衆議院

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第2号 平成16年3月2日(火曜日)

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平成十六年三月二日(火曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 北村 直人君

      大島 理森君    谷川 弥一君

      西川 京子君    大谷 信盛君

      黄川田 徹君    達増 拓也君

      中津川博郷君    松本 大輔君

      山内おさむ君    上田  勇君

      高木 陽介君

   兼務 伴野  豊君 兼務 赤嶺 政賢君

   兼務 阿部 知子君

    …………………………………

   農林水産大臣       亀井 善之君

   農林水産副大臣      金田 英行君

   農林水産大臣政務官    木村 太郎君

   会計検査院事務総局第四局長            重松 博之君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           鶴田 康則君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局結核感染症課長)        牛尾 光宏君

   政府参考人

   (農林水産省総合食料局長)            須賀田菊仁君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           中川  坦君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  白須 敏朗君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            太田 信介君

   政府参考人

   (林野庁長官)      前田 直登君

   政府参考人

   (水産庁長官)      田原 文夫君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            大道 正夫君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           小神 正志君

   政府参考人

   (国土交通省河川局次長) 中島 正弘君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 小林  光君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 小沢 典夫君

   農林水産委員会専門員   和田 一郎君

   環境委員会専門員     遠山 政久君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君

    ―――――――――――――

分科員の異動

三月二日

 辞任         補欠選任

  大島 理森君     谷川 弥一君

  達増 拓也君     松本 大輔君

  中津川博郷君     黄川田 徹君

  高木 陽介君     上田  勇君

同日

 辞任         補欠選任

  谷川 弥一君     大島 理森君

  黄川田 徹君     山内おさむ君

  松本 大輔君     大谷 信盛君

  上田  勇君     白保 台一君

同日

 辞任         補欠選任

  大谷 信盛君     達増 拓也君

  山内おさむ君     中津川博郷君

  白保 台一君     高木 陽介君

同日

 第五分科員阿部知子君、第八分科員伴野豊君及び赤嶺政賢君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十六年度一般会計予算

 平成十六年度特別会計予算

 平成十六年度政府関係機関予算

 (農林水産省所管)


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     ――――◇―――――

北村主査 これより予算委員会第六分科会を開会いたします。

 平成十六年度一般会計予算、平成十六年度特別会計予算及び平成十六年度政府関係機関予算中農林水産省所管について、昨日に引き続き質疑を行います。

 この際、分科員各位に申し上げます。

 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力をお願いいたします。

 また、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。赤嶺政賢君。

赤嶺分科員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 今、有明海の方には、「よみがえれ!有明海訴訟」弁護団というものが結成をされております。有明海の再生を願って、弁護団、市民、何よりも漁民の皆さんが必死に頑張っておられます。それで、きょうの分科会には、その「よみがえれ!有明海訴訟」原告団の中心的な弁護士としての活動を続けておられます福岡県の仁比聰平弁護士もこの分科会の傍聴のためわざわざお見えになっております。そういう意味でも、大変注目度の高い問題として、農水大臣のしっかりした答弁をまず最初にお願い申し上げたいと思います。

 それで、有明海は、タイラギなど魚介類の激減、それからノリの不作、赤潮の多発など、有明海の環境が急速に悪化して、漁業被害が深刻な事態にあることは御承知だと思います。多くの漁業者、この間私、ノリの養殖現場を調査し、それから有明海の漁民の方々と懇談をしてまいりました。この異変に対して、干拓事業を契機に生じてきた、これはもうどこに行っても口々に訴えられる話であります。そして、漁業が壊滅しかねない、こういう危機感を抱いております。その原因について、東長崎大教授を初め九名の学者、研究者は、諫早湾干拓事業が有明海の環境と生態系を悪化させている可能性が相当高い、何度も共同声明を発表しており、その見解に対する支持もまた広がっております。

 農水大臣に伺いますが、農政の重要課題でもある有明海の異変、これと干拓事業との因果関係について、これは解明していかなければならないと思いますが、大臣はいかがお考えですか。

亀井国務大臣 お答えいたします。

 私も就任いたしまして、なかなか機会がなかったわけでありますが、昨年十一月、佐賀の沖から諫早に向けまして現場を実際見てまいりました。また、関係の皆さん方からもいろいろのお話もちょうだいをいたしました。またさらには、会場にもいろいろな団体の皆さん方お見えになりまして、お話も承っておるところでもございます。

 この有明海につきましては、底質の悪化、あるいは藻場、干潟の減少、あるいは人の活動によります海域環境悪化等によりまして水産資源の減少が起こっている、このようには考えております。

 農林水産省といたしましては、有明海及び八代海を再生するための特別措置に関する法律に基づきまして、海域環境及び水産資源に関する調査を関係省庁と連携を図りながら実施しておるわけでありまして、原因解明を進めているところでありまして、また有明海を豊かな海として再生するための漁場改善であるとか赤潮対策等を講じているところでもございまして、今後とも、調査結果等を踏まえまして、海域環境の改善と水産資源の回復のためにより効果的な対策を講じてまいりたい、このように考えております。

赤嶺分科員 有明海の異変について解明をしていくというお考えの大臣の答弁でございました。

 そこで伺いますけれども、この原因の解明、これが緊急に求められている課題だと思うんです。その解明のために避けて通れないのが中長期開門調査だと考えております。二〇〇一年の十二月に有明海ノリ不作等対策関係調査検討委員会、いわゆるノリ第三者委員会は見解を公表しておりますけれども、その見解は、諫早湾干拓は重要な環境要因である負荷を変化させ、諫早湾のみならず有明海全体の環境に影響を与えていると想定され、また開門調査はその影響の検証に役立つと考えられる、現実的な段階として二カ月程度、次の段階として半年程度、さらにそれらの結果を踏まえて数年の開門調査が望まれる、このように提言しております。

 大臣、中長期開門調査、これをやるかどうか。少なくとも、開門調査が有明海異変の検証に役立つ、こういう学者の皆さん、専門家の皆さん、この方々の見解は大臣も同意できますか。

亀井国務大臣 この開門調査につきましては、有明海ノリ不作等対策関係調査検討委員会、いわゆるノリ不作等第三者委員会におきまして検討をいただいた結果、見解が示されたわけでありまして、それに基づきまして、その取り扱いにつきまして農水省として判断がゆだねられておるわけでありまして、我が省といたしましても、この見解の趣旨を踏まえまして、短期の開門調査を含む開門総合調査を実施したところであります。

 その際、中長期の開門調査につきましては、有明海特措法の制定の動き、また短期の開門調査の成果及びその影響、その他各種の調査の動向、ノリ作期との関係等との観点を踏まえまして、総合的な検討を行った上で平成十四年度内に設置する新たな場での論議を受けてその取り扱いを判断する、こうなってきたところでありまして、その中で中・長期開門検討会議はこの新たな場、このような中で設置されたものでありまして、その検討会議、その場の中でのいろいろな論点整理をいただきまして、今後の対応、これを考えてまいりたい、こう思っております。

赤嶺分科員 今私が伺いましたのは、そのいろいろな経過はいいですよ。専門家の方々が、有明海異変を解明するに当たって開門調査はその検証に役立つと言われた、そういう見解に農水大臣は同意できるわけですね。

亀井国務大臣 今、それらの問題を、いろいろお話を伺い、また私も現場を見てまいりまして、いろいろの考え方、また役所といたしましても関係団体やいろいろな皆さん方からのお話を承って判断をする、こういう考え方でおるわけであります。

赤嶺分科員 役立つかどうかという話なんです。役立つという認識があるから開門調査をやるかどうか検討しているわけですよね。そうじゃないですか。経過はいいです、大臣、経過はいいですから。

太田政府参考人 先生御指摘のさまざまな御意見につきましても、検討会議の中で議論されておるものもございますし、そういったものを含めて省としての判断をしていきたいということでございます。

赤嶺分科員 開門調査というのは、有明海異変を解明するに当たって大変大事な検証の場になると思うんです。

 そこで、皆さんが先ほどから出している検討会議、ノリ第三者委員会が開門調査は有明海異変の検証に役立つとした後、検討会議を二〇〇三年三月に設置しました。衆議院、参議院でもその設置についていろいろな批判が起こっておりますけれども、去年の十二月、検討会議の報告書が公表されております。

 その報告書の内容は、見てみましたら、中長期開門調査について、「複合的な要因によって影響されていることから、中・長期調査により得られるであろう多岐にわたる観測データから開門の影響を抽出し、さらに詳細に諫早湾干拓事業による有明海の環境への影響を検討することは困難である」ということで、いろいろなところに調査自体の有効性を否定しているくだりがあるんですね。調査は有効だけれども調査を実施するに当たっていろいろな課題があるという問題提起ではなくて、はなから、調査自体をあたかもやってもむだだと言わんばかりの書き方なんです。

 私、明らかにこの検討会議の報告とノリ第三者委員会の見解とは立場が異なるように見えるんですが、大臣、いかがですか。

亀井国務大臣 検討会議の論点整理、いろいろの面から御指摘をいただいておるわけであります。これは十分私ども、このことにつきまして検討をいたさなければならない、このように思っております。私もそのように受けとめて、そして専門家の皆さんや、あわせて、それぞれ地元の皆さん方、漁業関係者、こういう皆さん方のお考え、こういうものもやはり十分把握をしなければならないわけでありまして、そういう中で今後の対応というものを考えていくべき、このように考えております。

赤嶺分科員 ノリ第三者委員会の見解と検討会議の見解は明らかに異なると思うんです。いかがですか。

太田政府参考人 ノリ不作等第三者委員会の方から、諫早湾干拓事業が引き起こしたと指摘されている有明海の環境変化の諸事象につきまして、その指摘の適否を検証することといたしました見解が示されたわけでありますが、その具体的な取り扱いにつきましては、農水省が総合的に判断するということといたしております。

 中・長期開門調査検討会議の報告書は、この見解を踏まえまして、中長期開門調査の取り扱いの判断に必要な論点を整理いただいたものであります。諫早湾干拓事業が引き起こしたと指摘されている有明海の環境変化の諸事象についての検証方法の適否、周辺の自然及び社会環境に及ぼす影響とその対策、調査を実施するに際して準備や調査に一定期間がかかる等時間の観点、さらに漁業関係者や地元住民の心情等の論点が整理されたところでございます。

赤嶺分科員 このノリ第三者委員会が客観的な立場から有明海の再生に対して真摯な提案を行ったら、農水省においてこれは判断するといって、農水省の官僚OBが集まって第三者委員会とは異なるような見解を出している、こういう流れであります。

 それで私、その検討会議の報告をもうちょっと皆さんに質問したいんです。

 私、この件に関しては、質問主意書も出しました。答弁もいただいております。中でも六百三十億円の問題です。農水省は、昨年末の検討会議の最終段階になって、何の詳しい説明もないまま、開門調査を実施するのに約六百三十億円の費用、三年間の対策工事が必要になると突如発表しているんですね。しかも、中長期開門調査を実施するのか、実施するとすれば、その調査期間はどのぐらいになるのか、調査項目はどうなっているのかということもまだ決定されていない段階です。しかも検討会議ではその内容の議論さえ行われずに終わっているのに、どうして六百三十億円という費用が飛び出してくるんですか。

太田政府参考人 御指摘の、工事費用を算出し、またそれを提出した経過でございますけれども、中・長期開門調査検討会議の専門委員会の方で、どういう開門をすればどういうことがわかるかといったことを含めた技術的な議論が行われました。

 そうした中で、中・長期開門調査検討会議の求めに応じて検討いたしました二つのケースのうち、制約条件を設けない常時開門、いわゆる排水樋門を全開するというケースについて概算した結果を提出させていただいたものでありまして、検討会議の経過の中で資料を作成し、提出したものでございます。

赤嶺分科員 その六百三十億円の根拠について示してほしいということを、去年の暮れから私、求めてまいりました。ところが、農水省の返事はその資料を持っていないということで、ようやく二月二十七日まで提出しなかったという経過があるわけですね。いわば、六百三十億円というようなのは、根拠を持ってしっかり国民に知らせることのできる数字ではないということが、私の質問主意書を通じての、あるいはそれ以前の、根拠を明らかにしてくれ、その六百三十億円の根拠を明らかにしてくれというのは、きょうお見えになっています仁比聰平弁護士、一緒に農水省にも出かけて、私も一緒にその根拠を明らかにするように言ってまいりました。そういう根拠を全く明らかにしてこなかった。今、できるんですか、六百三十億円の根拠について。

太田政府参考人 六百三十億円の根拠でございますが、常時開門をした場合に生じる影響につきまして、三つの観点、一つは海域及び調整池の環境保全、そして二つ目として防災機能の確保、さらには周辺の農業、漁業への配慮、この三つの観点から必要な対策を検討し、これに要する費用を積算したものであります。

 具体的に申し上げますと、例えば海域及び調整池の環境保全につきましては、排水門を全開した場合に発生します流速の分布状態をコンピューターシミュレーションにより計算いたしまして、洗掘などが生じる範囲を特定し、これを防止するために必要な捨て石工などに係る経費を積み上げたものでございます。

赤嶺分科員 大臣、皆さんが開いていた検討会議というのを、私たちはその検討会議全体を傍聴もしたり議事録も検討したりしてみました。検討会議の中では、六百三十億円というのは、紙っぺら一枚が出されて、本気の検討というのは何もなされていないんですよ。中長期開門調査をしたらこれだけかかるぞというような、政治的ニュアンスの強い数字なんです。

 それを、こういう説明責任を果たしていない皆さんのやり方に対して、専門家、学者の皆さんからも、恣意的に一つの例を想定し、高額な費用を提示することは公正な態度とは言えない、高額な経費が中長期開門調査を妨げることがあってはならない、このように指摘しています。こういう指摘、どう考えますか。

亀井国務大臣 検討会議の求めによりまして、農村振興局におきまして、必要な対策、こういうことで、それを取りまとめた資料を提出した、このように私は思っております。

 いろいろ、それぞれの委員の先生方、お考えはあろうかと思いますが、我が省として、検討会議のお求め、こういう中での数字を出したわけでありますので、検討会議でまたいろいろ御議論をいただくことがまたこれは必要なこと、このように思います。

赤嶺分科員 検討会議の数字というのは、私は、中長期開門調査はできないという結論をこじつけるために出したとあれば、これは絶対に許せない話だと思います。

 仮に、開門調査をして漁業補償が必要になる事態が考えられても、短期開門調査では六千万円でありました。そういう数字の比較からしても、やはり中長期開門調査にかかる経費というのはもっと慎重に、そしてもっと具体化した段階で国民への説明責任を果たすべきだと思うんです。

 仮に、その費用が幾らかかるかが今問題ではなくて、有明海を再生させるために政府がどういう責任を果たしていくのか、中長期開門調査が有明海再生にとって検証に役立つということであれば、日本の水産業の発展のために、これを支えるためにも、これは何としてもやらなきゃいけないことだと考えております。

 そこで、有明海沿岸の福岡や佐賀や熊本県の三県は、昨年の十二月議会で、中長期開門調査を実施すべきとの国への意見書を全会一致で採択しています。また、福岡、佐賀、熊本県下の三十一市町村でも同様の意見書を採択しています。この地方自治体の意見書を重く受けとめなければいけないと思いますが、大臣、中長期開門調査をするに当たって、沿岸自治体で広がっている早くやれという意見書をどのように受けとめておられますか。

亀井国務大臣 昨年末、佐賀県、熊本県、福岡県の議会の方々に私も直接お会いをいたしまして、この中長期開門調査などにつきましてさまざまな御意見をお伺いしたところでもございます。

 中長期開門調査の取り扱いにつきましては、検討会議の報告書にまとめられておりますように、漁業関係者や諫早湾周辺住民の方々に配慮しつつ、行政として時間意識や費用対効果にも照らし総合的に判断していく必要がある非常に困難な課題、このように認識をいたしております。

 これらの問題、今後とも関係者の御意見を伺った上、三県議会の御意見を踏まえて、行政として総合的に判断をしてまいりたい、このように考えております。

赤嶺分科員 中長期開門調査をやるべきだという沿岸自治体の意見書について、これは今、私、答弁の聞き間違いであればお許しいただきたいんですが、困難だというお答えでしたか。

亀井国務大臣 いろいろのことを、いわゆる漁業関係者や諫早湾周辺住民の方々に配慮しつつ、行政として時間意識やあるいはまた費用対効果にも照らして総合的に判断をしていく必要があるわけでありまして、なかなか困難な課題、このように認識をしておる、こういうことです。

赤嶺分科員 まさに、費用対効果というのは、先ほどの六百三十億円の話というぐあいに理解してよろしいんですか。

亀井国務大臣 現状、先ほど申し上げましたような一つの数字はその六百三十億、こういうことでもあります。

赤嶺分科員 私、今の大臣の答弁、本当に情けないと思いますよ。今、有明海異変で漁民の方々は、ノリの収穫期にあるにもかかわらず、ことしもノリは不作だ、もうこれ以上ノリの養殖を続けても漁業はやっていけないということで、支柱を撤去し出しているんですよ。この人たちが自分の漁業に希望を託するとすれば、政府が中長期の開門調査をして、有明海が前の漁場のように豊かな漁場に戻ること、そのための努力を政府がすべきだということを第三者委員会も言ってきた。にもかかわらず、あなた方は、それを速やかに実行するのではなくて、官僚OBだけ、農水省OBだけで構成した検討会議で検討したら、費用対効果だの何だのといって困難だと言い出す、ここに来て。

 沿岸の自治体の県知事も、熊本の県知事のこの間の県議会答弁を聞きました。最近の答弁でも、中長期開門調査をやるべきだと言っているんです。漁民も自治体も有明海再生のために必死に頑張り出している、そういうときに、皆さん、前向きにこれを取り組むという姿勢は全くないんですか。大臣、答えてください、大臣。

亀井国務大臣 先ほど来お話し申し上げておりますとおり、県議会の意見書、そしてそのことも伺っておるわけでありまして、いろいろ総合的に判断をしてこの問題の対応を決めていく、こういう姿勢でいろいろ皆さん方の御意見を十分伺ってまいらなければならない、このように考えております。

赤嶺分科員 私、この問題、引き続きこれからも追及していきますけれども、もう一つ、現場に行って農水省がけしからぬと思いましたのは、中長期開門調査をやるかどうかということで検討している間に、工事は再開して着々と進んでいる。工事を完成したら結局開門調査ということも困難になるような既成事実を積み重ねている。全く地元の漁民にこたえる姿勢を示していないという点で、この点も指摘をしておきたいと思います。

 そこで、ノリ漁業の被害の救済策について聞きたいんですけれども、中でも、水産庁は漁業者への無担保無保証の融資制度として今年度から経営改善等資金融通円滑化事業を創設しております。ちょうど二〇〇〇年度の大凶作で融資を受けた漁業者の償還猶予期間がことしで切れるわけですが、当時の融資を受けていた漁業者は今期のノリの生産での返済を当てにしていたが、今期も凶作でまたそのめどがなくなっています。

 水産庁は、この融資制度を使って借りかえてもらうことを私にも答えておりますが、問題は、福岡、佐賀、長崎の県がこの事業に対する取り組みと予算化をすることが前提になっておりますけれども、熊本も含めて、今年度あるいは来年度で、この新規事業について有明海関係で事業化計画のある県はどこかということと、もし県においてそれが具体化されていない場合は、水産庁におかれても指導、周知徹底していくべきではないかと思いますが、伺います。

北村主査 田原水産庁長官、時間が来ておりますので、簡潔明瞭にお願いします。

田原政府参考人 お答えいたします。

 ただいま御指摘の無担保無保証人事業、経営改善等資金融通円滑化事業でございますが、有明海沿岸、周辺の県におきましては、熊本県が十六年度予算に盛り込まれ、対応予定と聞いておりますけれども、その他の県についてはその予定はないというふうに今のところ聞いております。

 私どもといたしましては、せっかくの制度でございますので、この制度につきまして、これまで主務課長会議等々で周知徹底しておりますけれども、さらにこの積極的な実施ということでいろいろと指導をしてまいりたい、かように考えている次第でございます。

赤嶺分科員 終わります。

北村主査 これにて赤嶺政賢君の質疑は終了いたしました。

 次に、谷川弥一君。

谷川分科員 自由民主党の谷川弥一と申します。

 さきの予算委員会で、弁護士なのに検事さんかなと間違えるような、また、予算委員会なのに、もしかしたらここは裁判所かなと思えるような質問をしていた山田正彦氏と同じ選挙区でありまして、私は、同じ地域で同じところに育った人間でありますが、考え方を全く異にしておりまして、保守本流としてのプライドがあります。

 保守本流というのは何かといいますと、その町が抱えた課題、その町が抱えた課題に対する原因、それに向かって、その町を構成してきている主要メンバーとともに、汗を流しながら真っ向勝負をしていく男の、男らしい生き方をする人間だ、そういうふうに実は思っておるんです。

 私は、四十数日という短期間に、結果としては彼を敗ったわけですが、その過程において、保守本流の人たち、当然自由民主党を応援してくれるだろうと思える人たち、かつてはそうであった人たちが今回は反対に回りました。そのことについては金田副大臣がよく御存じです、応援に来ていただきましたから。

 なぜそうなのかなということなんですが、自民党と一緒になっておっては林業並びに水産業は壊滅するんだ、この人たちは自分たちの味方じゃないよ、そういうふうに彼らが思っておるんです。

 大臣にお聞きしますが、その理由は、これは二月十日の朝日新聞なんですが、林業公社が長崎に二つありますが、日当数百円のときにヒノキは立米七万円以上したんだ、現在、日当一万円超になっている、こういう状況の中でヒノキの値段は二万ないし三万しかしないよと。これが実は、林業業者が自民党の政治に不満を言う、この連中と一緒ではもう生きていけないと言う最大の理由であります。なぜこうなったかということをまず一つ頭に描いてください。もう一つは、水産業の人たちが、我々の将来も林業と一緒だ、このまま自民党と一緒にやっておっては壊滅してしまう、こういうふうに思っておるんです。その結果として、林業の事務所並びに漁業関係の事務所には全部相手のポスターがばあっと張られていた。

 そういうことを踏まえて、私は、応援してもらわんかったから知らぬよというわけにいきません。なぜなら、壱岐、対馬、五島というところの基幹産業であります、水産というのは。一次産業はよその県の数倍あるんです、比率が。おまけに、その一次産業の八割が水産業なんです、対馬なんというのは。きのう実は市になったんですが。

 そういうことを踏まえながら質問をさせていただきますが、まず事実確認だけしていきますけれども、林業は、昭和三十五年に丸太が完全に自由化されました。それから、同じく昭和三十九年に、すべての木材に関する関税は取っ払われて完全に自由化されました。その後に、ヨーロッパ、並びに日本の他の分野、例えば肉とか米とか麦とかで手当てしてきたような手当てが全くなされておりません。なぜかということなんです。これには、大臣並びに先輩方の農業に関する、いわば非常に主要なリーダーたちの思い、考え方が僕はあるんだろうと思います。

 ここでひとつ考えていただきたいのは、私のお願いは簡単なんですよ、大臣。要するに、ヨーロッパ並みに所得補償とか輸出補助金とか、そういうことをやっていいんじゃないんですか。なぜならばかくかく、それを今から述べていきます。それから、お肉とか米とか、その他もろもろの手当てだって日本もやっているじゃないですか。それと同じような観点から、同じような必要性があるなら、林業だって水産だってどんどんやっていいじゃないですか。お願いしますよ、やってくださいよというのが質問の趣旨ですが、大臣が簡単に、わかりました、そうしますと言ってくれそうな気配はありませんので、今から私がいろいろな質問をしなきゃならぬのですね。

