衆議院

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第1号 平成27年3月10日(火曜日)

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本分科会は平成二十七年三月五日(木曜日)委員会において、設置することに決した。

三月九日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      熊田 裕通君    根本  匠君

      原田 義昭君    星野 剛士君

      山井 和則君    岡本 三成君

三月九日

 原田義昭君が委員長の指名で、主査に選任された。

平成二十七年三月十日(火曜日)

    午前八時開議

 出席分科員

   主査 原田 義昭君

      赤枝 恒雄君    熊田 裕通君

      白須賀貴樹君    谷川 とむ君

      根本  匠君    星野 剛士君

      堀内 詔子君    務台 俊介君

      山田 美樹君    山井 和則君

      岡本 三成君    浜地 雅一君

   兼務 宮崎 謙介君 兼務 泉  健太君

   兼務 奥野総一郎君 兼務 寺田  学君

   兼務 中根 康浩君 兼務 宮崎 岳志君

   兼務 河野 正美君 兼務 木下 智彦君

   兼務 初鹿 明博君 兼務 丸山 穂高君

   兼務 中野 洋昌君 兼務 清水 忠史君

   兼務 本村 伸子君

    …………………………………

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   厚生労働副大臣      永岡 桂子君

   厚生労働副大臣      山本 香苗君

   財務大臣政務官      竹谷とし子君

   文部科学大臣政務官    赤池 誠章君

   厚生労働大臣政務官    橋本  岳君

   厚生労働大臣政務官    高階恵美子君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 中島  誠君

   政府参考人

   (内閣府地方創生推進室次長)           藤原  豊君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           佐野  太君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           芦立  訓君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房情報政策・政策評価審議官)  安藤 英作君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房年金管理審議官)       樽見 英樹君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           中山 峰孝君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  二川 一男君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  新村 和哉君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局安全衛生部長)       土屋 喜久君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局次長)           勝田 智明君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局雇用開発部長)       広畑 義久君

   政府参考人

   (厚生労働省職業能力開発局長)          宮川  晃君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       安藤よし子君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           鈴木 俊彦君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    藤井 康弘君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  三浦 公嗣君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  唐澤  剛君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  香取 照幸君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 今別府敏雄君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房建設流通政策審議官)     吉田 光市君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           宮城 直樹君

   厚生労働委員会専門員   中尾 淳子君

   予算委員会専門員     石崎 貴俊君

    ―――――――――――――

分科員の異動

三月十日

 辞任         補欠選任

  根本  匠君     務台 俊介君

  星野 剛士君     山田 美樹君

  岡本 三成君     吉田 宣弘君

同日

 辞任         補欠選任

  務台 俊介君     堀内 詔子君

  山田 美樹君     白須賀貴樹君

  吉田 宣弘君     伊佐 進一君

同日

 辞任         補欠選任

  白須賀貴樹君     星野 剛士君

  堀内 詔子君     赤枝 恒雄君

  伊佐 進一君     赤羽 一嘉君

同日

 辞任         補欠選任

  赤枝 恒雄君     谷川 とむ君

  赤羽 一嘉君     真山 祐一君

同日

 辞任         補欠選任

  谷川 とむ君     根本  匠君

  真山 祐一君     赤羽 一嘉君

同日

 辞任         補欠選任

  赤羽 一嘉君     真山 祐一君

同日

 辞任         補欠選任

  真山 祐一君     浜地 雅一君

同日

 辞任         補欠選任

  浜地 雅一君     岡本 三成君

同日

 第一分科員寺田学君、本村伸子君、第二分科員奥野総一郎君、第三分科員泉健太君、木下智彦君、初鹿明博君、第四分科員宮崎岳志君、第六分科員中根康浩君、丸山穂高君、中野洋昌君、第七分科員宮崎謙介君、清水忠史君及び第八分科員河野正美君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成二十七年度一般会計予算

 平成二十七年度特別会計予算

 平成二十七年度政府関係機関予算

 (厚生労働省所管)


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     ――――◇―――――

原田主査 これより予算委員会第五分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりました。よろしくお願いいたします。

 本分科会は、厚生労働省所管について審査を行うことになっております。

 平成二十七年度一般会計予算、平成二十七年度特別会計予算及び平成二十七年度政府関係機関予算中厚生労働省所管について、政府から説明を聴取いたします。塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 平成二十七年度厚生労働省関係予算案の概要について説明をいたします。

 平成二十七年度厚生労働省所管一般会計予算案の総額は二十九兆九千百四十六億円であり、子ども・子育て支援新制度の実施に伴って平成二十七年度から内閣府に移管される保育所運営費等を除いた平成二十六年度当初予算額二十九兆四百五十四億円と比較しますと、八千六百九十三億円、三・〇%の増加となっています。

 また、平成二十七年度厚生労働省所管特別会計予算案については、復興庁に一括計上した予算案を含め、東日本大震災復興特別会計、労働保険特別会計、年金特別会計に所要の予算案を計上しています。

 次に、消費税率一〇%への引き上げの平成二十九年四月への延期に伴い、消費税増収分等を活用した社会保障の充実について、平成二十七年度予算案では、限られた財源の中、施策の優先順位をつけ、子ども・子育て支援新制度の予定どおりの施行や国民健康保険への財政支援の拡充などを優先的に実施することとし、低所得者への福祉的給付など年金関係の措置について、法律の規定どおり、消費税率一〇%への引き上げ時に実施するとともに、低所得者の介護保険料の軽減について、二段階に分けて実施することとしています。

 以下、主要施策について説明いたします。

 第一に、子供を産み育てやすい環境を整備するため、子ども・子育て支援新制度の実施による教育、保育、地域の子ども・子育て支援の充実、待機児童解消加速化プランに基づく保育所等の受け入れ児童数の拡大、放課後子ども総合プランに基づく放課後児童クラブの拡充、母子保健医療対策の強化、社会的養護の充実、一人親家庭支援の推進などを図ります。

 第二に、女性、若者、高齢者等の人材力の強化として、全ての人材が能力を高め、その能力を存分に発揮できるよう、女性、若者、高齢者、障害者等の活躍推進、労働市場インフラの戦略的強化、外国人材の活用などを図ります。

 第三に、医療、介護について、団塊の世代が七十五歳以上となり、医療、介護等の需要の急増が予想される二〇二五年に向け、医療・介護サービス提供体制の改革を本格的に進めるため、地域医療介護総合確保基金による事業や平成二十七年度介護報酬改定による介護職員の処遇改善、認知症施策などを推進します。

 また、医療分野の研究開発を促進することなどにより、革新的な医療技術の実用化を推進し、医療関連産業の国際競争力を向上させるとともに、予防、健康管理の推進などにより、国民の健康寿命の延伸を目指します。

 第四に、難病、がん、肝炎等の各種疾病対策や感染症対策などを推進するほか、食品の安全対策、安全で強靱な水道の構築、危険ドラッグ対策などの取り組みを進めます。

 第五に、就労形態にかかわらず公正に処遇され、安心して将来に希望を持って働くことができるように、ワーク・ライフ・バランスの推進などの働き方改革の実現、人材不足分野や地域における人材確保、労働環境の整備などを推進します。

 第六に、平成二十七年度から施行される生活困窮者自立支援法に基づき、生活困窮者の自立・就労支援等を一層促進していくとともに、生活保護制度の適正実施、自殺・うつ病対策などにより、自立した生活の実現と暮らしの安心を確保していきます。

 第七に、障害児、障害者の社会参加の機会の確保と地域社会における共生を支援するため、平成二十七年度障害福祉サービス等報酬改定による職員の処遇改善など障害福祉サービスの充実、地域生活支援の着実な実施や就労支援、精神障害者や発達障害者などへの支援施策を推進します。

 第八に、持続可能で安心できる年金制度を確実に運営するとともに、正確な年金記録の管理に資する取り組みや適用・収納対策の強化を進めます。

 以上のほか、世界保健機関や国際労働機関等を通じた国際協力の推進、科学技術の振興などを図ります。

 なお、委員の皆様のお手元に資料が配付されていますが、一般会計予算案の主要経費別内訳及び特別会計予算案の歳入・歳出予定額については、お許しを得て、説明を省略させていただきます。

 今後とも、国民生活の安全、安心の確保と質の向上、雇用の安定を図るため、厚生労働行政の推進に一層努力していきますので、皆様のなお一層の御理解と御協力をお願いいたします。

原田主査 この際、お諮りいたします。

 厚生労働省所管予算の主要経費別概要につきましては、その説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原田主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔一般会計予算案の主要経費別内訳及び特別会計予算案の歳入・歳出予定額は本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

原田主査 以上をもちまして説明は終わりました。

    ―――――――――――――

原田主査 この際、分科員各位に申し上げます。

 質疑時間はこれを厳守され、議事の進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。

 なお、政府当局に申し上げます。

 質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岡本三成君。

岡本(三)分科員 おはようございます。公明党の岡本三成です。

 質問の機会をいただきました。ありがとうございます。

 私は、比例の北関東ブロックから選出をされておりまして、公明党の役職といたしましては群馬県を担当させていただいております。したがいまして、本日は、群馬県の県民の皆さんが最も心配をしていらっしゃる群馬大学病院の医療事故について主に質問させていただきます。よろしくお願いいたします。

 二〇〇九年から昨年までの間に、同じ医師によって開腹手術、おなかを切る手術を受けた九十一名中十名が死亡、また、腹腔鏡手術、これは内視鏡を使用してする手術、これは九十二名のうち八名の方が死亡されておりまして、この死亡率は何と全国平均の六倍であります。

 この医師の方、実は、術前に必要な検査をしない、事前に倫理審査も怠る、インフォームド・コンセント、家族や患者への説明もほとんどなし、その他の選択肢も示さないというようなことでありまして、この事故、あえて今の時点では事故と申し上げますが、私はほとんど事件だと思います。これに関しましては、群馬県民のみならず、日本に大きな衝撃をもたらしております。

 一方で、私の友人の医師等に聞きますと、ほとんどの医師の方というのは高い倫理性のもと献身的に医療サービスに努めていらっしゃいまして、同じような人種に思われたくないというふうな医師の方もたくさんいらっしゃる現状であります。

 私は、この事案を、単なる一人の医師の問題ということではなくて、システムとして、体制としてこういうことをどのように今後防いでいけるかということを中心にきょうは質問、提案をさせていただきたいと思います。

 ただ、どう考えても、この医師の方の資質というのはかなり問題があるなと思っておりまして、その意味において、実は、医師免許を取得した後も、その後定期的に例えば倫理的な研修を受けるような機会が医師の方にもたらされたり、そのようなシステムをつくることも一方では重要ではないかと思っているんです。

 まず初めに、塩崎大臣のこの事案、事件に対する所感と、倫理に関して、医師の方々にどういうふうにさまざまな機会を提供するかということに関しまして、御意見があれば伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 先生御指摘のように、今回判明をいたしつつあるこの事案については、大変重たい事案だというふうに思いますし、先生御指摘のような広がりのある問題でもあろうかなというふうに私も個人的に思っているところでございます。

 この群馬大学病院での事案につきましては、本年二月三日から社会保障審議会の医療分科会で審議を既に開始しておりまして、その審議を踏まえて、厚労省としてきちっとした対応を検討していきたいというふうに考えております。

 この分科会では、特定機能病院の有すべき安全管理体制などについて審議を行う予定でございまして、倫理面などの資質向上を目指す取り組みについても、分科会における審議の結果を踏まえて、厚生労働省として必要に応じて適切に対応をしなければならないというふうに考えているわけでございまして、先生今御指摘のように、倫理面だけではなくて安全管理体制そのものについても、深い考察をした上で、対応をきっちりしていかなきゃいけないというふうに思っております。

岡本(三)分科員 その上で、さまざまなガバナンスを強化するという点から質問並びに御提案申し上げたいんですが、一つは、群馬大学病院の中のガバナンスが全くきいていなかったということは明らかだというふうに思います。

 実は、調べてみますと、術前、術中、そして手術の後、または亡くなられたときのプロセス、これは、さまざまな委員会は組まれているんですね。ただ、適切に運用されていないという現状であります。

 したがいまして、きょうは二つのことを御提案申し上げたいんです。

 例えば、さまざまな、会議録ですとかを医師の方が残さなければいけないというふうになっているんですけれども、当該医師においては、ほとんど議論もされていないし、その記録も残されていないわけですね。

 ただ、医療サービスを提供するのは医師であっても、その記録を残すのは必ずしも医師でもないというふうに、必要ではないと思っています。

 例えば、ガバナンスをきかす点からも、事務職を配置して、インフォームド・コンセントであれば医師が説明するけれども、その説明をした内容、患者の対応はどうだったのかということを事務職が記録してファイルに残す。例えば、不幸にもお亡くなりになった後には、ちゃんとデスコンファレンスがあることを担保する事務職、コンプライアンスの人がいて、その会議がどういう内容であったということもその事務職の方がちゃんとまとめてファイルで残す、そして後から検証ができるというように。

 医師不足ですから、このチームも、当該医師を含めて、医師は二人しかおりませんでした。

 ですから、大変な医師の仕事の中にさらなる事務的な作業をふやすというのは私はどうかなと思っているので、医療サービスを向上させてガバナンスをよくきかすために、事務職と常に働かせることによって記録を残していったらどうかというのが一つ目の提案であります。

 加えまして、今回、不幸中の幸いは、腹腔鏡は映像を見ながらやりますので、録画されていたんですね。ですから、その録画の資料を見て、どこが間違っていたのか、適切なオペレーションだったのかということが検証できるわけですので、万々が一のことがあったときの被害者の御遺族のためにも、録画が必要だと思います。

 また、医師の立場からしても、少数ですけれども、モンスターペーシャントみたいな方もいらっしゃるわけです。変な言いがかりをつけられたときに、いやいや、適切なオペレーションをやったんですという、医師の方を守る意味からも、基本的に、特定機能病院のような高度なサービスを提供する病院では手術に関しては全部録画をするということを義務づけしてはどうかと思いますけれども、いかがでしょうか。

二川政府参考人 特定機能病院の安全管理体制についてのお尋ねでございますけれども、特定機能病院は、高度な医療の提供を実施する能力を備えた病院として承認された医療機関でございます。したがいまして、医療安全管理体制につきましても、医療に係る安全管理を行う部門の設置等を求めるとともに、その分、診療報酬においても評価されているところでございます。

 群馬大学病院の事案につきましては、現在、先ほど大臣から御答弁申し上げましたとおり、社会保障審議会医療分科会におきまして、その安全管理体制について審議を行っているところでございます。

 また、この特定機能病院につきましては、東京女子医科大学病院、またこの群馬大学病院の事案と相次いでいるところでございますので、厚生労働省といたしましても、その安全管理体制について、なお一層の徹底を図っていく必要があるというふうに考えているところでございます。

 この医療分科会におきます二病院についての審議結果、それからまた提出された再発防止対策、そういったものがございます。そういったことを踏まえまして、特定機能病院の安全管理体制のあり方を検討してまいりたいと考えておりますし、より適切な、具体的な提案につきましても、今後、医療安全管理体制の一層の確保に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

岡本(三)分科員 群馬大学病院に関して言いますと、安全管理体制はさまざまなプロセスを経ることが義務づけられておりましたけれども、運用されていなかっただけなんですね。ですから、どのように運用を担保するかということを中心にぜひ御議論いただきたいと思います。

 続きまして、この大学病院を監督する厚労省のガバナンスが甘いということに対する御指摘と御提案を申し上げたいんですけれども、昨年、厚労省は、二月六日にこの大学病院に対しまして検査に入っております。ただ、大学側がこの死亡事故を把握したのがその三カ月後の五月だったということで、二月時点ではその事実を知るすべもなかったというふうに記録が残されているんですけれども、私は、この管理体制が全くチェック機能を果たしていないんだというふうに思うんですね。

 要は、厚労省の職員の方が大学に行くと、大学に用意された資料だけを見て、その資料をもとにさまざまなことをチェックするわけですけれども、そうしますと、上がってくる準備された資料以外のことは何も見えないわけです。普通は、金融庁が銀行をチェックするときには、例えば、アトランダムにサンプリングをして、その資料を持ってこさせて、そのサンプルの中で全てのことがちゃんとオペレーションされているかということを確認するわけです。

 ですから、同様に、厚労省も、行った後に全ての事案のケースを全部出させて、そしてサンプリング、例えば、オペレーションの中でこのオペレーション、デスケースの場合にはこのオペレーション、このオペレーション、全部ファイルを持ってきてくださいというふうにして、常に病院側が全ての事案に対して、術前、術中、術後の記録を残しておかなければいけないような体制にしなければ、向こうが準備したものだけチェックをするという体制だと、いつまでたってもガバナンスの強化というのは不十分ではないかなというふうに思うんです。特に特定機能病院はそのような責務を課してもいいレベルの病院だと思いますが、いかがでしょうか。

永岡副大臣 厚生労働省におきましては、全国八十六の特定機能病院に対して、原則として定期的に年一回、立入検査を実施しているところです。

 安全管理体制などにつきましては、先生おっしゃるように、書面ですとかヒアリングなどにより確認を行いまして、適宜必要な指導ですとか助言を行っております。

 この立入検査に当たりましては、限られた役所の人、これは医療監視員と申しますけれども、厚生局が出しております。また、限られた時間の中で、病院の診療業務に支障がないように、効率よく立入検査を実施する必要があることから、病院の人員配置や構造設備の状況などの検討項目については、あらかじめ病院において作成をお願いしているところです。

 立入検査での把握ができます内容は、事実上、病院で行われている医療の一部に限られますけれども、問題が発生した場合には、速やかに臨時の立入検査を行うなど、機動的な対応を行っているところです。

 今後は、議員の御指摘も踏まえまして、特定機能病院の安全管理体制の向上の観点から、立入検査で指摘しました事項につきまして、より短期的に改善状況を確認するなど、さらに効果的な立入検査のあり方について検討してまいります。

 以上です。

岡本(三)分科員 私は、検査の質と量を全部ふやしてほしいなんて全く思っていないんです。要は、どこがチェックされるかわからないというふうな状況にしておかなければ、全ての事案についてしっかりとした記録をとっていくことを怠るような可能性はあるわけですから、その意味で、サンプリングはほんの少しでもいいんです。その場で、この事案、この事案というふうに指示をして持ってきていただいて、それをチェックするというような体制に改めることによって、病院は全ての事案について適切な運用を行うというようなことをぜひ御検討いただければと思います。

 続きまして、今回のこの群馬大学病院、間違いなく大きな問題を起こしたわけですから、ここに対して適切なペナルティーを科すことが、他の特定機能病院に対するガバナンスを強化していただく方向に持っていくというふうなことにつながると思うんですね。

 私は、五年後、十年後で振り返ったときに、群馬大学病院のあの事案があったからこそ日本のガバナンスが向上したと言っていただけるような事案にすべきだというふうに思っておりますので、その意味におきまして、今回のこの群馬大学病院に対しても、強いペナルティーを科すべきだというふうに思っています。

 そして、きのう、社会保障審議会の群馬大学病院側に対するヒアリングが行われたというふうに聞いているんですけれども、一部報道もされておりますが、より詳細に、その審査の結果と今後の方向性について御説明をいただきたいんです。

 その中で、特に、この群馬大学病院は、臨床研究中核病院にも指定をされておりまして、補助金が渡されることになっております。そして、二〇一四年に四億円の支給が決まっていたんですけれども、今回の事案が発生したのでその支給が見合わされているんです。

 こういう問題を起こした病院までも、一度決めたことであれば補助金が渡されるようなことがあっては絶対いけないというふうに私は思っているんですが、この補助金の支給に関してもどうなるかということを含めて、今後の見通しをお聞かせいただければと思います。

塩崎国務大臣 今先生御指摘のように、昨日、医療分科会が非公開で開催をされました。

 病院関係者、特に病院長などから、最終報告書が既にもう出ていますから、それを踏まえて、死亡事案のこれまでの経緯とか、あるいは事案の発生当時の医療安全の体制、あるいは死亡事案の原因分析状況、再発防止策などについて説明を聴取したわけであります。

 それで、これに対して、分科会の委員からは、腹腔鏡手術の死亡例が八例あった、この続いた理由、それから再発防止策について主として質疑を行ったわけでありますけれども、厚労省としては、医療分科会の今後の審議の結果を受けて、先ほど申し上げたとおり、適切に対応していきたいと思っております。

 今先生御指摘の補助金でございます。

 これは、臨床研究の体制整備に関する補助金ということで、人材確保とか、あるいは施設整備に関する補助金が用意をされていたわけでありますけれども、現在、交付を保留しているわけでありまして、今般の事案についての病院による調査あるいは再発防止等の状況を踏まえる必要がどうしてもあります。

 年度末が迫っていることを考慮いたしますと、本年度の補助金の交付は現実的には困難だなというふうに考えているところでございまして、引き続き分科会での議論をしっかりとウオッチしながら、厚労省としても正しい対応をしてまいりたいというふうに思います。

岡本(三)分科員 この病院に対しまして適切に、厳しく対応することが残りの八十五の特定機能病院のガバナンスを上げていくことにもつながると思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。

 最後に、お願いを二点申し上げたいんです。

 一つは、遺族の補償に対しまして、最大限の努力を、配慮をお願いしたいということで、どのような補償をしても、もう亡くなられた方はお戻りにならないわけですけれども、どのように、国としても、または大学が対応するかということに対して指導していくかということも国民の皆さんは見ていらっしゃいますので、非は非と認め、最大限の御尽力をお願いしたいと思います。

 加えまして、この地域の県民の方にとっては、この群馬大学病院は、ラストリゾート、医療のとりでなんですね。ですから、今回の清算をしっかりした上で、地域医療に資するような安全管理機能を再構築させて、再出発できるような御指導もお願いしたいと思います。

 最後に、ちょっとトピックが変わりまして、一つだけ、国民年金に加入されている女性の方に対する産前産後の保険料の徴収免除の件につきまして質問させてください。

 現在、厚生年金におきましては、出産前六週間、出産後八週間の保険料免除がされています。そして、免除した上で、満額納めたものとみなしまして、老後の年金に反映される仕組みができ上がっています。しかし、国民年金にはこうした仕組みがまだ取り入れられておりませんので、出産される方々に関しては不公平だという声も出てきているのが事実であります。

 私、地元の方々からこの点御指摘をいただきまして、この地元の方から国会に嘆願書が持ち込まれたんですね。私自身が、紹介議員第一号といたしまして、この嘆願書を衆議院議長に提出させていただきまして、ぜひとも早期に国民年金の加入者の方に関しましても保険料免除を実現すべきだというふうに思っています。

 国民年金におきましては、この対象者、今後出産を迎えるような年齢層の方々が二十万人ぐらいいらっしゃるというふうに言われておりますけれども、仮にこの方々に対して産前、あと産後に関して保険料を免除した場合に、全体として財源が幾らぐらい必要なのかということをお伺いしたいと思います。

 加えまして、もしこの財源を保険料を納める方々の保険料で賄うとしたときに、お一人月幾らぐらいの御負担をお願いしなければいけないかということについてもお伺いしたいと思います。

香取政府参考人 御答弁申し上げます。

 御指摘ありました第一号被保険者、国民年金の方々の産前産後期間の取り扱いにつきましてでございますが、先生お話しありましたように、この方々、一号被保険者の女性で年間に出産される方ですが、さまざまなデータから推計しますと、おおむね、約二十万人ということで、出産は二十万件ぐらいあるだろうと推計されます。

 この方々、産前六週間、産後八週間、いわゆる産前産後期間につきまして、これはおおむね、十四週ですので、四カ月程度ということになります。この分、国民年金の保険料は、この方々が仮に納めていただく、あるいは、免除するとなりますと、年間で約百億円程度の保険料を免除するということになります。

 この百億円ですが、厚生年金等と同じような考え方で、ほかの方々が皆さんで薄くカバーをする、少しずつ分け合ってこの部分を御負担いただくと考えますと、おおむね、追加的に必要になるのが、一号被保険者一人当たり一月百円ぐらいの追加の負担ということになるであろうというふうに推計されております。

岡本(三)分科員 大臣、最後に御所見をお伺いしたいんですが、現在の安倍政権の大きな柱の一つが子育て支援であり、次世代の育成であり、しかも、直面している最大の危機は人口減少なんだと思います。

 その意味から、毎月お一人お一人にさらに百円御負担をいただくのは大変なことであるのはわかっている一方で、産前産後にこの方々に最大の支援の姿勢を示して、それを実現して、未来を開いていくというようなことが必要だと思いますけれども、現在検討中だと伺いましたが、大臣の決意も込めて、所感を最後に伺えればと思います。

塩崎国務大臣 御指摘の第一号被保険者の産前産後期間の保険料免除につきましては、社会保障審議会の年金部会において議論されておりまして、次世代育成支援の観点から配慮措置を設けることが妥当である、そして、免除期間中の給付を保障する場合には、その費用を第一号被保険者全体で、今お話があったとおり、分かち合うことが必要だという問題整理がされておるわけであります。

 この第一号被保険者の産前産後期間の保険料免除は、社会保障・税一体改革において、三党協議の結果、平成二十四年のいわゆる年金機能強化法に検討規定が設けられたという経緯のある重要な課題でございます。

 新たな負担が必要であることについて、国民の理解を得ながら、適切な結論が得られるように、前向きに調整を進めてまいりたいというふうに思っております。

岡本(三)分科員 厚生年金に比べまして、国民年金、不公平だというふうな声は事実だというふうに感じますし、今の政権の政策のど真ん中でありますので、ぜひ実現をお願いしたいと思います。

 では、以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

原田主査 これにて岡本三成君の質疑は終了いたしました。

 次に、務台俊介君。

務台分科員 アルプスの麓の選挙区から参りました務台俊介でございます。

 ただいまは群大の医療事故の件に関しまして、非常に深刻な御質問がございました。医療行為のチェック体制に関して、医療の先進国の日本ではあり得ないような事態だと驚愕しております。

 本日、私は、もう一つの課題である、地方における医師不足、特に産婦人科医、あるいは小児科医の不足について御質問させていただきたいと思います。

 私の地元の大町市、北安曇郡、北アルプスの山麓でございます。長野オリンピックをしっかりとこなした世界的なスノーリゾート地域でございまして、大臣もスキーをなさったことがあるんじゃないかというふうに思います。先ごろは、神城断層地震もありまして、思わぬ災害に見舞われたところでございます。人口規模でいうと六万人、広さでいうと東京都の半分くらいの広さのところ、ここに、思わぬ人為的な災難が降りかかっております。

 それは、大町市立病院というのがあるんですが、そこに産婦人科医がいなくなったということで、地元が大騒ぎです。というのは、大町市立病院の産婦人科医というのは、北安曇郡、大町を合わせて唯一産婦人科を持っていたところでございまして、ここにお医者さんがいなくなったものですから、大騒ぎになっております。

 せっかくIターンやUターンで若い家族がこの地域に移住しようとしても、ここで子供が産めないという事態で、びっくりして移住をやめるというようなケースも報告されております。里帰りで子供を産もうとしても産めない。地方創生でこれからどんどん人を、中山間地に帰ってもらおうというときに、これでは、移動の障害になって、まさに医療行政が地方創生を阻んでいる、こんな事態が生じております。

 そこで伺いたいと思います。一体どういう状態になっているかということに対しての厚生労働省の認識でございます。大町病院の産婦人科医の不在についてどのように受けとめているのか。私は、恐らく全国でも同様の事例が幾つかあると思うんですが、ここら辺の御認識を伺いたいと思います。

橋本大臣政務官 お答えをいたします。

 今御指摘がありましたように、市立大町総合病院におきましては、産婦人科の常勤医師一名を欠くこととなりまして、今月から分娩の取り扱いが中止されていると承知をしております。

 同様の事例がということですけれども、例えば私の地元、岡山県倉敷市では児島市民病院というのが、実に、二〇〇八年ですからもう何年も前の話ですが、やはり同様に産婦人科のドクターがいなくなって、産科が休止して、今はもう、多分、分娩はとれていない状態だと思いますが、そのような状態があるのもございまして、私も地元に帰ると、どうにかしてくれという御要望をいただくことは少なからずあるところでございます。

 今は個別の病院ごとというような話ですけれども、例えば二次医療圏という単位で見ますと、その大町市を含む大北二次医療圏のように分娩の取り扱いができない二次医療圏というものは、現在、平成二十三年では五つ存在をしております。北海道、山梨県、愛知県、徳島県、高知県と日本各地に散らばっておりますが、そういう地域があるというのが現状でございます。

 地域において安心して子供を産み育てることができるように、御指摘のように、地方創生という言葉もあります、少子化対策をしっかりしていかなければなりません。その中で、産科、小児科等の医療提供体制の整備というのは大変重要な課題でございます。

 厚生労働省としても、特定の地域等での勤務を条件とした地域枠を活用した医学部入学定員の増加、医師不足病院への医師の派遣を行う地域医療支援センターの運営に対する財政支援、そして、産科医の勤務環境改善、整備を行うため、分娩件数に応じた医師への手当の支給をするため、地域医療介護総合確保基金の活用などを通じて、都道府県が実施する医師確保事業について支援を行ってまいりたい、このように考えております。

務台分科員 私、お手元に資料を用意させていただいておりますが、六ページをちょっとごらんいただきたいと思います。

 ここに、大町市、北安曇郡のお医者さんの配置状況がどうなっているか。特に、真ん中の産婦人科医のところを見ていただきますと、平成十四年に六人この地域にいた産婦人科医が、昨年末の時点ではゼロとなっているというのが実態でございまして、これがミクロの状態でございます。

 そして、こういう状態を、今政務官から、るる対策を講じているというお話がございましたが、その結果がどうなっているかということが大事だと思うんです。

 マクロ的な観点から医師の需給バランスがどういうふうになっているのか、それから、ミクロの観点、診療科ごとの需給バランスというのがどうなっているのか、少し御説明いただきたいと思います。

二川政府参考人 医師の需給バランス、マクロの観点とミクロの観点からといったことでございますけれども、まず、全国の医師数につきましては、毎年四千人程度増加をしておりまして、平成二十四年現在ですと三十・三万人でございます。絶対数もふえておりますし、人口十万人当たりの医師数も、少しずつですけれどもふえているといった状況でございます。

 一方、各都道府県別に見ますと、人口十万対医師数で比べますと、最大の京都府が二百九十六・七人、最少の埼玉県が百四十八・二人というふうに、約二倍ぐらいの格差がございます。

 また、各県ごとに二次医療圏単位で医師数を見ていきますと、やはり県庁所在地のところはある程度多いんですけれども、そうでないところの方は少ないということで、県内の格差も県間格差以上にあるところが多いといった状況にあろうかと思います。

 また、個別の診療科別に見てまいりますと、小児科ですと、十五歳未満の人口十万対医師数といたしましては、最大のところが東京都の百五十・一人、最少の茨城県が七十一・九人ということで、やはり二倍ぐらいの格差があるということでございます。

 また、産婦人科、産科につきましては、十五歳から四十九歳の女子人口十万対医師数ということで見てまいりますと、最大の徳島県が五十八・六人、最少の埼玉県が二十七・二人ということで、これも二倍ぐらいの格差があるといった実情かと思います。

務台分科員 マクロではお医者さんの人口がふえている、毎年四千人ふえている、一方で、各地方ごと、診療科ごとには大きな格差がある、その資料を二ページから五ページまで用意させていただいております。今、局長さんがおっしゃったことについて数字が出ておりまして、西高東低という状況がお医者さんの世界でもあるのかなと思います。

 パイがふえているのに、その配置が、全くその格差が是正できていないということは、何かメカニズムが悪いとしか言いようがない。日本経済の今の現状も若干似ているようなこともあるかもしれませんが、こういう問題についてやはり政府としてしっかり取り組まなければいけないのではないかというふうに思います。

 そこで伺いますが、個別の病院が医師の確保ができなくなっている原因は何なのか、この点を伺いたいと思います。

二川政府参考人 各病院の医師不足の状況というのは、もちろんさまざまなわけでございます。全体といたしましては、先ほど申し上げましたように、医師数はふえておるわけでございますけれども、地域によって、あるいは診療科によって、その医師の確保が困難になっているといったところがございます。

 まず、全体といたしましては、医師数全体はふえてございますけれども、人口当たりの医師数が諸外国の平均を下回っているという、これも、絶対数としての不足はあろうかと思います。

 それから、都道府県間での格差とそれから都道府県内での格差、こういった部分が十分に調整できていないといったような理由。

 それから、診療科につきましても、特定の診療科の医師は、ふえている診療科もあるわけですけれども、診療科によっては、むしろ以前より人口当たりの医師数が減ってきている、こんなような状況の診療科もある。

 こういったような要因がさまざまに絡んで、それぞれの個別の病院につきまして医師不足が生じているのではないかというふうに考えているところでございます。

務台分科員 今のお話は、定性的な分析としてはそうなのかなと思うんですけれども、それは、制度がそのように仕組まれていて、そうなっている結果を何とかしなければいけないにもかかわらずしていない、そういうことにも大きな原因があると思います。

 そういう意味で、過去、るる言われている制度の中で、臨床研修制度の問題が一つの引き金になったという指摘があります。平成十六年からこれが施行されたということでございます。これがどの程度医療格差に結びついたのか、これによって大学病院の医局の医師派遣機能が著しく弱まったというふうに聞いておりますが、実際のところどうなのか、この点を伺いたいと思います。

二川政府参考人 医師臨床研修制度でございますけれども、御指摘のとおり、平成十六年から全ての医師がこれを受けるということの義務化がされたということでございます。

 これにつきましては、従来、専門医志向の研修が中心だったものを、基本的な診療能力の習得を目指す、そういった観点から行われたものでありまして、基本的な診療能力の習得につきましては、一定の効果があったということは間違いないわけでございます。

 一方、御指摘のとおり、大学病院で臨床研修を受ける医師が減少したこと、そういったこと等によりまして、大学病院で従来は医師派遣機能を担っていた、その機能が低下をしてしまったといったようなことが起こり、それがきっかけとなって地域の医師不足が顕在化をした、こういったことが言われていることも事実であるというふうに考えております。

務台分科員 これに関してのその後の対応策というか、課題の是正策をどのように講じてきたかも御教示いただきたいと思います。

二川政府参考人 今申し上げましたように、医師不足の一つの引き金になったというのが医師臨床研修の義務化であったというようなことが指摘されているわけでございまして、これにつきましては、平成十六年度から義務化をされましたけれども、その後の見直しにおきまして、臨床研修制度のあり方につきまして幾つか見直しをしてきておるわけでございます。

 具体的には、平成二十二年度の研修から、都道府県ごとに募集定員の上限を設けるということで、都会に医師が集まり過ぎるのを防止するということで都道府県ごとに枠をつくるということ、それから、大学病院での医師派遣の実績を勘案した上で各研修病院の募集定員を設定するということで、大学の方の定員をある程度確保できるようにする、そういったようなことをしております。

 それから、平成二十七年度の、今度の研修からでございますけれども、研修希望者に対する募集定員の割合を、新たに医師になられる方の一・二倍を従来は設定しておりましたけれども、今度は一・一倍ということにいたします。それによりまして、都会地での医師の研修を受ける人を少し減らし、地方の部分をふやしていく、そういったことをしております。

 また、各都道府県におきましても、都道府県内の臨床研修病院の定員を県の方の裁量でふやしたりすることができる、そういったような仕組みを設けたりしているところでございます。

 今後につきましても、この臨床研修制度につきまして必要な見直しを引き続き行ってまいりたいと考えているところでございます。

務台分科員 いろいろ工夫されている努力はよくわかります。問題は、そういう工夫が実際の医師不足にどの程度定量的に効果が生じるものなのか、そのことについての認識はいかがでしょうか。

二川政府参考人 平成二十二年から具体的な見直しを行っておりますが、それによりまして、いわゆる東京都を初め人口の大きな六都府県、ここで臨床研修を受ける医師の数が、医師全体の五一・三%だったものが、平成二十六年度におきましては四四・四%というふうに少し減ってきておるわけでございます。そして、それ以外の、大都府県以外のところで研修を受ける医師の数が全体としては少しふえてきている、こんな状況にあろうかと思います。

務台分科員 ありがとうございます。

 どうも抜本的な改善に結びつくかどうか、いまいち今の説明ではぴんとこなかったんですが、一方で、ちょっと諸外国を見てみますと、諸外国では、それが実態的にどの程度いい医療に結びついているかどうかまではわかりませんが、医師の配置に関する参考になるようなメカニズムが大分あるようでございます。

 私がロンドンにいたときに、イギリスでは医師の不足の問題は全くないと。その後、戻ってきてからNHKの番組を見ましたら、イギリスでは、医師は、一般医、ゼネラルプラクティショナー、GPという人がいて、その人は全国あまねくいらっしゃって、医師不足、医師の過疎というのはあり得ない、それを中央の配置機関がしっかりコントロールしているということで、すごく合理的だという話を聞きました。一方で、ちょっと診療までに時間がかかって余りよくないと言う人もいるようですが、少なくとも医師の配置に関しては立派なメカニズムが働いているというふうに感じました。

 それから、これは七ページに資料がありますけれども、フランスあたりは、国が地域や診療ごとに必要な医師数を調査して、病院ごとに受け入れる研修医の数も決めている。その枠組みに対しては、お医者さんの卵が試験を受けて、成績順に自分で行きたいところを選べる。ですから、プロ野球のドラフトじゃないけれども、行きたい球団、最後まで全部はまるんですよ。すごく合理的なんですよ。それは優秀な人はパリの病院に行くかもしれませんけれども、でも、ニースに行きたいという人はそっちへ希望するでしょう。そういうメカニズムがあるんですよね。一種のお医者さんの合理的なドラフト制度でしょうかね。

 ドイツは、保険医協会が州の医療圏ごとに人口当たりの医師の定数を設定している。定数の一割を超える地域は保険医として新たに開業できないということをやっているんですよ。すばらしいですよね。だから、自由診療でやるならどうぞ、でも、保険、診療報酬をもらいたければそれに従いなさい、こういうルールでございます。

 スウェーデンは、そもそもお医者さんというのが県庁の公務員で、人事異動で行けと言われて行くという、九割くらいが公務員と聞いています。ですから、こういう仕組みで立派なメカニズムをつくり上げている。

 これは当たり前なんですよね。当たり前のように行われている。

 アメリカもしっかりとした需給調整のメカニズムが、この資料にはありませんけれども、あると聞いています。

 こういう諸外国の仕組みについて、厚生労働省の認識をお伺いしたいと思います。

二川政府参考人 ただいま先生御指摘のとおりでございまして、これは一定の文献を調査した範囲での資料でございまして、私どもから提出させていただいた資料かと思いますが、イギリス、フランス、ドイツ、スウェーデン各国におきまして、医師の配置等につきまして、国の基準で決めたり、あるいは国家試験の成績順で決めたり、保険の方でその地域の配置数を決めたり、そういったような仕組みがそれぞれの国でとられているといったことにつきましては、私どもも認識をしているところでございます。

務台分科員 私は、代議士になってからこの問題に関心を持っていて、二年ほど前の厚生労働部会で、こうした諸外国の仕組み、枠組みを厚労省で検討できないのかと聞いたら、当時の医政局長は、これは職業選択の自由に反することになるので、日本では憲法違反なのでできない、そういう趣旨の答弁をされたんです。

 日本は、開業はやりたい放題、どこで開業しようがどうぞ御自由にと。一方で、日本は社会保険診療報酬の制度で、まあ公費ですよね。公費で収入を得ている人がどこで開業するかは全く野放し状態、放任状態。こういう枠組みが本当に合理的なのかどうかということについてどういうふうに思っておられるのか、これはぜひ厚生労働大臣に伺いたいと思います。

橋本大臣政務官 私の方から答弁させていただきます。

 御指摘いただいたようなさまざまな諸外国の取り組みを参考にしながら、我が国の国民に信頼される医療提供体制を構築する、そのために見直しを行っていくという視点は大変重要な御指摘だというふうに思っております。

 ただ、その医療提供体制がどのように今に至っているかという、これまでの歴史的経緯みたいなものもやはりそれぞれに異なりがございますものですから、いきなりどっと当てはめていくというのもそれなりに難しいところもあるのかなというふうに思うところもあるわけです。

 例えば、具体的に言いますと、これは社会保障制度改革国民会議の報告書で指摘があったわけですけれども、西欧や北欧では、国立あるいは自治体の病院などが中心でありまして、病院提供体制そのものが公立、公的所有のものであったということが多い。ただ、それに対しまして、我が国では、医師が病院などを民間資本で経営するという、私的所有の形で整備をされてきたという経緯があるわけでございまして、放任状態という表現をされましたけれども、言い方をかえれば、自立的にとか自主的な整備をされて今に至っているところがございます。それを、では突然制度をどっと変えてよいのかどうかということは、さまざまな御議論があるのだろうというふうにも思うわけでございます。

 また、例えば、西高東低という御指摘も先ほどございましたけれども、これも、私が読みましたある本によれば、もともとの医科大学が始まったころの配置そのものが起源になって今に影響を及ぼしているとか、そうしたこともあるわけでございまして、いろいろな要因があることをちゃんと踏まえながら、地域間、診療科間における医師の偏在等の問題、御指摘をいただいている問題について、我が国としてどういった対応が可能なのかどうか幅広く考えていかなければならない、このように考えております。

務台分科員 橋本政務官らしからぬ慎重な答弁でございますが。

 私は、この問題は、やはり大変大きな問題に発展しかねないと思います。冒頭申し上げましたように、地方創生で若い人たちに地方に行きましょうと言っている途端に、受け皿となる病院がないということは困ります。

 それから、今我々ちょっと準備していますけれども、子供たちを一週間程度農山漁村で滞在させる、そういうプログラムをつくって、法律でそれを慫慂しようと言っていますが、何かあったときに近くにお医者さんがいない、そこに安心して送れるのかみたいな、そういう議論も出かねません。地方創生という意味でも、ちょっと抜本的にやっていただけないかというふうに思います。

 この資料を調製する際に、事務当局の皆様に諸外国の仕組みをちょっと調査してもらったんですが、いろいろな委託調査とか学者の方が書いた論文はあるんですが、厚生本省で全世界的な調整メカニズムがどうなっているかというのをしっかり調べたことがないようなんですね。

 ぜひお願いしたいのは、この際、先進諸国の中で医療の需給体制がどういうふうに行われているのか、少し腰を入れて調べていただけないかと思うんですが、政務官、いかがでしょうか。

橋本大臣政務官 せっかくの御指摘をいただきましたので、勉強させていただきたいと思います。

務台分科員 しっかり調べて、またちょっと私、時間を置いて、この場で、あるいは常任委員会の場で質問もしたいと思いますので、ぜひよろしくお願い申し上げたいと思います。

 さまざまな仕組み、医師の適正配置の方策を検討していただけるという理解でいるんですが、今までのやりとりを聞いていらっしゃって、塩崎大臣、何か大臣としてどうすべきかということについてのお考えがあれば、伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 私も愛媛県にいて、私は松山ですから、割合、まだそこまで深刻化、先生の今御指摘になったようなところまでいっていませんけれども、しかし、宇和島とか南予の方、地方に行きますと、やはりもう、ちょっと正常ではない分娩の場合には松山に出てこないといけないとか、そんなことになっております。

 今先生御指摘ございましたけれども、諸外国でどうしているのかということをしっかり勉強しろ、こういうことで、今、橋本政務官からもそのようにするということでありますが、私もそのとおりだと思っております。

 いろいろな仕組みを考えておりますが、さっき政務官から御説明申し上げたように、いろいろ病院の生い立ちが違ったりするものですから、それを踏まえた上で、しかし、住民にとって、地方創生でもありますから、どんな地域に行ってもちゃんと医療のニーズは満たされるというふうにしなければいけないと思っております。

 この適正配置については、さまざま厚労省としてもやってきたことは、先ほど申し上げたように、地域枠を医学部で設けたり、あるいは地域枠の医学生に対して修学資金を貸与するための財政的な支援を行うとか、あるいは、地域医療支援センターで、医療法への位置づけやあるいは財政的支援を、この医師派遣に関して、特に医師不足病院への派遣などでやってきたところでございます。長野でも、信州大学の医学部あるいは県立の病院機構にそれぞれ分室があり、県庁にもそれがあるということであります。

 ちょうど来年の四月以降、地域枠の医学生が卒業するということで、地域医療支援センターによる医師の適正配置がさらにされることになるわけでありまして、こういうことを踏まえた上で、しかし、今先生御指摘のように、諸外国で何をしているのかということから学ぶべきことは学んで、しかるべき対応をしていかなければならないなというふうに思っております。

務台分科員 ありがとうございます。

 今の枠組みでできる範囲の工夫が行われつつあるということは、私も大変うれしいことだと思います。地域医療支援センターで、地域枠で入学した学生がお医者さんになってくるということも期待ができるというふうに思います。

 ただ、もうちょっと抜本的な対策がそろそろ講じられていい時期じゃないかというふうに思います。

 例えば、先ほど来御紹介申し上げた諸外国の医師適正配置メカニズム、これを日本でも導入できないかとか、あるいは、ちょっとこれは荒療治かもしれませんが、医師の過剰地域は診療報酬を抑制して、それで医師不足の地域の診療報酬を加算する、こういうメカニズムというのはおもしろいと思うんですよね。ドイツなんかは、定員オーバーの地域では保険医として開業できないと言っているわけですから。だから、市場メカニズムというのは、まさにこういうことじゃないかと思うんです。

 それから、私の知り合いの産婦人科医の女性が提案しているんですが、地方の医学部の地域枠、今はある程度枠がありますけれども、例えば半分は地元枠だと。やはり、北安曇、大町に戻ろうという人は、何かそこに思い入れがある人じゃないと戻りません。東京でずっと暮らした人が、スキーで行くのはいいけれども、ずっとそこで地域の人の面倒を見ようという気にはならないんですよ。やはり、サケじゃないけれども、生まれたところに戻ってくる、そういう習性というのは人間だってあるはずなので、そういう気持ちによって入る枠組みをやはりやらなきゃいけないと思います。

 政府内でこういう検討を行うつもりがあるのか、伺いたいと思います。

橋本大臣政務官 御指摘のような、さまざまいただきました。

 診療報酬に地域差という話がありまして、ただ、これもいろいろ難しい面があろうと思います。要は、ではドクターが多いところは自己負担が少ないよねみたいな話になったら、患者さんはそっちに集中するみたいな話になってもちょっとおかしなことになるのかなとか、あるいは、そういうことも含めて、公平感みたいなものをどう考えるか、さまざまな御議論があろうとその点については思います。

 ただ、全体として、さまざま御指摘をいただいたように、この医師確保というものは、これから地域で、やはり地方創生も進めなきゃいけません、そうした中で喫緊の課題だということは私どもも認識をしているところでございますし、地域枠の設定、修学資金の貸与、地域医療支援センターにおける医師派遣など、地域枠の学生が来年卒業になりますので、そうすると、ある意味で適正配置メカニズムみたいなものができるということもこれから起こってまいります。

 そうしたことも含めまして、制度的、財政的な措置を、これまでも講じてきておりますし、今後もそうした医師確保に向けてしっかり取り組んでまいりたい、このように思っています。

務台分科員 ありがとうございます。

 資料の八ページ、最後のページに、ちょうど三月四日に、長野県議会議長の風間辰一さんの名義で、安倍総理と塩崎大臣に意見書が出されております。医師の地域偏在、診療科偏在は解消されていない、医師不足が深刻化、その是正に向けての適正な配置をしてほしいというのが出ております。

 私がここで質問しているのは、何も私の趣味で言っているんじゃなくて、地元の声を受けて言っておりますので、ぜひ、深刻に受けとめて、しっかりやっていただきたいと思います。

 以上申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

原田主査 これにて務台俊介君の質疑は終了いたしました。

 次に、山田美樹君。

山田(美)分科員 自由民主党東京一区選出の山田美樹でございます。

 本日は、質問の時間をいただき、心から感謝を申し上げます。

 私は、医療、介護の専門家ではありませんが、かつて経営コンサルティングの会社に勤めていたとき、国内外の製薬会社の組織再編や営業改革のプロジェクトにかかわりました。質の高い医薬品を多くの患者さんに届けたいというMRの方々の熱意と使命感は、職業の枠を超えて、働くことの誇りを教えてくれました。

 また、国内大手メーカーの一般用医療機器の中国市場への販売戦略プロジェクトでは、上海に常駐して、中国の主要都市の消費者ニーズの分析や、欧米メーカーとの競合分析などを行い、中国人の方々の日本の健康長寿に対する強い憧れを肌で感じました。

 かつて日本は、経済成長で世界を驚かせ、日本の奇跡と言われましたけれども、国民皆保険という世界に誇る制度のもと、我が国が社会保障充実と財政再建という相反する課題を克服できるかどうかは、世界が注目するところです。再び日本の奇跡となるような活路を開くことが、私のような団塊ジュニアの世代に課せられた使命だと思っています。

 本日は、厚生労働省の平成二十七年度予算案で、主に医療分野のデータ活用に関連する予算について、健康増進や医療の効率化、研究開発の観点から質問をさせていただきます。

 最初に、介護、医療関連情報の見える化のためのシステム構築についてお伺いします。

 昨年六月に、地域医療介護総合確保推進法が成立し、二〇二五年に向けて地域主導の取り組みが進んでいく中で、厚生労働省が平成二十六年度から三カ年計画で進めています地域包括ケア「見える化」システムの整備は、各自治体に、現状把握と、ほかの保険者との比較、それから施策のベストプラクティスの共有を可能にするもので、大変意義のあるものだと思います。

 既に運用が始まっているプロトタイプは、当面は、来年度から始まる第六期の介護保険事業支援計画の策定に活用されることを念頭に置いていると伺っていますが、将来的には、介護だけではなく医療に関する分析機能を拡充することや、将来予測のシミュレーション機能を持たせるなど、さまざまな発展可能性を踏まえて、無駄のないシステム設計をしていくことが必要だと思います。

 地域包括ケアシステムの構築に向けた中長期的な取り組みの中で、このシステムをどのように位置づけ、拡充していく予定でしょうか。

 既に全ての都道府県と保険者にIDとパスワードが配付されていると伺っていますけれども、実際にデータベースを活用するには、課題を克服しようという強い主体的な意思と分析の視点が不可欠です。よほどの意欲と能力のある自治体でなければ実際には使いこなせないというのが現状ではないかと思います。

 システムの構築だけでなく、活用をサポートしていく方策が必要な反面、国の補助金で全てを賄うのは現実的ではありません。医療、介護に限らずさまざまな分野で、市町村の取り組みで、国からの補助金が切れた途端にプロジェクトが終わってしまうという例が少なくない中で、この見える化システムについてはそのような結果にならないように、民間の事業者にもこのシステムの利活用の機会を広げていくことも必要だと考えます。

 民間活用の可能性も含めて、ユーザーである市区町村をどのようにサポートしていくお考えでしょうか。

三浦政府参考人 介護、医療関連情報を共有するための見える化システムについて御質問いただきました。

 地域包括ケアシステムの構築に向けまして、地域別の特徴や課題、取り組みなどを客観的かつ容易に把握できるように、現在開発を進めているところでございます。

 この見える化システムの開発に当たりましては、昨年度からの試行的システムの運用実績と課題や、実際に活用した市町村、都道府県の意見を伺いながら、今後は介護保険事業計画の策定の際に活用することも念頭に置きつつ、効果的、効率的にシステムの開発を進めるよう努めているところでございます。

 また、システムの利用に当たりましては、介護、医療関連のデータのみならず、地域の課題や好事例を地域の関係者の間で共有し、地域包括ケアシステムの構築に向けた取り組みを推進しやすくするということにしております。

 一部の機能を除きまして、民間の事業者も含めて誰でも利用できるようにすることとしておりまして、自治体が例えばシンクタンクと協力しながら活用するということも可能としているところでございます。

 ことしの夏ごろからシステムを本稼働いたしまして、段階的にシステムの充実強化を図る予定としております。市町村、都道府県がシステムを活用しやすいように、利用手引の作成や、研修を通じて支援していきたいと考えておるところでございます。

山田(美)分科員 既に利用者からはさまざまなフィードバックが寄せられていると伺っております。ぜひそうした声を生かして、さまざまな利用目的に活用できるように発展をさせていっていただければと思います。

 次に、医療情報データベース基盤整備事業についてお伺いします。

 平成二十三年度から五カ年計画で進められていた医薬品の副作用に関するデータベースについては、おととし実施された行政事業レビューの中で、外部有識者から事業全体の抜本的改善との厳しい評価を受けて、厚生労働省で検討会を設け、改めて事業工程の見直しや進捗管理の徹底、必要な予算の確保などを再検討して、昨年の夏に取りまとめをされたと伺っております。

 この事業は、平成二十三年度の計画開始から平成三十年度の運用開始まで、国費と安全対策拠出金を合わせて合計約二十億円の支出が予定されていて、運用開始後も、システム管理費だけでも毎年二億円、さらにこれに加えて、データの管理や活用のための人材育成や体制整備の費用が必要となってくると伺っています。

 これだけ大がかりなデータベースをつくるからには、参加する医療機関を将来的にふやしていけるようなデータやシステムの標準化を進めていくことはもちろんですし、データベースの活用のあり方についても、本来の目的である医薬品の安全対策、副作用等報告制度の補完というだけではなく、活用範囲を広げて、ほかのデータベースと連携できる可能性もあるのではないでしょうか。御見解をお伺いします。

 試行期間中は、このデータベースを利用できるのは、拠点病院とPMDA、厚生労働省に限定されていますが、本格運用後は、研究者や製薬企業など、データベースが利用できる範囲を広げていくことになります。特に、製薬企業は、データベース構築のための拠出金を負担している立場からも、製薬企業にとってメリットのあるデータ提供が望まれます。

 その一方で、この事業が目標としているアメリカのセンチネルプロジェクトも官民を超えた取り組みですし、諸外国の主要な医療情報データベースの中には、医療情報サービス企業ですとか保険会社ですとか、民間資金で運営しているデータベースも数多く存在します。

 我が国の医療情報データベースも、将来的には、国費や安全対策拠出金に依存するだけではなく、多くのユーザーの期待に応えるような形で、より自立したビジネスモデルとする可能性も考えられます。本格運用後のデータ利活用の目的や条件、国と民間のコスト負担のあり方について、どのようにルール整備をしていくのでしょうか。お伺いします。

永岡副大臣 先生がおっしゃっていらっしゃいます医療情報データベースは、医薬品等の安全対策のさらなる向上のために、従来の報告制度だけでは難しかった副作用の発生頻度の分析など、副作用情報を定量的に解析する新たな仕組みでございます。

 平成三十年度以降の運用開始に向けまして、現在、十の拠点病院におきまして基盤整備を進めているところでございます。当面、三百万人分の患者データを分析することを目標としております。

 しかしながら、三百万人規模の巨大な一元型データベースを構築するというものではなくて、もともと各医療機関が保有する電子カルテなどのシステムから医療情報を院内の標準形式のデータベースに移行いたしまして、蓄積をして、PMDAが必要なデータを抽出して情報を分析するシステムでございます。

 今後、拠点病院の拡充やほかのデータベースとの連携に関しましては、電子カルテなどの医療情報を標準形式で収集している既存のほかのデータベースとの連携可能性につきまして、医療分野のICT化の検討状況を見据えつつ検討してまいります。

 当面は、この事業の目的でございます医薬品などの安全対策の向上の範囲内での利活用を想定しておりまして、今後の試行、活用などの実績を踏まえまして、非常に機微性が高いといいますか、デリケートな医療情報の取り扱いに十分留意をしつつ、製薬企業などの第三者の方の利用を含めた運用開始後の利活用のルールにつきまして検討していくということにしております。

山田(美)分科員 ありがとうございます。

 このデータベース、一千万人を目標としているというふうに伺っております。日本は国民皆保険ですので、国がデータを持っているという意味では、ほかの国に決して引けをとらないところだと思いますし、そういうところからも、ぜひこうしたデータベースを生かして、諸外国のものに引けをとらないような立派なデータベースを構築していただければと思います。

 次に、医療保険者によるデータ分析に基づく保健事業について、データヘルスについてお伺いをいたします。

 データヘルス計画については、平成二十六年度中に約五十の保険者がモデル計画を作成し、厚生労働省が並行して全ての医療保険者に計画作成を指示しており、平成二十九年度末を目途に実施、検証を行っていくと伺っています。国民の健康の増進はもちろん、医療保険制度を維持していくためにも非常に重要な施策だと思っております。

 医療費適正化の効果については、もし全ての被用者保険の保険者がデータヘルス事業を実施した場合、二〇二五年度で医療費〇・三兆円の削減効果があるという試算があるようですけれども、何分長期にわたる計画であり、国が実施するデータヘルス計画の予算措置全体のPDCAを検証していく仕組みが必要となります。データヘルス計画全体で、今後何年間で、どのような目標を設定し、どれだけの国費をかける見通しなのでしょうか。

 実際、多くの保険者にとって、計画をつくるのが精いっぱい、データ活用に必要な人材や資金は足りないのが実情です。企業健保は自主自立だとしても、市区町村で、例えば診療データを医療費抑制のために活用しているところは全体の一割程度にすぎないなどというような話を聞きますと、計画の策定だけではなく実施についても継続的にサポートしていかなければ、実効性は期待できません。

 データヘルス計画の実施は、特定健診や保健指導とは異なり、法律上の義務づけとはなっていませんけれども、現在、医療保険制度改革関連法案の中で一部検討されているように、保険者に取り組みを促す仕組みも不可欠です。保険者に対して、どのようにインセンティブを与え、データ活用をサポートしていくのでしょうか。

 また、一方で、先進的な取り組みの中には、国全体の医療政策のあり方に示唆を与えるようなものもあります。有名なものでは、デンソーの健保組合が、歯科健診事業が歯科医療費だけでなく医科医療費の抑制にも効果を上げていることをデータで裏づけているものがありますけれども、例えば、このような効果のある事業は、どのように全国レベルでの施策展開へとつなげていくのでしょうか。お伺いします。

永岡副大臣 データヘルスにつきましては、既に約五十の健保組合がモデル計画を作成いたしまして、それを参考に、本年度中に全ての健保組合にデータヘルス計画を作成していただくことにしております。また、国保でも同様の取り組みを進めることとしております。

 来年度からは、各保険者で計画に基づき事業が実施されるために、国において各保険者の事業を評価する仕組みを検討するなど、今後、データヘルス事業が本格的に実施されるように、保険者の取り組みを支援してまいります。

 また、今回の医療保険制度改革におきましても、これは国保の改革ですけれども、データヘルスを法律上位置づけるとともに、保険者へのインセンティブとなるように、後期高齢者支援金の加算・減算制度の見直しなどを行うこととしております。

 こうした制度の見直しも行いながら、データヘルスの取り組みの推進を図ってまいります。

山田(美)分科員 国の予算、さまざま、いろいろある中で、このデータヘルス事業というのは、例えば道路をつくるとか橋をかけるというような事業とは異なって、道路をつくったら、あとは改修やメンテナンスをしていけばいいというのと異なり、計画をつくって、それをどうやってモニタリングして、効果を出していくかということをたゆまなく続けていかなければいけないものだと思っております。

 それだけやはりお金をかけようと思えば、財源が幾らでもあればかけられるんだけれども、国のサポートをどれだけ効率的にやっていくかという視点も非常に大切になってくるかと思います。ありがとうございます。

