衆議院

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第2号 平成17年2月28日(月曜日)

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平成十七年二月二十八日(月曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 小泉 龍司君

      北川 知克君    北村 直人君

      玉沢徳一郎君    岡島 一正君

      近藤 洋介君    中川 正春君

      中塚 一宏君    橋本 清仁君

      吉田  泉君    和田 隆志君

      江田 康幸君    坂口  力君

   兼務 肥田美代子君 兼務 松野 信夫君

   兼務 田端 正広君 兼務 佐々木憲昭君

   兼務 山本喜代宏君

    …………………………………

   農林水産大臣       島村 宜伸君

   環境大臣         小池百合子君

   農林水産副大臣      岩永 峯一君

   環境副大臣        高野 博師君

   農林水産大臣政務官    大口 善徳君

   環境大臣政務官      能勢 和子君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   林  幸秀君

   政府参考人

   (総務省自治税務局長)  板倉 敏和君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局電波部長)         竹田 義行君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  田中 慶司君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  白須 敏朗君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  須賀田菊仁君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            川村秀三郎君

   政府参考人

   (林野庁長官)      前田 直登君

   政府参考人

   (林野庁森林整備部長)  梶谷 辰哉君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁次長) 細野 哲弘君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)            岩井 良行君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           阿部  健君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局次長)           平田憲一郎君

   政府参考人

   (環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長)   南川 秀樹君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局長)            田村 義雄君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局環境保健部長)       滝澤秀次郎君

   政府参考人

   (環境省地球環境局長)  小島 敏郎君

   政府参考人

   (環境省環境管理局長)  小林  光君

   政府参考人

   (環境省自然環境局長)  小野寺 浩君

   農林水産委員会専門員   飯田 祐弘君

   環境委員会専門員     遠山 政久君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月二十八日

 辞任         補欠選任

  玉沢徳一郎君     北川 知克君

  中塚 一宏君     橋本 清仁君

  永田 寿康君     和田 隆志君

  坂口  力君     江田 康幸君

同日

 辞任         補欠選任

  北川 知克君     寺田  稔君

  橋本 清仁君     岡島 一正君

  和田 隆志君     中川 正春君

  江田 康幸君     桝屋 敬悟君

同日

 辞任         補欠選任

  寺田  稔君     玉沢徳一郎君

  岡島 一正君     近藤 洋介君

  中川 正春君     増子 輝彦君

  桝屋 敬悟君     坂口  力君

同日

 辞任         補欠選任

  近藤 洋介君     中塚 一宏君

  増子 輝彦君     吉田  泉君

同日

 辞任         補欠選任

  吉田  泉君     永田 寿康君

同日

 第三分科員田端正広君、第四分科員肥田美代子君、松野信夫君、第五分科員山本喜代宏君及び第八分科員佐々木憲昭君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十七年度一般会計予算

 平成十七年度特別会計予算

 平成十七年度政府関係機関予算

 (農林水産省及び環境省所管)


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     ――――◇―――――

小泉主査 これより予算委員会第六分科会を開会いたします。

 平成十七年度一般会計予算、平成十七年度特別会計予算及び平成十七年度政府関係機関予算中環境省所管について、政府から説明を聴取いたします。小池環境大臣。

小池国務大臣 平成十七年度環境省所管一般会計予算及び特別会計予算について、その概要を御説明申し上げます。

 まず、予算の基礎となっております環境政策の基本的な考え方について御説明申し上げます。

 最近、世界の各地で洪水、干ばつ、熱波などの異常気象が発生し、昨年は、日本でも、夏の記録的な猛暑に加えて、数多くの強大な台風が上陸し、多くの人命を奪うなど激甚な被害をもたらしました。このような中で、国民のだれもが、気候の変動や異変を直接肌で感じ取り、関心を高めているのではないかと思います。

 これを環境問題との関連で見ると、地球温暖化が進行することによって、異常気象が頻発し、その規模も大きくなることが予測されています。今こそ、関心の高まりを契機として、私たち一人一人が、地球温暖化などの環境問題をみずからの問題として再認識することが重要です。今日の環境問題の多くは、通常の事業活動や家庭における日常生活など、社会経済のあり方そのものに起因するものと言えます。これまでの事業活動やライフスタイルのあり方を根本から見直し、環境保全の知恵を結集して積極的に取り組んでいくことが、環境と経済の統合による持続可能な社会の構築につながっていくものと考えます。

 以上の基本的な考え方に基づき、社会経済の大転換を実現するため、環境省では、脱温暖化社会の構築と循環型社会の構築を二本柱として、施策を推進します。これらの施策の推進に当たっては、地域、特に家庭や学校に焦点を当てた取り組みに力を入れます。また、自然と共生する社会、環境汚染を防止し、安全で安心できる社会を構築するための施策を講じます。さらに、地域の実情に応じた機動的できめ細かな環境行政を展開するため、本年十月に地方支分部局である地方環境事務所を設置します。

 二十一世紀が環境の世紀となり、持続可能な社会への変革を実現できるかどうかは、現在の私たちがどのように生きるかにかかっています。その分岐点に立つ私たちは、目先の利益を追うだけでなく、将来の地球のために何をなすべきかを考え、ためらわずに取り組んでいく責任があります。

 環境をよくするための取り組みが適切に評価され、私たち一人一人が地球を守る担い手であることを実感できるような環境の国づくりを目指して、私は、これからも全力で取り組んでまいります。

 平成十七年度環境省所管一般会計予算及び特別会計予算につきましては、以上のような基本的な考え方に立って取りまとめております。

 まず、一般会計予算では、総額二千三百五十五億七百万円を計上しております。次に、特別会計予算につきましては、石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計に一般会計から二百三十三億円の繰り入れを行い、総額二百三十八億三千六百万円を計上しております。

 なお、委員各位のお手元に資料が配付されておりますが、環境省所管一般会計予算及び特別会計予算の主要施策につきましては、お許しを得て、説明を省略させていただきたいと存じます。

 よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。

小泉主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま小池環境大臣から申し出がありました環境省所管一般会計予算及び特別会計予算の主要施策につきましては、これを省略して、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小泉主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小泉主査 以上をもちまして環境省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

小泉主査 質疑に入るに先立ちまして、分科員各位に申し上げます。

 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力をお願いいたします。

 また、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。北川知克君。

北川分科員 おはようございます。自民党の北川知克でございます。

 きょうは、朝早くから小池大臣初め環境省の方々も大変お疲れさまでございます。初めて環境関連の委員会で質問をさせていただきます。

 先ほど大臣の方から、今年度の予算、そして環境政策に取り組む姿勢について御所見をお伺いいたしました。先日の二月十六日の京都議定書の発効式、私どもも出させていただきましたけれども、日本の国がいよいよ環境元年の意味合いを呈しているんだなという思いで聞かせていただきました。

 先日の京都議定書の発効における式典でもお話がありました、これからの、日本だけではなく世界各国の、この地球温暖化をどのように防止していくのか、その点について皆様方の、識者の方々の御意見も、私どもも拝聴させていただきました。

 やはり、国がやっていかなければならない仕事、そして地方自治体、そして企業等々、今まで大変な努力もしてきていただいております。しかし、今、現状を見れば、民生部門や運輸部門というものが非常に二酸化炭素の排出が多い。こういう現実を見たときに、やはり私は、環境という問題は国民の皆さんの一人一人の意識の改革、環境教育を通じてこういう点も重要であろうと思っております。国民の皆様方に理解と協力を求めていく、そして意識の改革を求めながら、国民の皆さんと一緒になってこの環境問題を解決していかなければならないなという思いと同時に、今ある環境に対する制度をどのように改革し、そしてどのように新しい制度を構築していくのか、こういう点であろうと思っております。

 この新しい政策の点について、一つの柱として、昨年、環境税の議論が出てまいりました。政府税調がいち早く、まだまだ政治的にこの議論が熟していないということで、断念といいますか、もう一つ幅の広い議論が必要であるということで先送りの方針が出ましたので、自由民主党の中でも濶達な意見がありましたけれども、実現を見なかったわけであります。

 この点について、国、地方自治体が努力をしてきております。そして、国民の皆様方に理解を求めながらの、今後、環境税を導入していく方向の中で、どの程度この二酸化炭素の排出を軽減できるのか。一九九〇年レベルから六%のカットを言われております。しかし、今現実にはもう一四%のカットが必要になってきております。環境税の中でどの程度の削減が見込まれるのか、この点について、まず、局長で結構でございますので、御答弁をいただければと思います。よろしくお願いいたします。

田村政府参考人 今委員おっしゃられましたように、環境省のこれは速報値でございますが、二〇〇三年度における我が国の温室効果ガス排出量が京都議定書の基準年でございます九〇年と比べるとプラス八%ということでございますので、マイナス六%という約束との間には確かに一四%というギャップがあるわけでございます。環境省は、昨年十一月に御指摘のように環境税の具体案を公表いたしました。この環境税の具体案におきましては、この一四%のギャップのうち四%強程度をこの環境税ということによって埋めようというような案を提出したところでございます。

北川分科員 ありがとうございます。

 一四%のうちの四%ということでありますけれども、私は、去年の政府税調の議論、その議論の中身というものは詳しいものはわかりませんけれども、やはりこの環境税という問題を考えていく上において、もう一つ掘り下げて、国民の皆さんから見れば、今徴収をされておりますガソリン税や揮発油税、それからガスや石油、石炭、エネルギー等に係る税というものは、国民の皆さんからすれば、環境という意識の中での一つの税ではないかなという思いをいたしております。基本的なその基幹税の中での一たん見直しといいますか整理をした中で環境税という名目を導入する、そしてその上で足らない分はかけていく、こういう段階的な処理といいますか税制というものが必要ではないかなと思っております。

 この点について、マスコミも含め、国民の皆様方、そして業界、それぞれの立場でいろいろな意見があると思いますけれども、一たんそういう税を整理した中で、環境税という名目を国民の皆さんに訴えて、理解と協力を求めていく。そして、足らない点については、これは森林に使いますよ、そしてこれは道路も整備しなければ環境にも負荷を及ぼしますよという中で環境税というものをつくっていく方が、私は国民の皆様方に理解をされるのではないかなと思っております。

 いろいろな今までの経緯があると思いますけれども、その点について環境大臣の方から御意見をいただければと思います。よろしくお願いいたします。

小池国務大臣 冒頭に委員のお考えを述べられたところでございますが、その前に、二月十六日、京都議定書発効記念行事の折には、わざわざ京都までお越しいただいて、御参加いただきましたことに感謝を申し上げたいと思います。また、発効を機に、この京都議定書、我が国の目標達成ということで、心を一にしてまた取り組んでいきたい、このように思っているところでございます。

 今お尋ねの環境税の問題でございますけれども、既存のエネルギー関係諸税、揮発油税、石油石炭税などございますけれども、道路の整備、そしてエネルギー対策などの財源の調達を目的として課税されているということでございまして、また、その見直しについては、温暖化対策の推進とはまた別途の議論も必要である、このように考えております。

 それから、エネルギー関係諸税でございますが、環境税と同様に化石燃料に課税するものとなっておりまして、その副次的効果としてのCO2の排出抑制効果があると考えられておりますが、環境税は、こうした効果も含めまして、これまでの既存の温暖化対策では削減が不十分であるということから追加的な施策として検討をしているところであるということも考慮すべき点ではないかと思っております。

 今後、環境税をめぐりまして、さまざまな観点から、また、さまざまな場におきまして議論が行われていくものということでございますが、環境省といたしましては、これらの議論の進展を踏まえまして、また、今先生まさに御指摘でございました既存のエネルギー関係諸税との関係にも留意をしながら、地球温暖化防止という観点から、京都議定書目標達成計画の策定作業を通じまして、環境税の果たすべき役割について検討を行ってまいりたいと考えております。これを踏まえて、環境税のあるべき姿を早急に検討してまいりたい、このように考えております。

北川分科員 ありがとうございます。

 いずれにいたしましても、時代の流れといいますか、異常気象等々もありますし、よく我が国が、早期発見、早期治療という医学の分野での話もありますが、地球が病んできているといいますか、そういう兆候があらわれてきていると思っております。その中で、やはり国民の皆様方へのアピール等をぜひ積極的に進めていただきまして、環境税という名目等が導入をされる中で、国民の皆様方へのアナウンス効果といいますか、これがあると思いますので、その点も考慮に入れながら、ぜひしっかりとした議論をしていただきたいと思っております。

 これと同時に、環境という問題は、エネルギーと関連が欠かせない問題であります。今、中東、イラク、イラン、シリア、レバノン、いろいろな動きがありまして、昔から、第一次、第二次オイルショック、中東の動きによって、日本も、経済的にはいろいろな形で影響を受けてまいります。

 今、中東の情勢、イラクも、通常選挙といいます選挙に入る前の選挙を行っております。そして、サウジアラビアも、一部の地域で選挙という初めての試みが見られました。私は、サウジアラビアというのが、今まで石油が生産をされ、富の分配を国民にされてきたのでありましょうけれども、この先五十年、六十年のいずれにしろ、この石油というものは枯渇をしてまいります。

 それによって、サウジアラビアは、今民主化という一つの選挙を経て、五十年先の国づくりを目指しているのではないかなという思いをいたしておりまして、中東問題に非常にお詳しい小池大臣でありますから、そのあたりの、サウジアラビアの今後の国づくりの方向性、そして同時に、エネルギー全般、我が国にも影響が非常に大きいわけでありますから、環境省としては難しいかもしれませんが、今後の我が国のエネルギー政策等々について、中東の問題、ちょっとかけ離れてはおりますけれども、お詳しい大臣でありますから、その点もお聞かせを願えればと思いますので、よろしくお願いいたします。

小池国務大臣 ありがとうございます。

 エネルギーと環境とは、コインの裏表のような、もしくは同一の問題ではないかと思っております。

 また、中東問題でございますが、私も、十九歳のときに中東に参ったのは、別に帰国子女とかそういう問題ではなくて、自分の意思を持って、だてや酔狂で行ったわけではなくて、基本的に我が国の生命線というのは中東にある、そしてまた、そちらに日本はほとんど目を向けていないじゃないかということで、みんなから奇異の目を受けながら参ったわけでございます。

 そしてまた、現地におる際に、第四次中東戦争が始まりました。それは、すなわち、我が国にとっての第一次のオイルショック、一九七三年の石油危機につながってまいるわけで、私は、実際に中東の地において、日本の慌てぶりというのを間接的に見ていたわけでございます。

 いずれにしましても、我が国というのは特に化石燃料については非常に脆弱であるということはもう論をまたないわけでございまして、また、環境の問題という観点から考えますと、我が国は、みずから得ることのできるエネルギーをつくっていくというのは、ほかのどの国よりも真剣にやっていかなければならないのではないか。それと環境とともにセットで、どのような国家、そしてまた、それが安全保障ともつながり、それから社会の安定にもつながりと、総合的に考えていかなければならないのではないか、そういう思いで、今、環境大臣を務めさせていただいているということでございます。

 そこで、中東が今後どうなるかというのは、これはもう各国さまざまな要因を抱えております。イスラム全体ということでも、これからは人口の問題などで非常に不確定な要素は多々抱えております。

 総合的に申し上げると、非常に多くの議論をしなくてはなりませんが、今お尋ねの中で、その心として、我が国独自のエネルギーということであるならば、例えば具体的に申し上げますと、太陽光、これは世界じゅうというか、日本は恵まれている部分もあろうかと思います。風力、これは地域によって大変、可能性はまだまだあります。それからバイオマスですね。

 こういった再生可能エネルギーは我が国で自給できるエネルギーでありますし、また、その利用を拡大するということは、地球温暖化対策、そしてエネルギー自給率の向上の観点から重要だということで、今御審議いただいております予算の中にも、例えば、地域のエネルギー需要の相当程度を再生可能エネルギーで賄うモデル地域を整備する事業、それから、地方公共団体によります再生可能エネルギーなどの率先導入に対しての支援事業、さらには、住宅用太陽光発電システムなどを導入いたしました二酸化炭素低排出型の住宅の普及を促進する事業などを盛り込ませていただきました。それによって、再生可能なエネルギーの利用拡大をしっかりと促進してまいりたい、このように考えております。

北川分科員 ありがとうございます。

 いずれにいたしましても、このエネルギーの問題、環境省としても積極的にそのような形で取り組んでいただきたいと思っております。

 日本に、UNEPの機関が琵琶湖と大阪花博の跡地にありますけれども、私たちの先人の方々が苦労してこの日本の地に持ってきていただいた施設であります。水フォーラムで琵琶湖のUNEPの機関が随分使われて機能をしたんですけれども、その後、このUNEPの機関というのが、環境税や地球温暖化の問題に対して、もう一つ存在感が薄れているような感じがいたしておりまして、環境省、政府としても、UNEPと協力をしていただきながら地球温暖化問題にぜひ取り組んでいただきたいと思っておりますが、その点についてちょっと御意見を伺えればと思います。

小島政府参考人 UNEPの機関が大阪と滋賀にございます。水フォーラムではいろいろ活躍をしていただきましたけれども、現在はイラクの復興支援ということで、いろいろな活動をしていただいているという意味で、非常にUNEPの機関も貢献をしているというふうに考えております。

北川分科員 ありがとうございます。

 余り表に出ることが少ないものですから、国民の皆さんも、そういう国連の機関が日本にあるということを認識されている方々が少ないと思いますし、我々も、そういうアナウンスをしながら、日本の国というのが積極的に国際社会の中でも環境問題に取り組んでいるということをアピールしていかなければならないと思っております。

 私も、おやじに同行してナイロビまで参りまして、UNEPの本部で当時のドルバー局長にお会いして、ぜひ日本に二カ所、その機関を持ってきていただきたいというような交渉もさせていただきましたのを今思い起こしながら、そういうたくさんの方々の御努力で今こういう機関があるということを認識していかなければならないなと思っております。

 続きまして、今回、政府関連におきましては、予算案においても提案をされております循環型社会形成推進交付金制度についてお伺いをしたいと思います。

 この問題については、三位一体の改革の議論を契機として、環境省では、公衆衛生の向上、公害問題の解決を主目的とする廃棄物処理施設整備費補助金制度を今回廃止して、循環型社会の形成という新たな課題への対応を進めるための循環型社会形成推進交付金制度を創設される予定とお聞きをしております。

 二十世紀の大量生産、大量消費、大量廃棄型と呼ばれる社会から脱却し、循環型社会への転換を図ることは国家的課題であると考えておりますし、新しい交付金制度により、国がリーダーシップを発揮して循環型社会の形成を進めていく取り組みを私は高く評価いたしております。地方分権が言われる中でありますが、やはり環境というものは県境や国境において壁も立てられません。やはり国がこういう問題について積極的に取り組む上においても重要であろうと思っております。

 ただし、この制度は、国と地方が協働して広域的かつ総合的に廃棄物処理やリサイクルの取り組みを進めるという新しい内容のものでありますので、その実際の運用をどのように行われる予定であるのか、具体例を踏まえつつ、お聞きをしたいと思います。

 現在、私の地元であります大阪の北河内の四市、具体的には寝屋川市、枚方市、交野市、四条畷市の四市が一部事務組合を結成いたしまして、各市で分別収集をしたペットボトルやプラスチック製の容器包装廃棄物を選別し、圧縮こん包する施設の整備計画を進めております。このような施設を整備する事業は新しい交付金制度の対象になるのでしょうか。廃棄物・リサイクル対策部長にお聞きをしたいと思います。よろしくお願いいたします。

南川政府参考人 委員御指摘のとおり、新しい交付金制度を現在予算で提案しておるところでございます。これは三Rを推進するということでございますけれども、当然ながら、今話題になりました北河内の四市につきましても、国も最初から協議会に加わった形で市町村と意見を交換しながら地域の計画を策定する、そしてそれに位置づけられれば交付対象になり得るというふうに考えておるところでございます。

北川分科員 ありがとうございます。

 こういう点について地元からまた案件が上がってくるということでありますが、今の御説明によりますと、地域の作成する計画が交付金の前提となるようでありますけれども、この地域計画はどのように作成されるのか。また、循環型社会を目指す上では、リサイクルや熱回収を効率的に行うため、市町村の区域を超えた広域的な取り組みが必要な場合も多いと思います。国や都道府県も含めて、広域的な観点から国と地方が十分に意見交換を行った上で計画を作成することが重要と考えておりますが、この点についてはいかがでしょうか。もう一度部長の方から。

南川政府参考人 計画づくりでございます。

 まず、主体はあくまで市町村でございますけれども、その市町村の連合体、この場合、北河内四市に呼びかけいただきまして、国、環境省と府がそれに加わるということで協議会をつくりたいということでございます。

 その協議会において、当然ながら、三Rをどう地域として推進していくかということを議論し、検討し、そしてそのために、単に施設づくりだけではなくて、まずごみをいかに減らすか、そしてごみをいかに再利用するか、そしてその上でリサイクルする、そして処理するといったことについて幅広い検討をする必要があると考えております。

 その上で、協議会として計画をつくっていただき、それに基づいて施設づくりのための交付金の申請をいただくというステップを踏むことが必要だと考えております。

北川分科員 ありがとうございます。

 いずれにいたしましても、ぜひ国もしっかりとこの議論に参加をしていただくことが大事だなと思っております。適切な計画を作成してもらいたいとも思います。

 もう一点、計画の内容についてもお伺いをしたいと思います。

 廃棄物処理やリサイクルの計画は、当該地域の廃棄物の全体像をとらえた上で、三R、いわゆるリデュース、リユース、リサイクル、これについて戦略的な目標を設定した上で、一般に言われるライフスタイルの見直し等を含めた廃棄物の発生抑制方策並びに分別回収の徹底等によるリサイクルの推進方策、そしてリサイクルが困難な廃棄物からの熱回収の推進方策等を総合的に推進することが重要であろうと思っております。

 先ほど大臣のお話にもありました、熱回収で新たなエネルギーの創出という点にもつながるでありましょうし、こういう地域計画にもこれらの施策をバランスよく位置づけることになると私は理解をしておりますが、この点でよろしいでございましょうか。

南川政府参考人 この計画づくりでございます。まずきちんとした目標をつくりたいとぜひ思っております。

 三Rと一言に言いますけれども、まずごみを地域としていかに減らすかというところから議論をしなければならないと思っております。これは中央環境審議会でも随分いろいろな議論を行いましたけれども、家庭ごみについてなかなか発生量が減らない。バブルのころから一人当たり一日一・一キロを超えております。バブルがはじけてもごみが減らないということでございますので、これをいかに減らすかでございます。例えば、その中で、一般廃棄物についても有料化政策を進めるといったことも地域によっては当然ながら話題になってこようと思うところでございますし、また、この場合には、ごみの収集方策につきましても、不公平が生じないように各戸を、各家を収集車が回るといったことも必要かということで、そういったことも議論の俎上に上ってくると思います。

 また、リユースでございますけれども、これは、いわゆる一升瓶を回収して回るというシステムがなくなっておるわけでございます。そういった瓶にかわってペットボトルなどが市場に出回るという中で、そういう市場の動向の中でいかにリユースを進めていくかということも当然ながら議論をしていく必要がございます。

 また、リサイクルでございますけれども、これも、まずはいかに、マテリアルリサイクルと申しますけれども、物から物へのリサイクルを効率的に進めるかということが必要でございますし、それが困難な場合であっても、廃プラスチック等についてリサイクルできない場合でも、できる限り熱回収をしていくということでございます。

 その上、もちろん、残念ながら最終的に処理すべきごみは残るわけでございます。これにつきましても、従来のような生埋めということではなくて、できるだけ三Rをした後に、なおかつ無害化し、なおかつまたその上で最小の容積にして埋め立てるといったことを進めていきたいと考えておりますし、また、各地域でも、そういったことを御検討いただいた上で私どもが入って議論に加わり、いい計画をつくっていきたい、その上で、本当に必要な施設づくりについての支援を行ってまいりたい、そんなふうに考えておるところでございます。

北川分科員 ありがとうございました。

 いずれにいたしましても、環境元年という位置づけの中で、環境行政が新たな政策といいますか取り組みになるわけでありますから、こういう転換期であります。ぜひしっかりとした取り組みをしていただきたいと思っております。

 最後に、大臣にお伺いをしたいと思います。

 小池大臣は環境政策に積極的に取り組んでいただいておりまして、先ほど来からの話もお聞きいたしますと、心強いなと思っております。こういう社会経済の大転換を今後実現するために、脱温暖化社会の構築と循環型社会の構築を二本柱にされて環境行政のかじ取りをされる方針であると、先ほど来からお伺いをしてそう思ったのでありますが、循環型社会の構築を進める上で、今回創設されるこの交付金制度を適切に運用し、地域計画に位置づけられているリサイクル施設の整備等を積極的に支援していくことと同時に、やはり最初に申し上げました国民の皆様方の理解と協力、この点が重要であると私は思っております。

 この点も含めまして、今後、循環型社会づくりを進めていく上での大臣の御決意をお伺いしたのでありますが、ことしちょうど、四月の二十八日から三十日まで東京で、昨年のG8のシーアイランド・サミットにおける合意、三Rイニシアチブを開始するための閣僚会合が行われると聞いております。この会合は大臣が中心になって進められるのでありましょうけれども、これも踏まえて大臣の御決意をお伺いできればと思いますが、よろしくお願いいたします。

小池国務大臣 環境行政の今の二本柱の一つが循環型社会の形成でございますけれども、今御紹介ございましたように、我が国で三Rイニシアチブ閣僚会合を開くわけでございます。それは、すなわち、我が国のみならず世界に向けてこの三Rの精神、取り組みを広げていくということでございます。

 それから、そのために足元をしっかりしなければならないわけでございまして、地域単位でごみの発生抑制を含めて、廃棄物の処理、リサイクルのあり方を見直していくと同時に、今お話しありました国民の皆さんの理解を呼びかけていきたいと思っております。

 ちなみに、せんだってノーベル平和賞を受賞されましたマータイさんが、何ともったいない精神を大変評価してこられて、そういえば日本にはもったいないという言葉があったなと言って、忘れられていた日本の美徳の部分を掘り起こしてくださったのじゃないかなと思って感謝も申し上げ、また、このもったいないという言葉をどうやって広げていくのか、また知恵を絞ってまいりたいと思っております。

 あとは技術的な部分になるかもしれませんけれども、循環型社会形成推進交付金制度を最大限に活用する、循環型社会形成推進地域計画の策定を進めて、リサイクル施設の整備を含めました総合的な取り組みを積極的に支援してまいりたいと思います。もったいない精神を広く普及させるとともに、この循環型社会の形成を推進していきたい、このように思っております。

北川分科員 ありがとうございます。ぜひ積極的に取り組んでいただきたいと思っております。

 そして、そのマータイさんのもったいない精神、高野副大臣も当日会場でおっしゃられまして、私は、日本のすばらしいこういう環境に対する文化というのが太古の昔からあると思っております。そういうもったいないもあるでしょうし、ありがたいというか、天から授かるもの、これは気候もそうであります。環境もそうであります。ありがたいなと物に感謝をし、人に感謝をする、こういう気持ちも重要ではないかなと思っております。

 環境問題というのは、行き着くところはやはり人の意識だと思っております。環境教育、今積極的に取り組んでいただいてもおりますけれども、やはり文部科学大臣とも強く連携をとり合っていただきまして、環境教育を推進していただいて、今学力の向上云々言われておりますけれども、ゆとり教育等々の中でも積極的に環境教育というものを取り入れながら人の幅をつくっていく、人というものが生きていく上においてやはり環境というのは大事である。このもったいないや、そしてありがたい、こういうような精神と言ったら怒られるかもしれませんが、こういう意識をぜひ小さいときから根づくような環境教育というものを連携をし合ってとっていただきたいと思っております。そのことをお願い申し上げまして、きょうの質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

小泉主査 これにて北川知克君の質疑は終了いたしました。

 次に、和田隆志君。

和田分科員 おはようございます。民主党の和田隆志でございます。

 けさは、地球温暖化を議論するには少し厳しい冷え込みになっておりますけれども、審議のほどはぜひホットにお願いしたいと思います。

 まず、小池大臣、一昨年の御就任以来、このテーマは本当に大臣にとって最重要テーマであると思います。九七年の京都議定書、それの採択以来もう約八年が過ぎております。

 私、今回この問題を取り上げさせていただきます問題意識として持ちましたのは、九七年当時から今に至るまで、行政各部の皆様方がどのようにこの地球温暖化というテーマに対してそれぞれのその時点での状況を認識され、そしてその時々の必要な施策を打ってこられたか、その検証をやっていただきたいと思いましてテーマに選びました。

 当然ながら、これから約束年度であります二〇〇八年から二〇一二年度までの五年間を迎えます。まさにもう目の前に迫ってきておりますので、ここから先のスピードアップは本当に喫緊の課題だと思います。

 私、財務省におりまして、この問題にも若干携わらせていただいたことがございます。その当時も、この問題に対しては、その時点での取り組みが随分おくれているのではないか、そういうふうに自分でも考えまして、まだ京都議定書発効前でございましたけれども、CDM、クリーン・ディベロプメント・メカニズム、こういったところに携わっている中で、発効は前だけれどもこういったものは用意しておかなきゃいけないという問題意識で取り組ませていただいた覚えがございます。

 そんな中で、小池大臣、環境省になったのは二〇〇一年からでございますが、九七年当時にこの問題を扱われていた大臣は、私の知るところでは大木大臣だと思います。外務省御出身で、随分お勉強されて環境行政にも明るい方でしたが、私がその当時この議論を見守っていた中で、日本がどの程度諸外国と議論の状況を合わせてきて、日本の置かれた状況、外国の置かれた状況、これを総合的に判断した上で目標を設定されたのか、そこに若干の疑問が残りました。

 といいますのは、日本は御存じのように、九〇年当時に比べて目標達成年次に六%の排出量削減というのを約束しましたけれども、ほかの諸外国と比べてかなり厳しい条件を自分に課したような、そういったイメージを持ちます。それはそれで、環境に対して積極的に取り組む日本の姿勢を示す上で、また議長国としても大事だったと思います。しかしながら、その後の国内対策を考えていく上で、きっちりと外国とも交渉してきましたという成果はきっちりと国民に御説明いただく必要があるのではないか、そういうふうに考えて見守っておりました。

 そんな中ですが、大臣、いろいろと引き継ぎのときに御説明を受けられていると思います。九七年当時に日本が置かれた状況、またアメリカやEUや発展途上国が置かれた状況、こういったものについてどういう評価をなさっておられますでしょうか。

小池国務大臣 地球温暖化というのがもう世界のテーマになってきている。それは、リオのサミットのときに枠組み条約という、世界のほとんどの国が入ったそういった条約を取り交わせて、大きな目標は各国が設定をしているということでございます。また、京都議定書は、それをどのようにして達成といいましょうか、目標に向かっていくのかという方法論を長い間議論してまとめたものでございます。数値に関しては、当時の環境大臣をされていた大木大臣を議長として、京都の国際会議場におきまして、各国がまさに外交の一部としてこの地球温暖化に対して大変な議論が行われた、このように聞いているところでございます。

 数値などにつきましてはそれぞれの考え方もあるでしょうけれども、確かに、日本にとってはマイナス六%というのはなかなか厳しいものであるけれども、先ほどの三Rイニシアチブも、閣僚会議を我が国でやるということは、それをきっかけにまた国内の取り組みを進めるというような、そういうドライブをかけるというような意味もございます。

 その意味で、一たん京都議定書ということで我が国が批准をし、さらにその議定書がついに今回発効するわけでございますので、この六%の削減という世界に向けての我が国の公約ということにつきましては、これからもしっかりと守っていくための方法論を、今度は国内の方で計画に策定するための作業を今進めているところでございます。

 遅いか早いかということは、これは二〇〇八年から二〇一二年の第一約束期間、しっかりとそれを守ることができるのかどうか、また守らなければならないわけでございますけれども、そのときの評価を受けるべきではないか。今私どもは、政府一体となってこれを達成すべく、さまざまな立場で、さまざまな方法で最善の努力をしているという、このようなところではないかと私は考えております。

和田分科員 大臣として積極的に取り組まれている姿勢は評価させていただきますけれども、やはり九七年当時から考えて、今に至るまで、随分事態は深刻化していると言わざるを得ないのではないかと思います。

 まず冒頭に諸外国との交渉でどのような評価をされているかということをお聞きしたのには、皆様方よく御存じのとおり、脱落者がおります。米国という国が世界でどれぐらいたくさんの二酸化炭素相当量を排出しているかということを考えますと、京都議定書を採択したときの議長国である日本の責任は極めて重いと言わざるを得ないと考えます。そういった意味で、これから後に議論させていただく国内対策の進展度合いとともに、アメリカに対する働きかけというのは、やはり小池大臣、環境行政を預かる大臣、最高責任者ですから、大きな責任になってくるのじゃないかと思います。

 また、小泉政権にとっては、アメリカとの関係は本当に親密であると自他ともに認めていらっしゃる、そのようにお聞きしていますけれども、そういった関係であればなおさら、この環境分野にどうして盟友である米国が引っ張り込めないのか、そこは環境大臣としてもぜひ積極的に取り組んでいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

小池国務大臣 アメリカにつきましては、国際会議の場で、アメリカの方の政府当局者とも、また実際にワシントンに参りました際には、ホワイトハウスの当局者、さらには議会の皆様方ともできるだけ接点を持ってそれを進めてきております。また、細かい話ではございますけれども、せんだってアメリカ議会の議員の政策担当のスタッフの方々が来られたんですね。御承知のように、アメリカの場合は議員の政策スタッフというのはかなり影響力を持ってくるわけですね。ということで、その場において、日本がアメリカをどのように見ているのか、そしてまたアメリカが京都議定書に戻るということを彼らにまで大臣である私が説得をしているというような状況でございます。

 アメリカは、政権、州政府、そしてまた議会、それぞれいろいろな主体がございます。現時点では、京都議定書に対してアメリカ政府、特にブッシュ政権はなかなかネガティブな答えが返ってくるというのは残念なところではございますけれども、日本として積極的にまた粘り強くアメリカに対しても呼びかけをしてまいりたい。