 人間の生きざまの問題だと僕は思っているんです。山に対する思い、山に対する必要性、山に対するものがすべてお米とかお肉と同じだという理解があるなら、当然、お肉とかお米に手当てしたような手当てをしてくれるはずなんです。ここがどうも違うんだと僕は思うんですね。いや、米は大事だ、お肉は大事だけれども、魚とか山なんかはいいよ、こういうことになってきた経緯というのがあるんだと僕は思うんですね。そこがきょうの私の質問したい趣旨ですので、そういうふうに御理解を賜りたいと思います。

 さて、グローバリズムがずっと進展していって、私どもが非常に困るのは、WTOとかFTAの議論を新聞で読ませてもらって非常に困るのは、日本は先進国だろう、だから、付加価値の高いものにおたくは特化していって、低いものは我々にやれよと農業国が仮に言ったときに、日本はどう反論したらいいのかな。自動車は売りたいけれども、そのかわりに米は買えと言われても困るなというのが偽らざる心境だろうと僕は思っているんですが、ここでお考えいただきたいんですよ。先進国は付加価値の高い仕事をしなさい、こう言われたときに、はて、私の選挙区の壱岐、対馬、五島は先進国だよな、現実問題として、付加価値の高い仕事というのはどうしてやったらいいのかな。

 そして、戦後一貫して、一次産業の所得補償をするかわりに、ある種の失対事業みたいな形で公共事業をどんどんやっておりました。これが結果として、いい悪いは別にして、公共事業が町を支える大きな基幹産業になっているんです。その公共事業が、小泉内閣になって、御存じのように、これは悪の権化だというような形でだんだん切られていった。ここが実は塗炭の苦しみの始まりでして、大臣、職場がないんですよ、ないんです。首くくって死ねというのか、もしくは生活保護をやるかというのか知りません。何としても公共事業にかわる新しい職場をつくらないで、林業並びに水産業の振興も我々が考えているほどにはしてくれないで、知らぬふりしているんですね。

 結果として、そこで出てくる自民党の衆議院議員は選挙で大変ですよ。そういうことを頭に入れてください。

 質問に入りますが、グローバリズムが進展していっても、やはり、その国には付加価値の低い仕事しかできない人もいるんだよ。もしくは、一次産業というのは、付加価値の高い低いじゃなくて、環境維持、環境保全、それから国土の保全、それから食料安保、それから伝統文化をはぐくんできた思い、それから集落を形成する職場の提供、別の理由はもろもろあるんです。

 そういうことを頭に入れながら、ヨーロッパは、二〇〇〇年の予算十一兆二千九百十七億円中、直接払いが三兆三千五百三十七億、率で二九・七%、それから輸出補助金は四千二十九億円、三・六%やっております。これも、先進国ヨーロッパが、やはり付加価値の高くない仕事だって守らなきゃならぬと思っているあかしだ、これが先進国の共通認識だ、私はこういうふうに思いまして、私が主張していることは、決して変な話じゃないんだというふうに思うんです。

 もう一つは、お肉に十五年度予算で千二百二十三億円、畜産価格関連対策予算、それから肉用子牛生産者補給金二百三億円、千四百二十六億円手当てしておりますが、林業にはゼロです。それから、魚価安定基金、これは十一億円。余りにも差があり過ぎる。

 こういう事実を踏まえながら、あと残りは哲学論、宗教論、それから日本の伝統文化論について、大臣並びに副大臣と意見を交換したい、それが私の趣旨でありますので、まず、ここまでのところで御所見があればお伺いしたいと思います。

亀井国務大臣 お答えいたします。

 先生御出身の五島列島、私も対馬にも二度ほど参りまして、やはり、離島地域におきます水産業が、地域経済を、社会を支える重要な産業でありまして、また、水産物の安定供給の上で重要な役割を果たしておるということは承知をいたしております。そういう中で、豊かな水産資源に恵まれている地域の特性を生かし、今後とも水産業の振興を図ることが重要なことであると考えております。

 その中で、先ほど委員も御指摘になりましたが、直ちに所得補償を講ずるということのお話がありましたが、現状、ある面で、藻場あるいは干潟等の漁場の整備や、水産物のブランド化等高付加価値化、あるいは都市と漁村との共生、対流等、いろいろの今施策を進めておるわけでありまして、そういう中で、地域の振興、離島地域の問題等々の対応を図ってまいりたい、まずそのように考えております。

谷川分科員 あとは副大臣でもそれぞれの局長さんでも結構ですが、もう一回整理しますと、付加価値の低い、もしくは一次産業というのは別扱いだよ、これは世間の、世界の常識なんだということをまず御理解してください。

 もう一つは、仮に理解してもらったとして話を進めますが、同じ先進国で、ヨーロッパみたいに手当てをできないその理由、並びに、同じ一次産業でも、林業と水産業に対しては、ほかの農業に対比して余りにも冷たい仕打ちをしているという根拠、これについてお話を進めていきたいと思うんです。

 林業というのは、当時、高度成長のときに、大変な、いわば外貨がたまり過ぎた、石油と木材は向こうからどんどん買ってバランスをとろうというふうに思ったんだろうと僕は思うんです。結果として、山を崩壊させてしまったんですね。ここからいきますが、林野庁長官です、お聞きしたいのは。山が崩壊してしまったという御理解はしていいですか。要するに、山に行っても生活できないという意味なんです、僕が言っているのは。さっき新聞記事で言ったあのことを認めて、そうなっているという事実は認めてもらえますか。

前田政府参考人 先生御指摘のように、確かに山村、そしてそういった中での林業経営、大変厳しい状況にあるということは御指摘のとおりだと思います。そういった中で、私どもも、何とか林業を活性化していきたいということで、造林に対しての補助金を出しますとか、あるいは管理、経営に対しまして交付金を出すとか、そういった形の中で一生懸命死力を尽くしているところでございます。

 あと、もう一点お話ございました、確かに、昭和三十年代、外材を完全に自由化したわけでございますけれども、それはむしろ、当時、旺盛なる木材需要、それに対しまして国産材では不足しているというような状況の中で、時代の要請にこたえる、そういった形の中で、増産をしていく、あるいは輸入を自由化して外材を入れていく、そういった形で対応していくということで踏み切られたものでございまして、それぞれやはり時代時代の背景を踏まえた判断であったというように考えている次第でございます。

谷川分科員 日当数百円のときに七万円。日当一万円超のときに二万なり三万円じゃ生活できない、全くできない。そうなった理由というのは輸入化、完全自由化にあるんだ、完全自由化した後に全く手当てをしなかったらその産業は壊滅するんだ。これをここまで進めてきたときに、さて、なぜ壊滅してもいいような施策をしたかということなんです。

 それは、想像ですよ、ここから先は。林業は他の農産物に比べると業界としての圧力が弱かったのかな。もう一つは、林業というのは壊滅させてもいいんだ、お肉とか米とは全然位置づけが違うんだということなのかな。もう一つは、林業がはぐくんできた、例えば木やり歌、歌えないけれども、木場ではあの雰囲気、ちょっと想像してみて。ああいう、林業が日本人のふるさとであるということの理解ができなかったのかな、もろもろ考えます、もろもろ考える、理由は。ほかにもあるんでしょう、いろいろと。

 さて、ここで考えていただきたいのですが、リーダーに、私もリーダーと思っております、長崎県の。おたくも林業家のリーダーですよ。リーダーに一番必要なことは哲学ですよ。哲学の背景には宗教心があるんです。その二つの後ろに伝統文化というのが生まれてくるんです。

 私の宗教である曹洞宗、教義の般若心経というのは、「観自在菩薩行深般若波羅蜜多時照見五蘊皆空度一切苦厄」とずっと続いていきますが、一切の苦しみや災難から救われるよという意味なんです。

 どぎゃんすりゃよかとね、無念無想、無我夢中になって取り組みなさい、林業に。どぎゃんしたら無我夢中になれるんですか、それは般若波羅蜜多を修行しなさいということなんです。般若波羅蜜多の修行というのは何だといいますと、これをやり出すと二時間かかるので簡単に言いますけれども、生活のリズムをぴしっととれよ、朝は太陽と一緒に起きて、顔を洗って御飯を食べて、ああしてこうしてこうして、ぴしっと、きちっとした生活をしなさい。

 二番目は、心をふらふらさせるな。魚屋になろうかな、米をつくろうかなんて言わぬで、だあっと山でやれということなんですよ。そして、その生き方に自信を持って堂々と生きていけということなんです。

 さて、その教えどおり林業でやったと仮にします、まず一つ。

 もう一つは、林業というのは日本の文化を生んでいるんですが、どんな文化を生んでいるかというと、「見わたせば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮」というのがあります。「花をのみ待つらん人に山里の雪間の草の春を見せばや」というのもあります。「松風に明け暮れの鐘撞いて」「名月や池をめぐりて夜もすがら」等々、いっぱいあるんです。この文化をはぐくんでいるんですよ。

 そのはぐくんだ文化が、何で否定されたんだ、何で日本の山が要らなくなったんだ。占領政策なんです。第一条、日本人が世界に向かって戦争をしかけていけないように、経済的に足腰立たぬようにたたけ、そして食うや食わずにしておけ、これが第一条ですね。第二条、日本の伝統文化を破壊する。この占領政策の二つが大成功したんです。そして、日本の文化に対する思いというのが戦後五十数年たってきれいに消えていった。日本の文化を形成した山というもののよさ、日本の木のよさがわからなくなっていった。どう思いますか、何かコメントはありませんか。

 そういうことを背景にして、林業行政というのはこれじゃいかぬな、もう一遍山に日本人を行かせて、もう一遍これを職業にしようという思いが出てこなかった。これは宗教の欠如であり、日本人としての哲学の問題であり、日本の文化の破壊であると私は思っておるんです。コメントがあったらどうぞ。

前田政府参考人 おっしゃられますように、確かに、私ども、我が国は世界に冠たる木の文化の国であるというふうに自負いたしております。

 ただ、残念ながら、そういった中で、木材を生産し供給していく、そういった林家あるいは林業経営者、こちらの方につきましては、先生からもお話がございましたように、三十年代以降、いわゆる木材額がどんどん低迷していく、あるいは一方でそのコストがどんどん増嵩していくということで、大変厳しい生産条件のもとで経営を強いられてきているということは御指摘のとおりであると思います。

 そういった中で、私どもといたしましても、それぞれの時代の要請に応じつつ対応してきているわけでございますけれども、やはりそういった中で、いろいろな奨励策、あるいは基盤整備、あるいは生産手段の合理化、こういったことも図りながら、経営の安定、そういったものを目指しているところでございます。

 また、御案内のように、森林というのは大変多くの機能を持っている、公益的機能はもとより、文化的な機能を持ちますし、また保健休養の機能を持っている。そういったものを大事にしながら、何とか森林を将来に向けて維持していきたい、そういった思いの中で、我々としても精いっぱい頑張っていきたいというように思っている次第でございます。

谷川分科員 あと、現実的にちょっと戻しましょう。

 私の選挙区である対馬に、仕事をリタイアした後、仮に局長さん、移り住んだと仮定する、仮にですよ。はい、夜が明けました、山に行こうかなといって、のことなたと、チェーンソーでもよかですが、担いで行った。一日何本切れますか。どのくらいかかるでしょうか、運び賃が。

 私も実は家業が製材所なんです、親の代からです。そして、今は木造住宅を中心に九州で頑張っておるんですが、おかげで九州一です、地場産業。非常に木に対する愛着、木に対する思いというのはあります。

 一番わかっていただきたいのは、我々の競争相手はプレハブです。プレハブというのは何だというと鉄骨です、実は、つまりは。鉄骨、ビニール製品それからプラスターボードです。私どもの家は、ヒノキであり土であり紙なんです。これが日本文化と西洋文化の決定的違い。

 そして、わかってください、私どもが考えている家というのは、日本の木というのは中に脂がある、それがじわっとにじみ出てくるんです。にじみ出てきて、それが外気に触れ、外気にはごみもあるしいろいろなものがまじっているんですが、これが外気と融合しまして、本当にきれいなあめ色になるんですよ、色が。十年、二十年、三十年、だんだんよくなっていくんです、だんだん。ところが、鉄はだんだん悪くなります。つくった日がピークです。こんなすばらしい資源を持ちながら、それを荒れるに任せている。これでは芸がない。だから、私はさっき宗教論とか哲学論を言ったんです。

 考えてください、そんなすばらしいものが、実際家業にすると、どんなような日当になるか、日当何円になると思いますか。局長さんがリタイアして対馬に移り住みました、生活の糧に、まあ年金があるからいいようなものが、それだけじゃいかぬといって、山に行きまして木をチェーンソーで切ってみる、出して持ってくるんですよ。どうなると思いますか、現実問題として。

前田政府参考人 私も実家が林家でございますので、それなりに伐採とか保育とか、仕事に携わってきたことがございます。そういった中で、やはり今の情勢の中ですと、一日一生懸命働いても一万円前後ぐらいがいいところではないかなというふうに思います。

谷川分科員 冗談じゃないよ、局長さん。もう一遍帰ったら調べてくださいよ。きょうはこれでやめますが、もう時間がないのであとは水産の問題に行くんですが、これで林業に対してはやめますが、帰って計算してみてください。五円です。一万円になりませんよ。一万円になれば何の問題もないんです。五円です、日当は。もしくはマイナス、マイナス二千円かもしれない。きちっと計算してください。これはお願いしておきます。日当です、日当。

前田政府参考人 私が申し上げましたのは、得た収益と、利益との差し引きではなくて、例えば、ある森林組合なら森林組合、そういったところへ行って下刈り作業に一日従事するとか、そうした場合にもらえる日当という意味で申し上げたものです。

谷川分科員 ですから、長崎県の林業公社は数百億円の赤字になっているんです。それをまず頭に入れてください。

 次は、水産庁長官にお願いしますが、お肉に千四百何十億円という手当てをするときに、水産庁は十一億円しか来ておりません。まず、この事実を認めてくれるかくれないか。

田原政府参考人 お答えいたします。

 ただいま先生の方からは、ほかの品目との比較でございますとかあるいはヨーロッパとの比較を申し上げられましたけれども、やはり、それぞれの産業のよって来る歴史的な経緯ですとか位置づけ、こういったものがそれぞれ違うのではないかと思います。我が国の水産業は、少なくとも昭和の年代を通しまして世界一の水産国ということで、いわば対外的な優位性というものもあったわけでございます。

 そういったことを踏まえまして、現在あります経営安定対策ということでは、御指摘の漁業調整保管事業、これは、平成十六年度は十六億円強要求しておりますけれども、そのほかに漁業共済制度ということで、これは当然加入している方々だけでございますけれども、そういった方に対します掛金の国庫助成、こういったものが別に七、八十億円程度の金額があるのではないかと思います。

 そういったものもございまして、そういったものが相まちながら経営安定対策ということをやっておりますので、ヨーロッパと比較いたしましてもそう遜色がないような経営安定対策と申しますか魚価安定対策といいますか、そういったことをやっているのではないかと思います。

谷川分科員 認識が余りにも違うなと思って驚いておるんですが、全く、このままで、何とかせねばいかぬという思いが全然感じられない、今の答え方には。

 それは何でかと思うんですが、もう一遍さっきの話に返ってみて、林野庁長官みたいに。

 あなたがリタイアして対馬に行きました。魚で生活を立てようとする。しけて海に出れません、半分は出れないんだから。出れました、とれないんだな、中国や韓国ががばっとやっていって、資源が枯渇してきて。たまたま運よくとれました、輸入で全く値段が、だから一兆円下がっている、一兆円かれこれ下がっているでしょう、水揚げは。それで魚家が数が減っていないならば、収入は物すごく下がっていますよ。

 あなたは、ヨーロッパと歴史が違うんだ、遜色ないんだと言っていますが、本当にこれで水産業が成り立つんですか。

田原政府参考人 ただいまの先生の御指摘は、多分、我が国の過去の漁業生産金額、最高が約二兆九千億円ぐらいだったと思いますけれども、それから比較いたしますと、確かに、最近の漁獲金額ということで比較しますと一兆円ぐらい下がっているということはあるのではないかと思います。

 ただ、他方、当時の漁業従事者の方々、この数等も比較する必要があろうかと思いますけれども、残念ながら、その当時の漁業従事者の方から比べますと、現在はもっと少なくなっておられるということでございまして、単純にパー配分と申しますか頭割りでいきまして、そのまま影響が来ているということではないのではないかというふうに考えておる次第でございます。

谷川分科員 副大臣にお願いしますが、現地も何回か見てもらっているので、現地の人たちの苦しみというのはよくわかってもらっていると思います。

 今の長官のお答えでは、全く痛みが感じられない。自分たちの政策は間違っていない、これでよかったんだという言い方をしている。もう時間がありませんので、次の機会に徹底してこれはやらせてもらいますけれども、認識が余りにも違う。これは政治主導で何とかしなかったら、日本の水産業は壊滅しますよ。コメントありませんか。

金田副大臣 谷川先生の、般若心経も引用された哲学的な、水産業に対する思い、そして林業に対する思い、まさにその熱情あふるる思いというのは、私もいたく同感であります。政治家として、農山漁村を回りながら、大変なつらい思いをしているんだなという思いは、多分、選挙区は違いますけれども、谷川先生と思いは同じだろうと思っております。

 いろいろな歴史的な背景があります。林業についての自由化をしたとき、あるいは牛肉やオレンジを自由化したときのそのいきさつ等々があって、お米や牛肉に対する厚い手当てに比べ、水産業や林産業についての措置、政策というのは極めて少ないんじゃないかという思い、私も同感であります。

 そういった中にあって、現実的に衰退の危機にある林業、水産業を何とかして再生させなきゃならない、そのために、今与えられている状況の中で新しい政策をつくり上げていかなきゃならない。緑の雇用についてもそうでありますし、温暖化対策についての新しい財源の確保の問題、あるいは水産業の振興についての新しい施策を探しあぐねているというような状況もあります。

 そういった思いを、谷川先生の御指導もいただきながら、政策の場で、あるいは党の政策論議の中で、しっかりと本当に、林業、水産業、そういったものの振興のために、不遜でございますが、一緒になって頑張っていかなきゃならないという思いは一致しておりますので、どうかこれからも御指導よろしくお願いいたします。

谷川分科員 ありがとうございました。終わります。

北村主査 これにて谷川弥一君の質疑は終了いたしました。

 次に、阿部知子君。

    〔主査退席、西川(京)主査代理着席〕

阿部分科員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。きょうは、主には鳥インフルエンザについて農水大臣にお伺いいたしたいと思います。

 実は、亀井大臣と私は同じ神奈川県の選出でございます。昨日、神奈川県で十頭目のBSEが発生したということの調査に実は神奈川県庁に行っておりまして、初期の目的はBSE問題で、特に十頭目が出て、この間一貫してどういう形で感染が広がっていったかとか、どこに原因があったかと、BSE問題はまだまだ未解決でございますので、十頭目を契機に、さらに解決策が見えてきはしまいかと思って、実は県庁にも伺い、状況を聞いてまいりました。

 その中でといいますか、その直後に、BSEではなくて鳥インフルエンザの鶏卵が神奈川県にも京都から移動しており、既にもうゆで卵状態になって出回っておるということを聞いて、逆にこの鳥インフルエンザ問題の全国各地への波及という深刻な事態を改めて私も実感いたしました。

 そこで、冒頭、亀井大臣に御決意のほどを伺いたいのですが、一つは、やはりこれは二十日にその疑わしい鳥が発生してから二十七日にかけての対処が非常におくれおくれになり、そして実態も非常に広がりが多かったということで、昨日夕刻、農水省の事務次官の方が非を認められたというような報道もありましたが、やはり私は最大の責任は最後は政治に課せられていると思いますので、冒頭、亀井大臣のこの件に関する、一つはここまで拡大したことへの農水の対応のある意味でのおくれについての謝罪と、それからこの問題に取り組む御決意をお願いいたします。

亀井国務大臣 鳥インフルエンザの問題につきまして、大変御心配をいただいております。

 実は、我が省といたしましても、昨年アジアで発生をし、九月に防疫マニュアルを作成し、また韓国で発生すると同時に、十二月二十四日の時点で各都道府県にその防疫マニュアルの徹底につきましての通達を発出するなど、いろいろ努力をしてきたわけであります。

 しかし、現実に山口県で発生をし、そして鳥取県と。山口県におきましては、大変地元山口県の皆さん方のいろいろな御努力もちょうだいをいたしまして、あのような事態で推移をしました。

 一方、大分県につきましても、三羽の発生、その中で、伺いますと、嫌がらせの電話がそのチャボの材木屋さんのところに参ったような話も伺っておりまして、大変申しわけないなと。しかし、大分県につきましては、早期にいろいろなことを対応していただいた、そういう結果、移動制限区域からの問題等につきましても、今その縮小、こういうことをやっておるわけであります。

 京都のことにつきましては、大変残念なことに、業界の役員をされている方の経営の鶏舎で、そして二十日にあのような状況、今こういうインフルエンザの問題が大きな問題になっておりますときに鳥が死亡した、こういう面での届け出等々が大変おくれた、非常に遺憾なこと、こう思っております。業界のリーダー的な存在の会社でもあるわけでありますので、この面につきましては十分、まず今このような事態の蔓延防止、このために全力投球をすることがその使命、こう思っております。

 あわせて、京都の業者の関係につきましては、事実関係を十分京都とも連携をとって調査をして、しかるべき対応をどうするか、このことは考えてまいりたい、こう思っております。今日、蔓延防止のために再三都道府県にもいろいろの通達を出し、そして協力をいただいておるわけであります。今週中には四日を予定したい、こう思っておりますが、各都道府県からお出ましをいただきまして、農水省としてきめ細かくその対応を再度、また業界にも再度周知徹底させてまいりたい。いろいろ御心配やまた消費者の皆さん方にも不安を与えておりますことには、本当に申しわけない、こう思っております。

阿部分科員 今大臣から、国民に対しても消費者の皆さんに対しても申しわけないというお言葉をいただきましたけれども、もともと、この家畜伝染病予防法という法の枠の中でも私は問題があると思います。

 家畜伝染病予防法は、その地域で発生した疑似患畜並びに患畜の届け出が県知事になっております。届け出が県知事の段階で最終掌握される。そして、例えば、大分県、山口県、京都府、そのおのおの県知事が把握した情報を、今度はどのような形で全国的にきちんとした仕組みで発信していくかについては規定がございません。

 ここで、この間、私どもがわかったことは、今非常に食物の流通というのは広域化し、瞬時に、あちこちに、足が速く移動するということの中にあって、当然、感染症の対策の歴史の中で、一度は地方分権化、各地域できちんとした管理がなされるべきであるという原則が確立されたわけです。しかし、緊急的な事態にあっては、中央省庁であるところの農水省が一刻も早く全国の情報を集めて、例えば京都府で起きたことも神奈川県にすぐ情報が伝達されるような形で、即刻対応されないと、今回は鳥インフルエンザでしたけれども、いろいろな感染の拡大の可能性が私はあると思います。

 こうした広域化した物流ということに関して、農水大臣といたしましては、家畜伝染病の予防法の枠組みの一つは、知事に報告される、そこからどういう形で全国の、国という単位での動きを行っていくべきか。広域化に対応した機敏な動きとはどうあるべきかについてのお考えを伺わせていただきます。

亀井国務大臣 この家畜伝染病予防法につきましては、委員お話のとおり、私は、家畜の伝染性疾病の発生等により畜産に重大な影響を及ぼすおそれのあるときは、都道府県知事に対して、法に基づく殺処分や移動制限の実施等につき指示ができることとされているところであります。

 実態上、このインフルエンザ等重要な家畜伝染病が発生した場合につきましては、国が防疫マニュアル等を作成し、各都道府県にその考え方を示しているところでありまして、実際の発生の際には、各都道府県は国と密接な連絡をとりながら、殺処分の対象、移動制限の範囲等を定めているわけでありまして、私ども、この問題マニュアルを作成し、関係都道府県と十分連携をとるようにいろいろ努めておるところでもございますし、私どもの出先の地方農政局等々もあるわけでありまして、その徹底を今図っておるところでもございます。

