衆議院

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第2号 平成19年3月1日(木曜日)

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平成十九年三月一日(木曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 実川 幸夫君

      稲田 朋美君    河井 克行君

      清水鴻一郎君    清水清一朗君

      中馬 弘毅君    泉  健太君

      小川 淳也君    赤羽 一嘉君

      大口 善徳君

   兼務 長妻  昭君 兼務 柚木 道義君

    …………………………………

   厚生労働大臣       柳澤 伯夫君

   厚生労働副大臣      石田 祝稔君

   厚生労働大臣政務官    松野 博一君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 佐々木豊成君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           辰野 裕一君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           荒井 和夫君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  松谷有希雄君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       藤崎 清道君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       大谷 泰夫君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  阿曽沼慎司君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  水田 邦雄君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 薄井 康紀君

   政府参考人

   (社会保険庁運営部長)  青柳 親房君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君

    ―――――――――――――

分科員の異動

三月一日

 辞任         補欠選任

  稲田 朋美君     清水清一朗君

  小川 淳也君     佐々木隆博君

  大口 善徳君     赤羽 一嘉君

同日

 辞任         補欠選任

  清水清一朗君     清水鴻一郎君

  佐々木隆博君     泉  健太君

  赤羽 一嘉君     大口 善徳君

同日

 辞任         補欠選任

  清水鴻一郎君     稲田 朋美君

  泉  健太君     三日月大造君

同日

 辞任         補欠選任

  三日月大造君     小川 淳也君

同日

 第一分科員長妻昭君及び第二分科員柚木道義君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十九年度一般会計予算

 平成十九年度特別会計予算

 平成十九年度政府関係機関予算

 (厚生労働省所管)


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     ――――◇―――――

実川主査 これより予算委員会第五分科会を開会いたします。

 平成十九年度一般会計予算、平成十九年度特別会計予算及び平成十九年度政府関係機関予算中厚生労働省所管について、昨日に引き続き質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。赤羽一嘉君。

赤羽分科員 公明党の赤羽一嘉でございます。

 まず、昨日は、早朝から夜九時まで、柳澤大臣、石田副大臣、また委員長初め関係者の皆様も、大変お疲れさまでございました。きょうも早朝からの質疑ということで大変恐縮でございますが、三十分の短い時間でございますけれども、しっかりと議論させていただきたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。

 まず、私は、社会保険病院のことについて質問させていただきたいと思います。

 実は、私が住んでおります神戸市北区に社会保険神戸中央病院という病院がございます。このことで、最近地元の方からもメールですとか電話の問い合わせが大変多くあります。この病院がなくなってしまうのかということを大変心配されている声が私のところにも数多く寄せられております。

 何事かということで調べておりますと、この病院の健康保険病院労働組合神戸支部という組合の方々が、要するに、この病院が存続するのか、それとも民間経営に売却されるのか、いよいよこの三月末に厚生労働省が発表する、こういったビラを、きょうも持ってきていますけれども、大量に配布しております。

 また、共産党も、恐らく連動する形で、厚生労働省は社会保険病院を整理合理化しようとしています、地域にとってかけがえのない社会保険中央病院をつぶすな、こういったスローガンのもとに連続して集中的に署名活動を行っており、今回の統一地方選挙で出馬予定の共産党の候補のブログ、きょうもコピーを持ってきていますけれども、このブログにもそのようなことがるる書いてあり、そしてその中で、投稿者の声ということで「今度の選挙で、みんなで共産党を大きく伸ばし、」「社会保険神戸中央病院をともに守りましょう」、こういったことが扇動されているという事実がわかりました。

 まず、そもそも論として、この社会保険病院の問題というのは、社会保険庁のいわゆる一連の問題の中で、経営健全化もしなければいけない、それは皆さんの保険料が投入されているのだからしっかりとした運営をしなければいけない、当然地域の医療機関としてその使命を果たさなければいけないということで、平成十四年に社会保険病院の改革案というのが提案され、そして十五年から三年間かけてそれぞれの経営収支改善努力をするべしということを政府・与党で決定したという認識で私はおります。

 この前段として、それまでの経営状態がいかに放漫であったかとか、そういったことは全く彼らの主張には書いていないんですね。大変いい病院を厚生労働省や政府・与党がつぶしにかかっているというようなことを、極めて悪意に満ちた、ミスリーディングさせるようなことをあおって、そして今こそというような話をしているというのは、私は余りにもいかがなものかということを感じているわけであります。

 まず確認をさせていただきたいのは、この社会保険神戸中央病院の、当時、平成十四年までの経営収支状況はどうだったのか、そして政府のこの経営合理化案というか経営改善策の指示が出た後の十五年から十七年の経営改善状況はどうなのかということを、まず事実としてお示ししていただきたいと思いますが、よろしくお願いいたします。

青柳政府参考人 社会保険病院についてお尋ねがございました。

 ただいま議員の御紹介にもございましたように、平成十四年の十二月に策定をいたしました「社会保険病院の在り方の見直しについて」という厚生労働省の方針に基づきまして、施設整備を含め基本的には個々の病院の責任において運営するという考え方に立ちまして、平成十五年度を初年度といたします三カ年の経営改善計画を策定し、経営改善に取り組んでいるというところでございます。

 まず、社会保険神戸中央病院の経営改善前の平成十四年度の状況を見てみますと、単年度収支が二億八千万円の赤字、それから累積で七千万円の黒字という状況でございました。

 これに対しまして、経営改善計画を策定した平成十五年度以降について状況を見てみますと、まず建物等の更新費用として毎年度各三億二千万円を別途積み立てた上で、平成十五年度六千万円、平成十六年度四千万円、平成十七年度一億七千万円、それぞれ単年度の黒字が生まれております。また、この結果、累積でも三億三千万円の黒字となっている状況にございます。

赤羽分科員 ありがとうございます。

 今の答弁でも明らかなように、この社会保険神戸中央病院も、他の五十幾つかの病院と同じように、平成十四年までの経営状況は二億八千万円の大変な赤字を単年度で出していた、それが三年間で、それなりの恐らく合理化ですとか人件費の削減といったものがとられたのだと思いますが、黒字化をしているという状況が明らかになったと思うわけでございます。

 このことについて、今回、ただビラを配っているとかだけではなくて、請願、要請趣旨というような厚生労働大臣あて、内閣総理大臣あてのペーパーも出しておりますし、また加えて、厚生労働大臣あて、社会保険庁長官あてということでこういったはがきまでつくって、相当組織的に大量に運動を展開されているわけですね。

 これは私は、何か具体的な根拠があるのなら、こういった運動は民主主義の社会ですから認められているのは当然だというふうにも考えておりますけれども、現時点で神戸中央病院に対して厚生労働省の方針が何か定まっているのか、社会保険庁としてどうするということが決まっているのかどうか、そのことについても確認させていただきたいと思います。

青柳政府参考人 まず、結論から申し上げますと、社会保険神戸中央病院の今後の取り扱いについて、具体的に決定したものはございません。

 現在までのところ、社会保険病院につきましては、先ほど申し上げました「社会保険病院の在り方の見直しについて」という方針に基づきまして、今後施設整備に保険料は投入しない、これははっきりしておりますし、また、経営改善を図った後に整理合理化を行うということはすべての社会保険病院共通の問題として定まっている方針でございます。

 また、これに加えまして、平成十七年に、年金改正の際に議論が起こりました年金や健康保険等の福祉施設の取り扱いに絡みまして、独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構法案というものを成立していただきました。この審議時に、衆議院の厚生労働委員会の附帯決議におきまして、地域の医療体制を損なうことがないよう、厚生年金病院の整理合理化を進めるということが与野党一致で決められております。この御方針、考え方は社会保険病院についてもこれと平仄を合わせていくべきものというふうに認識をしております。

 このため、これらの病院が現に地域において果たしている役割をどのように維持していくかということもきちんと念頭に置いて、各方面の御意見を踏まえながら整理合理化を進めていく必要があると認識しております。

赤羽分科員 ありがとうございます。

 今の御答弁にもありましたように、政府は、こういった国会での審議、地域の医療体制を損なわないということを大前提にしながら、そしてまた、かつ社会保険庁改革の中で、保険料の使い道についての真摯な改革の中で今まじめに取り組んでいる。そして、現時点では何も決定したことはないという状況にもかかわらず、こういった大々的なことを仕掛ける。

 私は、ここであえて取り上げるのは、一度目じゃないんですよ。選挙のたびに行う、まさにマッチポンプなんですね。これで一番迷惑を受けているのは、そこに通院されている患者さんだったり、入院患者さんなわけでして、大変心配をしている。こういった人たちの不安をあおるだけあおっておいて、そして選挙のたびにいつもこういった運動を持ち出すというのは、私は言語道断だと。当然その中で組合活動は保障されるべきかもしれませんが、病院の中からこういった発信が出されるということは、私は大変おかしな話ではないかというふうに言わざるを得ない。

 当然、病院の中で、そこに通っている患者さん、入院されている方たちが大変な不安を感じているわけですから、ぜひ病院内から、そのようなことはまだ何も確定していないということや、また地域医療の体制を損なわないという大方針の中で社会保険病院の改革は進められているというような正しいメッセージを、私は丁寧に伝えるべきではないか。

 これは、実は、社会保険病院だけではなくて、厚生年金病院の中でも同じような動きがあるんです。別に神戸だけの問題ではなくて、全国的な問題として仕掛けられているということについて、私は、ここはきっちりとした姿勢を見せることが大事だ、それこそまさに社会保険庁改革のまじめな姿をゆがめるようなことについて断固とした態度で臨むことが大事だというふうに思いますが、その点について御答弁いただければと思います。

石田副大臣 今委員もいろいろと御指摘をいただきましたけれども、社会保険病院及び厚生年金病院の整理合理化に当たっては、地域の医療体制を損なうことがないよう、これらの病院が現に地域において果たしている役割をどのように維持していくか、こういう観点を念頭に置きながら検討を進めていくことが私は必要である、このように考えておりまして、できるだけ早く整理合理化計画を取りまとめてまいりたいと思っております。

 また、これら病院の整理合理化計画の取りまとめに当たっては、病院を利用される地域住民の方々に不安を生じさせることのないよう、十分に配慮していかなきゃいけないと思っております。

 また、これは所感ということになるかもしれませんけれども、今委員と社会保険庁とのやりとりを聞いておりまして、まだ何も決まっていないものを前提にいたずらに不安をあおるというのはこれはいかがなものか、こういうように私は思いますし、年金、介護、医療、こういう社会保障体制、こういう問題については、間違っても、選挙に利用するだとか、また、ほかの方向に、政争の具にするとか、こういうことは私はあってはならない、こういうふうに考えております。

赤羽分科員 力強い御答弁、本当にありがとうございます。まさに国民不在の、選挙戦に利用するなんというのは言語道断だということを重ねて申し上げておきたいと思います。

 次に、BSEの検査問題について質問をさせていただきたいと思います。

 私、毎回大臣がかわるたびにこの問題を取り上げておりまして、ある意味では相当マニアックなところもありますので、大臣、御答弁は結構ですので、よくやりとりを聞いていただけたらというふうに思います。

 まず、日本で国内初のBSEが発生をした直後に、全頭検査というものをとりました。これは、ある意味では、多分、厚生労働省も最初は、世界じゅうのスタンダードで三十カ月以上とか二十四カ月以上の検査でいいというふうに考えていたと思うんですが、そこはある意味では政治的な配慮の中で、初めての出来事に対するパニックをおさめるという意味で全頭検査をとられた。これはそういう意味では大変意味があったというふうに、そう評価をしております。

 以来、この間大変な検査を重ねられてきて、そして数年前に、何百万頭検査した結果、ある意味でのガイドラインが出てきた。日本では二十一カ月加齢、二十三カ月加齢という感染しているのではないかという悪性プリオンが発見されたということで、二十一カ月加齢以上の牛は検査をする、二十カ月以下はフリーにする、こういった制度に変えられたわけでございます。

 この点でまず考えたいんですが、過去に二十一カ月、二十三カ月という、はっきり言うと世界でも極めて例の本当に少ない、BSEの感染牛というのは全世界で二十万頭程度発見されておりますが、この二十一カ月レベルというのはもう本当に、この日本の一例しかないとも言われておりますし、言っても一、二例、三例ぐらいだというふうに思っております。

 私がお聞きしたいのは、二十一カ月が出た、だから、二十カ月以下はフリーだけれども二十一カ月は検査をする、こういったことは、今後、そのガイドラインというのは厳に変わらないのかどうかということをまず確認したいと思うんです。

 といいますのは、あわせてお聞きしたいんですが、全頭検査というと、我々素人は全部検査しているから安全だ、こういうふうに考える方が大半だと思うんですが、しかし、いろいろな文献を読んでおりまして、食品安全委員会の座長の先生ですとか、OIEの先生方の話をしますと、要するに、今日本でやられている検査というのは、BSEの発症三カ月から六カ月前にならないと陽性反応が出ない、これは変なことを言うようですけれども、ある意味では、感染した牛でもそのテストにひっかからないケースもかなりの程度あるということを言われている先生たちもいらっしゃいます。

 この全頭検査そのものも、実は冷静に言えば限界性がある、そういった意味の限界性があるのではないかということについての厚労省としての御見解と、また、加えて、二十一カ月以上という今のガイドライン、永遠に続ける意向なのか。そうでなくて、それをどういう状況であったらどう変えていくという、どういうシナリオを持たれているのかということを確認させていただきたいと思います。

藤崎政府参考人 お答え申し上げます。

 BSEの診断につきましては、牛の延髄かんぬき部の異常プリオンたんぱく質を検出することによって行っておりまして、我が国や欧米では、高感度のELISA法を用いてスクリーニング検査を行っているところでございます。したがって、検査の感度はELISA法の検出限界に依存しておるということでございまして、これを超える異常プリオンたんぱく質を含む牛についてBSE陽性の診断が可能である、こういうことでございます。

 そして、平成十七年五月に取りまとめられました、食品安全委員会の「我が国における牛海綿状脳症(BSE)対策に係る食品健康影響評価」におきましては、科学雑誌ネーチャーに掲載された論文を根拠に、現在行われているBSEスクリーニング検査の検出限界を約一mi・c・LD五〇としているところでございます。

 さらに、国内の状況に関して申し上げますならば、今申し上げました食品安全委員会の中間評価、平成十六年九月に取りまとめられました日本におけるBSE対策についてでございますが、これにつきましては、迅速検査により検出可能な月齢として、「我が国では、と畜場においてこれまでに約三百五十万頭の牛を検査した結果確認された九頭のBSE感染牛のうち、二十一、二十三カ月齢の若齢のBSE感染牛が確認された。ただし、ウエスタンブロット法で調べた結果では、これらの例の延髄閂部に含まれる異常プリオンたん白質の量は、我が国で確認されたその他のBSE感染例に比べ少なく、五百分の一から一千分の一と推定されている。このことから、二十カ月齢以下の感染牛を現在の検出感度の検査法によって発見することは困難であると考えられる。」とされております。これが食品安全委員会の見解でございますが、これは現時点では、二十一月齢以上の検査をすることは、ある意味で裏っ返しで必要であるということと私ども理解をいたしております。

 今後はどのレベルまでの検査が必要か、その点につきましては、科学的な知見、あるいは検査データの蓄積、新たな情報その他を勘案しながら、リスク管理機関としても、食品安全委員会の御意見を伺いながら判断していくことになろうかと考えております。

赤羽分科員 ありがとうございます。

 今の御答弁でもう一度確認したいのは、全頭検査については限界性がある、ですから、感染した牛でも発見できないケースもあるということが答弁だったと思います。加えて、いわゆる世界で極めてまれな若齢牛の感染につきまして、その発見された悪性プリオンの量は、他の感染牛に比べると五百分の一から千分の一という極めて微量であったといったことも今御報告があったというふうに思います。

 そこで、この委員会でもかつて議論になりましたが、この二十一カ月、二十三カ月の悪性プリオンに感染性があるのかないのか。かつて他の議員が、必要条件と十分条件なんだ、悪性プリオンというのは発見されたのは必要条件で、それが感染性があるのかないのかといったことはどうなんだということに対して、厚労省は、マウステストを行っている、こういう御答弁がございました。

 それで、食品安全委員会の議事録とかを見ておりますと、吉川先生ですか、座長を初めいろいろな方が、このマウステストの報告がやはり大事だと。吉川座長が、これは一昨年十一月二日の食品安全委員会の中で、座長の御発言で、「二十一、二十三カ月に関しては、今回もそうですし、国内見直しのときにもあれをどう評価するかという問題はいつも引っかかってきていて、異常プリオンの蓄積が見られたことは事実だと思うんです。それが生物学的にどういうものであったのかというのは、できるだけ早い機会に動物衛生研究所から、親委員会でも、専門調査会でもいいので、途中経過であっても、正確な情報提供をいただきたいと私も考えております。」こういった同様の発言が、他の委員からも随分出ているんです。

