衆議院

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第2号 平成25年4月15日(月曜日)

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平成二十五年四月十五日(月曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 西銘恒三郎君

      井林 辰憲君    池田 道孝君

      今村 雅弘君    加藤 寛治君

      菅家 一郎君    小池百合子君

      鈴木 憲和君    中村 裕之君

      牧島かれん君    務台 俊介君

      簗  和生君    渡辺 孝一君

      後藤 祐一君    玉木雄一郎君

      小熊 慎司君    東国原英夫君

      村岡 敏英君    輿水 恵一君

      佐藤 英道君    高木美智代君

      中野 洋昌君

   兼務 吉田  泉君 兼務 鷲尾英一郎君

   兼務 松田  学君 兼務 佐藤 正夫君

   兼務 中島 克仁君

    …………………………………

   農林水産大臣       林  芳正君

   環境大臣         石原 伸晃君

   農林水産副大臣      江藤  拓君

   環境副大臣        田中 和徳君

   環境副大臣        井上 信治君

   農林水産大臣政務官    稲津  久君

   農林水産大臣政務官    長島 忠美君

   国土交通大臣政務官    赤澤 亮正君

   環境大臣政務官      秋野 公造君

   政府特別補佐人

   (原子力規制委員会委員長)            田中 俊一君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  菊池 英弘君

   政府参考人

   (内閣府食品安全委員会事務局長)         姫田  尚君

   政府参考人

   (復興庁統括官)     伊藤  仁君

   政府参考人

   (総務省大臣官房地域力創造審議官)        関  博之君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           関  靖直君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           山下 和茂君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           山野 智寛君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房統計情報部長)        伊澤  章君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         荒川  隆君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房技術総括審議官)       別所 智博君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           藤本  潔君

   政府参考人

   (農林水産省食料産業局長)            針原 寿朗君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  佐藤 一雄君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  奥原 正明君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            實重 重実君

   政府参考人

   (農林水産技術会議事務局長)           小林 裕幸君

   政府参考人

   (林野庁長官)      沼田 正俊君

   政府参考人

   (水産庁長官)      本川 一善君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房総括審議官)         日下部 聡君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           中西 宏典君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           後藤  収君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           佐藤 憲雄君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           橋本 公博君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房技術審議官)         松井 直人君

   政府参考人

   (国土交通省道路局次長) 吉田 光市君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局環境保健部長)       佐藤 敏信君

   政府参考人

   (環境省地球環境局長)  関 荘一郎君

   政府参考人

   (環境省水・大気環境局長)            小林 正明君

   政府参考人

   (環境省自然環境局長)  伊藤 哲夫君

   政府参考人

   (原子力規制庁次長)   森本 英香君

   政府参考人

   (原子力規制庁審議官)  山本 哲也君

   政府参考人

   (原子力規制庁原子力地域安全総括官)       黒木 慶英君

   農林水産委員会専門員   栗田 郁美君

   環境委員会専門員     仲川 勝裕君

   予算委員会専門員     石崎 貴俊君

    ―――――――――――――

分科員の異動

四月十五日

 辞任         補欠選任

  小池百合子君     牧島かれん君

  西川 公也君     鈴木 憲和君

  玉木雄一郎君     後藤 祐一君

  東国原英夫君     小熊 慎司君

  佐藤 英道君     樋口 尚也君

同日

 辞任         補欠選任

  鈴木 憲和君     渡辺 孝一君

  牧島かれん君     井林 辰憲君

  後藤 祐一君     玉木雄一郎君

  小熊 慎司君     高橋 みほ君

  樋口 尚也君     輿水 恵一君

同日

 辞任         補欠選任

  井林 辰憲君     菅家 一郎君

  渡辺 孝一君     中村 裕之君

  高橋 みほ君     村岡 敏英君

  輿水 恵一君     中野 洋昌君

同日

 辞任         補欠選任

  菅家 一郎君     加藤 寛治君

  中村 裕之君     務台 俊介君

  村岡 敏英君     東国原英夫君

  中野 洋昌君     高木美智代君

同日

 辞任         補欠選任

  加藤 寛治君     簗  和生君

  務台 俊介君     池田 道孝君

  高木美智代君     佐藤 英道君

同日

 辞任         補欠選任

  池田 道孝君     西川 公也君

  簗  和生君     小池百合子君

  佐藤 英道君     中野 洋昌君

同日

 辞任         補欠選任

  中野 洋昌君     大口 善徳君

同日

 辞任         補欠選任

  大口 善徳君     樋口 尚也君

同日

 辞任         補欠選任

  樋口 尚也君     佐藤 英道君

同日

 第二分科員佐藤正夫君、中島克仁君、第三分科員吉田泉君、第五分科員松田学君及び第七分科員鷲尾英一郎君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成二十五年度一般会計予算

 平成二十五年度特別会計予算

 平成二十五年度政府関係機関予算

 (農林水産省及び環境省所管)


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     ――――◇―――――

西銘主査 これより予算委員会第六分科会を開会いたします。

 平成二十五年度一般会計予算、平成二十五年度特別会計予算及び平成二十五年度政府関係機関予算中農林水産省所管について、前回に引き続き質疑を行います。

 この際、分科員各位に申し上げます。

 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力をお願いいたします。

 また、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。東国原英夫君。

東国原分科員 おはようございます。日本維新の会の東国原でございます。

 本日は、質問の時間を頂戴いたしまして、関係各位の方たちに心から御礼申し上げたいと思います。また、江藤副大臣におかれましては、御無沙汰しておりますという感じでございまして、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、TPPについて少しお伺いしたいと思います。

 先週、日米事前協議が決着しまして、自動車分野においては撤廃の時期が最大限延長されたということで、これは新聞等々で報道されていますけれども、農産品の特例品を認めさせるかわりに、譲歩といいますか、そういったことをしたんじゃないかという報道も一部にはあります。最初が、日本には一定程度の農産品、米国には一定程度の工業製品というセンシティビティーがあるということでありましたので、これから交渉が大詰めというか本格化するんじゃないかなと思っているところであります。

 去年十二月に総選挙がありました。そのときに自民党さんが掲げられた公約の中に、聖域なき関税撤廃を前提とする限りTPP交渉参加に反対ということで打ち出されておりました。私も地方を回りましていろいろなところへ行きましたけれども、やはり農業県になりますと、聖域なき関税撤廃を前提とする限りTPP交渉参加に反対ではなく、もう有無を言わさず反対なんだ、交渉参加にはとにかく断固反対なんだという強い意思で選挙を戦われていたと思うんですね。

 私は、聖域なき関税撤廃を前提とする限りというこの文言といいますか、この言葉というのは、非常に考え抜かれた公約だなと思うんですね。

 実を言うと、恐らく、林大臣も政調の方におられてこの文言等々を検討されたんじゃないか、もまれたんじゃないかと思うんですけれども、さすが自民党さんだなという、これはもう本当に、聖域なき関税撤廃を前提とする限りTPP交渉参加に反対、これは非常にさらっとしていますけれども、賛成派にも反対派にも非常に気を使った、そしてまた、恐らく、聖域があるということを実感されて、聖域があるんだ、これは交渉次第だなという手応えをつかまれて、そしてこの文言になったんじゃないかなと思うんですね。どっちに転んでも公約は守れるという、そういった非常に考え抜かれた言葉だなという感じなんです。

 それで、先ほどの話に戻りますけれども、恐らく、各地の、特に農業地域、農業県の関係者というのは、TPP交渉の参加は断固反対だったはずなんですね。私も、見ていまして、これはもう有無を言わさず断固反対なんだというようなことで戦われていた、恐らく、大臣、副大臣もそういうおつもりだったんじゃないかなと思うんですが、そこについて、まず、どういう御覚悟で去年の総選挙を戦われたかというのをお聞きしたいと思います。

江藤副大臣 大臣は選挙を戦われておりませんので、私の方からお答えをさせていただきます。

 これは、長い、二年余りにわたる党内議論がございました。私は、もう断固反対ということで、離党するんだということも、選挙になる一年ぐらい前からずっと、県議の方々にも呼びかけたこともありました。その後、自民党で安倍総裁が誕生して、私は自民党の農林部会長になりました。そして、農林水産部門の政権公約をまとめる責任者になりました。

 そのときに、話すと長いので端的に申しますが、かなり厳しい闘いがあったんですよ、これをどう公約に書き込むか。最初は農林水産のページにだけ書くというような方向性であったのを、私は、これは外交ポリシーだから外交の大見出しの中に書く込むべきだと。最終ゲラが上がった最終日に、誰とは申しませんが、党内の重鎮の方ともかなりやり合って、これをねじ込むだけでも大変だったんです、正直言って。確かに、どっちにもとれる中途半端な言い回しだという御批判をいただけば、そうかもしれません。ただ、これを入れるだけでも、私は、そこにはかなりの闘いがあったことを思い出します。

 私たち、私も含めて、自民党は大勝したわけです、特に地方区では。そういった地方区で当選した議員に対する期待、TPPを阻止してほしいという気持ちが強かったことは間違いがない。そのことによって民主党の多くの議員が苦杯をなめた、その裏側にはそういうのがあったことも間違いがないと思います。

 しかし、私は、決してずるい言い回しをしたわけではありません。手応えを感じながらこの文言を公約に盛り込んだつもりはありません。

 TPPというものは、基本的には例外は認められないという大前提から入ってきたわけでありまして、ですから、一番衝撃を受けたのは、安倍総裁がオバマ大統領とお話をされて、あの日米共同声明のときに、農産品はセンシティブだという文言が入ったときに、あれは巧妙に、事前に作文をされたんだと言う人はいますけれども、その瞬間まで本当に誰も知らない。まさに安倍外交の力を見せつけられたということであります。

 私も、この間委員会で言いましたから、その後のことは言いませんが、この席にとどまることを決断したからには、自民党の決議を踏まえた全力の努力を傾けてまいりたい、そう思っております。

東国原分科員 私は、中途半端とは言っていないんですね。非常に考え抜かれた文言ではないかと思っているんです。

 あのとき、今副大臣御指摘のように、安倍総理がオバマ大統領と日米首脳会談をされまして、センシティビティーを入れた。それから、日本に帰国されて、副大臣の方に連絡があって、これからもう参加する方向なんだ、それで、副大臣には業界関係等々の取りまとめを、あるいは説得を、あるいは説明をお願いしたいんだというように依頼があったということを私は伺っているんですが、そのときに、非常におつらかったんじゃないかなと思うんですね。

 それは、業界団体に断固反対と言って戦われた、その方たちに説明、説得をするわけですから、非常にそのときのつらい気持ちというのは心中察するに余りあるものがあるんですが、そのときの御心境はいかがでしたか。

江藤副大臣 新聞報道等をごらんになって、どうもそういうふうに、通説となっているようでありますが、安倍総裁という方は、そういう方ではないですよ。根回しをしてくれとか、そういうことをする方じゃなくて、非常に意志の強い方で、五十一対四十九という民主主義の大原則というものを彼は持っていまして、たとえ反対があっても貫くんだという強い意志をその場で感じました。

 私に言われたことは、TPP交渉参加に大きく前進した、だから、TPPに参加しようがしまいが国内対策は必要なので、特に参加をするということになればさらに踏み込んだ対策が必要なので、その後の国内政策についてさらに知恵を出してくれということを私は言われたのであって、自民党内でのいわゆる二百数十名の、私の大先輩もたくさんおられる、議員さんたちを、先輩たちを説得する力は私にはありませんし、ましてや、業界団体の方に私が言ったところで、万歳さんはうんとは言わないですよ、そんなに親しい関係を持っているわけじゃない。

 ただ、私は、その後、自民党の幹部の方々と会って、内々には、総理に呼ばれて、総理にそのとき、そのときでも私は反対と言いましたから、これだけ言っても揺るがない、その自信に満ちあふれた、そして国を愛するという思い、それから、棚田を守るんだ、美しい日本の伝統文化を守るんだ、そういうかたい決意をお聞かせいただいたので、その気持ちは党内のごく限られた先生方にはお伝えをしました。本当の、先輩、ごく数名ですね。

 つらくなかったと言えばうそにはなりますが、私は、最終的に交渉参加を表明されたその瞬間まで反対の姿勢であったというふうに思っていますし、ましてや、ほかの方々に、気持ちを変えなさい、もう抵抗しても無駄ですよ、例えば、隣に長島政務官がおられますけれども、この方も強硬な反対派ですが、長島政務官に、もう抵抗しても無駄ですよ、そんなことを言ったことはありませんので、それはちょっと、日経新聞さんですが、私に対してかなり、悪意とまでは言いませんけれども、ストレートではない書き方をされたなという気持ちは持っております。

東国原分科員 三月十九日の農水委員会で、村岡議員の質問に対して、江藤副大臣が、地元で、宮崎で、TPP交渉参加ということの方向性の説明に当たって、副大臣を責める人が一人もいなかったということでしたね。断固反対と言って戦って、さあ交渉に参加するぞということを説明しに行った、でも、地元の方々が、そして農業関係者が、一人も責める人がいなかった。仮にTPP交渉に参加するということであれば、なおさら頑張ってもらわなきゃいけないという逆に励ましの言葉をいただいたということを伺っているんですね。農水委員会でそう答弁されております。

 地元の農業関係者は一体何を頑張ってほしいと思われているとお考えですか。

江藤副大臣 東国原議員におかれましては、宮崎県のことはよく承知をされておられる方ですから。

 宮崎県は、林業も水産業も畜産も、それから米も野菜も果物も、何でもある、まさにデパートのような、一次産業を中心とした県ですよ。それぞれの地域において、それぞれの問題を抱えている。これを言うと答弁が長くなりますからもう言いませんけれども、かなり制度的に限界が来ているものもあります。配合飼料価格安定制度であったり、林業政策であったり、それから海面養殖漁業であったり、いろいろな部分で、TPPとは関係なく、行き詰まっている部分がある。

 そしてまた、余り民主党さんのことは言いたくはないんですけれども、この三年数カ月の政権の中で、非常に、ちょっとスタックしてしまったり詰まった部分がありましたから、その部分を一気に解消してほしいという期待もかなりあった。

 ただ、私は、励まされたというよりも、これはちょっと言い過ぎだったなと後で反省したんですけれども、正確に、私が言われたのは、あんたは副大臣をやめたり自民党を離党すればそれで自分としては納得がいくかもしれぬけれども、林業者や漁師や百姓はどこにも逃げ場がないっちゃ、あんたは逃げれば済むかもしれぬけれども、俺たちはどこにも逃げ場がない、あんただけ逃げることは許されぬよという厳しい励ましだったんですよ、正直な話をすると。

 その言葉を聞いて、私は、これからもっともっと苦しい立場に追い込まれるかもしれません、それでも、自分の精根が尽き果てるまでは林大臣を支えて頑張らねばならぬなというふうに思ったわけであります。

東国原分科員 そうなんですね。TPPに参加する、参加しないにかかわらず、日本の農業、地域の農業を成長させ、守っていかなきゃいけない、あるいは強くしていかなきゃいけないというような課題は、普遍的だと思うんですね。それに対しての頑張ってくださいということだったんだと思うんです。

 さあ、これから交渉が本格化する、安倍総理も国益を実現する本当の勝負はこれからだという発言をされておられるように、これから本当に厳しい交渉が始まると思うんです。

 例えば、自民党のTPP対策委員会の決議文に以下のようなものがあります。聖域、聖域というのは農林水産物五品目とか国民皆保険等ですね。その聖域、死活的利益の確保ができないと判断した場合は、TPPから脱退も辞さないものとするという決議文があるんですが、副大臣、率直に、特例品目をかち取ることができるとお思いですか。

江藤副大臣 私のようなまだ当選四回の下っ端の議員がそこまでのことをここで申し上げるのは、余りに無責任だと思います。

 ただ、私は、安倍総裁と時々お会いをしてお話をする、一緒に食事をしたりする。あの方は、とても上品に見えますけれども、すごく腹の据わった方ですよ。前回、ちょっとよくない総理のやめ方をしてしまったので、何か弱いイメージを持たれているかもしれませんが、実はとてもタフネゴシエーターだと思います。ぶれない。ですから、本当に申しわけないけれども、前政権でTPP交渉参加をしなくて本当によかったと思いますよ。参加をするのであれば、安倍総裁のもとであってよかったなと思います。

 私は、この方は、最後は決然たる決断、委員が言われましたように、脱退するという決断もされるだけの腹は持っていらっしゃると思います。

 それは、私が推測する域を全く出ないのであって、総理のお気持ち次第ですが、私個人としては、財政との兼ね合いもあります。余りにも、例外を設けられなければ、大きな国内対策が必要になる。そうすると、これからプライマリーバランスをちゃんと健全なものに持っていって財政規律を守るという政策目標に対して、このTPP交渉参加による財政出動が国民の理解を得られるのか、そして財政が耐えられるのか。そういったことを考えると、私は、このテーブルから、席を離れるということも当然あってしかるべきだというふうに思います。

東国原分科員 同じ質問なんですけれども、特例品目をかち取ることができると思うか、そしてまた、もしかち取れなかったら交渉から脱退すべきと考えるかどうか、林大臣にお伺いします。

林国務大臣 今、江藤副大臣からもお答えさせていただいたとおりでございますが、党の決議は、脱退も辞さないものとする、今、東国原委員からお話がありましたように、そういうふうになって、これを踏まえて、力の限りやる。今申し上げられることはここまででございます。

 それは、いろいろな理由があるんですが、このあたりでとれれば脱退はしないというような議論を、この段階、交渉が妥結する前ということですが、いたしますと、交渉の最初から、では、そこまではいいんだな、こういうことになるということがまずあるわけでございますから、やはり、どういう交渉でもそうでしょうけれども、こういうことをきちっと決議を踏まえて、そして、アメリカもよく議会が議会がと言いますけれども、これは与党の決議ということであります。オーストラリアのときは、こういう党の決議も踏まえて国会でも御決議をいただいたわけです。

 したがって、我々は、そこを決議していただいて交渉に送り出していただく、こういうような立場になりますから、その決議を踏まえて、交渉力を遺憾なく発揮してこれをかち取るというのが我々の今の基本的な立場、こういうことでございます。

東国原分科員 最後は国会が承認することなので、そのときに国会議員一人一人が、国益にかなったのか、国益を確保できたのかという判断は国会に委ねられるんじゃないかなと思っております。

 次の質問にまいりたいと思います。

 口蹄疫についてちょっとお伺いしたいんです。

 御案内のように、口蹄疫、二〇一〇年四月の二十日、第一症例発生ということで、約三年がたちまして、これが、掘り起こしというか、発掘禁止であったんですが、家伝法によりまして、その期間が、三年をもちまして禁止が解除されますので、これからまた新たな局面を迎えるんじゃないかという節目の時期であります。

 ですから、ちょっと質問をさせていただきたいんですけれども、現在の周辺国家の口蹄疫における非清浄国の状況を教えていただければと思います。

藤本政府参考人 お答えをいたします。

 中国、台湾など、我が国の周辺諸国におきましては、最近でも口蹄疫が継続的に発生しておりまして、直近では、本年三月十五日でございますが、中国の青海省で口蹄疫が発生しているということでございます。

 また、韓国では、二〇一〇年の大発生以来、ワクチン接種を継続しておりまして、いまだ清浄化が達成されていないというふうに承知をしてございます。

東国原分科員 四月の六日にロシアでの発生が確認されたという情報もあるんですが、いかがでしょうか。

藤本政府参考人 お答えをいたします。

 お尋ねの、最近のロシアにおける口蹄疫の発生状況でございますけれども、三月二十五日に一件、三月二十八日に二件が、シベリア連邦管区のザバイカリエ地方で確認をされております。四月四日付で、国際獣疫事務局、OIEと呼んでおりますけれども、こちらへの通報があったと承知をしております。

 これらの発生につきましては、四月五日に取りまとめて、都道府県に情報提供をさせていただいたところでございます。

東国原分科員 近隣国が非清浄国なんですね。

 その中国、台湾等々からの人の出入りとか、飛行機とか船とか、そういったものの往来状況を教えていただければと思います。

藤本政府参考人 全て網羅的に調べることは難しゅうございますが、独立行政法人国際観光振興機構によりますと、まず、中国、韓国、台湾からの日本への訪問客は年間約三百七十万人、また、これに加えまして、日本からこれら三カ国への訪問者数が約八百二十万人ということを考えますと、合計で一千万人を超える人の往来があるというふうに推計してございます。

 また、国土交通省の情報でございますけれども、旅客航空便につきましては、中国から、平成二十四年の夏時点で週に六百六十八便、韓国からは、平成二十二年の冬時点で週に五百九十八便、台湾からは、平成二十三年の冬時点でございますが、週に二百三十三便が就航してございます。

 また、船舶便につきましては、旅客便で、これは平成二十四年の四月時点でございますけれども、中国からは週に六便、韓国からは週に七十便が就航しているというふうに承知しております。

東国原分科員 かなりの数の方たちが往来して、また、これは伝染媒体が人だけではありませんね、物あるいは餌、黄砂による伝染ということもまた疑われている状況なんです。

 二〇一〇年四月に宮崎県で発生した口蹄疫の感染経路を検証委員会が調べたんですが、たくさんの可能性はあるけれども、これといった特定はできなかったんですが、あらゆる手段を設けないと、どこから入ってくるかわからない。これは鳥インフルエンザ等々もそうだと思うんです。

 農水省さんとしては、国としては、この口蹄疫ウイルスをディフェンスといいますか、日本に入ってこない対策というのはどういったものをされているのかというのをお伺いしたい。

藤本政府参考人 お答えをいたします。

 口蹄疫等の悪性の家畜伝染病の国内への侵入を防止するということは、空港とか海の港で水際対策を講じる、そういったことが家畜防疫の第一歩として非常に重要であるというふうに認識してございます。

 このため、ふだんから、国際空港や海の港におきましては、消毒マットによる靴底の消毒を徹底するとともに、最近では、「クンくん」という名前で有名になっておりますけれども、検疫探知犬の活用の強化、それから、海外からの入国者に対する質問をさせていただく、さらに、必要に応じて、携帯品の検査など、水際対策を強化しているところでございます。

 なお、あってはならないことではございますけれども、万が一、国内で口蹄疫が発生したときには、靴底消毒がいろいろなところでできるように、動物検疫所におきましてもそういうマットを備蓄しているところでございます。

東国原分科員 今の答弁にちょっと僕は疑義があるんです。

 マット消毒をされているとおっしゃいましたね。では、具体的な国際空港、どういった空港で、あるいは港湾等々でマット消毒をされておられますか。

藤本政府参考人 中国を初めとして、発生国から到着する飛行機なり、そういったところがあったら、到着する空港においてそういう靴底消毒のマットを設置させていただいたところでございます。

東国原分科員 そうですかね。私は、宮崎空港には、長目の、大き目のマット、いつも湿らせているマットが常備されていることは存じ上げておりますが、それ以外の、中国や台湾からの国際便が到着する飛行機のおり口にマットが全部敷かれているというのは私は確認はしておらないんですけれども、またそれは私も実際目で確かめてみたいと思います。それは港湾も含めてですね。

 何が言いたいかというと、やはり水際作戦が一番大事だと思うんですね。オーストラリア等々は、御案内のように、口蹄疫のポスターなんかを張られて、あるいは飛行機の中にミストをかけて消毒をしたりなんかしているわけですね。

 これは、二〇一〇年、二十九万頭の牛、豚を殺処分しなきゃいけなかったということに至り、あれはやはり国益に、八百億から九百億かかわっているんですね。ですから、これはOIEに、非清浄国になれば何年もそれを解除できないということもありますので、これから攻めの農業をするのであれば、あるいは輸出等々をするのであれば、牛肉、豚肉等々は非常に重要な農業産物だと思うんですね。それを守るということは、これは成長戦略、農業戦略、あるいは食料安全保障上の問題からも非常に重要なことだと思っているんです。

 ぜひこれは水際でとめていただきたい。一回ウイルスが入ると、現場は大変なんですね。ですから、まずは水際できちっと、これは自治体と協力して、自治体も一生懸命やっていると思いますので、それはお願いしておきたいと思っております。

 平成十二年の三月に宮崎県と北海道で同じ口蹄疫が発生しました。このときは、たしか七百五頭の被害だったんですね。飼養頭数が少なかったというか、規模も少なかったというのと、周りに農家が、密集地帯じゃなかった、そういった状況もあったんですが、二〇一〇年は、やはり密集地帯であって、どうしても被害が拡大した部分があった。それらの対策というのは、あのころ家伝法も改正されたりなんかしてやられていると思うんです。

 ことし、三年が経過して、ことしの四月二十一日から発掘禁止期間が終了します。これから埋設地を農地転換する必要があると思うんですが、地元の方にお伺いしますと、九割方が農地転換したいという御希望を持っていらっしゃるんですが、この農地転換について、国の対策というのはどうなっているか、お伺いしたいと思います。

藤本政府参考人 お答えをいたします。

 平成二十二年の宮崎県におけます口蹄疫発生の際に殺処分された家畜の埋却に供した土地につきましては、本年、平成二十五年四月以降、家畜伝染病予防法によって埋却後三年間発掘してはならないとされております期間が、順次終了していくというふうに承知をしております。

 これらの埋却地につきましては、今後、埋却地の確保を円滑にするという観点からも、農林水産省といたしましては、原状復旧を迅速に行っていくということが重要であるというふうに認識しております。

 このため、農林水産省といたしましては、宮崎県からの要望を踏まえ、平成二十五年度から、家畜伝染病予防費負担金によりまして、患畜等の埋却地の原状復旧を支援することとしております。

 今後とも、宮崎県と意見交換をしつつ、口蹄疫により被害を受けた地域の復興、発展に向けてできる限りの支援に努めてまいりたいというふうに考えております。

東国原分科員 ありがとうございます。

 あのころ、私は現場にいて非常に困ったのが、罹患しているかどうかというのを検査するのに、一々東京の動衛研に血液検体を送らなきゃいけないんですね。これで一日、二日おくれるわけですよ、陰性か陽性かというのが。そういったことがもうちょっと簡素にできないか、あるいはスピーディーにできないかというのが非常に現場で思ったことなんですね。

 例えば、動衛研を……

西銘主査 時間が来ております。まとめに入ってください。

東国原分科員 はい。東京だけじゃなくて各地方に置く、あるいは簡易キットみたいな、すぐ、口蹄疫かどうか、陰性か陽性かわかるような、そういうシステムを構築するおつもりはないですか。これを最後の質問にします。

西銘主査 時間が来ていますから、厳守しないと大変になりますので、答弁は後で個人的にやってください。(藤本政府参考人「今よろしいですか」と呼ぶ)

 では、藤本安全局長、手短にお願いします。

藤本政府参考人 お尋ねの動衛研につきましては、非常に高度な検査能力が必要でございますので、資源の集中という観点から、全国的に設置するということは考えておりませんが、さらに動衛研の体制、位置づけについては考えてまいりたいと思っておりますし、お尋ねのございました簡易キットにつきましても、国で、ただいま実験室レベルでの性能を確認するというところまで来ております。今後、完成を目指して頑張ってまいりたいというふうに考えているところでございます。

 よろしくお願いいたします。

東国原分科員 ありがとうございました。

西銘主査 これにて東国原英夫君の質疑は終了いたしました。

 次に、牧島かれん君。

牧島分科員 おはようございます。自民党の牧島かれんです。どうぞよろしくお願いいたします。

 農そして食は、国の安全保障にもかかわる大変重要な課題というふうに受けとめております。さらには、農地集積、新規就農、経営をしっかりと継承していく、攻めの農業といったキーワードが今私たちの目の前にある中で、平成二十四年度の補正予算でも平成二十五年度予算においても、農業に関する関連予算総額は増額をしております。その理由として、農地の基盤を整備していく、さらには農業によって得られる収入を増大していこうといったことが挙げられています。

 しかし一方で、農地の集積、さらには就農といったものを阻んでいる要因として、鳥獣被害というものが挙げられると考えております。

 私の地元、神奈川県西地域小田原は、かんきつ類、湘南ゴールドの産地であります。農商工連携でブランド力をアップしていこう、そしてPRをみんなで一生懸命頑張っていこうというふうに活動しておりますが、一方で、猿がビニール袋を提げてミカンをとって歩いているといった目撃証言もありまして、笑い話ではありません。

 大井松田インターチェンジから秦野中井インターチェンジに至る東名高速道路のすぐそこにまでイノシシや鹿がすみついてしまっておりまして、植えつけ直後の苗も被害に遭っております。さらには、無農薬、有機栽培で一生懸命農家の方たちが育てていても、一晩で全滅といったことも珍しくないのです。

 また、子供たちが毎年サツマイモの収穫体験に来るからということで丹精込めて農家の方たちがつくっておられても、イノシシに畑を食い荒らされてしまった、茫然と立ち尽くしてしまう農家の方たちの姿に触れてまいりました。

 これでは営農意欲がどうしてもそがれてしまいますし、後継者不足という問題も長引いてしまう、農家の方たちのやる気を失わせてしまっている。私たちの大切な里地里山を守っていかなければならない。大変大きな危機感を抱いているところです。

 農家の皆さんができる自衛の策は限られています。柵をつくったり、また防御ネットを張ったりといった努力はされています。しかし、二メートルも跳び越えてしまう鹿、さらには学習能力があるイノシシの前に、限られている手だてと私たちには見えてしまうのです。

 そこで、農業のこの鳥獣被害の防止に対して国としてどのような予算がつけられているのか、まず初めにお聞かせいただきたいと思います。

佐藤(一)政府参考人 牧島先生の御質問にお答えいたします。

 今先生おっしゃったように、非常に、近年、農山漁村におきまして、過疎化でありますとか高齢化の進展によります耕作放棄地の増加に伴いまして、野生鳥獣による被害が深刻化、広域化しておりまして、こうしたことが農家の勤労意欲といったものの低下につながっているというふうに考えております。

 農水省におきましては、これまでも、まず、おり、わなの購入でありますとか緩衝帯の設置という、先ほど先生の方からもお話がございましたが、そうしたソフト対策、それと侵入防止柵の整備等のハード対策、こうしたものについて地域ぐるみでの取り組みを支援します鳥獣被害防止総合対策交付金というもので、これは二十五年度予算では九十五億円を計上させていただいておりますが、こういうことによりまして総合的に支援してきたところでございます。

 しかしながら、先ほど先生からお話がございましたように、非常に深刻化しているということで、昨年改正されました鳥獣被害防止特別措置法の趣旨も踏まえまして、二十四年度の補正予算でございますが、この中で、とにかく野生鳥獣の個体数削減に向けてしっかりやろうということで、鳥獣被害防止緊急捕獲等対策ということで百二十九億円の補正予算を計上いたしまして、鹿あるいはイノシシ等の捕獲頭数に応じまして、一頭当たり八千円以内を支払うといったような対策の充実強化を図っているところでございます。

牧島分科員 ありがとうございます。

 しっかりとした予算をつけていただいた、私たちの強い思いだというふうに思っております。

 鳥獣被害の防止というのは、治山事業にも関連するものだと思います。神奈川県の丹沢の山は鹿によって荒らされてしまっておりますので、森が砂漠化してしまっています。保水力を失っている。なので、山北町では、大雨が降ったり、または台風が来たりしますと、山崩れや土砂崩れという問題が大変深刻な大きな問題となってしまいます。

 さらには、秦野市にはたくさんの山登りの方たちが来てくださっていますが、この登山道にまで鹿がヒルを運んできてしまっています。若い登山の方たちがふえても、軽装備でおしゃれな格好で登山を楽しむ山ガールの人たちが、ヒルの被害に遭ってしまうともう敬遠をしてしまうといったことも大変心配をされております。

 また、南足柄は、足柄山の金太郎のふるさとでして、足柄山の金太郎、まさかり担いで金太郎、熊にまたがりお馬の稽古という歌があるんですけれども、本当に民家にまで熊が出てきてしまいますと、これは冗談ではなくて、やはり人々を恐怖に陥れてしまうといったことも実際に起きております。

 農林水産省における被害対策の進め方の中で、神奈川県西湘地域におけるニホンザル追い払い手法や、神奈川県丹沢地域のニホンジカの総合的保護管理対策なども紹介していただいておりまして、地元を注視していただいているということ、本当に感謝を申し上げながら、だからこそ、さらにモデル事業をつくっていきたいというのが私の希望です。

 鳥獣被害の八割は、イノシシ、鹿、猿、熊、カモシカというふうに言われています。国としても鳥獣被害の個体数の調整、今お話があったとおり、大きな目標を掲げていただいております。特に今回は、緊急目標として三十万頭という数字が挙がっていますが、この三十万頭の内訳について、またはどのような手法によって個体数を管理していく計画があるのか、お聞かせいただきたいと思います。

佐藤(一)政府参考人 お答えいたします。

 今、先生の方から御質問がございました鳥獣被害防止緊急捕獲等対策、先ほどの二十四年度の補正予算でございますが、この中におきまして、今、各都道府県が定めるイノシシあるいは鹿の捕獲目標頭数というのは全体で百万頭になっております。そのうち、直近では七十万頭ぐらいは消化できるかというふうに考えておりますが、残りの三十万頭を何とか緊急に捕獲する必要があるといったようなことから、そういうことを念頭に置いて必要な予算額を措置したものでございます。

 ただ、今先生お話ございましたように、地域によりましては、イノシシよりもむしろ熊だといったような地域の実情がございます。そういったところで円滑な対策を講じることができるようにすることが重要でございますので、事業を実施する市町村が捕獲計画を定めて、その中でイノシシや鹿以外の獣種も含めて、地域の実情に応じて頭数の具体的な目標を設定するというふうにしておりまして、こうした計画の積み上げが結果的に獣種別、地域別の内訳となる、こういうようなことでございます。

牧島分科員 ありがとうございます。

 それぞれの地域の実情があるというふうに答えていただいて、大変ありがたく思っております。イノシシであったり、鹿であったり、熊であったり。

 そこで、イノシシと鹿の違いについて、一度ちょっと確認をさせていただきたいのです。

 神奈川県において鹿というのは、保護をしていく、管理をしていくといった、イノシシとは違う観点もあります。端的に申しまして、実は、鹿をどれぐらい捕獲をするのかという許可は県が出しています。環境部の管轄になります。しかし、イノシシに関しては、鳥獣として駆除をしなければならないという観点が強く出ますので、町がその捕獲の個体数の目標、許可というものを出します。これは、県と町、さらには環境行政と農林水産行政という観点にありまして、現場で捕獲、駆除の作業に当たられる方たちにとっては複雑な心境になっているという声も聞こえてきています。

 なので、ここは、特に農業をされている地域に限ってでも、イノシシも鹿も、場合によっては熊も、一番実態を知っている自治体である町が一括して目標を定めていくことが、今回の三十万頭というプラス、私たちの最終的なゴールに近づく効率的な方法なのではないかと考えるのですが、いかがでしょうか。

佐藤(一)政府参考人 先生が今御質問していただきましたように、緊急にやるということになりましたら、やはり地元でのそうした計画づくりといったものが一番優先するかと思っております。

 この問題につきましては、先生の方から今お話ありましたように、環境省と農林水産省にもかかわる問題でございますが、できるだけ連携を密にして、現場におきまして円滑にいくよう、そのように今後とも働きかけていきたいというふうに考えておるところでございます。

牧島分科員 ありがとうございます。

 ぜひ環境省と農林水産省の連携をよろしくお願いいたします。

 そして、地方の声という、今まさにいただきましたお言葉に関連してでございます。

 今回、捕獲活動の経費の支払いとして、イノシシ、鹿などは八千円、タヌキそしてアライグマは千円というふうに提示をされています。既に地方自治体において報奨金などが出されている場合はこの事業に上乗せをしていいということになっているので、これはインセンティブが働くものだろうというふうに思っております。

 また、これを受けて、平成二十四年三月の鳥獣被害防止特措法の一部を改正する法律、この精神が大事になってくると思うんです。現場に最も近い行政機関である市町村が主体となって、総合的な取り組みをしていく、これを国として支援していこうということです。

 この主催団体は、市町村であったり、農林水産漁業団体であったり、狩猟者団体が地域協議会をつくります。これによって防止計画をつくっていく、さらには実施隊をつくっていくというふうになっておりますが、そもそも被害防止計画を作成している市町村はどれくらいで、神奈川県においてはどこがあるのでしょうか。また、実施隊を設置している市町村が五百二十一と伸び悩んでいる理由についてはどのように分析をされているのか、お聞かせください。

佐藤(一)政府参考人 お答えいたします。

 今御質問ございました被害防止計画を策定している市町村は、平成二十四年四月末現在でございますが、全国で千百九十五市町村になっております。全市町村数が千七百四十二でございますが、そのうち千百九十五市町村がつくられております。

 それと、神奈川県では、全部で三十三市町村ございますが、五市町村でございます。具体的な市名で申しますと、秦野市、厚木市、伊勢原市、湯河原町、愛川町というふうになっておるところでございます。

 それで、今先生から御質問ありましたように市町村が鳥獣被害対策実施隊といったものもつくることになっているわけですが、これが、平成二十四年四月末時点の八十七市町村から、二十四年十月末時点で五百二十一市町村に増加したわけでございますが、計画策定市町村が千百九十五でございますので、それに比べてまだ非常に低いということで、この広範な設置に向けて積極的に取り組んでいく必要があると考えております。

 なぜ進まないかという要因でございますが、地元市町村の間で被害防止計画あるいは実施隊に対するメリット措置がまだ十分知られていないといったような、いろいろな要因がございますので、やはりそういった要因も分析しながら今後とも努めていきたい、こういうふうに考えているところでございます。

牧島分科員 ありがとうございます。

 神奈川県においても、鳥獣被害に遭っている市、町が、まだまだ、全て登録をされている、防止計画ができている段階ではありません。また、実施隊に至っては神奈川県の県西地域、湯河原の町一つという現状を、私も大変大切な問題であるというふうに受けとめているんです。これは、それぞれの町のやる気ではカバーし切れないところがあるのではないかと思っております。

 ぜひ、防止計画をどのようにつくったらいいのか、実施隊をつくるとこういうメリットがあるんだということのノウハウを丁寧に伝授をしていただきまして、さらには、インセンティブが力強く働くようにお願いをしたいというふうに思っております。

 現在、野生鳥獣による農作物の被害額は二百億円を上回ると言われている中で、捕獲意欲のある農家そして狩猟家の方たちをふやしていく、人材発掘を進めていかなければならないと思っております。

 例えば神奈川県の小田原市の猟友会を例に挙げますと、今、会員数は約二十名、そして、二〇一二年度は、箱根外輪山を中心に、わなやおりなどを使って計六十九頭を捕獲しました。百キロを超えるものもあったと報告をされています。

 さらに、実態をより正確に把握するために、神奈川県猟友会足柄上支部に所属をする大井町の一人の猟友会員の活動実績を取り上げてみたいと思います。

 わな駆除に従事する日数は年間で二百一日、そして毎日三時間の見回りを必ず行っております。捕獲処理の作業は、別途一回十二時間かけています。計約八百五十時間を駆除のために使っています。一年間でイノシシ十四頭と鹿七頭を捕獲しました。長時間の業務に耐え得る体力と、そして何よりも強い使命感がなければできることではありません。

 さらに、くくりわな三十基、そしてわな用の餌、万が一事故が起きた場合の保険というものも全部自己負担です。報奨金が協議会を通じて出るとはいっても、車の燃料費にも満たないのが現実です。こうした危険な業務に従事をしてくださっている方たちのボランティア精神に過分に頼っているというのが現状なのではないでしょうか。

 まずは、有害鳥獣駆除に従事をしてくださっている方たちの実態を全国的に比較検討していただいて、今後の対応に役立てていただけるようにと期待をいたします。

 同時に、わな駆除における使用猟具そして使用方法というものは、狩猟法に準ずる形となっています。くくりわなは径十二センチ、そして三十個までというふうになっていますが、この規制が緩和されれば、より効率的に私たちの目標が達成できるのではないかと考えます。ワイヤーの径が十五センチになる、または三十個ではなくて三十カ所にするといった変更を提案したいと思うのですが、お考えをお聞かせください。

伊藤(哲)政府参考人 鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律におきましては、狩猟の規制と有害鳥獣の捕獲制度は分けて対策を講じているところでございます。

 今先生御指摘のくくりわなのワイヤー径あるいは設置個数に関する規制は、狩猟における規制でございまして、有害鳥獣捕獲許可においてそのまま適用されるというものではございません。

 有害鳥獣捕獲許可につきましては、基本的には地方公共団体による自治事務ということで、都道府県知事等が、環境省が策定した基本指針に基づきまして、鳥獣の生息状況や安全性等の地域の実情を踏まえて許可を出すということになってございます。

 それで、環境省が策定しております基本指針におきましては、この有害鳥獣捕獲許可に関して、くくりわなの直径につきましては、熊の生息状況や捕獲時期等を勘案して、熊を捕獲するおそれが少ない、こういうふうに判断される場合には、十二センチ以上のわなでも可能としているところでございます。いずれにしましても、これを踏まえて都道府県知事等が地域の実情を勘案しまして許可を出す、こういうことになってございます。

 また、設置個数につきましては、環境省の定めました基本指針において特段の定めはしていないという状況でございます。

 いずれにいたしましても、環境省といたしましては、引き続き、地域の実情に応じた鳥獣被害対策が推進されるよう、都道府県あるいは市町村に対していろいろな働きかけを行ってまいりたい、こういうふうに考えている次第でございます。

牧島分科員 それぞれの地域の実情があると思います。

 今、熊ということが出たんですけれども、先ほど農林水産省さんの方から御回答ありましたとおり、熊の被害というものは大変大きな問題となっております。これは神奈川県でもそうでございます。

 指針を環境省で出していただいて、それによって県がわなの直径を変えられるということで、県も受けとめてはいるんです。同時に、各市、町、村の首長さんたちも、十五センチの方がいいんだということを、ボトムアップで県に上げてはいただいているんですが、どうしても、県としては十二センチが一般的な指針なのではないかという考えが働いてしまって、なかなか十五センチにならないというところも、現実問題として出てきております。

 何よりも、危険な業務に従事をしてくださっている、ボランティア精神で現場にいられる方たちがより実動がしやすいような環境を整えていくという視点で、今後もサポートをしていただければというふうに思っております。

 この鳥獣ですけれども、最近では、利活用というものが、私たちの明るい展望として見えてきております。ヨーロッパでは野生の肉を使ったものはジビエとして珍重されてきておりますし、日本でも野生の命を無駄なくいただこうという考えが示されています。

 例えば鹿ですと、高たんぱく質でヘルシーだと言われていますし、イノシシもビタミンB群が豊富であります。こうしたイノシシや鹿の肉をより多くの人に食べていただこう、民間でも問屋ができ、都会のお店などとの連携といったものも積極的に進められるようになってきています。

 しかし、ここで課題となっているのが加工処理施設です。野生の肉ですから、質や量というものにもばらつきがあります。これを安定化していかないと、販路の拡大というものは見込めません。さらには、外食産業のニーズにも応えていく必要があります。ブロックがいいのかスライスがいいのかミンチなのか、五百グラムなのか一キロなのか、真空包装か冷凍加工かといった、きめ細やかな加工処理ができる施設がつくられる必要があります。そうすることによって、牛肉や豚肉と同じように、おいしく、そして使いやすい肉としてジビエが使われるようになっていくのではないかと考えております。

 そこで、野生鳥獣の販売価格を考えたときに、事業の採算ベースの価格はどこが最低ラインになってくるのか。一方で、加工処理施設をつくって運営していく費用はどれぐらいのコストがかかるのか。この二つの価格を考えてみる必要があると思います。

 加工処理施設の建設または焼却施設に関しては必要経費の二分の一の補助が出ておりますが、この事業を使った事例としてどのようなものがあるのか、お聞かせください。

長島大臣政務官 牧島先生の質問に、私の方から少し答えさせていただきます。

 先生の御地元は、日本有数の観光地であると同時に、山林を抱えたりで、鳥獣被害に大変悩まれていることは、私も現場を見せていただいたことがありますので、よく承知をしているつもりでございます。

 私は、今先生から御指摘いただいたように、鳥獣被害を防止する担い手というか、人の育成がやはり大変重いものだと思っている一人でありますし、先生御指摘のとおり、使命感を持っていただいて、そして達成感を持っていただくことがやはり非常に有効な手段だというふうに思っている一人です。

 そこで、今御指摘の捕獲現場の処理の方法ですけれども、通常は埋設あるいは焼却によって処理をしておりますが、その費用も自治体にとっては大変大きな負担になっております。近年、御指摘のとおり、そういったものをいわゆる料理として、嗜好品として、人が命を分けていただくというところを伝えようとしている動きもあることも実は承知をしております。

 さっき説明させていただいた農水省の交付金の中で、加工施設とかの建設、運営にも補助金を出せるシステムにしておりますし、何とか、鳥獣を用いた商品の開発あるいは販売流通経路の確立についても、農水省として取り組んでまいりたいと思います。

 私は山間地ですから、かつては貴重なたんぱく源でございました。それはやはりいろいろな意味で、食生活が多様化して、安易に肉が入ることもあって、少し、野生の動物の命を分けてもらうという考え方から今日本が遠くなっているんだと思うんですが、もう一回、そのことも踏まえて、貴重なたんぱく源、貴重な資源としての考え方も一方では必要なんだと思います。

 ただ、補助率二分の一は、ほかの事業とのバランスもあって、今のところ、すぐに変えることはできないんだろうと思っております。

牧島分科員 ありがとうございます。

 貴重なお話も聞かせていただきましたので、ぜひ地元でも、私たちは野生の命とどのように日本人として向き合っていくのかということもお伝えをしていきたいと思います。出口の市場に届けるまでの私たちの精神も含めた全体的なサポートを総合的に引き続きお願いしていきたいと思います。

 最後に、大臣に質問をさせていただきます。

 鳥獣被害の対策といいますと、男性ハンター、ぶこつなイメージがどうしても強くなっておりますが、最近では、昨年の秋に北海道で女性だけのハンターの組織というものがつくられました。また、今まで余り活用されてこなかったイノシシや鹿の皮をなめして革製品をつくっていこうという話が持ち上がったときに、では、それは女子大生のアイデアを取り上げてみようなどというMATAGIプロジェクトというものも誕生しております。

 こうした新しい、女性を含めた観点による鳥獣被害の対策について、大臣のお考えをお聞かせいただければと思います。

林国務大臣 今、牧島委員から御紹介いただきましたように、いろいろな女性の視点を活用するというものが方々で行われている。大変大事なことではないかというふうに思っております。

 敵もさるものという言葉がありますが、先ほど猿のお話がありました。私が地元の猟友会の皆様にお聞きしたところによりますと、鉄砲を向けると、猿がこうやって拝んで、撃たないでくれと頼むというんですね。ビニール袋に入れている猿かどうかわかりませんが、非常にいろいろなことが現場ではあるようでございまして、なかなか今、特効薬、これさえやれば全て解決ということがない中で、各地でいろいろな知恵や工夫をやっていただいている。

 そういう中での女性の知恵ということで、先ほどハンター組織の立ち上げ事例、これも女性ならではの視点ではないかというふうに思いますし、どんどん入ってきていただいて、例えば、着るときのベストをもう少しおしゃれなものにするとか、それから猟銃ももう少し運びやすく、使いやすくならないか、こういう視点も出てくるのではないかと、新聞記事も拝見しましたけれども、頼もしく思っております。

 また、六次産業化でジビエで出すときに、これは一般的に六次産業化で言われていることですが、最終的に生産者が加工そして販売というところにいく場合に、やはり女性が中心になって活動している取り組みが非常にうまくいく事例が多いというふうに言われております。

 考えてみれば、どういうものを買って食事をつくるかとか、それからどういうメニューで献立をつくっていくかということは、これはしょっちゅう女性は考えておられる。我々も考えないわけでもないんですけれども、やはりそういうところが非常に女性の強みとしてあらわれてきている、こういうことでございまして、ぜひ男性のみならず女性の活躍に期待したい、こういうふうに思っております。

 そういう意味で、我が省といたしましては、こういうすぐれた事例を横展開していただこうということで、関係者の方に皆さん集まっていただいて、全国鳥獣サミット、これは仮称でありますが、これを本年度中に開催する予定でございまして、現在、公募を準備しておるところでございますが、こういった場を活用することも含めて、現場でいい知恵を出しているものをどんどん探して横展開を図っていきたい、こういうふうに思っておるところでございます。

牧島分科員 ありがとうございます。女性の視点、そして現場力を生かしていただけるという大臣のお言葉、大変ありがたく思っております。

 私たちは、実は地元、足柄上郡松田町寄というところで、イノシシ、鹿、鳥でイノシカチョウ、花札にかけて「こいこい鍋」というのをつくろうという話が持ち上がっております。カップルが来てくれるように、恋来いというネーミングが実は先に決まったんですが、加工処理施設ができていないんです。まだ予算の措置もとられていない中で、気持ちはあります。これから私たちは、実際に一つ一つプロセスを積み上げていかなければならないと思います。

 ともすると過疎化が進んでしまう中山間地にとって、鳥獣被害対策をする、そしてジビエという明るい話題を取り上げていく、そして出口を考えて観光資源ともしていくという、今、本当に大切なタイミングを迎えておりますので、引き続き、大臣、副大臣、政務官初め皆様に御協力いただきながら、大切な日本の里地里山を守ってまいりたいと思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

西銘主査 これにて牧島かれん君の質疑は終了いたしました。

 次に、後藤祐一君。

後藤(祐)分科員 民主党の後藤祐一でございます。

 本日は、消費税、TPP、有害鳥獣、都市農業といったことについて中心に聞いていきたいと思います。

 まず、消費税の税率アップが予定されている中で、農産物との関係についてお伺いしたいと思っておりますが、そもそも、今、農産物価格が非常に低迷して価格転嫁が大変難しい状況にあるという中で、消費税増税が実施された場合、農業経営を圧迫していくおそれがあるのではないか。

 さらに言いますと、昨今の円安によって飼料あるいは肥料、燃油、こういったものの価格が高騰していて農業経営が大変圧迫されているというふうに、私の地元でも多種多様な農家経営の方から伺っておりますけれども、この食料、農畜産物価格について、消費税の税率アップが仮に確定した場合にはきちんと価格転嫁をしていくということを徹底する必要があります。

 そして、今まさに衆議院でこれに関連する法案も審議されているところでございます。これを政府全体でやるのは当然なんですけれども、農林水産省としても転嫁対策調査官を置いて取り締まりをしていくといったような対策をするように伺っておりますけれども、これは抽象的なことを言ってもなかなか進まないと思うんですね。

 私も役所で十三年間働いていた人間なんですが、一罰百戒的に、ストレートに、悪い事例があった場合には、ひとつぴしっと具体的な事例を取り上げるということが多分ほかの方に対してもきくと思いますので、ぜひ、この消費税の農畜産物の価格転嫁対策について、今のような方向でやっていただければと思います。厳しい姿勢をとっていただきたいと思いますが、これについての御見解を政務官からいただきたいと思います。

長島大臣政務官 議員の御質問に私の方からお答えをさせていただきたいと思います。

 消費税は、そもそも最終的には消費者が負担をしていただくものだという認識を持っております。ただし、事業を行う者にとって、円滑かつ適正に転嫁できるかということがこれからまさに重要な問題になってくるんだろうと思います。

 農業者の場合、その約九割は免税事業者だというふうに認識をしておりますけれども、仕入れ等の消費税額を価格に転嫁できるかということがまさに課題になってくるんだろうというふうに実は思っております。

 御指摘のとおり、通常国会に提出されている消費税円滑転嫁特措法案、昨年十月の、消費税の円滑かつ適正な転嫁等に関する対策推進本部の決定等を踏まえて、公正取引委員会などの関係省庁と連携をして、消費税の転嫁が円滑に行われるように対処をしていくつもりでございます。

 具体的に、農水省としては、消費者、事業者に対する相談窓口の設置、先ほど御指摘をいただいた転嫁対策調査官の設置、指導に従わない場合には、公正取引委員会に対する措置請求、そして、所管業界に対する広報活動や説明会の開催等にしっかり取り組んでまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いをしたいと思います。

後藤(祐)分科員 ぜひ、しっかり取り組んでいただけるようお願いいたします。

 続きまして、TPPについてお伺いします。

 私は、TPPについてはもう二年前から、米の関税ゼロですとかこういったことは認めてはならない、必ずこれだけは国益を守らなきゃいけないということを、立法府、議会から、交渉を担当される政府に対して、きちんと守るべきラインをある意味提示させていただいて、ただし、交渉には入っていただいて、その中で国益を守っていくべきだということを、ずっと地元でも、JAの皆さんなんかと議論する際にも、堂々とこのことを申し上げてまいりました。

 そして、今、交渉入りする中でそのような展開に今の自公政権でもなっているわけでございますけれども、今こちらにおられます玉木雄一郎議員なんかも提案されておられると聞いております、農水委員会の中でこのTPP協定交渉参加に関する決議というものが議論されているというふうに伺っております。

 ぜひ、これは決議をしっかりやっていただいて、立法府からこれだけのことを突きつけられている、政府としては、アメリカその他、この後、複数の国になるんでしょうけれども、各交渉の中で、それを日本国としてのんでしまったら議会との関係がもたない、それでは批准もいかない、ですからこれ以上我々は譲れないんだという形で、この議会からの決議を交渉のてこに使っていただきたいんですね。

 そういった強い交渉をしていく覚悟を、ぜひ大臣にこれは伺いたいと思います。

林国務大臣 先ほど、東国原委員の御質問にもお答えして申し上げたんですが、オーストラリアとEPAに入るときに、実は、同じように、当時の与党の自民党でも決議をいたしましたが、それと同じような内容だったと思いますけれども国会でも御決議いただいて、そしてそれを肩にしょってといいますか、交渉をしてきた、こういう経緯もございます。

 よく、アメリカは特にそういうことを言うんです、議会が議会がと。議会に説明を、議会が通らない、こう言うんですが、我々も議会がこのようにあるわけでございますから、同じように、今、後藤先生からお話がありましたような形で、今回のTPPについて、今から準備をされておられるというお話がありましたけれども、そういう決議がもしあれば、きちっとこれが我が国の国権の最高機関である国会の意思であるということを背負ってやれる、こういうふうに思っておりますので、ぜひそうなった場合には、しっかりとこれを背負って交渉してまいりたい、こういうふうに思っておるところでございます。

後藤(祐)分科員 我々議会としては、甘い交渉結果になった場合には批准しないこともあり得るということを強く心に持ちながら、交渉については見守ってまいりたいと思いますので、ぜひ強い交渉をしていただくよう期待をしたいと思います。

 それでは、続きまして、先ほど牧島議員からも話がありましたが、有害鳥獣対策について、私の地元でも、これは鹿、イノシシ、猿だけではなくて、アライグマだとかハクビシンですとか、その結果としてのヤマビルですとか、大変被害が大きくなっているところでございます。

 これに対しては、もう既に、鳥獣被害防止総合対策交付金といったものが、我々の政権になる前、平成二十一年度は二十八億円あったんですが、その後、大幅に民主党政権でもふやさせていただきました。私は、政調会長補佐という立場で予算編成を担当していたんですけれども、これを平成二十三年には百十三億円にふやすという仕事もさせていただいたところでございます。

 このたび、自公政権でまた新しい、鳥獣被害防止緊急捕獲等対策予算というものも加えられたというふうに伺っておりますけれども、これは、現場でいろいろな状況があるんですね。

 実際、電気柵なんかをつくって、つくるところまではお金をいただいてできたんですけれども、それを管理するのが大変で、ちょっとここだけ破られちゃったのを直したりとか、上から木がおっこちてきたとか、その管理するところの経費ですとか、あるいは、個人で電気柵をつくられるようなケース、あるいは数人の農家が共同してつくられるようなケース、こういったさまざまな現場での対策に、ぜひ柔軟にこういった支援策を使えるようにやっていただきたいと思いますけれども、これについて政務官の御見解をいただきたいと思います。

長島大臣政務官 私の方から少しお答えをさせていただきたいと思います。

 委員御指摘のとおり、交付金事業が、県を通じて市町村に、あるいはそれは実施主体とかということなんですが、なかなか地方の自治体によっては、そのことを十分一〇〇%理解しない状況で、できることもなかなか県レベルに上げていないということも、私は小さな自治体出身ですからよく承知をしているつもりです。

 委員御指摘のとおり、今言われた百二十九億円の緊急捕獲等対策を末端までおろすことは大変やはり御苦労のあるところなんだと思います。ただ、そのことを言っているだけでは大変なことになりますので、担い手、担ってくれる人たちにこういう事業があるんだということをやはり知らしめていただいて、その人たちから場合によっては町や農業団体を動かしていただいて、一緒にやっていただくということも私は必要なんだと思います。

 ですから、人材育成という観点も、先ほど牧島委員からも御指摘をいただきましたけれども、人材育成をしながら、やはり市町村の農業の実情や被害の実情に合わせて、私のところは、実りそうになるとタヌキがやってきて、イノシシがやってきてというのが一番多いんですが、少し南に来ると、猿の被害が一番多かったり鹿の被害が一番多かったりと、その実情に合わせて少しやっていく必要があるんではないか。小まめにやらないとなかなかこのことはクリアできないんだという認識の上に立ってやってまいりたいというふうに思っております。

後藤(祐)分科員 むしろ、農家の、人間がおりの中に入っているというのが私のところの実態だったりするものですから、猿が本当に来るところはそのぐらいまでやらないと防げないものですから、ぜひ柔軟に対応いただきたいと思います。

 それと、議員立法で鳥獣被害防止特別措置法の改正案というものが成立いたしました。私も党内で、この成立は何とか与野党を超えて積極的にやっていきましょうということを働きかけてきた一人でございますけれども、これによって、捕獲に従事される方々の技能講習免除ですとか、幾つか進展したところがございます。

 私の選挙区でも、厚木市、伊勢原市、愛川町、こういったところで既に被害防止計画を策定されているところでございますけれども、これも、いろいろな、現場での柔軟な対応が必要になってくるところはありますので、この法律についても柔軟な適用をお願いしたいと思います。これは、私から申し上げるだけで結構でございます。

 次に、都市農業に行きたいと思います。

 従来の農業政策というのは、都市というよりは大生産地を念頭に置いた支援策といったものがどうしても中心となってきて、この都市農業というのはやや後ろに置かれてきた面があるのではないかという気がいたします。都市農業というのは、実際、都市の中ではまた別の多面的機能がありますし、ここできちっと農地を守っていくんだという価値も、また別のところとは違う価値があるんだというふうに思っております。

 都市の農業経営を持続可能にしていくためには、私はやはり、きょう国土交通省の赤澤政務官にも来ていただいておりますけれども、都市計画との関係といったものが大変重要になってまいります。これについては、平成二十四年九月の社会資本整備審議会都市計画制度小委員会の中間取りまとめというもので、「都市計画に関する諸制度の今後の展開について」といったところで議論がなされておりまして、「制度上、営農の継続性を十分に担保することを検討すべきである。」といった取りまとめがされているところでございます。

 これは今までも国土交通省と農水省の間でいろいろな議論があったと思いますし、実は、復興特区法をつくるのに私も関与させていただいたんですが、これは都市計画の世界と農地の世界を革命的に転換する、共同作業ができる法律ができたというふうに自負しております。

 今までの関係とは違ってきていると思いますので、都市計画法の中に農地を位置づけていく、あるいは都市農業の振興というものを中心に据えた都市農業の基本法的なものをつくっていく、いろいろなやり方があり得ると思うんですけれども、ぜひ、国土交通省赤澤政務官、都市計画制度の中に、この都市農業、農地といったものを位置づけることを考えるべきではないかと思うんですが、これについての御見解をいただきたいと思います。

