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第1号 平成26年2月26日(水曜日)

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本分科会は平成二十六年二月二十四日(月曜日)委員会において、設置することに決した。

二月二十五日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      菅原 一秀君    関  芳弘君

      原田 義昭君    松本  純君

      長妻  昭君    重徳 和彦君

      伊佐 進一君

二月二十五日

 松本純君が委員長の指名で、主査に選任された。

平成二十六年二月二十六日(水曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 松本  純君

      大岡 敏孝君    清水 誠一君

      白須賀貴樹君    菅原 一秀君

      瀬戸 隆一君    関  芳弘君

      田中 英之君    高木 宏壽君

      永山 文雄君    原田 義昭君

      長妻  昭君    岩永 裕貴君

      小熊 慎司君    坂元 大輔君

      重徳 和彦君    松田  学君

      伊佐 進一君    國重  徹君

      中野 洋昌君

   兼務 大西 健介君 兼務 田嶋  要君

   兼務 三日月大造君 兼務 山井 和則君

   兼務 三谷 英弘君 兼務 小池 政就君

   兼務 佐々木憲昭君

    …………………………………

   厚生労働大臣       田村 憲久君

   内閣府副大臣       西村 康稔君

   文部科学副大臣      櫻田 義孝君

   厚生労働副大臣      佐藤 茂樹君

   厚生労働副大臣      土屋 品子君

   厚生労働大臣政務官    高鳥 修一君

   厚生労働大臣政務官    赤石 清美君

   国土交通大臣政務官    中原 八一君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 岩渕  豊君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 下川眞樹太君

   政府参考人

   (財務省理財局次長)   美並 義人君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           義本 博司君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房年金管理審議官)       樽見 英樹君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           古都 賢一君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房統計情報部長)        姉崎  猛君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  原  徳壽君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  佐藤 敏信君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局長)            今別府敏雄君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       新村 和哉君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局安全衛生部長)       半田 有通君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            岡崎 淳一君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局派遣・有期労働対策部長)  宮川  晃君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長) 内田 俊彦君

   政府参考人

   (厚生労働省職業能力開発局長)          杉浦 信平君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       石井 淳子君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    蒲原 基道君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  原  勝則君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  木倉 敬之君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 熊谷  毅君

   厚生労働委員会専門員   中尾 淳子君

   予算委員会専門員     石崎 貴俊君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月二十六日

 辞任         補欠選任

  菅原 一秀君     清水 誠一君

  原田 義昭君     田中 英之君

  重徳 和彦君     松田  学君

  伊佐 進一君     國重  徹君

同日

 辞任         補欠選任

  清水 誠一君     大岡 敏孝君

  田中 英之君     永山 文雄君

  松田  学君     坂元 大輔君

  國重  徹君     大口 善徳君

同日

 辞任         補欠選任

  大岡 敏孝君     瀬戸 隆一君

  永山 文雄君     佐々木 紀君

  坂元 大輔君     石関 貴史君

  大口 善徳君     中野 洋昌君

同日

 辞任         補欠選任

  佐々木 紀君     原田 義昭君

  瀬戸 隆一君     白須賀貴樹君

  石関 貴史君     岩永 裕貴君

  中野 洋昌君     佐藤 英道君

同日

 辞任         補欠選任

  白須賀貴樹君     高木 宏壽君

  岩永 裕貴君     小熊 慎司君

  佐藤 英道君     古屋 範子君

同日

 辞任         補欠選任

  高木 宏壽君     菅原 一秀君

  小熊 慎司君     重徳 和彦君

  古屋 範子君     佐藤 英道君

同日

 辞任         補欠選任

  佐藤 英道君     岡本 三成君

同日

 辞任         補欠選任

  岡本 三成君     中野 洋昌君

同日

 辞任         補欠選任

  中野 洋昌君     岡本 三成君

同日

 辞任         補欠選任

  岡本 三成君     伊佐 進一君

同日

 第一分科員三日月大造君、第二分科員田嶋要君、第三分科員大西健介君、第四分科員山井和則君、佐々木憲昭君、第七分科員小池政就君及び第八分科員三谷英弘君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成二十六年度一般会計予算

 平成二十六年度特別会計予算

 平成二十六年度政府関係機関予算

 (厚生労働省所管)


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     ――――◇―――――

松本主査 これより予算委員会第五分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりました。よろしくお願い申し上げます。

 本分科会は、厚生労働省所管について審査を行うことになっております。

 平成二十六年度一般会計予算、平成二十六年度特別会計予算及び平成二十六年度政府関係機関予算中厚生労働省所管について、政府から説明を聴取いたします。田村厚生労働大臣。

田村国務大臣 おはようございます。

 平成二十六年度厚生労働省関係予算案の概要について説明いたします。

 平成二十六年度厚生労働省所管一般会計予算案の総額は三十兆七千四百三十億円であり、平成二十五年度当初予算額と比較しますと、一兆三千百十五億円、四・五%の増加となっています。

 また、平成二十六年度厚生労働省所管特別会計予算案については、復興庁に一括計上した予算案を含め、東日本大震災復興特別会計、労働保険特別会計、年金特別会計に所要の予算案を計上しています。

 次に、来年度から消費税率が引き上げられますが、その増収分は、全て社会保障の充実、安定化に向けることになります。平成二十六年度の増収額五兆円については、基礎年金国庫負担割合二分の一の恒久化に充てるほか、子ども・子育て支援、医療、介護などの社会保障の充実に、国、地方を合わせて四千九百六十二億円を充てることとしています。

 以下、主要施策について説明いたします。

 第一に、子供を産み育てやすい環境を整備するため、待機児童解消加速化プランに基づく保育所等の受け入れ児童数の拡大、放課後児童クラブの拡充、母子保健医療対策の強化、一人親家庭支援の推進などを図ります。

 第二に、雇用改革、人材力の強化として、全ての人材が能力を高め、その能力を発揮できるよう、円滑な転職の支援、多様な働き方の推進、女性、若者、高齢者、障害者等の活躍推進などにより、全員参加の社会の実現を図っていきます。

 第三に、医療、介護について、日本再興戦略等を踏まえ、予防、健康管理の推進や医療情報の電子化、利活用の促進等により、国民の健康寿命が延伸する社会の構築を目指します。また、革新的な医療技術の実用化、医療関連産業の国際競争力の向上、良質な医療、介護へのアクセスの確保などの取り組みを推進します。

 第四に、難病等の各種疾病対策、感染症対策、がん対策、肝炎対策などを推進するほか、食品の安全対策、安全で強靱な水道の構築など健康で安全な生活を確保するための取り組みを進めます。

 第五に、就労形態にかかわらず公正に処遇され、安心して将来に希望を持って働くことができる環境整備として、ワーク・ライフ・バランスの実現、労働環境の整備、非正規雇用労働者の雇用の安定、能力開発などを推進します。

 第六に、国民の信頼に応える生活保護の適正実施と就労支援など生活困窮者に対する支援体制の整備などにより、暮らしの安心を確保していきます。

 第七に、年金制度について、持続可能で安心できる制度とするための取り組みを進めるとともに、正確な年金記録の管理に資する取り組みや適用・収納対策の強化を進めます。

 第八に、障害児、障害者の社会参加の機会の確保と地域社会における共生を支援するため、障害福祉サービスの充実、地域生活支援事業の着実な実施や就労支援、精神障害者や発達障害者などへの支援施策を推進します。

 以上のほか、世界保健機関や国際労働機関等を通じた国際協力の推進、科学技術の振興などを図ります。

 なお、委員の皆様のお手元に資料が配付されていますが、一般会計予算案の主要経費別内訳及び特別会計予算案の歳入・歳出予定額については、お許しを得て、説明を省略させていただきます。

 今後とも、国民生活の安全、安心の確保と質の向上、雇用の安定を図るため、厚生労働行政の推進に一層努力していきますので、皆様のなお一層の御理解と御協力をお願いいたします。

 以上でございます。

松本主査 この際、お諮りいたします。

 厚生労働省所管予算の主要経費別概要につきましては、その説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松本主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔一般会計予算案の主要経費別内訳及び特別会計予算案の歳入・歳出予定額は本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

松本主査 以上をもちまして説明は終わりました。

    ―――――――――――――

松本主査 この際、分科員各位に申し上げます。

 質疑時間はこれを厳守され、議事の進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。

 なお、政府当局に申し上げます。

 質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。清水誠一君。

清水(誠)分科員 おはようございます。

 昨年、ちょうど四月の分科会でも、障害者関係について集中して審議をさせていただきました。また、その際には、大変懇切丁寧な御答弁もいただきましたし、また、改善をしてきたことも多々ありますことを、今、一年たちまして、心から御礼を申し上げたいと思います。

 しかし、まだまだ障害者福祉というのは、措置制度から支援費制度、今日の総合支援法ということで、この十年間に五回の法律改正、制度の改正があったということで、まだ着地点が見えないというのがこの障害福祉だというように思います。

 きょうは、田村大臣初めとして、各政務三役の皆様方、また、特にきょうは国交省の中原政務官にもお越しをいただき、これから順次質問させていただきたいと思います。

 まず、一つの地域あるいは一つの団体に限っての話ということではなくて、全国的な課題というようなことで理解をしていただきたいと思います。

 そこで、現在、移動支援は、これも昨年もお話をしました。次の法律改正の中で検討事項ということになっておりますけれども、ただ、次の法律改正まで待てないというような緊急な課題として、通学生の移動支援ということがあります。

 というのは、例えば特別支援学校に通っていても、その特別支援学校のバスにも乗れない。あるいは、公立高校、私立高校に通っている生徒、この子たちが車椅子で学校に通うということになりましたら、これは父親か母親の送り迎え、あるいは、公共交通機関といっても、今、ステップバスというのはほとんど都会以外はないというようなことで、通学に際して多大な経費がかかるのと、また、学校に通うのに非常に生徒にとってのストレスになるんですね。

 そんなようなことで、次の制度改正を待つのではなくて、こういうような通学ということに限って、やはりこれを、今の市町村が地域生活支援事業で決定するというよりは、通学生の場合、これは文部科学省とも関係するかもしれませんけれども、通学生は今、日本全国でも、私は北海道でありますけれども、北海道でもせいぜい数市ですね、認めているのは。というようなことで、全国一律的にこの通学生の問題というのは、いろいろと意見が出てきている問題です。

 こういうことについて、一歩先に進んで、教育、学ぶというような観点での通学生への移動支援ということについて、新たな考え方ということが必要ではないかなというようなことで、まず最初に、この点を質問させていただきたいと思います。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員からございました通学の支援の関係については、これまでも先生の方からいろいろな形で御質問、御要望をいただいているところでございます。

 御案内のとおり、現在は、移動支援については市町村の地域生活支援事業ということで、市町村において、その地域の実情に応じた形で創意工夫をしながら実施をする、こういう形になっているわけでございます。その意味で、それぞれの地域で工夫していくということになろうかと思いますけれども、今お話がございました通学につきましては、確かにいろいろなところから、特に通勤通学の関係で要望が来ているわけでございます。

 ここの点につきましては、先ほど話がございましたとおり、これは、厚労省の側の検討のみならず、教育側の検討。教育側でも、特別支援学校については、先生から話がございましたとおり、バスを使っているところもあるということなので、やはり、教育側と福祉側とどういうふうな役割分担をするかということ。さらに言えば、現在、障害者差別解消法の議論の中で、合理的配慮をどうするかということも関係していくことだと思います。

 そういった意味では、そうした議論をやりながら、最終的にはどういう財源でやるのかということも含めて、よく検討をしていく必要があると考えております。

 お話がございましたとおり、実はこれは法律改正にも関係し得る事項でございますので、私どもといたしましては、できるだけ早くやるということは頭に置きながらも、施行後三年の見直しの中で移動支援のあり方について検討するということで、法律の附則にも書いておることでございますので、そうした大きな検討規定の趣旨を踏まえながら検討をしてまいりたいというふうに考えております。

清水(誠)分科員 蒲原部長には、過去、障害福祉課長の時代から大変お世話になっておりますけれども、今、喫緊の問題なんですよ。次の見直し時期まで待てない、そういう生徒が日本全国にたくさんいるんですね。

 その生徒さんの通学に、例えばこの移動支援を使ったとしても、年間でわずか十万円か二十万円の話なんですよ、市町村の負担ということになりましたら。市町村に決定権があるということで、この地域生活活動支援事業の中に入れないのが多いんですね。

 ですから、これは文科省とも協議する中で、こういう障害があって自力で学校に通学できない、特に車椅子というようなことになりましたら、やはり特殊な車両も必要というようなことで、これは、福祉というだけではなくて、文科省ともぜひ相談していただいて、喫緊の課題ということで捉えていただきたい。よろしくお願いしたいと思います。

 同じように移動手段ということですけれども、高速道路の割引制度です。

 これは今、登録した車両については割引が適用されている。ところが、全て登録した車で移動するのではなくて、例えば大会ですとか研修会に行くということになりましたら、お父さん、お母さん方何人かで行こう、あるいは、もう少し大きい車でもって行こうというようなときに、登録した車でない車での大会あるいは研修ということがあるんですね。

 特に、この割引適用というのは、身体障害者というようなことになりますけれども、今はETCカードの登録なんです。ところが、車の登録にETCカードの登録。ですから、カードの登録をしたのと身体障害者手帳、これをセットで出して行ったときに割引が適用するように、物に対するものと人に対するもの、これを同様に扱えないかなということです。

 きょう、中原政務官にも本当にわざわざお越しをいただきましたけれども、やはりこれも長い間の課題なんです。すぐに解決するとは思えませんけれども、ぜひ、人への方についても御考慮していただけないかなということで、あえてきょうはこの福祉部会の中で質問させていただきました。よろしくお願いいたします。

中原大臣政務官 清水委員は十分御存じだと思いますけれども、障害者割引制度は、通勤通学、通院等の日常生活で障害者の方々の社会的支援を応援するために、高速道路会社等が申し合わせで行っているものであります。割引の対象となる自動車につきましては、障害者本人またはその親族等が所有する自家用車一台を事前に登録されております。

 委員の御指摘は、障害者の外出を応援するために、事前の車両登録をしないで障害者手帳とETCカードにより確認する、そういう仕組みをつくるべきだ、こういうことだと思いますけれども、日常生活とは異なる利用がなされるおそれがあること、それから、料金所における応対時間が増加をいたしまして、他の利用者への影響等が懸念される等の課題があるというふうに考えております。

 いずれにしましても、国土交通省におきましては、障害者割引制度の運用につきまして高速道路会社と協議を重ねているところであり、このような課題にどのように対応するかも含め、引き続き、利用実態等を踏まえて慎重に検討してまいりたいと思います。

清水(誠)分科員 政務官のお言葉ですから、今後もNEXCOの方とも協議をするというお話です。

 現実的には、車の登録をしたら、確かに、これを不正使用しているというように最初から疑問を持つわけにはいきませんけれども、ただ、車の登録でしたら、誰が運転するかわからないんですね、監視機能がついているわけじゃありませんから。そういう意味では、我々の方もこの実態について調査をしてまいりたいというふうに思います。

 どういうケースのときに登録した車でない車を使用するとか、そういうようなことを、身体障害者、身障団体あるいはまたそれに類する団体の方の現場の声を、事例としてある程度出させていただく。その中で、国交省というよりNEXCOということですけれども、資本は一〇〇%国というようなことで、我々も今、自分たちの要求をただ通そうということではなくて、我々の知り得る範囲での調査もさせていただき、また提示をさせていただき、その中で、ぜひ早急な検討をしていただきたいということをお願いしたいと思います。

 それで、次に、通告しているのは、身体障害者福祉法第二十二条及び母子寡婦福祉法第二十五条ということですけれども、これは、各公共施設の売店を優先に出店できるというような法律であります。

 ただ、法律ができた当時、それからその後、身体障害者あるいは母子寡婦の人たちの生活の糧とか、そういうようなことでこの法律ができたわけでありますけれども、今、公共施設の中で、相当大きな施設でなければ売店というのはないんですね。

 私の知っているところでも、スポーツ施設。スポーツ施設というのは、昔は売店がたくさんあったんです。しかし、ほとんどが今は自動販売機なんです。例えば、カップラーメンもつくれます、あるいはお菓子も何も全部、自動販売機でできるというようなことになって、今の福祉団体あるいは母子寡婦団体にしても、自販機というものを設置させていただき、その自販機から得るものが、その団体あるいは全国にあります各支部の運営費になっている。

 昔は、これは国もそうだったと思います。厚労省から、一つの経由する団体で各福祉団体の方に運営補助金というのが流れていました。しかし、今、国の方ではそれはほとんど、ほとんどというか皆無ですね。それから、各都道府県にしても、障害福祉団体あるいは母子寡婦団体に運営をするための補助金、こういうものについて、ほとんど今出していないという状況なんです。

 そう考えていったときに、唯一、自主財源づくりをするとするならば、この売店であり自販機の設置なんですね。ところが、今、自由競争時代だ、自由社会だということで、たった一つの自販機が公共施設の中、役所の中に行くときに入札制度に、今全国そういう流れになってきました。一台の自販機で入札額が百万とか二百万ですよ。

 これはまさに、利益の得られるところについては、そういうことができるかもしれません。それが自由競争になって、入札制度になったということになりますと、今の身障福祉法あるいは母子寡婦の法律、これはどこに行ってしまったかということなんですね。特に、役所の中にあるというのは、その役所にいる職員の福利厚生、こういうことが主な理由でそれが設置されているということを考えていったときに、入札制度で全てがいくということには私はならないというふうに思います。

 そこで、国は、これは古い話です、昭和五十三年に、「身体障害者福祉法による売店の設置、専売品販売の許可について」ということで、各都道府県に通達が出されております。東京都についても、昭和五十一年、五十二年、同様にそういう通達が出され、福祉団体を優先するというような通達ですけれども、特に、東京都議会ではそれで決議もしていただいた。

 そういうことで、振り返って考えて、今、入札制度がある時期でありますけれども、ぜひ、こういうような、本当に運営団体の自主財源というような観点から、厚労省としても各都道府県の方に通達を出していただき、再確認の意味を込めて、そのようにできないのか、ぜひしていただきたい、そのように思います。よろしくお願いします。

佐藤副大臣 清水委員の御質問にお答えをいたします。

 まず、委員が、今までの御質問でも述べられておりましたように、肢体不自由児また者に対しての御支援を含めて、障害者の福祉の向上に日ごろ御尽力いただいておりますことに敬意を表したいと思うわけでございます。

 今御指摘の身体障害者福祉法第二十二条及び母子寡婦福祉法第二十五条の御指摘の規定の趣旨でございますけれども、これはそもそも、身体障害者等の就業を援助する、そういう観点から、国や地方自治体は、公共的施設において、身体障害者等が運営する売店等の設置を許可するよう努めるべき旨を定めているわけでございます。今ちょっとあえて強く言いました、就業を援助するというのが本来のこの規定を設けた趣旨ということが原則となっております。

 ですから、就業を援助するということでいいますと、厚生労働省としても、例えば、障害者に対しては、障害者総合支援法に基づく就労継続支援事業による就労の機会の提供でありますとか、あるいはハローワークにおける一般就労に向けた支援、さらに、母子家庭のお母さん方等に対しては、母子家庭等向けの就業支援や講習会の実施、資格取得を支援するための給付金等の支援、そういう施策を通じて就労支援に努めているところでございます。

 今後とも、こうした厚生労働省の取り組みとあわせまして、今委員御指摘のこの法律の趣旨について、適切に周知を図ってまいりたいと思います。

 特に、今質問の中で言われました自動販売機等を含む売店等の設置、これは障害者等の就業に資するような形の設置についての周知を行うということについては、厚生労働省としても一工夫させていただきたいな、そのように考えております。

清水(誠)分科員 きょうは、この法律の条文を議論するわけにはいかないし、また、それだけの時間はありません。今副大臣から話していただいたこと、各都道府県、そしてまた都道府県からは各自治体の方に同様な趣旨で回るというように思います。その中で、不都合な点がまたありましたら、どの場かわかりませんけれども、議論もさせていただきたいと思います。

 また、その際に、ただいま話したのは昭和五十三年、五十二年、五十一年時代なんです。ですから、まだまだ売店があった時代なんですね。ところが、今日、売店ではなくて、もうほとんど自販機に変わってきたというようなことで、若干、法律についても時代に合わせるということの必要性もあるのではないかということで、今、全国の実態を私たちは私たちなりにまた調べさせていただき、ぜひ、こういうことについても、直すべきものはやはり直して、実態に合うような形で進めていただきたいと思います。特に、今回、通達を出していただくということで、本当にありがたいと思います。

 さて、次に、重度の障害のある人たちが地域で暮らしていく、特に、今回、この四月からグループホームに一元化ということで、重度の障害者についても、グループホームという観点の中で、外からのヘルパーさんの介助をいただきながら地域生活をしていく、こういうようなことになっていくわけです。

 ただ、そのときに、特に重度者の場合、重度障害者包括支援サービス、常時介護が必要なそういう場合に、かなり負担額が大きくなってくるんです。そうなりますと、決定権が市町村にあるがために、どうしても、必要なサービスの時間というものが確保できない。

 今、相談支援事業ということで昨年から相談支援をやって、一人一人のケアプランをつくるということになっていますけれども、しかし、つくったとしても、ケアプラン、計画ができても、それの決定権は市町村にある。ですから、本来でしたら、必要な時間、三百時間欲しいと思っても、二百時間しか財政事情で出せないよというようなことになってしまった場合には、常時必要な介護が受けられない、こういうような話になってくるんです。

 ですから、何とか、財政事情からサービスが低下をするのではなくて、必要なサービスを確保できる、そういう施策に変えていかなければいけないんじゃないかというように思います。

 それともう一点。重度包括支援サービスの場合、上限が決まっているんです。例えば、一人当たり月額八十三万円で頭がある。その場合、百万円まで行くとなると、残り十七万円については市町村が実質負担をしていかなきゃいけないというようなことで、必要な金額を積み重ねていったにもかかわらず、上限を決めてしまった。そういうことが、今の重度の方たちが地域生活を安心して送っていけない、そういう不安材料が今話した点なんです。

 ただいま申し上げた二点について、どのような考え方で今後進んでいくのかについてお答えをいただきたいと思います。

蒲原政府参考人 お答えを申し上げます。

 二点について御質問いただきました。一点目が、いわば本人の事情をきちっと踏まえた支給決定ということだと思います。

 この点につきましては、市町村におきまして、重度の方々へのいろいろな訪問系サービス等の支給決定を行うに当たりまして、さっき先生がおっしゃいましたけれども、国庫負担のときに一定の上限が設けられている、ちょっと後で申しますけれども、そういうことがあるんです。これは、実は個々人の一人一人に対する上限ということではございませんで、各市町村全体に対する国庫負担の上限ということでございます。

 その上で、各利用者一人一人の事情をよく踏まえて、言ってみれば、各市町村の支給決定基準に何か一律に当てはめるということではなくて、本人の状況を踏まえてきちっと適切な支給量を決定していただくように、従来より市町村に周知をしているところでございますし、今後ともそこは引き続きやっていきたいというふうに考えてございます。

 なお、市町村の財政事情によりまして障害者が必要なサービスを受けることができないということが生じないように、例えば、小規模な市町村において、サービスを利用する重度の方々が非常に多いという場合に、当該市町村の費用の総額が非常に膨らんで、市町村が非常に負担を多く持たなきゃいけないということがあるわけですけれども、ここの点については、先ほど申しました、市町村全体で見た国庫負担基準を超える場合についても、一定の場合については国庫補助により財政支援を行っているところでございます。

 こうしたことを通じまして、地域で生活をされる障害者の方々、とりわけ重度の障害の方々も安心して生活できるようにしてまいりたいというふうに考えております。

 今、一点目のところで少し出ましたけれども、国庫補助を行う際の国庫負担基準の話について、これが二点目の点だと思います。

 先生から話がございましたけれども、実は、御案内のとおり、障害者総合支援法の中では、国の費用負担を義務化するということで財源の裏づけを強化したわけでございます。その際に、限りある財源を公平に配分して、いわば市町村の間のサービスのばらつきを是正するという趣旨で、市町村に対する国庫負担の上限というのが決まっているわけで、これは、重ねて申し上げますけれども、個々人に対する上限ではなくて、市町村全体に対する国庫負担の上限ということでございます。

 実は、こうした機能を実施することによって、この国庫負担基準より低いところが、全体の市町村の中で大体九割ぐらいの実績のサービスが支給できるように基準を決めておりますので、その意味でいうと、まず、平均的なサービス量が少ないところはこういう方法によりましてサービスを増加して、いわば幅広く国民全体がサービスを受けられるように、そういう効果があるものというふうに考えてございます。

 このような機能につきましては、やはり制度が、広く国民全体の方々にサービスを均てん化するという観点、さらには財政的な、長期的な安定性の観点から大事なものというふうに考えてございまして、こうしたことはきちっと維持しながらやっていかなきゃいけないと思います。

 先ほど申しましたけれども、これに加えまして、超過負担が出るところについては、引き続き、市町村に対するきめ細かなサポートをしてまいりたい、このように考えてございます。

清水(誠)分科員 いずれにしても、三年後の見直しという中にこれも入ってくると思うんですけれども、今のように市町村に決定権を預けてしまう、それでこれは裁量的な形でやるわけで、絶対的な、義務的な経費ではないんですね。

 ですから、そういうことを含めて、市町村も、やはり自分たちの住んでいる、住民というようなことで、国の方でどちらもとれますよというような二者択一じゃなくて、一つのことについて何通りもあるというのが今の法律の分野だというように思います。これについては、これから、ことしいっぱいぐらいまた議論に参加させていただきたいと思います。

 最後になりますけれども、今の障害者総合支援法第七条、法律の文章は非常に難しくて読みづらいんですけれども、この第七条は、六十五歳になったときに、介護保険制度のサービスを優先しますよ、あるいは健康保険法があればそちらが優先しますよということで、今まで障害福祉サービスでずっと受けていた人が、そこでばすっと切られてしまう。

 正直言って、これで今訴訟も起きているんですよ。それはちょっと自治体が勘違いしたのか何かかもしれませんけれども、今まで障害サービスをずっと受けて、六十五歳になりましたから、あなたは、さあ、これからは介護保険ですよ、これは乱暴な話だと思いますよ。

 今、社会保障制度改革、議論をしております。社会保障制度改革の柱は三つなんです。要するに、消費税が上がります、その財源を使えるのは、少子化対策、医療・介護、年金。この障害者は入っていないんです。障害者が入っていない、ということは障害者は一般財源、国の責任でするということなんですよ。

 それが、障害サービスで来たときに、ぶすっと六十五歳で切ってしまって、さあ、あとは介護保険ですよというのは、これは理屈が通らないと私は思います。六十五歳になった時点で、そのまま同じサービスが介護保険の中である場合はいいですよ。ところが、今まで低所得者で無料だったものが、さあ、きょうからは一割負担ですよ、こういうことも出てまいります。

 ですから、まず、この負担の問題はちょっと横に置いておいて、本人にそのサービスの選択権、これをやはり認めさせるべきではないか。介護保険が優先でなくて、選択するのは当事者です。当事者が優先するというぐらいにしていかないと、せっかくつくった総合支援法であっても、温かみがないんですね。

 あえてですけれども、本当はこの七条を取っ払った方がいいと思いますけれども、これも見直しの中で考えればいいので、今すぐ取っ払えとは言えませんけれども、少なくとも、これは本人の選択権というものを持たせていかなければ、やはりサービスが違うと、それまで一生懸命未来に向かって生きていこうという、そういう気をそいでしまうというふうに思えるんですけれども、どうでしょうか。

田村国務大臣 先生お詳しいので、細かいことを申し上げるつもりもありません。

 保険優先原則、こういうものがあるというのは御理解のとおりでありまして、四十歳になれば、障害をお持ちの方もそうじゃない方々も同じように介護保険に加入いただいて、保険料を払っていただくということになっております。

 今先生がおっしゃられた点からすれば、もちろん、具体的な内容でありますから、御本人の意向、それに応じたいろいろな状況、こういうものを勘案して、介護保険、いよいよ六十五歳になって給付が受けられるときに、同じサービスであれば介護保険が優先される。でありますから、それ以外のサービスはもちろん、福祉サービスはそのまま受けられるわけであります。

 ただ、そこが全く同じなのかどうなのかというところでいろいろな問題もありますし、今言われたように、仮に変われば、障害福祉サービスは能力に応じた負担でございますので、応能負担という原則のもとで、負担のない方も含めて、おられるわけでありますが、同じサービスであったとしても、介護になりますと、もちろん利用した自己負担額の限度額は所得に応じてありますけれども、基本的には一割を御負担いただくということになっておるわけでありまして、そこに関していろいろと御不満があるということも、私も承知をいたしております。

 ただ、一方で、加齢に伴う障害と、それから途中で障害をお持ちになられた方々の状況と、これがまた、公平性というものはどうなんだという議論もあります。さらに申し上げれば、とはいいながらも、加齢に伴う障害をお持ちの方において介護保険を受けられた方は、それまでそれなりに資産形成なされてきているわけでありまして、ストックも含めてあるではないかという御議論もあるわけでありまして、そこがなかなか難しいところであります。

 先生の御指摘を踏まえて、ちゃんと必要なサービスは受けられるような形、これはそもそもそうなっているはずでございますので、改めて、各自治体にも、そうじゃないところがあれば周知徹底をしてまいりたい、このように思っております。

清水(誠)分科員 ありがとうございました。

松本主査 これにて清水誠一君の質疑は終了いたしました。

 次に、國重徹君。

國重分科員 おはようございます。公明党の國重徹でございます。

 きょうが、今回の通常国会、私にとって初めての質問になります。よろしくお願いいたします。

 本日は、大きく三点、一点目に、難聴に関する支援、二点目に、いわゆるDVシェルターに関する実情とそれに対する支援、三点目に、建設産業の担い手の確保、育成、この三点についてお伺いしたいと思います。

 まず、一点目の難聴に関する支援についてですけれども、現在、身体障害者の手帳の交付を受けている聴覚の障害者、これは約三十六万人おります。この聴覚障害者の方々にとって、手話というのは、私たちが、健常者が言葉を話したりとか聞いたりするのと同じように、生活のため、またコミュニケーションのため、基本的人権の保障のため、欠くことのできないものとなっております。

 手話通訳者、手話通訳士については、嘱託や非常勤といった非正規雇用が多いとも聞きますが、実際はどうなのか。この雇用状況。また、手話通訳者、手話通訳士、これは、専門性の高い人材の育成、確保をするために、国としてどのように取り組んでいるのか。

 雇用状況、また人材の育成、確保、これについてまずお伺いします。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 手話通訳者及び手話通訳士の雇用状況でございますけれども、これは、雇用元が自治体だとか団体とかありまして、全体像を確実に把握するということはなかなか難しいのでございますけれども、一つ、手話通訳士、これは国レベルで試験を行って手話通訳を行っている方ですけれども、これにつきましては、こうした試験を実施しております聴力障害者情報文化センターがございまして、ここでいろいろ調べたところ、名簿登録者が二十六年一月現在で約三千人おられるわけですけれども、この方々の雇用の状況を見ると、働いている方々のうち非正規となっている方が約四割という話であります。

 ただ、これは国の試験を受けている手話通訳士の話でございまして、先生お話ございました、もう一つ、手話通訳者という方々、これは都道府県の研修を受けている方でございますけれども、こちらの方々は、恐らくもっと非正規の率が高いのではないかというふうに推察されます。

 また、人材確保及び人材育成についてでございますけれども、これについては、国レベルで、いわばそういう人を養成するための、先生に当たる指導者をまず養成いたしまして、この方々が都道府県単位でいろいろな研修をして養成する、実際に事業をする手話通訳者の派遣事業は市町村が行うというのが基本的な構造でございまして、それぞれ、都道府県におけます養成事業、あるいは市町村におけますそういう派遣事業については、地方公共団体が行う地域生活支援事業という、言ってみれば包括的なメニュー事業を伴う補助金のもとで行っているところでございます。

 私どもといたしましては、こうした地域生活支援事業の国庫補助をきちっと確保することを通じて、引き続き、そうした方々の養成あるいは派遣事業がきちっと行われるように支援をしてまいりたいというふうに考えております。

國重分科員 ありがとうございます。

 今、手話通訳士の方が非正規で四割、手話通訳者は、非正規の割合はそれ以上あるんじゃないかというような回答でした。

 この人材の育成、確保がおくれているというふうに私は聞いておりますけれども、その一つの要因として、やはり非正規の割合が多いということがあると思います。この非正規を正規の流れに持っていくなど、この方たちの安定した労働環境に向けての国としての取り組みが重要だと思います。

 これについての、今後の取り組みについての決意についてお伺いします。

蒲原政府参考人 ただいま説明申しましたとおり、この事業については各自治体がいろいろな形で実施しておるということでございますので、国としては、やはり聴覚障害者の方々が地域で安心して暮らすということが非常に大事だと考えておりますので、そのためのこうした手話通訳にかかわる人材が地域できちっと活躍できるように、先ほど申しました財政支援を初め、今後とも一生懸命取り組んでまいりたい、かように考えてございます。

國重分科員 よろしくお願いいたします。

 次に、聴覚障害者を専門に担当される相談支援員の方々についてですけれども、この方々は、聴覚障害者のコミュニケーションの仲介、また相談支援、社会資源の創出等、非常に重要な役割を担われておられます。このような役割や専門性を高めるための、聴覚障害者を専門に担当する相談支援員の方々に対する研修事業、これをまた新たに創設することも考えるべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

佐藤副大臣 今、國重委員から御質問いただきました相談支援事業者の件でございますが、これは、障害者総合支援法では、相談支援事業者の責務として、今御指摘のとおり、相談支援を障害者等の意向、適性、障害の特性等に応じて効果的に行うように努めなければならない、そのように法律でされておりまして、聴覚障害者に対しても適切な支援を行うことは各事業者の責務であるというように規定されているわけでございます。

 ただ、一方、障害者の範囲については、聴覚障害者だけではなくて、例えば今年度からは難病の方も対象となる等拡大していることもあって、個別の障害に対する支援を適切に行うためには、支援対象者の特性に詳しい、そういう専門機関でありますとかサービス事業者等と適切に連携するということが一つ大きなポイントになってきまして、チームとして専門的知見を踏まえた相談支援を行うということももう一方で必要でございます。

 そういうことから、御指摘のとおり、専門的知見を深めることも重要であるんですけれども、障害の重複あるいは多様性を踏まえれば、相談支援専門員は、専門的知見を有する関係機関等と連携し、これらを活用することが重要であって、そこの総合的な相談支援を提供するための調整能力を高めることが障害者の特性に対応するために必要である、そのように厚生労働省としては考えているわけでございます。

 それで、現在、相談支援員の資質について、各都道府県が各種研修を開催することによってその向上を図っているところですが、相談支援専門員の調整能力が向上されるように、厚生労働省としても引き続き取り組みを支援してまいりたい、そのように考えております。

國重分科員 どうかよろしくお願いいたします。

 次に、日本では聴力レベル七十デシベル以上から身体障害者手帳の交付を受けることができます。この聴覚障害者というのは、先ほど申し上げましたとおり、約三十六万人いらっしゃいます。ただ、世界保健機構、WHOでは、四十一デシベルから補聴器を使うことが推奨されており、この基準によりますと、耳の不自由な難聴の方というのは約六百万人いると推定されております。

 また、二〇一一年六月の日本老年医学会学術集会において、六十代の三人に一人が難聴と診断されるまでに聴力が低下しているとの報告も出ております。

 さまざまな報告はありますけれども、いわゆる健聴者、ゼロから二十五デシベルではなくて、障害者手帳の交付対象にもならない難聴の方々というのはどれぐらいいるのか。国として、どの程度の人数がいると把握されておりますでしょうか。

原(勝)政府参考人 お答えを申し上げます。

 難聴といいましても、例えば、加齢に伴って耳が遠くなるというようなこととかを含めまして、病気で難聴となられる方もいらっしゃいますし、原因や、あるいはその程度はさまざまでございますので、この把握についてはいろいろ難しい面があろうかと思います。

 ちょっと、現時点で難聴者の数を把握しているかということにつきましては、国としてはまだ把握していないという状況でございます。

國重分科員 今、回答をいただきましたけれども、難聴者の数というのを把握するのは極めて難しいと思います、自己申告しない限りわからないというのがありますので。ただ、これからも今、質疑の中で出しますけれども、やはり、難聴対策というのはこれから非常に重要だと思いますので、サンプルでも、何かしながら、ある程度の、推定の数でも把握していただけるようにしていただければと思います。

 高齢者の難聴、今、答弁の中にもございました。高齢者の難聴というのは厄介で、私の祖母もなっておりましたけれども、一般的に、高齢者の難聴、地域を歩いてもたくさんの方がいらっしゃいます。一家の団らんのコミュニケーションの輪から外れてしまう、蚊帳の外になってしまう。話をしようとしても、なかなか聞こえないので、でも、その場の空気を乱しちゃいけないということで、作り笑顔をして何とか話を合わせる。でも、重要なことを聞き逃したりしていろいろ叱られたりする。そうすると、家族との会話もおっくうになる。また、地域活動を頑張っていた方も、そういう地域とか親戚の集まりに出るのも怖くなって出なくなる、厳しい孤独の中に置かれていくというようなことになります。

 これが、先ほどのある報告によると、六十代の三人に一人が難聴というようなことですけれども、今、日本は、世界に類を見ない高齢化社会であり、また、ストレス社会であり、騒音社会であるというふうにも言われております。こういうことからすると、難聴の人数というのは、また徐々に広がっていくことが予想されます。

 こういう方たちは、コミュニケーションが難しくなるので、先ほどと重複しますけれども、閉じこもりになってまいります。家の中でずっといる。テレビを見てもなかなか字幕がないとわからないというようなことになりますけれども、閉じこもりになっていきます。いわゆるこの閉じこもりになった場合の心身に及ぼす影響、これについてお伺いします。

原(勝)政府参考人 議員御指摘のとおり、加齢に伴いまして、さまざまな原因で外出頻度が少なくなり閉じこもり状態となる、あるいは、認知症の発症リスクを上げたり、その状態が長くなることでうつ傾向になる可能性があるというようなことが言われております。

 なお、先ほどの御質問の関係で、実は、そういうことで、結局、難聴によって社会参加が少なくなったり、人とコミュニケーションができなくなったりということで、やはり介護予防という面からも問題がございますので、私ども、実態調査、全数を把握するということは難しいかと思っていますけれども、耳の、難聴の障害によって社会参加が妨げられている、そういう実態については、やはり介護予防という観点から把握する必要があるだろうと考えております。

 実は、第五期の介護保険事業計画、平成二十四年度から二十六年度を計画期間としておりますけれども、この第五期から、日常生活圏域ニーズ調査といいまして、市町村が地域の高齢者を対象にいたしまして調査を実施しております。

 この調査は、また第六期に向けて、今、来年度からでございますけれども、市町村でさらに広げるために準備を進めております。

 実は、この調査票のひな形の中に、私どもから示しておりますけれども、外出を控えているか否かという調査項目を設けまして、その理由の選択肢として、耳の障害、聞こえの問題という選択肢も用意いたしまして、こうした理由を含めた閉じこもりがちな高齢者の状況把握、これをしっかりと把握していきたいということで、準備を進めているところでございます。

國重分科員 よくわかりました。よろしくお願いいたします。

 今答弁の中でございました、閉じこもりがうつとか認知症の危険因子の一因にもなるということですけれども、ほかの介護予防が対象とする病態、例えば、口腔機能低下とか運動機能低下にも閉じこもりというのがつながっていくというふうに言われていると聞いております。

 聴力の加齢変化に詳しい専門家のうちには、自分で音の聞こえ方に異変を感じたときに早目に検査を受けることで、深刻な聴力低下を防止することができるとおっしゃられる専門家の方も中にはいらっしゃいます。本人のためにも、また家族のためにも、社会のためにも、介護予防の観点を含めた難聴対策というのは極めて重要になってくると思います。

 そこで、国として、例えば、聴力の定期検診とか難聴に関しての研究開発とか、まあ、補聴器の支援というのは、難聴の方は非常に幅広くいらっしゃると思うので、財政の面から難しいかもしれませんけれども、難聴対策について、難聴支援について、国として今後しっかりと取り組んでいく必要があると思いますけれども、いかがでしょうか。

田村国務大臣 我が省の方で通告をいただいたのを、どうも我が省の方の受けとめ方が、ちゃんと通告どおり来ていないものでありますから、高齢者の中で難聴で閉じこもりになった方々に対する対策ということでお聞きをいたしておりました。

 難聴対策というのはなかなか難しいんだと思います。私も、もうことし五十なんですが、以前と比べるとやはり聞こえづらくなっています。

 加齢に伴う聴力の衰えというのは徐々にきて、いきなりその後がくんとくるというような傾向があるものでありますから、なかなかそこは難しいんですが、今局長が、難聴対策というよりかは、高齢者の中での難聴、それに対する閉じこもり、こういうものに対しての対策といたしまして、一つは、見える化というものをやはりちゃんと進めていく必要があるんだと思います。

 つまり、難聴において、いろいろな身体機能の低下を及ぼす、また精神的ないろいろな病を生じる、そういうような影響を及ぼすというようなものを含めて、全体として、介護の状況というものがその地域地域において今どういうような状況なのかということを見える化を進めていくこと、こういうことにおいて対応策というのは考えられるわけであります。

 具体的には、出られないと、どうしても今委員がおっしゃられたようないろいろな問題が出てきますので、外に出ていただくように、例えば、集いの場でありますとか体操教室なんというものをつくりながら、そういう方々に町に出ていただく、社会に参加していただく。こういうような対策を進める中において、閉じこもりというものに対しての対応というものをしていく、そして介護の予防というものを進めていくということはあるんだろうと思いますが、難聴という点からいたしますと、さらにちょっと検討させていただきたいというふうに思います。

國重分科員 各地方自治体によると、聴力のチェックとかいうのを実施しているところもございます。また、そういうようなことも含めて、難聴に関しても少し光を当てていただいて、検討いただければと思います。よろしくお願いいたします。

 続きまして、いわゆるDVの民間シェルターに関してお伺いしていきます。

 配偶者暴力相談支援センターの相談件数、これは、平成十四年度が三万五千九百四十三件、平成二十四年度が八万九千四百九十件、三倍弱にまでふえております。配偶者暴力防止法に基づいて保護命令が発令されたのは、平成十四年が千百二十八件、平成二十四年が二千四百八十二件と、これも倍増しております。

 それに比べて、婦人相談所における一時保護件数というのは、平成十四年が一万九百三件、平成二十三年が一万一千二百四十六件、ちょっと平成二十四年のデータがなかったので二十三年で言っておりますけれども、二十三年が一万一千二百四十六件と、横ばいです。

 相談件数が三倍弱にまでふえているのに一時保護件数が横ばいである、この理由は何なのか、お伺いします。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、婦人相談所の一時保護の位置づけでございますけれども、婦人相談所で相談を受けた者のうち、保護が必要な方に対して行うものでございます。そして、婦人相談所において一時保護を行うため、この前段階でまず必ず相談を受けなければならない、そういう位置づけになっているわけでございます。

 議員おっしゃったように、婦人相談所による一時保護の前段階に当たる相談件数、そして一時保護の件数は、平成十三年、DV法が施行された直後に上がってきております。十六年までは上がってきておりますが、その後が横ばいという状況はおっしゃるとおりでございます。これは、やはりDV法の施行というのが大きかったというふうに受けとめております。

 議員がおっしゃっていることで私どもが気にしなければいけないのは、本来は一時保護を必要としながら、そこにたどり着かない、あるいはつながらないケースだろうというふうに考えております。

 近年、議員がいみじくもおっしゃられました婦人相談所以外に、DVに関する相談を実施する配偶者暴力相談支援センター、ここが数もふえてきておりまして、そこでDVの相談が非常に早い段階で受け付けられる形になってきている。設置箇所の増加とともに、相談件数が非常にふえているということでございます。

 これはやはり、言ってしまいますと、重篤といいますか深刻な状態になる、早い段階で、きめ細やかな相談、支援が可能になってきている、そういうことの機能として、大いに評価すべきものというふうに考えております。

 ただ、一時保護を必要としているのにそうした対応に結びつかないといったことがないように、これは我々、しっかり気をつけて見ていかなきゃいけないと思っておりますし、自治体とも連携して対応してまいりたいと思っております。

國重分科員 よろしくお願いします。

 次に、婦人相談所に入所できない同伴者、よく中学生以上の男子は同伴者として入れないというようなことも聞きますけれども、どのような方が同伴者として入れないのか、お伺いします。

石井政府参考人 婦人相談所で被害者とともに一時保護をすることができないのは、例えば、小学校の高学年とか中学校以上など、年長の男児の場合、あるいは、お年寄りのお母様とか、介護を必要とする方が同伴者である場合というケースでございます。そうした場合には、他の施設と連携をしてつないでいくという扱いをしているところでございます。

 具体的には、例えば、小学校の高学年や中学生以上などの年長男児については、一般には、母子ともに入れます母子生活支援施設、あるいは民間シェルターに一時保護委託をしたり、そして、児童のみは児童福祉施設に一時保護委託ということもございます。そして、介護を必要とする方につきましては、一般には老人福祉施設等に一時保護委託を行うことによって保護をいたしているところでございます。

 厚生労働省としましては、このように、地域の他の施設との連携によって、被害者の同伴者も含めて適切な保護をなされるように、自治体に対して促してまいりたいというふうに考えております。

國重分科員 私も、最近ある弁護士から聞いたんですけれども、六十歳代の女性の方が御主人から暴力を受けて、警察にも言った。逃げようと思うんだけれども、九十代のお母さんが家にいて、要介護が五だ、重度の介護が要る、そういうお母さんを預かってくれるところがないというようなことで、結局は逃げられないというようなことを言っておりました。

 このDV被害者の一時保護の方法として、婦人相談所もあります。ちょっと時間の関係で、質問を飛ばすところは飛ばしますけれども、一時相談所が婦人相談所でありますよ、そしてまた、今お話にも出ました民間シェルター等を初めさまざまなところに委託しますというようなことがあると思いますけれども、この民間シェルター、財政難とか人手不足というようなことを聞きます。民間シェルターというのは全国で幾つあるのか、また、その経済状況についてどのように把握されておられるのか、お伺いします。

田村国務大臣 今のお話は、一時保護委託というような形で、婦人相談所の中で、実際問題、入れないような方々に関しては民間シェルターの方にお願いしているわけでありますが、全国で今、百五カ所にあるということであります。大体、平均的な在所日数というのは十四・五日ぐらいだというふうにお聞きいたしておりますけれども、財政状況を詳しくまで我々は把握はいたしておりません。

 どちらかというと、民間のシェルターの場合、一時的なものも含めてでありますけれども、逆に、自立に向かった支援、例えば生活だとか経済的な部分、こういう部分に関しても含めてやっておるところがあるものでありますから、比較的長くそこの中で在所される方々もおられるということでありまして、平成二十六年度の予算の中で、一時的にそこに入られた方々に対して、経済的な自立でありますとか、もちろん、退所された後の定着、そういうことも含めて、いろいろと、モデル事業、これを予算の中に入れておりまして、それに対してのいろいろな財政的な支援ということをやっておるわけであります。

 このモデル事業の中身もこれからいろいろ勘案しまして、どのような形で民間シェルターに対して対応していくかということも含めて検討をさせていただきたい、このように考えております。

國重分科員 よろしくお願いします。

 民間にだからこそできる細やかな支援というのもあると思います。私も弁護士なので、司法修習生のときにもDVシェルターに行ったこともありまして、弁護士のときにも行きましたけれども、やはり財政難と手弁当というようなことも聞いたこともございます。

 今、モデル事業もあると聞きましたけれども、そういうようなことも通しながら、また、さまざまな、プライバシーには配慮しながら、情報網を仕入れて、実態がどうなのかというようなことをしっかりと調査していただいて、その上で、また適切な支援というのをよろしくお願いいたします。

 次に、建設産業の担い手の確保、育成についてお伺いします。

 建設産業の技能労働者、これは平成九年四百五十五万人、それが平成二十五年では三百三十八万人に激減しております。建設産業において、二十九歳以下は約一割しかおりません。これでは未来が危ういということで、国家的危機であるとの認識のもとに、建設産業の雇用のあり方についてグランドデザインが必要であると思います。

 国土交通省との連携を中心に、関係省庁との横断的な取り組みが必要であると考えますが、まず、それについての今後の方向性と、また、時間の関係で次の質問とも一緒にしますけれども、その次、若者とか新たな担い手が建設業界に入りました、では、入ったけれども、次に、いかに定着させるかというところが重要になってまいります。その定着支援、これについても、今後どのように対応されていくのか、お伺いします。

佐藤副大臣 今、二問まとめて御質問いただきました。前段の部分は私がお答えして、後段の部分は職業安定局長の方から御答弁をいただきたいと思うんです。

 前段の建設業における人材不足の件、厚生労働省も、実は、建設業だけに限らず、ほかに介護あるいは保育、さらには看護等の、そういう分野で人材不足という問題を抱えておりますので、局横断的に、これから本当に日本の社会を考えていったときにしっかり対応しなければいけないということで、先日、人材不足分野等における人材確保・育成対策推進会議というのを、副大臣の私が中心になりまして、各局長に参加していただいて、立ち上げたところでございます。

 そこで、特にこの建設業という分野においては、やはり国交省との連携というのが非常に大事になってくる、そのように考えております。

 平成四年以降続いた建設投資の減少に伴いまして就業者が減少している中で、今足元を見ても、東日本大震災の復興事業、これから二〇二〇年の東京オリンピックの開催決定による新たな雇用も見込まれておりますし、さらに加えて、中長期的には、自民党、公明党、与党で力を入れていただいております将来のインフラの維持管理、あるいは災害対応等を地域で担う人材が不足している、そういう問題を抱えているわけでございます。

 そういう担い手不足解消のために、国交省において、二年にわたりまして公共工事設計労務単価の引き上げを実施しているということは我々承知しているんですけれども、厚労省におきましても、国交省と連携しながら、一つは、建設業における雇用管理改善に資するよう、社会保険未加入対策を進めるということが一つ。もう一つは、平成二十五年度補正予算におきまして創設された、雇用の拡大や処遇の改善を目指す地域人づくり事業を活用した若年技能労働者の入職、定着への取り組みについて、関係団体に要請を行うということを具体的な取り組みとして行っているところでございます。

岡崎政府参考人 建設業にせっかく入っていただいた方をどうやって定着させるかということも非常に重要だというふうに思っています。

 そのためには、まず建設業を志す方々に業界の状況を見ていただく、インターンシップとかそういったことを含め、やっていく必要がある。それから、入られた方については、そこでしっかりと技能を身につけていただくということが必要だと思います。そうしますと、建設事業主の方にいろいろな形で技能習得のための取り組みをしていただく。それから、やはり職場環境とか雇用管理ということも重要である。

 こういったような全体的な雇用管理制度をしっかりしていただくということが重要というふうに思っておりまして、建設労働者確保育成助成金というような、そういう取り組みをされる方への助成金制度もありますので、こういったものと、それから、今副大臣が申し上げました地域人づくり事業、こういったものを含めまして、建設業界とか事業主団体にしっかり取り組んでいただく。我々も、それを支援していくということで取り組んでまいりたいというふうに思っております。

國重分科員 済みません、最後に一点だけ、簡潔にお願いします。

 今、担い手不足の解消の一つとして、外国人の活用が言われております。ただ、その一方で、日本人の労働者の賃金が下がるのではないか、労働市場に悪影響を及ぼさないかという懸念の声も聞こえます。

 建設現場での外国人の活用と日本人の若手人材の育成についてどのように取り組んでいくのか、最後に簡潔に一言お願いいたします。

佐藤副大臣 簡潔にと言われても大変困るんですが。

 今、政府の方としては、先ほど言いました、二〇二〇年度の東京オリンピックに向けまして、建設分野における外国人材の活用に係る緊急措置を検討する閣僚会議が一月二十四日に開催されまして、検討されているところでございます。

 こういうものが今年度中をめどに具体的な措置内容が取りまとめられるという予定と聞いておりますので、厚生労働省としてどのような協力ができるか、知恵を出していきたいと考えております。

 その上で、建設人材の確保については、やはり将来に向けた技能継承を適切に進めるためには、若者を初めとした国内の技能労働者の確保、育成や処遇の改善を進めることが厚生労働省としては必要だ、そのように考えております。

 もう一つは、外国人労働者の活用については、それによりまして、建設業に従事する労働者の賃金が低下するあるいは上昇しないということにならないようにする必要があると思いまして、そういう観点をしっかりと頭の中に入れながら政府として検討してまいりたい、そのように考えております。

國重分科員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

松本主査 これにて國重徹君の質疑は終了いたしました。

 次に、田嶋要君。

田嶋分科員 おはようございます。民主党の田嶋要でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 私は、今、法務委員会に所属しておりまして、去年初めて入ったんですが、そこで新たな分野に目を見開かされたと申しますか、きょうの目的は、大臣以下皆様に、責任あるお立場の皆様に、再犯防止にかかわる問題がいかに社会保障、厚生労働行政において重要かということを、少しお時間をいただいて、ぜひ御認識をいただきたいというふうに思います。

 そこで、最初に大臣にお伺いしたいんですが、これまで刑務所視察をされたことはおありでしょうか。

田村国務大臣 記憶をさかのぼりますが、たしか、法務委員でありましたので、そのときに法務委員会の視察でお伺いした、そういう記憶があります。

田嶋分科員 一番最後はいつ行かれましたか。

田村国務大臣 法務委員のときですから、多分もう十年近く前だというふうに思います。

田嶋分科員 では、佐藤副大臣も、もしよろしければ。

佐藤副大臣 私が行きましたのは、大阪の刑務所に、もう今から十五年ほど前に。

田嶋分科員 それでは、土屋先生もお伺いしたいと思います。

土屋副大臣 私も、埼玉県の川越だったと思いますけれども、行ってまいりました。

田嶋分科員 ありがとうございます。

 全然行っていないと言われると残念だと思ったんですが、それはよかったと思うんです。

 先日、杉良太郎さんの御講演を超党派の議連でお招きしていただきまして、杉さんは、半世紀、全ての刑務所を五十年間ずっと慰問されている。しみじみおっしゃっていたのは、昔の刑務所と今の刑務所は全く風景が違うということです。

 これはもう真理だと思いますが、今の刑務所は、老人ホームと介護施設と障害者福祉施設を三つ足したような風景が広がっている、こういうことなんですね。もし最後に行かれたのがこの数年ではないということであったら、私は、申しわけないですが、厚生労働を担当されている皆さんとしては、ぜひこれは行っていただかなきゃまずいと思っております。

 私、昨年、法務委員会に初めて入りましてから、栃木の刑務所やPFI刑務所、女子刑務所、それから、田村先生が学ばれた千葉大のすぐそばにございます千葉刑務所、私の地元でございます、ここはLAといって、十年以上の方で、そして犯罪傾向の進んでいない方が入っております。それから、先生の三重県にも津に刑務所がございますね。そういうところにぜひ足を運んでいただいて、まず実際を見ていただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。

田村国務大臣 高齢化が非常に進んでいるという問題は、たしか私が行ったときにも、そういう課題がもう既に出てきておったというふうなことだったと思います。そういう説明を受けた記憶があります。

 機会を見つけて、なかなか今、大臣業務、こういうことをやっておりますと、地元にも帰れない状況でございますし、視察といっても限られたことでありますけれども、大臣を終えた以降も含めて、機会をつくってまたお伺いさせていただきたいと思います。

田嶋分科員 ありがとうございます。

 再犯防止は、前回も、今回の所信でも、法務省、法務大臣にとって最重要課題なんですね。最重要課題なんですが、今、刑務所から出てきた人の半分以上は五年以内に刑務所に戻っているんです。ぐるぐるしているんです。ぐるぐるしている間に、ずっと税金がかかっているんです。一人の方が刑務所に入っていると、年間三百万、四百万というコストがかかっているそうであります。コストの問題だけではありませんが、これは本当に抜本的な対策をとらなきゃいけない。

 そして、再犯防止がなかなか実を上げない大きな理由の一つが、法務省だけで必死にやっているんですけれども、厚生労働省が同じぐらい大事だということをぜひ御認識いただきたいんです。調べれば調べるほど、生活保護と表裏一体であります。

 もし大臣が、ないですけれども、経済的に追い詰められてどうしようもなくなったら、人生でどういう選択肢がありますか。

田村国務大臣 例えば、どうしようもないというのはその程度によりますけれども、今般成立いたしました生活困窮者自立支援法、こういうものにのっとって、自立に向かって自分自身頑張る、もしくは、どうしようもなければ、それは生活保護という形になるんであろうと思います。

田嶋分科員 私がある方から言われたのは、三つしかない、生活保護か、犯罪して刑務所に入るか、自分で死ぬかしかない。そういうことなんです。そのぐらい、生活保護の問題とそして犯罪、特に年末になると高齢者が盗みをして、三百円盗んで刑務所に入る、刑務所に入れば飯が食える、そういうことをやっている方も大変多いということなんですね。

 そういう意味で、まさにこれは社会保障の問題そのものであると私は思っております。そういう意味で、最初の質問は突然でございまして失礼しましたけれども、ちなみにイギリスのアン王女という方が、六十三歳ですが、毎年十カ所近くの刑務所を今でも視察されているというふうに聞きました。

 それでは、質問通告に沿って質問をいたしますが、まず予算でございますけれども、厚生労働省の予算の中で、受刑者、元受刑者に関する予算というのはどのぐらいの規模あるのでしょうか。

宮川政府参考人 お答えいたします。

 受刑者、元受刑者にかかわる厚生労働省の予算でございますけれども、まず一つは、刑務所出所者等に対しまして、ハローワークと刑務所や保護観察所等が連携して、職業相談、職業紹介あるいは求人開拓、試行雇用奨励金などの支給などを行います刑務所出所者等就労支援事業というのがございます。そのための経費として、平成二十六年度予算案では二億六千万円を計上しているところでございます。

 それから、各都道府県に設置されています地域生活定着支援センターにおいて、矯正施設に入所した高齢者、障害者に対して、出所後の社会福祉施設への入所あっせん、あるいは療育手帳等の取得支援などの福祉サービスの利用支援を行う地域生活定着促進事業を実施しておりますが、これはセーフティネット支援対策等事業費補助金という大きな補助金の中の内数となっているところでございます。

田嶋分科員 今、最初に、二億六千万とありましたね。これが多いとは誰も思わないと思うんです。

 ぜひ大臣に考えていただきたい。例えば、イギリスですと、成人の犯罪者処遇に係る予算の半分は法務省以外で立てているというぐらい、全省挙げて、特に社会保障の責任所管である厚労省に、やはりもっと再犯防止のために、受刑者、元受刑者の対策を真正面から考えていただきたい。

 誤解のなきように申し上げますが、私は、むしろ一番関心があるのは、この日本から犯罪被害者をなくしたいという思いです。犯罪被害者をなくすためには再犯をなくさなきゃいけないということに尽きるというふうに思っております。