 このマウステストというのは、普通、世界じゅうで、大体一年経過すると、その結果陰性か陽性かというのを発表されているんですよ。しかし、このことについて、私の知る限りもう三年以上経過しているのに何ら発表されないというのは、どういうことなのか。何のためにこのマウステストをしているのかということを大変疑問に感じているんですが、この点について、なぜ発表がされていないのか。そして私は、当然通告もしておりますし、わかっているはずなんですよ、現在の状況、現段階でこのマウステストの陽性が出たのかどうか、それについてお答えをいただきたいと思います。

藤崎政府参考人 お答えいたします。

 まず、この研究といいましょうか実験といいましょうか、それの性状でございますが、今先生御指摘のとおり、我が国で確認されました二十一カ月齢及び二十三カ月齢のBSE感染牛について、非常に異常プリオンたんぱく質が少なかったということでございます。このために、伝達性を含む生物学的な性状解析などの研究に用いる材料を得るために、独立行政法人農業生物系特定産業技術研究機構動物衛生研究所において、異常プリオンたんぱく質をマウスに接種し、増幅を試みているものであるというふうに承知しております。これは厚生労働科学研究でやっております。

 そういうことで位置づけてございますが、これにつきまして発表がされていないのではないかという先生の御質問でございます。

 これにつきましては、その方法及び途中経過は厚生労働科学研究事業の報告書として取りまとめられておりまして、公表されているというところでございます。これがどこまで幅広く知られているかという問題はあろうかと思いますが、これは研究報告として公表を、途中経過でございますがさせていただいております。

 そして、平成十七年度の研究報告書におきましては、牛プリオンたんぱく質過発現トランスジェニックマウスということで、比較的発現しやすいマウスを使っておりますが、このプリオンの増幅試験の経過について報告されておりますが、その時点では増幅は認められていないというところでございます。

赤羽分科員 三年たった今、マウステストで陽性が認められていない。これはいつ発表するんですか。これはただでやっているわけじゃないですよね、税金が投入されているわけですよ。非常にこれを引っ張っていっている。

 だから、随分、食品安全委員会の座長ですら決着をつけるべきだというようなことがあって、これは多分、マウスですから、一代、子の代、孫の代とか正確なことは何にもつまびらかじゃないのでよくわからないんだけれども、それは終わっているはずなんですよ。何か出るまでやるみたいな実験をしているんですか。そうじゃないでしょう。三年たったら、私はもう十分、このマウステストとしては陰性だったということをやはり報告するべき、それが科学的な態度なんじゃないかと思うんですが、その点について厚労省の御見解を。

藤崎政府参考人 お答えいたします。

 この研究の目的が、一つは伝達性の性状というものを、どのぐらい感染していくのかという、感染といいますか伝達するのかということを見ていくという部分と、それからこの二十一月齢、二十三月齢という比較的珍しいケースのプリオンの生物学的性状を詳しく研究していくという側面がございまして、後者の面からは、可能な限りその増幅をさせて材料を得たいということがございます。

 ただ、前者の方につきましては、その時々の段階におきまして、どれぐらいの経過で接種をして、どういう結果になったのかということは一つ明らかになると思いますので、これにつきましては、私も直接今の食品安全委員会からの要請というものを具体的に承知はしておりませんでしたが、そういう研究報告として公になっているものでありますし、御要望があればそういうことについての御説明というのは可能なのではないかというふうに考えております。

 また、いつまで研究をするのかということにつきましては、研究者の方のその研究目的あるいは合理性、こういうものを判断しながら、私どもとしてはプリオンの研究全体の進捗というものにも資したいと考えておりますので、そういうことも考えながら検討してまいりたいというふうに思っております。

赤羽分科員 この場というのは学術の議論をしているわけじゃなくて、行政のあり方ということを議論しているわけでして、私は、行政所管庁として、行政の措置として何らかの判断というのはあってしかるべきだというふうに思います。

 加えて、私は、この二十一カ月、二十三カ月という極めて特異な例、一つは、その量も五百分の一から千分の一という微量だったということや、伝達性も、もう恐らく陽性ではないんですよ、伝達、感染性がないということが判断されたという前提の中でどのような検査体制をとるのかということを考えてしかるべきだということを主張したいと思います。

 それで、ちょっと話が変わって、実は私、こういう何カ月以上ということの今話をしましたが、そういう何カ月以上というのは実は余り意味がないと私は持論でかねてから申し上げております。月齢で危険性がどうなるかということではなくて、私は今こそ、世界じゅうで認知されているように、特定危険部位と称するところがクリーンカットされているかどうか、フグでいうと、肝がちゃんと取られていれば食することができる、それと同じように、牛の場合も、特定危険部位と言われるSRMというところをしっかりクリーンカットされているかどうかということが非常に大事だと思いますし、もう一つは、やはりえさの問題、えさの管理がどうかということなんです。

 これは、二〇〇一年の十月から肉骨粉のことについてきっちりとした体制がとられ、先ほどの特定危険部位の除去についても、屠畜場の分離とか、それは相当な勢いで厚生労働省の指導でやられているはずなんですね。こういったことの効果が出ているはずなんです。二〇〇一年十月以降、飼料規制された以降、感染牛が発見された例というのは、私は、この二十一カ月、二十三カ月の若齢牛を除くと二十頭ぐらい出ていると思いますが、すべてえさ規制の前の段階で生まれた牛ばかりだというふうに思いますが、この事実の確認をお願いしたいと思います。

藤崎政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおりでございます。

赤羽分科員 もちろん、えさ規制をした後感染牛が発見されたというのはヨーロッパなんかでは結構あるので、ここだけでは何とも言えませんけれども、私は、BSEに対するリスク管理体制というのは二〇〇一年の段階と今の時点では数段進歩しているというのは明らかであるし、それはこれだけの予算を投じているから、そういう意味では当たり前、そうなっていなければいけない、その評価というか、効果は明確にあらわれている。

 しかし、緊急措置でやった全頭検査体制というのは、現実的に今もまだ引っ張ってやっているということなんですよ。二十一カ月以上でいいと言いながら、地方自治体がこれまでの流れの中で全頭検査を続ける、そこに補助金を出しているわけですよ。私は、そういうことについては、鳥インフルエンザとかコイヘルペスですとかいろいろな問題が出ている中で、このBSEの問題について、余りにも予算と人件費という労力を使って本当の危機管理体制に支障が生じてしまうような、行政のバランスを欠くということは大変問題だというふうにすごく考えているわけです。

 ですから、全頭体制、全頭検査をやって、二〇〇一年からですからもう五、六年になるわけですし、えさの規制、屠畜場の規制も随分進歩しているわけですし、私は、日本国民の中でBSEに対するショッキングな部分というのは相当冷静になっていると思いますので、今こそ本当の食の安全ということはどういう形で担保できるのかということを、世界のスタンダードとも当然見比べながら、適正な特定危険部位の除去とえさのあり方、こういったことについて、そういう新しい安全性を確立することを強く期待したいと思いますが、ここで答弁を求めるとまたあれですけれども、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 最後に、もう限られた時間ですが、一点だけ、中国残留邦人問題について、大臣の御決意を聞かせていただきたいんです。

 私も神戸なものですから、神戸地裁の、勝訴した原告の方々とこの前もお会いいたしました。中国では校長先生をやっていた女性が、日本に来ると、日本語もしゃべれないし、生活保護に甘んじなければいけない。やはり尊厳という問題が一番大きいなということを大変強く感じました。

 私の父親は、実は戦時中に満蒙青年開拓軍で黒竜江省に行っておりまして、ややもすると、まさに大地の子になりかかったという、本当に実は身近な家族のそばにある問題であって、そういったことを勘案して、私は、安倍総理も、法律、裁判の問題ではなく、それを超えて新しい支援体制をつくるべしということを表明され、柳澤大臣にその使命を託されたんだと思います。

 今、生活保護の段階というのは実は医療扶助とか住宅扶助があって、そこよりレベルが落ちる新しい体制になってしまっては余り意味がないと思うんですね。ですから、中国残留邦人の皆さんの尊厳を尊重しながら、そして、それに見合うだけの対応、体制をぜひとっていただきたいということについて御決意をいただき、質問を終わらせていただきます。

柳澤国務大臣 今、赤羽委員のおっしゃるとおり、去る一月の三十日に東京地裁の判決がありまして、その判決自体は国側勝訴ということでありましたけれども、その機会に総理から御指示をいただきました。法律問題や裁判の結果は別として、中国残留邦人の方々への支援のあり方について、誠意を持って対応するように指示する、こういうのが御趣旨でございました。

 これを受けまして、私も、総理と官邸でお会いになった方々と引き続いてお会いして実情を聞きましたが、その後もまた一度、今度は別のグループの方々ともお会いして、生活の実情を聞かせていただいた次第です。それやこれやで、今まさに委員の御指摘になられたような、尊厳の問題ということをこもごもにお触れになられることが多くて、その辺に問題があるということを感じておる次第でございます。

 いずれにいたしましても、この問題、総理がおっしゃられたように、法律問題や裁判の結果は別としてということが一つございます。それからもう一つは、中国残留邦人の方々の実情をよく聞くように、これが一つございます。それから、それを厚生省部内で検討するということになると、どうしても行政の連続性みたいなことに縛られるということを総理がおもんぱかってくれたのかどうか、そこははっきりはしませんが、いずれにしても、第三者的な有識者の方の御意見も聞くべきだ、こういう御指示もいただいています。

 さらに、与党にPTがありまして、委員もその御一員かと思いますが、そういうところで、かなり専門的に、既に意見の積み重ねがございます。しかし、それは一たん出発点に戻しまして、新しい措置を考えていこう、こういうことでございますので、私どもとしては、そういう手順を踏みまして、できるだけ残留邦人の方々の実情にフィットした、適合した措置を考えていきたい、それもできるだけ早く考えていきたい、このように考えている次第でございます。

赤羽分科員 どうもありがとうございました。終わります。

実川主査 これにて赤羽一嘉君の質疑は終了いたしました。

 次に、清水清一朗君。

清水(清)分科員 自由民主党の清水清一朗であります。

 本日は、柳澤大臣の出席をいただきまして、予算委員会で質問をさせていただく機会をいただきましたことを、心からありがたく存じております。

 私は、将来の介護に対する国家負担の軽減と介護の質の確保につきまして提案を申し上げ、関連して五つの質問をさせていただきたいと存じます。提案型でございますので、私の一人おしゃべりのような状態になりますことを前もってお許しいただきたいと存じます。

 まず第一に、私自身がベビーブームの中心に位置するということもございまして、二〇二五年の介護に要する給付は国全体でいかほどになると予想されておられますか、お伺いをいたします。

阿曽沼政府参考人 お答えをいたします。

 二〇二五年度におきます介護保険の給付費でございますが、平成十八年五月の「社会保障の給付と負担の見通し」によりますと、約十七兆円というふうになると推計されております。

清水(清)分科員 改革をいろいろなさった上で十七兆円になるということでございますね。改革をしなければ二十兆円ということになるわけでございますが。

 現在、我が国の介護に関して、要介護の範囲を一から五の五段階、また、要介助の段階を一から二の二段階に分けております。そして、おのおのについて介護保険から、身体介護に対しましては、三十分以上一時間未満の場合四千二十円、一時間以上は五千八百四十円で、三十分ごとに八百三十円が加算されていくというわけでございます。生活支援につきましても、三十分以上一時間未満までは二千八十円とし、一時間以上二時間未満は二千九百十円ということになっているわけでございます。私は、こうした介護関連の給付を、新しい仕組みを導入することによりまして、ある程度軽減したい、こう思っているわけでございます。

 年金も医療も介護も、これから大幅に負担の絶対額が拡大してまいります。その中で、医療は削りにくい、また、年金も削ってもらいたくはありません。しかし、介護だけは、普通の人間が関与することによって、負担の増加を抑制できる分野ではないでしょうか。少なくとも私自身が経験をした分野でもございますし、私も人並みに親の介護というものを五、六年経験してまいりました。その経験から、今後の日本の介護について提案をしてみたいと思います。

 年金、医療、介護など社会保障の充実は国民すべての望むところであり、将来の不確実性が日常生活の中で不定愁訴となっております。施設サービスと在宅サービスを合わせた利用者は、平成十八年、二〇〇六年で約三百五十万人になっておりますが、二〇二五年には何万人ぐらいになると試算しておられますのでしょうか、お伺いをいたします。

阿曽沼政府参考人 お答えを申し上げます。

 二〇二五年度におきます介護保険の施設、在宅を合わせましたサービスの受給者でございますけれども、施設サービスで約百万人、在宅サービスで約五百万人、計六百万人と推計されております。

清水(清)分科員 ありがとうございます。

 少子化が進展し、高齢者がピークに達する二〇二五年には、約六百万人の方々が介護のサービスを受け、一年間で十七兆円にも上る負担を国民全体でしていかなければならないわけでありますが、この額を、大げさに言えばですが二割方軽減する方法があるとすれば、政府は絶対採用する必要があると思いますが、いかがでしょうかという、この質問には答えられないということでございますので、このための施策を提案したいと存じます。

 別紙を皆様方のお手元に配ってございますので、御参照の上、この制度を全国へ普及するための、政府、地方自治体一体となった事業を御説明申し上げます。

 今、仮に、ある地域で、年齢差により運動能力などに差のある民間人が、ある約束事を互いに履行することを中心概念として組織をつくるとします。その中心概念とは、介護を必要とする構成員Aと介護サービスを提供する構成員Bとの間で、BがAの介護を週に二回、二時間ずつ実行したとします。Bは、この組織に四時間、二回掛ける二時間の時間を預託したこととし、Bみずからまたは配偶者その他の者が介護が必要になったときに、当該集団の別のメンバーから四時間分の同種の介護サービスを返していただけるという権利を持つということでございます。この場合、Bの時間預託は、介護サービスを提供した一時間分を一ポイントとして積み立てることになります。この例では四ポイントということになります。

 皆様御案内のとおり、これは時間預託とかタイムダラーなどの類似の制度でございます。実は私は、平成五年、ワシントンのエドガー・カーン博士の自宅で、この制度につきましてお話をお伺いしてまいりました。カーン博士は、アメリカでこのタイムダラー制の特許をとった方でございますが、博士が申しますのに、介護の問題は、アメリカ合衆国といえども、国がすべてこれを行うとすれば、財政破綻をしてしまうでしょうと言われました。また、相身互いの観念の残る日本でこそ成功するでしょうと言われました。

 私は、その後、自分に返る福祉、自分のために積み立てる介護というキャッチフレーズで、選挙の公約として訴えてまいりました。ところが、現実に組織をつくろうとすると、大きな経済的な支障があります。

 ここからが私のオリジナルになるわけでございますが、この概要を一言で言えば、カーン博士のタイムダラー制度の修正版でございます。

 具体的には、先ほどの例で、Aは公的介護の一般的単価の半額、例えば、身体介護をした場合に一時間未満で四千二十円のところを二千円でということになります。ですから、Aは二千円を当該集団に支弁する。当該集団は、Bの将来の給付要求の担保として、このお金を基金として設立します。そして、生活支援などの場合は一時間につき千円といたします。この基金の運用はしないこととします。

 介護の現場においては、介護度の高い高齢者は専門的技術を持つ看護師や介護施設に任せることとし、要介護一から三程度の方々を対象とすることによって一般の人が参加しやすくし、そのことによって将来のマンパワーの不足をある程度補うことになると思います。

 加えて、介護度五の方でも、私の経験では実は寝たきりの人などは介護がしやすいものですから、ボランティアの方でも可能となります。この場合には介護保険からの支給を受け、時間を倍にして使う。つまり、四千二十円をいただいてBは二時間お手伝いをする。四千円をいただいて二時間ですから、二千円ずつの四千円ということになります。つまりは倍に使うことが可能になるわけでございます。

 もちろん、こういった現金を支弁する例は、介護の受給者が前もってポイントをためていない場合でありまして、ポイントを持つ方々は、このポイントを消費することにより、無料で介護サービスを受けることができます。イメージは多分皆さんもお持ちだと思います。

 この時間預託のポイントは、一ポイントを千円とし、当該サービス提供者の名義で積み立てられ、これは自由に引き出すことができます。ただし、引き出しは原則として、介護または介助のサービスとして、他のサービス提供会員によって提供されるサービスとして受け取ります。ここが、自分のために積み立てる、自分に返ってくる介護たるゆえんでございます。