赤澤大臣政務官 都市農地は、食料生産の場というだけではなくて、委員まさに御指摘のとおり、都市内の貴重な緑地、緑を提供したり、あるいは避難地としての機能の発揮が期待をされる防災上の観点もあるということで、独自の多様な機能、役割を果たしているというふうに認識をしております。

 これはもう委員御案内と思いますけれども、都市計画制度上は、市街化区域内において農地的土地利用を行うことは現行可能であって、生産緑地制度というのが既にございます。その制度自体はかなり機能をしていて、指定された農地についてはそんなに減っていないということがあります。

 また、平成二十五年度予算案では、都市農地の保全などに向けた実証的な調査のための予算も計上しておりまして、委員の御指摘なども念頭に置きながら、農林水産省とも協力しつつ検討を進めていきたいと思っています。

 今後とも、都市農地のあり方については、都市住民にとっての重要性とあわせて農業生産面における重要性なども踏まえて、農林水産省など関係省庁とともに、都市政策、農業政策双方から総合的に検討を進めてまいりたいと考えております。

後藤(祐)分科員 生産緑地は確かに守られている面があって、有効に機能していると思うんですけれども、それ以外の、特に市街化区域内の農地のあり方については、今、政務官から総合的に検討してまいるということでございますので、ぜひ、国土交通省と農林水産省の共同で審議会を設置するといった検討の場を設けるべきだと思うんですけれども、これについて、いかがでしょうか。

赤澤大臣政務官 御指摘の点はよく理解をいたしますけれども、先ほどもお話ししましたとおり、平成二十五年度の予算で、まず、都市農地の保全に向けて実証的な調査のための予算を計上しておりますので、これの結論を得て、農水省ともその後の進め方などもよく相談をしていきたいというふうに思います。

後藤(祐)分科員 ぜひ積極的に、現場ベースでは昔に比べると相当意見交換されているようでございますので、あとは政治の決断だと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 それでは、続きまして、都市農業の中で、実は、本音ベースで一番大きいのは相続税の問題だというふうに言われます。相続税については、二十五年度の税制改正で強化されたという大変苦しい中で、都市において本当に農業を続けていけるのかどうかということを大変危惧されておられます。

 相続税については、一番根本のところは相続税の納税猶予制度だと思うんですけれども、これはこれからも引き続き堅持していくべきだと私は思いますが、農水省としての、当面というよりは、これから長い目で見たときもこれはきちっと堅持していくという姿勢を、ぜひお聞かせいただきたいと思います。

江藤副大臣 意欲のある担い手にこれから農地を集積していかなければなりません。相続することによって農地が細分化されていくことは、政策の趣旨から大きく外れることになります。ですから、昭和五十年から始まったこの制度は、そういった政策を推進する上でも堅持されるべきだと理解しております。

後藤(祐)分科員 力強い答弁をいただきました。

 相続税の納税猶予制度というのは、実は、二十四年度から山林についても新しく制度がつくられたところでございます。これは民主党政権下で検討の結果つくったものでございますが、適用例がまだ実は一件しかないということを農水省の事務方からは伺っております。

 どうも、この理由はいろいろあるようでございますけれども、山林は百ヘクタール以上でないとこれは使えないという大変厳しい基準があって、農地は規模に関係なく使えるわけです。それに対して、山林が、大変大きな規模でないと使えない。それ以外にも、使いにくい理由というのはこれからはっきりしてくると思うんです。

 これは、非常に大きな山を持っていらっしゃる方が、実際、余りニーズがないという方もいらっしゃるんですが、現に神奈川県でも、山林なんかをお持ちの方で、いや、相続税のことを考えると実は大変なんだということをおっしゃっている方の話を私も直接聞いています。ぜひ、山林についての相続税の納税猶予制度、百ヘクタール以上という基準を緩和することを含めて、使いやすくするということを御検討いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

江藤副大臣 私も林野族でずっとやってきて、これは民主党政権の一つの大きな成果だと思いますよ。突破できなかった壁を突破したわけでありますから、よくぞやっていただけたというふうに思います。

 ただ、今御指摘があったとおり、なかなか現場では生かされていないという現実があります。まだまだ四月から一年ぐらいですから、もうちょっと見させていただきたいと思います。

 百ヘクタールという要件、もうちょっと突っ込みますとほかにも実は要件が、多分、議員もよく御存じの上でこの面積要件しか御指摘されていないんだと思いますが、ほかにも要件がいろいろございまして、厳しい縛りがありますから、せっかく一点突破していただいて、それが実効性がないということであれば、ここはやはり私たちとしても推移を見守りながら、頭をかたくせずに対応していかなきゃならないというふうに思います。

後藤(祐)分科員 ここは党派を超えて、大変ありがたいお言葉もいただきましたので、副大臣はこの分野の、本当にずっとやってこられた方だと伺っておりますので、ぜひ、だんだんでいいと思うんですね、急にというのはなかなか難しいと思いますので、一点突破、それを少しずつ拡大していくという形での改善を期待したいと思います。

 続きまして、都市における農地のあり方として、実は、私は、厚木ですとか、相模原ですとか、伊勢原、愛川町、清川村という選挙区なんですが、東京、横浜の大変都市化が進んだ地域の横に隣接する地域でございます。

 先日、今後の日本の人口推計がどうなっていくかといったときに、神奈川ですとか埼玉ですとか、こういったところの高齢者の数が物すごくふえていく、介護施設が足りない、でもつくるところがない、こういったことが明確に首都圏では予想されているわけでございますが、我々は、むしろ、この東京や横浜の要介護の方々を受け入れる余地のある地域だと思っています。

 農地は、本来、農地として使わなきゃいけないのはもちろん大原則なのでありますし、それをパチンコ屋にしちゃったりとか、そういうことは私はやるべきではないと思っておるんですが、実際、特別養護老人ホームに使われたりといったことは現在でも行われております。

 ですが、これから、特に国土交通省さんで、今、サービスつき高齢者住宅も民主党政権で制度をつくらせていただいて、順調にこれは数がふえてきております。神奈川なんかでも相当数がふえてきているんですが、これはある一定の厳しい制約があるのは当然だと思うんですけれども、農地にこういった介護施設をつくる場合に、今の特養とか老健ですとかデイサービスなんかは比較的農地転用を認められているというふうに伺っておるんですけれども、サービスつき高齢者住宅については必ずしもそうなっていないというようにも伺っております。

 今後、余り高い値段の施設というのはたくさんつくることはできないと予想される中で、このサービスつき高齢者住宅は今後の希望の星だと私は思っておりますので、ある一定の制約のもとでというのは仕方がないと思うんですけれども、ぜひ、農地におけるサービスつき高齢者住宅を比較的緩やかに認めていくべきではないかというふうに思うんですが、これについていかがお考えでしょうか。

江藤副大臣 御指摘の点は十分理解できるところであります。

 公共的な介護施設であれば、一番優良である第一種であっても知事が認可をすれば認める、でっかくなれば、これは知事から大臣に上げなきゃいけないという要件がさらにくっつきますけれども。

 しかし、今、私たちの政権でも、民主党政権でもそうでしたけれども、大変耕作放棄地があり、中には、農地として認められているけれども、その中では木が生えたりしまして農地としてはとても回復できないというようなところも、農地として今勘定されているわけですよね。そういったところについても考えていかなければなりませんし、現在でも、民間の老人ホームとかデイサービスであっても、農業の営農上、地域としてですよ、地域のコミュニティーとして支障がないということであれば、認めないこともないということであります。

 ただ、これからの時代を考えれば、その点も、先ほどの山林の相続税と同じように、本当に農地として活用できない部分も実際農地として勘定されているという現実がありますから、少し考える余地があるのかなと、委員の御指摘を聞いて感じました。

後藤(祐)分科員 実際に土地収用の対象となっている特養、老健、デイサービスは、かなり認めやすいそうなんですね。そこがやはり相当ラインがあって、今言った条件を認めるか認めないかというところが、かなり優先していただけるそうなんですが、そこにサービスつき高齢者住宅は入っていないんですね。余りそこに差を設けてしまうと、これから大変残念なことになってしまうので、ぜひここは、特に首都圏周辺部の我々のところは、この問題というのは非常に大きな課題だと思っておりますので、柔軟な解釈をしていただくようお願いしたいと思います。

 ちなみに、これは市街化調整区域において開発許可を受けられるかどうかということでもございます、都市計画法的に見ますと。これは、開発許可は受けられると伺っておりますけれども、サービスつき高齢者住宅を建設するに際し、比較的ここは公益上の理由というのがほかのものの場合と比べて大きいというふうに私は考えますが、赤澤政務官、まさに国土交通省が推進しているサービスつき高齢者住宅を市街化調整区域において認めていく、この開発許可を柔軟にしていくということについての御見解をいただきたいと思います。

赤澤大臣政務官 市街化調整区域における開発行為については、都道府県知事、政令指定都市や中核市の長などを開発許可権者とする許可制度が設けられています。

 この制度のもとで、基本的な考え方として、市街化を促進するおそれがなく、かつ、市街化区域内で行うことが困難または不適当な施設などについて、各都道府県に置かれている、あるいは各自治体に置かれている開発審査会の議を経て許可を行うことができる、これは基本的な原則であります。

 一応、御通告のあった御質問が有料老人ホームについてだったものですから、有料老人ホームについては、技術的な助言として開発許可制度運用指針を定めている中で、厚労省の基準に合った優良なものであれば、市街化調整区域における立地がやむを得ないと認められるものについて許可して差し支えない旨を我々としても支持していますが、今御指摘のあったケアつき住宅についてどんな扱いになっているかはちょっとわからないので、改めて調べて御連絡をさせていただきたいというふうに思います。

後藤(祐)分科員 これは総合的な体系の中でやっていくものだと思いますので、政治家であれば皆さんお聞きになっていると思いますけれども、特養ホームは、何百人待ちで入れない、安いけれども入れない。民間の老人ホームは、入れるけれどもべらぼうに高くて入れない。どっちもだめじゃないかという中で、ほどほどに安くて何とか入れるところ、できれば国民年金の方でも入れるレベルのものをつくっていかないと、これから本当に大変なことになってくるというふうに思いますので、ぜひ総合的な対策をしていただきたいと思いますが、もし今追加的な答弁がありましたら、政務官、お願いします。

赤澤大臣政務官 今ちょっと資料を入手いたしまして、サービスつき高齢者向け住宅事業に係る有料老人ホームという考え方で、もし介護、食事、家事、健康管理のいずれかのサービスを提供しているサービスつき高齢者向け住宅であれば、有料老人ホームと同じ扱いで、許可も現時点でも出る。ただ、安否確認、生活相談のみといったようなサービスつき高齢者向け住宅の場合は、現時点では対象になっていないというのが今の制度の運用状況のようでございます。

後藤(祐)分科員 見せかけのというのは確かに余りよろしくないでしょうから、ある一定のラインというのは必要だと思うんですね。ですが、きちんと基準をつくった上で柔軟に対応していくということをぜひお願いしたいと思います。

 まさにこれについても、国土交通省と農水省が協力して進めていただければと思う分野でございます。特に、介護で一番心配なのは、JAの組合員さんの方も当然その中に、私も実は准組合員でございますけれども、そういう方々は介護にかかわる話は非常に心配しておられますので、ここはぜひ協力して進めていただきたいと思います。

 それでは、時間がそろそろ迫ってまいりましたので、最後に、都市農業のやはり重要性ということについて確認をさせていただきたいと思うんです。

 これまでも、都市農業を支援する予算として、食と地域の交流促進対策交付金といったものがございました。ただ、その他の一般のメニューというのは、都市農業の方からするとなかなか使えるような要件になっていなかったなというふうに思います。

 それで、今回、「農」のある暮らしづくり交付金といったものが設けられました。これも先ほどの有害鳥獣対策のときと同じなんですけれども、現場ごとに、どういったものが農のある暮らしにつながるのかというのは、いろいろなアイデアがこれから出てくるところもあると思います。当然、今農水省が予定されているものもあると思いますけれども、そこを柔軟に適用対象にしていっていただきたいんですね。

 例えば、高齢者ですとか障害者の方々がやや福祉的な目的で農園をつくりたい、これを応援していただけないかといったようなことも、私の選挙区でも時々そんなお話を、私も見せていただいたことがありますけれども、こういった柔軟な対応、特に、どういった方がやった場合でも認めていっていただきたいんですね。NPOがやる場合もあると思いますし、個人の方がやられる場合もあると思います。

 こういった、せっかく新しくして都市農業の応援の施策をつくっていただいたわけでございますので、現場に応じた柔軟な対応、そして今後の都市農業の重要性についての決意も含めて、最後に林大臣の御見解をいただきたいと思います。

林国務大臣 今、後藤先生からお話のありました、この新しく創設いたしました「農」のある暮らしづくり交付金、五・五億円、こういうことでございますが、今お話もいただきましたように、ソフト、ハード両面で、地域住民の方でも結構ですし、NPOの方でも結構ですし、それから農業者等の方でももちろん結構ですが、多様な活動、それからハードの方も、都市農業の振興、都市農地の保全のための各種の施設整備ということで、幅広くいろいろなものを支援していこう、こういうことにしております。

 農業関係者にとどまらず、関係省庁の協力も得ながら、今ちょっとお話のありました社会福祉関係の方や学校の関係者の方、学童が農業をやるための施設をつくるですとか、そういうことをソフトで応援する。いろいろなものをやっていこうということでございまして、交付金でございますから、各地における創意工夫を生かした取り組みを積極的に応援してまいりたいというふうに思います。

 そういうことを通じて、先ほど来委員も御指摘のように、新鮮な食料の供給や、緑や農業体験の場の提供といったような都市の農業の果たす役割、それからもう一つは、やはり防災空間という役割もあるのではないか、こういうふうに思っておりまして、こういった重要な役割を果たしていただくためにも、一層都市農業の振興を図っていきたい、こういうふうに考えておるところでございます。

後藤(祐)分科員 都市農業への強い決意を大臣からいただきました。ありがとうございました。

 それでは、これで質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

西銘主査 これにて後藤祐一君の質疑は終了いたしました。

 次に、輿水恵一君。

輿水分科員 公明党の輿水恵一でございます。

 私、昨年の総選挙で初当選をさせていただいて以来、地域の農業者の方からさまざまなお声を伺ってまいりました。

 そのような中で、きょうは、何点か現場の声を伝えさせていただきながら、今後の取り組みについて確認をさせていただきたいと思いますので、どうかよろしくお願いを申し上げます。

 初めに、東日本大震災により被害を受けた水産業の復旧について、ワカメやカキのがんばる養殖復興支援事業の推進について伺います。

 日本人は、平均して、一年間に約二キログラムのワカメを食べると言われております。肉厚でうまみが強く、味や品質の点でも高い評価を受け、日本一の収穫を誇っていた三陸のワカメの養殖棚は、あの東日本大震災で全滅をしてしまいました。私が住んでいる埼玉においても、三陸のワカメは大評判でございました。

 一方、生ガキ、ここには、百グラムの中に、一日に必要なたんぱく質の量の三分の二、カルシウムは三分の一、燐は全量、鉄分、ヨードは四倍含まれている。このほか、ビタミンB2を初め、各種ビタミンも豊富。まさに栄養の宝庫でありながら、カロリーは意外に少なく、一個当たり十六キロカロリーということで、いいことずくめであるのがカキでございます。

 国民に親しまれてきた東北のワカメもカキも、一日も早い養殖の再建が望まれるところであります。

 ここで、養殖業の復興を推進するため、地域で策定した養殖復興計画に基づき、共同化、協業化により、安定的な水産物生産体制の構築に資する事業を行う漁協等に対し、人件費を含む生産費用、さらに、資材費等、必要な経費において、水揚げ金額で賄い切れなかった分を補填するという、そういったこのがんばる養殖復興支援事業、ここに大きな期待を寄せているところであります。

 そこで、東日本大震災の被害を受けたワカメやカキの養殖業の復興における、がんばる養殖復興支援事業の活用状況についてお聞かせ願えますでしょうか。よろしくお願いいたします。

本川政府参考人 御指摘のとおり、岩手県及び宮城県は、ワカメ養殖で全国生産量の七割を生産しておられます。カキ養殖では三割でございまして、その復旧復興は、地域経済のみならず、水産物の安定供給の観点からも極めて重要だと認識しております。

 御指摘のとおり、養殖業は、経営の再開から出荷までの間に時間を必要といたします。その間収入が得られないという事情がございますので、御指摘いただいたがんばる養殖復興支援事業というのを創設いたしまして、人件費とか燃油費、こういった生産に必要な経費を前渡しするという形で支援をさせていただきます。

 現在までのところ、岩手県で三十六計画、四百五十一経営体、宮城県で三十計画、四百十七経営体が参画をしておられまして、こういうものも受けて、ワカメについては養殖施設の九割程度が復旧をしております。生産量も震災前と比べて八割ぐらいまで回復しておりますが、残念ながら、カキにつきましては、養殖施設は七割以上復旧しておるんですが、出荷までに複数年を要するということで、生産量は一割強にとどまっているといったような実態にあります。

 今後とも、現場の声を伺いながら、被災地における養殖業の一日も早い復旧復興に向けてしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

輿水分科員 ありがとうございます。

 一つ一つ、その復旧復興にこの事業が適切に役に立っている、また、地域の支えになっているということがよくわかりました。

 しかし、そこで、例えばカキの養殖。壊滅的な被害を受けた女川では、ようやくカキの出荷までこぎつけ、そして、災害前のカキに比べるとまだまだ大きさは小ぶりですけれども、味は最高の仕上がり、そういった状況だと伺っています。ここで問題は、販売の低迷でございます。せっかく丹精を込めてつくったこのカキも安く買いたたかれてしまう状況。

 このように、ワカメもまたカキも、養殖の復旧ができたとしても、適切な価格で安定して売り上げを伸ばせるかどうかが大変に重要であると思います。このような風評被害は、地元の取り組みだけで解決する、そのことはなかなか難しいものがあると思います。

 そこで、風評被害に対してどのような取り組みを考えているのか、お聞かせください。

林国務大臣 今先生おっしゃいましたように、風評被害対策、これのためには、まずはやはり正確でわかりやすい情報提供を行うということが重要である、こういうふうに考えております。

 農林水産省といたしましても、原発事故以降のこれまでの放射性物質の検査結果の蓄積がございますので、現在、海域を問わずに、ワカメ、カキといった、今先生がおっしゃっていただいた海藻類や貝類、それから、表層、上の方のところで生息している魚については、もう基準値を超えない状況があるということはわかってきておりますので、これらの情報をなるべく広く消費者に公表してきておるところでございます。

 まずこれをやらなきゃいけないということですが、さらに、この被災地の水産業の復興のためには、販路の確保、拡大を図っていかなければならないということでありまして、これは平成二十四年度からですが、東日本大震災復興交付金、これを活用しまして、被災した市町村が地域の水産物の販路拡大、販売促進の取り組みを行う場合の支援をこの交付金によってしていこうということを実施してきております。

 それにあわせて、二十五年度の予算案においても、被災地域の漁協やそれから水産加工業の協同組合等が販路回復、販売回復に取り組む場合にも支援できる事業を二十五年度予算にも盛り込んだわけでございまして、やはり信頼を確保するためには、正確な情報提供それからいろいろな販路拡大、販売促進、県や漁業関係者と連携し、漁業の復興を推進してまいりたい、こういうふうに思っております。

 なお、霞が関全般としても、食べて応援しようということで、例えば農林水産省の食堂にはなるべくこういう被災地のものを使っていこうと各所に呼びかけておりまして、各省でそのシェアを競い合うような状況にも今なっている、こういうことも申し上げておきたい、こういうふうに思います。

輿水分科員 まさに力強いお言葉をありがとうございます。

 この販路拡大。今、農水省でもどんどん使っていただく、産地と消費地をつないでいく、そういった取り組みによって、きちっとした販路の拡大ができると思います。また、そのような取り組み、さらに拡大を期待しておりますので、よろしくお願いを申し上げます。

 続きまして、放射性物質の被害を受けた地域の農業の復旧について、初めに、原木キノコの栽培の復旧について伺います。

 原木キノコ栽培は、国産の原木に国産の菌を植えつけ、約半年から二年近くをかけて収穫できる状態にし、その後、三、四年の間に休養させながら約五回から八回収穫をするそうであります。栽培期間が長く、天候に左右され、安定栽培のためには確かな技術と経験が必要になってまいります。

 この原木キノコの栽培は、自然の営みに沿って原木だけの栄養で育つので、農薬や化学肥料などは一切使用せず、人と環境に優しい栽培方法でございます。木の栄養分を十分に吸収して育ったキノコは肉厚でぷりぷり、香りもしっかりしています。農薬、化学肥料を一切使用していないため、小さなお子様から高齢者の方まで安心して食べられる安全な食材であり、人気も上々でございます。

 しかし、東日本地域において、原発事故による放射性物質の影響で、この原木キノコ栽培が大打撃を受けております。原木キノコ農家は、長年培ってきた技術や経験を大切に、また、長年にわたり原木キノコを求めていただいた消費者の皆様の声に応えるために、その再建を目指しております。

 そこで、この原木キノコ栽培農家の再建に対して、国としてどのような取り組みを進めているのか、お伺いいたします。

沼田政府参考人 お答え申し上げます。

 原木キノコにつきましては、放射性物質の影響によりまして、現在、六県、九十四市町村でございますが、出荷が制限されております。そういったことに加えて、価格の下落、キノコ原木の不足など、生産者の方々は非常に厳しい状況に置かれていると認識しております。

 こういったことで、私どもといたしましては、キノコ原木の供給の掘り起こし、そして、需要者とのマッチングの推進、キノコ原木の購入費用や洗浄機械購入への支援、こういったものを実施しているところでございます。また、生産したキノコが食品の基準値を超えないようにするための生産工程管理、こういったものを実施すべく、現在、栽培管理に関するガイドラインの考え方を提示、お示しさせていただいているところでございます。

 なお、キノコ生産者の損害賠償につきましても早期かつ適切に賠償されるよう、東京電力への要請を行うとともに、生産者向けのQアンドA、こういったものを作成いたしまして、情報提供等に努めさせていただいているところでございます。

輿水分科員 ありがとうございます。

 さまざまな支援と同時に、工程管理によって東日本の地域においても安全で安心なキノコ栽培が可能になる、そういった方向でのガイドラインを作成されたと伺っております。

 ただ、ここで、西日本などの他の地域に比べ、工程管理をしていくということによって、原木の購入から施設の整備などの経費が余計にかかり、価格面での大きなハンディを負うことになるようにも思います。また、先ほどの風評による販売の下落も予想されてまいります。このような点について、やはりこの現場の皆さんに対して丁寧な対応が必要かと思いますが、見解をお聞かせください。

沼田政府参考人 原木キノコの生産工程管理の実施、これは極めて大事なことだと思っておりまして、こういった場合におきます放射性物質の検査でありますとか、ほだ木の洗浄、こういったことを行うことをガイドラインの中ではお示ししているところでございまして、その実施に伴いまして、放射性物質の測定でありますとか原木の洗浄機器の整備に費用を要するということでございます。

 こういったことで、私どもとしては、地方自治体の放射性物質測定機器の導入でありますとか、生産者の原木洗浄機器の導入、こういったものに支援いたしますとともに、ほだ場の除染につきまして、技術開発のための実証事業、こういったものを実施しております。

 また、そういった際に、生産者の方々は費用負担がかかってまいります。具体的には、放射性物質の検査費用でありますとか、洗浄機等の購入に伴う生産者の負担費用、そして、実証事業による知見を踏まえまして生産者が行うほだ場の除染費用、こういったものが必要になろうかと思っておりまして、東京電力が早期に損害賠償するように、引き続き働きかけを行ってまいる考えでおります。

 こういったことで、生産工程管理の実施に当たって、生産者の新たな負担、こういったものが実質的に生じないように全力で取り組んでいく考えでございます。

輿水分科員 ありがとうございます。

 まさにそういった工程管理につきまして、基本的には東京電力の補償、こういったお答えがありましたが、東京電力のそういった補償の方も、なかなかうまく進まないケースもあると伺っております。

 そんな中で、せっかく復興復旧に向けて取り組みを進めている地元の皆さんに対して、事前に少しでもそういった支援ができるような柔軟な取り組みも必要かなと思うんですけれども、その点についての見解をお聞かせ願えますでしょうか。

沼田政府参考人 キノコ原木のこういった被害につきまして、私どもとしても、きちんと対応していかなければいけないというふうに考えております。私ども職員も、何回も、福島を初め茨城の方にも職員を派遣させていただきまして、現地の状況を把握し、御意見も伺ってきております。

 そういったことで、私どもとしても、ぜひ、こういったキノコ原木による栽培の生産再開ができるように、全力を挙げて努力してまいりたいと思っておりますし、そのためには、やはり賠償という問題も解決しなければならないという点は重々承知しておりますので、東電の皆様方ともよく意見交換をさせていただいているということでございます。

輿水分科員 どうもありがとうございます。

 重労働で、自然環境に左右される中を、安全で安心、そして何よりもおいしい、そんな原木キノコ栽培にこだわりを持って取り組む農家の皆様の気持ちを大切に、最大限の支援を期待いたします。

 それでは、次に、畜産業の復旧について伺います。

 同じく、東日本の広い地域で、放射性物質の影響で牧草から放射能が検出をされ、牧草を家畜に与えることができない酪農業家がたくさんあります。実際に、宮城県や栃木県の現場に私も行ってまいりました。

 長年の苦労を乗り越え、やっと軌道に乗ったやさきにこのような事態になってしまい、落胆の色が隠せない状況でございました。本来であれば自前で確保できる牧草を、他から購入しなければならない状況も続いております。ここで、牧草の購入は東電から補填されるという前提で借金を重ねている、しかし、なかなか手続が時間がかかり補償金が届いていない、そんな現場の実態もございました。

 そして、このような農家に対して、牧草地の復旧対策、さらに、当面の牧草の確保に対しての丁寧な支援も必要と考えますが、見解を伺います。

佐藤(一)政府参考人 お答えいたします。

 今、先生の方から質問がございました、除染が必要となる牧草地でございますが、岩手、宮城、福島、栃木、そして群馬の五県でございまして、その面積は延べで三万九千ヘクタールというふうになっておりまして、二十三年度に既に実施したところが二千ヘクタール、二十四年度に一万五千ヘクタールの除染の実施が見込まれているというような状況になっておるところでございます。

 この除染を推進するために、二十五年度も二十四年度と同様に、特にこの放射線量の高い汚染状況重点調査地域につきましては環境省による除染事業が予定されているほか、その他の地域につきましては東京電力による損害賠償が基本となりますが、傾斜が急であるといったような除染困難な地域におきます除染については、東日本大震災農業生産対策交付金、こういったものを措置することを予算案に盛り込んでいるところでございます。

 こうした事業を活用しながら除染を進めるとともに、引き続き、各県や関係団体とも連携して牧草地の除染対策を推進していきたい、かように考えている次第でございます。

輿水分科員 ありがとうございます。

 もう一つ、今、牧草を購入している、しかし、なかなかその補償金が届かない、そういった環境の中でさらに牧草が必要になってくる、こういった農家がありますが、この点について新たな対応が必要かと思うんですけれども、その点、何かございますでしょうか。

江藤副大臣 東電さんは、いわゆる肉用牛の価格下落分については、もう九割ぐらいちゃんと払っているんですよ。あと、処理処分とか。ところが、牧草につきましては、毎日毎日これは食べなきゃいけないものであって、生き物相手ですから。御指摘があったように、借金を抱えて、そして必死に歯を食いしばって頑張っていらっしゃる方がたくさんおられます。

 ですから、今は、本当は東電が払わなきゃいけないこと、一義的責任は当然なんですけれども、民間団体がALICの支援を受けて、これはALICが全部払うんですけれども、いずれ東電が払うことなりますが、その民間団体を通じて、いわゆる全酪連などのこういった方々が牧草の支援を行う。ちょっと今価格が上がっておりますけれども、これについては予算的な措置を十分にいたしておりまして、今のところはそちらの方で対応させていただいているという状況でございます。

輿水分科員 ありがとうございます。

 畜産農家の将来に安心と希望が持てる取り組みを期待いたします。

 それでは、次に、鳥獣被害対策について伺います。

 東日本の野山に生息する鹿やイノシシが、今、異常に繁殖し、付近の農作物を食い荒らすなどの被害が多発しております。この原因として、肉が放射能に汚染されているということで、猟友会の方々が狩猟をやめている、そんなことも取り上げられております。

 このような鳥獣被害の状況をどのように捉え、どのような対策を進めようとしているのか、見解をお聞かせください。

長島大臣政務官 御質問にお答えをしたいと思います。

 非常に深刻な問題をはらんでいると思います。ただ、鳥獣被害対策ということであれば、鳥獣被害緊急捕獲等対策事業だとか、交付金事業だとかで対応できるんですが、いわゆる放射性物質を帯びている野生動物の移動を我々がどこまで監視をして把握をできるかということと、そして、それを駆除できるかどうかということについて、大変大きな問題をはらんでおりますし、委員御指摘のとおり、汚染をされている地域にはどうしても捕獲作業やハンターが入りたがらない現況があることは事実でございます。

 そのことを踏まえて、防止柵の整備、わなの購入など、やはり基本的なことを繰り返しながら、できるだけ移動しないように、移動を確認できた時点では的確に早急に被害軽減に努められるように、地道にやっていくことが今第一歩の道なのかなというふうに考えておりますので、ぜひまた御指導を賜りたいと思います。

輿水分科員 どうもありがとうございます。

 狩猟をしないと、ますますイノシシや鹿が繁殖し、被害が拡大をしてしまうということで、いろいろな、放射性物質というか、そういった放射能が絡んでいる問題でございまして、対応が非常に難しいかと思いますが、将来的にまた何か具体的な対応もしっかりと考えていただき、地元の皆さんの安心が少しでも図られるような取り組みを期待しておりますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、最後の質問に入らせていただきたいと思います。

 激甚災害指定下での農地等の復旧について伺います。

 具体的な場所なんですけれども、福岡県の八女市などでは、昨年の北九州北部豪雨により茶畑が崩れる、そういった大被害を受けた地域がございます。ここで激甚災害を受けているわけでございますけれども、この激甚災害では原形復旧が原則となっている。段々畑になっている茶畑が全部崩れてしまった、それを地元の皆さんは、段にするよりは面にして復旧した方が、コストもかからない、その後の作業効率もいい、そういった視点があります。

 そういった面で、原状復旧ということにこだわることなく、その状況に合わせた適切な復旧ということも必要なのか、そういうふうに考えますが、見解をお聞かせ願えますでしょうか。

實重政府参考人 お答えさせていただきます。

 委員御指摘のとおり、福岡県八女市では、昨年七月上中旬に九州北部を中心とする梅雨前線豪雨に襲われまして、農地九十七ヘクタール、それから、農地と農業用施設を合わせて約八十九億円の被害が生じております。

 現在、災害査定官による査定を終了しまして、順次農地の復旧工事に着手をしております。工事着手済みの水田については、春の作付を目標に復旧を急いでいるところでございます。

 御質問の、災害が生じた以前の原形の状態に復旧することについてでございますけれども、基本的に、これは災害査定官が査定を行いまして、原形復旧を行うことを基本としておりまして、被害の程度に応じて高い国庫補助を行っているわけでございますけれども、御指摘のように、従前の効用を回復するために原形に復するよりも経済的な工法が可能であるといったような場合には、被災農業者の意向に基づいて、そういった工法により復旧することも可能となっておるものでございます。

輿水分科員 ありがとうございます。まさにそういった形で考えていただくことはありがたい、そのようにも感じております。

 ここで、ただ一点、また問題がございまして、崩れたところと崩れないところがある。崩れたところは、そういった復旧が始まる。崩れないところも、できれば、この際だから同じ面にして、そして、そういった茶畑をつくった方が全体としての作業効率も上がる、そういった視点もあるそうでございます。

 そこで、この原形復旧、自在にそういった形で面にしていく、しかし、残ったところもあわせて一緒に整備をしながら、より効率的な茶畑に復旧をしていきたい、そんな希望もあるようでございますが、そういった復旧の複合化というか、いろいろな制度をうまく使いながら、周りのところもうまく復旧復興しながら、新たな形での農業の育成、そんな視点も必要なのかなと思うんですけれども、この点についての見解をお聞かせ願えますでしょうか。

實重政府参考人 復旧に当たりまして、地元からいろいろな御要請がございます。できるだけその要請にお応えするような形で工事を進めることができればと思っております。

 茶畑について、例えば、復旧に当たっては、段々畑ではなくて、一段の畑にしてほしいというような要請があった場合には、原形復旧に比べてその工法が経済的であるかどうか、それから、そうした工法をとることによって土砂崩れなど新しい災害を生ずるようなおそれはないかどうか、こういった点について精査をいたしまして、現状で、かなり本地区については工事が進んでいるところもございますけれども、地元の被災農業者や関係自治体の意向も踏まえながら、必要な形で助言していくことは可能と思っております。

 また、周辺農地を含めて圃場整備をしたい、あるいは排水路の機能向上をしたいというような、単に原形復旧だけでなくて、向上、改良したいというような御要請がある場合もございます。これについては、災害復旧事業に加えまして、農地災害関連区画整備事業を一体的に施行することによりまして対応することが可能でございます。この場合においては、再度、同様の災害が発生することを防止できるかどうかという点が要件でありまして、この点についてのチェックが必要であります。

 いずれにいたしましても、八女市の被災地区につきまして、関係の業者や自治体の意向を伺いながら、適切に助言をさせていただければと思っております。

輿水分科員 どうもありがとうございました。きょう、質問をさせていただき、明快な答弁、ありがとうございます。

 農業をやられている皆さん、今まで自分が長年やってきた経験やその技術を生かしていく、違うことをいきなりやるということは難しい状況でございますので、その今までやってきたことがちゃんと、きちっと継続できるような体制を早急につくって、そしてまた、その地域のさらなる繁栄と発展の道を開いていく、また地域の農業を守っていく、これはもう大変に重要なことであると思います。

 そういった取り組みの中で、やはり一日も早いというか、加速をしていく、そういった取り組みが必要かなというふうに考えます。この点につきまして、最後、大臣の決意をいただければと思います。よろしくお願いいたします。

林国務大臣 改めて、委員から大変いいポイントを聞いていただいたなと思っておりまして、今の八女市のお茶畑にしても、しゃくし定規にもとに戻すだけですよということではなくて、さらにいいようにしていく、そして周りもそれに合わせてやる、よってもってピンチをチャンスに変えていく、こういうことができるということを御指摘いただいたところでございます。

 そういうこともあわせて、農業の場合は、やはりやる気、頑張ってやっていこう、いいお茶をつくろう、これが大事でございますので、そういう気持ちに沿っていけるような施策の展開をしっかりとやってまいりたいと思っております。

輿水分科員 どうもありがとうございました。

西銘主査 これにて輿水恵一君の質疑は終了いたしました。

 次に、鈴木憲和君。

鈴木(憲)分科員 自由民主党の鈴木憲和です。

 先週の農林水産委員会、私は初めての質問でしたが、大臣、副大臣、本当にありがとうございました。また本日も、大臣、副大臣、政務官におかれては、本当に、夜まで一日、長丁場だと思いますが、御苦労さまです。

 先週、私は、水田農業について農水委員会の場で質問をさせていただきましたので、本日は、畜産について伺いたいというふうに思います。

 その中で、先週の十二日、TPP交渉参加に当たる日米の事前協議というものが合意に至ったという発表がありました。

 この合意の概要というのを内閣官房TPP政府対策本部というところから発表されておりますが、これを見ますと、米国の自動車関税は、TPP交渉における最も長い段階的な引き下げ期間によって撤廃されるというようなことが合意されている一方で、日本の農産品について、これは最後のパラグラフのところで、「日本には一定の農産品、米国には一定の工業製品といった二国間貿易上のセンシティビティが両国にあることを認識しつつ、TPPにおけるルール作り及び市場アクセス交渉において緊密に共に取り組むことで一致。」と。要するに、農産品について何かが決まったということは一切ないということになっているというふうに私は理解をしております。

 こういった意味でいうと、現場の農業界からいうと、自動車については一定の譲歩をしているのに、そういうふうにして入場料を払わされているのに、農産品については何もとれていないじゃないか、大変不安なんだ、本当に大丈夫なのか、こういう声を、この土日も、私は地元で、これは農家の方からだけではなくて、兼業農家の方もいますし、親戚で農業をやられているという方もいます。私の地元山形に帰って外を見回せば、全部水田です。そういったところが、将来本当にここの地域は大丈夫なのか、こういう不安が地域の皆さんからあるところです。

 ただ、総理も、記者会見の中で、交渉はこれからです、本番はこれからなんだということをおっしゃっています。

 そういった意味で、三月に自民党の方で決議文というのを出しましたが、この中では、米や牛肉、こういった重要品目、こういう聖域の確保を最優先として、できないときは脱退も辞さないんだという強い文章で決議をいたしました。これについてしっかりと、その重要性を踏まえて、これから前に進んでいっていただきたいなというふうに思うわけです。

 この中で、日本が誇るべき農畜産物の中に和牛というものがあると思います。山形にも、山形牛があり、そして米沢牛という、これは日本国内ではトップブランドになっておりますが、アメリカや香港に出かけていくと大体神戸ビーフという名前で日本の和牛が売られていて、米沢じゃないのは大変残念だな、我々の地域も努力が足りないんだなというふうに思うわけです。

 こういうブランド品、和牛について、高い評価がこれから世界じゅうでさらに予想されるんだと思いますが、その中で、牛肉については、輸入価格に対して、今、三八・五%の関税がかかっています。農林水産省の、仮に関税がなくなったらというTPPに当たっての試算の中で、三等級以下の牛肉については、仮に今関税がなくなると、大部分が外国産に置きかわってしまいますというふうに言っている一方で、四等級、五等級のいいものについては、今キログラム当たり二千七百八十円するのが、百九十七円下がるだけです、こういう影響試算をされています。

 これを地元で、畜産農家の方、特にブランド和牛をつくっている方に説明をすると、これは本当にそうなんですか、本当に私たちは関税がなくなったとしても戦っていけるんですか、こういう質問を受けます。私も、率直に言って、何となく理解はできますが、本当にそうなのかなという疑問が大変残る、何となくうそくさいなというような部分もある、これが現場の方の率直な意見だと思います。

 そういった意味で、まず、関税がなくなっても肉質のいいものは大丈夫なんだという根拠について、わかりやすく御説明をいただきたいと思います。

佐藤(一)政府参考人 今の鈴木先生の御質問でございますが、まず、試算でございますが、この試算につきましては、TPP参加十一カ国に対して関税を即時撤廃して、何ら対策を講じないという前提で行ったものでございます。

 その場合、よく考えますと、牛肉については、肉質四等級、五等級の国産牛肉全体は残るだろう。それと、肉質三等級以下のものにつきましては、一割は、価格低下はあるものの、残るんじゃないか。また、四等、五等級も、残るわけでございますが、一定の価格低下はあるんじゃないかという見通しは一応しておるところでございます。

 であるならば、肉質四等級、五等級の牛肉といったものはなぜ残るのかというような先生の御質問でございますが、やはり、我が国の固有の遺伝資源でございます和牛から生産されたものでありまして、肉質、特に、いわゆるサシ、脂肪交雑、この点で非常にすぐれているというふうに考えております。

 現に、二十四年度、四月から二月でございますが、八百六十四トンほど和牛が輸出されております。口蹄疫や何かでとまっていたわけでございますが、その後、再開いたしまして、やはり日本産の和牛に対する引きはございまして、たしか五十億円程度の売り上げになっているかというふうに考えております。やはり、外国産牛肉と品質格差が存在しているといったようなことから、一定の需要が見込まれるというふうに考えているところでございます。

 ただ、やはり価格にも多少影響はあるんじゃないかというふうな懸念はございますが、今後とも、国内生産の継続について頑張っていきたいというふうに考えているところでございます。

鈴木(憲)分科員 ありがとうございます。

 今の局長の答弁を聞くと、産地の方はどういうふうに思うかというと、関税撤廃されるかどうかに振り回されるのはもう勘弁してほしいというのが率直な生産者の皆さんのお気持ちだと思います。

 そうしたときに、品質格差がしっかりとあるからそういうものは生き残っていけるんだということであれば、日本の和牛産地、山形だけではなくて、副大臣の宮崎もそうだと思いますが、こういう大きい和牛産地というところは、さらなる肉質の向上とブランド化というものに努めていくことが間違いなく必要だというふうに私は思いますが、これについて、農水省としてどのようにお考えでしょうか。

佐藤(一)政府参考人 まさに、先生おっしゃっていただいたように、とにかく、輸入牛肉との競争に打ちかつためには、我が国固有のブランドでございます和牛の特徴である肉質のよさを生かしたブランド化を図るということが非常に重要かというふうに思っております。

 一方、最近の肉牛に対します需要をいろいろ見てみますと、健康志向の高まり、あるいは、中食、外食といったような増加によりまして、消費者ニーズが多様化しておりまして、やはりこうしたニーズ、嗜好に合ったような対応というものを考えていく必要があるんじゃないかというふうに考えております。

 一つは、やはりブランド化といいますか、本来でございます、サシの入った高品質な牛肉の生産といったことが一つあると思います。また、特にこのごろ、いろいろな話を聞きますと、若い方々ですと、なるべく脂肪のないものがいいといったような、赤身に対する需要といったものがございますので、脂肪交雑以外のよさをアピールしていくといったようなこと。それと、先ほど申し上げましたように、やはり輸出の一層の促進といったようなことによりまして、需要の拡大を図っていくことが重要じゃないかというふうに考えているところでございます。

鈴木(憲)分科員 ありがとうございます。

 今の答弁を聞くと、要するに、産地ごとにそれぞれの特色を生かして、消費者ニーズを踏まえてやっていけということだというふうに理解をいたしました。

 ただ、今御答弁いただいたニーズというのは、国内のマーケットのニーズだというふうに私は理解をしています。

 これから日本の人口が減っていくわけですが、一方で、畜産の現場においても大規模化や効率化というのがどんどん進んでいって、例えば一生産者当たり生産できる牛の量というのはふえていくんだと思います。技術的にも、いいものをどんどんつくる技術というのは進んでいますので、私の地元でも、私と同世代の人が、今私は三十一歳ですが、一億円投資しました、一億円投資してどんとふやしました、これでもやっていけるんですということで、頑張っている生産者も何人か知っております。

 そうしたときに、国内マーケットはこれから人口減少とともに減っていくわけですから、国産のすばらしい農畜産物について、海外マーケットを開拓していくということが何よりも今は不可欠なんだと思います。

 そうしたことを考えたときに、ただ、これは一産地だけで、もしくは農家に輸出をしなさいと言ったって、それはなかなか無理なわけですね。なので、これは産地として取り組むとか、もっと言うと牛肉業界として取り組むとか、こういったことがこれから私は求められていくというふうに思っております。

 その意味で、これから輸出促進に向けて、農水省としてもバックアップを、正直言うと今の何十倍もやっていただきたいなと思うのが本音のところなんですが、そこについてぜひ御答弁いただきたいと思います。

林国務大臣 今委員がお話しになったように、日本はなかなか人口がふえない、減っていくという推計もあります。それからまた、世界の食市場の規模というのが、これはATカーニーの資料をもとにつくったものですが、二〇二〇年にはおよそ倍になると。三百四十兆円から六百八十兆円。中国、インドを含むアジアは八十二から二百二十九ということで、非常に全体のスピードを上回るスピードになっていく。

 これは、いろいろな要因が考えられます。人口がふえるということもありますが、やはり所得が向上する。そうしますと、今まで単におなかがいっぱいになればいいと思っていた人たちが、よりおいしいもの、おしゃれなところで食べるということも含めて出てくる、こういうことでございますから、こういうところをやはり取り込んでいくということが非常に大事なことであろうと思っておりまして、この輸出促進を非常に積極的に、果敢に取り組んでいかなければならない。

 二月十八日に、産業競争力会議というのがございますが、そこでも私から説明を行いまして、総理や民間の有識者の議員の皆様とも、この方向でやっていこうと意見の一致を見たところでございます。

 今御審議をいただいておりますこの二十五年度の予算案を通じて地道な取り組みをやっていかなければいけませんが、例えば、原発事故に伴う輸出証明書の発給を国で一元的に行うということで事業者の負担を軽減するとか、それから、ジェトロと連携を強化して、輸出しようとする事業者を育成する、それから海外見本市へ出してもらう、それから国内外での商談会の開催、こういうような、総合的に、やはり地道なように見えても、それぞれの皆さんを国全体として政策でサポートをしていく、そのための体制をつくっていくということが大事ではないかというふうに思います。

 それから、そういうミクロの政策に合わせて、マクロとして、やはりメード・イン・ジャパンのものを輸出するということに加えて、メード・バイ・ジャパン、日本食そのものが、やはりいろいろな調査でかなりもう、一位になっているところもありますが、さらに情報発信をして、そもそもが、日本食がおいしくて食べたいということを広めていく、こういうことがマクロとしても大事ではないか、こういうふうに思っておりまして、攻めの農林水産業推進本部を農林水産省に置いて、そこでまず省内横断的にやるとともに、関係省庁や機関の参加も得ながら、オール・ジャパンでこの輸出の拡大策の検討をしていかなければならないと思っておるところでございます。

鈴木(憲)分科員 大臣、ありがとうございました。

 輸出については、本当にこれは、小泉政権のときというか、前の安倍政権のときから一生懸命やるんだというふうに農水省は言っていますが、現実にはなかなか、国内の体質強化の方が先なんだということで、力の入れようが私は足りないんじゃないかなというふうに思っていますので、この辺、ちゃんと前向きに進めていただけたらというふうに思います。

 あと、家畜に関連しまして、一つ、これは食品安全委員会に伺いたいと思います。

 私は、輸出をするにしても何をするにしても、これから、食品の安全というのは全ての大前提だというふうに思っています。そのときに、いかに科学的根拠に基づいてちゃんと安全なんだということを担保できるかということが大切だと思います。

 BSEが初めて日本で確認されたときに、BSEがあるから牛肉を買わないという買い控えがすごく起きたということを、私も、ちょっと前のことだと思いますが、覚えています。

 先日、BSE検査について、食品安全委員会のプリオン専門調査会の審議の中で、BSEの検査対象の対象月齢を四十八カ月齢を超えるものとしても問題がない、そういう評価案がまとまったというふうに伺っております。

 今は、それよりも月齢の低いものもBSE検査の対象として、それに対して国の方から財政負担をしているというふうに私は認識をしていますが、科学的根拠をもって必要のない検査であればやめていく。検査をした方がもちろん消費者にとっては安心ですから、安心感という意味でいえば検査をやった方がいいんですが、科学的に見てこれは必要ないだろうということは、無駄な税金を使うことになりますから、勇気を持ってどんどんやめていく、そういうことは当然なことだというふうに私は思っています。

 食品安全委員会として、このような評価結果がまとまりました。こういった経緯も含めて、消費者も含めて、牛肉の生産者そして流通関係者も含めて、しっかりと、わかりやすく説明をしていくということが必要だというふうに私は思っていますが、これについていかがでしょうか。

姫田政府参考人 お答えいたします。

 今回の評価書案は、我が国におけるBSEの検査対象月齢の引き上げに関するものです。

 食品安全委員会では、平成二十三年十二月に、厚生労働省から、我が国並びに米国、カナダ、フランス及びオランダに関するBSE対策の見直しについて諮問を受け、平成二十四年十月、国内のBSE対策について、検査対象月齢が二十カ月齢と三十カ月齢の場合のリスクの差は、あったとしても非常に小さく、人への健康影響は無視できるなど、また、他の四カ国についても、輸入の月齢制限が二十カ月齢、あるいは輸入禁止の場合と、三十カ月齢の場合のリスクの差は、あったとしても非常に小さく、人への健康影響は無視できるなどとする評価結果を取りまとめたところです。

 その後、平成二十四年十月から、厚生労働省の諮問内容である、さらなる検査対象月齢の引き上げについて、食品安全委員会プリオン専門調査会において、今月三日までに合計五回の科学的な調査審議を行い、八日の食品安全委員会に評価書案を報告したところです。

 プリオン専門調査会では、我が国をモデルケースとして評価手法の検討等を行い、評価手法を科学的に取りまとめ、それに従い、必要なデータがそろった我が国について先行して議論を行い、その結果、我が国における検査対象月齢を四十八カ月齢超えに引き上げたとしても、人への健康影響は無視できるとする評価書案を取りまとめたところです。

 評価書案については、四月九日から五月八日までパブリックコメントに付しているところであり、また、今後、いただいた意見を踏まえて、食品安全委員会において最終的な評価書を取りまとめることになります。

 食品安全委員会といたしましては、評価書案に加えて、その概要やQアンドAなどをわかりやすい資料にして公表しておりますほか、パブリックコメント期間中に二回の説明会を行うこととしております。

 さらに、BSE対策の見直しについては、引き続き、農林水産省や厚生労働省等の関係府省と連携しつつ、消費者や牛肉生産者、流通関係者を初めとした広く国民の皆様に対し、評価書案の内容やそれを取りまとめた経緯を含め、丁寧なリスクコミュニケーションを行ってまいりますので、御指導のほど、よろしくお願いいたします。

鈴木(憲)分科員 ありがとうございました。

 食品安全委員会にもう一度、確認のため聞きますが、今回の評価書案だと、四十八カ月齢よりも下の牛肉については検査をしなくても影響がないということか、一言でお願いいたします。

姫田政府参考人 議員おっしゃるとおりで、四十八カ月齢以下については、検査をしてもしなくても安全性に変わりはないという結論でございます。

鈴木(憲)分科員 ありがとうございました。

 本当にこれは牛肉にかかるコストの一つだと思いますので、それがなくなることについては、本当に前向きに評価したいと思います。

 次に、農業農村整備事業について伺いたいと思います。

 これは、平成二十五年度予算、二千六百二十七億円というふうになっておりまして、二十四年度に比べて五百億円の増額になっていることについては、大変現場から感謝の声が上がっています。補正予算と合わせると、これは政権交代前の水準になっています。

 民主党政権でこの土地改良の予算は半分以下になってしまいました。そのため、各地域で事業がとまっています。今回これが復活をしたということで、各地でこれから土地改良をやっていきたいんだという声がたくさん上がっています。

 その一方で、一つ、現場で問題になっているのが、これは、国営事業だと市町村の負担が六%、県営事業だと一〇%市町村負担があります。仮に十億円の事業をやろうとすると、一億円を町で負担しなければいけない。今回、新しい政権になって、どんどんやりたい、集落の合意形成もとれました、こういうことが一気に出てきているものですから、町の側からすると、町にとって一億円というのはすごい大きい負担になるんですね。これが負担できない、そのため、ちょっと待ってくれというような現状になってきております。

 これから農村では高齢化がどんどんどんどん進んで、効率的な農業というのをしないと地域の水田が維持できないというのが現実だと思いますが、これについて、私は、この事業は、自治体負担の軽減というのをもっと真剣に、緊急の課題として農水省として考えるべきだというふうに思っていますが、これについて御答弁をお願いします。

實重政府参考人 土地改良事業に関する地方公共団体の負担金についてでありますが、地方財政措置として、各年度における普通交付税の基準財政需要額に算入されておりまして、地方公共団体の負担軽減が図られております。

 特に、国営事業、県営事業につきましては、地方債の起債が認められておりまして、地方債の元利償還金の一定部分、地方負担額の二割相当につきまして、後年度の普通交付税の基準財政需要額に算入されるといった地方公共団体負担の軽減を図っているところでございます。

 加えて、二十四年度補正予算については、規模が大きくて、また、十五カ月予算といった執行の緊急性という趣旨がございましたので、地域の元気臨時交付金が創設されました。これは、地方公共団体の負担額などに応じた交付金が交付されることとなっております。

 このように、いろいろ措置が講じられてきているところではありますけれども、委員御指摘のとおり、大変厳しい地方財政の状況がございます。今後とも、土地改良事業に係る地方公共団体の負担に対する適切な地方財政措置につきまして、関係府省と検討してまいりたいと思っております。

鈴木(憲)分科員 ありがとうございます。

 これはぜひ、大臣、副大臣、政務官、政務の方でもしっかりと御検討をいただきたいと思います。土地改良なくして、これから農村が生きていくことはやはりなかなか難しいのが今の現実だと思っています。

 次の質問に移ります。

 今、若い担い手、私と同世代ぐらいの農業の担い手は、いろいろなことにチャレンジをしたい、自分の将来の経営を見据えたときに、農地がたくさん集まってくるわけですが、その中で、例えば、再生可能エネルギーの導入をしたいというような声がたくさん上がっております。今までは、農地法の規制というのがあって、農地で太陽光パネルを設置するというのはできなかったというふうに思いますが、この四月から少しですが緩和されたというふうに私は伺っております。

 私がこれは大切だと思うのは、農家の方が自分の農地で農業を続けていくわけですから、それを少しでも有効活用して、付加価値をつけたり、新しい経営をやりたいんだといった意欲があるときに、これをやはり現場感覚で応援していただくことが必要だというふうに思います。

 農地法の規制は、もちろん趣旨もわかりますし、大切なことも重々認識しておりますが、この辺について、再生可能エネルギーの導入、これは前向きに検討していただきたいと思いますが、要件の緩和等について御説明いただきたいと思います。

實重政府参考人 昨今のエネルギー事情から、再生可能エネルギーを推進していくことは重要な課題と認識しております。

 一方で、農業の生産基盤であります農地につきましては、食料の供給、国土の保全等の多面的機能の発揮といった重要な役割を果たしております国内の限りある資源でありますので、優良農地を確保することは重要と考えております。

 こうした双方の要請がございますが、最近、支柱を立てて、その上に太陽光パネルを乗せて、営農と両立させながら発電を行うタイプの設備が技術開発されまして、実用段階となってきております。

 このような、農地に支柱を立てるタイプのものにつきましては、三月三十一日付で文書を発出いたしまして、下の農地での農業生産や周辺の農地に影響を与えない、こういう場合には農地法の一時転用許可を行うことができるということにつきまして通知を行ったところであります。

 この通知の運用によりまして、支柱を立てるタイプの太陽光パネルについての取り組みが適切に行われるようにしてまいりたいと思います。

 また、支柱を立てて発電するタイプ以外のものにつきましては、農地の上に直接パネルを置くようなタイプのものになります。こういうものにつきましては、その農地について農業生産を継続することはできないということになりますので、農地転用の許可基準に基づきまして、優良農地以外の農地、すなわち第二種農地とか第三種農地、こういったところで転用許可をとっていただくというように誘導することにしているところでございます。

鈴木(憲)分科員 支柱を立てるタイプについては許可いただけるということで、よくわかるんですが、これは現場現場によって全然、やりたいことが、これだったらできるということが、私は違うと思いますので、その都度相談に乗っていただいて、やはり現場の農家にとって、別に農地を潰すわけではありませんので、できる限りこれは前向きに検討していただきたいというふうに思います。

 それでは、最後の質問に移ります。最後の質問は、品種改良についてです。

 今、地球温暖化が進んでいるとか、意外と進んでいないんじゃないかとか、いろいろな議論がありますが、いずれにしても、気候変動というのが起こっているというふうに思います。

 現場では、これに対応してさまざまな取り組みを行っています。私が初めてお世話になった農家に、鳥取県の湯梨浜町というところで、梨農家、二十世紀梨の農家の方がいて、その方は長谷川さんという方なんですが、ぜひ大臣、副大臣、政務官も一度御視察に行っていただきたいんですが、自分で品種改良というのをやっています。

 彼が何をテーマにしてやっているかというと、温暖化が進んで、梨の場合、休眠期間というのがないと花が咲かない、実がならないという現象が生じます。これに対応して、休眠期間が少なくてもできるような梨を開発したいんだと。これは別に鳥取だけのためではなくて、日本全国、梨の産地がありますから、いろいろな産地のために、もっと言うと、これは世界じゅうに、梨をつくりたくてもつくれないという地域もあります。そういう地域のためにもなるんじゃないかと思って品種改良にずっと取り組んでいる方です。

 この方のお話を伺うと、品種改良というのは大変時間がかかる話で、結果が出るかどうかも、個人でやれるレベルには正直限界があると。

 これについて、これから例えば輸出ということを考えたときにも、私の地元のサクランボでいうと、今の佐藤錦という品種では、これは皮が薄いですから、なかなか輸出するのに、何日間もかかってしまうとだめになってしまうという現実があります。なので、ちょっと、輸出向けに、皮が厚くて、だけれどもおいしいもの、見た目のいいものをつくるような品種改良もしなければいけないというふうに思うんです。

 果樹を初めとして、やはり農産物は、目先のことだけではなくて、将来を見据えて、こういう現場でちゃんといいものがつくれるんだということをしっかりと担保するのが、国としてやっていくべきではないかなというふうに私は思いますが、なかなかこれについて、予算上、脚光を浴びることがないんだと思います。

 私はこれは一生懸命やるべきだと思いますが、ぜひ品種改良について、最後に、農水省の取り組みと今後の対応をお伺いしたいと思います。

小林(裕)政府参考人 農林水産技術会議でございます。

 今御指摘いただきました品種改良の件でございますけれども、今お話しいただきましたとおり、品種改良は、うまくいきますと大変導入コストが低い割には経済効果が大きいという点は、農業技術の中でも特色のある技術でございます。

 ただ、その一方、品種改良は、効率的につくろうと思いますと、まず、技術、時間、手間、お金、こういったものがないとなかなかうまくいきません。

 このため、農林水産省としましては、今御指摘いただきました地球温暖化などの重要な課題につきまして、計画的、重点的に品種改良に取り組んでいるところでございます。

 例えば、高温に強い品種とすれば、水稲でしたら、にこまる、ブドウでしたらシャインマスカット、こういったものを開発しております。それから、収量が多いということでしたら、水稲で、あきだわら、こういったものも開発をしております。

 また、今輸出のお話もございました。確かに、需要地によりまして、例えば、真っ赤な色が好きだとか、大きいものが好きだとか、あるいは輸送がしやすいものがいいとか、輸出に向けて、今後、さまざまな課題は出てくると思います。

西銘主査 時間が来ていますから、簡潔にお願いします。

小林(裕)政府参考人 はい。そういったことも含めまして、今後、計画的に、品種改良をしっかり頑張っていきたいと思います。

 よろしくお願いします。

鈴木(憲)分科員 ありがとうございました。

西銘主査 これにて鈴木憲和君の質疑は終了いたしました。

 次に、井林辰憲君。

井林分科員 おはようございます。井林辰憲でございます。

 本日は、質問の機会をお与えいただきまして、まことにありがとうございます。

 まず、質問させていただきます。

 先週も、淡路島を中心として大きな地震が発生をいたしました。被害に遭われた方に心からお見舞いを申し上げるとともに、やはり、この日本という国が、地震が非常に集中をし、さまざまな被害が出る、そうした地域だというふうに再認識をした次第でございます。

 そうした中で、農林水産業に関しまして、漁港は非常に水産業が集中している地点でございます。特に漁港周辺の地域は、その漁港を中心に町が生まれ、成長し、そして発展をしてきた歴史的な経緯がどこの港もあるかと思います。そのため、漁港周辺には、さまざまな加工施設などの施設が集中し、また投資がなされている場合が極めて多いというふうに考えられます。このため、漁港施設は、単なる施設ではなくて、さまざまな自然災害に対しても備えが進められてまいりました。

