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第1号 平成23年2月25日(金曜日)

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本分科会は平成二十三年二月二十三日(水曜日)委員会において、設置することに決した。

二月二十四日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      佐々木隆博君    高井 美穂君

      中井  洽君    仲野 博子君

      小里 泰弘君    武部  勤君

二月二十四日

 高井美穂君が委員長の指名で、主査に選任された。

同月二十五日

 主査高井美穂君同日委員辞任につき、その補欠として高井美穂君が委員長の指名で、主査に補欠選任された。

平成二十三年二月二十五日(金曜日)

    午前八時開議

 出席分科員

   主査 高井 美穂君

      石井登志郎君    小原  舞君

      佐々木隆博君    柴橋 正直君

      空本 誠喜君    中井  洽君

      仲野 博子君    野田 国義君

      赤澤 亮正君    木村 太郎君

      武部  勤君

   兼務 仁木 博文君 兼務 皆吉 稲生君

   兼務 森本 和義君 兼務 伊東 良孝君

   兼務 中谷  元君 兼務 赤嶺 政賢君

   兼務 柿澤 未途君

    …………………………………

   農林水産大臣       鹿野 道彦君

   環境大臣         松本  龍君

   内閣府副大臣       末松 義規君

   農林水産副大臣      篠原  孝君

   農林水産副大臣      筒井 信隆君

   環境副大臣        近藤 昭一君

   文部科学大臣政務官    笠  浩史君

   農林水産大臣政務官    田名部匡代君

   環境大臣政務官      樋高  剛君

   政府参考人

   (国税庁課税部長)    西村 善嗣君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           篠田 幸昌君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           清水美智夫君

   政府参考人

   (中小企業庁次長)    豊永 厚志君

   政府参考人

   (国土交通省河川局砂防部長)           南  哲行君

   政府参考人

   (海上保安庁次長)    城野  功君

   政府参考人

   (環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長)   伊藤 哲夫君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局長)            白石 順一君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局環境保健部長)       佐藤 敏信君

   政府参考人

   (環境省水・大気環境局長)            鷺坂 長美君

   政府参考人

   (環境省自然環境局長)  渡邉 綱男君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  櫻井 修一君

   政府参考人

   (防衛省経理装備局長)  西  正典君

   農林水産委員会専門員   雨宮 由卓君

   環境委員会専門員     高梨 金也君

   予算委員会専門員     春日  昇君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月二十五日

 辞任         補欠選任

  高井 美穂君     小原  舞君

  仲野 博子君     石井登志郎君

  小里 泰弘君     木村 太郎君

同日

 辞任         補欠選任

  石井登志郎君     柴橋 正直君

  小原  舞君     高井 美穂君

  木村 太郎君     赤澤 亮正君

同日

 辞任         補欠選任

  柴橋 正直君     空本 誠喜君

  赤澤 亮正君     小里 泰弘君

同日

 辞任         補欠選任

  空本 誠喜君     野田 国義君

同日

 辞任         補欠選任

  野田 国義君     仲野 博子君

同日

 第一分科員中谷元君、第二分科員仁木博文君、第三分科員伊東良孝君、第四分科員柿澤未途君、第七分科員皆吉稲生君、森本和義君及び第八分科員赤嶺政賢君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成二十三年度一般会計予算

 平成二十三年度特別会計予算

 平成二十三年度政府関係機関予算

 (農林水産省及び環境省所管)


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     ――――◇―――――

高井主査 これより予算委員会第六分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりました。どうぞよろしくお願いいたします。

 本分科会は、農林水産省及び環境省所管について審査を行うことになっております。

 なお、各省所管事項の説明は、各省審査の冒頭に聴取いたします。

 平成二十三年度一般会計予算、平成二十三年度特別会計予算及び平成二十三年度政府関係機関予算中農林水産省所管について、政府から説明を聴取いたします。鹿野農林水産大臣。

鹿野国務大臣 平成二十三年度農林水産予算の概要を御説明申し上げます。

 初めに、予算の基礎となっている農林水産施策の基本方針について御説明いたします。

 まず、昨年末から、大雪や新燃岳の噴火など災害が発生しており、被害に遭われた関係者の皆様方に改めて心よりお見舞い申し上げます。

 また、相次いで発生が確認されている高病原性鳥インフルエンザについては、初動対応を迅速に行っているところでありますが、引き続き、感染予防、早期通報の徹底など、蔓延防止に万全を期してまいります。

 私は、昨年九月に農林水産大臣を拝命して以来、第一次産業の活力を生み出すことが日本の再生につながると確信をいたし、常に攻める気持ちを忘れることなく、農林水産行政に取り組んでまいりました。私は、農林水産行政が国政の中心に位置づけられ、農林漁業者の方々が誇りを持って生産に取り組むことができる環境づくりを進め、食と地域の再生に全力を傾けてまいります。

 次に、平成二十三年度農林水産予算について、その枠組みから御説明いたします。

 平成二十三年度一般会計予算における農林水産予算の額は、関係府省計上分を含めて、二兆二千七百十二億円となっております。その内訳は、公共事業費が五千百九十四億円、非公共事業費が一兆七千五百十七億円となっております。

 農林水産予算の編成に当たっては、既存予算の徹底した見直しを行うとともに、農林漁業者を直接支援する事業に予算を重点的に配分することにより、食と地域の再生を図ることといたしました。

 以下、農林水産予算の重点事項につきましては、委員各位のお許しをいただきまして、御説明を省略させていただきたいと存じます。

 よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。

高井主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま鹿野農林水産大臣から申し出がありました農林水産省関係予算の重点事項の説明につきましては、これを省略して、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高井主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

高井主査 以上をもちまして農林水産省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

高井主査 質疑に入るに先立ちまして、分科員各位に申し上げます。

 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力をお願いいたします。

 また、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がございますので、順次これを許します。石井登志郎君。

石井(登)分科員 おはようございます。民主党の石井登志郎でございます。朝八時からのトップバッターということで、さわやかに質疑をさせていただきたいと思います。

 きょうは森林の政策についてぜひ議論させていただきたいと思いますが、私は都会生まれの都会育ちで、そして今も都会から選出をされている議員でございます。だからこそ、森に対するあこがれというのがありまして、生きとし生けるものへの畏敬の念を抱く日本民族だからこそ、この森をすばらしいものとして次世代に引き継いでいきたい、そうした思いを持っている者でございます。

 また、そうした思いを共有する超党派の同志そして先輩の皆様方と、昨年に、奥山水源の森保全・再生議員連盟を設立し、事務局長を仰せつかっております。そうした活動を通じて出会った多くの皆さん方の声を背に、きょうの質問に立たせていただいております。

 森のことをいろいろと勉強しておりますと、遠くから見ると、きれいだな、豊かな森だなと思っておりましたら、一方で、実は健康でない一面もあるのではないか、問題が幾つかあるのではないかというようなことに気づかされるところでございます。

 きょうは、そうした中で、大変古い、私が生まれるはるか前の、昭和二十年代の新聞の社説を持ってまいりました。これは朝日新聞でございますが、お配りをしておきましたので、副大臣、政務官、お目通しいただいたと思います。この中で、一言で言えば、特に奥山、奥地林の開発、急増する木材需要を賄うには奥地林の開発というのが大変重要であろうというようなことが書いてございます。

 そうした時代背景の中での社説でありますから、林野庁もそうした政策を昭和二十年代、三十年代、四十年代ととってきたんだと思いますが、ただ、これから六十年たちました。この昭和二十年代の社説、そして、昭和二十年代から四十年代まで拡大造林政策が続いてきたわけですが、今もこうした認識で政策を続けておられるのか、基本的なところでございますが、この記事に対する御感想も含めてお聞かせをいただければと思います。よろしくお願いします。

田名部大臣政務官 おはようございます。

 石井委員、今お話しされました、日本の持つすばらしい森を次世代へつないでいきたいと、その思いは私たちも一緒でございます。石井委員におかれましては、日ごろから森林政策にも御熱心に取り組まれているということで、これからもぜひ御協力をお願いしたいと思います。

 それで、今お話のありました、過去の拡大造林に対してでございますけれども、これというのはまさに、戦後荒廃した国土、それを復興する意味もあり、また建築用材の需要、その増大への対処等を目的として、まさに先人が営々と取り組んでこられたその努力の結果、我が国の森林面積約二千五百万ヘクタールの約四割に相当する一千万ヘクタールの人工林が造成をされてきたところであります。これら森林は利用可能な段階をまさに今迎えておりまして、昨年でありますけれども、森林・林業再生プラン、これが取りまとめられて、まさに計画的にそのプランに基づいてこれから森林・林業に対する施策を行っていく、そういう段階にあります。

 今委員からお話があったように、この新聞記事の中には、奥地をもっとしっかりと開発する必要があるんじゃないかということなんですけれども、ただ、近年では、生物多様性の保全であるとか景観の問題、こういった森林に対する要請が高度化、多様化してきているところであります。このため、私どもでは、これら人工林について、資源の循環利用であるとか、また生物多様性の保全ということもしっかりと視点に入れながら、森林の持つ多面的機能を十分に発揮できるよう、間伐等を初めとする適切な森林の施業を行っていきたい、そのように考えています。

 ぜひとも、国民の森林に対するニーズをしっかりととらえながら、これからもその施策に向けて頑張っていきたいと思います。

石井(登)分科員 ありがとうございました。

 時代背景、そして時代のニーズに沿って、修正といいますか、変わっていっているというふうに理解をさせていただきました。

 そうした中で、次の質問に移りたいと思いますが、兵庫県の佐用町で、一昨年、私どもがちょうど総選挙を戦っているときに、大きな災害がございました。激甚災害にも指定をされたという大変深刻な、そして何名もの方が命を落とされるというような、そういう災害でございましたが、その災害に関して、ちょうど丸一年前のこの予算の分科会で、同じ兵庫県の、公明党でございますが、赤松正雄先生が、この災害に関しましてちょうど議論をされております。そのときに引用されたデータが、兵庫県治山林道協会が発行する、この「やまなみ」という会報でございます。

 その中のデータで、流れ出た多量の流木、最初の報道ベースでは、これは間伐材ではないかというようなことを言われておったんですが、その後の調査で、ここに書いてある中では、流れ出た二千二百立米の八割が立ち木、立っている木がそのまま流れていった。残り一割が間伐材、そして残りが風倒木ということで、この調査になっているわけですが、その議論をここで繰り返すのではなくて、一年前に赤松議員がされた議論、それは災害からまだ三、四カ月しかたっておりませんので、ちょうど災害復興のことについて主眼が置かれていたわけです。

 私がお伺いしたいのは、立ち木が八割、つまり、流れ出た流木の八割が立っている木であった、この原因は結局何だったのかということについて、これは一年たちました。一年前に調査をしてくれというようなことを言っていたわけでありますが、八割は立ち木が流れていった、大変なことでありますが、この原因についてどのように御認識をされているか、お聞かせをいただきたいと思います。

田名部大臣政務官 今お話にありました、兵庫県のあの災害、まさに立ち木が根こそぎ流されたという大きな被害であったと伺っております。

 そういうことも踏まえて、これからのしっかりとした対策というのは必要となってくると思いますが、例えば一部、放置人工林があるとか、また間伐が十分に行われていないようなケース、こういったことを、しっかりとその実態というものを把握していかなければならないと考えています。

 今申し上げましたように、間伐を計画的に実施をしていくということは非常に重要な施策だと考えておりますので、それらを含めて、起こった大きな災害、こういったことを防いでいきたいと考えています。

石井(登)分科員 ありがとうございました。

 そうした意味で、災害を防いでいくという意味では、森林の治山治水効果というようなことに議論をちょっと移らせていただきたいわけでございます。

 先般、農水省さんからいただいた資料で、保安林制度の概要という資料がございます。ここで私が申し上げたいのは、森林土壌が雨水を浸透させる能力の違いということで、農水省さんが示しております。森林の土壌が雨水を浸透させる能力、浸透能は、森林は草地の二倍、裸地の三倍ということが書いてございます。これは林野庁の資料でございます。出典は、林地の水および土壌保全機能に関する研究、一九七五年というようなことでございます。同様に、森林と裸地の流出土砂量の違いということで、これも一九七〇年の大変古いデータを使ってここで説明をしていただいています。

 もちろん、このデータが間違いだということはないんですが、しかし一方で、私が多くの人から話を聞くと、しっかりと手入れをされた森林と手入れが行き届いていないところの森林とではまた違うと。ある人は、緑の砂漠と呼んで、下草も生えず、表土は流れ、生き物のいない死の森となっているのではないかということを懸念されています。

 こうしたことで、感情だけの議論でなくて、豊かにしっかりと整備をされた森林と、そして整備が行き届いていない、下草も生えていないようなところと、これはやはり別に考えなければいけないのではないか。

 同時に、この一九七〇年、七五年という、片方は私が生まれる前のデータでございますから、こうした古いデータでなく、最新のさまざまな環境に応じたデータというようなものを出していただいた方がより実態に近いのかと思いますが、そのあたりについて御見解をお聞かせください。

田名部大臣政務官 委員御指摘のとおりだと思います。データはできるだけ新しいもの、つまり、しっかりと情報を把握する、実態を把握しながら適切な対応をしていくということは大変重要だと思いますので、委員御指摘のように、それらの努力にも努めてまいりたい、そのように考えております。

 それで、今おっしゃっていた下草、下層植生、これは、間伐をしっかりすることによって下草がまた広がっていき、保水力も高まるであるとか、また、間伐をすることによって根が広がっていき、強い木ができていく。まさに、先ほどからお話をさせていただいておりますとおり、適切な間伐をしっかり行っていく、このことが災害にも強い森林をつくっていくことにつながっていくと思います。

 人工林であれ、天然林であれ、まさに適切に管理をしていくということが大変大事なわけでございますので、ぜひとも木の持つ機能をしっかり高めていく、こういう施策に取り組んでいきたいと考えています。

石井(登)分科員 ありがとうございます。前向きな御答弁、大変感謝を申し上げます。

 そこで、先般、私が事務局長を務めております議員連盟の方で、広島大学の中根周歩先生に来ていただきまして、この先生は、特に四国の吉野川流域や地元の広島流域で、森林斜面の浸透能、そして河川流出のパターンというようなことで研究をされております。ですから、もちろん政務官、副大臣、中根先生のことはきっと御認識はいただいていると思いますが、御認識をいただいていなければ御紹介いたしますし、そして、森林総合研究所ですか、そこでは、広葉樹と針葉樹の浸透能、保水能力等には大きな違いが見られないというようなことを言っているデータもあったりいたしますが、ただ、やはり広葉樹の方が根が深く張るんじゃないかとか、もしくは人工林の方でも、強間伐をしっかりとしたり、もしくは針広混交の方が土壌が強くなるのではないかというようなことを言う人もおります。

 ですから、ここは、そうした調査データを林野庁、農水省としてそろえていくということを、可能であればお約束をいただければありがたいんですが、いかがでございましょうか。

田名部大臣政務官 前向きに検討しますというような、こんな答弁でいいのかわかりませんが、先ほども申し上げましたように、先生御指摘のとおり、やはり今の現状がどうなっているかということをしっかり把握することが大事だと思いますので、最新のデータを極力集めるための努力はしてまいりたいと考えています。

石井(登)分科員 信頼申し上げる田名部政務官から前向きな御答弁をいただきましたので、期待をしていきたいと思います。

 それでは、続いて、保安林について取り上げたいと思います。

 保安林は日本の森林面積の四七%、国土の三一%ということですから、相当な割合です。この保安林は、水源涵養保安林であるとか土砂流出防備保安林、その目的に応じた指定がされている。伐採や開発に制限が加えられる一方で、固定資産税などの税制面の減免があるように承知をしております。

 冒頭で申し上げたとおり、私は都会っ子でありますから、保安林、保って安全と書くと、保って安全なのかなと思っておりますが、一方で、現状、保安林が千二百万ヘクタールある。国有林はそのうちの七百万だ。残りの五百万は民有林であるとか、県や市、町の公有林であろうと思いますが、この保安林の状況が適切な状況かどうか、このことについて把握をされているかということをお聞きします。

 というのは、やはり、林の中でここまでが保安林に指定されていて、ここの隣からは保安林に指定されていない、そうした区分けはなかなか難しいというのは、それはもちろん現場サイドの声ではわかります。一方で、税の減免がここまでされている、そしてここは保安をすると言っている以上、保安林としてその機能を果たしているかどうかというのは、果たしていないのであれば、何らかのより積極的な措置を講じなければいけないだろうという問題意識でございます。

 繰り返しますけれども、保安林が適切な状況に管理されているかどうかという調査を、今、農水省、林野庁としてされておられるかどうかというのをお聞かせいただければと思います。

田名部大臣政務官 まさに保安林が保安林として、委員御指摘の、保って安全、そういうことでなければならないわけですが、この保安林の調査ですけれども、市町村、県が把握をして、それを踏まえて森林計画がつくられているところであります。

 ただ、保安林の中にも適切な森林整備が必要なものもあるという報告もございますので、ぜひとも、私たちとしては、まさに森林の有する水源涵養機能を含む公益的機能の維持、増進を図るということをしっかり行っていきたいと思いますし、そのためにまた二十三年度の概算決定、予算でありますけれども、荒廃地の復旧、整備などにより森林を再生する治山事業、これに六百八億円、造林や保育そして間伐などの適切な森林の整備により健全な森林をつくる森林整備事業、これに一千百八十二億、概算決定したわけですけれども、これらを踏まえて森林の整備、保全を推進していきたいと考えています。

石井(登)分科員 ありがとうございました。調査、全体の把握というのをされている部分と市区町村がされている部分と、さまざまあろうということだと思います。

 ただ、ここはちょっと意見とさせていただきますが、やはり国有林は国のものでありますから、私の考えでは国がしっかり調査をしていただくべきだと思いますし、また今、足して一千七百億、八百億程度の予算を計上していると。ただ、一千八百億円もの多額の予算を計上しているということは、やはり何らかのデータがあって、そして目指すべき政策目標があって一千七百億円、八百億円という予算が使われるべきだと思いますので、ぜひ、これから森林法の改正の議論もあろうと思いますが、現状の把握等で、もちろん大方されておると思いますけれども、また、私どものような都会っ子にもわかるようなデータをいただければありがたいと思います。

 次の質問に移りたいと思いますが、皮むき間伐、いわゆる巻き枯らし間伐についてお聞きをいたします。

 間伐といいますと、チェーンソーを持って、そして熟練された方でも事故が起きるかもしれない、大変難しいといいますか、危険を伴う作業だというふうに聞いております。ただ、一方で、林業をしっかりとやるところはそれでよいと思いますが、私の考えとしては、拡大造林政策がある意味行き過ぎたときに、山の奥の奥の、今はもうだれも行かないようなところ、そこに林道を通して林業をしよう、間伐をしようというのではなくて、そこを適正に間伐するためには、そこから切り出すということをある意味前向きにあきらめて、そしてヘクタール三千本植えているものを、それから間引いていく、それは必ずしも切り捨て間伐や切り出す間伐だけではなくて、巻き枯らし間伐というやり方もあるんじゃないかということを、何人もの専門家の方から示唆を受けているところでございます。

 そこで、私の質問と提案でございますが、これは国として一度、実証実験といいますか、数百万円の規模の補助金を出して、十件でも数千万円。何千億円というような単位からすると大変少ない額でございますけれども、一度、実証実験として巻き枯らし間伐、皮むき間伐をやってみていただいてはどうかということを御提案申し上げます。

 レクの中で聞いたところは、例えば虫が発生するという問題とか、あとは巻き枯らし間伐、皮をはいでから徐々に徐々に枯れていって十年後ぐらいに倒れる、何かまた人が入ったときに、倒れた際に事故が起きるんじゃないかというような懸念があるということでありましたが、やはり何事もすべてメリットばかりではありません。メリットとデメリットの比較の中で、メリットの方が大きければやるべきだ。もちろん、デメリットが小さくても、それが決定的なデメリットであったら、やるべきではないですけれども、国として研究を、実証実験なり何らかの形でやっていただければどうかと思いますが、御見解をよろしくお願いいたします。

田名部大臣政務官 委員御指摘のとおりメリットとデメリットがあるわけでございますが、熟練した作業者じゃなくてもできるというのが巻き枯らし間伐であります。ただ、一方で、今お話にあったように、枯れるまでに年数がかかる。それで、結局枯れて倒れてしまうわけですから、それに伴う事故というものも考えられます。さらに、間伐材の利用につながりにくいということも考えられます。

 ことしは国連の定める国際森林年でもあり、そして先ほど申し上げた森林・林業再生プランで、まさに新たな施策の中で新たな一歩を踏み出す元年になるわけですけれども、私たちはできるだけ木を使うということを念頭にいろいろな施策を進めていきたいと考えておりまして、そういう意味では、当然否定するものではございませんが、搬出間伐ということをしっかり視野に入れて、日本の持つすばらしい木を、さらにその後、切った後に利用するというところまで考えていきたいと思っています。

 ボランティアの皆さん方が巻き枯らし間伐に取り組んでいるというような事例は承知をしています。ただ、さっき言ったようないろいろなデメリットもあるということでありますので、現時点では十分な留意も必要なのかなというふうに考えていますが、地域の実情などを踏まえ、これは特例の補助が出る事業でありますので、実態というものを踏まえた中で、補助の対象になるようであれば、そのことは実施をしていきたいと考えています。

石井(登)分科員 ありがとうございました。

 今の御答弁、立場上大変なところもあろうと思いますが、よくわかりました、一〇〇%納得いたしましたということはちょっと言いかねるわけでございます。

 もちろん、デメリットがあることは承知もしています。ただ、例えば愛知県の豊田市などでは、まだ事例は少ないですが、ヘクタール当たり十二万六千円の補助金を出して、もちろんそれも林野庁の広い意味での集約化事業の一環としてやっていこうと。ただ、自治体として独自に、巻き枯らし間伐に対して補助金を出しているということもあります。これはボランティア団体の方々ですけれども、那智勝浦の、那智の滝の上が町有林で、そして今もう手がつけられないので、この春が明けた以降に巻き枯らし間伐をしていこうということになっておられます。

 ですから、搬出をしていくという前提で考えているとおっしゃいましたけれども、山の奥の奥の、あそこまでよく植えたな、そういうところに関しては、さまざまな可能性があるということをぜひ共有いただければありがたいと思います。

 次に移りたいと思います。

 これまた都会育ちならではの視点かもしれませんが、既設林道、作業道沿いの人工林に関して、時には林道ではなくて、県道そして国道沿いでも全く手の入っていない、そういう放置人工林というのがよくあります。先般、長崎に行った際に、雲仙・普賢岳のあたり、あそこも人工林だらけなんですけれども、あれはたしか県道か町道だったと思いますが、すぐそこが、ここは手を入れたらいいのになというようなことを感じました。

 ここで申し上げたいのは、林道整備がどうしても目につくわけですね。もちろんそれが必要なことである、そして必要なことだということで進めていただく。一方で、走っていると、林道整備、林道整備、目の前の、車で走ったら、横は手を入れられるじゃないかと思うところが一度や二度ではないんですね。

 そこで、今、農水省の方で認識をお聞かせいただきたいんですが、そういうデータがあるかどうかわかりませんけれども、既設の道路沿いの放置人工林対策に関してどのようにお考えになっているか。もしくは、既設の道路沿いの人工林に対して何らかの補助金、インセンティブとかをつけて整備をするとか、そう考えておるんですけれども、この点に関しまして、お考え、認識をお聞かせいただければと思います。

田名部大臣政務官 我が国の人工林における今先生御指摘の路網整備の水準、これは大変低い状況にあります。高性能の林業機械による効率的な間伐が行えるようにこれから路網整備をしていく、この路網整備も、今までみたいにただ無駄に広く大きいものではなくて、そこはしっかりと適切な路網の整備というものをこれからは行っていく必要があると考えています。

 その路網整備の水準でありますけれども、効率的な施業を行っているドイツ、これは一ヘクタール当たり百十八メートル。これに比べて日本というのは十七メートル程度なんだそうです、路網密度が。大変低い状態にあって、今申し上げたようなしっかりとした整備が必要だということです。

 ことしの二十三年度から、新たな森林管理・環境保全直接支払い制度、こういったものの導入によって、既設の林道や作業道沿いの人工林を含めた施業集約化による搬出間伐を推進して、森林・林業の再生を図っていきたいと考えています。

石井(登)分科員 ありがとうございました。

 これも、おっしゃることはよくわかります。ただ、やはり県道沿いの、すぐそこの森をまずどうにかしたいなと私は思います。ですから、もちろん、今までのようなものよりもコンパクトな林道をつくるんだという意味では、ある意味、前進なのかもしれませんが、しかし、それとは別建てで、道をつくらなくていいわけですから。道をつくらなくて手を入れられるところがあるわけでありますから、それについて。ただ、全体の数千ヘクタールしかそういうのがないとか、そういうのであれば、これは私の考え過ぎかもしれません。

 そうした点について認識をしていただければ、そして、もし、実は大きかった、石井登志郎の言うとおりだったということであれば、何かの政策立てをしていただければうれしいと思います。

 最後に、環境省、局長に来ていただいていますので、一点お伺いします。

 いわゆるナショナルトラストに関してでございますが、固定資産税などの地方税は当該自治体との折衝において減免されるということが大変多いというふうに聞いております。

 その中で、いわゆる自然を保護するナショナルトラスト、これは発祥はイギリスでありますけれども、韓国でもそうしたようなものがトラストの法律として形づくられているわけであります。日本でも、今私が申し上げたように、地方自治体と折衝したら固定資産税等の減免は受けられるのが現実であるけれども、しかし、もし、そこの首長なりとの折衝が形にならなかったときはその減免が受けられないというようなリスクもある。

 社会的にナショナルトラストというものの重要性を認知させて、そして、森を守っていくというような姿勢を国として示す意味でも、ナショナルトラスト法というものを日本でも検討してはいかがかと思いますが、御見解をお聞かせいただければと思います。

渡邉政府参考人 御指摘のナショナルトラスト活動の促進、支援につきましては、大変重要な課題と認識しております。

 昨年末に制定されました生物多様性保全活動促進法におきましても、ナショナルトラスト活動の促進のために、国は、活動を行う団体に情報提供等、必要な援助を行うことが規定されたところでございます。

 ナショナルトラスト団体への支援につきましては、自然環境保全法人という認定をされた団体への税制優遇措置が一部講じられております。この仕組みも、より活用されるような工夫をして、ナショナルトラスト団体への支援に努めてまいりたいというふうに考えております。

 あわせて、地方公共団体が税の減免を行う際の判断に資することができますように、全国のナショナルトラスト活動団体の情報を収集、整理いたしまして、地方公共団体にそれらの情報を積極的に提供してまいりたいというふうに考えております。

石井(登)分科員 ありがとうございました。

 これからこの問題も取り組んでまいりたいと思いますので、ぜひ今後とも御指導よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

高井主査 これにて石井登志郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、仁木博文君。

仁木分科員 おはようございます。民主党・無所属クラブ、衆議院議員の仁木博文でございます。

 きょうは、医食農連携について質問をしていきたいと思います。

 まず、私、産婦人科医として医療の現場にいまして、日々の食生活が国民の健康等に及ぶことを目の当たりにしてまいりました。実際、かなりの疾病において、例えばこういった食生活をしているとこういった病気になるというような、エビデンスというか、疫学的な結果も出ております。

 きょう、農水省、あと厚労省、そして文科省の皆様方に来ていただいていますけれども、医食農連携は、農業、医療、そして食品加工、外食の各業者が連携して商品やサービスの開発を行うこと、これは一つの手段として挙げられたわけでございます。まず、きょう、篠原副大臣、今、例えばメタボリックシンドロームというのはもう国民の共通の概念になっておりますけれども、そういった食生活と健康との関係というのをどのようにお考えかということをお願いしたいと思います。

篠原副大臣 食事は人の健康を左右する一番大事な要素だと思っております。ですから、私なんかはよく食べる方なんですけれども、よく食べるのに太らないとか言われますけれども、消化が悪いだけでして、空気を吸っているだけで、水を飲んでいるだけで太るとかいう、あれはうそですし、余計に食べているから太るのであって、食源病という言葉がよく使われておりますけれども、食事と健康はもう不可分のものじゃないかと思っております。

 ですから、生活習慣病を治したりするためには正しい食生活をするというのは大事でして、アメリカではとっくの昔からマクガバン報告というのが出まして、肥満防止のために食生活を変える。最近では、オバマ大統領夫人が、アメリカの子供たちがますます肥満になっている、これを何とかするために、学校の給食、それからジャンクフード、これを見直すべきじゃないかということを盛んに言われておりますけれども、日本もそういったことをしていかなければならない事態になりつつあるのではないかと思います。

仁木分科員 ありがとうございます。

 先ほども生活習慣病というふうなことを挙げられましたし、ジャンクフードという単語も出てまいりました。食生活というのはまさに生活の一部でございます。日々私たち国民が口にする、そういうものをつくるのが、また農業でもあるわけでございます。

 先ほど言われた一つの例としまして、今お聞きしたいのは食生活と健康についてでございますけれども、例えば、今、消費者行政においても問題となっております、ジャンクフードの中に多く含まれているというふうに言われていますトランス脂肪酸等々、これが、例えばメタボリックシンドロームを助長して、心血管疾患を、脳梗塞、心筋梗塞といったものを誘発するんじゃないかということも言われておりまして、今、表記の問題も問題にはなっております。

 きょう、厚労省の皆さんにお尋ねしたいんですけれども、栄養素と疾病、あるいは健康状態の関係、こういったものはよく研究も進められておりまして、国民の間にも一部広まってはおりますけれども、この辺の取り組みについて何か現状をおっしゃっていただければ、よろしくお願いします。

篠田政府参考人 お答えを申し上げます。

 先生御指摘のとおり、食生活と医療、健康というのは非常に密接な関係があるというふうに私どもも考えておるところでございます。

 私ども厚生労働省といたしましても、国民の健康の増進でありますとか生活習慣病の予防というのは大きな課題でございます。一例で申し上げますと、先生もちょっとお触れになりましたけれども、脂肪の摂取と心疾患のリスクというのは、これまた知見としてございますし、また、高血圧の関係で申し上げますと、これも御案内かと思いますけれども、食塩あるいはカリウムの摂取という点と非常に関係が深いというふうに言われておるところでございます。

 私ども、栄養素の摂取と疾病の関係ということにつきましては、これは年々研究を積み重ねてまいりましたので、その知見を踏まえまして、五年ごとでございますけれども、エネルギーと各栄養素の摂取の基準というのを取りまとめております。日本人の食事摂取基準ということで取りまとめさせていただいておるところでございます。

 この基準でございますけれども、科学的な根拠に基づきまして策定するということが基本でございます。このために、その策定に当たりましては、医学、栄養学の研究者の方に幅広く参画をいただくということが必要でございますし、そのとおり実施をしてきております。国立健康・栄養研究所を中心にいたしまして、科学的な根拠の集積のための研究ということもあわせて実施をしているところでございます。

 今後とも、関係の機関とも連携が必要でございますし、幅広く研究の充実を図りまして、生活習慣病の予防でありますとか健康の維持、確保、延伸ということに私どもとしても努めてまいりたいというふうに考えております。

仁木分科員 ありがとうございます。

 科学的根拠、つまりエビデンスを重ねていくということは非常に重要だと思います。事実、例えば、私たちも深夜番組を見ますと、通販で、健康食品なりということでいろいろなことを、国民が健康を求めております。

 そういうことで、今、厚労省としましても、そういったことの栄養素分類のみならず、個々の、例えば化学物質も含めて、人体実験はもちろんできませんけれども、動物実験とか、あるいはそういう疫学的な調査、つまり、さかのぼって、こういう疾病がどのような食生活が原因となったのかということも含めた、そういったことをお願いしたいと思います。

 それと、今回も、農水省の方で、農林水産物、食品の機能性を解析そして評価する基盤技術の開発ということに五億円を積まれてはおります。これもやはり、機能性ということでございますが、厚労省としっかりと連携していただいて、情報交換していただいて、そういったことの結果というものを、国民にわかるような形、啓発、啓蒙というのをやっていただきたいなと思っております。

 きょうの私の大きな主張でもありますけれども、医、食、農の連携、これは、生活によって病気になったりならなかったりする、そういったことのエビデンスを蓄積して国民にわかっていただく、その結果、国民が、最後は皆さん死んでいくんですけれども、より健康である健康寿命が長くなって、それによって結果的に医療費の抑制になるとか、もちろん、その前に、国民一人一人が健康でいられる期間が長い、幸せでいられる期間が長い、そういうことを目指すことでございます。

 今、そういう連携という話でございますけれども、最近話題にもなっておりますポストハーベスト、これは農薬の一部ではございますが、そういったものが健康に及ぼす影響、あるいは、遺伝子組み換え作物からつくられた遺伝子組み換え食品、そういったものの人体への影響あるいは健康への影響、そういったものも農水省あるいは厚労省と連携して何か研究できないのかなということを申し上げたいと思います。

 さて、そういったエビデンスを蓄積していくのは重要なことでございますけれども、やはり、そういったことを肌で感じて、それで賢い消費者あるいは国民になっていくということも重要でございます。

 今、文科省的な中におきまして、食育基本法というのが策定されて実施されております。これには、食育推進基本計画という中で、地元の農産物なりを、例えば学校の給食等々で三〇%以上使うことを目標とするというのが具体的なこととしてあるんですけれども、こういったことの今の進捗状況でありますとか施行後の変化でありますとか、そういうのを文科省的に御理解されているようでしたら、御説明の方、よろしくお願いします。

笠大臣政務官 今、仁木委員の方から御指摘がありましたように、学校給食において、できればその地域の、地場のいろいろな食材を使いながら、しっかりと子供たちに食育をという観点からも、推進していくということは非常に重要であろうというふうに思っております。

 平成十八年に政府が策定をいたしました食育推進基本計画、これは平成十八年度から二十二年度ということになりますけれども、これにおいては、学校給食における地場産物を使用する割合を食材数ベースで平成二十二年度までに三〇%以上とすることが目標とされておりますけれども、平成二十一年度で、今現在二六・一%というふうになっております。

 また、学校で食に関する指導を行う際に、農林漁業者などの人材の協力を得たり生産等の場を活用することは、教育的な効果をしっかりと高める上でも有意義だというふうに考えておりますので、こうした取り組みを文部科学省としてもしっかりと推進していきたいと思いますし、また応援をしていきたいというふうに考えております。

仁木分科員 ありがとうございます。

 三つ子の魂百までということわざがありますけれども、やはり幼少期のそういった体験なりこういったことで、いろいろな、その人の嗜好なり、人格形成も含めてそうですけれども、続いていくということは御存じのことと思います。

 そういう中で、やはり、人の味覚、舌の教育、それがすごく重要だと思うわけでございまして、ある種、今これだけ日本国民が長寿を謳歌しているというのも、やはり、和食、日本の文化、いわゆる御飯を主食とした、お米を主食としたそういう食生活が非常に大きいと私は思います。

 そういう中で、今、笠政務官のお話にありましたけれども、こういった今の計画というのは、さらに、今二六・一%ということをおっしゃられましたけれども、もっと高めていってもらいたいということも思います。

 局長通達ということでございますけれども、そういう中で、また、新たな調査的な項目として、児童とか生徒、あるいは教師の側に、実際に給食が行われる場でどういった変化があったということ、例えば、おいしくなったとか余計食べられるようになったとか、あるいは好みの変化とか、そういったことも長期的にこれから見ていっていただきたいというのも一つの希望でございます。

 また、食育というのは、やはりその地域の、地場の、どういうものがとれるのか、どのようにその農産物がつくられて自分たちの食べる段階になっているのかということも、食育の一つの目的であると思います。

 そういう中で、例えば、農業を担っている地域のおじさんが学校で担任の先生と一緒にアシスタントティーチャー的に取り組むということも、また、より身近になって、いいかなと思います。

 そういうことで申し上げますと、例えば、私の地元に、半田そうめん、そうめんをつくっている地域があるんです。私もその地域の病院で勤務したこともあります。ただ、これは病院なので文科省の範囲外とは思いますけれども、一年間いまして、地元のそうめんが出た日がたった二日とかそれ以下だということもありました。

 これも一つの例ではあるんですけれども、文科省的でなくて、例えば、子供だけでなくて地域でそういった啓発、つまり、地元のものをもっとアピールしていくということも重要だと思うんですけれども、その辺はいかがお考えでしょうか。

笠大臣政務官 今本当に、御指摘あった点は非常に重要だと思います。今、半田そうめんというお話がございましたけれども、平成二十一年の四月に定めた学校給食実施基準の施行に際して、食事内容の充実について、地場産のものや郷土に伝わる料理を積極的に取り入れ、児童生徒が郷土に関心を寄せる心をはぐくむとともに、地域の食文化の継承につながるよう配慮することを私ども求めているところでございます。

 実際、私もよく学校の方を訪問させていただいて、最近の、今週も実は月曜日、横浜で、小学校で子供たちと一緒に給食をごちそうになってきたんです。やはり都会は、地場のというのはなかなか難しいところがあるんですけれども、地域の学校なんかへ行きますと、本当に工夫されて、そして日ごろから、もちろん栄養教諭が中心になるわけですけれども、近所の農家の方々が、例えば米づくりあるいは野菜づくりをその時々において子供たちと一緒に体験をしたり、あるいはそういうふうな形でかかわっていただくような取り組みが随分進んできているところでございます。

 そういったことも、地域によるばらつきがないように、それぞれの特色を生かしながら、まさに食育がきちっと充実していけるように、私どもも、教育委員会とも協力をしながら、その点を留意しながら推進をしていきたいというふうに思っております。

仁木分科員 ありがとうございます。

 先ほど、舌の形成の話を申し上げました。つまり、その地域で自分たちが味わってきた食文化ということでいいますと、そういった地域に住む人たちが、今これだけ地域間あるいは人と物との交流が国内でも盛んになっておりますけれども、ほかの国民なりあるいは外国人も含めて、PRできるというか宣伝効果も重要になるわけですよね。そういうことで、これは農水省とも連携していただいてやっていく必要があるというふうに思います。

 私、もっと踏み込んでこのことを申し上げますと、例えば、学校給食の主食を原則御飯、お米にしていただきたいというのもあります。

 それはどうしてかといいますと、今、若いお母さん方、パン食、これは戦後のGHQのいろいろ政策もあったかもしれませんけれども、影響で、一日じゅうパンで大丈夫だという形になります。パンを主食に置くと、どうしても脂肪の摂取は高くなると思います。冒頭おっしゃられましたように、脂肪と疾病との関係というのもエビデンスとしてあるということでございまして、和食というか、御飯を主食に持ってくると、イメージですけれども、やはり地場のお野菜とかが合いますよね。むしろ、パンとか、あるいは油っこいものがイメージしにくい。そういう組み合わせというのはやはり大切だと思うんですね。

 そういうことで、これはなかなか難しいかもしれませんけれども、今、学校給食における主食が御飯であるという、週五回ですか、五日ありますから、そのうち三日とかいうふうな統計も出ているようでございますけれども、希望としまして、全回、五回とも御飯食に、主食にできないかということは、改めてリクエストとして申し上げたいと思います。

 そういう中で、今、和食というか、規則正しい生活ということも相まって、例えば、文科省の方では「早寝早起き朝ごはん」、あるいは農水省の方で「めざましごはん」、ともに、そういった和食をイメージするようなキャッチフレーズでいろいろな政策が進んでおります。こういったことの今後の取り組み、私が先ほど申し上げた提言等も含めてお答えいただければ、よろしくお願いします。

笠大臣政務官 今ありましたように、「早寝早起き朝ごはん」、もちろんこれを私どももしっかり学校現場でも、やはり規則正しい食生活、そして朝御飯を食べることによって、もちろん勉学、スポーツだけじゃなくて、生活の一つのリズムというか習慣もしっかりとしてくるというようなことで、これは民間の皆様方と一緒に推進運動を今高めているところでございます。

 お米、米飯給食を私どもはやはり推進をしていきたい。先ほどあったように、今、全国平均で大体三・二回ということなので、週五日のうち、丸々五日というのは難しいかもしれませんけれども、国としては週三回以上を目標にしながら、三回未満の地域あるいは学校、ここについては週三回程度に、あるいは週三回以上の地域や学校については週四回程度に新たな目標を設定して、実施回数をふやしていくように通知を発出しているところでございます。

