして、先ほど西川政務官からお話ありましたとおり、適用拡大が行われまして、新たに四つの移植術が保険適用されることになったわけであります。心臓に加えまして肺、肝臓、それから膵臓の四つの移植術でございます。

 この経緯でございますけれども、具体的には、まず高度先進医療専門家会議におきまして、これまでの高度先進医療としての実績報告が行われたところではあります。普及性、有効性、効率性、安全性、技術的成熟度、こういった観点から総合的な検討が行われたわけでございます。

 一次判定、二次判定ございまして、一次判定につきましては、それぞれの技術ごとに三名の方がA、B、C、D評価を行いまして、全員の方が保険導入すべきであるという移植術が、今度は全員の二次判定にかけられる、こういうプロセスになるわけであります。今度は十九名のところで議論された上でその適否を検討されたわけでありますけれども、その専門家会議におきましては、例えば心臓移植手術につきましては、末期心不全では唯一の治療法であり有効性は高い、こういった議論がなされた結果として、保険適用することが適当である、こういった結論が得られたところでございます。

 さらに、この高度先進医療専門家会議における検討結果につきましては、中医協に報告がなされまして、これは今回初めて行われたわけでございますけれども、国民からの意見募集の結果も踏まえながらさらに議論が行われて、最終的に、保険適用とするのが妥当である、こういう決定がなされたわけでございます。

 中医協における主な議論というものを簡単に御紹介いたしますと、一部、支払い側の委員の方から、本件につきましては意見が割れているようでもあり、もう少し時間をかけて検討するべきではないかという意見があったわけでありますけれども、これに対しまして公益委員の方から、既に高度先進医療として実績を積んできているのに、脳死臨調のときの議論を蒸し返すようなことはすべきではない、寄附を集めなければ移植を受けることができないような状況に対応するためにも、保険適用することによって、移植手術を待っている方々のニーズにこたえるべきである、こういう意見を出されました。これにつきまして、診療側委員はこれに賛同するという御意見でございましたし、先ほどの慎重な意見を述べられた方も含めまして支払い側委員も、保険適用に反対しているわけではないと。

 こういった議論を経まして、最終的に中医協としてこういった心臓移植等の保険適用について合意がなされた、こういう経緯でございます。

山内分科員 最後の質問とさせていただきます。

 現在、移植医療の状況について一般の方々は余り知られていないんじゃないか。実際の手続の様子、それから移植の現状について、一般の人は余りにも知らないというふうに感じます。私も、同僚の国会議員と話をしていて、特に新人議員の皆さんと話をしていて、余り知らない方が非常に多い。私自身も、すごくよく知っていたかというと、決して自信を持ってよく知っているとは言えない状況だったんですが、今の啓発活動のあり方について、現状、自治体との連携の問題、あるいは先ほど、公共広告機構といった民間での啓発活動も行われておりますが、そういった現状の啓発活動のあり方はどのようになっているのかということ。

 それと、やはり今までの啓発活動はちょっと成果が上がっていないのではないか。一般の人々により広く理解してもらうためには、例えば広告であったり、あるいは一般の人への啓発キャンペーンにもっともっと力を入れて、場合によっては予算をふやしてやっていくことが必要じゃないかと考えておりますが、それについて御見解をお聞かせください。

中島政府参考人 ただいま御指摘ありましたように、移植医療は、医療関係者と患者だけで成り立ちます通常の医療とは異なっておりまして、臓器の提供ということがあって初めて成り立つ医療でありますことから、移植医療の進展には、国民全体の移植医療に対する理解を深めていくことが大変に重要でございます。

 このため、厚生労働省といたしましては、移植医療を推進していくため、移植医療に関する国民の理解を深めていくことが大変に重要であるということから、社団法人日本臓器移植ネットワークとも連携を図りながら、公共広告機構等を活用した普及啓発、あるいは各種パンフレット等の作成、配布、また医療関係者への普及啓発等に取り組んできたところでございます。