 なお、地域の畜産の実態を把握しておりますのは、家畜保健衛生所が設置してあるわけでありまして、これは各都道府県であり、直接国が防疫対応を行うということでは現実的でないと考えております。

    〔西川(京)主査代理退席、主査着席〕

阿部分科員 あえて申しませば、そういう体制のところでやはり起こってしまったということもあると思うので、今の御質問をいたしました。

 防疫マニュアルも、迅速に国が対応して、先ほど申しました京都府で起きたら神奈川県とか、そういう対応をなされませんと、感染の拡大、大臣も御存じでしょうが、香川、三重、新潟、神奈川、もうありとあらゆるところに卵から骨から肉から移動しているわけです。国がどれくらい初動を早く行うかによって拡大は防止されるわけですから、私は、今の御答弁はさはさりながら、実際にこのことが起こってしまったという現実に基づいて、さらに機敏な対応のあり方ということを御検討いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

亀井国務大臣 できる限りの対応をするようにいたしたい。そういう面で、実は四日に各都道府県の関係者に東京にお越しをいただきまして、いろいろな徹底をさらに進める、こういう考えでおります。

阿部分科員 これも新聞報道によりますれば、自民党や民主党の中にはこの鳥インフルエンザ対策の緊急対策本部というものを設けられたということも聞いております。では、国政という大きな政治の場で、この鳥インフルエンザについての緊急対策の動きはどうであるかということについて、次にお伺い申し上げたいと思います。

 大臣も御承知のように、この鳥インフルエンザは、鳥にとどまれば鳥インフルエンザで済みますが、いわゆる鳥型インフルエンザとして人間にも感染の可能性もある。それからまた渡り鳥が伝播するということも言われておりまして、国際的な防疫システムも当然考えられなければならない。例えば、アジアで、特にベトナム、タイで発生した鳥インフルエンザの型と、我が国の山口、大分そして京都のものも全部、H5N1型といって全部同一でございました。ということは、このアジア地域も含めて広大なエリアでの、やはり何が原因かということも含めての疫学も必要となってまいると思います。

 といたしますと、この仕事の分野というのは、農水省、厚生省、環境省あるいは学術的な文部科学省と多岐にわたってまいると思いますが、このことを本当に総合的に解決していくために、農水大臣として、例えば内閣を挙げての緊急対策本部をつくって事に当たるべきだというような提言をされるおつもりはいかがでありましょうか。

亀井国務大臣 この高病原性鳥インフルエンザの発生につきまして、一月の十二日に山口で発生したわけでありまして、その直後厚生労働省及び食品安全委員会等に情報の提供を行い、連絡提携体制をしいておるところであります。

 また、農水省あるいは厚生労働省、環境省及び食品安全委員会との間で定期的に、局長レベルあるいは課長レベルでの、あるいは担当者レベルでの連絡会議を持っておりまして、今その努力をしておるところであります。

 そのほか、野鳥の調査や疫学調査等の関係におきましては、環境省及び文部科学省とも提携を密にしておるところでありまして、十分今日までそのような体制でやっております。

 今御指摘のような点、十分わかりますが、今日そのような体制が機能しておるわけでありまして、総力を挙げて、関係府省とさらに緊密な連携をとって対応してまいりたい、こう思っております。

阿部分科員 私は、各省庁の連絡会議程度では、やっぱりこの問題の広がりとそれから深刻さはなかなか乗り越えられないと思います。国を挙げて、本当にもしも人の流行が起こった場合に、七十九年ぶりに鳥インフルエンザが発生して、人には鳥型インフルエンザの免疫というものもございません。そうするとどの段階で、これだけ鳥もあっちこっちに行ってしまった、鳥の羽からもウイルスが出てくる、ここからもまた人への感染も起こるかもしれない、私はBSEを上回る深刻な事態がここにあると思います。ぜひとも、今現在大臣が関係連絡会議を、そういう対応をしていることは存じ上げた上で、やはり国の政治の意思としてこのことに立ち向かうということにお考えを深めていただきたい、これはお願い申し上げます。

 必ず、人に起きた場合、私はパニックに近い混乱が起こると思います。そして、あわせてそうしたことを環境省からも厚生省からも挙げていただいて、本当に命にかかわることは、実は政党や党派を超えた一番私は政治の根幹と思いますから、よろしくお取り組みをお願いしたいと思います。

 引き続いて、人畜共通感染症、この間、BSEもそうですしO157もそうですし、O157の場合は、牛の中にいるときは病原性を持ちませんが、その意味でも、でも人に来れば感染症として重大なことを起こす。あるいは鳥インフルエンザなどすべてこれまでは動物は動物の病気、人間は人間の病気と分けて、ある意味ですみ分けていたものが、ここのところこの伝播ということが極めて深刻な事態になってきております。

 そこで、これは農水大臣にも重ねて伺いたいですが、地方自治体などからも人畜共通感染症としての法の整備、今動物については家畜伝染病予防法、人間についてはいわゆる伝染病の、感染症の予防法という形で仕切られておりますが、この中間がグレーゾーンといいますか、人間にうつる、うつってからは人の感染症、動物でいるときは家畜伝染病という形で、しかしその間というものを埋めるものがないということで、人畜共通感染症というくくりでの法の整備やあるいは不備の点検ということも考えられるのではないかと思いますが、これはいかがでしょうか。

亀井国務大臣 農水省は、家畜衛生の観点から、家畜伝染病予防法に基づきまして、水際におきます動物検疫を行うとともに国内におきます予防措置や蔓延防止の措置を講じておるわけであります。

 また一方、厚生労働省は、公衆衛生の観点から、感染症法に基づきました人の感染症の発生予防、蔓延防止を図る動物由来感染症対策を講じているわけでありまして、その両者はその趣旨、目的が異なっておりまして、両者をつなぐ法制度といったものはなかなか難しい面があります。

 人畜共通感染症につきましては、農林水産省並びに厚生労働省が互いに密接な連携をとって的確な措置を講ずることが極めて重要、このように思っておりまして、今回の問題等も契機に、またそれ以前からも、SARSの問題等々のときからもいろいろ連携をとってやっておりますが、さらに今回の問題を契機に、十分その対応に努力をしてまいりたい、こう思っております。

阿部分科員 同じ質問を厚生省サイドにもお願いいたします。

 そして、分科会ですので、大臣、副大臣、御出席がかなわないということですので、現場サイドからお願いします。

牛尾政府参考人 委員御指摘のように、昨今新たに出現する新興感染症の多くがズーノーシス、人畜共通感染症でございます。この公衆衛生対策の強化を図る必要があるということから、平成十一年に施行されました感染症法におきまして、動物由来感染症対策の規定が新たに設けられ、また、昨年十月の感染症法改正におきましては、動物由来感染症対策の大幅な対策強化を図ったところでございます。

 具体的には、感染症法の改正におきまして、まず、動物の輸入届け出制度を創設する、感染症類型を見直し、消毒、駆除等の対物措置を講ずる対象に四類感染症を創設する、獣医師及び動物等取扱業者の責務規定を創設するなどの対策規定を行ったところでございます。

 家畜衛生対策を規定した家畜伝染病予防法は、公衆衛生対策を規定した感染症法とは法の趣旨、目的が異なるところではございますが、今後とも、両省の連携強化を図り、動物由来感染症対策の推進に取り組んでまいりたいと思っております。

阿部分科員 時代が変われば、疾病、病気の様子も変わってまいりますので、現在の法体制で不備がないかどうか、重ねて検討をお願いしたいと思います。

 そして、そうした観点から、今回、この鳥インフルエンザに関して、例えば養鶏にかかわっている現場の労働者、非常に暴露の可能性が強いわけですけれども、そうした勤労者に対して、感染症を予防すべくとられている措置について、厚生労働省に重ねてお伺いを申し上げます。

 この間、現実に鳥インフルエンザのウイルスは鳥の腸管の中、消化管の中にいっぱいいるわけで、実際にそれの肥育というか養鶏にかかわる人、あるいはふんに接する人、あるいは解体にかかわる人など、多くウイルスに暴露する可能性があるわけです。

 そこで、この間、厚生省がいろいろお示しになっている指導書と申しますんでしょうか、通達と呼べましょうか、そういうものを拝見いたしますと、例えば、鳥型インフルエンザ対策において、抗インフルエンザウイルス剤、人間でこのごろ使うようになりまして、タミフルという商品名でございますが、これの投与については、一応ここの文面によりますと、「H5N1ウイルスの呼吸器感染が疑われる症状が出た場合には、」「リン酸オセルタミビルによる治療ができる体制を確保すること。」となっております。

 一方、この薬品の認可並びに効能書を見ますと、本剤は予防的な投与はその対象とされていないという薬事の添え書きがございますが、実際、現実にどういう状態になったら、そこの働く人あるいは濃厚感染が疑われる人にこのお薬の投与を厚生労働省として勧めているのか。それを、例えば畜産現場は、農水省と連動しないと実際には有効な投与はできないと思いますから、どういうふうに進めておられるのかを御答弁いただきます。

牛尾政府参考人 鳥の殺処分に当たりましては、まず、鳥インフルエンザ、高病原性鳥インフルエンザと接触する方々及びその処理に当たる人々が感染するという危険性がございますので、まず、私どもとしましては、医療用マスク、ゴーグル、手袋、防護服、長靴などを着用するよう、可能な限りの感染防御態勢をしていただいた上で処分に当たっていただきたいということをお願いしている次第でございます。

 それに付け加えまして、万が一の場合を考えまして、インフルエンザの予防接種、あるいは委員から御指摘がございましたような抗インフルエンザウイルスの予防投与ということを勧奨しているわけでございます。

 ただ、御指摘にございましたように、この抗インフルエンザウイルス薬につきましては、現場における医師の処方というものが必要でございますので、医師の判断を求め、さらに本人に対して十分説明した上で投与するということをお願いしている次第でございます。

阿部分科員 答弁の揚げ足をとるようで恐縮ですが、薬剤にはいろいろな副作用がございますので、その薬剤をどういう場合に使ったらよいか、そしてその適用外に使えば、当然、医薬品の副作用の救済機構にも乗れない。いわゆる薬は、薬でもあるし毒でもあるわけです。

 それで、今、課長は予防投与と言われましたが、本剤は、薬の薬効上、予防投与は適用外になるのです。日本においては本剤の予防投与に関する適応は認められておりませんということが中央薬事審議会等々でも言われておりますし、タミフルという薬を安全投与するためには、厳密に対象を狭めて、今、販売されておるわけです。

 そこで、一方で、厚生労働省として、予防投与も各現場の医師の判断でよろしいとした場合に、混乱が起こります。私どもは、私は医者ですけれども、その薬が投与されて起こる副反応に自分も責任がとれない、ないしは国に救済機構がないということは、本当に薄氷を踏む思いで、その投与をするかしないかを全部自分が責任をかぶるわけです。私は、そのあたりの厚生労働省としての緻密な、本当に現場サイドに立った指導が行き渡っておらないと思います。この薬を使うべきか、べきでないか、どういう状態で使うべきかということ一つの統一見解がきちんとなされておりません。

 私は、きょうは農水の委員会ですのでこれ以上ここでの追及はいたしませんが、やはり国としてきちんとした対応が必要であるということは、一たん事が起これば、予防から治療からその副作用まで、全部きちんと対応されなければ、本当にパンデミックという大流行が起こったときには、大変な事態が参ります。国を挙げて、やはり厚生労働省としてももっと緻密に、そして現場で、だれが飲んでよいのか、悪いのか、飲ませるべきか、べきでないのかというところの基準まで、救済も含めてなされないと、役に立つ指針にはならないわけです。重ねての御検討をお願い申し上げます。

 最後に、廃棄物の問題でもお伺いいたします。

 この間、鳥インフルエンザの発生で、例えば、発生した鳥の処分とあわせて、ふんの処分も家畜伝染病予防法で対応されるわけですが、一方で、二〇〇〇年度から、いわゆる排せつ物処理法というのが農水省にかかわる法律として整備されております。排せつ物が環境に与える負荷ということをなるべくなくしていこうということで、農水省として御尽力でありまして、前向きに評価したいと思いますが、このことに対する補助は、各農家ごとにそういう処理施設をつくる方式と、あるいは一方で大型の施設をつくる方式と、二方式ございます。

 大型になった場合は、ふんの運搬ということも関係してまいりまして、この間、鳥インフルエンザの報告の中でも、オランダ等の例では、車についた鳥のふんが移動して伝播してしまったということもございます。大型施設の場合に、どうしてもふん便を運ぶ移動距離が長いという問題も生じてくるかと思いますが、現在の排せつ物処理法の中で、こうしたことも含めて、大型施設というものの何らかの対応、メリット、デメリットがあると思いますが、どの程度勘案されているのか。

 要するに、病原性のあるものが移動するかもしれない。しかし、便だから汚いとか言いたいわけではなくて、この間、やはりいろいろなことがわかってまいりましたので、私は、なるべくその地域のものは、その農家のものは、そこのエリアで広げずに処理していくということが重要になってくるのではないかと思いますが、大臣の御所見をお願いします。

亀井国務大臣 それぞれの地域でその対応ができる努力をし、これをまた肥料としての利活用の問題等々、いろいろ進めておるところでもございます。

 特に、各農場、養鶏につきましても、本病の発生予防のために、野鳥の進入防止であるとか、車両の消毒であるとか、関係者以外の農場への出入りの禁止だとか、いろいろ努力をしております。委員御承知のとおり、私の地元にも大きな養鶏場がございまして、そこに参るのも、常に消毒水のところを通ってまいらなければなりませんし、また、関係者にお目にかかるのも、外でお目にかかるというような、関係者は大変厳しい努力をしております。

 特に、それらのもののいわゆる運搬、コンテナにするとか最大限対応をして、この蔓延防止の問題、あるいは特にふん尿を通じてのいろいろな課題もあるわけでありますので、万全の体制をする努力をしてまいりたい、こう思っております。

阿部分科員 ありがとうございました。

北村主査 これにて阿部知子君の質疑は終了いたしました。

 次に、上田勇君。

上田分科員 公明党の上田勇でございます。

 きょうは、農林水産省関係、国土交通省の皆さんにもお見えいただいているんですが、関係をいたします幾つかの問題につきまして御質問させていただきます。

 まず初めに、私は、今退席をされましたけれども、亀井大臣と同じ神奈川県の選出でございまして、神奈川県の農業といえば、これは都市農業、近郊型の農業でございます。こうした農業が、神奈川県民八百七十万人の生鮮野菜を初めといたします生鮮な食料あるいは多彩な花などの供給をしているわけでございまして、また、ほかの農業地帯と比べても、生産性という意味では比較的高いものを持っているわけでございます。さらに、やはり都市住民にとっては、こうしたわずかの農地というのが非常に貴重な憩いの場でもありますし、防災上の役割も非常に重要なものがございます。したがって、私は、こうした都市農業の多様な展開とこれからさらなる振興というのは、我が国の食料、農業政策におきましても、またそれだけじゃなくて、都市政策上も非常に重要な役割があるというふうに認識をしているところでございます。

 ところが、どうも農林水産省で実施をしております政策というのは、都市農業が余り重視をされていないんではないかという気がいたします。もちろん、価格政策とかそういったものは、これは地域に関係なく全部に行き渡るんですけれども、いろいろな事業を実施しております、公共事業もありますし非公共の事業もございますが、そうした事業の実施に当たって、どうも都市部の農業の振興を図る、そういった視点が少し弱いんではないかという気がしております。

 大都市の周辺部におきましても、以前のようにすぐに開発が進んでいくというような状況ではありませんし、こうした区域の中で営農している農家の方々、その多くは、やはり今持っている優良な農地をしっかりと保全していく、そして営農も継続をしていくという気持ちを持っているわけでございます。

 そうした都市農業の持っている役割、重要性にかんがみ、農林水産省として実施をしております各種事業において、これから都市農業の振興という視点をもう少し考慮して実施をしていただきたいと考えておりますが、御見解を伺いたいというふうに思います。

金田副大臣 上田先生御指摘のように、都市農業、本当に足腰の強い、生産性の高い農業を展開しているわけでございます。

 今、農林水産省でも、日本農業全体の構造改革を進めなきゃならない、そういった中で、特に国境措置を高くしなければならない主として広大な耕作地で生産される米とか麦とかそういったもの、そしてこれから畑作の構造改革も進めてまいりますが、コストを削減できる、そういったところに構造改革の力点を置いていることは事実でございますけれども、都市農業だとか生産規模の少ない農家について無視しているわけでは決してございませんで、こういった方々もぜひとも育てていかなきゃならないし、また農村にも必要な重要な農業従事者でございます。

 それに、特に都市農業につきましては、都市生活の中で潤いを提供している緑の地帯である、そういったところの機能というのも都市農業は持っているわけでございまして、そういったところにも着目しながら、効率のいい農業、都市農業を育てていくために、従来以上の格段の対策を講じてまいりたいというふうに思っているところでございます。

上田分科員 今、副大臣から御答弁をいただきまして、大変にありがとうございます。

 今、特に大都市部の周辺の農地、こうしたところというのはすごく重要な役割を果たしているんですけれども、どうも農業サイドからも、あるいは都市サイドからも、余り政策という面では日が当たらないような面がございます。そういう意味では、農林水産省がもっと積極的なイニシアチブをとっていただいて、これから都市農業の振興、また農地の保全、環境の保全といったことにぜひ力を尽くしていただきたいというふうにお願いを申し上げます。

 それで、これからちょっと食の安全の問題について、幾つかお伺いをしたいというふうに思います。

 まず、牛肉のトレーサビリティーの問題でありますが、これは、国内でBSE患畜が発見をされてから、牛肉に対する消費者の安心感を高めていくという意味でトレーサビリティー法が制定をされまして、昨年の十二月には、生産や屠畜段階でそういうトレーサビリティーが実際に施行されましたし、ことしの十二月には、販売業者についても、これは小売店も含めまして、それが義務づけられることになってくるわけでございます。

 スーパーとか大手の小売店では、導入についての準備も着々と進んでいると伺っておりますし、それに対応できるんだろうというふうに思いますが、どうも、私など、地元で商店街の中にある肉屋さん、そういう小規模な小売店に行きますと、やはり制度の趣旨については皆さん大変御理解をいただいているんですが、では、いざ新たな計量器を購入するということになると、これは八十万円ぐらいかかるというようなこともあって、かなり困っているケースが多くあります。小売店にとっては、特に最近、商店街の中のそういう小売店というのは、ただでさえ非常に経営が厳しい、また商店主の高齢化も進んでいる中で、新たな投資ということはかなり負担感があります。

 そういった中で、現在、こうしたトレーサビリティー、これは非常に重要な政策だと思いますので、それが円滑に導入をされていく、そのことも重要だというふうに思いますが、そういう意味では、こうした小規模な小売店に対する支援が重要だろうと思っております。今現在、農水省として、いわゆる商店街の肉屋さん、そうした本当に小規模な小売店にどういうような助成措置を講じているのか、伺いたいというふうに思います。

白須政府参考人 ただいまの上田議員の御指摘でございます。

 お話のとおり、まさにトレーサビリティー法、昨年六月に成立しまして、生産なり屠畜段階の管理に関する部分は昨年の十二月から施行されておるわけでございます。ただ、お話のとおり、スーパーなり小売店、そういったところの表示あるいは流通段階におけますまさにトレサに関する部分はことしの十二月一日から施行されるということはお話のとおりでございます。

 そこで、やはり小規模な小売店の方々、そういった形での負担があるというふうなことでございまして、一つには、ロット番号によります表示、あるいは小売店での店頭表示に当たりましてはパネルボードの活用ができるとか、そういうふうな形で、できる限り事業者の方々のコスト負担軽減が可能な対応を推進しておるところでございます。

 もう一つには、今お話しのとおり、計量器、小さいもので大体八十万円ぐらいかかるわけでございます。したがいまして、そういう機器がどうしても必要になってくるわけでございますが、これにつきましては、畜産環境整備機構というのがございまして、そこに実はリース事業もあるわけでございます。そこで機器を用意いたしまして、そういう小規模な小売店あるいはそういった業者の方々に対しまして、そのリース事業によりまして機器の整備ができる、そういうふうな形での支援というものも行っておりまして、実際に相当程度の方々がこれを利用しておられるということでございます。もちろん、それ以外にも、政府系金融機関の低利融資というものもあるわけでございます。

 そういう形で、機器の整備、ソフト開発というふうなことで、お話のとおり、ことしの十二月からはいよいよ施行でございますので、私どもとしましても、牛肉トレーサビリティー制度の円滑な実施と食の安全、委員の御指摘のとおり大変重要なことでございますので、そういったことを通じまして、消費者の牛肉に対する信頼確保に万全を期してまいりたいというふうに考えております。

上田分科員 ありがとうございます。

 それぞれの個別の肉屋さんにとってみれば、やはり八十万円という投資というのは相当な投資額でございまして、制度の必要性、趣旨は十分理解をいただいていますけれども、今、融資、リース制度なども用意をしていただいているわけでございますが、ぜひさらにいろいろなきめ細かい対応を、また支援を引き続き御検討いただきたいというふうにお願いをいたします。

 それで、次に、今度は、昨年末にアメリカでBSEの患畜が見つかって以来、ずっと米国産牛肉が全面的に輸入禁止となっております。

 これによりまして、国内の米国産牛肉を取り扱っている事業者、これは外食産業もありますし、食品産業など多岐にわたっておりますが、そうした事業者は非常に深刻な影響を受けているわけであります。牛どんチェーンのことばかりがテレビでは放映をされているわけでありますけれども、それだけじゃなくて、もっと経営基盤の弱いところ、小規模な焼き肉店、レストランなどの事態というのはもっと深刻だというふうに思っております。日本でBSEの患畜が見つかったときにはそういった店から客がいなくなったということでありましたけれども、今度は、客はいるんだけれども物がないということでありまして、非常に事態は深刻になっております。

 こうした外食産業に対して、農水省としても今さまざまな対策を講じていると承知をしておりますが、具体的にどういうような対策を講じているのか、御説明をいただければというふうに思います。

須賀田政府参考人 米国産牛肉の輸入停止ということで、実需者の皆様方、原材料の購入先の変更もままならぬということで、こういう方への影響、少なからぬあるというふうに考えております。

 私ども、こういう関係事業者の方々の経営への影響を緩和するということで、まず、経済産業省にお願いをいたしまして、セーフティーネット保証でございます、いわゆる二号保証の事態に米国のBSEを指定していただきまして、一定規模までは無担保無保証人の機関保証が受けられるようにするということをお願いしております。

 それから、こういう措置に加えまして、我が方の制度でございます、先生にも御尽力をいただきましてつくり上げました中堅、大手の外食事業者向けの信用措置の対象とするということ、それから中小の食肉業者、外食業者を対象とするBSE関連のつなぎ資金、これの対象とするということの措置をとったところでございます。

上田分科員 ありがとうございます。

 さまざまなそういうような融資の制度を拡充していただいている、また、これまで比較的迅速に対応してきていただいたことについては評価するものでございます。

 しかし、今度の問題の場合には、米国産の牛肉の輸入がいつ再開されるのかという見当がつかない、これがやはり一番の問題だというふうに思います。せっかくさまざまな融資制度をつくっていただいても、この見通しが立たないと、果たして借金をして返済できるものなのかどうかというのが事業者の立場からするとわからないわけでありまして、これが一番の不安の原因になっているのではないかというふうに思います。特に、経営基盤の弱い小規模な事業者の場合には、借り入れをしてその返済に窮することが、実際その事業自体の存亡にかかわってくるようなことにもなりかねないわけでありまして、そういう意味では、この輸入再開の見通し、これが非常に重要なわけでございます。