 次の質問でございますけれども、犯罪を起こした者への欠格条項に関しまして、網羅的な把握を厚生労働省でされているかどうか、教えていただきたいと思います。

田村国務大臣 資格がそのまま職につくのにつながるという認識のもとでの御質問だというふうに思います。

 欠格要件に関して、各省に分かれるものでありますから、なかなか厚生労働省からというのが難しいというのが本音でございまして、お声がけをされるなら法務省だというふうに思います。法務省からお声がけいただければ、我が方としてもしっかりと協力はさせていただきたいと思います。

田嶋分科員 私も最初に法務省に聞いてみたんですが、法務省も全く把握していないですね。

 障害者に関しては、これもいろいろな歴史がありまして、最初いろいろな欠格条項があった、そして、全て相対的欠格条項というふうに変わっていった。いろいろな議論があって、今は全体を束ねて厚生労働省が見られておるんだろうというふうに思います。もちろん、医師法とか薬剤師法の関係は厚生労働省でありますけれども。

 しかし、全体、私は、大事なことは、役所の目線から考えればそれぞれの所管があってしかるべきかもしれませんが、刑務所から出てきた人がどのようにして更生をしていくか、そして、どのようにして仕事を手にすることができるかというふうに考えたときに、やはり、刑務所から出てきた方がどういう仕事だったらすぐつくことができるか、特に、資格をつけるということが非常に大事になってまいります。

 そういう意味では、トータルで把握をする、それが厚労省じゃなくてもいいかもしれませんが、私は、一番そこが、障害者の例に倣えば、出所者に関しても厚生労働省がしっかりと取り組んでいただけないかなというふうに考えておりますけれども、もし御答弁があれば。

田村国務大臣 障害者の場合は、そもそも、障害者に対する多くの部分が厚生労働省の所管であります。しかし、犯罪を犯されて刑期を終えられて出られた方々に関しては、厚生労働省としては、求職者という意味での一般の国民という態様の中での対応ではございまして、そういう意味では、立場的にはやはり法務省が所管をされている部分だと思いますので、他の役所に協力を依頼しなければならない話でございますから、やはり所管の省の方から協力をいただく。

 厚生労働省はしっかりと協力はさせていただきたいと思いますが、その方が適しているのではないかなというふうには思います。

田嶋分科員 もっともな御答弁かなとも思うんですが、一方で、法務省と話していますと、刑期を終えた瞬間に普通の人になるわけですから、刑期を終えた瞬間に、フォローもしていない、データもない、こういう実態がございまして、私の受ける印象は、ボールが真ん中に落ちてしまっているというふうな印象を受けます。そこは、次の医療の関係でも同じことを申し上げたいんですが、そして、年金に関しては昨年取り組んでいただきましたけれども、ぜひとも両省がしっかり協力して進めるという形にやっていただきたいというふうに思います。

 今申し上げました医療に関しまして、次の質問をさせていただきますけれども、刑務所の医療体制ということで、いわゆる医官と申しますか、非常に不足をしている。定員三百三十二人に対して、今、八割を切って危機的な状況にある。

 これに関する報告書が出てまいりました。しかし、この報告書に関して、厚生労働省がどのように関与してきたかということに関してお伺いしたいと思います。

田村国務大臣 これは、矯正施設の中で御活躍いただいている矯正医官の方々の話だというふうに思います。

 これも、やはり矯正施設の中での待遇の改善、それからまた、執務環境といいますか、それの改善をしていく中でないと、なかなか集まりづらいというところがあるんだと思います。

 これは、言われました法務省での検討会、これが設置されて、本年一月二十日ですか、今のような部分も含めた報告書、これが出たというふうにお聞きをいたしております。

 その上で、我々としては、その報告書に基づき、厚生労働省として必要な対応はさせていただきたいというふうに考えます。

田嶋分科員 そのとおりでございまして、私も法務省とも話しましたけれども、要は、刑務所内とはいえ医療の問題でございますから、こういったことを検討会を開催するときに、私は、法務省と厚生労働省が協力してこういったものに取り組むべきではないかなというふうに思うんです。

 ところが、一切、厚労省はこれにタッチしておりません。今おっしゃったように、何かあればこちらとしても対応しますよ、そういう感じでございます。これは法務省側の責任でもありますけれども、やはり、もう少し両省で、これはまたがる議論でございますので、ぜひ一緒に協力体制をとってやっていただきたい。

 一つの例を挙げますけれども、イギリスも実は同じような縦割りの問題が、苦労いたしまして、ある時期、二〇〇二年でございますけれども、二〇〇二年の立法によって、刑務所の医療の権限を法務省から厚生労働省に移管することを決定しているんですね。こういった事例もございます。

 そして、その大きな理由というのが、医療スタッフの確保という点で、その方がやはりスムーズである。今まさに直面している日本の、刑務所の中でお医者さんが不足している、この問題の解決の一つの手段として、イギリスも同じような苦労の結果、所管を移しているということもございます。それが必ずしも唯一の解決方法とは思いませんけれども、ぜひとも協力体制をしっかりやっていただきたいということを重ねてお願い申し上げたい。

 これは、残念ながら、法務省からも今回法案ということはないようでございまして、非常に時間がかかっておりますけれども、喫緊の課題の一つだというふうに認識をいたしております。

 続きまして、年金についてお伺いしたいと思います。

 年金は既に結果が出ておるものでございまして、昨年の法務委員会でこれも取り上げまして、刑務所に入っている人たちの無年金状況をぜひなくしていかなきゃいけない。これは、雇用の受け皿と同時に、高齢の方が刑務所から出てきたときに無年金状態が続いている。これは大分改善に向けて第一歩を踏み出したと思いますが、現状、どういう数字まで結果を出してこられているか、数字を御報告いただきたいと思います。

樽見政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘の矯正施設収容中の方に対します国民年金制度の周知あるいは手続ということに関しましては、昨年九月、法務省から矯正施設の長などに対しまして通知を出していただきました。それとあわせまして、私どもの方としては、日本年金機構に対して、収容されている方に対する国民年金制度に関する説明、あるいは免除申請書の受理、回送といった手続につきまして、矯正施設と連携を図るように通知をしたところでございます。

 それが九月でございまして、二十五年十二月末現在ということで、三カ月程度の数字でございますけれども、その間、収容されている方で免除申請の手続を行っていただいた方が約四千名というふうになってございます。

 引き続きまして、国民年金の正しい知識の普及、あるいは適正な申請、届け出の徹底ということにつきまして、法務省としっかり連携してまいりたいと考えております。

田嶋分科員 ちょっと、今、その四千名というのは初めていただいた数字でありますけれども。

 毎年、大体二万人が刑務所に入っていらっしゃるわけですね。そして、こういったアクションがとられる前は、五%以下の方が免除申請手続をしていたということでありますから、二万人に対して一千人ですね。一千人が、では四千人にふえた、そういうことでございますか。

樽見政府参考人 今申し上げましたとおり、これは昨年の十二月末現在で、通知から三カ月程度ということですので、そういう分析というのはちょっとまだ明確にはできないかと思いますが、ふえているのは間違いないと思っております。

田嶋分科員 今の数字は、新規に刑務所に入ってきた方に免除申請をその入り口でやったという意味でしょうか、それとも、もう既に入っている、およそ六、七万の入所されている方々に対する免除申請手続は、今どういう状況になっているんですか。

樽見政府参考人 今申し上げました四千名と申しますのは、新規というだけではなくて、入っている方全体に対しての数字。それで、この三カ月の間に出てきた方が四千名ということでございます。

田嶋分科員 ちょっと、私の期待していたほどの数字になっていないのが残念でありますけれども、どういうところにボトルネックがあるんですか。

 現場が大変御苦労されるのは承知の上で申し上げておるんですが、とにかく、最初一気にやって、免除申請の資格がある方は全員免除申請を出していただくということを急いでさしあげなければ、やはりスタートを切れないわけですね。だから、そこはやはり、大変でも、一回はまず全部に当たっていただいて、それが済めば、来年以降は、毎年入ってくる方々に対する免除申請という、入り口できっちりやることになろうかと思うんです。

 今、どういったことが原因でそういう数字に、私は、五万人ぐらい終わっていますとか、そういう御報告になるのかなと思っていたんですが、いかがでしょうか。

樽見政府参考人 お答え申し上げます。

 新たに受刑者になる人に対する指導ということで、新受刑者になるところで、保険料を納付することができる人には保険料を納付するよう指導する、それから、障害年金を受けている人には年金事務所にちゃんと届け出るよう指導する、あるいは、所得が少ないなどで保険料を納めることが大変難しいというような場合には免除の申請を行うようにする、その際に免除申請書というものも施設の中で配っていただいているというようなことをやっているわけでございます。

 それから、さらに、九月前に指導していた方につきましても、九月の通知の実施の後に同じようなことをやっているというふうに法務省の方から聞いております。

田嶋分科員 どういうボトルネックがあるんですか。何もないんですか。

 四千人という数字は決して少ない数字だと思いませんが、しかし、毎年入ってくる数字が二万人ですね。そうすると、もちろん、九月からの三カ月ということでございましたので、期間は非常に限られてございますが、しかし、今までは、丁寧な説明も積極的に行ってこずに、本当にみずから手続をとる方だけが免除申請をしていたので、五%以下の新たに入る方が免除申請を終えられた。

 それでは無年金者が続出するということで始めた制度なので、少なくとも、新たに入ってくる入り口のところでは、全員に、もししっかり取り組めば、恐らく収入があるという人はそんなに多くないですね、だから、二万人に対して一万八千人ぐらいとか、そういう数字は終わるんじゃないかな、できるんじゃないかなというふうに思うんですが、それは、一生懸命やっても進まない理由がどこにあるのかを教えていただきたいんです。

樽見政府参考人 そういう意味で申しますと、昨年九月の通知で三カ月というところでございますので、その辺の状況について、引き続いて法務省とよく連携をとって検討していきたいと思います。

田嶋分科員 大臣から、法務省がやっているということでございますが、これもやはり年金の問題でございますし、私の部屋に来ていただいたのが、初めての法務省と厚労省の出会いの場だったような印象なんですね。やはり、よく話していただいて、ぜひこういうやるべき部分を進めていただきたいと思いますが、大臣、一言。

田村国務大臣 二万人と言われましたけれども、多分、高齢者の犯罪者の方々もふえているので、そもそももう納められない方々もおられるんだと思います。

 いずれにしましても、実際問題、我が省もしくは年金機構の方から出張っていって全員にやっているわけではないわけでございますので、説明等々も含めて法務省と連携をしなければならぬ部分ではございます。

 今、状況も含めて確認をさせていただいて、さらに免除手続等々が進められるように、いろいろと調整をさせていただきたいというふうに思います。

田嶋分科員 昨年これは法務委員会でも取り上げておりますので、ずっと定点観測させていただいて、ぜひ、ターゲット、デッドラインを決めて、例えば、ことし中には全ての、七万人、六万人、終わらせるというぐらいのことを一気にやっていただけないかなというふうに思います。現場の御苦労は承知の上で、再犯になってしまうケースを減らすためには、やはり刑務所から出てきたら何がしか生きていく手段が要るわけですから、そこはぜひよろしくお願い申し上げます。

 次に、ハローワークとの関係についてお伺いしたいと思うんです。

 いろいろ取り組みを改善していただいて、先月末から、若干やりやすい形、つまり、協力雇用主にとって利便性を上げたという話も聞いてございます。その点について簡単に御報告と、それから、ハローワークの端末を例えば刑務所にも置いて、それを見ることができるようにする、つまり、中に入っている人が、仕事をしたいな、真っ当な人生に戻りたいな、どういう仕事があるのかな、そういうことに関心を持っていただいて、やはりそれを更生につなげていく、そういうような試みも必要だし、海外の事例も聞いてございますが、その点に関していかがでしょうか。

宮川政府参考人 お答えいたします。

 ことしの一月からの新たな取り組みといたしましては、協力雇用主の求人情報、これが受刑者等に直に渡るような形でのものというためには、今までですと一般的な求人という形でお示ししていたものを、協力雇用主からの求人という形で、特定の施設をいわば名指しして、そちらの方につないでいくという新たな取り組みを始めたところでございます。これによりまして、指定の矯正施設におきまして、採用面接などをやりたいというような非常に意欲的な事業主の方々が、こういう手順を使ってやっていただけるようになったというところでございます。

 そして、受刑者に対する求人情報の提供でございますが、やはり受刑者等の置かれている状況や環境などを考慮いたしまして、先ほど申しました事業の中では、就労支援の一環として、刑務所からの協力依頼を受けて、必要に応じてハローワーク職員が刑務所まで出張し、本人の希望職種等を把握した上で帰住予定地の求人情報を提供する、こういう仕組みを行っておるところでございます。

 なかなか、刑務所、受刑者等という特殊な環境の中で、そういう形のもので、今、求人情報の提供を行っておりますので、引き続き、こういう形で求人情報の提供ということに努めてまいりたいと思っております。

田嶋分科員 ぜひ、端末を置けないかどうかという検討も含めてやっていただきたいと思います。

 大臣、配付資料がありますけれども、お手元、これは法務省から、昨日、議員連盟でいただいた資料でございます。ちなみに、この再犯防止議員連盟、先月立ち上がりまして、御党の保岡先生が代表でございます。そして、石田前法務委員長とともに、昨年八月に、アメリカの刑務所視察をさせていただきました。私ども、大いにアメリカの取り組みにも触発されまして、今動きが加速をしておりまして、先ほどの杉良太郎さんの御講演は、その初回の総会でやられたものでございます。

 ハローワークの関係でもございますが、この資料の一ページをごらんいただいても、このページは就労でございまして、次のページは住居、福祉でございまして、これは厚生労働省が関与しない分野は本当に少ないというぐらい、ぜひ厚労省に力をおかしいただきたいというふうに思うんですが、特に、その一番下の協力雇用主のところを今お伺いしたわけでございます。全国で今一万一千社、協力雇用主がある。

 これは最後の質問になろうかというふうに思いますけれども、大臣、大企業で協力雇用主というのは何社あるか御存じですか。

田村国務大臣 大企業でというのは、私もよく存じ上げていません。全体で一万一千社が登録していて、中小企業、百人未満のところが七五%以上となっておりますので、それを差し引きすると出てくるのかもわかりませんが、細かい数字までは把握しておりません。

田嶋分科員 それでは、雇用実績という意味で、刑務所にいた人が仕事をしているケースはもちろんあるんですが、そういう受け皿に実際になっている会社、これは三百八十社という話があるんですね。つまり、一万一千社が登録をしていても、実際には三百八十社のみが雇い入れているということなんですが、そうした中に大企業がどのぐらいあるか御存じですか。

田村国務大臣 済みません、ちょっと確認しておりません。

田嶋分科員 この一番下の真ん中のところに、全国就労支援事業者機構ということで、これはトヨタの前会長ですか、奥田さんがやっていただいておるんです。そして、財政支援も、基金をつくってやっていただいているという状況はあるんですが、しかし、残念ながら、調べていきますと、大企業は、実績、全国でゼロでございます。

 そして、私も、こういう分野を学ぶにつれ、地元で協力雇用主の方々の集まりによく参加をさせていただくようになりまして、保護司さんの方々とかとお話しするんですが、もう本当に小さい会社の経営者ばかりです。そして、思いは一つ、もう本当に何とかしなきゃいけないという思いでやってくれている方ばかりなんですね。本当に頭が下がる。頭が下がる一方で、中小・小規模企業ですから、そんなに余裕はない。そして、あそこで何か刑務所の人が働いているなんといううわさで、心配になることだってあるでしょう。それでもやってくれている。

 一方で、大企業は、全国、実績ゼロなんですね。

 まず、やはり厚労大臣として、ここの部分は重く受けとめていただいて、ぜひ働きかけていただきたいというふうに思うんです。今初めてそのことをお知りになられたかと思うんですが、いかがですか。

田村国務大臣 一義的には、また言うと怒られるんですけれども、法務省の所管の部分もあるんだというふうに思います。

 私も実は、更生保護を考える国会議員の会というのを自民党でつくっておりまして、ずっとそのメンバーで十数年おるわけでございまして、そのメンバーからも、矯正施設から出られた方々の再就職といいますか就職、これに対しての御要望も、議員連盟の方からもいただいておるということでございます。

 大企業がそういう状況であるということを私は知らなかったこと自体、不勉強で大変恥ずかしいわけでありますけれども、どのような形であるのかわかりませんけれども、いずれにいたしましても、何らかの形で御協力を、そもそも、一応登録はいただいておるわけですよね、そういうのがあられるという話でありますから。そういうところに関しましては、やはり何らかの形で御協力をいただけるということはありがたい話でございますので、何らかの機会を捉えて、そんなお願いもさせていただきたいというふうに思います。

田嶋分科員 これは難問だと思いますよ。難問だと思うんですが、自分のところだけそういう人を雇うと、いろいろな風評が立つという心配がある。ただ、みんなが排除したら、そういう人たちはどこに行くかといったら、また犯罪をしているんです。そうすると、また被害者が生まれる。だから、結局これはミクロとマクロで非常に世界が違いまして、ミクロで見ると受け入れたくない、だけれども、マクロで見ると、やはり受け入れないとみんなが損するんですよ。

 だから、これは大企業がみんなで乗り出すことが社会を劇的に変えるし、僕は再犯というのは激減すると思うんですね。

 そこで、イギリスの事例をちょっと見てみました。やはりイギリスなどはもっと積極的に、日本の企業もやっているんです。

 ありがたいことに、私は地元で大企業の方が関心を持っていただいて、自動車関係でございますが、市原の交通刑務所を見に行きました。市原の交通刑務所は、刑務所の中で自動車整備をちゃんとやっているんですね。ところが、それのはるかに大きなスケールがイギリスの方にある。そして、交通刑務所ですから、交通犯罪の人が入っているわけですから、整備というのは意味がそれなりにありますよね。

 だから、そういうような取り組みもあって、それぞれの業種によって貢献できる分野はたくさんあると思うんですね。イギリスでは、それ以外に、ガス設備会社で国家技能資格の一級を、イギリスの十五カ所の刑務所で養成プログラムをつくっている。それから、先ほどアメリカを見てきたと申しましたけれども、潜水ダイバーの養成コースとか、そういうのがいろいろあります。

 いずれにしても、手に職をつけると再犯率は激減する、このことは証明されておりますから、一義的には法務省とおっしゃいますけれども、これは本当に法務省だけでは無理なんです。ぜひ厚労省が、大事な分野だということで、そして先ほど、冒頭申し上げました、再犯を防止するという話と生活保護という話も極めて密接な話でございます。ぜひ、一人称でこの問題にこれから関心を持っていただいて、お取り組みをいただきたい、そのことを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

松本主査 これにて田嶋要君の質疑は終了いたしました。

 次に、山井和則君。

山井分科員 三十分質問をさせていただきます。きょうは、介護保険の要支援をカットする問題、そのことについて質問させていただきたいと思います。

 まず最初に、質問通告どおりお伺いしますが、要支援、介護予防給付の費用の伸びを年に三、四%に抑制することを目標にしておられるということであります。これについては、きょうの配付資料でも、二ページ目ですね、ありますように、五、六%の自然増の予測のものを三、四%に減らしていく。

 それで、年五、六%の伸びだと二〇二五年度には要支援の費用は幾らか。同じく、二〇二五年には三、四%の伸びなら費用は幾らか。二〇二五年にはその差額は幾らか、何%の効率化になるか。二〇一一年度の介護予防給付は四千百億円なので、それぞれ平均の年五・五%、年三・五%として、機械的に計算してお答えいただきたいと思います。

田村国務大臣 お示しをいただいている中を詳細にということですか。(山井分科員「はい」と呼ぶ)

 三・五と五・五という中間の点をとっての話でありますが、平成二十三年度給付費約四千百億円が、五・五%の伸びで平成三十七年度まで伸ばしていくと、これは機械的な計算ですが、八千六百七十六億円であります。二十七年度から三・五%で機械的に伸ばしていくと七千二十九億円ということでありますから、その差し引きでいいますと、三十七年度時点で一千六百四十七億円が差し引きの数字として出てまいります。

山井分科員 それで何%効率化したということになるわけですか、機械的には。

田村国務大臣 効率化というか、ちょっと言葉を選ばなきゃなりません。これは、要支援になる方が減った場合には、効率化というよりかは、よくなった、改善したという話になるんだと思うんですが、減った率は一九%ということになります。

山井分科員 今回の地域支援事業への移行は、今、田村大臣がおっしゃったように、十年後に一九%、約二割の費用を抑制する、改善する、効率化する、そういうことを目標にされているということであります。

 そこで、先日も安倍総理が国会で、要支援切りではないんだという答弁をされました。しかし、私も地元で聞いてみると、例えば、デイサービスが要支援の人はもうとらないようにしている、今後、地域支援事業になったらサービスが続けられるかどうかわからないから、そのときに断るのはちょっと高齢者にとっても悪いから、できるだけとらないようにしているとか、あるいは、事業者が今もう、要支援の方専門のリハビリのデイサービスをやっていたけれども、それをやめようとしているとか、あるいは、そのことに対して要支援の方は、今のうちに要介護になっておかないとサービスが切られる危険性があるからということで、お医者さんに頼んで、要支援二と要介護一というのはかなりボーダーラインですから、要介護一に今のうちになっておこう、そういうふうなことも残念ながら既に起こっているんです。

 何が言いたいかといいますと、厚生労働省の思いはもしかしたら違ったとしても、既に要支援の人のサービスは、既にですよ、法案審議も始まっていないのに制限されつつあるんです、残念ながら。これが現実です。

 そこで、田村大臣にお伺いしたいんですが、まず、今、百万人、デイサービス、ホームヘルプを利用されているわけですよね。この方々がどういうサービスを利用できるかというと、この資料にもありますように、この三つですね。要は、既存の訪問介護事業所による身体介護、生活援助、それか、NPOか、住民ボランティアか。この三つがどれか受けられるわけなんです。

 そこで、今利用している方が、あなたは今のサービスじゃなくてNPOやボランティアのサービスを利用してくださいとケアマネジメントで言われる可能性もあるわけですよね、当然、可能性としては。ちょっとそのことを答弁。可能性としてはあるわけですよね。

田村国務大臣 地域包括支援センターでケアマネジメントをしていただくわけでありまして、そこで、必要に応じてということでありますから、今まで受けていた方が改善をされて、その状態像でありますとか環境、そういうものを広範に判断して、改善しているから、あなたはそういうサービスじゃないですよということは、ないとは言えないというふうに思います。

山井分科員 改善しているかどうかは別として、改善していない場合は、ほかのサービスを勧められる可能性は、そこは絶対ないんですか。

田村国務大臣 必要がある方には必要なサービスということになると思います。

 もちろん、どのようなサービスがあるか、それは個人の選好がございますから、それぞれの方々が、こういうサービスを受けたいと。というのは、なぜかといいますと、今も、今一律にあるような介護給付、予防給付のメニューの中で、本来はこういうサービスは受けたくない、もっとほかのサービスを受けたい、しかし、サービスがないからそれを受けているという方々がおられるのも事実でございます。ですから、御本人がどのようなサービスを選ぶかというのはあると思います。

 ですから、そのためには紹介はするとは思いますが、無理やり、必要があるのに、そのサービスを受けさせずに、こちらを受けなさいというふうなことはできないということであります。

山井分科員 地域支援事業に移ってから、NPOや住民ボランティアのサービスにかわってくださいと言われたときに、その高齢者が、状態像が変わっていないんだから今までのサービスを受け続けたいということをおっしゃった場合、つまり、十年後に二割抑制していくためには、コストの高いサービスはちょっとずつ削っていかないとだめなわけですからね、市町村からすると。そうすると、もしかしたら、今サービスを受けている人を、あなた、NPOやボランティアでいけるんじゃないのと言われる可能性があるわけですよ。そのときに、お年寄りがあくまでも今のサービスを受け続けたいと言ったときには、今までのサービスを受け続けることができるんですか。

田村国務大臣 ですから、ケアマネジメントして、その上で必要な方は、当然のごとく、今まで受けていた方々の継続性というものも重きを置いておりますので、そのまま受けられるということになっております。

 それで、目標値を置いておりますが、これはサービスを無理やり切るという話ではなくて、一つは、多様なサービスを求めておられる方々もおられますから、そういう方々にはそういうサービスを提供する。

 それから、見える化を図っていきますから、どこにどんな問題があるか、そういうことがわかれば、それぞれのサービスの中でも改善することもあり得るわけでありまして、改善すれば、例えば要介護者から要支援者、要支援者が自立ということもあろう。事実、和光市で私、そういう事例を拝見させていただきました。

 ですから、そういうことによって全体的に、介護状態が改善して、要支援から外れるという方々、もしくは要支援に入ってこないという方々も出て、全体として目標値を達成できればありがたいなというふうに思っているわけであります。

山井分科員 田村大臣が少しすりかえておられるのは、改善したらサービスが減るのは、それは当たり前じゃないですか、軽くなったら。

 私たちが今議論しているのは、今回の地域支援事業に変わることによってどう変わるかという質問をしているわけです。ですから、今私が質問したことに答えられませんでしたけれども、結局、サービスを受け続けたいと言っても、受け続けられるかどうかわからないということなわけですよね。

 次に、新たな、地域支援事業に移行してからのことをお聞きしますが、その方々に関しては、今回、NPO、ボランティア、介護保険事業所、この三つについて多様なサービスをお勧めになるということです。

 そのときに、私は介護保険事業所のプロの介護職員のサービスを受けたいです、はっきり言ってボランティアは嫌ですということをおっしゃった。ケアマネさんはボランティアを勧めた。その方は、いや、私は隣のおじいちゃんと同じ状況で、隣のおじいちゃんもデイサービスセンターに行っている、入浴している、同じような状況だから私は行きたいということを言った場合、既存の介護保険事業所のサービスは、新規に認定された方でも、地域支援事業に移行してから受けることはできるんですか。

田村国務大臣 ですから、先ほど来申し上げております。ケアマネジメントするわけです。必要であれば、それは受けられるということになろうと思います。

山井分科員 そこは、そうしたらほかの聞き方をしますよ。

 今までデイサービスを利用している方と全く同じ状態像の人がいて、ケアマネジャーは同じ判断を下しますか。

 というのは、何が言いたいかといったら、今まで利用していた人は経過措置で今までのデイサービスでいいけれども、新規の人は、できるだけ助け合いの方に、ボランティア、NPOの方に誘導するというような文章になっているじゃないですか、この資料によると。ここの書きぶりが違っているんですよね。「新しくサービスを受ける者については多様なサービスの利用を促進」と。

 だから、既に利用している方と、地域支援事業の移行後、新規の方と、状態像が全く同じであれば、介護保険事業所のサービスを受けられる権利性は全く変わりませんか。

田村国務大臣 継続して受けている方々に関しては、ここに書いてあるように、事業移行後も必要に応じて既存サービス相当のサービスを利用可能とするということですね。ですから、これは、継続性というものはちゃんと担保していますよということで書いてあるわけであります。

 一方で、新しくサービスを受ける者については多様なサービスの利用を促進します、ただ、必要に応じて既存サービス相当のサービスを利用可能とするということでありますから、先ほど来申し上げておりますとおり、ケアマネジメントを受ける中において、必要であろうという形の方に関しては受けられる。ただし、一方で、新規の方々になりますと、サービス提供事業者の方が枠がいっぱい等々になってくれば当然受けられないということもあろうかというふうに思いますけれども、枠があいておれば、必要であれば受けられるということであります。

山井分科員 今後、これは予算を削っていくわけですから、枠を縮小させるわけですよね。だから、今もおっしゃったように、新規、地域支援事業になってから新たに認定を受けた人が、どうしても介護保険事業所のサービスを受けたいと言っても、それは必ずしも保障されるわけではないということですよね。ケアマネジメントがそのことを認めなかったら無理だということですよね。

 そこで、お伺いしたいのは、要支援一、二の方で、新規に地域支援事業に行った、要支援一、二と認定された方で、既存の介護保険事業所のサービスを利用できる人は大体何割ぐらいだと思っておられるんですか。

 今、今までと一緒じゃないかとおっしゃったけれども、全く違いますよ、今までと。今までと一緒なんですか、本当に。今までは、要支援一、二の方は、希望すれば一〇〇%、少なくとも何らかのデイサービスやホームヘルパーを権利として受けられていますよ。ということは、新規に認定された方も一〇〇%、望めば、要支援一、二に認定された人は何らかの介護保険事業所のプロの介護職員のサービスは保障されるんですか。

田村国務大臣 ですから、ケアマネジメントをする中において、必要であるというふうに、状態像、いろいろなものを見ながら、そういうふうに認められれば受けられるわけでありますが、他にいろいろなサービスが出てまいりまして、多様なニーズにお応えできるようなサービスを各自治体でこれから整備していただくように、我々も協力をさせていただきながらお願いをさせていただいておるということであります。

山井分科員 やはり全員受けられるわけじゃないんじゃないですか。

 今は、要支援一、二に判定されたら、望めば全員が介護保険のプロのサービスを受けられています。しかし、地域支援事業になったら一〇〇%受けられるんですか。イエスですか、ノーですか。NPOやボランティアで受けてくださいという人で、プロの介護職員のサービスが受けられない人も出てくるんじゃないんですか。

田村国務大臣 ですから、必要であれば受けられるという話だと思います。

山井分科員 今、要支援一、二を認定されている方で、プロの介護職員のサービスを必要と認められて利用している方は何割ぐらいですか、現時点では。

田村国務大臣 割合というのは我々もなかなか把握していないんですが、今も、必要と認められた方がそういうサービスを受けているわけですよね。同じように、地域包括支援センターで、保健師でありますとかケアマネの方々にケアマネジメントを受けていただいて、必要に応じてサービスを介護保険給付の中から受けておられるわけでありますから、そこは変わらないんだろうと思います。

山井分科員 全くごまかしておられますね。

 では、今、要支援一、二の認定を受けて、希望しているのに、プロのデイサービスやホームヘルプを受けられていない方というのはかなりおられるんですか。いないんじゃないんですか。

田村国務大臣 ですから、必要度に応じて提供する話でありまして、必要であれば、それは全員受けられるという話になると思います。また、必要であったとしても、本人が他のサービスを受けたいということになれば、新たなサービスを受けていただくという話になるんだと思います。

山井分科員 田村大臣、やはり正々堂々と議論しましょうよ。

 今は一〇〇%、介護保険の、介護事業所のサービスを受けられているんですよ、実態として。皆さんもおわかりでしょう。そんなことすら認めないんですか。それを、地域支援事業になったら受けられない人が出てくるんでしょう。本当に、そういうことも言わないわけです。

 それで、こういうのは私は水際作戦ということになってくると思いますよ。例えば、私の地域の方々でも、体が弱っておられる高齢者は多いです。ところが、今後は、地域支援事業になると、今まで行っていたデイサービスに行きたい、あるいはプロのホームヘルパーのサービスを受けたいと言っても、ケアマネジメントで、あなたはボランティア、あなたはNPOとなったら、プロのサービスを受けられないわけですよ。そこが大きな問題になってくるわけです。そういうことを田村大臣は正直におっしゃらないから、私は非常に問題だと思っております。

 それでは次、六ページにありますが、ですから、今回の要支援切りの問題点というのは二つありまして、今言ったように、今までは権利としてホームヘルパーやデイサービスのプロの介護職員のサービスを受けられていたものが、今度は必ずしもそうじゃなくなってくるわけですね。

 それで、もう一つ、私は一番深刻な水際作戦があると思いますのは、今回、要介護認定を受けなくても地域で暮らせる高齢者をふやすということをおっしゃっているわけですね。ここにフリップがありますけれども。

 ということは、私、心配しますのは、要介護認定を受けたいと言ったら、市町村としては、要介護認定を受ける人を減らしてくださいというふうに厚生労働省からガイドラインが出ているわけですから、結局、要介護認定を受ける前に、チェックリストで、できるだけボランティアや……(田村国務大臣「出ているのか。出ていないよな」と呼ぶ)出ているかと言うけれども、ここに書いてあるじゃないですか。要介護認定を受けなくても地域で暮らせる社会を実現といって、一番上に。

 そういう意味では、これから、要介護認定を受けたいと言っても、いや、要介護認定を受けなくて、ボランティア、NPOのサービスをまず受けてくださいと、要介護認定を受けたくてもそういうふうに誘導する、推奨する、そういう水際作戦ということが起こる危険性はないですか。

田村国務大臣 まず、今までと同じように、地域包括支援センターにおいてケアマネジメントをして、必要に応じてサービスを受けられる方はサービスを受けられますから、そこは変わりません。必要な方は全員受けられます。受けようと思えばですよ、本人が。本人が、そういうような画一的なサービスじゃなくて、ほかのサービスを受けたいと言えば、それは多様なサービスに行くと思いますが、みんな、必要な方が受けたいという話になれば、今と同じように受けられるということです。いや、手を振っても、そういうことになっているんです。

 その上で、今も何か誘導して水際作戦だと言われていますが、チェックリストでチェックして、そしてサービスを受けられる方と、それから要介護認定をされる方があります。そこは本人の選択ですから、我々が無理やり、チェックリストしかあなたはだめなんということを、無理に言うことはありません。

 その上で、チェックリストの方の利点は、すぐにチェックリストでわかりますから、サービスをすぐに受けられるんですよね。ところが、御承知のとおり、要介護認定をしますと、場合によっては一月以上時間がかかるんですよ。すぐにサービスを受けられないということもある。

 だから、そこはそれぞれの方々の選択という話になろうと思いますから、自分が要介護認定を受けて、もしかしたら要介護度一になるかもわかりません、二になるかもわかりません。そうなればもう要支援じゃないんですから、これは介護給付を受けていただく。こういう話になりますから、そういうことも含めて、それぞれ、家族やそれから御本人がどういう選択をされるかということでありますから、全くもって、我々は、委員がおっしゃっておられるような、そんなことを考えているわけではございません。

山井分科員 私、田村大臣の答弁というのは非常に、申しわけないけれども、うそがあると思うんですね。今までどおりサービスを受けられると言うけれども、明らかに、これからは全員がプロの介護職員のサービスを受けられるんじゃないんですよ。だから、違うのなら違うと明確に言わないと、これは一歩間違うと後でうそをついたことになりますよ。

 今の話、全国の高齢者が今までどおり、必要な人は介護保険の事業所のサービスを受けられますと大臣はおっしゃいました。受けられないんじゃないですか、地域支援事業になってから。受けたいと思っても、いや、ボランティアのサービスを利用してください、NPOを利用してくださいと言うんでしょう。明らかじゃないですか。そうしないと、二〇%、一九%減りませんから。

 何か、法案だけ通ったら後はどうでもいいみたいな、そういうことではだめですよ。やはり変わる部分は変わるということをしっかりと、厚生労働大臣、責任を持って答弁しないと、今までと変わりませんよと、今までと変わらないんだったら法改正しなくていいじゃないですか。

 例えばこういうチェックリストでも、今、簡便だとおっしゃったけれども、私のおばあちゃんも昔ずっと寝たきりでしたし、私も介護の問題をライフワークとしていますが、本人や家族は立場が弱いんですよ。要介護認定を受けようかなと思って市役所に行った、そうしたら、時間がかかるから、チェックリストで、まずはボランティアのサービスを受けてくださいと言われたら、要介護認定せずにこっちと誘導されちゃいますよ、立場が弱いから、老老介護でおじいさんを介護しているおばあさんとかが行ったら。

 結局、そういうことを誘導すると、結果的には家族の負担が高くなっちゃうんです。だから、私は、こういう要介護認定を受けずに……(田村国務大臣「受けられます」と呼ぶ)そこを誘導される危険性があるわけですよね。だから……(田村国務大臣「受ける権利はあるんだよ」と呼ぶ)いや、受ける権利があると言うんだったら、要介護認定を受けなくても暮らせる地域づくりとか、こういう書き方をしたらだめです。田村大臣は、現場の介護者や介護家族の大変さが全然わかっていない。これは事実上の水際作戦になってしまいますよ。

 これからは、私は二つ、水際作戦でハードルができちゃうと思うのは、今までは要介護認定を受けて要支援一、二と判定されたら、本人が希望すれば一〇〇%、介護保険事業所のサービスは受けられた。しかし、地域支援事業になると、一〇〇%は受けられません。それともう一つは、さらに要介護認定についても、今までよりも、要介護認定を受けたいといって行ったら、まずはこのチェックリストで、まずはボランティアのサービスを受けてくださいといって、一回はじかれかねないんですよね。

 となると、介護している家族が仕事を休んで、おばあちゃんの、ちょっともう、自分は仕事を続けたいから、息子さんや娘さんが親が要支援じゃないかと思うから要介護認定といったときに、いや、まずはこのチェックリストに答えてください、ボランティアでまずは対応させてくださいみたいなことになると、結局は断られたということに受け取られかねないんです。

 その結果、何が起こるか。今は年間十万人が介護離職ですけれども、介護離職はふえますよ。例えば、私の近所の方々でも、ボランティアのサービスを勧められたら、ボランティアのサービスだったらもういいわと。

 結局、その結果、何が起こるか。御存じかと思いますが、ホームヘルパーやデイサービスも、多くの高齢者の方は最初は喜んでやっているんじゃないんです。ホームヘルパーなんかいいわ、他人に入ってきてもらわなくていいわ、デイサービスも行きたくないわ。でも、その中で、いざホームヘルパーさんが来てくれたら、すごくいいホームヘルパーさんで、今ではもう生きがい、その人が心の支えになっている。週に一遍のデイサービスが楽しみになって、元気になっている。そういうふうにして、デイサービスやホームヘルプを喜んでいるわけですよね。にもかかわらず、そのようなサービスが権利として今回受けられなくなるというのは、私は非常に問題だというふうに思います。

 ですから、要介護認定を受けなくてもいい地域づくりとか、そういうふうなことを言っちゃうと、市町村は、田村大臣、要介護認定率が下がった方がいいと思っておられますか。そこはどう考えておられますか。

田村国務大臣 今、山井議員がおっしゃっておられることをずっと続けると、多分、介護離職が逆にふえるでしょうね。

 それはなぜかというと、前から私は申し上げておりますが、そもそも介護を担う方々が圧倒的に足らなくなってくる。でしょう。これから足らないですよ、百万人。少なくとも、あなた方の試算の当時の話ですよ。(山井分科員「賃金を上げたら大丈夫ですよ」と呼ぶ)いやいや、あなた方、賃金を上げたら大丈夫といっても、財源をどうするのかということも含めてお考えいただかなきゃいけないんです。

 ただでさえ、日本は生産労働人口が減ってきますからね。その中において、これから百万人以上必要だと言われている中において、多様な担い手をつくらなきゃいけないんです。そのときに、今おっしゃられたように、いろいろな多様なサービスがこれから出てきます、そういうサービスを受けたくないけれども、無理やり受けさせられているんだという状況をつくるわけにはいきません。

 ですから、もちろん、必要度に応じて皆さんがちゃんとプロのサービスを受ける、そういうことはできるわけであります。できるわけでありますが、いや、それよりもこういうサービスを受けたい、私はもともとこういうようなサービスを受けたいんだというような、そんなサービスをこれから自治体でつくっていくんです。それによって多様な受け皿をつくり、多様な人材で担い手をつくる。それをやらないと、これから団塊の世代が後期高齢者に向かっていく中において、我が国はそれこそ、ヘルパーを頼もうと思っても来ない、人がいない、だから介護離職しなきゃいけない、そういう時代が来ますよ。そのための今回の制度でもあるわけです。

 ですから、我々といたしましては、何としても、今般のこの制度というものを本当に、使われる方々からしてみれば望んで使っていただけるような、そういう整備をしなきゃいけない。

 そして、まさにいろいろな好事例が出てきています。和光市の話もしました。和光市はそのような状況になっているんですよ。要支援率が下がっているんですよ。そして、要介護者が減っているんですよ。

 こういうような状況になってきているということをやはり御理解いただかなければ、今のままだったらいいんだというのは、そこに問題があるから今いろいろな改善をしているんです。今のままでいいのなら、我々は何も改革しませんよ。介護もこのままでいいじゃないですか。あなた方もそう思っていないでしょう。

 今般の要支援の問題というのは、そのための一つの改善策として我々は提案をさせていただいているわけでありまして、どうか御理解をいただきたいと思います。

山井分科員 やはり田村大臣、今、現場のホームヘルプやデイサービスで、プロの介護職員の方々が要支援の方々にどれだけ愛情を込めて、低賃金で大変な仕事だけれども、すばらしい仕事をされているかというのは、わかっておられないと私は思いますよ。そんな簡単にボランティアとかでできることじゃありません。プラスアルファとしてボランティアの方がやられるのは、これはどうぞやっていただいたらいい。しかし、今プロがやっておられる仕事を簡単にボランティアにかえられるなんて、そんな簡単な話じゃないですよ。

 そこでお伺いしますが、例えば、今までだったらデイサービスは、午前から午後まで、十時から三時ぐらいまで預かってもらっていましたけれども、地域支援事業になったら、午前中だけとか午後だけとか、そんな短時間のサービスになる可能性もあるんですか。

田村国務大臣 それも、必要に応じて、多様なサービスの中で対応していただくんだというふうに思います。

山井分科員 そうしたら、例えば、今のデイサービスをやっておられるときに、今までだったらプロの介護職員がお世話していた、今後は、この三つのパターンの中で、今まではプロの介護職員でサービスを受けていたが、無資格の人も要支援一、二のサービスをされるという可能性も出てくるわけですか。

田村国務大臣 今も各自治体でいろいろな研修事業をやっていただいております。でありますから、高齢者の方々といろいろと接する心構えでありますとか留意点、そういうものを学んでいただく中において、一方で、事故が起こっては大変でございますので、今も介護事業者はそれぞれいろいろな保険に入られておられると思いますけれども、同じような形で、そういう対応というものはこちらの方からも指導をしてまいりたいというふうに思います。

山井分科員 今は、百三十時間ホームヘルパーの研修を受けた人がやっているわけです。それを無資格の人にやってもらう。これはやはり私は質が下がると思いますよ。これは問題だと思います。

 さらに、今回、今は介護保険は一割負担ですけれども、二割負担とか五割負担とか全額自己負担のサービスになる可能性もあるんですか、自治体によっては。

田村国務大臣 基本的には、まず、サービスの単価は、そのサービスに応じた単価になると思います。

 負担に関しましては、当然のごとく、負担できる範囲でなければそんなものは誰も利用しないわけでありますし、各自治体だって、前から山井委員おっしゃられているとおり、それによってより悪くなって要介護度が上がれば、それだけ負担がふえるんですよ。そんなことは各自治体だってわかっている話ですから。

 そうならないような形でちゃんとサービスを受けていただいて、そして、重度化をある程度防げる、場合によっては改善する、そのようないろいろなサービスをそれぞれのニーズに応じて自治体が行っていただける。それは、その地域のことを一番わかっておられる自治体がやる話でありますし、そのために見える化をしっかり図っていただき、それに対するサービスを提供いただく。

 私は各自治体を信頼いたしておりますし、それぞれ、私が見た好事例集、ここだけが特別という話じゃありません。普通の地域においても、いい事例はいっぱいあります。そういう事例を好事例として我々としては紹介をさせていただきながら、横展開をさせていただければありがたい、このように思っております。

山井分科員 時間が来ましたので、最後に一言だけ発言をさせていただきますが、今の話によると、自己負担も二割とかに上がる可能性はある、サービスの時間も、半日だったのが午前だけ、午後だけとか、短時間のデイサービスになるかもしれない、プロの介護職員のサービスを受けられたのが無資格の人になるかもしれない。これで、要支援のあれを十年間に千六百四十七億円、約二〇%抑制する。

 私たちは、長妻元大臣もおられますけれども、民主党政権のときにも、要支援を介護保険から外そうかという議論がありました。しかし、私たちは、それはだめだと言って、そこは抑えたんです、やらなかったんです。その理由は、軽度の高齢者、約半数の方が軽い認知症、この軽度の最初が本人にとっても家族にとっても一番重要なんです。だから、こういうサービスは死守せねばならないから、でも財源をどうするんだということで、私たちは消費税増税を、苦しいけれども決断をしたわけです。

 にもかかわらず、今回、消費税は増税する、おまけに介護サービスもカットする。私は、残念ながら、国民の理解はこれは絶対得られないと思います。

 以上で私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

松本主査 これにて山井和則君の質疑は終了いたしました。

 次に、松田学君。

松田分科員 日本維新の会の松田学でございます。

 私は、どちらかというと経済財政畑なので、田村厚労大臣には多分初めての質問になると思いますが、よろしくお願いいたします。

 経済財政分野といいましても、私、実は財務省にいたときに大変変わった出向ポストがありまして、東京医科歯科大学の教授という出向ポストがございまして、そちらに二年間おりました際に、いろいろと病院経営とかそちらにも少しかかわったこともございまして、当時から医療問題にはいろいろな意味で発言するようにもなりました。

 その中で、今、医療財源の問題とか、日本は、財政は厳しいけれども、御案内のように、金融資産を莫大に民間は持っている、それをどうやってうまく医療システムの中で活用していくかとか、あるいは、そういった議論をしていく中で、やはり究極的には地域医療ですね。

 病院というのは、ホスピタルというのは個々の病院じゃなくて、やはり地域そのものがホスピタルになるという時代も早く日本で実現しなければいけないという問題意識で、私も地域医療の振興に個人的にかかわってきまして、そういった意味で、実は、その中で、地域でシームレスな医療サービス、さらには福祉までつながった社会保障、そういったものをどうやって提供していくかということの活動もしてまいりました。

 実は、きょうはドクターヘリのことだけを質問するつもりだったんですが、おととい、私の同志の、まさに在宅医療にかかわっている事業者の方と、それから一緒に議論してきたお医者さん、若いお医者さんなんですが、私の方に真っ青になって来まして、今回の診療報酬の改定について、ちょっと通告の順番と違うんですが、先にそっちの方を御質問させていただければと思います。

 今回、政府は地域医療・介護確保法案というのを提出しているわけですけれども、今回の診療報酬改定の中で、話を聞いてみると、入院中心から地域医療へという考え方がうたわれているというふうに認識していますが、本当にそうなのかなと疑われる事例がありましたので、それをちょっと取り上げさせていただきたいと思います。

 今回の改定で、要するにサービスつきの高齢者向け住宅とか、あるいは有料老人ホームとか、そういった医療サービスのついた集合住宅、それに向けた訪問診療について同一建物という項目が新設されて、従前より報酬が大幅に引き下げられる、四分の一ぐらいになったという話がございまして、これで在宅医療に関連する関係者の方々は非常に大きな打撃を受けるという声が出ております。

 要するに、こうなってくると、二十四時間医療サービスつきの有料老人ホームとか、あるいはグループホームとか、高齢者向け集合住宅に対するいわゆる在宅医療サービスの担い手の医師がなかなか集まらなくなってしまう、現実にこの事業を続けるのは非常に困難になっていくということで、また、こういった住宅を提供しているハウスメーカーの方からも、こういうサービスをつけるという約束をしていたのに、これが十分できなくなるというのは約束違反になってしまうということで、結構波紋を呼んでいるといいますか、そういった話を聞きまして、これはちょっと放置できないなということがありました。

 事前に関係者からの意見聴取とかしたのかどうか、また、なぜこういうことが突然決定されたのか、まず、厚労大臣、その点についてお伺いしたいと思います。

田村国務大臣 これはたしか、逆の方向から、予算委員会でしたか、質問を受けたと思います。

 新聞報道なんかでも御存じかもわかりませんが、特定施設、有料老人ホームでありますとか、サービスつき高齢者住宅でありますとか、軽費老人ホームでありますとか、こういうような施設、住まいのような形で住まわれている施設であります、特養とか老健とは違うわけでありますけれども、こういうところにたくさんおられますから、要は、医者に施設を紹介して、手数料ビジネスみたいなことが行われているということが報道ベースで載りました。報道以外でもそういう情報は以前からキャッチされて、田村大臣、危ないよ、これは診療報酬を食い物にするよというようなことを言われる議員の先生方もおられました。

 事実、いろいろと調べてみますと、そういう事例もありまして、何十人かおられる施設でありますから、ぽぽっと診られて、短時間のうちに、言い方は悪いんですが荒稼ぎをされるような、そういう形態がある。しかも、それを手数料としてバックしているというような、そういう報道もあるわけでありまして、これは非常に、このままでいくと変なモデルができてしまう。

 今委員がおっしゃられたみたいに、何かあったときに来るというのは、これは往診でございますから、別の診療報酬があります。今言っております訪問診療というのは、定期的に健康状態を確認しに来る、そういうような形の中で診断をするんですね。ですから、正直申し上げて、もし夜中に何かあるときには往診の点数をとっていただければ、十分に点数を強化もさせていただいておりますので、そのような形で対応していただきたいというふうに思うわけであります。

 そもそも、住まいの中にお住まいになられている方々は、本来、外来に行っていただく方々もたくさんいるんです。つまり、お元気な方々もおられるわけでありまして、特養だとか老健というような感じではないわけでございます。そこに付随したいろいろなサービスはあるにいたしましても、住まいのかわりに住まれておられるわけであります。

 ですから、そういう意味では、外来という意味からいたしますと、例えば、主治医機能を強化するというのを今般もいろいろと我々も対応させていただく、それから、何かあったときのための後方支援病院というものを整備する、それから、機能強化型の訪問看護ステーション、こういうものにも、今回、診療報酬改定でいろいろと対応させていただいておるということでございますから、そういうようなものをお使いいただきながら医療をお受けいただく、こういうことが大前提である中であります。

 関係者ともいろいろ話をさせていただいて、これで結構だと言われる関係者の方々もおられるわけでありますが、確かに、言われるとおり、大きな変化でございますので、これからも丁寧に、それぞれ関係者の方々のお話をお聞かせいただいて、これで本当に訪問診療が必要な方々が来てもらえないという話になると、これは大変でございますから、場合によっては、見直しも含めて検討はさせていただきます。

 なぜ今般このような形になったかというと、実はそういうような背景があって、どうも、犯罪とまでは言いませんけれども、かなり怪しい事例があって、報道ベースで流され、国会でもいろいろな御指摘をいただく中において、今般のような改定をさせていただいた。させていただいたというよりかは、中医協の中で関係者で御議論をいただいて、その方針にのっとって決定をさせていただいたということであります。

松田分科員 今のような不適正事例があるということは、私も承知しております。ただ、私自身がそういった方々のところに実際に訪ねていきまして、実際、集合住宅で訪問診療をしている現場も見せていただいたんですが、かなり住民のニーズにきっちりと応えているんですね。やっている方々も非常に志が高いですし、また、若いお医者さんで開業医の方も、ぜひ自分もそういうことをやりたいという方がどんどん参入してくださっているというものが、これをやると成り立たなくなってしまうという現実もやはりあるようなんですね。

 ですから、不正があれば、不正は不正としてきちっと摘発していくということは必要だと思いますけれども、根っこからこれができなくなってしまうということについては、もうちょっと御配慮をいただいた方がいいんじゃなかろうかという感じがしないでもありません。

 これは本当かどうかあれなんですが、一部には、やはり外来患者がどうも在宅に流れているという開業医側からの非常に大きな不満もあるという話も一部に漏れ伝わってきて、まさに新しいビジネスに対しては、いろいろな既得権益の壁というものができる一つの例ではないかというふうな感じもしないでもないんですが、大臣、いかがでしょうか。

田村国務大臣 我々、医療はビジネスとは考えていないので、そこはちょっと委員と認識が違うのかもわかりませんが、実は、私も心配しているのは、いろいろな声があって、実際問題、医療が提供されないと困るんですよね。

 もちろん、特定施設ですから、何十人かおられます。その中において、訪問診療が必要である方も複数人いる可能性はあるわけです。仮に九割は外来に行ける人であったとしても、一割おられれば、それだけで、例えば四十人ならば四人いるわけですよね。

 一施設で複数人になれば点数が下がりますが、一人ならば点数は変わらないわけでありますけれども、それで、やれないということで、そこには行かないということになれば困るわけでありまして、そこは、実は、地区の医師会、しっかりそういうところには紹介をさせていただいて、行っていただける、こういうような体制を組まなきゃならぬなということで、そういう点は我々も配慮をしなきゃならぬなというふうに思っておりますが、ビジネスといいますと、これで、わっと行って網羅的にやって稼いでもらうというのは、ちょっと本来の趣旨じゃないものでありますから、そういうことを想定しているわけではないです。

 もともと、なぜそういう点数をつけたかというと、そういうような特定施設にも数人診に行っていただく。だから、複数人、わあっと十人、二十人診ていただくというようなことを前提に考えた、そういう制度ではないわけでありますので、そこでどうも、網羅的に診て、わっと稼がれる方々が出てこられたので、それならばという形の中において、今回、こういう御提案を中医協でいただいたということであります。

松田分科員 ビジネスと言うと語弊があるかもしれませんが、何事も経済的な裏づけがないと成り立たないという意味で申し上げたのでありまして、そういう不正事例があるというのは事実かもしれませんけれども、一方で、真面目にやっている人たちもいる。こういう人たちがやっている、そしてニーズに応えているというところに対して、関係者からも意見をお聞きいただくというふうに大臣がおっしゃっていただいたので、ぜひ、これからしっかりとお聞きいただいて、必要があれば、必要な措置をとっていただくようにお願い申し上げます。よろしくお願いいたします。

 それでは、ドクターヘリの話にちょっと入らせていただきます。

 国松元警察庁長官がNPOの救急ヘリ病院ネットワークの会長をされていますが、国松さんは私も非常に個人的にお世話になっているんですが、その国松さんは、狙撃事件のときに、すぐに病院に搬送されて一命を取りとめた、そのときの御経験から、残りの人生はドクターヘリの普及にささげると。大変志の高い方でいらっしゃいまして、たまたま、ひょんな機会で、私も現役の役人だったときから知り合いになりまして、志が非常に同じなものですから、いろいろなところで意見交換をさせていただいております。

 このドクターヘリは、言うまでもないことですけれども、救命率を向上させるとか、あるいは後遺症が激減するとか、いろいろな効果がある。あるいは広域の救急医療圏の確立にも貢献するだろう、あるいは医療機関の集約化の促進にも資するだろう、あるいは地域格差の是正にも資するだろう、いろいろな意味もあって、近年では、平成十九年に、議員立法でドクターヘリ特別措置法というものが成立して、これもあってどんどん普及をしているという実態はあるにはあるんです。

 そこの附則の第二項では、ドクターヘリを用いた救急医療の提供に要する費用のうち診療に要するものについて、この法律の施行後三年をめどとして、国は診療報酬の対象化も含めた検討を進めることと規定されておりまして、お手元に配った資料にもございますように、超党派の議連もあって、この四のところにも、「検討を進めること。」これは平成二十四年の七月ですけれども、こういう決議も出されておりますが、どうも、検討を進めると法律にも書かれている、決議もなされているにもかかわらず、ほとんど検討された形跡がないのではないかという話があります。

 現行では、国が半分ぐらい出して、残りを特別交付税ということで、かなりの部分を面倒見ているということで、財源面では国や自治体というところが主導権を握っている、そういうことになっているんですが、そういう状況では、病院側が自主的にドクターヘリが必要だと思ったときに導入する、いわゆる病院の判断で自主的な導入促進ということをやっていく上では、やはり診療報酬の方がいいんじゃないかという議論もございます。

 お手元の資料の二枚目のところを見ていただきますと、表がいろいろ出ていますが、真ん中の表をちょっと見ていただきますと、「主要国の救急拠点と配備密度」という表でございます。これは、後でも申し上げますが、十五分ルールという、半径五十キロ圏でカバーされている、拠点数掛ける半径五十キロという面積を国土面積で割ったものでございまして、これが一を超えると、ほぼ国土面積の全体がドクターヘリで十五分以内で来るということになるわけなんですが、日本は〇・二と極めて低くて、高い国はドイツ、スイス、オーストリアという国々なんです。

 その下の「主要国の救急ヘリコプターの運航者と経費負担」で見ますと、これは医療保険でやっている国も結構ありまして、ドイツ、アメリカ、スイス、オーストリアといった国々で、どうも医療保険でやっている国ほど配備密度が高いという、これはたまたまなのか、その因果関係はあるのか、それは必ずしも明確ではありませんけれども。

 いずれにしても、いわゆる診療報酬で負担するのは、診療報酬も財源が大変だという話も一方であるとは思いますけれども、ただ、このドクターヘリをやることによって、医療財政にも非常に大きな寄与をする。これを示しているのが、同じ資料の上の方にある、これは一つの試算ですけれども、ドクターヘリと救急車によってどういう効果があるか。ドクターヘリを使うと、入院日数とか入院点数も大幅に削減される。医療財政にとって大きく貢献するということでもあります。

 今、日本は四十三機導入されている。これをドイツ並みの水準というか、全国をカバーすると八十機ぐらい必要になるらしいんですが、仮に全国で八十機ぐらい導入したところで、財政的にはそんなに大きな負担にはならないと言われているわけなんですね。国民一人当たりで大体年間百三十円ぐらいだという説もありまして、これは財政的に見ても、診療報酬全体の〇・〇四%を超えないぐらいの金額で、診療報酬全体の財政効果もあるといったようなこともいろいろ勘案しますと、別に診療報酬で見てもいいんじゃないかという議論にも非常に正当性があるようにも思えるんです。

 かつ、搬送費ですね、これも診療行為の一つなんだ、診療の不可欠の前提なので、それも含めて医療保険で面倒を見るべきではないかという、これも国松会長も強い御意見をお持ちなんですが、大臣のお考えをお聞かせいただければと思います。

田村国務大臣 これは、私も議連の役員でございまして、国松理事長とも議論をしながら、確かに、ドクターヘリの搬送費まで含めて保険で見ればいいじゃないかという議論もしたんですけれども、やはりなかなか、保険者もいろいろな御議論がありまして、難しいということで、助成をしながら対応しておるということであります。

 ただ、一方で、救急搬送の診療料に関しまして、これはもう保険に適用されておりまして、ここにありますような、今言われた附則第二項等々の検討も踏まえ、平成二十年には六百五十点だったものを千三百点に引き上げさせていただいたというか、こちらは要望しておった側なんですけれども、当時引き上げていただいたと言った方がいいのかもわかりませんが、そういう状況でありますし、また、新生児や乳幼児に対しての搬送の加算、これも手厚くいたしました。それから、三十分以上診療している場合、これに関しても加算をしたわけでありまして、そういう意味では、搬送時の診療を行った場合に対する対応というものはさせていただいておるわけであります。

 あわせて、先ほど言いました、運営していくためには、格納する費用もかかりますし、それからメンテも要るわけでありまして、すごいお金がかかるんですね、これは。ですから、それに対しては助成というような形で対応させていただいておるということでございます。

 言われますとおり、これがさらに必要なところにふえて、必要なところに全県配備されていけば、かなりの部分救われる命というものが確実になるんじゃないか、このように期待をいたしておるわけでございまして、議連のメンバーの一人といたしましても、そういう思いの中で先生の御質問にお答えをさせていただきます。

松田分科員 御案内のとおり、ヘリコプターのランニングコストが大体年間二億円ぐらいかかる、ここの部分なんですけれども、搬送費も含めていいんじゃないかという声でございますので、ぜひ御検討いただければというふうに思っております。

