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第2号 平成14年3月4日(月曜日)

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平成十四年三月四日(月曜日)
    午前九時三十分開議
 出席分科員
   主査 北村 直人君
      伊吹 文明君    大原 一三君
      西川 公也君    青山 二三君
      石井 啓一君
   兼務 井上 喜一君
    …………………………………
   環境大臣         大木  浩君
   環境副大臣        山下 栄一君
   環境大臣政務官      奥谷  通君
   政府参考人
   (環境省地球環境局長)  岡澤 和好君
   環境委員会専門員     飽田 賢一君
   予算委員会専門員     大西  勉君
    ―――――――――――――
分科員の異動
三月四日
 辞任         補欠選任
  伊吹 文明君     西川 公也君
  青山 二三君     遠藤 和良君
同日
 辞任         補欠選任
  西川 公也君     伊吹 文明君
  遠藤 和良君     上田  勇君
同日
 辞任         補欠選任
  上田  勇君     石井 啓一君
同日
 辞任         補欠選任
  石井 啓一君     青山 二三君
同日
 第八分科員井上喜一君が本分科兼務となった。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 平成十四年度一般会計予算
 平成十四年度特別会計予算
 平成十四年度政府関係機関予算
 (農林水産省及び環境省所管)


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     ――――◇―――――
北村主査 これより予算委員会第六分科会を開会いたします。
 開会に先立ちまして、民主党・無所属クラブ及び日本共産党所属の本務員に御出席を要請いたしましたが、御出席が得られません。
 再度事務局をして御出席を要請いたさせますので、しばらくお待ちください。
 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
北村主査 速記を起こしてください。
 御出席を要請いたしましたが、御出席が得られません。やむを得ず議事を進めます。
 平成十四年度一般会計予算、平成十四年度特別会計予算及び平成十四年度政府関係機関予算中環境省所管について、前回に引き続き質疑を行います。
 この際、分科員各位に申し上げます。
 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力をお願いいたします。
 また、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。井上喜一君。
井上(喜)分科員 保守党の井上喜一でございます。
 京都の議定書につきましては、今国会に条約なりあるいは関係法律が提案されるという状況になりまして、そういう意味では、そういうのに合わせました質問をするのが私はよろしいんじゃないかと思っていたんですが、たまたま環境大臣が大木大臣にかわられまして、ちょうど京都議定書を署名されたときの大臣でありますので、この際、幾つか明らかにしておくことが将来の議論のためにもよろしいんじゃないか。そういう意味で、この京都議定書の署名の段階までさかのぼりまして、幾つか質問をさせていただきたいと思うんです。
 私は、この京都議定書で規定されておりますこと、環境庁の当時の皆さん方は非常に安易に考えているんじゃないかと思うんですね。私のところに説明に来る人だって、日本は六%だ、EUとかアメリカよりも少ないんですよ、こういうような説明で事は済むと思っているわけですね。私は、それはちょっとおかしいんじゃないかということであります。これは、日本の経済とかあるいは国民生活に非常に関係のあることでありますし、また、一たん約束をすればそれは実行していく義務を負うわけでありますから、そう軽々に扱うべき問題じゃないと思うのであります。
 私が問題にいたしますのは、一つは、事実関係の認識において本当に十分だったのかどうかということなんですね。事実につきましては、起算年といいますか、基準にする年の問題とか、あるいは技術水準の問題なんかあると思いますし、もう一つは、戦略性におきましても、本当に余りそういうことがなかったんじゃないかと私は思うんですよね。ただ環境だ、大事だからやれ、やれと言うのは、日本人独特のそういうような発想ですね。実態と離れた、何か格好をつければいいじゃないかというようなところがありまして、ここまで進んできたんじゃないかと私は思うんですね。