 亀井大臣も、また農林水産省の皆さんも、アメリカとのさまざまな交渉を重ねておられまして、いろいろと先行きまだ予想しがたい要素があるのは十分承知をいたしておりますけれども、どうもここのところの報道とか見ていますと、かなり日本とアメリカとの間の主張、隔たりがあるのではないかという気がいたします。また、アメリカ側の主張を見ていますと、やはり主要国の中で日本が一番そういう意味では万全の対策をとっているということから、そう簡単に、では我が国の制度に対応してくるというようなことも難しい面もあるのかなというところが正直な感想でございます。

 そこで、今いろいろとそういった交渉を鋭意御努力いただいているんですけれども、現状がどうなっているのか、また、この先の見通しについて、これはいろいろな要素があるので難しい面もあろうかと思いますが、わかる範囲で御説明をいただければというふうに思いますが、よろしくお願いをいたします。

中川政府参考人 お答え申し上げます。

 これまでの米国との数次にわたります協議の中で、日本といたしましては、まず第一に、この問題は消費者の安全、安心の確保が第一である、そういうこと、それから二つ目といたしまして、日本に向けて輸出をされます牛肉につきましては、我が国が現在とっておりますような全頭検査それから特定危険部位の除去が基本である、このことは消費者、国民の方々からも大変強い支持があるということをアメリカ側にるる説明をいたしてきたところでございます。

 先般、一月の二十三日の日米会合におきましても、こういった点につきまして丁寧に説明をいたしました。アメリカ側は、そういった日本の考え方も踏まえて、一たん持ち帰って、それからまた改めて次回の協議を行おうということで前回の会合は終わっておるわけでございます。

 そういうことで、現在はボールはアメリカ側にあるというふうに私ども思っておりますけれども、これまでのところ、アメリカ側からは輸入再開についての具体的な提案がなされていないというのが現状でございます。私どもといたしましては、この日本の立場、日本の事情というものをきちっと踏まえて、アメリカ側から適切な提案がなされることを期待しているところでございます。

 したがいまして、先生はこの見通しがどうかということでおっしゃいましたけれども、現段階で日米交渉の今後の見通しを申し上げるというのは大変難しい段階でございます。私どもといたしましては、食の安全、安心の確保ということを大前提として、こういった日本の立場もよくアメリカ側は踏まえて、その上で具体的な提案をなされることを期待いたしているところでございまして、そういった具体的な提案があれば十分アメリカ側と協議をしてまいりたいというふうに思います。

上田分科員 農水省としてもいろいろと御苦労されているのは十分わかります。国内からは安全性を最優先してというような要望も強いわけでありますし、一方、なかなか、他国との関係とかを考えると、ではアメリカ側も、今日本が要求していることについて、そう簡単に全部やりましょうというような成り行きではどうもないんじゃないのかなという感じがいたしております。

 そうなると、どうもこの問題、ちょっと長期化するのではないのかなということが懸念をされるわけであります。

 先ほどもちょっとお話ししたんですが、輸入停止期間が長期に及ぶことになりますと、先ほど、いろいろな融資制度で借り入れをした場合などに、当初考えていたよりもさらにそれが長い期間に及ぶ。また、この問題の難しさというのは、今日本に対して牛肉を供給できる国というのは非常に限られているわけでありまして、では国内産に切りかえるといっても、なかなかすぐに牛を育てるわけにはいきません。ほかの国から輸入をするといっても、輸入先が限られているというような中で、もし長期に及んだ場合には、特に外食産業などの事業者、その借り入れをしたときに想定していたものよりも実際にはさらに深刻になってくるというようなことというのは当然予想されるわけであります。

 そうなりますと、そうした事態に至った場合には、これはやはりさらなる措置が必要なんじゃないのかなという感じがするんですが、例えば、一回借り入れたもの、その債務の軽減を図ることが必要になるかもしれません、利子についての何らかの対策が必要になってくるかもしれません、また事業が、輸入が再開されたときに新たな営業助成といったことが必要になってくるのかもしれません。そうしたさらなる支援措置が、もしこの問題が今我々が当初考えていたよりも長期に及んだ場合には、必要になってくるのではないかというふうに思います。

 具体的な施策を今お聞きするのはちょっと無理かというふうには思いますけれども、そういった事態、当然、これは万が一ということではなくて、今の時点からいうと、かなり可能性が高く想定されることだろうと思いますので、基本的なお考え方を伺いたいと思います。

須賀田政府参考人 国内のBSEが発生をいたしまして、その対策で生産者の方々につなぎの経営資金を措置したことがございます。これが長期に及んだということで、そのつなぎの経営資金をさらに借りかえする措置を講じたことが過去ございました。

 私どもとしては、外食産業の皆様方が、メニューの転換その他によって経営改善努力をして、何とか乗り切っていただきたいというふうに願っているわけでございます。

 仮定の話を進めるわけにもいきませんが、今後長期化したときに、どのような影響があって、どのような対応を望まれるのかということについて、引き続き情報の把握に努めたいととりあえずは今考えているところでございます。

上田分科員 ありがとうございました。

 ぜひ、相当皆さん大変な御懸念を持っておりますので、農林水産省挙げてこの問題にきっちり取り組んでいただきたいというふうに思います。

 ちょっとこれで次の話題に移らせていただきますが、今度の国会に景観法が提出をされております。景観法の中では、農村の景観の保全という観点も含まれた、これは非常にいいことではないかというふうに思っております。

 ただ、どうもいろいろな御説明を聞いていると、この農村の景観というのが、例えば棚田のような、どっちかというと特殊な地域の特殊な景観だけがクローズアップをされておりますが、私は、日本の田舎の景色というのは決してそんな特別なものだけではなくて、一般の水田あるいは水路、そうした田園風景というのが非常に重要なんではないかというふうに思っております。日本は古来からやはり農業を基本としてきた国でありますので、そうした農村風景というのがまさに心の安らぎをもたらすものだと思っております。

 そこでお伺いをしたいんですが、法案にあります景観農業振興地域整備計画、その策定に当たっては、先ほど申し上げた棚田のような、非常に特殊というか珍しいというような景色だけに限るのではなくて、やはり広く日本の伝統的な農村の景観を大切にする、そうした視点を入れて考えていっていただきたいというふうに思っておりますが、お考えはいかがでしょうか。

太田政府参考人 先生から御質問ありました、今国会で御審議いただくことになっております景観法案でございますが、都市や農山漁村におけます良好な景観の形成を図るために、国土交通省及び環境省と連携して検討を進め、共同で提出させていただいたものでございます。

 農林水産省といたしましては、農山漁村に特有の良好な景観の保全、整備に向けまして積極的に取り組むために、市町村が景観農業振興地域整備計画を策定し、景観と調和のとれました農地の利用の促進、あるいは耕作放棄地対策などの施策を講ずることができるように所要の措置を盛り込んだところでございます。

 この景観農業振興地域整備計画は、景観と調和のとれた良好な営農条件の確保を図る必要がある、そういう場合に策定するものとしておりますが、具体的には、まさに先生御指摘のとおり、棚田だけではなくて、いわゆる水路などに囲まれた田園地域、あるいは畑作物が織りなすような丘陵地の景観、さらには花や果実が四季を彩るような果樹地帯の景観など広く含まれるものというふうに認識しております。

 また、農村地域の景観は、集落と農地、里山などが一体となって形成されるものでありまして、関係府省とも連携しながら、景観計画におけます建築規制や市町村森林整備計画による施業管理なども効果的に活用しながら、総合的な農村景観の形成に向けた地域の取り組みを支援していきたいというふうに考えております。

 この法案が成立いたしますれば、地方公共団体や地域住民の景観形成に向けた取り組みを関係府省とともに支援してまいりたいというふうに考えております。

上田分科員 どうかよろしくお願いいたします。

 それで、景観ということで、ここでちょっと話が変わって、これは大都市部での景観の問題なんです。

 きょうは国土交通省にも来ていただいているんですが、私の地元の横浜市では、いわゆる地下室マンション建設、これが非常に大きな問題となりまして、これは、地下室分の容積率を算定から除外することによって土地の有効利用を図っていこうという建築基準法の改正が行われたことがきっかけとなりまして、その法律の趣旨とは若干違った方向でこの問題が進んだということから生じた問題でございます。

 今国会には、その建築基準法の改正案も提出をされているわけでありますけれども、そこでは、地方公共団体が条例を制定することによりまして、規制を独自の判断で強化することができるということになっているものだと承知をしておりますが、こうした改正に至った経緯、それから、建築基準法で国が判断するんではなくて、むしろ地方公共団体に判断をゆだねた理由をお伺いしたいというふうに思います。

小神政府参考人 地下室型マンションについてのお尋ねでございます。

 今、先生も御指摘いただきましたように、住宅の地下室については、全体の住宅の床面積の三分の一までは容積率の算定の際にカウントしないということになっております。ところが、近年、この措置を活用して、低層住宅地におきましても、いわゆる斜面地を利用してマンションが建設されております。低層住宅地の場合、一般的には高さは十メーター以内というようなことになっているわけでございますけれども、この地下室型マンションでございますと、斜面の下から見上げますと、七階建てとか八階建てとか、非常に高いマンションに見えるわけでございまして、こういったことから、住環境の悪化を招くというようなことで紛争が生じていることは、御指摘のとおりでございます。

 こういった状況を踏まえて、今お話にもありましたように、建築基準法等の一部改正案を今国会にもお諮りすることにしておりまして、この中で住宅地下室の範囲を条例で制限できるということにいたしております。

 この改正を地方公共団体の判断にゆだねた理由はということでございますけれども、今申し上げました紛争は、横浜ですとか川崎ですとか、大都市の低層住宅地の斜面地など一部の地域に限られております。私どもが昨年の四月に調査した内容でございますけれども、全国で三年間に二十一件ほどのこういった紛争が生じておるんですけれども、そのうちの八割が横浜市でございます。

 そうしたようなことから、やはりこういった規制につきましても、斜面地の土地の状況ですとかその周辺地域の状態がどうなっているかということを熟知しております地方公共団体の方で、条例で規制をしていただくことが適当であろうかというふうに判断した次第でございます。

上田分科員 今、御説明をいただいたところでありますけれども、私、こうした事態が生じてきたその背景というのは、やはり建築基準法で国が何でも細かいところまで、地域の実情とかを考慮せずに詳細なところまで決め過ぎてしまうんではないのかなという感じがいたします。やはり地域の実情はそれぞれ異なっておりますし、そうした建築基準に係るような具体的な内容というのは、一番地域の実情に精通をした市町村が責任を持って、そうしたさまざまな地域事情を勘案しながら決定していく、そうした考え方に原則をやはり変えていった方がこれからはいいんではないかというふうに思っております。

 これまで累次の見直しにおきまして、随分と地方分権も進んできたところでございますが、さらにそうした方向で、やはり地域の細かい具体的なことというのは、一番地域に近い、そうした地方公共団体にお任せをするというような方向で、ぜひこれから見直しを進めていっていただきたいことを御要望いたしまして、時間となりましたので質問を終わらせていただきます。

 きょうはどうもありがとうございました。

北村主査 これにて上田勇君の質疑は終了いたしました。

 次に、松本大輔君。

松本(大)分科員 民主党の松本大輔です。広島二区選出の一回生議員です。どうぞよろしくお願いします。

 本日は、林野庁で行われております大規模林道事業について取り上げたいと思います。

 まず、公共事業に対する我が党の立場を述べさせていただきたいと思います。

 昨年ですけれども、私たちはマニフェストを発表しました。その民主党のマニフェストの重点政策「五つの約束、二つの提言」の一つに、むだな公共事業の中止があります。これまで税金をむだに使ってきた自然破壊型の公共事業を改め、自然回復型の新しい公共事業への転換を進める。本分科会に関連したところで申し上げれば、農業土木予算を使って山や森が切り開かれ、美しい川が破壊され続けるようなことはもう終わりにしたい、そういう誓いを立てたわけでございます。

 本日は、そうした、我が党そして私の考えに共鳴してくださり、私をこうして国政へと送り出してくださった地元の皆さん、何人かの方は、今、インターネット中継で、危なっかしいなと思いながらごらんになっているのかもしれません。そうした方々を代表しまして、地元広島二区で行われようとしております大規模林道事業についての質疑を進めていきたいと思います。

 さて、私の選挙区は、広島県の西部ということになりますが、島根そして山口との県境に近い山合いに廿日市市吉和というところがございます。ここには細見谷と呼ばれる渓谷がありまして、お手元には用意していないんですが、こういった非常に美しい渓谷であります。西中国山地国定公園にも指定されておりまして、原生状態のブナやミズナラの生い茂る渓畔林、こういうぐあいのところなんです。

 昨年の十二月六日ですけれども、私も、こんなふうに長靴を履いて、雨がっぱを着て、現地に赴いてまいりました。細見谷の渓畔林、手つかずの自然というものをこの目で確認してまいりました。きょうは答弁でお疲れの大臣も、ぜひ一度、現場へお越しいただけるようにお願いしたいと思います。このように、絶滅危惧とも言われておりますが、ツキノワグマの落とし物にも出会えてしまうという、いやされること受け合いでございますので、ぜひ一度御検討いただきたい、そのように思う次第でございます。

 私の感想は以上にしまして、まずは、環境省としての立場から、細見谷についての御説明をいただきたいと思います。大臣でなければ副大臣、せめて政務官、本来であればそのように申し上げたいところなんですが、きょうはそろってお忙しいということでございますので、環境省の方、細見谷に生息する動植物について、レッドデータを絡めてお聞かせください。

小沢政府参考人 細見谷の自然植生などの状況についてのお尋ねでありますが、専門家による調査報告によりますと、細見谷渓谷には、環境省レッドデータブックに掲載されておりますオモゴウテンナンショウ、ノウルシなどの植物が見られます。また、広島県のレッドデータブックに掲載されていますオオマルバノテンニンソウなども確認されるという報告がございます。

 それから、この地域周辺一帯は、今お話のありましたように、イヌブナ、コハウチワカエデ、アカシデなどを主体とする落葉広葉樹林が広がっておりまして、貴重な自然林となっていることから、昭和四十四年に西中国山地国定公園に指定されているところでございます。

松本(大)分科員 ありがとうございます。

 日本が世界に誇ることのできる自然豊かな細見谷という地域なんですけれども、林野庁所管の独立行政法人であります緑資源機構によって、大規模林道事業、こういう名前の公共事業が二〇〇四年度にも着工されようとしております。

 まず、この大規模林道事業について林野庁長官にお伺いしたいと思います。大規模林道事業、特にこの細見谷を通る戸河内―吉和区間についてお聞かせください。

前田政府参考人 御指摘の大規模林業圏開発林道でございますが、これにつきましては、豊富な森林資源を有しているが、地理的条件が悪く、森林整備や林業を中心としました地域振興を図る必要のある地域、全国で七圏域でございますけれども、そこにおきまして、地域の林内路網の骨格となります幹線林道として、緑資源機構の方において整備を実施しているものでございます。

 御指摘の戸河内―吉和区間でございますけれども、中国山地におきまして、地形的、社会的な背景から林内路網の整備がおくれている中で、中国山地南側の森林地域を東西に結びます大朝鹿野線の一部を構成いたしておりまして、戸河内町城根から廿日市市吉和西までの計画延長二十五・五キロでございまして、計画事業費は約九十六億円となっております。

 戸河内―吉和区間につきましては、お話ございましたように、平成二年から工事に着手いたしまして、平成十四年度末までに十・八キロが完成、進捗率四二%となっておりまして、平成十六年度中には戸河内町城根から二軒小屋までの十一・一キロが完成する見込みでございます。

 今後、二軒小屋と吉和西間の整備に移行していくこととなるわけでございますが、当該箇所につきましては、平成十二年度の期中評価結果を踏まえまして、幅員を五メートルに縮小、大規模林道と申しますのは、基本は全幅七メートルの完全舗装となっているわけでありますが、ここにつきましては幅員を五メートルに縮小するとともに、特に細見谷、この渓畔林を通過する部分につきましては、既設林道が今ございます、これは四メートル程度なんでございますけれども、これは原則として拡幅せず、また緑資源機構におきましては、動植物、地下水あるいは地質、こういったものに関します調査を行いまして、専門家によるその結果を踏まえた影響予測、そういった必要な保全措置を検討することにいたしておりまして、今後とも、地元の要望を踏まえ、環境保全に十分配慮しつつ、事業を実施してまいりたい、かように考えている次第でございます。

松本(大)分科員 ありがとうございます。

 本件事業に関しては、地元紙も取り上げておりまして、これが配付させていただきました資料でございます。表裏、A4の一枚なんですけれども、こちらをちょっと御参照いただきたいと思うんです。

 本件事業に対して、日本生態学会が総会決議というものを出していらっしゃいます。ここで、その内容の一部を御紹介させていただきたいと思います。

 「細見谷は、西中国山地に残るよく保全された渓畔林として全国的に見ても貴重である。」「二〇〇四年度に計画されている当該区間の着工がもし実施されれば、「渓畔林部分は原則として拡幅しない」とする工法をとったとしても、林道沿いに集中して分布する多種の植物種の生育地や小型サンショウウオ類の生息地の破壊は避けられない。また、いかなる種類の舗装工事も林道下を伏流して渓畔に至る豊富な地下水を遮断して渓畔植物群落に重大なダメージをおよぼし、渓畔林の衰退をもたらす恐れが強い。」このように述べた上で、日本生態学会として、工事の中止それから細見谷地域における地質、生物の公開調査、さらには水源林、水辺林管理の新たなモデル地区とすること、以上を求めておられます。

 また、昨年十二月二十五日には、地元NGOであります細見谷保全ネットワークが中心となりまして集めた、細見谷渓畔林保全を求める署名三万九千三十二筆、こちらが公共事業チェック議員の会の仲介によって、農林水産省と環境省に提出されております。これについては、亀井農林水産大臣も環境省も御存じのことと思います。

 陳情書では、細見谷を「国指定の保護対象地域とし、あわせて国際的な「登録生態系」として、これ以上傷つけることなく、子々孫々引き継いでいけるように厳正な保全措置を講じること」、そして工事の中止、さらには三点目として「持続可能な水源林管理のモデル地区とすること」、以上を要望していらっしゃいます。

 学術的な見地からも、先ほどの日本生態学会の総会決議でございますけれども、それから今述べさせていただきました四万人近い民意からも、我が国が世界に誇れる細見谷、この自然を守るべきとの意見があり、さらに、実際に現地を見てきた私から見ても、失われようとする自然の価値の方がはるかに大きい。本件は林業振興に名をかりた不要不急の公共工事である、そのように考えますが、ここで環境省にお伺いいたします。

 日本生態学会の総会決議、そして四万人近い署名に対して、環境保護強化の姿勢を打ち出すべきと考えますが、例えばラムサール条約は適用できないのか、もしそれが難しければ、ほかに保護強化のための方策はないのか、お聞かせください。

小沢政府参考人 現在、細見谷地域の大部分は、西中国山地国定公園の第一種及び第二種特別地域として指定されております。日本生態学会あるいは地元の細見谷保全ネットワークなどの団体から御要望いただいておることは十分承知しておりまして、この中では、例えば自然公園法上の特別保護地区に格上げしてはどうかというような保全対策の強化に関する要望をいただいておるところであります。ただ、特別保護地区の指定につきましては公園計画を変更する必要がありますが、その変更の前提としては広島県の申し出が必要でございます。

 それから、ラムサール条約の件について、私どもなりにいろいろリストアップをしながら検討を進めておりますが、率直に申し上げて、細見谷地区は、その対象としては少し遠いかなというふうに考えております。

 いずれにしましても、先ほどいただいた要望につきましては、自然公園法上の取り扱いもございますので、環境省から広島県にお伝えをしております。広島県から、今後、関係者と調整の上、公園計画の変更などの申し出がありますれば、適切に対応してまいりたい、このように考えております。

松本(大)分科員 ラムサール条約については、確かに水鳥、渡り鳥の保護という当初の趣旨はあったと思いますが、ただ、後段というか、それ以外の湿地についても割と柔軟な姿勢で臨めるような、そのような趣旨で私は理解しております。

 ただ、いずれにしましても、公園計画の変更、特別保護地区への格上げは検討可能であるということはわかりました。

 今度は農水大臣にお伺いします。

 日本生態学会総会決議、四万人近い署名に対してどうお考えなのか、大臣の御見解をお聞かせください。

亀井国務大臣 委員御指摘のように、戸河内―吉和区間の二軒小屋―吉和西工事区間につきまして、日本生態学会総会決議、またあるいは七団体になりますか、要請を、陳情をちょうだいしておりますことは承知をし、環境保護団体の関心が高いことは認識をいたしております。

 一方、旧吉和村村議会におきます、当該区間の早期完成を要望する地方自治法第九十九条によります意見書の採択、あるいは早期完成を求める六万七千名の署名をちょうだいし、また町村合併後の廿日市市長による事業推進の意向などから、地元においては事業推進に向けた強い要望があることも認識をいたしておるわけであります。

 そういう中で、平成十二年度の事業再評価結果を踏まえまして、緑資源機構においては、細見谷の渓畔林部分の保全に必要な調査等を実施するとともに、第三者の複数の専門家の意見を聞きまして、当該区間の整備の具体的方法につきまして検討していくものと承知をし、適切に対処するよう指導してまいりたい、このように思っております。

松本(大)分科員 地元からの強い要望があった、それは合併後も変わらないということなんですけれども、ただ、反対サイドの署名というものも、十二月時点で、先ほども申し上げましたとおり、四万人近い署名を集めているわけでございます。

 いずれにしましても、大規模林道事業は不変という農水大臣の御趣旨だと思うんですが、なぜそうまでして戸河内―吉和区間において大規模林道事業を推進するのか、その具体的理由は何なのか、農水政務官にお伺いしたいと思います。

木村大臣政務官 松本委員御承知のとおり、この戸河内―吉和区間は、太田川上流に位置する中山間地域の林道網の骨格をなすものであります。

 具体的に挙げますと、例えば、受益地の森林の四割以上を占める人工林のほとんどが四十五年生以下の間伐が必要な森林となっております。そういうことも考えますと、戸河内―吉和区間の整備によりまして、間伐等の森林整備が進みまして、そして、森林の持ついわゆる多面的機能、例えば水源涵養機能等を発揮させることにもつながりますし、また、先ほど大臣からの答弁もありましたが、地区の林業に従事されている皆さんから大変熱望されておりまして、皆さんの林業経営の効率化にも期待できるというふうに私ども考えております。

 また、本区間は、旧吉和村、戸河内町、芸北町を結ぶルートとして、森林レクリエーション等森林の総合利用を中心とした新たな入り込み増加による地域の活性化というものも地元でも大変期待しているようでありまして、林道の整備によりまして生産環境が改善されること、あるいは御当地の特産でありますワサビの生産振興にもつながる、こういったいろいろなプラス面もきちっと見きわめながら対応していきたいというふうに思っております。

松本(大)分科員 ありがとうございました。

 一つずつ順を追って検証、反論していきたいと思います。

 平成十二年五月、参議院の行政監視委員会で、政府参考人より、平成八年度末の大規模林道事業投入事業費は累計で四千二百億、木材生産上の効果は千六百億という答弁がなされております。そもそも、大規模林道事業の木材生産上の効果は、到底投入事業費に見合うものではないわけです。

 政府参考人自身、当時「自然環境保護への意識の高まりや森林施業をめぐる情勢の変化を踏まえるとともに、費用対効果の観点から事業効果を総合的に明らかにすることが肝要」、こういった指摘をなさっていらっしゃいます。そのとおりだと思います。