 次に、ナショナルデータベースの活用促進についてお伺いします。

 昨年春の衆議院内閣委員会における独立行政法人日本医療研究開発機構法の審議の中で、私も質疑に立ち、レセプト情報データの研究開発への活用可能性についてお伺いし、政府内でのルール整備の検討状況についてお答えいただいたところです。

 研究開発以外にも、都道府県や市町村による病院機能や在宅医療連携の計画の策定ですとか、保健所による感染情報の把握や対策など、ナショナルデータベース活用が不可欠な分野がさまざまあります。

 また、民間からのニーズというのは実に幅広く、医薬品・医療機器業界はもちろんですけれども、例えば、健診産業の健康管理プログラムの開発のためにですとか、生命保険会社の保険商品開発のための健康評価指標づくりですとか、スポーツ、フィットネスなど健康産業による生活習慣病の改善や高齢者リハビリの市場開拓、医療給食や食品製造業などの食品産業、住宅産業による高齢者住宅や見守り住宅の開発などなど、このナショナルデータベースから得られる知見を生かしたいと考えている関連業界は実に多岐にわたります。

 今回、平成二十七年度予算の中で、レセプト情報、特定健診等情報から得られる医療に関する情報について集計したNDB白書を、仮称と聞いておりますけれども取りまとめ、公表する予定と伺っておりますが、NDBの基礎集計の作成に当たっては、研究者や企業、自治体など各分野で実際に役立つ情報提供となるよう、具体的なニーズをどのように酌み上げているのでしょうか。

 また、特定の研究目的のための第三者提供については、同じような制度を持つ米国や韓国、台湾と比べますと、日本は年間の提供件数が極端に少ないというのも実情です。研究者の側からは、例えば、データ分析の方法が申請した範囲に限定されてしまうので探索的な研究ができないですとか、厚生労働省の承認を得なければ成果を発表することができないですとか、データ持ち出しを防ぐために、入退室管理や立入検査への対応など、予算面で対応が難しいので、この申請を諦めてしまう研究者も多いという話もあります。

 この春から、東京大学と京都大学に、利用者みずから出向いてデータ集計を行えるオンサイトセンターが開設されると伺っていますが、今後、ナショナルデータベースの提供の利便性をどのように高めていくのでしょうか。御見解をお願いします。

唐澤政府参考人 ありがとうございます。

 先生御指摘いただきましたように、このナショナルデータベースの情報、これは全国民の皆様の情報が入っているわけでございますが、これをできるだけ幅広く生かしていくということが非常に我が国にとっても重要なことだと思っております。

 これは、一つには、もちろん国民の皆様の健康を向上させていくということ、それから予防に生かしていくということもございますが、あわせて、医薬品や、先生今お話しのような、さまざまな広い意味でのイノベーションにつなげていくということが非常に重要でございます。

 我が国のこのナショナルデータベースでございますけれども、今お話をいただきましたように、件数といたしましては、レセプトデータが平成二十一年の四月から昨年の十月までで約八十八億件くらい入っております。それから、特定健診保健指導の方は、これは二十年度から二十四年度分ということで一億二千万件くらいのデータがございますので、全部で九十億近いデータが入っているわけでございますが、こういうものを私どもとしてはナショナルデータベースというふうに言っております。

 一つには、保険者の皆様に対しまして、特定健診などの実施状況を取りまとめて情報提供して、そして、先ほどのお話のようなデータヘルスに生かしていただく。それから、二つには、公共性の高い学術研究を行う研究者の皆様に対しまして、データの提供を行ってきているところでございます。平成二十三年十一月から実施をいたしまして、これまで四十六件のデータを提供しております。

 そして、さらに、より幅広く研究者の皆様の利用ニーズに応えるために、御指摘のございました、来年度から、東京大学と京都大学、東西一カ所ずつということで、オンサイトセンターというものを設置いたしました。

 これは、匿名情報化をして個人情報に非常に気を使って申請をしていただきますので、申請はなかなか難しいという方がいらっしゃるんですが、このオンサイトセンターにその方が出向いていただければ、そこの情報を活用して、そして、処理をしたものを承認をとって磁気データに落として活用いただくということができるわけでございます。

 そういうことで、こういうようなオンサイトセンターということで、みずから出かけていって研究できる、NDBのデータの利活用の場所というようなものもつくっているところでございます。

 そして、さらに、御指摘のございましたように、民間の企業の皆様などへのデータの提供をどうしていくかということでございますが、これは、平成二十五年の日本再興戦略におきまして、データ提供を申し出することのできる方の範囲を拡大する、そういうことを検討していくということが御指摘をされているところでございます。

 このために、製薬業界それから医療機器業界などから私どももヒアリングを行いまして御意見をお伺いして、どういう利用するニーズが実際に御希望としてあるのかということをお聞きしているところでございます。

 そして、他方では、私ども、これを検討するためのレセプト情報等の提供に関する有識者会議というものを設けておりますけれども、その下に、民間の企業の皆様などへのデータの提供に対するワーキンググループを設置いたしまして、その枠組みの仕方についての検討を行っているところでございます。

 御指摘いただきましたように、我が国の提供の件数はまだ少ないわけでございますけれども、できるだけ幅広く御活用いただけるような手続ですとか枠組み、あるいは体制というものもございますので、そうした事柄につきましても今後しっかりと検討してまいりたいと考えております。

山田(美)分科員 ありがとうございます。

 恐らく、データの種類にも、データの分析というのも大きく二種類あると思うんです。単純な集計で統計的なことを知りたい、地域的な分布の状況ですとかを知りたいというようなものもあれば、もう一つは、民間でビジネスとかにつなげていくような話ですと、まず仮説があって、ビジネスにおいてどういうアクションを起こしたいというプランがあって、それを裏づける分析ということで仮説が必要なものと、それぞれあるかと思います。後者の方に関しては、まさに創意工夫を生かせるように、第三者提供の利便性をさらに高めていただければと思います。

 最後になります。

 本日は、さまざまな医療関連のデータベースの活用可能性について逐一お伺いしてまいりましたが、医療、介護のICT化については、昨年六月の「日本再興戦略」改訂二〇一四の中にも盛り込まれ、特に、医療等分野における番号制度の活用については、厚生労働省において有識者の検討会を設けて、昨年末に中間的取りまとめを行ったと伺っております。研究会の報告を受けて、今後、どのような政策展開をしていくのでしょうか。

 現状では、国や自治体、保険者、医療機関など、さまざまな主体がそれぞれ別個にデータを保有していますが、いずれのデータベースも完璧な条件を備えているわけではない中で、ほかのデータベースとの連携次第では非常に有益な結果をもたらす可能性が数多く指摘されているかと思います。行政が、国全体の視野から、情報連携のグランドデザインを示していくことが急務だと思います。

 情報インフラの整備は、方向性を誤りますと無尽蔵に費用がかかってしまいますけれども、国が目指すべき全体像と、その実現のために必要なコストと時間を明らかにしていくことで、システムの開発や改修の無駄を省いて、効率的な投資が可能になります。

 情報漏えいなどのリスクに最大限配慮しながら、潜在力のあるビッグデータを活用していけるような環境を政府主導でつくっていただきたいと思います。行政はどのように連携のイニシアチブをとっていくのでしょうか。お考えをお聞かせください。

塩崎国務大臣 これからの新しい医療・健康分野でこのデータをどう活用していくのかということは、先ほど来御議論いただいておりますように大変大事なことでございまして、私どもも今、二十年後の保健医療のビジョンをつくろうということで、私のもとに私的な懇談会をつくって、保健医療二〇三五というのをスタートさせておりまして、きのうも第二回目の議論がございました。

 若手の皆さん方、二十年先でもまだ現役で頑張っているという人たちを中心に、三十代、四十代の人たちに議論してもらっていますけれども、そういう中でも、先生御指摘の問題は必ずや大きな政策の柱の一つになるんだろうというふうに思います。

 医療・健康分野での番号の活用につきましては、今御指摘いただいた厚生労働省の研究会で十二月に中間まとめがございました。それを踏まえまして、自治体間の予防接種履歴の情報連携といった、行政機関によりますマイナンバーの利用に取り組むということで、今の予防接種履歴の情報の連携につきましては、この国会に提出を予定しております個人情報保護法、マイナンバー法の改正案にも盛り込まれているということでございます。

 それから、マイナンバーの行政機関による利用が大変大事で、これから取り組むわけでありますけれども、患者の医療保険資格の確認システム、この導入に向けても検討に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

 さらに、こうした基盤を活用して医療機関間の情報連携とか、あるいは、医療・健康分野の研究で活用する番号の仕組みというものも検討してまいりたいというふうに考えているところでございます。

 医療・健康分野の情報の利活用は、サービスの維持向上とか、あるいは資源の有効活用を図るために極めて重要であって、全国規模のレセプトデータベースの活用とか、診療情報の収集、分析による医療の質の向上などの事業の目的に照らして、必要なデータを収集し、効果的に分析をする取り組みを積極的に進めなければならないというふうに思っております。

 病気の予防、あるいは、きちっとした治療をみずからやっているかどうかというようなことも含めて、さまざまなデータを分析することによって健康が増進されるようにしていかなきゃいけないなというふうに思っておるところでございます。

山田(美)分科員 さまざまなものが組み合わさっていく中で、ぜひ、塩崎大臣、強いイニシアチブを発揮していただいて、進めていただければと思います。

 どうもありがとうございます。これにて質問を終了いたします。

原田主査 これにて山田美樹君の質疑は終了いたしました。

 次に、寺田学君。

寺田(学)分科員 民主党の寺田学です。

 きょうは、大臣及び局長、役所に対して、社会福祉法人についての質疑を三十分させていただきたいと思います。朝から晩まで御苦労さまでございますが、よろしくお願いします。

 まず一点ですが、そもそもですけれども、これから少子高齢化が進んでいく中において、社会福祉法人が果たす役割というのはこれからも大きくなっていくとは思いますが、残念ながら、私的流用や何やらというような、国民の皆さんにとって納得できないような事情もニュースでさまざま聞かれるところであります。

 今回、厚労省としては、社会福祉法人に関する法律に対して改正案を今検討中で、間もなく閣議決定に向けて最終段階にあるというふうにお聞きしていますが、そもそもとして、今回改正をするという現状認識、問題認識をどのようにお考えになられているのか、御答弁いただけたらと思います。

塩崎国務大臣 先生御指摘のように、社会福祉法人は、我が国にとって極めて重要な役割を果たす、高い公益性とそれから非営利性を持った法人であって、一部の法人とはいえ、今先生御指摘のような不適正な運営が指摘をされるということは極めて残念で遺憾なことであるわけでございまして、適切な運営の確保に取り組む必要が極めて重要というふうに思っております。

 不適正な運営が指摘されている事例を見ますと、やはり法人のいわゆるガバナンスというものが欠如している、あるいは十分機能していない、一部の役員の言ってみれば専断というか、一部の役員だけで物事を決めていくというところもあったりしておりまして、ガバナンスの強化によって法人本来のあり方を徹底して、国民に対する説明責任を果たしながら、この法人の目的を達成していかなければならないというふうに思っております。

 このために、私どもでは法律改正を今予定しておりまして、ここのところずっと議論をしてまいりました。経営組織のガバナンスを強化する観点から、理事会あるいは評議員会の位置づけあるいは機能を整理して、そして権限を明確化する。それから、運営の透明性の確保の観点から、財務あるいは事業に関する書類の閲覧、ディスクロージャーの対象を拡大していくということも重要でありますし、それから、財務規律の確立を図るために、適正かつ公正な支出管理を徹底していくということと、余裕財産、いわゆる内部留保の明確化をしていく。こういったことなどを内容といたします制度改正、法律改正を今検討しているところでございます。

 社会福祉法人が国民の信頼をしっかりと得て、福祉サービスの主たる担い手としての役割をきちっと地域地域で果たしていくということになるように、私どもとしてもしっかり取り組んでまいりたいというふうに思います。

寺田(学)分科員 私も、大臣がお話しされているとおり、最近ニュースをにぎわせている私的流用等々というのはごく一部の法人であって、多くの法人の方々は、社会的な意義を感じながら、使命感を持って頑張っていらっしゃると思います。

 ですので、本当に国民全体から社会福祉法人に対する信任が一層高まるように、しっかりと社会福祉法人に対する監査のあり方を含めて頑張っていかなきゃいけないと思うんです。

 私がなぜ今回この問題を提起しているかと申し上げますと、私、選挙区は秋田ですけれども、地元の秋田市でこういう声が寄せられたんです。

 認可権であり、そして監査権を持つ市役所の方が、ある種、天下りをして社会福祉法人にいる、その中でさまざま、余り評価できるようなことじゃない、不祥事等を含めてあるんだけれども、市の監査の担当の責任者との人間関係、市役所時代の人間関係があって表に出てこない、そういうことで、さまざま、そこの利用者の方々に対する不利益が年々増大しているという声が寄せられました。

 今大臣がお話しされたとおり、ガバナンスを高めるために、理事会そして評議員会、義務づけをしたり、自己管理というか自己監査の仕組みというものを強化していくことは大事ではあると思うんですが、認可権を持っていたり、そしてまた監査権を持っている所管庁との関係というものもしっかりと清めていかなきゃいけないと思っております。

 局長でも構いませんけれども、そもそも、監査の責任主体である市役所の方々、今回市役所に限りますけれども、市役所の方が天下って社会福祉法人に入っている、こういう現状は全国各地で多々あると思いますが、それに対する問題意識というものは厚労省としてどのようにお持ちになられているか、御答弁をお願いします。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、地方団体の職員の再就職の問題でございますけれども、これは、各地方公共団体におきます適正な手続のもとに、住民に対する説明責任がしっかり果たせるものでなければならない、こういう基本認識をまず持っております。

 その上で、社会福祉法人の指導監督でございますけれども、この所轄庁による指導監督は、社会福祉法人に適正な運営を確保してもらう、その上で極めて重要でございまして、どのような法人に対しても公平かつ厳正に実施される必要がある、これも基本認識の第二点でございます。

 その上で、今回の社会福祉法人改革におきまして、こうした点を徹底してまいらなければならないと思っております。

 具体的には、まずは、指導監督に係る基準を明確にして、いろいろな裁量とか、いいかげんなことが起きないようにするというのが第一点でございます。

 それから、第二点といたしまして、外部監査との連携というものをもっと強化しよう。具体的に申し上げますと、一定規模以上の法人につきまして会計監査人の監査を義務づけるとか、あるいはその他の法人につきましても、公認会計士や監査法人、税理士、こういった方々によりまして財務会計に係る体制整備の点検をきちんとやっていただく、こういったような外部機関による監査等を積極的に推進する。それと自治体の指導監督が連携をしていただくということで、外の目も入れていくことによって、より厳正な所轄庁の指導監督が行われるようにしてまいりたい、このように考えております。

寺田(学)分科員 今、御答弁いただいたとおり、さまざまなアプローチで監査を強めていく、適正化を図るということは大事ですが、私が申し上げたとおり、そもそも監査する主体の人間が天下って、そこにまた役所時代の上下関係などがある場合において、いかに裁量権を少なくするとはいえ、監査をする人間としてのさまざまな温情が入る余地があると思います。

 ですので、その点に関して、もちろん一般的な意味での地方自治体の職員の再就職がどうあるべきかというのは御答弁のとおりでありますけれども、私は、社会福祉法人の信任性を国民から高めるためにも禁止するべきではないかなと思いますが、その点に関してどう思いますか。

鈴木政府参考人 これも一般論になって恐縮でございますけれども、どのような法人であるかを問わず、やはり、地方公共団体の職員の再就職に関しては、住民の方々に疑念を抱かれることがないようにしていかなければならない。そういう意味では、地方公共団体の方で適正手続というものをきちんと設けておられますので、そのルールに従ってきちんとまずやっていただいて、住民に対する説明責任を果たしていただく、これが基本ではないかというふうに承知をいたしております。

寺田(学)分科員 一足飛びに禁止だ何だまで踏み込めないというのはわかりますけれども。

 では、答弁に不満だったらちょっと大臣にお伺いしますが、せめて、今、全国の社会福祉法人に、認可権を持つ、もちろん県庁でもいいです、市役所でもいいです、そういう方々が社会福祉法人に天下りをされている現状を、どのようになっているか、人数を含めて調査していくことは可能ですか。

鈴木政府参考人 事実関係の調査といたしまして、ちょっと一定のお時間をいただくかもしれませんけれども、調査をすること自体は可能であるというふうに思っております。

寺田(学)分科員 大臣にも確約の御答弁をいただきたいんですが、よろしいですか。

塩崎国務大臣 先生と私と大体同じ問題意識を共有しているというふうに考えて、先ほど来御質問を聞いておりました。

 今、鈴木局長から申し上げたように、若干時間はかかるかもわかりませんけれども、一度調べた方がいいと思いますし、実は、今回の社会福祉法人の改革の議論の中で、先生の御指摘の問題は私が大臣就任以来一貫して言ってきたことで、監査能力というか監督能力の中にそういうような問題が含まれているという問題をどう克服するのかということを問題意識として持ちながらやってきたことでもございますので、先生の御指摘、御要望については、若干時間はかかるかもわかりませんけれども、前向きに取り組んでいきたいというふうに思います。

寺田(学)分科員 多くの法人がありますのでお時間がかかることは仕方がないと思いますが、ぜひ実態把握を含めて調査していただければというふうに思います。そしてまた、その数字等を速やかに公表していただきたいと思います。

 先ほど、局長の方から、監査を強める意味で裁量権を狭めていくというお話がありました。

 今、改正法案がつくられている最中ですので、どのような法案になるのかちょっとわからない段階で聞くのであれなんですけれども、現在も、指導監査については毎年原則行う、しかし、二年に一回、四年に一回という幅も持っています。

 四年に一回、その監査の頻度の緩和自体は、外部監査を入れている等の、かなり明確なある程度の基準があって監査の間隔が開くというのは一定程度わかるんですが、二年に一回の方に要件を緩和すること自体が、法人本部、施設の運営に問題が認められない場合という、かなり裁量権を広く持った要件になっていますけれども、改正法案をつくる場合において、先ほどお話しされたとおり、裁量権を減らすという意味においては、こういう監査に関して、この頻度、回数を減らす云々に関してはどのようにお考えになられているんですか。局長、よろしくお願いします。

鈴木政府参考人 監査の頻度につきましては、これは法律の問題といいますよりは通達等の実効の問題だろうというふうに思っております。

 その頻度についてどのように設定するかということになりますと、監査の実効性とそれから行政の側の能力の問題、これを最大限パフォーマンスを発揮するように設定していかなければならないと思っております。

 したがって、今先生御指摘のような仕組みをとっておりますけれども、一つは、監査の頻度と申しますよりは、監査に当たってよるべき基準、これが必ずしも全国統一的な基準がないというような御指摘もございますので、まずはそのあたりをきちんとしていって、その上で、監査の頻度につきましても、行政の能力とそれから監査の実効性と、両方相まって一番最大限に効果が発揮できるような形をまた考えてまいりたいと思います。

寺田(学)分科員 監査の実効性を保つためにこれからさまざまな改正を行うというのは、それは事実ですけれども、局長が御答弁されたとおり、裁量権をできるだけ減らしましょうという中において、この監査自体の、二年に一回に緩めることに関しては、先ほども申し上げたとおり、法人本部の運営について法及び関連法令、通知に照らし、特に大きな問題が認められないという、問題が認められないということをどうやって認知するのかわかりませんけれども、裁量権そのものだと思います。

 この点に関して、厳格に対処するようなお考えは今回の改正ではないんですか。

鈴木政府参考人 今先生御指摘のありました、問題がないと認められる場合がどのような場合か、ここの基準の設定の問題だろうというふうに思っております。

 現行では必ずしもここは全国統一の基準がないのは事実でございまして、しかしながら、この法人の指導監督自体は法定受託事務でもございますので、今回の改正を通じまして、私ども、そこは明確な基準を設定してまいりたいというふうに考えております。

寺田(学)分科員 大臣もよろしくお願いします。イニシアチブをとってやっていただきたいと思います。

 監査のあり方はいろいろあると思うんです。市民の皆さんからチェックを受ける、利用者の方から声が上がってくる、それがある種、議会を通じて、市の対応、県の対応に対してのチェック機能を果たすということがあると思います。

 そういうような機能を果たす上で最も大事なのは、情報公開であると思います。情報が公開されない限り、何が問題であるかということの認知も進まず、チェック機能も果たせないということだと思います。

 ちょっと新聞をいろいろ取り寄せたんですが、二十六年の八月十五日の読売の記事で、「社会福祉法人 監査十七自治体公表せず」と。三千万円流用のケースも公表されなかった。何か問題があるということで特別監査を受けた事案に関して、自治体側でさまざまなお考えを持って公表をされなかったということが記事になっています。

 改正法案の中でどのような形でそれに取り組まれるのかわかりませんけれども、そもそも、私自身としては、一年に一回、二年に一回、四年に一回ですけれども、監査をしたことに関しては、できる限り多くの市民の皆さんに直ちに情報公開をするべきだと思います。問題がないということであれば、それはその施設にとっても非常に喜ばしいというか誇るべきことでありますし、問題があると何か考えられた場合には、その問題点を市民は知る必要があると思います。

 特に、今回、何かしらの明確な問題があるということで特別監査に入ったことの情報自体が、自治体の考え方によって明らかにされなかったということは大変ゆゆしき問題だと思っています。

 私は全部公開するべきだと思いますが、少なくとも特別監査を行ったような、何かしらの具体的な問題がある事案に関しては原則全て公開をするというのが、あるべき姿だと思います。大臣、よろしくお願いします。

塩崎国務大臣 先生御指摘の、これは読売新聞の報道にございますが、社会福祉法人の適正な運営を担保するためには、こういう形で、社会福祉法に基づいて、所管庁であります国、都道府県、そして市が指導監査を実施しているということで、運営等に特に重大な問題を有する法人については今の特別監査というものが重点的かつ継続的に行われているわけでありまして、その監査結果については各自治体の情報公開条例に基づいて公開をされているはずなんですね。それに対して、我々、国としても、やはり積極的に公開する体制を整えるように指導をしているところでございます。

 いずれにしても、公益性、非営利性の高い法人としての社会福祉法人でございますので、国民に対して説明責任を果たすという観点から、積極的な情報公開をさらに推進していかなければならないというふうに考えているところでございます。

寺田(学)分科員 今大臣が言われた、国として積極的に公開をするための努力をしているというのは、具体的にはどのような努力になるんですか。

鈴木政府参考人 指導監査の基準、要綱、これを国として示しております。その中で、今大臣が御答弁申し上げましたように、基本的にこういったものについては全て公開すべきであるということを基準として示しておりますので、私ども、自治体に対する指導あるいは自治体に対する監査等を通じまして、公表していない、公開していないという事例があれば、個別に指摘などをいたしまして徹底をするということで対処してまいりたいと思っております。

寺田(学)分科員 今局長が言われたそういう指導をしているということは、この新聞記事が載る前から行われていることですか、載った後に行われていることですか。

鈴木政府参考人 この指導監査の要綱、基準は、この報道の前からございます。

 しかしながら、ここの報道にございますように、まだ公開をされていないという事例が現にございますので、これは私どもとして指導を徹底してまいらなければならないというふうに考えております。

寺田(学)分科員 では、少なくともこの新聞報道にあるような自治体に対しては、個別に指導されたんですか。

鈴木政府参考人 この報道の自治体全部かどうかはわかりませんけれども、個別に指導監査の段階で指摘をしたり指導いたしておりますが、改めまして、今回、この御指摘もございましたので、この事例につきまして指導を徹底してまいりたいというふうに思います。

寺田(学)分科員 大臣にもお伺いしたいんですが、今局長が御答弁されているとおり、省庁として指導していても、このような記事が出て実態が明らかになる。実態が明らかになった上で、今局長が御答弁されたように、これが全てかどうかわからないけれどもということで、個別にはいろいろ指導していると。とはいいながら、今でもまだしっかりと公開されていないケースがあると思うんです。

 今、法改正が詰められていると思うんですが、全ての監査とは言いません、一年に一回の監査とは言いませんが、問題があって特別にちゃんとやっている、個別的な事案に関して特別監査をしているわけですから、この監査に関しては義務として公開する、原則として公開をする、そのような、今までとは違う、もう一段強目の国の指導を発揮するような形で情報公開をしっかり果たす、そういう仕組みづくりはできないでしょうか。

塩崎国務大臣 一義的な監督責任というのが例えば市にあるわけでありますから、そこがみずからどう律するかということ、そのことが大事なので、今申し上げたように、国としては、そうあるべしということで方針を示しているわけでありますけれども、それが徹底されていないということについてどうすべきなのかということは、今回の法律の改正もこれあり、そしてまた、監督を直接している市の言ってみれば監督能力というか、利益相反を含めてそういうことがあり得るということを考えて、どうすべきかということは今後も考えていかなければならないし、ちょうど今改革の法案を出すわけですから、どのようにするか考えてまいりたいというふうに思います。

寺田(学)分科員 間違っていたら訂正してほしいんですが、監査に関しては、自治事務ではなくて法定受託事務として、国のやっていることを法律で定めて自治体にお願いをしている、本来的な役割というのは国にあるはずなんです。ですので、実質的にやっているのは市であり都道府県であるというたてつけはそのとおりでありますけれども、この責任の大もとの主体は国にあります。間違っていたら訂正してください。

 ですので、自治体が今やっているのでと。あと、今大臣が言われましたけれども、能力の問題は能力の問題でまたそれは議論があると思いますが、特別監査をした問題の情報を公開するということは、行政としての判断の問題だと思います。その判断が、余りこじつけて言うつもりはありませんが、さまざま、法人と、それを監査する市、都道府県との関係性の中で公開をされないということがあってはならないので、原則公開すべきだと私は申し上げているんです。国の責任です。

 ですので、これは公開するという方向で対策を考えていただくことは可能でしょうか。大臣、よろしくお願いします。局長でもいいです。

鈴木政府参考人 先生御指摘のように、指導監査の中身について広く住民の方に知っていただくというのは、これは基本でございます。

 したがいまして、その事務がまた指導監査そのものは法定受託事務でもございますので、今般の社会福祉法人の仕組みを見直す改正の中で、この公表の義務についても何らかの位置づけをすべく検討してまいりたいというふうに思います。

寺田(学)分科員 今までどおり、基本的に公開せよと言ってもしてこない現状があるわけですから、ぜひともこのことに関しての厳しい基準を定めて、それを守っていただく指導体制というのを厚労省としても発揮していただきたい。大臣、よろしいですか。

塩崎国務大臣 今局長が答弁したとおりでありまして、私もその方向でやっていきたいというふうに思います。

寺田(学)分科員 最後の質問になりますが、先ほど来大臣もお話しされているとおり、監査をする能力、特に市に関してはかなりまちまち、ばらつきがあって、私もいろいろなところに聞いてみますと、財務諸表自体をしっかり読める人員及び人物が役所にいないということで、監査自体が実質的に非常に機能していないというところもあると聞いております。

 今回の改正の中では、この問題に関してもかなり問題意識を持たれているというふうにお伺いしておりますが、地方分権、地方主権という大きな流れは流れとして考えながらも、実質的にそこに暮らす住民の方々が安心、安全に暮らすためにどうシステムを構築するかということが何より一番大事なことですので、今、監査する側の能力にばらつきがあるということに関してどのような対策をとられるのか、御答弁をお願いします。

鈴木政府参考人 今御指摘のありました点は、今回の社会福祉法人改革の中で非常に重要な点でございます。

 地方分権の流れの中で、今まで都道府県が持っておりました法人の指導監督の権限が市におりております。その中で、市におりた中で、市ではなかなか対応、手が届かない部分もあるというような御指摘を現に現場からも伺っております。

 したがいまして、今回の改革の中で、市を何がしか支援をしたり連携をしたりする、そういう役割を都道府県に与えて、例えば研修でございますとか、そういったような支援もできるようにしてまいりたいと思っております。

 それから一方、市の中で、スタッフとして、例えば財務諸表ですとか財務会計について必ずしも専門的な能力がある職員ばかりではございません。そういう中で、やはり、公認会計士さんですとか、そういったような財務会計に関する専門的な知見のある方の意見を聞くとか、そういった専門的知見を活用する、こういったことも市の指導監督の中でできるような仕組みをまた法制上位置づけてまいりたいというふうに考えております。

寺田(学)分科員 そういうことで、監査能力自体を高めていくためのさまざまなサポートを国としてもやっていただきたいというふうに思います。

 それとともに、外部監査の導入も、今回、一定規模以上の法人に対しては義務づけると伺っています。確かにそういう義務づけは大事だなと思っておりますが、今、当初義務づけられるところはかなり大きい法人になると思います。

 実際のところ、さまざまな不祥事が起きた報道を見てみますと、大きな大きな社会福祉法人というよりは、ある種、地元に根づいたというか、地元の方がやられている、単体でやられているようなところがかなり会計がずさんで、時としては私的流用もあったりというふうになっています。ただ、そこにまで外部監査を義務づけるということになると、費用負担をどうするのか。

 そしてまた、一生懸命、児童養護でも保育でも、頑張って一人でやっているところに外部監査を義務づけるというのは難しいというふうに思います。ただ、税に対する優遇があったり、また補助金という公金が入ったりというところで、公正にしっかりとその現状を明らかに、外部の方に監査してもらう必要性もあると思います。

 その点のバランスをどのように捉えるのか、御答弁いただけたらと思います。

鈴木政府参考人 今御指摘ありましたように、一定規模以上の法人につきましては、負担能力もございますので、会計監査人ということで外部監査というものを義務づけるということにいたしております。

 ただ、小規模な法人が社会福祉法人は多々ございます。そういったところも基本的にその能力に応じてきちんと責務を果たしていただく、こういう観点から、一つは、会計の体制整備状況を公認会計士さんや税理士さんの方々にきちんと点検をしていただく、そういった責務があるというものを法制上位置づけたいと思っております。

 それからもう一つは、やはり財務会計の状況をきちんと公表していただくということも大事でございます。それによる牽制効果もかなりあろうと思います。

 そういったことで、この公表につきましては、法人の規模にかかわりなく、きちんと財務諸表その他について閲覧ができるようにし、あるいはインターネット等で広く一般に公開できるようにする、これを義務としてまいりたい、今回の改革の中でそういう位置づけをしてまいりたいというふうに考えております。

塩崎国務大臣 先ほど先生が御指摘になられました市の監査能力、監督能力、これは事業監査と財務監査と両方あると思いますが、やはり財務がわからなければ業務の監査もできないということであります。

 今も局長から答弁申し上げたように、一定規模以上については外部の監査法人が見るという仕組みをつくってコスト負担もしてもらいますけれども、小さなところについては、今、みずからがまずディスクローズをちゃんとした上で、監督する側がやはり財務のこともわかった上で事業についても監督をするということがちゃんと担保できるように、今度は市の側の財務分析能力、これをちゃんと強化していかないと、先ほどお話が出たような、OBが行っているみたいな話の中で、そこのところが不明朗になるのはやはりよくないということを私は強く今回の改革のときに申し上げて、公認会計士がちゃんと市の指導もするという中で、業務監査のためにも、財務がちゃんとわかったように体制を組んだ上でやってもらおうということにしているわけでございます。

寺田(学)分科員 いろいろ御答弁いただきました。

 いずれにせよ、多くの社会福祉法人は一生懸命頑張っている反面、一部のそういう不真面目なところが社会福祉法人全体のイメージをおとしめるようなことになりかねません。そういうことに関して、監査をしっかり制度的に担保して頑張っていただきたいと思います。

 以上です。

原田主査 これにて寺田学君の質疑は終了いたしました。

 次に、河野正美君。

河野(正)分科員 維新の党の河野正美でございます。本日はよろしくお願いいたします。

 私は、医師として医療の現場におりまして、我が国の医療政策を肌で感じてまいりました。このままでは地域医療が崩壊してしまう、そういった懸念から政治の世界に入らせていただきました。

 いわゆる団塊の世代の方々が後期高齢者となる二〇二五年、これも二〇二五年問題と呼ばれておりますけれども、超高齢化社会、そして一方で少子化、少数の若者で多数の高齢者を支えていかなければならない、こういったことから、今、早急に医療政策を根本的に見直さないと大変なことになってしまう。

 高齢化の先に少子化の影響がやってきます。かつては、医療費亡国論という提言もございました。しかし、短期的にでも、医療費はしっかりと確保しなければならないというふうに考えておりますし、大きなニーズのあるところに貴重な財源を投入することは是であるというふうに私は考えております。

 まずは、これまでさまざまな機会をいただきまして質問を重ねてきました医療機関の控除対象外消費税額の問題について、改めてきょうは取り上げたいと思っております。

 御承知のように、社会保険診療は非課税であるため、医療機関が仕入れの際に負担した消費税を消費者、この場合、すなわち患者さんに転嫁することができません。このために、医療機関が持ち出しとなっている状況が続いているわけであります。

 医療、診断技術の進歩により高額の医療機器の購入や、昨今は、地震対策ということで建物の耐震化、あるいは火災対策としてスプリンクラーを設置しなければならないなど、大きな投資が必要となり、経営上、これは看過できない影響が生じています。

 現時点までの取り組みですけれども、昨年四月、御承知のように、消費税は八%に引き上げられました。三%上がることで、医療機関が負わなければならない消費税負担も確実にふえているわけであります。一方、これまでの消費税引き上げ時と同様、診療報酬改定によって一・三六%の補填がなされたというふうに言われております。

 しかし、診療報酬はその項目が極めて多岐にわたる上、医療機関の経営形態あるいは規模もさまざまであります。こういったことから、各医療機関の消費税負担を診療報酬で反映することは困難であろうと考えております。より抜本的な対策が求められるものと思います。

 昨年四月の診療報酬改定によって医療機関の消費税負担は適正に補填されているのかどうか、その検証がなされているかどうか、まずお聞きしたいと思います。

唐澤政府参考人 お答えさせていただきます。

 先生の御指摘いただきました昨年四月の診療報酬改定、消費税率の引き上げに関しましては、医療経済実態調査などに基づきまして、医療機関等の課税経費割合を把握いたしました。そして、仕入れに対する消費税率の引き上げの影響を算出した上で、診療報酬本体におきまして必要財源を確保し、初再診料、入院基本料等の引き上げにより対応したところでございます。

 これにつきましては、医療界あるいはまた保険者などから、医療機関における消費税に関する補填の状況をきちんと調査すべきであるという御指摘をいただいておりまして、今後、この御指摘を踏まえ、具体的な調査方法について検討してまいりたいと考えております。

河野(正)分科員 診療報酬で仕入れ税額相当分は手当てされているというふうにされておりますけれども、本当に見合った金額となっているのかは極めて不明確ではないかなと思っております。

 平成二十七年度与党税制改正大綱では、「個々の診療報酬項目に含まれる仕入れ税額相当額分を「見える化」することなどにより実態の正確な把握を行う。」とされております。今御答弁の中に若干あったかもしれませんけれども、具体的な取り組みはどのようにされているのかをお聞かせ願いたいと思います。

唐澤政府参考人 昨年の与党税制改正大綱におきまして、個々の診療報酬項目に含まれる仕入れ税額相当分を見える化ということを指摘されているわけでございます。

 私ども、これまで、消費税の導入時には診療報酬で上乗せの手当てというものをしてきたわけでございますけれども、個々の診療報酬項目に仕入れ税額相当分の見える化をどういうふうな手法でしていくか。これは、薬価ですとか医療機器だとかいうものははっきりわかるんですけれども、診療報酬の点数ということになりますと、どういうふうにしていくかということについては、これから検討してまいりたいと思います。

 具体的には、医療機関等における消費税負担に関する分科会、これを中医協に設置してございますので、この中で検討させていただきたいと考えております。

河野(正)分科員 そもそも、八%のときまでに高額の医療機器購入等については検討するということだったと思うんですけれども、ずっとそれが長引いてしまっているということですので、ぜひしっかりとこういった取り組みをやっていただきたいと思います。

 ことし十月に予定されておりました消費税率の引き上げは、御承知のように、二年後の二〇一七年四月に延期をされました。一〇%になる二〇一七年、平成二十九年四月までには、これまでのような診療報酬改定による、いわばつけ焼き刃的対応ではなく、医療に係る消費税のあり方を抜本的に見直すことが求められているというふうに考えております。

 病気になった方から消費税をとるのかという問題もございますが、例えば、医療費も課税するというような考えがあるのでしょうか。

 また、与党税制改正大綱では、消費税の軽減税率制度を税率一〇%時に導入、平成二十九年度からの導入を目指して、対象品目、区分経理、安定財源等について具体的に検討を進めるというふうにしておられます。消費税一〇%導入時には、与党間では、軽減税率の導入も目指すということで、さまざまな検討が現在なされているんじゃないかなというふうに思っております。

 軽減税率の是非はともかくといたしまして、医療に関してもこういった軽減税率という考え方があるのでしょうか。

 医療の課税について、厚生労働大臣にお尋ねいたします。

塩崎国務大臣 先生御指摘のように、今、医療界の方からは、医療に係る消費税のあり方につきまして、軽減税率による課税化等によって医療機関等の消費税問題の抜本的な解決を図ってほしい、こういう御意見が寄せられていることは私どももよく承知をしているところでございます。

 今、課税化や軽減税率といった御指摘がございましたけれども、昨年末に取りまとめられました与党の税制改正大綱を見てみますと、医療に係る消費税等の税制のあり方についても議論があって、その中では、抜本的な解決に向け、個々の診療報酬項目に含まれる仕入れ税額相当額分を見える化することなどにより実態の正確な把握を行いつつ、税制上の措置については、医療保険制度における手当てのあり方の検討等とあわせ、つまり、診療報酬ですね、あわせて、関係者の意見も踏まえて、総合的に検討し、結論を得るということとなっているところでございます。

 いずれにしても、税制抜本改革法、一体改革の際に、医療に係る課税のあり方については引き続き検討するというふうになっておるわけでございまして、引き続いて、与党での議論を我々としてはまずよく見るとともに、医療関係者そしてまた国会でのさまざまな御議論を踏まえた上で検討していくことになろうかというふうに考えております。

河野(正)分科員 ありがとうございました。

 引き続き検討するということがずっと続いてしまっていますので、厳しい状況が続いているように思っております。

 ちょっと話はあれですが、抜本的な見直し方法として、医療関係団体を中心に四つの案が提示されていると思います。

 まず、課税してゼロ税率、あるいは、課税して先ほどお話しした軽減税率、また、非課税のまま全額還付、四つ目として、非課税で一部還付をする、こういったことがあると思います。

 各案のメリット、デメリットをどのように評価しているのか、見解をお聞かせいただきたいと思います。

二川政府参考人 社会保険診療につきましては、御承知のとおり、従来から、高度の公共性を有するといったことで、国民の負担を抑えながらサービスを提供するということで、消費税は非課税にされてきたわけでございます。これを課税という形に変えるといたしますと、まず、そういった従来の考え方とどういった整理をしていくのかといったことが論点になろうかと思います。

 また、課税化する場合ですけれども、医療機関におきましては、消費税申告のための記帳等の事務が発生するというふうに考えられます。

 また、課税の場合で、ゼロ税率の場合、こういった場合でございますけれども、こういった場合は多額の税収減を招くといったことが予想されるわけでございまして、そういった場合、医療を含む社会保障のための必要な財源をどうするのかといったことも論点になろうかと思います。

 また、課税、軽減税率といったようなケースの場合には、税率の設定次第におきましては、やはり多額の税収減を招くことについてどう考えるか。また、今度は、軽減税率でございますので、患者さんの負担が発生する可能性があるといった課題があるということでございます。

 一方で、控除対象外消費税の問題は、この場合には、全面的に解決されるというメリットがあるといったことかと思います。

 一方、非課税のまま還付により対応するといった場合でございますけれども、この場合には、患者さんの負担は増加しないというメリットはあるということでございますけれども、一方、医療機関におきましては、還付申告のための記帳等の事務が発生するというふうに見込まれる点。

 それから、非課税で全額還付といった場合には、実質的にはゼロ税率ということになりますので、やはり多額の減収を招くということになり、医療を含む社会保障のための必要な財源をどうするのかといったことが論点になろうかと思います。

 また、非課税、一部還付といった場合には、制度の複雑化が生じる、こういったデメリットがあろうかというふうに論点としては整理できるのではないかと思います。

 それからまた、これらに加えまして、これまで診療報酬で手当てをしてきた部分につきましてどのような取り扱いとするかといったことも論点になろうかと思いまして、このように、さまざまな論点が存在するといったことで、今後も、与党の議論の状況等を踏まえつつ、検討していくことになろうかというふうに考えております。

河野(正)分科員 ありがとうございました。

 事務手続が煩雑になるということに関しましては、地域の基幹となる病院ですと、かなり、億単位の負担を強いられているわけですから、これが仮に消費税率が倍になれば、億単位で倍々となっていくわけでございますので、そういったことを考えると、事務手続が煩雑になったからといって、しっかりと、逆に雇用を確保して、地域の雇用に貢献しながらやっていく、対策していくことができるんじゃないかなというふうに思っているところであります。

 一方で、私も医療崩壊は懸念しておりますけれども、国会議員の立場でもありますので、税収はしっかりどこからか補填していかなければいけないということで、非常に悩ましい問題であるからこそ、早急に検討していかなければいけないんじゃないかなというふうに考えているところです。

 社会保険診療は、先ほどお話ありましたように、高い公共性を有しているということから非課税というふうになっております。

 しかし、診療報酬改定で消費税負担を補填しているということは、先ほどお話しいただきましたけれども、患者さんが医療機関の窓口で支払う料金に含まれてしまっている、上乗せされているということであり、事実上、今お話しになったのとは若干異なりまして、患者さんが消費税相当分を実際はもう既に負担しているということになるように思います。このようなわかりにくく不公平な仕組みは、やはり抜本的に見直さなければならないんじゃないかなと思っております。

 今、我々の眼前にあるのは、消費税八%、そして一〇%ということでございますけれども、今後、例えば欧米諸国並みに二〇%とか三〇%というふうに消費税を上げていかなければならない状況が来るとするならば、やはり診療報酬での対応によらず、税制での対応こそが必要ではないかなというふうに考えております。診療報酬に含んでいく手法は、もう既に限界があり、困難だと思っておりますが、厚生労働大臣、改めて、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 これは、消費税が導入されてから、される際にも随分いろいろな議論があって、紆余曲折の末に非課税というふうになって今日まで来ているわけでありまして、引き続きこれでいいんだろうかという御意見があることはよく理解をしているということは先ほど申し上げたとおりでありまして、ではどうするんだというときに、先ほど、四つの選択肢について、メリット、デメリットをそれぞれ局長の方から御説明申し上げましたけれども、なかなか、越えなきゃいけないハードルはいろいろあるわけでございます。

 しかし、一方で、特に投資の大きい医療機関においてはかなり大変だということも言われているわけでございまして、結局、そうしてみると、先ほど私の方から御説明を申し上げた、その繰り返しになるわけでありますけれども、やはり与党税制改正大綱において、税制上の措置については、先ほど言ったように、医療保険制度における手当てのあり方の検討等とあわせて、関係者の意見も踏まえて、総合的に判断をした上で結論を出していくということをやらなきゃいけませんので、引き続き、国会で先生方からまたさまざまな方向性を持った御議論をしていただいて、そしてまた、我々としても、与党の議論にもしっかり耳を傾けながら最終的な判断をしてまいりたいというふうに思っているところでございます。

河野(正)分科員 早急にやらなければならないことだと思いますし、しっかりと我々も検討して、提言をしてまいりたいというふうに考えております。

 次に、介護報酬引き下げについてお尋ねをいたしたいと思います。

 平成二十七年度介護報酬改定では、二・二七%引き下げられ、九年ぶりのマイナス改定というふうに報道されております。この間、財務当局を中心に、特別養護老人ホームの内部留保の多さなどが報道されております。そういったことが指摘され、それを受けた報道が相次ぎ、社会福祉法人はもうかっているんじゃないかと言わんばかりのキャンペーンが続いたようにも感じるところであります。

 確かに、内部留保が多い法人があることは明らかでありましょうが、さきに述べましたように、耐震化や防火関係の設備投資を行わなければならない、あるいは、法律や通達が変わることも少なくないために、有事に備えざるを得ない部分も否定できないのではないかなというふうに思っております。また、地域差も大きいというふうに考えています。それをもって全体の介護報酬を引き下げる理由にはならないんじゃないかなというふうに考えているわけであります。

 こうしたイメージづくりは、実際に介護現場で働く方々の士気や意欲をそぐばかりじゃないかなと思います。待遇改善を進めると言いつつも、一方ではこのように先入観を広めていく手法は看過できないというふうに考えております。

 今回の介護報酬改定に至るプロセスで見られたキャンペーン、あるいは、介護現場への影響についての見解、政府の受けとめと対応についてお聞かせいただきたいと思います。

三浦政府参考人 介護報酬の改定について御質問をいただきました。

 今回の報酬改定におきましては、消費税増収分を活用しつつ、今後の高齢化の進展を見据えた地域包括ケアシステムの構築に向けて、中重度の要介護者や認知症高齢者の方などの介護サービスの充実を図ること、加えて、最重要の課題の一つでございます介護職員の確保を図るため、他の報酬とは別枠で、一人当たり月額一万二千円相当の処遇改善を実現するための措置を講じること、同時に、介護保険制度の持続可能性を高めるため、介護事業の経営の実態を踏まえた適正化など、これらを行うとするものでございます。

 この経営の実態を踏まえた適正化ということにつきましては、社会福祉法人の内部留保を直接考慮したものではございません。介護サービス事業者の収支差等を総合的に勘案して行ったものと考えております。

 また、改定に当たりましては、事業者、保険者、学識関係者などの有識者から構成される社会保障審議会介護給付費分科会におきまして、事業者団体からのヒアリングなどを実施した上で取りまとめました内容に基づいて決定しているものでございます。適正なプロセスを経ているものと考えております。

 厚生労働省といたしましては、介護事業者に対しまして、高齢社会における介護サービスの重要性や今回の改定の考え方につきましてあらゆる機会を通じて丁寧に御説明し、意欲を持って事業を進めていただくことをお願いしたいと考えております。

河野(正)分科員 介護報酬のマイナス改定によって、実際、介護事業者の運営が苦しくなっていないかどうか。あるいは、今、別枠で一万二千円ということをおっしゃいましたけれども、介護現場、介護事業者の中には介護する方だけではありませんので、本当に介護従事者の待遇改善が進んだかということについてどのように検証していくのか。現時点でのお考えをお聞かせいただきたいと思います。

三浦政府参考人 処遇改善のお尋ねをいただきました。

 今回の加算の取得に当たりましては、現行でも事業者の方から事前の計画や実績の届け出を求めているところでございますが、今回の改定で加算を充実することに伴いまして、この加算分が適切かつ確実に介護職員に支払われ、処遇改善の状況を確認、検証できるように、まず、計画や実績報告に記載する事項を見直しまして、事業者の具体的な取り組みを詳細に把握するとともに、また、経営悪化などにより賃金水準を低下せざるを得ない場合の取り扱いについて適切に運用されているかどうかを確認するため、新たに届け出を求めること、さらに、処遇改善の取り組みを介護職員にわかりやすく周知することを徹底することなど、運用の見直しを行うこととしているところでございます。

 これらの取り組みにつきまして、介護職員の処遇が改善されるよう、都道府県などと連携しつつ、適切に運用し、その状況をしっかりと見てまいりたいと考えております。

河野(正)分科員 時間が余りありませんので先に進めたいと思いますが、やはり、医療、介護というのは多くの雇用を必要とする、マンパワーを必要とするところですので、地域の雇用の担い手ともなりますので、しっかりと守っていかなければいけないものと思っております。

 介護報酬のマイナス改定を受け、今度は診療報酬改定の方への影響も懸念しているところであります。

 こういったところで、診療報酬改定をどのように考えられているのか、現時点での厚生労働大臣の決意をお聞かせいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 先般、介護報酬とそれから障害者の福祉サービスの報酬について改定をいたしました。ことしは、診療報酬の改定がこの間はなかったわけでありますけれども、その前のときもかなりいろいろな議論があって、ああいうような形で決着をしたわけであります。

 今、平成二十八年度の診療報酬改定に向けての決意ということでありますけれども、当然のことながら、マクロの経済指標、それから、前回、安倍総理が特に意識をされていたのは、やはり、国民負担への影響ということも十分考慮をするという中にあって、医療現場の実態を踏まえたものにしていく、ニーズに合ったものにしていく、あるべき医療の姿に、ふさわしいものにしていくということをしっかり考えながら議論を進めていかなければならないというふうに思っております。

 その上で、次期診療報酬改定においては、平成二十六年度改定に引き続いて、二〇二五年を見据えて、医療や介護が必要な状態になってもできるだけ住みなれた地域で生活が継続できるようにということで、地域包括ケアシステムというのをこれからまさに構築していこうということであるわけでございますけれども、それに見合ったものになっているかどうかということが大変大事な一つのポイントになろうかと思います。

 それから、平成二十六年度の診療報酬改定の検証結果、これもやらなければいけないので、どこが不十分で、どこが少し検討しなければいけないものなのかなどを踏まえて、国民一人一人が安心して医療や介護を受けられる体制を整備する観点から、次期診療報酬改定についても真剣に取り組んでまいりたいというふうに思います。

河野(正)分科員 しっかりと厚生労働大臣に地域医療を守るために頑張っていただきたいなと思います。

 次に、医学部新設について伺いたいと思います。

 被災地で一カ所開設することが決まり、現在、東北薬科大学を中心に、来年四月の開学を目指して検討が進んでいると言われています。しかしながら、報道ぶりを見ておりますと、意見の対立、あるいは地域での温度差など、乗り越える課題が山積していると思います。

 こういった状況で、予定どおりの開学も心配されているところかと思いますが、政府としての受けとめを簡単にお聞かせいただけますでしょうか。

佐野政府参考人 お答え申し上げます。

 東北地方の医学部新設につきましては、平成二十五年十二月に、復興庁、文部科学省、厚生労働省で決定いたしました基本方針において、復興のための特例措置として、東北地方に一校に限り医学部新設を可能とする方針を示したところでございます。これに基づきまして、公募を行い、文部科学省に設けられました構想審査会での審査を経て、昨年九月、東北薬科大学を条件つきで選定したところでございます。

 現在、東北薬科大学では、これまで、選定条件に適切に対応することができるよう、東北各県、各大学等が参加する運営協議会を立ち上げまして、教員、医師等の確保や卒業生の地域定着について議論を行ってまいりました。この結果、三月二日の第六回運営協議会におきまして一定の議論の取りまとめが行われており、その際出された意見も踏まえて、最終的な報告書の取りまとめに向けまして、現在、東北薬科大学にて運営協議会委員と調整を行っていると承知しているところでございます。

河野(正)分科員 次に、国家戦略特区での検討状況について伺いたいと思います。

 千葉県成田市では、国際医療学園都市構想による規制改革要望が出され、それをもとにした国家戦略特区の検討も進んでいると伺っております。石破大臣も、結論を出すと発言されており、政府としての結論が近々示されるものではないかなと受けとめております。

 現在までの進捗状況、今後の見通しについて簡単にお答えいただけますでしょうか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の、国家戦略特区におきます医学部の新設でございますけれども、一昨年、平成二十五年十月十八日の日本経済再生本部におきまして、「高齢化社会に対応した社会保障制度改革や全国的な影響等を勘案しつつ、国家戦略特区の趣旨を踏まえ、関係省庁と連携の上、検討する。」ということが本部決定されたわけでございます。

 この決定以降、国家戦略特区のワーキンググループなどにおきまして関係省庁と検討を重ねてきたところでございましたが、昨年十二月九日に、東京圏の国家戦略特別区域会議のもとに、国、関係の地方公共団体並びに関係の民間事業者から成ります成田市分科会を設置いたしました。十二月十七日、二月九日の二回にわたりまして、ワーキンググループの委員や専門家からの御意見をいただきつつ、関係省庁等を交えまして議論を行っているところでございます。

 政府といたしましては、今後、この成田市分科会での結論、議論を経まして、医学部新設に関します基本的な考え方や方向性等につきまして取りまとめを行っていきたいというふうに考えてございます。

 以上でございます。

河野(正)分科員 一方で、国家戦略特区での医学部の新設に関しましては、医療関係者などを中心に多くの懸念が寄せられているんじゃないかなと思います。具体的には、医師養成数の議論が必要である、医師不足対策にならず質の低下を招きかねない、国際的医療人材の養成は既に行われている、地域医療の再生を阻害するといった点がございます。

 たとえ特区という形で一地域での導入であったとしても、医療人材が新設医学部に集まることで広く影響が及ぶおそれがあるというふうに思っております。

 学校設置基準では、必要専任教員は百五十人程度というふうに考えられているようですが、医学部の教員は、大学附属病院で実際に臨床の診療業務を行うこととなります。これらを勘案しますと、医学部が一つ新設されることにより、約三百名程度の医師が地域臨床の現場から大学に集まってしまうということになるとも試算されています。

 医師不足地域においては、大学病院という巨大な基幹病院ができる一方で、身近な医療機関や地域の基幹病院の幾つかが崩壊しかねないということも危惧されます。大学病院は、御承知のように、研究機関でもありますので、きめ細やかな医療が提供できるとは限らないんじゃないかなというふうに思っております。

 こういった懸念について、厚生労働大臣の見解をいただけますでしょうか。

塩崎国務大臣 医療関係者からもさまざまな御意見を、私自身、直接にも聞いているところでございます。そういった方々からは、新設を医学部についていたすと、教員確保のために、今先生御指摘のような、医療現場から多くの医師を引き揚げざるを得ない、したがって、地域医療の崩壊を加速するんじゃないか、こういう御懸念、あるいは、人口減少など社会の変化に対応した医師養成数の柔軟な見直しを行いにくくなる、これから人口が減ってくるわけですから、それをどう考えるんだ、こういった指摘が私どものところにも寄せられております。

 これについては、先ほど特区の方からもお話がありましたが、日本経済再生本部の平成二十五年十月十八日の決定を見ますと、国家戦略特区における規制改革事項等の検討方針という文書において、「医学部の新設については、高齢化社会に対応した社会保障制度改革や全国的な影響等を勘案しつつ、国家戦略特区の趣旨を踏まえ、関係省庁と連携の上、検討する。」こうなっているわけであります。

 内閣府において現在検討中でありますけれども、我々としては、やはり地域医療への影響というのは極めて重要だというふうに考えておりまして、内閣府における今後の議論においてもしっかりこの点については取り上げていただいて、そして、我々とも連携をしていただきたいし、我々も連携してまいりたいというふうに思っております。

河野(正)分科員 時間が来ましたので終わらせていただきますけれども、そもそも、少子高齢化が進んでいる我が国におきましては、やはり、今大臣もおっしゃいましたように、二〇二五年問題など、一時的には非常に医療ニーズが高まるとは思いますけれども、その先には、少子化ということで人口が減ってまいりますので、新たな医学部新設をするよりは、一時的な問題としては、定員増などで対応しないと、今後、少子化になって、もう医学部を廃止しなければならないというようなことになると、大きなエネルギーが必要となると思いますので、その辺は十分考えていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

原田主査 これにて河野正美君の質疑は終了いたしました。

 次に、木下智彦君。

木下分科員 維新の党、木下智彦でございます。

 きょうは予算委員会分科会ということで、一日、大臣も、それから橋本政務官にもおつき合いいただくことになります。長丁場、大変でしょうけれども頑張って、よろしくお願いいたします。

 では、まず最初にお話をさせていただきたいのは、きょう、介護保険について少しお話をお聞かせいただきたいなと。

 私が地元を回っておりまして、いろいろなところで介護に従事されている方々がいらっしゃいまして、いろいろな御意見をお聞かせいただいているんですね。その中で、もう少しよくなったらいいな、こういうことをよくなればいいのになというふうな御意見があったので、それを中心に、きょうお話をさせていただきます。

 まず最初なんですけれども、介護の中で、居宅介護サービスといったものがあります。在宅のところに介護士の方なんかが、介護福祉士の方であるとかケアマネジャーの方とか行かれて、いろいろなサービスをされます。そのときに、介護保険の給付の対象ですね、これについていろいろ御意見がありまして、何かといいますと、介護というところで、生活介護サービスと言われる部分、そこが、例えば、今の介護保険の中では、医療系サービスと同時に行われるときには保険給付の対象だというふうにして言われています。

 そこについて、きょうちょっとお話を聞かせていただきたいんですけれども、まず最初に、医療系サービスと合わせた場合にのみ対象となっているというこの意図について、簡単にお聞かせ願えればと思います。

三浦政府参考人 介護保険の利用者の皆様は、もちろん、介護のニーズがおありだということと同時に、介護サービスを必要とされる、医療と介護、両方必要としているということでございます。そういう観点から、医療というものが欠かせないということは言うまでもないというふうに考えております。そういう中で、さまざまな日常生活を支援するサービスというものが活用されていくということではないかと考えております。

木下分科員 ありがとうございます。

 大まかにはあれなんですけれども、その中で、では、合わせたその生活介護の部分というのは、例えばどういうふうなものが保険給付の対象になるのか、例を何個か挙げていただければと思うんです。

三浦政府参考人 直ちに例というとなかなか難しいんですが、それぞれ利用者の皆様の状態が異なりまして、いろいろなサービスが当然それに伴って必要になってくるということでございます。

 そういう観点から、いろいろなサービスの形態をとりながら高齢者に対するサービスが行われる。こういう形ということよりも、そういう現場でのニーズといいましょうか、そういうものに的確に対応していくということであろうと考えております。

木下分科員 済みません、いきなりちょっと変化球を投げたので。申しわけないです。

 そういうふうなお話であれば、例えば、解釈としては、在宅で介護を受けられている方々が普通に生活をしていく上において必要なもの、基本的なものですね、それと医療が組み合わさっていた場合には保険給付の対象だというふうな、そういう解釈だと思います。

 そのときに、二つほど質問がありまして、一つは、では一体、どういう生活関連のサービスがオーケーでどういうのがだめなのかというその基準というものが、ちょっと、これから出してくるところでは明確じゃないなと思うところが一つ。

 それからもう一つは、今私は在宅介護についてお話をさせていただいたんですけれども、例えば老人ホームと言われている特別養護老人ホームみたいなところ、いわゆる共同生活介護もしくは入居者生活介護といったものについて、生活介護サービス自体は、医療系サービスと同時に行われた場合とかそういうのに関係なく保険の給付の対象じゃないというふうになっていると聞いています。

 その二点について、一つは、どういう基準になっているのかということと、二回質問をさせていただくことになりますけれども、それからもう一つは、共同生活介護と言われる部分についてはなぜ対象にならないのかというところについてお話しいただければと思います。

三浦政府参考人 介護保険のサービスの対象ということでございますけれども、その方の日常生活を支援するということが基本であるというふうに考えておりますが、では、日常生活を支援することがすべからく、そういう条件であればすべからく介護保険の対象になるかといえば、それは一定の、公的な保険としての限界というものがあろうというふうに思います。

 そういう点で、その方の日常生活として、基本的に、生活を維持するのに、例えば食事ですとか入浴ですとか、あるいは排せつですとか、そういうような基本的なサービスに関連して、どうしても不可欠なサービスというのが介護保険の給付の対象になるというふうに考えております。