 そういうことで、この署名の段階にさかのぼりまして、明らかにすべきは明らかにすべきだと思うんですね。
 まず一つは、基準年といいますか、この問題なんですね。一九九〇年でありまして、このときは、例えばイギリスなんかは、これはまだサッチャー政権かあるいはサッチャー政権の直後ぐらいじゃなかったかと思うのでありますけれども、エネルギー源を石炭から天然ガスへ転換しようとしていた時期なんですよね。だから、御承知のとおり、こうやればCO2の削減なんかはもう容易にできるわけでありまして、資料を見ますと、一九九八年のCO2の排出量は九〇年比で、もう六・八%減になっているわけですね。これはイギリスです。この年からずっと石炭が減りまして、天然ガスに転換をしてくるわけですね。
 EUでもう一つの大きなCO2排出国はドイツなんですね。ドイツも、一九九〇年ぐらいあるいはそのもうちょっと前からずっと石炭から天然ガスへ転換をしてきたわけですね。これも同じく、一九九八年のCO2の排出量というのは、九〇年対比で見ますと一二・四%減っているわけです。
 英独両国で大体EUの半分の排出量を占めるわけでありまして、この二国の成否といいますか、達成量いかんがEU全体のCO2の削減量を決めてくるというような状況なんですね。
 それから、ソ連なんかを見ましても、ソ連は一九九〇年対比ではゼロになっているはずなんですけれども、これも経済停滞から、今や何か一九九〇年の三割減ぐらいな排出量になっている、こういうことなんですね。
 私は、この基準年につきまして非常に問題があるんじゃないかと思うんです。まず、こういう各国の政策転換、そういうことを十分にらみながら、日本だってそういう戦略を考えて取り組むべきではなかったかと思うんでありますが、どうしてこういうような状況が考慮されないで、削減は結構なんですよ、地球環境を守るというのは結構でありますけれども、日本の状況を考えながら一歩一歩やはり進んでいくということが必要だと思うんであります。どうしてこういうような外国の状況が十分考慮されなかったのか、この点についてまずお聞かせをいただきたいと思います。
大木国務大臣 井上委員からも今お話ございましたとおりに、私も、一九九七年の京都会議のときは環境庁長官をやらせていただいておりましたから、いろいろとその当時も議論があったわけでございます。日本政府として、どういう削減目標を立てて、これを議定書に書き込むかということについては、基本的には二つのポイントがあったと思います。
 一つは、各国と比べて日本だけが非常に不利な形になっては困る、それは、国際交渉でございますから、当然そういったことがある。それから二つ目は、今度は日本として、例えば、最終的に六%という数字を合意したわけでございますけれども、これが非常に無理なものであるかどうか。この二つがあると思うんです。
 各国の状況というのは、今お話ございましたとおりに、一九九〇年から比べて、九七、八年当時に非常に状況がよくなった、つまり削減がイージーになったという国々があったことはそのとおりでありますけれども、要は、世界全体として、あるいは、実際に減らすのは、京都議定書では、簡単に先進国と言わせていただきますけれども、先進国、あるいはいわゆる社会主義体制からの移行国でありますが、大ざっぱに先進国とくくらせていただきますが、そういった国で削減目標をつくるということでございますから、いろいろと国によって難しい、易しいということの差があったことは、十分私どもも承知をしておりました。
 ただ、むしろEU諸国などは、八%じゃなくて、初めはもっと大きな数字も出しておりましたから、そんな数字ではとても我々としてもついていかれないということは言っておったわけですけれども、最終的には、EUも全体としては自分たちは八%ということの中で、アメリカが七%、日本が六%ということになったわけでございますが、決して、EUよりあるいはアメリカよりも少し少なかったからそれで大丈夫だというようなことではなくて、ぎりぎりは、日本としても本当に六%を達成できるかどうかという判断のもとで、しかし、日本も有力なる先進国の立場から六%という数字を出したわけでありまして、六%につきましては、また後で必要があれば細かく御説明いたしますけれども、いろいろ政府の中でも議論はありました。
 日本としては、二度にわたります石油ショックの過程におきまして、省エネということについては非常に努力しましたから、産業界としては、これ以上また自主的な省エネを進めろと言われれば非常に難しいというような議論はありましたけれども、いろいろと総合的に考えまして、六%は決して不可能な数字ではないということで合意をさせていただいたということで、非常に一般的なお答えになりますけれども、各国の情勢もわきまえながら、と同時に、日本としてできるかどうかということも考えながら、ぎりぎりの数字を出させていただいたということでございます。