 それから、ドクターヘリの配備について、ドクターヘリが一機体制の県にとっては、重複要請があった場合に十分応えられない場合があるということもあるので、できれば複数機のドクターヘリが配備されるべきだと考えますが、この対策の一つとして、消防防災ヘリ、これはほぼ全ての都道府県に最低一機配備されているので、これをドクターヘリ的に活用していく、併用活用するということで、そういった検討を厚労省としては、例えば消防庁に対して働きかけるというようなことは行ったことはあるんでしょうか。

赤石大臣政務官 お答え申し上げます。

 私も、埼玉県の川越市に住んでおりまして、埼玉医大医療センターというのがありまして、そこへ行って、見てきました。

 本当に、埼玉県は、地形が非常に高いところから低いところまでありまして、特に今回も雪害で問題になっていますけれども、雪の多い秩父地方で事故、災害等が起こった場合に、非常に貴重な輸送手段になっていると思っております。

 あと、私は青森県の八戸の出身なものですから、八戸市民病院もドクターヘリが置いてありまして、これが今、青森県は二機体制になりまして、青森県全体をカバーできて、そういう意味では、本当にこのドクターヘリのありがたみというのをよく実感しているところであります。

 そこで、厚生労働省としても、ドクターヘリのみならず、必要に応じて、消防の防災ヘリ、現在七十五機あるそうでありますけれども、これも活用して、傷病者の搬送を効果的に進めることが重要だというふうに考えております。

 これを踏まえた上で、消防庁の調べによると、消防防災ヘリについては、平成二十四年度における救急出動が三千二百四十六件と、全出動の五割以上となっておりまして、必要に応じて、医師の同乗のもとで消防防災ヘリの活用が図られていると認識しております。

 また、厚生労働省としては、ドクターヘリの要請が重複した場合等に備え、ドクターヘリ及び消防防災ヘリの要請を受ける窓口を一本化し、一体的かつ効率的な運用をしている事例を情報提供するなどの取り組みを行っているところであります。

 引き続き、消防庁とも協力しながら、より効果的な傷病者の搬送が進められるよう、取り組んでまいりたいと思っております。

 以上でございます。

松田分科員 わかりました。

 レスポンスタイムという言葉がありますが、救急要請の通知を受けてから治療を開始するまでの時間でありまして、ドイツでは十五分ルールとして各州で法制化されているということであります。

 これは、救急車でありますと、時速五十キロで走っても一時間を要するのが五十キロでありますけれども、時速二百キロのドクターヘリですと、十五分で飛んでいける、それだけ救命率が上がるということで、ドイツでは法制化されているということなんです。これをルール化すれば、半径五十キロメートルでコンパスを回したときにカバーできない圏域があれば、そこはドクターヘリをふやさなければいけないということになってくるわけですね。

 どの地域の住民であっても同等の医療サービスを受けるのは住民の権利であるという考え方は、多分、このドイツのルールが背景にあるんじゃないかと思われるんですが、これは、実は、イギリスでは八分ということなんですね。イタリアでは、都市部は八分、山間部では二十分。アメリカのシアトルでは、現場到着七分以内、いわゆる最初の段階の診療の終了が七分以内、病院搬送七分以内というのがルールになっている。

 こういうふうに、各国でルール化が進んでいるんですが、日本でも同じようにこういった十五分ルールのようなものを法制化すれば、計画的なドクターヘリの推進、あるいは、住民にとって自分が安心できるかどうかという点もはっきりしてくるわけなので、いろいろな意味で効果があると思いますけれども、この点について、大臣、いかがでしょうか。

赤石大臣政務官 続けてお答え申し上げます。

 適切かつ迅速な救急患者の搬送、受け入れを行うため、厚生労働省としては、消防庁とともに平成二十一年に消防法を改正し、各都道府県において、傷病者の状況に応じて適切な医療を提供できる医療機関リストの策定等を内容とする実施基準を策定し、これに基づいた救急患者の搬送、受け入れがなされるように取り組んでいるところであります。

 救急患者の搬送、受け入れ手段の一つでありますドクターヘリの運航について、日本航空医療学会による平成二十四年度の調査では、ドクターヘリ要請から現場着陸までは平均十六分であると承知しております。

 また、ドクターヘリのさらなる迅速な出動を進めるため、昨年十一月には、災害時などの緊急時において、消防機関からの依頼を待つことなく、迅速にドクターヘリを現場に着陸させることができるよう、運用の改善を図ったところであります。

松田分科員 ちなみに、十五分ルールを適用しますと、日本では現状四十三機なんですが、これが実は七十八機必要だということになるそうですので、できればこの点の御検討をしていただければというふうに要望を申し上げます。

 それから、今も災害のときの話が出ましたが、東日本大震災のときにはドクターヘリが大変大活躍をしたということで、一大戦力となっているということでございまして、その際にも、自衛隊のヘリとか消防防災ヘリと一体となって救助活動に当たったと認識しております。

 ところが、国が定める防災基本計画にはドクターヘリについての記載がない。いずれ近い将来に首都直下地震とか東南海大地震とかいろいろなことが予想される中で、やはりドクターヘリを防災基本計画に位置づけて、それを例えば防災業務計画とか地域防災計画にブレークダウンしていくといったようなことが必要ではないか。

 また、同時に、大規模災害時にドクターヘリを統一的、機動的に運営していくということも大事だと思いますが、これについての指揮命令系統といいますか、消防防災ヘリの場合は消防組織法に基づいて消防庁長官が出動指令をするという体制ができているようなんですが、これについても、ドクターヘリも同様な法的な仕組みが必要ではないかというふうにも思われるんですが、いかがでしょうか。

田村国務大臣 今の御議論をお聞きしておりまして、当時、ここが問題だったなというのをいろいろと思い出しながら、懐かしい思いで聞かせていただいておりました。

 まだ、夜が運航できない、そういう問題もありまして、なかなか難しい課題はたくさん残っておりますが、今のお話、東日本大震災で、十六機のドクターヘリで百四十名搬送をしたということで、大活躍をしたわけでありますが、今まで、こういうような大規模な災害のときにドクターヘリの運航をすること、これに対してのルールというものも何もなかったわけであります。

 そこで、昨年の十一月、国の要請で各都道府県に対して、ドクターヘリを出していただけるような、そういう派遣要請ができるようにいたしました。何か起こったときに、防災担当の方から、我々の方もその中の一員として入るわけであります、そしてその中において、必要であれば厚生労働省の方から各都道府県の方に要請をさせていただく、そのような形にさせていただくということでございます。

松田分科員 議連にいらっしゃるということでございますので、私の話は十分御承知のことだと思いますが、そのときの決議の内容が必ずしもまだ、いまだに十分実現されていない。超党派の決議がちゃんと政府側で実行されているのかどうかという点がいろいろ問題になっているということでございますので、その論点として、もう一つ、ドクターヘリパイロットの確保につきまして御質問させていただきたいと思います。

 日本は、御案内のように少子化、高齢化の進展で、将来ドクターヘリのパイロットの需要に供給が追いつかないのではないか、そういう懸念がなされているわけですが、今、議連の決議でも、「ドクターヘリの安全な運航の確保のために、ドクターヘリ従事者の育成・確保に対して、国は必要な支援を行うこと。」という決議が五番というところでなされているんですけれども、現時点での検討状況についてお聞かせいただければと思います。

赤石大臣政務官 またお答えさせていただきます。

 ドクターヘリの操縦士の養成、確保につきましては、これまで各運航事業者を中心に取り組んでいただいておりますが、このほか、防衛省の再就職支援により、退職した自衛官がドクターヘリ操縦士として再就職しており、また、国土交通省による、民間運航事業者が実施する養成への技術的な支援が行われていると承知しております。

 また、ドクターヘリの医療従事者の養成、育成につきましては、厚生労働省として、平成二十二年度から、ドクターヘリに搭乗する医師、看護師に対し、ドクターヘリ従事者研修を開催し、医療提供にかかわる安全管理について講義を実施しております。

 厚生労働省としては、引き続き関係省庁とも協力しながら、ドクターヘリの安定的かつ効果的な運用が図られるように御支援をしてまいりたいと思っております。

松田分科員 私がドクターヘリの問題をあえて取り上げましたのは、例えばスイスなんかでは、いわゆる民間の寄附によって賄われている部分が非常にある。年間三十フランですか、年間で三千円ぐらいですね、その寄附をした人が人口の三〇%ぐらいいて、そういった方々は無償で提供を受けられる。

 こういった、いろいろ民間の志というものをうまく医療システムに活用すると、いわゆる個人金融資産の大半を高齢者が持っているわけですし、それを、死んだ後天国に持っていけるわけじゃないわけですから、地域のため、あるいは地域の救命率を上げるためにこういうものを出していこうという方は、たくさん日本にもいらっしゃると思うんです。

 そういった意味で、これを医療保険の対象にして、そして自己負担分について、そういったいわゆるパブリックな仕組みをつくって、そういった方々の志で賄われる部分をつくっていくのが、これからの医療の財源を確保していく上でも非常に重要な一つのモデルになるんじゃないか。非常にドクターヘリというのはわかりやすいと思うんですよね。そういった観点もちょっとございましたものですから、きょう質問させていただきました。

 これから、いろいろな意味で、法案も出されているようですし、地域医療ということ、これに対して地域の資源をどうやって活用していくかという、いろいろなモデルを日本でつくっていかなければいけないと思いますので、厚労大臣もぜひいろいろな面でのお知恵を出していただければと思います。

 以上でございます。どうもありがとうございました。

松本主査 これにて松田学君の質疑は終了いたしました。

 次に、坂元大輔君。

坂元分科員 日本維新の会の坂元大輔でございます。

 松田学議員に続きまして、質問をさせていただきます。私、ふだんは財務金融委員会、そして国土交通委員会に所属をしておりまして、厚生労働省関係の質問は今回が初めてですので、ふなれな点もあるかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。

 本日は、さきの大戦で亡くなられた海外の戦没者の方々の御遺骨の収集事業に関してお伺いをさせていただければと思います。

 海外の戦没者数約二百四十万人、うち、既に日本にお迎えした御遺骨が約百二十七万柱、つまり、残りが、半分より少し少ない百十三万柱がまだ残されている状態です。そして、相手国の事情などで収集が困難なものを除きますと、約六十万柱がまだ帰還可能なのではないかというふうに言われている中で、ただ、来年、戦後七十年が経過をしてまいります。関係の方も高齢化がどんどんどんどん進んでいっている中で、この事業の推進が求められているというふうに考えております。

 最初に申し添えておきますと、私は、今回の質問で、特定の団体を擁護したり、もしくは厚生労働省に対して批判をしたりという趣旨で質問をさせていただくわけではなくて、あくまでも、この御遺骨の収集事業が本当に急がれる中で、推進をしていきたいという思いで質問をさせていただければと考えております。

 南方地域で最も戦没者が多いと言われるフィリピンについて、五十二万人のうち、日本へ帰ってこられた御遺骨が約十五万弱というふうに伺っております。フィリピンでの御遺骨の収集帰還事業の進展が、これは全体の御遺骨の収集帰還事業にも大きな影響を与えるというふうに捉えております。

 平成二十二年度まで、厚生労働省がフィリピンにおいて遺骨情報の収集事業を委託した特定非営利活動法人、NPO法人の空援隊から、厚生労働省に対して訴訟を提起されているというふうに伺っておりますが、まず、それは事実なのでしょうか。そして、この件に関しての厚生労働省の見解をお伺いしたいと思います。

古都政府参考人 お答え申し上げます。

 新聞報道におきまして、空援隊が厚生労働省に対して訴訟を提起したとの報道があることについては承知しておりますが、現時点では訴状が届いておらず、その内容を把握していないことから、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。

坂元分科員 報道では承知しているということですので、恐らく今後裁判という形になっていくと思いますので、裁判を通じて事実を明らかにしていっていただければなというふうに考えております。

 続いての質問ですが、今回裁判を起こされている空援隊が厚生労働省からの委託を受けて事業を展開していた時期、もしくはそのほかの時期も含めて、独自に御遺骨を日本に持ち帰ったというような事実はありますでしょうか。

古都政府参考人 お答え申し上げます。

 厚生労働省としましては、空援隊が厚生労働省から未送還遺骨情報収集事業を受託していた期間を含めまして、独自に御遺骨を収容していたという事実は承知しております。しかしながら、独自に日本に持ち帰ったという事実は承知をしておらないところでございます。

坂元分科員 独自に現地で御遺骨を集めていたという事実はあっても、それを厚生労働省に断りもなく、許可もなく、もしくは指示、指導を受けていないにもかかわらず持ち帰ったという事実はないということを確認させていただきました。

 つまり、厚生労働省からの指示、指導をしっかりと守っていたということが、この点については言えるのではないかというふうに考えております。

 続いて、フィリピンで平成二十二年七月に建設をされました火葬場の落成式典に、厚労省の職員数名とともに、外務省現地在外公館であるマニラ大使館の加藤次席公使も出席をされて、祝辞をこの式典で述べられたというふうに伺っております。これは事実でしょうか。

下川政府参考人 御指摘の落成式に、当時の肩書でございますが、加藤元彦在フィリピン日本大使館次席公使が厚生労働省遺骨収集派遣団とともに出席し、祝辞を述べたのは事実でございます。

坂元分科員 これも、祝辞を述べられたというところまで事実であるということを確認させていただきました。

 フィリピンはキリスト教徒の方が非常に多くて、つまり火葬場が少ないという実態がありまして、御遺骨の現地での焼却、御遺骨を焼くことに関して、この火葬場が建設されたということは、厚労省職員の方とマニラ大使館の加藤次席公使も出席をされて祝辞を伝えられたというところで、厚労省、外務省、つまり日本政府としてもこの点については当時歓迎をされていたということがこの事実からも言えるのではないかというふうに捉えております。

 その上で、次の質問に移らせていただきますが、七月の火葬場の落成から、NHKの報道によって、十月に、このフィリピンでの遺骨情報収集作業、一旦中断というか事業停止になったわけですけれども、その十月の事業停止までの短い約三カ月という期間で三回、この空援隊が建設をした火葬場を使って御遺骨の火葬が行われているというふうに伺っております。

 その際に、環境保全費という名目で、火葬場の使用料以外に追加の支払いが行われたということは事実でしょうか。そして、もしそれが事実なのであれば、この環境保全費の支払いの理由は何でしょうか。お答えをお願いいたします。

古都政府参考人 お答え申し上げます。

 当時、およそ七千柱余りの御遺骨がございまして、これを、一度に千を超える柱を焼骨して、日本に持ち帰るということでございました。

 厚生労働省といたしましては、当時、火葬場を所有する現地のフィリピン人に対しまして、火葬場使用料を三回支払っているところでございます。このうち一回については、請求の中に環境保全費を含むという形で火葬場使用料を支払っているということでございます。

坂元分科員 済みません、もう一度確認をさせていただきたいんですが、環境保全費を含むということで、火葬場の使用料を何回支払われたんでしょう。そこの確認をさせていただきたい。

古都政府参考人 もう一度お答えいたします。申しわけございません。

 火葬場を使ったのが三回でございます。三回、当然のことながら、火葬場使用料はお支払いしております。そのうち一回につきましては、請求書の中に火葬場使用料(環境保全費を含む)という形で請求がございまして、私どもとしては火葬場使用料という形でお支払いをしたということでございます。それは一回でございます。

坂元分科員 済みません、ちょっと事実関係を再度確認させていただきたいんですが、その請求書の中に、環境保全費を含むという形で火葬場の使用料が請求書に書かれていた、それをお支払いしたという形でしょうか。

古都政府参考人 お答え申し上げます。

 支払いに当たりましては、向こうのフィリピンの方と契約書を結んでおりますので、その中に、火葬場使用料(環境保全費を含む)という形で契約になっておりますので、それで火葬場使用料を支払ったということになっております。

坂元分科員 その他二回はそれが含まれていなかったということだと認識をしたんですが、それは、もしわかればで結構なんですけれども、何回目の支払いのときだったでしょうか。お願いします。

古都政府参考人 お答え申し上げます。

 基本的に、火葬場の使用料という形で払っておりまして、一回目、二回目は火葬場使用料ということでございました。三度目につきましては、火葬場使用料(環境保全費を含む)という要求でございましたので、その契約になっております。

坂元分科員 つまり、一回目、二回目には書かれていなかった、計上されていなかった環境保全費というものが、三回目の支払いというか請求の際に含まれたということだと思いますが、その中身、内容の確認というものはされなかったのでしょうか。

古都政府参考人 お答え申し上げます。

 現地で火葬場の使用料という形で包括的に全部支払うことになっておりましたので、そこの中に環境保全費が三回目については含むという形で明記されておったということでございまして、内容的には、一回目、二回目、三回目とも同じようにやったことは、火葬場を使って火葬、焼骨をしたということでございます。

坂元分科員 もし、これもわかればで結構なんですが、例えば、環境保全費が含まれていたことで、三回目の請求の額というのが、一回目、二回目と比較して多かったのではないかなというふうに推察をされるんですが、そのあたりの事実関係は確認できますでしょうか。

古都政府参考人 お答え申し上げます。

 全体額で払っておりますので、三回目が一番柱数が多かったということでございまして、詳細はまた、一回目、二回目の支払い方法とか、違いますが、全体としては量がまず一番多かったということで、額的には一番多い支払いになっております。

坂元分科員 ただ、一回目、二回目の請求と比べて、その環境保全費という項目が括弧内であるとはいえ書かれていたというところで、やはりその中身に関して確認をすべきだったのではないかなというふうに思うんですけれども、その点に関してはいかがでしょうか。

古都政府参考人 お答え申し上げます。

 あくまでも火葬場使用料という形で払いましたので、それから、そもそも焼骨をしたりすればどうしても、においが発生する等々、あるいは苦情があるとか、いろいろな問題があるというようには聞いておりましたので、それが幾らかという形ではなく、それを含む火葬場使用料という形で支払ったところでございます。

坂元分科員 内容の詳細については確認はされなかったということですね。はい、わかりました。

 次の項目に移らせていただきます。

 先ほど、私が前に質問させていただいた中で、その火葬場の建設当時は政府としても非常に歓迎をされていたことが、職員を出されている、祝辞を伝えられているというところからもありますし、空援隊が厚生労働省の指示、指導なく御遺骨を勝手に日本に持ち帰ったというようなこともない、つまり、指示、指導をしっかり守っていたということも明らかになっている中で、二十二年十月のNHKの報道による情報だけでこの事業が中断をされてしまったというのは、私は、これは余りに無責任というか、短絡的な判断だったのではないかなというふうに捉えております。

 一旦停止をした上で、厚生労働省として、その後、事実関係の検証はなさったのでしょうか。もしそれがされたということであれば、簡潔で構わないので、その検証結果を教えていただければと思います。

古都政府参考人 お答え申し上げます。

 フィリピンでの遺骨収集帰還事業につきましては、先生御指摘のように、一部にフィリピン人の遺骨が含まれているのではないかとのNHK報道をきっかけにいたしまして、事実関係を含め検証を行うよう、当時の厚生労働大臣よりまず指示がございました。あわせて、フィリピン政府からも事業の中断の要請がございました。そういうことから、フィリピンにおける遺骨収容を中断し、検証するということになった次第でございます。

 検証につきましては、事実関係を含め、一年余をかけて検証を行い、平成二十三年十月に、フィリピンでの遺骨帰還事業に関する検証報告書という形でまとめております。

 その中では、例えば、現地において保管されている御遺骨について法人類学的検査を行った結果、女性や幼児のものと思われる御遺骨が含まれていたほか、死後六十五年近く経過している旧日本兵の遺骨とは思われないものも相当数含まれていた。また、現地において保管されている御遺骨の中からミトコンドリアDNAの抽出が比較的容易と思われるものを百十検体選別し、ミトコンドリアDNA塩基配列のハプロタイプ解析というものを試みたところ、日本人に統計的に有意に多く見られるハプロタイプに一致するものが五個体であったということの記載がございます。

 これらを踏まえまして、事業の実施方法の見直しが指摘されているところでございます。

坂元分科員 検証をされたというところで、その中に日本人ではない御遺骨も含まれていたのではないかという疑いとか、女性、子供の骨も含まれていたという結果が出たというところなんですけれども。済みません、では、その点についてはもう一点だけ。

 このときに、一つ争点になったことが、遺骨の発見状況を証明する宣誓供述書の内容が虚偽ではないかという疑いがかけられていたと思うんですけれども、その点に関しては、その後の検証でいかがでしょうか。

古都政府参考人 お答え申し上げます。

 宣誓供述書につきましては、現地で調査を行って、例えば市区町村の方、証明をされた方とかに確認をとったところ、それが虚偽であるという事実は確認できなかったということが言われております。

坂元分科員 ありがとうございます。

 そういったフィリピン政府からの申し入れ等々によって、一旦事業が中断をされて、結果的に、今もってフィリピンでの事業というものが中断をされている状況でございます。

 その早期再開は、先ほど、冒頭にも申し上げましたとおり、高齢化する関係者の方々の願いでもございますし、フィリピンが最も多いというふうに言われていますので、ほかの地域を含めた全体の御遺骨の収集、帰還を加速させていくにも、これは必要なことではないか、急がれることではないかというふうに考えております。

 そこで、フィリピンにおける遺骨収容の今後の方針について、厚生労働省としてはどのような見解をお持ちでしょうか。

古都政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生がおっしゃいましたように、一柱でも、一日でも早く御帰還いただくというのが私どもの使命だと存じております。

 フィリピンにつきましては、先ほどの、御紹介いたしましたフィリピンでの遺骨帰還事業に関する検証報告書におきまして、今後、疑惑が生じることのないよう事業を適切に実施するためには、事業のあり方を見直すということが提言されております。

 一つは、遺骨の収容は、フィリピン国立博物館職員の同行のもとでのみ実施、遺骨の収容については、日本側から骨学等の研修を受けた当省職員を遺骨収容現場に派遣する、遺骨の移動を伴わない情報収集についてのみ、民間団体に委託する、収容された遺骨の鑑定は、フィリピン側専門家及び日本側関係者が合同で実施する、遺骨の鑑定については、紫外線光照射による蛍光反射検査を含む法人類学的検査及びミトコンドリアDNA塩基配列のハプロタイプ解析を行う、宣誓供述書を廃止するなどの見直しを行うということにされております。

 この報告書を受けまして、現在、遺骨収集帰還事業の早期再開に向けまして、フィリピン政府と事業再開に向けた協議を鋭意進めているというところでございます。

坂元分科員 ありがとうございます。

 つまり、国としての関与というか検証をより強めていった上で、確度の高いというか、御遺骨の収集帰還事業を行っていきたいという意思を今示していただいたのかなというふうに考えておりますが、そうなると、やはり、そこには予算というものが、人であったり技術について予算がかかってくるというふうに思います。

 私は、もちろん、民間の力をかりて、委託できる部分は委託をしていったらいいと思いますけれども、基本的には、やはり国のために、国を守るために戦ってくださった御英霊の方々に一柱でも多く日本に帰ってきていただくことは、これは国としての本当に責務だと思いますし、ぜひぜひ本当にやらなければならないことだというふうに考えております。

 そういう中で、来年、戦後七十年になります。これは本当に御遺骨の帰還というものが急がれている中で、やはり国としての責任、責務を果たしていくために、ここに、この事業にしっかりとした予算措置を含めた対応をしていかなければならないというふうに考えておりますが、その点に関しての厚生労働省としての御見解、お考えを伺えればというふうに思います。

佐藤副大臣 坂元委員の御質問にお答えいたします。

 私も、今回、坂元委員が御質問されたフィリピンの戦域ではないんですけれども、先月、東部ニューギニア戦域の遺骨収集帰還事業の帰還式に厚生労働省の責任者として出席をさせていただきまして、まさに今御指摘のとおり、戦没者の御遺骨の収容というのは国の責務でありまして、悲惨な戦争を繰り返さないためにも、フィリピンに限らず、全ての戦域で進めることが必要であると我々も考えております。

 このため、厚生労働省として、やはり二つぐらいしっかり力を入れていこうということでやっておりまして、一つは、戦後六十八年経過いたしまして、戦友等の関係者が少なくなったこともありまして、情報が非常に少なくなってきている、しかし、そこでもなおかつ日本遺族会等の関係団体とも協力して、できるだけ幅広い情報収集に努めるということと、もう一つは、やはりアメリカやオーストラリアの公文書館にある情報、こういうものもぜひ収集させていただく、こういうことをしっかりとやりたい、今までもやってまいりましたし、これからも努力するということ。

 もう一つは、やはり国として、外務省を通じて相手国政府との交渉等をやりまして、海外における遺骨収集が円滑に進むように、そういうこともやって、事業の円滑な実施に向けて環境整備を進めるなど、そういうことを行って、この遺骨収集帰還事業の推進というものを図っているところなんです。

 先ほどありましたように、御遺族が本当に高齢化されております。私の臨んだ式でも、もう相当平均年齢の高い方が、寒い中、一月でしたけれども、お越しいただいているわけでございまして、一柱でも多くの御遺骨を早期に可能な限り収容できるように、御指摘ありましたように、必要な予算を確保しつつ、遺骨収集帰還事業の促進に国を挙げてしっかりと努めてまいりたい、そのように考えております。

坂元分科員 力強い御答弁をありがとうございました。

 今御指摘のあった情報収集に努めていくというところと相手国との交渉、特に、相手国、国との交渉はやはり国が、日本という国が前面に立ってやっていただかないと、なかなか切り開けない、進めない部分も多いと思いますので、ぜひとも力を入れていっていただきたいというふうに思います。

 また、あわせて、最後にございましたが、予算の面ですね。現場で御遺骨収集に当たっておられる方のお話を伺うと、やはり、現場の場面では、なかなか予算がないからという理由を厚労省の職員の方が使われることが多いということも伺っておりますので、やはり、これは本当に重要な国としての責務を果たすというところでの重点的な予算の確保、配分をお願い申し上げたいというふうに思います。

 以上をもちまして、少し短いですけれども、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

松本主査 これにて坂元大輔君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

関主査代理 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。大岡敏孝君。

大岡分科員 自由民主党の大岡敏孝でございます。滋賀一区選出でございます。どうかよろしくお願いいたします。

 私からは大きく五問の質問を用意させていただきました。

 最初に、訪問看護の問題についてお尋ねをいたします。

 御案内のとおり、訪問看護は訪問介護以上に歴史は長うございまして、居宅へ、在宅へという流れで、これまで厚生労働省も政策を進めてこられたと思います。

 一方で、これに従事する看護師の視点からは、現実的には、訪問看護ステーションは極めて深刻な看護師不足になっております。まして、看護学校を出た新卒の方々の九割は大病院に勤めて、一割しか訪問看護ステーションには就職されないというのが実態でございます。

 さらに、もう少しさかのぼって、では、看護学校の中でこの訪問看護に関する教育がしっかりなされているかといいますと、私も専門ではないので、いろいろな専門の方に伺ったところによると、二十年に及ぶ知見が積み重なっているにもかかわらず、この教育の中身が十分ではないのではないかと。つまり、訪問看護特有の、地域にフォーカスをした、あらゆる症状、あらゆる状況の患者さんたちにしっかり対応していくというための教育が、極めて薄いのではないかという指摘がなされております。

 このことについて、まず、皆様の方でどのような認識を持ち、どのような対策を考えておられるのか、教えていただきたいと思います。

原(徳)政府参考人 お答え申し上げます。

 看護師の基礎教育において、在宅医療のニーズに対応した訪問看護サービスの拡充が求められております。これを踏まえまして、平成八年の看護師の教育カリキュラムの改正の中で、在宅看護論というものを創設いたしまして、訪問看護について講義及び臨地での実習を行っているところでございます。

 看護師全体の需給につきましては、第七次看護職員需給見通しにおいて、最終年である平成二十七年にはかなりの程度、九九%程度が満たされるという見通しではありますけれども、今後、団塊の世代が七十五歳以上になられる二〇二五年を視野に、さらなる確保対策が必要と考えております。これは、全般としてもそうでございますし、訪問看護をされる看護師についても同様と思っております。

 こうした中で、看護職員全体の確保を着実に実施していくために、院内保育所などの医療機関の取り組みへの支援などの定着を進めること、また、離職した看護師などがナースセンターに届け出をする制度の導入をする復職支援を促進する仕組み、それから、社会人経験者の養成策の検討など新規養成の促進など、各般、今回の医療・介護総合確保推進法案による制度改正を含めまして、看護職員全体の確保対策の強化を図ってきたところでございます。

 御質問にございましたように、訪問看護、対象になる患者さんはいろいろな疾病を持っておられます。そういう意味では、新人看護師をいきなり訪問の場面に投入するのがいいのか、あるいは、卒業してしばらくはしっかりと病院の中でいろいろな患者に対応することをまず学んだ後に、要するに疾患ごとにも学べますので、その後に訪問看護に携わるのがいいのか、これはさまざまな議論があるところでございます。

 今のところ方針を示しているわけではございませんけれども、全体の確保の中で、訪問看護ができる看護師の確保もしっかりできるように考えていきたいと思います。

大岡分科員 ありがとうございました。

 ただ、プロパーで訪問看護を本当に専門的にやっておられる看護師さんに言わせれば、一旦病院に入れてしまうと、内科は内科、外科は外科、そのまま大体路線が決まってしまう、もう訪問看護におりてくることはございませんと。

 変な話、大病院からスピンアウトした人が訪問看護でやるというほど生半可なものではない。これはこれで専門性もあるし、これはこれで夢と志を持って、もちろん病院で病気の方を診るのも、これも志が極めて高いことでございますが、地域にフォーカスをしてそういう方々のケアをするというのも、これも志の高いことであって、やはりその専門家を養成してもらいたいという要望があるんです。

 例えば、卒業生の九割が病院に行ってしまって一割しか来ない、さらには、深刻な看護師不足の現状はむしろ訪問看護ステーションの方にある、さらに言うと、手当も少ない夜勤等もあって、極めて大変だ。こういう状況について、改善される考えがあるのかないのか、持っておられるとすればどういうことでやっていこうと思っておられるのか、具体的に教えていただきたいと思います。

原(徳)政府参考人 例えば訪問看護に係る手当をどうするかという点につきましては、診療報酬等の関係もございますので、ちょっと私の領分ではございませんけれども。

 ただ、御指摘のように、看護師の方々の中にも両論ございまして、基礎をしっかりと学ぶためには、やはり病院のようなところでまず基礎の看護を学んだ上でなるべきだという意見と、先生御指摘のように、訪問看護そのもの、在宅の看護そのものはやはりそれだけで専門性が高いのだから、初めからそこに投入すべきだという意見、両論あるというふうには聞いております。その中で、訪問看護師がしっかりと活動できるような手当については、診療報酬等も含めて対応できるような体制整備も考えてまいりたいと思います。

田村国務大臣 在宅医療、これを推進していく必要性は大変大きいわけでありまして、二十六年度診療報酬改定の中においても、機能強化した訪問看護ステーションに対してはそれを評価するというような、そんな診療報酬改定の点数も今準備をさせていただいております。

 それで足りるかどうかというのはいろいろな御議論があると思いますけれども、やはりこれは大変重要な医療資源でありますし、そこで頑張っておられる看護師の皆様方は本当にやりがいを持ってやっていただいている、非常に志の高い職務だというふうに私は思っておりますので、しっかりとその方々が仕事ができるような、そんな環境整備にこれからも努めてまいりたいというふうに思います。

大岡分科員 大臣からも答弁いただきまして、ありがとうございました。

 続きまして、関連もあるんですが、地域包括ケアについてお伺いをしたいと思います。

 御案内のとおり、訪問看護も含めて、二〇二五年を目標に、地域ごとに特色を生かした地域包括ケアを目指していくということでございますが、実際には、先ほどの問題、さらにはケアマネの質的な向上、あるいは市町村の保健師そのものが足りていないのではないかという意見もあったり、まだまだ課題が多いかと思います。

 実際に、この地域包括ケアの実現に向けて、何を最大の課題と捉え、そのためにどういう政策を打っておられるのか、教えていただきたいと思います。

原(勝)政府参考人 お答え申し上げます。

 御案内のように、地域包括ケアシステム、高齢者の方々が住みなれた地域で要介護状態になってもいつまでも暮らしていけるような、そういうサービス、すなわち、医療、介護、予防、生活支援に住まい、こういうものを総合的に提供するようなシステムをつくっていきたいということでございます。

 ただ、このシステムは市町村が中心になってつくってまいりますけれども、市町村によって高齢化の状況も違います。七十五歳以上高齢者がこれから減っていくような市町村もあれば、どんどんふえていくところもあります。また、その地域で使える資源というのもさまざまでございます。施設が多いところもあれば、在宅系がたくさんあるところもあるということで、やはり大事なことは、市町村がその地域の実情をよく踏まえて、その地域に合った形のシステムをつくっていくということが大事なんだろうと思っています。

 また、サービスも、公的サービス、確かにこれからお金がかかってまいりますけれども、これだけではなくて、民間企業、NPOなど多様な担い手が連携しながら、効果的、効率的な地域の支え合い体制をつくるということが重要だろうと思っております。

 その中で、どこに力を入れていくかということでございますけれども、一つは、先ほど言いましたように、市町村に地域のニーズをしっかり調査していただいて、そこに合った形でつくっていただくということでございますので、計画をしっかりとつくっていただくということがやはり大事かなと思っています。そのためのいろいろな支援をしていきたいと思います。

 また、サービスの内容でいいますと、先ほど言いましたように、公的なサービス以外のサービスをこれからやはり地域の中でふやしていく。そのために、今回も国会に地域支援事業の充実という形で法案を出させていただいておりますけれども、こういったものに加えて、当然、専門的なサービスも大事でございます。

 議員がおっしゃられました訪問看護、これはやはり、これから医療ニーズの高い方がふえてまいりますので、当然ここは力を入れていかなければいけません。また、ケアマネジメントはやはり大事でございますので、御指摘のように、ケアマネジャーの資質の向上、これも研修制度の見直し等を通じてやってまいりたいと思います。

 また、保健師さん、地域の中で、予防、相談等、総合的に対応していただけるのはやはり保健師さんでございますので、地域包括支援センター、これを各地区に配置するようにしておりますけれども、必ず保健師さんを一名以上置いていただくことになっておりまして、今回、地域支援事業の充実等を通じまして、保健師さんの増員、そういったようなことも努力をしていきたいと考えております。

大岡分科員 ありがとうございました。

 私は、これを実際に現実のものとしていくためには、高齢者の住まいのあり方に絶対注目するべきだと思っているんです。

 今回、地域包括ケアで、住みなれた地域でと。確かに聞こえはいいわけですが、住みなれているからといって、ばらばらの、山奥の事実上孤立しているところに住みなれていただいても、実際にはケアできないんですね。

 今回、山梨で大雪が降って多くの高齢者が孤立したという報道がされていますが、実は、事実関係は違って、もともと孤立している。もともと孤立しているところに雪が降って、さらに深刻な状態になっただけでございまして、やはり、このもともと孤立している状況というのを何とかしない限り、この地域包括ケアも絵に描いた餅になりかねない、財源の裏づけができなくて、結局はできないということになりかねないわけでございます。

 この点につきまして、住まいのあり方をどうしていくべきと考えておられるか、本音と建前でも結構でございますので、お話をいただきたいと思います。

原(勝)政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘のとおり、住まいは大変大事だと思っております。

 それで、私どもとしては、住まい対策として、これは国土交通省さんともいろいろ連携をしながら、サービスつき高齢者住宅、ある種の集合住宅、賃貸住宅でございますが、こういったようなものをふやしていく。実は、ことしの一月時点で、十三万八千戸まで登録住戸はふえております。

 それから、もう一つは、いわゆるスマートシティーというふうなことをよく言われますけれども、今般のこの国会にも国土交通省の方から法案が出ておりまして、都市再生特別措置法等の一部を改正する法律案というものでございます。

 これはどういう法案かといいますと、例えば、いわゆる町の中心部に福祉施設みたいなものを誘致しやすいように容積率なんかを緩和してあげる、逆に、そういう集合住宅が地域の中でばらばらに建たないように、少し計画的に配置をすることによって、在宅サービスを効率的に提供しやすくするといったような内容でございまして、そういった取り組みもやっているところでございます。

 それから、もう一つは、やはり、住まいでございますので、要介護状態になる前に、住みかえというのでしょうか、そういうような早目の住みかえの推進というようなことも必要な観点かなと考えております。

大岡分科員 ありがとうございました。

 ぜひ、住まい対策、やはり安全な場所に、安全というのはあらゆる気象条件も含めて、安全な場所に集まっていただくというのは非常に有効なことだと思いますし、さまざまな議論を経て国交省の方に行ってしまったというのは、一体的に住宅政策が向こうに行ってしまったというのはちょっと残念なところでございますが、ぜひ連携をして取り組んでいただきたいと思います。

 続きまして、いわゆる三時間待ちの三分診療問題、これは医療のアクセシビリティーの問題でございますが、これについてお尋ねをいたします。

 まず、実態として皆さんどのように捉えておられるのか、教えていただきたいと思います。

原(徳)政府参考人 まず、実態でございますが、平成二十三年の受療行動調査によりますと、外来患者の診察までの待ち時間が三時間以上という方が一・二%、それから、診療時間が三分未満の方が一三・六%、この待ち時間三時間以上かつ診療時間が三分未満であった方は〇・二%となっているところでございます。

大岡分科員 そうすると、実際の平均時間としては、それぞれどのぐらいの時間になるんでしょうか。

原(徳)政府参考人 これは、大きな病院から小さな病院までございますけれども、全部のざくっとした推計でいきますと、私の目で見ますと、大体十五分から三十分の間ぐらいのところにあるというふうに思っています。

大岡分科員 私の実感としては一時間待っているという実感はあるんですけれども、いずれにしてもデータでございますので、それを了としたいと思います。

 だとすれば、どうして医療について三時間待ちの三分診療と言われ、特にこの言葉を聞くのは、我々の、若い、働いている世代でございます。働いている立場からすると、三分の診療のために三時間待つというのは、事実上不可能なんですね。

 本来の医療の目的は何かといいますと、我々はやらなければいけないことがある、やりたいこともあるという人たちが、病にかかってそれが実現できないときに、一刻も早く治してさしあげて、それで、社会に戻すあるいは家庭に戻すということが重要だと思うんです。

 一方で、年をとった方々は比較的待つことができる。待つことができるかできないかでいえば、待つことができる。

 そういう状況を考えますと、本来の医療のあり方として、また社会の要請として、さらには、日本がこれからさらに高齢化、少子化が進んでいく中で、働ける人たちはもっと頑張ってもらわないといけない、それを後押しする制度として、やはり若い人たちが本来は優先的に診療を受けて、早く社会に戻っていただく、そのための制度が求められている、ニーズがあるんじゃないかと思います。

 この点についてどのように考え、どのような対策を打たれる考えがあるかないかも含めて、お話をいただきたいと思います。

原(徳)政府参考人 お答えいたします。

 先ほども言いましたように、実態としてはそれほど長く待っているわけではないんですが、やはり待っている間は長く感じますし、逆に、診察時間は短く、ちょっとしか診てくれないというふうに感じられる方が多いのは、実感としてはそうなんだろうと思います。

 ただ、優先順位を決めるとなると、どういう基準でやるのかとか、あるいは、恐らく現場では相当な混乱あるいはけんかが起こることも予想されますので、なかなかしっかりとした形での対策というのは難しいだろう。

 ただ、待ち時間をできるだけ短くしていただくために、例えば再診なんかの場合には必ず予約をしていただくというような制度、これについてはかなり大きな病院では相当程度とられておりまして、だから、かえって逆に、大きな病院ほど待ち時間は相対的には短くて済むというような実態もございます。

 また、患者さん側から見て、どれぐらいの待ち時間なのかとか、あるいは、そういう予約診療をやっているかとか、そういうことにつきましては、実は、病院などで広告ができるようにということで、医療法の中でも改正をしたところでございますので、そういう情報などを含めながら、受診する医療機関を患者さんの側で選択していただきたいと思います。

 また、もう一つは、やはり、昔からよく言われます、大病院に患者が集中をして待ち時間が長くなる、そういうようなこともございましたので、外来の機能について、できるだけ病院とあるいは診療所や中小病院の機能を分けていこう、こういうことから、今回の診療報酬改定におきましても、主治医機能というものをしっかりと持たせて、そういう診療所や中小病院にかかっていただくような評価をつくったこと。

 それから、大きな病院につきましては、紹介率や逆紹介率が低いような病院については、そういう病院にいきなり飛び込みで受診された患者の初診料については適正化を図る、こういうような工夫をしているところでございます。

大岡分科員 若干、思いと答弁がずれている感じもありますが。

 いずれにしましても、我々も含めて環境整備も大事なことだと思うんですが、事医療の問題に関しましては、やはり若い人が、本来すぐに、ひどくなる前に受けてほしい、手おくれになる前に受けてほしい。

 ただ、三時間待つのは嫌だからと言っているうちに、もう手おくれになってしまうということもあるわけでございまして、この問題に関しましては高齢者の方々の理解も得て、少なくとも私がいろいろなところでこの話をすると、おおむね高齢者の方には理解をしていただけるわけでございます。やはり、若い人にもっと頑張れと言っていただけるような環境整備に向けて、私も取り組んでいきたいと思っております。

 次に、子ども・子育て支援新制度についてお尋ねをいたします。

 これはさまざまな議論を経て、いよいよ再来年度から実施に移すということで伺っておりますが、そうした中で、私、地域に帰りまして必ず聞かれるのが、市立の幼稚園、市立の保育園は一体どうなるんですかということでございます。

 当然、民間の幼稚園、保育園と同列の扱いということ、まあ、現在では市町村のそれぞれの判断ということになっているわけでございますが、一方で、本来、公立の幼稚園、公立の保育園というのは、社会的にさらに重い担いがあるはずでございまして、国として、政府として、こども園をつくっていく、すばらしいこども園をつくっていくという方針を決めたのであれば、当然、それに呼応して、先んじて、モデルケースとして手本を見せるつもりで取り組んでいただくべきものだと思いますが、皆様から各市町村に対して要請をしているのかしていないのか、今後する考えがあるのかないのか、そうしたことについてお尋ねをしたいと思います。

石井政府参考人 議員が御指摘のように、認定こども園、この制度は、保護者が就労しているかいないかにかかわらず、また、地域の就学前の子供が通うことができる施設であります。そして、地域の子育て支援の機能も果たしているところでございます。

 ところが、現在、例えば幼保連携型認定こども園になろうとしますと、幼稚園については学校教育法に基づく認可が必要ですし、保育所は児童福祉法に基づく認可、さらには、それぞれの法体系で指導監督があり、財政措置もばらばらというふうな形でありまして、非常に複雑であって、せっかく評価がされながら、なかなかなりがたいというのがあるわけでございます。

 それが、一昨年八月に成立いたしました子ども・子育て関連三法の中で、特に幼保連携型認定こども園について、改正認定こども園法に基づく単一の認可で、一発で設置できるようにするなど、手続の簡素化等の見直しが行われたところであります。

 現在、各市町村で、新制度に基づいて、子ども・子育て支援事業計画、これに向けた作業を進めているところでありまして、この中で、こうした制度改正も踏まえながら、公立保育所、これが果たしている役割を考慮しながら、その上で認定こども園に移行するかどうかについて、各地域の実情やニーズを踏まえて検討していただいていると思っております。

 とりわけ、新制度につきましては、市町村がサービスの提供のあり方を決めていくに際しまして、子供の保護者とか、あるいは当事者の関与を求める、そういう仕組みになっておりまして、そうした声をしっかり受けとめて対応していただく、これが肝要かと思います。

 議員おっしゃったように、例えば人口減少地域などができますと、子供の集団が小さくなってしまっている。そこで、一定の子供の集団を確保して、どういう地域であっても質の高い幼児教育、保育が提供できるようにという意味では、これは一つの方策だろうと思います。

 そうした意味合いにつきまして我々はしっかり説明をいたしますが、そういう形で、地域のニーズをしっかり捉まえた対応をしていただく、それに率先して市町村立が応えていく、これが大切なのではないかと思っております。

大岡分科員 ありがとうございます。

 ただ、恐らく、チャレンジングな市町村は、多分、すぐにでも新しいこども園に移行するというところは出てくると思います。ただし、おくれるところも山ほどある。やれ職員の労働組合との協議だ何だなんて言っていると、いつまでもぐずらぐずら、やらないところも出てくる。

 こうなると、市町村ごとに、やっているところもあれば、やっていないところもあるということになってきますと、では、一体こども園はよかったのか悪かったのか、国があれだけ主導しておきながら一体何をやっているのかということになりかねないわけでございます。私としては、本来、国としてこれがよかれと思って決めたことでございますので、市立、公立の幼稚園、保育園は原則全てこども園に移行してくださいという要請を出すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

田村国務大臣 幼保連携型認定こども園というものにみんななってくださいという制度では、今回ありません。保育所も、目指すところは目指していただければいいし、幼稚園だって、場合によってはそのまま私学助成の中に残るところもあります。

 一方で、公立となりますと、幼稚園も基本的に財源は自分のところでやっていますね。私学助成は来ません。保育園ももう一般財源化しておりますから、今回新しい制度をつくったとしても、給付の対象にならないですね。

 ですから、そういうようなところから、本当の意味で、今の幼稚園ならば、安定した給付があれば、では新しい施設に入っておくか、その中において幼保連携型認定こども園というのもあるから、そこを目指そうかということがあるんだろうと思うんです。

 各自治体においては、財政的というよりかは、実態として、自分のところの自治体でどういうものが望まれているかということを考えた上で、子供の数が少なくて、幼稚園の子供も保育園の子供も一体となって一つの施設をつくって、そこで多くの子供たちがお互いに触れ合いながらいろいろなものを学べばいいなということであれば、その中において幼保連携型認定こども園というものが手を挙げてくるのではないのかなというふうに私は思うわけであります。そこは、実態に沿ってそれぞれの自治体が御判断をいただく話になろうというふうに思います。

大岡分科員 ありがとうございました。

 私もこの制度に非常に注目しておりまして、当然、民間の幼稚園、保育園の中では大変な不安もあるわけでございます。だからこそ、リスクがほとんどない公立が、それが失敗したからといって、直ちに市町村が潰れるということはございませんので、まさにリスクをとって、さらには先進性を持って、手本を見せて、後についてくる、様子を見ている民間の人たちに、何がよかった、何が悪かった、こういう工夫があればよろしいというようなことをやはり先導的にやってやる責任はあると思うんですね。

 したがいまして、大臣から答弁いただきましたので了としたいと思いますが、ぜひ皆様からも、地域の実情を見ながらではありましょうが、適切なアドバイスもしていただければありがたいと思いますし、場合によっては、地方から皆さんはしょっちゅう陳情を受けておられると思いますので、市長が決めることだといいながらも、皆さんから陳情、要望をされるということも、私は、お互い、ありだと思っております。

 そういう対応も含めて、何としても、制度として確かなものになるためにも、市民に混乱を来さないように、できるだけ速やかに、公立の幼稚園、保育園のあり方については、一つの定まった形として進められるようにしていただければありがたいというふうに思っております。

 最後に、労働政策審議会についてお尋ねをいたします。せっかく厚生労働分科会なので、労働もちょっとぐらい聞いておかないといけないかなと思いまして、労働政策審議会についてお尋ねをいたします。

 これは、御案内のとおり、重要な労働政策を決めるときに、さまざまな専門的な御意見をいただく場として非常に大きな役割を果たしておられる審議会でございますが、一方で、この中のメンバーを見ますと、特に労働者代表とされている委員の方々の選び方を、私は、本来もう少し工夫をされるべきではないかというふうに思っております。

 少し、その労働者代表というのがどういう方がいらっしゃるかと申しますと、さらにもう少し申し上げて、労働政策審議会は、公益代表、いわゆる学者さんとか、あと労働者代表、労働組合の方とか、それから使用者代表、それぞれが十人ずつ、バランスよくメンバーを選ぶということにルールとしてなっているわけでございます。この中の労働者代表を見ますと、例えば、自動車総連の会長さん、昔のゼンセン同盟ですね、UAゼンセンの会長さん、情報労連の会長さん、基幹労連の会長さん、それから電機連合の会長さん、JAMの会長さん。

 民主党の方も自民党の方も御案内のとおり、これは誰かといいますと、言う人によっては、これは全員、民主党の参議院の比例代表の選挙の責任者じゃないかという意見もあるぐらいなんです。

 私は、本来労働組合さんは、当然、労働者の権利利益を守るために日夜頑張っておられると思っていて、そんな、民主党の別働隊と言われてみたり、選挙マシンと言われたりするのは不本意だというふうに思っておられるとは思いますけれども、一方で、まさに現在日本が抱えている労働政策の大きな問題点というのは、こういう守られた正規社員を中心とした労働組合の現場にあるのではなくて、むしろほかの場所にある。

 にもかかわらず、まるで既得権的に、まるで五五年体制の与野党の話し合いの制度のように、こうした方々だけがこの重要な場所で意見を述べる権利を持っているというのは、私は、極めていびつでもあるし、また、皆さんが本当に聞きたい情報が、実はとれない状況になっているのではないかというふうに思っております。

 したがいまして、こういう人たちの、例えば労働組合の組織率を二〇%とすれば、二〇%はそういう方に入っていただいても当然よかろうと思いますが、一方で、いろいろな働き方があるわけでございますので、そういう方々の意見を酌み取れるように、この人選について見直しを進めるべきだと思いますが、皆さんはどのように考えておられるか、教えてください。

熊谷政府参考人 お答え申し上げます。

 労働政策審議会の構成につきましては、今ほど先生御指摘のとおり、公労使それぞれを代表する三者で構成されておるものでございます。

 このうち、労働者委員につきましては、我が国の代表的な労働団体の意見も踏まえまして、厚生労働大臣が種々の要素を総合的に勘案して適格者を任命している、こういうところでございます。

 本審議会の委員は先生が先ほどお話のあったようになっておりますけれども、さらに、この労働政策審議会におきます具体的な政策の議論の多くは、本審議会の下に設けられております分科会あるいは部会といったところで行われております。

 その労働者委員につきましても、それぞれの政策分野の状況を踏まえた分科会、部会の委員の人選になっておるというふうに考えておるところでございます。その中には、非正規雇用労働者を多く組織する産業別労働組合の方も委員に入られておりますし、また、未組織の労働者の声も十分伺いながら、この議論がなされているものというふうに承知しているところでございます。

 いずれにいたしましても、厚生労働省といたしましては、多様な労働者の方々の声が労働政策にきちんと反映されるように、今後とも努力してまいりたいというふうに考えております。

大岡分科員 時間になりましたので終わりますが、皆様のこれまでの活動がこういうところばかり聞いていたというので、その帰着点としてこうなっていると私は思っているんです。

 だから、もっと皆さんが現場に入っていただいて、労働組合が全ていいとは私も思っておりませんし、実際、専従を出せるようなところは、よく言われていますが、労働貴族などと言われて、まるで経営者以上に毎晩飲み歩いて糖尿病になっているという話も聞いておりますから。ぜひ、働いておられる方に、皆さんが現場に本当に入っていって、組合の委員長だから、委員長とだけ話をして帰ってくるというのではなくて、本当に現場の実態を捉えていただく。

 この最終決定をする審議会は分科会があるからよろしいというのではなくて、やはりこのメーンの審議会の委員に、最後の最後でちゃんと意見を述べられる立場として、そういう方々の代表者に来ていただけるように、そういう仕組みが実現できるように、委員の見直しについては進めていただければありがたいと思います。

 以上でございます。ありがとうございました。

関主査代理 これにて大岡敏孝君の質疑は終了いたしました。

 次に、田中英之君。

田中(英)分科員 自民党の田中英之でございます。

 きょうは、この予算委員会の分科会で質疑をさせていただきますが、子育てに関する問題、また妊娠、出産に関する問題、この二点を大きく取り上げさせていただき、質疑をさせていただきたいと思います。

 さて、私自身、実は保育事業者の一人でもありまして、地方議会に籍を置きながら子育ての問題というのに取り組んできた経緯がございます。その点、少し今日まで取り組みをしてきた思いなんかも含ませていただいて、質疑をさせていただきたいと思います。

 待機児童の解消ということで、この二十五年、そして二十六年度、特にこの二年間は約二十万人の待機児童解消という形で、その枠を、受け入れられる枠をしっかりとふやしていこう、そして残りの三年間でもう二十万ふやしていこうという、前半戦の、緊急のところでの取り組みをする二年目のところになろうかと思います。

 待機児童解消ということが、実は、これは保育の現場また地域社会の中で十数年にわたって言われ続けている問題で、私自身も、地方議会に籍を置いているときから、前年に新しい保育所をつくって、その前年の待機児童と言われる数をクリアしても、また翌年には新たな待機児童の数が出てくる。減ってくる年もあれば、びっくりするぐらいふえてしまう、そんな年もございました。私の場合は京都市でありますので、待機児童の数が百を超えるときもあれば、百を切るときもある。しかしながら、実は、自治体としては待機児童が多い部類に入ると言われている地域であります。

 国の方でもいろいろとそういった待機児童対策をとっていただく、その予算を組んでいただいてまいりましたので、各自治体において、一定、待機児童対策というものを自治体はある程度納得をしながら、実は一年一年しのいできているというのが実態であろうかと思います。

 まず、そこで、二十六年度、待機児童対策を含むさまざまな、特別な保育をも含めてこの予算になるわけでありますけれども、前年よりもかなり増額をして予算化をしていこうというものを示していただいております。

 改めてになりますが、待機児童対策を含め、保育の中身の部分、事業の充実、こういったことも含めて、この取り組みと、また、予算がどのような形で展開されていこうとするか、お答えいただきたいと思います。

石井政府参考人 議員御指摘のように、保育所待機児童問題、これは数年来の課題でございましたが、総理が主導して昨年四月に策定しました待機児童解消加速プラン、ここで大変意欲的な中身になっておるわけでございます。総合的な支援パッケージということで、現在考え得るさまざまなものを五つの柱という形で盛り込んでおります。

 この措置でございますけれども、二十五年度の補正予算それから二十六年度の予算案、これを合わせて、約二十万人分の増加に必要な整備費、運営費の確保を初めとしまして、各種支援策のさらなる充実を図るために、一体的な経費を計上しているということでございまして、これによって、財源確保を検討していた事業も含めまして、予定していた全ての補助事業の支援が開始できる、ようやくそこに至ったものでございます。

 具体的にどういうものがあるかと申しますと、まずは保育所等の整備でございます。安心こども基金の残高見込みも含めまして、総額約千八百億円の整備費を確保して、約十三万人分の増加を確保する、あるいは補助率のかさ上げ、二分の一でありますのを三分の二にかさ上げいたしまして、財政力要件を撤廃してあらゆるところで対応できるようにするとか、あるいは資材とか労務費の動向、今この辺がすごく心配でございまして、それも反映をしまして、補助単価を改定するとか。

 そして、保育士の確保対策、これも欠かすことができません。総額約四百四十億円を確保いたしまして、潜在幼稚園教諭や保育所従事者の資格取得支援、保育士の業務負担軽減策、さらには保育士の処遇改善等々を盛り込んでいるものでございます。

 そして、保育所の運営費、小規模保育事業、認可外保育施設の認可化等、これにつきましても、運営費等の確保をした上で、これに加えて、最後に、事業所内保育施設につきましても、助成要件を緩和して、そういう分野においても確保の道を広げていこうということでございます。

 予算につきましてはメニューが出そろったということでございますが、後、いかにこれを動かしていくかということだと思いますので、予算案が成立いたしましたなら速やかにスタートダッシュできるように、一生懸命意を尽くしてまいりたいと思っております。

田中(英)分科員 ありがとうございます。

 五つの柱、ここをしっかりとしていくということ。施設が実はふえていくので、かつて心配をしていたのは、ピークがどこなのか。二十九年が一つのピークという形ではありますけれども、事業者、今後は幼稚園も含めてのことになってきますが、自分のところの施設に子供たちがどれだけ来てもらうことができるか。ふやせばふやすほど、ないときはあれなんですけれども、子供の数が減って、今定員割れというものが幼稚園の方でよくあるんですが、そういったことの心配が実は一方ではあります。

 しかしながら、このニーズの部分では、我々もいろいろとお話を聞くのは、入りたくても保育所、保育園に入ることができない。実は、これは毎年、人がかわってもやはりいろいろな相談を受けてまいりましたので、一定、今の社会状況を考えたときには、こういった施設整備も含めて、待機児童対策というものに今回スピード感を上げてやっていただけるというものでありますので、ここは大きな期待をするところでありますので、この予算案が成立後、速やかに、自治体等々と連携をしながら、また、新たな事業者の皆さんにも御参加をいただくことになりますけれども、推進を図っていただきたいというふうに思っております。

 一方で、やはり少し気になるのは、特別な保育については、この間、社会の情勢を考えたときに、延長保育、また休日保育、一時保育等々、いろいろと充実を図っていただいたことは事実であります。ニーズの方からすると大変これはありがたいという思いで、その事業というものを受けながら、子育てというものを事業者と家庭で育んでこられたというふうに思っています。

 しかし、一時保育の場合は、リフレッシュ等々もこれは夫婦間でもあろうかと思いますので、理解はかなりできる部分がありますが、延長保育に関しては、いろいろと事業者の皆さんとお話をすると、求められるので頑張ってやるけれども、実際、親の子育てというものがどのような状況になっているのかなと考えたときに、やはりできる限り子供といられる時間は子供といてほしい、実は、これを願っているのが保育事業者、一方ではあります。

 今振り返れば、自分自身の両親と、自分自身が今子育て世代でありますので、自分自身と比較したときに、よく私の場合は母親に言われますけれども、もうちょっと子供にかかわっていたよねということを実は言われます。

 そういうところを考えますときに、事業が充実するということは一方で大変喜ばしいんですが、親の子育て力、こういったところが低下していき、自分自身の子供が今度大人になったときは、自分の親がどのようにしていたかということ、ここが比較対象に恐らくなりますので、このまま事業をいいようにいいようにばかりやっていくと、家族とのそういうバランス、また保育事業とのバランスというものが大きく崩れて、何か大切なものを失っていくような、実はそんな危惧をもしております。

 そこで、事業を拡充していくということは、これはいいことでありますけれども、一方で、子育て力というものが低下しないような形でフォローアップをしていっていただきたいなと思いますが、これについては、事業というよりも厚生労働省としての考えの部分ですね、フォローアップの部分、この点についてお伺いしたいと思います。

石井政府参考人 委員御指摘のように、やはり働き方の問題もございまして、あるいはそれ以外の問題もございまして、恐らく、近年、親の子育て力、これを育んでいく機会が減少してきているのではないかなというふうに思います。

 例えば、以前でありますと家族形態が違っていた、核家族が進展をしていく。あるいは地域のつながりというものもかなり、住環境の変化もあると思うんですが、希薄化をしてきている。そして、祖父母とか近隣の住民、地域のおじさん、おばさんなどが一緒に子育てをする、その中で、子育てに迷ったときにアドバイスをもらうとか悩みを聞いてもらうとか、そういったような子育ての支援とか助言等を得ることがなかなか難しくなってきている。これが一つあると思うんです。