 さらに、平成十八年度の予算案におきましては、カードの所持者の増加を図るとともに、より確実に臓器提供の意思を生かすための、先ほどの御紹介のものでございますが、臓器提供意思登録システムの構築、それから、地方公共団体等に定期的にリーフレット等を配布いたしまして臓器移植の現状や実際を広くPRするなどの事業につきましても、新たに補助を行うこととしておるところでございます。

 以上でございます。

山内分科員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

根本主査代理 これにて山内康一君の質疑は終了いたしました。

 次に、糸川正晃君。

糸川分科員 国民新党の糸川正晃でございます。

 我が国の医療におきましては国民皆保険制度というのがとられておりまして、世界的にも評価をされている一方で、平成十六年末のいわゆる混合診療問題の議論におきましては、国内未承認薬の使用に関しまして、国内で承認されるまでに時間がかかり、欧米で承認されているのに全額自己負担でないと使えない、そういう患者からの要望があったというふうに承知しております。

 このように、欧米諸国で承認されているのに日本では承認されていないという医薬品につきまして、患者ができる限り早く使用できるよう、厚生労働省としてどのように取り組んでいるのか、本来大臣にお尋ねしたいんですが、大臣、大臣の答弁の予定ですよね。

福井政府参考人 申しわけございません。医薬食品局長でございます。私の方から御答弁申し上げたいというふうに思います。

 欧米で承認をされているけれども国内では未承認の医薬品について、治験の仕組みを活用いたしまして早期に患者が使用できますように、昨年一月でございますが、未承認薬使用問題検討会議を設置いたしまして、検討を行ってきたところでございます。

 本検討会議につきましては、昨年一月以降七回にわたりまして開催をいたしました。検討の結果、医療上の必要性が高いと結論をいただいた医薬品につきましては治験につなげているところでございまして、これまでに計二十の医薬品につきまして、関係企業に早期の治験開始等を要請したところでございます。

 今後とも、我が国に先立って欧米諸国で承認された医薬品、あるいは学会、患者団体等から要望のございます医薬品につきましては、本検討会議におきまして検討を行いまして、医療上の必要性が高いとの結論をちょうだいいたしましたものにつきましては、早期の治験につなげてまいりたい、このように考えているところでございます。

糸川分科員 日本では、今まで、私なんかもよく聞いているところでは、欧米ではいろいろなものを認めてもらえる、だから、日本では研究はするんだけれども、自国ではなかなか許可が出ないから外国へ持っていって、そこで使ってもらって、何年かしたら日本に持って帰ってくる、そういう若干おくれが生じているというふうに聞いておりますので、ぜひ積極的に承認をしていただければなというふうに思います。

 そういうことを踏まえると、日本で早く最先端の医療を、医薬品の承認というところでしょうか、審査の迅速化というところで早く努めていただければ、治験環境の改善をおのずから図るべきだというふうになってくると思うんですけれども、厚生労働省の見解をお聞かせいただけますでしょうか。

福井政府参考人 お答え申し上げます。

 医薬品、医療機器につきましては、国民の生命、健康に不可欠なものでございます。安全ですぐれた医薬品等を迅速に国民に提供できますよう、その承認体制の充実強化を図ることが重要な課題であるというぐあいに認識をいたしているところでございます。

 このため、医薬品等の承認審査を行う独立行政法人医薬品医療機器総合機構におきまして、必要な審査担当職員を確保するため、平成十六年四月に設立されたわけでございますけれども、それ以降、公募によりまして、専門職員の採用を計画的に進めているところでございます。

 それから、御指摘の治験につきましては、これまで全国治験活性化三カ年計画の策定等によりまして、国内治験等の活性化に向けた体制の整備等に取り組んできたところでございます。

