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第1号 平成19年2月28日(水曜日)

会議録本文へ
本分科会は平成十九年二月二十六日(月曜日)委員会において、設置することに決した。

二月二十七日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      臼井日出男君    三ッ矢憲生君

      宮下 一郎君    原口 一博君

      松木 謙公君    赤松 正雄君

      糸川 正晃君

二月二十七日

 赤松正雄君が委員長の指名で、主査に選任された。

平成十九年二月二十八日(水曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 赤松 正雄君

      臼井日出男君    小里 泰弘君

      木挽  司君    近藤三津枝君

      坂井  学君    長島 忠美君

      原田 憲治君    藤井 勇治君

      松本 文明君    三ッ矢憲生君

      宮下 一郎君    渡部  篤君

      市村浩一郎君    原口 一博君

      松木 謙公君    松野 頼久君

      吉田  泉君

   兼務 大串 博志君 兼務 楠田 大蔵君

   兼務 大口 善徳君 兼務 古屋 範子君

   兼務 笠井  亮君 兼務 日森 文尋君

    …………………………………

   国土交通大臣       冬柴 鐵三君

   国土交通副大臣      望月 義夫君

   国土交通副大臣      渡辺 具能君

   国土交通大臣政務官    梶山 弘志君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局審査局長)        山田  務君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 野村  守君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 津曲 俊英君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  稲見 敏夫君

   政府参考人

   (財務省大臣官房参事官) 森川 卓也君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   真砂  靖君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           森山  寛君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部企画情報課長)  南野  肇君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           小林 裕幸君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房長) 竹歳  誠君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房総合観光政策審議官)     柴田 耕介君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局長)            宿利 正史君

   政府参考人

   (国土交通省国土計画局長)            渡邊  東君

   政府参考人

   (国土交通省土地・水資源局水資源部長)      棚橋 通雄君

   政府参考人

   (国土交通省都市・地域整備局長)         中島 正弘君

   政府参考人

   (国土交通省河川局長)  門松  武君

   政府参考人

   (国土交通省道路局長)  宮田 年耕君

   政府参考人

   (国土交通省住宅局長)  榊  正剛君

   政府参考人

   (国土交通省鉄道局長)  平田憲一郎君

   政府参考人

   (国土交通省自動車交通局長)           岩崎 貞二君

   政府参考人

   (国土交通省港湾局長)  中尾 成邦君

   政府参考人

   (国土交通省航空局長)  鈴木 久泰君

   国土交通委員会専門員   亀井 為幸君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月二十八日

 辞任         補欠選任

  臼井日出男君     藤井 勇治君

  宮下 一郎君     松本 文明君

  原口 一博君     高井 美穂君

  松木 謙公君     市村浩一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  藤井 勇治君     木挽  司君

  松本 文明君     長島 忠美君

  市村浩一郎君     松木 謙公君

  高井 美穂君     松野 頼久君

同日

 辞任         補欠選任

  木挽  司君     小里 泰弘君

  長島 忠美君     坂井  学君

  松野 頼久君     吉田  泉君

同日

 辞任         補欠選任

  小里 泰弘君     近藤三津枝君

  坂井  学君     渡部  篤君

  吉田  泉君     原口 一博君

同日

 辞任         補欠選任

  近藤三津枝君     原田 憲治君

  渡部  篤君     宮下 一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  原田 憲治君     臼井日出男君

同日

 第二分科員日森文尋君、第三分科員古屋範子君、第四分科員笠井亮君、第五分科員大口善徳君、第六分科員大串博志君及び楠田大蔵君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十九年度一般会計予算

 平成十九年度特別会計予算

 平成十九年度政府関係機関予算

 (国土交通省所管)


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     ――――◇―――――

赤松主査 これより予算委員会第八分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりました。よろしくお願い申し上げます。

 本分科会は、国土交通省所管について審査を行うことになっております。

 平成十九年度一般会計予算、平成十九年度特別会計予算及び平成十九年度政府関係機関予算中国土交通省所管について、政府から説明を聴取いたします。冬柴国土交通大臣。

冬柴国務大臣 おはようございます。

 国土交通省関係の平成十九年度予算について、その概要を御説明申し上げます。

 まず、一般会計予算につきましては、所要の国土交通省関係予算を計上し、その歳出予算額は六兆六百二十六億円です。

 また、都市開発資金融通特別会計、治水特別会計、道路整備特別会計、港湾整備特別会計、空港整備特別会計、自動車損害賠償保障事業特別会計、自動車検査登録特別会計及び特定国有財産整備特別会計に所要の予算を計上しております。

 なお、北海道、離島及び奄美に係る公共事業予算については、他省関係予算を含めて、国土交通省予算に所要額の一括計上を行っております。

 次に、財政投融資計画については、当省関係の独立行政法人等分として三兆九千八百八億円を予定しております。

 国土交通省におきましては、厳しい財政状況のもと、限られた予算で最大限の効果の発現を図る観点から、国際競争力の強化、地域の活性化、都市再生、国民の安全、安心の確保、快適で豊かな国民生活の実現といった当面する課題に対応するための事業、施策を重点的に推進してまいります。

 また、政策評価等の結果を踏まえ、コストの縮減を図りつつ、ハードとソフトの連携、PFI手法の活用等により、成果目標の達成に向けて効率的な施策展開を図ります。

 よろしく御審議のほどお願いいたします。

 なお、時間の関係もございますので、お手元に配付してあります印刷物を、主査におかれましては、会議録に掲載されますようお願い申し上げます。

赤松主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま冬柴国土交通大臣から申し出がありましたとおり、国土交通省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤松主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

赤松主査 以上をもちまして国土交通省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

赤松主査 この際、分科員各位に申し上げます。

 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。

 なお、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。藤井勇治君。

藤井分科員 おはようございます。自民党の藤井勇治でございます。

 大臣、局長に質問いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 テーマは道路でございます。どうぞよろしくお願いします。

 道路は、国民生活を支える最も基礎的な社会基盤であります。我が国の競争力、成長力を確保するために必要不可欠なインフラであります。特に地方においては、自動車は生活の足そのものであります。地域の再生を目指すため、地域間競争が可能となる条件整備のための道路整備や、高齢化の進展に伴い、救急医療体制の確立に向け、高度な医療へのアクセス道路の整備などが熱望されています。

 私の地元であります滋賀県の彦根市、長浜市、米原市、伊香、東浅井、湖東・湖北地域と申しますが、湖東・湖北地域は、非常に水と緑に恵まれまして、そして歴史の重みと文化の薫り高い地域であります。この地域は、中山道と北陸道の分岐点として非常に古くから交通の要衝として栄えた地域であります。

 現在は、東海道本線そして北陸本線、新幹線の停車駅であります米原駅、あるいは名神高速道路、北陸自動車道、日本のまさに大動脈が走る私たちのふるさとであります。東西の経済、文化が交流して、交通の要衝としての特徴を生かしながら、広域交流の町としての発展を目指しております。

 私たちは、このような地域の特性を生かした地域の活性化を進めていくに当たって、拠点間の物流を円滑にして、人と人との交流を活発化していくということが不可欠であると思っております。

 去年、NHKの大河ドラマ「功名が辻」において、山内一豊さんとその妻千代の居城として舞台になった長浜の町でありますが、何と観光客は前年に比べて一・四倍とふえました。その結果、地域が非常に元気になり、活力が出てまいりました。

 このような物流や交流を支える最も基本的なもの、まさにインフラとして、高速道路を初めとした道路が果たす役割は非常に大きいものがあります。重要でございます。また、緊急医療を支える道路、買い物など日常を支える道路、地域活性化にとっても重要でありまして、まさに道路は、地域の経済活動や生活を支える基盤そのものであります。

 地域活性化を進める上で、今後とも道路整備はぜひとも必要であると思いますが、国土交通大臣のお考えをお聞きしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

冬柴国務大臣 藤井議員の御指摘のとおり、地域の活性化を図るためには、地域経済の強化や安心して暮らせる地域社会の形成などを図ることが重要であります。それを支える基盤となる道路整備を進めることは、極めて重要な課題と認識をいたしております。

 このため、国土交通省といたしましては、広域交通を支える高速道路から日常生活を支える市町村道までの道路ネットワークを体系的に整備するとともに、既存の道路ストックを有効活用する取り組みを進めているところでございます。

 今後とも、地域活性化を図る上で重要な道路整備については、引き続き、重点化、効率化を進めつつ、積極的に取り組んでまいる所存でございます。

藤井分科員 どうぞ大臣のお考えどおりに、強力なリーダーシップで地域の道路整備を着実に進めていただきたい。それが地方活性化につながると確信いたしております。

 引き続きまして、私の地元の話で恐縮でありますが、私たちの地元の地域で一番中枢をなしている直轄国道の国道八号線が走っておりまして、国道八号線は大動脈であるわけでございますが、実は、いまだに二車線しかなくて、幹線道路としては極めて貧弱な道路であります。その結果、毎日深刻な渋滞が発生しております。

 こうした状態では、地域の発展を図る上での支障ばかりではなくて、地域の経済活動や住民の毎日の生活の上でも日々支障を来しているというのが現実でございます。この国道八号線の渋滞解消は、地域にとっての死活問題となってまいりました。

 その対策として、現在、地元で米原バイパスの事業がとり行われております。その米原バイパスの現状と今後の見通しについてお尋ねをしたいと思います。また、地元の彦根市から南の国道八号線の渋滞対策、どんな見通し、対策を立てようとしておられるのか、これもあわせてお尋ねをいたします。道路局長によろしくお願いいたします。

宮田政府参考人 お答え申し上げます。

 国道八号は、米原市、彦根市、そういった都市を初めとする琵琶湖東部地域の経済活動や住民生活を支える重要な道路だというふうに認識しております。

 委員御指摘のように、米原市内では、現状二車線に対しまして一日当たり約二万二千台の交通量がございます。市内の交差点では大きな渋滞が発生しているというのが現状でもございますし、国道八号に並行する県道も一日当たりやはり二万台の交通量が流れておりまして、幹線道路の整備が急務であるというふうに考えております。

 このような交通渋滞の緩和、歩行者の安全確保のために、先生御指摘の米原バイパスを整備しているところでございますが、長浜市加田町から米原市中多良間五・六キロにつきましては、平成十六年の三月に部分供用いたしました。

 一方、米原市の中多良から米原市の入江間二・五キロにつきましては、軟弱層が堆積をしております。平成十五年度から軟弱地盤対策の試験施工を実施してきておりますが、平成十九年度には、この試験施工の結果を踏まえまして、本格的に橋梁工事に着手をしたいと考えております。平成二十年代半ばまでには供用できるように努めてまいりたいと考えております。

 さらに、米原市入江から彦根市佐和山町間二・二キロにつきましては、今後、詳細設計及び地元説明会を進めまして、早期に事業に着手できるように進めてまいりたいと考えております。

 二つ目のお尋ねの彦根市以南の国道八号でございますが、ここも現状二車線に対しまして一日当たり二万七千台、多くの交通量がございます。大変な渋滞が発生しております。

 これまでには、地下横断歩道設置事業を実施しまして、交通安全対策を進めてきたところでございますが、抜本的な渋滞対策あるいは整備計画につきましては、事業中の米原バイパスとあわせて、既に計画されている先ほど申し上げました彦根バイパスの整備が必要と考えておりまして、当該区間の事業化につきましては、米原バイパスの進捗状況を勘案しながら早期に検討を進めてまいりたいと考えております。

藤井分科員 ありがとうございます。

 早期開通を目指して本当に本気で頑張っていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 引き続いて、少し広域的な観点で申し上げますと、名神高速道路、私たちの地元を走る大動脈でございますが、この名神高速道を初めとする日本の高速道路、物流や経済を担う大動脈として、また地域の活力の向上や安全な暮らしの確保のために寄与するものとして、その果たす役割が非常に大きい社会資本の一つであります。

 しかしながら、日本の高速道路の平均インターチェンジの間隔は、欧米に比べると非常に長いということであります。高速道路が通過するのみの市町村では、高速道路が本来備えるべき物流や地域振興などの効果が十分に発揮されておりません。現在供用中の既存の高速道路ネットワークを有効に活用するためにも、ETC専用のスマートインターチェンジを初めとする追加インターチェンジの設置が大変有効であると期待しております。

 私の地元にも、インターチェンジの間隔が大変長うございまして、高速道路への乗りおりに時間がかかるために、高速道路の機能が十分に発揮されていない、十分に生かし切れていないと感じる区間があります。

 例えば、名神高速道路の彦根インターと八日市インター、二十一キロもありますが、ちょうどこの真ん中のあたりに秦荘パーキングエリアというのがございまして、このあたりにスマートインターがあればなという地域の要望でございます。また、北陸自動車道長浜インターと木之本インターというのが十五キロぐらいございまして、この中間地点であります湖北町あたりにスマートインターがあればなということで、地元の皆さんが大変熱望をされております。

 スマートインターチェンジを設置すれば、周辺の観光客の誘致にもなりますし、あるいは地域に生活して、通勤している、通学している方々にも大変便利になりますし、病院へ通院される方もより高速道路の利便性を感じて、生活の向上に寄与することは間違いございません。また、周辺の工場団地への出入りにも大いに役立つわけであります。

 これらのスマートインターチェンジの設置について、現在の取り組み状況をお尋ねしたいと思います。道路局長、お願いいたします。

宮田政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、日本の高速道路のインターチェンジ間隔、欧米に比べまして約二倍ということで、やはり地域活性化のためには、御指摘のように、スマートインターチェンジ等、そういうものをこれから積極的に整備をするということが必要だろうと思っております。

 先生御指摘の名神高速道路、八日市から彦根インターチェンジ間、二十キロございまして、秦荘パーキングエリアにスマートインターチェンジを設置した場合には、地域経済の浮揚や地域の観光振興にも資するなどの効果が考えられます。国、滋賀県、地元市町、中日本高速道路株式会社、滋賀県警で構成される地区検討会をこの一月に設置しておりまして、整備に向けた検討が進められております。

 また、北陸自動車道の木之本から長浜インターチェンジ間は、委員御指摘のように、距離が約十五キロございます。湖北町周辺にスマートインターチェンジを設置することは、湖北地域の開発や広域的な観光振興に寄与する等の効果が考えられます。現在、湖北町において検討に着手されたというふうに聞いております。

 いずれにしましても、国土交通省といたしましては、地域における検討等について支援を行ってまいりたいと考えておりますし、既存の高速道路の有効活用につながるスマートインターチェンジの全国的な展開に向けて、引き続き取り組んでまいりたいと考えております。

藤井分科員 地域活性化の観点で非常に重要な施策でございます。どうぞ、しっかりと手を組んでいただきまして、地域活性化のためによろしくお願いいたします。

 次に、その地域活性化のためにもう一点質問させていただきますが、交通結節点の件でございます。交通結節点の拠点性を高める方策についてお尋ねをしたいと思います。

 都市再生の推進や中心市街地の活性化を進める上で、多くの人が集まり、地域の核となる鉄道駅等の交通結節点において、その拠点性を高めることは重要であると思います。

 多くの町では、駅は交通の中心でありまして、周辺にはさまざまな機能が立地し、地域の核として機能をしていると思いますが、特に、地方の都市は中心市街地が寂れるなど元気がありません。昨年の通常国会でまちづくり三法の改正が行われたところであります。

 これに加えて、私は、地域の核である鉄道駅等において、拠点性それから利便性、これらを高めるために、自動車や歩行者のアクセスや鉄道への乗り継ぎをしやすくする駅前広場、自由通路の整備が重要であると考えております。また、自動車を使えない高齢者の活動を支えるために、バスや鉄道を快適に利用できる環境整備が重要であります。このためにも、交通結節点の整備が必要であります。

 地域の活性化や高齢者のモビリティー確保の観点から、交通結節点の拠点性や快適性を高めるために、地域の取り組みに対して国がしっかり支援していく必要があると思います。

 駅前広場や自由通路の整備について、国土交通省がどんな認識を持っておられるのか、また、どんな支援方策をとろうとしておられるのか、お尋ねをいたします。都市・地域整備局長にお願いいたします。

中島政府参考人 今お話をいただきましたように、駅周辺というのは、もとより交通の結節点、人の往来の中心でございますし、またあわせて、町のにぎわいの中心といいますか、にぎわいの中心になる可能性を持った地域でございますので、その拠点性、利便性を高めて地域の活性化のための拠点にする、あわせて、交通弱者を含めて快適な利用環境を整えるというのは大変大事なことだと思っております。

 このために、駅前広場とか自由通路の整備につきまして、これは各地から御要望も大変強いと思っていますし、私どもとしても、これに取り組む公共団体に支援する仕組みというのをしっかりとっていきたいと思っております。

 具体的に申しますと、交通結節点改善事業など道路特定財源を利用した補助の制度がございまして、国が二分の一ぐらいの負担をしまして地方に補助するという仕組みがございます。また、一般会計でも、都市交通システム整備事業と申しておりますが、この方は、多様なメニューを用意しまして、いろいろなニーズにこたえられるように来年度からまた制度も拡充することにしておりますし、こういう制度を使いまして、公共団体、地元の御要望にこたえられるように積極的な支援をしてまいりたい、このように思っております。

藤井分科員 どうぞ、さまざまな助成策をフルに活用しまして、交通結節点の整備をしっかり支援してまちづくりに貢献していただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 この交通結節点の整備について、具体例でもう一点お尋ねをいたします。

 私の地元の、先ほど来出ております鉄道の町、米原市でございますが、JRの駅のほかに、地元の私鉄、近江鉄道の米原駅が併設をされておりまして、東海道本線と北陸線が分岐する、また、東海道新幹線の駅であるということから、交通の要衝ということになっております。大いに利用いたしております。この米原駅の拠点性を高めることが地域の活性化にとって不可欠なことであり、今、駅周辺では土地区画整理事業が進められています。

 しかしながら、鉄道によって市街地が分断されているために駅東西の移動に大変な支障を来しておりまして、このため、現在、米原市が事業主体となりまして、古くなった駅舎の改築や、東西に結ぶ自由通路の整備を進めているところでございます。

 この自由通路の事業化に当たって、当然、鉄道事業者との合意が前提となるわけでありますが、JR西日本やJR東海との協議がスムーズに進展せずに、事業化に至るまでの過程で市当局が大変苦労されたという経過を聞かされております。

 交通結節点の整備は鉄道事業者にとっても大変なメリットのあることであります。受益に応じた適切な負担をするなど、鉄道事業者の協力が必要だということをつくづく感じております。この点について、国土交通省の取り組みをぜひお尋ねしたいと思います。鉄道局長にお願いします。

平田政府参考人 お答え申し上げます。

 鉄道駅を中心といたします交通結節点の整備につきましては、地域におきます交通ネットワークの充実でありますとか地域の振興の観点から重要であると認識してございます。

 交通結節点の整備につきましては、委員御指摘のように、鉄道事業者を含みます幅広い関係者が関係してまいりますことから、まずは、当該地域の地方公共団体が中心となって、関係者の協議により合意形成することが必要ではないかと考えております。その協議の過程におきまして、鉄道事業者の役割分担も明確にされるものと考えております。

 国といたしましても、このような地域におきます関係者の協議、調整が行われるということを前提といたしまして、鉄道駅の施設の整備を駅周辺の整備と一体的に行うような場合には、交通の結節機能の高度化を推進するという観点から、関係地方公共団体と協調して補助をする制度を設けております。

 一般的な事業制度を申し上げさせていただきますが、関係者の協議によりまして、三大都市圏におきましては、都市鉄道等利便増進法という法律がございますが、この法律の適用によりまして、国と地方と鉄道事業者がそれぞれ応分の負担を行うこととすることになっております。

 また、これらの地域以外の地域の場合にありましても、事業制度といたしまして、鉄道駅総合改善事業というものがございます。これによって、国と地方、鉄道事業者がそれぞれ応分の負担を行う制度になってございます。

 ただいま委員の方からお話のございましたJRの米原駅につきましては、米原市を中心といたします関係者の協議により合意形成が調いまして、地元の米原市とJR西日本、JR東海が相互に協力して、まちづくりの一環として、自由通路と駅舎の橋上化工事を平成二十一年の春完成を目標に実施することとなりました。

 この整備につきましては、費用を地元の米原市が負担する、それから鉄道事業者が工事施工を行うというような仕組みで合意形成がなされ、現在、工事が進捗しているところでございます。

 いずれにいたしましても、鉄道駅を中心といたします交通結節点の整備というのは、委員御指摘のとおり大変重要でありまして、このような事業が円滑に促進されるよう、私どもとしても鉄道事業者を適切に指導してまいりたいと考えております。

藤井分科員 ありがとうございました。

 国土交通省もこの問題にきちっとけりをつけて取り組んでいただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 それから、最後でございますが、もう一点。我が国は高齢者社会が急速に進展しています。高齢者、障害者はもちろん、すべての人にとって、都市や地域、交通機関が安全に利用されるということが必要であります。去年の国会で、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律というのが成立いたしました。今後、この法律に基づき、道路や交通機関等のインフラ、建物が一体となったバリアフリー化を着実に進めていただきたいと思います。

 そこで、最後に、道路とバスとの結節点であるバス停について質問させていただきます。

 道路については、幅の広い歩道の整備や段差解消、点字ブロック等の設置を進めていますが、バス停についても、安全、快適に利用できるようにぜひしていただきたいと思います。特に、病院、福祉施設、官公庁の拠点となるバス停については、道路管理者として、風よけやベンチを含めたバス停の整備を積極的に行うべきだと考えますが、国土交通省の考え方についてお尋ねをいたします。道路局長にお願いします。

宮田政府参考人 お答え申し上げます。

 バリアフリーの観点から、バス停の整備におきましては、高齢者、身体障害者がバスを円滑に利用できるようにするため、円滑に乗降できるような歩道の高さにする、ベンチ及びその上屋、視覚障害者誘導用ブロック、照明施設等を設置する、バスが停留所に正着、正しく停車できるような構造に配慮する、そういう基準を設けているところでございます。

 先生御指摘のように、平成十八年の十二月に法律が策定し直されまして、この基準も、旧基準は平成十二年の十一月でございますが、旅客施設周辺の重点整備地区のみを対象にしておりましたが、十八年の十二月、道路バリアフリー化基準というのを見直しまして、すべての道路を対象にいたしました。重点整備地区における事業実施義務に加えまして、すべての道路における基準適合の努力義務を法律で規定されておりますので、それに対応したところでございます。

藤井分科員 ありがとうございました。

 道路は最も基本的なインフラであります。日々の生活に直結したものですから、そのバリアフリー化は特に重要であります。高齢化が進展する中で、道路政策としても、バリアフリーや交通弱者にしっかりとした取り組みをしていただきたい、このように考えます。

 以上で質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

赤松主査 これにて藤井勇治君の質疑は終了いたしました。

 次に、松本文明君。

松本(文)分科員 本日は、狭隘道路の問題を中心に質問させていただきます。

 御承知のとおり、建築基準法は、建築物はすべからく四メーター以上の建築基準法上の道路に二メーター以上接していなければならないと定めているところであります。しかし、現実はそうなっておりません。特に都市部において、最も悲惨な地域、平均的な地域、まずまずの地域など、具体的な現状をお示しください。

榊政府参考人 お答えいたします。

 平成十五年に総務省が実施しております住宅・土地統計調査によりますと、住宅の敷地に接している道路の幅員についての調査結果でございますけれども、四メートル未満もしくは敷地が道路に接していないという住宅の割合が、全国のうち約四割という形になっております。

 また、地域別に見ますと、関東大都市圏では住宅の三三・八%、京阪神地区の住宅の三八・四%、東京都区部の住宅の三三・五%につきまして、敷地が接している道路の幅員が四メートル未満及び敷地が道路に接していないという結果になっておりまして、そのうち、木造民営借家で見ますと、関東大都市圏の場合は約五〇%、京阪神の場合で六三%、東京都区部の場合で五八%が同様の状況という結果になっております。

松本(文)分科員 いつ襲ってくるかわからない震災を前にして、安心、安全のまちづくりを標榜している、そういう一方で、こうした悲惨な状況があるという認識を私たちは共有しなきゃならぬ、こう思うわけでありますが、そもそも建築基準法が接道条件を明確に定めている、その理由はいかなることになっているのか、この際、国民にわかりやすく御説明を願います。

榊政府参考人 お答えいたします。

 市街地におきます道路というのは、単に通行の場ということではなくて、建築物の利用、災害時の避難路、消防活動の場、建築物の日照、採光、通風といったような、安全で良好な環境の市街地を形成する上で極めて重要な機能を果たしております。

 こうした中で、一定規模の道路のないところで建築物が相当の密度で建ち並ぶということになりますと、平時の利用に不便なばかりでなく、災害時の避難や消防活動に大きな支障を来すということに相なります。

 したがいまして、建築基準法で、建築物の敷地が原則幅員四メートルの道路に有効に接しているということを義務づけておるところでございます。

松本(文)分科員 建築基準法上の道路というのは、おおよそ六種類あると認識をいたしております。それぞれについて、簡単で結構ですから、ちょっと御説明をいただきたいと存じます。

榊政府参考人 基準法では、四十二条に道路の定義を定めております。大きく分けて、委員御指摘のように六種類ございます。

 一つは、道路法による道路ということで、国道、都道府県道、市町村道といったような形で幅員四メートル以上のものでございます。それから、都市計画法、区画整理法、再開発法といったような事業法に基づきまして整備された幅員四メートル以上の道路。それから、建築基準法の集団規定が適用されるに至った際に現に存在する幅員四メートル以上の道。それから、事業計画のある道路で、二年以内に事業執行が予定されておるという形で特定行政庁が指定したもの。それから、位置指定道路と申しておりますが、先ほど申し上げましたような道路法とか都市計画法といったような法律によらないで築造する一定の基準に適合する道でございまして、建築物を建てるために特定行政庁から位置の指定を受けたものでございます。それから次が、いわゆる二項道路ということでございまして、建築基準法の集団規定が適用される際に現に建築物が建ち並んでおります幅員四メートル未満の道路で特定行政庁が指定したものという形になっております。

 これらの道路のうち、幅員四メートル未満の道路というのは二項道路という形になろうかと思います。

松本(文)分科員 六種類分類できる道路ということでありますが、その道路のうちで、実態として四メーターに満たない道路、あるいは道路の中に私道の占める割合が多い道路というのはどのようになっているのか、御説明をいただければありがたい。また、それぞれについて、どういう問題をどの程度抱えているのかという御認識もあわせてお示しをいただきたい。

榊政府参考人 先ほど六種類の道路について御説明を申し上げましたが、そのうち、一番最後のいわゆる二項道路というのが幅員四メートル未満という形になっておりますが、それ以外の道路につきましては幅員四メートルは確保されておるところでございます。

 私道の占める割合の多いものでございますけれども、これは、特定行政庁が申請に基づいて指定をするという形の位置指定道路と、先ほど申し上げました幅員四メートル未満の二項道路という形になろうかと思っております。

 二項道路でございますけれども、これは幅員が四メートル未満ということでございますので、道路の中心線から二メートルセットバックして家を建ててください、こういう義務づけがされておりまして、建ち並ぶ建物が建てかわるたびに中心線から二メートルセットバックするということでございますので、将来的には道路幅員四メートルが確保できるだろうということで、このようなセットバックを義務づけておるところでございます。

 ただ、そのセットバックが極めて短期間にできるということではなくて、家が建てかわるたびにセットバックをするということでございますので長期間進まない場合があるということですとか、二項道路として指定された時点で、実は昭和二十年とかそういうころの話でございますので、道路の中心線自体がまだ不確かということで争いが生じるといったようなことがございます。それから、一たんせっかくセットバックしていただいたにもかかわらず、そこに花壇などを設けて、事実上、道の機能を失っているようなところもございまして、そういうところは大変問題じゃないかというふうに思っておるところでございます。

松本(文)分科員 この国の法律が、中心線から二メーターセットバックして建てるように、こう定めをしてから何年が経過しているのか、その経過年数の中で一体どれほど実態として二メーターのセットバックが進んだのか、そこら辺の認識についてお示しをいただきたいと存じます。

榊政府参考人 先ほどの建築基準法上の集団規定が適用されるに至ったときでございますが、一九五〇年ということでございますので、ほぼ私と同じような年ごろぐらい実は年数が経過をいたしております。

 大変恐縮でございますけれども、どの程度かという量的なものはわかりませんが、昭和二十五年からでございますので約五十六年近く経過をいたしておりますが、いまだに中心線から二メートル、二項道路がすべて四メートルになっているかというと、実はそういう実態にはなっていないということでございます。

松本(文)分科員 半世紀を経て、なお今日の状況であります。特に、東京の木賃ベルト地帯、あるいは災害で最も弱い、火災に弱い、こう言われる地域においては、五〇%を超えて、四メーター未満、四メーターに足らない道路に沿って建物が建ち並んでいる。五十年を経てこの状況ですから、この先このままの状況で推移するならば、あと半世紀たってもまだまだ一〇〇%には至らない、大変悲観的な状況というのが見えてくるわけであります。

 特に、私道を含めて、とにかく四メーター道路に接していなければ確認はおりないわけであります、建物を建ててもいいですよという許可はおりないわけであります。でき上がった建物は確かに道路の中心線から二メーター以上セットバックしているのでありますが、建物が建って、そして完成検査を受けるかなんかしてということが終わった後、塀や花壇等が置かれて、道路幅は相変わらず中心線から二メーターを確保することができていないというのが実態であります。

 ところが、そういう状況に対して、格別強力な行政指導が行われているようには見えません。罰則規定もどこにも見当たりません。そういう建物に対して、公的資金が導入をされております。民間金融機関の住宅ローンも問題なく行われているようであります。本当にこの国は本気で狭隘道路の解消に取り組む意思があるのかどうか、まことに疑わしいと言わざるを得ないのでありますが、大臣、本音のところでちょっとお答えをいただきたいと存じます。

冬柴国務大臣 いわゆる二項道路、五十六年前に指定されたものだと今答弁しておりましたが、建築物を建てるに際して、道路中心線から二メートルセットバックを義務づけているところであります。

 建築物に附属する門や塀は建築物として取り扱われており、建築基準法四十四条において、これらを道路内に建築することは禁じられているところであります。ただし、花壇など、建築物には当たらず、建築基準法において道路内に設けることを禁止することはできないものがございます。

 本来、道路内に建築物を建築する等の違反があってはならないことであり、安全で良好な環境の市街地を形成する観点からも、このような状態を早急に解消することが必要であります。まずは、建築基準法の厳格な執行が重要と認識をいたしております。

 また、多くの地方公共団体におきましては、セットバック部分の整備に係る助成制度を設けております。例えば、測量、舗装、側溝整備等の費用に対する助成、工事の代行、門、塀、植木、擁壁等の除去または移設費用に対する助成、セットバック部分を地方公共団体に移管する場合の測量、登記費用に対する助成、セットバック部分の固定資産税の非課税手続の代行などが実施されているところであります。

 国においてもこうした取り組みを支援する制度を設けているところではあり、建築規制の的確な運用について周知徹底することとあわせ、地方公共団体と連携した狭隘道路対策に積極的に取り組んでまいりたいというのが公式的な話でございます。

 ただし、東京の、先生の御指摘のようなところは、本当に過半の建物がこういうことになっていないんですね。それで、我々といたしましては、これは安全、安心の国土を形成する上においても大変な問題であるということから、密集市街地に対する整備を一日も早くやろうということで、今国会にそのような法案を提案いたしております。

 これに基づきまして、八千ヘクタールにも及ぶそういうような市街地を平成二十四年までに全部、四メートルといわず六メートル以上のきちっとした道路に面して、そしてそこに防壁として延焼をとどめるための高層の建物を建てて、そして住民の皆様方に安心していただけるような市街をつくってまいりたい。そのために、密集している市街地の人たちにそちらに移っていただくために、容積率をこちらの方へ移すというような法の整備も考えておりまして、抜本的に進めてまいりますので、よろしくお願いいたします。

松本(文)分科員 大臣のお話を伺いながら、少しは光が見えてくるのかな、こんな感じもするわけでありますが、しかし、大臣のおっしゃっていただいた手法というのは、すべての地域に一気にといいましょうか、できるわけではないわけであります。

 そこで、具体的な日々の暮らしの中で道路の幅員は確保しなくちゃいけない、こう思うわけでありますが、どうもおかしいなと思うのは、道路の中心線から二メーターセットバックする、塀は二メーターセットバックしたところに建てなくちゃいけない。ところが、花壇ですとか、あるいは、うちの塀に車がぶつかってもらっちゃ困るから大きな石をどんと置かれる。それの撤去を求めるということの根拠法令というのがどうもないようであります。

 一体、中心線から二メーター以内の私道に対して、塀は建てちゃいけない、建物は出っ張っちゃいけない、だけれども花壇程度のものは撤去を求めることができないということなのかどうなのか、そこら辺のことをもうちょっとわかりやすく、かみ砕いて御説明ください。

榊政府参考人 実は、建築基準法の二項道路といいますか、こういった道路につきましては、道路内建築制限と申しておりますが、そういう道路の中に建物は建ててはならない、建築物は建ててはならない、こういう制限を課しております。実は、塀というのは建築物の一部ということでございますので、その中に塀を建てるということは禁止される、こういうことでございます。

 ただ、花壇のように、容易に撤去できるとか、建築物でないものを置くとか、委員御指摘のように大きな石を置くということ自体が、実は建築物そのものではないということでございますので、基準法の道路内建築制限には当たらない、こういうふうになっておるところでございます。

松本(文)分科員 大きな石を置かれたり、一人で簡単にどかせないような重い重い花壇等を置かれてあって、道路としての利用が、四メーター確保できない、救急車も入れないというような道路が建築基準法の求める道路とは到底考えられない。そういう道路、実態として中心線から二メーターを道路として確保していないというところに建築物を建築する許可を与えるべきでない、基本的に私はそう思うのでありますが、もう一度御答弁をお願いします。

榊政府参考人 先ほども答弁させていただきましたが、いわゆる道路の中には道路内建築制限がひっかかっているということと、いわゆる二メートルのセットバックというのは、建築の確認申請をする際の審査の基準といたしまして、セットバックをして建築計画を出していただいて、それを確認して、それから家が建てられる。その後に実は花壇がいわば勝手につくられるというような形になるとすれば、基準法上は工作物でございますので、どけという命令が出せないという法体系になっておりまして、委員の御指摘の、道路の実態がないのではないかという点については、確かに御指摘のようなところがあるのかなというふうに思っているところでございます。

松本(文)分科員 局長、あるのかなという問題じゃなくて、救急車と消防車が入れないという道路に沿って木造住宅が建っているということが問題なんです。そこは道路だといいながら、道路に花壇が置かれたり石が置かれたり、こういうこと自体が問題なんですよ。もっと強い問題意識を持って事に当たっていただきたい、こう思うわけであります。

 続いて、そういった道路、私道の維持管理について伺うわけであります。

 私道の多く、ほとんどは税金が免除されております。私道の舗装については区市町村の補助金制度がありますから、私道の持ち主の負担はゼロであります。街路灯も区市町村の税によって建てられ、そして電気代も税によって負担をされておりまして、公道と何ら変わるところはありません。私道の持ち主がその私道の快適性をみずからの責任で管理しているという具体的な姿はどこにも見られない。

 ところが、私道に車をとめておいても駐車違反の取り締まり対象になりません。くいを打って利用制限をしても特段責めは受けません。上下水道、ガス、電気、道路の舗装修理、私道を使って整備される生活インフラのすべて、これらを行おうとするときには私道の持ち主の許可が必要です、判こが必要なんです。その判こをもらうためにお金を払わなくちゃいかぬ、こんな問題があります。こういった道路が本当に建物を建てていい基準法上の道路と言えるんだろうか、大変大きな疑問を持つわけであります。

 道路の持ち主が亡くなる。その道路に沿って地主が暮らしていればいいんですが、そんな全く、道路ですから、地主さんはその相続さえもしないんですね。そして相続権者は、今の時代ですから、東京であれば、北海道から沖縄、世界各地に散らばっていく。だけれども、そこに雨水がたまってしようがないから舗装をやりかえてくださいよと区にお願いに行くと、持ち主の判こをもらっていらっしゃいと言われる。世界じゅうを飛び回って判こをもらわなくちゃいけないのか、こういうような問題が生じているのであります。こんなばかげた制度は即時廃止すべきだ、私はこう思うのであります。

 建築基準法上の道路は、公道であれ私道であれ、すべからく道路として公共の福祉に貢献する公共財として利用すべきでありまして、私権の制限は当然である、こう思うのでありますが、御所見を伺います。

榊政府参考人 建築基準法の道路でございますけれども、先ほども申し上げましたように、公道か私道かによらず、道路内建築制限というのをいたしておりますが、これは建築物に関する最低限度の基準を確保するために必要不可欠な制限というふうに位置づけられております。

 したがって、私権との関係で申し上げますと、基準法上の制限が及ぶ範囲にはおのずから限界があるということでございまして、その範囲を超えるような私権の制限については基本的に民法上の問題であるというふうに認識をいたしておるところでございます。

 例えば、固定資産税の減免措置というお話がございましたけれども、公衆の用に供する道路という実態がなければ固定資産税の減免はなされていないというふうに私ども伺っておりますし、路上駐車という点でいえば、公道であれ私道であれ、公衆の用に供する道路といいますか、いわゆる一般の道路の交通の用に供していれば、私道であってもそれは道交法に言う道路でございまして、そうであれば駐車禁止取り締まりができるという形になっておりまして、そこのところは公安委員会の方で本当に道交法の道路と言えるのかどうかという実態を見ながら判断しているというふうに思っておるところでございます。

 御指摘の私道をめぐる課題のうち基準法で対応できる部分につきまして、二項道路のセットバックについての基準法の厳格な運用とか、先ほど大臣も御答弁申し上げましたが、舗装とかそういったようないわゆる助成制度、そういったような充実などにつきまして、改めて特定行政庁に対して周知を図っていきたいというふうに思っておるところでございます。

 それと、実は、二項道路を初めといたしまして、基準法の規定によりまして特定行政庁が指定しました道路、これが実は地図上明らかになっていないといいますか、公衆の用といいますか、明確になっていないということがございまして、そもそもその指定方法とか情報開示が不十分ではないかというようなこともありますので、実は、現在、指定方法の明確化とか情報開示の徹底について、いわゆる特定行政庁に対してその辺の情報開示をきちっとしろというようなことをやらせたいと思っておりまして、それとあわせて、先ほど申し上げましたような周知を一緒にやりたい。これは近々といいますか、数カ月のうちにやってみたいというふうに思っているところでございます。

松本(文)分科員 大臣、下水が古くなってやりかえなくちゃいけなくなったり、あるいは舗装をしなくちゃいけないというときには、その道路に面している人の全部の判こが要るんですよ。あるいは、自分の家に引いてある水道管、ガス管が古くなった、容量が足りなくなった、やりかえようというときには、その私道の持ち主全員の判こが要るんですよ。ところが、あのやろうは顔が気に入らないから、あのやろうは朝あいさつしないからという理由だけで判こを押してもらえないんですよ。そういうような問題もあるということなんですね。

 ところが、私道に対する権利というのは、先ほど言われたように、民法との絡みもあって、この国の法体系全般にかかわる問題もたくさん含んでおります。したがって、国土交通省だけでどうこうできるということではないんですけれども、しかし、やはり町の実態、安全なまちづくりをどう進めていくかという観点から、ぜひ御検討をいただきたい、このことを要望しておきたいと思います。

 それから、最後の課題で、もう時間がないんですけれども、その三メーターそこそこの道路にこれまた電柱が並んでいるんです。空を眺めるとクモのようであります。そして、その電柱の上に大きなトランスが載っている。トランスの下が木造モルタル二階建ての古い建物なんですね。電柱が地震でこけちゃったらトランスでその家はもうぺしゃんこになっちゃう、そういう状況が、この町、それも世界経済大国第二位と言われる国の首都のあちこちで見られる。私は、まことに恥ずかしいことだ、こう思っております。

 この電柱の地中化を進める上で、トランスをどこに置くのかというのが一番大きな問題であります。この国会周辺のように歩道がしっかり整備されているところはいいわけでありますが、三メーターに満たない、あるいは四メーター、あるいは五メーター程度で歩道をとれないというような区市町村道、ここが一番大きな問題でありますから、やはりそこら辺のところに、小さな小さなトランス一つ二つ置くぐらいのために、国土交通省の指導によって公園の一部ぐらいはトランスの一つや二つ置かせてもらったって罰は当たらない、こう思うわけでございますが、御見解をちょっと伺えますでしょうか。

赤松主査 中島都市・地域整備局長、簡潔にお願いします。

中島政府参考人 公園の占用物件として、電柱、電線、変圧器などは認められておりますので、原則地下埋になりますが、電線が地下埋されることは認められるので、条件が整えば、トランス部分が一部地上に出るというのは可能であると思います。

松本(文)分科員 ありがとうございました。

赤松主査 これにて松本文明君の質疑は終了いたしました。

 次に、大口善徳君。

大口分科員 公明党の大口善徳でございます。

 きょうは、現場を歩いておりまして、いろいろ地元の要望がございます、そしてまた地元の、私の公明党でございますけれども、県会議員、市会議員からも、ぜひともこれは聞いてもらいたい、こういうことがございまして、地元のことを中心にお話をしたいと思います。

 二月一日、予算委員会で、我が党の赤羽委員の質問に対して冬柴大臣は、道路特定財源につきまして、受益と負担の関係をきっちり明確にすると。そして、負担の方は従来の税率を、現行税率を維持するということで、それに対して見合う受益は何か、それは道路、真に必要な道路整備を進めるということでありまして、おっしゃるとおり、何が真に必要かということにつきましては、本年じゅうに、ことしじゅうにその具体の内容を我が方で策定しよう、こういうことで、負担に対する受益は道路、道路整備、こういう力強い御答弁をいただいたわけでございます。

 そこで、地元の道路整備についてお伺いしたいと思います。

 まず、国道一号静清バイパス昭府立体についてでございます。

 望月副大臣、地元でございまして、よく一緒にやらせていただいているわけでございますけれども、この国道一号静清バイパスは、静岡市清水区興津東から駿河区丸子二軒家に至る延長二十四・二キロの主要幹線道路であり、広域的寄与は当然のことといたしまして、政令指定都市静岡市における通勤、通学、買い物などの日常生活を初め、経済発展や都市整備に欠くことのできない重要な路線でございます。本バイパスは、昭和四十三年に事業化され、平成九年三月に全線暫定供用したわけでございます。

 平面構造区間の立体化、これは清水区においてもある箇所がありますけれども、非常に重要な問題でございまして、昭府立体は、静岡市葵区昭府二丁目から葵区の桜町一丁目間を結ぶ延長千三百九十メートルを高架構造に変更する計画でございます。交通渋滞の解消、交通安全、環境対策を目的とした事業でございまして、この昭府立体は平成十年に事業に着手し、私も地元の町内会、連合町内会等の方々といろいろお話をしながら、地元の理解を得ながらこのことをやってきたわけでございます。

 平成二十年三月の供用開始に向け工事が進められているわけでございますけれども、予定どおり明年三月に供用開始がされるかどうか、お伺いしたいと思います。そして、この供用開始後、引き続き高架四車線化に向け切れ目なく事業が継続されるかどうか、国交大臣にお伺いしたいと思います。

冬柴国務大臣 御指摘の昭府地区の立体化につきましては、平成二十年三月、暫定二車線で立体供用を目指し、順調に工事は進捗しているところでございます。

 また、昭府地区の立体四車線化につきましては、現況の交通状況にかんがみまして、引き続き整備する必要があると考えております。したがいまして、四車線化のための工事に平成十九年二月から着手をいたしております。

 今後とも、早期供用を目指し、引き続き切れ目なく事業を推進してまいる所存でございます。

大口分科員 大変前向きな御答弁、ありがとうございます。

 次に、第二東名自動車道の静岡サービスエリア、これは仮称、小瀬戸地区の静岡サービスエリアに接続するスマートインターチェンジの設置についてでございます。

 平成二十四年度、県内、御殿場から三ケ日供用開始に向け、現在建設が進められております第二東名自動車道では、小瀬戸・飯間地区に仮称静岡サービスエリアが開設されることになっておるわけでございます。

 スマートインターチェンジは、高速道路の有効利用、地域住民への利便性の向上、周辺地域への交流促進等々、さまざまな役割が期待されております。ただ単に通過点ではなく、このスマートインターチェンジを設置することによってその地域が活性化していくということで、地域の計画を策定するに当たっても、非常にこのスマートインターチェンジを設置するかどうかということは重要な課題でございます。

 本格導入されている箇所、社会実験をされている箇所を見ましても、通勤時間の大幅な短縮、観光客の増加、緊急医療施設への搬送時間が九分から十四分短縮した等々、こういうスマートインターチェンジ設置の大きな効果が出ている、実証されている、こう思うわけでございます。