 つまり、Aが五十代半ばから七十五まで二十年間、約四千時間、週に二回、二時間として、五十二週の二十年間、介護のお手伝いをした場合、そして自分が七十五歳で要介護の状態に至ったと仮定いたします。介護保険で受けられる介護に加えて、十年間で毎年四百時間ずつ、ただで受けられる介護がそこに出てくるわけでございます。

 もちろん、御自身が健康で使う必要がない場合には、配偶者または親のために、あるいは兄弟や子供のためにも使えるということになります。ただし、相続はできないということにいたします。基本が助け合いの目的なので、基金もそのまま当該組織の財産となります。

 次に、まだまだ問題があります。

 実際にこうした組織を立ち上げるにはまず仲間づくりでございますが、実際はお金集めが必要になります。事務所を借り、そして電話を少なくとも二、三本入れます。車は二、三台借りるか買うかしなければなりません。理想があってもこの段階で停滞してしまう例が多いのです。

 そこで、私は、国の予算を入れて、自治体の人的資源を投入し、三、四年でNPOを立ち上げる自治体の事業、これを国が手助けする方法を提案いたします。十年前に私が提案しましたら、NPOに予算を使うことは憲法上できないと言われましたが、自治体に補助金を出すということであれば、多分、事業として成り立つのではないか、こう思っているわけでございます。

 法律は時限立法で五年間、補助は三年間とします。つまりは、補助金を初年度に受けた自治体は三年目までで終わり、二年目から受けた自治体は四年目まで、三年目から補助金を受けた自治体は五年目で終わるということになります。

 設立から丸三年でNPOの運営を軌道に乗せることを目的とし、当該自治体の職員が、NPO設立のための啓蒙活動から、集会用のパンフレット制作、説明会の開催、会員募集など、運営が軌道に乗るまでの事業を行い、軌道に乗った後はNPOとして独立し、自治体とは切り離します。また、その間の職員の給料は自治体が負担することとし、なお、この事業は自治体に強制するものではありません。

 国の補助金は、次の基準を目安といたします。

 人口三万人以下の市町村は、人口一万人当たり一千万円。人口三万人以上五万人未満の市町は、人口一万人当たり八百万円。人口五万人以上十万人未満の市町は、人口一万人当たり六百万円。人口十万人以上二十万人未満の市は、人口一万人当たり五百万円。人口二十万人以上の市は、人口一万人当たり三百万円。なお、政令指定都市は除くものとし、また、立ち上げから寄附金の供与が受けられるように認定をし、かつ寄附金の所得控除または税額控除は初年度から認める特区または特例をつくるものとします。

 NPOの総務的な役割を果たす人々の給料を捻出する必要がありますので、サービス受給会員は入会時に一万円、年会費一万円、サービス提供会員は月ごとに千円を支払うことといたします。

 また、NPOを全国ネットでネットワーク化し、現実にはこれはもう全国ネットができております。ただ、それが普及しないので、私は、普及できるために、国の施策で自治体の事業として進めることを提案しているわけでございます。

 ですから、東京でポイントをためた方が、田舎が九州で、田舎に帰ってお父さんの世話をしなきゃいかぬ、そのお父さんの介護のためにこのポイントが使えるという制度にしたいと思っております。

 さらに、身体介護にかかわる方々には、少なくともホームヘルパー二級以上の資格を義務づけることとし、介護サービス提供中の万々一に備えまして、会員は民間保険に入ることといたします。

 今まで述べてきたような基準で、全国の千八百十一自治体、現在そうだと思いますが、全自治体が補助金を要求した場合の国の負担額は、年間およそ七百二十億でございます。三年間の合計で見ても二千百億円余りになると試算しておりますが、私の試算では、この効果は兆円単位で出てくるものと考えております。

 同時に、団塊の世代以降の人たちが、定年後、男性の三割、女性の四割がこういった組織に参加したと仮定して、平均十年で四千時間をためたとした場合、どの程度の介護に要する国の負担が軽減されるか、実は厚生労働省の協力をいただきまして試算をしてみたわけでございますが、そのすべてを身体介護に費やした場合、実は一年間で一・七兆円軽減できます。十年間で十七兆円。また、逆にそのすべてを生活支援に費やした場合、年間で八千八百億円、十年間で八・八兆円、こんな大きな数字に上ることが計算されるわけでございます。もちろん、やる気で国と市町村が始めて、そして日本人の多くの方々が協力してこれができるわけでございますけれども、こういった方法だということを申し上げておきます。

 その上、このシステムが本当に万全なものとして動き出すと、つまりは受給者と提供者のバランスがとれ出すと、その参加人数の規模の中で、もし大変な数が参加した場合でございますが、この中では無料の介護ということが、あるいは無料に近い介護というものが実現します。

 もともと介護は選ぶことのできる福祉でございます。契約による福祉でございます。民間の企業による介護、社会福祉協議会に代表される官による介護、そして介護保険の二倍のサービス利用が可能なボランティアによる、いわば公による介護、この三つの介護の間に競争が起こってまいります。ここに本当は問題があることはあるんですが、このことが介護の質を保持し、価額の高騰を防ぎ、マンパワーの不足を補います。そして、こうしたメカニズムを通じて公的介護費用の軽減が実現されるわけでございますが、この施策についてどのように評価されるでしょうか、お伺いをいたします。

阿曽沼政府参考人 お答えを申し上げます。

 団塊の世代が大量に退職するということが見込まれておりますので、こうしたマンパワーを介護の分野でも、専門職と適切に役割分担をしながら積極的に活用するということは、先生の御指摘のとおり、大事なことだというふうに認識をいたしております。

 昨年の末に決定されました再チャレンジ支援総合プランにおきましても、高齢者、団塊世代の活躍の場を拡大するという観点から、高齢者、団塊世代の再チャレンジ支援のための簡易な資格制度として介護サポーターを創設することが行動計画にも明記をされております。

 私ども、その具体化に当たりましては、今後、具体的な介護マンパワーの需給の問題、それから費用対効果はどうであろうか、さらには、こうした業務に従事する方々の研修内容をどういうふうな程度にすべきなのか、また、どのような介護業務を対象とすることが可能かなど、そういう多くの検討すべき課題があるわけでございます。

 御指摘いただきました時間預託の制度でございますが、この制度の是非につきましては、今直ちに判断するというのは大変難しゅうございますけれども、いずれにいたしましても、厚生労働省としては、高齢者、団塊世代の社会参加活動を介護分野に活用すべきだということは大変必要なことだと考えておりますので、今申し上げました介護サポーターの具体的方策につきまして、今後、研究事業を実施するなどして検討してまいりたいというふうに考えております。

清水(清)分科員 ありがとうございます。方向性としては私どもの考えも余り間違っていないということが確認できたような気がいたします。

 この会のメンバーには若い方々の参加も実はお願いしなければなりません。力の強い人の介護も必要なのであります。そのために、若年者のサービス会員には特典を与えます。若い方々がサービスを積み立てた場合、生涯には一万時間以上も積み立てることが可能であります。しかし、彼らはそんなにサービスを受ける可能性はありません。

 そこで、若い方の場合、年齢が四十歳になるまで、実はニートという方々がもうそのぐらいになっておられるということで四十歳ということにしたのでございますが、ポイントを単価千円で、現金で引き出すことを認めることにします。この場合、所得税を免除する特別措置をお願いしたいと存じます。

 ニート、フリーターと言われる人の中にも、心優しい力持ちはおられます。彼、彼女らの社会参加の道を開く巣立ちの場にしたいのであります。生活が自立できるようにするためにも、また少子化対策の一助にもなります。賛成していただけるでしょうか、財務省にお伺いいたします。

佐々木政府参考人 所得税の免除のお話でございます。一般論としてしかお答えできないことをお許しいただきたいと思います。

 まず、所得税の制度でございますけれども、個人所得課税は、さまざまな経済活動を通じて稼得される経済的価値、いわゆる所得に対して、税を負担する能力、担税力があるということで、その大きさに応じて負担を求めているものでございます。

 公平かつ適正な課税を確保するためには、ある方の稼得するさまざまな経済的価値を漏れなく、できる限り広く、包括的にとらえることが必要であります。ということで、所得税法第三十六条におきましては、課税標準となります所得の金額に含まれるものといたしまして、収入すべき金額以外に、「金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもつて収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額」という規定がございまして、そういうものも所得とされるということでございます。

 委員御提案の仕組みにつきまして、みずから労務等のサービス提供により預託したポイントに応じまして将来的に介護サービスを利用できる、あるいはポイントを現金で引き出せるという仕組みが御提案の仕組みだと思いますが、このようなポイントは、労務等のサービス提供によって稼得する、やはり経済的価値だということが考えられます。基本的には所得税の課税の対象になるものと考えております。

 それを免除するということにつきましてでございますけれども、これも一般論の域を出ないのでございますけれども、政府税制調査会、個人所得課税に関する論点整理というものが平成十七年六月に出されておりますが、これにおきまして、所得税の検討の基本的な方向として、「広く公平に負担を分かち合うとの観点から、課税ベース縮小の原因となる非課税所得、各種控除のあり方を議論することが重要である。」とされておりまして、御提案の非課税措置の創設につきましては、公平、中立、簡素という税制の基本的な考え方に沿いまして、十分な検討が必要だろうと存じます。

清水(清)分科員 ありがとうございました。

 ただ、ニートの方々というのは今まで働いていないわけですから、別に税収が減るわけではございませんし、また、余分に使える分が出てくるという使い方が多くなると思いますので、このポイントを消費することにつきましても課税をしないという方向をこれから考えていただきたい、このように思っておるところでございます。

 ここまで修正タイムダラー制度をるる説明させていただきましたが、「美しい国、日本」には、心の美しい日本人が住んでいなければなりません。日本は相身互いの国、公共の心厚い、美しい心の国民、美しい日本のシンボル的事業として実施してみる考えはないでしょうか。財務大臣や総務大臣または関連省庁の大臣にもお諮りくださいますでしょうか、石田副大臣にお伺いをいたします。

石田副大臣 今の委員の、みずからの介護の経験も踏まえた大変興味深い提案、このように拝聴させていただきました。

 おっしゃるように、団塊の世代がこれから大量に退職をされるわけでありますけれども、こうしたマンパワーを、介護の分野においても、専門職と適切な役割分担を図って積極的に活用していくということは、私は大変重要だと思っております。

 考えてみましたら、委員も途中でおっしゃいましたけれども、年金とか医療の分野には、ボランティアが入っていくのはなかなか難しいわけですね。ですから、介護の分野については比較的、簡便な資格をとっていただくとかそういうことはあるかもしれませんけれども、ボランティアの活躍していただける分野は多い、こういうふうに思っております。

 御指摘の時間預託制度の具体的な実現に当たっては多くの検討すべき課題があり、この時点でお答えするということは大変難しいとは思います。しかし、いずれにしても、厚生労働省といたしましては、高齢者、団塊世代の社会参加活動などにより効率的に介護ニーズに対応することは重要である、こういうふうに認識をいたしておりますので、関係省庁とも連携しながら取り組んでまいりたい、このように考えております。

清水(清)分科員 ありがとうございました。さすが福祉の党あるいは生活者の党、公明党の石田副大臣のお言葉でございました。前向きな含みのある答弁と受け取らせていただきます。ありがとうございます。

 実は、柳澤大臣にもお答えいただきたかったんですが、こういうお答えを積極的にいただくと運が開けるのではないかと思って用意したんですが、残念でございます。また次の機会にします。

 改めまして、ここまで申し上げました修正タイムダラー制度の長所について簡単に述べてみたいと思います。

 日本人の心の美しさなしには実現不可能な制度であります。つまり、第一に、介護の質を保ち、価額の高騰を防ぐ、選択できる福祉、契約による福祉が現実のものとなります。第二に、自分に返る介護、積み立てる福祉であります。必然的に老後に備え、安心の連帯感を醸し出します。第三に、マンパワーの不足を補います。第四に、国の財政を救います。第五に、地域社会を潤いのあるものにいたします。第六に、「美しい国、日本」のシンボル的な事業となり得、そこに住む日本人の心の美しさが十分に発揮され、外国にもアピールできるということであります。第七に、ニート、フリーターの生活自立を促し、社会参加の契機となる。第八に、障害者の親亡き後のケアも可能となります。第九に、修正タイムダラー制度により、公的介護保険を使い切らないで余らせる人が出てくる。第十に、施設介護の割合を引き下げ、施設建設費等の国家の負担も軽減する。そして最後に、大量に定年退職する団塊の世代にもう一働きしてもらうなど、生きがいを用意することにもなります。

 最後に、総理に、今後の社会保障への取り組みについて決意をお伺いしたいところでありますけれども、時間になりましたので、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

実川主査 これにて清水清一朗君の質疑は終了いたしました。

 次に、泉健太君。

小川(淳)分科員 主査、お待ちください。

 これより我が党の質疑に入りますが、昨日の最終の我が党の質疑時間内に不規則な言動がございまして、その件について少しお時間をいただいて協議をさせていただきたいと思いますが、お許しをいただけませんでしょうか。

実川主査 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

実川主査 速記を起こしてください。

 泉君。

泉分科員 民主党の泉健太であります。

 きょうは、柳澤厚生労働大臣に数点質問をさせていただきたく、お時間をいただきまして、ありがとうございます。

 私は、民主党の方で、少子化対策のネクスト副担当ということもさせていただいておりまして、この間の大臣の、あるいは厚生労働行政の混乱ということについては大変残念に思った一人でもあります。今後は、こういったことは繰り返していただいてはならないということは当然です。私たちは、本当に大臣は少子化対策、子育て支援のことを御理解いただいているんだろうかというふうに、今まだまだ疑いを持たざるを得ないという状況にあることをまず知っていただきたいと思います。

 その意味で、ちょっと冒頭、大臣にお話をお伺いしたいんですけれども、少子化対策、これはどういったものだというふうにお考えでしょうか。少子化対策とは何かということです。

柳澤国務大臣 御案内のように、今、日本の人口の動態というものは、合計特殊出生率が一・二六であるとか、そういうようなことが将来の見通しで出てくるとか、現在もたまたま同じ数値なんですが、そういう状況ではないか、こういうようなことが言われておりまして、このままですといろいろなところに大きな影響が出てくる。これは、労働力人口というような経済的な側面にも出てくるし、年金等社会保障の将来にも懸念の材料になってくることも考えられますし、さらにはまた、単身世帯が非常に多くなるのではないかといったようなことで、社会の成り立ちにも大きな影響が出てくるのではないか等々のことが懸念をされているわけでございます。

 そこで、では、日本の若い人たちはどういう考え方を持っている、気持ちを持っているのであろうか、こういうような世論調査をしたところがございますので、それを見ますと、日本の若い人たちは結婚をしたいという人が多い、結婚をしたときには子供を二人以上持ちたいと思っている人たちがいる、こういうことが判明いたしております。

 したがいまして、我々の少子化対策というのは、この希望と現実とのギャップ、希望ができるだけかなえられるような環境を整えていく、こういうことが重要なのではないか。こういう考え方で少子化対策が適切に打ち出されるべきである、こういうふうに考えているところでございます。

泉分科員 今二つのフェーズがあったと思うんですね。人口動態が一・二六という状況であるということ。このままではいろいろな影響がある、それは経済であり、年金、社会保障、あるいは社会の成り立ちである。そして、若い人たちにどういう考え方かと聞いてみると、二人以上の子供を持ちたい、結婚したいというような御理解だというふうに認識をしますけれども、これは、例えば経済、GDPが、一人当たりはどんどんどんどん高くなっていくけれども、人口全体が減れば全体としては減少するのではないか。あるいは、年金、社会保障、この制度が成り立たなくなるのではないかという点については、これは今の若者たちが懸念をしていることだというふうにお考えですか。

柳澤国務大臣 そのデータは、別に今ここですぐにお示しすることはできませんけれども、まず経済のことはともかくとして、少なくとも年金を初めとする社会保障については、やはり、特に年金などは賦課式の年金を基本としてとっている、こういうことからして、年金に対する若者たちの持っている不安というのは、だんだんだんだん現役の世代が少数になっていく、こういうところから由来しているというふうに、私は常識的にそういうふうに思っているということでございます。

泉分科員 年金の心配あるいは経済の心配というのは、政府あるいは大臣のお考えではないのかなというふうに私は思うんですね。それは、果たしてそういった考え方に基づいて少子化対策ということをするものなんだろうかというふうに思うわけですが、大臣は、やはり経済全体のパイが落ちてはいけない、そして年金を、今の制度を維持するためには子供をたくさん産まなければならないというようなお考えですか。

