衆議院

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第2号 平成15年2月28日(金曜日)

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平成十五年二月二十八日(金曜日)
    午前九時開議
 出席分科員
   主査 萩山 教嚴君
      伊吹 文明君    大原 一三君
      小沢 鋭仁君    海江田万里君
      山内  功君    山井 和則君
      矢島 恒夫君
   兼務 赤羽 一嘉君 兼務 大島 令子君
    …………………………………
   農林水産大臣       大島 理森君
   農林水産副大臣      北村 直人君
   農林水産大臣政務官    熊谷 市雄君
   政府参考人
   (財務省大臣官房審議官) 石井 道遠君
   政府参考人
   (国税庁課税部酒税課長) 寺内  肇君
   政府参考人
   (厚生労働省医薬局食品保
   健部長)         遠藤  明君
   政府参考人
   (厚生労働省老健局計画課
   長)           石井 信芳君
   政府参考人
   (農林水産省総合食料局長
   )            西藤 久三君
   政府参考人
   (農林水産省生産局長)  須賀田菊仁君
   政府参考人
   (農林水産省経営局長)  川村秀三郎君
   政府参考人
   (農林水産技術会議事務局
   長)           石原 一郎君
   政府参考人
   (食糧庁長官)      石原  葵君
   政府参考人
   (食糧庁次長)      中川  坦君
   政府参考人
   (林野庁長官)      加藤 鐵夫君
   農林水産委員会専門員   和田 一郎君
   予算委員会専門員     中谷 俊明君
    ―――――――――――――
分科員の異動
二月二十八日
 辞任         補欠選任
  海江田万里君     山井 和則君
  吉田 公一君     小沢 鋭仁君
  矢島 恒夫君     吉井 英勝君
同日
 辞任         補欠選任
  小沢 鋭仁君     山内  功君
  山井 和則君     海江田万里君
  吉井 英勝君     小沢 和秋君
同日
 辞任         補欠選任
  山内  功君     吉田 公一君
  小沢 和秋君     矢島 恒夫君
同日
 第一分科員赤羽一嘉君及び第二分科員大島令子君が本分科兼務となった。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 平成十五年度一般会計予算
 平成十五年度特別会計予算
 平成十五年度政府関係機関予算
 (農林水産省所管)


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     ――――◇―――――
萩山主査 これより予算委員会第六分科会を開会いたします。
 平成十五年度一般会計予算、平成十五年度特別会計予算及び平成十五年度政府関係機関予算中農林水産省所管について、昨日に引き続き質疑を行います。
 この際、分科員各位に申し上げます。
 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力をお願いいたします。
 また、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。赤羽一嘉君。
赤羽分科員 おはようございます。公明党の赤羽一嘉でございます。
 先日、大臣におかれましては、WTOにおいて大変タフなネゴシエートをしていただき、その御苦労の中で、食料の安定供給の問題というか、食料自給率の向上について、きょうは少し議論をさせていただきたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。
 日本の農政を語られる場合とか食料の安定供給とか、こういった話はどうしても生産者側の議論が先行する、そういう傾向があるというふうに思っております。これは、自民党だけではなくて、我が公明党も、また野党の各党においても、農水委員会というのは生産地選出の議員が集まっていて、ややもすると、どうしてもそういう傾向が強くなるのはやむを得ないことだというふうに思いますが、食料安定供給というのはまさに、私は神戸市選出なんですが、生産者だけではなくて消費者の側にとっても大変重要な問題であり、きょうは、農水委員会ですとなかなかこういう発言もしにくいものですから、分科会の場をおかりいたしまして、率直に私の思うことを述べさせていただきたいというふうに思っております。
 まず、食料自給率の向上、これは反対する人はなかなかいないと思うんですが、我が党も食料自給率の向上ということを大きなテーマとして掲げております。いろいろ農水省の方々の話を聞いていると、そんなに簡単なものではないなという思いもいたしますが、まず冒頭、この食料自給率の向上というテーマは今の日本の農政においてどのような位置づけで考えられているか、ターゲットとされているかということを教えていただきたいと思います。
大島国務大臣 赤羽委員が消費者という視点から自給率を考えていくということの観点に立って、農水省はどう考えているんだということだと思います。
 そういう視点に立ちますと、まず、これはもう御承知のことでございますが、私ども、自給率を、現在の四〇%から、四五%に目標設定をしております、平成二十二年。この自給率という問題は、実は、生産者がどんどんつくるということだけでは済みません。国民の皆さんが、消費者の皆さんがやはり国内のものをできるだけ買ってやろう、使ってやろう、あるいは使うんだ、こういうふうなお気持ちを持てるような構造政策だとか、食品の安全、安心政策だとか、さらに食品産業の皆さんの努力だとか、一体とならなければ本当にできないなということを、このごろ非常に強く私は感じます。
 この狭い国土の中で農産物をつくるということになりますと、ある程度国民の皆さんにも何らかのコストの理解をいただかなきゃならぬだろうと思うんです。そのかわり、安全で安心な、そしてある意味ではおいしいものを提供する、消費者のニーズにこたえていく。実は、その世界に米も麦も入っていきませんと、この自給率というのはなかなか目標を達成していくことが困難ではないだろうか。
 したがって、一体として取り組んでいくという国民の合意あるいは認識を持ってもらうために我々が努力をし、また理解を得られるというところが非常にポイントだ、一生懸命頑張れ頑張れと生産者に言っただけではなかなか自給率は高まらないというふうな率直な思いを私は申し上げ、そういう観点に立って努力してまいりたい、こう思っております。
赤羽分科員 ありがとうございます。今まさにおっしゃるように、生産者サイドだけの話ではなかなか食料自給率の向上というのは望めない、それは本当に全くそのとおりだというふうに思っております。消費者が食べる気にもならないようなものをたくさんつくって、数の帳じり合わせをしても全く意味のないことだということ、非常によくわかりました。
 まず、今、平成二十二年、二〇一〇年、食料自給率四五%をカロリーベースで目標に掲げて戦略を立てられているというふうに理解しておりますが、食料自給率といっても、恐らく大宗商品としては米、小麦、大豆、畜産物、これは水産物も、私、水産物がどうなっているのか、水産物自体に日本だとか海外のものだとかというのがあるのかどうかちょっとよくわからないんですが、こういった大宗商品のそれぞれのカロリーベースの目標設定、どのように置いているのか、食料自給率の目標設定をどのように置いているのか、ちょっと御説明いただけますか。
西藤政府参考人 先生今御指摘の、食料・農業・農村基本計画におきまして、食料消費、生産の両面における課題、先ほど大臣から御答弁がありましたが、まさに消費者のニーズに適合する、安全、安心の問題、あるいは品質の問題、そういうものにこたえていくと同時に、生産サイドにおいてもコスト節減に努めていく、そういう課題を解決された場合の実現可能な水準ということで、品目ごとに、食料自給率とあわせて、平成二十二年度における消費量の目標、「望ましい食料消費の姿」と言っておりますが、あるいは生産の目標値、生産努力目標ということで、設定をいたしております。
 先生今具体的にお尋ねの品目に即して、状況だけ御説明させていただきますと、食料自給率、カロリーベースでトータル四五%という目標でございますが、品目ごとに、米については自給率で九六%、消費量が一千万トン強、一千八万トン、生産量で九百六十九万トンという目標数値を設定いたしております。
 主な品目で申し上げますと、あと小麦、これは主に日本めん用に充当される状況にございます。現状の自給率が基準年で見まして九%であったものを一二%まで引き上げよう。消費量で六百五十二万トン、生産量で八十万トンという目標を設定させていただいております。
 さらに、自給率向上のもう一つのあれであります大豆、これも大豆消費のうち食用大豆、豆腐ですとか納豆ですとか煮豆ですとかという食用大豆を中心に、食用というベースで見ますと、現状の自給率が一四%程度のものを二一%まで引き上げたい。消費量、これは油糧用のものを含めてですけれども、全体五百十一万トンの中で、食用を中心に生産量二十五万トンという目標を設定いたしております。
 畜産物についても、牛乳・乳製品が、現状の自給率が基準年で七一%のところを七五%まで引き上げていく。消費量、生乳ベースで見まして年間千三百十八万トン、生産量で九百九十三万トンという目標設定をいたしております。
 あと、最後に、御指摘がありました水産物でございますが、これは食料・農業・農村基本計画ということなものですから、水産物につきましては参考値ということで整理をさせていただいておりますけれども、食用魚介類の自給率向上ということで、食用魚介類、基準年次で六〇%の自給率になっておりますが、これを六六%、三分の二の水準にしたい。生産量につきましても、五百三十九万トンという目標設定をさせていただいています。
 それぞれについての消費の課題、生産の課題、品目ごとに整理をしながら、生産あるいは流通加工業者、消費者の一体的な取り組みの中でこの目標実現に努めていきたいということで努力をしている状況にございます。
赤羽分科員 どうもありがとうございます。
 この食料自給率、細かいことに入る前に、私も、今回農水省の方に教えていただいて改めて気がついたんですが、例えば畜産物、豚とか鳥というのは、飼料原料が海外からの輸入ですと、国産で育っても、すべてが国産というカウントはされていない、こういうことですね。その辺のことまで厳密にやる食料自給率が、それほどの意味があるのかなということを私は少し感じておるんです。
 今御答弁いただいて、実は、自給率と消費量だけ言われてもなかなか、カロリーベースにおいての、例えば米の占める割合とか小麦の占める割合とかということが定かでないと、いま一歩はっきりわからないんですが、要するに、米の場合は、現状が国産で九六%ぐらいあるわけですね。ですから、恐らく、私の推測ですと、この食料自給率向上のためには消費量を落とさないということなのかな。小麦は恐らく、少し、九%ぐらいのものを一二%に上げるという、転作で奨励していく部分があるのかな。あとはなかなか、大豆とか畜産物とか油脂とか、それぞれの目標設定をされていますが、ちょっと現実的にどうなのか、よく、私、定かでないんですが。
 その中で、恐らく、小麦をどう考えていくかということが、この食料自給率を変えていく上で、また農政の構造改革というものを考える上で一つ大事なところだと私は勝手に思っておるものですから、これから先は、小麦のことについて少し議論をさせていただきたいと思います。
 まず、国内産小麦の生産量を見ておりますと、平成十二年以前というのは五十万トン台で推移していましたが、平成十二年以後、七十万トンぐらいですか、一・五倍ぐらいにふえている。これは恐らく転作奨励みたいなことなのかなと思いますが、このきっかけとなった背景と、数量は七十数万トンに伸びておりますが、その伸びた数量分、その部分、品質的にはどうなのか。
 これまでの常識でいきますと、国内産の小麦というのは、はっきり申し上げて、外国産の小麦と比べると全く競合関係にはない。小麦というと同じ種類ですけれども、パン用の小麦はできないわけですから、違う種類のものだ。私はかつて決算委員会の農水部会でそういう質問をして、農水省も、競合関係ではなくて補完関係だと言わざると得ないというような御答弁もあったのですが、数量がふえた部分は数字として認められておりますが、そういった品質の部分についてはどういう評価がされているのでしょうか。
中川政府参考人 お答え申し上げます。
 まず最初に、国内産の小麦の生産が増加した要因ということでございますけれども、平成十二年度から、水田を中心とした土地利用型農業活性化対策というものを推進してきておりまして、この中で、麦の本格的な生産に取り組めるように所要の助成措置を講じてきたところでございます。こういうことから、先生もおっしゃいましたが、水田での転作麦を中心にして生産が増加してきているという状況にございます。
 次に、国産の小麦の品質についての評価でございますが、国産の小麦の主たる用途は日本めん用でございます。海外から輸入をされております小麦、例えばオーストラリアからASWというものが入ってきておりますけれども、こういったものに比べまして、めんにしたときの色が若干くすんでいる、あるいはたんぱくの含有量などの品質面で問題があるということが指摘をされております。また、地域なり、それから年産ごとの品質のばらつきが大きいといった問題もあるというふうに承知をいたしておりまして、こういった課題を解決していくというのが課題だというふうに思っているところでございます。
赤羽分科員 この国内産の小麦、七十万トンぐらいの生産について、以前は政府がこれを買い上げて製粉メーカー等に売り渡していたというシステムをとっていたと思いますが、今は民間でやっているというような、まあシステムは変更になりましたが、結局、実質的には余り変わらないんだろう。補助金を出している部分、麦作経営安定資金というものを出されているわけで、こういったものを込み込みで、いわゆる、これまでの考え方でいうトン当たりの内麦の買い入れ価格と売り渡し価格というのは実質的に幾らになっているのか。これは変動もあるでしょうからあれですけれども、ざっとした数字で教えていただけますか。