 政令指定都市静岡市の北西部の玄関口として、この第二東名自動車道の静岡サービスエリア、仮称でございますけれども、ぜひともスマートインターチェンジを設置していただきたい、こう考えておりますが、国交大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

冬柴国務大臣 日本のインターチェンジの間隔というのは欧米に比べて非常に長くて、約十キロぐらいもあるんですね。したがいまして、通過だけされる市町村にとっては、道路は騒音と排気ガスをいただくだけであります。

 しかしながら、インターチェンジをつくるということは、相当な土地を取得しなきゃいかぬ。五十億ぐらいかかっちゃうんですね。しかしながら、その中間点にサービスエリアとかあるいはパーキングエリアというものがありますれば、そこは今閉鎖されておりますけれども、そこへ穴を開けると申しますか出入りできるようにして、そしてETCでできるようにすれば、そこから高速道路に乗りおりができるということになりまして、それはその地域の非常な、住民にとって経済的効果も大きいということから、我々、今、社会的実験でございますけれどもやっておりまして、非常に好評でございます。

 問題の、静岡サービスエリアにスマートインターチェンジを設置しようという大変な御要望があることは存じておりますし、現在、静岡市において検討会の設立の準備をしていらっしゃるということでございます。

 スマートインターチェンジは、地域からの、地方公共団体の発意によって、我々はそれに対して整備を助成していこうということでございますので、どうぞ、大口議員におきまして、これをつくる地域の発意というものの醸成に努力されるようにされてはいかがかと思います。私の方は、それをお受けする用意はございます。

大口分科員 大臣、まことに、用意があるということで前向きな答弁をいただきまして、ありがとうございます。

 次に、一般国道百三十九号線富士改良についてお伺いします。

 本年度、国道一号バイパスから新幹線までの間着工する、こういうふうに聞いております。

 富士市は、国道一号バイパス、東名自動車道を初め東西の交通網は整備されていますが、南北の基幹道路網の整備がおくれているわけでございます。この国道百三十九号が国道一号バイパスに連結すれば、田子の浦港の石油基地や山梨県までの輸送ルートが整備されることになるわけでございまして、経済界からも大きな期待があるということでございます。

 現在、この用地買収交渉は平成十八年度末で三二%ぐらい、こういうふうに私、地元の市会議員から報告を受けておりますけれども、順調に進んでいる、こう聞いております。この国直轄事業の早期の完成をお願いしたい、こう考えておりますが、見通しを道路局長にお願いしたいと思います。

宮田政府参考人 お答え申し上げます。

 国道百三十九号富士改良は、富士市内の南北軸を形成する一・六キロのバイパス事業でございます。

 現在、用地買収、工事を進めておりまして、一号バイパスから新幹線に並走する市道までの区間、これにつきましては既に用地買収を完了しておりまして、平成十九年度に供用する予定でございます。

 残る区間でございますが、現在、用地買収に全力を挙げておりまして、平成十八年度末には、この区間につきまして約二割の買収率となる見通しでございます。残る八割の用地物件につきましては、工場などの大規模施設、そういうものがございまして、補償調整も必要な状況でございます。

 平成十九年度は、引き続き、残る区間の用地買収、あるいはJRとの交差協議を精力的に進めまして、事業の完成の見通しを立ててまいりたいと考えております。こうした課題の解決見通しが立った段階で、直ちに完了目標を設定して、全力で整備を進めてまいりたいと考えております。

大口分科員 次に、三遠南信自動車道についてお伺いしたいと思います。

 三遠南信自動車道は、浜松市の三ケ日町と長野県の飯田市を結ぶ延長約百キロの高規格幹線道路で、一般国道四百七十四号線の自動車専用道路としての整備もされるわけであります。完成すれば、南信と三河、遠州地域との時間距離を大幅に短縮できるため、新たな観光資源の活用、産業の進展、過疎地域の振興など、広域的な、県境を越えた経済文化圏の形成に大きく寄与するわけでございます。浜松市は、ことしの四月から政令指定都市にもなるわけでございます。そういう状況なわけです。

 その中で、現在、静岡県側は、東名自動車道三ケ日ジャンクションから第二東名自動車道の引佐ジャンクションを経て鳳来インターチェンジの間の二十七・七キロが工事区間として進められています。この区間は、当初、平成十九年度完成であったということだったんですが、工事区間のほとんどがトンネル工事であり、また中央構造線という非常にもろい地盤になっておって、工事が難航している、こういうふうに聞いております。まず第一点として、完成の見通しはどうかということ。

 また、さらに、鳳来インターチェンジより佐久間インターチェンジは整備計画区間となっておるわけでございますが、佐久間インターチェンジの側は用地買収に入っている、鳳来インターチェンジの方は用地買収のための測量段階、こういうふうに聞いているわけでございます。できるだけ早く工事への着手を期待しておりますが、今後の見通しはどうか。

 三点目に、佐久間インターチェンジから水窪北インターチェンジの間については、現道の国道四百七十三号と国道百五十二号を強化し、当面活用区間としているわけですね。特にこの国道四百七十三号については、もともと道路が狭く、拡幅や見通しの確保、それから大型車とのすれ違いの可能な待避所の整備等、財政面から考えて、市の事業として行うには負担が大き過ぎる感がある。四百七十三号区間だけでも国の直轄による整備支援はできないものか。市も強く要望しておるわけでございますけれども、この点についてはどうか。

 以上三点について、道路局長からお伺いしたいと思います。

宮田政府参考人 お答え申し上げます。

 三遠南信自動車道でございますが、静岡県内では、三遠道路二十一キロ、佐久間道路七キロ、青崩峠道路四キロ、この三カ所で事業を進めております。

 三遠道路につきましては、鳳来インターから引佐ジャンクションまで十三・九キロの区間につきまして、十九年度の供用を目標に事業を進めてまいりました。

 委員御指摘のように、非常に長い延長のトンネル、三遠トンネル四・五キロでございますが、この掘削が非常に難工事でございます。専門家の指導のもとに慎重に掘削を推進しているところでございますが、現在、約六割に相当する二・六キロの掘削を完了しております。そういった関係で、当初目標にしておりました十九年度内の供用というのは困難な状況になっておりまして、三遠トンネルの掘削にめどがつき次第、新たな供用時期を公表したいと考えております。

 この区間に続きます三遠道路の東栄―鳳来間七キロ及び佐久間道路につきましては、現在、調査設計、用地買収を進めております。地元の皆様の御理解、御協力を得つつ、三遠道路の工事区間に引き続きまして事業を推進してまいりたいと考えております。

 三点目の御質問、お尋ねでございますが、国と静岡県の間で役割分担を決めまして、佐久間インターチェンジから水窪北インターチェンジまで、これにつきましては、現道の管理者でございます静岡県が未改良区間の整備をする、これを当面活用するということにしてございます。現在、国といたしましては、直轄事業として実施をするということに役割分担としてなっております三遠道路、佐久間道路の事業推進に全力を傾けたいと考えております。

 委員御指摘のように、平成十九年四月に浜松市が政令指定市に移行することになります。今後は、浜松市と連携、調整を十分に行いまして、適切な協力体制のもとに引き続き事業を進めてまいりたいと考えております。また、合併後の浜松市は、中心部も周辺部も道路整備の必要性が高いと認識をしております。この点も十分踏まえまして、国として必要な支援を積極的に行ってまいりたいと考えております。

大口分科員 今、三点目につきましては、本当にこの区間でやはり事業が進まないと、せっかくの三遠南信自動車道の機能がそれだけ低減するということがありますので、よく浜松市と調整をしていただいて、ここは非常に必要だということをよく御認識して対応していただきたい、こういうふうに思っております。

 次に、昨年も質問させていただいたわけなんですが、平成十五年七月と十六年六月に静岡市で大きな浸水被害がありました。それを受けて、昨年、静岡市浸水対策推進プランを策定して、地域に合った対策を検討するとともに、総雨量の五%分を雨水流出抑制対策によって対応する、こういう計画であるわけです。

 この十五年、十六年、浸水被害を受けられた静岡市の下川原地区と桃園地区を抱える丸子川流域の長田六連合町内会は、こういう計画に呼応しまして、昨年七月一日に丸子川流域浸水害対策協議会を立ち上げて、浸水被害を受けなかった地域の住民も被害を受けた地域の住民と一緒になって雨水の貯留を推進する、そういう運動を今展開しつつあるということでございます。

 そこで、静岡市も、流出抑制施設の一つとして、個人住宅における雨水貯留槽や雨水浸透升の設置、下水道接続時に不要となる浄化槽を雨水貯留施設に転用するなど、河川の負担の軽減を図り浸水対策を促進させることを目的とする新世代下水道支援事業、これは事業種別ですと水環境創造事業、水循環再生型、この採択を要望しているわけでございます。

 都市・地域整備局長に、これについての御答弁をいただきたいと思います。

中島政府参考人 お答え申し上げます。

 今、委員からお話がありましたように、十五年、十六年の浸水を受けまして、静岡市の方で総合的な対策を講じられていて、その中で、もちろん公共施設、排水路やポンプの施設整備はやっておられるわけでありますけれども、あわせて、民間の各家庭の協力を得て浸透貯留施設の設置を進められることが具体化しつつあるというふうに聞いております。

 私ども、都市内の治水対策を進める上で、公共の施設がもちろん重要でございますけれども、そういう民間の各家庭の御協力を得るというのは非常に大事なことだと思っておりまして、今お話のございました新世代下水道支援事業、これは多様なメニューがあるわけでありますけれども、その中の一つとして、各戸における雨水貯留浸透施設の設置に対して助成できるというメニューがございまして、静岡市の方からその利用について御相談を受けている状態でございます。

 もとより、新年度、成立後の話でございますけれども、今後、市のお考えを十分にお聞きした上で、せっかく静岡市がお進めになっておられる総合的な対策が十分な効果を発揮できますように、積極的な応援をしていきたいというふうに思っています。

大口分科員 先ほども御紹介しましたように、地元の住民の方々が立ち上がって、こういう対策協議会まで設置して、やろう、こういう雰囲気でございますので、今局長から極めて前向きな答弁をいただきましたので、またしっかり推進を私もしてまいりたい、こういうふうに思っております。

 次に、公共事業におけるダンピング排除についてでございます。

 昨年、臨時国会で、私も官製談合防止法の改正の提出者ということで答弁席に立たせていただきまして、いろいろ官製談合防止について答弁させていただいたわけでございますが、その一方で、ダンピングもひどい、こういう話が各委員からもございました。そういうことで、やはり公共事業におけるダンピング排除ということは非常に大事なことである。これも、アメリカなんかはダンピングというのは本当に厳しく対処しているわけでございます。

 そこで、ダンピングの弊害として、公共事業の品質の確保に支障を及ぼす、下請へのしわ寄せ、労働条件の悪化、安全対策の不徹底など、こういうことが挙げられるわけです。

 国交省も、公共工事の品質確保対策ということで、発注者の監督・検査等の強化、受注者側の監理体制の強化、手抜き工事へのペナルティー強化、これを昨年四月に実施されたわけです。さらに、昨年の十二月には追加対策として、総合評価方式の拡充、品質確保ができないおそれがある場合の具体化、一般競争参加資格として必要な同種工事の実績要件の緩和、入札ボンドの導入拡大、公正取引委員会との連携強化、こういうことを行っているわけです。

 私も「工事成績評定と落札率の関係」という国交省の資料を見ますと、やはり落札率が低くなるほど工事成績評定が悪くなる、こういう傾向が明確に出ておるわけでございます。落札率がおおむね八〇%未満では平均点以上の工事が大幅に減っている、こういう状況でございます。

 この公共工事のダンピング排除につきまして、国交大臣の見解をお伺いしたいと思います。

冬柴国務大臣 極端な低入札が急激に増加しているということは、大変ゆゆしいことでございます。それは、委員もおっしゃいましたように、建設業の健全な発達を阻害するだけではなしに、工事の手抜きとか下請業者に対するしわ寄せ、それから労働条件の悪化、安全対策の不徹底につながり、ひいては公共工事の品質確保にも重大な悪影響を及ぼすということでございます。

 したがいまして、国土交通省としては懸命に、今委員が本当に詳しく説明していただいたような施策をとりまして、こういうことが起こらないように頑張っているところでございます。

 その結果、そういう低価格と思われる、落札率がおおむね六五%未満の工事というものについていろいろ調査いたしましたところ、対策前は百件の入札件数に対して四十一件の低入札があった、四一%。これが、対策後は百五十一件に対して三十一件しか認められなかった、二〇・五%ということで、ほぼ半減をしているわけでございます。

 そういうことで、我々は、気を緩めることなく、引き続きこのような施策をきちっととって、なお的確に、公取とも、公正取引委員会はダンピングですから、連携をとりながら、そういうものが起こらないように頑張ってまいりたいと思います。

大口分科員 意欲的な御答弁をありがとうございます。

 公取委員会の方にお伺いしたいんですけれども、平成十五年十一月以降、国土交通省あるいは各都道府県に対して、低入札価格調査制度に基づく調査の対象となった公共建設工事等について情報提供を公取が依頼して、国交省及び各都道府県から七百件の情報提供があって、そのうち二件について、平成十六年四月と九月に警告を公取として発しているわけでございます。

 昨年の十一月にも公取は、国交省それから農林水産省、各都道府県、政令指定都市に情報提供を呼びかけて、既に回答を得ている、こういうふうに聞いているわけです。その結果を受けて、公取は今後どのように対応するのか、お伺いしたいと思います。

山田政府参考人 最近におきましては、国、都道府県等が発注します建設工事におきますダンピング受注につきましては、公正取引委員会といたしましても、独占禁止法で禁止されております不当廉売に該当する事案があるかどうか監視を強化しておりまして、現在、御指摘のとおり、所要の調査を実施しているところでございます。

 具体的には、先生御指摘のとおり、国土交通省や都道府県等の協力を得まして、低価格入札物件についての情報を収集しております。現在、その情報をもとに、低価格入札物件の多い建設業者に対しまして調査票を送付し、損益状況等について報告を求めたところでございます。現在、またさらにそれを踏まえまして、当該建設業者の方々それから周辺事業者の方々から聞き取り調査を進めているところでございます。

 これらの調査を踏まえまして、独占禁止法上問題が見られた場合には厳正な対処をとってまいりたいと思っているところでございます。

大口分科員 速やかに対応していただきたい、こういうふうに思います。

 そこで、長野県、前は田中知事だったわけでございますけれども、あそこも最近の取り組みの中で、平成十五年四月から低入札価格調査制度に失格基準価格を導入し、その価格を下回った入札者を失格者としている。平成十六年十二月からは、百万円から二億円の建設工事の失格基準を七五%から八〇%としておって、その後、平成十七年十月から失格基準価格算定方式を改定している。こういうことが長野県では行われている。

 また、静岡市でも、一億五千万円未満の入札においては最低制限価格を設け、その価格を下回った業者は失格として、最低制限価格は予定価格の六六・六六%から八五%の中で、一入札物件ごと、例えば工事の種類、金額によって直接工事に対する経費の金額が違うが、難易性をかんがみ、担当課長が決して外部に漏らさないという形で設定している、部長にも漏らさない、こういうことを聞いております。

 地方自治法で認められている、このような長野県の失格基準価格制度や静岡市の最低制限価格制度の動きに対して、全国的にどうなっているのか、また国交省でどう評価しているのか、この見解をお伺いしたい。これは国交省で、政府参考人にお伺いしたいと思います。

 それと、大臣に最後に、昨年六月十七日に、実は前任者の北側大臣が静岡県に視察されたときに、地元から国に対して、ダンピングの排除、入札執行前の予定価格、最低限価格の公表の中止、中小建設業を対象とする公共工事の発注に当たって、建設生産物の品質の確保と経営の安定のために、すべての工事に最低制限価格を設けるべき、こういう強い要望が出されております。これにつきましては、大臣に御見解をお伺いしたいと思います。

赤松主査 宿利総合政策局長、時間が来ていますので、簡潔にお願いします。

宿利政府参考人 まず、全国的な導入状況でございますが、私どもが調べたところによりますと、低入札価格調査制度の運用に当たって、具体的な判断基準を設定して、その基準を満たさない入札を失格として運用している都道府県が、昨年六月時点で長野県を含む十五団体になっております。また、最低制限価格制度を導入している地方公共団体は、昨年四月時点で六割を超える地方公共団体で導入されております。

 私どもとしましては、低入札価格調査制度や最低制限価格制度が適切に導入、活用されることによりまして、先ほど大口委員から御指摘がありましたようなもろもろの弊害、また公共工事の品質確保に支障が生じかねない、いわゆるダンピング受注の排除の徹底が重要であると考えております。

 また、このような観点から、昨年十二月に公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律に基づきまして、総務省とともに、各地方公共団体に対しまして、低入札価格調査制度の運用に当たっては、具体的な判断基準の設定に努めて、当該基準を満たさない入札を失格とする等厳格な運用を図るようにという要請を行っておるところでありまして、これらを通じまして、低入札価格調査制度や最低制限価格制度が適切に導入、活用されることが望ましいと私ども推進しているところでございます。

冬柴国務大臣 国が契約する場合には、会計法というものが適用されちゃうんですよ。この会計法では、「予定価格の制限の範囲内で最高又は最低の価格をもつて申込みをした者を契約の相手方とするものとする。」となっちゃって、それを排除するためには、そのただし書きで「その者により当該契約の内容に適合した履行がされないおそれがあると認められるとき、又は」、あとは略しますが、地方公共団体発注はこの会計法が適用されないんですね。したがいまして、国と地方で扱いが変わっております。

 しかしながら、この履行がなされないおそれが認められるという認識基準が非常に難しいわけでして、私の方は、これをもう少し類型化した解釈をきちっと定立して、そして早く排除できるようにして、次の人にそれは落札できるようにしようということで検討しているところでございます。

大口分科員 どうもありがとうございました。

赤松主査 これにて大口善徳君の質疑は終了いたしました。

    〔主査退席、三ッ矢主査代理着席〕

三ッ矢主査代理 次に、大串博志君。

大串分科員 きょうは、この第八分科会での質問の機会をいただきました。ありがとうございます。

 きょうは、私の方からは、国土交通省における重要案件ということで、新幹線の問題、そしてダム建設の問題、この二つについては私が住んでおります地域の重要案件をとりながらお話を進めさせていただきたいと思います。そして、道路特定財源の話、災害予算の問題等々について議論をさせていただければというふうに思う次第でございます。

 さて、まず整備新幹線の問題ですが、皆さんよく御案内と思いますけれども、整備新幹線、現在の計画に関しましては、十六年の十二月に行われました政府・与党申し合わせというこの取り決めにおいて考え方が定められております。

 「基本的な考え方」それから「既に着工した区間の工期短縮等」「新たな区間の着工」そして「各線区の取扱い」等々、これに関することが決められております。

 私の住む地域のことに関してお話をさせていただくと、九州新幹線長崎ルートというものがここに定められておりまして、このときに出てきた路線でございますけれども、武雄温泉―諫早間ということで、「並行在来線区間の運営のあり方については、長崎県の協力を得ながら佐賀県において検討を行うこととし、速やかに結論を出すこととする。調整が整った場合には、着工する。その際、軌間可変電車方式による整備を目指す。」これはフリーゲージトレーンですね。こういうことが決められております。

 この取り決めを前提に予算措置が、これが十六年の十二月十六日でしたから、十七年度予算以降、予算の策定がなされておりまして、十七年度予算においては事業費という予算で十億円、そして十八年度予算においても事業費ということで十億円が予算措置されております。

 これら十億円の予算措置は、いずれもいわゆる新幹線軌道の譲渡収入、書類上見ますと譲渡収入等というのを予算財源としておりまして、既設新幹線譲渡収入等というところでございますけれども、この等というところで読み込まれているようでございます。この等というのは、いわばその既設新幹線の譲渡収入、この将来収入分を一つの将来の返済財源として借り入れを行って、借り入れを行うことによって事業を行うという、その借り入れの枠として十億円の予算措置が、十七年度予算そして十八年度予算がつけられたということでございます。

 この「整備新幹線の取扱いについて」という十六年の十二月の与党申し合わせにおいては、「新たな区間の着工」というところで、こういうことも書かれております。

  新たな区間の着工については、現在工事実施計画の認可申請がなされている区間のうち、特に整備効果の高い区間や既に着工した区間と同時開業の望ましい区間について新たに着工することを優先する。

  また、その際には、収支採算性、投資効果等を十分に吟味するとともに、JRの同意、並行在来線の経営分離についての沿線地方公共団体の同意の取付等基本条件が整えられていることを確認した上で行う。

ということでございます。

 これを前提に、先ほど私申し上げました武雄―諫早間に関しては、「調整が整った場合には、着工する。」こういうことが書かれているわけでございます。

 これを前提に、十七年、十八年度予算において十億円の予算がついていたわけでございますけれども、これは、地方公共団体の調整がついていないという現状でございまして、着工がされておりません。十七年度予算に十億円の事業費借入枠の予算がついた、しかし、それが着工できず、十八年においても着工されておりません。

 そういう中で、今度、十九年度予算においても同じく、全く同じ形で借入枠ということで十億円の予算が措置されているわけでございますけれども、すなわち、これは事業費という財政当局も関与した形で決められている枠でございます。真水の予算ではないから、借入枠でありますから、これが事業が執行されなかったとしても、国の懐といいますか直接的に予算が影響を受けるわけじゃないということだろうと思います。そういう説明を聞いておりますけれども、十七年そして十八年と執行されなかったこの事業費予算を、ことし三年目でございますけれども、予算枠としてまたつけているわけでございます。

 これは、財政規律という観点からして、基本的には真に必要な予算をつけるというのが、この財政状況の厳しい折、適切な考え方だろうというふうに思うんですが、二年間執行されなかった予算を三年目もまたつける、こういうことがあってよいのだろうかという思いが率直にしておりますし、これは極めて厳しく見ていかなきゃならないんじゃないかというふうに思います。そして、こういうことが将来も起こるということはあってはいけないんじゃないかというふうに、私、国の財政状況を考えると思うわけでございます。

 この点に関しまして、冬柴大臣の御所見あるいは将来に関する考え方等々ございましたら、いただきたいと思います。

冬柴国務大臣 この与党申し合わせには、当時私も関与していまして、思いがあるわけでございます。

 この部分につきましては、地元との同意が整った際には速やかに着工する、こういう約束でございますので、私としましては、十九年度に同意がとれたら直ちに着手するためには、お金の用意がなければなりません。そういうことでこの十億円を用意したわけでございます。

 これについては、厳しい財政の折からとおっしゃいましたけれども、これは消費貸借予約でございまして、国の財政に損失を与えるものではございません。そのような同意が得られた際には、直ちにその借り入れをして、それを資源にこの工事を進めるということでございます。そのようないわば枠といいますか、国の財政に影響を与えないような趣旨を考えてこういうふうにしてあるわけでございます。

 しかし、甚だイレギュラーであることは事実です。ほかでこういうことはなかなかできないと思いますけれども、ただ、ここは、ほとんどのところは同意していられるんですが、一市一町が反対していられるといいますか、同意が得られていないという状況で推移しているようでございますけれども、地元からの要請はしばしばでございまして、それ以外のところから早くやってくれと。しかし、早くやってくれと言われても、ここは、そのように約束したのは地元の同意が得られてからということが前提になっているので待ってください、しかし、資金は国家としてはきちっと確保していますよということも申し上げているところでございます。

大串分科員 今大臣の方から、与党申し合わせを前提としてすぐに着工できるようにしなきゃならぬから十億円をつけているんだということでございましたし、すぐに国の財政が影響を受けるわけじゃないからというお話もありましたが、そうではありますけれども、やはり事業費予算でございます。であるがゆえに、財務省も議論に入った上で、議論した上でこの事業費予算を決めているわけでございますし、こういうふうな事業費予算の紙もつくって、十億円というお金もここに、政府がつくる紙の中に入ってやっている。完全に民間企業の予算であれば国が議論することは全く必要ないわけでございまして、国の財政に影響があるからこそ、こうやって財務省も絡んだ上で議論しているんだろうと思います。

 それに、一年目は十億円だと思いますけれども、この後、事業が仮に始まっていった場合には、新幹線のいわゆる予算スキームに乗って事業が進められていくわけでございます。その場合には、既設新幹線譲渡収入等、そして公共事業関係費、あるいは地方公共団体からの公的支出、これらをミックスした公的予算が入った上での事業が進むわけでございます。ですから、当然、もし仮に着工されたとすると、近い将来における財政的インプリケーション、すなわち影響が及んでくる。そういう意味からすると、財政の影響があり得ないということはあり得ないんだろうと思うんですね。

 ですから、そういう意味からも、大臣はイレギュラーなことだろうと思いますというふうにおっしゃいました。その発言はぜひ重視していただきたいと思いますし、財政規律ということはぜひ考えていただきたいというふうに思う次第であります。そこのところはぜひ、国の財政という観点からの精査のほどをお願いしたいと思います。

 そして、今、地方公共団体の調整、同意という話がございました。これまでも、予算委員会の場等々で、政府・与党申し合わせで言われている沿線地方公共団体の同意そして調整という意味合いに関しましては、これは、地方公共団体という地方自治法上の定義にございますから、県、そして市、町、沿線に当たるところすべての同意が必要なんだという御答弁をこれまでも、前任の大臣、前々任の大臣からもいただいております。その方針は変わっていないという理解でよろしゅうございますでしょうか。

冬柴国務大臣 そのとおりでございます。

大串分科員 今大臣からございました、地方公共団体の同意を得る中で、一市一町の方々がなかなか同意されないというふうな意見でございましたけれども、ぜひ地域の現状を見ていただきたいと思います。一市一町が反対というだけではなくて、これはやはり幅広い慎重論があります。

 例えば、これは去年の秋、佐賀県の県民世論調査であったことですけれども、これは佐賀新聞の報道できちんと報道されております。昨年の秋でございます。五五%を上回る方々が佐賀県内では九州新幹線長崎ルート不要とおっしゃっている。必要と言った人はわずか二九%でございます。こういうふうに佐賀県全体の流れをとってみても、不要という声は強い、そういうふうな事実がございます。

 他方、長崎の方々の声を私が代弁するわけにいきませんので、報道だけでお話しさせていただきますと、これは一昨年の秋の報道ですけれども、西日本新聞の報道によりますと、西日本新聞の調査でございますけれども、長崎県全体で調査をしたところ、どちらかといえばを含めた必要は四六・三%で、必要ないということを答えた方、これは四六・七%。拮抗しております。

 さらには、一年近くなりますか、長崎県の県知事選のときに同時に行われた、これは長崎新聞の調査でございます。これは二〇〇六年一月十日の長崎新聞の報道でございますけれども、県知事選に合わせて行われた県民アンケートでは、長崎ルートは必要かという問いに対して、必要と答えたのは三六・六%。これに対して、四四・八%は不要と答えられた。長崎でもこういう調査結果が報道等で出ております。

 佐賀県でも、最初に申し上げましたように、相当程度の方々がまだ、一市一町以外のところでも幅広く、本当に必要だろうかという声を上げていらっしゃる、そういうふうな現実に目を当てていただきたいと思うんです。

 そういう中で、最近、十六年十二月十六日の政府・与党申し合わせの全沿線地方公共団体の同意を必要とするというこの枠組みを変えるべきではないかという考え方が出ているやに聞きます。

 これに関して、私は、昨日も予算委員会の場で菅総務大臣と、今の安倍内閣は地方分権を進めるんですか、進めないんですかという議論をしたところ、総務大臣は地方分権はしっかり進めていくんですという答えでありました。

 また、前に予算委員会で前原委員の方から総理に問うたときも、地方分権はしっかり進めていく、こういうことで、施政方針演説にも、総理は地方分権はしっかり進めていくんだということをおっしゃっています。

 地方分権をしっかり進めるのであれば、ここは、この枠組みを変更して、全地方公共団体の同意を必要とするという枠組みを変えるというのは理に合わないことではないか。むしろ、きちんと地方公共団体の意見を聞くというのが、今、最も適切であり、流れに沿ったことじゃないか。

 ですから、この枠組みの変更というのは理に合わないんじゃないか、政府の方針と合わないんじゃないかと思うんですが、大臣のお考えを聞かせていただきたいというふうに思います。

冬柴国務大臣 これまでも地方の同意が必要であるということで、牢固としてそれは守ってきました。今回も守っております。変えるつもりはありません。

大串分科員 今大臣から、この枠組みを変えるつもりはありませんという答弁をいただきました。地方分権に関して強い決意をあらわしている総理そして総務大臣のもとでございますので、ぜひぜひ、今の答弁を胸に置いていただいて、かつ、先ほど私が申し上げました、一市一町だけじゃなくて、広い県民の方々も本当に必要なんだろうかという気持ちを持っていらっしゃるという事実を御認識いただけたらというふうに思います。

 公共事業でございますので、やはり幅広い方々の支援があって効果が生まれていくんだろう、ここは真理だろうと思います。

 さて、もう一つの論点、ダムの問題に移らせていただきたいと思います。

 佐賀県に城原川ダムという事業の計画がございます。この件についても、基本は県民、住民の皆さんの意見をよく聞いていただきたいということがきょうの議論の本旨でございますが、この城原川ダム事業に関して、現状がどうか、河川局長の方から、政府参考人の方からお願いしたいと思います。

門松政府参考人 城原川ダムの建設についてお尋ねがありました。

 城原川ダムは、筑後川水系の支川でございます城原川の治水対策として実施しているところでございまして、現在、関係地区住民の協力のもとに、事業計画の策定に向けて、必要な調査、水理水文あるいは環境調査、あるいは水源地対策調査等々を実施しているところでございます。

 今後も、早期建設に向けまして、関係者との調整を綿密にいたしまして、調査の促進を図ってまいりたい、こういうふうに思っております。

大串分科員 今、地域住民の方々の同意を得ながら調査を進めているという話でございましたけれども、きのうも、これまでも事務方の方々から進捗状況に関してはお聞かせ願っていますけれども、ことし一月に当該ダム建設地区の方々と調査に関する協定が得られたというのは新聞報道でも見ていますし、その辺に関しての事実関係をもう少し述べられるところがあったら、ちょっと教えていただいてよろしゅうございますか。わかる範囲で結構でございます。

門松政府参考人 この城原川ダムの関係する地区は四団体ございまして、そのうち、三団体につきましては既に調査の了解を得ておりましたが、残る一団体につきまして、ことしの一月に、調査してもいいというお許しを得まして、協定が結ばれまして、四地区全体の調査が今行われているところでございます。

大串分科員 今お話がありました、四団体のうち三団体は調査してもいいという理解が得られていたんだけれども、一団体、この一団体というのはまさにダムがつくられるサイトの付近の方々でございます。一月に調査をしてもいいという協定が結ばれたということでございますけれども、この協定に向けて、その道のりは、どの程度詳細にお聞きになっているかわかりませんけれども、事実としては、決して平たんな道のりではなかったんです。

 そこは三十六戸ほどの家が住んでいらっしゃる、広い地域ではありますけれども山合いの非常に美しいところで、そこにダムがつくられようとしているわけですけれども、そこの峡谷などを見ていただくと息をのむほどの美しさでございます。そこにダムができようとしているわけでございますので、そういう中で、住民の方々は、非常に慎重、そして心配な声を上げていらっしゃるわけでございます。

 去年の九月の末から、まず、その地区、仁比山地区と申しますけれども、地区の委員会をつくろうということで立ち上がりを始めて、ただ、その議論も決して平たんではなかった。九月の末にその地区で委員会をつくるということが賛同を得られたというような言われ方が地区ではされているようですが、決して住民の方々がすべて賛成していらっしゃるわけじゃない中で、非常にぼわっとした形で事が進んでいるわけでございます。

 そういう中で、その委員会が人々のわっとした認識の中で立ち上がり、かつ、一月に協定が結ばれているということでございますけれども、いろいろな話が漏れ伝わってまいります。

 この委員会に入るときに、結局、この委員会には三十六戸のうち二十九戸の人しか入っていらっしゃいません。七世帯は入っていらっしゃらなくて、すなわち、この地区から理解が得られたといっても、地区全体からは得られていないんです。すなわち、七戸からは得られていないという現状であることには変わりない。

 しかも、その同意を得るために、各戸を関係者の方々が回っていっていらっしゃいます。そのときに、入っていないのはあなただけよというような、事実とは異なるような説明をされたり、あるいは、これに入らないとダム旅行には行けないよというようなことを言われたり、そういうことも聞いております。

 ダム旅行とは何か御想像つきますでしょうか。はっきりとはわかりませんが、どうもダムをつくる地域の方々は、他のダムでどういうことが行われているか、実態を実地に見ていただくというようなスキームがあるそうでございますね。そういうことを指していらっしゃるんじゃないかなと思いますけれども、そこに行けないよ、見に行けないよ、あなた、そういうこともしたいでしょう、そういうこともあたかもえさであるがごとく言われて、勧誘がなされているわけでございます。決して、本当にダムのことをしっかり考えて合意が得られているということではない。

 しかも、この仁比山地区の地区委員会、この地区委員会をつくるときに会の会則がつくられています。

 会の会則の中まで御存じないとは思いますけれども、これは通告していませんでしたので、御存じなかったら御存じなかったで結構なんですけれども、この仁比山地区委員会の会則の中で、会の経費ですね、補助金から経費を賄うというような取り決めがあるかどうか、聞かれたことはありますか。もし御存じなかったら、ちょっと済みません、通告していないので御存じないというお答えでも結構でございますから、もしお答えいただければ。

門松政府参考人 存じておりません。

大串分科員 これは私ももう少しきちんと調べていきたいと思いますけれども、仁比山地区委員会、これは協定をつくるときの母体でございますけれども、この経費がかかる、補助金という考え方も浮上してあるようでございます。

 これはどういう補助金なのか。補助金ですからきちんとした出元、国か地方かがあるんでしょうし、それに関しては予算の手当てがされ、場合によっては補助金ですから法律補助ということもあるかもしれません、予算補助の可能性が強いのかもしれませんけれども。しかも、それも、いずれにしても補助金をつける際には、その用途、目途があるはずでございます。それがこの仁比山地区委員会の、地区の委員会の経費を賄うという補助金として適正な使われ方がされているかどうか、その辺に関してはもう少しきちんと調べていってみたいと思いますけれども、そういうふうなこともあるやに聞いております。

 ですから、ぜひぜひお願いしたいのは、この仁比山地区、そしてそれ以外の関連地区、もっと広い範囲もとっていただきますと、まだまだダムに関する認識、考えの熟度、そして理解、了解が得られたということに関してはほど遠い状況でございますし、足元の地区でも、今お話ししたように、いろいろな意見があるということはおわかりいただけたんじゃないかというふうに思います。

 先ほどお話ししましたように、非常に美しい渓谷のところにどんとダムをつくるということが考えられている、そういう計画でございますので、ぜひ、これは住民生活に大きな影響を与える事業でございますので、住民の皆さんの意見をしっかり聞いた上で考えていただきたい。それが、先ほども申しました、公共事業ですから、欠かせない筋なんじゃないかというふうに思う次第でございます。

 この点につきまして、大臣の御所見、御答弁をいただきたいと思います。

冬柴国務大臣 みずから住民の生命財産というものを守るのは、国土交通省に課せられた使命であります。治水ということは非常に大事でございまして、昨年の梅雨前線集中豪雨でも見られますように、大変な被害を及ぼすことになるわけでございます。そういうことに備えてどうあるべきかという検討の結果、ダムが必要である、治水ダムが必要であるという結論になったわけでありまして、こういう経過をたどっております。

 筑後川水系河川整備計画の策定に当たりまして、筑後川支川の城原川の計画に関し、佐賀県と協力をいたしまして、学識経験者や地元自治体の推薦委員、公募委員などから成る城原川流域委員会を平成十五年十一月から一年間かけて十三回開催し、さまざまな方々の御意見をお伺いしながら検討を進めました。平成十六年十一月に流域委員会から城原川の河川整備にダムは有効との提案を受けたわけでございます。

 流域委員会からの提案を受けまして、佐賀県知事は、城原川ダムの建設の是非を含めた城原川の河川整備手法についての意見集約を行うことを目的として平成十六年十二月に城原川首長会議を組織し、十一回に及ぶ検討を経て、平成十七年六月、国土交通省に対して、城原川ダムを流水型ダム、すなわち穴あきダムと言われているものでございますが、として治水上位置づけた「城原川の河川整備についての佐賀県の方向性」を取りまとめ、御提案をいただいたところでございます。

 このように、知事や関係市町村等の意見を踏まえまして、筑後川水系河川整備計画の原案を平成十八年一月に策定し、地元説明会やシンポジウム、そしてまたホームページ、パンフレットなどのさまざまな手法によって関係する住民の方々の御意見をお伺いした上で、国土交通省では平成十八年七月に、城原川の治水対策として、利水は含んでおりません、治水です、治水対策として城原川ダムを位置づけた筑後川水系河川整備計画を策定したところであります。

 城原川ダムの事業実施に当たりましては、引き続き、佐賀県知事や関係市町村、及び地域の皆様方の御意見を丁寧にお伺いしながら進めていかなければならない、このように思っております。

大串分科員 今、経緯も含めて御説明いただきました。そして、地域住民の皆さんの声も丁寧に聞きながら進めていかなければならないという答弁をいただきましたので、それはぜひそうしていただきたいと思いますが、恐らく、現地の声が大臣まで上がっていくというのはやはりなかなか難しかろうというふうに思うんです。

 先ほどおっしゃった有識者会議、そして首長会議、それぞれ十三回、十一回とたくさん開かれました。しかし、私がつぶさにそれを見ている感じでは、結論がすっきり出切ったということでは本当になかったんです。これはこうだ、あれはああだともんどり打って議論して、結論が難しいというところというのがフェアな見方じゃなかったかと私は思います。

 それを反映して、地域の皆さんも、非常にまだまだ慎重、不安、心配、もちろん賛成の方もいらっしゃいますよ、でも、心配だという方々もたくさんいらっしゃるんです。広い地域を見てもたくさんいらっしゃる。

 そういう現実をぜひ見ていただきたいし、まさにダムの足元の方々なんかにしてみても、いろいろな意見がまだあって、先ほど申し上げましたように、仁比山という地域の地区委員会の会の経費に補助金が使われているというようなことがあるとか、その辺は真実をきちっと調べていきますけれども、あるいは、いろいろなことが言われていまして、今回、先ほどおっしゃいました協定書、この協定書の内容も極めて行政主導でつくられているというふうなことすらあるんです。ですから、住民の方々の意識をどれだけ、自主的な意見を踏まえているかというのは極めて心配なところがあると思うんですね。

 ですから、大臣、ここは、ぜひぜひ住民の方々の意見によく目を見開いていただいて、その答弁書に書かれていることだけが事実じゃありません、ぜひぜひ現場の声をよく聞いていただきますようにお願い申し上げまして、私の質疑を終わります。

 ありがとうございます。

三ッ矢主査代理 これにて大串博志君の質疑は終了いたしました。

    〔三ッ矢主査代理退席、主査着席〕

赤松主査 次に、木挽司君。

木挽分科員 きょうは、私、都市農業に関する国土交通省の現状認識と今後の考え方、それから住生活基本法について、地元の事例にかんがみて御質問をさせていただきたいと思います。

 私の地元は、兵庫県宝塚市、百一・九六平方キロメートル、そして伊丹市が二十四・九五平方キロメートル、さらに川西市が五十三・四四平方キロメートルと三市を抱えておりますが、いずれもが、狭い面積の中、大都市圏の農業地域の中で、宝塚市はイチゴあるいは植木を産品とし、伊丹市は軟弱野菜に加えてジネンジョですとか特産の南京桃、そして川西市はイチジクに桃というものを農業産品として生産しております。いずれもが、阪神地域という大都市圏に位置して、経済成長に歩調を合わせ、年々、都市農地の宅地化あるいは市街化が推し進められる中で、貴重な緑が失われてまいりました。

 この三市の中、宝塚市あるいは川西市では人口が若干ふえ続けている地区もまだございますが、一般的に、人口減少社会に対応した持続可能なまちづくりというものが求められてきていると私は認識しております。

 農業粗生産額でも約三割を占めている全国での都市農業。都市部は、過去、その機能性を追求してきた一つの時代を経て、環境保全を重点事項に据えて考えねばならない時代を迎えたと私は思います。

 都市の限られた緑のスペースでもある農地、こうした都市の農地を、あるいは農業を、限られた自然を残してほしいという住民からの要望があります。また、地産地消や子供たちへの食育を促進していく面からも、災害時のオープンスペースの確保やヒートアイランド現象の抑制という観点からも、新しいまちづくりを推進していく中で、農業を大切に扱う自治体がふえてまいりました。

 都市の農地は実に多面的な役割を果たしていると言えますが、地域の発展と共生していく都市圏の農地の今後について、国土交通省の考え方をまずお聞かせいただきたいと思います。

中島政府参考人 今委員からお話しいただきましたように、緑そしてオープンスペースというのは、都市の空間の中で非常に多面的な機能、防災の機能あるいは環境的機能、多面的な機能を持った非常に貴重な空間だと思っております。

 都市の緑を整備、確保する上で、公共事業としては都市公園という仕事があるわけでございますけれども、それに加えて、民間の緑地を生かすというのは非常に大事なことだと思っております。その民有の緑地の中で、いろいろな緑のバリエーションがありますけれども、やはり農地というのは、そのボリュームから考えても非常に重要な役割を今までも果たしてきましたし、これからも大切だと思っております。加えて、農地の場合は、農作業のレクリエーションという市民農園的な活用も図られております。

 国交省としましては、そういう農地につきまして、制度としては生産緑地制度、さらには市民農園制度という制度がございますが、そういった制度を積極的に活用して都市農地を適正に保全しまして、農林漁業と調和した良好な都市環境の形成を図っていきたい、こういうふうに考えております。

木挽分科員 現在、国交省では、そうした姿勢の中で、市街化区域内の保全すべき農地などについて、地方公共団体による生産緑地の指定に助言をしているという例もあるかと聞いておりますが、そういった具体例について御紹介いただけませんでしょうか。

中島政府参考人 生産緑地につきましては、平成三年だと思いますが、大きな改正が行われまして、御案内のように税制とも非常に密接に関連した制度でございますので、そのときには大変な議論がございまして、一応そのときにできたスキームが今生きておるわけでございます。

 その後、いろいろなケースを踏まえて、公共団体のお問い合わせがあれば、一番多いのは具体の指定の仕方で、追加的にやる場合、平成三年が大きな節目だったものですから、それ以降の取り扱いをどうしたらいいのかとか、あるいは区画整理を含んだ場合どうするのか、いろいろなお問い合わせがございますけれども、その都度その都度応じまして、必要なものはまとめて通知を出しているつもりでございますけれども、その他、個別にお問い合わせがあれば御相談に応じている、そういう状況でございます。

木挽分科員 ありがとうございました。

 そういった中で、当然話題となってきますが、やはり生産緑地制度の話がよく出てまいりますが、その指定要件の緩和並びに追加指定の推進について若干お聞きしたいと思うんです。

 さまざまな観点から魅力ある都市農業を育成していく対策は、自治体レベルでも多くの取り組みが確かに見られてまいりました。東京都では、たしか生産緑地を中心に、品質向上や環境保全のための施設への支援を実施されておりますし、私の地元は阪神・淡路大震災がございましたが、それを契機に、災害時の避難場所などとして利用するための防災協力農地の協定締結も進んでいると認識しております。自治体レベルで積極的に取り組まれている事例が幾つも見られるわけです。

 その中で、先ほど申し上げた都市計画法の問題、財務省などにいつもお伺いしている納税猶予の問題、あるいは農地をめぐる税制並びに法制度など、自治体の都市農業を考えるとき、幾つかの省をまたがって問題が絡まっている、確かにこれはそうですね。しかし、自治体ではその対応に限界があるというふうに指摘する声も聞いておりますし、私自身もそう認識しております。

 都市農地の長期的減少が続いております。他方、農業従事者の高齢化が進む。これは都市に限ったことではないですけれども、主たる農業従事者の高齢化によって、保存されなければならない農地とされている生産緑地ですら、相続が発生すれば切り売りを余儀なくされる。この傾向に歯どめをかけなければ、抜本的な対策を講じなければ、都市の農地が消滅してしまうかもしれないというふうに私は危惧しております。

 そうした危機感を持つ中で、国交省に生産緑地制度についてお尋ねしたいと思っております。

 今まで話してきたように、都市圏の市街化区域では、農地の減少と分散化が急激に進んでおります。しかし、これは税制、そして都市計画法、さらに生産緑地といったさまざまな問題が絡み合っている。そうした現況に対応するため、農水省には、一昨年秋から都市農業に関する室ができましたね。都市農業に対する窓口がしっかりと見えてきたわけでありますけれども、幾つかの省をまたいで絡み合う問題だけに、国交省として連携の姿勢も問われてくると思います。その辺をお尋ねしたいと思うんです。