柳澤国務大臣 せんだっての私どもの新しい将来人口推計に基づきまして、私ども、年金の正式な財政検証は二十一年度に行われるわけですが、せっかく人口推計という数字が出ましたので、この機会に暫定的な試算をしてみようということでやらせていただきました。

 それによりますと、このプロセスについてはなお専門家の検討を将来にまつ部分もありますけれども、大体平成十六年度改正のときの再計算の方式に倣って、それをトレースしたような格好でやりますと、いわゆる所得代替率というのも五〇%台には乗っけられている、こういうことが判明いたしました。

 したがって、今すぐにどうこうということではないということが逆にわかって、少しほっとしている、別に本当の意味で将来に対する不安がなくなったわけじゃないんですが、当座、ちょっとほっとしたというのが正直なところです。

 しかし、若者が国民年金等の未納に走るという気持ちがあると言われているわけですが、その背景には、今言ったような、そんな、自分たちが納めたとしても、本当に年金というものが約束どおり将来給付されるかどうかわからないんじゃないかというような、何とはなしの不安というものが背景にあるのではないか。これはもう私ども常識的に考えているところでございます。

泉分科員 そうしますと、なおのこと、今の年金制度に若者たちが抱えている不安、感じている不安というものを解消しようということで少子化対策をされているということであれば、それは間違いじゃないですか。経済あるいは年金制度を維持するために、あるいはそういうところの問題意識から少子化対策をされているということであれば、私はそれは見当違いだというふうに思います。

 大臣は、こういった年金制度をより信頼を高めるためにも、少子化対策をしていかなきゃならないというお考えですか。もう一度確認を。

柳澤国務大臣 少子化というものが現在進んでいるということは委員もお認めになられると思うんですね。この少子化が進んだ場合に、我が国社会、経済、あるいはいろいろな制度にどういう影響が出てくるだろうか。こういうことを考えますときに、今、大きく申しまして、経済への影響、それから年金を初めとする社会保障制度への影響、それから社会の構造への影響、これを大別して申し上げたわけでございます。

 そういうことが一方にあるという状況の中で、他方、先ほど申し上げたことの繰り返しになりますが、若者の希望というものが那辺にあるかということの調査の結果は、そういう少子化の傾向を、そのままで道行きをたどっていくというのとはちょっと違う希望を持っているということが判明いたしたわけでございます。

 したがって、私どもとしては、そういう若者の希望ができるだけ実現するように、そういう施策を講じていくことが少子化対策ということになるのではないかということを申し上げたわけでございまして、念頭にある話と希望をかなえる話との二重構造になっていますので、そこは念頭にないということをいえば、これはもうそんなことはないわけですけれども、それが、その目的のために、全体の目的のためにだけ少子化対策が行われるということを私としても申し上げているわけではないわけでございます。

泉分科員 きょうは余り時間がありませんが、若者の思い、希望を理解してくださるのであれば、やはり背景に経済や年金、社会保障ということがあるというような形の少子化対策であれば、それはやはり若者の理解は得られないというふうに、私はまず大臣にお伝えをさせていただきたいというふうに思います。

 そして、具体的にお伺いをしたいんですけれども、そうしますと大臣は、出生率、これには政府としてやはり目標を設けることが必要だというふうにお感じになられていますか。

柳澤国務大臣 この御質問は、同じような御質問を実は厚生労働委員会でも私は受けたことがございます。そのときにも私は申し上げましたけれども、出生率のようなものに目標というような観念を入れるのは、私は非常にちゅうちょしますということを申し上げました。

 それはどうしてかというと、これはちょっと昔の経緯もあるわけですけれども、随分前の話になって恐縮ですが、私ども、大平内閣のときに、家庭の問題というか、そういったような問題についても、そろそろ政府が何かの施策をしなきゃならない時代に入ったかもしれないということで、大平さんの政策構想の一環として随分その議論が行われました。そのときでも、それはやはりまずいんだと。やはりそういうところに政府だとか公の力が直接介入していくというのは絶対避けなきゃいけない。そこで、大平さんの政策構想も、家庭基盤という言い方にしまして、家庭の基盤あるいは環境条件、こういったものに対して何か政策的に働きかけることがあったら、それは何なんだろうかというふうに目標設定をいたしました。

 そういう長い考え方の整理の歴史もありますので、私はそれを受けまして、目標というようなことを、目標管理のようなフレームの中で考えるというのは私は感心しないというか、そういう考え方を実は当時から持っているわけです。

 したがって、そもそも、結婚をする、あるいは子供を産むというのは、全く個人が、そういう政府のいろいろな意向とは関係なく、まさに個人個人の自由意思で決定をしていくものだ、こういう考え方。それはもちろん、環境がそういう自由意思にも影響を持つということも十分わかっているわけですけれども、そういう考え方で、私は今自分の心の中を整理しているということでございます。

泉分科員 先日、私は、内閣委員会で各大臣に、ちょうど高市大臣がそのとき体調を壊されて出られなかったときなんですが、お伺いをしましたら、山本大臣、再チャレンジ担当だけは、数値目標は入れるということも考えているということをおっしゃられていましたので、ぜひ閣内で、やはりこの少子化対策というのは数字ありきではないんだということは徹底をしていただきたいというふうに私は改めて思います。

 そして私は、少子化対策というのは、少子化対応策、これがまず一つだと思います。ですから、年金制度も、今の年金制度で続かないから、だから子供をふやすんだ、だから少子化対策だという話であれば、これはおかしい話ですよね。大臣、そうですね。

 ですから、では制度をどのように変えていくのかというところが本来必要な考え方であるということで、今冒頭でおっしゃっていただいた背景の中で、年金や経済の面があり、だからそういったものに危機感を持っていて、若者たちの希望を調べてみたら、たまたまそれがギャップがあるから、それを直していこうという話ではなくて、若者の希望をかなえるためにこの少子化対策があるんだということは、よくよく御理解をいただきたいというふうに改めてお願いをしたいと思います。

 この問題だけではありませんので、次の問題に行かせていただきますけれども、いわゆる民法七百七十二条の問題であります。

 今、大変な問題になっております。もちろん、法務省、総務省、さまざまなところがかかわらなければ動かないものもたくさんありますけれども、先日、東京都足立区が、出生届が出ていなかったことがあったわけですけれども、これに対して、その子供に、例えば児童手当が給付されないというような不利益があるということを踏まえて、足立区においては、住民票を出すことを住民基本台帳法の特例として認めるということを今回実施なされました。

 大臣、このことについての御見解をお願いします。

柳澤国務大臣 これは、戸籍がない場合でも国籍がない場合でも、住民票を出して、住民票を起点としていろいろな施策の対象になるということは十分考えられる場合でございます。出生届が出されないでも、住民票を出すというようなことによって、そういうことで、いろいろな施策の対象になることができるということに配慮をして行うということであれば、それはそれで一つの考え方かと思うわけでございます。

 戸籍のない児童についても、原則として、例えば児童手当については支給することができるということでございまして、これは、住民票が仮になくてもそういうことも可能だというような、住所要件がないということもあるようですが、また、それがあればさらに円滑に進行するということになろうと思いますので、一つの行政としての御判断だったかと思います。

泉分科員 もしかしたら、まだ余りこの点はカバーをなされていないのかもしれないなという印象を受けましたが、ぜひこの機会に、今大変話題というか問題になっております。やはり、三百日の民法の規定があることによって、前の夫の子供ではないにもかかわらず、離婚をして三百日以内に子供が生まれてしまった場合、今は本当に医療の技術も発達していますから、もちろん、存命で生まれてくるケース、早産のケースがあります。にもかかわらず、これが前の夫の子というふうな解釈にならざるを得ない。

 先日も、大阪地検でしたか、間違って訴えたなんということもあったわけですけれども、やはりこういった現場の混乱がある中で、毎日新聞の調査では、すべての自治体ではありませんが、二百ほどの自治体に調査をしたら、八〇%以上の自治体で、いわゆる出生届についてのそういったトラブルがあった、不受理にせざるを得ないケースがあったということが今出てきております。

 これを厚生労働大臣にお伺いをしたのは、不受理ということになれば、どうしても、その後に控えるさまざまな母子保健が受けにくくなるという現状があるということです。その意味から、やはり厚生労働大臣には、子供たちすべてに母子保健は行き届かせなければならない、そういう強い決意から、ぜひとも関係省庁に呼びかけていただくべきではないか。こういった足立区のような対応についてはぜひとも認めていただきたいというふうに私は思うわけですが、大臣、そういった呼びかけをしていただけますでしょうか。

柳澤国務大臣 母子保健法によるいろいろな行政のサービスということは、幼児の健康維持、あるいはその他、いろいろ幼児を取り巻く厳しい環境の判断のために大変重要なことだと考えております。

 そういったことから、今言ったような出生の届けが円滑に行われることがまず基本なんですけれども、それがない場合に、具体の行政サービスをその子供に行き届かせるためにどのような方策があり得るか。これは、今後私ども、真剣に検討していかなければならない問題だろう、このように考えます。

泉分科員 真剣に検討、もう少しよく理解していただきたいんですけれども、大臣、もう一度お伺いしますが、出生届がないということで健康保険を持てない、あるいは児童手当を受け取れない、そういう子たちがいるという事実は御認識いただいていますか。

柳澤国務大臣 そういうことは、現在の状況のもとでは十分あり得ることだというふうに認識をします。

大谷政府参考人 若干具体的に申し上げたいと思いますが、先ほど大臣が御答弁申し上げましたように、児童手当はそのお子さんの出生届が前提にはなっておりませんで、お母さんの監護がまずはっきりしていればお出しできるということで、制度的にお出しできないということではなくて、実例においてそれでちゅうちょした自治体があるならば、そこは確認していかなきゃなりません。

 また、市町村の母子保健も、出生届がなくても、現実に居住が確認されればサービスをするようにということを現実には行っておりますので、この問題でお子さんや母子の健康や福祉が害されることは極力ないようになっているのではないかというふうに考えております。

泉分科員 きょうは、実はそういう意味で、法務省、総務省もお呼びをしようと思っていたわけですが、やはりそこで問題なのは、連携のまずさ、悪さですね。なかなか窓口の方では、そういったことが本当にできるんだろうかという形で、確かにそんなにケースは多くないかもしれませんが、やはり対応に随分と時間がかかる、手間取るというような状況があります。

 ここはひとつ、厚生労働省、総務省、法務省の中で、お互いそういった研究を少ししていただいて、こういったことについての一つの方針というものをなるべく早く明らかにしていくべきだと思いますし、実際に児童手当を受け取れないという子供がいるようであれば、それは大変な問題だというふうに思います。そういった場合、例えばさかのぼって支給できるのかどうかとか、いろいろな問題もあるかと思いますので、ぜひ御検討いただきたいと思います。

 もう一つ、今、超党派で、児童虐待防止法の改正ということについて進めているところですけれども、その中で、ちょっと厚生労働省のある担当の方に、これは虐待担当じゃないですよ、こういった出生届というか児童手当の担当の方にお伺いをしたら、出生届が出ていない、だから実態把握もできていない、だから、行政が何をしろと言うんですかというような答えをされた方がおられたようです。

 この質問をする経緯で、そういう調べ物をした中でそういう答えが出てきたわけですが、実は、全国の児童相談所なんかでは、出生届が出ていないケースでも、もし周辺情報でわかれば、出生届を出すことを説得したり、いろいろな取り組みをしているわけなんです。ただ、そういったことで、ここにはマニュアル的なものは余り存在をしていないというふうに聞いておりまして、この出生届が出ていない子供たちに対しての児童相談所の対応、これを今、厚生労働省としてはどのように指示しているか、お聞かせいただきたいと思います。

大谷政府参考人 そういう名目で特別の通知を発したとかそういうことではありませんけれども、実態の運用の中で、その居住を確認してサービスを提供するようにということは、この世界としては徹底して行われていると思います。

 ただ、個々の担当によってまだ心得が足りない者があるとするならば、さらに徹底していきたいと思います。

泉分科員 大臣、これも要求なんですが、私はちゃんと追っかけますので、ちゃんとやるようにしていただきたいんですけれども、出生届が出ていないということについては、今のところ、出ていないものはわからないじゃないかということで、総務省も法務省も、実際には、その出ていない件数の積極的な把握には努めていないという現状がございます。

 しかし、今、こうして一年間の結婚の件数のうち、実は四分の一が再婚なんですね。どちらか一方、あるいは両方ということで、随分と結婚の動態というか中身が変わってきている、変容してきているという状況がございます。一人親もふえてきています。

 そういうことからいいますと、さまざまな意味で、先ほど言った三百日ルール、こういったものにどうしても実態が合わなくなってしまって、出生届を出すにも大変なトラブルを抱えるというケースが多くなってきております。

 ですので、この実態把握、実態調査というのはやはり進めていかなきゃならないんじゃないのかなと私は思っておりまして、大臣には、総務省そして法務省に呼びかけていただいて、子供の福祉のためにもそれは必要なんですということで、ぜひともこの実態調査を、出生届が出ていない児童がどれぐらいおるのか、そしてまた、その子たちの福祉がどうなっているのかということの調査をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 出生届がいろいろな事由で出ていない子供たちがいる、その子供たちに本来必要な行政サービスの手が届くようにしなければいけないわけですけれども、それをどういう制度の調整の中で実行上いいものを生み出していくかというようなことについては、なかなか難しい問題もあろうかと思いますけれども、機会を見つけまして、必ず早期に、総務大臣あるいは法務大臣に、その問題提起を私からも取り次ぎしたい、このように思います。

泉分科員 今お話をしました一連の問題で、先ほど言った健康保険そして児童手当、こういうものが、出生届がなくてもしっかりと受け取れるんだよということを、ぜひ全国に通達なりでお流しをいただきたいということ、それを、今、きっと前向きに考えていただけるという状況で御答弁をいただいたと思いますので、そのことが一つ。

 そして、全国の児童相談所では、そういった子供たちへの対応もしているという状況にかんがみて、ぜひとも、各省庁と連携をして、この実態把握に努めてほしいということ。それについても、今、前向きにお考えいただくということの御答弁をいただいたというふうに理解をしたいと思います。

 最後に大臣にもう一つお伺いしたいのですが、児童手当のことなんです。

 今政府は、乳幼児加算ということでまた充実をされた。これは、私は、財源の問題ですとかいろいろ不満はありますが、充実をしつつあるということについては、私の立場からは評価をしていきたいと思っているんですが、根本的な考え方として、児童手当というのは、我々は、児童一人一人に対する国からのメッセージ、権利の保障という意味も含めてその児童の一人一人に給付をしていくものだという考えですので、我々の民主党が今まで考えてきた案というのは、最終的には所得制限を外すというようなところまで考えてまいりました。

 それに対して、厚生労働大臣は、今の政府の方向性、これは将来的に所得制限を外していくという考え方なのか、それとも、今は財源の面で厳しいから所得制限があるという考え方か。それとも、いや、そうではないんだ、もう所得制限は最初からありきなんだ、そのどちらかでしょうか。どちらでしょう。

柳澤国務大臣 非常に難しい問題でございます。

 児童手当は、児童の養育のためにいろいろとまたかかり増しもする、そういうようなことで、経済的な支援のかなり大きな柱としてこれが行われているわけですが、現在のところは小学校六年生まで、所得制限がある。ただ、カバレッジは、もう委員御存じのように、九〇%内外のカバレッジでございます。

 しからば、これは、将来は一〇〇%に向けての九〇%なのか。もうこのぐらいでいい、これ以上のところは、かなりの所得を持つお父さん、お母さんに恵まれた子供たちなんだからいいじゃないかと考えているのか、そういうお尋ねなんですけれども、なかなか難しい問題でありまして、これはやはり、本当はお子さんに対する手当なんだから、親がどうであろうとという考え方と、親が相当所得があるのに何でそんなところまでという考え方も実はあるわけでございます。

 私としては、今の九〇%ぐらいということになれば、もう一〇〇に近いのかなという感想を持っているということだけで、きょうのところは御勘弁をお願いしたいと思います。

泉分科員 ありがとうございます。

 これで終わりますが、ぜひその方向性、やはり子供一人一人への、国家からの平等なこういった保障という意味があるんだということは、ぜひ、今大変いい答弁だったというふうに私は思っていますので、今後に期待をしております。