 それからもう一つ、兄弟自体が数が減っていまして、一人っ子とかせいぜい二人っ子とか、そういう形になってきますと、結局、自分自身の子供が生まれるまで余り小さい子とかかわることがない。昔ですと、一番上のお兄さん、お姉さんが一番下の子の面倒を見るということがあったのが、これがなかなかなくなってしまう、そういうこともあります。

 さらには、家庭よりも職場を優先する、あるいは経済優先をするといった風潮がないわけでもない。そうした中で、子供と向き合う時間がなかなか難しい。テレビで「サザエさん」という番組がございますが、あそこはいつもお父さんが定時に帰ってきて、大家族で食卓を囲んだりするわけなんですが、ああいう中で子供が育っていくというのは、やはりそうじゃないかなと思うこともございます。

 そうした状況を見たときに、一つは、疑似的な形でありますが、子育てが地域で支えられるような環境をつくっていくということがとても大切ではないか。それは、先生がおっしゃった一時預かりとかというのもございますし、今やっている拠点事業というのがあると思いますし、あるいはファミリー・サポート・センター事業、これなども地域のおじさん、おばさんがかかわるという機会になると思いますし、それから、やはり忘れてはならないのが、恐らくワーク・ライフ・バランスの実現なんだろうと思っております。

 先生の思いも、私も共有するところが大変多くございます。

田中(英)分科員 後ほど、少しワーク・ライフ・バランスについては触れることになろうかと思います。

 今、「サザエさん」を一つ出していただきましたけれども、そういうふうに考えると、子供のときに見ていたアニメというものは、ある意味、今まだずっとやっておられますけれども、ああいうテレビを見ることによって、日本の家庭というもの、温かみとか、家族がそろっているな、食卓を囲んでいるな、こんなことを改めて知ることができる。そういう意味では、一つの題材として、その家族のあり方というものも推奨できるのかなというふうに思います。

 私自身は、子育て力の低下というものを母親に言われて、実はどきっとしました。では、自分自身がどれだけ子育てを家内と一緒にできているかというと、恐らく、ほかのお父さんよりはできていない部分もたくさんあるのかもわかりません。

 しかしながら、やはり、家に帰ったときに自分の子供がさっと寄ってきてくれたりする、そういうことを一つ思い出すと、きょうも仕事を一日頑張って、そして子供の顔を見て、一緒に御飯を食べて寝るという、実はこの一つのサイクルが、恐らく、一人一人の仕事をされる方々、これはお父さんだけじゃなくてお母さんもでありますけれども、励みにもなると思います。

 そういった家族のあり方なんというものを考えると、人に子育てを任せてしまう、保育に預けてしまうという部分が過度になり過ぎると、実はこういったことも奪ってしまうようなこともあるので、このバランスというものを少し改めて考えていただければというふうに思っております。

 次は、待機児童ということでありますけれども、待機児童の定義というものが、ある意味、地域に帰りますと、自治体が思っている、事業者が思っている待機児童と、お父さん、お母さんが思っている待機児童では、実は定義に若干ずれがあるんですね。恐らく、自治体によっても、これはばらばらの部分もあると思います。

 二十七年度から新制度がスタートする予定ということでありますが、保育に欠けるという言葉は認定という言葉に変わってこようかと思います。となってきますと、実は保育所というのはそのまま残りますし、待機児童というこの言葉も残るとは思うんですが、基本的にはなくしたいというふうには思っておりますけれども、この待機児童の定義ですね。やはり一定、全国で統一したものであって、それと、保護者の皆さんにも、待機児童というものは実はこういうものなんですよというものを改めて知っていただけるような状況をつくっていかなければならないと思いますけれども、この待機児童の定義等について御答弁願いたいと思います。

石井政府参考人 現行制度におきましては、保育所の入所に当たって、保護者は市区町村に入所申し込みを行いまして、市区町村は、それぞれの条例などで定める要件とか選考基準などに基づいて保育所入所児童等を選考しておられます。

 そして、国が待機児童数の全国集計を行うに当たりましては、この選考で認可保育所に入所できなかった児童の中で、まず一点目としまして、市区町村が実施する地方単独保育施策を利用している児童と、それから特定の認可保育所を希望している児童、こういったような方々は除いて待機児童数を算出するよう定義を示しております。

 ただ、昨年も、国会でこうした点、ばらつきがあるのではないかという御指摘がありまして、調査を行う際に改めて、こういう考えですよということを明確に示したところでございます。ただ、先ほど議員がおっしゃったように、第一希望の保育所に入れなかったという気持ちが、恐らく、二点目に申し上げた特定の認可保育所を希望している児童さんについては除くというところで、認識のギャップになってあらわれているのかなと思います。

 今、新制度を迎える準備をしているわけでございますけれども、子ども・子育て会議でも、保育の必要な範囲につきまして議論をいただいているところでございます。その過程で、一方では、可能な限り統一的な基準を国が示すべき、そういう御意見もありましたが、その一方で、やはり市区町村の運用に一定程度任せてほしい、そういう意見も強くて、例えば、最低限の就労時間数について、月当たり四十八時間から六十四時間の範囲で、それぞれの地域における就労実態を考慮して定めることができるとか、国が統一的な考え方を示しながらも市区町村の運用に一定の幅を持たせる方法で実施することと、現在時点、されたところであります。

 新制度におきましても、待機児童数についての調査は行うわけでございますが、この調査に当たってこうした定義でやっているんですよということにつきましては、地方自治体、そして議員からは、お母さん方にもというお話がございましたので、地方自治体以外にも丁寧にお示しをして、こういうことでやっているということに理解のそごがないように取り組んでまいりたいと思っております。

田中(英)分科員 恐らく、この待機児童の定義というものは、自治体でばらばらというものは、今御説明いただいたとおり、それなりの裁量を持って、いろいろと地域の実情に合ったものにしていくべきであるという御答弁だったと思いますね。一定の理解はできるんです。

 ただ、地域に帰ったときの、保護者と事業者、自治体のこの待機児童の一つの考え方というところには実は差があるから、その年の、次の年にまた新たな待機児童の数がふえてしまったりというようなことも生みながら、要するに潜在的な待機児童というものが残ってしまうことになってきたと思うんですね。

 ですから、そういった意味では、自治体の中では、できるだけその三者に周知徹底できるような形にして、誤解のないような形をやはりつくっていただきたいなというふうに思っておりますので、待機児童という言葉が新しいシステムの中で残っていくのかどうかということはあれですけれども、一定、そのような定義というものを整理していっていただきたいなと思います。そこはお願いをしておきます。

 それで、一つだけ、自分自身が実はすっきりしておきたいということもございますので、あえて申し上げたいと思います。

 先ほども質疑がございましたが、新システム、来年からの部分ですね、二十七年度からの新たな子ども・子育ての制度のことでありますけれども、実は自分自身もその事業者の一人でもありますから、よく事業者の方々ともお話をすれば、自治体関係者ともこのことはお話をしてまいりました。

 さかのぼれば前々政権、自民党政権時代の認定こども園から始まって、前政権、民主党さんの新システムの問題、恐らく、この部分の協議というものは厚生労働省等ではずっと継続してやってきていただいていたけれども、政権がかわるたび、いろいろな部分がちょっとずつ変わっているなというところだと思うんです。

 私自身は、待機児童対策ということがやはり大きなテーマでもあったという受けとめをしておりますので、京都も先ほど多いとは申しましたけれども、創意工夫をしながら実は毎年乗り越えてきた、どこまでできるかという限界があるので、確かに、制度を変えて抜本的にやっていくというのも一つの方法であろうかと思います。

 しかし、やはり、これは幼稚園事業者の方々、保育事業者の方々、ずっといろいろな話をしていると、いまだに不安感というのは拭えないんですよね。要するに、お金の出どころが今までは違いますから、同じような事業をしても、同じだけ入ってくるのとか。実は、パッケージになっておりますので、この事業を選んだ場合、この部分では減ってしまうなとか。

 いろいろなことを試行錯誤しながら、これから公定価格というものが決まってから、これは自治体の中にあるそういった保育事業者、幼稚園事業者が選択をしていくわけでありますが、私自身は、この議論がスタートした時点から思っているのは、一定、待機児童の極度に多いところ、ここはこういった制度を利用しながら待機児童解消というものを図っていった方がいいという選択でありますけれども、全ての自治体において、こういったものを網をかけてやるということ自体が、いいのかな、どうなのかなということを実はずっと疑問を持っておりました。

 だからといって、新しい制度にマイナスのイメージを持って、反対という意見ではないんですね。

 私自身がずっと、そういった、特に東京都であったり、横浜市さんの場合はいろいろな取り組みをされていまして、いろいろな、いい部分もあれば悪い部分も出ているというふうには聞いておりますが、ああいったところはこういう取り組みをしながらやっていただく。それで、他の自治体なんかは、そういったものを見ながら、ここはよかったよね、自分のところの都市であれば。実は、こういう選択制でも私自身はよかったのかなというふうに思っています。パッケージになっておりますので選択ができるというのは重々理解はしているんですけれども、制度をつくっていく入り口の部分なんですよね。

 その点について、今日までいろいろな協議をしていたり経過もあろうかと思いますので、私自身は一律にかけてスタートの時点でやることがどうであったのかなという疑問を持っておりますけれども、その点について、進めてきた経過等々も含めて、この制度が実は一律にかける方がいいのであるというようなこともあるのであれば、御答弁願えればと思います。

岩渕政府参考人 二十七年四月に本格施行を予定しております子ども・子育て支援新制度でございますが、認定こども園、幼稚園、保育所を通じた共通の給付や、小規模保育等への給付の創設、認定こども園制度の改善、地域の実情に応じた子ども・子育て支援の充実などを内容としておりまして、消費税率の引き上げによる増収分を活用して、全国どの地域においても質の高い幼児期の学校教育や保育、地域の子育て支援の充実を図ることを目的としております。

 したがいまして、待機児童がいない地域におきましても、主として在宅で子育てをしている家庭を対象とした子育て相談や親子同士の交流拠点の整備、一時預かりなどの子育て支援の充実でありますとか、また、従来の幼稚園や保育所の維持が困難になりつつある人口減少地域においても身近な地域で幼児期の学校教育、保育機能を確保できるように、小規模保育事業などを創設するとともに、認定こども園制度を改善するなどの取り組みを行うことにより、全ての家庭が安心して子育てができる環境を整備するということが重要であると考えております。

 なお、既存の幼稚園や保育所が幼保連携型認定こども園に移行するかどうかについては、それぞれの地域のニーズを踏まえた事業者の意向や各自治体の判断によるものと考えておりまして、国として認定こども園への移行を一律に誘導しているものではございません。それぞれの地域の実情に応じた取り組みが進められるよう、引き続き、関係者の意見を十分に伺いながら、子ども・子育て支援新制度の施行に向けた準備を進めてまいりたいと存じます。

田中(英)分科員 不安の部分はどうしてもまだ拭えていないと思いますので、事業者関係、自治体の関係の皆さんとは、最初の部分でありましょうから、しっかりとここは調整をしていただいた中で、安心して自治体の中でこの新しい制度が進めていけるようには最低限やっていただきたいと思いますので、その点だけお願いをしておきたいと思います。

 通告いたしておりませんので御答弁は要らないですけれども、やはり幼稚園にしても保育園にしても、地域の中での歴史があって、いろいろな主体がやっていると思うんです。学校法人もあれば社会福祉法人もありますし、自治体もありますし、宗教法人もありますね。

 ただ、今回、宗教法人が幼保連携型をしようとしたときには、これはできないという形になるので、恐らく、保育園の場合は保育園の形でそのまま残していくことになりますけれども、この点についても、全国で約一割ぐらい宗教法人があるということで、いろいろと首をかしげながらおられる実施主体者もおられますので、そのことだけはちょっとお知りおきをいただいて、よく検討していただくことができるのであれば、考えていただきたいなというふうに思っております。

 実は、保育がこのような形まで充実していかなければならなかったのは、仕事とのワーク・ライフ・バランスの部分であろうかというふうに思っております。

 少し時間がありませんので、この部分の御答弁をいただくことはできないわけでありますけれども、ワーク・ライフ・バランス、企業の方々にもやはりいろいろと、仕事をする時間であったり休日であったり、そういったところを私自身は、もう一歩も二歩も進んだ形で、家庭に帰れるような形の推進というものを図っていただくように、ここは御努力をいただきたいというふうに思っております。

 時間の都合上、最後の質問になるわけでありますが、妊娠、出産に関しての質問であります。

 実は、私自身、これは地方議会でも取り上げてまいりましたが、不妊治療は、これは国の制度として助成事業等々がございます。もう一方で、妊娠はできるけれども出産まではいかない、不育と言われる部分であります。

 喜んでいたのは、平成二十四年の一月から、不育症の一つの要因であります抗リン脂質抗体症候群に対しては、ヘパリン注射が保険適用になったということです。その患者さんといいますか、対象であった保護者の方々も、自分が出産してからもかなり喜んでおられました。このことについては、本当によく保険適用にしていただいたなというふうに私自身も思っております。

 ただ、私自身もこういったことにいろいろとかかわらせていただく中で、検査等々も含めて、保険適用と保険適用外になる部分がやはりあるというふうに聞いております。

 不育症の検査をするに当たって、保険適用外の部分なんかでいいますと、先ほど言いました抗リン脂質抗体の検査であったり、染色体の部分も、私の知っている限りでは保険適用外であったというふうに思っておりますが、これは恐らく、厚生労働省の中の研究班で本当にいろいろと研究を重ねてきていただいたと思っております。

 こういった保険適用の部分の拡充というものが、これまでから少し期間がありますので、図られてきたかどうかということを少しお伺いしたいと思います。

石井政府参考人 不育症につきましても、大変重要な課題だというふうに思っております。いまだに原因がわからない場合も少なくないということがございまして、このため、その治療方法の研究の推進とともに、出産に至らないさまざまな悩みによる精神的な負担を少しでも軽減したいということで、相談支援体制の整備に努めているところでございます。

 議員お尋ねの、また御指摘のございました、血栓症を伴って流産を繰り返す妊婦さんに対するヘパリン製剤の自己注射については、こうした研究の成果として確認をされた有効性、安全性などを踏まえて、二十四年一月一日から保険適用に至ったということでございまして、現在、まだ引き続きさまざまな研究を行っておりますので、またその研究の成果ということで、もしそういう時点になりましたら、新しい対応というものもできるかなというふうに考えております。

田中(英)分科員 研究の成果なんですよね。

 実は、進めていただきたいという思いはあるものの、よくよく考えてみると、これは普通の病気と違いまして、出産というのはある一定の時期であるということであり、出産というその時期を終えられた方というのは、自分が仮に不育症という枠組みの中にあっても、もう気持ちを切りかえて、新たな夫婦での家族の形成なんというものを考えられるので、なかなか継続的に、こういった同じ人で研究、検証というものができるものではないというところがどうしてもついてくると思うんですね。だから、わからない部分があるということになってくる。

 同じような体質の方々がおられて、いろいろな方に研究、検証というものに協力をいただくことはできるのかもわかりませんけれども、でも、やはり同じ人がということではないので、恐らく継続的に研究、検証というのはできないので、そういった要因というものがはっきりとわからない、そういう状況にあろうかと思います。

 確かに、難しい部分があるのは事実であろうかと思います。しかしながら、不育症の場合は妊娠はできるんです。要するに出産まで至るか至らないかです。妊娠ができた時点で喜んでおられるんですよね。でも、実は不育症という形で、大体十一週、十二週ぐらいですか、流産をしてしまう、また死産になる。奈落の底に落とされるような思いであろうかと思います。

 そういった意味では、そういった方が出産までしっかりとできて、笑顔で赤ちゃんを抱いておられる姿というものを想像したときに、この不育症というところに、本当に大変な部分はあります、研究、検証が難しい部分もあります、しかしながら、そこに手を差し伸べていただくことこそ、そういった家庭を守るということにもなるでしょうし、また少子化対策というものにもつながってこようかと思います。

 小さな部分かもわかりません。しかしながら、この不育症対策というものに今後しっかりと取り組んでいただきたい、このことをお願いして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

関主査代理 これにて田中英之君の質疑は終了いたしました。

 次に、小池政就君。

小池(政)分科員 結いの党の小池政就です。

 大臣以下、きょうは朝から、どうもお疲れさまでございます。

 私は、いつもはまた別の常任委員会で審議しているんですが、なかなか田村厚生労働大臣には質疑をさせていただく機会がないので、本当にきょうはありがたく思っております。

 きょうは、三十分という時間でございますが、主に精神科医療の薬剤の処方についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 大臣、もう本当によく御存じだと思いますけれども、薬の効果ですとか安全性というのは単剤で確かめられているということでありまして、同じ性能の薬でも単剤処方というのが原則ということであると思います。二剤まではあり得るとしても、三剤以上併用になると、効果も安全性も確かめる手段がほとんどないというところであります。

 きょうお配りの資料をごらんになっていただけますでしょうか。幾つか図表をつけておりますけれども、資料の一番には、これは国際比較になりますけれども、日本が諸外国に比べ、抗精神病薬を中心に多剤併用の処方が目立つというところであります。

 少し古いデータになりますが、資料の二におきましては、これは国立精神・神経医療研究センターというところが調査したものでありますが、入院中の統合失調症患者に対して、抗精神病薬が三剤以上処方されている割合というのが四二%という結果が出ております。

 その次の裏面の資料三になりますと、これはまた別の調査でありますけれども、外来も行われておりまして、外来でも抗精神病薬の処方が三剤以上の割合が二六・八%という調査もあるところでございます。

 また、今度は同じページの資料四、下になります。こちらにおきましては、二〇一〇年の調査におきまして、抗うつ薬というものが三剤以上処方されていた割合、これが、四つグラフがあるんですけれども、この右上の、抗うつ薬の一番下の二〇〇九年の七・二と一・七、これを足したのが八・九%ということになります。

 また、睡眠薬におきましては、次のページの資料五になります。こちらの上のグラフの、さらに二つある上の部分の一番右、二〇〇九年の一番右でありますけれども、これは睡眠薬が三剤以上処方されていた割合でございまして、これらも決して低い数値ではないというところであります。

 ここで厚労大臣にお伺いさせていただきますが、多剤が処方されているというこの状況について、実際、把握されておりますでしょうか。

佐藤副大臣 田村大臣は後ほどお答えいただくといたしまして、最初に御答弁をさせていただきたいと思うんです。

 まさに小池委員が御指摘いただいた資料一に始まるこういう数値、私ども厚生労働省としても大変問題意識を共有しておりまして、結論から言うと、我が国の精神科医療では、諸外国に比べまして多種類の薬剤が大量に投与されているという実態がある、この御指摘は、まさに本当に我々としても大変な問題があるという問題意識を持っているわけでございます。

 厚生労働省としても、平成二十二年度に行われました向精神薬の処方実態調査によりますと、九割以上のケースで二種類以下の処方である一方、一部の患者でやはり多種類の薬剤が処方されているというケースがあった、そういう実態調査の結果も出ております。

 そこで、厚生労働省では、今までも三つぐらい施策を打っておりまして、一つは、向精神薬処方実態に関する継続的な調査。要するに、平成二十二年度にやった後も、引き続いてこれはしっかりと調査していこうということで、調査をしているということが一つ。二つ目は、前回の平成二十四年度の診療報酬改定で、睡眠薬または抗不安薬を三種類以上処方した場合の減算ということも入れており、その前から比べると二割減、こういう診療報酬改定で入れている。三つ目が、向精神薬の適切な処方を促すため、かかりつけ医等を対象とした抗うつ薬の使い方等についての研修を行ってきた。そういう取り組みを行ってきたところでございます。

 さらに、これは今答申の段階ですが、平成二十六年度の診療報酬改定において、今回、中医協の答申では、向精神薬の多剤処方を行った場合のさらなる減算規定を設けることとされております。

 今後もさらに、今申し上げましたように、実態調査というものも引き続きやっておりますので、そういう結果も踏まえつつ、この向精神薬の適切な処方というものはしっかりと厚生労働省としても推進をしてまいりたい、そのように考えております。

小池(政)分科員 ありがとうございます。

 現状把握ということでお尋ねしたんですが、その先の対策の話までしていただきまして、ちょっとこれからの質問とかぶってしまうかもしれませんが、よろしくお願いいたします。

 今、確認及び調査の件をお伺いいたしましたが、それでは、それを踏まえて、実際、対処のタイミングでありますとかそれから中身について、改めて、今度は大臣にお伺いさせていただきたいと思うんです。

 この多剤の大量処方というのは、もう大分前から問題になっていたわけでございます。報道等では二〇〇二年ぐらいからかなりクローズアップされておりまして、その後、実際の国の対応としては、確認しているところでは、二〇〇九年九月に厚生労働省が、今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会というところの報告書でこの問題について指摘しております。

 ちょっと読ませていただきます。「特に、統合失調症に対する抗精神病薬の多剤・大量投与について、その実態の把握に努めるとともに、例えば単剤投与や切替え・減量といった改善を促すため、情報公開や評価の方法等について検討すべきである。」と提言されております。

 その先ですけれども、二〇一〇年、先ほどおっしゃられました、診療報酬等の中でこの取り組みというものが出てくるわけでございますが、二〇一〇年の診療報酬の改定では、抗精神病薬を二剤以下にするとわずかに加算されるというような対応がなされておりまして、二〇一二年度の改定では、睡眠薬と抗不安薬について、それぞれ三剤以上処方した場合に減算するという措置がとられております。

 また、二〇一四年度、これからの改定におきましては、睡眠薬と抗不安薬の減算も前回と比べて厳しくなり、さらには、初めて抗うつ薬と抗精神病薬も減算の対象となったわけでございますが、ただ、こちらは四剤からということでもあります。

 ようやく、こういう形で、診療報酬を含めて取り組みがされているところでございますが、いかんせん、やはりタイミング的に遅いんじゃないかということを思ってしまうわけでございますが、ここまで対応が遅くなったその経緯、また、その理由というものはあるんでしょうか。大臣、お願いします。

田村国務大臣 日本は、そういう意味では、他国と比べて非常に多くの薬を特に精神科の疾病に関しては使ってきた、これは向精神薬全般だと思います。最近は、新しい、いい薬が出てきまして、多剤投与しなくてもかなり効くものが出てきておるということがあるようでありまして、新しい、いい薬を使う、その意味では、いろいろな新しい研修という中において、そういうことも医療現場の方々はいろいろ勉強されておられるんだと思います。

 実は、今般、減算をするわけでありますけれども、臨床の現場の先生方とお話ししますと、今まで幾つかの薬を使ってある程度症状を抑えてきた、そういうものに対して、薬を変えたらどういうような影響が出るかまだわからない部分もあると。そういう部分に関して、どのように考えていくか。薬を変えたがために症状が悪化するということもあるわけでありまして、そういう臨床での悩みもあるんだというような、本当に現場の先生方のいろいろな苦悩、お悩みも聞かせていただきました。

 しかし一方で、いい薬も出てきておるわけでありますし、それに対する弊害というものも、確かに、先生言われるとおり、起こってきておるという話も聞くわけでございますので。薬だけに頼らない、いろいろな療法もあります、認知行動療法等々含めて、睡眠障害に対しても対応していく、いろいろなことも含めて、なるべくこれからは多剤投与しないような形で、それぞれの症状に対して対応していく。

 そういう流れの中においての今回の診療報酬改定であったわけでございますので、方向性としては、中医協の中においても、そのような議論のもとでの今回の改定であったというふうに認識をいたしております。

小池(政)分科員 今私が指摘しているのは、薬の性質ではなくて、多剤そのものの結果による影響というところでありまして、先ほどの国際比較の中でも、やはり日本がずっと多剤の割合が多かったわけでもありますし、また、この期間において、その影響ということで、被害も出てきているわけでございますから、もう少し早く対応すべきだったのではないかなということも思います。

 また、これからの対処といたしまして、減算という話がありましたが、ただ、こちらは、抗うつ薬と抗精神病薬は四剤からの減算ということになっていまして、三剤はペナルティーがないわけでございます。

 このような取り組みで本当に今十分だと思われるんでしょうか。また大臣、お願いいたします。

田村国務大臣 これは、中医協の中において、専門的な観点から、それぞれの立場の方々の御議論をいただいたということであります。だから、三剤がいい、三剤を勧めるというわけではありません。

 今も申し上げましたとおり、いい薬がたくさん出てきている中において、今までのように多剤を併用して使う、そういうような治療法だけではなくて、いい薬の中においては、単剤でも十分に効くものも出てきておりますから、そういうものの普及も含めて、それぞれの臨床の先生方が、それぞれ自己研さんされる中において、これからはそういう方向性でいっていただけるんであろうというふうに思います。

小池(政)分科員 ぜひ原則に立ち返っていただいて、薬というのはもう単剤で処方する、それから、それについての安全性が確保されているわけでございますから、三剤以上というのはエビデンスすらまだ非常に危ういところでありまして、そこをどうにかしていくということをぜひこれからも検討していただきたいと思います。

 次に、これはちょっと、私も、一見聞くと専門的な言葉のように思えるわけでございますが、ベンゾジアゼピンというものがありまして、ベンゾ、ベンゾということで、知っている人は御存じだと思いますけれども、よく睡眠薬とか抗不安薬について処方されているものでもあります。

 これについても長期の処方とか安易な処方というものが問題になっているところでございまして、こちらも、国際比較によりますと、INCBという、国際麻薬統制委員会というところが出している調査によりますと、日本はアメリカの約六・五倍、人口当たりの消費量が多いというような調査もありますし、また、実際にこれが入っているような睡眠薬を処方された患者の四人に一人は四年後も薬を飲み続けていて、薬の量が減っていなかった人というのは六八%に上ったというような調査もあるところであります。

 また、処方によって依存とか離脱症状という被害の問題についても、十年以上前から指摘されてきたところでございます。

 これは、国際的には、この危険性というのは一九七〇年代には明らかになっておりまして、各国では規制が進められてきたところでございます。

 資料の六をごらんになっていただけますでしょうか。

 資料の六はガイドラインですね。これは海外のガイドラインの例でありますけれども、アメリカと、それからイギリスです。アメリカの場合、ベンゾジアゼピンは依存の可能性があり、使用には注意が必要。イギリスの場合は、二週間以上のベンゾジアゼピン投与は行わないというような規制がなされております。

 日本においても睡眠薬のガイドラインというのが去年から示されたということでございますが、これについても、やはり大分期間があいてしまったなという思いがあるわけでございますが、これも、なぜここまで対応がおくれたのか、もう一度、同じような質問になりますけれども、大臣、よろしいでしょうか。

田村国務大臣 全般的に、先ほど来申し上げていますとおり、日本の中においては、メンタル面の問題に関して、特に精神科疾病、それから睡眠障害、こういうものに対しては、九割は二種類、二剤というような話なんですけれども、一部でそのような多種類の投与があるということであったわけであります。

 そのような中において、やはり近年いろいろな問題点の指摘をいただいておりますので、今言われたような形で、厚生科学研究においてガイドラインをお示しするという形において、二十五年度にお示しをさせていただいたということであります。

小池(政)分科員 答弁も戸惑っているということからは、そもそも対応はおくれていないんじゃないかという印象も受けてしまうわけでございますけれども、やはりこの期間におきましても、諸外国に比べて対応というのが後出しということになっております。

 また、中身についても、処方期間の上限でありますとか、それから、今回、睡眠薬のガイドラインでありますけれども、抗不安薬についての取り組み等もこれから考えなくてはいけないと思うんですけれども、その点について、中身について、これからまたさらに取り組むおつもりなのかどうか、お聞かせいただけますでしょうか。

佐藤副大臣 済みません、小池委員、ちょっと質問取りのやり方がまずかったのかわかりませんが。

 私の答弁で足りるかどうかわかりませんけれども、先ほど来、委員が質問の中でも言われておりますように、睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドラインは、昨年、二十五年度より、ホームページに既に決めたものを載せていただいているんですね、これは御存じだと思うんですけれども。これは国立精神・神経医療研究センターのホームページ上で公開して、また、関係学会等を通じて周知を行うなど、このガイドラインの普及を図っている、そういうことはさせていただいております。

 さらに、大臣も答弁の中で言われましたけれども、厚生労働科学研究におきまして、こういう薬物療法だけではなくて、認知行動療法なども活用した、そういう睡眠障害の治療のガイドラインの作成等に着手をしているところでございます。

 もう一つおっしゃった、特にベンゾジアゼピン系薬剤の抗不安薬の部分、これはまた今後しっかりと検討させていただきたい、このように考えております。

小池(政)分科員 期間の部分でありますとか、それから、ベンゾが入っている対象についても、睡眠薬だけじゃなくて、ぜひこれから考えていただきたいということが私の問題意識でございます。

 今度は、関連するわけでございますけれども、過剰診断ということについてお伺いをさせていただきたいと思います。

 精神医療は、基本は早期発見、早期治療ということでありまして、とにかく受診につなげるということが確かに大事なわけでございますが、ただ、一方で、受診につなげた際に、健康な人が今度は誤って病気と診断されてしまう、過剰診断というのも精神医療の中でやはり問題になっているわけでございます。

 例えば、うつ病の診断については、米国精神医学会による診断マニュアル、通称DSM、これによって行われることが多くて、それを安易に使うようなことによって、マニュアル診断がふえたことによる弊害ということもよく聞いているところでございます。

 このDSMにつきましては、第四版の編集者であるアラン・フランセスさんという方がおっしゃっているんですけれども、もともとの彼らの本意というものと少し異なった使われ方をしているということに対して警告を唱えていらっしゃいまして、ぜひこれは大臣にも読んでいただきたいんですが、この方が、「正常を救え」という題名の本を出していらっしゃいます。二〇一三年の十一月に出版されたということでございます。彼は、このDSM第四版におきまして、過剰診断に対する警告と、それを避けるための助言をはっきりと記すべきだったという後悔をここで示しているわけでございます。

 一方で、副大臣、先ほどもおっしゃいましたけれども、かかりつけ医とか、それから今度は小児科医などにもうつ病の対策等がこれから広がっていくわけでございますが、その際にも、このようなDSMを使って安易に診断が行われて、正常な方が今度はまた病気とみなされて、フランセスさんがおっしゃるような懸念がかなり広がっていくんじゃないかなという意見もあるところでございます。

 それについて、どのようにこれからDSMというものを扱って、また、このようなかかりつけ医また小児科医に対する研修等に使用されていくのか、御所見をお伺いできますでしょうか。

田村国務大臣 非常にこれは悩ましい話でありまして、一方で、今委員おっしゃられたとおり、早くからその症状といいますか、それが把握できれば、そして精神科医にそれがつなげられれば、当然、それよりか重症化をある程度防止していけるわけでありますから、早期発見、早期治療ということが重要であるわけであります。

 そういうところから、特に十代、二十代、若いところで、結構、病をお持ちの方々、また発症される方々が多いものでありますから、それに対応するためには、小児科また地域のかかりつけ医、こういうところでやはりしっかりとチェックできるような体制を組んでいくということは必要であります。

 一方で、言われるとおり、何もわからない中で、みんながみんな、本来そうでもないのに変な形で診断されるという話になれば、それはまた問題が起こってくるわけでありまして、そこは養成研修等々含めて力を入れていかなきゃならぬわけでありまして、現状、かかりつけ医うつ病対応力向上研修、こういう研修でありますとか、思春期精神疾患対応力向上研修、さらには精神保健福祉関係者対象研修、さまざまな、それぞれ必要な方々に対して必要な研修を取り入れている。

 また、一方で、研修だけではなくて、やはり連携が大事でありますから、これは二十五年度から、精神科医とかかりつけ医等々との連携を強めるという意味で、連携会議、こういうものを設ける等々の取り組みを始めておりまして、そういう中において、今言われたような誤った診断が起こらないような形でうまく精神科医につなげられていく、そのような進め方、これを我々今整備をさせていただきたいというふうに思っております。

小池(政)分科員 ぜひお願いいたします。

 また、DSMにつきましては、これは幾つか要因があるとは思いますけれども、安易な診断に結びついている一つの要因として、このDSMの、果たして日本語訳もこれでいいのかどうかというような指摘もあるわけでございます。

 DSMの正式名称というのは、ディアグノスティック・アンド・スタティスティカル・マニュアル・オブ・メンタル・ディスオーダーズなんですね。こちらは、日本語では、精神疾患の診断・統計マニュアルと翻訳されておりますし、厚労省が内容を指示している医薬品の添付文書の中でも同様の訳語を使っているところでございます。

 こちらも、よく調べてみますと、DSMの第三版の編集委員長であるロバート・スピッツァーさん、この方は、多くの精神疾患はいまだに病理的根拠の確定されていない症候群にすぎないもので、その意味においてディジーズとは呼べず、ディスオーダーとしたというようなこともおっしゃっております。つまり、病気とはまだ呼べないということでございまして、ディスオーダーは本来、不調や失調ということでございます。メンタルディスオーダーの意味も、精神的な不調程度の意味合いということで、それを精神疾患と伝えるというのがかなり誤解を与えてしまうんじゃないか。

 また、これが、診断・統計マニュアルということで普及したということもありまして、あたかも精神疾患の診断が確立されたかのような誤解が蔓延していったというような意見もあるわけでございまして、ここはぜひ、このDSMというのは、あくまで精神的な不調を分類するものにすぎず、診断のためのバイブルというか、それで診断すべきものじゃないよということを徹底していただきたいと思うんですが、大臣、どうでしょうか。

田村国務大臣 いずれにしても、学会等々といろいろとここは相談させていただきながら、専門家の方々のしっかりした意見をいただきながら対応しなければならぬというふうに思っておりますので、先生がおっしゃられた考え方というものも含めて、しっかり検討の中において、誤った診断が行われないように、そのような形を我々としては確立してまいりたい、このように思っております。

小池(政)分科員 その専門家の中の専門家であるこのDSMを編集された方が、あえてディジーズじゃなくてディスオーダーという形で明記しているわけでございますから、ぜひそのような意見をもう一度考えていただきたいと思います。

 最後、ストレス検査についてでありますけれども、よろしいでしょうか。

 厚労省が導入予定のストレス検査というものがあります。これは、事業者に従業員のストレス検査というものを義務づけるものでございます。これについて、ちょっと質問主意書等で確認をさせていただこうと思ったんですが、質問の意図がよくわからないということで御回答が返ってこなかったわけでございますから、もう一度、具体的にお伺いさせていただきたいと思います。

 そもそも、このストレス検査の意義というものはどこにあるんでしょうか。その従業員の、個人のストレス度合いをチェックするのか、もしくは、会社全体とか部署の、その働き方の環境、そういうところをチェックするものなのか。それによって、その情報を誰が受けて、それをどうやって使うということを想定されているのか等も含めて、ちょっと意義についてお伺いさせていただけますでしょうか。

半田政府参考人 お答えいたします。

 このストレス検査は、審議会の建議に基づいて私ども検討しているところでございますが、審議会の建議では、ストレスチェックと面接指導を入れるという提言になってございます。

 このストレスチェックの意義といたしましては、労働者御本人に自分のストレス状態に気づいていただくということが一番の目的でございます。また、それを踏まえまして、事業者の方には必要な職場の改善措置などをとっていただく、こういうことを念頭に置いたものを考えているところでございます。

小池(政)分科員 本人の気づきを促すということを今お伺いさせていただきましたが、そうしますと、その結果というのは、基本的に本人が受けるものであって、事業者はその結果を見ることはできない、本人の同意がなければ多分できないということだと思いますけれども、それは、事業所の規模等に関係なく、そのような理解でいいんでしょうか。

半田政府参考人 ただいまの点も御検討を今いただいているところでございますけれども、基本的な考え方といたしましては、事業場の規模に関係なく、このストレス制度ということを導入していきたいとは考えておりますけれども、実態に応じて、どのような制度にしていくかということを今まさに御検討いただいているところでございます。

小池(政)分科員 時間も来ましたので。

 私のここの問題意識というのも、今までと同じように、本人の気づきということを促すわけでございますけれども、厚労省の試算によりますと、大体一回のテストで百億円ぐらい、それを使って、果たしてどのような効果を見込んでいるのか。また、それによって、結果として、また自分たちが、今度は精神医療に行って、かえって正常だったのが悪くなってしまうような、そういう可能性もなきにしもあらずでありますから、その点も踏まえて、これからしっかり検討していただきたいと思います。

 きょうはありがとうございました。

関主査代理 これにて小池政就君の質疑は終了いたしました。

 次に、中野洋昌君。

中野分科員 公明党の中野洋昌でございます。どうかよろしくお願いいたします。

 私、実は一昨年の衆院選、初当選でございますけれども、厚生労働の関係で質問をさせていただくのは今回が初めてでございますので、田村大臣、また佐藤副大臣、また関係者の政府の皆様、どうかよろしくお願い申し上げます。

 私の方からは、まず、小児がん対策について質問をさせていただきたいというふうに思います。

 我が公明党は、一貫して小児がん対策というものにしっかりと取り組んでまいりました。小児がんというのは、かかる方も年間約二千人から二千五百人ぐらいということで、専門家も非常に育ちにくい、こういういろいろな課題がございましたけれども、さまざまな取り組みを推進してほしい、こういう要望も受けまして、小児がん拠点病院として十五の病院も指定されております。

 私の地元兵庫県でも、神戸市が医療産業都市ということで、ポートアイランドを中心にさまざまな医療施設を集約させていこう、こういう動きもございまして、例えば、県立こども病院、これは小児がん拠点病院でございますけれども、これも移転をさせようという計画もございます。そして、小児がん専用の粒子線の治療施設、こういうものもこれからつくっていこうという話もあるわけでございます。

 小児がんというのは、治療後の経過が大変に長いということで、放射線治療あるいは化学療法、こういうものの後のいろいろな合併症に苦しんだりする方もいらっしゃる、こう聞いております。

 そこで、粒子線、より正確に言うと陽子線でございますけれども、正常な組織を傷つけずに、がんの病巣のところだけピンポイントで治療していく、こういう技術がございます。これは今、先進医療になっておりますけれども、残念ながら保険の適用の対象外になっておりまして、兵庫県の方からも、こういう形で小児がんを何とか対策をしていきたいということで、これはぜひ保険適用をお願いしていきたい、こんな御要望もございまして、私も去年、副大臣のところに御要望を持って行かせていただきましたけれども、今回、残念ながら保険適用にはならなかった、こういうお話をいただいたわけでございます。

 そこで、御質問なんですけれども、どういうことが理由だったのか。これをしっかり、政府としても小児がんの対策ということで私としては後押しをしていっていただきたい、こういう思いがございますけれども、どうでございましょうか。御答弁をお願いいたします。

土屋副大臣 小児がんに対するものを含めた陽子線治療については、現在、先進医療として実施され、保険診療との併用が認められているところでございますが、先進医療技術の保険導入については、診療報酬改定時に、先進医療会議というのがありまして、そこで実績報告等に基づく評価を行っておりますが、中央社会保険医療協議会総会、中医協において保険導入の可否を決定することとなっておりました。

 そこで、今回、二十六年度診療報酬改定時は、先進医療会議において三つのことが示されました。一つが、有効性、効率性について、既存技術との比較が不十分であるということ、二つ目が、技術的成熟度について、放射線治療の専門医等が不足しているということ、三つ目が、普及性について、巨額な建設費を伴う施設の適正配置等、国内整備のあり方の検討が不十分である等の課題が解決していないということで、先進医療として継続すべきとされまして、今後、中医協でも継続して結論を導こうということでございます。

 そして、陽子線治療については、先進医療として保険外併用療養を実施しながら、今後、実績等のデータを蓄積してまいりたいと思っております。

中野分科員 土屋副大臣、ありがとうございます。

 大変残念ながら、いろいろなデータの蓄積をこれからもっとしていって、有効性であるとか専門家の育成であるとか、いろいろなものを検証する、確かに大変重要なことでございます。

 私としてもしっかりと後押しをしていきたいと思いますし、何より、がんにかかられている子供を持たれている御両親の皆様、こういう方々にとっては、大変残念なことに、お金がなければこういう治療を受けさせられないという方もいらっしゃるというふうに思います。大変に身を切られるような思いでいる方も多くいらっしゃる、私はこう思いますので、何とか国としても後押しをしていっていただきたい、こう御要望させていただきます。

 もう一つ、小児がんの関係なんですけれども、私は、この治療の現場にも行きました。当然、小児のがんですので、小さい子供だけで入院をするというのは大変難しいということで、やはり御両親、お母さんですとか、世話をしに行かないといけない。遠方のところから来られている方は、例えば、近くに住む場所を借りて泊まり込みでやらないといけなかったりですとか、私が神戸で見させていただいたのは、診療施設と住宅施設が、かなり併設に近いというか、非常に近いところにある、どちらもできるんだ、こういう施設も見学をさせていただいたりしましたけれども、やはり、家族に対する負担が大変に重い、このように思います。

 そして、私は、子供にとっても恐らく負担が大きいだろう。ずっと家を離れて治療しないといけないということで、こういう子供あるいは家族に対してしっかりと、通常の診療とはかなり違う部分があると思いますので、心理的なケアも含めてやっていかないといけない、私はこう思いますけれども、厚生労働省の御意見を伺いたいというふうに思います。

土屋副大臣 委員がおっしゃるように、まさに、小児がんの場合は家族が本当に大変な状況だと思います。そして、先ほど先生がおっしゃったように、拠点病院が十五カ所あるわけですけれども、誰もが近くに住んでいるわけではないので、一緒に住みたい、またたびたび病院に行きたいというような状況の中で、今後、核となる病院それから相談支援センターの設置というのを加速していく必要があろうと思っています。

 二十六年度診療報酬改定において、小児がんを含めたがん患者の心理的なケアを推進するため、医師や看護師ががん患者の心理的不安を軽減するための面接を行った場合の評価を新設することになっております。

 このような取り組みにより、小児がんの患者やその家族に対する心理的なケアの充実を図り、小児がん対策をさらに進めてまいりたいと考えております。

中野分科員 ありがとうございます。

 私としても、また公明党としても、しっかりと小児がん対策をこれからも応援してまいりますので、どうか対応のほど、よろしくお願い申し上げます。

 少し話はかわりますけれども、線維筋痛症という病気がございます。これについて質問をさせていただきます。

 なぜ私がこの病気に関心を持ったかといいますと、ちょうど交通事故を原因にこの線維筋痛症を発症した友人がおります。これはどんな病気かといいますと、いろいろなところが、全身が痛い、しかし原因がわからない、いろいろな検査をしても異常が発見をされない。治療法がなくて、なおかつ、ガイドラインのようなものはあると聞いておりますけれども、客観的にどう判断するか、こういう指標も今のところないというふうに聞いております。

 ですので、例えば、交通事故でこの病気が発症した場合に、因果関係をどう見るのか、これは判断がなかなか難しい、こんな意見も伺いましたし、指標がないということは、当然、難病のような扱いにもならないということでございます。ただ、他方で、日常生活には当然非常に支障が出てくるわけでありまして、大変に困った、こういう状況を私は聞いたわけであります。

 ほかにも、このような、似たような病気で苦しんでおられる方から相談を受けたことも何度かございまして、この慢性的な痛みですね。痛いというのはなかなか、客観的に数字で示したり何かやるというのは非常に難しいというふうに聞いておりますけれども、この線維筋痛症も含めて、痛みという病気に対して、ただ、潜在的な患者の数は非常に多い、厚生労働省の推計では約二百万人ぐらいいるんじゃないか、こういう推計が出ているとも聞いておりますので、今後どのように取り組みを進めていくのかということをお伺いしたいと思います。

佐藤政府参考人 お答えをいたします。

 御質問にありましたような線維筋痛症を含めました慢性の痛みというものを来す疾患には、先生から二百万人というお話がありましたけれども、類縁疾患まで含めると数百万人の患者さんがいらっしゃるだろうというふうに考えております。

 また、今お話がありましたように、日常生活上に大変不便をなさる、あるいは診断がつくまでにいろいろなお医者さんを回るというようなことにもなりますので、多額の医療費がかかったりということで、社会的損失も大きいのではないかと考えております。

 こうしたことから、慢性の痛みの診療におきましては、身体的問題のみならず、心理的それから社会的な問題も含めまして、総合的なアプローチが必要だろうというふうに考えております。

 このため、平成二十一年度から、慢性の痛みに関する検討会というのを厚生労働省で開催いたしまして、二十二年の九月には、その報告書を提言の形で取りまとめていただいたところでございます。

 この提言を踏まえまして、平成二十三年度から、慢性の痛み対策研究事業というのを新たに立ち上げまして、病態の解明あるいは治療法の開発、そして医療体制の構築などということで行っております。平成二十四年度からは、からだの痛み相談・支援事業というのも別途立ち上げまして、医療従事者への教育、それから患者への情報提供、相談体制の整備充実などを図っているところでございます。

中野分科員 ありがとうございます。

 二十一年度からの取り組みを紹介していただきました。

 私は、この病気、大きな問題として、認知度が低いというか、恐らくお医者さんでも御存じない方も多くいらっしゃる。特に患者さんにとっても、私も、たまたま私の友人がそういう病気になりましたので初めて知ったわけでありますけれども、患者の方も、そんな病気があるということを恐らく御存じない。ですので、先ほどお話があった、たらい回しがあったり、あるいはちゃんとした対応ができない、非常に困る状況にあるなというふうに思います。

 そうした研究自体もしっかりと続けていただきたいと思いますし、また、これに対応することができる病院、ここに相談をすれば対応してくれる、こういうところをしっかりとふやしていかないといけない、こう思いますけれども、厚生労働省の御意見を伺いたいというふうに思います。

佐藤政府参考人 お答えをいたします。

 先ほどもお話をいたしましたように、慢性の痛みを起こす疾患は、質問の中にございました線維筋痛症はもちろんのこと、関連する疾患が幾つかあるんじゃないかというふうに思います。しかも、痛みというものが自覚的なものなので、なかなか家族や周囲の方にも理解されないまま、単に身体的問題だけじゃなくて、心理的、社会的な問題ということになっていくんだろうと思います。

 それから、これも先ほどもお話をいたしましたけれども、痛みの原因がさまざまであるために、その原因を究明するという意味もありまして、患者さんが多くの医療機関を渡り歩いて時間とお金と消費されて、しかも精神的にもがっかりされるというようなことなんじゃないかと思います。

 こうしたことから、私ども、平成二十三年度から、これも先ほどのお答えの中にありましたけれども、慢性の痛み対策研究事業を立ち上げまして、差し当たり、全国で十一大学の病院において、慢性の痛みに対して専門的に、総合的にアプローチを行うような病院というのをお願いして、診療体制の構築を推進しているところでございます。

 今も申し上げましたように、まだまだ十一大学ですし、大学だけでとどまっていてもなかなか難しいので、こうした取り組みがまた全国にも広がっていくようにということで、引き続き充実をしていかなければならないと考えております。

中野分科員 ありがとうございます。引き続きしっかり対策に取り組んでいただきたいと思います。

 先ほど御答弁の中にもありましたけれども、私が、推計で二百万人、そして関連のものも含めるともっと数が多い、こういうお話もありまして、ですので、苦しんでいる方の数でいえばかなり多い病気なのではないかというふうに思いますので、しっかりと対応していただきたいと御要望をさせていただきます。

 少し話はかわりまして、障害者関連の政策についてお伺いをしたいというふうに思います。

 昨年はさまざまな障害者関連の法律が成立をいたしました。障害者雇用促進法であるとか、あるいは障害者の差別解消法であるとか、画期的な法律が成立をしておりまして、障害者政策というのが大変大きく前に進んでいくのではないか、こういうように期待をしております。

 私は、地元でもさまざまな障害者の関係の団体の方、例えば、知的障害者を持たれている御両親の方のそういう会であるとか、あるいは自立支援、就労支援、こうしたものを積極的に行っている団体、さまざまなところを訪問させていただいて、そしていろいろな意見交換をしてまいりました。

 特に、障害者差別解消法の制定というのは、長年、皆様の大きな悲願であったというふうに聞いておりまして、私もある団体を訪問させていただいたときに、この法律ができて、本当にこの今の政府の動きには大変感謝をしているということで、みんなで万歳をして写真を撮ったりとか、本当にこの政策にかかわらせていただいて、前に進めさせていただいてよかったな、こう思う次第でありますけれども、実際にこれを今度はどのように実現、実行していくか、これはまた違った意味で大きな課題になってくると思いますし、これがどのように制度設計がされていくかによって、障害者政策がちゃんと前に進んでいくのか、あるいは、なかなか問題が解決しないのか、これは今後、非常に大きな課題になってくるというふうに思います。

 例えば、こんな御相談を受けたことがございます。例えばケアホーム、今度、グループホームの方に一元化されていくと承知をしておりますけれども、こうした施設の建設を地元でしようとする、そうすると、大変残念なことに、地元の住民の方からすごく反対をされるようなケースというのが出てくるわけでございます。

 大変に難しい課題で、何とか理解をしていただくということで、我々政治側としてもしっかりと訴えていかないといけない課題でありますけれども、他方で、障害者差別解消法といいますのは、障害を理由とする差別の解消の推進に寄与するようにみんな努めていかないといけない、こういう理念がある法律でもございます。

 具体的に、例えば、障害者の施設をつくろうとしたときに反対をするような、なかなか前に進まない、こういう現状が私の地元でもいろいろあるわけでございますけれども、こうしたケースに対して、これから国あるいは地方自治体は、どのような対応をしていくのか、どのような取り組みをしていくのか、お伺いをしたいというふうに思います。

岩渕政府参考人 障害者差別解消法、平成二十八年四月に施行予定でございますが、この法律におきましては、事業者ではない一般私人の行為や個人の思想や言論につきましては、法により規制することは不適当との考え方に立ちまして、直接の対象とはせず、法第十五条に規定する国や地方公共団体による啓発活動を通じまして差別解消の推進を図るということにしております。

 そして、障害者支援施設やグループホーム、ケアホームなどの立地をめぐる反対運動につきましては、障害者に対する理解が十分でないことによるところもあると考えられますことから、行政におきまして住民に対する啓発を行うとともに、本法の趣旨を踏まえまして、障害者支援施設の認可等に際して住民の同意を求めるなどの、ほかの施設の認可等にはない特別な措置を行わないようにすることが適切であるというふうに考えます。

 この問題につきましては、法案審議の際の衆参両院の附帯決議におきましても同様の御指摘をいただいたところでございまして、引き続き、これらの施設を所管する厚生労働省や地方公共団体とも連携をしつつ、障害を理由とする差別の解消の推進に努めてまいりたいと存じます。

中野分科員 ありがとうございます。

 私自身も、大変に難しい問題だなというふうに思います。個人個人の思いの問題でありますので、やはり、理解を促進していく、そういう啓発の動きというのを、自治体もそうですし、我々国会議員、あるいは国も、いろいろな場面でやっていかなければ、幾ら、差別解消法だ、成立したといっても、市民の皆様の思いが変わらなければ解消したことにならないわけでございますので、息の長い取り組みになるかとは思うんですけれども、しっかりと取り組んでいっていただきたいし、私もまた、しっかり頑張ってまいりたい、こういう決意でございます。

 続きまして、これも障害者のそういった関連でございますけれども、精神障害を持たれている方で就労を目指される方というのは最近ふえていると承知をしております。実際に、就業されている方の、雇用されている方の数というのも、どんどん精神障害の方に関しては伸びている、実績としても伸びている、このように伺います。

 ただ、私、まだまだ精神障害についていろいろな、ある意味、偏見の目というか、そういったものがあるなと感じたことがございまして、それは、ある方から御相談を実際に受けたときに、自分は精神障害を持っているんだけれども、雇用主にこれを持っていると言うと解雇されるかもしれない、だから、職場の中ではなかなかそういう話ができないんだ、こういうふうな悩みを打ち明けられた方がいらっしゃいます。

 確かに、いろいろな仕事をしている中で、精神障害というと周りのサポートがやはり必要でございます。大変に精神的につらいときに休まないといけなかったり、あるいは、復帰するまでいろいろな支えが必要であったり。ただ、その中で、自分がそういう精神的な障害であるということに対して、やはり周りの目がどうしても、そういう雇用の関係で解雇されるんじゃないかとか、いろいろな不安を抱えられながら働かれている、こういう方も現実的にはいらっしゃるというふうに思います。

 そこで、障害者雇用促進法が施行されますけれども、こうした雇用の関係で、精神障害を持っている持っていないで、解雇されるされないみたいな、何かそういう話があるかもしれませんけれども、これは施行に伴ってどのように状況が変わるのか、国はどういう対応をしていくのか、これをお伺いしたいというふうに思います。

内田政府参考人 お答えいたします。

 先生からお話がございましたように、昨年六月、障害者の雇用の促進等に関する法律が改正されてございます。

 この改正によりまして、平成二十八年の四月から、解雇を含め、雇用の分野のあらゆる場面における障害者であることを理由とする差別を禁止するとともに、紛争解決の仕組みとして、個別労働紛争解決促進法の特例を設けまして、都道府県労働局長による助言、指導、勧告等の制度を整備することとされているところでございます。

 現在、改正法の施行に向けまして、差別の禁止に関する指針の作成等必要な準備を進めているところでございますが、この改正法の内容等について事業主あるいは障害者双方に対してよく知っていただくということが何より大事でございます。その周知を徹底するなど、障害者に対する差別を解消するための取り組みを進めてまいりたいと思います。

中野分科員 ありがとうございます。

 やはり、使用者、労働者双方の立場で、こういうふうにこれから変わっていくんだと知っていただく、そうして、そういう障害を理由とした差別をしないようにしていただくということが何より大事であるというふうに思いますので、特に周知の活動をこれからしっかりとやっていっていただきたい、このようにお願いを申し上げます。

 精神障害者の方の関連でもう一つ質問でございます。

 就労支援をしている団体にも行きました。いろいろな障害の方がいらっしゃいますけれども、知的障害、身体障害がございますけれども、やはり精神障害というのは、非常に、一旦就労である程度うまく職場になじんだとしても、調子が悪くなったりするときもございます。一年たったら調子が悪くなってしまった、そういうこともございます。

 私が聞いた話は、就労がある程度うまくいって、そして生活がある程度安定をしてきた、こういう段階において、お医者さんが診断をするときに、これはかなり安定をしているということで、障害の等級が例えば切り下げられたりですとか、では、あなたはもう大丈夫だねということで、年金がもらえなくなったりですとか、そういうケースがある。自治体によってちょっと状況は違うかもしれませんけれども、こういうお話を伺ったこともございます。

 そうすると、何とか自立をしていただこうと就労支援をしているわけでありますけれども、安定すればするほど逆に支援がなくなるような場面もあるということで、本人にとってもなかなかインセンティブが湧かないんじゃないか、こういうような指摘をいただいたことがございます。

 この問題について、精神障害、一旦落ちついても、二年、三年たったらまた、ちょっと調子が悪くなることもございます。等級のこういう変更についても、しっかり慎重に行っていかないといけないんじゃないか、私はこう思いますけれども、厚生労働省の御意見を伺いたいというふうに思います。

樽見政府参考人 障害年金の等級の問題でございます。

 まず、障害年金、病気やけがで日常生活に支障を来している、あるいは日常生活に著しい制限という場合の生活保障ということで支給されるものでございますので、これは御承知のことと存じますけれども、まず、就労したからといって一律に年金がとまるというようなものではございません。あくまでその等級がどうなのかということになるわけでございます。

 障害年金の等級につきましては、その時々の障害の程度を適切に反映するという観点から、一定の、障害の程度が固定しているような場合を除きまして、一年から五年、これはケース・バイ・ケースでございますけれども、障害認定審査医員という者が障害の状態を確認して認定するという仕組みになっているわけでございます。

 障害の認定の仕組み、基準というのは、障害認定基準というものを定めて行っているわけでございます。この精神障害の程度の審査というところについては、療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況等を十分確認した上で日常生活能力を判断する。認定基準の文言の中にも、「労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、」という表現もございます。

 こうしたところを踏まえまして、個別の事案における認定に当たりましても、障害認定基準に従いまして適切に対応してまいりたいと考えております。

中野分科員 ありがとうございます。

 現場で自立支援あるいは就労支援を行っている皆様というのは、必ずしも、別に処遇が大変いいわけでもないですし、ただ、何とか障害者の方の力になりたい、こういう非常に強い思いでやられている方も大変多いというふうに思います。

 一人一人の面倒を見る、あるいは、それぞれ状況がさまざまな個々人の方に対応する中で、非常に気を使いながら、あるいは気配りをしながらやられている方も多いわけでございますので、現場でどんどん障害者の方が、就労支援をして、自立していただくというのが一番大事でございますので、なるべく、そうしたインセンティブが湧くようなというか、皆様がそうやって積極的に、こうやってみんなで頑張っていこうと、元気になっていけるような施策をぜひやっていただきたいなというふうに改めて御要望申し上げる次第でございます。

 最後に、うつ病の関連で一問質問をさせていただきます。

 今や、国民病と言われることもあります。大変に多くの方が罹患されることもあるうつ病でございますけれども、認知行動療法という療法がございます。これはいわゆる投薬ではない形で治療を行っていくわけでございますけれども、これが保険適用になりました。二〇一〇年のことだったかというふうに思います。

 私も、実際に身近に、薬をずっと飲んでいるのも確かに大変でありますし、なるべく飲まずに済むものであればという方もいらっしゃいます、ぜひこの認知行動療法を受けたい、そういう相談を受けたこともございます。

 しかし、実際にこれが保険適用になったんですよ、こういうお話をしたんですけれども、では、いざ受けようとすると、なかなかやっているところが少ない、こういうお話をいただくことが多うございます。

 この認知行動療法、確かに、時間もある程度かかりますので、やり方も訓練を受けないといけない、いろいろなことがあると思いますけれども、せっかく保険適用になったわけですから、受けたいと思う方はこういう治療が受けられるような体制をしっかり整えていただきたいというふうに思います。

 例えば、こういう治療をする方の育成をもっとしっかりやっていく、あるいは、実際の医師以外の方についてもこういう療法を行っていくというのは、私は可能なんじゃないかというふうに思っておりまして、こういうことも含めてしっかり検討していく、これが大事だというふうに思いますけれども、厚生労働省の意見を伺いたいというふうに思います。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 うつ病につきましては、先生お話がございましたとおり、薬物療法にあわせて、面接を通じて御本人の考え方を変えていくという認知行動療法というのが非常に有効であるということが明らかにされているところでございます。

 御指摘のとおり、認知行動療法を実施する人材の養成というのが非常に大事だということでございまして、平成二十三年度から精神科医等に対する研修事業を開始している、こういうことでございます。

 具体的に申しますと、この研修におきましては、一つの形は、お医者さんを対象にいたしまして、実践的な個別指導形式での研修というのを一つ行っております。また、あわせて、医師及び看護師等の多職種を対象として、講義形式の研修というのも一方で行っているということで、平成二十四年度末までの状況ですけれども、約三千人の方々が研修を受けて終わっている、こういう状況でございます。

 実は、こういう中で、厚生労働科学研究でその効果についていろいろと研究しておったところでございますけれども、先生からちょっとお話がございました、医師以外の職種が行う認知行動療法についても、研究の中で一定の治療効果が認められるということがわかってまいりましたので、これで平成二十六年度からは、先ほど申しました個別の研修方式について、これまでは医師のみが対象だったんですけれども、ここを看護師等の多職種に拡大をして実施していく、こういうことにしているところでございます。