 まずは、これらの自然災害対策やその計画などがあれば、教えてください。

本川政府参考人 御指摘のように、漁港の周りにはいろいろな施設、機能がございます。

 そういうものにつきまして、漁港を整備するに当たりましては、地震や津波などの大規模自然災害、地震だけではございません、台風による高波であるとかそういったものも想定をした上で、水産物の流通機能、加工施設なりを持って機能を確保していく。それから、漁港に就労している方やあるいは来訪者の安全を確保する、あるいはその周りにある漁村の住民の方々の安全を確保する、こういったことを目的として、防災なり減災対策に取り組んできております。

 その際、随時、地震の力あるいは波の高さといったものを見直しまして、これに基づいて、岸壁の耐震化あるいは防波堤のかさ上げといったもののほか、人工地盤をつくって避難地とか避難路を確保する、こういったような取り組みも進めている、そういうところでございます。

井林分科員 ありがとうございます。

 そうした取り組みの中で、二年前に発生をいたしました東日本大震災、これは、やはり我が国の防災における考え方を大きく変えたというふうに思ってございます。

 特に、津波対策については新たな考え方が必要だというふうに考えられますが、私の地元でありますけれども焼津港ですとか御前崎港、そうした港は遠洋漁業の基地となっていまして、特に集中して、付加価値の高い施設ですとか、または巨額の投資がなされてきています。考え方そのものを変えていかなければいけないというふうに考えてございますが、漁港の津波対策に対して、新しい時代に新しい対策が求められているといった認識、またその取り組みなどについてお教えください。

長島大臣政務官 私の方から少しお答えをさせていただきたいと思います。

 東日本大震災、北海道から千葉まで三百十九の漁港で被害が発生をしております。

 委員御指摘のとおり、津波が防波堤、岸壁を破壊して、背後の漁村そして水産加工施設に甚大な被害を及ぼしたということを考えたときに、私もずっと被災地を歩かせていただきました。防潮堤の高さに問題があるのか、あるいは幅に問題があるのか、形状に問題があるのか。そして、そもそも、町、いわゆる漁村のつくりに問題があるのかも含めて、やはりこれからきちんと対策を取りまとめてまいりたいと思っております。

 基本的な考え方は、設計を斬新なものにすると同時に、やはり粘り強くしていくことも大事だと思っておりますし、委員は御地元で、新しい工法で、いわゆる可動式、ゲート式のものを考えていらっしゃるということも踏まえて、これから、その場所でどういった形状が適切なのかを踏まえて対策を考えていく必要があるんだと思います。

 いずれにせよ、地元の自治体と連携をしながら進めてまいりたいと考えておるところでございます。

井林分科員 ありがとうございます。

 また、この東日本大震災で、原子力発電所の安全基準に対しても考え方が変わろうとしてございます。そうした中で、原子力発電所の運用そのものが、今大きく変わろうとしてございます。しかし、原子力発電所の周辺には、その廃熱を利用した施設や、原子力発電所があることを前提にした施設が数多く整備されていることも現実でございます。

 私の地元、浜岡原発におきましては、原発から出される温排水を利用して、静岡県の温水利用研究センターというものがございまして、種苗の育成、そうしたものが行われてございます。

 発電所からは、発電が行われたときには一万五千立方メートルの温排水を供給いただいて、マダイやヒラメ、アワビなどの種苗生産、または、クエやカジメなどの新しい技術を開発するといった大きな拠点になってございます。一部は県外にも供給をされて、地域の経済そして沿岸漁業の大きな大きな拠点になっているというふうに聞いてございます。

 しかし、平成二十三年五月に浜岡原発の停止要請が当時の菅総理からなされて以降、原発がとまりましたので、温排水の供給停止ということになりました。影響を回避すべく、平成二十三年から二十五年度まで三年間にわたりまして、温水を確保するということで御支援をいただいているところでございますが、これは三年前の話でございます。

 円高も進み、そして今度は円安に振れてきた、そしてさらに、原油は高騰の一途を続けているということで、やはり、三年目のことしに当たりまして、財源の枯渇そのものを心配して、ことしもしっかりとした運用はできるのかといった地元の声。さらには、平成二十六年度以降も、原発の再稼働云々ではなくて、やはり、こうした沿岸漁業を支えている大きな拠点でございます、しっかりと操業を続けるためにこの稼働は必要というふうに考えてございますが、その見解と見通しをお教えください。

後藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今お話がございました静岡県温水利用研究センターは、浜岡原子力発電所の温排水を利用して種苗事業等を行っているということでございますが、今お話がありましたように、東日本大震災以降の浜岡原子力発電所の停止によりその事業継続が困難になったということで、二十三年度の第三次補正におきまして国からの支援措置を講じたところでございます。

 静岡県に状況を確認したところ、県は、本予算を活用しながら非常に効率的に事業を進めていただいておりまして、二十五年度におきましても、当初に基金化した予算の範囲内で事業を継続することが可能であるということで、二十五年度におきましては特段の支障が生じる可能性はないという見込みになっているということでございます。

 いずれにしましても、今の予算でございますので、二十五年度は、引き続き、県と密接な連絡をとりながらフォローしてまいりたいというふうに考えている次第でございます。

 以上でございます。

井林分科員 ありがとうございます。

 ことしは大丈夫だということでございますので、平成二十五年度の分科会でございますので、来年度も引き続いて、重要な施設でございます、しっかりと守っていくという方向で今後とも検討を進めていただければというふうに思います。

 また、福島第一原発のことでございますが、原発事故によりまして、農林水産関係には、出荷制限のほかに、極めて広範囲にわたりまして風評被害というものが発生をしてございます。

 農林漁業者への損害賠償額というもので調べさせていただきました支払い額ベースでございますが、昨年度末までで、全国で約三千九百億。このうち一千億円を超えるものが福島県の皆様方にお支払いをされているわけですが、私の地元であります静岡県は、三百四十億円を超える、約一割近い賠償額というものをいただいてございます。

 特に、その中でも多く賠償請求を支払われているのがお茶でございまして、二百五十五億円の支払いをいただいているところでございますが、ほとんどの産地におきまして出荷制限がないということでございますので、ほとんどが風評被害による二百五十億近い損害賠償をいただいているということでございます。

 やはり、一番大切なことは、補償がなくなる、風評被害の払拭だというふうに思ってございます。どうしても、産地ブランド、この二年間で傷んでまいりました。その復興策や、また、需要と供給のバランスを見据えた対策について教えてください。

佐藤(一)政府参考人 お答えいたします。

 今、先生の方からお話ございましたように、お茶につきましては、これまで、いわゆる深刈り等によりまして除染対策に取り組んできました結果、二十四年産ではほとんどの産地で基準値を下回って、出荷制限も徐々に解除されてきたところでございます。

 その一方で、お茶を含め被災地食品に対する消費者の不安感の払拭といったものが非常に大事なわけでございまして、やはり、その際は、一般国民に正確でわかりやすい情報提供と丁寧な説明といったことが大事だと思っています。

 これにつきまして、我々農林水産省だけじゃなくて、厚生労働省でありますとか食品安全委員会でありますとか消費者庁というような関係省庁と一緒になりまして、基準値の考え方、あるいは農業生産現場での検査の取り組み等について説明会を何度か幅広く行っているところでございます。また、加工流通業者の皆さんに対しましても、科学的、客観的な根拠に基づく冷静な対応、こういったものをお願いしているところでございます。

 先生御指摘のとおり、やはりお茶そのものの需要の喚起あるいはイメージアップ、こういったものが大事かと思っておりますので、優良品種への改植といったことがお茶では非常に大事かと思っておりまして、この品質向上のための果樹・茶支援対策事業はことしの予算で三十億円ほど計上させていただいておりますが、こうしたものの活用、それとまた、お茶の健康機能性のPRや新しい茶商品の開発といったもので地域特産物需要拡大技術確立事業という二十三億円の事業がございますので、こうしたものを活用しながら事業拡大に努めていきたい、このように考えているところでございます。

井林分科員 ありがとうございます。

 ぜひ、風評被害の払拭をもって、一つ一つ原発の問題をクリアしていただければというふうに思っております。

 さて、今お茶の風評被害のことについてお話をさせていただきましたが、実は私、この分科会に出させていただく前に、地元で新茶の初取引に行ってまいりました。原発事故から三年目のことしでございます。随分と、おかげをもちまして、風評被害は少しずつではございますが和らいでいるんじゃないかという大きな期待感を持った取引でございましたが、逆に、新茶の取引のところで非常に大きな話題になったのが、この週末にもございました、気温の冷え込みによる凍霜の被害でございます。

 平成二十二年にも大きな凍霜害を受けまして、ことしもということで、私は、この御質問が終わったら、また地元に帰って現場を見てほしいということで、農家の皆様方から切実な声をいただいてございます。

 この凍霜害被害に対して最も効果的だと言われているのが、防霜ファンの整備でございます。これは昭和の五十年代に急速に整備をされてまいりました。急速に整備をした分、やはり急速に、そして広範囲にわたって更新時期を迎えているというのも現状でございます。

 強い農業づくり交付金の支援をしていただく対象になっていますが、生産性向上や省エネ等の要件、さらには、一定の面積を、これは三軒と聞いていますが、団地方式で求めるなど、中山間地域、凍霜害被害が起きやすい地域を中心に、新規投資や、その資力が徐々に乏しくなってきている農家を中心に、団地方式で求められるというのもかなり厳しい状況になってございます。その弾力的な運用について、これは、これから地元に帰らせていただきますので、ぜひとも前向きな取り組みをいただけますようにお願いを申し上げます。

佐藤(一)政府参考人 今の先生の御質問にございました防霜ファンの整備につきましては、強い農業づくり交付金によって対応が可能になっておりまして、二百四十四億円を本年度の予算で計上しておるところでございます。

 この事業の実施に当たっては、いわゆる機械、施設の導入となりまして、単純な更新というのは事業には対象とならないんですが、やはり、既存の防霜ファンと比べて性能や能力を向上させていくというようなことを行う場合には、単純な更新でないということから、補助対象としているところでございます。

 それと、採択要件の件でございますが、中山間地域等の条件不利地域において、やはり事業というものを円滑に行えるよう、平場とは違いますので、この事業参加者要件、これは原則五戸ですが、都道府県知事が認める場合には三戸で可能としておりますし、受益面積についても、原則十ヘクタール以上になっておりますが、中山間地域についてはおおむね五ヘクタールといったような緩和措置を講じているところでございます。

 先ほど、先生の方から、そういった現場でいろいろな問題を抱えていらっしゃるといったようなお話を聞いておりますので、我々としても、霜の被害について、今関東農政局の方で現地を調査させていただいております。また、そうした中でいろいろと現場での実情をお聞きした上で、どのような対応が可能か考えていきたいと思いますが、まずは実態を把握させていただきたい、かように考えているところでございます。

井林分科員 この問題は、平成二十二年に大きな凍霜害が起きて、二十三、二十四と原発の事故の風評被害ということで、またことしもかということになってございます。政権がかわったということもありますので、ここでぜひとも大胆な運用の見直し、または、さらなる支援策というものを御検討いただければというふうに思っているところでございます。よろしくお願いします。ありがとうございます。

 さて、そうした中山間地域のお茶の話でございます。

 やはり、五ヘクタールでもなかなか厳しいというのが現実でございますが、それはさておきまして、農地の集約化というものも、しっかりとそうした要件を満たすべく進めていかなければいけないところでございます。

 これまでさまざまな政策がとられてまいりまして、所有権移転や賃貸借などにより集約化が進められてまいりました。調べてみましたら、ここ数年、所有権の移転で大体三万ヘクタール前後、賃貸借で九から六万ヘクタールぐらいで、ストックで見ますともう二百万ヘクタールを超えて、農地の約半分に至ろうとするほどまで進めていただきました。

 これからさらに集約化を進めていくときには、さらに小さな農家や農地も集約化を進めていかなければいけないというふうに思うところでございますが、その際に、これは農家の皆様方から寄せられている御意見ですが、賃貸借や所有権移転の登記費用などの行政費用ですとか測量にかかわる費用、こうした費用負担が農地の生産性に比べて非常に重いという声もいただいてございます。

 今後、さらに農地の集約化を加速、推進する際に、さらに手厚い支援も必要だというふうに考えますが、その取り組みをお教えください。

江藤副大臣 委員のおっしゃるとおりでございまして、農地集積を進めてまいらなければなりません。その場合は、これは国税ですけれども登録免許税、それから、この事務を司法書士等に頼めば当然報酬を払わなければいけない。これが負担になっているわけであります。

 条件はついております、農地集約、農地集積を促す観点から農用地利用集積計画を市町村がつくる、これをつくって、これに沿ったものであればという条件がついておりますけれども、こういう場合であれば、登録免許税については通常税率二%のところを〇・八に軽減する。それから、市町村の計画にのっとってやるということであれば、この事務自体を司法書士に頼む必要がないわけでありますから、この部分についてはお金が要らないということで、若干の支援はさせていただいているということでございます。

井林分科員 ありがとうございます。ぜひ中山間地域の農地の集約についてもしっかりと取り組みを進めていきたいというふうに思ってございます。

 こうしたさまざまな支援策をいただいて、農地を集約化したり防霜ファンをつけたり、または風評被害の払拭などに努めていただいても、作物を育成して、その最後、収穫の段階になって大きな問題になってくるのは、やはり鳥獣被害対策でございます。

 特に、鳥獣被害という話になるとイノシシが象徴的に扱われていますが、イノシシの数は、実際、これは本当にふえているのかどうか。そして、現在どれぐらいで、やはり過去の趨勢を見ると、ふえつつあるのか、また範囲が広がっているのか。そして、その被害ですとか対策などについて、現状をお教えください。

伊藤(哲)政府参考人 私の方からは、生息状況についてお答え申し上げます。

 イノシシの分布域につきましては、環境省が実施した全国的な調査の結果、あるいは捕獲位置情報等から、分布域そのものは確実に拡大している、こういうふうに認識しております。

 また、個体数につきましても、正確な把握は難しゅうございますけれども、捕獲数や被害の状況、分布の拡大等を踏まえれば増加している、こういうふうに考えている次第でございます。

佐藤(一)政府参考人 被害額等についての現状でございますが、農産物の被害については、近年、被害額が大体二百億円を上回る、そういう状況でございまして、二十三年度は二百二十六億円となっております。中でも、鹿、イノシシ、猿によります被害が全体の七割、こういうような状況になっているところでございます。

 また、森林関係ですが、鹿などの野生鳥獣によります森林被害についてもこれは発生しておりまして、二十三年度の森林被害面積は約九千四百ヘクタール、このようになっているところでございます。

井林分科員 ありがとうございます。

 そうした非常に大きな二百億を超える被害ということでございますけれども、やはりイノシシを含めて非常に多産系の動物でありまして、数も幾何級数的にふえていくということが推測をされるところでございます。

 一方、野生動物の保護ということも当然大事でございまして、自然との共生を図りつつ、農作物をしっかりと守っていくということがやはりあるべき姿だし、とるべき政策だというふうに考えてございます。

 そうした考え方に立ちながら、これからもふえてくる鳥獣被害に対しまして、やはり新たな対策、特に捕獲ということになると思いますけれども、そうした新たな対策についての取り組みの方針などがあれば、教えてください。よろしくお願いします。

林国務大臣 今、井林先生からお話がありましたように、この分科会が始まってからこれは一番人気のテーマなんですね。ということは、やはりお地元、お地元で、この話はかなり出てきているということだろう、こういうふうに思っております。

 先週末の鈴木委員のときでしたけれども、そのときも私はお答えしたんですが、私の地元の山口でも随分その声が出てきておりまして、今環境省からもお話がありましたように、かなり深刻化、広域化している。そういう意味では、いろいろなことを今までもやってきましたが、二十四年度の予算九十五億円、二十五年度予算案九十五億円でしっかりと対応していきたい、こういうふうに思っておりますし、議員立法もできました。

 したがって、いろいろな対策の充実強化を図っていくということでございますが、この根本的な原因がどこにあるのか、それから、そこに対してどういうことができるのか、現場、現場の知恵をしっかりといただいていきたいと思っております。

 うちの地元では、ちょうど田畑と森林の中間に耕作放棄地がございまして、そこで牛を放牧する、牛を放牧すると、今までおりてきていた鳥獣がおりてこなくなるという抑止効果も出ている、こういうような例もあるようでございますので、その地域、地域に合った、こういういろいろな知恵も現場からいただきながら、しっかりと対策を打っていかなければいけないと思っております。

井林分科員 ありがとうございます。

 大臣に御答弁をいただきましたけれども、中山間地域では、鳥獣被害対策というのは非常に大きなテーマ、特に、生育した作物が荒らされるというのは農家の皆様方の心も荒らすということで、やはりこれからもしっかりとした対策をお願いしたいというふうに考えてございます。

 また、中山間地域では、農業と並びまして、やはり林業というものも非常に大きなテーマでございます。

 林業の振興は非常に喫緊の課題でございまして、特に、中山間地域は治山治水の面から見ても脆弱な地域でございます。こうした面からも、しっかりと対策をしていかなければいけないというふうに思っているところでございますが、どうしても、これまでの森林振興ということになりますと、路網を整備して、木材を間伐したり切り出していこうということが中心になってございますが、一方、急峻な中山間地域などでは、架線による間伐、切り出しや、皆伐なども対策が求められるところでございます。

 調べたところによりますと、架線系で切り出したときにも補助金をいただいて、路網の整備で切り出しも補助金をいただいて、平均一・二倍ぐらいの補助金をそれぞれ都道府県に応じて出されているということでございますが、私の地元、例えば川根本町では、町の中に林班だけで二百もあるということで、これ一つ一つに路網を整備していくとか、一律の架線系の補助金の金額では、細かな対応ができなくなるのではないかというふうに考えてございます。

 より急峻な地域でもしっかりとした林業が保たれるように、きめ細やかな支援が必要だというふうに考えますが、その取り組みと考え方について教えてください。

沼田政府参考人 お答え申し上げます。

 森林整備を推進するためには、傾斜等の条件に応じた適切な作業システムを導入していく必要がございまして、奥地森林におきましては、架線集材の活用、ワイヤーを使った集材でございますけれども、これが重要でございます。

 この架線集材を行う場合は、集材距離に応じて単価を柔軟に設定しておりまして、例えば、先生おっしゃいましたように、五百メートル程度でありますと、車両系の一・二倍、一・三倍ぐらいの単価を設定させていただいております。

 こういったことに加えまして、作業システムの効率化に必要な新たな林業機械の開発、それから先進的な林業機械の現場導入に当たっての実証といったものにも取り組ませていただいておりまして、特に架線集材関係を、きちっと取り組んで強化していく考えでおります。

 今後とも、地域の実情に応じて適切な森林整備を推進してまいりたいと考えているところでございます。

井林分科員 ありがとうございます。ぜひきめ細やかな制度、これからも対応していただきたいというふうに思ってございます。

 最後でございますが、こうした林業を計画的に実行するために支えているのが森林経営計画でございます。

 この計画に基づいて、森林をしっかりと維持し、保全をし、そして林業を振興していく、そして、この計画に沿ってさまざまな対策を講じていくということでございますが、この森林経営計画は、基本的には五カ年計画になっているということでございます。

 しかしながら、この根幹となる木材の切り出しにつきましては、市況価格がございます。木材の単価は非常に乱高下をいたします。昨年秋口にかけても、非常に価格が下がったというふうに聞いてございます。

 価格下落時に計画どおりに間伐の搬出や皆伐をするということが、やはり農家の皆様方の、いろいろな弾力的な運用もあるんでしょうけれども、真面目に信じ込んでしまってと言うことはよくないのかもしれないんですけれども、計画どおり忠実にしようとすると、どうしても市況価格の影響を非常に大きく受けやすいということがございます。

 今までも弾力的な運用というのをしていただいていますが、さらに弾力的な運用をしていただいたり、そうしたことの周知徹底をやはりしっかりとしていただくということも大切だと考えますが、その取り組みについてお答えをください。

江藤副大臣 先生の言われたことは、私が野党時代にさんざん農林水産委員会でやったことでございまして、計画どおり出せなければ、結局、後づけでだめよということであれば、これは大変なことなので、だったら、そもそも怖くて手が挙がらないじゃないかと。計画をつくれ、施業計画から経営計画に移行しろ、それもできないじゃないかということで、大分、前政権でも工夫をされて、十二月に、そういう取り消しはしないよという通知は一応出しました。

 余り言うと、後ろで林野庁長官が非常に冷や冷やした顔をしていますから、余りきょうは踏み込んだことは申しませんけれども、私は、野党時代にはもうこれ自体をやめた方がいいと。経営計画でやれるところはその方がいいですよ。さっきの架線集材の話もそうですよ。もうウインチをつくる会社自体がなくなりかけていますから、今、日本で。技術者もいなくなっている。

 ですから、急峻な山と条件に恵まれた山と、それによっての施業の仕方があるだろう。それによって、こういう経営計画の内容についても、もうちょっときちっと、せっかく十二月に取り消さないという通知を出したのであれば、我々の政権のもとでもきちっと、またさらに弾力化をされたということですな。

西銘主査 時間です。

江藤副大臣 ということで、時間ですので、これでやめさせていただきます。

井林分科員 ありがとうございました。

西銘主査 これにて井林辰憲君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

西銘主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。渡辺孝一君。

渡辺(孝)分科員 自由民主党の渡辺孝一でございます。

 分科会におきまして質問の機会を与えていただきまして、心より感謝を申し上げます。初めての質問でございますので、非常に緊張しております。どうかよろしくお願いいたします。

 TPPを中心に、農業にかかわる質問を、市長時代の経験を交えまして行いたいと思っております。

 さて最初に、私の選挙区の事情を若干説明したいと思います。

 北海道には、開拓の歴史以来、支庁制度というものがございました。道州制特区の議論の中で、この支庁制度を改めまして、空知支庁、留萌支庁を、空知総合振興局、さらには留萌振興局と改めまして、新たなスタートを切ったところでございます。

 この空知、留萌というのは、一次産業を基幹産業とする三十四の市町村で構成されております。この地域には、古くは空知では五市一町、もう皆さんも御承知のとおり、夕張、美唄、三笠、芦別、歌志内、上砂川と、留萌には羽幌炭鉱など石炭で一時代を築き上げた地域でございました。特に空知では、八十万人を超える人口を有したときもありましたが、今では三十三万人を割り以前の半分以下になるなど、炭鉱の閉山は地域にとって大変苦しいものになりました。

 特に夕張市は、昭和三十五年の国勢調査ですけれども十万七千人の人口が、今現在では一万人を割る、そういう状況でございます。美唄は八万七千人から二万四千人、芦別市は六万七千人から一万六千人、三笠は五万六千人から一万人、そして歌志内市、日本で一番小さい市でございますけれども、三万八千人から四千人というように、理由は閉山だけではありませんが、今現在、非常に寂しい状況になっております。

 当然、このことは周囲の自治体にも、経済、医療、教育などに大きな影響を与え、同じように衰退の一途を歩んでおります。もちろん、各市、自治体におきましては、地元の住民の皆さんと協力しながら、企業誘致や産業興しなど、必死になって町を守っている状況でございます。

 国策とはいえエネルギー政策の転換により一つの産業を失い、地域がこんなにも衰退した経験を持つ、日本でも数少ない地域ではないかと思っております。

 今まさに、TPPにより、日本、北海道、いや俺たちの農業はどうなるのだろうかと心配する農業関係者や住民の方々がたくさんおります。

 先日、四月六日の、いわゆる道連主催のTPPの経過報告及び懇談会には、小里農林部会長もお越しいただき、四百名を超える関係者の参加がございました。重要品目など関税をしっかりと守ってほしい、あるいは、交渉は後発参加国ということで不利ではないのかなど、意見が多数出ておりました。小里先生の適切な答弁で安心していただけたと思いますが、参加者の不安と不満はまだまだ根深いものがあると私は感じました。

 私も何回か聞いておりますが、安倍総理、林大臣のTPPにかける思いと農業に対しての熱意が、農業者の救いだと思っております。

 三月十五日以降は、私も、支部や後援会の皆様の協力をいただき、順次TPPの経過報告を行っています。大変耳の痛い、鋭い質問をする方が多く、皆さんがよく勉強していると感じております。

 しかしながら、総じて申し上げるなら、TPPはこれからが本番だ、こういうことをいつも訴えております。今後、交渉に参加し、具体的な話が出てくると思います。日米合意文書が十二日には発表されましたし、七月にも開かれるTPPの交渉会合から日本が参加する環境が整うと聞いております。

 これまで六カ国が日本の交渉参加を容認したり、残りの交渉参加国も支持に回る見込みだと報道されました。大変喜ばしいことで、ここに来ては、一日も早く交渉を始め、日本の国益をかち取ってもらいたいと思っております。

 そこで、一点目の質問でございます。予定では十月にも基本合意がなされるものと聞いておりますが、時間的制約もある中、いま一度、TPPに対しての大臣の思いや、今後の交渉に当たっての決意を聞かせていただきたいと思います。

林国務大臣 渡辺先生のお地元のお話を今お聞かせいただきました。

 私の地元も宇部市、美祢市というところ、炭鉱があったところでございまして、そこが盛んなころには、実は、村から市に、町を飛び越えて一気になったということもあったわけでございますが、御案内のように、石炭から、当時は石油へということでしたけれども、いろいろなことの中で変遷をしていったということがうちの地元でもあったわけでございます。

 エネルギーはそういうような変遷というものがあったわけですが、一方、やはり農業は、こういうふうに自由に貿易するようになったからもういいんだ、こういうわけにはいかないわけでございまして、よく私は、農は国のもとという言葉を使わせていただきますが、やはり、食料を安定的に安心できる形で供給するという基本的なことに加えて、いわゆる多面的な機能、よく言われることですが、やはりふるさとの美しい光景を初め、いろいろな機能をきちっと守っていく、これが石炭とは違うところがあるのではないかなというふうに、今お話を聞いていて思ったわけでございます。総理も常々、今のような話の中で棚田のことを例に出して、日本の食と農を守っていく、こういうことをおっしゃっておられるわけでございます。

 自民党の中でも決議をしていただいて、米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物等の重要五品目、これらの聖域を確保すべきという決議を既にいただいておるわけでございます。

 午前中の質疑でも、ほかの国と比べてやはり我々もきちっと立法府で決議をしてやっていくべきではないかという御指摘もいただいたところでございますけれども、まさに、このTPP交渉、今委員が御説明いただいたように、アメリカとの並行協議が先週末合意に至ったということでありますから、次は実際の交渉参加ということが見えてくるわけでございます。

 交渉参加に当たっては、この自民党の決議や、先ほど紹介させていただきました総理の御発言、あらゆる努力により日本の農業、食を守る、こういうものも踏まえて、国益を守り抜いて、聖域を確保するよう農林水産大臣として全力を尽くしてまいりたい、こういうふうに考えております。

渡辺(孝)分科員 大変ありがとうございました。

 大臣のお言葉は地元に帰って皆さんに伝えたいと思いますけれども、改めて、多少安心していただけるのではないかというふうに思います。

 次に、昨年の十二月十六日に国会議員にならせていただきましたが、この四カ月間、地元に帰り、TPPに関しては私なりにいろいろな方々との議論を重ねてまいりました。

 しかし、国民の皆さんは、これは全国津々浦々同じだと思うんですけれども、やはり知らないこと、つまり情報不足からくる不安、不満が多いというふうに感じております。もちろん、交渉前でございますので、我が国の手のうちを見せるのは大変無理なことだというふうに私も思いますが、どこまで国民の皆様に情報提供できる、あるいは国民的な議論をどういう形でできるのかということに関しまして、お聞かせいただきたいというふうに思います。

江藤副大臣 大変大切な点だと思います。我々、野党時代に、私も委員会で、全く情報がないではないかということを随分追及した本人でもありますので、政権交代をして、前政権と同じような情報公開のあり方であってはならないんだろうと思います。

 しかし、先生の御指摘のとおり、やはりタフネゴシエーターでなければならない。確固たる政権基盤を確立して、そして、最近であれば、日台漁業交渉のようなしたたかな外交手腕等も発揮をしながら、日本の国際的な地位を高めて、その上で我々のかち取るべき聖域を確保していくということに努力しなければなりません。

 その中で、あらゆる機会をつかまえて、農業団体の方々や関係者の方々に、委員御指摘のように国民的な議論が喚起されるような情報提供に努めてまいりますが、どこまで情報公開するかについては、ぜひ林大臣を御信頼いただき、内閣を御信頼いただいて、しばらくは見守っていただきたい、そういうふうに思います。

渡辺(孝)分科員 ありがとうございます。お立場は重々わかっております。

 これは一回生の愚痴というふうにお聞きいただきたいんですが、仲間と集まりまして、何というんでしょうか、我々は一体どうしたらいいんだというようなことを言う仲間が大変多うございます。結局、地元に帰って説明のしようがない、何を言ったらいいんだろうかということを仲間同士で話すことが多うございます。

 ですから、ぜひ、マスコミよりも早く情報を知りたいなという、そんなこともありましたものですから、そのことをどのように地元に帰って伝えるかどうかは議員の努力だというふうに思いますので、その辺のところをぜひ御考慮をお願いしたいなというふうに思います。

 さて、続きましては、やはり大事なのは実質の交渉事ではないかというふうに思います。しかし、私の地元で行われた説明会では、地元紙もちょっと偏った報道がございまして、特に交渉チームにつきましては酷評とも受け取られるような報道がなされました。

 こういうことが書いてありましたけれども、人のよい日本だからすぐ首を縦に振ってしまうんじゃないかとか、一番最後だから遠慮するのではないだろうかというような声が、あるいは報道がなされておりました。また、各種説明会におきましても、日本の交渉能力を心配する声も、その報道の影響もあったかと思いますけれども、そんな声も聞かれました。

 その都度、私は、今現在の交渉チームというのは最強のチームだということを皆さんの前でお話をさせていただいておりますけれども、いま一度、その交渉に当たってのチーム編成や協力体制、何せ二十一分野と大変広うございます。その辺、交渉チームについて一言お話しいただければと思いますので、よろしくお願いします。

林国務大臣 先日、五日になりますが、閣議決定をいたしまして、TPPに関する主要閣僚会議の下にTPP政府対策本部を設置したところでございます。ここに国内総合調整を担当する国内調整総括官、それから交渉を担当する首席交渉官を設置することなどによって、複数の分野にわたって交渉に関係する各省が一体的に対応できる体制を整備した、こういうふうに思っております。

 今お触れになられましたお地元の新聞を私も拝見いたしましたけれども、今の時点では、何か批判をするということであればこういうことぐらいかな、こういうふうに思ったわけですが、例えば、通商担当をしていた人を集めた。逆に言えば、通商担当などしたことのない人を集めてもしようがないわけでございますから、まさにそういう人を全部集めて、一つの首席交渉官という人のもとに置いたということが非常に大きなポイントではないか、こういうふうに思っております。

 余談ですが、今度この首席交渉官になる鶴岡さんというのは、なかなか煮ても焼いても食えない人でございまして、非常にこういう交渉事には向いているのではないか、私も個人的にもそう思っておりますし、国内調整総括官は財務省から佐々木さんという方が行っていらっしゃいますが、非常にいろいろな政策に通じた方であるとともに、いろいろな省庁をまとめていくリーダーシップをお持ちの方だ、こういうふうに思っております。

 先ほど申し上げたように、交渉が始まっていけば、特に農林水産分野は厳しい展開が予想されます。攻め込んでいく分野と守る分野があるとすれば、農林水産の分野は守る分野がほとんどである、こういうふうに思っておりますけれども、そういう中で、この新しい対策本部を中心に、国益を守り抜くように、ほかの省とも一体となってしっかりと交渉してまいりたい、こういうふうに思っておるところでございます。

渡辺(孝)分科員 今の大臣のせりふをしっかりと、私の選挙区に戻って精いっぱい説明したいというふうに思っております。

 さて、今度は話題をかえまして、攻めの農業についてお聞きをしたいと思っております。

 アベノミクスの三本目の矢に成長戦略が示されました。私も大賛成でございまして、この矢の結果次第では日本の将来は大きく変わるのではないかというふうに思って、期待しております。各分野におきまして、日本の英知と技術をもって日本の飛躍につなげていただきたいなというふうに思っております。

 そこで、十日にですか、参議院議員選挙の農業分野の公約案の柱にという記事が報道されましたけれども、その中で、所得倍増や新規就農者の倍増、さらには農産物の輸出拡大などという発表がございました。

 もちろん、私は、TPPを見据えての配慮とか参院選に勝利するだけのものとは思っておりません。むしろ、日本の農業の将来を描く中で当面の目標として掲げているものと、大いなる期待をしているところでございます。

 そこで、何点か質問、提案をしたいと思っておりますが、一点目は、一次産業の多面的機能の保持という点から、私は、国土の保全というのは、いわゆる農業関係者だけではなく国民全体で行わなければならないと思っております。

 これは市長時代の経験でございますけれども、例えば、建設土木業の方々から、社会貢献したいという提案がございました。そこで、用排水路の簡単な修繕とか荒れ地の整理、あるいは植樹活動など、いわゆる市行政の手の届かないところに御協力をいただきました。

 その後どうなったかといいますと、いわゆる荒れ地の整備の後は子供たちの野球の練習場になったり、あるいは植樹も今は、我々行政が考えられるような範疇を飛び越えまして、桜の里にしようと。当初は百本、二百本程度の植樹の話だったのが、何万本も植えようじゃないかなんという、そういうような話にまで発展して、大変ありがたい、企業の方々が皆さん頑張っていらっしゃるんだなというふうに、大変気持ちのいい話でございます。

 一方、このように、持てる力を逆に農業の方にも活用できないかというふうに考えたことがございました。

 当時は、異業種の農業への参入という話題もありまして、いろいろと建設土木業の方々も農業に進出というところもありましたけれども、正直言って鳴かず飛ばずで終わったというふうに私は思っております。

 農業においては、今、法制度の改正等々で企業の参入が非常にやりやすくなったのも私も知っておりますけれども、残念なことに、先ほど町の状況をちらっと申し上げましたけれども、いわゆる地方の企業というのは、五人、十人で言うなれば会社というか企業というふうに成り立っている状況でございまして、正直言って零細企業がほとんどでございます。

 それが要因で、農地・水・環境保全向上対策の際も、地域住民や学校関係の方々には大変御協力をいただいたんですが、なかなか企業の方々には、ちょっと手伝いたいけれども余裕がないなとか、時期的に考慮してくれればなど、いろいろなことが言われましたけれども、なかなか参加しづらかったというのが現状ではなかったかというふうに思います。

 先ほど申し上げましたように、きれいな国土を保持することは、もう誰もが賛成で協力をしたいと思っているはずでございます。ここで提案ですけれども、そういう小さな零細企業にも、国土保全を守る企業に参加できる制度をつくってみたらどうでしょうかというのが提案でございます。企業が農業に参入しやすい環境を整えることで、その延長線に高齢者や障害者の方々の農業にかかわるきっかけづくりができるんじゃないかというふうに思っております。

 例を申し上げますと、例えば、協力していただいている企業に多少の減免をしていただけるようなことがあれば、それが火つけ役になっていただけるのかなと、単純に考えておりますけれども、御所見をお聞かせ願いたいと思います。

長島大臣政務官 渡辺議員さんには、私はたしか市長さんのときに一回御挨拶をさせていただいておりまして、当時からこういった高い御見識をお持ちだということは拝聴いたしておりました。

 御指摘のとおり、農業、農村は、国民の食料供給基地だけではなくて、国土保全、水資源の涵養、そして景観という大事な部分の多面的機能を有しているということは私も認識をしておりますし、私も条件不利地域に住んでおりますので、今議員から提案のあったことはとても大切な観点だというふうに実は捉えております。特に、農業者だけではなくて、地域住民そして地域の企業が参加をしながら多面的機能を維持していく、つまり、そこに人が暮らし続けることがやはり大切だということは、私は大事な観点だろうというふうに実は思っています。

 農水省は、農地・水保全管理支払交付金では、こういった地域ぐるみの活動を支援するようにしておりますし、条件不利地域においても、中山間地域等直接支払交付金によって、少し共同作業がしやすいような環境をつくっております。

 特にことし、二十五年度予算で、共生・対流事業で、来ていただける方に、農村を知っていただいたり農業を知っていただくことによって、多面的機能を果たす農業そのものを国の基本的な産業として認識をしていただくということが大切な観点なんだろうと思っております。

 私も、この共生・対流の中で、多くの都会人であり、また地域人であり、農村を見ていただくことよって、農村が果たしている役割をぜひ国民の多くに認識をしてもらいたいと思うし、参加をしてもらいたいと思う一人であります。

 地域企業は、我々のところは、御指摘のとおり三人や五人の企業が多いんです。実は、ほとんどが農業をやりながらの企業人であったりいたします。それでも、やはり地域にとっては企業の力というのは非常に大きなものがございまして、これからいろいろな施策の中で、地域住民、そして交流をしてくれる交流人口、そして地域の企業人が一緒になって、やはり農村、農業のことを考えて、そして、管理あるいは維持に努めていっていただけることは、私は大切な観点だと思っている一人でありますので、ぜひ、委員御指摘のように、我々もそんな観点を踏まえながら、農業政策をうたってまいりたいと思っております。

渡辺(孝)分科員 次の質問ですけれども、農産物の輸出について若干聞きたいと思います。

 口で言うのは簡単ですけれども、輸出というのは一筋縄ではいかないというふうに思っております。私も市長時代、中国に地元の農産物加工品などの輸出事業を試みたことがございました。ちょうど瀋陽市で開催されました国際農業博覧会に出展の経験がありますけれども、岩見沢のお米でつくった俵形のおにぎりというのがありまして、実は、アンケートをとりますと、九八%の方がおいしいという返事をいただきました。言うなれば、おすしをちょっと大き目に握ったものに味塩をかけた程度のものですけれども、通訳の方に、ただで出しているから、みんなおいしいと言っているのだろうと言いましたら、市長、ばかにしないでください、中国人というのははっきりとイエス、ノーを言う民族でございますのでなんという、そんなことも話の中にありました。

 実は、なぜこのようにしたかというと、うちの市の職員がいろいろと中国の食文化を調べた中で、雑炊とかチャーハンとか、熱処理をすることが中国料理には多いようでございまして、なかなか、こういうおにぎりで食べるという習慣がなかったようでございます。遊び半分と言ったらあれでしょうけれども、ちょっと遊び心を持ちまして、そういう形をやったわけですけれども、意外と好評だったということに私もびっくりしております。

 何を言いたいかというと、輸出に関しましては、ただ物を送ればいいというだけではなくて、やはり相手の国の生活習慣や食文化までしっかりと考えて取り組んでいかなければ、どうも、日本人の感性や感覚だけでは大変で、行き詰まってしまうのではないかというふうに思っております。今後、輸出を考える際、相当な戦略を考えなければ難しいと思います。

 そこで、加工、流通、販路の確立や市場の分析など、用意周到な戦略が私は不可欠だと思いますけれども、輸出に関しまして、農水省の考え方をお聞かせください。

針原政府参考人 お答えいたします。

 今先生が御指摘されたとおり、所得の拡大のためには、新しい市場を開拓する、まさに伸び行くアジア等の市場に農産物を輸出していくということが大事なわけでございますが、ただ、国内で販売するよりも、外国の企業や国と競争して勝ち抜いていくということで、そんな生易しいことではないと思っております。

 私ども、原発事故に伴う輸出証明書の発給を国で一元的に行う、あるいは、ジェトロとの連携を強化して総合的なビジネスサポート体制を構築する、あるいは、日本の食文化の浸透とあわせて輸出を行っていく等々の取り組みをしておりますが、その際にも、相手の国の事情を知り、文化あるいは食生活、それから加工流通体制、そういうものを踏まえた戦略を立てる必要があるということで、今、林大臣のもとに攻めの農林水産業推進本部をつくっておりますが、そのもとで国別、品目別の輸出戦略を策定し、今おっしゃったような総合的な取り組みを行っていきたいと考えている次第でございます。

渡辺(孝)分科員 もう時間がございませんので、最後の質問ですけれども、新規就農につきましてお聞きしたいと思います。

 私の地元には農業高校がございまして、言うなれば、開拓以来、農家の息子さんはそこの高校に入るというのが正直言って定番でございましたけれども、近年の高校進学に対しての若者の感性なり、進学につきまして、若干、時代の流れとともに変わってきたようでもございます。

 そこで、私が高校の子供たちと懇談会を開いたときに、こんなことを言われたことがあったんです。うちは農家じゃないんです、ですから土地がないので、市長さん、俺が農業をやるとき、やりたいけれども、どうしたらいいんだろうと。あるいは……

西銘主査 時間ですので、まとめてください。

渡辺(孝)分科員 はい。

 どうやって農業をやりながら御飯を食べていけばいいのかなんということを言われて、返答に大変困ったことがございました。

 そこで、農業高校の子供たちに夢を与えられるような教育というのももう少し考えていただきたいと思いますけれども、どのようにお考えになっているでしょうか。

西銘主査 山下大臣官房審議官、答弁は簡潔にお願いいたします。時間が来ております。

山下政府参考人 文部科学省でございます。

 農業高校についての御質問でございます。

 農業高校の中で行われている教育につきまして、より魅力あるものをということは御指摘のとおりでございます。

 特に、職業選択の意識づけということについて、北海道の岩見沢農業高等学校におきましては、例えば五日間の農業実習、あるいは年三回の農業講演会といったような形で、就農意識を高める活動に取り組んでいただいているところでございまして、文部科学省としても、今後とも、そうした生徒の学習意欲、あるいは農業への意識を一層高めるような方向で、引き続き努力をしてまいりたいと考えております。

渡辺(孝)分科員 どうもありがとうございました。

西銘主査 これにて渡辺孝一君の質疑は終了いたしました。

 次に、高木美智代君。

高木(美)分科員 公明党の高木美智代でございます。

 私は、農水委員会で、しかも分科会も含めまして、質問させていただくのは初めてだと思っております。きょう、また大臣にも初めて質問をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 私は、前々回の動物愛護管理法の改正に携わらせていただいて以来、人と動物の関係につきましても勉強を少しさせていただいてまいりました。やはり、動物なくしては人は生きられないというふうに考えておりまして、そうしたことも含めまして、本日は、動物看護師の国家資格化と獣医師の不足、偏在問題につきまして、質問をさせていただきたいと思います。

 この動物看護師につきましては、日本獣医師会初め教育関係者からも、長年、国家資格化に向けまして要請を受けてきたところでございます。速やかな国家資格化に向けて取り組むべきと思いますし、また、そのための農水省また文科省、政府としての後押しを心からお願いするものでございます。

 まず、お伺いをさせていただきたいと思います。

 動物の果たす社会的役割と、獣医療をめぐる課題につきまして、大臣がどのように認識していらっしゃるか、答弁を求めます。

林国務大臣 高木先生、いつもお世話になっておりますが、委員会では初めて御質問いただけるということで、ありがとうございます。

 動物は、我々農林水産省ということでありますと、まずは、家畜として、人が生きるための糧となる乳ですとか肉ですとか卵等を提供する、これがあるわけですが、さらに言いますと、伴侶動物というそうですが、コンパニオンアニマルと言った方が通りがいいのかもしれませんが、動物として、家族のように密接にかかわって、人の生活において大きな役割を果たしている、こういうところがあるのではないかなというふうに考えております。

 畜産物については、安心、安全な良質なものを安定供給するということが必要ですから、適切な飼養衛生管理等々、安全性を確保しながら生産、流通させることが必要であります。また、コンパニオンアニマルとしては、動物の健康維持が、飼い主を初め関係する方々にとって大変重要であるというふうに考えております。

 そういった意味で、獣医療は、これら動物の健康を守り、畜産業の発達を図るとともに、公衆衛生の向上に寄与するといった観点から、大変大事なものであると考えておりまして、獣医師や獣医療関係者の皆さんが、獣医療を担って、国民の日々の生活を支えているものというふうに考えておるところでございます。

高木(美)分科員 ありがとうございます。

 私も、改めて動物が果たす役割を認識させられたのは、やはり、一昨年の東日本大震災でございました。

 そのときに、特に福島におきましては、一斉に避難をしたということから、どうしても、数日たてば帰ってこられるだろう、きょうだけだろう、いろいろな状況の中で、例えば家畜を飼っていらっしゃる農家については、牛や馬を置き去りにしてきた、家族のようなものなんだとおっしゃるんです。また、ペットにつきましても、置いて避難できない、でも、連れていくわけにもいかない。そういう状況の中で、先ほど、生活の伴侶としてと大臣は御答弁の中でおっしゃっていらっしゃいましたが、まさにそういう自分の家族のような存在をそのまま置いてきた、こういう状況がありました。

 私は、この両方から、多くの陳情といいますか要請をいただきまして、特に、家畜につきましてはすぐに、農水省は安楽死にする、こういうお話をいただきまして、それが進むだろうと思っていたら、これが結局は進んでいなくて、そのために、最後、牛や馬は餓死をしたというのが大半であった。しかも、ふんにまみれて、そして死んでいったというその姿を多くの方たちが見まして、特に私も、獣医師会の方たちからそういう話を多く伺いました。

 これではいけないということで、農水省にも申し入れに行かせていただきまして、要請をさせていただき、その結果、いわゆる放射性物質を浴びた研究用の家畜としてということで、一時期保存をし、飼育をし、最終的には今ほぼその役割を終えているというふうには聞いております。

 ただ、人に命をささげるというこの家畜の存在、それに対して人がどのように遇していくかということ、これがやはり人としてのあり方ということもそのときに教わる思いでございまして、実は、私の公明党のある南相馬市の市会議員も家畜を飼っておりまして、そして泣いていらっしゃるんですね。もう家族なんだ、置いてなんかいけないよ、何とか助けてもらいたい、助けるすべがあるだろう、こう言って、お話を伺いまして、それをもとに私たちは要請をさせていただき、最終的にその家畜も研究用として供されることになりまして、最終的にはその使命を終えたという状況でございます。

 本来でいえば、本当に最後は、そうしてふんにまみれて、また餓死してというのではなくて、せめて最後はきれいなところで、おなかいっぱい食べさせてというのが、人間に供してくれる家畜に対するあるべき対応なのではないかということも私は感じた次第でございます。

 また、あわせて、ペットにつきましても、これを何とか避難また確保してほしいということで、多くの動物愛護団体から要請をいただき、環境省に働きかけながら、何回かの捕獲作業をしていただきましたが、もうそこには、家畜が野生化していたり、またペットも野生化をしている、またその子供がもう既に生まれていて、そこが今、イノシシが家庭の中に入って家を荒らしていて、帰るたびに、もう二度と帰れない、本当につらい思いをしているんだ、そういうお声も、避難されている方たちから今も伺っているところでございます。

 ただ、いずれにしましても、今大臣がおっしゃるとおり、家畜そしてペット、こことどのように私たちが今後も対応していくか、そこが大事なところだと思っております。

 今、鳥インフルエンザ、H7N9型が席巻をしておりまして、我が国にもこの脅威が伝えられているところでございます。人と動物のグローバル化、スピード化に伴いまして、狂犬病も含めた新興・再興感染症の発生も増加しておりますし、国際的かつ重大な社会経済問題を引き起こす要因ともなっております。

 こうした危機への備え、そしてまた、先ほど大臣からもありましたペットにつきましても、今、犬猫などの飼養頭数が二千八百万頭とも伝えられておりまして、十五歳以下の子供の人口を凌駕するまでに増加をしておりまして、高齢化に伴い、まさに子供、孫にかわる存在として一緒に暮らしている、こういう状況があります。

 したがいまして、家庭動物の飼育が増加をすることにより保健衛生の向上に対する社会的関心も高まっておりまして、動物の診療機会の増加とともに、診療提供に対する飼育者からの要請も高度化し、かつ多様化をしております。これに対して、質の確保についての飼育者の要請にどのように応えていくか、この必要性も生まれております。

 こうしたことを総合的に考えてまいりますと、人の医療の世界でも、多種の専門職によるチーム医療が推進されております。産業獣医師、この方は、一人で手術の用意をして、後片づけも一人で行う。獣医療の世界で専門職、国家資格であるのは獣医師唯一という、ここは私は余りに異常なのではないかと思っておりまして、どうしても、それをサポートする人材の養成というのは急務であると考えております。

 また、一方で、家庭動物の世界でも、動物看護師という補助者が専門的に勉強してきましても、今度は動物病院でアルバイトのように、いらした方たちからみなされて、専門知識があってきちんとお話ししても、なかなかそれをそのまま受けとめてもらえない、いろいろなそういう思いもあられるようです。したがいまして、こうした感染症も含めた専門知識が要求される中で、唯一の国家資格が獣医師のみというこの事態は一日も早く改善されるべきと考えております。

 そこで、この国家資格化につきましては、五年前、参議院の予算委員会で我が党の山口代表も、獣医師の偏在是正と動物看護師の国家資格化について質問をいたしまして、当時の若林大臣から、「一定の教育レベルあるいは資格認定基準といったようなものをできるだけそろえた上で、このような動物看護師の制度化について措置、対応していきたい」という御答弁をいただいております。

 また、さらに、家畜伝染病予防法の改正の折には、二十三年三月二十二日になりますが衆議院、参議院両方の附帯決議におきまして、やはり、「(動物看護師など)の制度化について検討すること。」という附帯決議も盛り込まれ、また、動物愛護管理法改正の、これは衆議院の環境委員会の決議というところでございますが、ここにつきましても、やはり同様の決議がなされたところでございます。

 こういう背景を考えまして、今農水省がどのように取り組まれているのか、現状につきましてお伺いいたします。

藤本政府参考人 お答えを申し上げます。

 動物看護職でございますが、獣医療の分野におきまして、獣医師を補助して、診療施設における飼育動物の世話や保健衛生の指導などを担っております。多くの小動物診療施設において雇用されているというふうに承知をしているところでございます。

 動物看護職は、いろいろなところで、動物看護師という名前であったり、アニマルヘルステクニシャンという名前で呼ばれていらっしゃるようでございますが、現在、大学や専修学校、動物病院などで教育や養成が行われているというふうに承知をしてございます。また、獣医師の団体や民間の教育機関等が独自のプログラムに基づいて、その資格を認定しているというふうに承知をしているところでございます。

 これらの団体や機関のうち、一般社団法人でございますが、日本小動物獣医師会などの主要な五団体では、この資格を統一するというために、まずは動物看護に関する知識や技術の水準を高位平準化することが重要として、教育レベルの平準化や、これを踏まえた資格認定の手法を検討されてきたというふうに承知をしております。こうした検討を受けて、平成二十三年九月に、日本獣医師会等が中心となって動物看護師統一認定機構が設立され、ことし二月及び三月に第一回の動物看護師統一認定試験が実施されたというふうに承知をしてございます。

 農林水産省といたしましては、こうした民間団体の動き、こういった取り組みを注視いたしまして、これからどのような対応が適切かということについて考えてまいりたいというふうに考えているところでございます。

高木(美)分科員 恐らく今回初めて行われた統一認定機構の試験におきましても、約六千四百人の方が受験されておりまして、そのうち合格が五千二百九名、合格率が八五%、そのうち、新卒が七五%で、既卒、既にそうした仕事に従事していらっしゃる方が九二%、しかも、女性が全体の四分の三であったというふうに結果を伺っております。いわば意欲ある若者たちが六千四百人も受験をされているというのは、私は大変すばらしいことと思っておりまして、こうした意欲ある若者の雇用の確保と適正な処遇のためにも、国家資格化は必要であるというふうに考えております。

 この適正な処遇ということも、先ほど、アルバイトのようにみなされるという声もあったと申し上げましたが、そのように国家資格がきちんと手元にあれば、当然、それに見合った技術レベルも必要ですので、先ほど御答弁いただきました高位平準化、これが不可欠であると思っております。

 いずれにしましても、そうした知識また技能をきちんと確保して補助に当たる、このような資格が明確にありますと、またそれが国家資格という高いレベルではっきりとありますと、若者がこうした産業に従事しやすい、また、しかも、そこで低い処遇ではなく適正な処遇を受けられるというふうに思っております。

 今、とかく、保育士また介護士がそうですが、若者が担ってくれる、そういう職場が処遇が低過ぎるのではないか、私は、もっとそこを国としても応援していかなければならないのではないかと考えている一人でございます。若者の雇用のためにも国家資格化が必要であると思いますが、いかがでしょうか。

藤本政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたとおり、動物の看護職につきましては、現在、動物看護師の統一認定機構において、教育カリキュラムの検討が進められておりますとともに、同機構によります初めての統一的な認定試験である動物看護師統一認定試験が先般実施されたばかりという段階でございます。

 農林水産省としては、まずは、このような取り組みを通した動物看護職の知識、技術の高位平準化を確実に実現するということが必要と考えているところでございます。

 この資格につきましてでございますが、こういう知識、技術の高位平準化に向けた取り組み状況とその成果を踏まえさせていただいた上で、獣医療現場における動物看護師の資格に対するニーズがどの程度あるかということについても考慮しながら、関係者でございます獣医師また動物看護職などの関係団体、そういったところの御意見も聞きつつ、資格認定の必要性、それからどのような仕組みが適切であるかということについて、検討してまいりたいというふうに考えております。

高木(美)分科員 高位平準化のために、農水省がどのように取り組んでいらっしゃるのか。

 これから相談するという藤本局長の答弁でございますが、獣医師さんから見れば、今いらっしゃる看護師さんがそのまま動物看護師という国家資格になっていくのは、やはり技術がばらばらだから、そのままは困ると。やはり何らかの形で、そこはちゃんと研修するなり、今後の方策も考えてもらいたい。

 また一方、飼い主さんから見れば、また家畜を飼っていらっしゃる農家から見れば、やはり、そうした資格がはっきりあって技術的にも担保されている、その方が安全、安心にもつながりますし、信頼関係も構築しやすいという、両方の御要望があるようでございます。

 農水省、どのように今後具体策を展開されるんでしょうか。

長島大臣政務官 高木先生、私の方からお答えをさせていただきたいと思います。

 先生が福島原発発災以来大変御尽力いただいておりまして、私も復興特で随分聞かせていただきましたし、本当に御苦労さまでございます。

 私も、かつて、私どもの災害のときに、千二百頭、牛をヘリコプターで空輸をした経験から、やはり動物の命に向き合う、家族に向き合う覚悟がなければなかなか守り切れるものではないということは、先生と同じ思いであるというふうに思っております。

 今ほど先生から御指摘をいただいた動物看護職の業務内容等の調査でございますけれども、先ほど来お答えをさせていただいております、学歴等の把握に努めておりますけれども、動物看護職を育成する機関としては、四年制大学あるいは専修学校等、さまざまな機関があると承知をしておりまして、業務を行う者、動物看護職、機関によっても考え方が異なっており、全ての機関における動物看護職の教育、養成の状況を把握することは困難であることをまず御理解いただいた上で、動物看護職の教育レベルを高位平準化させることのために、動物看護職の教育機関における教育内容等の把握について、文部科学省とも相談をしながら進めてまいる所存でございますので、ぜひ御理解を賜りたいと思います。

高木(美)分科員 やはり、まず教育の高位平準化を進めることも大事ではないかと思います。今御答弁いただきました動物看護職の養成を実施している大学、専門学校、また、中には無認可の学校もあるようでございます。そこにおける教育の状況につきまして、農水省さんと、それから文科省と、また必要があれば環境省等が連携をしていただき、まず実態調査を行うべきではないかと思います。これは、文科省だけですと、どうしても大学と専門学校だけになってしまいますので、幅広く、ぜひともこの実態調査をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

長島大臣政務官 先生御指摘のとおり、まず実態を調査して、無認可のことも含めて、きちんと、どういった環境で教育をして、看護職としての適正が保たれるか、そして一方では、統一試験が実施をされた、その試験のありよう、そして、そのことの中で、どういった認定をされていくのかも含めて、基準を定めてまいりたいと思います。

高木(美)分科員 既にこの調査を始めるということになってはいるようなんですが、実は、日本動物看護職協会というのがありまして、その太田会長からお話を伺ったところによりますと、調査費が三十万円と聞いておりまして、これは、今、大学、専門学校等でも百二十四ぐらいある、三十万円だとアンケート調査しかできないじゃないか。本来であれば、大学まで行っていただいて、カリキュラムから何から、また学生に直接会っていただければ、その大学の勉強レベルも学力レベルもわかろうというものでございまして、三十万円ではなく、もう少し、大臣、私は桁が一桁違うんじゃないかと思っております。

 例えば、厚生労働の科学研究費と言われるものですが、それでも普通は三百万ちょっとはあると思いますが、大臣、いかがでしょうか。

林国務大臣 今の三十万円の予算というのは、動物看護師統一認定機構、ここがやっていらっしゃるものを補助する、こういうことでありまして、もうちょっとあってもいいんじゃないかなと今御指摘いただいたところで、なるほど、三十万円ではなかなかできることも限定されるかなという感じもいたしますが、まずは教育カリキュラムの検討を進めるということと、それから、全国統一試験の実施と資格認定の統一化、これをやってもらうということで、ことしの二月、三月に統一試験が既に実施されておる、こういうことをお伺いしておるところでございます。

 我が省といたしましては、この教育や業務の実態に関する調査等に対する支援にとどまらずに、適切な獣医療を確保する観点から、こういうような民間団体の取り組みに対して、例えばカリキュラムの内容、こういうものに関する助言を行うということもあわせてやっていくことによりまして、動物看護職の知識、技術の高位平準化、これが目標でございますから、こういうものにしっかりと貢献をしていきたい、こういうふうに考えておるところでございます。

高木(美)分科員 それでは、文科省の取り組みにつきましてお伺いをいたします。

山野政府参考人 お答え申し上げます。

 今議論になっていますところの動物看護に関する人材育成というものにつきましては、現在のところ、七つの大学、あと五十七の専門学校において人材育成が行われてございます。

 今議論がありましたように、では、その教育がどのような状況になっているかということにつきましては、文科省といたしましても、農水省ほかと協力しながら、そういう把握についてどうやって取り組んでいくかということについて検討してみたいと思います。

 また、るる議論になっています動物看護師の高位平準化ということの重要性につきましては、まさに文科省も全く同じで、動物の命を扱う職でございますから、きちんとした教育の質が重要だということは全く共感するところでございます。

 そういう観点から、一つだけ最近の取り組みを言いますと、平成二十一年になりますが、一つの学校法人のヤマザキ学園というものが設置しております動物看護学部を有しておる短期大学があったんですが、そこが四年制の大学にしたいという申請があって、そういうところを認可したような経緯もございます。

 そういうことで、各大学とか専門学校において教育の質を高めるというような取り組みにつきましては、文科省としましても、いろいろな支援をしていきたいというふうに考えてございます。

高木(美)分科員 それでは、大臣、くれぐれも調査費をもう少し増額していただきまして、やはりこれが一番ベースになる大事なところでございます。卒業生がどうなっているのか、そういうことも含めまして、現状の調査が、適正なものができますように、後押しをぜひともお願い申し上げました。うなずいていただきました。ありがとうございます。

 続きまして、獣医師不足ということがずっと言われてまいりました。その現状と対策につきまして、お伺いをいたします。

長島大臣政務官 私の方からお答えをさせていただきます。

 現在、全国で三万五千人の獣医師がおります。牛や豚等の産業動物の診療に当たっている、いわゆる産業動物獣医師が約四千五百人、そして、犬猫等の診療に当たっている、いわゆる小動物獣医師は一万三千人でございます。

 従来、新たに獣医師になる者の中では、小動物診療分野に就業する割合が非常に高かったのでありますけれども、近年は、産業動物獣医師として都道府県や農協等に採用される者が増加をしております。一方では、産業動物獣医師の確保に苦労されている地域もあるというふうに承知をしております。