 順を追って検証、反論していきたいと思います。

 まず、御指摘の間伐の必要性についてであります。

 一般的な人工林管理における間伐の必要性については私も認めるところであります。しかし、その間伐材の運搬は、渓畔林の保全上、人工林地域から渓畔林地域をまたいで林道へと引き出すことはできないものと私は考えております。よって、間伐の必要性上、渓畔林地域を通る大規模林道が不可欠である、こういう根拠は成り立たないのではないでしょうか。また、振興すべき林業が果たして地元、こちらにどの程度あるのか、非常に疑わしいとも思っております。

 林業振興について、二点目として反論させていただきたいと思います。

 先ほど、大規模林道事業全体の投入事業費に対して木材生産上の効果がどれだけあるか、投入事業費に見合うものではないという御指摘をさせていただきましたが、本日取り上げております戸河内―吉和区間二十五・五キロのうちの未着工区間十五・四キロ、いわゆる細見谷周辺は、ほとんどが国有林、西中国山地国定公園の中にある水源涵養保安林、先ほども政務官御指摘のとおりであります。この地域、伐採も規制され、木材の生産よりも水源確保が優先される地域というものが本来的な位置づけであると理解しております。特に、渓畔林部分はその中でも数少ない自然林、十方山風景林と呼ばれ、美しい景観を誇る地域であります。果たしてそのような地域を大規模林道にする必要があるのでしょうか。

 三点目としまして、先ほど、観光道路等としての需要があるということでございましたけれども、あるいは生活道路、検証してみたいと思いますが、この区域に集落はありません。生活道路としての需要はそもそもないと思います。では、観光道路としてはどうか。

 現在、吉和から筒賀村、戸河内町へ通じるルートは、中国縦貫道、国道百八十六号線、県道、三本も並行して走っております。今回の計画は最も山深い地域を通るものであり、ここは県内でも有数の豪雪地帯であります。冬季には、四カ月あるいは五カ月間使用不能となる。既に三ルートもある上に、一年のうちの半分近くが利用できない道路に、観光道路として推進する理由がどこにあるのでしょうか。

 地元の経済振興ということで、ワサビ栽培と御指摘がありましたけれども、例えばワサビ栽培などは、そもそも自然林を伐採し、杉の人工林化が進んだ結果、森の保水量が減少し、肥料となる有機物の補給が途絶えて、生物相が貧弱化したことの影響であると考えます。すなわち、これまでの官僚主導による林野行政の失敗のツケと見るべきであります。そのツケを棚に上げて、大規模林道化したことで交通アクセスがよくなるからワサビ栽培が盛んになるといった子供だましの論理は、全く国民をばかにしているとしか思えません。私には、農水省のおっしゃる地元経済の振興が、地元の土木建設業者の振興と言っているように聞こえてならないのであります。

 加えて、地盤の問題について少しつけ加えさせていただきたいと思います。

 地盤の問題というものは、建設費や補修費についても大きな影響を与えます。実際に、同じ地質で建設された道路、岡山県の大規模林道では、補修と崩落を繰り返し、そのコストは多大なものになっていると聞きます。これは国だけの問題ではなく、維持費を負担する地元自治体、廿日市市にとっても将来にわたって大きな負担となります。

 冒頭にも、環境保全に十分配慮して工事をするという話もありましたけれども、先ほど御紹介しました日本生態学会決議によれば、拡幅しない工法をとったとしても、植物種の生育地や小型サンショウウオ類の生息地の破壊は避けられないし、いかなる種類の舗装工事も渓畔植物群落に重大なダメージを及ぼす、渓畔林の衰退をもたらすおそれがあると明確に指摘していらっしゃるわけでございます。

 これまでの答弁で明らかになったのは、時代の流れや国民のニーズの変化に対応し切れず、大胆な政策判断のできない官僚主権国家の姿であります。そもそも、官僚機構には大きな方向転換を決める主体的判断を期待できない、そういうことなのかもしれません。

 だとすれば、大臣、先ほど引用しました、「自然環境保護への意識の高まりや森林施業をめぐる情勢の変化を踏まえ」という政府参考人の過去の答弁を真に意味あるものにしていくのは、連続性を断ち切る大臣の勇気、政治的決断、御英断であります。いけずな行政に温かい血を通わせるのが政治の役割だ、そのように私は思っております。

 大臣、林業振興に名をかりた不要不急の公共工事であるばかりか、世界に誇れる日本の財産、細見谷を破壊しかねないこの大規模林道工事を中止すべきであると私は考えますが、亀井農水大臣の見解をお聞かせ願えますか。

亀井国務大臣 今いろいろ御指摘をいただきましたが、一方では、今日までいろいろ地元の皆さん方の御要請もあるわけでありまして、さらに、森林・林業整備、私も先般、地方に参りましても、林業の問題、雇用の問題とあわせて、森林整備の課題もいろいろ指摘をされておるわけであります。

 やはり、この地域にとりましては、その計画をもって林業振興、こういう面も十分加味した中でこの問題の計画がなされたと思います。

 また、環境の問題、いろいろ加味しなければならないところもあるわけであります。時代の要請、このことも十分考えなければならないわけであります。

 そういう中で、緑資源機構におきましても、専門家等々のいろいろの意見を踏まえて対応することも考えておるわけでありまして、十分それらを含めた中で、この問題は計画を実施すると同時に、やはりいろいろ幅員の問題等々にも十分配慮して対応してまいりたい、このように考えております。

松本(大)分科員 ありがとうございます。

 繰り返しになりますが、私には細見谷に大規模林道を通す明確な根拠があるとは考えられません。それは先ほど検証、反論したとおりでございます。

 環境影響評価についても触れていらっしゃいましたけれども、細かい工法の話あるいは手続論で民意を酌み取るふりだけを見せて、事業そのものはあくまで存続させようという林野行政の流れは不変であるということだろうと思います。

 本来は、成り行き任せでは損なわれてしまう、かけがえのない価値を守るためにみずから主体的な行動をすべき環境省も、都道府県からの申請を待つ、先ほどの答弁にもありました、受け身の姿勢に終始しているように思います。やはり大きな方向転換を決める、このことが政治に求められているのではないかと私は考える次第であります。

 最後に、そもそも道とはどうあるべきか、この点について触れて、私の質問を終了させていただきたいと思います。

 歴代総理の指南役安岡正篤先生、私の郷里は広島でありまして、その広島の大先輩でもあります。池田勇人先生を初めとする自民党の歴代総理の指南役でもあったわけですけれども、宏池会の名づけ親ということでも有名であります。

 その安岡正篤先生が、道というものについて次のように述べていらっしゃいます。宇宙の本体は、絶えざる創造変化活動であり、進行である、その宇宙生命より人間が得たるものを徳という、この徳の発生する本源が道である、道とは、これなくして宇宙も人生も存在し得ない本質的なものであり、これが人間に発して徳となる、これを結んで道徳という、その本質は常に自己を新しくすることである。こういうことをおっしゃっていらっしゃいます。

 大規模林道事業、中国山地山陽ルートを当時の森林開発公団が基本計画を策定したのは一九七二年、今から三十二年も前の話であります。当時一歳の愛くるしい赤ん坊であった私も、今では立派な中年であります。三十二年とはそれだけの変化が起こり得る年月であります。今求められているものは、道路ではなく、安岡先生のおっしゃるところの道、道徳であると考えます。策定から三十二年も経過した古い計画に固執するのではなく、常に自己を新しくするという道の本質、道徳に立ち返るべきであります。

 事業のねらいであった自然との触れ合いの促進、これをより一層実現していくために、今求められている林野行政とは何なのか、環境行政とはどういうものか、今のままの公共事業のあり方でよいのか。政治家も、そして行政マンの方も、与党もそして我々野党も、謙虚に振り返りつつ常に自己を新しくしながら取り組んでいくべきではないかと考えます。改めるべきところは改める、そして本当に残すべきものを残す、そのように取り組んでいくべきではないか。それが先人として未来に残すべき本当の道、道徳ではないかと私は考えます。

 もしも今の政府・与党にそれができないというのであれば、政府・与党そのものを新しくする必要があります。つまりは政権交代であります。我々民主党はいつでも取ってかわる用意があるということをお訴え申し上げ、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

北村主査 これにて松本大輔君の質疑は終了いたしました。

 次に、黄川田徹君。

黄川田分科員 民主党の黄川田徹であります。通告に従い、順次質問していきたいと思います。

 まずもって、三位一体改革による国庫補助金の縮減あるいはまた税源移譲など、本当に地方分権改革が叫ばれております。その中で、補助金の交付、運用面で、国と地方のかかわりの基本的なあり方がまた問われておると思っております。

 そこで、今回は補助金についてお尋ねいたしたいと思います。

 話は平成十年に戻りたいと思います。当時、景気対策のために補正予算が国で三度ほど組まれておりました。その中で、小渕内閣では、平成十年の十二月十一日に成立しました三度目の補正が、総額約八兆五千億にも及ぶ、これは最大規模であります。そのうち、農水省分は五千九百六十億円で、林野庁分は一千四百六十九億円であります。とりわけ、林業振興費のうち、林業生産流通総合対策事業は約九十五億円強を占め、そのうち林構事業が目玉でありまして、全国で約六十億円でありますが、この中で岩手県は一つの県で十億円を占めております。

 当時、久慈市を中心に岩手県北部は、間伐がなかなか進まず、間伐利用促進、これは重要なことでありまして、木材関連産業の活性化、これも必要であるということでありました。そのような状況下にあって、久慈市の製材会社である岩手林材は、秋田県の能代市でありますか、庄内鉄工と共同で、薄い単板三枚を積層し、約一ミリ厚さの成形板でキサラと称しまして、食品トレー等を開発しつつありました。岩手県は、この成果を当該林構事業で、いわて森のトレー生産協同組合のもとで事業化を図ろうとしたものであります。

 なお、この総事業費約二十七億円規模で、そのうち国庫補助は十二億八千万、県補助二億六千万、組合負担十一億六千万であります。この組合の自己資本でありますけれども、これは一千万であります。極めて過少であります。結果として、残念なことでありますけれども、事業化に失敗し、そして国から補助金十二億八千万全額の返還命令を受けておる、これが事実であります。

 県は、平成十年の十二月十一日付で林野庁に計画認定の申請をし、そして事業が採択されております。その際に、極めて安価な発砲スチロール製のトレーが普及しておるということの中で、当時、環境に優しいということでその理念、精神はいいのでありますけれども、製造コストでありますけれども、これは一けたぐらい高いわけであります。そしてまた、本当に新しい事業、ベンチャーの事業ということで、事業の採算性、これが本当にきちっととらえられておればいいのでありますけれども、それが不明確な中でありますので、林野庁はどうして認可をしたのか、その根拠でありますが、その事業採択の根拠を大臣から改めて伺いたいと思います。

亀井国務大臣 本件の事業計画につきましては、事業実施主体でありますいわて森のトレー生産協同組合が県に資料を提出し、岩手県において認定を行ったものであります。林野庁は、当該認定に当たりまして、審査の上、異存がない旨の通知をしたもの、このように承知をしております。

 審査に当たりましては、岩手県からいろいろ説明を受けたようでありまして、当時、他の地域において木製トレーを生産している事例があり、試作品も既にできておりまして、実用技術であったこと。また、販売先につきましては、予定していた生産量のすべてを大手企業を含む四社に販売することとなっておりまして、うち二社については生産量の七〇%を引き取る旨の契約もなされていた。また、施設用地も確保されており、融資機関による資金面の見通しもあった。

 これらのことから、事業計画自体に特に問題は認められず、県として認定したい旨の話がありまして、林野庁としても県の方針に異存がない旨返答したわけであります。

黄川田分科員 当時、国の三度目の補正ということで、国の補助金がありますけれども、裏負担がある、自治体負担。なかなか財政が厳しいわけでありまして、声かけて踊らず、事業はないかという形の中で全国に要望したんでしょうけれども、なかなか手が挙がらなかったというのが実態ではなかったでしょうか。そしてまた、事業も、その事業年度の中で即時着工ということになれば、地域指定されるのでありますけれども、そんなにそんなに即時着工というのもなかなかあり得ないわけなんですよ。事業の詳細がしっかりしているという中であれば、できるんでしょうけれども。自分から言わせますと、景気浮揚対策のための予算の消化に国、県、市、一体となって突き進んでいった。だからこそ余りにも早い、スピード感のある認定ではなかったかと私は思っております。

 それからまた、通常の意思の決定とはまた別個な、何か別な圧力がかかったのではないかと感じるところも、思えてなりません。いずれこの事業認定、これに第一の誤りがあったと私は国の責任を感じております。もちろん、私、国の責任のみをここでただすというつもりはありません。岩手県にしても久慈市にしても協同組合にしても、これは大いに責任があると私は思っております。

 そこで、さらに驚くのは、この舌の根も乾かないうちに、当初申請から半年後の平成十一年の六月二十五日付で、林野庁は、県より計画変更の報告書を受け付けております。そして、この報告書の内容を見れば、単純な一部変更ということじゃなくて、これは完全に事業の実施方式ががらりと変わっておる、私はそう理解しております。計画変更は、本来実施内容の一部分の変更であり、今回のような実施方式の完全な入れかえというものは、計画変更上、本当におかしな話であると私は思っております。事業の計画変更を認定した、この部分でも私は第二の国の誤りがあると思っておりますけれども、大臣の見解はいかがでしょうか。

亀井国務大臣 平成十一年六月の事業計画の変更につきましては、間伐材を使用して木製トレーを生産するという事業の基本的な部分を変更するものではなく、生産工程を改善するために行うものというように承知をしております。岩手県より林野庁に対して説明があった、このように聞いております。

 木製トレーの生産技術自体は既に実用化されておりまして、変更の内容が、より量産化に適した施設の整備のための生産工程の一部を変更しようとするものであり、計画の一部変更に当たるものとして了解したわけでありまして、いわゆる裁断ライン等のむだな工程をなくしまして、積層材のスライスから成形プレスまでの一体的ラインを形成する、こういうことのようでございまして、小型の単板を裁断して一枚ずつトレーを成形する方式から、百十センチ四方の板から複数枚のトレーを一気に成形する方式、このような変更のようでありまして、スライスした単板を乾燥して接着すること、この二点がこの事業計画の変更内容、こういうことのようでございまして、このことにつきまして、岩手県より説明を受け、それの変更を認めたわけであります。

黄川田分科員 大臣は製造過程の一部の変更だという認識だという話でありますけれども、林野庁は平成十年の四月八日、「林業生産流通総合対策施設整備事業等の運用について」と題しまして、林構事業を含めまして、補助金運用の指針を長官通知として行っております。それによりますと、経営課所掌の補助事業であるから当然のことでありますけれども、研究開発段階、実績のないもの等は補助対象としないと明記しております。

 この計画変更の時期と同じタイミングで、しかも、ここでは説明を省略いたしますけれども、不明確な手順で事業受注者が、庄内鉄工から全く経験のないトリニティ工業に変更されております。同社は、トヨタ自動車の系列会社でありまして、薄板鋼板の板金、塗装等は専門でありますけれども、生木をスライスし圧着、プレス加工するなどは私は全くの素人であると思っております。板金屋が製材屋をやる、私は、そんな感じでおります。

 そこで、再度お尋ねいたします。

 この時点で、林野庁は、庄内鉄工からトリニティに変更された事実を承知していたのですか。もし承知していたのなら、私は、ベンチャーの部分ですから、やったことのない部門をやるということなんでありますから、長官通知に完全に反することになり、また、もし知らなかったのなら、この計画変更書の内容を何ら精査せずにそのまま通したということで、職務怠慢といいますか、そうも思えるのでありますけれども、大臣、認識はどうですか。

亀井国務大臣 事業計画の変更に当たりましては、変更する必要性、変更後における施設整備等の内容についても岩手県から聞き取りを行っているところでありますが、発注先の具体的な企業名まで聞いたかどうかについては記録が残っていないため定かでない、このように報告を受けております。

 間伐材を利用した木製トレーについては、既に国内において生産している事例もありまして、実用技術として既に開発済みであったことなどから、生産工程の改善を図ることとして、発注先の企業を変更することは特に問題ではない、このように考えておった、こう思います。したがって、新技術で事業効果の発現が十分に明らかでないものを補助対象外とする長官通達の趣旨には私は反していないのではなかろうかと考えております。

 また、実施主体が補助施設を整備する際に、施設に配備する機械あるいは機具類の選定、発注は、事業実施主体の裁量に任されているところでありまして、国が受注先の具体的な企業名を把握してこれを審査対象とするというような必要は全くないのではなかろうか、事業実施主体において責任を持って計画どおりの性能を有する機械類を整備すべきもの、このように考えます。

黄川田分科員 大臣は、当時木材トレーの具体的なものが現実にあったんだ、そういう中で、周知されたものだから、君がどうのこうのということじゃなくて、もうできているんだからやればできるというふうな形の中での答弁なんでしょう。

 であれば、トリニティという形の、そういうふうなものは生産しないという話なんですが、研究開発、そしてまたトリニティ自体が具体なものを示したわけじゃないわけですよ。庄内鉄工さんというのは確かに具体なものを提示し、それは林野庁にも見本があると思います。ないものに関して、できるということで、その一番大事なところ、物がつくれるかつくれないかという大事なところに全然論点がいかないというのは、何か別な働きかけがあったのではないかと思いたくもなるのでありますけれども、もう一度、特別な働きかけがなかったということなんでしょうか。

亀井国務大臣 あくまでもいわゆる事業主体、そして、もうその当時、この製品も出ておるわけでありますから、そういう面で、それぞれの事業主体が発注をされる、それは、それが生産される、こういうこと。そして、先ほども申し上げましたとおり、いろいろそれぞれの企業が技術開発・革新等もなされておるわけでありまして、先ほど申し上げたような形で、生産が多量にできる、こういうような技術をお持ちというような点からの変更であった。こういう面で特別な働きかけ、こういうようなことにつきましては、私はそういうものが入るべきではなかろう、あくまでも事業主体が事業を実行する上におきまして、それを着実に生産されると。

 また、先ほど申し上げましたとおり、四社からの、また二社からは七〇%の契約が済んでいる、こういうようなことでありますので、やはり企業者としてはそれを生産させるその責務があるわけでありますから、そのようなことは私は考えられないと思います。

黄川田分科員 先ほどの答弁で、何か県にも資料がないのでなかなか答えることができないところもあるという話もされましたので、それでは私も参考のために、そしてまた、これについてはもっと勉強したいと思いますので、森のトレーを主体にこの林構事業に関して、平成十年六月から平成十六年二月までに農林水産省及び林野庁を訪問した岩手県の幹部等の氏名、訪問年月日、主要打ち合わせ項目、そして国側の対応者のリストの資料提出、これをお願いいたしたいと思うわけでありますが、できれば一週間か十日ぐらいでお願いしたいのですが、できるでしょうか。

前田政府参考人 ただいま先生から御要請のありました資料要求の件につきましては、私どもとしましても、可能な限り対応してまいりたいというふうに考えております。ただ、御要求の内容につきましては、実は林野庁にはほとんど資料が残っていないということで、県に照会するなど調査する必要があるために、若干お時間をいただきたいというふうに思う次第でございます。

黄川田分科員 今、資料がないものもあると言われますけれども、例えば、県から職員が来て応対すれば、例えば上司に応対復命書とかいろいろなものをつくると思うんですが、そういうものを国ではつくらないわけですか。

前田政府参考人 恐らく当時の担当者はそれなりに自分のメモを持っていたんだろうとは推測されますけれども、現在のところ、そういったものはほとんど残されていないというような状況でございまして、それで県の方にそれを照会して確認したいというふうに考えている次第でございます。

黄川田分科員 国の事業はメモでもって進展していくわけですか。必ず上司に報告とか、文書で残らないんですか。

前田政府参考人 国の方ではヒアリングを何回となく行われているわけでありますけれども、それはすべて一々全部正式に公文書という形ではやっておりませんで、担当者が必要に応じてメモをつくって保管している。それがもう大分古い話になっておりまして、現在はそれがほとんど残っていないという状況でございます。

黄川田分科員 それでは、可能な限り資料をいただきたいと思います。

 それで、大臣にまとめてお尋ねいたします。

 さまざま、いろいろとお話しさせていただきましたけれども、今回の不祥事でありますけれども、私は、責任は県、市、あるいはまた組合だけではないと思っておるんですよ。国にも、その比率はともかくとして、かなりの責任があると思っておりますし、そして県議会の中でもそういう意見が多く出されておるわけでありますが、私も国の責任というものを、本当にどうなんだということを思っているわけですが、大臣、どうでしょうか。

亀井国務大臣 いわて森のトレー生産協同組合におきます木製トレーの生産が中断した、これは、設置された装置にふぐあいが生じたわけでありまして、製品を安定的に生産できなかったことなどによる、このように私は認識をいたします。

 このような事態を招いた点、組合による装置の完成検査や検証が不十分であったとか、あるいは岩手県及び久慈市による装置の完了確認調査や組合に対する指導監督が不十分であった、こういうことはあると思いますし、このことは会計検査院よりも指摘されている、このように承知をしております。

 今回の事態は、事業計画の実行段階における基本的なチェックや指導監督が不十分であったことによるものと認識をしておりまして、事業実施主体たる組合並びに指導監督を行う岩手県及び久慈市に問題があったもの、このように認識をいたします。したがって、補助事業者が補助目的を達成できなかったことについては国に責任はなかった、このようにも考えてよろしいのではなかろうか、こう思います。

黄川田分科員 補助事業のあり方の中では国の責任はなかったと。大臣、本当に責任がないと思いますか。

亀井国務大臣 我が省としては、そういう問題で林野庁が今日まで事業者並びに岩手県等々といろいろ連絡をとってやってまいったわけでありまして、やはりそれは、補助事業を受けられた事業者としてその責任をまず全うしていただくことが必要なことでありまして、私どもは、行政としては、その面でのいろいろの努力もしてきたことでありまして、私は、先ほど申し上げましたような考え方でおります。

黄川田分科員 それでは会計検査院にお尋ねいたします。

 今回の林構補助事業の実施以前に、検査院は、平成九年、十年度、林構事業等による施設の設置及び運営に関して、農水省に是正改善の処置を要求しております。それにもかかわらず今回の不祥事が発生し、検査院は、当該補助事業森のトレーに対し十二億八千万全額不当と認定し、十三年度決算検査報告を国会に提出いたしました。

 検査院は、地元で組合が各装置を試運転するなどして機能を確認することなく受領していたこと、施設を市に無断で担保に供して十億八千万円を借り入れて交付条件に反していたこと、及び県、市は十分な監督指導を怠ったとしております。

 そこででありますが、検査院の指摘自体、これは正しいと思います。しかしながら、それだけで会計検査は十分なんでしょうか。今回は、通常の補助事業と違いまして、新規の難しい開発要素を伴いまして、そしてまた事業化が求められる案件であります。国として、林野庁は、経営課のみだけでなく関連技術部門も総動員しまして県側を指導援助すべき立場にありながら、それを全く怠っていたのではないかと私は思われます。検査院は、地方だけでの狭い範囲のみを検査するのではなくて、国の計画面での指導性の欠如、そういうものを含めて最終判断を下すべきではなかったのでありますか、どうですか。

重松会計検査院当局者 お答え申し上げます。

 私ども会計検査院が行います補助金等の検査におきましては、補助金等を受領する側の県などの補助事業者とともに、補助金を交付する側である国の機関も検査の対象となっておりまして、私どもが補助金を検査いたします場合には、補助事業者等が補助金等の交付の目的に従って誠実に事業を実施したかといった点のほか、国における補助金等の交付に関する業務が適切に行われたかなどの点も含めて検査を実施しているところでございます。

 ただいまお尋ねの件につきましては、これは検査報告にも記述してありますとおり、発生原因につきましては、今までいろいろ御議論ございましたように、事業主体の組合において装置に対する受領検査が十分でなかったということ、それから補助事業者である県あるいは市において完了確認調査あるいは組合に対する指導監督が十分でなかったということなどが主要な原因だというふうに思っております。