 今後とも、このような、医師あるいは医師以外の職種に対する実践的な研修等を実施しながら、一方で、そうした方々がやる行為についての検証といったものを並行して行いながら、幅広く、認知行動療法ができる医療関係者の質、量の確保について取り組んでまいりたい、こういうふうに考えております。

中野分科員 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

関主査代理 これにて中野洋昌君の質疑は終了いたしました。

 次に、瀬戸隆一君。

瀬戸分科員 本日は、このような機会をいただきまして、ありがとうございます。瀬戸隆一でございます。

 まず、慢性の痛みについて質問させていただきたいというふうに思っています。

 先日ちょうど、愛知医科大学がありまして、その中で痛みセンターというのがありました、そこを訪問してきたところであります。その愛知医科大学の痛みセンターというのは、診療科、つまり内科とか精神科とか整形外科とか、そういった診療科を超えて、慢性の痛みについて治療をしていこう、そういう意欲的な取り組みをしているというところでありました。

 腰の痛みとか膝の痛み、いろいろな慢性痛がありますけれども、今までいろいろな医療機関で診療したんだけれども治らなかった、ただ、その中でいろいろドクターショッピングをしてきたんだけれども、その最後にここにたどり着いたというようなセンターでもあるようでありました。その痛みセンターで治療法を話し合うカンファレンスがあったんですけれども、一人の患者さんについて話し合う、そういったカンファレンスを私も傍聴させていただいたところであります。

 そこには、整形外科医はもちろんですけれども、麻酔科医、精神科医、臨床心理士、そして看護師の方々が集まって、まさしく診療科や職種を超えてチームを組みまして、一人の患者について包括的、総合的に、どういった治療をしていこうかということを議論しているということが行われていました。そういった中で、慢性痛の治療をどうやってやっていこうかということを議論し、決定していたところであります。

 患者さんの職業とか現在の生活環境、何時ごろ寝て何時ごろ起きるかとか、そういったようなものとか、趣味、家族構成、そして、その家族との関係性、親との関係が良好なのか、また夫婦関係が良好なのか、そういったことが感じる痛みの大きさの大小に影響を与えるということから、精神科医や臨床心理士の方々も積極的に議論に加わっているというような状況でありました。

 その中で、趣味とか仕事に一生懸命取り組んでいると、感じる痛みが減ったりするということで、趣味を持つこと、仕事を一生懸命やることについていろいろ助言をする、そういったことをしていこうと。つまり、整形外科の方が手術するというだけではなくて、精神科医の担当によるそういった助言も含めて、アドバイスも含めてやっていこうというふうなことを話していたところであります。

 現在の日本においては、これはなかなか、何人の方が慢性の痛みを持っているのかわからないところでありますけれども、数百万人の方々が慢性の痛みを抱えているとも言われているようです。その経済的損失というものは、一説には二兆円弱とも言われているようでありまして、かなりの社会的な影響がある問題になっております。確かに、周りのお年寄りの方々、必ずどこかに、腰なり膝なりに痛みを抱えているというのは、もう皆さんも御存じのことと思います。そういった慢性の痛みをどうしていくかということでございます。

 海外においては、総合的な痛みセンターというものが既に一定の役割を果たしているということであります。欧米、またオーストラリア、カナダというところに痛みセンターがあって、それはいわゆる日本のペインクリニックとはまた違った、ペインの場合は、整形外科医と麻酔科医の方が一緒にやっているパターンが多いようでありますが、もっと学際的な、包括的な取り組みをしているということであります。欧米においては、二百万人に一カ所ぐらいの総合的な痛みセンターがあるということであります。

 日本においても、慢性の痛みについて、対策を早急にとる必要があるんじゃないかというふうに思うところであります。

 そこで、質問をさせていただきます。

 まず、慢性の痛みに関する平成二十三年度から二十五年度までの予算額及び二十六年度の予算案は幾らになっておりますでしょうか。

土屋副大臣 慢性の痛みに関しては、平成二十一年度より慢性の痛みに関する検討会を開催して、平成二十二年九月に検討会としての提言を取りまとめ、対策を講じているところでございます。

 慢性の痛みに関する当初予算については、平成二十三年度、約一億三千万円、平成二十四年度、約一億二千万円、平成二十五年度、約一億二千万円となっておりまして、平成二十六年度予算案については、約一億二千万円ということでございます。

瀬戸分科員 今お話しいただきましたように、二十三年度からこの辺については予算がつき始めたところでありますけれども、最初からちょっと減っているんですけれども、余り変わっていないという状況であります。そういった中で、やはり厚労省におかれましても、これについての認識を深めていただけたらなというところでございます。

 そこで、世の中に対する啓蒙ということがまず必要なんじゃないかということであります。ただ、医療界においても、慢性の痛みということについて、これからもまだまだ、痛みがどれぐらいの大きさかというのは計測できないという状況でもありますので、果たしてそれをどう見ていくのかについて、いろいろ議論の分かれるところだそうです。確かに、いろいろな診療科にまたがって何かをやるということは、今まではほとんどやられてこなかったので、これに対してなかなか認識がされていないというところでもあるそうです。

 そういった中で、私は、例えば医学部において、総合的な慢性の痛み治療につきまして、そういった教育プログラムを策定したりとか、また、教育の実施等が必要なんじゃないかというふうに考えておりますが、いかがでしょうか。

櫻田副大臣 お答えさせていただきます。

 慢性の痛みは、患者の生活の質を著しく低下させ、就労困難を招く等、社会的損失が大きいとされており、文部科学省としても、慢性の痛み治療に関する診療科を超えた総合的な教育の充実等が必要と考えております。

 そのためには、文部科学省では、医学教育の指針となる医学教育モデル・コア・カリキュラムの平成二十二年度改定において、慢性疼痛に関する追加記載を行い、慢性疼痛の基本を学ぶことを一般目標として明記したところであり、各大学医学部において、このモデル・コア・カリキュラムに沿った教育が行われているところであります。

 また、一部の医学部では、疼痛に関する講座が、十一大学で十三講座等が設置され、痛みに関する教育研究が行われていると承知しております。

 文部科学省といたしましては、慢性の痛み治療に関する診療科を超えた総合的な教育の充実がさらに図られるよう、医学部長会議等において積極的な取り組みを促してまいりたいと考えております。

瀬戸分科員 ありがとうございます。

 先ほどもお話しいただきましたように、まだ十一大学。確かに、二十二年度から取り組んでいただいてきたということであります。慢性疼痛について、コア・カリキュラムの方に明記されたということでございますが、まだまだ十一大学で十三講座に限られているということでありまして、例えばこの中でも、なかなか、旧帝大でいきましても、まだこれは東北大学においても置かれていませんし、十一大学といっても限られたところであり、意欲的な先生がいらっしゃるところは、たまたまその先生がいらっしゃるということで、十一大学になっているということでありまして、まだまだ広がりを見せていないということだと思います。

 そういったことでございますので、今後も、やはり医学部生の段階から、慢性の痛みというものについて診療科を超えての診療が重要であるということの理解を深めていただくということは、将来の慢性の痛みに対する総合的な治療の推進に大きな意味を持ちますので、よろしくお願いしたいと思います。

 続きまして、お尋ねしたいと思います。

 ますますこれから高齢化社会を迎えることとなります。先ほども申しましたように、数百万人の方が慢性の痛みを抱えているという状況でございまして、これはやはり何かしなければならない、それがやはり社会的な大きな損失を招いているということであります。

 ますますこれから慢性の痛みを抱えた方々が、患者がふえると考えられます。そういった中で、痛みセンターの充実、そしてまた、各県に例えば一カ所ずつの痛みセンターの設置等ができれば、早期に進めればというふうに思うところでございますが、大臣の所見をお伺いします。

田村国務大臣 委員の前に、中野委員がやはりこの慢性の痛みの質問をしていただきました。やはり、それだけ今この慢性の痛みというのはかなり大きな課題になってきているんだなと。

 今お話があったとおり、いろいろな、まだ診断基準も確立されていないような疾病等々、複合的な部分もあるのかもわかりませんけれども、その中において慢性的な痛みが発症するということでありまして、数百万人と言われているわけであります。

 とにかく、経済的な損失のみならず、心理的、社会的な、いろいろなやはり問題も起こるわけでありまして、この問題に取り組んでいかなきゃならないということで、先ほど来話がありますとおり、平成二十一年に検討会を立てて、二十二年に報告書をいただいたわけであります。

 特に、今言われたように、痛みはあるんだけれども、なかなかいろいろなクリニックに行ってもわかってもらえないということでございますので、そういう意味からいたしますと、今ほど来言われたように、二十三年から、研究事業というような形ででありますけれども、十一大学病院において、総合的なアプローチという形で診療体制の構築を始めておるところであります。

 どうもいろいろな症状が、症状といいますか疾病があるようでありまして、うちの父も、これは高齢性といいますか、老人性の突発性リウマチというもので、体じゅう急に痛くなって、ただ、うまくリウマチ治療が効いたようでございますので、こういう場合はいいわけでありますけれども、うまく治療が合わない、もしくは原因がわからないという形になると、これはなかなか、本当にどうしたらいいかわからないという話でございますので。

 そういう意味では、今言われた愛知医科大の痛みセンター、さらには、ここに、からだの痛み相談・支援事業というのが、NPOを立ち上げて、愛知医科大学の中で、センター内でやられているようでございますけれども、このような形をやはりこれから整備していかなければならないという委員からの御指摘、これは大変重いものであろうというふうに思います。

 まだ我々も始まったばかりでございますけれども、それこそ臨床も含め、いろいろな研究を含めながら、どのような形でこれからこのようなものに対して対応していくか、検討していきたい、このように思っております。

瀬戸分科員 ぜひまたよろしくお願いしたいと思います。

 やはり今、整形外科医に行って切ってもらったんだけれどもなかなか治らないという方もいらっしゃるようでして、そういった方がドクターショッピングをしていって、でも、結局治らないので諦めたという方もいらっしゃいます。そういった方々を、いろいろなチームを組んで痛みについて相談に乗ってあげるということは、非常に大切なことだと思います。

 ただ、そこで一つ、例えばそういった総合的な取り組みをした場合に、ひょっとすると、切らないで、精神科医の先生がコンサルタントすることによって、助言をすること、アドバイスをすることによってやるということになりますと、なかなか、例えば病院内でも、やはり点数が出ないものですから、先生が頑張っているけれども残念ですみたいな、そういう状況が、点数がふえませんのでという状況が起きてしまっているようであります。

 それは、ただ、問題の根底には、痛みというものが数量化できていないといいますか、客観的な基準ではかれないというところが、やはり大きな問題としてあるんだというふうに思っているところであります。

 なので、そこのところをやはり客観的な指標で見てやらないと、本当にその痛みが減ったのかどうか、また、一部の先生には、これは、痛い痛いと言っているけれども、うそじゃないか、そういったことを言われる患者さんもいるということでございますので、皆が皆、お医者さんがそういったわけではないと思いますけれども、そういった状況であります。

 ですので、ぜひ、この慢性の痛みについて、今後、客観的な指標に基づいた診断基準の策定というものをやっていくべきじゃないか、そういった研究を進めていくべきではないかというふうに考えておりますけれども、いかがでしょうか。

土屋副大臣 おっしゃるように、長い間、評価法が確立されていないということを多くの方がおっしゃってきたわけですけれども、先ほどもお話ししましたように、慢性の痛みに関する検討会が平成二十二年にまとめた中では、やはり、「痛みは主観的な体験の表現であるために、客観的な評価が困難であり、標準的な評価法や診断法は未確立である。」というのが現状であります。

 この提言を踏まえて、平成二十三年度より、新たに慢性の痛み対策研究事業を立ち上げまして、客観的な評価システムの確立に関する研究等を行っているところです、今大臣がいろいろお話ししましたけれども。

 今後も積極的に、評価法をつくれるように取り組んでまいりたいと思います。

瀬戸分科員 ありがとうございます。

 本当に、これからしっかり取り組んでいただけたらというふうに思っております。

 ただ、先ほども予算のお話をいただきましたけれども、なかなかその十一大学でもきゅうきゅうとしている状況のようでありまして、非常に苦しみながら、人件費を出すのもどうしようかという中でやっているところでありますので、しっかりとまたこれについて今後とも取り組んでいただけたらというふうに思っているところであります。

 続きまして、それでは、外国人の技能実習生について質問をさせていただきたいと思います。

 ちょうど、私の地元の香川県でありまして、東かがわ市というところがあるんですけれども、その市では手袋業が盛んであります。全国のシェアの九〇%を占めているということでありまして、デパートの手袋のほとんど、そういったものが東かがわ市の手袋だということであります。

 ただ、つくっているんですけれども、ブランドは、違うブランドがついている可能性があるので、見えないかもしれません。東かがわ市にとっては非常に大きな基幹産業になっているところであります。

 現在は、海外への工場移転も進んでいるということでありまして、国内とそして海外、中国が多いみたいですけれども、両方で手袋の製作をしているということであります。

 それから、今はちょうど、最近は、技能実習生をこれから受け入れて、そこで学んだ人を、さらに、中国に帰ってもらって、中国で指導をしてもらえるような、そういったことをやりたいというふうに考えているようなんですね。なんですが、この手袋業界においては、外国人技能実習生が一年しか働けない、技能実習でしか働けないということになっています。

 それはどういったことかといいますと、手袋以外の、例えばタオルの業界とかそういったところは、一年の技能実習生を終えた後に試験を受けまして、その次に技能実習二号に移って、あと二年間延長できるという、つまり、全体で三年技能実習ができるというふうになっています。

 ここにおいて、手袋業界なんですけれども、そういった小さい業界なんですが、その小さい業界では、業界団体に体力がなくて試験を実施することができない、それによって、一年しかできなかったという状況だそうなんです。

 これを何とかしてほしいという、地元の方も言っているんですけれども、多分、ほかの業界にもあるんじゃないかと思うんですが、そこはちょっと、今はわからないところなんです。

 そこで、まずお尋ねいたしたいのが、現在行われている技能実習二号への移行のための試験ですけれども、この試験、全業種で、大体、合格率というのはどれぐらいになっているんでしょうか、お尋ねいたします。

杉浦政府参考人 お答えいたします。

 技能実習二号移行のための試験の平成二十四年度の合格率は、九四・四%となっております。

瀬戸分科員 ありがとうございます。

 合格率が九四・四%ということは、多分、ちょっと勉強しただけでほとんどの人が合格している。サボっている人、全然何もやっていない人が落っこちているんじゃないかというふうな、多分試験じゃないかというふうに思われます、想像ですけれども。

 試験については、実務的な試験とは言っていますけれども、多分これは、ほとんど日本語の試験に近いのではないかというふうに思うところであります。

 そういうことであれば、例えば、技能実習二号に上がるための試験ですけれども、普通に日本語の共通の試験を実施して、JITCOでもいいんですけれども、JITCOにやってもらって試験を実施すれば、それで済む話じゃないか、小さい業界団体に負担をかける必要もないんじゃないかというふうにも思ったりするところであります。

 そういった状況でありますので、これからですけれども、手袋業界のような小さい業界団体の事務に負担をかけないような試験にするなど、それは全国でやらなきゃならないとかいろいろ要件があるようなんですが、無理なく三年間の実習に移行できるようにすべきではないかというふうに考えておりますけれども、いかがでしょうか。

高鳥大臣政務官 瀬戸委員にお答えをいたします。

 委員御存じのとおり、外国人技能実習制度というのは、技能移転を通じた開発途上国への国際協力を目的とする制度でございます。技能移転を確実に図るために、入管法令に基づきまして、一定水準以上の技能等を習得したことを公的に評価できるものとして、技能検定その他これに準ずる検定により合格しなければ、技能実習二年目に移行できない制度となっております。

 このため、技能検定がない職種につきましては、技能検定が国家検定であることから、これに準ずる検定として、一定の要件で職種の技能を評価できる仕組みが必要であるということを御理解いただきたいと思います。

 厚生労働省といたしましては、業界団体が技能評価の検定、試験を作成する際には、できる限り御負担を軽減できるよう、評価システムを認定しております公益財団法人、今委員もおっしゃいましたけれども、国際研修協力機構、JITCOでございますが、これを通じて業界団体に支援をしてまいりたいと考えております。

瀬戸分科員 ありがとうございます。

 やはり、手袋業界は非常に小さい業界でして、業界団体も、何人でやっておるか、一人か二人でやっているような団体でございます。全国的な試験をしろと言われれば、なかなかそれは難しい。ほかにまた、逆に言うと、全国で一号の人もいないんじゃないかと思うんですね。なので、全国的というよりも、運用の中で、地元でやって、もし必要があればどこかでやるとか、そういった運用をしていただいて、できるだけ海外の人に手袋技術を学んでいただいて、帰っていただければというふうに思っているところでございます。

 東かがわにとっても非常に重要な産業でありまして、そういったものをぜひ、また技術の移転ということも含めて考えていかなきゃならないと思いますので、今後ともよろしくお願いしたいと思います。

 以上、きょうは質問を終わります。

関主査代理 これにて瀬戸隆一君の質疑は終了いたしました。

    〔関主査代理退席、主査着席〕

松本主査 次に、岩永裕貴君。

岩永分科員 きょうは、長時間の分科会ということで、本当にお疲れさまでございます。維新の岩永でございます。

 きょうは、維新の綱領というものの中に、真の弱者を見きわめてしっかりと施策を実行していこうというような一文があります。綱領は全て大事なんですけれども、私が最も気に入っている部分でございまして、少数であっても、困っていらっしゃる方がいればしっかりとそこに手当てをしていく政治というものを心がけていきたいなと考えております。それで、一点目は、障害をお持ちの方々について少しお伺いをさせていただきたいんです。

 これは、大臣も恐らく、二〇二〇年に東京オリンピック・パラリンピックというようなことで、障害をお持ちの皆様方が今後日本の中でどのように御活躍をしていっていただくのかという、それを考える大きな転機になるというふうにも考えております。

 私、学生のころに海外で約六年間ずっと生活をしておりました。それで、海外というのは、日常の生活の中に障害をお持ちの方もそうでない方もやはり一緒に、オープンな中で暮らしていっているという印象が非常に強いという印象を受けて日本の方に帰ってきたわけなんですけれども、パラリンピックという一つの大きなビッグイベントを控える中で、障害を持っていらっしゃる皆様方に今後どのように社会の中で御活躍をしていっていただくのかとか、今どのような課題をお持ちなのかとか、これはちょっと通告をしていないので申しわけないんですけれども、簡単にで結構ですので、大臣の方から御所見をいただければ大変ありがたいなと。(田村国務大臣「ちょっともう一回お願いします」と呼ぶ)

 障害を持っていらっしゃる皆様方が、二〇二〇年に向けてということだけではないんですけれども、現在抱えていらっしゃる社会的な課題とか、そして二〇二〇年に向けて、どういった対策を日本としてとっていったらいいのかというような、大変申しわけございませんけれども、簡単にで結構ですので、お伺いできればと思います。

田村国務大臣 委員のお父様とは同期でございまして、小規模作業所の議員連盟で大変御活躍を自民党でいただいておりました。懐かしく思い出させていただきます。

 今の障害者施策の話でありますが、二〇二〇年というと東京オリンピック・パラリンピック、そういう意味では、東京のみならず日本全体がやはり障害者に優しいまちづくりをしていく、こういう大きな課題もあります。

 それから、ちょうど差別解消法等々が成立したわけでありますけれども、そういう意味では、これから、合理的な配慮、こういうものをどのような形で形づくっていくか。これは今議論をしている最中でありますけれども、こういうことの中において、障害者の方々が差別なく暮らしやすい社会をつくっていかなければならないという課題があります。

 何よりも、厚生労働省といたしましては、昨年、障害者雇用促進法という法律を改正いたしました。法定雇用率も含めて、これをさらに将来に向かって上げていくような、そんな体制整備も組んでいかなければなりません。

 いずれにいたしましても、障害者の方々が生き生きと暮らしていただける、そういう社会づくりをする必要があるわけでありまして、そこにおいては、一つは雇用という問題も大きな課題であるわけでございまして、もちろん福祉サービスも重要でありますけれども、雇用というような形の中で、障害者の方々がより社会の中で活躍もいただける、そういうような世の中をつくっていくべく、これからも努力をさせていただきたい、このように思っております。

岩永分科員 突然の質問にもかかわらず、御丁寧にお答えをいただきまして、ありがとうございます。

 まさに、やはり生き生きというところで、障害をお持ちの皆様方が前向きに暮らしていける、そして、一度きりの人生ですから、自分としても充実した人生をみずからの意思のもとに歩んでいっていただけるというのが非常に大切なことだと思います。

 そうした中で、先ほど少し大臣の方からも出ました就労支援等々について、私も、地元の小規模作業所さんとかをお伺いしていっていますと、訓練等給付事業の方で、民間の企業の皆さん方からのお仕事が少ないという声がやはり圧倒的に多いんですね。そういった部分に対して、今、厚生労働省さんの方で具体的に利用者の方々にどういったサポートをしていただいているのかということをお伺いしたいと思います。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 障害のある方々が働く、働くという意味は、雇用形態もあれば、先生お話のありました福祉サイドでいろいろな働き方をする、こういうことが両方あると思いますけれども、今のお話でいえば、福祉側の方での働き方の関係だろうと思います。

 今、訓練等給付ということをおっしゃいましたけれども、働く側では、いわゆる昔の授産施設が今は就労継続支援事業ということで、B型事業ということで一つの給付体系がございまして、そこに対する給付が行われているということで、まず、給付ということで事業所自体を支える形になっております。

 その上で、やはりいろいろな仕事が来るということが非常に大事でありまして、例えば、先生がおっしゃった民間からの仕事ということについて言えば、これは従来の福祉の職員のノウハウに加えて、やはり企業的なセンスを持った方々、これはOBの方でもいいと思いますけれども、そういう方々に何らかの形で入ってもらって世の中のいろいろな仕事を探してきてもらう、あるいは、もともとのつながりがあったところから受注していくというようなことが非常に大事だと思っています。

 このために、厚労省の予算で工賃を向上させるための予算もとっておりまして、そうした予算を使うことによって、いわばそういう受注のできる体制整備といったことも県を通じてサポートしているところでございますので、そうしたことを通じて、仕事がきちっと来るように頑張っていきたいというふうに思います。

岩永分科員 労働に対する工賃の上昇というところで、さまざまな支援策を行っていただいているということなんですけれども、やはり営業力には限界があります。民間の企業から見ると、発注をした、でも時間的にとか、作業効率だけを追い求めていってしまうと、やはり、なかなかそこに発注に踏み切るということが現場では難しいようなんです。

 ですから、できれば、民間企業が作業所とかそういうところに仕事を出したときに何らかの補助が受けられるとか、そういった部分の改善策というのをぜひ今後お取り組みいただきたいなというふうに思います。

 やはり、まず仕事があって、そしてやりがいを感じていただくということが、利用者の皆さん方の生きる上での好循環というものを生んでいくというふうに信じておりますので、ぜひそういった視点からもお取り組みをいただきたいということをお願いさせていただきます。

 引き続き、地域活動支援センターの方なんですけれども、こちらの、基本的な財政支援というのは各自治体、市町村が行っていらっしゃるということなんですけれども、ここを活用しておられる利用者の数、そして職員の配置等について、国の方で把握をしておられるかということについて御答弁いただけますでしょうか。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど話が出ました地域活動支援センターにつきましては、これは、もともと障害者の自立支援法が施行される前に小規模作業所と言われていたものが一部変わってきた、こういうものでございまして、先ほど話が出ました就労継続Bに変わったところもありますけれども、一部こっちに変わってきた、こういうことでございます。

 そこの実態でございますけれども、一つ、もともと小規模作業所は六千カ所ぐらいあったんですけれども、これが地域活動支援センターに、おおむね全体でいうと半分弱ぐらい変わってきているという状況にございます。

 その上で、そこの職員でございますけれども、これは非常に基準的には緩やかでございまして、二人以上職員を配置する、こういう基準でございまして、それをベースに、先生お話ございましたとおり、まずは自治体が一般財源でサポートする、それに加えまして、地域生活支援事業という、国費が半分入った統合補助金の手法を使いまして一部助成をする、こういう実態になっておるところでございます。

 実は、いろいろな補助の、市町村のサポートの実態を申しますと、市町村の一般財源からの助成が、おおむね平均すると八百万円ぐらい行っています。あわせて、地域生活支援事業でサポートする分が約四百万ぐらい行っているということで、全体的に押しなべて言うと一千万円程度の支援がされている、こういう状況でございます。

岩永分科員 質問は、そこを利用していらっしゃる皆さん方の数と、あと職員数がどのぐらいかという御質問をさせていただいています。

蒲原政府参考人 これは、実は、先ほど申しましたとおり、これ自体は何か障害者の法律の個別の給付体系ではございませんで、各市町村がいわば統括的な補助金のもとでそれぞれ実施しているということで、そのやり方についても相当弾力性があるものになっている、こういうことでございますので、それぞれ独自のやり方をしている関係がございまして、ちょっと全体の職員の数というところについては、我々はそこまではとっていない、こんな状況でございます。

岩永分科員 もちろん、各自治体がそのあたりの数というのは把握をしていると思います、財政支援をしているわけですから。

 ただ、先ほど大臣からもお話がございましたとおり、障害をお持ちの皆さん方が今現状どういう環境にいらっしゃるのかということを、現場の状況というのを国がしっかりと見てよくつかんでおくということは、私、これは大前提だと思うんです。

 お話を聞いていると、個々の職員の皆さん方も、平均して、利用者の方が十八名に対して四名ぐらいの職員さんが配置をしておられる。それで、平均給与を見てみると十六万円ぐらいでやってくださっているということで、この十八名の中にもかなり精神的な障害をお持ちの方とか、マンツーマンでしっかりと補助をしていかないとなかなか厳しいというような方も、たくさんこの中にはいらっしゃるわけなんですね。だから、この四名という中で、本当に厳しい労働環境の中で、障害をお持ちの皆さん方と向き合ってくださっているという現状があります。

 日本の中で、障害をお持ちの方々が生き生きと暮らしていっていただくということはもちろん大目標としていいんですが、そういう方々が今現状どういうところでどういうことをしていらっしゃるのかということは、最低限、数字的なものでも結構ですので、国としても把握をぜひしていただきたいなと思いますので、副大臣、政務官の方にも、そのあたりの指示等を厚生労働省の方で出していただければ大変ありがたいなと思います。よろしくお願いいたします。

 引き続きなんですけれども、少しシングルマザーというところについて触れさせていただきたいと思います。

 シングルマザーの貧困の状況ということが近年深刻になってきているという報道が多々見られます。報道ベースの数字ではありますけれども、シングルマザーの約八〇%が年収百十四万円以下の貧困な状態にあるというようなデータが出ております。

 そこで、現在の離婚率と、高いのか低いのかというような議論ではないかと思うんですけれども、この率というものをどのように厚生労働省として分析をしていらっしゃるのかということをお答えください。

佐藤副大臣 岩永委員には、田村大臣だけではなくて私もお父様には大変お世話になりましたので、またよろしくお伝えください。

 それで、今の離婚率の問題でございますが、率というよりも数だけ申し上げますと、近年の離婚件数の年次推移というものを見ますと、統計をとり始めたのは非常に古くて、明治三十二年、人口動態統計というのをとり始めてから、これ以降では、離婚件数は平成十四年がピークでございまして、二十八万九千八百三十六組がピークで過去最高でございました。

 その後、減少傾向が続いておりまして、最新の数値は平成二十四年の二十三万五千四百六組。現在、この平成十四年をピークにして年々減少傾向にある、そういう統計が出ております。

岩永分科員 近年少し減少傾向にあるということなんですけれども、平成十四年のピーク時に向かってやはり大きく増加をしてきているというのがトレンドだと思います。

 そうした中で、ちょっと最近テレビなんかをよく見ていると、バツ一とかバツ二とかいう、バラエティーなんだと思いますけれども、そういった方々がよくテレビに出てこられて、もちろんさまざまな個々の事情はあると思いますし、離婚が悪いとは一概には言いません。しかし、やはり日本の伝統文化というのは、両親がしっかりそろって、そして子供を責任持って育てていく。人生の中にはいろいろな困難もありますけれども、そうした困難も手と手をとり合って乗り越えていくというすばらしい習慣がこの日本にはまだまだ根づいております中で、こういった報道等で、そういう真剣な議論がなされずに離婚というものが議論されたりということが多々あるように思います。

 そうしたことをしっかり続けていくことが、もちろんシングルマザーの減少にもつながりますし、シングルマザーが貧困状態にあるという現状がありますので、そうした現状をより軽減していく、そして、子供がより幸せに育っていくというふうな流れの中での施策の実行というものをお願いしたいんです。

 少し話はかわるんですが、非正規労働者、男性が二二%に対して女性が五五%というようなデータもございます。なぜこのような状況が起きているのかということを、少し分析の結果を踏まえて御答弁いただきたいと思います。

佐藤副大臣 今委員の方から言っていただいた数字、平成二十五年の厚生労働省としてつかんでいる数字を申し上げますと、役員を除く雇用者全体に占める非正規雇用労働者の割合を男女別に見ますと、男性は二一・二%、女性は五五・八%、そういうことになっております。

 非正規労働者全体の数字を見ますと、男女合わせまして千九百六万人なんですね。そのうち男性が六百十万人、女性が千二百九十六万人と、女性が男性の約二・一倍、そうなっているわけでございます。

 なぜこれだけ女性の方が千二百九十六万人と高いのかというと、その内訳を見ますと、やはり非正規労働者の中でもパート労働者の方が、女性の場合、八百二十六万人と約六三・八%を占めておりまして、このパートの多さが結局この比率の高さに大きく寄与しているもの、そのように厚生労働省としては考えております。

岩永分科員 そうした状況でそれぞれの皆さんの生活が成り立っていれば、それで何も言うことはないんですが、やはり、そうした状況の中で貧困層が増加をしているという事実も、一方でしっかりと注視をしていかなければならない部分であろうと思います。

 そこで、私が考えるその一つの理由というのが、成熟産業と呼ばれるマーケットが今かなりもう飽和状態にあるんだろうなというふうに考えています。

 決まったマーケットの中に女性の進出ということでどんどん入ってこられるんですが、やはりパイは決まっておりますので、そのパイをこれからふやしていく努力も必要だというようなことで、新産業の創出を内閣一体となって進めていただいているという部分もあるんですけれども、その場合に、成熟産業から成長産業への労働力の移行というものも大きな課題になっておりますし、今回の予算の中にも、三百一億円だと思いますけれども予算が配分をされていると思います。

 この移行について、具体的にどういった形で成熟産業から成長産業への労働力の移行というものを果たしていこうとされているのか、少し御説明ください。

岡崎政府参考人 今先生からお話がありましたとおり、労働移動助成金につきましては、補正予算で入りましたけれども、来年度に向けて三百一億円の予算措置をしております。

 これは、やはり成熟産業と言われている産業の中には労働力が過剰になっている。そうしますと、その方々をすぐ解雇するということではなくて、何とか成長産業の方に、できれば失業なく、そういかないにしてもできるだけ早く行っていただくということが必要です。

 そのためには、一つには、その方々に対していろいろ、キャリアコンサルティングとか、こういう産業があるよとか、そういうような指導をするということ。それから、受け入れ産業の方でも、違う産業で働いていた方が、潜在的な能力はあるとしても、やはりそっちになれない、そうすると、受け入れ時点でのいろいろな教育訓練、OJTを含めた訓練が必要だ。

 そこら辺をしっかりやって、できるだけ円滑に成長産業の方に行っていただく、こういうことで三百一億円を運用していこう、こういうふうに思っております。

岩永分科員 この件については、私もぜひ応援をしていきたいですし、非常に重要な本年のテーマだろうなというふうに考えております。

 それで、スムーズな移行ということを考えると、やはり厚生労働省さんだけではどうしても難しい、限界があるんだろうなというふうに思います。例えば農業分野も、新しい担い手を一万人から二万人にふやしていきたいとか、建築、建設関係も労働力が不足しているとか、他省庁とのその辺の連携もしっかりとしていっていただくということも大切だと思いますので、できるだけ省庁横断的に取り組んでいっていただいて、ぜひ成果を出していただきたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。

 それでは、最後なんですが、小児がんの患者を取り巻く環境というところで御質問をいたします。

 私の友人も、お子様が小児がんになられました。それで、非常にやはり厳しい、精神的にもそうなんですけれども、厳しい状況の中で、日々、お子様の治療に当たっていらっしゃるというような状況があるんです。

 ちょっと通告と前後するんですけれども、緩和ケアというものについて、少し、この定義も含めて、どういったものかということを教えてください。

佐藤政府参考人 お答えをいたします。

 質問の中で、小児がんとの関係で緩和ケアということを御質問になったように思います。

 緩和ケアという言葉の対象ですが、どうもWHOの指針によりますと、がんに限定されるものではないようです。

 ちょっと御紹介をいたしますと、WHO、世界保健機関によりますと、緩和ケアとは、生命を脅かす疾患による問題に直面している患者そしてその家族に対して、痛みやその他の身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな問題を早期に発見し、的確なアセスメントと対処を行うことによって苦しみを予防し和らげることで、QOLを改善するアプローチである、こういうふうにされております。

 今も、繰り返しになりますけれども、がんに限定をされたものではないわけですけれども、専ら、私ども厚生労働省では、がん対策の中でこの緩和ケアの概念を取り入れて対応しております。

 具体的には、平成二十四年の六月に閣議決定をされましたがん対策推進基本計画におきまして、がんと診断されたときからの緩和ケアの推進、これを重点的な課題として掲げまして、患者とその家族の方などが、がんと診断されたときから適切に緩和ケアを受けて苦痛が緩和されるよう、こういうことを目標としております。

岩永分科員 そこがなかなか一般国民の皆さんに伝わっていないというのが現状だと思います。これをしっかりやっていくことがどれほど大切なことかということを、私もその友人とお話をさせていただいていて痛感をしているところなんですね。

 がんと言われると、やはり私たちの認識でいうと、死の宣告をされたかのようなインパクトというか衝撃を受けてしまいます。それが私たちの知識レベルなんですね。それで、この緩和ケアという言葉を聞いても、痛みをとにかく和らげるためのケアだというような認識も、私も持っておりますし、恐らく、広く一般国民の皆様方もそういう御認識なんだろうというふうに思います。

 ただ、小児がんもそうなんですけれども、がんというふうなことに向き合っていくというのは、単に病気と闘っていくということだけではなくて、放射線治療をずっと繰り返していくと、体にいろいろな障害が出てきます。それで、その障害者認定というものを受けなければならなかったりとか、特別児童扶養手当というものをまた申し込んだりとか、もちろん、国の中でもさまざまな支援をしているんですけれども、そういったことをかなり行き当たりばったりに患者そして患者の御家族も学んでいかれるわけなんですね。

 その制度がまたかなり複雑で、行き当たりばったりであるがゆえに、それがまたすごいストレスになってきて、子供のことを考えるだけで精いっぱいなのに、そうした部分についても急に要請があったりということ。

 だから、この緩和ケアというものを総体的に、やはり、がんと宣告をされた時点で、どういったものかというのを、その制度も含めて説明をしていくことこそが私は緩和ケアになると思いますし、そうしたことを細かく細かく患者の皆さんそして御家族の皆さんに説明をすることこそが本当に心のケアにつながってくるんだろうなということを痛感いたしておりますので、ぜひ、その初期段階からの緩和ケアの説明というものについてしっかりと取り組んでいただきたいということを心からお願い申し上げます。

 そして、先ほど申し上げました障害者認定についてなんですけれども、この認定方法とか、そうしたものについて少し御説明をいただけますでしょうか。

高鳥大臣政務官 岩永委員にお答えをいたします。

 障害者手帳につきましては、交付を希望する方が、都道府県等の指定する医師の診断書、意見書を添えて、市町村を経由し都道府県等に申請し、都道府県等は申請者の障害の程度が認定基準に該当するか審査をし、手帳を交付するかを決定いたしております。

 厚生労働省といたしましては、身体障害者手帳の申請から交付までに要する標準的な事務処理期間をおおむね六十日以内と示しております。

 交付に当たりましては、申請が明らかに手帳の対象と考えられ、速やかに障害福祉サービス等を必要としている場合は、各都道府県等において迅速な対応が必要であると考えております。

 一方、適正な障害認定を確保するために、必要に応じて指定医に照会を行うなど、慎重な審査を要するケースもあることから、現在の標準的な事務処理期間を一律に短縮するということについては慎重な検討が必要であると考えております。

岩永分科員 特になんですけれども、がん患者、そしてきょうは小児がんというところのテーマについてお話をさせていただいているんですが、障害者認定についても、例えば滋賀県の場合ですと、月に一回審査会が行われて、それについて認定をするという手続が踏まれるんですけれども、最長でやはり二カ月ぐらい、申請を出してからかかってしまうんですね。

 これも、その友人の話を聞いていると、やはり一日一日の重みというのが私たちとまた全然違うんですよ、お子様が小児がんになられた方の親というのは。それで、二カ月というと、子供の状況を見たりとか、そして自分の精神的な疲労、ストレスなんかも考えると、やはりかなり長いというような印象を受けていらっしゃいますので、このあたりについても、もし厚生労働省さんの方から、一律にというわけではないんですけれども、そういった要求に応じて改善ができるところがあれば、ぜひしていただけるような検討を進めていただきたいなということもお願いをさせていただきます。

 質問の方は全てこれで終わらせていただきまして、間もなく時間なんですけれども、最後、ちょっと私の方から一件御提案だけさせていただいて終わりたいんですけれども、全く話はかわりますが、ビッグデータというものについて、ぜひ早急にお取り組みいただきたいなと思っているんです。

 これは、私も、昨年一年、総務委員会でずっと新藤大臣にもお願いをしてきたんですが、匿名化というのが非常に大きなハードルにはなっているんですが、ビッグデータを使うことによって救われる命とか予防医療とかというものが、非常に可能性の大きな世界です。

 これは、アメリカでも、インフルエンザの流行というものをどこがいち早く察知したのかというのも、グーグルという会社が、患者の粘膜をとるわけでもなく、医療機関に連絡をするわけでもなく、ただ単に国民の皆さんが検索しているワードというのをばあっと拾うと、より正確な情報が得られたというようなデータもあります。

 すぐにというわけにはいかないと思うんですが、ぜひ、このビッグデータという部分にも、厚生労働省さん、大きな興味を持っていただいて、これからの医療とか労働とかという部分に生かしていただきたいということをお願い申し上げて、質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

松本主査 これにて岩永裕貴君の質疑は終了いたしました。

 次に、三日月大造君。

三日月分科員 民主党の三日月大造です。同僚の岩永議員に続いて、私も滋賀県選出です。

 また、委員長初め、大臣、副大臣、政務官、省庁の皆様方もそうですけれども、連日の予算審議、また本日の長時間の分科会での審議、お疲れさまでございます。

 質問の機会をいただきましたので、きょうは戦没者慰霊事業、とりわけ戦没された方の御遺骨の収容、帰還事業について質問をさせていただきます。

 ことし、二〇一四年で、八月十五日を迎えますと、戦争終結から六十九年、間もなく七十年になります。さきの大戦で命を落とされました多くの方々に、改めて哀悼の誠をささげますと同時に、亡くならなくてもいい、亡くさなくてもいい命もたくさんあったと思います。そのことに心をいたしながら、肉親を失われた後に、戦後、戦後復興やこの国をつくるために、また、私たちを育てるために御尽力いただきました御遺族の皆様方にも、深く心をいたしたいと存じます。

 そして、きょう話題にいたしますこの御遺骨の収容、また帰還事業に対しましては、政府関係者もそうですし、遺族会の皆さん、戦友会の皆さん、それぞれ関係者の皆様方に、これは内外で多大なる御尽力をいただいております。この方々にも、心から敬意を表したいと存じます。

 まず初めに、戦没された方は三百十万人と言われており、そのうち海外で戦没された方が約二百四十万人と言われております。まず政府参考人にお伺いいたしますが、この御遺骨の収容、御帰還の状況について、どのように把握、発表されておりますか。

古都政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、戦没者の御遺骨の収容は、国の責務として、悲惨な戦争を繰り返さないというためにも、全ての戦域で進めることが大変重要であると考えております。

 これまで、厚生労働省は、関係団体の御協力を得まして、昭和二十年代から今日までの間に、約百二十七万柱の御遺骨の収容を行っているということでございます。

 直近の平成二十五年度におきましては、旧ソ連地域を初め、東部ニューギニア、ビスマーク・ソロモン諸島及び西イリアンなどの各地域から、きょう現在で九百十九柱の御遺骨の収容を行ったところでございます。

 御遺族が高齢化する中で、一柱でも多く、御遺骨を早く、可能な限り収容できるよう、引き続き遺骨収集帰還事業の促進に努めてまいりたいと考えております。

三日月分科員 少し伺いますが、この約二百四十万の海外での戦没者の方々の御遺骨の御帰還と収容、今年度現在で、約百二十七万ですか、お戻りいただいた。今、DNA鑑定でも身元の特定等々取り組んでいただいておりますが、海外で戦没された方々の、お亡くなりになった原因というのはどのようなものがあるんでしょうか。また、どの程度把握をされているんでしょうか。

古都政府参考人 お答え申し上げます。

 旧厚生省におきましては、復員業務の一環としまして、死亡者の記録をとることにしておったわけでございますけれども、個々の死亡者の具体的な死因、例えば、銃創が原因でお亡くなりになった、あるいはマラリア等に罹患をされてしまった等々、個別の、死亡された方の具体的な死因についてまでは記録をとっていないということでございまして、今申し上げたような、銃創であるとか戦病による死亡だとか、そういうことは定性的にはわかりますけれども、それが、ではどのぐらいの数で亡くなったかということについては不明であるということでございます。

三日月分科員 戦闘による銃創もおありだったんでしょう。また、行軍中の、また駐屯中の御病気や、また飢え等々もあったんだと思います。私は戦地に赴いたこともありませんので、物の記録等々で読むぐらいなんですけれども。

 今、百二十七万の方々がお戻りになって、なお約百十三万の未帰還、未収容の御遺骨があるんだろうと思います、計算上。この方々の御遺骨の収容、御帰還、これはどのように行っていかれるおつもりですか。

古都政府参考人 お答え申し上げます。

 厚生労働省におきましては、未帰還の御遺骨約百十三万柱ということでございますが、約三十万柱が海没のために収容がなかなか困難である、あるいは約二十三万柱が相手国の事情によりまして収容が困難であるというふうに考えております。

 これらの収容が困難である御遺骨を除く御遺骨につきましては、戦後六十八年が経過し、なかなか困難になっておるところでございますけれども、収容の可能なものは最大でも約六十万柱あるだろうというふうに見込んでおりまして、この六十万柱について、できるだけ早期に収容できるよう、予算を確保し、取り組んでまいりたいと考えております。

三日月分科員 海没された御遺骨、また相手国の事情により帰還困難な御遺骨以外で約六十万の柱がある、この御遺骨の収容、帰還にまず取り組むということでしたけれども、特にフィリピンでお亡くなりになった、戦没された方々がたくさんいらっしゃって、なお多くの御遺骨がフィリピンに残っている。

 このフィリピンでの御遺骨の収集、帰還の状況を調べますと、平成二十二年十月に、現地の方のお骨がまじっているんじゃないかということで、この遺骨収集帰還事業が中断され、その事業のあり方の検証が行われて、その後、事業再開に当たっては、フィリピン政府とまだ協議中だと伺っておりますが、この状況について、今後の見通しについてお伺いをいたします。

古都政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、フィリピンでの御遺骨の収集につきましては、NHKの報道をきっかけにいたしまして、事実関係を含め検証を行うよう当時の厚生労働大臣から指示があり、またフィリピン政府からも事業の中断の要請があったということで、中断をしたところでございます。

 それにつきましては、当時の厚生労働大臣の指示のもとで、フィリピンでの遺骨帰還事業に関する検証報告書というものを二十三年十月にまとめて公表したところでございます。その中におきまして指摘をされた点がございまして、フィリピン人の御遺骨らしきものも含まれているというような記載がございます。

 その上で、今後、事業を適切に実施するためには、事業のあり方につきまして、遺骨の収容はフィリピン国立博物館職員の同行のもとでのみ実施をする、遺骨の収容について日本側から骨学などの研修を受けた当省職員を現場に派遣する、遺骨の移動を伴わない情報収集についてのみ民間団体に委託する、収容された遺骨の鑑定はフィリピン側専門家及び日本側関係者が合同で実施をする、遺骨の鑑定については法人類学的検査やミトコンドリアDNAのハプロタイプ解析を行う、あるいは宣誓供述書を廃止するなどの見直し、改善点がこの報告書で言われているところでございます。

 これを踏まえまして、現在、遺骨収集帰還事業の早期再開に向けて、フィリピン政府と断続的に事業再開に向けた協議を行っているところでございますので、できるだけ早期に合意に至って再開できるよう努力してまいりたいと考えております。

三日月分科員 大体見通しはいつごろですか。

古都政府参考人 昨年度もやっておりますけれども、フィリピン側の事情もございまして進んでいない点もございますけれども、私どもとしては、できるだけ精力的に協議を重ねて、まさに早期に再開できるように合意を目指しておるところでございます。

三日月分科員 今審議中の来年度の予算の中にも、項目として入っていますよね、このフィリピンでの。早期に再開できるよう、精力的に取り組んでいただきたいというふうに思います。

 先ほど御報告、御答弁のあった帰還困難な御遺骨、これは、海没もあるんでしょう、また相手国の事情により困難だと。例えば、国交がない北朝鮮、また対日感情に配慮する必要がある中国ということで、厚生労働省の発表資料にも記載があります。

 これは平成二十四年ですか、北朝鮮との課長級の事務協議が行われたときに御遺骨の収集事業についても議論をされたり、中国との関係でいうと、昭和四十八年ですか、相互にそれぞれ骨の送還をされたということもあります。

 この帰還困難な遺骨、もちろん、より容易に収集が可能な地域に力を入れるということもあるんですけれども、相手国事情により帰還困難な遺骨というところにも、諦めずに、引き続きより強力に取り組む姿勢が私は必要だと思うんですけれども、この点は大臣に御見解を伺います。

田村国務大臣 今委員おっしゃられましたとおり、主に中国、北朝鮮。中国は二十万六千九十柱、そして北朝鮮は二万一千六百柱ということでございまして、中国は昭和四十八年に現地で保管されていた御遺骨八百九十九柱を日本に送還いただいたわけでありますけれども、北朝鮮はいまだ遺骨の収容はないということであります。やはり、中国はさきの大戦をめぐる国民感情がございますし、北朝鮮は国交がない。

 あと、ウズベキスタンも宗教上の理由で遺骨収容は困難だというふうになっております。

 とはいいながら、御遺骨収集、帰還、これは国の責務でございますので、進めていかなければならぬわけでありまして、なかなか我が省だけでは難しいわけでございますので、外務省とも密接に協力しながら、これからも努力をしてまいりたい、このように考えております。

三日月分科員 ぜひ、より強力に努力してください。

 そういう意味でいうと、外交はいろいろな問題があるんでしょうけれども、相手国の感情を逆なでするだけの外交ではなくて、むしろ相互に信頼関係をつくって、こういう遺骨の収容、帰還という人道上の取り組みが協力して進められる関係をつくっていくということが大事だと思うんです。

 それで、これは、お隣にいらっしゃいます長妻先生も、大臣のときに一生懸命取り組まれましたし、我が政権のときには、菅総理が硫黄島の特命チームをつくって取り組んだ経過がありました。

 特にどこで多くの方々がお亡くなりになったのかというような記録、生還された方でもお亡くなりになる方がふえてきて、もしくはお年を召されて記憶がだんだん曖昧になってくるという状況の中で、戦争に勝った国の記録等々をさかのぼって調べるということも大事だと思うんです。

 例えば、アメリカの公文書館で、これは当時の阿久津政務官でしたか、赴かれて、岡本厚生労働大臣政務官とも連携をして、記録の持ち帰り、また分析をされております。

 こういう海外の公文書館で得られた資料の分析をより急いで、そして、収容、帰還に役立てるという取り組みがもっともっと必要じゃないかと思うんですけれども、そのあたりの方針、また予算等につきましてお伺いをしたいと思います。

古都政府参考人 お答え申し上げます。

 厚生労働省におきましては、まさに今先生御指摘のとおり、遺骨収集帰還事業の促進を図るためには、戦争当時の関係国の資料調査が重要だというふうに考えております。

 平成二十一年度から米国の公文書館などにおきまして資料収集を開始し、収集した資料はその年度内に分析を終えるようにしているところでございます。

 これまでの資料調査実績といたしましては、二十一年度から二十三年度が米国、それから二十四年度から二十五年度は米国と豪州、オーストラリアに広げまして、公文書調査をやっております。

 そうした中で、平成二十二年度に収集した資料の分析の結果、硫黄島におきましては二カ所の集団埋葬地の資料を発見するなど、遺骨の収容促進に資したところでございます。

 遺骨収容を迅速に行うためには、海外の公文書館等の資料の調査を行い、過去の埋葬場所に関する情報収集が重要でございますので、そういった点に関しましての人員の増強などについても、必要な予算の確保についてもあわせて取り組んでいきたいというふうに考えております。

三日月分科員 ちょっと通告からも外れて、突っ込んで聞きたいと思うんです。

 きょうは大臣も副大臣もいらっしゃるのであれなんですけれども、帰還が困難ではないと見られる御遺骨が約六十万あって、今年度、多くの御努力のおかげで九百十九柱ですか。過去ずっと数年調べてみましても、八千柱戻ってきた年もあれば、そうじゃない年もある。これは毎年六千柱お戻しできたとしても、百年かかるんですよね。

 先ほど大臣は、外務省等々と連携を密にしてとおっしゃいましたけれども、具体的にどういうことをやればより収容が進むのかということについて、援護局の皆さんはどのようにお考えですか。

 間もなく戦後七十年を迎え、二〇二〇年には東京五輪も日本で開催されるというときに、なお戦争でお亡くなりになった方が海外に残されたままになっている状況というのは、私は、これは党の与野を超えて、政府も議会も一緒になって、より強力に進めていく必要があると思うんです。

 このあたり、大臣や何かは一年や二年でかわられるかもしれませんけれども、例えば援護局の皆さんはずっとこの問題に取り組んでいただいているんですよね。何をやれば、より、この時期になってこの収容が進むとお考えですか。

古都政府参考人 お答え申し上げます。

 例えば、平成二十六年度援護関係予算の中で、戦没者の遺骨収集帰還事業につきましては、二十五年度予算で十五億であったものを、二・六億ふやしまして、二十六年度予算では十八億円というふうにし、硫黄島あるいはソ連地域、南方方面での遺骨収集をできるだけ進めていきたいというふうに考えておるわけでございます。

 今先生おっしゃいましたように、より情報が少なくなっている、あるいは御遺骨の状況も年を経てなかなか厳しくなっている、そういう中にありましては、まずはできるだけ情報収集を強化しなきゃならないなということでございます。

 言ってみれば、そういう一つ一つの手、情報収集であれば、二十五年度予算に対しまして、二十六年度では四千百万から七千八百万円という形で増額をして、さらに、対象地域も米国、豪州以外、ヨーロッパにも広げて、例えばオランダでありますとかイギリスでありますとか、そういうところも広げてやっていこうというふうにしておりますので、できるだけ集中的に情報収集を重ね、そして、できるだけ効率よく地域を特定いたしまして進めていくことがまず肝要ではないかなと。

 そういう中で、厳しい中ではありますけれども、予算をできるだけ確保しながら、体制の強化、情報収集の強化を進める中で促進をしていきたいというふうに考えております。

三日月分科員 大臣、せっかくですので、確かに厚生労働省は所掌範囲が広くて、お生まれになった方からお亡くなりになる方まで、そして高齢化が進む、年金も医療も介護も必要だ、本当に所掌範囲が広いと思いますけれども、国の命令により海外の戦地に赴いてお亡くなりになった方を戻せていない国なんですよね、我が国は。

 この問題について、やはり集中をして取り組む体制もしくは機関、こういうものをつくられたらどうですか。つくって、そして、あらゆる省庁との連絡連携体制をもう一回確認して強化する等々の対策が要ると私は思うんですけれども、いかがお考えでしょうか。

田村国務大臣 やはり、時間がたてばたつほど御遺骨の収容は難しくなるんだと思います。それこそ、いろいろな民間の方々にお聞きするにしても、戦友もだんだんお亡くなりになられる。現地でも、そのときのことを知っておられる現地住民の方々もお亡くなりになられていく。遺族会等々からいろいろなお話をお聞かせいただいたりですとかするわけでありますけれども。

 一方で、今まで遺骨収集帰還事業をやっていく中で、やはり難しいところが多く残ってきておるのも事実だと思います。例えば、戦地ですから、戦闘をする中において、それは、都市部でやれば、比較的どこに御遺骨があるかわかるわけでありますが、ジャングルの中で戦闘をし、そこで病に倒れられ、また、亡くなられる。しかも、大敗を喫したところでは、その御遺体を運ぶこともなく、そこでそのまま御遺骨になられるというような状況もあるわけであります。

 都市化が進んでいる地域もあるとはいいながら、まだまだやはりジャングルというようなところもあるわけでありまして、そういうところで遺骨の収集帰還事業をやるというのはなかなか危険も伴う、そういう問題があるわけであります。

 しかし一方で、先生の言われる意味、それは我々も十分認識いたしておりますし、これは自民党の方でありますけれども、期間を切って集中的にこの収集帰還事業を進めるべきではないかということで、議員立法も含めて、今いろいろな御提案があるようでございます。そちらの方とも連携をしながら、もう戦後かなりたってきておるわけでございますので、なるべく多くの御遺骨、一つでも多くの柱を何とか帰還いただくように、我々としても努力をしていかなければならないというふうに思っております。

 これは政党は関係ないわけでありますけれども、今ちょうど与党の中でそういう動きもありますから、そちらともいろいろと連携をとりながら対応してまいりたい、このように考えております。

三日月分科員 与党のそういう動きは承知をしておりますし、私は今、議院運営委員会に所属をしているんですけれども、国会で改めて決議をして、これは昭和二十七年のサンフランシスコ講和条約の発効時に衆参両院で決議をされているんですけれども、そういったこともしながら、国全体で取り組む体制づくりを行っていく必要性を私は感じておりますので、議院運営委員会の中でも検討を提起したいというふうに思っているんです。

 やはり法的根拠があるのとないのとでは、こういう予算もそうですし、各省の連携も違うと思いますので、これは当然、立法府ですから、我々立法府において検討もいたしますが、ぜひ政府の中でも、その際にどのような措置があればより進むのかということについて、これまでの経験を踏まえて情報提供等をしっかりと行っていただきたいというふうに思います。

 最後に、ちょっと通告にはないんですけれども、お許しもいただいておりませんので資料提示もできないんですけれども。

 まずは、お亡くなりになった方の御遺骨の収容です。

 と同時に、私のいる滋賀県で昨年展示されて大きな反響も呼んだんですけれども、遺品、寄せ書き日の丸というものがあって、これは、出征時に武運長久等々を祈られて、何々君御無事で、頑張れということで多くの方が国旗に寄せ書きをされて、そのものを兵士の方が大切に持たれて、そして戦地でお亡くなりになって、その後、いろいろと戦利品をずっとかき集めて、例えばアメリカだとか本国に持ち帰られて、その方々もお亡くなりになって、御遺族の方がいろいろな遺品を整理される過程で、お名前があったことがきっかけになって、遺族の方にこの日の丸が、国旗が戻って随分喜ばれたということがありました。

 それで、実は、そういう戻せることがある反面、これはヤフーオークションの、インターネットで、この寄せ書きの日の丸が販売をされて流通をするということがあるんです。私も、これを見ますと、お名前があるものがそのまま売られているケースがあります。ここに千七百円だとか四千九百円だとか、旧日本軍の寄せ書き日の丸、日章旗ということで売買されているんです。

 こういったいわゆる旧日本兵の方の遺品を売買することを禁止する立法をということで、滋賀県の遺族会の方も御要望されており、私たちもそういうものを規制するためにはどういう法がいいのかということを検討しているんですけれども、これは厚生労働省においても、海外にある戦没者の遺品、そしてその遺品の売買を禁止する法律の検討、もしくはそういうものを収集して戻すことをどうやればいいのかということについて、ぜひ検討していただきたいと思うんです。

 何ができるのか、どういう法規制がいいのかということについて、ぜひ、お調べの上、検討していただきたいと思うんですけれども、いかがでございましょうか。

田村国務大臣 私、そういうものがまさかネット上で売買されているとは知りませんでして、今びっくりしたわけであります。

 御遺族のお気持ち、もちろん、そのまま持ち帰られて、その後、その日章旗の帰属がどうなったのかというのは、それはちょっと私も把握できるものではありませんが、どのような形で、例えば、出征されてお亡くなりになられた方々の、もし日章旗なるものが売買されているとすれば、御遺族の感情からしてみれば、それは許しがたいという思いになられると思います。

 どれがどれなのかということも含めて、なかなか特定はしづらいのかもわかりませんが、どういう状況なのか、ちょっと情報収集をさせていただきながら、それに対してどういう対応ができるのかというのは、これは厚生労働省でやるのかどこでやるのか、ちょっと私もよくわかりませんけれども、担当の方に現状がどういう状況なのかは調べさせてみたいというふうに思います。

三日月分科員 よろしくお願いします。

 本当に心ないことだと思いますし、実際、お名前が書いてあります。寄せ書き日の丸だけではなくて、千人針、頑張れ、気をつけてということでお母様が縫われたりされた千人針や何かもあるんだそうです。

 ぜひ、御遺骨をできるだけ早期に国を挙げてお戻しするということと同時に、その過程で、こういう旧日本軍の兵士の方々がお持ちになっていた遺品も、心なく売買されるということをとめて、一日も早く、一つでも多く御遺族のもとにお戻しできる、そういう体制づくりを切に切にお願い申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

松本主査 これにて三日月大造君の質疑は終了いたしました。

 次に、大西健介君。

大西(健)分科員 民主党の大西健介でございます。

 私も、ふだんから厚生労働委員会でお世話になっておりますけれども、ふだんは、厚生労働委員会、法案もたくさんありますし、重要な問題が山積みですので、なかなか細かい課題についてお聞きする機会がないものですから、きょうはそういうお話を中心にちょっとお聞きをしていきたいと思いますし、また、ふだんは専ら私は大臣とお話しさせていただいているんですが、きょうは大臣に少し休憩していただいて、ほかの政務の皆さんにお話をお聞きしていきたいというふうに思います。

 まず、最近では、「明日、ママがいない」というテレビのドラマがきっかけになって、決していい意味ではありませんけれども、児童養護施設に社会の関心が集まっているというところもあるのではないかというふうに思いますけれども、私は、昨年の十二月に、大学の同級生がたまたまそこで心理士として勤務をしているということで、横浜にあるいずみ学園という、これは社会的養護の中で一つの役割を担っている情緒障害児短期治療施設というところを訪問してまいりました。