 農林水産省としても、都道府県で計画的な産業動物獣医師の確保対策などをやっていただいておりますが、このような取り組みを支援するため、獣医系大学の学生に対する修学資金の給付、月額十万円から十二万円、獣医系大学の学生に対する産業動物診療の現場での実習研修の実施の支援、診療獣医師に対する臨床研修等を実施しているところでございます。

 獣医師の数、そして、産業獣医師というところが少し少ないことも踏まえて、地域的な偏在も含めて、農水省としては、検討を進めてまいるつもりでございます。

高木(美)分科員 ありがとうございます。

 私も今、全くそのことを実は確認させていただこうと思っておりまして、とかく獣医師が不足となりますと、ではもう少し大学をつくってとか学部をふやしてとか、そういう傾向が強いのですが、今、弁護士さん、そしてまた、それぞれ、いわゆる士業の方たちも、規制緩和によりまして相当人がふえたことにより、結局は、その方たちの就職すら危ぶまれる、そんな事態が生まれております。

 私は、獣医師の方たちにつきましては、総枠をふやすというよりも、むしろ、地方に偏在している、この遍在につきまして具体的にどのように対応されるのか、そこが大事なのではないかと思っております。

 当然、細かく分析して対応を考えていただかなければなりませんが、今お考えのことがもし何かありましたら、重ねての答弁を求めます。

長島大臣政務官 高木先生から御指摘のとおりでありまして、獣医師の数そのものというよりも、偏在をしているという状況を解消することの方が急務ではないかというふうに農水省も捉えております。

 この問題の背景には、学生の就職に対する考え方等があるんじゃないかなと思っておりますし、学生や就業先など、関係者の意見を伺いながら、農水省としてどういったことができるのか。我々のところも、実は、畜産が過密であったり過疎であったりするかによって、獣医師さんが居つく、居つかないという状況も抱えておりますので、そんなことも踏まえて検討をしてまいりたいと思っております。

高木(美)分科員 とかく、産業獣医師の方たちは相当な重労働であられまして、長島政務官におかれましても、それは一番、お地元でよく御承知のとおりかと思います。昼もなく夜もなく、呼ばれればいつでも出かけていく。吹雪の中も雨の中も、そういうお話もよく伺っておりまして、また、少しずつそこに女性の参画も進んでいるとも伺っております。

 いずれにしても、先ほど申し上げたように、補助者もいない、一人で手術の準備から後片づけから全部やらなければいけない、こういう過酷な労働環境をどのように改善していくのか。総合的な対策が私は必要であろうかと思っております。

 先ほどの動物看護職の国家資格化とあわせまして、このような産業獣医師の方たちの環境をどのように整備していくか、そこにつきまして、今後のさらなる取り組みを求めたいと思っております。

 それでは最後に、これにつきましての大臣の御決意を伺って、終わりにさせていただきたいと思います。

林国務大臣 この分野、委員からは、きょう、非常に詳しくやりとりしていただきまして、私も認識をさらに深めたところでございまして、大変大事な分野がなかなか政策の手当てが十分になっていないというような傾向があってはならないなと思ったところでございます。

 今お話がありましたように、地方でいろいろ偏在がある。マクロで全体的に足りないというところと、それから偏在のところ、都道府県等ともよく連携しながら、しっかりと産業動物獣医師の確保もやらなければいけませんし、そういうことを通じて、全体的に、冒頭申し上げましたように、大切な家畜として、それからもう一つは、コンパニオンアニマルとしての動物をきちっと見ていきたい、こういうふうに思っておるところでございます。

高木(美)分科員 時間になりましたので、終わります。

 ありがとうございました。

西銘主査 これにて高木美智代君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

西銘主査 環境省所管について、前回に引き続き質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。菅家一郎君。

菅家分科員 福島県会津から選出されました、自民党の菅家一郎でございます。質問の機会を与えていただきまして、心から御礼を申し上げたいと存じます。

 三月十一日の時点では会津若松の市長を務めておりまして、原発事故で多くの方が避難を余儀なくされたわけですが、会津地方は極めて放射線量も低かったものですから、大勢の方が避難をされてこられまして、受け入れに力を入れてまいりました。今でも大熊の方々、約四千人ほどが本市に避難をされておられるわけでございます。

 そういった意味で、そのときの経験を織りまぜながら、そして、大熊の方々、避難をされている方にとっても、戻りたいという思いもありますし、原発の収束状況も一番関心がおありでしょうから、そういった視点で何点か御質問を申し上げたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 まず初めに、東京電力福島第一原子力発電所における、仮設配電盤にネズミが原因と見られる停電や、冷却系が停止した事故、地下貯水槽からの汚染水の漏えい問題、これは、東京電力の安全対策や国の対応がいかにずさんであるかということが明らかになった、こんな感じがしておるわけであり、国民や原発事故被災県である多くの福島県民の一日も早い原子力発電所事故収束の願いを裏切るような結果になった、このように思います。

 二度と繰り返さない、一日も早く原発事故を収束させる観点から、以下について何点か御質問を申し上げたいと思います。

 まず、国の対応についてでありますけれども、この汚染水漏えい事故の報告というのは、東京電力から国の方に、どういう、いつごろに、最初はどこの所管に伝わっていくのか、この辺についてお示しをいただきたいと思います。

    〔主査退席、今村(雅)主査代理着席〕

田中政府特別補佐人 田中でございます。

 お答えします。

 東京電力は、特定原子力施設として、トラブルとか事故が起こりましたら直ちに私どもの方に連絡が入りまして、入りましたらすぐに官邸ほか国の方の関係機関に御連絡いたしますように、ほぼ自動的にそういった仕組みができております。

菅家分科員 四月五日ですか、金曜日、二号地下貯水槽からの汚染水の漏えいを発見して、東京電力が汚染水漏れについて初めて記者会見を行ったわけであります。四月七日には、原子力規制委員長指示として、原子力規制庁から東電へ指示がなされているわけでございます。委員長が現地を視察され、現場検証されたのは四月十三日と報道されているわけであります。

 私としては、これからも、何か有事の際に、東電と規制庁、委員長さん、おられるわけですけれども、こういう事故の報告があった現場の確認、そちらの現場に早急に行って、しっかりと確認をされ、そういったものから規制庁、規制委員会としてしっかりと間違いのない判断をもって指示をするというようなことも必要なのではないかな、これからのことも踏まえて。

 規制委員会として、四月五日以降速やかに現場を検証して、事故状況を確認して、速やかにそして適切に指示をすべきではないのかな、このように考えるわけですが、今後のことも含めた見解をお示しいただきたいと思います。

田中政府特別補佐人 お答えします。

 現場の確認につきましては、常時、現地に私どもの規制庁の職員がおりまして、ほぼ毎日、現場に出向いております。何かありましたら、直ちにそこに出向いて確認するということでございます。

 今回相次ぎましたトラブルについては、特に住民の方に大変な御心配をかけたということについては、私どももひとしく反省しているところでありまして、その確認作業につきまして、とりあえず今一人ふやさせていただきまして、来月にはもう一人ふやすということで、そういった体制を整えようということでございます。

 実際に、一昨日、私も現地を視察させていただきまして、やはり福島第一の状況というのは、まだまだ不安定な状況であるというのを改めて確認いたしました。

 それで、広瀬社長以下おられましたので、今後、いろいろな安全上の心配、いろいろな作業をやっていく上でいろいろな課題があるでしょう、それを全て洗いざらい出していただいて、それをよく、安全の面から私どももきちっと点検させていただいて、こういったことをできるだけ少なくする、全部なくすというわけにはなかなかいかないかもしれないけれども、それを少なくする方向で努力しましょうということでございます。

 政府の方としましては、一応、今まで規制という立場なので、事業者とエネルギー庁の方が中心になって廃止措置を進めてまいりましたけれども、それにつきましては、私どもも技術的な面からきちっと協力をさせていただくという形をとることにさせていただいて、今、審議官級の会合は一回持ちまして、間もなく、私も参加するような、廃止措置会議にも参加するという形で進めたいと思っております。

菅家分科員 ぜひ、規制委員会としての役割、期待しておりますので、しっかりお願いしたいと思います。

 次に、監視体制についてなんですけれども、やはり心配なのは原因ですね。この漏えいの原因だとか、四月五日に発見されたというんですけれども、モニタリング等もやられていらっしゃると思うので、それ以前はなかったのかどうかもこれは不安要因でありますが、今まではなかった、五日に発見されたんだけれども、その前からも漏れていたのかどうか、この辺もちょっと心配なので、確認されておられるかどうか。

 この点と、当然、安全対策、これは重要でありますから、今まで、地下貯水槽の設計、施工、これのあり方といいますか、安全管理上、国の対応としてどうだったのか、非常に心配な点かなと思うんですね。地下貯水槽設置に当たりまして、今までの国の対応はどうだったのか、この辺についてお示しをいただきたいと思います。

田中政府特別補佐人 今御指摘がありました、御心配されております放射能の漏えいですけれども、いつから起こったかということは必ずしも今確認されておりませんけれども、一応、今回の貯水槽の下の方にはモニター装置がありまして、それで少し漏れているのではないかということが確認されたのが四月五日でございます。

 その後ずっと、継続的に測定回数をふやして確認させていただいておりまして、特に地下水を通って海に流れ出すのが心配でございますので、それについては、今でもあります、七本ほどのモニタリングの縦穴がありまして、そこで確認しております。さらに、今回漏れたところの周りに三十カ所ほど穴を掘りまして、継続的にその動きを監視していくということでございます。今までのところ、その外の方に漏れたという測定結果は私の方には届いておりません。

 それから、どうしてこういう漏れるようなものをつくったのかということでございますが、旧原子力安全・保安院時代に緊急の対策としてこういったことを認めたというふうに承知しております。一応、水張りテストとか、いろいろな確認試験はやりましたけれども、結果的に、残念ながら、不十分な施工であったということで、これにつきましては、しっかりした排水タンクの方に移していくということ、今そういう措置をとるということを確認させていただいているところでございます。

菅家分科員 問題は、今後タンクに移送するということでありますので、このタンクも、今ほどの緊急的なものでやるということではなくて、今度は、このタンクも漏れると大変な問題になりますから、万全な安全対策を講じてタンクを設置して、そこに移すわけですね。これらについて、現時点で東電と協議といいますか対策を講じられていると思うんですが、きちっとお願いしたいということで確認してみたいと思うんですが、いかがでしょうか。

田中政府特別補佐人 実は、福島第一原子力発電所の廃止措置では、いわゆる冷却水等から出てきます排水の措置のほかに、これから廃止措置を進めるに当たってはいろいろな排水が出てまいります。これをどういうふうにコントロールするかというのが非常に大きな問題でありまして、今御指摘のタンクにしても、やや仮設的なところがございまして、先ほどの地下プールよりはしっかりできていますけれども、何十年ももつというようなものでもございませんので、そういった点検も含めまして、一昨日は、東京電力の方に、全てそういったことを含めまして、全体計画をもう一回きちっと見直した上で、どういったところに問題があるのかを明らかにして、それを含めて、政府も一体となってその解決に努力しましょうということを申し上げてきたところでございます。

菅家分科員 大変不安なんですけれども、二度とないようにひとつお願いしたいと思います。

 問題は、もう一つは、毎日四百トンですか、発生する地下水の処理ですね。これは、オーバーフローするわけにいかないし、海や地下汚染は絶対避けなければならないわけでありますから、ここが僕は非常に深刻な問題かなと思うんですね。今のような仮設的な受け入れもあるし、どんどん、毎日四百トン出るわけですから。ここは、現時点でどのように東電と協議をして方針を出されているのか、お示しいただきたいと思います。

中西政府参考人 お答え申し上げます。

 日々発生いたしております約四百トンの貯留水でございますけれども、そちらにつきましては、今後、地下貯槽ではなく鋼鉄製の地上のタンクにためるというようなことで準備を進めているところでございまして、その準備もできるだけ前倒しをさせるというふうなことで電気事業者を指導しているというところでございまして、ことしの九月末には四十五万立米のタンクの容量、さらには二十七年の中ごろには七十万立米のタンクの設置というようなことを現在進めているところでございます。

菅家分科員 これはかなり深刻で、これからの議論にはなるんでしょうけれども、四百トンの地下水が流入している、これを何とかとめる方法だとか、でないと、どんどんどんどんタンクがふえ続けてしまうというような課題もありますから、抜本的な解決を踏まえながら、東電とぜひ協議をしていただきたい。そして、四百トンはしっかりと安全に保管管理するということが望ましいわけでありますから、しっかりとお願いしたいと思っております。

 やはり基本的なのは、原子炉の被害状況が深刻だと当然考えているわけですけれども、事故から二年間以上経過しても、いまだに状況確認がなされていないという点があるわけですね。放射線量が高くてなかなか確認できないという、それもわからないわけじゃないんですけれども、そこがはっきりしないと、今後どのような問題になってくるのかがわからない。早急に、格納容器の損傷とかメルトダウンの状況とか、原子炉の地下水汚染など、まさに原発事故の現状を徹底的に調査をして解明していかないといけないのではないか、このように思うわけでありますが、この点についての御認識とか対応を示していただきたいと思います。

中西政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、福島第一原子力発電所の一号機から三号機、原子炉の温度が大体十五度から四十度といった形で、低温で安定して推移しているというふうに認識をしております。また、溶けました燃料の状況把握というところまでは至っておりませんけれども、原子炉の中にイメージスコープなどを挿入いたしまして、原子炉の中の温度、水位、線量等を継続的に監視いたしておるところでございます。

菅家分科員 国会には国会事故調などがつくられて、第三者的な観点から原因究明といいますか調査をしてきた、そして事故調からの報告もあるわけですが、事故調から、国会による継続監視が必要な事項が出されているわけで、今後もそういうような機関で徹底した究明も必要かなというふうに思うのであります。

 国会の問題ですから我々ですけれども、そういうような機関を持ってしっかりと確認すべきかなと思うんですが、その辺の御所見をいただければと思うんです。

田中政府特別補佐人 国会事故調の件に関しましては、今後どうされるかということについては、私が申し上げる立場にはありませんけれども、原子力規制委員会の一つの大きな役割として、今回の事故の解明を科学的、技術的にきちっとやるということになっておりまして、今、専門家の選定が終わりまして、ようやくそれに着手したところでございます。

 それで、先生御指摘のように、例えば一号機の五階にありますいわゆるIC、そういう冷却装置につきましても、ちょっと行ってくるだけでしたら数ミリシーベルトの被曝で済むんですが、きちっとした調査をしようと思うと、配管の状況とか何かを調べなきゃいけないということで、やはり数十ミリシーベルトぐらいの被曝量になるということですので、そういった状況をよく勘案しながら、今後、きちっとした調査を進めていきたいと考えております。

 もちろん、今回の新しい基準に関しましては、そういったことをある程度予測しまして、十分対応できるような対応をさせていただいておりますことを念のためつけ加えさせていただきます。

菅家分科員 先ほど申し上げましたように、今、会津若松には四千人を超える方が避難をされているわけで、避難地域の解除とか帰還とか、いろいろ計画をされているわけですけれども、それは、環境放射線量が除染によって安全な状況になるとともに、やはり原発事故の収束、安全だ、安定しているということが大前提になるわけですけれども、このたびの汚染水漏えい問題、これらの状況を見ますと、非常に不安という感じがするわけです。

 格納容器、原子炉の現状も確認できない状況だということなので、今後、これらを踏まえながら、今までのような計画で進むのか、やはりこの辺をしっかりとして、しかるべき時期に判断するのか、それもどうしていいかわからない。今避難をされている方が戻れるのか、戻れないのか、中途半端な状態なんですね。

 これは、今もつらく厳しい生活を余儀なくされている方の将来の方針を示すためにも、所管を超えながら、何らかの国としての判断が求められるのではないか、このように思いますが、この点についてお示しをいただきたいと思います。

伊藤(仁)政府参考人 お答えいたします。

 原発に近接いたします自治体については、放射線量が高いということ、また、現時点におきまして、具体的な帰還のスケジュール、見通しを立てることは非常に困難な状況というふうに認識しておりまして、残念ながら、長期にわたって避難を余儀なくされることになるというふうに考えております。

 このため、こうした長期の避難を余儀なくされる方々の安定した居住環境を確保するという観点から、現在、生活拠点、いわゆる町外コミュニティーの整備に向けて、県や関係自治体とともに具体的な協議を行っているところであります。また、二十五年度の予算案において、生活拠点形成交付金を盛り込んで、対応をするべく準備をしているところでございます。

 また、住民の方々に対しまして、国と自治体、県と一緒になりまして意向調査をいたしましても、やはり原発に近接する自治体の住民の多くの方々が、帰還に当たっての条件として、放射線量の低下に加えて、原子力発電所の安全性の確保という点を非常に重視しているということも把握しております。

 いずれにいたしましても、近接いたします自治体の将来の帰還については、御指摘のような、福島第一の中の作業の状況とか放射線量の低減の状況などを十分踏まえる必要があると考えておりまして、地元自治体の意向も十分踏まえて、丁寧に対応していきたいというふうに考えているところでございます。

菅家分科員 私は、もはや東電任せというのが非常に限界に来ているのではないか、このように感じております。現地では大分疲労しているという話もあって、このままでは本当に福島県も日本も大変なダメージを受けてしまうのではないか。

 ですから、国のプロジェクトとして、財源も含めて、東電と連携して、一日も早く汚染水対策とか原発事故の早期収束に取り組むべきであると考えるわけです。そして、広く世界の英知を結集する、技術力も結集して早期収束に取り組むべきだ、このように考えるわけでありますが、この点について、御所見を賜りたいと思います。

中西政府参考人 お答え申し上げます。

 福島の復興をしっかりと進める上でも、やはり福島第一原子力発電所の廃炉の問題への加速化が必要であるというふうに我々は認識をしておりますので、そういった観点から、安全に万全を期しながら、一日も早く廃炉を完了できるよう、経済産業省としても、前面に立って取り組んでいきたいというふうに考えております。

 このような観点から、三月に、経済産業大臣が議長を務めます廃炉対策推進会議を設けておりますし、今般の汚染水問題につきましても、その下に汚染水処理対策委員会を設置するといった形で、国が前面に立って進めていきたいというふうに考えております。

 もう一つ、廃炉につきましては、これまでに類のないような困難を伴うということでございますので、国内外の英知をうまく使って対応していきたいと考えておりまして、その一環といたしまして、本日からでございますけれども、IAEA及び各国の専門家から成る国際的なレビューミッションが来ております。そういったものを通じまして、積極的に内外の英知を使いながら、廃炉を積極的に進めていきたいと思っております。

菅家分科員 どうかひとつ、国の役割、責任をしっかりと果たしながら、お願いしたいと思います。

 三・一一のときに、私も受け入れをしてきまして、観光客の方も帰れなくなっていたり、あるいは燃料も枯渇して、緊急車両とかそういった車両の給油もままならない、こういう状況に置かれたわけですが、実は、平成十六年十月二十三日の新潟県中越地震、今回の平成二十三年三月十一日の東日本大震災においても、磐越自動車道は有効に活用できたんですね。

 新潟の長岡市長から給水車の要請が市にありまして、当日、給水車を新潟長岡に派遣して、次の日には給水活動を実施してきた。これは磐越道を使っている。東日本の震災でも。つまり、高速道路というのは管理できますからね。ですから、緊急車両、救急車両の給油とか救援物資の搬送、これは大変な貢献につながったと私は思っているんです。

 ですから、やはりこういった成果があるものですから、この震災に対する貢献というものを視野に入れながら、磐越道というのはまだ暫定なんですね、日本海と太平洋を結ぶ高速道路なんですけれども。今回、つくづく、こういった道路の貢献というのを肌で感じたんですね。

 そういった意味で、やはり、四車線化を目指しながら整備促進にぜひ対応していただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

赤澤大臣政務官 御通告があった二問を一度にお尋ねになったような感じがいたしますが、あわせてお答えをいたしましょうか。

 全く委員御指摘のとおりでございます。

 東日本大震災において、被災によって利用が制限された太平洋側の高速道路の代替として、日本海側の幹線道路網や磐越道などの横断方向の幹線道路網が物資の輸送ルートとして大変大きな機能を果たした。災害時に道路ネットワークが果たす役割が再認識をされたと思っています。

 そして、東日本大震災の教訓ということであれば、防災、減災のために道路を整備しておくことの意味はやはり極めて大きいということで、さらに細かく申し上げれば、当たり前といえば当たり前なんですけれども、高速道路はつながって初めて機能をする、いわゆるミッシングリンクのミスしている状態では本当に役に立たないということ。さらには、つながっていても、一本しかない場合には、寸断したような場合にやはり代替路が要るということで、災害時のリダンダンシーとしての選択肢も確保しなければ、これらのことが本当に大きな教訓だったと思います。

 なので、委員の御指摘もいただいて、防災、減災、あるいは命を守る公共事業といった観点で、道路ネットワークの強化になお一層取り組んでいきたいというふうに思っております。

 その上で、二番目の、御通告にあった、磐越自動車道の四車線化ということでございます。

 高速道路の暫定二車線区間については、円滑で安全に高速走行する上で課題がありますので、渋滞や事故の発生状況などを確認しながら、これまでも重要な課題として四車線化を進めてきております。

 そして、東日本大震災において、復旧工事による交通規制や、復旧復興のための交通量増加による被災地への復旧復興の物資輸送におくれが出るなど、課題も生じたところでございます。

 そこで、委員が日ごろから御熱意を示されている、お尋ねの磐越自動車道の四車線化につきましても、利用交通量の状況や、厳しい気象条件のもとでの道路の維持管理などを含む交通安全の確保の観点なども踏まえて、今後検討してまいりたいと思っております。

菅家分科員 ぜひひとつ、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 最後になりますが、受け入れをしていたときに、実は民間会社、具体的に申し上げますとNTTとか郵便局等の職員が、要請があっても外に出られない、水素爆発の後ですね。しかし、市の対策本部には何ら情報が入ってこなかった。昔、子供のころに、学校から、雨が降ると放射能の雨が降るから、表に出るななんという報道がなされた。今回は一切そういう情報が流れてこなかったんですね。

 それから、SPEEDIの活用も含めて、今後やはり、有事のときの国民を守るための情報をきちっと伝えていく、雨に当たるなとか、表に出るなとか、どこどこに逃げろとか、少なくともそういった情報をしっかりと伝えてほしいし、指揮命令系統の一本化、環境省の大臣もおられるし、規制庁の委員長もおられますが、一体どこが指揮命令系統として流れて、どこに情報が入って共有するのか、これもしっかりと制度的に確立しておいて対応していただきたいと思います。

 以上、御質問を申し上げて終わります。

今村(雅)主査代理 答弁はよろしいですか。(菅家分科員「お願いします」と呼ぶ)

 では、原子力規制委員会田中委員長。答弁は簡潔にお願いします。

田中政府特別補佐人 国の災害対策本部の中に、原子力事故の場合はそういった対策本部ができまして、私もその一員として入りまして、そこに情報が集まりまして、そこであらゆる判断をさせていただくというふうな仕組みになっております。

石原国務大臣 一元化して、防災担当でございますので。

 委員の御指摘のとおり、また、SPEEDIが有効に使われなかったということは、私も野党時代、歯がゆい思いをしておりましたので、以後、こういうことのないようにさせていただきたいと考えております。

菅家分科員 ひとつ早期収束に御尽力されますようお願いを申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

今村(雅)主査代理 これにて菅家一郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、中野洋昌君。

中野分科員 公明党の中野洋昌でございます。

 私は、兵庫県の第八区尼崎市におきまして、昨年の総選挙で初当選をさせていただきました。どうかよろしくお願いをいたします。

 早速でございますが、まず、国道四十三号線の大気汚染問題について御質問をさせていただきます。

 私の地元の兵庫県尼崎市におきましては、東西を走るルートとして国道四十三号線、そしてその上には阪神高速の神戸線が走っておりまして、大気汚染また騒音というものが大きな問題となってまいりました。公害訴訟も起こりまして、尼崎の公害の訴訟では、平成十二年に原告団と国そして当時の阪神高速道路公団が和解をいたしまして、以降、さまざまな対策が進んできております。これに関連して、幾つか質問をさせていただきます。

 まず、一つ目でございますけれども、国道四十三号線の沿線、特に尼崎の市域における大気汚染の現状というものがどうなっているのか、これを環境省にお尋ねしたいと思います。

小林(正)政府参考人 お尋ねの尼崎市域の大気汚染の状況でございますが、国道四十三号沿線地域に自動車排出ガス測定局として武庫川測定局を設置し、測定をしております。

 平成二十二年度の測定結果では、二酸化窒素及び浮遊粒子状物質において環境基準以下となっております。経年的な変化を見ましても、例えば二酸化窒素では、平成十四年度に〇・〇六六ppm、十八年度に〇・〇六三ppm、これが二十二年度には〇・〇五二ppmということで、減少傾向でございます。

 そういう意味で、尼崎市域における国道四十三号沿線の大気環境は改善の傾向にあるというように認識しております。

中野分科員 先ほど御答弁をいただきました。国道四十三号線沿線の大気汚染の状況は改善傾向にある、こういうお話でございます。

 しかし、実際に四十三号線の付近を私はよく通らせていただきますし、またいろいろなところを回らせていただきますけれども、排気ガスの現状、近隣にお住まいの方にお話を伺うと、大変すさまじいものがあるという状況でございます。私は、四十三号線の大気汚染の状況はまだまだやはり改善する必要があるのではないか、こういう思いでございます。

 しかし、そのためにはさまざまな対策が必要でございますが、私は、四十三号線を走っている交通量というものをやはりいろいろなところにもっともっと分散させていかないといけないのではないか、こういうことが必要であるというふうに考えております。

 そこで、関連した質問でございますけれども、この四十三号線の下に阪神高速の湾岸線というものがございます。ここに尼崎の末広インターというインターがございまして、その次に東海岸インターというものがございます。この二つのインターの間はわずか八百メートル程度と非常に距離の短い区間でございます。

 ここは平成二十四年から阪神高速の新しい料金制度が導入をされまして、今まで普通車の運賃というのは二百円で済んでおったんですけれども五百円に値上がりをした。そうしますと、このわずか一キロ未満の非常に短いところが五百円になりましたもので、ここを通らなくなって、ここの湾岸線というのは実は下道がございませんで迂回をする。どこを迂回するかというと、四十三号線の方に上がっていって迂回をする、こういう状況が起きております。

 私は、環境対策あるいは渋滞対策の側面からも、こうした区間の料金というのはやはり引き下げをしないといけないんじゃないか、こういう意見がございます。これについて国交省の見解を伺います。

吉田政府参考人 お答え申し上げます。

 国道四十三号、阪神高速三号神戸線の沿道環境の改善のため、平成十三年より、環境負荷の大きい大型車を対象に、湾岸線の利用料金を割り引く、いわゆる環境ロードプライシングを実施してきているところでございます。これによりまして、湾岸線を通行する大型車の割合は、導入前の三一・八%から、本年二月現在で四四・六%へと増加しております。一定の効果を発揮しているものと考えてございます。

 現在、社会資本整備審議会道路分科会国土幹線道路部会におきまして、今後の高速道路の料金制度のあり方等について検討しているところでございます。同部会における議論や地方公共団体の意見等も踏まえまして、阪神高速道路の料金体系について検討してまいりたいと考えてございます。

中野分科員 ありがとうございます。

 先ほど貨物車の環境ロードプライシングの話もしていただきました。いろいろな施策を講じる必要がございますし、今、高速道路料金制度を地元自治体も含めて検討している、こういうお話でございますので、こうした意見もしっかり聞いていただいて、また実態も調査をしていただいて、必要な対策をとっていただきたい、このように要望させていただきます。

 続きまして、この四十三号線の上を走っている阪神高速の神戸線の話でございます。この神戸線は恒常的に非常に混雑をしております。私も、神戸方面に向かうときにいつも乗りますけれども、大体渋滞に巻き込まれる、そんな状況になっております。

 この神戸線の交通量というものをやはりほかのところに誘導していかないといけないんじゃないか、私はこういう思いがございまして、例えば、その下に湾岸線が走っているものですから、こちらの方にやはり誘導していく必要があるのではないか。

 しかし、今、西宮におきまして名神高速が阪高の神戸線と合流をいたします。そこで、二つの高速道路の交通量が一気に一本になりますもので、大変に混雑をする。この神戸線と湾岸線というのは接続がされていない、こういう現状にございます。この名神高速と湾岸線をつなぐ名神湾岸連絡線という線の計画がございますけれども、これを何としても整備する必要があるのではないか、このように考えております。

 この名神湾岸連絡線につきましては、現在、計画段階評価を行う、こういう状況にあると聞いております。これを早期に実施する必要がある、このように考えますけれども、国交省の見解を伺います。

吉田政府参考人 名神湾岸連絡線は、名神高速道路の終点であります西宮インターチェンジと阪神高速五号湾岸線とを南北に直結する、延長約四キロの路線でございます。阪神高速三号神戸線の渋滞緩和や物流の効率化等に資する重要な道路と認識してございます。

 同路線は現在、計画段階評価手続に向けた検討を実施しているところでございます。具体的には、地域の課題、交通の課題、整備効果、対策案等について整理、分析を行っているところでございます。

 引き続き計画段階評価を進めるための調査を実施し、準備が整い次第、計画段階評価に着手してまいります。

中野分科員 現在、計画段階評価に向けた準備を実施しているというお話でございます。一刻も早く準備を済ませて、評価を実施する次のステップに進んでいただきたい、これを御要望させていただきます。

 さて、私は、四十三号線、また阪高湾岸線、神戸線のお話をさせていただきました。阪神間を東西に結ぶ交通路というのはさまざまございます。南から、湾岸線があり、四十三号線、そして阪高の神戸線があり、そして国道の二号線もございます。

 そして、それにもう一本、阪神間の東西を結ぶ道路として、山手幹線というものがございます。これは、現在、神戸から尼崎までの兵庫県の部分というのは開通をしておりまして、山手を走る線でございますので、防災上も非常に重要な道路である、このように考えております。

 阪神・淡路大震災の後に整備もどんどん進んでまいりまして、尼崎市の中に戸ノ内地区という工区がございまして、ここが平成十九年に供用を開始した、こういうことになっております。

 しかし、この山手幹線は、実際に私の地元でございますのでよく通るわけでございますけれども、神戸からずっとやってきて、尼崎にやってきて、そこでぶつっと完全に切れてしまっている、戸ノ内町で整備がとまっている。その先には、大阪側に向けた延伸というものもあるんですけれども、ここにまだ延伸ができていない、こういう状況でございます。

 せっかく阪神間を東西に結ぶ路線が幾つもある中で、この山手幹線を防災上も重要な幹線として神戸から尼崎まで整備してきたわけでございますから、ここでとまってしまってはやはりミッシングリンクになってしまう、私はこう思います。このミッシングリンクを解消する、大阪側へ延伸をしてつなげていくことは防災上の観点からも極めて重要である、このように考えておりますけれども、山手幹線の大阪側への延伸について、国交省にその現状、進捗状況を伺いたいと思います。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 山手幹線につながる大阪側の道路でありますが、都市計画道路三国塚口線と申しまして、この道路につきましては、大阪府と兵庫県との県境から国道百七十六号線までの延長約一・五キロメートルの都市計画道路でございます。

 このうち、大阪府において事業中の約二百二十メートルについては、来月供用する予定であります。引き続き、府道大阪池田線より東側の三百五十メートルについて、今年度、事業に着手する予定と聞いております。

 府県境から大阪池田線の間の約五百メートルについては、国土交通省、大阪府、兵庫県、豊中市及び尼崎市をメンバーとする連絡調整会議において、課題解決に向けた勉強を現在行っているところであります。

中野分科員 ありがとうございます。

 大阪側についても今徐々に進んでいるということ、また、連絡調整会議を開催しているということでございますので、引き続き、この場におきまして、今後の大阪側の区間の整備について、しっかりと検討を前に進めていっていただきたい、こういう要望をさせていただきますので、どうかよろしくお願い申し上げます。

 続きまして、ちょっと話題はかわりますけれども、動物愛護について質問をさせていただきたいというふうに思います。

 私は、日本というのは、犬猫の殺処分の数が非常に多い、このように思います。いわゆる動物愛護の観点からいうと、決して先進国ではない、動物愛護の後進国なのではないかと大変残念な思いでございます。

 近年、犬猫の殺処分の数というのはどんどん減少しておるわけでございますけれども、私は、政府としては、やはり殺処分ゼロというのを最終的な目標として目指していただきたい、そのために政策を前に進めていただきたい、このように考えております。

 これに関連する質問でございますけれども、現在、犬猫のいわゆる引き取り数の推移、また殺処分数の推移、これについてどうなっているのか、事実関係を環境省に伺います。

伊藤(哲)政府参考人 犬及び猫の引き取りにつきましては、動物愛護管理法に基づきまして、都道府県等が行っておるところでございます。

 犬の引き取り数につきましては、現在の動物愛護管理法の前身であります動物保護管理法が制定された昭和四十九年度当初は約百十八万頭、平成十六年度には約十八万頭、平成二十三年度には約七万頭となっているところでございます。殺処分数につきましては、昭和四十九年度は約百十五万頭、平成十六年度は約十六万頭、平成二十三年度は約四万頭となってございます。

 一方、猫の引き取り数につきましては、昭和四十九年度には約六万頭、平成十六年度には約二十四万頭、平成二十三年度には約十四万頭となってございます。殺処分数につきましては、昭和四十九年度は約六万頭、平成十六年度は約二十四万頭、平成二十三年度は約十三万頭となっている状況でございます。

中野分科員 ありがとうございます。

 近年におきまして、その殺処分数というのは大きく数は減ってきている、これ自体は非常に評価すべきことではあるというふうに思いますが、まだ二十万頭弱、犬猫合わせて十七、八万頭ぐらいかと思いますけれども、まだまだ多い、そんな状況でございます。

 私が一つ気になっておりますのは、犬の殺処分数の割合というのは大変に減っておりまして、猫についても減ってはいるんですけれども、その減り方の割合を見ると、犬に比べると少し少ないのかな、こういう思いもございます。

 これはなぜかというふうに考えたときに、やはり、犬に比べて野良猫は、人が餌をやったりですとか、そういう意味では非常に繁殖をしやすいのではないか、こういう思いがございます。飼い主へ啓発活動をする、これはもちろん一番大事なことでございますし、しっかりとやっていかないといけない。猫を飼う人がしっかりと一生涯責任を持つ。これは当然、前提ではございますけれども、野良猫が繁殖をしてふえないようにする取り組みが必要なのではないか、このように考えております。

 私の地元の尼崎市におきましては、平成二十四年の四月から、動物愛護基金というものを条例で設置いたしました。この基金をもちまして野良猫に対して不妊手術をする、不妊手術をして猫を放すことで繁殖を防ぐ、こういう費用などについて、市として助成を開始したところでございます。

 また、他の自治体の例を聞きましても、近年、不妊手術を行う、こうした野良猫をしっかりと世話する地域猫、こういう取り組みをしている事例も伺います。

 こうした、野良猫が繁殖しないような不妊手術をやっていく、あるいは世話をしていく、こういう対策というものを国としてもしっかり支援をしていく必要があるのではないかと考えますけれども、環境省の見解を副大臣に伺いたいと思います。

田中副大臣 中野先生の地元の尼崎市が先進的な取り組みをしておられることに大変敬意を表しておるところでございます。私の地元の川崎市でも、実は、去勢、不妊の施術について補助をしておりまして、今、野良猫の方も対象にしておりまして、年間二百万ぐらいの予算でございますけれども、執行させていただいておるところでございます。

 今御指摘ありましたように、昨年の九月に動物愛護管理法が改正されまして、現在、その趣旨を踏まえ、動物愛護管理基本指針の見直しに着手をさせていただきました。

 自治体による猫の引き取り数を削減するためには、やはり住民の合意を前提とした地域猫活動等も非常に重要だと思っております。このため、住宅密集地における犬猫の適正飼養ガイドライン等を作成いたしまして、地域猫活動を一つの有効対策として提示しておるところでございます。

 議員の御指摘のとおり、地域猫活動などを含めた猫の引き取り数の削減方策を、八月に告示を予定している基本指針に盛り込むことについても、中央環境審議会で御審議をいただいております。

 今後も自治体と協力の上、引き取り数及び殺処分の削減に努めてまいりたいと思います。すぐにというわけにはいかないと思いますが、先生の御指摘のとおり、先進国として、レベルの高い国家として、やはり幾ら野良猫でも野良犬でも殺処分をしないという方向に努力をしていかなければならない、当然だと思っております。

中野分科員 田中副大臣の大変力強いお言葉をいただきまして、ありがとうございます。

 副大臣の御地元でもこうした取り組みをされているということで、やはり自治体が先進的なところでしっかりと今やっている。やはり国としてもこういう取り組みをもっともっといろいろなところに広げていかないといけない。そして、最終的には犬猫の殺処分はゼロにする、こういう高い目標を政府としても掲げて、動物愛護の先進国に追いつけ追い越せというか、これを目指してやはりやっていかないといけない。私もしっかりとこれを応援してまいりたい、こういう決意でございますので、どうか今後ともよろしくお願い申し上げます。

 少しまた話はかわりますけれども、アスベスト対策について質問をさせていただきます。

 私の地元尼崎市にクボタの神崎工場がございまして、もちろん皆様御承知のとおり、平成十七年、ニュース、報道等でも話題になったいわゆるクボタ・ショックというものがございまして、アスベスト対策というものを行っておる、そんな状況でございます。

 しかし、このアスベストの問題は、これからさらにいろいろな問題が出てくるんじゃないか、こういう思いがいたします。アスベストを含む建物の解体工事はますます増加をしていく状況で、今後さらなる対策が必要であると考えます。

 今般、大気汚染防止法が改正をされる、こういうお話は伺っております。まずは、アスベストの飛散防止対策をしっかりやる必要もございますし、アスベストの被害というのは、関係する解体業者あるいは建設業者だけにとどまらず、尼崎で被害に遭った方の状況を見ましても、その建設業者の家族の方、例えば作業するときに使っていた服をいつも洗濯していた家族の方であるとか、あるいは、そういったマスクなどが身近にあったという子供の方、あるいは、単純にその工場の近くの地域に住まれていたという地域の方。非常に少量のアスベストであっても被害が出る場合がございます。

 そういう意味で、解体業者、建設業者だけにとどまらずに、広くこういう問題を国民一般に周知を図っていく必要があるのではないかというふうに私は考えておりますけれども、今後のアスベスト対策についての進め方、これをどうしていくのか。環境省の見解を伺いたいと思います。

小林(正)政府参考人 今先生から御指摘ございましたように、アスベスト対策はまだまだ力を入れていく必要があると考えているところでございます。

 従来、建築物の解体などに伴いますアスベスト飛散防止対策につきまして、大気汚染防止法で規制をしてきております。クボタ・ショックの後も規制強化を図ったところでございますが、今回、またさらに規制の徹底を図りたいということで、改正案を提出しているところでございます。

 具体的には、作業を行います場合の届け出者を事業者から発注者に変えるというようなこと、また事前調査を義務づける、また都道府県の立ち入り権限を拡大するなどの内容を提案しているところでございまして、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 また、今御指摘ございましたように、私どもは、今申し上げました大気汚染防止法は外への飛散の防止対策でございますが、厚生労働省の作業環境の問題、それから国交省などとも連携をいたしまして、幅広い対策が必要でございます。

 そういう中で、特にアスベストの健康影響につきましては、パンフレットあるいは環境省のホームページなどで従来も周知を図っておりますが、制度改正なども契機といたしましてさらに幅広く周知を図っていきたい、こういうふうに考えているところでございます。

中野分科員 ありがとうございました。

 アスベストの今後の対策についてお答えをいただきました。

 これについても、今後ますます力強い対策を行っていく必要があるというふうに考えますけれども、アスベストにつきましてはもう一つ問題がございまして、それは被害に遭われた方の補償の問題でございます。

 いわゆる労働者の方につきましては労災による救済の道というものがございます。しかし、そうではない方も非常にいらっしゃる。例えば、労働者の家族の方、こういう方は当然労災は適用にならない。あるいは、その地域の住民の方、あるいは働かれている方であっても一人親方のような方、いろいろな方がいらっしゃいます。労災で対応できない方のために、石綿による健康被害の救済に関する法律により石綿健康被害救済基金というものができまして、これによる救済をまさに行っている、そういう状況でございます。これについて、医療費の支援がございます。大変にありがたい、こういうお声をいただいているところでございます。

 アスベストでどういう病気になるかといいますと、例えば肺がんあるいは中皮腫、こういう病気になります。この中皮腫という病気は、かかってから早期に亡くなられる方というのも、大変残念なことに非常に多うございます。そして、残された遺族の方の生活も非常に大変だ、こういうお話も伺っております。

 労災の場合は遺族年金がございます。この基金による救済には特別遺族弔慰金の支払い、こういうものはございますけれども、年金のような形にはなっていない、これを何とかできないか、こういう御要望も出ているわけでございます。

 この基金による救済につきまして、私は、今後、やはりより手厚くしていかないといけない、こういうふうに考えておりますけれども、大臣の見解をぜひ伺いたいというふうに思います。

石原国務大臣 アスベストによりまして多くの被害を受けていらっしゃる方々には、本当に当時は、こんな先駆的なものはないということでこのアスベストが使われたという歴史をしっかりと私どもは認識してまいらなければならないと基本的には考えております。

 そんな中で、もう御承知のとおり、労災制度は、事業主がそこで働く労働者の健康被害を補償するために掛金を積んでいくという形で制度が成り立っております。これに対しまして、委員御指摘の石綿救済制度は、原因と被害の因果関係に関係なく、被害を受けられた方々を幅広く救済する仕組みとなっておりまして、その関係で、給付水準には委員御指摘のとおり違いが出ておりますが、やはり制度の生い立ちとその性格によるところが多いものであると思っております。

 そんな中で、昨年の制度改正の際にも見直しには至らなかったものと承知しておりますが、今後検討していくような課題ではないかというふうにも考えているところでございます。

中野分科員 ありがとうございます。

 なかなか、制度の壁というものもございまして一朝一夕にいく問題では必ずしもないのかもしれないですけれども、しかし、アスベストの被害というのは、実は、ああいうクボタ・ショックのような問題があって、これで終わっている、そういうわけでは全くない問題でございます。非常に潜伏期間の長い問題でございますし、建物の解体によってアスベストが大気中に出る、そのピークというのはこれからまだまだ後である。一説によると、二〇二〇年代以降、もっともっとアスベストというものが出てくる、こういうふうな予想もあるわけでございます。

 ですので、これからアスベスト対策は、私の地元尼崎市だけの問題では決してございません、全国的な課題になってくると思います。これの対策をさらに十分に講じる、また、補償の問題についても、さまざまな御意見というものをしっかり受けとめて、さらに検討を進めていっていただきたい、こう大臣に御要望申し上げるものでございますので、どうかよろしくお願い申し上げます。

 最後でございます。都市農業について質問をさせていただきたいと思います。

 近年、都市において農地の重要性というものが指摘をされておりまして、例えば、都市の住民や子供たちに対して農業体験の場を提供するんだ、あるいは災害のときにおいてオープンスペースとなるんだ、こういういろいろな役割がある、こういうお話がございます。

 しかし、現在、都市の農地におきましては、地価が大変高いものでございますから、例えば相続税の納税猶予制度、こういう仕組みがございますけれども、これの要件が大変厳しい、こんな御意見もございます。世代交代の際に営農を諦めまして宅地へと転売する、こういうケースが後を絶たない。やはり都会の中の農地というのはどんどん減少して、農業がやりにくい、こういう声が上がっているわけでございます。

 都市農業について、この重要性をどのように国として考えているのか、また今後どのように支援をされていくつもりなのか、農水省の見解を伺いたいというふうに思います。

實重政府参考人 都市農業についての御指摘でございます。

 一般的には、全国で八万四千ヘクタール存在しております、市街化区域内農地で営まれる農業のことをいいますけれども、これは新鮮な食料を都市住民に供給する役割、あるいは緑や農業体験の場を提供する役割に加えまして、近年では、委員御指摘のとおり、都市における防災空間としての役割も高まってきております。このため、例えば東京都のアンケートで見ますと、住民の八五%が都市農業や農地を存続してもらいたい、このような回答をされるなど、役割が高まっているものと認識しております。

 私ども、平成二十五年度予算におきまして、都市及びその周辺地域の農業を支援することを目的といたしまして、「農」のある暮らしづくり交付金、五億五千万円を新たに創設いたしました。これはソフト、ハードの両面から都市農業の多様なニーズに対して助成をしていくという補助事業でございます。

 委員御指摘の、相続などを契機に市街化区域内農地が減少していることにつきましては、都市計画法などの土地利用制度、あるいは税制も関連する難しい課題でありますが、国土交通省等関係省庁とも連携して、都市農業のさらなる振興に向けて検討してまいりたいと思っております。

中野分科員 ありがとうございます。

 農水省と国交省と連携をして、しっかりと対策をまた考えていただきたい、このように思いますので、どうかよろしくお願い申し上げます。

 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

今村(雅)主査代理 これにて中野洋昌君の質疑は終了いたしました。

 次に、吉田泉君。

吉田分科員 民主党の吉田泉であります。きょうは、原子力規制委員会の所管事項につきまして質問をさせていただきます。

 まずもって田中委員長、御就任以来、連日の激務が続いていると思いますが、多くの方の健康や財産が規制委員会の双肩にかかっておるわけでございますので、引き続きの御奮闘をどうぞよろしくお願いいたします。

 本題に入る前に、先ほど関係議員からも御質問あったようですが、四月五日に発覚しました東京電力福島第一発電所の汚染水漏れ事故について、簡単に二つほど確認をさせていただきます。

 委員長も、四月十三日に現地を視察されて、私、新聞で拝見しましたが、あれだけの貯水槽をビニールシートでつくるというのは普通じゃないという発言をされたと新聞で読みました。私自身も、ちょっとこの設備は余りにも安直な貯水方法ではないのかなというのが第一印象でございました。

 そこで、この三層シートによる貯水槽からの漏水の問題でございますが、規制委員会もしくはかつての保安院でありますが、この三層シートによる貯水槽方式を一応政府としては認めた、認めていたということでいいのかどうか、それを一つ確認します。

 それから、この問題への今後の対応ですが、これは短期的な対応、中期的、長期的、この三つに分けて考えざるを得ないというふうに思いますが、それぞれのあるべき対応策ということにつきまして、お考えをいただきたいと思います。

田中政府特別補佐人 委員御指摘のように、私も一昨日、現地を拝見させていただきました。思ったよりはビニールもかなり分厚いもので、しっかりとなっていたんですが、あれだけのものを、こういったやや仮設的なものでつくらざるを得なかったという当時の状況があるんだろうというふうに私は理解いたしました。

 その上で、やはり漏れるということは決して予定したわけではないでしょうけれども、漏えい検知器もきちっと入っていて、今回も幸い、漏れたというところですぐにその検知ができたということで、対応策を今とらせていただいているところでございます。

 先生御指摘のように、もう少しきちっとしたものを今後整備して、もう少し信頼のできる貯水槽をつくっていくべきものと思っています。

 それから、短期、中期、長期という問題でございますが、短期的には、現在の漏れている水を何とか安定した、いわゆる金属製の容器に移すということで、大体、その方法は具体的に手順も含めて確認させていただきましたけれども、中期、長期にわたりましては、今後、水がどういう状況で出てくるかというところ、それから、最終的には、ALPSという多核種除去装置がございまして、これが今ようやく試験運転を始めたところでございます。

 こういったものの運転状況を見ながら、将来的に水の処理をきちっと考えていく必要があるということで、広瀬社長もおいでになりましたので、その辺について、事業者としての計画をきちっと出していただいて、その上で、政府としても我々規制委員会としても必要な対策をとっていくというお話をさせていただいたところでございます。

吉田分科員 仮設的な施設でやらざるを得ない状況ということで認めたということだったんでしょう、今後はこのシート方式はちょっと考えられないということだと思いますが。

 それと、中長期について、ALPSほかの御答弁がございましたけれども、とりあえずはタンクの増設ということだと思うんですよね。今、九百個ぐらいのタンクがもう並んでいるそうですが、これが倍以上あと並べられる敷地が一応あるわけですから、いざとなったら敷地を越えてということだって考えられると思いますので、そこでがっちり恒常的な、恒久的なタンクでまず確保していただいて、そして、さらに長期的な地下水流入の問題とかALPSに取り組んでいただきたいと申し上げたいと思います。

 この問題は、ちょっと日を改めて、もう一度詳細を委員会でやらせていただきたいと思います。

 きょうの本題に入らせていただきますが、今回の三・一一以降の原発の事故のとき、私自身は政府の出先として一年半ほど福島におりました。そこで強く感じたことの、幾つかあった中の一つなんですけれども、安定沃素剤の配付ないし服用指示の問題ということできょうは取り上げてみました。

 事故の直後、原発周辺の市町村が、沃素剤を配るべきなのか、飲ませるべきなのかということで大変苦労いたしました。私も福島市におって、もう少しこの現状の仕組みを改善する必要があるなというふうに感じていた次第でございます。

 今、原子力規制委員会のもとで原子力災害対策指針というものの見直しが進行中である、そして、その中にこの安定沃素剤の問題も含まれているというふうに聞いております。ついせんだって、四月十日には原案が出されて、今パブリックコメントにかけられて、この五月とか六月にも完成する、発効するというふうに聞きました。

 この問題は、政府の事故調とか国会の事故調などでも簡単には取り上げられている問題ですが、きょうは、新旧の指針の比較などを尋ねながら、最終的には、関係市町村が自信を持って判断を下せるような仕組みを目指したい、そういう問題意識でお伺いしたいと思います。

 まず、総論ですけれども、この安定沃素剤の取り扱いについての基本的なところを確認したいと思います。どういう場合にどれだけの効果があるのか、限界はどうか、副作用はどんなものがあるのか、そして、避難との関係などについてお伺いします。

黒木政府参考人 お答えいたします。

 放射性沃素は、身体に取り込まれますと、甲状腺に集積しまして、数年から数十年後に甲状腺がん等を発生させる可能性があると言われております。

 このような内部被曝は、安定沃素剤をあらかじめ服用することで、その影響を低減することが可能であります。

 他方、安定沃素剤の服用は、放射性沃素以外の核種についての被曝の防護効果はございません。また、外部からの放射線による被曝に対する防護効果もございません。

 また、安定沃素剤の服用は、その効果が服用の時期に大きく左右されます。早過ぎても遅過ぎても、十分な効果は期待できません。

 したがいまして、原子力規制委員会が定める原子力災害対策指針では、安定沃素剤の予防服用は、その防護効果のみに過度に依存せず、避難や屋内退避等の防護措置とともに講ずる必要があると規定をしているところであります。

 なお、安定沃素剤の服用に当たりましては、沃素に対する過敏症を有する者は、アレルギー反応を引き起こすおそれがあること、新生児や妊婦に大量に服用させると甲状腺機能低下症を発症させるおそれがあること等の副作用が懸念されるところであります。

 こうした性質を踏まえまして、原子力災害対策指針の改定原案におきまして、原則として、医師により、副作用に関する注意点も説明して配付を行うこと、配付の際には、調査票等により、安定沃素剤を服用できない者を調査することなどの、安定沃素剤の服用による弊害が生じることを防ぐための段取りについても、その方法を示しているところでございます。

 以上であります。

吉田分科員 過度に期待せずに、やはり避難第一、屋内退避第一という御答弁だったと思います。

 従来は、平成十四年、原子力安全委員会から出された、安定沃素剤予防服用の考え方ということにのっとって施策が進められてきたと思います。この旧指針によりますと、誰がどういう基準で服用指示を出すということになっていたんでしょうか。

黒木政府参考人 お答えします。

 旧原子力安全委員会が作成した指針では、放射性沃素による小児甲状腺等価線量の予測線量が百ミリシーベルトを超える放射性沃素の放出、またはそのおそれがあると認められるときは、服用を指示することとされておりました。

 また、中央防災会議が作成した当時の防災基本計画では、地方公共団体は、原子力安全委員会が定めた指針を踏まえて、安定沃素剤の服用指示等を行い、また、国は、モニタリング結果等を踏まえて、安定沃素剤を服用するべき時期を指示することとされておりました。

 以上であります。

吉田分科員 要するに、指示者は、基本的には、原子力安全委員会の助言で、原子力災害対策本部長、総理大臣だと思います。

 ちょっと確認ですけれども、そういう基準はあるわけなんですが、従来は、市町村が独自の判断で飲ませても差し支えないという解釈でよろしいですか。

黒木政府参考人 そのとおりでございます。

吉田分科員 わかりました。

 それで、今回の事故の際、政府は、三月十六日でしたが、福島県並びに関係の十二市町村の方へ、半径二十キロからの避難時には安定沃素剤を投与することという指示を出したわけでございます。これは書面で指示が出ました。しかし、結局のところ、指示は出たけれども、投与はされなかったという事実があります。

 この一連のことを、当局としてどう評価しておりますか。

黒木政府参考人 御指摘のとおり、三月十六日付の文書、原子力災害現地対策本部からの指示でございますけれども、発出はされておりますが、福島県は、二十キロメーター圏内にはもう既に対象者がいないということが確認済みであるという理由によりまして、安定沃素剤服用の指示を市町村には行いませんでした。

 このように、福島県には届いていたものの、その指示を実施しようとした際には、対象の住民等が既に避難を完了していたという状況でございました。

 以上であります。

吉田分科員 二十キロから避難せよという指示が出たのは三月十二日だと思いますけれどもね。十二日で基本的には避難はされたわけですけれども、残っている病院とか、残留者が一部いるだろう、その人には安定沃素剤を飲んでもらおうということで、十六日、四日後ですが、出たんだろうというふうに思います。

 黒木さん、ちょっと確認ですけれども、先ほど百ミリシーベルトという基準があるというお話でしたが、この場合は、百ミリシーベルトを超えそうだというので三月十六日に出されたというふうに解釈すべきなんですか、どうなんですか。

黒木政府参考人 そのあたりは必ずしも定かではございません。

 ただ、一つ言えるのは、そのころ、モニタリングにつきましては、必ずしもポスト自体が十分動いていたかどうかといった疑問もありますので、むしろその周囲の状況を見ながら避難を開始したといったことでございますから、百ミリシーベルトを厳密に、要するに計算して出していたかどうか、それについてはちょっとわかりません。

 以上です。

吉田分科員 当時、数週間で百ミリを超えるという状況は、ちょっとはっきりしませんけれども、恐らくなかったですよね。そういう意味では、この基準から照らし合わせれば、服用指示は必要なかったようなふうにも思うんですが、そこはちょっと、後ほどまた確認したいと思います。

 一方、今度は、現地の関係市町村の方でとられた対応、これはどういう事実があるか伺います。

黒木政府参考人 お答えします。

 国会事故調査委員会の報告書によりますと、双葉町、富岡町、大熊町及び三春町は、独自の判断で、町民に対して沃素剤を配付し、服用を指示いたしました。いわき市及び同市に多くの住民が避難していました楢葉町は、配付のみとされております。

 いずれにしましても、多くの市町村では、国や県の指示がないことに加えて、そもそも線量情報や原子炉に関する情報がない状況で服用の判断をすることは極めて難しかったというふうに、国会事故調査委員会の報告書においては報告がされているところであります。

 以上であります。

吉田分科員 線量情報がなかなかない、原子炉情報もない、その中で、住民からは、早く配ったらどうだこうだ、こういう意見も出てくる。大変大混乱の中で苦渋の判断をした、指示を出した市町村と出さなかった市町村に分かれたということだと思います。

 結果としては、先ほど申し上げましたけれども、百ミリシーベルトの被曝という事態になった地域、住民はいなかったわけですから、私は、この基準から見れば服用は不要だったんじゃないかと思うんです。しかし、従来の指針でいえば、独自の判断をしてもいいんだということですから、そういう基準から見れば、判断としてはあり得た判断でもあったというふうにも思います。

 そういう苦渋の経験を経て、今、新しい指針の原案が出されました。この沃素剤の服用については、旧指針と比べてどこが改善されるということになるのでしょうか。

田中政府特別補佐人 旧原子力安全委員会の指針では、安定沃素剤は平時から住民に事前配付するということは行われておりませんでした。また、緊急時の住民への指示についても、国がやるのか地方公共団体がやるのかということについての関係が明確でなかったということを、今回の事故の反省として受けとめております。

 今回は、そういった反省を踏まえまして、緊急時には予防的な避難を行う原発周辺おおむね五キロ圏においては、原則として、放射能が出たかどうかということではなくて、避難と同時に安定沃素剤が服用できるよう、住民に事前配付をすることにさせていただきました。

 もう一点は、緊急時の速やかな服用指示を明確にするため、安定沃素剤の服用は、原則として原子力規制委員会が必要性を判断し、原子力災害対策本部長の指示に基づいて行うという、その関係を明確にさせていただいたところでございます。

吉田分科員 田中委員長、基準値はどうですか。実測値五百マイクロシーベルト・パー・アワーということでよろしいですか。

黒木政府参考人 今回の場合は、PAZ内につきましては、そのPAZからの避難の開始と同時に原則として服用していただくといったことを考えております。

 UPZに関しましても、基本的には屋内退避ということで当面プルームをしのぐにしても、それが避難という段階になれば、その段階において服用を考慮するとなっておりまして、基本的には、例えば五十であるとか百であるとか、その数値をトリガーにして服用ということについては、今のところは考えておりません。

 以上です。

吉田分科員 ああ、そうですか。基準が今度はなくなる、避難指示と同時に服用指示が出る、こういうことですか。

 いずれにしても、一時間当たり五百マイクロシーベルトというのをちょっと伺ってはいたんですけれども、これも、数週間で百ミリシーベルトという計算だと思いますので、ある意味では極めてこれは高い基準だ。そこまでの予測がない、もしくは実測がないうちは飲まなくていいんだというような受け取め方をしていたところでございます。

 一応、新基準の中身の概要を教えていただきましたけれども、この中で、なかなか市町村の判断が大変だなと思うのは、三つほど聞くつもりでしたが、ちょっと時間の関係で一つにしたいと思いますが、五キロの外です。

 UPZという圏内ですが、ここは、全面緊急事態宣言というのが出たら、予防的な避難も考えられる。しかし、それと同時に沃素剤を服用させようということになると、事前に配付していないと間に合わないですよね。今回配付した周辺の自治体の中にいわき市というのがありました。いわき市も実際配ったんですけれども、四日ぐらいかかったという話も聞かされております。

 こういう事前の配付を、この五キロの外ですよ、UPZにすべきかどうかというのは市町村が独自に考えてやるということになるんですか。

黒木政府参考人 お答えします。

 UPZに関しましては、原則としては、地方公共団体が備蓄する、それから、十条の事案になった段階で配付の準備を行い、十五条で現実に配付を行うというのが普通の流れだと思いますが、他方において、PAZ内と同様に、やはり予防的に即時避難を実施する可能性がある地域もないわけじゃないだろうと思っています。

 と同時に、避難途中に学校や公民館等の配付場所で安定沃素剤を配る、そういうところで受け取るということが困難な場合、地域もあろうかと思います。そういった地域があるということを前提に、やはり地域の実情に即した対策を講じることが必要だという観点から、そういった場所につきましては事前の配付を行うこともいいですよというふうな形で、指針には記述しております。

 当然のことながら、原子力規制委員会としても、そういった判断を地方公共団体や市町村に投げっ放しじゃなくて、いろいろと御相談に応じながら必要な助言も行ってまいるつもりでございます。

