衆議院

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第1号 平成19年2月28日(水曜日)

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本分科会は平成十九年二月二十六日(月曜日)委員会において、設置することに決した。

二月二十七日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      稲田 朋美君    河井 克行君

      実川 幸夫君    中馬 弘毅君

      小川 淳也君    大口 善徳君

二月二十七日

 実川幸夫君が委員長の指名で、主査に選任された。

平成十九年二月二十八日(水曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 実川 幸夫君

      阿部 俊子君    井澤 京子君

      稲田 朋美君    河井 克行君

      薗浦健太郎君    中馬 弘毅君

      とかしきなおみ君    冨岡  勉君

      中根 一幸君    西本 勝子君

      牧原 秀樹君    内山  晃君

      小川 淳也君    村井 宗明君

      森本 哲生君    江田 康幸君

      大口 善徳君    斉藤 鉄夫君

   兼務 仲野 博子君 兼務 前田 雄吉君

   兼務 穀田 恵二君 兼務 保坂 展人君

    …………………………………

   厚生労働大臣       柳澤 伯夫君

   厚生労働副大臣      石田 祝稔君

   厚生労働大臣政務官    菅原 一秀君

   厚生労働大臣政務官    松野 博一君

   政府参考人

   (消防庁審議官)     寺村  映君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  松谷有希雄君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  外口  崇君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局長)            高橋 直人君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       藤崎 清道君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            高橋  満君

   政府参考人

   (厚生労働省職業能力開発局長)          奥田 久美君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       大谷 泰夫君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           中村 秀一君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  阿曽沼慎司君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  水田 邦雄君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  渡辺 芳樹君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 薄井 康紀君

   政府参考人

   (社会保険庁総務部長)  清水美智夫君

   政府参考人

   (社会保険庁運営部長)  青柳 親房君

   政府参考人

   (国土交通省道路局次長) 原田 保夫君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月二十八日

 辞任         補欠選任

  稲田 朋美君     冨岡  勉君

  中馬 弘毅君     中根 一幸君

  小川 淳也君     村井 宗明君

  大口 善徳君     斉藤 鉄夫君

同日

 辞任         補欠選任

  冨岡  勉君     阿部 俊子君

  中根 一幸君     西本 勝子君

  村井 宗明君     内山  晃君

  斉藤 鉄夫君     江田 康幸君

同日

 辞任         補欠選任

  阿部 俊子君     薗浦健太郎君

  西本 勝子君     井澤 京子君

  内山  晃君     三谷 光男君

  江田 康幸君     大口 善徳君

同日

 辞任         補欠選任

  井澤 京子君     牧原 秀樹君

  薗浦健太郎君     とかしきなおみ君

  三谷 光男君     森本 哲生君

同日

 辞任         補欠選任

  とかしきなおみ君   稲田 朋美君

  牧原 秀樹君     中馬 弘毅君

  森本 哲生君     小川 淳也君

同日

 第一分科員仲野博子君、第二分科員保坂展人君、第四分科員穀田恵二君及び第七分科員前田雄吉君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十九年度一般会計予算

 平成十九年度特別会計予算

 平成十九年度政府関係機関予算

 (厚生労働省所管)


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     ――――◇―――――

実川主査 これより予算委員会第五分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりました。よろしくお願いいたします。

 本分科会は、厚生労働省所管について審査を行うことになっております。

 平成十九年度一般会計予算、平成十九年度特別会計予算及び平成十九年度政府関係機関予算中厚生労働省所管について、政府から説明を聴取いたします。柳澤厚生労働大臣。

柳澤国務大臣 平成十九年度厚生労働省所管一般会計及び特別会計予算の概要について御説明申し上げます。

 平成十九年度厚生労働省所管一般会計予算の総額は二十一兆四千七百六十九億円であり、平成十八年度当初予算額と比較いたしますと五千三百五十二億円、二・六%の増加となっております。これは国の一般歳出の四五・七%を占めております。

 以下、主要施策について御説明申し上げます。

 第一に、医師の偏在により、一定の地域や診療科において必要な医師が確保できない状況に対応するため、都道府県医療対策協議会の取り組みに対する支援や、小児科、産科における拠点病院づくりを初め、新医師確保総合対策に基づく各般の対策を推進するなど、安全、安心で質の高い医療提供体制を充実してまいります。

 また、生活習慣病対策を推進するとともに、効果的な介護予防対策や医療関連の科学技術の振興を図る健康フロンティア戦略を進めてまいります。

 さらに、新型インフルエンザ対策など、感染症対策の充実を図るとともに、総合的な肝炎対策を推進してまいります。

 第二に、がん対策基本法を踏まえ、がんの予防、早期発見の推進、がん医療水準均てん化の促進と情報提供体制の整備、在宅療養、緩和ケアの充実を図るなど、がん対策を総合的かつ計画的に推進してまいります。

 第三に、就業形態の多様化、個別労働関係紛争の増加に対応し、安心、納得した上で多様な働き方を実現できる労働環境を整備するとともに、非正規労働者の均衡ある処遇や正社員化の機会拡大、男女雇用機会均等の推進など、公正かつ多様な働き方を実現するための施策を推進してまいります。

 また、過重労働による労働者の健康障害防止や、職場におけるメンタルヘルス対策など、安全、安心な職場づくりを推進してまいります。

 第四に、地域における雇用創出を図るため、雇用情勢が特に厳しい地域と、雇用創造に向けた意欲が高い地域の取り組みに対する支援に重点化するとともに、企業の人材確保を支援するために、ハローワークにおける求人充足サービスを拡充強化してまいります。

 また、経済社会の活力の向上に向けた人財立国の実現を目指し、現場の戦力となる若者の育成を初め、職業生活を通じた能力開発を推進するとともに、二〇〇七年ユニバーサル技能五輪国際大会を契機として、物づくりに対する若者の就業意欲の喚起及びその重要性に対する国民の理解の増進を図ってまいります。

 第五に、働く人一人一人が職業生活の各段階で再チャレンジができ、その能力や持ち味を十分に発揮することが可能となる社会を実現するため、年長フリーター等に対する常用就職支援など、若者の人間力の強化と働く意欲の向上を初め、女性の再就職、起業の実現や、障害者の職業的自立、リストラによる退職者の再就職など、さまざまな事情に応じた再チャレンジにきめ細かな支援を行ってまいります。

 第六に、国民の結婚や出産に対する希望が実現する社会の構築に向けて、子ども・子育て応援プランや新しい少子化対策についてを踏まえ、児童手当の乳幼児加算の創設や、育児休業給付の給付率の引き上げを行うほか、働き方の見直し、地域の子育て支援の推進、母子保健医療の充実、児童虐待への適切な対応など、少子化対策を総合的に推進してまいります。

 第七に、介護保険制度の着実な実施を図るため、介護療養病床の円滑な転換を支援するとともに、介護サービスの質の向上や介護給付の適正化を推進してまいります。

 あわせて、高年齢者等の雇用就業対策について、六十五歳までの雇用機会の確保、七十歳まで働ける企業の普及促進等を図ってまいります。

 年金制度につきましては、平成二十一年度までの基礎年金国庫負担割合の二分の一への引き上げに向け、国庫負担割合を着実に引き上げることとしております。

 また、社会保険庁改革につきましては、公的年金の運営を再構築し、国民の信頼を回復するため、社会保険庁を廃止、解体し、公的年金に係る財政責任、管理責任は国が担う一方、その運営に関する業務は新たな非公務員型の新法人を設けてこれに担わせるとともに、あわせて、国民サービスの向上、保険料収納率の向上など、業務改革、意識改革、組織改革のさらなる推進を図ってまいります。

 第八に、障害者の自立した地域生活を支援するため、良質な障害福祉サービスを確保するとともに、障害者自立支援法の着実な定着を図るための措置を講じるほか、発達障害者支援施策の拡充、障害者の職業的自立に向けた就労支援の推進を図ってまいります。

 また、生活保護制度につきましては、受給者の自立を支援するための施策を一層推進し、その適正な実施を図ってまいります。

 第九に、医薬品等の安全対策を推進するとともに、新しい医薬品、医療機器を迅速に提供するための施策等を推進してまいります。

 また、輸入食品の監視強化、残留農薬等ポジティブリスト制度の着実な実施など食品の安全対策を推進するとともに、自殺対策基本法を踏まえた総合的な自殺対策、健康危機管理体制の強化等の諸施策を進めてまいります。

 以上のほか、世界保健機関や国際労働機関等を通じた国際活動の推進、経済連携協定の円滑な実施、戦傷病者、戦没者遺族や中国残留邦人などの援護、原爆被爆者対策、生活衛生関係営業の振興策、ホームレスの自立支援等の諸施策を推進してまいります。

 なお、委員各位のお手元に資料が配付されておりますが、一般会計予算の主要経費別の概要及び特別会計予算につきましては、お許しを得て、説明を省略させていただきます。

 今後とも、国民生活の保障、向上と雇用の安定を図るため、厚生労働行政の推進に一層努力してまいりますので、皆様のなお一層の御理解と御協力をお願い申し上げます。

実川主査 この際、お諮りいたします。

 厚生労働省所管予算の主要経費別概要につきましては、その説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

実川主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

実川主査 以上をもちまして説明は終わりました。

    ―――――――――――――

実川主査 この際、分科員各位に申し上げます。

 質疑時間はこれを厳守され、議事の進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。

 なお、政府当局に申し上げます。

 質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。冨岡勉君。

冨岡分科員 おはようございます。九州比例、長崎出身の冨岡勉でございます。担当各位の皆様方にはよろしく御答弁をお願いいたします。

 私は、きょう取り上げますのは、今柳澤大臣がおっしゃいました、がん対策基本法、がんについての検診そして診断、さらには治療について、PETCTを中心として質問をさせていただきたいと思っております。

 PETCTというと、何か犬を連れてCT検査を受けに行くような、そういうとらえ方もされることもあるんですけれども、ポジトロン・エミッション・トモグラフィー、陽電子を使った形態とともに機能を調査するような診断装置でございます。最初はPETだけあるいはCTだけで撮って、それを画像的に組み合わせていたんですけれども、現在はPETCT一体型というのが出て、がんに対する検診率、発見率というのが非常に高まってきております。

 それで、まず最初に、検診ということから入っていきたいんです。

 菅原大臣政務官も、多分年に一度は総合検診、自分で自己検診なんかに行かれていると思うんですが、御案内のように、この検診につきましては、いろいろな、血液検査、生化学検査、腫瘍マーカー等あるんですけれども、現在、消化管の検査、つまり、胃の内視鏡と大腸のコロンファイバー、それと、いろいろなレントゲンとかと組み合わせたものが一般化されているんですが、このPETCTですべてがカバーできるんじゃないかという考え方が出てきています。

 その点、これは最初の質問になりますけれども、総合検診において、いろいろなパックで、例えば、五万円、三万円なりのマルメで検診をするということが今行われておりますが、このPETCTを導入することはできないかどうか。まず、そのPETCTの有用性についての認識と、そしてちょっと進めますと、総合検診に取り入れる可能性はどのようにお考えなのか、その点をお聞きしたいと思います。

菅原大臣政務官 おはようございます。

 さすがは医療の最前線で御活躍をされていらした冨岡先生ならではの御質問と受けとめている次第でございます。

 PETCTによるがんの検査につきましては、医療現場におけるいわゆる血液検査や画像検査と組み合わせたがんの診断や、あるいは人間ドックにおける個別のがんの検診に用いられていることは重々承知をいたしております。

 そうした中で、現在、市町村が、健康な方も含めた総合的ながん検診において、実は、確実に死亡率が減少し得る、そう見込まれる、いわゆる死亡率減少効果の観点から有効性が確立されたものについてのみ実施をしているのが現状でございまして、先生御指摘のPETCTについて、今の段階におきまして、この死亡率減少効果を示すデータが出てきていないという現状の中で、今すぐに総合検診の中に導入するということは現段階では非常に難しい状況にあります。

 ただ、あらゆる見地から、今先生御指摘のことも含めまして、今後、有効ながんの検診のあり方についてさらに検討を進めてまいりたい、このように考えております。

冨岡分科員 その有用性については皆様も御認識のことだと思います。したがって、これをどのように普及させていって、それが、国民というんですか、いろいろな地域の隅々までやられるシステムを早急につくっていくのが肝要ではないかと思っております。

 ただ、このPETCTというのは、一つ、隘路というんでしょうか、問題を解決しなくちゃいけないのは、FDGといって、核種になるんですけれども、ガンマ線を出す、そういう核種をカウントする作業がどうしても要るわけなんです。そのFDGの半減期、ガンマ線を出すのが半減する期間が百十分と、かなり短いという問題点があります。したがって、今、各地域にそういうFDGを配送する、デリバリーする拠点があるわけなんですけれども、いかんせん百十分という非常に短い半減期のうちに病院に届けるというのがなかなか難しいところもあるわけなんですね。

 例えば、私は長崎ですけれども、九州では久留米、ちょうど九州の横断道と縦断道がクロスする久留米の近郊に配送するセンターがあるんですけれども、いかんせん百十分の間に、高速を通って福岡とか、熊本あたりまではいいんですけれども、長崎は遠うございまして、ちょっとトラブったり交通停滞になると、その半減期がもう過ぎてしまってこれが失効する、使えないというような状態になるわけなんです。

 このデリバリーシステムについて、国としてはどういう対策をとっておられて、今後どのように安全かつ確実にそういったFDGの配送をやるか、これがPETCTを普及させる一番の問題点ではないかというふうに思っています。

 これは担当の方でも構いませんので、現在、全国に拠点がありますけれども、カバーできないのが、私、拝察するに半分ぐらいの地域じゃないかなと思っております。このFDGのデリバリーシステムの問題点をちょっと整理していただければと思います。

高橋(直)政府参考人 PET用FDG製剤、これは釈迦に説法でございますけれども、サイクロトロンから弗素18を打ち出して、デオキシグルコースにぶつけてFDGをつくって、それを注射剤にして、それを患者さんの体に打って、放射性医薬品として使って、それから出てくるガンマ線を周りのトモグラフィーで画像を撮る、こういうものでございます。

 今、先生御指摘の放射線の半減期が百十分ということで、これはそのとおりでございますけれども、逆に、その半減期が百十分であっても、使用のときには、現在承認いたしておりますFDG製剤を使うときの標準の放射能の強さが百八十五メガベクレル、こういう大きさになっています。例えば、輸送時間が百十分かかるのであれば、使用時に百八十五メガベクレルの大きさにするためには、その倍の大きさのものが最初医薬品としてつくるときに必要なわけです。ですから、輸送時間がもう少しかかるということであれば、もう少し高いレベルの放射能で医薬品を製造して、半減期以上に輸送時間がかかるのであれば、使用のときに大体百八十五メガベクレルの高さに調節するようにできるわけです。

 現在の医薬品そのものとしての有効時間は二・四時間ということで、分に直しますと大体百四十四分ぐらいになるわけですけれども、これ以上の時間ということになりますと、使用のときに放射能の量が減ってきて、ちょっと使用としてはどうかという状態になりますので、御指摘のとおり、輸送時間が有効期限である百四十四分ぐらいを超えますと、それ以上の遠い地域では使用がなかなか難しいことになるというふうに私どもは認識をいたしております。

冨岡分科員 そういうことなんですが、ちょっと細かいようで申しわけないんですけれども、私が問題にしているのは、その製品の価格が、一cc、恐らく二万ぐらいだろうと思うんですが、有効濃度というかその核種の力というのが、遠方に、遠くに運べば運ぶほど減弱していくので、それのタイムリミットが二時間ちょっとということなんですけれども、そうしますと、量的に多く使うことになるんですね。つまり、一ccで済むところ、ここでできてぱっと私の体内に打つ場合には、それはシンチで画像が非常にきれいなものが出ますけれども、二時間後に、ぎりぎりのところでしたとき、それは一ccじゃ足りなくなって、二ccあるいは三ccぐらい使わないと、決められた範囲内でのものができないという状態が当然出てくるわけなんです。

 私が取り上げているのは、そういったシステムで、九州に一つということであれば、当然、そういう半減期の短いものを使うと常に失効する危険性があって、交通の停滞とか災害時とかあるいは車の事故とか当然考えられるので、全部だめになってしまう。したがって、セーフティーネットワークみたいな、こっちがだめならこれだということを常に地域ごとに自己完結型で完結しておく必要があるんじゃないかということで質問をさせていただいているわけなんでございます。

 つまり、私の大学のことを言って申しわけないんですが、まだPETCTが長崎大学にはありません。サイクロトロンとPETカメラというのが別々に、機材が若干高うございまして、サイクロトロンが五億とか八億とか、PETのカメラ、読み込む機械だけは二、三億であるとか、大分安くはなってきていますけれども。そうしますと、カメラだけ購入して、あとはサイクロトロンでつくるFDGを地域で完結する必要があるんじゃないかというのが質問の一つの趣旨になっているわけでございます。

 つまり、域内にサイクロトロンを持っている場合に、病院から大学の大学病院とか、がんの対策拠点病院にそれを提供することができないかどうか、まずそういう自己完結型のシステムをお考えでないのかどうか、ちょっとお尋ねしたいと思います。

高橋(直)政府参考人 地域における自己完結型のシステムというお話でございますけれども、その前提となる機械の衛生上の問題といいますか、そういったことでちょっと申し上げれば、先生今お話しの点は、院内にサイクロトロンがあって、かつそれに付設してFDGの製剤の製造機がある、この院内製造型。それから、先ほど私がお話し申し上げました、FDG製剤を市販の医薬品として供給するシステム、これはサイクロトロンは九州の場合には久留米にございますけれども、一カ所サイクロトロンを持っていて、その業者がサイクロトロンを持っている久留米から九州にできる範囲内で製剤を供給しているという、一方のそういう市販のシステムがございます。

 その二つの機関、機械の仕組みといいますか、そういったものは同じでございますけれども、一方の市販のFDG製剤というのは医薬品としての製造所の構造設備を満たしたところでのもの、一方の院内のものは院内で使うことを前提としているということが、ちょっとそこが違いまして、院内で製造したPET用のFDG製剤というのは、その病院内において使用するという前提で製造されておりますので、市販のPET用のFDG製剤と比べまして同程度の無菌的な環境のもとで製造されたものではない。それからもう一つは、同程度の品質を継続的に保証できないなどの事情から、他の医療機関への提供を行った場合には、保健衛生上の問題が発生する可能性が否定できないということでございます。

 このため、現状においては、病院内で製造された製剤を他の医療機関に提供するというのは、なかなか難しいのではないかなというふうに考えております。

冨岡分科員 既存の法律を運用するというか、それを当てはめるとそういうことになるんじゃないかと思います。

 PETCTが今急速に全国に普及しております。御提供いただいた資料によりますと、平成十五年に二百四十九台だったのが、わずか一年で四百三十八台までふえているという資料をいただいているんですけれども、そうしますと、これはほぼ倍とか七割増しとかという。この勢いでいくと、十九年度は何台になっているのかということになりますと、その供給体制が非常に不安になって、例えば九州の拠点の工場に火災が発生したりなんかすると、もう一カ月は全く診断にも治療にも使えないという事態が発生するわけでございます。東京の練馬あたりは、すぐどこからでも高速道路で運べばいいということになるわけなんですが。要するに、今格差というのが問題になっていまして、地域と都会というんですか、恩恵に浴するエリアというのが色分けされてきているような気がしてなりません。

 それで、非常に検診に有用、あるいはもうそれ一台で、いろいろな痛い目に遭わなくてもわずか二時間ぐらいで全身のチェックが済むようなこういう機械は、当然世界的にも普及するし、日本でも年に一度は数千万人の方が利用されることが予想されます。

 ぜひ、同一施設内での試料提供に関する特区とかそういったエリアで、県別ぐらいがいいのか、それはわかりませんけれども、やはり二次デリバリーシステム、あるいは病院で持っているのは大学とか中核拠点病院、がん拠点病院というのが今制度的にありますので、そういうところには地域内で融通し合う、法律の枠を超えたような、法律をまた変えればいいわけなんで、融通し合うようなシステムをお考えいただければと思います。非常に危ういデリバリーシステムじゃないかと私自身は思っております。

 なぜこういうことを申しますかというと、このPETCT自体は日本がつくったわけでも何でもないんですけれども、診断から治療というのが今がん対策基本法でもうたってありまして、国民が非常に関心を示している分野でございます。

 したがいまして、まずは診断のシステムをきちんとして、次に、私は外科医なんですけれども、切らなくても済む治療というんですか、重粒子線というのがございます。放射線治療というのが今クローズアップされておりまして、切らなくてもいい、我々が何時間かかかって腹をあけて取っていたのをわずか一回の照射で肺がんなんか消し飛んでしまう、吹っ飛んでしまうような重粒子線という非常にすばらしい治療装置が、これは日本が中心となって今普及あるいは開発に努めているところでございます。したがいまして、そのもとになるPETCT診断装置がないと、せっかくの治療装置が生かせないことになります。

 つまり、私自身は、医療というのを何度も申し上げていますけれども、厚生労働行政というのは、肝炎の後始末とか水俣の後始末とかカネミの後始末と言うと表現は悪いかもしれませんけれども、そういういろいろな手当てをするような省じゃなくて、攻める厚生労働行政というのをぜひ皆様方と構築していきたいのです。日本はすばらしいものを持っています。PETCTはおくれをとりましたけれども、重粒子線とか再生医療とか生殖医療を含めて戦略産業としてやはりこれを構築していかなくちゃいけないというのを、私はそれを使命として国会の方にもやってきたわけでございます。

 皆様方にお願いしたいのは、非常に狭隘というんですか、狭いと言ったらまたしかられるかもしれませんけれども、法律の運用とかあるいは枠をはめるということに視点を置くんじゃなくて、やってみさせてもいいじゃないか、そして長崎でこういうことが行われて、それを全国に普及する、そういったシステムをがん対策の基本法の中でもうたえればというふうに思っておりますので、ぜひそういう観点から、もう一度がんに対する対策をお考えいただければと思っています。その延長線上に、今申しましたように、医療産業というのが日本を第二のトヨタ、ソニーに次ぐようなものに仕立てていくんじゃないかと思っています。

 最後に、菅原先生の御意見をお伺いしたいと思います。

菅原大臣政務官 大変有意義な御議論、そしてまた先生の御意見を賜りました。

 先ほどのFDGの供給体制、先生のお地元の九州においては久留米市だけでございますから、あるいは北海道は札幌市だけ、こうした全国で九カ所しかない、こういう状況に対しましては、製薬企業、あるいは医療提供現場、そしてまた厚労省、三者でよく協議しながらそのフォローアップをしていきたい、このように思っておりますし、また、今のがん対策あるいはがん治療、その前の検診、こうした問題につきまして、きょうの御議論の趣旨をよく踏まえて、きめ細かに、そしてまた、守るだけの厚生労働省からしっかり攻める厚生労働行政、これを実践すべく私もその立場の中で努めていきたい、このように思っております。

冨岡分科員 ありがとうございました。終わります。

実川主査 これにて冨岡勉君の質疑は終了いたしました。

 次に、中根一幸君。

中根分科員 自民党の中根一幸です。

 本日は、少子化対策についてお伺いしたいと思っております。よろしくお願いいたします。

 我が国の少子化は非常に深刻な問題で、今回の予算委員会でも二度にわたる集中審議が行われました。年金、医療、介護、これらの社会保障制度は、まさに我が国の人口動向と密接なかかわりがあり、与党としても持続可能な制度をつくるための改革を行ってきております。

 昨年はついに人口減少社会になりました。その一方で、昨年、久しぶりに出生数が前年を上回ることとなりました。足元に少しでも明るい兆しが見えてきたわけですが、その兆しを消さないため、子供を持ちたいというカップルが希望どおりに子供を生み育てる環境をつくっていくことが非常に重要でございます。

 ところが、私の選挙区で地元の若い人たちの話を聞きますと、子供を持った後、すなわち、保育所はあいているんでしょうかとか、子育てに費用はどれくらいかかるんでしょうか、また、子育てをしている間の働き口といった不安があり、依然、子育てをめぐる環境というのは厳しいとの声が非常に多いわけでございます。

 国としては、来年度予算案において子育て環境づくりのためどのような対策を講じているのか、まずお伺いいたします。よろしくお願いします。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御指摘いただきましたように、我が国の子育ての環境、現状を若干申し上げますと、一つは、保育所の入所待機児童数、これは三年連続で減少はしておりまして、現在約一万九千八百人ということで初めて二万人を下回ったわけでありますけれども、依然として、都市部を中心に多くの待機児童が存在している。

 また二つに、子育て期にあります三十歳代の男性の約四人に一人が週に六十時間以上働いている、長時間労働の風潮がまだ根強くて、このような職場の雰囲気から、例えば育児休業制度も十分に活用されているとは言えない。

 また三つとして、地域共同体の機能が失われていきます中で、子育て支援サービスがどこでも十分に行き渡っているという状況にはまだないということ、身近に相談できる相手がいないからというようなこと、また専業主婦の家庭を中心に子育てに対する負担感が増大しているといったことも見られまして、残念ながら、これまで各般に講じてまいりました対策の効果が社会の変化に追いつくというところまでには至っていないと言わざるを得ません。

 少し長くなりますが、今具体的にどういうことの対策をしているか、お答え申し上げたいと思います。このような状況を踏まえまして、現在、十六年末に策定されました子ども・子育て応援プランといったものに基づきまして、働き方の見直し、地域の子育て支援などの総合的な取り組みを進めているところでありますが、さらに一層の取り組みを推進すべく、平成十九年度の、現在御審議いただいております予算案におきましては、新しい将来人口推計で、これはある程度厳しい見通しとなるということは念頭に置いておりました。

 そのことに基づきまして、一つは、待機児童解消に向け、各市町村における民間保育所の整備を推進する。二つとして、仕事と生活の調和や育児休業等の両立支援制度を利用しやすい職場風土づくりを推進する。また三つとして、児童手当制度における乳幼児加算の創設ということで子育て世代の経済的負担を軽減する。また四つ目として、地域における子育て支援拠点というものを拡充しまして、子ども・子育て応援プランで平成二十一年度達成目標値も、この六千カ所を前倒しで実施していこう、また、生後四カ月までの全戸訪問の実施による子育て支援に関する情報提供や養育環境を把握する、こういったさまざまな対策、政府全体としては大変厳しい財政状況にありますが、最大限の措置を盛り込んだところでございます。

 こういった取り組みを推進することで、子供を生み育てやすい環境づくりに全力で取り組んでまいりたいと考えております。

中根分科員 ありがとうございます。

 政府としては、先日、子どもと家族を応援する日本重点戦略検討会議を発足させました。その中で、実効性のある少子化対策の具体案の検討に入ったわけでございますが、これまでの少子化対策を振り返り、施策の実効性を高めていく必要があると考えております。その点で、どのような考えで臨んでいくのか、お考えをお伺いいたします。

大谷政府参考人 これまでも政府におきましては、少子化に対応するためにエンゼルプランあるいは新エンゼルプラン、さらには平成十六年末には子ども・子育て応援プランなどを策定しまして、さまざまな取り組みを進めてきたところであります。

 平成十七年から人口減少社会が現実のものとなり、また昨年末には新たな人口推計が公表されまして、少子高齢化が、これまでの予想を超えて進行するという厳しい見通しが示されたところでございます。

 このような我が国の少子化の現状は、多くの国民が、結婚したい、子供を生み育てたい、結婚しても子供を持って働き続けたいと希望しておられるにもかかわらず、その希望がかなえられず、結果として少子化が進んでしまっているというものと考えられるわけであります。

 厚生労働省といたしましては、この国民が希望しておられる結婚や出産を実現できる環境を整備するということが重要と考えております。このために、何が希望と実態の乖離を招いているのか、それを解消していくためにはどのような方策が重要なのか、こういったことを明らかにすべく、暮れの、人口構造の変化に関する特別部会というところで有識者の先生方のお知恵もおかりしながら議論を進めて、これを整理してこの一月二十六日に公表したところであります。

 この特別部会の考え方によりますと、経済的基盤や雇用、キャリアの将来の見通し、あるいは安定性、それから、子育てしながら就業を継続できる見通し、あるいは仕事と家庭の調和、さらに夫婦間の家事、育児の分担、あるいは育児不安、こういったことが結婚や出産に影響を及ぼしている要素として整理されているところでございます。

 そこで、先ほど御指摘のありました、子どもと家族を応援する日本重点戦略検討会議におきまして、今申し上げたような点に焦点を当てて、効果的な対策の再構築あるいは実行を図るべく、検討を進めてまいりたいと考えております。

中根分科員 一方で、子供を持てないカップルがいるのも事実であり、十組に一組が不妊に悩んでいるとの調査結果も出ております。不妊治療の技術は大変進歩してきていると伺っておりますが、地元の知人でも不妊治療に取り組んでいる人がいるもので、このようなカップルへの支援としてどのような取り組みを進めているのか、厚生労働省の対応をお伺いします。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 子供を生み育てたいという希望を持ちながらお子さんができない御夫婦に対する支援は、少子化対策の一環としても大変重要な問題であるというふうに認識しております。医療保険の適用のない高度な不妊治療を選択せざるを得ない、こういった場合の経済的負担の軽減を図りますために、平成十六年度から特定不妊治療費助成事業というものを実施しております。配偶者間の不妊治療に要する費用の一部を助成しているところでございます。

 さらに、平成十九年度の予算案におきましては、その支給金額を増額するとともに、その所得制限を緩和いたしまして、経済的支援の充実を図るということを考えておるところでございます。

中根分科員 ありがとうございます。

 また、子供を安心して生み育てていくことのできる環境づくりを進める観点からは、出産時の医療体制を整備すること、また、子育て期間中の小児の救急医療体制の整備が不可欠だと考えております。

 まず、出産時については、医療事故の危険性もあり、実際訴訟にもなっていますが、特に産婦人科のお医者さんのサポート体制、これがどうも弱いんじゃないかと感じております。それが地方における産科医不足にもつながっているということは明らかでございます。産科医を確保し、安心して産科医療に携われる環境をつくることは重要であり、まずその点での厚生労働省の取り組みをお伺いいたします。

松谷政府参考人 お産を担当する産科のお医者さんでございますけれども、出生数当たりの医師数は横ばいという状況ですけれども、総数については減少の傾向にございます。

 この産科医さんが大変な状況の理由といたしましては、分娩時の医療事故では過失の有無の判断が困難な場合が多く、裁判で争われる傾向がございまして、このような紛争が多いということが一つ挙げられます。また、各病院に産科医が一人ずつ配置されるなど、お医者さんの広く薄い配置などによる勤務医の厳しい勤務環境ということも理由の一つかと思います。また、少子化による出生数の減少などもございまして、これらを初めとするさまざまな原因があると承知してございます。

 このため、産科につきましては、訴訟の増加によって産科医療が萎縮しないようにするために、まず死因究明制度の制度化等の検討をいたしているところでございます。また、通常の妊娠、分娩にもかかわらず脳性麻痺となった患者さんに対する補償制度の検討もあわせて行っているところでございます。

 また、お医者さんが集まる拠点病院、私どもマグネットホスピタルと言ってございますが、そういうところをつくっていくこと、そして、マグネットホスピタルと地域の診療所あるいは助産所との連携体制を明確にすることによりまして、医療機関相互のネットワークを構築するということが一番基本的なところではないかと思っております。

 さらには、お産は、助産師さんは正常産を取り扱うことができますので、助産師さんの活用などの対策を行っているところでございます。また、産科には女性医師が多く就労していらっしゃいます。この産科に多い女性医師の就労環境の整備のために、院内保育所の運営に対する補助、またライフステージに応じた就労支援のための女性医師バンクの設立など、さまざまな対応を行っているところでございます。

 いずれにいたしましても、国としては、いま一度それぞれの地域の実情をしっかりと把握いたしまして、都道府県と協力しながら、地域ごとに具体的な医師確保対策を引き続き講じてまいりたいと思っております。

中根分科員 また、出産に関しては医療機関が連携協力することが非常に重要になってくるわけですが、厚生労働省でもかねてより周産期医療ネットワークの整備に取り組んでこられております。これの取り組み状況についてお伺いいたします。

大谷政府参考人 安全で安心できるお産の場を確保するために、一般の産科病院等と、それから高次の機能を有する医療機関との連携体制を確保する、周産期医療ネットワークと申しておりますが、こういうネットワークを全県で整備することとしております。現在三十九都道府県で既に整備されているところでございます。

 厚生労働省としましては、平成十九年度中にも全県で整備されるよう、これは各都道府県に対して、まだ整備いただいていない県も早急な整備をお願いしているところでありますけれども、それにあわせまして、例えば整備されるまでの間、現行体制での迅速かつ適切な医療が提供できるようにするということ、それから、既に整備されている県でありましても、現行体制がきちっとワークするかということの点検、あるいはその充実を図る取り組み、こういったことを促しておりまして、また、その実態を把握すべく現在調査もしているところでございます。

中根分科員 また、子育て期間中の小児の救急医療体制については、これまでも厚生労働省では夜間救急体制の整備、そして地域の医師の輪番制などさまざまな取り組みを行っております。厚生労働省としては、来年度の予算ではどのような点に重点的に支援していくのかを詳しくお伺いいたします。

松谷政府参考人 小児救急医療の体制整備でございますが、これは安心して子供を生み、健やかに育てる上で大変重要でございまして、地域の実情に応じまして充実、推進していくべき課題だと考えております。

 こうした考え方のもとに、平成十九年度予算案におきましては、まず、軽症の救急患者さんに対応する小児初期救急センターの整備、また、二次救急医療を担う小児救急医療支援事業などに対する運営費補助の拡充、また、小児科を初め急性期の医療をチームで担う拠点病院づくりなどの必要な関係予算を確保したところでございます。

 今般の医療法改正におきましては、都道府県が策定する医療計画に小児医療を重点的に位置づけることとしたところでございまして、各都道府県が新たな医療計画を策定する中で、地域の実情に応じた小児救急医療体制の充実が図れるよう、こうした予算を活用して都道府県の取り組みを支援してまいりたいと考えております。

中根分科員 救急体制については、今お話しのような医療機関のネットワークづくりというのは大変重要だと思っておりますが、何よりもそれを支える医師の確保が不可欠でございます。医師全体としては増加している状況にあっても、特定の診療科、特定の地域には医師不足の声が強く、医師がいるところといないところの差も以前よりも大きくなっているように思います。

 一般的には産科医、小児科医の不足というのがよく言われておりますが、現在の我が国の医師、医師不足の状況について、診療科ごとの傾向、大都市と地方との間の差の傾向など、厚生労働省としてはどの程度把握しているか、また分析しているか、お伺いいたします。

松谷政府参考人 我が国の医師の数につきましては、今先生御指摘のとおり、その総数は増加してきているところでございますけれども、医師の偏在などによりまして、一定の地域や、産科、小児科など特定の診療科では必要な医師が必ずしも確保できない状況が見られまして、医師の不足感があるものと承知してございます。

 診療科ごとの傾向について見ますと、先ほども若干申し上げましたが、産科につきましては、出生数当たりの医師数は横ばいとなってございますが、総数は減少傾向となってございます。この背景といたしまして、各病院に産科医が一人ずつ配置されるなどの、医師の広く薄い配置などによる勤務医の厳しい勤務環境、そして、特に産科におけるリスクの高まりや訴訟の増加に対する懸念、また少子化による出生数の減少などを初めとするさまざまな原因があるというふうに考えてございます。

 また、神経科、外科等においても若干減少の状況があるというふうに承知しております。

 また、小児科につきましては、総数及び小児人口当たりの小児科医師数は増加しているわけでございますが、不足感が一部にございます。この背景といたしましては、核家族化の進行、また共稼ぎ家庭の増加などに伴いまして、休日夜間診療の増大、また、親御さんの専門医志向といった患者さんの受療行動の変化などによる小児医療の質的なニーズの増加などによるものと考えてございます。

 また、大都市と地方との間での差の傾向について見ますと、全国的には、都道府県別に見ますと西高東低という状況にございまして、九州地方はお医者さんが比較的人口比当たり多く、東北地方は少ないという状況にございますが、東京や大阪のお医者さんが顕著に今増加しているという事実はございませんで、医師が大都市に一極集中しているとまでは必ずしも言えないと認識してございます。

 ただし、各都道府県内をまた見てみますと、県庁所在地など人口当たりの医師数が多い地域と、郡部など人口当たりの医師数が少ない地域がございまして、また、地域の病院間におきましても、医師の集まりやすい病院と集まりにくい病院に二分化する傾向があるというふうに認識しております。

中根分科員 ありがとうございます。

 また、このような現状を踏まえて、効果的な医師確保の対策について来年度はどのような取り組みを行っていくつもりか、具体的な方策についてお伺いします。

 また、今後の医師の需要の見通しについてお伺いいたします。

松谷政府参考人 今後の医師需給の見通しにつきましては、現在、医師の総数は毎年三千五百人から四千人程度増加してございまして、いまだ過剰な状態には至ってございませんけれども、将来的には必要とされる医師の数を上回る数の医師が供給されるとの見込みを昨年七月に示されたところでございます。

 しかしながら、医師の偏在によりまして、一定の地域あるいは産科、小児科などの診療科では、必要な医師が必ずしも確保できない状況が見られるものと承知しております。

 国民が地域で安心して必要な医療が受けられるようにするためには、国と都道府県が協力をして、地域の医療関係者の理解を得ながら、医療機関相互のネットワークを構築するなど、医療資源を効率的に活用した医療提供体制を構築することが重要と認識してございます。

 このため、平成十八年度の補正予算及び平成十九年度の予算案におきまして、充実した研修を行うことなどによりまして医師を集めることができる拠点病院の整備に係る助成、また、来年度より法定化されます都道府県における医療対策協議会の計画に基づきまして、これら医師を集めることができるいわゆるマグネットホスピタル、拠点病院から医師が不足する病院へ医師派遣を行う際の助成、さらには、小児科や産科のネットワーク化のための連携病院の整備費用の助成など、都道府県等の医師確保に係るさまざまな取り組みを財政面からも支援することといたしております。

 また、厚生労働省に地域医療支援中央会議を設置いたしまして、都道府県において実施されております医師確保に係る先駆的な事例の収集、医師確保のための改善方策の検討、自治体への具体的な助言などを実施することといたしているところでございまして、来年度より本格的に運用することといたしてございます。

 いずれにいたしましても、国といたしましては、いま一度それぞれの地域の実情をしっかり把握いたしまして、都道府県と協力しながら、地域ごとに具体的な医師確保対策を講じてまいりたいと考えております。

中根分科員 最後に、先ほど女性の医師が増加しているというような話もいただいたわけでございますが、それに関連して、女性医師の就労環境の整備についてのお話を伺いたいと思います。

 近年、国家試験の合格者に占める女性の割合は三割を超えるなど、医師全体に占める女性の割合が年々増加してきております。また、昨年、臨床研修を終え診療の第一線に立つ若い医師の動向を見てみますと、小児科を専門とした医師に占める女性の割合は実に四五・七%、産婦人科に至っては六八・一%となっております。今後、こうした不足感が強い診療科を中心に、これまで以上に女性医師の役割が重要になっていくものと考えております。

 このような状況を見ましても、今後、国民に必要な医療を円滑に提供していくためには、女性の医師の方々に、出産や育児といった多様なライフステージにも対応して、いかに診療の現場で継続して活躍していただけるかということが重要な課題となってまいります。

 そこで、厚生労働省にお伺いしたいんですが、厚生労働省では、このような状況に対応するために、従来から取り組んできた院内保育所への運営補助費に加えて、先ほど話していました女性医師バンクを設立したと聞いております。この女性医師バンク事業の現時点での運営状況や今後の取り組みについて、御答弁をお願いいたします。

松谷政府参考人 委員御指摘のとおり、出産や育児といった多様なライフステージに対応いたしまして、女性医師の方々に安心して診療に従事していただけるような環境の整備をしていくということは、地域の医療を確保していくという上からも重要な課題だと認識しております。このため、退職した女性医師等に対する支援といたしまして、今年度から女性医師バンクの事業を実施することといたしたところでございます。

 この事業につきましては、社団法人日本医師会に委託をいたしまして、本年一月三十日より運用が開始されたところでございます。二月二十七日現在で見ますと、求職者数五十八人、求人数二百六十六件の登録がございまして、求職者数、求人数とも順調に増加しているところでございます。

 今後とも、各都道府県や関係団体等に本事業の活用を呼びかけるなど、引き続き、女性医師の就業促進に努めてまいりたいと考えております。

中根分科員 少し早いですが、終わりにします。ありがとうございました。

実川主査 これにて中根一幸君の質疑は終了いたしました。

 次に、村井宗明君。

村井分科員 民主党の村井宗明です。

 きょうは、介護保険のルールの不透明な部分をもう少し透明にしていただきたいというお願いをさせていただきたいと思います。

 よく大臣のところでも陳情があると思うんです。何かといったら、うちの事業者も特養をつくりたい、何床ふやしたい。それぞれの選挙区、それぞれの市町村に、そういう介護保険をやっておられる事業者がたくさんおられると思うんです。ところが、各都道府県で枠が当然決まっているんです。介護保険事業支援計画で、この県は何床ふやす、市町村で何床ふやすというふうに決まっている。

 私がきょう質問をしたい内容は何かというと、どの事業者が何床ふやすというルールが非常に不透明でないかという話なんです。公共事業は透明なんです。何で透明かといえば、入札をして、金額の一番安い事業者がその仕事をできる。これはわかりやすいんです。

 ところが、介護保険の場合、そうじゃないんですよ。みんな、自分のところがやりたい、自分のところがやりたいというところがわんさかあるんですが、枠が決まっていてなかなか認可されない。どこでどう決まったかわからないけれども、いつの間にか、この事業者が十床、この事業者は何十床、あんたはだめ、あんたはだめ、あんたもだめというふうになってしまう。それで、聞いてみたら、大体、いや市町村で、市町村に聞いたら、都道府県で、国に聞いたら、いやどこか地方自治体でというふうにたらい回しになってしまって、この介護保険の事業者が、だれがどうやってつくれるかということが非常に不透明になっています。

 そんな中で、各市町村それから都道府県内での事業者選定の明確な基準の有無についてのお伺いをしたいと思います。

阿曽沼政府参考人 お答えを申し上げます。

 特別養護老人ホームのケースでございますけれども、各都道府県が、介護保険事業支援計画で定める区域ごとに、年度ごとに必要入所定員総数というものを決めておりまして、その範囲で都道府県が認可をする、そういう仕組みになっております。

 今お話がありましたように、複数の社会福祉法人が必要入所定員総数を超えて特別養護老人ホームの設立を希望した場合には、都道府県の中におきまして、サービスの質あるいは地域的なバランスを考慮して施設の選定に努めるということでございまして、そういう基準を定めております。

 また、その選定に当たりましては、各都道府県が、庁内の関係部局あるいは有識者が参加した合議制により、適正かつ公正に審査を行うようにという形で指導をしてきております。

 また、今お話がございました同一市町村内で複数の社会福祉法人が特養の設置を希望したという場合でございましても、各都道府県で、今申し上げましたような公正な審査を経て決めておられるものというふうに承知をいたしております。

村井分科員 その公正な審査をどれだけ厚生労働省は担保して、そして監督しておられるのかについて、もうちょっとお答えいただいていいでしょうか。それに対しての、ちゃんと公正にやっていると厚生労働省が見ている見方について、お願いします。

阿曽沼政府参考人 特別養護老人ホームについては、過去に大変残念な事件もございまして、私ども厚生労働省として、真摯に反省をいたしまして、公正な、中立的な監督を徹底するということを、平成十三年の時点で各都道府県に周知をいたしております。

 その中で、対象施設の選定に当たっては、妥当性あるいは協議基準との整合性等について、十分、他部局も参加をし、あるいは地方社会福祉審議会を活用するなど、合議制による審査を実施しなさい、それから、公正かつ公平な審査の実施をしなさいということで、例えば、県によって事情は違いますけれども、私どもが承知しておる限りでは、大学の先生とか、弁護士さんとか、公認会計士とか、その他行政機関の職員等で構成する選定委員会のようなものをつくって、そこで透明な形で決められているというふうに承知をいたしております。