 また、共同生活、入所者介護という場合のサービスの提供につきましても、これは、一体としてサービスを提供する事業者の場合もあれば、つまり日常生活をパッケージとして提供するものもあれば、場合によっては、有料老人ホームの形態の一つとしては、外づけのサービスといいましょうか、外から来てもらうサービスの組み合わせもできるというようなことがございまして、それぞれの利用者さんのニーズとか要望とか、そういうところに基づいてサービスの選択が行われるということだと考えております。

木下分科員 ありがとうございます。

 前半部分は非常によくわかりました。よく聞かれる部分で、特に食事とか入浴であるとかそういった部分については、私の地元の老人の方々もすごく助かっている、その御家族もすごく助かっているというお話を聞いておりますので、まさしく生活を支援するという部分では非常にいい話なのかなと。

 後半部分ですね、集合的に介護を受けられているようなところ、ばらばらだからということで、どうしてもそれで一律に決めにくいところがあるんだろうけれども、それによって漏れてしまうところも出てくるんじゃないかなということが少し懸念されると私は思っているんです。

 その中で、きょう一点、ちょっとポイントを絞ってお話をさせていただきたいんですけれども、理容、髪の毛を切る散髪屋さんですね、散髪屋さんのサービスについて、これも私の地元の理容師の方々がお話を言ってこられたんです。

 さっきのお話の中で、例えば在宅にまず絞ってお話しします、在宅で髪の毛を切りに行きますといった場合に、要介護度に応じて、当然のことながら、寝たきりの方であるとか自分で手を動かしにくい方であるとかというと、髪の毛を整えるのは当然難しいし、それ以上に難しいのは、自分で髪の毛を切ることもできない。そういう形なのに、先ほどちょっとお話をいただいた介護保険の対象にこれはなっていないんですね。食事であるとか、お風呂であるとか、排せつであるとか、これは重要なことだと思うんですけれども、髪の毛を切るということについても少し考えるべきなんじゃないかなと。特にこれは、要介護度に応じてやりにくい部分だと思うんですね。

 そもそも、この介護保険制度自体で給付の区分が決まっているのは、要介護度に合わせて決まっているわけですから、そういう部分で考えたときに、要介護度に応じて、散髪をするというものについても対象にするということを考えられないかなというのがきょうのお話です。

 そういうふうにして考えたときに、今、理容師の方々というのは国家資格になっております。その中で、それだけ特殊技能を要していること、それからもう一つは、やはり、清潔に保たなければいけないという部分があります。清潔に保たなければいけないというふうなことというのはすごく大きなことで、介護を必要とされている方々が清潔に保たれることによって、余計な病気になったりとかするようなこともないと思うんですね。

 そういうことを考えると、相当これは必要なことなんじゃないかなというふうに私は考えているんですけれども、その辺についての御議論等々ないかなと思いまして、お話をお聞かせ願えればと思います。

三浦政府参考人 理美容の、理容サービスの提供について御質問いただきましたが、平成十六年度まで、市町村における訪問理美容サービス事業というのは国庫補助の対象でございました。平成十七年度から、三位一体改革における国と地方の役割分担の中で、市町村が自主性を持って取り組むべき事業として、他の補助事業とあわせて一般財源化されております。

 このような経緯から、現時点で介護保険のサービスの対象にするということはなかなか難しいのではないかと考えております。

 一方で、今後、要介護者の方や認知症の高齢者の方々などが急速に増加するということが見込まれる中で、生活支援に関するニーズの高まりも見込まれております。訪問理容サービスも含めまして、生活支援のための多様なサービスが地域で提供される体制の構築が重要だと考えているところでございます。

 このため、今般の介護保険制度の改正におきまして、地域のニーズに応じた生活支援体制を構築していくというためのコーディネーターの配置などを行う事業を制度化したところでございます。市町村を中心に、訪問理美容サービス事業など一般財源化された事業も組み合わせながら、地域における支え合い体制の構築、これを推進していくということにしておるところでございます。

木下分科員 地域にそれぞれ決めさせる、これは非常に私はいいことだと思っていますし、賛成するべき部分というのは多いんですね。ただ、実態を見ていると、現場が少し混乱を来しているんじゃないかなと。

 というのは、今のお話を聞いて、前々からお話を聞いていて、ちょっと調べてみると、各市町村で、理容に関する補助金であったりとか、そういう行政サービスが行われています。それをそれぞれ見ていったんですね。

 そうすると、例えば葛飾区なんかは、要介護度三以上の利用者から、住民税の課税、非課税などによって五百円から千五百円を利用者が負担します。区から三千円の補助が出て、年六回利用できますというふうな感じになっています。

 ちょっと読むとあれですが、千代田区なんかは、一律設定料金六千八百四円、利用者から六百八十円をもらって、差し引き六千百二十四円を区が負担して、年八回。これだけでも差が結構あるなと。

 私の地元の豊中なんかは、在宅訪問の場合は、理容施設に行けない利用者が、だからこれは、要介護度というよりも、基本的に行けないと判断される人が、施術料として三千円からそれ以上を負担する。組合に加入している業者であれば、これは行政サービスというより、組合から千円が理容師さんの方に払われて、年六回。

 これは結構ばらばらなんですよね。行政としてやっているところもあれば、それがうまく回っていないところは理容師組合からお金が出たりということで、結構これはばらばらになっていて、地域によって、私のところなんかは小さい市なので、隣の市とも共同でやって、どうやらそこに行かれるような人もいるようです。

 そういうのを考えていると、その地域地域によって余りにも差があったり、ある特定のもの、サービスに関しては全くないというようなことが起こっているということなんですね。

 やはりこれを考えたときに、財源という部分で地域におろしたというところでは、これはある程度賛成できるところなんですけれども、ある程度、一定の基準というものは、そう、そこが結構一番難しいところなんだと思っていて、橋本先生もうなずいていらっしゃいますけれども、これをどうしていくのかということが一番私は重要だと思うんですね。そういったアイデアが議論されないかなと思っているんですね。

 これは、そうはいいながら、簡単に決められるものではないんですけれども、現場の今のお話のとおり、相当ここは難しい、解決が難しいところだけれども、ここを考えていくのは、やはり国がある程度考えていくべきところなんじゃないかなと思っております。

 私はもう一つ、ちょっとそれに付随するところで、これは厚労省の方にお話しするような話じゃないのかもしれないんですけれども、今ちょうど確定申告の時期になっております。医療費の控除の申請なんかも当然その中に入っているんですけれども、考えたときに、この理容サービス、これを要介護度なんかに応じて医療費の控除を受けられるようになれば、厚労省もそうだし国税庁もそうだし、国一定で、ある程度気軽に、そういうところから始めていくというのは一つありなんじゃないかなと。

 逆に言うと、一律で、今のところでは医療費控除の、当然、普通で考えたら健常者の人が散髪に行って医療費控除を受けるというのは難しいかもしれませんけれども、こういう要介護者がそういうサービスを受けたときには何らかの医療費控除が受けられるとか、そういうこともあわせてやっていくというのはありなんじゃないかなと。

 逆に言うと、そういうふうな決まりがあるから、理容サービスというのがどうしても保険給付の対象になっていない要因の一つになっているんじゃないかなという気も私はしているんですね。

 その辺について、ちょっとこじつけかもしれませんけれども、今までの話の流れで大臣にちょっと御見解をお聞かせ願えればと思うんです。

塩崎国務大臣 理容、あと美容もそうでしょうけれども、髪の毛を清潔に保っておく、お顔の手入れもちゃんとしておく、不精ひげなどが生えていないようにして清潔にするというのは、戦後すぐに、やはりシラミとかそんなのがあって、結構これは衛生上の大問題ということで、だからこそ、生活衛生というのでくくられているのが、この理容そしてまた美容だろうというふうに思います。

 今お話ございましたように、理容が在宅でサービスを提供することの大事さというのは、私もよく理解をしているつもりでございますが、今、医療費の範囲に入るかどうかという問題にもつながる控除の御指摘がございました。

 御指摘の医療費控除の対象となる医療費の範囲については、一つは、医師または歯科医師の診療、治療の対価、それから治療等に必要な医薬品の購入の対価、そして医療等に関連する人的役務の提供の対価、今はそういうものを対象としているわけであって、この中に理容サービスを対象とすることは、なかなかそう簡単ではないということだと思っております。

 一方で、今申し上げたように、施設や在宅の高齢の方への出張をしての理容あるいは美容の提供というのは、今後さらに増加することが当然想定されて、一般財源化をされているということでありますので、先生の御主張が今いろいろ出てきているんだろうと思いますが、出張理容・美容に関する衛生管理の徹底の依頼等を、自治体に対して通知を平成二十五年に行っております。

 それから、施設に入所されている高齢の方に対して、心身の特性に応じて適切な出張理容・美容が行われるような環境や留意事項等についても、これは調査研究事業の実施を行ってきておりまして、高齢の方が安心、安全に理容や美容のサービスを受けることができるようになることが、また、生活の質の向上というか、そういうのにつながるのではないかというふうに思いますので、直接、医療費の対象として入るかというと、今の定義だと、なかなか今は難しいという感じであろうとは思いますけれども、事の大事さというのは変わらないので、先生の御主張のとおりだと思います。

木下分科員 ありがとうございます。

 難しいところだとは思うんですね。ただ、今後、超高齢化社会になってきたときに、必ずここはもっとクローズアップされてくるんだろうなと思っているんですね。

 例えば、今言いました、在宅の部分とそれから施設で行われた部分というので違いがあるというところで、現場の話をちょっと聞いてきたんですね。そうすると、余り言ってくれないんですけれども、なぜ言ってくれないかというと、実際には、介護福祉士の人であるとかケアマネジャーの人が、要介護者の方々のニーズに応じて髪の毛を切っていらっしゃる方がいるらしいんですよね。やはり、そういう要介護者の方々も、そういうのをうれしく思っている人がどうやらいるようなんです。

 髪の毛ならまだしも、ひげとかが伸びたとき、このときに、かみそりを使うか電気シェーバーを使うかという問題もありますけれども、そういうこともなかなかままならないので、そういう人たちがやってしまっている、そういう現状があるようなんです。

 これが極端な例なのか、それとも恒常的にいろいろなところでやられているのかというところについては、私が調査しているわけじゃないですけれども、そういう話はよく、私が聞いている限りでは多いんですね。

 ただ、これは、理容師法というのも厚労省の所管で、聞いていると、理容を業とする者といった人は理容師の資格を持たなきゃいけませんと。それで、この業というのは、反復継続する意思を持って行うことで、有料であろうが無料であろうが理容師の資格を持っている人がやらなきゃいけないということが決まっております。

 それを考えたときに、これはちょっと、問題と言ったらあれですけれども、ここで問題だと言って、もう今すぐ全部やめさせろと言ったら、またそれもそれで実際うまく回っていかないのかもしれないんですけれども、こういう状態にあるということが現状なんじゃないかなと思っているんですね。

 その辺、橋本先生、せっかくいらっしゃるので、御見解をいただければと思います。よろしくお願いします。

橋本大臣政務官 突然の、ちょっと通告にない御質問に驚いておりますけれども。

 そもそもを言えば、要するに三位一体改革の中でそういう仕切りがされたということですから、これは一つの地方分権というもののそのときのテーマの中でそういう仕切りになったんだろうと思っております。それはやはり、要するに、一律に全国的にやるというよりは、それを各地域の実情等に応じて適切な方法を選んでいただこうとか、あるいは切磋琢磨していい方法をつくっていただこうとか、そういうようなことがある。

 その中で、御議論いただいたように、だけれども、てんでんばらばらに今なっているという状況があって、かつ、今御指摘があったような、どういう状況と表現するかは難しいので、あえて私からは申し上げませんが、御指摘のような実情もあるんだろうと思います。

 まさに、最終的には、利用者の方々がきちんと生活をしていただくのに、やはりそれなりに髪もきれいに整えた方が気持ちよくお過ごしいただけるでしょうし、おひげも整えていただいた方が気持ちよくお過ごしいただけるでしょうし、そのことをどのような形で実現するのか、それは私どもも当然考えていかなければならないと思うことであります。

 いろいろな、もちろん自治体だとか、あるいは事業者の方々とか組合の方々とか、そういう方々の御協力もいただきながら、よりよい方法を私たちも考えていかないといけないと思いますし、また、皆様の中でこういう方法がいいよというのがあれば、それはそれでお示しをいただくとか、そうした形でぜひ進めさせていただければいいのかなと思いながら伺っておりました。

木下分科員 ありがとうございます。突然であれだったんですけれども、お話しいただけて。

 これは本当に難しい問題だと思います。

 ただ、先ほど来お話ししています理容師組合の方々も、このままにはしておけないというふうに思っていらっしゃるようで、相当前向きな、いろいろなことをやられています。

 その中で、これはちょっと紹介だけなんですけれども、もう御存じだと思いますけれども、理容師の中で、ケア理容師という認定制度を組合の中でつくっていらっしゃいます。このケア理容師というのは、組合独自で相当な研修をされるようです。実際に要介護の方々に対して気持ちのいいサービスをできるようにするために、しっかりとした研修をして、サービスをしていこうということをやられています。

 やはり組合もそういうことを、ニーズに応じてそういうふうな認定制度をつくったりとかいうことをしておりますので、ここを、国として、国がやるというふうになると、どうしても財源の問題とかいろいろ出てくるかと思いますけれども、それなりの何か後押しができる、もしくはしっかりと一律の考え方、これは考え方だけでも私は十分だと思うんですけれども、そういうものを示していけるようなことを今後検討いただければなと思っております。

 次の質問をさせていただきます。もう短い時間になってしまいましたけれども。

 ちょっと余談なんですけれども、これはふっと思いついた話で通告にはないので、私の思いをちょっと聞いていただきたいんですけれども、医療費控除を調べていったときに、何が医療費控除の対象にならないかというふうなことを見ていったんですね。そうしたら、これは要介護とかそういうのは関係なしにですけれども、一般の方々も含めて、健康診断を受けたときに、これは医療費控除の対象にならないと書いてあったんですね。これが医療費控除の対象になれば、もっと健康診断を積極的に受ける方々が出てくるかなと。

 というのは、私なんかはもともと二十年間ほどサラリーマンをしていましたので、いろいろなところに転勤して、いろいろなところの地域に住みました。そうしたら、その地域地域によって、区から、健康診断は無料ですから受けてくださいとか、これぐらいのメニューがありますよというのが、これまたさまざまなんですね。

 そうじゃなくて、医療費控除の対象に健康診断をすることによって国民が健康な生活を送れるんじゃないかなと。ただ、これも財源の話がありますから、こういうのも少し考えていただければなと思っております。

 こっちから通告がなかったので、意見だけを述べさせていただきます。

 もうほとんど時間がないので、最後、認知症対策のお話をさせていただきたいんです。

 認知症対策で、今度、新オレンジプランというのを出されるということで、中身を見させていただきました。今までのオレンジプランと含めて見ていったんですけれども、その中でちょっと私が思ったところを一つ。

 認知症のサポーター制度というのがありました。認知症のサポーター制度の中で、いろいろな、認知症サポーターキャラバンというのがあれされて、サポーターの人たちをたくさんつくっていって、世の中をうまく、認知症の人たちを支えていこうというふうな話があるんですけれども、今この中で、私が見させていただいたら、サポーターになっていらっしゃる方の大半の方が六十代以上の方々。それがずっと五十代、六十代、七十代の方々がたくさんサポーターになっていらっしゃって、もう既に六百万人近くになっているということなんです。これは非常にいいことなんだけれども、サポーターというのは認知症の方々を支えてあげるという意味だと思うんですね。

 その中で唯一、ああ、光が見えたなと思ったのが、十代のサポーターの方々が結構いらっしゃるんですね。これはすごくいいなと思ったんですけれども、悲しいのが、三十代、四十代の方々が全然上の方に出てこないんですね、人数が。これを何とか、三十代、四十代の人たちにそういうサポーターになってもらえるような施策はとれないかなと思っておりまして、これについて政府としてどういうことを考えていらっしゃるかということを、最後ちょっと質問させていただきたいと思います。

橋本大臣政務官 認知症サポーター、新オレンジプランを先日作成させていただきました。でも、さらに拡充をしていこうということで、力を入れていこうと思っている分野の一つであります。私もこのようにさせていただいておりますし、ぜひ皆さんにも、九十分ほどの研修を受けていただければなれますので、ぜひしていただきたいと思いますけれども、その中で、働いている方々にやはり普及というのも、それは一つすごく大事なことなんだろうと思っております。

 私の地元のある信用金庫、水島信用金庫というんですが、例えばそこでは、あるときに、全員、パート、アルバイトの人から役職員の人までサポーター講座を受けて、毎年、新入社員の人にも受けさせて、もうそこの信用金庫の行員の人はみんなサポーター。

 やはり、銀行の窓口、金融機関というのは、認知症の方がどうしても困っちゃう場合が多いし、そうしたときに支えてあげるとか、あるいは、その周りの人にちょっと待っていてあげてくださいねと言ってあげるとか、そうした対応ができるというのは、とてもすてきなことなんだろうと思っております。

 ですから、そういうのも一つの例としてあるわけですけれども、今後も認知症サポーターの方々に、そうした職場、あるいは地域、いろいろな機会に受講していただく、サポーターになっていただく機会をふやしていくということ。

 それから、さらに、せっかくなっていただいたので、これから地域の見守り活動に参画をしていただくとか、あるいは、一遍サポーター講座を受けても、さらに復習も兼ねてより上級の講座をしているような例もございます。そうしたさまざまな例を私たちとしてはきちんと調べて、それを全国の方々に紹介していって、せっかくの制度ですから、そして、せっかく、今、五百八十万人、昨年十二月までにということになっておりますけれども、それだけの方においでいただいているので、しっかりと活動していただけるようにさらに取り組んでいきたい、このように思っているところでございます。

木下分科員 ありがとうございます。

 先ほど言われたように、職域ですね、そういったところも積極的に対象にしていただきたいなと。やはり、今のこのオレンジプランのホームページを見ていると、対象になっているところが、目を引いたのが、老人会とか自治会とかと書いてあるんですね。それが悪いわけではないんですけれども、そこの中に職域とばんと書いていただくだけでも、やはりやる気が出てくると思うんですよ。社会貢献はこれから企業もしていかなきゃいけないし、やりたいと思っていらっしゃる方々もたくさんいると思いますので、そういったところを含めて改善していただければと思います。ぜひよろしくお願いします。

 では、どうもありがとうございました。

原田主査 これにて木下智彦君の質疑は終了いたしました。

 次に、丸山穂高君。

    〔主査退席、熊田主査代理着席〕

丸山分科員 維新の党の丸山穂高でございます。

 本日は、大臣、本当に長丁場の中お疲れさまでございます。予算委員会もいよいよ佳境ということでございます。きょうは遅くまでということでございますけれども、ぜひおつき合いいただきますようによろしくお願い申し上げます。

 私からは、いわゆる泉南アスベストの最高裁判決が出まして、それを受けての御対応についてまず幾つかお伺いしたいと思っているんです。

 まず、真っ先に、率直にお伺いしたいこと、そして御礼申し上げたいことがあります。それは、本当に塩崎大臣、ありがたいですし、すばらしいと率直に思います。

 というのは、先般、うちの地元の泉南の方に、御要望があった中で、お忙しいのはわかるんですけれども、でも、その中でも来ていただいて、そして、被害に遭われた方々のお宅まで行っていただいて、その中でお話をしていただいたということは非常にありがたいお話ですし、地元を回っていましても、まさか本当に来ていただけるとはというお声と、涙を流される方もいて、その意味では、地元を代表する者としまして率直に感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございます。

 それに関連してお伺いしたいんですけれども、大臣、泉南アスベストの地域に行っていただきまして、率直にどのようにお感じになられたのか、そのあたりをまずはお伺いしたいんです。

塩崎国務大臣 最高裁で判決が出た後に、まず、原告の皆様方に可能な限りは年内にお会いをして、おわびを申し上げました。

 残念ながら既にお亡くなりになった方々、そしてまた、体力的にはもう東京にまでなかなか出てこられないという方々もおられたので、私も、できるだけ早いタイミングで現地に赴いて、直接私の方から、国として、不作為であったということについてのおわびを申し上げようと思っておったわけでありますが、裁判所も和解に向けての努力をしてくれましたし、関係者も弁護団も一緒にやってくださって、十二月いっぱいで和解が成立をいたしました。

 であれば、私もできる限り早く行かなきゃいけないということで、一月十八日に、原告の方々に直接おわびを申し上げるということで、まずは、実は面会を予定しておりましたけれども、訪問直前に亡くなられてしまった原告松本幸子さんの自宅にお伺いをいたしまして、お線香を手向けて御冥福をお祈り申し上げ、おわびを申し上げた。そしてまた、道半ばで既に亡くなられた原告の御遺族の方、これは岡田陽子さんでありますけれども、御自宅にお伺いをして、既に亡くなられた原告の御仏壇の前で手を合わさせていただいたということでございます。

 また、原告団の方々との面会で、お話し合いをさせていただきました。率直な御意見をたくさんいただきました。正面から受けとめなきゃいけないと思ったところでございまして、この石綿疾患の治療について、医学的な研究に取り組むことを申し上げ、そしてまた、他の同様の工場の労働者方の訴訟については、ぜひ和解に応じていただくように、その周知に取り組むということを申し上げて、原告の方々からは、これまで重ねてこられた御苦労について、さまざまなお話をいただいて帰ってきたところでございます。

 改めて頭が下がる思いであり、いろいろなお話を聞いてみても、本当に、白いアスベストが飛び交う中で、規制がしっかりしていない中で仕事をせざるを得なかった、そういった方々の無念の思いというものを改めて認識し、このアスベスト対策についてはこれからもしっかりと取り組まなければならないということを改めて心に刻んだところでございます。

丸山分科員 ありがとうございます。

 まさしく、きちんとやっていただかなければいけないところでございますし、現に、現場を大臣に見ていただいて、そして被害に遭われた方の、残念ながら、時遅しといえば遅しでございますので、そのためにお亡くなりになった方もいらっしゃいます。遅いといえば遅いんですけれども、でも、その中でも御決断いただいて、来ていただいたということは非常に大きな一歩ですし、皆さんにとっては念願のことがかなったということでございますので、改めまして感謝の思いと、そして大臣の思いをお伺いしたくて、まずはお伺いしたところです。

 その中で、大臣より、具体的に今後どういうことをしていただけるのかという御発言が幾つかありましたけれども、一つ、より詳しくお伺いしたいところがございます。

 それは、先ほどお話しになりました、合併症の予防とか苦痛の緩和に関する研究をしていくと。助成されるのかどうなのかというところも含めまして、細かい部分を、具体的にどういうことをお考えなのかをお伺いしたいんです。

土屋政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の研究につきましては、石綿疾患で苦しまれている方々が、病院でよりよい治療を受けられるようになり、また、合併症の予防や生活の質の向上、苦痛の緩和、こういったものにもつながるような医学的研究について、平成二十七年度から開始するように大臣から御指示があったところでございます。

 これを踏まえまして、来年度、平成二十七年度から、労災の疾病臨床研究事業の事業費の補助金を使いまして、石綿関連疾患に係る治療手法及びケア手法に関する研究、これを実施できるように、現在、厚生労働省のホームページそれから政府の研究公募サイトにおいて研究者の公募を行っているところでございます。

 この研究においては、症状に応じた適切な治療であるとか発症後の合併症の予防、あるいは症状の緩和について研究をしていただく予定でございます。

 いずれにいたしましても、石綿疾患について、少しでも治療が前進できるように、研究の推進にしっかり取り組んでまいりたいと思います。

丸山分科員 今、具体的内容をお伺いしたんですけれども、これは幾らぐらいの予算額ということでしょうか。

土屋政府参考人 公募でございますので、応募の内容によりますが、一課題当たり、一年当たりの研究費で、一千万から三千万程度を予定してございます。

丸山分科員 では、まずはこの一千万から三千万の範囲での予算のどこかのところで、この石綿関係の予算をつけていただいて、研究者を募集して、そして来年度からその研究をしていただけるということですかね。

 これはもちろん、ある程度、最初の研究の段階で、その研究のスケジュールみたいなものを研究者の方に出していただいて、もちろん、ごらんになっている国民の皆さん、被害者の方々にも、そのスケジュール感というのはある程度見えるということでよろしいんですね。

土屋政府参考人 研究の期間につきましては、一年から三年ということで公募をさせていただいております。

丸山分科員 また、研究の進みぐあいによっては、追加で必要なのかどうなのかというのもあると思うんですけれども、その辺も、もちろん、それは研究の進みぐあいということでよろしいんですか。

土屋政府参考人 さように考えてございます。

丸山分科員 ありがとうございます。

 御答弁も非常にわかりやすく、誠実に感じますので、しっかりとやっていただきますように、重ねてお願い申し上げます。

 そうしましたら、続けて、このアスベストの話をもう少しお伺いしていきたいんです。

 今回の判決を受けまして、賠償金の和解手続に関する周知がホームページにアップされていると思うんですけれども、一方で、何かポスターとかリーフレットも作成されたというふうにお聞きしているんですけれども、まず、現状どのように周知されているのか、お伺いできますか。

土屋政府参考人 御指摘の点は、昨年十二月二十六日に大阪高裁で和解が成立したことを踏まえまして、和解の手続についての周知をするためのホームページの掲載のほか、ポスター、リーフレットを作成して、周知、広報をしているところでございます。

 具体的には、現在、石綿による健康被害を受けられた方が受診される可能性のある全国の医療機関であるとか、泉南市、阪南市などの関係の地方公共団体、それから、法テラスの本部あるいは各都道府県に置かれております法テラス、それから、日本弁護士連合会あるいは各都道府県の弁護士会、それから全国の労働局、労働基準監督署、こういったところに合わせて四万五千部を配布いたしまして、見やすい場所への掲示であるとか窓口への備えつけをお願いしているほか、ホームページを通じて、広く周知に取り組んでいるところでございます。

丸山分科員 やっていただいているのは理解しているんですけれども、一方で、もう少し幅広くまいていただけないかという御要望が、お話を聞いていても出ています。

 例えば、今お話しいただいたように、全国のじん肺、石綿の健康管理手帳にある健康診断委託医療機関にはお配りいただいているんですけれども、例えば労災指定病院に関しては泉南市と阪南市のみなんじゃないかという御指摘だとか、地方公共団体も、大阪府と泉南市と阪南市のみ、限定的なんじゃないかという御懸念が、現場から、被害に遭われた方々から上がっているんです。

 御要望としては、労災指定病院に関しては、できれば全国配っていただけないかとか、例えば保健所にも配っていただけないか、地方公共団体、泉南市、阪南市だけじゃなくて、ある程度もう少し、きちんと関係のところには配っていただけないかという御要望をお聞きすることが多いんですけれども、このあたり、どのようにお感じになりますか。

土屋政府参考人 御指摘の点は、いわゆる石綿の工場が泉南地域に集中的に立地をしていたということを考えまして、まずはそういったところの関係地方公共団体であるとか、あるいは労災の指定医療機関であるとか、そういったところに配布をさせていただいているところですが、今先生御指摘のような点の要望は私どもの方にも来ておりますので、これからちょっと具体的な対応を考えていきたいと思っております。

丸山分科員 ぜひ、広目にやっていただくことが非常に大事だと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 重ねて、これもやはり現場で皆さんのお話を聞いていると出てくることなんですけれども、いわゆる残存アスベストのお話です。

 今、環境省も含めまして確認作業をしていただいているというのはお聞きしております。その辺に関してお伺いしていますと、工場があるところはもちろんいいんですけれども、一方で、例えば不法投棄されたものが漏れ落ちないかどうかとか、その確認作業に関しての地元の声を聞いていますと、少しずれを感じるところがあるんです。

 このあたり、お住まいの方とか、もちろんその原告団の方々も含めまして、すり合わせがきちんとされているのかどうか、現状も含めまして御報告をいただければと思います。

土屋政府参考人 御指摘の残存アスベストにつきましては、廃棄物処理行政という意味でこれを担う環境省、あるいは地方公共団体が所管をしていて、既に取り組みが進められているところだというふうに承知をしております。

 具体的には、昨年十月の最高裁判決の後に、環境省から大阪府への依頼がありまして、これを踏まえて、大阪府、泉南市、阪南市等におきまして残存アスベストの状況調査が行われまして、その結果を昨年十二月十六日に大阪府から公表されているというふうに承知しております。

 内容としては、大阪府内の四百八十二カ所を対象に調査を実施したところ、十一カ所において残存アスベストが確認をされたということで、このうち、九カ所については石綿の飛散の懸念はないということでございましたが、二カ所についてはなお調査をするということで、環境大気中の石綿濃度の調査を行ったところでございますけれども、これは低い濃度であったということでございます。

 いずれにいたしましても、大阪府において廃棄物処理法に基づき残存アスベストを適切に保管、処分するように引き続き指導をしていく、そういうふうに承知をしております。

丸山分科員 もちろん、環境省さんがやっていただいているのはわかっておりますので、今お話もありましたように、あと二カ所というのは懸念の点が出ているということでございますが、これは厚労省さんだけというわけじゃなくて、政府としてここの点もかなり気にされているところでございますので、しっかりやっていただけますようにお願い申し上げます。

 いずれにしましても、泉南アスベストの件は、これまでずっと、去年の判決が出るまでずっと、涙の連続の歴史がありました。そうした中で、大臣の御英断も最後にありまして地元にまで来ていただいて、そしてお会いいただいて、そして今、答弁を聞きましても非常に誠実にお答えいただいて、前向きに御対応いただいている環境になったことは、非常に私、議員になってまだ浅いものでございますけれども、感無量でございます。

 そういった意味で、残存アスベストもそうですし、これからのアスベストの被害の方々の御懸念にもきちんとお応えいただきたいということと、そして、あらゆる病気、疾病で、こういった同様の件は起こってくると思います。

 一方で、厚労行政として難しいところもあるのも、私も役所におりましたので重々存じておりますけれども、そこは、最後の御決断は政治の部分もございます。塩崎大臣、こういった形でアスベストの件をやっていただいたというのは、非常に安心感のある、野党でございますが感謝申し上げたいと思いますし、今後の対応につきましても、きちんと血の通った最後は政治の御決断をしていただいて、細かい部分は誠実に役所の方々に御対応いただけますように、この件は強くお願い申し上げます。

 そういった意味で、次のお話は予防という意味も含んでいるんですけれども、これは先日の予算委員会の集中審議で大臣にお伺いした点でございますが、いわゆるエボラ出血熱等一類感染症の疑いのある事例が、特に私の地元、関西国際空港でございますので、羽田の方はきちんと整っているな、東京の方は整っていると感じるんですが、一方で、ほかのところ、特に、次の人口集中どころといえば、関西は大きいところでございますので、関西国際空港に関連して先日の予算委員会ではお伺いしました。

 その中で、エボラ出血熱等の感染症が起きたときの、最後のきちんとした精密検査をする場所が東京の村山にしかない、国立感染症研究所にしかないので、結局、以前、関西国際空港であった事例では、疑われる事例において、東京まで運ぶのにとてつもなく時間がかかってしまって、その中で、幸いにしてそれは陽性ではなかったので大丈夫だったんですが、一方で、もしその場合には、大臣もお答えいただきましたけれども、患者の入院措置とか、交通遮断とか、建物の封鎖とかの強制措置とか、あらゆる点が必要になる中で、スピード感として少し懸念がある、というよりはむしろ不安、不満を感じられている方が多いので、この点、お伺いしたところです。

 大臣から誠実にこれも御答弁いただきまして、一つは、やはり厳重な管理のもとで高い精度でこの点をまずやる必要があるということだ、そして、先ほど申し上げたように、もし陽性であった場合には強制措置が必要になってくるので、正確を期さなければいけない、そのために、現時点として、十分な専門知識を有した職員がいる、そして、なおかつその施設の設備も整っているのは感染症研究所の村山庁舎だけなので、今現在ではそこでやっているという御答弁がありました。

 ただ、一方で、今後の方向性に向けて御検討もというお話がありましたけれども、スピードも要求される中で正確性も大事だというのは非常にわかるんですけれども、一方で、そうも言っていられない。この感染症がもし陽性であった場合、その後の二次感染を考えましたら、七時間強かけているというのは非常に、私は逆に、だから危ないからこそ、ある程度分散も必要だと感じているところなんです。

 その意味で、現状では、エボラは大分終息をしているかなという感じはします。ただ、エボラだけじゃなくて、あらゆる感染症のことを考えた上では、やはりこのリスク分散ということも必ず考えていかなければならないところだと思うんですが、お話を伺っていますと、状況に応じては、地方の衛生研究所においても同等の体制を確保できるのかどうかの検討を必要に応じてやっていかなければならないという御答弁でしたけれども、具体的に、今省内で、この辺、現時点ではということでございますけれども、もし今後の状況があれば対応することも十分にあり得るという理解でよろしいのか、確認させていただきたいんです。

新村政府参考人 お答えいたします。

 先日、大臣から御答弁申し上げましたので、一部その部分と重複するところがあるかと思いますが、エボラ出血熱など一類の感染症につきましては、危険性が極めて高いということがまずございます。

 また、検査により陽性と認められた場合に、患者の入院措置を含めた厳重な感染対策を講じる必要もございます。

 そのため、その検査につきましては、迅速性も確かに必要と考えておりますけれども、一方で、厳重な管理のもとで高い精度で行うことが重要と考えてございます。

 こうした観点から、一類感染症の検査につきましては、現時点では、十分な専門的知識を有する職員がおり、施設設備も整っている国立感染症研究所村山庁舎において行うことが必要であると考えております。

 そして、御指摘の地方衛生研究所で検査を行うことにつきましては、一つには、国内で一類感染症の病気の患者あるいはその接触者が今後複数発生するといったようなことで、国立感染症研究所のみでは対応できないケースが想定されるかという点を考慮する必要がございますし、また、地方衛生研究所において、国立感染症研究所と同等に高い精度で検査を行うための体制を確保できるのかどうかという点がございますので、こういった状況を踏まえつつ、今後検討していく必要はあると考えております。

丸山分科員 現時点ではですけれども、状況次第でというお言葉だと思いますので、一つだけ。

 やはりこれは起こってからでは遅い話ですし、何よりも、予防という観点から検査をしてその対応をとるということですので、少し防災に似ていると思います。やはり備えあれば憂いなしという点でございますので、その意味で、前向きにこれを検討いただいて、しっかり、東京だけじゃなくて、ほかの地域の方々も安心して暮らしていける、そんな環境をつくっていただけるようにお願い申し上げまして、私、丸山穂高の質疑を終えさせていただきます。

 ありがとうございました。

熊田主査代理 これにて丸山穂高君の質疑は終了いたしました。

 次に、宮崎謙介君。

宮崎(謙)分科員 自民党の宮崎謙介でございます。

 塩崎大臣、本日はお時間をいただき、ありがとうございます。

 私からは、労働政策全般につきまして質問させていただきたいと思います。

 最初に、そもそも労働とは何かということについて考えてみたいと思います。

 辞書等で調べてみますと、労働とは、太古より人間が自然に対して行う営みのことだというふうに、広く労働を定義しているようでございます。そういう意味では、人間にとって労働というのは、なくてはならない、切っても切り離せないものなわけでございます。我が国の国民の義務としても、勤労というのは定められているわけでございます。

 しかし、今の日本におきまして、労働の定義、捉え方というのはさまざまあるように思われます。

 資本主義において、例えばマルクス主義の考えのもとでは、労働というのは、労働者が、富を持たない者が、しなければならないという感覚で、所有者から搾取をされるというような考え方を持っているのがマルクス主義的な考え方であります。

 この考え方に立脚をして、過剰な労働者の権利主張または過度な労働者保護の考え方で、何が何でも残業代を獲得していこうというような訴えをする集団というのもこのマルクス主義的な考え方であって、基本的に、労働を、しなければならないものだというふうに捉えているというわけであります。非常に、私としては、こういった考え方は後ろ向きな発想だなというふうに思っています。

 一方で、国際労働機関の考え方はどうかということも調べてみましたところ、ディーセントワークというものが今大きく注目をされていて、世の中の、世界の潮流としては、ディーセントワークを推進していく方向になっております。これはどういうことかといいますと、人間らしさ、またはやりがい、働きがいを求める、どちらかというと前向きな働き方を推奨するのがこの趣旨でございます。

 その中で、我が国においての労働の考え方は大きく転換しようとしているんじゃないかなというのが、私の今思っているところでございます。

 現在議論されております高度プロフェッショナル制度、これは、意図的に反対する方は残業代ゼロ制度というようなレッテル張りをしているように思うんですけれども、本質を見てみますと、残業代や労働者としての権利を主張するだけじゃなくて、成果にコミットをして、そこに着目をしていく働き方であるというふうに私は思っています。

 みずからの計画と裁量に応じて時間を自由に使う働き方を選ぶことができますので、ワーク・ライフ・バランスの観点、さらには男性の育児参加という意味でも大きな前進をする可能性を持っているというふうに私は考えます。受動的な労働から能動的な労働へと大きく転換していく第一歩となる、今、転換期を迎えていると思います。

 労働のあり方によって、日本の経済も、日本人の生活の潤いも、家族のあり方も大きく変化をいたします。こういった中で、大変重要な労働について大臣はどのような定義をされているのか、御所見を伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 先生は、いろいろな御経験を積んで今代議士として御活躍をいただいているわけでありますけれども、特にこういう労働とか経済の問題にはお詳しい先生からの御質問でございました。

 全ての人々が、どういう形態で働こうとも、それと関係なく生きがいを持って働ける、できるようにすることがやはり重要ではないか、いわば喜びを感じ得るような働き、それが労働ということではないかなというふうに思っております。

 厚生労働省としては、頑張る人たちが報われる社会、つまり、頑張って報われるということは、それは深い意味での喜びにつながるわけでありますから、そういう意味で、心の充実につながるような、頑張りが生きる、そういう社会にするために、改訂日本再興戦略等に基づいて、女性もそれから若者も高齢者も、その他さまざまなバックグラウンドの方々の活躍促進や働き方の改革ということをやって、引き続き、我々としては、全力を挙げて日本の社会あるいは経済の再活性化に臨んでいかなければならないというふうに思っております。

宮崎(謙)分科員 前向きな御答弁をありがとうございました。

 全く私も同感でございまして、まさに生きがいを持って、喜びを感じて、心の充実をというふうにおっしゃいましたけれども、厚労省としては頑張った人たちが報われる社会ということで、本当に私も全く心から同感をするものでございます。

 頑張った方の汗が輝く社会であるべきだと私は考えるところなんですけれども、しかしながら、その考え方を推奨していく上で気がかりな立場の方々がいらっしゃいます。きょうは、大きく三点、お話をさせていただきたいと思います。

 まず一方目なんですけれども、それは職人の皆さんでございます。いわゆる手工業の領域に所属をしまして、例えば建設現場で働く方々ですとか、金属加工の技術者、または伝統産業の職人さん、さらには美術の領域などの伝統にかかわる職人の皆様、そういった方々のことを想定してお話をしたいと思います。

 現在、日本の平均年収は約四百十四万円というふうに言われているわけであります。特に男性は五百十一万円というわけでありますが、例えば先ほど申し上げました建設現場、本当に実際の現場で働いていらっしゃる方々ですが、比較をしたいと思います。

 建設現場で働く方々はほとんどが男性というわけでありますので、先ほどの五百十一万円と比較をしますと、建設現場の方々、三百四十五万円という平均年収になっています。かなり差が開いているなと実感をいたすわけでありますし、実際に、三十五歳が労働の、年収のピークを迎えるという数字もあるそうでございます。その中で、流した汗がなかなか報われにくい状況があるのではないかなというふうに思っています。

 さらには、後継者不足の問題、労働力不足の問題、多くの問題を抱えられている状況でありますので、この領域において職人の皆様の社会的地位ですとか賃金の向上というものを目指していくことが、物づくり大国である我が国にとっても急務であるというふうに考えております。

 この課題解決のヒントとして、実は、私は、ドイツに代表されるマイスター制度に着目をいたしておりまして、昨年の夏に有志を募って、同僚議員、先輩議員とともにドイツに視察に行ってまいりました。

 ドイツでは、いろいろ気づきはあったんですが、特定の四十一職種に関して、開業するためには、このマイスター制度で資格を取得しなければ開業ができません。また、その資格試験というのは、大変私も興味深かったのは、技術や理論はもちろん試験には組み込まれていますけれども、経営学それから教育、後進を教育するということまで試験に入っています。四つの観点で資格試験が決められていました。

 大変厳しい試験でありますが、有資格者になりますとどういったメリットがあるかというと、わかりやすく言います、給与が、見習いだったとき、普通の職人さんだったときに比べて二倍に上がるんですね、二倍に。マイスターの領域に指定されています製菓、お菓子をつくるところのマイスターさんに話を聞きましたところ、マイスターになったらどれぐらいの時給になるんですかと言ったら、八十五ユーロ、大体時給一万二千円ぐらいになるというようなお話でございました。

 今、日本でも、厚生労働省を中心に大変取り組みを積極的にやっていらっしゃいまして、ものづくりマイスターなどをやっていらっしゃいますけれども、実際は、まだこれは日本全国に浸透してドイツのマイスター制度のようになかなかなっていないなという現実があるかと思います。名称資格になっているというわけなんですけれども、ドイツのマイスター制度のように実効性のある中身にしていくには今どういった課題があるというふうに御認識なのか、その見解を伺いたいと思います。

中山政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、我が国の産業を支える物づくり分野におきまして、若年技能者の確保、技能継承に困難を来している現状であります。このような物づくり分野の人材の養成や社会的地位向上の取り組みを図ることは、厚生労働省として重要な課題と考えております。

 このため、厚生労働省としては、先ほど先生から御紹介がありましたものづくりマイスターというものを認定いたしまして、若者に対して実技指導を行っております。さらには、公共職業訓練や企業の行う実践的な職業訓練に対する支援に関しましても、物づくりを重点としております。さらに、技能五輪というものを開催いたしまして、ここで技能の社会的アピールを図っているところでございます。さらには技能検定、そして、その技能検定を超えた卓越した人に関しましては、現代の名工という制度によりまして表彰を行っているところであります。

 先生の御紹介ありましたとおり、ドイツのマイスター制度は開業資格とひっついているわけでございまして、その制度と我が国の施策を直接比較することは難しいところがあるかと思いますけれども、ただ、言えることは、我が国の取り組みの実効性を確保する上で、産業界に技能者の重要性を認識していただく、さらには学校教育者の協力を得る、こういう二点が重要不可欠だと考えております。

 現在も、起業、開業支援などを所管いたします経済産業省、そして、実践的な学校教育の課程の設定、運営に取り組んでおります文部科学省と連携しておりますが、さらに職人が技能に応じて評価され、そして人材確保が図られる社会の実現を目指してまいりたいと考えております。その際には、ドイツなど諸外国の取り組みも参考にして、関係機関とさらなる連携の強化をしていきたいと考えているところでございます。

宮崎(謙)分科員 ありがとうございます。

 まさに今、技能五輪の話もありましたけれども、私も一昨年、技能五輪の視察にも行きまして、若い方々が、例えば大工さんが一堂に会して、かんなで削って、自分の削り跡を見て、そういう自分たちの技能を競い合うというのを見てきたわけですけれども、トップを目指して頑張っていくという制度設計というのは極めて重要なことでありまして、その技術を磨いた上で、稼げなければいけないということがありますので、今お話がありました産業界と教育界の両方の協力が必要だという話、これはもっともだと思うんですね。

 特に、順序といえば、やはり産業界の方が先に協力を密接にしてもらって、稼げるようにしていくのが先だなと私は思うんですね。逆に教育的なアプローチを先にしてしまうと、果たして出口があるのかどうかという議論になりますので、まずは順番として産業界の皆さんと、本当にどういう資格があれば、どういう技術があればお金を出すのかというコミットまでしていただいて、しっかりと前に進めていく、そういった制度を皆さんと一緒に進めていければというふうに考えております。よろしくお願いいたします。

 では、頑張った人が報われる社会にするために気がかりな方々でございますが、次は、不本意非正規労働者の方々でございます。

 日本の生産労働人口は全体で約五千五百万人、そのうち、非正規雇用が約千九百万人と言われています。よく非正規雇用イコール悪というふうにレッテルを張られているわけでありますが、皆さんが非正規雇用というものを嫌々やっているかといったら、統計上そんなことはなくて、総務省の労働力調査によりますと、全体の二〇%に当たる約三百四十万人の皆さんがいわゆる不本意非正規労働者である。正社員になりたいけれどもなかなかなれないという方々は三百四十万人ということでございます。なので、非正規雇用イコール悪ではなくて、不本意非正規雇用を何とかしなきゃいけないというふうに私は思っているわけであります。

 実際に、千九百万人と比べますと三百四十万人という数は一見少なく見えるかもわかりませんけれども、そんなことはなくて、今、成人を迎えられた方々、大体年間百万人でございますので、三学年丸々が不本意非正規になっているというような規模でございます。

 特に、不本意非正規の内訳を見ますと、十五歳から三十四歳の皆さんが全体の半分を占めるというわけでありますので、実際に若い方々が不本意非正規になっているということが挙げられると思います。なので、私は、この不本意非正規の解決に向けていろいろなことをやっていかなければならないと思っていますが、地域若者サポートステーション、いわゆるサポステなんですけれども、私はこれをもっともっと積極的に推進していく必要があると思っています。

 中には、不本意非正規、非正規でもなくて、引きこもりの方々も対象に事業を展開しているわけであります。大変重要な仕組みであると思います、拠点だと思っています。ただ、なかなか安定的に運用ができないとか、サポステの方々も、予算が来年は本当に確保できるのかどうかわからないという中でやっていらっしゃいますので、まずサポステの強化について、ぜひ推進していただきたいと思いますが、その点いかがでしょうか。

勝田政府参考人 お答えいたします。

 今ほどお尋ねいただきました地域若者サポートステーションでございますが、実は、今国会に提出予定にしております青少年雇用促進法案の中で法律上の位置づけを与えることといたしておりまして、平成二十七年度以降、この雇用対策としての位置づけをしっかりしていく、そして、ニート支援の拠点として、ハローワーク、それ以外の自治体等との連携を強化しまして、職業的自立に向けてニート対策の一大拠点としてやっていきたいと思っております。

宮崎(謙)分科員 ありがとうございます。

 そういった意味では、青少年雇用促進法、これを推進するためにも、我々も協力して頑張ってまいりたいと思います。

 また、今国会、先ほど法案の話がありましたけれども、派遣法改正案、これは三度目の正直で何としても通さなければならないというふうに思ううちの一人でございますが、私は、今回の派遣法の改正、改悪なんというふうに言われていますけれども、全くそんなことないと思いまして、大きく前進をするものであるというふうに信じております。

 特に注目をしたいのは、不本意非正規にもつながってくることだと私は考えておりますが、派遣社員へのキャリアアップの義務、これは非常に意味のあることだと思います。

 これまではまだ派遣社員に対して労働力としか見ていなかったけれども、日本にとって大切な労働力である、人材であるというような観点になりまして、こういったキャリアアップの義務というのが加えられたんだと思っておりますが、不本意非正規の皆さんが正社員になりたいと思ったときに、採用する側は、実績がなかったり経験がなかったらなかなか採用できませんよね。

 そういう中で、では、どうやってやるのかといったら、机上の空論で研修をするのではなくて、やはり実務を積ませることが大事だなと私は思います。非正規だけれども実務を積む、実務を積む中で正社員の自分のつきたい仕事についていくという流れができるかなと思います。

 その中で、派遣というのは実はすごい大きな特色がありまして、自分の希望職種につきやすいという特性があります。それは、派遣会社さんが、派遣社員さんの希望になるべくかなうように仕事をとってきてくれます。なので、そういう特性を生かして、実務を積んで、実績を積んで、経験を積んで、さらにキャリアアップをして正社員になっていくというわけで、このミドルステップというのが今回の派遣法改正によってできるんじゃないかなというふうに私は期待をいたしております。

 不本意非正規雇用と派遣法改正案についての関係性、または私が今言ったような可能性というのがあるかどうか、御所見を伺えればと思います。

勝田政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、特に若者の労働者にとりまして、正規雇用につけない場合に、非正規雇用に一旦ついて、それを経てステップアップして正社員になっていく、こういったことは、我が国だけに限らず、諸外国でも往々にして見られることでございます。

 今回のことを含めまして、若者の非正規雇用の割合が多いというのは非常に問題でございまして、その中で、今回、私ども政府としまして提出を予定しています労働者派遣法の改正法案におきましては、派遣元に対しまして、キャリアアップを支援するための計画的な教育訓練、これを新たに法的に義務づけることとしております。

 この義務づけによりまして、不本意ながら派遣をやっているという方々が正社員へなっていく、こういった道が広がっていくということを期待しておりまして、私どもとしても、そういった施策を推進してまいりたいと思っております。

宮崎(謙)分科員 ありがとうございます。

 この義務づけというのは、大変積極的で、すごく意味のあることだ、力強い推進だなというふうに思います。

 派遣会社の皆さんと話をしても、毎年期限切れになって八万人の方々が仕事からあぶれてしまうというこの現実が大変心苦しいというふうにおっしゃる方が大変多うございました。そういった意味も含めて、この業界の皆さんが前向きにやっていける派遣法の改正法案、何としても成立に向けて頑張っていただきたい、我々も頑張っていきたいというふうに思います。

 では次に、先ほどから申し上げております頑張る方が報われる社会の実現に向けて、気になる方々の三者目でございますが、それは、働きたくても思うように働けない皆様についてでございます。例えば障害者の皆様ですとか、あとは難病患者の皆さんです。

 障害者雇用につきましては、すごく積極的にやってこられていらっしゃると思いますし、例えば、先ほど技能五輪という話が挙がりましたけれども、障害者部門のアビリンピックというのがございまして、同時に開催されます。その中でも、私も見ましたけれども、本当にすばらしく教育をされていて、しっかりと作業されて、本当にすばらしいなという思いをしながら毎年見させてもらっているんですが、そういった取り組みが進んでいる障害者雇用と同時に、難病患者についても、もっともっと積極的に推進していく必要があるのではないかというふうに思っています。

 先日、私の地元で、ある難病患者の方と意見交換をする機会がございました。線維筋痛症という難病に苦しむ方々なんですが、大変な痛みとともに生活をしている皆さんで、こういうふうに例えられました。毎日アイスピックで刺されているような痛みを持ちながら生活をしていますと。ついこの間、親知らずを抜いたけれども、こんなに歯茎が腫れたけれども、その痛みがわからないぐらいなんです、全く痛みを感じませんでした、それぐらい毎日痛みとともに生活をして、大変な思いをしているという話でございました。

 実際に、この線維筋痛症で苦しんでいる方々は二百万人いると言われています。その中で、では一体、自立をして生活をしていけている方々はどれぐらいかといいますと、一〇%台なんですね。八〇%台の方々は、家族の皆様に支えてもらわなければなかなか生きていけない、生活していけないという状況があるそうでございます。

 とはいえ、多くの方が、自分たちの力で自立をして生活をして働いて何とかやっていきたいというふうな思いを強く持っていらっしゃるそうでございます。そういった皆さんの支援をするための労働環境の整備の必要性を私はすごく感じたわけでありますが、厚生労働省の考えを伺いたいと思います。

勝田政府参考人 お答え申し上げます。

 厚生労働省では、難病患者の方々の就労支援、これにもハローワークを中心にして取り組んでございます。

 まず、ハローワークにおきまして、難病に関する専門的な知識を持つ難病患者就職サポーターというものを配置しております。また、ハローワークが中心となりまして、地域の関係機関が連携し、就職から職場定着まで一貫して行うチーム支援を行う、さらに、職場の方に専門のスタッフが出向き、障害者及び事業主双方に対して職場適応のための支援を実施するジョブコーチによる支援、また、障害者就業・生活支援センターによります就業面、生活面の一体的な支援等を実施しているところでございます。

 特に、平成二十七年度政府予算案におきましては、全都道府県の労働局に難病患者就職サポーターを配置できるよう、増員を図っているところでございます。

 今後とも、地域の関係機関の皆様と連携しつつ、きめ細かな支援体制を行い、働く意欲を持つ難病患者の方々の就労支援の充実を図っていきたいと思っております。

宮崎(謙)分科員 ぜひとも積極的に推進をしていただきたいと思います。

 そして、引き続き難病患者の方についてお話を伺いたいんですけれども、今回の予算案で、この冊子の四十ページにありますが、第四のところで、難病対策で、2国民の理解の促進と社会参加のための施策の充実、八・六億円ということでありますが、本当に国民の理解というのがまだまだ進んでいないなという印象を受けます。

 自立支援に向けて、難病患者の皆さんの就労支援に向けて、労働現場の環境整備だけではなくて、例えば通勤するときなんかも、やはり普通に我々が通勤するときと比べても大きな苦労を伴うわけでございます。実際にわかりやすい例で言いますと、電車に乗ったときに、本当につらいんだけれども、また雨の日なんかはつらいらしいんですね、雨が降ってつらいけれども、なかなかそれがぱっと見わからないという状況があるみたいなんですね。とはいえ、自分から座らせてくださいということもなかなか言いにくいところでありまして、私は、そういった皆さんに対する理解をいかに広めていくのかということで、一つ注目したものがあります。

 大臣、これをぜひごらんいただきたいんですけれども、ヘルプマークというものなんです。マタニティーマークみたいなもので、かばんにつけたりして、このマークをつけている方々がどういった方なのかというのをわかってもらうというのが、これをつくった趣旨であるそうなんですね。

 ヘルプマークというのは、義足や人工関節を使用している方、内部障害や難病の方、または妊娠初期の方など、援助や配慮を必要としていることが外見ではわからない方が、周囲の方に配慮を必要としていることを知らせることで援助を得やすくなるように、このヘルプマークがつくられたというわけなんでございます。

 先ほど申し上げた国民の理解の促進と社会参加のための施策の充実、東京都が今これをやっているみたいでございまして、ほかの自治体でも進めているみたいなんですけれども、ぜひこういったものを広めていっていただければ、マタニティーマークも広がったことによって社会は大きく変わりましたので、ぜひこういったことを推進していただきたいなというふうに私は思うわけですが、いかがでしょうか。

新村政府参考人 お答えいたします。

 難病対策につきましては、難病の克服を目指すという点とともに、患者の皆様方の社会参加を支援し、また、地域で尊厳を持って生きられる共生社会を実現するということを基本理念といたしております。

 この理念を実現していく上で、難病に関する正しい理解を普及し、地域社会において必要な支援を受けられるようにするため、普及啓発を進めていくことが重要と考えております。

 厚生労働省におきましては、本年一月の、難病の患者に対する医療等に関する法律に基づきまして、本年夏をめどに、医療、調査研究、就労などを含めた難病対策を総合的に推進するための基本的な方針を策定することといたしております。

 御指摘ありましたマークの利用なども含めまして、今後進めるべき普及啓発の方策につきましても、今後の基本方針の検討の中で、患者の立場の方も入っておられますので、そういった皆様方の御意見もよくお聞きしながら検討していきたいと考えております。

宮崎(謙)分科員 ありがとうございます。前向きに進めていただきたいなと思います。

 きょうこれをごらんの皆様、このヘルプマーク、問い合わせをしていただければ各自治体の皆さんにもいろいろ御案内できると思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。

 きょうは、労働政策全般について質問させていただきました。皆様に前向きな答弁をいただきまして、塩崎大臣からも力強いお言葉をいただきまして、心から感謝を申し上げます。

 我が国は、やはり自助自立というのがベースでありながらも、頑張って働けない方々、自分たちではどうしようもない方々に対しては家族や地域のきずなで支えていく、そして、地域でもどうしようもないときには最後に国が支援をする、これが我が国の基本姿勢であろうかと思いますので、私も、そのことを胸に刻みながら、これから日本の労働法制を整えていきながら、また、それが日本の経済の好循環を生むように頑張ってまいりたいと思いますので、今後とも御指導のほどをよろしくお願い申し上げます。

 本日はありがとうございました。終わります。

熊田主査代理 これにて宮崎謙介君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

原田主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。山井和則君。

山井分科員 三十分間質問をさせていただきます。派遣法と残業代ゼロ法案についてであります。

 まず、配付資料をごらんいただきたいんですが、この一枚目の配付資料、フリップにもしてまいりました。

 ある人材派遣会社が事務職の常用型派遣事業を本格展開しておるわけであります。それで、この人材派遣会社に常用型派遣として雇われるわけですが、私が少し、ちょっと気になっているのは、この求人情報には、正社員として雇用をするということが書いてあるのと、「正社員からはじめる未来。」ということが一つのポイントとなっております。

 私が学生さんなどと話をしましても、とにかく正社員になりたい、派遣は不安定だからよくない、やはり正社員になりたいという方が多いんですね。そういう方にとっては、あっ、正社員だと。正社員だということでこの仕事につけば、正社員なんだけれども実は常用型派遣であって、働くのはその会社じゃなくて、派遣先で働く。

 そこで、塩崎大臣にストレートにお伺いしたいんですけれども、人材派遣会社の常用型派遣の労働者は正社員と呼んでもよいのですか。

塩崎国務大臣 恐らく質問主意書にもあったかと思いますけれども、労働関係法令の中で、いわゆる正社員という確立した定義というのは特にないわけでございまして、今、これが正社員なのかどうかということのお問い合わせでございますけれども、一概にこれに答えることはなかなか難しいのかなというふうに思っております。

 では、そうすると、正社員という呼び名をどういうふうに使っていいのかということでありますけれども、時々やはり企業によっては常用型派遣で働く人を正社員として含めている場合もあるわけでございますけれども、我々がふだん言っている正社員というのとは、今、正社員をふやそうと言っているときの正社員とは、やはりそれは違うというふうに思っております。

山井分科員 これは塩崎大臣のおっしゃるとおりだと思うんですが、ただ、これは、就職する側にとったら、割と人生を左右する話なんですよね。

 先ほども言いましたように、派遣ではなくて正社員になりたい、こういう願望が若者に非常に強いんですよ。ところが、いざ正社員だと思って入ったら、今おっしゃったように、厚生労働省の分類では、質問主意書でも、これは派遣労働者と分類されるということなんですね。

 国の分類では派遣労働者と分類されている方々を、求人のときには正社員ということで求人をする。これは、確かに、正社員という定義がないから、そこは取り締まりようがないんだとおっしゃるのかもしれませんが、でも、ここはやはり整理をしないと。これは実際、声が出てきているんですよ、正社員だと思って就職したら派遣だったと。これはやはり割と根本的な違いです。

 だから、塩崎大臣、もちろん現状認識はわかるんです、定義がないというのも。でも、そうしたら、これからも、大手を振って常用型派遣の派遣労働者を、正社員ですよ、正社員の募集ですよということで募集を続けるということを厚生労働省としては容認されるわけですか。それとも、何か是正の指導はされますか。

塩崎国務大臣 今おっしゃっているケースは明らかに常用型派遣ということで、答弁書でも申し上げたとおりであります。

 そもそも、募集をする際の法律はどうなっているかといいますと、職業安定法によって、働く方の募集をもし行うということになった場合に明記されていることは、労働契約の期間、あるいは労働時間、就業場所などの労働条件を明示しなければならない、こう書いてあるわけでありまして、これによって一般的に雇用形態が判断されるということになると思うんです。