 以上であります。

吉田分科員 わかりました。

 それと、先ほどからのこの新しい指針によると、五キロと三十キロというのが一つのラインですよね。ただ、原子力発電所の周辺の自治体、恐らく、ほとんどの自治体がこの五キロラインもしくは三十キロラインで分断されるということになると思います。そのとき、どういう対応を政府としては考えているのか、つまり、あくまでこの距離でやるのか、もしくは同一自治体、一律対応、こういうことも可能と考えているのか、いかがですか。

黒木政府参考人 お答えします。

 UPZあるいはPAZの具体的な範囲につきましては、原子力災害対策指針で定めた施設から、UPZの場合はおおむね三十キロメーター、PAZはおおむね五キロメーターという数値を一つの目安として、地勢、行政区画等の地域に固有の自然的、社会的周辺状況等を踏まえて、それぞれの地方自治体が設定することというふうにしております。

 実際に、多くの地方自治体においては、UPZの設定範囲を物理的な距離で一律に区切るのではなく、行政区域ごとに設定されているのが実情であると承知しております。

 例えば、一つの村で一つ。途中、三十キロメーターラインがあっても村で。でこぼこは出ますけれども、そういう形の設定になっておると承知しております。あるいは、場合によっては地勢上の理由から字だけ指定ということもあるかもしれませんけれども。

 いずれにしましても、委員が御懸念されているように、同じ行政区域がUPZの設定により分断される場合については、地域コミュニティーの維持など、地域の実情に応じて地方自治体が柔軟に設定した上で、防護措置の準備等を行うことが望ましいものと思料しています。

 あくまでも、三十キロというのは、おおむね三十キロの一つの目安ということでありますので、その間には恐らくさまざまなバリエーションがあろうかと思われます。

 以上であります。

吉田分科員 例えば、先ほども例に出ましたけれども、この福島県のいわき市は、大きい広域都市なんですけれども、北部の方は三十キロ圏に入るわけですね。中部、南部というところはその圏外になる。そうすると、市としては、まずどこまで沃素剤を備蓄するのか、北部の人の分だけでいいのか、中部、南部まで含めるのか、面積的にはこの中部、南部の方が広いわけですからね。

 それから、事前に配付をするのかどうかというのも、どうも先ほどのお話だと、あくまで市町村の判断だ、実情によって何でもありだということですよね。

 例えば、事前に配付するという判断をした場合、これは賞味期限が三年ですから、三年たつとまた取りかえなくちゃいかぬという問題もございます。それから、各家庭できちんと保管されていて、いざというときにすぐ飲めればいいんですが、私なんかももらいましたけれども、よく考えてみたら、どこにしまったか忘れてしまったというような状況です。そういうことも出てまいります。

 市町村の実情によってとはおっしゃいますけれども、大変難しい判断になるというふうに思います。

 従来からもそうですが、この新指針によっても、なかなか難しいぞという感じを持ちました。自治体というのは、なかなかこういう専門的な知見はそうそう期待できるわけでもございません。そういうことを含めて、全体として、私は、国としての、何かもう少し具体的な考え方を示してやることができないのか、または、先ほどおっしゃいましたけれども、判断するときの何か技術的なサポートを手厚くするか、その辺をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

黒木政府参考人 そういった事柄は実はたくさんございまして、今、原子力規制庁でも各地域からさまざまな要望が出ております。それにつきましては、基本的には技術的な面が多いんですけれども、確かにそういった区分けの問題等でなかなか悩まれている面もありますので、その点について、十分お話を伺いまして、きちんとしたサポートをしてまいりたいというふうに考えております。

 なお、先ほど、沃素剤をなくすという話がありましたけれども、実は、なくすことも考えた上で、備蓄をもあわせて並行してお願いするといった形にいたしております。若干付言しますが、以上であります。

吉田分科員 時間ですので終わりにしますけれども、最初にお伺いしましたように、この沃素剤というのは、効果は確かにあるわけですけれども、服用のタイミングというのが非常に難しい薬でございます。本来は避難とか屋内退避が最優先だと。避難さえうまくできれば服用は必要なくなるわけですよね。

 そういう意味では、二次的な防護措置だというふうに思いますが、実は、一般の方々の感覚はそうじゃないんですね。最初におっしゃいましたけれども、沃素剤に対するいわば非常に過大な期待感があるというのが現地の現実でございます。ですから、最初の、御説明いただいたような基本的なところを私はもう少し説明する必要があるというふうに思います。

 そして、繰り返しになりますけれども、市町村に余りむやみな負担、判断の負担をかけないように、なるべく自動的な判断ができるような仕組みをさらに検討していただくようにお願いして、終わります。

 ありがとうございました。

今村(雅)主査代理 これにて吉田泉君の質疑は終了いたしました。

 次に、小熊慎司君。

小熊分科員 日本維新の会の小熊慎司です。

 私も福島県出身でございますし、今ほどもさまざま議論もありました。また各種委員会、予算委員会でも、またこの環境省に係る環境の委員会でも、議論がずっと積み上がってきているところもありますが、再度基本に立ち返って質問させていただきたいというふうに思います。

 今、県内でも種々さまざま議論をしているところであります、いわゆる年間の放射線量、これは一ミリという数字が出ていますが、既に承知をしておりますけれども、原子力規制委員会の方にこの見直しということで、年内に見直しを図るということではあります。もう一ミリという数字が出ていて、これを何ミリかに変えるとなると、これはなかなか大変なことだなというふうに思います。先日の予算委員会の公聴会で私もいわきにお伺いしましたが、そこに参考人として来ておられた浪江の馬場町長は、基準が変わったとしても学校教育施設は一ミリというのを目指していきますということをおっしゃっていました。

 これは、科学的知見に立って何ミリといっても、既に一ミリというのが出ている以上、どうやってもなかなか難しいとは思うというのが、現時点の、これは福島県内だけではなくて日本全体がそうだと思います。だから風評被害もある。

 そういう状況の中で、今後、環境省として、改めてその見直しの部分について、見解を求めます。

森本政府参考人 東電の福島第一原子力発電所事故によって避難されている住民の方々の不安を取り除くということは、何よりも大事なことというふうに考えてございます。そういう方々のふるさとへの帰還を進めていくということを、政府として極めて重要な課題として取り組んでいきたいと思っております。

 先生御指摘の点でございますけれども、本年三月七日の原子力災害対策本部において、線量水準に応じて講じるきめ細かな防護措置の具体化について、原子力災害対策本部で議論を行って年内を目途に一定の見解を示すということの方針が決められたものでございます。規制委員会も、その中で役割を果たしていくということでございます。関係省庁と連携して、しっかり対応していきたいというふうに考えてございます。

小熊分科員 これは基準を見直して、今、線引きがされている、避難指示解除準備区域とか居住制限区域とか帰宅困難区域といったものも、いろいろ実態に合わせて変わっていくとは思いますけれども、それだけで、実際、住民がその判断のもとに、帰る、帰らないを決めていないということも御承知のとおりであります。いわゆる、これまでもいろいろなところで言葉が出ていますけれども、安全基準と安心基準が違うんだという意味では、新しい線量の基準の見直しも、それが安全基準だけれども安心基準にはなかなかなっていかない。

 でも、政府としてはこの安全基準に従って区域見直しも今していますし、これからもしていくということを確認させてください。

森本政府参考人 先ほど申し上げました、線量水準に応じて講じるきめ細かな防護対策というものの具体策につきましては、いわゆる安全に加えまして、住民の方々に安心に暮らしていただくということも含めて検討させていただきたいというふうに考えてございます。

小熊分科員 そうすれば、今、事故を起こした東電の原発が三十年、四十年廃炉。それは、早くなればいいんですけれども、まだ見通しが立っていない。水漏れが起こる、電源もネズミで落としてしまう。

 まして、東電の体質ですよ。私も県会議員のときに東電の体質を見ていましたけれども、情報を小出しにする。あり得ないことが起きましたなんということをもう十年前から使っている。あのとき、東電の社長も格好よく、情報を隠すことは罪ですと。それだけじゃない、情報がおくれることでさえ罪だということで、企業体質を変えていきますと言って、変わっていないんですよ。そんな信頼のない東電、しかも原発事故が収束をしていないところに、その当該地域が安全基準ですから、こう変えましたから帰りましょうと言ったところで、なかなか難しいんじゃないんですか。

 今、安心も考えますと言っていましたけれども、原発事故が収束していなければ、安心なんて到底、それはそうですよ、何キロか先にまだくすぶっている原発があるといったら、安心なんかできますか。そこをどのぐらい見るんですかね。

森本政府参考人 失礼いたします。

 まず、東京電力福島第一原子力発電所のいわば安全の管理という観点につきましては、規制庁、規制委員会のみならず、政府を挙げて取り組んでいきたいと考えています。

 とりわけ規制委員会におきましては、この福島第一原子力発電所を、いわゆる特定原子力施設というふうに指定をしまして、法に基づいた管理というものを安全の側からやっていきたいというふうに考えております。

 また、そういった取り組みとあわせて、先ほど申し上げたような取り組みを進めていきたいというふうに考えてございます。

小熊分科員 役人の皆さんはそう答えるしかないんですけれども、これは政治的な決断も必要ですから、大臣か、副大臣でも結構ですが、安心基準というのはどのぐらい注視をしていますか。いや、大臣か副大臣、お願いします。安全基準でいろいろ決めているんですけれども、安心基準といっても、これは幅もあります、人によって違いますけれども。ただ、大臣も副大臣も現地にたびたび行かれて感じると思いますけれども、あんな状況で安心なんというのは到底感じられないですよ。

 実際、もう帰ってもいいという、さまざまな地域が出ていますけれども、半分も帰っていない状況だってあるわけじゃないですか。基準は安全ですと言ったとしても、科学的知見に立てば安全だけれども、それはいろいろな要因がありますけれども、やはり安心といったものがないからですよ。そこを、どんな見解をお持ちですか。

石原国務大臣 これはあくまで、規制委員会の方で基準をつくるということに何ら変更はございませんが、私も井上副大臣も現地を歩かせていただいて感じましたことは、ただいま小熊委員がおっしゃられたとおり、人によって安心感というのは全く違います。

 そんな中で、三月七日の原災本部において、復興大臣の方から、線量水準に応じたきめ細かな防護措置の具体化、原子力災害本部において議論し、年内を目途に一定の見解を示すことというような意見の開陳がございました。

 もちろん、冒頭申しましたように、こうした検討に当たっては、原子力規制委員会が科学的、技術的な見地から役割を果たすことになります。そんな中で、最終的に、政府として、この年内ということを目途に、この問題について、できる限り多くの方々と共通する考え方を取りまとめていくということになるものと承知をしております。

小熊分科員 今、その基準ではなくて。

 基準はそうですよ、ただ、収束していない原発施設がありますね、それがある限り安心なんてできないでしょうという話で、それをどういうふうにおもんぱかるんですかということですよ。質問の趣旨、わかっていますかね。

 委員長、ちょっと整理してください。全然違うんだ。

石原国務大臣 冒頭お答えさせていただきましたとおり、安心だと思う方は安心をしますし、安心だと思わない方は安心しない、こういう問題が安心という難しい問題であると。

 ですから、規制委員会の方で科学的、技術的な見地から見解を示す。また、この問題については、三月七日の原災本部において復興大臣からお話があった。その点で年内に向かって整理をさせていただくというのが政府の見解でございます。

小熊分科員 水かけ論になるからあれですけれども。だから、そういう基準を出したって、安心が醸成されてこなかったんですよ。それは民主党政権からそうですよ。自民党になったから変わったという話じゃないし、そうやって、科学的知見をもとにしっかり理解を求めていきますといって、それは民主党政権だってやっていた話ですよ。ここに来て、変わってないし、人によって違うんですけれども、多くの人は、やはり安心基準で動いています。

 今まで言ったとおり、では、土地がきれいになったから安全基準値です、東京とほとんど線量が変わりませんといったって、収束していない原発施設があれば、自分が住んでいるところがきれいだとしても、帰れと言ったって、帰らないでしょうという話なんです。そこをどう見るんですかということですよ。

 あとは、もうこれはこの後の質問に参りますけれども、まあ、現実論から言って、全部森林もやってほしいと地元も言っています。心理的にそうですよ。生活圏だけ除染が済んだって、裏山、見えているところの山が除染が終わっていないといったら、なかなかそれは帰りたいと思わないですよ。安心しても暮らせない。

 大臣も副大臣も、行って思いませんでしたか。あの地震から壊れた、そして田んぼにまだ自動車も流されたまま残っていたり。では、農地も生活圏も除染した、でも、目に見えている山のところは除染しないといったら、気分としてどうですか、一人の人間として。安全基準を満たしましたから帰ってください、生活圏内はオーケーですから帰ってくださいといっても、帰れないでしょう、帰る気持ちにならないんじゃないんですか。

 だからこそ、もっと安心する基準といった住民の意思、その気持ちといったものを入れていかないと。それは機械的にやりますよ、やれますよ。何マイクロシーベルトだから帰れます、帰れません、除染しました、どうですと。人の判断ってそういうところじゃないですよ。

 そこだけじゃない。日本人全体がそうじゃないですか。私は会津ですけれども、全然線量が低い、東京よりも低かったりするのに、修学旅行も来ない。大臣の地元だって、そんな議論したことはありますか。福島だけが現場じゃないですよ。安心基準を求めているのは福島の人だけじゃないですよ。福島のものも売れない、修学旅行にも、旅行にも行かない。安全であるのに行かない、買わない。自分の地元のPTAとかで議論したことはありますか。いや、安全だから大丈夫ですといっても、そういう人たちは納得するんですか。していないからこの状況じゃないですか。

 まして、当該地域は大変ですよ。もう簡単に、安全基準ですから、こうやって線引きしましたから、帰ってください、まだ帰らないでくださいって簡単にできますけれども、でも、そこをしっかり受けとめなきゃいけないんじゃないんですかと言っているんですよ。

 それで、除染の方に移ります。

 では、この除染、森林に対しては今後まだ検討するということですが、現時点で、話し合いの中で、森林除染はどのような経過になっていますか。

小林(正)政府参考人 森林についての除染でございますが、御承知のように、環境省としましては、現在、計画に基づきまして、平成二十四年度、二十五年度の二カ年で除染を実施する。その中で、森林の除染については、まずは住宅等の生活圏に影響を及ぼす場所の中をしっかりやっていく、こういう状況でございます。

 今後、森林についてどうしてくれるのか、こういう御要望は大変地元で強いというふうに認識をしております。

 二つの観点があろうかと思っておりまして、先生も御指摘ありました、いかに安心をしていただけるか。里の除染をしたときに、森林除染しなくて大丈夫なのかという御心配はございます。これについては、今やっていることといたしましては、森林から放射性物質がどのぐらい流出してくるかというのは、さきの検討会の方でもチェックをいたしまして、余り出ていないというのがございますが、ここは念には念を入れて、しっかり検証していくということを引き続きやっているところでございます。

 また、特に沢水を飲んでいる皆様方については、非常に心配だという声がございまして、これは御要望があるところは全てはかる、連続的にはかるようなことも含めてやるというようなことを一つやっているところでございます。

 それから、もう一つの観点は、林業の復興と除染がどう結びついてくるのかということかと思っております。

 これは、復興大臣、環境大臣の御指示もいただいて、いかに連携をしていくかということで、いろいろな林野庁のプロジェクトもあります、こういうものに私どもの調査が絡んでいきますとか、こういった連携を図っていく。

 こういう二つの軸でやっているところでございます。

小熊分科員 双葉郡内の森林も復活すれば、それはいいんですけれども。この間も県の森林組合の方々が来られました。それは、全県的には福島県の林業を復活したいということでしたが、双葉郡内の人たちは、復活という前に、森林の補償が、これがなかなか、不備という言葉が適切かどうかわからないですけれども、普通の財物とは違う扱いになっていますし、それは、何年に一遍切り出すから、過去五年間の実績ですといったって、そんな、五年に一遍出すわけじゃないですからね。

 この補償をちゃんとしてほしいというのが双葉郡内の森林組合の人の声で、再生なんという言葉になんかいかないですよ。売れないでしょうというのが彼らのことですから。食うものでさえ売れないんですよ。森林もなかなか。双葉郡の木ですよといって、家を建ててくれるならいいですよ。やはり建前と現実というのがあって、現実というのは科学的知見で動いていないから、風評被害も起きてくるし、今も、帰れる町や村もあるけれども、半分も帰っていないわけじゃないですか。それが何なのかということなんですよ。

 この安心を醸成するためにはさまざまな取り組みが必要ですけれども、私は一定の選択肢を今示しますよ、さっき言ったとおり、全面除染が終わっていない、原発事故も収束していないというところは、当該地域で安心基準は満たせませんから、帰すという地域にはなり得ないと思います。したとしても、本当に数%の人しか帰らない。それでも帰せという基準を示すんですかということです、科学的知見だけに立って。除染の進みぐあいがどの程度の割合。生活圏で安全だとしても、広く除染をしていないという状況でも外しちゃうのか。

 では、副大臣、原発事故は収束していないのに、廃炉になっていないのに、そこは考慮に入れないんですね、この区域見直しに関しては。実際は、影響はなかったりしますよ、再爆発したりなんかしなければ。でも、今、漏れたりなんだりでいろいろある中で、安心じゃないんです。そこはどうですか。

井上副大臣 区域見直し、あるいは住民の方々の帰還ということになりますと、これは除染だけの問題ではないということは御案内のとおりだと思います。

 そういった中で、原発の状態も当然ありますし、あるいは、帰還していただくということになれば、当然、現地のインフラ整備だって進めて、きちんとできていなければいけない、こういったことになると思いますので、そういった全体を総合的に判断していくということだというふうに思っております。

 環境省としては、しかし、この除染というものが、当然のことながら、いわばその前提になると思っていますから、全力で、なるべく線量を低目にするためにやっていく、こういう方針です。

小熊分科員 除染はそういうふうにやっていかなきゃいけないですけれども、しっかり今の住んでいる人の状況を考えて対応していただきたいと思います。

 極論を言いますけれども、大丈夫だというんだったら、本当に政治家の皆さんに言いたいですよ、後援会旅行でも何でもしてくださいよ、そこに行って。地元の小学生、中学生の修学旅行、社会体験だといって見せに行ってくださいよ。できるわけないでしょう、そんなの。こんなことを言っている自体がおかしな発言だと捉えられるんですよ。そんな状況ですよ。そこに帰って住んでくださいなんということも、これは真っ当な話じゃないんですよ、実は。

 ここをしっかり捉えて、科学的知見ももちろん示さなきゃいけないけれども、原発事故が収束していないという前提は一番重いですから、これはしっかり捉えてやっていただきたいというふうに思います。

 まして除染も、また除染の論点に移りますけれども、これは本当に長期的な取り組みになるというふうに私は思っています。線量が高いところは除染すれば大きく効果が出ますよ。私の地元からも除染作業をやっている作業員がいますから、私なりにいろいろ聞くと、二十ミリぐらいとか十ミリ以下になったり、年間十ミリぐらいのところがやれば五ミリ以下に下がったり、五ミリぐらいのが二ミリぐらいに下がったり。でも、大体二、三ミリぐらいから除染しても、一旦は下がるけれどもまた二、三ミリ戻ってしまうとか、低線量ほどなかなか効果が出ない。

 今まで、今年度も含めて、一兆五千億ぐらい使っちゃっている。その効果が出ているのか。今の一兆五千億使った中での進捗率と、これからやらなければいけない対応と予算を考えれば、膨大な量と膨大な資金と膨大な時間がかかってしまうわけですね。

 そのことに関して、費用対効果という言い方は本当に余りいい言葉じゃないですけれども、この除染の効果と費用について見解を求めます。

小林(正)政府参考人 今、除染につきまして、先ほど申しましたように、二十四年度、二十五年度で、まず生活できるようにということでやっております。ただ、御承知のように、計画策定が大変おくれたところもございまして、ここら辺は追いついていかなきゃいけない、こんな状況にございます。

 そういう中におきまして、特に進んでおりますところについては事業が予定どおりで終わってくるところがございます。あるいは年度計画が終わってくるということで、これについて地域的に、いろいろなところで事業前、事業後の検証をやっているわけでございますが、もう少し、地域全体でどのような効果が上がっているかということも、個別の除染作業の効果とはまた別に把握をしていかなきゃいけないというふうに考えております。

 こういった検証作業をやる中で今後どうしていくかということを、今おっしゃいました、どのぐらい、ちょっと、厳密の意味での費用効果というふうにいくのかどうかはあれでございますが、低減効果、それから求められる水準とどうなるのか、この辺をしっかり検証して今後の検討をしていきたいと考えているところでございます。

小熊分科員 その際に、国直轄のところは国がやるからあれですけれども、市町村の判断でと言っているところもありますね。私のところも、会津若松市は除染計画をつくっていないけれども隣町はやっている。大して線量は変わらないのに。

 これは自民党政権じゃなかったからあれですけれども、そもそも市町村の役所で、低線量で、これだとやった方がいいとか、やらなくてもいいよなんて判断できる職員なんかいないんですよ。これは低線量であっても、国が、ここはこの基準だからやります、この基準だからやりません、もし、おまじないみたいにしてやるんだったらそれは市町村の単独事業でやってください、それは大丈夫なものも、やらなくていいものをあなたちはやっているんだから。濃いところだけ国、薄いところは市町村の判断。これは国策でやった原発、そしてその事故。徹底して国が面倒を見なきゃいけないんですよ、やるのであれば。

 自民党政権になってから風評被害対策のお金を大分つけてくれましたよ。それまでは地域が金を出していたんです。市町村役場また地域住民も、これは大丈夫かな、大丈夫じゃないからちょっとやっておこうかと。あと、やらない市町村は、大丈夫だと言っているんだから、やれば、汚れているでしょうと風評被害につながるからやりませんと、そういう判断で決めたんですよ。科学的知見じゃないですよ。まさに安心基準みたいなところだけで判断して、やっているんですよ。

 では、この基準値が変われば、国直轄じゃないところのいろいろな除染の補助のあり方も今後変わるんですかね。どうなんですか。

小林(正)政府参考人 今市町村で実施をしていただいておる直轄地域以外のところ、これはお立場としては大変なお仕事をやっていただいているなと思っておりますが、特措法の中で、今、政府でやらせていただいております。

 その中で、国の責任としては、費用をしっかり見ていくということももちろんでございますし、技術的にはガイドラインや基準を示すという形で、いわば全面的にお願いしてしまうということではなくて、一定の基準を示すべくやっておりますし、また、それについてのいろいろな御要望もございますので、これはしっかり取り入れながらやっていきたいと思っております。

 そういう中で、こちらにつきましても、これは市町村によりまして計画期間などいろいろございますが、国が直轄地域に関して見直していく、あるいは技術的なものについて見直していくという中で、市町村にやっていただいている部分につきましても、よく御意見を伺って、あわせて見直していけるようにやってまいりたいと考えているところでございます。

小熊分科員 これは大臣、副大臣にも申し伝えさせていただきたいと思います。

 不適切な除染もありましたが、これは市町村の方の除染もなかなかいろいろな問題がありますよ。国直轄のものは大手ゼネコンがとって下に流す。市町村のものは、あれは普通の公共事業と違いますから、例えば、全然関係ない人が元請になって大手に流しているなんという、こんな逆転現象も実際はあるんですよ、市町村によっては。異業種の人が、質屋さんが元請になって大手ゼネコンに発注するなんという、実はこんな状況なんですよ。

 まして、これは市町村の除染計画でやっていることですけれども、作業員に聞きましたけれども、国直轄のものは、国がある一定のルールをつくってちゃんと作業員の健康調査していますよね。市町村でやっている除染は低線量だからということになるかもしれませんが、そこの作業員がガラスバッジ一つ持っていないんですよ。大丈夫だと言ってやっている作業員もいれば、国直轄のものと市町村のは線量も違うから大丈夫かもしれないけれども本当に大丈夫なんですかと聞いてくる人もいますよ。だから、これはやはり市町村に任せるんじゃなくて、これも国直轄にして、それは発注形態はいろいろあると思いますけれども、これは徹頭徹尾国が責任を持たなきゃいけないんですよ、はっきり言って。

 そうでなければ、ガイドラインなりもしっかり示して、大丈夫か大丈夫じゃないかの判断を市町村にさせるということの根本が間違っていると思うんです。安全基準なんだけれども、やはり、より安全を求めたいのであれば、国はやることはないと言っているけれども、やる場合にはこうしてくださいというような選択肢はあるとしても、国直轄以外は市町村が決めてください、これは国の責任の放棄だと思いますよ、はっきり言って。

 そこも、今後、線量の見直しのときにしっかり議論していただいて、このあり方もやっていただきたいし。福島県の中通りというところは大体市町村でもやっていますが、私の住んでいる会津は、隣町はやっていて、こっちはやっていない。何が違うんだ。その役場の判断、市役所の判断、どこが違うんだと。誰も説明できぬじゃないですか。やりたいと言ったからやらせているんですと。これはおかしいですよ。

 国がちゃんと、そこはやるべき、やらなくていい。そういうのがないから安心も醸成されないんですよ。不安になっちゃうんですよ。その現実をしっかり受けとめていただいて、やはり政治が決断をして、格好いいことばかり言っていないでやっていかなきゃいけないし、このまさに安心みたいな世界は、通り一遍の理屈だけでは解決できないですよ。

 今言ったような対応をしっかり整理して対応していくことが一つ一つ安心を醸成していくことですけれども、政府のこうした決定、国の決定がかえって安心の醸成を阻害しているという瞬間もあるわけですから、この除染のあり方、今後の方向性を徹底的に見直していただきたいというふうに思いますし、科学的知見だけで全てが語れるわけではないので。これは本当に、科学的には怖がらなくていいものを怖がっている状況もあるんですけれども、それが現実ですから、それに対応して、避難地域の見直しなんかも、ここは慎重にやっていかなきゃいけないというふうに思いますし、それで大丈夫と言っているんだったら、これは話が飛びますが、さっき言ったとおり、風評被害なんかなくなるんですよ。

 それぞれ大臣も副大臣も、地元に帰って地元の人にしゃべってみてくださいよ。福島の米を買ってください、修学旅行へ行かせてください。いやいや、何を言っているの、怖いじゃないですか。いや安全ですからと。大変な議論になると思いますよ。そういう中で暮らしているんですよ、福島県の人。それで、科学的に大丈夫だから行け、行けと、福島県の人だけ科学的根拠でやらされて、福島県外の人は科学的根拠じゃなくて、さまざまな活動をしている。

 大臣、副大臣の地元も現場ですよ。そこでまず、議論してみて感じてみてください、こういう状況、安心とは何なのか。それがわからなければ、的確な対応はできません。ぜひ、今後の議論の中でそうした点をしっかり重視して、この福島の復興、原発事故の収束に向けて努力をしていただきたいというふうに思います。

 残余の質問は、あしたの環境委員会もありますので、引き続きそこでやらせていただきます。

 ありがとうございました。

今村(雅)主査代理 これにて小熊慎司君の質疑は終了いたしました。

 次に、松田学君。

松田分科員 日本維新の会の松田学です。

 今、我が党の小熊委員の方から、原発に関連する放射性物質の質問をいたしましたが、私はアスベストに関して取り上げてみたいと思っております。

 日本維新の会の立場から見ても、このアスベストの問題は、私も必ずしもふだんから追いかけている人間ではありませんし、また、環境委員会でも大気汚染防止法の改正がこれから審議されると聞いておりますが、国の役割といいますか政府の機能といいますか、その点から一度この問題はしっかり議論しておかなければいけないという思いで質問をさせていただく次第であります。よろしくお願いいたします。

 日本維新の会は個人や地方の自立ということを唱えているんですが、やはりその前提は、個人では背負い切れないリスクを国がしっかり管理するということが前提になろうかと思います。

 しかし、ここでもさんざん議論されているように、今回の東日本大震災あるいは原発の問題を見ても、個人では背負い切れないリスクを国がしっかりとどこまで管理しているのかということに対して、どうも多くの国民が疑問を持つようになっている。安全、安心という言葉もありますが、安全、安心という言葉がなければ、どんなに個人が頑張ってリスクをとろうとしても、そこはなかなか難しいということになってしまう。

 そういう意味で、日本維新の会は、強くて賢い国家ということもうたっております。しっかりとリスクを管理して、それも、単に強いだけでなくて、賢い。

 そういった意味で、リスク管理能力というか、東日本大震災で政府のその能力についてもかなり疑問が出てきましたけれども、一方で、国民も何でもかんでも政府に頼ることがありますので、政府は過剰に規制をしてしまうとか、そうすると、新しい大きな問題が起こると、政府も責任を逃れたいが余りに問題を隠蔽してしまうというような、どうもこういう体質が日本はずっと続いてきたのではないか。そういった国の体質についても、アスベスト問題は重要な問題を提起しているのではないかと思っております。

 また、日本維新の会は、一般国民の立場に立って、消費者、エンドユーザーですね。しかし、今回の原発事故を見ても、原子力村という言葉もありますように、供給者側にどうも隠蔽体質があって、今回、原子力ではここの問題に非常に大きな焦点が当たっていますが、アスベストについてもそういう疑問を呈する向きがあります。

 こういった問題について幾つか質問をさせていただきながら、議論させていただければと思います。

 まず、アスベスト問題の現状は極めて深刻なのですが、なかなか一般国民が十分な理解をしていない。歴史上最大の公害事件になる可能性があるとも言われているようであります。

 現在、アスベストは我々の生活場所に大量に存在していますが、かつて輸入や使用を禁止するということで、アスベストの被害は終わりであると多くの世間の方も勘違いしている向きもあります。過去に建設されたものを中心に一千万トンのアスベストが使われて、大半が除去されていない。これまで罰則規定もなかったために、ずさんな除去や解体作業が進行している。そして、アスベストが原因の死亡者数はこれから増加する一方であるというふうな予測もなされています。

 中皮腫という病気はアスベストが原因であると言われていますが、アスベストは、肺胞に入って、鉱物性のため、解けずに残留してしまう。この中皮腫の死亡者数も増加する一方でありまして、昨年度は千二百人死亡したということであります。二〇〇二年は八百人余りであったということで、増加している。この被害は既にアメリカやイギリスといったほかの国でも先行していますが、今後、そういった国々と同じカーブで死亡が増加していくものと予想しますと、相当な死亡者数が見込まれている。

 お手元に資料を配付しましたが、これはある学者の先生が予測したものですが、かつて、棒グラフであるような、これだけの輸入量があった、それが、今後何十年かにわたって、中皮腫死亡者数としてどんどんこれから出てくるというグラフであります。これは五年ごとにとっていますので、五年合わせて、高位予測値では五万人、年間一万人という数字になるのかと思います。

 また一方で、非喫煙者の肺がんの死亡も急増しているということで、これも、喫煙以外の原因としてアスベストも原因の一部であろうというふうに言われていまして、ある方の見方では、こういったものを含めますと、現状で、既に一年間に少なくとも三、四千人がアスベストが原因で亡くなっているのではないかという見方もあります。

 この中皮腫による死亡者だけでも、このグラフにありますように、二〇三〇年をピークにして、トータルで、全部累積していくと十万人ぐらいこれから亡くなる可能性があるんじゃないかという予測もある状況であります。

 まず、これからふえていくという、こういった現実に対して、政府はどのような認識をしているのか、今後予想される中皮腫による死亡者数は年間何人ぐらいと推定されているのか、あるいはまた、肺がんによる死亡者のうちアスベストによるものと認められる件数、これも年間ベースではどれぐらいなのかについて、お答えいただければと思います。よろしくお願いいたします。

佐藤(敏)政府参考人 お答えをさせていただきます。

 中皮腫による年間の死亡者数でございますが、厚生労働省の平成二十三年の人口動態統計によりますと、千二百五十八人となっております。

 今後、中皮腫の死亡者数がどういう傾向を示すかということでございますが、技術的にはなかなか困難な部分がございます。

 それは幾つかの理由があるんですが、まず一つ目の理由は、我が国の石綿の輸入実績は一九七〇年から九〇年までの間がピークでしたから、そこからの経過年数をどういうふうに見込むかということ。二つ目が、今も申し上げましたけれども、そこで疾病の潜伏期間が三十年から四十年。それから三つ目、今先生の御質問の中にありましたように、近年、今もなお、中皮腫による死亡者数が増加している。こういった三つぐらいの要因を絡めて考えてみますと、なかなか予想が難しいんですけれども、当面は中皮腫による死亡は増加するだろうというふうに見込まれております。

 肺がんの中で、年間の死亡者数は、厚生労働省の平成二十三年の人口動態統計で七万二百九十三人となっておりますけれども、この人口動態統計の中で原因を問うておりませんものですから、石綿がこのうち原因としてどのくらい占めているかというのは、統計としてはございません。

 なお、参考までに申し上げますと、平成二十三年度の、私ども環境省の石綿救済制度による肺がん、石綿由来の肺がんということで認定をしました数が百十四人、それから、労災の方で石綿による肺がんではないかということで認定した数が四百二十三人ですから、合わせますと五百人を少し超えるぐらいが認定された方ということになっております。

 以上でございます。

松田分科員 しっかりとこれから起こる現象について向き合っていかなければいけないかと思います。

 ちなみに、日本最大の公害事件になる。日本では、これまで最大の公害事件である水俣病、死亡者は数千人ですが、この予測では、これからのアスベストが原因での中皮腫の死者が十万人と、水俣病よりもはるかに大きな死者が予想される。ちなみに、薬害エイズ死亡者数は約二百五十人、薬害肝炎推定患者数約一万人に比べても、アスベストの被害は格段に大きいというふうな見方がされています。

 今のアスベストの被害者は、アスベストが禁止される前に吸ってしまって発症しているだろうという誤解もあるんですが、これから解体が行われていってふえていく、過去、一千万トンのアスベストが輸入されていて、二〇四〇年ごろをピークに建築物の解体が行われていく。今アスベスト対策を抜本的に強化しなければ、この死者数も予測値の最悪の数値に達するのではないかというふうに言われている状況があります。

 この中皮腫の潜伏期間ですが、通常二、三十年と言われております。阪神・淡路大震災の際の復旧作業員がその後十三年で既に発症しているという例もありまして、静かな時限爆弾というような表現もされているようであります。

 東日本大震災において、この阪神大震災時の経験が生かされたのかどうか、生かされているのかどうかということになるんですけれども、まず、東日本大震災の被災地におけるアスベスト飛散の現状についてどういうふうな現状認識をされているか、お尋ねしたいと思います。

小林(正)政府参考人 東日本大震災の被災地におきまして、特に、自治体の皆様方の御要望を極力受けとめる形で、飛散による住民の暴露防止もし、また、不安も解消したいということで、モニタリングを実施してきております。

 具体的には、建築物の解体現場、また瓦れきの仮置き場、それから、暴露の防止のためということで、避難所ですとか住宅地、これも自治体から御指定をいただいて調査いたしまして、二十三年の夏からでございますが、これまでに千二百二十四地点で測定をしております。

 結果について申しますと、全体的には高い濃度ではございませんでしたが、何件か、これは必ずしも敷地境界ということではございませんが、集じん装置の排気口ですとか、そういった主要な場所において高い濃度が散見もされておりまして、ここは注視しているところでございます。ただ、今申しましたように、敷地境界での濃度を同時にはかりましたが、周辺環境に影響があるようなものは環境省の調査ではございませんでした。

松田分科員 阪神大震災の際も、当時の環境庁がおおむね問題なしという結論を出していたそうなんですが、しかし、それでも、こうやって中皮腫の患者が出てきている。今回も、東日本大震災の環境省の調査でも、ほとんどの地点で問題なしという結果が出ていますけれども、今回の調査については、多くの有識者から、甘いんじゃないか、もっと深刻なんではないかという意見も多々出ているようであります。

 特に被災地、今回の東北の被災範囲は極めて広大でもありますし、また、津波でだあっとアスベストが広がってしまっているということに対して、手の施しようもないというような見方も結構あるわけでございまして、それに対してどうするか。例えば、津波でほぼ全壊した建物に養生を施してアスベストを除去するというのはなかなか現実的ではない。そういう中で、せめて、最初からマスクをつける指導はしてほしかったという有識者もいらっしゃいます。

 何かにつけて、日本政府の対応がおくれがちでありまして、また、行政の危機意識も低かったのではなかろうかというような、いろいろな指摘もあるところでございます。

 やはり、この問題の根っこをしっかり押さえるために、まず、全国的にどれぐらいのアスベストが使用されているのか、それをきちっと把握がなされているのかどうか、単なる推計ではないかという話もありますし、また、今回の被災地においても、どの程度、アスベストが使用されている可能性が高い物件があった、そういった数字はきちっとつかんでおられるのでしょうか。

菊池政府参考人 内閣官房から御説明申し上げます。

 建築物におけますアスベストの使用実態につきましては、関係省庁におきまして調査を行っております。例えば、具体的に申しますと、駅や空港などについては国土交通省、学校については文科省、病院等については厚生労働省のように、各省が所管する施設につきましてアスベストの使用実態を調査しております。

 内閣官房におきましては、各省の調査に基づきまして、アスベストが使用されていることが確認されました件数等を取りまとめているところでございます。

 平成十七年度からこの取りまとめを行っておりまして、累計で、これまで調査対象となりました件数は約百万件でございます。このうち、アスベストの使用が確認されました件数は約三万件となっております。

 以上でございます。

松田分科員 私どもで把握した数字では、これは国交省の調査じゃないかと思いますが、二百八十万棟という数字があるんですが、それについてもかなり少な目な数値だという話があります。レベル1、レベル2、レベル3と区分がされているんですが、レベル1だけをカウントしたものではないか、いわゆる推計ではないかというような話もあります。

 こういった現実についてまずしっかり把握した上で、これから解体のピークが二〇四〇年に向かって来るということでありますので、これについてどう向き合っていくかということですが、どうもメディアなんかの取り上げ方も、放射性物質については非常に取り上げ方が多いんですが、それに対して、アスベストは必ずしも、余り注目されていないという点が一つ問題があろうかと思います。

 ただ、放射性物質の被害に比べてアスベスト被害はやはり大きいということで、例えばチェルノブイリですと、ある推計では、将来、欧州諸国四十カ国の住民を含めて、がん死亡者数がどれだけ増加するかというと、一万六千人という数字がありますが、先ほどの推計では、日本のアスベスト死亡者は十万人を超えるという数字もあるということでありますし、いわば放射能の被害は地域が限定されるかもしれませんが、アスベストの場合、全国民が被害を受ける可能性がある。

 そういった意味で、問題の取り上げ方も、もっとしっかりと、バランスのある、リスクの大きさにふさわしい取り上げ方がなされていかなければいけないかと思うんです。

 政府の方も、しっかりと対策を政府なりにやってきているとは思うんですけれども、ただ、本当に十分かどうかという問題があろうかと思います。

 まずは、予算については、放射性物質に関しては、除染対策費だけでも、二十三年の予備費から始まって、補正、当初予算等で一兆二千億円を上回る除染予算が計上されていますが、アスベスト関連に関しては、例えば今年度、二十五年度予算においてどれぐらいの予算、そして、復興関係予算においても、アスベスト対策がどれぐらい盛り込まれているのかについてお伺いしたいと思います。

菊池政府参考人 内閣官房からまず御説明申し上げます。

 内閣官房におきましては、毎年、関係省庁のアスベスト対策に関連する予算を取りまとめているところでございます。平成二十五年度の予算案について取りまとめたところでは、内数として、アスベスト対策に係る経費が、一部であるものを除きまして、総額約百三十億円というふうに内閣官房で取りまとめているところでございます。

松田分科員 恐らく、どこかに司令塔があってふだんから総合的に見ているところがないんじゃなかろうかというふうな推測がされます。

 大事なのは今後のアスベスト対策全般についてですけれども、やはりこれまで、強い意思を持って当事者としてかかわる、司令塔となるセクションがどうもアスベスト問題については欠けていたのではないかという認識がございます。各省庁ばらばらの施策で、自分の役所のやることはもうやったんだというような認識がどうも蔓延していたんじゃないか、そういう指摘もあります。

 自治体の方も、職員によって知識がばらついていて、しょっちゅう異動してしまうというので、必ずしも十分ではない。メディアの方も、単発的な取り上げ方しかしてこなかったということで、一般の国民も、あるいは一般の国会議員も、アスベスト問題はもう終わった問題だというような状況になっているのがやはり大きな日本の問題であろうかと思います。

 ただ、国民の命と安全を守るというのは、国家としての最大の使命であろうかと思います。北朝鮮の拉致問題なんかも、日本の国家がその面で大丈夫なのかと多くの国民が疑問を感じるきっかけになったと思いますが、いわゆる強い国家を標榜しても、その強い国家の基本は国防だけではありません。健康被害から国民を守るということで、このアスベストも、大事な機能でありまして、アスベスト問題というのは、日本の国家機能が試されているんじゃないかというふうに思わざるを得ないわけであります。

 安倍政権は強い国家を目指す政権だと思いますが、その内閣の一員である環境大臣として、このアスベストの問題、実態に正面から向き合う覚悟と決意を示していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

 また、これから、今国会中に改正が予定される大気汚染防止法もそういう対策の一環になるかと思いますが、それによってどういう効果を期待されているか、また、この法改正とは別に、今後どのような対策が考えられるか、環境大臣にお聞きしたいと思います。

石原国務大臣 松田委員の見識に富んだ議論を聞かせていただきまして、国の予算として百三十億という予算が多いのか少ないのかということはおきまして、これから予見され得る建物の解体に伴うアスベストの事案、さらに、その解体に伴い中皮腫等々の病症が発症する期間が、潜伏期間の長さからしますと、二千七、八十年代、そういうときまでに、どれだけの備えと、どれだけの法律改正と、法にのっとったこの問題に対する対応をするかというのが問われているということを、委員の御議論を聞かせていただきまして、強く思わせていただいた点でございます。

 そして、今国会に提出を予定されておりますこの法案の中の一部を御紹介させていただきますと、これまでは、やはり解体工事においては、工事施工者よりも、このビルを解体してくれという発注者の側が当然優越的地位にありますので、強く力が作用してまいりました。しかし、そうなりますと、工事を受けた側は、発注者の側から、おい、ここのことは大きい声で言うなよというようなことで、今委員が推計値なのか実数なのかという御指摘があったように、実態を正直言ってどこもなかなか正確には把握できていないというのが、私は、今の御議論を聞いていた印象でございます。

 そういうことを考え合わせますと、アスベストの飛散を伴う解体工事の届け出義務者を工事施工者から発注者にする、また、そこにも虚偽のことがあれば罰則をつけるということで、ある程度はこれからの事案については縛ることが可能でありますけれども、残念ながら、これまで優越的地位にあった者から言われた企業あるいは個人がどれだけの被害を受けているかということは、なかなかこれまでのものを、推計するのも私は難しいのではないかと思っております。

 そしてまた、実態の工事というのは都道府県等々が面倒を見ることになるわけなんですけれども、立入検査自体も権限がない、こういうことでは、実態の把握というもの、また、これは、通報等々が各現場の地元にあって、国の役所に来るものではございませんので、やはりそんなときに立ち入り権限を知事に持たせることによって、これからの部分については、この法案が、御審議をいただき、成立した後は、かなりの縛りができる。ただし、委員の長期的な視野に立った問題の解決には数割程度の役目しか持たないということも事実であると私も考えております。

 それで、これからどうするのかということですけれども、やはり、委員御指摘のとおり、物には耐用年数があって、そのピークがいつ来るかということがわかり、過去にも、また現在も、また議論が多い少ない論になりますが、百三十億円を国が毎年毎年計上しているのは、私はかなりのボリュームだという認識をしておりますので、これが十分であるのかないのかということの議論を十分していただいて、健康被害を未然に防止するということが、最大の、政治家に与えられた、また、環境行政、アスベストの問題を取り扱わせていただいておりますので、環境省にとりましても大きな大きな問題だと省を挙げて認識していくことが肝要である、このように考えております。

松田分科員 環境大臣の力強いお言葉、ありがとうございました。ぜひその方向で頑張っていただければと思います。

 ただ、では、今回の法改正で実際に実効がどの程度上がるのか。解体現場で実際にこのアスベストが飛散している状況、どうも聞くところによると、そのチェックをしても結論が出るのに数日かかる、数日の間に解体工場が終わってしまってアスベストが飛散してしまったというようなことも十分考えられるという話がございます。

 そうすると、リアルタイムでモニターするような仕組みというのは、これは技術的にもだんだんそういうものが出てきているということになっているんですが、やはり現場で飛散状況を把握しながらチェックしていく、だめな場合は是正措置をすぐにとらせるとか、そういうことがないと、せっかくのこの法改正も実効が上がらないのではないかという意見もあります。また、そのために必要な人材の育成も必要ではないかという意見もございますが、大臣、いかがでしょうか。

小林(正)政府参考人 ちょっと事実関係についての御答弁をさせていただきます。

 今おっしゃいましたように、解体現場というのは非常に多様な現実がございます。また、割と、工場などと違いまして一定期間で終わっていってしまうということで、非常に捉えにくいというところがございます。

 そういうことから、今の大気汚染防止法で規制をかけておりますそのやり方というのは、具体的な作業のやり方について、しっかり封じ込めなさいとか、湿潤化してやりなさいとか、こういうことを決めているわけでございます。

 こういうことできめ細かくやろうということでございますが、先生の御指摘にございますように、何か目で見てすぐわかるというところに乏しいわけでございます。かねてから、数値をはかるようなことによってこれがチェックできないか、こういう課題がございますが、数値だけでやっていくには、ちょっと、機械の精度の問題、あるいはまた、今おっしゃいましたように時間がかかってというような課題がございまして、今、私どもでは、これは直接法律でございませんが、この法改正を機に、この作業基準も、より充実した形でやるために、濃度、本数などをはかることによりまして、ちゃんとその決められた手順がやられているかどうか、こういうことをチェックする、そういうようなことも施行の段階ではやっていきたいと考えているところでございます。

 また、リアルタイムでわかるような機器の開発、これも重要な課題でございまして、幾つかのものが提案をされているのでございますが、本当に、きっちり今、本来のやり方で専門家が顕微鏡で見るようなものと精度がどの程度合ってくるかということをしっかり見きわめているところでございます。ちょっと今の感じですと、まだまだ開発、向上の必要があるのかなという感じを持っておりますが、こちらの方もしっかりやってまいりたいと思っております。

 また、これを使う人材の問題、この辺もぜひ心がけていきたいと考えているところでございます。

石原国務大臣 ただいま局長から御答弁をさせていただきましたけれども、委員の御指摘のとおり、この問題のピークは将来に来るわけでございますから、それまでに、局長の方で機器の信頼性ということのお話がございましたとおり、この信頼性を高める、また、人材、技術というものをしっかりと充当していくために、施策をこれから積み重ねていきたいと考えております。

松田分科員 特に、日本は地震大国でありまして、これから東南海大地震とか、いろいろなことが予想されている。一千万トンあるわけですから、それが地震のたびに、たびといって、そんなにしょっちゅう起こってもらっては困りますが、もし起こった場合に、大変悲惨な事態、今回の大地震の後に大津波が来ましたが、大震災の後にアスベストの災禍が来る。しかも、それが実際に中皮腫なりなんなりで発病するのは数十年後である。津波とは違って目に見えない恐怖が日本に存在しているという状況を考えますと、やはりもう一度初心に返って、今後予想される、特に被災地となりそうな場所におけるアスベスト使用の状況とか、それを徹底して調査し、そして対応策を策定する。

 さらに言えば、現在、安倍政権では、アベノミクスの二本目の矢として、積極的な公共投資ということをやっているわけでありますので、この際、国民の命を守るインフラ対策ということで、いわゆる国土強靱化と言われていますが、その中に、国民の命と安全を守る強靱さということを築く上でも、特段の資源配分をしていく必要があるようにも思いますが、環境大臣、いかがでしょうか。

石原国務大臣 これから日本を襲うであろう東海、南海、中南海の地震に対応して十分な備えを行っていかなければならないということは言うまでもありませんが、やはりこのアスベストの問題も、その問題の発生の後、あたふたすることなく、実態の把握ということにはこれから努めることができます。

 ただし、難しいのは、私有財産である場合が多いわけでございますので、これに対してどこまで国の力が及ぶのか、また、どこまでを国が援助していくのか、そういうものも含め、慎重に検討させていただきたいと考えております。

松田分科員 過去のことを言っても仕方ないのですが、何でそもそもこんなに日本のアスベスト対策がおくれたのかということを考えますと、やはり状況対応型で後手後手に回りかねないこの日本の行政のあり方というものに行き着くような気がいたします。

 せめて、これからは、計画性を持った、戦略性のある行政をいかに築いていくか。この問題も、長年にわたる自民党政権のもとで大きくなってきた問題でもありますので、やはりこれからは、より中長期の視点に立った、一般国民の立場に立った行政や政治をいかにつくっていくのかということをアスベスト問題をきっかけに考えていく必要があると思っております。

 日本は世界で最初に人類共通の課題に直面する課題先進国だという言葉がありますが、この問題に関して言えば、どちらかというと英米の方が課題に先に直面していたわけなので、日本は課題後進国なのかもしれませんけれども、せめて、地震大国として課題解決先進国になるように、関係者の力を合わせて英知を出していければと思っております。

 以上で質問を終わります。どうもありがとうございました。

今村(雅)主査代理 これにて松田学君の質疑は終了いたしました。

 次に、佐藤正夫君。

佐藤(正)分科員 みんなの党の佐藤正夫です。

 石原大臣、お疲れでしょうが、ちょっとおつき合いをしていただきたいと思います。

 秋野政務官、こんにちは。同じ地元です。どうぞよろしくお願いをしたいと思います。

 実は、北九州にあるJESCO、いわゆるPCBの廃棄物処理施設へ、先週の土曜日ですけれども視察に行かせていただきまして、いろいろ御指導を受けてまいりました。今の現状もずっと聞いてまいりました。それを踏まえながら質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 まず最初に、PCBの特措法ができました。なぜPCBの特措法ができたのか、簡単で結構ですから、その経緯だけお願いをしたいと思います。

秋野大臣政務官 お答え申し上げます。

 PCBを含むトランス、コンデンサー、安定器等は、産業廃棄物に該当しまして、本来であれば電気機器メーカー等が中心となって処理をしなくてはならないものでありましたが、その焼却の対応が三十年かかってもできなかったという背景がございます。

 そして、当時、ダイオキシン問題が社会的関心を集めていたこともございまして、欧米と比較して厳しい環境保全上の対策や処理方式を採用する必要があり、そういった背景があって、関係者の御理解を得て処理を開始することができましたが、その結果、処理費用が通常の産廃処理において行う焼却処理と比較して高額になっているところでございます。

 このため、一般に処理を行う資力に乏しい中小企業においても確実に処理が行われるよう支援する必要があるとされたところでありまして、こういった形でPCB特措法におきまして国や都道府県、事業者等の責務を定めて、現在対応を行っているところでございます。

佐藤(正)分科員 御説明、ありがとうございました。

 まさにそうなんだと思います。本来は廃棄物ですから、事業主体が支払って廃棄をするというのが本来の姿ですよね。

 そして、PCBの特措法が平成十三年にできた。昨年、政令改正をされたと思います。二十四年十二月十二日に、期間を延期すると。平成三十九年三月三十一日まで、あと約十一年の延長をされたということでありますが、なぜ延長しなきゃいけなくなったのか。

 それはまさに、例えば当初の計画が、普通だったらもうずさん。十五年でやりますよというお約束をしておきながら、ふたをあけたら十一年延長。これは民間ではあり得ないんですが、そこを少し説明していただきたいと思います。

秋野大臣政務官 JESCO事業におきましてPCBを処理するに当たりまして、さまざま困難な問題が起きました。

 例えば、処理物の多様性、複雑性ということで、規格品でないものが非常に多かった。缶体や内部構造が非常に多種多様でありました。あるいは、製造時から時が過ぎて情報が不十分だったということ、長期の使用や保管の過程で劣化などが起きている、こういったような背景等もございました。

 そして、先ほど申し上げましたが、化学処理を用いた処理システムも行わなくてはならないような状況から、多くの技術的な課題というものが操業後になって初めてわかったというような背景もございます。

 そして、委員も土曜日に御視察いただいて、施設の外部にPCBを出さないというような仕組みにさせていただいたものですから、陰圧のような状況もお感じになったかと思いますが、その管理を含む厳重な閉鎖系での作業が非常に必要となりまして、安全な労働環境も確保が極めて困難な状況にありました。

 こういったような問題をずっと解決しながらさせていただいたというような状況でございます。

佐藤(正)分科員 操業以来、大変困難なことがたくさんあったということですよね。

 平成二十年六月、福田内閣にて長浜議員が質問主意書を出しています。その答弁は、「JESCOは、政府及び民間企業等に対してその業務に必要な人材の派遣を求め、関係法令に従い、事業基本計画に定める処理の完了の予定時期までにPCB廃棄物の処理を完了するよう事業を行っており、これまで適正にその業務を遂行しているものと認識している。環境省としては、PCB特別措置法に基づき環境大臣が定めたポリ塩化ビフェニル廃棄物処理基本計画に沿って、今後とも適切にPCB廃棄物の処理が進展するものと認識をしている。」と答弁されているんです。

 この答弁は、先ほど秋野政務官がお答えになったことと乖離していませんか。その時点から非常に困難だとわかっているんですよ。だけれども、適切に処理をし、遂行できるという答弁をされているんですよ。そこはどのようにお考えですか。

秋野大臣政務官 私どもとしては、どんどん出てくるさまざまな課題を適切に解決してきたところでありまして、現状においては先ほど申し上げたような課題についてはほぼ解決できたものと考えておりますので、これからしっかりと対応してまいりたいと思っております。

佐藤(正)分科員 それはちょっとおかしいですね。平成十三年にできて、平成二十年ですから、もう七年、約半分過ぎているんです。そのときに適切に処理ができると言っている答えがあるわけですね、内閣として。しかし、現実にはまた十一年延長しなきゃならない。その延長する理由は何か。まさに安全管理面等もあったんでしょう。

 そこでお尋ねをしたいんですが、そもそもどのように計画されていたんでしょうか。例えば、十五年間で全部処理をするという計画だと思いますが、この計画は、例えば、政府がやったのか、それともJESCOがやったのか、どちらがどうやってこの計画案を出されたんでしょうか。

秋野大臣政務官 基本計画を作成したのは国でございます。

佐藤(正)分科員 基本計画を作成して、JESCOはどういう立場になるんですか。

秋野大臣政務官 基本計画に基づいて施設運営をJESCOが担当するという仕切りでございます。

佐藤(正)分科員 だったら、なぜもっと早く計画変更等をやらなかったんですか。

 さらに、その計画にのっとってJESCOが設備投資、設備をつくってまいりましたよね、全国に五カ所。過去のことですから、これ以上は申し上げませんが、しかし、政府の答弁と実態がかけ離れているということは指摘をしておきたいと思います。

 そこで、今回、十一年延長されるということですが、どこをどういうふうにすれば十一年で完了できるんでしょうか。

秋野大臣政務官 御質問ございましたが、PCBの特措法の施行から十年を経過しましたので、廃棄物の処理の現状を把握するとともに、委員御指摘の、今後の適正処理の推進策を検討することを目的としまして、有識者による検討委員会で検討を行いまして、昨年の八月に報告書が取りまとめられたところでございます。

 これまでの取り組みや課題について整理をさせていただきまして、今後の処理推進の基本的な考え方、具体的な対策や処理期限の見直しにつきましても御提言をいただきまして、本報告書に基づきまして昨年十二月にPCB特措法施行令を改正させていただきまして、保管事業者がPCB廃棄物を処分しなければならない期間を三十九年三月三十一日まで延長させていただいたところでございます。

佐藤(正)分科員 だから、今まで問題があってできないということですよね。その問題をどのように解決するかがわかっていないんでしょうか。わからないと、例えば十一年延長しても、また延長にならないですか。何が原因でできなかったのか。

 要は、私が言いたいのは、国民の皆さんにお約束をしたのであれば、それはしっかりやるようにしなきゃならない。となれば、障害があるのであれば、その障害を解決しなきゃならないんですよ。だから、その解決策があるから、昨年の検討委員会が行われたんだと私は思います。そして、延長ができたんだろうと思いますが、その解決策についてお答え願いたいと思います。

秋野大臣政務官 先ほど、作業員の安全対策について改善をさせていただいたということは、今御説明をさせていただいたとおりであります。

 もう一つ追加して御説明をさせていただきますと、これまでJESCOが対応しておりました高濃度のトランスなどに加えまして、PCB処理の特措法ができた後に、微量のPCBに汚染されたトランスなどが大量に存在することが判明をいたしました。

 こういったものをどうするかということで処理体制の検討を行わせていただきまして、微量のPCBに汚染されたトランス等については、二〇一〇年から処理を行っているところでありますが、こういったところが非常に時間がかかるという見込みがございます。

 そのため、二〇一六年に処理を完了することが困難な状況になりましたので、こうした状況を踏まえて、特措法の延長をさせていただいたところでございます。

佐藤(正)分科員 もっと具体的に言っていいと思うんですね、大臣に答えてもらっていないんですから。

 全国で五カ所つくりました。北九州市が第一号です。北九州市へ私は行かせていただきましたが、かなり努力をされております。かなり、北九州市の持ち分と言ったら失礼でしょうけれども、については順調に進んではおるんですね。

 ところが、あとの地区、例えば東京にしても、大臣も地元のことですからよく御存じだと思いますが、安定器の問題で大騒ぎになったと思います。東京も、今どういう状況になっているのか。東京自体、他の地区が、基本的に当初の処理予定がどれぐらい進捗しているのか、そういった総合的な判断で、基本的にはできなくなった。ただ単に安全面だけじゃないと思いますよ。

 その辺はどうなんでしょうか。

秋野大臣政務官 PCBの特措法を施行した後、環境省は、先ほど委員がおっしゃっていただきました五つの地域などと連携をさせていただきまして、処理施設の整備内容について検討を始めさせていただいたところであります。

 委員御存じのことだと思いますが、例えば安定器などを含めた全国の処理体制を可能な限り速やかに確保したいところでありましたが、地元地域との関係や処理施設の立地場所の観点などから、この五つの箇所におきましても、それぞれの地域の実情に応じて計画を定めさせていただいているところであります。

 先ほどおっしゃっていただきました北九州市あるいは北海道におきましては、当初の地元自治体における処理対象物の検討段階から、例えば安定器等につきましてもPCBの汚染物を含めて処理を行うことが検討されておりましたけれども、それ以外のところは、必ずしもそういったところではありませんでした。

 こういったことも一つ背景にありまして、検討会などでは、得意分野に応じた処理方法も対応していいのではないかとの御提言もいただきましたので、それに沿って私どもとしても検討してまいりたいと思っています。

佐藤(正)分科員 秋野さん、大臣、大きな問題は、これをやるときに、当然、各自治体そして住民に御理解をいただくために説明会をやられているんですね。そこで、例えば北九州だったら、どの範囲、すなわち、事業対象区域、どこからどこまでの部分のPCBの廃棄物は持ってまいりますよ、そして、実は、特措法でできた期限までに終わらせますよ、こういう説明をして了解を得てやっているんです。

 そして、今度またまた十一年延ばすとすれば、当然、本来ならば地域住民に速やかに御説明しなきゃいけないんですよ、実際。だって、そこまで御理解をいただいて、まあ、嫌ですよ、皆さん、そういう毒薬みたいなものが来るのは、地域の方は。それでも、安全を確保していただけるならばということで了解をしてやってきたんですよ。