中島政府参考人 都市計画制度の運用そのものは、市町村にお願いをしていますというか、市町村の権限でやっていただいております。

 したがいまして、現場でさまざまな横断的な調整がなされるというのが基本かと思いますけれども、私どものレベルでも、もとよりこの問題は、先生も今お話しになったように、農水省と私ども、都市計画と農業というのは、もともと、日本の都市の成り立ちが農地を転用して町をつくるという、よくも悪くもそういう生い立ちでございまして、密接な関係を持ってまいりました。いろいろな省庁間の問題はございますでしょうけれども、とりわけ農水省と私どもの部局は歴史的にも非常に密接な連携をとれていると自負はしております。

 今後とも、公共団体からいろいろな御要望を踏まえながら、その辺、抜かりがないようにしっかりとやっていきたいと思っております。

木挽分科員 生産緑地制度については、確かに、今、農水省との関係、古くからそういう関係が確立しているという御答弁をいただきました。確かにそうだと思いますが、そうなると、やはり壁になってくるのは財務省なのかななんというふうに思っております。これはもう過去からの議論を踏まえてみましても、そうした経緯が読み取れるわけでございます。

 確かに、都市農業を考える上で、生産緑地だけで考えていきますと、終身営農という、条件として不公平で厳し過ぎるというのは、やはり都市農業の生産者から声が聞こえてくるんですね。さらにその上で、指定要件の緩和や積極的な追加指定の推進要望の声もしつこいぐらい聞こえてまいります。その中で、例えば、現在五百平米以上という農地面積を三百平米へ下げてくれという話などが具体的に聞こえてまいります。

 これは何遍も答弁されていることだとは思いますが、そういった方にこそ、私は、農業を続けていこうという強い意思が読み取れるというふうに現場で感じております。それこそ、先ほどから申しておられますように、税の問題ということを認識した上で、国交省として、いま一度、追加指定の現状と今後の方向性についてお答えいただけませんでしょうか。

中島政府参考人 追加指定の問題をお答えいたします。

 追加指定と先生おっしゃられたのは、多分、平成三年に大変な議論をして、保全する農地と宅地化する農地というのを決めましたですから、そのときに、一応、一定の期間を置いて、各公共団体に大変な作業をしていただいて指定をしたわけであります。その後の指定のことというふうに理解をいたしますが、制度上はもちろん、都市計画でございますから、その後追加指定することは可能でございますし、現にやっていただいている公共団体はたくさんあると思っております。

 ただ、現場では、そのときの三年の仕切りといいますか議論が大変広範で大がかりなものだったために、全体の公平感とかバランスを考えて、その後の追加指定に慎重な公共団体もあるやに聞いております。制度としては追加指定はもちろん可能でございますので、私どもとしてもその旨を公共団体に周知しているところでございます。

木挽分科員 ありがとうございます。

 そういった見地とはほかに、いわゆる緑地保全という面からも評価できるところがあると思うんですが、緑地保全でいけば、都市計画法上一定の規制をかけた網かけをして余り変えないようにしておいて、要するに緑地を残そうということで、国や都の助成金、補助金を受けながら緑地を保全しているというのが東京都にも見受けられるわけなんですけれども、緑地保全という観点からいくと、どのような見解をお持ちでございましょうか。

中島政府参考人 農地が緑地保全として難しい点は、肥培管理といいますか、耕されていないと緑地じゃないというところが一番難しいところでございまして、御本人が耕作をされなくなると単なる空き地になってしまって、それでもオープンスペースの価値が全くないかというとそんなことはないと思いますけれども、緑地として評価するためにはやはり農業がされていないといけないというところ、これがこの制度の一番本質的な難しいところでございます。

 したがって、制度としても、都市計画ではありますけれども、するときには本人の同意をとったりとか、あるいは解除のときに、本人が農業ができないという、死亡が典型的でございますけれども、そういった要件が絡んだりしておりまして、緑地としての評価の難しさは、高齢化も進む中で肥培管理をどうやって継続していくかということだと思います。市民農園の活用などは、これまた税法上微妙な問題がございますのですけれども、そういった方向も一つのありようとして検討しなきゃならないと思っております。

木挽分科員 都市部の農業あるいは農地に対する認識は、ここ最近、大きく変わってまいりました。今のお話の中にあっても、農地の大切さが理解されてきた中にあって、では、今後どうして進めていくのかなという課題が浮かび上がってきたとは思うんです。ただ、日本人が真の豊かさを求める中にあって、より重要な地位を占めるようになってきたというのは、私、共通認識だと思います。国土交通省におかれましても、関係省庁と連携して、さまざまな課題への積極的な対応を今後ともよろしくお願いしたいと思います。

 次に、住生活基本計画について御質問させていただきたいと思います。

 私的なことですが、私にはことし百歳になる祖母がおります。ありがたいことに元気でございまして、それと私の母、七十歳を優に過ぎておりますが、この二人が、私と居住を離れて山間部の郊外に住んでおるわけなんでございます。親戚あたりから、どうするんだなんとよくつつかれているわけで、非常に私も心がかりなところなのでございます。

 先日、国立社会保障・人口問題研究所の市町村別人口推計データをもとにフリージャーナリストの松本武洋さんという方が作成した、三大都市圏の高齢者人口の推定増加倍率ランキングという資料を拝見いたしました。これは、二〇〇〇年の高齢者人口をベースにして、二〇一五年にどれくらいふえるのか、あるいは、二〇〇〇年スタートで二〇三〇年に推定増加倍率の上位にどのくらいの都市が入っているのかということを一つの表にまとめたものなんです。

 上位にランクされるであろう市町村名がずっと列記されている中で、千葉県とか埼玉県などの都市名が多く見られる。その中にあって、兵庫県では、二〇〇〇年をスタートに二〇三〇年推定増加倍率、いわゆる高齢者の推定増加倍率が三・四二倍で四位にランクされているのが三田市、同じく猪名川町が二・九八倍で十四位にランクされていました。これは私の地元の近隣の町なんでございます。先ほど申しました私の地元、宝塚市、伊丹市、川西市はこの中には登場してまいりませんでした。

 しかし、このスタート年を、二〇〇〇年ではなくて、例えば十年さかのぼって、十年ほど前にずらして一九九〇年として考えてみたらどうだろうな、そう考えると、恐らく、私の地元の三市、登場してくるんじゃないかな、特に宝塚、川西なんというのは登場してくるんじゃないかなと私想像しております。それだけ、私の地元の中にあっても、この宝塚だとか川西市というのは早くに開発された住宅地を郊外に抱えております。そこはまさに、戦後生まれの第一走者たる団塊の世代以上の方々が多く生活されているわけなんです。

 日本がかつて経験したことのない三つの大きな社会変化を私、ここであえて言いたいと思うんですが、それは、二〇〇五年からの人口減少社会の到来、同じく二〇〇五年からの地球環境社会の到来、そして二〇〇七年から二〇〇九年の団塊世代の大量退職の到来です。こうした社会変化を背景に制定された法律が三つ、良好な景観が豊かな生活環境にとって重要な国民共通の資産であるとする景観法。そして、まちづくり三法では、中心市街地の衰退を問題視し、コンパクトなまちづくりを目標に、経済優先主義を否定し、無秩序な市街地の拡散から中心市街地への回帰によるまちづくりを真正面に据え、関係省庁の連携の姿が見えることが評価されると私は思っています。そして、住生活基本法は、国民の豊かな住生活の実現を目的とする、住生活に関する初の法律であります。

 良質な住まいと町を現在のみならず将来の世代にも継承すべきだと強調しているところは私は非常に同感するところでございますが、まさに、急速に進展する少子高齢化に対応した町に必要な仕組みを再構築していかなければならないときが今だと私は思っています。

 そこで、昨年、住生活基本法に基づき九月十九日に閣議決定された住生活基本計画についてお尋ねしたいと思います。

 まず、急速に進む高齢化にどのように対応していくのか。

 冒頭にも述べましたが、私の地元のうちの川西市と宝塚市は、比較的早く郊外の住宅開発が進んだ地域を抱えております。団塊の世代以上の方々が多く住むこうした都市郊外の住宅地は、山を切り開いて、いずれも急勾配の狭い坂道を生活道路として有しております。中心市街地の施設とは距離がありますし、高齢者にとっては決して優しい町とは言えないと私は思っております。

 同じく、昨年創設された高齢者の住みかえ支援制度というものがあると聞いておりますが、これとあわせて、住生活基本計画の中にあって高齢者に対する住まいの考え方について御説明いただきたいと思います。

榊政府参考人 お答え申し上げます。

 高齢化が急速に進展する中で、住宅政策につきましても、高齢者が地域において安全、安心で快適な生活を営むことができるような環境整備を行うことが極めて重要だということで、昨年九月に、住生活基本計画の全国計画を閣議決定させていただいたわけでございます。この中で、住宅のバリアフリー化や見守り支援といいましたハード、ソフト両面の取り組みを促進していくとともに、高齢者、障害者等に配慮いたしました賃貸住宅の供給や、公的賃貸住宅などと福祉施設の一体的整備を推進する、こういうことを基本的な施策として定めたところでございます。

 こういった基本的な施策を踏まえまして、高齢者の居住の安定を図るためのさまざまな施策を展開しているところでございます。特に、御指摘の大都市郊外の住宅地を見ますと、高齢単身もしくは夫婦のみ世帯というのが大変多い、かつ、それが百平米以上のいい住宅に住んでおられる。一方で、子育て世帯は五十平米前後のところに住んでおられるというようなところで、広いところに住みたいなという需要がある。いわばストックとニーズのミスマッチが生じておるところでございます。

 そこで、国土交通省としましても、高齢者の持ち家の賃貸化を円滑に推進していくということと同時に、より高齢期の生活に適した住宅へ、例えば中心市街地に住みかえていただくということを促進すると同時に、広い住宅を必要とする子育て世帯へ賃貸住宅を供給するといったような形で、高齢者の住みかえ支援制度というのを昨年十月に開始いたしました。

 これは、いわば、中間法人が高齢者の持っている広い住宅を借り上げまして、借り上げたものを子育て世帯に定期借家でまたお貸しする、こういったようなモデル事業でございます。昨年の十月からですので、まだ三カ月足らずというところでございますが、現在、約八十件につきまして具体的な物件の査定を行いまして、順次借り上げを開始いたしたところでございます。

 この事業でございますけれども、首都圏を中心とした限定的な地域という形で始めさせていただいたわけでございますけれども、今後、順次対象地域の拡大を図っていきたいというふうに思っております。この事業の成果を踏まえまして、本格的な事業を実施する際には、現在、中間法人というところが借り上げ主体となっておりますが、これがひょっとしたら新しいビジネスモデルになって、民間の方でも同じようなことをやっていただけるということであれば、参加していただくとありがたいなと思っているところでございます。

木挽分科員 高齢者の住みかえ支援制度、その主体が早く民間に移行すればなと私も思います。

 次に、ちょっと団塊世代の話に集中しますが、家父長制の両親のもとで育てられているこの世代ですが、心のどこかで、最後は自分が親の面倒を見なければと思っているところがおありです。それも、できれば介護施設や老人施設ではなくて一緒に暮らして面倒を見たいと思っていらっしゃる。

 今御説明いただいた、高齢者に対するユニバーサルデザイン化を促進するようなお話もありましたが、具体的に、今後、団塊世代の方がさらに老親の介護、面倒を見るというようなことが急増してくる中にあって、高齢者の住む住宅にあってそういったユニバーサルデザイン化を促進する必要がある。この点で、税制など、施策の上で具体的な取り組みがあれば、御紹介いただきたいと思います。

榊政府参考人 先ほど申し上げました住生活基本計画の中で、住宅のバリアフリー化率といいますか、高齢者の居住する住宅のバリアフリー化率というところにつきまして、平成二十七年で目標値を設定いたしております。

 具体的に申し上げますと、手すりの設置、屋内の段差解消が図られた住宅、現在では約三割程度しかございませんが、これを七五%に引き上げる。それから、介護が必要な状況を前提といたしまして、車いすが通行可能な廊下幅の確保といったような住宅でございますと、現在六・七%程度しかございませんが、これを二五%に引き上げることにいたしまして、各種の施策に取り組んでおります。

 今法律を出しておるところでございますが、今般の税制改正におきまして、バリアフリー改修工事を行った場合に、住宅ローン残高の一定割合を五年間所得税額から控除するといったことですとか、固定資産税を一年間三分の一減額するといったような住宅のバリアフリー改修促進税制を創設する予定でございまして、バリアフリー化の取り組みを一層加速いたしたいというふうに思っておるところでございます。

木挽分科員 いわゆる使いやすさにかんがみて、今まで大きな借金をしたときに税制の優遇があったものが、非常に細かなものでもされるという、この点は非常に私も評価しているところでございます。

 時間の関係もございますので、最後の質問にさせていただきたいと思いますが、よくテレビなんかで、団塊世代のリタイア後の夢は田舎暮らしなんて番組でやったりしているんですけれども、先日読売ウイークリーが実施した調査を見ると、五十五歳から五十九歳の男女で、老後にそういった田舎に移住したい人は二五%、つまり四人に三人は、逆に、田舎には暮らしたくないんだ、都市生活の便利なところで暮らしたいんだ、そういった意思を持っているんだと読み取れると思います。

 こうした人たちは、地方から東京近郊に住み、やっとマイホームを持った人たちが多い。それこそ、田舎に住む両親の面倒を見なければならなかったり、生活の基盤が向こうにあるなら別ですけれども、あえて田舎に戻ろうとは考えない。田舎で暮らしたいと思っているのは、都市圏のサラリーマン家庭に生まれ育った方に多く見られるのではないかと私は思っております。

 老後の暮らしや便利さ、さらには医療サービスなんかを考えたら、むしろ都市志向が強まる可能性が高い。事実、大都市近郊に住む団塊世代では、住んでみたいところとして都会を希望する数字が田舎を上回っています。

 そうした中にあって、例えば、いざというときやふだんの生活の便利さを考慮して、高齢者の方が単身となったときなどに都市に住む子供の世帯と一緒に暮らすには、さまざまな事情もあり、なかなか一緒に暮らすということはできないですね。では、近所に住もうかという話が当然出てくると思います。

 子供の世帯近くに居住しようとしても、高齢者の単身などでは、そういう一方で、賃貸物件を借りようとしたときに入居を拒否されることがあるというふうに伺っています。その数字は大体一割弱。こうした現況にかんがみて、高齢者に加えて、障害者などハンディキャップを持った方々に対して、先ほどもちょっと話がありましたが、福祉など関連する部局とどのように連携して対応しようとしているのか、その方向性と具体的なものがあれば、ここで御紹介いただきたいと思います。

冬柴国務大臣 高齢者、障害者、あるいは子育て支援が必要な人、あるいはDV、ドメスティック・バイオレンスでなかなか地域において賃貸住宅に入れてもらえないような人たちのために、我々、地域優良賃貸住宅制度というものをつくりました。

 民間の賃貸住宅業者が家を建てる際に、そういう弱い立場にある人に優先して貸してやってもいいというものに対しては、その住宅を建てる際に国あるいは地方が相当な助成をしよう、そしてこれを登録していただきまして、我々の方で、そういう弱い立場にある人に優先的に入っていただく、抽選もありますけれども、入っていただくようにしよう。そして、その人たちに対しては、賃貸人にとっては、賃料を本当に払ってもらえるのかなということを心配されると思うんですね。したがいまして、そういう人たちのために賃料債務の保証をするということ。それからもう一つは、出ていくときとかあるいは亡くなったときに困りますね、そういうときの原状回復義務についても保証する。それから、家賃の補助をするというようなことを始めておりますので、どうぞよろしくお願いします。

木挽分科員 今御説明いただきました、高齢者や障害者、また外国人の方、DVも含めまして、入居制限のケースはどうしても見受けることもありますし、そこここで私も拝見する、また聞くことがございます。

 さまざまな分野で共生が叫ばれる時代です。住宅情報誌のCMじゃないですけれども、これらの入居をスムーズに進めるために、まだまだこうした情報が行き渡っていない面が私はあると思うんですね。行政、不動産業者、あるいはNPOなどの方々との協力関係も大切だと思います。

 大臣みずから御説明をいただきましたが、住宅セーフティーネットの充実に向けた取り組みについてお話しいただいた内容、非常に私も感銘いたしました。地域優良賃貸住宅、民間の賃貸住宅業者が社会的に弱い立場の人たちに優先的に入っていただくような住宅を建てようという気にさせる、いわゆるそのためのインセンティブを感じさせるような政策をこれからもどんどんどんどん打ち出していっていただきたいなと思います。

 社会環境の変化に、あるいは地域特性に応じて各地域で頑張っていただけるような政策を今後も期待して、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

赤松主査 これにて木挽司君の質疑は終了いたしました。

 次に、市村浩一郎君。

市村分科員 民主党の市村でございます。

 きょうは三十分いただきまして、冬柴国土交通大臣と、ぜひとも関西の三空港の活性化について議論をさせていただきたいと存じております。

 もう大臣御存じのとおり、関西国際空港も二期工事がことしじゅうには終わるだろうということで、供用も始まるんでしょうかね、いよいよ関西三空港時代ということになってまいりました。もちろん、過去のことを私もいろいろ勉強させていただきまして、過去のことについてもちゃんと解決しなくちゃいけないことはあると思います。ただ、きょうは、過去のことはちょっとおかせていただいて、過去のいきさつについてはまた改めて、それは、これをおいておいていいというわけじゃありません、やはりこれまでのいきさつについてもきちっと反省すべきは反省してということは大切だと思いますけれども、これから、未来に向けて関西がもっと元気になるための起爆剤の一つとして、やはり空港をしっかり生かしていくという観点に絞ろうということで、そういう観点からきょうは議論させていただきたい、質問させていただきたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。

 特になんですが、やはり私は、伊丹空港はもっと活用しなければならない、このように思っています。もう大臣よくよく御存じのとおり、伊丹空港がいかなる利便性のある場所にあるかということは、もうこれは言うまでもないわけであります。

 この場ではなくて、実は内閣委員会の方でもこのことについては一度質問をさせていただいておりますが、そのときの局長さんの返答は、いや、あれは都市空港だ、そういうことをおっしゃっていました。確かに都市空港は都市空港なんですけれども、これはもう御存じのとおり、あそこは単なる都市空港じゃない。

 まさに、今や京滋バイパスができて、京都に対しても四十分ぐらいで伊丹空港から行けます。そして、大阪には、もう言うまでもなく、すいていれば十五分、二十分程度で大阪市内に、ビジネス街に入っていけるということでありますし、かつ、この間、つい二年ぐらい前に中国自動車道から阪神高速七号線にバイパスができたものですから、私も利用していますが、三宮までも三十分台ぐらいで行けるようになりました、新神戸トンネルを抜けると。

 ということは、伊丹空港におりていただくと、いわゆる関西の三都と言われる京都、大阪、神戸に極めてアクセスの利便性の高い空港と今なっているわけです。こうした空港をやはり生かしていくということが私は必要だと思います。

 そのときに、私はやはり、伊丹空港の一つの活性化の流れとして、大阪国際空港と今なっているわけでありまして、もともとは国際空港だったわけです。今は国の施策で国際線は飛んでいませんが、やはり再び国際線を就航させるのがよかろうと私は思っています。

 ただ、これは関空の関係もありますから、例えばアメリカとかヨーロッパ便を、長距離便を伊丹におりていただく、または伊丹から飛んでいただくということは、僕もそこまでは考えておりませんが、例えば、今後、東アジアの諸地域、お隣の韓国、それから中国、またはモンゴルとか、そういった地域、また、もちろん台湾とかフィリピンという地域については、伊丹空港におりていただくようなことでいいのじゃないかなと思っています。

 それはなぜかというと、国際線ではないと私は思うんですね。今後のことを考えると、この地域と日本は、運命共同体的な結びつきを持たない限り、日本は二十一世紀はどうすべきかという中で、やはりこれは私はそういう観点を持たなくちゃいけないと思うんです。国際線というよりも、これはもう運命共同体なんだと。

 また、友好都市線というのが何かどこかであるような話も、そういえば神戸空港のときですね。何か海外と結ぶとき、友好都市線にしたらどうだという提案もあったというのを聞いているんですが、そういう観点から、国際線という考え方ではなくて、まさに友好都市、もしくは、もっと強く言えば運命共同体線みたいな感じで、やはり国際線を伊丹からも飛ばすということが必要じゃないかなと私は思っています。

 例えば、今、韓国のソウルの金浦空港と羽田空港が結んでいまして、一日往復で十六便飛んでいる。これはもうチャーター便というよりもほぼ定期便ということだと私は思います。これは当時の、今の盧武鉉さん、当時の小泉首相が行って、トップ会談で決断してきたということでありますけれども、私としては、この安倍内閣におきましては、冬柴国土交通大臣がソウルに飛んでいって、向こうの大臣なり大統領に会って、伊丹からもチャーター便をまず入れよう、ぜひともこういうことをやっていただければ大変ありがたいと思っているんですが、大臣、いかがでしょうか。

冬柴国務大臣 私も、兵庫に住む人間としまして、この伊丹空港、伊丹国際空港としてやっていたわけですけれども、環境問題があって、大変な問題があり、訴訟があり、そして九時以降の発着を禁止され、そして周辺、住宅が密集してきました。これは、飛行場ができる前から住んでいた人と、それ以後に住んだ人もたくさんありまして、そういう問題で、裁判でも、後から来た人については危険への接近ということでしました。

 そこで、御存じのとおり、十一市というのがあって、いきさつはやめにしようとおっしゃったけれども、その観点で、国際空港というものは別につくるべきだ、そして伊丹からは出ていくべきだというような極端な議論もありましたけれども、でき上がったのが関西国際空港。それについては、関空は国際線、そしてまた伊丹は国内線とすみ分けしようと。その後また神戸空港ができまして、この三空港においてそれぞれに機能を発揮しようじゃないかということで、伊丹については国内の基幹空港ということになったわけですね。これについては、ここに住む、各自治体も参加して、そしてそのすみ分けというものについては合意を遂げたわけでございます。

 それで、関空については大きな投資がなされて、この八月二日には二本目の滑走路が供用開始されます。これはまさに二十四時間運用ができる、供用できる国際的な、国際線の基幹空港として発揮できるわけでございます。神戸については百五十万の県民及びその周辺の人の国内専用ということで、すみ分けが地方でももう合意がされて、やられているわけです。

 そういう意味で、今御提案の、ソウル、特に金浦と伊丹と飛べば、在日の韓国の人も一番たくさん住んでいるのは近畿でございますし、そうですけれども、こういう今までの沿革がありまして、ここは国際線、ここは国内線というすみ分けを今しているわけです。みんなが合意をしてやったということを、なかなかこれは崩すことはできないのではないかと思います。

 なお、この三つが、狭い大阪湾の中に三つもあるというのを大変非難する向きがあるが、私はそうは思わないですね。ここの後背人口、二府四県で二千八十九万人という、これはオーストラリアの人口を超えるものでございます。そういう人口、そしてまたGDPは、お隣の、今驚異的な発展を遂げる韓国よりも、この二府四県のGDPの方が大きいんですね。

 したがいまして、そう考えたときに、その地域に三つの空港があるということが不自然だということは全く言えない。それを利用する人の後背人口から見ても、経済規模から見ても、そう思います。

 要は、そこがたたき合いをして、この三つの空港が本当に協調して機能してこそ関西全体の浮揚に資するというふうに思いますので、そこのところは、私も韓国も行きましたよ、それから中国も行きました。中国と日本の間でシャトル便を飛ばそうじゃないかという話もしてきました。

 そういう意味で、今おっしゃっていること、よくわかるんですけれども、すべての人の長い長い話し合いといろいろな問題の結果の結論が、伊丹空港は国内線の基幹空港、そして環境と調和した都市型空港というふうに皆さんで取り決めて、国土交通省としてもそれを受け入れているわけでございます。そして、関西国際空港は西日本を中心とする国際拠点空港であり、関西圏の国内線の基幹空港でもある。神戸空港は百五十万都市神戸及びその周辺の国内航空需要に対応する地方空港、こういう位置づけを皆さんで合意をしていられるわけでございます。それに従って航空行政は進められなければならないと思います。

市村分科員 わからなくはない。私も冒頭に申し上げましたように、やはり過去のいろいろないきさつがあったことは私も私なりに、いろいろお話を聞かせていただき、また、それは過去のいきさつの中でも、今のこの状態が、理由があるのだということも重々、ある意味ではわかっているつもりなんです。

 ただ、これからの日本の将来、また関西の将来ということを考えたときに、いろいろいきさつはあったとしても、でき上がった三空港があるわけです。まさに大臣がおっしゃったとおり、この三空港が連携し、協調していかなくちゃいけないということなんです。

 しかし、どうもこれまでの議論は、伊丹空港の旅客者をふやすと関空が何かいかにもなくなるかのような幻想があってやってきたんですけれども、結局は、結果として悪くないわけですね。だから、今まではそういう発想もあったわけですよ。伊丹空港を、ちょっとふえ過ぎたからあっちに移そうみたいな話だけれども、結局、両方ともおかしくなるという形になる、もしくは伊丹空港に結局お客様が戻ってくるということになるわけですね。

 だから、そういうこれまでの発想も、理由がないわけじゃない、全くおかしいと言っているわけじゃないです。ただ、今後のことを考えたときに、やはり見直す時期、もう見直さざるを得ないというときになっているんだろう。特に、関西三空港が、ある種、完成形としてでき上がってくることしからは、しかもいろいろ社会の情勢も変わってきた中で、やはり、これまでこうだったという過去の延長線上で三空港を語るのではなくて、未来への発想から今の三空港をどう生かすかという時期にもう来ているという観点から私はきょうはお話をさせていただきたいと思って参っているわけであります。

 その観点からも、やはり私は、確かにこれまでいろいろな話し合いがあって、合意があって、国際線は飛ばさない、国内線の基幹空港だと言ってきたんでしょうけれども、しかし、時代としては、伊丹空港から近くの国々、韓国や台湾、中国とかぐらいには飛びたいよ、中国の沿岸部ぐらい飛びたいよというようなニーズはあるし、向こうからの皆さんも、関西を訪れるときは伊丹空港におりられたらありがたいな、いろいろなところにも非常に便利だということで、やはり海外の方々は、まず日本の関西でどこへ行きたいかといったら、普通、京都だと思うんですね。京都なんですよ、これは。京都がどうなっているか、現実がどうであれ、でもやはり京都を訪れてみたい。そうすると、やはり関空におりていただくより伊丹におりていただいた方がいいわけですね。

 そのうちに、何回かリピーターになっていただいて、ああ、やはり日本はいいなとなっていただいて、そのときに、私は和歌山も大好きなところがありまして、そうすると、和歌山にも行ってみたいなというような、やはり何回も行っている人はそういうふうに、ちょっと今回は、余り京都、大阪、神戸ばかりじゃなくて、関西でももうちょっと南の方に何かいいところあるらしいね、風光明媚な、本当にいいところがあるよ、和歌山だよというようなところで、また奈良にも行ってみたいねとかいう話、やはりニーズも出てくるはずなんですね。

 ただ、その最初の段階はやはり京都だと私は思うんです。そうすると、やはり伊丹空港におりていただいて、観光のチャーター便でいいんですよね。だから、まずは伊丹という場所に、あそこに空港があって、そこにおりて、非常に利便性が高いということをわかってもらうということが必要だと私は思うんです。

 それからまた、たまたま聞いてみましたら、韓国の方というのは、最近どうもゴルフがやりたいというブームがあるようでして、ところが、韓国国内はゴルフ場が少ない、ゴルフプレー料金が高い。だからどこに来ているか。日本に来られていますね。日本に来て、例えば千歳空港、北海道へ行く。なぜならば、ソウルから飛んでいるから。例えば松山とか高松とか、あれもソウルから飛んでいるから、小豆島にゴルフをしに韓国の方が行っているとかいう話もあるんです。

 私個人は、ゴルフは残念ながら練習する間が今もありませんからやりませんけれども、ただ、よく御存じのように、伊丹空港の周りには、ゴルフ場どれだけあるかというぐらいにゴルフ場があって、しかも経営が成り立たなくてつぶれているというところもあるわけですね。

 それならば、やはり来ていただいて、伊丹空港のそばに有馬温泉を初め温泉街もあります。宝塚はもともと温泉街でした。そうしたところでゆっくりと楽しんでいただいて、ゴルフプレーをしていただいて帰っていただく。また、ビジネスも、大阪はすぐそばですから、仕事もして、ちょっと翌日はゴルフして帰るかというぐらいのことは、伊丹空港だったら十分できる。また、ビジネスの意味でも、日帰りもできるような場所だと思います。

 だから、そうやって考えてみますと、未来からの視点で考えていくと、やはり伊丹空港をどう生かすか。活性化ではどうも一致しています。結局、伊丹市も今議論中だということをお聞きしていますが、撤去宣言から今度は共生宣言に変えようということで、今、伊丹市議会でちょうど御議論されている真っ最中です。つまり、十一市協の中でも、もはや撤去じゃなくて共生していこうという思想に、今、伊丹空港は変わりつつあるんです。

 だから、そういう流れを受けて、やはり国として、大臣は、まさに尼崎という、すぐそばのところから出られている代議士として、伊丹空港の活性化の中で、国際化というよりも、さっき申し上げたように、運命共同体のところをいかに行き来させるか。まさにビジット・ジャパンと大臣がそこにバッチも掲げられていまして、一千万人を目指そうというときに、東京ばかりじゃなくて関西に来ていただく、やはり歴史のある関西に来ていただくということが、私は国の政策にかなっていると思っています。

 だからそれを、これまでのいきさつがあるからというだけで、せっかくのああいう利便性の高い空港をノーと言う理由にはならないんじゃないか、周りの今の意見を聞いてもならないんじゃないかと私は思うんですが、大臣、いかがでございますか。

冬柴国務大臣 私も、伊丹空港ばかり利用している人間として、その話はよくわかるんですけれども、ただ、そういういきさつで泉南の沖にできた関西国際空港は、八月二日に二本目の四千メートル滑走路が供用を開始される、ことしですよ。したがいまして、この四面環海の我が国は、外国からのお客様はすべて海を越えてきていただかなきゃならない、それが飛行機ですね。それで国際拠点空港というものが要ります。それから地方空港も、いわゆる税関等、CIQというんですか、これを備えた空港は今でも三十九ですかね、ありまして、韓国とでも二十五の日本の地方空港と結ばれているんです。

 ですから、その中にあって関空の役割、そして海の上ですから騒音にもう何の心配もなしに二十四時間、そして二本の滑走路を持っているというのは日本でただ一つなんですね。したがいまして、ここが国際線として非常に定着をしてくるということになれば、これは事情が変わるのかもわかりません。しかし、今の状況では、まだ目標の十三万回の発着というのは、まだまだ、もう少し時間がかかりそうですし、それから、今、民間から来られた経営者のすごい努力によって関空は黒字になったんですね。これも驚異的な話です。

 したがいまして、そういう事情の変更を見ながら、そしてまた過去のいきさつはとこうおっしゃいますけれども、そういうものも捨象されるような状況には今しばらく時間が要るんではないかと思います。そして、もちろん将来に向かって、もう今委員がおっしゃっているような状況です、実際。ですけれども、そういう関西の狭いエリアに三つの飛行場がある、そのすみ分けをどうするかということには、みんな苦慮したわけでありまして、その結論として、先ほど私が言ったようなすみ分けをやることが、三つの空港それぞれに機能を十全に果たす一つの方法ではないかという結論になっているわけです。

 したがいまして、今後、その結論は将来に向かってもう全く動かないという、そんなことはあり得ないわけで、みんなどんなことでも、時の経過とともに、また事情が変更するとともに、そういうものは見直すことができるんでしょうけれども、しかし、現時点では、この関空の今の状況、神戸空港もどうなっているかということも考え合わせていただき、そしてまた、できればこの三空港を結ぶ交通路、ネットワークですね、もう少しきちっと整備すれば、そんな遠いところじゃないんです。関空は、奈良にも、それからまた熊野古道にも近いわけですよ。それで、奈良は二〇一〇年には平城遷都実に千三百年という、こんな佳節を刻むわけでありまして、世界中から人に来ていただきたいわけですね。

 そういう意味で、国際空港としてのきちっとした定着をまずは図らないと、関空をつくったいきさつを考えていただければ、それはわかっていただけるんではないかなと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

市村分科員 関空のことは、大臣がおっしゃっていること、よくよくわかります。だから、今かどうかということだと思いますが、私は、伊丹空港のことをやはり今しっかりと考えていくべきだと。だから、一種、二種とかいう話ではなくて、伊丹空港の役割は何なのかということをもう一回見直してもいい。だから、先ほど申し上げたように、関空と伊丹は対立概念じゃないんです、共生概念なんですね。そこでやらなくちゃいけないのに、どうも対立概念でやってきたような雰囲気があるのがちょっと残念なんです。

 だから、今は、よりよく共生していく。今、関空は関空なりのやるべきことはたくさんあります。熊野古道のことも、私も本当にそう思います。だから、関空は関空でやっていく、しかし、伊丹は伊丹でやっていく、神戸空港は神戸空港でやっていく、こういう流れだと私は思うわけであります。

 それで、では、伊丹が国際化した場合に、さっき税関のこともありましたが、当然、税関とか入管とか検疫とかいろいろあります。ちょっとその辺について、きょう四省庁から来ていただいていますので、ごく簡単に、本当に短い時間ですけれども、どうすればいいか、どうなるのかということをおっしゃっていただきたいと思います。

森川政府参考人 お答えいたします。

 伊丹空港は関税法上の不開港でありまして、税関職員が常駐しておりません。また、税関の検査施設も整備されていないという状況にございます。

 したがいまして、将来、仮に伊丹空港に国際旅客チャーター便が運航されるとした場合には、出入国旅客に対する検査のための施設、あるいは取り締まり機器が必要となりますほかに、運航スケジュールに合わせて、出入国旅客数に見合う検査職員を近隣の税関から派遣するという必要が生じるものと考えております。

 なお、国際旅客の定期便ということになりますと、それ以前に関税法上の開港の手続が必要になるということでございます。

稲見政府参考人 お答えいたします。入管でございます。

 伊丹空港につきましては、現在、出入国審査を行うための審査場等の施設、それから審査ブース等の設備、これは備えておりません。また、職員も配置しておりません。

 したがいまして、伊丹空港が将来再び国際空港化されるという場合につきましては、審査場、事務所等の確保、それから審査ブース、審査用機器の配備が必要となります。また、職員につきましても所要の体制の整備が必要と考えておるところでございます。

 以上でございます。

南野政府参考人 検疫所についてお答えいたします。

 伊丹空港につきましては、平成六年の関西国際空港の供用開始に伴い、現在のところ検疫業務を実施する上で必要となる施設等は有していない、こういう状況にございます。

 今後、仮に伊丹空港に国際便が就航することとなった場合には、入国者に対しまして検疫を実施するために、検疫カウンター、診察室等の施設設備の整備が必要となってまいります。また、職員につきましては、近隣の大阪検疫所の職員を派遣して対応することになるものと考えられます。

 以上でございます。

小林政府参考人 動植物検疫について御説明申し上げます。

 動植物検疫を実施します飛行場といいますのは、年間十二便以上の国際チャーター便あるいは定期国際便の就航、こういった要件がございまして、こういった要件を満たして国が指定するという仕組みになっております。伊丹空港は現在この指定を受けておりません。

 もし仮に要件を満たしてこの指定を受けました場合には、まず検査施設等を整備する必要があります。次に、便数とか業務量に応じてということでございますが、臨時に職員を派遣する、こういった手当てが必要になるというふうに考えております。

市村分科員 どうも短くありがとうございました。

 本当に、改めて国際便を飛ばすということは、いろいろなこういうことが、今おっしゃっていただいたようなことがまた発生してくるということでもあります。

 冬柴大臣、私も初当選して三年ちょっとですけれども、当選前からこの伊丹空港の問題については発言をしてまいりました。当時の政治状況を考えるとなかなか言い出しづらい雰囲気があったと思います。というのは、環境対策という意味での騒音対策とか安全対策について、まだそれこそ空港撤去宣言を伊丹市では持っているような状況の中で、みんな言い出したいんだけれども何となく言えないという雰囲気があったんです。私は、これはあえて申しました。これは政治的にいろいろなリスクもあることを承知で実は申し上げてきました。

 しかしながら、結局、いろいろな方に話を聞くと、たとえ騒音反対運動をやっていらっしゃる方でも、伊丹空港はやはり利便があるからなお残した方がいいということがだんだんわかってきたんですね。だから、やはり共生なんです。だからこそ、今、伊丹市でも共生宣言をということで議論されている状況になってきました。

 特に、私は民主党でございますけれども、もともと一番反対していた勢力を抱え込んでいるのが民主党なわけです。そのとおりなんですね。だから、私が言い始めたものだから、ちょっと民主党の支部長が言っておるならしようがないなという感じになったわけです、この我々の市会議員の皆さんもですね。本当はちょっといろいろあるなという雰囲気だったんですけれども、しかし、やはり未来のことを考えたらそうも言っていられないぞ、こういうことなんですね。

 だから、みんな、それなりにある種リスクを負いながら、タブーだったものに対して言ってきているわけです、この話を。それに対して、やはり僕は、国として、特に冬柴大臣は地域の、まさに伊丹空港周辺の代表者として、せっかく大臣でいらっしゃる間に、私はぜひとも、もちろん過去のいきさつは、冒頭から申し上げたように、よくわかるんです。だから、国土交通省の言い分、財務省の言い分、その他の皆さんの言い分というのもよくわかるんです。ある意味でいえば、これは関西が問われている部分があるんですね。関西は本当に自前でやるのかと問われている部分も、いろいろ回っているとそういう声も聞こえてきます。結局、関西は自分でやる気がないんじゃないか、国にばかり頼っているんじゃないか、こういう声もやはり聞こえてくるんです。

 だから、私は、御縁があって今関西から出させていただいて、やはり関西をよくしたいんです。そのために伊丹空港をもっと活性化しなくちゃならない、そういう意味で、ずっと私も声を上げてきておりまして、大臣はわかっていただいていると僕は思っているんですが、ぜひとももう一歩踏み込んで、だから、関空のことは関空のことで、私は、さっき大臣がおっしゃったとおりだと思います。やはりこれからの様子を見なくちゃいけない。だからといって、伊丹空港はおいておいていいという話じゃないと思うんですね。

 やはり、伊丹空港は伊丹空港でどうするかということを、特に神戸空港も含めて、これは三空港一体という考え方、まさに大臣がおっしゃったように、アクセスのことも含めて、過去のことはあったとしても、前向きな話としてこのことを私はぜひとも大臣が大臣である間にどんどん進めていただきたい、こういうことを私は思っているのですが、いかがでございますか。

冬柴国務大臣 国土形成計画、今までの全総から変えまして、質を変えて、地域のことは地域で決めろということで、広域的な地方計画を立てていただこうと。その単位として二府四県が指定されたというか、その二府四県に来年の中ごろまでに広域地方計画というものを策定してもらおうということになっています。

 それは、今までの県境を越えて、それぞれに、その地域が外国とどういうふうに連携するのか、あるいは、国際空港、港湾と消費地あるいは生産地とのネットワーク道路をどういうふうにするのか、あるいは、観光拠点をどう開発して、どういう動線でするのか。それは、そこに住む地域の人々が、その歴史、伝統、文化、そして自然条件、温泉もあります、特産、そこしかとれない食材もあります。そしてまた、大阪のたこ焼きのような、そういう調理法も、固有のものもあります。そういうものを生かして、その地域地域がどういうふうに個性豊かに伸びていくかということを決めていただくことになっております。

 その中で、地域の人たちが県境を越えて、ここをどうするのかということを決めていただきたい。これは、冬柴が国土交通大臣のときにという、国が上から決めるということは今までのやり方でありまして、これからは、そこを一番知っている地方の住民が自主的、主体的、自立的にこれを決めていただく。国はそれを尊重して、その結論をお受けして、それについて国としての万全の整備を、支援をしていく、こういう形でありたいと思いますので、よろしくお願いします。

市村分科員 本当にありがとうございました。

 これで質問を終わります。ありがとうございました。

赤松主査 これにて市村浩一郎君の質疑は終了いたしました。

    〔主査退席、三ッ矢主査代理着席〕

三ッ矢主査代理 次に、笠井亮君。

笠井分科員 日本共産党の笠井亮です。

 きょうは、東京外郭環状道路、外環道について質問をいたします。

 外環道の関越道から東名高速に至る十六キロの区間というのは、一九七〇年にいわゆる凍結宣言がされて以来、凍結をされてきた。しかし、大深度地下を活用した都市計画の変更案が、来月、三月十六日の東京都都市計画審議会で審議されようとしております。

 この区間は、練馬区、杉並区、武蔵野市、三鷹市、調布市、狛江市、世田谷区という七区市にまたがっておりまして、環境や住民生活への影響は極めて大きいものがあります。私自身も住んでおります三鷹市では、外環道路「住民投票」推進連絡会がつくられまして、住民投票条例を求める運動が広がっております。二月九日には、既に住民投票実施を請求するのに必要な二千九百十七人を四倍近く上回る一万一千二百一人の署名が提出をされています。

 先日、私、改めて沿線へ実際に行ってまいりました。そして自治体の首長の方とも懇談をしましたが、住民からは批判の声や危惧の声というのが強く出されておりまして、関係自治体からも要望が出ております。

 そこで、まず、冬柴大臣にお聞きしたいんですけれども、この問題というのは、国会でも論議の積み重ねがある問題であります。一九七〇年の十月九日の参議院の建設委員会では、当時の根本龍太郎建設大臣によって凍結が宣言をされる。そして当時、非常に大きな運動が広がって、国会でも、自民、公明、社会、民社、共産と超党派の国会議員協議会がつくられて、衆参八十人の議員が参加したという記録があります。国会決議もされて、その後も凍結宣言は幾人かの大臣によって追認をされている。

 そこで、冬柴大臣、こうした経過を当然御存じだと思うんですが、この問題に、国会での長い審議の経過もある、そういう意味では極めて重みのある問題である、そういう認識で臨んでおられるかどうか、そこを伺いたいんですが、いかがでしょうか。

冬柴国務大臣 東京外環は、東京の中心から半径約十五キロメートルの地域を環状に結ぶ延長八十五キロメートルの幹線道路でありまして、首都圏の都心方向に集中する交通を適切に分散導入するとともに、都心に起終点を持たない交通をバイパスさせるなど、首都圏の道路網体系の確立にとって必要不可欠な幹線道路であるという認識を私もしています。

 このうち関越道から東名高速の約十六キロメートルについては、昭和四十一年に高架構造の道路として都市計画決定が行われましたけれども、地元自治体や地元住民の反対を受けて、その後、計画の検討が進展しない状況が続きました。

 しかしながら、平成十三年四月、高架の計画を地下にした計画のたたき台を公表して以来、国と東京都は、PI外環沿線協議会などの地元との話し合いをこれまで三百五十五回にわたり開催するなど、さまざまな形で意見交換を続けてきております。

 こうした取り組みの結果、東京外環の計画につきまして、昨年六月以降、東京都においても都市計画変更の手続に着手され、本年一月には沿線七区市からも、地下方式に変更したことにより地上への影響が軽減されたことについて評価をいただいているところでございます。

 いずれにしても、昭和四十一年の都市計画決定以来の経緯を重く受けとめて、これまでと同様に地元の方々との話し合いを続け、一歩ずつ計画の具体化を図ってまいりたい、このように思っているところでございます。

笠井分科員 必要性そのものについて、まず大きな異論があるというのが住民との関係ではあるわけで、私、後でも議論をしたいんですが、いずれにしても、重く受けとめると言われて、これからも住民の方々の意向をよく踏まえてという話がありました。

 関係自治体の話でも、ことし一月、いろいろ意見が出たということですが、計画変更案について条件つきで同意というところであっても、例えば事業着手は、これについては容認できないというところとか、さまざまな要望も出ているという現実もある。まして、住民のところではいろいろな反対の意見や異論もあるということを申し上げておきたいと思います。

 今大臣も言われたんですが、最近の動向を見ますと、二〇〇一年の一月に扇当時大臣が現地も視察をされて、翌年六月には、計画の構想段階から幅広く意見を聞くということで、国と東京都、関係自治体、そして住民によるPI、パブリックインボルブメントということでの沿線協議会が発足されて、議論が行われてきた。この間の経過を見るときに、私は、出発点をやはり確認していくことが非常に大事だと思うんです。

 当時、扇大臣は、現地視察の後、同年五月二十四日の参議院国土交通委員会で、「都市計画を一方的に住民の話し合いがなくて線引きしたこと自体にも私はやっぱり反省するべき点はあったと思います。」と、最初の話し合いが足りなかったなという反省があるというふうに述べられました。ところが、率直に言って、現在それに反した事態が現実に進んでいると言わざるを得ないんだと思うんです。