 また、治験の信頼性及び被験者の安全の確保を前提とした上で、治験の円滑な実施が行われますように、これは昨年三月でございますけれども、設置をいたしました治験のあり方に関する検討会、ここからいろいろと御提言をいただいているわけでございます。例えば、これまでに医師が準備、管理等を行う治験に係る実務上のさまざまな負担につきまして、その軽減等を図るといった措置を講じてきているところでございます。

 今後、これからもこの検討会におきまして、さまざまな課題につきましていろいろと検討を進めていただきまして、我が国におきまする新薬の治験が一層推進されますように努力してまいりたい、このように考えております。

糸川分科員 ぜひ迅速化というところで取り組んでいただければなというふうに思います。期待しておりますので、よろしくお願いします。

 次に、発達障害者についてお尋ねしたいんですが、発達障害者への総合的な支援を実現するために、発達障害者支援センターというものがございまして、その運営に対しまして、今どのような支援を行っているのか、また行っていくのか、厚生労働省の御見解をお聞かせいただけますでしょうか。

中村政府参考人 発達障害者の支援が大事だということで、昨年四月には、国会の方で発達障害者支援法も制定されました。そういう法律の中で、総合的な支援を行うための中核機関として、発達障害者支援センターが位置づけられているところでございます。

 発達障害者の支援につきましては、乳幼児期から成人期に至るまで、各ステージごとに対応する、また、そのステージを通じて一貫した支援体制の整備が大事だということで、都道府県内の各圏域で、医療、保健、福祉、教育、雇用などの関係者の方々がネットワークをつくっていただくということが大事だと考えております。

 委員から御指摘のございました発達障害者支援センターは、このネットワークの中心として活躍をしてもらいたい、こういうことで、実は、この法律ができる前からこのセンターについては平成十四年度より運営費について助成を行ってまいりましたけれども、このたび障害者自立支援法がまた制定され、その中で地域生活支援事業という事業が創設されました。国が、都道府県に対しまして、この地域生活支援事業の中で事業が行えるように国庫補助をいたすこととしております。都道府県がこのセンターを通じて行います専門的、広域的な相談支援事業について、この地域生活支援事業の中で運営費の助成を行うことができることとしているところでございます。

 平成十九年度までに全都道府県、指定都市に一カ所整備するということで、今年度まで三十七カ所の整備が終わっておりますけれども、十八年度、十九年度、さらに整備が進むように努めてまいりたいと考えております。

糸川分科員 整備の方も大事なんですが、ぜひネットワークをつくるところを支援してあげられればなというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

 次に、今少子化というのがどんどん進行しているわけでございますが、そこで、子供同士が触れ合っていくという機会が少なくなっております。ただ、そんな中、今子供をめぐる事件というのが多発しておりまして、児童が安心して遊ぶことができるということで、児童の健全育成活動の拠点として、例えば児童館、児童センターの役割というのが重要になってくるのかなというふうに思っています。

 今現在、その整備状況というのはどのようになっておりますでしょうか。

北井政府参考人 今お話のありましたとおり、少子化や都市化の進展、それから子供が犯罪に巻き込まれる事件の多発など、子供を取り巻く環境が大変変化しております中で、児童館、児童センターの役割というのは、年齢の違う子供さん同士が触れ合う場として、また安全な遊び場として、あるいは子育て家庭への支援の拠点として、その役割がますます大きくなっているものと承知をいたしております。

 現在、全国で四千六百七十三カ所の児童館、児童センターがございます。厚生労働省といたしましては、従来からその整備につきまして必要な予算額を確保しているところでございます。

糸川分科員 私の今の地元が福井なんですけれども、福井なんかはまだまだ児童センターとか少ないんですね。多くなってきているというふうにありますけれども、それは都市部と農村部というんでしょうか、とではかなり数も変わってくるわけで、当然それは人口の問題もあるんですけれども、地方での格差を減らしていただければなというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