中川政府参考人 平成十二年産から、麦につきましては民間流通に移行をいたしておりますので、一つは、その民間流通におきまして実需者が買い受ける価格、これは入札価格でございますけれども、直近年の平均価格でトン当たり三万六千九百八十三円というふうになってございます。これに、先ほど先生がおっしゃいました麦作経営安定資金、トン当たりでざっと十一万三千八百八十三円というふうなものが支払われますので、合わせますと、生産者の手取りベースで見ますとトン当たり十五万円強になるかというふうに思います。
赤羽分科員 一方で、外国産の小麦、これは、日本の評価では、国内産より数段品質がいいとされている部分について、これも相場が最近かなり上がっていますし、フレートもかなり高くなっているのでなかなか言いにくいかもしれませんが、いわゆる政府の買い入れ価格と売り渡し価格、同じようにトン当たりでどうなっているか。
中川政府参考人 輸入をいたします小麦の政府の買い付け価格でございますが、代表的な銘柄でございます米国産のウエスタンホワイトを例にして申し上げますが、平成七年、八年のあたりはトン当たり二万四千円でございましたけれども、最近ではトン当たりで一万九千円から一万八千円、これは平成十一年あるいは十二年の数字でございます。大体この幅で、国際相場あるいは為替の変動というものがございますけれども、一万八千円から二万四千円程度の幅で推移をいたしております。
 また、こうして輸入をいたしました小麦の政府の売り渡し価格でございます。同じ期間で申し上げます。平成七年度ではトン当たり四万九千円、平成八年度では四万八千円という数字でございましたが、内外価格差の現状なり国際化の進展ということを踏まえまして、最近年ではトン当たり四万四千円に引き下げてきているところでございます。
赤羽分科員 今お答えのあったように、輸入価格が二万円から二万四千円ぐらい、それを、製粉メーカーに売り渡しが四万五千円から五万円近くで、安く買って高く売っているわけですね。この輸入差益というのは大体どのくらいの単位に今なっているんでしょうか。
中川政府参考人 直近の数字で申し上げますけれども、小麦で大体年間五百三十億円程度でございます。これは十四年産の見込みでございます。
赤羽分科員 この麦作農家の経営安定資金というものが、キロ当たり六千四百六十三円ですから、先ほどのですとトン当たり十一万円強払われている。これは輸入差益の五百三十億円で賄われているんでしょうか。それ以上のものが拠出されているんですか。
中川政府参考人 現在、政府の売り渡し価格が、コストプールということで算定をいたしておりますので、輸入麦の売買差益もその財源となっておりますけれども、最近では、麦作経営安定資金が年間九百五十五億円程度出ておるということから、それだけでは賄い切れずに、一部、一般会計からの補てんもいたしているところでございます。
赤羽分科員 輸入差益五百三十億円と、それに加えて四百数十億円補てんして、結局、九百五十五億円のものが毎年麦作農家に払われている。こういったコストがかかっているわけですね。私は、消費者の側から見ますと、これだけ膨大な金額が払われている以上、やはりそれに見合う意味合いというか将来の展望がないと、これは相当大きなむだ遣いだと言わざるを得ないなというふうに思うんですね。
 今みたいなことをずっと続けてきて、また続けようとされているんでしょうけれども、こういうことをずっと繰り返して、率直に、わかりやすく言うと、日本の小麦、製パン用の小麦がつくれるようになるんでしょうか。
 今までの常識としては、日本ではパン用の小麦というのはできない、私も、私の知る限りにおいては、なかなかこのままいってもできないんじゃないかなと思っているわけですけれども、その辺についての食糧庁ですか、農水省の見解を。
大島国務大臣 赤羽委員の御指摘は、率直に言って、ずんずんと胸の中に、あるいは気持ちの中にぐんぐんと打たれるような御主張なんです。
 一体、日本の麦作の将来というものはこのままでいいのか、そして、五百億を超える差益と四百億を超える足らざるお金を使うことが本当に全体としていいのかということについての問いかけは、私どもは、その痛みあるいはその思いを込めながら、なおそれでも、やはり麦というものを確立していかなきゃならぬという思いはございます。
 しかし、そのために、一体日本の小麦の欠点は何かといいますと、今先生からお話しされましたように、日本の小麦はめん類に非常に使われておるのは御承知だと思いますが、やはりASWに匹敵する加工適性、これを有する品種をさらに改良しながら、そしてその特性を発揮できる栽培技術あるいは栽培体系というものをどうつくっていくかということだと思うんです。狭い国土の中で、非常に多湿な、多雨なこの国土の中で、先ほどの目標に向けてやっていくためには、技術とコスト、こういうものを重点的にこれからしっかり考えてやっていかなきゃならぬというところの重点化という施策が必要ではないか、こう思っております。
 そういう視点に立って、特にパン用の品種について努力していかなきゃならぬ、これが私どもの課題であろう、このように思っております。
赤羽分科員 私は、生産者の方は素人でよくわからないんですが、今のまま続けていてもなかなか展望が開けてこないのではないか。
 ちょっと技術的なことはよくわかりませんが、例えば、日本の麦作地帯というと、これは北海道で、今みたいな農家経営じゃなくて、よく言われているんですけれども、もっと民間の、アメリカ型の大規模な生産を何でできないのかな。ガット・ウルグアイ・ラウンドがあって、いろいろな経緯の中で、株式会社が参入するというような話もあったりしているけれども、なかなか実を開いていないで、そういった面での構造改革というのは進んでいないのではないかな、外から見ているとそういう感じがいたします。
 こういった、少し政策として、今の大臣の御答弁というのはそれに通ずるものなのかもしれませんが、本当に小麦を育てていこうという腹があるならば、やはりそれなりの、今まさに大臣の御答弁をいただいたわけですけれども、北海道で、外国産の、オーストラリアとかアメリカの小麦に負けないようなものを大規模でつくっていくということを、相当意図的にというか、政策の大方針として構えないと、なかなか展開がないのではないかなと思います。
 そういった大規模化、まあ株式会社化がいいのかどうか私はわかりませんが、そういった抜本的な改革に取り組まれる計画というのはあるのでしょうか。
須賀田政府参考人 小麦の持続的な安定的な生産振興という要件としては、先ほど来出ております品質の向上、そしてその均質化、ばらつきのない均質化、そして大ロット化、こういうものとあわせまして、やはり先生御指摘のような大規模化による生産コストの低減、これが重大な課題でございます。平成二十二年度を目標年次といたします生産努力目標におきましても、三割程度の生産コストの削減というのを掲げているわけでございます。
 そして、その手法として、企業の参入という御意見も有力な御意見としてあるわけでございますけれども、まさに日本農業の中で大規模化が展望できるような、十勝といったような北海道の畑作地帯というところで考えてみました場合、実際に行ってみて、そこの農業をつぶさに見ました場合、やはりあそこで畑作は、小麦も、連作障害の防止のために、三作、四作の輪作体系、これはきめ細かな生産技術を要するわけでございますけれども、輪作体系というものを確立するという技術問題がある。それからやはり雨の被害、雨害回避のために、急いで共同で収穫、乾燥しなくてはならないというような問題がある。現実に十勝で見ておりますと、だれかが離農するといった場合には、他の農家とか営農集団がそこの受け皿となりまして、全体としての品質のばらつきがないように努力している。こういうような実態がございまして、農地制度のあり方という別の問題はあるんですけれども、そういう問題を抜きにいたしましても、民間企業にこの畑作をゆだねるというよりも、やはり、担い手たる経営体の規模の拡大を図るということを目指すことが現実的な方向ではないかというふうに現在は考えているところでございます。
赤羽分科員 小泉内閣の基本的なコンセンサスでもあると思いますが、補助金というものは意味がなければ出すべきじゃない、意味がないものに補助金を出し続ける限り構造改革は進まない、私は、個人的には非常にその点は賛同しております。
 やはり、どうしても専門家の皆さんというのは現実がよくわかっているから、その中での改造とかというふうに思われるのはいたし方ないと思いますが、私は、正直に言わせていただくと、今のまま毎年一千億近い補助金が注ぎ込まれていることというのは決していいことではないというふうに思うのですね。それだったら、極端な意見かもしれませんが、小麦はもう一切つくらない、ある意味では。補助金を出さなきゃつくれないような小麦はもうつくらないで、小麦は輸入をする。それはもう割り切る。油脂なんかそうなわけですから。もっと日本のお米を食べましょうとか、冒頭水産物と言ったのは、魚を食べることが食料自給率向上につながるのかどうかということを知りたくて聞いたのですけれども、日本古来の健康的な食生活をしていこうというような、そういう考えをするのも、全く違う発想かもしれませんが、一つのアイデアだというふうにも思うんですね。
 ですから、食料自給率をアップするということが最初の質問なんですけれども、本当にここが一番大事なのか、食料の安定供給を輸入も含めて確保することが大事なのか。大臣の御答弁にありましたけれども、本当においしいもの、プレミアムがつくようないいものを国産ではつくってもらって、安心しておいしいものを食べられる、そこに補助金を出しながら生産体制をつくっていくのか。こういう筋を少しちゃんとつけていかないと、ややもすると、私なんかが見ていると、農業政策の補助金制度というのは非常に複雑で、昔だれがつくってきたかわからないぐらい知恵が注ぎ込まれているなというようなものがあって、しかし、やはりこれから、現代にそぐわない部分も出てきていると思いますので、どうか、一千億円の補助金の重みというものを再度吟味していただいて、この食料安定供給について取り組んでいただきたいというふうに思っております。
 短く御答弁いただきます。
大島国務大臣 赤羽委員から今率直な、そしてなおかつ、御本人も言われましたように、農水委員会だとそういうふうな発言がなかなかできないんだがという、いや、こういう議論がとても私は大事だと思うんです。
 私どもは、自給だけで国民の皆さんにすべての食料を安定供給するという考え方はとれないし、とっておりません。したがって、WTOの中でも、輸出国側の輸出規制に対するきちっとしたルールをつくれと主張しているのはそこにあるわけでございます。
 そこで、補助金というあり方について、選択的、集中的、その選択的、集中的というのは、消費者に対して喜ばれるような生産体系をつくる、そういうふうなところに選択をさせ、集中をさせていくという補助金の存在というものにしていかなきゃいかぬだろう。単純に、物をつくる、ありがとうといって、生産だけを奨励する補助金であっては、多分これからの時代はもうだめになっていく。今度の米改革についてもそうでございます。
 もう一つ、自給論でちょっと申し上げますと、国民が豊かになって、食の多様性が出てまいりますと、なかなかこの自給率というものをどう上げるかというのは非常に難しい問題もあることも社会情勢として申し上げておきたいと思いますが、先生の御意見あるいは御指摘をいただいて努力してまいりたい、こう思っております。
赤羽分科員 どうもありがとうございました。終わります。
萩山主査 これにて赤羽一嘉君の質疑は終了いたしました。
 次に、山井和則君。
山井分科員 民主党の山井和則です。茶業の振興を中心に、三十分間質問をさせていただきます。
 私は京都府の宇治市に住んでおりますが、宇治を中心とするこの山城地方というのは、気候もお茶の生産に適しており、八百年以上の伝統の中で歴史的に高品質なせん茶、玉露、碾茶をずっとつくってまいりました。また、その加工、流通の集散地としても有名でありまして、宇治茶ブランドも定着しております。そういう意味では、八百年以上本当に誇りを持ってこういうお茶どころを守ってきたわけであります。日本せん茶の創始者である永谷宗円も現在の京都南部、宇治田原町の在住であったわけでありまして、せん茶、玉露は京都南部で生まれたわけであります。
 そんな中で、去る二月十三日には、百十の市町村が集まって、宇治市で全国茶サミット京都大会も行われました。お米、御飯に最も合う飲み物としてお茶は日本人にずっと親しまれてきたわけでありまして、和みの茶と言われますように、お茶を飲むとほっとする、そういう面もあるわけであります。
 私も松下政経塾というところで政治を学んでおりましたが、当時の松下幸之助塾長も、日本人の心を理解することが国際人になる一歩であるということで、そのためには茶道を学べという指導を受けて、私も茶道を学ばせていただきました。そういう意味では、このお茶というのは日本の伝統文化であり、日本人の心であるというふうに思っております。
 そして、このような緑茶に関して、健康飲料、あるいはその効用というものが最近非常にさまざまな面で言われております。この点について、まずどのような健康効果、効用があるのかということをお伺いしたいと思います。
須賀田政府参考人 鎌倉時代以降長い歴史を誇りまして、先生まさに言われたように、茶道等、日本人の精神面を支えてきたという飲料でございます。
 私ども承知しておりますのは、この緑茶、一つはミネラル等を豊富に含むということで、健康面の維持増進に資する。それから、最近では、食中毒を予防するような殺菌効果がある。さらには、血中のコレステロールを低下、カテキン効果というようなことで呼ばれておるようでございます。さらには、ビタミンCということで美容にもいい、このようなことが言われておりまして、最近、そういう面でさまざまな効用を持っている注目される飲料というふうに承知をしております。