 そこで、国土交通省に伺いますけれども、国として、事業の完成年度というのはいつというふうにしているんでしょうか、お答えをいただきたいと思います。

宮田政府参考人 お答え申し上げます。

 東京外環の関越―東名の工事着手までには、御存じのように、都市計画変更手続や測量、用地買収等に要する期間が必要でございます。

 さらには、工事に要する期間につきましては、東京外環は、地下約四十メートルのトンネル工事それから東名高速とのジャンクション工事等、非常に大規模で難易度の高い工事になります。今後の技術開発の動向を見きわめつつ、工期の設定を検討することが必要だと考えております。

 したがいまして、事業完成年度につきましては、現時点で具体的に明らかになっておらないということでございます。

笠井分科員 相当時間がかかる、さまざまな問題があるということがあったと思うんです。

 ところが、この完成年度について、東京都の側は、二〇二〇年に完成とか、それから二〇一六年のオリンピック、これをぜひやりたいということで、これに間に合わせるということを言っております。国もそういう二〇二〇年とか一六年なんということを念頭に置いたような工程というのを想定しているんでしょうか。もしいるとしたら、いないという話なんですが、そういう点ではいかがでしょうか。

宮田政府参考人 お答え申し上げます。

 東京外環、関越―東名につきましては、東京都から早期整備の要望をいただいてございます。

 関越―東名間、東京外環につきましては、国としても、首都圏の渋滞解消等の観点から、緊急性の高いプロジェクトだと認識しております。

 現在、都市計画変更の変更手続を進めているところでございますが、都市計画変更決定後は、速やかな着工、整備を図ってまいりたいと考えております。

笠井分科員 ですから、二〇二〇年とか一六年ということを東京で話が出ているんですけれども、そういう具体的な工程の日程というのは念頭にあるんですか。

宮田政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどお答えいたしましたように、現時点では、いつごろできるということを明らかにする段階には至っておりませんが、いずれにしろ、東京外環、首都圏において非常に重要な道路だというふうに考えておりますので、早期整備を図ってまいりたいというふうに考えております。

笠井分科員 大分かかるという話ですね。

 その必要性はまた後でやりますが、外環道は、国土開発幹線自動車道建設法の予定路線にまだすぎない段階です。完成期日どころか、建設を開始すべき路線かどうかも正式には決定をされていない。しかも、この整備というのは、国の責任においてというふうに法律上されているわけであります。そして、さまざまな問題がある、道路整備を急いでやる必要があるといいながらも、実際にはさまざまな課題があるという話でありまして、相当そういう意味では超えなきゃいけない点がある。

 ところが、こうした問題について、東京都の側は、国幹審の決定もないけれども、しかし完成年次が決まっているかのような、あるいはこれまでにぜひやりたいということで推進をしようとしているとすれば、これはもう一方的だというふうに批判が出るのも当然で、先ほど扇大臣の反省ということも紹介をしましたけれども、そうした反省が生かされていないんじゃないかというふうに強く感じるところであります。

 もう一点、国交省に伺いますが、この事業主体や事業費というのは具体的に決まっているんでしょうか。

宮田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のように、東京外環は、高速自動車国道として予定されている、そういうプロジェクトでございます。

 その建設につきましては、有料道路事業の導入も含めて検討する必要があると思っておりますが、事業主体につきましては、事業化までに関係機関との調整を図りたいと考えております。

笠井分科員 要するに、明らかになっていないということであります。

 しかし、道路公団が民営化をされて、高速道路の整備ということについて言うと、高速道路株式会社が行うか、あるいは国が新直轄方式で整備するか、どちらかでやるというふうにされているわけであります。会社が整備する場合は採算性ということが問題になります。国は外環道のこの区間について事業費の推計というのを出してきたと思うんですけれども、それは幾らで、新直轄方式をとった場合には東京都の負担の割合というのはそのうち何割になるか、そのことについて伺いたいと思います。

宮田政府参考人 お答え申し上げます。

 事業費につきましては、今後さらに精査をしていくということが必要でございますが、平成十七年九月に発表しております、インターチェンジを除き約一・二兆円というふうに算定をしてございます。

 新直轄でやるかどうか、非常に仮定の御質問でございますが、新直轄でそういう事業、一般論で申し上げますと、四分の三が国、四分の一が地方公共団体ということでございます。

笠井分科員 過去の例をもとにということで、国は、外環本線の整備に一兆二千億円、そして、インターチェンジを除いてと言われましたが、それを加えると一兆三千五百億という数字も出されていると思うんです。

 そして、新直轄方式をとりますと、国が四分の三、東京都の負担というのは四分の一になるということですので、これはかなり莫大な額、東京都でいいますと三千四百億円ぐらいになるということになります。

 それで、計画は、沿線だけじゃなくて、そういう意味では東京都や国の財政全体、都民生活全般にもかかってくる。これは東京都でいいますと、この間、福祉を切り捨てるという問題、それからシルバーパスについても切り捨てということで、そういう意味では福祉の予算を減らしてきているということがあるわけですけれども、財政を圧迫して、さらに追い打ちをかけるということになっていくものであるというふうに思うんです。そうした基本的な問題すら都民に明らかにされないままに、ひたすら推進の方向に向かうということになると、これは極めて大きな問題だと思います。

 そこで、外環道の目的なんですが、国や東京都は、一言で言いますと、先ほども大臣も言われました、そして局長も言われましたが、都心に集中する交通を環状方向に分散して渋滞解消だ、不可欠だ、重要だということで説明されてきたわけですが、要するにそういうことなんですね。

宮田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のように、首都圏の渋滞、そういう解消が大きな目的でございます。首都圏の渋滞は、首都圏に発着点を持たない、いわゆる通過交通が大きな原因でございますが、例えば、首都高速道路都心環状線を利用する交通のうち約六二%が、都心環状線に発着地を持たない、そういう通過交通でございます。

 東京外環は、首都高速道路の中央環状線及び首都圏中央連絡道路と一体となりまして、この通過交通を受け持つことで、主として放射状の幹線道路や環状八号線の渋滞解消に大きな効果を発揮すると考えております。

 こういった整備によりまして、首都圏の渋滞はほぼ解消されまして、その経済効果は年間約四兆円というふうに試算をしております。

笠井分科員 これは大いに議論があるところなんですけれども、かなり大きな効果があるということでありましたが、私は、きょうここに「十年後の東京」ということで、東京都が「東京が変わる」ということで、平成十八年、二〇〇六年、去年の十二月にこういう資料を出しました。

 それで、今の議論にちょっとかかわることなので、委員長、大臣に資料をお渡ししてよろしいでしょうか、あと局長にも。

 これをごらんいただきたいんですけれども、この中から抜き出した一ページですが、そこでは、三環状道路によって東京が生まれ変わるということが書かれておって、十年後の道路のネットワークということで示されております。

 それで、十年後には、首都圏中央連絡自動車道、圏央道と首都高速中央環状線という二つの環状道路は、そこにありますように、一〇〇%完成する。外環道はまだ整備中ということで、四六%までいくというふうに書いてあるんですけれども、そういうもとで東京都はどう言っているかといいますと、その右側の上にありますが、「東京の弱点の克服」ということで「主要渋滞ポイント六百か所がおおむね解消」「毎日がお盆や正月並み スイスイ快適ドライブが実現」というふうに書いてあります。

 つまり、十年後に、二つはできるけれども、外環道はまだ途中、できていなくても、お盆や正月並みにすいすい快適ドライブが実現するというふうな状況になるなら、この外環道というのは要らないんじゃないか。実際に東京はこういうふうに構想を出しているんですけれども、こういうことになるんじゃないでしょうか。局長、これはどういうふうにお答えになりますか。

宮田政府参考人 お答え申し上げます。

 この資料は初めて見るんですが、まさにこの資料で書かれていますように、東京都区部の自動車の平均旅行速度というのは十八・八キロ、非常に低速でございます。仮に圏央道とか中央環状線ができたとしても約二十五キロということで、やはり走行速度としては相当低い。環境問題も、走行速度が上がればCO2とかNOxの減少ということも期待できますし、全体的に三環状があって、東京都市圏の全般的な渋滞解消がなお図られるというふうに考えております。

笠井分科員 初めてごらんになって、かなり苦しい説明をされていると私は思うんですが、この二十五キロというのは、もちろん信号がありながらいろいろなことでやるわけですけれども、そういう意味では、それを書いてあって、十年後の東京は、このことによって毎日がお盆や正月並みにすいすいドライブできる、快適ですよというふうに打ち出しているわけです。それでとにかくこれを進めていくんだというわけですが、外環がなくてもこういう状況になるというのが東京が実際に言っていることであって、根拠がないということを認めているという資料じゃないかと私は思ったんです。

 そういう意味では、事業目的や効果について掲げていることが本当に真剣な検討をしているのか、これは極めてずさんと言っても仕方がないんじゃないかと思うんですけれども、大臣、これはいかがごらんになったでしょうか。

冬柴国務大臣 諸外国の首都を見ましても、こういう環状道路の完成度は一〇〇%に近いところがありますよ。ところが、東京は現在三五%、本当に町の中に、道路に車があふれているというのが現状でもあります。

 そういう意味で、このいただいた地図の中で、通過する、例えば関越から東名の方へ行くという自動車が都心に入ってきて、それからまた出ていくというのが現状になります。

 したがいまして、ここに書かれた三つの道路というものは、何年、いつまでということは私は申しませんけれども、これはやはり、日本の一億二千七百七十万という人口の四分の一がこの狭い首都圏に密集してしまっている。もちろんこれは地方分権で進めていかなきゃいけないんですけれども、事実がそうでございまして、経済活動についてもここが中心に行われているわけです。政治も経済も金融も、文化までこんなところに、若い人もみんな集まっちゃった。その中で、交通渋滞というのが本当に耐えられない事態を迎えていると思います。

 もちろん、科学技術の進歩によって、ETCの普及等で料金所における渋滞というのは解消できる、そういう本当に画期的な政策もとられたわけですけれども、やはり物理的に、先ほど局長も申しましたように、起終点を持たない、通過するそのような多くの車両というものが都心に入ってきているという現状を解決しなきゃならないというのは、多くの人が認めていることではないでしょうか。私はそのように認識をいたします。

笠井分科員 諸外国へ私もいろいろ行ってみましたが、やはり交通渋滞解消という点では、都心部に車を入れないような形でいろいろな工夫をする、トラムを導入するとか、いろいろな手だてもとれるという状況があります。

 しかも、何より東京自身がこの弱点を克服できるとはっきり言っているわけです、十年後の段階では。ところが、その時点では外郭環状道路が完成していなくてもできるというわけですから、これはかなり苦しい御答弁だなというふうに私は受けとめました。

 密集しているというお話がありましたが、しかし一方で、国や東京都が施策でやっていることといえば、相矛盾することがあるんじゃないか。都内のセンターコアと言われる中心部の地域では今、広範な都市再開発が進められております。東京都の都市計画局の推定では、これによる一日の自動車発生の集中交通量というのは二十四万台と予測をされております。一方では渋滞解消といいながら、他方では交通量をふやして渋滞を巻き起こすような施策を進めている。だから、都市再生といって国はそれをあおっているということになっていると、これはいつまでも解決しないということになるわけであります。

 住民の皆さんからは、外環ができれば交通量が増大をして、大気汚染や騒音、振動など環境が悪化するという強い危惧が出されております。子供さんのぜんそくなどの健康被害も非常に心配される。大深度地下ということで変えたというふうに言われるわけですが、例えば三鷹市でいいますと、中央道とのジャンクション、インターチェンジ、それから換気塔というのができますので、そういう影響が出てくる。それから、青梅街道のインターチェンジがつくられるところでは、練馬区の関町一丁目ですが、町会が、九一%住民が建設反対ということであります。

 この計画の環境や住民の暮らしへの大きな影響という点では、地下水という問題もあります。

 私は、昨年、圏央道の八王子の城跡トンネルの掘削現場、実際に中に入って視察をいたしました。ここでは、国の史跡である八王子の城跡に重大な問題が起こっている。一昨年五月以降、御主殿の滝という滝が滝がれを起こしている。事前には国はトンネル掘削による影響は小さいというふうに言ってきたんだけれども、実際に滝がれが起こっている、こうした大きな問題点が生じております。

 それから、自治体からも、地下水についての予測や対策がやはり非常に問題点や疑問点があると。例えば武蔵野市は、知見が少ない状況にあって、十分納得できる根拠とはなっていないという意見を言っている。三鷹市では、実績として不十分という声が上がっております。

 今度の外環道の計画というのは、大深度で市街地の地下にこうした大型道路をつくるといういわば前例のない方法で整備するというのが特徴であります。地下四十メートル以深、支持基盤上面から十メートル以深のいずれかの深い方に直径十六メートルのトンネルが二本、十六キロにわたって通る、十六メートルといえば五階建てのビルに当たります。

 三鷹市は、ことし一月に国土交通大臣と東京都知事に要望書を出しております、大臣もごらんになっていると思います。そこでは、「国及び東京都においては、今後も「環境への影響が大きいと判断した場合は、計画を止めることもあり得る。」としているように、」「こうした態度を堅持しつつ、最大限慎重な取り組みを進めるよう要望する。」と述べております。

 さらには、先ほどありました、PIの二年間の取りまとめ、ここに私も持ってまいりましたけれども、この中でも、「国と東京都は、社会全体として外環計画の意義がないと社会的に判断されれば「計画を休止することもあり得る」ことを確認した。」というふうにまとめで書いてあります。

 大臣、長年の経過もあります。そして、問題があれば、そういう意味では休止する、とめることも当然だということだと思うんですが、自治体の要望や住民との確認、これがあったわけですけれども、そういうことに誠実にこたえながら、さっき大臣は、国が押しつけるんじゃないんだ、前の質問者にもありましたが、やはりそこに住んでいる住民の意向を、そこにあってこそだということを言われたわけですが、やはりそういう点では、必要な見直しとか、場合によっては再検討、中止、休止もあり得るというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

冬柴国務大臣 今後とも、地下水、大事だと思います、保全対策や、地下水、大気等のモニタリング体制の確保など環境への配慮について検討を深めるとともに、地域ごとに市民参加の機会を充実させるなど、引き続き地域の意見を十分に聞きながら真摯に対応していきたい、このように思います。

笠井分科員 地下水という点でいうと、関西の方でも、箕面の滝のところで、大滝の水量が減っているということで、この間も箕面の滝は人工滝というふうな形になっちゃっているという報道もありました。それから、今度の外環のところでも、練馬区の八の釜の湧水というところが計画の地域にかかっていて、そして消失の危機にあるということで、非常に心配の声それから危惧の声が上がっているわけであります。

 大臣も地下水の問題ということも触れられましたが、まさにそういう点では、地下水一つとっても未解明の問題が少なくないわけでありまして、だからこそ、各地で水がれとか出水とか地盤沈下などが相次いでいる問題でどうするのかということが問題になっているわけです。そうした科学的な到達点、認識に立って問題に臨むべきで、やはり乱暴なやり方で強行すべきじゃない、今大臣が言われた答弁、非常に大事な点を最後に言われたと思います。問題が上がれば計画をとめて検討する、これがどうしても必要だというふうに思うんです。

 最後になりますが、今見てきたように、外環道計画というのは、住民に対する姿勢という点でも、環境への影響の点でも、財政の点でも、極めて課題、問題が多いと思います。あくまで強行すべきでない。

 二月初めに、NHKの「クローズアップ現代」という番組で「しのび寄る老朽化の危機 多発するインフラ事故」という特集がありました。そういう意味では、これまでつくってきたものが大変に老朽化して危険になっているという告発でありましたけれども、昨年六月の国交省の社会資本整備審議会道路分科会でも「今後の道路政策の基本的方向について」という論点整理が出されている。そこでも、建設後五十年以上の一般道路の橋梁数が非常にふえているという中で、メンテナンスが十分でなければこれは非常に危ないということも指摘をされているというふうに思うんです。

 まさにそういう点では、高齢化社会それから人口減が言われる中で、大型道路を新規につくるばかりで将来の社会的あるいは経済的、財政的条件に対応できるのか。やはり今、そういう意味では、大きな意味で見直しが必要になっていると思います。この際、道路行政とか交通政策というのは根本的に見直すということでやっていく必要があるし、外環道については、住民の声にあくまで真摯に耳を傾けて、絶対に強行しない、再検討もあり得るということで対応していただきたいと思います。

 最後に一言、大臣、その点で答弁いただいて、終わります。

冬柴国務大臣 真に必要な社会資本の整備は重点的、効率的に行っていかなければならない、その際、真摯に対応しなければならない、このように思っております。

笠井分科員 終わります。

三ッ矢主査代理 これにて笠井亮君の質疑は終了いたしました。

 午後一時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三十五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三十分開議

赤松主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。長島忠美君。

長島(忠)分科員 自由民主党の長島忠美でございます。

 本日は、予算委員会分科会で質問の機会をいただきましたこと、国土交通大臣を初め御出席をいただきましたことに、まずもって心から感謝を申し上げたいと思います。

 私は、中越大震災で地震を経験いたしました。以来、二年四カ月が経過をし、国の支援に心から感謝を申し上げながら、思いを述べさせていただき、質問をさせていただきたい、そんなふうに考えるところでございますので、どうぞよろしくお願いをいたします。

 当時、山古志村は、人口二千二百人の小さな村でございました。平成十六年十月二十三日午後五時五十六分、突き上げる揺れとともに、私たちの生活はすべてを奪われることになりました。

 当初、何があったかも想像すらつかなかった状況の中で、当時、公明党の幹事長であられた冬柴国土交通大臣が、まだ余震の続く中、まだ土砂崩れの続く危険の中を、やっと土石流が引き始めた土砂の中を御視察いただいたことは、今もってきのうのように思い出させる気がします。当時の思いに、改めて心からの感謝を申し上げたいと思います。

 私たちは、道路、水道、電気、電話、そして公共施設、すべてのインフラをあの地震によって奪われました。特に、全村にわたる国道、県道、村道の被害は甚大で、一本として満足な道路がない、それも根こそぎ失われてしまう状況の中で、村の中でどうやって命と生活を支えてあげることができるのか、まさにそれが私に突きつけられた一番の課題でございました。

 状況がわかればわかるほど、そして私たちの村民が高齢者が多いことを考えたときに、一本の道路もない、水道も電話も電気も通じないところで命を守ることができるのか。そして一方では、いかに村長といえども、大切な歴史や文化、そして財産を捨てろと言うことはできるのか。迷いに迷った末でしたけれども、村長としては一番したくなかった決断、全村民に避難をしろと言う決断をせざるを得ませんでした。

 それも、陸続きでありながら、歩いても出られない、車によってもちろん出ることはできない。やむを得ずヘリコプターの出動をお願いし、全村民がヘリによって避難を完了したときは、発災から二日後、十月二十五日午後三時でございました。

 その後、村内の最終点検を自衛隊の皆さんと二時間ほどさせていただいたときに抱いた思いは、二度とこの場所に道路ができるとは思えない状況、そして二度とこの場所に住むわけにはいかない、それが私のそのときの思いでございました。そして同時に、人間の力の及ばない自然の力の大きさの恐ろしさをまざまざと感じた気がします。もし絶望という言葉があるとしたら、あの場面はまさに絶望であったのではないかなと思います。

 ただ、二年四カ月が経過をした現在を振り返ってみると、私たちに与えてくだすった国、県、そして関係者の人の力、自然の力を克服する人の力の偉大さを今まざまざと感じています。

 国道二百九十一号線は、当初、被害の状況を見ていただいたときに、三年かかる、五年かかる、それでも復旧は困難かもわからないと言われた状況の中を、一年十カ月と十一日、配付した資料の表紙のように開通式を迎えさせていただくことができました。これは、私たち村民にとって驚きであると同時に、大変大きな喜びでした。再びあの地で生活を営むことができる、再びあの地で暮らすことができる、これは、先祖伝来わずかな田畑を耕しながら、それでも子や孫を思い、つらい雪や自然と闘いながら生きてきた私たちの率直な気持ちでした。

 被害を受けてから国の直轄事業に二百九十一号線の災害復旧をしていただいたとき、一縷の、大きな希望を見出し、そして結果として、一年十カ月と十一日という短期間で、新しいトンネルが一本、新しい橋が二本、延長十キロの災害復旧が完成をした。これはまさに、技術だけではなく、そこに思いの込められた災害復旧の大きな役割を果たしていただいた、公共事業の必要性を今国民にさらに投げかける機会になった。私は、深く関係者の皆さんに感謝をする次第です。

 ただ、当時、被災した状況を考えたときに、たった一本でもいい、安全な道路が残っていさえすれば、私たちはあの地で、あの地を離れずに暮らすことができたかもわからない。市町村にとってたった一本の安全な道路が人の希望をつなぐことにもなるのではないかと、以来、思うように実はなりました。

 そんなことを考えたときに、今、日本の国では道路特定財源の見直しをする、見直しに関する具体策の中で、真に必要な道路、今後の具体的な道路整備の姿を、中期的な計画を作成するということになっております。私は、作成に当たって、防災上、安全、安心の確保を図る道路をぜひ確保していただきたい、そのことをこの中期計画の中にきちんと盛り込んでいただきたい。それが、今続いている異常気象とも思える自然災害の中で、国民の命と生活を守るだけではなく、希望をつなぐことになる、私はそうかたく信じております。

 ぜひ、このことについて、道路局長さんの見解をお伺いさせていただきたいと思います。

宮田政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のように、昨年の十二月にまとまりました具体策におきまして、「真に必要な道路整備は計画的に進めることとし、十九年中に、今後の具体的な道路整備の姿を示した中期的な計画を作成する。」こういうふうにされたところでございます。

 この中期的な計画につきましては、道路整備に対するニーズを踏まえて、その必要性を具体的に精査し、引き続き、重点化、効率化を進める、そういう方針に沿いまして、真に必要な道路に関する中期的な整備目標を明示していくことが必要だというふうに考えております。

 国土交通省におきましては、大規模地震や豪雨、豪雪など頻発する自然災害に対応いたしまして、国民の安全で安心な暮らしを守るため、災害に強い道路網の整備を進めることは極めて重要であるというふうに認識しております。また、地震時の救援活動や物資輸送を支える緊急輸送道路の橋梁の耐震補強、豪雨や豪雪による地域の孤立を解消する道路斜面の対策や雪崩対策、こういうものにも鋭意取り組んでいるところでございます。

 また、「道路特定財源の見直しに関する具体策」の取りまとめに先立ち、与党より、生活者重視の視点から、災害に強い道路について、地域の自主性にも配慮しながら、適切に措置することとの申し入れをいただいたことは承知しております。国土交通省といたしましても、中期的な計画の作成に当たりましては、安全、安心の確保を図ることは重要な視点だというふうに認識しております。

 いずれにいたしましても、中期的な計画につきましては、今後、国民の幅広い意見を伺いながら作成してまいりたいと考えております。

長島(忠)分科員 ありがとうございました。

 そこで、さらにお伺いをさせていただきたいと思います。

 ことし、新潟県では雪がありません。山古志村でいったら、去年の今ごろは四メートル、おととしも四メートルの積雪でしたけれども、今冬はわずか四十センチ。長岡市の駅前でも〇センチです。これは多分、何百年規模という、生活者にとってはいい方ですけれども、これも異常気象のなせるわざではないかと私は思います。

 ですから、今、日本の国の中で、異常気象あるいは地震等によって何が起こるかわからないということを考えたときに、災害に強い道路ネットワークを築くためにきちんとした道路特定財源を守る、議論をして、きちんと必要なものには必要な財源だと発信をすることが私は必要だと思います。

 国土交通大臣に、「道路特定財源の見直しに関する具体策」について、ぜひ御見解をお伺いしたいと思います。

冬柴国務大臣 先ほど長島議員からお話がありましたように、山古志村へ初めて足を踏み入れたときに、道路がもうずたずたになっているので驚きました。わずかな時間の間にあれほど、鉄筋コンクリートで上にアスファルト舗装された道路がまるで紙切れのように谷底に落ちているというような状況を見まして、本当に、自然の脅威というものを肌身に感じて恐ろしい思いをいたしました。

 そういう意味で、この道路特定財源の見直しに当たりましても、先ほど道路局長からも申しましたように、生活者重視という観点から災害に強い道路をという与党申し入れもありまして、この見直しの具体策を考えるときに、そういうものも含めて、いわゆる道路特定財源については、税率を維持しつつ、一般財源化の前提に、納税者に十分説明をし、その理解を得つつ、具体策を年末、昨年末でございますが、策定する、そういう言葉になっていたわけでございます。

 その具体策を考える上において、私は、やはり受益と負担ということがキーワードになるんじゃないか。負担は、従来の暫定税率を維持しながらということでございますから納税者の御意思、そして、それを引き当てにして受益は何か、これはやはりそれに見合う道路整備、なかんずく、それは災害にも強い道路の整備をしていくということだ、そのつり合いがとれなければならないのではないか、私はそれを強く主張いたしました。それが納税者の意思でもあり、納税者が納得していただくことでもあろうと。

 そうしますと、その道路整備の内容になるわけでございますが、真に必要な道路ということになりますと非常に主観的になります。これは、判断が入ってしまいます。したがいまして、これについては、もちろんそうであるけれども、具体的には、平成十九年中に、どのような道路を整備していくのかという中期計画、こういうものをお示しするということで御納得をいただけるのではないかということで、そのようにしたわけでございます。

 したがいまして、私としましては、今後、具体策の実現、実施に向けては、真に必要な道路整備は計画的に進めることとし、災害に強い道路網の整備を初めとする道路整備に対するニーズや国民のさまざまな御意見も踏まえつつ、十九年中に中期的な計画を作成する。それから二番目としては、国民の要望の強い高速道路料金の引き下げなど、既存の高速ネットワークの効率的活用等のための新たな措置を講ずること。

 高速道路には、もう道路会社、民営化をいたしましたから国費は投入しないということになっていますが、しかしそれは、新たな道路をつくるとか、あるいは株式会社になった独立した企業の営業を支援するような形で国費は入れない、従来三千億というものが入っていたわけですが、それは一切入れない、自主自立でやっていただくということでございます。

 今ここで合意したことは、もう既につくられている高速道路、そのネットワークを効率的に、また、国民のニーズの高い、高速道路料金が非常に高過ぎる、あるいは通るところによって道路の通行料金が違うというようないろいろな御不満がたくさんあります。したがいまして、それを引き下げていただくための、我々としてもただでやってくれというわけにいきませんから、それに対する我々の議論をしまして、許される範囲でこういうものについて措置を道路特定財源の中から行っている、道路歳出として行っているということをしたわけであります。

 したがいまして、関係各方面と連携しつつ、このような方策を鋭意取り組んでまいりたいというふうに思っております。

長島(忠)分科員 ありがとうございました。ぜひ、国民の安心、安全、そして受益のために、これからも道路整備に配慮をお願いしたいと思います。

 さて次に、私ども山古志村に芋川という小さな川が実はございます。新潟県の河川管理に当たる、県管理の川でございます。資料の一番最後のページに写真を載せておきました。上の写真が発災直後、そして下の写真が昨年十二月、概成をした写真でございます。

 当時、私は、山ができたという一報を受けて、信じられない思いがして現地に駆けつけました。まさに、ここの左側にある建物が東竹沢小学校、その前には、たしか深い谷底に川が走っているはずでした。それが山になっていました。木もそのまま、田んぼもそのままつけたまま、三百メートルの山が百五十メートルすべり落ちて、川をふさぎました。結果的に、二百六十万トンという水量をたたえる天然ダムになりました。

 発災直後、住民から、住宅が埋まってしまう、このままでは住宅が埋まってしまうという悲鳴に似た声を聞いて、県に駆け込み、県の管理でありますから県に何とか土を取り除いてほしい、このままでは住宅が水に埋もれてしまうという思いを抱いて、県に対応をお願いしました。被害が余りに甚大であるため、道路もないところに機械を運ぶことは困難であり、小さな機械を運ぶときには既に一週間が経過をしており、とてもそれでは歯が立たないことがわかって、今、日本の国の中では、市町村が県に要請をして初めて、県が国に要請をして対応に当たれるという制度になっている関係上、県が要請をして国の直轄事業にしていただくまでに二週間の日時が過ぎておりました。

 その間、住民は、毎日毎日テレビに映る我が家の姿を見て、夕方私のところに、きょうは十センチ埋まった、きょうは二十センチ埋まった、何とかしてほしい。毎晩毎晩来る声を聞きながら、私は実はどうしてやることもできませんでした。

 当時、国の方が来てくだすったときに、私は大きな声を上げてしまいました。何とか取り除いてほしい、世界に冠たる日本の技術でできないことがあるのか、私はそう言ってしまいました。でも、それからの国の対応については、とても大きな役割と大きな勇気を与えてくれたと私は皆さんにお伝えをしたいと思います。

 あの地に立ってくれたときに、道なき道を重機を運んできてくれ、そして道なき道を人は歩いてあそこにたどり着いて、調査をしてくれ、災害復旧に当たってくれました。

 水位を下げる工事から始めていただいて、その間、あの土を取り除くことが可能かどうか。六年という歳月と九十億円という費用がかかる。住民にとって、六年という歳月はとても待ち切れる年月ではありませんでした。では、どうしたらいいか。動かないように、下流に迷惑をかけないように、あそこをダム化してしまおう、そのかわり、住民の希望によってあのダムのほとりに住むことを許してほしい。そういったときに、国は、住民の対応を含め、災害復旧の先頭に立っていただきました。これもまた、さっき国道二百九十一号線の災害復旧に当たっていただいた人たちと同じように、自然の力の猛威を受けながら自然の力に立ち向かった人の力の大きさと、そのことが私たちの住民に大きな勇気を与えてくれた、その役割を果たしてくれたことに、私は今非常に大きな感謝をしています。

 二年と四カ月が過ぎて、ほぼ概成をすることになりました。ことしの春から、この湖のほとりに、整備をしていただいた宅地で住宅の建設が始まります。私たちは、あの重大災害で一時はあきらめそうになったふるさとに帰ることができました。それは、絶えず私たちの住民に向かってくれた、向き合ってくれた国の役人の姿があったからだと私は今深く感謝をしています。

 ただ、経験の中で、一つだけお伺いをさせていただきたいと思います。

 大規模な災害のときに、村民や地域を守るために立ち上がるのは、もちろん市町村が先頭です。そして、それに国が支援をするのが本当だと思います。でも、大規模な土砂災害を想定したときに、とても市町村のレベルで対応し切れるものではないということだけはよくわかりました。今回経験した中で、豪雨による大規模土砂災害、あるいは地震による大規模災害に国がいち早く積極的に関与する方法が私は必要ではないかとあの災害の中で思ってきました。

 河川局長さんから、この危機管理についての見解をお伺いさせていただきたいと思います。

門松政府参考人 お答えいたします。

 新潟県中越地震におきまして、芋川流域を中心に大規模な崩壊や地すべりが発生いたしました。また、その発生に伴いまして、今先生御指摘のように、芋川をせきとめ、大規模な天然ダムが形成され、集落が水没するなど、大変大きな被害が発生いたしました。さらに、その天然ダムが決壊すれば、さらなる激甚な被害が生ずるおそれもありました。

 このような中、我が国土交通省は、ヘリコプターの出動や専門家の派遣、排水路の開削など緊急工事を実施いたしました。これらは、天然ダムの決壊防止に大きな役割を果たしたと考えております。

 これらの芋川での経験を踏まえまして、昨年の九月から、大規模土砂災害危機管理検討委員会を設置いたしまして、大規模な土砂災害に対する危機管理のあり方を検討してきたところでございます。

 今後は、これまでの検討委員会での議論の方向性を踏まえまして、大規模な土砂災害に対して、国土交通省として、我々が管理いたします直轄砂防区域は当然でございますが、直轄区域にあっては応急対策を速やかに実施する、また、その他の地域にあっても、大規模土砂災害が発生したときは、状況の把握や専門家の派遣を初めといたしまして、都道府県あるいは市町村による応急措置への支援等、積極的に国が関与できる体制の整備を図ってまいりたいと考えております。

長島(忠)分科員 ありがとうございます。

 私は、今御答弁いただいたように、予算措置を含めて、具体的な調査費等を含めてきちんとした対応をすることが国民に安心、安全というキーワードを届けることになるのではないかと思いますので、ぜひよろしくお願いをしたいと思います。

 今御答弁いただいたように、芋川の天然ダムの現場では、国あるいは国の関係団体から派遣をいただいた技術者の方が大きな役割を果たしてくれました。と同時に、この資料の三ページ目に妙見の大規模崩落現場という写真をつけておきました。上が崩落直後、下が昨年十一月。おかげさまで、この三月二十四日、ここも開通することになりました。ここは、皆川優太ちゃんがお母さんと一緒に車ごと土砂の下に巻き込まれ、皆川優太君が救出をされた現場です。このような、石がごろごろするような状況の中でしたので、当初、多分レスキューの皆さんもここに救助に向かっていいかどうかということは迷われたんだと思うんです。そのときに、実は役割を果たしたのは国の関係機関である土木研究所の主任研究員でございました。

 私は、その方たちがあの現地の状況を見て、この状況だったらレスキューの皆さんが入っても大丈夫だというアドバイスをきちんと専門的な立場でしていただいたこと、そして、救助の間じゅう、実はあの岩の上方にいて、その岩を取り除く方法、救助をする方法、そして通るルートについてきちんと指示をしたこと、このことを考えたときに、やはり専門的な人材の育成とそして専門的な人材の派遣というのは被災地にとっては欠くべからざることなのではないかなというふうに実は実感をしました。

 あそこに土木研究所の研究員がおられなかったら、第二次災害の危険ということでレスキューも多分あそこには入れなかったと思うし、みすみす日数を経過して皆川優太ちゃんというとうとい命を失うことになっていたかもしれません。そんなことを考えたときに、ぜひこれから国の技術者あるいは国の関係機関の技術者の育成を急いでいただくと同時に、大規模災害のときにはぜひ市町村に積極的に派遣をしていただくということも、私は、命を救うということでも大変必要なことだと思うし、災害を最小限に抑えるという意味でも大変必要なことだと思いますので、ぜひ努めていただきたいと思いますが、河川局長さんから見解をお伺いしたいと思います。

門松政府参考人 お答えいたします。

 先ほどのお話にもありました天然ダムの決壊防止などの技術的な判断、あるいは今御説明がありました消防隊員の救出活動における二次災害防止のための地すべり監視などにおきまして、我々の職員、専門家が重要な役割を果たしたものと思っております。

 一次的な防災対策を担います市町村でございますが、土砂災害に対する経験が余りなく、また、直接、砂防事業を実施することも基本的にございません。

 また、都道府県でございますが、大規模な土砂災害を経験する頻度は多くはございません。また、土砂災害に関する専門家の育成、配置など、大規模土砂災害に対する危機管理を想定した体制整備は必ずしも整っていないという状況下にあります。

 地方自治体に比べまして、国においては、大規模な土砂災害に関します全国的な知識と経験を有しております。今後とも、現場での経験を蓄積、活用できる体制の整備と技術の継続的研さんによります人材の育成と技術の伝承に努めてまいりたいと考えております。

長島(忠)分科員 ありがとうございました。ぜひ、国民の命と生活を守るために、これからも努めていただきたいと思います。

 最後に、私たち、中越大震災の復興の中で、いわゆる山の暮らしを取り戻してまいります。その中で、基盤となる社会資本整備はさらに必要であるということだけはよくわかっていただいております。ただ、現地では、中山間地であるために、公図がやはり地すべりによって確定をしておらないという事情と、やはり用地の取得にもそんなことで困難をしている。引き続き、長い目で御支援をいただきたいというふうに思います。

 そして、今ほど私がお話をしたように、現地には、この災害に勇気を持って立ち向かってくれた国土交通省の皆さんのつめ跡そして思いが残っている災害復旧の姿が実は実現をしております。このことは、ぜひ全国の皆さんにごらんをいただきたい、私は、そのことが日本の国の安全、安心を国民の皆さんから考えていただく、あるいは行政から考えていただく大きな一歩になると思いますから、ぜひ私たちはそんな役割も果たしてまいりたいと思いますから、ぜひ現地をごらんいただき、皆さんのやってこられた姿を国民の皆さんから見ていただいて称賛の声を送っていただきたいな、そんなふうに思うところでございます。

 改めて感謝を申し上げながら、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

赤松主査 これにて長島忠美君の質疑は終了いたしました。

 次に、小里泰弘君。

小里分科員 自由民主党の小里泰弘でございます。

 きょうは質問の機会をいただきましてありがとうございます。

 まず、整備新幹線についてお伺いをいたします。

 昭和三十九年に東海道新幹線が開通をし、その九年後の昭和四十八年にいわゆる整備五線の整備計画が決定をされました。以来、財政悪化や国鉄民営化などを背景としながら、あらぬ誤解を受け、またいわれなき批判を受けながら、着工しかけては凍結を繰り返すなど、複雑な経緯をたどってきたのが整備新幹線であります。

 しかしながら、供用区間がふえるに従いまして、その効果は広く国民に認知され、特に関係沿線における新幹線への期待は高まる一方であります。

 新幹線ができますと、都市間競争力が向上をし、観光や各種産業を活性化させ、通勤、通学圏域も拡大をし、産学住にわたる地域の機能が高まるなど、新幹線による経済波及効果は建設費の何倍にも及ぶと試算をされているところであります。また、単位当たりのCO2排出量やエネルギー消費量に見られますように、環境に優しく、省エネにすぐれているのが整備新幹線であります。

 ちなみに、九州新幹線鹿児島ルートは、平成十六年四月に八代以南が開業いたしました。以来、利用者は在来線特急時の二、三倍前後とコンスタントに高水準を維持しているところであります。全線開業に向けて、さらに大きな期待が寄せられているところであります。

 平成十六年の政府・与党申し合わせによりますと、九州新幹線の博多―新八代間及び東北新幹線の八戸―新青森間につきましては、平成二十二年度末までの完成予定であります。また、北陸新幹線の長野―金沢間が平成二十六年度末まで、北海道新幹線の新青森―新函館間が平成二十七年度末までの完成予定となっております。

 冬柴大臣におかれましては、かねて整備新幹線に格別の関心を寄せていただいておりまして、また、幹事長時代からその足跡につきましては大変な高い評価が国民から寄せられているところでございます。それぞれの区間につきましての見通しにつきまして、大臣の御見解をお伺いしたいと存じます。

冬柴国務大臣 平成十六年の政府・与党申し合わせ、その原動力は委員の御父君でございました。心から敬意を表しているところでございます。

 整備新幹線は、国土の骨格を形成する高速交通機関であり、地域間の移動時間を大幅に短縮させ、地域開発や経済活性化等に大きな効果をもたらす重要なプロジェクトと考えております。

 こうした考えのもと、これまで累次の政府・与党申し合わせに基づき、着実に整備を推進してきたところでもございます。

 現在は平成十六年の政府・与党申し合わせに基づき、平成二十二年度末の完成予定とされている九州新幹線の鹿児島ルート博多―新八代間及び東北新幹線の八戸―新青森間を初め、各区間で着実に整備を進めております。

 今後とも、政府・与党申し合わせに基づき、各区間とも、完成予定を目指して着実に整備を推進してまいりたいと考えておるところでございます。

 なお、長野―金沢間が平成二十六年度末、北海道新幹線の新青森―新函館間が平成二十七年度末の完成予定となっておりますが、必ずこれは守りたいという気持ちで頑張っているところでございます。

小里分科員 ありがとうございました。

 ぜひ、今後とも、それぞれの路線につきまして、よろしくお願いをしたいと存じます。

 整備新幹線の歴史を振り返りますと、その節目節目におきまして、懸命の努力で新たな財源を確保しては見直しを行う、そして、新規の整備を進めてきたと認識をしております。平成二年の政府・与党申し合わせによる特定財源しかり、平成八年の国と地方の二対一の新たなスキームの構築しかり、あるいは、平成十二年には公共事業関係費の増額を行い、平成十六年には特定財源の前倒しでの活用の措置を決めていただいたところであります。

 今後、既着工区間の前倒しや、さらなる延伸を考えますときに、新たな財源の確保が必要と考えるところであります。また、政府・与党申し合わせによりますと随時見直すとなっているところでありますが、見直しの時期につきまして、あわせて国土交通省の見解をお伺いしたいと存じます。

平田政府参考人 お答え申し上げます。

 整備新幹線の既着工区間につきましては、ただいま大臣の方から御答弁申し上げましたとおり、政府・与党申し合わせに基づき、着実に整備を推進することといたしております。

 未着工区間の新たな着工につきましては、平成十六年の政府・与党申し合わせにおきましては、安定的な財源見通しの確保、収支採算性、JRの同意などの基本条件が整えられていることを確認した上で行うこととされております。

 未着工区間の新たな着工、完成時期の前倒しにつきましては、財源をどうするかなどの大きな課題がございます。したがいまして、まずは平成十六年の政府・与党申し合わせに基づきまして、着実に整備を進めていくことが重要でないかと考えているところでございます。

 あわせて、未着工区間につきましては、現在、整備新幹線建設推進高度化等事業といたしまして、駅予定地におきます調査でありますとか地質調査など所要の調査事業を行ってきております。

 例えば、北海道新幹線の未着工区間につきましては、現在、駅予定地の事前調査といたしまして、倶知安駅、長万部駅の詳細地形図を作成しているところでございます。昨年十一月に着手をいたしまして、昨年末には航空写真を撮影、現在、図化作業中でございます。さらに、全長二十キロに及びます長大で地質の特殊な桧山トンネルにつきましては、ボーリング調査を重点的に実施しておりまして、昨年十月に着手し、本年一月に四本のボーリングの掘削を終了して、現在、地質の分析中でございます。

 また、北陸新幹線の未着工区間におきましても、加賀温泉駅、芦原温泉駅、南越駅におきます駅部調査でありますとか小松駅におきます駅整備事業など、駅関係の調査設計に加えまして、手取川や九頭竜川といった長大橋梁の耐震設計などを実施しているところでございます。

 いずれにいたしましても、政府・与党申し合わせの見直しの時期について見通すためには、まずは安定的な財源が確保されることが大前提と考えてございます。したがいまして、見直しの時期につきまして具体的に見通すことは、現段階では難しいと考えております。

小里分科員 札幌から鹿児島まで一本の背骨を通す、骨格を国土に形成するという大きな目標で進められてきた整備新幹線であります。ぜひ、旺盛な意欲で、見直しも含めて今後取り組んでいただきたいと期待を申し上げたいと存じます。

 次に、治水対策についてお伺いをいたします。

 昨今の記録的な降雨量と豪雨災害の増大傾向を見るときに、日本列島全体として、いつでもどこでも大きな災害に襲われる、そんな危険性が高いと痛感をするところでございます。加えて、少子高齢化の進展や地域コミュニティーの衰退により、地域の防災力の低下が言われているところであります。そのような中にあって、現在、我が国の河川の整備率は目標の約六割、多くの国民が水害の危険にさらされているのが現状であります。

 本来、治水事業におきましては、すべての危険箇所について早期に抜本的に対応を図っていくべきでありますが、いかんせん予算が限られております。限られた予算の中で、上流、中流、下流のバランスをいかにとりながら効率的に整備を図っていくか、難しい対応を迫られているのが我が国の治水行政であると認識をいたします。

 もとより、国民の安心、安全の確保は国家の最大の責務であり、これに直結をするのが災害対策であります。災害の増加と社会の変化に対応した確固たる対応が求められるところであります。

 そこで、本来の抜本的な防災対策にさらに努めていくべきは当然でありますが、投資余力に限界がある、整備に長期間かかるということを考えますときに、浸水被害が発生しても被害を最小限度に食いとめるという、いわゆる減災対策をあわせて効率的に推進していくことがまた大事な要素であります。

 減災対策推進に向けての国土交通省の方針をお伺いいたします。

門松政府参考人 お答えいたします。

 先生の御指摘どおりだと考えております。近年、気象変動の影響によると考えられます豪雨の増加傾向によりまして、豪雨による浸水被害が頻発しております。また、高齢化社会の到来によりまして、はんらんした場合の備えがますます重要になっていることから、従来実施してきております河川堤防、連続堤防の整備に加えまして、はんらんした場合でも被害を最小にさせる対策をあわせて推進することは極めて重要であると考えております。

 具体的には、人命などを優先して守るため、輪中堤の整備とか、既存の道路等の盛り土構造物の活用、宅地のかさ上げ、あるいは水位情報や河川の洪水警報等の情報の提供、ハザードマップの整備等を推進していくことが必要であると考えております。

 また、これらの対策は河川管理者だけで進めるわけにはまいりません。いろいろな方々、地方自治体や関係機関との協力が不可欠でございます。これまで以上に綿密な連携を図ってこの対策を進めてまいりたいというふうに考えております。