 先ほど申し上げたように、労働関係法令上は正社員という固まった定義がないという中にあって、常用型の派遣の方の中には、先ほど、中にはあるぞということを申し上げたのは、派遣会社に無期雇用をされているという方がおられて、このような方について、会社によっては無期雇用を正社員という呼称で呼ばれている場合がありますけれども、繰り返しますけれども、これは、我々が今ふやそうとしている正規雇用、これには当たらないというか、正社員としては当たらないということであります。

 ただし、そのような場合であっても、今の職安法によって、先ほどのは職安法の第五条の三に労働条件を明示しろと書いてあって、同時に、四十二条に、「募集に応じようとする労働者に誤解を生じさせることのないように平易な表現を用いる等その的確な表示に努めなければならない。」ということも書いてございまして、応募に誤解が生じないように努めなければならないということが募集をする側の責任ということになるわけでありますので、これに照らして、誤解を生じるようなことになっているかどうかということについては、我々としてはしっかり見ていかなきゃいけません。

 個別ケースについて、これだけでは判断ができることではもちろんありませんし、この場で申し上げるのは差し控えますけれども、誤解が生じるようなケースを把握した場合には、適切にそれは指導をしないといけないということになるんだろうと思います。

山井分科員 そこは明確にお答えいただきたいんですが、既にこれは募集をされているんです。

 私は、この一社が問題だということじゃないんですね。この会社以外にも、常用型派遣の労働者を人材派遣会社が雇う場合には正社員として求人を出しているんです。既に今起こっているんです。それで、正社員だと思って就職したら、あれ、何か違うなと。よく考えたら、これは派遣じゃないのということに気づくわけですよね。既にもうスタートしているんです、この種のサービスが。別にこの会社にかかわらず、幾つかのところで。

 塩崎大臣としては、このようなことに関して、まさに私は、はっきり言って誤解を招くと思いますよ。今おっしゃったように、厚生労働省としてふやそうとしている正社員の定義とは違うとまで明確におっしゃっているんだから。でも、そんなことは一般の若者にはわかりませんよね。

 こういうことを是正されるのか、それとも是正される気がないのか、お答えください。

塩崎国務大臣 先生お配りのこのケースには、一番大きな字で常用型派遣事業というふうに書いてあるわけでありますが、ですから、個別のケースに関しては、私どもとしては、今ここでこれが誤解を招くか招かないかということは、これだけではなかなか判断もできませんし、そういう判断をすることは差し控えたいわけでございます。

 さっき申し上げたように、我々が今ふやそうとしているのは派遣ではなくて正社員というふうに言われているもので、申し上げたように、厚労省の定義と言っているわけではなくて、厚労省は法律に基づいて行政を行うわけでありますけれども、この法律の中では特に正社員というものが確たる定義をされているわけではないので、職安法にのっとって一つ一つ判断をしていくということでありますので、この案件がどうかというようなことについては、お答えは差し控えたいというふうに思うところでございます。

山井分科員 そうしたら、この件について調査をしていただけますか。正社員という呼び名が誤解を招くのか招かないのか。いかがですか。

塩崎国務大臣 個別にはまた役所の方で調べたいというふうに思いますが、申し上げたように、この場で定義をするというわけにはいかないということだと思います。

山井分科員 これは本質的な問題なんです。

 今の答弁を聞いている限りでは、では、塩崎大臣、常用型派遣で一生派遣として働く方も正社員と呼んで差し支えないということに塩崎大臣の答弁はなりますが、それでいいんですか。一生派遣で働く人を正社員と呼んでも差し支えないんですか。

塩崎国務大臣 一生派遣というのは皆さん方がおっしゃっている話であって、我々はそういうことは考えていませんし、今回は、特に期間の制限というものを明確に三年ほど設けるということにして、何のハードルもなしに、ずっと一生派遣であるかのようなことが起きるようなものをつくろうと言っているわけではなくて、むしろ、逆にきちっと、今までは、期間制限については、例えば係をかえればそのまま続けることができちゃうというようなことでもありましたから、今回、はっきり、常用代替としての事業所単位の期間制限、プラス、個人が派遣で固定化をするということがないように、個人についても個人単位の期間制限というのを設けていくということをやっていますので、今先生がおっしゃったことは、私の言ったこととは全く異なる解釈をおっしゃっているというふうに思います。

山井分科員 明確に否定されないのであれば容認されたと受け取りますが、改めてお聞きしますが、常用型派遣で一生、厚生労働省の定義による派遣労働者として働かれる方も正社員と呼んで差し支えないということになりますが、それを否定されますか。それでいいんですか。もし明確におっしゃらないんだったら、それをもう容認されるというふうに理解させていただきますが。

塩崎国務大臣 我々の制度の中で一生派遣というようなことが起きるということは想定をしていませんので、それは、今先生がおっしゃっているようなことで、正社員かどうかという問題とはまた別の問題として、期間制限の問題としてきっちり議論していただきたいというふうに思います。

山井分科員 ということは、塩崎大臣、一生派遣になる労働者は絶対出ないということでいいんですか、今おっしゃいましたが。(発言する者あり)いや、それはあり得ますよ。可能性としてはあり得るじゃないですか。それも否定されますか。

塩崎国務大臣 先生、そもそも派遣で働いていらっしゃる方は全雇用者の約二%であります。その中で、何度も言いますけれども、アンケート調査をとってみると、大体半分半分で、派遣で働きたいとおっしゃっている方々がおられます。一方で、やはり正社員になりたいというふうにおっしゃっている方々が同じぐらいおられて、どういう働き方をするかは、人それぞれの人生のステージもありますし、企業との出会いもありますし、体調も、いろいろあります。

 どういうふうになるかということは、これは、それぞれ、結果としてどうなるかの話であって、我々は、大事なのは、派遣で働きたいという方には、キャリアアップをしながら処遇がよくなるようにしていく、あるいは労働条件がよくなるようにしていくということを担保することと、派遣じゃなくてやはり正社員になりたいという方々にはそのチャンスをより多くつくるということが大事なのであって、それぞれのニーズに応じたことを入れ込んだのが今度の派遣法の改正であるわけでありますので、これまで以上に働く人たちの希望と立場を守る、権利も守るということを主眼に置いた改正であるということを、先生、御理解をいただきまして、今のような極端な、一方的なお話は少し、ちょっと現実的ではないかなというふうに思いますので、お考え直しをいただければありがたいと思います。

山井分科員 認識が非常に甘いんですね。今問題になっているのは、一生派遣の方が今ふえようとしているんですよ。その認識がないというのは、私はびっくりいたしました。

 今の一連の答弁で、今後、もし一生派遣の派遣労働者がこの常用型派遣で出てきても、それを正社員と呼んでも、別に否定はされませんでしたから、そういうことも容認するというふうに理解をいたしました。

 そこで、残業代ゼロ法案に移ります。

 この配付資料、今回、図をつくりました。残業代ゼロですね。これは、高度の専門的な知識等が必要ということで、一千万円以上とも言われております。

 ここで塩崎大臣にお伺いしたいんですが、年収一千万円以上で、高度な専門的知識等を含め、高度プロフェッショナルになり得るのは、この一千万円以上の年収要件の方々の何割ぐらいですか。過半数はなり得るんですか、それとも過半数以下ですか。

塩崎国務大臣 まず第一に、これを先生お配りでありますけれども、管理職の下の普通の一般社員の中にこういうものができるというふうにお示しでありますけれども、これは極めて誤解を招きやすいのであって、むしろ我々は、管理職のランクぐらいも含めて、そのちょっと下ぐらいを含めて、それも、どちらかというとスタッフ的な立場でおられる専門的な方々、こういう方々を主に思い描いているので、こういう絵を描いていただくと、あたかも残業代を、管理職は普通は残業代はもともとなしですけれども、そうじゃない人たちが全部残業代を奪われてしまうようなイメージを持たれてしまうので、そこのところはちょっと、次回からこの外にでもつくっていただいて、管理職にもかかる人もいれば、若干、一般社員の中で個性的な人たちもおられるので、そういう、言ってみればボーダーライン的なところ、両方にかかるような方々の特に能力のある方、そして一千七十五万円以上の年収を得られるような方々が対象だということをわかっていただければと思います。

 また、年俸制という概念がありますけれども、いわば我々の高度プロフェッショナル制度というのは年俸制のようなイメージを持っているわけでありますので、残業代ゼロと大書していただいておりますけれども、そういう問題ではなく、我々は、もっと個性を生かしたいと思っているところでございます。

 どういう人が対象になるのかと……(山井分科員「いや、一千万円以上の人の半分以上かどうかと聞いているんです」と呼ぶ)

 それは、一千万円超の年間給与額の方というのは、国税庁の民間給与実態調査によりますと、役員、管理職を含めて約百八十五・八万人、構成比で全体の約四%おられます。

 このうち、管理職を除いた給与所得者については統計上なかなか把握ができないので、現在検討しております高度プロフェッショナル制度の対象となる業務などについては、基本的な考え方を法律に規定をした上で、法案成立後、労政審での検討を踏まえて、省令によって具体的に規定することとしているわけでございまして、対象となり得る方々の数について回答することはなかなか難しいということでございます。

山井分科員 質問に答えていないじゃないですか。

 私が聞いているのは、一千万なり一千七十五万円以上の方々の中で高度プロフェッショナルになり得る人は、ここに線が引いてあるように、半分以上なのか半分以下なのか、大まかなイメージを教えてくださいというんですよ。

 年収要件はわかりました、一千万円以上ということで。その一千万の中で高度プロフェッショナルになり得るのは半分以上ぐらいなんですか、半分以下ぐらいなんですか。大臣、せめてそのめどを教えていただきたいんです。

塩崎国務大臣 これはもう繰り返し申し上げておりますけれども、そもそも希望する人でないと……(山井分科員「質問に答えてください」と呼ぶ)いやいや、希望する人でなければこの対象にはなりませんから、どれだけの人が希望するかというのは、やってみないとわからないわけですね。(山井分科員「だから、なり得ると聞いているでしょう」と呼ぶ)

原田主査 ちょっと、今説明しているんだから。

 どうぞ。

塩崎国務大臣 ですから、やってみないとわからないのに、半分以上ですか、半分以下ですかと言われても、なかなかそれはお答えはできないということでございます。

山井分科員 だから、私は、なり得る方は半分以上ですかと聞いているんですよ。そのうち何割が希望するかは別ですよ。高度プロフェッショナルという方々のベースとしてあるのは一千万円以上の半分以上ですか、半分以下ですかと聞いているんです。

 そのうち希望するかしないかは、大臣がおっしゃるようにありますよ。ベースとしては半分以上なんですか、半分以下なんですか。

塩崎国務大臣 まだ法律を出しておりませんので、どういう専門的な知識、技術または経験を要するか、あるいは、業務に従事した時間と成果との関連性が強くないというようなことを規定するので、それに当たるのがどのくらいかとか、いろいろなことがありますから、今、それが半分以下とか半分以上とかいうようなことを一概にはなかなか申し上げにくいということであります。

山井分科員 びっくりしました。もう今は法案の作業に入っているのに、高度プロフェッショナルの可能性がある人が半分以上か半分以下か担当大臣がわからない。そんな無責任な法案を出さないでください。

 ところで、一千万以上とか一千七十五万以上と言われておりますが、これは法律にはどう書かれているかというと、平均年収の三倍を相当程度上回るというふうな表現ぶりになっております。この配付資料の十七ページですね。

 問題は、最初はこの十七ページにありますように一千万以上かもしれませんが、今後、三倍を二倍にするとか、年収要件が下がるんじゃないかという不安を持っているんです。派遣法でも、最初はごく例外的だったけれども、今回の改正のように、全ての業務で解禁されるというふうに、緩和というのは進みますよね。

 ついては、最初は一千万以上とおっしゃっていますが、将来的に、年収要件、法改正して下がる可能性、例えば五年以内に下がる可能性というのはあるんですか、絶対ないんですか。

塩崎国務大臣 先生いみじくもおっしゃいましたように、今回は、法律でもってこの年収要件を、支払われることが確実に見込まれる賃金の額が平均給与額の三倍を相当程度上回るという基本的な考え方を法律に明記するわけですね。

 これによって、法律を改正しない限りは、大幅に年収要件を変えるとか、そういうようなことはできないわけであって、先生は今、五年以内に法律改正をする可能性をお尋ねになりましたけれども、それは国会に聞かないとわからないことだと思います。

山井分科員 政府として提案する可能性はあるんですか、全くないんですか。

塩崎国務大臣 まずは、今国会に法律を出すことが大事だと思います。

山井分科員 ということは、五年以内にまた法改正して年収要件を下げるという可能性に関しては否定をされないんですか。

 否定されるんですか、されないんですか。されないんだったら結構です、そういうふうに理解をしますので。

塩崎国務大臣 まだ成立をしてもいない、そもそも提出もしていない法律でございますので、その変更について今から云々するということはあり得ないことだというふうに思っております。

山井分科員 昨年、超党派で、自民党も賛成して過労死防止法を通したわけですね。残業代というのは何のためにあるか。これは長時間労働の歯どめをかけるという最大のブレーキなんですよ、唯一、最大のブレーキ。ところが、この法案でそれを外すということは、過労死がふえる危険性がある。人の命がかかっている問題なんです。だから私たちは心配しているんですよ。それが、わからないんですか。

 では、現時点では、五年以内にまた法改正して三倍を二倍にする可能性を否定されないんですか。これは大変なことですよ。

塩崎国務大臣 先生も政権についておられたときがあったと思いますが、法律を出す前から、法律を変えることを前提に出すことは、普通はないんだろうと思うんですね。

山井分科員 変える可能性はあるんですか、ないんですか。そこを答えてください。

塩崎国務大臣 まずは今国会でこの法律を通すことが大事であって、それ以上のことは何も考えておりません。

山井分科員 全国の方々が、年収要件が下がったらどうしようと。例えば経団連は四百万以上と言っているわけですよ。これは、残業代が下がったら、賃金が下がるだけじゃなくて、本当に過労死がふえますよ。本当にこれは切実な問題ですから。それに対して、今後年収要件が下がるということを否定されないということに私はびっくりしました。

 ところで、例えば岡本議員の質問に対して、一日十三時間労働で三百六十日働くという働き方も今回の高度プロフェッショナルでは否定をされないという答弁がありました。

 そこで、十七ページの下の部分をお聞きします。

 この高度プロフェッショナルでは、どういう条件がかかっているか。

 そこに、ちょっと読みにくいですけれども、「四週間を通じ四日以上かつ一年間を通じ百四日以上の休日を確保すること。」と書いてありますね。

 ということは、四週間を通じ四日間ですから、二十八日のうち四日間休む。ということは、つまり、残り二十四日間、二十四時間連続、つまり五百七十六時間連続働き続ける、そういう働き方はこの法律では可能になるということでよろしいですか。

塩崎国務大臣 今御指摘になった、いわゆるインターバル規制を行うか、在社時間等の上限規制か、年間の休日規制のうちのいずれかを講ずるということになっていて、今先生、三つを全部一遍に……(山井分科員「三つ目を読み上げたんです」と呼ぶ)三つ目。年間の休日日数のうちいずれかを講ずることを義務づけ。

 ですから、これでずっと、インターバルも入れてですか。(山井分科員「もう一回質問しますか」と呼ぶ)もう一回。

山井分科員 この三つのうちのどれかの措置を講ずるというラストは、「四週間を通じ四日以上かつ一年間を通じ百四日以上の休日」なんですが、これでいくと、四週間、二十八日のうち四日間休めばいいということは、二十四日間連続で働く、二十四時間働き続ける、つまり五百七十六時間働き続けるという働き方が可能になるわけですが、その理解でよろしいですね。

塩崎国務大臣 この三つだけで制度が成り立っているわけではなくて、当然のことながら、どういう働き方を選ばれるにせよ、長時間労働になった場合には、ちゃんと、代償休日とか、特別の休暇の付与とか、健康診断とか、面接の指導とか、そういうような健康確保措置が当然かかるわけでありますから、先生が今御心配されているような働き方というのは、今度は、例えば月に八十時間、百時間の残業ということになれば、残業時間を管理しますから、それで、こちらの健康確保措置の方でひっかかりますから、当然それは、まずは健康確保の方に重きを置くということになるわけでございますので、やや、今の先生の御指摘は、極端な例ではないかなというふうに思います。

山井分科員 今やじで、死んじゃうじゃないか、めちゃくちゃじゃないかとおっしゃったけれども、まさにそれが許される……(発言する者あり)あり得ないって、あり得るんですよ、残念ながら。

原田主査 ちょっと、一般席は黙ってください。

山井分科員 申しわけありませんが、それがあり得るから私たちはびっくりしているんですよ。読めちゃうし、そういう内容になっているんですよ、塩崎大臣。(発言する者あり)なっているんですよ。なっていないんだったら、何によって歯どめがかかるか、明確に言ってください。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたように、管理職以下の普通の方々ということで絵をお描きになってイメージをおつくりになられていますけれども、もともとこれは、交渉力があって、そういう働き方を強いられるような立場ではない方々の、能力のある方について特に、そして一千七十五万円以上の年収がある方について言っているわけでございますので、そのようなことを強いられるという形ではあり得ない。

 ただ、頑張り過ぎていっちゃうかもわからないので、それは健康確保措置でしっかりとチェックをして、健康確保が大前提ということの制度でありますから、そこのところはしっかりと御認識をいただきたいというふうに思います。

原田主査 山井君、時間が参りました。

山井分科員 はい。

 塩崎大臣も、法律の中で、今の、二十四日、二十四時間連続、五百七十六時間連続勤務、殺人的です、これは。そういう働き方が、残業代ゼロ、休日手当ゼロになれば可能になるんです。

 だから、自民党の方々も、やじを飛ばされるのであれば、党内審議をもう一回やった方がいいですよ。これはその働き方が可能になりますからね。おっしゃるんだったら、どういうブレーキがあるんですか。(発言する者あり)

 今も、やじで一日八時間労働と叫んでおられますが、その一日八時間労働を外すのがこのホワイトカラーエグゼンプションじゃないですか。そういうことぐらい自民党の方々もぜひ勉強していただきたいと思いますが、きょうの……(発言する者あり)

 今も大前提とおっしゃっているけれども、その八時間の大前提を外すのが今回の法案なんです。そういうことを大臣も自民党の議員もわかっていない。そんな状態で残業代ゼロ法案を出すのはとんでもない。

 人の命にかかわる問題で、過労死はゼロにすべきで、残業代ゼロではなくて、過労死をゼロにすべきだということを強く訴えて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

原田主査 これにて山井和則君の質疑は終了いたしました。

 次に、中根康浩君。

中根(康)分科員 民主党の中根康浩でございます。

 ただいまの残業代ゼロ法案、命にかかわる法案だということで、緻密な議論が必要だと山井議員からの御指摘があったわけでありますが、私も、命にかかわる問題について幾つかこの時間で取り上げさせていただきたいと思います。

 一つは、命というわけでもないんですが、障害者政策の一つでございますが、障害者基本法の改正というものが行われて、手話が言語であるということがきちんと規定をされたということは、もう大臣も御案内のとおりでございます。

 それから、障害者総合支援法、障害者の暮らしを全般的に支える極めて重要な法律、これにおいても、自治体に対して手話通訳派遣事業を実施することが義務づけられております。

 それから、昨年の一月でしたか、批准をされた障害者権利条約においても、手話は言語であるとされております。

 このように、手話が言語としてさまざまな重要な条約、法律などによって規定をされてはおります。これ自体は大変な前進ではあるんですが、ただ、まだまだ現実の現場においては、例えば聾学校においては、必ずしも手話を使って授業が行われているわけではありませんし、あるいは、いつでも、どこでも、どんな内容でも、必要とされるときに手話通訳者が派遣をされるかといえば、市役所に依頼をしても断られてしまうということがあると当事者の方々からも聞くことがあります。

 あるいは、手話を使ってコミュニケーションをしたいけれども、意に反して補聴器や人工内耳を押しつけられるというようなケースもあるようでございます。

 また、テレビの全ての番組で字幕が付されているわけではありません。これでは、緊急の災害時などにおいて聾者の皆様方が重要な情報にアクセスできない、まさに命にかかわることになりかねないというようなこともあるわけでございます。

 手話を言語として明確に位置づけることをもって、聾者の権利あるいは命や暮らし、こういったものを守る手話言語法というものの制定が今強く求められていると考えています。

 都道府県とかあるいは市町村のレベルでは条例づくりが各地で進んでおりますが、御案内のとおり、条例というものでは、その条例がある県に住んでいる方は対象になりますが、そうではないところに住んでいる方はそうではない。当然でありますが、いわばそういった意味での格差が生じてしまうということにもなるわけであります。聞くところによると、千五百以上の自治体の議会で手話言語法という法律の制定を求める意見書が採択をされているとも聞いております。

 差別禁止法あるいは危険ドラッグ禁止法、こういったものも、まず各地で条例づくりというものが先行して、その後、地域によって、住んでいるところによって対応が異なってはいけないということがあって法律にある意味進化したといいますか、全国を網羅する法律として成立をしたという経緯があるものもあるわけでありますので、こういった差別禁止法であるとか、結果的に国会では差別解消法ということで成立いたしましたが、この差別禁止法をめぐる動きであるとか、あるいは危険ドラッグをめぐる動き、こういったものと同じように、各地で条例づくりが進んでいる手話の明確な位置づけ、これを決める法律を政府としてぜひ検討する時期に今来ているのではないかと考えていますが、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

中島政府参考人 委員御指摘のように、障害者基本法におきましては、その第三条で、「全て障害者は、可能な限り、言語」、ここに括弧がついておりまして、「(手話を含む。)」となっておりまして、「その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保される」という旨を障害者基本法に明記しております。また、同じ二十二条におきましては、情報の利用におけるバリアフリー化などについて必要な施策を講じることとされている。法律ではそうなっているということでございます。

 これらを受けまして、政府としましては、平成二十五年九月に閣議決定させていただいた第三次の障害者基本計画で、分野別施策の基本的方向の一つとして情報アクセシビリティーという項目を設け、障害者の皆さん方が円滑に情報を取得、利用し、意思表示やコミュニケーションを行うことができるよう、手話を初めとする意思疎通支援の充実などの各種施策を計画に盛り込んで、関係施策を各省庁において実施しているところでございます。

 また、委員御指摘がございました障害者差別解消法でございますけれども、これにつきましては、先月の二十四日に基本方針というものを閣議決定させていただきまして、合理的配慮の一例として、「筆談、読み上げ、手話などによるコミュニケーション、分かりやすい表現を使って説明をするなどの意思疎通の配慮」というふうに明記をいたしまして、合理的配慮の一例として掲げさせていただいたところでございます。

 政府といたしましては、まずは障害者基本計画に基づく各種施策を着実に実施いたしますとともに、障害者差別解消法、来年四月施行でございますが、そこにおける合理的配慮の具体例の蓄積をしっかり図るなどしてまいりたいと考えておるところでございます。

中根(康)分科員 さまざまな法律の中に決められた計画あるいはガイドライン等をまずしっかりと決めて、それを円滑に順調に遂行していくことをもって、手話言語法の制定が求めているような内容のことを具体的にというか、実際にはそういった計画の中で推し進めていきたい、こういう御答弁であったということであろうと思います。

 確かに、私は、合理的配慮という考え方というのは、この社会を大きく動かしていくというか変えていく極めて重要な原動力になり得る考え方であると。今までの日本にはなかった言葉であるわけでありますけれども、このなかった言葉が、まだまだ違和感を持って受けとめられているような、あるいは、一体、合理的配慮とは何なんだろう、何のことだろうと御理解が進んでいないようなところもあります。しかし、この合理的配慮という言葉を大いに普及させて、この言葉を活用して、全ての人が出番と居場所がある、あるいは、お互いに思いやりと支え合いと助け合いで共生できる社会をつくっていく極めて重要なキーワードだというふうに思っておりますが、そういった意味では、今の御答弁というのは一定の理解、納得が得られるものであります。

 一方で、情報コミュニケーション、特に手話に対して、まだまだ聾者の方々が極めて住みにくい、生きにくい社会であるということを示しているのが、千五百以上もの自治体の議会で手話言語法の制定が求められている、意見書が採択された、こういったことにもあらわれているわけでありまして、速やかな聾者の方々に対する対応というものも、手話言語法ということには限らないわけでありますけれども、極めて重要なことでありますので、今御答弁のあったような内容をスピード感を持って推し進めていっていただくということ。

 もちろん手話だけではなく、例えば、では点字はどうなんだとか、いろいろの障害種別によって、情報の、コミュニケーションのとり方、アクセスの仕方というのはさまざまでございますので、手話だけを法律にしてそれでよしというわけではないということもわかりますが、手話を求めている方々、あるいは、特に、手話に対してこれまで偏見を持たれていたような状況もなきにしもあらずといいますか、あったわけでありますので、そういった偏見を解消していく意味も含めての手話言語法の制定の御要望だということもぜひ御理解をいただいて、聾者の方々の暮らしやすい、生きやすい社会づくりというものを積極的に政府として推し進めていただきたいと、心から期待を申し上げるところでございます。

 次に、雇用促進住宅についてお伺いをしていきたいと思います。

 平成十九年の閣議決定で、平成三十三年度までに全廃すると決められているということは、もう既に皆さん御案内のとおりでございまして、そういったことを承知の上で若干質問をしてまいりたいと思います。

 リーマン・ショックで仕事や住まいを失った人たちに対して緊急一時入居という形でこの雇用促進住宅が活用されたり、あるいは東日本大震災の被災者に対して空き室を提供したりというような形で、現在でもこの雇用促進住宅というものがあったということが大変有効に活用されているわけであります。しかも、現に住まいをしておられる方がまだまだかなりいる、そういった方々が結構な御高齢にも差しかかっている。こういう状況の中において、必ずしも閣議決定というものにあくまでもこだわって、全廃ということに固執をしなくてもいいというふうに思うわけであります。

 この雇用促進住宅、平成三十三年度の全廃という閣議決定の期限がいよいよ具体的な視野の中に入ってきたような気がいたしますので、今後のスケジュールあるいは取り組み、こういったものについて御説明をいただきたいと思います。

勝田政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、雇用促進住宅でございますが、元来、就職に伴い住居を移転する方々の宿舎として整備されました。

 御指摘の平成十九年六月に閣議決定されました規制改革推進のための三カ年計画におきまして、平成三十三年までに譲渡、廃止、これを完了するということにされております。

 このため、具体的な手続を進めなくてはいけないんですが、この具体的な譲渡、廃止の手続につきまして、閣議決定に基づきまして、住宅の所有者でございます独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が行っております。

 その一環といたしまして、平成二十七年度以降は、当該機構が入居されている皆様に対します説明会を実施することを予定しております。説明会の内容は、雇用促進住宅の平成三十三年度までの譲渡、廃止を改めて御説明申し上げる。さらに、各雇用促進住宅につきまして、地方公共団体への譲り受けの意向の状況、民間企業への売却の一層の促進等について説明することとしております。

 ただ、いずれにいたしましても、御指摘のとおり、譲渡、廃止の手続に当たりましては、今住んでいらっしゃる方がいらっしゃいます。独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構におきましては、居住者の方々に最大限配慮しつつ丁寧に進めていきたい、こういうふうに思っております。

中根(康)分科員 今、御答弁の最後の部分にあった、居住者の方々に最大限配慮して丁寧に進めていくということは、これは空手形にしないように、必ずそのことを、お約束をお守りいただきたいと思います。

 そして、確認なんですが、今後行われていくであろう説明会というものは、説明会を行った住宅に関しては、その時点から即退去を進めていくということではない、平成三十三年という期限はあるけれども、説明会をやったから、その時点からすぐに退去が促進されるということではないということでよろしいですか。

勝田政府参考人 説明会は説明会でございますので、説明会をもって終わりということではなく、丁寧に手続を進めさせていただきたいと思います。

中根(康)分科員 そういった取り組みを進めていって、結果的に、もう六年後に迫っている平成三十三年度、年度ということでいうと七年後になるのかもしれませんが、この時点において譲渡や売却が思ったように進んでおらず、その時点でまだまだお住まいになっておられる方が相当数いる場合でも、三十三年度の期限が来たから、だからもう出ていってくださいということになるのか、それとも、やはりその時点においても入居者に配慮した丁寧な対応がなされるのか。

 この平成三十三年度末、平成三十四年の三月の時点を今から想定して、局長、その時点においても、やはり今御答弁いただいたような丁寧な対応がなされるということを約束していただきたいと思うんですが。

勝田政府参考人 平成三十三年度まででございます、六年しかないというか、まだ六年あるといいますか、いずれにしましても、相当の期間がございます。私ども、入居者の方々に御丁寧に対応するとともに、関係の地方公共団体、そのほか関係機関ともよく相談の上で、その方々が立ち行かなくなるというようなことがないように配慮しながら進めさせていただきたいと思います。

 いずれにしましても、今の時点で、閣議決定、三十三年度廃止ということで定められておりますので、私ども、そのスケジュールも考えながら丁寧に進めさせていただきたいと思います。

中根(康)分科員 この議事録は、恐らく六年後、七年後にも、恐らくというか間違いなく残っているわけでありますので、ぜひ責任のある御答弁であったと信じて受けとめていきたいと思います。

 お住まいになっておられる方はもう決して若くないというか、むしろ高齢であります。その時点で出ていって新しいうちを自分で探せと言われてもそれは無理な話だと思いますので、ぜひ丁寧で優しい対応をよろしくお願い申し上げます。

 それから次は、福祉車両について一つだけお伺いをしたいと思いますけれども、福祉車両というのは、高齢者の方々、要介護の方々あるいは障害をお持ちの方々が、例えば車椅子のまま車に乗り込むという形になっている車でありますけれども、この福祉車両のリフト部分、いわゆる架装部分と言うようでありますけれども、このリフト部分が、車検とか法定点検の、定期点検の対象になっていないというようなことも聞いております。

 この架装部分については、やはり、けがや、あるいは、場合によっては命にかかわるような重大事故のもとになりかねない箇所であるというふうに思いますので、常に安全が確保されていないといけないと思います。そういった意味で、定期的な点検が義務づけられるような見直しが行われていくべきであるとも思いますけれども、政府としていかがお考えか、お聞かせいただきたいと思います。

宮城政府参考人 お答え申し上げます。

 福祉車両の車椅子でございますが、このリフトなどの架装部分を含みます自動車の点検整備、これは自動車の安全、環境性能の維持を図る上で最も重要かつ基本的なものでございます。ですので、まず、この点検整備につきましては、道路運送車両法でその実施を義務づけておるということでございます。

 それで、福祉車両の架装部分でございますが、これは実は、車椅子を使われている方、それから車両の使用者、こういった方々から寄せられました情報を踏まえまして、平成二十三年七月二十八日に、一般社団法人でございます自動車工業会に対しまして、その正しい使い方、それから適正な点検整備の実施について、ユーザーの方々に周知を徹底していただくようにお願いしてございます。

 この結果、委員御指摘がございましたように、それまであったいろいろなふぐあいの情報でございますが、これが平成二十二年に三十一件でございましたものが、平成二十四年から六年には、いずれの年も一件ずつというふうに減少してございます。

 御指摘の定期点検整備でございますけれども、この定期点検整備につきましては、自動車ユーザーにとって過度な負担にならないような形で、必要なものに限るという形をとってございます。

 このために、現時点では、御指摘にもございました福祉車両の架装部分を定期点検整備の項目とすることまでは考えてございませんけれども、引き続きまして、ふぐあいの情報につきましては、いろいろ情報収集させていただきまして、必要な対策を講じていきたい、このように考えてございます。

中根(康)分科員 ユーザーに注意を喚起して事故というか不備が減少した、こういうことであるならば、それはそれで歓迎すべきことでありますけれども、今後、そういった部分の故障などを理由として重大事故が起きて、そして慌てて法定点検の対象にする、こういうよくある後追い行政のようなものにならないように、そういった事故が起きる前からこういう提案があったということはぜひお心におとめいただいて、できれば専門の業者の方々が責任を持って点検整備に当たるという対象の箇所にしていくということも必要なことではないかなと改めて思いますので、今後、御検討を賜りますようによろしくお願いいたします。

 次に、いわゆる遷延性意識障害という方々、いわゆる植物状態にある人たちに関することでございますが、交通事故によってこういった遷延性意識障害になるケースが多いわけであります。

 こういったときに治療に専念できるのが、独立行政法人の自動車事故対策機構、いわゆるNASVAと言われているところが運営する療護センターであるとか、あるいは、このNASVAが委託をする病床であったりするわけであります。こういった療護センターにおいては、例えば一カ月や三カ月で退院を強制されるとかいうことがなくて、三年ぐらい集中的に治療に専念することができるということで、交通事故の被害者の方々からは大変重要視されているものでございます。

 この療護センターは全国で四カ所、NASVAから委託されている病床は三病院ということで、ベッド数にして合わせて二百七十八床ということであるようでございます。ただ、遷延性意識障害になる人は、交通事故による方だけでも一年に三百人以上も発生するというふうに言われておりますので、全国でこの二百七十八床ということではとても足りない。

 遷延性意識障害の方であっても、いわゆる早期治療、専門的な治療が集中的に行われれば、全く植物状態であった方々が、指先を動かすことができる、目を動かすことができる、こういった少しでも回復をするということはあり得る。また、そういうほんの少しの回復であっても、御家族の方々にとっては大変な朗報であるというようなこともありますので、ぜひこの療護センターあるいはNASVAが委託する委託病床というものをふやすことが必要だ、求められているというように思いますが、現在のように二百七十八床という不足状態にとどまっているのは、決して原因が、理由がないわけでもないと言われております。NASVAとしては、本当はもっとつくれるはずなのに、いわばお金がないからつくれないというようなこともあるやに伺っております。

 遷延性意識障害など交通事故被害者救済のために使われる自動車安全特別会計から、平成六年と平成七年に合わせて一兆一千二百億円が一般会計に繰り入れられた。そして、それがいまだに全部は返還をされていない。返還をされたのはそのうちの六千九百二十一億円、まだ返還されていないのが、利子相当分を含めて六千七十二億円ということになっているようであります。

 このことについては、もう既に財務大臣と運輸大臣あるいは国土交通大臣との間で四度にわたって覚書が交わされ直しておりまして、つまりは三回にわたって約束がほごになっているわけで、返すと言ったのに返されていないという状況がもう十数年にわたって続いていて、最後の約束が、平成二十二年に民主党政権において野田財務大臣と当時の馬淵国土交通大臣が約束をして、平成二十四年度から平成三十年度までの間の約束をしたわけでありまして、つまりは、平成三十年度までには残りの六千億円強を必ず財務省が返す、この自動車安全特別会計に、国交省の方に返すという約束をしているわけであります。

 民主党政権の民主党の大臣が交わした約束であるわけでありますので、私の立場としては、ぜひその約束を守っていただきたいというふうに思います。

 これが返されれば、場合によっては、もちろん病院をつくるだけにお金が必要なわけではありません、その運営やさまざまなものにお金が必要でありますので、六千億円が返されたから必要十分な病床が用意されるということにすぐにつながるわけではありませんけれども、しかし、交通事故被害者の方々からしてみれば、財務省に貸していたお金が国交省に返ってくれば、このNASVAがもっと療護センターを、あるいは委託病床をふやすことができ、遷延性意識障害の方々に対する早期治療、集中治療というものが充実をするというお気持ちを持たれても、これは当然、自然のことであると思います。

 この六千億円強の繰り入れたお金、財務省から国交省に平成三十年度までに必ず返すとお約束をいただくことができるでしょうか。

竹谷大臣政務官 お答え申し上げます。

 一般会計から自動車安全特会への繰り戻しにつきましては、平成六年度財政特例法等におきまして、予算の定めるところにより繰り入れることとされております。

 具体的には、原則として、二十四年度から三十年度までの間に分割して繰り戻すこと、毎年度の具体的な繰り戻し額については、一般会計の財政事情、自動車安全特会の収支状況等に照らし、財務省及び国土交通省が協議の上決定することということについて、財務大臣と国土交通大臣の間で合意をしているところでございます。

 二十七年度予算編成過程におきましては、この合意を踏まえて財務省と国土交通省との間で検討しました結果、一般会計の財政事情は依然極めて厳しい状況にあることから、二十七年度には繰り戻しを行わないことといたしました。二十八年度以降の繰り戻しの取り扱いにつきましては、引き続き国土交通省と協議してまいりたいと思います。

 また、委員御指摘の療護施設の運営等を含めまして、被害者の方々の救済事業につきましては、二十七年度予算で約百三十一億円を計上しているところでございます。

中根(康)分科員 二十七年度に一円も返さないということでは、あと残りの三年間、二十八、二十九、三十で全額返すということは極めておぼつかないということが推測をされてしまうわけでありますが、アベノミクスで税収がふえている、景気がよくなっていると言われているわけで、またその一方で、法人税減税を行うということを言っておられるわけでありますので、一円も返さないということは、これはおかしいんじゃないでしょうか。

 返還されて、その原資で、その原資が生み出す利子、運用益などでNASVAの遷延性意識障害に対する治療というものが行われているということを考えれば、やはりこれは少しずつでも、全く返さないということはあり得ないと思いますけれども、なぜ全く返さないのか。それほど財政事情が厳しいとは思えませんけれども、なぜ一円も返さないのか、もう一度お答えください。

竹谷大臣政務官 繰り返しになりますけれども、一般会計の財政事情は大変厳しい状況にございます。また、自動車安全特会の収支状況等に照らしても、これは財務大臣と国土交通大臣の間で協議しておるところでございますので、二十八年度以降の繰り戻しにつきましては、これも引き続きの協議とさせていただきたいと思います。

中根(康)分科員 これで終わりますけれども、三十年度までに返還をするという約束は生きているんですか、生きていないんですか、最後にお答えください。

竹谷大臣政務官 原則として、二十四年度から三十年度までの間に分割して繰り戻すという合意は生きております。

 しかしながら、また繰り返しになりますけれども、繰り戻しの取り扱いにつきましては、引き続き国土交通省との協議とさせていただきたいと思います。

中根(康)分科員 余り納得できるお答えではありませんが、時間が来ましたので、これで終わります。

 ありがとうございました。

原田主査 これにて中根康浩君の質疑は終了いたしました。

 次に、泉健太君。

泉分科員 民主党の泉健太でございます。

 大臣、分科会、お疲れさまです。そして、分科会は今中盤になっておりますけれども、きょうは、さまざまな疾病対策ということについてお伺いをしたいと思います。

 大臣、冒頭、確認だけですが、脳脊髄液減少症、聞かれたことはございますでしょうか。

塩崎国務大臣 聞いたことはあります。

泉分科員 これは、本当にひょんなことで日常生活で起こり得るものでありまして、何かしら脳に強い衝撃を受けたときに、それが原因となって、脳は、ある意味、頭の中で浮いたような状態ですね、それは脳脊髄液というものに支えられて脳が浮いているわけですね、その脳脊髄液が少なくなっていってしまうと、脳がぶら下がる、つり下がるような形になって、それでさまざまな障害が起こり得るというものでありまして、そういったことで、今かなり患者さんの数もふえているというようなところであります。

 多くの方々が、目まいや腰痛や吐き気や、そして思考力の低下ですとか、睡眠障害ですとか、何となくだるいですとか、そういうような中で、なかなか因果関係がはっきりしなかったり、あるいは症状が人それぞれであったりするものですから、理解もされにくいということで、大変悩み苦しんでおられる方々が多数おられます。

 そういうことで、厚生労働省の方では、今、調査研究の班もつくられて、補助金をいただいてその研究が進んでいるわけですけれども、改めて、厚生労働省の方の現在の対策がどのようになっているか、確認をしたいと思います。

新村政府参考人 お答えいたします。

 脳脊髄液減少症には二つタイプがございまして、一つは、脳脊髄液の漏出が画像診断等により明らかとなっている脳脊髄液漏出症がございます。また、漏出は確認されないけれども同様の症状を訴えるという類縁疾患がございます。現在実施している厚生労働科学研究事業におきましては、そのいずれも対象として研究を進めているところでございます。

 これまでの研究の成果の一端としましては、平成二十三年十月に、脳脊髄液漏出症の画像判定基準・画像診断基準が作成され、関係学会で広く用いられております。また、平成二十四年六月からは、脳脊髄液漏出症に対するブラッドパッチ療法が先進医療の一つに位置づけられているということでございます。

泉分科員 ありがとうございます。

 徐々にそういう形で進んでいるということでありますけれども、今お話のあった研究、今、平成二十五年から二十七年までの三カ年の研究が進んでいるところであります。

 こちらの方も、今、周辺病態の研究ということになると思うんですけれども、これは百症例ぐらいを目標に被験者を募ってきているというふうに思うんですが、現段階でどれぐらいの症例が集まっているという理解なんでしょうか。

新村政府参考人 脳脊髄液減少症につきましては、御指摘のとおり、現在、平成二十五年度からの三年計画で研究を実施しております。

 この研究は、脳脊髄液漏出症と、また周辺病態をあわせた脳脊髄液減少症の疾患概念を確立すること、また科学的根拠に基づく診療指針を作成することを目的としております。

 これまでに脳脊髄液漏出症あるいはその疑いとされた患者さんにつきましては、六十六例の臨床症状が収集されていると承知しております。

泉分科員 さらに詳しくですが、その中に、例えば子供の症例というのは含まれているんでしょうか。

新村政府参考人 これまでは小児につきましてはその症例数に入っていないということでございますけれども、この研究班では、平成二十七年度に、ブラッドパッチ療法を実施している医療機関に対しまして脳脊髄液漏出症に対する診断法と治療成績の調査を行うこととしておりまして、その中で小児の実態も把握する予定にしております。

泉分科員 二十七年度ですね。

 そういう各医療機関への調査ということはそうなんですが、現段階でも子供の症例というのは存在はしていると思うんですが、これは入れられない理由が何かあるんでしょうか。

新村政府参考人 お答えいたします。

 脳脊髄液減少症の研究班におきまして、こういった周辺病態も含めた研究の対象者として特に年齢を限定しているというものではございませんが、小児の症例の場合には、検査の協力に対する同意が得られにくいといった問題がございまして、症例の集積に時間を要している、そういう事情はあると伺っております。

 いずれにしましても、脳脊髄液減少症の周辺病態の解明が進むよう、研究に対する支援を引き続きしっかり行ってまいりたいと考えています。

泉分科員 今のお話だと、子供さんであれば学校生活もあったり、いろいろなケースもありますから、同意が得にくいということでありますが、ということは、研究班の意思としては、子供の症例を何としても集めたいけれども、現段階ではそれがかなっていないということであって、集めないという方針ではないということで、改めてよろしいですか。

新村政府参考人 御指摘のとおりでございます。

泉分科員 子供の患者の場合は画像診断がなかなか困難だとかということも伺ってはいますけれども、しかし、今のお話では、決して集めないという方針ではなくて、努力はしていて、あとはいろいろな環境がかなうものが出てくればということの理解だと思いますので、引き続き最大限の努力をしていただいて、多くの方々にとって有効な調査研究になるようにしていただきたいというふうに思います。

 あと、子供と同様に、なかなかわかりにくいということでいいますと、交通事故の方の症例というものもやはり重要だと思いますけれども、例えば労災。これは、例えば工事現場で仕事をしている途中に脳にさまざまな衝撃があって、何らかのきっかけでこういったケースになってしまったものも含めて、労災や交通事故や学校現場での事故、学校現場のお話は子供ということになるわけですが、さまざまな患者がいますけれども、そういう寄せられている症例というのは、ある程度、そういった原因となるようなきっかけにおいてバランスはとれたものになっているんでしょうか。

新村政府参考人 研究班におきましては、二十五年度から二十七年度まで三年間で症例を集積して、脳脊髄液減少症の原因分析を行っているところでございます。

 二十五年度末の時点で、脳脊髄液減少症のうち、画像診断によりまして脳脊髄液漏出症と診断された症例が十七症例、少し限られておりますが、把握されております。このうち、原因がはっきりしているものとしては、例えば、スポーツは四例、交通事故または外傷が三例、重労働が一例となっておりますが、原因不明の特発性と言われているものが九例ということでございます。

 なお、平成二十六年度につきましては、現在、取りまとめを行っているところでございます。

泉分科員 ちなみに、今患者の皆様にとりましては、やはり何とか医療費の負担というものが軽減されていくようにということを要望しておりまして、健康保険の適用を目指して、それを目標に、何とか今、苦しい中、生活をしているという実情であります。

 そういった中で、今お話のあったように、科学的な指針、そういったものがそろっていくようにということで研究をしていただいていることは大変ありがたいというふうに思っておりますけれども、やはり、前回の保険適用の議論の中でも、論文の発表というものはとても重要な一つの要素であるというふうに伺っております。

 今回の研究の、二十七年度で終わるわけですけれども、とはいえ、二十八年に保険適用ということであれば、直前に論文が発表されて、果たしてそういうものに間に合うのかどうかということもあろうかと思いますが、二十八年の中で議論をされようと思えば、どれぐらいのタイミングまでに論文を出さなければならないのか、また、それが現在どのような進捗の状況になっているのか、お答えいただきたいと思います。

唐澤政府参考人 保険の方での扱いの状況について御答弁をさせていただきます。

 お尋ねのブラッドパッチ療法でございますけれども、平成二十四年六月より先進医療として実施をされております。

 平成二十六年一月に、これはこの前の改定の前ということでございますけれども、四月から実施でございますので三カ月ほど前に、二十六年一月に、先進医療会議におきまして、保険導入の扱いについて検討がされたところでございます。

 この一月の先進医療会議におきましては、先進医療として行われたのが五百二十七件ございます。このうちの約八割、約四百三十くらいでございますけれども、その症例については、実施をした医師が、有効であった、こういうような報告をいただいているところでございます。

 ただ、この会議では、先生からも今論文というようなお話がございましたけれども、あわせて、客観的な解析に基づくエビデンスをさらに収集することが必要であるということを御指摘いただきました。これは、治療の回数とか期間とかいうようなことが入ってくると思います。

 そういうことから、今回は保険導入はいたしませんでしたけれども、先進医療として引き続き継続をし、そして、データを集めていただいてエビデンスを確立していただくことが必要だというふうに思っているところでございます。

 厚生労働省といたしましても、昨年の八月にブラッドパッチ療法の実施医療機関に対しまして先進医療会議の議論を周知させていただいて、適切なデータの解析というものをお願いしたところでございます。

 今後とも、保険導入の扱いにつきましては、先ほど申しましたように、四月実施であれば一月ころに先進医療会議がございますので、それより前の段階でデータを出していただけるように働きかけてまいりたいと考えております。

泉分科員 周辺病態のことも含めてですけれども、漏出症については徐々に徐々にそういった形で明確化が図られてきておりますが、その周辺に多くの方々がおられますので、ぜひとも研究をしっかりと精力的にしていただいて、その有用な基準づくりに取り組んでいただきたいというように思います。

 きょう、実は、文部科学省赤池政務官にお越しいただいております。ありがとうございます。この厚生労働の問題になぜお越しをいただいたかということでいいますと、これからの御回答はまだ文部科学省の芦立審議官になるかもしれませんけれども、ぜひ聞いていただきたいんです。

 それは何かといいますと、この脳脊髄液減少症、先ほど大臣にもお話ししたように、スポーツの現場等々で子供さんでもなる可能性が十分ございます。

 そういう中で、しかし、これまで文部科学省としても二度ほど全国に通知をお出しいただいたことがありまして、例えば、平成二十四年の九月五日、事務連絡ということで、「学校におけるスポーツ外傷等による脳脊髄液減少症への適切な対応について」という文書が出されております。

 大変身近なところで起こり得るということ、そして厚生労働省でも研究が進んでいるということ、それも含めて学校の中で適切に対応してくださいということの中で、この文書の中でまさに、「事故後の後遺症として通常の学校生活を送ることに支障が生じているにもかかわらず、まわりの人から単に怠慢である等の批判を受け、十分な理解を得られなかったことなどの事例があるとの指摘もなされています。」と。

 何となく、よくわからないけれども、気力が出ないとかだるいとか、それを先生に言っても、おまえ、だらけているだけちゃうかとか、友達に言っても、何やそれみたいな話で、なかなか理解してもらえないということが、この文部科学省の指摘の中でもあるわけですね。

 という中で、例えば不登校のデータを、きょう紙では持ってきていませんが、私、調べてみたんです。

 文部科学省の平成二十六年度の学校基本調査の中では、長期欠席者数を見ますと、一カ月以上の休みをとっているうち、そのうち不登校の児童生徒は、小学校で二万四千人、中学校で九万五千人ということになっています。

 その中で、いろいろと内訳があるわけですが、今度は、平成二十五年度の、児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査という文部科学省の同じ調査がありまして、「本人に係る状況」というところで、長期の「病気による欠席」というので見ると、小学生は二千三百二十四人、中学生は七千百三十四人ということで、両方とも、パーセントでいうと、一桁台のパーセントが病気による欠席なんですね。

 一方では、「無気力」というふうにカテゴライズされるものがあります。これが病気の二倍以上、三倍ぐらいになっておりまして、「無気力」というふうにカテゴライズされているのが、小学生で二三%、不登校の中の二三%、五千五百六十五人、中学生では二六%で、二万五千四十八人が「無気力」という中に入っております。

 果たして本当に無気力というものの中が、例えば脳脊髄液減少症ですとか、あるいは睡眠障害ですとか、あるいは、後ほど触れますが、線維筋痛症ですとか、起立性調整障害ですとか慢性疲労症候群とか、こういういろいろな病名がつくようなものがある中で、学校現場がそれを知らずに、また家庭もそれをなかなかわかることができずに、うつじゃないの、無気力じゃないのということで、長期欠席化している。

 ここについて、文部科学省はもう少し、不登校ということの統計調査のみで終わってよいのか。

 例えば、学校には保健室も当然あるわけでありますし、いろいろな意味で、無気力になってしまっているとしたら、そこにはもしかしたら何らかの事情があるんじゃないのというところに手を差し伸べてあげることが非常に重要なのではないのかなというふうに思います。

 学校に通っている間は、もし子供が無気力ということになれば、何か学校であったんじゃないのという別な事情、例えば学校生活の生徒の間での関係や先生との間での関係で何かあったんじゃないのということは親はうかがい知ることはできますが、なかなか病気にまでは至ることができないですね。

 そういった意味では、学校生活におけるそういった子供たちの異状、変化というものについて、単に不登校というところでの統計で終わるのではなくて、まさに今、そういうところのさらに細部に入った調査が必要ではないのかなというふうに思うんですね。

 審議官の方にお答えをいただきながら、加えて政務官の方にもお答えいただきたいと思います。

芦立政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のように、長期にわたりまして学校を休まざるを得ない児童生徒につきまして、学校において教職員あるいは児童生徒が正しくその状況を理解して適切な配慮を行っていくということは極めて重要な課題であると考えております。

 脳脊髄液減少症につきましては、先ほどから御議論いただかれていますように、病態が不明な点が多いことなどから、現在、厚生労働省の研究班において、診断基準も含めてさまざまな研究がまさに行われている状況だと思います。

 学校においてこの脳脊髄液減少症の把握をしていくということについては、診断基準の問題もございますので、今直ちにということは困難な状況もあるわけでございますけれども、やはりこうした問題点を踏まえた上で、厚生労働省とも連携して、私どもといたしましても、必要に応じてこうした疾病の子供たちの実態把握の方法について検討してまいりたい、かように考えているところでございます。

赤池大臣政務官 泉委員御指摘のとおり、無気力をさらに学校現場でどう解明していくか、大変難しい課題かなということを感じておりまして、この調査そのものは、御承知のとおり認知という形での調査でありますので、その無気力が一体どういう無気力かということを、さらに、これが、今、泉委員御指摘の病気なのか心因性なのか人間関係なのかということはなかなか難しい部分なので、これはぜひまた文科省の方で検討させていただいて、例えばサンプル的にもうちょっと突っ込んだ形で考えるとか。

 今の調査ではなかなか限界がありますし、また、これは各政党からも指摘されていまして、調査が多過ぎて、学校現場がそれに忙殺されて実質的な教育活動がしにくい、こういった課題も先生方から与野党問わず御指摘もいただいているところですので、その辺はぜひちょっと検討させていただければというふうに考えている次第です。

泉分科員 これは全体調査というよりも、私もびっくりしたんですね、これだけ無気力という項目の該当者が多いというのは大変びっくりしまして、そういった意味では、思春期だからとかということで片づけられてきたことが、実は、何かの部活動やさまざまなきっかけで、もしかしたら病名がつくようなものなのかもしれない。

 病名がつくということについては、それをよしとする方もそうじゃない方も両方おられると思うんですが、やはり家族の中では、なかなか原因がはっきりしないけれども子供が急にそういった無気力というか元気がなくなるということについて、発見をすることによって次への対策が見えてくるというケースも非常に多いわけでありまして、発達障害ですとか学習障害もそういうものの一つだったと思うんですね。

 そういった意味で、先ほど私がお話ししたように睡眠障害や線維筋痛症などさまざまなものが今出てきておりますので、これはあくまで統計調査としての文科省の調査ですけれども、その中で出てきたものに対して、いかにアプローチするかということをぜひ考えていただきたいということをお願いしたいと思います。

 引き続き、アトピー性皮膚炎の問題なのであります。

 厚生労働省に対しての罹患率のことはちょっと飛ばさせていただいて、今、大体一〇%ぐらいの子供さん、あるいは一般の市民の方もかかっているというふうに言われていますけれども、文部科学省でも、学校におけるアトピー性皮膚炎の対策というのはいろいろとされているわけです。

 実は、私も小さいころずっとアトピー性皮膚炎でありまして、血を流しながら朝起きたことは何度もありました。学校で友達から非常に傷つく言葉を投げかけられたこともありましたが、幸い私は体も結構強い方でしたので、時に戦いながら、仲間たちと仲よく過ごしてきたわけですけれども、本当につらい思いをしている人たちがいます。

 きのうも文部科学省からヒアリングをさせていただいたんですが、学校におけるアトピー性皮膚炎対策といったときには、どうも健康面の気遣いということに限られているような印象を受けました。

 例えば、文部科学省ですとか関連するところの書籍なんか見ると、学校生活におけるアトピー性皮膚炎QアンドA、あるいは、学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドラインというのがあるんですが、これは全て、いずれも、子供の症状に先生や学校がどう対応するかという側面になっています。

 ただ、実は皆さん、例えば、インターネットですとかさまざまな患者の会の情報なんかを見ていただくとよくわかるんですが、アトピー性皮膚炎というのは、やはり体の外に出ますので、気持ち悪いだとか、近寄るなだとか、いろいろなことを言われるそういう可能性があるんですね。本当に本人は傷つくわけです。

 周りの子供たちがアトピー性皮膚炎の子供と接する際には、やはりもっとそれを受け入れてもらうだとか、あるいは、一緒に過ごしても全く問題ないということについて、もっともっと学校側にそういうことへの配慮ということも取り組んでいただくべきではないのかなというふうに思います。

 そういった意味で、きょうは政務官にもそのことをぜひ御認識いただきたいと思ってお越しをいただきました。改めて文部科学省の側のそういった対策をお願いしたいと思いますが、現在のところのお話を聞かせていただきたいと思います。

赤池大臣政務官 泉委員、個人的な体験も含めて御指摘をいただいておりまして、学校においてのアレルギー対応、これはアトピー性以外も当然あるわけでありまして、大変重要な課題の一つということは文部科学省としても認識をしているところでございます。

 そのためには、本人に対する個別指導のみならず、周りの子供たちや保護者の理解、そして、泉委員御指摘の、学校に対しては、文科省としてもガイドラインもお示しをして、教職員の周知徹底というところを果たしているところであります。

 そして、いわゆるいじめを含めたそういったものは、理由のいかんを問わず絶対あってはならない、決して許されることではないということでありまして、御承知のとおり、いじめ対策の防止法というものも超党派で制定をさせていただき、それを踏まえて対応も進めさせていただいているところであります。

 そして、心の通う人間関係を構築する、そういった基本的なことからということでの、文部科学省としては、今までの生徒指導はもちろん、道徳教育などにおきましても、しっかりその辺も踏まえて充実を図ってまいりたいと考えているところでございます。

 今後とも、学校においては、先ほど申し上げましたいじめ防止対策推進法を踏まえた中で、アレルギー疾患に関する児童生徒を初め全ての児童生徒にかかわる、体のみならず心の問題を含めたいじめの未然防止をしっかり適切に行ってまいりたいと存じます。

泉分科員 ぜひお願いします。少なくとも、現段階で文部科学省の関連で学校に届いているものというのは、アレルギー対策の一環で、やはり健康状態にどう対応したらいいかということに限定されているという節がありますので、ぜひそこは、子供たちの心理に呼びかけるようなお願いもしたいというふうに思います。

 さて、残りの時間が少なくなってまいりましたが、大臣、線維筋痛症、これまた大変、原因不明の痛みというふうに言われておりまして、難しい病気でありますが、急に刺すような痛みが体に来まして、それによって起き上がれなくなったり、日常生活がなかなか難しくなるというようなことで、これまた本当に原因不明ということであります。

 今、この友の会を初め患者の皆さんも、難病指定ということを頑張ってお願いをしているわけですが、逆に、この症状というのは、患者さんが非常に多くて、二百万人とも言われていて、だからこそ難病指定の枠に入らないというふうにも言われております。

 しかし、日常生活ができないというところが大変苦労しておりまして、今彼らが求めているのは、介護保険の特定疾病の対象にならないかということのお願いをしているところであります。

 アメリカでは、加齢とともに患者がふえるというふうにも言われているそういう線維筋痛症でありまして、現在の厚生労働省の考え方を聞きたいと思います。

三浦政府参考人 介護保険での線維筋痛症の取り扱いについてお尋ねいただきました。

 介護保険では、六十五歳以上の方については、原因を問わず要介護状態などと認定されれば、介護保険のサービスを利用することができますが、四十歳以上六十五歳未満の方につきましては、加齢に伴って生ずる特定疾病が原因で要介護状態などと認定されれば、介護保険のサービスを利用することができるという仕組みになっております。

 この特定疾病でございますけれども、医学的に見て心身の病的加齢現象との関係があると考えられる疾病であった上で、六十五歳以上の高齢者に多く発生しているけれども、四十歳以上六十五歳未満の年齢層においても発生が認められるなど、罹患率や有病率などについて、加齢と、つまり、年をとるということとの関係が認められ、その医学的概念を明確に定義できるということ、それに加えて、三カ月から六カ月以上継続して要介護状態などとなる割合が高いと考えられる疾病、こういった要件を満たす必要があるのではないかと考えているところでございます。

 御指摘の線維筋痛症につきまして、加齢との関係性、また、要介護状態などとなる割合が高いといった特定疾病の要件を満たしているという状況につきましては、私ども、情報は現時点で得ておらないところでございまして、そういう点で、現時点で特定疾病として追加するということはなかなか難しいことがあるのではないかと考えているところでございます。

 以上でございます。

泉分科員 この中でも、重症の方々が十二万人というふうにも言われております。我々としては、ここの部分を特に難病指定できないかということは訴えているわけですが、加齢との関係の調査も含めて、ぜひ、今後とも、特定疾病に該当しないかどうかということについては十分に検討していただきたいということをお願いしたいと思います。

 大臣には、厚生労働大臣ですので、障害者や難病の方とできる限りお会いをいただきたいということで御質問を申し上げるつもりだったんですが、時間がやってまいりました。

 今、難病の審査の関係で、難病の方とはなかなかお会いできないという御事情も伺っておりますけれども、ぜひ、任期の中で数多くの障害者や難病の方々とお会いをいただきたいということもお願いを申し上げ、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