井上(喜)分科員 我が国の省エネというのは非常に進んでいるということを言われておるんでありまして、よく言われますのは、鉄鋼とかセメントなんかの省エネ技術というのは非常に進んでいる、こういう話なんですね。確かに、セメントなんかを見ますと非常に進んでいるわけでありますし、今、鉄鋼なんかも新しい技術を入れまして進んでいる。つまり、日本の技術というのは、他の先進国に比べまして非常に進んでいるということでありますから、そういう意味では、将来、削減をしていくのは、ある意味ではほかの先進国よりも難しい面があるわけですね。技術的にはそういうことだと私は思うんですよ。
 こういう技術面への配慮というのは、つまり進むところまで進んできているということですね、原子力への転換もかなり進んできていますから。そういう点への配慮というのはどの程度されたのか、この点についてお伺いしたいと思います。
大木国務大臣 技術のことでございますので、実を言うと、細かく言い出しますと、そういういろいろと、どの部門でどういうことができるのかというようなこともありますが、まず、削減の目標をどういうふうに割り振るかというようなときには、もちろん先生よく御存じでございますから釈迦に説法ですけれども、産業部門のほかに、運輸交通とか民生の部門もありまして、そういうところも努力してもらわなきゃいかぬということでありまして、率直に申し上げまして、産業部門は非常に努力してきたけれども、運輸交通とか民生のことになりますと、必ずしも、日本が非常に一生懸命、今まで全部、よそよりもはるかにやってきたというような状態ではないということもございましたから、そういったことも含めて、いろいろと議論させていただいたというわけであります。
 どういうふうに技術の方のことを考えたかということにつきましては、ですから、先ほども申し上げましたこと、繰り返しになりますけれども、省エネのほかにも、また別に新エネルギーをさらに開発するとか、いろいろありますから、そういったようなものも全体として考えて、産業部門でもある程度は努力していただくけれども、産業部門だけに過重に負担がかからないようにということは考えながら、私どもは、全体の姿を考えさせていただいたわけでございます。
井上(喜)分科員 産業部門にこれから削減の余地がある場合とない場合というのは、国全体としての削減結果に大きな影響を及ぼすと思うんですね。日本は、そういう意味では、産業分野にこれ以上CO2を削減していく余地が相対的に少ないと思うんですよね。だから、日本の目標というのは、そういう意味では非常に厳しいものがあるんじゃないかと私は思うんであります。
 そこで、CO2削減のコスト、これはどのぐらい見ておられるのか、しかも、このコストをほかの国と比較をしてどの程度になっているのか、お聞かせいただきたいんです。
岡澤政府参考人 コストのお尋ねでございますけれども、排出削減コスト、言うまでもなく、導入する対策技術の内容によって大幅に異なります。各国それぞれ、省エネのレベルも違いますので、導入が可能な対策技術というのも異なりまして、それによりましてまた随分コストも変わるわけでございます。
 私どもの調査、中央環境審議会からの報告等によりますと、日本の場合でも、追加的なコストがゼロ以下、つまり、例えば省エネ技術のように、最初に投資いたしましても、その後で、エネルギーコストの削減という形でリターンがあるというふうなもので、トータルとしては追加的な支出がマイナスになるというような対策技術も相当ございまして、そういうものを利用すれば日本でも相当コストを下げられるというふうな推計をしておるわけでございます。
 どのぐらいかかるかということについては、削減コストが、日本の場合、今平均どのぐらいになっているかということにもよるわけですけれども、例えば、限界費用というふうな言い方でいたしますと、日本の炭酸ガスの削減コストは、カーボン一トン当たりで大体三万円ぐらいではないかというふうに言われているわけでございます。
 ただ、途上国あるいは他の国ではそれが数分の一になっているというふうなケースもありますので、実際から見れば、今の平均的な対策技術から見れば、日本はほかの国に対して何倍か高いというふうなことはあり得るだろうと思っています。
井上(喜)分科員 余りごまかすようなことじゃなしに、はっきりと言ってほしいんですよ。ちゃんとこういうのはもうレポートも出ているんですからね。それは、包み隠さず言って、どうするかということを考えるべきだと思うんですよ。ああでもない、こうでもないなんというような議論をしてはぐらかすようなことはやめてほしいですよ。