小里分科員 ありがとうございました。

 昨年、私どもの鹿児島県北部で大変な豪雨災害が発生をいたしまして、国土交通省を初め政府各部署に大変お世話になったところであります。その鹿児島でも採択をされまして、期待をされるのが河川激特事業であります。ところが、このような再度災害防止型の事業に対する財政需要が、全国的に増大する豪雨災害に緊急に対応する必要性から、ふえております。財政需要がふえております。この予算が従来の治水予算の中で執行されている、そのようなことから、通常の計画的河川整備の予算を圧迫しているのが現状であります。

 一方で、災害を受けての災害復旧事業予算は、通常の河川事業とは別に確保されております。しかしながら、復旧事業は文字どおり壊れた箇所をもとに復するにとどまりますために、また同じ雨が降れば壊れて、復旧事業をまた行う、そういうことにもなりがちであります。

 通常の計画的河川整備を積極的に行うことが国民の安心、安全の確保につながる、資するのみならず、長い目で見れば予算の節約にもつながると考えるところであります。

 このため、計画的河川整備の予算を圧迫しているところの再度災害防止型の事業予算の確保のために、新しい仕組みを構築すべきと考えますが、国土交通省の見解をお伺いいたします。

門松政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、治水事業は国民の安心、安全の確保に資する事業でありまして、生命と財産が失われる前に計画的に実施すべきものと考えております。

 今年度の予算においては、河川激甚災害対策特別緊急事業などの再度災害防止のための事業を二十カ所実施しているところでございます。さらに本年度、川内川などにおきまして激甚な災害が発生いたしまして、新たに三河川、六カ所が激特事業に採択されたところでございます。

 また、激特事業などの大規模な再度災害防止関連事業費が河川事業費に占める割合でございますが、平成十八年度の予算においては約二割となっている状況にあります。

 このため、御指摘も踏まえて、河川事業が重点的、効率的に実施されるように、今後さらに一層の工夫をしてまいりたいというふうに考えております。

小里分科員 ありがとうございました。災害に強い、安心、安全な地域づくりに向けまして、今後ともどうぞよろしくお願いしたいと存じます。

 次に、道路整備についてお伺いしたいと存じます。

 今質問申し上げました鹿児島における昨年の豪雨災害や一昨年の台風災害におきましても、土砂崩れや浸水により各地で国道や県道が寸断をされまして、多くの集落で孤立状態に陥りました。地方における災害発生時の孤立化を防ぎ、人命救助や食料輸送の支援活動などを円滑に行うためには、災害に強い道路整備が望まれるところであります。

 また、地方では、都会以上のスピードで進む少子高齢化への対応や観光ルートの整備、あるいは市町村合併に伴う地域の連携強化の必要など、地方特有のさまざまな社会的な課題への対応が求められております。そのような中、道路は、地方の社会経済活動を支える上で最も基礎的なインフラと認識をいたします。

 これらの課題に重点的に、早期に、地域一体的に対応するための道路整備が望まれるところであります。今後の方針につきまして、国土交通省にお伺いいたします。

宮田政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘の課題、地方にあると思います。人の移動の九割以上が、地方におきましては自動車によっております。地域の経済社会を支える上で、道路整備は極めて重要だというふうに認識しております。

 こういった課題に対応するために、台風、豪雨災害による地域の孤立を解消する道路の防災対策、地震時の緊急輸送路の耐震補強等、災害に強い道路整備を進めますとともに、地域間の連携を強化する幹線道路の整備に鋭意取り組んできたところでございます。

 また、市町村合併や高次医療施設へのアクセス性の向上を図るなど、地域の課題に対応するために、複数の市町村にわたる地域などにおいて、地方道路整備臨時交付金を活用し、都道府県道、市町村道の一体的な整備を行っているところでございます。

 加えて、平成十九年度の予算案におきましては、都道府県等が管理する一般国道におきましても、災害時における集落の孤立化の解消等の地域の特性に即した課題を早期に解決するために、一体的に実施する局部改良、橋梁補強、災害防除事業を一括で補助する制度を新たに創設することといたしまして、所要の予算を計上しているところでございます。

 今後とも、地方の道路整備につきましては、地方の自主性のもと、創意工夫を凝らして進めることが重要でありまして、国土交通省といたしましては、地方のニーズも踏まえまして、補助制度など地方にとってより使いやすいものに充実しつつ、真に必要な道路を効率的、重点的に整備してまいりたいと考えております。

小里分科員 ありがとうございます。平成十九年度からの新たな制度を期待申し上げたいと思います。おっしゃったように、地方にとって使いやすいものとなるように、その運用を効率的にまた心がけていただきたいと存じます。

 続きまして、南九州西回り自動車道でございます。

 この路線は、南九州の骨格を形成し、地域発展の基礎となる道路であります。この路線が整備をされますと、地域内外の交通量が増大をいたします。企業立地が促進をされまして、各種産業の振興や地域活動の活性化など、はかり知れない大きな効果が期待されるところであります。

 現在、鹿児島、熊本両県で徐々に整備が進みまして、その効果も見え始めているところであります。例えば、平成十七年度までに鹿児島インターチェンジ―串木野インターチェンジ間が開通をいたしまして、地域イベントの来客数が従来の二倍になるなど、大きな効果が出ているところであります。また、この三月には、続く六・五キロメートルの区間が開通予定でありまして、さらに大きな効果が期待をされております。

 地域長年の悲願であり、地域に新たな限りない可能性をもたらせてくれるのが南九州西回り自動車道であります。全線開通の効果を早期に発揮することが望まれます。未着工区間を含めまして、着手後十年の全線開通を期待したいところであります。

 現在の整備状況及び今後の方針につきまして、大臣の御見解をお伺いいたします。

冬柴国務大臣 南九州西回り自動車道は、熊本県八代市から鹿児島県出水市、薩摩川内市等を経て鹿児島市に至る延長百四十キロメートルの高規格幹線道路でございます。

 本路線の整備によりまして、八代から鹿児島間の所要時間を国道三号を利用するのに比べ二百五十分から九十分へと大幅に短縮するなど、地域間の移動時間短縮が進み、沿線に点在する観光資源の活用、福岡、熊本、鹿児島など大都市圏との交流拡大、農水産物の競争力拡大など、九州南西部地域の経済活性化、生活利便性の向上に寄与するものと期待しているところでございます。

 これまで、八代市側、鹿児島市側からそれぞれ事業を進めてきており、既に全体の三六%に当たる五十キロメートルを供用するとともに、約六十九キロメートルで事業を実施しているところでございます。

 特に、鹿児島県区間約九十キロメートルにつきましては、既に鹿児島市側約三十キロメートルを供用しておりまして、この三月三日には、その延伸区間である薩摩川内市までの六・五キロメートルを新たに供用する予定でございます。

 私は過日ここまで行って見てまいりました。川内川上流のはんらんの激甚災害を受けたところの復旧事業と、それからこの道路の進捗状況を視察させていただきまして、三月三日ですから、もう舗装もきれいにできて、すばらしい道路ができ上がっておりました。

 また、出水市、阿久根市、薩摩川内市の約三十三キロメートルについては、用地買収等を推進するとともに、この三月から、阿久根市から薩摩川内市間の約十七キロメートルについて、ルート位置や道路構造の早期計画策定に向けて、地元地方公共団体及び地元住民との意見交換を行う取り組み、パブリックインボルブメント、PIを実施する予定であり、私はその場でそのように指示をいたしました。報道でもそのように書いていただいております。

 今後とも、地元の皆様の理解と御協力を得るとともに、効率化を図りつつ、早期に整備計画が発現できるよう事業を推進してまいりたいと考えております。

小里分科員 大臣には、この路線に格別の対応をいただいておりますことに心から感謝申し上げたいと思います。

 時間の関係で、次の質問に入らせていただきます。地方財政措置を主にお伺いしたいと思います。

 まちづくり交付金は、地方の自主性、裁量性を大きく向上させ、使い勝手よく、個性あふれるまちづくりを目指す制度として、現在、全国で六百六十四市町村、一千百二地区で利用をされております。

 しかしながら、まちづくり交付金の財源内訳を見ますと、市町村負担分がおおむね六割、通常、起債充当率は七五%、そのうち交付税措置がなされるのは一〇%、すなわち交付税は事業費全体の四、五%にすぎないとなっております。すなわち事業費全体の五五%が純粋な市町村負担となっております。これで財政に悩む自治体が機会均等にこの制度を利用できるのか、疑問に思わざるを得ないわけであります。

 現に、まちづくり交付金の活用状況を自治体の規模別に見ますと、まず、政令市十五都市中、十五都市が利用しております。すなわち、利用率一〇〇%であります。同様に、中核市が利用率八四%、特例市が八五%であります。その他の市が五六%、町が二〇%、村が一〇%と、小規模な自治体ほど利用率が如実に低くなっております。

 富める自治体への偏在性がうかがわれるところでありまして、これでは富める自治体とそうでない自治体との格差がますます広がりかねないということを危惧するところであります。

 せっかくの制度であります。すべての自治体が機会均等に利用できる制度であってほしいと考えますが、見解はいかがでありましょうか。

 折から、まちづくり交付金の都道府県版ともいうべき広域的地域活性化のための基盤整備に関する法律案が計画をされているところであります。財政措置、地財措置における財政窮乏県への配慮が必要と考えますが、いかがでありましょうか。

赤松主査 中島都市・地域整備局長、時間が来ておりますので、簡潔にお願いします。

中島政府参考人 まちづくり交付金についてのお尋ねにお答えをいたします。

 利用の実態は、今委員がお話しになったようなことで、やや規模の小さいところの利用実績が悪いという認識を持っております。

 ただ、当然でございますが、制度としては、全国共通、同じ枠組みになっておりまして、どこの市町村でも同じように使っていただけるようにはなっております。ただ、制度そのものが、複合的な事業を一括的にやるという仕組みでございますので、やや規模の小さい市町村の場合に利用のニーズが低いという面もあるかなと思います。

 あと、ノウハウの面で不足して情報がないとかいうことであってはいけないので、私どもとしましては、都市再生機構で受託してという制度もございますし、使っている自治体同士がネット上で情報交換する仕組みもございまして、そういう仕組みを通じて、意欲のある市町村が財政規模に応じて必要な事業を的確に利用できるように、今後とも意を用いてまいりたいと思っています。

渡邊政府参考人 お答えいたします。

 地域自立・活性化交付金の制度の都道府県負担分に対する地方財政措置につきましては、現在、総務省と調整を進めているところでございます。

 本交付金制度の趣旨であります、より地方の自主性、裁量性を高め、地域の自立、活性化を促すという観点から、交付金の対象としている個々の事業について、おおむね現行の地財措置を準用するなど、有効な措置となりますよう、総務省さんの協力を得てまいりたいと考えております。

津曲政府参考人 まちづくり交付金事業につきましては、市町村負担分のおおむね七五%に地方債を充当することとし、その元利償還金の一〇%を交付税の基準財政需要額に算入する方式により、財政措置を行っております。この措置は、平成十六年度の制度創設時に、従前のまちづくり事業と同等の措置になるよう設定したものでありまして、市町村の円滑な事業推進に配慮したものでございます。

 交付税措置の拡充につきましては、基本方針二〇〇三などにおきまして政府全体としての事業費補正の見直しが求められている中で、慎重な検討が必要かと考えております。

 いずれにしましても、まちづくり交付金事業を初め、地方の創意工夫を生かした事業の推進には、交付税などの一般財源総額の確保が必要であるということでございまして、平成十九年度は、交付税の法定率分を堅持するとともに、地方一般財源総額を前年度を五千億円上回って確保しているところでございます。

小里分科員 ありがとうございました。

赤松主査 これにて小里泰弘君の質疑は終了いたしました。

 次に、坂井学君。

坂井分科員 自民党の坂井学でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 地元からのお話を幾つか質問させていただきたいと思います。

 まずは、鉄道の駅の混雑緩和ということでございまして、私の地元、東戸塚駅、この東戸塚駅に、開発がここ十年来大変多くて、マンションや事業所が大変多くなってきております。マンションもまだ建設途中というものもございますし、また事業所も、東戸塚の駅の西側には大変高い高層ビルが建つということでございまして、まだまだ利用客が多くなる、こういう状況でございます。

 今既に、この東戸塚の駅は、一つの真ん中のホームの両方側に電車が入るようになっておりまして、ラッシュ時はホームの上に人がいっぱい、利用客がいっぱいということで、今も危ないということで住民の方々からお話をいただいているところでございます。また一方で、鉄道事業者、また国土交通省さんも駅利用者の安全を確保する対策も考えておられる、こう思うわけでありますが、この東戸塚駅を例に、駅利用者の安全を確保するための対策というものをお示しいただければと思います。

平田政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま委員の方から御指摘がございましたJR横須賀線東戸塚駅についてでありますが、駅の周辺におきますマンションでありますとか商業施設の建設に伴いまして、一日当たりの利用者は毎年二千人程度増加しております。平成十七年度は約十万八千人になっております。

 東戸塚駅につきましては、地形的に見てみますと、斜面の途中に設置されてございます。いわゆる橋上駅の構造でございまして、自由通路に面して改札口が一カ所であります。また、ホームは一面の施設構造で、改札口のある階とホームとは、一カ所の階段と二基のエスカレーター、それから一基のエレベーターで結ばれております。駅利用者の増加に伴いまして、特に朝夕のラッシュ時には、このエスカレーターの付近に利用者が集中して混雑するという状態にありますことは、委員の御指摘のとおりでございます。

 ただいま申し上げましたように、東戸塚駅が斜面の途中に設置されております関係上、ホームの拡張それから拡幅のための用地を確保するということは非常に困難な事情を勘案いたしますと、施設を拡張するなどのハード対策ではなくて、例えば駅の係員の配置によりまして利用者を誘導するなどのソフト対策を中心に、利用者の皆様方の安全確保を図っていくということが肝要ではないかと考えております。

 このような状況を踏まえまして、JR東日本におきましては、ことしの一月にホームの係員を一名増員いたしまして、五名体制で利用者の誘導などを行い、安全の確保を図っているところでございます。

 さらに、JR東日本では、ホームの係員の配置などの対策を継続してやっていくということによって利用者の皆様方の安全の確保を図っていくこととしておりますが、私ども国土交通省といたしましても、今後の利用者の動向などを踏まえて、適切な混雑緩和や安全対策が図られますよう、JR東日本を指導してまいりたいと考えております。

坂井分科員 ありがとうございました。

 そういうソフト面での工夫で乗り越えるということはまず大事なことではございますが、これは東戸塚だけではなくて、一般的に、特に神奈川、埼玉そして千葉といった首都圏は、これから、開発のために予想よりも一気に利用者がふえるという駅が多数出てくるのではないか、既にあるのではないか、このようにも考えます。特に千葉などでは、東戸塚駅よりも混雑の激しいところがあるというようなことも聞いております。これはもう絶対的な駅舎の許容量というものも大きく関係してくるのではないだろうかと思っております。

 例えば東戸塚の駅は、当初、つくったとき、もう約二十五年前でありますが、五千人の利用者のところに何と大体五万人の利用者を想定して駅をつくった。地元の方々は、こんな大きな駅をつくって、五千人しか利用がないところに大きなものをつくり過ぎだ、無駄遣いだ、こういった批判があったそうでございますが、そういった駅が、今お話ありましたように、十万八千人、約十一万人の利用者、要は、当初説明があった約倍の人数に既に利用者はふえているわけであります。

 こういったように、大体この規模の駅舎で、そしてこのペースで電車が来るところであればどのくらいの人数までが安全に利用できるか、こういった駅舎の安全の目安もしくは基準といったようなものが今あるのかどうか。もしあるのだとすれば、東戸塚はどのくらいになるのか。こういったことを教えていただきたいと思います。

 また、今地元では、ここは、安全は、事故が起きなければだれも対応しないんじゃないか、このような声が住民から聞こえておりますけれども、そういった住民に対し、しっかりと安全を確保しているんだ、こういったことが実感できるような対策というものを求めたいと思います。その目安、基準があるかどうかということをお答えいただければと思います。

平田政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたように、一般的に、駅のホームでありますとか階段、施設の規模につきましては、沿線の地域の開発動向なども勘案しました将来的な利用者を想定するとともに、用地の確保ができるかなど、地形上の制約条件も踏まえて、個別の駅ごとに計画されていくものであろうと思います。

 このようなことから、先ほど私申し上げましたように、施設の拡張をするなどのハード対策もさることながら、ソフト面とあわせ持っての対策を講じていくことが極めて重要ではないかと考えているところでございます。

坂井分科員 これからどんどん利用者がふえていくという状況の中で、確かに用地の確保は困難、こういうことはあるかもしれませんけれども、使う方がとにかく安全に使えるということをまず第一に考えていっていただきたい、こう思います。

 続きまして、道路の関係に関して何点か御質問したいと思います。

 まず、用地買収ということに際して、各地で道路をつくるときには用地買収ということが行われると思います。冬柴大臣にお伺いをしたいんですけれども、一般論ということでございますが、用地買収の際の補償に対する国交省の基本的な考え方というものをお聞かせいただければと思います。

冬柴国務大臣 公共用地の取得における補償金額の算定は、買収に応じていただいた地権者の方が同種同等の代替地を取得することができる金額を補償すべきとの考え方に基づいております。

 こうした考え方に基づき、公共用地の取得における補償金額は、契約時点における正常な取引価格をもって金額を算定しているところでございます。

坂井分科員 今、同種同等な土地が取得できる金額、こういうことでございました。簡潔に言いますと、要は、土地を売った、協力をした方が損はしない、得もしないけれども損はしない、こういう考え方ではなかろうか、こう思っておりますけれども、私の地元にある横浜南線という道路の建設に伴いまして、今、地元の方々、特に農地を持たれている方々から心配な声が上がってきております。

 戸塚区の小雀町の一画でありますけれども、横浜市が農業専用地区ということで指定をしている地区がございます。そこは、国の農振地域にもなっておりまして、以前は国の補助金も入り、そしてまた市の補助金も入りまして、今は農業が営まれている、こういうところでございますが、ここに道路が入り、当然買収という形になってまいります。

 そこで、今、そこの農家の方でございますが、十代の後継者もいるということでございまして、これから、順調にいけば、その方が三十年、四十年ここで農業をやっていきたい、そして農専地区として頑張っている、こういうことでございました。

 ここに道路が入りますと、まず畑が分断をされる。それから、土盛りでいくものですから、日陰になる土地が出たり、また半端な畑が出たり、土地が出たりということでありまして、今あります、要は、今使っております農地、畑の便利さでありますとか、簡単に言えば生産性といったものを考えますと、かなり落ちるのではなかろうか。また、戸塚区の小雀地区というのは、農専地区ではございますが、住宅街も近くまで来ておりまして、かわりの畑を探すということが大変難しい状況になっております。

 この農家の方は、私は、今こういう恵まれた、要は整備をされた環境で農業を営んでいる、これで道路が通ることによって、例えば、畑、代替地が遠く、自分の家から十分も二十分も行かなければいけないところにできたのでは、もう農業をやっていられない、こういうことでありまして、今と同じような形で農業ができる、その補償をいただきたい、こういうことを言っているわけであります。私も、その点に関しては、まさしくそのとおりだと思っているわけでございます。

 その点、今、さまざまな一般論の話、それから基本的な原理原則ということでいきますと、どうも農家の方が、代替地が近くにないということもあり、畑を確保するのが難しいのではないか、こういう状況になっております。今、代替地を造成し、そして畑として見てくれないか、こういうような声もありますが、基本原則としては、お金に算定をして金額を支払う、こういうようなことになっているということでございます。

 なかなか難しい状況もございますが、この点、要は、地元の方が農地を、今回土地を協力して、その結果、しっかりとした農業ができる環境を整えるための知恵そして対策というものがないだろうか、こう思うわけですけれども、この点についての見解をお聞かせいただきたいと思います。

宿利政府参考人 お答え申し上げます。

 今、坂井委員からお話がありました関係でございますが、地権者の方が農業を行っておられる、それから、農業専用地域になって、いろいろ排水施設を初め農業を営むための付加的な設備整備が行われると思いますけれども、こういう土地につきましては、これも一般的な考え方でありますが、そういう設備があることによる効用分をきちっと土地の価格に反映するような形で買収額を決定する、そのような補償基準になっております。

 いずれにしましても、私どもといたしましては、今後、地権者の方々に対しまして、この補償基準に基づいて適正かつ公正な用地補償が行われるということを十分に説明しながら、御理解を得て対応していきたいと考えております。

坂井分科員 地元の方が協力をして、そして損をした、そんなような思いのないような対策、ぜひ個別具体な対策をお願いしたいと思っております。

 次に、国道一号線がございまして、そこの原宿交差点の改良工事についてお伺いをしたいと思います。

 この原宿交差点というのは渋滞の名所でございまして、そういう名所は要らないんですけれども、今までは本当に、ラジオでも必ず、渋滞何キロ、こういう報道があったところでありまして、ここに、地元の念願だった交差点改良の工事が始まりました。この工事に関しまして、今予定の工期がいつまでになっているか。そして、近隣住民への配慮、これに関して今までどういうことをし、また今後どういうことをお考えいただいているのか。そしてまた、工事中は、恐らく工事の車が出入りすることによって、今まで改良されてきた、要は、一車線、交差点が広くなりまして、今多少渋滞が緩和されたところでありますが、それがまた再び渋滞になるんじゃないか、こういう心配もございます。新たな渋滞が発生するんじゃないか、その対策等々、どのようにお考えになっているか、それをお聞かせいただきたいと思います。

宮田政府参考人 お答え申し上げます。

 横浜市の原宿交差点、委員御指摘のように、朝夕のピーク時には五キロの渋滞が発生するということで、神奈川県内の交差点では最も渋滞の激しい交差点でございます。こういう観点で、渋滞、交通安全の確保を図るということで立体化事業を起こしておりまして、平成二十一年度の完成を目標にしてございます。

 立体工事に際しましては、平成十八年、昨年の十一月に住民の方々に工事内容の説明会を開催したところでございます。立体化の工事に先立ちまして、電気、水道等のライフラインの移設、新設工事、トンネル工事のための車道の切りかえ工事を実施するために、一時的に渋滞が発生する可能性があると考えております。

 このため、新技術の採用による工事期間の短縮、片側トンネル工事を先行、供用することにより、工事による交通の影響を極力低減するよう工程上の工夫を図ってまいりたいと考えております。

 工事中は、大変申しわけありませんが、周辺の皆様に御迷惑をおかけすることになりますが、工事内容、工期の変更等について、広報誌の配付、工事説明会の開催等を通じて、できる限り幅広に情報提供を行ってまいりたいと考えております。

坂井分科員 近くの近隣住民が、工期に関して、または進捗状況に関して、例えば質問があったり、また疑問があったりすれば、どこに連絡をすればいい、どこに行けばいい、そういう場所をつくっていただいても結構かと思いますが、常にそういった情報に住民がしっかりと接触できるような環境をつくっていただきたい、このようにも思います。それこそ、工事が長引けば長引くほどこの渋滞というのは続いてまいりますので、できる限り予定どおりの工期で終わらせるような対策もまたお願いをしたいな、このように考えております。

 続きまして、同じ一号線、原宿の交差点よりも東京側でございますが、バイパスができました。その前の旧道の一号線に不動坂の交差点という交差点がございます。ここは、東海道本線戸塚駅で、あかずの踏切とよく言われております大踏切がございます。踏切があかないということで、当時の吉田茂首相がしびれを切らし、ワンマン道路と言われておりますけれども、踏切を渡らなくていいように線路の上につくったワンマン道路がある交差点、そのスタート地点でございます。

 不動坂交差点は、同時にまた、瀬谷柏尾道路という戸塚区、泉区、瀬谷区を結ぶ一つの幹線道路のスタート地点でもございまして、要は、一号線、またワンマン道路、そしてワンマン道路が今横浜新道、そしてバイパスにつながるわけでございますし、また瀬谷柏尾線、主要な道路が重なる交差点でありまして、ここも一つの戸塚区内における渋滞をする場所でございます。

 これは、戸塚駅から上がってくる車もここを通りますし、また、その後一号線をずっと横浜市内、関内地区に向かう車も通るということでございまして、ここも改良工事の予定があるということを聞いております。ここの改良工事についても、当初予定をされていた内容と比べましても、さまざまな今議論があるのではないか、このように聞いておりますけれども、この点に関して、今の状況、そしてまた今後の見通しというものがあれば教えていただきたいと思います。

宮田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のように、不動坂交差点も非常に渋滞の激しいところでございまして、渋滞の損失時間が、県内の主要地方道以上で見ますと上位一割以内に位置する渋滞ポイントでございます。

 いろいろな計画がございました。今の状況を御説明いたします。

 横浜市の事業でございますが、横浜市では、平成九年度に立体交差として事業化し、これまでも用地取得を推進してきたところでございます。JR東海道本線を地下横断する先の国道一号の四車線化、そういうもの等によりまして、当初推計しました将来交通に変更が生じるという状況でございます。立体交差は直進の方で計画されておりましたが、右左折の交通容量を増加させる平面交差のどちらが効果的か、今、横浜市の方で検討をされておるというふうに聞いております。

 横浜市からは、当該交差点の渋滞は著しいことから、今年度中に交差構造を決定し、来年度には事業化を図りたいと聞いております。国土交通省といたしましても、横浜市からの要望に基づき、必要な支援をしてまいりたいと考えております。

坂井分科員 ここの事業も国のお金が半分以上入るだろう、こう言われていると思いますので、ぜひ御協力をお願いいたしたいと思っております。

 もう一つ、大変渋滞の場所が多い戸塚区でございますが、その渋滞を緩和する大変大事な役割を果たしております環状三号線という道路に関して、進捗状況をお聞きしたいと思います。

 戸塚区には、今お話がありましたように、線路と、それから柏尾川という川が並行して流れておりまして、この二つを越える、すなわち南北に越えるというのが、この不動坂交差点の後が豊田立体という交差点でありまして、これを越える部分というのが、橋が大変に少ない、こういう町であります。不動坂そしてこの豊田立体という交差点が大変込むということで、渋滞をまた引き起こすということになりました。

 環状三号線というのはそれを緩和する大変大事な道路でございますが、要は、鉄道と川を渡る橋はあったのでありますけれども、この道路が、一号線、すなわち原宿の交差点につながる、一号線につながる、こういう予定ではありますけれども、今途中でとまっている、こういう状況でございます。

 これも市の事業かと思いますが、こういったことの中で、今の現状の進捗状況を教えていただくと同時に、また、速やかに事業が進むよう御協力をお願いしたいと思いますが、進捗状況を教えていただければと思います。

中島政府参考人 環状三号線の進捗状況についてお答えを申し上げます。

 横浜環状三号線は、横浜市磯子区杉田五丁目、国道十六号から都筑区佐江戸町の県道川崎町田線に至る延長約二十八キロの環状道路でありまして、四車線の道路として都市計画決定をされております。

 横浜市により順次整備が進められておりまして、現在までに約十七キロが供用、整備率で申しますと約六二%でございます。

 未整備区間が十一キロ残っているわけでございますが、このうち、現在、横浜市栄区長沼町から戸塚区の汲沢町までの延長二・六キロの区間について、平成元年度から横浜市が街路事業によりまして整備を進めております。八百五十メーターが部分供用しておりまして、十八年度末までの進捗率で申しますと約七一%となる見込みでございます。

 残る事業中区間でございますが、平成二十二年までに長沼町から国道一号までの部分供用を目指して整備が進められておりまして、平成十九年度、来年度も引き続き用地買収、街路築造工事を行う予定と聞いております。

 国交省としましても、市の要望を十分に踏まえまして、適切な支援をしてまいりたいと思っております。

坂井分科員 どうもありがとうございます。

 横浜市とも協力をいたしまして、そして、戸塚区内、大変住みやすい、そして渋滞のない道路環境をつくってまいりたいと思っておりますので、また今後ともの御協力をお願いしたいと思います。

 最後になりますけれども、横浜市の河川整備事業に関しまして御質問、また理由をお聞かせいただきたい、こう思っているわけであります。

 平成十九年度の予算ということでありますが、河川整備都市基盤改修事業という名前かと思いますが、国が三分の一、県が三分の一、市が三分の一、こういった割合で進めるというこの事業が、横浜市が要望額に比べまして五億八千九百万円の減額だ、こういうことの説明があったということをいただきました。

 それを受けまして、地元の市会の議員の方が詳しい説明を横浜市に求めたところ、どうも、和泉川、阿久和川、護岸整備を初めとするこの二つの川の整備事業というものが実は減額の対象になり、そして和泉川の事業は行われなくなる、また、阿久和川に関しては規模を縮小してしかできない、こういうような説明が市の当局からあったということでございました。

 しかし、この和泉川という川にいたしましても阿久和川という川にいたしましても、実際のところ、まだまだ護岸整備を初めとする整備事業が必要な部分があるということが明らかであるわけでありまして、河川整備が必要な状況がありながら、一方で減額をされる、予算がつかないということの内容、また、今の横浜市の河川事業の環境といったものも含めて、どのようなお考えなのか、お聞かせいただければと思います。

門松政府参考人 お答えいたします。

 まず、国全体の河川事業予算でございますが、公共事業の削減によりまして非常に厳しい状況にあります。一方で、最近の異常気象等によりまして大規模な災害が多発している。こういうことで、二重苦の状態にありまして、より一層の効率的、効果的な河川整備が求められているところでございます。

 委員御指摘の、横浜市におきますこの二河川の改修でございます。効率的、効果的に河川改修を進めている観点から、遊水地の整備を十六年、十七年と重点的に投資してまいったところでございますが、遊水地につきまして、両河川とも十七年度までに整備が完了いたしまして、即供用を開始しているところでございます。十八年度の予算でございますが、次の事業のための用地取得という段階に入りまして、結果として減額になっているというふうに認識しております。

 いずれにいたしましても、横浜市など、人口、資産の集中する都市河川の整備は重要であると認識しておりまして、国土交通省といたしましても、今後とも、予算の重点化に努めまして、効率的、効果的な整備を図ってまいりたいというふうに考えております。

坂井分科員 どうもありがとうございました。

 きょうは、駅、そして道路、また河川ということで質問させていただきましたけれども、それぞれ、整備のために御協力をいただきまして、よりよい環境をつくっていくために努力をしてまいりたいと思いますので、今後とも御協力をよろしくお願いいたします。

 どうもありがとうございました。

赤松主査 これにて坂井学君の質疑は終了いたしました。

 次に、古屋範子さん。

古屋(範)分科員 公明党の古屋範子でございます。

 大臣、きょうは長時間の質疑、お疲れさまでございます。

 本日、私からは、観光立国推進への取り組みにつきましてお伺いをしてまいります。

 観光は、二十一世紀の国づくりの重要な柱であります。これまで、公明党といたしましても、観光の振興というものに積極的に取り組んでまいりました。二〇〇三年七月には、観光立国の戦略的な展開を求める二十の提言を発表いたしました。この中で、観光担当大臣の任命などの提案によりまして観光立国担当大臣が誕生したほか、予算の大幅な増額、中国の観光ビザ発給地拡大、また通訳ガイド増員のための試験制度の見直しなどに取り組んでまいりました。

 現在、我が国では、観光立国の実現に向けまして、日本の魅力を海外へ戦略的に発信するビジット・ジャパン・キャンペーン、歌やさまざまなグッズがあるようでございますが、行っているところと聞いております。

 冬柴大臣も就任会見の際に、二〇一〇年に外国人観光客一千万人を目標にするということをおっしゃっています。これは、東京だけでなく、各地方で受け皿づくり、また受け入れのための施策をとっていかなければならないというふうに述べられています。昨年は推計七百三十万人、前年比九%増とふえているわけでありますが、初めて七百万を突破するということで、着実に成果を上げていらっしゃると思います。

 一千万人の目標達成のためには、旅行者のリピーターをふやすことが重要であろうと考えております。そのためには、来日する外国人向けに案内標識をより魅力的なもの、また、わかりやすいものにすることが肝要であろうかと思います。多言語による街頭や駅の案内板の整備、また、ネットを通じた情報検索や予約など、ひとり歩きができる環境を整備していくことが大事であると考えます。

 そこで、国交省は今年度、こうした環境整備のため、最新の携帯機器を使った名所旧跡についての情報提供を行うまちめぐりナビプロジェクトとして、全国二十五カ所で実証実験を行っているとのことでございます。初めにこの取り組みについてお伺いをいたします。

柴田政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま、まちめぐりナビプロジェクト、ナビゲーションプロジェクトでございますが、政府の目標でございます二〇一〇年までに訪日外国人旅行者数を一千万人、この実現のためには、旅行者が旅行しやすい受け入れ環境を整えることが大変重要であるというふうに認識しております。

 観光情報の提供手段につきましては、従来型の観光案内所、また案内標識、パンフレットなどの媒体、これらにつきましても、多言語化、また、ピクトグラム化と申しまして絵で一目で見てわかるような、こういったことも重要でございますが、それだけでは提供できる情報の量や即地性などの点で限界があるというふうに認識しておりまして、外国人を含む旅行者の利便性の向上のためには、インターネットや携帯情報端末、こういったITを活用した情報提供が大変有効であるというふうに考えております。

 こうした観点から、国土交通省では、インターネットや携帯情報端末などのほか、既存のものも含めまして、さまざまな観光情報提供手段が相互に補完、連携できるようにするためのITを活用した情報提供システムの実証実験を今年度から実施しているところでございます。

 例えば、日本橋では、名所旧跡やしにせの商店などの観光情報を携帯端末から入手できる実証実験を行いましたほか、山梨県の富士河口湖町では、地域のさまざまな観光情報を集約いたしました観光データベースを構築いたしまして、これと域内の観光施設をネットで結び、域内二十六カ所で観光情報を提供するとともに、外国語を話せる観光ボランティアが自宅にいながら町歩きをしている外国人観光客に対して携帯電話で観光案内をするなどの実証実験を行っているところでございます。

 今後とも、引き続き、外国人を初めとする観光客が安心してひとり歩きできる環境を整備するため、こうした取り組みを推進していきたいというふうに考えてございます。

古屋(範)分科員 さまざまな取り組みをしていらっしゃるということでございますが、二月二十六日月曜日の朝日夕刊の一面トップにその模様が報道されております。

 日本橋で、携帯ゲーム機器を使って案内をするということでございまして、単純に、おもしろそうな感じがいたします。このネット調査でも、歩き回って何かを見つけるのによいですとか、音が小さくて屋外では聞こえないとか、現在位置が表示されずわかりづらい、いろいろな不満もございましたでしょうが、非常に画期的な試みをしていらっしゃるというふうに感じます。

 IT社会も情報社会ということでございますが、私も、一年近く総務省で郵政、情報通信の分野の仕事に携わらせていただき、IT社会と申しますと非常に冷たいとか暗いとか、一方でそういうイメージがあるように思いますが、一昨年十二月に竹村真一京都造形芸術大学教授が主催をされたイベントに参加をいたしまして、情報社会というのは、実はぬくもりのある社会である、多くの人の知恵、高齢者の知恵なども実際にどこにいても手にすることができる、そういった、実際には非常に人間的な社会なのだというような発想を伺いました。

 そのときも、さわれる地球、そこにさわると、その国では一体今何時で、どういうところにあるかというようなことが一瞬にしてわかる、あるいは、フランス製のコップをテーブルに置きますと、そのテーブルに、フランスが何時で月が出ているとか、そういうものがばあっと机に広がってくるというようなもの。また、携帯を使いまして、自分が歩いている町並みの歴史やそこを通った人の置き手紙を読むことができるというシステムですとか、これから春になりますけれども、桜前線も俳句に託してその土地に住んでいる人のメッセージが送られてくるなどなど、実際、パソコンですとか携帯というのは機械ですが、この機械を通して、その先に、人間を感じさせてくれるさまざまなデザインを紹介していただきました。

 こうした環境の実現は、私たちが目指す、だれでも、いつでも、どこでも情報にアクセスできる、まさにユビキタス社会の実現につながると思います。ユビキタスは、情報革命であると同時にまちづくり革命だというふうに考えております。私は、このユビキタスIT技術が魅力的な地域づくりに活用されることを期待しているところでございます。

 次に、観光立国の実現に向けましての課題についてお伺いをしてまいります。

 基本法の中で、国が行うべき基本施策に国際観光の振興があり、その施策はさまざまでありますが、中でも受け入れ体制の充実ということが大変に重要であると考えております。

 外国からの観光客、また訪日間もない日本で生活をしている多くの外国人にとって一番心配なのは、コミュニケーションの問題、すなわち、言語が通じるか否か、言葉の問題であると思います。

 言葉の支援が最も必要と感じるのは、病院、学校、住まい探しなど、医療、教育、不動産の三つの分野が多いと外国人の方々からは声が上がっております。これらの多くのところでは、案内文書、また説明文書類でさえ多言語化されていないため、外国人は大きな不安を抱いている現状がございます。

 先日も、公共サービスの窓口において、外国人でも対応できるように特に指示されていないので、日本語のわかる人を同伴してくださいと言って、日本語のわからない外国人だけで来ることを拒否したという事例を耳にいたしました。

 これは観光だけの問題ではありませんが、日本での生活、また観光について、言葉の側面で安心できるようなソフトインフラの整備が必要であると考えます。

 ここでは、観光という側面からお伺いをしてまいります。

 推進基本法の第十七条に、外国人観光旅客の来訪を促進するため、「通訳案内のサービスの向上その他の外国人観光旅客の受入れの体制の確保等に必要な施策を講ずるものとする。」とありますが、具体的にどのような取り組みがなされているのか。国交省は、地域限定通訳案内士制度を創設されました。通訳人材の確保に取り組まれていることと思いますが、その進捗状況についてお伺いいたします。

柴田政府参考人 お答え申し上げます。

 通訳ガイドにつきましては、外国人旅行者に対する接遇の向上のほか、日本をよりよく理解してもらうことによる国際相互理解の増進といった観点からも、大変重要な課題であるというふうに考えております。

 ただ、一方で、ビジット・ジャパン・キャンペーン等を通じまして着実に訪日外国人旅行者がふえる中で、中国、韓国などアジア諸国からの旅行者に対応できる質の高い通訳ガイドの数が不足するなどの問題が生じてきているのも、またこれも事実でございます。

 こうした状況にかんがみまして、通訳ガイドの充実を図る観点から、通訳案内業法、外客誘致法を改正いたしまして、通訳案内士制度の免許制から登録制への変更、また、先生御指摘ございました地域限定通訳案内士制度の導入等の制度的な枠組みの整備を図ったほか、試験の免除制度、例えば英検の一級に合格された方についてはそれは免除するとかそういうことでございますが、また、海外での通訳案内士試験の実施などを行ったところでございます。

 こうしたこともございまして、通訳ガイド試験の合格者数は、平成十五年は三百三十一人でございましたが、今年度、平成十八年度につきましては一千百三十七人ということで、三・四倍に増加しております。

 また、地域限定通訳案内士試験でございますが、今年度はまだ実施するところがございませんでしたが、十九年度からは岩手県、静岡県、長崎県、沖縄県の四県で実施する予定というふうに承知しております。加えまして、既存の有資格の通訳案内士の技能の向上を図ります観点から、通訳ガイドのスキルアップ・プログラム、こういったものの策定検討会を設けまして、研修プログラムの策定作業を進めているところでございまして、今後、通訳案内士の技能向上を図る観点から、その周知、活用、普及を図ってまいる所存でございます。

古屋(範)分科員 さまざまな観点から通訳ガイドがふえるように今施策をとっていらっしゃるということがよくわかりました。

 また、この地域限定通訳案内士に関しましては、十九年度四県で実施をされていくということで、さらなるこうした人材の輩出というものが期待されるかというふうに思っております。

 こうした制度が導入されても、なかなか、何百人単位という人数でございまして、一千万人の外国人観光客を受け入れるのに、非常にそれは大変だなということでございます。

 そこで、私、昨年八月、阿蘇に行ってまいりまして、ここの観光センターなんですが、ASO田園空間博物館総合案内所というところがありまして、阿蘇は多くの外国人観光客が訪れているところでございますが、ここの案内所には、インターネットを利用したテレビ電話による通訳サービスというものを入れておりました。入り口にボランティアの女性、本当に地元の方なんですが、いらっしゃって、案内の窓口に、マイクとかカメラを取りつけた外国人用とスタッフ用の二台のパソコンが、本当にパソコンが二台設置をされているだけの簡単な装置であります。

 案内所を訪れた外国人の方々は、英語、韓国語、中国語、先ほども中国語、韓国語の需要が多いということでございましたけれども、希望する言語を自分で選択する。そうすると、自宅で待機をしている通訳者がこの二台のパソコンの画面にあらわれて外国人観光客とやりとりをする。阿蘇山に行くにはどうやって行ったらいいかとかさまざま。非常に難しいのは、忘れ物をしたなど話が複雑になってまいりますと、どうしても人間のといいますか、通訳が必要になってくるということでございます。

 地元にいる方は、本当にボランティアの方ですので、ほとんど外国語というものができないわけなんですね。最初だけ、イングリッシュですかと言って、そこをクリックしますと、その後は通訳とのコミュニケーションでやりとりが足りるということがございました。このようなシステムもございます。

 そんなに最先端の技術を使ったものでもなく、非常にシンプルなもので、その先に人の手もかりながらということでこのようなシステムを活用している観光案内所もございました。

 こういうところは、これから一千万人の外国人を受け入れるということになりますと、地方においては、通訳者の確保、それも英語、中国語、韓国語、非常に大変だと思います。そういう中で、安価に、それほど経費もかからず、また、通訳する側も、日本じゅう、それこそ北海道にいようが、どこにいても通訳をすることができる、非常に一石二鳥のシステムではないかなとそのとき感じました。

 通訳ガイドを確保すること、非常にこれも重要なことでございます。しかしながら、現実は、さまざまな言語を習得している通訳の人材はいても、日本の伝統、文化、幅広い知識を要する通訳案内士の試験を受ける人というのは非常に少なく、通訳としての能力を持つのは女性が多いということで、全国に散らばっていて、やはり女性の場合には家事、育児などもございますので、なかなかその能力を一〇〇%発揮するということが難しいわけであります。

 こうした能力を生かす働き方がこのインターネットを利用したテレビ電話による通訳サービス、これも私、政務官時代に特に力を入れてきた課題でもございます、自宅で仕事ができるというテレワークに通ずるものの一つではないかというふうに思っております。

 今までの受け入れ体制は、ITの活用というものを考えずに人材を育成する、確保するという方向性だと思いますが、この阿蘇のように、ITを利用した、こうした多言語による情報提供、通訳が可能となる観光案内所、これをもっともっと全国に広げていってはどうかというふうに考えます。

 大臣、これについての御感想をお聞かせいただきたいと思います。

冬柴国務大臣 所管の観光についてたくさん質問いただきまして、ありがとうございます。

 観光立国基本法におきまして、二十一条には「情報通信技術を活用した観光に関する情報の提供等に必要な施策を講ずるものとする。」というようなものがありまして、今、いろいろのお話がありましたような点で非常に重要だと思います。

 観光立国の実現のためには、多くの外国人旅行者が日本へ来ていただかなきゃならないわけでございますが、そのように訪れられた外国人観光客が安心して快適に観光ができ、地理に不案内な外国人観光客が目的地まで安心してひとり歩きができる環境を整備するということが重要でございます。

 外国人だけではなしに日本人でも、地方からぽっと出てきて、銀座ですね、銀座通り、これは平面ではなしに地下もありまして、多層です。そういうところで、また晴海通りとも交差していまして、大変繁華で、そこにはいろいろなお店もありますし、食べるところもあれば、それからお便所がどこにあるかということも大切な話ですね。こういうものについても、過日、ユビキタス、この実証実験が行われまして、外国人だけではなしに日本人もそのようなものの恩恵を受けられるようなことがしてあります。

 それから、神戸空港は全面的にユビキタスが採用されていまして、外国人はもとより日本人の聴覚障害とか視覚障害の方もこのユビキタスで目的地へ行ける。もう驚くべきITの発達というのはすごいもので、これはやはり活用しなきゃならないと思います。

 それで、このITを活用した観光情報の提供が重要であることは観光立国基本法のとおりでございまして、これまでもITを活用した外国人観光客への観光情報の提供を観光ルネサンス事業ということで、民間の人の取り組みについて国土交通省からの助成が行われるわけでございます。また、まちめぐりナビプロジェクトとか、いろいろ積極的に支援しているところでございまして、先ほど古屋委員からお話がありました熊本県の阿蘇市の事業も観光ルネサンス事業で三千万円ですか、というようなところで、英語、中国語、韓国語、三カ国語により行っているところでございまして、これからも観光ルネサンス事業等で観光分野におけるITを活用した取り組みを推進していきたい、このように考えております。