村井分科員 その答弁はそれで結構なんです。それで十分なんですが、その上で、ぜひ今後知っていただきたいのは、特養をやりたいという事業者、自分のところはもっとふやしたい、自分のところはショートから、二十床あるところを十床展開したいというところもあれば、いや、もっともっと特養をふやしたい、そんないろいろなのがあるけれども、だれが、どこで決まっておるのかわからぬけれども大きいところにばかり持っていかれるとか、そういういろいろな地域の不満。公共事業みたいに透明な入札になっていないので、ぜひ厚生労働省の方からも、しっかりと、それが公正中立になるように運営していただきたいとお願い申し上げます。

 さて、同じように公正中立が今必要だなと思っているのは、在宅介護支援センターについてなんです。これは、もちろん、当然在宅介護支援センターになっているところが介護施設を持っておられる。そこで利用者の抱え込みがあるんじゃないかという話なんです。

 どの介護施設も、いや、自分のところが在宅介護支援センターになりたい、自分のところがなりたいと言い出す。何でみんな自分のところがなりたいかといえば、都会の議員さんはそういう話しても全然伝わらなかったんですが、私ら地方の議員になってみたら、大体、介護が必要になったら民生委員さんが来るんです。それで、民生委員さんが在宅介護支援センターになっている事業所に振るんです。建前上のルールは、在宅介護支援センターになっているところがケアマネの形になって、その地域にあるほかの介護施設にも客を振るはずなのに、実態として、在宅介護支援センターになっているところばかりたくさん繁盛するけれども、そうじゃないところには利用者を全然回さないという実態があります。

 さて、その利用者の抱え込み、在宅介護支援センターになっている介護施設の利用者の抱え込みについて、厚生労働省は実態調査を行っておられるでしょうか。

阿曽沼政府参考人 在宅介護支援事業所、いわゆるケアマネジメントの事業所というふうに呼んでおりますが、このケアマネジメントの事業所につきましては、居宅介護支援、いわゆるケアマネジメントの指定基準というのを私ども持っておりまして、その指定基準の中で、今御指摘のありましたような、特定のサービス事業者に不当に偏することのないよう、公正中立にケアマネジメントを行わなければならないということが規定をされております。

 それで、昨年四月の介護報酬の改定の際にも、ケアマネジメントの事業者が特定のサービス事業者に対して訪問介護サービスなどを一定割合以上割りつけているといいますか、位置づけている、そういうような場合には、そのケアマネジメントの介護報酬を全体減額するというふうな、私ども特定事業所集中減算制度と呼んでおりますけれども、そういう制度を導入しまして、公正中立性の確保に向けた措置を講じているということでございます。

 私どもは、その抱え込みの実態調査ということは行っておりませんけれども、今申し上げましたような介護報酬制度の運用あるいは指定基準の運用等によりまして、今後とも、利用者の立場に立った公正中立なケアプランが作成されるということを目指して指導していきたいというふうに思っております。

村井分科員 さて、その話なんですが、実態調査をせずして、だけれども特定の事業者に偏っている場合は減算する、もちろんそれはそれでいい制度だと思うんです。ただ、減算するのはいいんですが、実態調査をせずして、では、どこが特定の事業者に偏っているケアマネなのかは、どうやって調べられるんでしょうか。

阿曽沼政府参考人 特定の事業者に支払いが集中するといいますか、ケアマネジメントが一定の事業者に偏っているというのはそれなりに市町村で把握できますので、それがある場合には、当然市町村が指導に入りまして介護報酬の減算を行うということでございます。

村井分科員 特定の事業者に偏ってケアマネが振っている最大の理由は何かといえば、そのケアマネが、実際として、どこかの特定の介護施設に雇われている人であることが多いからだと思うんです。今、実際、どうなんでしょうか、本当にケアマネだけで自立している人がどのぐらいいて、在宅介護支援センターになっている介護施設に雇われているケアマネとの比率、そういったものはどうでしょうか。

阿曽沼政府参考人 今、手元に正確な数字は持ち合わせておりませんけれども、かなりの部分が併設型ではないかと思います。ただ、併設型でありましても、先ほど申し上げましたように、私どもとしては、ケアマネジャーというのはあくまで中立公正でなきゃならないということで、そういうケアマネジメントが行われるように十分に指導しているところでございます。

村井分科員 ありがとうございます。

 そうしたら、またそれは徹底していただきたいということをお願い申し上げます。

 次に、介護報酬の妥当性をめぐりまして、小規模多機能型が導入されました。これはこれで私もいいことだと思うんです。

 小規模多機能型の介護報酬は、月当たりに、要介護認定で幾らというふうにやっていきます。同じような施設で、デイサービスとショートステイを併設していて、場合によっては訪問介護もやっているところもあるんですが、デイサービス・プラス・ショートステイでやっているところがある。もう一方で、小規模多機能型でやっているところがある。この介護報酬で、今の小規模多機能型の介護報酬が妥当かどうかについての実態調査の質問をしたいと思うんです。

 何でかといえば、デイサービス・プラス・ショートステイの併設型の場合、どれだけ利用したかによって介護報酬が変わる。ところが、小規模多機能型の場合、全然使わぬ人、思いっ切り使う人、それは、同じように、どれだけ使っても介護報酬は一緒だし、どれだけ使わぬでも介護報酬が一緒なんです。これ、今、小規模多機能型を運営し始めて、調査をしてみて、実際介護報酬は妥当ですか。それとも、少ない、多い、利用頻度を比べてみてどうかを教えていただきたいと思います。

阿曽沼政府参考人 御指摘ありましたように、小規模多機能のサービスと、それからデイサービス、ショートステイのサービスとは異なっておりまして、お話がございましたように、小規模多機能のケースの場合には、一月当たりということで包括的に設定をされております。それから、デイサービスとショートステイは、御案内のように、それぞれ一日当たりということでございまして、そういう意味では、サービスの報酬の立て方が違っているという面がございます。

 したがいまして、私どもとしては、小規模多機能という制度を今回入れましたのは、一定の契約の中で、利用者の方も自由に使い得る、そのかわり一月間で報酬を設定する、そういう仕組みを設定したわけでございますけれども、今、たしか四百四十一施設ぐらいだと思います、小規模多機能の施設が。したがいまして、これが現実にどういうふうに動いているのかというのは、もう少し時間をいただいて、十分検証いたしたいというふうに思っております。

村井分科員 今おっしゃられた四百四十一の施設の中で、ぜひ、今すぐとは言わなくても、半年ぐらいたった時点で、利用頻度を割り算して計算してほしいと思うんです。つまり、月当たりの単価で決めた人がどれだけ利用したのか、平均何回利用したのか、ショートステイを平均何回利用したのか、同時に、訪問介護をどれだけ利用したのかを統計をとる、それで割り算をする。そうしたら、今の介護報酬が妥当かどうかが見えると思うんです。

 つまり、私は、小規模多機能型の事業者の人から、いや、うちは損しておる、これだけやっとんがんに、本当はデイとショートだったらこれだけ入るはずなのにといって、両方持っておられる人から言われたんですが、いや、どうなのかな、実際、全国で平均値をとってみて、ちゃんと実態調査をする、そして介護報酬をもう一回決め直さないと難しいのかなという気がするんです。また、そういう実態調査は必要だと思うんですが、もしされる場合、いつごろされるかというのをお答えいただければと思います。

阿曽沼政府参考人 御指摘のように、小規模多機能の施設は、そういう意味でも新しいタイプの施設でございます。従来のデイサービスとかショートステイの形とは違っておりますので、これがどういう形で経営されているか、経営実態を十分調べる必要があると思っております。

 したがいまして、一定の期間が必要だと思っておりますので、もう少し様子を見て実態把握に努めて、経営状況あるいはサービス提供の実態についての分析、検討を進めていきたいというふうに考えております。

村井分科員 質問は今の話で以上なんですが、ぜひ実際、利用頻度数を割り算してみて、しっかり調べていただきたいと思うんです。完全に利用数を割り算するだけじゃなくて、実際夜まで二人必要ということも勘案するならば、もう少し介護報酬が高い方がいいんじゃないのかなというのが私の今の感想なんですが、それはぜひ統計をとってみてやるべきだというふうに思っています。ちょっと今その辺、事業者の方からの不満の声も上がっているということをお伝えだけ申し上げます。ぜひ実態調査のほどよろしくお願いします。

 さて、四点目として、グループホームでの高齢者虐待の実態調査の有無、監査のあり方の話をしたいと思うんですが、監査が来る日がわかっているということに私は大きな問題があるのかなと思っているんです。監査の方が来る日に虐待なんてするはずはないんです。でも、実際、現場では身体拘束などの問題点があるというふうによく聞きます。

 そういった抜き打ち監査などをすることがあるのかないのか。実際に、何日前に監査をすると言って、身体拘束の実態を把握できないのではないかというふうにちょっと思っているんですが、その辺、監査のあり方についてお答えいただきたいと思います。

阿曽沼政府参考人 先日も、千葉の施設で虐待があるのではないかというふうな報道がなされましたけれども、高齢者虐待防止法というものが実施をされまして、各都道府県は、市町村からの報告があって、毎年度、養介護施設について、例えば虐待の状況とかあるいは虐待の場合の措置を公表するということになっております。

 したがいまして、この高齢者虐待防止法の枠組みの中で、新しい枠組みなものですからまだ十分な公表はなされておりませんけれども、毎年度どういう状態であったかというのを公表することになっておりますので、そういう形で私ども対処したいと思っております。

 それから、監査の問題でございますけれども、今私ども指導監督という形でやっておりますのは、一つは集団指導を通じるケース。これは、集団指導という形で虐待防止についての制度の理解あるいは普及促進ということをやっておりますとともに、もう一つは、実地指導ということをやっておりまして、実地指導の中で、認知症とか行動障害のある人に対して虐待防止になるような個別プラン、アセスメントを含むようなプロセスを十分大事にしてほしいという形で指導をしております。そういう形で市町村にも具体的な指導マニュアルというようなものを出しておりますので、今後ともそういう形の周知徹底に努めてまいりたいというふうに思っております。

村井分科員 デイサービスとかだと、通いもあるし、夜家へも帰ったりする。だから、虐待というのは見えづらいかなとは思うんです。ところが、グループホームの場合、ずっと閉鎖的な世界がつくられて、利用者の人は余りその世界から出ることがない。もちろん職員の人は家へ帰ったりしますけれども、それでも、閉鎖的な世界がつくられる中で、私は抜き打ちの監査というものもあってもいいのかなと思うんですが、老健局長さんはどのように考えられますでしょうか。

阿曽沼政府参考人 考え方として抜き打ち監査ということもあり得るとは思いますが、私ども、監査のあり方として、本来やはり指導をちゃんと徹底するという方が望ましいと思っておりますし、それから、高齢者虐待防止法の中でも、いわゆる内部告発といいますか、そういう通報窓口みたいなのを市町村なり都道府県で受けとめてやるという仕組みがございますので、多様な方法を活用してできるだけ虐待の実態の早期発見に努めまして、また、早期の指導を行いたいという形で対応したいと思っております。

村井分科員 関連質問も含めて、老健局長さん、ありがとうございました。関連質問にアドリブですぱっと答えていただいて、さすがだなと思いました。

 さて次に、全く別の話へかわりたいと思います。

 医療機関窓口でのレセプト並み明細書発行についてなんです。私が昨年の通常国会のときに川崎前大臣に質問した内容の続きをさせていただきたいと思います。

 川崎前大臣に通常国会で質問したときに、医療機関窓口でのレセプト並み明細書発行について広報の必要性がある、そして、各病院に指示しているという答弁がありました。国立高度専門医療センター八病院、国立循環器病センター等四病院ではその趣旨のポスターがどのような形で掲示されたか、そして、それが掲示された後、レセプト並み明細書の発行についての請求の、ふえているか減っているかなどの推移についてお聞きしたいと思います。

松谷政府参考人 国立高度専門医療センターにおきます明細書の発行が可能であるということの広報につきましては、レセプト並みの明細書の発行が可能であること、それからその発行料金は無料であることを示したポスターを、外来ホール、診察室の前、各病棟などに掲示をいたしまして周知を図っているところでございます。

 また、明細書の請求件数でございますが、国立高度専門医療センター八病院合計で、先月末までに、入院患者からは百四十四件、外来患者からは九十件、計二百三十四件の請求があったところでございます。

村井分科員 同じく、前の大臣は、その質問をしたときに、国立医療センターを初めとして国立病院機構にも同様にレセプト並み明細書の無料発行を広げていく旨の答弁をされました。その答弁をされた後、実際どの程度取り組んでおられるかについての説明をお願いしたいのと、また、国立大学附属病院においても、ポスター掲示など、文科省を通じて同様の取り組みを促すようにどのような形で連絡をとられたのか、そして、その結果どのような状況にあるのか、お答えください。

松谷政府参考人 国立病院機構の各病院におけるレセプト並みの明細書の発行につきまして、当方から指示、依頼をいたしまして、国立病院機構ではその対応を図っていただきまして、今、全病院で発行ができる体制を整えたというふうに伺っております。なお、件数については、今直ちにはちょっと掌握してございません。

 また、文科省の国立大学法人の病院等につきましては、口頭でございますけれども、文科省の当局にその旨同様の取り扱いをするようお願いを申し上げているところでございます。

村井分科員 通告した六問が終わりましたので、ちょっと違う話、通告していないのでわからなければわからないという答弁でも結構なんですが、その前提でお聞きしたいことがあるんです。

 特別養護老人ホームがありますね。特養で、個室の場合と多床室の場合、これは二種類あるわけです。例えば、要介護度四の場合、個室のときの基本報酬は二十四万円、それで、多床室の場合、基本報酬は二十五・九万円。もちろん、食費とか居住費を入れて、別料金も請求するわけです。

 私が今何を気にしているかといいますと、食費とか居住費とか自己負担分を全く除いて介護報酬の金額だけを見た場合、何で個室と多床室で多床室の方が介護報酬が高いのか。ちょっとこれはバランスに欠けているんじゃないかなと思うんですが、急な質問ですが、もしお答えできるようだったらお願いします。

阿曽沼政府参考人 急なお尋ねなんですけれども、介護報酬の改定、一昨年の十月から個室とそれから多床室でいわゆる報酬の額が変わっております。それは、食費と居住費を原則利用者負担にお願いするということをやったことによって、結果として介護報酬の額が変わっているということでございます。

 ちょっと、大変細かくて恐縮でございますけれども、考え方としては、従来、個室である場合には、光熱費と減価償却費全部を利用者の負担にお願いし、しかしその分は介護報酬から差っ引くという形をやっております。また、多床室については、居住環境が余りよくないということで、光熱費だけを介護報酬から引く。その結果、結果として介護報酬、単価だけ見れば違いが出てくる、そういうことでございます。

村井分科員 さて、結果としてそうなった。もちろんそうだと思うんです。私もそれをわかった上で言っているんですが、実態として、介護報酬で、個室と多床室で多床室の方が高いというのは、どうもやはり私自身は違和感を感じていたんです。

 制度としてそうだというのはわかった上で、今後、それについて見直しを検討する気持ちがあるかないかについて、お答えをお願いします。

阿曽沼政府参考人 委員御指摘のように、直観的な違和感は多少あるというのはあろうかと思いますが、トータルな利用料の総額という意味では個室と多床室はバランスがとれておりますので、私どもとしては、今後とも経営の実態の調査をしながら、次期の介護報酬の改定の際にいろいろな角度から検討していきたいというふうに思っております。

村井分科員 例えば差額ベッド代、正直差額ベッド代という言い方はおかしいですね、個室料金を取っている実態はあると思うんです、それぞれの施設で。実態はそうやっているなと思いながらも、取っていないところももちろん何カ所かある。そういったところは、個室より多床室の方が値段が高い、介護報酬が高い、すごいおかしいなと。そうじゃない、実際はだからといって、民間の事業者の場合別料金を取るのは、それは実態としてあった上で、制度自身がそうなっていないというのは、私はおかしいと思うんです。ぜひ、今後そこについての検討をしていただければとお願い申し上げます。

 三分だけ余りましたので、最後に大臣に、意気込みだけの話、今と同じ話で結構ですので、お聞きしたいと思うんです。

 一点目が、介護保険事業計画に基づいてつくる事業者が、入札とかで非常に透明になっていない。入札とかで透明になっていなくて、恣意的に、だれがどこでどうつくられるのかわからないものをぜひ公正中立にしていただきたい。つまり、自分の事業者、おれのところもつくりたい、おれのところもつくりたい、おれのところもつくりたいと言っている中で、いつの間にか、A、B、CがあるのにC社に決まるというのをぜひ公正中立にしていただきたいという意気込み。

 それから、在宅介護支援センターになっているところが利用者を抱え込んでほかに振らないというところをぜひ公正中立にしてほしいというお願いについての、公正中立にしたいという意気込みだけを聞かせてください。

柳澤国務大臣 特養の設立等について、複数の事業者がこれを申請したときにどういう形でこれを最終的に選定するか、これは行政手続としても非常に公正中立を期さなければならない、こういうことであろうかと思うんです。

 ただ、今先生のいろいろな御議論を聞いておりまして思うのですけれども、やはり普通の公共事業のように、公共事業でも品質確保ということが非常に問題になったわけですけれども、こういう、人に対する、特に弱い立場の人たちに対するサービスということになると、やはり品質の確保というかバランスというか、これは非常に大事なポイントだと思うんです。そういうことを確保しつつ、なお、今先生がまさにおっしゃるように、偏りがない、不公平がない、そういう業者を選んでいかなければならない、これはもう非常に重要なポイントだと思います。

 現在もいろいろ審査機関を設けて、透明を保ちながら公正を期するということであろうと思いますけれども、さらにこの面で、今先生御指摘のような方向での努力を一段と進めていくということは大変大切なことだと考えております。

 それからもう一つは、在宅介護支援センターのケアマネとの関係ですが、これも、私なぞもこの制度が発足するときに、ケアマネをどこで確保するんだ、それは事業者との間で本当に独立なのか、公正は期せるのか、これは随分気にしたところでございます。

 そういうことで、しかし、現実、独立のケアマネという人たちは、今事務当局から答弁があったように、なかなか確保しがたいという状況にあって、やはり事業者のところから派遣するということの実態があるという答弁があったわけですが、それでもやはり基本的に、我田引水というか、そういうことばかりをやるということは、これは努めてケアマネの人たちの自覚の問題でもあろうと思うんですけれども、大いにここのところは、これは事業者それからケアマネの人たちそれからまた監督者ともに気を使って、努力をしていかなきゃならない分野であろう、このように考えております。

 厚労省としても、その方向での努力をいたしたい、このように考えます。

村井分科員 大臣、本当に、さすが、すばらしいと思いました。急に振ったのにずばっと答えていただいて。ぜひその大臣の意気込みで、今の介護保険事業者の、地域によっては、もちろん全部の地域がそうだとは言いませんが、実際に不公正な抱え込みがある。それから、いつの間にか、よくわからないところで、行政とつながっているようなところが特別養護老人ホームに認可されていって、公正に民間が参入しづらいところもあるということについての取り組みをしていただければ、もっともっと介護保険が公正で透明なものになる。大臣はきっとそういうふうに取り組んでいただけると御期待申し上げ、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

実川主査 これにて村井宗明君の質疑は終了いたしました。

 午後一時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十時二十七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三十分開議

実川主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。内山晃君。

内山分科員 民主党の内山晃でございます。

 きょうは、社会保険事務所で健康保険被保険者証の即日交付を行わない理由につきまして、お尋ねをさせていただきたいと思います。

 事務処理の円滑化を図るため、全国の社会保険事務局単位で事務センターを設立し、個々の社会保険事務所で行っていたさまざまな仕事を事務センターに集約し、入力業務を外注化することで効率化を図る、このことにより人員をシフト、例えば国民年金の収納対策の強化といったところに振り向ける、健康保険の被保険者証の交付も、原則、事務所の窓口の即日交付から、事務センターへ集約をして郵送で送るというふうに社会保険業務処理マニュアルに定めた、昨年十二月一日、厚生労働委員会で、私の質問に対して、そちらにおられます青柳政府参考人からのこのような御答弁がございました。きょうはそのことをさらに掘り下げて質問をさせていただきたい、こう思っております。

 まず第一に、事務の効率化を図り、国民年金の収納対策の強化に振り向けるとありますけれども、窓口で健康保険被保険者証の交付を行わないこと、それを犠牲にしてよろしいんでしょうかということをお尋ねしたいと思います。

青柳政府参考人 これまで社会保険の仕事の仕方というのは、社会保険事務所というのが第一線の機関ということでございまして、ここでいえば、いわゆるオフィス業務、デスクワークと申しますか、そういった事務処理のいろいろな、受付のみならず、そこで処理をすること、それからあわせて、お客様の相談に応じること、あるいは保険料の徴収その他の事務、これを一括して行っておったのがこれまでの社会保険の仕事のやり方であったというふうに、まずは御理解をいただきたいと思います。

 これを、私どもは、今後、一線の社会保険事務所というのは、基本的にお客様に対応する、人的なサービスにいわば特化していく、そのために年金相談等の体制も整えておりますし、また、国民年金の保険料の徴収等、直接にお客様に働きかけをするような仕事、こういったところにも力を入れていかなければならないだろう。

 そういたしますと、必然的に、これまで社会保険事務所で同時に行っておりましたさまざまな届け出書類等の審査でありますとか、これの入力でありますとか、こういった業務というものを集約いたしまして、それはそれで、例えば都道府県に事務センターをつくってここで集約をしていくという形にすることによって、私どもとしては、むしろ全体としての、被保険者を初めとするお客様へのサービスというものを向上させることができるのではないかという基本的な考え方に立つものでございます。

内山分科員 今までできた窓口での即日交付が、国民年金の保険料の収納業務に人員を特化したために犠牲になっている、やはりこういう形はあるわけでありまして、今までの利便性が損なわれてしまうということは事実であります。

 では、続きまして、昨年十月一日に出ました業務処理マニュアルにおきますことについてお話をしたいと思います。

 業務処理マニュアル、基本事項一に、社会保険庁職員行動規範に基づき業務を行う、こういうふうに書いてあります。その行動規範の一に、「お客様」として、「私たちは、全ての国民の皆様をお客様とし、お客様第一の精神で取り組みます。」行動規範の二、「国民へのサービス向上」として、「私たちは、親切、迅速、正確の3Sをモットーに、国民へのサービス向上に努めます。」と明記されています。

 現在、東京都社会保険事務局以外の社会保険事務所では、健康保険被保険者証の即日交付をしないことに対して、利便性が悪くなり行政サービスが後退したとの声を数多く耳にしております。

 社会保険事務所の窓口で健康保険資格取得届を提出してから被保険者証を手にする、交付するまで、大体十日から十四日間の日数がかかっているわけでありまして、この間、病院で受診をするとき、やはり非常に不利益が生じているわけであります。後日、療養費払いということで請求をするにしましても、また療養費の請求書を書かなければならない。二度手間、三度手間をかけることとなるわけでありまして、このことを判断しても、お客様第一のサービスとは言えない、行動規範に反していると私は思いますけれども、答弁はいかがでしょうか。

青柳政府参考人 健康保険の被保険者証の交付につきましては、確かに、事務センターに集約することによって、即日交付を受けられていたのに受けられなくなるではないかというお声があることは御指摘のとおりでございます。

 しかしながら、ここのところは、業務処理マニュアルを内山議員もよくお読みということで御承知のこととは存じますけれども、どうしても緊急に病院にかからなきゃいけないために、どうしても即日に被保険者証が必要であるというお申し出があった場合には、これは全国一律の業務処理マニュアルに定めておりますとおり、被保険者証の窓口交付をいわば例外として行うことができるということで、緊急のニーズには対応させていただく。しかし、先ほど申し上げましたように、総体としての効率化を図ることによってお客様のいわばサービス向上にこたえていくという大きな方向の中では、郵送あるいは今後は例えば電子申請、こういった形で申し込みをしていただくことによって、その処理期間をできるだけ短くしていくということに努めてまいりたいというふうに考えております。

内山分科員 被保険者証が手元に届くまで、自費で病院にかかります。そうすると、病院の方は、自費扱いということになりますから、保険証を持っていく場合と自費でかかる場合との、医療機関の保険点数の請求の仕方が違うんじゃなかろうかと思うんです。そこに不利益が生じませんか。

青柳政府参考人 具体のケースとして、そういった意味で点数が違ったというケースについては私は承知をしておりませんが、例えば、これがいわゆる自賠責等、つまり、まさに責任のある者が別にいるようなケースの場合には、これはいわば民民の間での賠償責任というような問題がありますから、医療機関の請求の仕方が保険請求と違うということはあり得るだろうというふうに思いますけれども、療養費払いをするということが前提の中で、例えば保険請求のルールとは違うような請求がもし仮にあった場合には、これは私どもとしてはやはり医療機関に対して、しかるべく申し入れをしなきゃいかぬということではないかと考えております。

内山分科員 田舎ですと、保険証ができるまで、できたらすぐ持っていきますということで、保険扱いということで初診からやってくれるところもあろうかと思います。しかし、全くわからない会社の被保険者が病院にかかりたい、その病院と信頼関係も何もないところで受診をした場合において、自費で処理をしなければならないわけでありまして、後日持ってきてくださいと言って、仮に医療機関の方が保険扱いをしていなければ、自費扱いの医療機関で保険点数の差がある。後日、保険証を持っていった、当然差が出てくるはずだと思いますよ。療養費払いという制度があるのは百も承知でありますけれども、最初から保険証を持っていく場合と何もないで行く場合、あくまでも医療機関の良心にかかっている、こういうケースがあるんだろうと思います。これは明らかに不利益です。

 ことし四月から、東京都社会保険事務局管内の社会保険事務所でも、健康保険の被保険者証の即日交付を行わないということを、窓口にリーフレットを置きまして説明をしております。なぜ東京都社会保険事務局が行わなくなるのか、その理由を確認したいと思います。

青柳政府参考人 先ほど冒頭に内山議員の方から御紹介をいただきましたように、現在、社会保険庁におきましては、各県単位ということになりますが、社会保険事務局の単位で事務センターという形をいたしまして、これまでそれぞれの事務所で行っていた仕事を集約するということに取り組んでいるわけでございます。

 ところが、この集約の取り組み方につきましては、これまでの、それぞれの事務局ごとの仕事のいわば経緯といったようなものや、あるいは仕事の量といったような物理的な制約により、進捗状況が必ずしも一律ではないという事情がございます。特に、東京の場合にはかなりの数の被保険者あるいは事業所を抱えておるわけでございますので、この入力業務等の集約が恐らく日本の中でも一番おくれているグループの一つということであろうかというふうに存じております。

 したがいまして、他の社会保険事務局、他の都道府県の管内においては、多くのところが集約を進め、例えば被保険者証についても後日郵送するということに切りかわっているにもかかわらず、東京都においてのみその切りかえができないために、逆に、各社会保険事務所内において入力業務を、しかし民間の派遣職員を使いながら行うということにしておったがために、結果的に、被保険者証の交付が現時点でも社会保険事務所の窓口で行われていたというのが実情でございます。

 ただ、こういったような中でも、東京もいつまでもそういった事務の集約をしないでも済むということではございませんので、当然、集約の方向に持っていかなければならない。

 かてて加えて、都道府県単位の事務センターでの仕事を将来的にはブロックでさらに集約をしていこうということを、私ども、方向性として見据えておりますので、本年の四月から、そういった資格取得届等につきましては、報酬月額を自動的に算出する。これは、生の賃金を御報告いただければ、それを機械で標準報酬に置き直す。今までは人間がそれを見ながら全部置きかえておったわけですが、こういうことを機械でやる。それから、決定した年月日を機械で印字する。これも今まではスタンプを押して、いわば手作業でやっておったということでありましたが、これを機械でやるようにするということにした。このために、決定通知書を一括作成するということに切りかえたわけでございまして、そういったシステム変更を全国的にしなければならなくなった。

 このような中で、今まで手作業でやっていたがために窓口で即日交付のできた東京の社会保険事務局管内におきましても、こういった段階的に集約化を進めるいわば一過程といたしまして、このシステム変更に合わせて、被保険者証の窓口交付について、被保険者証と決定通知書を後日郵送するという取り扱いに切りかえさせていただく、こういうことであることを御理解賜りたいと存じます。

 なお、一言つけ加えさせていただきますが、先ほど、この御質問の冒頭で、療養費払いについてのお尋ねがさらにございました。

 療養費払いにつきましても、保険診療で後日償還するということをきちんと医療機関に伝えて、すなわち、これは保険診療で私は診療を受けたい、保険の範囲で受けたいということをきちんと医療機関にお伝えいただくことによりまして、例えばそういった誤解はなくなるものと思いますし、療養費払いそのものも、最終的には保険者が被保険者の方に自己負担分をお支払いするという形で、いわば完結をする仕組みでございますので、ここは多少のお手間をとらせて申しわけございませんけれども、きちんと医療機関にもそういった御意思を表明いただければ幸いかというふうに存じます。

内山分科員 長い御説明、ありがとうございました。時間が限られておりますので、簡潔にお願いをしたいと思います。

 港社会保険事務所に置いてありました書類を見ますと、適用関係の用紙を複式から単票様式に変更する、こう書いてあります。この複式から単票にする理由は何でしょうか、簡単にお願いします。

青柳政府参考人 現在は複式というふうに御紹介ございましたように、いわば正副両様、二枚の書類ということで、一枚書きますと裏にそれが転写されるという形の書類を出すというのが現在のルール、これを一枚のものにするということでございます。

 これは部分的に先ほどの繰り返しになりますけれども、資格取得届等の報酬月額を機械で自動算出するようにする、それから決定年月日を機械で印字するようにするということのためには、一枚の紙があって、それを機械で入力すれば、副票をつくる手間も必要もなくなるわけでございますので、我々としては、こういった機械処理をしていくために単票様式に切りかえていくということを考えている次第でございます。

内山分科員 先日、東京港社会保険事務所と神奈川の横浜中社会保険事務所に行きまして、業務の流れ、被保険者証を作成するコンピューターやプリンターを見てまいりました。港社会保険事務所では、健康保険被保険者証を作成する場合、適用窓口の職員がウィンドウマシンでデータを入力して、その横にあります保険証作成プリンターから打ち出された保険証と資格取得届との突合をしまして、その場で窓口で即日交付をしている。しかし、四月以降は単票用紙に変更となるために、作成された保険証と確認する用紙が複数でなくなるためにできない、だから即日交付はできないんだという説明がありました。

 では、取得届の用紙を、今まででもカーボンを入れて書いているわけでありますから、取得届だけでも複式の用紙に戻し、即日交付ということはできないのでしょうか。

青柳政府参考人 繰り返しになりますが、仕事のやり方そのものを全国一律で切りかえていこうというのがこの事務センターへの集約の根本になるところでございますので、そのスピードに違いこそあれ、最終的に目指す形というのは、単票方式によるところのシステムに乗っけていくということが基本であるというふうに考えております。したがいまして、東京都は結果的に、今までその対応がおくれていたがために窓口の即日交付ができていたということでございますので、これは全国一律の方式に基本的には切りかえていきたい。

 ただし、繰り返しになりますが、先ほど申し上げましたように、どうしても即日で被保険者証を必要とする方については、これは全国どこでもそうでありますけれども、例外的な措置として対応させていただくことができるという仕組みであることを御理解賜りたいと存じます。

内山分科員 同じく昨年の政府参考人の答弁で、東京都におきましては、一部の入力を社会保険事務所の室内において民間の派遣職員が行うというやり方で被保険者証の交付をしている、こういう答弁がありました。だから、即日交付ができるんだと。

 東京都の社会保険事務局の場合というのは、やはりボリュームが物すごく大きい。ここが即日交付を行えないということになりますと、その影響が非常に大きいのだろうと私は思うわけであります。また、四月から即日交付ができないということに対して、東京都の事業主の皆さんや社会保険労務士の皆さんからいろいろな意見をいただいておりまして、混乱をするのではなかろうかと非常に懸念をしています。

 田舎であれば、保険証ができたら持っていきますという扱いもできるかもしれません。しかし、東京のようなところでは、医療機関も取りっぱぐれもあるかもしれませんから、そのような扱いをしてくれないかもしれません。先ほど答弁にもありましたように、では、療養費払いで、最初から健康保険でということの申し出をどれだけの人ができるかという知識の問題もあるわけであります。

 私は、やはり今後も健康保険の被保険者証の交付、何とか即日交付ができないものか、さらには、できなければ、お手元に届く十日から十四日の間に資格証明書のようなものが発行できないだろうか、こういうふうに要望したいのですが、いかがでしょうか。

青柳政府参考人 お手元に届く日数を短くするための努力というのは当然私ども、今後してまいりたいと思います。したがいまして、例えば事業所側におきましても、従業員の採用に当たって事前に届け出を準備していただき、採用と同時に届け出書をいただくというようなことや、先ほどもちょっと申し上げましたが、電子申請の利用といったようなことで、私どもとしても被保険者証の早期交付を図るということは努力をしてまいりたいと存じますし、事業主にもお願いをしてまいりたいと存じますが、基本的に目指す方向といたしまして、緊急の対応はできるようにきちんと今後も対応してまいりますが、大きな流れとしてはこういった事務センター方式に移行するということについて、広く御理解を求めてまいりたいと存じます。

 なお、先ほどの私の答弁中で、一言、療養費払いに関しまして、利用者負担の分をというふうに申し上げましたが、これは利用者負担以外の分を療養費としてお支払いするの間違いでございましたので、この場で訂正させていただきます。申しわけございません。

内山分科員 共同事務センターということになりますと、社会保険事務局からセンターへの搬送費用とか、またそれから、即日交付ができないことになりますと、事業主あての郵送のコストというのも膨大な費用が東京都の場合なんかも出るのではなかろうかと思うんですが、その辺はどういうふうにお考えになっていますでしょうか。

青柳政府参考人 コストの点についても十二月のときにも少しお話を申し上げたかと存じますが、確かに、郵送料を初めとして、これを切りかえることによってかかるコストというものがかかってまいります。しかし同時に、要員のシフトという形で、その業務についていた者を別の業務に移すということになりますと、結局その業務については要員の人件費相当分が節約されたということにもなるわけでございまして、これを両様、いわばコストとベネフィットを比較してみますと、やはりベネフィットの方が大きいというふうに私ども判断をいたしまして、このような対応をさせていただいております。

内山分科員 昨年も費用対効果のことでお尋ねをしました。埼玉県の事例を御報告いただきまして、この中で、平成十七年度、千二百万円を経費として委託費を払った、これに伴いまして、二十三人の人員シフトを国年徴収の方に回すことができたと。しかし、この中には、先ほども申し上げましたとおり、郵送コストであるとか、事務局からセンターに送る搬送費用であるとか、目に見えないものが含まれていないわけでありまして、ぜひ一度、二十三人分の人件費と、事務センターそれから事務局との間のさまざまな経費というものを数値に置きかえて御報告いただければと思うんですが、きょうはその資料はお持ちではないと思いますので、おわかりでしたらお答えをいただければと思います。

青柳政府参考人 完全ではございませんが、一部わかっているもののみお答えをさせていただきたいと思います。

 まず、届け出書の搬送経費につきましては、ただいま御紹介のございました一千二百万のうちに含まれておりまして、これがおよそ五百万程度という金額である、残りは入力業者への委託経費が大である、こういうことでございます。

 要員については、職員一人当たりの給与を幾らと見るかというのがあるわけですが、仮に、平成十八年度の国家公務員給与等実態調査の行政職(一)、平均四十・四歳の方の給与というようなことで、ボーナス込みの給与を計算しますと、一年当たり、一人当たりで六百二十七万円ということですから、二十三人にこれを掛けていただきますと一億四千万ということでございます。

 郵送経費については、他のさまざまな事務センターから郵送するものと一緒に算出がされておりますので、これを区分することは少し難しいんですけれども、ただ、ただいま申し上げた経費だけ見ても効果の方が十倍以上あるということでございますので、私どもは、全体としては利益の方が大きいのではないかと判断しておる次第でございます。

内山分科員 それでは、時間が残り少なくなりましたので、テーマを変えたいと思います。

 同じくやはり昨年十二月の十五日、質問主意書におきまして、年金の裁定請求書の提出に対して、社会保険労務士が代行する割合が低い、このような答弁がございました。社会保険事務所からの情報をもとに行ったものであるとの質問主意書の答弁がございましたけれども、具体的な根拠を持って再度回答を求めたいと思いますが、いかがでしょうか。

青柳政府参考人 この点につきましては、昨年も申し上げたとおり、まず全体的な考え方といたしましては、全国民を対象とする年金の申請書あるいは届け出書というものにつきましては、手続を行っていただくお客様にとって利便性あるいはわかりやすさということから様式を定めたいというのが大原則としてございます。

 昨年の十二月の厚生労働委員会、それから、ただいまも御紹介ございましたその後の質問主意書におきましても、年金の裁定請求書に社会保険労務士の提出代行者印の欄を設けるべきとの御意見をいただいたわけでございます。二度にわたりましてそういうことでお尋ねがございましたので、私ども、改めまして、一月の一週間程度の期間ではございますが、全国の社会保険事務所に対しまして、その間の裁定請求書の社会保険労務士さんによる提出代行の件数というものの報告を求めさせていただきました。その結果、全国でこの一週間の間に老齢年金の裁定請求がトータルで五万三千件ほどございまして、そのうち社会保険労務士の方の手続代行件数が一千四百件余ということで、パーセンテージにいたしますと二・七%というような実態でございました。

 このような実態に加えて、このような欄を設けることが、あたかも社会保険労務士の印がないと裁定請求書を受理してもらえないんじゃないかというような誤解を招くおそれがあるというようなことを懸念いたしましたことから、現在に至るまでこうした欄を設けていないということについて、御理解を賜りたいと存じます。

 なお、蛇足でございますが、現在の年金の裁定請求書につきましても、労務士の方がその余白に記名、押印をしていただくことによりまして提出代行が可能であるということを申し添えさせていただきます。

内山分科員 どのような調査をされたかよくわかりませんけれども、お持ちになった方に、この裁定請求書は社会保険労務士の方が関与しているんですかと、そのような形で個別に御確認をなさっているんでしょうか。

青柳政府参考人 ただいまも最後に申し上げさせていただきましたように、余白に提出代行という印がございませんと、私ども、提出代行であるかどうか確認できませんので、余白に提出代行の印がある数をカウントしたものでございます。

内山分科員 提出代行者印欄がそもそもないわけですから。社会保険労務士が作成をしたとしても、そこに提出代行者印を押さない、これが大半でありまして、余白に押してくる人がそもそもまれなんですよ。その調査は間違っています、はっきり言いまして。私の知っているところの社会保険事務所では、大半の書類は社会保険労務士が関与している、これを、根拠を持って説明することが私はできます。それは後日説明をさせていただきたいと思います。

 残り少なくなりましたので、もう一点、最後に、通告をしております社会保険事務所の職員の健康状態ということについてお尋ねをしたいと思います。

 職員の健康悪化と早期退職者の増加という記事が出ておりました。事務の集中化、窓口対応のトラブル、年金の収納対策など、極度のストレスからメンタル的な病にかかっている職員が非常に多い、長期病気療養者が、平成十七年度、約五百名近くに上っているという実態があるというふうに見ておりますけれども、その辺、どのようにとらえておられますでしょうか。きょう大臣がいれば、大臣にお聞きしたかったんですけれども。

清水政府参考人 社会保険庁におきましては、これまでの事業運営に対します御批判、御指摘の一つ一つをしっかりと受けとめまして、鋭意、皆様方の信頼を回復するために業務改革に取り組んでいるところでございます。

 職員の健康状態に関しまして、その一つの指標として、一カ月以上の長期病気休暇取得者の延べ人数でございますけれども、これを見てみますと、確かに今委員御指摘のとおり、平成十七年度五百十八人ということで、中期的に見て増加傾向にございます。また、この平成十七年度五百十八人という長期病休者のうち、三百五十七人という六割強がメンタルヘルス不全の関係ということになっておるところでございます。

内山分科員 長期病気療養者というのは昨年より四割ふえて、四年前の二倍に達している。何か非常に問題があるんじゃなかろうか、こう思うわけであります。

 さらに、早期退職者が年間五百人を超えている。早期退職者が年間五百人以上である、この数値も非常に異常じゃないか、こう思うわけでありまして、特に中堅職員の退職が目立っている。将来の社会保険行政をつかさどる若手や中堅クラスから退職していく現状というのはどのようにお考えになっていますでしょうか。

清水政府参考人 やはり社会保険庁におきましては、社会保険行政に関します国民の信頼回復のために、国民の目線に立った仕事の仕方というのが重要かなというふうに考えてございます。

 職員に関しましては、上司と部下のコミュニケーションをしっかりとる、あるいは、先ほど御指摘のございました長期病休に関しましては、健康管理のドクターによるいろいろな診断体制を組む、あるいは超過勤務の縮減、年次休暇の取得の促進といった心と体の健康対策を推し進めておるところでございます。

 今後とも、組織のミッション、使命を明確にしつつ、また職員の健康管理対策に気を配りつつ仕事を進めてまいりたい、このように考えておるところでございます。

内山分科員 大臣がいれば一言申し上げたかったんですけれども、職員は機械じゃありません。人です。働きやすい職場、魅力ある職場をつくることは、ひいては国民のためになるんじゃなかろうか。ぜひとも、よりよい環境の、そして国民のためになる行政ができるような組織になっていただきたいということを申し上げまして、時間が来ましたので、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

実川主査 これにて内山晃君の質疑は終了いたしました。

 次に、阿部俊子君。

阿部(俊)分科員 自由民主党の阿部俊子でございます。

 本日は、このような貴重なお時間をいただきまして、まず感謝を申し上げ、三十分間質問をさせていただきたいと思います。

 まず初めに、現在議論が進められている後期高齢者医療制度の創設について質問いたしたいと思います。

 後期高齢者医療制度に関しましては、平成二十年の創設に向けて、けさも党の部会で関係団体からヒアリングを行うなど、三月末に骨子をまとめるべく検討が行われているところでございます。

 そこで、後期高齢者医療制度を考える際に最も重要なのは、後期高齢者の多くが介護と医療の両方のニーズをあわせ持っているということであります。

 ところが、現行の制度では、例えば六十五歳以上の方で介護保険の要介護認定を受けている人の場合、診察を受けるのは医療保険、介護サービスを受けるのは介護保険と、高齢者の身体の状態に応じて、あるときは介護保険、あるときは医療保険という形で両者を使い分けなければいけません。

 また、例えば厚生労働省が推し進めている在宅でのターミナルケアなどをとっても、介護保険を利用した場合と医療保険を利用した場合とでは算定要件が異なるなど、国民にとってもサービスの提供者側にとっても非常にわかりにくい制度になっています。

 特に、両者を切り離しては考えられない後期高齢者については、医療保険と介護保険とを統合することも含めて考えていただくことが自然な姿と思っていますが、これについてどうお考えかをお聞かせください。

菅原大臣政務官 阿部委員におかれましては、いろいろな場面で後期高齢者問題を活発に御議論されていることを承知いたしております。

 そもそも介護保険は、従来、措置制度のもとで実施されてまいりました福祉、そして保険制度のもとで行われてまいりました医療、この各サービスを再編成して、必要なサービスを総合的、一体的に利用者本位の仕組みとすることを目的として始まった経緯があるわけでございます。

 現在、実際にサービスを提供している現場におきましては、例えば、介護保険のサービスを受ける際にケアプランを作成するわけでございますが、その際には、主治医やケアマネジャー、介護サービス従事者等が参加をするケアカンファレンス、いわゆるサービス担当者会議を開催して、そこで情報の収集や交換に努めるなど、いわば利用者が受ける医療サービスと介護サービスがなるべく一体的に提供されるように努めているところでございます。

 しかしながら、今阿部先生御指摘のとおり、後期高齢者の数が大変ふえてきている中で、その後期高齢者の方々の、医療と介護の双方のニーズをあわせ持っている、こういう状況がふえてきている中で、例えば、医療機関で行った気管切開等の医療の処置が、結果的には特養じゃなくて在宅化を進めてしまうような状況であったり、その後の介護サービスに大変大きな影響を与えていること、あるいは、訪問介護や訪問リハビリテーションなど、医療保険と介護保険の両制度からやや類似をしているようなサービスそのものが、患者、高齢者側からすると非常にわかりづらい、こういった御指摘を受けているところでございまして、いずれにしても、この連携をしっかりしなければいけない。