 どうもありがとうございました。

実川主査 これにて泉健太君の質疑は終了いたしました。

 次に、柚木道義君。

柚木分科員 民主党の柚木道義でございます。

 本日は、予算委員会の分科会ということで、厚生労働関係を中心に、なるべく大臣にお答えをいただきたいということでお願いをさせていただきたいと思います。

 早速質問に入ります。

 昨年の衆議院の厚生労働委員会の中でも大臣とこの問題はやりとりをさせていただきましたが、奈良県において、妊婦の方が十九病院で受け入れがかなわずに亡くなられるということがございました。昨年の十月二十七日の厚生労働委員会でのやりとりの中で、亡くなられた高崎実香さんの死を決して無駄にしない、そういった思いのもと、これは大臣から、奈良県を含む八県において総合周産期母子医療センター、こういった母子ともども受け入れがしっかりとできる、そういうセンター整備がなかなか進んでいない中で、来年度中に完備をするということを御答弁としていただきました。

 ところが、私がその後調査をいたしましたところ、きょうの資料の一枚目におつけをしておりますこの八県の現状は、ざっと見ていただくと、検討中、準備中というところが五県、そして、実際に国の基準を満たす形でのセンターの設置は、見込みなし、もしくは必要なし、その他で対応というところが三県となっているわけでございます。

 大臣、この状況から、では、どのようにして十九年度中にこの総合周産期母子医療センターを整備していかれるおつもりなのか。いろいろな地域の事情がございます。しかし、できない理由ではなくて、どうやって整備をしていくかという視点から、前回の質疑同様に、改めて全国の妊婦の方々に向けてお答えいただくつもりで御答弁をいただきたいと思います。

柳澤国務大臣 柚木先生にあのときに応答を申し上げておったことを思い出すわけですけれども、本当にああいうことはもう二度と再び起こしてはいけないということで、私もこの周産期医療ネットワークの整備の促進ということを強く考えたわけでございます。

 私自身、関係の都道府県からの、あれは部長さんの会議ですか、わざわざ出かけていきまして、そういうことはしっかりやってもらわないと困るんだということを直接あいさつで話をしたかと思います。そういうこともしているわけですが、今御指摘のように、いろいろの各県の持っている事情を背景として、そうしたことに対しての実現への意向も、なかなか持てないというか、持たないというか、そういうところがあるということを聞きまして、そういうことであってはいけない、このように思うわけです。

 と同時にまた、周産期医療ネットワークというようなことであれば、これはもう絶対必要だと私は考えますが、例えば、総合周産期医療ネットワークがまずあって、それから次に地域の周産期医療ネットワークがあって、それからそのネットワークの中に診療所もあるし助産所もあるというような、絵にかいたようなものを全部画一的につくらなければだめだというアプローチとはちょっと違うけれども、実質そういうものが確保されることを考えたいというようなことは、私はあり得るのかなというふうにも他方で思っております。しかし、実質、機能的にそういうものがちゃんと確保されなければこれは許容できないというのが私の立場でございます。

 それやこれや、今の医師不足の中で、本当に地域ごとの事情というものを我々はもっとよく知って、それを踏まえた上で、例えば都道府県の医療対策協議会等がどういう働きをするかといったようなものについて、もっと具体的でかつ実効性のあるいろいろな協議を今後していきたいと実は考えております。そういうことの一環として、今の柚木委員の指摘の周産期医療ネットワークの整備についてもこれの促進方を図ってまいりたい、このように考えます。

柚木分科員 大臣、確かに現状は私も承知をしております。しかし、各都道府県がやってもらわないと困るんだ、もちろんそうなんです。そして、実際にやろうとしているところがほとんどであり、また、見込みなしというのも、そういうことを全くやらないということではなくて、それに準ずる形で、まさに大臣の言われるように、具体的に実効性のある形を取り組んでいこうとしている。そういう意味においては、この八県すべて、一生懸命に取り組みを行っているわけですよね。

 しかし、各自治体だけではどうしてもその実現が困難である。例えば、この中にも、佐賀や長崎やあるいは宮崎、これは国の機関であります。そういったところは、やはり自治体だけでは、まさに佐賀県なんかは、県ではどうしようもない面があるというふうなことも書いているわけです。

 これは、お互いができない理由を探す、ある意味で責任転嫁をしていては、実際に住民の皆さんのお産の安全、では、これは一体どこが責任を持ってやるのかということになるわけですから。

 実質的な面、結構です。しかし、十九年度中に整備をする、あの答弁にうそがあってはならないわけですから、そこについては、再度確認しますよ、実効性のある形で結構ですから、必ずやるとお答えいただけますか。

柳澤国務大臣 必ずやります。その考え方を毫も変えるつもりもありませんし、絶対実現したい、このように考えています。

柚木分科員 大変に力のこもった御答弁をいただきましたので、ぜひ今後の、この十九年度中に向けた整備状況、現状把握をしながらということをおっしゃいましたが、把握をした上で必ず実現していただくということを今確認させていただいたということで、次の質問に入りたいと思います。

 ちょっとこの問題で時間が過ぎましたので、若干通告を飛ばして、時間があればさせていただきたいと思うんです。

 こういった取り組みの中で、実際に小児、産科、そういった不足診療科において、とりわけ病院勤務医ということになるんでしょうか、ある意味では長時間労働、過労死の認定基準をはるかに超えるような、月に十回ぐらいの宿直をこなしながら、翌朝もほぼ一〇〇%の方が勤務をしている。そんな状況の中で、まさに医師の過労死、過労自殺などということも問題になってきている中で、そういう方々がまさにバーンアウトして、病院勤務医から、ある意味では多少自分のペースで診療もできる開業医に流れていくとか、さらには、それによって産科病棟が閉鎖をしてしまう、そういう事態が全国的に起こっているのは、大臣御承知のとおりだと思います。

 ですから、それに対する、やはりそうならないための施策、あるいは、そういう現場で踏ん張っていらっしゃる方々へのインセンティブが必要なわけでございます。

 そこで、診療報酬の問題についてお伺いをしたいと思います。

 現在、来年の改定に向けて、これから徐々に秋に向けて議論が煮詰まっていくというふうなことだとは思うんですが、昨年の三・一六の引き下げの際に、確かに小児加算が行われた。しかしながら、これは医師不足解消にはほど遠い、さらには、焼け石に水にすぎない、そういう見方もあるわけでございます。

 ですから、今後の推移を、四月以降にそういった実情、改定の影響を調査するというふうに伺っていますが、今後の改定に向けて、現時点で大臣として、とりわけ、小児、産科、この二点、この診療報酬の加算について、現段階での所見で結構ですから、今後この推移を見ながら、本当の意味で小児、産科救急医療の体制整備のために、大臣としてどのように取り組んでいくお考えであるか、その所見をお聞かせいただきたいと思います。

柳澤国務大臣 現在の病院の先生方の厳しい勤務状況、さらには産科、小児科の医師の不足、こういったようなものを背景として、次期の診療報酬改定のときに、その面からの取り組みについてどう考えるか、こういうお話でございます。

 これは、私どもとしても、私自身は、診療報酬というのは余り政策的なことに偏した決め方というのはいかがかという考えも片っ方で持ちながらではありますけれども、やはり事がここまで運んでいるという事態は、これはもう診療報酬改定のそういう段階においてもやはり考慮せざるを得ないんじゃないかと私は考えております。

 これはまた専門の先生方あるいは関係の皆さん方が寄り寄り協議する話ではありますけれども、私としては、そうした隘路の打開ということにも、できるだけ効果的な診療報酬の実現ということに向けて努めるべき立場であろう、このように考えているわけでございます。

柚木分科員 考慮せざるを得ないという部分を重く受けとめさせていただきたいと思います。

 この診療報酬、もちろん限定的な部分はございますから、この後、具体的な医師不足の解消についての取り組みについて、さらにお伺いをさせていただきます。

 前回の十月二十七日の質疑の際に、実は私から大臣に提案をいたしました。これは奈良の場合に、いわゆるハイリスク分娩である場合の母体の県外搬送率が四割にも上るということで、大阪の産婦人科診療相互援助システム、いわゆるOGCS、こういう機能に依存をしている現状がある。高度広域救急医療ネットワークとでもいったらいいんでしょうか、そういう制度を、やはり奈良県のような、まさに今すぐに完璧に整備するのが難しい場合の、当面の期間、こういうシステムをしっかりと機能させていかなければ、結果的に十九病院であの場合には受け入れがかなわなかったわけですから、そこをしっかりと実効性のあるものにしていかなければならない。

 そこで、お伺いをしたいと思います。このOGCS、私はそういった高度広域救急医療ネットワークの整備が必要であり、例えば奈良と大阪の連携をもっともっとしっかりとしたものにしていかなければいけない、そういった視点で大臣に御提案をさせていただいた際に、大臣は、それは大変重要な視点なので、ぜひしっかりとそこも踏まえて取り組んでいきたいということをおっしゃられたわけです。

 そこで、具体的にはどうするのか。大臣、例えば今回のOGCSが、結局十九もの病院が受け入れていただけなかった原因の大きな一つに、受け入れ病院のベッドが満床であったという問題が、かなりの割合で上がっているわけでございます。ちなみに、このOGCS、電話で照会をする、あるいはネットで検索できるわけですが、最初の一件目でその搬送先を見つけるケースは半分ぐらいにとどまっているわけですね。さらには、近隣病院で、先ほど申し上げましたように産科が閉鎖をする、その影響で、さほどハイリスクでない出産までがどんどん集中してきている、そういう幾つかの要因の中で、今回の奈良のあの問題が起こったわけであります。

 ですから、このネットワークをより整備していくという視点で、このベッド数、もちろん、MFICUであったりNICUであったり、それぞれ何がどう不足しているのか、どうすればいいのかという調査は必要でしょう。しかし、その上で、受け入れるハードの部分についても、そしてもちろん医師数についても、今後こういう援助システムの拡充という視点でぜひとも検討していく、再構築をしていく必要があるというふうに私は考えるわけですが、これについてどうお考えであるか、所見をお聞かせいただきたいと思います。

松野大臣政務官 冒頭、亡くなられました妊婦の方の御冥福を心からお祈りを申し上げます。

 奈良県からの報告によりますと、中核病院であります県立奈良医大病院の病床数の不足が妊婦死亡の要因の一つであったと報告を受けております。そのため、奈良県においては、十九年度内に必要な病床数の確保を図るとともに、当面の対策として、満床の場合には救急救命センターでの受け入れを図る方針であるとのことであります。

 厚生労働省といたしましては、奈良県のような周産期医療ネットワークが整備されていない県に対し、整備されるまでの間の現行体制での迅速かつ適切な医療の提供を促すとともに、各都道府県に対してその実態を把握すべく調査を実施しているところであります。総合周産期母子医療センター等の病床数の確保に努めてまいります。

柚木分科員 大臣政務官に御答弁いただいたんですが、当面、救命救急センターでの受け入れを図る、これで高崎さんはだめで亡くなったわけですから、本当に今、冒頭御冥福をお祈りするとおっしゃっていただいたわけですから、調査するまでもないわけです。だめなわけです、今では。同じ事例が起こった場合、助からないんです。少なくとも、同じ事例が起こったとき奈良県では助からない。

 これは、ベッド数、もちろんベッド数をふやせばいいというものじゃありませんが、やはりそういう部分についても、あれだけ全国的に先進的なシステムと言われているOGCSですらうまく機能せず、そして今、産科医の逮捕等いろいろな事例の中で、閉鎖がされ、医師がやめ、そしてますますそういったところに集中をするということにあるわけですから、これは早急な対策を重ねてお願いして、次の質問に入りたいと思います。

 これまでは、ある意味では緊急避難的な形での取り組みについてお伺いをしてきました。短期的に、とにかく今すぐにでもできること、お産をされる方、子育てをされる方が、全国どこの地域であっても安心して出産や子育てができる、そういう環境整備が重要でございますが、それと同時に、やはり中長期的な視点も持って、先ほど来大臣も、根本的な形での解決はなかなか難しいということをおっしゃっている、その認識は私も同様でございます。

 ですから、そういう意味では、例えば、医師一人が学部研修から卒後研修、そして専門医としての研修を受けて、ある意味ではひとり立ちされるといいますか、そういう現場で本当の意味で医師として仕事をされるまでやはり十年ぐらいのスパンがかかる。そういう中で、中長期的な視点について質問をさせていただきたいと思います。

 これは医師の養成についてですが、大学における地域枠というものがまずございます。そして、御承知のとおり、奨学金制度というものがございます。さらには、その奨学金の中でも特定診療科に進む方々を対象とした奨学金制度というものがございます。

 御承知のとおり、幾つかの自治体あるいは大学で、そういった地域枠、さらには特定診療科への勤務を希望する学生を対象とする奨学金、これはそれぞれ、地域枠については奨学金と連動した形での地域枠が五県現状としてあり、また、特定診療科勤務を希望する学生を対象とする奨学金が六県あるわけです。

 そこで、これはぜひ大臣、私は新しい提案をさせていただきたいと思うんですが、ちょっときょうは資料をつけられなかったので、これは厚労省さんからいただいたものなんで多分見たことがあると思いますが、地域枠と奨学金は、連動させている県が五県ございます。しかし、これでは大臣、実際にこの地域枠で入って卒業された方々が、例えば奈良県、まあここはありませんけれども、産科医が不足している、しかし実際に産科に進むかどうか、これは全く保証がないわけです。あるいは地域枠で入っても実はほかの都道府県で勤務される方もたくさんいらっしゃるわけです。

 しかしながら、この地域枠と、ちょっと今近くなんで見えるかもしれませんが、下にある特定診療科勤務を希望する学生を対象とする奨学金、こちらとの連動、セットにすれば、実は不足地域における医師の偏在解消であったり、さらには不足診療科、ここには小児科、産婦人科、麻酔科等ございます、その不足診療科における医師確保対策にも同時につながることになるわけです。

 この組み合わせというのは、実はきょうおつけをしております資料の二枚目を見ていただくと、この一番上の、左から見ると、二番目、三番目、二番目は地域枠と連動した奨学金、三番目は特定診療科勤務を希望する学生対象奨学金、この両方の組み合わせの都道府県というのは、実は一つもないんですね、丸を見ていただくと。

 当然、職業選択の自由等ございます。しかしながら、現状としてこれだけ医師不足が叫ばれ、また、例えば千葉県なんかでは医師養成のために三千二百万円もの破格の奨学金を出しているような自治体も出てきています。

 そういう中で、つまり、それだけ緊急性が高いんだ、あるいは中長期的にそういうことをしないと、不足診療科、不足地域における医師の養成が不可能なんだ、そういう認識のもと、地域枠と特定診療科を希望する学生への奨学金制度との連動、この新しいタイプの拡充について、これは当然、文科省さんあるいは総務省さん、そういった省庁との連携も含めて、ぜひとも取り組んでいただくことを、ぜひ大臣、前大臣の川崎厚生労働大臣が、この地域枠とそして奨学金制度のセットの取り組み、これについては大変前向きに、当時の小坂文部科学大臣としっかり相談して必ず取り組むということを答弁いただいているわけです。それにさらに一歩踏み込んで、特定の診療科希望の奨学金制度との連動、この新しい取り組みについて、ぜひとも大臣の前向きな御所見を伺いたいと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 現在、この地域枠の設定とそれを奨学金で裏打ちしていくという制度につきましては、厚生労働省、総務省、文科省が共同して取り組んでいるということを言わせていただいてよろしいかと思います。それをさらに関連づけて、地域枠と特定診療科勤務をクロスさせたらどうだろうか、こういう新しい御提案でございます。

 ただ、地域枠を設けて入学させるというときに、診療科目まで決めさせるというか、そういうことが医学教育の上で望ましいかどうか。非常に柚木委員の切迫した気持ちは私自身も共有しておりますけれども、実際問題として、医学部に入りたいといって地元から奨学金をもらって、その地元に貢献するようなお医者さんになりたい、このくらいはあり得る、学生に対する地域社会の希望として、それをぜひ実践してもらいたいということで、あり得るかと思うんですが、さあ、ここの地域でお勤めいただいて、何々科を専攻してくださいということまでいった場合にどういうことになるのかということについて、私、ちょっとまだここでにわかに自信を持ってお答えする用意がないわけでございます。

 先生の気持ちは非常によくわかりますので、そういう方途をこれから研究していくということ、それをちょっとお約束させていただくにとどめたい、このように思います。恐縮ですが、よろしくお願いします。

柚木分科員 ぜひ研究をいただきたいと思います。もちろん、縛るということじゃないんです。これは強制じゃないんです。もともとそういう特定診療科を希望する学生さん、そしてその方が、地域でしっかり地域医療に貢献したいんだ、そういう思いで地域枠として入ってこられる、そういう方々がその対象であるということで、無理やりそこに当てはめようということではございませんから、ぜひとも研究をしていただきたいということをお願いして、次の質問に入りたいと思います。