 かなり都道府県でばらつきがありまして、全国平均三・二回、徳島県も今全国平均なんですね。四回以上やっているところだと、やはり米どころの山形とか、あるいは新潟なんかでは四・二回、あるいは福井、高知、高知は四・一回なんですね。地域によっての、都道府県によっての取り組みのばらつきもかなりありますので、そういったところはしっかり連携しながら。

 ただ、あと、私も和食が大好きなんですけれども、これまで学校給食をやはりパンが支えてきたという点もございますので、これも、ある学校では、パンを食育で、自分たちでつくるんですね、そして食べる。だから、単に出されたものじゃなくて、そういった工夫もしながら、米飯給食というものを中心に、あと、そうめんであるとか、うどんであるとか、あるいはパンなんかも含めて、食育にどういうふうな形で貢献できるのか、しっかりとそうしたことを展開していきたいと思います。

仁木分科員 笠政務官、前向きな御答弁、ありがとうございます。

 そういうことで、食生活における幼少時からのそういった影響を与えるための政策というのは非常に重要だと思います。

 今、日本の地方、いわゆる農業をする場でございますけれども、やはりこれというのは、具体的に言うと、東京等のように既に土地のないところでは難しいと思います。アグリカルチャーという農業の言葉にありますように、土地を耕すということでございますので、水耕栽培、一部を除きまして、あるいはファクトリー的な農業生産を除きまして、やはり土地が必要だと思っております。

 今、日本の地方は、特に農業の担い手がいなくて困っている状況がございます。例えば私の地元、高井委員長の地元でもありますけれども、鳴門というところに、サツマイモ、鳴門金時というのがあったりします。もちろん、こういう付加価値の高いものをつくり出して広めていく、いわゆる、ある種ブランド化ができているわけでございますけれども、まだまだそうはいかないものもございます。

 そういったことで、今、地産地消を進められようとする農林水産省の中で、今回、六次産業化ということも一つの政策として上がっております。これは、加工したことによってより付加価値をつけて、それを戦略的に売っていくという一連の流れでございます。このことに関しまして、やはりその地域にお金が入ってきて、その地域に仕事が生まれる、じゃないと、今、日本の地方は、仕事がないから自然減少以上にその地域から若者なり担い手が出ていって、結果的に地産地消の地産、産出もできないですし、またそこで地消、消費もできないという現実、つまり悪循環に陥っていると思います。

 篠原副大臣、この地産地消、六次産業化、こういったことに対する農水省のこれからの取り組みに関しまして、新たなお考えといいますか、今回の平成二十三年度の予算にも十分盛り込まれていると思います。具体的には、そういったことを農家の方々は、例えばつくるのはなれているというか、御経験的にあるんですけれども、それをいかに付加価値をつける、二次産業に持っていく、そしてまた加工したものを売っていく販路の拡大とか三次産業化、こういったことにやはりそれぞれの専門家が要ると思います。

 そこで、仕事人というふうな形をつくって、そういう担い手を募集したり、あるいは雇用したりということでございますけれども、その辺の今後の展開なりを教えていただきたいと思います。よろしくお願いします。

篠原副大臣 仁木委員が冒頭言われました食生活でございますが、私は、ちょっと手前みそになりますけれども、地産地消という言葉、それから旬産旬消という言葉を使い始めました。

 食べ物の二大原則は、そこでできたものをそこで食べる、そのときできたものをそのとき食べる。これは、今TPPの問題がありますけれども、私はあれは絶対反対でございまして、余計なことですけれども。輸送距離はなるべく少なくするというのが地球環境に優しい生き方になるんだろうと思います。ですから、そこの場でそのときできたものを食べるのが一番いい。これは健康にもいいわけですね。

 ですから、私は、日本農業の活性化のためには、地産地消というのが一つのキーワードだと思っております。

 農林水産省といたしましても、平成二十年度からですけれども、地産地消の仕事人というのを選定しております。今は既に百三十一人の方が地産地消の仕事人というふうに指名されておりまして、徳島県でも一人の方が、平成七年に、徳島県では初めてでございますけれども、直売所をつくられた方が仕事人に選ばれまして、あちこちに助言しておられます。

 そういったことがなぜ大事かというと、今おっしゃいましたけれども、地元のものを学校給食で使われると、子供たちは地元に対する愛着も生まれてきますよね。つくる人たちも、自分の子供や孫が食べるんだったら、もっとちゃんとしたものをつくらなければいけないというふうになって、それで地域が活性化するわけです。ですから、これは非常に私は大事なことじゃないかと思っております。

 ですから、こういったことも含めまして、六次産業化の中で、プロモーターというのを、アドバイザー、コーディネーターのような方もきちんと位置づけまして、地域全体で農業を守り立てるべく、二次産業、三次産業も含めて振興していく所存でございます。

仁木分科員 ありがとうございます。

 そういうことで、地域の地産地消をより進めるためにも、やはりその地域でつくったものが売れなければ、つまり消費されなければいけないという現実があると思います。

 例えば、篠原副大臣の、長野県の有名な野沢菜ですね。原材料の一部が、私の選挙区の石井町というところからも、つくられて行っているという現実があったりとか、あるいは奈良漬けで有名な漬物の原材料がそういった地域でもつくられているという現実も国内でも起こっております。

 そういうことで、ある種そういう、今、野沢菜とか奈良漬けの話をしましたけれども、ブランド化されているようなものはいいんですけれども、いかにその地域であるもの、本当はそういうすばらしい素材になっている農産物なんだけれども、やはり何か付加価値をつけていく過程がしっかりと、あるいはそういったプロの方、あるいは専門の方が参画していないがために、そういうブランド化ができていないものもたくさんあると思うんですね。その結果、売れなくて、そこで衰退していっちゃっている、担い手がいなくなっている、そういう現実があると思います。

 そういうことで、付加価値の高い農産物を、あるいはそこの地域でつくっていくことに対して、かなりこれから力を入れていっていただきたいというのが私の主張でもございます。

 きょう、いろいろ述べてまいりましたけれども、医、食、農の連携というのは、やはり今まで各省庁縦割りでなされてきた経過があると思います。やはり、これはみんなつながっていると思うんですね。冒頭に言った健康と食生活の関係。では、食生活のもととなるのは、やはり農業、あるいは農林水産省的な分野の方々がつくられて、提供される。そういった方々もやはり、川下の消費が伸びなければ成り立たないという、もうみんなこれはつながっているわけでございます。

 冒頭に申しましたように、やはり国民が健康でいる、これも重要だと思います。そういうことで健康な国民をつくる、それは、医、食、農、これが連携してこそ成り立つ、そういうふうな形に私は思っております。

 そういうことで、これは最後の提言なんですけれども、こういったことをより強力に推し進めるために、具体的には、農林水産省、厚生労働省、そして文部科学省の三省、あるいは内閣府も絡んでいいんですけれども、そういったことの何か共同体みたいな、プロジェクトチームみたいなものがつくれないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

篠原副大臣 その点についてはもう手を打ってあるというか、そういう動きはもう既に始めております。昨年の十二月ですけれども、農林水産大臣を本部長としまして、食に関する将来ビジョンというのをつくりまして、医療、介護、福祉と食、農の連携の推進を大きな柱として位置づけたところでございます。

 せっかくの機会ですので、仁木さんはお医者さんでもありますし、一つ見逃されている観点、医と食と農にですね、ちょっと申し上げたいと思います。

 農業の多面的機能というのがよく言われます。それは、自然環境を守っているという、水源林がどうこうとか言われますけれども、私は、農業をやること自体が非常に健康に役立っていると思っています。

 ちょっとこれもまた手前みそになるんですが、長野県は長寿県です。なぜ長寿かというと、若月俊一さんという農村医学の大家がおられたりというのもありますし、空気がいいし水がいいしというのがあるのかもしれませんけれども、六十五歳以上の高齢者の就業率が断トツトップで二九%なんです。どういう職業に従事されているかというと、農業なんです。手間のかかる野菜や果樹ですね。働いているから、生きがいがあって長生きできるということなんです。これは、私は、自然環境の維持というようなものの多面的機能に加えられるべき農業の多面的機能だと思っております。

 ですから、お年寄りが安心して農業ができるようにと、よく徳島県の上勝町が出ます、葉っぱビジネスの。あれが象徴的ですけれども、七十歳、八十歳のおばあさんでも、おじいさんでもできる。こういったことにバックアップするのが、医療、介護の支出を少なくするもとにもなるんじゃないかと思っております。

 そういう観点からのアプローチも私は必要なんじゃないかと思っておりまして、まだそこまで議論が進んでおりませんけれども、TPPをきっかけとしてできました食と農林漁業の再生推進本部、官邸にございますけれども、こういったことも議論して、農林水産業の活性化の新たな理由として位置づけてまいりたいと思っております。

仁木分科員 ありがとうございます。

 まさに緑に接していると心がいやされたりとか、ストレスがたまりがちな都会の労働者がよく出されますけれども、やはり、今、篠原副大臣がおっしゃったようなことは私も同感です。

 そういうことで、農業をできる場、そしてまたそれが業として成り立つということは、やはりこれは現実問題として基本だと思っております。

 そういうことで、きょう、医、食、農の連携を通じていろいろ御提言をさせていただきましたけれども、このことが形になって、そしてまた政権交代してよかったと思えるような状況をつくっていきたいと思いますし、また、そのことを、きょうおっしゃっていただいたことがより一日も早く形になることを御祈念申し上げまして、私、仁木博文の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

高井主査 これにて仁木博文君の質疑は終了いたしました。

 次に、中谷元君。

中谷分科員 自由民主党の中谷元でございます。

 厳しい現状にあります日本の山村、林業の現状等につきまして伺いたいと思います。

 まず、最近、中国人などが日本の山林または水源林を買い占めているのではないかというような報道がありまして、林野庁がその実態を調査したということでございますが、その結果どうであったのか、また、今回どのような方法で調査をしたのか、伺います。

鹿野国務大臣 昨年の十二月に、平成十八年から二十一年の間、四年間でございますけれども、森林買収の実態として、全国で三十件、五百七十四ヘクタールの事例がある、この旨を公表したところでございます。

 この調査方法でございますけれども、国土交通省と連携をいたしまして、都道府県の土地対策担当部局が保有をする国土利用計画法に基づく森林売買に関する届け出のうち、居住地が海外にある法人及び個人により森林が買収された事例については、都道府県を通じて全国調査を実施して把握したものでございます。

中谷分科員 この調査は、国土利用計画法に基づく一定面積以上の売買ということで、一ヘクタールなんですね。つまり、一ヘクタール以下の取引は把握されておりません。

 今の今、日本の林業家の五八%が一ヘクタール以下の所有者ですし、七五%が五ヘクタール以下の零細経営者です。つまり、国土利用計画だけでは把握できないわけでありまして、問題は、日本の土地の所有移転、特に、山林に関する管理が実に今いいかげんな状態であるというふうに思います。

 この土地の所有につきましては、山林登記がありまして、これは、法務省の不動産登記簿、そして、林野庁の方も一応森林簿というものを県や市町村がつくっています。また、総務省においては、固定資産税を取らなきゃいけませんので、これの地価公示、評価基準額のまとめなどもありますが、まさに縦割りで非常に複雑でありまして、特に、県や市町村のつくっている森林簿などは、情報が古くて、境界や所有もあいまいなままです。相続などは登記する必要がないので、子供の所有に移転されているかどうかさえあいまいなままでありまして、今後、経営計画や地域広域計画を作成するためにも、正確な森林簿の作成というのが必要になってまいります。

 そのため、すべての森林所有を把握するために、売買したら事前でも事後でも、それは議論の末ですが、市町村に届け出をする、そのための法律整備が必要であると考えますが、この点いかがですか。

鹿野国務大臣 前段の先生から御指摘の一ヘクタール以上の売買の届け出以外に、ここが非常に大きなシェアを占めるんじゃないか、これをどうやって把握していくかということを考えたときには、こういう御指摘がありましたが、この一ヘクタール以上の売買の届け出以外に、従来より、都道府県あるいは市町村や森林組合等に対して、地元のつながりの中で得た森林所有者の異動情報を提供していただくように要請をいたしておりまして、そういう中で把握をしてきているところであります。

 そしてまた、登記簿情報や地籍調査の情報にも森林所有者情報が含まれておりまして、これらを活用していくというものも可能であるのではないか、こんなふうに思っております。

 これらの情報を十分に活用すれば、一ヘクタール未満の森林所有者情報の把握が、相当程度ということになりますけれども、可能ではないかと考えておりまして、今後とも、関係省庁と連携をして森林所有者の把握に努めていきたいと思っておるところでございます。

中谷分科員 私の父も山林を持っていますが、実際、私は一体どこに父の山林があるかわかりません。こういう事情は多いと思うんですね。

 実に私有林の二四%が不在村林です。その地元に人がおりません。そして、所有者の同意の取りつけには時間がかかり、今後、林業を集約化、路網を整備するに当たっても、これを把握しておくということは大変重要なものでありまして、きちんと市町村に届け出を行ってしっかり確定をさせておくことが、地域森林計画をつくる、今度、フォレスターとかプランナーがこういった計画をつくらないと補助金がおりなくなってしまいますけれども、特に重要であります。

 そこで伺います。大臣は農業の専門家ですが、農地には農地法があって、農業委員会があって、売買とか開発につきましては、常にそこに届け出、許可を申請して、市町村もしっかりと管理されています。しかし、林野には林地法というのがないために実にいいかげんな管理のもとに置かれておりますが、今後、森林再生プランの柱である計画作成等をしっかりさせるためにも、その根拠となる林地法をつくってしっかりと管理をする必要性があると思いますが、この点、大臣、いかがお考えでしょうか。

鹿野国務大臣 今御指摘いただきました、しっかりと把握をしていく必要があるのではないか、こういうようなことでございます。

 重ねて申し上げますけれども、市町村や森林組合、あるいはそういう方々と地元のつながりというふうな中で得た情報や、あるいは登記簿情報というふうなことを利用できるところ、そういうものの中で、これらを所管する関係省庁と連携を図りながら森林の売買を把握して、あるいは所有者情報を森林簿に反映していくという、こういう取り組みを今いたしておるところでございまして、これから法律で森林の売買の届け出制度を創設するとかというようなことは、既に国土利用計画法に基づく届け出制度やあるいは登記情報がある中で新たな義務というものを国民に課すということを考えた場合に、慎重な検討が必要ではないか、こんなふうに考えておるところでございます。

中谷分科員 非常に心もとない答弁であります。地元とのつながりと言いますが、現に四分の一の人はそこに住んでいないんですよ。しかも、あと十年、二十年しますと、所有を知っている人が死んでしまいます。地縁情報も得られなくなります。そして、町役場に一体何人の人がいると思いますか。そういった情報を得るというのには、一日がかりの仕事で、完全に把握されていないというのが実態でありまして、やはりこれは、申告制、届け出制にしてきちんと管理をする必要があります。

 そこで、民間の立場から言いますと、今度の改正で、経営計画を立てなければ補助金が得られないとなりますが、民間の林業会社がそういう地域計画を立てたいときに必要なのが、この森林簿というか、土地所有などの林業に対する情報です。しかしながら、この計画を立てたいときに、市町村に対してこの情報を教えてくれと言っても、教えてくれない自治体がまだあります。林野庁は、こういった情報は努めて開示せよというふうに指導をしているようなんですけれども、開示の権限は自治体が有しておりまして、これでは民間人が林業経営計画を立てることが非常に難しくなります。

 したがって、林業の情報開示、これが徹底されますように、法律で記して定める必要があるのではないか。情報公開という壁に阻まれていますので、この点は法律でしっかり情報公開できるというような改正が必要だと思いますが、この点いかがでしょうか。

鹿野国務大臣 今、先生からの御指摘の森林簿に記載されているところの所有者情報等は、個人情報保護法の対象となりまして、その開示は各地方公共団体の条例に基づき対応するということとされておりまして、現在、森林簿の開示は、森林組合に対しては四十二都道府県で実施しております。林業事業体に対しましては、森林所有者と長期施業受委託契約の締結や、林業労働力の確保の促進に関する法律に規定されておる認定事業主であることを要件といたしまして、二十九道県において実施されております。

 このようなことの中で、森林施業の集約化を進めていくために森林情報というものを今先生からおっしゃったとおりに活用することは非常に重要だと認識しておりまして、昨年の二十二年の九月十日に閣議決定された新成長戦略実現に向けた三段構えの経済対策等に基づきまして、意欲や能力のある森林組合や林業事業体に対して森林簿などの森林関連情報が開示されるよう、事例を示しながら、都道府県に対して助言を行う、こういうことを始めているところでございます。

 さらに、森林・林業再生プランに基づき、森林経営計画を作成しようとする意欲と能力のある者に対して、集約化に必要な情報の提供等を促すよう措置することをも検討いたしておるところでございます。

中谷分科員 先ほども申し上げましたとおり、日本の五八%が一ヘクタール以下の零細業者で、一人、二人がチェーンソーを持って自分の所有の山を手入れしております。しかし、今後は、こういった作業道とか経営計画を立ててみんなと一緒じゃないとその補助金がもらえなくなってくるわけですから、やはりそういった情報開示ということもできるように、あわせてお願いしたい。

 また、地籍調査もよく言われますが、実施済みは四一%です。五九%がまだ地籍調査を行っていないんですね。すなわち、境界の確定とか、所有権だとか、不在地主とか、そういった森林情報すら市町村が明確に把握をしていない状態でありますが、この地籍調査も、総務省とか国交省とか林野庁とか、縦割りの弊害があるために責任を持って進められていないというのが現状でございます。

 したがいまして、大臣も総務大臣を経験されておられるかもしれませんが、あのゼンリン社の地図のように、もう民間に開示して、ここはだれの土地であるということをだれもがアクセスできるような状態になりますように、この地籍調査、これを進める必要があろうかと思いますが、農林省、いかにしてこの地籍調査を急速に進めるつもりですか。

鹿野国務大臣 今、先生の方から、地籍調査は四一%ということで進んでおらないんじゃないか、こういうようなことでございますけれども、まさしく、これから森林施業の集約化やあるいは路網整備というふうなものをやっていく場合に、どうしても森林整備のためには森林境界の明確化というものが必要になってくるわけでありまして、非常に重要なことでございます。

 そのようなことから、平成二十三年度から、森林管理・環境保全直接支払い制度のソフト対策といたしまして、境界の確認も含めた施業集約化に不可欠な活動に対する支援を行うというようなことも考えておるところでございます。

 今後、国土交通省が推進するところの地籍調査や、その前段階の山村境界基本調査といった国土調査事業との連携も重要、このようなことで、市町村の林務担当から地籍調査担当に森林に関する情報を提供するなどの取り組みというものを充実させていきたいと思っておるところでございます。

中谷分科員 しかし、今も四一%ということで一向に進んでいないんですが、やはり、おしりを決めて、いつまでにやれと。今、地上デジタルやっていますが、国民がことしからテレビを見られないとなりますと、テレビを買いかえたり対応します。ですから、この地籍調査も、二〇一五年までにきちんと自己申告してください、それ以降は権利については主張できませんよとか、やはり、いつまでに終えるという最終年次を決めてそれなりのことをしない限り進みませんので、ぜひそのような対応等も検討していただきたいと思います。

 次に、森林・林業再生プラン、これについて伺います。

 これの目玉は、要するに、作業道と高性能機械を導入して効率化した間伐作業等を実施していくということでありまして、私も、地元にドイツ、オーストリアの機械がやってきたということで、せんだって視察してまいりました。非常に高性能で、さすがに効率がよくなったんですが、問題は、作業道の路網と高性能機械、これがセットじゃないとなかなか実現しづらい。両方実現しないといけないということでございます。

 そこで、二十三年度の予算を見ますと、もう早々と高性能機械の補助金が非常に減額になっていまして、むしろ、全国で何カ所も購入させていたのが購入のための金利の補助に置きかわっております。この機械は本当に何千万もするような高額機械でございますが、自己資金で購入となりますと、幾ら金利の補助を受けても、採算ベースに乗りませんので、こういった機械が購入できないということでございます。

 なぜ機械が高いか。これは防衛装備と一緒です。汎用性がないので、特定のメーカーが受注をしてつくり続ける。ほかが乗ってこないので、なかなか価格競争ができないので日本のメーカーもほとんどこれに手を出さずに、ドイツとかオーストリア、こういったところから買わざるを得ませんが、もっとリーズナブルな単価で購入できるまで、まず機械の研究もやっていただきたいし、機械の購入の補助、これも続けていただきたい。

 そして、直接支払い制度、これには間伐、作業道の補助についてしか内容が入っておりません。この機械の購入等も直接支払い制度に乗せていただきたいと思っておりますが、この点いかが考えていただけますでしょうか。

鹿野国務大臣 今御指摘の、補助事業にかえて林業者に対する利子助成というものを新たに措置いたしまして、高性能林業機械の導入にかかわる融資というものを平成二十三年度では充実したところでございます。

 また、高性能林業機械の導入支援も可能な、平成二十一年度補正予算で都道府県に造成した森林整備加速化・林業再生基金においては、平成二十三年度分といたしまして約四百二十億の国費が計上されているところでございます。さらに、二十二年度におきましては、高性能林業機械の導入支援も含む予備費六十一億円を同基金に積み増したところでございます。

 今後、二十四年度以降というふうなことについては、森林・林業関係予算について、本年の六月を目途に、六月から七月ということを目途になりますけれども、森林・林業基本計画等の改定も予定いたしておりますので、これらを踏まえて検討してまいりたいと思っておるところでございます。

中谷分科員 大臣に伺いたいんですが、では来年度、一体幾つの企業体がこの高性能の機械を買うことができるんでしょうか。相当高いんですよ、これ。したがって、路網整備をつくれとかいうんじゃなくて、こういった機械もセットでやらないとこういった構想は実現できないと思いますが、お答えは結構ですが、少しでも多くの林業体が購入できるようにしていただきたいと思いますが、数字はわかりますか。わからないですか。ではいいです。

 では次に、森林組合の改革について伺います。

 今、組合改革の論点で大きくなっているのは、員外利用、これが強く制限をされていることなどが挙げられておりますけれども、森林組合の改革、これは、国有林が直接作業班を持たないように極めてかなりリストラをして民間に振ってきたということで、その作業の受け皿として森林組合を当てにしたことから、現在、国有林や公社、公団についても、員外にも員内にも当たらない特殊な状態で作業を委託しております。

 事実、この仕事が森林組合のメーンになって収益を上げているところも少なくないんですけれども、こうした中で、組合員中心の業務に急に切りかえるというのには少し時間がかかると考えます。急速な転換ではなくて、例えば、五年間に何%減らしますといった目標を持った緩やかな転換が必要になってくると思いますが、この点につきまして、今後の改革の取り組み方、また、急激な改革、変化をするなら人件費的な公的な助成も必要になってこようと思いますが、この点の進め方についていかがお考えですか。

鹿野国務大臣 その前に、先生、高性能林業機械の導入台数でありますけれども、平成二十三年度は百九十四、こういうふうな数字でございます。

 また、今、森林組合のこれからの改革というふうなことについていろいろお考えが示されたわけでありますけれども、森林組合はもちろんのこと、森林整備の中核的な担い手である、こういうようなことでございます。

 組合員のための業務を優先したりあるいは員外利用の厳格化など森林組合改革の取り組みについては、都道府県や森林組合系統とも連携というものを図りながら、現場の実態、何でもかんでもやるというようなわけではない、いわゆる現場の実態というものを踏まえて対応をしていかなきゃならない、こういうふうに考えておるところでございます。

中谷分科員 次に、十年後に自給率を五〇%にするという目標について伺いますが、現在検討されている間伐補助金制度では、間伐をして出荷をした数量によって補助金が増加するようにできております。このことによって、間伐面積は今までと同じでも、材の出荷量、これは増加するという仕組みなんですけれども、出荷数量が増加をしますと、当然のことと言えますが、その販路、すなわち市場を拡大させておかないとだぶつきますので、木材価格の下落、これを招いてしまいます。

 この販路の現状について、住宅着工量というのがありまして、平成十八年は百三十万戸ありました。ところが、平成二十一年、おととしですが、三年後には八十万戸に下落をしておりまして、わずか三年で五十万戸減少しています、三分の二になっています。しかも、木造住宅はこの一年で十万戸減少して、五十二万戸から四十三万戸に減っております。つまり、販路というのは、この木造建築に関しては二〇%減っているわけですね。

 では、五〇%ということでこれからさらに集成材とかB材がどんどん市場に出たら、この価格の下落がますます落ちてしまう。そうすると、無垢材という、本来、生木のすばらしい木さえ売れなくなって林業家はますます困ってしまうような状況になってくるわけでありますが、こういったことに対してどう対策を講じながら五〇%を目指していくのか。より一層の市場の拡大とか消費増加策を当然考えておられますが、簡単にその五〇%ということを数字だけ挙げているのじゃないかなと思いますが、この点、林野庁、農林省、いかがお考えですか。

鹿野国務大臣 目標である十年後の木材自給率五〇%、こういうふうなことを達成するためには、搬出間伐の推進による木材供給量の増加に対応していかなきゃならない。こういうことから、公共建築物の木材利用促進法をしっかりと推進していく、あるいは、石炭火力発電所におけるところの間伐材等の利用を初め木質バイオマスの利用を拡大していく、あるいは、木製ガードレールを初め工作物への木材利用などの新たな木材需要の開拓をしていく、このようなこと等々で国産材の実需を拡大していかなきゃならないと思っております。

 なお、間伐材の需要先といたしましては、近年の技術開発によりまして、合板への利用も急速に拡大をいたしておるわけであります。

 このような国産材の需要拡大に向けて、二十二年度の補正予算あるいは二十三年度予算案におきましても、原木の安定供給を図り、木材産業を活性化させるとともに、木造公共建築物への地域材の利用拡大に向けて取り組みを支援するための地域材供給倍増事業、あるいはまた、地方公共団体や民間事業者によるところの木造公共建築物の施設整備を支援するための森林・林業・木材産業づくり交付金というふうなものを計上いたしておるところでございます。

 このほかに、公共建築物木材利用促進法の実効性を高めるために、都道府県や市町村における方針の作成というものに働きかけを行う、あるいは、国土交通省と連携した住宅、建築物への地域材の利用促進のための関係者への情報発信など、こういうところに重点的にまた取り組んでまいりたいと思っております。

中谷分科員 もう一点、地方はこういった森林プランというのは評価していますが、結局、予算の減額で、こういうものに乗せられた後、本当に最後まで大丈夫かということを心配しております。

 例えば、高知県で二つ心配事がありまして、一つは、大型の製材工場、これにつきましては、誘致をしたり県内の中小の製材工場を共同化させて加工体制の整備に取り組んでいますが、国の支援事業が、今までの補助金から融資、これに大幅に切りかえられました。融資では、現在の地元の製材業の体力、経営状態から、もうこれ以上金を借りられないんですね。したがって、融資といっても活用できずに、みんなうつむいたまま展望が開けないということであります。

 これまでは、通常予算に森林整備加速化・林業再生基金事業などがありまして、これは、フル活用でいろいろなことに使えました。しかし、この基金は二十三年度に終了します。御承知のとおり、森林整備もこの基金で何とか目標を達成しておりますが、来年、全く展望が見えません。さらに、バイオマス、これも非常に今までは力を入れてくれておりましたけれども、このための国の支援、これも継続をしていただきたい。

 そして、そのバイオマスにつきましては、電力会社との協力で、電力の買い入れの単価の調整、これは、木材単価の調整で電力の買い入れをやるとか、実質的な価格調整機能を国と電力会社とで持っていただきたいと思っておりますが、こういった財政の面の裏づけ、特に、林業再生基金が今まであって温暖化対策も達成してきたんですが、本体予算がもう減っていますので、補正予算でもつけてもらわない限り、事業量が続いていきません。

 やはりこれ、二、三年の基金をつくって林業のために使えるような仕組みが必要だと思いますが、こういう点は検討されませんでしょうか。

鹿野国務大臣 今お話しのとおりに、バイオマス利活用の施設の整備とかあるいは木材加工施設、こういうことにつきましては、平成二十三年度までは森林整備加速化・林業再生基金の活用が可能だ、こういうふうなことでありますが、また、平成二十三年度予算案では、公共建築物等の木材利用促進法による需要拡大などを進めるとともに、木材加工施設等の整備については融資を中心とした支援を実施する、確かにそのとおりでございます。

 そこで、今後どうなっていくのかということでございますけれども、木材加工施設等の整備というものは今後とも大変重要な課題である、こういうふうな認識をいたしておりまして、森林整備加速化・林業再生基金の取り扱いも含めまして、平成二十四年度以降の森林・林業関係予算については、本年の六月から七月を目途に改定予定をいたしております森林・林業基本計画等も踏まえて検討してまいりたいと思います。

中谷分科員 ぜひ、この財源の確保というのは大変必要なことでありますので、その仕組みをつくっていただきたいと思います。

 そこで、樋高環境大臣政務官、きょうわざわざ来ていただいておりますが、林業関係者から見ますと、環境省に裏切られたという気持ちが高いです。というのは、この五年間、十年間、環境省と林野庁は一緒になって、環境税をつくろうじゃないか、地球温暖化対策税をつくろうじゃないかということで、協議会もつくって一生懸命やってきました。同じ汗をかいて涙をかいて、ともに戦友だと思っていました。

 ところが、本年の税制改正でガソリン税を温暖化課税としたんですが、その用途が森林整備に使われない内容で、吸収源対策においては、環境省としてはこの森林整備や吸収源の分野において一体何を考えているのかという気がいたします。

 したがって、森林環境税と我々は称していますが、環境を守るための森林整備のための財源、このために環境税を当然つくって使うべきだと思いますが、この用途に、森林整備、これを含めないのか、そして森林整備のための環境税というものは環境省はいかに考えておられるのか、この点について伺いたいと思います。

樋高大臣政務官 お答えをさせていただきます。

 今先生がおっしゃいました地球温暖化対策の税につきましては、これはエネルギー使用者に御負担をいただく税でございまして、その使途につきましても、受益と負担の関係が明確であり、相当のまとまったニーズがあるエネルギー起源CO2排出抑制対策に限定をするということで国民、納税者の理解を得やすいと考えたところでございます。

 一方で、先生御指摘の森林吸収源対策も重要な施策であるというふうにまず認識をしていることを御理解をいただきたいと思っております。

 したがいまして、環境省といたしましては、ガソリン税に係る当分の間の税率につきましては、現行負担水準を維持することを提案し、その税収は、一般財源としつつも、一方で、森林吸収源対策を初めとする地球温暖化対策の歳出、減税に優先的に充てることを要望してきたところでございます。

 昨年十二月十六日に決定をいたしました税制改正大綱におきましては、当分の間の税率の水準は平成二十三年度においては維持することとされた一方で、森林吸収源対策を含めた諸施策の着実な推進に資するように国全体としての財源確保を検討することとされているわけでございます。

 引き続きまして、関係各省と連携をし、森林吸収源対策を含む地球温暖化対策の推進に、今、中谷先生の御指摘を踏まえさせていただいてしっかりと努めてまいりたいと思います。ありがとうございます。

中谷分科員 本当に残念な答弁で、戦友というか、突然話もなくなったし、方針も向こうを向いてしまって、本当に林野においての環境省に対する考え方が変わってしまいました。

 環境といったら、やはり森林整備というのは大事な部分があって、環境省自身がそう考えてくれないと森林整備が進みません。永田町の世界で、理屈は後から貨車でやってくると言われますけれども、まさに、そういった理屈を考えて政策を考案するのが我々議員の姿であって、都市偏重の世の中ではなくて、やはり地方を大事にしていかないと日本もおかしな結果になってしまいますし、地方こそ環境を担うかけがえのない価値を持ったところでありますので、ぜひ、環境省自身が森林環境税創設のために一肌も二肌も脱ぐような理論を考えるとなってほしいんですが、最後にもう一度、このことについてのお考えを伺います。

樋高大臣政務官 今、中谷先生からの発言をしっかりと私の方でも受けとめさせていただいて、誠実に努力をしてまいりたいというふうに思っております。

中谷分科員 では農林大臣、林野責任者といたしまして、森林整備に関する環境税についての所信を伺います。

鹿野国務大臣 農林水産省としまして、平成二十三年度税制改正においても、いわゆる環境税というふうなものを創設した上で、税収の使途に森林吸収源対策等を位置づける必要があるということを強く要望してまいりましたが、結論といたしましては、今、政務官からお話しのとおりに、国全体として今後財源確保を引き続き検討する、こういうことでございますので、森林吸収源対策等に必要な財源が確保されるよう、引き続き私どもといたしましても努力をしてまいりたいと思っております。

中谷分科員 財源がなければどんなにいいプランも実現できないことでありますので、ぜひそのことをお願いいたしまして、質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

高井主査 これにて中谷元君の質疑は終了いたしました。

 次に、木村太郎君。

木村(太)分科員 大臣初め皆さん、おはようございます。きょうは分科会ということで、朝早くから、大臣初め皆さん、本当に御苦労さまです。心から敬意を表したいと思います。

 では、早速、質問に入らせていただきたいと思います。

 農林水産大臣として、TPPに対するきょう現在の対応姿勢というのをどう考えておられるのか、お聞かせください。

鹿野国務大臣 このTPPという協定でございますけれども、これにつきましては、昨年の臨時国会の所信表明におきまして総理大臣から、TPPに対する参加を検討、こういうふうなことが打ち出されたわけであります。

 それを受けまして、今このTPPというのはどういう交渉になっているのか、その中身等々も含めて、判断する上においてしっかりと情報を収集しなきゃならない、このようなことから、今、情報収集のための協議というふうなものがなされているわけであります。

 農林水産省にとっても非常に関心を持っておるこのTPPでございますけれども、しっかりとした情報というふうなものを把握して、そして判断をしていかなければならない。また同時に、これは二十四分野というふうなことにわたって、参加表明をしている九カ国が交渉をしておる、いろいろな話し合いがなされておる、こういうことでございますので、そういうものも、どういう中身かというふうなものも、当然のことながら農林水産関係以外の分野も含まれるわけでありますので、国民の人たちに対してできるだけの情報を提供しながら議論をしてもらい、判断をしていかなきゃならないことではないか、こんな認識を持っているところでございます。

木村(太)分科員 そうしますと、情報収集に今努めていると。今現在、農林水産省あるいは大臣として、賛成だ反対だという考えは毛頭ない、あるいは、どちらかというと反対の思いが強いとか、全くないわけですね。まだ情報収集をしている最中だ、こういうことでいいですか。

鹿野国務大臣 菅内閣といたしまして、六月をめどに交渉に参加するかどうかを決める、内閣としてそういうような方針を決めておりますので、今私が菅内閣の一員として、どうこうというふうなこと、私自身の考え方というふうなものを出していくのはやはり控えなきゃならない。やはり判断をする場合は、私は私なりにしっかりとした情報を把握して、そして、国民の人たちがどう考えているかということも踏まえて判断をしていかなきゃならないことじゃないかなと。重要であればあるほど、そういうことについてしっかりと踏まえていかなきゃならない、こういう考え方であります。

木村(太)分科員 大事なことですのでもう一度聞きますが、そうしますと、菅内閣としてもちろん判断するんでしょうが、あくまでも内閣の判断にゆだねる、あるいは、その前に農林水産省あるいは農林水産大臣としてはオリジナルな判断をして、そして内閣の判断を求める、こういう考え方ですか。どちらなんですか。

鹿野国務大臣 木村議員も議員としてこれまで活躍しておりますからその点はおわかりになるでしょうけれども、当然、これから情報を収集して、TPPについてどうなのか、どうするのかというふうなことはそれぞれ閣僚委員会においても議論をされていくわけでありますから、そういう中で、いずれ私自身としての考え方というものを申し上げるような機会が来るものと思っております。

木村(太)分科員 私もそうした方がいいと思います。内閣として最終的な判断の場面はあると思いますが、やはり農林水産省そして大臣としての意思表示というのははっきり示す必要がその時点で必要だ、私はこう思っておりますので、今の答弁のように対応していただきたいと思います。

 では、そのTPPに関して、当初、農林水産省あるいは内閣府、経産省、三つの役所から、行政府から、TPPに参加した場合あるいは参加しない場合の試算というものを、具体的な金額を提示したわけであります。

 私だけではなくて、国会議員あるいは国民の皆様も、一つの政府なのに、その一つの政府から三つの試算が出てくること自体何なのかな、三つの試算があってそれをもとに議論をすることさえも実はこれは大変不自然なことではないかなというふうに皆さん思ったと思うんですね。

 お尋ねしたいんですが、農林水産省が出した試算と他の二つの試算と比較した場合、最大どのぐらいの開きがあるのか、お聞かせください。

鹿野国務大臣 どのくらいの差があるかというのは、試算の出し方がいろいろ違いますので、今この時点で申し上げることができますことは、いわば内閣府が出した試算の主なるところは、TPP参加の場合は全体で実質GDPは二・四兆から三・二兆円増加する、こういうふうなところが主なる分析だと思います。

 農林水産省の試算といたしましては、今の国境措置のまま、何もそれ以外の、いわゆる国内対策をやらない、何もしないということを前提として関税が撤廃されたというようなことを前提として、農林水産業の生産額が四・五兆円減少する。

 そして、もう一つ、経済産業省の方から出された試算としては、日本がTPPあるいはEUなり中国なりとEPAを締結せず、韓国が対米国、中国あるいはその他と締結をした場合、基幹産業では実質GDPは十・五兆円ほど減少する、こういうような試算を出しておる。これが違いだと思います。

木村(太)分科員 今の答弁のことは私も知っているんですよ。だから、最大何兆円開きがあるのかということを私は聞いているわけです。

鹿野国務大臣 何兆円というのは、いわゆる生産、例えば、農林省が出した試算は、生産額で四兆五千億減少します、こういうふうなことでございます。そしてまた、経産省が出した数字は、基幹産業では、締結をしないというふうな場合は実質GDPで十・五兆円減少する、こういうふうなことでありますから、その前提が、全く数字の前提が違いますので、一概に数字の比較だけでというふうなことにはいかないというところは御理解いただきたいと思います。

木村(太)分科員 そのとおりなんですよ。試算の仕方にも違いがあるんですね、最初から。そうすると、我々議論もできないでしょう、普通に考えますと。

 だから、農林水産大臣として、あるいは先ほど御答弁にあった内閣の一員として、内閣として、民主党菅政権として、試算を一本化する、もちろんその一本化するための試算の仕方も一本化して打ち出すということが必要だと思いませんか。また、それを、閣内の一員として、他の役所に、あるいは総理に対しても、一本化をきちっと図った試算を出すべきだというリーダーシップを、農林水産大臣は、第一次産業者の皆さんのためにもリーダーシップを発揮するという思いはありませんか。

鹿野国務大臣 今、交渉というものの中身がどうなるか、こういうふうなことから情報の収集をして、そしてどういうことになるかということを当然分析していかなきゃならないところであります。

 そういう中で、その情報がなぜ必要かというようなことは、一つの例を申し上げますと、いわゆるアメリカと韓国のFTAというものにおいては、米が除外品目になっているということでありまして、それがTPPというふうなことになった場合に除外品目というのがあり得るのかどうか、こういうようなことについてどうなのかということをしっかりと把握しなきゃならない。そうでなければ、この試算も、数字の出し方も違ってくるというふうなことでありますから、これからはやはり情報をしっかりと吸収して、そしてそれぞれ、農林水産省関係だけじゃなしに、二十四の分野というふうなものにおいていろいろの話し合いがなされているということも聞いておるところでございますので、そういうところを、各省、関係省庁が、メリット、デメリットというふうなものを分析していくというようなことも必要である、こんなふうに考えておるところでございます。

木村(太)分科員 その答弁のとおり作業をされて、その上で、政府として試算を一つにまとめる、試算はこの一つしかありませんというのが当然ではないでしょうかということを聞いているんです。

鹿野国務大臣 そういう分析がなされていくというようなことになってくれば、ああ、こういうふうなことなんだな、影響はこういうことなんだなというふうなことで、当然そういう方向に進んでいくもの、こう思っております。

木村(太)分科員 ありがとうございました。

 今の答弁ですと、必ずある時点で試算が一つになるというふうに私は理解をさせていただきました。

 では、次にお聞きしますが、これは大臣というよりも、民主党の大臣としてということでもお答えいただきたいんですが、実は、私の地元紙に、民主党の青森県連の代表が、もしTPPへの参加を決めた場合に、離党も真剣に考えるということが大きく報道されたんですよ。