 略して情短と呼ばれるこの施設ですけれども、福祉、心理、医療、それから教育、学校が併設されているんですけれども、そういう専門家が連携して子供のケアをする。特に、最近では、ひどい虐待で心のケアが必要な子供が非常にふえている、医療的なケアが必要な子供がふえている。いずみ学園でも、今、入所者の八割が虐待が理由で入ってくる子供だ、それから、四割は服薬の経験がある、入ってきた時点で薬を飲んでいるというようなことであります。

 本来は、こういう医療的なケアができる情短という施設を都道府県に一つぐらいは整備をしていこう、厚生労働省としてもそういう方針を持たれているというふうに聞いていますけれども、まだ今、全国で三十八ですか、全部にはないということですけれども、これはどんなところに理由があるのか、今後どうやって整備をしていこうとされているのかについてお聞きをしたいと思います。

赤石大臣政務官 大西委員にはいつも厚生労働委員会でお世話になって、ありがとうございます。

 今委員から御指摘のありました情緒障害児短期治療施設、これにつきましては、今委員から指摘がありましたように、虐待や発達障害などによって心理的な課題を抱え、日常生活のさまざまな場面にて困難に直面し、心理治療等を必要とする子供に対し、地域で生き生きと自信を持って生活できるよう支援を行っている施設であります。

 平成二十五年三月末現在で、委員指摘のように、十七都県においてまだ設置されておりません。現状は、全国で三十八カ所でありまして、大阪が三カ所、大阪市二カ所、愛知県二カ所など、複数の設置場所もありますけれども、未設置は十七都県になっております。

 国としては、これまでも、都道府県に一カ所以上の情緒障害児短期治療施設を設置することを目標として、施設整備の補助を実施しつつ、設置の推進を図っております。

 厚生労働省の審議会で平成二十三年七月に取りまとめられた「社会的養護の課題と将来像」では、人口の多い都道府県では複数設置が必要であることから、将来は五十七カ所程度を目標としております。

 また、子ども・子育て支援法に基づく基本指針のおおむねの案におきましても、子供に対する専門的ケアを充実させるため、情緒障害児短期治療施設の設置について都道府県の計画に記載するよう盛り込んでいるところでありまして、今後とも促進に努めてまいりたいと思っております。

大西(健)分科員 五十七という目標ですから、まだまだこれから先が長いわけですから、しっかり進めていただきたいんですが、以前、厚労省が未設置の自治体にその理由を調査したら、いろいろな理由があるんですけれども、一つは医師の確保の困難という回答が多く見られた。情短は、職員配置基準として常勤医の配置というのを義務づけているんですけれども、国からの財政措置というのは最低保障の額で来る。そうすると、医者は給料が高いものですから、なかなか十分なお給料を出して医師を確保することが難しいということも聞きました。

 それから、ほかの職員についても、まず人手が圧倒的に不足している。やはり一対一でケアしてあげなきゃいけないような子供が多いものですから、人手が不足している。それから、職員がやめてしまうと、愛情に飢えていて、人間関係を結ぶのが難しい子供たちなので、仲のいい職員さんが急にやめちゃうとすごく喪失感が大きい。ですから、やはりできるだけ長く働けるような、そういう勤務条件というのを整えてあげる必要がある。

 そういう意味では、職員の待遇改善というのも必要だというふうに思いますが、今の点についてはいかがでしょうか。

石井政府参考人 議員御指摘のように、情緒障害児短期治療施設は、虐待を受けたお子さんとか発達障害を受けたお子さんなど、本当にそもそもがかかわり合いの難しい子供、そしてその家庭への対応をしているわけでございまして、手厚いケアが必要なだけに、専門的な能力の向上が不可欠というふうに考えております。

 このため、二十三年の九月から施設長に対する研修の義務化を行ったり、あるいは、二十四年度からは児童指導員等の人員配置基準を引き上げたりしておりますが、今後とも、さらなる専門的機能の充実を図っていく必要があるというふうに思っております。

 さきの臨時国会でプログラム法が成立いたしておりますが、その中におきまして、情緒障害児短期治療施設も具体的に書いた上で、施設に入所等をする子供の養育環境等の整備のために必要な措置を着実に講ずるものとされておりまして、消費税財源を含めた安定財源を確保した上で、必要な環境整備に向けて取り組んでまいりたいと考えております。

大西(健)分科員 もう一つは、名前なんです。

 私も初め、一回ここを見に来てくれと言われて、情緒障害児短期治療施設という難しい名前で、どういう施設か全くイメージも持てなかったんですけれども、この名前が、例えば、新しく開設しようとした場合に地域に説明会をします、そうすると、この名前を聞いて何かすごく、どんな子供が来るんだろうと地域の皆さんがちょっと構えてしまうというようなことも聞いています。

 それから、短期というふうに言っているんですけれども、短期というと数カ月みたいなイメージなんですけれども、実際には平均在所日数は二年以上ということですから、そういうのもちょっとイメージが違いますし、ほとんどの子は虐待で入ってくる子ということですから。

 それで、どういう名前がいいのか。これは、全国情緒障害児短期治療施設協議会さんからは、例えば子ども心理治療センター、こんな名前がいいんじゃないかというような提案もあるんですけれども、この名称変更について御検討されているかどうか、お聞きをしたいと思います。

石井政府参考人 情緒障害児短期治療施設の名称につきましては、子供が直面する心理的な困難を障害という言葉であらわしているということとか、あるいは、平均在所期間が二年半を超えている現状で、それを短期であらわしているということについて、これは実態と乖離しているのではないかといった御意見があることは承知いたしております。

 このため、平成二十四年三月に策定をいたしました情緒障害児短期治療施設運営指針では、当面ということでありますけれども、児童心理治療施設という通称を用いることができることを定めたところでございます。

 情緒障害児短期治療施設の名称につきましては、平成二十三年七月に厚生労働省の審議会で取りまとめられました「社会的養護の課題と将来像」、ここにおきましても検討課題としているところでございます。

 今議員からは、子ども心理治療施設といったような御提案もあったわけでございますが、今私どもが提案をしております児童心理治療施設、こういった通称の評価を初めとしまして、引き続き、関係者のさまざまな御意見を伺ってまいりたいと思っております。検討課題として受けとめております。

大西(健)分科員 ぜひ、現場の、実際に携わっておられる皆さんの声をよく聞いて決めていただければというふうに思います。

 次に、ソチのオリンピックは終わりましたけれども、二〇二〇年には東京オリンピックがあるということで、今後、スポーツの分野では、日本がメダルをとれるようにまた強化予算とかがたくさんつくんだというふうに思うんですが、技能のオリンピックというのがあります。技能五輪の全国大会が、ことしは私の地元の愛知で、十一月二十八日から十二月一日という日程で第五十二回の技能五輪全国大会、それから全国アビリンピックがあるわけですけれども、まずは、これの成功に向けて、厚生労働省にはぜひ力強いバックアップをお願いしておきたいというふうに思います。

 あわせて、この技能五輪ですけれども、二年に一度、世界大会があるということなんですけれども、今言ったように、スポーツの世界は恐らく手厚い予算がつくと思うんですけれども、では今、技能五輪、二年に一回の世界大会に政府がどんな支援をしていただいているかというと、これは非常に限定的なものになっています。

 一方で、日本のライバルということではないですけれども、お隣の韓国、最近では韓国が非常にメダルをたくさんとるわけですけれども、韓国は、国立の訓練施設を設置したりとか、企業の選手育成に助成金を出したりとか、あるいは選手自体に報奨金を出したりとか兵役の免除をしたりとか、さまざまな形で、国を挙げて、この技能五輪世界大会でもメダルがとれるようにということで支援をしています。

 それに比べると、どうも日本の、職業訓練という枠組みになっていますから厚生労働省なんですけれども、その支援というのはちょっと心もとない気が私はしております。

 日本は技術立国ですから、私は、厚生労働省も、スポーツに負けないぐらい、メダル獲得に向けて国を挙げて取り組むんだと。そしてまた、職業訓練ということで切ってしまうと厚労省の縄張りなんだということになるのかもしれませんけれども、これは技術ですから、経産省も当然ながら、あるいは国を挙げて、メダル獲得に向けて頑張るんだということをぜひやっていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

佐藤副大臣 今、大西委員から御指摘いただきました技能五輪国際大会への備えというのは、本当に大事だと思っております。

 というのは、ことし、今、大西委員御指摘のように、愛知でその予選にも当たります技能五輪全国大会が行われるんですが、昨年の十一月、千葉の幕張で技能五輪全国大会がありまして、私もそこに行ってまいりました。本当に、二十代前半以下の若者が技能を競うという、このすばらしさというものを目の当たりにしてきたところでありまして、やはりこれは、これからの技能継承という面でも本当に力を入れていかないといけない、また、物づくり立国にしていくためにも力を入れていかなければいけないなということを痛感したところでございます。

 まだまだ不十分だとおっしゃる点もあるかと思いますけれども、厚生労働省として、新たなものも含めて、今、大きく三つ取り組みをさせていただいております。

 一つは、技能五輪国際大会出場選手の育成、強化訓練、選手派遣等への支援というものを国としてしっかりサポートしていく。二点目は、今言いました技能五輪国際大会の国内予選に当たる技能五輪全国大会等の各種技能競技大会の開催、運営に取り組むというのが二点目であります。三点目に、これは最近の取り組みとして申し上げたいんですけれども、本年度創設いたしました若年技能者人材育成支援事業によりまして、将来これらの大会を目指す中小企業の若年技能者や学生、要するに選手の卵ですね、そういう方々を対象とした、ものづくりマイスターによる競技大会の課題を用いた実技指導、具体的に熟練のものづくりマイスターによって実技指導をしてもらうというような実施なども行いまして、関連企業や選手への支援を図っているところでございます。

 技能五輪国際大会、確かに韓国に比べると日本はちょっと成績が落ちるんですけれども、しかし、大体、この四、五年、二位から四位の間にはしっかりといい成績をとっているわけでございまして、国としても、選手の育成、派遣に取り組む企業のニーズや課題のよりきめ細かな把握に努めつつ、一層積極的な支援を行ってまいりたい、このように考えております。

大西(健)分科員 ぜひ、副大臣から力強い御答弁をいただきましたので、より一層力を入れていただきたいと思います。

 ただ、現実には、残念ながら、ちょっと企業任せになっている部分があるんじゃないか。実際にメダルをとっている人たちを見ても、例えば、メダリストの多くは、実は私の地元にもそういうのがあるんですけれども、トヨタ工業学園みたいな、学園といって企業内に学校を持っていて、職業能力開発校があって、そこに中卒、高卒で入ってきた子たちがその中でメダルをとるためにずっと訓練する、そういう人たちがとっているというところがあります。

 トヨタは、物づくりは人づくりみたいなことを言うんです。また、例えば、中長期の人づくりを通じて東北における物づくりの基盤強化をしようということで、昨年の四月に、被災地である宮城県にも実はトヨタ東日本学園というのが開校していて、多くの地元出身の若者を学園に採用しているわけです。

 この職業能力開発校ですけれども、中小企業の事業主が認定職業訓練というのをやった場合には、国や都道府県が定める補助要件を満たせば、訓練経費等の一部に補助金が出るということなんですけれども、大企業は、そこまでしてあげなくていいだろうということで、対象外ということになっているんです。

 企業も、もちろん自分のために訓練をやっているし、メダルをとればその企業のイメージアップにもつながるんですけれども、ある部分では、国家の威信をかけて、メダル獲得のために、ほかの仕事をおいておいてと言うと変ですけれども、メダル獲得の訓練をずっとやっているわけですよね。施設も企業の負担で建ててやっているわけです。

 そういう意味では、企業が好き勝手にやっているんだからお好きにどうぞということではなくて、やはり頑張っているところに、大企業は支援しませんということじゃなくて、何かちょっとでも優遇措置とかがあれば、これはまたやる気が出るんじゃないかなというふうに思いますけれども、この点、いかがでしょうか。

杉浦政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のトヨタ工業学園、その名のとおり、トヨタが企業内に設置しておる職業能力開発施設でございまして、先生のお話のありましたように、職業訓練の内容が一定の基準を満たすということで、認定職業訓練というものを都道府県の知事から受けておるわけでございます。

 この認定職業訓練制度につきましては、中小企業の財政基盤ですとか訓練実施能力が十分でないということから、国等が補助する仕組みになっておりますが、大企業についてはその補助の対象にはなっていないということは御指摘のとおりでございます。

 大企業を初め、こういったいろいろな企業が国際大会の選手の育成に向けて積極的に取り組んでいただいておるというのは非常に貴重なことだと考えておりますけれども、この国際大会の選手の選出と申しますのが、御案内のとおり、国内大会の成績優秀者が国際大会の選手として選ばれるということになっておりまして、国内大会の実施に向けて選手を育成しておる企業というのは数多くあるわけでございます。

 こういったことを考えますと、個々の企業に対して直接支援をするというようなやり方はなかなか難しい面があるんじゃないかなというふうには思っておりますが、先ほど副大臣からの御答弁にありましたように、国際大会の選手になった方々に対しては、その強化訓練を行ったり、あるいは、渡航、滞在等の支援というのはもちろんやっておりますし、それから、その前提となる国内大会の実施あるいは啓発といったような形での支援ということをこれまでもやっておりまして、この辺の支援については今後とも一層やっていきたいと思っております。

大西(健)分科員 今、直接そういう個別の企業への支援はちょっと難しいんじゃないかという話がありましたけれども、先ほど言ったように、例えばトヨタ東日本学園だったら、本当にそこに雇用を生んでいるわけですよね。

 若い人たちが、どういう仕事をしたいか、今、なかなかマッチングがうまくいかない。トヨタ学園に入ったら、そのまま間違いなくトヨタに採用されて、生涯賃金でいうと大卒で入った人よりもいいみたいなんですね。そういう仕組みというのは、実は、私は、この時代、ちょっと見直した方がいいんじゃないかなというふうに思っていますので、これはまたちょっと別の観点ですけれども、また議論をしていきたいというふうに思っています。

 ちょっと時間がありませんので、これは言うだけにとどめます。

 ただ、一方でちょっと矛盾したことを言うんですけれども、国内大会と世界大会で何か競技内容が違っていたりするんですね。それはなぜかというと、世界大会に勝とうと思ったらその競技内容をやればいいんですけれども、国内大会はあくまで技能の伝承という点に重点を置いているので、内容が違っているとかということなんですね。

 そこで、私は常々思っているのは、職業訓練というのが独立した領域としてあるんじゃなくて、例えば、工業高校での職業教育と実際に現場で求められる職業能力、あるいは、競技として求められる職業能力と実際現場で求められる職業能力、ここがうまくつながっていくことが重要だと思うんです。

 残念ながら、実は、メダリストの人たちが、職場に行かずにまた次のメダリストを養成するみたいなことになっているところとかもあったりするので、そういう意味では、厚労省の職業能力を担当している皆さんが、工業高校の皆さんといろいろ話をしてみるとか、実際の職場の現場の最前線の人たちが今どんな職業能力を求められているかということをよく聞いていただくということが、経済界とコミュニケーションしていただくということが重要だと思いますので、ぜひそういうことをしていただきたいと思います。

 それでは、全く別の話ですけれども、クリーニングの外国人技能実習生の受け入れということをちょっと聞きたいんです。

 今、例えば建設業界で人手不足になっている、外国人技能実習生をどうするかみたいな議論が始まっているようですけれども、クリーニングの中でも、特に取次店から集めてきた衣類をまとめて工場で洗うような、そういう大規模なクリーニング業をやっているところでは、今までも外国人の技能実習生というのを受け入れています。

 ただ、それは、今、技能実習一号という区分のために、一年しか在留資格がない。来て二カ月、まず座学の講習をやるということですけれども、残り十カ月。クリーニングも、いろいろな薬剤を使ったりとか、専門的な知識が必要なので、なれたころには帰らなきゃいけなくて、十分な技能を身につけないまま帰らなきゃいけないというような話もあります。そういうところがあるので、これを技能実習二号にして、最長三年実習できるようにしてほしい、業界からそういう要望があるというふうに聞いているんです。

 それを厚労省も受けて検討も進めていたというふうに私は承知しているんですけれども、現在の検討状況を教えていただきたいのと、これがなかなか進んでいないことの一つに、パパママクリーニングという言い方をたまにしている人がいますけれども、おやじさんと奥さんとだけでやっている個人商店と、そういう工場みたいでやっているところとは、業界団体も違うんですね。全ク連という団体と全国クリーニング協議会という団体があるんですけれども、ここの足並みがそろわないことが進まない理由になっているんじゃないかというような指摘もあります。

 この辺も含めて、何でこれは進んでいないのか、あるいは検討状況がどうなっているかについて教えてください。

杉浦政府参考人 お答えいたします。

 今お話のありましたように、技能実習制度の二号に移行するためには、入管法令に基づきまして、一定水準以上の技能等を習得したという公的な評価ができるものとして、技能検定またはこれに準ずる検定というものに合格しなければ移行ができないという仕組みになっておるところでございます。

 クリーニング業につきましては、その国家検定たる技能検定がないことから、業界内で統一した技能検定に準ずるそういった検定あるいは試験を策定、実施するということが必要になるわけでございまして、この辺の仕組みについては関係の業界の方も十分御承知だというふうに私どもも承知しております。

 それで、そういった話を受けて、今現在、業界の関係者の中で検討をしていただいておるというふうに我々も承知しております。業界の中でもいろいろな御意見がある、先生のお話のとおり、あるということでございますので、その辺は私どもとしては、業界としての話し合いの状況を見つつ、その辺での環境が整いますれば、その辺をよく話を伺いながら、制度の実施等に向けて適切に対処していきたいというふうに思っておるところでございます。

大西(健)分科員 小さいお店だと、そんなあっせん料まで払ってわざわざ外国人を使うなんということはまずないわけですので、主に使うのは工場でやっているようなところですから、そこは全然ニーズが違うのかなというふうに思いますし、また、クリーニング師みたいな資格というのも業界ではあるというふうに聞いていますので、引き続き、ぜひ業界の皆さんと話し合いをしていただければなというふうに思います。

 次に、介護保険料の税額控除という話をしたいんですが、ちょっとこれは細かい話になるので、皆さんのお手元に資料をお配りさせていただいているはずなんですけれども。

 資料の右上のところに、確定申告における社会保険料の控除についての説明が書いてあります。例えば、生計をともにしている奥さんの国民健康保険料を御主人が払った場合には御主人の控除の対象になりますよ、ただ、奥さんの年金から天引きされている場合には、これは奥さんが支払ったものとみなされますから、御主人の控除対象にはなりませんよと。これは、なるほどなということなんです。

 そこで、そこに国民健康保険税の納税方法変更申請書というのをつけておきました。このように、国保保険料は、天引きをやめて旦那さんが口座振替にしますよということになれば、旦那さんが払ったんだから旦那さんの税額控除の対象になる。ところが、介護保険料の方は、このような形で納税方法を変更するという道がないんですね。ですから、奥さんの年金から天引きされる、そうすると税額控除にはならない。

 これは何か変な感じがするんですね。同じ保険料なのに、片や納税方法を変更して旦那さんが払えば認められるのに、介護保険で同じことをやろうとしても、その道はないのでできない。

 これは、ある部分ではまさに税務当局の問題なのかもしれませんけれども、私は、やはり普通に考えたら、並びで見た場合に変じゃないかと言われると、何とも答えられない。実際、私は地元の人からこういうことを言われたんですけれども、何とも答えられない部分があるんです。

 税務当局の考え方は別にして、厚労省として変だと思いませんか。どうにかできないのかということについて。

原(勝)政府参考人 お答え申し上げます。

 介護保険制度におきましては、高齢者の自立支援を基本理念としていることなどを踏まえまして、高齢者お一人お一人が御自身の要介護リスクに備えて保険料を納めていただくというようなことを基本的な考え方としております。

 また、保険料の徴収につきましては、各保険者の介護保険財政の安定的な運営の確保、もう一つは、被保険者本人の利便性を図る観点から、年金額が著しく少ない場合、これは年間の年金受給額が十八万円に満たない場合などでございますけれども、それ以外は、原則として、被保険者本人の年金から保険料を徴収するいわゆる特別徴収という形で対応させていただいております。

 今お話がございましたように、社会保険料控除は税を負担する本人が支払った社会保険料について控除を受ける仕組みでございますので、御指摘のように、夫婦でそれぞれが特別徴収されている場合には、夫は本人の保険料については控除を受けることができますけれども、妻の保険料については妻が支払っているということで、妻の分までは社会保険料控除を受けることができないということで、現在、介護保険ではそのような取り扱いになっているとおりでございます。

 御指摘のように、後期高齢者医療制度あるいは国保制度のように、特別徴収と普通徴収を御本人の選択制にしてはどうか、こういう御指摘だろうと思いますけれども、これについては、特別徴収によって高い徴収率を現在維持しておりまして、例えば平成二十三年度で、これは普通徴収も一部年金額が少ない方がとっておりますけれども、ここだけを見ますと八五・六%の徴収率でございますが、全体としては九八・五%と、特別徴収があることによって高い徴収率を維持しているということで、各保険者の保険財政の安定化を図るために必要な仕組みであること、また、保険者である市町村の理解を得ることが難しいことから、困難ではないかと考えています。

 実際、後期高齢者医療制度で見直しがあって選択制が導入されたときに、実は介護の方でも審議会で御議論いただきまして、平成二十年の十二月ごろでございますが、社会保障審議会の介護給付費分科会でも検討いただきましたけれども、やはり保険者である市町村の、市長会あるいは町村会の代表の方からの強い反対の意見がございまして、ちょっと合意に至らなかったという経緯でございます。

 介護保険制度の年金からの特別徴収については、先ほど言いましたような理由から、安定した制度運営を維持するためには必要なものであると私どもとしては考えておりまして、ぜひ御理解をいただきたいということでございます。

大西(健)分科員 私は、介護保険も特別徴収をやめる道を開けと、そこまで言っているつもりはないんですが、ただ、やはりちょっと変なんですよね。

 だから、これは、税務当局の問題だったら、ぜひもっと力強く厚労省が税務当局とかけ合っていただけないかなと。以前も同じような話が、調べてみると、大分前に西川きよし参議院議員が、ちょっと聞き方は違うんですけれども聞いていることがあって、そのときも、厚労省のお答えとしては、税務当局の壁は厚いような感じがいたしておりますみたいな、そんな話になっているんですけれども、もう少し何かうまい知恵はないのかということをまた税務当局ともお話し合いをしていただきたいと思います。

 最後になりますけれども、患者紹介料の規制ということについて質問したいんです。

 訪問診療を行う医療機関の一部が、手数料を支払って高齢者施設の入居者の紹介を受けて、過剰な診療を行うなどして患者を食い物にしているケース、これが新聞報道等で出てまいりました。

 厚労省は、省令を改正して、医師が患者紹介料を支払うことを禁止するというような規制を四月から実施する方針だと聞いておりますけれども、今回の法規制というのは、あくまで保険診療のルールを定めた省令を改正して医者の側を規制しようということなんです。

 ただ、この点については、本来取り締まるべきはこういうわけのわからぬ業者の方じゃないのか、あるいは、訪問診療の診療報酬を下げると、一方では在宅医療を進めましょうというふうに言っているのに、そこにブレーキがかかるんじゃないかというようなお声があるんですけれども、この点、こういう患者紹介料の規制を今後どうやっていくのか、そして、その点について今私が申し上げたような御意見があることについて最後にお聞きして、終わりたいと思います。

赤石大臣政務官 余りもう時間もないので、簡単に説明したいと思います。

 今議員指摘のとおり、いわゆる患者紹介ビジネスについては、患者の医療機関の選択を制限したり、あるいは過剰な診療を惹起するおそれがあるとか、大変問題があるというふうに思っております。

 中医協の答申では、一つは、保険医療機関等が経済的誘引により患者紹介を受けることの禁止、そして、訪問診療料の算定要件の厳格化、同一建物への複数訪問の評価の引き下げを行うことといたしました。

 これは医療機関に対してでありまして、経済的誘引等により患者紹介を受けてはならないことを徹底して、不適切な患者紹介が行われることのないように周知を図っていきたい。厚労省としてはそこの範囲までしかできないのかなというふうに思っております。

 以上です。

大西(健)分科員 ありがとうございました。

松本主査 これにて大西健介君の質疑は終了いたしました。

 次に、白須賀貴樹君。

白須賀分科員 自民党の白須賀貴樹でございます。

 このような質問の機会を頂戴いたしまして、まず心から感謝を申し上げます。

 田村大臣を初め、朝の九時から、もう夕方の五時でございますので、大変お疲れだと思いますので、最初に、厚労の部分ではなくて、ちょっと歴史の話をさせていただきたいと思います。

 私は歴史が大好きで、一番大好きなところは中国の春秋戦国時代から秦ができるまでですが、日本の歴史の中でおもしろいのは、やはり応仁の乱の後から室町幕府が衰退していくところ、いわゆる戦国時代でございます。

 さまざまな定説がありますが、その戦国時代、いわゆる天下統一をするために戦国大名たちが争っていたという説もありますが、一方の説で、その時期はちょうど小氷河期、寒い時期であった、つまり、作物がとれないために、自分の国の領民を食べさせるために相手のところから分捕らなきゃいけない、そのための、食べるための戦いであった、そして、一五八〇年代になると、だんだん気候が暖かくなってきて作物がとれるようになったので、経済の安定とともに天下が安定していった、そういう説もあります。

 私は、こちらの説の方が非常に好きでございまして、歴史には必ず必然性がある、そのように思っております。私たちの出す政策も、この出した政策が歴史の必然性になることを心から期待を申し上げます。

 まず最初に、先生方、そして厚労省の方々に理解をしてもらいたい。それは、私自身も歯科医師でございますので、歯科の分野というのはどういうものか、それについて説明させてください。

 三分ください。三分で、皆さんがなぜ歯を磨かないか、そしてなぜ歯を磨かなければいけないのかについて説明をします。

 皆さん、大体、歯医者さんに通うのは、虫歯とか歯周病で通われます。虫歯も歯周病も、これはお口の中の細菌の感染症でございます。例えば、お口の中の口腔内細菌が歯のかたいところに付着して、その出す酸によって壊されて、神経まで行くと痛い。つまり、細菌感染によって虫歯が起きる。歯周病は、歯というものが存在して、その歯を支えているのは顎の骨でございます。歯茎の下にあります。その顎の骨に細菌が感染していって骨を溶かしていくことによって、歯が支えられなくなって揺れてくる、それによって歯が喪失していく。

 つまり、虫歯も歯周病も、これは細菌の感染症なんです。ですから、細菌感染症であるならば、その感染症の原因をなくすためには、歯磨きをすることによって細菌を除去しなければいけないんです。

 そしてまた、今のお口の中の細菌の考え方は、昔は、さまざまな菌がいて、その菌がピラミッドのように力関係があって、強い細菌から弱い細菌がいると思われていましたが、今は違うんです。さまざまな細菌たちが、自分たちで、みんなで集落をつくって、その周りにバイオフィルムという膜をつくって、共存共栄しながら、そして、そのバイオフィルムは、さまざまな薬液とか、そういった外部刺激を遮断してくれて、自分たちが安泰に過ごせる空間をつくる。

 お口の中の感染症は、細菌感染症であり、バイオフィルム感染症であります。皆さんが一番身近に感じるバイオフィルムは、お風呂場のぬめりです。あのぬめりを取るときにどうされますか。もちろん、洗剤とかをかけて、こすりますよね。こすることによって、機械的刺激によってそのバイオフィルムが壊されて、初めて薬液の効果が発揮されて、汚れが落ちる。口の中も一緒なんです。ですから、うがい薬だけでは歯磨きのかわりにもならない。ですから、歯ブラシを使って、機械的な刺激を与えることによってバイオフィルムを壊して、そこで初めて、歯磨き粉の成分やうがい薬の成分が効き始める。ですからブラッシングが大切なんです。

 約三分でございます。

 なぜこの時間をいただいたかというのは、やはり知識というのは大切なんです。なぜあなたが歯を磨かなければいけないのか、そして、その病態は何かを理解していただき、それと大切なのが、自分自身の状況が今どういう状況なのか、これを知ることが大切なんです。そして、そのことによって、これが悪い状況なら、あなたの体はこうなるかもしれませんね、これがいわゆる健診の一番大切なところであります。

 お口の中の細菌、お口の状態が悪かったらどうなるか。例えば妊婦の女性の方は、ホルモンバランスによって奥歯のところの歯茎が腫れてくる妊娠性歯肉炎があったり、子供が低体重児で生まれてくる低体重症の原因であったり、また、心筋梗塞の原因でもあると言われておりますし、糖尿病の方がよく歯磨きをしていただきますと、症状がよくなってくるというデータもあります。

 そして、何よりも、六十五歳以上の方々が亡くなられる死因の毎年一、二、三位の中のどこかに入る肺炎。この肺炎は、寝ている間にお口の中の細菌が、本来、唾をごくんとのみ込んだときに、胃の方に行っていただければ胃酸で死にます。しかし、それが間違って肺の方に落ちてしまう、誤嚥をしてしまうことによって、肺の中で口の中の細菌がふえてしまって、誤嚥性肺炎を起こしてしまう。それによって、悲しいことに、死因の第三位にいつも入ってしまう。つまり、歯を磨くことが、御年配の方々の健康の増進にもなります。

 そこで質問をさせていただきたいと思いますが、皆様方のおかげをもちまして、後期高齢者医療の被保険者に係る歯科健診、これから導入されていくことになりますが、導入されるときに、国の予算が三分の一、そして地方交付税と保険料が残りの三分の二という形になっておりますが、逆を言えば、都道府県の取り組みの仕方や広域連合等の体力等の問題で、この健診が十分に全国津々浦々、発揮できない可能性もございます。

 先ほど言ったように、歯科は、口腔感染症であって、非常にこれは予防ができる、私は一番予防ができるものの一つだと思っております。そして何よりも、歯が残っていると、よくかむことができる。それによって胃腸の動きも活性化されますし、また、去年もお話しさせてもらいましたけれども、入れ歯でもいいですけれども、かみ合わせがしっかりとできるときには、転んだときに、手で支える、そのときのかみしめる力、それによって転倒したときの骨折率とかも相当変わってきます。

 つまり、かみ合わせがしっかりしていたり、お口の状態がいいということは、やはり大切なんです。つまり、歯科というのは、生活の質を上げる医療なんです。

 このために、私は、健診を、国民の皆様方に広くその恩恵を受けていただきたい、そう思っておりますが、先ほど言ったように、都道府県や広域連合の体力等の差によって地域間格差が生まれるんじゃないか、そのように感じておりますが、厚労省の方の見解はいかがでしょうか。

木倉政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、若い方もですが、高齢者の方々にとりましても、歯あるいは口腔全体の健康の保持というのは、生活そのもの、日常生活そのものの質に大きく影響を与えるものだというふうに認識しております。この機能低下を予防しまして、今御説明いただきましたように肺炎等の疾病予防にもつなげていけるということでございますので、私ども全力で大臣以下取り組んでおります健康寿命の延伸ということ、あるいは生活の質の向上ということにも大きく効果を上げていくものというふうに期待をしております。

 そこで、このため、これまでの後期高齢者医療制度、広域連合で取り組んでいただいておりますものは、医科の方の健診、四十代からの特定健診に加えまして、後期高齢者になりましても、それに準じたような健診をしっかりやってくださいという意味で補助はしておりましたのですが、歯科の健診は、自主的に取り組んでいらっしゃる県が五県程度でございました。これに対して、やはり、どの県でもしっかり歯科の重要性を認識していただいて取り組んでいただきたいということで、全県を補助事業の対象に今度の新予算で加えさせていただいておる、その案にさせていただいておるところでございます。

 これにつきましては、初年度でもある、あるいは広域連合は市町村の連合体でございますから、その実施に対する専門的な体制というのはなかなか確保しづらいという声もありますので、これは予算編成段階から専門家の方々との連携を図ろうということで、日本歯科医師会の方にも御協力をお願いし、各都道府県歯科医師会の協力体制を組んでいただきたいということでお願いを申し上げてきております。

 予算案を編成しました後も、先週も全国の広域連合の事務局の会議を持ちまして、この中でも、今の五県の取り組み事例、具体的なノウハウというものも具体的に示して共有していただきましたし、さらに、改めて各都道府県歯科医師会との連携をしっかり図っていただきたいことを重ねてお願い申し上げておるところでございます。

 これから予算を成立いただきますと、その後で具体的に実施をお願いしますけれども、ぜひ早目早目に準備をいただきまして、お支えいただいて、どの県でもレベル高く実施していただけるように取り組んでまいりたいというふうに思っております。

白須賀分科員 心強い答弁をありがとうございます。これからもよろしくお願い申し上げます。

 昨年は、口腔がんの早期発見の件に関して御質問させてもらいました。ちょうどと言ったら失礼ですけれども、甘利大臣がちょっとそっちの病気になりまして手術をされましたが、やはり早期発見だったからこそ、あれだけ早く職場復帰ができた。

 昨年と何度も同じことを言って申しわけないんですけれども、歯以外の白いものが、お口の粘膜、べろの横、そういったところにあった場合は、何かしらの悪いものでございますから、近くの歯医者さんに行ってください。これが口腔がんの最大のチェックポイントです。

 しかも、いろいろながんは何かしらの検査をしなければいけないですけれども、口の中のがんは目で直接見ることができるがんであり、しかも、子宮頸がんの方々で亡くなられる方が年間六千人、口腔がんで亡くなられる方が、咽頭がんも含めて約六千人、ほぼ一緒なんです。ですから、そんなにまれな病気じゃないので、どうか皆様方、チェックをしていただきたい。

 これは本当に、早期発見は、先ほど言ったように、知識を持つことによって早期発見ができる。ですから、そういう知識を広めたいし、知らないことは本当に不幸なことだなと思っております。

 そしてもう一つ、歯医者の自慢でございます。

 皆さん、死亡診断書と死亡検案書と二つあるのは御存じだと思います。今さら説明はしませんが、死亡診断書は医師と歯科医師が書くことができます。死亡検案書は医師だけであります。

 これから、尊厳死の問題や、また、御年配の方々がたくさん亡くなってしまう時期がやってきます。そのときに、やはり死亡診断書、どうしても書類の大変なときが出てきますので、こういったときに、まだまだ歯科医師の活用法というのはたくさんございますので、そういったものも、皆様方の活用法として歯科医師を考えていただきたい。同じ職業なので、このような説明をさせていただきました。ありがとうございました。

 次の話に移らせていただきます。

 次は、持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律、いわゆるプログラム法の第二条、「政府は、人口の高齢化が急速に進展する中で、活力ある社会を実現するためにも、健康寿命の延伸により長寿を実現することが重要であることに鑑み、社会保障制度改革を推進するとともに、」ここから大切です、「個人がその自助努力を喚起される仕組み及び個人が多様なサービスを選択することができる仕組みの導入その他の高齢者も若者も、健康で年齢等にかかわりなく働くことができ、持てる力を最大限に発揮して生きることができる環境の整備等に努めるものとする。」という第二条がございます。

 私も、皆様方にちょっと配らせてもらいました資料、グラクソ・スミスクライン健康保険組合、こちらの方を見学させてもらいました。一ページ目にあるみたいに、この被保険者の数は三千七百七十四名でございます。経常収入ですけれども、二十四億五千九百二十一万五千円。この健康組合の方々は、このように説明しておりました。この規模だから私たちのこの活動ができる、そのように言っておりました。

 どんな活動か。これは、ヘルスケアポイントという形で、例えば、健診を受けてもらって、その健診を受けたときにその方がメタボリックでなかったならば何ポイント、また、自分でパソコン等で打ち込んで問診票を記入してもらってまた何ポイント、そして、例えば、いつもの最寄り駅から一個前の駅でおりてもらって、御自宅まで歩いてもらったら何ポイント、歯科健診を受けてもらったら何ポイント。また、おもしろかったのは、食事の前に、最初にベジファーストで野菜をとっていただいてから食べてもらうとか、あとは、一日に一回だけの油物に変えてもらう、揚げ物とかは一日一回にしてもらう、そうすると何ポイント。

 そういう形で、いわゆる日常の生活習慣を改善しようという、この健康組合が前面に立って活動されております。そして、彼らも、この規模だから隅々までこういうことができると言っておりますが、その結果、やはり目に見えて健康になっていただいたというか、その収支がよくなっている、こういうこと。

 そして、もう一つのお話に移らせていただきますが、今は健康保険の話でございますけれども、次は介護の方の話です。

 これは稲城市の介護支援ボランティア制度というものでございます。これは、簡単に言いますと、高齢者の方がボランティアに参加してもらって、そのボランティアの内容はどんなものかというと、レクリエーション等の指導とか参加の支援、お茶出しとか食堂内の配膳、散歩、外出、館内移動の補助とか話し相手、あとは草刈りとか洗濯の整理とかシーツ交換、またごみ出しとか、そういったボランティアをすることによってポイントをためてもらう、そして介護保険料から、たまった分のポイントを現金として差っ引いてくれるわけですね。

 例えば、どういった目的で、これは直接読ませてもらいます、「目的」の第一条、非常にいい、すばらしいので。ちょっと途中略しますけれども、「高齢者が介護支援ボランティア活動を通して地域貢献することを奨励及び支援し、高齢者自身の社会参加活動を通した介護予防を推進するため、市民の共同連帯の理念に基づき、稲城市介護支援ボランティア制度を設け、もって生き生きとした地域社会をつくることを目的とする。」

 本当にすばらしい理念で、これを行いまして、結果的にどうなったかというと、明らかに介護保険料が下がっています。しかも、これは、介護保険の出すお金と、今回、ポイントが千ポイントだったら千円返す、五千ポイントを上限として五千円を返す、その返したお金を差っ引いても、それでもやはり下がっているんですね。結果的に効果がすごく出ているんです。

 なぜかといえば、高齢者の方々が、きょうは僕はボランティアに行かなくちゃいけないんだと、生きがいを持ってやってもらって健康になる。やりがいを持つわけですね。

 私はよく会合で、御年配の方々はこれからキョウヨウとキョウイクが必要なんですよと話すんです。きょう用があるか、きょう行くところがあるかという話ですねとよくやるんですけれども、そういったものを持つことが本当に御年配の方々にとってプラスになるし、結果的に介護保険も下がっていく。

 そしてまた、これは事例じゃなくて僕の勝手な考えです、本当に勝手な考えです。例えば、年金をしっかりと納めていただいて、支払っていただいて、いざ年金をもらえる立場になったときに、私は国のために要らないよ、私はもらいませんといってずっともらわなかった方に勲章を上げたいぐらいなんですね。そういう報奨制度をつくったっていいと思っています。

 さまざまな施策を講じて、さまざまなことをやって、いかに社会保障のお金を下げていくか、そのことを真剣に考えないといけないと思います。

 平成二十三年度の民主党政権さんがつくった一般会計予算を、私、前回もお話ししましたが、あのときの一般会計予算は九十二兆四千百十六億円でした。そのうち、集まったお金は四十兆九千二百七十億円です。そのうち、社会保障に使ったお金は二十八兆七千七十九億円です。よく覚えていますね。本当にそれぐらい使っているわけですね。

 ですから、これから二〇二五年度を迎えるに当たって、そのときに当たって、いかにこの社会保障を、私は、支出の方でもコントロールしていかなきゃいけないと思うんですけれども、その社会保障のニーズそのものも下げていく努力をしていかなきゃいけない。その一つがこういったポイント制だと思っております。

 ちょっと二番目と三番目の質問を一緒にしましたが、これについて厚労省の方のお考えを教えていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

木倉政府参考人 先に、ヘルスケアの方を簡単に御説明申し上げたいと思います。

 御指摘のように、このプログラム法でも、自主的な努力を喚起していこうということをうたわれておりますので、昨年から田村大臣のもとで、先ほども申し上げましたように、健康づくり推進本部、省を挙げて取り組もうということで、その中では、御視察いただいた健保組合さんのようなところもですが、協会けんぽの各県支部、あるいは市町村の国保も、取り組みの規模の大小の違いはありますが、皆さんに、健診の結果のデータあるいは治療を受けたときのレセプトデータが分析できるようになってまいりましたので、これをちゃんと個人個人で分析して、それを予防、健康づくりにつなげていただくという事業に取り組んでいただきたい、データヘルス計画と申しておりますが、こういうことを応援していきたいということで取り組みを進めております。

 その中では、御指摘のようなヘルスケアポイント、自主的に運動をしたとか健康づくりに努めたことを、健保組合ごとに一定の評価ポイントを決めておきまして、それを登録していただいて、そのポイントに応じて健康のサービスとか商品が購入できるというようなインセンティブを与えていくということで、さらに健康に関心を持ってもらう取り組みを進めてもらって、結果的に健康になっていただいて医療費も下がっていくという取り組みを全保険者に促してまいりたい、予算の中でも応援をしていただくものを入れておりますので、その取り組みを進めてまいりたいというふうに思っております。

原(勝)政府参考人 ボランティアポイント制度でございますけれども、御指摘のように、高齢者の方がボランティア活動を行った場合にポイントを付与するということで、高齢者の社会参加を推進し、介護予防につなげる仕組みでございまして、稲城市における取り組み、私どもとしても大変評価をしております。

 このボランティアポイント制度については、平成二十四年度で、全国で、私どもの調査ではおおむね九十ぐらいの市町村に取り組んでいただいておりますが、最近やりました二十五年四月現在、ちょっとまだ確定しておりませんけれども、二百を超えているということでございまして、広がってきていると思っております。

 また、介護支援ボランティアポイント制度以外にも、例えば、市町村が中心となって、高齢者を対象に介護サポーターの養成でありますとか活動拠点の整備を行いまして、住民主体の介護予防教室や通いの場などをつくり出している、そういった取り組みもございます。

 いずれにしても、このような取り組みを推進することで、社会参加を通じた高齢者の介護予防につながり、その結果として保険料上昇の抑制にも寄与するものと考えておりまして、私どもとしては、高齢者の社会参加を促進しながら、支援を必要とする高齢者を元気な高齢者が支え、その高齢者の介護予防にもつながる、こういうような地域づくりの全国展開を、介護支援ボランティア制度の活用も含めながら進めてまいりたいと考えております。

白須賀分科員 ありがとうございました。

 本当にこの第二条は、この先の社会保障を考えるキーワードになると思っておりますので、どうかこれを進めていきたいと思っておりますので、御協力のほどよろしくお願いいたします。

 次に移ります。

 社会保障の問題を突き詰めて皆さんで議論すると、最終的にたどり着くところは、少子化問題に尽きると思います。本当に子供たちの数を何とかふやさないと、どんなにすばらしい制度をやっても結果的に問題解決にならないと私は思っておりますので、まず御質問させていただきますが、今厚労省が取り組まれている少子化対策全般についてお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 少子化対策については、結婚や出産が個人の選択であることを踏まえて、結婚して子供を持ちたいという国民の希望を実現させることが重要と思っております。現状におきましては、子供を持たないという様態があるわけでございまして、その溝を埋めていく必要があるんだろうと考えております。

 我が国の家族関係支出の対GDP比、これは欧州諸国に比べて低い現状にございます。これら諸国の経験に照らしますと、児童手当などの現金給付、そして保育サービス等の現物給付をバランスよく充実させることが重要と考えております。子ども・子育て支援新制度の実施とか、あるいは待機児童解消加速化プランの推進、そして児童手当の支給など、子育て支援の充実に取り組んでいるところでございます。

 それから、妊娠から子育て期にかけて切れ目なく支援が行われる環境づくり、これがなされなきゃいけないというふうに考えておりまして、そういう意味で、子育て支援に加えて、例えば職場の問題、育児休業を取得しやすい職場の雰囲気づくりにも資する次世代法の延長、強化とか、あるいは育児休業給付の充実などの仕事と子育ての両立支援、そして母子保健施策などの妊娠、出産支援などに総合的に取り組んでまいりたいと考えております。

白須賀分科員 ありがとうございます。

 この前の厚労委員会のときには、ワーク・ライフ・バランスについてお話をさせていただきました。これを改善しない限りは、子供と一緒にいられる家族の状況、一家団らんの話もさせていただきましたが、我が国は、例えばよく例に出されるノルウェーのように、ノルウェーというのは、御存じのとおり、ロシアやサウジアラビアに次ぐ世界第三位の石油の輸出国でございます、そういう国の社会保障を見習っても、やはり限りある財源でございますので、私たちは有効にその財源を使っていかなければいけない。

 本当に、私自身が保育園でさまざまなお父さん、お母様方と接しておりますと、一つの共通点があるんですよ。これは、子供三人目の壁なんですよ。

 一人目を産みました。でも、一人だと、兄弟いないと寂しいよね、もう一人産もうよ。でも、例えば男の子と女の子が生まれたりすると、もうそこで、二人産まれたからもういいよねというお父さん、お母さんというのは本当に多いんですね。

 でも、お父さんとお母さんが結婚されて、二人産んだら、これはプラマイ・ゼロです。人口をふやすためには、もう一人産んでもらって、三人産んでもらって初めて増加なわけですね。私は勝手に、三人目の壁だと思っています。

 この三人目の壁を、もう本当に今までの考え方を、皆様方、考えをひっくり返して、奇抜なアイデアを出してもらわない限り、この三人目の壁というのはなかなか越えられないんじゃないかなと私は思っております。

 例えば、一人目、二人目、今いわゆる子ども手当を出しておりますが、二人までは毎月千円でいいんですよ。三人目になったら、一子二万円、二子二万円、三人目三万円で合計七万円出しますよと、いきなりどかんとはね上がってみてください。僕が同じ立場だったら、二人目までだったら、もう一人産んだら月七万円入るんだ、三人目産もうじゃないかと。これは国策で、三人目を産むような方向にぐっと持ち上げないと、なかなか出生率というのは変わらないんじゃないかなと思っております。

 本当に奇抜過ぎて大変申しわけないんですけれども、そんなアイデアを出していただかないと、なかなか三人目の壁というのは乗り越えられないような気がしております。なので、そういったことも一緒に、今度相談させてください。よろしくお願いいたします。

 最後の質問に入らせてください。時間がないので早く言います。

 日本における食品中の放射性物質の基準値と、世界の基準値についてお伺いしたいと思います。特に、アメリカやEU、コーデックスにおける放射性セシウムの基準値についてお答えください。よろしくお願いいたします。

新村政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国における一般食品の放射性セシウムの基準値は、一キログラム当たり百ベクレルとなっておりますが、諸外国等の基準につきましては、一キログラム当たり、コーデックスはまず千ベクレル、米国は千二百ベクレル、EUは千二百五十ベクレルと設定されているものと承知しております。

白須賀分科員 今お聞きしたとおり、日本の基準は、世界基準に比べてはるかに厳しいんです。

 では、日本の農産物は放射性セシウムを一生懸命調べていますけれども、海外の農産物は全部調べているんですか。海外から輸出されているんですから、その基準でつくられているかもしれませんよね。海外のものは全部調べているんですか。日本のものに関しては厳しく調べて、海外のものはそんなに調べない。どこまで我が民族は自虐的なんですか。

 もうそろそろ、せめて震災前の基準まで戻してあげないと、それによって、農産物で困っている方々とかたくさんいらっしゃるんですよ。でも、世界基準を考えてください。私は、もっと日本人に対して優しくなるべきだと思っております。

 大変言いっ放しでございますが、これで私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

松本主査 これにて白須賀貴樹君の質疑は終了いたしました。

 次に、永山文雄君。

永山分科員 自民党の永山文雄でございます。

 本日は、地域包括ケアシステムの構築に向けた医療、介護に関する取り組みについて、質疑の中で明らかにしてまいりたいと思っております。どうぞよろしくお願いをいたします。

 さて、皆さんよく御存じのとおりでございますが、今後我が国はますます高齢化が進行し、超高齢社会と言っても過言ではない時代がやってきております。七十五歳以上の高齢者は、現在約一千四百万、二〇二五年には二千万人を超えます。七十五歳を超えますと、要介護状態となる割合がふえてまいりますし、何らかの病気を持っている方もふえてまいります。つまり、このような時代の変化は、私たちが今持っている元気な高齢者がたくさんいる現在の社会のイメージを変えていく可能性があるだろうと思われます。

 私の地元の富山県におきましても、全国を上回る高齢化が進んでおります。高齢者だけの世帯数を見てみましても、六十五歳以上の高齢者世帯の四分の一の世帯はひとり暮らしでございます。今後もその割合は着実にふえていくだろうと思われます。このような高齢化の進行や世帯構成の変化は地域社会に変化をもたらしており、未来を見据えた着実な対策が求められると思われます。

 元気な高齢者は社会や地域の担い手となっていただくことが必要となると思われますが、また、支援を必要とする高齢者を支えるためには、介護保険や医療保険などの公的な仕組みの整備だけでなく、生活支援や見守りなどの地域のインフォーマルな活動まで、幅広い支援が必要となると考えられています。

 地元の自治体でも、介護サービスの確保から医療サービスの整備まで、さまざまな取り組みが進められておりますが、国としても、このような自治体の取り組みを応援することが今後ますます大切になっていくだろうと思います。

 また、昨年秋には、富山県南砺市で、介護保険推進全国サミットが開かれ、高齢者福祉や介護保険制度について活発な議論が行われましたが、まさにこれは時宜を得たイベントと言えると思います。

 今後、高齢者の方が安心して暮らし続けるための取り組みを国全体で進めていくことが不可欠と思いますが、そのために、地域包括ケアまたは地域包括ケアシステムを構築していくという言葉を目にすることが最近多くなってまいりました。

 説明をよく読みますと、地域包括ケアは、地域で高齢者が安心して暮らすための仕組みであると書いてあるのでありますが、このように聞けば、その方向はよいものだろうと誰もが思います。私は、現場でも国民の間でも、まだまだこの包括ケアシステムを御存じない方が大変多いんではないか、理解が進んでいないとまだ感じております。

 そこで、まず最初に、そもそも国が考える地域包括ケアとは何か、どのようなものであるかを、厚生労働省からわかりやすく説明をお願いしたいと思います。

原(勝)政府参考人 答弁の前に、今お話ございました南砺市におきます介護保険の自治体サミットでございますが、私も参加をさせていただきまして、大変有意義な大会だったと思っています。また、富山県におかれましては、共生型、富山型のサービスということで、全国的にもモデル的な取り組みをなさっておりまして、そういう意味でも、富山県における取り組みに敬意を表したいと思います。

 地域包括ケアシステムについて説明をすべしということでございます。

 医療や介護が必要な状態になっても、できるだけ住みなれた地域において生活を続け、人生の最後までそこで暮らしていきたい、こういうふうに思っておられる多くの国民の方がいらっしゃいます。

 このために、今後、単身や夫婦のみの高齢者世帯、あるいは認知症の高齢者、重度の高齢者が増加していく中で、団塊の世代が七十五歳以上となる二〇二五年をめどに、地域包括ケアシステムの構築に今取り組んでいるところでございます。

 この地域包括ケアシステムは、おおむね中学校区程度の区域内で、医療、介護、予防、住まい、生活支援が一体的に提供される体制あるいは地域づくりというんでしょうか、こういうものを目標に進めていくものでございます。

 地域包括ケアシステムの構築に向けましては、これは市町村が中心となって、住民の声も聞きながらつくっていくものでございますけれども、その具体的なつくり方、これは実は、地域によって、さまざま事情が違います。

 例えば、高齢化率だけとってみましても、二〇一五年から二〇二五年までの十年間で、七十五歳以上高齢者の数というものが全国平均の一・五倍以上ふえていく市町村、これも確かに全体で一一・三%の市町村がそういう急激な高齢化を迎えますけれども、一方で、全国の一六・九%の市町村は、むしろ七十五歳以上高齢者が減っていく、こういう状況にございます。高齢化率一つとっても、そういうふうに地域差がございます。

 また、当然、地域の結びつき、都会では薄くて田舎の方では強いとかいったこともございますし、また、サービスの整備状況、地方では比較的入所施設がつくれるけれども、都市部ではなかなかつくりにくいとか、逆に、在宅サービスみたいな人的な確保は都市部の方が容易じゃないかとか、いろいろな事情が違います。

 市町村においては、関係者や地域住民と意識を共有しながら、こうした地域の実情を踏まえて、その地域に合った形の地域包括ケアシステムの構築に取り組んでいただきたいと考えているところでございます。

 私どもとしては、国は、これは市町村にやっていただきますけれども、都道府県と協力いたしまして、医療・介護サービスの充実のための支援はもちろんのことでございますが、例えば、好事例の収集でありますとか提供、あるいは各種マニュアル、ツールの作成、提供、あるいは都道府県単位で市町村セミナーなんかをやった場合に、国からも講師として出向いていくといったような、できる限りの協力、支援をしていきたいと考えています。

 また、厚生労働省内の支援体制づくりという観点から、昨年十月に厚生労働大臣、田村大臣を本部長とする医療・介護サービス提供体制改革推進本部というものを設置いたしました。同本部のもとに、関係局長から成る地域包括ケアシステム推進プロジェクトチームというものを設けまして、厚生労働省を挙げて、都道府県や市町村の取り組みを支援していきたいと考えております。

永山分科員 大変丁寧な説明、ありがとうございました。

 高齢者が住みなれた地域で安心して生活することを可能にするためには、御家族や御親族に頼るのではなく、必要なときに必要なサービスを受けられる仕組みをつくっていくことが大切だと思われます。そのためには、高齢者の状態に応じたサービス、夜間でも受けられるサービスなど、さまざまな在宅介護サービスの充実が重要であると考えますが、国では、在宅介護サービスの拡充に向けてどのような取り組みを行っているのか、厚労省から説明をお願いいたします。

原(勝)政府参考人 お答え申し上げます。

 高齢者の在宅生活を支え、在宅の限界点と呼んでいますけれども、これを高めていくために、在宅サービスを一層充実させることが重要であると認識をしております。

 具体的には、いろいろございますけれども、特に私どもとしてこれから力を入れたいと思っていますのは、日中、夜間を通じて、訪問介護と訪問看護を提供する定期巡回・随時対応サービスというのがございます。これは平成二十四年度からスタートしたものでございまして、現時点、二十五年の十二月時点で、全国で三百九十一事業所、利用者数でいくと五千人ということで、まだまだ少のうございますけれども、これを今後ふやしていきたいと考えています。

 また、通い、訪問、泊まりという三つのサービスを柔軟に組み合わせて、一つの事業所でそれを提供するという小規模多機能型居宅介護サービスというのがございます。これについては、現在、これは二十四年の十一月時点でございますけれども、全国で四千二百四十四事業所、利用者としては約七万八千人の方が利用されていますけれども、これもやはり在宅生活の限界点を高めるという意味では、大変重要な役割を果たしていると考えてございます。

 それから、あと、厚生労働省としましては、こういうサービスの実態やさまざまな事業の実施事例を市町村や事業者、ケアマネジャーの皆さんに周知する。特に、二十四時間定期巡回型サービスはできたばかりでございますので、こういったものの周知が必要だと思っておりますし、あわせまして、介護基盤の整備に対する財政的な支援ということで、例えば、二十四時間定期巡回サービス事業所を開設する際には、緊急時のオンコールの端末機器の補助といったようなことも国として財政支援をしておりますけれども、こういったようなものを通じまして、市町村の計画に沿った体制整備が進むように取り組んでまいりたいと考えております。

永山分科員 私は、高齢者が安心して生活するためには、医療サービスも欠かせないと思っております。病院に入院して治療が終わって退院するときの支援、自宅で生活しているときの急変時の対応、そして人生の最期の段階でのみとりなど、さまざまな場面において、在宅医療と介護の連携が求められると思います。

 今後、在宅医療・介護を必要とする高齢者が増加する中で、そのニーズに対応するためには、訪問看護の推進とともに、在宅医療・介護のさらなる連携強化が重要であると考えますが、厚労省の見解をお願いいたします。

土屋副大臣 今後、慢性疾患の罹患率や認知症の発生率が高い七十五歳以上の高齢者の増加に伴い、委員が言っているように、医療ニーズと介護ニーズをあわせ持つ高齢者の増加が見込まれるところでございます。

 また、病院完結型の医療から地域完結型の医療を目指す医療提供体制の改革の方向性を踏まえると、地域包括ケアシステムを構築していく上では、介護サービスなどの充実だけではなく、急性期医療から円滑な在宅への復帰を可能とする体制整備等が最も重要であると考えております。この場合には、在宅医療と介護の連携が、委員がおっしゃるように、特に重要になってくると考えております。

 今国会に提出した医療・介護総合確保推進法案において、在宅医療・介護の連携の推進については、市町村が実施主体となる地域支援事業の包括的支援事業として制度的に位置づけることとし、市町村の取り組みを支援することとしております。

 さらに、委員御指摘のとおり、高齢者の地域での療養生活を支えるためには、二十四時間三百六十五日、安定した訪問看護サービスを提供できることが重要であるということで考えております。

 そのためには、訪問看護ステーションが鍵になると思いますけれども、これが、今までの規模よりも大規模な訪問看護ステーションを推進していくことにより、みとりへの対応を強化するなど、効率的、効果的なサービス提供体制の構築を進めており、引き続き、訪問看護ステーションによる必要なサービス確保に努めてまいりたいと考えております。

永山分科員 御指摘のとおり、在宅介護の環境整備は非常に重要ではありますが、私は、それだけでは今後の高齢社会は乗り切れないだろうと思います。高齢者の状態、家庭環境、地域の社会資源の状況によっては、在宅での生活が困難な場合も多くあり、さまざまな理由で特養へ入所を求める人は依然として多いと考えております。

 そこで、地域包括ケアシステムにおける特養の役割について、厚労省はどのようにお考えになっていられるのか、ちょっと見解をお願い申し上げます。

原(勝)政府参考人 御指摘のように、高齢者の介護を支えていくためには、在宅サービスはこれからもっと普及していかなければいけませんけれども、やはり入所サービスとのバランスのいい整備ということが必要だろうと思っております。

 特別養護老人ホームでございますけれども、在宅での生活が困難である要介護者を支える施設として、高齢者が住みなれた地域において安心して生活できるようにする地域包括ケアシステム構築の上で、大変重要な役割を果たしていると認識をしてございます。

 また、特養につきましては、これは少し古い数字でございますけれども、平成二十一年十二月現在で、要介護度四、五、すなわち、かなり重度の方でございますが、四、五で、在宅で入所待ちをしている方、これらの全国調査をしたところ、六万七千人が待っておられると。最近はもっとふえているのかもしれませんけれども、やはり優先度が非常に高い方がいらっしゃいます。

 そういうことも考えますと、中重度の要介護高齢者を支える施設としての機能に重点化を図っていくことが必要ではないか、やはり特養という施設整備ですから、そう簡単にたくさん、どんどんどんどんつくれるものではございませんので、やはり優先度をつけていくということが必要ではないかと考えております。

 このために、今国会に提出している医療・介護総合確保推進法案におきまして、原則として中重度の要介護者、私どもとしては一応、要介護度三以上の方というふうに考えておりますけれども、こういう方に入所を限定することとしてはどうかということを提案させていただいています。