 現在進められております後期高齢者医療制度の検討の中で、医療保険と介護保険の連携は極めて重要な論点の一つでございますので、御指摘賜ったことをよく留意して、今後、患者本位のサービスが提供できるような制度のあり方を検討してまいりたい、このように考えております。

阿部(俊)分科員 ありがとうございます。

 菅原政務官におかれましては、非常にお忙しい中、本日お答えいただきまして、ありがとうございます。

 いつも歯切れのいい政務官がちょっと歯切れが悪かったように思いますが、連携ではなく、私がお願いしておりますのは、後期高齢者は医療保険と介護保険の統合ということもお考えいただけませんかということですが、これに関してもう一度お答えをいただけますでしょうか。

菅原大臣政務官 先ほど御答弁申しましたように、介護保険の存在理由、あるいは医療保険の今日の体系、それぞれ独立独歩してやっているもの、あるいはそれぞれがオーバーラップをしている部分等々、いろいろな議論、論点がございます。それをよく整理いたしまして、確かに患者の方から、あるいは後期高齢者の方からは、統合した方がわかりやすい、サービスを受けやすいという意見も賜っております。この点はよく論点整理をすべく取り組みを進めていきたい、このように思っております。

阿部(俊)分科員 ありがとうございます。

 統合も含めてお考えいただけるということで、前向きに考えたいというふうに思っております。

 後期高齢者医療制度の創設の最も大きな目的は、ふえ続ける医療費をどのように抑えて、必要なものはどうやって守っていくかというところであると思いますが、例えば高齢者に関しましては、薬剤の多剤投与、受診を何度もいろいろなところでするなどという医療の無駄な部分を省いていくという点で、例えば病院と診療所の連携、例えば入院中の医療機関の薬剤師と退院後の調剤薬局との薬薬連携、これらの複数の機関の連携と情報共有がかぎになるのではないかと考えています。

 こういう病診連携、薬薬連携を進めるには、その高齢者がどういう病院にかかって、どういう診断名でどういう薬を飲んでいるのか、過去にどういう病気をしたのか、要介護認定を受けているのか、介護サービスを利用しているのか、そういう情報をすべて医療機関や関連機関が一元的に把握していること、そうしないと、その方の個人像、全体像が見えてきません。

 これは高齢者に限ったことではありませんが、横断的にそのような、その方の病状、介護に関する情報を把握できるように、情報を一元的に管理するために、例えばICカードの導入、統一番号の導入が必要であるというふうに考えます。

 また、将来的には、現在の医療、介護、年金、福祉、すべての社会保障を一体的に管理、提供することの検討が必要であると考えますが、この点について政府のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

薄井政府参考人 お答え申し上げます。

 適切な医療を効率的に受けられるようにするためには、今先生がおっしゃられましたように、医療機関等の間の情報の共有あるいは連携を推進するということは極めて重要であると考えておりまして、厚生労働省といたしましても、それに積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

 そのためには、医療分野におきます情報化を推進する必要がございますし、さらに、医療以外の分野ということもございますので、医療を初めといたしまして、健康、介護、福祉分野全般にわたります情報化のグランドデザインというものを今年度末までに策定するということで現在検討を進めているところでございます。

 先生から御例示として、社会保障番号のようなものを使ってというお話もございましたけれども、こういうふうな情報化を進めていく上で、事務の効率化とか情報提供の充実等に資する面があると考えられる一方で、個人情報の保護の関係であるとか費用対効果とか、この辺にも留意する必要がございます。いずれにいたしましても、国民的な議論を行いながら、その点はコンセンサスを得て進めていかなければいけないと考えております。

 情報化を進める、そのことによって連携を強めていくということは、まさにおっしゃられたとおりでございますので、引き続き努力をしてまいりたいと考えております。

阿部(俊)分科員 ありがとうございました。

 個人情報に関しては非常にいろいろな問題点があるのは存じ上げておりますが、安全ということは個人情報の前に来ることではないかという観点と、さらには、短期的にかかる費用の問題は、中長期的に考えたときに経済効果が大きいんだということも含めて、今、情報の一元化のグランドデザインを話し合われているのであれば、ぜひとも、後期高齢者保険の中に導入することも含めて御検討いただきたいと思いますが、菅原政務官、そのことに関してぜひ前向きな発言をお願いいたします。

菅原大臣政務官 今、阿部先生も活発に党の御議論に参加をいただいて、日々御議論いただいております。多くの各先生方の御議論もよく踏まえて、厚労省の中であらゆる情報を集めながら努力をしていきたい、このように考えております。

阿部(俊)分科員 ありがとうございます。よくわかりませんが、前向きな発言として考えさせていただきたいと思います。

 次に、高齢者のみとりの医療という点から質問させていただきたいと思います。

 私は、かねてから、高齢者や末期の患者さんに対して過剰医療、いわゆる医療のやり過ぎによって、高齢者のQOL、クオリティー・オブ・ライフ、生活の質に低下を来していることを問題視してまいりました。

 それは、例えば高齢者が急性期の病院に入院すると、気管切開といって、のどに穴をあけてチューブを入れてたんを取りやすくしたり、胃瘻といって、食事が十分にとれなくなると、胃に穴をあけて、むせて肺炎を起こすことを防ぐためにそこから栄養を入れるという処置ですけれども、こういう医療処置が実に簡単に行われています。

 しかし、こうした処置をしている患者さん、いわゆる医療的ケアが必要な患者さんは、特別養護老人ホームなどは、手がかかるといってなかなか受けてくれないというのが実情です。仮に、気管切開をした場合は、二十四時間たんの吸引が必要になることが多く、家族だけではとても診ることができません。結果として、在宅に変えることもできず、社会的入院が長期化する原因となっています。

 先日伺った話では、ある施設では、九十歳代の認知症の高齢者の方に、暴れないように手や足を縛りながら無理やり透析治療が行われているということを聞きました。これは、腎臓が働かなくなったために、血液を交換して電解質をきっちりしていこうというものでありますが、認知症の方ですから、当然、処置の間に暴れたりぐあいが悪くなったりして、透析はすぐ中断されます。だけれども、短時間でも透析を回しているという事実があれば、医療機関は診療報酬を受け取ることができます。

 こういう例は極端な例ではなく、こういう本人の苦痛を増すだけの過剰な処置とか医療が現実に行われています。高齢者の場合、本人の意思がはっきりしない、緊急に医療処置を開始しなければいけない現状もありますが、それ以前に、我が国では事前意思、リビングウイルという考え方が定着していないために、たとえ家族も過剰な医療や苦痛を増すような処置に疑問を持ったとしても、意思決定ができない現状にあります。

 去年の十二月、厚生労働省からは、終末期医療に関するガイドラインが、たたき台でございますが出されて、現在パブリックコメントを募集していると聞いています。また、先日、日本救急医療学会が、延命治療を中止する手順についてガイドラインをまとめ、延命治療や終末期医療のあり方についていろいろなガイドラインが出されていますが、過剰医療や延命治療を抑制し、尊厳ある死を迎えることは国民的な関心事ともなっています。

 これらのガイドラインが作成されることについては一定の評価はありますが、例えば、実際に患者さん、家族が、延命治療を望んでいない、苦痛を増すだけの治療をしてほしくないというリビングウイルを表示したとしても、今の制度では、医師は必ずしも患者、家族の意向を酌み取ることができません。例えば、先日の富山の射水市民病院で起こった人工呼吸器取り外し事件のように、医師が患者さんの家族の希望を酌み取った場合は、現行法では刑事上の罪に問われることになることもあります。つまり、現在のガイドラインのレベルでは、尊厳ある死を望む患者さんやその家族、それをみとる医師を守ることはできないということです。

 将来的な課題として、いわゆる尊厳死の法制化の必要性を訴える声は多く、一日も早く尊厳死法の立法化が望まれています。今、議員立法としてそれが国会内で進められていますが、少子高齢化社会に伴って、我が国はこれからまさに多死時代を迎えようとしています。国として真剣に尊厳死の問題を議論すべきときに来ていると考えますが、これに関してお考えをお伺いいたしたいと思います。

松谷政府参考人 御指摘の気管切開あるいは胃瘻の造設といったさまざまな診療行為につきましては、個々の患者さんの状態を踏まえまして、患者さんに対する十分な説明を経た上で、医師の医学的判断に基づいて行われるべきものでございまして、さまざまなケースが考えられ、なかなか法律でもって一律に規制するということにはなじまない面もございまして、現段階では慎重に判断すべきものと思っております。

 なお、高齢者を含めました終末期医療におきまして、どのような医療が提供されるべきかという基本的な先生の御提言、問題提起につきましては、人の生死に深くかかわる問題であるとともに、国民の関心も非常に高い重要な課題でございまして、真剣な国民的議論が行われることが必要と私どもも考えております。

 このため、国におきましては、先生も御指摘いただきましたけれども、昨年九月に、患者の意思の確認方法や治療内容の決定手続等の終末期医療に関するガイドラインのたたき台を国民にお示しして、本年一月には、第一回目の終末期医療の決定プロセスのあり方に関する検討会を開催したところでございます。

 今後、検討を進めるに当たりましては、人の尊厳ある生き方を支えるという観点に立ちまして、医療従事者のみならず、法曹界の専門的な方々の意見や広く国民の意見も聞きながら、真剣な議論を行っていくということを考えております。

阿部(俊)分科員 ありがとうございました。

 静かに死を迎えたい、安らかな死を迎えたいと望む方々のためにも、ぜひとも、一日も早い尊厳死法案の実現に向けて御協力をお願いしたいというふうに思います。

 次に、地域における医療提供体制に関しまして、地域への医師派遣システムの必要性についてお伺いをさせていただきます。

 平成十六年度から開始された新医師臨床研修制度の影響によって、医師の偏在が深刻化しています。全国各地の地方都市で医師不足が、いわゆる僻地や過疎地に指定されていない地域でも、拠点となる病院で特定診療科の閉鎖、休診が相次いでいます。こういう事態を改善するためには、従来の大学医局制度にかわる何らかの新しい医師派遣システムを検討していかなければいけないと考えます。

 例えば、私は、先日知り合いの医師に、地方になぜ医師が行かないのかということをお聞きしました。理由は三つだそうです。研修ができない、すなわちこれは、自分の知識、技術が低下するのではないかということであるそうです。もう一つは、御自分の健康。自分が病気になったら大きい病院にかかることができないという御心配。三つ目が、家族の問題。一つは、奥様が都会に住んでいる、子供が都会の学校に通っている、なぜ自分だけが離れた地方に行かないといけないのかなどということが多いのだそうです。

 医師にとって、田舎に行くのは非常に不安なことです。医学の進歩からおくれをとるのではないか、自分しか医師がいなくて病気になったらどうするのか、ほかの医師に意見を聞くことはできない、妻や夫、子供の進学、教育問題はどうするのか。片道切符で田舎に行けと言われても、医師は地方へは行きません。

 長崎県がシステムをつくっていますが、やはり、何年かたてば都会に戻ってくることができる、自分の健康、家族の問題などについては、例えば派遣期間を限定してすべての医師で地方勤務を回していくという方法が私は必要なのではないかと思います。例えば、臨床研修修了後十年の間に自分が選んだ時期三年間などという形で地域医療を義務づけるなどの方法は考えられないのでしょうか。地域医療において中核的な役割を果たしている日本赤十字病院や済生会病院など、例えば公的病院を医師派遣システムの協力病院として、一定地域の医療圏ごとに医師派遣システムを構築するなど、抜本的な見直しが必要であると考えています。

 地域医療のあり方に関しては、都道府県の策定する地域医療計画をもとに進められていますが、国で全国一律のシステムをつくることは現実的ではないと思っています。また、医師派遣システムを全く財政的なバックアップなしに行っていくのも私は無理であると思いますし、地域医療に関しましては、診療報酬だけでその財政を回していけということも私は不可能であると考えています。

 これに関して政府のお考えを聞かせていただきたいと思います。

松谷政府参考人 地域に必要な医師の配置につきましては、従来、大学病院が医師の派遣機能といったようなものを担ってきたわけでございますが、大学病院の医師派遣機能は、今先生御指摘のような状況その他もございまして、全体的に低下をしてまいっておりまして、大学病院の医局だけでは十分な調整を行うことが難しくなってきている。また、必ずしも地域の医療ニーズを適切に酌み上げられない場合もあるというような状況であると認識しております。

 このため、今後は、国と都道府県が協力をいたしまして、地域医療に必要な医師の配置を行うことが重要であると考えております。

 まず、都道府県におきましては、昨年の医療法改正におきまして、公的医療機関、大学病院の医局など地域の医療関係者等を構成員とする医療対策協議会を設置いたしまして、地域の民意も十分に踏まえながら、都道府県が積極的に必要な調整を行える仕組みとしたところでございます。

 国といたしましては、平成十八年度の補正予算及び平成十九年度の予算案におきまして、充実した研修を行うことなどによりまして医師を集めることのできる拠点病院、いわゆるマグネットホスピタルと呼んでおりますが、その整備に係る助成、そして、こういったマグネットホスピタルから医師が不足する病院へ医師派遣を行う際の助成など、都道府県による医師派遣機能を財政面からも支援することといたしてございます。

 また、厚生労働省に地域医療支援中央会議を設けまして、自治体の医師確保に係る取り組みに対して助言指導するなど、内容面からもサポートすることといたしておりまして、引き続き都道府県の取り組みを多面的に支援していきたいと思っております。

 先生御指摘のとおり、医師はただ給料のために異動するというのではなくて、みずからの腕を磨く、あるいは地域に貢献したい、いろいろな動機がございますので、そういった医師のインセンティブに沿うような形で、各地域それぞれ事情がございますけれども、取り組んでいただく、それを支える、そういう方向で進めていきたいと思っております。

阿部(俊)分科員 ありがとうございました。

 財政的に支援も行われることが検討されているということに関しましては、私などのように地方にいる議員にとっては非常にありがたいことでございまして、医師は給料だけで動くのではないんだ、特に松谷医政局長に関しましては、奥様が看護師であるということも含めまして、私ども医療の現場に非常に御理解をいただけると思いますので、ぜひとも頑張っていただきたいと思います。

 地方を活性化して魅力ある地域をつくっていくためには、人が住みやすいまちづくり、安心して暮らせる地域づくりが不可欠であります。地方を切り捨てているんではないんだということをわかるためには、やはり医療、教育、特に医療に関しましては、そこの部分を私ども国会の方でしっかりとやっていくということが国民的課題であり、皆さんも注目しているところだと思いますので、頑張って一緒にやっていきたいと思います。

 次に、基礎看護教育に関しまして質問したいというふうに思います。

 看護職員の確保対策に関しまして、平成十八年に、新たに七対一ということが急性期の手厚い人員配置として入りました。このことは、看護界としては非常にうれしい部分と、逆にナースがいなくなって困っている部分と両方ございます。特に、大病院による看護師の大量採用、さらには中小病院の看護師の引き抜き、これは、引き抜いたのではなくてナースが自発的に動いたということだと私は思っていますが、皆さんなぜか引き抜きだ引き抜きだというふうにおっしゃっておりますが、それは間違いであると思っています。

 看護の基礎教育に関しまして、平成十六年の文科省の看護学教育の在り方に対する検討会の報告書におきまして、卒業時に到達すべき目標が示されたところでございますが、今の大学での看護基礎教育カリキュラムのあり方を含め検討が必要であるということが指摘されました。

 それを受けまして、昨年から厚生労働省で、看護基礎教育の充実に関する検討会が開催されて検討が行われていたところでありますが、年度内に報告書をまとめ、早ければ来年四月から新カリキュラムを導入する予定であるというふうに聞いています。

 病院に就職した新卒ナースの一割が就職後一年以内に退職していくと言われていますが、さまざまな要因がある中で、やはり学習のカリキュラムの問題が指摘されてきました。新人看護職員の職場定着を困難にしている要因の中に、特に看護基礎教育終了時点の能力と看護現場で求められる能力のギャップが大きいという意見が八割を占めています。

 この検討会でも、看護師の教育を現行の九十三単位から百単位に七単位ふやすということが提案されたそうですが、今の三年間という教育年限の中で単位数をふやすことは現実的に難しい、対応できないという意見が出されて、改正案が修正されることになったと聞いています。

 確かに、現行の三年間の教育の中では現実的に対応できない単位数へカリキュラムを改定することは、現実的ではありません。しかし、今回の検討会がこのような形で終わることは、看護基礎教育に関して何の解決にもなりません。

 現に、医療の高度化や学ぶべき知識の増加にかんがみますと、五十年以上も三年間の基礎教育のままで据え置かれている看護基礎教育の年限の延長も含めて、早急に次の検討会を開催して、さらなる議論を進める必要があるのではないかと思いますが、教育年限の延長も含めて、平成十九年度、次の検討会を開いていただけるのでしょうか。ぜひお考えを聞かせてください。

松谷政府参考人 急性期医療の充実や医療安全の推進、生活習慣病予防など、近年の重要な課題がございますが、これら国民の保健医療サービスのニーズに的確にこたえていくために、看護職員の資質の向上を図る必要があることは論をまたないと思います。

 そこで、御指摘の看護基礎教育の充実に関する検討会を昨年三月から開催いたしまして、これまで八回の検討会を重ねまして、一昨日行われました検討会では、現行の制度内での看護基礎教育のカリキュラムの改正案について議論がなされたところでございます。

 現時点では、まずは検討会における御議論を見守りたいというふうに考えておりますが、基礎教育の充実のためにさらに教育期間の延長等の検討を行うべきであるということになりますれば、改めて具体的な課題について検討してまいりたいと思います。

阿部(俊)分科員 ありがとうございました。

 平成十九年度、ぜひとも次の検討会に進んでいただきたいと思っておりまして、看護基礎教育の充実は、医療事故の防止、さらには患者にとって質の高い医療、看護に直結する大変重要な問題でございますので、ぜひとも継続して検討をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 最後の質問に移らせていただきます。配偶者控除の見直しについてでございますが、今国会に改正案が提出されておりますが、パートタイム労働法の改正に関しまして、女性の働き方という観点で質問したいと思います。

 少子高齢化が進む中、我が国の労働力人口の低下、労働力不足は避けられない状況にございます。その中で、女性の働き方を見直して、女性が働きやすい社会、女性が働き続けられる社会をつくっていくことは大変重要でございますが、現在、専業主婦の女性が働く場合、パートタイムの収入だけであれば、配偶者控除として、収入の上限が、基礎控除三十八万、所得控除六十五万と合わせて百三万円以下の場合、働いても所得税が適用されないことになっています。さらに、厚生年金や健康保険など、社会保険料についても、収入が百三十万以下であれば夫の扶養として保険料が徴収されない仕組みになっています。

 これについては、これまで専業主婦と働く女性の間での税制上の不公平、女性の社会進出を妨げるなどの問題が指摘されているところでございますが、税制が働き方に影響を与えないようにすることは大変重要であり、女性の社会進出を進めるためには、年金や健康保険の適用問題など、社会保障を含めた抜本的な見直しが必要であるというふうに考えます。

 女性の就労促進という観点から、現行の配偶者控除という枠組みそのものを見直していく必要があると考えていますが、これに対して政府のお考えをぜひお伺いしたいと思います。

薄井政府参考人 昨年の十二月に新しい人口推計というものを公表させていただきました。その中でも、前回の推計に増しまして少子高齢化が進むという姿が示されております。こういうことは、労働力率が現在のままですと、生産年齢人口の減少に伴いまして労働力が減っていく、こういうことを意味するわけでございます。そういう中で、女性の方あるいは高齢者の方の就労を促進するというのは、やはり国を挙げて取り組むべき大きな課題であると考えているところでございます。

 そういう中で、今、所得税法上の税の課税ラインの話、あるいは社会保険の方、医療保険、年金の被扶養者の要件について御指摘がございました。この点につきましては、女性の就業調整あるいは賃金抑制の要因の一つになっているという指摘があることは、私どもとしても十分認識をしているところでございます。

 女性を含めまして、だれもが意欲と能力に応じて働くことができる社会を構築していくということは、個々人のより豊かな生活の実現だけではなくて、これからの少子高齢化ということを考えますときには、労働力率あるいは社会保障の支え手の確保という観点から重要であると認識をいたしております。

 一方で、税制あるいは社会保険におけるこれらの要件の見直しは、個々人の負担、負担がふえる方もいらっしゃるわけでございます、あるいは制度のあり方、こういったところにもかかわる問題であることに留意する必要があると考えております。

 税制につきましては、私ども厚生労働省として責任を持って答弁する立場にはないわけでございますが、いずれにいたしましても、個人の就労意欲を阻害することなく就業に中立的な制度の構築というのは重要であると考えておりまして、引き続き議論を深めていくことが重要であると考えているところでございます。

阿部(俊)分科員 ありがとうございました。

 労働力人口の低下は、国の国力にもかかわる課題でございます。高齢者、女性がしっかりと働いていく、外国人労働者だけに依存しないということが私は非常に重要であると思いますので、平成十九年度、税制の抜本改革の年でありますので、菅原政務官におかれましても、ぜひとも前向きにこのことに関しては御検討いただきたいと思います。

 これで私の質問を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。

実川主査 これにて阿部俊子君の質疑は終了いたしました。

 次に、西本勝子君。

西本分科員 自由民主党の西本勝子でございます。

 厚生労働省に対して三十分の質問時間をお与えいただきまして、ありがとうございます。

 平成十八年の人口動態統計の速報値では、合計特殊出生率が四年ぶりに一・三を超えるのではないかという発表がありました。婚姻数は五年ぶり、出生数は六年ぶりの増加ということで、少子化対策効果の小さな前進ではないかと喜んでいます。

 ある経済のデータで、少子化が進み、日本の人口が三十年後に一億人を切ったとしたら、二千万人の減少となるわけで、一人が生まれてから大学を卒業するまでにかかる消費や教育などの生活費用が一千五百万円として計算すれば、三十年間で三百兆円の損失だと言われています。少子化の影響は多岐に及ぶのですが、圧倒的に悪影響の方が多いと思います。

 このたび、人口減少に一時的な歯どめがかかったとはいえ、今後とも厳しい状況が続くものと予測されており、さらに加速して少子化対策に取り組まなくてはならないのであります。それには、国の子育て支援プランや市町村の次世代育成支援行動計画に沿った多様な子育て支援メニューをもとに、子育て家族を社会各層が支え、応援する幅広い取り組みを強力に後押ししなければならないと考えております。

 私は、昨年、この予算委員会分科会において、次世代育成支援対策について質問をさせていただきましたが、その中の保育所の運営についての御答弁で、いささか腑に落ちない点がありましたので、再度、機会をいただいて質問させていただきます。

 私は、団塊の世代のすぐ後にくっついた、いわば団塊外側世代であります。我々の幼児期の保育園は、現在のように公立や社会福祉法人立ではなく、集落の自治会が経営する保育園であって、保育の内容は、三十人程度の子供を、一人か二人の保母さんが、年齢の区分などはなく、みんなまとめて身の回りの世話や給食などすべてを賄っておりまして、超大家族と申しますか、要は、集団でお守りをするといった状況であったのです。

 また、施設はといいますと、保育所としての子供だけのものではなく、青年団や消防団、婦人会やお年寄りまで、地域全体が使用するもので、自作の演芸会や映画の上映、旅一座の公演など、数少ない娯楽の場でもありました。また、夏場にはスイカの出荷場となったり、ともかく多目的な施設として活用する中で、子供も集落の一員として扱われ、一緒に行動する中で、地域のみんなが子供を見守り育てる環境であったように思われます。その後、経済成長に伴うさまざまな変化の中で、広い区域を対象として、公立や法人立の保育園が建設され、私の通った小さな集落の保育園は姿を消しました。

 その後、児童福祉法で保育所が市町村の事務として位置づけられたことにより、保育園はお守りをするだけの業務ではなく、保育指針に沿った保育内容を定め、家庭を補佐して、子供たちに基本的生活習慣を身につけさすことを主眼に置き、就学までの期間、保育を受け持ってきました。

 ところが、だんだんに、保護者から、小学校生活にスムーズに対応できるような保育内容を望む声もあり、以後、保育士さんたちの不断の努力により、幼児教育、就学前教育としての視点も踏まえ、公的責任の持てる保育を確立してきたものと評価しているのですが、このような経過のある保育所の保育ということについて、どのように認識しておられるのか、まずお伺いいたします。

大谷政府参考人 お答えを申し上げます。

 保育所の機能について御評価を賜りまして、ありがとうございました。

 保育所は、就学前のお子さんが、生涯にわたる人間形成の基礎を培う大切な時期に、その生活時間の大半を過ごすところであります。子供の健全な育ちを担う重要なものであると認識しているところでございます。

 最近では、保育所や幼稚園に通わず、家庭で子育てしている保護者の育児に係る不安や負担の増加に対応しまして、地域における子育て支援の役割も一層増してきているところであります。

 また、保育所は、養護と教育を一体的に行う施設であります。これまでも、保育所における保育内容を示します保育所保育指針というものにつきまして、幼稚園教育要領の内容との整合性を確保することにより、保育所における教育の充実に努めてきたところであります。

 この保育所保育指針につきましては、保育を取り巻く環境の変化等を踏まえまして、昨年十二月に設置いたしました保育所保育指針改定に関する検討会という場におきまして、指針の構成やあるいは内容等につきまして検討を行っているところでありまして、今後とも、この検討結果を踏まえまして、保育所の保育内容の充実に努めてまいりたいと考えております。

西本分科員 局長の御認識はよくわかりました。

 子供たちは社会の宝であります。やはり、安心して子供を生み育てることができ、子供自身が健やかに育つことのできる環境の整備がまだまだ必要だと私は思っております。

 そういう視点で、次の質問に移ります。

 私のこれからの質問は、都市部ではなく、私の地方の自治体の問題としてとらえておりますので、そういう認識に立って御答弁をお願いいたします。

 保育の実施義務は市町村にあるわけでして、実際の保育所運営は、直営の場合と民間への委託とで実施してきているのですが、御承知のとおり、地方自治体の多くは、財政力が低下していく中で、早くから行財政改革を重ね、徹底した歳入歳出の見直しを図り、行革はほぼ行き着くところまで進んでいると認識しているのですが、それでも財政再建団体にならないためには、今後、生活に直結するサービスにまで切り込まなければならない状況だと聞いております。

 そうなりますと、児童福祉の現場では、保育園の統廃合と、加えて民間保育園の補助金の削減が求められてきますが、ここに着手した場合、まず、地域密着型の小規模園は廃止され、子供たちは統合された大規模園にバス通園することになります。

 私は、保育園は、家庭はもちろんですが、地域とつながりを持ち、地域の人たちに支えられた運営により、子供たちが健やかに育つものと考えています。このことは厚労省も重要であると認めているので、できるだけ統廃合しない方がいいということになります。ですから、小学校区に一園は必ず残してほしい。そうしないと、大規模園に通っていた園児が、校区が違っている場合は別々の小学校に入学しなければならず、五歳という年齢で友達と別れるという心の傷と大きな負担を与えてしまいます。また、将来、保、幼を加えた小中一貫教育を目指したとき、施設がなくては地域という視点が抜け、総合教育とはならないからです。

 そこで、統廃合より先に補助金の削減を実施するとなりますと、公保育として責任が持てるのかという問題が生じるわけであります。

 運営補助金は委託料の超過負担ですが、自治体周辺に保育所を運営できる法人等が限られていることから、運営を委託する場合、自治体の独自基準で算定した額で随意契約しているのがほとんどではないかと思われます。

 ここを改革するには、保育所運営の業者選定を一般競争入札にすることが考えられますが、この場合の仕様書において、従来の独自基準を使わず、児童福祉施設最低基準をもとにした保育単価での運営費と国基準の保育料の合算額を運営費の予定価格として入札した場合、恐らく、落札業者がいないか、または、もし落札しても、その業者の運営する保育園の入所希望者がいないか、どちらかだと思われます。

 つまり、国の基準どおりの保育運営をした場合、安全で安心の保育はできないのです。特に、小規模な保育園ほど、職員配置計画基準が混合保育の計算になるので、国基準どおりの配置では保育士の負担が大きくなり、保護者から子供に目が行き届かないとの苦情が出ることは必定で、職員をふやせば経営はとても厳しくなるのです。

 こういう現場の問題を以前に私が質問したとき、前雇用均等・児童家庭局長は、保育所運営費国庫負担金は、子供一人当たりの補助単価を小規模な保育所ほど高くなるようにして、規模が小さくても適切な保育が行われるよう配慮している、また、保育単価も、施設の規模や地域区分別に定めており、職員の勤務年数に応じた加算を設けるなど、きめ細かい設定をしていると答弁されています。

 つまり、言いかえれば、現行の国基準で保育はできる、それ以上は、想定以上のサービスだから、実施義務者の超過負担で対応するしかないと読み取れる答弁でしたが、現局長は、前局長の答弁内容と国基準を精査した上で、保育基準は現行で十分とお考えでしょうか、お伺いいたします。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 国と地方の関係も念頭に入れて答えよということでございますので、最初に基本的な考え方を申し上げたいと思いますが、現行の保育制度では、国において、職員配置や施設設備など、保育の実施に必要な最低基準を定め、保育所の運営に係る経費の一部を負担する一方で、保育の実施に責任を有する地方自治体が地域の実情等に応じた必要な措置を講ずるなど、国と地方の適切な分担がなされるということが制度の考え方になっているところでございます。

 このうち、国の負担に係る単価でありますが、これは先年、前任の局長が申しましたところと同じでありますが、子供一人当たりの単価を小規模な保育所ほど高くなるようにする、規模が小さくても適切な保育が行われるよう配慮するということでありますが、そういったこととともに、地域区分別の職員の勤務年数に応じた加算を設けるなど、きめ細かな設定を行っていると考えております。

 このように、保育基準は、保育の現場の状況に対応したきめ細かな制度になっておりまして、今後とも適切な保育制度の運営に努めてまいりたいと考えております。

西本分科員 局長の答弁はおおむね理解いたしますが、でも、なかなか現場が立ち行かないと私は思っております。保育の公的責任は大変重いものがありますので、やはり、義務教育と同様、保育基準はナショナルスタンダードでなくてはならないと思っておりますので、次に移らせていただきます。

 それでは、現場の実態をお示しいたしますので、これに対する所見をお伺いしたいと思います。

 お渡ししています資料は、私の地元のある市の保育園の実態なのですが、人口は二万七千人強で、幼稚園一園に保育園が十一園で、うち、公立園が四園、社会福祉法人経営が七園となっています。資料一で運営状況をお示ししておりますが、市全体では約七百五十人の園児を受け入れ、かかった全体経費は九億七千六十一万九千円で、このうち市の一般財源からは五億七千三百十一万二千円を投入しており、公立保育所の一般財源化分を差し引いても、約五億円が単独経費であります。これは、市税収入二十七億円の約二〇%弱を占めていることから、幾ら次代を担う子供たちの経費ということで市民の理解が得られるとしても、市の一般財源だけに、極力圧縮の方向に努力していかなくてはいけないと、財政担当は苦慮しているところです。

 どうして保育園運営経費にはこれほどの超過負担がかかるのでしょうか。

 幾つか原因はありますが、その一つで一番大きな要因は、国の定める職員配置基準です。この基準は、一人の保育士が何人の子供を受け持つかということを決めています。ゼロ歳の場合、三人の園児を一人の保育士が担当する。同じように、一歳児は六対一、二歳児も六対一、三歳児は二十対一、四歳、五歳児は三十対一となっています。

 この基準に対して、現場で苦労しているのがゼロ歳の途中入所児と一歳児と三歳児でありまして、保育士さんに聞いてみますと、年度途中で一歳になり入所してくる児童の扱いは、措置年齢ということで一歳児の計算になりますが、どちらかといいますと、四月入所時ゼロ歳の子供の方が、園なれしている分、手がかからない場合が多いのです。ですから、ゼロ歳の途中入所に限っては、措置年齢ではなく、四月年齢とするか、新たな基準をつくってほしいとのことです。

 一歳児の場合、早生まれと遅生まれでは発達段階に大きな差があり、よちよち歩きの子供もいれば走り回る子供もいる状況の中で、好奇心ができ始めていることから、いろいろなことに興味を示し、何でも口に入れたりするのですが、何せ危険なことの認識ができないことから、常に危険が伴う集団となります。ですから、このクラスは四対一の基準でないと、園内外での子供の安全は保てない。また、一、二歳は混合保育になる場合が多く、この場合は子供間にますます体力差が出てくることから、六対一の現基準での混合保育は、子供はもちろん、保育士も相当無理な状況になります。

 次に、三歳児ですが、この年齢になると自我の主張もできるようになりますが、反面、社会性に乏しく、友達とのいざこざやトラブルも多い、ほとんどの子供が生活習慣の自立が十分でないため、一人一人に独自の手だてが必要であり、受け持ち定数は幾ら頑張っても十五人が限度である。

 加えて、以前と比べると家庭の子育て力が低下しているケースが少なくない実態もあり、他の年齢も引き下げてほしいとのことでした。

 このような切実な現場の声もあるのですが、厚労省は現行の職員配置基準で安全な保育ができるとお考えでしょうか、御意見をお伺いしたいと思います。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 保育所の保育士の配置基準のうち、乳児につきましては、三歳未満児と同様の六対一であったものを、平成十年度から三対一に改善したところであります。また、主任保育士がその業務に専念するための代替保育士の雇い上げ費の加算、あるいは事務職員雇い上げ費用加算を実施するなど、延長保育や乳児保育などに取り組んでいただいている保育所につきましては、必要な財政措置の拡充を逐年講じてきたところでございます。

 このように、国としても、保育所の適切な運営のために、必要な措置に努めてきているところでありまして、各自治体や施設で御工夫をいただきまして、安全な保育を達成していただきたいと期待しているところでございます。

 また、ちょっと付言いたしますと、御承知のように、全国的にはまだ待機者が依然として二万人弱おられるということで、現在、この解消に最大限の努力を注いでいるところでございます。限られた財源の中で最大限の政策効果を上げることが重要であると考えておりまして、関係者の御理解を賜りたいと考えております。

西本分科員 御答弁ありがとうございました。

 さらに、次に、職員配置基準で保育所運営費国庫負担金の計算をする場合の厚労省の考え方には、私は問題があると考えておりますので、質問を続けさせていただきます。

 資料二は、保育士の必要数を国基準で算定したもので、資料三は、市独自の基準で、実際に保育をしているもの、つまり、安全で安心できる保育に最低必要な保育士と聞いていますが、国庫負担金の計算上の必要人数と何と二十四人もの差が生じています。

 これは、国基準では、年齢ごとの保育士必要数に一人未満の端数が生じる場合は、小数点第二位を切り捨てて第一位まで割り出し、ゼロ歳児から五歳児までの合計数の小数点第一位を四捨五入して、必要な保育士数としています。一方、市の独自基準は、同じ計算をするのですが、小数点第二位を切り上げて一位まで割り出し、ゼロ歳から二歳と三歳から五歳の二区分に分け、小数点を切り上げた合計数を必要な保育士数としています。

 国基準は、ゼロ歳から五歳までのすべてを混合保育する考えで、なおかつ、小数点第一位が五に達しないのは切り捨てるといったもので、保育の現場がわかっているものとは思えません。保育園は物ではないのです。生きた人間で、大切な幼児期を任されているのです。安全で安心の保育が到底できない、この計算方法を厚労省は見直す考えがないのか、お尋ねいたします。

大谷政府参考人 保育所の配置基準に基づく保育士の算定方法についての専門的なお尋ねでございます。

 現行の方法は、一つとして、年齢ごとに必要な保育士数を算定し、一人未満の端数が生じる場合には、小数点第二位を切り捨てて第一位まで割り出しまして、その次に、さらにゼロ歳児から五歳児までを合計して小数点第一位を四捨五入する、こういった計算方法を取り扱っているところでございます。これは御指摘のとおりであります。

 こうした算定方法は、児童福祉施設の配置の基準としては一般的な方法でありまして、確かに四捨五入あるいは切り上げといったいろいろな考え方はありますけれども、費用と効果のバランスといった点から考えましても、現在のところ、この計算方法を改める状況にはないんじゃないかというふうに考えております。

西本分科員 ありがとうございました。

 確かに国基準はそうでありますけれども、現実の保育園ではそれが全然稼働していないのです。安心で安全な保育園を経営するためには、どうしても私の地元のように二十四人もの加配保育士が必要な現状でございますので、なお一層御一考いただければありがたいと存じます。

 今、小学校の三十人学級が認められたのは、生活習慣や学習態度の乱れからくる学力低下が問題となったことが大きいと理解しているのですが、それは就学前の乳幼児の家庭での育ちに問題があるとも言われています。小学校が改善されているのに保育所がまだ昔のままの配置基準では道理に合わないと思いますので、保育現場にぜひとも足を運んでいただき、実態を感じて善処していただくことをあわせてお願い申し上げます。

 次に、フリーの加配についてであります。

 基準では九十人以下の園となっていますが、それはいいのですが、実は小規模園ほど職員が不足し、小回りがきかないのです。資料二の安和とみなみの園の職員配置を見てください。この園はフリーを入れないとクラス編制ができないのです。ですから、加配をしてもフリー保育士がいないのと同じ状況になっています。

 国は、フリーの加配についてどのように考えているのかと、小規模園の追加加配などの対応ができないものか、お伺いいたします。

大谷政府参考人 保育所の運営に係る国の負担金につきましては、子供一人当たりの単価を小規模な保育所ほど高くなるようにして、規模が小さくても適切な保育が行えるよう配慮しているところでございます。また、御指摘のように、定員九十人以下の保育所につきましては、児童福祉施設最低基準に加え、一人加算ということにしているところでございます。

 さらに、ある一定条件を満たす保育所につきましては、主任保育士専任加算といたしまして運営費負担金の加算を行っておりまして、延長保育や乳児保育など多様なニーズに対応して御努力いただいている保育所に対しましては、主任保育士に受け持ち児童を持たせずフリー化できるよう配慮しているということでございます。

 それから、先ほどの御質問の答えにも相通ずるものでありますけれども、運営費の負担金につきましては、児童福祉施設の最低基準に基づく常勤の保育士配置に必要な経費が算定されているわけでありますが、実際には、複数の非常勤保育士を活用するなど、保育の質に配慮しながら弾力的な運営を行うことも可能でありまして、現場においてさまざまな工夫が行われているものというふうに承知しております。

西本分科員 御答弁、ありがとうございました。

 今後、特に家庭支援の問題が多くなると私は考えておりますので、そうなりますと、フリー保育士でしか対応できないといった状態にもなりますので、ぜひとも御指導のほどよろしくお願い申し上げます。

 次に、最後の質問でございますが、私は、小学校入学前の一年のうち、せめて半年間程度を就学前特別期間として、一定の教育課程を履修していただくことを無料で義務化してはどうかと考えています。いわばプロ野球のキャンプみたいなもので、子供にとっては小学校生活のならしであり、親にとってもしっかりと心構えをしていただく機会にしていただきたいのです。また、幼稚園や保育現場と学校との間で、職員が双方の立場から研修したり相互の情報を共有し合うことで、現場同士の垣根を取り外し、子供や親、職員も、それぞれが余裕を持って小学校のスタートが切れることを望んでいます。

 ことしからは、認定こども園ができたことにより、この分野での一定レベルでは幼保の一元が図られました。結果、両親がどんな就労形態でも、どれかの施設で保育や教育が受けられることになりましたので、就学前の支援策として、先ほど申し述べました特別期間の設定や、さらに進んで保育園、幼稚園のすべてを無料化にすることなどが可能になると考えます。それらの実現のためには、文科省とのさらなる連携や、事業によっては幼保の完全一元化が不可欠と考えますが、この点について御所見をお伺いいたします。

大谷政府参考人 生涯にわたる人間形成の基礎が培われる大切な時期であります幼児期に、質の高い幼児教育が提供されるということは極めて重要であると考えておりまして、まことに示唆に富む御指摘をいただいたと考えております。

 教育に関する幼稚園と保育所の連携につきましては、昨年の十月に認定こども園という制度が発足したところでありますが、今後、設置が進んでまいりますこの認定こども園における積極的な取り組みも見守りながら、文部科学省と連携しながら、幼稚園、保育所の一層の連携強化を図ってまいりたいというふうに考えております。

西本分科員 大谷局長の前向きな御答弁、本当にありがとうございました。

 私も保育園にこの間出向きまして、子供の姿が昔と大きく変わったということを感じました。就学前の家庭の育ちについて視点を当てる必要があると考えておりまして、この時期の義務化や無料化についてもどこかで検討していただきますことをお願いして、私の質問を終わります。

実川主査 これにて西本勝子君の質疑は終了いたしました。

 午後三時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後二時五十八分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時三十分開議

実川主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。斉藤鉄夫君。

斉藤(鉄)分科員 公明党の斉藤鉄夫でございます。どうかよろしくお願いいたします。

 最初に、在外被爆者の問題から質問させていただきたいと思います。

 きょう私がこの分科会、この席に立たせていただきました目的の一つは、柳澤大臣にこの在外被爆者の問題、これからちょっと技術的なことを政府参考人の方とやりとりいたしますけれども、ぜひそれを聞いていただいて、この問題について御理解を賜りたい、これが今回の私の質問の最大の目的でございます。

 被爆者につきましては、被爆者援護法という法律がありまして、援護の手が差し伸べられております。以前は、被爆者、被爆者というのは被爆者手帳を持っている人ということで定義されますが、その被爆者手帳を持っていれば援護の措置が受けられたわけですが、その方が海外に出ると一切その措置が中止された。それに対して、被爆者はどこにいても被爆者であるということで、海外にいても諸手当やそれから医療を受けるということ、これはちょっとなかなか難しい考え方の変遷を経て、海外でも医療措置がされているということになりました。

 これは坂口厚労大臣のときから始まった、歴代の厚生労働大臣の決断によりまして大きく在外被爆者の問題が進んでまいりました。その間の大臣の決断とそれから厚生労働省がとられてきた努力に対して深い敬意を持っております。

 しかしながら、いま少し問題が残っているということで、超党派の議員連盟がございまして、在外被爆者に援護法を適用する議員の会というのがございまして、私が責任者をさせていただいておりますし、ここにいらっしゃる河井先生もそのメンバーでございます。

 残された問題が三つあると思っていまして、小さい順から見ますと、一つは、被爆者手帳を持っておりますと日本で医療を受けられる、その場合、全額補助があるわけです。海外に行きますと、医療制度が違いますからなかなか難しいのですけれども、例えば、最も在外被爆者がたくさんいる韓国でも医療措置が受けられるんですが、日本ではない上限が韓国には残っている。その医療費の上限の問題、これが一つかと思います。

 それから二つ目ですけれども、これがかなり大きな問題だと思っておりますが、諸手当につきましては、手帳を持っていれば海外にいたままその手当の申請をすることができるようになりました。ところが、手帳を持っていなければ、当然これは被爆者じゃないわけですから諸手当の申請はできないんです。

 しかし、日本に高齢で来られない、また、体が弱くて来られない方のために、厚生労働省が現地に行って、あなたは被爆者であることはもう間違いないということで、確認証を渡して、先ほど申し上げましたいろいろな医療措置が受けられるようになって、そこまで拡大した厚労省の御努力には本当に敬意を表するわけですが、しかし、日本に来ないと手帳の申請ができない。手帳を持っていれば諸手当は海外から申請できるけれども、手帳の申請だけは日本に来ないとできないという問題が残っております。

 もう既に確認証を持っている、ですから被爆者には間違いない、しかし手帳を持っている人と同等の援護措置が受けられない、こういう問題がございます。

 それから、三番目といたしまして、これは在外被爆者に限らない問題かもしれませんけれども、現地の方、この人はもう被爆していることには間違いないんだけれども、証明する人がいないからその確認証もとれない。したがって、日本に行っても手帳ももらえない。しかし、これまで、被爆者であることというのはいろいろな状況から間違いないことだから、韓国赤十字、例えば韓国の場合は韓国赤十字からいろいろな手当を受けていた。その人たちをどう救済していくか。三百人以上いらっしゃるそうです。

 この三つが残された課題なのかな、このように思います。

 まず、難しい方から。自分が被爆者であることを科学的に証明できない。しかし、状況証拠的にはもう間違いない。これは、もう日本にもいらっしゃるわけで、そういう方をどう救っていくのか。これは我々も正直申し上げていい知恵がないんですが、このことに対して厚労省はどのようにお考えになっているかということをまず最初にお聞きしたいと思います。