 大臣、この姿勢をどう思いますか。

鹿野国務大臣 その前に、今、木村先生が、試算が一本化されていく、こういうふうなものだと、こういうふうな断定的な言葉を言われましたけれども、私どもとすれば、あくまでも、そういうふうな一つの考え方というものをまとめていく場合は、それぞれの試算なりというふうなものの影響というふうなものをどうとらえていくかというふうなことの中でまとめていく方向に向かっていかなきゃならないんじゃないかなということだけ、そういうことでありますということを申し上げたいと思います。

 なお、今青森県の県連会長のことに触れられました。これについては、相当、議員としても、基本的な考え方というふうなものを述べられたわけでありますけれども、今、党内でもいろいろと、当然政府においても、情報収集をしながらこれからも議論をしていくということになるわけでありますので、党内でも、当然のことながら、並行して、このTPPについてどう対応するかということが議論されていくわけでありますので、青森県の会長として、議員として、一つのそういう意思を表明されたのではないかな、こんなふうに私はとらえているところでございます。

木村(太)分科員 私ごとですが、私は今、党の県連の会長をやっておりまして、年末の、十二月県議会で、私は県連の政調会長に指示しまして、県議会でも意思表示すべきだということで、自民党県議会会派が主導権を持ちまして、TPPへの反対の旨の意見書の採択をしたんですよ。そのとき、民主党県連の県会議員の皆さんは賛同しなかったんです。それで、県議会を閉じたら、何か民主党県連の会議をしまして、青森県連民主党としては反対しましょうということを言っているんですよ。こういう姿勢が、私は政治家として大変理解に苦しむんですが、そして年明けて、その県連の民主党の代表さんが、個人的にも、参加を決めたら離党も真剣に考えていくというようなことを言っているんですね。

 だから、私は、今ちょうど県議会が始まりますので、もう一回、県議会でTPP反対の旨の意見書を採択するように指示しているんですよ。だから、今回、その民主党の県会議員の皆さんが、県議会会派がどうするのか。そこでまた意思表示されると思うんですが、ただ、何か、これは私の地元の例ですが、多分に、他の地域、あるいは他の県でもそういう似たような動きがあるんだと思うんですよ。民主党菅政権のTPPに対する対応と地方の民主党の支持者の皆さんの対応が違ってきている、そういうこと自体も、国全体に対し、国民の皆さん全体に対しても、責任のある姿勢とは私は理解できないんですね。

 ですので、先ほど何回も聞きましたが、しっかりと情報提供、あるいは試算の一本化ということを示していくことがまことに求められているというふうに私は指摘をしておきたいと思います。

 では次に、米のことに関して質問させていただきます。

 先般、農林水産省は、戸別所得補償制度における、いわゆる変動部分の交付金を、十アール一万五千円ということを確定させたわけであります。当初、農林水産省は一万二千円前後というのを想定していて予算化していたわけですよね。そうしますと、三千円の開きがここにある。つまりは、三千円分、私はかなり大きい額だと思うんですよ、一万二千円の想定に対して一万五千円ということになりましたから。だから、それだけ、当初から皆さんの対応がまずかったというふうに理解しております。

 もっと具体的に言いますと、戸別所得補償制度、この制度そのものが、需給バランスだけではなくて、この制度そのものが米価の下落の大きな要因の一つになったということを、一万五千円と決定したことが、ある面では証明しているというふうに私は理解するんですが、大臣はどう御認識されますか。

鹿野国務大臣 そこは予算委員会、あるいは農林水産委員会でも議論があったところでございますけれども、私自身は、そういう今の木村議員の認識とは違った認識を持っておるわけであります。

 すなわち、米価の下落というふうなことは、やはり需給ギャップがあるわけでございまして、そしてまた、国民生活におけるところの消費者の人たちの低価格志向というふうなものが反映したんではないか、こう思っております。

 そういう意味で、戸別所得補償のモデル事業に関しまして、生産数量目標に即して生産を行う者に対して、その所得を補償するという強力なメリット措置を講じて、需給調整への参加を誘導するということで需給を引き締めるものというふうなことでございまして、所得補償モデル事業が米価下落を招いているということにはならないんではないか、こういう認識でございます。

木村(太)分科員 私は需給ギャップも要因の一つだと思っています。それを否定しません。ただ、政権交代して戸別所得をやるということを皆さんが訴えて、そして政権交代になった。それで、二十一年産の米の値段の動きを見れば、一年間で見れば、少しはジグザグの折れ線グラフのように米の値段の推移というのがあるんですが、政権交代して戸別所得をこれからやりますと言った途端に、右肩下がりでずっと来ているんですよね。ですので、需給ギャップだけではない、戸別所得補償制度そのものが足を引っ張っているというふうに私は思うんです。

 そして、これはもう言わずと知れた、仮渡金でも三千円から四千円、相対でも二千五百円前後一気に値段が下がった。これは需給ギャップだけの要因ではないというふうに私は思っております。そこが、大臣と私どもとの認識の大きな違いであるというふうに今改めて確認させていただきました。

 ではお聞きしますが、その二十一年産の米の値段が下がり始めていきまして、昨年の八月の末の段階で、我が党はいわゆる過剰米対策、集荷円滑化対策事業を早期に発動して、米の値段の下落に歯どめをかけるべきだということを訴えたわけです。また、JAさんを初め、農業者団体も、早目の過剰米対策を実施していただきたいということを農林水産省に、政府にいろいろなところでお願いした。でも、我々から見ると迅速な対応になっておらず、ようやくつい最近の動きになってきている、こういうふうに思うわけであります。

 だから、もし早目早目の、我々や農業者団体が指摘をし、お願いした時点で対応していれば、ここまで米の値段が下がらないで、そして、先ほどの変動部分も、一万五千円まで出さなくても、一万三千円で踏みとどまったかもしれないと私は思うんですが、大臣はどう認識されますか。

鹿野国務大臣 御党からも、またいろいろな他の政党からも、今、木村議員が言うような要請、要望というふうなものを国会においても御指摘いただいたわけでありますけれども、そのときにも私どもからお答えを申し上げてきたわけでありますけれども、いわゆる現在の食糧法というふうなものにおいては、政府が買い入れをして、そして需給調整や価格維持を行うというようなことにはなっておらないわけでございますので、そこには限界があるなというようなことだけは申し上げてきたところでございます。

木村(太)分科員 ですので、皆さんがようやく腰を上げて過剰米対策に乗り出した、もう少し前に乗り出していればというふうに反省の思いは持ちませんかということを聞いているんです。

鹿野国務大臣 私どもからいたしますと、集荷円滑化対策についても、それは機構の判断でもありますから、当然農協さんと相談をしてというふうなことで判断がなされたわけでございますので、私どもが需給関係に直接介入するということは、食糧法上、やはりこれは限界があるというようなことを申し上げているところでございます。

木村(太)分科員 それは建前でありまして、だれもそう思っていませんよ。農協関係者も遅過ぎるという意見を言っているじゃないですか。それは私は違うと思いますよ。

 では聞きますが、昨年は記録的な猛暑になりましたので、場所によっては収量の低下、あるいは一等米比率の低下というのが著しくあった地域があるわけですが、いわゆる変動部分も決まりましたので、最終的に米農家の手取り収入はどのぐらいになると見込んでおられますか。

鹿野国務大臣 先生御承知のとおりに、このモデル事業というふうなものは、今回、具体的な数字が出されました。いわゆる定額部分は十アール当たり一万五千円で、そして、当年産の販売価格が下落した場合は、変動部分十アール当たり一万五千百円追加で支払う、こういうふうなことを発表したところでございます。

 そこで、特に変動部分というところは、数量払いではなく定額部分を支払った面積を対象に、面積当たりの単価で支払うものでございます。このために、作柄の影響というようなことによる収量減や、あるいは、二等米から三等米の、あるいは規格外米という発生率が高くなったとしても、そのようなお米を除外するということなく交付金が支払われるということであります。

 ただ、最終的にどうなるかということでありますけれども、農協に販売委託された米については、当該年産の米のすべての取引が終了した段階で精算が行われるというのが一般的でございまして、最終的な手取りがそこで確定する、こういうことで、概算金の下落幅を見ても、定額部分と変動部分の交付額でほぼ下落が補てんされるというふうなところは考えておるところでございますけれども、重ねて申し上げますが、最終的な手取りというものは今後確定されていくものと思っております。

木村(太)分科員 流れからいくと大臣の答弁のとおりだと私も認識しております、承知しています。

 ただ、戸別所得補償制度を実施しての、そして変動部分を決めたわけですから、ある面では先んじて、ある程度、TPPの試算じゃありませんけれども、試算というものをむしろ早目に、どのぐらいになりそうだということを出す必要があるんではないかな、私はそう思うんですよ。どうですか。

鹿野国務大臣 そういう意味では、私どもは、できるだけ早く、二十一年度産米については、定額部分がどうなるか、このようなことで、支払いも早くしなきゃなりませんから、そこで、一月の相対取引価格というふうなものが出された中で、この変動部分だけはどうなるかということを明確に示したということであります。

 これからのことは、これは農協等々の概算払いとの関係でありますから、私どもから安易に試算を出すというふうなことには、これは慎重にならなきゃならないんじゃないかな、こう思っておるところであります。

木村(太)分科員 我々は戸別所得補償制度そのものを否定しておりますが、しかし、しっかりと米農家に対してサポートをしていただきたいということはお願いしておきたいと思います。

 では今度は、果樹のことをお聞きします。

 私は赤松農林水産大臣のときも取り上げたんですよ、佐々木政務官のときでしたけれども。それは、総選挙のときに、民主党の幹部の皆さんが青森県に応援に来ますと、鳩山当時の代表もそうでした、青森県といえばリンゴ、リンゴも戸別所得補償制度を必ずやります、こう言ったんですよ。一回、二回じゃないんです。地元のマスメディアにも何回も大きく報道されたんです。だから、赤松大臣に聞いたら、リンゴは恒常的に生産費を下回る農産物ではないので、考えはありませんというゼロ回答なんですよ。そして、昨年の参議院選挙、民主党の公認候補は、公約に、必ずリンゴの戸別所得補償制度をやります、こう言っているんです。また、そこに応援に来た山岡副代表を初め、みんな言いまして、これまた新聞に大きく何回も出たんです。

 いつやるんですか。二回も約束したわけですから、やりますね。

鹿野国務大臣 今、木村太郎議員から指摘があった件でございますけれども、果樹というものは、お触れのとおりに、恒常的に販売価格が生産費を下回るという状況じゃない、こういうようなことから、いわゆる戸別所得補償制度の仕組みがそのまま適用されるということにはならないというようなことを赤松大臣が答えられた、こういうようなことでございます。

 鳩山前総理を初め民主党の議員の人たちが、この制度を果樹にも導入するんだ、こういうような話をされたというふうなことは、経営安定のためにやはり何らかの対策を講じていかなきゃならないんじゃないかな、そういう必要性というようなところからお話をなされたのではないか、こんな思いをいたしておるところでございまして、なかなか、実質的に、冒頭に申し上げましたとおりに、この戸別所得補償制度の仕組みそのものが適用されるというふうなことは難しいんじゃないかな、私はこう考えておるところでございます。

木村(太)分科員 そうはっきり赤松大臣も答弁したらよかったんですよね。

 何らかの支援をしていきたいというのは、それはそのとおりなんですよ。ですので、これから、民主党のためにも、間違ったアナウンスを果樹農家や地域の皆さんに伝えないためにも、例えば、今の答弁のように、民主党さんの農林水産部門会議というんですか、大臣、そこにどうぞ行っていただいて、今の答弁を一度しっかりと、特に果樹に関心ある議員の皆さんにお話ししたらよろしいんじゃないですか。

鹿野国務大臣 今言われた件についてでございますけれども、すなわち、何らかの対策が必要だ、こういうふうなことから、今回、果樹農家の経営安定を図るために、平成二十三年度予算案におきましては、果樹経営支援対策を継続するとともに、改植後数年間の、この間は収益がないわけでありますので、未収益期間に対する支援措置を改めて創設した。こういうようなこと等々は、果樹農家に対する何らかの措置を講じなきゃならないということの一つではないかと御理解をいただければと思っておりまして、今後とも、果樹農家の経営安定というふうなものに対して取り組んでいきたい、こう思っております。

木村(太)分科員 そうなんです。果樹経営支援対策なんですよ。だから、そのとおりなんです。

 ただ、戸別所得補償の品目に果樹、リンゴは入らないということをはっきり申し上げたらどうですかと言っているんですから。何らかの支援はわかりました。また、あるのはわかります。戸別所得補償の品目には果樹、リンゴは今は入れる気持ちはありませんとはっきり答えた方がいいですよ、逆に。民主党のためにも。

鹿野国務大臣 木村議員からの指摘については、私なりに、私の考え方のもとで、何らかの機会にそういうふうなことをお話ししていきたいと思っております。

木村(太)分科員 御答弁あった果樹経営支援対策、これは、当時の赤松大臣が、期限が切れるので、検証してさらに充実をさせていく中で果樹農家をサポートしていきたい旨の答弁をしてくれたんですよ。

 では、果樹経営支援対策の予算案の中での額は、対前年度と比べてどうなっていますか。

鹿野国務大臣 平成二十三年度の果樹関連予算は七十五億円。このうち継続要望の根強い改植対策、果樹経営支援対策は、従来の実績、平成二十一年でございますけれども、これは二十一億円でありますが、を上回る三十億円を措置いたしております。さらに、新たな対策といたしまして、今申し上げた改植後数年間の未収益期間に対する支援措置を三十億円措置している、こういうことでございます。

木村(太)分科員 済みません。もう一回確認します。

 果樹経営支援対策関連の予算案は、要は対前年比、いわゆる今年度予算と比べた場合に、増減がどうなっていますか。

鹿野国務大臣 二十一年度と増減というのは、どことどこの増減ということでしょうか。

木村(太)分科員 要は、平成二十二年度と、そして今審議している二十三年度案と比較した場合に、増減はどうなっていますかと聞いています。

鹿野国務大臣 果樹経営支援対策事業、これは予算額が、平成二十二年を六十三億円、平成二十三年度予算案には三十億円ということでございます。ですから、三十三億円減、こういうことであります。

木村(太)分科員 三十三億円も減なんでしょう。経営支援対策が二十二年度で切れて、延長して、その際に拡充して、リンゴを初め果樹農家を支援していきたい、こう当時の赤松大臣は言ったんですよ。拡充じゃないんですよ。減額しているんですよ。そうでしょう。

鹿野国務大臣 実績額というものを私今申させていただきますが、これは、平成十九年度は十五億円、二十年度においては二十億円、それから二十一年度においては二十一億円、こういうことでございまして、これに比較いたしますと、平成二十三年度三十億円ということでありますから、私どもとしては、この事業の重要性というものを踏まえさせていただいているというふうに思っておるところでございます。

木村(太)分科員 通告していませんが、政府委員の人でもいいですから、きちっと答弁してくださいよ。

 果樹経営支援対策と項目として掲げた二十二年度の予算額と今の予算案の額とどうなのかと聞いているんです。

鹿野国務大臣 だから、先ほども申したとおりに、この果樹経営支援対策事業というものは、予算額は、平成二十二年は六十三億円です。そして、平成二十三年度は三十億円であります。

木村(太)分科員 そうなんです。だから、減額したんですよ。何も充実させていないんですよ。

 こういうことが余りにもいいかげんに私は思うんですね。選挙になれば、地方に行けば、やります、やります。国会で聞きますと、さらに充実させます。でも、そうでない。だから、こういうところもある面ではマニフェスト違反というか、民主党の得意わざとなっている詐欺的な姿なんですよ。こういうところが一つ一つ目立ってきているんですね。

 大臣の答弁のとおり、大幅に減額したんです。だから、私はこれからも、充実させるべきだということを主張させていただきたいと思います。

 そこで、私はこれまでも主張しているんですが、果樹経営支援対策が今あるんですが、かつて、果樹経営安定対策というのがあったわけです。これは、農家の手を離れた後に、いわゆる、市場に流通が始まって、販売のところで価格が暴落したときに果樹農家に補てんしてあげる、簡単に言えばこういう制度であります。

 私は、この果樹経営安定対策を復活させて、先ほどお話しされた支援対策と、二つの制度が柱となって果樹農家をサポートしていく、これがベストな姿だということを今までも主張してまいりましたが、これまでの大臣は、それに対してはゼロ回答でありました。鹿野大臣はどう思いますか。

鹿野国務大臣 今、木村議員が指摘の果樹経営安定対策ということでありますけれども、これは、制度の概要というものは、生産者によるところの適切な需給調整を実施してもなお、価格が基準価格を下回った場合に価格補てんを行うというようなことで、ミカンとかリンゴが対象になっておったわけであります。

 この果樹経営安定対策につきましては、産地や品質の違いにより価格差が大きい、このために、品質の低い産地を温存するのではないか、こういうような批判も出ておったわけでありまして、そのようなことから、いわゆる、どういう政策を行うか、施策を行うかということについては、優良品目なり品種への改植を推進するというようなことによって、需給調整対策の強化というふうなものが主なる内容になっていくんではないかというようなことから、先ほど申し上げたような政策というふうなことで予算づけもいたしておるところでございます。

木村(太)分科員 そういうデメリットの声があったのも、私も承知しています。

 ただ、国の制度としてなくなったものですから、そういったところは工夫して、改善するところは改善しながらも、制度そのものは復活してほしいという声が高まってきているんですよ。

 そこで、私の地元でいうと、県の事業として復活をさせているんです。また、県でやってきた事業をさらに新たなリニューアルをして、今取り組もうとしているんですよ。それは、価格安定制度と共済制度を組み合わせた考え方を示しているんですが、通告していますけれども、青森県が取り組もうとしているこの制度を農林水産省はどう評価しますか。

鹿野国務大臣 リンゴの主産県である青森県が、県独自の対策を設けるというようなことで、主体的な取り組みをしているということは評価すべきことだな、こういうふうに思っております。

木村(太)分科員 うちの青森県で実施しようとしているこの制度を農林水産省もぜひ参考にしていただいて、これはいい制度だなと思うならば、あるいはそのとおりでなくても、もう少しここも工夫したらいいなとか、そういうようなこともきちっと検証した上で、私が先ほど来申し上げた、いわゆる実態的に、かつてあった果樹経営安定対策を新たにつくっていくという大きな参考にしていただきたいということをお願いしておきます。答弁はいいです。

 それで、今国内で生産されているリンゴが、海外に輸出されている今の実績、それはどのようになっているのか。国別、地域別、また量、あるいは輸出金額、もし御承知でしたらお聞かせください。

鹿野国務大臣 平成二十二年のリンゴの輸出につきましては、輸出量は二万一千トンで、対前年比で一〇一%、輸出金額は六十四億円で、対前年比一一八%。

 我が国のリンゴの輸出量は、平成十四年から増加傾向で推移をしてきたわけでありますけれども、平成十九年度をピーク、これは二万六千トンから、景気の低迷等も含めて減少傾向でここのところ推移をいたしております。平成二十二年には二万一千トン、こういうふうなことでございます。

 輸出先でございますけれども、台湾向けが約一万九千トン、全体の九割、次いで香港向けが約一千トン、全体の五%、中国向けが四百トン、全体の二%、こういうふうになっておるところでございます。

木村(太)分科員 世界的なリーマン・ショック以降の経済状況がありました。それもその要因だと思うんです、今大臣の答弁のあったとおり。また、円高の影響もあるんですね。

 それから、もう一つあるんですよ。今答弁あったとおり、台湾向けがかなりのパーセンテージを占めていますから、山梨県の桃からモモシンクイガの幼虫が発見されまして、台湾側のルールからいくと、暫定的に日本からの果物の輸入をストップさせるんですね。そして、一年度、一年の間にもう一回発見された場合には、もう完全にストップなんですよ。これもある面では影響はあったんです、少し減少してきた。

 そこで、例えば私の地元青森県のリンゴ農家から見ると、青森県のリンゴからまた出た場合は、これは納得します。しかし、例えば山梨県の桃から二回目も出たときに、青森県のリンゴを初め、他の県のリンゴ、あるいは他の果樹もストップさせられることになっているんですよ。だから、ある面では、農林水産省として、台湾に対してもう少し実態的に合った基準というものを考えていただきたいということをこれまでも交渉しているんですが、その状況が今どのようになっているのか、お聞かせください。

鹿野国務大臣 今お話しのとおりに、台湾では、リンゴ、ナシ、桃及びスモモというような生果実については、台湾の輸入検査でモモシンクイガが、毎年一月から十二月までの間に二回発見されれば、日本全国からの輸入が停止される、こういうことになっておるわけであります。

 ただ、これは年が変わればリセットされるわけでありますけれども、台湾の方にもう少し何とか話ができないか、こういうようなことでありますけれども、実は、我が日本の国の側で申し上げますと、輸入検査で侵入を警戒する病害虫が一回発見されれば、輸出国全体からの輸入を停止しておる、こういうことでございまして、この台湾の検疫条件が、通常各国が定めているよりも条件がより緩いものだ、こういうことでございますので、我が国の考え方からいたしますと、なかなか台湾に対してそういうような状況にはならないんじゃないかと思っております。

木村(太)分科員 あきらめないで、ぜひお願いしたいと思います。

 リンゴから二回も出た場合は納得しますよ。でも、リンゴ農家が一生懸命出ないように努力しているのに、他の県の、あるいは他の果樹から出たことがすべてに影響を与えるということが、理屈に合わないでしょう、普通に考えても。ぜひ粘り強く交渉していただきたいと思います。

 それから、リンゴのことで恐縮ですけれども、うちの地元の県は、年間二万四千トン輸出というのを目標に掲げているんです。これは青森県のリンゴですからね。

 農林水産省として、長野県を初め、国内のリンゴのうち、海外に攻めの農業として、いつまでに、あるいはいつの時点で何万トン輸出しようという具体的な目標を持っているんでしょうか。

鹿野国務大臣 目標何万トン、品目ごとに目標というふうなものは持っておりません。今御承知のとおり、農林水産品関係は、約五千億円ほど輸出されておる。これを、二〇一七年まで何とか一兆円にしたい、こういうふうな考え方を示しておるわけでありまして、品目ごとに目標というものは、まだ定めておりません。

木村(太)分科員 リンゴに限らず、ある程度国内で主力的に生産している農産物あるいは果樹というものを、具体的に目標を掲げて、それに向けて着実に実行していくというふうに思う考え方はありますか。

鹿野国務大臣 リンゴについては、果実の輸出の中でも八割を占めておる重要な品目でありまして、そのうち青森県産が八割これまた占めておる、こういうふうなことからいたしまして、重要な産地であるということは言うまでもなく認識をいたしておりますが、今後、今御指摘の果樹の輸出総合戦略というふうなものを策定するに当たりましては、青森県を初め主産県の関係機関とも情報交換等、連携を密にしながら検討を進めてまいりたいと思っております。

木村(太)分科員 ぜひお願いしたいと思います。

 それでは、次に入ります。

 農山漁村(ふるさと)地域力発掘支援モデル事業というのがあったんですよ。これを活用しまして、農家の皆さんがグループをつくって、いろいろな事業をしながら取り組んでいる事例がたくさんあったんですね。しかし、例の事業仕分けで廃止になりまして、私の地元のあるグループも、この事業の廃止によりまして、事業を展開していく計画も、あるいはお金の返済計画も、すべて狂って大きな迷惑をこうむったという憤りの声が、一人二人じゃありません、あちこちであるんです、私の地元だけでも。これは無駄な事業なんですか。

鹿野国務大臣 今議員からの御指摘のことで、いわゆる地域活性化に向けた地域ぐるみの自立的取り組みを支援する、こういうふうなことで、いわゆる農林水産省としても重要だというふうなことから、二十二年度においては、広域連携共生・対流等対策交付金など、他の補助事業の活用により支援をいたしておるということでございます。

木村(太)分科員 きょう質問するために、もう一度、私の知り合いでこの事業を活用していた農家のリーダーに問い合わせしたんです。そうしたら、ファクスを送ってきてくれまして、こう言っています。国の事業だから、信じて特産品の開発、農家の収入増、そして雇用の場の提供など、地域産業の発展に努力していこうと思って取り組んできた、しかし、裏切られたという気持ちでいっぱいである、こういうふうにファクスを送ってきたんです。こういう声を、大臣、どう思いますか。

鹿野国務大臣 実質的に、青森県におきましては、私の承知している限りは、今回のこの事業仕分け等々のことも含めて六カ所採択になっておった、このうち二カ所が支援というふうなことでありますので、青森県の実際に取り組んでいる人たちからするならば、今、ファクスの、農家の方々のお声というふうなものを直接聞かせていただいたわけでございますけれども。

 そういう中で、平成二十三年度におきましては、これらのいわゆる都市農村交流に関する事業を大くくりいたしまして、そして、集落の多様な取り組みに対して国が交付金を直接交付するところの食と地域の交流促進対策交付金というものを新しく新規として創設することにいたしておりまして、経費は十七億円、これを計上しているところでございます。

 これからも、この事業というものの重要性を十分頭に入れながら取り組んでいかなきゃならないと思っております。

木村(太)分科員 では、その答弁のとおり、いきなり事業がストップせざるを得ない状況になっている私の知り合いの方を初め、全国にそういう人はいっぱいいると思うんですが、その交付金を使ってということでしたら、一度計画をつくり、もう事業として動き出していた農家あるいはグループに対して、一つ一つ直接に、こういうメニューがありますから、これで何とか活用してくださいというふうに、一人残らず、一つのグループ残らず丁寧に対応すべきである、こう思いますが、どうですか。

鹿野国務大臣 平成二十三年度の予算案というものが成立をするというふうなことになった場合はこういうふうなことになりますよということを、情報をできるだけ提供するように努力をしていかなきゃならないと思っております。

木村(太)分科員 同じようなことがありまして、子ども農山漁村交流プロジェクト対策事業というのがありますが、これもまた事業仕分けで、平成二十二年度から大幅に減額されたんです。

 受け入れ小中学校がなければ国庫補助がなく、大きな混乱になっておりまして、いわゆる民宿というか農家のうちに泊まって、そして二、三日農作業を体験しながら、こういう農家は、金もうけでやっているんじゃないんですよ、ボランティアの思いでやっているんですね。

 これも大幅に事業仕分けで削減、こうなっているんですが、これも無駄な事業なんですか。

鹿野国務大臣 この子ども農山漁村交流プロジェクトというものにつきましては、今お話しのとおりに、平成二十一年度の事業仕分けの評価結果を踏まえて予算が縮減された、そのとおりでございます。

 ただ、私どもといたしましては、小学生による農山漁村での宿泊体験活動の推進というものを引き続き図るために、受け入れ地域の体制整備等の推進に必要な予算を平成二十二年度予算額として三億八千八百万、これを計上いたしておるところでございます。

木村(太)分科員 農林水産省は、全くなくしてはいないんです。ただ、大幅に減額したんですよ。

 同時に、文部科学省の予算は廃止なんです。ゼロになりました。そうすると、この事業の全体の予算から見ると、かなり少なくなったんですね。これが学校関係者や、あるいは今まで協力していた農家の皆さんから見ると、本当にもう残念でならないという声なんですよ。

 私は、その農家の皆さんのところへ何回もお伺いしているんですが、たくさんの手紙があるんですよ。子供たちからの手紙、あるいは親御さん、お父さん、お母さんからの手紙、校長先生からの手紙とかね。

 その中にこういうのがありました。うちの子は自閉症だったのに、二泊三日の体験だけで、帰ってきたら、別人のように今積極的に学校生活、勉強にも運動にも頑張っているという旨の内容でして、親としては感激し、感謝しているという内容なんです。できれば、もしお許しいただければ、一度夏休みを利用して、家族みんなで今度はお伺いして、泊めさせていただいて、体験させていただけませんかとか、こういう手紙がいっぱいあるんですよ。

 私は、涙が出ましたよ、そういう手紙を見まして。それを無駄な事業として仕分けするんです。農水省の予算はまだありますけれどもね。しかし、大幅に減額。文科省はゼロ、廃止。

 もう一度聞きます。無駄な事業なんですか、これは。

鹿野国務大臣 ですから、私が今申し上げましたとおりに、小学生による農山漁村での宿泊体験活動の推進は非常に重要だ、こういうようなことも申し上げましたが、そういうところで、この子ども農山漁村交流プロジェクト、あるいはふるさと地域力発掘支援モデル事業というふうなもの、そういう事業を初めとするところの都市農村交流に関する事業というものはもう大くくりして、そして集落の多様な取り組みに対して国が交付金を直接交付する、こういうようなことで、食と地域の交流促進対策交付金を新規として創設したわけでありまして、そういう事業が無駄だというふうな考え方は持っておりませんということは申し上げたいと思います。

木村(太)分科員 ただ、予算から見ると、大幅に減額しているわけですから、それで指摘をしているわけです。

 ですので、もう一度検証していただいて、今後の対応に生かしていただきたいということをお願いしておきたいと思います。

 では、次に入りますが、まず、そもそも論なんですが、漁業には、農業者年金のような年金制度というのはあるんですか。確認させてください。

鹿野国務大臣 漁業には、農業者年金のように、公的年金制度として保険料の一部を国が補てん、補助するような仕組みはございません。

木村(太)分科員 ないんですよ。

 そうしますと、同じ第一次産業の中でも、何で農業者年金があって漁業者年金はないんだというのが、ふだんから漁業関係者は思っているんですね。

 将来というか今後、漁業者年金の創設という必要性を大臣は感じますか。

鹿野国務大臣 今申し上げましたとおりに、公的な年金制度というふうなもので国が補助する、そういうふうな仕組みはございませんが、六十歳以上の漁業就業者が四割を占める、こういうふうなことを見ましたときに、高齢化が進んでいるわけです。そうしますと、漁業者の老後の福祉対策というふうなものを図ることは大変重要な課題だ、こういうふうな認識は持っておるところであります。

 このために、全国共済水産業協同組合連合会が任意で実施している漁業者老齢福祉共済事業、いわゆる漁業者年金の事務運営費に対して国庫補助を行っているということでございます。

木村(太)分科員 時間が来ましたので、最後の質問をさせていただきます。

 中東情勢の不安定なああいう状況等も影響しまして、燃油の高騰が著しくなってまいりました。農林水産業に関しての燃油高騰対策というのはどのようになっているのか。

 きのう、党の部会でも、担当から聞きましたけれども、例えば肥料なんかは、あの二、三年前の高騰のときから肥料の値段は高どまりしているんですよ。それから、もちろん燃油は値段が下がりまして、今また上がってきていますけれども。だから、前と同じ対策をしてもだめなんですね、そのままやっても。また、農業資材、肥料なんかは高どまりしていますから。

 前回やった対策をそのままやるのではなくて、今の状況に対応した対策を講じるべきだと思うんですが、どうですか。これで終わりますから。

鹿野国務大臣 農業分野につきましては、施設園芸の経営の体質を強化するという意味で、平成二十二年度から、ヒートポンプ等の施設園芸用の省エネ設備や、木質バイオマス利用加温機の導入支援、あるいはその他の省エネルギーの設備のリース方式による導入支援というようなことを行うことといたしておりまして、省エネルギー型の農業への転換を推進しておるところであります。

 また、漁業分野につきましては、漁業者と国が毎年度に積み立てを行うことにより基金を造成いたしまして、燃油価格が急騰したときには基金から補てん金を交付する、漁業経営セーフティーネット構築事業というものを二十二年度から開始いたしております。

 本事業は、四半期の平均原油価格が直前二年間の平均価格を一五%以上上回った場合に補てんを行うというようなことでございます。平均価格原油の動きというものは、本年に入り、一月から三月期の補てんの基準価格を既に上回って推移しておりまして、この状況が続けば補てん金の支払いが発生する見込み、こんなふうに思っております。その際は、速やかに支払いがなされるよう、しっかりと事務を進めてまいりたいと思っております。

木村(太)分科員 終わります。ありがとうございました。

高井主査 これにて木村太郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、伊東良孝君。

伊東分科員 おはようございます。私からは、きょう持ち時間が三十分でございますので、簡潔にお聞きをしたいと思います。

 大きく二点、お伺いいたします。一つは、中断を余儀なくされ帰港途中にある調査捕鯨についてであります。また、もう一点は、EUあるいはオーストラリア、カナダとのEPAについてお伺いをしたいと思います。

 まず、二月十八日、第二十四次の南極海鯨類捕獲調査の計画途中での切り上げを発表されました。この理由につきましては、反捕鯨団体シーシェパードの妨害活動から乗組員の生命財産及び調査船の安全を確保するということでありました。

 これは、生命財産を守るということを最優先にした選択は一つの道であった、こうは思います。しかし、どうしても釈然としないわけでありまして、暴力に屈してしまったのではないか、あるいはまた、すごすごと逃げ帰ってきたのではないかというような印象、国民や世界各国の関係者がこう見たのではないかと思うわけであります。政府の決定によりまして、日本人あるいは日本の国が大切なものを失い、また失いかけている、このような印象を持たれる、こう思うのであります。すなわちそれは、日本が正しいと主張し続けてきたこれまでの調査捕鯨という行為を、不法な暴力行為あるいはテロ行為に屈して取りやめ、そしてその結果、日本国民に屈辱を与え、あるいは日本の国際的信用をおとしめたのではないか、こう思うからであります。

 今回の決定は、最終的にどなたがだれとどのような機関でこれを協議し、決定をしたのか、中断に至る決定をされたのか、まず第一にこの点をお伺いするものであります。

    〔主査退席、佐々木(隆)主査代理着席〕

鹿野国務大臣 今回の決定は、調査船団の帰国については、二月十八日、調査実施主体である財団法人日本鯨類研究所及び現場の意向というふうなものをお聞きしながら、私が判断したものでございます。

伊東分科員 このような判断は、本来、役所ではなくて、もちろん今大臣がおっしゃられたように、政治家本人がこれは決断すべきもの、このように思うものであります。

 さて、これは安易な人道上だけの問題では済まない問題を、先ほどからお話ししておりますように、含んでいるというわけであります。

 今回の決定に至るまでに、政府として、この妨害行為に対して毅然たる抗議をしたのかどうか、あるいはまた、オーストラリアやニュージーランド、オランダなど、これは船籍国、寄港国あるいは給油国等々でありますけれども、これらの関係諸国に、これら暴力行為がなされないよう厳重な申し入れを行ったのかどうか、また、それに対してどういう相手国の返事があったのかどうか、国民はこれらについて全く知らされておりません。この点についてお伺いいたします。

鹿野国務大臣 関係国、オーストラリア、オランダ等々に対しまして、大使館の関係の人たちにも、この暴力行為というふうなものは許されるものではないというようなことで抗議もいたしてきた経緯がございますということだけは、申し上げさせていただきたいと思います。

伊東分科員 しかしながら、残念ながら、全くその抗議、日本の主張というものは無視されているわけであります。

 これは一部の報道によりますけれども、オーストラリア、ニュージーランドでは今回の事態を歓迎し、シーシェパードの行為を支持している、このような政府関係者の談話もある、こういうわけであります。このままこのシーシェパードを、日本の調査捕鯨を中断に追い込んだ、あるいは英雄的な振る舞いというか、英雄視させて本当にいいものかどうか。これは海賊行為であります。これを、世界に大々的に捕鯨中止をPRして、また寄附金稼ぎをする、こんなことが本当に許されるのかという強い憤りを感ずるものであります。

 これについて本当に、一部報道に言われますこれら豪州あるいはニュージーランドに対する、これらの報道に対する政府関係者の発言に対して、日本はどういう態度をとったのか、お聞きしたいと思います。

鹿野国務大臣 私どもといたしましては、今申し上げましたとおりに、このような暴力行為というふうなものに対して抗議を行ってきたところでございますが、この船団の人たちが帰国いたしましたならば、その実態、実情というものをしっかりとその報告を受けて、今後どういうふうに対処していくかというふうなことを判断してまいりたいと思っております。

伊東分科員 日本はやはり少しおとなし過ぎるという気がしてなりません。これは、関係国との協議の経過や、あるいはこれらの国の態度、さらにこうしたシーシェパードの行為というものについて、日本政府として考える対処方針というものを、国際的にも堂々と発表し訴えるべきだ、このように思うわけであります。

 国民から見ますと、泣き寝入り国家にはなりたくない、こう思っているのは、尖閣以来、やはり我が国の主権が侵されているのではないか、我が国の船舶が危険に陥れられているのではないか、みんなこれを心配するわけであります。

 我が国の中断に至る判断の正当性、あるいはまた調査捕鯨の継続、あるいは国益や主張というものを、この機会にはっきりと内外に、やはり政府として堂々と発表すべきではないか、発信すべきではないかと思いますけれども、この点、いかがでしょうか。

鹿野国務大臣 今回のこの暴力行為というふうなものは、乗組員の生命財産を脅かす危険な行為でありまして、これに対して、重ねて申し上げますけれども、私どもといたしまして、関係国に対して厳重な抗議を申し入れをしたところでございます。

 これから乗組員の今後の生命財産というふうなものがきちっと確保されるというようなことを踏まえて、関係国に対してどう対処していくかというふうなことは、船団の人たちが帰られて、実態というふうなものを聞きながら、今申されたようなことも踏まえて、今後検討してまいりたいと思っております。

伊東分科員 去年、農水委員会の場でも、私も二度も三度もこのお話をさせていただいておりました。去年は、たまたま十二月二日の出港前でありましたので、いわゆる防御内容あるいは警備体制のあり方、作戦等々が敵方のシーシェパードに漏れてしまえば大変なことだということから、我々も納得して、これ以上は聞かないということでありました。

 さて、海上保安官が、今回は三交代制で見張りができるほどの乗り組みを見せたというふうに聞いているところでありますけれども、今回の妨害活動に対して、そのたくさん乗り込んだ海上保安官が一体どういうような仕事をされたのか、行為をされたのか、あるいはまた船団に対する指導をしたのか、これについて、きょうは次長がお見えでありますので、城野次長にお伺いします。

城野政府参考人 調査捕鯨に対する妨害対策につきましては、内閣官房を中心としまして関係省庁が連携して、国際法、関係法令等を踏まえまして、また、これまでの妨害事例を検討の上、自衛措置の強化等、必要な対策を講じたところでございます。

 ただ、具体的な妨害対策につきましては、これは海上保安庁の乗船の有無等も含めまして、次回以降の調査捕鯨における妨害対策への影響も考慮しますと、お答えは差し控えさせていただきたいというふうに思います。

伊東分科員 次長、僕はこれでしつこく聞く気はそんなにないですけれども、しかし、海上保安官が乗り込んでいって、そして現実にはこうして中断に追い込まれて、妨害内容もこれだけ、先ほど報告があったように、我々もこの報告を聞いておりますよ。極めて危険な発光弾を今回用意し、さらにはまた、実際にロープを巧妙にスクリューに絡ませ船の航行を妨害し、あるいは酪酸を、一回に百本も瓶を投げ込むような行為を繰り返されていて、これが現実に防御できないで帰港せざるを得なかったわけでありますから、来年のことがあるからどんなことをしたか言えないなんという話は、私は本来おかしいと思います。来年、これに負けない新たな防御体制を構築すればいい話でありますし、場合によっては、来年これはできないかもしれないんですよ、このままでいくと。

 ですから、私は、出発以前であれば今の答弁もしようがないかと思いますけれども、全然これが効果を上げないで、たくさん乗り込んでいるのをこっちはわかっているわけでありますから、その上で、戻ってこられて、来年のことがあるから言えないなんという話は少しおかしいのではないかというふうに思います。では、何のために乗り込んだんだというふうにとられるわけでありまして、この点、海上保安庁がここに乗り込んだ意義というか使命というか、受けて出た命令というか、基本的に、ではどういうことで海上保安官がたくさん乗り込んだのか、ここについて、次長、お聞かせください。

城野政府参考人 繰り返しで大変恐縮でございますけれども、この妨害対策の具体的な内容につきましては、海上保安官乗り組みの有無も含めまして、また次回以降、妨害対策を検討する上での支障ということも考えられますので、回答は差し控えさせていただきたいと思います。

伊東分科員 これはやはりちょっとまずいと思うんですよね。

 もちろん、海上保安庁の方が政府の方針やあるいは決定の中でそれ以上答えることができないというのはわからないわけじゃないです。しかしながら、これがもし農水大臣あるいは保安庁を所管する国土交通大臣あるいは総理の方からそういう話が出ているとしたら、これは国民の税金を使って何人も行っているわけでありますし、現実に何の効果も上げられないでこうやって帰ってきているとしたら、これは、そういう体制についてはお答えできませんなどといって済む話ではないわけであります。