原田主査 これにて泉健太君の質疑は終了いたしました。

 次に、奥野総一郎君。

奥野(総)分科員 質問の機会をいただきました。民主党の奥野総一郎でございます。大臣、よろしくお願いいたします。

 私は、障害基礎年金の障害認定の地域差等について、きょうは伺いたいと思います。

 障害基礎年金の認定に地域差があるということは、従来、社労士さんとかそういった方が指摘しておりまして、一連の報道の中で、今回調査が行われたというふうに承知いたしております。

 調査結果というのが出ておりますが、その調査結果によっても、不支給割合を都道府県ごとに比較すると、最も高い大分県は二四・四%、最も低い栃木県は四・〇%で、地域差が認められる。これは二十二年度から二十四年度までの三年分ということでありますけれども、この三年間で見てみると、栃木県と大分県の間でおよそ六倍の開きがあるというふうに報告書にも出ております。

 まず伺いたいんですが、なぜこうした地域差が生じたのか、原因を伺いたいと思います。

樽見政府参考人 障害年金の認定についてのお尋ねでございますけれども、障害年金は、障害等級に該当する場合に支給する。障害等級ごとの障害の程度というものについては政令において定められているわけでございますが、より詳細な基準として全国一律の認定基準というものが定められているわけでございます。これによりまして、各都道府県にある日本年金機構の事務センターの認定医が、医学的知見によって個々の事例の認定を行うということにしているわけでございます。

 精神障害や知的障害につきましては、身体障害とは異なりまして、検査数値等に基づいて障害等級を判断するということはなかなか難しいという状況にございますので、認定基準におきまして、日常生活の状況等を総合的に評価するんだということになっておりまして、これに基づいて、認定医がその認定を行ってきたというところでございます。

 今般、障害基礎年金の認定状況を調査いたしましたところ、結果的に、各県ごとの不支給割合にばらつきがあるということが出たわけでございます。

 これまでの調査の結果から見ますと、認定医の方が総合的に評価をする、その認定の際に用いる目安について認定医の方々の考え方に若干の差があるということが、認定の傾向に地域差が生じた要因の一つではないかなというふうに思っているところでございます。

 一方で、精神障害、知的障害、診断書に書いてある日常生活能力の程度というものから認定医の方が判断をされるわけでありますが、その日常生活能力の程度だけではなくて、具体的な症状あるいは治療の経過、日常生活状況、そういったものを総合的に評価するということになっておりますので、診断書に記載された日常生活能力の程度というものをどう見るか、その考え方の傾向の差ということはあるのではないかと思っておりますけれども、日常生活能力の程度が同じであっても認定結果に差が生じる、これはこれであり得るものというふうに考えているところでございます。

奥野(総)分科員 詳細に御説明をいただきましたけれども、まず、事例の割合、精神障害、知的障害がこの不支給の、事例のおよそ七割近くを占めているということが報告書には書かれている、ですから、この精神障害、知的障害というのが恐らく影響しているのであろうと。

 実際、そういう不支給割合が低い県は精神障害、知的障害の等級非該当割合が低い、同じく高い、多い県は精神障害、知的障害の等級非該当割合が高い、こういう分析になる。恐らくこれが影響しているのであろうと推計されるということだと思うんですね。

 今御指摘のように、総合的に認定することにはなっているけれども、目安というのが診断書に書かれていて、その目安となるもの、二と三というふうになっていると思います。家庭内での日常生活は普通にできるが、社会的には援助が必要である、これが二。それから三、目安となる日常生活能力の程度、三段階というのは、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要。これは非常に微妙な、私ここの部分は余り詳しくないんですけれども、これを読んでも余りよくわかりませんが、これが目安になっている。

 調査によると、ヒアリングをされたということですね。今そこは説明がなかったですけれども、不支給割合が低い県五県、高い県五県ずつ、十県ですか、ヒアリングをして傾向を見た。

 その結果、今言った日常生活能力の程度が二相当であることが障害基礎年金を支給する目安となっているというところは、二が目安となっているところは不支給割合が低い、そして、三が目安となっているところは不支給割合が高いというふうにここの報告書の中に出ているわけでありますが、では、そもそもこういう差が出ている、二を目安とするのか、三を目安とするのか、こういう違いが出ている原因は何なんでしょうか。

樽見政府参考人 まさに、そこのお医者様の考え方、先生がおっしゃいましたように、調査の中でヒアリングをしましたところ、そういう目安というものの考え方において差があるのではないかということが調査のヒアリングの中で出てきたということでございます。

 そこのところについては、それぞれのお医者様の専門的な知識に基づきまして、この判断基準に当たるかどうかというところを考えてもらうということになっているわけでございますが、それとあわせて、先ほど申し上げましたとおり、具体的な症状でありますとか、治療の経過でありますとか、日常生活状況でありますとか、そういったようなものを総合的に判断するということになっております。

 そういうことのいわば結果の集積ということであろうと思いますので、今のところ、それが具体的にどういうことということで今申し上げることはできませんけれども、専門家のお力もかりまして、さらにこの認定における地域差による不公平というものが少なくできるようにということの検討を始めたところでございます。

奥野(総)分科員 目安とは言っていますけれども、障害基礎年金は二級までしかないんですが、二級というのは、妄想とか幻覚等、異常体験等々で日常生活が著しい制限を受ける、日常生活の態様というのが、一つ、二級になるかどうかのメルクマールになっているわけですね。当然、そうすると、目安と言っていますが、日常生活能力の程度というのが恐らく大きな判断基準になるというふうに思われます。ですから、今そこは定かではないというようなお話だったと思いますが、これはやはりそろえておく必要があると思うんですね。

 もう一回聞きますけれども、わざわざ診断書に五段階の目安が書かれているわけですね。この五段階の目安をどう認定の際に活用すべきか、どういうふうにこれを考えるべきかということは、特に指導とか、あるいは指示とかというのはされているんでしょうか。

樽見政府参考人 繰り返しになりますが、まさに総合的な判断ということで、その総合的な判断をする中の一つの要素ということでございますので、ここについて具体的にどういうふうに見るべしという指導というようなものについては、特にしてございません。

奥野(総)分科員 だからこそ、ばらつきが生じたというふうに言えるのかもしれませんね。

 もう一点伺いたいんですが、診断書にこういう目安として登場したのは一体いつからなんですか。逆に言うと、今まで調査していないだけで、さかのぼればこういう地域差というのがもっと昔からあったという可能性はあるんでしょうか。

樽見政府参考人 済みません、今、具体的にいつからということについて資料を持ち合わせておりませんけれども、かなり以前からこの一から五というのを書くということにはなっておったというふうに記憶をしてございます。

奥野(総)分科員 たしかヒアリングで伺ったときは昭和六十一年と聞いたような気がしますが、大分前からですね、今の目安として載っていた、精神障害者については少なくとも載っていた。知的障害者について分けて書かれるようになったのは平成二十三年だということでありますが、しかし、当時は知的障害者に準用するというか、それを同じように使いなさいということがあった。だとすれば、こういうことがもう随分前からあったのかもしれないということなんですね。

 そこで、将来に向けて伺いたいんですが、こういうことがわかった以上、地域によって差が現実にあるわけですね、これは非常に問題ではないか。仮に同じ生活能力を有していたとしても、県によっては認定されたり認定されなかったりするということが起こり得るということだと思うんです。少なくとも、この目安の使い方について、認定基準にどういうふうに活用していくかといったことについて、二なのか三なのか、日常生活能力の二を使うのか三を使うのかということについて統一を図るべきではないかと思いますが、どうでしょうか。

樽見政府参考人 まさに、地域によって認定の考え方に違いがあって、それが不公平になってはならぬ、その先生の御指摘のような考え方については私どもも同様に思っているわけでございますけれども、まさにここは専門家の方々に総合的に判断していただく、そういう方針といいますかルールでやってきた。そこの考え方について、より客観的なものができないかというようなことにつきまして、先ほど申し上げましたように、専門家の方々のお知恵をかりて検討を始めたというところでございます。

奥野(総)分科員 これまでが間違っていたとは役所の方はなかなか言いづらいと思うんですが、少なくもこの調査結果を見る限りは、この目安の取り扱いが大きく影響していたという可能性が非常に高いというふうに読み取れる、にじみ出るような書き方になっていますね。ですから、将来に向けてこの辺をきっちり議論を整理しておくことが必要だ。今検討されているということですから、ぜひそこはお願いしたい。

 もう一つは、なるべく基準を低い方に、認定を絞る方向ではなくて低い方、これでいえば目安の二番目の方ですね、社会生活に援助が必要である、この二のレベル、低い方にそろえていただければと思います。大臣、そのあたりはいかがでしょうか。

塩崎国務大臣 今、先生と審議官の間で御議論いただきました。

 認定基準においてばらつきがあったということでありますが、精神障害、知的障害は、身体障害とは異なって、なかなか数値的に等級を判断することが難しかったということだろうと思います。認定医が医学的な知見をもとに、診断書の記載等から日常生活の状況等を総合的に評価して判断するということで、今回、本年二月から、先ほど来申し上げているように、専門家による検討会を開催して、できるだけ地域的なばらつきが生じないように、等級判断のガイドラインとなる客観的な指標などについて検討を行っていきたいというふうに思っております。

 今、どちらに合わせるというお話でありますが、お気持ちはよくわかりますけれども、やはりここは、全国、言ってみれば物差しが統一されるような形で、科学的にも説明がつくような形で基準を改めてしっかりしたものにしたいなというふうに考えております。

奥野(総)分科員 今、大臣から、統一的なものを、考え方を検討していくという御発言をいただきました。ぜひお願いしたいと思います。

 そこで、重ねてまた伺いたいんですが、これは将来の話ですけれども、統一的な基準ができましたといったときに、それに従って、今回不支給になった方々がもう一度再申請できるのか、一事不再理でもうだめなのか。もし新しい認定基準ができたとして、認定の方法ができたとして、今回不支給になっている方々が再度申請できるかどうか、伺いたいと思います。

樽見政府参考人 まさに、どういうふうに認定基準に基づいて認定をするかということについて、先ほど来申し上げておりますように、いわば一定の考え方、一定のルールに基づいて認定を行っているということでございますので、過去にさかのぼって認定をやり直すというようなことについては、基本的に慎重であるべきというふうに私どもとしては考えてございます。

奥野(総)分科員 慎重であるべきということだと思いますけれども、しかし、本来もらえるべきであった方がもしそれによってもらえていなかったとしたら、非常に問題だと思うんです。

 そういった方々に対して、これは将来の仮定の話ですけれども、新しい基準ができたときに、そういう検討をされる余地があるかどうか、もう一度伺いたいと思います。

樽見政府参考人 まさに、専門家の方々のお知恵をかりていろいろ検討をこれからしていくというところでございますので、その検討の結果を踏まえて考えるというふうになると思います。

奥野(総)分科員 ぜひ、これは私の思いでありますけれども、なるべく多くの方が認定されるように、もちろん不正受給は防ぐべきでありますけれども、なるべく多くの方、受けるべき方が受けられるようにしていただきたい。そして、今回不支給になられた方について、できることならばもう一度チャンスを与えられるように、ぜひ御検討いただきたいと思います。

 それで、今申し上げた、なるべく多くの方がということに係る質問ですけれども、今回の調査の資料に付随する部分として、では不支給の割合が減っているのかふえているのかというのも、検討会の資料などを見ると、添付されていますね。今回の件を受けて、まさに地域差に関する専門家検討会を開いていただいているわけですが、その中の資料などを見ますと、地域差があると同時に、また今度は経年的に見ると不支給がふえている、こういう数値も出ています。これも報道されていますし、御省の出しておられる資料にも書かれています。

 二〇一〇年度の不支給割合、平均一〇・九%から、二〇一三年度には一四・三%、一・三倍にふえたということなんですね。裁定件数は減っているのに不支給件数はふえているということなんですね、資料を見ると。

 これはどういうことですか。なぜふえているんでしょう。

樽見政府参考人 今御指摘ありましたとおり、平成二十二年度から二十五年度にかけての数字で見ますと、新たに申請のあった障害基礎年金の不支給割合で見ますと、一〇・九から一四・三%に増加しているということでございます。

 これの要因としては、一つは、実は、二十二年度と二十三年度、一〇・九からその次の年に一二・八にふえているんですが、その間の要因としては、恐縮でございますが、日本年金機構の事務的な要因として、複数事案で請求があった場合に、一方で認められたという場合にそのもう一方を不支給の方にカウントするという、実は二十二年から三年にかけて年金機構の事務を変えております。それで、実はその間不支給の割合がふえているという要素が一つございます。

 ただ、それを除いても一、二%ふえているという状況でございますが、ここについてはよくわからないのでありますけれども、もう一つの要素としては、こういう不支給の傾向が見られるのは、まさにこれも精神障害、知的障害なんです。精神障害、知的障害全体で見ますと、比較的軽い方からの申請の割合がこの間ふえているということもございます。ですので、そうしたことが要因ではないかというふうに思ってございます。

奥野(総)分科員 今私が聞こうと思ったこともお答えになられているんですが、二〇一一年度から件数のカウント方法を変えたと。しかし、二〇一二年からもふえ続けている、一二・八から一四・三とふえているんですね。その部分については、軽度の方の申請がふえてきているというのが原因じゃないかということなんですが、もうちょっと突っ込むと、軽度の方の申請がふえてきている理由というのは何ですか。障害年金のPRを大々的にしているとか、何か理由があるんでしょうか。

樽見政府参考人 特に、私どもの方として大々的にPRをしたというようなことはございませんので、そこについてはよくわかりません。よくわかりませんが、障害年金についての知識が広まってきているということはあるのかなとは思います。

奥野(総)分科員 今、日常生活能力の程度ということで目安というのが出ましたけれども、この判断基準が例えば厳し目に変わった県がふえてきて、それによって支給を抑えているというようなことは、よもやないでしょうね。

樽見政府参考人 私どもとして、厚生労働省として、日本年金機構に対して障害年金の認定を厳しくするようにといったような指導というのはいたしておりません。特に、そういう何か厳しくしようということでなっているというような事実はないものというふうに考えております。

奥野(総)分科員 この資料を見ると、精神障害者の数は年々ふえているんですね。障害年金受給者の数も年々ふえているんですね。だから、財政的に厳しいものがあるというのはそうだと思います。しかし、これは福祉の問題でもありますから、財政面だけにとらわれず、この問題についてはしっかり、本来もらうべき方には支給が行くようにお願いしたいと思います。

 また同じような話になるんですが、支給停止、減額もあります。東京新聞等によれば、今のは新規の不支給の話だったんですが、これまで支給されていた方が支給停止になる、あるいは減額になる、こういう事例がふえている、六割増だということでありますが、これは事実なんでしょうか。

樽見政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の数字でございますけれども、日本年金機構の、先ほど申し上げたように、障害基礎年金は各県の事務センターで認定をしているわけでありますが、そのうちの八つの県の事務センターが集計しておりました再認定に関するデータの中で、障害年金の減額あるいは支給停止の割合について、平成二十二年度から二十五年度までの変化というものについて数字をとって説明をしたものというふうに承知をしてございます。

 そういうことでいいますと、この八県でいいますと、減額あるいは支給停止の割合が平成二十二年度の平均二・三%から二十五年度の平均三・七%になったということで、六割ふえたという数字であるというふうに承知をしております。

 ただ、これは、私どもが年金機構に聞きますと、年金機構の事務センターが集計した数値が、実は八つの県それぞれによってかなり違っています。統一的にとっているわけではなくて、年金の種別、例えば障害年金、あるいは年金制度、旧法、新法とか途中で変わってございますけれども、それの種別、どこまでを範囲としてとるのかといったようなところが不統一であったり、あるいは、再認定の日付というものを、受け付け日の入っている年度で集計するのか、決定日の入っている年度で集計するのかということがどうも違っておるということでございます。

 それから、申請があって、それに対して例えば添付書類が不十分であるということで一遍お返しいたします、一遍お返しいたして、それからさらに受け付けた場合に、それを二件とカウントしている県と一件とカウントしている県があるということでございますので、これについて、全国で同様の傾向が見られるかどうかということについては、これからは何とも言えないというふうに私どもは評価をしてございます。

奥野(総)分科員 やはり、より詳細に調査をしていただくべきだと思うんですね。

 というのは、不支給の増加については、さっきおっしゃっていたように、症状の軽い方の申請がふえたから不支給がふえたということは言えるかもしれませんが、これについて言えば、もともと受けていた方が支給停止や減額ということは、恐らく症状が改善する、あるいはより軽度になっていくということがふえたということになるのかもしれませんが、それは医学が進歩したのかもしれないけれども、特に精神障害の場合は、なかなか急に全体によくなるということは考えられないわけですね。

 であれば、まず、この数字が正しいかどうか。ごく一部の県しかないというわけでありますが、確かにこの資料を見るとそうなんですね。全国的にやはり各都道府県について経年的にきちんと調査をして、ここの新規の不支給のものと照らし合わせて傾向を見るべきではないでしょうか。

 そうしなければ、何か同じ原因で、先ほどそんなことないとおっしゃいましたけれども、やはり認定基準が、まあ指導していないのかもしれないけれども、何らかの事由で、まさにそんたくをして厳しくなったか、そういったことが起きているのであれば、不支給もふえる、あるいは、こういった支給停止、減額もふえるということはあり得るわけですね。

 ですから、ぜひお願いしたいのは、これは全国的にきちんと調査をして、不支給の増加というものと、それから支給停止、減額について、共通の要因によるものかどうかということをしっかり分析いただきたいんですが、いかがでしょうか。

樽見政府参考人 まさに、この八県のデータということで限られているわけでございます。

 私ども、去年の後半、先ほどの地域差につながる調査というものを行っている中で、こういうデータがあるということを年金機構から聞きまして、私どもといたしましても、全体的な状況を把握することが必要であるというふうに考えましたので、年金機構の方に全体の調査というものをやってほしいということをお願いしたところでございます。

奥野(総)分科員 結局、何が問題かというと、診断書で、ペーパーだけでやっているから恐らくわかりにくい部分が出てくるんだと思うんですね。ペーパーでやって、総合的に判断しなさいと言われてもなかなか難しい。お医者さんの診断書のつけ方によっても違ってくるし、受け取る側も違ってきますよね。

 専門家検討会の中でペーパーが出ていまして、青木先生ですか、ペーパーの中に、提案として、精神障害というのは波があるんだ、一時点だけ取り上げてもなかなかわからない、だから、本人の日常生活における障害状態が反映されるように、本人や家族から日常的に情報収集ができるシステムが必要じゃないか、こういう提言をなされている。私も、精神障害者の方が地元にいらっしゃって、よくお会いすることがあるんですけれども、このとおりだと思うんです。

 であれば、例えば労災なんかは、担当者が実際に面接を行い、必要があれば認定医の診断を受けるということになっています。労災はできているわけですね。同じように、障害年金についても、実際に本人、御家族に面談をしていく、あるいは必要に応じて認定医の方に面談していただく、こういう仕組みを取り入れて、ペーパーだけじゃなくて、実際に生活状況というのを把握すべきじゃないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 今まで、日本年金機構の認定医が、具体的な症状とか日常生活状況等について、診断書の記載とか、御本人や御家族が作成した病歴に関する書類などを総合的に評価、判断していた、こういうことでありますが、この二月から始まっております検討会では、今お話がありましたように、御本人や家族からの情報を十分に得る、そして認定を行うべきという提案もいただいておるわけであります。

 御本人の状況をどういうふうにできる限り把握して認定を行うか、どういうふうに把握するかというところでいろいろ御提案があるんだろうと思うので、そういう御意見をしっかり受けて、状況をできる限り正確に判断できるような状態にまで把握をしていくかということについては、引き続き検討していかなければならないと思います。

奥野(総)分科員 ぜひお願いします。労災も同じ厚生労働省でありますので、そのやり方とかを比較しながら御検討願えればと思います。

 それから、最後に、初診日主義について伺いたいと思います。

 精神疾患というのは、大体二十歳前後に発病しやすいと言われています。受診するまでに、なかなかこれは本人に病識がなかったり御家族が病院に行かせたがらなかったりして、受診がおくれるんですね。そうこうするうちに生活が混乱して保険料の未納が続く、納付要件を満たせない、三分の二の期間納付しなきゃならないということでありますけれども、納付要件をなかなか満たせないということで、障害年金をもらえない方が多くいると伺っています。

 私の地元の方に聞きましたけれども、初診日主義を原因とする年金未受給者は、統合失調症では一四%、こうおっしゃっていました。これは、初診日がわからないという方もいらっしゃるでしょうし、未納の方もいらっしゃるでしょうし、そういう意味で、初診日主義に基づくものとしてかなりの方がもらえていない、こういうふうに伺いました。

 一つ伺いたいんですが、追納ができないかと。なかなか病院に行かないうちに、当然保険料も払えない、ばたばたして払えない中で、未納でもらえないということでありますから、例えば、障害が一定期間続いたとき、あるいは障害の程度が一定以上となったときを基準とするなど、初診日主義に変更を加えられないかということを地元の方から伺ってきたんですが、いかがでしょうか。

樽見政府参考人 障害年金でございますけれども、公的年金制度、社会保険方式ということで、保険であるということになっているわけでございます。いわば保険事故の発生時点において支給要件を満たしているということで、障害というリスクに対して一定規模の金額をお支払いするということになっております。

 ですので、これを、後で、保険事故が発生してから保険料を納付して受給できるということになりますと、あらかじめ備えておいて保険ということで保険料を納めていただいた方との公平といったような問題にもなりますので、後からということについてはとり得ないというふうに考えております。

奥野(総)分科員 時間ですので、最後に一問だけ。

 老齢年金の場合、任意加入制度というのがございまして、二十五年間の期間保険料を納めていなくても、六十五歳から七十歳までに特例的に払えば、期間を満たせば後からもらえる。これは追納ではないんですが、恐らく追納と類似の効果を持つ任意加入制度というのが老齢年金の場合はあります。これは、障害年金にも同じような考え方でできないんでしょうか。最後に。

樽見政府参考人 老齢年金につきましては、いわばいずれ訪れる老齢への備えということで、長期間の保険料を納めて、それに基づいて給付をする。障害年金は、先ほど申し上げたように、あらかじめ発生が予期できない障害ということで、短い拠出であっても一定の金額をお支払いする。そういうことで、かなり給付の性質が違ってございますので、予期できない障害に対する備えということについて、老齢年金と同じような考え方ということについては、恐縮でございますが、さすがにとり得ないものというふうに考えております。

奥野(総)分科員 ありがとうございました。

 予期できないからこそ、より厚く救済すべきだと私は思います。

 以上です。ありがとうございました。

原田主査 これにて奥野総一郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、堀内詔子君。

堀内(詔)分科員 自由民主党の堀内詔子です。

 平成二十七年度予算委員会第五分科会で質問する機会をいただきまして、ありがとうございます。

 生病老死という言葉がございます。お釈迦様は人の持つ苦しみについてお話しになり、それは、今申した四つの苦しみですと説いたと言われています。考えてみますと、人間の生病老死に最も寄り添う省庁は厚生労働省だと思います。改めて、そのお仕事の大切さを心するところでございます。

 早速質問に入らせていただきます。

 初めに、産科医療の関係で質問いたします。

 私の地元でございますが、駅前再開発事業の影響で、長らく地元で開業していました産科医院が移転せざるを得ないということになりました。

 実際の分娩を取り扱う医療機関を新設するには大きな資金が必要です。厚生労働省では、産科医療確保のため、産科医療機関確保事業を行っていらっしゃいます。その補助条件は、二次医療圏であり、最寄りの産科まで一時間以上かかるという御不便なところが対象です。

 施設設備と運営への補助はそれぞれお幾らでしょうか。

二川政府参考人 産科医療機関についての補助制度のお尋ねでございます。

 離島や山間部など分娩を取り扱う医療機関の集約化が困難な僻地におきまして分娩可能な産科医療機関を確保する観点から、隣接する他の産科医療機関まで離れているような施設につきましては、施設それから設備整備、それから運営費につきまして一定の補助をしているところでございます。

 二十七年度予算案におきましては、まず、施設につきましては、医療施設等施設整備費補助金の内数ではございますけれども、全体として約三・五億円を計上しております。

 また、設備につきましても、これも内数でございますけれども、二十七年度予算案で約六・五億円を計上しているところでございます。

 また、人件費などの運営費の補助でございますけれども、これにつきましては、一カ所約一千百万円余りの金額でございますけれども、平成二十七年度予算案で約三・一億円を計上しているところでございます。

堀内(詔)分科員 ありがとうございます。

 日本全国の規模で申しますと、思ったよりなかなか厳しい数字ではないかと思います。

 これからも十分に地方で出産するという要望に応えていってくださるには、それ相応の支援が必要だと思いますが、いかがでしょうか。

二川政府参考人 厳しい財政状況ではございますけれども、今後も、僻地等におきまして産科医療機関が確保できるよう、必要な予算の確保に努めてまいりたいと考えております。

 今年度、二十六年度におきましては、補助申請のあった医療機関につきましては、全て交付決定は現在時点ではできているということでございます。

 今後につきましても、努力してまいりたいと考えております。

堀内(詔)分科員 ありがとうございます。

 東京一極集中、また診療科の偏在の中で、市や町や村が産院を用意し、産科医のお医者さんと協力して出産環境をよくしていくというこの私の地元の試みは全国初かもしれませんが、このような事業の充実が期待されます。どうぞよろしくお願いいたします。

 今度は、病児保育について質問させていただきます。

 都会では、たくさんのお子さんが風邪を引いたら、病児保育園はすぐにいっぱいになって、利用される方も多いと聞いております。一方、地方都市では、少子化の影響で、そんなに大勢のお子さんが利用できるということを望めません。利用者が少ない市町村に病児保育園を創設したい、補助金額が少なく、環境が整わないといった声をよく耳にします。

 何か改善はされましたでしょうか。

安藤(よ)政府参考人 お答え申し上げます。

 特に小さなお子さんは病気になることも多いものですから、議員御指摘のとおり、病児保育のニーズは高いものと承知しております。

 この病児保育事業のうち最も利用者数が多い病児・病後児対応型につきましては、平成二十六年度では全国で千二百七十一カ所、延べ五十七万人分について実施されているところでございます。

 病児保育事業は、児童が病気にかかって初めて必要となるものでございますので、利用児童数が読みにくい、そしてその変動が大きいという特徴がございます。

 そこで、安定的な運営を確保するということが課題になっております。

 平成二十七年四月に施行を予定しております子ども・子育て支援新制度におきましては、病児保育事業を法律上の地域子ども・子育て支援事業の一つとして位置づけるとともに、消費税増税分による財源を活用して改善を図っていくこととしております。

 具体的には、病児・病後児対応型につきまして、利用人数にかかわらず補助を行う、つまり、安定的な収入となる部分につきまして、基本分補助単価として引き上げを図るということ、それから、体調不良児対応型につきましては、看護師等二名以上の配置が必要であるとしている実施要件につきまして、看護師等一名以上の配置でも実施可能とする要件の緩和を行うということで、これらを改善策として盛り込んでいるところでございます。

 また、特に利用者数が少ない地域においては、複数の市町村間で連携して事業を実施するという方法もございます。

 こうしたことも含めまして、国としても、市町村の取り組みをしっかり支援してまいりたいと考えております。

堀内(詔)分科員 ありがとうございます。

 さまざまな施策が充実してきていますことをうれしく思います。

 これから子供を産みたい女性、そして子育てをしながら仕事を続けたい女性のためにも、今後ともしっかり取り組んでください。よろしくお願いいたします。

 次に、保険外診療、先進医療制度につき質問いたします。

 難病治療の克服のために開始されましたが、実際の患者さんの数はどのぐらいでしょうか。また、医療費の総額に占める自由診療の割合はどの程度でしょうか。

    〔主査退席、熊田主査代理着席〕

唐澤政府参考人 お答え申し上げます。

 いわゆる混合診療、これは、保険制度の中では保険外併用療養費制度ということで、先進医療を対象にしているわけでございますが、これを、保険外の併用療法ということで、保険と保険外を併用している患者さんの数、この数は、平成二十五年七月から二十六年六月までの一年間で約二万四千人という状況でございます。

 また、先進医療を受けている患者さんの医療費の総額でございますけれども、同じ二十五年七月から翌年六月までの期間で約二百五十億円という状況でございまして、四十兆円分の二百五十億円ということでございます。この二百五十億円のうち、保険給付が行われていない部分が占める割合は約七割、百七十億円というような状況になっているところでございます。

堀内(詔)分科員 ありがとうございました。

 自費と医療保険での負担、低所得者がいわゆる混合診療が受けられない、所得格差により医療の平等が損なわれることのないよう、どのような施策をお持ちでしょうか。

唐澤政府参考人 この併用療養費制度でございますけれども、先生の御指摘いただきましたように、最終的には保険に導入していくということが前提でございます。

 私どもの基本的な考え方としましては、基本的、基礎的な医療というものは、これはしっかりと公的保険で見ていく、そして、先進医療のような、例えば外国で実施をされているけれども日本ではまだ承認されていないというようなものがございますので、こういうような先進医療につきましては、保険外併用療養費制度という形で、保険を使いながら御使用いただけるようにということで進めているところでございます。

 ただ、これは、最終的には保険導入を目指していくということでございますので、それぞれ実施をしていただく医療機関に対しまして、保険収載に向けた実施計画の作成ということを求めているところでございます。

 こうした形によりまして、保険導入を進めていって、最終的には国民の皆さんの医療サービスの向上につなげていきたいと考えております。

堀内(詔)分科員 ありがとうございました。

 これからも、全ての方々が、ひとしく、望む治療を受けられるような社会をつくっていただきますように、施策の充実をどうぞよろしくお願いいたします。

 次に、介護と医療の連携について質問させていただきます。

 競争原理の導入は、いろいろな分野でのインセンティブを高め、活性化すると言われています。

 介護分野へも企業の参入が認められましたが、医療と介護の間には垣根があって、なかなか連携が難しいと聞いております。連携を確保するためにどんな施策をおとりでしょうか。

三浦政府参考人 医療と介護の連携についてのお尋ねでございました。

 医療ニーズをあわせ持つ要介護者の方が増大するということが見込まれております。そのような中で、高齢者の方々が、住みなれた地域で、尊厳を持って、自分らしい生活を送ることができる、こういうことが非常に重要だと考えております。そのためには、在宅医療と介護を一体的に提供するということが肝要ではないかと考えます。

 このため、介護保険法の地域支援事業という位置づけで、在宅医療と介護の連携を推進するための事業を進める、こういうような取り組みが始まるということになっております。市町村が関係団体などと連携して、医療、介護の関係者による会議の開催、医療、介護関係者の研修などを通じて、お互いに顔の見える関係を構築するなど、地域の在宅医療、また介護の関係者の連携を推進するための取り組みを平成二十七年度から開始し、平成三十年四月には全ての市町村で実施するということになっております。

 今後とも、事業の実施状況の把握に努めるとともに、手引書や好事例の周知などを通じて、市町村の円滑な実施を支援してまいりたいと考えているところでございます。

堀内(詔)分科員 ありがとうございました。

 医療と介護の連携がお互いの分野にとってプラスになって伸びていくような、相互協力ができるような施策をどうぞよろしくお願いいたします。

 次に、高齢化社会の到来を前に、高齢者の認知症問題が話題となっております。

 全国で四百六十二万人と年々その数はふえ続けております。この数は平成二十四年十月の数字でございます。男女ともに、七十五歳未満では五%に満たない認知症も、七十五歳から七十九歳では一〇%を超える、八十歳から八十八歳では、男性の六人に一人、女性は四人に一人が認知症の有病者となります。

 ふえ続ける認知症の方々をめぐっては、さまざまな事例が起きております。

 例えば、認知症の方が行方不明となってしまう問題です。平成十九年十月、認知症の女性が群馬県館林市で保護されました。そして、その方の身元がわかったのは、平成二十六年五月にNHKで放送したことがきっかけでした。

 平成二十五年、認知症または認知症の疑いで警察に届け出が出されている行方不明の方の数は、一万三百二十二人です。その後、厚生労働省は、こういった問題について何か手を打ってこられましたでしょうか。

三浦政府参考人 認知症の方に関するお尋ねがございました。

 認知症の方やその御家族ができる限り住みなれた地域で安心して暮らすためには、地域によるさりげない見守り体制をつくっていくということが重要であると考えております。

 これまでも、徘徊・見守りSOSネットワークという、徘回や、見守りを行うための体制の構築や、認知症サポーターなどによる地域での見守り体制の整備を自治体にお願いするとともに、昨年九月には、こうした取り組みをさらに進めるために、各自治体における取り組みの具体例や、警察との連携協力のあり方などを自治体の方々にお示しし、取り組みの強化を依頼しているところでございます。

 また、行方不明となってしまった認知症の方につきましては、厚生労働省のホームページに特設のサイトを設けまして、各自治体で公開されている身元不明の方の情報を一元的に確認できるようにして、御家族の方々などが必要な情報にアクセスできるようにしております。

 本年一月に策定いたしました認知症施策推進総合戦略、新オレンジプランとも呼んでおりますけれども、この総合戦略においても、認知症高齢者などに優しい地域づくりに向けた柱の一つとして、地域での見守り体制の構築を位置づけているところでございます。

 引き続き、こうした取り組みを積極的に推進していきたいと考えているところでございます。

堀内(詔)分科員 認知症の方をめぐるさまざまな状況が改善されてきているように思われます。ありがとうございます。

 認知症が進むと、独居老人また御高齢の御夫妻などは適切な支援が受けられず、さまざまな事態が大きくなる可能性があります。事故などが起きてからでは遅いと思います。早期発見、早期対応についてはどのような施策をおとりでしょうか。

塩崎国務大臣 先ほど来出ております新オレンジプラン、認知症施策推進総合戦略、これを先般まとめましたけれども、その中でも、今御指摘の、早期の段階から適切な支援を行うということについての重要性を明示しておりまして、できる限り住みなれた地域で暮らすためには、やはり、症状が御指摘のように悪化する前に適切な対応をするという、まず早期診断、それから早期の対応ということが重要であるわけでございます。

 消費税増収分を活用いたしまして、医療と介護の専門職によります認知症初期集中支援チームというのを平成三十年度までに全市町村に配置をする、それから、かかりつけ医の認知症対応力を高めるための研修を行うとか、相談役の認知症サポート医、お医者さんですね、この養成の数値目標というのを引き上げていこう、こういう、できる限り早い段階から認知症の方の支援をしっかりとやっていこうということをこの新オレンジプランでもうたっているわけでございます。

 認知症は、今や誰もがかかわる可能性のある身近な病気であることは、先生今御指摘のとおりでありまして、最も早いスピードで高齢化が進む我が国が、言ってみれば、この面でも世界のモデルになるということが大事であって、我々としてもしっかり取り組んでまいりたいというふうに思います。

堀内(詔)分科員 ありがとうございました。

 ただいま大臣がおっしゃったように、高齢化は物すごいスピードで我が国を襲っております。認知症対策は待ったなしの状況です。これからも、さらなるお取り組みをよろしくお願いいたします。

 さて、時間が余りましたので、もう一問質問をすることは可能でしょうか。

熊田主査代理 大丈夫です。

堀内(詔)分科員 昨日削らせていただいた質問を、時間がございますので、一問足させていただきます。

 現在の、医療診療報酬改定は二年に一度、介護診療報酬改定は三年に一度となっております。医療と介護が一体化する中で、改定年度のずれは、さまざまな病院または診療所とか、そういった方々にとっては混乱が大きいものでございます。同一年度、時期での改定と改めることはできないかという声も地域では上がっておりますが、それについて御教示いただければと思います。

唐澤政府参考人 ありがとうございます。大変大事な御指摘でございます。

 私ども、地域包括ケアシステムというものをつくっていこうということを目指しておりまして、これは、それぞれの方が住みなれた地域で暮らし続けていけるように、医療、介護、予防、住まい、生活支援、こういうサービスをそろえて、安心の基盤をつくろうという考え方でございます。

 その際に、とても重要なことは、医療と介護がきちんと連携をしていくということでございまして、その中で、もちろん法制度もございますけれども、診療報酬上のそれぞれの連携をするということはかなり重要な点でございます。

 そういう点で、先生の御指摘のように、これは一緒に改定した方がいいんじゃないかという御指摘をいろいろな方面からいただいておりまして、診療報酬の方は二年に一遍、それから介護報酬の方は三年に一遍でございますので、両方がそろうのは実は六年に一回という形なのでございます。

 それを、例えば毎回一緒にできればもっとダイナミックな報酬改定というものができるのではないかという御指摘もいただいておりまして、それは、そのとおりの面がございます。

 ただ、もう一方で、介護の方は保険料の改定というものを三年に一遍実施をしております。そうすると、報酬を改定いたしますと、どうしても保険料の引き上げというようなことがまた出てまいりますので、なかなかこれは、市町村長の方も、すぐに二年という、必要な、その御指摘の意味はよくおわかりいただけるんですけれども、保険料の改定という面から、すぐには難しいという面があるわけでございます。

 私どもは、次の同時改定が平成三十年の改定でございますので、これはもう間もなくでございますが、これに向けて、地域包括ケアをつくるための医療と介護の両方の報酬を、御指摘のようにダイナミックな改定につながるようにしていきたいと思います。

 先生の御指摘は、今後の検討と重要な課題ということで受けとめさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

堀内(詔)分科員 ありがとうございました。どうぞよろしくお願いいたします。

 私の地元、甲斐の国は、武田信玄のお膝元であり、皆様御存じのように、武田の侍は、温泉で戦いの傷を癒やし、英気を養ったことでも有名です。温泉は体によいことは衆目の一致するところです。その豊かな温泉を利用して、リハビリ病院が多く開設されております。また、私の地元のほかのある市では、シルバー産業を推進するとして、サ高住の建設用地を用意し、首都圏から第二の人生を住環境のよい我が町で暮らしてくださいと呼びかけてもおります。

 この世に生をうけてから、その生を全うする、人というものの一生に寄り添って、これからも地域の皆様方とともに精進してまいる所存でございます。そのことをお誓い申し上げ、堀内からの質問とさせていただきます。

 本日はありがとうございました。

熊田主査代理 これにて堀内詔子君の質疑は終了いたしました。

 次に、初鹿明博君。

初鹿分科員 きょうも分科会で質問をする機会をいただきまして、ありがとうございます。大臣初め政務三役の皆様、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず最初に、先日の予算委員会で、少し時間がなくて質問し損なってしまったものが幾つかありますので、そちらの方から質問をさせていただきたいと思います。

 前回の予算委員会の質問の際には、格差と所得の再分配の問題を取り上げさせていただきましたが、その冒頭でお話しさせていただいたのが、生活保護の受給者がまた過去最高を更新したというお話でございました。

 きのうのニュースで、また今度は、生活保護の不正受給が四万三千二百三十件と過去最高を更新したというふうに出ておりました。よくよく見てみますと、件数で増加しているけれども、金額ベースでは三億六千万円減少していて、割合は全体の〇・五%程度だということなんですよね。

 不正受給というと、一般的に、何となく、印象としては、物すごい悪いことをしているような印象を国民の皆さんは持たれてしまっているように感じるんですけれども、実際のところは、四六%は働いた収入の未申告で、二一%が年金の未申告、そして一一%が働いた収入を過少に申告していたというものでありまして、中には非常に悪質な人もいるんだろうと思いますが、恐らく、多くは、よくよく生活保護という制度を理解していなくて、働いたお金を申告する必要があるのかどうかもわからないで保護費を受給していて、後で指摘をされてという方が多いんじゃないかと思うんですよ。

 この働いている収入の中には、例えば高校生の子供を持っていた場合に、その高校生の子供のアルバイトの費用まで含まれてしまうわけでありますから、そういうことを考えると、確かに不適切な受給ではあるけれども、不正だという言い方を余り強調し過ぎるのは、全体のイメージを悪くし過ぎるのでよくないんじゃないかなというのをまず御指摘させていただきたいと思います。

 今回、過去最高になったということですけれども、つまりは、自治体がきちんと収入調査をするようになった結果、判明したものが多いんじゃないのかなというふうに思うんです。

 でも、それは裏を返すと、割と真面目に働いているような人たちが申告をし忘れていたのは見つかっているということになるけれども、では、本当に悪質な人たちが、それが見破れているかというと、なかなかそこは難しいんじゃないかというふうに思います。隠している人を見破るのは非常に、なかなか難しいものだと思うので。

 やはり、日常的にきちんとケースワーカーの方が生活をしっかり見ていくような体制ができるというのが私は好ましいんだと思うんですね。

 よく、生活保護に対する批判の中で、パチンコ屋さんに毎日行っているとか、昼間から酒を飲んでいるとか、そういう批判がありますけれども、そういう人たちというのは、もしかしたら依存症の傾向があったり、そもそも生活習慣がきちんとできないような人であったりと、もう少しきちんと伴走的な支援をして、生活習慣をきちんと立て直すようなサポートをすることが必要なのに、今の体制ではそれができていないということでそういう生活になって、それに対してほかの人たちからの批判が出ているんじゃないかと思います。

 しかし、だからといって、今、この行革の流れの中でケースワーカーさんの数をふやしていくというのは現実的に難しいし、私はそれがいいとも思わないんですね。

 では、どうすればいいかといったら、支給を決定するような、そういうことは自治体の職員である公務員がやるべきだと思いますけれども、日常的な生活のサポートとか支援などは、自治体の職員、公務員がやるのではなくて、困窮者の生活支援をやっているようなNPO法人に委託をするとか、あと社会福祉士さんに委託をするとか、そういう形でケースワーク業務をもっと外に外注するというかアウトソーシングするということが必要で、そうすることによって、就労支援がもっと充実をして、生活保護から脱却できるような人もふえていくと思いますし、生活習慣が改善をされて、変な、批判を買うような、そういうお金の使い方から抜けていくことができるんじゃないかと思います。

 このように、NPOだとか社会福祉士の方々にケースワークの業務を委託したり外注するということについて、御見解をお伺いいたします。

永岡副大臣 先生の御指摘にお答えいたします。

 生活保護の受給者の自立支援ですとか不正受給の防止などを図るためには、各自治体で、その担い手でございます地方公務員のケースワーカーなどを確保していただくことが基本的に重要であると考えております。

 ケースワーカーは、外部委託をすることにつきまして、この業務内容が、これは、生活保護費の決定ですとか、また、生活保護受給者に対する指導、指示など、公権力の行使を行うものでございます。また、訪問調査の方につきましては、法律上付与されました立入調査権で担保されているものでございます。これらの課題がございますので、慎重に検討する必要があるというふうに考えております。

 また一方、ケースワーカーにつきましては、平成二十一年度以降、毎年度、地方交付税の算定上の人数をふやしております。

 また、先生御指摘のとおり、就労支援におきましては、これは、福祉事務所に就労支援員を配置いたしまして、自治体の実情に応じて、その外部委託化も行われております。

 長期入院の患者さんの地域移行支援を含みます健康面に関する専門的な支援につきましては、福祉事務所に保健師ですとか、あとは看護師さんを配置できるよう、平成二十五年度から地方交付税措置の増額を行っているところでございます。

 引き続きまして、ケースワーカーの負担軽減と質の高いケースワークの両立、これに取り組んでまいります。

初鹿分科員 大体、地方交付税の措置と言うんですけれども、私は二十三区なんですね。二十三区は不交付団体で、その二十三区にかなりの生活保護者が集中しているということを考えると、全く不十分だということを少し頭の中に入れていただきたいなと思います。

 確かに、公権力の行使にかかわる部分が多いことはわかるんですけれども、そうじゃない部分の支援というのは非常に重要な面があると思いますので、そういう公権力の行使にまでつながらないような支援については、自治体の職員任せにするんじゃなくて、外に出して、きめ細やかな支援をしていくことが私は必要だと思いますので、さらなる御検討をいただければというふうに思います。

 それでは、次の話題に移ります。

 障害者年金について前回質問しようと思っておりましたが、先ほど奥野議員からかなり詳しく、細かく質問がされていたので、重複をしないように、少し、何点か質問させていただきたいと思います。

 先ほどの質問の中でも述べられていたとおり、不支給がまずふえているということと、地域間のばらつきが非常に多くなっているということ、そして更新の際に等級が下がったり支給が打ち切られたりしていることがふえている、そういう指摘がございました。

 先ほど答弁を聞いていて、検討会もあって、今検討しているということなんですけれども、私も今、福祉の事業をやっていまして、日常的に障害者の方と接して、親などからもいろいろなお話を聞くんですが、その中で一つ気になる指摘をされたのが、就労移行の施設とか就労B型とかにいて一般就労に移行できた、一般就労になったら、その後の年金の更新のときに、一般就労したということで等級が下げられたというお話を最近頻繁に聞くんですよ。

 この点について、どのようにお感じになっているか、お聞かせください。

樽見政府参考人 就労のケース、まさに先ほどのやりとりでも申し上げましたけれども、知的障害、精神障害の方については、日常生活の状況を総合的に見て判断するんだということになっています。

 就労ということについても、いわば総合的に見て判断することの一つの要素になるわけでございますが、一般就労の方であっても、まさにいろいろな援助や配慮のもとで働いておられる方というのは多いと思います。ですので、私ども、全国一律の認定基準を通知で書いているわけであります。

 その中でも、例えば、仕事の種類や内容、あるいは就労状況、あるいは援助の内容、あるいは他の従業員との意思疎通の状況といったようなものについて十分確認した上で日常生活能力を判断する。したがって、就労したというだけで直ちに年金を減額または停止するということにはしないというふうに認定基準ではしているわけでございます。

 ただ、いずれにしても、就労をどういうふうに評価するかということについては重要な問題だというふうに思いますので、先ほど申し上げましたとおり、本年二月から、精神、知的障害の専門家のお知恵をかりて検討会でやってございますので、その中で、就労の評価ということについても検討を深めてまいりたいと思います。

初鹿分科員 せっかく一般就労したら年金を下げられちゃったというと、就労してよかったのかなと御家族も思ってしまうし、また、中小企業などで、今、雇用率が二%になって、五十人の規模のところから雇えるようになって、では雇ってみようかというふうに思った経営者からすると、雇ったら年金が下がっちゃったというのを聞くと、何かいいことをしたのか悪いことをしたのかわからないなという思いになっちゃうと思いますので、ぜひ、就労をもって判断することがないように徹底していただきたいなというふうに思います。

 先ほどの質疑の中で、最近、軽い、軽度の人たちの申請が多くなった、その理由がよくわからないというお話がありましたが、これは私が想像するになんですけれども、特別支援教育が広がっていって、手帳を持っていないけれども通級だとかに通ったりするお子さんたちがふえてきていて、その人たちが特別支援学校の高等部に行ったりして、それで卒業してというケースが今非常にふえてきているんだと思います。

 私の施設、放課後デイサービスなんですけれども、手帳を持っていないで受給をする子供たちが非常にふえていて、来年新規の募集を今しているんですが、一年生とか低学年の子たちで問い合わせが来るのは、手帳を持っていない子たちなんですね。

 手帳がないということは知的な能力は高いということになるんですけれども、では、そういう人たちが、日常生活が、重い子と比べてどうなのかというと、意外と、手帳がないけれども自閉症だったり発達障害だったりしてコミュニケーション能力のなかなか難しい人たちの方が日常生活が難しかったりするんですね。ですから、そういうことをきちんと判断をして年金の支給決定もしていくことが私は非常に重要だと思うんです。

 先ほど大臣も答弁の中で、そういう日常生活の状況を親とか本人だとかにきちんと確認をしてこれから支給決定をするという旨の答弁をたしかされていたと思うんです。

 そのときに、私からの提案なんですけれども、年金の業務と福祉の業務は別物だということはわかっておりますけれども、福祉の事業所などは本人とかかわりをずっと持ってきているわけですよ。特に、今、相談支援という事業ができて、何かサービスを受けるためには、相談支援事業所に行ってサービス等利用計画をつくってもらうということになっているわけですよね。そうなると、子供のころから大人になるまで、その障害者にずっと寄り添っている人たちができるわけですね。だから、そういう人たちにきちんと生活の状況だとか判断能力だとか、そういうことを確認して年金の支給につなげていくということができると、もう少し的確な認定につながっていくんじゃないかと思います。

 現状だと、年金の方の認定医の人が診断書ベースで判断をするわけですよね。例えば、トイレに自分で自立して行けますか、はい、行けますというふうな答えであったとしても、トイレに行くことはできるけれども、では、それがTPOに合わせてきちんとできるかどうかというと、知的な障害のある人は必ずしもそれができなくて、私がかかわっている子供たちだと、自分で全部トイレとかできますよ。でも、普通の、サービスエリアとかデパートとか、そういうところでトイレに行ったときに、小を足すときに、ズボンを全部下げてお尻を出してしてしまう子とかがいるわけですよ。それは、トイレはできるといったらできるんだけれども、では、それがきちんとできているのかというと、やはりちょっとクエスチョンなわけですよね。

 また、御飯を食べられるかといって、ちゃんと御飯は自分で食べられますよ。ただ、限度がわからなくて、たくさん食べて、食べたそばから吐いちゃうというお子さんもいるわけですね。それは、食べられるかといったら食べられるんだけれども、では、それは日常生活上支障があるかないかといったら、支障があるわけですね。

 だから、こういうことをきちんと見られる、見てきているのは、私は、福祉事業にかかわって、その子たちとずっとかかわってきたような人たちだと思いますので、年金の認定についても、そういう福祉との連携をもう少し強めていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

樽見政府参考人 先ほどの大臣からの答弁でも触れましたが、先ほどの専門家の検討会、二月に第一回を開いたときの委員の御意見の中で、具体的にこういうことを意見書で書いてありました。「日常生活の具体的な情報を得るためには、本人からの情報はもちろんのこと、家族や身近な支援者の情報が重要だと考えられる。」「まずは、本人や家族から、日常生活の情報をエピソードとして聞くようなシステムが必要ではないだろうか。」「診断書を作成する医師が、生活支援を担うソーシャルワーカー等と連携しながら、本人や家族より、日常生活の情報収集を得るシステムを構築することが重要ではないだろうか。」そういったような御意見をいただいているわけです。

 こういったことを含めまして、まさに御本人の状態をどういうふうに把握するのかということについて、こういう方に委員に入っていただいているわけでございますので、そういうところで議論をして、お知恵をかりたいと考えております。

初鹿分科員 本人や家族も必要なんですけれども、家族で気づかないことというのはあるんですよね。

 先ほどのトイレの例なんかは、お母さんたちは気づかないんですよ、男子便所に入らないから。私が支援をして、それを親に伝えて、初めて知ったと言われました。二十を超えているお子さんですけれども。大体、障害者のヘルパーさんも女性が多いので、トイレに一緒に行くことがないので気づかなかったと言うのです。

 ですから、私は、第三者的な立場にいる福祉の方との連携もきちんとやってほしいということを言いましたので、ちょっとそれも御理解いただきたいと思います。

 では、次に、障害者の雇用について少しお伺いします。

 昨年の四月から法定雇用率が二%に引き上げられまして、これまで対象ではなかった中小企業、五十人以上になれば全て対象になっていくということであります。

 現状、きのう資料をいただきましたが、法定雇用率二%達成の企業数が三万八千七百六十社で、四四・七%という数字になっておりました。

 では、まずこの数字について御評価いただきたいのと、半分以上まだ達成していないわけですから、その達成していない企業に対して、今後、どういう働きかけをしていくのか、まずはそこをお聞かせください。

広畑政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘のとおり、民間企業につきましては、法定雇用率が二%ということでございまして、達成率が四四・七%ということでございます。

 ただ、これは、まだまだという評価もあろうかと思いますけれども、おかげさまで、障害者の雇用というのは非常に進んでございまして、十一年連続してふえてございますので、そういった中では企業の御理解というのは進んでいるのかなと思っております。

 それから、やはり雇用していただくためにはどうしても、特に、今委員御指摘のとおり、五十人のところですとたった一人でございますので、雇用することについて非常にちゅうちょというか、ためらいもあろうかと思います。その辺につきましては、ハローワークが中心になりまして、実際に雇用されている方のお声とかそういったことを丁寧に御説明申し上げて、雇用につなげていただければと思っております。

初鹿分科員 そうやって中小企業や民間の事業所には働きかけをこれから積極的にやっていくということなんだと思いますけれども、民間がやる以上は、やはり行政機関がしっかりと雇用率を達成しなければならないと思うんですけれども、きのういただいた資料によりますと、市町村で達成しているところが八三%だから、まだ達成していないところが一七%もあるわけですよね。これはやはり、来年度というか、今年度中には達成してもらわないと、民間にやれやれと言って行政機関がやらないということにはならないんじゃないかと思いますので、その辺、徹底していただきたいなと思います。

 加えて、これは、私もずっと、本当に何年も前から言い続けているんですが、教育委員会の達成割合が非常に低いんですね。都道府県だと四六・八%で、市町村だと七九・五%になるわけですよ。ここをやはり、もう少し頑張っていただきたいなと思うんです。

 私も都議会議員の時代によく東京都で質問していたんですが、教育委員会は先生が多くて、教員免許を持っている障害者が少ないから仕方がないんだ、そういう言い方をずっとしてこられたんですけれども、でも、教育委員会の職員は必ずしも教員だけではないですよね。学校事務の人もいるし、また用務員の人もいるわけですよ。だから、用務員さん、学校に一人は知的障害者を入れるとか、学校事務の人には車椅子の人を一人入れるとかすることは、できない話ではないと思うんですね。

 それと、教育的な効果ということを考えても、やはり、幼いころから身近に障害を持っている方がいることによって、障害のある人ない人が一緒に暮らすような社会がいいんだということにも気づいてくれるし、偏見や差別もなくなっていくことにつながるんじゃないかと思うんですよ。そういう教育的な側面からしても、学校の中に障害者の雇用が広がっていくということは非常に重要だと思います。

 そういう観点からしても、とにかく教育委員会にもっとハッパをかけて、きちんと法定雇用率を達成させていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

広畑政府参考人 お答え申し上げます。

 教育委員会の雇用につきまして、今委員御指摘のとおり、昨年の六月一日時点におきます公的機関の達成割合は、都道府県の機関は九二・九%、市町村の機関は八三・〇%。一方、都道府県の教育委員会は四六・八%、市町村の教育委員会は七九・五%が未達成でございます。

 この点は、多分、市町村のところは教職員の数がほとんどカウントされておりませんので、そういった問題もあろうかと思いますが、いずれにいたしましても、厚生労働省におきましては、未達成の公的機関、特に教育委員会に対しまして、採用計画の作成と、採用計画が適正に実施されない場合の改善勧告や指導、それから、文部科学省や都道府県知事に対しまして、雇用率……。

 失礼しました。数字を間違えました。先ほど、市町村教育委員会は、七九・五%、大変失礼いたしました。

 採用計画の作成と、採用計画が適正に実施されない場合の改善勧告や指導、それから、文部科学省や都道府県知事に対しまして、雇用率達成に向けた取り組みを推進するための勧奨、助言を行うよう、文書によって要請をしてございます。

 さらに、今委員御指摘のとおり、教員の積極的採用のほか、施設等の職員、あるいは、いろいろな何とかセンターといったところもございますので、こういったところで教員以外の者による障害者雇用の好事例、いい事例がありますので、そういった事例の提供などをさせていただいております。

 いずれにいたしましても、御指摘のとおり、公的機関は民間企業を率先垂範して障害者雇用を推進すべきであると考えておりまして、未達成の教育委員会など公的機関について、引き続き指導助言を行ってまいりたいと思っております。

 先ほど、未達成と言い間違えましたが、先ほどの数字は達成割合でございます。おわびして訂正させていただきます。

初鹿分科員 今大臣、手を挙げかけていましたけれども、何かありましたら、一言お願いします。

塩崎国務大臣 それぞれいろいろな理由をおっしゃるんだろうと思いますけれども、やはり障害者雇用というのは社会を挙げて推進しなきゃいけないわけでありますので、教育委員会においてもしっかりやってもらいたいと思います。

 私は、高校のとき、アメリカに一年留学したときに、スクールカウンセラーというのが高校でいまして、必ず誰かいるんですね。私のスクールカウンセラーは車椅子の障害者でありました。そういうところでも使えるので、教育委員会はしっかり頑張ってもらいたいと思います。

初鹿分科員 ぜひよろしくお願いいたします。

 では、続いて、障害福祉サービスの報酬改定について少し御質問をさせていただきます。

 今回、ゼロ改定ということでありますけれども、実際には、消費税が引き上がっていたり物価が上昇しているということを考えると、事実上マイナスですし、サービスの種類によっては、実際にマイナスになっているところも多いわけですね。

 その一方で、介護職員、ヘルパーの処遇改善は行うということですが、私、自分でも事業をやっているので、非常に疑問なんですよ。

 特に処遇改善の加算、これはこれで私もありがたいとは思うんですけれども、やはりヘルパーさんだけが事業所の職員じゃないということもありますし、加算をとるのにかなりの書類をつくらなきゃいけないんですね。書類をつくる事務職員はその加算の対象にならない人であるという矛盾もあるし、研修を定期的にやるようなことになるんですが、研修に時間をとられると、その分サービスができませんから、特に居宅の介護だと、外に出ていってサービスをすることによって事業所に報酬が入ってくるわけですから、それを、事業所の中で研修をしていたら一銭にもならないわけですよ。そう考えると、処遇改善加算は、ありがたいようで、事業所には余りうまみがないものなんですね。

 ですので、全体の基本報酬の中にやはり組み入れてきちんと報酬全体を引き上げてもらわないと、なかなか本当の意味での処遇改善につながらないんじゃないかというふうに私は感じているんですけれども、その点についてどのように考えているのか、お聞かせください。

永岡副大臣 初鹿委員にお答えいたします。

 今回の福祉、介護職員の処遇改善加算の拡充は、これまでの処遇改善の取り組みを一層進めるため、さらなる資質の向上などの取り組みを行う事業所につきまして、一人当たり月額一・二万円相当の上乗せを行うものでございます。

 この加算の算定に当たりましては、職場外での研修の場の確保だけではなくて、OJTによります研修機会の提供ですとか技術指導などによる場合も算定可能としております。事業所の実情にそれぞれ応じた研修機会の確保を通じまして、処遇改善が図られるよう対応してまいりたいと考えております。

 いずれにいたしましても、事業所の具体的な取り組みを詳細に把握することによりまして、この加算が福祉、介護職員の処遇改善に確実に結びついているかにつきましても、しっかりと検証をしてまいりたいと考えております。

初鹿分科員 福祉事業をやっていて思うんですけれども、職員の給料を毎年上げたいと思うんですけれども、なかなか上げられないのは構造的なものなんですよ。

 というのは、定員が決まっていますよね。定員が決まっているから、定員いっぱいになってしまったら、同じことをやっていれば同じ収入しかないわけですね。そこで、給与のベースを上げるということになると、やはり利益を取り崩すしかないわけですよ。

 大きい法人で、歴史があって、給料の高い年配の人たちがどんどん退職をしていって若い人が入ってくる、それで総額の人件費が下がっていくようなところだったら上乗せしていくことができるんですけれども、小さい法人になればなるほどなかなか苦しいということもぜひ御理解をしていただいて、できれば職員の経験年数によって少し上乗せが行くような、そういう制度になってくれれば、定期的にどんどんどんどん給料が上がるような体制がつくれるんじゃないかというのを提案させていただきます。