古屋(範)分科員 ありがとうございました。

 まさにひとり歩きができる観光ということで、大臣からITを活用した取り組みの推進への御決意を伺うことができました。

 今までは、例えば、旅行会社に行って、そこにたくさんのパンフレットが並んでいて、そこから選んで、どこに行こうか、そこの窓口でいろいろとやりとりをして、いついつ、ツアーで何十人、ガイドさんのもとにというような旅行が多かったかと思いますが、これからはやはりネットで自分で、この国はどうなのか、あるいは、本当にピンポイントで日本の何々県のどこどこの温泉、それを海外の方がサイトを見て、そして、いついつ、ここの宿に行きたいというような、そういった一対一の観光といいますか、そういうものがこれからは非常に主流になってくるかと思います。

 そのためにも、ITの利活用に応じた施策というものを万全を期していくことが必要なのではないかというふうに感じております。

 先ほどもちょっと触れました通訳の方の在宅勤務といいますか、テレワークについて次に質問させていただきます。

 ちょうどこれは二月の二十四日、先週の土曜日の読売の一面、「家事と両立 在宅ワーク」ということで、テレワークについての記事が載りました。

 この方は、岩手県で子育てをしながら、パソコンに向かって自宅で仕事をされているということでありまして、九時―五時、フルタイムでの勤務、独身時代にはそういう勤務をし、そして子育てをしながら今は自宅でそういう勤務をし、ライフステージに合わせて多様な働き方を可能にする、これがテレワークだろうと思っております。

 私もこのテレワークの普及というものを推進してまいりまして、在宅勤務、場所と時間にとらわれない働き方、これがこれから非常に重要な働き方だというふうに感じております。

 二〇〇五年度の政府のテレワークの取り組み状況を見ますと、既に、国土交通省におかれましては、テレワークの試行実施をされています。そして、来年度予算にこのテレワーク普及関連予算といたしまして三千五百万円が計上されております。テレワーク導入に対しましては大変熱心に取り組んでおられるものと考えます。

 省内のテレワーク導入の状況についてお聞かせいただきたいと思います。

中島政府参考人 昨年度、十七年度に四名の職員で初めてやってみました。今年度、続きまして五名の職員、ことしは女性も三名御参加いただきまして、具体的に育児というテーマをこの間、設けまして、育児について事情を抱える職員を募集して現在実施中であります。二月半ぐらいの期間でございますけれども、週に一回から二回程度はテレワークをやってくださいということで今試行しているところでございます。

古屋(範)分科員 安倍総理も施政方針演説の中でテレワーカーを倍増するということを明言していらっしゃいますし、また、政府のIT新改革戦略の中でも、二〇一〇年までにテレワーカーを就業人口の二割に持っていくということを目標に掲げています。総務省では既に昨年本格導入を始めまして、七名の省員が今テレワークをしています。また、十九年度は三十人に拡大するということを伺っております。

 こうした中で、国土交通省での平成十七年度テレワーク実態調査によりますと、就業者全体に対するテレワーク人口は一〇・四%でありました。三年前に比べますと一・六倍にふえてはおりますが、既に普通の働き方になりつつある、民間ではもうデスクがないというところもございますが、欧米先進諸国と比べますとまだまだという感があります。

 IT戦略会議でも二〇一〇年までにテレワーカーを就業人口の二割にするという目標もありますし、安倍総理も先頭に立ってこのテレワーク人口の倍増を目指すとおっしゃっているときでございます。さきの予算委員会集中審議でも、テレワークについて、公務員においてテレワークを行っている者も人事管理の上で差別をしないと総理は明言をしてくださいました。

 冬柴大臣、このテレワークという働き方につきまして御感想を伺いたいと思いますし、また、国土交通省におかれましてもぜひ積極的な取り組みをお願いしたいと思います。いかがでございましょうか。

冬柴国務大臣 実は、私、もう三十年ぐらい前になると思うんですが、私の法律事務所で、ファクスが普及したのとそれからワープロですね、それまでタイプライター、タイピストがカチャカチャやっていたんですけれども、もうこれは必要ないんじゃないかということで、実は、自宅で打っていただいたら結構だと。それで、こちらで原稿を書いたものをファクスで送って、向こうで自宅で打って、そして、多ければ夜までやっているようですけれども、通勤時間が要りませんから、非常に助かるということを言ってもらったのがもう三十年近く前になります。これはもうテレワークそのものだと思うんですね。

 このごろは物すごく通信機器とかいろいろなものが発達していますから、これはこれから、特に都心で働く方々の通勤時間というのは、毎日が旅行のような時間を費やす人もあるわけでございまして、それも混雑がひどいということになれば、私どもの国土交通省も二名の男性の職員の方がテレワークをやっていただいていますが、非常に遠いところから通っておられる方ですけれども、大変助かるという感想でございます。

 それから、何といっても女性の活躍の場を広げる意味で、育児、介護に携わる方々、高齢者や障害者などを抱えながら働いておられる方、また、そういう方々自身が意欲と能力があれば、通勤していただかなくても、そういう人材、高齢者や障害者などの人材の就労機会を拡大するということもありますので、これからも公務員テレワークの本格導入に向けてまず取り組んで、そして積極的にこれを民間にも広げて、あらゆるところでテレワークというものが普及するように頑張っていきたいなというふうに思っております。

古屋(範)分科員 大臣のテレワークに対する積極的な御答弁を伺うことができました。大変ありがとうございました。今後とも、ぜひ推進をしていただきたいと存じます。

 以上です。終わります。ありがとうございました。

赤松主査 これにて古屋範子さんの質疑は終了いたしました。

 次に、近藤三津枝さん。

近藤(三)分科員 前回の通常国会でも、この第八分科会で質疑に立たせていただきました。その際に、国土交通大臣からは、国土形成計画の全国計画を定め、これを基本とし、地域の特性を生かした広域地方計画を策定していきたい、特に、近畿ブロックにつきましては、歴史的にもつながりの深い、発展する東アジア経済圏をどう近畿圏の地域づくりに生かしていくかを大切にして、広域地方計画を策定していく必要があるという大変力強い御答弁をちょうだいいたしました。

 本日は、これらの施策がさらに具体的にどのように推進されているのか、私からの提案も含めて、質問をさせていただきたいと思います。

 まず初めに、国土形成計画、特に広域地方計画の策定について、冬柴大臣にお伺いさせていただきたいと思います。

 国土形成計画の全国計画につきましては、本年中ごろを目指し、閣議決定されると理解しております。また、広域地方計画につきましては、全国計画を基本とし、全国八つのブロックについて、平成二十年中ごろをめどに決定される予定というふうに伺っております。

 昨年十二月には、冬柴大臣の御出席のもと、大阪で第一回近畿圏広域計画検討会議が開催されました。具体的な計画策定に向け、キックオフされたものと感じております。

 早速ですが、広域地方計画の策定に当たりまして、ぜひ計画に盛り込んでいただきたいことがございます。

 御案内のとおり、京都議定書の第一約束期間は来年二〇〇八年からでございます。CO2を初めとした温室効果ガスを一九九〇年レベルのマイナス六%の目標達成に向け、いよいよ国際的な約束を果たしていかなければなりません。私は、環境委員会そして経済産業委員会に所属しておりまして、その動向に注目しております。

 現状を見てみますと、産業界につきましては、自主行動計画を策定しております。自助努力に励み、不足分は京都メカニズムを活用しようという動きもあります。業界によっては、CO2の削減目標をさらに高水準に設定するという大変前向きな努力も払われております。このような取り組みによりまして、産業部門のCO2の排出量、一九九〇年に比べまして、二〇〇五年はマイナス三・二%と、排出削減が進んでおります。

 これに対しまして、家庭の方を見てみますと、一九九〇年に比べますと三七・四%、オフィスなどの業務部門は四二・二%、運輸部門は一八・一%とふえています。この結果、我が国全体のCO2の排出量は、二〇〇五年は一九九〇年レベルに比べますとおよそ八%もふえていることになっております。

 すなわち、当初の削減目標の六%、その後の増加分の八%、これを加えますと、CO2排出量を現況より一四%も削減しない限り、目標は達成できないという厳しい状況に追い込まれている、これが今の日本でございます。

 このような現状を踏まえ、温暖化対策に国全体で取り組むことはもちろん重要です。持続可能な地域づくりの視点から、広域ブロック単位で取り組むべき施策も数多くあると考えております。例えば、広域ブロックの中では、CO2の排出を抑える電力供給システム、広域リサイクルシステム、公共交通の整備やその利用促進策、内航海運などを活用した輸送システムなどです。

 このような施策を効果的に推し進めるために、広域地方計画の中に、ブロックごとの現在のCO2排出量、そして将来のブロックごとのCO2削減目標を明らかにしていただきたい。そして、これらを実現するために、地域づくりの視点から、地域の特性を踏まえた具体的な地球温暖化防止対策を盛り込んでいただきたい、このように考えております。

 私は、今回の広域地方計画の策定が、我が国で初めての本格的な広域ブロック単位の計画であると考えております。本年中ごろに閣議決定されます全国計画には、広域地方計画に盛り込むべき視点が位置づけられると承知しております。

 以上の観点から、関係各位の連携のもと、先ほど申し上げました広域地方計画にブロック単位の地球温暖化防止目標の明示などが全国計画に盛り込まれるよう努めていただきたい、このように考えておりますが、冬柴国土交通大臣の御所見をお聞かせいただけますでしょうか。

冬柴国務大臣 御指摘の国土形成計画、全国計画というものをことしの中ごろには決定したいということでございますが、そのために国土審議会計画部会で検討が行われております。昨年十一月に取りまとめられました計画部会の中間取りまとめの中におきまして、両計画の達成に向けて、貨物輸送の効率化、それから輸送機関の低公害化等の温室効果ガス排出削減対策とともに、森林の整備、保全や都市緑化等の吸収源対策を進めることの必要性が指摘されているところでございます。

 また、温室効果ガスの排出削減等につきましては、平成十七年四月に閣議決定されました京都議定書目標達成計画及び平成十八年四月に閣議決定された環境基本計画に基づき、政府一体として取り組んでいるところでございますので、そのようなことを総合いたしまして、全国計画の策定に当たりましては、地球温暖化対策への取り組みを積極的に位置づけていきたい、このように思います。

 これを受けまして、広域地方計画が、例えば近畿であれば二府四県が一体となってこれにどう取り組むのかということは、地方が中心になって自主的、自立的に取り組まれますけれども、その際、我々が示しました全国計画というものを下敷きにしていただきまして、このような御指摘いただきました地球温暖化効果ガスの排出削減等についても当然配慮されるものと期待をいたしております。

近藤(三)分科員 大臣から御答弁いただきまして、本当にありがとうございます。

 地球環境問題は、政府を挙げて取り組むべき課題、重要な課題でございますが、次の世代によりよい地球を残していくために、広域地方計画、環境に配慮した地域づくりの視点、欠かすことができないと考えております。ぜひ冬柴大臣には、関係大臣と御連携いただきまして、本件について前向きな御対応をお願いし、次の質問に移らせていただきます。

 次に、今後の近畿圏の広域地方計画の策定に当たりまして大変重要な視点と考えております、大阪湾を中心とした地域連携についてお伺いさせていただきます。

 その第一が、阪神港の一開港化についてでございます。

 国土形成計画の中間取りまとめを見てみますと、アジアとの人、物、情報の迅速かつ円滑な流れ、すなわちシームレスアジアの実現が求められております。

 この点につきまして、近畿ブロックを考えてみますと、第一に、スーパー中枢港湾であります阪神港のアジア・ゲートウェイの機能を強化すること、これが重要かと考えております。このためには、神戸港と大阪港を手続面などで一つの港として取り扱うことができる一開港化を早急に行う必要があると考えております。

 この点につきまして、関西では、全国に先駆けまして、関西経済連合会の秋山会長を本部長とします国際物流戦略チームにおきまして、産学官が一体となり議論を深めています。特に、昨年八月に大阪で開催されました国際物流シンポジウムでは、国土交通大臣から、大阪湾の港を一開港化していきたいという御表明があったと聞いております。

 そこで、お伺いさせていただきます。

 阪神港の一開港化の実現時期、そして一開港化によります効果について、具体的に教えていただけますでしょうか。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、阪神港の一開港化につきましては、平成十八年三月に、関西において産学官の関係者によりまして設置される国際物流戦略チームにおきまして、広域連携を通じた国際競争力強化に向けた提言という形で取り上げられております。そして同年四月には、関係省庁にその内容を要請されております。

 国土交通省におきましては、大阪湾諸港の一開港化につきまして、十九年中の実現を目指しまして、関係省庁と連携しまして、現在、既存の業務形態に配慮しつつ検討を進めているところでございます。

 現在、大阪湾諸港は、大阪港、大阪港と堺泉北港でございますが、それと神戸港、尼崎西宮芦屋港に分かれております。これらの港はアジア諸国と近いということから、多くの船舶が湾内の複数の港に寄港しております。

 大阪湾諸港の一開港化が実現されますと、湾内各港において、現在、一つの港に入港ごとにとん税、特別とん税が徴収されている状況が解消されることから、とん税、特別とん税の軽減が図られます。これらとあわせまして、港湾管理者が徴収しております入港料というものがございますが、これらの低減も予定されておりまして、湾内の複数の港に寄港する船舶が増加することが期待されます。

 またさらに、大阪湾諸港の一開港化を契機といたしまして、大阪湾諸港の包括的連携強化、これらのことに取り組むことによりまして、国際競争力の強化が図られるものと期待しております。

近藤(三)分科員 大変前向きに御答弁いただきまして、一開港化に向けてさらに強力に調整いただくことを望んでおります。ありがとうございました。

 続きまして、関西が我が国のアジア向けのゲートウェイとしてのポテンシャルを上げていくためには、大阪湾に集中しております港湾、空港、産業・業務機能を有機的に結びつけていくことがぜひとも必要です。その役割を中心的に担うのが大阪湾岸道路というふうに理解しております。

 これまでの関係機関の御努力によりまして、大阪湾岸道路につきましてはかなりの整備が進んでおります。しかし、前の質問の阪神港の一開港化の効果を上げるためにも、いわゆる大阪湾岸道路西伸部の整備が不可欠だと考えております。

 大阪湾岸道路西伸部は、御案内のとおり、神戸の六甲アイランド、それからポートアイランド、そして和田岬を横断し、長田地区に向かう道路であり、まさに神戸港を貫く基幹道路の計画でございます。この道路による港湾の利便性の向上、阪神間の産業・業務機能の増進、国道四十三号の環境対策などの観点から、国土交通省が持っておられます各種の道路整備の方法をうまく活用されて、早期に整備なさってはいかがか、このように考えております。

 大阪湾岸道路西伸部の整備に当たりましての各種道路事業の活用方針及び完成目標時期を伺わせていただけますでしょうか。

宮田政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、大阪湾岸道路、大阪に沿って臨海地域を広域的に連絡する全長約八十キロの自動車専用道路でございます。このうち、西伸部につきましては、六甲アイランドから名谷ジャンクションの約二十一キロを残して、五十九キロは既に供用してございます。

 この西伸部、この区間のうち、名谷ジャンクションから駒ヶ林南の約六・四キロにつきましては、平成六年九月に都市計画決定をしてございます。その間でございますが、駒ヶ林南から六甲アイランドの約十五キロにつきましては、平成十七年二月より、兵庫県において都市計画決定の前提となる環境影響評価の手続に着手しております。国としても、早期の計画決定に向け協力してまいる所存でございます。

 こういう段階でございますので、まだ都市計画決定ができておりませんので、完成時期がいつかという、明示する段階にはないと思いますが、都市計画決定後速やかに事業化が図れるよう、関係機関と引き続き検討を進めて、できるだけ早期の供用に向けて努力をしてまいりたいと考えております。

 なお、整備手法でございますが、有料道路事業それから一般道路事業などの手法が想定されますが、今後、事業化までに、兵庫県、神戸市等の関係機関とともに検討を進めてまいりたいと考えております。

近藤(三)分科員 公共事業を取り巻く状況、かなり厳しいことは認識しておりますけれども、関係機関でぜひ知恵をお絞りいただきまして、大阪湾のアジア・ゲートウェイの進展、地域のよりよい環境づくりのために、早期整備に向けて、地域の期待にこたえていただきたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 さて次に、関西の国際的な空の玄関口であります関西国際空港についてお尋ねさせていただきます。

 関西国際空港二期につきましては、関係者の御尽力によりまして、当初の完成時期を前倒ししていただきまして、本年八月二十五日から大阪で開催されます世界陸上選手権に間に合う八月二日の開港としていただきましたことを感謝申し上げます。本当にありがとうございます。

 関空二期供用によりまして、滑走路の保守点検などの問題も解決され、我が国初めての本格的な二十四時間空港となることが期待されております。

 そこで、関西国際空港のシー・アンド・エア輸送についてお尋ねさせていただきます。

 中部国際空港では、ことしの一月から、伊勢湾沿岸の工場で製造されましたボーイングの翼や胴体などを海上輸送し、これを中部国際空港から空輸する、シー・アンド・エア輸送が開始されたとの報道がございました。関空二期の開港によりまして、関空の二十四時間機能と容量の大幅な拡大を生かしたシー・アンド・エア輸送につきまして、具体的にどのような展開を考えておられるのか、国土交通省の御見解を聞かせてください。

鈴木政府参考人 ただいまお尋ねのありました関西国際空港でございますが、御質問のとおり、本年八月二日に待望の二本目の滑走路がオープンする運びとなりました。本格二十四時間運用の国際拠点空港となるわけであります。

 この意味は、先生からお話もありましたように、一本の滑走路だと、どうしても週に三日ほどメンテナンス工事のために深夜二時から五時ぐらいまで三時間クローズしなければなりません。このメンテナンス工事を二本だと交互にできますので、必ず二十四時間あけられるということになりまして、そうなりますと、特に貨物機にとっては、やはり深夜に飛ぶことが多いもので、大変便利な空港になります。したがいまして、航空貨物というのはこれからの関西国際空港の経営戦略上大変重要な分野だと、私どもも関空会社も今理解しているところでございます。

 そんな中で、お話がありましたシー・アンド・エア輸送でございますが、既に関空で幾つか事例がございまして、特に、陸路で運びにくい重量物、ガスタービン、発電機などが一番多いのでございますが、四十トンから百トンぐらいまでの大きさのガスタービン、発電機などをシー・アンド・エア輸送している事例がございます。これをもっと拡大したいということで、先ほどの御質問にもありました、地元の産官学の国際物流戦略チームでも一つのテーマとしてお取り上げいただいておりますので、私ども、地元一体となってしっかり検討して、シー・アンド・エア輸送の拡充に努めてまいりたいと思っております。

近藤(三)分科員 ありがとうございます。シー・アンド・エア輸送の利用拡大に向けまして、関西地区の、今御答弁にもありました国際物流戦略チームなどにおきましても、具体的な検討をこれからも進めていただくようにお願い申し上げます。

 さて、阪神・淡路大震災から十一年がたちました。私も当時、大阪市内で早朝の地震におびえ、その後、神戸市内を幾度も取材で回りました。当時は、陸上交通が地震発生直後ほとんど機能不全に陥りました。そんな中、被災を受けました中でも、使える神戸港の岸壁を使用しまして、大阪港などとの間で、人、物のピストン輸送がなされました。このとき、人、物の広域的な支援がいかに重要であるかを身をもって経験いたしました。

 災害対応は時間との勝負でございます。そして、日常的に使えている道路などの交通手段、電気、水道、通信などのライフラインが途絶した状況下で、いかにしてほかの地域から広域的な支援が迅速に得られるかがいかに重要であるか、このときに痛感いたしました。

 阪神大震災を教訓としまして、国では、現在、首都圏の川崎港の東扇島地区に、全国各地からの緊急物資の受け入れ先として、地震にも強い岸壁と、物資の搬入、搬出に利用できる広いスペースを持った基幹的広域防災拠点を整備されているというふうに伺っております。

 一方で、この教訓の原点でございます関西地区の、とりわけ大阪湾における広域防災拠点の整備に向けた取り組みが現在どのようになっているのか、お伺いさせてください。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の基幹的広域防災拠点でございますけれども、まず、首都圏では、川崎港東扇島地区で、平成十九年度中の供用に向けまして、現在、整備を進めているところでございます。

 一方、京阪神都市圏の基幹的広域防災拠点についてでございますけれども、まず、平成十三年六月、都市再生プロジェクト第一次決定で、必要性を含めまして適正配置を検討することとされております。これを受けまして、平成十六年三月に設置されました、有識者、近畿地方整備局、関係自治体などで構成されます京阪神都市圏広域防災拠点整備協議会、こういうものがありまして、これにおきまして議論されまして、平成十七年九月に堺泉北港の堺二区というところが基幹的広域防災拠点の適地だということがなされました。

 さらに、平成十八年二月には、港湾管理者である大阪府が、堺泉北港の港湾計画、これは港の長期計画でございますが、その中で基幹的広域防災拠点を位置づけたところでございます。

 国土交通省といたしましては、今後とも、先ほど述べました協議会などにおきまして、地元関係機関などとさらに検討、調整を進めてまいりたいと考えております。

近藤(三)分科員 広域の防災対策というのは非常に大事なことだ、国の重要な任務と考えております。関係機関と連携し、東京湾同様、大阪湾につきましても、一日も早く具体的な整備に着手していただきますよう、私の方からもお願い申し上げます。

 さて、これまで、広域連携による大阪湾の国際物流、道路機能、防災機能などについて質問してまいりましたが、もう一点重要なことは、大阪湾の水質環境です。その中でも、大阪湾の漂流ごみ問題についてお伺いさせてください。

 一方で、かなりいろいろなものが流れているわけなんですけれども、大阪湾など、内海の漂流・漂着ごみは、外洋からのごみ問題だけではなく、大阪湾に注ぐ多くの河川からの漂流物、それから海外からも入港しています船舶の影響など複雑な問題を抱えていると考えていいかと思います。

 大阪湾につきましては、平成十六年に、十年間を計画期間として大阪湾再生行動計画が策定され、これに基づき各種の取り組みがなされているというふうに理解しております。ぜひ、大阪湾につきましても、国、そして複数の湾に面した府県、また大阪湾に注ぐ河川が流れる府県も参加し、漂流・漂着ごみ対策を促進していただきたいと思っております。

 美しい大阪湾をよみがえらせるための漂流ごみに対する具体的な取り組み方針について、大阪湾再生行動計画を踏まえて、国土交通省にお伺いさせてください。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の大阪湾再生行動計画、これは、国と大阪湾周辺の府県、政令指定都市などから成る大阪湾再生推進会議によりまして、海の再生を推進するために平成十六年三月に取りまとめた計画でございます。その目的は、ごみのない美しい海岸線、海域の確保を目指しまして、その具体的な指標として漂流ごみの削減が位置づけられております。

 国土交通省といたしましては、船舶航行の安全の確保とか、海域環境の保全を図るということから、神戸港を基地港とする海洋環境整備船「いこま」と「紀淡丸」、この二隻によりまして、大阪湾の漂流ごみの回収を行っております。今後とも、大阪湾再生行動計画の目標実現を図るため、引き続き着実に実施してまいりたいと考えております。

 また、やみくもに船が走り回ってごみを回収するということではなくて、例えば、大阪湾の海面表層流を観測することによりまして漂流ごみの集まる位置を予測するなど、効率的なごみ回収のための技術開発も推進してまいりたいと考えております。

近藤(三)分科員 ありがとうございます。

 現在、関西国際空港から神戸空港の間の高速船が一日二十往復しております。美しい大阪湾が取り戻されますと、海外から初めており立った観光客が、海上空港である関西国際空港から神戸へ船旅を楽しめる、もっと快適に楽しめる、こういうことになると思うんです。大阪湾の浄化は海からの景観向上につながります。国土交通省が推進されていますビジット・ジャパンの目玉にもなると思っております。国土交通省の総力を挙げて、大阪湾の浄化に取り組んでいただきたいと考えております。

 さて、本日は、大阪湾を囲む圏域について、府県の枠を超えた広域連携による施策の展開の必要性について幾つか御質問をさせていただきました。全国計画、そして広域地方計画の策定を間近に控え、広域連携による地域の活性化、アジアの中における存在感ある地域づくりに、まさに国土交通省はリーダーシップを発揮される必要があるというふうに考えております。

 最後に、アジア・ゲートウェイとしての機能の充実が期待される大阪湾を囲む圏域について、広域地方計画の策定などを通じ、府県の枠を超えた連携施策をどのように推進されようとしておるのか、その方針について、国土交通省のお考えをお聞かせくださいますでしょうか。

渡邊政府参考人 お答えいたします。

 今後、我が国が人口減少局面などの制約条件がある中で経済成長を実現していくためには、成長を続けるアジアのダイナミズムを日本に取り込み、グローバル化の中で、アジアとともに成長するメカニズムを構築することが必要だというように考えております。

 その際、各地域が直接アジアとつながる視点が重要であると考えておりますが、特に大阪湾におきましては、関西国際空港、大阪港、神戸港などが立地しておりますことから、アジアと世界を結ぶかけ橋となるアジア・ゲートウェイを構築しまして、近畿圏の競争力を高めていく上で、これらの機能の広域的な連携を図ることが効果的であるというように考えております。

 委員御指摘の新たな国土形成計画の仕組みであります広域地方計画は、こうした広域的な連携をするための方策として有効であるというように考えております。広域地方計画は、御案内のとおり、現在作成中の全国計画を基本として、国の地方支分部局、関係地方公共団体、経済団体などの官民が一体となって広域地方計画協議会を設置して、アジア・ゲートウェイ構想など地域ごとの広域的な活性化戦略を定めていくものでございます。来年を予定しております広域地方計画の策定を通じて、アジア・ゲートウェイの構築に向けて、府県の枠を超えた連携が推進されることを期待しておりますし、私どもとしても応援してまいりたいというように考えております。

近藤(三)分科員 近畿ブロック、とりわけ大阪湾を事例とし、道州制などの動向も視野に置きまして、広域連携の必要性について、御質問そして御提案をさせていただきました。そのかなめであります、リーダーシップを発揮しておられます冬柴国土交通大臣のますますの御指導を期待しております。

 質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

赤松主査 これにて近藤三津枝さんの質疑は終了いたしました。

    〔主査退席、三ッ矢主査代理着席〕

三ッ矢主査代理 次に、松野頼久君。

松野(頼)分科員 民主党の松野頼久でございます。

 きょうは、分科会にて質問をさせていただく機会を与えていただきましたこと、ありがとうございます。

 きょうは、幾つか私の地元熊本で起こっています河川改修工事に伴う用地取得に関する若干の混乱ということに関連をしまして、その関係の質問をさせていただきます。

 まず、大臣、白川という川がございまして、その川の流域が一級河川の直轄事業の対象となっております。

 そして、まず、ちょっとお配りをさせていただいた資料の二を見ていただきたいというふうに思うんですが、いわゆる大江地区というところで約六百メートル区間の改修工事、この事業の施行は、平成九年十月から鋭意用地交渉に当たったということを資料二、資料三に記させていただいております。

 その当該の用地買収に当たる方、Aさんが、この事業が始まったことによって非常に大きな損害を受けているということであります。そして、決してAさんは売却をしたくないということを全く言っているのではなくて、私も公共の福祉のために売却をしたいと。しかしながら、国交省のさまざまな交渉の過程の中でボタンのかけ違いがあって、非常に内容がこじれてしまった。後で御紹介します地権者が三十八名いる方の物件も同じような、全く違う事例ですけれども、やはり国交省とのやりとりの中で、長い年月の中で、ボタンのかけ違いがあり長引いているという案件でございますので、ぜひ聞いていただきたいと思います。

 そのAさんから文書が来ておるんですけれども、要は、平成八年六月から始まりました私の所有する物件の買い取りに関して経緯を明らかにさせていただきたいということです。

 平成八年六月十八日、公民館において説明会が開催をされました。二〇〇一年、河川改修が完了した完成予想図のパンフレットがございました。これをどのように使用されるのか説明会で質問をしたところ、繁華街で配布をするということだった。そのパンフレットを見ると、パンフレットには、自分の所有をしている賃貸ビルが消滅をした形で改修工事の完成図がかいてあった。これは大変だということで、こういうパンフレットが配られたらばテナントが出てしまうから、これは配らないでほしいということを国土交通省の、当時の建設省の方に言ったということなんですね。もしそれで強制されるのなら、必ず補償をするとの前提で実行してくださいと。

 当然のことだと思います。あと何年かで消滅をしてしまうビルに新たなテナントが入るわけでもありませんし、テナントが不安を持って出てしまう。

 やはり案の定、その結果、制止をしていたんですけれども、その制止を聞かずにパンフレットを配布し、また新聞にも発表されたことによって、いつまでこのビルが存在するかわからないので、ほかのビルに移転をしたいという申し出が相次いだ。私は、家賃を大幅に下げることによってテナントの退去を防止しようと今日に至っていたけれども、最後のテナントは平成十六年八月に出てしまった。また、九七年一月から予定されていた屋上広告塔の契約も取り消しになってしまった。塔屋看板ですね。

 実は、こういう被害を受けているわけです。結局、現在まで非常にこじれにこじれて用地買収に応じていないというところで、地元もこの数件が立ち退かないことによって待望の工事ができないということで非常に困っている。双方困っている。この方の気持ちとしては、私も過去の熊本、白川の大水害を経験しておりますので、河川改修の必要性、重要性は十分理解をしているつもりですし、協力もしなければいけないというふうに思っているというのがこの方の心情なんですね。

 まずお伺いをしたいのは、これは局長でも結構です、細かい話ですから。先ほどの資料三で、この事業の施行に当たっては、「平成九年十月から鋭意用地交渉に当たった結果、」となっているんですが、実際には、平成八年に用地交渉がもうスタートしたり、パンフレットが配られたりということをしているんですけれども、これはどういう経緯なんでしょうか。

門松政府参考人 この事業を実施するに当たりまして、事業全体の構想を関係住民の方々に広く知っていただくということが大事でございまして、平成八年にパンフレットをつくりまして、関係者の方々に周知したということでございます。

松野(頼)分科員 この資料の三の説明と違っているんじゃないですか、「平成九年十月から鋭意用地交渉に当たった結果、」と。これは、きのう国交省から持ってきていただいた資料ですよ。まず、ここの食い違いは一体何なんでしょうか。

門松政府参考人 舌足らずで申しわけありませんでした。

 平成九年十月から用地交渉に当たったのですが、事業の説明はその前からやっていたということでございます。

松野(頼)分科員 大臣、ちょっと伺いたいんですけれども、こういう事例で、やはり当然、買収をされる当該の方の生活もビジネスもございます。事前にこういうことを発表されてしまったらば収益にかかわることだから慎重にしてほしいと言ったにもかかわらず、まして事業認定は平成九年からということですよね、違いますか。この平成九年に事業認定がされるものに関して、前年からそういう形で公にパンフレットを配ったり、そしてまた新聞に発表したりということ、こういうのはいかがなものなんでしょうか。大臣、お答えいただければと思います。

冬柴国務大臣 一般論としまして、特定の地権者の方のみ先行して説明を行うということではなしに、公共事業の円滑な推進とか地権者間の公平性を阻害することにならないように、その区域に土地を所有する人、あるいは建物を所有する人、あるいは賃借りをして建物の中にいられる方等にも広く、我々としてはこういう事業をやりたいということを周知いただきまして、御理解をいただいて、そして、土地の買収とか、あるいはそのようなものに対する借家権の補償も行っていかなきゃいけないわけでございますから。

 そういう意味で、家主さんがおれがとめたのになぜやったんだとお怒りのように、今の話を聞いて僕はそう思うんですけれども、我々としては、一部の人だけではなしに、広くその地域でこの事業に対して利害関係を持つと思われる人たちに、一日も早く我々の事業の意味なり、そしてそれが公益目的でどうしてもやらなきゃならないものであることを理解していただくために、広報活動といいますかPRをしながら、後にそこへ皆さんに説得に、御理解を得るためにお願いに上がるという順序になるのではないか、このように思います。

松野(頼)分科員 ただ、事業認定は平成九年なんでございます。事業認定の前ということになるんですよね。

門松政府参考人 お答えいたします。

 白川の大江地区でございますが、平成八年にパンフレットをつくりまして、地元への事業説明会等に入ったのは平成九年の六月からでございます。その後、十月から用地交渉に当たったわけでございまして、用地交渉は任意交渉で、現在まで八十五件のうち八十二件の任意契約が完了して、あと三件が残っているということでございます。その三件につきまして土地収用法の手続に入ったのは十八年でございます。

松野(頼)分科員 違う違う。言っている意味が、要は実施計画の承認です、事業認定と言うとわかりづらいかもしれませんが。

 実施計画の承認がこの平成九年でしょう。要は、白川の流域五百メートルに関して、いわゆる認定を受けて予算を財務省に計上したときのことですよ、約二十億なのか三十億なのか知りませんけれども。ここから要は用地交渉に入りましたということがこの紙に書いてあるわけですよ。にもかかわらず、八年にパンフレットを配ったりということをしているのは一体どういうことなのかというのを聞いているんです。

門松政府参考人 お答えいたします。

 用地費を計上して用地交渉に当たったのは、先生御指摘のとおり平成九年からでございまして、その前までは、用地費というものが事業費の中で計上されていませんでした。その予算の中で事業のイメージとかいう概念をつくってパンフレットをつくって事業説明を行ったのは用地交渉の前でございますが、そういうことで、不整合はないというふうに思っております。

松野(頼)分科員 ちょっと意味がよくわからないんですが、用地費という項目はありませんよね。それは目ではなくて、河川事業費、河川改修費の中でいろいろやりくりをしているからパンフレットにも使えるということですよね。

 その地域の流域に予算がつかなくても、そこのパンフレットがつくれたり新聞広告が打てたりということをしているという意味ですか。

門松政府参考人 お答えいたします。

 白川の河川改修事業費というのがありまして、その事業費の中に、用地費もあり、工事費もあり、測量試験費もあり、事務費もありますが、皆様に事業全体の概要を説明するときに用います費用は測量試験費という調査費でございまして、それと先生が御指摘の用地費は違う費目でございまして、改修費の中の内訳を言っているわけでございまして、不整合はないと思います。(発言する者あり)

松野(頼)分科員 多分、よくわからないという声が聞こえているんですけれども、この説明を聞いていて私は非常に大きな問題があるなというふうに思ったのは、例えば用地買収のお金も河川改修費で、目でやられているんですね。私はこの説明を聞いて大変驚いたんですけれども、なぜ用地買収が進まないかということ。

 例えば、この区間は幾ら幾らですよ、二十億ですよ、三十億ですよと、用地買収を含んだ河川改修工事費がまず予算計上されるじゃないですか。用地買収が十何年もおくれても、毎年用地買収費は計上されていて、用地買収費という目はないんです、河川改修費の目に入っていますから。用地買収費で予算をとって、用地買収ができなかったときには、護岸工事にも使えるし、ポンプの建設にも使えるし、その幾つかの費目の中で、これは会計法違反していないので流用という言葉が正しいかどうかわかりませんけれども、運用できるんです。だから、用地買収で予算計上して財務省に認められれば、用地買収ができなくても、ほかの、それで護岸工事ができるんですよ。もっと驚くことに、白川なら白川全部の護岸工事にそのお金は使えるんです。そこで使い余ったら、着工区間、認定区間以外のところに。だから、毎年用地買収をして、この年も買収できませんでした、そうすると、その余ったお金は使い切っちゃうわけですから、ほかの護岸工事でも、ポンプをつくったり、そういうのに使えるわけですよ。

 こういう事実をきのう説明を受けて私は聞いて、これは大変ゆゆしき問題なんじゃないか。多分この方の例では、Aさんの物件を買収するからといって、何億円かわかりませんけれども、平成九年からずうっと今日まで予算計上されているんです。買収は進んでおりません。その買収費はほかの護岸工事に使われている。もっと言うと、白川で使えなければ九州管区全部いけるんです、それでも余れば日本じゅうの河川に使えるんですという説明を私は受けて、大変これは驚いた事態なんですね。

 いずれにしても、この護岸工事で、こういう事例で大変苦しんでいらっしゃる方がいる。大臣、これはちょっと御答弁いただきたいのは、そこで生活をされたりビジネスをされている方というのは非常にナイーブですから、やはり、まず当該買収をされる方の気持ちを重んじて、確かに告知することも大事かもしれませんけれども、その前にやはりきちっとその方に対応して、ちゃんと一刻も早く買収が気持ちよく、買う方も売る方も気持ちよく直ちに買収が進むようなことに配慮を今後しなければいけないのではないかというふうに私は思うんですが、大臣、御答弁いただけたら幸いでございます。

冬柴国務大臣 いろいろな公共事業の中で、任意の売買による買収というのが原則で、頭から収用というようなことはもう論外でありまして、幾ら交渉してもまとまらなくて、そして、どうしても公共のためにこの収用は必要であるという場合に初めて収用ということが行われるわけでございます。

 成田空港の買収等をこれで挙げていいかどうかは知りませんけれども、やはり、地権者にとってはいろいろな言い分があるんでしょうけれども、客観的には、現在もなお数人以内の方の土地の買収ができないために国際空港としての十全の役割を果たすことができないという部分があるわけであります。

 地権者の方には、それはそれの言い分があると思うんです。しかしながら、公共事業を進める上においては、多くの人の中で一部の人にどうしても御理解いただけない部分があるわけでございます。その場合は、収用をお願いしなきゃしようがない。しかし、その間、平成九年から十年以上ほっておいたわけではないだろう。私、もっと事実関係を確かめなきゃいけませんけれども、再三にわたって交渉し、お願いもし、そこに、一番最初のボタンのかけ違いというお話も冒頭ありましたけれども、そういうことも原因があったのかもわかりませんけれども、任意の売買契約が締結することができなかったということから次の段階に移らざるを得ないということで、このようなことになっているのではないかと思います。

松野(頼)分科員 双方の意見が合えば、決して強制収用に至らずとも、御本人たちは動く気があるということでありますので、ぜひ、誠意を持って、双方が気持ちよく動いて、早く護岸工事が着工できるような御努力をお願いしたいというふうに思います。

 もう一点、余り時間がありませんので。もう一つの薄場地区というところ、これもやはり同じ白川の水系の護岸工事に対する用地買収の件であります。

 これは、概要をお話しすると、三十数名の地権者の皆さんが、要は町の共用部分を買収するということなんです。実は三十九人の地権者の人がいるんですけれども、それはその町の、昭和十五年に共用地だったんですけれども、便宜的にその村落の人たちの全員が名前を入れただけと。それで、仮にみんなで名義をして、共用地としてずっと使っていたということだったんです。これがずっと、これは平成三年の事業ですから、もう十五年、十六年かかっているんですが、これも実は平成八年の説明会の中で、要は名義人にしか買収金額は払うことができないというふうな建設省の説明があったがために、みんな、自分に払ってほしい、自分に払ってほしいということで、今まで一つになっていた交渉の窓口が、意見がばらばらになってしまった。長引いて長引いて、もう十六年なんです。

 実は、ちょうどたまたまこの二月の十五日に、熊本県の土地収用委員会と起業者である冬柴大臣名でこういう見解が出されました。要は、今までは買収資金を払うのは個人名じゃなきゃいけないと建設省が説明をしていたにもかかわらず、実は大臣名で「「薄場町自治会」より力合校区薄場町自治会会則その他資料の提出を受け、「権利能力なき社団」の成立要件について検証を行ったところ、以下の事項によって、「薄場町自治会」は、その要件を満たしていると認められる。」と。今までの建設省の説明では個人じゃなければ買収資金は払えないんですよと言っていたところが、これが大臣名によって自治会という集合体でもいいですよということでひっくり返ったわけですね。

 これもやはり、この十六年間の長きにわたって混乱を招いた途中の、当時の建設省の説明の仕方、解釈の仕方によってこういう形になっているわけです。そして、地権者の皆さんも、やはり逆に言うと一刻も早く買収してほしい、四年も五年もかかって買収されるのも、そんなに時間がかかるのは嫌ですよ、早くやってほしいということを言っていたんですけれども、結果、十六年間もかかったがために、土地収用法に基づいて、当時は七万二千円と言われていたものが三万円ですよということで、金額が落ちてしまったということなんです。これをお聞きになって、大臣、いかがでしょうか。

冬柴国務大臣 数人以上の人が一つの土地を持つ場合に、共有とか入会とかいろいろな形態がありまして、また自治会でも、つまり、以前は権利能力がなかったわけです。しかしながら、そういうものについても登記を認めるような法制がその後できたり、最高裁の判決が出たり、それにはいろいろな厳格な要件があります。したがいまして、その時点によって、だれを所有者として認めて買収交渉あるいは収用すればいいのかということは、こういう複雑な所有関係がある場合には非常に難しい、時系列的に見ないと判断しにくいところがあるんです。

 いずれにいたしましても、誠実にこちらとしては交渉を遂げてきたんですけれども、その中で、共有者の間で、複数の所有者の間で買収金の配分について争いがあるというような問題があって今日まで延びたものと承知しているわけでございます。

松野(頼)分科員 時間も余りないんですが、いずれにしても、特に河川関係の用地買収、それが任意であろうが土地収用法に基づくものであろうが、私たちのイメージとしては、大変長い時間をいつも要するんですね。裁判になっている事例もたくさんあるんです。ですから、もちろんそこに不正や不公平なことがあってはいけませんけれども、なるべく双方が納得して、もっとスピーディーに公共の福祉に供するようなものが完成をする。

 この二つのこじれている事例も、皆さん売りたくないと言っているのでもないんです。そして、ごねて法外な値段を要求しようと言っているわけでもないんです。その長い交渉過程の中で、感情的なもつれだとか、いろいろな説明不足だとかいうことのこじれによって、これだけ長い期間がかかっている。そして、私は、その一つの要因の裏には、用地買収で要求をした予算がほかの護岸工事等に運用できるということも一つ入っているのではないかというふうに見るわけであります。ですから、まず、そこの部分をしっかりと、もっとスピーディーに双方の方が納得するような形の事業を考えていただきたいというふうに思う。

 もう一つ、実は土地収用法の中に生活再建措置というものが法制化を今回の改正でされているんです。これは、要は用地買収に係る事業費の算定というのとは別に、資料の九、十につけてございます、収用等によって生じる土地所有者の生活上の不利益をできる限り埋め合わせるものの政策的措置。ただし、これは義務規定じゃないんですけれども、これをやらなかったからといって違法にはならない規定なんですが、ただ、こういうものもやはり弾力的に使って、双方が納得するような措置というものも今回盛り込んでおりますので、この土地収用の改正に関する生活再建措置というものもぜひ運用していただいて、使っていただければと思います。これは、ちなみに、移転後の居住や事業活動がなるべく支障なく継続できるようにということでつくられた措置であります。

 きのうから、国交省の話を聞いていると、いや、これはもう物すごく厳格な査定の中で出ているものだから、裁量権の幅は全くないんですということをおっしゃっているんです。実際に現地で交渉に当たっている皆さんから見ても、これも大変な御努力をされ、怒られたり、しかられたり、嫌なことを言われたり、担当する国土交通省の現場の方たちというのも本当に大変な努力をされているのも私はわかります。

 ですから、もちろん、公平であり公正であるということが大前提ですけれども、こういう措置も法的に盛り込まれているわけですから、ぜひ、いろいろなことを考えながら、双方が納得できるような対応というものをとっていただきたい。別にこの案件だけに限らず、全国で河川に伴う改修工事のトラブルというのは大変多うございます。ぜひ、大臣、そこのところをひとつ答弁していただければというふうに思います。

冬柴国務大臣 土地を売っていただくわけですから、これは誠心誠意当たらなければならないと思いますし、その方が事業を失う、買収によって生活手段を失うということであれば、これは配慮しなきゃいけないと思いますが、それは契約時点の話になるだろうと思います。

 薄場地区の話では、平成三年八月から任意買収の交渉に入って、四十八件中四十七件は既にまとまって、あと一件になっているんですね。そういうことで、平成三年ということになりますと、今日から見ればもう十数年が経過しちゃったわけで、それを考えたときに、もうこれ以上待つわけにいかないということで、収用の手続に入るということに決めたことは御理解いただかなきゃならないと思います。しかし、本当に、交渉の際に、土地を売っていただくわけですから、誠心誠意、その人の置かれた立場とか事情とかも考慮しながら、買収について、事業の公益性とかそういうものを説明して、円満にお願いをしなきゃならない筋合いのものであろうと思います。

 ただ、本件は四十八件中四十七件までが任意で成立しているということも、そして十五年の歳月がそこに流れているということもお含みをいただきたいというふうに思います。

松野(頼)分科員 きょうは時間になりましたのでこの辺で終わらせていただきたいと思いますが、大臣、ぜひしっかりと対応いただいて、特に全国で河川改修に対する用地買収なり用地取得のことのトラブルが非常に多うございますので、ぜひそこのところも、もう一回今までの制度でいいのかということもチェックをしていただきながら対応していただければ幸いでございます。