山井分科員 聞けば聞くほど、本当にお茶というのはすばらしい飲み物だということを思うんですけれども、そういうことをもっと国としてもPRをしていただいて、この消費拡大というものを目指していただきたいと思います。例えばこの委員会室でも、私たちは水を飲んでいるわけですけれども、お茶を飲めばもっと和やかな審議になるのではないかということを思ったりもいたしております。
 それで、今の御答弁なんですが、厚生労働省さんは、二十一世紀、やはりこれは病気の予防を中心にしないと医療費がどれだけかかるかわからないということで、健康21という健康づくりプランを進めておられます。私、前々から思っているんですが、やはりこういう健康づくりプランの中で、今御説明がありましたような健康飲料でありますお茶をもっと飲もうとか、そういうことを入れていくべきではないかというふうなことを考えておるわけですけれども、このようなお茶の効能に関しまして、厚生労働省からもお伺いしたいと思います。
遠藤政府参考人 厚生労働大臣が審査を行い、保健機能の表示の許可をする特定保健用食品の制度におきまして、これまで茶の成分を利用した食品として、茶ポリフェノールを利用した虫歯の原因になりにくい菓子、血圧に作用する杜仲葉配糖体に着目した杜仲葉茶、糖の吸収を穏やかにするグアバ葉ポリフェノールに着目したグアバ葉茶が許可を受けております。
 また、茶とがん予防に関する最近の研究成果として、平成十二年度厚生科学研究、緑茶による老年病予防に関する研究におきまして、バイオ細胞及びマウスを用いた試験で、緑茶ががん予防薬の効果を相乗的、相加的に増強するとの結果が得られたこと、独立行政法人国立健康・栄養研究所において、バイオ細胞を用いた試験により、緑茶ポリフェノールの一種が過酸化水素等の活性酸素により誘発される染色体損傷を抑制する作用を有するとの結果が得られております。
 そのほか、先ほどもお話がありましたように、ビタミンC、カフェインなど有効成分が含まれていることは広く知られているところでございます。
山井分科員 本当に歴史的に、ずっと日本人というのはお茶を飲んで健康に暮らしてきたわけでありますから、今のような研究をぜひとも続けていただいて、さらに、やはり将来的には健康21プランの中にぜひともこのお茶のことを入れていただきたいというふうに思っております。
 次に、大島大臣に、このような健康面からも、また地場産業としても非常に重要な茶業のことについてお伺いします。
 二十一世紀においても、農林水産業、特に茶業というのはますます重要性は増してくると思います。環境問題も出てきまして、やはり一つの雇用創出の手段としても、茶業というのは非常に重要であります。しかし、輸入茶の増加などによって日本の茶業も非常に厳しい局面に立たされていることも事実でありまして、自然環境に負荷をかけずにいかに高品質で安全、安心な茶を日本で提供していくかというのは重要なことであります。
 そのあたりについて、大臣の茶業の振興に関するお考えをお聞かせ願いたいと思います。
大島国務大臣 お茶、茶業というのは、かなり地域的に偏在しているというんでしょうか、天候とか地域性というものが非常に大事、なるがゆえに、地域農業にとっては非常に大事な農業だと私は思います。そして、先ほどからお話ございましたように、鎌倉時代からという方もおれば、いや、実はその前からだという人もいますけれども、鎌倉時代から日本の生活の一つの柱、文化になっているわけでございます。
 そして、先生の地元の宇治茶を初め、静岡茶だとか狭山茶と、先ほども申し上げましたように、地域の基幹作物、そういう観点から、私どもとしても、地域農業を支える、地域農業が発展していくということが今これから大事なことでございますから、まず第一に生産の省力化、栽培加工技術の高度化、高品質化、そういうふうなことの中で年間を通じた収穫の安定化、この三点に沿って努力をしてまいりたいと思います。
 もう一つ、これは輸出ということも少し茶業の方々も含めて考えていく、攻めていく時代になったのではないか。お茶の文化というのは世界じゅうにあるわけでございまして、何も我々は紅茶やコーヒーをぼんぼん輸入されて飲むだけではなくて、こんなにすばらしい緑茶の、あるいは茶道の、そういうふうな意味での日本文化の輸出であり、そういう意味での輸出振興というものも真剣にともどもに考えていく時代になっているのではないか、こういうふうに考えております。
山井分科員 今の大臣の答弁にも、お茶というのは日本の生活の柱であるという話がありましたが、本当にお茶なしでは日本人の生活というのは成り立たないわけであります。それで、例えばドイツなどでも、日本茶に対するブームがあって、非常に健康飲料として、またおいしいということで消費も拡大しております。
 問題は、今大臣もおっしゃいましたように、逆に輸入が日本では今拡大していて、攻め込まれていて、国際競争力を保てるかということであります。昨日、一昨日と私も地元の茶生産農家の方々、また販売業者の方々にもお目にかかっておりましたけれども、その辺に関して非常な不安感も一方では持っておられます。
 そこで、もう少し具体的に、どのような振興策を農林水産省としてとっておられるか、このことについてお伺いしたいと思います。
須賀田政府参考人 お茶の振興策でございます。
 基本的に考えますと、やはり、先ほど来お話がございました、一つは、気候風土とか土壌条件を生かした産地銘柄を形成する、あるいは既に形成されているその銘柄を維持していく、こういう目標と、お茶は、先生も御存じのようにやはり労働が大変でございます。労働集約的な作物でございますので、その負担をどのように軽減していくか、この二つを基本に据えて対策を講じているところでございます。
 具体的に申し上げますと、一つは、高品質品種の導入のための改植というのを計画的に進めていきたい。それから、摘採機というのでしょうか、自動的にお茶の葉を摘む、あるいはアタッチメントをかえて農薬を散布する、こういう複合管理機、あるいは荒茶の加工施設を計画的に整備していく。それから、寒さに弱いものですから、防霜ファンというのでしょうか、防霜施設というものを計画的に整備していく。あるいは、先ほど来ありますように、新たな製品、その特徴に応じて、これは血圧降下作用がありますよというような新製品を開発していく。
 こういうものを総合的に講じられるような予算も今組み込みまして提出をさせていただいているところでございますので、一刻も早い成立をお願いしたいというふうに思っております。
山井分科員 今も御答弁いただきましたが、これからこの不況を脱却する、景気回復して雇用創出していく中で、工場を誘致するというようなことはある意味で逆に非常に難しいと思うんですね。そういう意味では、伝統的な地場産業であるこの茶業の振興というのは非常に重要なことだと思っております。
 それで、国際競争に打ちかつということとともに、多少京都南部の事情を言わせていただきますと、やはり宇治茶というブランドの中で高品質の煎茶、玉露、碾茶をつくっておりまして、そういう意味では、大規模農園を支援すると同時に、小規模で高品質なものをつくっていく、そういうことも、ブランドを保つ上でぜひとも御支援をいただきたいと思っております。
 そこで、少しペットボトルのお茶についてお伺いしたいと思いますが、最近ペットボトルのお茶も非常にふえております。その中で、これは日本のお茶なんだろうか、中国のお茶なんだろうかと緑茶に関しても疑問に思ったりするわけであります。そういう外国の緑茶の場合はやはり表示をすべきではないかというようなことを思いますが、そのあたり、いかがでしょうか。
西藤政府参考人 私ども、食料品の表示問題につきましては、近年、逐次その充実を図ってきているところでございます。生鮮食料品の原産地表示等も実施をいたしております。
 先生御指摘の加工品の原料原産地の表示ということにつきましては、加工品においても、やはり品質に関する情報として原産地を消費者に提供していくということは非常に重要だということで、ただ加工食品も非常に幅が広うございますので、そういう点で、どういう形でということで、私ども個別品目ごとに検討を進めてきている状況でございます。
 そういう中で、まず、平成十三年の秋でございますが、漬物の中の梅干しとラッキョウの、まさに梅の原産地はどこだ、ラッキョウの原産地はどこだということで原産地表示を開始しまして、漬物全体に拡大する。あるいは、水産物のウナギのかば焼きについての原産地表示。あるいは、近年冷凍野菜が大変伸びてきておりますけれども、冷凍野菜についての、その野菜の原料原産地ということで、八品目まで現在拡充し、原料原産地をお願いしている状況にございます。
 お茶については先生御案内のとおりですが、製茶につきましては、お茶そのものにつきましては、荒茶の生産地を原産地とするということで、例えば中国の荒茶を輸入して国内で製茶した場合もその原産地は中国という表示をしていただくということで、現在既にそういう取り組みがございます。
 ただ、飲料については、先生御指摘のとおり近年非常に消費が伸びてきている状況でございますけれども、こういう加工食品全体にどういうふうに原料原産地をやっていくかというのは、これは国際ルールも正直言ってございません。そういう中で、統一的なルール、基準がわかりにくいという意見がございます。それで、私ども、現在厚生労働省と一緒になって、食品の表示に関する共同会議を設置させていただいております。その場において、原料原産地表示のあり方も御論議いただく。その中で、当然ペットボトル系飲料を含めて御論議をいただきたいと思っております。
 いずれにせよ、私ども、表示そのものは、消費者にわかりやすく、かつ製造、加工段階できっちり実施できる、そういう状況でないとなかなかルールとして確立していかないというふうに思っておりますので、先ほど申しました共同会議での御論議を通じて、適切に対応していきたいと思っております。
山井分科員 このような質問をします一つの理由も、昨年、厚生労働委員会で中国産のホウレンソウの残留農薬の問題を私たちも議論いたしました。そういう中で、やはり残留農薬の問題、消費者に非常に不安を与えているわけであります。
 それで、そのことについてもう少しお伺いしたいんですが、中国産のお茶などの残留農薬とかそういうことに対する検査体制はどのようになっているか、お伺いしたいと思います。
遠藤政府参考人 中国茶を初めといたします輸入食品の安全確保のため、厚生労働省では、全国三十一カ所の検疫所に二百六十八名の食品衛生監視員を配置し、食品衛生法に基づき輸入時の審査、検査などの監視、指導業務を行っているところでございます。輸入食品の残留農薬を初めとする輸入時検査につきましては、輸入重量、過去の違反率等を踏まえた年間計画に基づいて実施するモニタリング検査、食品衛生法違反が継続するなど違反の蓋然性が高いと判断される食品についてすべての届け出に対し実施する命令検査など、違反の蓋然性に応じた検査を実施しているところでございます。
 平成十四年におきまして、中国茶の輸入届け出件数は約四千二百件ございまして、そのうちモニタリング計画に基づき百四十二件について三十五種類の残留農薬検査を実施いたしましたが、食品衛生法違反は確認されておりません。
 今後とも、食品衛生法に基づく残留農薬の基準に適合しない食品が輸入されることのないよう、引き続き輸入時検査の実施に努めてまいりたいと考えております。
山井分科員 茶業の振興に戻らせていただきますが、昨日も私、二十八歳で親の後を継いで新しく京都南部で茶の生産を始めたという若者と話をしておりました。このような新規就労、就農のことや後継者育成について、農林水産省としましては、茶業だけに限らないかもしれませんが、御支援をどのように考えておられるか、お伺いしたいと思います。
須賀田政府参考人 我が国の経済社会全体が高齢化、少子化を迎える中で、やはり後継者あるいは新規の就農者を確保して農業界全体の新陳代謝を図っていく、これは重要な課題というふうに私どもも認識をしております。
 先生言われるように茶に限ったことではないんですけれども、新しく農業を始める、後継者として新しく就農をする、こういう場合には、やはり三つの要素、一つは技術、それから資金、それから農地、この技術と資金と農地といったものをどのように確保していくかということが難しい課題ということでございます。
 そこで、私どもは、後継者とか新規就農したい人の習熟度合いに応じまして、先進農家へ行ったりする技術研修というものを支援していくことによって技術を身につけていただく、そして資金の面では、就農支援資金というのを用意いたしまして総合的な融資を行う、そして農地につきましては、情報を集めまして、これを提供してあっせんをする、こういう三つの柱で総合的な取り組みをしているところでございます。
山井分科員 これから新たに茶業にかかわりたいという方も徐々にふえてきておりますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、最初の質問と少し重なるかもしれませんが、改めてお伺いしたいんですが、お茶の中に含まれるカテキンやテアニンにはさまざまな健康にいい効果が発見をされております。血圧を下げたり動脈硬化を防いだりがん予防というものが言われているんですけれども、さらに最近もう一つ言われているのが痴呆の予防でありまして、例えばテアニンは脳の神経細胞の働きを健全に保つ働きがあるということもわかっておりますし、また、お茶のカテキンには動脈硬化を予防して脳血管性痴呆の予防につながる効果があるというふうなこともわかっているわけであります。このようなお茶の健康効果について、農林水産省さん、いかがでしょうか。
須賀田政府参考人 私ども、その中身は正直言って難しくてよくわからないんですが、最近、緑茶の成分が人の神経細胞死を抑制する、いわゆる痴呆に効く、あるいはがんの予防に効く、脳卒中に効く、そういう研究成果があるということは承知をしております。
山井分科員 もちろん、これは今ネズミでの調査とかそういうことですから、人間の中でどういう効果があるということを、本当に実証、解明するというのはなかなか時間がかかるかもしれないわけですけれども、私はそういう効果は非常に重要だと思っております。