外口政府参考人 被爆の証明についてのお尋ねでございますけれども、被爆者健康手帳の交付の審査につきましては、今から約六十年前の原爆投下当時の所在や行動について、申請者一人一人の個別具体的な申し立てが事実かどうか、そして交付要件に該当するか否かを審査するものでございます。

 過去において不適切な申請が多発したこともありまして、これらの事実関係を第三者により証明できることが必要であると考えておりますことから、被爆事実の確認ができない場合については被爆者健康手帳を交付することは困難であると考えております。

 なお、平成十四年の手帳交付渡日支援事業の開始に伴いまして多くの申請がございましたが、広島、長崎四県市に御努力いただいたことによりまして、未処理件数が、平成十七年三月末には五百四十一件であったものが、平成十九年一月末には二百五十九件と大きく減少しているところでございます。

斉藤(鉄)分科員 二百五十九人にまで減っているということで、その御努力に対しては敬意を表します。

 この問題は簡単ではない。しかし、韓国のそういう被爆者の代表の方、それからブラジルのあの森田さん等の話を聞くと、手帳を持っている人たちが援護を受けられるようになって、ある意味では非常に大きな問題になってきた。援護を受けられる人は本当に手厚い援護を受けられる、しかし、被爆していることは間違いないのにその証拠がないから援護を受けられない人、その差が非常に大きくなって、自分としてはもう本当にここの問題を解決しないと死に切れないという声をよく聞きます。ちょっとその声だけをまず届けておきたいと思います。

 二番目の問題、これは解決可能だと思うんです。日本からわざわざ行って、あなたは被爆していることは間違いないということで確認証まで手渡される。したがいまして、確認証を持っているということは、その人が日本に来ればもう即被爆者手帳を交付しますということでございます。しかしながら、御高齢や病気やそういう理由で日本に来られない。それで、手帳をもらわなければ先ほど申し上げたようないろいろな諸手当をもらえない、申請できないわけでございまして、であるならば、ここを現地から手帳を申請できるようにできないものかどうか。

 法律に、被爆者援護法に「居住地の都道府県知事に申請」するとありまして、その「居住地の」という言葉、この四文字を取るだけでそれが可能になる、このように私は思うわけですけれども、この点についてはいかがでしょうか。

外口政府参考人 被爆者健康手帳につきましては、議員御指摘のように、法律上、国外からの申請が認められていないこと、これが明らかでございまして、申請時に都道府県の窓口において本人確認及び所定の要件への該当の有無の審査等を行う必要があることから、来日して申請していただく必要がある取り扱いとしてきているわけでございます。

 厚生労働省としては、在外被爆者の高齢化に配慮いたしまして、被爆者健康手帳の交付を受けるために渡日する方々の旅費を支給する事業を行っているわけでございます。

 法律改正はどうかというお尋ねでございますけれども、被爆者健康手帳につきましては、過去に被爆者健康手帳の不正取得といった事例もございまして、申請の際には、来日して申請していただき、本人への対面審査を行う取り扱いとしているわけでございます。

 今後とも、現行法の枠組みに従いまして、また、こうした渡日支援の事業、これは平成十四年度から十八年三月まで千四百九人の方が利用されておりますが、こういった事業を円滑に行っていきたいと考えております。

斉藤(鉄)分科員 法律に「居住地の都道府県知事に申請」と書いてある以上、行政府としてはその法律に従って執行するということで、そういう御答弁はある意味では当然かと思います。

 したがって、ここから先は法律改正、立法府の問題になるんですけれども、先ほど申し上げましたように、現実問題としては、皆さん現地に行って確認証までお渡しになって、さっき不正受給云々という話がありましたけれども、不正ではない、この人は確実に被爆者なんだという証明書を確認証という形で渡されているわけですから、わざわざ日本に来いということについては、これを海外で申請できるように法律改正すべきだ、このように思います。

 被爆者援護法は閣法で提案された法律でございますので、政府として、この四文字削除という法律改正をぜひしていただきたい、このように思いますが、先ほどと同じ趣旨の質問ですが、いかがでしょうか。

外口政府参考人 先ほどの繰り返しになって恐縮でございますけれども、この制度につきましては、やはり過去の不正取得といった事例もありましたことから、来日して申請していただき、本人への対面審査を行う取り扱いとしているところでございます。

 それで、私どもといたしましては、現行法の枠組みに従いまして、また、渡日支援の事業等、これを一生懸命行いながら、できるだけ多くの方が手帳取得に結びつくように努力していきたいと考えております。

斉藤(鉄)分科員 この二番目の問題は、いま少し我々も議論をしていきたいと思います。

 三番目の問題、これは具体的な問題ですが、医療費助成、日本の被爆者の医療費については上限がないけれども、韓国についてはある、また諸外国、アメリカやブラジルの場合についてもある、これは差があるのではないか。その差が存在することについて、厚生労働省がこれまでこういう理由によるとおっしゃってきたこともよくわかっておりますが、つまり、海外での医療費補助は援護法ではない、いわゆる予算措置によるものだという論理なんでしょうが、これも、基本的に日本国内にいる被爆者と同等の援護を行うという趣旨からすれば改善していっていいのではないか。

 また、十三万円というのが上限ですが、十三万円使わない人もたくさんいるわけですから、その使わない人の分を十三万円以上使う人に回すということも合理的ではないかな、このように思いますが、この点はいかがでしょうか。

外口政府参考人 医療費の補助の事業についてでございますが、この事業につきましては、在外被爆者がお住まいの国の医療機関にかかったときの医療費、この自己負担を助成する事業といたしまして、平成十六年度から開始したところであります。開始するに当たりましては、被爆者の多くおられる韓国、米国、ブラジルに厚生労働省の担当官を派遣いたしまして、現地の被爆者協会への説明を行い、御理解と御協力を求めてきたところであります。

 また、助成の内容につきましては、韓国の現地協会の御要望を踏まえまして、四日間以上の入院期間がある方の場合には、年間の上限額を十三万円から十四万二千円に引き上げるとともに、韓国特有の措置といたしまして、助成対象とする医療費の範囲を、韓国の医療保険の範囲にとどまらず、日本の医療保険の範囲まで拡大、例えば人工関節とかMRI検査とか入れ歯とかでございます、といった拡大をするとともに、医療費の自己負担分が助成上限額まで達しないケースが多いとの想定のもと、健診事業に要する経費も助成対象としたところであります。

 また、ブラジルを含む南米につきましては、民間医療保険に加入しないと十分な医療が受けられないとの理由によるブラジルの協会の御要望を受け入れまして、民間医療保険の保険料を特例として助成対象としたところでありますが、来年度からは、さらに民間医療保険に加入できない方については、医療費を助成の対象とすることとしております。

 このように、各国の被爆者の方々の御要望をお聞きしながら柔軟な対応をとってきたものでありまして、さらに御指摘のような御要望があることは承知しておりますが、在外被爆者の方には被爆者援護法上の医療給付を行うことが難しい中でぎりぎりの知恵を絞っているところでございますので、御理解いただきたいと考えております。

斉藤(鉄)分科員 もう一つ、いわゆる国内の被爆者について介護費用が出る、海外の場合はこれが出ない、ここも差の一つだという指摘がありますが、この点はどうでしょうか。

外口政府参考人 介護手当につきましては、これは地域の福祉施策の一環という性格を持っておりまして、こうしたことから、都道府県や市がその費用の一部を負担することが法律上規定されていること、毎月の介護の実施状況や介護費用を確認し実費を支払うという仕組みになっていることなど、ほかの手当とは事情が異なることがございます。そういったことがございまして、国外からの申請に対応するには困難な面があるわけでございまして、この点についても御理解を賜りたいと考えております。

斉藤(鉄)分科員 大臣、今のような議論をお聞きになりまして、在外被爆者の問題、五年前に比べますと、全くゼロだったのが、私の感触からすると八割ぐらいは解決したのかな、しかし、残っている二割が、先ほど言いました一、二、三の、非常に難しい問題、頑張れば解決できるんじゃないかなという問題、あとちょっと頑張れば解決できる問題、この三つがあると思うんですけれども、ぜひ大臣、在外被爆者問題について御努力をいただきたいということで、御感想といいましょうか御決意をお願いいたします。

柳澤国務大臣 ただいま斉藤政調会長の方から、かねてお取り組みの在外被爆者を中心とする被爆者問題について、事務当局との質疑応答の状況を聞かせていただきました。

 在外被爆者の方々に対する援護については、いろいろ医療制度や社会経済情勢が国によって異なっているということがありつつも、何とかできるだけ国内にいらっしゃる被爆者の方と同じ援護策を実現したいということで、これまで歴代の大臣がいろいろと指導力を発揮されて取り組まれてきたということでございます。よく本当にぎりぎりの努力が積み重ねられてきたということを感じた次第でございます。

 しかしながら、まだ問題が残っているということで、今斉藤委員の方から御指摘をいただいたわけでございますけれども、今お聞きをしながら、斉藤委員がランクづけをされて、もう一歩のところ、難しい問題あるいは半ばの問題というようなことで御指摘をいただいたわけでございますが、今ここで私がどうこうと言うわけには、私の方の勉強、検討も正直言って進んでおりません。

 したがって、私としては、かなりのところまで努力を、今まで政治的な指導、それから事務当局の、事務方としての検討、こういったものをぎりぎり進めてきたなという感じはいたしますが、なおまだ、何か考える余地があるのかないのか、これらについては、私としても、今後またそういったことについて勉強させていただきたい、そういう感想を持った次第でございます。

斉藤(鉄)分科員 大臣、ぜひ前向きにお取り組みをいただきたいとお願いを申し上げます。

 それでは、次の質問でございます。

 発達障害の方の医療費補助について質問させていただきます。

 障害者自立支援法におきまして、知的障害、身体障害、そして精神障害、発達障害というものが一本化されて、医療補助、また自立支援が体系化されました。そういう中で、次のような質問を私の地元の広島からいただいたんです。

 その方は、発達障害を持った息子さんがいらっしゃいます。息子さんは精神福祉手帳一級をもらっておりますが、医療費は精神科のみが公費負担となっている。しかし、精神的な障害のために、そこが原因で体のいろいろなところの不調を訴えて、内科や泌尿器科、耳鼻咽喉科なども受診しないといけないときもあるんだけれども、精神科以外の科については公費負担にならない。負担が非常に大きい。

 しかし、身体障害や知的障害者の方には、いわゆる重度医療費としてその他の科の医療費も全額補助をされている。そういう意味で、一本化された障害者自立支援法の中で、精神障害、発達障害の医療費補助も改善をしていくべきではないのか、こういう御指摘で、もっともだなと私は思うわけですが、この点についてはいかがでしょうか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御指摘ございましたように、障害者自立支援法におきまして、精神障害も対象にするということで、いわば三障害の方々を対象にした福祉施策、そういったことが進んできております。

 また、医療につきましては、これまで身体障害者の方については更生医療、障害児の方については育成医療、それから精神障害の方につきましては精神保健福祉法に基づきます医療助成が行われてきております。そういったものを再編いたしまして、自立支援医療、こういうふうに制度化されましたけれども、一つ問題がございますのは、今、発達障害のお話がございました。

 精神医療の、精神障害の方の手帳をお持ちということでございますが、これまで発達障害につきましては、必ずしも正面からいわば福祉施策なり医療施策を対象にしてこなかったという側面がありまして、これは十七年四月に議員立法で発達障害者支援法をつくっていただきまして、我々も大いに頑張らなきゃいけないということで、発達障害の問題については十九年度の予算案でも大幅に、三倍以上予算をふやすことをお願いしております。そういった中で、ケアのあり方、そういったことも事例を積み重ねて、それで国としても開発をしていこう、こういうところでございます。

 今委員の御指摘のお話は、従来の精神保健法のもとでの枠組みの中では、統合失調症とかそういった精神科領域のものにつきまして、大変支援が必要だということで自立支援医療にも引き継ぎまして、普通の方は三割御負担をお願いするところを一割負担ということにし、さらにその御家庭の所得の状況に応じましては、また症状が重度でありましたら、さらなる軽減措置を講じているところでございます。

 何分、従来の制度を引き継ぎまして、統合失調症等を対象とする、通院による精神医療を継続的に要するという定義で今行っておりますので、発達障害の方々のケアなり治療という意味でどういったことが必要なのかは、また継続して我々、来年度もモデル事業で国としての事例を集積して適切な方策を開発したいと思っておりますので、そういう方向で検討させていただきたいと思っております。

斉藤(鉄)分科員 その検討はどうかよろしくお願いいたします。

 その方がいつもおっしゃるのは、自分たちが生きている間はまだいいんだけれども、自分たちが死んだ後のことを考えると死に切れないと。こういう方々に対して、国として、生活面や就労、それから医療面などをどのようにサポートしてもらえるのか安心したい、このような声もよく聞くところでございますが、これに対してはどのようにこたえていけばいいのか。

中村政府参考人 今、委員からお話ございましたように、発達障害につきましては医療面でも相当進歩してきておりますし、例えば二十年、三十年前の理解と、介護やケアやそれから職業訓練等に当たる方々も、三十年前にわかっていたことと現在では相当違ってきている、いわば日進月歩の分野ではないかと思っておりますので、我々としては、そういう最新の有効な方策をつくることが大事だということで、十九年度、これまでの施策に加えまして、多くの都道府県でモデル事業をやってそういった知見の集積を図るとともに、発達障害情報センターというのをつくりまして、国としても大いにそれを全国に普及していきたいと思っています。

 それからもう一つは、就労支援、これは大事でございます。従来も、事業者の皆さんに向けて雇用管理のノウハウを提供するとか、そういったことの普及啓発を図るとか、あるいはハローワークなどでもこういったことに取り組んでおりますし、今年度から、職業能力開発の方でも発達障害の方々に対する訓練の試行的な受け入れをやっているところでございますので、そういったことを通じて、支援策の開発、それから具体的な適用について積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

斉藤(鉄)分科員 それから、最後なんですが、大臣、この間、私は筑波大学に行きましてロボットスーツというのを見学、視察をしてきたんです。服を着ました。その服にいろいろな筋肉のかわりになるモーターが装着されております。それで、例えば右手をこう動かしたい、こういうふうに私が思うと、神経を電流が流れるわけですが、この表面、皮膚を流れる電流をキャッチして、実際にそれが筋肉に行って筋肉が動く、その直前にモーターを動かして手を上に挙げるということで、ある意味では、非常に重たいものを持つロボット、人間を助けるロボットということで、介護や福祉の面に非常に有効なのではないかと言われてきたんです。

 びっくりしましたのは、筋肉を動かせなくなった方々、高齢者や障害者の方の復帰、リハビリにも役立つ。つまり、神経が指令を出す、指令に従って筋肉が動くということがなくなった方々に対して、指令を出したら現実にモーターで動くということの繰り返しが、その神経系統全体のリハビリに非常に効果があるというふうな結果も聞かせていただきました。

 私がたまたま見たものをこういう場で言うのはどうかとも思いますが、医療分野にもすばらしい発展の可能性があるんじゃないかなと思ったものですので、局長、何かありましたら。

松谷政府参考人 我が国は世界に先駆けて超高齢社会に突入するわけでございますけれども、疾病や老化などによります心身機能の低下、あるいは障害を克服するための技術開発を行うということは、大変重要な課題だと思っております。

 御指摘のロボットスーツに対しましては、厚生労働科学研究におきまして研究の助成を行っているところでございまして、その開発の支援を行っております。

 厚生労働省といたしましては、今後とも、医療、福祉現場のニーズを踏まえたロボットスーツなどの研究開発、あるいは実用化ということに向けて努めていきたいと考えております。

 もちろん、まだまだ研究段階ということで、神経が行くのをキャッチするというか、そもそもその指令が行かないようなものにはなかなか有効でないとか、いろいろ難しい、あるいは安全性の問題とか、まだまだ研究しなくちゃならないところ、たくさんあると伺っておりますけれども、そういうことを支援していきたいと思っております。

斉藤(鉄)分科員 終わります。ありがとうございました。

実川主査 これにて斉藤鉄夫君の質疑は終了いたしました。

 次に、薗浦健太郎君。

薗浦分科員 自由民主党の薗浦健太郎でございます。

 本日は、質問の機会をいただきましてありがとうございます。私は、主に、厚生労働省に労働の関係を中心にきょうは質問をさせていただきたいと思います。

 最近、例えばワーキングプアですとかニート、フリーターといったような、さまざまな格差というものを象徴するような言葉がマスコミなんかで躍っていることが多いんですけれども、根本的な考え方として、日本という国は資本主義の国家ですから、例えば個人の努力で、努力した人と全くしない人が同じ結果だというのは、当然これはあってはならないことであって、ある意味では、私は格差があるというのは日本の国では当たり前だと思っています。ただ、その格差の中にも、例えばチャンスが全くないとか、いわゆる許されざる格差と、あって当然の格差というものがあると思うんですけれども、労働行政における現状の格差というものについて厚生労働省はどのようにお考えかという、まずその現状認識から教えていただきたいと思います。

高橋(満)政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘の雇用をめぐってのさまざまな格差と申しますか課題、どういうふうに認識しているかということでございます。

 御案内のとおり、雇用情勢全体として見ますと着実に改善の道をたどっておるわけでございますが、そういう中で、例えば地域という観点で見ますと、具体的に申し上げますれば、北海道でありますとかあるいは東北でありますとか九州といったような地域におきましては、依然として、例えば有効求人倍率が低いままで推移して、改善度合いも他の地域に比べますと大変弱いといったような意味での地域差。それから、雇用形態と申しますか就業形態という観点から見ますと、最近におきましては正規雇用もふえてまいっておりますが、それ以上に非正規の雇用がふえておる、そういう中での問題。また、これとかなり関連しておりますが、若者をめぐってのさまざまな問題ということが現にあるわけでございまして、こうした特に若者の低所得におきます非正規雇用がどうかということについては、こうした傾向が将来の格差拡大につながりかねないという意味では十分注意していく必要があるのではないか、かように認識をいたしております。

薗浦分科員 ありがとうございました。

 それでは、きょうは、今局長がおっしゃった、いわゆる地域の格差、それから正規、非正規の格差、それから若者の問題という三点をお挙げいただきましたけれども、その三点を中心にお伺いをしたいと思います。

 この地域間格差というのは非常に重要な問題でして、例えば有効求人倍率をとってみても、青森とか〇・四倍台のところもある、一方で愛知県なんかは一・九倍というところで、二人の求人者に一つの職もない県から一人の求人者に二つ近い職があるところまである。そうなると、例えば、個別具体名は、本当は県名は余り挙げない方がいいと思うんですけれども、青森県に生まれたがゆえに職業がない、つまり就職の機会を失ってしまっている、一方で愛知県に生まれたがために引く手あまただ、こういう地域間の格差は断固として是正をしていかなければならないと思うんです。

 具体的に、この地域間格差、もちろん有効求人という意味では民間の力も大変大きいと思うんですけれども、この是正というものに対して、新しい年度の予算では何か考えていらっしゃるのか。それともう一つは、具体的に、予算がつくとして何をやるのか、どの程度の効果を見込んでいるのか。いわゆる費用対効果のところも含めて、ちょっと教えてください。

高橋(満)政府参考人 地域に関してのお尋ねでございますが、言うまでもございませんが、雇用需要というのは産業経済活動の結果としての派生需要でございます。そういう意味では、地域の問題ということを考える上では、非常にトータルとして対応していく必要があろうかというふうにまず思うわけでございます。

 ということを踏まえながら、やはり私ども、雇用対策という立場でも、地域の雇用機会の開発に向けての支援ということをこれまでも実施してまいったわけでございますが、今申し上げましたような地域差が大変顕著になってきておる中で、かつ限られた行政資源、財政資源で効率的、効果的に対応していくという意味では、この地域雇用対策についても重点化を図っていこうという考え方で、現在国会にも御提出させていただいております地域雇用開発促進法の一部改正ということで対応していきたいと考えておるところでございます。

 具体的に申し上げますと、この地域雇用開発としての支援につきましては、一つは、雇用情勢が特に厳しい地域と、それから同時に、雇用創造に向けて地域が何かに取り組んでいこう、そういう意欲の高い地域、この二つの地域に支援の対象地域を重点化いたしまして、具体的な支援策といたしましては、特に厳しい地域でございます雇用開発促進地域に対しましては、事業所の設置、整備に伴い地域の求職者を雇い入れます際の事業主への助成措置ということを中心にした支援をやっていこう。

 また、雇用創造に向けた意欲の高い地域でございますが、自発雇用創造地域、これに対しましては、地域が提案をいたします事業構想の中から雇用創造効果が高いものを選抜いたしまして、そうした事業を委託していくという形で支援をしていきたいということで、これに絡みます予算の措置も十九年度の予算案の中で盛り込んだところでございます。

 こういうことでございますが、冒頭申し上げましたように、やはり何と申しましても、地域の雇用対策を効果的に進めていく上では、地域の産業振興あるいは活性化の取り組みというものと密接不可分な関係にあるわけでございまして、そういう意味で、相互に連携協力していくということが何よりも大事でございます。そうした観点をこの地域雇用開発促進法の一部改正案の中にも盛り込んでおるところでございまして、そうしたことを踏まえながら、地域全体としての取り組みがなされるような対応ということに政府全体として取り組みつつ、地域の雇用対策を講じていきたいと考えておるところでございます。

薗浦分科員 ありがとうございました。今のお話で、重点化というのは当たり前の話だと思いますし、逆に、一回こういうことを始めるとそれに頼ってしまうという部分で、またばらまきなんじゃないかというような批判も出かねないと思いますので、どのタイミングでやればいいのか、いわゆるいつまでやればいいのかという話の先を見据えながら、例えば、有効求人倍率がここまで戻ったらやめますよとか、いわゆる企業立地、何人分の雇用創出を生み出したらこれは終わりですよということをやらないと、無限にお金をまた出すことになるので、そこはちょっとお気をつけをいただきたいというふうに思います。

 地域の格差の話をするときに、雇用を生み出すのは当然企業でございますよね。例えば、地方でも、中小企業でも元気な企業は当然たくさんありますし、例えば回転ずしのコンベヤーをつくっている企業なんかは石川県のえらい中小企業でしょうし、福井県には携帯電話のナノテクのハンダづけを世界でここしかできないという技術を持った会社もあります。

 当然、雇用ということになれば産業創出という話になってきて、これは厚生労働省だけの問題じゃないと思うんですけれども、経済産業省との連携というのがこれからある程度話になってきて、例えば、ではここに厚労省が雇用を創出したいから経産省としてこれを協力してくれないかというような話はできているんでしょうか。

高橋(満)政府参考人 今の御指摘の、例えば経済産業省の施策との連携ということに関してでございますが、これは若干さっきお答え申し上げましたが、法律の中で、一つの代表的な連携すべき施策として、産業集積の形成及び活性化を促進するための措置等との連携ということを盛り込んでおります。ただ法律の中で盛り込むだけではなくて、これは経済産業省ともかなり、十分話し合いをいたしておりますが、経済産業省でも地域地域の中で関係行政機関がお互いに連携をとれる協議の場ということも設けていく、ここに私ども厚生労働省の地方の機関も参加する形で、具体的な事案事案で相互の連携、あるいは具体的に相乗的な支援策が講ぜられ得るというふうに私どもは期待をいたしております。

薗浦分科員 ありがとうございました。

 企業と雇用というのは密接にして不可分なものでございますから、厚労省と経産省も役所の垣根を越えて、密接不可分なものとしてこれに当たっていただきたいと最後にお願いを申し上げておきます。

 次に、個人の格差の話なんですけれども、よくニート対策、フリーター対策、また何とか対策という話で最近予算を大変使っておるんですが、まじめに働いて税金を納める人間からしてみれば、フリーターさんとかニートさんとか、いわゆる何もしていない人たちに我々が汗して働いた税金をなんで突っ込まなきゃならないんだという話、多分、心の奥底でそういうことを思っている人はたくさんいらっしゃると思います。

 何でニートやフリーターの対策はそもそも必要なのか。この人たちがいわゆる技術も全く身につけずに、例えば、三十五歳のニートです、大学を卒業して以来十三年間何もしていません、技術もありませんという人間を雇うのは、企業だってこれはちょっとしんどい話です。となったときに、その人の生活の面倒、生活保護も含めて、将来、国が面倒を見ていかなきゃならない、そのコストを少しでも削減するために、今私はフリーターとかニートの対策が必要だというふうに思っているんです。

 ところが、いわゆるフリーター、ニート対策というものは、政府広報とかいろいろなもので見る中で、全くその観点がなくて、フリーターとかニートがふえては困りますから今お金を突っ込んで彼らを雇用させましょうという話しか聞こえてこないんですけれども、そうなると、本当にまじめに税金を払っている人たちがばかを見る世の中になっちゃいけないと私は思っていますし、そこのところの、いわゆる一生懸命働いている人が税を納め、それをフリーター、ニートに使っているわけですから、その認識、何のためにやるのかという認識を、いま一度、ちょっとお聞かせ願いたいと思います。

高橋(満)政府参考人 若者をめぐってのフリーター、ニート問題ということが多くの問題を含んでいるということで私ども対応させていただいておるわけでございますが、特に雇用状況の改善が進む中で、若い人たちの雇用をめぐるチャンスというものも、かつてから見ますと大変ふえてきておるというふうには思っております。

 ただ、最近の状況を見ますと、いわゆる就職氷河期に学校を卒業して社会に出ざるを得なかった方々がやむなくフリーター的な働き方にとどまらざるを得ない現状の中で、特に二十五歳から三十五歳という年齢層のフリーター、私ども、年長フリーター、こういうふうに定義をして申し上げておりますが、こういう人方がなかなか減らないという現状がございます。

 そういう意味では、特に年長フリーターという方々が、今後もさらにこういう不安定なと申しますか、フリーター的な働き方を続けざるを得ないという状況が続いた場合、どういう問題が我が国全体として懸念されるのかということを考えてみますと、一つには、本人にとってやはりまず大きな問題だろうと。つまり、若年期に必要な知識、技能というものが身につかない、蓄積されない、そういうことによって将来的にいわゆる稼得能力というものがなかなか得られない。あるいは、我が国を支える人材の育成が図られないことによって、経済社会全体としての生産力というと、いろいろまた語弊があるのかもしれませんが、競争力、生産性の低下ということにも結びつきかねない。

 さらに、先ほど委員もお触れになりましたが、例えば少子化の一層の進行であるとか、ひいては社会保障全般にかかわる負担の増大に結びつきかねないとかいう問題が危惧としてあるという観点から、私どもも、やはり若者をめぐる問題についてはしっかりとした対応をしていく必要があるのではないか、このように受けとめておる次第でございます。

薗浦分科員 ありがとうございました。

 今おっしゃったような話を、なぜ働いた人が納めた税金を使わなきゃならないのかという話を、もっといわゆる普通のサラリーマン、働いている人たちが理解できるように、広報をやるといってもなかなか難しいでしょうけれども、例えば新聞に書いてもらうとか、テレビで識者に出てもらうとか、やり方はいろいろあると思うんですけれども、なぜそこに税を使うことが必要なのかというのをもっと理解してもらう努力をしないと、これは、まじめに働いている人たちは本当に怒ると思うんですよね、おれらの税金をと。そういうところに使うのであれば、まじめに働いて税金を納めている人間がもうちょっと豊かな暮らしをしてもらうようになるのが先じゃないか、私自身はそう思っていますから、その認識というか、認知の努力をこれからしていただきたいというふうに思います。

 また、貴重な税を使うわけですから、当然、費用対効果という問題も出てくると思いますし、そこに座っている皆さんは、フリーターとかニートという人たちから最もかけ離れた場所にいらっしゃって、恐らく、大学を出てそのまま役所に入られて仕事をされてきた方々でしょうから、果たして、その中央省庁の人たちが考えるフリーター、ニート対策というのはマッチしているのだろうかという思いも実はあります。

 それで、去年もちょっと質問させていただきましたけれども、自立塾というのがあったと思います。去年聞いたら、予算の消化率というか、予算に対する人数が物すごく少なかった、来年は周知広報に努めて、親御さんにも周知広報して、何とか人員をふやしたいという話を去年この場でいただいたと思うんですけれども、あの若者自立塾の修了生、いわゆる受けた方々、それから、それによって実際就職された方々の数は去年からことしにかけてどう変わったのかという数字をまずお教えいただきたい。

 もう一つは、ことしの予算が幾ら予算をつけていて、うち執行は幾らぐらいなのか。それで、来年はどのぐらいの予算を予定しているのかという、ちょっとまず数字を教えていただきたいと思います。

奥田政府参考人 お答え申し上げます。

 若者自立塾という事業を平成十七年度から開始をしております。この事業は、いろいろな要因によりまして働く自信をなくした、そういった若い方々に対しまして、三カ月程度の合宿を通じまして、その間に、生活の訓練でありますとか、労働体験でありますとか、あるいは資格の取得を応援する、そういったようなことをして就職にいっていただこう、こういう事業でございます。

 昨年、十七年度から開始をいたしまして、初年度は二十団体を指定して事業を実施してまいりました。ただ、初年度におきましては、なかなか最初からすべての団体がそろうということがございませんでしたので、年度後半になりましてようやく二十の団体がそろったというふうなことがございまして、予算の執行率が約三割というようなことで、昨年の国会でも委員の方から御指摘を受けたとおりでございます。

 ことしといいますか、十八年度はさらに五カ所を追加し、また、その間、一カ所はどうしてもやはり塾生が集まらないということで辞退をされまして、それの穴埋めも含めまして、今現在、二十五カ所で実施をしているところでございます。

 ことしの一月一日現在で、この事業を修了したといいますか、三カ月間の訓練を受けて塾を卒業したという方が八百八十八名おみえになります。このうち就労に至った人が四百八十四名ということですので約五五%、それから、もう一度勉強し直そうということで進学したという方が六十二名ございまして、卒業した方の中の六二%の方は、何らかの形で自立といいますか、そういった方向に進んでいっていただいているところでございます。

 ただ、昨年のときにも御指摘がございましたように、塾生の募集につきましては、やはり各塾かなり苦労しているというような状況がございます。

 この事業に対しましては、いろいろなところで努力をしておりますけれども、例えばということでお話を申し上げますと、こういった事業を知ったのでぜひ入れていただきたい、まずこういう相談が、電話が入ってまいります。この相談を受けましてから、私のところの塾はこういう塾ですよというような内容を御説明して、入塾に至るまでに三カ月から半年かかるというのが平均的な例でございます。

 この間に数回、親御さんのところに塾の担当者が訪ねていって説明をし、大抵の場合は親御さんが非常に困っておられますので、娘、息子を何とか塾に入れていただきたい、こういうお話をされるわけですけれども、ようやくそういう若者が何とか行ってみようという気持ちになって出てくるのは、相談をしたうちの二割ぐらいにとどまるということで、潜在ニーズは相当多いというふうに思うわけですけれども、入塾まで至るということになりますと、かなり人数が限られてくるということでございます。

 これも、先ほど委員がおっしゃっておられましたように、まさに自分の意思でこの塾に入って、訓練を受けて、何とか自分で自活をしよう、こういう意思を持つまでになるところが実は一番大事なところでございまして、そういうきっかけをこの自立塾事業というものはつくってきているというふうに思うわけでございます。

 この塾を実施しておりますのは、先ほどお話がございましたように、私ども役人がやりますとうまくいきませんので、NPOの方あるいはこういったことをやる会社をつくっておられる方がございますので、そういった方が実際に運営をされておられます。現在、二十五の団体がそろいましたので、二十五の団体の方に、私どもの方で、年二回、全員の方に集まっていただいて、情報交換会をしていただくような場をつくっております。

 そういう中で、塾の中には、一クールといいますか、二十名を三カ月というのが一つの単位になるわけですけれども、二十名ほとんど常に満杯にしてやっている塾もございますので、そういったところがどういう取り組みをしているのかということを紹介していただいて、そういったものを倣いながら、ほかの塾もいわばまねしながらやっていこうとか、そんなような動きがようやく出てまいりましたので、これからそういった各塾の取り組みを私どもも支援する。

 それから、地方におきましても、パンフレットをつくったりとか、こういうものを、市役所でありますとか、中には県会議員の方にこれを持っていって置いてくるというようなこともやっておりますけれども、できるだけ相談が来そうなところにそういったパンフレットを持っていってやるとかいうようなこと、それから、マスコミに取材をいただいて記事にしていただくということが一番効果があるということでございますので、そういう広報活動にも積極的に努めていくということで取り組んでいるところでございます。

 全体からいいますと、先ほど申し上げましたように予算の執行率がまだまだ三割とかいうことでございますので、内容につきましての周知をすることで、この事業をさらに発展させていきたいというふうに思っているところでございます。

薗浦分科員 たしか、ことしの予算は幾らでしたっけ。

奥田政府参考人 予算は約十億円でやっております。

薗浦分科員 十億円の予算で、去年も言いましたけれども、修了したのが八百八十八人で、就職した方が四百八十四人ですか。多いか少ないかはそれぞれ皆さんお思いでしょうが、私は、十億円かけて四百八十四人というのはちょっと余りにも、やはり高いと思います。もう一工夫必要だと思います。

 例えば、同じようなことを、民間の企業がお金を出して団体に任せる。そこは何をやっているかというと、フリーターを集めて、とにかく一年間パソコンを教え込むわけです。一年間パソコンの技術を教え込んだら、そこの塾にお金を出している企業に就職をする。もう一人前のエンジニアですよ。この人たちは、三年定着率が八五%を超えています。こういうのを民間でできる。

 では、国が十億円使って四百八十四人と聞いたときに、これは納税者の側からしたら、ちょっと高いんじゃないのかという話に当然なると思います。僕自身は、この自立塾というのは、今定着してきつつあるところなんでしょうけれども、予算の額、使い方、それから広報、いろいろな面でもう一度検討をし直さないと、十億円で四百八十四人といったら、普通の人だと高いと思いますので、ちょっと去年に引き続きのお願いですけれども、これはもう一度考えていただきたいというふうに思います。

 もう一つ、若者支援の話のときに、ドイツにもとをただしたデュアルシステムという話があったと思うんです。もともと、学校に行けずに働いていた人が学校にも行けるように、もしくは学校に行っている方がスムーズに就職できるように、労の方にも行けるという二段階があったと思うんですけれども、日本の場合は、ほとんどが就職にスムーズに行くがための、学校に行っている人が企業の協力を得て労の方にも行くというデュアルシステムの活用のされ方をしている。

 では、働いている人がさらに勉強をしてキャリアアップをしたいとなったときの、いわゆる労の人たちが学にも週に二日ぐらい通いたいという方のデュアルシステムがなぜ定着しないのか、なぜ余り見られないのか、そこのところの御見解はいかがでございますか。

奥田政府参考人 今委員御指摘になりました後者の例につきましては、昨年の通常国会で職業能力開発促進法を改正いたしまして、実習併用型訓練というものを法律的に位置づけたわけでございます。実践型人材養成システムという名前で今売り出しておりますけれども、これはまさに企業に雇っていただいて、その中でそういった勉強といいますか、教育機関での訓練も受けられる、こういう仕組みのものでございます。

 これは、十九年度にモデル事業を実施しようということで、団体にお願いをいたしまして、その団体で、どういった訓練をしたらいいのかというようなことをつくっていただきまして、この事業をさらに全国に普及していきたいということで取り組んでいるところでございます。

薗浦分科員 ありがとうございました。

 実は、パート労働法の話もちょっと聞きたかったんですが、時間がなくなってしまったので、これはちょっとお願いというか、しゃべるだけにしたいと思うんです。

 まず、僕は、正規、非正規という言葉を何とかしてほしい。正規にあらずといったら、いかにも、昔で言うというか、余りそういう言い方をしたらいけないんでしょうけれども、国民、非国民みたいなイメージが日本人にはどうしてもありますから、この正規、非正規という言葉、当然、パートを選んで働いている人もいるわけですから、この正規、非正規という言葉をちょっと考えてください。余りにも非正規という言葉はよくないと僕は思います。

 それから、パートの話なんですけれども、均衡待遇という話がありますよね。例えば、デパートなんかに今行くと、フロア全体に正社員が一人しかいなくて、各ショップは責任者まで全部派遣、お任せ、でも正社員の方が給料は高いという現実があるわけですけれども、いわゆる均衡待遇への道筋というか処遇について、今の検討状況、それから、何か予算措置があるのかということを教えてください。

大谷政府参考人 今お話しになりましたデパートの例とはちょっと違うかもしれませんが、パート労働者についての均衡処遇の考え方について御説明申し上げたいと思います。

 パート労働者の待遇を働き、貢献に見合った公正なものとするということは、国民一人一人が安心して納得して働ける社会の実現のため、また、我が国の経済の活力維持のためにも重要な課題であると考えておりまして、こうした考え方に立ちまして、今回、パートタイム労働法の改正案を国会に提出させていただいております。

 その中身を大きく二つに分けて申しますと、一つは、正社員並みあるいは正社員以上の働き方をしている、こういったパート労働者の方には、完全に正社員並みの待遇とする、いわゆる差別的取り扱いを禁止するということを盛り込み、またそれ以外のパート労働者の方々についても、これは今お話ありました正社員と均衡のとれた対応を求めていくということで、すべてのパート労働者について、その実態に応じてきめ細かな格差是正を図るということであります。それから、今のお話にちょっと追加になりますが、正社員として働くことを希望するという方についても、正社員への転換を促進するということも考えているわけであります。

 この法案におきましては、パート労働者に対する教育訓練や福利厚生施設の利用についても事業主に実施を求めることとしておりまして、今回提出させていただいております法案の実現を通じまして、このパート労働者の方々の意欲、能力を有効に発揮できるような環境の整備が進むものというふうに考えております。

薗浦分科員 この今の話は企業側にとってはえらい負担がかかる、新たな負担がかかる話ですから、相当理解を求める努力をしないといけないと思いますので、そのことを最後にお願い申し上げまして、時間が来ましたので、終わります。

 ありがとうございました。

実川主査 これにて薗浦健太郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、前田雄吉君。

前田分科員 民主党の前田雄吉です。

 きょうは、質問通告していないことがありますけれども、冒頭に、私の子供たちもかかったインフルエンザに有効であるというタミフルの話を大臣にちょっと伺いたいと思います。

 この二月二十七日の未明に、仙台市で十四歳の男子生徒さんが飛びおりで転落死されました。アメリカの食品医薬品局、FDAによると、タミフル服用後の異常行動などの精神・神経症状は十七年八月から十八年七月までに計百三例あった、そのうち九割以上の九十五件が日本であったということがありますので、私は、もちろん有効だというのはよくわかっておりますけれども、一たん販売を停止されて、速やかに厚生労働省によって因果関係を調べられた方がいいのではないかというふうに思っておりますけれども、大臣のお考えを伺いたいと思います。

柳澤国務大臣 タミフルとどのような関係にあるかということは私ども確認しておりませんけれども、いずれにしても、そういう若い少年、そういうような方が今回のような悲しむべき死を遂げられたということに対しては、本当に強く胸を痛めているところでございます。

 タミフルのことについてなんですけれども、今現在、これがそのような精神・神経症状と関係があるというようなことについては、私どもは消極的でございます。そもそもインフルエンザに罹患した場合に、タミフル服用の有無と関係なく、そうした異常な行動に出るということもかねて観察されていたことでもあるという事情もありまして、いずれにせよ、とにかく、まず私どもとしては、本日、インフルエンザ治療にかかわる医療関係者の皆さんへ、注意事項についてのお願いということで、インフルエンザ治療開始後の注意ということで、留意事項について、これを通達するということをいたしたところでございます。

 今、先生は販売中止して云々というお話もございましたけれども、私ども今現在もこの調査をいたしておりますので、それらにつきまして、できるだけ早くに、私どもの認識について改めるべきところがあるかどうか、このことを、調査結果を踏まえて検討してまいりたい、こういうのが現状の私どもの姿勢でございます。

前田分科員 ぜひ、大臣、子供たちの命がかかったことですので、速やかに調査をされて対処していただきたいと思います。

 次に、いよいよきょうの本題の健康食品について伺っていきます。

 山形市内の業者が製造しました花粉症の対策用の健康食品のパピラ、これを飲んで意識不明になった女性の方があったという問題で、このパピラに対して、これも通告をまだしていませんでしたけれども、きょうも医薬食品局長がお越しいただいていますので、これへの行政処分をどのようにお考えなのか伺いたいと思います。

高橋(直)政府参考人 たしか杉花粉症に効くということで杉の花粉をカプセルに入れたものだったと思いますけれども、関係の業者につきましては都道府県の方で現在調査をしているかと思いますけれども、その点につきまして、たしか現在、販売をとめるようにというような指導をしているかと思います。

前田分科員 ここからは通告しておりますので、よろしくお願いします。

 政府の健康・栄養政策について、健康食品を中心に伺いたいと思います。

 この健康食品、今、国民の過半数に及ぶ皆さんが活用されている。それこそ安倍内閣の支持率以上に、それを凌駕するぐらいの国民の関心事項でもあると私は思うんですけれども、やはり多くの国民が安心して、信頼が置ける健康食品の利用ができるような法整備を急いでいただきたいというふうに私は思っております。

 厚生労働省においては、新開発食品保健対策室、これをつくられて、これは、いつどのような目的でつくられて今に至るのか。いまだ名前も何も変わっていないというお話ですけれども、これは本当かどうか。そして、二十年たっても、この間に健康食品に関しての法整備はなかなか、何もなし遂げられていない。特に、健康食品市場は、総務省の調査でも十年間で倍増しております。この対策室はそのままに置かれている。国民の健康食品の利用が過半数に及ぶ中で、僕は、この健康食品に対してすごく軽視しているんではないかというふうに思うんですね。

 確かに、二〇〇三年に健康食品のあり方検討会をつくられて、十三回にわたる討議をされて、提言を出され、新特保制度をつくられて二年に及ぶんですけれども、この新特保制度で健康食品をカバーしようという意図があったと思うんですけれども、この二年間で、条件つきで特保がわずか一例しかない。規格基準型特保を入れても、これは数例しかありませんので、合わせて十例もないということで、大半の健康食品は法の外に追いやられている、制度外に置かれているのが今の現状であります。

 この特保、六千八百億円規模ある、これを含む健康食品市場は二兆円とも言われておりますので、私は、まず、この対策室がいつできて、どんな目的で、今もそのままかというお話を伺いたいと思います。

藤崎政府参考人 お答え申し上げます。

 厚生労働省におきましては、昭和五十九年に、当時でございますけれども、厚生省生活衛生局食品保健課に、健康食品を担当する室として、健康食品対策室を設置いたしております。この時点では、広く健康食品に関する調査でありますとか、あるいは啓発と普及でありますとか、そういったことを中心に室の業務を開始いたしております。その後、健康食品に関する関心も大変高まってまいりましたし、また、その重要性にかんがみまして、昭和六十三年に、新開発食品保健対策室と名前を変えまして、厚生省令に位置づけられる省令室というふうに格上げになりました。

 それ以来、増大する健康食品対策に対応できるよう対策室の定員も増員させてまいりまして、平成十九年度においては、健康食品の安全性の確保、安全性の確保のところまでまいりましたが、これを推進する担当官の増員を予定されております。当初四名でスタートいたしましたが、来年度の一名増員がかないますと十一名になるということで、これまで体制の充実を図ってまいりました。

 今後とも、健康食品に対する国民の関心の高まりと消費の拡大を踏まえまして、必要な体制の充実に努めてまいりたいというふうに考えております。

前田分科員 今、体制の充実を図るということをお約束いただきましたので、本当に国民の皆さんの関心が高い分野でありますので、ぜひお願いいたします。

 今、ここに食品衛生法を持ってきましたけれども、その四条に、「この法律で食品とは、すべての飲食物をいう。ただし、薬事法に規定する医薬品及び医薬部外品は、これを含まない。」衛生法では医薬品関係は含まないと言っていて、そして薬事法は、以前は、食品は含まないという条項があったというふうに聞いております。お互いに、この食品衛生法と薬事法は相互不可侵の関係にあった。それが、昭和四十六年の局長通達によって、この薬事法下の、ただし食品を除くという条項が削除されたというふうに聞いております。これはどういう経緯で外されたのか、御説明いただきたい。これを外したことによって健康食品が薬事法下に置かれてしまったというふうに私は考えております。どうぞ。