 臓器移植の問題でございます。これは以前の厚生労働委員会でも大臣に直接やりとりをさせていただきましたが、生体肝移植についての保険適用の問題でございます。

 御承知のように、当時名前も出されまして了解をいただいておりますので、大臣はまだ覚えていらっしゃると思いますが、大阪の森上悦子さんの問題です。保険適用になるということで息子さんから移植を受けられた、ところが、実際に手術を受けてみたら保険がきかなかった。この手術には、御承知のとおり、一千万、二千万という高額な医療費がかかるわけです。そういうケースが、実はあの森上さんの例のみならず、同様のケースが最近では頻発している、これは全国の医療現場の方から私もヒアリングをして承知をしております。

 そこで、大臣、ぜひ御検討いただきたいのは、今後、診療報酬改定に際して、例えば外保連であったりいろいろな専門学会あるいは専門部会、そういった中での議論あるいは提言など現場の意見を勘案した上で、中医協の中できっちりと審議をしていただき、そして、遅くとも来年の診療報酬改定の際、あるいはそれまでにその評価をきっちりと示す、あるいは見直す、そういったことが、やはり現場の混乱、患者さんの苦悩といったことを考えると大変重要になってくるやに考えるわけでございます。

 ですから、わかりやすく御答弁をいただくと、次回診療報酬改定でこの評価を見直すのかどうなのか、あるいはもう少し、混乱を来さないように、しっかりと医療現場の方々にわかる形で、患者さんにわかる形でその評価を示す、そういったことをぜひ取り組みをいただきたいと思うんですが、これは大臣、ぜひ明確にその方向性を御答弁いただきたいと思います。

柳澤国務大臣 生体部分肝移植を行う医師であれば適用基準というものについても熟知していたはずであるということでございまして、私どもとしては、現場の混乱というようなことについては、その点、すっとはなかなか理解できないという状況です。そういう意味で、当省におきましても周知を図ってきたことでございますので、現時点においては、基準自体を見直す、そういう状況ではない、こういうことでございます。

 ただ、いろいろと医療の技術あるいは環境といったようなものが変化していることもございますので、ここで申し上げられることは、次期改定に向けて、学会等から提出していただいた提案あるいは科学的な知見というものを踏まえまして、中央社会保険医療協議会のもとの専門組織である医療技術評価分科会において検討をし、適切に対応するということでございます。

柚木分科員 ぜひとも適切に対応いただきたい。検討、そして適切にという言葉がございましたから、その中身についてはぜひともその部会の中での提案を踏まえてということでお願いをして、時間が来ましたが、ちょっと申しわけないんですが、一問だけぜひ最後にお願いします、短く言いますので。児童虐待の問題でございます。

 実は、私の地元は岡山県倉敷市というところでございますが、虐待においてお子さんが亡くなられるというようなことが最近起こっております。そこで、児童相談所の機能の強化あるいは役割分担の明確化、これを最後にぜひお伺いさせていただきたいと思います。

 実際に今、相談員の増員、人口規模において百七十万人について三名でしたでしょうか、そういう方向性が示されております。大変ありがたいことでございます。しかし、それだけでは十分ではないんです。

 今、現場の相談員の方は大変疲弊しています。一人当たり年間百人ぐらいの案件といいますか対応を抱えておられますので、ぜひこの役割分担、例えば学校とかあるいは市役所、公民館等、そういう現場を一次的な窓口としてそういう方を配置して、そこを経てどうしてもという方が、例えば二次的な相談窓口として近所の児童相談所に来られる、そういった医療における一次救急から三次救急までといったような段階的な役割分担、そういうことを検討していただき、まさに現場の支援、そういった部分につなげていただけるような方向性を少しでもここでお示しいただければ、まさにそういう亡くなられるというような事例の解消にもつながっていくというふうに思いますので、ぜひ前向きな方向性をお示しいただければと最後にお願いをさせていただきたいと思います。

柳澤国務大臣 児童虐待の対応件数が増加する中で、児童虐待への対応については、平成十六年の児童虐待防止法等の改正をいただきまして、市町村も虐待通告の通告先となりまして、その意味では窓口がそれだけ広がった。広がると同時に、児童相談所と市町村がよく連携をして、これにすき間のないように対応していく、こういうことが一応実現できたわけでございます。

 この上ともに、これに必要に応じて警察の援助もいただくというようなことにもなりますし、場合によっては医療機関などとの連携もとらなければいけないかと思いますけれども、そうしたことで、児童虐待が悲劇に至らないような、そういう対応の充実に努めてまいりたい、このように考えております。

柚木分科員 どうもありがとうございました。

 以上で終わります。

実川主査 これにて柚木道義君の質疑は終了いたしました。

 次に、清水鴻一郎君。

清水(鴻)分科員 自由民主党の清水鴻一郎でございます。きょうは質問の時間を与えていただきまして、まことにありがとうございます。

 きょうは、社会保障制度、医療制度について質問をさせていただきたいと思っています。

 私は、最近、日本の医療制度、特に日本型医療と私は呼んでおりますけれども、日本型医療が崩壊しつつある、あるいは崩壊の危機にあるというふうな認識であります。

 医療制度というのは、各国それぞれの歴史もあり、そして成り立ちもあります。だからよく国際比較などが使われますけれども、日本は結果として今、少なくともWHOの資料などによりましても平均寿命世界一、健康平均寿命も世界一、健康達成度も世界一という結果である日本の医療制度というのは、大変うまく今までは機能してきたのではないか。

 ただ、世界に例のない少子高齢社会を迎えたということでありますから、確かに世界に例がない、だからこれからどういうふうにその社会保障制度あるいは医療制度を、いいところを維持しながら改善すべきところ、工夫すべきところは工夫していくということが大切であると思いますけれども、少なくとも今まで世界一であった結果を残しているこの医療制度を堅持するという一つの柱が必要なのではないかな、そういうふうに思っています。

 だから、例えば、よく問題にされます在院日数が世界の諸国に比べて長い、あるいは病院数、ベッド数が多いというようなことも指摘されますけれども、例えばベッド数というのは、病院と名前をつければ施設的な要素、例えば今現在であれば療養型病床群なども病院という名前でありますから、その在院日数は当然その目的からいって長いものになる、それを平均値で割れば日本の在院日数は長いということで、国際比較からも随分長いのではないかということになってしまいます。

 しかし、各国の在院日数の比較の表などを見ますと、各国それぞれ、例えば公的病院だけの集計であるとか、あるいは長期の療養的な施設は省いて統計をとるとか、いろいろな統計のとり方、そしてそれぞれの施設の名称も、病院というのか、あるいはナーシングホームというのか、長期療養型施設というのか、いろいろな名前があります。だから、そういうものの国際比較は余り意味がないのではないかと私自身は思っています。

 だから、少し名前を、今の療養型病床群などを例えば療養型施設とすれば、それだけでも、もう在院日数は随分短くなってしまう。急性期の病院の在院日数は、国際的な比較にしても決してそんなに今現在は長いものではありません。そして、何よりも、では長いから日本の医療費が世界各国に比べて倍かかっているんだ、それでは幾ら何でもかかり過ぎだろうというのなら、それはそれでわかるわけでありますけれども、決してそうではない。

 つまり、日本の医療費は、例えば、それこそ国際比較をせざるを得ないわけでありますけれども、GDP比で見ますと、OECD加盟国三十カ国中の第十七位、先進七カ国の中ではイギリスと並んで大変低い八%程度の医療費で、一番いい結果を出している。そういうことを踏まえながら考えていけば、大きな医療制度の、ベッドの削減あるいは療養型病床群の廃止等も含めて、なぜそういう国民に対して非常に不安感を与える施策を断行していかねばならないのか、その辺のところがよく、必ずしも私には見えてこないところであります。

 ただ、そうはいっても、少子高齢社会なんだ、大変なんだ、だから社会保障の制度も、いわゆる持続可能という言葉でありますけれども、その持続可能というのも、どの観点から持続可能かというのは大変難しい問題でありますけれども、しかし、社会保障制度の中で、給付と負担ということについてはこれから考えて、工夫していかねばならないというのは私も全く同じであります。

 現在、国民負担率といいますのは、二〇〇四年で見ますと三五・五%ということで、二十年前、一九八四年の三四%に比べてわずか一・五%国民負担率は上がっている。内訳で見ますと、社会保障負担率というのは、二十年前、一九八四年の一〇・一%に比べまして二〇〇四年では一四・四%と四・三%の伸びを示しています。この二十年間、徐々に上昇しつつあるということであります。

 しかし、租税負担率で見ますと、一九八四年の二三・九%に比べても、二〇〇四年では二一・一%と、むしろマイナス二・八%というふうに低下をしています。もちろん、租税でありますから、税金でありますから、景気の動向等もありまして、途中もっと伸びた時期も、また下がった時期もありますけれども、少なくとも税という負担率というのは、決して負担率が上がっているわけではないわけであります。

 税収というのは景気に左右される。だけれども、例えば最近、例を挙げますと、トヨタが世界最高益を上げた、あるいは公的資金が導入されました銀行、史上最高の収益を上げたというようなことも含めて考えてみますと、やはりもう少し社会的に租税、税金というものが社会保障に投入される、そういうものであってもいいのではないかと私は思うわけでありますけれども、特にまた、社会保障の安定的な財源としての税制というのはこれから大変大事な問題であろうと思いますけれども、それに対して担当者の方々はどのようにお考えかということを一点お伺いしたいと思います。よろしくお願いします。

薄井政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘ございましたように、国民負担率、足元では平成十七年までの実績が出ておりますけれども、税、社会保険料合わせまして三八・二%、こういう数字でございます。十九年度、これは見通しでございますが、三九・七%、こういう数字になってございます。

 今非常に厳しい国の財政状況の中で少子高齢化が進んでいく、こういうことに伴いまして、年金なりあるいは医療、こういった社会保障の経費というのは年々増加しておりまして、これをこのまま放置しておけば、将来の世代に重い負担のツケ回しをしていくことになる、かように考えております。

 そういうことで、ここ数年、年金、医療、介護と一連の制度改革が行われまして、この結果、社会保障給付の将来の見通しということでございますけれども、これは国民所得比で申し上げさせていただきますけれども、二〇〇六年に二三・九%であったものが二〇一五年には、これは改革後の姿でございますが、二五・三%、改革前であると二七・四%であったものが二ポイントほど下がる、こういう給付の見通しを持っているところでございます。

 いずれにいたしましても、セーフティーネットとして社会保障に求められる水準に配慮しながら、引き続きまして効率的な制度の運営を目指しまして、社会保障の給付の伸び、これは伸びていくわけでございますが、その伸びの抑制には努めていく必要があると考えているところでございます。

 その上で、必要な給付に対する負担につきましては、将来の世代に先送りすることのないように、安定的な財源を確保するということが必要であろうと考えております。

 特に、基礎年金について申し上げますと、国庫負担割合につきまして、平成二十一年度までに二分の一に引き上げる、こういうことになっておりまして、そのための安定した財源を確保する必要がございます。こういった観点も含めまして、消費税を含みます税体系の抜本的な改革を検討していく必要があると考えているところでございます。

 いずれにいたしましても、社会保障に要する費用というのは、世代間の公平性あるいは経済、財政とのバランス、こういったことも考えながら、税と保険料と自己負担、こういうふうなものを適切に組み合わせる必要があると考えておりまして、引き続き、給付と負担というものを一体的にとらえました改革努力というものを継続してまいりたい、かように考えているところでございます。

清水(鴻)分科員 ありがとうございます。

 今御答弁いただきましたけれども、国民負担率のまさに国際比較をしてみますと、財政赤字を加味しますと、いわゆる潜在的国民負担率というのが、二〇〇四年のデータしかないんですけれども、日本で四五・一%、今はもう少しふえているのかもしれませんけれども。それに対して、イギリスは五〇・二%、ドイツは五九%、さらにフランスは六六・六%、スウェーデン七四・三%。アメリカは三五・二%と例外的に、アメリカは自由競争の社会でありますけれども、それを、例外を除けば日本の負担率は極めて低率であります。

 私は、せめてイギリスあるいはドイツ並みの負担が必要だと思いますけれども、将来展望としてどのぐらいの負担率というのが、世界で例のない少子高齢社会を迎えた日本にとって、どれぐらいの負担率なら適正とお考えか、もしお考えがあれば教えてください。

薄井政府参考人 私どもでお答えすることができるのは社会保障の給付の見通しということでございます。それは、先ほど申し上げましたように、制度改革後の姿ということで申し上げさせていただいたところでございます。

 今御指摘ございました潜在的ないわば財政赤字も含めました国民負担率でございますけれども、二〇〇七年度の日本、これは財務省の方のあれでございますが、四三・二%というふうに承知をいたしております。

 今先生御指摘ございましたように、北欧は非常に高い数字でございますし、一方でアメリカは日本より低いというところでございますが、社会保障だけではなくて、さまざまな財政支出全体をちょっと加味して議論しなければいけないかと思っておりますので、過去、諮問会議等でもさまざまな御議論がございましたけれども、私どもとしては、いずれにいたしましても、社会保障制度がセーフティーネットとしての機能を果たしていけるように、そういう中で給付と負担ということも考えていく必要があるのではないかと考えているところでございます。

小川(淳)分科員 主査、済みません。

 与党側の副主査それから分科員の出席を求めたいと思いますが、お取り計らいをお願いできますでしょうか。

実川主査 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

実川主査 速記を起こしてください。

 清水鴻一郎君。

清水(鴻)分科員 負担率につきましては、これから工夫をしていかねばいけないと思いますけれども、ただ、やはりこの少子高齢社会を乗り切るためには、社会保障費の財源というのはしっかり確保していく工夫をお互いに考えていきたいと思います。

 先ほども申しましたけれども、日本の医療というのは、やはり今、結果としては最高レベルにあると思います。それだけに、今のOECDの先進七カ国、この中ではイギリスと並んで最下位の医療費ということでは、現在進められています医療制度改革というのは、どうしても財政優先の改革という感じでありますし、医療費適正化という名前のもとで医療費の抑制政策が中心になっているのかなというふうに思います。医療の質と安全を確保するために医療はいかにあるべきか、そういう視点から考えていく必要があるのかなというふうに思います。

 過去に医療費の抑制政策を進めた結果、重大な医療の質の低下を招くことになった、現在、ブレア首相の医療費投入宣言によって医療費を大幅に増額していますけれども、一度崩壊したイギリスの医療制度というのはなかなか回復しないということも考えますと、日本の国民の健康と命を守るために、社会的共通資本であります医療資本というのを重視して考えていくべきというふうに思います。これはもうあえて答弁は求めませんけれども、厚労省の方もその点は十分考慮していっていただきたいなというふうに思います。

 それから、まさにその医療費が少ないということも含めて、医師の需給に関する問題であります。医師不足。医師の需給に関する検討会報告書というのが平成十八年七月二十八日に出されておりますけれども、内容はかなり不的確、不適正な部分があるのではないかなというふうに思います。

 つまり、医師の労働時間というのを四十八時間というふうに設定しています。既にここで八時間の超過勤務を前提としていますし、あるいは待機中あるいは自己研さんの時間等は全く考えずに、診療時間等のいわゆる直接的な業務時間だけを算入している。故意に、ある意味では必要な時間数を減少させて当初より医師不足が少なくなるような、そういうことが何かもくろまれているのかな、こう思ってしまうような部分もあるわけであります。

 一般労働者の方と当然同等に労基法を遵守した場合の必要医師数というのを、真に必要とされる医師数というのを出す必要がある。我が国の医師数というのはOECDの中でも非常に少ない。今現在で三十カ国中二十七位ですか、三十カ国中、医師数が二十七位ですよ。それで結果としてトップ、やはりこれは、お医者さんに負担がかかるのはやむを得ないのではないのかなというふうに思います。

 だけれども、今、国家試験で三四%ぐらいですか、もう三分の一強が女性医師でございます。そうすると、例えば看護婦さんなんかの場合は、今現在、大体百六十万ぐらいの方が就業していると考えて、五十万ぐらいの人は就業していない、そういう計算。つまり、実際に資格者は二百十万ぐらいいるけれども五十万は働いておられない、そういう前提に立ちますけれども、医師の場合は、女性も含めてフルタイム稼働だということを前提にしているんですね。そのことも、まさにこの少子化の中で、子育て支援、あるいは子供さんを産んでいただきたい、ちょうど大臣も来られましたけれども、いわゆる二人は持ちたいというような方を実現していくためには、これはちょっと無理な算定ではないのかなというふうに思います。

 厚労省的には、不足ではないんだ、偏在だというふうによくおっしゃいます。しかし、そもそも、診療科目が今のところ自由に選択できる、自由に地域も選べるということを前提にしていれば、ある程度の偏在というのが起こるのは当然のことであります。それらの偏在を織り込んだ上で、なお不足が起こらないような需給のバランスを考えていかねばならないと思うわけであります。