 なぜこういうふうなことを言うかといいますと、私の住んでおります宇治市でも、お茶の産地そして販売の拠点でありながら、同時に痴呆症に関して非常に取り組みをしておりまして、例えば痴呆性高齢者ケアの切り札と言われておりますグループホームも五カ所ございますし、また、特に過去二年間にわたって痴呆予防のモデル事業というのをやってまいりまして、来年度予算も四百三十万円という予算を組んでおります。
 ここでちょっと厚生労働省さんに話が移って恐縮なんですけれども、痴呆初期の段階で、脳活性化教室などによって、場合によっては痴呆の進行をおくらせたり痴呆症状からカムバックできるというような報告も出ているわけです。そこで、まず、生活習慣と痴呆の発症との因果関係など痴呆予防のために解明すべき課題があると考えますが、厚生労働省さんの取り組みはいかがでしょうか。
石井(信)政府参考人 高齢者の痴呆についての御指摘がございました。
 私ども、高齢者の痴呆に関してのさまざまな要因の解明、こういった研究につきましては、先端的科学の研究を重点的に振興し、かつ予防と治療成績の向上を目的とするメディカル・フロンティア戦略、これを立ててございます。御指摘の痴呆に関する研究につきましても、その一環として現在取り組みを進めておる最中でございます。この一環の中で、引き続き専門家の先生方の研究を進めてまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。
山井分科員 現在、痴呆症の方は、百七十万人ということでどんどんふえております。そういう中で、医療費も非常にふえている。どういう意味で寝たきりを予防していくか、痴呆を予防していくかということがこれから非常に重要であります。寝たきり予防に関しましては厚生労働省さんの努力によってかなり効果が上がっているわけですけれども、次はやはりこの痴呆予防の問題だと思います。
 もちろん、痴呆といいましてもアルツハイマー性痴呆から脳血管性痴呆もありまして、一〇〇%予防するということは非常に困難だとは思いますけれども、さまざまな取り組みで、痴呆症になりかかっていた方が元気になったとか、進行が遅くなったという事例が出てきております。
 例えば、初期における痴呆予防を目的とする脳活性化教室というのが全国に今広まりつつありまして、これを宇治市でもやっているわけですけれども、痴呆を食いとめる効果が上がってきておりますし、さらに、それによって、そういう取り組みをしてきた地域では、介護保険の財源というか、高齢者福祉のお金が少し浮くというような論文も出てきております。
 平成十一年度には、既に、痴呆を初期で食いとめる試みが厚生省の高齢者ケア未来モデル事業の助成によって行われ、その成果も報告されているわけであります。その後、介護教室などのさまざまな取り組みが各地で行われているわけでありますが、厚生労働省として、痴呆予防を目的とする取り組みを積極的にどのようにこれから支援していかれるのでしょうか。
石井(信)政府参考人 先生御指摘ございましたように、いろいろな取り組みがなされておるということは耳にいたしております。ただ、どういう活動をすれば痴呆の発症予防に客観的、科学的に効果があらわれるのか、これは、先ほどの御答弁でも少し触れましたけれども、まだ研究の途上である、こういう認識をいたしております。
 ただ、いろいろな活動の中で、絵画、絵をかいたり、書道をしたり、園芸、草花を育てたり、あるいは音楽、こういったいろいろなものを取り入れましたアクティビティー痴呆介護教室、こういったものが、閉じこもりの予防でありますとか、あるいは、初期の痴呆の高齢者の方にとって非常に大切であります社会性の維持、こういった点から、介護予防という点で効果があるということは考えております。
 私ども、市町村でいろいろなお取り組みを進めていただくことについて、国庫補助事業ということで、介護予防・生活支援事業というものを従来から進めております。また、十五年度予算案にも四百五十億円という金額を計上させていただいております。こういった補助事業を活用しながら、市町村での取り組みを引き続き支援してまいりたい、このように考えておるところでございます。
山井分科員 私も、大体過去十年以上、この痴呆症の問題、世界各地を回って取り組んで、研究してまいりました。例えば、スウェーデンでは、痴呆年という年を、この一年は痴呆年というふうに定めて、痴呆というものに対する取り組み、啓蒙活動を国を挙げてされたりしたこともありました。
 今まで、痴呆というと隠してしまう、かつ家族の方も発見がおくれる。家にずっといる奥さんは、親が少し痴呆症になってきたのに気づくのが早かったりするけれども、外に出て働いている男性は半年、一年それに気づかなかったり、そういうふうなことで発見がおくれたり、また隠すというような、そういう風土も残っております。御存じのように、やはり痴呆症も早期発見、早期対応をすれば後の進行が大きく違うわけでありまして、私も経験上、ひとりぼっちで、外にも出なくて、閉じこもりになって話し相手もいない、そういう環境では痴呆が非常に悪化しやすいということもわかっております。
 ただ、どのファクターで痴呆が予防できるかというのはわかりにくいわけですし、実証もしにくいわけですけれども、今御答弁くださったようなさまざまなアクティビティー、交流、歌を歌ったり踊ったり、楽しいひとときを暮らす、そういうことがやはり痴呆の進行や発症をおくらせることにかなり効果があることが、さまざまな実証例が出てきておりますので、ぜひとも積極的に支援をしていただきたいと思います。
 これからも、茶業の振興、そしてこの痴呆予防の問題、精いっぱい私も頑張りたいと思いますので、農林水産省、厚生労働省におかれましてはよろしくお願いいたします。
 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
萩山主査 これにて山井和則君の質疑は終了いたしました。
 次に、大島令子君。
大島(令)分科員 社会民主党・市民連合の大島令子でございます。きょうは、保安林をめぐる諸問題について農水大臣及び林野庁長官に質問をいたします。
 まず、農水大臣にお尋ねいたします。
 保安林については、森林が環境保全にいかに重要な役割を果たしているか、言うまでもありません。森林・林業基本計画、これは平成十三年十月に出されたものですが、二酸化炭素の吸収源として森林の役割について「国民の理解の醸成等を図る。」とこの基本計画には書いてあるわけです。つまり、森林に関して、国がその重要性を国民に理解を求める側にいるわけです。国は森林を率先して守る立場にあると私は理解しております。これが保安林となればなおさらであると思っております。
 そこで、大臣に、保安林制度の意義、保安林制度はそもそも何のためにあるのか、その意義に対して御所見を伺います。
大島国務大臣 保安林制度は、森林法に基づきまして、水源の涵養、災害の防備、生活環境の保全、形成等の目的のために、重要な森林を保安林として指定して、その森林の保全を図るための制度でございます。御承知のように、我が国の森林面積の約三六%に当たる約九百万ヘクタールが保安林として指定され、国民生活に重要な役割を果たしている、このように思っております。
 今後とも、保安林制度の適切な運用により、森林の有する公益的機能の確保に努めてまいりたい、このように思っております。
大島(令)分科員 保安林制度は、森林学の専門家などにも日本の森林を守ってきた重要な制度であるということで認知されております。それが今、大臣が御説明ありましたように、今回、行政手続の簡素化と地方分権という美しい名のもとで壊れかけております。本来、保安林は厳格な制度で、そこに落ちている石も持っていってはいけないというほどのものであったと思うわけです。
 そこで、次の質問に入りますけれども、大臣に御答弁をお願いします。
 保安林は、一号から十七号まで、その機能に応じて細かく分類されております。重要保安林の一号は水源涵養保安林、二号は土砂流出防備保安林、三号は土砂崩壊防備保安林になっております。これは重要保安林として大臣権限で指定、解除ができますが、この一部が平成十二年に、地方分権一括法成立に伴いまして森林法が改正され、緩和されました。一部、都道府県の法定受託事務になったわけでございます。
 解除に際してこの重要保安林が大臣権限から県の権限になったことに対して、私は、解除に対してある意味厳格さを欠くことになったのではないかと思っております。国の目が届かなくなることについて大臣の見解を聞かせてください。
大島国務大臣 委員が先ほど冒頭に申されたように、石ころ一つ動かしちゃいけないというのが保安林ではないかということを考えますと、国がすべてを管理して、どこにどういう石ころがあるかということを一番知っているのは、ある意味では地方なのかもしれません、地域なのかもしれません。
 しかしながら、先ほど委員が御指摘いただきましたように、民有林の水源涵養保安林、土砂流出防備保安林及び土砂崩壊防備保安林の指定及び解除の権限につきましては、確かに、平成十一年、地方分権の推進を図るための関係法律の整備に関する法律において森林法が改正され、平成十二年四月一日より、二つ以上の都道府県の区域にわたる流域及び国土保全上または国民経済上特に重要な流域に存する民有保安林については引き続き農林水産大臣としますが、それ以外は都道府県知事に移譲したところでございます。
 なお、民有林のこれら以外の保安林に関する事務については、従来から都道府県知事の権限となっております。
 また、国有林の保安林の指定、解除事務は、国有林の管理経営とあわせて行うことが効果的であることから、すべて農林水産大臣権限としておりますが、移譲したからといって、そこの検査、査定あるいは考え方が甘くなっていくということは、むしろ地方自治体の皆さんに失礼ではないかなという気が私はします。しっかりとやっていただけるものと思っております。
大島(令)分科員 では、大臣に伺います。
 保安林指定の解除につきまして、国の審査と都道府県審査の違いというのは私はあると思います。
 例えば職員体制、いきなり地方分権されましたけれども、では都道府県に保安林担当の職員体制がどのように確保されているかという問題ですとか、また、この職についた人はゴルフ場にも行けないほど身を律しなければいけないと言われているそうですね。というのは、例えば保安林の指定を解除してゴルフ場をつくりたいというときに、地元にいると開発業者と接する機会が多いわけですから、審査の中立性が確保できない。そういうマイナス面も私は想定できると思うわけです。そういう意味で、私は、保安林というのは守らなければならないという前提に立つのであれば、やはり大臣権限ということを確保しておくべきではなかったかというふうに思っております。
 そこで質問でございますけれども、保安林解除手続の緩和、一号から三号、一部流域をまたがるところは緩和されましたけれども、実際これによってどのような問題が起きているのか、省として把握しているのかどうか、お答えいただきたいと思います。
加藤政府参考人 先ほど大臣の方から話をさせていただきましたとおり、一部権限を移譲したわけでございますが、これら権限を移譲しました保安林につきましても、一定規模以上の面積の解除を行う場合は農林水産大臣の同意を必要としているところでございますし、また、都道府県から毎年度保安林の解除状況につきまして報告を受けておるところでございまして、そういった形の中で我々として適切に保安林行政を進めていくということで考えているところでございます。
大島(令)分科員 では、大臣に伺います。
 大臣権限で保安林を解除するケースの場合、現場にはだれが行くんでしょうか。
加藤政府参考人 解除に当たりましては、都道府県から申請がされるということでございまして、都道府県の意見等も聞きながら、我々として判断をしているということでございます。
大島(令)分科員 私の質問は、では書類審査ということだけなんですね。大臣権限で許可をする重要な保安林が、だから、保安林というのは十七の機能に分かれていまして、水源涵養ですとかいろいろな目的で、土砂流出防備保安林ですとか、森林の中でも非常に重要な位置づけをしてあるわけで、解除というのは森林保全の逆のことをするわけですから、私はまさか書類審査だけだとは思っていなかったわけなんですが、国の林野庁、農水省関係の職員は書類審査だけで現場に行かないんですか。
加藤政府参考人 今申し上げましたように、都道府県から申請があるということでございまして、都道府県の段階で都道府県知事としての判断というものもあるわけでございますが、同時に、地元の市町村長等の意見あるいは利害関係者の意見というようなものも把握をしながら都道府県から上がってくるということでございます。都道府県としては、当然その段階で現地についても把握をしながら申請をしてくるということでございまして、我々として、それを受けとめて審査をしているということでございます。
大島(令)分科員 それでは、現場に行かないということでいいんですね。イエスかノーで答えてください。
加藤政府参考人 通常の場合、国の職員が行くということはございません。
大島(令)分科員 では、保安林解除手続の緩和、これに関しまして、異議申立人のことについて質問をいたします。
 保安林の指定の解除については、幅広くだれでも異議意見が述べられるべきであると思います。しかし、異議意見書を出す際に、利害関係を証明する書類を一緒に提出しなければならないということが現在の状況でございます。私は、この制限は撤廃されるべきだと考えております。いかがでしょうか。
加藤政府参考人 保安林の解除につきましては、その保安林の機能を享受している者に対して影響を及ぼすというものであることから、直接の利害関係者は御意見を提出することができるということにさせていただいているところでございます。また、保安林の解除に関しまして、先ほど申し上げましたように、都道府県知事の意見を求めているほか、地元地域に及ぼす影響について、地域住民を代表する地方公共団体の長の意見書も提出できるということにされておりますので、十分地域の意見は把握できているというふうに思っております。
大島(令)分科員 保安林、森林の機能としまして、災害防止ですとか水源涵養、温暖化防止、いろいろ機能があるわけです。