 ところが、説明したことが全く違う。全然ずれているんですよ。十五年でやりますと言ったのが、あと十一年延ばしてください、さらに私の方から言わせていただければ、その事業対象区域も変更せざるを得ない、こういう現実になっているんではないですか。

秋野大臣政務官 先ほど御答弁をさせていただいたとおり、さまざまな課題は乗り越えたところでありまして、現時点としては順調に推移をしていると考えております。ただ、二〇一六年までには八割程度しか遂行することができないので、大量に存在をした、微量のPCBに汚染されたトランスの問題等にしっかり対応させていただくということで、十年の期限の延長をお願いしたところでありまして、大幅におくれているという状況ではないということも御説明をしておきたいと思います。

佐藤(正)分科員 それはおかしいですよ。十五年でやると、約十年、十一年延ばして、大幅におくれていないと皆さんが思いますか。十五年でやりますよとお約束しておいて、あと十一年延ばしてください、これが大幅でなかったら小幅って幾らなんですか。それは地域住民の方を考えていないですよ。私は、早くしっかりと処理をしてもらいたいんですよ。

 そして、協力していただけるところは協力していただく。北九州へ行ってきましたけれども、本当に安全管理を一生懸命やっています、現場は。だから、もう実績が実はあるんですよ。当初は全く実績のないところから説明をしていって、これだけの実績を残してきた。ところが、先ほど言った東京にしても、うまくいっていないんですよ。大臣、うまくいっていないですよ、東京は。

 そこで、なぜうまくいっていないのか、そういうことをしっかりと検証はされたんでしょうか。

秋野大臣政務官 先ほどJESCO事業の特性に伴う困難性については御説明をさせていただいたところでありますが、当初、東京事業所におきましては、高圧トランス等それから安定器を同じ設備で処理することを目指して、例えば水熱酸化処理設備を整備させていただいたところでありますが、これが安定器の処理に関しては技術的な問題があることが判明をいたしましたので、これ以降、安定器につきましては東京の事業所におきましては受け入れが行われていない、すなわち北九州でしか今までできておらず、北海道は間もなく運用ができるような状況になっておりますけれども、こういう形で事業の進捗についておくれが、先ほど申し上げた特性に伴う困難性ゆえに起きているということを御理解いただきたいと思います。

佐藤(正)分科員 秋野さん、まだ北九州に持ち込んでいないんじゃないですか。持ち込んでいますか、もう既に。安定器、東京のものを持ってきているんですか。

秋野大臣政務官 北九州が担当すべきところで、プラズマを用いて安定器については処分をさせていただいているということであります。

佐藤(正)分科員 要は北九州が先駆者なんですね、第一号で。北九州はうまくいっているんです。ところが、この処理の仕方が違うんですね、東京とかは。うまくいっているのは実は北海道もうまくいっています。北九州と北海道は同じ処理の仕方をやっています。ところが東京は違う。何かおかしくないですか。先駆者がうまくいっているのに、あえてそうでない方式を使う。何かおかしいような気がいたします。

 確証がありませんから、ここはもうこれぐらいにしておきたいと思いますけれども、大臣、今こうやりとりをやっていまして、国民の皆さんに明確にお願いをすべきこと、それから住民の方々にお願いをすべきこと、いち早く行動に移すべきだと思いますが、いかがですか。

石原国務大臣 ただいま佐藤委員と秋野政務官との議論を聞かせていただきまして、私どもが政権にあるときに、当初の見込みとしては予定どおりの年限で問題を処理できるということを言わせていただいておきながら、このような事案を招き、昨年、政権交代前ではありますけれども、大きな変更を行ったということ、そしてそれを引き継いだということで、大変私も遺憾であると思っております。

 ただ、今佐藤委員がおっしゃられたとおり、これは処理しないことには有害物質が存在するわけでございますので、これからも、住民の皆様方の説得、あるいは先駆的な北九州の事案の方策を模倣して、北海道の方でも、できれば東京の方でも処理を加速化していく、その他の事業所でも、大阪、豊田等々でも処理を加速化していくということに努めさせていただきたい、こんなふうに考えております。

佐藤(正)分科員 ぜひ、なるべくスピード感を持ってやっていただきたいと思います。

 そして、その中で、私は、民間から見た、納税者から見た感覚で物を申したいと思いますが、例えば、当初、国が基本計画をつくり、そしてそれに合わせてJESCOはこれでやれるだろうという施設をつくって、ふたをあけてみたら、いろいろな問題が起きたからだめでした、もう一回延長させてください、この施設をつくってください。

 そのお金はどこから出てくるんだろうと思うと、これまでにJESCOに、日本環境安全事業株式会社というんですけれども、国が一〇〇%出した会社です、ここに何と累計で一千三百億円。一千三百億円ですよ。これは設備投資ですよ。施設設備費で一千三百億円出している。そして、さらには、先ほど秋野政務官が言われたように、中小企業の方々に、独立行政法人環境再生保全機構、こちらに国と都道府県が同額を出して、これまでに、国二百三十億円、都道府県二百三十億円、これを毎年出しているんですね。

 そういう中で、まさに計画破綻ですよ、当初の計画。民間だったらどうするんでしょうね。JESCOの会長さんか理事長さんかわかりませんけれども、本来ならこれは責任問題ですよ。

 そこで、もう時間がありませんが、もう一点だけお尋ねをします。

 今後どれぐらい、まだお金を投資しようと思っていらっしゃるんですか、投資しないと完了しないと思っていらっしゃるんですか。

秋野大臣政務官 国が行うべき施設整備という点では、北海道はもうほぼめどが立ちましたので、今後、新たな改造がない限りは、そういった投入は必要ないと考えているところでございます。

佐藤(正)分科員 すごい大事なことを言われたんですよ。では、もうこれ以上に施設整備費は出さないということで解釈をしました。いいですね。

 それからもう一つ。もう時間がありません。JESCOで、いわゆる官僚OB、全く経営能力がないと僕は思っています。企画能力もなし。安全管理はやっているけれども、経営能力、管理能力はない。

 そこで、JESCOには官僚のOBが天下りしていると思いますけれども、天下りがあれば、天下りの人数もしくは年収及び退職金、そして現役出向がどれぐらい行っているのか、簡単にお願いします。

秋野大臣政務官 先に御質問にお答えをしますが、OBの人数は六名でございます。そして、現職として平成二十五年四月一日時点でいるのが、在職中が一人という整理でございます。

 現役出向者は、同じく平成二十五年四月一日現在で十二名ということになります。

 先ほどの質疑についてですが、これからもさまざまに出てきた課題につきましては対応してまいりたいと考えておりますので、何らかの課題が起きたときにさまざまな資金投入等が行われるということは御理解をいただきたいと思います。

佐藤(正)分科員 うらやましい会社ですね。自分たちがやるといって、こんな問題が起きたから、また追加工事を下さい、何を下さい、期間が間に合わなくなったからまた延ばしてください。民間ではあり得ません、本来。それを一つ指摘しておきます。

 それから、今、現役出向が十二名。私は、北九州に行ってきましたけれども、安全管理なんですね。この現役出向の方々の職種というのは何なんですか。

秋野大臣政務官 事務、そして技術系の職員が出向してございます。

佐藤(正)分科員 実は、事務系なんかは出向させる必要はないですよ、逆に地元で採用してもらった方がいいですよ、事務系なんて。JESCOの役割は何なのかと言ったら、安全管理だと明確に言っていましたよ。何で現役出向に事務系をやらせるのか。これこそまさに現役の天下りと言ってもおかしくない。これがずっと続いている。

 そして、安易にこれまで一千数百億円。恐らくこれからも莫大なる税金投入をされるんでしょう。だったら、現役出向ももう一回精査しなきゃいけないんじゃないですか。そう思います。

 さらに、これまで支払ってきた退職金と報酬を、JESCO、日本環境安全事業株式会社、平成十六年からかな、これまでちょっと累計をして足してみたんですよ、どれぐらいのお金を払っているんだろうかなと。そうすると、JESCOの方では大体三億六千万以上のお金が、俗に言う天下りの方々に払われているのが三億六千万です。そして、もう一つの団体、独立行政法人環境再生保全機構。ここも、天下りの役員ですよ、役員だけにこれまで二億五千万を超えるお金が報酬として払われています。

 こんな実態が今全てこの議論の中で明らかになってまいりましたが、環境大臣、今言うこういう税金ですよね、しっかりと精査をしてもらわなきゃならないし、ましてや、当初から私が申し上げたように、計画をしても計画をしてもなかなかうまくいかなくて、どんどんどんどん税金が投入される。さらには、そこの役員も何一つ責任をとってもいない。そして、トータルでいくならば、JESCOは三億六千万円を超える報酬が払われている、この実態。総合的に見て、環境大臣、これからどのように考えていかれるのか、お答えを願いたいと思います。

石原国務大臣 実は、これは私が行革大臣のときに切り出した組織なんです、保全機構の方は。

 これはどういう整理をしたかというと、官業と民業がある、しかし、官業でも民業でもできない部分、すなわち官の現業部分というものはやはり存在するんじゃないか。それは、特殊法人という形ではなくて、エージェンシーという形でその部分は残そうと。

 なぜそれを残すのか。今度のこのPCBの処理にしても、実は、民間企業に全部やってくれといって設備投資をして、もちろん持ち込まれるものについては所有者責任でありますけれども、それに対しても、それを処理するには国の補助が台数に対して出ている。これを全部民間でやったら、そこの補助率が上がるだけで、結局払う金額というのは同じで、ましてや、やらない人間が出てくる。誰かがやらなければいけないものを官の力を使って、ただ、官が直接やるのではなくてエージェンシーというものを使ってやるという整理を、実は小泉行革のときはさせていただきました。

 そんな中で、民主党政権になったときに、民主党政権の整理は、官業と民業の二つに分ける。ですから、エージェンシーも廃止したり民営化したり。まあ、これは一つの考え方でありますけれども、そうしますと、この部門はどこかの役所の現業部門として残らざるを得ない、そういう整理をさせていただいたわけであります。

 そこに働いているOBの職員の方々が幾ら退職金をもらったかということについては、私、承知を現在しておりませんけれども、それは、国民の皆さん方が納得できるものでなければならないということは当然でありますし、能力のない人間があるいは役所が押しつけた形での天下りということは行われないという形に整理をさせていただいていると記憶しております。

佐藤(正)分科員 時間が来ましたので終わりますが、大臣、もう少し認識を変えた方がよろしいですよ。

 いいんですよ、官民でやってもらってもいいんですよ。だけれども、現実が、今までの歴史が物語っている。そして、現役出向にしても、事務職は要りませんよ。

 そのことを最後に申し上げて、質問を終わります。

今村(雅)主査代理 これにて佐藤正夫君の質疑は終了いたしました。

    〔今村(雅)主査代理退席、主査着席〕

西銘主査 次に、中島克仁君。

中島分科員 みんなの党の中島克仁です。

 本当にお疲れだとは思いますが、よろしくお願いいたします。

 先週の予算委員会で、原発の再稼働に向けた新安全基準、それを取りまとめている原子力規制委員会、その問題について御質問をさせていただきました。

 その中で、新安全基準をつくられている規制委員会の田中委員長の御発言ですね、昨年九月に就任された当時、さまざまな要因には考慮せず、厳格にいくという御発言をしておったと思います。それが、徐々にニュアンスが変わってきたんじゃないか。

 資料の一枚目にも出しました。当初は、とにかく厳格にいくという御発言だったわけですが、その後、直近では、経済性も憂慮するような御発言ともとられるんじゃないか、そんなことにつきまして、田中委員長に直接御質問をさせていただきました。田中委員長からは、発言の趣旨としてそうとられた部分はあるけれども、あくまでも厳格にいくというお答えをいただきまして、それは真意として私自身も捉えたところです。

 まず、御質問とすれば、その厳格にいくという方針に間違いはないですね。

山本政府参考人 お答えさせていただきます。

 委員御指摘のとおり、原子力規制委員会の役割は、あくまで、電力需給の問題、あるいは経済的、経営的問題といったことにかかわることなく、科学的、技術的見地から原子力発電所に必要な基準を設定いたしまして、原子力発電所に対してその基準が適合しているかどうかを確認するものということで、現時点におきましてもこの考え方には変わりがないものというふうに考えているところでございます。

中島分科員 この間もちょっと御質問したんですが、安全基準から規制基準に名前を変更する、パブリックコメントの意見等も踏まえてということだったんですが、これはもう間違いない事実ですか。

山本政府参考人 御指摘のとおり、今回策定いたしますものは、安全基準じゃなくて規制基準という呼び方をしようと思っております。

 これは、安全基準ですと、それを満たせば安全になってしまうと努力を怠ってしまうのではないかということで、規制上の要求であることを明確にするために規制基準という呼び方に改めたものでございます。

中島分科員 先日も田中委員長からそういうお答えをいただきまして、でも、私は、どうしてもそこがちょっと納得できないんですね。今回の福島の原発事故を踏まえて、とにかく厳格な安全、それを担保するための規制ということだったんです。

 安全から規制へ、そんなことで時間を費やしてもしようがないんですが、これはどうして気にするかといいますと、その発言の趣旨、どういう捉え方をするのかは個人のあれなんですが、そういう経済性や、政治的な、政権がかわったとか、さまざまな事情も一つ。そして、直近では、今月の五日から福島第一原発ではトラブルが相次いでおります。そういったことも踏まえていきますと、国民の皆さんは、やはり厳格さが緩んでいるんじゃないかと。私自身も、やはりそういった経緯の中で、それを否めないなということなんですね。

 きのうもありました。この間、三カ所目の汚染水の漏水問題。一般的には、これは単なる水漏れなわけですよね。その原因が、全て東電さんの発表に任せられている。その前には、停電事故、小動物、ネズミと言っておりましたけれども、それも全て東電さんの精査ですよね。その件について。

山本政府参考人 委員御指摘のさまざまなトラブルが最近続いているということは、私ども規制委員会としましても、これは大変大きな問題であるというふうに考えてございます。

 特に、福島第一原子力発電所というのは、やはり事故を起こしたものでございますから、依然としてリスクが高い状況にあるということは、まず認識をしなければならないというふうに考えております。ただ、そうはいっても、依然として、やはり設備面あるいは体制面で脆弱性を克服してこれを改善していくということが大変重要であると思っております。

 それで、先週開きました規制委員会におきましても、こういう現状の課題に対しまして、まず、東京電力に対しては継続的な改善を求めるというのは当然ではございますけれども、規制委員会といたしましても、この対応を強化していくというふうなことを考えているところでございます。

 具体的には、福島第一におけますリスク要因を洗い出しまして適切な監視をしていくようなこと、それから、適切な廃止措置に向けまして、政府の担当者であります資源エネルギー庁と連携をいたしまして、これを強化すること、それから、現場の規制事務所に検査官がおりますけれども、こちらの監視体制を強化すること、こういったことを決めまして、しっかり対応をしていきたいというふうに思っているところでございます。

中島分科員 やはり、後手後手と言われてもしようがないんじゃないかと思うんですね。先ほど言った、安全から規制へということだったんですが、今回、もう三カ所目。停電事故等を踏まえていきますと、トラブル続きなわけですよね。

 そういった中で、ちょっと検証というか確認したいんですが、汚染水漏れ問題では、昨年末に東電さんが造成した地下貯水槽について、原子力規制委員会が、原子炉等規制法による使用前検査の対象とせず、施工ミスなどの厳格なチェックをしていなかったと言われておりますけれども、それは事実ですか。

山本政府参考人 お答えします。

 今回水漏れを起こしました地下貯水槽でございますけれども、これは、原子力規制委員会発足前の旧原子力安全・保安院の時代におきまして、設計の妥当性とか中身について確認をしたものでございます。

 それで、もちろんこれは応急の措置という形で実施をされておりますので、特に、増大いたします汚染水に対してきちっと保管をする、そのためのものとして用意されたものでございます。

 そういう旧原子力保安院時代に確認をされたものについて、現地の検査官ももちろん検査などに一部立ち会い、あるいは記録の確認などをしておりましたが、結果的には、御指摘のような水漏れがありましたので、やはり、施工上あるいは管理上の問題があったんだというふうに考えております。

 いずれにしても、その辺の技術的な原因をしっかり見きわめていく必要があるというふうに考えておるところでございます。

中島分科員 今回、原発再稼働に向けた新安全基準ということなんですが、要するに、以前の保安院の精査がされていないということですよね。全てそういう前提のもとで、これもちょっと確認したいんですが、現地の保安検査官も造成作業に立ち会って、形式的な確認にすぎなかった。さらに、この原因について、地下貯水槽は、今おっしゃったとおり旧原子力安全・保安院で決めたもので、その対策を急ぐために原子炉等規制法から除外されていた。これも事実ですか。

山本政府参考人 御指摘のとおりでございまして、地下貯水槽につきましては、事故後の応急の措置ということで、旧保安院の組織で評価、検討を行ったものでございます。

 その後、規制庁ができましたけれども、既に設備は建設が進んでおりまして、その建設段階の確認を行っていたという状況でございます。

中島分科員 これは報道で知ったんですが、これも確認です。移行の途中ということだったわけですよね。除外された原因として、規制委員会発足に伴う業務移行の混乱で、この計画に対する旧保安院の評価を精査する時間がなかったためという報道がされておりました。これも確かですか。

山本政府参考人 この設備につきましては、既に完成をして運用なされているというところで、規制委員会が発足いたしましたのは昨年の九月でございます。したがいまして、九月以降を、福島第一については新しい法律のもとで、特定原子力施設という形で指定をいたしまして、それに基づいて実施計画というものが今現在提出されて、それを現在、私どもで審査をしているという状況でございます。

 したがいまして、既に行われたものはある程度所与のものという形で前提を置いていたことも事実でございますので、今回の件を踏まえまして、先ほども言いましたような原因究明、技術的な問題はどこにあるかということをきちっと評価した上で、この問題に対応していきたいというふうに考えております。

中島分科員 確認を何点かさせていただいたんですが、福島の原発事故はまだ全く終結していないですよね。それで、以前の保安院の基準、そして今回は汚染水の問題ですけれども、やはりトラブルが相次いでいるわけですよね。そういったことが全く解決されていない中で、今回、新安全基準、そして新安全基準を満たす新たな要件みたいな中、いろいろ、さまざまあるんですけれども、五年間猶予された。そういったもろもろの内容が、やはり、昨年九月に厳格にやると言ったことから随分緩んでいるなという印象を持っているのは、私だけではないんじゃないかな。

 私自身も、福島には何度か行きました。そして、きのうですか、田中委員長も初めて福島第一原発……(山本政府参考人「二回目です」と呼ぶ)二回目。まあ一回も二回もそんなに大して変わらないかもしれないですが、そういう現状の中で、やはり、私自身は、もっと国民の皆さん、特に福島の皆さんに不安を与えない、その一方で新安全基準というものが本当に国民の皆さんに理解されるのかどうか、そういったことを非常に危惧しています。

 五年猶予した二点、また改めて根拠をお聞かせください。

山本政府参考人 今回策定をしようとしております新規制基準の運用について、ことしの三月の原子力規制委員会におきまして、その施行方針について議論をいたしました。

 まず、大きな原則としまして、今回の福島の事故のようなシビアアクシデント、これを起こさないための対策に加えて、大規模自然災害あるいはテロを含めたさまざまな事象により万一シビアアクシデントが起きた場合の対策として必要な機能は、ことし七月に新規制基準を施行するわけでございますけれども、この七月の段階で全て備えていることを求めるものでございます。

 しかしながら、安全の追求には終わりはなく、これは継続的に取り組む必要があるというのが規制委員会の姿勢でございまして、このため、必要な機能を満たした上で、その信頼性をさらに向上させるためのバックアップ対策についても要求しておりまして、これは施行後五年後に行うというものでございます。

 御指摘の五年のものの対象となりますのは、フィルターベントなどの特定安全施設と呼ばれるものでございますけれども、これらについては、信頼性をさらに向上させるためのバックアップ対策ということで、施行後五年までに実現を求めているものでございます。

中島分科員 フィルターつきベントは、福島第一原発の方式と、そうじゃないもの、大きく分ければ二タイプ。さまざまな五十基以上ある原発の中で二つの方式がとられているわけですね。その設置に対しては、やはりある程度期間が必要だ。これは理屈上、アメリカの規制委員会の方もおっしゃっておるので、それはそうなんですが、そういうことになりますと、その期間の間にそこが安全基準に満たされてしまう。猶予期間になってしまうと、その期間の中で事故が起こらないという前提になってしまうわけですよね。それが本当に厳格なのかどうかというのは、私にはやはりちょっと納得いかないところなんですね。

 あくまでも、安倍総理も所信表明でおっしゃっておりました、とにかく安定供給のため。しかも、復興のためにも一定の安定した電力供給が必要であって、そのある一定期間の間は原子力もエネルギーの一つと考える、安全が担保された原発については再起動するというふうにはっきりおっしゃっておりましたね。安倍総理がその後に言ったのは、原発神話ではない、安全文化の創設とおっしゃっていました。しかし、この経緯を見ていきますと、また新たなやはり原発神話、安全神話の創設にしか見えないんですね、私自身は。

 そういったことも含めますと、これから、今の福島、きょう、福島の議員の方もたくさん原発の問題、除染の問題も含めて御質問をされておったようですが、私自身は医者でもあります、今の福島の子供たちが抱えている不安、子供たちが子供らしくいられないわけです。そういった中で、一人でも多くの方の不安を取り除く努力をしなければならない。それが、再稼働ありき、そこに方向性があるという今の取り組みの中での新安全基準であれば、本当に厳密なのかなと言わざるを得ない、そういう問題だと思います。

 一点、この間もお聞きしたんですが、私は、田中委員長を含め、この半年以上の間に、そのバックフィット自体が困難なんじゃないかと。もう既に一兆円近く、その整備に使われているわけですよね。発想からいきますと、そうやって継ぎはぎだらけにしていくよりも、やはり最初が肝心ですから、世界一の安全基準を満たした新たな原発をつくった方が早いんじゃないか、そんな発想にならないか、非常に危惧しているわけです。その辺をこの間、経産大臣にも確認したんですが、正直、余りはっきりとした答弁は得られなかったんですね。

 その辺について、今そんな発想にはなっていないかどうか。

山本政府参考人 私ども規制委員会におきましては、原子力発電所の安全の確保を図る、そのための規制基準を今つくっているところでございます。

 御指摘の、新しい原発をつくるかどうかについては、これは、規制委員会として全く関与するものではございません。むしろ、今の既存の原子力発電所が規制基準を満たし、安全が確保されるかどうか、これをしっかり確認していくというところに注力していきたいというふうに考えております。

中島分科員 そこは確認したいところで、それは大前提だと思います。

 もう一点、福島第二原発についてです。

 これも、廃炉とは決まっておりません。予算委員会でも、長妻議員とかいろいろな方から第二原発について。そして、安倍総理からも、はっきりとしたお答えは得ていません。

 これは、安全基準を満たすとか、そういったレベルの話では私はないと思います。先ほどからも御質問が多々あるように、除染の問題、森林の除染もなかなか難しい、そういう基準の中で、現状の中で、自治体の方々も、廃炉にしてくれという御希望も強いと思います。

 そういう中で、いまだにそこがはっきりしないというところは非常に矛盾しているなというふうに考えるんですが、その辺についてはいかがでしょう。

山本政府参考人 お答えいたします。

 福島第二原子力発電所につきましても、三・一一の地震、津波の被害を受けて現在停止をし、その施設の一部の仮設の設備を恒設の設備に復旧すべく、これはむしろ安全機能を回復させるということの作業が今進められておるところでございます。

 御指摘のように、福島第二を今後どう扱っていくかということにつきましては、一義的には事業者がまず判断をする、あるいはエネルギー政策上の中で判断をされるものでありまして、私どもとしては、まず安全をしっかり確認をし確保する、こういった観点から対応していきたいというふうに考えてございます。

中島分科員 やはり、ちょっと歯がゆいんですよね。

 環境大臣にお尋ねしたいんですが、必ずそこでエネルギーの問題と原発の問題、さらに、原発事故がある前までの地球温暖化、低炭素社会の問題も含めていきますと、環境の部分と今後のエネルギー、そして原発の問題、やはり全て一つの中で考えないと、今もあったようにエネルギーの問題にかかわってという話になりますと、では、どこに、何と何を比べているのか、やはり一つになって取り組まなければいけないんじゃないかと私自身は思うんですが、環境大臣、いかがでしょう。

石原国務大臣 その点については、私も同意見でございます。エネルギーの基本計画なくして環境負荷の問題を議論することはできませんし、環境への負荷の問題だけを議論してエネルギーをうっちゃってしまったら日本の産業は成り立たない。これらもろもろを、これから、この後御議論があるかと思いますけれども考えていく、そんな中で、この原子力発電所。

 安倍総理はもう一つ言っているので、ちょっと御紹介させていただきたいんですが、原子力に依存した体制からは脱却をしていこう、こういうことを目指していこうということもあわせて言っています。それにはやはり工程があって、いきなりオール・オア・ナッシングということではないということで、今委員が御説明をされたようなことを総理は申し述べているのではないかと、私もそばにいまして感じているところでございます。

中島分科員 やはり、その発言はよくされておって、今後の問題と直近の問題、子供たちの将来を守るためにと私もよく言います。そのために何が一番必要かというと、今現在なんですよ。先ほど言った猶予期間の間に、では、事故があったらどうするんですか。それは守れなかったということになってしまうので、もうこういう事故、三・一一があった以上、やはり日本は、しっかりとそういうところに軸足を置いて今後進めるべきだなという認識です。

 それに付随した話になりますけれども、チェルノブイリの事故からもう二十七年がたちました。いまだにやはりチェルノブイリの問題も解決はしていないんですよね。そんな中で、昨年末からことしの初めにかけて、福島県内で三人の子が甲状腺がん、そして七人の子が疑いありという結果が出ました。それを踏まえて、ことしの三月に、青森と山梨、長崎でしたか、三県でスクリーニング検査をしたということです。もちろん、小児の甲状腺がん自体は百万人に一人、非常に珍しい病気の一つでありますが、福島で三人出た、それがどうなのかということでスクリーニング検査をしたわけですが、結果は有意差がなかったということになっております。

 この因果関係がないという結果が出たわけですが、私は実は、そんなことは全く関係ないと。御存じのとおり、チェルノブイリは四年目から五年目にかけて小児の甲状腺がんがふえ始めました。十年目をピークとしたわけですが、とにかく、今これから福島の子供たち、甲状腺がんの問題も含めて、科学的には証明できない放射能の影響、そういったことを踏まえていきますと、今後のそれに対する対策は、今、どんなふうになっているのか、お聞かせください。

佐藤(敏)政府参考人 お答えをいたします。

 今、甲状腺調査、超音波検査を例に出されまして、福島県の子供さんを含めて、福島県民の方をどう見守っていくのかという御質問だったと理解します。

 そういう意味では、福島県が実施しております県民健康管理調査、これが基本になってまいりまして、県民健康管理調査を福島県が実施する中で、環境省を含めた政府全体で、その取り組みというものを財政的にもまた技術的な面からも支援していくということになります。

 具体的には、今先生の御質問の中にありましたような県外における超音波検査の結果、三県調査と呼んでおりますけれども、これもやはり国としての応援でございますし、また一方で、非常に重要だと言われております事故初期の沃素、I131を中心としました初期線量被曝の状況、あるいは初期の放射線量がどの程度あったか、こういったことも、福島県単独ではなかなか難しい部分がありますから、放射線医学総合研究所など関係する機関とも連携をとりながら、国でないと、政府でないとできない部分は、技術的、財政的な面から応援をしているという状況でございます。

 引き続き、福島県や関係する方と一緒になって、支援をし、長期にわたって見守ってまいりたいと考えております。

中島分科員 私の知っている限りでは、甲状腺のエコーに関しては、二年に一回ということですよね。

佐藤(敏)政府参考人 お答えをします。

 結論から申しますと、二年に一回というのはもっと先の話でございまして、まずは、一学年に大体二万人ぐらいいらっしゃって、十八歳未満の方、当時福島県にいらっしゃった方については全員ということになっておりますので、合計しますと三十六万人の方について、ともかく基礎データをとろうということで、三十六万人の方、来年の三月までかけまして、ちょっと三年近くかかってしまいますが、浜通り、中通り、そして会津、大ざっぱに言いますとそういう形で、三年をかけて全部やってしまいます。

 その後は、二十になるまでは二年に一回、それから、二十を超えました後は三年に一回ぐらいのペースで二回目、三回目というものを実施していこうというふうに考えております。つまり、長期にフォローしていこうという形になっております。

中島分科員 基礎データをつくるためには、大規模なものを一斉にやって、要するに、私が言っているのは、その後のフォローなんですね。十八歳以上になったら二年に一回ということですが、チェルノブイリ付近、ベラルーシでは半年に一回という検査でした。今二年がたちまして、チェルノブイリの例からいくと、あと二年後、三年後には増加し始める、そういうことになると思います。

 先ほどおっしゃっていただいたように、今非常に不確定なんですね。先ほど、今回のスクリーニングの結果は全く関係ない、だからどうしたという結果だと言った意味は、おっしゃっていただいたように、事故から数カ月の放出された放射線核種の種類と量、これが全くわかっていないですよね。さらに、数カ月間の子供たちの行動動態、それを一カ月ほど前の環境委員会で御質問させていただいたんですが、今どのくらいまで進んでおられるんですか。

佐藤(敏)政府参考人 お答えをいたします。

 先ほど数字を間違えましたので、ちょっと訂正をさせていただきます。第一回目の調査は、二十六年三月までの間、三十六万人を対象に一通り基礎データをとるわけですけれども、それ以降、二十歳までは二年に一回、これは間違いないんですけれども、先ほど、二十歳以降は三年に一回と言いましたが、五年に一回の間違いでございましたので、訂正をさせていただきます。

 それから、今の御質問は、要するに、基本調査と呼ばれます、当時の行動、三月十一日からおよそ四カ月ぐらいの間にどういう行動をしたのか、それに基づいて外部被曝線量を見ていこうというものでございます。答えは、大体二五%ぐらい、約四分の一ということでございます。

 実は、浜通りや一番被曝量の多かった地域は五〇%近いところまで提出率が上がってきているんですけれども、残念ながら、会津を中心とした地域ではなかなか御提出いただいていないという状況で、県全体として見ると、二五%程度にとどまっているという状況でございます。

中島分科員 事故から二年たっているわけですよね。小児甲状腺がんの問題であれば、その二点が非常に重要なんです。そのデータが全くないうちに、先ほど言った、今回は大丈夫だよと言われても、そんなの関係ないですと言わざるを得ないんです。

 甲状腺のフォローに関しては、私も医者なので、エコーの検査をやるんです。侵襲は少ないですが、少しテクニカルなことも必要な部分がありまして、私は、今回、今後長期的にと先ほどもおっしゃいましたが、これから、甲状腺も含めて、低セシウムの被曝、そして科学的には証明し切れない放射能の影響をフォローしていくためには、やはり福島に、それに特化した病院が必要だ。ある意味、放射能専門病院、小児甲状腺がん病院、そういったものをぜひつくっていただきたい。環境大臣、どうでしょうか。

西銘主査 佐藤部長、時間ですので、簡潔にお願いします。

佐藤(敏)政府参考人 お答えをさせていただきます。

 がん診療連携拠点病院という制度があるのは、もう先生御存じのことと思います。福島県も、福島県立医大附属病院を含めまして、八つの連携拠点病院が指定されております。

 とりわけ、この福島県立医大には臨床腫瘍センターというものが平成十九年の四月に設立をされておりまして、これを拝見しますと、先生がおっしゃったような化学療法はもちろんのこと、小児がん、緩和ケア、院内がん登録という幅広い体制と内容で、充実したものがあるようでございます。

西銘主査 簡潔にお願いします。

佐藤(敏)政府参考人 まずは、この体制で対応いただくとしまして、環境省としましても、ふくしま国際医療科学センターというものの構想があるようですから、その構想に向けて、平成二十四年度の復興予算において六十億円を措置しまして、この臨床腫瘍センターとあわせて連携をとって、がん治療に邁進していただこうということで準備をしております。

中島分科員 ありがとうございました。

西銘主査 これにて中島克仁君の質疑は終了いたしました。

 次に、中村裕之君。

中村(裕)分科員 自由民主党の中村裕之でございます。

 石原大臣にお出ましをいただいて質疑をさせていただくこと、大変光栄に存じます。

 大臣、大臣の縁の深い小樽市も私の選挙区でございますので、お疲れとは思いますけれども、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 私の選挙区、北海道第四区でありますが、ニセコ積丹小樽海岸国定公園がずっと広がる、本当に自然豊かな、海の幸、山の幸に非常に恵まれた地域であります。

 自然豊かな地域でありますけれども、その自然豊かな中でも、ちょっと困ったことが起きております。生態系の関係でありますが、ゼニガタアザラシですとか、トドですとか、オットセイですとか、海の中ではそういった海獣類が非常にふえていて、漁業者が非常に困っているという状況でありますし、おかに上がると、エゾシカが六十万頭以上になりまして、被害額も六十億を超えている状況にあります。

 自然豊かな中でも、そういう、産業にとって困った状況があるわけでありまして、きょうは、怪獣退治ではないですけれども、海獣対策について初めに伺っていきたいというふうに思います。

 初めに、ゼニガタアザラシの漁業被害の状況を国としてどのように認識をしていらっしゃるのか、お伺いしたいと思います。

伊藤(哲)政府参考人 ゼニガタアザラシにつきましては、北海道の襟裳岬から根室半島にかけての沿岸域に生息しており、漁業被害としては、主として、生息域沿岸のサケ定置網漁において食害が発生しているというふうに承知しております。北海道庁の集計によりますと、平成二十三年度の漁業被害額は約三千万円であったというふうに承知しているところでございます。

 また、専門家や漁業者によりますと、サケの漁獲量そのものが減少しておりまして、漁獲数に対するアザラシ被害の割合も増加している、こういうふうに認識しております。

 このように、近年、ゼニガタアザラシによる漁業被害は相当大きなものがあるというふうに認識しているところでございます。

中村(裕)分科員 ゼニガタアザラシの漁業被害が相当大きなものになっているという認識を示されましたけれども、それでは、その対策をどのように考えていらっしゃるのか、お伺いいたします。

伊藤(哲)政府参考人 ゼニガタアザラシにつきましては、環境省のレッドリストにおいて絶滅危惧種に選定されており、鳥獣保護法に基づく希少鳥獣として、殺傷等を伴う捕獲を原則として認めてきていないところでございます。

 しかしながら、近年、同種による漁業被害が深刻化しているということを受けまして、環境省では、捕獲による個体数管理や、被害防除も含めた総合的な保護管理対策の検討を今行っているところでございます。

 具体的には、平成二十四年度から、北海道地方環境事務所が、ゼニガタアザラシ保護管理検討会を設けまして、漁業関係者とも相談しながら、銃や縄による捕獲手法や音波による被害防除対策の検討を行っているところでございます。

中村(裕)分科員 答弁にあったように、ゼニガタアザラシは、現状、レッドリストの中で絶滅危惧種でありますから、捕獲が禁じられている。それを捕獲できるように、さまざま保護管理計画を立てていこうとしているわけでありますが、これよりずっと歴史が古く、トド対策にも国として取り組んできたわけでありますが、そのトド対策について、初期の取り組みからどのような取り組みをされてきたのか、お伺いしたいと思います。

本川政府参考人 日本近海へ回遊してきますロシア海域におけるトドの個体数について、平成元年に調査をしましたところ、一万三千頭ということでありました。三十年前の昭和三十四年に調査したところ五万二千頭であったものが七〇%以上減少しているということが、その時点で判明したわけであります。

 こういう状況を受けまして、平成六年から、科学的根拠に基づいて、捕獲枠を百十六頭と決めて捕獲を行ってまいりました。これを、平成十九年以降、百三十二頭を順次ふやして、現在では二百五十三頭まで拡大をしてきている、そんな状況でございます。

中村(裕)分科員 では、平成六年から捕獲を始めているということでありますけれども、その対策の結果、被害額はどのように推移してきているのか、お伺いいたしたいと思います。

本川政府参考人 五年刻みで申し上げますれば、平成十年度は約十億円の被害という報告を受けております。それから、十五年度は約十一億円、二十年度は約十四億円、二十三年度、最新年次では約十五億円というような被害報告を北海道庁から受けているところでございます。

中村(裕)分科員 トドも、平成六年からですから、約二十年近く捕獲の対策をしているわけですけれども、被害額が増加傾向にあるということは、ただいまの答弁でも明らかだというふうに思います。

 トドが二十年近く対策を講じてきてなかなか成果が上がらないでいるところで、今度は環境省がトド対策と同じような対策をこれから始めようとしているということでありますから、私は、このゼニガタアザラシの対策についても非常に疑問を感じているところであります。

 ここで農業被害についても確認をさせていただきたいと思いますが、近年の北海道におけるエゾシカ等の農業被害額並びにその対策予算はどのようになっているか、お伺いしたいと思います。

佐藤(一)政府参考人 中村先生の御質問にお答えいたします。

 北海道における野生鳥獣による農作物被害につきましては、平成二十三年度でございますが、約六十七億円と相なっておりまして、このうちエゾシカによる被害額は約六十一億円となっているところでございます。

 農水省におきましては、このエゾシカを含む有害鳥獣の捕獲あるいは侵入防止柵の設置等の地域ぐるみの総合的な取り組みを支援する、鳥獣被害防止総合対策交付金といったものを措置しておりまして、平成二十五年度予算案では九十五億円を計上しているところでございます。また、二十四年度も同額の九十五億円の予算でしたが、北海道に対しましては、平成二十四年度において約十一億六千万円を交付したところでございます。

中村(裕)分科員 それでは、水産庁の方にお伺いしますけれども、海獣による漁業被害の額と対策予算についてどのようになっているか、お尋ねします。

本川政府参考人 先ほど、トドについては御報告いたしましたが、北海道庁によれば、平成二十三年度において、漁具の破壊でありますとか漁獲物の食害によりまして、先ほど申し上げたトドで約十五億円、アザラシで三億円、オットセイで約四億円、こういった被害が報告されております。

 このうち、水産庁としましては、トドにつきましては有害生物漁業被害防止総合対策事業、こういうもので実施をしておりまして、例えば、平成十年度から小型定置網における強化網の導入を支援しております。それから、平成十三年度からは強化刺し網というものの開発を行い、音や光による追い払いを十四年度から始めて、平成十六年度からは、鉄くい、岩にくいを刺しまして上に上がれないようにするとか、あるいはネットによって上陸を阻止する、こういったようなことも行ってきたわけでございます。

 この予算につきましては、現在、基金により運営をさせていただいておりまして、平成二十四年度につきましては、約十九億円の国費をトドや大型クラゲ対策などのために予算を用意しておりまして、その時々被害があったものについていろいろお使いいただくということで、このうち、トドについては約一億円の予算が使用されたといった状況になっております。

 平成二十五年度におきましても、二十四年度末の基金残高と二十五年度に計上した本予算、まだ予算は成立しておりませんが、これを合わせれば約十六億円をこれら有害生物の被害対策のために活用できるように用意している、そんな状況でございます。

中村(裕)分科員 エゾシカの被害が六十億円に対して予算額で十一億円、トド、オットセイ、アザラシで被害額が二十億を超えるわけですから、エゾシカの約三分の一になるわけですけれども、北海道に来ている対策費は一億円ということであれば、三分の一の被害に対して十分の一の予算しか来ていないということになるわけであります。

 エゾシカは、六十万頭を超えたものを三十八万頭まで個体数を管理するという目標を定めて、今その駆除に取り組んでいるところでありますけれども、エゾシカの被害が六十億を超えるようになったということは、これは陸上においても個体数管理に失敗したということでありますから、これが水中で生息するトドやオットセイやゼニガタアザラシの個体数を管理するなんというのは非常に難しい。なおかつ、捕獲を禁止されている、もしくは制限をされているという状況の中で、エゾシカでさえうまくいっていないものを、対策としてやるということに非常に懐疑的であります。

 そういうようなことをまず申し上げまして、確認したいことを次に続けますけれども、昨年、レッドリストの見直しがあったということであります。私は、それは個体数がふえたことによるものなんだろうというふうに感じていますが、どのような変更があったのか、お伺いいたしたいと思います。

伊藤(哲)政府参考人 環境省レッドリストでは、日本に生息、生育する野生生物について、生物学的観点から個々の種の絶滅の危険度を評価し、絶滅のおそれのある種を選定し、リストにまとめております。

 そのカテゴリーは、絶滅のおそれのある程度の高いものから、絶滅危惧1A類、絶滅危惧1B類、絶滅危惧2類、準絶滅危惧などに分類され、特に絶滅危惧1A類、1B類、2類までを総称して絶滅危惧種というふうにしております。現在、その数は三千五百九十七種でございます。

 ゼニガタアザラシにつきましては、最近の調査によって個体数の増加傾向が見られたことから、昨年公表した第四次レッドリストでは、絶滅危惧1B類から絶滅危惧2類ということで、危惧のより低いランクに移ったということでございます。

 一方、トドにつきましても、最近の調査では、北海道沿岸に五千頭以上来遊していると推定され、個体数も増加していると考えられることから、絶滅危惧2類から、絶滅危惧種ではないところの準絶滅危惧にランクが移ったということでございます。

中村(裕)分科員 レッドリストの見直しで、トドが絶滅危惧でないところに見直されたということでありますけれども、絶滅危惧かそうでないかというラインというのは、頭数でいうとどのぐらいのラインになるんでしょうか。

伊藤(哲)政府参考人 絶滅危惧種に選定する際の判断基準につきましては、対象種の個体数だけではなく、その減少率や生息地面積の大きさなど、さまざまな観点があり、それらを総合的に検討し、判断しているところでございますが、新たに選定する場合につきましては、個体数に着目いたしますと、通常、成熟個体数が一千未満となった場合に絶滅危惧種に選定しているわけでございます。

 一方、絶滅危惧種から外れる際の基準につきましては、個体数の減少率が一定程度以下であり、また、生息地面積が一定程度以上であるなどの条件において、通常、五年以上の間、千個未満とならない場合に絶滅危惧種から外しているという状況でございます。

中村(裕)分科員 先ほど、トドが絶滅危惧種から外れたということでありますけれども、絶滅危惧種から外れたのであれば、今かけている捕獲数の制限を外してもいいのではないかというふうに考えるところでありますけれども、絶滅危惧種ではない野生動物の保護管理についてはどのように考えていらっしゃるのか、お伺いします。

伊藤(哲)政府参考人 絶滅危惧種でない種につきましても、他の多くの種と相互に関係しながら生態系を構成していることから、無計画な捕獲等により特定の種を著しく減少させるということは避ける必要があるのではないかというふうに考えております。

 また、被害対策を進める上でも、科学的な知見に基づいて計画的に進めていくことが重要であるというふうに考えてございます。

 したがいまして、これらの種の被害対策のための捕獲につきましても、科学的、計画的に進めるよう努めていく必要があるのではないかというふうに考えている次第でございます。

 こういったことから、御指摘のトドの対策につきましても、漁業法等のもとで、科学的、計画的に対応されていく必要があるというふうに考えております。

中村(裕)分科員 絶滅危惧種ではなくても無計画に捕獲をさせるわけにはいかないという答弁でありますけれども、今、エゾシカにしてもトドにしてもそうですけれども、ハンターが不足をしていて、非常にその捕獲に苦労しているという状況でありますし、トドについては、頭を撃たないと死なない、脂肪が厚いので体では死なないということがあって、水中にいることもあって、減らすなんということは非常に難しい状況にあるわけでありまして、私は、捕獲数の制限は外しても差し支えないというふうに思っておりますので、その点を指摘させていただきます。

 先ほど来申し上げているように、トドでは、二十年近く既に対策を講じていても被害額はふえている。なおかつ、陸上にいるエゾシカでさえ、その個体数管理に失敗をしている。ハンターは減少している。そして、エゾシカは捕獲の制限がない動物でありますから、それでさえ個体数の管理ができていないのに対して、私は、水中にすんでいて捕獲制限がされている、そういう海獣類をきちんと個体数管理するということが可能とはとても思えないんですね。その点について、どのように考えていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。

田中副大臣 地元の中村議員の方がもう本当にお詳しいことを承知で、私の方もお答えをしたいと思います。

 私ども、環境省の所管でいえば、ゼニガタアザラシが今問題になっておるわけでございますけれども、一応、数字的には、一九四〇年ごろ、千五百頭程度、そして、その後著しく減って、一九八四年ごろに三百五十頭程度までに減っていき、その後、微増傾向にあって、二〇〇八年の東京農大の小林教授の調査によると、一千八十九。ただ、この数字は子供も入っているものですから、先ほど来より言われておりますように、成獣の数ということになりますと、どうも一千頭がちょっと難しいところではないか、このように思っているんです。

 我々も、今御指摘の点は大変重く受けとめなければならないところでございます。そういうことで、今後、引き続き、対策を進めていきたい、特に総合的な保護管理対策の検討を始めていく、こういうことで努力をしてまいりたいと思っております。

中村(裕)分科員 田中副大臣、ありがとうございます。

 ただ、その総合的な保護管理計画を推進するという考えに対して、私は非常に疑問を持っておりまして、こういう絶滅危惧種などの希少生物と漁業者は共存共栄を求められているということなんですけれども、実態は、絶滅危惧種は今、漁師ですから。漁師が絶滅危惧種になっているんです。本当にそうなんです。

 大臣、漁師の人は、漁業共済とかいろいろな保険もあるんですけれども、その掛金さえ払えないぐらい所得が落ちているんですよ。私は日本海側におりますので、日本海側の海岸線に一本道があって、そこに漁師の家が張りついているんですけれども、そこの家がどんどん空き家になっていく姿を見ておりまして、もしかしたら、トンネルを越えたら、どこか隣国の人がそこにキャンプを張っているような場面が出てくるんじゃないかというような危機感も持っているんです。彼らは、多面的機能といいますか、国境監視であるとか海難救助であるとか、魚をとる以外にも役割を果たしているのでありますが、そういう中で、本当に漁師の人たちが絶滅危惧種になっているというふうな状況であります。

 私は、こうした実態を見たときに、捕獲が制限あるいは禁止をされている野生動物の被害に対しては、共存共栄を求めているのでありますから、国として直接補償をすべきであるというふうに思います。例えば、農林水産省は、ただお米をつくるだけでも所得補償をするわけですけれども、こうした、共存共栄を求められている漁師の方々は、本当にその大変な中で、悔しい思いをしながらいらっしゃるわけですよ。こういう方にこそ直接補償をすべきだというふうに考えておりまして、早速そういった検討を始めるべきではないかというふうに思いますけれども、環境省、農水省としての考え方についてお伺いしたいと思います。

稲津大臣政務官 中村議員の御質問にお答えをさせていただきます。

 ただいま、トド被害の状況について、議員の御認識と、また、本省からの説明がございました。その状況については、気持ちは共有しているつもりでございます。

 特にこのトド被害が広域化しているということもありまして、議員の地域でございます小樽には、今、ニシンがとれる状況になっておりまして、このニシンを追ってトドが南下をする。そういうことで、近年にないような状況が生まれているというのも事実でございます。

 そうした中で、先ほど来、答弁の中にもありましたが、科学的根拠に基づいて捕獲頭数を設定した上で駆除を実施している、こういう状況ですが、このことに加えて、本省としては、本年に入りまして、二月の十八日、十九日と、留萌管内、さらに石狩管内で、このトド被害の状況について調査をさせていただき、その上で具体的な対応策ということを検討している状況でございます。

 平成二十五年度からは、離島と本土で広域的かつ同時にハンターによる駆除を行うことで、トドにいわゆる逃げ場所を与えない、こういった、駆除効果を高める一斉駆除ということを実施いたしまして、この中で本土側にも駆除費用を支援すること、あるいは、漁業者の方々に強化刺し網を実際に使用してもらう大規模な実証実験も行っていく。こうした中で、漁業被害の軽減の効果があらわれれば、改良漁具として導入を支援できるように検討をしていくことなど、議員御指摘のことを踏まえて、トド被害防止対策のより一層の強化を図ってまいりたい、このように考えているところでございます。

 直接補償の御質問、御指摘もいただきました。これは、先ほど議員のお話の中でもありました保険料のこともありましたが、本省といたしましては、まず、漁業収入安定対策事業によりまして、不漁あるいは自然災害、そのほかに、これらトド被害による生産金額の減少も含めて、漁業者の収入の減少を補填しているところでございまして、引き続き本対策への加入の促進をお願いしていきたい、このように考えているところでございます。

石原国務大臣 環境省の所管はゼニガタアザラシなんですけれども、私、中村委員の御質問を、実はどきどきしておりまして、漁業者の立場だけを主張されたらけんかしようと思って、実はやってきました。

 というのは、先日、佐渡に行きまして、トキの絶滅に至る経緯を聞いてきました。これも結局、農業の生産性を上げるために、農薬を畑に、水田に入れたことによって、トキが食べられるものがいなくなった。以前は、トキを学校のおりの中で飼っていたという学校もあるんですね。やはり、人間が自分たちの生産性を高めようとすることによって、種がいなくなってしまう、日本固有の種がいなくなってしまう。そして今、大騒ぎをして、やっとここまで来て、去年は八羽のひながかえりまして、今、佐渡の空を飛んでいる。

 ゼニガタアザラシをそれと同じ目に遭わせるわけにはいかないな、そんな思いで、実はきょう、ここに来ました。

 しかし、その一方で、私も、議員をやめたら漁師になろうと思っているんですよ。生まれたところの組合長には組合に早く入れろと今も言っているんですけれども、国会議員なので、なかなか組合員にはしてくれないんですけれども、私は、潜れば、今でもアワビがどこにいる、トコブシなんて山ほどとれるし、ワカメだってたくさんあるし、サバなんて死ぬほど釣れますし、マグロだけ釣れないんですね。

 漁業者の気持ちはよくわかります。漁をしてはほとんど無理になって、貝とかワカメとか、そういう漁業と、あと、乗り合いしかないんですけれども。また、小樽も、私、何度も行かせていただいていて、鰊御殿ってすごいですね。あれだけ漁業でもうかった。それが年々年々細っていって、漁業の従事者の方の平均年齢も上がっている。

 稲津さんから、直接補償のことはなかなか難しいというお話がありましたけれども、環境省としたら、野生鳥獣による漁業被害についての被害補償というのはやったことがなくて、難しいのはわかりますけれども、将来的には、漁師の人もいなくなってしまったら、それは困るわけですから、若い人がやはり参入をしてその地域の海を守っていこう、こういうこともぜひ考えていっていただきたいというのが率直な印象でございます。

中村(裕)分科員 石原大臣から、海を守っている漁師の人もしっかり守っていただきたいというお気持ちを聞くことができました。

 大臣、アワビは、とったら密漁ですからね。(石原国務大臣「とっていません」と呼ぶ)とってはいないと思うんです。ありかがわかるというだけの話だと思いますけれども。

 委員の皆さん、私が今質問してきたように、北海道の周りには、たくさんの海獣がいる。それは、トドであり、オットセイであり、アザラシであり、それらが、トドもオットセイも並んで泳いでいるわけですよ。ところが、その扱いは、ゼニガタアザラシは環境省、トド並びにオットセイは水産庁と。同じアザラシでも、ゴマフアザラシになると自治体が所管をするということになっていまして、同じ海を同じように泳いで、同じような被害を与えている。同じような被害を受けている漁業者にとっては、何でこれがばらばらなんだ、こんな縦割り行政で対策の効果がきちんと発揮できるのかという指摘があるわけでありまして、私も、そのように強く感じるところであります。

 こうした海獣対策の所管組織を一元化するということが必要になるのではないかというふうに思いますが、それぞれの所見をお伺いしたいと思います。

伊藤(哲)政府参考人 環境省が所管しております鳥獣保護法におきましては、トド、オットセイなどの、漁業法等の他の法令で保護管理がなされている種以外を我々が担当しているということでございます。

 鳥獣保護法の対象のうち、ゼニガタアザラシなどの絶滅危惧種については環境大臣の事務となっておりますが、ゴマフアザラシ等、それ以外については都道府県の事務となってございます。

 こうした役割分担で海生哺乳類の保護管理を行っているわけでございますけれども、先生御指摘のとおり、関係行政機関の連携は極めて重要であると認識しております。これまでも密に連携をとってきたところでございますけれども、今後も、より一層連携を強化するとともに、行政の役割分担によって漁業者などの関係者が不便をこうむることのないように注意を払ってまいりたいというふうに考えております。

稲津大臣政務官 お答えいたします。

 今、御答弁にもございました、トド、オットセイ、ゼニガタアザラシ、ゴマフアザラシは、それぞれ法律によりまして対策の所管が分かれておりますけれども、海獣類の被害防止対策は、議員御指摘のとおり、関係各省との連携強化が一番大事だと思っております。

 したがいまして、環境省さん及び北海道庁とも情報交換、意見交換を、これまでも行ってまいりましたが、今後ともこの両者との連携をさらに一層強めてまいりたい、このように考えているところでございます。

中村(裕)分科員 時間になりましたので、長い答弁の長い対応、どうもお疲れさまでございました。

 ただ、やはり一つ申し上げておきたいのは、漁業者は非常に危機的状況にあるということ、そして、陸上にいて、捕獲を禁止されていないエゾシカでさえ個体数管理に失敗している状況の中で、水中にすんでいて、そして捕獲を禁止されている、あるいは制限されている生物の個体数管理なんというのは、私は不可能だと思います。

 そういう指摘をしながら、それと、共存共栄を求めるのであればやはり補償は必要だということを、これからも北海道の議員と連携をしながら訴えてまいりたいというふうに思っておりますし、各省連携はもちろん大事なことでありますけれども、さらに具体的な連携方策についてもこれから検討いただきたい、そのことを指摘させていただきます。

西銘主査 時間です。

中村(裕)分科員 はい。

 よろしくお願いいたします。ありがとうございます。

西銘主査 これにて中村裕之君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして環境省所管についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

西銘主査 次に、農林水産省所管について、引き続き質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鷲尾英一郎君。

鷲尾分科員 民主党の鷲尾でございます。

 これから長丁場ですけれども、ぜひ頑張っていただきたいと思います。

 私の方からは、大きな流れといたしまして、まず冒頭申し上げたいと思いますけれども、ちょっと、通告が直前になってしまって申しわけなく思っておりますけれども、まず初めに離島漁業再生支援交付金についてお聞きをして、それから、私の地元の佐渡市内にある漁港の状況についてお聞きをしたいと思います。それから、戸別所得補償の規模要件についての問題点を指摘し、薬用作物の栽培状況、最後に日台漁業協定についてお聞きをする、そんな流れでやってまいりたいというふうに思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 まず最初ですけれども、離島漁業再生支援交付金についてでございます。制度の概要をいま一度確認させていただきたいと思います。お願いします。

本川政府参考人 離島は、我が国漁業の前進基地であるとともに、漁場保全の観点からも大きな役割を果たしております。その振興は、我が国水産業にとって極めて大きな課題となっているというふうに認識しております。

 その離島漁業の振興のために、農林水産省では、集落の創意工夫を生かして、漁業生産力の向上や施設、機器の整備といった取り組みを行うなど、そういう場合に活用できる離島漁業再生支援交付金、これを措置しているといったような状況でございます。

鷲尾分科員 特に、この離島漁業再生支援交付金ですけれども、漁業集落に対して交付金として支援するというところで、非常によい取り組みだということで評価をしておりますし、島民の皆さんからも御評価をいただいていると聞いておりますが、この中で、制度設計の中で、漁業再生活動について支援金を交付するとあるわけであります。

 この漁業再生活動で、例えば、漁業の生産力の向上に関する取り組みでありますとか、集落の創意工夫を生かした取り組みとあります。この創意工夫ということがどう解釈されるのかというところで、私は、少し個別具体的なことも含めてお聞かせをいただきたいと思うわけです。

本川政府参考人 それぞれ地元で、集落の中でお話し合いをいただいて、例えば漁業生産でございますと、共同で小さな船団を組んで無線で情報のやりとりをして漁場の探索をされるとか、やはり話し合いをしていただいて、今までやっておられなかった事柄に新たに取り組んで、離島の集落の再生なり、離島の漁業の振興なり、あるいは出荷に関する、出荷の向上であるとか、そういうことに全体で取り組もうとされる、いろいろお話し合いをされて、これまでやっていなかったことに取り組んでいかれる、そういうようなことをしていただくということが創意工夫ということであろうというふうに思っております。

鷲尾分科員 今ちょうど長官から答弁をいただいたように、既存のものではなくて、新たな工夫と。創意工夫というのは、まさしく創意ですから、新たな意味合いを持たせるということなのでありましょう。そういう意味では、新規性というものが求められてくるんだなというところを感じるわけであります。

 実際、現場でもその新規性に着目をしていろいろと話し合いがなされていると聞きますが、きょうび、漁村で、新規なもの、新規なものということで、果たしてそんなにアイデアがたくさんあるとも思えないですし、やはり既存の、いろいろ、前に交付金で買ったものについて、これはうまい取り組みであるから、これを少し維持管理しながらもうちょっと設備を拡大していこうとか、そもそも、その維持管理にちょっとそういった支援交付金を使いたいよといったときに、新しくないからだめなんだよ、これは創意工夫として認められないんだとなっちゃうと、これまた現場ではなかなか大変な思いをされるんじゃないかと思うんです。

 ですから、新規性、創意工夫というところが余り強調されて、それがしゃくし定規に現場におりていきますと、これはなかなか、本当の意味で漁村再生、漁業再生ということにつながりにくいのではないかな、あえて注文をつけるとすれば、そういう点が挙げられると思うんですが、いかがでしょうか。

本川政府参考人 農林水産省は、よく新規にといいますと、今までなかった、誰かが発明したような新しい技術をといったようなことを要求したりするのが普通の事業でありますが、この事業は、創意工夫と申し上げているのは、まさに、その集落にとっては新しいものをお話し合いの中で見出していただいて、そういうような工夫、理屈をきちんとつくっていただく、そういうことが最低限お願いしたいなと思っていることであります。

 全てをやっておられるわけでは決してないと思うので、全ての取り組みを、先進の、本当に大規模な漁業集落のように取り組んでおられるわけではないと思いますので、何らかの形でこれから新しくこういうことをやろう、それをお見つけいただくことはそう難しいことではないと思います。もしあれでありましたら、個別に御相談いただければ、私ども職員の方でも御助言をさせていただきたいというふうに思っております。

鷲尾分科員 ぜひ現場に即した形で、幅広に、よりうまく、資産を有効活用する。政府も御案内のとおり、いろいろな資産ができていますから、それをどう有効活用するかという観点でいろいろな法制度も設計されているわけでありますから、創意工夫、新規性というものに余りとらわれ過ぎずに、現場の意見を、現場が活性化するような形で工夫を捉えていただけるとありがたいなと思っております。

 では、次の質問であります。

 佐渡市の、旧両津市内ですけれども、鷲崎という漁港があるわけです。この鷲崎という漁港が第四種に指定されているわけですけれども、これは、第四種であるがゆえに、当然、避難港として機能するという認識でおります。

 そういう認識に立ったときに、冬場、佐渡沖は随分と荒れます。船も避難してきます。そんなときに、例えば水道設備であるとか公衆トイレであるとか、そういった、当然なければならない、付随しなければならない設備というのが第四種漁港についてはある程度決められていると思うんです。そこをまずちょっとお聞きしたいと思います。

本川政府参考人 水産資源の悪化とか漁業者の減少といった、我が国水産業を取り巻く環境は厳しい状況にありますけれども、水産業の安定的発展のためには、漁業現場のニーズに合わせた地域の自主性と創意工夫による漁村地域の整備、こういったものが必要だというふうに認識しております。