 例えば、今回発表をされても、それをさらに上回る、それをカバーして余りある次の対策を講ずるという観点から、シーシェパードに手のうちを明かすというような、前回、出港前とは違った内容だという思いが私はいたしますけれども、これについて、鹿野大臣、どうお考えでしょうか。

鹿野国務大臣 海上保安官の乗船によりまして、自衛措置の強化等々、重要な役割を果たしていただいているわけでございますが、今次長から答弁のとおりに、今後のいわゆる乗組員の安全にかかわることでもありますので、妨害対策への影響も考慮し、明らかにすることは差し控えさせていただきたいというふうなことは、私どもとするならば、尊重しなきゃならない一面もあるんじゃないかな、こんなふうに思っているところでございます。

伊東分科員 この件については、ちょっと堂々めぐりなものですから、改めてまた機会を見て聞かせていただきたいと思います。

 ただ一点、海上保安官が乗り込んでいるわけですから、当然、一連の妨害工作を受ける、そうした行為について一部始終を恐らくビデオカメラにおさめているんだろうと思います。

 これは尖閣のときも問題になった話でありますけれども、本来、シーシェパードの極めて悪質な違法的な海賊的行為について、それはまさに唯一の証拠になるわけでありますから、一部はニュースで我々も見せていただきました。しかし、これをきちっと、あの尖閣の漁船衝突事件のとき同様、これはやはり公開すべきだというふうに思います。そして、いかにシーシェパードが違法性が高い、危険性の高い行為を行っているかということを全世界にやはり知らしめるべきだ、このように思うわけでありまして、このビデオ公開についての意思について、保安庁は恐らく政府の命令がなければ出せないということになるでありましょうから、これは鹿野大臣にお伺いします。

    〔佐々木(隆)主査代理退席、主査着席〕

鹿野国務大臣 今後、関係省庁とも検討してまいりたいと思います。

伊東分科員 それでは、その次に、鯨類調査の目的、これにつきましては、私が言うまでもなく、海洋食料資源、これは人類のものでもありますし、日本の食文化の継承の面など、極めて公益性が高いわけであります。

 現在、調査捕鯨の事業主体は民間団体でありまして、副産物の鯨肉の売り上げで調査経費を賄う仕組みになっております。これは、再三これまでもお話ししてまいりました。果たしてこんなことでいいのかということになるわけであります。

 今回、計画では八百五十頭のクロミンククジラが百七十頭、あるいはナガスクジラ五十頭の予定が二頭しかとれないということでありますから、五分の一、六分の一という話になってまいります。そうなると、この事業主体が来年度以降、あるいはこれからも、今回の調査捕鯨の経費も、副産物の売り上げで賄うということは不可能なわけであります。

 これについて、このままこれを見過ごすならば、シーシェパードは明らかにこれをねらって、宣言して言ってきていたわけであります。こうして調査捕鯨をやめさせるんだ、あるいはつぶすんだということをこれまでも彼らは宣言してやってきたわけでありますから、そのとおりになりかねないわけであります。

 そこで、私は、被害の国庫補てんももちろんそうでありますが、調査捕鯨事業自体を国が行う事業とすること。そして、この鯨肉の販売代金は、さまざま、内外の肉の価格や、あるいはまた、最近はアイスランドあたりからも鯨肉が入ってきているわけでありますので、そうしたものとの競合などなど、経済的な、そのときの相場でこれは販売し、国庫収入にすべきだ。

 さらにはまた、これらを学校給食などに大いに提供し活用し、子供たちに鯨肉というものの味やそういったものを継承していく、こうした考え方をするべきでありますけれども、これについて、国の事業にするかどうかの御判断、いよいよせっぱ詰まってきておりますので、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

鹿野国務大臣 今御指摘の件につきましては、たしか昨年の臨時国会でも、先生から今後のあり方について、国会におきましてお考えが示されたということを、私も頭の中に入っているところでございます。

 今のこの仕組みというふうなことからいたしますと、確かに、捕獲頭数が低調に終わっている、このようなことから、日本鯨類研究所の経営に影響を及ぼすというふうなこともこれは否定できない状況でございますので、今後どうするかということにつきましては、船団が帰ってきて、どういう状況であったかということの実態も踏まえながら、専門の先生方に意見を聞くということも、いわゆる今後どうするかという検討委員会のようなものを設置して、そしてどうするかというふうなことも決めていかなければならないということもあり得るのかな、こんなふうに思っておるところでございます。

伊東分科員 この件につきましては、そう時間がないわけでありますので、急ぎ、ひとつ御決断いただくようにお願いをしたいと思います。

 それでは次に、EU、オーストラリア、カナダとのEPAについてお伺いいたします。

 先ほども木村先生からTPPスタートのときのお話がありました。昨年十月一日、所信表明の中で突然、TPPへの参加を検討する、こう表明されたわけでありますけれども、その後の騒ぎは御案内のとおりであります。

 賛否両論さまざまある中でありますが、特に影響を受ける一次産業団体からは、大きな将来への不安、あるいはまた現在の農政そのものが崩壊してしまうのではないかという大きな心配をいただいているところでありまして、農水省はそちらの、生産者団体の立場に立って、経産省、外務省、あるいは各省との交渉をいただいている、このように私どもも見ておりますので、ぜひそのお立場を忘れないでいただきたい、こう思うわけであります。

 とはいえ、ことしの七月に韓国が、EUとのFTAが発効をいたします。それで恐らく菅首相も少し焦ったのではないかと思うんですが、たしか昨年の十一月十二日、韓国で行われましたG20のときに、EUの議長に対して、日本とEPAの話をやらないか、こう持ちかけて、十二月から一部事務レベル、年が明けてから閣僚級のレベルと話をというお話で進んでいるわけであります。

 さて、また突然、この二月になりましてからも、オーストラリアとのEPAの話が浮上をしてまいりました。一昨日は、カナダとのEPAも再開する、このような話でありまして、本当に立て続けにEPAの話が出てまいっているわけであります。

 TPPの二十四部門の取り扱いや、あるいは六月に向けた作業もしながら、それを横目でにらんでこの三カ国とのEPAを進めるというのは、私は極めて、これは事務方の心配をするのもなんでありますけれども、本当に大変な作業ではないか、こう思うわけであります。

 特に、オーストラリアは、四年前、平成十九年の年にこのEPAの話が持ち上がりまして、そのとき、私どもの地元の北海道でもこの影響額が試算されました。ちょうど今回のTPPの影響額の七掛けでありますが、TPPで二兆一千億、北海道の一次産業の受ける被害、オーストラリア一カ国で当時一・四兆円の農業被害、影響額ということがありまして、猛反対運動が起きたわけであります。その結果、中断に至って今日に来ていると思うわけであります。

 まずもって、TPPと同時に三カ国のEPA、三カ国といっても、これはEUですからなかなか難しいわけでありますけれども、これが同時進行して出てきている、この経緯についてお伺いします。

篠原副大臣 昨年十一月九日に、EPA、FTA、包括的経済連携協定につきます基本方針が閣議決定されました。TPPのことをきっかけとしてこの基本方針がつくられたわけですけれども、その中で二国間のEPA、FTAについては積極的に推進していくということが盛られております。そういったことから、今、伊東委員が言われました三カ国、三地域についての二国間の交渉も、ちょっとずつ、経緯は違うわけですけれども、行われております。

伊東分科員 篠原副大臣、ちょっとずつですか。ちょっとずつ進める程度の話ですか。今まで四年間もちょっと交渉を中断していたというか停滞していたものを、これからちょっとずつ閣議決定があったから進めるということなんでしょうか。我々の認識の中には、TPPに参加する、あるいはその前提となるような試金石的なお話をされていたのではないかという記憶がありますけれども、いかがでしょうか。

篠原副大臣 経緯がちょっとずつ違うということでございまして、交渉は鋭意行っております。

 例えば、日豪EPAですけれども、中断と伊東委員はおっしゃいましたけれども、そこそこ進んでおりまして、二〇〇七年からいろいろな期間、途中何カ月置きとかいうのはあるんですけれども、二〇〇七年から二〇一〇年にかけて四年間、十一回も交渉をやっております。

 それで、TPPの動きがありましたので、先般、二月七日からまた交渉を再開しております。しかし、問題は四年前と同じでして、センシティブ品目、四つの大きな品目があります。こういったことについて配慮しながら交渉を再開したところでございます。

 それから、日・EUですけれども、先ほど、これも伊東委員御指摘のとおりでございますけれども、昨年七月ぐらいから共同作業をやってきております。それから、APECの前に開かれましたG20でも動きがあります。それで、現段階では、農業とかいうのじゃないんですが、EU側の方から、非関税障壁について、二十七項目について、これを何とかしてくれと、特に政府調達についていろいろ御指摘を受けておるところであります。

 日・EUのEPA、FTA交渉におきましても、やはりセンシティブ品目というのはございます。オーストラリアほどではないんですけれども、豚肉とかナチュラルチーズとか、それから、ほかにマグロ類等もあります。そういったものがありますので、こういったものについては我々は配慮を求めていく所存でございます。

 それから、カナダについてですけれども、二月二十三日、これはちょっと今の二つの国・地域よりもおくれておるわけでございますけれども、いつもEPA、FTAをやるときは共同研究という形でスタートしておりますけれども、それをしていくということで合意したところでございまして、我が国の農業、林業、水産業の実情を考慮して共同研究を進めていく所存でございます。

伊東分科員 今、三カ国とのEPAの経緯についてお伺いしました。

 時間がもうあと三分しかありませんので、これはまとめて最後の質問にさせていただきたいと思いますけれども、今副大臣お話しのように、このセンシティブ品目について、もちろん、ここをどうクリアするかどうかでEPAが決まるかどうかということであります。ですから、これがひっかかって今日まで来ているわけであります。

 今回、閣議決定を受けて、私は少なくとも、万が一、EPAを国として進めるとしたら、ガードをきちっとするという決意であれば、恐らく余りこれは進まないのかなと思います。しかし、ガードをしないで一定程度開放するんだということであれば、これは一歩進むことになるでありましょう。恐らく、私が今見ている限り、これをTPPの試金石と言われているようでありますから、一歩進めようとしているのではないかなと思います。

 とすれば、センシティブ品目、農林水産物にどのくらいの影響があるかということを、やはり金額を、影響額を示して、そして業界団体、生産地域にそれを示して、そこに対する対策をきちっととる、手を打つ、その上でこれを進めるようなことでないと、納得してもらえるわけがないわけであります。そういうことをしないで、ただ進めよう、進めようといったって、全く進むわけがないわけでありまして、これはTPPについても言えることでありますけれども、手順として、もう少しきちっとした農業対策をやる、一次産業対策をやるということでなければならないと思います。

 ですから、さっき木村先生の言うように、予算は減らしておいて、去年二兆四千五百億の農水省予算がことしは二兆二千七百億でしたか、こういうふうに大幅に減らしておいて、農業対策をやるんだ、やるんだと言っても、なかなかこれは実態として見えてこないわけであります。

 このEPAを進めて、本当に、私たちの地元であれば、これはもう酪農も何も大変なことに実はなるわけでありまして、そうした実態をしっかり見せて、そしてそれに対する対策を打って、示して、それから話を進めていただきたい、このように思うところでもあります。これについて最後に。

篠原副大臣 伊東委員の御指摘のとおりだと思います。

 新聞紙上、マスメディア等の表現でございますけれども、日豪EPAがTPPへの試金石だという言葉がよく使われます。私は、この意味がちょっと違うのではないかと思います。

 TPPというのは、非常にどぎつい自由化を決めた協定でございまして、ほとんどの例外を認めない。一部、イスラム教の関係で、酒とかたばことか、ブルネイについては例外が認められているわけですけれども、普通の国については一切例外を認めないというものでございます。十年間にすべての関税を撤廃する。それに引きかえ、EPA、FTAは、各国の事情を配慮して例外品目を設けていい。

 ですから、総理は平成の開国と言っておられますけれども、自由化していくにしても、それぞれの国がそれぞれの品目について痛みがあるんだから、二国間協定でやっていったらいいんじゃないかと。二国間協定できちんと自由貿易を達成できるならば、何も全部をゼロにする必要はないという意味の試金石であって、日豪、日・EU、日加でもって日本のセンシティブ品目がちゃんと守られるならば、逆にTPPなんか全くやる必要はないという結論に至るのではないかと思っております。私は少なくとも、そういう方向で交渉を進めたいと思っております。

 それから、国内対策でございますけれども、いろいろ、口蹄疫とか鳥インフルエンザが発生しますと、官邸に危機管理のための対策本部ができます。しかし、政策の企画立案の関係で、食と農林漁業の再生推進本部というのができたのは、余りないことではないかと思います。

 ですから、我々は韓国に倣っているわけですけれども、韓国の場合は、先に対策を講じて、後から開放ということを言っております。それが筋だと思います。我々も、食と農林漁業の再生推進本部の議論を今いただいているわけですけれども、きちんと国内対策をまとめまして、センシティブ品目は守りつつ、同時に国内対策をきちんと固めてまいろうと思っております。

伊東分科員 これで終わりますが、経産省、外務省、内閣官房、財務省等々、敵がいっぱいいるわけでありますので、ぜひ負けないで、ひとつ、農水省だけが、恐らく日本の一次産業、農業者さん、みんなが農水省を頼りにしていると思いますので、頑張っていただきたいと思います。

 終わります。

高井主査 これにて伊東良孝君の質疑は終了いたしました。

 次に、赤澤亮正君。

赤澤分科員 質問の時間をいただきまして、ありがとうございます。自由民主党の赤澤亮正です。

 きょうは、鹿野大臣、篠原副大臣、長時間のロングランで、お疲れさまでございます。何か、もう既に疲れておられるような感じもいたしますが、まだ長丁場でありますので。

 通告は米の問題でいたしましたが、今、篠原副大臣から非常に重要なお答えもあったこともあり、篠原副大臣の顔を見ると何となくTPPと思い出してしまうものですから、少々伺いたいと思います。

 それで、今、TPPについては、EPAとかの、あるいはFTAとかの二国間協定を進めて、お互い痛みがわかるといいますか、そういうもの同士で中身のあるものをやっていけばTPPは不要になる、そういう交渉をしていきたいという趣旨の発言が篠原副大臣からありました。鹿野大臣も賛成ですか。

鹿野国務大臣 FTAAPに向けて道筋をどうするか。昨年のEPA、包括的経済連携に関する基本方針というふうなものが出された中で、どういうふうな道筋で進めていくか。ASEANプラス3、ASEANプラス6、こういうふうな中、あるいはEPAを進めていくんだ、こういうふうな中で、EPAは推進する、こういうことでありますが、その中で、TPPというふうなものについては、今後情報収集して判断をしていく、こういうことでありますから、EPAというふうなものにおいて、二国間同士というふうなことのいわゆる推進はしていかなきゃならない、こういうふうに思っておるところでございます。

赤澤分科員 大変わかりづらいお答えで、私はイエス・ノー・クエスチョンを求めたわけであります。はっきりと篠原副大臣は、TPPが必要でなくなるような交渉を進めていきたい、先ほどこうおっしゃった。議事録にも残っている。これは、厳しい言い方をすれば、大臣がそれを認めるのか認めないのか、大きな意味でいえば、政府全体として閣内不一致があったんじゃないかというたぐいのことだと思うんですよ。

 大臣、いかがですか。先ほど篠原副大臣がおっしゃった、TPPが必要なくなるような、そういう交渉を進めたい、その考え方に大臣として賛成ですか。

鹿野国務大臣 篠原副大臣は、副大臣として一つの考え方を今示されたわけでありますけれども、私が農林水産省におけるところの責任者でございますから、今後どういう方向に進めていくかというふうなことは、それぞれの考え方というものを参考にしながらやっていかなきゃなりませんけれども、基本的には、私どもとしては、昨年の十一月の基本方針に沿ってEPAを推進するというふうなところに力を入れていく。

 そして、TPPについてはどうするかというのは、六月をめどに判断をする、こういうふうに総理自身おっしゃっておるわけでありますから、できるだけしっかりとした情報を踏まえて、農林水産関係の産品だけではございませんので、あらゆる、この二十四分野というふうなものがどういうことになっていくのかというふうなことも当然かかわってくるわけでありますから、そういう中で判断されていくものではないかと思っておるところでございます。

赤澤分科員 大臣が、篠原副大臣が副大臣としての考えを述べた、しかし責任者は私であるということをおっしゃいました。篠原副大臣と大臣の考えが違うということで発言をされたんでしょうか。

鹿野国務大臣 個人的な考え方を今副大臣が言われた。以前から、その考え方というふうなものは、いろいろな機会で発言をするというふうなことも私は承知しておったわけでありますけれども、いろいろやはり考え方がある。しかし、内閣の方針なり、あるいはまた、農林水産省の方針というのは当然私が判断をする、こういうふうなことでございますので、その点は、幅広くいろいろな考え方があるんだというようなことで御理解をいただければと思っております。

赤澤分科員 それでは、繰り返しお尋ねをしますけれども、TPPについて、結ばなくてもよくなるような交渉を進めたいとおっしゃった副大臣の考えは、大臣としてはとらないわけですね。

鹿野国務大臣 一つの考え方であるというふうなとらえ方はしなきゃならないと思っております。

赤澤分科員 一つの考え方として、それを大臣が受け入れて、省としての考えを決めるのは大臣だとおっしゃったわけですから、省としてその考えでやるのかどうかについて、イエス、ノーでお答えいただきたいと思います。

鹿野国務大臣 TPPについて、判断できるというふうな、それだけの情報もまだ把握をいたしておりませんし、そういうふうなことを踏まえてしっかりと判断をするときが私は来ると思っております。

赤澤分科員 それでは、少なくとも現時点においてまだTPPについては判断できないというお話をされたわけですから、TPPが必要なくなるような交渉を進めていきたいという考え方ではない点はお認めになりますね。

鹿野国務大臣 とにかく今進めておるところはEPAの推進ということで、先ほどお話しのとおりに、日韓なり、あるいは対EUなり、対オーストラリアなり、対カナダなりというふうなことで進めておるわけでありまして、TPPについてはまた別の問題、こういうふうなことでございますから、まさしくTPPというのはどうするかというふうなことは抜きにしてEPAを進めていくというふうなところにおいて、私どもはやっていきたいと思っておるところでございます。

赤澤分科員 TPPについてお尋ねをしています。今のお答えは、何度聞いてもEPAを進めていくというようなお答えになっちゃうわけでありますけれども、少なくともTPPについてまだ判断はこれからだと大臣はおっしゃったわけですから、それであれば、少なくとも篠原副大臣がおっしゃったTPPについては結ばなくていい方向で交渉したいというものとは内容は違っていると私は思います。

 現時点においてTPPについてはまだ判断できる状態にないという趣旨をおっしゃっているわけですから、そこは篠原副大臣のおっしゃった個人的見解と大臣の見解は違っているのではありませんか。

鹿野国務大臣 今の篠原副大臣の個人的な考えというものと私の考え方は、確かにそれは違いはあると思います。しかし、今後どうするかというふうなことについては私が最終的に判断をしていく、こういうふうなことであるということで御理解をいただけると思います。

赤澤分科員 今ので最初のお答えよりは大分明らかになったかと思います。

 それで、大臣が本当にある意味苦悩されている、篠原副大臣も同じであります。私もその点は同じつもりです。日本の農業をどうやって今後もきちっと発展させ、食料自給率を確保していくかには、これは本当に知恵を絞ってやっていかなきゃいけないと思うんです。

 昨年の十一月九日、それから二月十六日、今月ですけれども、二回にわたって予算委員会でTPPの話を私が質問いたしました。いろいろな問題点を指摘いたしましたけれども、少なくとも私が指摘した問題点の所在ということについては、大臣には御理解をいただけましたでしょうか。特にわかりづらい点とかがあれば、この場でも御説明をしたいと思います。私が予算委員会で尋ねた点について、問題の所在について何か今の時点で大臣として不明な点というのはありますか。

鹿野国務大臣 赤澤議員から、農水委員会におきましても、また予算委員会におきましても、TPPに対しての考え方というふうなものについて私もお聞きをさせていただきました。頭の中には残っておるところでございます。

赤澤分科員 ありがとうございます。

 先ほどの篠原副大臣の考えが農水省の考えではないという前提に立てば、当初用意したとおりの質問になるわけでありますけれども、TPP、これは、参加、不参加の決定を六月に行うというのが閣議決定の基本方針に書いてありますよね。

 農業についての国内対策については、六月には基本方針、我々がずばっと言ってしまえば、スローガンしか出てこない、行動計画と言われる具体的な国内対策の中身は十月まで出てこない。これは、先ほど篠原副大臣もおっしゃった先対策後開放ということからしても、どう考えてもおかしいじゃないか。とにかく国内対策がないうちに、丁寧に説明もされず、私はやはり、本来は国内対策が具体的に説明されて、その財源も明かされて、その対策を打った前提で影響試算も出た上で、国民の皆さん、安心だから前に進みましょうと。これでなければ、TPPに賛成する人ですら危なっかしいなと思わざるを得ない。

 その点についてきちっと御理解いただいた上で、事前に、TPPの参加、不参加を決める前に、もし参加に進もうというのであれば国内対策を示してもらえる、それなしで前に進むことはない、交渉に参加することを決定することはないというのは、大臣、断言をしていただけますか。

鹿野国務大臣 国内対策というふうなものを示しながら、そして具体的にどうするかというふうなものを決めていかなきゃならない、まず国内対策ありきだ、こういうようなことの御指摘は、過般の予算委員会でも赤澤議員の方から承ったところでございます。

 私自身といたしましては、赤澤議員のその指摘というふうなものは大変重要なところだな、こういうふうなことで頭の中にしっかりと入れさせていただきたいと思っております。

赤澤分科員 これはお答えしづらいんでしょうけれども、閣議決定と闘うような話ですよ。だから、本当に大臣には篠原副大臣ともよく知恵を絞って出し合っていただいて、とにかくそこがないと非常に乱暴なやり方になる。TPPについて賛成の人たちですら、農業の国内対策が決まっていないのに交渉に参加することを決めてしまった、後で、例えば財源が用意できない、対策を打てない、農業はどうなるんだという話の絶対ないやり方をしてもらわなきゃいけないので、そこだけは強く申し入れておきたいと思います。よろしくお願いをいたします。

 米の話に移らせていただきますけれども、戸別所得補償のモデル事業でやりました平成二十二年度産米については、変動部分が払われるのは出来秋の明けて翌年の三月だということでよろしいですよね。加えて、このたび本格実施というふれ込みで始まる平成二十三年度産米については、変動部分が支払われるのは六月ということになっています。それを前提にお話を進めさせていただきます。

 私どもにとっては十分予想されたことでありますけれども、平成二十二年度産米の米価の下落のために、前年よりはるかに少ない仮渡金あるいは概算払いのお金しか受け取れなかった米農家の多くが、多くつくっているところはもう一千万円ぐらい前年よりも受け取った金が少ないなんという農家もあったと思うんです。平成二十三年度産米の生産に備えるために物入りな年末年始、手元不如意で大変苦労をしたという声をよく聞きました。その現実は、大臣、認識しておられますか。

鹿野国務大臣 いろいろな情報というふうなもの、どんなふうに現場の方々が考えているか、また一面、自分どもとして、具体的に固定部分の支払いが行われたということで、改めて戸別所得補償制度というふうなものを認識していただいたというふうな方もおるということも、承知をしておるところでございます。

赤澤分科員 私自身は、やはり、大幅に下落したけれども、米価の下落についての対策というのが特に打たれない中で、年を越して三月に変動部分が初めてもらえるというのは、どうも農家の方たちにとっては非常にやりづらい、ある意味制度上の設計のミスじゃないかという感じもしているんです。

 制度設計の話が続きますけれども、ことしの秋に収穫される二十三年米、これについては変動部分の支払いというのは来年の六月になるわけですよね。そこは間違いないですね。ということで、ことしの秋に収穫される平成二十三年度米支払いの変動部分の予算というのは、平成二十三年度予算には計上されていないという理解でよろしいですか。

篠原副大臣 そのとおりでございます。

赤澤分科員 これは、実は地元のJAの大会で私がその説明をしたところ、私の地元の民主党の議員が理解をしていなかったという事態があります。そんなことはないと言われて、私とその場で議論にちょっとなったようなところがあるんですけれども、事ほどさようにわかりづらいんですよ。二十三年度米についての予算が二十三年度に要求をされていない、一言で言えば二十四年度予算として要求をする、払うのが二十四年の六月だからという理屈なんでしょうけれども、本当に心配なんです。

 先ほどの話で、TPPへの国内対策も、交渉の参加、不参加を決めた後で具体的な対策が示される、財源確保できるかどうかが本当に不安だと私は思います。この変動部分についてすら二十四年度予算でしょう。今の財源を本当に確保できずに、財源あさりという悪い言い方までされていますけれども、やる予算の中で、こういうたてつけでは本当に農家は不安になるというふうに私は思います。

 お伺いをしたいのは、モデル事業では出来秋の明けて翌年三月に変動部分を払うのに、なぜ本格実施と称して平成二十三年度米からは出来秋の明けて翌年の六月に変動部分を払うことになったんですか。なぜ変わったんですか。

篠原副大臣 今年度の事業はあくまでもモデル事業でして、単年度の予算事業として組んでおります。ですから、本来は長い期間の平均価格からきちんと算定するべきなんですけれども、単年度で仕上げなければいけない。何月までがちょうどいいというのはないんですけれども、ぎりぎり計算をして払えるものということで、一月までの相対取引価格までを計算し、そして三月末までに支払うこととした次第でございます。

 それから、もう一つ、時間がないのでお答えさせていただきますと、変動部分については、どれが一番筋が通っているかというと、きちんと一年間全部平均して価格を算定するのが一番いいわけです。それで比較するのが一番いいわけです。農家の皆さんからも、なるべく長い期間きちんと計算したものでやってくれと。計算の仕方によっては減収部分がきちんと補てんされなかったというようなことが生じてしまうわけですから、そういうことのないようにということで、本格実施の場合は三月までの相対取引価格をきちんと算定して払おう、そしてその結果、なるべく早くということで六月までと。

 これは、ずっと前から始まっております経営所得安定対策のナラシ対策も同じように六月に支払っております。それに倣ったものでございます。

赤澤分科員 これは党の部会の議論でもあった話なんだけれども、やはり議論が破綻していると思うんですよ。

 というのは、ナラシ対策というのは法律に基づいてやっているんでしょう。本格実施するときは法律をつくるとあなたたち自身が言っていたことじゃないですか。その法律はつくれなかったけれども、本格実施と称して六月に持っていったというのは、どうも、二十三年度の予算編成をするときに財源が苦しいから持っていけるものは持っていったようにしか見えないんですよ。法律はできていません。そうでしょう。マニフェストで所得補償をやるといったときは、本格的にやるときは法律をつくるんだと言ったんですよ。

 子ども手当と似たような話が起きているんですよ。二年目は地方に負担させないために、本格的に子ども手当をやるから二年目は負担させないと言いながら、させたんですよ。所得補償も、二年目は法律をつくって本格的にやると言ったけれども、できていないんですよ。

 今の篠原副大臣の答弁を前提にすれば、モデル事業だって六月に払うことにすればよかったじゃないですか。法律がなくて、実際は本格実施でなくたって、六月にするんですよ、二十三年度米については。何か、やることがちぐはぐではないですか。

篠原副大臣 そうですね、赤澤委員の御指摘、ほとんどごもっともな部分が多いわけでございますけれども、この点については、財源が確保できなかったからというようなことは全くございません。

 我々、できますれば法案も提出したかったわけですけれども、いろいろな事情でできない、しかし、予算措置でもってなるべく本格的実施に近い形でこの事業を進めようということで考えて、六月に支払いをすることにした次第でございます。

赤澤分科員 それでは、少なくとも、本格実施のときは法律をつくってというマニフェストには、この点、やり方が、二十三年度米について反しているということはお認めになりますね。

篠原副大臣 この点については、民主党政権ができてから三人の大臣皆、本格実施のときは法案でということを答弁してまいりましたけれども、いろいろ事情が変わりまして、我々は、これは大臣にお答えいただくべきことだと思います。

鹿野国務大臣 きちっと法案として提出をして、こういうふうに申し上げてきたところでございます。赤松大臣、そして山田大臣、それを踏襲して私も、そのような考え方を国会の場におきましても申し上げてまいりました。

 いろいろな諸事情から、今回は予算措置で、こういうふうなことに相なったということは大変申しわけないことだということを、過般の予算委員会におきましても私から申し上げさせていただいたところでございます。とにかく農業者の方々が再生産につながるにはどうするか、このようなことを一つの最も大事な基点としてとらえさせていただいての判断であったというふうなことは、御理解をいただければと思っております。

赤澤分科員 農業者のことを思う大臣のお気持ちは、私、全く疑っていません。そこには本当にいつも敬意を払っています。

 ただ、今の御説明で伺いたいとさらに思ったのは、では、ことしやろうとしていることは、マニフェストには違反をしているけれども法律を伴わない本格実施だという御説明なのか、それとも、マニフェストには違反していない、本格実施ではないんだ、二つしか説明はあり得ないと思いますけれども、いずれでしょうか。

鹿野国務大臣 マニフェストに掲げておる本格実施ということで、畑作物に対しましても対象を拡大したというふうな考え方に立っておるところでございます。

赤澤分科員 では、どう考えても、法律でやると言ったことについては守れていないということは認めざるを得ないですね。

鹿野国務大臣 法律につきましては、今後いろいろと、二年間ということでありますから、最初は米のモデル事業として、今度、二十三年度はそれを拡大して、いわゆる対象品目を拡大して、こういうふうな形でやっていく。そういうことで、二年間のこういう事業というものについて検証をしながら、二十四年度ということ等々について法案として提出をするかどうかというふうなものは大変重要な御指摘でございますので、総合的に勘案をしながら判断をしていかなきゃならない、こういうふうに思っておるところでございます。

赤澤分科員 少なくとも、マニフェストに照らせば本格実施は法律でやるということですから、ことし本格実施とどうしても言い張られるのであれば、やはりそこの部分はマニフェストに違反していると私は指摘せざるを得ません。その点を御指摘して、ちょっと次の問題に行きたいと思います。

 私は、過剰米対策はしないと言い続けて、結論、備蓄米の購入を昨年末打ち出されたのは、どうも政策に矛盾があるのではないかというふうに感じますけれども、その点はいかがですか。

篠原副大臣 済みません、ちょっと秘書がごちゃごちゃ言ってきましたので、質問を。済みません。

赤澤分科員 過剰米対策をしないと言い続けておきながら、昨年末に備蓄米の購入を打ち出したのは、政策として矛盾していませんかとお尋ねしました。

篠原副大臣 備蓄米の買い入れは全く別の観点からいたしました。

 これも随所でお答えしていると思いますけれども、二十三年度から、回転備蓄から棚上げ備蓄方式にする。そのためにはきちんと毎年二十万トンずつ処理して、新しく買い入れていくということ。それがきちんとスタートできるように今年度中にきちんと古いお米は、十三万トンほど十七年産米がありまして、それを処理して、その分十八万トンほど百万トンに足らなくなるわけでございます。それを購入しておかなきゃならないという、そちらの方の要請から買い入れたものでございます。

赤澤分科員 マニフェストだと、三百万トンの棚上げ備蓄という記述だったのではないかと理解をいたしますけれども、もし過剰米対策として備蓄米の購入を打ち出したのではないというのであれば、マニフェストに基づく備蓄米についての戦略が具体的にあってしかるべきです。どういうふうにその三百万トンまで持っていかれるんですか。御説明をお願いします。

篠原副大臣 この点についても、いろいろなところで大臣、副大臣がお答えしていると思いますけれども、当初、二〇〇五年のインデックス、二〇〇七年のインデックス等で、三百万トンの備蓄というのが書かれておりました。これは事実でございます。

 しかし、先般開かれました食料・農業・農村政策審議会等の場におきまして、三百万トンというのがあるけれどもということで御議論いただきましたけれども、百万トン程度で十分ではないかという御示唆をいただいております。

 そういったことを踏まえまして、我々は、とりあえず百万トンの備蓄でスタートしております。

赤澤分科員 それでは、三百万トンということをずっと党としてうたってこられたのは撤回をされたわけですか。

篠原副大臣 備蓄がどの程度の水準がベストかということについては、いろいろ議論があるところだと思います。

 我々、過去三十年間の不足の事態というのをいろいろ検討いたしました。当然ですが、三百万トンまでというのはございませんで、三回ほど大きな不足というのは生じております。そういった中で、十年に一度の大不作、あるいは二回連続不作、作況指数が九四とか五ぐらいの不作が二年続いた場合、これが通常起こる不作でございますけれども、そういったものに対処するためにはどのぐらいが必要かというのを過去の経験から照らし合わせますと、百万トンぐらいがちょうど、これで十分だということです。

 それで、今、財政事情もあります。多ければ多い方がいいに決まっているわけですけれども、百万トンぐらいが今の限度では適当ではないかということで、百万トンの棚上げ備蓄することを決定しております。

 ですけれども、今、食料品の価格が高騰したりしておりますし、ほかの小麦とか大豆とかいうようなことも考えますと、もっと備蓄してしかるべきだというふうな議論が生じ、国民がそういうことを、皆さんが理解していただけることになったりしたら、私は、もっと多くても、我々の当初の三百万トンに近づくような努力もしていかなければならないのではないかと思います。

赤澤分科員 なかなかお答えになっていないと私は思うんです。

 ちょっと大臣に伺いたいんですけれども、少なくともインデックス等で三百万トンの棚上げ備蓄と言っていました。財政事情等もその当時からわかっていたはずだと思います。いろいろなことをおっしゃるけれども、三百万トンの備蓄とうたっていながら、かなりの長い期間そううたっておられましたよ、民主党として。

 ところが、いろいろな議論をしたら、いろいろな議論があると言うけれども、その議論を尽くして三百万トンと書いたはずですからね。それが、どうも百万トンがやはりもっともだという話については、これは昔の三百万トンというのは、やはりこれは撤回せざるを得なかったということではないんですか。大臣としては、いまだに三百万トンを目指して備蓄をされるつもりなのかも含めてお答えください。

鹿野国務大臣 このことにつきましては、昨年の臨時国会でも御指摘をいただいたところでございますけれども、今、篠原副大臣の方から答弁しましたとおり、インデックスにおきまして三百万トン、こういうふうなことを打ち出したことはそのとおりでございます。

 そういう中で、昨年の七月及び八月に開催された食料・農業・農村政策審議会食糧部会におきまして、備蓄水準については現行の備蓄水準百万トンを維持すべきだというような考え方が、そういう意見が大宗であったというようなことも踏まえて、今日、百万トンというようなことを出しておるところでございます。

 このインデックスというものを民主党が出したときには、その思いというものはその中に含まれておったのではないか、こんなふうにも考えておるところでございまして、今後の動向というものが、国際相場におけるところの食料需要がどう変化していくかというふうなこと等々も考えながら、この食糧部会の意見というものも尊重しながら決めていかなきゃならないことではないかな、こんなふうに思っております。

赤澤分科員 お互い、農業にかける思いは熱いんですが、必ずしも国会の質疑というのは思いを語り合う場ではないと私は思っています。

 大臣にもう一度お尋ねをしたいのは、では、審議会の有識者の意見を聞いたので、百万トンが適当だということで、やはり三百万トンは不適当だ、そこについては考えを改めたということなのか。それとも、先ほど副大臣からお話がありました、財政事情があるから、好転したらもう一回三百万トンを目指すんだ、どっちの考え方なんですか。

鹿野国務大臣 この食糧部会の考え方というものを、すべてそのまま受け入れるということも一面はあるかもしれません。しかし、あくまでも参考としての考え方だなというふうな受けとめ方の中で、今日のこの状況というものを考えた場合に、過去におけるところの政府米の放出実績等を踏まえるならば、今日の状況では、国産米は百万トン程度が備蓄として適切な基準ではないかというふうに判断をしたということだと思います。

赤澤分科員 それでは、要するに、当面百万トンということでやっていくんだ、三百万トンとインデックスでうたっていたけれども、しばらくそれはわきに置くという理解でよろしいですか。

鹿野国務大臣 当面、そういうふうな、百万トンを水準としてというふうなことで備蓄体制を確立していくということでございます。

赤澤分科員 それで、備蓄をやっておられるということももちろんあるわけですけれども、いろいろな議論があり得る中で、戸別所得補償を行いながら、結論、昨年末、備蓄のために買い上げるということを発表すれば、当然先高感が出てきて皆さん売らなくなるので、実際、まだ落札とかが起きなくても急激に値が上がり始める、結論、米価がもとに戻るという状態になっていると思うんです。

 戸別所得補償を行いながら米価も下がらないということになれば、ある意味、政策としてはちぐはぐであって、国民は何のために税金を使ったのかわからない、納めた税金の使い道としては、本当にそれは適当なのかという議論があり得ると思うんですけれども、その点はどう考えられますか。

篠原副大臣 質問の趣旨が、私はちょっと理解ができないんです。もう一度お願いいたします。

赤澤分科員 戸別所得補償について言えば、これは、生産調整とかそういったものについて緩めていくことで、あるいは選択的生産調整という言い方もあったかもしれませんけれども、ある程度消費者のために米価を下げる、しかしながら、その場合に農家の所得を補償するという考えがあるのではないかと私は理解をしています。

 ところが、起きたことは、戸別所得補償に税金を数千億使うけれども、実際、米価について言えば、備蓄の関係とかもいろいろあって、これはもう水準として下がっていく方向とは必ずしも限らない状況になっています。

 そうすると、消費者からすれば、税金は使ってもらったけれども、なかなか米価は下がらないというような事態になっているんじゃないかと私は理解をしますけれども、その辺については、政策として、今の政府として矛盾は感じられていないですか。

篠原副大臣 米価を下げるということが主目的にはなっていないのではないかと思います。消費者の皆さんも、現在の食料価格の高騰等があります。二〇〇八年にもありました。ですから、内閣府の世論調査をやりますと、ちょっとずつですけれども、少々高くても、安全性のこともあるので、なるべく国内で主食はつくるべきだというのは多いわけですね。そういった声があるのではないかと思います。

 そのためには、食料の安定供給ということで、自給率を十年以内に四〇%を五〇%に上げるといったことが主目的でございまして、もちろん、消費者にとっては安い方がいいわけですけれども、そちらよりも、安全保障ということを我々は意識してこの政策をつくっております。

 ですから、必ずしも、矛盾しているとか、あるいは政策目的と違ったんじゃないかというようなことは考えておりません。

赤澤分科員 これで終わりますが、私の地元、米子が、年末年始、大変な記録的豪雪に見舞われまして、災害対応等も、大臣、副大臣に大変手厚くお願いをしますということを申し上げて、私の質疑を終わります。

 どうもありがとうございました。

高井主査 これにて赤澤亮正君の質疑は終了いたしました。

 次に、柿澤未途君。

柿澤分科員 みんなの党の柿澤未途でございます。

 先日、予算委員会で、我が党の江田憲司幹事長が農政にかかわる質問を菅総理に対してさせていただきました。そのときに、みんなの党がこのほどまとめた農業アジェンダ、農業政策の内容をお話しをさせていただきました。

 基本的な主張として、減反を段階的に廃止をして米の価格を下げていく、そして、減反による生産調整やあるいは関税によるいわゆる価格支持政策、農産物を高い価格にとめ置くための政策をやめて、価格を下げることによって国際競争力をアップしていく、米も最終的には輸出ができるようにそういうふうにしていく、こういう方向性を打ち出しております。そうしたことが結果的に食料安全保障にもつながるのではないか、こういう考え方を私たちは持っているところです。

 まず、食料自給率のことについてお伺いをしたいというふうに思います。

 これはもう言わずもがなのことでありますが、食料自給率、農林水産省として通常どういう数字を国民の皆さんにお示しをされているか、まずお聞きをしたいと思います。

篠原副大臣 国民に対する食の安定供給というのは非常に大事でございまして、我々は、国内施策の基本として、国内の生産をアップさせるということで、国民の生命の維持ということを考えた場合、いろいろな計算の仕方があるんだろうと思いますけれども、昭和六十年代の前半から、カロリーベースの自給率というのを基本に考えております。