 地方といえば、地域における医師不足というものがかなり深刻化しているわけですが、厚生労働省では医師の確保にどのように取り組まれているのかなというところをお聞かせいただけますでしょうか。

松谷政府参考人 特定の地域あるいは診療科における医師の偏在問題につきましては、厚生労働省では、総務省及び文部科学省とともに関係省庁連絡会議を開催いたしまして、昨年の八月には医師確保総合対策を取りまとめるなど、各般の取り組みを進めているところでございます。

 中でも、早急な対応が求められております小児科医や産科医の確保につきましては、昨年末に各都道府県に対しまして、公立病院を中心に小児医療、産科医療の機能を集約化、重点化するための検討を平成十八年度末までに行うよう要請をいたしたところでございます。

 また、今国会に提出いたしました医療法等の改正案におきましては、救急医療、僻地医療、小児医療、周産期医療などの従事者の確保を推進するために、各都道府県が中心となって大学病院などの地域の医療関係者と話し合いを行った上で、各病院に医師を派遣する仕組みや、医学部の卒業生が地元に残るようにする方策などについて検討し実施していく枠組みの制度化など、法制度面からも必要な措置を講じることといたしてございます。

 さらに、平成十八年度予算案におきましては、女性医師のライフステージに応じた就労を支援するための女性医師バンクの設立や、講習会の実施などを初めとする関係予算を計上いたしているところでございまして、引き続き、総合的な医師確保対策に取り組んでいきたいと考えているところでございます。

糸川分科員 今、新しい医療計画というのを都道府県に普及させていこうという動きがあると思うんですけれども、今後、国としては、普及させていく上で、地方に対してどのような支援を行っていくのか。これは、日本国じゅう均等なサービスを行っていかなきゃいけないわけですから、僻地ですとか、そういうところに対してどのような支援を行っていくのか、お聞かせいただけますでしょうか。

松谷政府参考人 今回の医療法改正によって見直すこととなっております医療計画制度につきましては、平成二十年四月一日から各都道府県で実施していただくという予定にしてございます。

 このため、厚生労働省では、先般、二月の二十二日でございますけれども、都道府県の医療計画の作成に資するようモデルの医療計画及び作成ガイドラインを提示したところでございます。

 また、平成十八年度には、新たに医療提供体制施設整備交付金を創設いたしました。都道府県の医療計画による事業実施を財政面からも支援するということといたしますとともに、厚生労働省におきましても、医療提供体制の確保に関する基本方針の策定、全国で把握すべき共通の指標、それから国としての数値目標などを近々提示する予定にしてございます。

 あわせて、全国規模の医療機能調査を実施いたしまして、平成十八年度には、その結果を公表することによりまして各都道府県の医療提供体制の現状を明らかにするとともに、計画を立てる前に各都道府県が行います医療機能調査につきましても、その基準をお示ししまして、各都道府県の取り組みに資するように万全の対応をしてまいりたいと考えております。

糸川分科員 そういう地方なんかのところでは、本当にわかりにくいんですね、伝わりにくい。ですから、そういうところを、局長に言ってもあれなんでしょうけれども、しっかりと地方に伝わるように積極的に取り組んでいただければなというふうに思います。

 現在の医療計画における基準病棟の制度というのをちょっとお聞かせいただけますでしょうか。

松谷政府参考人 現在の医療法の医療計画における基準病床数制度でございますけれども、この制度は、病床不足地域における病床整備を進める一方、過剰地域における病床増加を抑制することによりまして、病床の整備を過剰地域から非過剰地域へ誘導するなどして、医療資源の効率的活用を通じて国民に対する適正な医療の確保を図るという趣旨のものでございます。

 具体的に申し上げますと、地理的条件、生活事情、交通事情等を考慮の上、医療機関における入院医療を一体の区域として提供することが相当と認められる地域的な単位として、二次医療圏、一次、二次、三次の二次でございますが、二次医療圏を設定いたしまして、その中で必要とされる病床数として、性別、年齢階級別の人口や入院率及び平均在院日数などさまざまな要因を加味して基準病床数を定めまして、当該基準病床数を超えて医療機関が病床を設置、増床しようとする場合には、都道府県が勧告等により増床を制限することができるようにしているものでございます。