 現在、医師の不足、これが医療の崩壊の兆しになっているわけでありますから、この医師の需要というのは大変大事な問題である。今までも医師需給に対する政策が行われてきましたけれども、結果として、今医師不足、あるいは科の偏在、あるいは地域の偏在というのが起こっているわけであります。

 先ほど申し上げましたように、日本は恐らく今、千人当たり二・一人ぐらい、OECDの平均は三・〇とかそれぐらいじゃないですかね、恐らく一・五倍ぐらいにしてようやくOECDの平均値ですよ。それを考えれば、あと十数年たてばプラトーに達するとかそういうことでなくて、今現在、医学部の定員を速やかに増員して、余裕のある、女性医師も十分に産休もとれる、子育てもできる、また一定の研修も受けられる、そういうことも考えれば、やはり医師数をふやすべきだと考えますが、いかがでしょうか。

松谷政府参考人 委員御指摘のとおり、現時点での臨床医師数を比較した場合、我が国の人口当たりの医師数は、OECDの平均を下回ってございます。今先生、OECDの平均を三・一というふうにおっしゃいましたけれども、単純平均するとそうなんですが、人口比がそれぞれ国によって違いますので、加重平均をいたしますと二・六人ということでございます。それでも、我が国は二・〇ということですから、下回っていることには違いがございません。

 もちろん、各国によって国土の規模とか医療提供の仕組みが異なっているということにかんがみますと、単純に医師数のみを比較するということは難しいことでございますけれども、ここら辺はよく考えなければならないと思っております。

 我が国の医師数は、近年、三千五百から四千人程度増加しておりまして、今後もこれまでと同程度の増加が見込まれております。したがいまして、現状において医学部の定員を抜本的にふやすということは、必ずしも必要ではないのではないかと考えております。

 ただ、今委員御指摘のとおり、大変深刻な状況もございますので、厚生労働省におきましては、昨年八月に、関係省庁と取りまとめました新医師確保総合対策におきまして、医師の地域偏在によって不足となっている現状にかんがみて、中長期的な対策の一環として、医師の不足が著しい県における大学医学部や自治医科大学の定員増を推進するとともに、地域医療に従事する医師の確保を図るため、医学部における地元出身者のための入学枠、いわゆる地域枠、その設定を推進するなどの取り組みを進めているところでございます。

 また、あわせて、委員御指摘のとおり、今、女性医師がふえてきておるところでございまして、医師国家試験の合格者に占める女性医師の割合が三分の一ぐらいまで高まってきておるわけでございまして、医療現場における女性の進出が進んでいくことが見込まれております。

 この場合、男性医師と比べまして、出産や育児により医療機関を休職、退職する割合が高いという指摘もございますので、各医療機関におきましても、また国といたしましても、女性医師の家庭生活と診療の両立、あるいは退職後の診療現場への復帰を支援するということが大変重要だと思いまして、そのための各般の施策もあわせて行っているところでございます。

清水(鴻)分科員 今、医師数をふやすのは適切でないとおっしゃいますけれども、例えば、日本の人口千人当たりの医師数というのは二・〇ですよね。それに対して、少なくとも同レベルの医療、まあ日本の方がいいと思うけれども、ドイツとかフランスでも三・四ですよ。少なくとも一・五倍ぐらいにふやさないと。

 というのは、地域に行け、地方に行ったら研修をしなきゃ、研修に行くときはかわりにだれか来てもらわないといけない、そういうことを考えれば、ぎりぎりでは地方にも行けないんですよ。行ったら行ったきりで、勉強する時間も研修する時間もなくなったら、だれも行かないですよ。これは絶対、地方の医師不足は解決しませんよ、このままでは。余裕がなければ。研修する時間がなければ。

 それから、科の偏在も、やはり産科というのは一番女性医師が行っているんですよ。そうしたら、自分たちも子供を産んで育てる時間がなかったら、産科は続けられないんですよ。だから、結果的に、産科に行っても産科を離れて臨床を離れる。そういう仕事についていかれる方も、僕もたくさん知っていますよ。

 だから、産科に行く医師は決して減っていないんですよ、最初に選ぶ人は。小児科もそうですよ。だけれども、維持できないんですよ。そこを考えて、ぎりぎりどうだということではなくて、まさにこの高齢社会を乗り切るために弾力的に運用して、将来医師が過剰になってくれば、それは例えば医学部の定員を減らせばいいんですよ。医師というのは、きょうふやしてあした医師ができるわけじゃないでしょう。専門医、ある程度の経験を積むとなれば、やはり最低十年、あるいは十数年かかる。そういうことを考えると、本当に真剣に考えたら、そんな悠長なことを僕は言っていられないなというふうに思っています。

 それから、地方の偏在は、要するに研修制度を含めて、やはり人数に余裕がなければだめだということを申し上げたいと思いますし、科を選ぶ、科の偏在については、一つはやはり訴訟の問題があると思います。先ほど前の方も質問されたので詳しくは言いませんけれども、一生懸命やった、でもやはり結果が悪い、リスクというのは医療にはつきものであります。

 そのことについて、今、やはり一番産婦人科が、医師千人当たりの訴訟を受けた件数というのは断トツ、十一・八ですね、統計的に。そして、今、外科医もどんどん入局者が減っているんですよ。外科に入る人もどんどん減っているんですよ。外科関係の人に聞けば、十年後には真っ当な外科医がいなくなるんじゃないかと。今現役の外科医の方は、ロートルになってメスを持てなくなってくる。でも、今ほとんど入局者がいなければ、ちゃんとした外科医になる人がいなければ、十年後、そのときになってまた外科医不足だ、今の産科不足、小児科不足と同じですよ。やはり、少し早目に手を打っていかないと大変なことになるんじゃないか。

 実は、外科もその次に訴訟率が高くて、医師千人当たりに九・八件なんですよ。例えば、歯科は別でありますけれども、歯科の千人当たり一件なんかに比べれば、九倍、十倍、産科だったら十二倍訴訟がある。そして、訴訟に時間をとられ、それでノイローゼになり、とても産科は続けられない、外科は続けられない。それではやはりだめだと。

 そのために、今、いわゆる日本版ADR、死因究明のモデル事業をやっていただいています。五年計画と聞いて、まだ一年しかたっていないですけれども、やはり早急にそういうものを進めて、いきなり警官が来て逮捕されて、これこれのリスクがあってこうなんですよ、こういうリスクは説明した、だけれどもこうだったんですよ、でも結果的に出血多量で死んだじゃないかということだけで取り調べが行われるようでは、リスクのある医療はできなくなる。

 ということは、奈良の事例もそうですし、だんだん萎縮医療、ほかでトラブルが起こって、それを自分が引き受けてまでできないと。つまり、自分は引き受けてやりたくても病院に迷惑がかかる、あるいは家族に迷惑がかかる、そういうことになればやれなくなる。

 ちょっと時間もなくなってきたので、余りあれですけれども、そういうことも含めて、今、死因究明のモデル事業を早急にやって、日本版ADRを立ち上げていただいて、少なくとも専門家の間で判断していただきたい。海の事故であれば海難審判庁がある、航空機事故であれば航空調査委員会ですか、少なくとも、専門家がまず入って調査をして、明らかな過失があるのかどうかというのを調べるべき。そして、明らかに過失があれば別ですけれども、医療の中で起こるリスク、専門家としてはこれはリスクの範囲内であるということであれば、訴訟にならない、そういうものも含めて、工夫をしていただきたいということ。

 今の死因究明のモデル事業、進捗状況と今後の見通し、簡便にお願いします。

松谷政府参考人 先生お尋ねの、診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業は、第三者が死因の調査を行う際の課題の整理等を目的といたしまして、平成十七年九月から、日本内科学会への補助金事業として実施しているところでございます。現在、東京都を含みます七地域において事業を実施しておりまして、四十四例を受け付けているところでございます。

 今委員御指摘のとおり、産科あるいは外科、それに限らず医療現場については、診療行為に関連した死亡について大変微妙な状況にあるということから、今後さらにモデル事業に取り組むとともに、このモデル事業の実施状況も踏まえまして、診療行為に関連した死亡の死因究明等のあり方につきまして、本年度内を目途に厚生労働省から試案を提示する予定としてございまして、その後、来年度、この四月以降でございますが、有識者による検討会を開催することといたしてございまして、その議論を踏まえながら必要な対応を行っていきたいと考えております。

清水(鴻)分科員 できるだけ早く専門家による医事紛争の処理の委員会を立ち上げられるように、ぜひ努力していただきたい。少なくとも、それが科の偏在を是正していく大きな役割を果たすと私は思います。

 それから、それに関連しまして、今、無過失補償制度、産科の脳性麻痺を対象ということでありますけれども、これも産科医師にとりましては大変ありがたい。そしてまた、お互い、患者さんにとってもありがたい。過失はないけれども、結果として不幸な結果が起こるということは、医療にはつきものであります。一定のリスクがあります。この無過失補償制度をできるだけ早急に立ち上げていただきたい。そして、できれば産科に限らず、他の科にも無過失補償制度を拡大していくような方向、少なくとも、それが医療を支える大きな、科の偏在も含めた、あるいは一人で地方で頑張る医師を支えるものになると思いますので、そこのところを頑張っていただきたい。

 一言、決意だけお願いします。

松谷政府参考人 医療事故に関します無過失補償につきましては、昨年十一月に与党の検討会で、分娩により脳性麻痺となった場合を対象とする制度の枠組みが取りまとめられたところでございまして、これは医療事故の中でも、分娩時の医療事故では大変過失の有無の判断が困難な場合が多くて、裁判で争われる傾向がございますし、また、このような紛争が多いことが産科医不足の理由の一つである、こういう指摘を受けて行われたというふうに承知してございます。

 今、厚生労働省では、この与党の検討会の御提言を受けまして、その枠組みを尊重しながら具体化について進めているところでございます。また、その対象につきましては、今このような枠組みが与党から示されたところでございますけれども、まずはこれをきちんとスタートさせるということに全力を注ぎ、また、その結果を見ながら次の段階を考えていくということになろうかと思っております。

清水(鴻)分科員 ありがとうございます。全力で頑張っていただきたいと思います。

 それで、あと、七対一看護の導入とともに大変看護婦さん不足が言われています、大学の囲い込み等も含めて。このことに対しても、看護婦さんの不足が起こっているということは、これは中医協でも指摘をしているところでございますので、ぜひこの点は早急に、来年の改定ということもありますけれども、暫定的にでもそのことを緩和するような方策をぜひ練っていただきたいということ、これも要望しておきます。答弁はもう要りません。

 それで、あと未収金の問題をちょっと取り上げさせていただきます。

 つまり、今、日本の病院が抱える未収金は、業界の調べ、四病協の団体が調べたところでは、大体三百七十三億、一年間で起こると言われています。今、大体、医療法人の収入が前の医療経済実態調査でプラス一・三%、つまり収益は一・三%しかないと言われていたときに、三・一六%のマイナス改定が行われた。その状況の中で、今現在また未収金がどんどんふえている。

 つまり、自己負担が三割自己負担になれば、前の一割、二割のときよりは、医療サイドにとってはその自己負担金が確保できなければリスクはもっとどんどん大きくなるわけです。だけれども、医療機関は貸金業とかではありませんから、それを返してくれというノウハウはない、ただ手紙を出して返してください、払ってくださいと言うことだけぐらいで。

 給食費でも払わない方がたくさんいらっしゃる中で、ほとんど確信犯的に、保険証があってかかったけれども払わないという確信犯の方、さらには保険未加入の方、それから外国人の多いところでは外国人の未加入の方の医療費の問題。病院の場合は、けがをする、病気で来られた場合に、お金を持っていますか、保険証はありますかということを聞いてから診療するわけではなくて、まず診療行為をしなければいけない、そういう義務を負っています。だから、それはもうやってしまう。だけれども、そのまま退院されて行き先がわからない、外国に帰ってしまわれるというようなことも含めて、大変未収金の問題が大きな、医療費の厳しい中でまた圧迫要件になっています。このことについて、厚労省の認識をお聞きしたい。

 それと、もう時間がありませんから……

実川主査 時間が来ていますので、簡潔にお願いいたします。

清水(鴻)分科員 はい。あと、健康保険証、これは例えば免許証のない方なんかではIDのかわりに使うわけですよ、お金を借りる場合でも。でも、あれは本人確認が、病院に来られてもできないんですよ、実際には。写真はない、有効期限というか、少なくとも、会社をやめられたかどうかということもはっきりしない、確認ができない。そうすると、そのままそれで保険診療をしても、それはまたまた未収金につながっていく。あるいは、使い回し、若い人の間ではだれかが入っていればそれでいい、それを借りていく。そのことを含めて、本来は保険者にはね返るわけであります。

 健康保険証のIT化、そして写真の添付等を含めて、少なくともその人の本人確認が確実にできる、そして有効期限がわかる、あるいは会社をやめたらそれが無効であることがわかる、そのことも含めて至急に取り組んでいただきたいと思います。時間ですので答弁はもう一言だけで結構です。

実川主査 簡潔にお願いいたします。

水田政府参考人 まず、未収金の問題でございますけれども、これは委員御指摘のとおり、さまざまな原因がございます。そのそれぞれの態様に応じまして私どもとしてできる限りのことはしていきたい、このように思っております。

 それから、被保険者証のお話がございました。これにつきましても、私ども現在、QRコードを装着しました個人カードへの切りかえというようなことも考えてございますけれども、さらに被保険者証の登録状況のオンライン照会の可能性、こういったことにつきましても検討したいと考えてございます。

 それからもう一つ、顔写真を添付するという提案がございましたけれども、なかなかこれは、保険者の事務負担あるいはコスト増を考えると、一律に義務づけることは困難ではないか、このように考えております。

清水(鴻)分科員 大変ありがとうございました。しかし、やはりIDなので、やはりその辺は、運転免許証と同じように使うことが十分あるということも含めて、十分な検討をお願いしたいと思います。

 どうもありがとうございました。

実川主査 これにて清水鴻一郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、長妻昭君。

長妻分科員 民主党の長妻昭でございます。

 本日は、柳澤厚生労働大臣に質問をさせていただきます。

 今、社会保険庁で大変なことといいますか、あの不正免除問題等事務処理のずさんさ、のぞき見等々モラルの低さ、よく大臣も御存じだと思いますが、その中で、非常に深刻な問題といたしましては、過去、国民の皆様、国民年金、厚生年金の被保険者の皆様が払い込んだ保険料の記録が、管理がめちゃくちゃで消えている例がかなり多いということで、その調査すらできない状態になっている、現場では大変な混乱をしております。

 もうこれは、お役所の責任者の方も、厚生労働省からキャリアの方が二年ぐらい来て、二年で戻っちゃうんですね。社会保険庁純粋のキャリアの方はいらっしゃらないで、司令塔不在でございまして、社会保険庁の中で責任のなすり合いが今行われております。これはぜひ、大臣みずからが調査に乗り出して解明をしていく、直接かかわっていただくということがないと、これから本当に大変なことになる。これから社保庁解体、我々も議論するわけでございますけれども、そのときに、本当に記録がどんどん消えたままとまらない、こういう状況になりかねませんので、ぜひこの問題の深刻度と、非常に社保庁が今ずさんな、記録を放置して問題の本質を逆に隠ぺいしようとしている、大ごとにならないように、そういう非常におかしな状態になっているというのを御理解いただきたい。

 我々もそれを解明するために、松本政調会長初め四十二名で、予備的調査ということで、全容解明の質問状を出しましたら、こういう回答が来ましたが、ほとんど答えがありません。データを持っていないとかということが非常に多くて、後から検証するデータすらなくなっている、トレースができない、こういう現状でございます。

 でも、我々は、いろいろな調査をする過程で、やる気になれば調査が実はできるんですが、なぜか社保庁が、いろいろな理由があるんでしょうけれども、責任が及んでいくと困るとか、本気で調査をするつもりがないということでありまして、これは大臣みずから乗り出さないと問題である。

 例えば、具体的な例を申し上げますと、昨年の八月二十一日から十二月二十八日まで、社会保険庁は年金記録相談の特別強化体制というのをとって、年金の保険料の納付記録に対するクレームあるいは相談を受け付けるということがございました。全国で多くの方が相談に訪れる、窓口やインターネット等でもございます。

 それで、結論を申し上げますと、一万八百五十八人の方に対しては、いや、これは、あなたが主張する納付記録、いつからいつまでの納付記録はありませんよ、社会保険庁には記録がないので、あなた、払ったと言っているけれども、それはだめですよ、認めませんと。こういうゼロ回答というか、いや、自分はこの期間は絶対払っているはずなんだ、こういうふうに主張をされた方のうち、一万八百五十八人もの方に対して、あなたの主張はうちには記録がないので認められません、こういう回答をしているんです、最後通牒といいますか。