 そういう中で、農林水産省では、農山漁村地域の防災力の向上とか農林水産業の基盤整備の促進を図るための農山漁村地域整備交付金というのを用意させていただいておりまして、こういうもので、今御指摘いただいた環境施設、いわゆるトイレも含めた、まさに避難港であるがゆえに求められるような周辺の環境施設、そういうものについても整備の対象にしておりますので、これも、御論議いただいて、お考えいただければ、こういう交付金を使って整備できるというふうに認識をしております。

鷲尾分科員 せっかくそこまで言っていただいたので、もう少し個別的に、具体的な状況に入らせていただきたいと思います。

 実は、この鷲崎という集落に、集落がつくっているいわゆる集会所、鷲崎文化センターというところがあるんですけれども、これが結局、いろいろな話し合いがうまくいかなかったんでしょう、漁港にトイレ等が備えつけられていないというところもこれあり、このいわゆる集落の文化センターというところを利用してトイレ等を今やっているというところなんですけれども、これ自体も今老朽化して、解体、移転を予定しているというところなんです。

 これは、実際、県の方から話が上がってきているかどうかわかりませんけれども、本来、避難港であるならば当然にして設備が整っていなければならないような水道設備や公衆トイレといったものが余り整備されていない状況の中で、集会所でそれを兼用していた。しかし、その集会所もなくなるんだという状況になったときに、地元の方ならずとも、やはり漁港の整備という観点からも、当然にして整備を進めていかなければならないと思います。そういった状況、今後の見通しについてコメントをいただきたいと思います。

本川政府参考人 県にも、御質問いただくということで問い合わせをいたしましたところ、集会所の話についてはまだ御申請はいただいていないようでありますが、集会所の使っておられたトイレというのを、集会所がなくなってそういうトイレが必要になるということでありますので、ことし中には御申請いただいて着工できるような方向で対応するといったような報告を受けております。

 それから、ちなみに、その集会所につきましても、漁業振興なり漁村環境の整備といった観点から、補助対象として御支援申し上げるということは可能でございますので、その辺、もう少し、私どもも県を通じて現場の事情を聞いてみたいというふうに考えております。

鷲尾分科員 長官、ぜひよろしくお願いをしたいと思います。

 それでは、次の質問であります。

 我々で言う戸別所得補償、大臣がおっしゃる日本型の直接支払いでございますけれども、これから規模に関する要件を課すということが検討されているやに聞いております。これはもしかしたらこの分科会でも質問があったかもしれませんけれども、規模要件についての検討状況、一般的な状況で結構でありますので、お聞かせをいただきたいと思います。

奥原政府参考人 戸別所得補償制度の関係でございます。

 この制度につきましては、二十五年度は、名称を経営所得安定対策というふうに変更いたしまして、中身といたしましては、二十四年度と基本的に同様の仕組みで実施することとしております。

 本格的な見直しは平成二十六年度に向けて行っていく、こういうことになっておりまして、今後の検討に際しましては、これまでの制度の実施状況を検証するとともに、農業者それから地方公共団体等、個々の生産現場の意向をよく確認しながら進めていきたいというふうに考えています。

 現時点で、この規模要件につきまして、特段の方向性は持っておりません。

鷲尾分科員 経営所得安定対策ということでありまして、先般、自民党政権下において、品目横断的経営安定対策というのがございました。ここでは、経営規模要件が課されたことによりまして、本当にいろいろな場面で現場に混乱が生じたと聞いております。

 我々が行った制度が、全ての販売農家ということで、経営規模要件というものを特段設けずに実施をしたというところもありますが、今、奥原局長の話ですと、まだ白紙の状況だということでありますけれども、現場が混乱してはならないというところはぜひ御認識をいただきたいと思います。

 現場が混乱をするというのは、難しい問題ですけれども、要するに、前回、品目横断の制度によってもまだ解消されていない混乱も実はあるんですよ。各省の垣根を越えていろいろ調整しなければならないという問題がある、現場からそういう声が上がってきておりますし、今回も、事前にいろいろと国交省さんや農水省さんに話をしたところ、やはりまだこれは難しい問題だと言われているところもあります。

 解決しなければならないけれども、解決することがなかなか難しい問題が現場にまだ残っているという状況で、少なくとも、また経営規模要件を農家の皆さんに大々的に打ち出してお願いするということになると、さらに問題が複雑化する可能性も私はあると思っています。

 この点、あえて具体的には申し上げませんけれども、大臣から、どのような意向をお持ちなのか、確たる答弁をいただきたい。

林国務大臣 今局長から答弁したことが今の検討状況ということですが、今の段階では、まさに我々、今先生がおっしゃったように、政権交代をする前、ゲタとかナラシとか、そういうのをやっておりまして、当時の加入件数が大体七万件とか八万件だったわけでございますが、民主党政権になって、戸別所得補償ということで、これが百万件を超えるような件数になったということでございます。

 まだ検討状況は、今局長から答弁したとおりでございますが、検討の方向性というのは公約をいたしておりますので、その自民党の公約の方向性、それから、野党時代に幾つか議員立法を出させていただいておりますので、そういうものが基本的には有権者の皆さんにお約束をしてきたことでありますので、そういう方向性でやっていくということです。

 これは、委員がおっしゃるように、現場が混乱してはならないという判断もありまして、政権交代がこの時期だったということもありまして、名称変更のみにして、じっくり時間をかけて、そして、与党と政府で両輪となってやることの意味は、特に与党の先生方は毎週地元に帰っていらっしゃいます。地元に帰ったときに、そこでいろいろな方のお話を聞いて、我々と検討するときに、まるっきり見たことも聞いたこともないものがぽんと出てくるということがないようにするという意味でも、私は、しっかりと現場の声を踏まえた与党との調整の結果で新しい制度をつくっていくということが望ましいと考えておりまして、そういったような道筋で検討してまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。

鷲尾分科員 大臣、ぜひ一度ちょっと聞いていただきたいんですけれども。

 前回、自民党政権さんがおやりになっていた制度の不備とまでは言いません、そこまでは言っていないですけれども、今も、やはり省庁間の調整がつかなくて、課題として残って、それが現場を不安にさせているという事例があるんです。それは、やはり経営規模を拡大する過程で、生産法人ができていく過程で実は自然発生的に起こってきた話でありまして、ですから、戸別所得補償に規模要件を課すということになると、またそういった側面が出てきかねない問題なんですね。

 ぜひ一度、ちょっと個別具体的にお聞きになっていただきたいんですけれども、省庁間で、難しいですけれども解決していこうという方向性になるのか、それとも、やはりやぶ蛇だから今のままの方がいいのかというところが、これは相当難しい政治判断だと思います。一度お調べになって、ぜひそこは御検討いただきたい。現場が不安になっているという状況をぜひわかっていただきたいというふうに思います。

 それから、続きまして、薬用作物の栽培の状況についてお聞きをしたいと思います。

 今、いろいろな問題が、問題といいましょうか、健康志向と言われていますし、その健康志向の中で、それこそ健康食品がたくさんあって、漢方薬とかいろいろ、薬と名のつくもの、その他健康食品でいろいろな商品作物が利用されていると思いますけれども、その薬用作物の作付状況について少しお聞きをしたいと思います。

佐藤(一)政府参考人 鷲尾先生の御質問にお答えいたします。

 薬用作物につきましては、御案内のように、生薬の原料として、北海道から沖縄に至るまで、全国各地で栽培されておるところでございます。

 生産量でございますが、ちょっといろいろと変動がございますが、大体一千トン、収穫面積につきましても、四百ヘクタールというような状況に相なっているところでございまして、つくられている農家は千八百戸程度というふうに聞いておるところでございます。

 それで、収穫面積で見ますと、いわゆる血行を促す効果を有するセンキュウというもの、これが北海道とか岩手でつくられておりまして、また、婦人薬として利用されるトウキといったものがございますが、これが群馬県そして北海道などでつくられておるところでございます。また、解熱あるいは鎮痛薬として利用されるミシマサイコというのがございますが、これが愛媛県あるいは熊本県などでつくられている主な品目と相なっているところでございます。

 以上でございます。

鷲尾分科員 千八百戸程度ということでございますけれども、それこそ日本とチャイナとの関係が今後どうなっていくのか。当然、安定的な原料作物の供給という面からいっても、やはり国内で付加価値のある作物を生産奨励していくということは非常に大事な視点だと思っているわけであります。また加えて、為替の動向もあります。

 ですから、もし日本国内における生産条件が整うのであれば、やはり生産奨励を行って、できる限り付加価値の高い作物を農家さんに栽培していただいて、そのことが結局、所得の向上であったり担い手の育成につながっていただきたいなというふうに思っております。

 そもそも、日本の歴史を踏まえたら、やはり商品作物の奨励、昔からこう言われているわけであります。大体、別に調べなくても、教科書レベルの知識でもそうですけれども、江戸時代の藩政改革とか、それを見ますと、必ず出てくるのが商品作物の奨励なんですよね。

 時代は移り変わって、それは、いろいろ地場産業を育成するという側面も当然そうなんでしょうけれども、農水省さんとしたら、やはり今、この健康志向の時代、さまざまな付加価値の高い健康食品が市場に出ていますし、それで物すごくもうけている企業家の方はたくさんいらっしゃいます。びっくりするぐらい多い。ですから、そういったことを考えると、やはり生産者の皆さんにそれを還元していく、生産者の皆さんにマーケットニーズを捉えたものを生産奨励していく、そういう視点が求められてくるのではないかなと思うわけです。

 これは当然、各省間との連携、調整も必要になってくると思います。そういった点、検討状況がどう行われているかというところも、一言コメントをいただきたいと思います。

佐藤(一)政府参考人 お答えいたします。

 今先生おっしゃっていただきましたように、薬用作物といったものも非常に大事かというふうに思っておりますが、この薬用作物につきましては、使う医薬品メーカーと生産者との契約栽培により栽培されているというような状況になっていまして、その生産拡大のためには、やはり需給情報の交換あるいは共有といったものが非常に重要だというふうに考えているところでございます。

 このため、農水省におきましては、厚生労働省や関係業界と連携しまして、昨年十一月以来、三回にわたりまして、薬用作物に関する情報交換会といったものを開催したところでございます。その中で、先ほど少し申し上げましたが、ミシマサイコでありますとかトウキ、こうしたものを初めとしまして、七品目の薬草につきまして、生産振興に向けた対象品目として、実需者側の方から列挙をされたところでございます。

 やはり、こうした議論を踏まえまして、今後、実需者サイドにおいて、地方自治体あるいは生産者団体等の関係者を対象とした説明会を開催していく予定となっておりまして、今後とも厚生労働省との連携を密に図ってまいりたい、このように考えているところでございます。

鷲尾分科員 最後に、ちょっと御紹介だけ。

 麻という作物がありますけれども、これは麻薬取締法で今、栽培許可制になっています。ただ、この麻というのはかなり伝統的な作物でありまして、日本古来のしめ縄でありますとか、げたの鼻緒ですとか、そういうところにも利用されていますし、今、麻はほとんど輸入物で、着物なり衣服の麻という形で使われていると聞いております。

 最近の日本の伝統文化に根差した麻、これはいろいろ厚労省との関係で禁止されているわけですけれども、もし、マーケットニーズあるいは日本の伝統文化を維持するという観点から見直しが行われたら、それはそれで非常に画期的かなというふうに思っております。諸外国の状況も鑑みながら、ぜひ先進的に、省庁間の垣根を越えた議論が行われることを期待したいというふうに思います。

 最後に、日台漁業協定についてお聞きをしたいと思います。

 この分科会でも議論がされていると聞いておりますが、私も、台湾と日本の友好関係を維持発展していく、そういう立場でありましたので、大変、この取り決めについては、関係者の努力を率直に、大きく評価したいというふうに思っております。

 その中で、内容について少しお聞かせいただきたいと思います。

 実は、前回も、農水委員会で日台漁業交渉について質問したんですけれども、その直後に交渉妥結と相なりまして、ぜひ、農水省さんにはすぐに説明に来ていただきたかったなというじくじたる思いもありますが、長官からお聞きしたいと思います。

本川政府参考人 申しわけございません、御報告が遅くなったことを。

 この場をかりて御説明させていただきます。

 日台漁業取り決めの適用水域を含む東シナ海におきましては、歴史的に、日台双方の漁船が入り会って操業しております。時期によっては、双方の漁船が高密度に操業してトラブルも生じてきたというふうな海域でございます。

 今回の取り決めにおきましては、漁業実態が複雑であり、かつ、日台双方が強い関心を有する海域を適用水域に設定しまして、その適用水域の中に、法令適用除外水域と特別協力水域、二つの水域を設定いたします。そのそれぞれの水域なりの操業ルールなどにつきまして、日台漁業委員会を設置いたしまして、今後、海洋生物資源の合理的な利用や操業秩序の維持を図るために具体的な措置を協議するということになっていると聞いております。

鷲尾分科員 それで、早速なんですけれども、長官が沖縄にも何度も行かれている、沖縄の漁業者との対話も大事にされているということは聞いておりますし、実際に行っておられるので、そこで、やはり沖縄の漁業者の方は大変これに関心を持っておられると思いますし、一部、抗議もされていると聞いております。

 ですから、今後の取り組み、沖縄の漁業者に対する取り組み、説得をどういうふうにしていくかということもあるでしょうし、さまざまな取り組みの方向性というのがあると思いますので、そこを少し具体的にお聞きしたいと思います。

本川政府参考人 沖縄の漁業者を含めて関係の皆様方には、大臣にも二度お会いいただきましたし、私も、昨年赴きまして意見交換をしたり、あるいは上京されたときに意見を伺ったりしております。

 その中では、特に、先島諸島の南の水域については適用対象水域から外すべきだといったような強い御意見をいただきました。それから、当然、尖閣諸島の領海内については安全性を確保していただきたいとか、あるいは、その北方の尖閣と先島諸島の間については一定のルールをつくってほしいといったような御要望を伺ってきたところであります。

 そういったようなことをお伺いしてきましたけれども、今回の結果につきまして、先島諸島の漁業者を初めとする沖縄県の関係者の方々に御説明をして回っております。大臣にも副知事にお会いいただいて、御説明をいただき、御意見を伺いました。それから、担当部長が、先週水曜日から土曜日にかけまして、沖縄本島、久米島、宮古島、石垣島と回らせていただいて、説明をし、意見を伺ってきましたが、極めて遺憾であるなどの非常に厳しい指摘を受けておるところでございます。

 今後とも、漁業者を初めとする沖縄県関係者の方々へ誠心誠意説明を尽くすとともに、日台漁業委員会において操業ルールに関する協議がしっかり行われるよう対応してまいりたいと思っております。

 また、台湾漁船との漁場の競合の激化でありますとか、好漁場の縮小といった影響につきましては、今後、関係漁業者の方々からよくお話をお伺いした上で、我が国漁業への影響についてしっかりと把握し、対応してまいりたいと考えているところでございます。

鷲尾分科員 時間となりましたので、最後に、ちょっと指摘だけでありますけれども、漁業という部分でも、実際にマグロ漁が始まっているわけですから、ことしのマグロ漁にどう影響が出るのか、この間も農林水産委員会で質問させていただきましたけれども、いろいろと体制を整備していただいている、拡充していただいているというところは評価をしたいと思いますけれども。

 今回の取り決めでも、法令適用除外水域の中に尖閣諸島があり、そこに我々の領海があるわけですから……

西銘主査 時間です。

鷲尾分科員 法令適用除外水域において領海侵犯が行われたときにどう対処していくのか、大変難しい問題だと思います。

 政府一丸となって、微妙な問題ですけれども、うまく、日台の関係が損なわれぬように取り組んでいただきたいことを指摘し、質問を終わります。ありがとうございました。

西銘主査 これにて鷲尾英一郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、村岡敏英君。

村岡分科員 林大臣、江藤副大臣、長島政務官、予算委員会の分科会、大変御苦労さまでございます。

 きょう一日、十一時間ぐらいあったんじゃないかと思って、大変お疲れだと思いますが、予算関連法を含めて、御質問させていただければと思います。

 質問の通告にないといいますか、農業新聞で、四月十一日、自民党の農林部会が、「農業・農村所得倍増へ」という、池田内閣以来、大変景気のいい対策を打ち立てていこうということを話されておりますけれども、これは農林省と一緒になって所得倍増という計画を立てていこうとしているのかどうか、大臣にお伺いしたい、このように思っています。

林国務大臣 実は、私も報道でそれを見て、いろいろなものがありまして、五割増しにするというものもたしかあったと思いますし、それから倍増というのもありまして、多分、私が政調会長代理をしておったときもそうですが、ずっと検討していくわけですね。そうすると、その中でいろいろな意見が出ますから、まだ最終的にこうというものが固まったということではなくて、今、詰めていく段階の中でいろいろな御意見が出ていて、その一部が外に出てああいう報道になっているのかな、こういうふうに受けとめております。

 いずれにしても、党の方の公約ですから、しっかりと政府・与党でその後やっていくという前提でつくるということでもありましょうから、しっかりと見守っていきたい、今はこういう状況でございます。

村岡分科員 確かに、この倍増という言葉は非常にすばらしいことだと思っています。しかし、やはり経済とはちょっと違いまして、農林水産業というと非常に幅広い。決して、株高、円安だけで、ある程度景気がよくなる、株がふえるというのと違って、一つ一つの対策をとっていかなければ、とても倍増というのは目標として達成でき得ない。もちろん達成でき得れば、これはすばらしい。農林水産業は本当の成長産業で、これから農林水産業に就農する人がどんどんふえていくということで、これは、まず出てくる対策を期待したい、こう思っております。

 ところで、私は秋田県出身ですので、雪国であります。東北、北陸、北海道というのは、やはり四カ月、五カ月仕事ができない、農業ができないという中、菌床シイタケであったり、また花卉をハウスでやったり、いろいろな形で努力はしております。しかしながら、灯油が上がったり、いろいろな部分で、冬に仕事をするとなれば、大変非効率でお金もかかるような状況であります。

 これに対して、農林省もいろいろ対策を立てていると思いますが、周年農業という件に関して、どのような対策をこれからとっていくのか、教えていただければと思います。

林国務大臣 今お話がありましたように、私なんぞ山口なものですから、余り雪がしんしんと積もっているところというのは地元ではなかなか想像しにくいところがあるんですが、先生のようなお地元のところでは、温室を導入したりして農産物を周年栽培するということは、攻めの農業の実践という面でも農業所得を向上させるという面でも大変大きな意義がある、こういうふうに思っております。

 施設園芸の周年栽培は、大体秋から春、冬を中心に、そこの季節における施設の加温というものが大変重要であると思います。したがって、未利用エネルギーというものを活用して、省エネ型の施設園芸を展開していくということが特に重要であるのではないかな、こういうふうに思っておりまして、そのための施策もいろいろと用意させていただいている、こういう状況でございます。

村岡分科員 秋田県独自でも、百億の基金を使って、地下水熱であったり、いろいろな部分で周年農業をすることが所得をふやすことだということで、努力をいたしております。多分、雪国の各県ともそのような対策はとっていると思います。

 その中で、やはり農林省も縦割りというのがあるなと。きのうも地元におりましたけれども、例えば、灯油が上がったから、林野庁の部分の、木材チップであったりペレットであったり、いろいろなものを使おうとすると、どうしても、それは間伐材のために使うものであるから、間伐した木じゃなければならないと。

 こういうふうに、もちろん間伐の予算ですから、そうだとは思います。しかし、例えば秋田では、また地方というのは、空き家というものもたくさんあるんです。これの廃材もたくさんあるんです。そういうものを使うことはやはりだめだ、こういうふうな形で、もちろん間伐材の予算ですからだめなことは、確かに法案ではそう書いてあります。しかし、解体したものを利用するという中で、何かいろいろなアイデアができないものかなと。

 間伐でやるのがもちろん基本だと思います。しかし、地方では空き家の解体というのも大変問題になっていることであります。その廃材なども使うときに、何か農業のための燃料という意味でこれは使えるわけですから、そういうことを少し考えてみるということは農林省の中ではないでしょうか。

林国務大臣 燃油価格高騰緊急対策というので、ヒートポンプや木質バイオマス利用の加温設備などの省エネ設備のリース導入、こういうものは、二十四年度の補正で、四百二十五億円の中の内数ということでございます。あと、強い農業づくり交付金で、地熱水ですとかをハウスに使う、こういうものもございます。

 直接ぴたっと合うかどうかは別として、今おっしゃっていただいたように、間伐で切ってきたものは、間伐を進めるための予算ということで林野庁ですが、今申し上げた方は、材料は何でもいいというような事業でございますので、廃屋ということになれば、そちらの方は使っていただけるのではないかな、こういうふうに思います。

村岡分科員 やはり農業は、前から予算委員会、農水委員会で言っていますけれども、成長産業の分野と、社会的な側面で地域や環境を守るという側面があります。

 そういう意味では、地域の問題の中で、空き家をどうしようかというのがあります。その部分の中で、廃材が木で出てきます。長島政務官も多分御地元にあると思います。空き家の問題も大変です。それが、農業分野の中でエネルギーとして使ってもいい部分にいろいろな体質のお金があると、これは安く燃料が出てくるわけです。

 そういうアイデアも組み合わせながら地域の問題を解決していく、周年農業というものを考えていく、やはりいろいろなアイデアを取り入れることを農林省でもぜひやっていただきたい、こう思っています。

 長島政務官はどういうふうに思われるでしょうか。

長島大臣政務官 私の地元も、村岡先生と多分同じように過疎が進んでおりまして、空き家がかなりあります。

 エネルギーの問題ですが、我々のところも木質バイオ、いわゆるペレットをストーブ、温室等に少し使わせていただいておりますけれども、そのペレットを作製する段階で廃材を使うということについては、大臣が答弁したとおり、私もいいアイデアだと思いますから、費用の部分をどうするかということを含めて少し検討が必要かと思いますが、念頭に置きたいと思っております。

村岡分科員 林大臣、ぜひ長島政務官からも地域の実情を聞いていただきながら、廃材利用というのは地域にとっても農業にとっても大変いいですし、また、空き家をそのまま放っておくということは、やはり犯罪につながったり、また危険につながったり、そういう面もあるので、ぜひ御検討願いたい、こういうふうに思っております。

 次の質問に移らせていただきます。

 新規就農者に対して、二万人にふやしていこうと目標を立ててやっております。百五十万円、七年間、新規青年就農ということで、農林省も画期的な制度をつくっておりますけれども、今の実態はどのようになっているでしょうか。

林国務大臣 今の青年の新規就農者、三十九歳以下ということですが、最近、大体一万三千人から五千人程度で推移をしておりまして、入ってくる人がそれぐらい入ってきて、定着するのが大体一万人程度、こういう状況でございます。

 今委員からも御指摘があったように、平均年齢が大変上がってきたということもあって、今後も、世代間バランスのとれた持続可能な農業ということを考えますと、やはり新しい人が入ってきてくれるということが大変に大事だ、こういうふうに思っております。

 今、画期的だというふうに御評価をいただきましたけれども、青年就農給付金、就農準備段階の就農に向けた研修中の者や、経営開始直後の青年就農者に対する給付金ということですが、これが大体一年当たり八千二百人程度出ております。それから、農の雇用事業ということで、今度は法人等に雇用されるという形への支援が三千五百人程度ということでありまして、二十四年度からこういうことをやっている。

 それから、これ以外にも、新しく入ってこられた方が機械、施設の導入等を行う場合の無利子の資金、就農支援資金の融通とか、経営体育成支援事業による助成、さらには農業委員会等による農地のあっせんを就農者にしてあげよう、こういうことを総合的に実施していくことによって、先ほど八千人なり三千五百人なり申し上げましたけれども、それ以外の、そういうことを受けずに就農する方も含めて、新規就農者の倍増、今一万人程度が定着ですから、これを目標の二万人にしていきたい、こういうふうに考えておるところでございます。

村岡分科員 ぜひこれは定着して、やはり新規に就農した人たちが農業というものに魅力を感じて、それが広がっていくことによって農業というものは成長分野に進んでいくと思いますので、これはぜひ進めていただきたいと思います。

 ただ、プラス、これはあくまでも生産が中心になって勉強されると思います。しかし、実は農業でも、いいものをつくっても売れるとは限りません。やはり売れなければいけない。売れるためには、経営という感覚、営業という感覚がなければなりません。例えばアスパラやリンゴや、何か技術を学んで、黙っていても誰かが売ってくれるなんという時代ではありません。やはり経営感覚を持って、営業力を持って農産物を売らなきゃいけない。そのことを考えると、この新規就農の中に、経営感覚、営業感覚、市場調査感覚というものを取り込んで勉強させようという形の中、また学んでもらおうという部分の対策はとられているかどうか、教えていただければと思います。

林国務大臣 実は、この間、開校式に行ってまいったんですが、農業大学校というのが今般できまして、二十人ちょっとだったと思いますが、いろいろなキャリアを持った人がそこへ入学をしておられたわけでございます。こういうことを授業としてやっていくということ。

 そしてまた、認定農業者がみずからの経営改善を行っていくときにどういうポイントに着目したらいいかなということで、点検指標なるものをつくって、こういうところをチェックしなさいよというようなものを活用していただこう、こういうことですね。

 それから、平成二十五年度の新たな取り組みとしては、法人の職員というか新たに雇用した人も含めて、この人たちに次の世代の経営者になってもらわなければいけませんので、そういう人たちを育成していくために、その法人からほかの法人、もしくはほかの産業へ研修派遣をして、例えば、農業のところにいて、今おっしゃっていただいたように、営業をかけるとかマーケティングをやるとか、そういうことをやっているところに行ってその手法を学んだりするようなイメージだと思います。こういうところも今からやっていって、やはり農業者の、今まさに委員がおっしゃっていただいたように、経営マインドの向上を図っていくということが大変に大事なことであると考えております。

村岡分科員 ぜひその感覚を持ってこそ、成長分野に農業が変わってくるんだと思います。

 だからといって、農業者が経営感覚を学んだから、すぐさま会社を起こして、そして十億、二十億売り上げるというわけではありません。そういう意味では、もう一つ、農林省の方で、大臣の方で考えられて、六次産業化に対して株式会社、ファンドをつくりました。これをどのように、そういう経営感覚を持っていた農業者が、いろいろなプロの営業をやっている方やマネジメントをやっている方とも組み合わせてということだと思いますけれども、どんなイメージでこの六次産業化の新しい株式会社を使っていただきたいと思っているのか、お教え願いたいと思います。

長島大臣政務官 私の方からお答えをさせていただきたいと思います。

 多分、村岡先生は農業者が主体となったファンド利用あるいはそういった加工、流通という形態をやはり望ましいというふうにお考えになっているんだと思うんです。

 事実関係だけを申し上げますと、ファンドを利用するためには、地産地消法あるいは六次産業化の認定が必要です。そして、出資審査を受ける必要が実はございます。

 出資審査においては、農林漁業者の主導性の確保、地域の農林漁業の健全な発展、農林漁業者の所得の確保、農山漁村における雇用機会の創出、農山漁村の活性化、農林漁業者その他関係者の意向の尊重等の要件をとりあえず求められます。

 ですから、このレベルで早速ファンドに参加をして、いろいろなノウハウを持っている、加工の技術を持っていらっしゃる人だとか販売のネットワークを持っている人たちと結びつける人は、直ちにここに参加をしていただいて、やっていただく。

 そしてまたもう一歩手前、私のところは小規模な農業者が多いですから、もともと、うまいものをつくったりうまいものを食べさせることは、百姓ですから、これはしていたと思うんです。ただ、それを商品化したり、安全基準に合わせて大量に生産をしたりするということについては少し疎かった。そこのところを少し補助しながら、このプラットホームに乗れるように支援をしてあげる。その時点でこのファンドに参加をしていただいて、ファンドを利用して、例えば会社形式にして販路を広げていく方法をとられるということが、我々がこのファンドで求めている方向性だというふうに思っています。そのようにしていきたいと思っています。

村岡分科員 今政務官が言われたように、まだまだ小規模な法人が多いですし、おいしいものをつくっても、先ほど言った、経営感覚を勉強しながらも、少し年月がかかります。やはりプロの人も組み合わせながら、このファンドを使いながら、販路を求めたりマーケティングをやったり、そういう意味の中でぜひ御指導もしていただきながらフォローをしていくことによって農業が変わっていく、こう思っております。

 さらに、秋田県では実は、農業者も一緒にやっていますけれども、銀行が一緒にやって、もう既に農業の新しい加工品、食料品をつくっているというので、枝豆を使ってチョコレート菓子みたいな形でやっているんです。これも積極的にやっていこうと思っているわけですけれども、これは手前にやっちゃっているんですね。

 こういうところは各県にあると思うんですけれども、そこに対しては六次産業化のファンドの部分はどのような形に、例えば融資だとかいろいろな形はできるのかどうか、お願いしたい、こう思っています。

長島大臣政務官 既に六次化認定を受けているものはファンドの対象には実はならないかという御指摘でございます。

 農林漁業六次産業化、農林漁業者主体の新たな事業分野を開拓する事業が対象でございますので、個別の案件についてはA―FIVEまたはサブファンドに御相談をいただきたいという返事なんですが、私は、そういったものがやはりファンドの上に上がって出資を募ってやっていくことが望ましい方向だと思います。

 この前、大臣が答弁の中で上勝町の葉っぱのお話をされました。私はよくおやきの話をするんですが、おやきというまさに農村のお母さん方が持っていたものが、今はもう既に数億円産業あるいは数十億円産業に育っている。今、大学生も積極的に実は農業に参加をして、例えば健康にいい食品だとか、アレルギーに強い食品だとかということを非常に研究しながら実践しようとしております。

 ぜひ、そういったところと結びついて、ファンド利用をした会社をつくっていただきたいなというふうに私自身は思っている。農水省もそういった方向でいきたいと思っているところでございます。

村岡分科員 前もってスタートしたところが不利にならないように、そのことは、逆に、努力したところが先行して成功例をつくっていくということは大切だと思いますので、そこはぜひお願いしたい、こう思っております。

 一つ紹介するとすれば、秋田の枝豆を使って、東京のスイーツ専門店パティスリーポタジエという大変有名な方と組んでつくられまして、枝豆が、このぐらいの、ちょっときょう持ってこなかったんですが、千二百六十円ということで、大変な価値を持って今売れ始めているということなんです。そういう意味では、加工することによって原料が変わっていく、またパティシエみたいな人にいろいろと協力してもらうことによって変わっていく、そういうことがたくさん出てくると思うんです。

 地域には、多分、秋田に限らずいろいろな農業県の御出身で、東京でいろいろな料理人の方がたくさんいるんです。こういう方々も何かアイデアをしっかりと自分の県に、自分の生まれたふるさとの農業の農産物はこういうのがいいんじゃないか、こういうところに何か農林省が率先して、各県の料理人で協力してくれる人を、六次産業化なのか農産物の加工品なのか、そういうことをちょっと考えてみないでしょうか。どうでしょうか、大臣。

林国務大臣 聞いていて、なかなかおもしろいアイデアだなと思いました。やはりそういうお気持ちがいろいろな方にあって、そこの横のつながりをどうしていくか。今まで、ある程度いったものでも、例えば経営体を新しくつくっていただいて、そのスイーツをもう少しさらに発展させるために今度は別会社で別の人と組んで、そこが事業体になってと、いろいろな取り組みがあり得る、こういうふうに思いますので、とにかく、これは攻めの農林水産業でございますから、どんどん先へ進むという取り組みを応援していけたら、こういうふうに思います。

 先ほど政務官からもありましたように、個々の農林漁業者がやっている小規模な取り組み段階から、これが少し、いろいろな方と会って、今先生おっしゃったように企業的経営に移行していく段階とか、それから、それがさらに発展していく段階、いろいろな段階があると思います。プランナーという者もいますので、今、我々はこういう状況なんだけれどもどうだろうかという御相談をやはり個別にしていただいて、これはマックス十五年間、ずっとハンズオンで御指導をするということもありますので、やはりそのフェーズ、フェーズに合った御支援を総合的にやっていく。一般的な融資とか補助金と違いまして出資ということでございますので、かなり自由度は、ほかの政策ツールに比べてあるというふうに思いますので、いろいろな可能性を追求していけたら、こういうふうに思っておるところでございます。

村岡分科員 ぜひ、それはいろいろなアイデアを持って、農業全体が変わるときだと思いますのでお願いしたい、こう思っております。

 最後になりますけれども、TPPの問題に関してお聞きしたい、このように思っております。

 参加はもう決まったわけですけれども、新聞紙上で見ると、自動車の部分が大体妥結して、これは農産物を守るためだということを書いている新聞もありますけれども、大臣は、農業分野に関しては、内閣、政府からしっかりと聞きながら、農産物は守れるんだという認識の中で大臣が考えられているかどうかお聞きしたい、こういうふうに思っております。

林国務大臣 いろいろな報道があるようでございますが、よく事実関係をフォローしていただくと、今回の日米合意というのは往復書簡ということになっておりますが、これは前回、総理がワシントンに行かれて共同声明というものを出されたときに、いろいろなことがあれに書いてあって、一定の農産物がセンシティビティーだ、こういうようなことも書き込んだわけでございます。

 その後、第三パラグラフに、さらにこういうことを日米でやっていきましょうということが書いてあって、例えば、「自動車部門や保険部門に関する残された懸案事項に対処し」云々と、ここの部分をやっていたと。どうも報道によっては、これと本チャンの交渉自体が何かごっちゃになっているようなイメージがあるのでございますが、ここについてのことを、一応入る前提としてやっていこうと。この間二月に、お互いに共同声明で出したことをやったということでありますから、これによってアメリカが我々の参加表明に対する合意ということになっていく、こういう一連の手続が一個ずつ進んでいくということですから、本チャンの交渉というのは、議会通知後九十日ルールというのもアメリカはあるようでございますので、そこからということでございます。

 二月の共同声明で言う第二パラグラフ、まさに、「日本には一定の農産品」、「米国には一定の工業製品」、こういうようなことをきちっとここで書いたわけでございますので、これをもとに、これを手がかりにして、そして、与党から決議を既にいただいておりますし、国会でも決議がなされるやもしれずという御質疑が、午前中でしたかありましたけれども、そういうものをきちっと踏まえてしっかりと交渉をしていく、こういうことだと思います。

村岡分科員 我々は野党なので、政府ではありませんから、外交交渉はできません。外交交渉はもちろん最終的には総理の御決断だ、こう思っておりますが、農水大臣でありますから、しっかりと農林水産業の、日本で守っていくものは守っていく、そういうことも、ぜひ農林水産大臣から総理にしっかりとお伝え願いたい、こう思います。

 しかし、TPPは参加していきます。ここで、先ほど、新規就農であったり、六次産業化であったり、いろいろな対策を立てながら、大臣を初め農林省の皆さんも頑張っておられると思います。農業者も頑張っていると思います。しかしながら、多分、根本的にこれは制度を変えなきゃいけない時期が近くに来ているんだと思います。

 例えば、農地もこれはリースでできるようになって大規模化も進んでいる、二十ヘクタール以上も三割あるということが言われております。しかしながら、実際には、八割までいくという目標を立てたにもかかわらず、なかなか進んでいない現状がある。やはりある程度大規模化を進めていかなければ、とても国際競争力をつけることができない。このことに関しては、どのように大規模化を進めていくのか、その計画、また目標を教えていただければと思います。

林国務大臣 TPPいかんにかかわらずという言葉は、午前中も実は質疑の中でいただいたことがあるんです。

 私もそのとおりだなと思いますのは、今まさに村岡委員がおっしゃったように、これはTPPがあろうがなかろうが、もう日本の農業は岐路に立っている、こういうことでありますから、先ほど来いろいろ御議論いただいたような施策を進めていって、岐路ということは二つに分かれていくということですから、縮小均衡で衰退の道ではない方にきちっと歩を進めていかなければならない、こういうことであります。

 規模の話は、確かに、集約化していこうという方向性で、規模拡大ということは重要な要素だとは思います。ただ、ではアメリカのように平均百七十ヘクタール、また豪州は三千ヘクタール弱ですから、ここと同じようにしていくという方向性になるのかといえば、それはそういうことはないわけでありまして、我が国のいろいろな土地の形態、いろいろな自然状況の中で拡大をしていくことをやっていこうということでありますから、さらに、野菜を組み合わせた複合経営や、今御議論いただきました六次産業化で付加価値をつけていくということも含めて、それから、外に展開していって輸出をするというような需要の方もあわせてやっていくことで日本の農業をやはり強くしていく、これが必要だ、こういうふうに考えておるところでございます。

村岡分科員 最後……

西銘主査 御協力ください。時間です。

村岡分科員 大臣の答弁が長かったのであれですけれども、ぜひとも、このTPPの中で、大規模化だけがいいわけじゃないですけれども、ぜひとも農業の成長のために頑張っていきたいと思います。そこには協力していきます。よろしくお願いいたします。

西銘主査 これにて村岡敏英君の質疑は終了いたしました。

 次に、加藤寛治君。

加藤(寛)分科員 自由民主党、長崎県二区の加藤寛治でございます。

 再度質問の機会を得ましたことに感謝をいたしております。

 林大臣、江藤副大臣、長島政務官には、大変お疲れのこととは思いますけれども、しばらくおつき合いを願いたいと思います。

 私は、地方議会におりましたときに、平成二十一年に誕生した前政権に一刻も早く退場を願い、新政権の樹立を果たさなければならないと強く念じておりました。

 なぜならば、それは、一つには、農業、すなわち、国民の命をつなぐ、また命を守る食料産業、農業の基本である農業基盤整備事業等の予算を六十数%削減したからであります。このことは、農業の何たるかを全く理解していない上に、国民の命を軽視するもの以外の何物でもないという考えからであります。

 民は食をもって天となすとか、農は国の大もとなりと、先人は農業の大切さを遺訓として残しております。このことは未来永劫変わることのない真理だと私は理解をいたしております。政治にかかわり、国民を守らなければならない立場の者がやってはならない邪道である、このように断ぜざるを得ません。

 また、アメリカの第十六代大統領リンカーンは、人物の資質を試すにはまず権力を与えてみることだと言っております。大変危険なことではありますけれども。

 そこで、三年余の前政権を思い起こしたときに、リンカーンの言葉を改めてかみしめながら、また、先人の言葉に、その人にあらずんば災い民に受くともあります。いかに三年余、国民が多大な被害をこうむったか、はかり知れないものがあろうかと存じます。

 そうであればあるだけに、安倍政権への期待と同時に、責任は多大なものがあろうかと存じます。加えて、新政権の一翼を担っておられる林農水大臣の農林水産業に寄せる思い入れを期待いたしておるところでございます。

 そこで、私の二十年足らずの農協組合長等としての浅い経験も踏まえながら、質問に入りたいと思います。

 私は、ずっと以前、四十代、四十そこそこだったと思いますが、六十代後半の地域の有数な農業経営者に尋ねたことがございます、あなたは五十年以上の経験があるから、農業についてわからないことはほとんどないでしょうと。返ってきた答えは、自分はまだ五十数回しか田植えはしたことはないし、また、毎年毎年気象は一定でもないし、とてもとてもまだまだ、毎日毎日が勉強であるということでした。このことは、いかに農業が難しく、現場を見聞せずに机上論だけで判断、対処しようとすることへの戒めだと痛感をいたした次第でございます。

 そのような見地から、これからの農協のあり方についてお伺いをしたいと思います。

 平成二十三年七月の二十二日に閣議決定された、国の、規制・制度改革に係る追加方針にありますように、農業の成長産業化促進については、農協における農業経営支援機能の強化や組合員の収益力強化などの取り組みが大変重要なことであると考えております。

 しかし、農協が営農指導部門を強化していくためには、そのための財源が必要となってきます。しかし、組合員への負担増を求めることも現在の農業経営の現状では厳しい状況があることから、農協においては、農協法で規定され、定款で定められた事業を総合的に行うことで経営基盤の確立を図ることが必要であると考えております。

 ついては、過去に議論されてきた農協の信用、共済部門分離など、行き過ぎた自由化、規制緩和がないようにしていくことが必要であると考えておりますが、これからの農協のあり方についてどのように考えておられるか、お伺いをしたいと思います。

江藤副大臣 先生の御指摘は、大変、私から見れば大先輩でございまして、いろいろ農協に対する風当たりが強いことは、この永田町におれば強く感じるところであります。

 私のところにも単協はたくさんあります。しかし、例えば台風が来てハウスのビニールが飛ばされれば、全く無給で、休みを返上して、ビニールの張りかえとかに最初に走り出ていくのは農協職員ですよ。あとは役場の職員とかですね。

 やはり、地域の単協の皆さん方、農協は地域で非常に当てにされていますし、我々自由民主党の農業政策は地域政策。地域を守るための農業政策の中には農協というものは必要だと私は思います。

 今御指摘ありましたように、農協法の中でいろいろな事業、信用、共済事業等をやっているわけでありますので、このことについて都会の人たちはいろいろ言う人もおりますけれども、私は、これを今改める必要はないのではないかと思います。

 ただ、自民党政権時代にも、中央会に対しては何度も事業改善命令を出した経緯があります。ですから、やはりこの大きな農政の転換点に立って、農協があるから新しい事業展開ができたとか、随分努力をしていますよ。販路開拓をしたり、新たな付加価値をつけたり、保冷技術を導入したり、いろいろな努力をしている先進的な農協も出てきておりますけれども、それがまだできていない農協もあることもまた事実でありますので、やはりもう一度、農協組織というものが原点に立ち返るときが来たということも、一方の事実であるというふうに認識をいたしております。

加藤(寛)分科員 ただいま江藤副大臣からお話をいただきまして、随分、ほっと胸をなでおろした気分もございます。

 お話の中にもございましたように、やはり全国に七百余の農協があるわけでございますから、それは、いろいろな農協が存在していることも事実であろうと存じます。しかしながら、先ほどお話しされましたように、地域にとっては、農協の職員というのは、農業、農家の方々のために、我が身をなげうって大変頑張っておるというのが現状であるわけです。

 そうした転換期の中で、恐らく、国としても農協の合併を進めてこられたんだろうと思います。

 そうした中で、私が関係をしておりました農協も、十一農協が合併をしまして、現在、島原雲仙農業協同組合として、平成十三年四月一日に発足をしたわけでございます。発足した当初は、職員もそれぞれの十一農協の合算でありますから、千名余の職員がおりました。しかしながら、十年かけまして、今現在七百余に、いろいろな施設の統廃合を重ねて効率化を図っておるのも現実でございます。

 そうした中ではございますけれども、営農だけで経営というのは成り立っていないというのが現状であります。それを補完するために、また、営農に携わっておる職員も、夜討ち朝駆けで、一緒になって、信用、共済に、額に汗して頑張っていただいて、収支の改善を図って、経営の基盤に大きな努力をしておるわけでございます。

 分離をしますというと、必ず、農協の経営、運営というのは成り立っていかないというのが現状であるわけでございますから、ぜひとも御理解をいただいて、今後ともに、農協のあり方というのを正しい方向で導いていただきますように、お願いを申し上げておきたいと思います。

 御案内のように、農協というのは、万人は一人のために、一人は万人のためにという綱領というのがございまして、やはり、小さな零細の農業であっても、耕作を大きくされておる大規模の農業であっても、同じように扱わなければならないという使命もあるわけでございます。そこが利点であり、また欠点でもあるわけでございますので、よろしく御理解を賜りますようにお願いを申し上げておきたいと思います。

江藤副大臣 先ほど、業務改善命令が全中と申しましたが、全農の間違いでございました。修正させていただきます。

加藤(寛)分科員 次に、主権国家の最大の使命というのは、国民に対して食料の安定供給というのが私は第一であろうと。このような観点から、食料自給率のアップについて、これからの取り組みをお伺いしたいと思います。

 御案内のように、農林水産業を取り巻く環境は、先行きの見えない大変厳しい経済の状況の中で、担い手の減少や高齢化の進行、燃油価格の高騰を初め、大変大きな課題を抱えております。

 このような中で、民主党政権時代には、食料自給率を四〇%から五〇%に向上させる目標を設定しながら、食料自給率の向上の基本となる農業農村整備事業の六〇%以上の削減をするなど、今日では、四〇%の食料自給率が三九%に減少しておることからいたしましても、農業に対する国策が誤りであったと如実に証明をしておるものと私は考えております。

 我が国の食料自給率が三九%であっても、現在は外国からの輸入によって賄われておりますが、将来にわたって安定的に安い食料が入ってくる保証は何一つありません。

 世界の人口というのも、五十年前は四十億人、現在は七十億人を超えたと報告されております。これから百億人に達するには、そう大した長い年月は要しないということが推測をされております。加えて、世界的には、地球は砂漠化しており、農地は大変な激減をしております。

 そのような観点の中で、食料不足が到来することは必ず近い将来にある、私はそう考えております。

 そうした中で、農産物、国民の食料が外国から入ってこなくなってから対策を講じても、これは到底間に合うことではないわけです。言うならば、泥棒を捕まえて縄をなうようなものだと思います。水産業についても、全く同じことが言えるのであろうと思います。

 これまで、長い歴史の中で、数え切れない多数の戦争が起こっております。この戦いのほとんどというのは、食料の争奪戦から発端が始まっておるということが言えるのではないかと思います。また、戦いの中で一番悲惨な戦いというのは、兵糧攻めだと言われております。どうか、歴史は学べども批判せずというような先人の教えもありますように、同じ轍を踏まないように、ぜひとも食料自給率の向上については全力で取り組まなければならない課題だ、私はこのように考えております。

 やはり、自給率がないと、一旦急あるときに一番困るのは国民であるわけでございますから、先ほど、地球は砂漠化に進んでおるということを申し上げましたけれども、現在、年々五百万ヘクタールほどが砂漠化して、農地が減少しておると言われております。日本の農地は、御案内のように四百四、五十万ヘクタールしかないわけで、日本の農地以上のものが減少するということは、やがて近い将来、食料不足というのは間違いなくやってくるもの、このように考えております。

 私は、農業は国の礎であり命綱ということを確信しております。そこで、食料自給率に向けたこれからの取り組み方についてお伺いをしたいと思います。

林国務大臣 今、加藤先生から御指摘がありましたように、世界人口がふえていく、また地球温暖化の影響、また砂漠化のお話もありました。それから、世界的に穀物の収穫面積が横ばいで推移する中で、単収の伸びが鈍化しているということを考えますと、世界の食料需給が中長期的に逼迫基調にある、こういうふうに考えております。

 実は、十九世紀の終わりごろにも同じような議論があって、マルサスが人口論というのを述べておったというのが歴史の教えるところでありますが、あのときは、その後まさに単収が伸びるということが出て、面積はそう伸びないけれども人口が増加するのを、単収の伸びとか農薬の開発もございました、これで支えていった。緑の革命などということを産業革命に比して言う方もおられるわけでございますが、しかし、今回、単収の伸びも鈍化しているということ。

 それから、中国などを見ておりますと、今まで穀物を食べていた方が、所得の増加に伴って肉を食べるようになる。そうすると、穀物に換算しますと大変にたくさんのものを消費するようになる。

 こういうようなことがあるわけでございまして、こういう状況の中で我々はいろいろなことを考えなければいけないということでありますから、まさに、食料の安定供給というのを確保していくことは国家の最大の基本的な責務であるということでありまして、国内の農業生産の増大を図って食料自給率を向上させることは大変に重要である、こういうふうに考えております。

 したがいまして、この自給率の向上については、食料消費、それから国内農業生産の両面にわたる取り組み、両方とも必要であるということでございます。

 例えば、小麦、大豆など自給率の低い農産物の生産振興を図る、それから、米の消費拡大や、地域で生産された農産物を地域で消費しようとするいわゆる地産地消、こういうものの取り組みを推進していくということが求められておるところでございまして、我が省に立ち上げました、攻めの農林水産業推進本部で現場の声をよくよく聞いて、これを吸い上げて、需要サイド、供給サイド双方からしっかりと検討を行って、食料自給率の向上を図ってまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。

加藤(寛)分科員 今、林大臣から、食料自給率の向上は国家にとって最大の責任であるということをお伺いしまして、安心をしたわけでございます。

 そこで、TPPについてお伺いをしておきたいと思います。

 TPPに参加をしますというと、今現在の予測では、三九%が二十数%に低下をするではないかということが予測をされております。

 そこで、食料自給率が低下しないでアップするために、やはり、このTPPに参加をした場合に、どうした形で決着を図るかということが一番最大の要点ではなかろうかという思いもしておる中で、農水大臣として、林大臣、どうした決意、思いでこの対応について取り組んでいかれるのか、その思いというのをお聞かせいただきたいと思います。

林国務大臣 まさに加藤先生おっしゃっていただきましたように、党でTPPに関する決議というのをいただいて、委員も多分一緒になってつくっていただいたんだと思いますが、あれは何も、農業を守る、保護するということを主目的としているというよりも、まさに今ここでお話をさせていただいたように、国民にきちっと食料を供給するために自給率を上げていく。

 こういうことを考えたときには、やはり、ああいう決議をしていただいて、そういう方針でこの重要品目についてきっちり聖域を確保していく。これが必要だから、ああいう議論をして、そして決議をしていただいたわけでございまして、我々はそういう認識を改めて胸に刻んで、この党で御決議をいただいたことを聖域として確保していくために、これは今から、幾つかの段階はございますけれども、しっかりと国益をかけて交渉してまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。

加藤(寛)分科員 ありがとうございました。ぜひ、そういう強い思いで取り組んでいただくようにお願いを申し上げておきたいと思います。

 そこで、それぞれの農業の経営をやっていく上での基本というのは、優良な農地の確保であろうと思います。そうした思いから、農地の基盤整備の今後のあり方についてお伺いをしておきたいと思います。

 食料自給率を向上させることの重要性について先ほどから述べたわけでございますが、食料自給率の向上には、その前提として、農業の担い手の育成とその基本となる農地の基盤整備の充実があって初めて、農業も効率的な経営による競争力の強化が図られると思います。

 このように、農業にとって、農地の基盤整備は基本であります。基盤整備を完成しないというと機械化もできませんし、機械化をしなければ規模拡大もできません。規模拡大ができなければ担い手の育成もできず、ひいては、食料自給率の維持、アップも不可能であります。

 農業は、国民の生命を維持していくための不可欠な食料産業であるわけですから、これが基本であるということをぜひ再認識していただいて、農地の基盤整備について将来を見通して取り組んでいただくようにお願いを申し上げたいと思います。

 一方で、農地の基盤整備は、御案内のように、一般の公共事業とは異なって、受益者つまり農業者の金銭的な負担を伴う申請事業であります。そうした負担が障害となって申請を見送る地域も数多くございました。基盤整備を推進していく上で最大の障壁になっておることも事実であるわけでございます。

 そこで、お尋ねをしたいわけでございますが、現在の農地の基盤整備には国の補助事業がありますが、農家の負担軽減のために、国の補助率のさらなるかさ上げというのが実現できないのか。私は、これができれば、これまで二の足を踏んでおった農家が基盤整備について一層取り組んで、規模拡大、ひいては後継者の育成にも大きく寄与するものと考えておるわけでございますけれども、この点について、政府の御見解をお伺いしたいと思います。

西銘主査 實重農村振興局長、なるべく簡潔にお願いします。

實重政府参考人 委員御指摘の農地整備事業でございますが、公共事業ではありますけれども、一方で、農業者の私有財産に対して裨益する事業でありますので、一定の負担を農業者に求めているところであります。

 国が補助をした残りの部分につきましてでございますが、農業者の負担の軽減を図る観点から、さまざまな措置を講じております。

 一つは、区画整理に当たりまして、担い手への農地集積が進展する場合には、最大で事業費の七・五%に相当する額につきまして、促進費として地区に交付をしております。

 また、農業者負担金対策という形で、無利子にする対策を講じておりますが、二十五年度地区につきましては要件を緩和したところでございます。

 さらに、農業基盤整備促進事業、二十五年度で予算を二百二十億円計上しておりますが、この事業では、畦畔の除去や暗渠排水といった基盤整備を自力施工で行っていただく場合には定額で助成を行う、十アール当たり十万円の助成をするというような措置をしているところでございます。

 このような施策を通じまして、農業者の負担の軽減に努めて、大区画化等の農地整備をさらに進めてまいりたいと考えております。

加藤(寛)分科員 基盤整備事業についての重要性というのは、これはもう誰が考えても論をまたないものだ、私はこのように考えております。

 しかしながら、政府の方でこれから考えておられることの一つに、現在、二十ヘクタールの経営体が三〇%であるけれども、これを、一六年度まで、三年後に八〇%に持っていきたいというようなことが言われておるようです。それとまた、ほかの点から考えてみましても、十ヘクタールの耕作をする人が三十万人必要である、そういう方向に持っていきたいというようなことが考えられておるようですけれども、例えば、二十ヘクタールの経営体を八〇%にするためには三百六十万ヘクタールが必要になってきます。十ヘクタールを三十万人が耕作するには三百万ヘクタールが必要になってきます。

 十ヘクタール、二十ヘクタールを耕作するには、すきやくわでは耕作はできないわけですね、機械化しなければ。

西銘主査 時間が来ていますから、まとめてください。

加藤(寛)分科員 はい。

 機械化するには、圃場整備をしなければ機械化はできないわけです。今現在、圃場整備が済んでおるのは、国、農水省の統計から考えますというと、二百万ヘクタールしか圃場整備は済んでおりません。ということは、百万ヘクタール不足しておるんです。

西銘主査 時間です。

加藤(寛)分科員 ということは、百万ヘクタールを早急に圃場整備しなければ、あなた、政府が考えておられる強い農業は実現できないということでありますから、早急に、一日も早く圃場整備を完成していただくように強くお願いを申し上げておきたいと思います。

 以上です。

西銘主査 これにて加藤寛治君の質疑は終了いたしました。

 次に、務台俊介君。

務台分科員 長野県第二選挙区選出の務台俊介と申します。

 私の選挙区は、北アルプスの東側に沿ってずっと縦に長い選挙区でございまして、地形的には、盆地もありますが山間地が多いということで、長島先生の選挙区にちょっと似ているのかもしれません。

 昨日、私は、地元の北安曇郡の小谷村というところで、地元の支援者の皆様と車座で集会をしてまいりました。そこで、きょうこういう質問をするという話をしたんです。実は小谷村は、御多分に漏れず人口がどんどん減っていきますが、唯一元気のある、唯一と言っては語弊がありますが、元気のある要素があるんです。

 それは、小谷村に大網という、限界集落の典型的な、山の上にある集落がありまして、冬は三メートル、四メートルの雪が降るところなんです。平成五年に村にあった分校が廃校になったんですが、そこに、OBS、アウトワード・バウンド・ジャパン・スクール、そういうシステムを運営している野外活動のNPOが入ってきてくれまして、その分校を拠点にいろいろな活動をしているんです。これまで、三万人くらいの子供たちを受け入れる拠点になっているんですよ。

 その結果、限界集落が元気を盛り返したんです。その事務局をやっている若い人たちが夫婦で移り住んできて、その人たちがいるので、限界集落、消滅がとまっているんです。彼らがいるうちにということで、春夏秋冬、お祭りを新しく考えて、そうしたら、大網から出ていった人たちもそのお祭りのときには戻ってくるという。

 私が何を言いたいかというと、結局、子供の教育が限界集落を救っているということなんです。

 同じことはほかでもあります。旧八坂村というのがありまして、その八坂村というのは、山村留学で有名なところなんですよ。育てる会という財団法人がありまして、これは昭和五十一年に、山村留学に全国で初めて取り組んだ武蔵野市の元学校の先生の青木さんという人、私も存じ上げているんですけれども、この人が始めたもので、この八坂の取り組み、そこに寄宿舎までつくって、定期的に、一年、二年の山村留学を受け入れているということで、旧八坂の人たちは、里親になって子供たちを自分のうちに住み込ませて学校に通わせているんです。複式学級になるところが、その子供たちが来ているので複式学級にしないで済んでいるんですよ。彼らがいて八坂が元気が出ているんです。そこに行くと、子供たちが学校に、里親のうちから農家から歩いて通っているんです。そして、よう、君ら、山村留学と言うと、はい、そうです、おはようございますと、しつけもいいんですよ。

 要は、子供の教育が地域の活性化に物すごく役立っている。おじいちゃん、おばあちゃんは自分たちの子供たちが出ていって孫にも会えていないのに、東京から疑似的な孫が来てくれていると言うんですよ。これはすごいんです。

 要は、何を言いたいかというと、私は、農山村、農村地域、農業活性化のために、子供の教育ということをしっかりと位置づける必要があるというふうに言いたいんです。そのことを私はずっと選挙中から、自分自身が国会議員になってこれをやる、やると、ずっと五年間も言い続けてきていまして、ようやくその質問の機会が与えられたということなんです。

 私は、総務省の課長をしていたときに、和歌山県の海南市長を経験された石田真敏さん、衆議院議員とお話ししたことがありまして、地域再生と子供の教育が非常に強いつながりがあるということで認識が一致しました。今、御承知のように、全国で農山村で子供たちを短期間滞在させるプログラムが動いています。一番有名なのは武蔵野市のプログラム。これは、派遣元として有名。受け入れ側として有名なのは、飯田市のプログラムというのが有名です。私は、こういった取り組みはすごくいいんだけれども、全体としてこれをもっと制度化することができるんじゃないかと。

 それで石田先生と話をした当時、当時の我々の二人だけの議論なんですが、今の小中学生の各学年の人員は大体百万を超えています。百十万ちょっとです。この子供たちを、例えば、一週間単位、クラス単位で農村に連れてきて合宿してもらう。すると、クラス単位で、一週間で一クラス三十人ですから、一カ月だと大体百五十から二百人ぐらい来てくれる。十二カ月ずっと来いというのは難しいので、十カ月来るとしたら、二千人規模の子どもたちが一週間単位で来ることになるんですよ。全国で百万人いますので、大体二千人で割ると、全国で五百カ所の受け入れ学校があるとこれが成り立つということです。

 先ほど申し上げたOBSのように、廃校に手を入れるとか、寄宿舎を整備するとか、農家にホームステイしてもらう、そういう受け皿整備を行っていけば何とかなるんじゃないかと。通年で経常的に、二千人規模の都会の子供たちが、特定の農村地域に入り込んで生活をする。一週間でいいんですよ。これは思いつきでなくて継続しますので、地域社会でビジネスとして成り立つ、それで地域経済の活性化にもなる、こういうことを石田先生と話をして、これを一緒にやりましょうということで盛り上がったんです。

 この提案は、実は、去年の選挙のこの二十四ページの右上に入っていまして、そこには、「都会と農村の子供の交流を制度化する仕組み」というふうに、地域振興の項目に書いてあるんです。

 実は、これを入れたのは、恐らく石田さんのグループが議論して入れてくれたと思うんですが、そういうことをちょっと想定しながら、今、農水省、総務省、文科省の間で、都市と農村の教育交流の協調のプログラムが動き出して、組まれていると思います。現時点でのこの協調システムがどんな現状にあるかということをお知らせいただきたいと思います。

實重政府参考人 都市の子供が農山漁村に宿泊することによりまして農業、農村について体験学習を行うというプログラムでございますが、平成二十年度に子ども農山漁村交流プロジェクトとして発足いたしました。

 これは、農林水産省において子供を受け入れる農村地域の側の体制整備を支援いたしまして、文部科学省において子供を送り出す学校側を支援いたします、総務省においてこれを仲介する市町村などを支援するという、三省連携のプロジェクトとして発足したものであります。全国の小学校五年生を主な対象として、学校教育の一環として、農村に原則として三日以上滞在することを目指したものであります。