糸川分科員 そのような制限というものが、例えば、今高齢化がどんどん進んでいっているわけです。高齢化が進んでいって、地域ではベッド数のばらつきがあるというふうに言われているわけですけれども、その中で本当に高齢化というのはどんどん進んでいるわけでございます。お医者さんが少ないとか、ベッドが少ないとか、地域によっては全然足りないんじゃないかという声があるわけですけれども、そういう声を聞いてどのように今対応されているのか、お聞かせいただけますか。

松谷政府参考人 地域の病床数につきましては、医療計画は五年ごとに各都道府県で見直しをして、基準病床数もその都度見直すということにいたしてございますが、その病床数につきましては、今先生御指摘の高齢者の数といった人口構成の違いなどに伴う地域の実情を反映して設定をするということといたしてございます。

 具体的には、各都道府県におきまして、性別、年齢階級別の人口や入院率、平均在院日数などさまざまな要因を加味して定めているところでございまして、高齢者数もその大きな勘案要因となっているところでございます。したがいまして、高齢化率の状況に応じて算定される基準病床数も、各都道府県、それぞれ異なってまいりますし、年次ごとにもちろん高齢化が進んでございますので、五年ごとにそれが修正されるという仕組みになっておるところでございます。

糸川分科員 私の先ほどからお話ししている福井では、田舎に行けば田舎に行くほど、本当にベッドがない。先ほど答弁の中で小児科なんかにも非常に取り組んでいるというふうにお話があったわけですけれども、そこはまたこれからも質問いたしますが、ベッドの数が本当に足りないという声もあるわけですから、そこはやはり地方だからといって切り捨てないでいただきたいなというふうに思っております。

 今、もう一つ深刻な問題として、先ほど局長様が小児救急についてということをおっしゃられましたので、そこについてもお尋ねしたいんですが、今、小児救急について整備をしなきゃいけないなと。特に地方の場合は、子供が熱を出したとかなんとかだというときには、電話相談とかいろいろあると思うんですけれども、やはり親というのは、病院に連れていきたいとか、いろいろなそういう心配事というのはあるものですから、今厚生労働省としてどのように取り組んでいらっしゃるのか、そこについてお尋ねしたいと思います。

松谷政府参考人 小児の救急についてのお尋ねでございますけれども、医療法等の今国会に提出した改正案におきましても、医療計画制度を見直しまして、小児医療などにつきまして、救急医療も含めまして、地域において特に必要性の高い医療を確保するための救急医療等確保事業というものを医療計画に位置づけるということといたしまして、医療計画を、先ほどの基準病床数の機能だけではなくて、もう少しこういったソフト面についても位置づけようということといたしてございまして、例えば、休日、夜間における小児救急医療の連携体制を構築していくということといたしているところでございます。

 また、休日、夜間の小児救急患者のほとんどの方は実際は軽症の方が多うございまして、今先生御指摘の保護者等の不安に適切に対応するということによりまして医療機関における小児科医の負担が軽減するということから、平成十六年度から電話相談につきましても実施をしているところでございます。

 今後さらに、休日夜間急患センター等における初期の小児救急体制の充実、それから、二次医療圏単位または複数の二次医療圏単位で夜間、休日の小児救急医療体制の充実、さらには、救命救急センターにおきまして、小児救急専門病床を確保して、二十四時間、これは重篤な小児救急患者さんですけれども、これを受け入れる体制の整備を来年度予算に盛り込んでいるところでございます。