 これは、日本政府も参加しているんじゃないんですか。このIPCC第三次評価報告書で、各国が削減目標を達成するためのコスト試算というものが出ていますね。これは気候変動に関する政府間パネルですよ、IPCCというのは。これは、日本は四百ドル、これはトン当たりかな、それからEUは三百ドルですよ、アメリカは二百ドル、こう書いてあるわけですね。これは事実と違うんですか。この報告書というのはおおよそ見当外れなんですか、こういうのは標準じゃないんですか、どうですか。
岡澤政府参考人 IPCCの報告書にそういうことが記載されているのは事実でございます。
井上(喜)分科員 だから、これが事実と違うのかどうかということを聞いているんですよ。そんなことは、記載されていることはわかっているわけですよ。
岡澤政府参考人 対策技術は中身によりますので、一つの仮定を置いた計算でございますけれども、一つの仮定を置いた計算で求めた数値としてはそういう関係になるということでございます。
井上(喜)分科員 だから、日本のコストというのはEUとかアメリカに比べて、では低いというんですか。どうですか、その辺。
岡澤政府参考人 先ほど申し上げましたように、日本の対策技術は、安い技術はかなり使っておりますので、相対的に、ほかの国に比べれば高くなるということは事実でございます。
井上(喜)分科員 当たり前でしょう。これは一人当たり見ても、CO2の排出量とか、GDP当たり見たって日本は低いんですよ。さらにこれを削減していくというのは絶対コストがかかるわけですよ。そういう事実を認めないといかぬと思いますよ。それを何かごまかしてやるというのは絶対いかぬですよ。
 次に、CO2をこれからカットしていく場合の成長率、仮に六%カットとしまして、成長率とか雇用に対する影響。この間アメリカがこれを言っていたのを見ますと、アメリカは四千億ドルのコストですね、それから四百九十万の雇用減、この京都議定書はそういう大きな影響をもたらす条約だ、こう言っているわけですよね。
 日本に対してはどの程度の影響を及ぼしていますか。成長率とか雇用です。
岡澤政府参考人 京都議定書の目標達成のための国内対策を実施した場合の経済影響ということでございますけれども、初期投資等がありますので、短期的に見れば我が国の経済にマイナスの影響があるのではないかというふうな懸念があるのは事実だと思います。
 ただ、一方では、環境産業における生産の増加だとか、革新的技術開発等への投資の増加とか、あるいは環境に優しい商品へのシフトということによりまして、経済的な影響は余りといいますか、ほとんど生じないというふうな研究もあるわけでございます。
 そのために、私どもとしては、我が国の中でも今まだ追加的なコストがゼロ以下でも対策として使えるものもございますし、できるだけ投資効果の、費用対効果の高い対策を優先的に採用するなどのことをまず考える必要がありますし、また、温暖化対策の推進というものを新しいビジネスの拡大につなげるような努力をすることによって、中長期的には温暖化対策の実施が経済あるいは雇用の面でもプラスの効果をもたらし得るというふうに考えているわけでございます。
井上(喜)分科員 では、プラスの効果は幾らと見込んでいるんですか。
岡澤政府参考人 今、まだそういうところまでは計算をしておりません。
井上(喜)分科員 そういう日本の経済に対する中期的で、短中期でいいと思いますけれども、影響すら考慮しないで、そんな法律なんか出せるんですか、一体。条約の批准なんかが求められるんですか。そんないいかげんなことでいいんですか。
大木国務大臣 私、最近もいろいろとその計算はやっておるんですけれども、この議論というのは京都議定書のときから始まっておりますけれども、いろいろなものは、二〇一二年までにいろいろと達成しようということでありますから、ある程度幅のあるいろいろな計算はありますけれども、これを今責任のある数字としてなかなかお示しはできない。
 ただ、その傾向というようなものはこれからお示しできるように、またいろいろな形で、国会に対する答弁でもどういうようなものがあるというようなことはお示しできると思いますけれども、最終的に、やはり国会ですから、国会に非常にまだ不確定な数字を出すということはちょっと遠慮させていただきたいというような場面があるかと思いますので、御了承願いたいと思います。
井上(喜)分科員 私、今申し上げましたのは、プラスの影響、経済成長にプラスだということですから私は申し上げたんですよ。プラスであるかマイナスであるかのことは言えるわけですよ。
 これはもう御承知だと思うんですけれども、スタンフォード・エネルギーモデリングフォーラムという、アメリカのシンクタンクですかね、これが〇・一から一・八八、いずれもマイナスの影響と言っているんですよ。中をとって大体一%ぐらいということですね。マイナス一%ぐらい。それから、日本の財団法人の地球産業文化研究所は一・〇三%のマイナスと見ているわけですね。皆さん方の所管の国立環境研究所はマイナスの〇・二六と言っているんですよ。それから、経済産業省の所管の経済産業研究所はマイナスの〇・七と言っているわけですよ。