 また、それは日本だけではございませんで、ことしのG8はイギリスがホスト国になって、そして二つ設定しているテーマが、一つがアフリカであり一つがクライメットチェンジであるということでございまして、これは一つ、今後とも各国とも協力してアメリカとの対話を進めていこうというあらわれ、このように感じているところでございます。ぜひともこのG8の場ということも注目してまいりたいと思っておりますし、私自身、日本としてもそこで声が上がるような、そういう場を確保していきたい、このように思っておるところでございます。

和田分科員 ぜひアメリカに対しては、小池大臣のリーダーシップのもと、また地球温暖化対策推進本部は総理を本部長としておりますので、総理が日米関係でそれぞれの場で話をされる際には、ぜひトップバッターとして取り上げていただきたいということを御要望して次に移りたいと思います。

 さて、そのような環境の中で、国内対策を九七年以降、いろいろな面で進めていらっしゃることは存じ上げておりますが、しかし、先ほど申し上げたように、随分この取り組みのペースが遅いのではないかという問題意識を私としては持たざるを得ません。

 といいますのも、いろいろと資料を調べてみますと、九七年、議定書を採択した当時からもう随分深刻なトレンドはうかがえるわけでございます。例えば、家庭や業務その他というふうに仕分けていらっしゃる部門においては、九七年当時にわかっていたであろう統計数字としては九五年ぐらいまでだと思います。この中で、伸び率からすると、例えば家庭部門、九二年六・六%、九三年七・八%、九四年一三・一%、九五年一五・五%、これは九〇年、基準年次に対する増加分でございますが、こういったこと等を前提にしますと、相当大きなトレンドで今言われている部門間のばらつきが出てくるであろうというようなことは想定し得たはずだと思います。

 そういった中で九七年、議定書を採択して、九八年に最初の大綱を定められておりますけれども、その定められたときの経緯と、このトレンドをどのように評価してそれを定めたのか、環境省の事務方から御説明いただけますか。

小島政府参考人 今委員御指摘のとおり、交渉の時点では一九九五年のデータを見ておりました。そのデータをもとに、平成九年の関係審議会の合同会議の報告書が出されたわけでございますけれども、各部門における省エネルギー対策、それから電源における原単位の削減、こういう対策を加味して、二〇一〇年には産業部門はマイナス七%、運輸部門は、電源の原単位低減がききませんので、一九九五年のレベルに維持しようということでプラス一七%、民生部門はプラスマイナス〇%、こういう報告をいただきまして、これをベースにCOP3の交渉にも当たったわけであります。

 COP3の交渉の結果、日本は三ガスでいっておりましたけれども六ガスに拡大されたこと、あるいは吸収源や京都メカニズムという新しいことが合意されました。それらを加味してマイナス六%を引き受けたわけでありますけれども、その場合におきましても、エネルギー起源CO2についてはプラス・マイナス・ゼロということで、マイナス六%が達成できるというふうに考えたわけであります。この目標はその後の旧大綱あるいは現在の大綱にも受け継がれておりまして、政府の努力としては、その目標をいかに達成するかということで事業量の確保等に邁進をしてきたというのがこれまでの経緯でございます。

和田分科員 その分析そのものが本当に正しかったのであろうかといった問題意識を持たざるを得ません。そういった意味で、これから先、それぞれの分野を所管される省庁の方々にも少しお伺いしてみたいと思います。

 先ほど環境省の方から御説明ありましたように、九七年当時に大体どれぐらいのことを見積もられて、また環境省がいろいろと取りまとめられている目標数字に対して、どのような評価とどのような施策を打っていこうとされたか。

 そして、大綱というのはまた二〇〇二年に見直されております。そのときには、先ほどお話にも出ましたけれども、特に目標数値の変更は行われないで、政策展開を充実させていこうということを取りまとめられているように見受けられますが、何年間かありますね、九八年から二〇〇二年まで四、五年が経過しておりますけれども、今御説明する時間がございませんが、そのトレンドもかなり深刻化してまいっております。その中で、なぜ目標値も変えないでいけるというふうに判断されたのか。

 きょうは、経産産業省それから国土交通省、農林水産省、それぞれにいらっしゃっていただいていますので、それぞれ御説明いただけますでしょうか。

細野政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘になりました当時の状況と今日に至るまでの経過、それから、見直しに当たってのいろいろな前提の置き方をどう見ていたかということについてお答えを申し上げます。

 御案内のように、通産省の方では、産業界のもろもろの取り組み、それからあと家庭部門あるいは運輸部門等につきましてもいろいろなツールを持っておりますものですから、それぞれのところでどれぐらいポテンシャルがあるかということについて検討させていただいております。

 御案内のとおりでございますが、まず産業部門でございますけれども、基本的には、経団連の自主行動計画というのがございますので、こういったものをベースにしながら、支援をする方策と、あるいは規制的な手法によるものとうまく組み合わせをすることによって、産業界の努力を後押ししていくということでございます。

 御案内のように、産業界におきましては、ちょっと基準が古くなりますけれども、オイルショックのころから比べても、エネルギー消費ベースでいいますと余りふえていないということにも代表されますように、大変顕著な成果を上げてきております。

 それから、民生部門でございます。これは、今御指摘のとおり、生活の水準が上がるとかあるいはOA化が進むというようなことで、なかなか減らない分野でございますけれども、そういった分野におきましても、御案内のように家庭用の機器につきましては、いわゆるトップランナー方式という方式を省エネ法で持っておりますが、これは、一定の期間にいろいろな機器について目標を定めていただいて、なるべくその一番いいところにそろえていく、こういう方式をとることによって効率の向上を図る制度がございます。

 端的には、冷蔵庫なんかが一番いい例だと思いますけれども、これは過去二十年間ぐらいでだんだん生活様式が向上しまして、容量が約二倍ぐらいになっております、大きさが。ところが、いわゆる原単位といいますか、効率が四倍以上にもなっているものですから、二十年たっても冷蔵庫の一つの消費量というのは半分以下になっている、こういうような成果を上げてきているわけでございます。

 それから、そのほか省エネ機器につきましては、最近非常に喧伝されておりますヒートポンプ、こういったものを最大限活用して成果を上げてきておりますし、それから、住宅あるいは建築物の分野につきましても、国土交通省といろいろ連携をとらせていただいて各般の成果を上げてきております。

 それから、需要面だけではなくて、いわゆる新エネルギーの導入によってCO2を減らすということについても精力を傾注しておりまして、例えば太陽光発電、こういったものは、財務省の方からいろいろ予算もつけていただいたわけでありますけれども、この十年間で導入量が約三十六倍になる。それから、そういうふうになると当然のことながら量産効果も働きますもので、価格は五分の一になるというような成果も上げてきております。

 今後でございますけれども、先ほど申し上げましたように、業務用の床面積がふえるとかOA化が進むというようなことで、なかなかふえない要素もあるわけでございますけれども、トップランナー方式の対象になるもの、機器の増加でありますとか基準の強化、それから運輸部門につきましても、クリーンエネルギー自動車の導入でありますとか、あるいはトップランナー方式による自動車そのものの燃費の向上、これも引き続き上積みが期待できるということで、先ほど申し上げましたようなトータルでマイナス六%になるように、産業界における、あるいは民生部門における、あるいは運輸における努力になお余地があるだろうということで、もろもろの対策を引き続き講じていく所存でございます。

平田政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま先生の方から、九七年の京都議定書の採択時、その後におきます節目節目の段階で、私ども国土交通省の運輸部門としてどのような問題意識でおったのか、それに対する対策をどういうふうに講じてきたのかという点についてお答え申し上げたいと思います。

 まず、京都議定書におきまして、先ほど来お話がありましたように、対基準年比六%削減という形で決定されたわけでございますが、これを受けた九八年の対策の策定時におきましては、既に運輸部門のCO2の発生量は対基準年比で大幅な増加を見せておりました。当時、九五年当時でございますが、排出量で対九〇年比一七%増の約二億五千万トンのCO2の排出量となっておったわけでございます。

 このように、自動車交通、特に自家用の自動車からの排出が引き続き急激な増加傾向を示している中で、大綱に記載いたします削減量の検討に当たりましては、運輸部門の排出量の増加を抑えて、約束期間におきまして現状程度の排出量に抑制することを目標として設定いたしました。その実現のための施策といたしましては、自動車の燃費の改善の強化でありますとか物流の効率化、さらには公共交通機関の利用促進などを掲げていたところでございます。

 また、二〇〇二年の三月に現在の大綱を策定するに当たりましては、排出量が九五年よりもさらに増加をしている中で、排出削減目標を実現するために取り組みの強化を図っていこうということで、自動車税のグリーン化の導入を行いました。低公害車の開発普及の推進でありますとかモーダルシフトの推進強化の新規施策を盛り込んだところでございます。

 そして、現在、京都議定書の目標達成計画を策定中でございますが、運輸部門のCO2の排出量はこれまでの施策の効果も見られるところでございまして、最近では横ばい傾向から削減傾向を見せております。しかしながら、今なお現大綱に設定されております目標値の二億五千万トンのCO2の排出量を上回っておりますので、一層の施策の強化が必要となっているのは先生御指摘のとおりでございます。

 このような状況を受けまして、昨年の五月でございます、国土交通省に置かれております交通政策審議会におきまして、今後の排出量の動向予測を踏まえまして、運輸部門の地球温暖化対策の方向性につきまして御審議をいただきました。

 これによりますと、従来の対策に加えて、新たに産業界との連携、つまり荷主と物流事業者とのパートナーシップの確立というようなことがうたわれ、なおかつ、地域との連携、例えば通勤の交通マネジメントでありますとか交通規制、道路管理者、地元自治体との連携の強化といったような視点からの新規施策に取り組む必要性が指摘されているところでございます。

 これを受けまして、国土交通省といたしましては、地球温暖化対策を含めた環境施策の全般について検討をいたしまして、昨年六月に国土交通省環境行動計画なるものを策定いたしましたが、この中で、先ほど申し上げました審議会の御指摘を踏まえて、新たな地球温暖化対策といたしまして、荷主と物流の事業者との連携強化の枠組みをつくっていこうといういわゆるグリーン物流総合プログラムでありますとか、ESTモデル事業と言っておりますけれども、地域におきまして自動車の交通需要の調整対策と公共交通の整備をパッケージで実施していこうという、環境的に持続可能な交通システムと呼ぶようなESTモデル事業の実施を掲げてございます。

 また、これらに加えまして、先ほど経済産業省から御答弁がありましたが、経済産業省と連携をいたしまして省エネ法を改正し、運輸部門を新たに省エネ法の対象に加えることを現在検討しているところでございます。

 以上のように、運輸部門のCO2排出量の動向を踏まえた措置を各種講じることによりまして、先生御指摘のような排出削減目標を達成するべく、効果的な施策を講じてまいる所存でございます。

和田分科員 二つの役所の方から御答弁ありましたけれども、私は、ずっと聞いておって、非常にこれではまだまだだめだなという印象を持ってしまいます。なぜかというと、大綱にも、その見直しの際にも、いろいろな文書に書かれています。それぞれのときに打った施策の評価、見直しがきちんと行われていないと、次にステップを踏む際にも非常にアバウトな施策の構成になってしまうのではないかと思って、先ほどの御説明を聞いておりました。

 すなわち、今まで打ってきた政策のその効果がどの程度あったのか、数値基準でいうと排出量削減にどの程度寄与したのか、そういった御説明はほとんど含まれておりませんでした。それから、これから先に行う対策についても、ほとんどめどが立っておらないという印象を受けました。

 そんな中で、きょうは農水副大臣にいらっしゃっていただいています。ありがとうございます。特に、最近、農林省所管の林野庁がいろいろなところで御説明されている状況を聞きますと、林野庁の所管であります森林吸収源として、排出量六%のうち三・九%を確保することがとても難しいのではないかという印象を持たざるを得ませんが、副大臣の現在の所見と、十七年度予算の確保状況についてどのように印象を持たれているか、御説明いただけますでしょうか。

岩永副大臣 十七年度で三千八十億の森林整備、林野公共事業費に実は予算をとっているところですね。

 それで、我々心配しておりますのは、これは平年ベースの予算でいきますと、二・六しか吸収源が達成されない。そして、補正予算を、ずっと今まで入れております十年から十四年の分を入れると、私は三・一ぐらいまで行くんではないかと。それにいたしましてもまだ〇・八足らぬわけですね。それで、〇・八を補おうといたしますと、約二千億ぐらい足らないような試算ができるわけでございまして、これはこの三月にきちっとした数字を出して、そして皆さん方に御協力いただく、このように思っておるわけでございます。

 そういうことで、六%のうちの三・九、これは本当に、山に負荷された部分というのは大変多うございますし、加えて、御承知のとおり木材が大変低迷しておりまして、林家が山を維持、経営していくという力がなくなっているわけですね。

 そうなってまいりますと、やはり国がどんどんそこへ力を入れていかなきゃならぬ、こういうことでございますので、何とぞ環境税等、予算的にはかなりの部分をひとつ応じていただいて、そして、これを達成していかなきゃ目標の三・九にならない、先生のところでも格段の御支援をいただきますようにお願いを申し上げる次第でございます。

 以上でございます。

和田分科員 副大臣は財源が足らぬとおっしゃいました。しかし、財源を確保しようと思えば、まず国民の御理解をいただかなきゃできません。そういった意味で、今お話の中にも出ましたが、最近、環境税の導入議論はさまざまなところで行われています。

 小池大臣、税の基本原則というのはどんなものか、御存じでしょうか。

小池国務大臣 幾つかあろうかと思いますけれども、国の行政の最大のツールといいましょうか、そういった、国として人様のお財布から取るわけですから、これ以上の国家としての力はないのではないか。それだけに、おっしゃいますように、悪代官が嫌々取るという時代ではございませんので、やはり国民の広い御理解をいただいて、そして納得をして、そして国民の思いにかわってそれを行政として実行していくということになってくるのではないかと思っております。また、それはどのように使われたかということもきっちりと透明性を持って進めていかなければ、さらなる御理解をいただけないのではないか。総合的にお答えさせていただきました。

和田分科員 今おっしゃったことそのものは正しいと思いますけれども、それに実行が伴っていないのではないかというような危惧を持たせていただきます。それはすなわち、最初にも申し上げましたが、諸外国との交渉でも、日本がどのような見地からどういった交渉を行ってこの議論をまとめてきたのか、まだまだ説明不足ではないでしょうか。

 それから、各部門において、現状をそれぞれ認識されながら対策を打ってきたにしては、余りにも部門間での格差がつき過ぎている。そういった意味では、部門ごとにそれぞれこれから御負担いただくとすれば、余りにも公平感を失しているのではないかというような印象さえ持ちます。現に、私のホームページ上にも相当たくさんの、今環境省が取りまとめようとされている達成計画に対して異論を唱えるような御趣旨のメールがたくさん届いております。

 そういった意味で、本当に工夫をして、工夫をして、最大限効果の上がる施策を打って、それでもなお足らないときに初めて議論すべきであって、その努力が今の政府全体に少し足りていないような気がいたします。ぜひ、これからの取り組みを、そういった視点を重点的に取り組んでいただくことによって、環境整備を整えた上でなら議論は幾らでもさせていただきますけれども、それまでの税源確保については、政府の限られた予算の中で、環境大臣のリーダーシップによって、ほかのところを削減してでも確保していただきたいというふうに御要望して、終わりたいと思います。

小泉主査 これにて和田隆志君の質疑は終了いたしました。

 次に、橋本清仁君。

橋本(清)分科員 おはようございます。民主党、宮城三区、橋本清仁でございます。

 本日は、持ち時間が三十分ありますので、昨年に引き続き、不法投棄問題についての質問をいたします。

 特にこの予算委員会第六分科会での質問、私にとって非常に思い出深いものです。と申しますのも、昨年三月一日に国会議員として初めて大臣に直接質問したことであり、また、地元の問題に関する初めての質問でした。

 昨年の三月一日から数えて約一年間、環境省の私が指摘いたしました問題に対しての対応を見守るとともに、地元でのこういった動向を見てまいりました。昨日の朝も、久しぶりだったんですけれども、実際に不法投棄現場を私は直接見てまいりまして、どういった状況であるかということも見てきました。特に重要な部分においては、昨年の質問と同じ質問をあえてまたさせていただきまして、どのように改善がなされたのかという点についてお答えいただきたいと思います。

 まず、国全体の現状説明についてお伺いいたしたいと思います。

 環境省が公開している平成十五年度の不法投棄件数及び投棄量によりますと、投棄件数が八百九十四件、投棄量にいたしまして七十四・五万トンと、平成五年からの調査で過去最大規模となっています。一方、平成十五年の不法投棄の残存件数と残存量によりますと、残存件数二千三百二十件、残存量は千二百六十七万トンにも上るとあります。このような膨大な産業廃棄物が山林や農地に投棄されていて、毎年、投棄量の五割程度におきましては投棄者に原状回復させているものの、依然として残りはまだ投棄されたままであるのがこの実態です。

 これらの産業廃棄物を山林や農地に放置したままにいたしますと、地下水、土壌、そして、岩盤や土壌を通じまして地下水に流れ出た有害物質というのは付近にばらまかれますから、そういったところで付近全体の環境影響が出て、地域住民に健康被害が出るとともに、付近で農作物をつくっていらっしゃる方に、この農作物に影響が出ることは容易に予想されると思います。

 こういったここまでの現状認識について、異論はありませんでしょうか。

南川政府参考人 事務的案件でございますので、答えさせていただきます。

 先生の御指摘について、特に異論はございません。

橋本(清)分科員 それでは、こういった前提をもとに、まず、昨年質問させていただいたことの確認、一年たってどういった対応をなさっておられるかということについて、まず確認をさせていただきたいと思います。三点ございますので、一つずつお答えいただければありがたいと思います。

 まず第一に、環境省の生活環境上の支障の定義の明確化への取り組み状況についてです。

 昨年の第六分科会の質問におきまして、不法投棄現場は、県が不法投棄を認め、国に報告することが必要であると。それで、対策が必要な現場の判断基準である生活環境上の支障が具体的に定義されていないため、県によって温度差があり、この温度差があるというふうに申しますのは、予算の関係もいろいろあるでしょう。大臣は昨年もベストミックスとかそういうことをおっしゃっておりましたけれども、そういったところもありまして、放置されて、いまだ顕在化されていない不法投棄現場があると思います。

 こういったところで、県が認めないところの言いわけと申しますか、逃げ道であるところの生活環境上の支障の定義の明確化への取り組みの状況、こういったものを明確化していくつもりはあるのか、また、ないのか、そういったことについてお伺いしたいと思います。

南川政府参考人 去年の国会以来、大臣の指示も受けまして、私どもいろいろ検討しておるところでございます。

 ただ、この問題でございます。私ども、決して、狭くとるというよりは、むしろ地域の実態に応じてできるだけ拾っていきたいと考えておるところでございます。

 例えば、廃棄物がそのままであれば飛び散るとか広域に流出する、あるいは水の汚濁、土壌汚染、大気の汚染、におい、悪臭の問題、それから害虫が大量に発生する、あるいはほうっておくと火災とか崩落の危険性があるということでございまして、これはあくまでその土地の利用状態とか周辺環境により大きく左右されるというのが実感でございます。

 私も含めて、また担当も、できるだけ問題があった場合には現地へ行くようにいたしておりますし、実際に村田町へも行っております。

 例えば、豊島でございますと土壌、地下水の汚染の問題、青森、岩手でございますと有機塩素系化合物による農業用水とか水道水源への汚染の問題、山梨県ではプラスチックの崩落等ございまして、この火災の問題あるいは崩落等の問題。抽象的でございますけれども、現地へ行ってみますと、やはり規模の問題とかいうことで、おのずから、私ども参りますと、県庁とか市役所の方以外にも、いろんなマスコミの方も来られますし、また住民運動の方も来られますけれども、そこは、一緒に見ていけばある程度相場観は現地でできていくというふうに思っております。

 そういう意味で、決していいかげんにするという意味じゃなくて、より的確に対応するためにも、私ども、いろんな各地の事例をまとめて、それを紹介していくということで、できるだけ多くの方が理解いただけるようにしていきたいというふうに考えているところでございます。

橋本(清)分科員 納得いかないんですけれども、この点につきましては、また後ほど、地元の村田のお話をさせていただきますときに厳しく追及させていただきたいと思います。この生活環境上の支障、的確に対応するとおっしゃっていますけれども、うちの地元のところでの現状をお伝えすると、いかにこれが的確に対応されていないかというのがわかると思います。

 次に、また昨年の質問の確認に戻らせていただきます。住民が指摘してから原状回復までの期間の短縮方法の検討状況についてお伺いいたします。

 これまでの大型の不法投棄現場は、住民が行政に指摘してから行政が認めるまでに五年以上かかっているケースが非常に多い。行政が原状回復や応急対策のため予算措置できない中で認めることは難しいと思いますけれども、ここは国がイニシアチブをとって把握する仕組みを構築しないと、住民は泣き寝入りをせざるを得ない状況になります。

 このような状況を放置している環境省の対応はいかがかと思いますけれども、大臣、お願いします。

南川政府参考人 済みません。実際に私ども、事務的にたくさん相談を受けております。そういう関係から、お答えをさせていただきます。

 住民の方からの通報、これは私ども、大臣の指示によりましてホットラインというものもつくっております。そういう意味で、随分入ってまいります。そういう情報が入れば、もちろん匿名を保った上で、私ども各地域にも連絡をして、どういうふうに対処しているかということについて、その後もフォローしております。

 また、もちろんそれ以外に、各地域もそういった情報網を相当の地域で最近は張りめぐらすようになっておりまして、そういった情報も各地域には当然入っておりますし、私どももできるだけ聞くようにしておるところでございます。

 ただ、その上ででございますけれども、影響の程度も十分把握しながら、各地域でまずどうするか考えていただいております。

 具体的には、廃棄物処理法に基づきまして、原因者を突きとめて、そして、具体的にもし法令違反があれば、それについて、例えば原状回復のための措置命令、そういった命令をかけていただくわけでございます。そして、それがなされない場合に、代執行を行うべきかどうかということを御検討いただくわけでございます。その過程におきましては、当然ながら、周辺の方への影響も含めて、幅広く検討がなされているわけでございます。

 私ども、いたずらに月日が流れるということは、当然ながら、好ましくないというふうに考えておるところでございます。

 したがいまして、相談がある場合には、例えば、法令上どうやって原因者を追及するかという専門家チームを派遣したり、また、技術的に回復の措置等をどこまでどういうふうにやるのが効率的か、また地域にとって安全かということが問題になった場合には、その方面の専門家チームを現地に送り出す。そういったことで、主体はあくまで地方公共団体でございますけれども、私どもも親身になって応援できるように対応しているところでございまして、できるだけ早く対応できるようなことにしていきたいと考えているところでございます。

橋本(清)分科員 これは、期間が長引けば長引くほど地域住民に負担というか苦しみを与え続けているわけですから、こういったところをきちんとやっていただきたいと思います。

 そして、先ほどから、大臣お願いしますと言っているんですけれども……(小池国務大臣「次、答えますから、大丈夫よ」と呼ぶ)そうですね。また後ほど、済みません、お願いします。地元のところで特にきちっとお答えいただければと思います。

 それで、三番目に、現行の不法投棄廃棄物の原状回復の予算措置についてお伺いいたします。

 昨年の質問で、膨大な不法投棄を原状回復するための予算が余りにも足りないのではないかと指摘させていただきました。昨年度に比べてどの程度不法投棄関連予算が増加したのか、また、財源確保の見通しはあるのか。

 過去に不法投棄された産業廃棄物を一掃するために二〇〇三年に制定された産業廃棄物特別措置法に基づく撤去事業費が、上限として想定していた一千億円を超えるのが確実な見通しであることが二月の十二日に判明したそうです。環境省は、こういった隠れた不法投棄はまだあるだろうと当初の見通しの甘さを認めているという新聞報道がありました。

 一九九八年以前の不法投棄に対し、都道府県が計画を策定し、撤去や汚染防止事業をする場合、国から事業費の二分の一とか三分の一を補助したりとかしていますけれども、政府は、十年間の事業費を九百億から一千億、国の補助を三百億から四百億円と見込んでいらっしゃったそうです。しかし、既に適用が決まった香川県や、青森、岩手の県境、能代市などの五県の四件と、三重県桑名市など現在環境省と協議中の二件だけで、事業費九百三十二億円、国の補助額四百十五億円に達するそうです。

 こういったところからも、こういった予算の関係の見通しの甘さというものがあるんですけれども、この点についてお答えいただきたいと思います。

小池国務大臣 まず、廃棄物処理法は平成九年に改正をされております。そこで、平成十年六月以降の不法投棄による支障の除去というために、都道府県などを支援するために、産業廃棄物適正処理推進センターというのをつくりまして、そこに国庫補助、そして産業界からの出捐を受けての基金の造成を行っております。

 まず、数字をお伝えいたしますと、平成十五年度までに約二十八億円の基金が造成されておりまして、平成十六年度においても一億七千万円の国庫補助を行っております。

 また、平成十年六月以前に発生した不法投棄につきましては、先ほど来出ておりますが、青森、岩手県境の不法投棄事案を初めとして全国各地で問題となっているということから、その支障を除去するために計画的かつ着実に推進しようと、平成十五年の六月、産廃特措法、特定産業廃棄物に起因する支障の除去等に関する特別措置法というのが正式な名前でございますが、これを制定いたしました。その予算措置として、十七年度はこの基金に前年度よりも八億円の増額で三十八億円の補助を行う、このようにいたしております。

 私は常に不法投棄の問題で思うんですけれども、余り最初から国が全部やりまっせといったら、そのうちしりぬぐいをしてくれるさという都道府県が出てくるのは困ると思っているんですね。それに、国、環境省が日本国じゅうにヘリコプターを常に飛ばして、どこの地形が変わって、あそこが怪しい、そういったことは事実上不可能ということになるわけでございますので、都道府県に責任を持ってやっていただいているということでありまして、特に新規の不法産廃などは、まず都道府県がしっかりと不法投棄を見張ってほしいということと、それからマニフェストをより着実に実行していただくような努力もこれから重ねてやってまいりたいというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、ゴミの問題というのは、どこかにここが簡単だと思ったら、こういった情報はすぐに必要な人はシェアし始めるのでしょうか、いつの間にか、ここが不法投棄できるぞというような、そういった事態をつくり出さないということが重要なことだと考えております。

 いずれにしましても、不法投棄の問題は、私は、マイナスの国費をこれ以上どうやってつぎ込まないようにするかということの観点と、これまでのお始末をどうするかという観点、この両方を総合的に踏まえていきたいと思っているところでございます。

 いずれにいたしましても、三Rの閣僚会議を我が国で開くということは、それだけ我が国の三Rがどうなっているかの確認もするという意味合いもありますので、この不法投棄問題には引き続きしっかりと対応してまいりたいと思っております。

橋本(清)分科員 国がしりぬぐいをしてくれるさというところからも、やはり県とか自治体に責任を持たせる意味でも、一番最初に質問いたしました生活環境上の支障ということをきちんとやっていただきたいと思います。

 これはもうちょっと突っ込みたいんですけれども、もう時間がだんだんなくなってきているので、次の、本当に地元の問題をさせていただきます。

 昨年も申し上げましたけれども、私の選挙区にございます村田町の竹の内の産業廃棄物の処分場、こういったところで深刻な被害が出ております。宮城県の村田町というところの住民が指摘してから十一年以上たってから、そして県知事が県におきまして責任を認め謝罪しているにもかかわらず、いまだ行政は認めておりません。行政の都合で住民がどれだけ苦しんでいるか、理解なされていますか。

 ここに村田の不法投棄現場の写真があるんですけれども、申請していないのでこれは使えないと思いますけれども、これは大臣に後ほど……(小池国務大臣「ここに持っています」と呼ぶ)いや、また別に持ってきましたので、ぜひ。

 実は、ほかの不法投棄の現場に比べて本当に深刻な被害が出ているのは、歩いて三分のところに村田第二中学校という中学校と小学校があるんですよ。こういった小学校が付近にあって、先ほど、現地に行ってみると規模やその他の状況が把握できて、的確に対応なさるとおっしゃっていましたけれども、深刻な健康被害が出ているということを御存じですか。小学生が、中学生がこういった状況の中で勉強している。

 処分場から化学物質が発生し、住民にさまざまな症状が出ている可能性がある、子供や妊婦には十分な配慮が必要である、そして、健康被害、処分場から発生するガスに因果関係があるとする報告書が承認されているんですね。

 半径六百メートル以内の成人住民を対象に、成人ですよ、化学物質過敏症に関するアンケートを実施した。四百十名のうち、三十人が頭痛を訴え、二十九人が気道粘膜症状を訴えており、前回同様、健康被害が確認されております。報告書によると、何らかの粘膜刺激性のある化学物質が処分場から発生し、住民にさまざまな症状が引き起こされている可能性があるといった報告もあります。

 ここまで健康被害が出ているのに、先ほどおっしゃっていましたように、これは生活環境上の支障と言わないんですか。きのう通告したものとちょっとずれるんですけれども、これは生活環境上の支障と言わないんですか。

南川政府参考人 委員御指摘のございました周辺の地域の医学調査が行われていたことは承知しておりますし、また、その中で化学物質に暴露されて気道粘膜症状あるいは皮膚症状が出ておるという御報告があったということは承知をしております。

 これについては、今委員会でさまざまな観点から検討されております。もちろん、それで実際に影響が出ておるということでそれが肯定されれば、これも当然ながら影響の一つに入るというふうに考えるところでございます。

橋本(清)分科員 本当に、これは成人の調査ですから、子供はもっと敏感ですからね。

 ここに写真があるんですけれども、硫化水素測定中という、測定装置が学校の校庭内にあるんですよ。それで、学校の教室から処分場が見えているんですよ。小学生もいますよ。こういった状況の中、十一年も放置しているということ自体が問題であって、これはひとえに、生活環境上の支障の定義があいまいだからこういった状況が起きるんじゃないかと私は思います。こういったところをきちんとしていただきたい。

 大臣にお伺いいたしたいんですけれども、先ほどの質問とちょっとダブってしまうんですけれども、昨年、この村田の状況を大臣にお訴えしたところ、大臣は村田の状況を認識していらっしゃる、そしてまた、県から申し出があった場合は適切に対応していただけるという答弁もいただきました。本当にありがとうございました。この点に関して、その後の経過措置などについて、大臣にお答えいただければと思います。

南川政府参考人 事務的にお答え申し上げますと、私ども、県からのお話も最近特に十分聞くようにしておりますし、また、済みません、ちょっと今手帳に日をつけていないのでございますけれども、つい最近でございますけれども、複数の職員を、各方面の専門家の職員を現地に派遣して状況の把握に努めているところでございまして、現在も県と連絡をとりながら内容について吟味をしておるところでございます。

橋本(清)分科員 そういった答弁になるんですかね。

 ここに写真を持ってきましたから、後でごらんになっていただくとともに、できれば大臣、私の地元にお越しいただいて、こういった子供たちの劣悪な状況をぜひごらんになっていただきたいと思います。そして、子供たちだけではなく、村田に住んでいるすべての町民の命、そして柴田郡全体、地下水が汚染されれば柴田郡全体が汚染されますから、こういったところもごらんになっていただきたいと思います。

 そして、また申し上げますけれども、平成十六年十二月二十八日の環境省の不法投棄に関する報道発表資料における実態把握の方法について申し上げます。

 これは、村田もそうなんですけれども、このカウント自体おかしいんじゃないか。これだけ問題になっているものが、いまだカウントされていない。何でカウントされていないのか、そういった状況についてお答えいただきたいと思います。

南川政府参考人 私ども、まずストック、いわゆる不法投棄分のストックというものをまとめて発表したのは去年の年末が最初でございます。これは、ぜひ地域においていかに全体的に不法投棄されたものを除去するかということをよく考えてほしいという問題提起を含めて、まとめて発表したつもりでございます。実際、見ていただきますと、中身に何々町まで書いてございまして、場所もおのずからすぐわかるような形で公表したことでございます。

 ただ、不十分だとしますれば、これはあくまで十五年度末の時点の残存量について、都道府県あるいは地元の市町村が把握しているというその申告の数字をまとめたものでございます。もちろん、この中では、定義としましては、いわゆる純粋な不法投棄だけじゃなくて、村田町のように処分場の容量をはるかに超えて積み増された不適正な処分、そういったものも対象にしておるところでございます。

 ところで、村田町でございますけれども、これにつきましては、十五年度末の時点で県が把握しておりました三十五万トンということで、件数には入れておるところでございます。ただし、その後、また量がふえたことが判明しておりますので、これについては、またことしの末にも必要な修正を行っていきたいと思いますし、全国的に当然また見直しが要るというふうに考えておるところでございます。

橋本(清)分科員 時間がないので、さらに別の質問に行きます。

 不法投棄による住民の健康被害の補償制度について。先ほど、私、地元の村田で深刻な健康被害が発生しているということを申し上げましたけれども、こういった不法投棄された廃棄物や有害ガスなどにより、健康被害を訴えた住民がいるという事実がございます。高度成長期時代の公害病のように、何らかの健康被害の補償制度も必要だと考えられますけれども、こういった不法投棄現場近くに住んだ住民が泣き寝入りするのはおかしいんじゃないか。この点についていかがお考えか、お答えいただきたい。

南川政府参考人 委員御指摘のとおり、廃棄物による健康影響が起きた場合につきまして、特段そのための制度はございません。したがいまして、健康被害が起きれば、これは一般的にはその原因者との間の民事的解決ということによらざるを得ないというのが現状でございます。

 ただ、一般的にいいますと、廃棄物の場合は、硫酸ピッチのように、それがすぐそばにあれば非常に健康上危ないというものが必ずしも多うございません。そういう意味で、全体的には民事的解決に頼っておるというのが現状でございます。