 きょうはどうもありがとうございました。

三ッ矢主査代理 これにて松野頼久君の質疑は終了いたしました。

 次に、楠田大蔵君。

楠田分科員 民主党の楠田大蔵でございます。

 私、実は、昨年の末でございましたが、北橋健治先輩が北九州市長選挙に出馬をされるということで辞職をされまして、それに伴いまして次点の私が繰り上げ当選をさせていただきまして、二期目、改めて年末に国政復帰をさせていただいております。

 そうした立場からしますと、最近では一番遅く国会議員にならせていただいたということで、いわば現職の中では国民に一番近い立場で議論ができるのではないか、そうした思いを持ちながらきょうの質問に当たらせていただきたいと思います。

 本日は、冬柴大臣、梶山大臣政務官初め多くの皆様に同席いただきまして、ありがとうございます。

 私の地元に、国道五百号線という道路がございます。これを、福岡県の道路という地図を改めて見ますと、大変山合いを通る道でありますけれども、地元の方にとりましては大変重要な道路として親しまれている場所であります。鳥栖を起点としまして別府に抜けるこの道路でありますが、甘木・朝倉地域という地元とそして田川の方を結ぶ物流及び観光アクセス道路と言われております。

 この国道五百号の改良について、要望書というものが既に地元からも提出をされていると認識をしておりますが、まず、大臣自身、この要望書の認識はおありでしょうか。

冬柴国務大臣 私は直接お会いする機会がなかったんですけれども、お届けいただいたということで、読ませていただいております。認識をいたしております。

楠田分科員 ありがとうございます。

 認識をしていただいているということでありますが、今般、その五百号の改良についての要望書を出されるに至った経緯でありますけれども、まず、その五百号線の一部が、平成十八年の三月に認可をされました小石原川ダムというダムの事業実施計画に基づき、この一部の部分が水没をすることになりまして、そのいわゆるつけかえの道路というものが近く環境アセスに基づいて選定をされる、そのように伺っております。

 そうした事情で、まず、こうした要望が出ておりますが、このつけかえ道路の区間というものがどのような部分になる予定なのか、また、いつごろまでにこれが完成する予定であるか、この点に関してお答えいただきたいと思います。

門松政府参考人 お答えいたします。

 国道五百号線の一部区間でございますが、現在、建設中の小石原川ダムの建設に伴って水没いたします福岡県朝倉郡東峰村大字小石原地先から朝倉市の江川地先まで、現道の延長で七・一キロメーターをつけかえて、つけかえ後の延長は五・一キロでございますが、そういう計画で事業を実施しているところでございます。

 つけかえ国道の整備の完成予定でございますが、ダムの完成年であります平成二十七年度までに完成する予定でございます。

楠田分科員 ありがとうございます。

 この区間でございますが、まず、確かに水没する地域というものを考えますとこうした区間になってくるのも理解できますし、それが現実に決まりつつあるというのも認識をいたしております。しかし、今回、私が要望等を見ておりましたり、またほかの例を考えてみておりましても、やはり、道路というものは生き物といいますか、いかに、どうつなぐか、またその規模をどのようなものにするかということが大変重要で、それによって効果が格段に変わってくるのではないかと思っております。

 かくいう私の父が地元の首長であった時代も、筑紫野インターというインターチェンジを追加インターで設置する際に、大変道路局長初め多くの皆様に折衝をして実現をした。財政的に厳しくなったという御批判も確かに受けましたけれども、それによって、地域の発展は目覚ましいものがあった。こうしたものが道路ではないかという認識を持つ者として、やはり、このつけかえの部分と、そしてそこにつながって延長されている部分、そこの改良がいかになされるか、これがこれから重要な課題ではないかと思っております。

 ここでもう一つ確認でございますが、五百号というのは国直轄の道路ではないとお聞きをしておりますが、直轄でない国道の新設もしくは改良の優先づけといいますか、これを決定づけていく際の、決定の選定の基準というものがあると思うんですが、それを教えていただけますでしょうか。

冬柴国務大臣 私、読ませていただいているんですけれども、本村内というのは、陳情に来られました朝倉郡東峰村の地内の五百号の改築等整備をやってほしいということが結論でありました。それで、今のつけかえ道路に接続しまして東に延伸している相当曲がりくねった道路ですけれども、これを今度つけかえられる道路と構造の同じようなものに何かしてほしいという趣旨だろうと思うんですね、この趣旨は。この部分は、約五キロをしてほしい、こういうお話だと思うんです。

 ここは、国道五百号ですが、福岡県が管理していただいているいわゆる補助国道というものなんです。したがいまして、この部分は、福岡県知事が計画素案を示して我々の方に、ここをこういうふうに、東峰村の要請もあり、そして、ここが水没することによるつけかえ道路もきれいになるということになれば、その延伸ですから、これをきちっとしたい、こういう申し出があれば、我々は、この補助事業として十分の五・五を国費で負担して、そしてこれをそのようにすることを検討させていただくというものだと思うんです。

 それで、直接こちらへ持ってこられても、管理者である福岡県知事が、このような、道路の幅員もこうで、こういうふうに曲がっているけれども真っすぐしたいとか、そういうようなことを、素案を示して、そしてそのことを我々の方に知事の方から言っていただくというのが筋ではないかというふうに思います。

楠田分科員 もちろんそういう筋は認識をした上で、しかし、そうした素案が上がってきた時点で国の方としても受け入れがしやすいといいますか、そうした認識を事前に持っていただくことも重要ではないかという思いから質問をさせていただいておりますので、ちょっと大分先回りしてお答えをいただきましたが、せっかくの機会ですから、私もまだ不勉強ではありますが、先ほどの直轄でない国道の新設、改良の優先づけの決定基準というのを、ちょっと、いずれにしろ、事務方の方に教えていただければと思います。

宮田政府参考人 お答え申し上げます。

 国土交通省所管の公共事業の新規採択に当たりましては、費用対効果分析を含めて、総合的な評価を実施しております。

 補助事業の新規採択時評価は、国庫補助を受ける地方公共団体が必要なデータ収集などを行いまして、資料を作成し、補助金交付等に係る要求を行うことになっております。国土交通省の方は、提出された資料に基づき、検討を加え、その対応方針を決定するということになっております。

 御指摘の国道五百号の改良につきましては、道路管理者である福岡県が今申し上げましたような新規事業採択評価を行い、これに基づいて国土交通省は新規採択について検討するということになります。

楠田分科員 ありがとうございます。

 また、何といいますか、そうした一般的な道路の建設に対する要望と別としまして、今回の例としましては、小石原川ダムが建設をされる際に、このダムに関しまして、水源地域の対策特別措置法の指定というものも平成十五年の五月に受けたとこれも聞いておりますが、この法の目的をまた教えていただきたいと思います。

棚橋政府参考人 お答えいたします。

 水源地域対策特別措置法は、ダム等の建設によりましてその基礎条件が著しく変化する地域につきまして、生活環境、産業基盤等を整備するため、水源地域整備計画を策定し、その実施を推進する等、特別の措置を講ずることにより、関係住民の生活の安定と福祉の向上を図り、もちましてダム等の建設を促進し、水資源開発と国土の保全に寄与することを目的といたしております。

楠田分科員 先ほど、生活の安定、福祉の向上という話がありましたが、私がいただいた事前の資料によりますと、水源地域の生活環境や産業基盤等の計画的な整備等もあったと思いますが、この中に周辺の道路というのも入ってくるという認識でよろしいでしょうか。

棚橋政府参考人 道路なども当然入ってまいりまして、実際、いろいろなダムで行っております事業のメニューのうち、事業費で半分強が道路事業で占められておるところでございます。

楠田分科員 ありがとうございます。

 この地域が特措法の指定も受けまして、先ほどお話がありましたように、道路も入って、半分強がそうした部分であるという御答弁をいただきまして、これは、我が地元にとりましても非常にありがたい方針、方向性ではないか、材料ではないかと思っております。

 先ほど大臣が事前に申していただきましたが、改良の要望区間というものが五キロメートルに広がる部分でありまして、まさに曲がりくねっておりますし、村を通る道でありまして、大変狭隘の部分でもあります。そして、こうした部分が今なお存続をし、しかし、つけかえの道路によって新しくダムができるところまでは大型バスも入れるようなサイズになってくるとしますと、やはり地元の方にとりましては非常にもどかしいといいますか、せっかくここまで来るのであれば、残りの部分もつないでいただければ非常にありがたいというのが率直なところであると思っております。

 せっかくの機会でありますので、そうした東峰村、この地域は、旧小石原と旧宝珠山が平成十七年の三月に合併をしてできた村でありますが、合併しても三千人程度の村でありまして、その当時は日本でも最小の合併と言われたところであります。

 しかし、規模は小さいところではありますけれども、旧小石原のところは特に基幹産業として小石原焼という三百年以上の歴史を持った、昭和五十年に通産大臣からの指定を受けた伝統工芸品がありまして、こうした点在する陶器の里に対しては年間七十万人の観光客が訪れるところでもありますし、また、最近ではJAPANブランドの指定も新たに受けて、特に村の青年層の方なんかが元気を持って、プライドを持ってこうした地域の村づくりに取り組んでおられるという村を結ぶ大切な道路でもあります。

 また、この秋月という地域、城下町でありますけれども、国の重要伝統的建造物群の保存地区でありますし、この村と、またさらにここから添田町、日田等に、近隣市町への交通アクセスの地域でもありますから、ここが飛躍的に向上して道路が拡幅されれば、大変な周辺への経済的な影響もあると思いますし、何よりも、こうした合併をしたけれどもまだまだ規模が小さくて将来的になかなか不安が大きいというところに対しましては、今、格差の問題も特に問題となっているところでありますから、特に日を当てていただきたいという問題ではないかと思っております。

 そうした地元の思いを大臣にお伝えさせていただきまして、また改めて、先ほどお話のありました、県から出ればという話でありましたけれども、こうした、先ほどの道路の選定の基準の話であるとか水源の地域対策特別措置法の指定を受けたという特殊性からも考えまして、また地元がもう少し盛り上がって、県の方から出てくるということになれば、前向きに御検討いただけるか、ちょっと改めてお答えをいただきたいと思います。

冬柴国務大臣 福岡県からそのような申し出があれば、当然前向きに取り組みます。

楠田分科員 力強い答弁をどうもありがとうございます。

 そうしましたら、もう一点、地元の問題に関しまして取り上げさせていただきたいと思います。

 もう一点は、地元のJR博多南線という路線がございまして、この路線は少し変わった路線でありまして、もともとは博多駅から私の地元の那珂川町、ここに車両基地がございまして、この車両基地まで空の電車が博多駅からいつも納めに来られていたということでありますが、せっかく、この間、八・五キロぐらいの距離でありますけれども、こうして移動をしてくるのであれば人を乗せてはどうかという当時の、昭和五十九年ごろと聞いておりますが、そのころの地元の方々の運動によりまして、今まで、従来にはなかった形と聞いておりますが、そうした車両基地の間の線路を利用して、営業路線として認可がされた、これが平成二年のことだと聞いております。

 現在では五十三便が運行をされておりまして、交通の利便性も大変高くて、一日当たりの利用者が一万一千人を超える。年間収入も十一億円に達する黒字路線である。昨今におきましても、大変優等生と言える路線ではないかと思っております。

 関係住民は、この地域だけではなくて、春日市や大野城市や福岡市の南部にももちろん及んでおりまして、三十万人に及ぶ主要な交通手段の一つとしてこの路線が生きている、周辺地域になくてはならない生活の基盤である、私もそのように認識をいたしております。

 しかし、この路線が、実は九州新幹線が開通するに当たりまして、この従来の地域の路線に新幹線の路線が共用される部分が出てきた。これによりまして、地元では、この共用部分を走る新幹線も出てまいりますし、この今まで使われていた駅が使われなくなってしまうんじゃないか、もしくは本数が圧倒的に減らされてしまうのではないか、このような心配をされているわけであります。

 そうした問題のある今の現状でありますけれども、こうしたことに対してまず認識があられるかどうかということと、この存続自体がされる見通しがあるのか、この点に関して大臣にお伺いしたいと思います。

冬柴国務大臣 この博多南線につきましては、地元のたくさんの方が大臣室へ陳情にお見えになりまして、私は、この沿革から、非常に多くの方々の足として使われているという事実、それから、JR西日本がここは車両基地として使っておられるわけでございますから、JR西日本は、現実に地域住民にとって欠かすことのできない交通機関として定着しているので廃止は考えません、廃止はいたしませんということを明確に言っていただきましたので、その方たちにも、陳情に来られた方にもその旨をお伝えいたしましたら、非常に喜んでいられました。

 これから、平成二十二年度末にこの九州新幹線が全通するわけでございますが、そういうことになっても、両方が共用することになると思うんですけれども、地域の住民の足として使われている以上、それは尊重しますとはっきり申し上げているので、私もここでそれはきっちり申し上げておきたいと思います。

楠田分科員 大臣みずからの力強い御答弁をいただきまして、大変ありがとうございます。

 平成二十二年度末に完成をして、平成二十三年から九州新幹線が開通をしてくるわけであります。将来的に、開通をした後のダイヤとの関係性もあると思いますが、存続をするという前提のもとで、どれだけ利便性が維持向上されるかという点に関しても、今の時点で見通しがあれば確認をさせていただきたいと思います。

平田政府参考人 お答え申し上げます。

 博多南線につきましては、平成二年の開業時でございますが、これは一日当たり三十四本であった列車本数が、現在では一日当たり五十三本に増加しているなど、着実に利便性が向上してきております。博多南駅からの乗車人員について見てみますと、平成二年度には一日平均二千二百七十三人であったものから、平成十七年度には一日平均五千八百九十人と大幅に増加してきております。

 今後の博多南線の運行本数、さらには運賃などのサービスの内容につきましては、基本的に、鉄道事業者の経営判断の問題であると考えておりますが、鉄道事業者において、博多南線が地域住民にとって欠かすことのできない交通手段として定着していること、さらには九州新幹線の運行との関係などを考慮しつつ、今後、適切に検討がなされるものと考えております。

楠田分科員 ありがとうございます。

 一日平均の推移というもの、こちらの手元にも利用者数はデータとしていただいておりますけれども、非常に着実な伸びを示している路線であると私も認識をいたしておりますし、そのような御答弁のもとで、維持向上にお努めをいただきたいと思っております。

 この存続とまた別の問題として、新幹線建設において、この補償というものがやはり地元の方にとりましても非常に気になる部分であるということも事実であります。

 この補償基準の中で、公共用地の取得に伴う損失補償基準の細則第四十二に定める年利率というものが四%から三・五%に平成十七年度に改正をされたと聞いておりますが、この点に関して、しかし、実際の金融レートというものは当然これよりももっと低いものでありますから、金融レート自体がそうした実際のレートに合わせて細則で定める部分を柔軟的に考える可能性があるのかどうか、この点も確認をさせていただきたいと思います。

宿利政府参考人 お答え申し上げます。

 公共用地の取得に関する補償につきましては、楠田委員御承知のように、補償時点において前払いするという原則で対応しております。

 その際の金利につきましては、将来にわたっての金利の変化を推計するために、過去の一定期間、具体的には二十年間の金利の平均値を年利率として定めております。

 その結果、例えば建物の再築補償の場合を考えますと、建てかえ時期が早くなりますから、その際の建築資金の運用益の損失を補償するということになりますので、年利率が低くなれば補償額が低額になる、こういうことであります。一方、将来にわたって必要とされる施設の維持管理費の場合につきましては、前払いした補償額とその運用利益をもって充てていきますから、年利率が低くなれば補償額が高額になる、こういう関係になるわけであります。

 そういったことで、補償の対象によって、年利率の上下の結果、有利になったり不利になったりするケースが出てきますから、年利率を一律に引き下げるということは困難だと思いますが、一方で、この年利率は毎年度見直しをしてきております。その結果、現在の金融レートとの差は縮小傾向にありますということを御理解いただければと思います。

楠田分科員 ありがとうございます。

 私も、これを質問する際に初めて知ったことでありますが、この補償の部分でも、そうした建物等の移転の補償の部分と代替施設の維持管理の部分で、簡単にいいますと、同じレートでも、高い低いで得する部分と損する部分があるということで、これを二重基準で使うのは非常に難しいというのも私も認識をいたしておりますが、そうした、二十年の平均値というのは今初めて知ったところでありますが、できる限り実際のレートに合わせて判断をしていただくということも要望として上げさせていただきたいと思います。

 また、もう時間も迫ってまいりましたので要望だけにとどめさせていただきますが、騒音、振動についても、これからの工事の際、またでき上がってからも、非常に地元の方としては大変センシティブになる部分でもありますから、この点に関しても対策を、既にとっていただいていると思いますが、基準にのっとって最大限の努力を費やしていただきたいという要望も最後に申し上げまして、私からの質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

三ッ矢主査代理 これにて楠田大蔵君の質疑は終了いたしました。

 次に、日森文尋君。

日森分科員 社民党の日森文尋でございます。

 きょうは、先日といいますか二月十八日に大阪の吹田でスキー客を乗せたツアーバスが重大事故を起こしたということに関連して、幾つかお聞きをしたいと思っています。

 これは、添乗員の方が亡くなって、二十数名ですか、けがをされたという大変重大な事故があったわけです。最初に、亡くなった方の御冥福をお祈りしたいと思いますし、おけがをなされた方々の一日も早い回復をお祈りしたいと思います。

 この事故なんですが、この十年間の統計を見ると、バスによる事故というのは一千件増大しているという統計があるようです。こう考えてくると、どうもこの事故は、その背景には、この間政府が推進してきたバス事業における規制緩和、これが一つ大きな要因としてあるのではないかというふうに私は思っています。そういう意味では、こういう事故が二度と起こらないように、この事故が起きた直接の原因というのはあると思いますが、居眠りとかいろいろ警察の調べでも出ているようですが、その背景も含めた事故原因を徹底究明していくということがひとつ必要でしょうし、同時に、私どもの立場からいうと、規制緩和の政策、これはずっとやってきたわけですが、これについてももう一度改めて検証する必要があるんじゃないかというふうに思っています。

 最初にお伺いしたいんですが、今回の事故について、大阪府警であるとかあるいは大町労働基準監督署、これは長野県ですが、これが、あずみ野観光バスというそうなんですが、そこに立入調査を行っているし、北信越運輸局も監査をしているというふうに聞いています。

 現時点でどのような事実関係が判明しているのか。また、想定の範囲で結構ですが、どのような法令違反の疑いがあるのかということについて、最初にお伺いしたいと思います。

野村政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの捜査状況につきましては、詳細な説明は差し控えさせていただきたいと存じますが、現在、大阪府警におきまして、事故現場や車両の見分、また、事故を起こしました当該バス会社を初めといたします関係箇所につきまして捜索を行うといったように、所要の捜査を進めているところでございます。

森山政府参考人 お答え申し上げます。

 具体的な調査内容につきましては回答を差し控えさせていただきたいと思うんですけれども、この件につきましては、現在、所轄の労働基準監督署におきまして、事故を発生させた事業所におきまして労働時間管理の状況等について調査を行っているところでございます。

 いずれにしましても、その調査結果を踏まえまして適切な対応をとってまいりたいというふうに考えているところでございます。

岩崎政府参考人 私どもの北陸信越運輸局及び長野支局の担当官が、二月二十日にこの会社に監査に入りました。その後も引き続き調査をしておりますが、監査に入ったときの社長あるいは専務さん、これは社長の妻でございますけれども、聞き取った情報の概略をお話しいたしますと、二月十七日の夜、四台のバスを連ねて、運転者合計六名で白馬村を出発した、幾つかのパーキングエリアを経て、二月十八日午前五時二十五分に大阪府の吹田市の府道で事故が発生した、こう聞いております。

 事故を発生した車両の運転手でございますけれども、当初は交代していたということでありましたが、改めて社長に確認しましたところ、白馬村から大阪まで一人の運転手が運転していた、このようなことでございました。

 道路運送法で過労運転等防止のための基準を設けておりますけれども、まだこれは事業者から聞き取った情報だけですので、事実関係を特定するまではいかないと思っております。引き続き、原因、事実関係を解明していきたい、このように思っているところでございます。

日森分科員 ぜひ引き続いて徹底した調査をしていただきたいというふうに思います。

 報道によると、この事故車両の運転手さんは三、四日間ぶっ続けで長野―大阪間を運転していたとか、それから、このあずみ野観光では所有車の一台は常に交代要員がいない状態で運行しているとか、それから、ここにいらっしゃった元運転手さんのお話によると、シーズン中に一日も休みをとれなかったという証言も報道ではあるようです。この運転手さんは昨年の七月に大型二種を取ったばかりで客を乗せて往復していたというような状態もあるわけで、大変な労働実態というか環境の中で仕事をしていたということが何となく浮き彫りになったと思うんですよ。

 実はこういう状態でツアーバスというのが運行されているわけですが、昨年六月三十日に、自動車交通局それから新輸送サービス対策室長それから旅客運送適正化推進室長、この方々の名前で、地方運輸局の自動車交通部旅客課長に対して「ツアーバスに関する取扱いについて」という事務連絡が出ています。また、同じ日に、国交省の総合政策局旅行振興課長名で、これは業者の関係ですが、社団法人全国旅行業協会会長あてに「「ツアーバス」に係る募集型企画旅行の適正化について」という文書が出されているわけです。

 これは、実態について、今回の事故が起こる前から国土交通省も相当把握をしていたがゆえにこういう文書が出されたのではないかというふうに推測をしているんですが、この文書がこの時点で発せられた理由というのは一体何でしょうか。

岩崎政府参考人 ツアーバスでございますけれども、旅行業者が主催をいたしまして、主として二地点間の移動を目的とした旅行商品を売っていく、それを貸し切りバス事業者との運送契約によって運行するというような形態をツアーバスと呼んでおります。

 二地点間の輸送を不特定多数の人を募集してやるものですから、いわゆる乗り合いバスと形が似ているのではないか、乗り合いバス類似行為ではないかということで、いろいろ関係方面からも疑義が生じてきたところでございます。

 先生御指摘の昨年六月の、その前の平成十七年七月に、私どもの方から、ツアーバスについては、貸し切りバスとしてやることについて、正規な貸し切り契約に基づいて運行されるものについては道路運送法上適法です、ただし、同じような形で二地点間を輸送するので、安全運送の確保から必要な監査を実施するよう、これは一昨年の七月でございますけれども、指示をしております。

 御指摘の昨年六月の文書でございますけれども、ツアーバスが二地点間だけじゃなくて途中で乗降客を拾っていく、こういう形態もございましたので、貸し切りバスの営業区域の観点から問題がないのかどうか、それから、一般の乗り合いバスについては、高速バスなんかについて、長距離運行をする場合にはちゃんとした休憩施設、宿泊施設をとりなさい、こう指導しておりますけれども、こうしたことをやらなくていいのかということがございましたので、そうした対策をきっちりとるようにという意味での事務連絡を発出したということでございます。

日森分科員 そのとおりだと思うんですが、そこで問題になるのは、乗り合いバス、特に高速バスとの関係ですね。

 これは前々から問題になっていたと思うんですが、高速バスは一般乗合旅客自動車運送事業、ツアーバスは一般貸し切りになるわけですね。乗り合いの場合は、例えば運賃については、国交大臣へ許可申請を行うということなんです。しかし、貸し切りの方は届け出でよろしいというふうになっているわけですね。

 それから、さまざまな条件、例えば車庫だとか休憩施設だとかいうことについても、これは詳しく申し上げませんが、高速バスなどは大変厳しい条件が課されていて、貸し切りの場合は、高速に比べればずっと緩い、実態としては同じような仕事をこなされているということが実はあるんです。

 一方で、高速バスの方は、例えば客が少なくたって動かさなきゃいけないわけですよ。しかし、貸し切りの方は、最少何とか人数とかあって、二十人募集したけれども十人しかいなかったらやめちゃうとかいうことも可能なんでしょうけれども、そういう違いもある。

 こういう条件の違いがどこに響いてくるかというと、やはり料金に決定的に違いが出てくるわけですよ。

 これも報道の範囲で申しわけないんですが、例えば東京―大阪間の料金、これは新幹線の三分の一ですよ。それから、通常の高速バスの半分で貸し切りは行くんですね。こういう状態が今野放し状態というか、いわば常態化しているということがあるんです。こういう競争条件で本当にいいんですかという、実は私個人はそういう思いをずっと持っているんですが、きょうはそれは触れません。

 きょう問題にしたいのは、ツアーバスについては一般貸切旅客自動車運送事業がやっているわけですが、これがどういう状態にあるのか。特に、二〇〇〇年の二月、需給調整規制が撤廃をされてきました。それによって、さまざまな問題が出てきているわけです。この法改正を二〇〇二年に行ったわけですが、改正をして競争が厳しくなって、規制をどんどん全部取っ払ったわけですが、その法改正の目的というのは一体どういうことだったのか、改めてお聞かせいただきたいと思います。

岩崎政府参考人 先生御指摘のとおり、貸し切りバス事業、従来は免許制、運賃も許可制となっておりました。平成十二年に、これを許可制、あるいは運賃については届け出制といたしました。

 貸し切りバス事業でございますから、できるだけ市場における創意工夫を引き出して業を活性化し、利用者利便の向上を図っていく、輸送の安全性の確保を前提として、マーケットを活性化していいサービスをしてもらおう、こういう目的で、免許制を許可制等に改めたわけでございます。

 この結果、新規の事業者の参入は多くなりました。二階建てのオープンバスとか、いろいろな形の新しいサービスが多様化してきたというのは評価しているところでございます。

 御指摘の、貸し切りバス事業の安全性が損なわれてはならないというのは当然でございますので、私ども、監査体制を一生懸命頑張っているというところでございます。

日森分科員 今局長がお答えになったように、法改正は、競争を通じた多様なサービスの提供を促進し、事業の効率化、活性化を図り、あわせて、運行管理制度の充実を図ること等により輸送の安全を確保する、輸送の安全を確保することが法改正の目的だったわけですよ。

 さっき触れたように、この十年間でバスの事故は一千件もふえている。今回のような重大事故が起きた。これは本当に法の目的が達成されているのかどうかという大変疑問があります。

 今回事故を起こしたあずみ野観光バス、これは報道が出ていますが、家族経営ですね。父親が社長で奥さんが専務とかいう典型的な家族経営の会社で、しかも、民間の調査機関だと、従業員などについて六名いると。そういう意味でいうと、零細な会社、零細企業というふうに言って、ちょっと失礼な言い方ですが。

 ところが、業種別の売り上げを見ると、これも民間調査機関の調べなんですが、全国七百六十七社、ツアーなんかをやっているところがあるようなんですが、四百六十六位、長野県内では二十社あって十位だそうなんです。いわば、売り上げからいうと中堅どころのような売り上げになっている。

 これは、相当厳しい状態で仕事をとってきてやっているのでこういう格好になっていると思うんですが、これを考えると、他の企業も多分物すごく厳しい状況の中でおやりになっている。物すごい競争、過当競争と言っていいと思うんですが、買いたたかれていくわけですね。旅行業者が圧倒的に強いわけですよ。旅行業者の言いなりで、言い値で仕事をしていかないと、とても競争に勝っていけない。聞くところによると、四割ぐらいは赤字だというふうに言われていますよ。

 そういう状態が実は法改正で生まれちゃったということを、局長、ぜひ理解していただきたいと思うんですよ。恐らく御存じだと思うんですが。

 そこで、お伺いしたいんですが、一般貸し切りバス事業の収支状況とか、それについて今国土交通省はどの程度きちんと把握をされているのか、それについてどうお考えになっているのか、このままだとさらに安全問題が深刻になるわけで、改善策というのは何か検討されているのかどうか、これをお聞きしたいと思います。

岩崎政府参考人 貸し切りバス事業の収支状況でございますけれども、日本バス協会が、これはサンプル調査でございますけれども、経常収支率を毎年出しております。それで見ますと、規制緩和を実施した平成十一年度には収支率九七%、一〇〇%が収支とんとんですから、九七%で若干の赤字、こういうことでございます。平成十七年度は九九・四%、収支率で見ますと、少しではありますがよくなっているという数字になっております。

 ただ、全体の貸し切りバス事業の営業収入は、十一年度の五千四百億円から十六年度に四千五百億円と落っこちておりますし、車両数はふえておりますので、個々の事業者は相当厳しいコストカットをしながらこうした経常収支率を保っておられるのかな、このように推察をしております。

 ただ、事業分の収支につきましては、やはり基本的には事業者みずからの努力でやっていただくことだ、このように思っております。

 私ども、事業はそういう形で事業者にお任せしますけれども、先生御指摘の安全の問題につきましては今後ともきっちりやっていきたい、このように思っているところでございます。

日森分科員 そこで、最初に申し上げたとおり、規制緩和をやり過ぎたんじゃないかという思いは私はぬぐい切れないんです。今回の場合も、例の耐震構造計算の偽装問題というのがあって、あれも九九年から施行された規制緩和が背景にあるんじゃないかということを我々は思っているんですが、実は規制緩和が裏目に出ているというふうに思っています。

 ずっと政府は、規制を緩和するけれども事後チェック体制はきっちりやるんだと。規制緩和と事後チェック体制の強化というのはセットですよ。事後チェック体制の強化がなければ、規制緩和したら、それは本当に野放しで、何でもありの世界になってしまうわけですから、事後チェック体制ということが十分にできているのかどうなのかということについてお聞きをしておきたいと思うんです。

 貸し切りバスの事業者は、規制緩和前の九九年、二千三百三十六社、規制緩和されて五年後の二〇〇四年、三千七百四十三社、五年間で千三百社ふえたんです。急激にふえましたね、規制緩和の後、一・六倍になった。しかも、バスの数が十両未満の会社が二千六百九十八社、七二%というふうに言われています。中小じゃなくて本当に零細でやっていらっしゃるところですね。

 そういう状態で、つまりあずみ野観光のような、名前を言うと失礼かもしれませんが、もう新聞に出ていますから、あずみ野観光のような状態で運行している会社が実はたくさんあるんじゃないか。あずみ野観光の実態というのは氷山の一角ではないかというふうにこの数字から私は想像するんですが、実際に、事後チェック体制についてお聞きをしたいんです。

 そういうことであるにもかかわらず、監査体制については、二〇〇二年二月に事後チェック行政への転換というのが行われて、その年の七月、地方運輸局の組織を再編し、監査体制の充実強化ということが言われました。翌年の三年四月には、監査項目を重点化して行政処分基準の強化をするということも言われた事後チェック体制の強化、去年の二月からは、監査及び行政処分基準のさらなる強化というふうに言われてきました。

 しかし、数字上、実態を見ると、監査が行われたのは、二〇〇二年が全体の二二・七%、これがピークですよ。その後、毎年毎年、強化とか処分を厳正にやるとかいろいろなことを発表しているんですが、私の資料によると、監査したのは、翌年の〇三年は一八%ですよ、〇四年は一六・四%。どんどん業者はふえるけれども、さっき言ったように一・六倍にもなった、監査は強化する強化すると言っているけれども、監査している件数はどんどん率が減っているわけですよ。こういう状態があるわけです。〇五年はちょっと数字を持っていないのでわかりませんけれども、しかし、多分そんなにふえているとはとても思えません。多分減っているんじゃないかというふうに思います。

 あずみ野観光もそうですね。もう発足して七年たつけれども、監査を受けたのは一回ですよ。しかも、それも、労働基準局が問題だと言ったので、それに連動して監査に入ったという状態になっているわけです。

 だから、今三千以上あるけれども、全部監査が一巡するのに三十年かかるんじゃないかとかという説も実はあるわけですよ、今の体制では。

 報道によると、監査する要員、国土交通省、百六十六人しかいない。長野県、十人とか言われているでしょう。これは、事後チェック体制の強化といっても、実態としてできないんじゃないか。こういうツアーバスの運転手さんも労働強化でもしかしたら過労死するかもしれないけれども、この体制で全部事後チェック体制を強化してきっちりやれと言ったら、国土交通省の職員が過労死しちゃうよ、そういう状態ですよ。

 だから、実は、規制緩和と事後チェック体制の強化というのはセットなのに、片っ方は完全におくれているということをちょっと指摘しておきたいと思うんです。

 監査方針及び行政処分の改正というのを出されまして、予防的監査をやるんだ、新規参入事業者に対する早期監査をやるんだ、それから労働基準監督機関との相互通報に基づく監査をやるんだというふうに国土交通省はおっしゃっていまして、これを徹底すること。そのためには、各地方運輸局単位で監査要員を大幅に増員するということが避けられないんじゃないか。増員しないでやるんだったら別の手だてを考えないと、これは氷山の一角とさっき言いましたけれども、これからこういう事故が次々と起こる可能性があるということですよ。

 そういう意味で、ぜひお考えをお聞きしたいと思うんです。増員じゃなくても、監査の問題をどうするのかということについて、これは多分恐らく同じ思いで局も大臣もいらっしゃると思いますけれども、具体的にそれをどう実現していくのか。監査を強めていく、しっかりやるんだ、これについて、道筋、具体的な問題があったらお聞かせいただきたいと思います。

冬柴国務大臣 全く御指摘のとおりでございますが、規制緩和しますと、監査体制の充実が必要であります。

 監査要員が設けられた平成十四年七月には、百八人の体制でした。本年一月からは百六十六名、そして今回の予算要求で、平成十九年度予算が通りますと二百名体制にしていただくことになります。そのように、本当に厳しい公務員の純減ということで、大変厳しい中でいろいろやりくりしながら、この部分については大切だということで、このように努力をしてきたところでございます。これでいきますと、これだと三十年に一回と違うかと今おっしゃいましたけれども、二・八年に一回はできるということでございます。

 それから、先ほどちょっと言っていただきましたけれども、旅客自動車運送事業における新規参入事業者については、参入後六カ月以内の早期監査を実施する、それから、労働基準監督機関からの通報に基づく監査は確実に実施するというようなこと、大変こちらも、職員も本当に苦労しながらやらせていただいております。

 今後とも、監査要員の増強には私も努力しなきゃいけないと思いますし、効率的かつ重点的な監査を実施して、悪質事業者の是正とか事故の未然防止に努めなきゃならないというふうに思います。そういうふうにして、厳しい中で増員を、ほかでこんなに伸ばすところはないわけでございますが、一生懸命やっていることは御理解いただきたいと思います。

日森分科員 時間がなくなりましたので、最後に二点ほど簡単にお聞きをしておきたいと思うんです。

 本当に過労状態で運転して事故が起きた、それは直接の要因で、背景はさっき言ったようにいろいろあると思うんです。そこで、旅客自動車運送事業運輸規則の二十一条の四というのがあるんですが、これは、一定の条件のときは運転手の交代要員を置いておかなきゃいかぬということが決められているわけです。特に、「疲労等により安全な運転を継続することができないおそれがあるときは、」交代要員をちゃんと確保しなさいと。

 夜なんかは当然そうなんですが、しかし、それは労働時間と拘束時間だけなんですよ、基準になっているのは。連続四時間以上運転しちゃいけないとか、二日にわたる場合は一日九時間とか、そういう労働時間と拘束時間ですね。例えば、休憩は連続して八時間以上だとか、時間だけでこの問題が基準になっているんです。しかし、時間だけで果たしていいのかというのは、実際に運転をしている人たちの思いでもあるわけです。

 そういう意味では、一日最高走行キロ規制、例えば、時間であれば一日三百キロでも五百キロでも六百キロでもいいのか。これは疲労の度合いが全然違うわけですから、走行キロ規制というのが必要じゃないかということを思っているんですよ。具体的に数字でいうと、十万走行キロ当たりの運転者数というのがあるそうなんです、九三年は三・〇人、ところが〇四年は二・四人。つまり、一人の運転手が運転する距離がどんどんどんどん、もちろん高速道路ができたとかいろいろな条件のよくなった部分もあるかもしれませんが、ふえています。だから、この基準に一日最高走行キロ数というのを含める必要があるというふうに私は思っているんですが、これについて一点お聞きをしたいということ。

 それから、先ほどお触れになりましたけれども、自動車運転者の労働時間等の改善のための基準、改善基準告示というのがあります。運転手の過重な負担を防止するために、厚労省と連携をして、拘束時間や休息時間、労働時間のあり方、実際の実ハンドル時間などのあり方、これについても連携して検討する必要があるんじゃないかと思いますが、この二点について、お考えだけお聞きをしたい。

三ッ矢主査代理 岩崎自動車交通局長、時間が押しておりますので、簡潔にお願いします。

岩崎政府参考人 とりあえずは、私ども、やはり今の基準をしっかり事業者に守ってもらうということが最重要だろうと思っております。

 こうしたあずみ野観光バスの事故が起こりましたけれども、まだ原因も特定されておりませんので、今の先生の御提案について、直ちに再検討を行うと申し上げる段階にはないと思いますけれども、こうした問題について、基準の徹底、監査、指導というのを当面は全力でやっていきたい、このように思っているところでございます。

森山政府参考人 お答え申し上げます。

 先生今御指摘の改善基準告示でございますけれども、これにつきましては、関係労使の方々の御議論をいただきながら、合意形成を図って定めているところでございます。

 これも委員今御案内のように、拘束時間、これは原則十三時間以内、あるいは休息時間は八時間以上などと取り決めておるところでございまして、私ども、まずはこの告示の遵守の徹底を図っていくことが重要であるというふうに考えております。

 今後とも、国土交通省と連携しつつ、監督、指導の実施に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

日森分科員 ありがとうございました。

三ッ矢主査代理 これにて日森文尋君の質疑は終了いたしました。

    〔三ッ矢主査代理退席、主査着席〕

赤松主査 次に、原田憲治君。

原田(憲)分科員 自由民主党の原田憲治でございます。

 国会という場所に出てまいりまして、初めて質問をさせていただきます。まして、顔を上げましたら、旧大阪三区の大先輩、近江巳記夫先生の肖像画もかかっておりまして、いささか緊張いたしておるところでございます。

 まず最初に、大阪国際空港についてお尋ねをいたしたいと思います。

 大阪国際空港、国際と名前がついておりますけれども、今、国際線の飛行機は一機も発着をいたしておりません。関西三空港の時代ということで、神戸空港、それから関西国際空港、そしてこの大阪国際空港という三つの空港があるわけでございます。

 この中で、大阪国際空港、伊丹空港は国内線の基幹空港ということで位置づけられておりますけれども、国内線の基幹空港という位置づけというものはどういうものなのか、まずお尋ねをいたしたいと思います。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 ただいまの先生からの御質問にありましたように、関西圏に三空港、神戸空港も開港いたしまして、できたわけでございますけれども、その役割分担というのを私ども地元ともお話し合いをしながら決めさせていただいておりまして、その中で、関西国際空港は西日本を中心とする国際拠点空港であり関西圏の国内線の基幹空港、伊丹空港は国内線の基幹空港であり環境と調和した都市型空港、神戸空港は百五十万都市神戸及びその周辺の国内航空需要に対応する地方空港、こういう役割分担を決めさせていただいております。

 この中で、伊丹空港は国内線の基幹空港というのは、国際線は関空の方に移転したわけでありますが、国内航空ネットワークの中では伊丹は大変重要な空港でありますので、その位置づけを私ども基幹空港ということであらわさせていただいておるというところでございます。

原田(憲)分科員 大変大事な国内線の空港として位置づけられておるという御答弁をいただいたわけでございますけれども、ただ、私はそこで少し疑問に思っておりますのは、基幹空港と言いながら、いろいろな制限がこのごろ加えられておる。例えば、長距離便については減便をしなさい、あるいは、現実の問題として、今騒音の問題もありましたので、そのこともあろうかと思いますけれども、大型機の乗り入れ、双発以上のジェット機の乗り入れはだめだということで制限を受けております。

 制限をしておきながら国内線の基幹空港と言えるのかどうか、もう一度お考えをお聞かせいただきたい。

鈴木政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、伊丹空港は国内線の基幹空港でありますが、もう一つ、環境問題と調和した都市型空港という位置づけをさせていただいております。

 この意味するところは先生も十分御承知かと思いますが、伊丹空港の長い歴史の中で、大変深刻な騒音問題からスタートした空港ということで、関空ができることが見えてきた平成二年に地元と存続協定を結ばせていただいて、伊丹を存続することが決まったわけでありますが、その際にも、やはり騒音問題に配慮して、総発着回数を一日三百七十回、うちジェット二百回ということで決めさせていただきました。

 その後、YS11、国産のプロペラ機が老朽化してリタイアしなければいかぬということで、それにかわる適切なプロペラ機がなかったもので、低騒音の小型のジェット機ならやむを得ないかということで、YS代替ジェット枠というのを、ジェット枠の二百にプラスして一日五十発着、決めさせていただいておりまして、低騒音ジェット機をその枠で運航してきたところであります。

 しかしながら、平成十五年に実施いたしました騒音測定調査で騒音値がふえたという状況が見られまして、この原因のほとんどがジェット機によるものであったため、平成十六年に地元自治体と協議の上、このYS代替のジェット枠を平成十九年四月までに段階的に廃止する、その際に、ジェット枠が希少になりますもので、ジェット枠を中近距離路線に優先的に使用し、長距離路線には使用しないように努めるという基準。それからもう一つは、高騒音の大型機材であります、三発とか四発のエンジンがついていますDC10とかボーイング747とかいう機材でありますが、この就航を平成十八年四月までに禁止するという措置をとらせていただいたところであります。

 ただ、こちらの大型機材につきましては、トリプルセブンと言われております新しいボーイング777、これは二発でありますので、これは使っていくことになっております。例えば、東京羽田なんかは全便もう今777になっておるというような状況でございます。

 こういうことで、騒音問題に配慮しながら、希少となったジェット枠を効率的に使用し、限られた枠の中で利用者の利便になるべくこたえたいということでやっておりますことでありますので、やむを得ない措置かなと私どもは考えております。

原田(憲)分科員 騒音問題の観点から見ますとやむを得ないかなという思いもあります。しかし、利用者の側からすれば、どうしてという思いが当然残ってくるわけでありまして、今言われたDC10なる飛行機は、国内線では今存在しませんね。大型機、ジャンボにしましても、テクノジャンボというんですか、騒音も随分抑えられる飛行機になってきておる。今後またどういう新たな機材が導入されるかわかりませんけれども、そのときにはお考えをいただけるのかなというような思いを持っております。

 私も池田に住んでおりまして、今おっしゃっておりました、逆に私のところは、実家は、YS11が飛びますと直下になるんですね。かえってうるさい。プロペラ機ですから、いつまでもぶうんという音が残っておるような状況でありまして、これはどっちがいいとかいう話ではないかもしれませんけれども、そういう実態もありました。今はもう範囲に入っておりませんけれども、NHKの受信料も軽減されたような地域でもありました。ですから、騒音が全くないというところで議論をしておるのじゃなくて、騒音地域にも入っておった立場として議論をさせていただきたい、このように思っておるんです。

 今のプロペラ機ですね、これも少し心配なことがありまして、故障の回数が大変多い。欠航でありますとか、あるいは、一度飛び上がって戻ってきたりということであります。プロペラ機を何機も飛ばすのであれば、私としましては、小型のジェットをプロペラ機の代替で、プロペラ機が三回飛ぶところを一回飛ばしたらどうなのかな、中型のジェット機であれば、輸送人員もそんなに変わらないと思うんですね。そういう思いもいたしておりますし、今申し上げましたように、利便性の問題の観点から見ますと、お客さんもそれを希望しておられるということであります。

 ジャンボは、関空は飛べるんですよね。関空は飛べるんですけれども、実際、今度は逆に、向こうはお客さんがおらないからジャンボを飛ばしても採算が合わないということだと思いますけれども、東京―大阪は特に飛んでおらないような実態もあるようです。

 ツアーという話が先ほどありましたけれども、旅行会社で北海道行きの募集をしますと、大阪の広告を見ておりますと、伊丹空港確約というようなツアーがたくさんありまして、やはりその方がお客さんが多いんですね。このことも少しお考えの中に入れていただけたらなと思います。確かに、騒音問題があるところですから、それを全く無視してやれというのではありませんので、ひとつよろしくお願いを申し上げておきたいと思います。

 それから、地元では、伊丹空港はかつての大阪国際空港じゃないか、近距離の国際線ぐらい飛ばしてくれてもいいんじゃないかという意見もあるんです。あるんですが、冬柴大臣が先般、本当に明快に、明確にお答えをいただいた。これから関西の三空港というのは、今局長からお答えをいただきましたように、それぞれの位置づけでやっていきますよということでありまして、冬柴大臣の地元と言ったらあれですけれども、神戸空港に革商大会のときに国際線のチャーター便ぐらい飛ばしてくれたっていいじゃないかという要望があったようでございますけれども、これを明快に大臣はお断りいただいた。やはり国際線は関空に特化するんだということであります。