 国については、審査等必要とされる業務において検査報告に掲記するような特段の瑕疵はなかったもの、問題はなかったものというふうに考えているところでございます。

    〔主査退席、西川(京)主査代理着席〕

黄川田分科員 悪いのは地方だけということですね。

 それでは、県と林野庁との間で、国の補助額十二億八千万円の約三分の一、四億円をとりあえず返納し、残り約三分の二については受注者トリニティ工業へ返還訴訟を起こす条件で不問にしてもよいとの暗黙の了解が、これは県議会の証言で出ておるのであります。筋論としてはよくわかりませんけれども、検査院はこのことを、この事実を承知しておりますか。そしてまた、この事案を踏まえ、どのように対処する方針でありますか。

 加えて、このように補助金運用の根本に関して国と地方が論争しているさなかでは、時計の針をとめまして、そして、適正化法の一日三十八万円もの延滞金がつくわけでありますけれども、この条項を解釈すべきと思いますが、検査院の見解をお伺いします。

重松会計検査院当局者 お答え申し上げます。

 ただいま先生がお話しのような事実につきましては、私どもは全く承知をしておりません。

 いずれにいたしましても、私ども会計検査院といたしましては、補助金適化法等に従って適切な措置がとられるべきものであるというふうに考えているところでございます。

黄川田分科員 それでは、最後に検査院にまたお尋ねいたします。

 検査院の指摘には含まれておりませんけれども、このトリニティ工業が選定された際に、同社と同社推薦の小規模な当て馬会社二社の三社から業者選定が行われていたこと、及び、組合は、ホットプレスや成形機など高額な個別の機械、施設を購入の際には、トリニティが作成した購買仕様書を用いてトリニティから調達していたことなどが県議会の調査で判明しておるようであります。これでは適正な価格での調達は不可能でありまして、より高価な調達をしていたことになります。これらの事実を検査院は認識していたのか、そしてまた、どう判断していたのか。さらに、組合とトリニティとの民間同士の取引は、これは民民同士だから対象外だと看過していたのですか。

重松会計検査院当局者 お答え申し上げます。

 私ども会計検査院では、従来から、補助事業における検査につきましても、契約措置が適切に行われなかったために不経済なものとなった事態について、これまでも指摘を行ってきているところでございます。

 そこで、本件についてでございますが、本件事業で整備された装置が必ずしも一般的なものではなく、市場性がないということなどから、手続上の問題はともかく、不当に高額なものであるとの検査結果は得られていないということでございます。

黄川田分科員 それでは、また最後に大臣の方にお伺いいたしたいと思います。

 当時、景気対策ということでさまざま補正予算が組まれまして、県、市町村一体となって、景気浮揚だということでそれぞれ予算規模を拡大してまいりました。その拡大した結果が、今の国の財政再建、あるいはまた地方の財政破綻を招いている、そう言っても過言ではないと私は思っております。特に、当時の状況を見ますと、予算消化ありきじゃないのか。そういう中で、そういうときだからこそ、国の関与がしっかりしていなきゃいけないと私は思うわけなのであります。

 地方にとって補助金は本当に自立を妨げるような、主体的に物事を考えるというようなことをさせないような方向に持っていかれるような気がするわけなのであります。国は補助金によって地方をコントロールします。地方は補助金頼みということで、それで自分の頭で考えようとしなくなるわけなんですよ。

 ですから、そういう中で、国はただ補助を上げればいいんだということであれば、今言われている三位一体改革の中で個別に何も指示、指摘する必要ないですよ。いろいろなメニュー、つくる必要ないですよ。むしろ、国税、県税、本当に血のにじむような税金だ、むだに使ってはいけない、その責任が持てるところに金をやったらいいんですよ。国、林野庁、もう要らないですよ。

 しっかりとした一括交付金を地方に与えて、この金は県民の金なんだ、国民の金なんだ、そういう中で、現場に近いところでしっかりと計画させ、実行させた方がいいものができるんじゃないですか。大臣、お答えください。

亀井国務大臣 一概にすべていいものができる、こういうわけにもならないところに問題があろうかと思います。

 いろいろそれぞれ、各事業につきましても、補助事業につきましても、やはりそれは事業をされる皆さん方が英知を結集していただく、またある面ではなかなかそれに合わない、いろいろなところもあろうかと思います。

 全国のいわゆる均衡あるいろいろな事業を進める、こういう面では、やはりそれなりの制度と指導、こういうものも十分必要なわけでありますし、また、でき得れば、地方でいろいろの創意工夫、そういうものをお出しいただいて、そしてそれを国、地方一体になった形で、やはり共同の作業として進めていくことが私は必要なことではなかろうか、こう思います。

黄川田分科員 林野庁は要らないというのは極論でありましたけれども、ただ、大臣、全然この場で責任がないという形で終わってしまったら、そんなものか、補助事業というのはそんなものなのか。計画の段階でかかわってきた、本当は三位一体、国、県、市、一緒になって考えてきたことでしょうが。問題が起きるとわしゃ知らぬ、そういうものじゃないでしょう。マイクを通して大臣は言えないかもしれませんけれども、立場上もあるでしょうが、そういう立場だけやっていると、いつの間にか農林水産省は残れない省庁になると私は逆に心配しますよ。いろいろな補助金、メニューがたくさんあるでしょうが。

 以上で終わります。

西川(京)主査代理 これにて黄川田徹君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

北村主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。大谷信盛君。

大谷分科員 ありがとうございます。衆議院議員大谷信盛でございます。

 三つの大きなテーマについて質問させていただきたく思います。一つ目が鳥インフルエンザ、二つ目が、それにかかわりましてBSE、鳥インフルエンザ、外食産業への影響、そして三つ目が卸売市場の活性化ということで質問させていただきます。

 ちょっと盛りだくさんでございますので、ぱっぱ過ぎていくかと思いますが、ぱっぱ御答弁いただけますようにお願いを申し上げます。

 まず最初、鳥インフルエンザでございますが、京都丹波町で発生をし、そしてその周辺三十キロの自粛、移動制限が出ておるわけでございますが、この中でも、経路やまた原因等々、今議論されているところでございますけれども、私は補償制度について質問させていただきたく思っています。

 二つありまして、一つは、発生した農家への補償というもの。これは、現時点ですと八割ということになっておるんですけれども、私は、一〇〇%にしてすぐに出すというものがなかったら、隠すであったりとか、知らないうちに処分しちゃうんじゃないかということが、多々これからも出てくるんではないかというふうに思います。

 そして二つ目は、この三十キロ圏内の中で、適正な農家であるにもかかわらず、こういう自粛をされてしまうということは、経済的にも大きな大きな被害をこうむる。ここの制度というものが今ないわけですが、今回一月の山口県であった発生では、国が半分、県が半分ということで御負担をされたようですが、残り大分県、そして私の地域でございます京都丹波町周辺を含みます三十キロ圏内、ここもしっかりとこの機会に制度化をして補償していく必要があるというふうに思うんですが、大臣もしくは金田副大臣、鳥インフルエンザ本部長ということで、ぜひとも御見解を賜りたく思いますが。

金田副大臣 大谷先生御指摘のとおりでございまして、現在、家畜伝染予防法についての補償措置ということは、殺処分等々で被災農家についての補償の手当金の規定はあるわけでございますけれども、移動禁止地域についての補償というようなことがありません。制度的にないわけであります。

 満額補償というお話が先ほど大谷先生からありましたけれども、今八割やっているわけでございますが、満額補償という道が果たしていいのかどうか。やはりそういった伝染病に感染することを、常日ごろ農家の皆さん方が、消毒措置を講じたり、一生懸命努力していただかなきゃならない。満額丸々国が措置するということでいいだろうかどうかということの検討も含めまして、三十キロ圏内の補償措置について、今回、丹波町の例もございまして、隠すというような状態が出てきておりますので、そういったのをもう少し制度的に検討しなきゃならないなということで、昨日の対策本部会議においてこれからの補償の制度について検討するように指示しているところでございます。

大谷分科員 検討中であるということでございますが、私は、きのう三十キロ圏内に入る養鶏の農場を見て回ってまいりましたですけれども、本当に、これは大きな大きな被害でございまして、鶏の場合は、機械とは違いますから、えさ代がかかるわけですよね。千羽鶏がいたら大体一日にそのうちの六から七割の卵が生まれていって、それが一週間以内に出荷できなかったら非常に大きな経済的打撃をこうむる。こんな状態が続いていくと、やはり、勝手に出しちゃおうかとか、思うような人はいないと思いますけれども、それが人間の心理だというふうに思いますから、ぜひとも、経営強化を図る意味でも支援を絶対にするべきだと思っています。

 それも、大きな業者だけではなく、小さな業者というのがたくさんございます。ここが、我々してもらえないんじゃないかと思ったら、適当に検査を受ける前に処理をしてしまうようなことだってあるかもしれませんから、はっきりと、大にかかわらず小にかかわらず、その業者さんの補償をしっかりとしていくということを今出していくことが大事かと思いますが、ここは大臣の大きな方向性について御決意をいただけたらというふうに思いますが。

亀井国務大臣 今御指摘のお話、十分考えて、その制度化の問題を早急に考えてまいりたい、こう思っています。

大谷分科員 ぜひとも、よろしくお願いいたします。

 それで、次に起こるのが風評被害だというふうに思うんですよね。ここの地域の卵が出荷されなかった、ですから消費者、また卸の方々は別の地域から卵や鶏を仕入れてくる、そしてこの三十キロ圏内の制限が解除されたとしても売るところがなくなってしまうという懸念が非常にあるわけなんです。

 これを考えたときに、やはり、何もそこの業者さんは悪いことをしていないのにそういう被害をこうむるわけですから、それ相当の、安全なんだよということをしっかりと検査をして証明するということ、そして経済的にも何らかの支援というものが絶対にその風評被害に対応するために必要だというふうに思うんです。

 外食産業の方でも後で御質問させていただこうと思っておるんですが、鳥インフルエンザに関して、まだ一月から発生したばかりということはあるんですが、将来、そのような制限区域が外されて安全性が証明されたとき、何らかの支援策というようなものも講じていくお考えですか。私は、必要だというふうに思いますが。

金田副大臣 鶏の肉、そして卵については、世界的にそれで感染したという事例がございませんので、とかく風評被害等々で、移動制限区域の農家の卵が売れないとか鳥肉が売れないというようなことのないように、現場等々でスーパー等に行って、そういった風評被害を助長するような対応がないようにしっかりと措置しているところでございます。

 また、一定期間、二十八日間なり、営業できない状態があるわけで、その間にスーパー等で仕入れ先を変えちゃって、自分の鳥肉や卵が売れないということがあるというお話でございますけれども、そういったことに備えて、いろいろな融資制度等々で対応を措置していきたいというふうに思っているところでございます。

大谷分科員 ぜひ、その方向でお進めいただきたく思います。

 それで、もう一個なんですけれども、安全確認をするときに、例えば、丹波町は町制でございますし、私の地域で三十キロ圏内にかかっているところも町でございますが、安全確認をするときに獣医さんを伴ってそれなりの検査をしなければいけない。これは人材的にも財政的にも相当な負担がかかると思うんですが、ここは都道府県、そして何よりも国がリーダーシップを発揮して、人的、財政的支援をしていく必要性があるというふうに思うんですが、その辺については、何か新しいもの、お考えでございますか。

中川政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生おっしゃいましたように、清浄性の確認というものを行う必要がございます。その際は、各県に設置をされております家畜保健衛生所の家畜防疫員が現場に行ってチェックをするということになるわけでありますけれども、こういった際に、人手が足りない場合に、民間の獣医師の方を臨時に雇い入れるとか、そういうことも現場においては行われております。

 こういった人員を確保するための経費あるいは家畜防疫員の旅費等々、こういった費用につきましては、家畜伝染病予防法に基づきまして、獣医師の人件費であればその費用の二分の一を国が持つ、あるいは旅費のようなものであれば全額国が負担をするといった格好で、それぞれ法律の中にその措置がされておるところでございます。

大谷分科員 一日も早くということになれば、今制定されている法律の中の枠を超えることもあるかと思いますので、ぜひとも、早期、安全性の確認という視点に立って進めていただけたらというふうに思っております。

 次に、外食産業の方に移りたいと思うんですが、BSE、そして鳥インフルエンザ等々、食の安全にかかわる問題が発生して大きな経済的打撃を受けている、最初の部分と今回受けている打撃の中身というのが違う、ここをしっかりと認識しなければいけないというふうに思っています。

 最初は、いわゆる、肉を食べたら病気になるというような風評被害が中心でした。最近は違っていまして、まさにこれは、輸入食材に多くの部分を外食産業が頼っていますから、輸入食材が入ってこないということになると、そういう、安くてうまくて早いお料理というものを、商品を提供できなくなってしまう、そのことによって客足が遠のき売り上げが下がっていくという、今までの風評被害とは違う、大きな打撃を受けられています。

 そんな中、たくさん、大きく分けて四つの支援策を外食産業にかかわる事業者の方々、大企業、中企業そして中小企業にそろえていただいておるんですが、これが十分機能しているのかどうなのかということをお伺いしたいというふうに思っていますが、その前に、大臣、一つだけ先に聞きたいんですけれども、これは、BSEに関するこういう資金繰り支援策というのは農林水産省も中小企業庁も用意してくれているんですけれども、鳥インフルエンザにかかわるものはまだないんです。これは将来的に僕は絶対に必要になってくるというふうに思うんですが、その状況が出たとき、その状況を見越して、先につくっていこうというような御意思は大臣にはございますでしょうか。

亀井国務大臣 鳥インフルエンザの外食産業に与える影響につきましても、今、委員と同じように心配をしております。

 ただ、若干、消費が長期低迷したBSEの場合とちょっと異なりまして、輸入禁止期間が短いわけでありまして、また、タイのように加熱処理、これは輸入を可能とすることにしたわけでありまして、あるいは、焼き肉屋さんやステーキ屋さんと違って、鳥の場合は一つの食材に特化した、こういうこともちょっと違うんじゃなかろうかと。

 しかし、やはり状況を十分把握しておかなければならない、このような状況をいろいろ消費・安全局関係者、地方にもありますので、それらが注視をするようにいたしております。

大谷分科員 今のところ規模が小さいということでございますけれども、安全性そして経済面も顧みて、必要な場合にはぜひともこれはお願いしたいというふうに思っています。

 そうしたら、四つ用意していただいております資金繰り支援策について、ちょっと中身はもうよろしいので、どれぐらいのキャパ、すなわちは予算があって、今どれぐらい利用されているのかということについてお伺いをしたいというふうに思いますが、農林水産省さんの方が御用意されている中堅外食事業者BSE関連資金融通円滑化事業ですか、それと、もう一つはBSE関連のつなぎ資金支援というものからまずは教えていただけますでしょうか。

須賀田政府参考人 まず、最初の中堅外食事業者のBSE関連資金融通円滑化事業でございます。融資の限度七十億円でございます。これまでに十億円実績で使っております。このアメリカ産のBSE関連で、現在までのところ約十社程度の申し込みがございます。

 それから、BSE関連のつなぎ資金でございます。これは当初融資枠百五十億円でございました。これまでに約二十四億円実績がございます。米国産のBSE関連で、現在六十社程度の資金の希望があるというふうに把握をしておるところでございます。

大谷分科員 続いて、中小企業庁さんの方、ほかの二つのセーフティーネット貸し付けとセーフティーネット信用保証二号というものの方をお願いします。

大道政府参考人 お答えを申し上げます。

 まず、セーフティーネットの貸し付けあるいは保証に限定した枠ということで特に設けているわけではございませんけれども、平成十六年度について申し上げますと、これはまだ計画でございますけれども、例えば、中小公庫の貸付規模というのは全体で一兆九千億円ございますし、国民公庫が三兆七千億円、こんなような数字になっております。その内枠としてもちろん対応をしていくということでございます。

 それから、信用保証でございますけれども、これは、大体年間十数兆の実績がございまして、例えば十四年度の実績でいうと年間十四兆円の保証の実績、各都道府県等の保証協会の保証額でございますけれども、この保証額についても一定程度の余裕がございます。

 したがいまして、一方で、このセーフティーネットの貸し付け・保証の実績でございますけれども、いわゆる米国産牛肉等の輸入停止措置に伴ってまず発動した対応について申し上げますと、これまで中小企業から三百七十八件の相談、これは二月二十七日現在でございますけれども、寄せられておりまして、その中で、いわゆるセーフティーネット資金ということでプラスアルファで枠を設けた資金でございますけれども、それについて言いますと二件で三千四百万、それからその他通常の枠として御融資したものも含めますと、九十九件、十二億円の融資、保証、これを行っているところでございます。

 ちなみに、インフルエンザの方も一応相談窓口はつくっておりまして、貸し付けについては、これはある程度柔軟に対応しておりますので、これまでインフルエンザ関係、これは一部BSEとあわせて両方でということの御相談も含めて百五十八件ございまして、その中で、運転資金円滑化資金という別枠での貸し付けが既に一件、一億円の実績がありますし、その他の一般枠として貸し付けたものも含めますと三十二件、四億七千九百万、こういうことでございます。

 ただ、いずれにしても、この実績から見まして、十六年度のいろいろな計画上の融資の事業規模を考えますと、十分これからも対応できるんじゃないかというふうに考えておるところでございます。

 以上でございます。

大谷分科員 ありがとうございます。

 そうしたら、ちょっと農水さんの方に詳しく伺いたいんですが、今、中堅外食事業者用の円滑化事業でいいますと、七十億あるということでございますが、これはたしか、畜産の事業団の方が十二億出資をして、それでもって七十億貸せるキャパがあるということだというふうに思うんですが、今、十億出たと。よると、十億、十一億使っちゃっていると。

 こういう、基金的には一億しかなくて、今十社申し込みということでございますけれども、これから食材のコストを考えますと、外食産業さんの食材コスト平均は大体三五%だと言われていて、これは、鳥肉が一・五倍に上がっていますし、牛肉の方は御存じのとおりでございますので、五パー、一〇パー、食費コストが上がっちゃうと利益が出ないような状態なわけですよね。まさに、今十社ですけれども、これは大きな会社の方で、もう十社、二十社、三十社と出てくる可能性がこれからあると思います。そんな中、これは基金、この残り一億円ぐらいで足りるんでしょうか。どのように考えているのか。私は絶対にもっともっとふやすべきだというふうに思っているんですが、いかがなものでしょうか。

須賀田政府参考人 この基金は保証の基金でございますので、ちゃんと返す、償還行為が行われれば毀損しないわけでございます。

 当初の私どもの考え方は、十二億で六倍ぐらいの保証能力があるだろうということで、保証限度七十億という想定をしておる。現在までに十億の保証をやっておりますので、残りの保証能力六十億。十社程度で、一社当たりの保証の限度が八千万でございますので、八千万掛ける十社で八億ということで、六十億の範囲にはなっておるということでございます。

 ということで、全部が全部毀損するんだ、焦げつくんだということで設計はしておりませんので、当面私ども大丈夫というふうに踏んでおりますけれども、なお注視をしていきたいと考えております。

大谷分科員 ありがとうございました。

 局長、当面大丈夫という計算の上に立っていると。当面が、まあ当面というのは多分日本語では短期ということだと思うんですけれども、これが中期までいくと五年ぐらいになるんですけれども、来年、再来年というのは中期と短期の間ぐらいだと思うんですが、今言ったような食材コストからくる大きな打撃を受けると、八千万円という枠でも足りるのかという話も出てくるし、さらに借りたい、そうでないと大きな事業体が倒産の危機に直面するというようなことも出てくると思うんです。

 やはりそれを見越して、安心で、ちゃんとセーフティーネットを張っているよということを意思表示するためにも、この復興事業団の方からぜひとも拠出をしていただいて、この倍ぐらいは、私は、これは専門家の人に計算してもらわないといけませんけれども、倍ぐらいの額は用意しておく必要があるというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

須賀田政府参考人 それは、あるにこしたことはないんですけれども、国民負担を伴う基金でございますので、やはりある程度の実需というものを見通して措置をするということでないと、なかなか国民の理解が得られないというふうに思っております。

 私ども、決して楽観しているわけじゃないんですけれども、今のところは経営状況を注視させていただく段階じゃないかなというふうに思っている次第でございます。

大谷分科員 では、今の段階は状況を注視ということで、将来のことは考えているけれども今の段階ではこれくらいで、将来は場合によっては十分あり得ると認識をさせていただいていいのかなというふうに思っています。

 確かに、国民負担が生じるんですけれども、この外食産業、三十兆円のマーケットがあって、その中ではたくさんの雇用があるわけであります。そして、何よりも、私が一番身近に接している方々がパート、アルバイトという形でサービス産業に従事をしている、まず最初にしわ寄せが来るのがそこら辺のパート、アルバイトで勤めている方々だというふうに思うんですね。これは、落とした場合、下げた場合、やはり個人消費にも大きな大きな影響が出てくるというふうに思います。

 何せ三十兆円産業ですから、大きな大きな、この国全体の経済に響くんだという意識をぜひとも持っていただいた上で、このセーフティーネットというものを農林水産省さんが張らなければいけないんだという意思をぜひともしっかりと持っていただきたいということが、お願いさせていただきたい一番大きなことでございます。

 それで、中小企業庁さんの方にもお聞きしたいんですけれども、今聞いた会社の応募件数というか希望件数、相談件数というんですか、でいいますと、何か少ないような、けたが一個足りないんじゃないかというような気がするんです。

 例えば、私の地域で食肉業を営む方が、もう大変なんだよ、国は何もやってくれないし、何の補助も融資制度もないじゃないかと言って愚痴をこぼしに電話をかけてくるわけなんですよ。いや、ちょっと待ってくださいよ、あるはずですよ、ありましたよと、ちょっと三十分ほど時間を下さい、調べさせていただいて、ありましたということで報告するわけなんですね。

 何が言いたいかというと、アナウンス不足というか、周知徹底がなされていないんじゃないかなと思うんですが、この件数は、いや、そんなことはない、十分インターネットで載せていて、来た数なんだというふうに答えるのか、いや、まだ自分のところでこれからこうやって、零細の業者さんにも知らしめていこうという努力をしていると言うのか、その辺はどんなようにお考えなんですか。

大道政府参考人 まず、PR不足という点でございますけれども、これは、一般的に、中小企業の施策についてPRをいろいろやっているつもりではあるんですけれども、まだまだ知られていないケースが当然ありますので、引き続きPRに一生懸命努めていきたい、こういうふうに思っております。

 ちなみに、今回の相談窓口をつくりましたというふうに申し上げましたが、これは、いわゆる政府系金融機関三機関、商工会議所、商工会の中央会それから各経済産業局、こういうところに設けておりまして、一応、各中小企業の方々がふだん接しているような、これはいろいろな機関があると思うんですけれども、そういうところに行かれればわかるようにはしてあるつもりなんでございますけれども、引き続きPRに努めたいと思っております。

大谷分科員 ぜひPRに努めていただきたいというふうに思います。

 中小企業庁ということで、中小企業全般を見ておられて、一つの特定の産業、特にBSE関連の産業だけを見ているわけじゃないというのが役割だというのはよくわかっているんですけれども、ぜひともこれは、農林水産省の方からも、大事な産業が今大変なことになっているんだということを強く強く言っていただき、またそれを聞く耳をさらに大きく持っていただいて、やっていただけたらというふうに思っております。

 最後の三番目のテーマ、市場の活性化に移らせていただきたいというふうに思っています。

 ことしは、卸売市場制度の改正案という法律が提出される予定でございます。これはまた、農林水産の委員会の中で法案審議される中、議論が深まっていくんだとは思いますが、簡単に私、その考え方を見せていただいて、一、二の疑問があるので、それにぜひともお答えいただきたいなというふうに思っています。