 いずれもマイナスなんですね。やはりマイナスの影響があるんじゃないんですか。これはいがかですか。
岡澤政府参考人 ちょっと先ほどの説明が不十分だったんですが、当初では、初期投資等がかさみますので、マイナスの影響が出るということでございます。
 私どもとしては、長期的にはそれがプラスに転じられるような対策のメニューというものを考えていく必要があるだろうということを申し上げたのでございまして、当初からプラスの影響が出るということではございません。
井上(喜)分科員 目標とするところはどんな目標でもいいんですよ。しかし、今想定されるところはどうなのかと聞いているんですよ。それでプラスなのかマイナスなのか、そこを聞いているんですよ。
岡澤政府参考人 ただいま先生がおっしゃったように、当面はマイナスの影響が出るというふうに予想されております。
井上(喜)分科員 この京都議定書の六%の削減というのは日本にマイナスの影響が出るだろう、それは常識的だと思うんですよね。今、日本の産業は、特に製造業を中心にして空洞化が非常に進行していますよね。これは関西におきましても東京においても同じなんですよ。
 それから、今のところは、アメリカとか中国なんかはこれに加盟しないということでしょう。加入しないということですよね。だから、そういうことを考えると、そういう削減コストという面から見ても、相対的にこういった国は有利だと思うんですよね。そんな状況を考えれば、産業の空洞化がもっと加速されてくるんじゃないかと思うんですよ、これは。
 どうして日本が、日本の製造業が中国の方に行くかといいますと、やはりコストでしょう。賃金なんかもそうですよね。しかし、そのほかもろもろのことがあると思うんですが、これなんかもその要素の一つになるんじゃないかと思うんですよね。
 だから、よほど対策を考えないと、そんな悠長なことを言っていたんじゃ、私は産業の空洞化をますます促進する結果になりかねないと思いますよ。その辺の認識はどうですか。
大木国務大臣 日本の産業の空洞化というのは、温暖化の問題ばかりじゃなくて、全体として考えなきゃならぬ問題だと思います。
 ただ、今、とりあえず温暖化と関連してちょっと私の申し上げられることを申し上げますと、まず、アメリカは今のところ京都議定書に入らないということを言っておりますけれども、引き続き話し合いは続けるし、それから、温暖化の防止策については必ずしも京都議定書の枠内でなくてもいろいろとアメリカも努力する、日本も努力する、あるいは一緒に研究するというようなこともございますから、これはひとつ続けたいと思っております。
 それから、中国につきましては、京都議定書に入らないとは言っていません。今、開発途上国の相当数が既に参加しておりますし、中国は別に今のところ温暖化の削減の義務は負っていないわけですから、むしろ私どもとしては、先進国の大多数そしてまた途上国の大多数が京都議定書に加盟してもらって、そしてまた入らない、例えばアメリカのような国もできるだけ早く入ってくれ、そういう構えでひとつ話し合いを進めたいというふうに考えております。
井上(喜)分科員 CO2の削減については、特に民生部門と運輸部門に大きな問題があるというぐあいに聞いているのでありますけれども、それぞれの分野で削減目標というのはどういうぐあいに達成していくんですか。その具体の方法をお聞かせいただきたいんです。
山下副大臣 民生、運輸の部門につきましては、先ほども井上委員と大臣とのやりとりで若干お話があったわけでございますけれども、この運輸、民生部門における排出量が非常にふえておるというのが実情でございます。これをいかに抑えていくかということが大変な課題であろう。もう既に御承知のように、九九年の時点で、温室効果ガスの排出量の比率でございますけれども、九〇年と比較しまして、民生で一七・四%増、そして運輸部門ではさらに二三%増という実態であるわけでございます。
 非常に対策が立てにくい分野であることは確かでございますけれども、そのために、国民一人一人の意識改革、そして国民運動ということが求められているというふうに私は思います。個々の努力といっても非常に難しいわけですけれども、特に今、日本社会全体が抱えておる、みんなのためにという貢献的な自覚、そしてまたみんなで連帯しながら取り組んでいくというパートナーシップという問題、このパートナーシップという面も非常に欠けてきている今の社会情勢であるというふうに思うわけです。
 したがって、国民一人一人の価値観、哲学にかかわる問題ですけれども、このようなパートナーシップなりそしてまた貢献、そういう観点からの環境教育的な取り組みが物すごく大事な分野がこの民生、運輸であるというふうに私は考えております。