橋本(清)分科員 だから、一般的には民事的解決に頼っているとおっしゃいますけれども、この場合どうするんですか、村田の場合は。

南川政府参考人 村田の場合につきましては、そのお医者さんが調査されたデータが委員会に報告されているところでございます。委員会においてその健康影響が確かだということになれば、当然ながら、民事的解決についてもよりクリアな方向が出るだろうというふうに考えておるところでございます。

橋本(清)分科員 これは、国のスキームというか方法というか、法律自体がおかしくてこういうことになっているわけですよ。きちんと、生活環境上の支障の定義の明確化しかり。そういったところで、結局住民に泣き寝入りしろということですか。

南川政府参考人 恐縮でございますが、生活環境上の影響でよく議論になりますのは、虫が大量に発生して非常に周りの家が困った場合にそれを含めるかどうかとかいうことでございまして、むしろ健康影響とは逆の、そういう強い健康影響はもちろん対象になるわけでございますが、それと逆の方向で、どこまで見るかということでよく話題になります。これについて、なかなか特定できないということで、私ども、現地との話し合いの中で常識的な線を探しておるのが現状でございます。

 当然ながら、健康影響が出れば、それは民事的解決が方策としてはあるわけでございまして、それについては、今何か環境省としてというよりは、むしろ一般的な民民の関係で対応いただくことが可能だと思います。

橋本(清)分科員 でも、結局、これは民事的解決できないんですよ。これは民事的解決できないですよね。しかも、ほかの産業廃棄物の投棄場と違って、住宅地というか、もう学校のそばにあるんですよ。これからこういった状況があらわれてくると思うんですけれども、こういった状況に対して、これから何らかの対応をとっていかなければいけないと思うんです。

小泉主査 質問時間終了しておりますので、簡潔に。

南川政府参考人 詳しい状況をまた地元とよく調査しますけれども、いずれにしても、民民を中心に解決されるようなことを相談していただきたいと思います。

橋本(清)分科員 最後に、ちょっともう時間がなくなってしまったので、またこれは私は来年やらせていただきますよ。

 そういうことで、本当に、これからこういった不法投棄の問題に対して、国はしっかりと責任をとって、これ以上こういった被害を拡大しないようにきちんとやっていただきたい。そして、我が選挙区にある村田の町民も救ってもらうことをお願いします。ありがとうございました。

小泉主査 これにて橋本清仁君の質疑は終了いたしました。

 次に、中川正春君。

中川(正)分科員 おはようございます。民主党の中川正春です。

 実は、きょう議題にしますNOx・PM法、これは三回目なんです。

 私の気持ちとしては、環境行政、特に環境税や何かの議論も含めて、やはりしっかりと納得のいく、方向性としてはみんなそれは総論で賛成するんですが、個々の施策について議論をすると、どうしてもそこに公平性というものがしっかりと基本として入っていないんじゃないかということであるとか、あるいは、本来は、特に経済については中立でなければならないところが、その負担が片方にだけかかってきてしまって、いわゆる市場というものを乱していく、そういう懸念であるとか、中身を突き詰めていくと、そうした議論によって、なかなか環境施策が入っていかない、しっかりとしたものになっていかないということがあるんだと思うんですね。

 だから、一つ一つの法律に、よほどそこのところをしっかりと考えていかないと、不公正だとかあるいは市場を乱していくようなことが現実として起こってきたときに、それがネックになって次の施策が入らない、こういうことがあるんだろうというふうに思うんです。

 そんなところから考えていくと、このNOx・PM法というのは、私はそれの最たるところなんじゃないかと。趣旨はわかる。それから目的もしっかりと考えていくということは正しいということなんですが、しかし、その方法論において、いろいろなところでゆがみと不公正がこの中にあるということを実は過去二回指摘してきました。

 だから、そこのところをしっかりと考えていただいて、改良できるものは改良する、不公正というものが直していけるものであれば、途中でもいいから施策を考えていくようにという主張をずっとしてきたわけであります。

 それがなかなか進んでこないので、小池大臣の目的意識を持ったしっかりとした施策に期待をして、きょうもやらせていただきたいと思います。

 まず、これは、この政策が入ってきたわけでありますが、具体的にどれだけの効果が今上がり始めているか、それをどうアセスしているかということから聞いていきたいと思います。

    〔主査退席、北村(直)主査代理着席〕

小林政府参考人 担当の環境管理局でございます。

 まず、どんな効果を上げているかということでございます。

 これはもう釈迦に説法でございますけれども、特定の地域で、車種規制といったようなことで車種の代替を早めまして、排出量を急速に減らしていくというのが本体の法律でございます。そういう意味で、どれだけの排出量の削減が行われてきたかということが一つのパフォーマンスの評価かと思っております。

 これにつきまして、いろいろな場所がございますけれども、一応、メルクマールといたしましては、平成十七年に中間目標というのを置いて、そして平成二十二年をゴールにするという仕組みになっておりますので、二十二年はまだでございますから、この中間目標ととりあえず比べたいというふうに思っております。

 例えば、東京都を例にとりますと、中間目標といたしましては、自動車からのNOx排出量及びPMの排出量、それぞれについてでございますけれども、まずNOxが三万三千三百トン、そしてPMの方につきましては一千三百八十トンということとされておりますけれども、直近のデータ、平成十四年でございますが、NOxの排出量、PMの排出量それぞれ申し上げますと、三万八千四百六十九トン、そしてPMにつきましては二千六百六十二トンということで、十七年と比べますと、まだ大分前の直近データということになって申しわけございませんけれども、減っては来ておりますけれどもまだ中間目標を達成していない、そういった状況にございます。

中川(正)分科員 この法律は、トータルで、いわゆるディーゼルの技術基準といいますか、これをメーカーに対して付しているものが一つありますよね。これも、やっと、おくれていたのが今になって新しいものになって、それを技術的にクリアしてきた。そのことによる買いかえ需要といいますか、全体が買いかわっていくときに排出の基準が満たされていくような、そういう背景が一つあるんですね。それにプラスこの施策というのは、東京と大阪、あるいは名古屋圏の大都市圏を中心にして、ここの部分を特別に下げていこうという形で、特にその買いかえを早めて施策としてつくった、こういうことですね。

 だから、全体がよくなってきている、その影響の中で数値がある程度下がってきたのか、あるいは、この法律によって、この法律自体の効果があってそれが下がってきたのか、こういうところの見方というのはなかなか難しいんだというふうに思うんですね。

 それで、私も細かく、どんな調査の方法をとっているのかというのを見てみたんですね。両方とも、いわゆる測定ポストがあるんですね。それが、一つは、これまで面的に見ている一般環境大気測定局というもので出ている環境を達成しているか、していないかというその基準と、それからもう一つは、自動車排出ガス測定局というのを特別に設けて、そこの部分をはかっているのとあるんですね。

 これは、私は地元が三重県ですから、三重県の特に北西地域を中心にその数値を見ていると、どんなことかというと、例えばNOxなんかはもともと一般環境大気測定局は一〇〇%満たしているんですね。特定の自動車排出ガス測定局にポストを置いて、それも、東京とは全く環境が違うというか、東京の場合は、恐らくNOxの影響が出てくるような道路が面的に走っている、いわゆる格子状に走っているんですが、三重県なんかの場合は、幹線道路が国道で二本走っていて、その二本の幹線道路についてのみ測定局が置かれていて、これが特定の排出基準を満たしているかどうか、そういうことになっているわけです。

 結果を見ていると、東京の場合は、確かに徐々に徐々に上がってきているという自動車の測定局の部分はあるんですが、三重県なんかの場合は、上がったり下がったりしているんですよ。PMなんかについて言うと、全く成果が出ていない、これは東京も含めて成果が出ていないという結果があるんですね。

 こういうことから考えていくと、どうも技術革新でメーカーが達成をしたディーゼルの中身によって、新車に買いかえていくことによってある程度の全体の影響は出ているのかなということは考えられても、どうもこれだけで特定でいくということになると、例えば東京のような、これは流入規制も含めて、車庫がたまたま東京にあるということだけじゃなくて、全国からの流入してくる車の規制も含めて全部シャットアウトするということの中で初めて、この数値を見ていると、NOxあたりがちょっと改良されてきているのかなというふうなことが見えておりまして、三重県のように、あるいは恐らく名古屋全般もそうかもしれない、あるいは関西圏もまだそんなところかもしれない。全体の流入規制をやらずに、ただ、車庫がたまたまそこにあるから、その車の買いかえだけは早目にしなさいよという話だけでは、実際の影響というのは出ていないんじゃないかというふうなことが推察される、そういう調査結果になっているんではないかと私はこれを解釈するんですけれども、どうですか。

小林政府参考人 大変難しい解析を要するお話でございますので、なかなか答弁も難しいところでございますが、まず、御指摘いただいたうちの車種規制と、それから全国一律の新車の規制の効果の比較といったようなことでございます。

 正確には、また平成十七年が先ほど申し上げました中間目標の年でありまして、その状況に応じて点検をしたいというふうに考えてございますが、この制度発足時点の試算によりますと、例えば関東、関西六都府県におきましては、要削減量といいますか、平成二十二年に向けて削減していく量のうち半分ぐらいは車種代替であがなうといいますか賄うというような仕組みというふうに推定をしてございます。

 そして、現実、短い施行年数でございますけれども、それがどういう効果を及ぼしてきたかということを測定データの方から推計するとどうなのか、こういう御指摘でございます。

 これはなかなか難しいところはございますけれども、対策地域におきますところのNO2の自動車排出ガス測定局、道路際にある測定局の例えば年平均値を見ますと、これは対策地域全体でございますが〇・〇三四、そして浮遊粒子状物質についていいますと、これはミリグラム・パー・立米ですが、〇・〇三七という数字になってございます。

 これは、今中川委員御指摘の、三重の恐らく納屋局の話かと存じますけれども、ここで見ますと、納屋局の数字は大体SPMが特に顕著にオーバーをしておりまして、先ほど委員御指摘のとおりでございますけれども、年平均値で見ますと〇・〇四ミリグラム・パー・立米あるいは〇・〇五ミリグラム・パー・立米ということで、対策地域全体よりもやや高いということでございます。その原因が恐らく大変幹線道路に面しているから通過交通等々の影響があるのではないか、こういう御指摘かと存じます。こういったものも、ナンバープレート調査というようなことで調査をしてございます。

 正確には、十七年度にその調査のし直しということでまた評価をしていきたいというふうに考えてございますが、そういった域外の大型トラックの通過による部分というものも多少あろうかというふうに考えてございますけれども、それを見込みましても、三重県の納屋局の数値というのは、対策地域全体から比べても残念ながらまだ高い状況、こういう状況かというふうに考えてございます。

中川(正)分科員 これは大臣、どう思われますか。地元でこの議論をしていると、たまたまうちは対策地域に指定された中に車庫を持っているので、自動車を買いかえなきゃいけない。ところが、ちょっと離れた市町村、離れた向こうに行くと、特に運送業の話なんですけれども、同じ商売をしていて、車を効率的にもっと長く使うことができる。それが同じ荷物に対して競争しているわけですね。当然、何でそうなるんだと。向こうで商売している人たちも、同じ古い車で町の中へ入ってきて同じように商売するんだ、これはいいんだと。たまたま車庫がここにあるからそうした買いかえという規制をかけていくということに対して、中川さん、おかしいじゃないかというのはしっかり上がってくるんですね。これに対して、大臣、どう答えたらいいのかということですね。

小林政府参考人 まず、これも中川委員よく御承知のところでございますけれども、この制度の復習になりますが、地域指定をするに当たって幾つかの要件がございまして、中央環境審議会でいろいろ御議論いただいた要件に従って、地域の知事さんの御意見も聞いて指定をしているということでございます。

 例えば、自動車走行量の密度、あるいは自動車保有台数の密度、あるいは自動車排出の窒素酸化物、あるいは粒子状物質の排出量の密度、こういったものがいずれも全国平均の三、四倍を超える地域ということで、そして、今、恐らく中川委員おっしゃっているように、車庫の位置によって、簡単に車庫を逃がしてしまうというような、いわば脱法行為みたいなことが起こったらいけませんので、ある程度まとまりを持った地域を一体的にくくって特別の規制をさせていただく。そのことによりまして、大変経済的な利便も高い、交通も錯綜している地域の環境改善を全国一律規制に加えて深掘りをするという対策で達成をしていきたい。こういうことで、そこに住んでいらっしゃる方については大変厳しい規制と思っておりますが、そういう仕組みであるということについては御理解をいただきたいと存じます。

中川(正)分科員 恐らく当局は、環境ということでしか世の中を見ていないから、そういう答弁になるんだと思うんですよ。そうじゃないんです。そこで実際に車を買いかえていかなければならない人たちは、そこで企業経営をやっているわけですよね。そのときに、さっきの問いが出てくるわけです。それは、全体の環境を改善していくという気持ちはわかる、わかるけれども、なぜ私たちだけが負担をして隣の会社は負担しないのか、このことがあらゆる環境行政の中にあるんですよ、こういう問題が。

 だから、そこに対してしっかりこたえていかないと、次の環境行政が入らないですよというのが私の論点なんです。これについてどうするか。

 まだ東京の規制の方が公正だと思うんですよ、東京の中へ入ってくる車については全部流入規制をするということですから。例えば三重県の車でも、東京の中へ入っていこうと思ったら、その基準に適合するように車をかえて東京の中へ入っていって、東京の中で商売するには、東京の荷物を運ぶにはイコールフッティングでこれはやれるんだという機能がここに入っているわけです。だから、それは、東京で規制することによって全国的にまたその影響を及ぼすことができるということなんです。

 ところが、国の入れたこのNOx・PM法というのはそうじゃなくて、車庫がたまたまそこにあるからという話にしたから矛盾が起きてきているということなんですね。大臣は、そこのところをよくわかっていただくというふうに思っているんですが、そこをどうするかということについて、問題意識をひとつ持っていただきたいなと。

 それからもう一つは、これをすることによって、産業の中で、これは日本の特質ですが、大手があって大手が仕事をとってきたら、その次は全部大手がするわけじゃなくて、それを下請、孫請に出していきながら全体が回っているんですね。そうすると、今回の中で、例えばトラック協会という団体があって、私たちにこの法律ができたときにさまざまな陳情がありました。対照的に違ったのは、大手の企業というのは、やってくれと言うんです。やって買いかえをしていくということ。それで買いかえに対する税制の優遇策とか、あるいはそれで融資が特別に受けられるということを使って企業を展開させていこう、こういうことなんですね。

 ところが、中小あるいは小さい企業は、今どんなことが始まっているかというと、廃業なんですよ。それは金が借りられても、私たちが上の方から下請、孫請という形で取っている金額というのはもう基本的に違うんだ、これをこなしていこうと思ったら、一つの車を長く使って償却金額というのを最少にしながら初めて商売ができる環境なんだ。ところが、それを一挙にこれだけ。だから、古い車ばかり持っているわけですよ。全部買いかえなきゃクリアできないような状況に追い込まれるわけですよ、中小というのは。

 それで、全部をかえてまた借金できるといっても、それをやって、やったときに本当に採算をとっていけるのかといったら、これは無理だということで、廃業というのが相当出てきています。これはつかんでいますか。答弁を聞いていると、恐らくそうした数字まで念頭に置きながら政策が進んでいるとは見えないということですね。

 こういうことに対して、例えば、仕方ない、イコールフッティングだったらいい、日本全体がそういう形でいくんだったらそれはそれでいいでしょう。ところが、ここにたまたま商売しているから規制がかかって、そうでないところというのはフリーでいくんだということになっていく。そういう法律のつくり方でいいのかという問いかけに対してどう答えていったらいいかという、その答えが見つからないんです、私今のこの施策では。ということも含めて、小池大臣、どのように受け取られますか。

    〔北村(直)主査代理退席、主査着席〕

小池国務大臣 三重県もそうでございますけれども、流入率が高いのが千葉県、それから三重県が三一%で高いですね。私の兵庫県も二四%で非常に高くて、今回の条例などでも、私も実際に地元の業者の皆さんから、これではもう廃業するしかないというふうな陳情も受けてまいりました。ただ、自動車NOx・PM法、今までも御答弁させていただいているように、大気環境基準の確保が困難な地域に限定して、古い年式の車の更新を認めないということなど、特別な対策を総合的に実施するものでありますが、平成二十二年度における環境基準のおおむね達成の目標に向けて、この十五年度において関係自治体が総量削減計画を定めて取り組みを始めたばかりということでございます。

 現段階では、この計画に基づいての総合的な対策を着実に実施していくということは、これはまさにこの法律が目的とする大気汚染に対しての管理を強化していくという、これには合致しているということでございます。

 来年度、平成十七年度でございますけれども、自動車NOx・PM法の中間評価の年ということでございますので、これからの新車に対しての世界最高水準の排出ガス規制などの、この法律以外の対策も盛り込んでまいりたい、そして大気環境の改善状況の予測を行うということを予定いたしております。

 そういった予測調査などを経まして、その結果として、必要であるならば、先ほどから御指摘ありますように、車種の規制地域を拡大する、それから流入車の規制を行う、それから都市における自動車の使い方の改善方策、土地利用など都市構造のあり方などに踏み込む対策といったような追加的な対策を検討してまいりたいと思っておりまして、そしてその行き着く先は平成二十二年度までの環境基準の達成ということでございます。

 きょうは、まさにそういった地元の生の声を代表してお聞かせいただいた、その辺は重々承知もいたしております。

 それから、これは大気の管理のみならず、今後の日本の物流そのもの、例えば、そこからのCO2の出し方は一体どうなのか。御承知のように、CO2、温室効果ガス排出ということで、運輸部門というのは大変伸びているわけでございますね。ですから、きょうは管理局からのお話もさせていただいているわけですけれども、私とすれば、そういった全体の、日本の物流のトータルのコスト、それからそれにかかわっている方々、そういったことも総合的に考えた上でのこれからの実践をさらに強化していきたいというふうに思っております。

 先生のきょうの御意見については、重く受けとめさせていただきたいと思っております。

中川(正)分科員 見直しを総合的にしていくということ、これは評価したいと思いますし、もうわかっているところはどんどんやっていくということで、ひとつ実績を上げていただきたいというふうに思います。

 それからもう一つ、追加してお話しするとすれば、必ずしも新車にかえなくても、私がそちらから得た情報では、二車種というか二企業において、NOx・PMの除去装置をつけることによってそれが改善できるんだという認可が二つだけおりていると聞いています。これのコスト、どれぐらいかかるんだと言ったら、役所はそれには関与しませんとかというばかみたいな返事が出てきたんですが、そんなことを言わせていないで、これに対して何らかの公的な金を入れることによって中小、弱小企業というのは救うことができるんですよね、それをつけさせるということによって。そこのところを施策としても、これは国土交通省との話し合いが要るんだろうと思うんですが、一遍考えてみていただきたいということ。

 さっきのトータルのモーダルシフトの話はずっと二十年も三十年も続いてきて、なかなか実現できないことなんですが、それは環境省のしっかりとした政策によってそこへ持っていくというのは正しい方向だと思いますし、私も応援したいと思うんですが、そのことだけじゃなくて、きめ細かい部分で国土交通省と連携をとっていただいて、そこのところも含めて、ぜひ実現をしていただきたいというふうに思います。

 大体時間が来たようでありますが、最後の点について、大臣、ひとつコメントがあればお願いします。

小池国務大臣 重く受けとめさせていただきましたので、しっかり頑張らせていただきます。応援してください。よろしくお願いします。

小泉主査 これにて中川正春君の質疑は終了いたしました。

 次に、松野信夫君。

松野(信)分科員 民主党の松野信夫です。

 私の方から、水俣病の問題について御質問をさせていただきたいと思います。

 せんだって、環境委員会の方でもこの問題については質問させていただきましたが、地元熊本の方にとっても、また公害の原点と呼ばれる水俣病の問題でありますので、これはぜひ、やはり政府全体として真剣に取り組んでいただきたい、こういうふうに思っているところであります。

 もう既に御承知のように、昨年の十月十五日に、いわゆる関西訴訟で最高裁の判決がありました。国、熊本県の責任が認定された、こういうことで、やはりこれは国全体として責任を持って真剣に取り組んでいただきたいと思いますが、どうも今のところ、私が承知しているところでは、国の取り組みがなかなか進んでいない。既に熊本県の方は熊本県としての一定の対策の案を出している。しかし、どうも国の方からなかなか具体的な提案が出てきていない、これが現状ではなかろうかというふうに思います。これには鹿児島県もいわゆる総合対策医療事業ということで一定の負担をしているわけで、鹿児島県にとっても大変大きな問題になっているかと思います。こういうことで、熊本県、鹿児島県、また総合対策医療事業ということであれば新潟県も入っている、新潟水俣病の関係でも入っているわけです。

 そうすると、そういうような各県との調整をしながら、この問題についてはきちんとした対応をしていかなければいけない、こう思っていますが、現在での検討、取り組み状況、どうもまだ余りよく見えていないものですから、その辺についてまず御説明をいただきたいと思います。

小池国務大臣 昨年の十月、水俣病関西訴訟最高裁判決が出たわけでございまして、これについては厳粛に受けとめてまいりたい、その思いは今も同じでございます。

 対策の方でございますけれども、来年は何よりも水俣病公式確認から五十年の節目であるということもしっかり認識もいたしております。また、今回の最高裁判決、そして平成七年政治解決の経緯ということを踏まえまして、国として何ができるのか、できないのか、検討を鋭意進めてまいりました。

 また、御指摘のように、熊本県、鹿児島県、それぞれで御意見を出されております。こういった関係の県と協議をしながら、また、原告団そして政治解決受け入れ団体などの患者団体の皆様方との意見交換を積み重ねているところでございます。

 さらに議論を深め、そして国としての対応策、対応案をできるだけ早く示せるように努力をさせていただきたい。また、これについては今、現時点では見えない部分もあろうかと思いますけれども、まさに鋭意この調整を図っているというところでございますので、御理解のほど、お願いいたしたいと思います。

松野(信)分科員 鋭意調停を図っているというような大臣の答弁ですけれども、国は単なる調停役……(小池国務大臣「調整」と呼ぶ)調整ですか、調整役に徹すればいいということではないわけで、まさに責任を問われたわけですから、やはり一歩も二歩もリードした形で取り組んでいただきたい、こう思います。

 最高裁の判決、もう言うまでもありません、これは既判力との関係でいうならば、確かに当該原告と国あるいはチッソとの関係で、ほかの人たちには判決の効果というのは及ばないんだ、それは確かに法律的に言えばそういうことであります。

 しかし、何と言っても、やはり最高裁の判決が出て、これだけ具体的に国の責任が出ているということであれば、ほかの水俣病の患者さんたちが仮に続々と提訴をするというようなことにでもなれば、恐らく最高裁の判決と同じような判決がそれこそ続々と出てきて、一体いつになったら解決するんだ、こういう批判がまず間違いなく来るだろう、こう思います。

 ですから、単に原告だけの問題ではない、水俣病全体にとってどう解決するかという立場に立っておられるだろうと思いますが、まずその点の確認と、それからできるだけ早くというふうにおっしゃったんですけれども、それについては具体的に、いつまでにこうしますということが言えるのであれば、御答弁をいただきたいと思います。

滝澤政府参考人 まず一点目のどういう範囲の方々、さまざまな、認定患者から、それから政治解決に御同意いただいた方からいらっしゃるわけですが、二月一日に、私ども環境省としての基本的なスタンスのペーパーをお示ししておりまして、そうした中で、水俣病被害者を広く視野に入れて対策を講じていくべきではないかというような考え方も示しておるところでございます。

 それから、県との協議の関係でございますが、十一月二十九日に熊本県から御提案がありましたことに対しまして、年末、それから一月、二月、五回、六回と協議を重ねておるところでございまして、その後、二月一日には自民党の水俣病対策小委員会がございました。そのときに、小委員長の御指摘、最後の御指摘ですが、二月中、関係県あるいは関係団体とも鋭意調整して、できれば年度末にはきちっと考え方をまとめるようにというようなお話もいただいたところでございまして、そういった御指示に沿うように努力しているところでございます。

松野(信)分科員 今、お話がありました、それは同じように民主党の方にも二月一日にいただいておりますが、二月中にまとめる、もうきょうは二月二十八日でありますので、二月中にというようなことであったんですが、その点は実際どうなんでしょうか。

滝澤政府参考人 ただいまも申し上げましたように、熊本県が中心でございますが、御提案があった対応案をたたき台といたしまして、環境省といたしましても、どのようなことができるかということで鋭意調整を進めておりまして、本日の時点ではまだ調整が終わっているという状況ではもちろんございませんが、なるべく早く調整を進めたい、あるいは終わりたいということで努力をしております。

松野(信)分科員 どうも具体的な日程が必ずしもはっきりしないようですが、この水俣病の問題については、もう大臣御承知のように、最高裁の判決当時は大臣が談話を出されている。それから、九五年、いわゆる政府解決策に当たっては、十二月十五日に閣議決定を踏まえて、総理大臣談話というものが明らかにされております。

 しかし、この当時の総理大臣談話というのは、もちろん国の責任を前提にしているものではないわけでありまして、中を見ましても、「政府としてはその時々においてできる限りの努力をしてきたと考えますが、」「結果として長期間を要したことについて率直に反省しなければならない」、こういうようなところで、談話がすべての患者さんに向けて発せられているわけです。

 やはり最高裁の判決を踏まえて、国の責任をこれだけ認定されたということであるならば、すべての患者さんに対して、国、県の責任を踏まえた形で、九五年の総理談話以上のものをこの際明らかにすべきではないかというふうに思いますが、この点、大臣の率直な御意見をお聞きしたいと思います。大臣、大臣の御意見を。

 大臣は、最高裁の判決の当日、談話を出された。これは基本的には、しかし原告向けのものであります。前の九五年の十二月十五日の総理の談話というのは、これは国の責任を前提としていない、反省すべきところはいろいろあるという程度のものでしかないわけです。そうだとするならば、この判決を踏まえて、あるいはこの閣議などを踏まえて、やはり大臣、患者全体に対して率直な意見あるいは談話あたりを表明するのが相当ではないかというふうに思いますが、この点は大臣の率直なお考えを。

小池国務大臣 まさに当日、十月のあの最高裁判決の日に出させていただいた談話に、すべて私の率直な考え方を凝縮して詰めさせていただいたと思っております。

 これについては、もう最高裁判決が出た、この中身については、もちろん原告と国との関係、チッソとの関係、県との関係ということで、特に県と国との関係で今回の判決が出たわけでございますけれども、これはもう厳粛に受けとめるという一言に尽きると思っております。

 そしてまた、先ほど来御答弁させていただいておりますように、これまでの政治解決の方々との関係も、この最高裁判決のみならずこれまでの経緯ということを考えるならば、それに対して今何ができて何ができないかということを、言葉もさることながら、どのようにして態度で国としての責任を、また国としての考えをあらわすか、これについて、先ほど来申し上げておりますように、まさに案を練り、そして検討を進めているところでございます。

 そういったことで、今その判決を受けてどうか、原告のみならず全体に対してどうかということは、まさに今、その件につきまして具体的な案を練っている、それを見て、またそれに対して御評価いただければ、このように思っているところでございます。

松野(信)分科員 すべての患者さんに向かってのいろいろな案を検討されている、それはそれで大いに結構でぜひその方向で、それはそれでいいんですが、やはり患者さんとしては、節々に、この水俣病の問題については、政府はそれなりの見解を発表してきています。昔は、例えれば当時の園田直厚生大臣も見解を発表している。九五年のときには、閣議決定を経て総理の談話も発表している。

 そういうようなことから踏まえて見るならば、もうそれこそ、いよいよ最後というような段階にも近づいているわけですので、やはりきちんとした政府としての一定のコメント、水俣病に対するコメントというものがあってしかるべきだと思うので、個々の対応はともかくとして、そういう大きなコメントについてはどうか、こういう質問です。

小池国務大臣 コメントはもちろん文言であらわすものでございますが、やはりそれに対しての裏づけと申しましょうか、具体案があって初めてそのコメントそのものが説得力も持つのではないかと思っております。必要なときに必要なコメントを出させていただこうと思っております。

松野(信)分科員 具体的な被害者に向けての案と、それから、それを大きくとらえたところの談話なりコメントなり、そういうのはぜひ車の両輪というような形でお願いをしたいと思います。

 それで、残された時間は公健法の問題について御質問したいと思います。

 公害健康被害補償法ということで、公害による健康被害を受けた人たちに対して一定の補償をしなきゃいけないということで、まさにこれは基本法になっているわけであります。これはもう言うまでもありません。

 歴史を少しひもときますと、その前の時点では、これは別の法律で、昭和四十四年にいわゆる旧法がございました。公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法、いわゆる旧法が昭和四十四年にできまして、その四年後に現在の公健法が制定されたということでございます。

 一般的に言われているところでは、旧法、特別措置法の方はどちらかというと行政上の救済を行う、民事責任とは一応切り離して、行政上の救済制度をする、これが昭和四十四年時点での旧法の考え方。ところが、公健法の、新しい昭和四十八年の考え方というのは、あくまで民事責任を踏まえた救済制度だ、一般的にはこういうふうに言われているのではないかと思いますが、これは、こういう認識で政府の方もよろしいですね。

滝澤政府参考人 今、委員のお話のありましたとおりでございます。

松野(信)分科員 そうしますと、あくまでこの公健法による認定とかあるいは救済とか、そういうものは民事責任を踏まえたものになっている、これが本来のこの法の建前になっているわけです。

 ところが、現実に公健法の運用がどうなっているかというふうに見ますと、いわゆる大気を中心とした第一種地域については、もうこれは指定地域が解除されている。第二種、水俣病はこの第二種の方になっているんですが、現実には最近ではもうほとんど認定されていない。認定されないという状況が続いている。以前認定された人も、公健法上の補償を受けるかというとそうではない。現実には私的契約、チッソと患者団体との補償協定に従ったところの補償を受けている。

 こういうことで、現実では、まさに公害健康被害に関する基本法であるところの公健法が率直に言うと余り使われていない、こういう実態にあろうかと思います。

 これは私は大変残念なことだ、せっかくある公健法を、もっともっとやはり患者さんに喜ばれるような形でこれが活用されるように、使われるように、こういうふうな方向に持っていくのがやはり本来の行政の筋じゃないかな、せっかく一生懸命審議をして法律をつくったわけですからと思うんですが、その点について大臣の率直な、御感想でも結構ですが、御意見をいただきたいと思うんです。

小池国務大臣 特に公健法の第二種地域のことについておっしゃっているんだろうと思いますけれども、この地域に係る水俣病などの疾病については、今御指摘もあったかと思いますが、公健法の枠組みとは別に、患者団体さんとそれから汚染原因企業との間での補償協定が結ばれているということでございます。

 補償協定書というのがございますけれども、これは公健法に基づく認定患者については、その希望で、公健法に基づいての補償と、それからこの補償協定に基づいた汚染原因企業による直接補償のいずれかを選択できるようになっているわけでございます。つまり、民民であるということでございます。

 水俣病に関しては、これまですべての認定患者が補償協定による補償を選択されてこられました。この理由とすれば、補償協定の方が公健法と比べて補償内容が手厚いということでこちらをお選びになった、つまり、一時金があるかないかということは大きな分かれ道になったというふうに承知をいたしております。

 補償協定ではなくて公健法の枠組みで補償がなされるようにするというためには、この補償協定の改正とか廃止が必要になってくると考えられるわけですけれども、これは、あくまでも補償協定は原因企業と患者団体との間の契約でございますので、そこに逆に行政として介入するということが、いいのか悪いかは別にしても、まずは難しいのではないか、困難ではないか、このように思っております。

松野(信)分科員 チッソと患者団体との補償協定というのは、確かに今大臣が言われるように民民の問題ですから、これに行政が介入してどうだこうだというのは、これは現実にはなかなか難しい問題だろう、その点については私もそのように思います。しかし、まず根本の問題として、公健法が使われない、せっかくこれは、かなり昭和四十八年当時相当の審議をして、議論してでき上がった法律なんですけれども、使われていないということは、本当に私は率直に言ってもったいないという気がします。

 それと、もう一つ、今お認めいただきましたように、この公健法というのは、本来は民事責任を踏まえたところの仕組みになっている、こういうことです。行政上の単なる公的な行政補償とか救済とか、そういうわけじゃないわけで、あくまで民事責任を踏まえた制度になっているわけです。ところが、現実には、公健法上は民事責任を踏まえたと言いながら、次々に棄却されている。患者さんが認定申請をしても棄却されている。それではということで、患者さんの方が公健法をあきらめて次々に裁判を起こさざるを得ない。そうすると、裁判では全体としては次々に認定がなされ、一定の賠償が認められる。こういう図式が残念ながら今現在でき上がって、最終的には最高裁まで行っている、こういうことです。

 そういう現実だとするならば、公健法というのは本来民事責任を前提とするというふうに言いながら、現実にはそれになっていない、結局、裁判まで起こさないと救済されない、損害賠償が請求できない、こういうようなのが今の現状であります。

 これでは、私は、この公健法が本来民事責任を前提にしたというような本来の仕組みからかなりかけ離れたものになってしまっているのではないかと思いますが、この点についても率直に御意見をいただきたいと思います。

滝澤政府参考人 確かに、立法の趣旨という意味では委員御指摘のとおりでありますけれども、その後、補償協定等の歴史的な経緯もございました。それから、多数の裁判が発生したということも事実でございまして、そうした経緯の中で平成七年、御承知のように政治解決、一万二千人が参加するという形での政治解決がなされました。最後に五十数名、最高裁まで今回の判決の部分の方々が残ったわけでございまして、そうした歴史的な経緯を見ますと、その時々において、それぞれの行政判断あるいは政治判断において対応がなされてきたというふうに考えております。

松野(信)分科員 どうも余りはっきりした答弁になっていないと思うので、やはり本来は民事責任を前提にした法体系なんですから、この公健法の考え方と裁判所の考え方とが狂っているというのはおかしいわけですよ。ところが、現実には、公健法はもう昭和五十二年の判断条件というのを金科玉条のごとくして、これで患者さんは次々に棄却をする、患者さんは裁判所に行くとまた裁判所の判断基準があって、司法で認定される。おかしいんですよ。民事責任を前提とした仕組みに、本来は法律の仕組みはそうなんだけれども、全然運用の面がそうなっていない、この点は指摘をせざるを得ないと思います。