 一つは、これは卸売業者さんがあって仲卸業者がある、そして市場が形成され、その中で競りや相対でもって市場価格が形成されているわけですけれども、今回の法律ですと、卸売さんが直接量販店やスーパーに売ってもいい、仲卸さんが直接産地から仕入れてきて売ってもいい。まさに、卸と仲卸の垣根がなくなっていくわけでございます。

 では、これは市場価格形成システムとか、今まで市場が持っていた機能が何か全部崩れていってしまうんじゃないか。食の流通の大きなかなめである市場、経由率でいえば七割というふうに言われているんですけれども、これを一体どうしようとしているのか。なくそうとしているのか、仲卸さん、そして卸売さんを場外業者化しようとしているのか、全くよくわからないというのが今の仲卸業者さんたちの将来不安だと思うんです。まずもって、この将来不安にぜひともこたえていただきたいというふうに思います。

須賀田政府参考人 卸売市場の機能、まさに先生言われましたように、卸と仲卸が公正な取引によって公正な価格形成をする、そこにあるわけでございます。

 今回の改正、これは誤解を生じている面がありますけれども、卸が仲卸と取引する、第三者販売でございますとか直荷引きでございますとか飛ばしてやる取引は原則禁止、そういう原則は維持したいというふうに考えております。

 ただ、そのままでは、新規の製品の開発とか新規の需要の開拓でございますとかがなかなかできないということがございますので、そういう場合に限りまして、市場の開設者が市場の取引秩序を乱すおそれがないと言う場合に限り、少し弾力化を図っていこうということでございます。言いかえますと、どういうケースで、どういう品目で、どういう数量をどの期間というのを決めて、限定的に弾力化を図っていきたい。それでうまくいきましたら、今度はまた市場取引の方へそれを持ってくる。そういう活性化を図る方途であるということについて、御理解を願いたいというふうに思っております。

大谷分科員 それでは、必ずしも仲卸さんの拡大を望んでいるわけではないということで、これは結果的に仲卸さんが卸業者さん化していくことになってしまうんじゃないかというふうに思っているんですけれども、そこはどうなんですか。

須賀田政府参考人 仲卸は、小売屋さんを系列化している一方のメーンプレーヤーでございますので、仲卸さんを卸化するということを企図したものではなくて、あくまでも市場取引が大きくなることをねらっている制度でございます。

大谷分科員 わかりました。これはまた法案審議の中でしっかりとやらせていただきたいというふうに思います。

 ですから、簡単にまとめますと、市場の中を経由していく云々は別として、市場の役割が大きくなっていくための法律だということですね。わかりました。

 その中にもう一つ出ているのが、完納奨励金という制度が市場の中ではございますが、ここもなくしていくんだというようなことが出ておるんです。私は、今の商取引、例えば量販店さんが支払いのスパンを長くしているがゆえに仲卸さんが経営圧迫を受けている、それで卸さんにお金を払っていくという現状がある中、これは奨励金をなくしてしまったら機能しなくなってしまうんじゃないかという不安があるんですが、その辺は御考慮して述べておられることなんでしょうか、どうなんでしょうか。

須賀田政府参考人 完納奨励金の制度、これまでも法律上の制度ということではなくて、運用で上限設定とか開設者の承認制にしていたわけでございます。

 これは、卸売業者の手数料の法定化という制度が一方にありましたので、それに伴いまして、仲卸さんと取引してその一部をバックするということでありましたので、運用上は、市場の開設者が承認制その他をしていたことがございました。

 今回、こういう取引関係、卸売の手数料、卸業者の手数料を約五カ年かけて弾力化するということでございますので、これに合わせまして、その上限設定、開設者による承認制、こういうものはなくしたいと考えておりますけれども、実態に即して、みずからの判断で開設者が業務規程に規定を設けることは可能とするということで措置したいというふうに考えております。

 いずれにしても、この完納奨励金の取り扱い、実態の問題でございますので、卸、仲卸あるいは売買参加者、これが構成をしております市場取引委員会の場で十分議論をしていただいて、適切に対応してもらいたいというふうに考えております。

大谷分科員 ありがとうございます。

 今回の市場の制度の改正が混乱を招くのではなく、我々消費者にとってはもちろん安全で多種多様の食品が安く手に入る、またその中で役割を果たしておられます仲卸さん、卸売さん、そして産地とありますけれども、特に仲卸さんの現状を見ての制度改正議論が少なかったように思いますので、そこのところをしっかりと踏まえた上で、またこれからも行政を進めていただきたいし、議論をさせていただきたいというふうに思っております。ありがとうございました。

北村主査 これにて大谷信盛君の質疑は終了いたしました。

 次に、山内おさむ君。

山内分科員 民主党の山内おさむでございます。

 私は、国営中海淡水化事業の中止に伴う諸問題につきまして、特に原状回復義務の問題に視点を置いてお聞きをしたいと思っております。

 まず、水質の問題ですが、平成十四年の数値でいきますと、化学的酸素要求量も全窒素も全燐も、中海の湖心や米子湾中心、いずれの地域の数値をとっても環境省の求める環境基準より悪い数値でございます。この水質汚濁は淡水化に関連した事業が原因ではないかと思うのですが、農水大臣の御意見を伺います。

亀井国務大臣 中海の中心部の水質は、平成十四年度の公共用水域の水質測定結果によれば、化学的酸素要求量、COD、全窒素及び全燐、いずれも御指摘のとおり環境基準を超えている、こういう状況にあります。

 しかしながら、中海の水質は、これら三項目の水質測定が開始された昭和五十一年以降、全体としておおむね横ばいで推移してきているということから見て、昭和五十九年度までの堤防工事が実施されていた中海干拓事業が中海の水質に明瞭な影響を与えているとは考えていないわけであります。

山内分科員 それでは、漁獲量の減少の問題についてお聞きしますが、昭和四十二年の中海の漁獲量は二千百九十三トン、そのうち魚類は千二十トン、アカガイ五百九十三トン、海藻類が二百八十一トン。これに対しまして、平成十四年の漁獲量は三百五トンでございまして、内訳は、魚類が二百四十七トン、アカガイが〇トン、海藻類が〇トン。つまり、堤防着工直前の昭和四十二年と平成十四年の漁獲高を比較すると全種別で減っておりますし、あのおいしいアカガイは今は全くとれないような状況でございます。これは淡水化事業が原因ではないのですか。

太田政府参考人 中海の漁獲量でございますが、農林水産統計年報によりますと、総量で、昭和四十二年に約二千二百トンでございましたものが、その後漸減し、平成十四年には約三百トンという状況になっております。

 中海干拓事業との関係を見てみますと、魚類につきましては、昭和四十二年に約一千トンであったものが、平成十四年には二百トンと減少しておりますが、堤防造成後の昭和六十一年ごろには約九百トンと、造成前のレベルに一たん回復をいたしております。サルボウガイにつきましては、昭和四十二年には約六百トンであったものが、昭和五十一年に激減し、それを境にほとんど漁獲が見られなくなりましたが、激減した前後の昭和四十九年から五十一年にかけましては堤防工事を実施しておりません。また、サルボウ以外の貝類につきましては、昭和四十二年に約二百トンであったものが、平成十四年には三十トンに減少しておりますが、森山堤防造成がピークとなりました昭和五十三年前後には約七百トンと、むしろ大幅に増大をいたしております。

 以上のように、漁獲高は堤防の造成にかかわらず増減をいたしておりまして、両者の間に明確な関連は見られない状況にございます。

 また、平成十二年の本庄工区検討委員会の報告書によりますと、中海周辺地域の基幹的産業であります農業や漁業も、近年、担い手の減少、高齢化などの問題から停滞していると分析されておりまして、漁獲高が漸減傾向にあるのは、このようなことも背景にあるものと考えております。

山内分科員 ここ最近、中海では赤潮やアオコが発生するなどして、見た目にも水質が悪化していますが、それでは、この原因は淡水化事業によるものではないのですか。

太田政府参考人 島根県の資料によりますと、昭和四十九年以降ほぼ毎年、中海において赤潮、アオコの発生が確認されております。また、公共用水域水質測定結果によりますと、昭和五十一年以降、赤潮やアオコの発生に影響のあります窒素及び燐の濃度は、全体としておおむね横ばいで推移しております。

 これらのことから、中海干拓事業の実施と赤潮やアオコの発生に明瞭な関係があるとは考えられないというように思っております。

山内分科員 農水省の本庄工区水産調査専門委員会が平成十一年一月に提出した報告書によりますと、干陸を中止して森山堤防と大海崎堤防を両方とも二百メートル開削し、かつ潮汐に応じて中浦水門を開閉した場合には、海水の流量が千トンもふえ、本庄工区での水質浄化に最もプラスになる。漁獲高も、堤防開削により、例えば現状ではアサリが適応する範囲は六二%ですが、開削した場合には九四%まで拡大する。先ほど出ていますアカガイの現状についても、〇トンですから適合する範囲は〇%なんですけれども、堤防を開削した際には九七%にまで広がってくるということも農水省の委員会が指摘をしています。本庄工区だけで最大六千三百トンの漁獲量が見込めるという結果も出ています。この点についてはどう御認識しているんですか、御認識あるんですか。

太田政府参考人 本庄工区水産調査専門委員会は本庄工区の水産利用に関する検討を行ったものでありまして、浅場造成などの水産振興施策を実施するという前提のもとに一定程度の漁獲高の回復が期待できるという報告となっております。

 一方、中海に関します協議会では、堤防開削によります水質や治水への影響について検討すべきとの指摘を受けて、本庄工区検討委員会で用いられましたシミュレーションモデルにより検討を行ったものでありまして、中海の水質や治水にほとんど影響がないとの結果を報告いたしております。

 このように、本庄工区水産調査専門委員会におきます検討と中海に関する協議会におきます検討は、その前提が異なるものとなっております。

 もちろん、堤防開削の取り扱いについては中海に関する協議会で引き続き検討されているという状況にございます。

山内分科員 しかし、その平成十五年の協議会のデータでいきますと、堤防を開削した際に化学的酸素要求量の数値は、開削しない場合に比べて一リットル当たり〇・一ミリグラムよくなる、そういうことがデータとして報告をされています。しかし、今のお話を聞いていると、余り変わらないんじゃないかというようなことを表明されますと、現地の自治体が厳しい予算状況の中で〇・一下げるために必死に取り組んでいる浄化の努力を無にする見方だと思いますが、これについての見解を伺います。

太田政府参考人 第五回中海に関する協議会に報告いたしました、堤防を開削した場合と開削しない場合のCODを比較したデータによりますと、中海の水域によっては〇・一ミリグラム・パー・リッターよくなっている層がございますが、他の水域や他の層では逆に〇・一から〇・二ミリグラム・パー・リッター悪くなっているという状況もございます。また、中海におきます平均のCODは四から五ミリグラム・パー・リッター程度でありまして、〇・一ミリグラム・パー・リッターの変化は二%程度の変化に相当するという状況にございます。

 こうしたことから、堤防を開削した場合と開削しない場合のCODの差についてはほとんど変化が見られないという表現を用いたものでございます。

山内分科員 それでは、別な見方からお聞きしますけれども、本庄工区の堤防建設により遊水面積は減少するわけですね、四分の一を締め切るわけですから。そうすると、中海の水位が上昇したとして、洪水に対する不安を訴える地域の声があるということも聞いておられると思いますけれども、これに対してどのように対応しますか。できれば大臣、見解をお願いします。

亀井国務大臣 中海周辺の農民、地域住民の間にそのような声もあることは承知をいたしております。しかしながら、中海干拓事業におきまして、干拓堤防を造成しても計画洪水位を上回らないよう境水道のしゅんせつ及び中浦水道の拡幅を行い、治水上必要な流下断面を確保して治水計画との整合性を図っているところであります。

山内分科員 私は、淡水化事業も干陸も中止された以上、もとの自然に近い状態に戻すべきだと考えています。まず、本庄工区の周囲の堤防をすべて開削し、中海に、大根島や江島に反時計回りの水の流れを取り戻すことが大変大切だと考えています。島根県にある財団法人宍道湖・中海汽水湖研究所の調査でも、堤防開削で中海の環境が改善される、水産資源も戻ると試算をしております。住民団体や漁民の皆さん、そして鳥取県、米子市、境港市などの地元自治体も本庄工区の堤防を開削すべきと強く訴えていますが、この方向で再考する考えはないでしょうか。大臣の御見解を伺います。

太田政府参考人 本庄工区の干拓堤防につきましては、開削した場合、中海の水質はほとんど変化しないという検討結果があること、境水道のしゅんせつなどにより治水上必要な流下断面を確保していることなどから、農水省としては開削の必要はないというふうに考えております。

 一方、地域には、先生御指摘のとおり、環境や治水の観点から堤防を開削すべきとする意見や、逆に、干拓堤防が道路利用されていることなどから開削に慎重な意見など、さまざまな意見があることも承知いたしております。

 こうしたことを踏まえ、堤防開削の取り扱いについては、鳥取、島根両県に中国四国農政局及び中国地方整備局を加えました中海協議会で、結論を出すべく協議が行われているという状況にございます。

山内分科員 その結論はいつごろ出るのですか。

太田政府参考人 目途をもちろんできるだけ早くということではございますけれども、検討すべき中身によってその期間は一概には申し上げられない状況にございます。

山内分科員 淡水化事業の中止を受けて、それにかわる農業用水の確保対策が急がれていますけれども、その点についてはどういう御見解なんでしょうか。

太田政府参考人 淡水化にかわります農業用水の確保対策についてでございますが、平成三年度までに造成いたしました四つの干拓地につきましては、背後地のため池や近傍の用水路からの導水を可能としますような水利施設の整備などを中海干拓事業により行い、また沿岸の既耕地につきましては、国営、県営等の事業により周辺河川等を水源とした水利施設の整備を行うという方針につきまして、鳥取、島根両県、関係市町、土地改良区等の関係者の理解が得られておるところでございます。

 この方針に従いまして、干拓地につきましては、事業の見直しを行うための土地改良法に基づく手続を了した後、平成十六年度から工事に着手する、また沿岸の既耕地につきましては、弓浜半島及び斐伊川沿岸地域の国営かんがい排水事業等の事業計画の立案に係る調査検討を進めているところでございます。

 いずれの実施に当たりましても、鳥取、島根両県とも連携しながら、適切に対応したいというふうに考えております。

山内分科員 農水省は、淡水化事業の中止に伴って、中浦閘門を撤去する考えのようですが、仮に撤去工事を行う場合に、その工事にはどれくらいの期間を要するのか、どれくらいの費用を要するのか、そして、それに伴う環境への影響対策をどのように考えているのか、お伺いしたいと思います。

太田政府参考人 中浦水門撤去工事の期間でございますが、平成十六年度からの五年間を予定いたしております。また、撤去工事に要する費用といたしまして、約九十四億円を見積もっております。

 また、その撤去工事に関します影響対策でございますが、中海の水質、周辺地域への振動、騒音等の環境への影響につきまして、環境影響評価に関します指針に基づく予測によれば軽微ではございますが、より環境への影響に配慮する観点から、必要な対策を検討いたしておるところでございます。

山内分科員 大臣、今まで水質の問題と、漁獲量の問題と、それから治水の問題について農水省にお聞きいたしました。

 昨年、平成十五年の二月に関係自治体が大島農水大臣に面談をいたしまして、この件についての、早期開削についての要望会をさせていただきました。その際、大島大臣が、事後処理の中に堤防開削の問題があることは承知している、両県に任せる話ではないので、国としても努力をしたい、そういう発言をされていますが、最後に農水大臣の見解をお聞きしたいと思います。

亀井国務大臣 大島大臣おられますし、御答弁をされた経緯もございます。関係県とも十分連携をいたしまして、いろいろ先ほど委員御指摘の問題等々もあるわけでもあります、環境の問題等につきましても十分検討して進めてまいらなければならない、このように考えております。

山内分科員 どうもありがとうございました。

 今までの議論を国土交通省、聞いていたと思いますけれども、国土交通省でも、既存の農地に高潮などの浸水被害が発生していることを聞いていると思います。これは、堤防開削により、水の流れる範囲が広がったり、いろいろな向きに水が流れる、そういうことによって被害をより防げると私は思うのですが、国交省の考えはどうでしょうか。

中島政府参考人 昨年の九月に、高潮で農地に被害が出ております。

 高潮は、台風など低気圧で海面が吸い上げられるといいますか、圧力が解放されて、周りから水が入る現象でございますので、基本的には、特に中海の場合は、日本海の水位をそのまま影響を受けますので、海面が上がればその分上がるというのが基本だと思っております。したがって、干拓堤防があってもなくても、水面が上がればその分上がるというのが基本で、あとは波浪の影響とかいろいろあると思いますが、原則的には、堤防の開削と高潮というのは余り関係がないのではないかというふうに思っております。

山内分科員 今おっしゃった昨年の例というのは、台風があったときの話でしょう。いや、そうじゃなくて、例えば、平成十四年だけを見ても、七月には中海の湖心の水位が七十センチを超えた、最大八十センチに達して、農地七十アールに浸水した。平成十四年九月には、中海の水位が最大九十八センチに達し、千三百十二アールの農地に浸水した。平成十五年九月には、水位が上昇して、七十センチの指定水位に達した。米子市内の住家あるいは事業所、マンホールなどに被害が生じ、また、九月の別の日には水位が警戒水位を上回って、最高で百六センチ、中海周辺の農地二百五十アールに浸水被害が出て、床下浸水七棟、道路の冠水もあった。それでは、これらの浸水被害はどうなんでしょうか。

中島政府参考人 おっしゃるように、高潮で浸水被害が出ているようであります。

 十五年の九月の被害状況を調べまして、その原因としましては、高潮による潮位上昇によって一部漏水が確認されたところとか、越波あるいは排水樋管からの逆流、支川からの排水不良による内水などが原因で浸水被害が生じたというふうに理解しております。

山内分科員 農水省からいろいろ国土交通省も言われているからそうかもしれないんだけれども、例えば、一部でも開削して水の流れや水の量や方向性やそういうものも、漁獲高や水害という被害、あるいは水質の保全ということとは別にしても、国土交通省の分野で道路を、堤を切り刻むということを行って、そういう実験データをとってみるというような考えはないんですか。

中島政府参考人 干拓堤防の開削につきましていろいろ御議論があることはよく承知しておりますが、まず、私どもとしましては、この堤防の開削につきましては、堤防を設置された事業主体であります農水省が交渉なさるというのが基本であると思います。

 先ほども御答弁ありましたように、地元、県と私どもの出先も入りまして協議がされているようでございますので、そこでの議論にゆだねるということが私どもの基本的な今の立場だと思っております。

山内分科員 苦しい答弁であるのはわかるんですけれども、しかし、コンピューター上のシミュレーションばかりやっていても、実際にその開削をしないで机の上だけでデータを収集しても、私はそれは不十分なデータだと思います。

 そういう二百メートルを開削しなくても、例えば十メートルぐらい開削してでも、潮の流れを見たり塩分がどうなっていくのかということを判断するのは、やはり役所同士でもチェックをし合うという関係をつくって、そして地域住民のためにどういう施策が国として必要なのかということを考える場合には、そういう姿勢というのは私は大切だと思っています。

 今宍道湖とそれから中海を結ぶ大橋川の拡幅工事が計画されていますけれども、その点についても、本庄工区の堤防を開削しなければ、それでなくても地球温暖化で海面上昇が心配されているわけですから、中海の水位もどんどん、斐伊川の山の上からどんどん水が流れてきて、大橋川が拡幅されれば中海の水位は上昇していくという因果関係にあると思っています。また、例えば米子市旗ケ崎にある工業団地では、五年間で二十センチという地盤沈下が起きていて、浸水被害も起こりやすくなっています。

 大橋川拡幅を進めるということは、堤防開削があって初めて許される工事だと私は思いますし、住民の皆さんや鳥取県あるいは米子市などもそういう主張をしていますけれども、国土交通省ではこの件についてはどのように考えているのでしょうか。

中島政府参考人 大橋川の改修は、斐伊川流域全体と申しますか、上流のダム群の整備とか放水路と並んで三点セットなどと申しておりますが、実施している事業でございまして、ぜひとも御理解いただきたいのは、これらの事業が全体として斐伊川さらには神戸川流域全体の治水の安全度を高めているということを御理解いただきたいと思います。

 中海の堤防、湖岸堤の整備もあわせて必要でございまして、これにつきましても、堤防の管理者、いろいろたくさんあるのでございますけれども、私ども管理者とも連携をとりまして、着実な整備について、責任を持ってその整備を促進していきたいというふうに考えております。

 干拓堤防の開削が治水をどうこうというよりも、それ自体にそんな大きな影響があると思っておりませんで、そういうのも前提にした上で全体としての治水を進めていきたいということでございますので、よろしくお願いします。

山内分科員 よろしくと言われましても、本当に地元のお考え、あるいは少しでも堤防を切って、本当に実際の生の数字を、データを示してほしいという地元住民あるいは関係市町村あるいは県の意見というものは大事に考えてもらいたいと思います。

 私は、時流に合わない事業だとして国が国営事業をやめるわけですから、できるだけ厳しい、できるだけ壊した環境とかあるいは自然はもとどおりにしていく、そして原状回復にしっかりと努めていく、これが私は国の態度として必要だと思っています。

 だからこそ、原状回復をしなければいけないという理念があるからこそ、中浦水門も撤去されると思うんです。だとすれば、本庄工区の森山堤防も大海崎や馬渡堤防も撤去して、もとにあった状況に戻して、水質が浄化されて、魚や人が泳ぎ、浸水被害におびえることのない地域社会を実現することが私は国の責務であると考えています。

 堤防開削を強く求めたいと思いますが、もう一度、恐縮ですけれども、大臣の御見解を聞いて、終わりたいと思います。

亀井国務大臣 先ほどもお話し申し上げましたが、両県とも十分連携し、そしてその対応を図ってまいりたい、このように思っております。

山内分科員 ありがとうございました。

北村主査 これにて山内おさむ君の質疑は終了いたしました。

 次に、伴野豊君。

伴野分科員 民主党の伴野豊でございます。

 本日は、予算委員会の第六分科会ということで、農林水産行政につきまして、大臣初め皆さん方にお伺いをしたいと思っております。

 昨年は、ちょうど一年前に、同じようにやはりこの予算第六分科会で、農水行政につきまして、きょうもお越しになっていらっしゃいます大島大臣にいろいろお聞きしたわけでございますが、私が申し上げるまでもなく、農林水産行政というものは国の根幹中の根幹、基盤中の基盤と言ってもいいものでございまして、我が国農耕民族からすれば、その歴史、文化にも基づく国づくりの基盤になるのではないか、そういった意味で大変興味を持っております。とりわけ私は、昨今のこのグローバルかつ自由貿易社会の中において、食の安全保障あるいは危機管理という面で大変興味を持っておりまして、できることなら、いつの日か農林水産委員会でしっかりと委員を務めさせていただく日があればな、そんなことを思いながらきょうは質問をさせていただければ、そんなふうに思っております。

 ここへ参ります前にも、ちょうど地元と話をしておりましたら、きょうは亀井大臣とお話をする、そうした中でやはり地元は、特に子供たちが今の鳥インフルエンザ、非常に情報も錯綜しておりまして、正直言って怖がっているという電話が入っておりまして、もし時間があれば、多分何回もこの場でも質問が出ているかと思いますので、時間があれば少しそのあたりのお話もさせていただければと思っているんです。