 また、各都道府県での医学部や医療関係者の協議を通じた小児医療の確保、また、先般決まりました平成十八年度診療報酬改定におきましても、小児科を担う病院等と地域で小児科を専ら担当する診療所等との医師の連携によります夜間、休日の小児救急医療体制の構築を支援するための、小児を二十四時間診療できる手厚い体制に係る評価を新設するといったようなことによりまして、小児の救急医療提供体制の充実に取り組むことといたしているところでございます。

 地域によっていろいろ事情がございますけれども、今後とも、患者さんの状態に応じて適切に小児救急医療体制を提供できる体制づくりにさらに努めてまいりたいと思っております。

糸川分科員 今、少子化が進んでいる中で、ほとんどのケースが軽症であるということでございますけれども、やはり親が安心して子育てができる状態にしていかないと、少子化対策にもなっていかないのかな。ですから、そういうところで、安心に育てることができますよということを積極的に国として取り組んでいただければ、子供の数ももしかしたらふえるというところに寄与できるのかもしれません。

 安全、安心というようなお話となりますと、やはり病院の地震対策というところにも話があるのかなと思いますが、昨年の十月に病院の地震対策に関する実態調査という調査結果が公表されましたが、この調査結果に対しまして厚生労働省としてどのようにお考えでしょうか。

松谷政府参考人 今御指摘の平成十七年十月の病院の地震対策に関する実態調査によりますと、すべての建物が新しい耐震基準に沿った病院は二千四百九十四病院、三六・四%に相当いたしますけれども、一部の建物あるいは建物全体が新しい耐震基準に沿っていない病院が三千六百九十一病院、五三・九%存在するという結果となってございます。

 医療施設は、災害時における医療の確保のみならず、地域住民の避難場所ともなり得ることから考えますと、特に災害時に災害医療等を提供する病院の耐震化の整備というのが今後重要であるというふうに認識しておるところでございます。

糸川分科員 正直、三千六百九十一の病院がまだ耐震化されていないということでございますので、半数以上だということで、何か地震が起きたときに、本来は救わなきゃいけない病院がつぶれてしまうというようなことであっては大変なことになるわけですから、これは、耐震基準を今満たしていない病院に対して今後どのような対策を行っていくのか、お聞かせいただけますか。

松谷政府参考人 厚生労働省といたしましては、患者さんの安全を確保して、災害時においても被災者に迅速かつ適切な医療を提供していく上で重要な病院の耐震化を一層推進していく必要があるというふうに考えてございます。

 このため、十七年度の補正予算におきまして、国立病院機構の病院に対しましては四十九億一千六百万円を確保して対応いたしたところでございますし、災害拠点病院等の耐震化未整備病院に対しましては十一億三百万円を確保して対応したところでございます。

 また、平成十八年度予算におきましても、救急医療等を担う施設に対象を拡大いたしまして医療施設耐震整備事業を新たにメニューに追加いたしまして、医療提供体制施設整備交付金で対応することとするなど、病院の耐震化整備に対する助成措置などによりまして、引き続き、救急医療、災害医療等を担う医療機関の耐震化を推進していきたいと考えております。

糸川分科員 では、病院の耐震化を促進するために、今各都道府県に対してどのような指導を行っているのか、またどのような指導をしていくのか、お聞かせいただけますか。

松谷政府参考人 都道府県に対しましては、つい先般でございますけれども、二月二十日に開催いたしました全国医政関係主管課長会議におきまして、実態調査の結果を踏まえて、耐震基準を満たしていない施設の耐震診断を早急に行うよう指導したところでございます。

 また、病院等施設の耐震診断及び耐震化整備に要する経費につきましては、厚生労働省の所管する助成制度、先ほども申し上げましたけれども、これらのみならず、国土交通省所管の補助事業におきましても補助対象とされたところでございますので、所管省庁の壁を超えまして積極的に活用して、病院等施設の耐震診断及び耐震化整備が着実に促進されるようあわせて通知をしたところでございます。