 そういう中で、利害関係者のみ異議意見が申し述べられる。この証明書を出すということは、住民票とか登記簿謄本などの書類を出さないとだめということでございますけれども、では、地球温暖化防止で二酸化炭素をいっぱい、森林、大切ですね。それで、沖縄の人が、地球温暖化を防止するために、北海道の保安林解除に対して異議意見書を出すことができないんじゃないですか、今の制度ですと。どうなんでしょうか。
大島国務大臣 森林の果たす役割の全体的なCO2削減に対する機能という問題と、今の保安林の機能という問題はオーバーラップしているところもございます。しかし、保安林というのはかなり限定された地域、したがって、そこには直接的な利害関係者の声を聞くということ、私は基本でいいと思うのです。
 全体の、北海道の山の保安林をちょっと変化させたから沖縄の人たちの意見もそこには聞かねばならないというふうにしていくことが、行政としていいのかどうかというと、私は、委員のおっしゃることは、いささか総体的な問題と個別具体的な問題をリンクし過ぎているんではないかなという思いを持ちました。
大島(令)分科員 先ほど、公益的機能が保安林、森林にあると言っておりました。
 ここに、森林の有する諸機能の保全に対する国民の期待度というのがありますけれども、災害防止、水源涵養、温暖化防止、大気浄化・騒音緩和、野生動植物、野外教育、保養休養、林産物生産、木材生産、こういうふうに、森林、とりわけ保安林に、特に指定しているわけですから、国民の期待する公益機能が大きいわけですね。
 そういう意味で、私は、例えばの話で北海道と沖縄を出したわけでございますけれども、現状、利害関係者という範囲が非常に狭められているのではないかということで、この趣旨の質問をさせていただいたわけでございます。
 自治体を超えてその保安林から影響を受ける、例えば流域の下の方に住んでいる人たち。このように、住民票や登記簿謄本を出すということは、では、だれがそういうふうにして判断するのか。証明しなきゃならないわけなんですね。そういう意味で、現行の利害関係を証明する書類、これをもう少し、撤廃もしくは緩和してもいいのではないかということを私は申し上げたかったわけでございます。
 では、異議意見書によって、実際、保安林解除が中止になった事例があるかどうか、お答えください。
加藤政府参考人 保安林の解除におきましては、意見書が提出されたときには、公開による意見の聴取を行いまして、その内容を慎重に判断することとしているところでございますが、これまでそれによりまして保安林の解除を行わなかったという事例は承知しておりません。今まで、これらのところまで至った事例というものは数件でございますけれども、そういった事例は承知していないということでございます。
大島(令)分科員 制度として異議意見を述べることができるということであって、私は、これは実際には、行政手続上皆さんの意見を聞きましたよ、そういうアリバイ的な手続にすぎないなということを、今の答弁を聞いて感じました。
 では、次の質問に入ります。
 これは、具体的なある地域の問題でございます。東部丘陵というところでございますが、これは、私の住んでいる愛知県愛知郡長久手町と、愛知県日進市藤島町にまたがる地域でございます。ここは、重要流域保安林二号、いわゆる土砂流出防備保安林となっております。
 実は、この土地は鉱業権が設定されまして、本年二月六日には中部経済産業局によりその施業案が認可され、次の法的段階は保安林の解除になります。しかし、地元自治体や市民は、東部丘陵を自然のまま残したいということで、この保安林の解除をしていただきたくないという強い意見、気持ちを持っております。
 先般、林野庁の担当者の方に、地元の市長さんたちも上京しまして聞いたんですが、解除の要件が整えば保安林の指定の解除をせざるを得ないということでしたが、本当にそうなのかどうなのか、もう一度答弁をお願いしたいと思います。
加藤政府参考人 今お話がございました事案につきましては、まだ保安林の解除の申請が上がってきていないということでございまして、今ここで断定的に申し上げることはできないわけでございますけれども、保安林の解除につきましては、指定理由の消滅及び公益上の必要がある場合という二つの場合につきまして解除ができるということになっているわけでございます。
 指定理由の消滅につきましては、受益の対象が消滅したもの、あるいは自然現象により保安林が破壊され、かつ森林に復旧することが著しく困難になったというようなもの、あるいは当該保安林の機能に代替する機能を発揮すべき施設が設置されるということで、保安林の指定理由が消滅したというようなものにつきましては保安林の指定を解除するということでございます。
 また、公益上の理由により必要が生じたときは保安林の解除をすることができるわけでございますが、これにつきましては、保安林の土地を他の事業の用に供する必要が生じた場合に、その公益性が保安林の指定目的を上回って重要と判断され、防災上の措置など必要な措置が講じられるときには、保安林の解除を行うことになるというふうに考えております。
大島(令)分科員 仮定の話ということでございますけれども、ここの土地に関しましては、まず、平成十三年八月三日に地元の産廃業者が鉱業権の許可を受けました。そして、鉱物の採掘に当たりましては、土地の所有者の同意もしくは地権者にならなければいけないということで、昨年の六月十一日と昨年の十一月二十九日に約十四億円を投じてその東部丘陵の土地を買っているわけでございますから、これだけの十四億円の土地を買うということは、そこを掘るという前提でなければ買わないと私は思うんですね。そういう意味で、仮定の話ではなく現実の問題として今まさにあるわけです。そして、昨年の十一月二十九日、この産廃業者に土地が売られたわけなんですが、そのとき地元の日進市もその土地を買いたいという意思表示を地権者にしているわけですから、仮定の話ではないと私は思っております。
 そこで、大臣もしくは長官でも結構でございますけれども、日進市民や長久手町民が、この保安林を解除したくない、自然を守りたい。そして、この保安林が解除され、広大な面積が鉱業権によって採掘されるならば、東海集中豪雨でこの下流域に住む名古屋市緑区の人たちは、多くの人が床上浸水をしたわけなんです。そういう意味において、この東部丘陵の果たす役割というのは大きいわけです。それでもなお、法的に解除の要件が整えば解除せざるを得ないのかどうか。このあたりの考えを大臣に聞かせていただきたいと思います。
加藤政府参考人 今お話がありました件につきましては、先ほど申し上げましたように、まだ提出がされていないということでございまして、提出された段階で我々としてはきちっとした審査を行いたいというふうに考えているわけでございます。
 その審査に当たりましては、そこを利用する目的、あるいはそこを使わざるを得ない、この保安林以外の土地に求められないのかというような用地の事情、あるいは保安林解除をすべき面積が必要最小限の面積であるかというようなこと、あるいは他法令との関係がどうなっているか、それから防災上等、そういった必要な措置がとられているのかというようなことを審査していくわけでございまして、そういった審査をクリアするということであれば解除がされるということであろうと思っております。
大島(令)分科員 もう具体的に業者が土地を購入してきているわけなんですね、着々と段階的に。そういう中で話しているわけで、これがすべての法的要件をクリアされれば、業者は十四億、また残りの用地の取得にもかかっているわけですから、保安林解除されればこの東部丘陵は広大な面積を確実に掘られていくわけなんです。
 鉱業権が設定されれば、百年ぐらいかかって業者は掘るわけなんですね。掘っている間は調整池とかいろいろつくりますけれども、穴が深く掘られるわけなんです。森林の持つ水の保全機能ですとかいろいろな機能がこの百年間、この地域で失われることになるわけなんです。
 この住民の、自然と水源として洪水を起こさせないためにというものと、一つの業者の、鉱物を掘る、粘土を掘るという鉱業権、この公益性。自治体の言う、自然を守りたい、洪水を起こさせたくない、レッドデータブックにも載っている貴重な植物がある、市民の散策の場所にしたい、この市民や自治体の気持ちと、一業者が鉱業権に基づいて土地を取得し百年にわたって粘土を採掘することと、どちらが公益なのか。大臣、答えてください。
大島国務大臣 先生の思いというものを今伺いましたが、法律という手続にのっとって、そして、その要件を満たしたことを逆に否定してしまうということになりますと、法治国家としていかがなものかという御批判も当然出てくると思うんです。
 大きな政策論争、判断論争と同時に、法律の手続に沿って我々は、国家というのは動いているわけでございますが、そういう中にあって、地方自治体の意見も聞くということになっております。したがって、長官が今ここでお答えしておりましたように、今まだ私どもの判断の材料も何もない時点から、これはいけないよ、これはいいよというふうなことをいたすことは、これはなかなか、明確に言えばできることではございません。したがって、出てきたときにその要件等をしっかりと客観的に判断していく姿勢というものがなければならぬと思っております。
大島(令)分科員 この東部丘陵の下流にある名古屋市民からも、一万を超える署名が提出されております。今大臣は、自治体の意見を聞くということも言われましたが、日進市はこれを受けて、議会においても保全に向けての決議をしております。また、日進市の市長は、貴重な植物がありますので、環境省、林野庁を訪ね、保全についても要望しております。また、日進市は、この区域の自然環境を調査しまして、自然公園として残すため、現在公園化の計画の策定を現実に進めているわけです。
 こうした日進市の保全への姿勢は明確であるわけでございますけれども、このような署名ですとか日進市が自治体としてやっていることは、行政執行の保安林の指定を解除する、しないということにどのように生かされていくのか。法律を守るのが法治国家はだれだってわかりますけれども、法律が市民の気持ちと合わなくなっていったときに、そこを考えるのが私たち政治家、大臣も政治家ですね、政治家の仕事じゃないですか。法律の番人をするのが私たちの仕事ではないわけです。法律が、市民の意見、自治体の意見と一事業者の意見が合わなくなったときに、どこでどういうふうにしたらいいかということを決めるのがこの国会であり、私たち政治家の責任だと思うんです。法律の番人じゃないと思うんです、私たち政治家は。
 ですから、今言った日進市民、下流域の名古屋市民の署名、自治体のこれからの取り組みを、法律を超えて、大臣、政治家としての大島農水大臣の意見を行政執行上どのように生かされるのか、大臣の見解を聞きたいと思います。
大島国務大臣 まだ私どもに、具体的な事例がここに、テーブルに来ているわけではございません。来るときには当然に、今先生がお話しされた市の意見等も付与されてくるんだろうと思うんです。そういう、来ないうちに私どもの方から行って、政策判断だからこれはいかぬよということが本当にいいのでございましょうか。
 私どもは、やはり今、これはいいとか悪いとかと判断できる状況ではないわけでございます。一方、今先生から先生の意見としてさまざまな観点からの御議論をいただいて、なるほど、そういう問題があるのかということは私は今聞きとどめさせていただきました。しかし、あくまでも、そういうふうな状況は状況としても、来た時点でさまざまな判断をしてまいらなきゃならぬと思います。
大島(令)分科員 法律というものが壁になっていることがたくさんあります。行政手続法という法律が通りまして、業者としては法律にのっとって鉱業権の許可をとり、施業案の認可を受け、掘るために土地を十四億円投資してもう買っている。最後の手段は、保安林の解除をして、掘る寸前にいるわけです。これが決まった段階で、では、自治体はなすすべがないじゃないですか、大臣。そうでしょう。保安林の解除が決まれば、後この東部丘陵をだれが守ってくれるんですか。未然に防ごうということで、私はきょう、大臣にもこのことを知っていただきたいし、質問として取り上げさせていただいたわけでございます。本当に迫っている問題なんですね。
 では最後に質問しますけれども、日進市長や地元住民が直接大臣を訪ね、地元の意見を聞いてくださいといったときに、大臣は会ってくださいますか。そのことだけお答えください。
大島国務大臣 私は、国民の皆様方、特に市長さんとかそういう方々が市の意見として陳情及び意見を申し出たいというときは、できるだけ時間を調整して会うように努めております。
萩山主査 大島君、時間が来ました。
大島(令)分科員 時間が参りましたので、では大臣、そういう事態になったときには、ぜひ地元の意見を直接聞いていただくという政治姿勢でよろしくお願いいたします。
 以上で終わります。
萩山主査 これにて大島令子君の質疑は終了しました。
 次に、小沢鋭仁君。
小沢(鋭)分科員 私の選挙区はブドウで有名な選挙区でありまして、ワインもつくっておるところであります。まさにそういった地域の皆さんの声を受けて、きょうは主にワインの話を聞かせていただきたい、こういうふうに思います。
 ただ、改めていろいろな調査をしたり、あるいはまた役所の皆さんと話をしておりますと、ワインの話というのは農水と財務省と両方にまたがる話なんですね。ですから、これがなかなかやりづらいところもある。別にこれを大げさに縦割り行政の弊害だと言うつもりはありませんけれども、しかし、どうも話をしていると、そういう溝にはまっているようなところがありまして、大変そういう感じを持ちました。できれば、いわゆる食用として、飲料としてのワインというような話の部分はどこかで一元化した方がいいのではないですかね、こういう話を冒頭申し上げておきたい、こういうふうに思います。
 まず、日本におけるワインの消費の拡大。ワイン産地としては大いに消費の拡大をしてもらいたいわけでありますけれども、これはもう皆さん方も御承知のとおり、ついこの前、平成十年くらいはワインブームというのがありまして、振り返ってみると一次、二次、三次とあって、第五次ワインブームと呼ばれているようでありました。いわゆる健康志向、ポリフェノールが含まれているということでそんなブームにもなったというのを思い出すわけでありますが、その平成十年を頂点にして頭打ちなんですね、ワインの消費量というのが。