 きょうはその前に、かねがね私が思っております農業、漁業を一つのなりわいあるいは営みの中心とした地域のまちづくり、この場合は私は平仮名で書くべきだと思っているんですが、どうもまちづくりといいますと、国土交通省さん、あるいは多少自然保護という点で、最近環境省さんも少し自然再生という面でやっていらっしゃるようでございますが、このあたりにも農水行政のお立場から積極的に、農業、漁業をなりわいの中心としているようなところには手を出していっていいんじゃないかな。国土交通省さんやその他の行政の皆さん方とそのあたりは切磋琢磨して、どっちがいいまちづくりができるんだという政策を争っていただいてもいいんじゃないかな、もうそういう時代に入っているんじゃないかなと思っておりまして、きょうはその観点から、ぜひ大臣に御所見を幾つかお聞きしたいと思うわけでございます。

 その一つの問題点といいますか、課題の中に、やはり雇用がなければ、後継者がうまく育たなければそれは絵にかいたもちになってしまうだろうということで、昨年も当時の大島大臣にお聞きしましたが、農業、漁業のいわゆる後継者問題というのは、我が地元の知多半島でも非常に重要な案件になっておりまして、昨年も同様の質問をさせていただきましたら、当時の大臣からも御丁寧なお話をいただいたわけでございますけれども、その中でこういう御回答がございました。漁業における阻害要因といたしまして、漁業権の難しさあるいは漁業資源の維持、これは世界的にも非常に重要案件になっているという御回答がございました。

 この案件に関しまして、省としてこの一年、どう取り組まれたのか、どう発展したのか、どう改善されたのかお話しいただければ。よろしくお願いいたします。

亀井国務大臣 漁業後継者の不足の問題は、陸上労働に比べまして危険を伴うという問題、また、漁村社会への受け入れの問題や資源状況の悪化、こういう面で将来への不安が原因である、こういう面での後継者不足の問題が考えられるわけであります。

 また、御指摘の漁業権の問題は、漁業への新規参入を制約している面もあろうかとも思いますが、それ自体古くからの慣習を踏まえて制度化したものでありまして、短期間にこれを変えるという性質のものでないわけでありまして、ぜひ御理解をいただきたい。

 資源問題につきましては、資源回復計画等によりまして、漁業者の参画を得つつ、積極的にその回復に取り組んでおりますし、資源の評価につきましても、本年度の予算におきましてもその拡充を図ることといたしておりまして、中長期的な視点からこれらの施策を推進してまいりたい、このように考えております。

 また、昨年の大臣答弁にありますとおり、新規参入の促進策は重要でありまして、農林水産省といたしましても、漁業への新規就業者確保対策といたしまして、都市部における漁業者フェアの開催、漁協による研修生の受け入れ等の各般の施策を進めております。

 平成十四年の新規就業者は千四百八十一人、前年千三百七十人でございますので、前年より若干増加が見られるわけでありまして、依然として低い水準にあることは事実でありますので、これらの施策を着実に実施してまいりたい、このように思っております。

伴野分科員 漁業権の問題、長い歴史と伝統の間にいろいろな経緯を経てそういうお話が出てきたわけでございますので、一朝一夕にはなかなか改革をするのは難しいのかなと私自身も理解はしておりますが、しかしながら、守るべきものを守るために変えていかなければいけない、まさに改革だと思うんですね。

 このあたりのところ、関係者の皆さん方が頭を柔軟にしていただいて、守るべきものを守るためにも発想を豊かに、あるいは時代の流れに合った権利、あるいは既得権益のあり方というものを考えていただければ、そんなふうに思うわけでございます。また、若年層の後継者といいますか、若い担い手を育てる、多少甘やかし過ぎて、またこれも保護し過ぎてだめにしてしまってはいけないと思うんですが、しかし、長い目できっちりと育てていく計画というのは非常に重要かと思いますので、お力添えをいただければ、そんなふうに思っております。

 それと、二つ目、これも漁業関係なんでございますが、昨年、少し地元を回らせていただいたときに、これもまた地元ネタで恐縮なんですけれども、当時言われていた、多分今も同じ状況かと思いますが、魚介類を原料とした加工業、この救済というのが非常に我が地元では重要な案件になっておりまして、行けば行くほど、きのうまで営業されていた、あるいは稼働していた工場がさびついた状態でほったらかされているというようなところを目にするわけでございますが、このあたり、何かいいお知恵があれば教えていただけますでしょうか。

田原政府参考人 お答えいたします。

 先生ただいま御指摘されました水産加工業でございますけれども、経営体数でいきますと全国で約一万経営体、生産金額といいますか出荷額といいますか、それでいきますと約三兆七千億円ということで、これはやはり地域経済におきますそれなりの役割を果たしているわけでございますし、活性化、さらには国内漁業の振興という面でも水産加工業の振興ということは大変大事ではないかと私どもも認識している次第でございます。

 ただ、問題は、一万経営体と申し上げましたけれども、ほとんどが中小零細企業ということでございまして、従業員三百人以下のいわゆる中小企業関係、これが九九・八%を占めている、二十人以下がさらに七四%ということで、非常に規模が零細であるということから、企業としての体質が弱いということは御指摘のとおりということではないかと思います。

 私ども水産庁といたしましては、こうした水産加工業に対します支援策ということで、一つは地域加工品のブランド化、あるいは水産加工業者が共同して原料魚の調達の改善を行うというふうなことに対します施設の整備の助成ですとか、あるいはソフト事業でございますけれども、そういった話し合いの推進でございますとかいったこと、さらには、例のHACCP関係の導入の促進ということで、いろいろな資金制度の導入ですとか、さらには水産加工品につきましても原料原産地の表示、こういったことによりまして国内水産物に対します消費者の方々の信頼を高めていくということ、こういったこと等いろいろやっているところでございまして、こうした支援策を今後とも講じさせてもらうことによりまして、ぜひ水産加工業の体質強化と、今後とも将来にわたって水産加工業を健全に発展させていきたいということで頑張っているところでございます。

伴野分科員 まさに今お示しいただいた数字のとおりでございまして、我が国の非常に重要な産業も担っていてくれているわけでございまして、そこが非常に今痛み、苦しんでいるということでございます。ぜひ今後ともいろいろな知恵を絞り出していただきまして、救済とまではいかないまでも、少しでも温かい手を差し伸べていただけるようによろしくお願いいたします。また、トレースもしていただければ、こんなふうに思っております。

 それと、三つ目でございますが、これは漁業の漁業権にも当たることなのかもしれませんが、昨年、やはり農業における後継者問題について、その阻害要因として当時の大島大臣からお答えいただきました、阻害要因の一つである農地取得の困難さ、もう一つは農協改革についてのお話がございましたが、この一年、どのように省としてお取り組みになられまして、あるいは改善された点があればお教えいただければと。

亀井国務大臣 農業の後継者を確保するためにも、就農の際に必要となる技術等の習得、資金の手当て、あるいは農地の確保、こういった課題に対応しつつ、就農形態や経営発展段階に応じたきめ細かい対策をいたしておるところでもございます。

 具体的には、昨年の御質問以降、新規就農者を確保するための措置として、厚生労働省と「農林業をやってみよう」プログラム、これを昨年四月策定し、ハローワークと新規就農相談センターとの連携を実施しているところでもあります。

 さらに、農業法人等への就農を促進するための措置として、法人等に対する無利子の就農支援資金の貸し付け等を内容とする青年等就農促進法の改正法案を今国会に提出しているところでもございます。

 また、農地の取得につきましては、現行五十アール以上、こうなっておりますところを、農地取得の下限面積につきましては、昨年十月から構造改革特別区域法に基づきまして十アール、このように引き下げる措置を講じたわけでありまして、新規就農者の農地取得を容易にしているところでもございます。

 また、農協改革につきましては、経済事業改革を中心に取り組んでいるところでありまして、昨年三月に取りまとめました農協のあり方研究会におきましての報告書を受けまして、農協改革を支援するための農協法等の改正法案を、実は本日の閣議決定をいたしましたところでございます。

 今後とも、新規就農の確保に向けてさらなる努力をしてまいりたい、こう思っております。

伴野分科員 農業、漁業に限らず、一定のモラルあるいは一定のレベルを維持するために、時と場合によっては一時的な閉鎖性というのも必要なのかもしれませんが、一般論として、やはり新規参入、新しい血が入り、そして若い人たちが興味を持ちモチベーションが高まるような、そういう仕組みづくりというのは、一つの組織なり、あるいは一つの規模を維持していくためには非常に重要な案件かと思います。ぜひとも、今後ともいろんなお知恵を出していただき政策に生かしていただければ、そんなふうに思います。

 続きまして、ここからは少し、私自身都市計画というのが専門でございまして、今回、農業、漁業を一つのなりわいとしたまちづくりのあり方というのを、ぜひ農水省さんに進んで提案していただければと思っているわけでございます。

 私の地元の農業、漁業を営みの中心としている町というのは、南知多町、美浜町という二つが代表されるわけでございますが、やはり景色もだんだん変わってきてしまう、それから場合によっては、非常に大きく構えれば文化も変わってきてしまう。これは、後継者が育っていないというところもあるんですが、伝えるべきことが伝わっていないということもあります。

 それから、土地の使い方というのもだんだん乱雑さも見え隠れしているというようなところで、特に耕作放棄地の有効活用というのを図っていただきながら、やはり積極的に、平仮名で書くまちづくり、日本の伝統的な文化を守るためにも積極的に政策で打って出ていただきたいなと思うわけでございますが、このあたり、何かよい施策をお考えでしたら。

太田政府参考人 我が国は、南北に長い地形によりまして、非常に多様な気候風土を有しております。そうした中で地域の特性に応じた農林水産業が営まれておりまして、これが一種の地域の個性を生み出していると思います。それぞれの農山漁村は、食料などの生産の場であるとともに地域住民の生活の場となっておりまして、国土環境の保全、良好な景観の形成など多面的機能の役割も有しております。

 このため、農林水産省といたしましては、農林漁業の振興に向けた生産基盤の整備とともに、都市に比べて立ちおくれている生活環境を整備し、豊かで住みよい、また美しいまちづくりを支援しているところでございます。

 一方で、国民の価値観が多様化する中で、近年、農林漁業体験を楽しみたいという人々や里山の保全活動に参加してみたいという人々、さらには都市から農村に移り住んで農業を始めようという新規就農希望者なども増加しております。

 このような状況を踏まえまして、特に耕作放棄地が見られる地域等におきましては、特区制度によります、大臣が答弁いたしましたとおり、農地取得の下限面積要件の緩和あるいは市民農園の開設主体の拡大等を進めまして、都市と農山漁村の共生、対流を推進し、地域の活性化に取り組んでいるという状況にございます。

伴野分科員 今、御答弁にございましたように、まさにそこでの営み、どういう農業、どういう漁業、どういうものをつくっているかによってそこの地域の顔ができてくる、あるいはできたというお話がございましたけれども、まさにそうだと思うんですね。ぜひ、平面的なお考えだけではなく、農林水産行政によって立体的なまちづくり、空間づくり、景観づくりを推進していただけるような施策を、これからもどんどん打っていっていただきたいなと思うわけでございます。

 そうした中で、やはり平仮名で書くまちづくりというのは、国土交通省あるいは環境省、場合によっては厚生労働省さんなんかとの連携も必要なのかなという気がしているわけでございますが、他省庁とそうやって連携して、よく言われる縦割りではなく、ぜひ力を合わせて切磋琢磨して、どちらがやってどちらが得点を上げる、そういう狭い観点ではなく、各省庁とも連携して地域をつくっていくというお考えに立った場合、今後どんなお考えがございますでしょうか。

太田政府参考人 実は、農村振興局という局の名前は、まだできて三年目になります。それまでは別の名前で進めておりましたが、国土庁の地域振興局の役割を一部担っておる、そういった意味で、農林水産業、なりわいの仕事から地域も担当するということになりまして、ただいま各省とのいろいろな連携を進めるべく努力をいたしております。

 一つの例を申し上げますと、今国会で国土交通省、環境省と一緒に提案させていただきました景観法などはその典型的な例でしょうし、生活インフラの関係では、下水道と集落排水を連携しながら進めるといったこともしております。

 また、ソフト的な対応といたしましては、観光立国の実現に向けまして、美しい農山漁村の景観形成を図り、外国人旅行者も訪れるような、観光立村と言っておりますが、そういった推進を図るとともに、また環境省とは、エコツーリズムの定着、普及に向けた検討に、私どもからグリーンツーリズムを進めておりますので、そうした立場から参加して、あるいはまた森林環境教育にもかかわっていくといった形で、さまざまな連携を深めておる状況にございます。

伴野分科員 ぜひぜひ連携を深めていただきまして、地域の側に立ったまちづくりができるように御推進いただければ、そんなふうに思っております。

 続きまして、また地元のお話で恐縮なんでございますけれども、そういった観点の中で、先ほどもちょっと例に出させていただきました我が知多半島においては、南知多町、美浜町、各町長、本当にいろいろ知恵を出して頑張っているわけでございます。例えば、先ほど申し上げた南知多町におけるお話とすれば、魚介類を中心とした加工業がなかなかうまくいかない、あるいは美浜町においても後継者不足に悩むとか、いろいろ問題点が、あるいは課題がございます。

 そうした中で、それぞれの町長、例えば美浜町においては、例えば今度、食と健康の館というものをつくり、塩づくりを体験させながら、いわゆる地元でつくっている伝統的なものを体験させながら関心を持たせ、あるいはまちづくりに生かしていく、観光産業の一つにもしていくというような工夫をしているわけでございますが、何か南知多町、美浜町に今後、将来のためにアドバイスしていただけるとすれば、どんなお話がございますでしょうか。

太田政府参考人 南知多町、美浜町、私もかつて若いころ訪れたことがございます。名古屋市から一時間圏内にあって、青い海と緑の里山が多く残された、ふるさとの原風景が残る、そういう地域だというふうに認識しております。

 こうした大都市近郊の立地条件を生かされることがまず大事だろうと思います。農業、漁業の振興を通じた地域づくりを進める上で、消費者の身近な場所での新鮮でおいしい農水産物の提供、あるいは自然との触れ合い、農林漁業体験の場の提供などの取り組み等、これを地域の活性化につなげていくことが有効というふうに考えられます。

 農林水産省といたしましては、こういった取り組みに対し、新鮮な農水産物を提供する直売所の整備など都市近郊の特質を生かした農業、漁業の振興、あるいは都市住民のレクリエーションニーズに応じました市民農園、魚釣り桟橋などの整備、さらには農地の遊休化が深刻な地域では先ほど申しましたような特区制度の活用、さらには農家、漁家民宿を活用いたしましたグリーンあるいはブルーツーリズム、こういったことを推進しているところであります。

 ぜひ、地域におきましては、まずはその地域の立地条件を生かした主体的な取り組みが大事でございますが、我が省といたしましても必要な御支援をさせていただきたいというふうに考えております。

伴野分科員 基本的には地域のことは地域に任せていくべきだとは思うんですが、今御指摘のございました日本の歴史、伝統、文化、風景、これらのものは、必要なものは金をかけてでも守るというぐらいの決意で手を差し伸べていただくことも時には必要じゃないかなと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 続きまして、時間の許す限り最近の話題について幾つか、大臣初め関係各位に質問させていただければと思うわけでございます。

 私も大変お世話になった時代がございますし、今でも娘がたまに連れていけというときもございます。やっぱり地元へ戻りましても、アメリカのBSEの終結はいつなんだろうか。非常に大臣、頑張っていただいている面もあるわけでございますが、国民的には、いつ、あのスタイルで、あの値段でまた牛どんがおいしく食べられるのか非常に興味を持っておりまして、ずばり言ってくれというのは難しいですけれども、いつごろだったら何とかなりそうですか。ちょっと教えていただければ。

亀井国務大臣 国民の健康保護を第一に、食の安全、安心、このことで、アメリカに対しまして我が国と同じようなことを、こういうことを申し上げておるわけでありまして、本当に先方には何回か説明もしておりますし、我が国の消費者のニーズに合うものを、こういうことで、先方から御提案をいただくことを待っておるわけであります。

 牛どんの問題につきましては、いろいろ関係の皆さんも知恵を出し、また日本の国産の牛肉をお使いになっていろいろおやりになる、あるいはオーストラリア産、豪州産、こういう努力もされておるわけでありますが、今、いつということを申し上げることは、大変残念ながらその状況にないというのが実情であります。

伴野分科員 大変難しい質問だったのかもしれませんが、アメリカにも言うべきことを言っていただいて、ただ、やはりいつまでもということでもないんだろうと思います。ですから、安全が確認されれば、できるだけ早く、またあの値段で食するということは、多分国民の大多数の希望でもございますので、どうか御尽力いただきますよう、よろしくお願いいたします。

 そういう意味でも、自由貿易の中で、この分野で、あるいはこの食物が何かなったときという観点で見ると、危機管理、あるいは先ほど申し上げた食の安全保障という観点からも非常に重要な案件であるわけでございます。

 そんなことを考えておりましたら、ここ一週間といいますか、その前からもお話があったわけでございますけれども、鳥インフルエンザの話、多分この分科会でもいろいろな質問があったかと思いますし、本委員会においても何度となく御答弁もいただいているのかもしれませんが、今の時点で、この鳥インフルエンザ、きょうも新聞に大きく載っておりました、現状と今後の見通し、お考えがあれば。

中川政府参考人 高病原性鳥インフルエンザでございますが、これまで我が国では山口県、大分県、それから京都府というふうに、三例の発生が確認されております。この高病原性鳥インフルエンザへの対処の要諦は、できるだけ早く見つけて、そしてできるだけ早く対処する、早期発見、早期対処が基本であるというふうに思っております。

 この観点に立ちまして、これまでも家畜伝染病予防法、それから、昨年の九月に既に準備して各都道府県に配付しております防疫マニュアルに沿って、発生現場におきまして、まずはそこの養鶏場のところの鶏を処分する、それから汚染された物品をきちっと埋却する、さらにまた周辺の地域におきまして一定の移動制限をお願いする、こういうことで対応してきたわけでございます。

 一例目の山口につきましては、現場におきまして的確な対応をしていただきまして、既に二月の十九日に移動制限が解除されておりますし、二例目の大分におきましても、二月の二十八日に、とりあえず第一次の清浄性確認の結果を踏まえまして、移動制限から搬出制限に一つランクを落としたわけでございます。残念ながら、三例目につきましては、養鶏事業者の方からの通報が遅かったということがございまして、また、さらに鶏を食鳥処理場に出荷をしたというふうな問題点もございまして、非常にその後問題が出てまいりました。極めて遺憾なことだというふうに思っております。

 何よりも、こういった異常があった場合にはできるだけ早く報告をしていただき、現場での対応ができるようにお願いをしたいというふうに思っております。これからも、改めて関係の都道府県や関係の団体に対しまして通知を発出いたしますし、また、今週の四日に予定しておりますが、全国の都道府県の方々に集まっていただいて、改めて周知の徹底を図りたいというふうに思っております。

 こういった対応をしながら、一方で、疫学調査などによって感染ルートの解明を進めるということも大事でございますし、それから、国境措置という面で、輸入の検疫をきちっとやっていくというふうなこと、それから全国的な監視体制、それと消毒を初めといたします発生の予防策を徹底するというふうなこと、こういった手法を取りまぜて、さらなる発生の防止に努めたいというふうに思っております。

伴野分科員 そうなってしまった原因といいますか、特に今御指摘あった三つ目の例で、連絡が遅かった、あるいは、はっきり言ってその後の対応の仕方の不備といいますか、とりわけ疑いが疑いを呼んでしまうような行為、今も調査中であるから軽々には申し上げられないんですが、どうもそのあたりのところ、自分で自分の首を絞めていらっしゃるような部分もあるんじゃないかなと。

 私も地元でおつき合いのあるそういう農林水産漁業の方々というのは、本当に素朴で、人のいいと言うと大変失礼な言い方になるのかもしれませんが、いい方が多いんですが、ただ、今回京都で起こったことは、これは本当にちょっと、後々調査が進めば明らかになることでございますが、どうも本当に消費者の目から見ると、こんなことをやっているのかというようなことが起きているわけでございます。

 ぜひそのあたり、調査の進展とともにやはり、確かに同情したくなる部分もあるんですが、不可抗力の部分もあるんだと思いますが、しかしモラルハザードが起きないように、きっちりとこの後は信賞必罰の態勢で臨んでいただければ、そんなふうに思います。

 時間があればもう少し質問もしたかったんですけれども、そういった意味で、最近やはり食の賞味期限の表示の問題あるいは生産地表示の問題、どうしても消費者から見ると、けげんそうにまゆをひそめたくなるようなことも起こっております。このあたりのところ、ぜひともしっかりと、トレーサビリティーといいますか、監視もすべきところはきっちりとしていただき、二度とこういうような疑惑が疑惑を生むようなことがないようにお願いしたいなと思っておるわけでございます。

 最後に、これはもう本当に時間がなくて申しわけないんですが、これも地元のある栄養士さんからの質問をあえてさせていただくわけでございますが、学校給食の中においてもう少し、学校給食を通じて食の教育というものをしていったらいいんじゃないか、あるいは食の情報を流していったらいいんじゃないかというような御指摘があったわけでございます。

 その中で例として上がっていたのが、乳製品あるいは卵や大豆のアレルギー性の問題。学校でどういうことが起こっているかというと、御案内のように、パンと牛乳はもう必需品で学校給食にあるわけでございます。とにかく食べないとだめだと言われているわけでございますが、お子さんにしてみると、それを食べるとアレルギーになってしまう。そういった情報がきちっと先生にも学校にも、あるいは仲間にも伝わっていないものですから、牛乳を飲まないことが何か悪いことをしている、いじめになっているというようなこともあったり、情報がきちっと伝達されていないいい例だとは思うわけでございますが。

 学校給食といえばすぐ頭に浮かぶのは文科省ということになってしまうんですが、こういうところもぜひ、情報を持っていらっしゃるところは、積極的に攻めていく政策という意味で、学校給食なんかにもぜひ皆さん方の情報を的確に流していただいて、それを通して食の情報、食の教育ができるような政策も積極的に打っていただきたいなと思うわけですが、このあたりはいかがでしょうか。

木村大臣政務官 まさしく伴野委員おっしゃるとおりでありまして、私ども、もう既に文部科学省等関係省庁と連携を深めて食育の大切さというものに邁進いたしております。子供さんたちが小さいころからみずからの食について考え、判断する能力を養うということは本当に大事なことだと思っております。

 私ども、例えば出前の出張というものを行っておりまして、実は私、一カ月ほど前に東京都内江戸川区の新堀小学校というところに、私の方から文部科学政務官に呼びかけまして、一緒に視察をしてまいりました。

 校長先生を初め先生方、大変熱心でありまして、当日、私も文部政務官と一緒に、子供さんたちと一緒に給食を食べまして、その後、授業の中で、こちらでは岡野さんという栄養士の先生の授業、そしてまた、私ども農林水産省の東京統計・情報センターというところに勤めております三宅さんという方が、いわゆる出前講座みたいな形で子供さんたちに食育の大切さというのを教えて、またどんどん子供さんたちからのいろいろな意見や質問に答えていた、そういう場面を見て、私も、むしろこっちの方が勉強させられたような気がいたしております。こういったことを全国的にもっともっと展開していければなと。

 既に、各都道府県の教育委員会の方にも、こういったこともぜひ活用していただきたいということもお願いしておりますし、あるいは、本省においては、時に食育をテーマにした展示会等を催しておりまして、大分一般の方が視察されているようでありますから、こういったことも引き続き努力していきたいと思いますし、また、本省のホームページにおいても、食育の大切さ、また今現在取り組んでいる内容等々、広くPRし、情報の提供に努めてまいりたいと思います。

伴野分科員 ぜひ、子供たちの脳細胞初め体をつくるのは農水省だという、そんな思いで頑張っていただければ、そんなふうに思っております。

 どうもありがとうございました。

北村主査 これにて伴野豊君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして農林水産省所管についての質疑は終了いたしました。

 これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつ申し上げます。

 分科員各位の御協力によりまして、本分科会の議事を滞りなく終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午後二時三十一分散会


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