 何かお答えはありますか。

藤井政府参考人 先生、今のお尋ねでございますけれども、一つは、今回の報酬改定におきまして、先ほど副大臣の方からも御答弁申し上げましたように、処遇改善加算の拡充ということをしておりますけれども、先生おっしゃいましたが、例えば定期昇給のようなところにもこの処遇改善加算を充てていただけるような、そういうことが可能になるようなことにしたいと思っておりますし、また、これも御案内のように、職員の勤続年数に着目した加算といたしましては、職員の勤続年数が三年以上の常勤職員の割合が一定以上の場合につきまして、福祉専門職員配置等加算において一定の評価を行っているところでございます。

 また、おっしゃいますような、入所施設なんかで定員が決まっていたりするとしても、その中で、例えば、これは今般の報酬改定におきましても、重度の障害者の受け入れに対して評価を手厚くするなどで、よりサービスが必要な利用者を支援する事業所につきましては報酬がまたふえるような、そういう評価も行っているところでございます。

初鹿分科員 済みません、時間がなくなってしまって、もう少し細かいことをたくさん聞きたかったんですけれども、きょうはこのあたりで終わりにさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

熊田主査代理 これにて初鹿明博君の質疑は終了いたしました。

 次に、清水忠史君。

清水分科員 日本共産党の清水忠史でございます。

 実は私、大阪市会議員をしているときに、全国の年金病院、社会保険病院を公的存続させるという運動に携わっておりまして、そのときの院内集会で、塩崎大臣が当時、存続のために力強く頑張るという発言をしていただいて、そのことを非常に印象深く思っております。

 その大臣に、私、初質疑ということで、きょう、実のあるやりとりができますよう一生懸命頑張りたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 初めに、生活保護の問題についてお伺いしたいと思います。

 生活保護制度については、この目的と理念をまず確認したいと思うんですね。

 全国社会福祉協議会発行の「生活保護法の解釈と運用」、これによりますと、日本国憲法第二十五条に規定する理念に基づき生活保護法の目的を定めた第一条の趣旨について、三点述べています。

 第一に、生活に困窮する者の最低生活を保障するもの、第二に、国の直接責任において行われるものであること、第三に、最低生活を保障するとともに、自立を助長することを目的とするとありますが、厚労省にお伺いします。これは間違いございませんか。

鈴木政府参考人 お答えを申し上げます。

 生活保護法第一条の趣旨につきましては、今先生のおっしゃったとおりでございます。

清水分科員 つまり、財源措置だとか実施機関の問題、いろいろありますけれども、生活保護の中身については、理念や規定に基づいて、逸脱しないように、いずれも国の責任においてその適正な運用が確保される必要があるということだと思います。

 そこでお伺いしますけれども、昨年十二月に大阪市が、生活保護費の一部をプリペイドカードで支給するというモデル事業を開始することを発表しました。これは既に募集が始まっております。

 大阪市が計画している生活保護費のプリペイドカードによる支給について、その事業概要について、厚労省の説明をお願いしたいと思います。

鈴木政府参考人 今お尋ねのございました大阪市のモデル事業でございますが、この取り組みは、生活保護受給者への家計管理支援、これを目的といたしまして、生活扶助費の一部をプリペイドカードにより支給する、こういうモデル事業であると聞いております。

 このモデル事業の実施に当たりましては、利用申し出のあった生活保護受給者を対象にいたしますとともに、現金の必要性を考慮した上で、プリペイドカードへの入金は生活扶助費の一部としているというふうに聞いております。

 また、大阪市におきましては、このモデル事業の実施によりまして、利用者が利用明細を活用することで家計管理を行うことができること、それから、福祉事務所において必要に応じて金銭管理支援を行うことができること、そして、紛失や盗難時に、みずからがカードの利用停止と再発行の手続をすれば、引き続き残高が利用可能となることなどのメリットがあるといたしております。

 モデル事業の実施を通じましてこの効果を検証する、そういう考え方であるということも聞いております。

清水分科員 ただいま、例えば受給者の家計管理だとかあるいは生活の支援ということがありましたけれども、そもそも厚生労働省として、生活保護世帯にプリペイドカードを利用してもらうことで大阪市の言うような高齢者世帯の金銭管理、生活支援、こういうものに役立つという知見はお持ちですか。検証されたことはございますか。

鈴木政府参考人 この大阪市のモデル事業のように、生活扶助費の一部をプリペイドカードによって支給する、こういった取り組みは、これまでに例のないものでございます。

 大阪市としては、今回のモデル事業は、先ほども申しました、利用者が利用明細を活用することで家計管理を行うことができる、そして、福祉事務所において必要に応じて金銭管理支援を行うことができる、こういったことから、家計管理あるいは金銭管理が必要な方々への支援ツールの一つとして活用する、これを目的に導入するものだと聞いております。

 したがいまして、お尋ねの点につきましては、大阪市が今回のモデル事業の結果を踏まえて評価をするものだというふうに承知をいたしておりまして、厚生労働省といたしましても、このモデル事業の実施と大阪市の検証を注視してまいりたいというふうに考えております。

清水分科員 モデル事業の推移を見守るということでは、ちょっと私、済まされないと思うんですね。

 金銭管理だとか生活支援というのであれば、領収書だとかあるいは家計簿というのを利用すれば十分できるというふうに思うんだけれども、なぜプリペイドカードを導入する必要があるのか。

 資料の一、ごらんいただきたいというふうに思います。

 左上に募集要項というのがありまして、参加条件というのがあるんですね。ここに何と書いているか。パソコンもしくはスマートフォンで会員ウエブサイトを閲覧可能な方、こう書いているわけですね。

 高齢者の金銭管理が目的ということでありますけれども、そもそも、金銭管理できないような高齢者がスマホやパソコンをできるのかというふうに思うんですね。

 それから、謝礼というところがありますね。申し込み先着二千名様に謝礼として三千円相当の商品券をお渡しします、こう書いているんですね。

 モデル事業で謝礼が出るというのも、私、ちょっと聞いたことないんですけれども、生活保護世帯に謝礼を出すモデル事業。

 大臣、この事業のことを御存じでしたか。

塩崎国務大臣 今回初めて知りました。

清水分科員 発表直後からマスコミでも大問題になっていまして、プリペイドカード導入の目的、それからその効果、これを疑問視する声がたくさんありまして、貧困問題に取り組む市民団体、それから生活困難を抱える方々の支援活動を行っているグループ、また福祉事務所のケースワーカーたちからも批判が集中しているんですね。先月には、大阪弁護士会と日弁連からも、プリペイドカード支給の中止を求める会長声明も発表されて、大問題になっております。

 モデル事業であろうが、そうでなかろうが、これだけ批判の集中している問題について、国が直接責任を負うというこの生活保護の問題について、効果の検証だとかその違法性について十分把握することなく見守るという態度では、私はだめだというふうに思っております。

 そこで、改めて質問したいと思います。

 金銭給付、これを原則とした生活保護法第三十一条第一項について説明していただけるでしょうか。

鈴木政府参考人 今お尋ねの生活保護法第三十一条第一項でございますけれども、「生活扶助は、金銭給付によつて行うものとする。」と書かれております。これは、生活扶助におきましては、原則として各人の自由購入に任せることが適当という趣旨を踏まえての規定であるというふうに理解をいたしております。

清水分科員 ありがとうございます。

 そうしたら、さらにお尋ねしますが、プリペイドカードで生活保護費を支給するというのは、この金銭給付に当たるんでしょうか。当たるか当たらないかだけお答えください。

鈴木政府参考人 ここで申します金銭といいますのは、通常、通貨を意味すると理解しておりますので、プリペイドカードによる支給というのはこの金銭給付には当たらないというふうに理解をいたしております。

清水分科員 例外的に、金銭給付が適当でないときとか、あるいはその他の目的のためにという場合は現物給付ということも書いてあるんですが、そうしたら、このプリペイドカードは現物給付に当たるんでしょうか。教えてください。

鈴木政府参考人 今先生御指摘のように、生活保護法第三十一条第一項におきましては、本文で、「生活扶助は、金銭給付によつて行うものとする。但し、これによることができないとき、これによることが適当でないとき、その他保護の目的を達するために必要があるときは、現物給付によつて行うことができる。」というふうに規定をされております。

 私どもの理解といたしましては、今回のプリペイドカードにつきましては、このただし書きの現物給付に当たるものというふうに理解をいたしております。

清水分科員 現物給付に当たるという重大な答弁が今ありましたので非常に驚いているんですけれども、その現物給付に当たるということの根拠、これはどこにあるんですか。

 先ほど申されたように、このことによって目的を達成することができない、あるいは適当でない、そういう要件になぜこのプリペイドカードが現物給付ということで当てはまるのか、もう少し明確に教えてください。

鈴木政府参考人 生活保護法上、現物給付につきましては六条の五項に規定がございまして、その中では、まさに先生、先ほど御紹介のありました小山進次郎著の解説書におきましても、現物給付という用語に対しまして、日常の受けとめよりもやや広い範囲を意味するということで、六条五項に規定をしたというような解説がございます。

 そういうことと、それから、先ほど御答弁申し上げました三十一条一項ただし書きの要件とあわせ持ちまして、まさに、この「保護の目的を達するために必要があるとき」という部分に該当することによりまして、今回のプリペイドカードのモデル事業については、この現物給付に当たり得るのではないだろうかというふうに考えているところでございます。

清水分科員 資料の二と三をごらんいただきたいというふうに思います。

 これは、資料二の方は日弁連の会長声明であります。それで、本文六行目には、「生活保護法三十一条一項に反し、違法」と声明で出されておりまして、続く三ページの大阪弁護士会の会長声明におきましても、十三行目に、「生活保護法第三十一条第一項に違反することは明らかであり、」と。つまり、このプリペイドカードというのは、金銭給付でもなければ、今おっしゃったような現物給付をしなければならないということにも当たらない。

 現物給付というのは、例えば、戦前、食べ物がない、この人にはお米を渡した方がいいとか着るものを渡したらいいとか、そういうのを現物給付というのであって、電子マネーを渡すというのが現物給付に当たるというふうに本当に考えているんですか。ちょっと明確に答えてください。

鈴木政府参考人 生活保護法第三十一条の解釈でございます。

 これは、先ほど先生がおっしゃったように、金銭給付を原則としておりますけれども、「保護の目的を達するために必要があるときは、現物給付によつて行うことができる。」とされておりまして、今回のモデル事業は、先ほど御説明申し上げましたように、プリペイドカードの利用明細等を家計管理支援として活用し、生活保護の目的であります生活保護受給者の自立の助長の一助とする、こういうこともうたわれておりますので、まさに、このただし書きに言う現物給付が可能な場合に当たるのではないかというふうに考えているところでございます。

清水分科員 では、聞き方をちょっと変えたいと思います。

 自己決定、自由購入の原則についてお伺いいたします。

 今回のモデル事業は、そのプリペイドカードはVISA加盟店のみ使用可能。一番最初にお配りした一枚目の資料に書いてあります、事業概要説明に。全ての商店で使えるわけではないんですよ、これはVISA加盟店のみで。そして、地元では、安売り店に行かれへんやないか、スーパー玉出でまとめ買いできへん、こういう不安と怒りの声が高まっておりますよ。

 また、アレルギーのある方は、自分に応じた食材などを購入する必要がありますから、そこの店がプリペイドカードを使えなかったら健康を損ねる可能性だってあるわけですし、プリペイドカードを店舗で提示することによって、私は生活保護を受けていますということがばれてしまう。これは生活保護への偏見を助長するということで、今、怒りが大きく高まっているわけですよ。

 高齢者の見守りなどを行っているのは商店街です。小売店ですよ。そういうところでVISAカードが使えなかったら、見守りをすることもできない。地域の商店街だって、売り上げが減って疲弊してしまう。

 ここで確認したいんですけれども、一旦支給された生活保護費の使い道、使途、この原則について聞きますけれども、これは保護者が自由に決定できる、これは間違いありませんか。

鈴木政府参考人 生活扶助の金銭給付につきましては、保護者がこれを自由に活用できるということについて、先生のおっしゃったとおりでございます。

清水分科員 自由決定、自己決定、自由購入の意思、そのとおりだ、何に使おうが自由だと今おっしゃった。そう言うけれども、プリペイドカードでは、限られた店舗しか使えないじゃないですか。違いますか。限られた商品しか買えないんじゃないですか。

 これは結局、生活保護受給者の保護費の使い道に対する自己決定権、自由購入の権利を完全に保障することにはつながらないのではないでしょうか。ここで、塩崎大臣。

塩崎国務大臣 今回の大阪市のモデル事業におきましては、この生活扶助費のプリペイドカードによる支給については、生活保護受給者の承諾を得た場合に限っているわけでございまして、また、現金の必要性を考慮した上で、プリペイドカードへの入金は生活扶助費の一部に限っているということから、各個人の自由購入を趣旨とする生活保護法の金銭給付の原則に反するところはないものと考えているところでございます。

清水分科員 今、承諾者のみというふうに大臣はお答えされたんですけれども、大阪市の橋下徹市長は、昨年十二月二十六日の記者会見でこう述べているんですよ。生活保護制度全体の適正支給、受給者の支出の適正化のために、管理する、記録するのは当たり前。さらに、希望者だけじゃなくて、本来的には対象者全てにプリペイドカードを導入することの是非について問われ、何と答えたか。そう思う。つまり、希望者だけじゃない、こういうふうに発言しているからこそ、地元では、全国でも、不安と怒りが広がっているわけですよね。

 大体、皆さん、希望者のみと言いますけれども、大阪市の生活保護の行政の実態を御存じですか。辞退届を半ば強制的に書かせてみたり、あるいは、必要な医療機関に通う、そういうことを阻害したり、さらに言いますと、ほんのわずかな自己負担の分だけでも、本来は行政が出さなければならない介護利用料などについても本人負担させる。さまざまな形でケースワーカーと受給者の力関係というのがあるわけですよ。

 ですから、希望者とか申し出に名をかりた、やがては強制になるのではないかというふうに言われているわけなんです。

 そうしたら、もう一つ、違う角度で確認したいと思います。

 このモデル事業には、さらに重大な問題点がございます。それは、大阪市健康福祉局も、それからこのプリペイドカード事業をやるカード会社も、事業概要説明の中で、どの店で何を購入したのか、実施機関が、当局が、利用明細を確認することができるとうたって事業提案をしているわけですね。つまり、大阪市当局が、生活保護受給者の購入記録、どこで何を買ったかというところを閲覧、管理することができるわけですよ。

 再度、最初に配りました一枚目の資料をごらんいただけますか。募集要項ですよ。ここにはどこにも、カード会社がとか、大阪市当局がとか、福祉事務所が受給者の購入記録を閲覧しますとは書いていないんですよ。

 私、大阪市のケースワーカーの方に聞きました。このモデル事業の説明会において、受給者の購入記録を大阪市当局が閲覧、調査する、そういうことを受給者の方に説明しなさいねという話があったか。ないと言うんですよ。つまり、このまま行われたら、受給者の方々の知らないところで、プリペイドカードによって購入された明細を第三者である福祉事務所が閲覧するということになるわけですよ。

 そもそも、厚労省として、このモデル事業にはこのような重大な説明が欠落している、そこをどう認識されていますか。お答えください。

鈴木政府参考人 今御指摘のあった点でございますけれども、福祉事務所につきましては、御案内のように、生活保護法上、保護の決定、実施のために必要があるときは、資産、収入、支出、その他の状況について要保護者の状況を調査することができるとされているのは御案内のとおりでございます。

 実際の運用におきましても、生活保護法に基づきまして、保護の開始時に受給者から、こういったものを調査を行いますよという同意書を徴収しております。その範囲内の中で今回のこのプリペイドカードの利用履歴についても調査が行われるということでございますので、その観点から、生活保護法上の特段の問題は生じないものというふうに理解をいたしております。

清水分科員 とんでもない詭弁ですよ。資産や収入を保護決定のときに調べるというのは私知っていますよ、大阪市議もやっていたんだから。しかし、受給者が、どこの店で何を買ったまで、本人の同意なしにプライバシーにまで立ち入って、当局が閲覧、管理、記録することが許されるんですかということを私は聞いているわけですよ。話をすりかえてもらっては困ります。

 この大阪市の事業説明を見ますと、ギャンブルだとか過度な飲酒、これに生活費を使い、自立に向けた生活設計を立てることが困難な方々への支援も求められている、これをプリペイドカード導入の文句にしているわけですよ。これでアルコール依存とかギャンブル依存がなくなるだろう、プリペイドカードを持たせればということなんですけれども。

 では、厚労省に聞きますけれども、このプリペイドカードを持たせることだけで、受給者のアルコール依存やギャンブル依存、改善できると考えているんですか。

鈴木政府参考人 生活保護を受給されている方の中には、御指摘のように、適切な家計管理ができないで、最低限度の生活を保障する目的で給付される保護費、これを趣旨に沿った形で使うことができない、こういった方も事実おられます。こういった方々に対しまして福祉事務所が家計管理の支援を行う、これ自体は有用なことだと考えております。

 そこで、例えばギャンブルとかお酒への依存がある方についての支援でございますけれども、家計管理の支援につきましては、今回のモデル事業というのは一つのやり方だろうと思っております。ただ、もちろん、それだけで全てのギャンブルあるいはお酒への依存等の方々に支援ができるわけではございません。

 具体的には、福祉事務所の実際の仕事の運用の中でも、例えば、専門的な医療につなぐこと、あるいは依存症を克服するための自助グループに参加を促す、そして、必要に応じまして福祉事務所に保健師、看護師等を配置できるようにまた交付税の措置もしておりますので、こういった支援もあわせ持って、総合的にいろいろな支援をしていくということだと理解をいたしております。

清水分科員 繰り返し申し上げますけれども、家計管理というんだったら、プリペイドカードを持たさなくても、ケースワーカーの方が寄り添って、領収書だとかあるいは家計簿だとか、そういうことで支援していったらいいわけですよ。先ほども確認しましたでしょう、プリペイドカードというのは全てのお店で使えるわけじゃないんですよ。しかも、その購入記録については当局が閲覧をする。これは、憲法十三条に基づく基本的人権、プライバシーにかかわる問題だと日弁連も大弁会も指摘しているわけなんですね。安易に考えてもらったら困ります。

 今おっしゃったように、ギャンブルとかアルコール依存というのは病気なんですよ。精神保健福祉協会の方も、依存症は脳の病気である、一人一人の専門的な生活支援が欠かせず、金銭的管理は支援になり得ないと言って、プリペイドカードの導入に反対しています。お酒を隠してもアルコール依存が治らないのと同じなんです。

 ケースワーカーの方に聞きますと、プリペイドカードを持たさなくてもアルコール依存の方はわかると言うんですよ、ギャンブル依存の方はわかると言うんですよ。生活保護費を受給した翌日に、お金を落としましたと来るんですよ、福祉事務所に。ケースワーカーの方は、目が節穴の方ばかりじゃないんです。どの方がお酒やギャンブルで困難な状態になっているのかというのは、わかっているんですよ。

 私、改めて問いたい。本来は、ケースワーカーが生活支援を必要とする受給者に対してしっかり家庭訪問する、本人に寄り添って長期的な生活支援を行うことが求められていると思います。

 ここで、資料の四番を見てください。

 これは、大阪市のケースワーカー、現業員の充足率及び不足人数です。大臣、これはよく見ていただきたいんですね。一人一人の受給者の皆さんの身近なところで支援をするというケースワーカーの充足率、今回、プリペイドカードのモデル事業をやろうとしている大阪市、充足率六七%ですよ。不足人数は何人ですか、四百七十人。政令市の中でも断トツじゃないですか。

 続けて、資料の六番を見てください。

 先ほど、厚労省は、ギャンブルとかお酒の問題については専門家の配置が必要だというふうにおっしゃった。この六番の資料を見ていただきたい。

 これは、社会福祉法第十五条で規定されている社会福祉主事の資格を持っている査察指導員、現業員の数を政令市ごとにあらわしたものです。査察指導員の欄を見ていただきますと、ほとんどの政令都市で一〇〇%充足している。一〇〇%、査察指導員は社会福祉主事の資格を持っている。大阪市はどうですか、二六・三%。現業員についても、全国レベルからかなり低い六一・六%というふうになっていますね。

 こうした状況を厚労省はどう認識しているんですか。お答えください。

鈴木政府参考人 今御指摘のように、大阪市におきます現業員の充足状況、これは、配置標準数が千四百二十三人に対しまして九百五十三人、充足率六七%でございます。

 また、現業員、査察指導員の資格取得状況につきましても、現業員九百五十三人のうち社会福祉主事が五百八十七人、六一・六%でございます。

 こうした問題につきまして、ただいまの充足率六七%等々につきまして、厚生労働省は、御案内のように、大阪市に対して指導監査等をやっております。そういったものを通じまして、生活保護の実施体制の整備について必要な指導を行っているところでございます。

清水分科員 何か靴の裏から足をかいているような答弁で、そんなことで本当にこういう現状を是正することができるのかと言わざるを得ません。

 私、最後に、塩崎大臣に、この質疑、やりとりを聞いていただいて、事の重要性に鑑みてお答えいただきたいと思うんですね。

 このモデル事業の募集が始まったのが二月なんですよ。目標は二千世帯なんです、大阪市でモデル事業に参加していただく生活保護世帯。二月末までに希望した世帯が、たった五世帯ですよ。たった五世帯。破綻しているんですよ、モデル事業として。見抜かれているわけですよ、こんなもの、何の役にも立たないということで。

 先ほど、申込者に三千円の謝礼が出ることになっていると言いましたが、この三千円は、大阪市が出すのと違うんです、カード会社が出すんです。なぜカード会社が、営利企業がお金を出してまでこんなモデル事業を唆してやっているか。莫大な手数料が入るからですよ。

 資料の八番をごらんください。資料八ページの下線部分。これは、政府の日本再興戦略における具体策の一つだ、利用拡大を含むキャッシュレス決済の普及を目指すと。

 カード会社が政府の再興戦略の中でキャッシュレス決済を普及していく、そのやり玉に、大阪市の生活保護の受給者を狙い撃ちにしてモデル事業をやるということが事の実態じゃありませんか。

 大阪市も、やがては本格実施につなげていくと公言しているんですよ、大臣。先ほど希望者だけとか言われましたけれども、そうじゃない。大阪市の生活扶助費は約一千億円です。仮に本格導入されれば、多額の生活扶助費が電子決済されることになって、業者は数億円の手数料収入を得るとの指摘もあります。

 クレジット会社に莫大な手数料を稼がせるだけ、行政と大手企業が結託して生活保護世帯を実験台にする、この貧困ビジネスのモデル事業を、厚労省として、大臣として、許したらあかんやろと私は思うんですが、いかがでしょう。

塩崎国務大臣 いわゆる貧困ビジネスのようなものは決して好ましいわけではないわけでありますが、今ここに書いてある、キャッシュレス決済の普及ということ自体は、何ら進めてはならないことではないわけで、むしろ進めた方が、全体的な社会コストが下がるという意味においていいことでありますから、それをVISAの方がどう利用するかはまた別問題だと思います。

 問題は、生活保護をどうするかということが我々にとって大事なことで、最低限の生活の保障をするという国の責任において、やらなきゃいけないことをどう効率的にやるかということで、私も、もちろん、地元のいろいろなミニ集会などを通じて、やはりいろいろな指摘が生活保護についてはございます。

 つまり、これは皆さんの税金ですから、約三兆円のお金を使って、しかし最低限の生活は守るという憲法の定めに従って、やるべき国の義務を果たすということでありますから、それをいかに効率的に所期の目的を達成するようにやるかということが大事なんだろうというふうに思います。

 そういう意味で、今回の大阪の試み、これはモデル事業ですから試みているわけですね、この試みは、一つは、利用者がちゃんとした支出管理をみずからできるようになるかどうか、それと、福祉事務所の側でもやはりそれをサポートできるかどうか、そして、盗難、なくなっちゃったというようなときでもちゃんとできるというところに着目をして、多分モデル事業を始められたんだろうと思うんです。

 ですから、さっき局長から説明したように、法的に問題はないというふうに我々は解釈をしているわけですから、とりあえず、これが本当に所期の目的を達成できるかどうか、我々としてはモデル事業をウオッチしていくということではないかなというふうに思います。

清水分科員 時間が来ましたので終わりますが、たった五世帯の募集ではモデル事業どころではないというふうに思います。

 私もキャッシュカードは持っていますよ。しかし、自己決定権を阻害するようなプリペイドカードの導入は、国としてやめるよう強く指導することを求めて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

熊田主査代理 これにて清水忠史君の質疑は終了いたしました。

 次に、本村伸子君。

本村(伸)分科員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 まず最初に、呼吸器、たんの吸引が必要な子供さんの通学保障、暮らしを丸ごと支えていく、この問題について御質問をさせていただきたいというふうに思います。

 愛知県は、特別支援学校がマンモス校、ワーストテンの中に五つ入っているという状況でございます。そのために、広範囲にわたって遠距離から子供たちが毎日学校に通わなければいけないという現状がございます。

 特別支援学校にはスクールバスがあるわけですけれども、しかし、たんの吸引や呼吸器を必要としている子供さんは、スクールバスに乗ることを断られているという現状がございます。ある子供さんは、毎日、お母様初め御家族の方が、西三河という地域から知多半島、距離のあるところを特別支援学校へ送り迎えをされております。

 スクールバスにも乗ることができない。厚生労働省の施策でも、これは通学だからだめだというふうに言われております。お母様からは、まず週一回だけでもいいから通学を公的に保障してほしい、こういうお声をお伺いしております。お母様も子供さんと一緒に過ごしていたいという思いはありますけれども、しかし、自分がもし病気になったり入院したり、そういうときにも通学を子供たちがちゃんとできる、そして暮らしがしっかりとできるということをやってほしいんだと言っておられました。

 今の現状は、障害を持った子供さんを育てている親御さんは働けない。これは、経済的な基盤に差が出てしまうということにつながってまいります。こんな状況を本当に許していいのか、放置していいのかということが国家として問われているというふうに思います。

 呼吸器、たんの吸引が必要な子供さんを初め一人一人の子供さんに対して、公的な通学を保障するために、きめ細やかな支援を行うべきです。厚生労働省、文部科学省縦割りではなく、障害を持った子供さんや御家族のことを第一に考え、柔軟に制度を運用し、差別なく通学保障をするべきだと思いますけれども、大臣、そして、きょうは文部科学省からも来ていただいておりますので、御答弁をお願い申し上げます。

塩崎国務大臣 先生今御指摘の、通学に関する問題でございます。

 現行制度におきましては、障害児の通学等の通年かつ長期にわたる外出に係る支援というものは、教育と福祉の役割分担が未整理、不十分であったことなどから、給付の対象外というふうになっております。一方で、市町村の判断によって、予算の範囲内において移動支援を行うということは可能となっておりまして、今、裁量的経費として実施をされておりますいわゆる地域生活支援事業の中の移動支援事業において、通学時の支援を行うということは可能になっております。

 こうした通学時の支援を含めた移動の支援のあり方につきましては、障害者総合支援法の施行三年後の見直し事項の一つに挙げられておりまして、障害者団体からも、障害福祉サービスの支援対象を通学等に拡大してほしいとの意見も多くいただいている中で、教育と福祉の役割分担のあり方や財源等を含め、十分な議論が必要ではないかというふうに考えているところでございます。

赤池大臣政務官 医療的なケアを必要とする子供のスクールバスなどによる通学については、委員御指摘のとおり、児童生徒の安全というものの確保が第一とした上で、各設置者において適切に判断すべき事柄であるというふうに認識しているところでございます。

 他方、その必要な医療的ケアの内容等によっては、大変危険を伴う場合などもございます。このため、文部科学省といたしましては、平成二十三年の十二月二十日、初中局長通知におきまして、スクールバスの送迎においては、乗車中に喀たん吸引が必要になる場合には、日常と異なる場所での対応となります、移動中の対応は危険性が高いことなどから、看護師等による対応が必要であるとともに、看護師等が対応する場合であっても慎重に対応することと指摘をしているところでございます。

 なお、文部科学省としては、平成二十五年から、特別支援学校への看護師の配置に係る経費の一部を補助する取り組みを既に実施しているところでございます。引き続き、医療的ケアを必要とする児童生徒等に対する支援の充実に努めてまいりたいと存じます。

本村(伸)分科員 早急に支援をしていただきたいということを求めておきたいと思います。

 呼吸器、たんの吸引が必要な子供さんは、地域で暮らすということも困難を抱えております。デイサービスやショートステイも身近なところになかなかないという状況がございます。西三河の地域では、ショートステイ、病院であるわけですけれども、ただ、同伴が必要だ、付き添いが必要だと言われて利用できないという状況がございます。

 保護者の方が入院したとき、病気になったときなどのことも考え、全国どこでも、公的な責任で、身近なところで呼吸器やたんの吸引が必要な子供さんのデイサービス、ショートステイの利用ができるようにするべきだと思いますけれども、厚生労働大臣、お願いいたします。

塩崎国務大臣 これは、私の地元なんかでも、やはりかなりの距離を移動しなければサービスが受けられないという問題を抱えている障害者、障害児のお話を私も何度も聞いたことがございます。

 保護者の送迎の負担を軽減する、そのために身近な地域で支援を行えるようにするということが重要な課題ではないかというふうにまず思うわけであります。

 そのために、平成二十七年度の障害報酬改定におきましても、医療連携体制加算の引き上げを行って、看護師等が支援を行う機会をふやすことで、身近な地域で安心して短期入所のサービスをより一層利用できるようにするとともに、障害児通所支援におけます重症心身障害児についての送迎加算というものを新設するということも、今回、二十七年度の障害報酬改定におきまして新たに加えたところでございます。

 いずれにいたしましても、引き続き、医療的ケアが必要な障害児に対する温かい支援というものが必要であって、努めてまいりたいというふうに思っております。

本村(伸)分科員 ありがとうございます。

 ぜひ、本当に地域に行き渡るように、積極的にPRもしていただいて進めていただきたいというふうに思います。

 そもそも、日本は障害を持った方々の予算がまだまだ少ない現状にございます。ぜひ予算をふやしていただいて、障害を持った子供たちの全面参加と平等、これを実現していただきますことを重ねて強調しておきたいというふうに思います。

 次に、外国人労働者、技能実習生の問題について質問をさせていただきます。

 私が住む愛知県豊田市を初め比例東海ブロックの範囲というのは、外国人労働者や技能実習生の方々が大変多い地域となっております。地元の労働組合、愛労連の皆さんのところにも、かなり相談が寄せられている現状がございます。

 一人の人間として誰もが大切にされる、そういう社会をつくっていかなければならないというふうに思います。しかし、外国人労働者の方々や技能実習生の方々は、人権がかなり脅かされているという深刻なケースがございます。

 厚生労働大臣にまずお伺いをいたします。外国人労働者、技能実習生の方々も労働者として平等に権利が保障される、そのためにしっかりと監督指導を行っていくというその御決意をまずお伺いしたいと思います。

塩崎国務大臣 今回、技能実習生の制度を抜本的に見直しまして、改めて法律にして、国会で御審議をいただくということになっております。

 それは、いろいろな御指摘が世界からも寄せられていることを十分認識した上で、そして、中には、いろいろ今先生御指摘のような人権侵害に当たるようなことをやはり起こしているケースもあるということは十分認識した上で、しかし、大半は、大変いい人間関係で技能を学んでいただいて自国に帰っていただくというところが多いということも事実だろうと思うんです。ですから、決して外からの批判を受けることのないような制度にするということで、私ども、私は当時、まだ政調会長代理というのをやっておりまして、この制度の見直しの際に責任ある立場にありましたけれども、そのようなことに留意をしながらやってまいりました。

 この技能実習生につきましては、事業主との雇用関係のもとで労働基準関係法令が適用される、こういうことから、これらの法令違反があった場合には、労働基準監督署において厳しくこれを指導しているところでもありますし、また今後もそうしなければならないというふうに思っております。

 さらに、先般提出いたしました技能実習法案においては、新たに外国人技能実習機構というのを創設して、監理団体等への実地検査等を行うこととしておりまして、労働基準監督署と連携をして技能実習生の権利保護を徹底してまいりたいというふうに考えているところでございます。

本村(伸)分科員 ありがとうございます。

 ひどい人権侵害があっても声を上げられないという状況に追い込まれていくケースというのも多いわけでございます。例えば、もし公的な機関に訴えたりした場合に、日本円で三百万円以上の罰金を払うという内容の、いわゆる黒い契約書というものにサインをさせられたり、そういうケースもあるわけです。こういう黒い契約書をどう防ぐのかということも問題になってくるというふうに思います。

 私は、最低限必要だというふうに思いますのは、技能実習生の皆さんや外国人労働者の皆さんが安心して相談することができる、法的権限を持って解決をすることができる、雇用主や監理団体と一切関係のない第三者の独立した公的な機関が必要だというふうにまず強調しておきたいと思うんです。

 さまざま闇の世界があるわけですけれども、闇の世界という点では、近年、技能実習生の失踪というものが急増しております。

 国際研修協力機構、JITCOによれば、技能実習生の行方不明者というのは、二〇一一年度千百十五人、二〇一二年度千五百三十二人、二〇一三年度二千八百二十二人。そして、三月八日の新聞記事によれば、外国人技能実習生、昨年、最多四千八百五十一人の失踪だと。背景に厳しい労働環境というふうに記事にもございます。このように、失踪者というのもふえております。

 昨年、富山県で五十人もの外国人が不正就労で名古屋入管に摘発をされましたけれども、この事件でもブローカーの存在が指摘をされております。日本語の不自由な外国人の方々が仕事を探す際に不正なブローカーが仲介するということは、容易に想定されるというふうに思うわけでございます。

 今、職安、職業安定所なんかでいえば、外国人雇用状況報告というものをつかんでみえるというふうに思いますけれども、労働行政の観点からも、失踪が多いということはやはりそこは厳しい労働環境にあるのではないかという観点も含めて、体制を強化しながら把握できる仕組み、あるいは、富山のケースでは派遣会社がそういうブローカーの役割を果たしていたわけですけれども、そういう失踪を助長するブローカーを根絶する施策をぜひ行うべきだというふうに思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

宮川政府参考人 何点かの御質問がございましたけれども、一つは、外国人雇用状況の届け出の徹底の観点での失踪の点と、それから、そもそもブローカー対策をどうするのかという点がございました。

 外国人雇用状況の届け出につきましては、雇用対策法二十八条の規定に基づきまして、事業主が新たに外国人を雇い入れた場合、その外国人が離職した場合、厚生労働大臣に、実際はハローワークでございますけれども、届け出るという形になってございます。

 御指摘の、事業主からの届け出を徹底することによりまして、ハローワーク窓口での相談ですとか事業所訪問等での周知という形の中で、外国人を雇用したり、あるいは離職した場合の届け出がなされていないというようなことにより、事業所訪問などをして実態を把握するということもできるのではなかろうかと思っております。そういう点で、速やかな届け出を行うという観点が何よりも重要じゃないかなと考えているところでございます。

 厚生労働省としましては、引き続き、外国人の就労状況の把握、そして事業主による適正な雇用管理の確保という形に努めてまいりたいと思います。

 一方、実習生の失踪とブローカーの関係でございますが、実習生の失踪が増加しているのは今先生御指摘のとおりでございまして、その背景には、実習生に在留資格外の就労をあっせんするなど、不法就労を助長するブローカーが存在しているのではないかと指摘されているところでございます。

 このため、厚生労働省も法務省も含めた政府全体といたしましては、外国人を雇用する事業主に対しまして、不法就労は法律で禁止されているということ、それから、不法就労した外国人だけでなく、不法就労させた事業主も処罰の対象となる、この点についての周知啓発をするとともに、いわゆる不法就労助長罪、不法就労をさせたり不法就労をあっせんした者に対する罰則、あるいは、それが外国人であった場合には退去強制の対象とすること、こういうような制度を活用いたしまして対策に取り組んでいるところでございます。

 今後とも、こうした取り組みを徹底することによりまして、悪質なブローカーの排除に、関係省庁と連携を強化して努めてまいりたいと思っております。

本村(伸)分科員 技能実習生の方は被害者という側面もありますので、ぜひ守りながらやっていただきたいというふうに思います。

 監理団体についてもお伺いをしたいと思います。

 技能実習生の制度、そして、ことし四月からスタートする外国人建設労働者受け入れ事業もそうですけれども、もし受け入れ企業で問題があったとき、職場をかわりたいときに、監理団体に相談をというお話もよく聞くわけでございます。

 関東地方の建設会社の例なんですけれども、こういう事例もございました。中国人男性の方が、技能実習生の方ですけれども、二〇一三年の暮れに仕事中に腰を負傷いたしました。しかし、会社からは休めば給料を下げるとおどされ、痛みが悪化をし、たまらず欠勤をすると、受け入れ窓口になっている監理団体が帰国の航空券を手配するというふうに通告をしてきました。このケースでは、監理団体も労働災害を隠す、手をかして一緒に不法なことをしております。

 企業の不正を訴えた場合に、監理団体によって強制帰国させられてしまうということも少なくありません。これでは、やはり声を上げることも難しいというふうに思うんですね。

 このような監理団体による不正はどのように防ぐのか。監理団体に対する監査の抜本的な強化が必要だというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

宮川政府参考人 お答えいたします。

 監理団体、実習実施者あるいは送り出し機関などがさまざまな形で不適正な行為を行うという形の中で、それをどのような形で防いでいくかという点でございますが、現在におきましては、法務省令に基づく形といたしまして、これらのさまざまな不適正な行為が行われた場合には、それは不適正であるという形の中でその対応をする、一定期間、実習生を取り扱うことができなくなるような仕組みとはなっておるところでございますが、今までのところ、そういうものが必ずしも強化されているものではございません。

 今回の法案の中で、まず一点、技能実習生の方からの申告ということが非常に重要なのではないかという観点で、法律違反、さまざまな申告がある場合、労働基準法の場合はいわゆる労働基準法違反の申告が監督署の方にできるわけですが、それと同様に、技能実習関係の法令に違反しているような内容について厚生労働大臣に対する申告という形で、その申告を法律上の制度とし、それを担保していく。このようなものを申告したことによる不利益取り扱いについても禁じるなどの制度をつくりまして、一方で申告がきちっとできるようにするという対応をさせていただきたいと思います。

 また、御指摘の問題点の中の一つに、労災隠しの問題がございました。

 労災隠しの問題そのものにつきましては、都道府県労働局や労働基準監督署で厳しく取り締まっているところではございますが、今後、監理団体というまた別の観点の方々がそういうような問題につきまして問題を起こしたとき、現状では、例えば不適正というか、うその文書を入国管理局に出した場合には、入国管理法制の中で、不正行為の通知という形で、一定期間、実習生の受け入れをやめる形のものができるわけですが、今後につきましては、新法に基づきまして、監理団体が労働関係法令に違反したり新しい法律に違反するというような形のものが、実習実施計画の認定ですとか監理団体の許可の欠格事由や取り消し事由に該当し得るという形のものにしたいと思っておりまして、内容やその程度に応じまして実習の受け入れができなくなるような仕組みとしたいと考えているところでございます。

本村(伸)分科員 もう一つ事例を挙げたいんですけれども、岐阜県にある監理団体が、受け入れ企業に対して次のような注意通知を出しております。

 「研修生受入れに際しての注意事項」ということなんですけれども、「弊協同組合において一番懸念される事は、入国管理局における抜き打ち査察である(必ず作業現場の査察がある)。 JITCO(国際研修協力機構)の企業立ち入りに関しては、必ず事前の連絡が入るため、入国管理局への対応が出来ればそれに付随する。」

 続いてこういうふうにございます。

 「入国管理局(以下Nと証する)抜き打ち査察に対する対処案」ということで、「1各工場には中国人研修生が二十人づつ配置される事からして、その人数分の飯ずし作業」、発酵させてつくるおすしのようなものですけれども、「飯ずし作業現場を設ける。(通常は、他の作業をしていても吝かではない。)」「Nは、いきなり工場内に立ち入る事は出来ない為、各工場の事務所を訪ねて来る、その為若干のタイムラグがある為それを利用する。(一斉に研修生達に知らせ、飯ずし作業現場に集合する。)」というような、監理団体が受け入れ企業にこういうものを出しているわけでございます。

 JITCOが侮られている。事前に連絡しているから大丈夫だということも、ここには書かれているわけでございます。

 そこで、JITCOについて議論をさせていただきたいんですけれども、JITCOは今でも、不正がないかということを調査する場合に、監理団体や受け入れ企業を訪問する前に事前に連絡をしているんでしょうか。

宮川政府参考人 JITCOの監理団体に対する巡回指導という、予算措置で行っております事業についての御質問でございますが、原則、事前に連絡するものと承知しております。

本村(伸)分科員 JITCOの二〇一三年度の経常収益を見てみますと、経常収益二十億三千百十四万円余りですけれども、その中で、監理団体や受け入れ企業が出している賛助会費というのは幾らかといいますと、十二億三百八十一万円になっております。経常収益の半分以上が賛助会員の会費で運営されているということでございます。

 こういう監理団体や受け入れ企業との関係がある中で、本当に受け入れ企業や監理団体の不正をチェックできるのかということが問われると思いますけれども、いかがでしょうか。

宮川政府参考人 お答えいたします。

 JITCO、公益財団法人国際研修協力機構が監理団体等から賛助会費を得ているということは事実でございます。

 監理団体に対する巡回指導は、先ほども申しましたように、いわゆる法的な根拠はないわけでございますが、予算措置として巡回指導をお願いしているということでございまして、これにつきましては、厚生労働省で定めております巡回指導基準に従って適正に行われているものと考えておりますが、一方、先生今御指摘のように、このような形のものということに対する指摘があることも事実でございます。

 今回の新しい法律に基づきまして、新たに外国人技能実習機構を創設いたしまして、この新法に基づく、法律上の根拠に基づく監理団体に対する報告徴収あるいは実地検査というものを位置づけまして、適正に今後さらに強化されるものと考えているところでございます。

 以上でございます。

本村(伸)分科員 JITCOが受け入れ企業や監理団体からの会費収入に依存をして、法的権限がないということから、実効力がないということを厚生労働省の報告書でも指摘をされているわけでございます。

 このチェック機能に対しても、拘束力、実効力がないというふうに言われているわけですけれども、母国語相談というのもやっておりまして、その相談についても、技能実習生を守っていないという例がございます。

 これは二〇一一年のときわ食品の事件ですけれども、JITCOに電話をして相談した実習生について、JITCOから連絡を受けた監理団体が、本人は希望していないのに、帰国を希望していると言って、すぐに帰国の旅券を手配してしまいました。この監理団体というのはなぜか介護施設が住所でありまして、入国手続から日常の監理まで、派遣会社でありますITCが委託を受けておりました。帰国も派遣会社が手配をしておりました。

 JITCOに相談したことで、技能実習生にとって不利益が生じてしまっているわけでございます。声を上げると帰国させられるということは、技能実習生の皆さん、このことに本当におびえているわけでございます。こういうことは絶対にあってはならない。本当に独立した、監理団体や受け入れ企業と一切関係のない独立した、公的な、法的権限を持った機関が必要だということを強調しておきたいと思うんです。

 そこで、国土交通省にも来ていただきました。

 ことし四月から、建設労働者については、技能実習を修了した方々を対象に、二から三年、技能実習生としてではなく国交省が認める特定活動として、法改正もなく、日本で働くことができるように緩和をしようとされております。

 この新制度でも、技能実習制度のJITCOがやっているような制度推進事業実施機関というものをつくりまして、監理団体と受け入れ企業の巡回指導などを行う事業を委託するということになっております。

 その制度推進事業実施機関ですけれども、ことし二月二十四日に公募選定手続がスタートをいたしました。決定というのは三月下旬になります。四月から外国人建設労働者の受け入れをスタートしようとしている、そういうときに、本当に拙速な決め方ではないか、ずさんな決め方ではないのかというふうに思います。

 きょう議論をしてまいりました、一点目で、監理団体と受け入れ企業、こういうところと一切関係のない第三者性がこの制度推進実施機関には担保されるのかという点、そして、外国人建設労働者の皆さんが不利益をこうむることがないように安心して相談できるのかという点、そして三点目ですけれども、監理団体や受け入れ企業に対して、報告ですとか帳簿書類の提出ですとか、そういうものを命じたり、出頭を求めたり、立入検査をしたり、そういう法的権限を持って解決できる公的機関なのかというこの三点、確認をさせていただきたいと思います。

吉田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の、建設分野におきます外国人材の活用に係る緊急措置でございますが、これにつきましては、昨年の四月の関係閣僚会議における取りまとめにおきまして、現行の技能実習制度を上回る新たな特別の監理体制によりまして適正監理を図ることとされたところでございます。

 そして、その内容は、国土交通大臣の告示及びこれを具体化するガイドラインに規定しているところでございます。制度推進事業実施機関の巡回指導につきましても、この告示、ガイドラインに基づいて実施するものでございます。

 この告示及びガイドラインにおきましては、巡回指導先、監理団体になるわけでございますが、制度推進事業実施機関に非協力的な態度をとったような場合には、認定の取り消しを含めた対応を行うこととしておりまして、これにより実効性は担保されるというふうに考えてございます。

 また、巡回指導につきましては、巡回指導基準に基づきまして、一者当たり年一回以上行うことですとか、また、できる限り外国人建設就労者との面談を行うといったようなこととしているところでございます。

 また、最後、第三者性の担保の問題の御指摘がございました。これにつきましては、現在、実施機関について選定手続中でございますけれども、その企画競争参加資格要件におきまして、外国人技能実習生等を受け入れておらないといったようなことを要件としているところでございます。

 御指摘の第三者性の担保の必要性も踏まえまして、入札の公募手続を通じて適正に選定を行ってまいりたいと考えているところでございます。

本村(伸)分科員 これで終わりますけれども、国土交通省にお聞きしたときに、JITCOも有力な委託先だというお話もありました。私は、そのお話も聞いて大変懸念をしております。こういう四月からの拙速な実施はやめるべきだということを申し上げ、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

熊田主査代理 これにて本村伸子君の質疑は終了いたしました。

 次に、中野洋昌君。

中野分科員 公明党の中野洋昌でございます。時間も限られておりますので、早速質問に入らせていただきます。

 まず、造血幹細胞移植の関係で御質問をさせていただきます。

 党の方では、私は、造血幹細胞移植の推進プロジェクトチームの事務局長ということで、今、活動させていただいております。今いらっしゃる我が党の山本副大臣はこの造血幹細胞移植推進法の成立ということで大変御尽力されたわけでございますけれども、しっかり取り組んでまいりたいと思います。

 造血幹細胞移植推進法が施行されまして一年以上が経過をいたしました。

 この法律、まず、移植の体制をしっかり整える。骨髄バンクであるとか臍帯血バンクであるとか、これを支えるために本当に多くの皆様が大変御尽力をしていただいている、こうした移植の体制をしっかり整える。患者の皆様にとっても、病気の種類であるとか病状であるとか、こうしたものに最適な移植をしっかりと行う。移植をしたら、その後、移植後の生活の質の改善をしっかり図っていく。こうしたことをしっかり視野に入れた法律である、このように承知をしております。

 しかし、私の地元でもこういう御相談がございまして、それは何かと申しますと、ある方が白血病に苦しむ親戚の方に末梢血幹細胞移植をされた、これでうまく適合して、これで何とかということであったんですけれども、大変残念なことに、移植後しばらくして亡くなられてしまった、こういう大変悲しいことがございました。

 やはり、移植するまでの体制の整備、大事なんでございますけれども、移植をしてからがやはり大事だな、移植後の患者の方々に対するフォローをしっかりしていかないといけないな、こういうことを改めて痛感した次第でございます。

 私が伺っておりますのは、例えば名古屋市の第一赤十字病院で、移植した患者の方の健康の状態をフォローする、こういう移植ですよ、いろいろな情報を記載した造血幹細胞移植健康手帳、こういうものを発行している、このように聞いております。こうした手帳を移植された患者の方に配付する、しっかりわかっていただく、あるいは、ほかの病院にかかるときも、こういう移植をしているんだなと把握をしていただく。

 これは患者の方の生活の質の向上という観点で非常に重要であって、こういうものをしっかりと配付していくべきだ、しっかりフォローしていくべきだ、私はこう考えますけれども、いかがでございますか。

山本副大臣 今御指摘をいただきましたとおり、造血幹細胞移植におきまして、移植後の患者さんの健康状態を中長期的な観点からフォローする、患者の生活の質の向上を図るということは、極めて重要なことでございます。そのため、平成二十五年度から、造血幹細胞移植の拠点となる病院が御指摘の移植患者の健康管理のための手帳を作成、配付等をする場合に、拠点病院事業の対象経費として認めているところでございます。

 現在、そうした関係学会におきまして、この手帳の内容の統一といったことに向けて検討がなされていると承知をしておりますけれども、厚生労働省といたしましても、平成二十七年度におきましては、こうした取り組みもしっかりと支援をしつつ、全ての拠点病院におきまして、手帳の作成、配付に取り組めるように推進してまいりたいと思っております。

中野分科員 副大臣、ありがとうございます。

 また、私が相談を受けた件では、こういったこともございまして、それは何かといいますと、例えば、ドナーとなられたんですけれども、ドナーとなる方の負担も減らしていかないといけない。そうしていかなければ、やはりこのバンクに登録をしていただく方というのを、特に若い方をもっともっとふやしていかないといけませんので、こうした取り組みも非常に重要だなと思います。

 私が伺ったのは、ドナーとなって、移植をするんだけれども、では、会社を休まないといけない。このときに、その企業はドナー休暇という仕組みは特にとっていなかった。大企業であればそういったものがあるかもしれませんけれども。ですので、休まないといけない。何とか通常の有休で対応されたというふうに伺いました。

 やはりこうしたバンクの登録者をふやしていくという観点からも、ドナーの方の負担を減らす。例えば、ドナー休暇を採用している企業、これはまだまだ少ないと思いますので、こうした取得ももっと促進していくべきではないかと考えますけれども、いかがでございますか。

山本副大臣 おっしゃるとおり、造血幹細胞移植というのは、善意のドナーの方がおられて初めて成り立つものでございまして、ドナーの方々には本当に深く感謝を申し上げるとともに、敬意を表したいと思っております。

 御指摘のドナー休暇制度なんですが、現在、二十七年二月六日現在では二百五十一社。まだまだ少ないと思いますが、ドナーの方々が骨髄等を提供される際の負担を軽減するものとして、移植の普及を図っていく上で極めて重要なものだと考えております。

 こうしたドナー休暇制度につきましては、現在、造血幹細胞移植推進法に基づきまして、あっせん事業者である公益財団法人の日本骨髄バンクにおきまして、企業等に対して、制度の普及活動、啓発活動を行っております。

 厚生労働省といたしましても、引き続きそれらの活動を支援して、制度の普及をしっかりと図ってまいりたいと考えております。

中野分科員 また、こういった御要望もございまして、それは何かといいますと、ドナーとなる方に、やはり、その事前あるいは事後でどういうふうなことになるのか、例えば、採取をするのにどのようになって、その後どうなってと。こういうことで、いろいろな情報提供あるいはフォローみたいなものがもっとあれば、不安もなくこういったドナーになることができたんじゃないかというお話を伺いました。

 これは、私は非常に単純なことではあると思うんですけれども、実際、例えば骨髄の移植とかであれば採取をするのもかなり大変だというふうには聞いておりますけれども、この方は末梢血幹細胞ということで、そこまで、想像していたほどではなかったと。

 ですので、大変不安を抱えられながら、ドナーというものは大丈夫だろうか、自分ができるだろうか、いろいろな不安の中でドナーとなって、そして、それが終わった後も、では何かフォローがあるかというと、なかなかない。精神的な意味でも、やはりこうしたフォローをしっかりとしていけば、ではドナーになろうという方ももっとふえていくんじゃないか、私はこういうふうに思いました。

 病院であるとかバンクであるとかでも、コーディネーターという方がそういったドナーの方のフォローをするというふうにも聞いておりますけれども、まだまだ実際は不十分だなと思います。こうした方々の配置をもっと進めていくなど、ドナーに対するフォローというものもあわせてしっかりと行っていくべきではないかというふうに考えますけれども、いかがでございましょうか。

山本副大臣 おっしゃるとおり、ドナーコーディネーターの方は大変重要でございまして、骨髄等を提供いただいた善意のドナーに対するフォローアップというのは、採取後もドナーが健康に生活されているかどうかを確認するために必要であるだけじゃなくて、将来的に骨髄等の移植をさらに普及していく、ドナーの方々になっていただくというためにも重要な取り組みであると私たちも考えております。

 現在、造血幹細胞移植推進法に基づきまして、骨髄バンクにおいて、骨髄等の採取後、体調に不安が残るドナーの健康状態が回復するまでの間、健康診断の実施やコーディネーターによる健康状態の確認などを行っております。

 コーディネーターの方は今二百三十三名いらっしゃるわけでありますけれども、今のところ、すごく不足しているという状況ではありませんが、さらにきめ細やかなコーディネートを行っていただくために、適切なこういった配置というものも骨髄バンクを通じましてしっかりとできるように、厚生労働省といたしましても必要な支援を行ってまいりたいと考えておりますので、ぜひ、中野議員におかれましても、PTの座長として頑張っていただきたいと思います。

中野分科員 ありがとうございます。PTの事務局長でございます。

 大変大事な分野であるというふうに思います。私もしっかり取り組んでまいりますし、山本副大臣、また、塩崎大臣も戻ってこられました、ぜひこの分野、厚生労働省としても力を入れていただけますよう、重ねてお願いを申し上げたいというふうに思います。

 次の質問に移りたいんですけれども、これも、私の地元で相談を受けた、そういったお話でございます。視覚障害者の皆様の就業支援ということについてお伺いをしたいというふうに思います。

 どういう御意見を伺ったかといいますと、視覚障害者の皆様で、特に通常の事務系の職種、こういったところに就職をする方というのがまだまだ少ないんじゃないか、こういうお話を伺いました。

 私も、お話を伺ってデータを見まして、就業者、就職をしている方という比率でいけば、身体障害者の皆様、あるいはほかの障害者の皆様の中でも、視覚障害者の方というのはそんなに遜色がない比率ではありまして、しかし、確かに、中を見ると、業種が、いわゆるあはき業、あんま、はり、きゅうですとか、視覚障害者の方がその技術を磨いてやっておられる、こういう職種の方が非常に全体的には多いな、確かに通常の事務職の方というのはまだまだ少ないのかな、こういうふうに思いました。

 私は、あんまであるとか、はりとか、こういったものが悪いというわけではなくて、こうした分野でも引き続きしっかり活躍をしていただく。他方で、IT機器ですとか、いろいろなものが普及をしてまいりまして、視覚障害があったとしても、通常の、例えばパソコンを使ったりですとか、いろいろなものを使って仕事をしっかりできる。これは、環境を整えさえすれば、私はかなり今後広がっていくものであるというふうに思いますし、また非常に可能性があるな、このように感じた次第でございます。

 こういった事務系の職種も含めて視覚障害者の皆様の就職がどんどん進んでいくようにということで、やはりそのためには雇用環境を整備しないと、普通のパソコンではなかなか就職はできませんので、雇用環境の整備というのをこれからしっかり国としてやっていかないといけない、こう思いますけれども、政府の御答弁を求めます。

広畑政府参考人 お答え申し上げます。

 視覚障害者の方の就職状況につきましては、ただいま委員御指摘のとおり、あんま、はり、きゅう、マッサージ等の専門的、技術的職業の割合が多くて、五割を超えております。職域の多様化という観点からも、今一割程度でございますけれども、事務系の職種への雇用を進めていくことも重要であると考えてございます。

 このため、事務系職種を望む方への就労支援といたしましては、まず、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構におきまして、視覚障害者の事務作業を容易にするための就労支援機器、例えば拡大読書器であるとか、あるいは画面読み上げソフトであるとか、こうした機器につきまして、事業主の購入、活用を促進するために、購入費用の一部の助成、あるいは無料の貸し出しも行ってございます。

 また、各ハローワークにおきましても、障害者の職域拡大のための企業指導を行う際に、こうした助成金制度や就労支援機器の活用事例マニュアル等を周知させていただくことや、さらに、各都道府県に設置しております地域障害者職業センターにおきまして、事業主と視覚障害者双方への相談、助言などを行っているところでございます。

 今後とも、これらの取り組みを通じまして、視覚障害者の方の雇用のさらなる促進に努めてまいりたいと考えております。

中野分科員 ぜひとも取り組みをしっかりと進めていただきたい、このように要望を申し上げます。

 続きまして、小児救急電話相談、いわゆるダイヤル八〇〇〇、これについて質問をさせていただきます。

 この小児救急電話相談は公明党が今まで非常に大きく推進をしてきた、このように自負をしております。それぞれの都道府県でやっておりますけれども、現在、全ての都道府県で行われるようになった。

 確かに、今、核家族化も進んでまいりまして、若いお母さんが、突然、赤ちゃん、子供が夜中に泣いてとまらない、あるいは、どうしようか、病院に連れていくべきか、こういうことがあるときに、なかなか相談できる人がいない、全部救急に連れていくというわけにもいかないということで、非常にこの電話相談というのが、件数もふえておりますし、これはますます大事になってくるのではないかなというふうに思います。

 他方で、この電話相談につきましてはいろいろなお声もいただいているところでございまして、例えば、一番伺うのが、夜中にかけてもつながらない、こういうことはよく伺います。都道府県でやっておりますので、それぞれのところでこういう要望をいただいて、それぞれの都道府県で、もちろん、県会議員の方とかいろいろな方にお願いをして、改善をしてもらうケースもございます。例えば、人をふやすとか、時間を延ばすとか、いろいろなケースがあるかというふうに思います。

 例えば、夜中にかけようと思うんだけれども、肝心の夜の時間だけやっていないとか、確かに、昼間のときは普通に小児科に行けますので、一番どうしようかわからない時間帯にやってもらわないと困るんだけれども、それがやっていない。

 あるいは、夜中にやっていないだけならともかく、夜中に電話をしても、では、夜はやっていないからここにかけてくださいというふうな、別に音声案内があるわけでもなく、どうしたらいいのかわからなくなった、こういうふうなお声もいただいたりですとか、いろいろなお声をいただいて、やはり改善をすべきところはしっかりやらないといけないなと思います。

 しかし、他方で、体制を拡充するというのも予算が当然必要になってくる部分はございますし、そうした、例えば、私が先ほど申し上げたような、やっていない時間であっても、ではかわりにここにかければいいですとか、いろいろな形で、でき得る限り対応する手段というのはあるんじゃないかというふうに私は思います。

 厚生労働省としても、せっかく全都道府県に今広まってきた事業でございますし、しっかりと行き届くように支援もし、また指導もしっかりしていっていただきたいな、このように思うんですけれども、いかがでございましょうか。

二川政府参考人 小児救急電話相談、いわゆるシャープ八〇〇〇についてのお尋ねでございますけれども、この事業は、委員御指摘のとおり、平成十六年度から開始をされまして、平成二十二年度には全都道府県で実施をされているわけでございます。

 始まりました平成十六年度には年間約三万件ぐらいの相談件数でございましたけれども、平成二十五年度では約五十六万件というふうに、大変多く利用されておりまして、相談件数の増加が続いているわけでございます。