柿澤分科員 それで、そのカロリーベースの自給率というのは今どういう水準になっておりますか。

篠原副大臣 今、これは柿澤委員も御存じだと思いますけれども、先進国では最低水準の四〇%でございます。

 ですが、我々は、マニフェストでこれを十年以内に五〇%に上げるというものを掲げております。

柿澤分科員 四〇%というカロリーベースの食料自給率が盛んに言われて、国民の中でも危機感も高まっている、こういう状況だというふうに私自身も認識をしております。

 しかし、これが本当に国民の実感に近いものなのかどうかというと、いささかちょっと疑問に感じる部分もある。米は主食ですけれども、基本的にはほとんど国産の米を私たちは食しているわけですし、野菜を見てもそうですし、そんなに自給率が低いのかな、こういうふうに感じる方もいらっしゃるのではないかというふうに思います。

 カロリーベースの自給率いうのは、いわゆる国内で供給をされる総カロリーのうちどれだけ国産で賄えているか、こういう割合だと思いますけれども、こういう計算の仕方をすると、実感ベースよりもカロリーベースの方が自給率の数字は下がってしまう、こういうことになっているのではないでしょうか。

 一番いい例が、いわゆる家畜の飼料だと思います。日本の国内で牛や豚を飼育している。しかし、この飼料作物、トウモロコシなんかについて、このえさがすべて輸入だということになってしまえば、この牛や豚というのは、これは自給率ゼロ%というか、低いそういうものになってしまうわけですね。また、カロリーベース、熱量ベースで計算をすることによって、国内でほとんど自給で賄っているはずの例えば野菜、大根、キャベツ、トマト、キュウリ、こういうものについては、カロリー低いですから、どういうふうに国内で自給率を高めても、結果としてカロリーベースには余り反映されないということになってしまいます。

 これは、金額ベース、生産額ベースでいうとカロリーベースの数字とは大きく違ってくる。私の手元の資料を見ますと、カロリーベースの四〇%前後の食料自給率に比べて、生産額ベースでいうと日本は七〇%、こういうことになっていて、ドイツが七五%ということですから、遜色ない。こういう数字になるわけです。しかも、このカロリーベースの食料自給率というのを公に使っている国というのは日本のほかには数少ない、こういうふうにも聞くわけなんですけれども、こうした、ある意味では生産額ベースよりも、実感よりもやや低い数字が出てしまう。

 このカロリーベースの数字を食料自給率として農林水産省が主にしようとしている理由は何なのか、お伺いをしたいと思います。

篠原副大臣 どんぴしゃ数字が出てくるのでは、例えば穀物の自給率、そういうのがあります。それはFAOでも使っております。これは非常に易しいんじゃないかと思います。もっと言えば、米の自給率、麦の自給率、菜種の自給率、野菜の自給率、こういう計算があるんだろうと思います。しかし、客観性を持たせるにはどうしたらいいかと。

 先ほど、TPPの影響試算について内閣府と農林水産省と経済産業省は違う数字を出しているじゃないかというのがありました。あっちの数字、こっちの数字と出てくるのはよくないということで私もその議論に参加した覚えがあるわけですけれども、では、一番客観的な数字というのはどうやって設けられるかと。さんざん議論した結果、やはりカロリーベースが一番客観性が高いんじゃないかということでこの数字を使うことにいたしました。

 この二、三年前にカロリーベースの自給率はいかがなものかという指摘がされ始めましたけれども、我々には、わざと低くして危機感をあおって、自給率を高めるための政策のバックアップのネタにしようなんというそういう悪い魂胆は一切ございません。

柿澤分科員 カロリーベースの自給率について、これを使用するのが果たして妥当であるのかどうか、こういう議論が今出ていることは事実だと思います。そして、実感で言えば、私たちは、安全性も考え、信頼性も考えて国産の農産物を好んで消費をしている、こういうふうに消費者の傾向としてあるというふうに思いますので、四〇%という数字が喧伝をされているというのは、果たして本当の私たちの生活実感とそぐうものなのかどうか、私自身はちょっと疑問に思っているところがあります。

 そして、その食料自給率を高めよう、こういう政策を行っているわけですけれども、カロリーベースで言おうが生産額ベースで言おうが、食料自給率を下げている原因は、例えばトウモロコシであったり大豆であったり、こうした特定の品目の自給率の低さだと思います。そこの部分について農林水産省はどのように解決をしていこうとしているのか、お伺いをしたいと思います。

篠原副大臣 国民にとって必要不可欠な食料を安定的に供給するのは国の大きな責務だと思います。ですから、我々の今中心の政策になっております農業者戸別所得補償というのも、穀物、主食、こういった言葉があるのは日本独特だと思いますけれども、米の自給にこだわったために米を非常に大事にしていたわけですね。麦は外国から輸入してもいい、大豆もだ、菜種もだ。その結果、あちこちに遊休農地が生まれた。これはやはりよくないんじゃないか。こういったところにみんな土地利用型作物をつくっていただいた方がいいのではないか。ただし採算が合わないということなので、その分、少なくとも米並みの所得を補償することによって遊休農地も活用してもらい、水田も活用してもらい、自給率を高める、こういった政策を採用しております。

 それから、先ほど柿澤委員、ドイツの話をされました、七五%。ドイツは、EU全体で自給していけばいいんだと。すぐ隣の国と国境を接していますので、日本のように海に囲まれているということではありません。

 それから、ドイツ国民もフランス国民もイギリス国民も同じですけれども、食料自給率には結構こだわりがあります。なぜかというと、二度の世界大戦でもって相当食料に苦しめられた。ですからドイツ国民は、ドイツの消費者ですけれども、どういう農業生産を国内で望むかというと、野菜や果物を温室栽培でつくろうとすると、やめてほしいと言うんです。それは暖かいスペインやイタリアから買ってくればいい、むしろドイツでは、小麦やジャガイモ、これをちゃんとつくるようにしてほしいと。そうやった結果、金額自給率が七五%になっているのではないかと思います。

 金額の自給率でいいますと、自給率という言葉は金額には私は余り向かないと思いますけれども、ダボス会議に先日行ってまいりました。WTOの関係閣僚会議でございます。同じ時刻に菅総理が平成の開国というスピーチをされていたわけですけれども、私は同時期に、農産物については八兆円ちょっとの生産額になる、それに対して四兆円も輸入している、農産物については日本はほぼ開放している、開国し切っているんじゃないかということを言ってきております。

 ですから、金額ベースで見ても、日本は相当外国に頼ってしまっているのではないかと思います。

柿澤分科員 食料安全保障のお話をさせていただきたいと思いますが、先ほどの赤澤委員に対する最後の質疑のところで、そもそも所得補償政策というのは、米の価格を下げて、そして価格支持をやめて、それによって所得が減少する分について生産コストとの差額を所得補償する、こういう考え方、EUが転換をした考え方に基づいたものではなかったか、こういうことが赤澤委員から言われて、それは必ずしもそうではない、食料安全保障の観点からこうした政策をやっているんだ、こういうことを篠原副大臣から御答弁をされておられました。

 しかし、私たちは、今申し上げた赤澤委員の考え方というか、みんなの党の農業政策にも書かれている、まさに価格支持をやめて、そして財政による直接支払いに転換をすることで米の値段を下げて、そして価格競争力を高めることが、食料自給率の維持向上そして食料安全保障にもつながる、こういうふうに考えております。

 日本は、平和なときは例えばアメリカから小麦や牛肉を輸入する、こういうことでいいんだと思います。そして、一方で日本は米を輸出していく。こういう自由貿易を平時はやっていけばいい。食料危機がもし生じた場合、それで輸入が困難となった場合は、輸出していた米を国内に向けて消費に充てていけばいいんだというふうに思うんです。

 平時の自由貿易と食料危機が起きたときの食料安全保障というのは、両立をする。むしろ、人口減少によって国内の需要は減少していってしまうわけですから、平時において、国内需要に見合ったあるいは国内需要を上回る生産を行って、その分を輸出していくことができるようなそうした価格水準にすることが、もし本当に食料輸入が不可能になった場合に、まさにその分を国内の消費に充てればいいわけですから、食料安全保障につながる。むしろそうした形でないと、この先、食料安全保障というのは確保できない。こういう時代になってきているのではないかというふうに思うんです。

 そういう意味で、私たちは、先ほど申し上げたように、まさに高関税そして生産調整によって米の価格を高く維持してきた価格支持政策をやめて、減反を廃止し、米の供給量をふやして、そして価格を下げ、それによって仮に生産コストを大幅に下回る部分については、直接支払い、所得補償でカバーをしていく。こういう考え方を食料安全保障のためにも提示をさせていただいているつもりですけれども、この考え方に対する農林水産省としての見解をお聞きをしたいと思います。

篠原副大臣 貿易と食料安全保障の両立ということでございますけれども、赤澤委員のおっしゃった、輸出をしている、それでいざとなったら輸出をやめて国内に回せ、これはちょっと危険な考え方ではないかと思います。

 我々、WTOの場では、これは自由貿易、自由貿易ということで輸入を多くするということばかりが議論されますけれども、世界一の食料輸入国として、自給率が四〇%に下がっている国として、輸出規制はやめてほしい、食料輸出国に対してこういう要求をしています。

 ですから、今、EPA、FTAを交渉しておりますけれども、そういったときにも、では輸入はちゃんとする、しかし、安定供給の約束をしてくれということを盛んに言っております。これと矛盾してきますし、輸出しておいて、輸出先国をバッファーのようにして、いざというときにはそれを平然とやめてというようなこと、これは、やはり自由貿易の考え方からすると、私は反するのではないかと思います。

 ですから、やはり食料については、なるべく国内でできるだけ、どの程度、何%がベストということはないと思いますけれども、世界の各国と比較した場合に、四〇%というのは低過ぎるというのが常識ではないかと思います。

 ですから、食料安全保障のことを考えた場合、なるべく食料自給率を高めるというのが王道ではないかと思います。

柿澤分科員 今、輸出をバッファーのように使って、国内で仮に食料需要が逼迫したときにはこの輸出に回している分を引き揚げればいいんだ、こういう考え方は自由貿易の考え方に反する大変危うい発想ではないか、こういうことを御答弁いただきましたけれども、しかし、これはEUなども今行っていることなのではないですか。例えば、小麦を初めとする穀物であるとかについて、価格支持をやめ、そして財政による直接支払いに転換をして、価格がそれだけ下がった。その結果、国際競争力をつけて、今、輸出に回っている分が出ているではありませんか。

 同じ考え方に基づいて今EUはそうした政策を実行しているにもかかわらず、日本の場合だけ自由貿易の原理に反する。それも、日本の政策当局者がそれを言うというのは私はどういうことなのかなというふうに思いますけれども、これは堂々めぐりになってしまう可能性がありますので、次の質問に回らせていただきたいと思います。

 農協についてお伺いをしたいと思います。

 日本のJA、農協というのは、かつては昭和恐慌の農山漁村経済更生運動に起源を持つ、世界でもまれな総合農協、いわゆる金融事業も兼務をし、農業、農村にかかわるすべてのあらゆることを行っている。そういう協同組合です。また、准組合員というのも擁していて、ある意味では、農業協同組合という枠の外側にもその業務領域が大きく広がっている。そうしたものでありますけれども、今、行政刷新会議の規制・制度改革分科会で、この農協制度に関するさまざまな議論が行われております。

 まず、農協、JAというものが、農業、農村において、また、農業、農村地域の生活において果たしている役割について農林水産省はどのようにお考えになられているか。これは大臣にお伺いをしたいと思います。

鹿野国務大臣 農協につきましては、農業生産の増大や農産物の販売力強化など、農業者の協同組織として役割を果たしておるというようなことが私どもの認識でございます。

 今後、そういう意味で農協にも農協としての役割を果たしてもらいたい、こういう考え方です。

柿澤分科員 減反等による米の価格支持政策をなぜやめられないのか、こういうことに農協の存在がかかわっているんじゃないか、こういう見方もあります。

 農協にとっては、米価が高いと米の販売手数料が高くなる、そして、農家に肥料、農薬、農業機械、これを売ることができる。農家の数が多ければ多いほどそうなわけです。減反を行って、そして米の価格を高く維持する。結果として、兼業農家が米をやっている割合は非常にほかの作物と比べても高いことになっているわけです。

 まさに、この米農家に対してさまざまなサービスを供給し、そして高い米の販売手数料を手にすることが、農協にとって経営上のある意味では極めて重要な生命線になっているわけです。この農協の存在があるから、EUのように、抜本的に価格支持政策から財政負担による直接支払いに転換をして、そして米の価格を大幅に下げて輸出競争力をつける、こういう政策に転換できない、こうした障害になっているのではないか、こういうふうにも言われているわけであります。

 こうした私の今言った見方について農林水産省はそのように考えているのかどうか、お尋ねをしたいと思います。

鹿野国務大臣 先ほど来からの議論を聞いておりますと、みんなの党の考え方というふうなことで申されていますけれども、私どもの民主党政権が誕生してから、今までの価格維持制度からまさしくこの所得政策に切りかえた、これは大きな転換であります。これはもう実質的に戸別所得補償制度というものをやっているわけであります。戸別所得補償制度というふうなものの導入というものは、非常に大事なことは、やはり再生産につながらなきゃならない、こういうことであります。

 先ほど来から生産性の向上というふうなこと等々を言っておられますけれども、これはもう私から言うまでもなく、釈迦に説法ですけれども、我が国の平均一戸当たりが一・九ヘクタール、アメリカは二百ヘクタール、オーストラリアは三千ヘクタール。こういうところで土地利用型農業というものを対比した場合に、それと競争しろと言ったって、それはもう競争力に限界があるわけです。そういう中で、生産性の向上を図りながらどうやって国民生活の食政策に寄与していくかというふうなことは、これは考えていかなきゃならない。

 こういうふうなことから、二十三年度のこの戸別所得補償においては、規模加算をまず第一歩としてやっていきましょうというようなこと等々で、常に国民の人たちのこの食生活に貢献をしていく、そして安定供給につなげていくというようなことが一番大事なことだという意識の中で、この戸別所得補償制度というものを私どもは推進をいたしておるわけでございます。

柿澤分科員 私は農協の話を聞いたんですけれども、ちょっと答弁がすれ違いになってしまいました。

 これはこれで私たちにも言いたいことはあるんです。今の戸別所得補償政策を、しかも減反を行いながら、減反に参加した人には戸別所得補償をしますよ、こういう形で進めていることによって、結果として農地の集約化も進まない。逆に貸しはがしのたぐいが起きてしまっている。こうした現象は多々言われているわけであります。

 それは、日本は国土が狭い、だから集約させたってアメリカのようになるわけがない、こういうことでありますけれども、しかし、そのことをわきに置いても、そのことを考慮しても、今の日本の米作農家の農地の規模というのは余りにも小さ過ぎる。だからこそ集約化による生産性向上というものが必要であって、そこを促すような政策を行わなければいけないのに、結果的にそうした方向性になっていない。こういうことを再三再四私たちは指摘させていただいているところであります。

 時間もちょっとなくなってきていますので、最後に二つの点をお伺いしたいと思います。

 先ほど、行政刷新会議規制・制度改革分科会の話をいたしましたけれども、そこで農協に対する独禁法の適用除外の見直しの議論が提起をされています。

 この独禁法の協同組合に対する適用除外というのは、大企業に対して零細の事業者が共同で事業を行っていく場合に、競争条件が不利にならないように、こういうことで独禁法の適用除外がある、こういうふうに思いますけれども、しかし、先ほど申し上げたように、農協というのは、農業、農村地域において極めてドミナントな役割を担っている。例えば肥料の販売なんかでいえば、七割が農協であって、民間会社よりもよほどよほど大変なシェアを持っているわけですね。また、市場のシェアでも、米で五〇%ですか、野菜でも五〇%、牛肉だと六割ぐらいになるんでしょうか、こういうふうになっている。こうしたものに対して独禁法の適用除外を引き続き認めていくというのが妥当なのかどうか、こういうことが言われている。

 そして、農業改革の観点から、今、例えば志ある農業者が、新しい農協をつくろうじゃないか、こういうことをしようとしたときに、地域の中で重複をする農協をつくろうとすると、今は既存のJAと事前協議をしなければいけない。この既存の事業者に対して私たちは新規に旗上げするから認めてくださいと言ったって、できるはずがないじゃないか、こういう話であって、この協議規定を見直すべきではないか、こうした議論が行われています。

 JA、農協も、そうした多様な事業者と同じイコールフッティングで競争をし、そして、農業者に対してもっともっとレベルの高い、質の高いサービスを行っていく。今が悪いと言っているわけではありませんけれども、さらに競争による向上を目指していく、こうした観点でこのような規制の見直しは私は考える必要があるのではないかというふうに思いますが、農林水産省としての見解をお伺いをしたいと思います。

篠原副大臣 柿澤委員冒頭触れられましたとおり、日本の農協は、ほかの農協と違いまして、総合農協というユニークなものでございます。これは日本社会独特のものでして、隣近所助け合っていこうと。というのは、横のきずなを強めて、そしてみんな仲よくしていこうというそういったマインドを持った日本人にはぴったしの制度ではないかと私は思います。しかし改革はしていかなきゃならない。

 二つの点を御指摘になりました。

 まず、新規の農協の設立についてでございますけれども、規制・制度改革に係る対処方針の中でこの問題が指摘されております。農協中央会協議というのがございますけれども、これにつきましては、多様な組合が設立されてしかるべきでございますし、要件を緩和して、こういった協議なしに組合が設立できるようにしたいと思っております。

 それから、二つ目の独禁法の適用除外でございますけれども、これについては、肥料の販売七割ということでございましたけれども、依然として農家は零細です。ですから、肥料に限らず、農薬その他生活資材の共同購入という面では必要ですし、何よりも、生産物、これを販売するのに一軒一軒販売するわけにはまいりません。そういった関係で農協は、私は農村地域社会には必要不可欠なものではないかと思います。それを一般企業と同じように扱うわけにはいきませんので、当初から独占禁止法の適用除外になっているのではないかと思います。

 ただ、程度の問題がありますので、公正取引委員会で今実態の把握、検証をしております。ですけれども、私は、基本的には、農協、漁協、森林組合等は適用除外があってしかるべきだと考えております。

柿澤分科員 時間も参りましたのでちょっと残余の質問は割愛させていただきますけれども、いろいろと議論をさせていただきましてありがとうございました。

 以上です。ありがとうございました。

高井主査 これにて柿澤未途君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

高井主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑予定者の出席が得られません。

 事務局を通して出席を要請させていただきますので、しばらくお待ちください。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

高井主査 速記を起こしてください。

 御出席を要請いたさせましたが、御出席が得られません。やむを得ず議事を進めます。

 質疑を続行いたします。柴橋正直君。

柴橋分科員 民主党の柴橋正直でございます。

 今、立法府たる国会が、本当に国民の皆さんの期待にこたえる政策を実現できているのか、あるいはそれに対するしっかりとした審議ができているのか、私は、このことが問われているというふうに思います。国会の本来の使命を取り戻して、国民の皆さんの負託にこたえるという問題意識を共有させていただきまして、私の質問に入ります。

 私の選挙区があります岐阜県には、オグリキャップで有名な笠松競馬がございます。競馬関係者だけでも八百名、御家族を入れますと、三千名を超える方が競馬によって生計を立てておられる地域でもございます。

 まず初めに、地域の雇用、経済の面から、地方競馬をどのように認識しておられるか、大臣にお伺いをしたいと思います。

鹿野国務大臣 今、委員の方から、笠松競馬、オグリキャップのお話が出されたわけでありますけれども、オグリキャップ、中央競馬での活躍もこの頭に浮かんでくるような感じであります。

 そういう中で、まさしく地方競馬は、調教師なり、騎手なり、あるいは厩務員などの厩舎関係の人たち、あるいは競馬開催時の従事員の雇用の場の創造、こういうことになるわけでありますけれども、そのほかに、競馬場内の飲食業や地域の商店街の活性化など、地域経済には大きく寄与しているのではないか、こういうふうな認識を持っておるところであります。

柴橋分科員 ありがとうございます。

 大臣の地方競馬に対する御所見をお伺いした上で、一号交付金についてお伺いをしたいと思います。

 笠松競馬は、全国の地方競馬と同様に、大変厳しい経営を余儀なくされております。実は岐阜県では、笠松競馬経営問題検討委員会によって事業の廃止が一時提言をされたわけでありますけれども、税金で赤字補てんをしない、こういう前提で事業の継続をするということになっております。そんな中で、厩務員や従事員の皆さんの給与をカットしたり、あるいは賞金のカットというところにまで踏み込んで、みずから身を切る努力をしながら事業継続に全力を傾けているところでございます。

 実は現在、交付金猶予制度を設けていただきまして、平成十七年から二十一年までまず猶予をしていただき、さらに、平成二十二年から三年間、猶予を認めていただいております。現在の笠松競馬の厳しい経営状況を勘案しますと、利益ではなくて売り上げに対してかかる一号交付金の納付でさえも、今後の事業継続には大変大きな負担としてのしかかってくるわけでございまして、ここで大臣にお伺いをしたいわけであります。

 笠松競馬は現在、現状でいきますと、平成二十五年からの十年間で、通常の交付金と、これまで猶予をしていただいていた交付金、これを合わせて納付をしなければならないということになっております。既に岐阜県の古田肇知事からも大臣に御要望させていただいておりますけれども、ぜひ赤字の場合については、この一号交付金の納付を、免除も含めて新しい制度をつくる、このことをぜひ御検討いただきたいと思うんですが、大臣の御所見をお伺いいたします。

鹿野国務大臣 今委員からの御指摘の件につきましては、地方競馬主催者は、競馬法に基づきまして、刑法の特例として競馬事業を行う前提として、馬券売り上げの水準に応じて、地方競馬全国協会に対して交付金を交付するということにされております。現行の競馬法上、収支が不均衡で交付金の交付が困難な主催者を対象といたしまして、交付金の猶予制度が設けられているところでございます。

 そういう中で、過般、古田知事からも、お話しのとおりに、いろいろ要請、要望も賜っているところでございますけれども、交付金の免除制度につきましては、今後、交付金の取り扱いを検討する際に、いろいろな選択肢の一つとして検討してまいりたい、このように考えておるところでございます。

柴橋分科員 ありがとうございます。

 ぜひ、今力強く、この免除の制度についても選択肢の一つということで大臣に御答弁をいただきました。

 地元の皆さんも、本当に雇用の面で、また地域経済の面で大変大きな役割を笠松競馬は担っておりますので、ぜひこれからも、身を切る努力は継続してやりますけれども、制度そのものによって競馬事業が存続できないということにならないように、農水省からも力強い御支援と大胆な改革をお願いしたいというふうに思います。

 大臣、この後も、お時間ということでありますから、引き続き副大臣に答弁をお願いしたいというふうに思います。よろしくお願いします。

 次に、卸売市場についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 実は、地域の食の安心、安全を守っている卸売市場の役割というのは、大変重要であるというのは共有をしていただけるところだというふうに思います。私も、初競りなんかにもよく、毎年お邪魔をするわけですが、本当に日の出前から、寒い季節問わず働いておられる皆さんの御努力に大変敬意を表するところであります。

 そこでお伺いしたいのですが、今般、第九次の卸売市場整備基本方針によって、中央拠点市場とその他の卸売市場に区別をする、こういう方針が出されておりますけれども、その初競りにお邪魔をしたところ、岐阜中央卸売市場の皆様、市場関係者あるいは自治体の皆さんから、将来に対して大変不安である、こんな声をお伺いいたしました。

 そこで副大臣にお伺いをするのですが、今般出されたこの基本方針というのは、将来どういう市場のビジョンというものを掲げておられるのか、また、市場の関係者が大変懸念をしておられるように、この拠点市場に入らないということになった場合に、中央卸売市場という中でどんどん淘汰をされていってしまうんじゃないか、そういうねらいが農水省の中にあるんじゃないか、こんな疑問も現場では生じております。ぜひ答弁をお願いしたいと思います。

筒井副大臣 委員おっしゃるように、第九次の卸売市場整備基本方針で、中央拠点市場と中央卸売市場、これを区分するということを方針として打ち立てました。その基準は、売上高とか、あるいは区域外部の出荷の割合とか、これらによって定めたものでございます。

 そこまではまさに委員のおっしゃるとおりでございますが、中央卸売市場をこれからどういうふうに扱っていくんだ、それについての不安があるという点に関しましては、全く不安を持たないでいただきたいということでございます。

 これは、中央拠点市場のもとで、中央卸売市場と全国的なネットワークをつくって、それぞれ任務分担、役割分担をして、それぞれをもっと効率化してきちんとした経営体質に変えていくというのが目的でございますから、中央卸売市場をこれからなくしていくんだとか、そういう方向性は一切ありません。

 その証拠に、補助金の支給等に関しましては施設ごとに決めておりまして、ほとんどの補助金の項目は、中央拠点市場と中央卸売市場と全く同じ割合で支給するわけでございますから、まさに全国的なネットワークをつくって、全体として効率のいい市場をつくっていこう、そういう目的に基づくものでございます。

柴橋分科員 ありがとうございます。

 ぜひ、そういったメッセージがまだ十分に市場関係者に伝わっていないように思いますので、我が民主党政権として、この卸売市場についてしっかりと応援をしていくんだ、よりよいものにしていくんだということを伝え続けていっていただきたいと思います。また、行政の現場からも、逐一丁寧な説明をしていただきまして、市場関係者あるいは自治体の皆さんの安心というものを実現していっていただきたいというふうに思います。

 その中でもう一つ、現場から懸念材料をいただいたわけでありますが、今回の方針にのっとれば、私どもの岐阜の中央卸売市場というのは、まだ決まったわけではありませんが、基本方針に掲げた水準に照らし合わせますと、青果は中央拠点市場に該当いたしますけれども、水産については該当しないということになっております。今、岐阜の卸売市場というのは、一つ屋根の下で青果と水産というものが併存をしているような仕組みになっているわけであります。

 そこで、二点お伺いをしたいんです。

 まず、この青果と水産が別の市場というものに区分をされたときに、市場の事務所でありますとか、今、企業会計にのっとって会計というものをやっておりますけれども、こういった会計基準というものも変わってしまうのか。この点が一点、疑問が出ております。

 もう一点は、仮に今、もう四十年ぐらいたって随分古くなっておりますので、改築をしよう、あるいは新しいところに移転をしようといったときに、水産と青果が違う区分になっておりますので、補助率が違う等の問題が出てきますけれども、そういったときにも、改築あるいは移転について、この区分が違うということが問題にならないのか。この二点についてお伺いをしたいと思います。

筒井副大臣 最初に、補助率の点は、先ほども申し上げましたので、ほんの一部の、駐車場等々の問題を除けば、あとの補助率は全く一緒でございますから、懸念されているような問題は起こらないと思います。

 それから、おっしゃるとおり、岐阜の市場は、青果の方は中央拠点市場に該当する、水産の方は中央卸売市場以下のところ、中央卸売市場になるかと思いますが、そちらの方に該当するというふうな見込みでございます。

 ただ、今現実として、水産と青果が同じ屋根の下にあるようでございますが、全くそれぞれ別々にやっておられるでしょう。そして、今までやってきた会計基準とか会計のやり方とか、それらを根本から変えるような、そんなことは要求していないわけでございますから、この中央拠点市場に一方は指定されて、もう一方はそれに指定されないことによる不都合さも生じないというふうに判断をしております。

柴橋分科員 ありがとうございます。

 ぜひ、私も、今回初競りに行きまして、そういった懸念を初めてお伺いをしたのでありますが、そういった心配は一切ないということを私も伝えていきますし、また、現場からもいろいろな問い合わせがありましたら、丁寧にお答えをいただきますようにお願いしたいというふうに思います。

 最後に、こういった卸売市場に対する支援策についてお伺いをしたいわけであります。

 ネットワークをつくって効率よくやっていくということは大事でありますけれども、さはさりながら、やはり地方も人口が減ってきている。こういったいろいろな問題を抱える中で、大変流通量も減ってきているところがございます。

 そういった中で、この卸売市場に対して、農水省としてどのような支援策を現在講じておられるのか、副大臣にお伺いをしたいと思います。

筒井副大臣 今度の基本方針に基づく、先ほど申し上げました区分けも支援策の一つだと考えておりまして、まさに市場の経営、運営の効率化を図っていく、それは支援にもなるというふうに思っております。

 それから、先ほどから申し上げておりますいろいろな施設についての補助率、これもきちんと設定をして、支援体制をこれからも継続していくわけでございまして、特に、これからはコールドチェーンの体制の確立というのが市場運営にとって極めて重要で、それは、生産の段階から消費に至るまでの段階をすべて網羅しなければならない。このコールドチェーン体制の確立にも重点を置いて支援をしていきたいというふうに考えております。

柴橋分科員 大臣、副大臣、ありがとうございました。

 本当に、地方都市が抱える課題というのは、競馬それから卸売市場、これは象徴的な問題として今般取り上げさせていただきまして、いずれにしても、戦後の高度成長から四十年ぐらいたって、皆それぞれ、地方競馬のあり方あるいは卸売市場のあり方そのものが大変今曲がり角に来ている、こんなふうに思っております。

 ただ、さはさりながら、それを今のまま放置をするとかあるいは廃止をする、これもまた地域に大変大きな影響がございますので、これからも私は地方の代表として守っていきたいと思いますし、そういった視点でこれからも農林水産行政に当たっていただきますように、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 次に、近藤副大臣に、環境省についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 私からは、PCBの処理についてお伺いをいたします。

 過去、PCBの毒性というのが大変社会問題化をいたしまして、政府を中心に処理を進めてこられました。ところが、今、当初の計画どおりこのPCBの処理が進んでおりませんで、産業界にとりましても、PCBの処理コストあるいは管理コストというのが大変大きくなってきているところでございます。

 今、PCB特措法がございますけれども、平成十三年の制定時には、附則第二条において「政府は、この法律の施行後十年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」というふうにされております。

 ちょうどことしの七月が、十年経過後見直しの時期に当たるわけでございますけれども、現在の見直しの見通しについてお伺いをしたいと思います。

近藤副大臣 御質問ありがとうございます。

 柴橋議員におかれましては、PCBのこの問題にも大きな関心を寄せていただいて、いろいろと地域の皆さんの不安、あるいは、このことを処理していくことに対する見通しに対する懸念といいましょうか、そういう声を受けとめて、きょう御質問いただいているんだと思います。

 御指摘いただきましたように、平成十三年の七月に特措法をつくった。そして、その第二条で、十年を経過した場合において、検討を加え、必要な措置を講ずる、こういうふうになっているわけであります。

 御承知のとおり、PCBの廃棄物は、PCBを使用した高圧トランス等、そして、その他安定器や感圧複写紙等の汚染物等、また、PCB特措法施行後にその存在が明らかとなりました微量PCB汚染廃電気機器等の三つに大別をされておるわけであります。それぞれについて、環境省としても鋭意取り組みを進めているところであります。

 ちょうど十年に当たるこのときに、さまざまな観点からその検討を踏まえ、適正かつ、そして地域の皆さんあるいは関係の皆さんに安心していただける、そういう処理の推進のために必要な措置を講じてまいりたい、このことについて準備をしているところであります。

柴橋分科員 ぜひ、ちょうど十年経過後でありますから見直しをしていただきたいと思いますが、これからの議論の中で、少しそのことも踏まえて質問をさせていただきます。

 このPCB特措法の施行令には、平成二十八年までのPCB処理を義務づけるというふうにされております。

 現在のPCB廃棄物基本計画の中に、JESCOを処理機関とするというふうに書かれておりますけれども、私が調べましたところ、平成二十二年三月時点のJESCOの全社における処理進捗率というのがございまして、トランス類では二五・四%、コンデンサー類では一九・八%であるという状況でございます。

 また、全国で五カ所事業所がございますが、東京事業所は現在まだめどが立っていないというふうに聞いておりますし、また、豊田の事業所もことしの一月から停止中である、こんなふうにお伺いをしております。

 こういう状況で、果たして平成二十八年までにPCBの処理は可能であるというふうに考えておられるのか、御所見をお伺いしたいと思います。

近藤副大臣 大変に重要な質問をいただいております。

 平成二十八年を目途として、環境省としても鋭意努力をしているところであります。

 ただ、今御指摘もいただきましたように、今抱えている現時点での課題、そしてまた、この処理をするに当たっては、環境省としても、政府としても、早くから処理施設をつくるということを計画を立ててきた。ただ、今冒頭の質問の中にも御指摘もありましたように、かつて大変にこのPCBに関する悲しい事故といいましょうか事件というか、ことが起こり、地域の皆さんにとっても不安を感じる施設、もちろん、その不安を払拭するために私どもも努力をしてきているわけでありますが、なかなか、どうしても理解が進まないところもありました。そういう中で、やっとJESCOを通じて処理を行ってきた。ただ、ここでも、今御指摘をいただいたことについては、課題としてはあるわけであります。

 私どもとしましては、このJESCOの処理を通じて、二十八年に向けて本格的に今努力をさせていただいているところであります。

 また今、高圧トランス、またコンデンサーについての御指摘もありましたけれども、法施行後に明らかになりました微量PCB汚染廃電気機器等についても、民間の協力を得ながら徐々に整備が進んできたというところであります。

 環境省としては、安全性、また住民の皆さんの声に十分な配慮をしつつ、これを何とか二十八年に向けてしっかりと処理する、この努力をしていく、今鋭意努力をしているところであります。

柴橋分科員 この後、少しこのJESCOの実態についてもお話をさせていただきたいと思うんですが、JESCOが平成二十二年の一月に安定器の処理単価を改定いたしまして、これは大変びっくりするぐらいの値上げであります。

 東京事業所での処理単価は、キログラム当たり千八百十円だったものが二万九千四百円に値上げをされました。世の中、デフレ、デフレと言われておりますが、ハイパーインフレに近いような値上げということになっております。それから、平成二十二年三月末の決算においては、当期純損失が百七十億五千四百万円でありますし、五百二十八億三千五百万円の債務超過という状況に現在ございます。

 そうした中で、私から二点お伺いをしたいんです。

 一点目は、このJESCOというのは国の全額出資でございますけれども、こうした純損失が続き、また債務超過も大変大きなものになっておりますけれども、今後の税金投入という可能性は、このPCBの処理を迅速に行うに当たって検討しておられるのかどうかが一点目。

 もう一点は、先ほど、十年経過をめどに見直しをしなければならないというところでありますけれども、ちょうど平成二十八年までに実現可能かどうか、努力をしたいというところもお話をいただきました。

 私はぜひ御提案をしたいんですが、そういったまさに処理単価をどんどん引き上げていったとしても、現在、債務超過が続いておりますし、大変処理も進んでいっていない、事業所も停止しているところもある、こういう中においては、JESCOにこだわらずに民間の力もおかりをして、PCB処理を進めるべく抜本的なPCB処理体制の改革というものを、あくまでも平成二十八年までにこの世の中からPCBをなくするというところを掲げ続けるならば、そういったことも検討をしてはどうかと。

 あるいは、平成二十八年という目標を見直しして、改めて、いつまでにこのPCBというものをきっちりと処理する、これを、この年のちょうど七月に十年経過後見直しという時期がやってきますので、そこでしっかりと国民の皆さんに、あるいはPCBを抱えて大変苦労しておられる産業界の皆さんに、政治としてメッセージを発信していただければどうかというふうに思うんですけれども、近藤副大臣の御所見をお願いいたします。

近藤副大臣 柴橋議員におかれましては、本当に重要な質問だというふうに思います。

 昨年末、税制の調査会がございました。私もメンバーの一人として出席をさせていただきました。その中で、PCB処理をするその施設に対する税の優遇制度ということの議論もあったわけであります。正直言って、なかなかそうした措置の延長に対してはいろいろな意見がやはりつきました。それはやはり、処理施設の設立というものが随分遅いのではないか、そのことについては私も大変に懸念をし、また、環境省の担当者とも話をしてまいりまして、二十八年度にしっかりとこうした施設をつくっていくための努力をもうする、していくというところであります。

 ただ、その中で私も、やはり先ほど来からも柴橋議員におかれましても指摘がありましたように、住民の皆さんの中でもそういう不安感がある。そういう中で、努力はしてきたけれどもなかなか難しいというところもあったのも一面であったと思います。だからといってそれでいいというわけではありませんが。ですから、環境省としても、このことは何とか二十八年度に向けてやっていく。もちろん、そのときまでにできなかったら等々の仮定、仮定というか予測はあるわけでありますが、環境省といたしましては二十八年度を目指してやっていく。

 そしてまた、御指摘のありました民間の参入の部分については、もちろん、我々も当初から、民間にも御参加をいただいてこの処理を進めていく、こういう考えであったわけであります。ただ、現実の問題としてなかなか難しかった。

 そういう中で、PCB特措法を制定して、JESCOを活用していく、活用して何とか処理をしていこうということであります。ただ、その過程で時間も経過がするところもありまして、なかなか当初のようにJESCOの処理も進んでこなかった。そういう中で、だからといって簡単に単価を上げていいのかということではありますけれども、ただ一方で、これは安心、安全に処理していくというところでいえば、やむを得ないとは申し上げませんけれども、そういう状況が出てきてしまったということであります。

 そういう意味では、環境省としても、この民間の施設の参加については、システムとしては、地元の自治体が許可することによって民間の参入の方法、道はあるわけでございまして、そういう意味では、きちっとした処理をする、住民の皆さんとも、きちっとした地元理解も得られる、そうした民間の事業者さんが参入してこうした処理をしていただく、このことについては進めていただきたいと思っています。

 ただ、これはやはり、今申し上げたように、非常に我々も慎重に進めてきたことでありまして、そうした道は開かせていただいておりますが、確かに厳しい条件がついているというのは間違いないところだと思っております。

柴橋分科員 ありがとうございます。

 ちょうどこのPCB廃棄物処理基本計画というところに、JESCOを処理機関とするというふうに明記をされておりまして、それが都道府県に右へ倣えで、みんなJESCOを処理機関にするということになっておりますので、実質JESCO以外はできないというのが現状になっております。

 ですから、それは実質でありますので、本当に二十八年までにやるということならば、この処理基本計画の中に、JESCOを処理機関とするというような書き方ではなくて、もちろん技術等の問題があるわけですし、地元の皆さんの御理解が得られなければそれは設置はできませんが、JESCO以外のところについても地方自治体に大いに検討していただいていいんだ、参入していただいていいんだ、こういう環境省からのメッセージを出していただくのが、本当の意味で平成二十八年までにPCBを処理ができる、私はこのように思っております。

 先日いろいろと質問レク等でお話をしましたら、では、平成二十三年度、平成二十四年度と毎年これぐらいこの事業所で処理をして、だから二十八年度までに完全に処理ができるというものをきちっと数字で出せますかということを問い合わせていただきました。出せないというのが答えであります。

 ですから、努力はされるけれども、しかし現実にはそれだけの今能力がなくてできないという現状ですので、ぜひ近藤副大臣に御決断をいただいて、ちょうどこの見直しの時期に産業界を含めてまたいろいろな議論になると思いますので、前向きに、いい方向にこの処理ができるように体制の見直しをお願いしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

高井主査 これにて柴橋正直君の質疑は終了いたしました。

 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺分科員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 末松副大臣の到着もおくれているようでありますので、最初に、諫早湾干拓事業の問題について大臣に伺っていきます。

 二〇〇八年六月、佐賀地裁が干拓事業と漁業被害との関連を認め、さらに二〇一〇年十二月に、福岡高裁も佐賀地裁の一審判決を支持して、三年以内、五年間の潮受け堤防排水門の開放を国側に命じる判決を出しました。国側も上告をせずに、この判決は認定したわけであります。国はいわば開門を義務づけられたわけでありますが、三年以内の開門に向けてどのように取り組むつもりですか。

鹿野国務大臣 今先生御指摘のように、福岡高裁判決、三年以内の開門に向けて対応するように、こういうような内容であります。

 開門によりましてまず何といっても長崎県関係者の方々に不利益を強いることがないよう、関係者の方々の不安や懸念に真摯におこたえをしていくということが大変重要なことだと、こういうふうに認識をいたしております。

 そこで、開門に当たりましては、本年五月の環境アセスメントの結果素案が取りまとめられるということを踏まえまして、防災上、営農上、また、漁業への影響というものを十分配慮しながら、長崎県の方々の理解と協力が得られるように努力をしてまいりたいと思っております。

 そういう意味で、一月の二十三日、長崎県を訪れまして、長崎県の知事初め関係者の皆様方にお会いをいたしまして、これまでの経緯等について報告もさせていただき、話し合いを行ったところでございますけれども、引き続き誠心誠意取り組んでまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。