高橋(直)政府参考人 現在の薬事法は昭和三十六年の改正で現在の形になっておりますけれども、その昭和三十六年改正以前の旧薬事法における医薬品の定義の規定では、委員御指摘のとおり、食品を除くということが明示されておりましたが、三十六年のその改正で、この規定が削除されております。

 これは、事柄の実体としては何も変わっていないんですけれども、解釈上当然のことであるので、ただ、それまでは両方でお互いを除くと書いていたものですから、解釈上若干の混乱を来したことがありましたので、逆に今は、食品衛生法の方で医薬品は除く、薬事法の方では何も書いていないということで、医薬品に該当すれば自動的に医薬品、医薬品でないと言えば必ず食品になるということで、解釈上の混乱を避けるためにこういった改正をしたという経緯でございます。

前田分科員 そこで、やはり健康食品はどちらの範疇に入るのか、食品なのか医薬品なのか、こういう仕切りが非常に私はあいまいであるというふうに思っております。

 だから、これから話しますように、法的な環境整備をきちんと整えなければいけないというふうに思っております。アメリカでは、一九九四年、薬事法を改正して、議員立法で栄養補助食品健康教育法、これをつくりまして、そしてクリントン大統領のサインでスタートしたというふうに聞いております。健康食品に対して前向きに認知したと考えております。

 この健康食品に携わる人たち、携わるというか、それを愛用している人たち、二兆円にも上るお金を払って、その市場が形成されておりますので、法的にもきちんと環境整備をすべきではないかというふうに私は思っております。

 これは、効能等を何も言えないのが今の現状であります。しかし、消費者にとってみると、正しい情報と安全な商品が提供されるのが当然であるというふうに僕は考えております。この健康食品についても十分な情報開示をしていただく、そのような法的な環境整備について食品安全部長さんはどのようにお考えなのか、伺いたいと思います。

藤崎政府参考人 お答え申し上げます。

 最初にまず、この間の法的な取り組みにつきまして、今米国の御紹介をいただきましたが、我が国も、形態は違いますけれども、一定程度そういうことを行ってきておりまして、まず、健康食品に、いわゆる法的な取り組みということで、平成三年に特定保健用食品制度というものをスタートいたしました。また、先ほど先生御紹介いただきましたように、平成十三年に保健機能食品制度というものをつくったということでございまして、これらは健康増進法また食品衛生法等の整備を通じて行ってまいってきております。また、平成十五年には食品衛生法、健康増進法が改正されまして、この際に、食品衛生法の改正によりまして新開発食品等の販売禁止規定の整備でありますとか、また健康増進法の改正によります虚偽誇大広告禁止規定の整備等を行ってまいりました。

 このような形で、単独の法律というわけではないんですけれども、関係諸法を整備しつつ、また、さまざまな運用を通じて健康食品の質が担保され、そしてまた情報が提供され、また安全が確保されるような対応をこれまで行ってまいりました。また、あわせまして、今先生おっしゃられました情報という問題につきましては、独立行政法人の国立栄養研究所におきましてデータベースをホームページで開設いたしておりまして、そういうものも御参照いただけますし、また、私ども、健康食品等にかかわります健康障害事例等々の御報告をいただいた際には、ホームページ等に公表する、あるいはプレスリリースをする等を通じまして、そのような情報の提供にも努めてまいっております。

 引き続き、今後とも適切な制度の整備と運用に努めてまいりたいと考えております。

前田分科員 今御説明があったように、確かに法律はいろいろつくられてきました。健康食品に関する法律は、食品衛生法、先ほどの薬事法、健康増進法、あるいは景表法、特商法などがありますけれども、この二兆円にもわたる有望な産業が、やはり私はまだまだその法的位置づけがはっきりしていない、隅に追いやられているような感がしてやみません。

 健康食品自体も、これは、おいしいとか色合いがいいとかいって決めて食べるものではなくて、消費者は、機能で決めて摂取されるものでもあります。しかし、食べる量も機能もはっきり書かれていない、伝えられていない、それを消費者が摂取するわけでありますので、私は、きちんとやはり健康食品だけの立法が必要ではないかというふうに考えますけれども、大臣はどのようにお考えでいらっしゃいましょうか。

柳澤国務大臣 前田委員が大変、現在の健康食品について深い関心をお持ちで、その観点からいろいろな問題提起をされていることにまず敬意を表したい、このように思います。

 ただ、私どもの取り組みについても御理解をいただきたいと思うんですけれども、たとえ健康食品というふうに称しておったとしても、特定の疾病の治療を目的とする、あるいは体の機能に影響を及ぼすということを目的とするもの等については、これは医薬品に当たる、そういう判断をいたして、薬事法に基づいてこれは未承認医薬品として取り締まりを行う、こういう体制になるわけでございます。また、消費者が適切に選択できるよう、事前の許可等により機能に着目した表示を可能とする保健機能食品制度なども実施をいたしておりまして、薬事法それから健康増進法、食品衛生法、この適切な運用によってこれに取り組むということに努めているところでございます。

 具体的には、健康増進法に基づきまして、個別に国の許可を受けた上で、特定の目的で健康の保持、増進に役立つ旨を表示できる、先ほど委員も御指摘になられた特定保健用食品制度がある。それからまた、国が定めた基準に沿っていれば許可なくして食品に含まれている栄養成分の機能を表示できる栄養機能食品制度などもあるわけでございまして、食品の機能に着目した表示を可能とする制度を実施している。そして、その場合には、これらの制度においては、機能とあわせて摂取量も表示することとなります。

 こういうことでございまして、厚生労働省としては、引き続き、法に基づく適切な制度運営に努めていきたい、このように考えている次第でございます。

前田分科員 だからこそ、ぜひ、反対に健康食品だけに特化して法律をきちんと整備すべきではないかというふうに私は思っておりますけれども、これからまた委員会でも大臣と議論したいと思っております。

 そして、昔は健康な人と病気の人と、二分割されていたと思うんですけれども、今は、私もそうかもしれぬですけれども、二千万人に及ぶメタボリックシンドロームに象徴されるような、病気でもなくて健康でもない人がふえてきている。もともと日本は、セルフメディケーション、そうした感覚がすぐれた国であると思いますので、国民の皆さんは自分で自分の健康管理をする。そしてまた二〇〇八年には国民総健診制度が出発するわけでありますので、私は、ここに健康食品が、国民の健康を維持するのに一つ非常に有効な手段になってくるのではないかというように思っております。例えば、カルシウムと骨粗鬆症とか、はっきりと予防的な機能を備えたものが健康食品には多いということです。しかし、一回に何錠とか食前とか食後とか、あるいはどんな機能があるかとかいう情報がやはり消費者にきちんと開示されなければ、安心して消費者の皆さんはとれない。

 だから、私は、立法スキームをやはりコンシューマーズファースト、消費者サイドに移して、きちんとこれから立法していただきたいと考えます。特に、薬事法をコンシューマーサイドに切りかえる必要があるのではないかというふうに私は思っております。そう改正すべきであると思っておりますが、いかがお考えでしょうか。

高橋(直)政府参考人 薬事法におきましても、医薬品は、疾病の治療のみならず、その予防に使用されることが目的とされるものについても当然その範疇に入るわけでございます。したがいまして、予防の上で有効性なりあるいは安全性が確認されたものについては、これはもちろん医薬品としての承認を与えるという制度になっています。

 そういったものがまた今後出れば、私どもとして、そういったものを審査しまして、予防に役立つものはもちろん役立つということで、私どもとして承認をいたしていきたい、かように考えております。

前田分科員 先ほども大臣のお話の中にもありましたように、健康増進法の中に、著しく誇大な表示をしてはいけないという一条が入っておりました。ちょうどこの法律は、BSEのときとか食肉偽装のときにつくられた法でございますけれども、このたった一条を通して、通知、通達、ガイドラインと、拡大解釈の、私は、裁量行政の重いものが健康食品にのしかかっているのではないかというふうに思っております。

 著しく虚偽誇大ということはどういうことであるかということを御説明いただきたいと思います。

藤崎政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘の、著しく虚偽誇大についての解釈ということでございますが、健康増進法第三十二条の二においては、著しく事実に反する表示をし、または著しく人を誤認させるような表示をしてはならないと規定されております。

 この趣旨でございますが、健康の保持増進の効果等について、著しく事実に相違または著しく人を誤認させる広告が十分な取り締まりがなされることなく放置された場合に、これを信じた国民が適切な診療機会を逃してしまうおそれ等もあり、国民の健康の保護の観点から重大な支障が生じるおそれがあるということで、このような事態を避けるために規定されたものでございます。

 そして、その規定で言う、それでは何が著しく、あるいは事実に相違するかということでございます。

 まず、著しくということでございますが、この判断は個々の広告等に即してなされるべきでありますが、例えば、一般消費者が、広告等に書かれた事項と摂取した場合に実際に得られる真の効果との相違を知っていれば当該食品を購入しないような場合、これに該当するのではないかということでございます。

 また、事実に相違するとは何かということでございますが、これは、広告等に表示されている健康保持増進効果等と実際の健康保持増進効果等が異なることを指しております。

 また、人を誤認させるとは何かということでございますが、これは、食品等の広告等から認識することとなる健康保持増進効果等の印象や期待感と、健康の保持増進の実際の効果等に相違があることを指すものと解しております。

 このような基準に基づきまして、国民の健康の保護の観点から、健康食品における表示の適正化を図っております。

 ところで、では、具体的にどんな表現なんだということがあろうかと思いますが、例えば、即効性でありますとか、万能でありますとか、最高のダイエット食品でありますとか、あるいはがんが治ったなどの治療、治癒に関する言及でありますとか、天然、食品だから安全、全く副作用がない、こういうようなことなどが、例えばでございますけれども、こういうものに当たるのではないかというふうに考えております。

前田分科員 時間が来ておりますので、最後の質問にさせていただきたいと思います。

 今、ヨーロッパのハーブをOTCにする議論がなされているというふうに聞いております。ハーブのOTC化について、これは本当であるかということを伺いたいと思います。

 特定保健用食品は、人試験が必要であります。OTCとハーブは、人試験なしでなされます。本来的な健康食品の機能を何年も放置しておいて、放置とは皆様は言われぬかもしれぬですけれども、製薬会社が推すハーブのみをわずか一年で承認しちゃうというのは非常に問題であると私は思っております。製薬会社がSOSを出せば厚生労働省が動くという構造があるのではないかというふうにも私は懸念しますけれども、人試験を要求される特保に比べてOTCの水準は低い、人試験もなく欧米のハーブ医薬品を市場に出すということは非常に乱暴な議論ではないかというふうに私は思っておりますけれども、これを出す理由を伺いたいと思います。

菅原大臣政務官 今、前田委員から御指摘ありましたハーブの件でございますが、御指摘のヨーロッパのハーブに該当するOTC、いわゆる一般用医薬品につきましては、平成十五年並びに十七年にそれぞれ一品目が新医薬品として承認申請されているところでございます。いずれも赤ブドウの葉から抽出したエキスをカプセルに詰めたものでございまして、これらの医薬品につきましては、国内において治験段階で実施されました人の百八十症例の臨床試験成績、あるいは外国において実施されました臨床試験成績及び動物を用いた毒性試験成績等が提出されているところでございまして、こうした流れの中で、現在、医薬品医療機器総合機構におきまして、この審査をしているところでございます。

 厚生労働省といたしましては、これらの試験成績に基づき申請された医薬品の品質、有効性及び安全性を適正に審査して、その承認の可否をその状況において判断していきたい、このように考えております。

前田分科員 とにかく高齢化が進んで、我が国の国民の健康状況も心配であります。美しい国もいいですけれども、健康な国をぜひつくっていただきたい。そして、戦後の薬事法を盾に医薬品の権益保護にだけ頼る、そうした健康・栄養政策はいかがなものかと私は思います。ですから、きちんとした法整備の環境を整えていただきたい、これをお願いしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

実川主査 これにて前田雄吉君の質疑は終了いたしました。

 次に、井澤京子君。

井澤分科員 自由民主党の井澤京子でございます。

 きょうは、この予算委員会分科会で質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 実は、私自身、本日二度目の質問で、財務金融委員会でも質問いたしまして、尾身財務大臣に、少子化に対する財政、税制上の措置をどのようにお考えかを伺いました。尾身大臣からは、少子化対策は安倍内閣の最重要課題であり、どういったメニューが必要か、財務省に対しても幾らかかるのか出してほしいと、これは、政党、党派を超え、全力を挙げて取り組まなければならないとの力強い御答弁をいただきました。

 まず、本日、この分科会で質問させていただくきっかけになりましたのは、先日、私の地元、京都府南部の久御山町において男女共同参画フェスティバルが開催されまして、子供と大人が一緒になって楽しめる催しのほかに、厚生労働省の方の少子化や子育て支援を考える講演会や、その後にはパネルディスカッションも行われ、参加者約百人がともに地域ぐるみでの子育ての大切さを再認識したからでございます。

 この企画は、そもそも、子育てをテーマに、男女がともに子供を安心して生み育てられる社会を考えようという目的で開催されました。講演の後のパネルディスカッションでは、パネリストや一般参加者からこんな声がありました。出産のタイミングが難しい、やめてしまうと会社でのポストがなくなる危機がある、テレビドラマのように子育ても仕事も格好よくはできない、独身者に独身税を課し、結婚して子供を産んだら減税する大胆な政策が必要ではないかとまで意見が飛び出しまして、活発な議論になりました。

 この久御山町は、実は二〇〇三年に、このように、男女共同参画プランを、地域編、家庭編ということで早目に策定をしまして、翌二〇〇四年には、京都府内で先駆けて、男女共同参画都市宣言を行うなど、また、二〇〇七年度の予算では、子育て支援センターの建設、子育て支援医療費など、子育て支援や少子化対策にも積極的に取り組んでいる町であります。

 しかし、このような意見がいろいろパネルディスカッションで出たことは、つまり、国の施策がまだまだ国民に浸透していないことを痛感いたしました。本日の質問を通して、地元京都のみならず、多くの人々に、国が少子化対策にどのように取り組んでいるのかを知っていただく機会になればと思います。

 以上のような観点を踏まえ、きょうは、就労、結婚、出産、育児など、人生のライフサイクルを考える際、重要と思われるポイントについて伺いたいと思います。国民に安心感を与えられるような少子化対策と子育て支援策について御答弁をお願いいたします。

 まず最初に、若者の就労支援についてお聞きいたします。

 今月まとめられた出生動向基本調査によると、十八歳から三十四歳までの独身男女の約九割は結婚の意思を持っており、希望する子供の数は男女ともに二人以上という調査結果が出ています。結婚や出産に影響を及ぼす理由として考えられることには、特に経済的基盤について、収入が低く雇用が不安定な男性は未婚率が高いという要因もあるようです。

 結婚するということは、共働きを選ぶにせよ、どちらか片方だけが働くにせよ、家族を養っていけるだけの所得が安定し、将来のキャリアの見通し、安定性が得られるかどうかというのが大きな問題になると思います。結婚してから子供を持とうとすれば、育児や教育にかかる費用をどう負担できるのかということも考えなければなりません。若者が結婚して子育てをしていくためには、やはり安定した雇用と将来の収入という経済的基盤に対してある程度の見通しがつくことが必要です。

 そこで、近年の雇用情勢を見ておりますと、ここしばらく景気が回復してきたこともあり、全体としては失業率が低下しているようですが、年齢別に見ますと、十五歳から二十四歳という、社会に出てみずから生活基盤を築かなければならない世代の失業率が高いということが大変気になります。また、景気が低迷していた時代に学校を卒業して、その後も正規の社員になれず、まだフリーターを続けていると言われている、いわゆる二十五歳から三十歳未満の年長フリーターと言われる九十七万人もの存在も大きな社会問題になっております。

 まず、このような若者の就労支援、年長フリーター対策について、来年度予算ではどのような対策を講じられるのか、具体的にお伺いします。

高橋(満)政府参考人 お答えいたします。

 若者をめぐっての雇用の状況、今委員御指摘のとおりでございまして、改善をしてきているとはいえ、まだまだ高い失業率が現にある。あるいは、フリーターと言われる人たちも最近は減ってはきておりますが、その中で、御指摘のような年長フリーターと言われる人たちが余り減らない。こういうような問題があるわけでございまして、こうした問題をほっておくというのは、まさに少子化という観点でも極めて重要な課題であるというふうに思っておるわけでございます。

 そうしたことを踏まえまして、来年度におきましては、一つは、学校卒業段階におきまして、学生から社会人に円滑に移行を図っていくという意味で、ハローワークと学校とが密接に連携をとりながら、ハローワークに配置しております若年者ジョブサポーターという方々を学校に派遣して、きめ細かな就職支援などを行っていく、こういう取り組みを引き続き行っていきたいということが一つでございます。

 また、学校を卒業してやむなくフリーターという形で働いておられる方々に対して、私どもは、常用雇用化、正規社員としての雇用というものに結びつくような支援ということに取り組んでまいってきておりますが、来年度におきましては、特に年長フリーターと言われる方々の正規雇用化というところに重点を置いて支援をしていく。

 具体的には、ジョブクラブという、少人数、十人ぐらいの規模のグループを一つの単位として、お互いに経験交流を図りながら、就職に結びつくようなさまざまな支援を行っていく。

 それから、まずはトライアル雇用で事業主の方に雇っていただいて、そして適性なりを見きわめていただいた上で正規雇用に移っていただく。こういうような取り組みを行う事業主に対して、若年者雇用促進特別奨励金という制度を新たに創設して、正規雇用化を促進していく。

 また、フリーターの方ですのでそれなりの就業実績はあるわけですが、ただ、やはり個人差が大変大きいということもございまして、その方が持っている職業能力がどの程度のものなのかということを見きわめながら必要な職業訓練を行えるような仕組みとして、企業実習を先行させる就業訓練システムを創設して実施していきたい。

 こういうようなことを通じて年長フリーターの方の正規雇用化を図っていきたいと考えておるところでございます。

 さらに、雇用対策法改正案を今国会に提案させていただいておりますが、この中で、企業におきまして新卒者以外にも採用の門戸を広げていただく、そういうことで、事業主に対しまして、若者の能力を正当に評価するための募集方法の改善等による取り組みを努力義務化という形でとらせていただいて、若者の雇用機会の確保に努めていきたいと考えておるところでございます。

井澤分科員 ありがとうございました。

 次に、子供を産む場所の問題についてお伺いいたします。

 今、日本の各地で、小児科医、産科医の減少により、産科医院の廃止、産科の閉鎖等により、身近なところでお産ができないという深刻な産科医不足の問題が生じています。私の地元にも産科医院がない地域もあります。この背景には、出生数の減少に伴う需要の減少のほか、医師の長時間労働や当直、自宅待機などという過酷な労働環境の問題、医療訴訟の問題などがあると伺っております。

 この問題に具体的にどのように取り組もうとされているのか、特に、産科医院がない地域についての対策についてお伺いいたします。

松谷政府参考人 産科を取り扱うお医者さんは、出生数当たりの医師数は横ばいではございますけれども、総数は先生御指摘のとおり減少しておりまして、これに伴いまして分娩取扱施設数も減少しているという状況でございます。

 この背景といたしましては、今委員御指摘のとおり、各病院に産科医が一人ずつ配置されるなど、医師の広く薄い配置などによる勤務医の厳しい勤務環境、また、特に産科におけるリスクの高まり、あるいは訴訟の増加に対する懸念、そして、少子化による出生数の減少などを初めとするさまざまな原因があるというふうに承知しております。

 小児科医についても別途の問題があるわけでございますけれども、地域で必要な産科、小児科のお医者さんを確保するためには、国と都道府県が協力をして、地域の医療関係者の理解を得ながら、医療機関相互のネットワークを構築するなど、医療資源を効率的に活用した医療提供体制を構築することが重要と考えております。

 このため、一つには、お医者さんが集まります拠点病院、マグネットホスピタルと言っておりますが、こういうものをつくっていく。そして、このマグネットホスピタルと地域の診療所や助産所との連携体制を明確にすることによる医療機関相互のネットワークの構築を進めているところでございます。

 さらに、産科につきましては、訴訟の増加によりまして産科医療が萎縮しないようにするために、死因究明制度の制度化等の検討、また、通常の妊娠、分娩にもかかわらず脳性麻痺となった患者さんに対する補償制度の検討、また、正常のお産を取り扱うことのできる助産師さんがいらっしゃいますけれども、この助産師さんの活用などの対策を行っているところでございます。

 また、小児科につきましても、初期小児科救急の当番制による開業医等の活用による病院医師の負担の軽減、また、小児救急電話相談事業というものをやっていますが、この推進等の対策を行っているところでございます。

 また、産科、小児科に共通して女性医師が今大変ふえてきております。この就労環境の整備のために、院内保育所の運営に対する補助、また、女性医師のライフステージに応じた就労支援のための女性医師バンクの設立など、さまざまな対応を行っているところでございます。

 いずれにいたしましても、国としては、いま一度、それぞれの地域の実情をしっかりと把握して、都道府県と協力しながら、具体的な医師確保対策を引き続き講じていきたいと思っております。

井澤分科員 ありがとうございました。

 次に、仕事と子育ての両立支援対策についてお尋ねします。

 働く女性にとって、出産、育児により仕事をやめるということは、世帯の所得の低下やキャリアの中断を招くこともあり、出産をためらう大きな要因の一つにもなっております。例えば、出産退職後に再就職をして定年を迎える場合と正社員で定年を迎える場合との所得の差額を見ても、大卒女性のケースでは、出産後に正社員で復帰をすれば約八千五百万円の所得格差、パートとして復帰をすれば、何と約二億三千八百万円もの所得格差が生じます。できれば育児休業や保育所などを利用しながら仕事を継続したいと考えるのは当然であり、それが実現できる社会ができなければと考えております。

 しかしながら、我が国の現状を見ると、結婚や出産を契機に離職をする女性の数は依然として多く、女性の労働力率を示す代名詞として言えるM字カーブを見ますと、二十五歳から三十四歳の底に当たる部分は、徐々に浅くなっているとはいうものの、これは、晩婚化や晩産化により、独身者や子供のいない既婚者といった労働力率の高い人々の割合が増加していくことが大きく寄与していると分析されております。幼い子供を持ちながら、女性の就業は進んでいないのが現状でございます。

 また、民間のある調査会社では、未就学児を持つ専業主婦の九五%が再就職を希望しているという事実もあります。

 大企業では、最近さまざまな両立支援のための取り組みが行われていると報道されていますが、多くの労働者が働く中小企業では、次世代法に基づく行動計画の策定も義務づけられていないことから、ほとんどが進んでいないというのが現状ではないでしょうか。

 以下、二つお伺いいたします。

 まず最初に、多くの労働者が働く中小企業、小規模企業に対して、両立支援のためにどのような対策を講じているのか、その取り組みの状況などをお聞きいたします。

 続きまして、育児後、再就職を希望する女性に対する就労支援対策の現状についてもお聞かせいただければと思います。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 中小企業における仕事と子育ての両立しやすい職場環境の整備を進めるということは大変重要でございます。

 このため、厚生労働省といたしましては、中小企業における次世代法に基づく行動計画の策定あるいは実施の促進を図るために、全国九十二カ所に指定しました次世代育成支援センターを活用したモデル計画の提供や好ましい事例の収集、あるいは、地方自治体等と連携いたしました広報啓発活動などを行うとともに、平成十八年度に、従業員百人以下の中小企業で育児休業取得者が初めて出た場合に助成金を支給する制度を創設したところでございます。

 また、育児休業制度が整備されていても、職場の雰囲気のためにこの両立支援制度を利用しにくいと感じている労働者が多く、このために、平成十九年度予算案におきましては、職場風土の改革に計画的に取り組み、成果を上げた中小企業に対して助成金を支給し、その職場風土の改革を推進する制度を盛り込んでいるところでございます。

 こういった取り組みによりまして、中小企業においても子育てしながら安心して働き続けることのできる職場環境の整備に努めているところであります。

 また、出産後も職場に復帰して働き続けるということについての支援でありますけれども、これは、今申しましたものにも含めておりますけれども、企業における次世代支援法に基づく行動計画、これに基づいて社内の体制を整備していただくとか、あるいは育児休業法、あるいは育児休業給付の拡充、こういったものを通じて、働き続ける、また出産後も職場復帰できるという環境の整備をしていきたいと考えております。

井澤分科員 再度、育児後の再就職を希望する女性に対する就業支援対策について、現状についてお伺いできればと思います。

高橋(満)政府参考人 出産、育児等で離職をされた後再就職を望む女性の方々に対しての支援でございますが、私どもは、昨年四月から、全国十二カ所にマザーズハローワークというものを設置いたしまして、子育て女性の再就職支援というものに取り組んでまいってきております。

 このマザーズハローワークでございますが、幾つか大きな特徴がございます。これは、まさに子育て女性の皆さんが置かれている状況ということをよく踏まえまして、一つは、子供連れでも来所しやすい環境を整備する。これは、マザーズハローワークそのものが入りやすい、利用しやすいというようなことに配慮する。それから、担当者制によりますきめ細かな職業相談を行うと同時に、育児と両立が可能な求人というものを確保していく、そういう取り組み。さらに、地方公共団体との連携によります保育所等の子育て支援情報というものを提供していく。こういうことを通じて総合的かつ一貫した支援を行う施設として設けたものでございまして、昨年の四月からの実績としても、一定程度と申しますか、私どもとしては相当程度成果が上がっているものというふうに理解をいたしております。

 こうした機能について、各地からも大変要望が強いということで、来年度におきましては、マザーズハローワークが設置されていない県の主要なハローワークに、同様の機能を持つマザーズサロンというものを整備いたすことといたしまして、それに必要な予算というものを予算案の中に盛り込ませていただいているところでございます。

井澤分科員 次に、冒頭に紹介をいたしました私の地元、久御山町であった意見の中で、子育ての現状について幾つか気になる発言がありました。

 今はマザーズという母の立場での質問をさせていただいておりましたが、何といっても、子育ては、家庭の中でどうしても母親に偏ってしまい、女性の負担感が強いという声が多くありました。仕事と家庭の両立を図るには、まず父親である男性の家事、育児の参加をやはり促進すべきであると考えます。

 二〇〇五年度の男性の育児休業の取得率はわずか〇・五%にとどまり、前年度よりも十日低下をしております。その挙げられる理由として、職場に迷惑がかかる、出世に響くなど、取得しにくいという理由です。政府が目標とする一〇%とはほど遠いのが現状のようです。この現状を踏まえ、今後どのように男性に家事、育児参加をさせていくのがいいかという目標達成に向けてのお考えを具体的に伺います。

大谷政府参考人 委員御指摘のとおり、少子化の流れを変えるためには、男性も女性もともに子育てにしっかりと時間を注ぐことができる社会の実現が重要であるというふうに認識しております。

 男性の育児休業の取得が進んでいない、そういったことについての考え方でありますが、職場の理解不足あるいは法制度に関する理解不足、こういったものが原因ではないかというふうに考えております。

 このため、厚生労働省におきましては、一つは、全国の労働局におきまして、男性も育児休業を取得できることを周知徹底する。二つ目として、次世代法に基づいて一定の基準を満たした企業を認定するわけでありますが、その際の基準に男性の育児休業取得実績というものを盛り込みまして、男性の育児休業取得の機運をつくる。三つ目といたしまして、男性の育児参加促進のためのモデル的な取り組みを行う企業二百社に対する支援、またこれらの事例を普及する、こういった施策の推進に取り組んでいるところでございます。

 また、昨年の十月でありますが、男性が育児参加できるワーク・ライフ・バランス推進協議会という協議会におきまして、これは企業の経営者等の方に集まって御議論賜ったわけでありますが、企業経営者向けの提言を取りまとめていただいたところであります。この提言の考え方でありますけれども、男性が育児参加できるような柔軟な働き方や短くて効率的な働き方というものは、優秀な人材の確保定着を初め企業経営にメリットがある、こういうことが盛り込まれているわけでありまして、企業に対し、この提言の普及を図っているところであります。

 こういった取り組みによりまして、今後とも、男性が育児参加できるような職場環境の整備を進めてまいりたいと考えております。

井澤分科員 次の意見を紹介します。

 久御山町では、このような、子育てに関する意識調査結果報告書というのを取りまとめておりまして、子育てをする上で地域の人に何を望みたいのかというアンケートを実施したり、先日のパネルディスカッションなどを通しても、地域ぐるみでの子育ての大切さや協力、サポートの重要性について再認識をしております。

 母親としての子育ては、共働きの家庭の中の母親だけでなく、専業主婦家庭の母親も同じ子育てであり、子育てへの負担感や孤立感を軽減するためには、やはり地域ぐるみでのサポートが必要かと思います。

 そこで、子育てを地域でサポートする体制の整備が急務だと考えられますが、厚生労働省としてどのような対策を講じていらっしゃるのか、お伺いいたします。

大谷政府参考人 御指摘のように、家族や地域の姿が変化する中で、子育ての孤立化あるいは不安、負担感が大きくなっているということが指摘されております。こうした問題を解消するために、子育て家庭を地域でサポートする体制を早急に整備することが重要な課題となっております。

 このため、厚生労働省といたしましては、平成十九年度の予算案におきまして、一つは、孤立化しやすい生後間もない乳児のいるすべての家庭を、地域の子育て経験者等を幅広く活用して訪問するというこんにちは赤ちゃん事業、これは、生後四カ月までの全戸、すべての家に訪問するという事業。二つ目として、身近な地域の中で気軽に親子が交流したり子育ての相談を受けたりできる地域子育て支援拠点というものの拡充。三つ目として、地域住民の参加や協力も得て、全小学校区に安全で充実した放課後活動の場をつくるという放課後子どもプランの推進など、子育て家庭を地域の力を活用して支える、こういった取り組みを盛り込んでいるところであります。

 こうした事業の推進を着実に進めてまいりたいと考えますが、さらに、先般発足いたしました子どもと家族を応援する日本重点戦略検討会議というものがございますが、ここでも、御指摘のように、子育て家庭を地域全体で支えるという視点も持って検討を進めたいというふうに考えております。

井澤分科員 最後になりました。

 この間のパネルディスカッションで意見として最も多かったのは、子育て支援の中で、国で一番サポートしてほしいのは経済的支援であるという声です。さまざまなアンケート調査などでも同様の結果が見られていることから、国では、これまでも児童手当の対象年齢の拡大など経済的支援の拡大を図ってきていますが、今後さらに児童手当などの経済的支援を充実すべきではないか。目に見える形で経済的支援を充実していただきたいと思っております。

 今回の来年度の予算ではどのような措置を講じようとされているのか。また、これまでの議論をお聞きになって、お待たせしております松野大臣政務官に、今までの議論の中の御感想と、今後の少子化対策に対するお考えなどを最後にお伺いしたいと思います。

松野大臣政務官 井澤委員におかれましては、日ごろから少子化問題、子育て問題に大変熱心にお取り組みをいただきまして、心から敬意を表するものであります。

 子育て家庭に対する経済的支援について、平成十九年度予算においてどのような措置を講じているかという御質問でありますが、児童手当に係る乳幼児加算を創設することとしまして、三歳未満の児童の養育者に対する児童手当の月額を一律一万円に拡充いたします。加えまして、育児休業給付の支給率を、休業開始前の賃金の四割から五割に引き上げる等の措置もさせていただきます。大変厳しい財政状況でございますけれども、極めて重要な少子化問題でありますから、最大限の措置を盛り込んだところであります。

 今後の少子化対策に取り組む決意をということでございますが、子育てに関して経済的支援に対する要請が多いというお話をいただきました。加えまして、井澤委員のこれまでの質問の中で各方面で御指摘をいただきましたとおり、子育てに関しては、地域の子育て支援策の拡充であったり、働き方にかかわる施策であったり、総合的な、多面的な取り組みが必要であろうというふうに認識しております。

 今後、子どもと家族を応援する日本重点戦略検討会議における議論等も踏まえまして、効果的な対策の再構築、実行を目指して、総合的に対策に取り組んでまいります。

井澤分科員 ありがとうございました。

 以上で質問を終わらせていただきます。

実川主査 これにて井澤京子君の質疑は終了いたしました。

 次に、とかしきなおみ君。

とかしき分科員 きょうは、予算委員会の方の分科会で質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 本日は、高齢者の在宅医療についてお伺いしていきたいと思います。

 皆様も御存じのように、二〇〇五年には、ついに死亡数の方が出生数を上回ってしまいまして、人口が一万九千人減ということで、今、六十五歳以上が二千六百万人おりますけれども、十八年後の二〇二五年には三千五百万人ということで、高齢者一人を支える若者が、今は三・一人ですけれども、十八年後には一・九人という、高齢社会に加えて人口減社会ということで、日本はある意味で世界の中でもかなり特異的な状況になってきております。

 ということで、このような状況を受けまして、昨年の六月、いよいよ医療制度改革関連法が成立されまして、平成二十年から後期高齢者を対象とした独立した医療制度を創設していこう、こういった方向性が見えてまいりました。

 ということで、この後期高齢者の医療はどんな特徴があるのか、そして、この後期高齢者医療における課題は何なのか、この辺のことについてお伺いしたいと思います。

    〔主査退席、河井主査代理着席〕

水田政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、後期高齢者医療制度は平成二十年度から開始されるわけでございます。

 そこで、新たな制度におきましては、新たな診療報酬体系を設けることになっておりますけれども、そのいわば前提として、高齢者にとって心身の特性にふさわしい医療というのはどういうものであるのかということを、実は、昨年九月に設置されました社会保障審議会の後期高齢者医療の在り方に関する特別部会で議論をいただいているところでございます。

 その場におきまして、心身の特性ということについて言われておりますのは三点ございまして、一つは、老化に伴う生理的機能の低下によりまして、治療の長期化、それから複数の疾患、特に慢性疾患への罹患が見られるということ、二点目は、多くの高齢者に、症状の軽重は別といたしまして、認知症の問題が見られるということ、三点目に、いずれ避けることができない死を迎える、こういったことにつきまして御指摘をいただいているところでございます。

とかしき分科員 ありがとうございます。

 慢性疾患や認知症、死を迎えるということで、医療制度の中で、こういった後期高齢者の方々というのは、ある意味でかなり特異な状況に置かれているわけでございます。

 ということは、後期高齢者にふさわしい医療提供のあり方、これはかなり特殊になってくるかと思いますけれども、国としての取り組みの方向性、そういったことについてちょっと詳しく御説明いただけますでしょうか。

松谷政府参考人 今答弁申し上げましたように、後期高齢者は心身の特性がかなり異なっておるということから、複数の疾患をあわせ持っている、あるいは、慢性の疾患のための、その人その人の生活に合わせた療養を考える必要がある、あるいは、頻回受診をする傾向がございますので、そういう方々への検査、投薬というものをどのように見ていくかというようなこと、あるいは、療養が地域において行えるようにする、あるいは、患者自身がみずから治療法を選択していくというようなことを満たすようなことを考えていく必要があろうかと思います。

 そのためには、一つは、高齢者の方々をサポートする地域での体制、特に在宅での医療を重視した医療というのが必要でございます。このためには、従前から推進してございます、かかりつけ医を持って、その方と御相談しながら自分の体についてのケアを考えていく、また、そういう方々とともに訪問診療、訪問看護など在宅での医療ができるような体制をとっていく、あるいは、複数疾患を抱えるということから、総合的に診ていくお医者さんを育てていく必要があるというようなこと、さらに、最終的には私どもはすべて終末期を迎えるわけでございますけれども、そういうことについては、疼痛緩和あるいは自己決定といったような観点からのこと、それから、介護保険との連携といったような各般の体制を今後は進めていく必要があるというふうに認識しております。

とかしき分科員 地域におけるそういったサポート、そして介護保険との連携ということで、後期高齢者は場所によっていろいろ医療体制が変わってくるかと思うんです。例えば、入院をしている入院医療の場合、外来医療の場合、そして在宅医療ということで、特に、国の方は、この在宅医療の方に今後力を入れていこうというふうになさっているようなんですけれども、それぞれの役割が多分微妙に変わってくるかと思うんです。

 求められるそれぞれの役割は何なのか、それの連携をどういうふうに考えているのか、そして、国として、どちらの方に今後ウエートを持っていこうと思っていらっしゃるのか、その目標とかもございましたら、あわせてお知らせください。

水田政府参考人 後期高齢者の、それぞれの医療提供の場面場面に応じた医療の役割ということでございます。

 先ほども申し上げました特別部会における議論を御披露いたしますと、一つは、急性期の医療、これは入院医療ということもあろうかと思います。急性期の医療にありましても、治療後の生活を見越した医療の提供が重要であるということが指摘されております。また、二点目といたしましては、在宅医療を実施する医師などを含めまして、医療機関の機能、特性に応じた地域における医療連携が重要となるという御指摘。それから三点目は、複数疾患を抱える後期高齢者を総合的に診る医師が必要となることが言われておりまして、特に在宅医療の場面を考えますと、こういった後期高齢者を総合的に診療できる医師の必要性ということが指摘をされているところでございます。

とかしき分科員 ありがとうございます。

 実は、私も薬剤師でございまして、地方議員をしておりましたときから何回か薬にかかわる陳情等もいろいろございまして、中には重複投与による副作用の陳情みたいなものもございまして、あるお宅にお伺いしたところ、物すごい量の薬を飲んでいらっしゃいまして、特に、その方はうつ病だったんですけれども、複数の医療機関にかかって、うつ病であるということをどんどん言って回っていると、皆さんが気を使ってうつ病の薬をお出しになって、それを生まじめに飲んでいらして、ますます病状が悪化していくということで、それで体調が悪いということで陳情があったわけなんです。

 そういったことがあったり、あと、私の祖父もそうだったんですけれども、非常に薬の量をたくさん飲んでおりまして、手にいっぱい余るぐらい薬を飲んでおりました。祖父は、食事のときに薬が飲めなくなるといけないのでということで、食事の量までコントロールを始めまして、一体何のために薬を飲んでいるのだろうと、当時、私は学生、高校生だったんですけれども、祖父のその姿を見て、私が薬剤師になって、必要な薬とそうじゃない薬を見分けてあげよう、こういうふうに思って薬剤師になったんですけれども、なったころには祖父は亡くなっておりまして、結局、亡くなった死因は胃がんだったわけですね。これは多分、薬をたくさん飲み過ぎたことによって胃がんになっていたのではないかというふうに医者の方にも言われました。

 こういったことによって、加齢によっていろいろな複数の疾病を抱えることによって、使用される薬剤は当然ふえてくるわけです。そして、生活習慣病ということで、長期にわたって、いろいろな複数の薬がどんどんふえてまいります。そして、重複投与も出てまいりますし、薬物相互の作用も出てまいります。あと、臓器の機能低下による副作用の危険性も出てくる。

 そして、何といっても身体的な機能の低下ということで、先ほども話がありましたけれども、認知症が入ってきたりとか、視覚、聴覚も不自由になってきたり、嚥下障害が出てきたりということで、自己管理がだんだん高齢者になってくると非常に困難になってくるわけです。となると、周りの人たちもかなり支えてあげないと、こういった治療の体制も整えることが難しくなってまいります。調剤の工夫による服薬の援助、こういったこともどんどんしていかなくてはいけないわけです。

 ということで、後期高齢者の薬物治療というのは結構難しいわけですけれども、その辺、国としてどういった指導を今後していこうか、どういうふうに取り組んでいこうと思っていらっしゃるのか、お聞かせください。

水田政府参考人 後期高齢者の薬物治療の特性という点につきましては、先生御指摘のとおりでございます。

 一つは、加齢とともに複数の疾病を合併する割合が高くなり、使用する薬剤数がふえるということ。それから、高血圧など生活習慣病の罹患率が高いわけでございますので、長期にわたって薬物治療を受ける患者が増加するということ。それから、腎臓機能、肝臓機能などの生理機能の低下によって、薬物の作用が増強したり、副作用が発生しやすくなる、こういったことが見られるということ。それから、複数医療機関を頻回受診する傾向があり、投薬におきまして多数、重複、こういった傾向が見られることが挙げられるわけでございます。

 これらに対してどのような対応をしていくかということがポイントになるわけでございますけれども、特に、薬局につきましては、こういった医薬品の重複、相互作用への対応、こういうところで重要な役割が期待されていると認識をしております。

とかしき分科員 ありがとうございます。

 ということで、こういった薬物の重複利用、たくさん飲むことによって、もちろん健康被害も起こるんですけれども、当然医療費もかさんでくるわけでございます。ということで、患者本人にも身体的負担もある上に、医療費がすごくかかってしまう。さらに、医療を受けるために身体的負担もかかってくるということで、そういった意味では余りハッピーな状況ではないわけでございます。

 といいましても、諸外国と比べて、では、日本が突出して薬の費用負担が大きいかというと、決してそうでもないわけです。とはいうものの、無駄な部分も非常に多いかと思われますので、この後期高齢者の医療にかかわる、特に薬を今例にとりましたけれども、情報の一元化、このことについて、どういうふうに今後取り組んでいこうと思っていらっしゃるでしょうか。

高橋(直)政府参考人 後期高齢者にかかわる情報の一元化ということでございます。

 薬以外にも、医療全般にでも、もちろん、かかりつけのお医者さんにできればかかっていただくということがあるかと思います。また、薬の分野でも、これまでも薬の重複投薬を避けることなどを目的にいたしまして、特に患者さんが日常的に調剤を受けるかかりつけ薬局の普及にも取り組んでいるわけでございます。また、患者の投薬情報を一元的に管理するという観点から、御本人にも薬歴等の情報が記載された手帳を持っていただいて、医師が薬を処方する際や薬剤師の方々が調剤する際に役立てるお薬手帳の普及などにも現在取り組んでいるところでございます。

 こういった施策について、引き続き推進していきたいというふうに考えております。

とかしき分科員 ありがとうございます。

 今いろいろお話しいただきましたけれども、私は、後期高齢者というのは、普通の状態とちょっとまた、かなり状況が特殊になってくるかと思われるわけです。

 といいますのは、今のお話からいきますと、実は、非常に情報が医療機関の方に今帰属している状況で、例えば医療のレントゲン一つとっても、医療機関からレントゲンを提供してもらうのに、かなりお医者様に交渉したりとか、そういった患者の強い意思がないと、自分の方に情報を一元化していくのが非常に難しい状況にあるということです。

 さらに、後期高齢者の場合は、自分の方で一元化しようと思っても、本人以外が情報を一元化しなくては、例えば、だれかが付き添っていったりとか、本人に認知症が発生したりとか、そういった状況になって、本人自身が一元化する意思をはっきり出せなくなってくるかわりに、周りの人がそれをある程度管理してあげなくてはいけないということで、情報の一元化を本人自身の方に帰属させていくのも非常に難しいということです。

 これは、医療機関と本人と、情報を、両方がダブルで、ある程度セットで持っておかないと、どちらかに、お願いします、本人が持って歩いてください、今のように手帳で持ってくださいといっても、なかなか難しい場合もあるし、忘れていくときもあるでしょうということで、いろいろなシチュエーションが考えられる。特に、後期高齢者の場合はそういった状況が多分多く山積されると思いますので、当然、個人の方と医療機関の方と、両方が医療情報を今後持っていく仕組みをつくっていく必要があるかと思うんですけれども、この点、いかがお考えでしょうか。

松谷政府参考人 先生御指摘のとおり、後期高齢者は、相当に認知症が出てまいったり、あるいは御本人自身の衰えというようなこともございますので、情報をみずからすべて主体的に管理をするということが難しい場合も出てまいります。また、医療機関の方も、いろいろな複数の疾病を持っていますと、複数の医療機関にかかるというようなことで、それぞれの医療機関がすべての情報を持っていないという課題がございます。

 これらにつきましては、それらを組み合わせることによってやらなければならないということでございますけれども、先ほど申し上げましたように、総合的に診るようなお医者さん、あるいはかかりつけのお医者さんというようなところで、専門的な意味での情報の、その方をよく知っているお医者さんがサポートをするというような形が最も望ましい。あるいは、薬局におきましても、病院ごとの薬局ではなくて、かかりつけの薬局というようなところがございますので、そういうところで薬を一元的に管理する、そういうやり方がやはり本来的な望ましい姿ではないかと思っております。

とかしき分科員 ありがとうございます。

 ということで、かかりつけのお医者様とか、薬局とか、そういったものをある程度一元化していくというのが必要であるというのもよくわかるわけでございます。しかし、大学病院とか、そういった複数の科を持っている機関のところに、どうしても高齢者というのはかかりに行く頻度が高くなっていくわけです。ですから、最初のころはかかりつけ医でいいんですけれども、だんだん症状がひどくなってきますと、大きな大型病院の方にどんどんどんどん高齢者は移動していってしまうわけですから、そうなると、ますます情報が集まりにくい。