 相談件数の増加とともに、委員御指摘のとおり、話し中であったり、あるいは、深夜などやっていない時間帯がある、その時間帯は相談ができない、こういった状況がある、そういった都道府県もあるといったことは、確かにそのとおりでございまして、各都道府県におきまして、回線数をふやすとか、相談できる時間帯をふやすとか、そういった取り組みの強化はしていただいているところでございますけれども、さらにそういった実情をよく、十分踏まえて取り組んでいただく必要があろうと思っております。

 厚生労働省といたしましても、小児救急電話相談、安心して子育てをするために大変重要な事業でございますので、地域の実情に応じて都道府県が相談体制を組んでいただきますように、財政支援等につきまして積極的に取り組んでまいりたいというふうに考えているところでございます。

    〔熊田主査代理退席、主査着席〕

中野分科員 それぞれの地元で状況は違うと思いますので、またしっかり私も地元と連携をしてやってまいりたいと思いますけれども、国としてもしっかり御支援のほど、よろしくお願い申し上げます。

 少し話はかわりまして、児童発達支援管理責任者について御質問いたします。

 これは何かと申しますと、例えば障害児の通所施設であるとか、こういったところに配置をしないといけない、そういった資格でございます。

 この資格の要件というのが実務経験であるとか研修を受講するということでございまして、一応、この研修の受講というものは、今経過措置ということで、平成二十七年三月までは猶予されている、このように認識をしておりますけれども、ただ、私が伺いましたのは、都道府県によって研修の回数というのは割とばらつきがあるというふうに聞いております。

 確かに、調べましたら、私の地元の兵庫県では年一回しかやっていないということで、例えば、年度の途中で入られた方とかが研修を受けようとしても、その年はもう受けられない。では、他府県でいけるかというと、他府県は他府県でもちろん地元が優先でございますので、希望していても資格が取れないんじゃないか、こういう御指摘もいただいたところでございます。

 そうすると、この資格が取れないまま猶予措置としての経過期間が終了してしまうと、配置ができない、こういう状況になってございます。これについて、まず、どのように対応されるのかというのをお伺いしたいというふうに思います。

藤井政府参考人 お答えをいたします。

 少し現行の仕組みにつきまして御説明申し上げます。

 いわゆる障害児通所支援あるいは障害児入所施設におきましては、個別支援計画の作成でございますとか、あるいはサービスを提供する職員に対する指導的役割等を担うということで、児童発達支援管理責任者を配置することとしておりまして、この児童発達支援管理責任者となるためには、所定の実務経験を有する者が都道府県の実施する研修を修了するということを要件としているところでございます。

 この要件の取り扱いにつきまして、先生御指摘のように、制度の創設に伴う経過措置といたしまして、平成二十七年三月三十一日、すなわち今年度末までの間は、実務経験を有していれば研修を修了しているものとみなすということとしているところでございます。

 この経過措置の終了を見据えまして、これまで厚生労働省といたしましては、各都道府県に対しまして、管内の受講希望者数を勘案して、計画的に研修を実施していただけるように要請をしてきたところでございますけれども、現実の研修の実施状況等を踏まえまして、私ども、一つは、平成二十七年の四月以降につきましては、新たに開設される事業所や施設のオープンの日を起点といたしまして一年間は、実務経験を有していれば研修を修了しているものとみなすという猶予を平成三十年三月三十一日までの経過措置として設けるということをいたしたいと考えております。

 それとともに、もう一つは、既存の事業所や施設の場合につきましては、現行の経過措置を平成二十八年三月三十一日までと一年間延長するといったことなど、所要の措置を講じることとしてございます。

 各都道府県におきましては、この間に、受講希望者が確実に研修を受講できるように、引き続き研修の計画的な実施体制の確保に努めていただきたいというふうに考えております。

中野分科員 ありがとうございます。

 しっかり研修をしていただくということは、これも都道府県で回数が違いますので、それは県の方でもしっかりとお願いをしていきたいとは思うんですけれども、やはり、希望する方が資格を取れないという状況が続きますと、これは私は、いつまでたっても、せっかく経過措置ということでやって、この間にということでございますので、しっかり希望する方が資格を取れるように、国としても各都道府県をしっかり後押ししていただきたいと思うんですけれども、いかがでございますか。

藤井政府参考人 これは、先生おっしゃるとおりでございまして、児童発達支援管理責任者の計画的な研修をしっかりと実施していくということは、これも、地域における障害児へのサービスの提供体制の整備という観点からも当然重要なものであると考えております。

 私どもでは、各都道府県におきまして、児童発達支援管理責任者となるための研修の実施体制が整備されるようにということで、私どもが持っております統合補助金でございます地域生活支援事業におきまして、開催に必要な経費を助成しているところでございます。

 また、先般、三月六日でございましたが、全国の課長会議がございました際に、自治体に対しまして、研修の実施について、これを改めて私どもの方からも依頼をしておるところでもございます。

 受講希望者が確実に研修を受講できるように、私どもとしても、都道府県の取り組みを引き続き支援、促進をしてまいりたいというふうに考えております。

中野分科員 ぜひともよろしくお願いを申し上げます。

 続きまして、またちょっと違う話題になりますけれども、消費税の問題、特に医療と消費税の問題についてお伺いをしたいというふうに思います。

 御承知のとおり、医療サービスは非課税ということでございまして、これは、医療サービスを提供する側にとってみれば、仕入れるものには消費税がかかっている、しかし、これを転嫁しようとしても転嫁する方法がない、こういうことでありまして、以前から、問題ではないかということでいろいろな御指摘がございました。

 今までのやり方としては、消費税増税のときに診療報酬に上乗せをするということで対応を図ってきた、このように承知をしておりますけれども、前回、八%のときも診療報酬に、やはり基礎的な部分にそれを上乗せする、こういうことで対応を図ってきた、このように承知をしております。

 しかし、これから消費税を一〇%に増税するということでございまして、このときにどうするか。やはり、医療機関の関係者の皆様からは、税率がかなり上がってきているので何らかの抜本的な対策をしていただきたい、こういう御要望も来ているわけでございます。例えば、伺っている要望であれば、課税にしてゼロ税率にするというふうな要望初め、今までのような措置ではなくて、とにかく抜本的な措置を講じていただきたい、こういうふうに伺っております。

 これについて、政府として、今どうお考えか、どのように進んでいかれるのかというところをお伺いしたいというふうに思います。

二川政府参考人 医療についての消費税の問題でございますけれども、委員御指摘のとおり、消費税は医療につきましては非課税というふうになっているわけでございますけれども、一方、医療機関が医薬品等を仕入れる際に支払う部分は消費税がかかっている、そういったことでございまして、その部分につきましては、御指摘のとおり、これまで診療報酬により手当てをされてきている、こういったところでございます。

 この点につきまして、医療界の方からは、医療に係る消費税のあり方については、一〇%になる際には医療機関等の消費税問題の抜本的解決を図るべきだ、こういった要望があることは承知をしているところでございます。

 この点につきましては、昨年末に取りまとめられた与党税制改正大綱におきまして、医療に係る消費税等のあり方につきまして、抜本的な解決に向け、個々の診療報酬項目に含まれる仕入れ税額相当額分を見える化することなどにより実態の正確な把握を行いつつ、税制上の措置については、医療保険制度における手当てのあり方の検討等とあわせて、関係者の意見を踏まえ、総合的に検討し、結論を得ることとされている、こういったことが与党税制改正大綱で盛り込まれているところでございます。

 いずれにいたしましても、税制抜本改革法におきまして、医療に係る課税のあり方については引き続き検討するというふうにされておりまして、引き続き、与党の議論の状況等を踏まえつつ検討していくことになるというふうに考えているところでございます。

中野分科員 ありがとうございます。

 税ですので、まずはしっかり与党で検討をするということかと思いますけれども、私は、しっかりと対策をやはり今回しないといけないと思っております。また与党の方でも協議をしてまいりますので、よろしくお願いをいたします。

 最後に、済みません、時間が余りありませんが、介護職員の処遇改善についてお伺いをしたいというふうに思います。

 今回、処遇改善の加算措置というものがなされます。しかし、やはり、介護職員、若い世代の方も多いんですけれども、介護職そのものが魅力あるキャリアかというと、非常に、働いていてもなかなか給料が上がらない、このままずっと働いていってキャリアパスがどうなるのかもわからない、いろいろな不安の声をいただくわけでございます。

 処遇改善というのも大変大事でございます。しかし、それとともに、キャリアに応じた賃金体系、しっかり、キャリアパスの整備も含めて、介護職、これを、働く皆さんにとって、やはり希望を持って働ける、これから意欲を持ってしっかりと働ける、魅力ある職種としていかないといけない、そのための取り組みが必要だ、このように考えておりますけれども、政府の御見解を伺います。

三浦政府参考人 介護人材の確保につきましては、最重要課題の一つというふうに認識しておりまして、参入の促進、資質の向上、労働環境・処遇の改善、この三つの点に向けた取り組みを総合的、計画的に進めていくということが重要であると認識しております。

 特に、介護人材の確保や定着という観点からは、御指摘のようなキャリアパスの確立に向けた取り組みが必要、そういうような観点から、任用要件や賃金体系の整備、資質向上に資する研修機会の確保など労働環境の整備を進めることが重要だという認識でございます。

 具体的には、介護職員処遇改善加算のうち、今回の介護報酬の改定において充実した部分につきましては、賃金改善以外の処遇改善に向けた取り組みとして、今申し上げたような任用要件、賃金体系の整備、また、研修機会の確保などの労働環境の整備の両方の実施を要件とすることといたしまして、介護人材のキャリアパスの整備を促進することといたしております。

 また、二十七年度予算案におきましては、都道府県の実情に応じた必要な支援を行えるように、地域医療介護総合確保基金におきまして、人材確保のための資金といたしまして、新たに九十億円を計上しているところでございます。

中野分科員 以上で終わります。ありがとうございました。

原田主査 これにて中野洋昌君の質疑は終了いたしました。

 次に、赤枝恒雄君。

赤枝分科員 自由民主党の赤枝恒雄でございます。

 きょうは、尊敬する塩崎大臣に質問ができるというのは本当にうれしい限りですが、ちょっと厳しい質問もあるかもしれませんが、そこは四国県人としてお許しをいただきたいと思います。

 実は、最初に、介護報酬の引き下げについて大臣にお尋ねをしたいと思います。

 今回の介護報酬は、限られた財源の中で地域包括ケアシステムが機能するために、関係各位が知恵を集結してできた改定であったと私は思います。要介護者の経済的負担も軽減するという目的から、私は理解をしております。

 しかし、一方で、かなり大胆に介護報酬の各サービスの基本報酬部分を削減しました。二・二七と言われていますけれども、この部分が五・六ぐらいあるわけですけれども、その影響として、介護保険の事業者が、事業を継続できるところとできないところが出てくると思われます。新聞やテレビでもこのようなマイナスイメージが報道されて、職員が他産業への転職とか退職とか、これが出てきております。このままでは介護人材不足がますます進むのではないかと危惧をしているわけです。

 この状況下で、介護施設の経営は今後どうなっていくのかと予想をされていらっしゃいますでしょうか。

 また、介護施設の経営が悪化した場合、救済策として具体的な対策を考えておられますでしょうか。例えば、ほとんどの事業者が利用している福祉医療機構がありますね。そこからの借り入れの金利や返済の延長などについて、大臣、何かお考えのことがあればお教えいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 赤枝先生から御質問いただいて、ありがとうございます。

 今、先生お話ございましたように、マイナス二・二七という今回の介護報酬の改定につきましては、さまざまな御意見を頂戴いたしておりますが、我々としては、やはり少子高齢化が急速に進む中で、介護保険制度をより持続可能なものにしなければならない。先生がおっしゃったように、地域包括ケアシステムを新たに強固に築いていかないといけない。こういう中で、保険料や利用者負担ができる限り過重とならないように配慮をしながら、一方で、より利用者のニーズに応じたサービスを提供していくということをやらなければならない。そんな中で、特に介護人材を確保するということが極めて重要だという喫緊の課題も解決を同時にしていく、こういうことをやらせていただいた。まあ言ってみれば、連立方程式だったというふうに思います。

 今回の改定が事業者の経営に与える影響につきましては、一律にお答えをすることはなかなか難しいわけでありますけれども、中重度の要介護者を受け入れた場合にきめ細かく加算を設定するとか、あるいは質の高いサービスを提供する事業者、つまり、教育をきちっと受けた人材を多目に配置するとか、そういう事業者には手厚い報酬を支払うというような加算を新たにつくるなり、全体としては事業者の経営に必要な収支差というものが残るように配慮したつもりでございます。

 ただ、今先生の御指摘にございました独立行政法人の福祉医療機構では、特別養護老人ホームなどの事業者に対しまして、福祉、医療分野に精通した職員による、経営に不安を抱く事業者に対する相談支援をまずやるとともに、借入金の返済がなかなか難しくなってくるという法人が仮にあれば、償還期間の延長等の貸し付け条件の緩和も行う、そして、経営状況が悪化をして、一時的にこそ資金繰りが困難な法人に対する運転資金の貸し付けについても、償還期間などの貸し付け条件の見直しを行うなど柔軟な対応をしながら、介護事業者の安定的な経営を支援していきたいというふうに考えているところでございます。

赤枝分科員 温かい御配慮をありがとうございました。

 そこで、今出ました加算の点ですけれども、介護報酬の引き下げに伴って、かなりいろいろな加算をつけていただいたんですね。しかし、それは果たしてとれるのかどうか。例えば、特養についてサービス提供体制加算というのが新設されましたけれども、これは十八単位なんですけれども、これは要件がありまして、介護福祉士が介護職員の六割以上とならなきゃだめですね。この加算を果たして取得できる事業所がどれぐらいあるんだろうか。

 これについて、三浦局長にお尋ねしたいと思います。

三浦政府参考人 今回の報酬改定におきましては、特別養護老人ホームについて、経営の実態などを踏まえて基本サービス費の適正化を行う一方で、日常生活継続支援加算やサービス提供体制強化加算、これらの要件を見直しております。認知症高齢者や重度の要介護者を積極的に受け入れた施設や、介護福祉士を一定の割合以上に配置した施設、これらについて、これまで以上に手厚く評価するということにしておるところでございます。

 今御指摘がございましたサービス提供体制強化加算を含めた個別の加算の今後の取得状況ということについて、これをお答えするというのは、今後の動きということでございますのでなかなか難しいところがございますけれども、私どもといたしましては、できるだけ多くの特別養護老人ホームにおきまして質の高いサービスを提供していただき、その結果、加算も取得していただきたいと考えているところでございます。

赤枝分科員 これからもこの加算の要件をできるだけ緩和していただきたいというふうにお願いをしておきます。

 二〇二五年に介護人材が百万人足りないとか、看護師が十三万人ぐらい不足するとか、そういうふうに想定されている中で、介護福祉士の資格取得に国家試験を課すことが決まりそうですけれども、その必要性について御説明をいただきたいと思います。

 また、国家試験の合格率が、三年実務をやっていて受ける場合の合格率は現在六割と言われていますよね。この六割というのは、大変難しいのではないかと思うんです。私は、この試験のあり方として、面接を重視して、今まで働いてきた施設長が、この子はいい子だ何だという推薦状を書くなりして、その上で面接をして、そして合格率が九〇%ぐらいになるように試験の難易度を下げるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

 前の厚労委員会で塩崎大臣から、准看護師の養成も必要だと思うという答弁をいただきましたけれども、介護福祉士も大きく不足していますので、介護福祉士の質はもちろん大切だと思いますけれども、量の問題にも配慮すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

鈴木政府参考人 先生御指摘いただきましたように、二〇二五年に向けて、介護人材の確保、これは喫緊の課題でございます。

 その中で、御案内のように、介護は資格がないと必ずしもできない仕事ではないということでございまして、まずは人材の裾野を広げていって、多様な人材にここに参画をしていただくということがまず必要であろうと思っております。

 それから、限られた大事な人材でございますので、これを有効に活用するために、人材層を類型化いたしまして、機能分化を図っていくということもあわせて必要だと思います。

 そうした中で、介護福祉士でございますけれども、これは介護に関する唯一の国家資格でございます。これから多様化、高度化を介護がいたしますので、これに対応した専門性の高い人材として、その中で中核的な役割を果たしていただく。裾野はいろいろな多様な人材に入っていただきつつ、中核として、山の高さを高くする役割として介護福祉士さんの活躍の場がある、こういう構図でございます。

 したがいまして、この介護福祉士につきましては、社会的な信頼と評価を高めていく、こういう観点から、一定の教育課程を経て国家試験の受験資格を得ていただく、その上で国家試験によりまして修得状況を確認する、こうしたプロセスが必要であろうと考えております。

 人材確保につきまして、社会保障審議会の福祉部会人材確保専門委員会で検討してまいりましたけれども、先生御指摘のように、介護福祉士の養成ルートのうち、今、国家試験が義務づけられておりません介護福祉士養成施設の卒業生につきましても、国家試験を段階的、漸進的に導入するという考え方が示されたところでございまして、こういった考え方に基づいて制度的対応を検討してまいりたいと思っております。

 それから、面接の関係でございます。

 御指摘のように、介護はコミュニケーション、対人サービスでございますので、やはり介護者としての適性とか対人スキルを確認することは極めて重要だと思っております。

 試験におきましては、そういった面で、人間の尊厳とか自己決定の尊重、プライバシーの配慮、こういったコミュニケーション技術の確認も試験の中でするということをいたしているわけでございます。

 そして、最後に御指摘ございました難易度でございます。

 国家試験の合格率自体は出題内容と受験者の資質との関係で定まりますので、一概に高低を論じるということができるものではないと思っておりますけれども、例えば、同じ名称独占の資格でございます保育士、社会福祉士、こういった職種の合格率が二、三割であるということに比べますと、この介護福祉士の六割という合格率自体につきましては、さほど低い合格率ではないのではないかというふうに考えている次第でございます。

赤枝分科員 各種加算がいろいろな要件の中に介護福祉士の数を求めてきているわけですから、ぜひ、その辺の難易度はできるだけ易しいものにしていただきたいというふうにお願いをします。

 それから、あと、個室の問題なんですけれども、多分全ての人は尊厳ある死を迎えたいと思っているに違いないんですが、そのためには個室でなければならないというふうに私は考えております。

 厚労省が目標にしてきました個室七割、多床室三割という個室重視の方針は、今のところ変わっていないんでしょうか。

三浦政府参考人 個室、または、恐らく委員の御指摘はユニットケアの充実というところをお考えなのではないかと思いますが、私どもといたしましては、特別養護老人ホームの入所者の生活環境の改善を目指すという観点からは、まずは、居室定員を原則として一名とする、つまり個室ということでございますが、それとあわせて、平成十八年に策定いたしました国の指針で、平成二十六年度の入所定員のうち、ユニット型施設の定員が占める割合を七割以上とすることを目標とするように各自治体に求めているところでございます。

 この点、入所者の生活環境の改善というのは引き続き重要であると認識しておりまして、平成二十七年度以降の国の指針におきましても、平成三十七年度における特別養護老人ホームのユニット型施設の整備目標につきまして、全体の七割以上、七〇%以上とするよう努めるものとするとの方針をお示ししているところでございます。

赤枝分科員 三浦局長は、ユニット型の準個室というものを見学したことはございますか。

三浦政府参考人 私も特別養護老人ホームは幾つも見ておりますが、正直、これはユニット型準個室、あるいはユニット型個室ということで余り意識しておりませんので、ひょっとしたら拝見したことがあるかもしれませんが、少し記憶がはっきりしないということでございます。

赤枝分科員 このユニット型の個室とユニット型準個室が、施設介護のサービス費が同じ九百四十七単位なんですね。同じなんですね。しかし、ユニット型の準個室というのは、個室になっていますけれども、上は完全にあいています。上があいているんですよ。ここが違うだけです。

 上があいているということはどういう意味かというと、やはりこれは、においが行ったり来たり、声が聞こえる、それから、感染症が発生したとき風の動きで感染症が拡大するという、本当にこれは個室としては余り意味がないものなのに、介護サービス費が同じ九百四十七単位というのはどうしてなんでしょうか。

三浦政府参考人 特別養護老人ホームなどの介護保険施設の施設サービス費につきましては、サービスの提供に要する費用を勘案して設定するということになっております。

 ユニット型個室とユニット型準個室、今御指摘ございましたように、天井と壁面が分かれているというのが準個室、壁面と天井がくっついているというのが個室ということになるわけでございますが、この両サービスにおきまして、つまりユニット型個室、ユニット型準個室ともに、ユニットケアを実施するということになっております。ユニットケアを実施する際に同じ人員配置基準のもとで行われているということがございまして、介護報酬は同額にかねてから設定されているところでございます。

 御案内のとおり、ユニットケアというのは、利用者お一人お一人の個性あるいはリズムに沿って、ほかの方とのなじみの人間関係を築きながら、家庭的な雰囲気で介護を行う、いわば介護サービスのソフトに当たる部分だろうというふうに思います。そういう点から、同じソフトを実施するという関係で、介護報酬そのものにつきましては同額を設定するということにかねてからなっているところでございます。

 一方で、ユニット型準個室は、今申し上げたように、構造上の違いが、いわゆるユニット型個室との違いがあります。完全な個室ではないということでございます。

 所得の低い入所者の負担軽減を実施する、その際の基準として用いられる居住費、この基準費用額につきまして、ユニット型個室よりもユニット型準個室の方が低い額に設定している。つまり、構造上の違いというものを、ハードでございますので、これを、いわば居住費、別名ホテルコストなどと言いますが、その上で評価をして、準個室の方が低くなっている。そういう点で、両者のサービスまた報酬、これらを総合的に勘案して今の報酬体系ができているということでございます。

赤枝分科員 何か、わかったような、わからないんですけれども。

 とりあえず、限られた財源で増加傾向にある要介護者をカバーするのは大変大変だということはわかりますけれども、終末期の要介護者や認知症の介護にはどうしても個室が必要なんですね。今後とも、個室のユニットケアの推進に積極的に取り組んでいただきますよう、お願いをいたします。

 それから、午前中も多分質問があったと思いますけれども、医師の研修医制度、これについて大臣にお尋ねしたいと思います。

 医師の初期臨床研修制度が始まって十一年が経過し、再来年には新たな専門医の仕組みが始まります。この間、医師の診療科や地域の偏在が指摘されて、厚生労働省も、都道府県間の定員の差を縮める努力をされてきたことには敬意を表しております。しかしながら、現実的には、偏在解消の抜本策として、初期研修と学部教育の一体的な取り組みが必要となります。

 一昨年の改善策に加え、今後、具体的にどのように制度をさらに改善されるおつもりなのか、大臣にお聞きしたいと思います。

塩崎国務大臣 この臨床研修制度につきましては、私も、さまざまな医療関係者からいろいろな問題点指摘と提案をいただいて、不断の見直しがまだまだ必要だなという感じがするのが、まず申し上げなきゃいけないことではないかというふうに思っております。

 かつての臨床研修制度については、専門医志向の研修が中心で、基本的な診療能力の習得に対応していなかった。それから、処遇の確保に課題があって、アルバイトにより生計を維持していかざるを得なかったというような問題が数々あって、平成十六年度から見直しがされたわけでございます。

 これによりまして、研修医の基本的な診療能力が向上した一方で、地域の医師不足問題が顕在化したきっかけの一つになったという側面もあって、先生今御指摘の医師の偏在、あるいは診療科の偏在といった問題が改めてクローズアップされているということだろうと思います。

 こうした問題への対応として、平成二十二年度の研修から、都道府県ごとの募集定員の上限を設ける、それから、大学病院から地域の病院への医師派遣実績を勘案した上で各大学病院研修医の募集定員を設定するといったことなどの措置を講じまして、研修医の地域的な適正配置を誘導して、その偏在を是正しようというようになってきたわけでございます。

 冒頭申し上げましたように、今後も、この臨床研修制度についてはさまざまな課題があるというふうな御指摘はまだまだあるわけでございますので、よりよい制度になるように必要な見直しを絶えず図ってまいりたいというふうに思います。

赤枝分科員 そこで、私は、私案として御提案をしたいと思いますが、初期研修というのは、自分が選んで入った大学がありますよね、大学を出たその出身大学で、その大学がつくったみずからのプログラムに責任を持った上で、大学病院以外の地域の研修指定病院というのを指定してそこでやるとすれば、現在の制度とも整合性がつきますし、かつ、解消が加速的に進むというふうに私は考えております。出身大学でとりあえず責任を持って地域の指定病院でやるというこの方法は、もうこれしかないと私は思っています。

 たまたま、私の本当によく知っている男が田舎の大学に行きました。その彼は田舎の地域医療を守るつもりでそこへ行きました。しかし、研修医制度で、東京のあるクリスチャンのすてきな病院に研修で出てきました。それで、そこで知り合った、本当に美しい看護婦さんとめぐり会って、結婚したんですよ。結婚したら、女性の意見が強くて、田舎に帰らないということになっちゃったんですね、その地方に帰らないということに。

 これを考えれば、将来的に、私は、やはりそこの地元に残るという意味で、この医師の偏在も、出身大学の、そこで研修を二年間とか三年間やれば、その地域で恋愛だって芽生えるんですよ。恋愛だって絶対芽生えると思いますよ、若いときは。そういうつき合いもできる。

 ですから、本当に、地域の出身大学にどうして残るようにしないのか、これが私は不思議でならないんですが、医政局長、どうですか。

二川政府参考人 臨床研修制度につきましては、大きな見直しは、平成二十二年度の研修から見直しを行ったところでございます。この点につきましては、先ほど大臣から答弁申し上げたとおりでございます。

 さらに、平成二十七年度の研修からは、その措置をさらに進めるために、研修希望者に対する募集定員の割合を、当初の一・二倍から一・一倍に縮小していく方向で考えているところでございますし、また、都道府県が都道府県の裁量で各病院の募集定員を調整できる枠をつくる、そういったようなことも行うことにしておるわけでございます。

 さらに、今後、臨床研修制度の次の見直しに向けまして、検討の場を立ち上げて議論を開始したといったところでございます。

 ただいま委員から御提案をいただいた、臨床研修を出身大学のプログラムで、かつ、その地域の病院でという方式といったことにつきましては、研修医の研修先の選択肢が現在に比べれば狭くなるとか、そういった問題はあるのかなというふうに思いますけれども、今後、こういった臨床研修制度の見直しを始めているわけでございますので、こういった見直しにおける、その場におきましての検討の参考とさせていただきたいというふうに考えるところでございます。

赤枝分科員 ぜひ、重要なテーマでもありますし、重要な私の意見だということで、取り入れていただければありがたいと思います。

 それから、今度、生殖補助医療が最近進んできまして、年間に二万人の双子ちゃんが生まれているわけですね。

 二万人の双子ちゃん、三つ子が生まれて、いっときに二人、三人の赤ちゃんに恵まれるということは、それはうれしいことではある反面、非常に、その辺、ちょっとストレスとか、いろいろなつらい思いをすることもあって、特にバギーが問題なんですけれども、運ぶバギーが大きくて、タクシーとか電車になかなか乗れないということもあって、双子ちゃんを持ったお母さんはやはり表に出にくいんですよね。

 この間、双子ちゃんのお母さんを議員会館に五人呼んで、五人のお母さんに質問しました。やはり双子ちゃんだから、御主人はその辺も理解して手伝ってくれるんでしょうねと言ったら、三人が、全然見向きもしない、家庭のことは手伝わないと。双子ちゃんが生まれてうれしいはずなのに、御主人は帰ってこない。その五人のうち三人が全然協力的じゃないと言うんですね。

 だから、そこで、やはり表には出られない、御主人の協力はない、そういうところから、うつ病になる方もいらっしゃるんですね。それから、虐待に走るお母さんもいらっしゃるんです、悲しいかな。

 そこで、双子、三つ子の赤ちゃんをどうにか支援するために、ベビーシッターのお金とか、こういうのをいろいろ考えようという議員連盟をつくって、これは会長が塩崎先生なので、私、質問しても答えづらいと思うので質問をしませんが、今後とも、積極的、前向きにこの問題を一緒に考えていただければというふうにお願いをします。

 それから、最期のみとりのところで、やはり多床室というのは、多床室にいても、みとりのときは個室に移すんですよ。カーテン越しに、最後の詰め物をしたり、機械の音がチャカチャカ聞こえると、やはり隣の方は、僕らは医療従事者ですけれども、夜中にみとりをやるわけですけれども、気の毒だなと思うことがある。それで、あいている部屋があれば移すんですね。

 だからやはり、最期の尊厳ある死、女性の場合は特に、尊厳ある死ということになれば個室でなきゃだめだと僕は思いますし、そういう意味で、これからますます個室ユニットケア、とにかくみとりのときは個室というような方向でこれからやってもらえばありがたいというふうに思います。

 きょうは、大臣、お疲れのところ、どうもありがとうございました。

原田主査 これにて赤枝恒雄君の質疑は終了いたしました。

 次に、白須賀貴樹君。

白須賀分科員 このたびは、質問の機会をいただきましてありがとうございます。白須賀貴樹でございます。

 経済通をうならせている塩崎大臣の胸をかりるつもりで、質問をさせていただきたいと思います。

 大臣、朝からお疲れでございますので、ちょっと頭の体操で、豚ちゃんとか牛ちゃんとかを数えるのは一頭、二頭。これは、食べた後に残るところが頭のところだから、一頭、二頭という数え方。例えば、お魚の場合には一尾、二尾。残るところが尻尾ですから。また、鳥の場合には一羽、二羽。羽のところが残る。では、人間は何と数えるか。一名、二名。これは、人間は死んだら名を残すというところからだというふうに私はとんちで聞いております。

 そんなくだらない話から始まりまして、おもしろくなかったですね。失礼しました。

 私も最初にさまざまなことを話させていただきますが、まず最初に、私なりに理解しているアベノミクスについて、大臣に、そのことも含めながらお話をさせていただきたいと思います。

 そもそも、我が国がデフレで苦しんでいるのはなぜかというと、やはり要因の一つに、不良債権の処理のときに、企業が設備投資を減らして、研究投資も減らして、そして賃金も減らすことによって、何とか不良債権を返済していこうというふうに、国全体で借金返済のために動き始めた。

 結果的に、我が国の従業員の方々の賃金が下がりましたから、日本全体の購買能力が落ちた。そのために商品がだぶついて、またその商品を売るために値段を下げる。値段を下げると、また企業はどこでそれを担保するかというと、設備投資であったり、研究開発であったり、賃金であったり。結果的に、また購買能力が落ちる。この悪い循環によって、デフレスパイラルが始まった。

 我が党は、それを逆回りしていこうということで、賃金を上げていく政策をしたり、金融緩和をしたり、財政出動をして何とか会社にも体力を与えて、また、リーマン・ショック以降、ユーロは二倍以上紙幣を刷ってマネタリーベースを上げ、ドルも三倍以上刷っていたが、円は一〇%ぐらいしかふやしていなかったために、過度な円高に振れてしまっている、それを是正するためにも、やはり金融緩和も大胆にしていかなければいけなかった。

 さまざまなことをしていく中で、例えば法人税のことも考えて私たちは議論をしてきました。

 そもそも、二〇一二年の会社の方の内部留保は三百四兆円近くあって、二〇一三年に向けて三百二十八兆、二十四兆円もふえております。そしてまた、内部留保がふえていくということは、それで法人税を下げることは本当にどういうことなんだという議論もあると思います。

 ただ、私たちはもう一つ考えなければいけないのは、これから日本は、二〇二五年に団塊の世代の方々が皆さん七十五歳以上になって、二〇三〇年には人口減少社会が始まり、一年間に百万人ずつ人口は減っていくので、宮崎県の人口が約百十二万人ですから、毎年毎年宮崎県民が丸ごといなくなるような時代が、あとわずか十五年後にやってくる。結果的に、購買能力も国全体が落ちますし、また、生産者人口、労働者の方々の数も減ってくる。

 我が国の人口は減りました、結果的に、物をつくる能力が落ちました、国力が落ちましたということは絶対に避けなければいけませんから、それこそ、工場、また農業の分野においてもやはりオートメーション化して、ロボット化して、設備投資をしてもらわなければいけない。

 そのための設備投資減税であり、研究開発減税であり、これから少数精鋭で向かわなければいけないから雇用促進税制であったりその人材を育成するための減税であって、そのトータルが法人税の減税であるわけで、外国の企業を呼ぶために法人税減税をするわけではなく、我が国の国力全体を底上げするための方策が、私たちのアベノミクスの第三の矢でありますから。

 この国力全体を底上げするためには、やはり時間というものはかかります。ですから、マスコミの方々や野党の方々が、全く第三の矢が見えていないとかさまざまなことを言いますが、私は、じりじりじりじり国力を上げていき、そして、十年後の人口減少社会にもしっかりと、企業が物をつくる能力や、農業においても、農産物をつくる能力を得るための設備投資も含めて、十年後に花を開くための政策が第三の矢だと思っておりますので、そういった意味で、私は、このアベノミクスをトータルで非常に評価しております。

 また、なぜ最初にこんな経済的な話をして、これは場所が厚生労働委員会だから違うよというお話があるかもしれませんが、私の根底の考えは、あくまで社会保障は国力に準ずるべきであるんです。ですから、本当に社会保障を厚くし、困っている人たちを助けるためには、国力を上げていくしかない。国力を強くしなければ、本当にやりたいことや、困っている人は助けられないと思っております。ですから、まず最初に、ベースの話としてこの話をさせていただきました。

 そして、これから少しずつ本題に入っていきますが、私は、社会保障の制度を支えている中の大きなものの一つが年金だと思っております。その年金の中のかなめは、やはり年金積立金管理運用独立行政法人でございます。私はこのGPIFに対していろいろと思い入れがありまして、やはり、ちょっと冷静に議論をしていかなければいけないと思っています。

 まず最初に、GPIFを語る前に、国債について考えていくべきだと思っております。

 我が国の国債がこれからどうなっていくかを冷静に議論していきますと、例えば、海外の、いわゆる銀行を評価するさまざまな機関は、今までは自国通貨建ての自国債券に対しては、ほぼ一〇〇%、簿価の評価として認めてきました。

 しかし、これからそれが本当に評価されるかといいますと、例えば、ドイツ銀行がギリシャの国債を持っております。ユーロ建てでございますから自国通貨建ての自国国債でございますが、これを本当にそのままの評価をできますか、そういう議論は必ずありますので、この先、さまざまな銀行を含め、金融機関が持っている国債がどんなに自国通貨建てであっても、一〇〇%簿価の評価ということはあり得ないと思います。ですから、我が国の国債がこの先どういう評価をされていくかというリスクがまず一つ目。

 二つ目。我が国がこのままアベノミクスでしっかりと政策を回して、特に、二十七年度の物価上昇が、今、予測として一・〇。しかし、これは、原油の下がる分、〇・七から〇・八を引いた一・〇ですから、実際は一・七から一・八のインフレ率ということを考えられますし、その翌年のインフレ率予測でございますけれども、二・二の状況でございますから、このままアベノミクスがうまくいくということは、最終的に実質金利が正常化してくる。

 つまり、実質金利が正常化するということは、今のマイナスを異常とすれば、プラスになっていく。実質金利は、御存じのとおり、金利からインフレ率を引いたものですから、日銀のインフレ目標が二%ですから、いわゆる金利の方は、二%を超えなければ実質金利はプラスになりません。

 そうすると、金利が上がっていく中で、我が国の低金利の国債が、次に金利が上がったときに、本当に今の価値のまま存在できるのかということは冷静に議論をしなければいけない。私は、こんなことを言うと問題ですけれども、やはり評価は下がると私自身は感じております。

 こういった今の国債の、国債さえ持っていれば安全だという、これはもうはっきり言って神話だと思いますから、これからは国債のリスクも、破綻するとかそういう極端な話じゃないですよ、そうではなくて、その評価がどう変化するかということは冷静に考えなければいけません。

 そこで、塩崎大臣が基本ポートフォリオを変えていただきました。数字を覚えていないので、ちょっと見させていただきますが、見直し前は、国内の債券は六〇%プラマイ八%、国内株式は一二%プラマイ六%、外国債券は一一%プラマイ五%、外国株式は一二%プラマイ五%、短期資産が五%。平成二十六年六月末現在で、国内債券は五二%、国内株式は一七%、外国債券は一一%、外国株式は一五%、短期資産が五%。

 大臣が基本ポートフォリオを見直していただいた結果、目標値としては、国内債券は三五%プラマイ一〇パー、国内株式は二五%プラマイ九パー、外国債券は一五%プラマイ四パー、外国株式は二五%プラマイ八パーという形になりまして、今現在の、私が知り得る一番今の構成割合は、国内債券が四三・一三%という状況になっております。今現在、四〇%近くの国債をGPIFは持っていますし、三五%のプラマイ一〇パーですから、ほぼアッパーアッパー分、まだGPIFは保有しております。

 これは、先ほど言ったさまざまなリスクを考えると、やはり分散投資をしていかなければいけません。つまり、国債の保有率を、大変言い方は悪いんですけれども、極力、三五パーのマイナス一〇パーの方の、二五%ぐらいの、四分の一近くにまで、ある程度下げていきながら、ほかのところに分散投資をしていかなければいけませんが、そのときに一番大切なのは、どうやってこの分散投資をするときのリスクを回避するかということが一番の問題です。

 このリスクを回避するためには、何が必要かというと、やはり、その組織のガバメントをしっかりと強化していくことと、高度な人材をしっかりと集めておかなければいけない。この二つがなければ、どうやってもできないと思います。

 例えば、高度な人材を集めました、基本給でいきなり高いサラリーを出すということが難しかったとしても、大きな投資に成功してリターンがしっかりと来たときには、ボーナスでビッグボーナスをどかんと出してあげるとか、そういうシステムも私は必要だと思います。

 また、ノルウェーとかカナダとか、さまざまな年金ファンドが長い歴史を持っているところと人材交流もして、さまざまな金融工学の発達のために人材交流もして、知識を持ってもらわなければいけない。

 そしてまた、意思決定をするべき理事会と、CEOを初めとする執行役員、そしてまた、いわゆる金融の専門家、そういう方々が、アクセルとブレーキとハンドルの役割をしながら、三つどもえじゃないですけれども、にらみをきかせながら、いわゆるGPIFを、名前は変わるでしょうけれども、そういったもののアクセル、ブレーキ、ハンドリングをしながらガバメントをしていかないと、私は、今の現行制度は、どうしても理事長に権限が集中し過ぎている。

 これは、一人の判断で、百三十兆を超える我が国のGPIFの投資を本当に決めていいんですか。国債ばかり持っているそういう時代ならまだいいんですが、これから分散投資をしてリスクヘッジをしていかなければいけないときに、リスクマネジメントをするのが理事長一人で本当にいいんですか。

 私は、必ず、最初に、本来は、ガバメントの強化をしたときに、それで初めて基本のポートフォリオを変えていくべきであって、ちょっと順番が違うのかなと思いながらも、今、日銀が国債を買ってくれるこのチャンスに、GPIFがたくさん保有している国債は、言い方は悪いですけれども、売ってしまえと思っております。

 そして、ある意味、リスクを日銀さんの方と共有しながら、そして、いかに集まった資金を投資して、積み立てていくか。

 そこで一番大切なのは、どんな方法が、どういうガバメントをしたり、どういう人材を集めることが安定的なリターンをもたらして、そしてリスクマネジメントができるか、これはしっかりと議論しなければいけないと思っております。

 私は、大臣にお聞きしたいのは、このことについて大臣がどんな思いがあって、どういうふうに考えられているのか。本当に、胸をかりるつもりで、大臣の思いをしっかりと聞きたいと思いますので、時間は全部使って結構でございますので、教えていただけたらと思います。よろしくお願いします。

塩崎国務大臣 ありがとうございます。

 私の理解では、歯科医師の白須賀先生というイメージが圧倒的に強かったわけでありますけれども、きょうですっかり変わりまして、エコノミスト白須賀ということで先生のイメージを改めないといかぬなということを改めて感じたわけでございます。

 アベノミクスの理解はそのとおりであって、この間も、総理がお出かけしてスピーチをされた、機関投資家が世界から集まっていたところに私も行きましたが、そのときに、一番大事なメッセージは、先生今おっしゃったように、まさに日本は今、国力、競争力を上げようとしていて、おまけに、言ってみれば、失われた二十年と言っていたのが、もっとたって、エズラ・ボーゲルさんがジャパン・アズ・ナンバーワンと書いたのが一九七九年ですから、そこからもう三十年以上たっている。そういう長い時間をかけて競争力を失ってきたこの国を、もう一回反転しようという大きな試みをしているのが私はアベノミクスだというふうに思っているので、余り慌てるなということを言いに行きました。

 つまり、確実に変化はしつつあるので、言ってみれば、我々は、日本という国の体質改善をしているようなもので、まさに変化は確実に起きているから、慌てないで、もう少し見てくれと言って、幾つか変化を訴えてまいりました。

 そういうことでありますから、先生、基本的な認識は全く同じだなということを感じながら、今、力強く感じておったわけであります。

 年金は大変重要でございます。やはりこれは、それこそ、第一次安倍内閣で年金記録問題というのが起きて、国民の皆さん方がどれだけ年金が大事と思っていらっしゃるかということを、私たちは、本当に、高い授業料を払って、痛い思いをして学びました。

 したがって、年金に対する信頼を取り戻すというのは物すごく大事で、今、年間、年金の支払いの約一五%ぐらい、実はGPIFから来たお金で支払っているわけであります。

 ということは、約束どおりの年金を国民の皆様方に受け取ってもらうというのが、我々、GPIFに寄託をして、年金資金を運用していただくというときの最大の目的は、約束どおり年金を支払っていくということです。

 つまり、そのためには、経済前提を置いて、今だったらば、賃金上昇率プラス一・七%で回してくださいということを厚労大臣からGPIFにお願いをして、それに基づいた基本ポートフォリオが返ってきて、それが今言っていただいたものであります。

 いろいろ誤解をされている野党の皆さん方が大変心配をしていますけれども、大事なことは、経済情勢がすっかり変わった、まさに、国債が今までは安全だと思っていたけれども、実はそんなことはなくて、そもそも、銀行が国債をたくさん保有することで価格変動リスク、金利変動リスクにさらされて、これは大変になるぞということをしばしば言われてきたわけであります。

 この間、予算委員会で民主党の方が、銀行の資産評価の際に、国債はリスクフリーだ、株は一〇〇%のリスクだ、こうおっしゃいましたが、これは実は全く古い話であって、金利リスクを負っている国債というのは、実は、もうリスクフリーだなんということはあり得ないわけです。ましてや、これから金利が上昇していくだろうというときには、まさに金利リスクを負うわけでありますから、そのことを考えると、先生がおっしゃった分散投資を賢くやることで約束どおりの年金を支払うということがとても大事になってきている。

 これは、総理の指示で、基本ポートフォリオも前倒ししてつくるようにということを言っておられたのは、まさにこの時代の変化、経済の変化を捉えた総理の指示であって、それに基づいて今やっているわけでありまして、急にはなかなか変われないので、ポートフォリオ、先ほどおっしゃっていただいたような形のものを基本形に、日々、この運用をきちっとやろうということで、今、GPIFでやっていただいているわけであります。

 ただ、今お話がありましたけれども、高度人材が必要だ、そのとおりであって、これについては、成長戦略、再興戦略、最初の年も去年も、高度人材の必要性はしっかり指摘をし、それから、当然、ガバナンスも大事だということもこの再興戦略でも言われているわけでございます。

 基本ポートフォリオの見直しが先に来ました。その際に、GPIFとしても、少なくとも、今の法的枠組みの中でどれだけガバナンスを強化できるのかということで、ガバナンスの強化策を、去年の基本ポートフォリオを発表したときに同時に発表しております。

 柱は二つあって、内部統制の強化とリスク管理体制の強化、この二本をきちっとやっていくということ。

 内部統制の強化にあっては、ガバナンス会議の設置とか、あるいは、今までなかった投資原則というものを設けて、その原則に従って投資をする。今の分散投資などということ、そして、リスクをどう捉えながら運用すべきかという投資原則をつくるということを、今、もう最終段階に来ています。それから、行動規範というものも、実は、一人一人の職員が行動規範も何もなしでやるわけにはいかないというので、新たにこれも設けることになりました。コンプライアンスオフィサーというのも設けることになりました。

 そして、リスク管理に関しては、やはりマクロ経済分析をしながら、それも市場の予測もしながらやるという、分散投資には不可欠なこのリスク管理についても、きちっと人材をふやしながらやっていく。それから、年金の給付と運用の資産との一体分析というのもやらなきゃいけないということもやり始めています。そして、人材も、新たな人材を採り始めているということで、きっちりやらなきゃいけないということであります。

 今回は、とりあえず、これはおととしの年末に、既に独法の改革の中で独立行政法人改革としてやるべきことということが決まっておりまして、ほっておくと神奈川県に本拠地を移さないといけないというのがこの四月からになってしまったりするので、これを、まず、GPIF法というか、独法としての改革の推進をまずやるということで、運用担当の理事も一人ふやすという形で法案を提出していくわけであります。これを御審議いただくということで、まずこれをやっていただく。

 同時に、社会保障審議会の年金部会で、今、ガバナンスのあり方についての審議をしていただいております。去年、ガバナンス改革に関する検討作業班、六回議論していただいて、既に一月にその報告が出てまいりました。それは、基本的には、先ほどお話がございましたけれども、実は、おととしの再興戦略で有識者会議というのを設けました。その報告書がおととしの十一月に出ています。そこで提言がございまして、その有識者会議の提言は、先ほど先生がおっしゃったような形の、理事会と執行部の合議制というものを提案されていまして、それに基づいての議論というものが行われて、作業班の報告がございました。

 ここで出てきた報告書の中では、二つの大きな合意事項があって、一つは、合議制にした方がいい、もう一つは、監督と執行を分離して、ちゃんとチェックの体制をつくる。これについては作業班としてのコンセンサスがあり、そして、それを受けた年金部会も異存はなかった、異論が出なかったという形で、そういう方向性が出ているということでありますけれども、しかし、まだいろいろな議論はこれからでございますので、大いにこの年金部会で議論していただく。

 実は、これは、去年の再興戦略の改訂版の中で、法改正の必要性も含め、年金部会での議論を踏まえ、「必要な施策の取組を加速すべく所要の対応を行う。」ということが再興戦略に書いてございまして、この閣議決定された方針にのっとって、年金部会でまず議論をしていただくというところまで来ているというのが現状でございます。

白須賀分科員 ありがとうございます。

 私自身の個人的な見解ですけれども、やはり独法ではちょっと限界があると思っております。枠を超えた形じゃないと、アクティブな運用とリスクマネジメント、この両方を両立させるのは難しいんじゃないかなと、個人的な意見ですけれども少しあります。

 私は、会社が、今、内部留保が三百二十八兆までふえていますが、これからは、会社の経営者たちも、蓄えました、内部留保を得ました、その人が偉いんじゃなくて、もっとアクティブに、しっかりと投資をして先を見据えた活動をした人間ほど評価される、そういう経営者の方々こそ株主総会でも評価されるという、会社の経営者の方々にもやはり変わってもらわなくちゃいけないので、そのためのコーポレートガバナンスであって、スチュワードシップ・コードであって、そういったものもちゃんと、アベノミクスというか安倍政権がそういうこともしているんだということも含めて、やはり国民の方々に伝えていかなくちゃいけないなと思ったので、最初の前段でそんな話をさせてもらいました。

 次に、私は、地方創生の法案というか、マスコミも含めて、一部の政治家の方々もたまに間違って発言されている方がいらっしゃるんですけれども、東京に集まり過ぎた物や人や金を、さあ地方に分散するんだと言っている方々がいますけれども、東京が沈んだら日本は沈みますよ。

 私は、東京は、世界じゅうの、ニューヨークとかパリとかロンドンとか、そういった都市と闘ってもらって、世界一を目指してもらいたいんです。そして、残りの都道府県や市町村は、日本一になるための政策を切磋琢磨して、日本一を目指してもらいたい。

 それが今回の地方創生の法案であって、東京が日本のエンジン、エンジンというよりもロケットになってもらって、飛んでいけるぐらいの力を持たせなきゃいけない。

 そのためにはどうすればいいかというと、海外の企業が東京に進出したいという環境を整備しなければいけないと思います。

 そのためには、逆に言うと、欠点を知らなければいけないので、外国企業に日本に進出しない理由を挙げさせますと、一つ目は、行政が煩雑過ぎる。二つ目が、医療を含め子育てを含め、外国人に対してのそういうケアが余りにもちょっと粗雑というか弱い。そして三つ目が、終身雇用を含め日本の独自の雇用体系。やはりこの三つが、いつも上位に食い込みます。

 ですから、東京都は特区で、まず、法人をつくるのに対してワンストップ化して、行政を簡単にしてあげましょうねということをやって、品川に含めて、メディカルセンターを含めて、外国人医師を受け入れるという形をこれからしていくでしょうし、そしてまた、外国人のベビーシッターさんも入れていく。

 最後の三つ目ですよ。この三つ目が、私は、今回、まだ出ておりませんが、労働基準法の一部を改正する法案の中の、多様で柔軟な働き方の実現の特定高度専門業務・成果型労働制、このプロフェッショナル制度、これがまさに最後のキーの法案であって、ここをしっかりと本当にクリアさせないと、外国の企業の進出といったら変ですけれども、外の力を日本に入れるんだと。

 まさにそこがメーンであって、きょうの午後でしたか、お話を聞いていると、二十八日のうちの四日間休みで、二十四日間二十四時間働いて、五百七十六時間ずっと働ける法案ですよ、何ですかこれはという御議論がありましたが、厚生労働分野は労働の分野もありますから、もちろんそういう危険を危惧することも大切でしょうけれども、私は、この日本の国力をどうやって上げていくかということも、労働体系の見直しでどう上がるのかということもやはり真摯に議論しなければいけないと思います。ですから、この内容に関しては真っ向から、しっかりと、正論を持って闘わせなければいけないと思っております。

 今、私、地方創生の話から来ましたけれども、やはり、東京は世界の東京になってもらいたい、そして、私が住んでいる千葉県は東京の次の県になってもらいたい、そういう形の思いがありますので、どうか、今回の高度プロフェッショナルのこの政策について、大臣がどういうお気持ちであるかを率直に聞きたいと思います。よろしくお願いいたします。

塩崎国務大臣 先生、最初に、日本経済の何がおかしいかというお話がありました。

 いろいろな言い方があると思うんですが、なぜ競争力を失ったのかということなんだろうと思うんですが、それはなぜというところはちょっとおいておいて、現象としては、やはり生産性でほかの国の産業に負けているというところが最大の問題の一つであって、特に、例えば日米比較の生産性を業種別に見てみると、ほとんどの業種でアメリカに勝てていない。圧倒的に負けている。特にサービス業、非製造業は圧倒的に負けているんですね。これがまた地方に多いというところが問題であって、卸、小売なんていうのは就業者の約四分の一がここにいて、アメリカの四割ぐらいしか生産性がない。これならば勝てるわけがない。

 ですから、ほかの国のつくるものと比べても絶対に負けないものをつくり、そして、ほかの国が提供するサービスと比べて絶対に負けないものを提供すれば、高い賃金を差し上げても全然企業は収益上問題ないということになることが大事なのであって、そうなると、先ほど先生おっしゃったように、かつては過剰三兄弟という時代があって、債務と雇用と、それから設備ですよね。ところが、これが全部解消したけれども、一方で、投資をしなくなったものだから今度はたまる一方ということで、投資することを忘れた企業になってしまった。それで、どんどん負けて、今、企業が持っている設備の、いわゆるビンテージとよく言いますけれども、年齢も相当上がってしまっているということでありますから、これを直していく。

 そういうことを考えてみると、資本と労働で生産は決まる、こう言いますが、まさに資本も労働も動きがなかった。そして、今、やっとこのアベノミクスで資本は動き出して、設備投資もしようかというところになってきたし、コーポレートガバナンス・コードもこの六月から適用になる、新しい東証ルールでガバナンスも強化されるという中で、投資をしてくれるようになるかもわからない。

 しかし、生産性を上げるためには、やはり多様な働き方というものをつくっていかないとなかなかうまくいかないということなので、だから、野党の皆様方が残業代ゼロだなんていうことをおっしゃっていますが、これはやはり、多様な働き方を選択できる一つの制度として、今回、象徴的に高度プロフェッショナル制度を導入して、これはまさに有能な方しか適用されないわけであります。

 例えば、アイデアが湧いたときに集中して働いて、後は休む。それから、グローバルに活躍する人というのは、こっちが夜のときに向こうが昼ですから、そうすると、こっちが夜のときに昼休んでおいて夜電話会談するとか、いろいろなことができるというようなこともあるけれども、それは、残業代というか深夜の手当を一々つけていたら大変だ、では、そのかわり、ふだん休んで夜働くとか、そういうようなこともあります。

 そういうような形で、柔軟な働き方で、柔軟な企業をつくって、そして、ほかの国には絶対つくれないものをつくれるような国、絶対提供できないサービスを提供できる国になっていくということが大事なので、このことは、健康を守るということを大前提に、そして本人が選ばない限りはあり得ない制度としてこの制度を仕組んでいるということでありますので、また皆様方にはじっくり御議論いただきたいと思います。

白須賀分科員 ありがとうございました。

 最後に、厚生労働分野、社会保障を語るときには皆さん社会保障と財源を話しますが、そこにもう一つ、国力も含めてどうすればいいのかをみんなで議論したいと思います。

 本当にありがとうございました。

原田主査 これにて白須賀貴樹君の質疑は終了いたしました。

 次に、浜地雅一君。

浜地分科員 公明党の浜地雅一でございます。

 まず、大臣を初めとしまして厚労の皆様、きょうは長い分科会になっておりまして、大変お疲れさまでございます。

 きょうは分科会でございますので、私、地元で聞いたいろいろな声をきょうはお届けしたいと思って質問させていただきたいと思っております。

 人工内耳について御質問させていただきます。

 もう既に大臣は当然御案内のとおりとは思いますけれども、改めまして、人工内耳とは、非常に高度の難聴者で、普通の補聴器をつけてもやはりなかなか聴力が出ない、効果が乏しい方でございまして、耳の皮膚の下、耳の中に受信装置を埋め込む手術をしまして、そして電極が中耳を通って聴神経に働きかけて音を感知するものだそうでございます。人工内耳用の音声信号処理装置というものを耳の外に、補聴器の少し大きなものなんですけれども、それをつけて音を感知されております。

 平成二十三年度現在で、人工内耳をされている方は一万三千六百六十七人いらっしゃるということなんですが、先日、私は、九州の比例区選出でございますので鹿児島市に行きまして、実際に人工内耳をつけられている主に子供たちにお会いをしてきました。当然、子供だけじゃなくて親御さんもいらっしゃいまして、人工内耳についての理解をしてほしいということでお話を聞きました。

 子供たちは非常に元気に飛び回っていまして、しっかり耳は聞こえているんだなという状況はございましたけれども、いろいろと話を聞くと、さまざまな問題点があるということでございましたので、その声をきょうは代弁したいと思っております。

 皆さんの御要望の一番は、音声信号処理装置、補聴器の非常に高度なものなんですけれども、今、これを取りかえる場合に百万円ぐらい費用がかかるそうでございます。現在、鹿児島市は、この取りかえ費用に対する独自の助成や補助はないということなんです。ほかの県にはありますとか、そもそも、ほかの市町村にはあるのに何で鹿児島市にないんですかというふうなことだったんですね。

 私、調べましたら、全国の自治体では、障害者の支援制度のメニューであります地域生活支援事業の中の日常生活用具給付事業を使いながら、各自治体が創意工夫を凝らしながらやっているので、これは基本的にはやはり自治体にやっていただく問題であるということを認識いたしました。

 しかし、この人工内耳を行うには、手術代も医療保険の適用だそうでございます。そして、音声処理装置の購入費も医療保険の範疇ということでございますので、きょうは、医療保険の適用に観点を絞って、この人工内耳についてお話をしたいと思っています。

 まず、前提としまして、人工内耳に係る保険適用の範囲についてお聞かせいただきたいと思っています。

唐澤政府参考人 先生御指摘の人工内耳でございますが、これは埋め込み型のいわゆるインプラントという形で実施をされておりまして、診療報酬の適用の対象になっております。

 具体的には、今御指摘ございましたように、手術料が約四万点で四十万円、それから機械の方でございますけれども、この材料が、人工内耳用のインプラントでございますとか、今お話のあった音声信号処理装置でありますとか、あるいはヘッドセットというようなものを合わせまして標準的には約二百五十万円ということで、おおよそ三百万円という費用がかかりますが、これが保険給付の対象になっております。

 それで、いろいろ御議論がございますのは人工内耳を交換するというような場合で、これは保険上は、高額のものでもございますので、破損した場合等において人工内耳の材料価格を算定できる、交換できるというようなことにしておりますけれども、単なる機種の交換等の場合は算定できないというような扱いとしているところでございます。

浜地分科員 ありがとうございました。

 私も次に聞きたかったのが交換についての費用ということで、先ほども話しましたが、この親御さんからは、交換のときにどうなるんだろうという話でございました。

 大人でしたら耳の形状というのは余り変わらないということなんですが、私が会った子は二歳か三歳ぐらいで、五、六人に会ったんですけれども、やはりどうしても成長しますし、汗をかく、さびるんじゃないかといういろいろな御指摘があるんですね。それで、若いお父さんお母さんでしたので、本人たちは、五年ぐらいたつとやはり買いかえたいんだという御要望でした。そうなると、五年に一度百万の出費というのは大きいというお話であったわけでございます。

 今御答弁いただきましたとおり、交換に係る費用は、破損した場合等においては出ますよ、しかし単なる機種の交換等の場合は出ませんという回答だったんです。この辺の、等の読み方が、非常に皆さん不安がっておりまして、どうも患者の皆さんというか親御さんたちは、壊れたときじゃないと出ないんじゃないかということで御認識をされる方が多かったんですね。

 しかし、先ほど私が言いました、例えば成長に合わせて耳の骨がずれるとか、または外の装置、音声信号装置が、形状が当然耳が大きくなって合わなくなる、もしくは聞こえづらくなる、いろいろなケースが考えられると思うんですが、これは破損等に読み込んでいいのかなと。ケース・バイ・ケースですから明確なお答えはなかなか難しいと思うんですが、どのように今後の運用として考えられているのか、少し具体的にお話をしていただくと大変助かります。

唐澤政府参考人 先生の御指摘のように、私どもの通知上は、診療報酬の点数解釈の通知上は、交換をする場合には、破損した場合等において新しく算定できる、こうなっているわけでございますけれども、ただ、保険適用となるのは必ずしも破損した場合だけということを言っているものではございません。

 個別の事例が今いろいろ御議論ございましたけれども、破損した場合等というこの中に含まれるかどうかにつきましては、個別の症例に即して、医学的な判断を踏まえて御判断をいただくものと考えております。機械的に適用ということではなくて、個々の症例に即して、医学的な見地から判断をいただく、こんなふうに考えているところでございます。