赤嶺分科員 いろいろな意見や思いを持つ長崎県側の不安の解消をするために、話し合いをするということはこれは必要なことであります。

 しかし、同時に、被害を受けてきた漁民にとって、開門の確固たる見通しがないと安心できないわけですね。いわば、この因果関係も明確になってきている。さらにこの三月には、長崎地裁での諫早湾沿岸三漁協を原告団とする裁判も起きるわけですね。この判決では、さらに国にとって厳しい判決が出るんじゃないか。もう因果関係、諫早湾沿岸だと非常に明確になるわけですから、その場合には即時開門という判決になるかもしれないわけですよね。開門を求める大きな流れはいよいよ広がっていくばかりであります。

 そのときに、長崎県側と話し合ってとか長崎県側の理解を得てと言っても、漁民の側には、必要なことではあるんだが、では開門に向けて具体的にどうするんだと。アセスと言うけれども、アセスというのはかなり長い期間やらなきゃいけない。そういうことともかかわって、展望が開かれてこないわけですね。それについてはいかがですか。

鹿野国務大臣 実際に今実施しておるところの環境アセスメントにおきましては、開門に伴って、農業生産なり、あるいは背後地の防災なり、あるいは漁業生産などにどのような影響が生じるかということについて調査、予測、評価を実施しているわけでありまして、そして当然のことながら、必要に応じて、その影響を解消するなり低減するための措置についてもこれは検討していかなきゃならないということであります。

 すなわち、客観的な根拠というふうなものが必要になってくるのではないか、こういうような考え方から、重ねて申し上げますけれども、開門に当たりましては、この環境アセスメントの結果というものを踏まえて、防災、営農、漁業への影響に十分配慮して、開門の方法なり時期なり期間について話し合いを関係者の方々とさせていただき、そして、できるだけの事前対策というものを講じることによって長崎県関係者の理解と協力が得られるように、誠意を持って取り組んでいかなければならない、このように考えておるところでございます。

赤嶺分科員 今の状況の認識を一致させたいんですが、三月には長崎地裁の新たな、これはもう即時開門の判決になる可能性があります。皆さんは五月までに素案を出す。一方では、長崎県側では、いわば開門を阻止する訴訟、これも準備しているやに聞いておりますが、理解を求める、理解を求めると言っても、こういうものが絡まってくると事態はより複雑になるんじゃないかという認識を持っているんですが、この点いかがですか。

鹿野国務大臣 ただ、私どもといたしましては、いろいろな御指摘がありますけれども、とにかく、開門というようなことに当たってどういう影響があるか、あるいは防災上どういうふうな状況になるか、また、漁業生産についてどういう変化や影響があるかというのは、重ねて申し上げますけれども、当然、調査なり予測なりというふうなものをこれは実施していかなきゃならないわけでありまして、そういう状況を踏まえて対策というものを講じていかなければならないわけでありますから、そういう意味で、五月の時点におけるこの環境アセスメントの素案というものを踏まえて、今後、長崎県側とも誠心誠意話し合っていかなきゃならないというふうなことを重ねて申し上げさせていただきたいと思います。

赤嶺分科員 国が開門に後ろ向きの姿勢をとっているときも、いわば、背後地の災害やあるいは農地の問題などが挙げられていたわけですね。

 それで、一体その干拓農地はどうなっているかと思いまして、この間、現場を見てまいりました。森山地域や吾妻地域、こういうところも行ってきたわけですが、防水のための排水ポンプが非常に老朽化している。そして、干拓地で水の被害から農地を守ることが農民にとってどんなに大変な御苦労を伴うものであるかという話も聞いてまいりました。

 この地域における災害は、いわばこの諫早干拓事業の完成によっても、災害そのものは繰り返されているわけですね、湛水被害等も。むしろ、現場に行きますと、こういう古くなった排水処理施設や排水ポンプなどの近代化が、アセスとは無関係に直ちに着手した方が、いわば長崎県側は安心して開門に理解を示せることになるんじゃないかとこのように思いましたけれども、いかがですか。

鹿野国務大臣 この開門の前にできることをやったらどうか、こういうような先生の御指摘でありますけれども、基本的に、これは同じことの繰り返しでありますけれども、私も現場を見せていただきました、そしてまた、関係の方々との率直なる意見交換もやってまいったわけでありますけれども、非常に重要な問題というふうなものの指摘、あるいはこの目で確かめる中で、どうしても、今日の環境アセスメントのこの影響評価というふうなものの素案をまとめたものをやはり基本としていろいろな対策を講じていくというふうなことの必要性を感じておるわけでありまして、そこはぜひ関係者の方々にも御理解をいただくというようなことで、今後、誠心誠意取り組んでいかなきゃならない問題だという認識を持っておりますということを申し上げさせていただきたいと思います。

赤嶺分科員 老朽化した施設をいつまでも見せられて、そして、アセスで素案が出たらと言って実際の具体的な解決の道筋を示さないところに不安を高じさせて、一方ではそういう開門を阻止する訴訟を起こそうなどという話にもなっていくわけですよ。

 私、この問題は非常に大事だなと思いましたのは、平成二十一年五月十一日の参議院の決算委員会で我が党の当時の仁比聡平参議院議員も、この森山地区、吾妻地区の湛水被害、災害などについて、アセスと切り分けて直ちにその防災対策をとるべきじゃないかという質問をしているわけです。こう言っているわけですね。「これまで農林水産省が開門に後ろ向きの理由の一つとして挙げてきた背後低平地の排水不良や洪水時の湛水被害について」いろいろ聞いて、当時の政府参考人はこう答えているわけです。

 森山地区あるいは吾妻地区におきましては、かなり古い時代の排水機場、これは整備をされた経緯はございます。ただ、現在でも森山町、諫早市の森山地区を中心に標高が海抜ゼロメートル以下の農地が三百ヘクタール程度存在しているというふうに承知をしておりまして、現在、調整池の水位をマイナス一メートルで管理をしているわけでございますけれども、集中豪雨時等には調整池の水位が高くなって、他地域と比較して排水が滞ることがあるというふうに聞いております。こういった状況を改善するために、森山町の地先の農家を中心に排水改良のための事業の要望があるというふうに長崎県から聞いております。

 調整池の水位をマイナス一メートルに管理しても、集中豪雨が起きたら湛水被害が起きるんだと。だから、これはアセスの問題じゃないわけですよ。直ちに手をつけなきゃいけない。政府参考人もそのように答えて、やはり、集中豪雨が発生したら、その調整池の水を管理していても災害は起きる。起きるのであれば、これは一刻の猶予も待てないわけですから、アセスを待たずに手をつけるべきじゃないかと思うんです。

 そして皆さんは、裁判では、いわば防災対策、排水ポンプの設置などに三年かかるとおっしゃっているわけですよね。それで、三年後には開門ですよね。判決から五月の素案が出るまでやると、約半年経過するわけですよ。半年経過して二年半で、しかも、急がれている目前の湛水被害の解消、これもやらなきゃいけないのに、素案で素案でと言う。これじゃ間に合わないんじゃないですか。そして、実際に起きている被害に対する対策を急ぐことが長崎側の理解を得ることにつながるんじゃないですか。

鹿野国務大臣 高裁判決によりまして、三年以内に対応しなきゃならない、全くそのとおりでございます。ですから、当然これから、この三年以内にどう対応していくかというふうなことを前提として取り組んでいくというふうなことになるわけであります。

 また、今先生が御指摘の平成二十一年の決算委員会においては、やれるところはやったらいいじゃないか、要するに、そういう災害等というふうなものが起き得るというようなことの御指摘もございましたけれども、開門によってこの調整池がどうなるかというようなこと等々もすべて含めて、政府一体となって取り組んでいかなきゃならない大きな重要な問題でありますから、とにかく、客観的ないわゆる根拠というふうなものがやはりそこには必要となってくるわけでありますので、私どもとしては、この五月の環境アセスというふうなものの評価を踏まえて、素案というものができたものを踏まえて、今後の対応というふうなものを誠心誠意長崎県側とも話し合いをしながら取り組んでいかなきゃならない、こういうふうに考えておるところでございます。

赤嶺分科員 調整池をマイナス一メートルに管理していても、いわば諫早湾干拓事業の目的の一つであった防災ということにかかわっていっても、こういう管理をしても集中豪雨のときには湛水被害が非常にひどい。そして、その地域の排水ポンプは老朽化している。であれば、手をつけるのは、これは行政の本当に常識だと思います。このことを強く指摘しておきたいと思います。

 それで、アセスで開門の方法をいろいろ検討をしていらっしゃるようでありますが、原告団や弁護団が提案をしているのは、短期開門調査レベルの開門から開始する段階的開門だということをるる私たちも説明を受けておりますが、大臣も、原告や弁護団の主張はそのとおりだという認識でよろしいでしょうか。

鹿野国務大臣 今後のことにつきましては、環境アセスの評価というふうなものの素案を受けて、これから一つ一つ話し合いながら判断をしていかなきゃならないことではないかなと思っております。

赤嶺分科員 私が伺ったのは、いろいろ大臣がアセスを受けて素案を出してとばかり繰り返されておりますが、弁護団や原告団の開門に関する主張でいえば、短期開門調査レベルの開門から開始する段階的開門という認識と説明されているんですが、大臣も、そういう原告団の主張はそのとおりだというぐあいにお認めになりますかと聞いているわけです。

鹿野国務大臣 その開門の方法というふうなものについては、先ほど申し上げましたとおりに、時期なり方法なりあるいは期間なりをどうするかというふうなことは、当然のことながら、長崎県側とも今後誠心誠意話し合って取り組んでいかなきゃならないことだと思っております。

赤嶺分科員 いや、この裁判で、一番諫早湾の干拓事業で被害を受けているのは漁民ですよね。その漁民の皆さんが、段階的開門でいいから早くあけてほしいと言っている。それは、開門によって起こる長崎側のさまざまな問題についても、段階的な開門ということであれば懸念が払拭されるんじゃないかと思いますが、その点を聞いているんですが。

鹿野国務大臣 開門の方法については、即時開門とか、あるいはまた制限開門とか、今先生言われたとおりに段階的開門とかいうふうなことの中で、原告側が段階的な開門というものを求めておるということは、そのとおりだと思っております。

赤嶺分科員 その段階的開門というのは、背後地の農地に対する問題でも、二〇〇二年の短期開門調査で実証済みなわけですね。被害も起きなかった。漁場は回復した。いわば、二〇〇二年程度の短期開門調査であれば開門も問題ないという実際の結果が出ているわけです。

 環境アセスというのは環境を予測することですが、アセス法の中には、これまでのさまざまな文献の知見や、あるいは実際の実態の把握から生まれる知見あるいは検証されたもの、これは生かすべきだと、このように言っているわけですね。生かすことによって、今回のアセス、アセスと言っている問題についても、早期開門につながるやり方がとられるわけですよ。こういうものを生かして段階的開門を急ぐべきだと、このように思います。

 それを聞いても、アセスを見て素案が出てからだとこのようにおっしゃると思いますから、しかし、これは漁民の大変強い要望である。そして、あの地域が漁業によって栄え、活気ある町がつくられ、にぎわいがあった。それが干拓事業の後、宝の海が本当に漁業もできなくなる。漁民によっては自殺者も出る。そういう困難な中で裁判を起こしてやっと勝利した。漁業に希望が出てきた。未来がわいてきた。

 今まで開門に後ろ向きの姿勢でアセスを出してきたのは、自公政権のころであったとはいえ、政府の側であります。仮に長崎県でいろいろな意見が出てくるのであれば、その責任は漁民にはありません。漁民と農家を対立させてきた政府の手法にあります。政府は責任を持って三年後には開門をするんだ、この決意は大臣に示していただきたいんですが、いかがですか。

鹿野国務大臣 高裁判決を受けて上告しないというような判断に立ったということは、今後三年以内にその開門に向けて対応する、こういうことでございまして、それぞれ今先生申された漁業者の人たちの考え方、これはもう十分これらも配慮をしなきゃなりませんし、そして、そういう中で農業に対してどういう影響があるか、あるいは防災上どうであるか、そういうことを総合的に勘案をしながら、どういう形での開門をやっていくかということを、当然、関係者の方々と真摯に御相談をさせていただきながら取り組んでいかなきゃならないことだと思っております。

赤嶺分科員 それでは次に、沖縄農業、そしてTPP、EPAにかかわって質問したいと思います。

 最初に農水大臣にお聞きしますけれども、日豪のEPAの締結交渉が始まっております。報道ではいろいろあるわけですが、沖縄の農業関係者は、砂糖や畜産の自由化の拡大を大変懸念しておられます。

 今、日豪のEPA交渉、どんな交渉が行われているんですか。砂糖や畜産、沖縄農業にとって大事なものは当然除外品目の中に入っている、こういう理解でよろしいでしょうか。

鹿野国務大臣 日豪におけるところのEPAの交渉というものにつきましては、お互いが十カ月ぶりに話し合いがなされたということでございますので、その中で説明をし合ったというようなことの段階でございまして、交渉事でございますから、また具体的なことについて申し上げさせていただくことは控えなきゃならぬことでございますけれども、今先生申されたことについて、センシティブな品目についてはしっかりと配慮をしながらというような国会の決議もございますので、そういうものを念頭に置きながら今後とも取り組んでいかなきゃならないことだと思っております。

赤嶺分科員 念頭に置くだけじゃなくて、重要品目はきっぱり交渉に応じられないということを示してほしいと思うんですが。

 それで、EPAやTPP参加ということになりますと、沖縄は特にサトウキビが壊滅的な打撃を受けると言われております。

 そこで、事前に通告しておきましたけれども、沖縄の農業におけるサトウキビについて、大臣、この認識を聞かせていただきたいのですが。

鹿野国務大臣 今先生が御指摘になりましたサトウキビ、これにつきましては、沖縄にとっては極めて重要な産品であるというようなことも承知をいたしております。

 砂糖を含むところの重要品目がいろいろな意味で除外または再協議の対象となるよう交渉する、こういう農林水産委員会の決議というふうなものを十分念頭に置きながら今後事に当たっていきたい、このように考えておるところでございます。

赤嶺分科員 末松副大臣は離島にも行っていらっしゃいますのでよく御存じだと思いますが、まさに、サトウキビが打撃を受けると離島の地域経済はなくなってしまいます。何よりも、人がその島に住み続けられなくなる。今、尖閣列島の問題がクローズアップされておりますが、まさに、尖閣列島のような無人島になっても南西諸島はいいのかという話になるわけです。

 また、亜熱帯の地域において土壌を守るのは、サトウキビだと言われているんです。土を守っているんです。それから、沖縄の土壌を非常によくしていく、そういうのもサトウキビの役割。地力維持作物とも言われております。

 そのサトウキビがなくなるということは、経済的な打撃の大きさ、小ささの問題ではなくて、沖縄から農業そのものがなくなっていく、そういうものでありますから、そのサトウキビを守ることについてどこぞやらの外務大臣が、GDPのわずか一%じゃないかというような発言、国会でも沖縄でもやっておられますが、そんな、GDPに置きかえられる作物ではないんだということをぜひ認識していただきたいと思います。

 それで末松副大臣に伺いますが、沖縄のそのサトウキビからつくられる黒糖生産、これは離島地域の経済に重要な地位を占めております。ちょうどもう製糖期が始まっておりますけれども、本当に、離島の製糖工場の製糖の煙というんでしょうか、新しい黒砂糖の香りというんでしょうか、大変すばらしいものがあります。

 政府は今回、黒糖の定義を、サトウキビの搾り汁を煮沸し製造したものとして明確にしたわけですが、一方では、黒砂糖と表示している多様な商品が出回っている状況もあります。

 沖縄では、黒糖とはすなわちクルザーター、黒砂糖と同じ用語であります。沖縄産含みつ糖と輸入含みつ糖及び再製糖との表示区分を明確化するために、黒糖と黒砂糖は同義語であるとこのように定義してほしいという要望が沖縄側から上がっています。また、「加工黒糖においても原料原産国表示を規定すること」が沖縄側から求められております。それについてどんな考えをお持ちでしょうか。

末松副大臣 先生御指摘のように、黒糖につきまして厳格な定義がございます。今、先生おっしゃられましたけれども、定義として、「黒糖とは、さとうきびの搾り汁に中和、沈殿等による不純物の除去を行い、煮沸による濃縮を行った後、糖みつ分の分離等の加工を行わずに、冷却して製造した砂糖で、固形又は粉末状のもの」を言うということでございます。

 これの定義から考えまして、今、黒砂糖と先生おっしゃいましたけれども、黒砂糖の名称で流通している砂糖には二種類ございまして、先生が一番御存じと思いますけれども、釈迦に説法ですけれども、一番目は、サトウキビの搾り汁を分離、加工せずにそのまま煮固めたもの、これは黒糖と同じということでございますけれども、二番目に、黒糖とは異なる方法で製造された粗糖や糖みつなどを使用した砂糖、この両方がございます。

 このことについて今消費者庁が判断をしようとしているところでございますけれども、先生がおっしゃられたように、沖縄県からことし二月付で要請書が出されておりまして、これは、沖縄県、沖縄県農業協同組合中央会、沖縄県農業協同組合、沖縄県黒砂糖工業会、この団体が、「「黒糖」と「黒砂糖」は同義語であることを定義すること。」ということと同時に、「加工黒糖においても原料原産国表示を規定すること。」という要請をいただいていることも事実でございます。

 これを踏まえまして消費者庁において今検討しているわけでございますけれども、黒糖と黒砂糖が同義語であるかどうかについては、消費者庁の立場というものも検証しながらやっておりますので、そこの、消費者の認識度の調査とか、市販食品の表示実態調査、こういうことを今行いまして、ことしの三月中、年度内には結論を出すことにしております。沖縄県等の要請もしっかりと踏まえながら、消費者の立場からここは判断をしていきたいと思います。

 また、もう一点言われました、加工黒糖におきましても原料原産国を表示すべきだという見解についてでございますけれども、黒糖の含有量が半分以上の加工黒糖につきましては、原料原産地表示を義務化するよう現在手続を進めているところでございまして、最終段階にございます。これも、ことしの三月末までには措置を行うということでやっておるところでございます。

赤嶺分科員 もう時間がなくなりました。鳥インフルについても通告してありましたが、終わりたいと思うんです。

 ただ、鳥インフルは、私は生産農家と会ってきたんです。政府や県は防疫、防疫と言うけれども、どんなに防疫体制をしっかりしても鳥インフルは発生する。やはり感染ルートを解明してほしい。そして、殺処分した場合に、農家が再生産を安心してできるようなそういう仕組み、家伝法の改正ですね、それから、鳥を中心に町が成り立っています地域の商店街も疲弊しております。これらについても総合的な対策をとってほしいと宮崎県の生産者からも強く要望されてまいりました。

 要望を伝えるだけになってしまいましたが、大臣におかれても、よく検討をしてしっかり対策をとっていただきますように心よりお願いを申し上げまして、質問を終わります。

 以上です。

高井主査 これにて赤嶺政賢君の質疑は終了いたしました。

 次に、空本誠喜君。

空本分科員 民主党の空本誠喜でございます。

 本日は、中山間地域の再生のための予算に関連しまして、質問をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 さて、昔から、山が滅びれば海が滅びる、国が滅びると言われております。まさに日本は、松枯れ、また山の手入れができておりません。これによって森林が荒廃して、イノシシ、シカ、鳥獣の被害も急増しております。まさに山が滅びつつございます。その結果、農地も荒れまして、農業の崩壊の危機を迎える、中山間地域はさらに過疎化が進むという状況であり、瀕死の状態にございます。

 昨年三月三十日に、政治主導で、農業の最上位の基本計画たる食料・農業・農村基本計画が閣議決定されました。その際に、私も危機感からその見直しに参画をさせていただきました。

 水源の涵養能力、国土の保全、環境の保全、さまざまな多面的な機能を山、中山間地が持っている、それを再認識していただかなければならない、そういう思いで「森は海の恋人」というようなフレーズも見直しの中で入れさせていただきました。

 さらに、地元の中山間の農業者の方々から意見をしっかりと聞きまして、中山間直接支払い、そして農地、水、環境保全、さらには鳥獣対策を先輩の議員の皆さんから指導いただきながら私が見直しの担当をさせていただくことができました。

 こういう問題もあるんですが、さらにもう一点、中山間地域においては高齢化していまして、田んぼのあぜの草刈り、また地域の道の国道とか県道、町道、村道、こういったものも高齢者の方々が一生懸命刈っていらっしゃいます。高齢者の方々にとっては本当に重労働でございます。また、自分のポケットマネーを出して、本当に自分の財産を崩して地域を守っていただいておるというところであります。

 そういった意味で、まず中山間地域の方々の支援という面から、中山間地域を再生させるために平成二十三年度の予算案としてさまざまな対策を検討いただいておりますけれども、総論として、農水省としての御見解をいただきたいと思いますので、まずお願いいたします。

筒井副大臣 おっしゃるとおり、今、山は荒れている、極めて緊急の重要な問題だと思いますが、そのために農水省としていろいろな重要な柱立てをしております。

 今の質問の中になかったかもしれませんが、来年度、この四月から森林・林業に関する直接支払い制度、これを始めることにしているのは御存じのとおりでございまして、切り捨て間伐ではなくて搬出間伐であること等々を条件として森林整備をきちんと進めていく、これを目指しているわけでございまして、まさに荒れていることをなくしていく、これが大きな目的でございます。

 それと、中山間地の直接支払い制度、これも引き続いて行っていく、これも委員御存じのとおりだと思います。

 今、中山間地だけではなくて、地方の市街地までも被害が及んでいるのが鳥獣被害でございまして、これについても今まで以上の予算をつけてきちんと対応していく、そして、この前、鳥獣被害防止特別措置法ができて、まさに現場の市町村の判断でいろいろなことが今まで以上にできるというふうな、そういう改正もしたところでございまして、これもきちんとやっていくこと、これも必要なことだと思っております。

 さらには、所得補償とは直接支払い制度と並ぶものでございますが、六次産業化路線も今の農政三本柱の一つとして位置づけておりますが、この六次産業化路線も中山間地、山村の再生に大きく効果を発揮する政策であるというふうに思っております。食料品の加工とか販売、これに農業者が直接取り組むだけではなくて、特に限界集落とか中山間地に行けばたくさんあります植物、稲わらとか間伐材とか雑草とか、これらを資源として活用して、バイオマテリアルやバイオマス発電あるいはバイオ燃料、これらをつくる事業を新しく起こしていく、これらについても支援をしていくということも六次産業化の重要な柱として出しておりますから、これは限界集落の解消や中山間地の活性化にも大きな効果を発揮する、こういうふうに考えております。

空本分科員 確かに、ことしは本当に充実した鳥獣対策とかをさせていただいておりまして、中山間地域にとっては大変ありがたいと思います。そういった意味で、先ほどバイオエタノールとかバイオプラスチックとか、さらなる、農水省だけではなくて経産省、他の省庁とも連携してしっかりとそういう新しい産業の創出をお願いしたいと思っております。

 またもう一点、民主党はコンクリートから人へということでうたっておりますが、やはり山の再生、山の手入れというものは、一部コンクリートが入ってまいります。無駄なコンクリートは省いて必要なコンクリート、そして人へという形での政策をしっかりお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

 それでは次に、中山間地域を守るためには米づくりについてもしっかりと支援をしていかなければならないと思います。

 先ほど来、中山間地域の直接支払いでございますが、私が今住んでおります広島県においては、生産コストが高いんですね。平成二十年産米で、六十キロ当たり全国平均一万六千四百九十七円ですが、広島県では生産コストが一万八千八百六十七円、二千三百七十円も高くなっています。それは、中山間地域は直接支払い等で面倒を見ていただけるということであろうと思うんですが、一方、また、圃場整備とか法人化も進めておりますけれども、やはり作付面積の拡大には限界があります。そういった中で、広島県は全国平均で見ても五五%ぐらいの作付面積しかございません。また、法人化しても、耕運機とかコンバイン、乾燥機、こういった農業機械の買いかえというのも大変厳しい、高齢化する中で買いかえはすごく財政的に厳しいという状況にあります。

 また、鳥獣の被害で、農業共済もございますけれども、被害の対策を打たなければならない、労力をかけなきゃいけない、本当に農家の方々が困っていらっしゃる。

 今、中山間地域の生産コストに戸別所得補償制度だけではなくさまざまな施策で対応いただいておると思うんですけれども、これが十分なのかどうか。私自身、やはりまだ十分じゃないと思うんですね。先ほど申し上げましたが、道路の草刈りとか、こういったものを自前でやっていらっしゃいます。こういった中で、やはり財政的には厳しいところもございますけれども、さらには農機具のリースなどに対する支援政策、こういったものもさらに充実していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

筒井副大臣 おっしゃるとおりでございまして、特に、中山間地の農業をきちんとやっていくためには、一つは、生産コストの削減という課題があるわけですが、これをやるための規模拡大、なかなか難しいところがあることは今御指摘のとおりでございます。

 ただ、例えば棚田についても、機械が入れるような基盤整備、それを行う必要性はある。そして、そんなに大型の機械はそもそも使えないと思いますが、機械を導入した場合にそれに対する補助制度が必要である。今、機械リースについての補助制度を始めていることはもう委員も御存じのとおりだと思います。機械をリースする際に、その機械代の半額を一括して支援する、そして農家の方はその残った半額についてのリース料金だけ払えばいい、こういう支援制度をやっているわけでございます。

 それと、今言われました、田んぼや道路のあぜ道の草刈りとか、そういうことに関しましては、中山間地の直接支払い制度とかそれから農地・水保全向上対策、中山間地の場合はこれが二重に支給されますから、それらの共同活動に対しましての支援制度として使っていただきたいというふうに思っているわけです。

 それともう一点、中山間地は非常に厳しい生産条件でございますが、有機農業を初めとした環境保全型農業をやるには適した面もございます。

 環境保全型農業は、安全性と味、食味を向上するのに必要かつ最適なやり方でございまして、それをやることによって、環境保全型農業をやることに対しての支援も御存じのとおり設置をしているわけでございます。

 同時に、環境保全型農業をやった場合に、安全性とか味とか、これがいいんだということを認証するような仕組み、今も一部ございますが、これはまだ完全に十分とは言えないと思いますので、それらをさらに充実させて、中山間地の米が、稲作が高く売れる、こういう状況に対する支援体制もさらにこれから強化をしていきたいというふうに考えております。

空本分科員 ありがとうございます。

 中山間地域の直接支払い、従来決めた地域でも、多少地域の不公平感があるところ、公平でない地域がございます。県が決めている地域、その場合、緩傾斜地域、そういったところは対象にならないとかいろいろそういうものもありまして、そういったところで地域からは、同じような環境なんだけれども多少違うというものがございます。その辺、またいろいろなところでお話をさせていただければありがたいと思いますので、よろしくお願いします。

 また、農機具も、一時期にリースが一括で行われるということもございまして、農機具が足りないということもお聞きしております。そういったことに関してもちょっとお考えいただければ、今後、ありがたいかなと思います。

 それともう一点、農家の方々は、いつ、幾ら入るかというのが一番の根本です。今回の戸別所得補償制度の中でも、農家の皆さんが、いつ、幾ら、それがわかれば安心していただけて、戸別所得補償制度に対する理解が深まると思いますので、その点も御理解いただければありがたいかと思います。

 続いて、鳥獣被害対策についてお伺いしたいと思います。

 平成二十三年度の予算案では、鳥獣被害については、緊急総合対策として先ほどもお話しいただいたとおり、鳥獣被害防止総合対策交付金は、昨年二十二億七千八百万からことしは百十二億、さらには産地活性化総合対策事業も大幅にふえている、大変ありがたい話でございます。

 そこでお聞きしたいんですけれども、鳥獣被害に対する現状の課題と、実際、具体的な対策というものをどのようにお考えか、御見解をお願いします。

筒井副大臣 鳥獣被害については、今の金額でもあらわれておりますように、非常に重視をして、大幅に予算額をふやしたわけでございます。そして、これはもちろん、鳥獣被害防止対策特別措置法も制定して、より直接被害を受けている市町村において、捕獲等の許可を与えることができる権限を下に移して、それでその市町村等に対する支援の制度もつくるという形にしたわけでございます。市町村等において、例えば鳥獣に対する防護さくをつくったり、あるいはわなをつくったり、そういうことに対するハード、ソフト面の支援をする、これも決めていて実際にやっているところでございます。

 さらには、今、猟友会等の皆さんの数が減っておりますが、猟友会やあるいはその市町村の人たちに対しても、今言ったような対策についてのソフト面の研修といいますか、それについても、農水省、一生懸命取り組んでいるわけでございます。

 それで、これは森林の方の問題として、そもそも今、鳥獣が下までおりてきている、中山間地に限らず、もう地方の市街化区域までも入ってきている。この大きな理由はやはり森林が荒れている点にある。森林の整備をして、例えばドングリ等々の杉以外の木がたくさんあることもまた被害防止につながるわけでございますから、そっちの方も取り組んでいくというふうに考えているところでございます。

空本分科員 ありがとうございます。

 現在、電気さくとかさまざまな防護さくの設置などをされています。また、緩衝地帯をつくったり、それを管理したり、また今、狩猟、捕獲するにしても、大きな問題として、やはりそういう対応する方々が高齢者になっております。

 また、もう一点は、イノシシやシカの個体数が、先ほど申し上げましたが、大幅にふえている。防護さくを張ったとしても、もうそれでは対応し切れていない。先日も地域で聞いてきたんですが、今、瀬戸内海の島々、島嶼部では、逆に家の周りにさくを張っている、そういう状況です。人間がおりの中に入っているという状況になっていまして、県道、国道の中へおりてきて、また道路ののり面を荒らしていくと、災害面でも大変被害が大きくなるだろうというふうに想像されております。そういった点で、やはり根本的に鳥獣の個体数を減らさなければならないと思います。

 あともう一点は、地元の声として、県を越えた、または市町を越えた、猟友会の方々の区域がありますのでなかなか越えていくことは厳しいかと思うんですが、そういった市町村を越えて、県境を越えての対策も充実していただかなければならないかと思います。

 今回、農水省の産地活性化総合対策事業の中の鳥獣被害対策支援事業においては、県域を越えた広域的な取り組みに対する支援としては大きく前進していただいていると思います。これは農水省だけではなくて環境省においても、有害鳥獣の県域を越えた捕獲についてしっかりと対策をともにとっていただきたいと思います。

 そこで、環境省として、現状どのように運用されていらっしゃるか、また今後、農水省とどのように進めていこうとされているか、その点について御見解をお願いいたします。

渡邉政府参考人 先生御指摘の野生鳥獣の被害、大変深刻な状況にあるというふうに認識しております。

 環境省といたしましては、まず、鳥獣保護法に基づきました特定鳥獣保護管理計画、この計画を策定した都道府県におきましては、できるだけ捕獲ができるように狩猟期間の延長、捕獲制限の緩和、休猟区における捕獲の実施、これらが可能となるような措置をしております。それによって、個体数の調整、被害防除対策、そして生息環境整備の三本柱が総合的に実施されるように指導助言を行っているところでございます。

 御指摘のありましたシカなどの都道府県域を越えて広域に移動する鳥獣につきまして、個体数の調整や被害対策を関係都府県が連携して行うことが大変効果的であるというふうに考えております。このため、環境省といたしましても、農林水産省を初め、関係省庁や地方自治体とも連携して、広域の協議会の設置あるいは広域的な保護管理指針の策定、そういったことに向けて積極的に取り組みを進めていきたいというふうに考えているところでございます。

空本分科員 ありがとうございます。

 県域を越えての、本当に広域的な対策が今まさに必要でございますので、農水省とそして環境省、しっかりとお願いしたいと思います。

 そこでやはり、先ほど申し上げましたが、猟友会、実際、狩猟、捕獲をされている方々が高齢化しておりまして、その人材育成が、先ほど副大臣からも、喫緊の課題となっているという御指摘をいただいております。しかしながら、今、若い方が中山間地域にはおりません、少ない状況にあります。

 そこで、もう大胆な発想でございますが、これは地域の声でございます。防衛省の方にお聞きしたいんですけれども、有害鳥獣を自衛隊の皆様に捕獲、狩猟していただくことができないか、その可能性はあるかないか。もしあるのならば、法整備として、どのような法整備をする必要があるのか。その点について御見解をお願いいたします。

櫻井政府参考人 お答えいたします。

 有害鳥獣捕獲等につきまして御質問がありました。

 まず、自衛隊によります有害鳥獣駆除のための狩猟、捕獲、これにつきましては、地方自治体の皆さんからは、これまでもいろいろ依頼がなされてきたところではございます。残念ながら自衛隊は、鳥獣駆除に関する教育訓練を行っておりませんし、また、野生の鳥獣に関する、特性に関する知見もないということでございまして、鳥獣の駆除に必要な猟銃も持っておりませんし、対応は困難であるという旨をこれまで回答してきております。

 しかしながら、一方、防衛省・自衛隊といたしましては、これら有害鳥獣の駆除に関しまして可能な協力は行っていきたいというふうには考えておりまして、例えば、今月、二月の上旬だったんですが、北海道におけまして、エゾシカ駆除に協力するという立場で、ヘリコプターによるエゾシカの捜索等の協力を行った、こういう形の実績はございます。

 そういうわけでございまして、防衛省・自衛隊といたしましては、この有害鳥獣駆除のための御協力に関しましては、地方自治体から具体的な御依頼がある場合には、我々が持っている装備品の能力、それから今御期待のありました組織力、こういったものを用いる必要性を総合的に考えまして、現行法制でどのような協力が今後できるかどうか、個別具体的に検討して、対応してまいりたいと考えているところでございます。

空本分科員 ありがとうございます。

 やはり今、防衛省の方も、防衛大綱の方で人員の削減、そういった面で大変厳しい状況も存じております。そういった中でやはり、さまざまな訓練をされていらっしゃる隊員の皆様の人材の有効活用という観点からも、国土を保全する、国を守るという観点から一緒に取り組んでいただきたいと思いますので、その点よろしくお願いしたいと思います。

 そして、やはり中山間地域を守るという点では、山の荒廃の対策が重要かと思います。今、酸性雨によってと私は考えているんですが、松くい虫の影響でございますけれども、松枯れ、ナラ枯れ、そういったものが多く広がっています。

 まず、そこで林野庁さんの方に、ナラ枯れ、松枯れの要因というものについてどのようにお考えであるか、お聞かせください。

筒井副大臣 それぞれ直接の原因は、松枯れの場合には線虫、動物の一種だと思いますが、これが直接の原因である。ナラ枯れの場合にはナラ菌という、これはカビ、微生物に入るのかもしれませんが、それが直接の原因である。

 しかし、それらが以前よりも多くて、今もまだナラ枯れの方は大分広がっているようでございますが、これらがなぜこれだけ広がったかという原因としては、酸性雨とか、あるいは現在の気温の変化、これらによって木が弱っているというのがあって、その弱くなった木にこれらが発生しやすいし、その影響を強く受けやすくなるという、複合的な原因なんだろうというふうに考えられると思っております。

空本分科員 確かに今、私たちの地域でも、本当に松枯れがひどい状況にあって、高速道路の周辺とか、また大きな湖の周りとかが、それは薬剤散布をやめてしまったということもありまして、先日も広島県の方に林野庁さんの方が視察に来ていただきまして、地域を見ていただくことができました。

 そういった意味で、やはりいろいろな可能性があって、そういった原因究明、大変厳しい、なかなか難しい話ではあるんですが、この対策として、例えばスーパー松を一斉に植えていこうではないか、土壌の観点からも、松しかなかなか育たないというところもございますので、そういった今、これからもし豪雨災害があった場合、さらなる被害が拡大する可能性もございますので、そういった観点からも森林の整備、こういったものを一緒に進めていただきたいと思っております。

 また一方、治山治水の観点からも、やはり緑のダム構想というのが今さまざま語られております。流域全体を水源として見て、例えば四国の吉野川流域においては、人工林を強間伐することによって治水を実現するということも今試みられております。

 そこで、国土交通省さんの方にお聞きしたいんですが、森林の再生は、水源維持、治水対策の観点からも大変重要と思います。適正な間伐等を進めることは本当に大切なことと思います。林野庁さんと一緒に連携を図っていただきながら、この治山治水を進めていただきたいと思っておりますけれども、そういった中で、間伐の利用の拡大とか、そういった観点からも協力ができるのではないかと思います。その観点からどのような対策ができるか、御見解をお願いいたします。

南政府参考人 間伐材の利用の拡大についてでございます。

 国土交通省では、河川事業の護岸工、ダム事業ののり面保護工、砂防事業の山腹工を中心にいたしまして、自然を生かした川の整備を行う場合に、間伐材の積極的利用を図っておるところでございます。

 また、治水事業での間伐材の利用推進を図るために、林野庁と連携いたしまして、都道府県の林務部局、河川・砂防部局と地方整備局におきまして、連絡会を開催するよう通知いたしまして、治水事業に使用する間伐材の規格、それから量等の需要情報と間伐材の供給情報を交換するなど、計画的な利用の調整を図っているところでございます。

 引き続きまして、この連絡会を活用いたしますとともに、治水事業におけます間伐材の利用促進を図ってまいる所存でございます。

 以上でございます。

空本分科員 これは林野庁さんとともに適正間伐をしっかり行っていただき、また森林再生プランの中でともに協力して、お願いしたいと思います。

 最後に、時間が余りありませんけれども、米の消費について少し見解と、そしてコメントをさせていただきたいと思うんです。

 今、米の消費については、米飯給食等促進、「めざましごはんキャンペーン」などが行われておりますけれども、平成二十二―二十三年、平成二十三―二十四年の需要見通しは毎年減っています。戸別所得、そして六次産業化、さまざまな施策を打っておりまして、やはりここはしっかりと消費目標というものを設定していただいて、国民に対して喚起するような政策をとっていただきたいと思います。

 その中で、今、米飯給食が全国平均三・二回まで上がってきました。けれども、もう少し上げていただきたいということと、プラス、杉花粉症の緩和米というような研究開発もされております。そういったものをもっともっと進めることによって、米を食べていただけるのではないか。そうすると、地域の活性化もさらに進むのではないか。米づくりの支援、そして山の対策、鳥獣対策、里山管理、こういったもの一体で、そしてさらには、そういう食の推進、米の消費促進を進めていただきたいと思いますので、最後に、簡単にコメントをいただけたらと思います。

筒井副大臣 米の需要量がピーク時期よりも半分以下になってしまった。まさに今、一人当たりの消費量が六十キロを切っているわけでございまして、これを何とか戻したいというのは、まさに委員と同じ気持ちでございます。

 そのために、今委員が指摘されましたように、給食についての三・二回、これをさらに広げていく取り組みをしなければならないというふうに思います。

 それと同時に、杉花粉症に効くという米の開発、これも今、技術会議を中心としてやっているところでございまして、動物実験を既にやっているという段階です。これを、動物実験から実際に人間についても安全性、効果の治験を調べる、この段階になるべく早く進めることによってそれを実用化していきたい、今こういう取り組みをしているところでございます。

 さらには、やはり日本の国産の米の強さは何かといったら、価格面では弱いわけでございまして、この価格面をできる限り、規模拡大とか単収の増加とか、それらによって低めるという努力が一つは必要である。

 同時にまた、日本の米が一番強みを持っているのは何かといったら安全性とうまさでございまして、この安全性とうまさに関しましては世界最高であるというふうに確信をしております。この安全性と食味を高めるためには、有機農業を初めとした環境保全型農業が一つの手段としてある、さらには品種改良によっても行うことができる、これらを強めていくことによって、もっと消費したいという気持ちを持っていただくことができるようにしていきたいというふうに思っています。

 さらに、最後に追加すれば、先ほど杉花粉症に効くという米の開発がありましたが、今、さらには、抗酸化作用をより強く持っている米の品種改良として、これもやっていきたいというふうな取り組みも進めているところでございまして、これら全体が消費拡大につながっていく問題だというふうに考えております。

空本分科員 中山間地域、そして米の消費拡大、一生懸命頑張っていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

高井主査 これにて空本誠喜君の質疑は終了いたしました。

 次に、森本和義君。

森本(和)分科員 民主党・無所属クラブの森本和義です。

 本日はこのように質問の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。また、日ごろより、政務三役を初め政府関係者の皆さんの本当に真摯な取り組みに対して、感謝と敬意を表したいと思います。