 具体的には、民生部門におきましても、省エネ製品の開発、そしてそれを買っていこうという国民の普及運動、これは、家電商品にしろ、建材なんかもそうだと思うわけです。
 また、運輸部門におきましても、グリーン税制を導入することによって低公害車を普及促進していく、この観点を非常に今小泉首相も訴えられて、急速に高まっておりますし、産業界の取り組みも、技術開発も非常に進んでおるというふうに聞いておるわけでございます。燃料電池なんかは特にその典型的な例かもわかりません。また、渋滞解消の取り組み、これも国土交通省を中心に、ETCを中心とする、そういう渋滞解消の取り組み。また、公共交通機関も、大都市においては、兵庫県もそうだと思いますけれども、取り組みが非常に急速に高まっているというふうに思っております。また、モーダルシフトへの転換、これはなかなか進まない面もあるわけですけれども、このような運輸における取り組み。
 さらには、国民運動推進体制としまして、市町村レベルにおける対策協議会を設置して、みんなで意識を盛り上げていこうという体制づくりも必要であるというふうに考えております。
 こんなようなことを中心にした新大綱、温暖化対策推進の新しい大綱、この策定が今一生懸命取り組まれておりまして、もう間もなくそれが推進本部で決定するという運びになっておりますし、また、温暖化対策推進法の改正の中にこのような体制や計画も盛り込みました、そういう法改正を今国会に提出する予定になっております。
 与党の最高責任者でございます井上先生の働きかけといいますか、後押しをお願いするところでございます。
 以上でございます。
井上(喜)分科員 今の御答弁を聞いておりましても、大変難しいということですね。決め手がないということだと思うんです。非常に大事な問題であるけれども、なかなか明確に、この削減目標が達成できるかどうかというのは不明のところがある、こういうように私は理解をしたわけであります。
 各国もこれをどういうぐあいに取り扱っていくのか、国際的にもいろいろな動きがあるように思うのでありますけれども、私は、国民生活にあるいは日本の経済に非常に大きな影響があるということを認識の上で、やはり着実に一歩一歩前進していくようなことでないといかぬと思うのですね。
 そこで、これが未達成の場合は、ある種のペナルティーといいますか、ペナルティー的なものを科されるわけでありますけれども、考えてみますと、ソ連なんかは今もう、ともかく、一九九〇年よりも三割も排出量が少ないというのは、これは余っているわけですよ。こんなところに金をやる必要は全くないと思うんですよ。こんな金があるならODAでどんどんやるべきだと私は思うのでありまして、こんなことのないように。本当にむだだと思うんですよ。
 この条約に参加したおかげで、金を払う、日本は大変な努力をしている、またこれからも努力をしようとしているわけですよ、しかし、万一未達成の場合はあるかもわかりませんけれども。そんな場合に、今でも削減量はもう十分達成しているといいますか、そもそも基準年よりももう少なくなっているわけですよ。これは何の努力もなしにそうなっているわけですから、そんな国にお金を払うというようなことの絶対ないようにしていただきたいと私は思うのであります。
 その辺の決意のほどをお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。
大木国務大臣 この京都議定書、今一生懸命、何とかして発効させようと思って私ども努力しておりますが、これはやはり世界じゅうのできるだけ多くの国が、ソ連のような社会主義国から、今資本主義経済体制に移行中の国もあるわけでございますけれども、できるだけたくさんの国がまず参加してもらって、その上で、実際にその中でどういうふうにやっていくかはこれからまた毎年検討していきたいというのが基本的な姿勢でございますので、今おっしゃいました、何かソ連だけもうかるようなことをやるなということは十分私どもも配慮しながらこれから努力をしてまいりたいと思いますので、よろしく御支援のほどをお願い申し上げます。
北村主査 これにて井上喜一君の質疑は終了いたしました。
 この際、暫時休憩いたします。
    午前十時七分休憩
     ――――◇―――――
    午後五時開議
北村主査 休憩前に引き続き会議を開きます。
 民主党・無所属クラブ及び日本共産党所属の本務員の御出席が得られません。やむを得ず議事を進めます。
 他に質疑の申し出がありません。
 これにて本分科会所管の審査はすべて終了いたしました。
 これにて散会いたします。
    午後五時一分散会


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