 ぜひ大臣には、この公健法をどういうふうにしてうまく活用するかというのを御検討いただきたいな、こう思っています。

 念のために申し上げておきますと、昭和四十八年に公健法は制定されたんですが、当時は田中内閣でありまして、当時の環境庁長官が副総理だった三木武夫さんです。三木さんが、この委員会での質問に繰り返し繰り返し言っておられます。例えば、その一つの例としては、昭和四十八年七月十日の衆議院の公害対策並びに環境保全特別委員会で、三木さんがこう言っておられます。

 こういう制度をつくる以上、これが動かないということになれば国民も承知しないわけでありますから、健全に動いて、公害の被害を受けておる人たちに対して迅速な処理ができる非常に有効な制度にしなければならぬ、そういうふうに考えております、こういうふうに答弁をされて、これは一回だけじゃなく、繰り返し繰り返しこういうような趣旨の答弁を当時の三木環境庁長官はされておられるわけで、ぜひ大臣、今申し上げたように、裁判所の考え方と公健法の実際の運用が大きくずれているというのは本来の建前からはおかしい、こういうことでありますので、食い違わないような運用をお考えいただきたいと思います。

 それで、次に、認定審査会の点について御質問したいと思いますが、これはもう十分御承知のように、現在、最高裁の判決以降、認定申請をされる方が非常にふえておりまして、大体八百名程度にもなっている、恐らく私は千名を突破するのはもう時間の問題だろうというふうに思います。

 ところが、現実には認定審査会がなかなかうまく機能しない。審査会の委員の先生方も、裁判所の基準にいくのか、それこそ昭和五十二年の判断条件でいくのか、どっちをいくのだというようなことででも大変混乱があるわけで、そういう状況ですから、ぜひこの辺は環境省がリーダーシップを発揮して、認定審査会についてもどういうふうに持っていくのか、あるいは例えば具体的に申請者を診断する検診医あたり、どうするのか。その辺について積極的なリーダーシップを発揮してもらいたい、こう思いますが、この点はいかがですか。

滝澤政府参考人 環境省といたしましては、つい二月の十七日でございますが、熊本県、鹿児島県等の担当者とこの審査会の関係で情報交換の場を設けております。各県の実情について十分お伺いもしているところでございます。それから、熊本県、鹿児島県におきましては、御指摘のありました検診に対応できる医師の確保等が重要な課題であるとも聞いております。

 いずれにいたしましても、関係自治体における状況を十分把握しながら、環境省としてもできる限りの協力、支援をしていきたい、このように考えております。

松野(信)分科員 念のために確認をしておきたいと思いますが、この公健法については、衆議院の方でも参議院の方でも附帯決議がついております。ちなみに、衆議院の附帯決議の第四項のところは「公害健康被害認定審査会が、認定審査について意見をきめるにあたっては、特に健康被害者の治療を担当している主治医の診断が尊重されるよう配慮すること。」こういうような附帯決議がついているのです。

 要するに主治医の診断を尊重して、こういうことですが、この点については環境省の方も、これはこのとおり今までやってきたし、この趣旨を尊重するということでよろしいですね。

滝澤政府参考人 公健法上のその認定に当たりましては、一定の、眼科でありますとか耳鼻科でありますとか、検診をお受けいただいて、そうした所見に基づきまして、県におきます審査会において認定に値するかどうかということが審査されるシステムになっております。

 したがいまして、今委員御指摘の主治医云々ということは、ちょっと今私、答弁という意味では保留したいと思いますけれども、審査会のシステムとしてはそのように、今申し上げたようになっております。

松野(信)分科員 答弁がちょっと保留ということですが、これまでは基本的には、実際問題としてどうかはおいておいて、主治医の診断は尊重されるというようなことで本来は運用されてきたのではないかと思いますので、この点についてはもう一度よく検討して、答弁をお願いしたいと思います。

 それから、もう一つ念のために確認をしておきたいのですが、従来、この認定審査会というのはすべて医者で占められていました。それがある意味では一ついろいろな形で批判がなされていて、もっと総合的な立場で認定がなされるべきだというような批判にもつながっていたわけですが、私もその法律をひっくり返して見ましたけれども、認定審査会というのは、すべて医者でなければならないというふうにはなっていないと思います。お医者さん以外のいろいろな学者、研究者、そういう人たちが入って、認定審査を総合的に判定していくということは、法の趣旨からして当然あってしかるべきだと思いますが、この点もいかがですか。

滝澤政府参考人 確かに、制度上は今委員御指摘のようなシステムになっているようでございますが、実際に、あの五十二年判断条件に基づきまして、かなり神経学的、内科神経学的に専門的な判断を伴いながら、この認定が認定できるかどうかという判断をしていただくわけでございまして、実質的に審査会の構成、そういった専門家から成る構成になっておるところでございます。

松野(信)分科員 実質的にお医者さんが中心であることは別にそれは疑いませんけれども、別に法律上は違反されていないということで確認をしておきたいと思います。

 ぜひ、やはり何度も言うように、公健法は民事責任を前提とした立場に立っている。ところが、環境省が余りに昭和五十二年の判断条件に固執するがために、その運用からずれてしまって、裁判所の判断と公健法上の判断とが食い違っている。これがある意味では大きな混乱のもとだ。この点をやはりしっかり考えないと、今後とも公健法が患者さんに喜ばれるような形での活用にはならない、この点を指摘させていただいて、質問を終わります。ありがとうございました。

小泉主査 これにて松野信夫君の質疑は終了いたしました。

 次に、岡島一正君。

岡島分科員 私は、民主党の岡島一正であります。

 きょうは、環境大臣初め環境省の役人の方々に、不法投棄されている産業廃棄物、その現状と、撤去事業に関しての質問をしていきたいと思っています。

 不法投棄された産業廃棄物が残存している残量は、平成十五年度で全国で千二百六十七万立方と聞いております。そのうち、私、別に地元が千葉県だからこの質問をするというつもりは全くなかったのでありますが、調べていたら、私が選出されているのは千葉県でありますが、何と全国の三〇%に当たる三百八十八万立方が実は千葉県にある。しかも、これまた偶然ですが、私が住んでいる市原市というところに、全国のおよそ一割弱、九%ぐらいですか、百十七万立方メーターくらいの産業廃棄物が不法に投棄されているということは、少なくとも環境省も確認しているという事実があります。これは、市原市の場合、市町村においては、恐らく全国でも市町村単位ということにおいては、一番の不法投棄、あるいは不法になる前から含めた投棄であろうと思われます。

 香川県の豊島あるいは岩手県、青森県境、これは、かかわった企業が大手だったり、あるいは島という象徴的な存在だったりということで、ニュースでも多く取り上げられました。ですから、全国的にも大問題だということもあり、社会的に注目された事象となったわけであります。

 一方で、この市原市に福増という地区があります。ここには、不法投棄された産業廃棄物が、行政、千葉県の確認した量だけでも、豊島と同数は最低ある。恐らくは豊島の倍はあるであろうと県の行政は言っております。七十万トンに及ぶ産業廃棄物の不法投棄された現場が、一市内の一地区にあるわけであります。こうした場所が、これも偶然、私の住んでいる市原市には、何と六十九カ所も不法投棄の現場が市原市や行政において確認をされております。

 かつては、山合いとか人里離れたところに多かったのですが、最近では、何と住宅地の本当に二メーター道路を挟んだ後ろにあるとか、大きな団地のすぐ裏の水田に及ぶ谷間にできたとか、そういうふうに問題がどんどん顕著化しているわけであります。

 ただ、直接的に大きな健康被害が関連性を持って確認されたという状況にはまだないと見られるものの、硫酸ピッチが六百本、ドラム缶が置き去りにされている勝間という地域などは、周りの樹木は赤く枯れ果て、子供たちは山の中で遊べなくなった。いずれは間違いなく健康被害も出るだろうと見られているわけであります。

 そうした立場から、きょうは特定産業廃棄物支障除去特別措置法に基づく不法投棄の撤去事業を中心に質問したいと思います。

 時限立法のこの法律の期限の平成二十四年までが上限であり、事業費は一千億円と聞いておりますが、豊島やそのほか岩手県境などあります。この事業費の一千億円の使う見込みなど、果たして現状はどうなっているのか、環境省にお伺いします。

南川政府参考人 お答え申し上げます。

 産廃特措法の適用につきましては、都道府県が実施計画を決めまして、環境大臣がそれに同意することが必要でございます。

 現在までにその適用が決まっている案件は四件ございます。香川県豊島で総トータルの事業費見込みが二百三十三億円、青森、岩手の県境で総事業費見込みが六百五十五億円、それから山梨県の須玉町で二億円、秋田県能代市が二十六億円ということでございまして、現時点では九百十六億円と見込んでおるところでございます。

岡島分科員 そうすると、上限一千億円という見通しの中でできているわけでありますが、もう既にほぼ一千億円の使い道が方向は決まってしまっている。しかも、四件の処理に当たるお金ですね。

 しかし、先ほど私が申し上げましたように、私が住んでいる千葉県あるいは市原市、そのほか全国で、宮城県でも、首都圏のあちこちで、不法投棄されたままの産廃の残存が今もふえているわけであります。とするならば、全国各地から、まだ認定されたのは四件とはいえ、ほかの県、ほかの地域から要請があると思いますが、その実情はありますでしょうか、環境省。

南川政府参考人 私ども、ほかの幾つかの県からも相談を受けておるところでございます。

 それから、当然ながら、千葉県も実はいろいろ悩んでおられます。例えば、今御指摘の市原の案件でございますけれども、これもたしか二年ほど前に衆議院の環境委員会が視察に行った際の視察地の一つにもあったほどでございまして、千葉県も含めて相談にあずかっておるというのが現状でございます。

岡島分科員 そうすると、その一千億円という予算の上限といったもの、これは明らかに不十分になると思われるわけですが、そういった上限の撤廃やさらに上積みなど、そうした方向性については何か環境省としての要望とか思いはおありでしょうか。

南川政府参考人 まず、予算的な措置でございますが、私ども、自治体に毎年アンケートを行って、どれだけ対応が必要かということは吟味をしておるところでございます。

 その結果でございますけれども、十七年度予算においては、従来よりも増額いたしまして、三十八億円で予算案に計上しておるところでございます。

 ただ、私ども、一概に、問題があるから予算などを投じて支援をするというわけではございませんし、また都道府県にも、公的資金を導入しろということが優先すべきではないと思っております。当然ながら、事業者、不法投棄した人への追及、それにかかわった方への追及ということがまず一義的に必要と思っておりまして、一千億というのは公的な資金のベースとして念頭にはございますけれども、今、それを超えるかどうかということではなくて、やはり対策の必要性、さらに原因者の究明とそれから請求といいますか、それもしっかりやっていきたいと思います。

岡島分科員 事業者の責任については、また後ほどお聞きしようと思っています。

 ただ、産廃に関する現状でいえば、排出した責任者なり事業者がどこのだれべえかもわからず、どこに行ったかもわからず、何の対応策もとれないというのが産廃問題の基本的な、象徴的な問題の一つだということがあります。ですから、その責任を追及するとするならば、その中身というのは相当に吟味されたものでなきゃならないだろうと思っているわけです。

 それについてはまた後でお伺いいたしますが、この基準、ではその四件はどうしてそういった予算を使うことに認定されたか、その基準は何だったんでしょうか。

南川政府参考人 これにつきましては、実際に都道府県知事が地域の生活環境を守る観点から必要というふうに判断をしまして、その上で原因者に対して原状回復命令等をかけて、それでうまくいかない、限界があるということで、その必要性から、当然みずからも半分以上負担するわけでございますが、国に対して協力を求めてきたということでございます。

 私ども、まず地域で徹底的にやれることはやった上で、必要なものについては支援をしていく、そういうスタンスでございます。

岡島分科員 そうすると、明確に、例えば人体への危険が数値的にあるからとかそういう基準ではなくて、行政の判断によるということになるんでしょうか。

南川政府参考人 生活環境保全上の影響があるということで行政が判断したものについては、対象になり得るというふうに考えております。

岡島分科員 そうなると、多分、豊島など小さな島で三十五万トンもあれば、これは早急にやらなければ逃げ場がないわけですから、これは対応しなきゃいかぬということもわかります。そういった緊急性を判断する基準は、健康だけでなく、あるいは環境問題、さまざまにあるでしょう。

 そうした中で、この市原市の場合、あるいは千葉県の場合、明らかに、四十七都道府県のうち、この千葉県に三分の一が偏在している、偏って存在、残存しているという実態。あるいは、市原市という市は、関東では横浜の次に広いとはいえ、東京駅から特急で三十五分です。快速電車でも五十分ぐらいですね。そんなところに、全国の市町村三千余りの中で、その市に何と一割弱がある。明らかに偏った首都圏のごみ捨て場、ごみの銀座とでもいいましょうか、になっているわけですね。

 こういう明らかに偏在した状況というのも、これは取り組まなきゃいけない一つの、地域への負荷という意味においては圧倒的に高いということは認識されませんでしょうか。

南川政府参考人 千葉県が大変不法投棄の量が多いというのは全く事実でございますし、これは千葉県の責任云々の前に、やはり首都圏の工業地帯の中で、非常に交通も便利で、地形的にも低い丘がたくさんあって、ある意味で不法な投棄をする方にとって非常にある種の不法投棄に駆られるような要因があるんじゃないかと思います。

 当然ながら、千葉県も大変な問題意識を持っておられます。私どもも、ぜひ、千葉県との意見交換を深めていく中で、何とか不法投棄のまず事前撲滅も含めて対応していきたいと思います。

岡島分科員 事前に撲滅というのは当然、今、きょうこれからやらなきゃいけない問題ではあります。ただ、今私が申し上げたのは、既にある産廃の量であります。

 基本的には、産廃というものがこの日本から、地球からなくなるのが理想だと思います。その理想論からいえば、当然、千葉県に象徴されるその偏在した状況、圧倒的に偏在が顕著ですね。そういった状況をかんがみて、その残存量を撤去するというために国が主体的に取り組む、そういった施策を考慮することはできないんでしょうか。

南川政府参考人 私どもとしましては、制度論で申しわけないんですけれども、健康に著しい影響があるような場合については、これは例えば硫酸ピッチがそうですけれども、優先的に相談をし、また応援するということが多うございます。

 それから、岩手や青森の問題にしましても、それから豊島の問題にしましても、実際にごみの相当部分が健康に影響するものがあり得るということからも、地元も急ぎましたし、私どももできるだけ協力するということで対応してまいったところでございます。

 千葉県の場合は、もちろん硫酸ピッチのような案件、たくさんございます。私ども、これについて非常に優先的に対応しておるつもりでございまして、千葉県だから、それなりに豊かな県だからおいておくということは全くございません。

 ただ、全体としまして、建設廃棄物などのものが多いということで、にわかに健康影響ということで、特に対応をほかに比べて急がなきゃいかぬという案件が必ずしも多くないということで、国としてなかなか積極的に、主体的に対応するというところには至っていません。

 ただ、県も大変問題意識を持っていますし、私ども、意見交換は頻繁に行っております。

岡島分科員 今部長がおっしゃったことですが、私も、危険性のことの基準などについてはさまざまあることはわかります。

 ただ、明らかに、偏在の率が圧倒的に顕著であります。つまり、面積が圧倒的に産廃が埋まっているということであります、簡単に言えば。一つの市に全国の産廃の十分の一近くが面積をとっているという地域への負荷は、その上では子供たちは遊べないし、その上ではもちろんお米はつくれません。その上で何か事業を展開することもできません。圧倒的に地域への負荷としてのマイナス要素は、健康被害と比べる次元、尺度は違うものの、負荷という意味では大変大きい。そういった意味で、今後取り組みをしていかなきゃいかぬと思っております。

 次の質問に移りますが、特措法の対象事業というのは、たしか平成十年六月以前の廃棄物とされていると思います。これは、廃棄物処理法の規制が強化される前のものをどうするかということなんだろうと理解をしております。また、その法律の成立以降については、産業界なども出資した基金がありますね、産業廃棄物適正処理推進基金ですか。投棄者が不明であり資力が不足だという対象者に、事業費は八億円だと聞いております。

 先ほどの特措法が平成十年前だとして、それ以降、年間八億円の事業費でそれ以降の産廃の残存を撤去する、対応することが果たして可能か、私は疑問なのですが、現状はいかがでしょうか。

南川政府参考人 まず、金額的なことから申し上げます。平成十年六月以降の不法投棄に対する処理関係でございます。

 国庫補助と産業界からの出捐で基金を造成しておりまして、十五年度末までに二十八億円の基金が造成されているというのが現状でございます。十六年度におきましては、一億七千万円の国庫補助を行ったところでございます。

 お金のことだけ申しますと、私ども、産業界にも多大の御協力をお願いしておるところでございますが、なかなか産業界としましても、私どもがお願いする業界と、実際に不法投棄する企業といいますか、企業の実態もよくわかりませんけれども、全く違います関係で、私どもがお願いに参りますと、どうして自分たちのグループは全くそんなことしていないのにそういうお金を負担しなきゃいかぬのだということで、なかなか実はお願いするのも大変なのが現状でございます。もちろん、私ども、大臣名の文書をつくりまして、あちこち回りまして、何とか必要な金額を手当てしておるというのが現状でございます。

 ただ、私どもとしましては、当然ながら、お金集めも必要でございますが、やはり都道府県と打ち合わせを頻繁にしておりますのは、その前にまず原因者に対する究明をやろうと。

 原因者というのは、実際に不法投棄した業者。この業者というのは、実際はいわゆる白タクの方が多いものですから、廃掃法の許可も得ていない方が多いんですけれども、そういった人への追及。さらに、明らかにその人が業者じゃない、許可もとっていないというのに、知りながらそれに頼んだ人、あるいは不注意で頼んでしまった人、そういった人も含めて、その責を負ってもらう。当然ながら、代執行はその方々にもかけられるわけでございますし、費用負担もお願いするわけでございます。

 そういうことで、予算の確保もぜひきちんと、民間に対するお願いを含めてしてまいりたいと思いますし、必要な原因究明も行っていきたいと考えているところでございます。

岡島分科員 今の部長の答弁の中に、産廃問題の現状を打開する上で問題になっている本質が一つあったかと思っています。

 今部長は、この予算は、もともとの生産業者など大きいところはお願いできるところがある、しかし、実際に行為を行う中間の業者など、白タクという言葉もおっしゃいましたけれども、だれがやっているかわけがわからぬ、つかみようがないところにお金を取りに行くわけにはいかないとおっしゃいました。

 まさに不法投棄は、生産しているのは確かに大手企業があるでしょう。しかし、不法投棄そのものは、今部長がいみじくもおっしゃったように、白タクのように、だれがやっているかわからないままに、不法に、どんどん生産されたものを処理する、その需要を処理できない過程で、白タクとおっしゃったような業者が、全国に十数万あるのか幾つあるのか、特定も実はできないかもしれない業者がいて、その横行が結果としてもたらした、直接的原因はそこにあるだろうと思います。

 とするならば、そういった中間処理だったり最終処理だったり、その搬出業者以降の業者の把握とか実態について、今部長はみずから、よくわからぬとおっしゃいました。その把握をすることも環境省としての取り組みであるべきだと私は思いますが、いかがですか。

南川政府参考人 私ども、今把握している中で、産業廃棄物関係の業者さん、これは、運搬業者から中間処理業者、最終処分業者まで含めて、およそ六万軒程度は実際に何らかの手続をしておりますので、把握をしておるところでございます。

 ただし、実際に不法投棄する件数を見ますと、これは、廃掃法の許可を受けた業者が、例えば中間処理の権限しか持っていないのに最終処分をしてしまうということもあります。例えば岐阜の善商という企業はそうなんです。ただし、そういった廃掃法上の許可を持っている業者が違法なことをするよりも、件数としては圧倒的に、廃掃法の許可を持っていない、余り表現は適切じゃありませんが、白タクの方が件数ははるかに多いというのが現状でございます。

 私どもとしまして、この四月からでございますが、一部制度を変えようと思っています。具体的には、なかなか白タクの実態というのは把握しようがないものですから、産業廃棄物を運ぶ業者さんには、いわゆる業を取った方はもちろん、これはどういう業の許可を持っておって番号は何番かということについては、車の右側、左側に掲示をして、また必要な書類も持ってもらおうと。

 それから、それ以外に、自分の会社のごみを処理しに行く、いわゆる自社処理でございます。これについては許可は要らないわけでございますが、これについても、自社処理車ということで、産業廃棄物を運んでいるということを車の両側に掲示してもらって、いつでもわかるようにしようということをしております。

 したがいまして、四月以降は、産業廃棄物を運んでいる、あるいは処理しているところについては、例えばトラックならトラックの両側にきちんと掲示していない人がごみを運んでいれば、それは言ってみれば違法な白タクだとなるわけでございまして、実態把握ということには少し遠いんですけれども、明確な形で取り締まりができるというふうにしていきたいと考えているところでございます。

岡島分科員 いずれにしても、中間処理の運搬業者など、白タクとおっしゃった、そういったことへの把握が国としてはこれまでできていないということはお認めになったわけでありまして、そのことの影響は、やはり先ほどの千葉県や市原市、岩手県、豊島に出ているんだろうと思います。

 もちろん、県や市などに責任がないと私は思いません。しかし、立入検査の権限を持っている千葉県の行政にしても、それでもそういう許可証を確認できないことがあるという中で、国が、霞が関から見て、その許可を持っている持っていないという判断とか、白タクじゃないかあるかとか、だれが白タクかとか、なかなか判断はできないだろうと思います。

 とするならば、いずれにしても、これを、排出者の責任とか原因をつくったところにお金を求めるというだけでは、そのルートがどこかわからないわけですから、明確にはできないだろうと私は懸念をしているわけであります。

 いずれにしましても、このままでいくと、例えば豊島なんかは、三十五万トンで、処理に十年以上かかると聞いております。平成十五年度だけでも、新しい産廃の量が八十万トン以上ですか、八十二万トンぐらいですか、発覚しているわけです。発覚ですね。そうすると、このペースでは、今の既定の法律の中での国の対応としての処理はとても追いつかないと私は思うわけであります。

 そういった中では、環境省を含めて、新しい取り組みが必要だと思います。このままだと、国にどんどんごみがたまっていくことになります。

 環境大臣にお伺いしたいのは、このままでは、一立方メーター五万円ぐらいかかる処理の費用があるとしても、全国で一兆円ぐらいのオーダーになって、とんでもない費用がかかる事業が取り残されていく。負の遺産がまた残されていく。赤字国債ほど大きくないにしても、同じような本質だと思います。それについて大臣は、こういったものを全面撤去していくことこそ、子供たちに日本を残すという意味では大事だと私は思いますが、大臣のお考え、シナリオはございますか。

小池国務大臣 まず、委員のお父様には大変お世話になりました。ありがとうございます。

 基本的には、このごみの問題は、この四月に閣僚会合を日本で開こうと言っているわけで、まずリデュースをしていく、全体を抑制していく、それから再使用していきましょうというリユース、さらにはリサイクルをしていこう、この三つのRを今後国としてもっと確立していくということが、これからの新たな不法投棄などを防ぐ一番大きな近道で、かえって、遠回りのようですけれども近道なのではないかというふうに思います。

 また、不法投棄というのは、文字どおりイリーガルなわけですから、どのようにしてそれを追及していくのか。今おっしゃいましたように、私ども環境省が、国全体の不法投棄の現状を、ずっと双眼鏡を片手にじっと夜中じゅう車に乗って、そしてそういった動きを監視するというわけにはなかなかいかない。よって、都道府県の、それぞれまた市町村の皆様方にしっかりとやっていただいているというのが現状であります。

 また、白タクであるとかいろいろ言われますけれども、しかし一方で、この業界というのは、私は、もっと日本の基幹産業の一つになってもいいぐらいだと思っておりますので、むしろ、しっかりやっている業者にとっては、この人たちは優良だというようなことで励ましもしていきたい、このように思っております。

 それから、不法投棄、先ほど千葉の市原の例を挙げられましたけれども、関東の産業のごみの排出量の多いところで、なおかつ、近くて山のぐあいがよくてという、捨てる側の論理から言わせればそんなところなのでありましょうけれども、これは、ニューヨークのジュリアーニ市長が、ニューヨークの治安をいわゆる破れ窓理論でもって対応して、そして大変な成果を上げてきた。

 ごみの場合も、一種のソフトターゲットというか、ここに捨てても大丈夫なんだろうな、そういうふうにみんなが思い始めたら、いつの間にか大変な山に、まさにごみの山になっていく。そして、ごみの山は、実はそうやってためにためたら、これは借金でいうとモラトリアムみたいに、多く借金した方が勝ちだみたいな世界になって、それが、そこから国費が投じられるようになると、これはイリーガルをやった人の方が勝ちになるということについては、私は、国家の全然十分ではない財政をこれからも切り盛りしていく上では、極めてマイナスの方向なんだろうなというふうに思っております。

 よって、先ほどからのをまとめますと、三Rを徹底してやっていく。それから、都道府県とともに団結しまして、この問題を一日も早く除去できるようにやっていく。

 それから、もう一つ言うならば、かえって都道府県などの近い行政では言えない情報があると思いますので、国として産廃一一〇番という制度をつくりました。詳しく話すとややこしい話がいっぱい出てきてしまいますので言いませんけれども、しかしながら、国に通報していただくということによって、その地域の問題点をより的確に把握できるという、国だからできることもあろうかと思います。

 いずれにいたしましても、こういったごみの問題、廃棄物の問題、循環型社会の構築という大きな環境行政の二本柱のうちの一つでございます。目の前の問題だけを片づけるのではなくて、そういった総合的に取り組んだ対応をしてまいりたいと思いますので、委員の御協力もよろしくお願いいたします。

岡島分科員 もう時間もほとんどないのですが、一点だけお伺いしたいのは、大臣がおっしゃったことに私は異論はほとんどありません。三Rにしても、すべきだと思います。

 ただ、私は、最初から質問申し上げておりましたけれども、基本的には、今あるものが異常なほどになっている。環境省が把握している、ひょっとしたら十倍かもしれない、百倍かもしれない。これは役人の皆さんも、内々にはそういう懸念をお持ちです。

 例えば、私の住んでいる市原市に養老川という川があります。三十年も四十年も前に捨てられたコンビナートの廃油が、環境庁だった当時の平成十年の検査で、実はそこに4tブチルフェノールという物質が、環境ホルモンが全国最高濃度で発見されました。実は、出した業者もほとんどわかっています。しかし、法律ができる前のことでした。三十年前、四十年前の施策、あるいは施策が行き届かなかった、あるいは勝手にやった、含めて、三十年前、四十年前の産廃にかかわる事態が今の子供たちや子供たちの住む町や食料に影響が出ている事実です。

 市原市、千葉県は毎年、三千万、四千万で井戸を掘って汚染物質を除去しています。しかし、それでは追いつきません。こういうようなことが、市原市に限らず、全国で間違いなくあるんだろうと思います。そういう実態、負の遺産を整理することがあって初めて、新しい事業に取り組める。新しい事業と並行かもしれませんが、負の遺産を置き去りにしたままでは、いつまでも負の遺産への対応が残されるというこれまでの繰り返しになると思います。

 そういった意味で、負の遺産の整理も新しい施策とあわせて、大臣初め環境省にお願い申し上げて、質問を終わります。

 以上です。

小泉主査 これにて岡島一正君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

小泉主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。江田康幸君。

江田分科員 公明党の江田康幸でございます。

 きょうは、水俣病問題について質問をさせていただきます。

 水俣病、これは工場から排出されましたメチル水銀、有機水銀によって汚染された魚介類を摂取することによって発生しました我が国で初めての公害病でございます。公式発見から来年で五十周年を迎えようとしているところでございます。

 昨年十月の十五日、最高裁におきまして水俣病関西訴訟の判決が言い渡されました。水俣病の被害拡大を防ぐことができなかったことについて、国と県の責任が確定したわけでございます。国と熊本県におきましては、最高裁判決を当然重く受けとめて、そして適切に対処すべきであると考えます。

 今回、最高裁は、国の責任について、水俣病の被害拡大を防ぐため、住民の生命、健康の保護を目的とする水質二法に基づいてアセトアルデヒドの製造施設の一時停止等を命ずべき状況であったにもかかわらず、権限の行使をしなかったとして、国の国家賠償法上の責任を認めました。

 県に対しましても、水産動植物を摂取する者の健康の保持等を究極の目的とすると解釈し、県漁業調整規則に基づき有害な物質を取り除く設備の設置を命じなければならなかったとして、県の国家賠償法上の責任を認めました。

 国及び県は、昭和三十四年十一月時点で水俣病の原因を知り得る状況にあり、適切に規制権限が行使されておれば、水俣病の被害拡大を防ぐことができたと判断されたわけでございます。

 当然、国と県はこの最高裁判決を重く受けとめるべきであると思いますが、国は最高裁判決をどのように受けとめ、どのような対応をなさろうとしているのか、お伺いをいたします。

小池国務大臣 今、経過の御説明、そしてまた、そもそもこの水俣病はなぜ起こったかというようなことを、委員自身がおまとめいただいたものと思います。

 昨年十月に出されました水俣病関西訴訟の最高裁判決でございますけれども、御指摘のとおり、国及び熊本県に、昭和三十五年一月以降の水俣病の被害の拡大を防止できなかった不作為の不法行為の責任を国に対して認めたものでありまして、チッソと連帯して賠償責任があるということが判示されたものであります。これは、私は環境大臣として厳粛に受けとめております。

 詳細な見解につきましては、判決当日に環境大臣としての談話を表明させていただいております。先生のお手元にも既に行っているかと思いますけれども、ポイントは、水俣病を発生させた企業への対応に長期間を要し、その被害の拡大を防止できなかったことについて、これに対して真摯に反省をしている、そしてまた、このような悲惨な公害を決して再び繰り返してはならないとの決意を新たにさせていただく、こういった要旨を談話に盛り込ませていただいたところでございます。

 また、この訴訟の当事者の方々を初めといたしまして、長年にわたって苦悩を強いられてこられた方々に対して、まことに申しわけないという気持ちでいっぱいであるということも、もちろんその中に入れさせていただいたところであります。

 現在、この最高裁の判決、そして平成七年の政治解決の経緯などを踏まえまして、さらには来年は水俣病公式確認から五十年の節目の年でございます。先生も、公明党におかれまして、この水俣病の問題について御担当として御活動をいただいているということもよく承知をいたしております。

 そういった中で、国として何ができるのか、できないのか、先生方の意見なども踏まえながら検討を鋭意進めているところでございます。この対応策、できるだけ早くお示しできるように努力をしてまいりたい、このように考えております。

江田分科員 大臣、ありがとうございました。大臣の御決意、受けとめ方については、昨年の十月の十五日に環境大臣談話としても出されておりますので、私もよく承知しているつもりでございます。

 私も熊本選出の議員でございます。そして公明党は、大臣からも申していただきましたけれども、昨年の十月の十五日、最高裁判決が出て、直後に公明党の水俣病問題小委員会をつくらせていただきまして、この問題について早急な対応を検討してきたところでございます。国、県からも、これまでの期間、多くのチャンスをいただいて御意見をお伺いしてきた。

 そういう状況の中で、熊本県におきまして、また鹿児島県でもそうなんですが、水俣病認定審査会というのがございます。委員の任期が十月の三十一日で切れております。現在、委員が不在の状況であります。なぜかと申しますと、今回のこの最高裁判決以降、新たな認定申請が九百人を超えている。そういう急増している状況の中で、一方で、認定審査会は委員が集まらない、認定基準をどのようにしたらいいのかわからない、結局、処分が進まないといった困窮状態に陥っているわけでございます。

 委員の皆様からすれば、最高裁でより緩和な基準というものが司法判断で出されたわけでございますけれども、それで賠償責任が認められております。そういうダブルスタンダードがあるような状況の中で、今の水俣病認定審査会の委員の先生方は、その判断をするには責任が負えない、むなしいという御意見があるわけでございます。

 これは、対応がおくれればおくれるほど混乱が深まってまいります。今、熊本でもそうですけれども、現状では、五十二年判断条件に基づいて認定棄却された申請者が訴訟で許容されることになるわけですね。ですから、公健法の認定制度の機能自体が疑われたり、また、保健手帳所持者が手帳を失効させてでも認定申請する動きというのが加速しておりまして、平成七年の政治解決策の枠組みが空洞化してしまう、そういうおそれもあるわけでございます。

 認定審査会の委嘱の滞りや新たな認定審査への対応について、国はどのように対応されようとしているのか、お伺いいたします。

滝澤政府参考人 認定審査会の委員の状況でございますが、委員御指摘のように、熊本県におきましては、昨年の十月末、任期終了以降、委嘱が行われておらない状況でございます。また、鹿児島県におきましても、本年三月下旬に任期終了を迎えるということで、その後の委嘱について調整中であるというふうに伺っております。

 私どもといたしましては、先般、二月十七日に、関係の熊本県、鹿児島県等の三県一市の会合を開きまして、こうした状況について、状況の把握に努めたところでございます。

 今後とも、引き続きまして、関係自治体におきます状況の把握に努めながら、自治体からの要請がございますれば、審査会の委員あるいは委員の委嘱についてお願いに伺うなど、さまざまな協力、支援を行ってまいりたいと考えております。

江田分科員 状況把握に努めながら、自治体からの要請があれば説明に参るということでございますけれども、もう既にこれまでの間でも、やはりその対応として、最高裁の判決とこの認定基準について国は考えをきちんとまとめられているはずですから、それについて委員の方に御説明はされたんでしょうか。まだこれからということでしょうか。

滝澤政府参考人 五十二年の判断基準と、今回最高裁で示されました基準とダブルスタンダード云々、そういったことについて審査委員の先生方が非常に心理的に不安を感じているという実態もございます。