 さて、余り時間がございませんので早速質問に入りたいと思います。私は、鳥インフルエンザの件について御質問させていただきたいと思います。

 昨年の宮崎で発生した口蹄疫の問題、それに続いてまた、ことしは冬の時期になって、九州初め全国で鳥インフルエンザの発生あるいは疑い、あるいは野鳥を含めた感染が発生しているわけであります。

 そういう中で、私の地元も、静岡県との県境でありまして、実は愛知県の豊橋市ですが、二年前にもウズラの鳥インフルエンザが発生いたしました。私の地元のウズラというのは日本でも一番の生産地域でありまして、いろいろな意味での被害もありますけれども、やはりブランドを守っていく、そういう意味での被害というのが大変大きく、まだ完全にそういう意味での傷がいえていないという中であります。

 そういう中で、この一月二十六日に、今度は鶏の方、養鶏農家で疑いが発生しまして、その日の夜、二十七日になったんですが、真夜中に、検査の結果、感染しているということで大変な動揺そして心配が一帯を襲ったわけであります。

 そういう中で、関係者の皆様を初め、農家の皆様ももちろんですけれども、本当に心配をしている中で、ぜひ、そういう地元の方々の声も含めましてきょうは質問させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 まず補償についてでございます。現在、家畜伝染病予防法の改正案の方をいろいろなところで話をしているわけでありますが、疑似患畜の処分補償、従来は国が五分の四の手当金を払うということでありましたけれども、それに加えて残りの五分の一を特別手当金として交付して国が評価額全額を交付するという、ある意味画期的な方向で閣議決定に向けて準備中というふうに聞いております。

 このこと自体は大変に評価できるんじゃないかと私は思っておりますが、従来から一歩踏み込んだ今回の支援の御決断、ねらい、また、共済制度というものもございますけれども、との関連について改めてお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。

    〔主査退席、佐々木(隆)主査代理着席〕

筒井副大臣 この鳥インフルにしても口蹄疫にしても、一番大事なのは初動の対処でございまして、初動の対処を早急に必要なことすべてをやるためには、一刻も早い通報をもらわなければそれが不可能になるわけでございまして、通報がおくれてしまったために蔓延の一因となったという例がたくさんある。

 通報がおくれることの一つの理由としては、もしこれにかかってしまって疑似患畜として処分されてしまった場合に、補償金が全額出ない、本当に損する、どうするか。経営が大変な中でもって、いろいろそれらで悩まれる人もいます。

 しかし、きちんと評価額の全額が、五分の五が補償されているんだということになれば、そういう経営の問題、生活の問題の点で心配がなくなりますから、一刻も早い、一定の症状が出たら直ちに通知をしていただくことがより可能になるというふうに思っておりまして、それが蔓延を防ぐ一つの大きな手段だと。だから、これはやはり五分の五、評価額の全額にしなければならにゃいかぬ。この点では他の災害とは違うんだ。

 例えばいろいろな水害等々がありますが、それらの災害の場合には、終わった時点でのいろいろな補償や何かを考える。この補償の金額がどうであるかによってその被害が蔓延するかどうかとは直接関係ない別の問題でございますが、しかし、こういう家畜伝染病の場合には、まさに蔓延を防ぐことができるかどうかがその補償の割合に、かかっているとは言いませんが、それに大きな影響を与えられる。

 何とか蔓延を防いで初動の対処をきちんとしたい、これが、五分の五全額を補てんする、こういうふうにもう事実上決まりました。もうじき閣議決定されると思いますが、その理由でございます。

森本(和)分科員 ありがとうございます。そういう意味で、早急に進めていただきたいというふうに思います。

 ただ、問題が残っているのかなと私が思っていますのは、移動制限を受けた農家への補償ですね。発生した農家、疑似患畜の農家ではなくて、移動制限を受けた農家への補償は、現在差額のみで、また、実施まで約半年かかっているという声もよく聞きます。

 移動制限範囲内に入ってしまった農家の例えば休業補償や、人件費もかかりますし、また飼料費その他の損失補償、場合によってはその間に商圏を失うというふうなこともあり得ます。また風評被害、そういった間接的損失などに対する国の支援を充実させてほしいという声もたくさんいただいておりますが、どのような対応ができるか教えてください。

筒井副大臣 先ほどの質問でちょっと答弁を忘れたのが共済との関係でございますが、五分の五を支給するその対象者に関しては、共済を外すということになります。だから、二重払いということは、もちろんのことでございますが、しない。

 今の移動制限がかかった場合の、出荷ができない等々いろいろな損失が発生するわけございますが、その損失も補償する、そういうふうに今度の家伝法の改正案でも明記をする、こういう予定にしております。

森本(和)分科員 その際には、ぜひなるべく広く、間接的な部分も含めて御検討いただきたいというふうに思います。

 また、それに加えまして、農家のみならず、例えば食鳥処理場、肉の処理場など、これは中小企業に相当しますけれども、休業などを実質的にしなきゃいけないというような損害が発生しております。現在、低利融資などでいろいろな支援策が提示されているかと思いますが、農家への御支援とあわせて直接的な補てん、支援はできないんでしょうか。これは中小企業の責任というよりも自然災害に近いと思いますので、お願いします。

    〔佐々木(隆)主査代理退席、主査着席〕

筒井副大臣 融資等以外に直接的な支援を農水省の支援項目の中に入れるというのはなかなか難しいことでございまして、農家以外でございますし、ただ、制限区域の中にある食鳥処理場に、鶏の内臓等を取った、つまり、感染の関係で危険性がないその処理は、引き続いてそこへ搬入してそこで処理することができるというふうにしておりますし、実際に今回もそれをやっているわけでございまして、それはその食肉処理場に対する支援の一つだというふうに考えていただきたいなと思います。

森本(和)分科員 いろいろな意味での支援というのは当然考えていただいているかと思うんですが、引き続き、さまざまな手厚い支援も御検討いただきたいと思います。

 次に移ります。発生時の対応、移動制限等についてですが、発生時に迅速に対応するには、通常からの準備が必要かと思います。例えば、自治体の職員の皆さんの研修、あるいは埋却地のリストアップ、なかなかこれは埋却地を急に探すといっても難しいわけでして、そういったものを日ごろから想定しておく。

 あるいは、流行時期が例えば鳥インフルであれば冬が多いわけですから、今回、私の地元の自治体ではたまたま焼却場が点検期間で使えなかったということもありまして、例えば、そういう時期は点検とかでとめるのをずらして、なるべくちゃんと焼却できるようにしておくとか、経験と研究に基づいたマニュアルなどを作成したり、ガイドラインでもいいんですが、そういった実施は行われているんでしょうか。

 また、今回の家伝法の改正においてこれらの視点は含まれているのかどうか、お願いします。

筒井副大臣 全国的な演習を含めて、それらに対してはきちんとやっているというふうに考えているところでございますが、さらにそれを徹底してやっていきたい。

 それから、マニュアル、防疫指針をつくって、それに基づいた具体的な対処のやり方等々についても、それも周知徹底を図っているところでございますし、経験のたびにその内容を見直してさらに適切なものをつくっていく、そういう努力もしているところでございます。

 埋却地に関しましては、今度の家伝法の改正案においても具体的に規定をする予定でございまして、埋却地は、もちろん養鶏農家がまずその場所を確保しなければいけないわけでございますが、それについて、県の方もきちんと対応していくということもその家伝法の改正案の中で規定をしていきたいというふうに思っております。

森本(和)分科員 ありがとうございます。

 さまざまな経験談がいろいろと集まってきております。地元のさまざまなそういう声をぜひ生かしていただいて、初動が大事だということであります。まさにそのとおりでして、特にまた、今まで経験していないところで急に発生した場合に、すぐに対応できるように日ごろからの準備の徹底をよろしくお願いいたします。

 続きまして、移動制限区域の範囲のことでございますが、過去の経験等で、最初十キロ、あるいはその途中で五キロというふうに制限区域が縮めていかれるわけなんですが、新たな知見等で、早期再開のために移動制限区域の範囲を、もうちょっと例えば機敏にというか、十キロ、五キロの二段階だけではなくて、例えば十キロ、五キロ、三キロ、一キロとか、いろいろな経験値というのがあるかと思うんですが、そういったことも検討をされているんでしょうか。また、そのこと自体が可能なのでしょうか。

筒井副大臣 検討しております。今委員から言われたように、十キロ、五キロ、最後は解消ということを含めると三段階にしてあるわけですが、それを、十キロを五キロとか、五キロを三キロとか、そういうものはどういうふうにしたら可能であるかどうか、検討しております。

 そして、EU等ほかの諸外国の例でも、場合によって緩和されているような基準もあるようでございますから、それをさらに精緻に検討をしていきたい、それで見直していきたいというふうに思っております。

森本(和)分科員 蔓延を防ぐという意味での科学的な知見から、やはりしっかりとしたそういう移動制限区域というのも大事だと思いますが、一方で、本当に生活がかかっている皆さんでありますので、実態に即した形で柔軟に対応をしていただきたいというふうに思っております。

 続きましてGPセンターですが、現体制では、早期に防疫措置が確認できれば営業再開が可能となっているというふうに私は認識しているんですけれども、実際は三、四日かかったりしているわけであります。GPセンターというのは、家伝法のみならず、食品衛生法に基づいて適切に管理をされておりまして、この基準を明確に打ち出して気をつけてやっているわけです。

 確認作業が早急に行われて、早急に一日も早く再開できるように再度国の方からも徹底してほしいというふうに思いますし、また、鳥インフルエンザというものがどういうものかということも踏まえて、GPセンターのそういった日ごろの管理のレベルというものも、きちっと安全性というものについてPRをしていただきたいというふうに思っています。

 一つの提案ですけれども、例えば、平常時から一定の基準を設けて、定期的な点検を前提に登録して、ここは例えば鳥インフルエンザが起きてもすぐに再開ができるところなんだ、そういう事前の安全性のPRということも含めて検討をお願いしたいなというふうに思っております。こちらは答弁は結構です。

 続きまして、今回の家伝法改正において鶏などの家禽に対する予防的殺処分はどう扱われているかということを改めてお聞きしたいと思います。

 口蹄疫の場合は、いわゆる空中の伝播力が強いということで予防的殺処分をされるわけですが、鳥インフルエンザの場合は、発生農家、農場の中というか、箱物の中の疑似患畜についての処分というのはあるかと思いますが、それ以外は移動制限区域ということだけでありまして、殺処分は行われていないと思います。そこを、ちょっと一部お聞きしたところでは、鳥インフル等も含めまして予防的殺処分もあり得るんじゃないかというような議論も出たというふうに聞いております。

 私は、口蹄疫と違って鳥インフルエンザはそういう必要はないんじゃないかというふうに思っておりますけれども、それは今回どういうふうに扱われているか、教えてください。

筒井副大臣 おっしゃるとおりで、鳥インフルエンザに関しては、予防的殺処分、それからワクチン、これもいろいろな意見はありますが、今のところそれは考えていない。考えていないというか、しないということでございます。

森本(和)分科員 ちょっとワクチンについてはまた後で触れたいと思いますが、次に行きたいと思います。

 今後の対策なんですけれども、リアルタイムPCRを今導入を進めているというふうにお聞きしておりますが、陽性なのかどうか判別が速やかに行われるためには、ぜひこの導入並びにその実際の使用というものを進めていただきたい、早急に体制完備を進めるべきであるというふうに思うわけですが、現在どういう状況になっているのか。

 リアルタイムPCRを使えば、本当に早く二時間ぐらいで、行き帰り含めて一日以内には検査ができるというふうに聞いておりますが、対応の方で現状今はどういう状況になっているのか、また、今後の見込みについて教えてください。

筒井副大臣 その結論を申し上げれば、早くはっきりさせることができる状況のようでございますから、その方向で今検討していて、そんなに遠くない時期においてそういう形になるというふうに考えております。

森本(和)分科員 そんなに遠くないというお言葉をいただきましたけれども、今、シーズンで、あちらこちらで発生している中でございますので、できれば、そういう冬のシーズンに鳥インフルエンザがたくさん発生するんだという過去の経験に基づいて言えば、この冬に向けて準備をしておいていただけたらよかったのではないかなというふうな思いもあるんですけれども、ぜひとも、一日も早く万全な体制になるように御努力をいただきたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。

 また、今回、野鳥が原因というふうなことも言われておりまして、野鳥対策、ネット等々の対策というものが重要なんですが、ただ、今回、私の地元では、ウインドーレスという窓がない建物でどうやら発生したところは、その真ん中から発生しているみたいなものですから、ひょっとして小動物か昆虫かというようなことも言われておりまして、この辺の原因究明と対策をしっかりと行っていただきたいなというふうに思っております。

 完全に密閉した空間で養鶏、養鶉等ができるとは思いませんけれども、これだけ先駆的なというか先進的なまさに一番進んだ形での、鳥インフルエンザにかかりにくいのではないかというふうに思っていたその農場から発生したということの衝撃は、結構大きなものがございます。そういう意味で、早く原因究明、対策をしっかりしていただきたいと思いますが、これは環境省と絡むと思います。

 ただ、問題は、このようにいろいろな対策、先ほどからお伺いをしておりました補償についてのことやら、あるいは、起きた場合の初動を含めたいろいろな対策、これももちろんしっかりやっていただいているかと思いますし、今後もより改善されていくというふうに思っておりますが、ただ、このようにいつどこで発生するかわからないような状況では、養鶏、養鶉農家さん、家禽農家さんは安心して営むことができないんじゃないかな。いつも、うちで起きたらどうしようという心配があって、また、移動制限が解除をされてよかったねと思った次の日にまた発生するみたいなことも実質宮崎県でも起きておりますから、このような状況というのは、対症療法を改善に改善を重ねていくということだけではやはりなかなか難しいのかなと。根本的な対策もやはり検討をしていただけないものだろうかというふうに今考えております。

 その中で、先ほどもありましたが、ワクチン接種の話があります。現段階でのワクチン接種に対しての政府の見解と対応状況をお聞きしたいと思いますのが一点。それからまた、今後、技術的なあるいは制度的な課題を解決していくことができるのか、あるいはそういう意思があるのか。

 例えばワクチンも、そのワクチンについてなかなか使用が進まないという原因として、ワクチンそのものを打ってしまうと、本当にかかったところと見分けがつかないというような話もありますが、逆に、予防的なワクチン、人間でもそうなんですけれども、予防的にかからないようにするワクチンというか、そういうものの開発など、ちょっと科学的、技術的なことは私は詳しくありませんが、そういう開発をしていくとかいうようなことは御検討をされているのか。また、ワクチンだけではなくて、それ以外に抜本的な予防対策というものが今検討をされているのか、今後検討をしていくのか。

 ワクチンに対しての現状の見解と、それから、今申し上げたような、そういう技術的な、制度的なものを改善してそういうワクチンの開発も含めてやっていこうという御意思があるのか、それから、それ以外の抜本的な予防対策というものが今考えられているのかということを教えてください。

筒井副大臣 現状では、ワクチンは、発症を防ぐことができるけれども感染を防ぐことができないというふうな特性といいますか、それがあったりして、いろいろな意見があるんですが、現在のそのワクチンは打てないというふうに、先ほども申し上げましたが、考えております。

 ただ、これも委員が言われましたように、これから新しい技術開発で別な効果を持つワクチンができて、それが、デメリットがゼロでないとしても非常に少ないというふうな方向での開発ができないのか、あるいは既にそういうワクチン的なものがないのか、それらの検討はしているところでございます。

 それから、抜本的な対策というふうに言われました。なかなか難しいんですが、口蹄疫は宮崎県だけに限定することができた。しかし今回、鳥インフルは、七県十九例という、全国完全ではありませんが、非常に飛び散った形でもって発生をしている。

 今度の鳥インフルの原因、媒体は、やはり渡り鳥ではないかというふうに強く推認されるわけでございまして、聞くところによると、シベリアではもう鳥インフルが蔓延をしているというふうに聞いておりますから、なおさらそうではないか。そして、渡り鳥が例年よりも物すごくたくさん来ている地域においても発生をしている。それから、口蹄疫の場合だったら、発生農場から横にその口蹄疫が広がっていったりする例もたくさんあったわけでございますが、今回は、先ほど申し上げたように、横に広がったというよりも、ワンポイントみたいな形で広い地域において行われた。やはり渡り鳥。

 そして、渡り鳥が直接鶏等に感染させるだけではなくて、これも委員言われましたように、ネズミとか昆虫とか、そういうものを経て感染させる、こういう可能性もあるようでございますから、やはり、養鶏場に渡り鳥も鳥もネズミや昆虫も入らない、こういう対策が最も基本的で必要なのではないか。

 どうも今まで発生した例を見ますと、防鳥ネットに破れが見えたとか、あるいはネズミが養鶏場の中に入っているのが確認されたとかいう例がありますので、それをきちんとやることがまず大前提であるというふうに考えていて、農水省は、頻繁に全国に、渡り鳥だけではなくて、小動物も鶏に接触しないような、防鳥ネットの整備を初めとしてそういう対策をきちんととる。これを特に徹底しております。

 もう一つ可能性としては、一部であったわけでございますが、横への広がり、それは、死亡鶏の処理業者、あるいはえさを運んでくる業者、あるいはそれ以外の者も、養鶏場間を移動することによって感染させた可能性が全然ゼロではない。全くないという断定はできないということでございますから、そういう場合にはきちんとした消毒体制をとる。

 さらには、農場の出入りについてきちんとした消毒体制をとるだけではなくて、付近の国道、県道、農道を含めた交通の各地域に消毒ポイントを設けてきちんと消毒をするというふうなことが二つ目の大きな対策としてあるんだろうというふうに思います。

 それから、ただこれもはっきりしませんが、ちょっと特殊例なのかもしませんが、未消毒の自然からの飲用水を給与していたという例もあるようでございまして、それらのこともきちんと対応をしていかなければいけない。

 抜本的にこれをやればいいという一つのものがあるわけではありませんが、今言った、鳥や小動物、昆虫からの感染を防ぐ、それから、人間同士あるいは車両の移動による感染を防ぐ、この二つを基本として徹底をしていくことが必要であるというふうに思っております。

 それから……。それだけに今回しておきます。

森本(和)分科員 ありがとうございました。

 鳥インフルエンザ、もう本当に現場の皆さんも困っていますし、また、日本国じゅうの国民のためにも、ぜひ引き続きいろいろな対策を御検討をお願いします。

 ちょっと時間がなくなってまいりましたので、最後に一点だけ。

 我が地元は、コチョウランやら電照菊、あるいは鉢物、花卉生産日本一の地域でございまして、そういう意味で、国際園芸博覧会、いわゆる花博を誘致したいという機運が高まってまいりました。この国際園芸博覧会について、大阪花博のようなA1と言われる最大規模の花博を開催するには、どれぐらい前にどういう手はずが必要になるのか、希望する地域としてはどういうことをしていけばいいのか、ポイントだけ最後に教えていただきたいと思います。

筒井副大臣 難しい質問なんですが、大阪でこの前やったときに、準備期間に五年かけたと言われましたからね。浜松でも、あれはA2の方ですか、もっと小さい規模の花博をやった。物すごく国内的な対策と、国際的なそれを決める機関がオランダにあるようでございますが、そこに対する働きかけと両方とが必要なわけで、本当に大変な働きかけが必要なんだろうなというふうに思っております。

 具体的な行動は、またこれは農水省も一生懸命取り組んでおりますので、相談をしながらやってほしいなというふうに思います。

 ただ、花は愛知県は非常に進んでおりますが、食育に対応した花育の活動もやっておられるようですし、最近ようやく取り組み始めたのが、バレンタインデーは本当は男性が女性に花を贈るんだというのが、日本の場合にはチョコレート業界の方が強くて、女性が男性にチョコレートを贈るんだというふうに定着しましたが、本来は花を男性が贈るんだと。この動きを国内において始めた方が、方がより効果があるとは言いませんが、これも非常に大きな効果があるのではないかというふうに思っていることだけ申し添えます。

森本(和)分科員 どうもありがとうございました。政務三役が率先してバレンタインデーに花を贈っていただければというふうに思います。どうぞよろしくお願いします。

 ありがとうございました。

高井主査 これにて森本和義君の質疑は終了いたしました。

    〔主査退席、佐々木(隆)主査代理着席〕

    ―――――――――――――

佐々木(隆)主査代理 環境省所管について、政府から説明を聴取いたします。松本環境大臣。

松本国務大臣 平成二十三年度環境省所管一般会計予算及び特別会計予算について、その概要を御説明申し上げます。

 まず、予算の基礎となっております環境政策の基本的な考え方について御説明申し上げます。

 現在、我が国は、経済が長期間低迷を続けるという深刻な状況にあります。このため、環境政策の分野でも、持続可能な社会づくりに向けたさまざまな取り組みを実施し、環境イノベーションの促進や、世界に先駆けた物やサービスの提供等を実現することにより、成長と雇用の拡大を図る必要があります。

 また、気候変動枠組み条約第十六回締約国会議や、昨年十月に愛知県名古屋市で開催された生物多様性条約第十回締約国会議の成果を踏まえ、国際貢献を積極的に推進するとともに、国内対策を着実に実施することにより、環境外交において我が国が主導的役割を果たしていくことが必要です。特に、経済成長の著しいアジア諸国とは、環境保全のあらゆる分野で連携を強化することにより、これらの国の持続可能な社会づくりに貢献すると同時に、日本企業がアジアの環境市場にこたえられるよう促していくことが必要です。

 さらに、人を大切にし、命を守るという環境行政の基本的な姿勢を堅持し、安全、安心な生活を実現するための取り組みを引き続き着実に実行していくことも必要です。

 このような基本認識のもと、環境省としては、低炭素社会づくり等持続可能な社会に向けた取り組み、国連地球生きもの会議の成果を踏まえた自然共生社会実現に向けた取り組み、日本とアジアの安定した成長を支える循環型社会実現に向けた取り組み及び安全、安心な生活を実現するための取り組みの四つの柱を掲げ、積極的、総合的に各種施策を展開してまいります。

 また、平成二十三年度予算については、厳しい財政事情を勘案して、例年にも増して真に必要な施策に重点化して予算を計上するように努力いたしました。

 平成二十三年度環境省所管一般会計予算及び特別会計予算につきましては、以上のような基本的な考え方に立ってまとめております。

 一般会計予算では、総額二千九億二千六百万円を計上しております。

 次に、特別会計予算につきましては、エネルギー対策特別会計に一般会計から三百四十一億円の繰り入れを行い、総額として三百七十九億二千万円を計上しております。

 なお、委員各位のお手元に資料が配付されておりますが、環境省所管一般会計予算及び特別会計予算の主要施策につきましては、説明を省略させていただきたいと存じます。

 よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。

佐々木(隆)主査代理 この際、お諮りいたします。

 ただいま松本環境大臣から申し出がありました環境省関係予算の主要施策の説明につきましては、これを省略して、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐々木(隆)主査代理 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

佐々木(隆)主査代理 以上をもちまして環境省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

佐々木(隆)主査代理 質疑に入るに先立ちまして、政府当局に申し上げます。

 質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 ただいま、質疑予定者の出席が得られません。

 事務局をして御出席を要請いたさせますので、しばらくお待ちください。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

佐々木(隆)主査代理 速記を起こしてください。

 御出席を要請いたさせましたが、御出席が得られません。やむを得ず議事を進めます。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。野田国義君。

野田(国)分科員 民主党の野田国義です。

 国会は論戦の場でございますので、しっかりと論議をしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いをいたします。

 松本大臣、それから近藤副大臣、樋高政務官、本当にお疲れさまです。また環境省の皆さん、お疲れさまでございます。

 松本大臣におかれましては、COP10あるいはCOP16に向け、ニューヨーク、名古屋そしてメキシコと世界を飛び回られ、最近では、新燃岳あるいは鳥インフルエンザ等、視察に行かれまして、本当に八面六臂の御活躍をされていることに対しまして心から敬意を表し、福岡県人としてうれしく誇りに思っているところであります。

 それで、謙虚な松本大臣でありますので、もういいよとおっしゃるかもわかりませんけれども、就任六カ月になられるわけでありますけれども、この六カ月間、半年間の感想と、これからの環境行政に対する抱負を述べていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

松本国務大臣 野田委員の本当に郷土を愛する、また日本を愛する気持ちを私も昔から知っておりますけれども、きょう質問に立っていただいて、心から感謝を申し上げたいというふうに思っております。

 さまざまな問題が山積みをしております。まだまだ、生物多様性の問題、気候変動の問題等々、これからやらなければならないことはたくさんあります。環境省のみんなと一緒にチームとして、近藤副大臣そして政務官初め、それぞれ心を合わせ、力を合わせて今日までやってまいりました。

 これからもまた、困難な状況ではありますけれども、与党、野党、さまざまな皆さんの御理解をいただきながら環境行政を進めてまいりたいというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

野田(国)分科員 御承知のとおり、私も長く地方自治におりました。地方自治の方も、三Kといいまして、環境、教育、観光の分野が非常に大切だと近年言われるようになってきたということであります。それで私、その地方自治の事例を挙げながら、経験から、環境政策に対する問題点などを論じ、また指摘をしていきたいと思いますので、何とぞよろしくお願いをしたいと思います。

 まず、私、十六年、市長をやる中でいろいろ環境問題にも取り組んでまいりました、重要だということで。その中で、平成十四年に八女市は、やっておりました市は、環境マネジメント、ISO14001を取りました。今、9000シリーズ、品質保証の方も取ってダブル取得なんですが、そういうことで、一つのツールとして自治体経営をやらせていただいたわけでありますけれども、私、きょう、環境省は取っておられるのかどうかちょっと知らなかったものだから、聞きました。

 なぜ市が取ったかと申しますと、市民に対してあるいは事業者に対して率先垂範というか、環境について範を示していくことが大切だということで、いち早く取らせていただいたということであります。そうしましたところ、環境省としてもこの環境マネジメントシステムを取得されておるということでございまして、ここにそれを送っていただいたところでございます。

 本当に改めて見せていただいて、電灯とか電気の節電、あるいは給湯室、ちょっとしたことなんですけれども、大切だなと。そしてまた、クールビズとかウオームビズとか、そういうことを一つ一つ実施していくこと。何か前は盛んにそういうことが言われておりましたが、ここ一、二年、どうもちょっと忘れられているのではなかろうかなと思っております。マータイさん、もったいない、もったいない、この運動を環境省がしっかりと先頭に立ってやっていただくことが、これからの環境問題、一つの解決の道でもあるのではなかろうかなと思っております。

 それで、ちょっとお聞きしたいんですけれども、環境省が取ったということは聞いたんですけれども、他の省庁、特に私、衆議院の会館なんか、無駄な電気がついているなと思ってずっと消して回っているような状況なんですけれども、国の機関は、ほかのところで取っているところはあるんでしょうか。

近藤副大臣 実は先般、私も、環境省がISOを取っているということで、ほかのところはというふうにちょっと気にしていたんですが、農水省が取っているというところと、あと、国交省の地方事務所で幾つか取っているところがあるというところであります。

 済みません、正確にはちょっと把握していないところがありますが、残念ながら、まだ不十分だなというところだと思います。

野田(国)分科員 私、市が取った後、いわゆる教育、子供たちにもそういうことを学ばせていかなくちゃいけないということで、学校版ISOとか、そういうことで全小中学校に取らせました。そういうことで、これは民間にも当然広げていく。入札の点数なんかもISOを取っているところは加算するとか、そういう形で広げていきました。

 環境省におきましても、そういうことで、環境省だけじゃなくて、もっと国の機関が範を示していく、これが環境行政にとって非常に大切なことだと私は思いますので、ぜひともよろしくお願いをしたいなと思っております。

 特に国会に来て、ペーパーなんか非常に多いですね。そして私は裏表必ず使わなくちゃいけないと思っておりましたところ、なかなか表だけしか使わないような状況でもありますので、よろしくお願いをしたいと思っております。貴重な資源ということでございます。

 それで、この間から、大臣初め、地元のことで陳情をさせていただきました。樋高政務官の方に対応をしていただいたところでございますけれども、地元に、うすま・ふぁーむぱーくという産廃の施設があるわけでございます。この産廃が、私の市長のときに、平成十四年十二月に許可がおりておるところでございますけれども、それから操業が開始されました。

 ずっと、先週の日曜日もその方々が私の事務所に見えまして、どうかしてほしいということで何度も何度も、いわゆるにおいの問題でございますけれども、私、悪臭というのは初めてちょっと勉強させていただきましたけれども、大気に乗っていくんですね。ですから、におわないところはにおわないんですけれども、におうところはすごくにおうということであります。平成十四年から、この問題が、業者と地域住民の方がいろいろなトラブルがあっておるということであります。私、県の方に盛んに、市長時代も含めて、どうかならないかということを言ってきておりますけれども、結局まだ解決ができておらないということでございます。

 そこで、私、思いますのは、この問題、まず業者と県の関係、余りにも身近なので、非常に何か業者側を見た行政と申しますか、そういうことが行われているのではないか、そういうような気がしてならないわけでございます。

 先日から民主党の県連もここを視察していただきまして、その後、県議会の決算委員会におきまして、この施設のことを質問していただきました。そこで、施設の処理過程に問題があるということを県の担当者が言ったということでございます。しかしながら、言ったにもかかわらず今も悪臭がひどいということでございまして、これがどうにか国からの指導などができないだろうか、そういうことでお願いしたわけでございますけれども、いかがなっておりますでしょうか。よろしくお願いしたいと思います。

伊藤政府参考人 今御指摘の問題、産業廃棄物の処理施設に係る問題でございます。

 産業廃棄物の処理施設に係る許認可あるいは指導監督ということにつきましては、廃棄物処理法上、地域の実情に精通しており事務を行う体制が十分整備されているという観点から、都道府県が、あるいは政令市において実施するということになっているわけでございます。

 一方、私ども国は、都道府県等が許認可や指導監督を行うに当たり必要な基準、これを廃掃法に基づいて定めておりますし、それに加えまして、廃掃法の基本的な考え方でありますとか運用に当たっての留意点などについてさまざまな形で技術的な支援を行っている、こういう関係にあるわけでございます。

 今後とも、産業廃棄物の処理に係る住民の不安が払拭されますように、私どもと県が連携を図ってまいることが非常に重要だというふうに考えている次第でございます。

野田(国)分科員 今おっしゃったことを私もよく存じております。

 悪臭防止法では、今おっしゃったように、調査、指導の権限は市にあるということなんですね。しかしながら、その許認可権は県にあるということでございまして、またちょっとこの後も産業廃棄物の処分場の問題に行くわけでありますけれども、共通するのは、どうしても許可権を持っているところじゃないと権限が及ばないわけですよね。先ほど言いましたように、市から改善勧告を合計で六回しております。六回しても改善がなされていないということでございまして、ここの権限の問題があるのではないかなという気がいたしますが、どうでしょうか。許可権も持っていないところがどんなに指導しても、業者にとっては痛みがないということになるわけでありますけれども。

鷺坂政府参考人 済みません、私の方から悪臭防止法の体系について御説明させていただきたいと思います。

 悪臭防止法では、規制地域とかあるいは規制基準、こういったものにつきましては基本的には都道府県が定めるということになっておりますが、実際の具体の法の執行というのは市町村で行うということになっておりまして、例えば、今あったように、規制基準に適合しないでありますとか、さらに生活環境が損なわれている、こういったような場合には市町村長が改善勧告、改善命令を行うことができるということになっております。

 これは、悪臭の影響範囲が極めて限定的であることを踏まえまして、市町村長が事業場の規制を行うことで、地域の特性、実情に合った規制を行う、こういう趣旨で行うわけでございます。

 いずれにいたしましても、国といたしましては、こういった悪臭防止施策の推進のため、市町村長に対しましても、また市町村長からの要請がありましたら、積極的に必要な助言等はしていきたい、このように考えております。

野田(国)分科員 地方分権あるいは地域主権の中で、地方のことは地方にということ、これはよくわかるんですけれども、しかし、やはり同じ国民ですから、国民が困っているわけですから、私は適切な指導をやっていただくということが大切じゃないかなと。性善説で、地方はいい行政というか政治がやられているかというと、なかなか変な方々もたまにはおられるわけですから。

 ですから、例えば廃棄物処理法などをどう運用するかというのは、全然それで違うわけですね。その法律の範囲内と言われればそうなんですけれども、それをちょっと変なふうに解釈していけばどうにでもなるということでありますので、ぜひとも国も、これは一括交付金なんかの問題でも私、取り上げているんですけれども、やはり国が関与するところは関与するということも国民のためには必要なことではないかな、そのように思っております。

 それから、廃棄物の最終処分場でございますけれども、この処分場、私も市長になったころ非常に苦労いたしました。やはり、できるのは地域住民にとっては非常に反対なんですね。しかしながらできてしまう、県が許認可権を持っているというようなことでございまして、御案内のとおり、この最終処分場というのは大体環境がいいところにできるんですよ。そうでしょう。緑が豊か、自然が豊かなところにできるということでございます。

 それで、みやま市なんですけれども、またこれもちょうど一カ月前ぐらいだったでしょうか、地元の方から呼ばれて、私、要望を受けたところでありますけれども、ここは昭和五十四年から平成九年ごろまで十九年間にわたって埋め立てられたわけですね、捨てられてきた。そして、十年たった今でも、もう埋め立てられたままにしているわけですね。それで、十年たった今でも、鉛とか砒素とか硼素とか、そういう基準を上回る汚染物質が検出をされておるということであります。それで、平成二十年、終了届を出しまして、今、処分場の廃止の届け出が県になされておるということでございまして、これを、ぜひともしないでほしい、非常に危ないんだというようなことなんですね。

 よく聞いてみますと、終了届から、何カ所かに穴を掘ってちゃんと調査をしなくちゃいけないということになっているみたいですね。地元がおっしゃっているのは、水は当然高いところから低いところに流れ、また分水嶺とかいろいろあるわけでありますけれども、汚水が流れてこない、そういうところの検査をしているということをおっしゃっているんですね。だから、こういうことでは当然そういった汚染物質が検出されないというような形になるということでございまして、先ほど私が申し上げましたように、運用次第でどうにでもなるというようなことでございますけれども、こういうことについてはどうお考えでしょうか。

伊藤政府参考人 御指摘の最終処分場の廃止に関する手続をまずちょっと御説明申し上げたいと思います。

 最終処分場が、年月もきちっとたちまして、廃棄物処理法に基づく維持管理を行わなくても生活環境保全上問題が生ずるおそれがない、そういう状態になったというふうに設置者が判断した場合には、都道府県知事に対し廃止の確認の申請を行うという手続がございます。この申請に基づきまして、都道府県知事は、本当にこの廃止の基準を満たしているのかどうかというふうなことを確認いたしまして、これは大丈夫だ、こういうふうに県が判断した場合には、廃棄物処理法上の廃止が認められるということになっております。

 もちろん、この廃止された後も、廃掃法上、指定区域というふうな区域に指定しまして、掘削等をやる場合には事前にちゃんと届け出て、必要な場合には改善命令を行うということで、廃止された後にもきちっと必要な管理が行われるような体制に廃棄物処理法上なっているわけでございます。

 今御指摘の処分場につきまして私どもが承知しておりますのは、今まさに福岡県が二年かけて、本当に廃止しても大丈夫なのかどうかということをきちっとモニタリングということで調査をしている、こういうふうにお聞きしているところでございます。

野田(国)分科員 先日から、御案内のとおり、筑穂町、今の飯塚市ですね、こちらの方で、産廃撤去の訴訟で県に命令義務、住民側が逆転勝訴をしたと。これは本当に画期的な裁判の結果になったということではないかなと思っております。これは以前からずっと問題があったところでありますけれども。

 ただ、私も、前ずっとやってきた中で、実を言うと八女でも産廃場があって、そこでは、八女方式ということで注目も集めておったんですけれども、どういうことをしたかと申しますと、非常に悩んだ末に監視員を二名つけたんですね。住民の方々が、どんなに捨てていない、いわゆる安定五品目だと言っても信用できないと。安心してできるようにということでありましたので、監視員を二名つけました。ですから、搬入してくる車を、地元の方をわざわざ雇って、そして、その方々が、どういうものが搬入されるかということをチェックするということでやらせてきました。

 平成二十年の実績で、これはだめだということで持ち帰らせた、指導したのが十七件あったということなんです。ですから、本当に安定五品目なのかどうかというのは、ではこの監視員がいなかったならば、そのまま恐らく捨てられていたと思うんですね。

 ですから、非常にそこのところが問題でありまして、私が以前から思っておりますのは、安定型、安定五品目、これはちょっと逆に無理ですよ、それだけを捨てるというのは。ですから、安全とかを考えた場合には、何かちょっと聞くところによりますと、千葉の富津ですか、最高裁あたりで安定型はだめだというような裁判も出たことがあるそうでございまして、環境省でも何か検討された時期もあったということでありますけれども、私は、やはり安定型というのはなくしてもらって、管理型、シートぐらいはちゃんと張って管理してもらうとか、そういうような行政というか形に変えてもらわなくちゃいけないのかなと思っておりますが、いかがでしょうか。

伊藤政府参考人 御指摘の安定型最終処分場につきましては、産業廃棄物の処理において、実際大きな役割を果たしてきております。また、適切に管理されれば安全に問題が生ずることはないというふうに考えておりますし、多くの安定型処分場はそのようにされていると思います。

 ただ、御指摘のように、一部の安定型最終処分場におきまして、安定型産業廃棄物五品目以外の廃棄物の付着、混入が見られる、こういうふうな課題も指摘されておるところでございます。したがいまして、環境省としましては、この搬入管理の強化などについての方策について今検討しているところでございます。

 今後とも、安定型最終処分場における不適正な処理がなされることがないよう、その実態を把握、評価し、安全対策を一層強化していきたいというふうに考えております。

野田(国)分科員 ぜひとも、産業廃棄物の処分場というのは必要なんですね。人が、トイレが要るように、本当に必要なんです。しかし、きちっとした処分場になるように指導をしっかりお願いをしたいと思っております。

 私、今二つの事例を挙げてきましたけれども、最終的には基礎自治体に少し停止権限とか、何かそういう権限を持たせてもらわないと、なかなか、県の方ではちょっと弱腰というか、例えば業者との関係とか、そこにまた政治家が介入している場合が結構多いんですね。ですから、県の行政が動かないというようなことが現実、多くあっておりますので、そういうことを提案してまいりたいと思っておるところであります。

 ちょっと時間も大分過ぎてまいりましたので、最後になりますけれども、これも、市長時代に本当にもったいないなと思っておりましたが、民主党が一度、平成二十年四月ですか、合併処理浄化槽ですか、を原則としての接続免除、下水道法等の一部改正を国会の方に提出したということで、今その勉強会も始まったところでございまして、きょうも朝からありましたので、その勉強会に出てまいりました。

 私も、下水道を計画段階からずっとやってきた一人なんです。ずっとやってきました。しかし、合併処理浄化槽が、今本当に性能が高くなっておりますね。私がもう十八年前ぐらいに、下水道を計画するときに、合併処理浄化槽はどのくらい耐用年数がありますかと言いましたら、十五年とか二十年と言っていました。今はもう何年ですか、五十年ぐらいもつんじゃないかと言われておるような状況であります。そして、下水道に必ず接続しなくてはいけないというような法律になっておるということであります。

 ですから、ここを何とか接続免除ということができないのか、私もこれは大賛成でございまして、恐らく国土交通省あたりは、だめだ、だめだと言うだろうし、現に、最近、アンケート調査が各自治体にあっておるんですね。そうしましたところ、千四十五の自治体が反対、これが全体の七六・二%、賛成は二百二十八自治体、一六・六%ということなんです。しかし、これは恐らく職員が答えていると思うんですね、首長じゃなくて。ですから、こういうことは現場にとっては非常に変えるということは厳しいのかもわかりませんが、何でかというと、下水道会計が非常に悪化している。だから、どうしても、少しでも経営状況をよくしたいという思いから、こういうアンケート調査になっておると思うんですね。

 現実、では合併処理浄化槽が区域内にどのくらいあって、どのくらいの影響が出るのか、そういうことを数字でちゃんと明らかにしていけば、もったいないですよ、本当に、合併処理浄化槽、血税も入っておるし、当然、自己資金も使って合併処理浄化槽を設置されている。それを埋めていきますね、あれを現実に私、見たときには、本当に、先ほどから言っておりますように、もったいないという気がいたしますので、ぜひともそういう方向で検討をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