 さらに、今後、都道府県ごとの病院の耐震化状況を公表することを通じまして、病院の耐震化について責任のございます都道府県において対応を促していくことを考えてまいりたいと考えております。

糸川分科員 今、報道なんかで、今後、大規模地震が起きるのではないかというふうに聞いておりますが、いつか起きる、関東で起きるような大震災のために、医療機関の減災対策というのはどのように検討され、また実施されているのか、お聞かせいただけますでしょうか。

松谷政府参考人 関東での大規模地震に対する減災対策ということでございますけれども、患者さんの安全を確保して、災害時においても被災者に迅速かつ適切な医療を提供していく上で、病院というのは非常に重要なものでございますので、その耐震化を通じて減災対策について一層推進していく必要があると考えてございます。

 これまでも、こうした医療施設の耐震化に係る都道府県からの要望につきましては、できる限り応じてきたところでございますけれども、今後も、先ほど申しましたような補助制度を活用いたしまして耐震化を推進していきたいと考えております。

 関東での大規模地震のみならず、地震の対策につきましては、政府全体として、内閣府を中心に災害予防、減災対策について検討を行っているほか、首都直下地震につきましては、平成十七年九月二十七日の中央防災会議におきまして決定されました首都直下地震対策大綱でも、病院を含む公共施設の耐震化の促進を図ることとされたところでございまして、今後とも、関係省庁と連携して取り組んでまいりたいと考えております。

糸川分科員 それでは、最後、大臣にお尋ねいたしますが、地震が発生しますと、病院の機能を確保するために、病院側の取り組みだけではこれは不十分だ、そこで今耐震化なんかを進めていくということでございますけれども、幾ら病院が耐震化構造になっていても、例えば水や電気が使用できなければ必要な医療活動が行えない。そのために、病院ではよく自家発電というものが備えられているわけですね。

 ただ、水というものは水道管が運んできてくれるものですから、水が幾ら貯水槽にあったとしても、それですべて事足りるのかどうか。先日、私も予算委員会の一般質疑のときに、大臣に水道管の耐震化というところでいろいろお尋ねをしたわけでございますけれども、インフラの整備としましても、水道というのは地震が起きると断水期間が非常に長期化する。この間も、予算委員会の一般質疑では、大体三カ月ぐらいかかるというようなことでございました。

 医療機関のような重要拠点に対して優先的に水道水の供給が確保されるようにあらかじめ対策を講じておいた方がいいんじゃないかなと考えておりますが、厚生労働省の取り組みはどのようになっているのか、また、大臣の御所見をお聞かせいただければなというふうに思います。

川崎国務大臣 災害時のライフラインの確保、それから、まさに拠点となる施設の確保、これをどう有機的に結びつけるのかという議論であろうと思います。

 先日の予算委員会での議論でも、電力、電話は割合復旧が早い。しかし、地下に潜るガスと水道はかなり復旧に時間がかかる。したがって、耐震性の管というものをきちっとやっていかなきゃならぬ。

 こういう中で、水道の耐震化計画策定指針において、病院などの重要施設をあらかじめ把握し、給水を確保するための対策を講じるように水道事業者に求めております。また、災害時に重要な拠点となる病院など優先的に給水すべき施設への耐震性配水管の整備等に対し国庫補助を行って、きちっとやってくださいと。

 言われるとおり、備えあれば憂いなし、そういった意味では、病院等の重要施設を守る、そこへのライフラインをきちっと整備していくというのは大事な御指摘だろう。いつも水道関係でいろいろ御注意をいただいておりますことをしっかり受けとめながらやらせていただきたいと思っております。

糸川分科員 ありがとうございました。

 人は水がなければ生きていけませんし、ぜひ、救える命を救っていただけるように、病院の耐震化それから水道管の耐震化、そういったものにも取り組んでいただければと思います。ありがとうございました。

根本主査代理 これにて糸川正晃君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明三月一日水曜日午前九時より本分科会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後七時二十九分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.