 知事の委嘱でございますので、これは一時的には県の行為になるわけでございますが、私ども、承知している範囲で申し上げますと、熊本県で申しますと、年明け早々から県の部長以下御担当が、各委員について、そうした基準等の考え方について説明して回られたというふうに伺っておりますし、また、間接的にも私どものもとに今後の対応ということで御相談もいただきつつございます。

 そういう状況でございますので、先ほど申し上げましたように、県と連携しながら支援、協力してまいりたいということでございます。

江田分科員 今回の最高裁判決におきましては、今話題になっていますように、公健法の認定基準とは別に、より緩和された判定基準で患者をメチル水銀中毒症と認定して、国、県の損害賠償法上の責任を認めたことになるわけでございます。これによりまして何が生じてくるかというと、公健法の認定基準とは別に新たな認定基準が出てきたというふうに見られているのもまた事実でございます。またさらに、関西訴訟の方々を初めとして、国の五十二年の判断条件は崩れた、この基準を見直せという意見があります。

 そこで、明確にこの国会の場で、今回の最高裁判決後の水俣病問題について取り上げるのは国会では初めてだと思いますので、私は、やはり国民の皆さんが見られている中で明確な説明をしていく、それが地域の混乱を引き起こさないということになってくると思いますので、ダブルスタンダードというか、この件についてもはっきりとお考えを示していただきたいんです。最高裁の判決ではこの五十二年判断条件は否定されたんでしょうか、そうではないのか。この点について、最高裁の判決に関する国の考えをもう一度きちんと御説明ください。

滝澤政府参考人 昭和五十二年の判断条件につきましては、公健法に基づきまして、公平性、統一性の観点から水俣病患者の認定を行うため、水俣病に関する医学の各分野の専門家による検討結果として示されたものでございます。その後、昭和六十年、それから平成三年と二回にわたりまして、専門家によります判断条件をめぐる妥当性が検討されましたが、この妥当性については、その二回の検討の結果も妥当であるというふうに確認されております。そういう状況にございました。

 今回の最高裁の判決におきましては、結果的に大阪高裁の高裁判決が踏襲されたことになっておりますが、その部分について申し上げますと、五十二年判断条件は公害健康被害補償法の水俣病認定要件とし、これとは別個に判断準拠を示してメチル水銀中毒症としての損害を認容したという考え方が踏襲されておるわけでございまして、五十二年の判断条件は否定されずに、制度上の認定基準として裁判所も認め、別個に賠償基準として別の基準を準拠しながら賠償を認定したということでございまして、私どもの考えといたしましては、今回の判決によってこの五十二年判断条件が否定されたものではないというふうに考えております。したがって、再検討する必要もないと考えております。

 こうした趣旨につきましては、二県の審査会の先生方、県庁を通じまして、この制度上の認定基準は変更はないんだということは伝えておるところでございます。

江田分科員 今ございましたように、最高裁の判決でもこの五十二年の判断条件は否定はされていない、容認されているというお考えを今示していただいたところでございます。

 では、国、県においてこの問題について何ができるかということについて、幾つかまた議論をさせていただきたいと思うわけでございます。

 熊本県は、最高裁判決で責任が確定したことを受けまして、その責任を果たすために、県議会でこれは了承されたわけでございますけれども、「今後の水俣病対策について」という対策案を昨年の十一月の二十九日に国に提出したわけですね。それをもとにといいますか、それを含めて国と県の協議が進んでいるという状況でございますけれども、その中に、療養費の拡大、拡充の案を示しております。

 私、最も大事なのはこの療養費だと思っています。本当に水俣病の患者さん、またその延長ではあるけれども、軽症ではあるけれどもメチル水銀中毒症と言われた方々は、やはり健康不安を訴える悩みが一番多いわけでございます。私も多くの皆さん方とお話ししている中で、自分自身が一生涯医療に心配しなくていいこと、これが一番の望みなんだ、また、自分の子が、我が子がそうやって生きていく上において本当に心配なく過ごしていけるかどうか、それは医療なんだということを私は多くの方々から聞いております。大変重要な患者支援はやはり療養費の問題であるというふうに思っております。

 この拡充される対象者は、この熊本県の案によればどんな人たちが対象として考えられているかといったら、まずは、平成七年の政治解決に基づく水俣病総合対策医療事業の対象者、これが約八千九百人ぐらいいらっしゃると推定しています。それから、訴訟確定者、関西訴訟、二次訴訟の方々、三十九人。それから、総合対策医療事業の申請者のうちで対象とならなかった者、約五百五十人と推定されています。それから、総合対策医療事業に申請しなかった者、ここが多くて、推定約二万五千人という数字として県は示しているわけでございます。

 特に、最後に言った総合対策医療事業、ここに申請しなかった者が約二万五千人いる、この推定でありますけれども、私も驚いています。本当にそれだけの方々が、あのとき平成七年に救済した方々は一万一千人いらっしゃいました。それ以外に二万五千人いらっしゃるかどうか。ここはやはり県も推定、すなわち、いろいろな計算に基づいて推定しているわけですから不確かということはあるとしても、大変な数のメチル水銀中毒の患者さんが潜在しているということになるわけでございます。

 私も、水俣の地域で多くの患者さんと接する中でお聞きしているのは、水俣病の患者、家族の皆さんというのは、これまで、当時においても今もなんですけれども、結婚もできない、仕事にもつけないというような偏見、差別に遭ってこられているんです。

 当時から今日に至るまで、その差別や偏見を恐れて水俣病への認定申請とか平成七年の政治解決である総合対策医療事業への申請ができなかった者というのは少なくないと私も思いますし、そう言われております。事実、今回の最高裁判決以降、初めて申請するという人が五百人を超しているというところであります。

 今回の判決では、公健法の認定基準が否定されたわけではございませんけれども、それとは別個に、より緩和された認定基準でメチル水銀中毒症と認定して損害を認めた。ここに端を発して、自分も認められるのではないかということで、初めて申請する人がどんどん多くなっているような状況なんです。

 今回の最高裁判決以降、新たな認定申請が急増しておりますけれども、先ほども言いましたけれども、今後、公健法に基づいて認定棄却される申請者については訴訟では許容されることになります。多くの訴訟を引き起こす危険性があります。こういう中で地域に混乱が起こってくるんです。その混乱をもたらさずに、この再生、融和を目指して水俣病問題の解決を図るために大事なのは何なのかということでございますけれども、私は、中でも現在申請している者または今後申請してくる者への対応、受け皿、ここがあるのかどうかというのが極めて重要と考えますけれども、これらについての国の考え方、今後の対応について伺います。

滝澤政府参考人 昨年の十一月に県から御提案がございました。今委員からいろいろ御披露がございましたように、新たに申請されるであろう方々を二万数千人というような推計もされているわけでございますが、そうした推計の是非については、まさに今県と私どもといろいろ協議もし、専門的な見地からも再検討もしております。

 しかしながら、新たに手を挙げて申請されている方々、そういう方々に対してどのように対応していくかということでございますが、二月一日に私どもの基本的なスタンスをまとめたメモを御説明いたしましたが、そういう政治解決に乗られた方々、あるいは御指摘の新たに申請されてくる方々、あるいはもともとの認定患者の方々、それから関西の原告の方々、いろいろなグループの方がいらっしゃるわけですが、そういった方々を広く視野に入れまして、対策をバランスよく検討していくべきであろうという考え方も示したところでございます。

 そうしたことで、目下熊本県を中心に私どもと調整を進めておりますが、そういう新たな申請者に対する対策も含めまして、地域におきます全体の高齢化も進んでおります、それから新しい対策もいろいろ拡充も求められております、そういったことを総合的に検討を進める必要があろうかと思います。目下、繰り返しになりますが、当事者たる熊本県とも調整中でございますが、できるだけ早い時期に具体案がまとまるように鋭意努力をさせていただいているところでございます。

江田分科員 水俣病問題の解決を図るために、まずは二次訴訟、関西訴訟の確定者への療養費支給、これに早急に対応するというのが大事だと私は思いますし、また現行の総合対策医療事業の方々を、さらに特に保健手帳と言われる方々に対する拡充といいますか、そういうところも大事だと思います。

 そして、先ほどから私が指摘しております最も大事なことは、政治解決策から漏れた者に対する救済策です。その受け皿がやはり何らかの形でなければ、あの平成七年の救済、政治解決は平成八年の一月から六月の六カ月間で締め切られているわけでございます。コックは閉められているわけでありまして、ですから公健法で認定棄却された人たちの行き場がない、その部分というのがやはり今回の最高裁判決を機に出てきているんじゃないか、私はそこが一番の大事なところであり、これに対する国の姿勢、対応の姿勢を示す、そこが本当に早くすべきだと思っております。

 皆様方の心の部分もお聞きしなければいかぬのですけれども、ちょっと時間がございませんので先に参ります。

 これまでの国と県との協議、最高裁判決や平成七年の政治解決の経緯等を踏まえて、種々の検討を今なされております。

 国におきましては、二月の一日に、今後の対応にかかわる検討状況について、基本方針を発表されました。それによると、すべての方々を視野に入れること、公健法に基づく認定や政治解決の経緯を尊重すること、地域の再生、融和と被害者救済を両立させること、裁判による損害賠償や政治解決等の枠組みとの関係を整理すること等となっております。これは、昭和五十二年判断条件と平成七年の政治解決策の枠組みは崩さないで、すべての方々を視野に入れて政治解決の枠組みの補強、平成七年の政治解決の延長といいますか、あそこで閉じられたコックを開く、そういうようなことを想定しておられるとお察しするんですが、国の基本的なお考えをお聞かせいただきたい。

小池国務大臣 水俣病、大変歴史的な問題でございます。そしてまた来年公式発見からついに五十年という歳月を経て、その五十年の機会にまた記念事業的なものを環境省としても行おうとしているわけでございます。

 その五十年間に、さまざまな立場の方々がかかわって、そしてまた各種の対応策、対応が講じられてきたということで、今回の最高裁判決を受けての対応というのも、そういった長い歴史の中の、その中でのまた対応ということを考えなくてはならない。今般の最高裁の判決を重く受けとめるということは当然なんですが、その上で、これまでの経緯についても尊重して、新たな対策を講じることがかえって地域に新たな混乱をもたらす、または一部の方に不利に働くようなことがないようにしていくことが極めて重要だと。

 よくもやい直しという言葉が使われます。地域の人々がこの水俣病で、それぞれの立場、それぞれの思いでかえって地域が混乱したというような歴史の積み重ねでもあったと聞いておりますから、ここで国の対応でまた新たなもやいができてしまうということは、私どもにとっても不本意であります。

 いずれにしましても、特に政治解決に係ります経過、経緯は非常に重いものでありますので、こういった枠組みを崩すことのないようにしながら、むしろ積極的に補強して安定化させるといった観点に立って、さらには関係者の皆さんが高齢化しておられます。高齢化の進展、さらには新規に救済を求める方々への対応、こういった新たな課題にも取り組んでいくこと、これが今対応策を練って検討している上での大きな柱ということでお示しをさせていただいたのが、先ほど御紹介されましたコンセプト、概要案でございます。

江田分科員 最後になりますけれども、今大臣からもお伺いをさせていただきましたけれども、昭和五十二年判断条件と平成七年の政治解決策、これは重たい。五十二年の判断条件と平成七年の政治解決策の枠組みを、政治解決の枠組みの補強とおっしゃいましたけれども、それを前提にするという点では、これは国も県も一致していると思います。国においては、我が党は以前から申し入れをさせていただいておりますけれども、やはり二月一日の国の基本方針をもとに県との協議を早急に進めて、二月中には合意案を、国、県、行政上のすり合わせはまとめて、少なくとも予算の決定が必要となりますところの今年度中には国の対応策を国民の前に示すということができるように、万全の対応を公明党はお願いしてきたところでございます。

 きょうは、私、水俣病問題をこうやって取り上げておりますけれども、これは一地域の問題ではないのです。我が国としましては、やはり水俣病の歴史と、二度とこのような悲惨な公害の歴史を繰り返さないその決意を世界に向けて発信することが必要、発信しなければならない、そういう責任が今回の問題でもあると思っております。

 ですから、大臣に最後にお伺いしますけれども、水俣病、来年で公式発見から五十年でございます。この歴史的なときを迎えている今こそ、水俣病の全面解決に向けて大きな決断を示していただきたい、そのように思うんですが、最後に大臣の御決意をお願いいたします。

小池国務大臣 水俣病問題につきましては、来年で五十年という節目の年を迎えるに当たりまして、最高裁判決、平成七年の政治解決の経緯などを踏まえまして、国として何が求められているのか、また何ができるかについて、関係者の意見を広く伺い、また熊本県などとも協議しながら、鋭意検討を行ってまいりたいと思います。

 水俣病問題は、長い歴史的経緯の中で多くの関係者がかかわります複雑な問題でございます。できること、できないこと、ございますけれども、一人でも多くの方に納得してもらえるような対応策を示すべく、できるだけ早急に、しかし、内容はきっちりと詰めて検討を進めてまいりたいと考えております。

江田分科員 国と県の協議が早急に進むように、よろしくお願いを申し上げます。

 以上でございます。ありがとうございました。

小泉主査 これにて江田康幸君の質疑は終了いたしました。

 次に、山本喜代宏君。

山本(喜)分科員 社民党・市民連合の山本でございます。

 今、公明党の先生から水俣病の件について御質問がございましたが、私も同じ内容についての質問ということになりますので、よろしくお願いをいたします。

 昨年の関西水俣病訴訟の最高裁判決ということを受けまして、国、県の行政責任というのが確定をしたわけでございます。国が、国民の健康を守るために憲法十三条あるいは二十五条という国民の権利ということをこの間ないがしろにしてきたということは、大変大きな問題ではないのかというふうに思います。長い間、水俣病、そして偏見と差別に苦しんできた患者の方々の苦労、こうしたことを踏まえた場合、来年で五十年というふうな状況を見たときに、早急に最終解決のための施策をとっていかなきゃならないということが国の責任じゃないかというふうに思うわけでございます。

 社民党といたしまして、この全面解決を急がなきゃならないということで、今月の七日に水俣市に、参議院の渕上副党首ということで、国会調査団を派遣いたしました。現地で、水俣の市長さんあるいは議会関係者、そして患者団体の皆さんとの意見交換を受けて、長い間の苦しみということ、あるいは解決に向けた願いということを受けながら、早急な対策というものを国政の場で見出していきたいということで、きょう質問に立った次第でございます。

 そこで、最初に大臣にお伺いしますけれども、昨年の判決を受けた後に、患者団体の皆さんから四点の要望がなされたというふうに思います。一つは、全被害者に対する明確な謝罪。あるいは、被害者の救済、被害地域援助を含む特別立法の制定。三つ目に、被害者、被害地域の総合的調査の実施と被害の把握。四つ目には、関西訴訟原告患者、二次訴訟原告患者への早期医療救済というふうな内容だったと思うんですが、これに対して、どのように受けとめて、謝罪をして、そして今後どうした対策をとっていこうとなされているのか、まずお伺いしたいと思います。

小池国務大臣 まず、最高裁判決当日、環境大臣としての気持ち、そしてまとめということで、談話を発表させていただきました。これにつきましては、この訴訟の当事者の方々を初め、多年にわたり筆舌に尽くしがたい苦悩を強いられてこられた多くの方々に対し、まことに申しわけない気持ちでいっぱいであるということで、すべての水俣病に係る被害者に対する謝罪の気持ちをお伝えさせていただいたところでございます。

 また、こういった環境省としての気持ち、私環境大臣としての気持ちもそうでございますけれども、これについては、関西訴訟原告の方々に対して、担当部長、先ほどから答弁しておりますけれども、担当部長が訪問させていただいたり、政治解決受け入れ団体などとの面会の場などを設けさせていただいて、そういった機会を活用してこの気持ちについてお伝えもしてまいりました。また、これからも、機会をとらえて、謝罪の気持ちが伝えられるようにしていきたい、このように考えております。

 ただ、謝罪の気持ちを伝えるということもさることながら、最高裁判決、それから政治解決の経緯を踏まえて、来年の公式発見五十年という節目もございますし、原告団、政治解決受け入れ団体を初めとするそれぞれの方面の方からの要望も踏まえまして、先ほどの四つの要望も踏まえて、国として何ができるのか、できないのか、検討をただいま鋭意進めているところでございます。国としての対応案をできるだけ早く示せるように努力をしてまいりたい、こう思っております。

山本(喜)分科員 国として何ができるのか、今鋭意検討しているということでございますが、昨年の判決を受けた熊本県の対応、熊本として新たに対策案を立てて実際やっているわけですが、これについては、患者団体の気持ちを受けとめていただいているということで、地元では大変な評価を得ているというふうに私の方は理解をしております。水俣市議会も、完全解決への道筋をつける機会だということで、この熊本県の案を土台に、特別立法と水俣病患者の位置づけの見直し、九五年解決との整合性を持った広い救済策などをするべきだというふうな意見書を議会の方で出しているわけです。

 国として、こうした県あるいは市の取り組み、これをやはりきちんと受けとめていくということが非常に大事ではないかと思っているんですが、これについてはどのような考え方を持っているでしょうか。

滝澤政府参考人 熊本県の御提案の対策案はもちろんでございますが、つい先般、水俣市議会からも御意見書をいただいたところでございます。さまざまな各方面の方々から要望、御意見をいただいております。

 そうしたことを踏まえまして、水俣病被害の関係者の方々を広く視野に入れまして、今後の水俣病対策について検討を行っていきたいと考えております。さまざまな課題との整理でありますとか調整が必要でございますが、国としての対応策についてできるだけ早い時期に具体化したい、このようなことで努力しております。

山本(喜)分科員 九五年の解決から十年というふうな状況でございます。当時の自民、社会、さきがけの三党合意ということで政治決断があったわけでございますが、この解決というのは、被害者の生きているうちに解決をというふうな苦渋の決断からなされたわけでございます。ですから、国あるいは県の責任を問わない、あるいは和解者は水俣病としないというふうな点で非常に不十分な面が指摘されているわけです、この九五年の解決ですね。

 今回の最高裁判決ということでは、明確に国の責任というのが確定をしたというふうに判断をしているわけです。メチル水銀中毒症による病像というのも明白になりました。ですから、そうしたことを受けて、新しい認定申請者が急増している、あるいは保健手帳の返上者も続出しているというふうな新たな状況の変化があることは認識しておられると思います。

 ですから、国の責任が明確になった現在、当時の政治決断ということの有効性を云々するというよりも、この水俣病自体を、水俣病をめぐる諸問題の全面解決という問題、政府としての道義的責任ということは、これは避けられないことだと思うのであります。

 ですから、この点、熊本の取り組みあるいは水俣市議会の意見書というものを受けとめて、新たな救済策を新年度の予算の中で早急に措置すべきというふうに考えますが、この点はいかがでしょうか。

滝澤政府参考人 最高裁の判決につきましては厳粛に受けとめておりますし、このような悲惨な公害を決して再び繰り返してはならないという決意を新たにしておるところでございます。

 ただ、最高裁判決ということで申し上げますと、直接的に何らかの対応を求めているものではございませんけれども、政治解決に基づく医療支援の改善でありますとか、可能な対応策につきましてはいろいろと要望も出されておるわけでございまして、現在、来年五十年を迎えるという節目、そういったこともございます。水俣病対策全体を考える中で、さまざまな御要望等、あるいは地域社会での高齢化等の要素等、さまざまな要素を踏まえながら検討を行っていく必要があると考えております。

山本(喜)分科員 そこで、現実に起きている事態があるわけですね。一つは、新たな認定申請者、これが急増している。私たちが現地に行って、実際、要望を患者団体の皆さんからお聞きしたわけですが、偏見と差別の時代があって、名乗るのは覚悟が要るものだったというふうな声。今はそれがなくなって、新たな六百名の申請者を出しているというふうなこととか、もう今回が最後だ、勇気を出して申請したいということで、苦しんでいる潜在患者という人たちの声があるわけでございます。

 こういう具体的な、地元で起きている事実ですね。新たな認定申請者がふえているということ、そして新しい患者団体も発足をしているというふうなことは御存じですよね。認定審査会に申請しても判断条件ではじかれる、裁判を起こせば国の認定基準よりも広く救済をされるということで、終わりなき闘いが続くおそれがあるというふうなことも現地では指摘されているわけです。

 ですから、こういうふうな事態を早く解消していくという立場には立たないんですか。

小池国務大臣 今お話ありましたように、この最高裁の判決後に認定申請者が急増している状態ということについては、毎週のように受けております。現時点で九百十八名の方が申請をされておられる状況でございまして、また、熊本県においては認定審査会が機能していない状態であるということについて聞いておりますけれども、国としても何らかの対応は必要だという認識に当然立っております。

 では、このような状態の対応としてどうすればいいのか、何が必要なのか、それを含めまして今検討を行っているところでありまして、先ほどから対応策の話もさせていただいておりますが、全部連動する話でございますので、そういった点も含めて、国としての対応策をできるだけ早くお示しできるように努力をしてまいりたい、このように考えております。

山本(喜)分科員 それから、公健法に係る七七年判断基準の件でございますが、これは、先ほど来聞きますと、変更はないというふうなお考えのようでございますが、医学上の認定基準ではなくて、あくまでも補償協定の対象者を決めるための基準だというふうに私たちは理解をしているわけです。このことは、これまでも、九一年の水俣委員会あるいは日本精神神経学会、それから大阪高裁、こういうところでも、医学上の基準ではないということが言われているわけですね。そして現在、最高裁判決を受けて、現地では認定審査会の委員も選定できないような混乱。ですから、これはダブルスタンダードというふうに受けとめはされていますか。

滝澤政府参考人 五十二年の判断条件につきましては、公健法上の制度上の認定基準ではありますが、もちろん、水俣病という認定を行うわけですから、神経関係の専門家等々の御意見をちょうだいして、五十二年の判断条件というものはできているわけでございます。

 その後も、昭和六十年、平成三年、いろいろ御指摘を踏まえて、二回、専門家にやはり集まっていただきまして、その妥当性について検討していただきました。これは認定基準として妥当であるというその折々の結論もいただいております。

 ダブルスタンダードかどうかということでございますが、従来のお話とちょっと重複いたしますが、今回の最高裁の判決は大阪高裁を踏襲したものでございます。五十二年判断条件は制度上の基準として認められる、別個、それぞれの原告に対してどのような形で賠償するか、別な基準でもって損害賠償した、これは判決上そのとおり事実でございますので、それを、二つ基準があるじゃないかという意味では、そのとおりでございます。

山本(喜)分科員 今、その二つの基準ということを、これは具体的にはどのように解決をして整合性があるものにしていくのか。あるいは、今鋭意国として何ができるか検討中ということで、言われるところの三月めどにというふうな話もございますが、今の中で考えられているようなものがお話しできるのであれば、お伺いしていきたいというふうに思います。

滝澤政府参考人 県が提案された対応策についてはもう公表されていますので、それに基づいて、先ほども申し上げましたが、技術的な問題点やら、協議を続けております。

 それから、国として、環境省として独自に何ができるかということもあわせて検討を進めておりますし、きょう、具体的にこういうことを検討しているということまで言及はできませんが、できるだけ早い時期にその辺を、県との調整、それから国としての対応策、こういったことを総合的に御提示できるように努力しておるところでございます。

山本(喜)分科員 そうすると、今の熊本県の方で進めていることが、大体それに基づいたもの、相応したものになっていくというふうなことで理解していいんでしょうか。

小池国務大臣 県は県で独自に出されておられます。また、県の立場で必要な調整、何ができるかを検討された結果だと思っております。

 国といたしまして、国として何ができるのか、できないのかについて今対応策を練っているということでございますが、いずれにしても、それにかかわった方はそれぞれ一人一人の個人でございますので、国の対応であれ、県の対応であれ、それがやはり、これからの高齢化の進展であるとか、それから、これまでの長い長いこの間の思いであるとか、そういったことを、患者さんとか関係者の立場に立って、国と県、あわせて、しっかりとした対応をしてくれたなというふうに思っていただけるように、また、これからの公害を出さないためのそういった思いも、国の思いも入っているんだなということが御理解いただけるような、そういった対応策を練っていきたいと思っておりますが、具体的にはこの場で御報告できるところにはございませんので、御了解いただきたいと思います。

山本(喜)分科員 ぜひ、大臣におかれましては、最高裁判決を真摯に受けとめていただいて、九五年の政治解決の不備な面を救済すること、それから、水俣病の判断基準を最高裁と同様のものに見直すこと、全被害者を救済すること、そして、水俣病の過ちを二度と繰り返さないように検証を行いながら教訓としていくことを基本に、完全解決に向けた対策を強く要望しておきたいというふうに思います。

 次に、地球温暖化に向けた新エネルギーの対策についてお伺いをいたします。

 二月十六日に京都議定書が発効いたしました。最大の排出国であるアメリカが議定書から離脱をしているということ、あるいは、批准した先進国の温室効果ガスの総排出量は先進国全体の六一%というふうな状況でございますが、しかし、この京都議定書が発効されたことによりまして、法的な拘束力を持ってきているわけでございます。

 そこで、京都議定書の議長国として、みずからの義務、九〇年比六%の温暖化ガスの削減ということを達成しなきゃならないわけですが、政府のいろいろな、経済産業省を含めた動きを見ますと、京都メカニズムの利用というふうなことが、何かそうしたものに重きを置いているような印象を持つのでありますが、環境省といたしましては、この新エネルギーということについてどのように考えておられるのか、お伺いします。

小池国務大臣 京都メカニズムということで御指摘ありました。

 京都メカニズムの活用というのは、むしろ、まず国内のことをしっかりやった上でプラスアルファという位置づけ、補足的であるべきだというふうに私ども考えております。

 まず、京都議定書の目標達成のためには、今、国内の各関係省庁とも議論を重ねておりますし、また、間もなくそれによって計画を策定することとなっているんですが、まず国内でもって省エネ、そして新エネ対策などのそういった対策を確実に、そして強力に推進していく。その上で、国内対策を最大限行っても間に合わない部分については、CDM、クリーン開発メカニズムや、JI、共同実施などを中心とした京都メカニズムを適切に活用することが必要だ、こういうふうな私どもは位置づけにいたしているところでございます。

 いずれにしましても、六%削減の約束というのは、おっしゃるように、我が国が議長国として開催をしたCOPの場で決まったものであります。そして、我が国が批准をし、国会で全員の賛成を得て決議をしたものでございます。大変重いものでございますし、御指摘のように法的な拘束力があるわけでございます。私は、まず国内の削減を総動員して行う、そしてそれでも足りない場合の京都メカニズム、こういうことを考えておりますので、よろしく御理解のほどお願いいたします。

山本(喜)分科員 国内の削減を最大限取り組むということでございますが、それと同時に、化石燃料の消費量を減らしていくわけでございますから、新たなエネルギーの開発ということにもなっていくと思うんです。

 ですから、私は、二酸化炭素の排出量が極めて少ない自然エネルギーの利用ということについても力を入れていくべきではないかと思っていますが、新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法というような中にも、そうした法律も施行されているわけですから、この新エネルギーの利用ということについてはどのように考えておられるでしょうか。

能勢大臣政務官 御案内のとおりかもわかりませんが、平成十四年三月に政府が策定いたしました地球温暖化対策推進大綱では、新エネルギーの導入については「積極的な導入を進める必要がある。」そして、「長期的には新エネルギーが我が国のエネルギー源の一翼を担うことを目指して意欲的に取り組む必要がある。」というふうにされておりまして、大きな柱の一つ、対策の一つというふうに考えております。

 また、この大綱におきまして、新エネルギーの導入目標量は、二〇一〇年度までには原油換算で千九百十万キロリットルとなっているわけです。そして、これを二酸化炭素の排出削減量に換算いたしますと四千六百九十万トンということになっておるわけでありまして、一九九〇年度の温室効果ガス総排出量の三・八%に相当し、量的にも大変効果が大きい対策である、この目標の達成に向けて積極的に取り組んでいく必要がある、取り組んでまいりたいというふうに考えておるところでございます。

山本(喜)分科員 新エネルギーの利用促進、積極的に取り組んでいこうという気持ちはあろうというふうには思うんですが、現実のところ、電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法、RPS法ですか、これで電気事業者に新エネルギー等から発電される電気を一定量以上利用することを義務づけているわけですが、昨年度、東北、北海道、北陸、九州の各電力会社が風力発電事業者を募集したところ、応募が全国で二百万キロワットを超えたが、募集枠が三十四万キロワットにとどまっていて、多くの事業者が事業化をあきらめたというふうな報道があります。

 ですから、新エネルギーを推進するというふうな決意はあっても、現実には低い割合しか義務づけられていないという現状にあるわけです。ですから、こうした点、どのように改善をしていこうと考えておられるのか、お伺いします。

岩井政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のいわゆるRPS法でございますけれども、この義務量の考え方は、先ほど御答弁がございました二〇一〇年度における新エネルギーの導入目標千九百十万キロリットルのうち、電気の分野の目標を達成するために必要な量として計算をしてございまして、二〇一〇年度にかけまして、この目標の達成のために一定の努力をしていくというような仕組みになってございます。

 ただ、その義務量の達成におきましては、円滑にこれが行われますように、当初は少し低目の義務量から徐々に上がっていくというような義務量の設計になってございますので、途中段階におきましては、今御指摘のような、もう少しできるのではないかというような様々な議論もあるいは出てまいるかと思います。

 いずれにいたしましても、二〇一〇年度の目標に向かって、今決まっておる路線を進んでおるわけでございますけれども、この法律は、施行後三年目を迎えた時点で、よく現状を勘案して検討せよということも附則で書いていただいておりますので、全体の義務量の履行を勘案しながら、足元の状況もよく踏まえ、適宜適切に対応してまいりたいと考えております。

山本(喜)分科員 三年をめどに見直しをするというふうな状況でございまして、ちょうど十七年度がその三年目というふうに当たりますから、ぜひ見直しも含めて、この新エネルギーの開発に全力を挙げていただきたいということをお願いいたしまして、私の質問を終わります。

小泉主査 これにて山本喜代宏君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして環境省所管についての質疑は終了いたしました。

    〔主査退席、北村(直)主査代理着席〕

    ―――――――――――――

北村(直)主査代理 農林水産省所管について、前回に引き続き質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田端正広君。

田端分科員 大臣、大変に御苦労さまでございます。

 この前の予算委員会の総括質疑のときに、大臣に通告していながらできなかったものですから、きょう改めて、カネミ油症の問題についてお尋ねしたいと思います。

 お手元に、カネミ油症事件の経過という私のつくったペーパーが行っているかと思いますが、これをもとに、少し事件の経過をもう一度考えてみたいと思います。

 今から三十六年前、昭和四十三年に起こった事件でありますが、四十三年の二月にダーク油事件というのがありまして、大量のブロイラー、二百万羽の被害があったんですが、四十万羽相当が死んだと言われておりますが、こういう事件がありました。

 その半年後に、カネミ倉庫が製造した米ぬか油によって、食中毒というか被害が起こったわけでありますが、被害者は一万五千人ぐらいと言われております。そのうち、認定患者になったのは、後に千八百六十七名ということであります。

 つまり、体にいいという米ぬかの油だということがうたい文句であったんですが、そこにPCBが混入していたということでこの被害が起こったわけであります。

 そして、これが後に裁判ざたになるわけでありますが、五十九年の時点において、第一陣訴訟福岡高裁判決及び第三陣福岡地裁判決というのがありまして、農水省の過失ということが問われ、国が敗訴して、そして農水省から仮払金を、八百二十九名の方に約二十七億円、一人当たりにして平均三百二十万円ということでありますが、そういう仮払金が支払われるということになりました。

 ところが、その後、国及び鐘淵化学の責任というものが後の判決でまた逆転になりまして、そういうことがあったことから最高裁が和解勧告という形になりまして、患者団体、原告の方々が訴訟を取り下げるということになって、また事態が変わってしまったわけであります。

 したがって、昭和六十二年になって、この仮払金を返さなければならない、返してもらわなきゃならないという、債権管理法に基づいて農水省と原告との間での返還請求、こういう話し合いになっていくわけであります。

 ところが、これは、これまでPCBが原因である、こう言われてきました。ところが、その後、環境省の方においても、PCDFというものが、これはダイオキシン類に入るんだ、こういうことを正式に環境省も言い出したわけでありますが、そういう意味において、PCBにプラスPCDF、ダイオキシンの複合汚染ではないか、こういうことがずっと、その時点といいますか、もっと前からですけれども、言われてきました。

 御存じのように、PCDFというのはポリ塩化ジベンゾフランという、これはPCBの五千倍ぐらいの毒素があると言われているわけでありまして、そういう意味では、ダイオキシン類ということになれば、また話が全然違ってくるわけであります。

 実は、平成十三年十二月の参議院の決算委員会で、我が党の山下栄一議員の質問に対して当時の坂口厚生労働大臣は、PCDFはダイオキシン類だということを初めて国として認めました。そして、翌年、平成十四年三月の予算委員会で私も坂口大臣にそのことも確認し、では、PCDFというダイオキシン類であるとするならば、それに従った診断基準、認定基準、そういった見直しをして、もう一度患者の総点検といいますか、そういったこと、あるいは治療対策も含めて、すべて考え直さなければならないのではないかという問いかけに対して、当時、坂口大臣は、そのとおりやっていく、こういう表明があったわけであります。

 そして、治療研究班の体制が強化されて、がんの専門家とか婦人科の専門家とかそういった方々が入り、また、PCDFの血中濃度の測定とかそういったことが厚生省の方で行われるようになりまして、その後、ずっと相談窓口も強化されたりしてやってきました。

 そして、平成十五年三月からは、今度は厚生労働省と農水省と環境省でカネミ油症問題関係の連絡会議というのが設置されまして、三省で協議しながら、新たな、ダイオキシンによる複合汚染であるという視点から考えていく、こういう流れができ、そして昨年新しい診断基準ができ、新たに昨年末に十八人の認定患者が追加された、こういう流れであります。