 特に、その後また、いわゆるワインの新世界、こう呼ばれております、いわゆる低価格の輸入ワインが入ってまいりまして、これはチリとか南アとかから入ってきていて、国産ワインは特に消費も頭打ちなんですね。我が地元の勝沼というところの出荷額も、当然それに右に倣えになっているわけであります。
 まず、ワインの消費を拡大するという話は、ひいては農産物、ブドウまで行くわけですから、まさに農家の皆さんたちへの政策にもなるわけでありますけれども、例えばどういう形で消費の拡大というのに政府は取り組んでいるのか、お尋ねをしたいと思います。
大島国務大臣 ワインをとりたてて消費拡大政策をどう打っているかということは、私が大臣に就任して省内でさまざまな議論をしましたが、率直に言って余り、積極的であるかといえば、ございません。
 ただ、小沢委員、米もお酒も消費拡大しろ、ワインも消費拡大しろ、今度は特区構想でどぶろくをつくれ、こうなってまいりますと、日本人の胃袋と肝臓というのは限界がございまして、ワインはかなりそういう意味ではアッパーリミット的なところに定着をしてきたんじゃないか、むしろ世界の中で国産ワインと海外のワインとどう競争していくかという時代になったのではないかなという感じを、今御意見を伺いながらいたしました。
小沢(鋭)分科員 確かに、アッパーリミットという話も考えながらワイン醸造会社も農家もやらなきゃいけないのかもしれませんが、ただ、数字を見ますと、まだ全体の二・八%なんですね。ですから、これは幾ら何でも小さい、こういうふうに思っておりまして、ワイン産地としてはまだまだそこはアッパーリミットとあきらめるのは早過ぎる、こう思いますし、私もまだ地元に対してちょっとこれは限界だ、こういう話ではない、こう思っておるものですから、また特段の対応をお願いしておきたいと思います。
 それで、今も申し上げましたように、新世界のワインが入ってきておりまして、特に国産ワインはつらいのであります。大変国産ワインが今現状厳しい、こういうことになっていて、これは一言で言うと、さっきも申し上げましたけれども、ブドウ栽培農家へ直撃するんですね。それで、昨年は、これは大変残念な話でありますが、例えば勝沼の甲州というブドウが最も伝統的な品種でつくられているわけでありますけれども、この甲州ブドウを農家の皆さんが結局出荷できないで穴を掘って埋めるということが昨年は起こっているんですね。この農家の皆さんたちの気持ちは、本当につらいものがあるわけであります。こういったことが現状起こっている。
 ですから、後ほどその改植の問題を取り上げさせていただきますが、現状そういう話になってしまっていて、やはりこれは、大臣、つくったものをまたそのまま出荷できないで穴を掘って埋めるというのは、農家の人たちの気持ちにしたら大変つらいものがある、こういうことでありまして、そういった意味では消費も拡大しなきゃいかぬ。それから、生で食べる食用のブドウからワインとかそういう話に切りかえていけば、年数ももちますし、そういったことがまさに必要ではないか、こう思うわけであります。
 国産ワイン生産の振興策といったようなことにどのように取り組まれているか、お尋ね申し上げます。
寺内政府参考人 お答え申し上げます。
 国税庁といたしましては、これまで、ワインの製造業を中小企業近代化促進法に基づく指定業種として指定いたしまして、金融面の助成措置を受けられるよう、その事業活動を支援してきたところでございます。さらに、先生がおっしゃいました中小のワイン製造業者の経営の活性化を図るために、研修会等においてテキストとして使用されますアクションプラン等の冊子の作成、あるいは研修会への中小企業診断士の派遣などの支援措置を講じてまいりました。また、従来より、業界団体の会合あるいは研修会等の場を通じまして、ワインの消費動向等の情報提供を行う、あるいは業界の需要拡大に向けての各種の取り組みに対しまして必要な助言指導を行うなど、支援を行ってきております。
 こうした中、ワイン業界においては、例えばワイン祭りのような消費振興のためのイベントの開催、あるいは県内の観光地とタイアップしたワインの消費の拡大、こういったことの実施に積極的に取り組んでいるところと承知いたしております。
 なお、ワインの製造技術面につきましては、その質的な向上を図るために、私ども、独立行政法人酒類総合研究所というのがございますが、果実酒鑑評会を開催したり技術者を養成するための醸造講習会を行ったり、あるいは研究所への研究生の受け入れを行ったり製造に関する基礎的研究を進めたりして、さまざまな技術的支援を行っているところでございます。
小沢(鋭)分科員 メニューとしては幾つか取り組んでいただいているということでありまして、さらに頑張っていただきたいと思います。
 ただ、冒頭にも申し上げたんですが、国税庁がワインのセールスをする、こういう感じはやはりどうも合わないんですね。国税庁が合っているのは、この後質問通告しておりますが、やはり税金なんですね。御承知のとおり、現在ワイン増税が、政府としてお決めになっていて、この国会で、全体で通るかどうか、こういうことでありますけれども、一本当たり十円、こういうことなんですね。説明を聞くと、ほかのお酒やなんかとのバランスの問題です、こういう話があるのはもちろんわかるわけであります。しかし、昔私が習った経済学には幼稚産業の育成というのがあって、まさにマーケットメカニズムの中だけでいかない部分、これからまだ育てようとする産業であれば、そこのところは育成のための政策があっていいというのが昔習った経済学であります。
 そういった観点に立ちますと、先ほど言ったように、まだ二・何%の分野、これから一生懸命伸びようとしている、なおさら輸入品で圧迫されている、輸入は輸入で、財務省の方は関税でちゃんと収入も得ている、こういう話ですから、ワインくらいは、全体の産業政策のことも考えるとまだ増税は早いのではないか、こう思うわけでありますけれども、いかがでしょうか。
石井(道)政府参考人 お答えさせていただきます。
 今先生からワインについて、幼稚産業の育成あるいは産業政策というお話がございましたけれども、私ども、税制の立場からお話をさせていただきますと、今回の酒税の全般的な見直しという基本的な考え方は、消費課税の基本的な考え方でございますが、同種同等のものには同じような税負担をお願いするというのが酒税も含めた消費課税の基本的な考え方でございまして、そのような観点から、酒類間の税負担の格差を縮小するという基本的な考え方に立ったものでございます。
 そういうことを踏まえまして、全体、このワインに限らず、清酒と合成清酒、あるいはビールと発泡酒というような、さまざまな酒類間の格差を基本的には四分の一程度縮小させていただきたいというのが今回御提案申し上げている内容でございます。
 ワインについて申しますと、清酒との間で近似性が認められるものですから、先ほど先生がおっしゃいましたとおり、現在、清酒との間で税負担の格差が一本当たり四十円ぐらいございますものを、その四分の一でございます十円程度引き上げさせていただいて格差の是正を図らせていただけないかということでございますので、ぜひとも御理解方よろしくお願い申し上げたいと思います。
小沢(鋭)分科員 今同僚議員からも声が上がって、公平感ということであれば清酒を下げればいいではないかという話がありました。まさにそういった観点で見直してもらって、とにかく、今これだけ不況で苦しんでいるときに増税という話、やはりこれは響くわけでありまして、一般論のマクロ政策としても、話はちょっと飛びますが、私はずっとデフレストップという話をどこに行ってもしてきていて、この間も本会議でもやらせてもらいましたけれども、そういう中で、マクロ政策をしっかりやれば、正しい政策を打てば景気は回復できる、そうすれば増税なんかしなくたって税収は上がる、そっちを考えるのが本道であって、ここでまた、いわゆるマクロ政策もいいかげん、そして増税で今度は逆に景気を冷やすというような話だと、これはとにかく全く逆行ではないか、こう思っているところでありまして、私も、日銀総裁人事が決まって、何か声も出ないくらいがっくりしているんですが、ちょっと声を張り上げて、そこのところはまた改めて、そういった観点で政策そのものを見直してもらいたい、増税ではなくて、まさに下げる方で合わせてやっていただきたい、こう要望を申し上げておきたいと思います。
 それから、具体的な話に入りますが、先ほど申し上げましたブドウの改植事業というのを今地域では始めております。先ほどの甲州ブドウの、まさにこれですね、新聞がありますが、「畑に穴掘り、もぎ取っては捨て…」こういうつらい話から少し、ワイン用のブドウに改植しよう、それに対して町、勝沼町というところですが、あるいは山梨県、タイアップしてその改植事業に対して補助金を出す、厳しい財政状況の中で苗木代の半分を補助していく、こういう話をしております。
 こうしたことに対して、これは我が地域だけではなくて、日本全体の中で、お米もそうでしょう、品種を改良していく、苗木を改植していく、そういう事業があると思いますが、そういった前向きのことに対する助成措置というのはないんでしょうか。
須賀田政府参考人 果樹の需要というのは移ろいやすいものでございまして、ブドウ以外にも、例えばミカンの世界でも、かつて売れていたのが新しい品種に改植せざるを得ないというのは間々あることでございまして、私ども、これに対しまして総合的な事業を用意しておりまして、小規模な土地基盤整備というような形で事業を用意しております。
 ただ、この財政出動、財政支援、財政にお詳しい先生のことですから当然おわかりだと思うんですけれども、それにふさわしい手法がございまして、例えば個人の苗木の購入に補助を行う、これはできないわけでございますけれども、私どもの事業の中では、営農集団というのをつくっていただいて、それが優良品種の導入を図る場合には支援の対象になっている、こういうことでございます。
小沢(鋭)分科員 品種をより国民のニーズに合わせたものにかえていく。苗木ですから、一回かえると大体三年くらいはブドウがなりませんので、やはりその間が大変なんですね。ですから、ぜひ国としてもそういった前向きの努力に少し配慮をいただきたい。大臣のところも、恐らくリンゴがそうなんだろうと思います。まさに、リンゴは何年でなるか私はよくわかりませんけれども、苗木をかえていくというような話は時間がかかる話でもあります。そういったきっかけがないと、農家の人も本当に踏み込めないんですね。ですから、ぜひそこは御検討いただきたい、こういうふうに思います。
 次に、ワイン特区というのを申請しております。山梨県としてワイン特区の認定をお願いしておりまして、その特区の中では、まず、農地の取得それから賃貸、そういったものをワインメーカーの方でもできるようにさせてもらいたい。さっき申し上げましたように、ワイン用のブドウをつくりたいとメーカーは思っているわけであります。そういったワイン特区に関しまして、現状、どうなっているのか。ぜひお願いしたい、こういうふうに思います。
 この特区は、かつて、昔大臣と一緒に勉強をしたいわゆる元気の出る農業というのがありました。あのときは、昔のいわゆる農政というのは最初米だった。総合農政になった。そこから、今度は総合農村だ、農村整備だ、やはり農村全体を見てやっていかなきゃいかぬという話を、もう十年も前でありますけれども、やらせていただきました。
 特区というのは、今回は構造改革特区ですから、若干それは考えが違うというのはわかるんですが、地域として考えていったときに、そういった実験場でもありますから、大いにやって、その地域全体をとにかくどう考えるのかという意味では、まさにそのモデル地域にしていきたい。
 私は、ヨーロッパなんかに行きますと、ワインの産地のところが本当にすばらしい光景になっている。山梨もきれいですよ。棚になっておりまして、トンネルを抜けると雪国であったというのは川端さんの小説ですが、トンネルを抜けるとまさにブドウ畑がばっと眼下に広がるわけであります。そういう地域をやはり徹底的に整備していく、そういう意味では大変重要な特区だ、こう思っているんですが、御所見をお願いしたいと思います。
大島国務大臣 小沢委員と十数年前にそういう議論やあるいは経済や国土づくりを議論したことを今委員から言われてふと思い出しながら、長い友情に感謝をしておりますが、今度の特区構想の中で、今の委員のお地元の特区がどういう形で来ておったか、ちょっと私、大変申しわけありませんが、具体的に見ておりません。勉強したいと思います。
 ただ、今回の特区については、農地取得の緩和と生産法人の事業の拡大ということを基本にして、我が省としては二つ挙げました。それで、ワイン会社が、醸造会社が農地を持ちたいといったときに、前回の特区法案の中で、もうこれは御承知だと思いますが、いわば貸し付け方式みたいな形でできることになっておりますし、ワインの醸造が農業関連事業に該当するということから、具体的な事例があれば、どういう会社があってどういう土地を持って云々ということがあれば、いろいろ御相談に乗ることが可能ではないかと思います。
 したがいまして、そういう観点から、新たに特区構想として、今御提案を我々内閣として考えるというところまではもう行けませんけれども、現実的に、そういう今までの特区構想の法案をつくったこと、あるいはまた農地取得のそういうふうな条件を踏まえれば、きちっとした具体的な案があれば、さまざまに御相談に乗ることができるかと思いますので、ぜひお知らせをいただきたい。私も勉強してみますが、そういう面でお手伝いを申し上げてみたい、こう思います。
小沢(鋭)分科員 ぜひお願いしたいと思いますし、実際にかなり進んでいるというふうに承知しておるんですが、もう一点そこの確認と、それから、あと具体的なお願いとしては、今国から言われているのは、最低施行が五十アールくらいのところでないとだめです、こういう話を言われているようなんであります。それだと少し広過ぎて大変だな、こう思っておるんですが、何かそこは違うんでしょうか。
大島国務大臣 小沢委員、今その具体名がまだちょっと私の手元にありませんので、ちょっと勉強して、そしてまた委員の方から、こういう会社がこういう構想を持ってこうしているというふうな形でお示しいただければ、大いにそれは、法律をきちっと解釈しながら応援したいとも思いますので、ぜひお知らせいただければと思います。