 特に、大きな病院にかかっておきながら、その病院に、ある専門の科が欠落していて、そのためにその高齢者の方がその診療を受けられないとなると、治療体制として非常に整いにくい状況にもなりますので、その辺、今後どういうふうにしていったらいいのか。後期高齢者というのはかなり特殊な状況がいろいろありますので、運用面でまたいろいろ考えていただければと思います。これは要望にしておきます。

 ということで、終末期の医療、今、自宅で迎えていこうということで、国の方もどちらかというとそういった形で進めていこうともしておりますし、患者や家族の方も、むしろ病院よりも自宅の方で死を迎えてみとっていただきたい、こういったことがだんだんふえてくるというふうに考えられます。となると、在宅用のチーム医療、こういったものが、環境整備を進めていくことが非常に大切になってまいります。ところが、こういった在宅医療を行いにくい環境がいろいろあるわけです。これからは、ちょっとそちらの方の質問をさせていただきたいと思います。

 ちょっと具体例を申しますと、例えば、これは末期がんの患者さんなんですけれども、もう口から栄養がとれなくなってきた患者さんの場合は、高カロリーの点滴、HPNというんですけれども、これを点滴する方法がよく行われるわけでございます。しかし、患者さんは、症状が、もちろん状況が違いますので、このHPNというのを、ある程度必要な輸液を調製していかなくてはいけないんですけれども、そのためには無菌室を持った薬局でやっていくしかないわけです。ところが、全国でも約百二十カ所、私の地元の大阪でも、調べましたところ、約十カ所ぐらいしかこの無菌製剤室を持った薬局がないわけです。

 ということで、では、この無菌室のある薬局は一体全国でどれぐらいあるのか。また、もしかしたら無菌製剤室を持たないところが都道府県でどこかあるのではないかと思われるんですけれども、その辺、いかがでしょうか。

水田政府参考人 お答えいたします。

 無菌調剤のある薬局数そのものの調査というものはございませんけれども、保険薬局といたしまして無菌調剤の届け出を行っている施設ということで申し上げますと、平成十八年七月現在、全国で百三十四カ所と承知をしてございます。

 こういった無菌調剤のある保険薬局としての届け出のない都道府県の数は、全国で十七でございます。

とかしき分科員 ありがとうございます。

 十七都道府県が無菌製剤を持っていないということで、かなりこれは、分布からすると、一つの県で一つもないというところも十七カ所もあるというのは、利用できる患者さんが非常に不便を強いられているというふうに考えられるわけです。特に、末期がんで自宅で終末期を迎えようと思っても、このサポートがないと、なかなか自分の家で終末期を迎えることができなくなるわけでございます。

 ということで、この無菌製剤を行える薬局、これはやはり、個人の薬局では設備投資が非常に難しくて採算がとりにくいというのでなかなかふえていかないというのと、そして、薬剤師がほかの薬局と例えば連携をして調製して服薬指導することも禁じられているわけでございます。

 これは、調べましたら、昭和五十年の六月当時に、厚生省の薬務局長の通知によると、薬局は、同一フロアもしくは患者さんが上りおりできる専用の階段を持っていないとだめだということで、無菌調剤をある程度想定した設置基準になっていなかった。ということで、薬局が無菌製剤室を例えば違うフロアに持とうとしても、同じフロアのかなり広いところの薬局を持っていないとそういう設備投資ができないということで、今の時代に非常に合わないというふうに思うんですけれども、このような形の通知を少し改善していく必要はないのでしょうか。

高橋(直)政府参考人 ただいま委員御指摘の通知は、調剤室や待合室など薬局の構造設備の一部を同一の建物のほかの階に設けるような薬局の許可について、疑義の照会があったのでございますけれども、それについて、薬局内で専用階段によって患者が昇降できる、薬局としての同一性、連続性が保たれる、あるいは薬剤師が適切に管理をする、こういった条件を満たして、構造設備の一部を他の階に設けることが適正な調剤確保の上で必要と認められる場合には許可して差し支えないということを命じたものでございます。

 したがいまして、それ自体は、無菌製剤室の設置などとは必ずしも関連はしていないものでございますけれども、そういった、今後の在宅医療の推進の上で、無菌の調剤というのはもちろん今後広がりを見せていくというふうに考えられますので、構造設備面で何か多少差しさわりと申しますか、そういった面があれば、私どもとして、また、そういった在宅医療の普及との兼ね合いで、そういったものについて考えていきたいというふうに考えております。

とかしき分科員 ありがとうございます。

 実際、これをつくろうと思ったら、これでひっかかってできない方がいらしたということで聞いておりますので、そういった無菌製剤室をつくりやすい環境を背中を押していただけるように、ぜひお願いしたいと思います。

 あと、無菌製剤室を持てればいいんですけれども、例えば、持てなかった場合、特別な機能を持った、こういった無菌製剤を持った薬局と地元のかかりつけ薬局の連携ができるように。今、一つの処方せんで、一つの薬局で全部集中しないと薬を出してもらえないということで、こういう無菌製剤室の処方が出てしまいますと、施設を持っているところまで患者さん、家族の皆さんがわざわざその場所まで、遠くまで行って、そして薬をもらってこないとだめな状況なわけです。

 例えば、地元のかかりつけ薬局で無菌製剤室を持っている薬局と連携をして、最終的にかかりつけ薬局の方から薬を出してあげるというような、こういった連携をもっと自由にとれるようにしていくのも一つの方法かと思うんですけれども、この辺、御検討いただけないでしょうか。

高橋(直)政府参考人 在宅医療を推進していく上で、地域とのかかわりの深い、そういったかかりつけの薬局が果たす役割というのは大変重要だと思います。それと同時に、在宅医療そのものの推進の中には、無菌調剤などの設備を必要とする面も今後ふえていく、その間の連携をどうするかということでございます。

 現在の薬事法などの体系ですと、基本的には調剤を行った薬剤師さんが例えば薬についての説明をきちっと行うというのは基本原則ということになっていまして、幾つか薬局間で連携を図る上では、制度面でももう一回よく考えてみなければいけない点もあるかと思いますけれども、そういった在宅医療の推進のためにそういった薬局間の連携ができるだけ進むように、私どもとしても研究をしていきたいというふうに考えております。

とかしき分科員 ぜひよろしくお願いいたします。

 それでは、在宅医療での医療廃棄物について、ちょっとお伺いしていきたいと思います。

 今後、増加が見込まれる在宅医療で、医療廃棄物が驚異的にふえてくると想定できるんですけれども、この医療廃棄物、例えば薬などをとりますと、これは化学物質のかなり濃縮されたものでございます。今はこの廃棄については行政が余り指導を行っていなくて、環境省が今調査をしているようなんですけれども、普通の一般ごみの中に入って捨てられているということで、一般ごみの場合は、多くの場合は焼却という手をとっておりますので、この化学物質に熱を加えますと、ガス化していって、空気中に散布されていって、それをまた私たちは吸ってしまうということで、これは、薬とかこういった化学物質を含んだ医療廃棄物、処理の仕方を間違えてしまいますと、非常に私たちにまた健康被害というものが起こってくる可能性があるわけです。また、家の中にも、皆様のおうちもそうでしょうけれども、冷蔵庫とかをあけるといっぱい薬が入っていて、いつのころにもらった薬でどんな薬なのかさっぱりわからない、そんな状態があちこちで見受けられるわけでございます。

 ということで、こういった化学物質をたくさん含んだ薬、これの処理の仕方。昔も、ピルを飲んで、それによって川の生態系が狂ってしまって、雌化してしまったというようなこともありましたけれども、こういったちょっとした化学物質の量によって、物すごく自然に影響も大きいわけでございます。

 ということで、こういった化学物質をたくさん含んでしまった医療廃棄物、この辺の処理を今後どういうふうにお考えなのか、お示しいただけますでしょうか。

松谷政府参考人 廃棄物処理につきましては、廃棄物の処理及び清掃に関する法律で、これは環境省の所管でございますけれども、対応されているわけでございます。

 今先生御指摘の、特に在宅医療が今後進んでいく中で、医療の廃棄物というものが出てまいるわけでございまして、家庭から排出される廃棄物につきましては、先ほどの法律に基づきますと、市町村が収集、運搬、処分しなければならないというふうになってございます。

 ただし、今委員御指摘のとおり、いろいろ注意しなければならない面がございます。化学物質の塊である、あるいは在宅の医療に伴う注射器、点滴バッグなども含まれるというようなことでございますので、環境省においても、この面、研究を進めているというふうに伺っておりますけれども、私どもとしても、それと協力をして今後対策を考えていきたいと思っております。

とかしき分科員 ありがとうございます。

 私が前に地方議員をしておりました杉並区で、実はこの注射針の回収をやっていこうということで、モデルケースとしてやって、これをあちこちに普及させていこうというふうにしているんですけれども、意外に普及しないわけでございます。

 その理由はなぜかといいますと、これは地元の杉並区の薬剤師会が善意で回収して、そして東京都の薬剤師会が集めてそれを処分するという方法をとっているんですけれども、なかなかメーカー側の賛同が得られなくて、要するに、善意である団体のところで処理できる能力というのはもうほとんど限りがありまして、それ以上できなくなってしまうわけでございます。

 ということで、この医療廃棄物の問題は今後どんどん大きくなってくると考えられます。そして、これは自治体だけの対応、そして心ある団体だけの対応ではもう十分できなくなってきているわけでございます。

 そこで、やはり製薬業界への協力、働きかけを、もう今から少し考えておいてほしい、そして、取り組みをどうしていったらいいのか、これを厚労省の方から働きかけをぜひしていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

松谷政府参考人 在宅の医療にかかわる医療廃棄物につきましては、今委員御指摘のとおり、いろいろな課題があると思います。環境省においてもその研究を進めておるわけでございますけれども、基本的な責任はもちろん市町村に最終的にはあるわけでございますけれども、それにどういう形で協力をするか、単なるボランティアでは先生のおっしゃるとおり限界があるということでございますので、関係する医薬品あるいは医療機器業界においても適切な廃棄物処理に協力できることがあるか否かにつきまして、関係業界と、私どもとしても意見交換をしていきたいと思っております。

とかしき分科員 ありがとうございます。

 それでは、最後にもう一つ、栄養士の役割についてお伺いしたいと思います。

 アメリカでは、ヘルシーピープルプロジェクトということで、国民医療増進計画が大きな成果を上げて、何とアメリカでは、がんによる死亡率が先進国で唯一減少しているということです。その成果が上がった原因には、いろいろあるんですけれども、食生活の改善、栄養士さんの活躍がかなり大きかったのではないか、こういうふうに言われております。

 ということで、在宅医療、これは食べ物の指導というのはかなり重要かと思われますので、栄養士の求められる在宅医療での役割は。あと、チーム医療で、栄養士として活躍していこうと思いますと、医師とか薬剤師とか、そういった人たちとの連携が今非常にとりにくい状況にあるようなんですけれども、この環境を今後どういうふうに整えていこうと思っていらっしゃるのか、その辺のことをお知らせください。

河井主査代理 時間が来ておりますので、簡潔に。

松谷政府参考人 患者さんのQOLの向上という観点から、在宅医療サービスの提供という中で、食事、栄養の管理というのは大変大事でございます。

 管理栄養士につきましては、チーム医療の一員として、医師を初め関係職種との連携のもと、在宅療養者の食生活の状況や栄養状態の把握、食事療法や摂食、嚥下機能に応じた食事形態などについての相談などを実施することが期待されておりますし、現にそういう方向で動いております。

 また、チーム医療の中で管理栄養士というのは、チームの一員として、医師、薬剤師、看護師等医療従事者がそれぞれの知識、技術を持ち寄って、患者さんの最適な栄養管理、評価という上で、栄養管理の点では管理栄養士に期待されるところが非常に多いわけでございます。病院等におきましては、栄養サポートチームというような形での体制が次第にとられてくるようになってきているものと承知してございますけれども、今後、そういった方向、取り組みをさらに進めていきたいと思っております。

とかしき分科員 ありがとうございました。

河井主査代理 これにてとかしきなおみさんの質疑は終了いたしました。

 次に、牧原秀樹君。

牧原分科員 与党で質問の機会を与えていただくことは大変珍しいことでございます。貴重な機会をいただきまして、この機会に、約六つの分野にわたりまして質問させていただきたいと思います。

 まず最初、これは地元のことですが、昨年度もこの分科会で質問をさせていただきました社会保険庁、今、解体という話もありますけれども、病院の方、医療の方でございます。大宮の社会保険総合病院の存続問題、今段階でどのようになりつつあるのか、御説明をいただきたいと思います。

青柳政府参考人 社会保険病院についてお尋ねがございました。

 社会保険病院のあり方につきましては、平成十四年の健康保険法の改正のときからの経緯がございまして、十四年の十二月二十五日に策定をさせていただきました「社会保険病院の在り方の見直しについて」、これは私どもの省の方針というふうにさせていただいたわけですが、これに基づく見直しを進めておる。具体的には、施設整備を含め、基本的には個々の病院の責任において運営をするという考え方に立って、平成十五年度からの三カ年の経営改善計画を策定し、その経営改善に取り組んできていただいたというところでございます。

 今後は、それぞれの病院の経営改善の達成状況あるいは収支の状況、それから地域においてそれぞれ担っていただいている役割あるいは病院機能等を総合的に勘案した上で、各方面の御議論を踏まえ、できるだけ早く整理合理化計画を策定するということが全体の方針でございまして、お尋ねのございました社会保険大宮総合病院の取り扱いにつきましても、経営改善の達成状況あるいはこの病院が担っている病院機能等を踏まえた上で判断をさせていただきたいと考えております。

牧原分科員 ありがとうございます。

 検討の状況がなかなか見えないということで、風評被害みたいなものも出始めております。常勤の医師を雇おうと思っても、存続するかどうかわからないうちでは、なかなか出したがらない、行きたがらない、そうした状況もあります。また、十四年のときには想像もしていなかった診療報酬の改定というものがありました。これが大きく影響を与えているということもあります。ぜひそうした状況も勘案しつつ、地元にとりましては本当に必要不可欠な病院でございます。ぜひとも御配慮を引き続きいただきたい、そうした思いでお願いを申し上げる次第でございます。

 次に、介護の方に移らせていただきます。

 平成十五年よりユニットリーダー研修というものをやっているわけでございますが、これが昨年度、制度が義務づけになって、そしてそのために応募が殺到して混乱が生じている、そういう声を現場からお聞きしております。厚生労働省としてどのように対応をお考えになっているのか、お聞きしたいと思います。

阿曽沼政府参考人 お答えを申し上げます。

 ユニットリーダー研修でございますけれども、ユニットケアの理念でありますとか役割あるいはユニットの管理運営上の留意点などにつきまして理解を求めるということを目的といたしまして、御指摘ございましたように、平成十五年度から各都道府県、指定都市において実施をしているということでございます。

 平成十八年度の介護施設に関する基準の改正によりまして、ユニット施設では、ユニットごとに常勤のユニットリーダーを置くということを義務づける、また、ユニットの数に応じて、原則最低二名以上のユニットリーダーがユニットリーダー研修を受けるようにという形にいたしました。したがいまして、御指摘のように、平成十八年度において各県で研修の希望者がかなり急増しているという状況にございます。

 私どもといたしましては、こういう状況を受けまして、これまで認知症の介護研究・研修東京センターだけでやっておりました実施主体を、平成十八年度からは社団法人全国老人福祉施設協議会などにも広げるということをするとともに、また、この研修に必要な実地の研修施設でございますけれども、それも箇所数をかなりふやしまして、受講者の枠を大幅にふやすという形で対応しているということでございます。

牧原分科員 これは、制度改正のときにこうした大幅な増加というのは見込まれたわけでございまして、最近の改正、とかくとかく後追いになりがちな面も見受けられます。この研修を滞りなく行うということは、これは必要不可欠なことでございますので、ぜひそうした努力を引き続きしていただいて、現場に混乱が生じないように御努力をいただきたいと思います。

 同じユニット研修について、実はこれは、地元が私は埼玉県なんですけれども、各都道府県におきまして、ユニット研修に対する補助というものが、対応がまちまちになっております。埼玉県では、社会福祉法人には支出を公費負担で補助をするが、民間企業に対してはこれを補助しないという決定がなされました。そうしたことによりまして、民間の事業者は、研修ということで極めて重い負担を急に受けるということになっておりまして、円滑なサービス提供に阻害が出るというおそれが出ております。

 ぜひこうしたことを、改正を行った厚生労働省として、都道府県がまちまちな対応をして結果、こうしたサービスを提供する現場に不当なしわ寄せが行かないように対応をお願いしたいと思いますし、また、こうした社会福祉法人と民間企業を区別するということは、そもそもこの改正で想定をされたことではないと考えますけれども、このあたりの対応につきまして、厚生労働省としていかにお考えでしょうか。

阿曽沼政府参考人 お答えを申し上げます。

 私どもとしては、より多くの職員がユニットリーダーの研修を受講できるということが望ましいと考えておりまして、それは質の向上という観点からも大変必要なことだろうというふうに思っております。平成十五年度以来、必要な予算を確保いたしまして、各都道府県が研修受講料に対して助成を行うとした場合には、別に事業所の法人種別を問わず、社会福祉法人であろうとあるいは民間であろうと、事業費の二分の一を補助するという仕組みをつくっております。

 したがいまして、こういう補助制度をどういうふうに各都道府県の方々が活用するかということについては、都道府県サイドで考えますと財政の負担もございますしいろいろな御事情はあろうかと思いますけれども、私ども厚生労働省としては、より多くの質の高いユニットリーダーが養成されるということが必要だろうと思っておりますので、今後とも、この制度の活用についてお願いしたいというふうに思っております。

牧原分科員 ありがとうございます。

 今おっしゃられたとおり、国の制度として、補助金制度としてはそうした区別はないということですから、確かに各都道府県でそれぞれの財政事情があるでしょうけれども、他方で、利用する側というのは別にそうした事情の影響を受ける必要はない、つまり、そのことによって何らかのサービスが制限されてしまうということではこの制度のもともとの趣旨に反してしまうわけですから、その辺、しっかりと厚生労働省としてもできればお願いをする、そうした形で進めていただきたいというふうに思います。

 これで介護から、次は障害者自立支援法について質問させていただきます。

 私も、障害者自立支援法が通りまして、地元の大宮あるいは与野のいろいろな障害者の方々とお話をさせていただきましたし、ほとんどの施設に、現場に行って、いろいろお話を伺ってまいりました。

 その中で、いろいろなことをお願いしたいんですけれども、一つ、授産施設ということで、国会でもたびたび質問に出ておりますけれども、工賃と利用料、この逆転現象というのを地元でも指摘を受けました。もし受け取る工賃の方が利用料より低いということであれば、施設を利用すれば利用するほど自分の支出がふえてしまう。したがって、そういう工賃を稼げない人ほど引きこもりになってしまう、まさにこの法が想定していたことと逆になってしまう可能性がある、実際にそうした現場の方もいらっしゃるという声をいただいております。

 この対応につきまして、厚生労働省としてどのようにお考えであるか、まずお聞きしたいと思います。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 先生、地元の施設をお訪ねになっているということで、敬意を表したいと思いますが、御案内のとおり、通所の授産施設、そういったところに障害者の方が通っておられる、その授産施設の障害者の方お一人当たりのかかる事業費は、月額平均十四万九千円になっております。お一人当たり十四万九千円の、働くためのさまざまなサポートを申し上げている、そういった費用について、今回、障害者自立支援法で御負担をお願いするということでございます。

 そういった場合に、しかし工賃よりも利用料の負担が重くなるケースがある、これは非常に割り切れないということ、まずは、私どもの説明は今申し上げたとおりでございますが、やはり障害者の方々からすれば、ごもっともなお気持ちがあるということを認識いたしております。そこで、さきに成立していただきました補正予算、それから、今審議をお願いしております来年度の予算で、障害者自立支援法の円滑な運用のための千二百億円の特別対策を講じていただき、そういった場合、特に通所されている方々の利用負担が重い、あるいは負担感が大きいというお話がございましたので、さらなる負担軽減措置を講じております。

 その結果、例えば、年収六百万円までの世帯の障害者の方については、月額の利用料が従来二万九千円だったものが一万四千円まで軽減することができまして、今、授産施設における平均工賃が一万五千円でありますので、平均的に言えば、御負担は、工賃よりも負担が高くなることはない、こういう状況でございます。それが第一点でございます。

 ただ、私どもは、働いて得られる工賃よりも利用者の負担が大きくなる場合、これは平均ケースでございますから、場合によっては工賃のさらに低い方についてはあり得ると考えておりまして、これはむしろ、工賃水準が低いことが問題ではないかというふうに考えております。

 先般、総理主導で決めていただきました成長力底上げ戦略でも、福祉から雇用へ推進五カ年計画の一環として、私どもが今回の予算でお願いしております工賃倍増五カ年計画を取り上げていただきまして、産業界などの御協力を得ながら、官民一体となった取り組みによって、授産施設で働く障害者の方々の工賃の水準を引き上げていきたい。現に、そうやって取り組んだ結果、月額八千円程度の工賃が二万六千円になったとか、一万五千円程度の工賃が五万円になったとか、そういう事例も出てきておりますので、私どもは、そちらの面でも頑張ってまいりたいと思いますので、引き続き先生の御支援、よろしくお願いをしたいと思います。

牧原分科員 ありがとうございます。

 今の千二百億円という話は、自民党の小委員会で、私も参加をしておりまして緊急対策ということでしていただいたもので、これはことしと来年ということですから、またそれ以降のこともにらみつつ、五カ年計画と言わず、もっと早く達成するような形でも対応をお願いしたいと思います。

 また、障害者自立支援法に関しまして、私が今回現場を歩いていて思ったのは、やはり対応がきめ細かくないなというのが実感でございまして、例えば今の授産施設でも、身体の方と知的の方と精神の方と、それぞれ働ける状況は大分違うなというのは現場を見ていても思いました。したがって、やれる仕事というのも大分違ってくる。そうしたこともぜひ御配慮をいただきたいと思います。

 また、いろいろな年齢層の方がいらっしゃいます。やはり高齢者になればなるほどまた別の、高齢者による、例えば記憶の低下ですとかそうした違う側面が出てきてしまいます。そうしたこともぜひ御配慮をいただきつつ、いずれにしても、よりよい制度として、助け合いの精神のもとでこの制度をつくっていただくよう、私もやりますし、皆様にもぜひお願いをしたいと思います。

 また、これは財政の問題が大きいということが一つ背景にあるんでしょうけれども、今、地元の施設でも、自分たちで本当に一生懸命バザーをやったりというような形で自分たちで運営費を獲得する、その努力をされております。これは親の方々もそうですし、御本人の皆様がされている場合もあります。

 そうしたときによくひっかかる問題として、場所の問題があります。ぜひ公の自治体による場所の提供、それからいろいろな区民祭り等々、利用したときの場所の提供、そうしたこともこの制度をつくっていくときに御配慮をいただければというふうに思います。これは質問というよりは、現場を見たときのお願いでございます。

 次に、医療に移らせていただきます。

 昨年度、診療報酬三・一六%の減という決定がなされました。これは医療全体でございますけれども、その影響といたしましては、例えば先ほど私が申し上げました病院経営で少し、何年か計画でやっていたものが随分ずれてしまった、これは多分病院だけでなく、個々の医師の方々、医院の方々に影響があるんだろうと思います。

 このことは、国の財政という問題があることは私も重々承知をしておりますけれども、少しそのプロセスが不透明かつ短期間過ぎるんじゃないかという意見を多くお聞きいたしました。予算単年度主義があるため限界があるんでしょうけれども、三月の頭に決定されてすぐ四月から適用だよ、そしてこれは総額で大体一兆円程度の減収、つまり、この三・一六を単純に計算すると減額ということになるわけですから、それを一カ月そこそこで対応するというのは、なかなか現場に混乱を生じるわけでございます。

 この辺につきまして、厚生労働省として何らか対応をとられるつもりがあるのか、お聞きしたいと思います。

水田政府参考人 診療報酬改定のプロセスについてのお尋ねでございます。このプロセス、私どもは中身をなるべく透明化しようという努力をしておりまして、さまざまな工夫をしているところでございます。

 平成十八年度の改定に即して申し上げますと、まず、これまで診療報酬の議論、中央社会保険医療協議会、中医協におきましては、自己完結的になされている、こういった批判がございました。それを受けまして、昨年度の改正におきましては、まず、社会保障審議会におきまして、診療報酬に係ります基本的な医療政策の議論をしていただいて、そこで、十一月でございますけれども、改定の基本方針を提示していただく、こういった手順を一つ新しく加えたわけでございます。それと、一方で、これは従来からでございますけれども、医療機関の経営状況につきまして、十七年六月から医療経済実態調査を実施してございます。

 これらを踏まえまして、中医協において改定に関する議論をしておりますけれども、これは公開でやっておりますし、また、議事録や資料、こういったものを厚生労働省のホームページに記載しているということを実行しております。

 またさらに、これは昨年から新しい工夫でございますけれども、改定の基本的な方向につきまして、パブリックコメントを実施する、あるいは地方公聴会を開催する、こういった工夫を重ねまして、プロセスの透明化等、周知に努めたところでございます。

 こういった新しい手順をしたにもかかわらずと申しますか、したところでございますけれども、具体的な答申、告示、それから実行につきましては例年どおりということになったわけでございます。

 その実施に当たりましては、三月の六日に告示があったわけでありますけれども、それにつきましては、直ちに地方社会保険事務局それから都道府県の担当者会議を通じまして、その周知に努めたところでございます。それから、療養病床に係る入院料など評価体系の大幅な見直しを今回行ったわけでございますけれども、そういったものにつきましては、施行時期を四月ではなくて七月にする、こういったことをしてございまして、できる限りの配慮を行ったところでございます。

 ただ、先生御指摘の点は、私どもも認識をしておりますので、できるだけ早くと申しますか、周知の期間を十分とるような努力はこれからも続けていきたい、このように考えております。

牧原分科員 今、いろいろな御配慮を前回の改定時にはしたということでございますけれども、多分、厚生労働省側も、この診療報酬の改定についてはいろいろな御意見を、ほとんどはマイナス的な、否定的な意見だったのではないかと思いますけれども、受けられたのではないかと思います。

 私は、財政の問題がありますので一概にそうした判断がいけないというわけではございませんけれども、やはりその影響が余りに大きいわけですから、そこはきちんと、より努力を続けていただきたいというふうに思っております。

 私も、アメリカにいて、あるいはほかの国々にも行って、この国民皆保険ないし日本の保険制度というのは世界一だということをよく申し上げております。この現在の日本の医療体制というものを、厳しい財政あるいは人口構造の変化がございますけれども、でき得る限り守っていくこと、こをまず第一に我々は考えていかなければならない。

 そして、個別には、例えば小児科や産科の不足というものも指摘をされております。特に、私はさいたま市というところで、子供がいまだにふえ続けておりまして、私自身も昨年度一人貢献をしたんですけれども、そうしたところでも、例えば小児の救急体制なんかは随分と薄いなというのが実感です。まして地方では、やはりより大変な問題を抱えているというのは私もお聞きしているところでございます。こうしたことを私も、これも引き続き検討をして、そして考えていきたいと思っていますので、ぜひともよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 今、医師不足ということが言われておりますが、その中で、歯科医だけは逆に人数がふえ続けているという意見、ふえ過ぎているという意見をお聞きいたします。この点につきまして、厚生労働省の認識、あるいは、もし少し多いなということであれば、どのような対応をとられているのか、お伺いしたいと思います。

松谷政府参考人 歯科医師の数でございますが、歯科医師の新規参入につきましては、昭和六十一年の将来の歯科医師需給に関する検討委員会の意見を受けまして、このときは、もう既に将来過剰になるという結論だったわけでございますが、それを受けまして、歯学部入学定員のおおむね二〇%削減が提言され、それが達成されたところでございます。

 その後も、歯科医師過剰との意見が強くございまして、平成十年度に同様の検討会において、さらに一〇%程度の新規参入歯科医師数の削減が提言されたわけでございますけれども、平成十八年度の入学定員で見ますと、一・七%の削減にとどまっているところでございます。

 こういった背景の中、昨年の八月末には、文部科学大臣と厚生労働大臣との間で、歯学部入学定員削減と歯科医師国家試験の合格基準の引き上げによりまして、歯科医師の養成数を削減する旨の確認書が交わされたところでございます。この確認書を受けまして、昨年十二月に、今後の歯科保健医療と歯科医師の資質向上等に関する検討会中間報告におきまして、平成十年度の検討会提言による入学定員一〇%削減の早期実現に向けまして、各大学の自主的かつ前向きな取り組みを期待すること、また、歯科医師国家試験の見直しについて検討を早急に開始するという提言がされたところでございます。

 厚生労働省といたしましては、これを受けまして、直ちに、医道審議会歯科医師分科会歯科医師国家試験制度改善検討部会におきまして、合格基準の見直しに着手したところでございます。今後も、文部科学省と十分な意思疎通を図りながら、新規参入歯科医師の削減について取り組んでいきたいと思っております。

    〔河井主査代理退席、主査着席〕

牧原分科員 今の御回答ですと、過剰であるという認識がなされてから随分とたってしまったが、目標がなかなか達成されていないということであります。

 私は、日本とアメリカと両方弁護士資格を持っていて、日本は弁護士不足、アメリカは弁護士が過剰なわけです。アメリカの弁護士というのは、こんなことを言うと怒られるかもしれませんが、余りに過剰であり、救急車がいるとよく追っかけていくアンビュランスチェイサーというような話があって、そしてまた、事件があると、それを何とか引き延ばして、時間を使って報酬を高くしよう、そうした習性が非常に強くあります。

 日本の歯科医の方は、そうしたことをみずからのモラル、道徳心を持って抑えられているために、診療報酬全体としては横ばいの状況がずっと続いていると私は見ておりますけれども、それにしても、そうしたことが起きかねない。また、過剰であるということは、そうした、無理に請求をするということだけでなくて、営業活動に走ってしまうような、つまり適正な医療というものをゆがめる可能性があると思っています。

 現在、八〇二〇運動や予防の大切さなど、歯科の見直しというのも進めていただいておりますけれども、私は、この歯科医療も世界一だと思っています。ぜひこの体制をお守りいただきたいと思います。

 最後の質問ですけれども、実は、先週末、地元大宮で狂犬病についての日本獣医師会のシンポジウムがございまして、私も顔を出しておりました。この狂犬病、人間でも、かかって発病すると一〇〇%死ぬという恐ろしい病気であるということを改めて実感をいたした次第でございます。

 この狂犬病につきまして、現在、お話では、大体五〇%程度しか予防注射がされていないということでございました。その一つは、ペットを飼っている人にお伺いしますと、費用もありますけれども、鑑札が明治時代以来変わっていない、非常に古くさいものであって、つけるのが嫌だ、現代に合っていないという話をよく伺います。

 実は、鑑札がついているということは、もう一つ意味がございまして、例えば、迷い犬になったときに、鑑札がついていることによって飼い主がわかって、殺処分を免れるということがあります。現在、犬猫等々の殺処分が四十万頭近くだと思いますけれども、国民の税金をもってそうした動物たちの命をあやめているという状況があります。

 私は、これを何としても減らしたいという切なる思いでも活動をしているわけでございますけれども、この狂犬病の鑑札につきまして、厚生労働省として、古い、変わらない、かわいくない、そうした鑑札を何か変更していくつもりがないか、この点をお聞きしたいと思います。

外口政府参考人 狂犬病予防法に基づきまして、飼い犬の所有者は、犬に鑑札及び注射済み票を装着しなければならないこととされておりますが、現在、御指摘のように、装着の義務が十分遵守されていない状況にあります。このため、今回、狂犬病予防法施行規則を改正することとし、昨年パブリックコメントの募集を行いました。

 このパブリックコメントでいただいた御意見を踏まえて、鑑札等をより装着しやすいものに変更するとともに、市区町村長が独自に鑑札等を定められることとして、狂犬病予防法施行規則を近く改正する予定でございます。

牧原分科員 ありがとうございました。

 この厚生労働の分野、今、多分一番重要な分野がかなり集中しているという分野でございます。大臣もいらっしゃいますが、今後とも、いろいろ体力的にもきつい、そして精神的にも大変だということもあるでしょうけれども、ぜひ、国の未来にとって最も重要な分野を担っているんだという、そうした責任感と使命感を持っていただいて、私もこの分野、一つのライフワークとしてやっていきたいと思いますので、皆様にもお願いを申し上げたいと思います。

 以上で質問を終わります。

実川主査 これにて牧原秀樹君の質疑は終了いたしました。

 次に、保坂展人君。

保坂(展)分科員 社民党の保坂展人です。

 柳澤厚生労働大臣に、きょうは原爆症認定の問題について伺っていきたいと思います。

 私たちが国会でつくりました被爆者援護法には、このような前文がございます。

 ここに、被爆後五十年のときを迎えるに当たり、我らは、核兵器の究極的廃絶に向けての決意を新たにし、原子爆弾の惨禍が繰り返されることのないよう、恒久の平和を祈念するとともに、国の責任において、原子爆弾の投下の結果として生じた放射能に起因する健康被害が他の戦争被害とは異なる特殊の被害であることにかんがみ、高齢化の進行している被爆者に対する保健、医療及び福祉にわたる総合的な援護対策を講ずる、こういうふうにあるわけです。

 この法律ができてから随分また時がたちました。きょうは、戦後長らくの間、被爆をされた体験を持って頑張ってこられた皆さんも傍聴にいらっしゃっています。

 まず冒頭、柳澤大臣に、この被爆者援護法の基本精神、そして大臣のこの問題に対する政治家としての姿勢、率直なところを伺いたいというふうに思います。

柳澤国務大臣 日本が、過ぐる大戦の最終段階におきまして、人類最初の原子爆弾の被害をこうむったということは歴史的事実でございますが、具体的には、この原子爆弾の投下によりまして、原爆の放射線に起因して原爆症を患われる方々がいらっしゃるということ、これはもう本当に悲しむべき悲惨なことだ、このように受けとめております。

 そういう中で、被爆者援護法というのが、皆さんの長年の努力の結果、成立という運びになりまして、今被爆者の救済がいろいろな形で図られているということは大変意義のあることであるし、また、この運用が本当に被害に遭われた方々に対して的確な措置の手を差し伸べるものでなければならない、このように考えております。

保坂(展)分科員 御承知のように、原爆症認定集団訴訟が各地で起きております。そして、私は昨年、被団協のパーティーに出席させていただきましたけれども、乾杯のごあいさつは、みんなで長生きしよう、それが我々の闘いだということで、非常に胸が詰まるものがございました。先般、日比谷公会堂でこの問題についての集会が開かれましたが、自由民主党を初めとして、国政に参加をしている各党の代表から、これはもう党派を超えてしっかり解決しようじゃないかという声が与野党問わずございました。

 そこで、原告者は三十名、そして三月二十二日、もう間もなく判決が予定をされている東京訴訟なんですが、ちょっと主査の許可を得てお写真を掲示したいと思いますが、まず、ここ近々にもどんどん亡くなってしまっているという事実がございます、柳澤大臣。吉田忠さんでございますね。C型肝炎から肝がんを発症されて亡くなられたということでございます。昨年の四月の二十二日に亡くなられています。そして、須田芳子さん、昨年の十一月の十八日に八十二歳で亡くなられている。甲状腺のがんの転移による肺がんだったということです。先ほど、三十人の中で、この方で十人が亡くなったということです。そして今月、つい最近ですね、ことしの二月三日には齊藤泰子さん、大腸がんのため亡くなっております。広島で被爆をされていて、この問題でも奔走されていらっしゃった。六十五歳であります。十一人の方が亡くなっている。残っている方は十九人でございます。そして、法廷に立ったり外に出たりすることができる方はわずか八人なんですね。先日、中国残留孤児の皆さん、内閣の御判断があったと思います。時間がもうぎりぎりのところまで来ているというふうに思います。

 柳澤大臣、この被爆者援護法でこの国会が盛り込んだ高齢化という文言がありますけれども、これは十年以上の時を刻んで、もうぎりぎりのところまで来ているということについてぜひおわかりをいただきたいし、また、国の主張は主張としてあります。しかし、当事者の皆さんの命限り、ぎりぎりのところで立ち上がって、もう既に三分の一の方が鬼籍に入られたという大変大きな区切りというか、判断ができるチャンスが間もなくあろうかと思います。大臣、率直なところ、政治家としてのまなざし、どのようにお考えなのか、受けとめられているのか、教えていただきたいと思います。

柳澤国務大臣 原爆症認定訴訟におきましては、放射線と疾病の関係に関する科学的な知見が争点となっているところでございます。これまでの各地裁における判決は、医学、放射線学の上での一般的な理解と異なるものでありましたことから、それぞれ控訴をし、上級審の判断を仰ぐこととしたところでございます。

 原告の方々が高齢化されていることは私どもも承知をいたしておりますけれども、一方、原爆症の認定そのものにつきましては、これは科学的な知見に基づきまして公平公正に行う必要があるというふうに考えているところでございます。

 なお、被爆者の方々に対しましては、医療費の無料化であるとか各種の手当の支給等の援護施策を行っているところでありまして、今後とも、保健、医療、福祉全般にわたりまして、被爆者援護施策の適切な運用には全力を挙げてまいりたい、このように考えております。

保坂(展)分科員 厚生労働省として大臣が今お話しになったこと、立場ということは、私はわかっています。ただ、自民党でも、そして民主党でも、各党でも、我々国会に籍を置く議員がそれぞれの立場から話したのは、やはりこれは政治の問題である。そして、行政としての継続性でいえば、今大臣がお話ししたような見解でしょう。しかし、政治家柳澤大臣として、これだけ高齢になられて、体の自由もきかなくなる方も多くなって、そして、全国にその声がこだましているという状況をどう受けとめるのか。例えば、その声をしっかり大臣自身、受けとめていただけるのかどうか、お話もしていただけるのかどうか。私は、ぜひしていただきたいし、立場がどうあれ、その事実、今、私たちがこの時点で向き合わなければいけないという認識は恐らく大臣も同じだと思いますが、そこの点についても率直な言葉をいただきたいと思います。

柳澤国務大臣 今保坂委員がおっしゃられるように、原爆症の方々に対する認定の問題等につきましては、与野党を問わずいろいろな見解をお持ちである方々がいらっしゃることを私もよく承知いたしておりまして、そういう方々からいろいろな御意見の表明が私どもにも寄せられておりまして、これにつきましては、私ども、聞く耳は持たないなんというような気持ちではなくて、お話は十分承るという姿勢で先生方の御意見に耳を傾けているところでございます。

保坂(展)分科員 恐らく、このように全国で裁判という手段で事を訴えるというところに、好んでその手段を選んだということではなくて、やはり、もうぎりぎりその手段しかないところに皆様が追い詰められてしまったという面があろうかと思います。国とすれば、それは係争中のそれぞれの裁判がまだ続々とございます。ただし、政治家として、今柳澤大臣がおっしゃっていただいたのは、各党で、自民党でも原爆症認定を早期に実現するための議員懇談会、こういうものが発足して、恐らくそういう議員の方からの声があろうかと思います。我々も、野党としても、与野党の議員でこれはスクラムを組もうよという話し合いもその場でいたしました。

 ですから、当事者の皆さんと厚生労働省が、先ほどの被爆者援護法の前文にあるように、やはり、この法の趣旨に照らしてしっかり実情を知ってほしい、また意見を交換してほしいと思うんですね。この点、大臣からしっかり指示していただけますか。

柳澤国務大臣 そうしたいろいろな声があることにつきましては私どもも承知をし、また、そういう先生方の御意見については、事務当局にもその声をよく聞くということを私ども申しておりまして、そういう立場にいるわけでございますが、今後そういったことについてどういうことが考えられるか、これはなかなか今日段階までのところでは、乗り越える壁というものが高い、また厚いということを、私ども、話し合っているというような状況でございます。

保坂(展)分科員 大臣が、聞く耳を持たないとか、あるいはそういう当事者の皆さんが何を言おうが聞かないなんということは全く考えていらっしゃらない、むしろ聞くべきだというふうにお考えになっていることはよくわかりました。

 厚生労働ですから、大変今国会も懸案が山積みです。ただ、私は、この被爆の問題、そして今、現に大変苦しい中を生きていらっしゃって、国を相手に闘うという非常に大きな、いわば重圧を感じながらやっておられる、また、裁判を直接はしていないけれども、同じ思いを持って何とか認定の幅を広げてもらえないだろうかと、これは命の叫びだと思うんですね。

 大臣自身も、私もできたら同行したいと思いますけれども、大勢というよりは何人かの代表の方と、今の被爆をされて苦しんでいらっしゃる当事者の皆さんの声をしっかり聞いていただきたいというふうに思いますが、具体的なスケジュール、いろいろおありと思います、それは重々わかっていますけれども、そういうお気持ちがあるかどうか、お尋ねしたいと思います。

柳澤国務大臣 私ども、そうしたいろいろな声を受けとめられて、論点等いろいろな問題を整理されて、そしていろいろ我々に意見として声を届けていただく先生方の御意見、これについてはいろいろ聞かせていただいております。

 しかしながら、それは保坂先生の御意見もまた、こうしたこと以外にも承るにやぶさかでないんですけれども、やはり訴訟というようなことが片っ方で進行しているということでございますと、なかなかこれは、私どもとしては、訴訟の問題点について裁判外でいろいろとお話をするということについてはかなり制約があるということをひとつ御理解賜りたいところだということを申し上げたいと思います。

保坂(展)分科員 柳澤大臣、制約は当然あるんですね。訴訟そのものについて、訴訟外のところで別途同時並行でやるのは国の立場として難しいというのもわかります。

 ただし、私ども、与野党を問わず、この問題に触れた議員それぞれが思いを共通にするのは、もうこの問題は時間がないですよ、皆さんが次々と亡くなってしまう、そういう裁判じゃないですか。そういう問題について、訴訟の問題そのものだけではなくて、今皆さんがどういう思いなのか、どういう実態なのかというのを、やはり大臣としてしっかり耳を傾けていただきたいんです。そういうことをぜひお願いします。

柳澤国務大臣 保坂委員のお訴えになるお気持ちというのは十分わかるわけでございますけれども、訴訟の原告の方々と裁判外でお会いをするということには、やはりこれはもう、我々、法の執行に当たっている行政当局ということになりますと、かなり制約があるということは重ねて御理解をいただきたいと申し上げなければなりません。大変恐縮でございますが、御理解を賜りたいと思います。

保坂(展)分科員 柳澤大臣はこの問題について非常に深くお考えがあるというふうに私は思っています。今おっしゃったような、原告の方と訴訟についてお話しするのは難しい。しかし、私が大臣に申し上げたのは、原告の方以外の、この被爆の問題でさまざまな問題を考えていらっしゃる方たちがいらっしゃるわけですね。今の実情を厚生労働大臣として聞いていただけないものだろうかというふうに申し上げているわけです。いかがですか。

柳澤国務大臣 そういうことであれば、これはもう、先ほど保坂委員が仰せられたとおりに、事務局に対してよく話を聞くようにということで、私どもの方もそういういろいろな立場の者がおりますので、しかるべきポストにある者で対応させていただくということは、私、指示をいたしたい、このように思います。

保坂(展)分科員 ぜひしかるべきポストにある方もしっかり対応していただくように指示をしていただくと大変ありがたいと思います。

 私は、大臣自身にも、ぜひ、いろいろな記念式典や、毎年八月の広島、長崎の日もございます。しかし、この国であの原子爆弾が炸裂して、その災禍を背負いながら生きていらっしゃる皆さんが、今、本当に高齢化でぎりぎりだという中で、やはり大臣自身も耳を傾けていただきたいな、短時間でいいから時間を割いていただきたいなと思います。いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 八月のそういう式典には、歴代厚生労働大臣も寄せていただいているということでございますので、私ども、そうした機会にはぜひ参列をさせていただくということを継続いたしたい、このように考えております。

保坂(展)分科員 政治解決という言葉があると思うんですね。例えば幾つかの裁判では、具体的には申し上げませんけれども、国が控訴を断念するという選択をしたこともある。これについては我々国会の責任でもあったということで決議をつくった経験もあります。例えばハンセン病なんかがそうですね。