 私は、この間ずっと患者の皆さんのお話を伺い、また今までも、例えば武部農水大臣、大島農水大臣等にも陳情にも一緒に行きましたし、先般、ことしに入ってからまた患者代表の方と、島村大臣あてに、大臣政務官にお目にかかって、患者の皆さんの声をお伝え申し上げたところでございます。

 この事件は、本当にそういった意味で複雑であり、しかし、大変不幸な事件でありまして、がんを初めとしたいろいろな病気に次から次へと侵され、その重病の中で今もう皆さん七十代、八十代と高齢化し、そして、その上に仮払金の返還ということを国から求められるという三重の負担を背負って、今皆さんは苦労なさっているという状況であります。

 この債権管理法というのはなかなか厄介な問題でありまして、もし当事者が亡くなった場合は子供や孫にまでそのままついて回るということでありまして、患者の皆さんにすれば、死ぬに死に切れないという思いで今現実にいるわけでございます。

 そういうことで、この問題は大変難しい問題ではありますが、しかし、当初はPCBによって起こった事件というふうに言われていたものが、科学的に、それの五千倍の毒素のあるPCDFがこの主たる原因の複合汚染であったということを国が認めたわけですから、そこからやはり話を変えなければならないのが本当だと思うのですけれども、農水省の方では、このPCDF、ダイオキシンと認めた後と前とで何がどう変わったのか、ちょっと御説明いただきたいと思います。

白須政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま委員からも御指摘ございました、PCDFであるというふうに認め、当時の参議院決算委員会におきまして、坂口元厚生労働大臣の御発言というものは私どもも十分承知をいたしております。

 ただ、私どもとしては、先ほど委員からもお話ございましたように、こういったカネミ油症の仮払金の債権につきまして、債権管理法に基づきまして管理することが義務づけられているということでございますので、今後とも、私ども農林水産省といたしましては、患者の皆さん方の事情を考慮しながらその事務を進めていきたいというふうに考えている次第でございます。

田端分科員 PCDF、ダイオキシンが主たる原因だということを国が認めたわけですから、そして農水省と厚生労働省と環境省で連絡会議も設置されたわけでありますから、やはり政策が変わらなきゃならないのが本当だと思います。それが、今のところ具体的には見られない。

 例えば、厚生労働省の方は、認定基準の見直しとか、新たな患者が追加認定されたとか、そういう動きは出てきました。しかし、本質的な解決は、これは何らメスが加えられていないわけでありまして、そういう意味では、私はぜひもう一度しっかりとお考えいただきたい、こう思うわけであります。

 さっき申し上げたように、昭和四十三年十月に起こった米ぬか油の食中毒事件でありますが、その半年前に、同じカネミ倉庫が製造した飼料から、ブロイラーが二百万羽被害を受け、四十万羽も死ぬ、そういう事件が既にあったわけでありまして、もしこの時点でこのことを察知して、ここで原因究明していれば、米ぬか油によって、食中毒によって一万五千人も被害に遭うようなことはなかったんだ、こう思うわけです。

 そういう意味では、それは債権管理法、そういう法律で厳しくやっているんだということだとは思いますが、しかし農水省に責任はなくはないわけでありまして、患者の皆さんからすれば、そういう大変な思いをしているわけでございますので、そういう意味で本当に新しい時点に立った、人類史上初めてのダイオキシンの被害者が出たということなんですから、その人に対しての本当に温かみのある行政という立場での手を差し伸べるのが本来の政治のあり方ではないか。

 いろいろ難しいことはあります。しかし、いろいろな知恵もあるのではないかと大臣にお伺いしたいんですが、例えば、思い切って債権免除するとか、あるいは見舞金という形にするとか、あるいは新たな何か救済策という知恵を出していただくとか、そういったことで何らかの措置が今こそ必要ではないかと私は本当に感じているわけでございまして、どうぞ島村大臣において政治的な決断をしていただけば、大変患者の皆さんは喜ばれるのではないか、こう思うわけですが、大臣、いかがでしょうか。

島村国務大臣 このカネミ油症の仮払金債権は、国に対する訴えが取り下げられた結果発生したものでありますが、何としても、カネミ油症患者の皆さんが現在もなお受けておられる苦しみとか御苦労については、いろいろな角度から今までにも聞く機会が多かったので、その点については十分お気の毒であると心から御同情申し上げているところであります。

 ただ、私どもとすれば、この金自身も国民の貴重な税金に基づく金でありますから、これは簡単な判断によって、いいことにしようというわけにもいかないのが私たちの立場であることは御理解いただけると思います。

 そういう意味で、既に返済完了者が二百四十五名、金額にして六億六千七百万円返済なさっておられますし、現在もなお、分割して返済しようというので、百六十八名の方が返済に応じて、苦しい中から返済をしているという現実もこれあり、そういう方たちとの間で何か不公平が生じるということがあってもいけないので、我々はそれらに十分心を配りながら、それはそれとして、いわば実際に返済不能の方々のお立場、これに対しては、十分その状況をしんしゃくしてこれから対応しようという基本的な姿勢に立っているところであります。

 したがいまして、そういうお申し越しを、従前から大変御努力いただいている委員のお気持ちは十分私たちも承知いたしておりますので、この上とも、できるだけお気持ちに沿ったいい結果につながっていくように、いわば血も涙もある行政のサイドの判断をしていきたい、こういうふうに考えております。

田端分科員 大臣、血も涙もある配慮をしたい、こういう大変うれしい御答弁をいただきましたが、今まで各大臣歴代、あるいは農水省の梅津政府参考人からも答弁いただいておりますが、債権管理法上の問題として、「無資力で弁済が困難であって履行延期の合意をした皆さんのうち、履行延期後十年を経過した後においても無資力かつ弁済できる見込みがないと認められる場合には、債権を免除できる旨の規定がありまして、」と、こういう本当にぎりぎりの表現で今までもお話しいただいています。

 しかし、その履行延期十年、それが来年なんですね。平成十八年から始まります。平成八年に調停した、その調停がいよいよ十年たって再調停という時期を迎えて、この延期十年のところに当たるわけであります。

 その時点で無資力、この無資力という言葉が非常によくわからない。患者の皆さんにとれば、もう七十、八十で高齢で、収入もなければ、しかし病院通いが毎日のように続いている、そこらじゅう手術の跡だらけである、そういう状況で、弁済できる見込みがないというのは当然わかっているわけですから、そこをどうするか、私はぜひお考えいただきたい。

 「免除できる旨の規定がありまして、」と、規定があるんだったら、どんどん免除をはっきりと言っていただいて、そして少しでも精神的あるいは肉体的苦痛の負担が軽くなるように、何とか血も涙もある本当の意味の運用をしていただけないかというのが私の思いなんですが、大臣、どんなものでしょうか。

白須政府参考人 ただいまの議員の御指摘どおり、債権管理法におきまして、当初の履行延期から十年を経過した後において、なお債務者が無資力またはこれに近い状態にあり、かつ、弁済することができることになる見込みがないと認められる場合には、債権を免除できるということにされているわけでございます。

 この無資力またはこれに近い状態ということの範囲につきましては、今委員からも御指摘のとおり、来年以降、十年の履行延期を満了される患者さんも出てこられるわけでございます。したがいまして、今後私ども、その範囲につきまして、関係省との間で十分協議をしてまいりたいというふうに考えております。

田端分科員 大臣、いかがでしょうか。

島村国務大臣 今日までも、この債権管理法に基づきまして、履行を延期したりいろいろ配慮してきているところでございますし、来年の十月にはこれはまさに時間をもう満了するわけでございますから、それに向かって、ただその時期を待つのでなくて、私なりにこれから適時適切に対応していくことを約束したいと思います。

田端分科員 ぜひ個々の患者の皆さんに激励の意味を込めて対応していただければ大変ありがたい、重ねてお願いしておきたいと思います。

 話はかわりますが、自然再生推進法というのが平成十四年十二月に成立いたしまして、実はこの前こんな本を出版しまして、これは谷津義男元農水大臣と私の共著になっておりますが、大臣、済みません、二冊しか持ってこなかった、大口政務官はまた後でお渡しします。ぜひまた参考に見ていただきたいと思います。

 今、この法律に従って、全国で十二カ所、自然再生事業が進んでいます。地域で協議会が立ち上げられたのは十二カ所、その協議会で話がまとまって、こういう自然再生をやろうという全体構想がまとまったのが四カ所あります。

 そういう意味では、この法律のすぐれたところは、市民、NPOを参加させるということを明確に明記した法律の第一号でありますが、地域の皆さんに入っていただいて、上から、国からこういうふうにやれというんじゃなくて、地域からボトムアップ方式でこういう自然再生をやろう、こういうことで、今各地でそういう再生事業が議論されている。

 そういう意味で、まず環境省に、簡単で結構ですから、全国が今どういうふうになっていて、これが今どういう状況で進んでいるのか、ちょっとお答えいただきたいと思います。

小野寺政府参考人 委員御指摘のとおり、十四年の十二月に法律が制定されまして、十五年の一月から施行されております。

 これも重ねてでありますが、全国で十二、自然再生のための地域協議会というのが発足しております。その地域協議会では、どう自然再生を一番大きな枠組みで進めていくかということについて全体構想をつくることになっております。全体構想をつくった後、実施計画をつくって、実施計画の後、事業実施をする、そういうプロセスになっておりますが、四地区において全体構想が策定されました。

 発足前に田端委員からも御視察いただきました釧路湿原の自然再生協議会、これは百人を超える物すごい大きな地域協議会でありますけれども、二月二十二日、一週間前に全体構想が策定されたところでございます。これを受けまして、次の実施計画、事業実施に向けて、農水省、国土交通省、環境省が主管官庁でありますが、各省連携して事業の促進を図ってまいりたいと思っております。

田端分科員 実は私、昨日、大阪の岸和田市に神於山という山がございまして、百八十ヘクタールで標高三百メートルのこんもりとした山ですが、行ってまいりました。

 大変すばらしい里山づくりが今進んでいるわけでありまして、これがこの十二カ所の中の今トップを走っていまして、実施計画が間もなくできると思います。来月十九日には市民シンポジウムも開かれて、最終決定の方向のようであります。ここは、本当に町からも近いし、そしてまた市民も気楽に行ける、また、登ってみると眺望がまたすばらしくて、大阪湾も全貌が見渡せる、こういうすばらしいところでもありました。

 それで、切った竹やぶの竹のササが、今、和歌山の白浜のアドベンチャーワールドのパンダの、和歌山の方が塩害でササがなくなったためにここのササが運ばれて、パンダに喜んでいただいている。こんなことで、一石二鳥三鳥だというので非常に話題にもなっています。自然学習の拠点までたくさんつくられていまして、本当にいい里山づくりが行われているなと。

 農水省の方で大変力を入れていただいて、林野庁からもいろいろな形で資金の援助もいただいているようでありますが、このすばらしい里山づくりを今後とも、資金面ももちろん、この治山事業が終わっても、維持管理というのはまたお金がかかると思いますので、そういったことについてぜひ御支援をお願いしたいという意味で、大口政務官の方に御見解をお願いしたいと思います。

大口大臣政務官 今委員が環境につきまして大変努力されている、そして、自然との共生社会を実現して、そして地球環境保全にも寄与する、こういう自然再生推進法の提出者の一人としてやってこられたことを私ども承知しております。

 そういう中で、農林水産省といたしましては、農林水産業というのは、本来、自然の物質循環機能に依存した持続的な生産活動であり、里地、里山などの二次的自然の形成に寄与しているわけでございます。そういうことで、農林水産省といたしましても、生態系に配慮した農業用の水路の整備、広葉樹の栽培など、自然再生に貢献するための事業を実施しているところでございます。

 委員おっしゃいましたように、今、この自然再生法に基づいた協議会が十二あるわけでございますけれども、その中で、釧路湿原、北海道、それから多摩川源流、山梨県、そして先生の御地元の神於山、北海道の上サロベツ、これは農水省が参画しているところでございます。この件につきましては、農林水産業の生産活動との調和を図りつつ、自然環境の再生にしっかりと取り組んでまいりたい、こう考えておる次第でございます。

 そういう点で、今御指摘のありました神於山の実施計画につきましても、後ほど詳しくは参考人から述べさせていただきたいと思いますけれども、全力を挙げて積極的にやってまいりたいと思います。

田端分科員 十七年度予算の中に、国民参加の森づくり交付金ということで四十四億円余りの予算が計上されていますが、林野庁長官の方としては、こういった資金も、今のような市民参加型の里山づくりにぜひ配慮していただいて、バックアップしていただければと思いますが、長官の御意見をお伺いしたいと思います。

前田政府参考人 今先生からお話ございましたように、神於山の全体構想、またこれの協議会のメンバーといたしまして、私どもも参加させていただいて検討を進めてきているわけでございます。

 林野庁にはいろいろな事業がございます。森林の整備ですとか担い手の育成、そういったこともいろいろあるわけでございますけれども、現在は、治山事業の生活環境保全林整備といった中で除竹とかそういった問題も含めて対応しておりますし、また一部では、例の緊急雇用、こういったものを使いまして除竹なんかもやっている。

 さらに、今後、今実施計画の策定が進んでいるわけでございますけれども、こういったものも受けまして、私どもも、今先生お話ございました森づくり交付金といった中で、かなり弾力的な形で対応できる予算制度になっておりますので、そういったものも活用し、また、できれば森林整備事業といったものも使いながら積極的に御支援申し上げていきたいということで対応してまいりたいというふうに考えている次第でございます。

田端分科員 森林というのは、京都議定書においても三・九%の吸収源ということで大変大事なことで、ぜひ京都議定書履行のためにもいろいろな形で御努力をお願いしたいと思います。

 そこで伺いたいことは、環境省の分野になるかと思いますが、日本のリサイクル技術といいますか、大変すぐれたものだと思いますし、リデュース、リユース、リサイクルという三Rの考え方というのは、この間もマータイさんが、アイラブ三Rだと言って、もったいないという日本の文化は大変すばらしいということをおっしゃっておりましたが、そういう意味でも、日本の廃木材、建築廃材リサイクル法という法律の施行によって、さらに木材を再利用するというのが業界の中でも大変進んでいると思います。

 私思うのは、木を伐採した時点でCO2排出のカウントになるわけです。だから、一回使った木をもう一回、二回、三回と、日本の技術でいけば三百年、五百年使えるという技術まで開発されているようですから、そういうふうに何年も使うということは、逆に言うと、これはマイナスにカウントしてもらわないと割が合わないんじゃないか、こう思うわけです。二〇一三年以降の次の第二期の交渉の中で、日本のこういう技術がマイナスカウントできるような、国際条約の交渉の過程の中で、そういうところまで踏み込んだ議論をすべきではないかと思っておりますが、環境省の方、いかがでございましょうか。

北村(直)主査代理 環境省小島地球環境局長。

 時間が終了しておりますので、端的にお願いいたします。

小島政府参考人 御指摘のように、炭素が立木で蓄積されているか、あるいはこういう机になって蓄積されているか、それはまた同じことではありますけれども、こういうふうに机になってしまった後は、それがいつどういうふうに廃棄されるか、あるいはこれが日本のものであるか外国のものであるか、そういう全体の流れを正確に把握することが難しいということで、第一約束期間は、木を伐採した時点で木に蓄えられておりました炭素が二酸化炭素として空気中に出る、こういう扱いをしているわけであります。

 第二約束期間以降はこれからの交渉になりますけれども、そういういろいろな条件をどういうふうにクリアするか。木を大切に使うということは環境にとってよいことでございますので、そのような方向にしてまいりたい。いろいろな条件はありますけれども、検討していきたいと思っております。

田端分科員 以上で終わります。ありがとうございました。

北村(直)主査代理 これにて田端正広君の質疑は終了いたしました。

 次に、近藤洋介君。

近藤(洋)分科員 民主党の近藤洋介でございます。

 農業政策は国の基本の政策であると私は認識しております。私は、ふだん常任委員会では現在経済産業委員会に所属をしておりますが、農業政策は、私政治家にとりましてもライフワークにしたいと思っているところでございます。

 本日は、昨年の予算委員会の分科会に引き続きまして、希望いたしまして、農業政策を質問したいということでこの機会をいただきました。折しも、新たな食料・農業・農村基本計画を政府が策定中ということでございますので、基本的な問題につきまして、広範な計画でございますけれども、ポイントを絞って政府の考え方をただしていきたいと思っておるところでございます。

 まず最初に、食料の自給率に関する認識をお伺いしたいと思っているわけでございます。

 島村大臣は、農林水産大臣、二度目の御就任でございます。私ごとで恐縮ですが、私、以前、日経新聞の新聞記者をやっているころ、農政クラブにおりました。当時の大臣が島村農林大臣でございました。その意味では、今度は立場が変わってこういう場で、きょうは新聞取材ではなくて質問ということでございますが、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 大臣は、前回の大臣のときに、現在の基本計画のもととなった農業基本法改正にかかわる議論にも当然かかわっていらっしゃいますし、食料、農業政策に対しては大変高い御見識を持っていると私存じております。また、立場は異なりますけれども、保守政治家として大変すばらしい見識をお持ちだと尊敬申しているところでございます。

 ただ、この食料の自給率に関して申し上げますと、残念ながらこの五年間、実績が上がっていないといいますか、目標を達成できずに参りました。現在の自給率というのは、平成十五年ベースでございますけれども、四〇%程度。この計画がスタートした当時よりも一ポイント、これは数字のマジック等ございますけれども、ほぼ横ばいないしはじり貧ということでございます。今回、政府が審議会に示された案でも、この目標年次を当初の目標よりも、平成二十二年よりも五年延ばされて四五%と、先に計画目標値を延ばされたということになっているわけであります。

 私自身は、過去の政策云々について、この場で、ここは問題ではないか云々という責任を問うつもりは毛頭ございません。また、実現可能な政策目標を立てるのが筋でありますから、不可能な数字を過去の計画を引きずってやる必要も毛頭ないと思うわけでありますから、その意味では、二十七年度目標で四五%というこの目標をぜひ達成してもらいたいと思うわけであります。

 地元の生産者の方々とお話をしますと、残念ながら、農林水産省の農政に対して必ずしも全幅の信頼を置いているとは言いがたい。それは、やはり、この目標を掲げたけれども本当に大丈夫なんだろうかという、不信感と言うと言い過ぎですが、やや不安感があるのもこれは現場では事実だと思うんですね。

 したがいまして、ここは、農林水産省がこのたびこの方針を出されたわけでありますが、必ず実現するんだ、この四五%を何としても総力を結集して実現するんだというその決意、政治的な決意が重要かなと思っております。この食料自給率に関する御認識と、この達成に向けた御決意を最初に農林大臣にお伺いしたいと思っております。

島村国務大臣 久方ぶりにじかにこういう話し合いができる、幸せに思います。あの当時、あなたは敏腕記者として鳴らして、私は随分貴重な意見を伺って勉強させていただいた恩義も感じているわけですが、実は私は、あなたの御尊父が経済企画庁長官のときに政務次官としてお仕えをした、こういう関係もあるわけでございまして、非常にいろいろな意味での因縁を感じているわけであります。

 ただいま御指摘のことは、そういうわけだからではございませんけれども、全く同じ考えに実は私も立っているわけです。本当ならば、私たちが掲げた目標をきちんと実現して、いわば私たちも努力の結果、皆さんの努力が生きました、こういうことを申し上げたいわけです。

 もう釈迦に説法ですけれども、私たちの自給率をいろいろ過去に顧みて調べますと、御承知のように、昭和三十五年には何と七九%、約八割、自給率があったわけですね。これが五年後の四十年には七三に落ち、さらに五年後にはこれが六三に落ち、そしてその後、昭和五十年代から六十年にかけての十年は、大体五四から五三に落ちただけですから、一%減という横ばい状態にあった。しかしその後、また五年ごとに五%、五%落ちてきて、現在の四〇%。もう実に六年続いておりますが、これも多少は減りぎみの中の四〇%です。

 では、なぜそんなことになっているのか。自給率というのは、だれしも一般の素人の方は、生産面が能力が足りないからなんだろう、こう考えがちですけれども、実はそうではありませんで、今の数字を申し上げたのも、消費に影響されることが極めて大だということを申し上げたいわけであります。

 しかも、大づかみな言い方をしますと、日本人の主食はお米でございますが、一〇〇%これは供給する能力が今でもあるわけですね。なるほどミニマムアクセス米その他も抱えさせられる国際的な義務はあるものの、私たちは、お米さえ食べていただければ自給率をどんなにでも上げることができる。ただ、具体的に申し上げれば、この四五%、平成二十二年を想定した当時、農林水産省は何を考えたかというと、大体統計を全部ひもときまして、一日に日本人は平均茶碗三杯の御飯を食べる。その三杯の御飯を食べるということを前提にいわば四五%ということをやっているわけです。

 この茶碗三杯を食べるときに、一杯食べるときに、かわりにもう一はし御飯を食べていただけると、一%上がるという数字が出ております。

 ところが、どうも最近は日本型食生活、日本人には余り好まれない。皮肉なことに、国際的には大変な評価を受けて、いわば日本食ブーム。だれが考えても美容と健康には断然いいわけですし、世界一の長寿国になったのは、医学も環境面の進歩もありますが、一番基本となるのは、やはり日本の食生活によるところが極めて大きいと思うんです。その証拠に、海外で肥満体を苦にする女性がたくさんいますけれども、海外の肥満体と日本人の肥満体というのは比較にならない。スカートの上にもう一枚スカートをはいたような大きな体をしている人をたくさん見かけるわけでありますが、あれは日本の食生活と向こうの食生活の違いなんだろうと思います。

 そういう意味で、具体的に申し上げると、お米の消費が私たちの予定をはるかに下回った。例えば、ここに数字がございますが、当初予定した、平成九年当時は六十六・七キログラムだったわけですが、大体六十六キログラムぐらいで推移していただけるという期待を実は前提に置いたわけですが、何と今六十一・九キログラム。実に四・八キログラムも減っているわけですね。これでは、私たちがどのようにあがいても自給率は上がらない理屈になります。

 そして一方では、油脂類あるいは肉類、こちらへのいわば消費はどんどんふえている。これは残念ながら自給率が低いわけでございますから、その分食料自給率が下降するということにもなります。

 そういうことをいろいろ考えますと、私たちは、本当ならば、お約束の二十二年に四五%、五%アップをしたいんですけれども、今すぐ四五%に持っていきますということを言うと、これは結果によってはうそをつく可能性がある。それは、あくまで消費者は自由に選択しているわけですし、大体最近の家庭の状況なんかを見ていますと、お母さん方も御自分の時間が欲しいし、どうも手間暇かかる和食は嫌だ、皿洗いその他も面倒くさい、とすると、安直にパンか何かで食事を済ませてしまうというような傾向が非常に強いわけですから、これを何としても米を食えという、戦時中のようなわけにいきませんので、私たちは、残念ながら、いわば自給率をはっきり上げて責任を持ちますということが言いたくても言えないというのが実情です。

 そこで、では、我々は拱手傍観するのか。これは許されません。それでは何をするのか。生産面に対していろいろ我々の努力を重ねることは当然でありますけれども、少なくとも、先進国も皆やっておりますフードガイド、こういうものをつくって、いわば食生活に対するいろいろな私たちなりの手引きをするとか、当然のことのように、今話題の食育を推進して、いろいろな意味で国民の皆さんに、美容と健康と、そして同時に日本の国の国益にもつながることをもっともっと知っていただくというような意味もそうですし、また、食事内容をもっともっと充実させるようなお手伝いも必要でしょう。

 あらゆる角度で私たちは努力をして、それでお米の消費を高め、それでもって自給率を上げようということにしているわけで、油はやめなさい、肉はやめなさい、これも私たちは言いませんし、また、それはどちらでもいいけれども、少なくとも最低限度お米だけは食べていただくということをぜひお願いしたいものだ、こんなふうに考えているところであります。

近藤(洋)分科員 大臣御存じのとおり、フランスの大統領だったドゴール大統領は、かつて、食料を自給できない国は真の意味の独立国ではないという名言をおっしゃっているわけです。

 自給率がどこまで上がればいいのかという議論がございますが、やはり、こちらの基本計画にも書いておりますが、五割を超えるのが望ましいと書かれているわけで、私も全くそう思います。目指すべき目標は、いろいろな数字はありますが、やはり五割というのが中期的な目標ではないかと思っておりますし、お話しのとおり、食生活の議論と密接にかかわるわけでありますけれども、しかしながら、同時に、やはり生産サイドも足腰を強めなければいけないのかな、これは両方、車の両輪だろうなという気がしているわけでございます。

 そこで、担い手の部分、食生活の部分は今回はおきまして、担い手の議論をさせていただきたいと思っているんです。

 今回、農家の総数は大変な勢いで減っているわけでございます。数字は申し上げませんが、大変な勢いで減っているという中で、その意味では、やはりどうしても法人化ということは流れなんだろうなと私も認識しております。

 ただ、法人化のときに留意すべき点は、主業農家の方々をどんどん法人にする、準主業農家の方を法人化するということも大事なんでしょうけれども、できる限りこぼれがないようにすくっていくことといいますか、加えていくことが大事ではないかなと思っているわけです。株式会社の農業参入の議論だけがどうしても光が当たってしまって、これは余り進めると議論をおかしくすると思っているので、あえて触れません。

 ただ、問題は、農業生産にかかわる雇用も含めて、やはりふやしていかなければいけない。そのときに、いかにも競争力のあるところだけに光を当ててしまうと、実際に法人になれるところが少ないのではないか。ある程度幅を広げた法人経営というか法人体というのを認めていくということ、大切にするという視点も、集落を維持するという意味において重要ではないかと思うわけでありますが、こうした視点に立った法人化の後押し策についてお伺いしたいと思うんです。

岩永副大臣 今大臣が答弁申し上げましたり、また先生がお話しいただきましたように、本当に日本農業、自給率だけではなしに、担い手がだんだん少なくなってきている、そして放棄地がふえてきている、大変大きな岐路にあることは事実でございます。

 そういう状況の中で、今回、基本計画の見直しを三月を目途にやりながら、農業の土地そして国の補助金や金を集中化しながら、やはり自給率なり土地の効率的な利用を進めていこうじゃないかというのが、今回の大きな大転換のもとでございます。これは、戦後いろいろあったけれども、かつての兼業農家から専業化へ目指していくという政策転換というのは大変大きな決断でございますし、また、日本の生産者、全域を巻き込む大転換期だろう、私はこのように思っております。

 そういう状況の中で、では、どういうメリットがあるのかということでございますけれども、法人化すると、やはり地域内の多くの人的資源が包括的に使えるということ。それからまた、農業資材、機械等の問題だとか、団地だとか集団化による大幅なコスト制限が図れるということ。それから、多様な資金の信用力でもって利活用ができるということ。そして、加工、流通、販売の一体的処理といった経営の多角化によるものが今度は大きな効果を生む、こういう大変多くのメリットが出てくるだろうという想定のもとに我々は集落営農、法人化を進めていきたい、このように思っているところでございます。

 それで、農水省といたしましても、地域で考える担い手創成プロジェクトチームというのを、私、座長をさせていただきながら、系統農協とそれから農業委員会と一体になって、今度は国の段階から県の段階、市町村の段階まで全体的な組織をつくろう。そして、この基本計画の見直しが終わったら、今度は農水省の我々副大臣、政務官は、大臣を先頭にして一斉に全国を歩こう。なおかつ、各都道府県挙げてその体系を皆さん方に御説明いただく。もう富山県だとか滋賀県あたりは先進県と言われておりまして、今ずっと農水省の幹部もそういう先進地を見ているような状況でございます。

 ひとつそういう意味で、いろいろとこれから課題も多いだろうと思いますが、先生のおっしゃったように、効率を上げていくというような意味で、精いっぱい頑張っていきたい。

 ただ、集落営農の場合に、今いろいろなばらつきがありますので、その実態はよく見きわめていって、できるだけ今までの兼業農家も集落という形の中できちっと拾い上げていって、やはり農業に参画していただくという体系だけは忘れてはならぬ、このように思っておりますので、御協力のほどよろしくお願い申し上げます。

近藤(洋)分科員 御指摘のとおりだと思うんですね。やはり健全な兼業農家というのは大事にしたらいい、副大臣も同じ御認識かと思うんですが、私も思っているんです。そこは、集落の共同作業が維持できるような健全な兼業農家はきちんと、彼らにあきらめさせないということは大変大事なことだと思っているものですから。

 ちょっと仄聞すると、今度、農林水産省は、かつて四町歩以上がプロ農家、今度は十町歩以上ないとプロ農家じゃないんじゃないかとか、そういう話も出ております。そこはやはり健全な兼業農家をきちんと認識する、その中で法人にできるものはどんどん法人にという視点も重要かなと。我々民主党の農政政策は、やや政府と違うわけでありますが、どちらかというと、プロだけではなくて、もう一つ、第三の道的なものも目指していきたい。これはこれで党でまた御提案をしていきたいと思いますし、議論させていただきたいと思っているところでございます。

 さてそこで、今度は農地制度なんでございますが、農地も大変な勢いで減り続けているわけであります。六年間で二十万ヘクタールというわけでございますが、そこで、私も地元で政治活動をしていますと、意外に多い陳情が農転なんですね。農地転用してくださいというのが実は私ども野党の議員のところにも、野党と言っちゃいけない、政権準備政党でございますが、よく来るわけでございます。これは非常に複雑な思いで、丁寧にお話は聞いているわけでございます。

 しかし、これは規制緩和の中で、国から県へとだんだん移っていった。実際は、どうもその運用の基準が、市町村がよしとなると国がオーケーをするわけで、結果として巨大なスーパーがどんとできてしまう、農村が壊れていくということが起きているわけです。

 この辺は、ルールの運用の明確化とか、さらには、場合によっては規制の強化も、これは農村を守るという意味では必要なのではないかと思うんです。簡単で結構でございますが、今農水省、これに向けてどんなことを考えていらっしゃるんでしょうか。

川村政府参考人 ただいま委員の方から、農地の問題についてのお尋ねがございました。特に転用の問題でございますが、まさに食料の安定供給、そのためには食料生産の基盤であります優良農地をいかに確保していくかということが重要だと思っております。

 今回もこの国会に農地関係の法案を提出させていただいておりますが、その中で、農業振興地域整備計画の変更の際に、地域住民の意見を聞く仕組みも導入するといったようなことでの提案もさせていただいておりまして、そういう中で手続の透明性というものも確保していきたいと思っておりますし、今、委員が御指摘ありましたように、優良農地の確保の観点から、農地転用許可制度につきましても一層の適正かつ厳格な運用、こういうものを目指していきたいと思っております。

近藤(洋)分科員 続きまして、担い手論の方に戻るんですが、私の地元でも、だんだん建設業が、公共事業がだんだん減ってまいりまして、ただ、やる気のある若手の建設業の経営者の方々、私の仲間の方々は、これからはやはり農業だと思っているんですね。農業で、例えば畜産なら畜産の生産者の方々と連携して畜産関係をやってみて、さらには畑作もやり、そして観光業の方と、食品流通の方とも連携して、事業を起こしたいという機運が非常に高まっています。

 こういう場合、こういった新しい連携がどんどん広がると思うわけでありまして、これについて質問しようと思ったんですが、時間もあれなので要望だけでございますが、そういった部分について、やはり農水省としてもきっちり目を当てて、金融面も含めてその後押しをすること、これからどんどん異業種参入がそういった意味でふえてくると思っておりますので、この辺は島村大臣も感覚を十分お持ちの、また執行部の皆さんだと思いますので、ごらんいただき、必要なものは御支援をいただきたいと思っているわけであります。

 続きまして、新たな息吹という意味で、バイオマスについてお伺いしたいと思っております。

 バイオマスは非常に可能性を秘めた分野かと思っております。今、役所からも資料をいただきました、このバイオマスタウン構想ですか、ここにも書いていますとおり、特に山村地域におきまして村おこしの柱になるなという認識をしておるわけでございます。

 これまでのバイオマスは、やや廃棄物系のバイオマスが中心であって、もう一つ広げるためには、やはり資源作物系のバイオマス、こうした分野にも光を当てることが必要かと思っているわけであります。エネルギー分野、ガソリンに入れるとか、いろいろなコストが高いというのは承知しています。うちの地元でも、山形県内でも、新庄市というところでは唯一ガソリンを販売しているということでありますけれども、ぜひこういった分野の背中を押す必要があるのではないかと思っておりますけれども、農水省の考え方なり施策を伺いたいと思います。

大口大臣政務官 ただいま先生お話ししたとおりでございまして、地域の活性化のために、本当にバイオマスというのはすごいんです。

 昨夜遅くでしたけれども、山形県の小野川温泉、一千二百年の歴史だそうでございますね。そして、そのバイオマスもその要素に入れて堆肥をつくったりしておられるということで、本当に地域の活性化にバイオマスは非常に大事でございます。

 そういう中で、バイオマスタウン構想というものを私ども推進していくということで、二〇一〇年を目途に五百ぐらいの市町村でこれを展開してまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。

 そして、今、先生おっしゃったように、日本は今、バイオマス・ニッポン総合戦略というものを立てておるわけでございまして、その中で、どちらかというと今まで家畜の排せつ物などの廃棄物系のものが多かったわけでございますけれども、やはり大気中の二酸化炭素をふやさないで化石資源に代替する、そういう資源でございまして、二月十六日に京都議定書が発効されまして、非常にこれは注目すべき資源であるということでございますので、未利用バイオマスあるいは資源作物、こういうものに、農作物の利用へと発展させていくということが、委員御指摘のとおり大事であると思います。

 そういうことを踏まえまして、技術開発やあるいは施設整備などを進め、農作物を含め地域が有するあらゆる種類のバイオマスを十分に活用していけるよう努めているところでございます。

 いずれにしましても、このバイオマスタウン構想の推進を初め、地域の実情に即した取り組みが進むよう、今後も、関係府省庁と連携をしっかりとりながら施策の充実を図ってまいりたいと思います。