小沢(鋭)分科員 それでは、ぜひお願いをしたいと思います。
 それから、ちょっと時間が押してきているので、質問通告をしておりました自家用ワインはちょっと割愛させていただきます。済みません。
 農薬の認可の話をお尋ねしたいと思います。
 これは、農家の皆さんたちが農薬を使うときに大変苦労しているようでありまして、私のところに入ってきている話でいいますと、具体的な話だと、例えばボルドー液というのがあるんだそうであります。それを六対四の配合にして使いたい、こういうニーズがあるようですが、その登録が、その調合割合が六対四ではとれていないというような話があるようです。
 それからまた、例えば対象品種も、デラウェアというものにはいいけれども甲州種は使えない、こういう話があるようであります。これは限定使用、こういう話らしいんですが、片方のブドウには使えて片方に使えないというのは、どうもやはり常識からしたらよくわからない。
 それからまた、例えば、種なしブドウをつくっていくのにジベレリンというものがありますけれども、これも、いわゆる欧州系のブドウ、フジミノリとかルーベルマスカットという種類には使えないとか、こっちには使えるけれどもこっちに使えない、こういうような話があって、どうもこれは登録の事務的な時間差の問題だということではないか、こういうふうに農家の方は思っているわけですね。だから、早く使えるようにしてもらいたい、そんな話があったらおかしいじゃないか、こう言っているんですが、いかがですか。
須賀田政府参考人 まず、農薬の登録でございます。どうやって登録するかというと、作物の栽培試験をしていただいて、具体的な作物に効くか効かないか、害があるかないか、使う際に安全性は大丈夫かというデータをとっていただいて、提出していただいて登録をする。そうすると、先ほど言われましたように、特定のブドウで申請が来ますと、それを登録しますと、そのブドウが対象作物というふうになるわけでございます。
 今までは、前回の臨時国会で法律改正するまでは、これは使用規制の義務化はされていなくて、罰則はなかったわけです。恐らく現地では使われていたんだろうと思うわけでございますけれども、今回、使用基準違反が罰則になったということで、今まで使っていたのが使えなくなると大変だということになっているのが現状だと思います。
 私どもも、安全性の確保というものは第一義に置きますけれども、お困りの点もまたよくわかりますので、ブドウならブドウでグループ化をいたしまして、データがそろっておれば、こちらの農薬をこちらに拡大していくということを今作業を進めております。
 メーカーと協議をいたしまして、登録申請の拡大をするということで、今お話しの六対四式のボルドー液、これのブドウへの使用が可能となるよう調整を進めておりますし、ジベレリンにつきましても、フジミノリだとかあるいはルーベルマスカットについて、関係メーカーとの調整を進めておりまして、現場がお困りにならないような形で調整をしていきたいというふうに考えております。
小沢(鋭)分科員 今の御答弁は、ちょっと確認ですけれども、そうすると、申請をするのは農薬のメーカー、こういう話になるわけですね。
須賀田政府参考人 農薬は、メーカーが販売業者も恐らく兼ねております。登録をしますと、登録されたものを容器に張りまして、対象作物何々とか表示するわけでございます。それの登録申請をしていただければ、ジベレリンにフジミノリ、そういうものがついてくる、こういう仕組みでございます。
小沢(鋭)分科員 では、それはぜひ私の方からも、そういった申請を直ちに上げろと、もう上がっているのかもしれませんが、上げろという話もさせてもらいますし、逆に、今須賀田さんから御答弁があったように、できるだけ迅速にその対応も今度はお願いする。もちろん、最後は口に入るものですから、その安全性というのは一番大事だというのは農家の皆さんも一番よくわかっているわけでありまして、そこのスムーズな認定をできるように、私も努力をさせていただきますし、どうぞまた農水としても対応方をお願いしたいと思います。
 それから、最後に、いつもここでお願いを申し上げるんですが、先ほどのワインの話で、とにかく私は、勝沼を中心としたその地域を、フランスのボルドーだとかブルゴーニュだとか、そういうのに負けない世界的な産地にしたい、ワイン産地を形成したい、こう思っているんですね。
 ただ、これはやはり歴史も違うし、そういった意味ではまだまだやらなきゃいけないことがある。ただ、若い醸造メーカーの皆さんたちは必死に勉強して、品種改良をし、そしてそれを目指している。そういう姿をぜひバックアップしてもらいたい。前向きなそういう努力をバックアップしてもらいたいということで、そういった本当に日本の気候それから風土に適したブドウというのは一体どういうものなのか、ワインというのはどういうものなのか、研究開発費というのをお願いしてまいりました。これは、昨年の数字を改めて見たら、六百七十万円なんであります。六百七十万円でボルドーに勝てるか、こういう話でありまして、そういった意味では、ぜひ、前向きなそういった努力を応援していただくという意味で、そういったところへの配慮をお願いしたいと思いますが、いかがですか。
石原(一)政府参考人 ワイン向けのブドウの品種改良の点についてでございます。
 国といたしましては、独立行政法人農業技術研究機構果樹研究所というのを持っております。そこと連携しつつ、それと山梨県の果樹試験場とも連携しつつ、山梨県の果樹試験場に品種改良の委託の試験研究をお願いしています。
 先ほど先生からお話のありました金額のものにつきましては研究費部分だけですので、委託費そのものといたしましては一千万強でございます。その費用なり委託研究費をもちまして品種改良をやっております。
 長年にわたりまして品種改良をやっておりまして、これまでワイン用の品種としましては、甲斐ノワールあるいは甲斐ブランそれからサンセミヨンといった形での優良な品種ができております。これにつきましては、かなり市販されているというふうに聞いております。
 現在もよりよい品種を目指しまして、あるいは糖度が高い、それからポリフェノールが高いといったような有望な品種を育成中でございます。
 今後とも、ワイン向けのより優良な品種の開発に向けまして、国といたしましても積極的に推進していきたいというふうに考えております。
小沢(鋭)分科員 終わりますが、一点、今のような、例えば農業も、そこには最先端の研究機関がある。まさにその研究機関と、それから農家の皆さんあるいはメーカーの皆さんとのコンプレックス、まさに複合的な地域がある、美しい景観がある、やはりそういう姿をぜひ目指していきたいと私も思いますし、政府としてもお力添えをお願いしたいと思います。
 以上です。ありがとうございました。
萩山主査 これにて小沢鋭仁君の質疑は終了いたしました。
 次に、山内功君。
山内(功)分科員 民主党の山内功でございます。
 私は、米は食生活の基本であると思いますし、米づくりは国家戦略として位置づけることは極めて当然のことだと思っています。しかしながら、米の農業総産出額での割合は、昭和三十五年には四七%を占めていたのに、現在では二六%と低下もしています。主業農家の割合が低くて、構造改革がおくれている米の割合は、今後ますます低下するのではないかと危惧するのですが、この点、どうでしょうか。
石原(葵)政府参考人 お答え申し上げます。
 ただいま委員の方からお話ございましたように、米の農業産出額の割合は低下してきております。これは、農業全体の産出額、これは増加しておりますが、その中で、米の消費の減少に伴いまして生産調整を拡大いたしまして、その結果生産量が減少したということで、米の相対的な地位が低下したことが原因であろうというふうに考えております。
 今回の米政策の見直しは、米を取り巻く環境の変化に対応いたしまして、一つは、消費者重視、市場重視の考え方に立ちまして、需給調整システムを改革し、需要に即応した米づくりを推進する。それから、二つ目は、創意工夫ある米産業の発展と需要に応じた米づくりの推進の視点に立ちまして、流通制度を改革いたしまして、安定供給のための自主的な取り組みを支援する。それからまた、最近、米粉パンという、米を粉にいたしまして、それでパンをつくるという技術が非常に発展しております。そういうことに着目いたしまして、米粉パン原料用の加工用米の定着拡大に向けた取り組みを推進するとか、あるいは、飼料用の稲の定着拡大に向けた取り組みを推進する、こういうことを行いまして、米の消費の減少、これに歯どめをかけることが重要であろうかと思っております。
 それに加えまして、何といいましても、「農業構造の展望」に沿いまして構造改革を進めるという観点から、経営政策、構造政策を構築することが重要であろうと思っております。
 このようないろいろな取り組みを通じまして、我が国農業の礎でございます稲作農業の将来にわたる発展に向けて努力してまいりたいと考えているところでございます。
山内(功)分科員 今までの、現在行われている生産調整についても、水田農業経営確立助成、共補償、稲作経営安定対策などを含めると、大体二千九百億円ぐらい措置をされているようなんですけれども、しかし、私たちの地元で聞いてもいろいろな反省点がございます。
 例えば、不平等感があると言われる方もございます。仕組みが複雑でわかりにくい、使いにくいという批判もあります。経営確立助成も共補償も稲経も八百億から九百億と、余り数字的に三つの制度の助成額に変わりがなくて、めり張りがついていないのではないかという指摘をする方も多くおられます。
 今回の米政策の転換、改革に関連した助成措置は、今までとはかわりばえはしませんというような答えはされないのは当然でしょうけれども、もし変わっているとしたら、例えば、内容は後で聞くとして、どの程度の規模の助成額を考えておられるのでしょうか。
大島国務大臣 まず第一点、山内委員が米に集中してこういう御議論をしていただくこと、大変ありがたいと思うのです。
 先ほどの議論を聞いていて、一つ、構造が、こんなに米が減ってしまった。長官も言いましたが、そこの裏には何といっても消費の減退があるのです。
 今、山内委員もお話しされた、平成十五年度は実は二千九百億ではなくて二千四百億、さまざまな、稲経だとか、それから水田農業確立助成だとか共補償だとかいうことを含めまして、約二千四百三十三億計上しておるところでございますが、平成十六年度でどのぐらいのものをおまえたちは用意しているんだ、こう言われますと、まさにこれから米政策改革大綱を発表し、法律案を提案いたします。それに基づいて考えてまいらなければなりませんが、一方において、今、WTOの交渉がございます。これは黄色、青、緑、このボックスの中においてどういうふうにルール化するかという問題もありますけれども、大事なことは、今、不平等ということのお話をされました。この平等感は、何をもって平等感なのか、不平等感なのかはわかりませんが、一言で言いますと、米をつくらないことに平等にお金を配付していく。今まで、米をやめる、つくらないことに、そこに平等にお金を配付していくということから生まれてくる閉塞感だとか不満感とか、そういうふうなものがあるのではないでしょうか。したがって、やろうとする人に集中してそういうふうなものを支援していくという方向に私どもは今度の改革で考えていかなきゃならぬ、こう思っております。
 したがって、そこを目標にして効率的、効果的であるということが必要である。そのためにはどうするかといいますと、やはり、食料供給基盤の確立、そしてそれは集落型経営体を含めた農業経営者の育成、そして農村地域社会の発展、そういう観点から今度の改革を考えておりますし、そういうことによって十六年度の概算要求を考えてまいりたい、こう思っております。
山内(功)分科員 しかし、ことしの八月ごろの二〇〇四年度の概算要求まで明らかにならないとすれば、幾ら今、米政策の転換を昨年末に発表しました、さあ、一生懸命議論をしましょうといっても、全体の助成額というんですか、どの程度の規模のことを考えているのかということが出そろわなければ、評価のしようもないということになるのではないんでしょうか。米改革に向けた意識を高めていこうとか、そういう議論が、ことしの八月までは明らかになりませんよというと、なかなかこの二月から八月までの期間の議論ができにくいんじゃないんですか。
石原(葵)政府参考人 ただいま委員からお話ございましたように、米に係る予算の総額、これはまだ明らかになっておりません。先ほど大臣からお答え申し上げましたとおり、これからいろいろ議論をいたしまして、農林水産省の最終的な考え方は、この八月の概算要求時点、それが最終的に決着いたしますのは年末の時点であろうかと思っております。予算編成過程で決定するということであろうかと思います。
 しかし、あくまでも農家、農業者、農業団体にも、この制度の仕組み、これをどう知っていただくかということが重要でございますので、我々、その仕組みにつきましては、昨年の十一月から十二月にかけまして、ただいま先生からお話がございましたように、いろいろな対策、こういうものを講じますよ、それから、それぞれの施策につきまして、具体的に今農林水産省が昨年の十二月時点で考えている単価といいますか、それはこういうものですよということを明らかにしております。
 ですから、もちろん最終的な姿が明らかにならない時点で、農業団体の方あるいは農家の方にすべて自分の経営の判断をしていただくというのはなかなか難しゅうございますが、その仕組みと、それから基本的な今の考え方、それを、最終的にはこの八月の時点で農林水産省の最終的な単価をどうするとかいうのを決めて、それからそれを十二月に決定するということでやっていきますけれども、去年の十二月の段階で当面の我々の考え方というのを示したところでございますので、我々、その点につきましては先生の御理解をいただきたいと思っております。
山内(功)分科員 先ほど述べました、いろいろな農家の皆さんあるいは生産団体、農業団体の皆さんから出てくる今までの生産調整制度についての批判とか不満とかにこたえるためにも、今回出てきている産地づくり対策、米価下落影響緩和対策、担い手経営安定対策、過剰米短期融資制度などについては、例えば、先ほどの反省点の、仕組みが複雑でわかりにくいというような批判にもたえられる、あるいは、最後に述べた過剰米短期融資制度については、今から不良債権化を心配している人もいるけれども、そういうこともございませんというような、この新しくできる四つの制度についての農水省としての思いというか、こういう制度を新しくつくって、これでとにかく任せてくれという思いを聞かせていただければと思うんですけれども。