浜地分科員 医学的な見地からということで、当然、医療保険を使うわけですから、医学的見地は必要だという御答弁は理解できますが。

 やはり、人工内耳の手術は小さいころに決断をするということで、手術をさせること自体も非常にちゅうちょされたそうでございます。小さい子の耳の中にそういったインプラントを埋め込むわけでございますので、やはり非常な決断が要ったそうでございます。その後も買いかえ等の費用の不安があるということですので、私も娘が一人おりますけれども、少しもう大きいですけれども、もし自分の子供が小さいときにそういう決断をしなきゃいけないというふうになるとやはり不安だし、その親御さんの熱い気持ちというものも本当に私は痛いほど理解をしました。

 ですので、しっかり医学的な見地、症例をもとに、さまざまなケースにも対応していただく運用をしていただければと思っております。

 こういった鹿児島でお会いした親御さんにも、しっかり厚労の方にも声も伝えたし、しっかり医学的見地を見ながら、しゃくし定規ではなく運用をしていただくようになるであろうということはぜひお伝えしたいと思っております。

 それともう一つ、言語聴覚士さんの育成も大事だそうでございます。

 実は、人工内耳の患者さんは、人工内耳をしたからといって、すぐに私たちと同じように声が聞こえているわけではないそうです。しかも、聞こえ方も、補聴器と違って、今私がしゃべっている声がそのまま聞こえているんじゃなくて、電子信号で、電子信号を自分の頭の中で、あ、こういうことを話しているんだなというふうに解釈をして今何をしゃべっているかがわかるということなので、普通の難聴の方以上に、こういった人工内耳をつけた方は、訓練、リハビリが非常に重要であるそうでございます。

 しかし、私が行きました鹿児島市では、人工内耳を使ったリハビリテーションを行える言語聴覚士の方が一人もいない。宮崎から月に一遍来られるそうなんですね。ですから、みんなで、月に一回のそのチャンスを逃さないようにリハビリを受けているそうでございます。

 ですので、やはり人工内耳の専門の方も含めた、専門だけとなるとその方のまたいろいろなお仕事の関係でも問題があるでしょうけれども、人工内耳ができる言語聴覚士も含めたこの言語聴覚士さんの育成について、国はどのように今後取り組んでいただくのか、御見解をお聞きいたします。

    〔主査退席、熊田主査代理着席〕

二川政府参考人 言語聴覚士の育成のお尋ねでございますけれども、言語聴覚士は、医師の指示のもとに、嚥下訓練、あるいは人工内耳の調整等を行う専門職といったことでございまして、嚥下障害や聴覚障害等に関する訓練、指導、助言等を行い、障害を持つ方をサポートする重要な役割を担っているということでございます。

 さらに、日本の医療をめぐる環境は、急速な高齢化に伴いまして、国民の医療サービスへの需要は大きく変化をしてくるわけでございます。言語聴覚士を初めとした、機能回復訓練等を行うリハビリテーション職種の果たす役割はますます大きくなっていくと考えられるわけでございます。

 このため、言語聴覚士の育成につきましては、厚生労働省といたしましては、言語聴覚士の養成課程あるいは国家試験の改善等によりまして、資質向上に向けた取り組みを行っているところでございます。また、地域医療介護総合確保基金を使いました財政支援を通じまして、こういった言語聴覚士を初めとする医療従事者の確保、養成にも取り組んでいるところでございまして、今後ともこうした支援を図ってまいりたいと考えているところでございます。

浜地分科員 ただいま御答弁いただきました、基金ができるということですね。財政的な支援をできるということですので、やはりこういった基金を積むことによって各市町村も取り組みやすくなると思っていますので、ぜひこれはまた予算もふやしていただきながら取り組んでいただきたいと思っております。

 では、次のテーマに行きたいと思います。上水道事業、特に官民連携等について、塩崎大臣の御見解をこれからお聞きしたいと思っています。

 その前に、私、塩崎大臣が厚労大臣になられまして、この上水の事業、特に官民連携等が進んでいくんじゃないかなというふうに期待をしました。やはり非常に金融や投資の分野にも明るい大臣でございますので、しっかりこの推進というのは進んでいくんじゃないかなというふうにまず期待をしていることを申し伝えたいと思っております。

 当然、日本の水道事業は、世界的にも安全でございます。世界に冠たる水道インフラを、これまで官主導でつくってきたわけでございます。

 これまでの予算委員会でも、この上水道の更新やまた広域化、そして官民連携ということはたびたび大臣も聞かれておることとは思いますけれども、今の日本の現状というのはもう危機的な状況ということは御認識のことと思います。経年経過、いわゆる法定耐用年数を超えた上水道管の割合は八・五%、そのうちで、更新できたのはわずか〇・七九%ということで、このままのスピードで更新をしますとあと百三十年更新にかかるという状態でございますので、これから、上水道の耐震化やまた更新、そして官民連携の推進は急務であるというのは、我々共通の認識であろうと思っております。

 そこで、まず、各水道事業体に義務づけをされたアセットマネジメント、しっかりとこれからアセットマネジメントの計画を立てて行うんだという水道ビジョンを出されましたが、このアセットマネジメントの現在の実施状況はどうなっているのか、お答えください。

新村政府参考人 お答えいたします。

 人口の減少に伴いまして、給水需要が低下するということが見込まれる中にありまして、水道事業の健全な事業運営を持続させていくということが重要と考えております。老朽化施設の更新に必要となる事業費と財源を見通した上で、計画的に老朽化対策を進めるということが必要でございまして、アセットマネジメントはそのための有効なツールであると考えております。

 厚生労働省におきましては、アセットマネジメントの普及と効果的な実施を促すために、平成二十一年に「水道事業におけるアセットマネジメント(資産管理)に関する手引き」を策定いたしました。そして、平成二十五年に簡易支援ツールを公表し、全都道府県でこの簡易支援ツールに関する講習会を開催してきたところでございます。その結果、全水道事業者におけるアセットマネジメントの実施割合が、平成二十四年度の二九%から、二十五年度には五二%にまで上昇しております。

 厚生労働省におきましては、引き続き、水道事業体への助言等の支援を実施することを通じまして、アセットマネジメントの実施を促してまいりたいと考えております。

浜地分科員 ただいま五二%の実施状況だというふうにお伺いしました。これは民間の計画、例えば民間の投資事業とかに換算しますと、まず計画ができていない自体で非常に問題があろうかと思っています。この水道事業をどのようにこれからマネジメントしていくのかなということが、やはりしっかりとまず計画を立てないと事は進まないわけでございます。

 そこで、事業者が事業計画にしっかりこのアセットマネジメントを反映させるような取り組みを国の方で推進してやっていらっしゃるのか、お聞かせいただきます。

新村政府参考人 御指摘のとおりでございまして、アセットマネジメントにつきましては、その実施結果が事業計画に的確に反映されて初めて、計画的な老朽化施設の更新というメリットが実現されるものと認識しております。

 このような観点を踏まえまして、厚生労働省におきましては、水道事業担当者会議及び講習会におきまして、アセットマネジメントの手法を活用して水道事業計画を更新するよう呼びかけを行っております。また、今年度からは、水道施設整備への国庫補助事業の中で、アセットマネジメントの活用による事業の実施を条件とするといった取り組みも行っているところでございます。

 これらを通じて、引き続き、アセットマネジメントの実施結果がその事業体の事業計画にきちんと反映されるように水道事業体を促してまいりたいと考えております。

浜地分科員 ただいま交付金というお話もございました。生活基盤施設耐震化等交付金というのが平成二十七年度予算で五十億、一応予定をされております。この中でも計画作成、事業の支援をしていくということでございますので、なかなか上水道事業に対する予算が厚労の中ではとれない中、今回五十億積まれたことは大変画期的なことだと思っておりますので、しっかり有効に使っていただきながら、実際、効果が見えるように今後行っていただきたいと思っております。

 続きまして、PFIについて、分科会でございますので、少し角度をつけてお話をさせていただきたいと思います。

 特に、PFIの中でもコンセッション方式、これを有効な投資先と見る民間業者は多うございます。ここ二、三日、私はそういった民間業者の方と実際の意見交換もしまして、その方々の意見も踏まえて、きょうは質問をしたいと思っております。

 大臣も御存じのとおり、上水道事業等に限らず、やはり民間資金の活用というのはもう世界の潮流になっているということでございます。具体的には、これは外国の調査ですけれども、イギリスでは八七%、フランスでは六七%、民間資金を活用しての水道事業が行われているということです。

 日本では、コンセッション方式の事例はまだ一件もございません、この前法律が変わったばかりでございますので。しかし、PFIですね、コンセッション以外のPFIの割合もまだまだわずか数%です。具体的な取り組みが少しずつ始まっているということは聞いておりますけれども、取り組みはおくれているということでございます。

 そこで、昨年の日本再興戦略では、上水道のコンセッション方式の導入の目標を、二〇一六年までに六件と定められました。現在のコンセッションの取り組み状況はどうなっているのか、御質問いたします。

新村政府参考人 お答えいたします。

 水道事業の経営環境が厳しさを増す中にありまして、事業の効率性を向上させるという観点から、公共施設等の運営権を一定期間譲渡するというコンセッション方式、この導入も含めまして、民間事業者の能力を活用するということも重要な選択肢と考えております。

 御指摘ありましたように、平成二十六年六月の日本再興戦略では、コンセッション方式を活用したPFI事業の案件数の目標といたしまして、二十八年度までの三年間で六件という目標を掲げてございます。

 水道事業者におけるコンセッション方式の活用に関する具体的な検討は、現在、大阪市で進んでおります。コンセッション方式の活用を可能にするための条例案が議会に提出されていると承知しております。

 大阪市に確認いたしましたところでは、その条例案が可決された場合には、二十七年度に入って、運営会社設立のための補正予算案を議会に提出し、二十七年秋ごろを目標に、設立した運営会社に運営権を付与するための議案を提出する、そして二十八年度から運営会社による業務開始という予定であると聞いているところでございます。

浜地分科員 ありがとうございます。

 大阪で進むということで、まだちょっと議会が議決前ですから余り私も踏み込んだ意見は言えないんですが、一つ私が思うのは、コンセッションの受け皿会社として大阪が予定しているのは、運営会社は大阪市の一〇〇%出資というふうに聞いております。

 それを見ると、それは足りないというふうな意見をすぐ言う方もいるんですが、何で大阪市の一〇〇%出資じゃなきゃいけないかといえば、怖いんだと思うんですね。

 まずは水道事業体から、大阪市の一〇〇%出資とはいえ運営会社の方に任せるという取り組みは、非常に画期的だと思っています。しかし、その中にあるのは、水道事業というのは安全も大事だし、これまで日本はずっと官が行ってきたので、やはり民間には任せにくいという、どうしてもそういった心理的なものはまだまだあるように思います。ですので、まずは大阪市の一〇〇%出資の運営会社に任せてみて、まずは切り離すところをやってみて、今後どうかという取り組みであろうとは思っております。

 私、先ほど民間業者の方とお話をしたと言ったんですが、いわゆるPFIではなくて業務の包括委託においても、浄水場の整備だったり、または設計だったり施工だったりするところは業務委託をしている、そして、管路の維持管理、漏水調査であるとか実際漏水した場合のその修理というのがある、そして最後に料金収納という部分があって、浄水場の運営と管路の維持管理と料金の収納という主に三つの大きな枠があるんですが、これがばらばらにこれまで業務委託をされているということだそうです。

 ですので、やはり、官として渡すときに、ばらばらにしか仕事をさせたことがないものですから、それを全部コンセッションで渡すということには当然抵抗があってしかるべきだと思っております。

 特に、管路の維持管理については、今の業務委託の割合でもわずか一%しかないそうでございます。先ほど例に出しました浄水場の運営については一五%、今、全国的に業務委託がされている。そして、料金収納に至っては約二〇%近く業務委託がされている。しかし、それがばらばらなものですから、民間としては、そういったノウハウが発揮できない、または見せつけることができないということだそうでございます。

 ですので、当然、業務委託のやり方は各水道事業者の裁量に任されるわけでございますけれども、やはり厚労省としては、将来的なコンセッションに移行するその前提の練習として、浄水場の運営、管路の維持管理、そして料金収納まで、しっかりと包括的な業務委託をまず任せるような、そういった取り組みをぜひ推進していただきたいなと私は思っております。それによって、民間事業者でもしっかりと、いわゆる川上から川下までの事業ができるんだなという安心感を持ってコンセッション方式に移行できるんじゃないかな、そのように民間業者自身も言っております。

 すぐにコンセッションというんじゃなくて、まずは包括的な業務委託を我々にやらせてみてくださいという意見でございますけれども、大臣は、今後のコンセッションに対する取り組みを含め、先ほど私が申し上げました本当の意味での包括的な業務委託についてどうお考えか、大臣の御所見をお伺いいたします。

塩崎国務大臣 パブリックな資産を民間に委ねていくという提案は、アベノミクスの一年目の再興戦略、我々自民党でまとめた成長戦略の中でも、足し上げてみると本当に何兆円という資産が、料金収入がある資産としてコンセッション方式なりPFIなり何かできるということで、第一号は仙台空港に多分なると思いますが、コンセッション方式で、これはもう前々から私ども、空港の地上権の民営化というか、をやるべきだということでやってきました。

 水道につきましては、今お話がございましたように、運営基盤の強化を図る上で、やはり官民の連携というのは極めて有効だというふうに思いますし、コンセッション方式や、今、包括委託のお話がありましたけれども、いろいろな方法があると思うんですけれども、それぞれの自治体において、事業経営の現状分析をしっかりと行って、適切な官民連携の手法を検討して進めていただきたいと思います。

 二十七年度予算で、生活基盤施設耐震化等交付金のメニューとして、自治体が行うコンセッション方式の導入に向けた調査検討などの業務の支援にこれを充てるということにもしています。

 ですから、厚労省としても、水道事業における官民連携の推進をぜひしたいと思いますし、包括委託だけではなくてコンセッションも視野に入れて、外国の企業ができて日本の企業ができないはずがないというふうに思いますので、今まで何らかの理由でできなかったものをここで解き放つというのがやはりアベノミクスのやるべきことではないかというふうに思いますので、先生もまた、いろいろな知恵を授かるように私からもお願いを申し上げたいと思います。

浜地分科員 そうですね。その民間事業者は、まず、広域化ということもやっていらっしゃるんですが、五万人ぐらいでも自分たちはペイできるというふうな意見がございました。

 それともう一つは、出資機能を持った機構みたいなものをつくるべきかなと私は思っております。なかなか予算が限られておりますけれども、やはり、官から民に渡す場合には一度、官の方も出資をして、民の方にも出資をさせて、半官半民のような機構をつくって、そこで受け皿としてやるのも一つの手ではないかなと個人的には思っております。

 ですので、またしっかりと、塩崎大臣にこれを推進するんだという大きな声が欲しいと言っていました、民間の方々は。塩崎大臣だったらこれを大きな声で推進していただけるんじゃないかなというふうに言っておりましたので、それもお伝えをしたいと思っております。

 では、最後の質問をさせていただきます。

 またちょっと視点を変えまして、市民成年後見人の推進についてお伺いをいたします。

 当然、厚労としては地域包括ケアをこれから行っていくわけでございまして、しっかりとした介護施設を適正配置していく、医療施設もそうなんですが。この箱を適正配置しても、実際に痴呆等で契約が自分ではできない、いわゆる契約の意思表示ができなくなった方々に対しては、やはり成年後見制度をつけるしかないわけでございまして、地域包括ケアの一つの観点としても、法的なケアというものは非常に大事になってこようと思っています。

 厚労省の方でも、社会福祉協議会を中心とした市民後見人の育成を進められておるわけでございますけれども、実際、なかなかこれが進まないという地元の声もございます。成年後見制度利用支援事業において、今後どのような取り組みを具体的に考えていらっしゃるのか、それをお答えいただきたいと思っています。

三浦政府参考人 今後、親族などによる成年後見の困難な方の増加が見込まれる中で、成年後見の担い手として市民の役割を強化していく、これは御指摘のとおりでございます。

 平成二十四年度から施行された改正老人福祉法では、後見等の業務を適正に行うことができる人材の育成、活用を図るため、そのような人材に係る研修の実施や家庭裁判所への推薦などの措置を講ずることが市町村の努力義務とされたところでございます。

 これまでも、市民後見を推進するモデル事業の中で、市民後見人の養成研修に加えて、研修修了者が後見人として家庭裁判所から円滑に選任されるようにするための支援体制、選任された市民後見人が困難事例等に円滑に対応できるような、弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門職などによる支援体制などを構築するための市町村の取り組みを支援してきたところでございます。

 さらに、平成二十七年度予算案におきましては、このモデル事業にかわりまして、都道府県に設置された地域医療介護総合確保基金を活用いたしまして、新たに権利擁護人材育成事業を設けることとしております。

 都道府県、市町村が連携しながら、市民後見人の育成と普及により一層取り組むということを期待しているところでございます。

浜地分科員 もう時間が来ましたので、終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

熊田主査代理 これにて浜地雅一君の質疑は終了いたしました。

 次に、宮崎岳志君。

宮崎(岳)分科員 それでは、質問でございます。民主党・無所属クラブの宮崎岳志でございます。

 今回は、まず群馬大学附属病院の腹腔鏡手術における患者の死亡問題について質問をさせていただきたいと思います。

 群馬大学医学部附属病院第二外科における腹腔鏡による肝臓手術において、二〇一〇年十二月以降、患者八人が手術に関連して死亡していたということが判明し、本年二月十二日、同病院の事故調査委員会が調査報告書を発表しております。その中では、八例全てにおいて過失があったという判断であります。

 医学部、医科大学というのは全国に約八十あるわけでありますけれども、古いヒエラルキーでいいますと、まず旧帝国大学というのがあり、その次の序列で、一九二〇年代に大学に昇格した旧六医科大、通称旧六、そして、一九四〇年代に大学に昇格した新八医科大学、通称新八、それから旧設公立医科大学、一九七〇年代以降の新設医科大学という古いヒエラルキーがございますが、群馬大学は、そのうち新八という、戦時中につくられた旧制医科大から戦争直後に大学に昇格していったということでありまして、日本の医学界においては、一定の伝統校、名門校とみなされていることは間違いないであろうというふうに思います。

 いずれにしても、群馬県においては最も大きな総合病院でありまして、かつ、最も高度な医療を取り扱っている、群馬の地域医療の中心を担う病院であるというふうに認識をしているところであります。

 そこで、大変な今回の問題でありますけれども、まず、事案の概要及び厚生労働省の対応についてお伺いをしたいということでございます。橋本政務官にお願いしたいと思います。

橋本大臣政務官 お尋ねのございました群馬大学病院の事件についてでございます。

 委員からもおおむねの御説明はあったところではございますが、御下問でございますので答弁させていただきます。

 今回の事案におきましては、群馬大学病院の第二外科に所属する同一の医師が平成二十二年から平成二十六年までの五年間に腹腔鏡による肝臓手術を行った患者九十二名のうち、八名が死亡していたことが昨年十一月に判明をしたものでございます。

 報告ということですが、三月三日付で最終的には報告書を私ども厚労省に御提出をいただいておりますが、その事故調査委員会の最終報告書によれば、手術に関する説明同意文書の記載が不十分である、診療録の記載が乏しい、また、病院としての問題事例の把握がおくれたというような問題点が指摘をされているところと私どもとしては承っております。

宮崎(岳)分科員 今回の問題の背景を私もいろいろ考えてみたんですけれども、もともと新聞記者でございまして、いろいろな医療過誤問題も取材の経験がございます。今回の問題の背景には、やはり医局講座制の問題があるんだろうというふうに思っております。

 今では全国的にかなり変わってきたわけでありますが、かつて、国立大学では、教授をトップとするピラミッド形の医局が構成されて、診療、教育、研究、そして人事、この四点について独占的に支配を行ってきたという歴史がございます。

 戦後間もない時期から根強い批判がこの点についてはありまして、私が生まれる以前の話に大体なるんですけれども、一九六〇年代までの学生運動等では、医局解体ということが常に叫ばれてきたという歴史があるというふうに認識をしております。

 全国的にはかなり変わってきたんですけれども、群馬大においてはいまだにかなり根強いところがありまして、昭和十九年に創設された第一外科、それから昭和二十九年に創設された第二外科、これが並び立って、同じ分野、重なり合う分野の診療に当たってきた。臓器別の医局構成になっていなくて、ほぼ人間関係だけで二つの医局が構成されている、こういう状況であります。

 その結果、群馬大学附属病院には消化器外科が二つある、呼吸器外科も二つ、乳腺・内分泌外科も二つある。同じ手術をやるときに、こっちの外科では京大方式、こっちの外科では九大方式、それでお互いに張り合っている、こんな状況が長年続いてきたわけであります。

 医学部の方でも、講座というのが当然あるわけですけれども、第一外科は病態総合外科学講座、第二外科は臓器病態外科学講座、これは、それぞれの群馬大学内のドクターに聞いても、本当にわけがわからないと御自分たちでおっしゃるような状況であります。

 第二外科でいいますと、第二外科の内部が消化器外科グループとか呼吸器外科グループとか循環器外科グループとかに分かれていまして、そして、その消化器外科グループが十人いるんですが、その消化器外科グループがさらに、上部消化管外科チーム、胃ですね、下部消化管外科チーム、これは腸ですか、肝胆膵外科チームというふうに分かれていて、肝胆膵外科というのは、今回の執刀医を含む二名しかそのチームにはいない。もう一名は若手でありますので、事実上、今回の執刀医がほぼ肝臓関係については全権を握っている。第一外科にも四人ぐらいということで聞いておりますけれども、それが別々にやっている。

 専門家がこの外科には事実上そのお一人しかいませんから、教授以下、その専門家が誰もいないので、誰も口を挟めないという状況があったのであろう。これが問題の一因である。

 それから、第一外科と第二外科というのは、長年、ある意味で険悪な関係でありまして、非常に、お互いに足を引っ張り合ったり、あるいはお互いにミスを隠し合ったりというようなこともあったというふうに言われております。

 今回も、なかなか情報が外へ出なかった、共有されなかったということが問題視されているんですけれども、このようなことが遠因にあるんだろう、要因の一つであろうというふうに私としては感じるわけです。

 特に、教授選とか学長選とか、そういう人事が絡む時期になりますとこの対立が激化しまして、そのたびごとにいろいろ何か問題が発生しているという、長年のそういった経過があります。非常に、私たち政治家が政治というのを悪い意味で使うのはいかがなものかと思うんですけれども、政治的なところが反映している、構造的な要因があるであろうというふうに思います。

 今回の調査報告書を見ましても、そういったことを受けまして、この二つの外科が併存していることが問題の要因だろうということで、この二つを統合するという改革を打ち出しております。

 六十年以上これは並立してきておりますので、そう簡単ではないんですけれども、人事についても一つにするということであって、省庁再編にも匹敵するような、規模は小さいですけれども、そういったお話になるので、簡単ではないんですけれども、ぜひこういうことを実現していかないと、再生、立ち直りは果たせないんだろうなというふうに私の所感としては思います。

 群馬大では、そのような機構改革を含めて、さまざまな再発防止策に取り組んで信頼回復を目指すということでありますが、今回の問題を深く反省して、強力にこれらの改革を推進していってもらいたいという思いであります。

 また、このことを一大学、一病院の問題として終わらせてしまってはやはりよくないというのが私の思いであります。今回のケースをやはり教訓といたしまして、全国の特定機能病院、大学病院においても、さらなる医療安全体制の確立とか自己改革を進めるべきではないかというふうに思っております。

 そこで、また改めて橋本政務官の方に、この再発防止の取り組みについて、これは群馬大学についてということよりも、日本全体の問題としてどう捉えていくのかということについてお伺いしたいと思います。

橋本大臣政務官 今、群馬大についていろいろ興味深いお話もしていただきましたけれども、そのことにとどまらず、きちんと全国として捉えていかなければならないというお話で、私たちもそのように思っているところであります。

 特定機能病院という枠組みを申しますと、特定機能病院というのは、御案内のとおり、高度の医療の提供等を実施する能力を備えた病院ということで承認をされた医療機関でございまして、医療安全管理については、医療に係る安全管理を行う部門の設置などを求めている、既に求めております。とともに、そうしたことも含めて、診療報酬においても評価をしているということになっております。

 群馬大学病院の事案につきましては、現在、社会保障審議会医療分科会におきまして、特定機能病院の有すべき安全管理体制等について審議を行っているところでございます。

 群馬大学の件をお取り上げいただいておりますけれども、同じ特定機能病院でありますところの東京女子医科大学病院も事故が最近あったということで、そちらにつきましても、含めて我々は考えなければいかぬだろうということで、一層の安全管理体制について徹底を図る必要があるというふうに考えておりまして、先ほど申し上げました医療分科会における二病院についての審議結果、あるいは提出された再発防止策などを踏まえ、特定機能病院の安全管理体制のあり方を検討し、より適切な医療安全管理体制の確保に努めてまいるように、今、努力をしているところでございます。

宮崎(岳)分科員 本年十月には医療事故調査制度がスタートいたします。死亡事故の発生を第三者機関に届け出る、そして院内調査を行う、調査結果をセンターと遺族に報告する、センターが結果を分析して再発防止に向けた注意喚起や情報提供を行う、そして、遺族がその結果に納得できない場合は、遺族の申請を受けてセンターが再調査を行う、こういった仕組みであるというふうに思います。

 信頼性、透明性、専門性、この三つのものが鍵ではないかと私は思っているんですが、これを今回のケースに当てはめてみますと、まず、問題の発覚自体がおくれておりまして、病院内でもインシデント報告等がされていないというような状況でありましたので、医療事故調査制度が導入されても解決できないような部分も残るのかなというふうに思っております。

 また、院内調査の調査委員のうち、学外委員が五名いらっしゃるんですけれども、そのうち二名の名前が非公表となっております。いろいろ聞いている範囲ですと、狭い医療という世界の中で、ある意味、仲間に対して、仲間というか同じ医療界という、あるいは医師という、そこの仲間に対して厳しいことも言わなきゃならないということもあって、なかなか名前が出しがたいんだ、こういった説明もあるわけであります。

 わからないでもないんです。わからないでもないのですが、しかし、メンバーがわからないということでは、やはりどうしても調査結果の信頼性というものに対して揺らぎが出てしまう、たとえしっかりした調査をしたとしても疑念を持たれてしまうようなところもあるのかなというふうに感じた次第であります。

 それから、専門性を確保するということも必要でありまして、調査結果は医師あるいは医療関係者、こういった方々の名誉と身分にかかわってくる問題でありますから、高い専門性を持った方々がやはり調査に当たらなきゃならない。そうすると、専門の学会が関与するということを義務づけるとか、やはり何らかの指針というか歯どめというか、専門性を確保する手だてというのが必要なんじゃないかな、このようなことを感じている次第であります。

 今、ちょうど、ガイドラインを策定したりとか省令等を作成したりという議論でなかなかに紛糾しているということも伺っているんですけれども、今回の事故というものも教訓として、信頼性、透明性、そして専門性の高い調査制度をつくり上げていかなければならないというふうに思っておりまして、この点について、塩崎厚生労働大臣の御見解を伺いたいと存じます。

塩崎国務大臣 今先生御指摘のように、この十月一日から、昨年の六月に成立をした改正医療法において、医療事故が発生した全医療機関がみずから調査を行って、第三者機関である医療事故調査・支援センターにその結果を報告して、センターが再発防止、普及啓発などを行う医療事故調査制度というのがスタートするわけですね。

 これに対して、今お話ありましたとおり、有識者会議によって検討会がつくられておりまして、医療事故調査制度の施行に係る検討会、ここで、制度の施行に向けてガイドラインを、今先生御指摘のとおり、取りまとめをしているところでございます。

 この制度の適切な運営によって、大事なことは、やはり医療の安全を確保するということと医療事故の再発を防止するということが大事でございまして、今、群馬大で起こっている事象、あるいは東京女子医大、これもそうでありますけれども、やはり、医療の安全の確保のためにその病院はどういう体制になっているのか、そして医療事故の再発防止をどうとり得るのか、そういうことがきっちりとできるような仕組みとして十月一日からスタートしてほしいなというふうに思って、今、御議論を賜って、ガイドラインの作成に当たっているところでございます。

宮崎(岳)分科員 最後に、要望としてお伝えしたいのでありますが、冒頭で申し上げましたとおり、群馬大学附属病院は、群馬県内で最大の総合病院であって、最も高度な機能を担っている病院であります。そして、群馬県内の病院は、その大半が群馬大学系列ということで、ほとんどの病院が群馬大学から、その医局から医師の派遣を受けて運営が成り立っているという状況でございます。都会であれば、A病院がだめだったらB病院に行けばいいということになるわけでありますが、群馬の地域事情を考えると、なかなかそうもいかないというのが実情であります。

 安全、安心な医療の確立に向けて襟を正して取り組む、これは当然のことだと思いますし、信頼回復に取り組まなければなりません。そして同時に、高いレベルの医療を幅広く提供し続ける、そのための経営的、財政的な健全性というのも維持する必要があるかなというふうに思っております。

 特定機能病院の指定について、今後どうされていくのかということも検討されておりますし、いろいろ、これはもう厳正にやるしかないところではありますけれども、ぜひ、多くの患者が今現在、群馬大学でまさに診療を受けている、そして、地域の住民にとって取りかえがきくことができないというような、こういった病院であるということもいろいろ考慮に入れまして、地域医療の維持ということも踏まえて、病院の機能が低下することのないように、適切に、また慎重な検討をお願いしたい。これはお願いでございます。

 同時にまた、再発防止ですね。まず、病院というところで最も必要なのは安全でありますから、再発防止に向けたしっかりした指導もしていただくようにというふうにお願い申し上げて、この件に関しては質問を終わりたいと思います。

 次ですが、被用者年金一元化後における年金積立金の扱いについてということで御質問を申し上げます。

 先日、二月二十五日の予算委員会一般的質疑で、この点を塩崎大臣に伺いました。その際は、市町村職員共済が経営しているホテルに焦点を当てた質問であったんです。本日も、午前中の予算委員会の第三分科会の方でこの関連質問をしまして、これは、国家公務員共済組合連合会、つまりKKRですね、このホテルについての質問だったんですけれども、趣旨は同じでございます。

 いずれにしても、秋に、十月に、サラリーマンの厚生年金と、国家公務員、地方公務員、私立の学校教職員、この共済年金が統合をされる。資金の入り口である年金の保険料が統合されて、出口である年金給付が統合される。

 ところが、その真ん中にあります年金積立金というのは独自運用のままという状況でありまして、そこに素朴な疑問もあるわけですが、先日、塩崎大臣に、これがばらばらのままだと、それぞれ運用が違いますから、どこか一カ所が大きく損失を出したときは、これは全体でカバーするのか、そこがカバーするのか、どういうカバーの仕方をするんでしょうかというような質問をしたと思うんです。

 お答えについては、私も会議録を読み返してみると、全体で基本方針を定めて安全かつ効率的に運用されるので心配は余りないのではないか、そうはいっても損を出さないようにちゃんとやります、こういうお答えだったと思うんですけれども、速記録を読み直してみても、そこのところがもうちょっとよくわからないところがありまして、改めて確認させていただきたいんです。

 それぞれの年金積立金があります。GPIFがあります、KKRがあります、あるいは市町村の連合会があります、都道府県があります、警察があります、公立学校があります、東京都があります、そして私立の学校があります、こういう状況なんですが、基本運用方針は定めておりますが、独自運用もその範囲の中でできる。

 その中で、非常に大きな損失がどこか一カ所で出てしまったというようなことが起きた場合に、これを穴埋めするのはどこなんでしょうか。その共済組合がやるのか、それとも全体で穴埋めするのか、これはどうなりますでしょうか。

香取政府参考人 御答弁申し上げます。

 今お話ありましたように、この十月でしたか、一元化をされますので、私ども公務員も全員、厚生年金の被保険者になるということになります。

 今の、私どもの国民年金、厚生年金は、一、二階全体が一つの財政単位として運用をしておりまして、御案内のように、五年に一度、財政検証を行うという形になっております。

 一元化されますと、各共済の積立金、あるいは保険料収入も含めて、給付も含めて、いわば全体を一つの財政単位として財政検証を行うということになりますので、その意味では、積立金はそれぞれ持っておられますけれども、年金財政としては、あたかも一本であるかのように財政検証を行い、その検証を行うということになります。

 実際のお金のやりとりなんですが、各共済組合は積立金を持っておられますけれども、共済の場合には職域部分というのがございますので、いわば三階部分の積立金と二階部分の積立金とを持っておられることになります。

 なので、その二階部分に相当する積立金を一つ切り取った形にしまして、それをあたかも一つの積立金のようにして年金の財政は考えますので、年々歳々、各共済は、自分の積立金と保険料収入を厚生年金との間で一本で調整することになりますので、そういう意味でいうと、お金を分担するということになります。

 そのときに、私どもは、各共済の積立金、今申し上げた厚年相当部分の積立金と各共済、実は今、保険料、成績が少し違っておりますので、その部分を考慮して負担部分を決めまして、その保険料収入と積立金を厚生年金に持ってきて、厚生年金から給付をする、こういう形をとります。

 その意味でいいますと、もちろん、運用は運用で一元的な方針をとって運用の考え方もそろえるわけですが、財政的には、共通の部分についていわば割り前をそれぞれ割りつけてその部分を出していただくということになりますので、その意味では、各共済の運用後の成績とはまた別に、いわばそういう一つのバーチャルな積立金の中でお金のやりとりをするという形で、財政単位を一個にするという運用をすることになります。

宮崎(岳)分科員 そうしますと、全体でもし損失が出た場合も、財政検証等を行って、全体でカバーするよということですよね。

 そうすると、逆に言うと、各積立金が、もちろん頑張って運用するんでしょうけれども、損失を出しても、その責任はそれぞれの共済組合とかいうところはとらない、最後は全体で平均される、こういうことでいいんですか。

香取政府参考人 基本的には、財政単位は一個になりますので、五年ごとに財政検証をするときに、例えば、ある共済が厚生年金と違う運用になって運用利率が違ってくるとなりますと、いわばバーチャルな厚生年金の積立金部分の水準が変わることになります。

 そういう意味では、おっしゃるように、いわばみんな一つのお皿に入りますから、そういうでこぼこも含めて全体で調整することになりますので、その意味では、各運用の結果の違いは、最終的にもし例えば積立金に穴があいたということになれば、そこは全体で、財政検証の中でもう一度計算し直すということになります。

 そのこともありまして、積立金については、共通指針をつくって、モデルポートフォリオをつくって、基本的に同じ考え方でそろえて運用しましょうという形になっているということでございます。

宮崎(岳)分科員 やはりちょっと違和感がある。それぞれ別々に運用はするんだけれども、運用成績がよくても悪くても関係ない、最後はならされてしまうと。

 過去にいろいろ、例えば、高利回りの元本保証の債券なんというのが紙くず同然になったというケースがありまして、いわゆる農協系の金融機関なんかは結構そういう被害をこうむったりというようなケースもあります。

 私は、今回、ホテルの問題とかをいろいろ突っ込んでいるんですけれども、逆に、そういうところで損を出しても、よくはないでしょうけれども、まあ、別に最終的にそこが責任をとるわけではないというような感じにも聞こえてしまうんです。何か運用のモチベーションも何もないような気もするんですけれども、そういうことなんですか。

 例えば、債券は何%とかいうことはあるんですけれども、その債券にも、もちろん安全な債券もありますけれども、安全じゃない債券もあって、そういう安全じゃない債券にひっかかって、そういう年金組合みたいなものが破綻したケースも過去にはあるとは思うんですよね。

 でも、そういうことなんですかね。どうなんでしょう。質問になっていませんか。まあ、そういうことなんでしょうね。

香取政府参考人 ちょっとお答えになるかどうかわかりませんが、今の共済組合も、もちろん今は共済が御自分で運用されていますが、当然、組合員、我々がいるわけですから、GPIFが厚生年金の被保険者に対して責任を持っているのと同じ意味で、共済組合も自分の組合員に責任を持っている、そこの構図は変わらないわけです。

 一応、法律上の建前も、厚生年金も安全確実に運用するという考え方に立っていますし、共済も基本的には同じ考え方に立っています。もちろん、今は少しポートフォリオの組みぐあいは違っていますけれども、考え方は同じということになります。

 今度、一元化されても、私どもは、国家公務員、地方公務員は厚生年金に入るわけですけれども、同じように、自分たちの掛金を出した人間たちが入っている厚生年金に対して一定の負担をするということになりますので、その意味でいうと、責任が軽くなるというようなことでは多分ないんだと思うんですね。

 ただ、一方で、お話のように、各組合ごとにいろいろ、過去の経緯もあって複利運用みたいなものを持っておられるところもありますから、それぞれ運用の違いはございますけれども、申し上げましたように、厚生年金部分については、基本的には、バーチャルに同じ積立金、この部分が二階部分だということを決めて、それで、一定の方針を決めて各共済に運用していただくということになります。

 もちろん、細かい違いは出てくるかもしれませんが、基本的には同じ考え方で運用に臨むということになりますので、その意味では、完全にそろうことはもちろんないかもしれませんけれども、御指摘のような、一種、モラルハザードのような形で運用で失敗をして云々ということは基本的に余り想定はしなくてもいいのではないかと思っております。

宮崎(岳)分科員 財政検証の中でならして処理するということですね、損失が出た場合は。

 きょう、第三分科会で行った議論というのは、所管ではありませんけれども、塩崎大臣にもぜひ聞いていただきたかったなという感じもするような議論だったんですが、先日、市町村共済の質問を聞いていただいたと思うんですが、大体同じであります。

 年金積立金からお金を借りてくる。それでホテルをつくる。ホテルは赤字である。なので、返せない。でも、返さなきゃならないから、よそのところからお金は持ってくる。これは保健経理というところで、事業者負担が五〇%、これが税金であって、あと組合の掛金が五〇%で、これが年間、市町村職員の共済ですと、総額二十億円ぐらい毎年入っていますよ、こういう話で、KKRも同じで、こういうことは第二のグリーンピアになりかねないんじゃないんですかね、こういう危惧であったわけです。

 KKRのホテル全体でいいますと、二十五年度、収入が二百十億円で、支出が百九十八億円で、差し引き十二億円余りの黒字という数字が出ているんですね。ところが、保健経理からぽんと、二十五年度については三十一億円ここに入っていますので、実態は十九億円近い赤字ですよ。十二億の黒字ですという決算が出ているんですけれども、実際は十九億の赤字です、こういう話なんですよ。

 もっと問題があって、ホテルの営業収支を出していただいて、四十三施設中の三十五カ所が黒字です、赤字が八カ所です、こういう御回答だったんです。ところが、この数字の中に、設備投資の関係、例えば減価償却費とかが入っていないんですね。つまり、粗利で計算していて、三十五が黒字で、赤が八だ、こういう話なんですね。

 塩崎大臣も日本銀行にいらっしゃったから企業会計にもお詳しいと思うんですけれども、設備投資部分を全く入れないで黒字、赤字を判断するようなものというのは余りあり得ないかなと正直思っております。

 それから、これは答弁者だった菅原一秀財務副大臣に後で確認したいと思うんですけれども、KKRの役員の中に官僚の天下りはいるんですかという質問をしたら、一名、常勤役員は八名いるんですけれども、一人だけ、理事長がそうだ、国税庁長官のOBだ、年収二千百八十一万円だ、こういうふうに言って、おかしいなと思って、はっきり断言されたのでそのまま流してしまったんですけれども、事務所に戻ってから確認をしましたら、ことし二月一日付の役員一覧を見つけたんですね。

 調べたら、常勤役員が九人いて、理事長は答弁のとおり元国税庁長官なんですけれども、そのほかに八人常勤役員がいるんですが、専務理事が元国税庁次長、常務理事が防衛省OB、元防衛医大副校長、文科省OB、元九州大学理事・事務局長、厚労省OB、元内閣官房内閣審議官、会計検査院OB、元事務総長官房審議官、総務省OB、元中国総合通信局長、常任監事が外務省OB、元在フィリピン大使館公使、人事院OB、元九州事務局長ということでございまして、何か、これらの人は天下りではない、官僚OBではないということなのか、ちょっと答弁の趣旨がよくわからなかったです。

 大臣の責任ではないんですけれども、どういうことなのかちょっとわからないので、確認したいと思います。

 いずれにせよ、こういった実態はちょっとおかしいなと思っておりまして、もう答弁の時間がないので大臣にコメントを求めることもしませんけれども、改めて、今後もちょっと調べていきたいと思っておりますので、よろしく大臣にも御関心をお持ちいただければと思います。よろしくお願いいたします。

熊田主査代理 これにて宮崎岳志君の質疑は終了いたしました。

 次に、谷川とむ君。

谷川(と)分科員 自由民主党の谷川とむでございます。

 平成二十七年度予算委員会第五分科会において質問の機会を与えていただき、ありがとうございます。

 今回は、生活保護について質問をしたいと思います。

 さて、我が国において、近年、被生活保護者が急増し、国や地方公共団体の財政を圧迫しているのは周知の事実であります。被生活保護者は二百十六万人を超え、生活保護費負担金も平成二十七年度当初予算案では三・八兆円が見込まれております。

 一方で、最近、生活保護に関するビジネスが展開されているということがテレビや新聞等で報道されています。また、生活保護を利用した違法な行為が指摘されてもいます。さらに、他方で、以前に比べれば、身の回りにおいても、就職できなかったら、あるいは失業したら生活保護に頼ればいいという話を耳にすることがふえております。これは、人々の勤労意欲が減退しているようにも思われます。

 このようなことからすれば、生活保護制度は、その理念とは裏腹に、経済と社会を損なっている可能性があると言えるのではないでしょうか。

 そこで、現行の生活保護制度が制定された背景、意義などが私は重要であると思っておりますので、もう一度確認してから質問に入りたいと思います。

 我が国における生活困窮者の公的救済制度は、古代の屯倉、大宝律令の義倉、光明皇后の施薬院、悲田院などにその萌芽を見ることができます。

 明治以降の我が国における近代的公的扶助は、一八七四年に明治政府によって制定された恤救規則を経て、一九二九年に救護法が制定されたことにより確立されました。恤救規則は、幕藩体制下の慈恵主義的に給付を行うものであり、救済の基本原理は親族救済や隣保扶助でありました。また、治安対策としても必要だったと言えます。

 つまり、趣旨は二つあったと言えます。

 第一に、無告の窮民を救済すること、第二に、生活に困窮する者がさまざまな犯罪を起こすということを防止することであります。

 一九二九年の救護法は、家族救済や隣保扶助に基づいている点では恤救規則の延長にあるものの、理念としては、法的な救護を、慈恵ではなく、法的な国の責務としていました。ただし、失業による困窮は対象としないなど、制限的でもありました。

 この救護法を補完し、旧生活保護法が一九四六年に制定、施行され、その後、憲法二十五条、生存権を含む新憲法の趣旨を踏まえて、一九五〇年に旧生活保護法を全面的に改める形で現行の生活保護法が制定、施行され、平成二十五年に生活保護法が一部改正され、現在に至っています。

 以上の歴史を踏まえると、生活保護制度の意義は三つあったと言えます。

 第一に、困窮者救済であります。極貧で、労働能力がなく、しかも親族や近隣の援助も受けることができない、無告の窮民を救済することに意義が求められます。

 第二に、治安対策であります。生活の困窮を原因に発生する犯罪を防止する役割があるとも言えます。

 第三に、生存権保障であります。すなわち、全ての国民に国が健康で文化的な最低限度の生活を保障することであります。

 現在は、第三の、憲法二十五条、生存権保障の意義が重要であるのは言うまでもありませんが、生存権は、具体的権利説ではなく、抽象的権利説であるとするのが通説であり、すなわち、どのような生活保護を行うかは、行政の裁量に委ねられていると言えます。

 平成二十五年に生活保護法の一部が改正されましたが、生活保護の基本理念である憲法二十五条、生存権保障の性質を考えると、もっと根本的な問題、すなわち、実際の現場で生活保護がどのように運用されていて、どのようなメリットとデメリットが生じているかという実態を明らかにした上で議論を重ね、改めて生活保護制度のあり方を考えることが必要であると考えます。

 私は、大学院のときに、当時、大阪市の被生活保護人員の約五人に一人が居住する大阪市西成区、その中でも約三人に一人が居住するというあいりん地区を中心に、生活保護制度の実態を調査いたしました。

 実態を調査した結果、生活保護が必須な者は保障されていることが明らかであり、これは、現行の生活保護制度の運用としては評価ができます。

 これからも、生活保護を受けなければ生きていくことができない国民は必ず守る制度でなければなりません。このことは絶対であり、生活保護が必須な者を必ず守るためにも、生活保護を取り巻くさまざまな問題を解決する必要があると考えております。

 では、まず、現行の生活保護制度は、決定基準自体の妥当性については一定の評価ができるものの、実質的には支給決定が形骸化しつつあると言えます。

 行政は、大前提として、生活保護申請者が生活保護の要件を満たしているとの判断で支給決定を行っております。それに対して、支給決定を下すまでの時間が短い、行政調査権に強制力が弱いなどの理由から、申請時の資産しか判断材料として見ていない現状があります。また、いろいろな圧力により、やむを得ず緩やかに判断する者も存在しております。さらに、ケースワーカー一人が担当する人数が多過ぎて、厳格に支給決定ができないのが現実で、実質的には支給決定が形骸化しているのではないでしょうか。厚生労働省の見解をお聞かせください。

鈴木政府参考人 先生今お話しのように、生活保護につきましては、利用できる資産とか能力、その他あらゆるものを活用していただく、これが要件でございます。

 このために、生活保護の申請を行った方に対しまして、行政の方で、生活状況等の聞き取り、それから、収入、資産等に関する書類の提出、各種調査、こういったものを通じまして、この要件を満たしているかどうか、これを確認する必要がある、こういう運用でございます。

 一方で、申請者の方はやはり生活に困窮しておられる方々ですので、短期間で保護の決定をしなきゃいけないというケースも間々あるわけでございます。こうした場合には、やはり一旦保護決定を行った上で、調査を引き続いて行いまして、必要に応じて、保護費をお返しいただくということがあれば返還を行っていただく、そういう措置を講じているところでございます。

 一方で、調査能力、調査権限のお話がございました。

 この点につきましては、生活保護法を改正いたしまして、改正後の法律が昨年七月から施行されておりますけれども、確認に必要な福祉事務所の調査権限、これにつきまして、これまで資産と収入に限定をされておりました調査事項、これについて、就労の状況ですとかあるいは健康の状態、こういうものを追加いたしました。それから、官公署等が情報提供を求めている、そういう場合に必ず回答しなきゃいかぬということを義務づけました。こういった強化を逐次図っているところでございます。

 それから、ケースワーカーについての御指摘もございました。

 支給決定を行うのは、やはり個々のケースワーカーでございます。平成二十一年度以降、毎年度、地方交付税につきまして、算定上の人数をふやすということを総務省にもお願いいたしておりまして、この点につきましては、今後とも適切に保護の実施ができるように我々も努力をしてまいりたいというふうに思っております。

谷川(と)分科員 法改正によって調査権限が少し強くなったのは存じておるんですけれども、福祉事務所が行う官公庁等への情報提供の求めに対して回答が義務づけされました。しかし、民間に対する回答義務がないのではないかなと。今後、回答の義務を含めた民間の協力を得られる対策を講じていくべきであると考えますが、いかがでしょうか。

鈴木政府参考人 官公署に対します回答義務につきましては、その情報が実効性のある調査を行う上で必要不可欠である、それから、現在、ほかの法令におきましても、官公署の回答義務というものは規定をされているわけでございます。これは、やはり、公権力を背景にいたします官公署であるということがあると思います。

 一方で、民間の機関、これに対する回答義務につきましては、なかなか諸法令を含めて類例がなくて、全くの新しい試みでございますので、直ちに行うことはなかなか困難かなと思っております。

 公的年金給付につきましては、保護の申請段階で状況を確認する必要がございますので、例えば、民間機関と申しましても、日本年金機構でございますとかあるいは共済組合、こういうものに対しては回答義務の対象にすることにいたしておりまして、こういったように、必要に応じて、逐次状況を見て改善を図ってまいりたいというふうに思っております。

谷川(と)分科員 ありがとうございます。

 今後も、民間の協力を得られるように、少し対策を考えていっていただきたいなというふうに思います。

 次に、現行の生活保護制度は、生活保護に便乗して過剰な利益を上げるビジネス、いわゆる貧困ビジネスを生みやすい仕組みになっているのではないかと考えているところでございます。

 具体的には、支給水準と実際に生活保護サービスを提供できる費用のギャップ、すなわち利ざやが大きい。また、支給基準内であれば請求はほぼ認められるので確実に利益を得られる。さらに、医療扶助や介護扶助のような現物給付に自己負担や支給限度額が設けられていない。その上で、行政のチェックが緩い、または不正に対する制裁が軽い。これらが、生活保護制度に便乗して過剰な利益を上げるビジネスを生み出す原因となっていると考えています。

 生活保護制度は、保険料の拠出を前提とする対価型の社会保険制度とは異なり、税金を財源とする非対価型給付、言いかえれば、事前の拠出を要しない給付であり、当たり前ではありますが、生活保護に便乗して過剰な利益を与えるような制度であってはなりません。

 そのためには、支給水準を実際に生活保護サービスが提供できる水準まで引き下げるなど、支給水準の適正化を図ることが重要であり、また、いわゆる貧困ビジネスを起こりにくくさせることが絶対であると考えますが、いかがでしょうか。

鈴木政府参考人 御指摘のように、生活保護基準につきましては、生活保護制度が今後とも国民の信頼が得られるように、適時適切に見直しを行っていく必要があると考えております。

 このため、厚生労働省といたしましても、社会保障審議会に常設の機関といたしまして生活保護基準部会というものを設けまして、専門的、客観的な見地で検証を行っているところでございます。

 今御指摘のございました貧困ビジネスでございますけれども、典型的な例といたしましては、例えば、住宅に関して、生活保護の受給者を劣悪な施設に住まわせて、限度いっぱいまで住宅扶助をもらえるために家賃額を設定する、こういうようなケースが間々見られるところでございます。

 したがいまして、この点につきましては、今般の住宅扶助の上限額の見直しの中で、これは生活保護基準部会においても御議論いただきましたけれども、各地域の家賃実態を踏まえまして検証を行って、適正な水準となるように見直す。

 その中で、この貧困ビジネスでございますけれども、床面積に応じて上限額を減額する仕組み、すなわち、劣悪な狭いところに受給者を押し込めているというような場合には、狭いところに応じた上限額しか出しませんよというような適正化も図ることによりましてこの貧困ビジネスの是正を図る、こういったことも試みているところでございます。

 いずれにいたしましても、この生活保護基準自体につきまして、今後とも、各扶助について、実態に見合った額になるように、専門的な見地も含めて客観的に見直しを行ってまいりたい、こういうふうに考えてございます。

    〔熊田主査代理退席、主査着席〕

谷川(と)分科員 ありがとうございます。

 私、西成区の方にいろいろと調査をした結果、やはり支給水準が高いのではないかなというふうなところを考えております。これからもまた審議会等で、本当に必要な人たちが必要な分だけを与えられるような制度にしていっていただきたいなというふうに思います。

 次に、現行の生活保護制度は、被生活保護者の労働意欲を損なっており、被生活保護者の自立が促進されていないのではないかと考えております。

 具体的には、大過なく生活保護サービスを受けることができる上、生活保護を受けることによるサンクションもない。一度生活保護を支給決定されれば、死亡、失踪及び病気の治癒を除けば、ほとんど廃止されないのが現状であります。さらに、ヒアリング調査を行った被生活保護者のほとんどから、働きたいけど働く場所がなかった、働く場所がない、また、働くチャンスがない、チャンスがなかったとの訴えも受けております。これは、労働意欲を有する被生活保護者が自立できていない現状を示しております。

 これらの結果、被生活保護者の労働意欲減退につながり、被生活保護者の自立が促進されていないと言えるのではないでしょうか。厚生労働省の見解を求めます。

鈴木政府参考人 御指摘ありましたように、働く能力がある生活保護受給者が就労して自立できるように支援していくこと、これはまことに重要であるというふうに思っております。

 これまでも、就労支援といたしましては、福祉事務所に就労支援員を置いておりまして、これを活用した就労支援、それから、ハローワークと福祉事務所のチーム支援などを行っているところでございます。

 実績を申しますと、こういった支援の結果、例えば平成二十五年度におきましては、約七・七万人が就労、増収につながりまして、金額で申しますと約百七十三億円の削減効果があったという推計もあるわけでございます。

 また、二十五年度から、働ける方に早期に生活保護から脱却をしていただく、こういうことに向けまして、切れ目ない支援、それから今御指摘のありましたインセンティブの強化、これをやってまいらなければならないということで、いろいろな試みをやっております。

 幾つか御紹介させていただきますと、例えば、就労の自立が見込まれる方、これにつきまして、まず、原則六カ月以内に就労していただくことを目指しまして、自立活動確認書というものをつくっていただきまして、これに基づいて集中的に支援を実施する。早期にとにかく働いていただく、こういう試みが一つございます。

 それから、就労活動を行いましても、なかなかやはり就労のめどが立たない場合というのはどうしてもございます。まずは、本人の意思を尊重しながら職種ですとか働く場所、こういうものを広げるわけでございますけれども、短時間であっても、それから低額の賃金であっても、とにかくまず、一旦就労していただく、これが後につながる大事な取り組みでございますので、こういった方針も明確化しているわけでございます。

 それから三点目に、みずからむしろ積極的に就労活動に取り組んでいただいている方も多くいらっしゃいます。こういう方々に対しては、インセンティブといたしまして就労活動の促進費を支給して、最初のかかり増し経費とかそういうものをきちんと見て、さらに円滑に就労につながるようにしていく。

 そして四点目に、一旦就労しますと、今まで、例えばいろいろな税金とか、そういう公的負担を払っていなかった生活保護の方でございますので、ちょっと収入が生じると、そうしたいろいろな負担が出てきてしまう。そこにつきましては、いろいろな勤労控除についての配慮でございますとか、その控除率の見直しとかいうことで、働いたがゆえにやたらに負担が重くなって、では働くのをやめようというようなことが起きないようにするというふうな工夫もさせていただいております。

 それから、二十七年度からは、先ほど御紹介いたしました生活保護法の改正、これを施行いたしまして、先ほど御紹介した就労支援員を活用してやっておりました活動につきまして、法定事業として、被保護者の就労支援事業を法律上位置づけたところでございます。こうしたことで、さらに強力な取り組みをしてまいりたいというふうに考えております。

谷川(と)分科員 就労支援については、本当にしっかりと取り組んでいっていただきたいなというふうに思います。

 しかし、本当に仕事をしたい、生活保護から脱却したいという人たちだけであればいいんですけれども、なかなかそういう人たちだけでもないという現状があるのも、私は、調査の結果、見てきております。

 そういう方たちに、次のことを少し提案させていただきたいんです。

 被生活保護者の自立が重要であることは、生活保護法第一条にも明記されております。そのためには、非対価型給付から対価型給付に構成し直すことは考えられないのか。もっとも、生活保護の性質上、社会保険制度のように事前の拠出を求めることは現実ではない。となると、生活保護による給付に対して、事後的対価を被生活保護者に求めることが考えられます。例えば、生活保護費を支給する対価として、労働を求めることが考えられます。

 ただし、被生活保護者は、被生活保護者以外の者に比べて労働力が劣る者が多いので、軽労働や軽作業等が適切であると考えております。寝たきりで、障害を持った方たちも多いと思いますので、その人たちは稼働能力がさらに損なわれている、そういう場合は、表情や言葉や態度によって対価とみなすべきだろうと考えておりますが、いかがでしょうか。

鈴木政府参考人 今の御指摘、働ける者にはやはり就労を義務づけるべきだというようなお考えに通じるんだと思います。やはり、働ける方にはしっかり働いていただく。一方で、就労をとにかく義務づけるということが今の憲法のもとでどこまでできるかという難しい問題もございます。

 そういうことで、被保護者の就労につきましては、先ほど申しましたように、いろいろな角度から取り組みをしていく。なるべく早期に働いていただくための取り組みでございますとか、あるいは、働いたがゆえに、コスト、かかり増し、公的負担がふえる、それがインセンティブにつながらない場合に、そこを一定程度軽減して、より就労につなげていく。

 こういったような、それぞれの方の状況に応じて、やはり就労というものに結びつけていく取り組みが結果的には一番効果があるというふうに考えておりますので、今いただきました考え方もまたしっかり踏まえながら、こうした多角的な取り組みにつきまして、さらに検討を深めて、より実効性のあるものにしてまいりたいというふうに思っております。

谷川(と)分科員 先ほど、導入の部分でお話しさせていただいたとおり、やはり、身の回りでも、生活保護をもらった方が楽や、働いたら損やというような考え方も多く、私がヒアリング調査した結果でもそういう人たちも多かった。やはり、そういう人たちに対してはしっかりと取り締まっていただいて、また、労働の対価として支給できるような取り組みを今後も検討に加えていただきたいなというふうに思います。

 また、事実上、生活保護の支給が決定されましたら、無期限で生活保護を受けている者が多い。これについて、有期化することによって被生活保護者がみずから働く努力をするように導いていくということも必要ではないかと考えますが、いかがでしょうか。

鈴木政府参考人 ただいまの御指摘、例えば、生活保護に期限を限った有期の更新制を設けてはどうかという御指摘だというふうに受けとめております。

 この点につきましては、一方で、憲法に保障された最低限度の生活、これをいかに保障していくかという観点との調整、調和が必要であろうというふうに思っております。

 今の御提案につきましても、私ども社会保障審議会の特別部会でも多々御議論ございまして、その中では、やはり憲法との兼ね合いも含めまして慎重な検討が必要ではないか、もちろん、賛成する議論もありましたし、全く反対する議論もございましたけれども、全体としては、慎重な検討が必要ではないかというような経緯であったというふうに承知をいたしております。

 一方で、ただ、現行制度におきましても、やはり、働けるのに働かないようなケース、これについては極めて厳正に対処いたしておりまして、正当な理由がないのに就労活動などを行わない、こういったケースにつきましては、まず指導をしたり指示をしたり、そういった手順を丁寧に踏みました上で、手続を踏んで、保護の停止とか廃止とか、そういった厳正な対応もいたしております。

 平成二十四年度の数字でございますけれども、七千を超える世帯にこういった指導をいたしまして、実際に保護の停廃止をしたのが千二百六十六世帯というふうなデータもございます。

 この辺については、やはり国民の税金で成り立っている制度でございますので、理解が得られるように、厳正な対応をしてまいりたいというふうに思っております。

谷川(と)分科員 私も、いろいろと判例を読んで、憲法二十五条の健康で文化的な最低限度の生活というのは、誰一人として、憲法学者においても、定義がなされていないと。先ほど私も言わせていただきましたけれども、抽象的権利説で、どれが正しい、どれが間違っているということはなかなか一概には言えないんですけれども、やはりそういうところも考えていただきたいというのが心からのお願いでございます。

 今回、まだまだ質問したいことも多いんですけれども、次の機会にさせていただきたいなというふうに思います。

 しかし、最後に、生活保護制度は、最後のセーフティーネットでございます。持続的に存続できる制度でなければならないと考えております。まだまだ改善すべきところが多いのではないかと考えておりますので、今後も、全国民にとってよりよい制度となるように、御検討のほど、よろしくお願いいたします。

 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

原田主査 これにて谷川とむ君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして本分科会の審査は全て終了いたしました。

 この際、一言御挨拶申し上げます。

 分科員各位の御協力によりまして、本分科会の議事を滞りなく終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午後七時五十五分散会


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