近藤(洋)分科員 おっしゃったとおり、各省庁にまたがる分野でございますから、連携が大事だと思っておるんですね。農水省からいただきました資料、今年度、二百七十七億円でございますか、バイオマス関係予算ということでございましたが、とりわけこの分野は農林水産省と経済産業省、二つがキーになるのかなと思っておるんです。

 これまでの政府で見ますと、農水省と経産省というのは、余り仲がよい役所だとはとても言えないわけでありまして、農林水産省は建設省とも、あらゆるところでそれなりに角突き合わせているわけですが、特に経産省とはやや距離があった役所だという気がするわけでありますけれども、この分野について言うと、やはり経済産業省と連携をすることが重要かなと。ぜひ、これは手あかのついた言葉ですが、縦割り行政の弊害なく集中して進めていただきたいと思っているわけでございます。

 最後に、ちょっとがらっと話は変わるんですが、国有林野について、ぜひお伺いしたいと思っているんです。

 現在、国有林野事業、改革集中期間として、事業の合理化を進めてきたことは私も十分承知しています。人員も随分減らされました。営林署も統合されました。

 しかし、こうした合理化を続けても、新規の借り入れがなくなっただけで、なかなか元本というか一兆円引き継いだ、三・八兆円の二・八兆円は国が、そして一兆円は特会が持っているわけですが、この一兆円を返すめどがあるのかというのは大変不安になるわけでございます。五十年間ということでございますけれども、一体これは返すめどがあるんでしょうか。ちょっと長官、本当にあるんでしょうか、お伺いしたい。

前田政府参考人 この関係につきましても、先生、当時から大変お詳しいのでなんでございますけれども、御案内のように、私ども、平成十年、抜本改革に着手いたしまして、国有林の経営、木材生産から公益機能へ、またそういった中で組織の合理化、職員数の適正化、さらには民間委託の推進ということで、職員一丸となって取り組んできたわけでございます。

 この結果、今お話にもございましたけれども、平成十六年度、二十七年ぶりかと思いますが、新規借入金に依存しない経営、いわゆる借金体制から脱却を図った。そういう意味で、今後に向けて国有林の健全な経営といったものを進めていく一応の基礎ができたのではないかというふうに思っております。

 確かに、御指摘のように、現在、木材価格が相当低迷しているという中で大変厳しい状況にあるわけでありますけれども、一方では、戦後、着実に進めてまいりました森林の整備、そういった中で森林資源の充実も進んできておりまして、今後に向けては収穫量が相当増大していくということが見込まれているわけでございます。

 こういった状況も踏まえまして、事業収入の確保は当然でありますけれども、一方では効率的な事業執行といったものにも努力いたしまして、収支両面にわたる努力を尽くし、そして財政の健全化に努めていきたいというように考えているわけであります。

 特に、あの一兆円の世界につきましては、いわゆる止血措置を講じまして、利子につきましては一般会計で補てんしていくということで、債務そのものがふえていくという構造に今回は切りかえたわけでございますので、そういった中でしっかりとこれらの返済に向けて努力していきたいということで、私どもも可能であるというふうに認識している次第でございます。

近藤(洋)分科員 長官のお立場としてはそう答えざるを得ないと思うわけでありますが、これは、森林がいかに重要かと、私はこの場で言う必要はないと思うわけでありますけれども、大変多面的な機能も持っておるわけですね。

 あの一兆円の債務を特会にそのまま引き続き残したという意味合いは、国有林野事業を合理化するというおもしとして、政治的なおもしとして残すことは、僕は意味があったと思っています。何もなく、全部一般会計に振り分けたら、これは国有林野事業は合理化もしないことになるでしょうし、やはり、これがあるんだから合理化しなきゃいけませんよということで進められた、政治的な意味は僕はあると思うんです。

 だけれども、ここまで来ると、まだまだむだは省かなきゃいかぬ部分はあるとは思いますけれども、相当タオルは絞り切ったのかなという気はするわけですね。

 そうすると、確かに利子は一般会計から補てんしている、だったら元本も一般会計で持てばいいわけでありまして、この辺の区分はどうなのか。でも、そもそも、もう京都議定書の議論も、まさにこれから環境なんだという国のかじを切るとすれば、林野事業で木材を売って、そしてお金を返しましょうということ自体が、果たしてこのスキームが成立し得るのかというのは大変疑問なわけであります。

 規模で、お金の額で言うわけではありませんが、国有林野事業のあの議論のときに、あれから数年後、金融破綻の話があって、何十兆円もの、三十兆円を超える国費を金融機関にじゃぶじゃぶとつぎ込んでいるんですね。我が国の国土を守る森林のことを考えれば、もしあの金融破綻の後に国有林野のことがあったら、いっそのこと、もっと早く国費が入ったのかなという気すら、タイミングがちょっと二、三年、逆に早かったのかなという気すらするわけですが、これはもう終わったことを言ってもしようがありません。

 問題は、この一兆円をこのまま抱き続けて無理なスキームを続けることが、果たして本当に森林を守るという観点から正しいのかということだと思っております。

 こういう判断は、なかなか連続性のある政府の中ではできないわけでございまして、あえて言えば、政権を交代して、森林整備事業についての考え方を転換するということでないとなかなかできないのかなということだけ指摘を申し上げまして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

北村(直)主査代理 これにて近藤洋介君の質疑は終了いたしました。

 次に、肥田美代子君。

肥田分科員 民主党の肥田美代子でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 私はまず、男女共同参画社会を推進する立場から、農村女性の地位向上に向けた取り組みについて、大臣の見解をお伺いしたいと思います。

 食料・農業・農村基本法は、「女性の農業経営における役割を適正に評価するとともに、女性が自らの意思によって農業経営及びこれに関連する活動に参画する機会を確保するための環境整備を推進する」と明記されております。この基本法施行後、農村女性の地位向上に向けた政策支援が行われ、女性農業委員の増加を初め、政策決定過程への女性の参画が広がりつつございます。

 私の心配は、これから全国で市町村合併が進み、広域行政が行われるようになりますと、その影響で、農業委員の定数が削減され、女性農業委員の登用増加の傾向に歯どめがかかりはしないかということでございます。

 今回の食料・農業・農村基本計画原案でも、女性参画の促進ということが明記されております。農村女性の政策決定への参画を促進することは、まさに現代的な課題だと思います。農業団体の女性役員や農業委員への登用についてなお一層取り組まれるよう、関係団体、機関に対する奨励も含めて、大臣の見解をお伺いいたします。

    〔北村(直)主査代理退席、主査着席〕

島村国務大臣 お答え申し上げます。

 女性は現在、農業就業人口の約六割を占めておりまして、農業の重要な担い手であります。そういう意味で、農業経営への参画とあわせまして、地域の農業者の代表であります、今御指摘の農業委員への女性の登用を進めるとか、そういう具体的に指導的な立場に立っていただくことも、またこれは重要ないわば考え方だろうと思っております。

 そういう意味で、農林水産省も、その辺はよくそれぞれの組織に呼びかけをしてきたところでありますが、最近も、都道府県農業会議や農業委員会では、これまで女性の選挙委員への立候補の促進や選任委員への登用に向けた自主的な運動を実施しているということでやってきたわけでありますが、我々は、あくまで数字を確認するということで今まで来たわけですね。その点では、どの程度の指導監督をしているのかと言ったら、いや、数字が非常に着実に伸びておりますという、まず就任早々の報告がありました。

 具体的に申し上げますと、女性は平成十一年の選挙時に九百七十七人、千人に満たなかったわけでございまして、九百七十七人。これは、平成十一年のいわば選挙のときの農業委員の数でございます。これが平成十四年の選挙のときにおいては二千二百六十一人、二倍強に増加しているところでありまして、やはりこれは非常に好ましい結果を生んでいるんだろうと私たちは率直に歓迎をしているところでございます。

 そういう意味で、ただいまも御指摘がございましたが、今後、国といたしましても、女性の農業委員への登用について、都道府県農業会議や農業委員会に対して積極的に指導助言をしていきたい、その意味では御趣旨に賛成でございます。

肥田分科員 力強い大臣のお言葉をいただきましたので、ぜひよろしくお願いいたします。

 農村女性の起業に対する政策的な支援について、お尋ねをしたいと思います。

 農村女性の活動は、地域社会の活性化や農業の再評価につながるばかりではなくて、農業の多面的な機能という点からも、さまざまなバックアップが必要だと思っております。

 特に、農村女性の起業は、今、農産物の加工とか直販ばかりではなくて、産地生産物を食材としたレストランとか、そのほかのビジネスというところまで広がっております。新しい起業に意欲を燃やすこうした女性たちは、個人経営、グループ経営にかかわらず、資金面、そして技術面、施設面などにおきまして、政策的な支援を求めております。

 農村の女性起業に対する今後の支援策についてはどのように考えておられるのか、お尋ねしたいと思います。

岩永副大臣 女性の起業家、特に農村女性の場合、平成九年四千人が平成十五年八千人と、倍にまで伸びるほどすさまじい御活躍をいただいているわけでございます。

 それで、農水省といたしましても、情報提供だとか、女性のネットワーク化のための交流会だとか、加工技術の研修だとか、いろいろな応援をいたしております。

 特に、私はこの間、男女共同参画社会のうちの農村女性の幹部に集まっていただきました。そのときに、一番気づいたのは、ともかく男性というのは、やはり相続していて担保もあるわけですよね、そして信用力もあるわけですよ、そして企業を起こしやすい体系にはなっているんですが、女性はどうしてもやはり家の中ではナンバーツーになっていて、いざ仕事をしようと思った場合に、担保力もない、信用も落ちるというようなことで、特に女性だけの資金を何か考えられぬかということで、優先できる資金を考えられぬかというお話を実はしておったわけでございます。

 だから、いろいろな状況の中でのそういう枠組みというのはこれからつくっていくだろう、このように思いますし、また、資金活用についても十分対応していきたい、このように思っております。

 それで、女性起業支援施策というので、技術面での施策、それから施設面での施策、それから資金面での施策、これは農業改良資金等々、具体的、個別に、実は女性のためにどうしていくかというものを農水省も今精いっぱい考えて、対応しているところでございますので、肥田先生の御趣旨に沿うように頑張ってまいります。

肥田分科員 ぜひよろしくお願いいたします。

 また、地域の人たちに新鮮な野菜とか食材を届けようという地産地消の取り組みが全国で広がっております。日曜日や土曜日にはあちらこちらで直売所ができまして、たくさんの買い物客が行列をつくっております。

 この風景を見ますと、私は、食の安全に対する住民の気持ちのあらわれだなといつも思うわけでございます。朝市や青空市場に自分の産品を持ち込む人たちは、自分でテントだとかのぼりをつくるなど、一生懸命なんですね。

 私は大阪府高槻市の萩谷という地区に住んでおりますけれども、ここでも週二回、総合公園の入り口で朝市を開いて、前日には出品する作物の品ぞろえや水洗い、袋詰めといった作業を本当に生き生きと続けていらっしゃるんです。人口が少ない、そして高齢者の多いところでございますけれども、自分の作物を直接販売することに対する張り合い、これはもう大変なものでございます。

 ですから、地産地消の取り組みに対する計画的な推進はますます重要なときに来ていると思いますが、今後の支援策について前向きな御答弁をいただきたいと思います。

岩永副大臣 先生のおっしゃるとおり、地産地消は、農業に対する消費者の信頼を深めているということで大変大事でございますし、生産者が地場産業産品の普及活動をやると同時に、消費者の皆さん方もその地域にある地場産業の普及活動に御貢献いただいているというようなこと、それから、生産者と消費者が交流するような場というのはやはり地産地消の大きな接点ではないか、このように私は思っているわけでございます。

 それで、具体的に、農水省としては、平成十七年以降交付金制度になりましたけれども、強い農業づくり交付金の中で四百七十億を見てあるわけでございますし、その中で、ソフトの面で大変具体的な事業をたくさん盛っております。それは、地産地消に対する情報収集・提供、消費者が中心になった組織的な地場産品を応援する活動、地場の生産者とそして消費者との交流促進等でございます。

 私は、特に、その地域地域でそういう施設をつくって、冷蔵庫つきの販売所をつくって、そこで地産地消がうまく行えるような、そういうハードの面で今後対応していけないかと。これは、農水省だけではなしに、道の駅だとかいろいろな場面がありますので、そういうものをもっともっと地場産業そして地産地消に生かしていけるような形、そういうことで具体的な対応をしていきたい、このように今農水省全体で考えているところでございます。

肥田分科員 今、副大臣から道の駅という言葉が出ましたけれども、本当にこの動きは私はすばらしいと思いますので、おっしゃるように、ぜひ力を入れていただきたいと思います。

 私の周りにも、農業を新しい職業の一つにしたいという選択をする人たちがふえております。これまでは農作物を買う側にいた人たちが、自分も農業経営に参入したいという意欲を持ちます。山村に移住したり、脱サラしたりする人たちも相次いでおります。

 農地面積が大幅に減少し、有効に活用されていない現状を考えると、農業経営に意欲を燃やす人たちを政策的に支援して、参入しやすい環境に整備することが必要だと思います。新たな人材を農業経営に参入させることによって、農地の有効利用を図ることができると思うんです。

 ですから、農地取得の下限面積条件を緩和する、そういった措置も含めて、可能な限り入り口を広くとることが必要ではないかと思いますけれども、いかがですか。

岩永副大臣 先生、たくさんありますので、私もできるだけ協力して、先生にたくさん質問してもらえるように答弁しているつもりでございますので、お許しいただきたいと思います。

 農地の細分化により非効率な農業経営にならないように、権利取得後の経営面積は原則として都府県で五十アール、それから北海道で二ヘクタール、こういうことになっておりますが、どんどん零細農家がふえてしまいますと、これは後々の日本の農業振興のために大変でございますので、そういうことになっております。

 それからもう一つは、下限面積の特区というのを今回全国展開することにいたしました。それで、今までは十アール、二十アール、三十アールと、一反、二反という形でございましたけれども、そこはもう細かく切り分けできるというようなことにいたしておりますし、また、都道府県知事が地域の実情に応じて弾力的に対応していける、こういうことにしておりますので、特区が全国展開されますと、先生の御要望のような下限の部分というのが大変広くなっていくのではないか、このように思っております。

肥田分科員 私の住んでおります萩谷地区の人たちは、みんな小規模経営の農業者でございます。生鮮食品の供給という面では地域内で大きな役割を果たしております。

 また、その萩谷地区から数分の距離のところに、実は市街化区域内に農地が点々と広がっております。この市街化区域内の農地は、生鮮食品の安定的な供給を初め、都市機能の面でも緑地、防災空間といった役割を果たしております。

 今回の食料・農業・農村基本計画原案は、担い手の明確化と集中化、重点化を盛り込んでおりますが、施策の集中化によって小規模な市街化区域内の営農が見捨てられるのではないかと心配するJA関係者もいらっしゃいます。

 ですから、今後も、水路やハウス施設、それから市民交流、触れ合い施設の整備など、持続した営農ができるように支援していく決意を伺いたいと思います。

岩永副大臣 新鮮で安全な農産物の供給、それから農業体験の場、それから今先生がおっしゃられましたオープンスペースの確保、災害時においては都市緑地というのはそういう部分で大変大事でございます。だから、長期間営農を継続していただくことができたら、これは生産緑地として認めていくわけでございますし、簡易な生産基盤の整備を含めて農業支援というものをやっております。これは特に、病害虫の防除の事業、それから普及事業や研修事業、それから既存施設の維持管理事業等をやっております。

 ただ、生産緑地の整備については、平成十五年だけでも九カ所やっておりますし、また、平成十二年から十六年にかけて、約三億弱の予算で七十地区、やはり支援をしているわけでございます。

 今後、多くの事業を都市の生産緑地にどうしていくかという支援対策を講じていこうと今考えているところでございますので、またいろいろと先生なりの御意見も賜れば大変ありがたい、このように思います。

肥田分科員 副大臣は、子どもの未来を考える議員連盟の幹部として、子どもゆめ基金の創設に御尽力いただいたわけですが、このゆめ基金は子供の体験学習に活用されておりますけれども、子供たちの荒れた現状を見ますと、自然環境の体験学習、まさにこれが心に潤いを取り戻す営みだと思うわけです。

 今、子供たちは、米や野菜はだれがつくって、どんな方法で育つのかということを知る機会が大変少なくなっております。農水省の農業・農村体験学習は、子供たちが農地に直接触れ、農業者と交流し、学校の教室で学ぶことのできないものを発見するという意味では、とても大切なことだと思います。

 農水省の元気な地域づくり交付金制度、これは、地域に農地、農業を開放し、地域の活性化に貢献していると思いますが、この制度を含めて、学校農園やセラピー農園、シルバー農園といった学校とかそれから福祉施設の多様なニーズに対する支援が必要だと思うんですけれども、いかがでしょうか。

岩永副大臣 おっしゃるとおりでございまして、体験学習それから福祉農園等は、本当にハンディを持っている皆さん方が土との触れ合いの中から自立向上していただく、そして、学童の情操教育等も、農業は本当に多くの要素を持っておりますし、私自身も、そういう部分で農業を生かしてもらいたい、このように思っております。

 大変うれしいことに、市民農園が全国に二千九百カ所あるわけでございますが、うち学童農園が五十三カ所、それから福祉農園というのが七十四カ所ございます。それで、平成十六年度までは、やすらぎ空間整備事業というので、大体四年間で二十一カ所ほどで十三億の事業をいたしてまいりました。

 今後、今おっしゃられたような元気な地域づくり交付金四百六十六億のうち、この事業をどれだけ地域から上げていただくか、こういうことになろうかと思いますが、おっしゃるとおり、積極的にひとつ取り組んでいきたいし、また支援対策も充実させていきたい、このように思っております。

肥田分科員 次に、地球温暖化防止森林吸収源十カ年対策に関連しまして質問いたします。

 農水省は、温室効果ガス削減目標六%のうち三・九%を森林吸収源で確保するという施策を掲げております。その対象となる森林は、全森林面積二千五百万ヘクタールの七割に当たる千七百五十万ヘクタールとなっております。

 この政策を達成するための必要な予算は、なぜか十カ年対策の実施を見通したものではありません。単年度方式ですから、そのときの状況によって予算額が変動するわけですね。現に、京都議定書は発効されたばかりなのに、平成十七年度の林野庁関係の当初予算、これは前年度よりも予算総額も森林整備予算額もマイナスになっております。平成十六年度の補正予算が充てられることになろうかと思いますけれども、これでは森づくりの意気込みが伝わってまいりません。

 例えば、副大臣が尽力されました学校図書館の図書整備費、この五カ年計画は単年度で百三十億円、五年間で六百五十億円というのが計上されております。こうした事例を考えたときに、なぜ十カ年対策を策定した段階で中長期の財政計画を立てなかったんだろう、単年度にしたのはなぜだろうと素朴な疑問がわいてまいります。この点、どのように理解したらよろしいですか。

岩永副大臣 おっしゃるとおりでございまして、三・九%、これは六%のうち本当にすごいパーセントを山それから林野が持つわけですね。そういうことを考えますと、今まで林家というのがずっと虐げられてきた、木材価格が低迷してきて、林家が経済生活を負えなくなってきた、そこへ一遍にこれが来ると。だから、本当に国自身も林家、森林組合と一体になってこれだけの要望を達成することができるだろうかということ、これはもういちずにやはり国の財政に頼らなきゃならぬわけです。

 それで、本来なら中長期的な財政計画を立てたらいいわけでございますが、これは今、三月を目途にしてそれを立てようということで頑張っているわけでございますが、いずれにいたしましても、今の試算では、三・九%全部をやろうと思いますと、年間二千億ぐらいの不足金を見る、これは補正予算も入れて。だから、それをどの財源で賄うのかということで、今、環境税等の議論をやっているところでございます。

 ひとつ肥田先生におきましても、そういう京都議定書の日本の責任達成のために財源確保の御協力をお願い申し上げたい、このように思う次第でございます。

肥田分科員 ある研究者の試算では、植林、保育に一ヘクタール当たり最低二百万円かかると言われております。三年未満、三年以上の造林未済地面積、これをお聞きしますと、三万三千五百二十七ヘクタールとおっしゃっていただきました。全林地の植林や保育などに必要な費用は、一ヘクタール当たり二百万ですから、掛け算をしますと約七百億円の投資が必要になるわけです。ところが、平成十七年の造林未済地解消対策は三億四千万円です。十カ年対策の再造林の重要性を思いますと、本当にやる気があるのだろうか、そういうことが心配になってまいります。

 そこで、十カ年対策で強調されました間伐の推進とか多様で健全な森林の整備、これは乏しい予算の中でどのような手順で実現されるのかと心配している私に対しての御説明をいただきたいと思います。

前田政府参考人 最初にありました造林未済地、いわゆる伐採しました後三年以上たっても更新されていないというのをそういうふうに呼んでいるわけでありますが、最新のデータでは全国で約二万五千ヘクタールというふうに承知いたしております。当然、こういったものにつきましては私どもも計画的に解消していきたいということで、今般の地球温暖化防止対策、こういった中でも第二ステップに入るわけでございますので、間伐の問題とあわせまして、造林未済地の解消といったものに重点を置いて取り組んでいきたいというように考えている次第でございます。

 ただ、御指摘ございましたように、確かに予算規模といたしましては、例の公共事業全般の縮小といいますか抑制という問題等々もありまして、なかなか思うに任せないわけでありますが、そういった中でも工夫しながら、少しでもこういった造林未済地の解消あるいは間伐対策、特に間伐対策につきましては、五百億前後ぐらいの経費だったと思いましたけれども、そういったものも投入しながら対応している。

 しかしながら、先ほど副大臣の方からお話し申し上げておられますように、残念ながらこの三・九%を達成しようとすれば、今の予算規模、ざっと森林整備につきましては事業費ベースで二千五百億ぐらいでありますが、これに対しましてさらに二千億、毎年でありますが、毎年二千億ぐらいの追加的な金が必要ということで、その財源を求めていろんな場面でまた私どもも努力していきたい。決して安穏としているわけではなくて、そういった財源の確保にも全力を挙げて取り組んでいきたい、かように思っている次第であります。

肥田分科員 ここに、十カ年対策のあらましで、一番知ってほしいこと、多分この中に挙げていらっしゃると思うんですが、この中に、実は、木材及びバイオマスの利用は記載されておりますけれども、国産材の利用については触れられておらないわけですね。

 日本は国土の三分の二の森林がございます。ですから、木材資源に恵まれておりますし、また、木材利用では世界第二の大きな内需があるわけでございます。しかも、外材よりも安い。ところが、国産材の利用は二割を切っておりまして、八割以上が外材に依存しております。

 製材工場や工務店の関係者、大工さんと懇談しますと、木材の流通の仕組みを変えないと国産材は使えないと言うんですね。木材は、伐採業者から製材業者へ、そして製材品は問屋や小売店を通って工務店や大工さんの手に届きますが、その流通の途中でそれぞれの値段がつけられますから、原木は安くても最終価格は高くなるということになるそうでございます。

 また、ある程度規模の大きい製材工場関係者は、原木市場には国産材が少量しかなくて、しかも供給が安定していないから、余りメリットがないとおっしゃるわけですね。さらに、知り合いの大工さんは、国産材は乾燥が十分でないから、寸法に狂いが出たり割れが生じやすいと話されます。ですから、供給が安定し、流通もシンプルな外材にシフトしていったんだと思うわけですが、この国産材二割の内実、これが今申し上げたものじゃないかと思うわけです。

 この大工さんたちの話は、まさに林業改革のポイントを指摘していると思いますが、国産材の安定供給と需要拡大についてどのような対策をお持ちでいらっしゃいますか。

前田政府参考人 最初に、地球温暖化防止の十カ年対策でありますけれども、私ども、これは十四年の十二月策定させていただいたわけでありますが、その中の四つの大きな柱の一つといたしまして、木材並びに木質バイオマスの推進ということを掲げまして、それに向かって努力しているというような状況にございます。

 確かに国産材、今外材に比べまして実態のところ恐らく価格も逆転しているという中で、先ほどお話ございましたように、自給率が一八%程度というような状況でございます。お説のとおり、確かに国産材の場合にはなかなか一定の品質のものを必要な時期に一定量安定的に供給できないというところに大きなネックがあることは事実であります。

 そういったことで、私どもも、こういったものの供給体制をきっちりしていかなきゃいけないということから、実は本年度から新たに、生産段階からハウスメーカーまで一連のつながりの中でB材、そういった間伐材も含めまして集成材なりといったものをつくって、そしてまたその中できちっと乾燥して、安定的に出していく。そういったことを通じて国産材の需要を拡大すると同時に、安定化に努めていきたいということで取り組んできているわけであります。

 一方でまた、需要拡大の関係につきましては、私どもも、木材利用拡大行動計画といったものをつくらせていただきまして、農林省みずから取り組むと同時に、ほかの省庁にもいろいろお願いする、あるいは普及啓発、公共事業への木材の利活用といったさまざまな需要拡大策、こういったものに取り組んできているところでありまして、御指摘のように、これからも積極的に木材の需要拡大、わけても国産材の需要拡大に積極的に取り組んでまいりたい、かように考えている次第であります。

肥田分科員 間伐材の利用につきまして、もう少し丁寧に質問させていただきたかったんですが、もう時間が参りましたので、最後に、大臣の森林に対する熱い思いを伺いたいと思います。本当はもっと大臣に伺いたかったんですが、事務方の方から、大臣ばかりはいけないというふうに言われましたので、またこれからよろしくお願いいたします。

 二、三日前のテレビ番組で、積み木広場の話が紹介されておりました。これは間伐材が積み木になるわけですね。形は正方形とか長方形とか台形の三種で、それを丁寧に切りそろえて、広げると部屋いっぱいになるぐらいの量、どっとつくるわけです。それを幼稚園とか保育所に持っていきまして、子供たちに浴びせるように使わせるわけですね、部屋いっぱいにして。そうしますと、子供たちが本当にうれしそうにひとみを輝かせているわけです。楽しいはずですよね。こういう工夫次第では、間伐材というのはどんな利用もされるし、拡大する可能性を持っていると思うんです。

 また、幼いときにこうやって木に触れることによりまして、森の神秘性に対する畏敬の念とか、それから生きる力、感性も育つと思います。この意味からも、里山や森林の整備保全は、まさに二十一世紀の大きな課題だと思うわけですが、大臣のホームページを読ませてもらいますと、子供の教育に対する大変熱心な熱さが伝わってまいりました。

 そこで、この思いは森林を通じても実現していただけないかと思いますので、大臣の壮大なビジョンについて伺いたいと思います。

島村国務大臣 さすがに童話作家らしいいろいろな発想でございますが、我が意を得たりと思います。

 実は、私は今、農林水産大臣を拝命いたしておりますが、農水大臣と言うと言い直していただく。林の字を抜かないでいただきたい、農林水産大臣ですと。それは何も私が変なところにいこじになっているわけじゃございませんで、林業に私たちがどれだけの恩恵を受けているか。

 だれでもわかることは、空気の清浄化とか、水源の涵養とか、あるいは災害の防止とか、たくさんございますが、意外と都会の方々が知っていないのは、自分たちはどれだけ恩恵に浴しているか、どんなに渇水期においても、水のいわば供給ということにおいては。しかも、それは単なる水でなくて、非常に清浄な水である。

 また同時に、最近は、漁師が山に登って山の手入れをしています。これは失業しているからでなくて、山から出る肥沃な水が川を伝わり、海へ行って、これが川や海を育てて、藻が繁茂し、あるいはプランクトンが発生し、豊かな魚礁をつくる。いろいろな効用を挙げればこれは切りがないわけですし、そういう意味ではあれなんですが、問題は、間伐材が本当に売れ口を全く失っている。昔は、例えばビルの足場とか電話線の電柱などは間伐材で済んだわけですね。しかし今は、とてもそうはいきません。

 それで問題は、なぜ間伐しないのか。間伐しても粗大ごみにしかならないし、運送賃はどこからも出てこない。ちなみに、私、就任してすぐ聞いて驚いたんですが、立ち木で計算して、五十年物の杉の木が立ち木で買うと三千円なんだそうです。ヒノキですら四千二百円だそうです。

 ですから、先ほど流通機構の御指摘がありましたけれども、確かにそういう点に関して先行きに道を開く必要は当然ありますけれども、やはり林道その他を確保して、間伐したものをきちんとスムーズに他へ運ぶことができるということ、あるいはそういうことの効率化も図るということも大事なんだと思いますが、今御指摘の点も極めて重要でありまして、私たち、子供のときは積み木遊びで育って、いろいろなことを学びました。そして、同時に、木に親しむということは、日本人そのものは、もともとは木の文化の中に日本の今日を築いてきているわけでありますから、そういう点をいろいろ考えれば、この今御指摘の点は一々非常に大事なことなんだろうと思います。

 そういう意味で、私たちは、私の場合でいいますと、日本の間伐材活用第一号のログハウスを買わされまして、前の政務次官のとき、今から二十二年前になりますが、大事に使っておりますけれども、住んでみればみるほど、日本の風土になじんで育った間伐材の恩恵というのは、住んだ人はよくわかります。香りもいいし、そして同時に、もちもいいし、すべての面ですぐれているわけですから、そういう活用の道を大いに開く中に間伐材を活用する。

 そしてまた、先生今御指摘の、子供の教育にこういうものがもっと入り込んでくるようでなければ本当の日本人の教育はできないのかな、そんなふうにも思います。ビジョンと言われるといきなりで用意がありませんが、しかし、私は、同じ考えに立っている人間だということだけは申し上げてうそでないわけであります。ありがとうございました。

肥田分科員 どうもありがとうございました。

小泉主査 これにて肥田美代子君の質疑は終了いたしました。

 次に、吉田泉君。

吉田(泉)分科員 民主党の吉田泉です。

 私の方からは、杉花粉症対策について幾つかお尋ねをいたしますので、よろしくお願いします。

 私の地元の先輩で大変元気で丈夫な人がいるんですが、この方が、都会での勤務を終えて、六十五歳で実家に帰ってきました。大変元気な方で、何でもない方だったんですが、六十五歳で実家に戻った途端に重症の花粉症になってしまいました。毎年、注射をしながら、大変憂うつな数カ月を過ごしている。

 御存じのように、ことしは去年の猛暑のために特別花粉の飛散量が多そうだ。十倍という新聞もありますし、二十倍、中には百倍という数字も出ております。観測史上最悪の状態になるんじゃないかという報道もありますので、非常に戦々恐々としているという状況でございます。

 今や国民の二割近くがこの花粉症で悩んでいる、一歳半の赤ちゃんもかかっているということでございます。経済的な損失も数千億円。これは非常に日本的な現象で、外国に類似の例はないという話もございます。一種の公害として、政治、行政の積極的な対応が切望されていると私は思っております。

 それで、まず最初の質問なんですけれども、今までの政府の対応について確認しておきたいと思います。

 この花粉症の問題は、非常にたくさんの官庁が関係する問題であります。そのために、平成二年、スギ花粉に関する関係省担当者連絡会議というのが設けられました。もう十五年前でございます。そこで、その会議の今までの経過そして成果はどんなものだったのか、お伺いします。

 さらには、ことしの二月、今度は専門家による花粉症対策の研究検討会というのができました。そこでは、今後何を検討して、どういう日程で結論を出すんでしょうか。

田中政府参考人 御指摘の連絡会議でございますけれども、平成二年に、当時既に社会問題化しておりました杉花粉症の諸問題について検討を行うということを目的として、関係省庁の合意によって設置されたものでございます。

 当初は、環境庁、気象庁、林野庁、それから厚生省という四省庁でスタートしたようでございますけれども、その後文科省とか、あるいは昨年は内閣府もオブザーバー参加というようなことで連絡会議が設置され、だんだん発展して、さらには省庁間で情報交換が行われてきて、これらの施策の精力的な推進ということを行ってきたところでございます。

 具体的に申し上げますと、免疫・アレルギーの疾患の予防、あるいは治療研究事業を実施する、それから、杉花粉症克服に向けた総合研究を行う、花粉の観測とか予測体制の整備を行う、さらには国立病院機構相模原病院と独法の理化学研究所の免疫・アレルギー科学総合研究センターの花粉症を初めとする免疫・アレルギー疾患に関する共同研究を行う、そんなようなことを行っているところでございます。

 今先生御指摘のとおり、観測史上一、二を争う花粉の飛散が今予想されているということでございまして、これまで以上に的確かつ効果的な施策を実施する必要があるということで、最近、今期における花粉症に関する政府の取り組み、こういうようなものをつくりまして、合意形成を図って、関係省庁において一体的な取り組みを行うということを今考えているところでございます。

林政府参考人 総合科学技術会議におきましては、免疫・アレルギー分野の世界的権威でございます岸本忠三議員主宰におきまして、関係省庁の幹部、それから花粉症の専門家に御参集いただきまして、これまで二回の花粉症対策研究検討会を開催しております。

 二回の検討会におきましては、関係省庁の花粉症対策研究等を科学的な観点から総点検する、それで、比較的早期に成果が期待され当面推進すべき分野や、成果の創出までに時間は要するものの、中長期的観点に立って今から研究を推進すべき分野等につきまして整理をしたところでございます。

 これらの成果を踏まえまして、先般の総合科学技術会議の本会議におきまして、岸本議員より、減感作療法、花粉症緩和米、ワクチンの研究開発に重点を置いた研究の推進及び今後のロードマップについて報告をいたしたところでございます。

 今後、本検討会におきましては、この三つの研究分野につきまして、より具体的な、各省連携による研究の推進方策について鋭意検討が進められるものというふうに承知しております。

吉田(泉)分科員 十五年会議をやっているわけですので、会議はたくさんやったけれども花粉症はふえ続けたということにならないように、なるべく早く抜本的な対策をまとめていただきたいとお願いいたします。

 次の質問は、過去、現在の実態でございます。そして、これから先どうなるのかということに関しまして、幾つかの点についてお伺いいたします。

 まず、患者の数です。過去はどのぐらいいた、今どうだ、そしてこれからどうなりそうだ、いかがでしょうか。

田中政府参考人 御説明申し上げます。

 花粉症の症例というのが報告された経緯をまず見ますと、昭和三十八年に初めてブタクサ花粉症が報告されて、三十九年に初めて杉花粉症が報告されているということで、比較的新しい病気だというふうに位置づけられるのではないかと思っております。