伊藤政府参考人 浄化槽につきましては、今先生から御指摘いただいたとおり、特に人口分散地において比較的安価にできる、しかも一週間の工期でできるという、非常に短い期間でできる。さらに、水環境保全上十分な処理水質が得られる、こういったすぐれた特徴を有していると思っております。

 今後、汚水処理施設の整備の中心が市街地から離れた中山間地域、いわゆる人口分散地になるということを考えますと、浄化槽の役割がますます今後大きくなっていくだろう、こういうふうに考えているところでございます。

 このため、環境省といたしましても、地方の実情を踏まえ、浄化槽の普及に努めるとともに、市町村等に対し合併浄化槽の特徴の周知に努めて、地域の特性に応じた効率的な汚水処理を推進していきたいと考えております。

 とりわけ、この浄化槽につきましては施策を強化したいということで、来年度の予算におきましても、これまで単独浄化槽を合併浄化槽に転換する場合の補助の対象が非常に限られていたのを拡充するといった措置も計上しているところでございます。

 今後とも、浄化槽整備の施策について強力に進めてまいりたいというふうに考えております。

野田(国)分科員 下水道事業は全国で三十一兆の起債残高があるということ、そして、これが一番問題なんですが、自治体としては、一般財源の繰り入れを毎年一兆八千億している、そういう状況になっておるわけでありますから、私は、しっかりと合併処理浄化槽を普及させる、また推進させるということが非常にこれから汚水処理にとって大切な課題だと思いますので、ひとつ環境省、頑張っていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

佐々木(隆)主査代理 これにて野田国義君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

佐々木(隆)主査代理 次に、農林水産省所管について、引き続き質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。皆吉稲生君。

皆吉分科員 民主党・無所属クラブの皆吉稲生でございます。

 本日は質問の機会を与えていただき、ありがとうございます。

 また、本日御答弁賜ります近藤副大臣、筒井副大臣におかれては、私の選挙区でございます出水そして長島の地にわざわざ訪れていただき、今回質問をさせていただきます野鳥のインフルエンザの発生の問題、さらには、昨年の長島の赤潮発生にかかわる問題で現地へ赴いていただいたことに、心から御礼申し上げます。本当にありがとうございます。

 本日は、高病原性鳥インフルエンザの発生にかかわって、対策の強化について御質問をさせていただきます。よろしくお願い申し上げます。

 ことしの冬の国内各地で鳥インフルエンザに罹患をした野鳥が大量に発生をしたこと、さらには、それが養鶏場の鶏に感染をし、十九例にも及んだわけでございます。先ほど、同僚議員の森本議員の方からも御質問があったかと思います。重複する部分もあろうかと思いますが、御容赦をいただきたいと存じます。

 私の地元であります鹿児島県出水市においても、特別天然記念物でございますツルが毎年シベリアから約一万三千羽飛来をしてまいりますけれども、高病原性鳥インフルエンザに罹患をしたツルの発生によって、地域が大きく震撼をするような事態になったわけであります。

 このツルは、地域の中学校の皆さんが羽数調査をするなど、地域の方々と本当に親しくつき合う、田んぼの中にいるツルを見ながら暮らしていくというそういう状況が続いてまいり、また、観光客の皆様方にも喜ばれてまいったわけであります。

 しかし一方では、この出水は、県内でも、また全国でも有数の養鶏地帯でございます。五百万羽を超える鶏が飼養をされているという地域でもございます。

 このような地域でツルの発症、さらには、ツルの保護区からわずか二キロ離れたところの養鶏農家からウイルスに感染をした鶏が発見をされ、直ちに殺処分を行い、各養鶏農家への立入検査、そして、消毒や防除体制をしっかり構築していくことなどが取り組まれてまいりました。まさに、行政や農協、そして農家の皆様方が一体となって、また、市民の皆様方の御協力をいただきながら、何とか一例でとどめて再発を防いできているところでございます。

 ある意味では大変危険な地域の中でこの再発を防いできたということは、一つの出水モデルとして今後皆様方の方でも御検証をいただきたい、そんなふうに思っているところでございます。

 また、政府におかれても、この間、精力的に対策を講じていただいておりますことにも感謝を申し上げます。

 そこで質問をさせていただきます。環境省の方にお伺いをさせていただきますが、野鳥に対する消毒や、あるいはウイルスの拡散防止策でございます。

 ツルに発症したということで、野鳥であり、そしてそれが特別天然記念物であるということで手も足も出せない状況に置かれました。例えば、ツルのねぐらなどの消毒もできない。そういう意味では、大変不安な日々を強いられたわけでございます。そういう意味では、例えば、消石灰をツルのねぐらにまいた場合にツルや農地にどのような影響があるのか、あるいはツルや農地に安全な消毒剤、そういった対策はできないのかをお伺いしたいと思います。

 きょうも地元から電話がかかってきまして、ツル保護区内の地主さんからの電話でございまして、ツルが飛び立った後に、北帰行した後に農地の消毒はどうするのかというお尋ねもございました。このような不安を一掃するための対策を講じれるのかどうか、お伺いしたいと思います。

近藤副大臣 皆吉議員におかれましては、私の方にもというか、環境省の方にも御要請がありまして、私も出水市の方に出かけさせていただきました。出水市、大変に養鶏も盛んであり、一方でまた、天然記念物であるツル、今お話もありましたように、これを地元の地域の皆さんが、特にお子さんなんかも、小学生とか子供さんなんかも随分と熱心に取り組んでおられる。そういう中でこの鳥インフルエンザが発生し、大変に御心痛、そしてまた、しっかりと対応されておられる。しかしながら、その中でいろいろと大きな不安を持っておられる。私も本当に、皆吉議員にそうした状況をお知らせいただいて、そしてまた御要請をいただいて、早速行かせていただいたということであります。

 そういう中で、今御指摘のありました消石灰のことでありますけれども、ツルということで特定いたしますと、ツルが警戒心が強いということで、御承知のとおり、ツルを野生生物等々から守るということもありまして、ねぐらには五センチから十センチ程度の湛水が行われている、こういうことであります。また、これはツルだけではなくて、本当に、冬の間に湛水をすることによってより安全な農作物、米をつくる等々というような効用もあるというふうにお聞きしております。

 ただ、そういう中で消石灰を使った場合、水に溶けるといいましょうか、水に溶けた消石灰がツルの足の水等々にかかって、ツルの足の部分が炎症を起こす、あるいは、農地にまくことによって、ツル類がえさと一緒に食べるおそれがあるというところでなかなか悩ましい。こういう状況の中であります。

 そういった意味では、本当に御地元と同じ御心配があるわけでありますけれども、私どもとしても、よりよい方法がないか、こういうことを探求するとともに、今後の対策ということで申し上げますと、乾燥、高温、日光に鳥インフルエンザウイルスが弱いということでありますから、これからの季節ということになりますけれども、水を抜いて数日程度日に当てて消毒の効果を上げていく、こういうことを一つ考えさせていただいているところであります。

 また、この間も、できる限り発生をした現地でとにかく素早い対応をすることによって、ふん便の検査等々もしっかりさせていただいて、とにかくそうした原因をしっかりとつかむということで進めさせていただいているところであります。

 皆吉議員の御指摘のところについては、今後とも、現地の皆さんの不安の解消に向けて引き続き環境省としてもしっかりと取り組んでまいりたい、こういうふうに考えております。

皆吉分科員 ありがとうございます。ぜひよろしくお願い申し上げます。

 次の質問でございます。昨年の口蹄疫、今回の鳥インフルエンザの対策の中で、ワクチンの問題が盛んに議論をされてまいりました。口蹄疫の際には殺処分を前提としたワクチンの接種というものが行われ、そして、ウイルスを拡散させないということが目的であったというふうに思っています。

 そこで、感染を予防するための安全で信頼できるワクチンの開発、これが行われているのか状況をお知らせいただきたいとともに、政府として、速やかに支援をしながら開発をお進めいただいて、使用できる体制を構築できないのか、これらについてお伺いをしたいと思います。

筒井副大臣 そういうワクチンを開発したいということで、農水省としても取り組んでおります。直接それを担当しているのは農研機構動物衛生研究所でございますが、感染自体を予防できるワクチン等々、現在のワクチンとは異なる効果的な、しかもデメリットがない、あるいは少ないワクチンの研究をさらに進めていきたいというふうに考えております。

皆吉分科員 どうもありがとうございます。ぜひ早急にその開発をお進めをいただきますように、よろしく御要請をさせていただきます。

 続きまして、環境省の方にお尋ねをさせていただきます。いわゆる出水における野鳥の検査体制の強化の問題でございます。

 先ほどお答えいただいたこととも少し関連をしますが、これは、今後毎年鳥インフルエンザの恐怖にさらされるということになります。それに対して対応できる体制が貧弱であるということを、大変申しわけないんですが、申し上げさせていただきます。

 一つは、簡易検査で陽性と判定をされても、鳥取大学の方に検体を運んで、そして検査をせざるを得ない、こういった状況にあるわけでありますし、もう一つは、いわゆるふん便検査においても、昨年の十二月二十六日に検査の検体を提出しましたけれども、年明けの一月十八日に判明をするという状況になりました。まさに考えられない時間を要したのではないか、そういうふうに思っています。

 幸いにしてウイルスは検出をされませんでしたけれども、ここはぜひ環境省として、ツルの保護、観察という観点とウイルスなどの検査機能を備えた研究施設を、いわば象徴的な出水の地に設置すべきではないか、そのような御検討はできないか、御質問をさせていただきます。

近藤副大臣 大変に貴重な御意見を賜ったと思っておるんです。

 先ほども申し上げましたように、皆吉議員におかれましては、本当に、地元のそうした不安を解消するために東奔西走されているということであります。私の方も、先ほど申し上げましたように、現場に行かせていただいて、本当にそうした不安を解消するために、農水省あるいは都道府県及び検査機関等と連携のもとに、そうした今の検査等々も速やかに進めて、そして、できる限り早くそうした問題点を発見をしてというふうに考えているところであります。

 ただ、そういう意味では私も、環境省の関係者とも、そうしたことに対する促進をという話をさせていただきました。御地元の皆さんの不安は大変に大きいところであります。ただ、この間の流れで申し上げますと、よく御存じだと思いますが、国立環境研究所に送り、そこで陽性が出たものを改めて鳥取大学に送ってきた。大きな問題点があったというよりも、ちょっと物理的な課題もあったのかなというふうに思っております。

 そういう意味では、より近いところでできるということは、より地元の皆さんの不安解消、不安だけではなくて、問題点解消につながるというふうに思っております。ただ、そういうことで私も関係者と話をしてまいりましたところ、地元の研究機関である鹿児島大学、この鹿児島大学の方で検査施設を設置する、検査システムをつくる、こういうことが進んでいるということの状況であります。

 そういった意味では、まず、この鹿児島大の進めていただいているところで進めていただく、こういうふうに環境省としては考えているところであります。

皆吉分科員 ぜひよろしくお願いします。

 次の質問に移らせていただきます。

 実は、本日発行の全国農業新聞の方に掲載がございまして、この鳥インフルエンザの問題が取り上げられております。農水省の家きん疾病小委員長の北海道大学喜田先生の方のコメントが載っているんですが、「野鳥は、シベリアの湖沼から飛んで来たもの。これまで、北からの渡り鳥は、病原性の全くないウイルスしか運んで来なかった。家きんに対する病原性を獲得したウイルスが自然界に広がり始めている」と警鐘を鳴らしておられます。

 このような状況の中で、今回の鳥インフルエンザにつきましては、渡り鳥がもたらしたものと推測をされているわけですけれども、日本へは、ロシア、韓国を初め中国、台湾など、多くの野鳥が飛来をいたしております。また、口蹄疫も韓国から何らかの形で侵入したのではないかと推測をされているわけであります。関係国との協議を図りたいとの松本環境大臣の御表明がありましたけれども、ぜひ積極的に進めていただきたいと存じております。

 そこで、環境省、農水省など関係省庁が連携をして、できるだけ高いレベルで国際的協議の開催を、そして関係国に働きかけていただくということをお願いをしたいと思いますし、国際的な対策を具体的に講じていただければと、そんなふうに思っているところでございます。このことについての環境省としての見解をお伺いしたいと存じます。

近藤副大臣 これもまた大変に重要な御指摘ですし、私自身も、先ほど来から申し上げておりますように、この問題に取り組まさせていただいて、この鳥インフルエンザの問題に野鳥、渡り鳥がかかわっているということが言われております。そういう意味で、環境省としてもいろいろと検討をさせていただいてきたところであります。

 そういう意味では、環境省の方でも渡り鳥の関係では、極東地域の研究者間のネットワーク、こういうものを構築をしてきているところであります。そういう中で、こうした関係機関と情報の共有をする、各地における発生状況や野鳥の監視、どういうふうにしているのか等々の情報共有を進めていきたいと思っておりますし、このことに当たりましては、農水省と連携協力をしっかりとしてまいりたいというふうに思います。

皆吉分科員 ぜひ積極的にお進めをいただきたい、そのことを御要請させていただきます。

 次に、農水省の方にお尋ねをいたします。いわゆる原因究明の問題であります。

 ウイルスの家禽への感染が発生をした場所には、感染ルート解明のために農水省から疫学調査チームが派遣をされて、施設の調査や関係者からの聞き取りなど精力的に行われ、原因究明が行われておりますけれども、残念ながら、昨年の口蹄疫の問題を含めて、確固たるその原因の究明ができておりません。効果的な対策を講じるためには、その原因をしっかりと突きとめて、そして、そこに対して的確な対策を講じることが大変重要だと、そんなふうに考えているわけでございます。

 そこで、なぜ確たる原因を突きとめることができていないのか。例えば体制上の不備というか、そういったものがあるのかどうか。それらについて御見解をお伺いしたいと思います。

筒井副大臣 極めて重要な問題なんですが、一番難しい、一番と言ったら語弊があるかな、非常に難しいことでございまして、去年の口蹄疫についてもそうですし、十年前の口蹄疫のときも原因究明がされていなかった。それはなかなか難しかったということでございました。

 ただ、今度の鳥インフルに関してもそうでございますが、可能性があるものを幾つかに特定することはできるということははっきりしているわけでございますから、可能性のあるものすべてに対する防疫措置をとることが必要なんだろうというふうに考えて、農水省はそれらすべてに取り組んでいるところでございます。

 そして、今回の鳥インフルに関しては、一番可能性が高いと推認しているのはやはり渡り鳥でございまして、その根拠は委員も既に御存じだと思いますが、口蹄疫の際には宮崎県の中一カ所で抑えることができた。しかし、今度の場合には、七県十九例に上って非常に散らばっている。横の方の連絡から蔓延した、ほかの農場に感染したという可能性があるのは極めて薄いわけでございますから、やはり、渡り鳥による感染だというふうに推認することができるというふうに考えております。

皆吉分科員 ありがとうございます。

 原因を究明してこそその対策ということで、推認をいただく、その可能性の中で今やっておられるということで、そういう意味では、さらにこの原因究明に向けた御努力をぜひよろしくお願い申し上げます。

 次に、環境省さんにお伺いをいたします。

 家畜や家禽の場合には、家伝法によって、立ち入り制限あるいは消毒ポイントの設置義務づけ、こういったものが定められているわけでございますが、野鳥についてはそれが定められておりません。

 この出水においては、全く法的根拠のない中で、消毒ポイントを設置をし、あるいは立ち入り制限区域を設け、これは地域の住民の皆さんの協力があってこそできたことでございます。しかし、これが強制力がないばかりに、その首長さんも本当にいろいろ苦労をしながらその対策を講じておられたというのが現実でございます。

 そういう意味では、環境省として、いわば法の不備とも言えるこの部分について今後どのようにお考えなのか、お聞かせをいただきたいと存じます。

近藤副大臣 ありがとうございます。

 これもまた、私も現場に参りましたときに皆吉議員も駆けつけていただき、また、現地出水の市長さんとも意見交換をさせていただいた。そういう中でも御意見というか御要望として出てまいりましたし、私も現地に参りましたときに、地元の出水市の職員の方だったのではないかと思いますけれども、通行規制等々で、地元の皆さんの御理解も得られながら頑張っておられた。大変に敬服をしたわけであります。そして、そういう中での御指摘のような課題があるということであります。

 ただ、そういう中でこの点につきましては、与党からも要請が出て、家畜伝染病予防法、この中に、野鳥におけるインフルエンザ対策、これを通して家禽の保護につながる仕組みをつくっていこうという御提案がありました。

 政府と与党と一体となって検討してきているところでありまして、これについては、今御指摘もありました、野鳥の検査について都道府県職員が実施する、野鳥で発生した場所周辺での消毒、通行制限をする、環境大臣と農林水産大臣とがしっかりと連携をしていく、これが、家伝法、農水省が管轄している法律でありますが、家伝法に位置づける方向となっているということであります。

 もちろん、この中には車両の消毒義務についても位置づける方向、こういうふうに聞いてるところであります。

皆吉分科員 ぜひ、新しい家伝法改正の中で今副大臣がおっしゃったことが実現をし、地域が本当にきちっと対応ができるようなそのような法案をつくって御提案いただきますように、よろしくお願い申し上げます。

 続きまして、時間もだんだんなくなりましたが、いわゆる水際対策について農水省さんにお伺いいたします。

 鹿児島には多くの温泉地があり、また、冬場のゴルフを楽しむために、韓国や中国、香港、台湾などから多くの観光客においでいただいております。こういう海外からのお客さんに対して、やはり伝染病ウイルスの侵入というその危険性も帯びているわけでありますが、そういう意味では、航空会社などへの協力の要請、あるいは家畜防疫官に対する権限、これらをどう強化をしていこうとされておられるのか、農水省の方にお伺いをさせていただきます。

筒井副大臣 今、家畜伝染病予防法の改正案、もうじき閣議決定がなされるという段階になっております。

 この中で、今の水際対策としては、家畜防疫員が海外からの入国者に対して質問、検査をすることができる。そして、検査というのは、携帯品の検査もすることができるという規定を入れました。そして、その携帯品が感染ウイルスを持っている可能性がある場合には、消毒することもできるという規定も入れました。

 さらには、空港であれば航空会社、船の会社等に対して協力を求めることができる。今までなかった規定でございますが、それを入れて、協力を求められた場合には、それらは民間会社でございますが、協力に応ずるよう努めなければならない、こういう規定も新たにプラスしたところでございます。

 それらのことを防疫指針にも記載しながら、今までなかった新しい規定を生かして水際対策をきちんととっていく、こういうふうに考えております。

皆吉分科員 その対策の強化をぜひよろしくお願い申し上げます。

 次に、いわゆる飼養衛生管理基準、家畜を飼う際のその管理基準を定めていただいておりますが、これにかかわってのお伺いをさせていただきます。

 今回の鳥インフルの問題あるいは口蹄疫の問題などで、これは当然として、国やあるいは県の皆さん方、その基準の強化、徹底について農家の皆さん方へ働きかけられると思います。そうした中で、農家の皆さん方への人的な、経済的な負担、こういったものが過剰にならないように支援あるいは補助を行っていく、そのことを考えておられるのか。

 現場からの具体的な御要請として今私のもとに届いておりますのは、例えば養鶏場入り口に、簡易の、自動で車両を噴霧式で消毒する設備を設置したい、しかしその補助はできるのかというお尋ね、さらには、養鶏場が古くなった、これをもう安全なものにということでウインドーレス化をしていきたい、その際に御支援をいただけないのか、このような御質問をいただいているわけでございます。

 これらについて今後前向きな検討を進める御用意があられるかどうか、御質問をさせていただきます。

筒井副大臣 先ほど私、防疫員と言ってしまいましたが、防疫官の間違いでございます。何かこれ、防疫員というと県の職員で、官というと国になるので全然違うそうですから、防疫官というふうに訂正をさせていただきたいと思います。

 それから今の、衛生基準に関係した支援措置の質問ですね。(皆吉分科員「そのとおりです」と呼ぶ)衛生基準については、もう委員が言われておりますような本当に重要な基準でございますし、それをきちんとやるかどうかによって感染を防ぐことができる、あるいは蔓延を防ぐことができるという状況ですから、これにきちんと取り組んでいるつもりでございますし、これからもそういうふうにしていきたいと思います。

 それで、今言われたようなウインドーレス等々の衛生基準に適合したような改築等をする場合の支援でございますが、現在は、家畜伝染病予防法の改正案で、五分の五を殺処分の対象となったものに支給する、これが今までと全く違った新しい段階に入ったところでございますから、それをまずやった上で、今言われたような支援の制度の充実、これは今後検討させていただきたいと思います。

皆吉分科員 大分時間が参りまして済みません。あと最後に、ちょっと取り扱いの問題で質問をさせていただきます。

 現在の防疫指針では、移動制限区域内の食鳥処理場における屠畜の再開については、発生農場における防疫措置の終了から清浄性を確認して二十一日後となっております。このことが、商品性の低下、いわゆる出荷時期のずれたことによって鳥の商品が低下をすること、あるいは飼料代の増加など、経営を圧迫してしまいます。

 つきましては、いわゆるAI検査によって安全性が確認をされた鶏については早期に出荷をできる体制ができるのかできないのか、そこをお伺いをしたいと思います。

 また、同じような事例において、GPセンターにおいて、これが例外措置によってGPセンターの鶏卵の回収が許可をされておりますけれども、農場とGPセンターのピストンが条件になっています。これを、各農場を連続的に回るようなそんな形で集荷をすることができないか、これをお尋ねをさせていただきます。

筒井副大臣 その後の方の、各農場を連続的に回って集荷をすることができないかという点に関しましては、これは結構危険性がありますから、横の感染につながる可能性もありますから、それに関しては、農水省としては極めて消極的に考えております。

 その前に言われた点に関しましては、積極的に考えていることを、先ほどのだれの質問だったか忘れましたが、その際にも申し上げたとおりでございます。

皆吉分科員 どうもありがとうございました。

佐々木(隆)主査代理 これにて皆吉稲生君の質疑は終了いたしました。

 次に、小原舞さん。

小原分科員 民主党・無所属クラブの小原舞でございます。本日は貴重なお時間を賜り、質問の機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。

 本日は、有害鳥獣被害対策について御質問をさせていただきたいと思っております。

 私のふるさとであります京都北部もということになりますが、もう全国的な問題となっておりますけれども、イノシシ、猿、シカ、こういった有害鳥獣に対してかなり大きな被害を受けております。その中で、やはり住民の生命財産を脅かす問題であって、特に農業従事者の方々にとっては農業被害などもあり、非常にお困りの様子を日々承っているところでございます。

 地元で集会しておりましても、一番多い質問がこの有害鳥獣の件であります。例えばシカが百頭単位で群れをなして歩いている。そしてまた、猿が悠々と電気さくの上を歩いていたり、さらには、これはクマなんですけれども、昨年、クマの被害、町中にあらわれてきておりますけれども、集中治療室に入って治療を受けられた方がおられるというような事例もありますし、また、自宅に帰ってドアを開けたときにだれかが冷蔵庫を開けている、それがクマだったというような事例までも聞いております。今や町民の方々、市民の方々が気軽に散歩に行くのも怖い、そういった切実なお声を承っております。

 また、電気さくでありますけれども、防護さくとしての電気さく、イノシシなんですけれども、これはイノシシの鼻などの粘膜に感電させるというような仕組みだと思いますが、これも、イノシシ自体も生きることに必死、そして人間との知恵比べの中で、今やもう多少の感電ぐらいはいとわない、おしりから突入しているというようなことも農業者の方々から伺っております。

 このような状況の中で、地域協議会が主となって、都道府県を越えた取り組みを実施されておるところでございますけれども、うちの地元の与謝野町と、そしてお隣の兵庫県北部で追い込み猟というような形で共同実施をされている事例もあります。けれども、現実の中では、例えば議会の状況の中で、予算がおりるのにずれが出てきて実施がずれてしまうという事案や、また、合意形成が難しいという状況もはらんでいるということであります。

 そこで、質問でございますけれども、鳥獣被害対策に関しましては、その対象範囲によって大きく分けて言えば、広域的な対策と地域的な、局地的な対策というふうに分けられると思っております。

 この点で、平成二十一年十一月の事業仕分け第一弾において、国は広域的な対策を、そして局所的な対策には地方自治体の判断に任せるべきという評価がなされました。この事業仕分けの評価に関して、農林水産省としての御対応とお考えをお伺いいたします。

筒井副大臣 今言われたように、鳥獣被害が深刻化、広域化している、この二つの特徴があると思うんですよ。その深刻化は今委員が言われたとおりで、まさに、繰り返しませんが、もう人がそこでは住めなくなってしまうというふうな、そういうところまで深刻化しているし、耕作放棄地もそのたびに増大をするというふうな形で深刻化している。

 もう一つは広域化でございまして、市町村を越えて、あるいは都道府県を越えてでも起こっていく。そういう段階で、行政仕分けの方で、行政刷新会議の方で、都道府県とか市町村の方に全部おろして国の関与をなくせ、地方自治体の判断に任せろというふうな趣旨のことがなされました。しかし、これは実態に合わないと思います。だから、必要な範囲で、もちろん地方自治の立場から都道府県や市町村の方に権限を移したわけでございます。

 しかし、国の判断、国の関与を残したところが、またやはりその行政仕分けの結果に従っていない、そういう通告がありまして、結局、交付金という形でもって行うことにしたわけでございます。

 しかし、国から判断して直接市町村の方に交付できるような、そういう仕組みとしては残しておりますので、現在の百三十億の鳥獣被害対策費は広域的なものにも対応できるものだ、辛うじて対応できるものだというふうに考えております。

小原分科員 ありがとうございます。

 ただいまお答えいただきましたように、平成二十三年度の予算案の中では、広域的な対策に関しては国が直接採択事業で、また局所的な対策については交付金による対応がそれぞれ計上されております。まさに、事業仕分けで指摘があった点に関して、地域の実情にかんがみながら改善をなされてきたかとは思っております。

 私は、地域主権、地方分権をライフワークとしておりまして、私が暮らしているような京都北部、こういった地方に光を当てる国政を求めていきたいところと思っているんです。その点で、事業仕分けにおいて、地方自治体の判断にゆだねるというその観点自体は賛成するんですけれども、今、筒井副大臣がおっしゃられましたように、一方で鳥獣被害のように広域的な対策が必要であり、また、かつ自然災害と申し上げてもいいような状況下にある事態をかんがみたときに、やはりこれに対応するのは国の責務であるという思いがあります。

 極論してしまえば、局地的には地方自治体に地域の実情に合った対応を認めた上で国がしっかりとした予算措置をして、そして広域的には国が戦略、そして予算措置も含めて責任を持っていかなければならないと思っております。

 二十三年度の予算案では、前年度に比べて約五倍という、先ほど百三十億円というお答えが返ってきましたけれども、こういった部分で、広域的な部分もプラスアルファの部分で計上されております。この厳しい財政状況の中で五倍の予算をつけたわけでございますから、何とかこの一年間で、この鳥獣被害をなくしてしまう、十年前の段階に戻してしまう、それぐらいの意気込みを持っておられると思いますけれども、地域に応じた鳥獣対策の必要性と、国による広域的な対策の整合性を含めて、鳥獣被害対策のあり方に関してお考えをお伺いいたします。

筒井副大臣 今の委員の質問の中身を聞いていて、まさにおっしゃるとおりでございまして、それを農水省は考えて、行政刷新会議からの指摘がある中で、広域的な被害にもきちんと対応できるような形を何とか苦労してつくってきたわけでございます。

 そして、おっしゃるとおり、この問題が物すごく重要な問題でございますから、深刻な問題でございますから、予算もこの厳しい中で大幅にふやしたということを御理解いただけると思います。

 まさに各地域、各市町村、各都道府県、そして国全体から見た鳥獣被害対策がきちんと整合性を持ってできるようにこれからも取り組んでいきたいというふうに思っております。

小原分科員 ありがとうございます。

 国の責務としてさらにお願いを申し上げたいところは、地域の実情にかんがみて、地域間格差が生まれないようにぜひ御配慮いただきたいと思っております。都道府県に対する交付金の配分に関しても、例えば、広域的な取り組みをしているかとか、そしてまた、戦略作物、麦や大豆など、こういった部分、ポイント制で評価されるということを伺っておりますけれども、中には、土壌の質によって麦がつくれない地域もある、こういったこともかんがみていただければ幸いでございます。

 私の地元舞鶴市に、西方寺平という限界集落がございます。この地域では、地域を挙げて、若者の新規就農者の支援をしております。若い衆でやろかいという会なんですけれども、今まで限界集落と呼ばれていた地域が、今や子供が十人、そして、ことしも一月に赤ちゃんが生まれたばかりで、平均年齢が五十歳以下になったという本当に元気な、明るい話題を振りまいてくれる地域であり、また、そんな若者の取り組みであるんですけれども、こうした熱意ある新規就農者にとって、鳥獣被害はやはり深刻な打撃を与えております。

 彼らとの勉強会を通じて訴えられたことを申し上げさせていただきたいんですけれども、せめて十年前の状況に戻してほしい、これがあと二年、三年続いたら、もう農業をやめると言っております。

 こういった状況を何とか解決していくために彼らが今求めていることは、自分たちでできる捕獲とか、そういった自衛手段です。とても熱意、意欲を持っていて、ただ文句を言っているだけじゃなくて、自分自身で何かできることはないかという相談を受けております。こういった部分では、捕獲技術の習得また訓練が必要ですけれども、そういった取り組みに関しては、隣の兵庫県の森林動物研究センターのように、都道府県単位の活動の方が目立っているように感じられます。

 私は、鳥獣被害対策において、この捕獲技術の研究、普及は、これも国の責務であると考えております。この捕獲技術は、猟友会の方々中心に今お世話になっておりますけれども、経験、ノウハウ、技術、やはり十年やってようやく山に入って獲物をしとめることができるというような大変技術の要るものでございます。

 そこで、国による捕獲技術の普及の必要性及び現在のお取り組みに関してお伺いいたします。

筒井副大臣 今まさに先生のおっしゃるとおりの中身でございまして、捕獲技術についての研修、これも農水省として取り組んでいるところでございます。

 さらには、今の発言の中にはありませんでしたが、捕獲した鳥獣を肉用として販売する、この場合の解体の施設とか何かについては、支援制度を六次産業化の中でつくっているところでございますから、ぜひ活用をしていただきたいなというふうに思っているところでございます。

 それと、もう一回訂正ですが、私は百三十億円と言いましたが、正確には百十三億円の間違いでございますので、訂正させていただきます。

小原分科員 食肉加工施設のお話、ありがとうございます。京丹後市といううちの地域もこれを活用させていただいて、今、食肉加工という形で前進させていただいているところでありますし、これからもいろいろと課題があると思いますので、また引き続きお願いしたいと思っております。

 この有害鳥獣駆除において現場の農家の方々が実際に苦心されていることは、自衛の観点から囲いわなを設置しても、そこに鳥獣が入ってきて、それをいかにしとめるか、これについて非常に苦心されております。行政やまた猟友会の方々に依頼をして来ていただくというような状況の中で、毎回頼んでいてなかなか依頼しにくいという心理的な問題や、また、これも非常に技術が要ることでございまして、じゃ、農家の方々が猟銃を用いてしとめるのか、また、とめ刺しの技術を習得していくのか。これは、農業をしながら片手間でできるようなものではないと思っております。

 いろいろな研修制度があるとは思いますけれども、行政としては、猟友会の方々との連携強化のための橋渡しとかいろいろ御尽力をいただいているとは思うんですけれども、こういった部分に関しても、実際の現場の、わなにかかって、それからどのようにその動物をしとめ、そしてどういうふうに埋設や、また食肉加工センターなどいろいろなルートがあると思いますけれども、これが実際に、猟友会、行政職員の方々、そういった専門家の数が少ないこともあって、非常に苦労されているという現状があることを訴えさせていただきたいと思います。

 引き続きまして、本日、空本先生からの御質問でもあったと思うんですが、これは防衛省の方にお伺いさせていただきたいと思っております。

 地元の方々とお話をしていると、これほど非常に厳しい被害を受けておられるので、自衛隊の協力を得ることはできないかという相談を受けることが本当に多くあります。もちろん、本来任務に支障を来すようなことがないように、そして隊員の皆様の士気を下げることがないように、こういった配慮が必要なことは元自衛官として十分認識しているところでございますし、実際に自衛隊が銃を持って山に入っていくといっても、猟銃と自衛隊が使っている銃が違うということや、また追い込み作戦をしてくれというような御要望もありますけれども、これも訓練の一環にとらえられていないという現状や、また、そういったことが実際に行われるとすれば、安全確保の観点からも非常にハードルが高いとは承知しております。

 そこで、自衛隊法の百条に基づいて、今まで訓練名目で、例えばグラウンド整備など、必要に応じて土木工事とか過去に事例があったと伺っておりますけれども、自衛隊による鳥獣被害対策の対応事例、北海道でも先日事例があったと思いますけれども、対応事例と対応可能な範囲について改めてお伺いいたします。

櫻井政府参考人 自衛隊の有害鳥獣対策に対する協力の関係についてお答えいたします。

 先生おっしゃっているように、自衛隊も捕獲技術とかそういうものがあるわけではございませんので限られてはおるんですけれども、今先生が御紹介のありました北海道の事例をまず御紹介させていただきたいと思います。

 まさに今月の八日から十日までの三日間だったんですけれども、北海道が実施いたしましたエゾシカ駆除計画、これに対する協力の依頼がありまして、これに対して自衛隊としてできることということでやりましたのが、今から御紹介いたします、具体的には陸上自衛隊の帯広駐屯地第五旅団があるんですけれども、ここの隊員四十名がこれに協力しました。

 まず、ヘリコプターによりましてエゾシカを比較的低い上空から捜索、発見して、その生息状況等を調査する道のお仕事の支援をいたしたということが一つあります。それから、猟友会の方々がエゾシカを捕獲されたわけですけれども、山の中の雪のあるところから下まで運ぶということで、自衛隊の雪上車等を用いまして、これを輸送する支援を行ったということがございます。

 ということで、我々の協力の仕方としては、鳥獣駆除に関しまして自治体の方々から具体的な依頼がございましたら、自治体からの具体的なニーズを分析、踏まえまして、自衛隊が保有する装備品が使えるかどうか、それから我々の組織力としてできるものかどうか、こういったものを総合的に勘案しまして、対応できるかどうか、個別具体的に検討しながら、御協力の道を探りたいと思っております。

小原分科員 ありがとうございます。

 宮崎の口蹄疫や鳥インフルエンザ、また雪害対応に関しても、自衛隊の皆様、防衛省の皆様に大変御尽力いただいていることに心から敬意を表したいと思っております。

 一方で、先ほどは自衛隊法百条の件をお伺いしましたけれども、自衛隊法の八十三条の自然災害対応は、いわゆる緊急性、公共性、そして非代替性が要件になりますけれども、被害状況をかんがみれば、もはや鳥獣被害は災害と言えるものだという声が上がってきております。

 ここまで追い詰められている地域の現状をお伝えさせていただいた次第でありますけれども、繰り返しですけれども、自衛隊の本来任務との整合性、そして隊員の皆様の士気というものを御検討いただきながらも、この二十三年度に集中して鳥獣被害問題を解決すべく、さまざまなお知恵や、そして御検討をいただけると幸いでございます。

 戻りまして、鳥獣被害に関しまして、これも地元の方からいろいろな御意見をいただいておりますが、なぜ有害鳥獣駆除は鳥獣保護法に基づいてということになるのだ、なぜ保護ありきなのかというお声をいただきます。

 私としましては、鳥獣保護と有害鳥獣対策のはざまの中で、有害鳥獣対策特措法もあることですし、政府を挙げて御努力いただいていることは認識しております。一方で、保護ありきではないかという御懸念を持たれる気持ちもわかるわけですが、そこで、有害鳥獣対策特措法と鳥獣保護法の関係性を踏まえ、有害鳥獣対策の見地から、適正頭数管理の必要性を含めた農林水産省としてのお考えといいますか、意気込みについてお伺いいたします。

筒井副大臣 鳥獣被害防止対策特別措置法はまだできたばかりでございますが、できたばかりというか、一年ですか、その前から鳥獣保護法があるということでございまして、ただ、明確に同じものを対象にした法律でございますから、その整合性をきちんと図っていかなければいけない。

 その整合性を図っていくという上において一番の点は、捕獲の許可でございます。これを、以前は都道府県が一つ一つ許可をするというふうな形でございましたが、そうなるとやはり鳥獣被害に苦しんでいる地域が機動的な対応がなかなかできないということで、その権限を市町村の方に移譲いたしまして、市町村の方でそのことができるというふうにしたのが、一つ大きな、整合性を図りながら鳥獣被害防止をやっていくということの大きな柱だというふうに思っております。

小原分科員 ありがとうございます。

 市町村に権限がおりていったということで、例えば猟期以外に関しても、申請をすれば、農家の方々が自分の自衛をできるというような仕組みになっているということで、さらに国は、日本の農業を守るんだという御姿勢で取り組んでいただけたらと思っております。

 次に、外国資本による森林買収についてお伺いいたします。

 外国資本による森林買収に関してはさまざまな報道でも指摘されているところでございますけれども、私の地元には、舞鶴に海上自衛隊、福知山には陸上自衛隊、そして京丹後には航空自衛隊の施設を有しております。近年、外国資本がこういった防衛施設周辺の森林を買っているのではないか、防衛上問題ではないかという話が上がってきております。防衛施設周辺地域の土地の取引、取得につきましては、外国人土地法が昭和二十年から運用停止となっているのが現状であります。国土保全、安全保障上の観点から何らかの検討が急務であると思っております。

 外国資本による土地取得に関しましては、民主党内でもプロジェクトチームを設置し議論を深めているところでございますが、農水省として、現状をどのように把握なさっておられ、また、今後どのように調査し、把握されていくのかについてお伺いいたします。

筒井副大臣 非常に国民の関心が強いところでございますので調査をいたしまして、北海道が一番多かったわけでございますが、外国人の土地所有がなされている。ただ、それがほとんど現状ではリゾート地が多いというふうな調査結果でございました。

 この調査はこれからもやっていくわけでございますが、現在の森林に関する法制度ですと、一ヘクタール以上の森林を取得する際にはそれを届け出しなければならない、こういう法規定になっております。森林に関しては一ヘクタール未満の取引というのは非常に少ないですから、それでほとんどの取引に関しては把握できる、法制度としては把握できるものというふうに考えております。

 もしそれで、まだ一ヘクタール未満のものも足りないとして、そこをきちんとするとすれば、保安林の指定をすれば、保安林に指定すればいろいろな制約があるわけでございますから、それらによって把握することができるというふうに考えているところでございます。

 ただ、今、それだけでは不十分だ、すべて届け出するようにせよという意見もございますが、それは今度、森林、農地だけに限定しない一般的な問題でもありますから、全体として議論をしていただいて、検討していただいて、そこに農水省も参加をしていくという形になるかと思います。

 森林に関しては、現在の規定で把握することは可能である、基本的に可能であるというふうに判断をしております。

小原分科員 ありがとうございます。

 一ヘクタール未満に関しても、やはり防衛施設周辺という、国益、安全保障上の観点からもぜひ引き続きの御検討をよろしくお願い申し上げます。

 時間がもうなくなってまいりましたけれども、鳥獣被害対策は、捕獲や殺処分、また、さくなどによる侵入の防止だけでなく、やはり根本的な課題解決のためには、山の手入れ、人が山に入っていくということが重要だと思っております。人とけもののすみ分けが図られることがセットで行われるべきだと思っております。

 森林の間伐など動物の隠れ家となるような場所を排除する緩衝帯の整備の取り組みや、また林業支援、そして私の地元でもレンタカウや、また里守り犬といった取り組みも実施しているところでございますけれども、まさにさまざまな知恵でもって、さらに鳥獣被害と林業分野の連携というものを引き続き図っていただきたいと思います。

 早期の課題解決に向けてよろしくお願い申し上げ、本日紹介させていただいた若い衆でやろかいというような、若い方々がこれから未来に希望を持って農業に励めるように、この二十三年度、何とかこの年で鳥獣被害対策に一定のめどをつけるというような意気込みを持って取り組んでいただくことをよろしく申し上げ、質問を終わらせていただきます。

 本日はありがとうございました。

佐々木(隆)主査代理 これにて小原舞さんの質疑は終了いたしました。

 この際、暫時休憩いたします。

    午後五時五十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後七時開議

佐々木(隆)主査代理 休憩前に引き続き会議を開きます。

 これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。

 これにて散会いたします。

    午後七時一分散会


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