 やはり政治が動いていく、これは当然、一番中心におられるのは厚生労働大臣自身なんですね。今のこの高齢化のぎりぎりの、そしてもうどんどん、三、四年の中で三十人いた方が十一人亡くなっているという現状にかんがみて、柳澤大臣は、政治解決という考えはございませんか。あるいは、そういうことについて国が今まで主張してきたことを、司法の判断はどんどん出ているわけですけれども、もう一度ここで抜本的な救済を、ぜひその道をあけていただきたいというふうに皆さん方は訴えていらっしゃる。それについての政治解決というお考えはありませんか。

柳澤国務大臣 この裁判にお訴えになっていらっしゃる方々と広い意味での政府との争点というものは、放射線と疾病の関係に関する科学的知見の問題をめぐる訴訟ということでございまして、こうした問題をめぐっては、従来、本当に専門の方々がいろいろと携わって、一番適切だという考え方のもとで一つの措置の分界を画しておられるということもございますので、この点については、これまでの私どもののっとっているところの原則というものを続けていくことのほかに何か考え得るところがあるかということについては、またいろいろな先生方が御意見もあろうかと思いますけれども、それとても、先ほど申したような大きな厚い壁があるというのが私どもの実感でございまして、争点が争点、争点の性格といったようなこともあって、大変私自身も非常に苦渋の中にいる、こういうのが現状でございます。

保坂(展)分科員 では一点だけ、科学的知見という言葉が出ましたので、局長の方に伺いたいんですが、例えば、最高裁で認められた遠距離被爆で外傷の松谷さんの例ですね。大阪高裁で認められて厚労省が上告を断念した小西さん、白血球減少症の事例です。東京高裁で認められて、やはり厚労省が上告を断念した東さん、C型肝炎。こういった事例が、現在申請されたときに認定されないんじゃないか。つまり、最高裁で確定はしているんだけれども、確定して広がるんじゃなくて、むしろ認定は狭まっているんじゃないか、こういう指摘があるんですね。こうやって確定された方が今申請をしたときに、すんなり認定されるでしょうか。端的にお答えいただきたいと思います。

外口政府参考人 判決で確定された方は、その時点で、判決の考え方で認定されているわけでございます。

 それで、今の認定の仕組みでございますけれども、個別個別の事例につきまして、一般的な医学的あるいは放射線学的な知見に基づいて、放射線の量が、申請者の方はどのぐらい浴びたのか、あるいは、その量と疾病との因果関係がどの程度認められるかなどについて、これを医学、放射線学の専門家から成る合議制の審査会での審査結果を受けて、個別に行っているわけでございます。

保坂(展)分科員 大臣、今具体的なお答えはなかったと思うんですね。私が皆さんから聞いているのは、最高裁や東京高裁で確定した人たちが今申請を出すと認められないぐらい、むしろ審査基準は狭まってしまっている。

 もう一つ、今、審査会の科学的知見のことをおっしゃいました。こちらに新聞の切り抜きがございますが、昨年の八月三日の読売新聞に、これは広島の碓井さんという、この審査に当たっていらっしゃった、厚労省の委員を務めた碓井さんという方の、援護的な審査が必要だというインタビュー記事がございます。これを見ると、なかなか審査に時間はかけられないと。

 例えば、被爆体験のない審査員が、原爆投下の翌日に広島市中心部を通ったと言っても、そんなことはあり得ないよと言って、広島にいる人だったらそんなことは言わないんだけれども、そういうことをおっしゃる。あるいは、防火用水の中を通り、その場所に行ったという話を聞いて、この方は広島の方なので、あり得るかなと思うんだけれども、そんなことはないだろうというふうになってしまう。どうも、しゃくし定規に当てはめているだけで、血が通っていないのではないかと。被曝線量だけで、申請者の背景が余り考慮されていない。これは、審査に当たっていたこの方自身がおっしゃっていて、申請者の訴え、その中には不自由な手で震えるように書いていらっしゃる、そういう申請書もあって、一件に当たる審査というのは大変短い。平均して三分、四分、そのぐらいの時間でしかない。

 やはり、根本的にこの審査の仕方を改めるべきではないか。冒頭、最初に朗読しました被爆者援護法ですよ。まさにこれは他の戦争災害とは、戦争災害全般が悲惨ですけれども、しかし、わけてもこの問題については国がしっかり支援していくということで、大臣、この審査のあり方についても目を配っていただきたい、こういう声にもしっかり耳を傾けていただきたいと思いますが、一言いただいて終わりたいと思います。

柳澤国務大臣 原爆症の認定というのは、先ほど来申し上げておりますとおり、申請の方がどのくらい放射線を浴びたか、また、その放射線量と疾病との因果関係がどの程度認められるかなどにつきまして、確立した科学的知見に基づいて個別に合議制の審査会で審査をしているところでございます。

 そういうことで行政としては対応させていただいておりますので、それを何か乗り越えたりというようなことというのは、先ほど来申し上げておりますように、それを積み重ねてまいりましただけに、これはなかなか、乗り越えて、違う基準なりなんなりを持ってくるというのは極めて難しいことではないか、このように考えている次第でございます。

保坂(展)分科員 あれもこれも、国が決めていることについてなかなか変えられないというお話が多かったんです。

 今私が申し上げたのは、この審査をしていたお医者さん自身が、この審査のあり方をもう少し考え直した方がいいよと、まさにやっておられた方がこうおっしゃっているということにもきちっと耳を傾けていただければ、審査のあり方もこれでいいのかどうかもう一回見直してみるということはぜひ言っていただきたいと思うんですね。いかがですか。それも含めて、もう見直す必要はないんだと。この審査をされていた方なんですよ。それは大臣、そのことも言えないですか。審査はより的確に、より正確に行われるべきじゃないですか。それに向けて努力していただけませんか。

柳澤国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、個別に合議制の審査会で審査をしていらっしゃるというのが現在決められている手続でございまして、その基準なりなんなりについて、これをどのように、変える見地があるのかどうか。私は、今まで積み重ねられてきたことからすると、極めてまた、これまた難しいことではないか、このように考えている次第です。

保坂(展)分科員 済みません、議論がちょっと平行線になって大変残念です。きょうもいろいろ聞いていただいていますけれども、ぜひ政治的な決断をもってこの問題の打開を、柳澤大臣にも求めていきますので、よろしくお願いします。

 終わります。

実川主査 これにて保坂展人君の質疑は終了いたしました。

 次に、穀田恵二君。

穀田分科員 日本共産党の穀田恵二です。

 きょうは、大変深刻な青年雇用問題にかかわって、〇三年からスタートした若者自立支援事業の一つで、全国十四カ所に設置されたヤングジョブスポットについて質問します。

 このヤングジョブスポットが若者の就労支援に果たしてきた役割と効能について、簡単に見解を聞きたいと思います。

奥田政府参考人 お答えをいたします。

 今お話にございましたヤングジョブスポットは、平成十五年に事業を開始いたしました。就職活動をためらっている若者を対象にいたしまして、若者たちの相互交流等を通じて職業意識の啓発を図るということで、十五年度の実施以来、毎年度相当数の利用実績があるというふうに認識をしているところでございます。

穀田分科員 そのヤングジョブスポット十四カ所のうち、東京、大阪を除く十二カ所について廃止するという方針だと聞きます。なぜ東京、大阪だけ残すのか。私は、なくなったら若者の就労支援に重大な支障を来すのではないかと考えています。その点についての見解をまずお聞かせください。

奥田政府参考人 先ほどの御質問でお答えをいたしましたように、ジョブスポットは平成十五年に開始をいたしました。これは、当時の厚生労働省の若者支援施策としてはいわば先駆け的なものとして事業を開始したわけでございます。

 その後、十六年にはジョブカフェというのが設置をされまして、これは今現在、全国に九十五カ所設置をされております。

 それから、昨年度から、これは私どもの能力開発局の事業としてでございますけれども、地域若者サポートステーションというものの設置を始めました。十八年度は二十五カ所で始めまして、来年度、予算が通りますと、これを五十カ所に増設するというようなことになっております。

 また、大都市におきますハローワークの中で若者を対象にしたハローワークがございますけれども、そこで、全国九カ所で、来年度からはジョブクラブという方式の事業を始めるということで、いわば、ヤングジョブスポットで行ってまいりました事業が、その後いろいろな施策の中で発展的に事業が拡大をしてきているということでございます。

 そういう意味で、ヤングジョブスポットが果たしてきた役割というものにつきましては非常に重要な役割があったということで、これがその後の事業の中に継承されているというふうに考えているところでございます。

穀田分科員 そこが問題なんですよね。やはりそれは実情を知らないから言えることなんです。

 大臣、一度聞いてほしいんですけれども、今発展的解消という話なんだけれども、ジョブカフェとヤングジョブスポット、それから今お話のあった地域若者サポートステーションというのは、それぞれ青年の就労に向かう段階に応じてすみ分けが行われてきたことが中心なんですね。

 ジョブスポット千葉の利用者から、次の声が寄せられています。実際に就職についてのイメージが固まっている若者はジョブカフェへ行けばいい。逆に、長い間の引きこもりなど、丁寧な支援が必要な若者は、カウンセラーとの一対一のカウンセリングが受けられる若者サポートステーションに行った方がいい。しかし、自分のようにその中間にあるような、引きこもりとまでは言えない、でも就職活動は始められないという層の若者がジョブスポットに行けば、仲間に会える。お互いに励まし合いながら、就職活動前の準備段階で自分探しをすることができる。こう言って、さらに、無料のインターネットの端末が使えたり、同じ境遇の仲間と励まし合ったり、相談員さんとの対話で情報収集するなどしながら、実際の職探しにつなげていくことができる、かけがえのない居場所だったと言っているんですね。このように独自の役割を果たしてきたのがヤングジョブスポットなんです。

 だから、その声は利用者の声にもあらわれていて、調べると、先ほど言わなかったんだけれども、利用者アンケートでは、八三%の方々が行動は変わったと。八三%ですよ、変容したと。それから、四一%が就職につながったと。これほどの大きな効用があるわけです。

 そこで、神戸やそれから横浜のように、ジョブカフェと同じフロアにあることで、スムーズに、自分探しの段階から具体的なキャリアカウンセリングに進んでいくという施設は、利用者数を見ても伸びておって、実は神戸が全国一なんですね。大阪、東京よりも多いんですよ。だから、そこは廃止すべきじゃないんです。

 私は、せっかく積み上げてきた若者就労支援の水準を後退させるようなことがあってはならない。この三年間ヤングジョブスポットの仕事をしていたスタッフの皆さんの力を引き続き生かすなど、人的にも予算的にも充実して支えるべきだと思うんだけれども、ここでは大臣の所見を伺っておきたいと思います。

柳澤国務大臣 穀田委員から私どもの役所の仕事について、大変かけがえのない施設だというようなお褒めの言葉をいただけるというのは大変幸せでございます。(穀田分科員「千葉の人が言っているんです。幸せでしょう」と呼ぶ)不規則発言はちょっと控えていただきたいんですけれども。

 しかし、ジョブカフェとヤングジョブスポット、私ども、それが入れかえができるというふうには思っていないんです。それはもう我々の方もしっかりそこのところの考え方の整理はついているわけでございまして、今度ヤングジョブスポットを発展的に解消するというのは、主としては地域若者サポステ、サポートステーション、これを非常に大きく増設するというようなこともあって、そういうことにいわば仕事を引き継いでいくというような考え方のもとで、このヤングジョブスポットについては、発展的解消と今委員は仰せられましたけれども、そういうような形で、より発展した形でこの機能は引き継いでいくということを先ほど局長も答弁いたしているわけでございまして、それはぜひ御理解を賜りたいと思います。

穀田分科員 だから、実情を知らないと言っているんですよ。それは大臣にしてみたら仕方ないことなんですね。現実はそうじゃないんです。そこは区分けをして、すみ分けをしていたという事実があるんだ。

 若者ステーションというところはどういう人たちが来るかというと、やはりカウンセラーの実際の側面が多いことも事実なんですよ。神戸の実態なんというのはそういうことなんですよ。

 これがさっき言いましたひょうご・しごと情報広場というもので、「自分探しから就職へ」と、わざわざこうして、しかも一階のフロアを全部使用してやっているところなんですよ。それでやっているんですよね。すぐ引き継いでいけるとかいうんだけれども、二十五カ所から五十カ所というんだけれども、予算は確かに一定ふえますよ。だけれども、今までやっていたヤングジョブスポットの金というのは大体八億ぐらい使っているんです。それ以外に、今まで若者ステーションなんかを初めとして使っていた金、十億以上使っているんですよ。そうすると、今度はどのぐらい使うかというと、九億六千万に減るんですよ、客観的には。減るんです。それは事実なんです。だから、私は、そのすみ分けの問題についても、どういうふうにいっていたかということをよく見てほしいんですよ。

 厚労省の継続事業に関する事業評価、これを持ってきました。これなんですね。これによると、ジョブスポットは、ジョブカフェなどと相互補完の関係により事業を実施してきたと。つまり、そこでは、ここまで言っているんですね。この施策を講じなければ、必要な職業能力がわからず、就業が困難となり、現状が改善されないことになるとまで言っているんです。さらに、この事業を実施しなかった場合、雇用上の安定、将来的な経済社会を担うべき人材不足及び社会的コストの増加により、中長期的に見て大きな損失を生じるおそれがある、ここまで言っているのは珍しいんですよね。

 これを評価したのはいつかというと、去年の八月なんですよ。それほど大事なことだと言っていて、十二月にはころっと変わるわけですね。これはあかんと私は言っているんですよ。だから、本当の意味で、今大臣は、継続させ引き継ぎ、こう言うんだったら、例えば、若者の就労支援をやるところの人たち、サポートしている人たちを首切るなんということは大体あかんと言っておきます。

 その上で、やはりきちんとやってほしいのは、今、若者の就労支援に実際に成功しているジョブスポットを充実し、さらに多様な手を打って一層若者の雇用の拡大に結実させる、充実させるというところこそ求められているんだということを心にとめておいてください。そこだけ言っておきたいと思います。

 次に、自治体で広がっている、自治体による派遣会社の設立に関して質問します。

 まず、大きな社会問題になっている偽装請負について、厚生労働省として現在どのような指導、是正を行っているのか、基本的考え方を簡潔にお述べいただきたいと思います。

高橋(満)政府参考人 いわゆる偽装請負の問題でございますが、言うまでもなく労働者派遣法に違反するものでございまして、違反が確認された場合には、厳正に指導を現在行っておるところでございます。

 特に、昨年九月以降、偽装請負の防止、解消を図るための取り組みを強化してまいってきておるところでございまして、私ども、この偽装請負の防止、解消に今後とも最大限の努力をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。

穀田分科員 偽装請負はあかんという話と、去年通達を出したというだけの話ですね、今言ったのは。

 そうじゃなくて、実際上、今出てきているのは、発覚した場合どうするのかという問題も問われていますね。それがこの間、新聞でいろいろ取りざたされている考え方でしょう。そこをもう少し言ってくれなくちゃ。

高橋(満)政府参考人 違法状態にあるような請負、いわゆる偽装請負につきましては、この解消を指導いたしておるわけでございますが、その際には、この解消に当たりまして、雇用の安定のための措置を講じていくということを大前提にして指導をいたしておるわけでございます。

 雇用の安定の具体的な措置という観点からは、派遣先または発注者による雇い入れでありますとか、適正な請負または労働者派遣による事業の継続等々さまざまな方法が考えられるわけでございまして、こうしたさまざまな方法の中から、派遣労働者の希望にも配慮しながら、派遣元、派遣先双方の努力によりまして適切な方法で対応するよう指導をいたしておるところでございます。

穀田分科員 大臣、これを聞いて情けないと思いませんか。つまり、現場のこういう問題について、機械的話では通用せえへんわね、私いつも思うんです。

 今起こっている事態に対して、例えば、雇用の安定を前提としてさまざまな措置があると。これは当たり前ですよ。だけれども、今大事な問題は、偽装請負をやっているというときに、では、正規の請負だったらいいのかということで、そういう形で、三年も五年もたっているのに、では、請負にしたらいいじゃないかとか派遣にしたらいいじゃないかとかいう形で、本当の意味で雇用の安定に資するようなやり方をしないところはだめだ、こういうふうに言わなくちゃだめだと私は思うんですよ。

 そこで、聞きますよ。

 去年の十一月二十九日ですけれども、神戸新聞の一面トップで報道をされた、兵庫県篠山市において、篠山市が一〇〇%出資した労働者派遣事業会社であるプロビスささやまが偽装請負を行っていたことが明らかになって、兵庫県労働局より十二月七日に指導を受けるという事態が起きています。当然把握していると思います。このことを発端に「各市・町の機関における適正な業務の委託について」という兵庫労働局の通知が発せられたのは事実だと思うんだが、その内容についても、簡単でいいですから答えてください。

高橋(満)政府参考人 御指摘の事案でございますが、これは当該篠山市におきまして市議会でも御報告をされた事案だというふうに承知をいたしておりまして、そうしたことを踏まえまして、兵庫労働局において確認をしておる事項についてお答えをいたしたいと思います。

 これは、篠山市及び当市が一〇〇%出資いたします法人でございます株式会社プロビスささやま、この間で業務委託が行われておった事案でございますが、兵庫労働局におきまして、一つは、篠山市の職員とプロビスささやまの社員が混在をして仕事をしておる、そういう中で指示命令系統が不明確であるといった点、それから、プロビスささやまの労働者の労働時間等の管理の一部を篠山市の職員が行っているということから、これが労働者派遣法に違反しているということを兵庫労働局が指摘したわけでございます。

 兵庫労働局におきましては、この違反事項、事実を踏まえまして、両者間で締結をいたしておりますすべての委託契約について点検の上、適正なものとなるよう是正指導を行ったところでございます。

穀田分科員 だから、率先して法律を守るべき立場の地方自治体が違反を行っているというのはゆゆしき事態だと思うんですね。

 しかも、今、通知の話はされませんでしたけれども、通知まで出しているわけですね。まさに前代未聞。つまり、先ほどあったように、昨年九月に偽装請負をやめなさいという通知をいろいろ出しましたよね。やはり、民間企業に発するならまだわからないでもないけれども、先ほど大臣が、政府や地方自治体というのは法の執行にかかわるという話をしていましたけれども、そういう担う庁に出さざるを得ないこと自体が大問題だと私は思うんですね。

 問題は、それが今、単にこの一件だけじゃなくて、自治体が出資して派遣会社をつくって、自治体の業務を請負させるという動きが進んでいる、こうした中で各地で偽装請負なんかが問題になっていることを私は指摘したいと思うんですね。

 そこで、京丹後市に起きている事態について聞きたいと思うんです。

 京都府北部の京丹後市において、市が一〇〇%出資する派遣会社、京丹後市総合サービス株式会社を設立しています。昨年十一月十五日に設立登記がなされ、ことし三月一日に派遣事業所としての許可がおりる見込みで、四月一日より派遣業務を開始するという計画だったんですね。

 この会社は、昨年十一月末から十二月にかけて住民向けの説明会を実施しています。これが会社の説明会の資料なんです。この中で、履歴書の提出を一月二十四日、二月に採用試験を行うという募集要項を市民に配付しているんですね。

 労働者派遣事業の許可を受けていない会社が派遣労働者を募集、採用を行うということは、労働者派遣法に違反するのではないか。端的に。

高橋(満)政府参考人 お答えいたします。

 個別の事案にかかわってのお答えは差し控えさせていただきますが、一般論として、具体的に、まだ許可を申請しようとする段階の者が、許可を受ける前に募集、採用を行うということは特段問題はないと私どもは理解をいたしております。

穀田分科員 それはないでしょう。採用するということはあり得ないんですよ。募集ということまではいろいろグレーゾーンがあるのは普通ですけれども、それはない話ですよ。

 現実、個別の例だとどうのこうのとおっしゃったから、では一言聞いておこうと思うんですけれども、やはり現場では、大臣、ちょっと聞いてほしいんだけれども、小中学校や保育所の給食調理員を当初三年間は派遣労働という形で置きかえて、その後は業務請負契約に切りかえる計画だ、市当局はそんな説明までしているんですよね。本来、派遣労働というのは臨時的、一時的な労働需要に対応するためのものであるにもかかわらず、こんなことが現場では話されている実態があるわけですね。だから、そういう意味では本当にひどいと思うんです。

 だから、あなたはそんなふうに言っていないけれども、この説明会資料に対して、京都労働局から口頭での指導を受けて、当該の派遣会社は、わざわざおわびの広告まで出しているんですね。あなたは好き放題言っていたけれども、おわびの広告を出して、済みませんでした、間違っていましたと言っているんですね。

 しかし、これがまたひどくて、その同じ日に、市の保育所所長会の会議の席上で、先ほど述べたこの派遣会社の総務部長が出席して、京丹後市に雇われている保育所の給食調理員さんに対して、また履歴書等の準備をするように伝えてほしいと案内するなど、やはり派遣事業許可前の採用を組織していたというわけなんです。

 これに対して、一連の経過について地元の丹後労働組合総連合が指摘をし、一月三十一日に再び京都労働局から改めて口頭での注意がなされているんです。これはどういう注意かというと、採用に類する行為はしてはならない、ここまできちんと指導しているんですね。

 このように、京丹後市総合サービス株式会社は、許可を受ける前から違法行為を何度も繰り返して、労働局からの厳重注意を二回も受けているんですね。

 大臣、そこでお聞きしたいんです。そのような、許可前から平気で法律違反をし、指導を受けざるを得ないような会社に自治体の業務が置きかえられようとしていること自身に、地域住民や現在京丹後市に直接雇用されている労働者の皆さんが不安を感じているのは当然と思いませんか。派遣事業の許可を受ける前から法律違反でたびたび注意を受けるような会社に許可を与えることは私は問題だと思うんですが、そこはどうお考えでしょうか。大臣に聞きます。

柳澤国務大臣 二つ問題があったかと思います。

 一つは、派遣法上の許可を得ない前に採用をしたというのについてどう考えるか、これが一つ問題だと思うんですが、これは今局長が答弁したように、採用まではよろしい、しかし、実際に許可もなく派遣行為をするというようなことは許されない、こういうのが基本的な枠組みの理解ということでございます。

 それからもう一つは、こういうような形のいわば派遣が地方自治体で行われることについてどう考えるかということであれば、これは適法な派遣であれば問題ではない、私どもはこういうように思いますが、それがまた、いわゆる偽装請負のような形になったり、あるいは二十六業種以外のところで、それが、今の制約である一年とか三年とかの期限を超えて行われるというような違法な状態に至るということは極めて問題だ、このように思います。

穀田分科員 だから、わざわざ京都の労働局から指摘があって、採用に類するようなことをしてはならないということまで現場はきちんと指導されているんですよ。こちらはそのことはさっぱりわかっていないけれども、現場ではきちんとそういう指導をしているんですね。だから、そこはよく考えていただく必要があると思うんです。

 そこで、私が言っているのは、派遣会社だけの問題じゃないんですよ。というのは、この会社は、先ほど言いましたように、京丹後市、地方自治体が一〇〇%出資している会社です。受け入れも全部自分のところでやるわけですよ。双方に絡んでいるというのが自治体でしょう。金は全部出している、実際の仕事もここのところでやらせる、両方に絡んでいるわけですよ。

 そうなると、少なくとも労働者派遣法の、つまり、派遣先が講ずべき措置に関する指針、いわゆるガイドラインにあります、派遣先事業所の責任者は労働関係法令に関する知識を有する者であることを求めている、こういうことからしますと、たびたびこういうことをやられて、指摘をされて、注意をされてやるということ自体に、およそ地方自治体として、法を守るべき、法を執行すべきところでやるというのは、二重に問題だと私は思うんですね。

 そこで、篠山のケースでも京丹後市のケースでも、働いている労働者に対しては、賃金、労働条件は切り下げないなどと説明していて、直接雇用から派遣に置きかえようとしているわけです。同じ労働者が同じ賃金で働くとなると、地方自治体にとっては、派遣会社に支払う手数料と消費税の分がありますから、当然これは効率化とはほど遠いということに、その論理からしたって、なるんですよ。適法か適法でないかという話の前に、そうなっちゃうわけです。結局、ではどうなるかというと、見えているのは、労働者の賃金や労働条件を下げて不安定雇用に置きかえることになるということは見えているわけです。だから、みんな心配しているんです。

 そこで、丹後労連から、既に大臣あてにこれらの問題について要望書も提出されているはずです。私も見ました。私は、ここは大臣に聞いておきたいんですけれども、結論から言えば、民間企業に正規雇用の拡大をなるべくやってほしい、安定雇用をしてほしいと求めていながら、一方、地方自治体が労働者の不安定雇用を進めている、こういうやり方は矛盾ではないかと思いませんか。そこだけ言ってください。

柳澤国務大臣 民間であれ公的な団体であれ、不安定雇用を促進するというか、そういうようなことは、私どもの労働行政の上では全く望ましくないことだ、このように考えます。

穀田分科員 ですから、そうなりますと、やはりそういう先が見えているやり方、私は、少なくとも全国でこういう問題が、今、出ている例は二つ、篠山の例と京丹後の例を出しました。これが適法で行われればいいんだという形では済まない。今お話ししたように、やる前から少なくとも法にひっかかるんじゃないか、ガイドラインに見た場合でもおよそ似つかわしくないということをやられているという現状を見ていただかないとあかん。全国的に言えば、こんなことが適法にやられるなどということで甘い事態を予測することはできないと思う。だから、私は警告を発しているわけであります。

 そこで最後に、今ありましたように、安定的な雇用をふやすというのは当たり前だと私は思うんですね。この方向に実は逆行することになるということだけ指摘をし、なおかつ、私は、住民サービスの確保と、そのために公務における安定した雇用を守るということは、国と自治体の責任だ。これは、この間の予算委員会における集中審議でも、柳澤大臣それから安倍総理大臣も、企業に対して命令することはできない、しかし、そういう全体の考え方としては示すし、そういうことを含めて実行できるようにしたいということをるる述べておられました。

 ですから、今の考え方をきちんとやるとすれば、民営化万能論という形で効率化だけを追求するというやり方に対しては、私は反対だ。しかも、雇用を削減したり、不安定雇用を拡大するということになりかねない。そのことを警告を発して、これからもしっかりこの問題について見守っていきたいし、そのことを要望して、私の質問とします。

実川主査 これにて穀田恵二君の質疑は終了いたしました。

 次に、江田康幸君。

江田(康)分科員 公明党の江田康幸でございます。

 早速に質問に入らせていただきます。まずは、臍帯血移植についてでございます。

 白血病などの血液の病気に対しまして有効な治療法であるのが、この臍帯血移植でございます。新しい命がもう一つの命を救う。大臣、これは御存じでしょうか、臍帯血移植推進のキャッチフレーズでございます。

 公明党は、この臍帯血移植を推進するために、今から十年前の九七年、その推進を求める署名運動を展開しまして、全国の議員、党員が一丸となって取り組んで、二百万人を超える署名が集まりました。この間、九八年には臍帯血移植術への保険適用、九九年には公的臍帯血バンクの設立、また二〇〇〇年には検査費への保険適用が実現したわけでございます。昨年秋には、秋篠宮家新宮様の臍帯血が公的臍帯血バンクに提供されたことがニュースで大きく報道されましたことも記憶に新しいわけでございます。

 このように、我が公明党は大変に尽力をしてまいりましたが、この臍帯血移植医療への保険適用から九年、設立八年目に入った公的臍帯血バンクというのが、目標を高めながら、現在、三千三百人を超える臍帯血移植に貢献してまいりました。当初は子供のための治療法だったのが、技術が飛躍的に進歩しまして、今では、移植を受ける八割以上が大人の患者さんで、大人にも子供にも有効な治療法として確立されているわけでございます。

 また、この臍帯血保存というのは、設立四年目に目標の二万検体を達成しまして、現在は、より細胞数の多い、質の高い細胞の保存へと切りかわりつつございます。これも、多くの妊産婦の皆様の善意と、臍帯血採取協力産科施設を初め、バンクやボランティア、関係者の皆様の献身的な協力のたまものであると思っております。

 一方で、残されている問題と課題があります。今、高品質の臍帯血を安定して供給できる体制の整備、また移植治療の成績を向上させていくための取り組みが強く求められているわけでございますが、本日は、これらに関しまして、そのための財政基盤の安定化、臍帯血、骨髄液への保険適用、また品質確保への法的な位置づけ等について、今後の臍帯血バンク事業のあり方等質問をさせていただきます。

 臍帯血バンクの財政運営は、主として国庫補助金によって賄われておりますが、実態は各バンクの母体組織に人件費や設備費の多くを依存しております。そのため、すべてのバンクは慢性的な赤字体質に陥っておりまして、事業からの撤退を検討せざるを得ないバンクもあるわけでございます。さらに、人件費を極力抑えざるを得ない状況は、臍帯血の品質を維持する上で危うい事態を惹起することにもなりかねない。これらの財政上の危機的状況を厚生労働省は把握しておられるのか。バンクの認識と厚生労働省の認識には私は乖離があるように思いますが、いかがでしょうか。早急に第三者機関による財政状況の監査も実施すべきと考えますが、いかがでしょうか。

 さらに続けて、このような慢性的な赤字を引き起こす原因の一つは、臍帯血の保存のみに目を向けたコスト計算にあるのではないかと思います。臍帯血と比較対象になる血液製剤を見ますと、製剤の製造や検査などの費用のみならず、献血とその推進、製剤の保管と出庫、品質管理、医薬情報活動や研究開発費を含めたすべての経費を合わせて事業費として計算して、血液製剤の薬価が決定されているわけでございます。

 同じような考え方を臍帯血にも当てはめるべきで、これまでの採取、保存、検査費用のみならず、臍帯血出庫や品質管理、構造設備などをすべて必要な事業費とみなした算定方法をとるべきであると考えますが、以上について、厚生労働省の見解を問います。

外口政府参考人 最初に、財政状況についてのお尋ねでございますけれども、各臍帯血バンクの収支状況につきましては、これは毎年度、運営費補助の申請を通じ、補助対象となる事業費額及び対応する収入額を把握しております。

 しかし、委員御指摘のように、母体組織からの労務の提供のように、本来バンクが負担すべき費用であっても把握できないものがあると考えられます。この点につきまして、現在、日本さい帯血バンクネットワークがコンサルティング会社に委託いたしまして、平成十五年度から平成十七年度における各バンクの収支状況につきまして、母体組織からの労務の提供等を適正に評価するとともに、設備の減価償却費についても適切に反映させ、分析することとしております。

 厚生労働省といたしましては、分析の結果に基づき、各バンクの収支状況を適切に把握して、今後の施策の参考としてまいりたいと考えております。

 次に、必要な事業費についてのお尋ねでございますけれども、臍帯血バンクに対しましては、採取、保存、検査、出庫、品質管理に要する人件費や消耗品の費用について運営費補助を行っております。また、設備について設備整備費補助を行っております。いずれも、これまで単価や補助対象設備の拡大等の改善に努めてきたところでございます。

 なお、研究開発に対する助成につきましては、一般的には、研究の内容や成果を評価して実施する必要がございますので、臍帯血の場合におきましても、単に事業を推進する立場から実施するということよりも、研究の内容や成果を評価して審査する仕組みで実施されることが適当と考えております。

    〔主査退席、河井主査代理着席〕

江田(康)分科員 適切な監査を急いで、そして分析の結果に基づいて対応するということでございますので、やはり、適切な監査方法というかルールがしっかりしていかなければならないということを申し上げておきたい。また、この算定方法についても、ぜひとも、そこのところまで検討していく、そういう姿勢を持って対応していただきたいと思うわけでございます。

 将来、これらの費用は、私は、これまでの補助金ではなくて、医療保険から支払われるのが一番望ましいと思います。ただし、必要経費の算定は、上記のとおり、すべての経費を含んだ内容にしなければならず、円滑な臍帯血バンク事業運営にふさわしい保険点数の設定や補助金の交付であるべきでございます。

 また、補助金の対象を、これまでの保存臍帯血数から移植数に変更することも検討すべきではないでしょうか。これにより、各バンクには使用頻度とコスト計算に基づいた保存計画が要求されることになりまして、また、利用者の利便性を向上させることなどの波及効果も生むことになります。使用頻度の低い、細胞数の少ない臍帯血の保存は必然的に減少していくと予想されまして、補助金、これは税金でございますが、その補助金が投入されている臍帯血バンク事業全体の経費削減へとつながるのではないかと思います。

 以上、臍帯血への保険適用も含めまして、厚生労働省のお考えをお伺いしたいと思います。

石田副大臣 臍帯血の費用につきましては、現在、臍帯血バンクに対し、運営費補助及び設備整備費補助を実施しているところでございます。

 運営費補助につきましては、供給数に応じて交付すべきとの意見もあるわけでありますけれども、まずは利用頻度の高い臍帯血を効率的かつ安定的に供給できるように国庫補助の見直しも進めてきたところでございます。

 平成十五年度には、補助対象となる有核細胞数の基準を三億個から六億個に引き上げており、来年度からは八億個に引き上げる、こういうふうにしております。これにより、できる限り使用頻度の高い臍帯血を確保する、そういう取り組みを進めるバンクに有利になるような交付の仕組みにしてまいりたい、このように考えております。

 また、設備整備費補助につきましては、事業の実態に合った助成を行うことができるよう、来年度から、採取から保存に必要な設備等について広く補助対象にできるよう要件を緩和する、こういうことも考えております。

 なお、診療報酬につきましては、現在、臍帯血等の費用も含め包括的に評価を行っているところは委員もよく御承知いただいていると思いますが、今後とも、事業の実態を踏まえて適切に、適正に評価を行ってまいりたいと考えております。

江田(康)分科員 私は、二〇〇一年から党内に造血幹細胞移植小委員会というものを設置して、この小委員長もやっておりますが、ずっと、補助金が足りない、足りない、足りないでその増額をしてきた、また、それを応援してきた者の一人として、今までのようなやり方というのはもう限界が来ている、さらには、多くの国民へ普及していく中でそういう限界が露呈していく。そういう意味で、抜本的なこういう考えをぜひとも検討していかなければならないと思うわけでございます。

 次に、信頼できる品質の臍帯血を供給できる体制について伺います。

 やはりこの臍帯血、確立された医療であります。いつでもだれでも安心してこの移植術を受けられるようにしていくことが非常に重要でございますが、そのためには品質の確保が大変大事であります。

 輸血用血液製剤というのは特定生物由来製品に分類されて、従来の医薬品GMPに上乗せして原材料の安全性確保が求められております。臍帯血も、ヒト由来の血液を原材料とするため、特定生物由来製品に相当するものと考えられまして、かつ、加熱処理やウイルス不活化などの工程を加えられないことから、輸血用血液製剤同様の安全性基準が期待されているわけでございます。

 しかし、臍帯血は、御存じのとおり、造血幹細胞移植に用いられることから、安全性、有効性の評価は極めて難しいものであります。したがって、医薬品として分類することは困難という考え方もありましょう。

 これらのことから、臍帯血を輸血用血液製剤と全く同等の特定生物由来製品に位置づけるというのは困難ではないかなと私も思いますけれども、この品質管理面に関しては同等の安全性が求められるべきでございます。

 以上のことから、臍帯血事業は、特定生物由来製品のGMPに準じた品質体制を保証できるバンクで行われるべきであると規定することが適切と考えますけれども、これらについて厚生労働省の御意見を伺いたい。

石田副大臣 臍帯血の品質については、それがまず大事である、このことはもうどなたも認めることだろうと思います。

 臍帯血の品質については、日本さい帯血バンクネットワークにおいて臍帯血バンクの技術ガイドラインを策定し、これに基づき品質の確保が図られているところでございます。

 さらに、日本さい帯血バンクネットワークが設置した検討会からも、昨年、臍帯血についても品質管理面で医薬品と同等の安全性が求められるべきであり、医薬品に準じた品質管理体制の確保が適切、こういう報告書も出されております。

 現段階においては、直ちにGMPに準じた管理体制を講じていくということは正直なかなか難しいと思いますけれども、報告書の内容を踏まえて、今後、厚生労働省といたしましては、臍帯血移植のさらなる安全性の確保を図るため、臍帯血の安全基準のあり方についてしっかりと調査研究を進めてまいりたいと思っております。

    〔河井主査代理退席、主査着席〕

江田(康)分科員 石田副大臣から、すぐというのは無理ではあるけれども、GMPに準じた品質体制を含めて、品質確保に関する、安全性確保に関する研究を進めるというお答えでもございました。しっかりと進めていっていただきたい。

 また、このことが、例えばGMP基準に合致するような、そういう準GMP基準に合致するような臍帯血になってくれば、それに準じて承認、保険適用、そういう道というのも考えられてくるかと思いますので、どうぞ研究をしっかりと進めていただきたいと思います。

 最後に、これらの問題点を初め、この臍帯血移植には多くの抜本的な課題が残されております。有効臍帯血の目標数、有効期限の設定、各バンクの組織体制はどうするか、バンクに対する査察、評価体制、臍帯血の提供や情報公開をいかにしていくか、また、各バンクとネットワークのあり方等々でございます。将来にわたって質のよい臍帯血が広く安定して供給されて、いつでもどこでもだれでも安心して臍帯血移植が受けられる体制の確立が急務でございます。

 そこで、今回の臍帯血バンク事業の望ましいあり方につきましては、坂口前厚生労働大臣が指示して設置された審議会というのがございますけれども、これらの抜本的な課題に対して適切な検討がなされているのか、機能しているのか。遅々として進んでいない審議状況や、偏ったと思われる委員構成に疑念を抱かざるを得ないと思っています。

 現審議会の審議内容の報告を求める必要もありますでしょうし、また、抜本的な問題解決を目指す、新たな有識者による審議会の設置というものを考えていってもいいのではないか。厚生労働省の見解をお伺いいたします。

石田副大臣 臍帯血移植や骨髄移植につきましては、ドナー確保の目標、関係団体の財政の問題、一層の安全性の確保など、今後のあり方の検討を行うため、今委員御指摘のとおり、平成十四年度に厚生科学審議会疾病対策部会の下に造血幹細胞移植委員会を設けて今までも調査審議を行ってまいりました。

 この委員会には、委員もいろいろと御指摘もございましたけれども、専門医やバンク関係者のほか、医療倫理の専門家、ボランティア、報道関係者など幅広い方も入っていただいているということはよく御存じのことだろうと思います。

 これまで造血幹細胞移植委員会におきましては、必要な臍帯血の確保数の目標、バンクの財政状況の検討、臍帯血移植に関する診療報酬のあり方、移植に関する安全性等について検討を進めていただいておりました。私も委員会の開催数等も見させていただきましたけれども、やはり設立当初、本当に、一カ月に一・五回、二カ月に三回ほど、精力的に議論も重ねられてきてもおります。

 しかし、今後、厚生労働省としましても、造血幹細胞移植委員会において、今までより幅広く検討を行っていただくとともに、広く関係者の方々からいろいろな立場の方に御意見をさらに伺っていく、こういうことも必要ではないか、私はこういうふうに考えております。

 ぜひまた忌憚のない御意見をお寄せいただければありがたい、このように思っております。

江田(康)分科員 今副大臣がおっしゃいましたように、これまでの審議会においても多くの課題が論議されているということでございますが、先ほど来議論しているように、やはり抜本的な課題、本当に国民が安心して移植医療を受けていくためには、やはりその課題は大変多い。それをスピーディーに、やはり結果を出すというような、そういう意識でこの問題解決を行う、そういう強い意思を持ってこの審議会が動いていかなければならない、そういうふうに強く思うわけでございます。

 今後、この抜本的な課題についても幅広く検討していくというお答えでございました。ぜひ、この審議会、適切な審議をスピーディーにやって、今積み残されているそういう課題に対してぜひともその方向性を示していく、そういうふうな審議会であってもらいたい、そのように強く申し上げておきたいと思います。

 もう一つ、私のライフワークの一つでもございますが、アレルギー対策についてお伺いをさせていただきます。

 公明党の強い後押しで、食物アレルギーによる重篤な症状であるアナフィラキシー救命用の自己注射、これは製品名がエピペンというんですが、平成十七年三月に承認されて、実際に処方されて患者さんが日常携帯したり、子供が学校に持っていくケースがふえております。

 アナフィラキシー症状がショックに進むケースでは、症状が出てから三十分以内に医療処置が施されるかどうかで生死を分けることがあるとされます。エピペンは、そのためのプレホスピタルケア薬剤として承認をされました。エピペンは、安全キャップを外して大腿部に押しつければ、だれもが、中に入っている薬剤、エピネフリンを投与できる仕組みになっております。きょう持ってくる予定でございましたけれども、間に合いませんでした。

 もう大臣は御存じだと思いますが、押しつけるだけで薬剤が投与できるように、そういうすぐれものでございます。多少力を入れなければならないために、小学校低学年の児童や幼稚園児では使用が難しくて、また、大人でも、タイミングを逸して意識が失われていくような状態ではその使用が難しいのが実情でございます。

 現状では、このエピペンを使用できるのが本人と家族に限られておりまして、これは私もこだわったのでございますけれども、やはり本人と家族に限定していくことによって安全性を担保していくことがエピペンの承認が早くなるという御判断もあり、最初の条件は本人と家族に限られているわけでございます。例えば、学校で子供がアナフィラキシーを起こした場合に、保護者や家族に連絡し、その到着を待つことになります。このままでは、エピペンが目の前にあっても、だれも使用できずに、アナフィラキシーで苦しむ子供の助かるはずの命が失われてしまうという最悪のケースも考えられるわけでございます。幸いにも、そういうような状態は今まだ出ておりませんけれども、十分に想定されます。

 このような状況の中で、エピペンの処方を受けている子供さんや保護者、家族の多くは、実際にアナフィラキシーを起こした場合に、短時間のうちに到着できる救急車、東京消防庁の平均時間では六分十八秒でございますので、そこに乗務する救急救命士にエピペンを使用してもらうことを強く希望しております。

 救急救命士による薬剤投与につきましては、昨年四月から、心肺停止患者に対するエピネフリンの注射が認められております。救急救命士によるエピペン使用が認められれば、患者、家族の不安を軽減して、救命効果を高めることが期待できます。また、学校現場では、エピペンを打とうとする児童に手を添えるなどの補助を保護者が依頼しても、救急救命士にさえできないことを我々はできないという理由で、それ以外のサポートも含めて断られる事例が多いわけでございます。救急救命士が駆けつけてエピペンを打てることが安心材料となって、学校などの積極的な対応を促す効果も期待されるものであります。

 そこで、質問をいたします。

 必要な検討、体制の整備を急いで、一日も早く救急救命士によるエピペン使用を認めるべきであることをこの委員会の場で強く申し上げたい。厚生労働省は、昨年九月の公明党の申し入れを受けて検討を進めていると承知しておりますが、その検討内容はどういったものか。許可する方向で進んでいるのか、助かるはずの小さな命が失われてしまわないよう、柳澤厚生労働大臣の力強いリーダーシップに期待したいと思っております。

 大臣の見解をお願いいたします。

柳澤国務大臣 食物アレルギー等によるアナフィラキシーという症状につきまして深い御見識を持たれている江田委員からの御提案でございます。

 救急救命士にその使用を業務の拡大の一環として考えたらどうかという御提案かと思いますが、この救急救命士による業務につきましては、心肺機能停止の患者に対して平成十八年四月よりエピネフリンの投与の実施が認められるなど、確実に、その拡大が着実に行われてきた、こういう認識でございます。

 御指摘のとおり、エピネフリンの使用につきましては、アレルギー反応による重篤な症状にあるアナフィラキシー症状によるショック状態に対しても効果を持つということはそのとおりなのでございます。ただ一方、ショック状態に対する使用におきましては、心肺停止状態に比べましていろいろな問題があるということで、私どもとしては極めて高度な医学的判断を必要とするというふうに考えております。

 したがいまして、本件の救急救命士の業務拡大に関しましては、現在の心肺停止患者に対する投与の実績を積み重ねながらその効果等について検証を行う必要がある。また、その点については、救急救命士の側からも、まずは現在までに拡大された業務についてその定着を図るべきだという意見も寄せられていると聞いております。

 このようなことから、本件につきましては、救急救命士への教育、研修内容等の充実を図る中で、今後、多方面の御意見を伺いながら慎重に考えてまいりたい、このように考えている次第でございます。