大島国務大臣 今委員がお話しされた産地づくり対策、それから米価下落影響緩和対策、それからもう一つの担い手経営安定対策、これらはまさに基本的な、今思いというお話をされましたので、思いというのは、やはり集落で物を考える、それから、できるだけ担い手、その集落でも担い手に集積をしていく。そういう人たちにやっていただくことによって、米の下落対策もとっていくという基本でございます。
 ですから、だれでもかれでも、いわゆる形は平等だけれども、そういう人たちに平等にやるというよりは、担い手、集落、こういうものに中心になってもらう、そういう米政策を考えていこうというのが一つの思いでございますので、御理解いただきたいと思います。
 もし細かにそれぞれの内容を御説明しろというのであれば、させていただきます。
山内(功)分科員 例えば担い手経営安定対策においては、都府県では四ヘクタール以上の経営規模が必要とされているのですが、例えば私の出身県の鳥取県を含めて西日本では、主業農家の割合が本当に極めて低いし、副業的農家が過半数を占めているわけなんですよね。この要件を満たす者は全く限られるわけなんですけれども、この点については例えばどう考えておられるんでしょうか。
川村政府参考人 委員お尋ねの、担い手経営安定対策の関係でお答えを申し上げたいと思います。
 この担い手経営安定対策でございますが、米価の下落対策としまして一般的な対策は、この産地づくり推進交付金の中で米価下落対策が盛り込まれております。ただ、水田経営をある程度大規模にやっておられる方は、米価下落による稲作収入の減少の影響というのが大きいわけでございます。
 そういうことを考えますと、今後私ども、平成十二年に出しました「農業構造の展望」がございます、その方向を目指して頑張っていただく方々を支援していかなくちゃいけないということでございまして、先ほど先生から御指摘がございました四ヘクタールの考え方も、その効率的、安定的な農業経営というものを提示してございます。ただ、一挙にそこに持っていくということはできませんので、その目指す経営規模の二分の一というものを基本にしまして設定をしたところでございます。
 もちろん、水田経営につきましては、先ほど来大臣もお答えしておりますが、個人の担い手ということも非常に重要でございますし、一方、やはり地域ぐるみといいますか、集落を単位とした営農というものも非常に今後大きな役割を果たすということでございますので、今般、その担い手として、集落型経営体というものも出しております。今先生御指摘がございました、個別で対応するということもありますし、また、この集落型経営体の組織の一員として現地で頑張っていただくということも方向としてはあろうかと思っておりますので、そういう方向で私ども、指導なりいろいろな対策を組んでいきたいということでございます。
山内(功)分科員 この一定の経営規模以上の自主的な生産調整に応じる農家とか、そういう農業者の経営体ですね、そういうところに例えば助成を与えるというのは、土地の集積化も求めていることが根底にあると思うんですよ。
 しかし、減反政策が今まで集積化を阻害してきたんじゃないんでしょうか。すべての農家に一律に作付面積の削減を割り当てるわけですから、土地を大きく、広くして大規模経営をしようとしている農家にも四割の減反を強いるということになれば、その大きくふやすという意欲も減退してくるでしょうし、減反政策の転換というのは、そういう面からも今は手詰まりになってきたんだろうと私は思っているんです。
 しかし、一方ではこういう議論がございまして、省としての考えもお聞きしたいんですけれども、日本の農家の経営面積はアメリカに比べて百二十五分の一。日本農業が国際競争の中で生き残るためには、もう今や一つの町村が一つの農地だ、それぐらいで、そこを一人の、あるいは一つの経営体が担うほどの構造改革が必要だという議論もあるんですが、省の考えはもうそこまで思い切ったお考えなんでしょうか。
川村政府参考人 新しい基本法を受けまして、先ほどもちょっと触れましたが、平成十二年に「農業構造の展望」を示しております。これは、各地の状況を踏まえまして、水田経営につきましても規模を示して、またいろいろな、一年二作とか二年三作とかいう、そういう作付体系も踏まえた上で示しております。例えば、北海道におきましては二十一ヘクタールぐらいの規模を想定いたしておりますし、また内地におきましては十二ヘクタールぐらいの規模を理想として展望しているというところでございます。
大島国務大臣 今委員がアメリカと比較して、こうお話ししましたが、まさに今のWTOの議論というのはそこにあるわけですね。アメリカと同じように競争しようといったら、これはとても地政学的に無理な話なわけです。
 しかし、その中でも農業改革というのをやっていかなきゃなりません。今局長がお話しされましたように、その限られた制限の中で生きていく、存立していく、そういうふうなことで我々は構造改革を進めている。そういう結果として、今局長が申し上げたような目標値を設けてやっていく。集積も頑張ってそこにやっていこうというふうな方針でやってまいりたい、こう思っているんです。
山内(功)分科員 本当に集積化を考えるんだったら、例えば物すごく田畑の相続税を高くして、孫子の代まで田畑を引き継ぐという美徳は、今の国際化の進んだ農業政策ではそんな考えはもう通用しない。だから、相続税でたくさん取られるんだったら、今のうちに転用とか利用とか、あるいは売却とか、そういうことを考えていって、土地を意欲を持っている農業者にどんどん集中させるというような施策ですね。
 私たちは増税ということは余り好まない政党なんですけれども、そういうインセンティブを与えるような税制とかを考えないと、集積化というのはなかなか進まないんじゃないかと思うんですけれども、どうでしょうか。
大島国務大臣 したがって、借地というのが一つのポイントだと思います。所有権の移動というのは、なかなかこれは、もちろん、そういう税制上の議論も、体系として、インセンティブを持つものとして非常に重要なものだと思いますが、利用権、借地権、賃貸、こういうもののために農地法をたびたびに変えてまいりました。そこにどうインセンティブを与えていくか、こういうことも一つのかぎではないか、私はこのように思っております。
山内(功)分科員 私は、今回の米政策大綱で示されたような助成措置を講じることは、これもやってみないとわからないことですよね。またもう一つ議論があって、二千数百億のお金を一切助成措置には使わないで、農業者の所得を直接補償する措置をとるべきではないかという議論も、私たちの農水部門会議ではやっているんですね。
 例えば、EUのように直接所得補償を導入すれば、農家は一定の収入があるから、コストを農産物にかけて、高い農産物価格で販売ルートに出すという今の日本のようなやり方はとらなくても済むわけで、農産物価格が思い切って下げられるということも期待できるのではないかと思うんですが、どうでしょうか。
大島国務大臣 一兆円かかるそうですね、民主党さんの提案では。
 ヨーロッパの所得補償、デカップリングというのは、かなり農業者というものが、いわば国民全体から見て、この人はもう確実な農業者だ、そして農業の持つ多面的機能も担っていただいている、ここがかなりはっきりしている主体だと思うんです。
 今先生がお話しされましたように、日本の農業構造を考えますと、地方に行って、お役所に勤めながら三ヘクタール、四ヘクタールの田んぼをやっている。そういう方々に、おまえは農業者だからといって、デカップリングの考え方でお金をどんどん差し出すということは、国民の理解が得られるんでしょうか。やはりまだまだ、農業者、農業を主業として生きていくという人たちが明確になってくる、そうするとそういうふうな考え方もある意味では理解を得られる部分があるかもしれません。
 今、日本の農業構造の中で、すぐ、民主党さんが提案しているような、十アール当たり幾らでお金をやれ、そっちの方がいいんだというふうには、国民の理解を得られないと私は思うんです。一兆円というお金がかかるというふうに御提案では拝見しました。そういうことが本当に日本の農業に今の時点でいいだろうかというと、私どもは、すばらしい提案ですと言うわけにはなかなかまいらない、こう思います。
 もう少し農業者というものを、農業を主業としてやっていく人たちをもっと明確に位置づけていく、その次の段階でそういうふうなものは議論としてあり得るかもしれませんが、農業論全体として、今農業をやっている人に全部、所得補償というかデカップリングでそういうふうなことをやれということは、私はなかなか受け入れられないんじゃないかというふうに思っております。
山内(功)分科員 今の農水省には多分受け入れられない、受け入れにくい議論だと私たちも思っています。
 しかし、所得補償をしっかりとして、米価が大幅に下がれば、業務用や飼料用の需要がふえる、そして米生産が拡大して、生産調整の必要はなくなる、こんなに簡単にはいかないとも私たちも思っていますよ。だけれども、そういうような議論もあるということを踏まえての米政策の展望も、ぜひ一考に値をしていただければと思っています。
 食糧法の改正の骨子案ができたようですけれども、最大の焦点は国の役割だと思うんですね。自主調整に移行するのに、国がどうサポートをしていくのかというのが問われてくると思います。ここで新しい制度として、農業団体がつくる自主的な生産調整方針を国が認定する制度を導入しようとされているようですね。それは間違いないんでしょうか。
石原(葵)政府参考人 食糧法の改正でございますけれども、今政府部内で最終的な詰めをやっております。与党とも協議しながら詰めをやっておるところでございますけれども、その中で、我々、今委員の方からお話ございました生産者団体等がつくります生産調整に関する方針、これにつきまして、農林水産大臣が認定する制度を入れられないかということで詰めを行っているところでございます。
山内(功)分科員 これを読んで、最初にぱっと思ったことは、この自主的な生産調整方針を国が認定しなかったときにはどうなるのかなと思ったことが一つと、それからもう一つまた、認定しないということで強く指導をする、強く指導をしなければ実効性も図れないんじゃないか、しかし自主調整とした趣旨とは今度は相反するのじゃないか、そういうようなことも考えました。
 今、農協だけで農家に減反を強制できる、農協にそういう力があるのかなという不安もあるんですね。組合員の加入率の問題もそうでしょうし、独自の販売ルートを持っている人や、減農薬、無農薬、無化学肥料、減化学肥料でつくっている人たちというのは、もうじかに小売店との取引もされているようですし。
 今の私のそういう疑問についてはどう答えてもらえますか。
大島国務大臣 そこが先生、大改革なんですよ。農協がやれないだろう、あるいは生産者がやれないだろう、だから国がやっていればいい、これでは自主的責任とかそういうものが生まれてこないから、やはり生産主体にしていって、自分たちのつくっている米を自分たちで売っていかなきゃいかぬ、そういう思いに変えていかないと、いつまでたっても日本の米の政策というのはお上頼りということになってしまう。今先生が、農協はできないんじゃないかというふうな疑問点、そこをやってもらうところにこの大改革の基本があるということをぜひ御理解いただきたいと思うんです。
山内(功)分科員 では、全く根本的な話を聞きますけれども、もしそうおっしゃるんでしたら、今後は国は米の需給問題については責任は持たないということなんですかということが一点と、今後は米の価格の安定については国は全く責任を持たないんですかということをお聞きしたいと思います。
大島国務大臣 一方、私どもは、国民に食料の安定供給という責務を持っております。逆に、カルテルを組まれた場合、あるいはそういうふうな運動が起こらないとも限りません。したがって、先ほど長官がお話ししたように、認定という方向で今議論をしております。
 価格についても、一切マーケットに任せますというところまでは行っておりません。やはり下落をした場合には、そこはある一定の責任、ある一定のセーフティーネットを築いてやらなければいかぬでしょう、こういうふうにしているわけでございます。
山内(功)分科員 ただ、認定をするという制度を設けると、幾ら大臣が自主的な制度を確立するとか農協にしっかりしてほしいということを言われても、農業団体は国にやはり責任を少し持ってよということを頼っているという制度で、国が需給や価格安定についてどれほどの責任を持つかという、改革の方向性がちょっとまだ十分に理解できません。
 しかし、はっきりしているのは、今回の米政策の改革によってさらに米価が下がれば、必ずというかますます耕作放棄地もふえてきます。という意味では、今回の米政策の転換後も現在と同じような状況が続く、あるいは悪い方向に行くならば、農業者の皆さんからの国家への不信ということも増幅すると思いますので、私としても省にはしっかりとした対応をしていただきたいということをお願いして、質疑を終わらせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
萩山主査 これにて山内功君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして農林水産省所管についての質疑は終了いたしました。
 これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。
 この際、一言ごあいさつを申し上げます。
 分科員各位の御協力によりまして、本分科会の議事を滞りなく終了することができました。ここに厚く厚く感謝を申し上げたいと存じます。ありがとうございました。
 これにて散会いたします。
    午前十一時三十五分散会


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