 この措置は、これから法律が施行されて新たに入所をされる方に適用するということで、既に入所をされている方についてはもちろんこれは適用いたしませんし、また、要介護度一、二の方であっても、例えば、認知症があって、おひとり暮らしで、在宅ではなかなか地域では暮らしていけないというような方もいらっしゃいます。あるいは、精神的な障害だとかいろいろな問題を抱えておられるということで難しい方については、これは市町村等に施設の入所判定委員会というのがございますけれども、そこで、やむを得ない事情があるということで特例的に認めるというふうな措置もあわせて考えていきたいと思っております。

 さらに、特養でございますけれども、重度の方の受け入れということもそうでございますが、先ほど言いました地域包括ケアシステムの構築を推進する観点からは、特養の有する資源、これはいろいろな専門的なサービスとか経験をお持ちでございます、こういう資源やノウハウを地域の中で有効活用することがやはり重要ではないかと考えております。

 実際、特養は、例えばショートステイ、特養がショートステイを併設しているのは、八割近くがショートステイサービス、いわゆる在宅サービスをなさっていただいています。また、訪問介護、ホームヘルプサービスも、五三・七%の施設があわせてそういう在宅サービスをやっていただいていますので、やはり、入所者に対してのみならず、在宅で暮らす重度の要介護者等に対しても、在宅サービスや生活支援サービス等の担い手として、地域におけるサービスの拠点としての役割も期待されているのではないかと考えているところでございます。

永山分科員 私も特養には積極的な役割があると考えておりますので、大変安心をいたしました。ぜひ、必要な施設の整備のためには、しっかりとした支援をよろしくお願いいたします。

 さらにもう一つ申し上げたいのですが、私の地元の特養では、みとりの段階で最終的に病院にお願いすることが多いと聞いております。でき得れば、ついの住みかと言われる特養においてもみとりをすることができる体制や人員を備えることが利用者のニーズに応えることになると思いますが、厚労省としてはどのようにお考えでしょうか。よろしくお願いいたします。

原(勝)政府参考人 ついの住みかというお話がございましたけれども、確かに特養にはそういう役割がございます。

 入所者の重度化が現在進展をしておりまして、御指摘のとおり、特養におけるみとりの体制を整備することは極めて重要であると認識をしております。

 このため、平成十八年度の介護報酬の改定におきまして、みとり介護加算というものを創設いたしました。

 これはどういうものかと申し上げますと、みとり期にある入所者について、本人や家族とともに、医師、看護職員、介護職員等が共同して、随時、本人や家族に対して十分な説明をしつつ、合意を得ながら、その人らしさを尊重したみとりができるように支援することを評価しようということで、死亡される三十日前から一定の加算をつけまして、施設側のそうした取り組みに対して応えていこうという制度でございます。

 こういった介護報酬での対応もございますが、さらに、平成二十四年度の、今度は医療の方で、診療報酬改定でございますけれども、在宅療養支援診療所等の外部の医師が特養でみとりを行った場合でございます。

 特養は、必ず常勤で医者がいなきゃいけないというものではございません。嘱託医は置かなきゃいけませんけれども、通常は医師は常駐していません。そういう意味で、外部のお医者さんの役割というのは大きいわけでございますけれども、こういう外部の医師が特養でみとりを行った場合について評価をするというようなこともしてきたところでございます。

 また、特養の入所者の重度化に伴いまして、医療ニーズの高い入所者への対応が一層求められることから、さらなるみとりの体制の強化ということも含めまして、特養における医療提供のあり方について、今後とも、引き続き検討してまいりたいと考えております。

永山分科員 以上の質疑で明確になってくることは、医療や介護に関する多くの関係者の方々の取り組みが地域包括ケアシステムの構築には不可欠であるということです。特に、介護の現場で話を聞くと、人材確保には介護職員の処遇改善が喫緊の課題であると感じるのですが、厚労省としては介護職員の処遇改善にどのように取り組むのか、お答えをお願い申し上げます。

原(勝)政府参考人 お答えを申し上げます。

 介護職員の処遇改善は、質の高いサービスを提供していく上でも、また人材を確保するという意味でも大変重要な課題であると考えております。

 このため、これまで、介護従事者の処遇改善に重点を置いた介護報酬改定、これを平成二十一年度の介護報酬改定で行いました。また、平成二十一年十月には、補正予算で介護職員処遇改善交付金というものを計上いたしまして、処遇改善をしていただく場合に交付金という形で財政支援をする、こういうような措置も行いました。

 また、平成二十四年の介護報酬改定では、二十一年の十月の措置は交付金でございますから、補正予算ですので、予算が終わっちゃいますと財政の手当てができなくなりますので、それでまた賃金が戻っては元も子もありませんので、介護報酬という恒常的な財政的な手当ての中で、その改善交付金等で措置した分を加算という形で入れ込んだという措置をいたしました。介護職員処遇改善加算と呼んでおりますけれども、平成二十四年介護報酬改定で対応をしてきたところでございます。

 その結果、平成二十一年度以降、介護職員の給与を、これは同じ人をずっと追ったわけではございませんけれども、一応比較いたしますと、約三万円相当の引き上げ効果があったと私どもは見ております。

 今後、社会保障・税一体改革の中で必要な財源を確保し、さらなる処遇改善に取り組んでいきたいと思っています。

 具体的に言いますと、介護報酬改定は来年の四月に予定をいたしておりまして、まだはっきりと決まっておりませんが、来年度、四月に入りますと、社会保障審議会介護給付費分科会というところがございまして、ここで年末の意見取りまとめに向けまして介護報酬改定の内容について御議論をしていただく予定にしておりまして、こういう中で処遇改善の問題についても検討してまいりたいと考えております。

 また、介護人材の確保を考えますと、あるいは介護サービスの向上ということを考えたときには、確かに賃金を上げていくということも大事でございますけれども、それ以外に、やはりこれはいろいろな、例えば離職率を低くするための取り組み、よく介護労働はきついとか言いますけれども、例えば介護ロボット等を導入して、できるだけ何とか介護職員の方の肉体的な御負担を軽くするような取り組みでございますとか、あるいは、キャリアパスと呼んでいますけれども、介護職員の方々に節目節目に研修を受けていただいて、みずからの技能、知識というものを高めていただいて、その専門性を高めていただく。そうしますと、それが高まれば、またそれに応じて給料が上がるというようなシステムになれば非常によろしいのではないか。

 あるいは、職場環境の整備改善というようなこととか、いろいろな観点から取り組んでいくことが介護職の方の確保につながっていく、処遇改善につながっていくというふうに考えておりまして、厚生労働省としては、総合的な観点から取り組んでいきたいと考えているところでございます。

永山分科員 人材の確保は非常に重要な課題ですので、ぜひよろしくお願いをいたします。

 話は少しそれますが、折しも先日、多くの日本人が活躍をしましたソチ・オリンピックが閉幕しました。そのオリンピックといえば聖火リレーでございまして、これは開催地ごとに引き継がれていくわけでございます。

 一方、冒頭に紹介しました介護保険サミットでもシンボルとして開催地に引き継がれているものがございます。それは、つえでございます。その名も「転ばぬ先の杖」でございます。ある自治体の住民の方が製作し、介護保険サミットのシンボルとなりました。これは、住みなれた地域で生き生きと安心した生活が送れるようにとの願いがこのつえに込められていると紹介されております。地域包括ケアシステムの構築とは、まさに転ばぬ先のつえをつくろうとしていると言えると思います。

 地域包括ケアシステムは、派手さはありませんが、団塊の世代が七十五歳以上の高齢者になる二〇二五年に向けて、高齢者だけでなくその家族も安心して暮らすために、国や都道府県、市町村など、総力を挙げ取り組むことが必要であるだろう、これは誰もが注目すべきキーワードと言えると考えます。

 そこで、最後に、今後、二〇二五年に向けて、主導的な役割を行う市町村に対する支援などを含め、地域包括ケアシステムの実現に向けてどのように取り組んでいくのか、厚生労働省の見解をお伺いいたします。

土屋副大臣 委員から、今、東松山市という名前が出まして、私、埼玉でございまして、また、私が議員になったのは平成八年なんですけれども、東松山市はそのころから非常に福祉に熱心な町でございまして、一度、私、夜中に行っていろいろ、二十四時間の在宅サービスの見学をさせていただいたことがあります。つえの話を聞いて、これは知らなかったので、非常にうれしく思います。

 今、地域包括ケアシステムについて、最初に、委員が、これを知らない人が多い、名前を聞いてもまだ周知されていないということをおっしゃいましたけれども、まさに徹底して周知していくことが大事だと思います。

 団塊の世代が七十五歳を迎える二〇二五年を目途に、重度な要介護状態となっても、できる限り住みなれた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、医療、介護、予防、住まい、生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築が求められると思っています。

 厚生労働省においては、地域包括ケアシステムの構築に向けて、今言いましたように、二十四時間対応の在宅サービス等の充実を行うとともに、先般国会に提出しました医療・介護総合確保推進法案においては、一つは在宅医療と介護連携の強化、そして二つ目が認知症施策の推進、そして三つ目が生活支援の充実強化などの取り組みをしっかりと進めていくこととしております。

 また、平成二十七年度からの第六期介護保険事業計画においては、各市町村において、二〇二五年を念頭に置いた地域包括ケアの取り組みを促すため、介護保険事業計画の記載事項として、サービス量などに関する中長期的な推計を新たに位置づけるとともに、新たに地域支援事業に位置づけられる在宅医療連携等の事業を含め、地域包括ケアの各要素の記載をより具体化していくこととしております。

 いずれにしましても、多分先生のところも、市町村の皆様、特に現場の職員の皆様が、地域包括ケアといってもどういうふうな形になるだろうという、形がまだ見えていないのであろうと考えます。

 今後、市町村、現場の方々の御意見を十分に伺いまして、全国の先駆的な取り組み事例の提供等も行いながら、市町村の取り組みを最大限に支援していきたいと考えております。

永山分科員 ぜひよろしくお願いいたします。

 時間も来ました。これで質問を終わります。ありがとうございました。

松本主査 これにて永山文雄君の質疑は終了いたしました。

    〔主査退席、関主査代理着席〕

関主査代理 次に、小熊慎司君。

小熊分科員 日本維新の会の小熊慎司です。

 まず初めに、ワクチンの接種についてお伺いをいたします。

 常任委員会の中でも、このテーマについてはこれまでもさまざま議論してきたところであるというふうに私も承知をしております。

 改めて、今、子宮頸がんの部分でも課題をちょっと抱えてはいますけれども、私としては、やはり、日本はワクチン接種に関しては世界の中ではちょっとおくれているというふうにも言われているところでもありますし、もちろん、いろいろなリスクを背負うわけですから、これは慎重に進めていかなければいけないところでありますけれども、国民の生命と財産を守るその責務としては、ワクチンの接種をより広く種類を拡大して、しっかりと対応していくということがいいのではないかというふうに考えます。

 まず、そういう意味で、総論的に、このワクチン接種、これを拡大していくべきだという考え方について、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

田村国務大臣 我が国は、世界と比して、まあ、世界、どこと比べるかというのはあるんですけれども、やはり、ワクチンが定期接種になっているそういう数というのは、決して各国と比べて多いというわけではありません。

 そういう意味からいたしまして、今年度からでありますけれども、新たに三ワクチンを定期接種化したわけであります。さらに、今、次なる候補に向かって、いろいろと厚生科学審議会の中で御議論をいただき、予算等々の対応もしなきゃなりませんけれども、これからもワクチン行政を進めるためにいろいろと施策を進めていかなければならないというふうに思っております。

 この子宮頸がんワクチンに関しましては、後ほど御質問いただけるんだというふうに思いますが、いろいろと、体に疼痛が出るというような、そういうお声が出てきたわけでございまして、昨年の六月にでありますけれども、積極的な国の勧奨、これは一時停止をさせていただいて、今、副反応検討部会というところでいろいろと調査をしていただいておるというような状況でございます。

小熊分科員 リスクゼロということは、これは世の中全てあり得るわけではないというのは承知をしています。ちょっと話題がそれるかもしれませんけれども、私は福島県ですから、いろいろな風評被害とか、これを払拭しようとしても、リスクゼロというのは、日本の国民は求めたがる嫌いがあるなというふうに非常に感じています。ワクチンにしても恐らくそうです。

 もちろん、この国会議員の中にも、川田龍平さんみたいに薬害エイズの被害者、そういう立場に立てば、これは慎重に取り扱っていかなければいけないということも必要ではありますけれども、逆に、日本の子供たちが接種をしていないことによって失われる命、もしくは重篤な状況になって障害を負ってしまうという状況を考えれば、ワクチン接種によって副作用で大変な思いをするのと病気とをてんびんにかけるということではないんですけれども、やらないことによってリスクが生じているということもしっかり受けとめなければならないと思っています。

 そういう意味では、大臣、年間、病気によってその数字がいろいろありますけれども、受けないことによってそれぞれの病気が生じてしまっている、そして命を失っている、障害を負ってしまっているというこの現状に関してはどう思われますか。

田村国務大臣 定期接種化という意味からすれば、定期接種化していない疾病に関して、年間、やはりかなりの数の罹患者がおられ、中にはお亡くなりになっているお子様方もおられるわけであります。

 もちろん、そういうこともございますから、我が国も、今後、幾つか今候補に挙がっておるワクチンに関しまして、定期接種化していく中において、技術的な課題等々、これを検討した上で、先ほど言いました財政的な対応ができるのであるならば、これは早急に定期接種化に向かって進めていきたいという中において、今御議論をいただいておるということでございます。

 まさに、委員のおっしゃられる意味、それは、ちゃんとワクチンというものを定期接種化できていれば防げるいろいろな疾病、また命というのもあるのは事実でございます、そのためにワクチン行政というのはあるわけでありますから。もちろん、軽々にやるわけにはいきません。しっかりと副反応に対するいろいろな調査もしなければなりませんけれども、ワクチン行政というものは、そういう中において我々は進めさせていただいておるということであります。

小熊分科員 命と財政的なお金の話を並行して語るというのは、余り、私も本当は好ましくないとは思うんですが、でも、限られた財源でありますし、青天井ではないので。

 財源という意味でも、もう大臣は御承知だと思いますし、常任委員会でもたびたびその辺も出ますけれども、有名な神谷先生は、医療経済効果ということで、定期接種を公費負担してやることの支出と、逆に、それによって病気が発症しない、その後の重篤な患者も出てこない、医療経済効果という意味でいえば、接種した方が、結局は医療費、間接医療費も抑えられるというデータもありますよね。

 そういう意味では、ワクチンの接種を拡大していった方が、救われる命、守られる健康、そして財政的にもいい。でも、先進国に比して、ほかの国に比して接種が拡大していかない。これだけ自明の理になっているのに、何で拡大できないんですか、何でここまで慎重なんですか。

田村国務大臣 今、次というところでいけば、例えば水痘でありますとか、あと、ロタ、B型肝炎、こういうようなワクチンがあるわけでありますけれども、どちらかというと、財政的なものはもちろん、医療経済からいけば、いいのはわかります。それは、ただ、長期的なタームの中の話だと思います。

 その財政的な手当てというのは、短期的に目の前をどうするんだという、財政的に目の前のお金をどうするんだということは手当てしなきゃなりません。

 それも必要でありますが、あわせて、やはり技術的な課題の検討というものがまだ十分になされていないというのが、厚生科学審議会の中で御議論いただいておる今の状況でございますので、そちらの方もしっかりと一定の答えが出てくれば、当然、我々としては財政的な手当てに向かって努力をしていくということになってくるわけであります。

 決して、財政的なことだけでやっていないというわけではございませんでして、その両輪がうまく回っていけば、当然のごとく、これからワクチン行政は、定期接種に向かって我々としても努力をしてまいる、こういうことであります。

小熊分科員 私も、これまでHibとかいろいろな、かかってしまった子供さんとか、その親御さんとお会いをしたことも何回かありますけれども、やはりこれは余り時間をかけてやるべきものではない。毎年毎年、罹患している方が出てきてしまっている。でも、それは、ワクチンさえ接種すれば防げるものも数多いわけですね。

 もちろん、いろいろな限られた条件というのはあります。財政的なものも含めて、あと、今の技術的な問題。そうすると、いいかげんなワクチンを接種するわけにはいきませんから、これは慎重に。慎重にやりながらも、やはり大胆に早くやっていかないと、この瞬間にも病気になっている子供たちがいる、失われる命があるということを考えれば、これはもう喫緊の課題としてスピードアップしていかなきゃいけないというふうに思っていますし、また、国際機関からも、日本はそれをもっとちゃんとやってくださいということを言われているわけですよ。

 ある意味、バブルがはじけてから経済がおかしくなっているとはいえ、これだけ繁栄した国家の中で、その繁栄の陰で泣いている子供たちがいる、親御さんたちがいる、失われた命があるということは、これは繁栄の中の不平等なんですね。これは紛れもない象徴ですよ。

 こういうことをしっかり対処していくのがやはり政治であって、これは本当にもっと、技術的なものも人的な制約もあるんでしょうけれども、やはり、先進国の中で数多くやっている、その全ての検討をするぐらいのことをやらないと進んでいかないというふうに思いますよ。

 子宮頸がんのときも、私も参議院から国会議員を出発していますから、御党の三原じゅん子さんの御活躍というのは、本当に尊敬に値する、政治家としてすばらしいことだったというふうに思います。一方で、子宮頸がんは対処したけれども、では、ほかの接種されていないものはどうなるんだ、それも一生懸命やらなきゃいけないんじゃないかということであれば、ああいった方々のものをやはり全てにおいて検討していく必要があるというふうに思います。

 今、具体的に検討しているのは三つと大臣は言われましたけれども、それから漏れている人たちの家族や本人たちの気持ちからすれば、私は、全部に検討に入っていってこそ、限られた財源、技術的な制約においてでも、全て検討ですよ、これはもう全てにおいてやっていくことが必要だと思うんですけれども、そういった方向性についてはどうですか。

田村国務大臣 ワクチン行政はかなり進み出しておることは事実でありまして、昨年、今年度からでありますけれども、今言われたHib、それから小児用肺炎球菌ワクチン、さらには子宮頸がんワクチン、この三つを定期接種化したわけであります。

 さらに、今年の十月をめどに、成人用の肺炎球菌ワクチン、そして今言った水痘、水ぼうそう、これを定期接種化するということで、今、財政的な措置を予算でお願いさせていただいておる。その次のおたふくだとかロタだとかあるわけでありますが、それに関しては、今、技術的な検証等々、課題を検証しておるわけでありますが、これだけばっと進み出した。

 実は、厚生科学審議会の中の組織も、今までよりもやはり力を入れなきゃいけないということもございまして、予防接種・ワクチン分科会という形で新しく改組をさせていただいて、この予防接種行政に対して力を入れていこうという、そのような体制を我々も組ませていただいておるわけであります。とはいいながら、やはり技術的な課題に対する検討はしなきゃいけないわけでありますけれども、それも含めて、予算もしっかりと我々は要求してまいります。

 さらにスピードを速められるように、ワクチン行政のおくれておる部分を早く取り戻せるように努力はしてまいりたい、このように思っております。

小熊分科員 公明党さんの中にも、ワクチンで有名な、女性の議員でいますけれども、ワクチンのマドンナと言われている方です。

 本当に時間のかかる部分もあります、本当に慎重にやらなきゃいけないですから。

 そういう意味では、順次やっていくという感じではなくて、ぜひ田村大臣、優秀な大臣ですから大臣のときに、ワクチンの大綱というかロードマップというか、基本方針を、ワクチン先進国宣言とかでも出して、それは順次、具体的にやっていくのはそういうことになるんでしょうけれども、ある程度の将来的な方向性、このワクチンはこのぐらいのスパンでやっていきますよというような、しっかり国民の皆さんにお示しをできるような、指針があるのはわかるんですが、一個一個親御さんたちに伝わるような、そういうワクチン大国宣言みたいなもの、先進国宣言みたいなものを出していくべきだと思うんです。

 もちろん、具体的な検討はそれぞれになると思います、現実論からすれば。でも、全てのワクチンに対して、現時点、あと将来的な取り組みについての言及、検討、このロードマップ、それは具体的なものじゃなくてもいいというか、その方向性だけでも出していくべきだと思うんですけれども、どうでしょうか。

田村国務大臣 それも含めて、予防接種・ワクチン分科会のもとで、予防接種に関しまする基本計画というものをつくるべく、今もう大分できてきておりますけれども、計画をしておりますので、そういうところで、今委員がおっしゃられたような、ワクチン行政、これからの進む方向性、そういうものも含めてお示しをさせていただき、国民の皆様方が、日本のワクチン行政はこういう方向で進めるんだなということが御理解いただけるような、そういうものをつくってまいりたい、このように考えております。

小熊分科員 そういう意味では、できればワクチンごとに、このワクチンについては五年以内に定期接種について、まあ、しますというよりは、どうするか結論を出しますということは言っておかないと、下手に希望を持ってしまったり、全然不信が出てきたりということがありますから。やはりある程度の検討の時間を区切ってやらないと、これは進まないし、かけ声倒れで終わりますから、ぜひそこは、大臣、頑張っていただいて。

 幸せの結果はそれぞれの努力だと思います、基本的には。だけれども、命はやはり平等ですから。そこを踏まえて、ぜひ今後とも取り組んでいくことをお願い申し上げて、次の質問に移ります。

 少子化対策です。

 昨年の安倍総理の国連演説でも、女性の社会進出、これを国際的にも支援していくということで、あれはいい演説だったなというふうに思います。

 さはさりながら、ただ、日本の場合は、やはりまだまだ女性の社会進出が、いろいろなデータを見るとおくれているというところがありまして、少子化対策、これは私の、もう田舎ですから、なかなか保守的な方だと、女性は家に入って子供を産み育てるのが一番幸せなんだとか、そういう価値観もあるのはあるんでしょうけれども、やはり政治というのは、私は、結果を担保するのではなくて、機会均等、機会再配分ですよ。どのような条件であっても、努力して幸せになる道を閉ざされない、女性とか男性とかそういうことでこだわらない、家が金持ちとか貧しいとかでもこだわらない、これをやるのが政治だと思います。

 政治家の光を当てるという言葉も、一面正しいんですけれども、私は意外と嫌いで、それはやはり上から目線なんですね。国民一人一人が光になればいいんです。それを遮るものがあれば、政治がそれをのけていくということです。

 という意味では、やはり日本の社会、女性というだけでいろいろな不利益をこうむっているというのは現実としてあります。

 少子化の部分でも、厚生労働省は非常にいいデータを公表していまして、これは私、地方議員の時代からも使っているんですけれども、二十一世紀成年者縦断調査、これで見ると、初期のころから、結婚した夫婦が多産になるのはどういう傾向があるか。もちろん収入とかいろいろあるんですけれども、一番の肝は、男性の育児参加がある家庭ほど多産という傾向にあるんですね。これは直近のデータでもそうなっていますし、初期のころのこの厚生労働省の調査でもそういうふうになっているんですよ。

 私は、大臣にも提言書を昨年出しましたが、イクメン議連というのにも入っていまして、私も三人の子持ちなんですけれども、ただ、育児参加をちゃんとしているかどうかというのは妻に聞いてみないとわからないんですが、自分ではやっているつもりなんですけれども。

 やはり、子供を産むということに関しては、これは女性、我々男性ではできませんけれども、育てるということに関しては、これは男女ともにやっていかなければいけませんし、その比率がどうだかというのは、それは個々人の家庭の勝手なんですよ。必ずフィフティー・フィフティーにしろということではないです。一対九でもいいし、二対八でもいいし、それはその家庭によって決めればいいんですけれども、やはり男性の育児参加がゼロということは、これは少子化対策を阻害するものだと思うんですね。それでも産んでいる家はありますけれども、傾向として言えばそういうことです。ということで、データもちゃんと出ているわけです。

 イクメンをふやして少子化をなくす、こういう方向について、大臣、自分の経験も踏まえて、お伺いしたいと思います。

田村国務大臣 私もイクメン議連の、おととしまで共同代表をやっておりましたので、よく委員のおっしゃられる意味はわかります。

 私も、実は、自分の反省のもとで代表をさせていただいた。こういう仕事をやっていて、平日、地元に帰れないという中で、育児がなかなかできなかったという反省もありました。やはり、その分だけ、うちの奥さんに大変負担がかかったんだと思います。

 国として、やはりイクメンを応援していくということで、イクメンプロジェクトということで進めておりまして、当然、イクメンを実施している人、それからイクメンを推奨している企業、こういうところに対してアワードを組んで表彰するということもやっておりますし、そもそも育児休業の取得率が非常に男性は低いわけでありますから、これをやはりもう少し率を上げていかなきゃならぬ。

 来年度に向かって、雇用保険、育児休業給付、これに関しましても、男性も女性も半年六七%というのは、実は頭の中で理想で描いているのは、それは、やれるかやれないかというのはなかなか難しいと思いますけれども、お母さんが半年とってお父さんが半年とれば両方の給料が六七%ずつ取れるというような、そういう一つの設計のもとに、このようなことを今お願いいたしておるわけでございます。

 こういう形の中だけではありません。もちろん育児休業だけではなくて、子供が小さいうちは、育児休業法の中において短時間勤務というものの義務づけをお願いしておるわけでありますから、そういうことがしっかりと要望できる、そしてまた、企業側がそれをしっかりと要望に対してかなえられる、そういうような環境も整備していかなきゃならぬわけであります。そういうものに対しての助成等々も含めてでありますけれども。

 そういうことを進める中において、おっしゃられるとおり、男性も普通に育児をしていただいて、育児を夫婦で分担していただける、そういう社会をつくることが、これは子供がふえていく解決策のうちの一つだというふうに思っておりますので、これからもそのようなことが行えるように、我々厚生労働省はしっかり施策を進めてまいりたいというふうに思っております。

小熊分科員 大臣が言われたように、本当はイクメンという言葉すらなくならなきゃいけないんです、特別なことじゃないということで。最終的にはですよ。

 いろいろな支援制度とかも必要だと思います。男性の育休取得率というのも一つの指標だと思うんですけれども、ただ、これはやはり、先ほど最初に言ったとおり、ある意味、日本の文化的な、社会的な背景を言えば、価値観を変えていかなきゃいけない、その戦いだというふうに思います。

 大臣も地方ですから、中小企業がいっぱいあって、五人ぐらいの会社で育児休暇といったら、会社は成り立たないわけですよ。人で会社が経営されている。大企業だったら、うまく人を回すというのはありますけれども。

 そういうことを考えれば、厚労省だけではなくして、やはりいろいろな省庁と横断的にやっていかないと、企業風土を変える、まさに価値観の変容です。

 あと、やはり、なかなか日本の中では、女は家に入って育てればいい、三歳まではお母さんがそばにいればいいと。これは、全然、何のエビデンスも本当はないんですよ。子供に親がかかわるなんというのは、これは大人になるまでかかわっていかなきゃいけないんです。乳幼児には乳幼児なりのかかわり方、小学生には小学生のかかわり方、それぞれ大事なんです、かかわり方。

 そういう意味では、価値観を変えていくというのは、実は容易ではないというふうに思っています。ですから、育児休暇のとり方は一つの指標ですけれども、そういう価値観をどう変えていくか。これは本当に壮大なことであって、では具体的にどうするんだといっても、地道な努力を大変積み重ねなければいけないというふうに思います。

 あと、この調査でも、働いていても実はいいんですよ。せいぜい休みの日ぐらいは育児に参加している家庭は、まあまあ産まれているんですよ。休みの日でさえお父さんがパチンコに行っちゃう、ゴルフに行っちゃう。そうじゃないだろうと。

 それを言うのは、制度じゃないんですよ。この男の価値観を変えなきゃいけないんですよ。そのためにどうやっていくかなんです。そうすると、これは企業の支援とか制度じゃないんですね。ここの部分をちゃんと捉えてやらないといけないんですよ。ウイークデーに休まなくても、土日にかかわっている家庭があれば、それは多産になっています。そこは制度でいじれないんですよね、まさに生き方の問題ですから。

 でも、政治がそこまでどう立ち入るかというのはなかなか大変だとは思うんですけれども、そのぐらい変えないと、本当に少子化というのは直らないということですよ。

 少子化の根本原因、いろいろなのがありますけれども、私は、男性が一番の主犯だと思っていますから、これは。そこは、大臣、本当に重いと思います。そういう意味、その人生観まで問いかけていくということが、まさにイクメンを広げるということですから、その覚悟で、最後、答弁をお願いします。

田村国務大臣 ちっちゃい企業、中小零細、なかなか育児休業を取得できないじゃないかという話がありました。

 政治家の事務所というのはちっちゃいですよね。数人でやっている。もちろん、その中で、女性、特にうちの場合はちょうど出産適齢期の女性なものでありまして、男性は比較的高齢者の方が多いものでありますから、うちは、女性といったって、もう中心的な役割で働いていて、その女性がいなかったら中の事務は回らないという状況でありますけれども、東京も、それから地元も、育児休業をとっていただきました。

 後は大変でしたけれども、やはり、かわりに誰か入って、ちゃんと教えていっていただければ、何とか回るんですよね。だから、やってみないとこれはわからないと思ってやりましたら、ちゃんと回りました。ですから、そこは、いろいろな問題もあるんですけれども、とりあえずやっていただく、やっていただかない、つまり、そこを一歩踏み出してもらえるかどうかなんだと思います。

 ですから、そういう意味では、いろいろな好事例集を含めて、実は、厚生労働省のホームページの中に、好事例集を出せと私の方もしっかり申し上げまして、好事例集が載っております。中には、ちっちゃい企業向きの好事例もあります。そういうものを御利用いただければありがたいなというふうに思います。

 ただ、言われたとおり、男性の意識が変わらなければならない。だから、イクメンと言って、イクメンという言葉がなくなればこの問題は解決するんですけれども、しかし、あえて何でイクメンと言わなきゃいけないかというと、PRするために、これが普通になるように、どんどんイクメンを言い続けるしかないと思って我々は申し上げているわけでありまして、委員もそのうちのお一人でありますから、十分わかっておられると思います。

 仕事をやっているんだから、土日ぐらい休ませろよ、ゴルフさせろよというお父さんの気持ちがわからぬわけでもありませんが、お母さんはずっと育児をやっているわけであります。仕事を抱えながら育児をされているお母さんはずっとやっているわけでありまして、それを考えれば、お父さんだって休みのときに育児を手伝うというのは、私は当然であろうと思いながら、私も、地元に帰って、自分自身、後援会活動をやって、なかなか育児ができていなかったということに反省もしながら、今はなるべく、大きくなった子供でございますけれども、いろいろな相談に乗るようにはいたしております。

小熊分科員 時間が来ましたので、とにかく、これはもう与党、野党関係なく大事なテーマでありますから、引き続き、このイクメン議連と政府の三役の皆様も含めて共闘していくということを宣言いたしまして、終わります。

 どうもありがとうございました。

関主査代理 これにて小熊慎司君の質疑は終了いたしました。

 次に、三谷英弘君。

三谷分科員 みんなの党の三谷英弘です。

 本日は、朝九時からそして八時半まで、本当に長時間にわたっての質疑の対応だと思います。その意味で、大変だと思います。敬意を表したいとまずもって思います。

 また、昨日は、恐らく官僚の皆様も、質疑の準備ということに本当に遅い時間まで御尽力されたんだろうというふうに思っております。その意味でも、皆様の御尽力に心から敬意を表するとともに、本当に感謝を申し上げたいというふうに考えております。

 それでは、本日いただきました時間、三十分ございますので、質問をさせていただきたいというふうに思います。

 厚生労働省関係ということでございます。大きく三つのテーマ、何とかお話を伺えればというふうに思っているんですけれども、質疑通告させていただいた中で、ちょっと順番を変えさせていただきまして、二点目から伺っていきたいというふうに思います。

 二点目は何かと申しますと、いわゆるレーシックの問題でございます。

 レーシックというものは、その名前は聞かれたことがあるかと思いますけれども、視力が悪化をした、近視になったときに手術をして、そしてその中で視力を矯正するんだというような手術。その話だけ聞くと非常に夢のような手術だというふうな印象があるようには思いますし、また実際、レーシックを受けられたという方も非常に多かったというふうに聞いております。

 ただ、その一方で、何か、ちまたで言われているほどいいものじゃないんじゃないのというような、レーシックの被害を受けたという方も残念ながら少なからずネット上にいるというようなことを聞きまして、これは実は神学論争みたいになっていたんです。

 つまり、レーシックはいいぞいいぞと言う側は、いわゆるレーシック業者がそういった宣伝をする、レーシックは危険だと言うのは、眼鏡業者とかコンタクト業者がうその情報を流していると、どっちがどうなんだというような、そういった話がずっと続いてきたというところもありまして、実は、去年の消費者問題特別委員会で、私が、レーシックについて実態を把握していただきたいとか、実態の調査をしていただきたいという質問をさせていただきました。そのときには、厚生労働省さん、消費者庁さんの双方に、実態の状況の認識、そして、それについての対応というものを伺ったわけでございます。

 残念ながら、そのとき、厚生労働省さんのお答えとしては、このときには丸川大臣政務官でございましたけれども、レーシックの手術の実数を知らない、また有害事象の件数も把握していない、重篤な事故の報告を義務づけている一部の医療機関からはレーシック手術に関する報告を受けていない、そういった重篤な事故の情報という報告を受けていないというようなことをお答えいただきまして、また、平成二十一年の感染性角膜炎の院内感染の事例に関して、厚生労働省として通達を出して、ガイドラインの周知徹底を図るように依頼したという回答をいただいたわけでございます。正直、その時点ではそれにとどまっていたというような状況でございました。

 その後、国会の閉会中ですけれども、いわゆるレーシック難民の会、被害者の会の方々と共同で情報収集に当たりまして、意外に多くの被害が出ているというような情報が集まりましたので、その情報を改めて、国会外ではありましたけれども、厚生労働省さん、そして消費者庁さんに情報提供を行わせていただいた。

 前置きが長くなって済みません。そうしたら、昨年の十二月に、レーシックの被害の実態というものが、消費者庁の調査結果が公表されることによって明らかとなったというわけでございます。手術を受けられた方のおよそ四割を超える方々が何らかのふぐあいを訴えているというようなことが明るみに出たわけでございます。

 それを受けて、本日、厚生労働省さんに対して質問をさせていただきたいというふうに考えております。

 去年の段階ではそういったことは知らないというような状況でしたので、それに対して何らかの対応をするということは事実上あり得なかったんだろうというふうには認識をしておりますけれども、四割という方々が何らかのふぐあいを受けているということを訴えているという調査結果を踏まえまして、厚生労働省として何らかの対応をされるのか、またはされてきたのかということについてお答えをいただきたいと思います。よろしくお願いします。

赤石大臣政務官 委員の指摘のとおり、レーシック手術に関しましては、さまざまな問題が発生したことは事実だったろうというふうに思っております。

 それで、レーシック手術については、手術経験者を対象とした消費者庁のアンケート調査が昨年行われておりまして、この調査においては、全部でレーシック手術経験者六百人及びレーシック手術希望者六百人を、平成二十五年の十一月、これはインターネットで調査をしておりまして、レーシック手術を受けた消費者の四割以上が症状やふぐあいを感じているというふうな報告を受けております。

 厚生労働省としましては、この調査を受けまして、レーシック手術に関する危害事例について消費者庁から報告を受けておりまして、この報告に基づき、関係する自治体へ情報提供するとともに、医療広告規制に違反しているおそれのある事例については、医療法に基づき適切な措置を講ずるよう自治体に依頼したところであります。

 また、日本眼科学会、日本眼科医会においても、消費者庁の調査について、学会誌や学会ホームページでの掲載による周知、あるいはレーシック手術のガイドラインの周知を行っているところであります。

 厚生労働省としましては、引き続き、消費者庁と連携をとって適切な対応をしてまいりたい、このように思っております。

三谷分科員 ありがとうございます。

 そういう意味では、厚生労働省としても周知徹底を図る、何らかの指導を行っていくという意気込みは今お話しいただいたと思うんですけれども、具体的な何らかの、例えば、実際の医院の広告についてこういった問題があるというような行政指導を行ったですとか、各都道府県レベルにおいてそういったことがなされたというような実例について情報をお持ちでしょうか。

赤石大臣政務官 これは地方の自治体に対して周知をしているところでありまして、それからの報告についてはまだ受けていないということでございます。以上でございます。

三谷分科員 インターネット等を見ていただくと、今でも非常に、レーシックというのはある意味夢の手術。もちろん、私も、レーシックそのものがアプリオリにだめだとか、危険だからやるべきではないというようなことを申し上げるつもりではなくて、きれいなバラにはとげがあるではないですけれども、いいものには必ずそういう意味ではリスクがあるんだという、そのリスクの周知なり徹底が今まで余りなされていなかったのではないかというふうな懸念を持っているわけでございます。

 その意味では、今でもインターネット等を見ていただくと、そういうリスクの周知、こういったところもあるんですよということについて、余り書いてあるというような、この十二月を境にすごく変わったというような状況を認識していないものですから、今回の調査結果が出たことによって、どれぐらい変わっていくのか。これが変わらなければ、すごい労力をかけていただいて出したレポートというものが全くもって宙に浮いてしまう、全く無意味に終わってしまうということになるわけですから、ある意味、何とか前向きに、形に残すような形で対応していただきたいというのがお願いとしてあるわけです。

 そこでなんです。先ほどの丸川大臣政務官のお答えの中でも触れられておりましたけれども、平成二十一年の感染性角膜炎の院内感染の事例というものがあったときに、これは一部で、その当時の新聞等で非常に騒がれた事例ですけれども、通達を出して、周知徹底をするようにというような形にしたんですね。

 事実上、ちゃんと周知徹底するようにというふうに口頭で言うというのは、もちろんそれはされているんだろうと思うんですけれども、それを形にして、厚生労働省の意見として改めて周知徹底を促すというような、そういった対応というのはとれないものかと考えているんですけれども、その点、いかがでしょうか。

赤石大臣政務官 御指摘の件はよくよく承知いたしましたので、今後前向きに厚生労働省として取り組んでいきたい、このように思っております。

三谷分科員 ありがとうございます。

 本当に今まで、レーシック難民、なぜ難民かというと、なかなかその被害の実態というのは表に出てこなかった。そういうことで、お医者さんに行っても、気のせいじゃないのというふうに相手にされない、目が痛いというのはなかなか数値であらわせるものではないので。そういったところから、心の病とか心身に不調を来すというようなこともあった。

 あともう一つ、自由診療で自分の体を傷つけているんだからそれは自己責任でしょうというような、表現が不穏当であったらあらかじめおわびしたいんですけれども、ある意味、相手にされないというような状況もあったかというふうに聞いているので、その辺の苦しまれている方々へのケアというものも含めて、改めて、こういったものに対してリスクがあるんだというようなことを周知徹底を図っていただきたいというふうにお願いを申し上げます。

 そこで、この点についてもう一つ質問をさせていただきたいと思います。

 よく保険診療と自由診療というものがあるというふうに理解をされていると思うんですけれども、保険診療とは何かといったら、保険がきく診療だ、診察行為だというふうになって、自由診療とは何か、保険がきかないというふうに思われる方もいらっしゃると思うんですけれども、多分それはちょっと違うんだろうなというふうに思います。

 いわゆる自由診療とは何なのかということを、その意味を念のため確認させていただきたいと思います。

赤石大臣政務官 今委員指摘のように、自由診療というのが実際に行われているわけでありまして、厚生労働省でそういう認可をしているのは先進医療ということで、それは保険の中に抱合されていますけれども、御指摘の自由診療とは、公的医療保険が適用されない診療であり、医療法において、全ての医療機関は安全管理のための体制を確保しなければならないことと定められているものの、自由診療における治療行為そのものは、医師の裁量で行われるものであり、特別の制限等は存在しておりません。

 自由診療においては、医師等による適切なインフォームド・コンセントのもと、患者がその診療の安全性や有効性について理解して医療を受けていただくことが重要である、このように考えております。

三谷分科員 今まさにお答えいただいたとおりなんだろうと思うんですね。自由診療というのは、ただ単に保険がきかないということではなくて、有効性だけではなく安全性についても、それは厚労省なりがオーソライズをしているというものではなく、しっかりとそういうリスクがあるんだということを十分に理解して、インフォームド・コンセント、同意をした上で受けていただくということに尽きるんだろうというふうに思っております。

 その意味で、保険診療ではないものに対して、しっかりお金を出して、理解をした上でそういう自由診療を受けていただくということは、私自身はそれは個人の自由だと思うので、やっていただければと思うんですが、一点、ここでちょっと気になることがあります。

 それは何かと申しますと、今回のいわゆるレーシックの手術で使われているエキシマレーザーとか、そういったものは、専門的な話で済みません、医療機器として承認をされているんですね。

 要は、自由診療ということからすると、本来的には有効性なり安全性というのは自己責任だというようなことが一方である中で、医療機器として厚生労働省が承認しているということからすると、その安全性については厚生労働省がオーソライズしているというような、ある意味、印象を与えてしまうわけです。自由診療なんだけれども、厚労省が認めているんだ、だから安全なんだというような話があるわけです。

 そういう意味では、この自由診療と医療機器としての承認という関係性をもう少し明らかにしなければいけないのかなというふうに思っております。

 個別にちょっと伺いたいと思うんですけれども、今回、医療機器として、いわゆるエキシマレーザーと言われる医療機器、もちろんこれは承認されているというところなんですが、その承認の過程、プロセスを見たら、確かに、そのプロセスにおいてはほとんどふぐあいを訴えている方が出てきていないんですよ、医療機器として承認される際のプロセスの中では。

 今回、消費者庁さん、もちろん、その過程には厚生労働省さんもかかわったというふうに理解はしておりますけれども、レポートでは、四割の方がふぐあいを受けているということを言っている。この大きな差は何なのかということを改めて見直していく、または、その違いがどこから来るのかを検討されるということに取り組まれる御予定を持たれるかどうかについてお答えいただきたいと思います。

今別府政府参考人 医療機器につきましても医薬品と同様でございまして、審査をして承認をした後も、市場に出てからの情報は、格段に使用者もふえますので集めております。

 薬事法に基づきまして、医療機関でありますとかあるいは企業から、医療機器のふぐあい、これは健康被害あるいはそのおそれを含めて、報告が国ないし医薬品医療機器総合機構に上がってくる、そういう仕組みになっております。

 したがいまして、今先生から御紹介をいただきましたレーシックの機器について、その機器に起因をする健康被害の報告は現在のところ上がってきておりませんが、今先生の御指摘も踏まえて、引き続き注視をしてまいりたいと考えております。

 先ほどの四割の話ですが、これは果たして医療機器に起因をするのか、あるいは手技の問題なのか、あるいは患者の適性がどうなのか、いろいろな要素があると思いますが、いただいている報告の中では、そこまでの分析はできないのではないかというふうに考えております。

三谷分科員 まさに、どんなに適正な機器も使い方を間違えてしまえばそういった重篤な結果になるというのは、それは当然のことですから、そういったものが全てだというふうな考え方もあるでしょうし、いや、そうじゃないんだ、ちゃんと使ってもそういった重篤な結果が出るんだ、いろいろな意見があるんだろうというふうに思うんですね。

 そういう意味では、今回の、昨年十二月の消費者庁の結果だけを見て、これが危険だとか安全だとかいうことではなくて、この問題については、しっかり厚生労働省さんとしても、去年の消費者問題特別委員会の場では若干、自分のことではないし、他人事だしぐらいな印象を、正直、質問させていただく側としては受けたんですけれども、これは医療機器の承認に対する信用性ということにも絡む話ですから、ぜひとも主体的に取り組んでいただきたいと思いますが、その点について、大臣、よければ一言お答えをいただきたいと思います。

田村国務大臣 きょうは勉強をさせていただきました。そういうような実態があるということを改めて認識させていただいたわけであります。

 いずれにいたしましても、四割からのふぐあいがあるというような声もあるわけでありまして、そこのところは、我が方といたしましても、どのような状況なのか、いろいろと実態等々は確認していく必要はあるであろうなというふうに思います。

 ただ、どのような形でこの実態を確認するのかというのはなかなか難しいところもございます。一方で、自由診療という部分のものもあるわけでありまして、それぞれ、今委員がおっしゃられたとおり、御本人とそれから医療機関との自由な契約のもとにおいて医療を受けられているという部分もあるわけでありまして、そこら辺のところの整理もしっかりしながら、一方で、何かあった場合にはやはり、それは日本の医療でありますから、厚生労働省から、たとえ自由診療であったとしても、そこは注意喚起も含めて、所管をしておるわけでございますので、どのような形で対応できるか検討してまいりたいというふうに思います。

三谷分科員 ありがとうございます。ぜひともよろしくお願いいたします。

 それでは、次の論点に移らせていただきたいと思います。

 先日、予算委員会の場で若干、若干というのもおこがましいですけれども、質問させていただいた、いわゆるJ―ADNIと言われる、アルツハイマーに関する調査研究の事案について若干伺っていきたいというふうに思います。

 先日は、この情報提供をされた職員が、情報提供してきた方の氏名というのを、研究の担当者にそのままメールを転送することによって氏名を開示されてしまったというようなことについてもろもろ伺わせていただいたんですけれども、その際には、公益通報者保護法についてのガイドラインには抵触しない、そして、研究活動の不正行為への対応に関する指針にも特段違反しないというようなことをおっしゃっていたかと思うんですが、その後、具体的に何らかの処分なりを氏名を開示された方にする、もしくはする方向であるというような状況になっているのかどうかについてお答えいただきたいと思います。

田村国務大臣 今のお話ですが、公益通報者保護法、これにのっとった厚生労働省の訓令、これには、今の文面でいきますと、そもそも公益通報ではない、それに類似するものでもないという判断でございますので、そういう意味では、これには特段触れない。

 一方で、指針に関しては、書きぶりが非常にわかりづらいんですけれども、本来、もらった情報を漏らすということ自体はひっかかってくるわけであります。あわせて、国家公務員法百条第一項、これは秘守義務の部分でありますけれども、これには当然ひっかかるわけでありまして、当然これは処分の対象でございます。

 ただ一方で、今、御承知のとおり、実態がどうなのか。つまり、この研究はおかしいというふうにお訴えになられたつもりである研究者の方と、訴えられた側というか、その対象者である方との間に意見の相違があって、そこに合理的な、科学的な合理性の根拠がないと我々はまだ思っておりまして、それを確かめるための調査が東大主導で行われるわけでありまして、この中身を見て、どのような社会的な影響があったかということをあわせて、この情報を漏らした者の処分を検討させていただきたいと思っておりますので、まずは東大の調査結果を待って、それを踏まえた対応をさせていただきたいというふうに思っております。

三谷分科員 ありがとうございます。

 何らかの対応、処分なりの方向性でというふうなお話ですので、この話を聞けば、霞が関で働かれている方々も、内部告発をしようかなというふうに思われている方がもしいらっしゃれば、今回の件をきっかけに、ちゃんと自分の氏名というのは守られるんだというふうに心強く思われる方もいらっしゃるんだと思うんですね。

 そういう意味では、その対応というのは聞いていてうれしく思っておりますが、その一方で、今回の事案、研究なりのデータに改ざんがあったかどうかという話、もちろん、あったらよりひどい話になるということではあるんですけれども、仮に改ざんがなかったとしても、やはり情報を、そういう声を上げた人の氏名が当事者に伝わってしまったら困るわけですから、恐らくは、この二つは切り分けて、処分なら処分を先行させることもできるのではないかと思うんですけれども、その点について改めて大臣の認識を伺いたいと思います。

田村国務大臣 何らかの処分はいたします。

 ただ、今も申し上げましたとおり、委員もおっしゃられました、もし改ざんがあれば、社会的な影響はもっと大きいわけでありますから重い対応をしなければならぬわけでありまして、これは私、記者会見でも申し上げておりますが、処分をすることを前提に、今、実態がどういうようなものであったかというのを待って、それに応じた処分をさせていただこうということでございますので、処分をするということは、もう我々としては判断をさせていただいております。

三谷分科員 ありがとうございます。

 この点に関して、もう一点だけ伺いたいと思います。

 先ほど答弁いただきました公益通報者保護法に関するガイドラインの件ですけれども、本当に公益通報に該当するかとか、いわゆる告発に該当するかというような判断を個人に委ねるというのはなかなか難しいところもありますし、これは予算委員会の場でも申し上げたことだったんですけれども、被害届なりなんなりを警察が受理するまでにも、何回か情報のキャッチボールをして、どういった情報があるんですかとか、どういった被害を受けているんですかとか、何かおかしいと思いますというものを被害届に育て上げるというか、そういった努力を警察の方なりはされているんだろうというふうに思うんですね。

 そういう意味では、今回の公益通報者保護法に関するガイドライン、これ自体の所管はもちろん消費者庁さんではございますけれども、それを訓令という形で落とし込まれているという中で、そういった情報のやりとりをしていきますよというようなことを含めて、ガイドライン上に、その訓令上に何らかの形で明記するなどの対応というのは、改正なりなんなりというのはしていただけないものかと思うんですけれども、この点、いかがでございましょうか。

田村国務大臣 今般、公益通報者保護法においての、消費者庁のもとでのガイドライン、これに基づく我が省の訓令、これには触れなかったと申し上げましたが、触れなかったことがよかったわけではなくて、当然、やったこと自体は問題があるわけでありまして、今現状はこういうような書きぶりになっているので触れないということだけを申し上げたわけであります。

 でありますから、問題意識は我々も十分に理解いたしておりますので、これは一義的には消費者庁になるわけでありますが、相談をさせていただきながら、消費者庁の見直しの中において、こちらとしても対応させていただきたい、このように思っております。

三谷分科員 ぜひともよろしくお願いいたします。

 残る時間、三つ目のテーマに移らせていただきたいと思います。

 三つ目のテーマは、これは先ほどの二つの話に比べると極めて抽象度の高い話になってしまうんですけれども、雇用の流動化について伺いたいというふうに思います。

 最近のいわゆる就職氷河期というものを見ましても、大学生なり新卒の方なりが就職活動をするという中で非常に厳しい環境に置かれているということは、それは誰も否定できないのではないかというふうに思います。

 大企業に正社員として就職できればいわゆる勝ち組になる、一方で、大学を卒業するときに正規社員になり損ねた、これは人生において負け組になるというような考えのもと、いわゆる就職浪人をして一年間卒業をおくらせるだの、そういった対応をして何とか正社員になろうというような努力をされている方々が数多くいるというのもまた事実でございます。

 その中で、やはり大学を卒業するときに一斉に就職活動をするというような慣行というもの自体を何とか見直していくべきなのではないかというふうに考えております。ある意味、正社員というものが既得権益化しておりまして、非正規社員との大きな断絶があるというところをどういうふうに解消していくのかということはしっかりと検討していかなければならないのではないか、その問題意識自体を私は申しているわけでございます。

 これを解消する一つの手段として、いわゆるILO憲章の前文にも記載されているとおり、同一労働同一賃金というものをしっかりと徹底していくということが一つの解になるのではないかと考えておりますけれども、この原則というのは日本でどの程度徹底されているというふうにお考えでしょうか、お答えいただきたいと思います。

佐藤副大臣 今、三谷委員御指摘のとおり、厚生労働省としても、労働条件の平等な設定という観点に立てば、今おっしゃいました同一労働に対して同一賃金が支払われるべきもの、そのように考えております。

 ただ、日本の雇用実態というものを見たときに、何をもって同一労働とするかを明確化するためには、個々の労働者の具体的な職務等の内容を比較しなければならないことになるんですけれども、ただ、我が国では、職務の限定のない働き方というのが実態としては主流でありまして、職務の範囲が不明確なことが多いということが一つですね。もう一つは、また、我が国においては、賃金の決定に当たって、職務の内容のほかに、能力、責任、さらには配置転換の範囲など、さまざまな要素が考慮されているということが多いということがありまして、そういうところも留意すべきである。

 だから、精神としては我々もそういう方向に持っていきたいんですけれども、実態として、同一労働同一賃金というところについてはさまざまに考慮しなければいけない、そういう要素があって、なかなか今難しい状況にあるということでございます。

三谷分科員 この同一労働同一賃金について何らかの形で法律で定めていくということについて、そういった考えもあろうかと思いますけれども、その点についての取り組みについてはどうお考えでしょうか。

田村国務大臣 例えば、パートタイム労働法を今国会に提出をさせていただこうと思っておりますし、それから、労働者派遣法においても、均衡待遇という考え方のもとに配慮義務等々をお願いさせていただく、これは派遣先でありますが、また一方で、派遣元に対しては、そのような観点から対応するようにというようなことがうたわれておるわけであります。さらには、労働契約法にもそのようなことは書かれております。

 ただ、一方で、ヨーロッパ型という話になると、向こうは職務給でやりますので明確に違うわけでありまして、日本の場合は、これは委員も御承知のとおり、結構、企業側のいろいろな要望の中で、残業をやれだとか配置転換だとかまた出向だとかという、広範な人事労務管理上のいろいろな制約があるわけでありまして、ちょっとヨーロッパとは働き方が違う。

 あわせて、労働組合も、ヨーロッパは産別でいろいろなところが動いているのに対して、日本の場合は、どちらかというと、事業所別というか企業別に労働組合が力を持っておる。そういう違いもあって、なかなかすぐに同じような形態というのは難しいわけでありまして、やはり実態を近づけていかなければそうはならないのであろうなと。

 そういう意味では、一つ、多様な正社員という考え方を打ち出しました。これは、例えば職務にフォーカスした働き方ということになれば、そこでやはり賃金の比べ方ということが出てくるわけでありまして、そのような実態をつくっていく中において、委員がおっしゃっておられたような形にだんだん近づいていくのであろうなというふうに思います。

三谷分科員 与えていただきました時間が終了いたしましたので、これで質問を終了させていただきたいと思うんですけれども、先ほど小熊委員の質問の中で出ておりましたように、イクメンという観点もありますので、いろいろな働き方を認めるような厚生労働行政を進めていただきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いします。

 ありがとうございました。

関主査代理 これにて三谷英弘君の質疑は終了いたしました。

 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)分科員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 きょうは、雇用促進住宅の問題についてお聞きをしたいと思うんです。

 この住宅は、現在、多くの方々が住んでおりまして、生活の基盤となっております。まず確認をいたしますが、雇用促進住宅の現在の総戸数は幾らか、そのうち、現に入居されている戸数、入居者の数、これを示していただきたいと思います。

岡崎政府参考人 二十五年十二月末現在の数字でございますが、雇用促進住宅、住宅数としては千二百七十三ございます。戸数では十二万一千四百九十二でございます。そのうち、現に入居をされている戸数が五万六千九百五でございます。

 ただ、借りられている戸数でしか把握していませんので、一世帯に何人入っているかまではちょっと把握しておりません。かつて調べたときでは、お一人の世帯もありますが、二人、三人入っておられるところもあるということでありますので、その状況を少し勘案して考えていただければというふうに思います。

佐々木(憲)分科員 人数は正確な数字は把握していないそうですけれども、大体、二、三人が一つの世帯として入っている。そうしますと、十数万人が住んでおられる、こういうことになると思うんですね。

 これはかなり多い数でありまして、全体として、その中で高齢化が進んでいると思います。入居者のうちの高齢者の比率、これはわかりますか。

岡崎政府参考人 少し前の調査で恐縮でございますが、平成十八年に入居状況の調査をいたしました。その時点で、五十から五十九歳が二三・四%、六十から六十九歳が一〇・八%、七十歳以上が七%という数字でございます。

佐々木(憲)分科員 かなり高齢者の方々が、この後も年を重ねているわけですから、いらっしゃるわけです。

 もともと、この雇用促進住宅というのは、戦後のエネルギー政策の転換ということで、石炭から石油へ、そういう政策転換に伴って、転職する方々の支援のために建設された住宅であります。当初は、石炭離職者を中心に入居をされていましたけれども、その後の制度改正などによって、幅広く、職と住宅を求める人々に提供されるようになってまいりました。とりわけ、二〇〇八年以降は、リーマン・ショックあるいは東日本大震災、これらへの対応として、多数の入居を認めております。

 例えば、二〇〇八年のリーマン・ショックのときは、大手企業が派遣労働者に対して派遣切りを行う、こういうことがありました。多数の労働者が職を失うと同時に住居も失う、こういう悲惨な事態が発生しまして、それに対応して、二〇〇八年十二月十二日に厚労省は、「解雇等による住居喪失者のための雇用促進住宅の活用について」、こういう文書を発出しまして、雇用・能力開発機構に向けて指示をしているわけであります。

 そこに、こう書いてあります。生活基盤の根幹となる雇用と住居を同時に喪失するという極めて深刻な状況が生じている、第一義的に住居を確保することが喫緊の課題であることから、今般、貴機構の所有する雇用促進住宅を緊急に、短期間の定期借家契約によって提供することにより、住居及び安定的な就労の機会の確保の支援を実施することとした。

 こういう文書を出していると思いますが、これは間違いありませんね。

岡崎政府参考人 今先生からお話しいただきましたように、最初は炭鉱離職者の住宅から始まりまして、ずっと続いてきた。本来は、移転就職をする方のためでございましたけれども、今先生から御指摘がありましたように、リーマン・ショックが起きた際に、職とともに住居を失われた、そういうことからその措置をとりましたし、その後、東日本大震災の際にも、被災者の方にも同じような考え方で提供する、こういうことにいたしております。

佐々木(憲)分科員 今言われたように、東日本大震災が発生した直後の二〇一一年三月十二日、震災の発生の直後、次の日ですね、このときは、「東北地方太平洋沖地震による被害に伴う雇用促進住宅の取扱について」、こういう文書が出されておりまして、ここには、雇用促進住宅を被災者の当面の住居の場として提供し、関係機関と連絡、連携をとりつつ、被災者の支援に全面的に協力を行うこととしたところである、このように記されているわけです。具体的なその体制も指示しているわけです。

 これは、大臣、大変大事な、雇用促進住宅はいわば駆け込み寺のような役割を果たしているわけですね。

 改めてお聞きしますけれども、平成二十年、二〇〇八年から昨年末までの間に、雇用促進住宅への新規入居の戸数は何戸あるか、そのうち、東日本大震災の被災者や派遣切りに遭った人の戸数、これは幾らか、示していただきたいと思います。

岡崎政府参考人 平成二十年以降、新規に入居をされた総戸数は四万四千九百六十二でございます。そのうち、リーマン・ショック等で住居をなくされた緊急一時入居者が九千八百六十六、それから、東日本大震災の被災者の方が七千六百六十八でございます。

佐々木(憲)分科員 大変多くの方がこの住宅を利用されているわけです。この数字を見ただけでも、大臣、雇用促進住宅というのは大変役割が大きいと思うんですけれども、どのような感想をお持ちですか。

田村国務大臣 今委員がおっしゃられましたとおり、もともとの歴史は、炭鉱なんかの、要するに、職業がかわる場合に、移転という形で、雇用福祉上といいますか、そのような観点からこのような雇用促進住宅を整備してきたわけであります。