 これもいろいろ裏で話を聞きますと、きちっと調べていないで、一定の表面上を調査して記録がないと。本人に対して、領収書か何か持っていますかと聞く。しかし、昭和四十年代、五十年代の領収書を持っている人というのはかなり少ないんじゃないかと思います。いや、領収書はありませんと。じゃ、うちにも記録がないから、あんただめだ、そんな主張をしたって証拠がないんだからというような門前払いが、一万八百五十八人おられる。大臣、きちっと調査がされていない生煮えのまま、だめ回答がされている疑いがあります。

 この一万八百五十八人の方に対して再度、本当に記録がないのかどうか。社会保険庁は、その方の勘違いという位置づけですよ。本当にこれは、払ったと御本人たちは言われておられるわけでありますので、もう一度調査を、再調査をして、一万八百五十八人の人に対して、本当に記録がないのかどうか。

 コンピューター上で、新しくプログラムをつくって調べる方法もあります。COBOLという言語で書いて調べる方法もありますが、それもやっていない。あるいは、マイクロフィルムで保管されている手書き台帳を最後まで徹底的にトレースして、その方のがあるかどうかを調査する。これもきちっとやっていない疑いがあります。非常に表面的な形で、国民の大きな財産である納付記録に関して最後の回答をしてしまっているということで、ぜひ大臣、一万八百五十八人分、調査をしていただきたいと思うんですが、いかがですか。

柳澤国務大臣 今委員がおっしゃられたとおり、平成十八年八月二十一日から十二月の末日までで記録の相談をいたしたわけでございますが、全部は、大ざっぱに言って百万件ほどの記録確認の作業に取り組んだわけですけれども、そのうちの三万二千六百八十五件の回答済みの中に、もうこれで記録が双方判明しましたねということで確認ができたのが二万一千八百二十七、その残り一万八百五十八の問題でございます。

 このうちに、実は、御本人さんの申告によりまして、あるいは証明書類によりまして判明した、先生もつとに御案内の八十六件というものの一部はここに重複して入っているというようでございますけれども、その他については、いわば被保険者の方にも証明の手だてがない、我々の役所の方にも証明の手だてがない、こういうことでございますが、それが即、何というか、もちろん被保険者の年金権というものは重視しなければならないわけですけれども、人間には双方に、役所の側には記録のいろいろな誤った操作みたいなものがあり得る可能性もあるかもしれませんが、同時に、被保険者の側にもいろいろな御記憶の違い等があり得るかと思うわけでございます。

 我々としては、これから先のいろいろなチャンスを活用して、一万八百五十八についてもできるだけこれをしっかりと管理していって、ある種の債務管理みたいなことはしなければならないと思いますが、調査というものは一応した上で御回答をさせていただいたという認識を私としては持っているわけでございます。

長妻分科員 これは柳澤大臣、いや、ちょっと、事務方の方はいいですよ。今質問していますから。ちょっと速記とめてください。質問できません。

実川主査 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

実川主査 速記を起こしてください。

 長妻昭君。

長妻分科員 柳澤大臣、事務方は今のような説明だと思いますが、だまされてはいけません、本当に社会保険庁は。多分、大臣に対しては、きちっと調べて、徹底的に調べて、一万八百五十八人はどうしても社会保険庁側に記録がないから回答したんだというふうに言われていると思いますが、我々の調査、ヒアリングでは、徹底的になど調べていません。表面的です。

 基本的に、大臣も先ほど少々言われましたけれども、御本人の勘違い、これも私もゼロとは言いません。そういう方もいらっしゃるかもしれない。しかし、一万八百五十八人の方が勘違いをするのか、全員が。

 銀行に例えて言えば、柳澤大臣ともかつて金融担当のとき議論させていただきましたが、もし一人でも自分の預けた預金が消えていたら、こんな例は聞いたことないですよね。もしたった一人でも消えていたとしたら、その銀行は業務停止とか大変なことになるんじゃないでしょうか、パニック等々。しかし、銀行に例えて言うのがいいのかどうかわかりませんけれども、一万八百五十八人の人が払ったよと言っているのに、全員が本当に勘違いなんですかね。

 社会保険庁の中で記録が消える、ミスで記録が消えてしまっているのも当然あるし、しかし、まだ記録が残っていて、残っているんだけれども、きちっと調べていなくて、生煮えの回答でだめ回答を出してしまったケースもあると私は思っておりますので、ぜひ、お役人に惑わされずに、大臣の見識で一万八百五十八人を、もう一回記録を、あるのかないのか徹底的に調査をする、せめてそういう御答弁をいただきたいと思うんです。

柳澤国務大臣 先ほども申し上げましたように、制度がいろいろ変わる中で、その都度、事務に当たった社会保険庁としてはこれに対応してきているわけでございます。

 そういうことで、今後は、かなりいろいろな機会、その中には、こういう特別強化体制をこちらがしいていますから記録の確認に来てくださいというようなことでやっている場合もありますし、御案内のように、五十八歳のときに、年金の裁定をいよいよ行うその直前、二年間ぐらいのアドバンスをとって、照会をして何か御疑問の点があればというようなことをやる、そういうことがあるわけで、そういうプロセスの中でいろいろまた判明していく分もあるんだろう、こう思うんです。

 さらに、一万八百五十八人の中で、これはそれぞれの保険事務所がやるわけでございますが、本庁で審査をするというようなこともケースによっては考えられるという体制になっておりますので、そういったところで、できるだけこの面についてもお申し出いただければ解明をするということで進んでまいりたい、このように思っております。

長妻分科員 では、もう一万八百五十八人の人は、この中には、大臣によると、勘違いの人もいるかもしれない。そして、先ほど大臣の答弁でも、社会保険庁が誤った操作があり得る可能性、つまり、社会保険庁のミスで記録が消えた方もいる。あるいは、記録があるのに、ないよと生煮えの回答をしてしまった人がいる。私はこの三パターンの方がいると思うんですが、全員切り捨てですか、もうだめなんですか。社会保険庁のミスで記録を消した人を、もうおまえはだめだと回答している可能性もあるわけで、いいんですか、そういうようなことをして。

柳澤国務大臣 今、委員は三パターンを挙げましたけれども、この一万件余りの案件について、さらに被保険者の側で、自分には、領収書とかそういう、そのものがなくても、いろいろな状況からいって主張すべき点があるというようなことでおっしゃられる方々があるとすれば、その方々については、そういったことのお申し立てを今度は本庁で受けとめて、それでまたよく審査に当たるというようなことも考えているということでございます。

長妻分科員 そうすると、社会保険庁のミスで記録を消してしまった、そして、御本人も領収書を持っていない、こういう方ですね。幾ら調べてももうこれは記録がないという場合は、泣き寝入りになっちゃうわけですか、その被害者の方は。

柳澤国務大臣 これは、一つのルールのもとでやっておりますので、できるだけぎりぎりのところまで、とにかくお互いに、状況のいろいろな詳細、そういったようなものをまた言っていただいて、ほかの周囲の納付の記録などからいってもこの方の言っていることが正しいかなというようなことの判断は、全くないとは言えないと思いますけれども、いずれにせよ、全く証拠のない人の主張をそのまま認めるということは、これはその当該の年金被保険者に対してと同時に、我々は、正しい行政をやって、国家あるいは社会保険会計の適正な会計処理ということに対しても大きな使命を負っているということでございますので、ぎりぎりの解決を求めていくということしか私は申し上げられないんではないか、このように考えます。

長妻分科員 社会保険庁が、きちっとした内部体制があり、きちっとした調査結果を出してきて、トレースをするというやる気があって、きちっと回答するということであればまだしも、この答弁書でもわかるように、やる気が全然ないし、隠ぺいの疑いもあるし、この一万八百五十八人も、表面的に調べて、はい、ないよというふうに答えている疑いもありますので、ぜひ、もう一度、一万八百五十八人が記録が本当になかったのかどうか。

 これ、普通の方は、一回ないと言われたら、悔しいけれども泣き寝入りしますよ、普通は。裁判を起こす方というのは一部ですよ。普通の方は、悔しいけれども泣き寝入りをする。これ、調査してもいいじゃないですか、一万八百五十八人。ぜひ、大臣。申しわけないけれども社会保険庁は本当にいいかげんな役所なんですから。金融庁の方がまだまともですよ、余り比べてもいけないですけれども。本当にめちゃくちゃなんですから。ぜひ、一万八百五十八人、記録があるかどうか、もう一回調査をすると明言いただきたいと思うんですが。

柳澤国務大臣 社会保険庁のこれまでの運営の状況につきましては、数々の問題点が露呈したということでございまして、今の長妻委員の、我々の組織に対する評価というものに対して大きな疑念を持たれるということは、それはそれでわかるわけですけれども、新しい社会保険庁に生まれ変わろうということで、新しい長官をいただいて、長官も本当に一生懸命やってくださっているということも私よく承知をいたしております。

 そういう前提で、この一万八百五十八についても、ぜひ、今言ったような、御自身の主張といったものを、単に今まで挙げたこと以外で、何か、証明と言えないまでも疎明とか、そういう……(長妻分科員「こっちが証明できるわけないじゃないですか」と呼ぶ)いやいや、証明なんて言っていないんですよ。だから、証明というようなことじゃなくて、疎明とかそういう状況的なことをいろいろお申し立ていただいて、そして、そのことについて、改めて、担当者をかえて、それで本庁の方に再審査というか、そういうものをしていただく、そういう窓口は開いておるのでございますということを申し上げているんです。(発言する者あり)

長妻分科員 いや、今河井さんから、何か変なやじが飛びましたが……(発言する者あり)答えていないからですよ。全然今答えていないでしょう。答えたんですか。河井さん、答えたの今、大臣は。(発言する者あり)だから、答えないから私はここで言っているわけでしょう、答えてくれといって。(発言する者あり)関係あるよ。黙らせて、これを。

実川主査 質問してください。

 静かにお願いいたします。

長妻分科員 大臣、どうですか、再調査。

柳澤国務大臣 いや、ですから、この一万八百五十八については、ちゃんと私どもなりの調査をして、確認をさせていただいたわけでございます。したがって、それでなお、またいろいろ納得し得ないという方については、もう少し、証拠そのものでなくて、何かそれを状況的に、そっちの方があり得るかなというようなことをひとつ申し立ていただいて、それをきっかけに、私どもが、同じ担当者では同じことの繰り返しになり得るわけですから、担当者もかえて、上級の本庁でもって審査をさせていただくという窓口を開いておりますということを、先ほど来申し上げているわけでございます。

長妻分科員 そうすると、一万八百五十八人の方はもうだめということですね。今、再調査しないという御答弁だと思いましたけれども、本当にそういうことでいいんですか、これ。きちっとして、調べて回答しているんじゃないんですよ。

 そして、先ほども大臣言われました、八十六件ということでございますけれども、この八十六人、たった八十六人ですが、八十六人の方は、実際に正しい領収書を自分で持っていた。だから、社会保険庁には記録がないけれども、記録を認めてあげた、領収書ですね、そういう方が八十六人いる。

 この八十六人の方は、社会保険庁の内部には記録は全くなかったわけですか。

柳澤国務大臣 この方々については、申し立ての書類に基づきまして記録を訂正させていただいたということでございます。過去にどういう原因があったかということについては、そういうことは私の手元では現在不明ということでございます。

長妻分科員 いや、八十六件の方は、社会保険庁の中の記録としては全くなかった、しかし、本人が領収書を持っていたから認めたというふうに事務方には聞きましたけれども、そういう事実関係でいいんですね。

柳澤国務大臣 社会保険庁の中ではお申し立ての記録を確認できなかったということでございまして、それで、被保険者の側にそういう領収書等が保有されておったということで訂正をさせていただいたということでございます。

長妻分科員 ということは、今公式に社会保険庁が認めている、この八十六件は国民年金でございますけれども、八十六人の方ですね、この方々は、社会保険庁には払い込んだ記録が全くなかった、しかし、本物の領収書を持っていたので、社会保険庁がミスを認めて記録を訂正した、こういうケースだと思うんですが、これはもう間違いなく御本人の勘違いではなくて、どこかで記録が消えたという確実なものだと、八十六件。

 それで、八十六件を、ちょっと詳細をお聞きしましたら、配付した資料の二ページ目でございますけれども、この消えている時期が、八十六件中八十一件が昭和四十年代、五十年代に集中をしております。

 消えた時期が四十年代、五十年代以外の時期としては、北海道の事務局で回復された、領収証書があって回復された方。これは平成元年の四月から平成元年の五月まで消えていた。しかし、本物の領収書があったので復活した。

 あるいは、北海道で、領収証書を持っていた。これは昭和六十年一月から昭和六十年三月まで消えていた。しかし復活した。

 あるいは、三重の社会保険事務局で復活をしたもの。これは、年金手帳の検認印、これを押したものを持っていたということで、昭和三十八年四月から昭和三十九年三月までが消えていたのが復活した。

 そして、徳島社会保険事務局。これは領収証書を持っていたということで、昭和三十七年十月から昭和三十八年三月まで消えていたのが復活した。

 そして、福岡。これは領収証書を持っていた。昭和三十八年二月から昭和三十八年二月、一カ月だけですね。年金手帳の検認印があったものを持っていた。昭和三十八年の四月から三十九年の三月、これは消えていたのが復活をした。

 これ以外は全部昭和四十年、五十年代の記録が消えていたものでございます。

 そして、一番長い期間消えていたものが復活したのが栃木でございまして、これは年金手帳の検認印によって確認されたものですが、昭和四十七年の四月から四十八年の五月、十四カ月分が、自分は払ったと言いましたが、社会保険庁には記録が全くない。しかし、たまたま偶然、本人は年金手帳、検認印を押したものを持っていたので回復をされたということがございまして、これはぜひ原因究明していただきたいんですね、大臣。

 これは、今社保庁が公式に認めている、どこかでミスがあったというのは確実なわけですから、どこにミスがあったのか、それをぜひ徹底検証していただきたいと思うんですが、いかがですか。

柳澤国務大臣 この八十六件につきましては、今委員が御指摘いただいたように、本人、被保険者の側でそうした証拠となる記録をお持ちだったということでございます。

 これは、原因を究明しろ、こういうことでございますけれども、将来のためにはそうしたことも必要かとも思いますけれども、八十六件の方々については、今こうした形で記録が正常化したということでございますので、私どもとしては、そのことが大事だというように考えているわけでございます。

長妻分科員 いや、それはめちゃくちゃな答弁ですね。たった八十六人ですよ。しかも、確実な証拠を持っている。では、一万八百五十八人の人は見捨てられるんですか。あるいは多くの、まだ本人も気づいていない被害者の方というのが全国にたくさんおられますよ。

 今大臣も、将来のためにはそうしたことも必要だと思いますがということを言われまして、そうなんですね、その八十六件のサンプルといいますか、貴重なそういう情報がある。では、それがどこで消えたのか、あるいは特定の事務所とか、特定の時期とか、特定の行動パターン、引っ越しした直後とか、あるいは名前が変わった直後とか、そういうパターンがわかるわけですね。

 ということは、これから、消えたと主張される方も、その部分のポイントを絞って調査をして被害者救済ができる。そういう資する情報に、貴重な情報となるわけで、八十六件ぐらい調査してくださいよ。大臣も社会保険庁を守ったら一緒に沈没しますよ。国民の皆さんも大変困りますよ、これ。八十六件程度調査してくださいよ、追跡調査。

柳澤国務大臣 こうしたことで、現実に納付の手続をちゃんと済ませたということで、我々の方ではそれが判明できなかったということで、八十六件、これはほぼ百万件の中の八十六件なんですけれども、しかし、この八十六件というのは、ある意味で大切な例だというふうにも考えられることは先ほど申したとおりでございます。

 したがいまして、対象となった時期にいらっしゃった市町村や、マイクロフィルム化された台帳が保存されているのかの調査をさせていただきまして、これからの参考にするということは必要かと思います。

長妻分科員 たった八十六件でも大臣まで質問しないと動かない社会保険庁、膨大な情報が隠されておりまして、証拠がないと一切応じない、今こういう姿勢でありますので、しかも、表面的な調査でどんどん回答していますよ、一般の被保険者の方に。ぜひこういう実態を御理解いただいて、これからも集中的に取り組んでいただきたいということをお願いしまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

実川主査 これにて長妻昭君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして本分科会の審査はすべて終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつ申し上げます。

 分科員各位の御協力によりまして、本分科会の議事を滞りなく終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午後零時十七分散会


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