江田(康)分科員 大臣、ありがとうございました。

 心肺停止に対するエピネフリンの注射と違っていろいろと検討するところがあるということでございますけれども、実績を本当に積み重ねていってその効果を検討していただくということでございますが、やはり、先ほども申しましたように、一日も早く、そういう待っている患者さんがおります。このような危険な状態をそのままにしておくことが政治家のやるべきことなのか、それを問うたときに、やはりそこを本当に政治判断もしながら進めていかなければならない、重要な命を預かる者の責任だと思っておりますので、しっかりと検討を進めていっていただきたいと思います。

 もう最後の時間でございますけれども、最後に一つだけ、医薬品の適応外使用の問題についてお聞かせいただきたいと思います。

 例えば、乳がんの効能、効果で承認されているような抗がん剤を胃がんに使いたいというような、いわゆる適応外使用の問題でございますけれども、大変大きな患者の負担になっていて、大きな問題が残っております。

 そこで、質問させていただきますけれども、例えばドセタキセルという抗がん剤、これは国際的にも有名な抗がん剤でございまして、細胞分裂を阻害する機序の薬でございます。日本でも、平成八年に承認されて、タキソテールという名前で販売されております。承認当時の効能は、乳がん、非小細胞肺がんでございましたけれども、平成十二年以降、胃がんとか卵巣がん、食道がん、子宮がんと、その適応が順次追加承認されております。

 しかし、我が国では、タキソテールの前立腺がんでの効能追加はいまだなされていなくて、そのため、前立腺がんの患者さんには保険がきかずに、全額自己負担で経済的に大変苦しまれている状況でございます。海外ではこれはもう既に承認をされておって、有効性が確認されていて、標準的に使われるようになっております。

 患者さんたちは一刻も早くこの薬が承認されることを願っておりまして、我が国でも早急にこの前立腺がんの効能を追加していくべきであると考えます。国内の関係学会からも、この薬への前立腺がんの早期の効能追加に対する要望書が厚生労働省あてに出されたと聞いております。患者にとってみれば、医療保険が適用されないというのは大きな問題であって、適応外使用にも迅速な対応が必要だと考えますが、このタキソテールの前立腺がんの効能追加に向けた現在までの状況について、いつごろまでに承認されるのか、御説明をお願いいたします。

高橋(直)政府参考人 お尋ねの前立腺がんの効能追加につきましては、これまでにも議員からもたびたびお話がございました。また、関係学会からの要望もございますけれども、昨年の十一月に、私ども厚生労働省から企業に対しまして、効能追加の承認申請について検討要請を行ったところでございます。

 企業からは、近々、承認申請を行うべく準備中という報告を受けておりまして、その申請があれば、また私どもの方で、臨床試験成績などの提出データに基づきまして、有効性、安全性について審査して、適切に対処してまいりたい、かように考えております。

江田(康)分科員 早急な承認をよろしくお願いいたします。

 以上でございます。ありがとうございました。

実川主査 これにて江田康幸君の質疑は終了いたしました。

 次に、森本哲生君。

森本分科員 民主党・無所属クラブの森本哲生でございます。

 大臣には初めて質問をお許しいただきます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。お疲れのこととは思いますが、あと二人でございますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 それでは、救急車の搬送体制についてからお伺いをさせていただきます。

 救急に対する需要は近年ますます高まっておるわけでございます。全国の救急出動件数は、平成十七年度時点で約五百三十万、搬送人員は五百万人、ここ十年でそれぞれ六一%、六〇%の高い伸びを見せておるわけでございます。一方、供給体制を見ますと、救急隊の数は約四千七百八十隊で、十年間の伸びは九%というように、需要の拡大との間に大きなギャップがございます。

 昨年三月に発表されました救急需要対策に関する検討会の報告書によりますと、救急車の現場到着までの所要時間は遅延する傾向にあること、全国平均時間が六・四分となり、十年間で〇・六分の遅延、搬送人員のうち高齢者の割合がふえていること、そして軽症者や緊急度の低い事案が増加していること、頻回利用者の存在など、大きな課題を抱えていると指摘をしております。

 これらを踏まえて、救急車の搬送体制がどうなっておるのか、そのことについて、総務省に御意見をお聞かせいただきたいと存じます。

寺村政府参考人 お答え申し上げます。

 救急出場件数は年々増加しております。平成十七年中は約五百二十八万件と、十年間で約六一%増加しておるところでございます。このうち、入院の必要のない軽症患者が五二・一%と過半を占めております。しかし、この軽症の中では、例えば異物によります窒息の場合は、異物を除去しますと結果的には軽症になってしまいます。緊急度は高い事案でございますので、軽症者が五二・一%であることをもって、直ちに不適正利用が多いということを判断することについては、この点は少し御理解いただきたいと思っております。

 一方、急増する救急需要に関しまして、救急隊の数は、御指摘のとおり、各消防本部の厳しい財政事情によりまして、十年間で約九%の増加にとどまっております。

 これらの結果、救急隊の現場到着所要時間が遅延傾向にありまして、十年間で〇・五分遅延しております。

 今後も、高齢化の進展などによりまして、さらなる救急出場件数の増加が予想されますことから、救命効果の低下が懸念されております。

 そこで、こうした中、消防庁といたしましては、真に緊急を要する傷病者への対応が遅れることのないよう、昨年度来、救急需要対策に関する検討会を開催いたしまして、その対策といたしまして、交通手段がない要請者に対する民間搬送事業者の紹介や診察可能な病院情報の提供、また頻回利用者につきましては、福祉部局と連携した適正利用の呼びかけや、悪質な利用者に対しては、出場しないあるいは搬送しないというような対応、これらについて、軽症者に対しても総合的な対策を示してまいったところでございます。

 また、一一九番受信時や救急現場におきまして、緊急度や重症度を選別することが可能かどうか、いわゆるトリアージが可能かどうかにつきまして検討を進めておりまして、昨年度に引き続き今年度は判断基準のあり方、あるいは実際に運用を行う場合の問題点等につきまして整理を行っているところでございます。

森本分科員 ありがとうございました。

 それでは、市町村合併が非常に進んでおるわけでございますが、合併後も地域医療に関して、消防管内、管外とも搬送について十分な連携をとられておるのか、病院に搬送したけれどもそこで拒否をされるというような連携ミス、そうした事態は起こっておらないのか、お聞かせをいただきたいと存じます。

寺村政府参考人 消防機関が実施します救急業務におきましては、傷病者の状況とか地理的条件等を勘案しまして搬送する医療機関を決定しております。現に、平成十七年中では、全体の搬送人員のうち一六%が管轄地域外の医療機関に搬送しております。特に、人口規模の小さい消防本部、人口五万人未満におきましては、四一%が管外、地域外の医療機関へ搬送しているところでございます。

 また、いわゆるたらい回し、これは処置困難などの理由によりまして収容不可能であったため、他の医療機関に転送する事例に関しましては、地元医師会あるいは医療機関との連携強化や空きベッド情報の共有などの対策によりまして、昭和五十年中において二・四%であったものが平成十七年度中には〇・七%と大幅な減少となっているところでございます。この中には、直近の病院が応急処置を施した上で、遠方の高次医療機関へ転送を行う場合も含まれておるところでございます。

 消防庁におきましては、今後とも、消防機関と医療機関が連携して、それぞれの地域におきまして実情に応じた体制が構築され、円滑な救急活動が行えるよう推進してまいりたいと考えております。

森本分科員 この件について厚生労働省の方に、各近隣の市町村で連携を十分とられておるのか、その辺について、合併後、問題はないのか、お伺いをします。

松谷政府参考人 救急医療の提供体制につきましては、初期、二次、三次のそれぞれの役割分担に基づいて、体系的な整備を進めているところでございまして、それぞれ、重症度等に応じて分けているわけでございます。

 地域医療につきましては、市町村単位と申しますよりも、二次医療圏というものを都道府県において定めてございまして、その医療圏ごとに体制を組むということといたしておりますので、市町村合併によるそごというのは今のところ聞いておりません。

森本分科員 ありがとうございます。

 それでは、ひとつ、そうした連携がされておるという前提でお伺いをさせていただくのですが、これは地元の要望になって申しわけないのでございますが、今、津市というところに十カ町村が合併して大きな市になりました。一番端の美杉というところは緊急医療で約一時間ぐらい時間を要します。逆に、津市から名張市へ搬送される、美杉でも、大きいですから美杉の一部の地区で名張へ搬送できるところであれば、二十分でそこまで救急車が行きます。その中で、またひとつ私の地元の松阪市へ行くとなると、これが三十分から四十分ぐらいの短縮が可能になります。

 ですから、このことは国道三百六十八号線、特に松阪へ向かう道路がかなり厳しい道で、それを解決すれば、今でも軽トラックぐらいですと楽に通るんですけれども、なかなか乗用車は対向できない。こうした緊急体制の整備を十分図っていくためには国土交通省の協力が必要だと思いますが、その点について今どのような状況になっておるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

原田政府参考人 お答えいたします。

 地方部におきましては、人の移動の九割以上が自動車交通に依存しておりまして、そういった意味では、医療を初め生活のさまざまな場面で道路の果たす役割というのは非常に大きなものがあるというふうに認識しております。

 このため、救急医療施設へのアクセスの向上を図るための幹線道路の整備でありますとか、あるいは救急車のすれ違い困難な道路の拡幅等々、地域の課題を解決するための道路整備を実施しているところでございます。

 先生お尋ねの国道三百六十八号でございますが、交通の隘路を解消して地域医療の活動を支援するために鋭意改良工事を実施してきておりまして、現在、三重県内で改良率は約七九%でございます。現在事業中の箇所が三カ所ございまして、仁柿峠バイパス、それから杉平バイパス、下長瀬拡幅の三事業を三重県において推進されているところでございます。

 このうち、杉平バイパスにつきましては、十九年度中に供用予定というふうにお聞きしておりますが、ただいまの先生の御質問は恐らく仁柿峠バイパスのことかと思いますが、これにつきましては、着手してから相当時間が経過していることも事実でございますが、いろいろ工事工程上の問題もございまして、もう少し、恐らく二十年代後半ぐらいになるのではないかというふうに県の方から聞いておりまして、引き続き努力はしてまいりたいというふうに考えております。

森本分科員 ありがとうございます。

 これも不思議なもので、県会議員をさせていただいておった当時では選挙区が違いますから、そこの連携を私も見ることができなかったんですが、同じ選挙区になって、今悲痛な叫びのような要望があるんですね。これはかなり心を痛める問題です。

 今、二十年の後半と言われましたけれども、この美杉という地域は、御存じのように、高齢者の方が三五%なんですよ。やはりこういうことから、死ぬまでにできるんかいなという話なんです、どこへ行っても。ですから、こうした医療が明らかに半減するような効果があるところは県も頑張らなければいけませんが、ぜひ厚生労働省もそういった連携を十分とっていただいて、もう一言いただけませんか、国土交通省。

原田政府参考人 先生御案内のとおり、事業主体は県でございますので、県とも調整をしながら、国土交通省として、いろいろな制約がありますが、最大限の支援をしてまいりたいというふうに考えております。

森本分科員 本来ならばこういう陳情のような格好はやりたくないんですが、命の道でもございますので、ぜひよろしくお願いをいたします。

 それで、少し質問の方向が変わるかもわかりませんが、救急車の体制について私の一つ知見がございますので、そうしたことは考えておられないのかということでお聞かせをいただきたいんですが、出動していただくと今は無料なわけですね。有料化も考えられておるというようなことも聞かせていただいておりますが、私は、強制的な有料化というものは避けるべきだというふうに考えています。

 ただ、命が救われて、今の体制ですと、お礼をしようと思ってもお礼ができないような仕組みなんですよ。ですから、私がもし子供が命を救われるようなことがあれば、それは当然お礼もさせていただく。そういう基準があれば、私は、心ある方がかなり応援をされてもっと救急体制が充実していく、そんな方向に進んでいくのではないかな、それが消防隊の信頼につながって、役所の信頼回復にもなっていく、そういう思いをしておるんですが、それに対して御意見をいただけたらお願いをいたします。

寺村政府参考人 救急搬送に対します謝礼を市町村がみずからの救急業務に役立てるべく寄附として受け取ること自体は、財務会計上は特に問題はないというふうに認識しております。

 しかしながら、一方で、これは一般論でございますけれども、地方公共団体に対します寄附金は、真に任意のものによる場合には問題はございませんけれども、制度をつくって募集が行われるというような場合には、応募に事実上の強制力が加えられるのではないか、住民に負担が転嫁されるおそれがないというわけにはいかないのではないかという、慎重な検討が必要と指摘されております。

 救急搬送といった基本的な行政サービスの財源につきましては非常に重要なことでありまして、御指摘のとおり、議論を進めていかなくてはいけないと思っておりますけれども、消防庁といたしましては、住民の安全救護を図るべく、市町村行政の重要な一分野としまして個人負担を求めないというふうにしておりますので、この考え方を今後も貫いてまいりたいというふうに考えております。

森本分科員 その程度のお答えだというふうには想像はしておりましたが、これは、大臣、皆さん、例えば救急車には本来ならばキロ当たりこのぐらいは支払うというのが取り決めになっておるけれども、やはりそれは強制力がないものだというような基準をある程度考えながら、好意ある方にはそうしたことを基準として受け取っていく。まんじゅうをもらったりお酒をもらったりも困りますし、たくさんもらっても。しかし、それも受け取らないということなんですけれども、我々は寄附できないんですよ。ですから、そういったことをもう少しソフトに考えてみればということなんですが、大臣、感想だけ聞かせていただけませんでしょうか。

柳澤国務大臣 先ほど来、救急車の救急搬送、これにつきまして各方面からの深い御関心をお示しになられて、傾聴いたしておりました。その関連で、救急車を利用した人から感謝の気持ちの寄附を考えられないか、こういうお話でございまして、私も、前からの先生のいろいろな角度からの御議論同様に、大変敬意を持ってお聞かせいただいたわけでございます。

 ただ、今消防庁の方から答えがありましたように、これを少しでもルール化すると、地方財政法でしたかが禁じておる税外負担になるというようなことで、やはり地方自治体が寄附を求めるという場合には、本当にこれはいろいろな方面からの議論というか問題が伏在しておりまして、なかなか難しい議論になるのが常でございます。

 こんなことを厚生労働大臣としてそもそも論じるのが不適切かと思いますけれども、要するに、最終的には救急搬送を所管する総務省におきまして適切に検討、判断されるべき問題かな、こんなことで余分なことかもしれませんが、一言前置きとして述べさせていただいた次第です。

森本分科員 これは私の一つのアイデアとして申し上げておりますので、結構でございます。

 それでは、特に救急医療に戻りますが、やはりこれは、小児科、産婦人科が慢性的な医師不足や過酷な労働実態が伝えられておるんですが、こうしたところに、勤務環境や待遇面の改善とか、それを少しプラスアルファするとか、そうしたことの対応はやっておられないのですか、考えられておらない、そのことをお伺いします。

松谷政府参考人 小児科、産科を初めとした病院勤務医を取り巻く厳しい勤務環境に伴う負担を軽減していくということは大変大事な課題でございます。そのために、各般の施策、来年度の予算においてもお願いをしているところでございますけれども、昨年の診療報酬におきましても、小児科への対応あるいはハイリスク分娩に伴う対応等がなされたところでございます。

 また、これからそういう診療報酬面での議論というものも行われるところでございますし、先ほど申しましたように、予算面、それから、昨年医療法の改正をいたしまして、制度面の対応もいたしておりますし、いろいろな手だてを講じながら、病院で、厳しい環境の中で働いていらっしゃる小児科、産科の先生方を援助していきたいと思っております。

森本分科員 今も少しやられておるということをお聞かせいただいて、ありがとうございます。

 さらに、診療報酬等、今後も検討を重ねるということで理解してよろしいですか。

水田政府参考人 お答えいたします。

 平成十八年、昨年の診療報酬改定におきまして、小児科、産科、全体がマイナス改定の中で重点的な評価を行ったことは、ただいま医政局長がお答えしたとおりでございます。

 具体的に言いますと、例えば小児医療につきましては、入院医療、それから夜間、休日の救急医療体制、深夜加算、こういったものを充実したわけでございますし、産科医療につきましては、産科の体制が整っている病院におきまして、ハイリスクの妊産婦に対する分娩管理を行った場合の評価の新設、こういったことを行ったところでございます。

 平成二十年度はどうするかということでございますけれども、それは今後の中医協での御議論等を踏まえて検討していきたい、このように考えております。

森本分科員 ちょっとその辺はダブって聞かせていただいたような感じなんですが、少し急ぎます。

 小児科に関しては、夜間の電話相談事業というようなことを聞いておるんですが、その実態について少し簡単に答弁いただけますか。

松谷政府参考人 小児救急事業の一環といたしまして、全国統一の短縮番号、シャープ八〇〇〇番と申しておりますが、これによりまして、患者さんの症状に応じた電話相談を受けられる小児救急電話相談事業を行っているところでございまして、これによって、休日、夜間における地域の小児救急医療体制の充実ということから、平成十六年度よりこれを実施しておるところでございます。

 現在、全国三十四都道府県で実施されておりまして、軽症患者さんにつきましては病院へ足を運ぶことなく適切な対応ができるとともに、休日、夜間の小児救急を担う病院にとっては、重症な患者さんに集中できるといったような、患者さんの症状に応じた迅速な対応が可能になるというふうに認識してございます。

 一方で、一部まだ未実施の県がある、また、今は固定電話からの電話ということになってございますが、携帯電話からのアクセスの対応ができない、地域の実情に応じた深夜の電話相談の体制が必ずしも整備されていないといったような課題がございますので、厚生労働省といたしましては、平成十九年度予算案におきまして、その解決を図るための必要な予算を確保したところでございまして、引き続き事業の普及に努めていきたいと思っております。

森本分科員 家庭の形態が昔とは変わっていますからね。特に、しかし深夜体制がまだできていないということと、三十四という、このあたりは、あとを全国的に展開していただくように頑張っていただきますように、そのことはお願いにとどめさせていただきます。頑張ってください。

 それと、例えばこれは私も一番心配しておるんですけれども、公立病院の赤字化については、また改めて議論をさせていただきたい。

 介護保険について、退職手当等に対する国の支援が打ち切られるという背景から、福祉施設から若い方がかなり流れておるという現実があるんですが、それは大臣、どこまで今つかんでおられるのか、そのことについてお伺いをしたいと思います。

阿曽沼政府参考人 実態の関係だけちょっとお話を申し上げたいと思います。

 地域ごと、施設ごとに違いがあると思っておりますけれども、現実には、二十代、三十代の若年者の割合が非常に高いと思っておりますし、それから離職率、入職率とも相対的に高い、それから勤続年数が短い職員の割合が高いというのが全国的な状況ではないかというふうに思っております。

森本分科員 大臣、このことは、地域の中で、どんどんどんどん若い方が流れていくんですね、これ。今、第一次産業から第三次産業に加速されて人口が動いておりますし、こうしたことは私、大変な事態だというふうに、人材が失われていくという傾向なんですよ。

 このことについて、簡単で結構でございますので、コメントをいただけますか。

柳澤国務大臣 特養の介護職員は、若年者の割合が高いわけですけれども、離職率も相対的に高いという状況にあることは承知をいたしております。

 介護サービスの効率化が求められる中で、各施設が、人員配置基準を遵守していただいた上で、常勤、非常勤の職員を適切に組み合わせていただくということは一概に否定されるべきものではない、このように考えております。しかし、利用者にとってより満足度が高く、職員にとってよりやりがいのあるケアを実現していくということは重要ですし、また、職員が長く勤める中で、キャリアアップが可能な職場にしていくということも非常に重要だ、このように考えております。

 特養の施設の運営につきましては、その収入となる介護報酬の設定は、人件費も含めたサービスに要する平均的な費用の額を勘案して設定しているところでございますけれども、今後の介護報酬の見直しにおきましても、平成二十一年度に予定されておるわけですけれども、こうした若い人たちの就業の場としての特養、この特養におけます経営実態等を踏まえながら適切に対応してまいりたい、このように考えております。

森本分科員 ありがとうございました。ぜひよろしくお願いをいたします。

 このままですと、やはり地方と都市、中心部との格差がどんどんどんどん広まるという傾向にありますので、お願いをさせていただきます。

 少し急ぎますが、年金の件でございます。

 現在、基礎年金部分が六万六千円支給されておるわけでございますが、やはりこれは私は大変少ないというふうに思っています。例えば、月々七万円、それをまた八万円に引き上げる場合に、財政的にどのぐらいの影響があるのか、そのことについてお聞かせをいただきたいと思います。

渡辺政府参考人 御承知のとおり、厚生年金とか国民年金は、全国どこでも、都市部か地方かを問わず、負担に応じた給付ということが権利として保障される普遍的な仕組みでございますし、その財政は、今お尋ねでございますが、単年度ではなく、時間軸の長い、長期にわたるもので運営されております。おおむね百年の財政均衡を図る仕組みで今動いておりますが、法定された保険料率の水準一万六千九百円、あるいは厚生年金ですと一八・三%を前提に、給付水準の調整を行うことで安定させることにしております。

 したがいまして、今御指摘のように、基礎年金の水準を七万円あるいは八万円に上げるというときに、その財源は、基本的には保険料水準の引き上げ、または最終的な給付水準の引き下げに求めざるを得ないわけでございます。

 そういたしますと、七万円コースの場合には、約六%の引き上げでございますので、国庫負担がついてくるという前提をあえて入れて、賦課方式で見ましても、国民年金において月額約千円程度の保険料の引き上げ、八万円コースの場合には三千五百円程度の保険料の引き上げということで、一万七千九百円とか二万四百円という水準が必要となる。厚生年金の場合には、一八%台あるいは一九%台の保険料率を必要とするということでございますし、給付で調整するということになりますと、今上がった現役世代は、現在の世代はよろしいんですが、将来世代の給付水準を引き下げて財源を出すということになりますので、なかなか難しいわけでございます。

 そうしたものを仮に単年度で見てみましても、七万円実現の場合には、現行と比べて一兆円程度の増加の財源が必要でございますし、八万円の場合には、単年度で四兆円程度の追加財源が必要になる。

 これが、長く時間軸で続く、こういう仕組みでございますので、なかなか上手に実現することは難しいというところだけ御説明させていただきます。

森本分科員 月々の保険料を上げれば給付を上げられるというのはだれでもできることであって、やはり政治がそのことを税を投入してでもやっていかなければならないということを私は思っておるわけでございます。

 あとの質問は時間がございませんので省きますが、例えば、ひとり暮らしの老人になられた方の実態を見てみますと、二人の計算で、一人でとてもじゃないが六万六千円で生活できない。しかし、私がなぜそういうことを申し上げるかというと、生活保護を簡単にもらえる方について、そして精神的に生活保護をもらうことを苦にしない方はそれでいいと思うんですよ。しかし、今、安倍総理が言われる、一生懸命働いて、この国のために力になってこつこつ働いた方々は、自分たちは国に迷惑をかけないで一生懸命頑張ろうという姿がそこにあるんですよ。ですから、その方々に国がどうこたえていくかということは、私は政治の大きな役割だというふうに思っています。ですから、そのことを、現実もう少し地域の実態を見ながら、やはりこの政策はお互いに党を超えて考えていかなければならない問題であるというふうなことを特に申し上げたい。

 一つ。あるおばあさんとお話をさせていただいて、昨年の十月だったと思います。生活保護ももらいたいんだけれども、何とか頑張りたい、しかし、十月は非常にこれはいいんですねと。文化会館で非常にいいショーをされていました。秋は日曜日ごとにショーをされるんですね。しかも、お弁当つきなんですよ。しかし、一流のああいうところへは、温泉へも行けないから、これが森本さん、唯一の楽しみなんですよというような、そんなお言葉があって、しかし、八十歳を超えておしめをしなければならないときに、果たしてこの私の生活がどうなるか、子供は子供で精いっぱいの生活をしている、そういうお言葉を聞いたときに、これはやはり国が最低条件保障だけはしていかなければならない、そんな思いの中できょうは質問をさせていただいて、これからこのことについては議論をさせていただきたい。きょうは大臣のお言葉も聞きたかったわけでございますが、これについては私の一方的なお話で終わらせていただきます。

 時間が来ました。ありがとうございました。

実川主査 これにて森本哲生君の質疑は終了いたしました。

 次に、仲野博子君。

仲野分科員 民主党の仲野博子でございます。

 私、初めて柳澤大臣に質問を、きょうは誠意ある御答弁を期待したいと思っております。

 今回、この分科会で取り上げさせていただきます問題は、既に予算委員会等で何度も与野党の議員の皆さんからなされていると思いますけれども、今、国民生活にとって非常に深刻で緊急の課題となっております医師不足の問題について、何点か質問をさせていただきたいと思っております。

 当初、この医師不足の問題は、小児科、産科が中心となって取り上げられてまいりました。安心して子供を生み育てられる社会の実現、少子化対策の観点からも、厚生労働省や関係省庁がさまざまな取り組みを実施してきたことは承知しております。医師……(発言する者あり)何ですか。

 医師不足の問題は拡大の様相を見せているわけであります。

 実は、私が地元であります北海道の根室に帰りますと、こんな話を伺うことがあります。そろそろ病気が心配になってきたから、病院のあるところに引っ越ししなければならないと。既に医療サービスは国民生活にはなくてはならない存在になっております。これまで災害等で一時的に医療が受けられない状況が発生することはありました。また、奥深い山間部や陸地から遠く離れた洋上ではこのことがやむを得ない場合があるかもしれない、しかし、現在、地方のごくごく普通の町でも基本的な医療が受けられない、このような危機的な状況が迫っているわけであります。

 なぜここまで言うかと申しますと、地元の根室の市立病院では、小児科、産科医の不足により、昨年の九月から産婦人科が休止しておりまして、それだけではなくて、この四月には内科、循環器科の医師までもが、医大からの派遣中止や退職などで病院を去っているという状況にあります。常勤の内科系の医師がいなくなり、病院の存続そのものが危ぶまれる状況となっているわけであります。また、世界知床自然遺産の町で知られております羅臼の国保病院では、唯一の外科の常勤医がいなくなる、そういった状況にもなっているわけであります。

 そこで、大臣にお伺いしたいのは、地方の町において、医師不足から内科など基本的な医療サービスが受けられなくなっている地域医療の現状について、そして、自治体立の病院がこれまで地域医療に果たしてきた役割とその重要性について、大臣の基本的な御認識をまずお聞かせ願いたいと思います。

柳澤国務大臣 我が国は、国民皆保険のもとで、だれもが安心して医療を受けられる制度を構築してまいりました。そのもとで、医師の総数は全国的には毎年三千五百人ないし四千人程度増加をしているわけでございますけれども、その中で住民にとって必要な医療を確保する観点からは、今仲野委員が御指摘になるような、いろいろな自治体立の病院を含めて各医療機関が重要な役割を担っている、このように認識をいたしております。

 しかしながら、今御指摘になりますように、全体では相当数のお医者さんの数がふえている中で、偏在という問題が起こっているわけでございます。一つには、診療科目、産科、小児科などにつきまして、必要な医師が必ずしも確保できないという状況が全国いろいろなところで生じている、そういう状況でありますし、また、地域的には、今委員の御指摘のとおり、県庁所在地など人口当たりの医師数が多い地域と郡部などで少ない地域というように、地域的な偏在もかなり際立ってきているというふうに承知をいたしております。

 いずれにいたしましても、医師確保対策については、各般の取り組みを行って、国民皆保険のもとでのだれもが安心して医療を受けられる体制というものを確保していかなければいけない、このように考えております。

仲野分科員 大臣も医師不足という現状を十分認識されて、その確保ということに何とか取り組んでいかなければならないと今お答えをいただいたんですが、これまでも、厚生労働省を中心に新医師確保総合対策を取りまとめ、医師不足問題への取り組みを進めていることは承知しております。

 地域の現状は待ったなしの状況であることを改めて御理解願いたいことと、北海道における単純な人口十万人当たりの医師の割合は、全国平均と比べて遜色のない水準となっているわけであります。しかし、御承知のとおり、医師のほとんどは都市部に、先ほどもお答えになっております県庁所在地、政令都市等、そういったふうに集中しているわけであります。

 大臣も御想像できるかと思いますが、北海道というところは大変自然の厳しさもあり、冬の北海道は車での移動もままならない状況が生じていることも実態であります。そのような中、一時間以上もかけて病院に通わなければならない地理的な条件があります。さらに、町から病院や診療科目がなくなり、一番近い病院まで通院すると往復するだけで丸一日かかってしまう、そんな状況にもなっているわけであります。しかし、道や大学病院に医師派遣をお願いしても、大学病院自体も医師確保に精いっぱいで、地域への医師派遣の見通しが立たないという状況であります。

 与野党を問わず多くの議員が医師不足の問題を取り上げられているのは、根本的に医師の絶対数が不足していることがその背景になっているのではないでしょうか。単純な対人口の割合で医師が足りていると答弁したりだとか、あるいは医師不足を特定の地域や特定の診療科の問題ととらえるのはもはや無理があるのではないかということと、本来であれば根本的に医師の養成数をふやすべきと考えますが、OECDの加盟国やヨーロッパ諸国などと比較しても、対人口割合でも医師数は少ないことを指摘したいと思います。

 政府は将来の医師過剰を懸念しておられるようでありますが、医師が不足している県に対して既に限定的に医学部の入学定員増の前倒しを実施されているので、この点についてお伺いしたいと思います。

 医学部の入学定員の前倒しを実施できるのはこの人口十万対の医師の割合が低い十の県に限定されておりますが、単純な数値で比較するのではなくて、地域の実情に応じて対象となる都道府県の範囲を拡大していくべきと考えますし、またこのことについて政府の見解をお聞かせ願いたいと思います。松谷医政局長、お願いいたします。

松谷政府参考人 先生御指摘のとおり、従来政府におきましては、医師の過剰を心配して閣議決定をもって医師をむしろ減らすという方針をとってきたところでございますけれども、近年の医師の不足、偏在といったような問題から、長期的な対策、中長期的な対策といたしまして、昨年八月、関係省庁と取りまとめました新医師確保総合対策の中の中長期的な対策といたしまして、医師の不足が特に深刻と認められる十県につきまして医学部定員の暫定増を認めたところでございます。

 この対象県の選定に当たりましては、都道府県全体で見て医師が不足しているかどうかという観点から、人口当たり医師数を指標として用いるとともに、あわせて、地理的にも医師へのアクセスが困難であるかどうかを考慮するという観点から、都道府県の面積当たりの医師数という指標も活用をいたしまして、いずれの条件も満たす県を医師不足が特に深刻な県と位置づけておりまして、医師の絶対数の比較だけではなくて、この二つの要件でもって、医師へのアクセスの困難さという地域の実情を極力反映した指標といたしまして、対象県を選定したところでございます。

 なお、地域に定着した医師の確保を図るという観点から、厚生労働省におきましては、文部科学省など関係省庁と連携をいたしまして、医学部における地域枠、地元出身者のための入学枠の設定を推進するなどの取り組みもあわせて進めているところでございます。

 先生御出身の北海道、私も大学はそちらを出ているんですけれども、人口十万当たりの医師数は全国平均より若干上ということで今回外れておりますけれども、百平方キロメートル当たりの医師数ということになりますと十四・六人ということで全国最下位、これは北海道は非常に広い地域であることを反映しているということだと思いまして、そういう点では、北海道は特に医師が平均よりはたくさんいるんだけれども、地域によっては非常に厳しい状況にあるというのが北海道の状況であろうかと思います。道においても大変危機感を持って取り組んでいるというふうに思っておりますけれども、私どもとしても、道のお取り組みを支援していきたいと思います。

 また、地域枠、地元出身者のための入学枠につきましては都道府県単位で考えておりますけれども、北海道のように広いところにつきましては、札幌出身の人を幾ら大学に入れても余り意味がないというようなことから、もう少しきめ細かい地域枠といったようなアイデアもあるのではないかと思って、そういったいろいろなことを道と協議していきたいと思っております。

仲野分科員 局長、何か北海道の大学を終わられたということで、北海道のそういった広大な面積等、いろいろ御事情、おわかりかと思うんです。

 ただ、北海道は一次から三次の医療圏域で構成されているんですが、中間の二次医療圏域では、例えば私の地元の根室管内で全国平均の医師数の対人口割合が半分以下となっているわけであります。このような実態を含めてどのようにまた考えられているのか、改めて見解をお願いいたします。

松谷政府参考人 各都道府県ごとの医師の分布等を見ますと、全体に西高東低というようなことで、県ごとにも、全体で多い県、少ない県、見ますと二倍ぐらいの差がございます。しかし、県内の二次医療圏ごとをさらに比べてみますと、これはもっと大きな差がございます。北海道の場合も、おっしゃるとおり、旭川周辺あるいは札幌周辺と比べまして最も少ないところが根室のところの医療圏というふうに承知しておりまして、根室のところは、人口十万当たり百を切っているという厳しい状況にあるということは承知してございます。

 これらの地域の偏在は、圏ごとの偏在というよりも、圏内あるいは道内の偏在ということでございまして、これについて、従前大学が担ってきたような役割をもう少し公もかんで、都道府県当局もかんで対策を立てられるようなことを昨年の医療法の改正の中でも行ったところでございまして、これらを活用しながら、その対策をさらに強力に進めるように国としても援助していきたいと思っております。

仲野分科員 全体の医師不足により町から病院がなくなれば、一番に住民が心配するのは救急医療であります。先ほども同僚の森本議員も質疑されておりましたけれども、風邪などで症状が軽い場合は診療所でもこれは対応できます。これもまた、高齢になれば風邪症状といっても気をつけなければならない場合もあります。

 厚生労働省においても、小児の救急医療を中心に補助金を出して地域の基盤整備の推進を図られていることは承知しております。また、最近ではドクターヘリの整備に対する補助を積極的に行うこととしているとも聞いております。しかし、国が補助金を出しても地方の負担が伴う仕組みとなっており、その進捗状況は決してはかばかしくないと伺っているわけであります。

 地方自治体において、正直なところ、今の医療施設を維持するのが精いっぱいの財政状況にあり、地域住民の命を守り、救うためには積極的な体制整備を進めたいのはやまやまですが、これ以上の財政負担はもう困難な状況になっている。しかし、救命救急で救急車が来ても一番近くの病院まで何時間もかかるような状況が日常に生じれば、これはもはや医療体制の崩壊と言わざるを得ないと言っても過言ではないと思います。

 このような状況が生じないよう、救急医療を初め、地域医療に最低限必要な体制整備については、地域を限定されても結構でありますが、全額国庫負担による早急な対応も必要と思われますが、改めて松谷医政局長の御見解を求めます。

松谷政府参考人 先生御指摘の救急医療を初めといたします地域医療体制の整備につきましては、各都道府県が地域の実情を踏まえながらみずから主体的に医療提供体制を構築するということが原則となっているわけでございます。この整備に当たりましては、各医療機関が診療報酬により負担することに加えまして、都道府県においても必要な財源について負担をしていただくものというふうに考えております。

 大変地方財政も厳しいという状況でございますが、国の財政も大変厳しいということで、その中で地域の住民のためにできるだけのことをしていくということが地方自治体と国それぞれの役割であると思っております。

 国におきましても、先般の医療法改正におきまして、都道府県が策定する医療計画に救急医療等を重点的に位置づけることとしたところでございまして、医療の確保を図るための基本方針や計画作成に当たっての指針等を示すことといたしているほか、来年度予算案におきましても、小児救急を初めとする救急医療体制の充実や医師確保対策に関して必要な予算を確保したところでございまして、引き続き都道府県の取り組みを支援していきたいと考えております。

仲野分科員 昨年の医療制度改革の国会審議において、民主党は、小児科医、産科医の不足問題に対して、国の責任において医師の確保や拠点病院の整備を緊急に講ずるべきとの観点から、小児医療緊急推進法案を提出させていただきましたが、残念ながら成立に至りませんでした。

 このように、医師不足問題に国が積極的に関与しようとしてこなかった結果、現在では小児科医、産科医不足のしわ寄せが、こうして内科だとかあるいは循環器、さまざまな他の診療科目の医師にも広がっているのではないのか。

 都市部の病院においても勤務医師の大変な過重労働が続いており、厚生労働省は、病院の勤務医をやめて開業される医師がふえていることを医師不足の要因の一つともされているわけでありますが、このふえている開業医と病院との間で病診連携がうまくとれればこのような問題が少しでも解消されるとお考えだと思います。しかし、開業される医師も、残念なことに、地方じゃなくてどうしても都市部に集中をしているのではないのか。

 先ほども触れたのですが、地域の医療を守るために道や医大に医師派遣をお願いしても断られ、本当に医師確保の見通しが立たない自治体病院がふえつつある中で、この自治体病院の最高責任者であります首長さんが大変苦慮されているわけであります。

 北海道において、僻地医療拠点病院としての医師の派遣や、あるいは巡回診療などの支援活動を行う病院が幾つも指定されてきているんですが、その活動さえ滞っている状況であります。拠点病院の指定を受けながら、これまで支援活動を展開することができない病院もあったわけであります。自分のところで精いっぱいとなっているのが現状だと思います。地域全体の医師不足により、これまでの対応策すら機能しなくなり始めているのではないのか。

 厚生労働省はこの医師不足に対して、拠点病院に医師の集約化を図り、地域の病院、診療所との連携で対応するとの考えや、あるいはIT技術による遠隔医療の導入などで対応する旨の説明をされてきたと思いますが、もはやそのような取り組みでは対応できない状況になっております。拠点病院の医師の集約化についても、北海道の広大な大地のもとで患者の搬送や医師の巡回が可能と思われるのかどうなのか。遠隔医療にしても、地方に医師がいなければ全くその機能を果たすことはできません。

 そういったことで、このことについて、また松谷医政局長の御見解を求めたいと思います。

松谷政府参考人 医療へのアクセスにつきましては、特に医師の偏在が問題となっております小児科、産科の分野で、限られた医療資源を重点的かつ効率的に配置をして、医療機関相互の連携体制を構築するということが有効であるというふうに考えております。また、個々の医師の勤務状況の改善や医療の安全性の確保という面からもこれは資するというふうに考えてございます。

 このため、病院の拠点化を都道府県が中心となって、地域の医療関係者や住民の意見を踏まえつつ、真に必要な地域における対応として推進しているところでございます。その際、地域の病院の外来機能と拠点病院の医療との連携を図るなど、地域の患者さんの医療へのアクセスに十分配慮した上で対応していくべきものと考えています。

 なお、地域によっては患者さんの医療アクセスが懸念される場合もあるというふうに考えられるわけですけれども、厚生労働省といたしましては、医療機関まで相当の時間を要し、容易に利用できない地域の患者さん及び家族を対象とした宿泊施設の平成十八年度補正予算における整備、また救命救急センターや周産期母子医療センターにおいて、他の施設と密接な連携を図るために、ドクターヘリやドクターカーの配備などの施策によって対応しているところでございます。

 また、病院の拠点化によりまして医師の配置が手薄になった地域におきましても、引き続き専門性の高い医療を提供していくために、このような地域において診療を担うお医者さんからの専門的な意見照会に対して電話等によって対応する体制の確保を図ることとしてございまして、今後ともその充実に努めていきたいと考えております。

 また、委員御指摘のとおり、開業された先生と病院との連携というのは非常に大事でございまして、病院の先生は大変厳しい思いをして働いていらっしゃいます。できるだけ病院に行く前での、診療所での前さばきあるいは連携ということは大変大事でございまして、これについてはまだまだやらなければならないこともあろうかと思っておりますけれども、これもあわせて進めているところでございます。

 また、僻地につきましては、かねてから僻地の対策も進めておりますけれども、その中で、今申し上げましたような道具も使いながらこれを進めるということといたしているところでございます。

仲野分科員 救急医療となった場合に、先ほど局長からドクターヘリ等とお答えになったんですけれども、現在のところ、このドクターヘリの運用というのも非常に、全国十一カ所ですか、本当にその機能がされていないというか、今後、このドクターヘリ云々とおっしゃられたんですけれども、これについてどのように今お考えになっているのか。ドクターヘリと簡単におっしゃられますけれども、なかなか財政的なもの、あるいは管理運用をどうするのかというさまざまな問題、クリアしなければならないことがたくさんあると思うんです。ですから、ドクターヘリとおっしゃられるにしても、やはりきちんと国の責任のもとでやっていくということをきちんと答えていただかなければ、何か漫然たるお答えではどうもすんなりこないものがあるんですね。

 ですから、そういった意味では、これだけもう医師不足の問題が深刻となって、特にこういった北海道でいえば、広い地域であるがゆえに、例えば根室の病院から釧路まで患者を救急で搬送するにしても片道二時間かかるんですね。そういったこともかんがみたときに、どのようにお考えなのかなということをいま一度局長の方からお答えいただきたいと思っております。

松谷政府参考人 ドクターヘリにつきましては、平成十三年度から、救急医療体制のさらなる充実という観点から事業化したものでございます。平成十七年度、北海道での導入も行われたところでございます。

 先生おっしゃるとおり、救急搬送、車による搬送、あるいはその車にドクターが乗ること、それからヘリコプター搬送につきましても、まだ完璧なところまでは到達してございませんけれども、ヘリコプターによる搬送、さらには、今申し上げましたように、それにドクターが乗るドクターヘリというような体系を構築していくということが、特に北海道のような広い地域というところでは大事なことではないかと思っております。

 また、今委員御指摘のとおり北海道は大変距離的な問題がございますので、そういう特色を踏まえた形での搬送体制、医師の配置を含めた搬送体制ということは道当局も大変熱心に考えていらっしゃいますけれども、私どもとしてもそれを支援していきたいと思っております。

仲野分科員 本当にこの医師不足が深刻な状況に陥っている。昨年の医療制度改革により、地域医療の体制整備は都道府県が担うこととされて、都道府県が作成する医療計画に基づいて交付される地方への交付金で整備を進めることとなりました。本当に小児科、産科、救急医療や僻地医療などの医療提供体制を体系的かつ計画的に進めていくことが必要でありますが、医師が足りない中では、本当に計画倒れになるおそれがあります。

 もはや医師不足の問題は国が全力を挙げて取り組む課題ではないでしょうか。都道府県任せで本当によいと考えているのかどうなのか。地方の町から医師がいなくなり、病院がなくなり、そして住民がいなくなってしまう。そんな現状が間近に迫りつつあることを国として認識をされ、また取り組むべき重要課題ではないのか。

 確かに自治体立病院の運営は地方自治体の問題でもあり、また、国では主に総務省の所管であります。また、大学病院の経営や大学における医師の養成については、文部科学省の所管であります。そして、全体の医療政策は厚生労働省となっているわけであります。

 これまでも各省が連携してさまざまな取り組みを推進されてきたと思いますが、これを国全体の問題として、地域における医師の確保を政府全体の責任として、これは本当に一自治体、都道府県ではなくて、国全体のレベルまで来ているのではないのかな、そのように思っているわけであります。

 そこで、大臣に、こういったことをどのようにお考えになっているのか、大臣の決意のほどをお伺いしたいと思います。

柳澤国務大臣 今、仲野委員から、地方における医師不足、特にお地元の北海道、根室地域における医師不足の深刻さといったものをお訴えになられまして、私もさまざまなことを考えながらお聞きいたしておりました。

 私どもは、これから先は、今委員が御指摘になられたように、この問題に取り組むのは都道府県ですよ、国はそれに対して指針を示す、しかも一般的な指針を示すということでとどまるんですよというような考え方をいたしておりません。これは、今委員がおっしゃるとおり、国と都道府県が本当の意味で協力をして、拠点病院づくり、あるいは拠点病院と地域の診療所など医療機関相互のネットワークの構築が必要だと考えております。

 予算の措置もいろいろいたしておりまして、都道府県の医師確保に係るさまざまな取り組みを財政面から支援しようとしております。先ほど私申し上げましたように、国として、いま一度それぞれの地域の実情をしっかり把握しなきゃならない、そして、都道府県と協力をし合いながら、地域ごとにもっと具体的な実効性のある医師確保対策を講じなければならない、このように考えておりまして、省内にそういう体制もしき、それから、そういう取り組みも今後において早急にいたしていきたい、このように考えております。

仲野分科員 最後に大臣から力強い決意をお答えいただいたので、質疑時間も終了いたしましたので、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

実川主査 これにて仲野博子君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明三月一日木曜日午前九時より本分科会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後九時四分散会


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