 それに対していろいろな声もあったわけでございますし、いろいろな閣議決定もあったわけでありますが、リーマン・ショックの折、委員おっしゃられたとおり、それまで社宅等々もしくは借り上げの住宅の中でお住まいの方々が、仕事を雇いどめもしくは解雇とともに、仕事もなくなれば住居もなくなるということで、これはどうするんだというようなお声をいろいろといただく中において、この雇用促進住宅を緊急的、一時的な住居として使おうじゃないか、そして東日本大震災のときに、災害対応向けの住宅として使おうじゃないかということで、今なお多くの方々が入っておられるわけでありまして、それが必要だという声は我々もお聞きをさせていただいております。

佐々木(憲)分科員 私は大変重要な役割を果たしていると思いますね。現に十数万人が住んでいるということでありますから、例えば居住環境の整備も大事だと思いますよ。

 安全で安心な住宅にしていく努力、これは非常に大事で、例えば雨漏りするとか、あるいは水漏れだとか、空き部屋の割れた窓の修理ですとか、手すりのペンキ塗りとか、住宅のメンテナンスというのは大変大事だと思います、現に住んでいるわけですから。あるいは草刈り、これも大変大事でありまして、こういうこともきちんと責任を持ってやる、これは当たり前のことだと思いますが、どうですか。

岡崎政府参考人 雇用促進住宅も、住宅としてお貸ししている以上は、持ち主、家主として必要な対応はする。したがいまして、耐震診断等もやらせておりますし、それから必要なメンテナンス、これは日々の関係で御本人が負担されるものもありますが、構造損害に伴うものについては国というか独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の方で対応する、こういう形でやっております。

佐々木(憲)分科員 これはなかなか要望があっても対応がうまくいっていないとか、そういう話も聞きますので、万全な体制できちっとやっていただきたいというふうに思います。うなずいておられるから、そうしていただけるんだと思います。

 ところが、雇用促進住宅の役割が終わったとか、あるいは廃止するという話がありますが、私はこれはとんでもない話だと思っております。

 五年前に私は予算委員会で、当時、舛添厚労大臣だったんですけれども、質問しました。舛添大臣はこういう答弁をしたわけです。一方で退去を進めながら、片一方で困っている人を入れます、この二つの方針の整合性はどうなのか、今のような二つの矛盾をどう解決するか、鋭意検討を進めています、閣議決定の見直しということも含めて、全て検討させていただきたい、このように答えておられるわけです。

 この答弁は事実でしょうか、確認をしておきたいと思います。

岡崎政府参考人 そういう趣旨の答弁をしたというふうに理解しております。

佐々木(憲)分科員 廃止という話が出ていますけれども、現に人が住んでいるわけですね。この五年間で四万五千世帯もの人々を受け入れているわけであります。この今住んでいる十数万人の方に、出ていけということが本当に言えるのか。大変不安な声が上がっているわけなんです。

 例えば、三重県四日市市の住宅、ここでお住まいの方はこう言っているんですね、男性の方ですけれども。

 ようやく見つけたのが雇用促進住宅、そこも追い出されると、どこに頼ればいいですか。私は低所得で住宅ローンも組めない年収です。県も市も助けてくれない、国にまで放り出されたら、どこが一体助けてくれるんですか。正社員ではないので、半年ごとの契約で六十五歳まで働かせてくれる保証もありません。今追い出されたら死ぬしかありません。こういう深刻な声ですね。

 それから、岐阜県恵那市の住宅の方はこう言っているんです。

 入居時、何の説明もなかった。私はたまたま普通契約でありましたが、五年前に急に廃止の話があった、そのため入居者の半数以上が慌ただしく退去してしまった。空き室ばかりで不用心で困る。今は退去の要請が延期されているが、いつ退去を求められるのか不安でたまらない。

 これが住んでいる人々の多くの気持ちではないかと思うんですね。大臣、この声をどういうふうに受けとめますか。

田村国務大臣 今、安定局長からも答弁がありましたけれども、平成二十一年二月二十五日の予算委員会で舛添大臣の方から、平成二十三年度までにおおむね三分の一を譲渡、廃止するという目標を変更し、これは大臣の答弁を踏まえですよ、住居喪失者に対しては雇用促進住宅の活用を図っておるわけであります。

 でありますから、退去等々、促進の取り組みに関しましては三年間延長をさせていただいておるわけでございまして、そういう声もお聞きをさせていただきながら、特にリーマン後、緊急一時的とはいいながら、まだおられる方々もおられます。それから、震災の対応向け住宅ということもありますので、そういうことも踏まえながら、今、三年間延長をさせていただいておるということであります。

佐々木(憲)分科員 大体、この廃止の方針というのはどこから出てきたのかということなんですね。

 もともと小泉内閣時代の構造改革で、官から民へという規制緩和の流れがありまして、もとをただせばそこなんですけれども、小泉内閣の最初の段階ではまだ、地方自治体に譲渡するというのが基本的な方針でありまして、そして住んでいる人は追い出さない、これが基本の考えでありました。

 ところが、二〇〇五年十二月の、オリックスの宮内会長が議長を務めた規制改革・民間開放推進会議、ここが出した規制改革・民間開放の推進に関する第二次答申、これがその廃止を加速したわけですよ。この答申は、三十年かけて長期にわたって実行するということについては撤回して、従来やってきた地方自治体への譲渡という方針に加えて、更地にする、それを前提に入居契約を解消し、速やかに跡地を民間等に一般競争入札で売却する、非常に荒っぽい方針を出したんです。

 この方向に沿って、二〇〇七年六月の閣議決定で、遅くとも平成三十三年までに全ての処理を完了する、民間事業者のノウハウを活用し、売却を可能な限り前倒しできるようにする、こういうふうにしたわけですね。

 大臣、この方針というのは、厚労省が主導して提案したものじゃなくて、規制改革会議からの提案だったと思うんですが、いかがですか。

岡崎政府参考人 一番最初は、平成十三年の閣議決定、特殊法人等整理合理化計画からでございます。その際に、規制改革会議等々、いろいろなところで議論がされてきております。

 私どもも、現に入居者がいるということについてはその中で主張しつつ、どういう形で対応していくか、そして、そういう中で、ただ、相当古い住宅もある中でどういう形でこれに対応していくかということで、これまでやってきたということであります。

 したがいまして、今先生御指摘になられたようなところでいろいろな議論があったことも踏まえながら、何回かの閣議決定の改定がされてきた、これが事実というふうに思っております。

佐々木(憲)分科員 経緯からいうと、厚労省が今持っている雇用促進住宅から、人が住んでいるのに、出ていけ、更地にするぞという方針を出すわけがない、大体、もともとがですよ。そういう役割を果たす省庁ではないと私は信じておりますからね。

 ところが、規制改革という名目のもとで、何か民間の関係者がその責任者に座った途端に、極めて乱暴な、国の財産は全部更地にして売り出せと。あのとき私も議論したんですけれども、ともかく評価するのも民間人、そして買うのも民間人、売るのも民間人みたいな、そういう仕掛けをつくろうとした、これはとんでもない話だ、そういうことで批判した覚えがあります。それはやはりもう一度見直す必要が今の時点であると私は思いますよ。

 今、各地で説明会と意向調査というのを実施しているようなんですが、そのやり方もいろいろ現地の声が出されておりまして、説明会の持ち方やそこで配付されている資料を、今資料はお手元にあるかもしれませんが、見ていただきたいんですけれども、表題は、この一番上に、「雇用促進住宅の入居者付き民間売却について」と書いてあるんです。民間売却、これは頭から民間に売却するという前提なんですよね。

 この中には、民間売却可の場合は、売却後八年間は現在の家賃水準が維持されます、こういう巧みな案内がありますが、しかし、売却後は民間に渡るんですから、何の保証もありません。民間が勝手なことをやっても、ではどうするのか、これはペナルティーがあるわけでもありませんしね。

 それから、民間売却不可という場合は、売却の手続を行うには皆様のおおむね三分の二以上の同意が必要、だから意向調査に協力をお願いしたいと書いてあるんですね。これを見ると、意向調査といいながら、民間売却を進めるための調査ではないかと思わざるを得ないわけです。

 当然、この出席者から、こんなやり方はあるかと疑問や怒りの声が多数出されておりまして、何で退去しなけりゃいけないのか、入ったときには何の説明もなかったじゃないか、だったら、かわりのところを探してくれ、いつも相談なく進めるのはけしからぬ、こういう怒りの声が出ているんですけれども、実際にこの文書を配っているのは事実ですか。

岡崎政府参考人 雇用促進住宅につきましては、必ずしも民間売却だけをしているということではなくて、地方公共団体にも依然として受け入れの打診はしております。

 ただ、地方公共団体もいろいろな御事情でなかなか受け入れていただけない。その場合に、入居できる状態のままで民間に引き受けていただくことが一つの方法ではないかということで対応をしているということでありまして、必ずしもこれを強制するとかそういうことではなくて、幾つかのやり方があるということを説明するものとして使っているんだというふうに思っています。

 ただ、これは、実際には、業務をやっております高障求機構の方で作成した資料であろうというふうに考えております。

佐々木(憲)分科員 大体こんな資料、何か民間売却だということを前提にしたような感じのものは、これはやはり手直しすべきだと思いますよ。厚労省は、そこまでちゃんと目を光らせてやらなければいけない。

 しかも、現地の説明の仕方がとんでもないんですよ。例えば、岐阜県恵那市のある住宅の場合は、こういう説明が行われた。

 アンケートの結果を踏まえて、七月ごろから専門業者に交渉や販売広告を出す、今後一年ほどかけて民間に働きかけていく、売れるかどうかはやってみなければわからない。売れない場合は空戸にして、平成三十三年には更地にして売却する。民間売却を了解されても売れない場合は退去してもらう、解体、更地などその手続に一年ぐらいかかるので、その所要期間を差し引いて空戸にするために、三十三年以前に退去してもらう。

 これは余りにも乱暴だと思うんですよ、こんな言い方をして。こんな言い方をするように厚労省は指導しているのか。誰がこんなことをやれと言っているんですか。

岡崎政府参考人 説明の仕方そのものを指示しているわけではありませんが、これにつきましては、現に入居されている方々が大勢おられる、そういう中で、できるだけ不安に思われないような形で丁寧に説明するようにということで指導しているということでございます。

佐々木(憲)分科員 つまり、今のようなやり方は厚労省が指示してやらせているわけじゃない、大臣、そういうことですよね。

田村国務大臣 指示をしてやらせているわけではありません。

佐々木(憲)分科員 現に住んでいる人に退去を求める場合は、借地借家法というのが一応ありますわね。正当な事由というのがなければ、そういうのはできないんですよ。

 現在の借地借家法では、正当事由というのは、一つは、貸し主、借り主が土地建物の使用を必要とする事情、二つ目、賃貸借に関する従前の経緯、三つ目、土地建物の利用状況、四つ目、立ち退き料の提供などを考慮して判断する、こうなっているわけです。

 正当事由がないと土地建物の賃貸借を終了することはできません。民間に売却したいから出ていけ、あるいは売却できるかどうかわからないけれども出ていけ、これは正当な事由には当たらないと思いますけれども、どう思いますか。

岡崎政府参考人 仮に、民間売却に至らずに、その後どうするかということになった場合には、それぞれの時点におきまして、当然のことながら、法律に即した判断をしながら対応していくというふうに考えております。借地借家法等に違反するような対応は、要するに、言い方をかえますと、ちゃんと法律にのっとった対応はするようにというふうに指示をしているところでございます。

佐々木(憲)分科員 売却できるかどうかわからないから出ていけというのは正当事由に当たりませんからね、どう考えたって。これははっきりしているんですよ。仮に、そういうことを説明して住民から集団的な訴訟がだあっと起こると、十万人もですよ、国は絶対に負けますから。ひとたまりもありません。

 一方的に廃止を決められた住民は結局どういうことになるのかというと、田村厚労大臣の地元、三重県にある住宅を紹介したいんですが、ここにはもともと五棟二百七十戸あったんです。今では四十戸まで減っているんですね。そのうち七戸は、派遣切りに遭った人が新たに住んでおります。

 ここでは、廃止方針のもとで大勢の人が出ていかざるを得なくなって、何よりもコミュニティーが破壊される。一棟は入居者が全くいなくなって、防犯上の都合から、窓側に一斉に板塀を打ちつけているんです。

 別の棟では、昨年、六十代の男性が孤独死をしている、これが発見されました。何日も新聞がたまっているので配達の人が通報した、こういうことなんです。

 こういうような実情を御存じでしょうか。

田村国務大臣 いや、直接は。今聞きました。

佐々木(憲)分科員 現に、極めて深刻な状況になっているわけです。

 二年間の定期契約で入っている人はこう言っています。一年後か半年後か、いつ契約が解消されるのか心配だ、出ていけというのなら別の住居を保障してほしい、仕事もない、保証人もいない自分に新たに引っ越しせよと言われてもできない、死ぬまでここに住みたい、こう言っているわけです。毎年のように退去期限を先送りされて、あげくの果てに期限が来たら出ていけ、住民は強制的に追い出されるのか、今住んでいるところを追い出されるともう死ぬしかない、こう訴えているわけですよ。

 公営住宅に移ればいいじゃないかという話もありますけれども、大変難しいんですね。

 例えば四日市の市営住宅の場合は、抽せんの倍率は二十五倍から三十三倍、しかも数が少ないんですね。一戸募集しますとか二戸募集しますなんて、そんな状況で二十人、三十人がわあっと殺到するわけです。

 しかも、ひとり暮らしの高齢者は、市営、県営住宅に希望しても、二人以上という規定があって入れないんですよ、対象にならないんです。ですから、高齢者住宅の募集もあるけれども十倍から二十倍の倍率になる。八回申し込んだが全部外れた、こういう人がいるわけです。

 これは、どこにも行けない人は一体どうするんですかね、期限が来たら。強制執行でもやるんですか。あるいは、電気、ガス、水道をとめて、家財道具を部屋から放り出して、住んでいる人を引きずり出す、こんなことをやるんですかね。それは幾ら何でもひど過ぎるんじゃありませんか、国がホームレスをつくるなんというのは。現に住んでいるわけだから。やってはならないと思いますけれども、どうですか、大臣。

田村国務大臣 平成三十三年までに譲渡、廃止する、これは閣議決定でございます。まだ閣議決定は生きております、当然のごとく。

 でありますから、この中長期的な方針というものは撤回しているわけではございませんので、そのもとではありますが、今住んでおられる方々に無理やり出ていけということはできるわけがないわけでありまして、そこは、公営住宅、なかなか入れないという話もありますけれども、それに対するあっせんでありますとか、また退去に関する費用のお支払いであるとか、こういうことを提示しながら御理解をいただいて、この三十三年の閣議決定、これに向かって我々は対応してまいるということでございます。

 あくまでも丁寧に御理解をいただきながら対応していくということであります。

佐々木(憲)分科員 三十三年が来ました、そのときに大量にまだ住んでおられるわけです。もう行き場がない。そういう場合、どうするんですか。強制的にできないでしょう。御理解を得るといったって、どこに行くんですか。行くところがない、そこしかないと言っているんですよ。だって、家賃は民間はもっと高いですから、何倍も。収入がない人はそこしか住めないと言っているんですよ。

 それは、やはり閣議決定も含めて、舛添大臣も答弁されましたけれども、現状を踏まえてもう一度全体像を再検討する、そういう方向に今踏み出さないと、無理やり突っ走っていったら大変なことになりますよ。そういう方向で見直すというのが当然だと思いますけれども、大臣、見解を伺いたいと思います。

田村国務大臣 これは、閣議決定は閣議決定でございますので、まだ見直してもいないわけであります、当然のごとく。

 でありますから、三十三年という目標に向かって譲渡、廃止、これを進めていく。場合によっては地方自治体に譲渡ができるということもこれからあるかもわかりません。その場合に、三十三年というのはどうするんだと。これはやはり、先ほど来申し上げておりますとおり、丁寧に御理解をいただきながら、我々としてもいろいろな条件を提示して、この閣議決定実現に向かって努力はしてまいります。

 ただ、一方で、被災地三県、ここにも雇用促進住宅はあるわけでありますし、先ほど来申し上げておりますとおり、被災対応向けの住宅という役割もあるわけでありまして、そういう観点はしっかり我々は認識を持ちながら、閣議決定に向かって対応していくということであります。

佐々木(憲)分科員 大体、その閣議決定に向かってというのがおかしいんですよ。閣議決定そのものをもう一度見直さないと、路頭に迷わせるんですか、住んでいる人を。ホームレスを国がつくるんですかという話なんだ。だめですよ、そんな答弁では。

 我々は、閣議決定そのものの撤回を求めます。住んでいる方は、希望をする方には住み続けられるように、そして、退去せざるを得ない方には同じ条件で国が保障する、そういうことをこれからも要望を続けてまいります。

 きょうは、田村大臣と直接こういう形でやりましたが、引き続き、この点については交渉を続けていきたいと思っております。

 以上で終わります。

関主査代理 これにて佐々木憲昭君の質疑は終了いたしました。

 次に、高木宏壽君。

高木(宏)分科員 自民党の高木宏壽でございます。

 田村大臣、長時間、大変お疲れさまでございます。私が、本日、自民党としては最後の質問者でございます。

 それでは、軍人墓地の管理について、何点かお伺いをしたいと思います。

 私の地元、札幌市月寒に、月寒忠霊塔という、日露戦役から大東亜戦争に至る軍人の御遺骨を納めた忠魂納骨塔がございます。この忠魂納骨塔は、明治三十七年の日露戦役以来、国の平和と自由を念じつつ、とうとい命をささげられた歩兵第二十五連隊、それから二百十九連隊、百二十五連隊、その他札幌軍管区内外の将兵の御偉勲を顕彰するために、昭和九年四月に、当時の第二十五連隊長の永見俊徳大佐によって建立されて、以来、終戦に至るまで約四千柱の御遺骨が合祀されております。

 戦前は、慰霊祭などの祭祀や忠霊塔の維持管理は、月寒に駐屯している旧軍部隊によってとり行われてきた経緯がございます。

 終戦後は、軍の解体に伴いまして、忠霊塔の維持管理が放置されて、塔の荒廃も甚だしい時期もございましたけれども、昭和三十三年、札幌市長や関係遺族会の方々が発起人となりまして、旧札幌連隊区管内市町村並びに遺族会、あるいは戦友会等に呼びかけて、月寒忠霊塔奉賛会というものを設立して、その後は、塔の維持管理はこの奉賛会によって行ってきております。

 こうした陸軍墓地、海軍埋葬地という軍用墓地は、戦前はそれぞれの師団、鎮守府などがこの維持管理に当たってきた官立墓地であったわけですが、終戦後の一九四五年八月二十八日の閣議で、陸海軍所属の土地、施設等一切の国有財産を現状のまま総括的に大蔵省に引き継ぐことを決めて、同年十月末には、国有財産台帳が添えられて所轄の地方財務局長に引き継がれたという経緯がございます。

 土地や施設は大蔵省に移管されたわけですが、管理の問題をどうするか、これが未解決のまま残ったわけで、そこに至る経緯として、陸軍省、海軍省の両省廃止に先立ち、一九四五年十月二十五日、陸軍省副官から、「陸軍墓地ノ移管、忠霊塔ノ処理、及ビ日本忠霊顕彰会ノ監督ニ関スル件」という通達が出されております。

 この通達は、陸軍墓地の厚生省への移管、それから、厚生省内の軍事保護院が管理する、したがって引き続いて国有地として維持する、日本忠霊顕彰会は、全国市町村に建設済みの忠霊塔を管理指導する機関として継続し、主務官庁は厚生省とするという内容であったわけですけれども、当時の連合国総司令部、GHQは、軍国主義排除、政教分離という観点から、国の関与を相当嫌がったようで、結局、地方に管理が丸投げされてしまったという経緯があるようでございます。

 そこで、まずお伺いしたいのは、全国に、明治以降建設され、大東亜戦争に至る軍人の御遺骨が納められている官立墓地はどのぐらいあるのか、終戦時それがどのように処理され、現在の管理状況はどうなっているのか、教えていただきたいと思います。

美並政府参考人 お答え申し上げます。

 先生がおっしゃられました旧軍用墓地は、昭和二十年の陸軍省、海軍省の廃止に伴い、当時の大蔵省へ引き継がれまして、国有財産の中でも普通財産ということになっております。

 これらの旧軍用墓地につきましては、昭和二十一年に大蔵次官、内務次官通牒というのが出されまして、具体的には、旧軍用墓地の処理に関する件ということでございますが、都道府県または地元市町村へ無償貸し付けするものとされ、維持管理については、実情に応じ、都道府県または市町村、遺族会等において行うものとされております。

 財務省では、これに基づきまして、現在、四十四カ所の旧軍用墓地を所有しておりますけれども、それぞれの財産の実情を踏まえ、使用目的に沿った維持管理が行われているものと承知しております。

 なお、この四十四カ所の旧軍用墓地のほか、終戦後これまでに、地方公共団体等へ四十二カ所の旧軍用墓地を譲与等により処分しております。したがいまして、現在、全国では八十六カ所の旧軍用墓地があるというふうに理解しておるところでございます。

高木(宏)分科員 地方自治体に無償貸与あるいは譲渡されたものがほとんどということでありますが、月寒忠霊塔も、昭和二十年十月、北部軍管区司令官所有から、陸軍墓地である忠霊塔敷地を雑種地として大蔵省が引き継ぎ、北海道財務局から、札幌市と合併する前の旧豊平町に対し、月寒納骨塔敷地として無償貸与され、奉賛会設立後は、塔の立っている部分のみ、奉賛会に札幌市から無償貸与されております。

 しかし、無償貸与を受けた自治体や民間がこうした墓地や忠霊塔をしっかりと管理してきたかというと、さまざまな制約があって、必ずしもそうはなっていない状況にございます。

 例えば、月寒忠霊塔の場合、設置場所の敷地は平和公園として使用されておりますが、忠霊塔そのものは、建設後七十九年経過して、今、壁が剥がれ落ちて、倒壊の危険すらございます。そこで、工事用のカラーコーンでその塔の周りを覆っている状況でありますけれども、平和公園ですから、大勢の子供たちが公園の中で遊んでおります。さらには、公園の隣には幼稚園があって、幼稚園の園児たちも外に出て遊ぶというわけで、万が一倒壊などして子供たちが事故に巻き込まれたら、大変なことになると危惧をしているわけであります。

 平成四年のとき補修をしたわけですが、その費用全額、三百万円は全て、遺族会、戦友からの寄附で賄ったわけでありますが、この戦友、遺族が皆さん御高齢になられて、高齢化で、経費負担につきましても限界に達しております。

 札幌市は敷地全体の無償貸与を受けているわけで、札幌市のスタンスとしては、基本的には関与できない、倒壊時の緊急措置、公衆衛生上の緊急措置はとらざるを得ないが、費用は所有者あるいは管理者に請求する、寄附その他の自己責任で維持補修してほしいというスタンスでございます。

 一般に、無償貸与の場合、使用者は、民法上の使用貸借に当たる善良な管理者としての注意をもって、貸与財産の維持保全に努めなければならない一方、国家賠償法というのがございますけれども、この観点から考えると、使用者が第三者に損害を与えた場合、所有者である国や自治体も責任を負う場合があると私は認識しておりますが、無償貸与されている自治体や民間が十分に対応できない場合、所有者たる国としてどう対処されるのか、御見解を伺いたいと思います。

美並政府参考人 お答えいたします。

 先生おっしゃられましたように、国有財産の無償貸し付けは、民法上のいわゆる使用貸借に当たるものでございまして、使用貸借における民法の規定に基づいて、無償貸付契約において、借り受け人は、善良な管理者としての注意義務をもって、貸付物件の維持保全に努めなければならない旨を明記しているところでございます。このため、無償貸し付け中の財産については、それぞれの財産の実情を踏まえて、貸付相手方である地方公共団体において、貸し付けの使用目的に沿った施設の維持管理等を行っていただいているものと理解しております。

 なお、無償貸し付け中の財産については、使用目的や使用上の制限など用途指定の履行状況を確認するために、無償貸付契約書において、実地調査を行うことができるとしております。この実地調査等の結果により、地方公共団体に対し、御質問のような場合には適正な管理に努めるよう指導していくこととなるということでございます。

高木(宏)分科員 幾つかの県の管理や助成の状況を調べましたけれども、例えば宮城県の場合、日清日露戦没者合葬碑や満州事変戦没者合葬碑は、旧陸軍が建立して、現在、宮城県が建設地を所有、管理し、県直営として県単費で維持管理費を出しております。また、一方、ガダルカナル島戦没郷土将士留魂の碑というものは、宮城県が敷地を所有しておりますが、遺族会が事務局の慰霊碑管理会が管理を行っております。

 また、愛媛県の場合は、旧陸軍墓地に昭和二十八年、遺族の意向で県が戦没者慰霊塔を設置し、敷地は国が所有したまま、県が管理をしております。

 このように、敷地の所有者が国のままで、慰霊塔の日常的な維持管理や工作物の修復費用を県が負担していたり、敷地が市町村有の場合、自治体が施設を所有、管理したり、遺族会が施設を所有しているにもかかわらず、自治体が管理を行っている例もございます。

 私は、国のために戦った戦没者を祭っている施設に対する国や自治体の関与に関して、適切に支援が行われているところはきれいに維持管理されているけれども、さまざまな理由で管理が行き届かない施設は荒れ放題というのでは、同じ国のためにとうとい命をささげた戦没者を祭る施設としては、大いにこれは問題があるのではないかと思うわけです。国の責任において対応を統一すべきと考えますけれども、いかがでしょうか。

古都政府参考人 お答え申し上げます。

 旧軍墓地につきましては、先ほど財務省からも御説明ありましたように、国有財産として地方自治体に貸し付けが行われているという実情にございます。そして、そこの管理につきましては、それぞれの財産の実情を踏まえまして、地方自治体等におきまして、使用目的に沿った維持管理が行われなければならないだろうというふうには承知しております。

 これについて、先ほど先生から御指摘がございましたように、管理できていないところがあるということは、それぞれ受けているところがきちっと管理をしていただくためにも、地域の実情に応じまして、無償貸与先におきまして適切な管理がなされるよう、これまでも財務省といろいろ協力して対応をやっておるわけでございますけれども、引き続き、国有財産を所管する財務省と連携して対応していくということで、まずは、管理を行っている地方自治体が適切な管理ができるように促していきたいというふうに考えております。

高木(宏)分科員 私どもが今日のこの繁栄を享受できるというのも、国のためにとうとい命をささげられた先人のおかげであり、この戦没者に対する尊崇の念というものを失うことはあってはならないと思っております。

 その意味で、遠く海外の地に依然として眠っている約六十万柱の御遺骨の一刻も早い御帰還と、国のために亡くなった戦没者の御遺骨を納めた軍人墓地の管理の問題、この二つはいまだ未解決の問題で、これらの課題を解決せずに本当の意味での戦後処理は終わらないと考えております。

 厚労省では、平成十五年から、海外における民間が建立した慰霊碑等の現況調査を毎年度一千万円ほどの予算を計上して実施しているとのことですが、国内のこうした軍人墓地や忠霊塔の実態、現況をちゃんと調査されたことがあるのか。海外の調査よりは、まずこの国内の実態調査の方が先ではないかと私は思うわけです。

 北海道における忠霊塔、幾つかございますけれども、管理実態を道に調査してもらったことがございます。管理している奉賛会の高齢化など、さまざまな管理上の将来的課題を抱えております。施設の老朽化、管理している者の高齢化。

 管理の状況がばらばらであるというのは先ほど私も述べましたが、国として、この軍人墓地の管理の現況をいま一度しっかりと把握する必要があると思います。財務省の財産無償貸与契約書の中には、用途指定の履行状況を確認するために、財務省は実地調査または実地監査をできると書いてあるものもございますが、厚労省は所管官庁として、各地にある軍人墓地の管理状況をいま一度しっかりと調査すべきと考えますが、いかがでしょうか。

佐藤副大臣 今、高木委員の質問を最初からお聞きしておりまして、もう両方とも亡くなっておりますが、実は私の母方の祖父は日露戦争で勲章をもらいまして、生前、私小さいころでしたけれども、その模様も聞かせていただきました。さらに、私の父親も、亡くなっておりますが、さきの大戦では海軍で、最後、呉で終戦を迎えたという、生還させてもらっているということはあるんですけれども。

 そういうことからいきまして、今、高木委員のさまざまな議論をお聞きしておりまして、やはり、さきの大戦等を含めて多くの方がとうとい犠牲となられておりまして、政府としても、今、現実には、全国戦没者追悼式や海外の戦域における遺骨収集帰還事業を実施する、これは極めて大事な事業だと思っておりますが、それと、主要戦域に国立の慰霊碑を建立する、そういうことも行っておりまして、戦禍に倒れた方の慰霊、追悼を行ってきているところであります。これはしっかりとこれからもやってまいりたいと思っております。

 ただ、今るる御議論いただいております問題ですが、まず、民間団体等が建立したそういう戦没者の慰霊碑については、基本的には、建立者がその維持管理を行っていくべきものと考えておりまして、厚生労働省として、その状況については現段階では把握をしておりません。

 しかしながら、建立者の意思を尊重しつつ、海外の民間建立慰霊碑の調査、整理事業は行ってきている実績もあることから、都道府県等から要請があれば、調査、整理のあり方についても適切な助言を行うなどしてまいりたいと思っております。

 さらに、国内にある慰霊碑等については、その所在地の地方自治体が状況等を把握することが可能であると考えておりまして、まずは、地方自治体において調査を実施していただきまして、その上で、要請があれば、地方自治体と相談をさせていただきながら、国としての対応をしっかり検討させていただきたい、そのように考えております。

高木(宏)分科員 それは、地方自治体に対して調査をするよう指示を出すということでよろしいんでしょうか。

佐藤副大臣 指示を出すということで結構だと思います。

高木(宏)分科員 よろしくお願いしたいと思います。

 月寒忠霊塔の場合、現在、自衛官のOBである隊友会の有志の方々を中心に、日赤奉仕団等がボランティアとしてお盆前の忠霊塔及び周辺の清掃、あるいはお盆供養、慰霊祭行事をとり行っておりますけれども、かかわっている隊友会の方々ももうかなりの御高齢になりまして、また、戦友や遺族も平成十年以降急速に減少しておりまして、財源は供物料なわけでございますけれども、主要な運営財源としている供物料が激減したことで、慰霊祭等運営経費の確保も困難になってきている状況でありまして、民間依存というのはもう限界に来ているんじゃないかなと私は考えております。

 これは月寒忠霊塔に限った問題ではなくて、遺族会等が管理している施設では、会員の高齢化、施設の老朽化によって、維持管理が困難になっているという課題がもう明らかになってきております。

 戦没者の御遺骨を祭っている施設の場合、当然、遺族感情の問題がございます。さらには、墓地、埋葬等に関する法律などの制約、例えば、札幌市は現在認可をしておらず、地下へ埋葬ができないんですね。こうした問題もあって、例えば、納骨堂ではなくて、忠魂碑として別の形態で英霊を顕彰していくにも、さまざまな難しい課題がございます。

 国のために亡くなった戦没者の御遺骨を納めた軍人墓地の管理を現状のまま自治体や民間に委ね続けていいのかと私は強く思っておりますが、地方に委ねたことが占領下という状況であったためというのであれば、サンフランシスコ講和条約が発効して、日本が主権を取り戻した昭和二十七年の四月二十八日に、この問題をしっかりと整理すべきだったと私は思っております。戦後のいろいろな歴史的経緯があったとしても、本来は国の責任でやるべきことではないかなと。

 麻生内閣の当時の舛添厚労大臣が、軍人墓地の管理についての国会答弁で、大きな意味での戦後処理の一環であり、これは関係各庁とも連携をとりながら、国の責任としてきちんと管理していくと答弁をされております。その後、民主党に政権がかわったこともあり、約五年間経過しておりますが、地方の自治体や民間に委ねられた管理の問題というのは、一向に解決していないように思われるわけです。

 戦後の歴史的な経緯もございますが、国のために亡くなった戦没者の墓地であって、戦没者を祭っている施設ですから、国が責任を持って、将来どうすべきかということも含めて、国による維持管理をしっかり検討してほしいと考えておりますが、田村大臣、いかがですか。

田村国務大臣 これは、昭和三十七年の旧厚生省における旧軍墓地調査、陸軍軍用墓地七十五カ所、海軍軍用墓地七カ所、軍用墓地に設置されている忠霊塔十九カ所ということであります。

 これは、無償貸与という、無償貸与というのが何かちょっと私は違和感がありながらこの言葉を聞いておるわけでありますが、こういう形になっておりますので、いろいろな地域の実情において、貸与先はほとんどが地方自治体だと思うんですけれども、一義的にはやはりここがしっかりと適切に管理していただくことだと思います。でありますから、財務省とここは連携してそのようなことをしっかりと促していく、これはまず一義的であると思います。

 その後、そうであったとしても、一向に前に向いて進んでいかないということがあるのならば、それはそれで次なる対応を考えていかなければならない。やはり、戦没者、日本の国のために命を賭された方々でありますから、その戦没者に対して尊崇の念を持って我々は日々生活をしていかなければならないわけでございまして、ほったらかしというわけにはいかないわけであります。

 まずは、管理をしておるところに対してしっかり促す、その後、対応は考えてまいりたいと思います。

高木(宏)分科員 ほったらかしにしておくわけにはいかないというのを、国としてしっかり責任を持ってやっていくと捉えさせていただきますが、先ほども申し上げましたように、これは、戦後のいろいろな経緯がございます。経緯がございますけれども、国のために戦って亡くなった人たちの御遺骨でありますから、国の責任でしっかりと取り組んでいただきたい。ぜひ、関係各省庁が連携して、まずはどういう状況なのかということを調査していただいて、課題を整理して、具体的な支援策を検討して対応していただきたいということをお願いして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

関主査代理 これにて高木宏壽君の質疑は終了いたしました。

 次に、伊佐進一君。

伊佐分科員 公明党の伊佐進一です。

 十二時間近くにわたりまして本当に長い長い分科会ですが、やっと最後のバッターになりました。もう最後ですから、三役の皆さんお疲れのところで、ゆっくりとリラックスした気持ちで聞いていただきたいと申し上げたいところなんですが、私のきょうの質問は、本当に地域の皆さんの深刻な声、悲痛な声、そこからさまざま質問させていただきますので、申しわけありませんが、もう少しの間おつき合いいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

 まず最初に質問させていただきたいのは、障害者の就労の話です。

 障害者就労施設、A型、B型、さまざまありますが、例えばB型で就労されている障害者の方々は、今、十七万六千人。毎年二、三万人のペースでふえ続けています。どんどんふえています。では、これに合わせて工賃が上がっていますかということなんですが、給料が上がっているかといえば、微増です。この五年間でふえたのは一割だけ。しかも、この五年間は、工賃倍増計画ということで国が一生懸命取り組んだ、取り組んだ結果としてやっと一割上がったというのが今の現状です。

 今、全国の平均月収が一万三千五百円で、特に私の地元の大阪はひどくて、佐藤副大臣もそうですが、九千円台、一万円を切っているという状況で、これは本当に、働きに行って、交通費を出してお弁当代を出せばもう足が出るというような状況です。

 そこで、まず政府に、事務方にお伺いしたいのは、今の障害者就労に対する厚労省の支援、充実させるべきだと思いますが、現在の取り組みについてお伺いしたいと思います。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、障害者の方々が地域で暮らすというためには就労支援が極めて大事だというふうに認識をいたしております。

 このため、障害者の総合支援法におきましては、一つは、一般就労を希望する方に、きちっと一般就労に届くように就労移行支援ということで一定の事業を行うほか、一般就労が難しい方々に対しましては、先ほど話がございましたように、就労継続支援事業ということで、雇用型のA型、あるいは非雇用型のB型、こういった事業を実施しているところでございます。

 こうした取り組みによりまして、一般就労への移行の状況ですけれども、二十三年度の実績で五千六百七十五人ということで、平成十五年と比較して四・四倍。一方で、A型、B型を合わせた就労継続事業の利用者、先ほど話がございましたけれども、一年間で約一割増ということで、数はふえてきている、こういう状況でございます。

 お話がございましたとおり、工賃についてまだまだ伸びが十分ではないという点はありますけれども、ここについても、例えば事業者の経営力を向上させるだとか、あるいは、各事業者が自分だけの窓口を持つのではなくて、共同の窓口を持つことによっていろいろな受注が進むといったこともありますので、そうしたことを支援すること。さらに言えば、障害者の優先調達推進法ができましたので、こうしたことに基づく支援というのをやっているところでございます。

 こうした支援について、引き続き、就労支援が進むように取り組んでまいりたいというふうに考えてございます。

伊佐分科員 ありがとうございます。

 御答弁いただいたとおりで、政府はこれまでさまざま努力はしてきたんです。工賃倍増計画もそうですし、優先調達法もそうでした。でも、結果は残念ながら、工賃という点でいえば、大きな効果が上がったかというと決してそうじゃなかった。

 では、この理由は何なのかということなんですが、それはもしかすると、さまざまなやり方というのは、ある意味、市場ルールに合わないような、ちょっと無理をして制度をつくったんじゃないかなと思います。

 それはどういうことかというと、例えば、障害者の皆さんの得意分野をどうやって生かしていくのかという観点であったりとか、そしてまたさらに、そういう得意分野が生かせる付加価値の高いような仕事、いわばもうかる仕事をつくればいい。でも、果たしてそんな都合のいい話があるのかということなんですが、ちょっと一例を紹介したいと思うんです。

 銅、金属の銅です、銅線のリサイクル。実は、銅資源というのは日本は昔たくさんとれたんですが、この銅資源は今ほとんど、例えば解体現場で出たりとか、あるいはいろいろな工事現場で出たりとかするものを、全部、中国とか東南アジアとか、安いところに持っていっている。そこでリサイクルしています。何でかというと、むくのが大変なんです。

 では、中国、東南アジアへ持っていって何をするか。細かい銅線はむけないので、結局、野焼きをするんです。そうすると、そのまま土壌汚染が広がっていく、こういうような実態。日本は銅が足らないのに、銅資源をどんどん出している状況なんですね。

 実は、これに目をつけたある物づくりの中小企業さんがありまして、ある機械をつくったんです。これは何かというと、銅線、いろいろな雑廃線を太さに合わせて機械に差し込むと、するっとむけるというのをつくったんです。本当に細い、野焼きしなきゃいけないほどの直径五ミリ以下の銅線でも、きれいにむけるというものなんです。これを障害者施設へ持っていったんです。

 障害者の方々というのは、根気が非常にあったりとか、集中力が非常にあったりとか、この雑廃線としていろいろな太さのものがごちゃごちゃっと来るのを、全部太さをきれいにより分けて、こつこつされるんです。それを太さに合わせて全部きれいに入れて、するっとむいていく、こういうような作業をされていらっしゃる。実際、その施設に私も行って、障害者の方に話を聞くと、非常にきれいにむけるし、この仕事が楽しい、好きだということを言っていただいている。

 この銅のリサイクルで、リサイクルされる銅線の量は一時間当たり五千円なんです。それぐらいの、工賃アップに効果があるような取り組みをしていらっしゃる。そういう、工賃も改善されるし、資源のリサイクルにもなるし、環境にも優しいという取り組みをされていらっしゃいます。

 では、これをほかでもやったらいいじゃないかということなんですが、そういう提案でほかのB型施設を私も訪ねていろいろ話したんですが、実はそう簡単じゃないと。なぜかというと、多くの就労施設というのは本当にかつかつの中で経営されているわけですね。これは機械一台数十万ぐらいなんです。それでもその数十万が出せないわけですよ。

 就労B型の施設でよくあるのは、例えば、施設全体で内職をして、いろいろな作業をして、もらえるお金が施設全体で月五千円なんです。自分たちの持ち出しで今経営を何とかしている。月五千円しか収入がないのに、数十万のそんな設備投資はできないという状況なんですね。

 先ほど、いろいろ支援を言っていただきました。支援のメニューの中で、厚労省の今の支援で、確かに社会福祉施設整備費補助金というのがあります。これは百八十億円あります。ところが、実態は、平成二十四年度でいえば、B型施設に投じられているのは十億円です。しかも、実はこの使い方が非常に厳しくて、これは、新しく新設する、今から立ち上げますよという人にはお金を出しましょうと。だから、先ほど申し上げた、かつかつの経営の中で何とか業種転換して新しいことをちょっとの後押しでできる人に対してはお金が出せない、こういう状況です。

 しかも、例えば施設設備整備といっても、これまた使い勝手が悪いのは、地面に固定できる機械じゃないとだめなんです。先ほど申し上げた、ああいうするっとむける機械、これは本当にちょっとした投資です。さまざまなちょっとした機械の投資が実は対象外。固定されるものじゃないとだめだというルールがあるんですね。

 こういうような、本当にちょっとした後押しをすれば高付加価値の仕事ができる、そういうネタはあるんですね。こういうところにちょっとしたお金をつけるような、そういうサポートができないかという提案をさせていただきたいんですが、厚労省の御所見をお伺いしたいと思います。

佐藤副大臣 今、伊佐委員の方から、現実にごらんになられた銅線のリサイクル、一時間に五千円の工賃という、すばらしいコストパフォーマンスの話を伺いました。

 今、質問の中でも言われましたように、障害者の日中活動の場等の基盤整備を推進するために、現在、社会福祉施設等施設整備費国庫補助金によりまして、社会福祉法人等が整備する施設の建設費等の一部について財政支援を行っているところであります。この名前のとおり、施設の建設費等の一部について国が二分の一財政支援しましょう、こういうところなんですね。平成二十五年度補正予算で百四十八億、平成二十六年度の予算案で三十億円、そういう予算をつけているところなんです。

 ただ、当該補助金は、新設のところだけではなくて既存の事業所についても、経済情勢の変動等によりまして、例えば受注量の減少等に対応して、事業品目の転換、要するに事業の業種を変更しますよ、そういうことを図るために必要な機械設備の整備を行われるとか、あるいは、技術革新等に伴う既存設備の更新、要するに古いものを更新しましょう、こういうものを行う場合について、条件は、施設と一体的に整備され、かつ施設に固定される設備等の購入費及び工事費等を補助対象としている。

 ですから、今、具体的に私も見ていないのでそれがどうなのかわからないんですけれども、例えばクリーニングの機械であるとか印刷の機械というような、施設と一体となっているようなものについては当然認められる。しかし、施設と一体的に整備されない設備、小型の機械等、今は余りないかもわかりませんが、例としてはミシンなどの、そういう小さい機械等については補助の対象外。

 そういうことになっているのが今現状でございますが、しかし、今後とも、今そういうお話をるるいただきましたので、就労支援事業所等の基盤整備を着実に推進していくことは、しっかりと厚労省としても努力をし、検討してまいりたい、そのように考えております。

伊佐分科員 ありがとうございます。

 副大臣おっしゃっていただいたとおりで、業種転換するとしても、結局、建てかえなんですね。建てかえをして初めてできる。大型のものなら認められるけれども、ちょっとした背中を押す小型のものは認められないというような現状ですので、ぜひ御検討いただきたいなと思うんです。

 先ほどたまたま私は電線の話を例にとりましたが、今いろいろな取り組みがあって、例えば水耕栽培、ちょっとした農業を小さい場所でやろうとか、あるいは福祉と農業の融合、いろいろな取り組みがあって、そういう後押しで何かできることが、もしかするといろいろな今の状況を救うことになるかもしれませんので、ぜひ積極的な御検討をお願いしたいと思います。

 では、次の質問に行かせていただきます。

 次は、一人親家庭への支援。

 母子家庭あるいは父子家庭の皆さん、今、一人親家庭の置かれている環境というのは大変な状況でして、平均所得は一般子育て世帯の四割と言われております。一人親の、お母さんの非正規雇用率は約半分。子供の貧困率というのを見ますと、大体、全国平均で子供の貧困率は一五・七%です。ところが、一人親世帯では五〇・八%。つまり、半分以上の子供が一人親世帯では貧困ラインを下回っているというような状況です。

 この一人親家庭への支援として大事な視点は何かというと、いかに自立できる環境をつくっていくかということだと思います。生活ができる仕事をまず見つけられて、しかも、その仕事と子育てをしっかり両立することができてという、この自立の環境をいかにつくれるかということが大事だと思うんです。

 これまで、政府の就労に対する支援策をいろいろ勉強させていただくと、例えば、まずあるのが高等職業訓練促進給付金。これは、職業の訓練中に、あるいは研修中に、研修を促進する、その間にさまざまな補助金を出すというプログラムなんですが、これはあくまで、高等職業と書かれていますように、看護師さんとか一定の職業に限られるわけですね。つまり、高等じゃない職業は対象になっていないというのが今の現状です。

 あともう一つありましたのは、在宅就業支援事業というものです。在宅就業という、つまり内職ですね、内職の仕事で、そのための訓練とかあるいは業務開拓とか、こういうものに対して支援をしてというもの。ところが、これは今年度でなくなったということです。(発言する者あり)

関主査代理 ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

関主査代理 速記を起こしてください。

 伊佐君。

伊佐分科員 先ほどの話の続きですが、今、一人親家庭への支援というのは、先ほど申し上げたように高等職業訓練というものがありますが、これは当然、一部の職業に限られていますねという話。もう一つは、在宅就業支援事業。これは内職で、内職の方々の訓練とか業務開拓とかをしようということですが、今回これはなくなったんですが、内職といいましても、内職で得られる月収なんて五千円ぐらい、平均五千円だということを伺っております。当然そんなのじゃ生活もできないし、子供を育てることもできないという中で、この事業は打ち切りになりました。

 では、かわりに何をやるのかということなんですが、一人親家庭への就労支援という観点で、当然、我々公明党もずっと支援の拡充というのを求めてまいったんですが、厚労省はどのように一人親家庭への就労支援について取り組んでいくのかについてお伺いしたいと思います。

高鳥大臣政務官 伊佐委員におかれましては、文科に引き続いての質問、大変御苦労さまでございます。

 委員おっしゃるとおり、一人親家庭が経済的に自立するためには、安定した就業が極めて重要でございます。このため、母子家庭等向けの就業支援や講習会の実施、資格取得を支援するための給付金等の支給、母子家庭の母を含む子育て中の人を対象としたハローワークでの相談支援、これはマザーズハローワーク等でございますが、就業支援に取り組んでいるところでございます。

 またさらに、就業支援を強化するため、資格取得を支援するための給付金等を法定化し、非課税とすることなどを内容といたしました、一人親家庭支援の充実を盛り込んだ法律案を国会に提出いたしました。また、平成二十六年度予算案には、母子自立支援員に加え、新たに就業支援専門員の配置による総合的な相談窓口の整備、転職やキャリアアップのための就業支援や子供への支援の充実強化を盛り込んだところでございます。

 こういった取り組みによりまして、引き続き、父子家庭も含めました一人親家庭への支援充実に努めてまいりたいと考えております。

伊佐分科員 ありがとうございます。

 さまざまな取り組みをしていただいているところだと思うんですが、ただ、今いただいたさまざまな話は、どちらかといえばソフト面の話、例えばコンサルティング機能をどうやって拡充していくかというような話じゃなかったかと思います。

 ソフトだけじゃなくてハードの部分といいますか、例えば先ほど申し上げた高等職業訓練促進給付金では、研修とか訓練を受けている間に一定の給付金が出るわけですね。こういうような、高等じゃない仕事の方々にもぜひ、職業訓練とか研修を受けていらっしゃるシングルマザーの方とか父子家庭の方には、一定額の補助金をお渡しするということもあるんじゃないかなと思っております。

 今、四月に消費税も上がって、物価もこうやって今上がってきているという状況の中で、本当に一番苦労されている方々のところにさらにしわ寄せが来ることのないように、ぜひ積極的な取り組みをお願いしたいと思います。

 次の質問は、歯科技工士の質問をさせていただきたいと思います。

 健康寿命をいかに延ばすかというのが、今の社会保障の中の一つの大きなテーマだと思います。その中で、言わずもがなですが、歯の役割というのは非常に重要で、歯が健康であればおいしく食べられて、内臓も強くなって、健康寿命を延ばすことにつながっていくということだと思いますが、歯の健康、歯科の中で、その土台を支えていらっしゃる技術者集団というのが歯科技工士の皆さんであるわけです。入れ歯とか差し歯とかを、日本人特有の本当の手先の器用さで、こういうものを患者さんに合わせて細かくつくっていただく。

 ところが、今、歯科技工士さんの置かれた環境というのは非常に厳しいものがありまして、診療報酬もなかなか大きく上がらないという中で、小さなパイを歯科医師の方々と分け合っているというような状況。

 歯科技工士さんの離職率は今何と八割、つまり、一年以内に十人のうち八人が仕事をやめるというような状況です。これは、よく介護業界の方々が、介護士さんは本当に離職率が高いですという話になりますが、介護業界の方でも二三%ですから、いかに歯科技工士の皆さんの離職率が高いかということがわかると思います。せっかく学校で学んで、また修練を積んで、技術を身につけて、そして仕事をされるわけですが、その多くの方々がやめられて、日本の得意分野であるような歯科技工士の技術というものがなかなか維持できない。非常に切迫した状況になっているというのが今の状況です。

 こうして歯科技工士さんの環境が悪くなっていく中で、では何が起こっているかというと、例えば、義歯なりいろいろな歯をどんどん諸外国にアウトソーシングしていくというような状況が起こっています。

 さまざまな外国、少し安いところにお願いをして、多少材料が悪かったとしても、あるいは材質が悪かったとしても、技術が落ちたとしても、とにかく何とか安くつくってくれるところにお願いをする。安かろう悪かろうと言ってはあれですが、そういった歯がもしどんどんどんどん広まってしまうと、結局、そういう歯はすぐ悪くなってしまいますので、時には、もしかすると患者さんの健康にも影響を及ぼしていくかもしれないというのが今の状況だと認識しております。

 こうした今の歯科技工士さんの置かれた環境をどうやって改善していくのかというのは、喫緊の課題であると思うんです。どうやってこの技工士さんの技術を守って、質を向上して、希望を持てるような環境をつくっていくかということです。

 幾つか、さまざまな動きはあると伺っております。幾つか提案もございます。例えば、この資格試験、国家試験については全国統一試験にして、質の向上を図っていきましょうというような提案があったりとか、あるいは、歯科技工所の中でも無届けの技工所の方もいらっしゃって、この無届けのところにはしっかり取り締まりを強化していこう、あるいは識別番号を付与するというような提案もあると聞いております。

 こうしたさまざまな取り組みがあると思うんですが、今の離職率八割という中で、なかなか若い人たちが集まってこないようなこの職場、歯科技工士さんの置かれた環境をどうやって改善するか、質の向上を図っていくかという点について、積極的な取り組みをお願いしたいと思うんですが、いかがでしょうか。

原(徳)政府参考人 お答えいたします。

 歯科技工物につきましては、御質問にもございましたけれども、義歯などもございますが、最近は、インプラントなどの高度な技術を必要とするものが増加してきております。このため、歯科技工士の資質の向上が望まれているところでございます。

 従来、歯科技工士の国家試験そのものは、実技試験の実施の面から、歯科技工士の養成施設の所在地の都道府県知事が実施をしていただいております。地域によっては、このような高度な技術に係る試験問題を作成することが、あるいは出題することが困難な状況になってきていると聞いております。

 このため、国家試験を全国統一試験とすることにつきまして、今回、歯科技工士法の改正についてお諮りをお願いしているところでございます。また、これによりまして、試験問題、合否判定のレベルの均一化を図ることによりまして、歯科技工士の資質の向上、ひいては安全で安心な歯科技工物の提供ができると考えております。

 また、先ほどの無届けの技工所の問題でございますけれども、これにつきましては、技工物を注文する歯科医師側がしっかり確認していただくことも大事でございますけれども、届け出をしているかどうかの確認をどうやってするのか、こういう問題もございますので、都道府県等におきまして、届け出があった場合の証明書等の発行をしていただくようにお願いしておりますし、また、都道府県においてもそのような管理をしっかりしていただくということを依頼しているところでございます。

伊佐分科員 ありがとうございます。

 歯科技工士の皆さんの環境をいかに改善していくかということが、恐らく、また結果として国民の健康寿命を延伸していくということにつながっていくと私は確信しておりますので、何とぞよろしくお願いいたします。

 次の質問ですが、死体検案、というのは、亡くなった方々の原因特定とか身元の確定とかの話です。

 これは、特に災害対応として非常に重要でして、今も三十年以内にマグニチュード八から九の地震が来ると言われている中で、例えば、こうした災害で不幸にも被災された方々が亡くなって、その亡くなられた方々の身元確認とかあるいは原因の特定とか、これをして、御遺族のもとに一刻も早くお返ししてさしあげるという、この体制をどうやって整備していくかというのが重要だと思っております。

 死体検案書というのがありまして、これは、何が原因で亡くなったかというのを調べて助言する、そのための紙なんですが、この死体検案書というのを書けるのは今医師だけです。お医者さんだけ。それで、この検案書を作成する過程の中で、もし解剖する必要がある場合、この場合は、死体解剖資格というのを持った方々が解剖するということになっています。

 ところが、この体制が日本では非常に不十分だと長らく言われておりまして、本来解剖を行うべき御遺体で、実際に解剖されているのは約一割と言われています。これは北欧諸国は大体八から九割と言われていますので、相当差がある。今後どうやって日本のこの検案体制を充実させていくか、特に都市部では本当に喫緊の課題になっています。

 こうした危機感を持っていただいて、政府の中でもさまざまな報告が取りまとめられてはいるんですが、昨年六月に、死因究明に関する推進計画というのを取りまとめていただきました。ところが、そこにどう書いてあるのかというと、死体の検案及び解剖の実施体制の充実について、「今後、検討会において更に議論を深めていくこととする。」、議論を深めますということが書いてあるだけなんですね。

 今まさしく議論していただいていると思うんですが、そこで、どうやって充実させていくかの中での一つのアイデアとして、例えば歯科医師の方々、死体解剖資格というのは歯科医師も取れますので、この解剖資格を持った歯科医師の皆さんでも検案書を作成できるようにしたらいいんじゃないかという考え方もあります。

 先ほど申し上げたとおり、死体解剖というのは最後に死体検案書を作成するために行うわけなんですが、この解剖資格は医師だけじゃなくて歯科医師も取得できる。つまり、この資格さえ持っていれば、解剖は医師と同じようにできる知見が歯科医師の皆さんもあるわけです。ところが、そうやって歯科医師の皆さんが、死体解剖資格を持った者が死因を特定したとしても、そこを解剖したとしても、最終的には、その検案書を書けるのは歯科医師じゃだめで医師になっている。もしこれが歯科医師でも書けるようになれば、より迅速な対応ができるんじゃないかなという考え方もあります。

 そこで、こうした提案を含めて、この検案体制の充実という点、しっかり充実させていく必要があると思いますが、どう厚労省として考えられますでしょうか。

原(徳)政府参考人 死体検案の体制の問題でございますけれども、現在、死因究明等推進計画検討会において、最終報告書の取りまとめに向けた検討が進められていると聞いております。

 厚生労働省としましては、死因究明体制の充実を図るため、平成二十六年度予算案におきまして、総額約一億五千万円の計上をしているところでございます。

 具体的には、検案体制の充実を図るために、国立保健医療科学院で実施してきました死体検案講習会を、もう少し幅広くしやすくするために、来年度から日本医師会に委託して、講習会の回数をふやすなどを考えているところでございます。

 引き続き、死因究明体制の充実に向けて努力するとともに、死因究明等推進計画の取りまとめに向けて、内閣府など関係省庁と連携してまいりたいと考えております。

伊佐分科員 ありがとうございました。

 もう一つ、この死体解剖資格の認定手続が実はかなり複雑でして、ここを簡素化していただきたいということもあわせてお願いしたいと思います。

 最後に、三分延長していただけるそうなので、介護のやりがいについての話を質問させていただきたいと思います。

 介護職員、今百五十万人ですが、二〇二五年には一・五倍以上、二百五十万人近くが必要になると言われています。これは先ほど申し上げたように、介護業界の離職率は二三・七%です。実態調査をして、何でやめたのかというのをやめた方々に調査をして聞くと、その結果として多いのが、まず、収入が少なかった、もう一つが、自分の将来の見込みが立たなかったということをおっしゃいます。

 まさしく今、どんどん超高齢化社会の中で、介護職員の環境をどうやってつくっていくのか、これもまた喫緊な課題なわけですが、どうやって、やりがいのある、これはいい仕事、夢を持てる仕事だなというのを持っていただくか。

 それで、実は、事業者の皆さんが独自に努力していただいている例もありまして、千事業所ぐらいが応募して、そこでまず書類選考する、その中で、あるいは介護事業所間で投票して、五つの事業所を選んで、この五つの事業所が最後に決勝戦ということで、東京でやるんですが、プレゼンをやるわけですね。そのプレゼンは、例えば、介護を通じてこういうやりがいを感じていますとか、あるいはこういうような感動のエピソードがありましたというプレゼンテーションをする。最後は、その中で、日本一として、この人が今回ナンバーワンですよというのを決めていく。そういう取り組みの中で、介護に対するやりがいを高めていこうという取り組みをされていらっしゃる方々もいらっしゃいます。

 そういう方々のお話を聞くと、介護を憧れの仕事にしたいんだという思いがある、こういう思いでいろいろな取り組みをされていらっしゃるということです。こうした取り組みについて、いろいろな御意見はあると思うんですが、ただ、一石を投じるという意味では、意味のある活動をされていらっしゃるんじゃないかなと私は思っております。

 そこで、最後に質問ですが、この介護業界、やりがいある仕事として、若者が集まってくるような仕事として、どういうふうに介護業界を盛り上げていくかということは重要な取り組みだと思いますが、処遇の改善も含めて、厚労省として応援をぜひいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

原(勝)政府参考人 お答え申し上げます。

 介護に従事されている方々がやりがいを持って仕事をしていただくということは大変重要なことだと思っておりまして、そのためには、まず事業主、事業者みずから、あるいは事業者団体に取り組んでいただくということがやはり大事じゃないか。先ほど議員が御指摘になりました取り組みも、これは事業者団体が自主的に取り組んでおられるということでございまして、そういうことではないか。

 その上で、国としても、そうした事業主の取り組みを支援しつつ、介護人材を確保するという観点から、例えば、介護技術の向上に積極的に取り組めるようにキャリアパスを確立していく、あるいは、事業主が研修受講を支援するなどのキャリアアップ支援による資質の向上、これを支援していく、さらには、介護職員の処遇改善あるいは労働条件等の環境改善等を一体的に行っていくということが重要ではないかと考えておりまして、今後とも国としても努力をしていきたいと思っています。

 介護は価値ある仕事であるという意識が国民の間に共有されることが重要であると考えておりまして、介護職員の専門性に対する社会的認知度のアップなど、介護に従事する方のやりがいにつながるように私どもも努力をしてまいりたいと思います。

伊佐分科員 本当に大変な介護業界だからこそ、その介護の世界から日本を変えていくんだ、元気にしていくんだという思いで頑張っている方々もいらっしゃいますので、ぜひ積極的な御支援をよろしくお願いします。

 以上、終わります。ありがとうございました。

関主査代理 これにて伊佐進一君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして本分科会の審査は全て終了いたしました。

 この際、一言御挨拶申し上げます。

 分科員各位の御協力によりまして、本分科会の議事を滞りなく終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午後八時三十四分散会


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