 二十年度から二十三年度までの四年間で、全国百三十七の農村のモデル地区に支援をいたしたところでございますが、千六百三十四校の小学校から約九万九千人の小学生が滞在したところでありまして、その間、予算規模は減少してきておりますけれども、三省での連携は基本的に維持してきているところでございます。

務台分科員 ありがとうございます。

 モデル事業として、四年間で十万人規模の子供たちが来た、そういうことだと思います。

 一方で、民主党政権のもとで、この事業が事業仕分けの対象になったという話を聞いたんですが、実際に予算に手がつけられて事業がとまったりした経緯があったんでしょうか。そこら辺のてんまつをちょっと教えていただきたいと思います。

江藤副大臣 レビューはありました、確かに。それで、バツということになったんですが、さすがにまずいと思ったんでしょう、バツにはなりませんでした。

 我々が政権を去る直前の二十一年が二十四億四千万、しかし、これが二十二年には十五億六千万、二十三年には十七億、そして二十四年には十四億と、がたがたがたっと減りまして、それで、二十五年になりまして、二十一年の水準を若干上回る二十五億円ということになっております。

 今、先生からの御意見をいただいて、私も非常に関心を持って聞いておりました。私の集落でも、全く子供がいないところがあるんですよ。そういうところは必ず消滅しますので。限界集落というところだけじゃなくて。それから、廃校をいかに利用するかということも、例えば私のところの椎葉村なんというところは、子供たちが、車が通っても知らない人が通っても、必ず挨拶をするんですよ、おはようございます、こんにちはと。テレビ番組でも紹介されるぐらいでありまして。

 子供がいると、それだけでも集落が明るくなりますので、先生の言われた長期滞在プログラムですか、百万人、これはぜひ大臣ともお話をさせていただいて、これぐらいの予算じゃとても足りませんので、ぜひ検討させていただくべき価値のあるものだというふうに感じております。

務台分科員 ありがとうございます。

 江藤副大臣のおっしゃったことは最後に聞こうと思っていたので、ちょっと……。

 それで、現時点で、小中高ともに各学年百十万人前後の生徒がいらっしゃる、そういう学校基本調査の数字がありますが、最近の出生数は百万人ということで、この数字が将来にわたってベースとなる数字。多少減っていくと思いますが。

 この百万人規模の生徒に、学校教育の一環として農山村に親しんでもらう機会を制度的に付与するということがどうしても大事だと思います。これは子供の情操教育として大事であり、今の公教育の荒廃が叫ばれている中で、何としても必要な発想だというふうに思っています。そして、そのことが副産物として、地域社会が大いに活性化するということ、それは、江藤副大臣が今、御地元で体験していることとまさに一致していると思います。

 先行的に短期間の農村交流を実施している武蔵野市では、山村滞在を果たした生徒が帰ってくると見違えるように元気になっていると、親御さんが驚くんだそうです。この事業を開始したのは当時の土屋正忠先生でございまして、最初は、土屋先生は一カ月くらいの滞在を考えていたそうです。ところが、学校の先生が、困る、困るというふうにおっしゃって、それで九泊十日になったというふうに伺っておりまして、短期滞在にとどめていると。

 それでも、短期滞在でも学校の先生の負担は大変で、補充の先生を確保するとか、派遣の経費をどうするかとか、武蔵野市の財政負担も結構大きいというふうに聞いております。それでもなぜ続けているかというと、子供がびっくりするほど元気になって帰ってくるものだから、親がこんなのやめたらだめだよということで、そういう声が学校側のプレッシャーにもなって、学校は大変だけれどもやり続けざるを得ない、そういううれしい悲鳴のようでございます。

 ところで、これは数年前に、私、当時、農水省の都市農業・地域交流室長の下條龍二さんという方と話をしたことがありまして、下條さんはこの交流事業に詳しいんですが、この事業、一番のネックは何ですかと、ちょっと端的に聞いたんですよ。そうしたら、学校側の負担、これが目に見える形、目に見えない形でふえるので、学校の先生が嫌がると言うんですよ。特に、最近、いじめ問題とかPTAとの関係とか、とにかく事務的にいろいろ忙しい中で、こういうことをさせられては困る、そういう物理的な話があるんです。

 さて、学校現場の負担感が実際にそうなのかどうか、文部科学省の御認識を伺いたいと思います。

関(靖)政府参考人 今お話ございました農村との交流事業などの体験活動の実施につきましては、例えば、現地での活動内容を充実したものにすることはもとより、しっかりとした事前や事後の指導が重要でございまして、そのための準備や時間の確保が必要であるということがございます。

 また、体験活動を適切に運営して、特に事故がないようにするということで、事前の調査が必須となっているようなことがございまして、そのための準備や時間の確保というものが必要であるということもございます。

 さらには、教員によりましては、家庭の事情によりまして長期の宿泊を伴う体験活動に参加することが困難だ、そういったような課題があるものと認識をしております。

 児童生徒の社会性や豊かな人間性を育むために、発達の段階に応じまして自然体験活動等のさまざまな体験活動を行うことが極めて有意義でございます。このような体験活動を充実していくためには、関係機関等との連携を深めることなどを通じまして、できる限り教員の負担軽減あるいは必要な人員の確保というものを図っていくことが重要であると考えております。

務台分科員 ありがとうございます。

 やはり、綿密な事前調査、事前準備が相当程度あるというお話でございまして、私は、だから進まないんだと思うんです。今のような一種の完璧主義のシステムでやろうとすると、どうしても、ええっということになっちゃいますよ、誰が考えても。

 ちょっと発想を変えて、学校の先生はもう事前準備とかはやらない、とにかく今やっている授業を場所を変えてやるだけだ、そういうふうに割り切ってしまう。交流事業を地元で支えるのは、地元であったり、NPOであったり、地域社会であったり、そういう人たちがやるので、学校の先生はとにかく授業だけやってくれ、あとは俺たちがやるというふうに役割分担をしっかりすると、これは学校の先生の反対が少なくなると思います。

 そういう仮定があるとして、文科省、どのようにお考えでしょうか。

関(靖)政府参考人 今お話ございましたような、学校教育の一環として農村との交流を含む体験活動を行う場合に、教員のかわりとしてNPO等の第三者に全ての指導を委ねる、これはできないわけでございますが、お話ございましたようなさまざまな受け入れについての役割分担ということで、学校の負担を軽減しながら農村を含むさまざまな自然体験活動を推進するために、NPO団体の活用を含めまして受け入れ体制を整備していく、これは大変重要であるというふうに考えております。

 そういう観点から、先ほどお話ございました、農水省、総務省、文部科学省が連携しての子ども農山漁村交流プロジェクトを行っているところでございます。

務台分科員 ありがとうございます。

 今は、団塊の世代が大量に退職し終えた時期だと思います。この人たちは、体力、気力、お金、全て持っていらっしゃいます。ないのは、引退して何をするかという、そういう生きがいで迷っていらっしゃる方が結構多いと思います。まだまだ仕事をしたい人もいるでしょうけれども、仕事ではなく、地域貢献をしたいというふうに思っている人がいます。

 こういう人たちを、潜在的なそういう気持ちを引き出して、例えばこういう都市と農村の教育交流の受け皿にしたら、これはすごいことになると思います。要は、そういうきっかけとか、それをいざなう仕組みを、どうも政府の側でつくってあげていないといううらみがあるんじゃないかというふうに思います。この体験プログラムが仮に全面展開すると、団塊の世代に限らずに、若い人たちの農村移住も促進されることになると思います。

 今、総務省で、地域おこし協力隊という仕組みをおつくりになっていらっしゃいます。交付税による支援の仕組みですが。これは実は、私の田舎の町村に結構たくさん来ていまして、志あるこの人たちはすごいんですよ。給料は低くてもいい。それで、役場の人よりも下手したら優秀というか、ほとんど優秀なケースが多いんですけれども。

 例えば、こういう地域おこし協力隊のような仕組みを活用して、当初は、協力隊員にこの事業の事務局機能を、コーディネート役を務めてもらうということをやれば、物すごくブレークすると思うんです。

 総務省に伺いたいんですが、この地域おこし協力隊の制度の趣旨、それから、この協力隊の人たちが、都会の子供を地元に受け入れるような、そういう機能を担っているようなケースがあるのかどうか、教えていただきたいと思います。

関(博)政府参考人 お答えいたします。

 地域おこし協力隊ですけれども、これは、地方自治体が大都市などの住民の方々を受け入れて、おおむね一年から三年、地域おこし活動の支援や農林漁業の応援などのいわゆる地域協力活動を担っていただこうというもので、これを将来的な定住、定着につなげていきたいという趣旨のものでございます。

 現在、二十四年度では、私どもの把握では、全国二百七の自治体で、六百十七人がこの地域おこし協力隊として御活躍をいただいているところであります。

 お尋ねの点でございますが、地域協力活動と先ほど申し上げましたが、これには、都市との交流事業や教育交流事業の応援も、当然のことながら含まれておりまして、隊員の方々には、その受け入れ協議会などの事務局機能を担っていただくということが可能でございます。

 具体的には、都市部から子供を受け入れる際に、事務局員として、また体験活動のインストラクターとして活動している、そういう事例もあるところでございます。

務台分科員 ありがとうございます。

 いろいろな活動に協力隊が活躍しているという話は本当にそのとおりだと思います。

 六百十七名という話なんですが、国の予算、補助金でこれだけの人を各地に配置するというのは相当困難だと思います。交付税という一般財源の仕組みを利用するからこれだけの人数ができるという、これから多分もっとふえていくと思うんですけれども、そういう側面もあると思うんです。

 それで、ちょっと先走って恐縮なんですが、将来の地方交付税の改正の話ですが、例えば、市町村ごとに他地域からの子供の受け入れの延べ人数を指標として把握して、それに基づく財政需要を受け入れ自治体の交付税の需要額に加えるということは、私は十二分にあり得ると思うんですが、総務省のお考えを聞きたいと思います。

関(博)政府参考人 お答えいたします。

 現在、私たちの方は、この二十年度から、実際の措置としては特別交付税の方で、送り出す方、受け入れる方の財政需要について調査をいたしまして、特別交付税措置をするという仕組みをとっております。

 今のお話は、恐らく、普通交付税の中で、算式でそのような仕組みがとれないかという御提案だと思いますが、これはやはりいろいろな、受け入れの事業の進捗にかかわってくるものだと思います。

 現在の規模ですと、恐らく、インセンティブを働かせようということが主になりますので、私どもは、特別交付税という措置でインセンティブを働かせて、これを拡大していくということだろうと思います。さらに拡大されて、普遍化された場合には、やはりそういう御提案の趣旨もいただきながら、検討することになるだろうと思っております。

務台分科員 制度的には、まさにそのとおりです。であれば、これを、進捗状況に応じてということではなくて、普遍化して制度化しさえすれば、総務省は、普通交付税で数千億円、この指標で算定してくれる可能性が十分あるという答弁に、私は今聞きました。

 そこで、提案したいんですが、子供の地域間循環が実はすさまじいばかりの教育上の効果、地域活性化のプラスの相乗効果を生むことになることを踏まえて、先ほどのこの公約集、J―ファイルにある仕組みの具体化、全国展開をぜひ提案したいと思います。

 農水省、文科省、総務省の制度構築に向けての協力体制をまず組んでいただきたい。具体的には、文部科学省は、学習指導要領を変更して、一週間程度、小学校五年生の段階で農山村で授業を行う、これを学習指導要領に位置づけていただきたい。農水省は、農山村の受け入れ体制を整える、農協の協力をいただく、そんなこともあるでしょう。総務省は、市町村の体制を整備して、財源措置をびしっとしていただく。

 こういう協力体制をすれば、そのためには恐らく法律が必要だと思います、この構想は実現できると考えますが、政府の、大臣のお考えを伺いたいと思います。

林国務大臣 今、ずっとやりとりを聞いておりまして、よくよく委員は議員になられる前からこれを進めておられて、さすがだなと思いましたのは、やはり先輩から言われると、交付税の仕組みはかたくて変えられないものだという認識を我々はいつも持っているんですが、そうでもなさそうだという答弁も総務省からもあったところでありまして、しっかりとこれを進めていくということは大変大事なことではないか、こういうふうに思っております。

 先ほど、聞いておりまして、なるほど、挨拶ができるようになったとか、命に対する関心が高まった、大変にすばらしいことでないか、こういうふうに思いますので、やはり農村と都市の交流、いろいろなことに、我々農林水産省という立場でも波及効果もあるのではないか、こういうふうに思いますので、しっかりと省庁とも連携して、さらなる発展についても検討していきたいと思いますし、省庁をまたがることですから、これは農林大臣としてというよりも、議員立法なんかの道筋もあるのではないかなというふうに、聞いていて思いましたので、つけ加えさせていただきます。

務台分科員 大臣から積極的な答弁、最後に、議員立法でやろうじゃないかという、やろうじゃないかとまではおっしゃっていませんけれども、ぜひそういう議員立法をプロモートする役割を私自身が果たしていきたいと思いますので、どうか関係省庁の皆様、特に實重重実局長は私の大学のときの同級生でございますので、強い味方がいるものと思ってやっていきたい、やらせていただきたいと思います。

 もう少し時間がありますので、もう一つ、ちょっとおもしろい提案があるので、御紹介したいと思います。

 先ほどの石田真敏先生は、定年前帰農促進事業というのを提案されております。

 定年は今六十ですが、六十になってから農業を始めたら遅い。その前、十年ぐらい前、五十歳ぐらいからやれば何とかなる。今、人生百年時代なんて言われていますが、例えば七十、八十くらいまでは働けるんですね。その場合には、やはり六十では遅いので五十くらい。その五十で始めるためには、農業技術というのは大変です、しっかりやるには。ホビー農業はいいですけれども、そうじゃなくて、やはりまともに出荷するようにするには農業技術が要るので。

 大体、人間は五十になると、次は何をするかなと考えますよ。しかも、都会へ出ていった人たちは、自分の農村を捨ててきたという後ろめたさがある。その人たちが、全国の農業大学校で少しずつ、現役時代から農業技術を習得して、自分の生まれ育った故郷でもいいし、別の地区でもいいんですけれども、そこで農業を始めると、これはすごい担い手が、担い手は若い人だけじゃないと思うんですよ、定年前のある程度の、まだ余力のある人たちをそこにいざなうという仕組みが必要じゃないかと思います。

 おまけに、その人たちは六十五になると年金をもらえますから。そうすると、政府が補助金を出して農業をやらせるんじゃなくて、自分の年金を、自分で補助金を出して農業をできる。内部補助なんですよ、これは。

 長野県は全国一の長寿県ですよ。なぜかというと、いろいろな要因がありますけれども、農民の数が日本一多いんですよ。役場を退職した人は、ほとんど田んぼを持って畑をやるんです。それをやっているから、朝早く起きて、四季に応じた農業体験ができる。それが元気のもとなんです、実は。それは実証されていませんけれども、みんな言っています。サラリーマンをやめて農業をやった人は長生きするけれども、サラリーマンをやっていて農業をやっていない人は早死にする、そういうふうに我々の地元では……

西銘主査 そろそろまとめに入ってください。

務台分科員 はい。

 ということで、こういった定年前帰農促進事業というアイデアについて、農水省のお考えを伺いたいと思います。

林国務大臣 これも石田先生のプランだと。石田先生は私も長いつき合いなんですが、いろいろいいアイデアがあるなと思って聞かせていただいておりました。

 先ほど、青年の就農の話をほかの委員の方とやっておりました。一応、原則として四十五歳未満ということなんですが、一方で、五十歳前後の方も、ほかの仕事にずっと従事していた中でいろいろなノウハウを培われているということで、そういうノウハウを持って農業経営にチャレンジをしていただける。また、こういう方は貯蓄等の資産も持っておられるということでありますけれども、住宅の準備をしたり、機械、施設を導入しようとする場合には、五十五歳未満、これで都道府県知事が特に必要と認めた場合は六十五歳未満まで、無利子の就農支援資金というのは融通をしておるところでございます。

 また、全国レベル、都道府県レベルでの新規就農相談センターにおける情報提供や相談、それから農業委員会等における農地のあっせん、これは年齢にかかわりなくやっているということでございますから、世代間バランスも必要でありますけれども、五十歳前後、人ごとのように言っていますが、私もまさにその五十歳前後の世代でございますので、こういう……

西銘主査 時間です。

林国務大臣 熟年というよりは中年かもしれませんけれども、こういう方々の経営ノウハウも活用することも視野に入れて、新規就農対策が必要だと思っております。

務台分科員 ありがとうございました。

 とにかく、日本の農村を救うのは、都市と農村のお互いの共感だと思います。共感をつなぎ合わせる仕組みをぜひつくっていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

西銘主査 これにて務台俊介君の質疑は終了いたしました。

 次に、簗和生君。

簗分科員 自由民主党の簗和生でございます。

 本日は、私の初めての質問でございます。林大臣、江藤副大臣、そして長島政務官、何とぞよろしくお願い申し上げます。

 私の地元は栃木県でございまして、私の選挙区は北部に位置しています。日光は有名だと思います。西部が日光で、そして私の方の東部は、いわゆる那須と言われる地域でございます。この那須地域は二千メートル級の山々が連なっておりまして、茶臼岳という山は千九百十五メートルということで、日本百名山にも数えられている山です。また、東の方に目を向けますと、八溝山地、こういうものもありまして、茨城県と接しています。そして、西の方には高原山というものもございまして、山々に囲まれた土地であるというところでございます。

 栃木県全般で申し上げますと、非常に農林業が盛んな地域でございます。非常に平たんで広い農地がありまして、水資源も非常に豊富でございます。そしてまた、穏やかな気候であるということで、非常に農業にとってすばらしい条件がそろっています。農業産出額は全国で十位ということで、農業県と言ってもいいと思っています。

 主な農産物としましては、まずイチゴ、これは全国の生産高一位です。とちおとめ、そして新しい品種としてスカイベリーというものもこれからできてくるという方向にあります。また、お米。

 それから、生乳につきましては、これは本州では一位です。北海道に次いで一位の生産量を誇っているということになります。また、豚肉や牛肉についても全国八位ということで、非常に生産が豊かでございます。

 そうした中で、本日は、まず、我が国の今後の農業のあり方ということに関しまして、攻めの農林水産業というものに焦点を当てて質問させていただきます。

 六月をめどにまとめる成長戦略を検討している産業競争力会議において、テーマ別会合の議題の一つに、農業輸出拡大・競争力強化というテーマがあります。そして、その中で、攻めの農林水産業の推進というものがあります。これについてお伺いいたします。

 まず、大臣は、同会議において、この攻めの農林水産業の具体的な取り組みとして、日本の農林水産物、食品の輸出促進、それから農商工連携、六次産業化の推進、そして農地の集約化、集積などに言及をしています。

 この第三番目の農地の集積ということに関して、今、農地の貸借がよりスムーズに進むような制度の構築に向けて取り組みを進めているということで、規模拡大を目指す意欲のある農家が農地を確保できるようにするというような制度が進んでいると思います。

 全般的なトレンドを見ましても、担い手は今増加傾向にあるということで、家族経営の経営体の大規模化が進んでいる、それからまた、法人経営体につきましても、十年で二倍の数になっているという状況があります。そしてまた、担い手への農地集積も進んでいて、土地利用型農業の農地面積全体の三二%が、今、二十ヘクタール以上の経営体が担っている、そういった状況にあるわけでございます。

 栃木県につきましても、五ヘクタール未満の経営体については減少を示す一方で、五ヘクタール以上の経営体が増加しており、五ヘクタールを分岐点として、大規模経営体が小規模農家の受け皿になっているという状況があります。

 そうした中で、今、農業者の高齢化が進んでいて、耕作放棄地の増加という状況があるわけでございます。栃木県においても、この耕作放棄地というものが二十年間で約三倍になっているという状況があり、いかに担い手に耕作放棄地を引き受けてもらうかということが重要になってくるというふうに思っております。

 そうした中で、平成二十一年度の農地法改正で、企業の参入というものをリース方式に限って認めることになりました。この改正後、過去三年間で千七十一法人が、これは改正前の五倍のペースで参入したということでございます。

 この状況を受けまして、お伺いをいたします。

 農地の流動化というもの、これは、一つ、国全体の方向性としては必要なことだというふうに考えておりますが、やはり一定の慎重さというものも必要だというふうに思っています。農地が有する多面的な機能の維持という観点からすると、たとえそれがリース方式という形で貸し手側がいざというときに契約を解除できるという状況が担保できているにしても、経営体が頻繁に入れかわるようなことになれば、農地の安定的な管理という点ではいろいろな支障が生じると思っています。

 したがいまして、現行のリース方式による企業の農業参入に関して、今、その参入の数字が出ているんですが、定着率の方です、いわゆる撤退の状況も合わせた観点から、実績をまずお伺いしたいと思います。

奥原政府参考人 平成二十一年の農地法の改正によりまして、リース方式での農業参入、これは完全自由化をされたところでございます。

 一方で、その法改正前、これは平成十五年から二十一年まで、特区制度の時代で、特区においてこのリース方式での参入が認められておりました。この間に参入した法人の数が、全部で四百三十六法人ございます。

 このうち、平成二十四年九月末時点で、農業を継続していたところは三百五十七法人でございまして、定着率でいいますと八二%ということになります。逆に言いますと、約一八%のところは、これは七十九法人でございますが、撤退をしている、こういう状況でございます。

簗分科員 リース方式ということで、先ほど申したように、所有に比べて、いわゆる悪い使い方、産廃場にされたりとか、そういうところは防げると思うんですが、やはり一定程度、この点に関しては、農地を安定的に維持管理していくという点から、引き続き配慮をお願いしたいというふうに思っております。

 それでは、次に、農地の集約化、大規模化、それから輸出競争力の強化という点、それから、その点に関して、担い手に農地を集積した、その一方で、やはり小規模農家も存続していかなければいけないという状況があると思いますので、その点についてお伺いしたいと思っています。

 栃木県に目を向けますと、農地面積、全体の割合の中で田んぼが七八%を占めています。約七万ヘクタールの水田で毎年約三十五万トンの米がつくられているということで、これは換算しますと、栃木県の人口が約二百万人でございますから、一年間に食べる量の三倍をつくっているということでも、十分に自給できる状況にある県だということがわかります。

 では、国際競争力を実際に日本にとってどのように高めていくことができるかという点でございますけれども、産業競争力会議で、ある民間議員からこういう発言がありました。米作について、十年から十五年程度を目途に、平均的な農地の規模を五十ヘクタール規模という目標を設定してはどうか、また、当面は直接所得補償を行いながらも、時間をかけて米の生産調整を段階的に縮小するべき、米も十分に輸出産業になり得るなどとの意見が出されています。

 我が国の平均経営耕地面積、これは約二・一、二・二ヘクタールとも言われていますけれども、その程度の面積ですから、これを五十ヘクタールにするということ、これは実際にどうなのかと、私は非常に疑問というか不安に思っています。

 アメリカは、平均で日本の約七十五倍の耕地面積を持っています。そして、オーストラリアについては千三百倍ですから、根本的な競争条件として、もう経営努力では挽回できないような状況があるわけでございます。

 そうした中、国際市場の中に日本が進出をしていった場合に、大規模化ということで本当に対等に戦っていけるのか、これについて改めて農水省の見解をお伺いしたいと思います。

奥原政府参考人 我が国農業の国際競争力、これを高めていくための方法といたしましては、農業経営の複合化ですとか、あるいは付加価値を高める、こういったいろいろな対策があるというふうに思っております。ただ、土地利用型農業につきましては、やはり規模の拡大というものも重要な要素というふうに判断をしております。

 農地の流動化の積み重ねによりまして、先ほど先生からも御指摘ございましたが、土地利用型農業の農地面積の三割が二十ヘクタール以上の経営体が担うという状況に既になってきております。これにつきまして、さらに加速化していきたいと思っておりますが、仮に加速化を進めていったとしても、先生御指摘のように、アメリカの規模、これは百七十ヘクタールでございますし、豪州、こちらは二千九百七十ヘクタールでございます。これとはなかなか比較にはならない、これも事実でございます。

 このために、農地の集積を進めますとともに、あわせまして、先ほど申し上げました複合経営の導入ですとか、六次産業化によって付加価値を高める、こういったことをいろいろ組み合わせまして国際競争力を高めていきたい、こういうふうに考えております。

簗分科員 規模の拡大という点については、地元の農業に従事されている皆さんからも、本当にこういう方向で国として正しいのかという意見があります。

 例えば中山間地域、これは、データで見ますと、国全体で見て、国土面積の六五%、耕地面積の四三%、そして総農家数の四三%、農業産出額の三九%、こういう数字を中山間地域が占めていることになります。

 この中山間地域は本当に重要ですね。流域の上流部に位置することから、水源涵養、洪水の防止、それから土壌の侵食や崩壊の防止、そういった多面的機能を持っていて、下流域の都市住民を含む多くの国民にとって豊かな暮らしが守られているという状況があって、非常に重要だと思っています。

 したがいまして、この中山間地域がこれだけの割合がある中、大規模化そして機械化というものを進めていくこと、これがこの国の農業のあり方として、言葉は極端かもしれないですけれども、本当に正しいのかどうか、これを改めてお伺いしたいと思っています。

 地元の住民は非常に不安を覚えています。担い手への農地集積と、そして、一方での小規模農家をどうやって存続させていくか、この両面のバランスをどのようにとっていくかという点について御見解をお伺いさせていただきます。

實重政府参考人 お答えさせていただきます。

 条件の不利な中山間地域などにおきましては、農業経営の規模拡大を図るにも限界がある地域があることは事実でございます。このため、集落ぐるみでの営農や経営の多角化、複合化、あるいは加工、流通なども含めた六次産業化といった多様な活動によりまして、農業生産の維持発展を図ることが必要なものと考えております。

 また、委員御指摘のとおり、上流地域にあります中山間地域におきましては、国土保全など農業、農村の多面的機能に果たしている役割も大きいところでございます。農業生産活動の継続を確保するという観点から、中山間地域等直接支払交付金、これは水田で十アール当たり二万一千円といった水準となっておりますけれども、この交付金を交付しているところでございます。

 また、小規模な農業者も含めまして、地域社会を形成する重要な一員でございます。そういう意味で、地域社会全体として活性化していく、そういう観点から、都市と農村の交流を行うことによって活発な取り組みをしていただくという都市農村共生・対流総合対策交付金、これらの施策を講じまして、ソフト、ハードの両面からも支援を行っているところでございます。

 今後とも、地域のニーズに応じましたさまざまな施策を展開することによりまして、中山間地域等条件不利地域を含めまして、農業と地域社会の振興、発展を図ってまいりたいと考えております。

簗分科員 私が大きくここで申し上げたいのは、やはり、大規模化、集約化による輸出競争力の強化という方向性と、それから、農地が本来有しているその多面的機能を維持していくことで農業、農村の維持発展を図っていくということの整合、これが、どうしても私はイメージが湧かないという点があるわけであります。

 本当に国際市場の中に参入するということになりますと、生産コストの低減を図るということがまず第一に必要になるわけですから、そういったところで、もうかればこれはやるけれども、もうからなければやらないという論理、いわゆる営利主義が第一になるわけです。そうすると、外国に売れるものをつくろうというインセンティブのみが働いて、売れるもののみに特化して生産活動を行うという考え方で農地利用が進むことが一つ容易に想像がつくと思います。

 その一方で、やはり農地が有する多面的な機能を維持していく上では、安定的、継続的に農地を管理する主体というものも必要になるわけです。したがいまして、徹底したコスト意識のもとで大量生産するという考え方に基づく土地利用において、本当に多面的機能を維持していくことができるのか。

 これは、今、自民党の農政の中でも、多面的機能直接支払い、それから担い手総合支援ということで、国としてもしっかりと農業を支えていくという面も、もちろんしっかりとこれから政策をつくっていくわけでありますが、その一方で、ある意味、市場原理に全て任せてしまおう、そして成長させようという面があるわけです。ここの整合性、これについては、本当に十分に検討を重ねて慎重な議論をしていただきたいというふうに思っているわけでございます。

 大臣は、所信表明演説の中で、農は国の基ということを言われました。食料の安全保障の観点からも、農業は市場メカニズムとは相入れない部分を非常に多く占めていると思います。営利主義によって事業の存続が左右されてしまうことが許されない、本当に生命活動の基盤であると私は考えていますので、この二つの施策の方向性、これが、両立、併存することについてどのような考えをお持ちか、改めて農水省さんの見解をお聞かせください。

荒川政府参考人 お答え申し上げます。

 農業の潜在的な生産力というものを引き出していくという観点で、現場重視の視点に立ちまして、農産物の高付加価値化を進めていく、あるいは輸出を進めていくといったような、農業を産業として強くするという取り組み、これを今展開しておるところでございます。

 一方で、先生今お話ございましたように、多面的機能も大変重要でございます。食料・農業・農村基本法の中で、国土の保全、水源の涵養、自然環境の保全といったような農業の有する多面的機能というものがしっかり位置づけられておるわけでございまして、このような農業の多面的機能が将来にわたって適切かつ十分に発揮されるように施策を展開するということも重要でございます。

 したがいまして、先般、林大臣が本部長として農林水産省内に設置をされました攻めの農林水産業推進本部におきましても、農業を産業として強くする取り組みと同時に、農業の有する多面的機能の発揮というものを車の両輪といたしまして検討を進めておるところでございまして、今後とも、農産物の高付加価値化ですとか輸出の推進、そういったこととあわせて、農業の有する多面的機能の評価などにつきまして、地域の特性に応じて、トータルとしてバランスのとれた政策を進めてまいりたいと考えておるところでございます。

簗分科員 ぜひ、今御答弁いただいたとおりに、両方のバランスに十分に留意をしてこれからの政策をつくってもらいたいというふうに考えています。

 この論点について、最後になりますが、林大臣にぜひお聞きしたいと思っています。

 産業競争力会議第三回目の会合で、ある議員がこういうことを言いました。TPP参加を期して、守りの農業から攻めの農業に転換していく、そういう大きな決意を今すべきではないかという発言でした。これは、ある見方をしますと、構造改革をしてTPPに耐えろというふうに言っているように私はとれると思うんですね。

 私は、この攻めの農林水産業という取り組みについて、政府は元来、TPP交渉をめぐる議論とは全く別のものとして、我が国農業の長期的なあり方として議論をしていたというふうに思っているんです。そう信じているんです。

 ですから、改めて大臣として、この攻めの農業と、そしてTPPとの関係について、御見解を頂戴したいと思います。よろしくお願いします。

林国務大臣 大変本質的な、大事な御質問をいただいたというふうに思っております。

 TPP交渉は、参加の表明を行いましたので、今後、しっかりと交渉に全力を挙げるということでありますが、まさに委員が御指摘いただきましたように、農業従事者が減少したり、高齢化が進展するというような状況の中で、先ほどもどなたかの御質問に答えて申し上げましたが、農業が岐路に立っている、したがって、縮小均衡に入る道を選ぶのか、今言っていただいたように、バランスをとりながら攻めの農業をやっていくのか、これが今の我々が立っているところでありまして、これはもう、TPP交渉への参加いかんにかかわらず、待ったなしの、極めて重要な課題だ、こういうふうに認識をしております。

 そういう意味で、今、荒川総括審議官から答弁がありましたように、一月二十九日に攻めの農林水産業推進本部を立ち上げまして、現場の声を徹底的に吸い上げながら、しっかりと攻めの農業の具体化を進める所存でございます。

簗分科員 大臣、ありがとうございました。心強い御答弁をいただきまして、ぜひその方向で、私も党の中でしっかりと活動してまいりたいというふうに考えているところでございます。

 それでは、次の論点に参りたいと思います。次は、森林経営、林業の振興施策についてお伺いをいたします。

 林業を取り巻く環境というものが、今、非常に厳しさを増しているという中で、本当に森林、林業を地域で守り育てていくためには、より地域の実情に即した、実践的な、有効な施策というものをつくらなければいけないと思っています。

 栃木県については、平成二十三年度の林野面積が三十四万八千七百八ヘクタールということで、県土面積に占める割合が五四・四%ということで、非常に森林も多い県でございます。

 そうした中、今、国産材の需要拡大、利用促進が重要だということで、いろいろな政策が打たれているわけでありますが、一つ、公共建築物において木材の利用を促進する法律というものが施行されたというふうに思います。

 全国八百の市町村で、公共建築物における木材利用方針というものが既に策定済みだということをお伺いしておりますけれども、実績で見ますと、平成二十二年度に新築、増築、改築された建築物の床面積における木造率は、建物全体の四三・二%であるのに対して、公共建築物で見ると八・三%というふうに、非常に低い数字になっているんです。国が整備した建築物について言うと、公共建築物六%という数字になっているということで、この数字が低位にとどまっている理由について、お考えをお聞かせください。

沼田政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生御指摘の、公共建築物等木材利用促進法でございます。平成二十二年の十月に施行されたものでございます。御指摘の、公共建築物の木造率八・三%でありますが、これは平成二十二年度における実績ということでございます。

 この原因はさまざまあろうかと思いますけれども、私どもといたしましては、国や地方公共団体が、戦後、建築物の非木造化を進めてきた影響というのがまだ残っているのではないか。あるいは、延べ床面積が大きい建物、例えば事務所ですと三千平米以上でございますけれども、こういったものについては耐火建築物とするといったようなことがございます。

 そういったものがあろうかと思いますけれども、私ども、国や地方公共団体が率先して、公共建築物で国産材の需要拡大を図るということが非常に大切だと思っておりますので、各般の施策を実施してまいりたいというふうに考えているところでございます。

簗分科員 わかりました。

 木造の耐火性のある素材というものもあると思いますので、そういったものが使えるということをぜひ自治体にも周知していただいて、木造建築物の割合を高めていただきたいというふうに思っています。

 次に、森林経営計画についてお伺いをしたいと思っています。

 この森林経営計画、平成二十四年から始まったということで、面的なまとまりのある森林を対象に、施業の集約化とか、それから、効率的な路網整備を進めていくということで持続的な森林経営を確保していく、そういった計画、制度があるというふうに聞いています。

 これの策定状況をお伺いしたいと思っています。私、これは非常にいい制度だというふうに思っていますので、今の策定状況と、これから森林経営を進めていくに当たっての、現状の、この計画に基づいた森林経営の進捗状況についてお聞かせください。

沼田政府参考人 お答え申し上げます。

 間伐等の森林施業の集約化でありますとか計画的な路網整備を進めていくために、平成二十三年の四月でございますけれども、森林法改正によりまして森林経営計画制度が創設されまして、昨年の四月からスタートしたところでございます。

 平成二十四年の十二月に都道府県を通じて把握いたしました、その時点での全国の計画作成見込み面積でございますけれども、約三百万ヘクタールということでございまして、民有林の面積全体の約二割ということでございます。始まったばかりということでございます。

 今後とも、従来の森林施業計画からの切りかえも含めまして、森林経営計画の作成を着実に進めて、地域の実情に応じた効率的かつ持続的な森林経営が図られるよう努めてまいりたい、かように考えているところでございます。

簗分科員 栃木県も同様に、今、二割程度しか策定済みになっていないということですから、これから周知徹底も含めて加速化をさせていただきたいというふうに思っているところでございます。

 それから、この林業につきましては、後継者、担い手の育成というものが非常に重要になってくると思っています。今、林業従業者が非常に長期的に減少している中、若者を中心とした新規の就業者の確保、育成も含めて、これからどのように展開をしていくのか、施策の方向性をお聞かせください。

長島大臣政務官 私の方から少しお答えをさせていただきたいと思います。

 戦後造成された人工林が、ちょうど本格的な利用可能な段階を迎えていますから、この際、供給する側、いわゆる川上に利益還元をするということが、木材需要を進めていくという大きな施策の一つだと思っています。そのことの中に、公共建築物に使ったり、木造建築物の推奨をしたり。

 ただし、森林を、入って世話をしたり、林業に携わる若い人たちが非常に少なくなっているのと、つきたがらない、就業したがらないという現況がありますから、農林水産省は、緑の雇用事業、あるいは林業活性化のビジョンづくりを担ってくれる技術者、あるいは計画づくりの中核となる技術者を育成することによって、林業に対する思いを強く、国産材に対する思いを強くしてほしいなと思っております。

 ちなみに、我が家は一〇〇%地場産、国産材の杉の木の家でございます。機会があったら、ぜひごらんをいただきたいと思います。

簗分科員 やはり林業につきましては構造的な問題があるというふうに思っています。これは我が国の特性と言えるのかもしれないんですけれども、保有山林面積が小さい所有者が多数を占めていたりですとか、植林から伐採まで長期にわたって多大な労力と経費がかかる、あと、きわめつけは、やはり諸外国に比べて路網整備密度が低いということだと思います。特に、この路網整備密度、これを高める努力というものを、これから私もしていきたいと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。

 では、最後に、大きな柱として、私の選挙区における要望と絡めてお話をさせていただきます。

 一昨年の東日本大震災による福島第一原発の放射能漏れ事故によって、放射性物質の影響が、私の栃木県北地域、これは非常に大きく影響を受けました。そして、いまだに、まだ完全にその影響が払拭できていないという状況にあります。農産物について言いますと、出荷制限や風評被害、そして除染に係る費用等で追加的なコスト負担が生じている、こういったことがあります。

 そうした中、政府の原子力損害賠償紛争審査会というところで、賠償に係る指針というものが策定されていまして、これは三度にわたって今まで改定がなされていて、非常に使い勝手のいいといいますか、非常に、実際に賠償請求する人の立場に立った方向に改定がなされているということで、私は一定程度の評価をさせていただいているところでございます。

 栃木県につきましては、私の地元の要望では、肥育、繁殖、酪農経営における牧草に関する損害について、そういった要望が多い、支払いがおくれているという状況があります。また、シイタケ農家につきましても、やはり出荷制限等で非常に損害をこうむっているということで、早期の解除、そして、これまでの損害についての早期の支払い、こういうものの要望が多い状況にあります。

 そうした中で、私も、一つ一つやはり個別にこれは解決をしていかなければいけないというふうに思っていまして、この指針上も、そうしたものに対して、中間指針において対象として示されていない場合であっても、個別具体的な事情に応じて相当の因果関係のある損害として認められる場合には、個別に対応していくというふうに明記されていまして、私も、これを受けて、個別に林野庁さんや農林水産省さんに話をさせていただいているところでございます。

 そうした中、今、その支払いの進捗状況というもの、これは国全体としてどうなっているのか。栃木県においては、今、進捗状況は、まだまだ十分ではありません。特に、全品目平均を下回るものとしては、酪農や生シイタケ、シイタケ原木など、こういったものが非常に支払いがおくれています。

 そうした中で、いろいろな努力をしていただいているとは思うんですが、これまで以上に、やはりもっと柔軟に、部分的に合意が成立したものについては早期に支払う、こういった形でこの制度を本当に円滑に運用していただきたいというふうに思っているんですが、そのことについての見解をお聞かせください。

別所政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの東京電力からの賠償金の支払いの進捗状況でございますが、私どもが関係者から聞き取りにより把握いたしているところでは、農林水産業関係では、三月末時点で合計約四千五百八十四億円の損害賠償請求が行われ、それに対しまして、請求額の八六%に相当いたします約三千九百二十七億円の支払いが行われている状況でございます。

 農林水産省といたしましては、被害者の方々の早期救済を図るという観点から、これまでも、関係都道府県や団体で構成いたします原発事故連絡会議を、文科省などの関係省庁も参加してもらいまして、十一回開催してまいりました。そういった取り組みを通じまして、東京電力に対しまして、賠償金が早期に支払われるよう求めてきたところでございます。

 今後とも、現場の状況の把握というものにしっかり努めまして、適切かつ速やかな賠償が実施されますよう、引き続き取り組んでまいりたいと考えてございます。

西銘主査 簗和生君、時間です。

簗分科員 どうもありがとうございます。

 では、最後、まとめさせていただきます。

 大臣におかれましては、農林水産業、農山漁村から日本を元気にということで、産業競争力会議でも御発言をされています。ぜひ、まず何よりも、国の基本である農業、そしてその発展を支える農業政策のあり方というものを第一に考えて、政府全体としてもこれから取り組みを進めていただきたいということを強く申し上げまして、私のきょうの質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

西銘主査 これにて簗和生君の質疑は終了いたしました。

 次に、池田道孝君。

池田(道)分科員 本日のトリを務めさせていただきます自由民主党の池田道孝でございます。

 林大臣を初めとして、皆様方には大変お疲れだろうと思いますが、いましばらくの御辛抱をお願いいたします。

 私は岡山県出身でございますけれども、岡山県は中四国九県でも一、二を争う農業生産高の多い県でございます。

 県議会当時からずっと農政に携わってまいりましたけれども、いかんせん地方は地方でございまして、幾ら議論しても、国の制度があるいは農水省さんの方がということで、かみ合わないわけでございますが、本日は直接お話をお伺いする機会を与えていただきました。まことにありがとうございます。

 御承知のように、今、我が国を取り巻く農業の問題につきましては、TPPでありますとか耕作放棄地あるいは後継者の問題等、非常に厳しいものがございます。しかしながら、安倍総理もお話をされておりますように、我が国は瑞穂の国でございます。古来から米づくりによって我が国はつくられ、そしてまた、その過程におきまして我が国固有の文化が形成をされてきました。そして、その文化を地方の方々、特に農業に従事しておられる方々が守ってまいりました。

 これから全国で田植えが始まりますけれども、田植えの前、そして田植え中、終わればいろいろな、田植えが終わったという豊作を祈願しての行事、そして、豊作祈願をして、秋の取り入れが終わりますと、特に岡山県では備中神楽というものがございます。秋になりますと、土曜日、日曜日、いろいろなところで備中神楽が奉納をされております。

 そうしたことが、我が国の産業構造の変化、そしてまた少子高齢化社会の中で廃れてまいります。いつの時代からか、限界集落という言葉まで使われるようになりました。そうした地方に住んでおります一人として、非常に寂しい思いがいたします。

 また、農政におきましては、減反政策がもう四十年を経過いたしましたけれども、当時は地域を二分するような騒動に発展したところもございます。その制度が悪いとかいいとかいう判断は、そしてお尋ねはいたしませんけれども、それ以来、農政は、猫の目行政と言われるように、毎年のように変わってきました。特に稲作農家におきましては、収穫が終わった段階、十一月中には来年のもみ種を注文いたします。そして、肥料も、注文した後ぐらいに、ことしはこういう制度に変わったというのが今までの経緯でございます。

 本来ならば、二十五年度も変わるのではなかろうかというふうに皆さん方が心配をしておりましたけれども、自由民主党にかわりまして、前年同様の施策を継続しておられます。

 そうした中山間地域、そして農業を取り巻く環境というものは非常に厳しい、そしてまた今過渡期にございますけれども、今までの農政、そしてまた農業に対する現実というものにつきまして、林大臣に現状につきましての御認識をお伺いいたしたいと思います。

林国務大臣 今、委員から、振り返ってみて、いろいろなお話をいただいたわけでございます。

 やはり農業、農村の現場の事情を振り返ってみたときに、この数十年の単位で見ますと、生産者の所得が減少する、それから農業従事者の数も減っておりますが平均年齢も上がっている、また耕作放棄地も増加している。これはもう認めなければならない事実である、こういうふうに思っております。

 どういう要因があったかということでございますが、農産物の価格がなかなか上がらない、低迷する中で、経営規模の拡大や農作物の高付加価値化がなかなか実現できなかった、それから、国民の食生活が大きく変化する中で、特に今お米の話をいただきましたけれども、ちょうど私が生まれたころの一九六〇年前後と比べて米の一人当たりの消費は半分になっている、こういうような食生活の大きな変化の中で、需要が減少する作物の生産転換がなかなか円滑に進められなかった、また土地利用型農業の経営規模の拡大に必要な担い手への農地集積がなかなか進まなかった。こういうような状況であったというふうに認識しております。

 逆に言えば、農業を活性化していくためには、こうした状況を一つ一つやはり克服していく、これが非常に大事な課題であろう、こういうふうに思っております。

 今、現場のお話をいただきましたけれども、猫の目農政と言われないように、公約はいたしましたけれども、ことしは経営所得安定対策という名前には変えましたけれども、現場の方が困らないように、混乱しないように、おおむね昨年と同じ仕組みにして、じっくりと現場の声を吸い上げながら新しい仕組みをやっていく、こういうことを戸別所得補償と言われたものに対してはやっていこう、こういうことも含めて、供給サイドの政策をやっていくとともに、やはり、つくったものを国内外に売っていくという需要サイドの観点からの検討も大変に大事だ、こういうふうに思っておりまして、そのいろいろな検討を一本筋の通った形でやっていくために、攻めの農林水産業推進本部をつくって、ここで鋭意検討していきたい、こういうふうに考えておるところでございます。

池田(道)分科員 ありがとうございました。

 それでは、先ほどもお話がございましたが、具体にこれからの農業、攻めの農業ということで展開をされていかれるわけでございますが、そのためには、絶対にクリアしなければならない、解消していかなければならないことにつきまして、お尋ねをさせていただきます。

 疲弊し切っております中山間地域では、今、耕作放棄地がどんどんふえております。四十万ヘクタール、埼玉県と同じような面積の耕作放棄地があるようでございますけれども、その耕作放棄地についてでございます。

 平野部あるいは国の予算を投資した圃場整備の中の耕作放棄地については、担い手あるいは地域の方々が協力して、幾らか、放棄地にしないようにということでやっておられますけれども、特に中山間地域、山に面したあたりの、昔、戦後の食料難の時分に開墾した、いわゆる今では山林になっているような土地も同じようにその中に入っておろうかと思いますし、水路も道路もない、昔の人は、てんびん棒とくわで耕作をされておられた、そういうところは復元はまず不可能でございます。そしてまた、大規模化ということの中で、どうしても、住宅地のあたりの十アール未満の田んぼというものは、そのまま借り手の方も取り残してしまいます。

 そうしたものが合わさって、多くの面積がだんだんふえてくるわけでございますけれども、地域の農業委員会が常に、毎年のように指導しております。そうしたいわゆる開墾地、竹が生え、木が生えておるようなところについては、たしか、昔そういうお話があったように記憶しているんですが、山林に地目を戻してしまうというようなことでもしないと、いつまでたっても四十万ヘクタールという数字がひとり歩きして、それがだんだんふえてくると思います。復元できるところは当然復元して、水稲以外の野菜等あるいは果樹をつくればいいわけですけれども、そうした耕作放棄地の解消策、そしてこれからの耕作放棄地は、放棄された土地そのものに対して、JAさん、あるいは公社、市町村、農業委員会も含めてなんですが、そうしたところが仲介の労をとるということにはなっておりますが、現実にはなかなかそういうこともされません。借り手と貸し手の相対でのお話がほとんどでございます。

 そうしたことも踏まえて、耕作放棄地が余計ふえるんではなかろうかと思いますけれども、その耕作放棄地の解消対策についてお尋ねをいたします。

長島大臣政務官 私の方からお答えをさせていただきたいと思います。

 耕作放棄地のうち、先ほど先生御指摘の、平場の耕作放棄地、あるいは中山間地の耕作放棄地とあると思うんですが、荒廃農地ということで、作付が困難なところを位置づけております。

 再生可能なものが大体十四万八千ヘクタール、再生が困難と見込まれる農地が十三万ヘクタール、合わせて二十七万八千ヘクタールほど、農水省では捉まえているところでございます。このうち、再生可能な荒廃農地については再生活動に支援をしております。反当たり十二万五千円の定額助成をさせていただいているところでございます。

 多分、池田先生と私と、年代がそんなに違わない。戦後、食料増産の時代に育って、私は中山間地で、それこそ、森林を開墾したり、草地を開墾して田んぼにしたり畑にしたりしながら、天に届けと、棚田をふやしていったところでございます。

 あるとき、腰かけて田んぼの数を数えたら、自分が十五枚だと思っていたのが十四枚しかなかった。よくよくあれしたら、みのを自分のお尻に敷いた、それで田んぼが隠れていた。そんな小さな田んぼまで開墾をしながら、実はやっていたところでございます。

 私が大学生で東京へ来たときには、米穀通帳でした。つまり、米穀通帳がないとお米が買えないという食管法の中にいた時代でございます。それからすれば、さま変わりをして、食生活も変わったなと思っております。

 あの先祖の苦労を思うと、忍びないものはございますけれども、そういった荒廃地について、やむを得ず森林に返さざるを得ないところについては、農業委員会が非農地証明をすることによって、そのことを認めざるを得ないところにいるのかなというふうに思っているところでございます。

池田(道)分科員 ありがとうございました。

 今、長島政務官がおっしゃられましたけれども、後継者のところでお尋ねしようと思ったんですが、私も実は認定農業者でございまして、今は当然できませんから、預けて法人にしていただいております。県議会の時代は幾らかできましたので。

 それは別といたしまして、水稲をつくる上では、必ず水が必要でございます。皆さん方も、選挙区を回っておられる時分に、四月から六月ぐらいまでは、特に日曜日には、大勢の方々が出られて、水路の清掃、あるいはため池の草刈り、そういうことをやっておられる光景を見られると思いますけれども、それをやらないと水は引いてこられません。

 大きな河川のところから、満々と水をためた、用水に水があふれているようなところを見ますと、私どもは非常にうらやましいという考えが起きるわけでございますけれども、中山間地域では、必ず今の時期にはそうした清掃を行います。それも、少子高齢化で、年寄りの方が多く出られておる。現実には、土地改良区あるいは町内会、そして農地を耕しておられる方だけ、それは非常に厳しいのでございます。

 そういう中で、今、国の方でも、農地・水・環境保全向上対策ということで、一般の方々も入ってできる、そのために補助制度がございますけれども、それだけでは非常に不十分でございます。

 これからは、そういうふうな、特に安倍総理が言われる、美しい棚田も守りたい、当然我々も守りたいんですけれども、棚田を守るということは、水路、あぜ草を刈らなければ守れません。都市と農村の交流というのはありますが、それは、地域の方々が全て整備した中で、水をためた上に来られて田植えをするということでございますけれども、そうしたいわゆるインフラ整備につきましても、後継者難と同様に、もう十年もすれば作業ができなくなるという状況になろうかと思います。

 そうしたインフラの整備、平素の活動について、それがないと、当然田んぼには水を引くことができないわけですけれども、その点につきまして、お考えをお聞かせ願いたいと思います。

實重政府参考人 お答えさせていただきます。

 農業水利施設は、食料生産基盤として重要でございます。人口減少、高齢化の進む農村地域におきまして、将来にわたって適切に保全管理していくことは、重要な課題と認識しております。

 このため、今委員御指摘のとおり、農業者だけでなく、地域住民等の多様な主体の参画を得まして、農業水利施設について、草刈り、泥上げなどの保全管理を農地・水保全管理支払交付金により助成しているところでございまして、二十五年度予算では二百八十二億円と、前年より増額して計上しているところであります。

 この通常の共同活動に加えまして、点検や補修といった長寿命化を図る活動をしていただく場合には、向上活動支援という形で追加的に助成をしているところでございます。

 また、農業水利施設一般についてでありますが、機能診断や水利用調整といったソフト的な活動に要する経費、あるいは老朽化施設の補修、更新、それから水路のパイプライン化、こういったような保全や合理化整備に対して助成をするために、農業水利施設保全合理化事業を創設したところでございまして、平成二十四年度の補正予算と二十五年度予算におきまして百八十四億円を計上しているところであります。

 今後とも、将来にわたって農業水利施設の機能が発揮されるように、ソフト、ハード両面からの支援を進めてまいりたいと考えております。

池田(道)分科員 ありがとうございました。

 どちらにいたしましても、なかなかそうした協議会もつくれない地域もございます。頑張って、わずかの人数でやっておられるところもございますので、また今後ともそうした支援をよろしくお願いしたいと思います。

 ため池の問題でございますけれども、水路と同じように、ため池は特に中国、四国地方では数多くのため池がございます。そしてまた、そのため池というのは江戸時代以前のものが多いようでございますけれども、ただ、江戸時代以前と申し上げましても、その当時の工法というのはよくわかりませんが、たまたま私の家の前にも二つございます。

 一つの池の方は、石垣が途中までしかございません。昔の人の技術というものは立派でございまして、あの真ん中を非常に固めた、刃金というんですか、という工法でやっておられるんだろうと思いますけれども、もう一つの上の池は、私の家の屋根よりまだ堤防は高いところがございます。

 そういうところへずっと住んでおった関係かどうか、余り堤防が壊れたらということを思わないんですけれども、実際にそれを、先ほどのインフラ整備と同じように、水番という方が適当な線まで水を、天水ですから、ためなければいけない。オーバーフローすると危ないですから、抜かなければいけない。

 それには、先ほどもお話がございましたが、パイプラインというものもあります。ただ、パイプラインがあっても、上流の池に一旦上げて、そこから落とすわけでございますけれども、そうしたため池の修理、要らぬことでございますが、一つの私の家の前の池はやっと、ずっと前から要望しておりましたが、大分漏水しているんです。漏水しているんですが、あれも基準がございまして、どれだけの漏水をしたら防災に入って適用になるかどうかというのはわからないんですけれども、それと、どちらにしても地域の方々の負担が要ります。

 農業をやっておられる方々は別に構わないんですけれども、農業から一旦離れて、土地はもう貸しておるという方々は、負担にはなかなか応じてもらえない。そうすると、ため池の修理もできかねるという現実もございます。

 今後のそうしたことも踏まえて、ため池の修理計画についてお尋ねをいたします。

實重政府参考人 ため池は、全国に約二十一万カ所存在いたしますが、西日本に多く分布しております。また、受益面積二ヘクタール以上のため池約六万五千カ所のうち、今委員がお話しになりましたとおり約七五%が江戸時代以前に築造されておりまして、老朽化しているものが多数存在しております。

 ため池の整備につきましては、東日本大震災を踏まえまして、都道府県において、下流に住宅などがあって決壊した場合の影響が大きいため池を、警戒ため池という形で約一万四千カ所選定しているところでありまして、これを重点的に整備していく必要があると思っております。

 このような警戒ため池を含むため池につきまして、広く整備を行うために、まずソフト面では、耐震点検やハザードマップの作成について、定額による助成を行っております。これは十分の十の助成で、幅広く展開をしております。

 ハード面では、緊急性や重要性の高いため池について、補強工事等を行うことについて二分の一などの助成を行うこととしておりまして、平成二十四年度補正予算と二十五年度予算において必要な予算を計上いたしまして、ため池の一斉点検を全国約四万カ所で今進めているところでございます。

 今後とも、ため池の防災、減災対策の推進に努めてまいりたいと考えております。

池田(道)分科員 ありがとうございました。

 続きまして、農業問題の中で一番大きな問題であります後継者の問題について、最後にお尋ねをいたします。

 今、農業に従事する方々は非常に高齢化いたしております。その従事しておられる方々の年齢構成を分析してみますと、七十代から八十代になろうかと言われる方々は、もともと農業を営んでおられた方々です。高度経済成長に合わせまして、地域の工場あるいは商店にお勤めになられ、そして、退職されてから自然とそのまま農業に従事されておられる。

 六十歳代のいわゆる団塊の世代の方々は、親の背中を見て育つというより、親に無理やり手伝いをさせられた。長島先生は御存じだろうと思いますけれども、昔の市町村の教育委員会の学校管理規則の中には、夏休み、冬休みと同列で農繁休暇というのが一日から三日ございました。子供たちは、嫌々ながら手伝いをさせられておったわけですね。その方々が今退職されて、農業のいわゆる手法というものは体にしみついておるわけです。

 我が国の人口構成の中で、一番年代別に多いのが団塊の世代でございます。そういう方々は、全員が全員ではございませんけれども、田舎にそのまま残っておられる方、田舎から都会へ出て帰られた方は、これもまた必然的に農業に従事をされるわけです。そういう方々が今、法人あるいは営農組合の、主としてやっておられるわけですね。

 その下の子供、団塊の世代の子供たちは、到底農業をするような状態ではございませんし、親もさせませんし、仮に田舎におっても、するといったら、乗用車に乗る気分でトラクターに乗ったりコンバインに乗ったり田植え機に乗るだけでございますから、そうした子供たちは絶対に農業をするということはありません。

 年に一万人あるいは一万五千人の新規就農者の方々がおられるとはいっても、今の団塊世代、六十歳から上の方々がやめられたら、十年先です、まず我が国の農業は成り立っていけません。先ほども、五十歳ぐらいからというようなお話をたまたま来る前にテレビで聞いておりましたが、そんな生易しいような、五十歳ぐらいから、それなら農業をやろうと。今まで体にしみついておった人と、全く知らない方が農業大学校へ行って、あるいは農業の専門のところへ行って研修を受けてというのは、二十代、三十代の人ならできます。

 資本とかという以前の問題で、なかなかそれができないと思うんですけれども、本当に今の農業従事者がやめられたときのことを思いますと、非常に寂しいというか、想像ができないんですけれども、今、人・農地プランをつくっておられますが、その会議にも私も行かせていただきました。我々からいうと夢物語です。お話が出るのは、それをつくる前に、誰がするんだと。それを質問される方は皆、認定農業者などですが、同じような年代の方です。

 本当に、果樹も水稲も酪農も含めてでございますが、これからの後継者問題というのをどのように考えておられて、どのように養成をしていかれるおつもりなのか、お尋ねをいたします。

林国務大臣 今、池田先生から、本当に現場の実感に即したお話をいただいたところでございます。

 このままいけば、今、六十五歳以上が六割、五十歳未満が一割でございますから、人が足りなくなるということはもう目に見えているわけでございまして、先ほどの議論でもお答えしたように、いろいろな施策を打って、今の一万三千人ぐらい入ってきて一万人定着するベースを、何とか二万人にしていこうということでやっているわけでございますが、農業のしみついている人と、そうでない外からの人と両方、やはり若い人の就農意欲を喚起する。やはり、やろうという意欲がまずないとなかなか難しいだろう、こういうふうに思います。

 私、いろいろなところへ最近視察に行かせていただいて、一つは地元の山口県なんですが、大島というところがございまして、そこにUターンではなくて、奥さんが地元の人なので半分Uターンかもしれませんが、ジャムをつくりたいという思いで帰ってきて、あそこはミカンがいっぱいありますから、そういうところと一緒になってやっていこうと。少し軌道に乗ってきたようでございます。

 それから、これは有名な例でありますけれども、島根の隠岐には海士町というところがあって、ここは人口がふえているというようなこともございます。

 したがって、そういう個別のいろいろな積み重ねを、それぞれ工夫してやっていただきますのを今全国から集めておりまして、どうしてそういうところはうまくいっているのかということを横展開することによって、しっかりとした施策にこれを編み上げていくということを本部で今やっておるところでございます。

 したがって、先ほど来申し上げているような青年就農給付金とか、いろいろな政策をどんどんどんどんやっていくということがもちろん大事でございますが、それをやる対象に就農意欲というものをいろいろな施策で喚起をしていく。これによってしっかりと新しい人に内外から来てもらえるようにしていきたい、こういうふうに考えておるところでございます。

池田(道)分科員 ありがとうございました。

 時間も参りました。本当に、これからの農業が若い方々が一人でも多く従事する、もう昔のように三K、四Kとかいう農業ではございませんので、極端に言うと意識転換だけで、サラリーマン、一般の会社へお勤めになられるのと同じような状態の中で農業も営みができる、そして、多くの若者が農業に参入していただけるということを期待いたしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

西銘主査 これにて池田道孝君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして農林水産省所管についての質疑は終了いたしました。

 これにて本分科会の審査は全て終了いたしました。

 この際、一言御挨拶申し上げます。

 分科員各位の御協力によりまして、本分科会の議事を滞りなく終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午後九時二分散会


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