 どのくらいの患者さんがおられるかという数字でございますけれども、平成十三年に、財団法人日本アレルギー協会とそれから国立保健医療科学院、これの全国調査によりますと、杉花粉症の有病率、これが全国平均で一二%というふうに言われております。このたぐいのデータは、ほかにも幾つか数字ございます。

 そして、過去と現在の差でございますけれども、これは余りきちっとしたデータはございません。アレルギー性鼻炎ということでデータが辛うじてございまして、それを見ますと、この十五年で二倍ぐらいになっております。十五年で二倍ぐらいにふえているというデータがございました。

 今後でございますけれども、従来は、一般的に三十から四十歳代に多いというふうに言われておりましたけれども、近年では、小児花粉症患者の増加というのも指摘されております。また、花粉が多く出れば出るほど患者さんがふえてくるというようなこともございますし、一般には自然治癒というのが少ない疾患でございますので、今後、花粉症患者数は増加が予想されているということでございます。

吉田(泉)分科員 続いて、花粉の飛散数。過去そして現在、そしてこれから、いかがでしょうか。

滝澤政府参考人 春に飛散いたします杉やヒノキの花粉の飛散数でございますが、これは前の年の夏の気象条件に大きな影響を受け、猛暑の翌年の春の飛散数は多く、冷夏の翌年の春の飛散数は少ないと一般的に言われております。

 環境省といたしましては、本年一月二十日に、過去の花粉総飛散数、それから前年の夏の日照時間あるいは平均気温、それから杉の芽の調査の結果等を踏まえまして、NPOの花粉情報協会が作成いたしました都道府県別の花粉総飛散予測を公表したところでございます。

 その予測によりますと、今春、例えば東京では、昨年と比べまして約十七倍、過去十年平均と比べますと約二倍の総飛散数となっております。それから、東京以外のところで、多いところでは昨年の百倍というような地域も予想値として指摘されております。こうした傾向は、過去十年で最大の飛散数でありました平成七年と同様の傾向を示しておりまして、本年度の総飛散数は過去一、二を争うと予想されております。

 環境省といたしましては、本年度公表を開始した花粉飛散予測のさらに精度向上を図りまして、あわせて、杉やヒノキの花粉がどのように大気中に拡散しているかなど、花粉の動態についての研究も進めてまいりたいと考えております。

吉田(泉)分科員 続きまして、花粉を飛ばす杉というのは林齢二十一年以上と言われておりますが、その面積の今までの推移について、そしてこれからについてお伺いします。

前田政府参考人 実は、杉自体、全体の森林面積につきましては、この二十年間ほとんど同程度の水準で推移いたしておりまして、現在、約四百五十万ヘクタールございます。

 この中で、今先生御指摘のございました二十一年生以上、一般的に二十一年生から三十年生以降に花粉を多く出すと言われておりますが、その二十一年生以上の面積でございますが、これにつきましては、昭和三十六年をピークに、植林量でありますけれども、その後漸減していったという関係もございまして、二十年前は約二百八十万ヘクタール、それから十年前には約三百七十万ヘクタールということで、約九十万ヘクタールこの十年間で増加いたしました。

 そして、その後現在までの十年間でございますが、約四十万ヘクタール増加いたしまして、現在は約四百十万ヘクタールというふうになっているわけでありますが、この増加につきましては穏やかになってきているというような状況にございます。

 今後につきましては、現在の十一年生から二十年生が約三十万ヘクタールございます。また、十年生以下が約十万ヘクタールということから、二十一年生以上の杉、これの森林面積は若干増加するものの、その増加率は、従来から比べますと徐々に減少していくという状況にあると考えております。

吉田(泉)分科員 そうしますと、今三つの数字をいただいたわけなんですが、こういうふうに言えるんじゃないでしょうか。まず、花粉を飛ばす杉の面積が二十年前と比べると一・六倍にふえた、花粉の飛散数については過去十年平均と比べて二倍になった、そして患者さんは、これは十五年ですが二倍になった。この三つに私は強い相関関係があるというふうに思っているんですが、ここで改めて、今までいろいろ研究されてきて、杉花粉症の原因について究明状態をお伺いします。

 杉の花粉症と杉花粉数、それから、いろいろな説があります、大気汚染も関係しているんじゃないか、食生活も関係しているんじゃないか、いろいろありますが、それらと杉花粉症との関係、どこまでわかったのか、教えてください。

滝澤政府参考人 環境省といたしましては、花粉症と大気汚染という御指摘もありましたが、その大気汚染との関係について申し上げますと、動物実験それから疫学調査を行ってきております。

 動物実験におきましては、モルモットに実際の環境中濃度の数十倍の粒子状物質を含むディーゼル排気ガスを暴露した場合に、アレルギー症状を増悪させる実験結果が得られているところでございます。しかしながら、疫学調査におきましては、杉花粉症が杉花粉数の影響を受けることが明らかとなっておりましたが、現在の環境における大気汚染が杉花粉症を増悪させるという明確な結論は得られておりません。

 また、食生活との関係でございますが、アレルギーと高たんぱく、あるいは抗アレルギー食の関係を示唆する海外の報告例がございますが、明確にはその因果関係が解明されていないと厚生労働省においては承知していると聞いております。

吉田(泉)分科員 大気汚染それから食生活、いろいろ説はありますけれども、まだ明確な関係はわからない。わかっておるのは、やはり花粉の飛散数と花粉症については強い相関関係があるということだと思います。

 それではもう一つ、今まで政府として予算を使ってやってこられた対応策についてお伺いします。

田中政府参考人 花粉症に関します関係省庁連絡会議の事務局として、必ずしも私、全体を説明できるかどうかわかりませんけれども、私どもで把握している範囲でお答え申し上げます。

 花粉症を含みます免疫・アレルギー疾患に対して関係省庁が平成十七年度予算案に計上した額というのは、内数のために計上できない経費は除いてありますけれども、総額で約六十億円でございます。

 主な事業を挙げますと、文科省の部分では、理化学研究所の免疫・アレルギー科学総合研究センターの運営、それから私どもの厚生労働省といたしましては、免疫アレルギー疾患予防・治療研究事業、それから免疫・アレルギー疾患に対する正しい情報の普及というようなことをしております。また、林野庁の方では、花粉の少ない品種選定に関する調査及び花粉生産予測情報調査を行っておりますし、環境省の方では、花粉観測・予測体制整備費等が計上されているところでございます。

吉田(泉)分科員 来年度、六十億円という予算は計上されているわけなんですが、結局、今までお伺いしてきたこの一番の原因は林齢二十一年以上の杉の林だ、これを減らすというのが一番の対応策じゃないかと私は思っているんですが、どうもせっかくの六十億円も、それ以外の、実際に症状が発症しちゃった後の対応に重点的に使われているような嫌いを感じるところでございます。

 さて、最後の質問でございますが、実はいろいろ花粉関係のNPO法人がございます。花粉情報協会という会があります。そこの小笠原さんという副代表の方とちょっと書類のやりとりをしたんですが、この方は兵庫県の西脇市で耳鼻科のお医者さんをやっている方でございます。そして、近所の宝塚市というところで、ここではヤシャブシ花粉症というのがあったんですね、これを精力的に伐採してこの花粉症を解決したという経験を持っているお医者さんでございます。

 その方が御自分の経験をベースに提言されているのは、杉花粉症も適切に伐採を進めれば花粉症の増加は防げるはずだ、そのためには、林業支援、里山整備、こういうことが欠かせないと言っているわけであります。

 例えば、標高の高いところの杉の花粉、これは都会に住んでいる人間には余り影響しない、ですから、なるべく低いところの杉山、杉林に手を入れたらどうかと。例えば、この方は阪神地区に住んでいるわけですが、基本的には中国山地と丹波山地から花粉が飛んでくる。例えば、中国山地なら標高二百四十メーターまでの杉を取る、なくす、そうすると花粉の飛散量は四割減るというわけです。三百二十メーターまでの杉山を切るとすると、花粉量は七五%減らせると。

 要するに、標高の低いところでは、樹種転換ということだと思いますが、杉を減らす、そういう政策を積極的に進めたらどうだろうかと。ということは、昔の里山を復活するということだとこの先生はおっしゃるんですが、私もこれが花粉症対策の一番の正攻法じゃないかと思うところでございます。

 つきましては、林野庁の方でもそういう発想に立った政策を始めたところでございます。例えば、雄花が多い杉を抜き取る、間伐する、そういう推進事業を始めました。それから、杉林の抜き取り、枝落とし等についてボランティア活動をするグループについては作業器具の購入費は支援しよう、こういう事業も始めて、大変私は方向性はいいと思うんですが、それらの事業の状況はいかがなものでしょうか。どの程度の規模で進められているものなんでしょうか。

 そして、さらには、先ほど申し上げた一番の正攻法である適切な杉山の手入れ、杉山の伐採のために国として今後何をやったらいいんだろうか、そういうところも含めて御答弁願いたいと思います。

前田政府参考人 現実問題としては、杉林をなくしてしまうというのは、確かに物理的にはおっしゃるとおりなんですが、現実にはなかなかきつい話ではなかろうかというふうに思います。

 私どもも、一つの大きな政策の流れといたしましては、例えば杉林の単純林でありますと、できるだけ広葉樹も入れ込んだ混交林といった形に持っていこう、そういうような大きな流れ。あるいは、積極的に、今お話もございましたけれども、花粉の着花量の多い林分、そういったところに重点を置きました間伐の積極的な推進、さらに、単木的にも、一つの林分の中で花粉が多くついている樹木、こういったものを重点的に間伐していこうというような形で進めてきているところでございます。

 現在、日本の人工林は約一千万ヘクタール、そのうち、先ほど申し上げましたように、杉だけとりましても四百五十万ヘクタール。現在、我が国が毎年伐採、造林していますのは大体三万ヘクタール強でございますので、全部ということになるともうとてもなかなか厳しいというような中で、特に私ども、間伐の関係につきまして、今お話がございましたけれども、都市近郊、こういったところを中心に、杉花粉のたくさんついているような林分、あるいはたくさんついている樹木、こういったものに重点を置いて間伐を積極的に進めていこうということで、私ども、今現在毎年三十万ヘクタール以上の間伐をやっております。

 そういった中で、今申し上げましたような制度を積極的に導入し、少しでも減らしていくというようなことで積極的に取り組んでいきたいというふうに思っております。

 また、今ボランティアの関係でもちょっとお話がありましたけれども、一部で森林ボランティアの方々が、花粉症対策ということも頭に置きながら、杉林の手入れ、あるいは花粉の多い木の間伐といったことも積極的に活動されております。そういった方々につきましては、私どもも、必要な作業器具あるいは苗木、こういったものを供給するというような形で、積極的な支援を今後とも進めていきたいというように考えている次第でございます。

吉田(泉)分科員 もう時間だと思います。

 私も、四百五十万ヘクタールの杉林をみんな切れというつもりはないんです。低いところ、それから都市部に近いところ、こういうところを重点的に伐採する。中国に杉を輸出できる時代ですから、伐採するとか、それから間伐を進めるとか、そういう政策をぜひ少し強力に進めてもらわないと、このままでは国民病の花粉症はますますふえるということだと思います。

 結局、昭和三十年代以降、杉の人工林というのが大々的に奨励されてきたと思うんですよね。それで、三十年、四十年たって、今度はその一つのマイナス面の結果が、この一千万人、二千万人の花粉症ということになって出てしまったということだと思います。

 時代は変わりました。積極的な政策転換、つまりは、里の杉山を昔の里山に変えていくというような転換が必要じゃないかと申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。

小泉主査 これにて吉田泉君の質疑は終了いたしました。

 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)分科員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 最近の市町村合併、これに伴ってさまざまな問題が生じております。きょう取り上げますのは、政令市の宅地並み課税の問題であります。

 それに入る前に、合併にかかわる問題で、総務省に一つだけただしておきたい問題があります。それは防災無線の問題でして、昨年の三月に、岐阜県下呂町を中心に五つの町村が合併いたしまして、下呂市が誕生しました。以前の五つの町村にはそれぞれ同報無線を設置しておりまして、時報ですとか広報、あるいは行事紹介、災害広報などなど、住民生活になくてはならないものとして活用されてきました。各集落ごとに屋外スピーカーの鉄塔がつくられ、各戸には受信機が設置される、こういうものであります。

 ところが、合併して新しい下呂市が誕生いたしますと、総務省からいろいろな指導がありまして、一市一波が原則だ、つまり一つの市に一つのシステムが原則となっておりますというふうに指導がありまして、この周波数を統合するようにという指導があった。そのために、本庁のセンターから各戸の受信機まですべて整備し直すというようなことになりまして、大変な負担になっている。

 これは、事実上、国によって押しつけられたような合併でありますが、しかも、この五つが統合した形でやらざるを得ない。広域の山間地域の市でありますので、平野部の市と同じ基準で縛られるというのはおかしいではないかというのが現地の声です。

 そこで、私は、必ずしも一市一波というところにとらわれずに、それぞれの実情に応じた形で対応するということが必要だろうと思うんですね。この点での対応策、解決の方法、どのように考えておられるか、お聞かせいただきたいと思います。

竹田政府参考人 お答えいたします。

 総務省は、有限希少な資源であります電波の有効利用を行う、こういう観点から、防災行政無線、同報系につきましては、必要最小限の周波数を割り当ててございます。

 しかし、市町村合併に当たりましては、早期の周波数の統合が望ましいと考えておりますが、既存の設備を有効活用しながら設備更新の時期などをとらえて統合を図るなど、市町村の実情を踏まえた対応を行ってきてございます。

 例えば、岐阜県の郡上市や恵那市におきましても、合併前と同じ数の周波数を割り当てさせていただいております。また、山間とか離島地域などにおいては、地形を考慮いたしまして、通信を確保するために必要な場合には複数の周波数の割り当てを行っております。

 具体的な割り当てに当たりましては、各地方自治体の御要望や実情をお伺いして、防災行政目的を実現できるよう、柔軟な対応を行ってまいりたいと考えてございます。

佐々木(憲)分科員 ありがとうございました。

 次に、島村農林水産大臣にお伺いしたいと思います。

 都市農業でありますが、これは消費者に地元で生産される新鮮な野菜を供給するという役割、あるいは自然を守り緑を守る、そういう役割、あるいは防災、多面的な、大変重要な役割を持っていると私は思うんですが、大臣は都市農業の果たす役割についてどのような認識を持っておられるか、まず確認したいと思います。

島村国務大臣 御質問の都市農業についてでありますが、実は、私のところは都心から八キロから十五キロぐらいの中におさまる江戸川区でございまして、東京都内では二番目に都市農業の多い地域でございます。御存じかとは思いますが、コマツナというのは私どもが主産地で約一割を生産いたしますし、都市農業の専門家の中には、例えばセロリ日本一を何回もとっているとか、そういう農業名士も結構おられるくらい、研究熱心ですばらしい方たちがそろっております。

 そもそも、今御指摘もございましたけれども、まず何といっても、やはりオープンスペースがあって災害に対する予防にもなる、それからまた、東京にいると殊さらにそういう面もあると思いますが、農業に親しんでみたい、いわばそんな願望に駆られる方々が多いわけですが、市民農園としての役割も十分また果たしていただいている。

 また、今、何よりもかによりも、朝とれた露も滴る野菜、これを私たちはいつでも食べることができるという意味では、知らず知らずに健康のためにも大変に役立っていただいているんだろう、そんなふうに思うところであります。

 それから同時に、最近、子供たちが農業に親しんで、農業の大切さ、こういうようなことを勉強するということにおいても非常に効果が高いので、我々は、いわば都市農業というものの必要性というのをだれよりも強く実感している人間であります。

 したがいまして、私、前の農林水産大臣のときに、たまたま現行の基本法の検討がなされておりましたが、そのときにも私はあえて都市農業の重要性を訴えて、これをしっかり位置づけていただいた、こういう人間でありますから、恐らく佐々木先生は同じ考えなんだろうと思いますが、都市農業についてはだれよりも深く理解しているつもりであります。

佐々木(憲)分科員 ところが、清水市と旧静岡市が合併しまして新しい静岡市になりました。その上、これは政令市になるということで、市街化区域の農地に対して宅地並み課税が適用される。ことしの四月からという話になっておりまして、これは地元で大問題になっているんです。同じ政令市でも、仙台ですとかあるいは広島では、これは起こってこない問題であります。

 そこで、数字ですけれども、対象となる農家の戸数と面積を教えていただきたいと思います。

須賀田政府参考人 静岡市内の市街化区域内の農家、三千五百戸でございます。それから、農地面積、約八百ヘクタールでございます。

佐々木(憲)分科員 大変な数でありまして、これは全農家の四〇%にも上るわけです。

 宅地並み課税がそのまま適用されると、適用されない場合と比べて税収はどういうふうになるのか。例えば平成二十一年の場合、どの程度になるのか、数字を示していただきたい。

板倉政府参考人 お答えいたします。

 宅地並み課税に伴います静岡市の増収がどうなるかということでございますけれども、静岡市の試算によりますと、従前の宅地並み課税がなされない場合と比較をいたしまして、税負担の上昇程度が早まるということがございますので、数年後に最大で年間約十四億円程度の増収になる。全体で約二十四億円ぐらいになる。これは一時的ということでございますけれども、そういうふうになると聞いております。

佐々木(憲)分科員 これは大変な規模でありまして、例えば、平成二十一年の固定資産税と都市計画税の合計二十一億円というのが想定されているわけです。平均しまして、現在の水準でいきますと九億八千万円ですから、約二・四倍ということです。平均して、一戸当たり年二十八万円の課税額が六十八万円になる。農地の場所によっては五、六倍になる農家も出てくる。大変な額なんですね。これではもう農家をやっていけないという声が上がるのは当然のことだと思うわけです。

 これらの農家の環境というものは、一体何が変わったのか。急に都市化が進んだわけでもありません。地価が上がったわけでもありません。いつもと同じような条件で、前の年も、ことしも、来年も続けていく、そういう農業であります。行政の側がいわば勝手に合併して政令市になったというだけの話なんですね。それなのに、三倍から七倍というような本当に大変な増税になるというのはおかしいと思うんですね。

 島村農林大臣、ただ合併しただけでいきなり何倍も税金が上がる、農家がやっていけない、これはおかしいと思いませんか。

島村国務大臣 確かに、御本人が好むと好まざるとにかかわらず、都市化が進んだり、あるいは、最近は地方自治体の財政事情が非常に悪化しておりまして、このままではいわば赤字再建団体になりかねないというような先行きを憂慮する声もよく聞くわけでございます。そういう意味からすると、ちょうど、いわば企業がリストラを進めたり、むだな経費を全部削って体質を強化したように、自治体においてもそういう面の要求が当然出てくるんだろうと思います。

 そういう意味では、いろいろな地域の合併によって、議員数が大きく減る、あるいはまた職員が大きく減る。特に、管理部門その他については、お互いが一緒になることによって随分削減ができるわけで、最近、東京ではそういうことが非常に多くなってきているわけでありまして、そういうことからすれば、いわば市区町村の合併への動きというのは、ある意味で時代の要請なんだろうと思います。

 ただ、問題は、農業を営々として、一生懸命努力をしている人が、いわば、ある日突然、宅地並み課税だよ、こう言われることについては、御本人はまじめに営農しているわけでありますから、これをにわかに、行政の事情によって奈落の底へ落とされるような、いわば厳しい試練に耐えなければいけないのはちょっと何か気の毒でもありますから、こういう点についてはいろいろな配慮をしていかなければいけない面があるんだろうとは思います。

 さはさりながら、やはり区域内農地については、原則としてはやはり宅地並み課税というものにある程度なることは避けて通れない道であることもありますから、やはりこれからは農業をあえて続けたいという場合には、多少域内での、地域を自分たちが変えて求めるか。その一方では、また生産緑地として計画的、永続的にそういう道を開くためにいろいろなこれからの適応をするか、あるいは市街化調整区域として逆線引きするというようなこともと、いろいろ考えざるを得ないと思いますが、この問題は定規で引っ張ったようなやり方だけでやっていくことには問題があるんだろうと思いますので、これからもさらに検討したいと思います。

佐々木(憲)分科員 これからもさらに検討したいということであります。

 都市農業というのは非常に重要な位置づけだということを大臣はおっしゃったわけですから、これが、行政がただ合併しただけでいきなり何倍も税金が重くなるなんというのは都市農業破壊ですから、そうならないように具体的な手だてを打つというのは当然のことだと思うわけです。

 それで、一つの方法として、先ほどもおっしゃいました生産緑地を都市計画にきちんと位置づけるということが必要だろうと思うんですが、例えば、生産緑地指定の条件としてよく言われているんですけれども、三十年間農業を続けなければならぬというふうに理解している人がいるようですけれども、そういうことなんでしょうか。一点だけ答えていただきます、そうか、そうでないかと。

須賀田政府参考人 生産緑地法の方で、生産緑地といいますのは、三十年間原則として農業を続ける。開発する場合にも農業用の施設に転用することはできるんですけれども、それ以外の開発行為は認められていないというふうに承知をしております。

佐々木(憲)分科員 三十年間続けなければならぬという条件は、生産緑地の指定の条件としてはないんじゃないですか。

 静岡市の「生産緑地地区の指定について」というパンフレットがありますが、これを見ましたらそういうことではなくて、現に農業の用に供されていること、あるいは公害、災害防止、良好な生活環境の効用があること、公共施設の敷地の用に供する土地として適していること、一団の農地が一定規模以上であること、農業の継続が可能であることということでありまして、三十年というのは指定の条件じゃないでしょう。

阿部政府参考人 三十年と申しますのは、生産緑地の買い取りの申し出ができるかという、その基準として、三十年を経過したとき、または当事者が死亡等した場合、そういう場合に申し出ることができる、こうなっております。

佐々木(憲)分科員 ですから、指定の条件じゃないんですよ。三十年経過した後に、その当事者が死亡したような場合には買い上げていくことが可能になる、そういう条件なわけであります。

 それで、従事者でありますが、都市農業の場合、特に兼業農家もありますし、あるいは共同経営というのもあるかもしれない。そういう場合でも、これは主たる従事者が農業経営に欠くことのできない主要な働き手であるかどうか、これが大事な点だと思うんですが、そういうことですね。

阿部政府参考人 主たる従事者の年齢によって異なりますが、それぞれ、主たる従事者が六十五歳未満である場合には、もう一方、共同の方が、それに対する一年間に従事した日数の八割とか、あるいは主たる従事者が六十五歳以上である場合においては七割とか、そういう形で決まっております。

佐々木(憲)分科員 これは、農業経営に欠くことのできない主要な働き手ということであれば、兼業でも共同経営でも構わないということです。

 それから、指定の条件の一つに、一団の農地が五百平米以上という規定がありますね。これはどういう意味なんでしょうか。必ず五百平米がまとまっていなければならぬということではないと思うんですが、いかがでしょうか。

阿部政府参考人 この一団の面積と申しますのは、都市計画において農地の持つ緑地的機能が最低限確保されるか、特にこれに権利制限を加えて保全を行うわけでございますので、一定規模は必要だというような趣旨から定められているものでございます。

 この数値につきましては、平成三年の生産緑地法の改正によりまして、従来、一ヘクタールが第一種、あるいは第二種が〇・二ヘクタールと定まっておりました面積要件につきまして、これをぎりぎりどこまで落とせるかというようなことで、五百平米以上という非常に小規模なものにまで引き下げたところでございます。

 なお、この一団性の判断に当たりましては、各地域の実情に応じまして、都市計画決定権者が適宜判断し、弾力的な運用を行っております。具体的には、道路とか水路などが介在する場合であっても、それらが小規模であり、農地と一体であれば、一団の農地として取り扱うことができるというふうにいたしております。

佐々木(憲)分科員 道路が真ん中にあって、挟んでいる農地が合わせて五百平米以上という場合も指定の対象になる。その場合、その道路の幅というのはどういうものでしょうか。六メートルだとか、そういうことが言われていますけれども、場所によっては若干柔軟性があると思うんですが、いかがでしょうか。

阿部政府参考人 小規模として取り扱います道路、水路等の幅員規模といたしましては、六メートル程度が上限でございますが、各都市計画区域の実情に応じまして、適宜判断することが望ましいというふうに、私どもとしては、運用指針で各公共団体にお示ししているところでございます。

佐々木(憲)分科員 この静岡の場合、市街化区域内農地の半数が基準に満たないと言われているんです。これらの農家は、生産緑地の指定からはみ出してしまうというようなことですね。こうなると救われないということがあるわけですけれども、一体、そういう方たちはどのようにして救済するんでしょうか、この条件に満たない場合は。

阿部政府参考人 先ほど申しましたように、この法律は、ある程度、その都市計画の地域において緑地機能が評価される、例えば、この五百平米の物の考え方と申しますのも、都市の美観風致を維持するための樹木の保存の法律の政令で五百平米と決まっております。したがいまして、都市の美観風致を維持するための最小限度の規模ということで決めております。したがいまして、それ以外のものにつきましては、生産緑地としての指定は困難かと。ただし、先ほどのような形で、できる限り各地域の実情に応じて弾力的に運用していきたいということはやっておりますが、そこが限度かなというふうに思っております。

 そうなりますと、当然ながら、引き続き小規模でございますが、農地として経営されていくのか、あるいは、市街化区域の趣旨にかんがみまして、宅地化を促進していただく、宅地として売却していただくというようなことになろうかと思います。

佐々木(憲)分科員 そういう場合、農業を続けたい、そこで農業をやっていきたいという人たちは、今の答弁だと救われないんですね。

 例えば、新しい静岡市が何らかの支援策を打ち出す、そして、宅地並み課税を緩和する、これは当然あり得ると思うんですが、そういう場合、それは認めるということですね、市の判断でやる場合は。

板倉政府参考人 宅地並み課税の趣旨につきましては、今さらここで申し上げるまでもないと思いますけれども、少なくとも、その趣旨に反しない限り、いろいろ実情に合わせて、市の方でさまざまな対応をされるということはあり得ることではないかというふうに思っております。

佐々木(憲)分科員 それで、島村農水大臣、この五百平米に満たない農地が、この静岡の場合は半分あるんですよ。ですから、そういうことを考えますと、どうも基準として適切なのかどうかというのがもう一つ出てくるんです。ですから、こういう問題、例えば三百平米にしてほしいというような要求もありますし、いつまでも五百というのにこだわらずに、都市農業は本当に大事だということを考える場合には、そういう問題も含めて、今後、制度のあり方をどうするか、検討するというのが必要だと思うんですが、いかがでしょうか。

島村国務大臣 実は、この生産緑地を何平米にするかどうかを決めたときに、たまたま私、そちらの方の責任者になっていまして、最初は、私の判断で、むしろ五百平米にたしか下げたんです。そんな記憶がございます。ですから、この後さらに、もっと小さくすることが可能かどうか、ちょっとわかりませんが、当時、かなり抵抗があったのを押さえつけて決めた記憶がありますので、まあ、これからも一つの勉強課題にしたいとは思います。

 ただ、ついでに申し上げるようですが、私は純粋に、都市農業を営む方にこれからも頑張ってほしいということで随分努力したんですが、多少裏切られた気持ちがないではないのは、カキの木を植えたりあるいはクリの木を植えて農家でございと、大変横着に、とてもとても農業と思えないような人たちもたまにいるわけですね。これに対しては、やはり自治体の組織も余り対応できないでいる。

 もともとそういうことをなさるような方ですから厚かましいのかもしれませんが、やはりこういう人まで都市農業と言われると、非常に複雑なのでありまして、どこまでが都市農業なのか。少なくも、生産した実績とか、あるいは納入して販売した実績とか、そういうものがチェックされて、本物の農業をまず確認して、その農家に対しては、なるべく現状に即して、多少狭くても、いわば意欲と実績があれば、みんなで面倒を見る、そんなような弾力的な運営があっていいのではないか、こう思いますが、検討してみたいと思います。

佐々木(憲)分科員 課税の問題も、例えば固定資産税の計算方法ですね。土地の利用形態に応じて課税する収益還元方式ですとか、あるいは、農地の相続税の軽減ですとか、こういう問題も課題があるというふうに思いますが、そういう問題も当然含めて検討していくということであると思うんですが、今、首を振っていらっしゃいますから、そうだと思います。そのようにしていただきたいと思います。

 最後に、これは大臣、突然ですが、二十五日の予算委員会で、BSE対策のため日本で実施している牛の全頭検査について、国際社会で生きていくための常識がある、全頭検査は世界の非常識だ、こういう発言をされたというので、報道を見てびっくりしまして、私は議事録もとってみたんですが、非常識の部類でありますから、いつまでもこういう姿勢に閉じこもっていることが妥当とは考えておりませんという、これは日本が今進めてきている小泉内閣の方針、これが非常識であると。

 では、その閣僚は一体何なんだろう、こうなるわけで、この発言はちょっと、従来の大臣の発言も調べさせていただきました。そんなこと言っておりません。従来の発言は、この全頭検査については、あくまでも日本がとっている措置と同じことをしていただく、やはりこれだけは、きちんと検査を終えないことには国民に対する本当の責任を負えないという姿勢を貫いているわけでございます、これは二月十七日の予算委員会の答弁なんです。

 ですから、これだけ全然違うようなことを突然言われますと、これは一体、どちらが本心なのかということでありまして、その真意を聞かせていただきたい。

島村国務大臣 実は、それは限られた時間ですから、十二分に私の意を尽くした説明はできておりませんが、少なくも赤羽議員の御質問に対して答えたことです。

 全頭検査をお調べいただければわかりますが、世界じゅうどこにもやっているところはございません。ただ、全頭検査を導入した際、あの当時の消費者のいわばおびえといいますか、牛肉はおろか他の肉も一切合財食しないというような動きもあったわけでありますから、こういう際に、国民の信頼を回復して、安心して牛肉を食べていただく。少なくも米国の牛肉以外のものはその対象ではなかったわけですから、これは全頭検査をやって、国内農産、肉も何も大丈夫なんですよという配慮をしたことは、あれはあのときにおいては英断であったと思います。

 しかしながら、御承知のように、例えばEUは三十カ月以上というのを原則としておりまして、今ドイツあるいはイタリーとスペインぐらいで、あとは全部三十カ月の線で並んでいる。要は、私たちが海外へ行けば、フランスでも、あるいはイギリスでもどこでも、牛肉が出れば喜んで食べるわけでありますが、少なくも、今私たちが諮問しているのは、二十カ月以内ということに私は今しているわけでありますから、少なくもほかの地域の実情に照らせば、やはりかなり低い、厳しい水準に置いているわけでありまして、私は、まずその点について、いつまでも全頭検査ということにこだわるのは世界の常識に照らしていかがなものか、こういう判断をしました。

 いま一つ、私はやはり、正直言って、アメリカから圧力がかかって私の言動が変わったんじゃないかと危惧する向きがあるんですが、私はこういう男ですから、アメリカの代表の人に対しても、郷に入っては郷に従えで、日本の国に物を入れようというときには我が国の国内措置に従っていただく、これは断じて私がこの任にある以上は変わらないから、やはりそういう姿勢で出直してほしいと大変厳しい、失礼なくらい厳しいことを申し上げました。その後、私には、電話一本、そういう要求がありません。

 したがいまして、はたからの力とかそういうことではないのですが、実は、例えば十月十五日に私たちは諮問をいたしましたけれども、これはいつになったら結論が出るか全くわからないで、まあ三週間に一遍ぐらいの検討ですが、もう既に何回もやって結論が出ないままに来ています。これはこのまま放置していて果たして国際常識に照らして通用するんだろうか、何か日本が無用な引き延ばしをしているんではないかということは、私はこれはアメリカの代表ではなくて、ほかの角度からいろいろ聞いているところでございますから、何かそろそろ、いわば世界の常識に照らしても、少なくも鋭意検討しているんだという、何か結果が出てきていいんではないかと思っているところで、その結論についてかくあるべしということは私は一言も言っていないのです。

 ただ、全頭検査についてあなたはどう思うかと言うから、全頭検査というのは世界どこでもやっておりませんということを申したところでございます。

佐々木(憲)分科員 もう終わりますけれども、大臣の答弁は、これは一貫してなければならぬと思うんですね。ですから、全頭検査というのは、安心、安全というものを確保するために、日本が世界にないそういうものを採用したんだといって胸を張っていたわけですよ。ほかの国でやっていないから何か特別なんだというのではなくて、国民の安心、安全ということで、それを確保するためにやったということなんですから、まずはっきりその点を踏まえていただきたい。

 それから、いつまでも結論が出ないといっても、専門家なんですから、専門家はじっくり検討するのが当たり前じゃありませんか。しかも専門家に早く出せ、早く出せと言って、それでアメリカが早く結論を出せと言われて、それに乗っかっているような、そういう発言と聞こえるわけです。

 ですから、やはりこれは国民の安心というものが最優先でありまして、全頭検査というものを日本が採用していることを胸を張って世界に宣言する、堂々と主張する、そういう大臣であってほしいということを述べまして、終わります。

島村国務大臣 私、その際、赤羽議員が、情報公開して、これは米国産の牛肉ですよということを消費者によく知らしめて、その上で消費者が食べることについてどう思うか、こういう趣旨でしたから、私も、情報公開をして、消費者がそれを判断するということにおいては、少なくも二十カ月未満のものしか入れないという前提に立てば、世界の常識に照らしてそうおかしくないと私なりの考えを申したところでありまして、別に安心、安全を吹き飛ばす供給もありませんし、消費者に万が一のことがあったら大変なことでありますから、それらを十分考えて発言しているつもりであります。

佐々木(憲)分科員 終わります。

小泉主査 これにて佐々木憲昭君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして農林水産省所管についての質疑は終了いたしました。

 これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつ申し上げます。

 分科員各位の御協力によりまして、本分科会の議事を滞りなく終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午後四時三十四分散会


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