 大臣、突然で申しわけないんですけれども、今後、このようなお考え方でいっていただけるということでしょうか。もう一度お聞かせいただきたいと思います。

冬柴国務大臣 関西三空港は、関西は一つということで、来年、国土形成計画法等によって広域地方計画というのをつくるわけですけれども、それは、従来の府県を越えて、例えば近畿であれば、大阪府、京都府、兵庫県、滋賀県、そして奈良県、和歌山県、二府四県が一つの広域エリア、広域ゾーンとして、ここでどういうふうに発展していくのか。このエリアは、韓国一国のGDPをしのぎますし、人口においてもオーストラリアをしのぐ力があるところですね。三つぐらい飛行場があって不思議じゃないんですよ。しかしながら、三つの飛行場は、大阪湾という小さなエリアの中で三つあるわけですから、いろいろ批判を受けました。

 しかし、でき上がって、今、四面環海のこの日本の国がこれから人口減少社会を迎えて生き延びていくためには、やはり近隣の、特にアジア、中国、韓国、東南アジアの活力、人口も物すごく多いわけですから、そういうものをこちらへ引き入れるためにも、海を越えて人とか物が来なきゃならないという特性があります。したがいまして、国際空港あるいは国際港湾というものが非常にこれから大事ですね。

 それで、関西国際空港は、まさに日本で初めての、八月二日にそうなるわけですけれども、二本の滑走路を持った二十四時間使える国際空港なんですね。これについては、今までのいろいろな経過がありまして、年間十三万回の発着とか、年を越えると十三万五千回とかいう発着が大臣同士の約束で約束されているわけでして、そういうものに取り組んでいる関空は、国際拠点空港として関西の中で大いに発展をしていきたい。それから、伊丹空港は、先ほど航空局長が答弁しましたように、国内の重要な拠点空港としてやってほしい。そして、神戸は、先ほど言ったように、百五十万神戸市民とその後背人口の国内専用空港としてやっていこうと。

 これはもう地元でどういうふうにしてこれをしたらいいかということを利害関係人が寄り集まって合意した線でございますので、これはなかなかちょっと、伊丹にも国際線を入れろとかなんとか今言われても、いろいろな過去からのものがありますし、九時になったら飛んだらいかぬ、こういう制限もありますし、騒音とか環境問題を考えますと、今のような形がみんなが合意する内容として合理的なのかな、こんな思いでございます。

原田(憲)分科員 ありがとうございます。

 今の大臣の御答弁で、伊丹空港はなくならないということを再確認させていただいた次第でございます。この問題につきましては、また国土交通委員会等でお話をさせていただきたいと思います。

 それから次に、先ほどもございましたけれども、私の地元、大阪の吹田市、選挙区の隣で起きましたスキーバスの事故に関連してお尋ねをいたしたいと思います。

 二十一歳の運転手さんの勤務実態というものは今言われておりましたけれども、それと別に、亡くなられた添乗員さん、十六歳ということでありましたけれども、この添乗員さんの勤務実態等、この辺がどうなっておったのか、もしおわかりになればお教えいただきたいと思います。

岩崎政府参考人 先ほど申しましたように、日森先生の御質問でお答えさせていただきましたように、今北陸局で監査をしているところでございますけれども、まだ十分な聞き取り調査も済んでおらない段階でございますので、添乗員の方の動向まではきっちり把握している段階ではございません。

原田(憲)分科員 わかりました。またわかればお教えをいただきたいというふうに思っております。

 それから、先ほどありましたけれども、二十一歳で二種免許を取って間なしということでありますが、これはもう典型的な小規模な会社というんでしょうか、家族の中の会社というんでしょうか、そういったところの典型的なものだと私は思います。

 普通の会社ですと、二種免許を取ってすぐに長距離をお客さんを大勢乗せて運転させるというようなことは恐らくないんではないかな。少なくとも、私の知っております大手の会社ではそのようなことはありません。まず添乗というんですか、わき乗りをさせてある程度してというようなことでありましょうし、昔でありますとバスの車掌をさせて、今はもうほとんどワンマンですから車掌なんというのはありませんが、そのようなことをさせて長距離運転を正運転手としてさせるというのが実態ではないかなと思っておるんです。

 そこで、提案といいますか、こういうことが可能かどうかお答えをいただきたいんですが、各路線バスの会社でありますと、路線を走らせるについて、もちろん全く知らない者が乗ってもどこをどう走ったらいいかわからないので、いわゆる習熟運転というんですか、新規の路線でもそうだと思いますし、今度、私の地元では、三月十九日にモノレールが阪大病院前から彩都西駅まで延びますけれども、今その習熟運転をしておる最中でありますけれども、そういったことがバスの中ではされていないと思うんですね。会社単位でやっておると思いますけれども、法律上こうしろというようなことは恐らくないのではないかなと思うんですが、習熟運転というような考え方は国土交通省としてお持ちではないでしょうか、お聞かせをいただきたい。

岩崎政府参考人 私どもの方で指針を決めておりまして、旅客自動車運送事業、バス、タクシー、乗り合い、貸し切りを含めてでございますけれども、こうした運転者に対して、特に新たに雇い入れた場合については、この人たちに対しては、事業用の自動車の安全な運転に関する基本的な事項でありますとか、そうしたものの点検のやり方とか、こうしたことを六時間以上特別に指導してください、こういう指針を定めております。

 また、これに、先生今御提案のような、可能な限り実際に事業用自動車を運転させて、安全な運転方法を添乗等により指導してください、こういう指針を定めているところでございます。

 監査等でもこういうところは見ておるところでございますけれども、また、こうした指導が適切に実施されない場合には警告をし、あるいは改善が見られない場合には行政処分をするといったことをやっておりますけれども、今回のような事故を踏まえて、そうしたことが本当に実態としてどのぐらいできているのか、さらに改善点がないのか、勉強してまいりたいと思っております。

原田(憲)分科員 今お答えをいただいたようなことで、ぜひそういうことを実現していただきたい。

 それからもう一点、バスの免許の関係であろうかと思いますけれども、先ほども指摘がありましたように、乗り合い的なもので貸し切りバスが運行されておる、これは路線バスにならないのかというようなお話もありました。私もまさにそのとおりだと思います。

 それから、これは、大阪におりますと、スキーのシーズンになりますと、スキー客がたくさん大阪駅前、最近では駅のところへ入ってこれなくなって、どこかバスターミナルみたいなものをつくって、そこからツアーの発着がされておるようですけれども、大阪のバス会社よりも他府県、例えば長野ナンバーでありますとか、今はもっとナンバーがふえておると思うんです。

 他府県の事業者が入ってきて、理屈はわかるんですよ、そこまで運ぶんだから、タクシーと同じじゃないかと思うんですが、大阪へ来て、他府県の車が事業認可を受けておって、大阪でお客さんを乗せて、大阪で観光して、お客さんを大阪でおろして、バスは長野なら長野の地元へ帰っていくというのは、許されるのかどうかわかりませんけれども、少なくともタクシーではこのやり方はだめですね。

 バスの方は、チャーターすればいいのかなとも思うんですけれども、どうも実態が、今の料金体系というお話がありましたけれども、それに関連しているんではないか。大阪の業者ですとその値段では請け負わない、だから、他府県のこの値段でも受けておるような、言ったら、適正な料金があるわけですけれども、それより安くチャーターして使っておるという実態があるのではないかな、こう思うんですけれども、その辺のところはどうでしょうか。

岩崎政府参考人 貸し切りバスもタクシーも同じような考えなんですけれども、営業区域という概念がございまして、我々、俗に片足主義と言っているんですが、例えば、長野のバスが長野からどこかに向かうお客さんを運ぶ、それから他府県から長野に向かうお客さんを運ぶということについては、どちらかが長野県にあれば合法だ、それで片足と言っているんですけれども、こういう整理をしております。したがいまして、大阪―長野間の貸し切りツアーバスを長野の事業者がやられるということについては、営業区域の観点から違法ではありません。

 ただ、実際に、長野でのいろいろな諸経費、駐車場なんかを含めてのコストと大阪でのコストは違いますから、どうしても先生おっしゃったような傾向はあろうかと思いますけれども、そのあたりはやはり営業努力でカバーしていただくしかないのかな、このように思っているところでございます。

原田(憲)分科員 営業努力ということがありましたけれども、私、もう一つお尋ねをしたいのは、観光バスをチャーターするときに、料金というのは決められていると思うんですよ。だから、大阪から長野へ行くことを考えれば、駐車料金を考えますと、逆に現地へ行った方が、大阪でバスをとめておくより駐車料金が安いんじゃないかなと思うんですよ。

 私が言いたいのは、ある一定の料金がありながら現実はその料金が守られておるのかどうか。そのためのしわ寄せが運転手さんに行っているのではないか。バスを、車両を安く買ってきたって、これはもう知れていると思うんですね。一番手っ取り早い方法は何かというと、バスの運転手さんの給料を抑えるということだと思うんです。

 私は、今回の事故は、先ほども申し上げましたように、典型的な家内工業と言いましたのは、一般の運転手といいましょうか、会社で、このような二十一歳の、しかも昨年の夏に二種免許を取ったばかりという人を本当に雇うかどうか。自分の弟だから、あるいは兄貴のためだからということでハンドルを握っておった、済まんな、辛抱せいよというような形で過酷な労働を強いられておったのではないかな、こんなふうにも思うんです。

 ですから、料金の適正化ということについて指導監督される立場の国土交通省がもう少し踏み込んだ指導ができないのかなという点について、お尋ねをしたいと思います。

岩崎政府参考人 貸し切りバスの運賃でございますけれども、平成十二年の二月に規制緩和をいたしまして、事前届け出制としております。その額も確定額ではなくて幅運賃等を認めておる、こういう状況でございます。貸し切りバス事業者の運賃の収受については、やはり基本的には事業者がみずから適正な運賃の収受に努めていただくというのが基本だろうと思っております。

 私ども、監査等において、届け出運賃に相違して著しく違っているといったものには必要な指導を行っているところでありますが、何よりも過労運転等につながらないことが大切でございますので、先ほど来申していますように、そうした労働時間の実態、運行管理の実態、こうしたものについて適切に、重点的に監査に努めていって、こうしたことの事故の防止や事故が二度と起きないように頑張ってまいりたい、このように思っているところでございます。

原田(憲)分科員 バス事業者についても監督する立場にあると同時に、旅行業者、ツアーを主催する業者に対する指導も国土交通省の所管であると思いますので、その辺のところは、岩崎局長の方で指導する立場なんでしょうか、違う部署になるんでしょうか。

岩崎政府参考人 旅行業者の方の監督は、同じ国土交通省でございますが、観光部門が担当しております。

 私ども、このツアーバスの問題については、観光部門と私ども自動車交通局で十分話をしながら、連携をとりながら、適正な運行をやってくれということで指導、連携を図っているところでございます。

原田(憲)分科員 よく連絡をとりながらその辺の指導をしていただきたいと思います。

 私も自動車が好きで、子供のころは、将来は観光バスの運転手になろうかというような夢も持っておったんですね。一つのあこがれの職業ではなかったかなと思うんですが、このような形になって大変残念であります。

 先日も、ここは私の、選挙区ではありませんけれども、しょっちゅう通る道です。左へ当たってはね返されて右へ、ああ、ここでやったんだなという、千里ニュータウンのそばなんですね。現場も見てまいりました。何でこんなところで事故が起こるのかな、居眠り以外に考えられないかなというような思いをいたしておるんですけれども、事故の原因はまだ調査中であろうと思いますし、捜査の最中であろうと思いますし、監査の方も今行っておられるということでありますので、詳細なことはまた国土交通委員会等でお尋ねをする機会があろうかと思います。

 免許制から許可制になったためにこの事故が起こったのではないかというようなお話がありましたけれども、私は決してそうではないと思います。適正に運営をされておればこういった事故は起きなかった。それから、だれでもかれでも仕事ができるようにしたためにこんなことになったんだということは、私は決してないと思います。

 許可制度になって、この会社も長野県の村で優良企業と言われておったところということでありますので、こういうところがまだほかにもたくさんあると思います、優良企業と言われるところがたくさんある。そのためにこの制度はよかったのではないかなと、私はよかったと思っております。逆にこのことが事故につながったと言われることのないようにしっかりと調査をしていただきたいということをお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

赤松主査 これにて原田憲治君の質疑は終了いたしました。

 次に、渡部篤君。

渡部(篤)分科員 自由民主党の渡部篤であります。

 冬柴大臣に国土交通に関する質問をすることができまして、大変感激をしています。

 国民の安全、活力、環境を守るために国土交通省は献身的に努力をされているわけでありますが、私が心配をしているのは、建設投資が、公共、民間を含めて、十年前は八十兆円あったのが、現在は五十兆円に減っています。これでいわゆる安全、活力、そして環境というテーマに、この国の形をつくっていくのに問題がないのか、大臣にお伺いしたいと思います。

冬柴国務大臣 確かに、平成十年には公共事業投資額は十四兆九千億でありました、補正後でございますけれども。しかし、今御審議をいただいています十九年度の公共事業投資は、この半額以下で、六兆九千億台でございます。

 私どもは、この日本の国の財政状況を考えましたときに、歳出削減というものには聖域はない、しかしながら、我々は、それによって、今委員おっしゃいましたように、この安全、安心とか活力とかいうものがそがれるようではいけない、そこをどうするのか。私は、やはり、軽重緩急、何が重くて何が軽い、何を急いでこれは遅くてもいいというような仕分けをするとか、真に必要な社会資本の整備はどうしてもやっていかなきゃいけないわけでございます。

 そういうものについては、重点化、効率化というものを徹底して、そして限られた資源を有効に活用することによって、国民の期待される安全、安心、活力というものを失わないような政治を行っていかなければならない、大変苦しいですけれども、そのように頑張らなければならないというふうに思っているところでございます。

渡部(篤)分科員 私の選挙区の奥会津に、人口二千八百人の金山町というところがあります。つい最近、土砂崩れがありました。現在、土砂崩れで避難して生活している方が三十人、十三世帯います。プレハブの仮設住宅は旧山古志村で使われたものを使うと言われていますが、全国にマスコミ報道はされていませんが、会津の過疎地域の現実を大臣に知っていただきたいと思います。

 ことしは会津も雪が少なくて、その影響で自然の形態が崩れ、地盤が崩れたと言われています。土砂崩れが二回起きて、またもう二、三回は起きるだろうと地域の人たちはおびえています。このことは、金山町だけではなくて、全国の過疎地域、山間部の地域が同じ状況にあると思いますが、土砂災害の危険箇所数は約二十一万カ所、保全人家戸数は約三百三十七万戸と言われています。

 過疎地域も含めた全国の土砂災害危険箇所に対する国土交通省としての安全対策の進め方についてお伺いいたします。

冬柴国務大臣 今渡部委員が御指摘のように、残念ながら、我が国には非常に山地が多く、そして、現在全国に、人家等が五戸以上ある土砂災害危険箇所は約二十一万カ所にも上っておりまして、その中に保全すべき人家戸数が約三百四十万戸も存在しているわけであります。

 これに対して、我々は国民の安全、安心というものを何としても実現しなきゃならないわけでありまして、中長期的な事業の見通しといたしまして、平成十五年度に策定された社会資本整備重点計画におきましては、平成十九年度末までに約三百四十万戸のうち百四十万戸を保全することとしております。現在鋭意事業を進めているところでありまして、この目標はおおむね達成できる見込みとなっております。平成十七年度末現在で百三十万戸の保全を済ませております。

 今後とも、土砂災害による被害を少しでも軽減すべく、施設整備及び警戒避難体制の強化並びに土砂災害のおそれのある箇所での土地利用の制限、このことを三本柱として、より一層効率的、効果的に砂防関係の事業を推進してまいりたいというのが現状でございます。

渡部(篤)分科員 私も県議会の土木委員長をやったことがあるんですが、かつて県とか地方は生活関連で一定の公共投資がなされていました。しかし、今、大変悲惨な状況にあります。

 私の住んでいる県の会津若松建設事務所というのが、かつて二百二十億円あった事業費がもう五十億円を切りました。四分の一の予算で地域の安全が確保できるのか。私は、今大臣が言われたように、効率的に、重点的にやられる、それはそのとおりだと思いますが、地方の現状は厳しいものがあると思います。

 国土交通省が昨年実施した市町村アンケートでは、今後、全国の二千六百四十一の集落で人が住まない消滅状態になることが予想されると報道されていました。地方の公共投資の減少とこれは私は無関係ではないと思いますが、どうでしょうか。

宿利政府参考人 お答え申し上げます。

 今渡部委員から御指摘の調査につきましては、国土形成計画の全国計画の検討に資するために、過疎地域に指定されている市町村等を対象に実施をいたしましたアンケート調査の結果でございます。

 この結果によりますと、これは市町村の主観的な判断ではありますけれども、今後十年以内に消滅のおそれがあると判断される集落が四百二十二、十年以降にそういうおそれがあると判断される集落が二千二百十九、合わせて二千六百四十一の集落について、将来的に消滅のおそれがあるといった結果が出ておりました。

 このようなアンケート結果の背景としましては、私どもは、一つには今後の人口減少、高齢化が進んでいくことに加えまして、産業構造の変化に伴う若年層の都市部への転出、医療や地域公共交通の衰退、防災上の不安など、さまざまな要因が複合的に影響しているのではないかと考えております。

 国土交通省といたしましては、このような人口減少と高齢化が急速に進展する中で、過疎地域においても安心して住み続けられる生活圏域を形成することが重要だと認識しております。そのため、中心となる都市の拠点性の向上、周辺地域との連携を強化する道路ネットワークの整備、公共交通の活性化などとあわせて、防災対策や生活の維持に不可欠な道路等の確保に努めてまいりたいと考えております。

渡部(篤)分科員 私は、市会議員二期やって県議会議員四期やりまして、地方議会出身ですが、憂慮にたえないことがあります。

 例えば、今度福島県の予算で、公共事業の削減で県道が二十二工区、河川七工区が休止になりました。もちろん不必要なものはやめるべきですが、ここ数年、各都道府県、市町村を含めて、無理な公共投資はもうしていない時代になっています。それでもこういう状況というのは、私は、これは何とかみんなで考えていかなければいけないと思います。国の公共投資の削減が三%でも、地方では大幅な削減となります。公共事業予算をこれ以上削減すべきでないと考えますが、国土交通省の見解をお伺いいたします。

竹歳政府参考人 国の公共事業関係予算につきましては、先ほど大臣より御答弁申し上げましたように、ピーク時の半分以下になっておりますが、地方はさらに厳しい状況でございまして、地方単独事業、投資的経費につきましては、平成五年度十七・九兆ございましたが、これをピークとして、平成十七年度では七・八兆円となっており、近年では国を上回る勢いで削減が進んでいるわけでございます。

 国土交通省としましては、これまでもずっと削減してまいりましたし、また、社会資本整備における今後の課題等を考えますと、これ以上公共事業予算を削減することは非常に厳しいものがあると考えておりますが、一方、御案内のとおり、平成二十三年度における国、地方を合わせたプライマリーバランスの黒字化を実現するためには、公共事業を含むあらゆる分野で歳出改革を進める必要がございまして、平成十八年、昨年の七月に閣議決定されました基本方針二〇〇六におきまして、今後五年間、公共事業関係費、地方単独事業、投資的経費ともに対前年度比マイナス三%からマイナス一%、こういう幅を持ったものでございますけれども、削減とされたところでございます。

 このように、公共事業をめぐる状況は大変厳しいわけでございますが、公共事業は、やはり何と申しましても、経済活動の活性化でございますとか、国民生活を豊かにする非常に大きな役割を持っております。今後とも、重点化、効率化を徹底し、真に必要な分野における社会資本整備を進めてまいりたいと思います。

渡部(篤)分科員 次に、建設産業について述べたいんですが、建設産業、建設業者は、あるいはその社員が生きるも死ぬも、政治そのものが大きな要因になっているということを忘れることはできません。地方の建設業にとっては、公的なところからの受注がその企業の生命線を握っているのであります。

 平成十八年三月三十日木曜日、会津に季節外れの雪が降りました。只見町の中心部では二十センチ以上の降雪があり、積雪は二メートルを超えました。国道だけでなく、県道も町道も除雪しなければなりません。三十一日の深夜、雪はやみました。東京では桜が満開のところがあるというのに、氷点下の深夜、積雪状況を確認するために道路を監視している建設業者がいました。徹夜で待機している社員がいました。このことは大切だと思います。地域を守っている人たちがいるわけです。

 建設業は、地域におけるインフラ整備や災害対策、除雪等の活動を通じて、国民の生活基盤や国土の安全のみならず、地域の雇用の確保に大きな役割を果たしております。国土交通省は、建設業の育成に取り組んでいくべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。

宿利政府参考人 お答え申し上げます。

 地域の建設業につきましては、社会資本整備の担い手という大きな役割と同時に、基幹産業としてそれぞれの地域で多くの就業機会を提供するなど、地域の経済社会の発展に欠かすことのできない大変重要な役割を担っていると考えております。

 また、渡部委員御指摘のように、昨今の地震や風水害など自然災害が多発する中で、国民の生命と財産を守る社会資本整備の重要性が改めて認識されておりますけれども、災害発生時やその復旧過程における対応、あるいは御指摘のような除雪への対応も含めまして、地域の建設業に対する社会的な期待は大変大きなものがあると私どもは考えております。

 しかしながら、残念ではありますけれども、現状においては、建設投資の急速な減少の中で、特に公共事業への依存度が高い地域の中小建設業につきましては、大変厳しい経営環境に直面をしております。

 このような状況の中、国土交通省としては、一つには、入札契約制度を改革することによりまして、例えば、一般競争入札の拡大、総合評価方式の拡充、また、入札ボンドの導入などに取り組み、その結果として、技術と経営にすぐれた企業が伸びることができる経営環境整備を進めるということをやっております。

 あわせて、例えば農業や福祉や公共施設の管理など、コミュニティー産業としての建設業のノウハウを生かした地域における新たなニーズへの対応などの取り組みを促進、バックアップすることによって、建設業の健全な発展が図られるように努力してまいりたいと思います。

 また、あわせまして、建設業者の地域貢献でありますけれども、主として地域の建設業者が担う小規模工事などにおいて防災活動等を適切に評価に反映させることも重要だと考えておりまして、現在、総合評価方式の運用の中でどのようにこれを反映させることができるか、検討しているところでございます。

渡部(篤)分科員 建設産業の育成については、やはり優良な技術力のある会社を何とか育てていただきたい。かつてのバブル期のような、公共投資がたくさんある時代は、私ももうこれからないと思いますが、本当にまじめにやっている業者の育成について、国土交通省で努力をしていただきたいと思います。

 今、日本の将来を考えると、高速道路、高規格幹線道路一万四千キロ、これはもちろん大切ですが、もう一つ、地域高規格道路、第十一次道路整備五カ年計画で言う、いわゆる地域を連携するあの地域高規格道路の整備というのが私は重要だと思っています。会津でも磐越自動車道という横断道はありますが、縦軸の会津縦貫北道路、南道路というのを今国土交通省ではいろいろ事業をやっていただいていますが、このいわゆる地域高規格道路の重点的な整備が必要だと思いますが、いかがでしょうか。

宮田政府参考人 お答え申し上げます。

 地域の交流と連携の促進、あるいは高度医療等の国民生活を支えるサービスの提供、こういったものを図るために、高規格幹線道路を補完して高速走行が可能な規格の高い道路を地域高規格道路として重点的に整備をしております。

 例えば、地域高規格道路である会津縦貫道路は、福島県の会津若松地域の各都市の連携を強化する重要な路線であるとともに、当地域と首都圏の連絡強化に寄与するルートとしても重要な路線と認識しております。現在、喜多方市から会津若松市に至る約十三キロを事業中でございます。このうち、平成十九年度に約三キロの供用を予定しております。今後とも、事業中区間の早期完成を図るとともに、残る区間についても調査を推進してまいりたいと考えております。

 これら会津縦貫道路を初めとする地域高規格道路につきましては、地域の活性化を支援する観点等から、効果的、効率的な整備となるよう留意しつつ、重点的に整備を進めてまいりたいと考えております。

渡部(篤)分科員 会津縦貫北道路、南道路、そして、東北中央高速自動車道というのがありますが、相馬から福島に出て、米沢、山形に行くんですよ。ところが、私たち会津の人間としては、なぜ宇都宮から田島、会津若松を通って米沢に行けなかったのか。これは悲しい現実ですから、地域高規格道路で、若松から田島、そして首都圏に行って三千万の人たちと会津が交流できるように、何とか国土交通省で事業を早期にお願いしたいと思います。

 それから次に、新幹線についてであります。

 この前、私びっくりしたんですが、新幹線の時速は二百七十キロですが、もうすぐ三百キロを突破するそうです。あるいは三百五十キロになるかもしれませんが、そのとき何が起こるのか。新幹線の通る地域と通らない地域に大きな格差が生まれると思います。高速交通時代からおくれることは地域の停滞を示すことになります。我が会津も、郡山から磐越西線で会津若松、喜多方市に何とか新幹線を走らせたいという思い、今は夢かもしれませんが、そういう思いがあります。

 そのような中で、フリーゲージトレーンというのが今話題になっています。新幹線と在来線の直通運転、乗りかえ時間が要らなくなる、あるいは直通のために、在来線を新幹線の軌間と同じ幅につくりかえるのに比べて大幅なコストダウンになる。東京駅から会津若松、喜多方まで新幹線、フリーゲージトレーンを導入するというか、そういうお考えはあるのかどうか、お伺いしたいと思います。

平田政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねのフリーゲージトレーンでございますけれども、現段階では実用化されておりませんで、まだ技術開発の途上のものではございますが、新幹線と在来線との直通運転化は、乗りかえの解消でありますとか到達時分の短縮を図り、地域の活性化にも資するものであると考えております。

 このフリーゲージトレーンにつきましてちょっと御説明させていただきたいと思いますが、新幹線のゲージは標準軌といいまして広いもの、千四百三十五ミリでございます。在来線は狭軌、千六十七ミリでございます。これを直通運転できるように車輪の左右の間隔をゲージ幅に合わせて自動的に変換する列車でございまして、山形ミニ新幹線それから秋田のミニ新幹線のように在来線の線路の軌間を拡大する必要がなくて、既存施設を有効に活用できるという特徴がございます。

 ただいまのフリーゲージトレーンの技術開発の状況について申し上げさせていただきたいと思いますが、平成十年に試験車両を完成させました。これまでの国内外の走行試験の結果、新幹線の区間でおおむね時速二百キロ程度、在来線の区間では特急列車並みの走行性能を確認いたしましたが、フリーゲージトレーンの実用化に向けては、より高速域での走行安定性を高めていくなどの技術的な課題がございます。

 現在、これまでの知見を踏まえまして、座席つきの新型車両の製作を進めているところでございます。来月の末を目途に新型車両を完成させ次第、この新型車両によります各種走行試験を実施するなど、引き続き技術開発を推進しております。

 したがいまして、現時点では具体的な路線でフリーゲージトレーンの導入を確定できるような段階にはありませんが、一日も早く技術的な実用化のめどを立てまして、その段階で、鉄道事業者とも十分調整しつつ、具体的な活用のあり方について検討してまいりたいと考えております。

 以上がフリーゲージトレーンの技術開発状況でございます。

 次に、委員御指摘の、では、磐越西線のフリーゲージトレーンの導入を初めとする高速化につきましては、まずは、鉄道事業者によります輸送需要の動向、収支採算性などを勘案した上での経営判断が基本となります。JR東日本によりますれば、磐越西線の利用者の方は年々減少傾向にある、現在のところ、郡山―喜多方間のフリーゲージトレーンの導入などを初めとする高速化の計画は残念ながら考えていないと聞いてございます。

 したがいまして、まずは、地元におかれまして、観光イベントなど観光客の誘致のためのさまざまな取り組みを行っていただきたい、さらには、魅力あるまちづくりを進めるなどによりまして、磐越西線の利用促進に努めていただきたい、こういうふうに考えてございます。その過程におきまして鉄道事業者との間で十分な検討を行い、費用負担を含め、案件の成熟度を高めていただくことが肝要かと考えているところでございます。

渡部(篤)分科員 いわゆる磐越西線のいろいろな利用の状況を言われましたが、郡山まで新幹線でみんな来るんですよ。政治家の先生もあるいは大学の先生も、みんな郡山から車で高速道路で行きます。なぜか。乗りかえるからですよ。会津若松まで行くのに、高速道路で一時間以上かかるんですよ。

 だから、私は、かつて特急「あいづ」というのが、上野から会津若松まで直通がありましたが、乗りかえなしであればまだまだその可能性ありと思いますし、しかし、やはり県とか地方が、地域が新幹線を何とかつくりたいという熱意、あるいは、みんなでもっと考えていきたいと思います。

 それから大臣に、最後、私、質問したいんですが、公共事業についての私の考えです。

 公共事業というのは社会公共の利益を図るための事業であると私は思います。河川や山林という自然のままに手を入れずして我々の安全で安心できる暮らしも実現できませんし、人、物、情報が効率的に流れ、国土や地域が一体的に使える状況もできません。公共事業は、もうかるからではなくて、国民が必要だからという公共サービスとして考えるべきであると私は思います。いつの時代にも公平公正な観点からの社会資本の整備が必要であります。

 だから、私が大臣にお願いしたいのは、中山間地域や過疎地域や地方で頑張っている人たち、汗水流して一生懸命やっている人たちに夢を与えていただきたい。だから、新幹線も、会津縦貫の北道路も南道路も、あるいは山間部で土砂崩れの中で、生きている、その頑張っている人たちに、安全、活力、環境という大きなテーマであるならば、政府が何とかしてやる、そういう思いが公共事業に私は必要であると思いますが、最後に大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

冬柴国務大臣 私たちの子供や孫たちが自信と誇りを持てる「美しい国、日本」、これをつくっていくのが我々国土交通省の使命だというふうに思っております。それは抽象的でございますけれども、もっと突き詰めればやはり安全、安心な国土を建設するということになるだろうと思います。

 もっと分ければ、国民の安全、安心、これは建設とか公共事業だけではなしに、運輸もありますし、また海の海上保安もございますけれども、いずれにしても、その安全、安心ということが、確保が大事だ。

 二番目には、日本は少子高齢社会が進展しておりまして、人口減少社会にまで突入した現在、やはり近隣諸国、特にアジアの活力を日本へ呼び込む、そのような競争力強化、そのための社会資本整備がまた必要だろうと思います。そうでなければ日本の持続的な成長ということは期待できなくなってしまうと思うわけであります。

 三つ目には、今委員もおっしゃいましたように、頑張る地方を我々は再生するあるいは押し上げる、これをやはり重点的に行わなければならない。総理もいつも、地方の活力なくして国の活力なし、そのようなことをおっしゃっています。

 そして最後には、やはり国民の生活というものを、快適で豊かな生活を確保するために国土交通省が頑張らなければならない、こんなふうに考えているところでございます。

 いずれにいたしましても、歳入歳出一括改革というようなことで歳出が著しく削られていますけれども、そういうことで泣き言を言わずに、緩急軽重と申しましたけれども、何が必要で何を重点的にやらなければならないかということを見きわめながら、国民の期待にこたえなければならないと思っております。私は、委員と全く同じ気持ちでおります。

渡部(篤)分科員 大臣の答弁を聞いて涙が出ました。地方出身で、地方の実情を考えると、ただ、私は、財源が厳しい、二〇一〇年初頭までプライマリーバランスを何とかしなければいけない、子供たちに借金は残してはだめだ、これもとうといことですが、今やらなければならない社会資本の整備、これはやはり、大臣、何とか大胆にやっていただきたいと思います。

 そのことを強くお願いして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

赤松主査 これにて渡部篤君の質疑は終了いたしました。

 次に、吉田泉君。

吉田(泉)分科員 民主党の吉田泉でございます。大変長時間でお疲れとは思いますが、よろしくお願いいたします。

 私のきょうのテーマは、港湾における沖待ち問題ということであります。船が港に入ってきて荷物をおろそうとしますけれども、港が込んでいる、そのため沖で数日間待たなければならない、これを専門用語で、船込みによる沖待ち、こう言うそうでございます。

 私の地元は福島県なんです。今直前に質問に立った渡部議員は会津といって内陸部ですが、私は、浜通りといって太平洋岸に面しているところが地元でございます。そこに、重要港湾ですが、小名浜港という港があります。きょうのお昼ごろ、そこに電話をして、そこに県の港湾事務所があるものですから、所長さんに小名浜港における沖待ちの状況を聞いてみました。そうしたところ、きょう現在で一隻の石炭船が沖待ちをしていると。二月二十二日から待っているということですから、既に六日間ぐらい防波堤の外で待っているということであります。

 所長さんの話ですと、待っているときの一日当たりのコストというのは大体二百万円を超える、こういうことでありますから、六日間たつと、それだけで千二百万円お金がかかってしまっている。結局、このお金は、石炭船の場合ですけれども、荷主側の負担である、恐らくこれは火力発電所が荷主だと思うんですが、その会社が負担をしているという状況でございます。

 港湾サービスを提供している行政側としては、何とか早急な対応が求められるのではないかというのが基本的な問題意識でございます。

 きょうは、なぜこういう沖待ちが起こってしまうのか、数年続いているんですが、なぜ続いているのか、どういう対応があり得るのか、その辺を御質問したいと思います。

 最初に、質問の前提として、こういう港湾の運営管理及び整備において、国、県、そしてさらには市町村、この分担がどうなっているのか、お伺いします。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 港湾の管理運営及び整備に当たっては、港湾法に基づきまして、国と港湾管理者の役割は次のとおりとなっております。

 まず、国におきましては、一番目に、港湾の開発、利用及び保全並びに開発保全航路の開発に関する基本方針の策定、二番目に、港湾管理者が作成する港湾計画の審査、三番目に、直轄事業による港湾施設の整備でございます。港湾管理者におきましては、一番目に、港湾区域及び港湾施設の管理、二番目に、港湾計画の作成、三番目に、港湾施設の整備ということになっております。

 また、港湾の所在する港湾管理者でない市町村でございますけれども、これらは港湾の魅力を活用して地域づくりに取り組んでいるということでございます。

 今のは法律の言葉でございまして、実際どういうことをやっているかというのは、まず港湾の管理でございますけれども、港湾法に基づく港湾の数が全国で一千七十ございます。うち地方港湾が九百四十二、重要港湾以上が百二十八、重要港湾のうち特定重要港湾が二十三ございまして、これの管理は、都道府県がやっておるのが約六割でございます。それ以外、一部事務組合といって特殊な管理をしているところが七つございまして、それ以外は市町村、四割でございます。市町村の管理というのは、実際問題として、非常に小さな港湾、あるいは、北海道とか九州とかそういうところの小さな港湾を管理しているというのが実態でございます。

 整備に関して申しますと、国が直轄事業で主要な航路とか大きな岸壁を整備しております。管理者が、それ以外の小さな岸壁とか小舟だまりとか小さな施設、それと、埠頭用地と呼んでいまして、荷物をさばく用地の整備、あるいは荷役機械の整備などを行っております。

 それ以外、先ほど言いました、港湾管理者でない市町村でございますけれども、それらは実際問題として港湾の整備は行っておりません。ただ、背後のアクセスとか背後の土地利用計画について非常に関心を持ってやっておって、当然のことながら、一番港湾を利用して栄えるのは港湾の所在の市町村でございますので、非常に関心を持ってやっていただいているという状況でございます。

吉田(泉)分科員 そうしますと、港湾の管理者というのは県を中心とした地方自治体である、そして、整備もそこがやるんだけれども、岸壁等の大きな事業については国が直轄でやったりすることもあるということですね。

 ちょっと一つ確認なんですけれども、基本的に、港湾の管理、整備というのは地方自治法なんかで言う自治事務という解釈でよろしいんでしょうか。

中尾政府参考人 我々の世界では港湾法が港湾の管理のもとになっておりまして、これは昭和二十五年にできた法律でございますけれども、当初の目的は、地方公共団体と同じぐらいの独立した、準ずる団体をつくるということになっておりまして、法律上では港務局をつくるということになっております。その中で、準用として地方公共団体がなってもいいということになっておりまして、基本は、港務局という独立の団体をつくって、それで港湾を運営するという形になっております。

吉田(泉)分科員 ちょっとよくわかりませんでしたが、基本的に管理者が地方自治体だ、しかし、整備の面では国が直轄事業等でかかわってくる。その辺の役割分担の問題が、私は、この港の問題、沖待ちの問題を考えるに当たってちょっとあるなという気持ちがあるものですから、最後にもう一度この問題に触れたいと思います。

 さて、二番目ですけれども、予算の状況についてお伺いしたいと思います。

 先ほど、全体で千七十の港があって、いろいろ、特定重要港湾、重要港湾、地方港湾、こういうランキングになっているということであります。それで、去年の予算を見ますと、港湾整備事業費というのは国全体で約四千億円ということでありますが、重要港湾、特定重要港湾、さらに地方港湾、その配分の状況をお伺いします。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 平成十八年度の港湾整備事業費は四千十五億でございまして、そのうち特定重要港湾に千五百八十億、そのうち、スーパー中枢港湾と呼んでおりますけれども、特定重要港湾の中でございますけれども六百二十一億、重要港湾千四百八十億、地方港湾五百二十四億、その他避難港というのがございますけれども、その他避難港などに四百三十二億円の配分となっております。

吉田(泉)分科員 そうしますと、いわゆるスーパー中枢港湾も含めた特定重要港湾、二十三あるわけですが、ここで大体予算の半分以上を、この二十三港だけで消化しているという意味では、やはりスーパー中枢と特定重要が非常に圧倒的な配分をとっている、こういうのが実態だろうというふうに思います。

 私も、日本国全体の国際競争力をどうやって維持していくかということになると、このスーパー中枢港湾の重要性が非常に高いというふうにはもちろん理解をいたします。しかし一方で、地方の整備も上手にバランスをとってやらないと、いろいろ問題が出てまいります。

 先ほどの小名浜港の例でいきますと、石炭を輸入して火力発電をやっている。その電気は大部分東京に送られてくるわけですよね、東京に近い地域なものですから。港が込んでいて沖待ちが続く、発電所の費用がかかる、そうすると、結局、東京で消費する電気代が上がらざるを得ない、国際競争力の足を引っ張らざるを得ない、こういう状況も懸念されるわけでございます。そういう意味で、予算の全体のバランスというのが極めて大事であろうというふうに思っているところでございます。

 それから、沖待ちの問題に参りますけれども、小名浜、私の地元では、沖待ちがもう数年、この三年ぐらい続いて問題になっておるんですが、全国的に見てこういう状態がどのぐらいあるのか実はお伺いしたかったんですが、国交省の方には特にデータがないということでございました。要するに、国は直接の管理者じゃないわけですから、そういう理由でデータがそろっていないということなんだろうと思います。

 そこで、一般論で結構なんですが、大局的に見て、少なくとも私の地元で起こっているような船込みによる沖待ち現象、一体どういう原因があって、どういう背景があって起こっているのか、国交省の立場から教えてもらいたいと思います。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 船込みによる沖待ち現象というもの自体でございますけれども、船舶が貨物の積みおろしを行うために岸壁などに停泊しようとした場合、既に他の船舶が停泊して貨物の積みおろしを行っているために、先に係留している船舶が荷役を終了し離岸するまで、当該船舶が港湾内あるいは港湾区域の外で待つ現象というふうに理解しております。

 まず、沖待ち現象は、昭和三十年代から四十年代の高度成長期に我が国の港湾において非常に激しく起こりました。この原因は、増大し続ける貨物需要に対して我が国の港湾整備が追いつかなくて発生した現象でございます。この結果、貨物の深刻な停滞が発生しまして、我が国の産業活動に重大な影響を及ぼしました。そのために、港湾整備五カ年計画を昭和三十年代から策定して、計画的かつ着実に港湾の整備を実施してきた結果、近年では沖待ち現象は大幅に減少してきております。

 沖待ち現象は、取扱貨物量に対して岸壁等の施設量や荷役機械の能力が不足している場合に見られる現象でございますけれども、このほかにも、入港船舶の大きさに比べて係留施設の水深が不足しているような場合、つまり、大きな船があってそれに見合うような岸壁の深さがないというような場合とか、気象、海象による入港船舶の運航おくれが生じた場合にも見られると思います。

吉田(泉)分科員 おっしゃるように、港の能力が足りない、水深が足りないとか、そういう状況が私のところの港にもございます。

 さらには、私のところは原発もあるんですが、原発がいろいろ不祥事で最近稼働率が落ちている、石油火力発電所に頼らざるを得ない、そういう状況もあります。それから、原油が高騰したものですから、石油を使うよりかは石炭で発電をした方がいい、そんな状況もあって、実に、小名浜港における石炭の輸入量がこの三年間で三倍になったという背景がございます。

 そのため、沖待ちの船の数、滞船隻数と呼ばれておりますが、これが一年間に五十隻ぐらいある。そして、その滞船日数は、延べですけれども百五十日。つまり、五十隻で百五十日ですから、一隻当たり大体平均三日以上待たされるということ。こういう状況がこの数年続いているということでございます。

 しかも、この後、うちの地元で火力発電所が二つ新規に稼働を始める、これは三年後から始めることになっておるんです。そうしますと、石炭の輸入量がますますふえる。実は、昔は二百万トンと言われておったんですが、今現在六百万トンぐらいになっておる、さらに三年後これが一千万トンになる見込み、もうすぐなる、こういう状況でございます。今の六百万トンが千万トンになるわけですから、倍近くに輸入量がふえる、そうするとますます船込みが進むのではないか、そうするとますますこの沖待ち現象が大きくなってくる可能性が強いのではないか、こういう心配が地元では強いわけでございます。

 国として、大局的に見て、この沖待ち現象の今後の見通しなどについて教えていただきたいと思います。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 港湾における沖待ち現象の発生は、貨物の深刻な停滞を招いて国民生活や産業活動に重大な影響を与えるものであります。これは委員御指摘のとおりでございます。その速やかな解消を図ることは必要だと思っております。

 このためには、発生している沖待ち現象を詳細に分析して把握して、原因とか要因を究明することが必要であり、これに基づいて改良策を検討する必要があると思っております。

 小名浜の場合でございますけれども、確かに平成十四年から急激に貨物がふえております。平成十一年が約一千百万トンであったものが平成十七年に千六百万トンという形で、毎年一〇%以上伸びておるということでございます。これは、委員御指摘の石炭火力、コールセンターもございます。それと、あと、鉱石類等の輸入が急激にふえているということもございます。

 これにつきましては、まず港湾計画というものがございまして、長期の港湾計画を港ごとにつくっております。例えば小名浜港でございますと、平成十五年につくっておりまして、平成三十年後半を目標とした計画になっております。その中でいろいろな計画、当然でございますけれども、大型岸壁の新規増設というものも入っております。そのようなものをまず着実に進めていく、あるいは、実態に合わせて、これは一部変更といって変更できますので、そのようなことをやっていくということが必要じゃないかと思っております。

吉田(泉)分科員 行政は国内最大のサービス業だという言い方がされるときがあります。お客を待たせるということは何とか避けたい、早く何とかしていただきたい、こういうことでありますけれども、この沖待ちをなるべく早く解消しようというときに、国、県、市町村、それぞれどういうことができるのか、その点についてお伺いいたします。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 まず、沖待ち現象を解消するためには、港湾管理者である、小名浜の場合ですと福島県が、先ほど言いました港湾計画、それが足りない場合だったらそれを見直すとか、そういうことをまずしなければいけないと思っております。

 さらに、そのために、国としてはそれの審査をするという立場がございますので、国としては、それの支援あるいは審査をするということになると思います。

 さらに、港湾計画というのは計画でございますので、実際に岸壁をつくるあるいは背後の用地をつくるということになりますと、お金が要ります。そのためには、港湾管理者が国といろいろ協議いたしまして、直轄はこういうところをやらなきゃいけない、あるいは補助はこういうところをやらなきゃいけないということを決めまして予算要求をするという形になってくると思います。

 多分、港湾整備の場合は非常に時間がかかりますので、早目にそれをやらなきゃいけないと思っておりますけれども、こういう長期にわたる港湾計画をつくる場合には、二、三年の話じゃなくて、やはり十年先を見ておりますので、非常に難しいことがございます。

 さらに、地元であります市町村、特にここだといわき市だと思いますけれども、いわき市としては、やはり港を使って地域の振興を図るということが大事でございますので、港湾管理者である県、あるいは直轄事業をやる国、それを審査する国に対して、こういうことがある、こういう問題が出ている、だからうちとしてはこういうことをやりたいということも伝えていただくのが重要かと思っております。

吉田(泉)分科員 小名浜でも、東港と呼ばれておりますが、人工島をつくって、水深の深い岸壁をそこでつくろうということで、今工事が進んでいるところでございます。

 今予算委員会にかかっている十九年度の予算案を見ますと、港湾局の予算概要を拝見しましたら、スーパー中枢港湾である東京港、横浜港、ここでは水深十六メートルの国際海上コンテナターミナルというのをつくろうということで、ことしから着工なんですか、ことしから予算がついた。それで、両方とも五年で完成するんですね。東京港、横浜港はいずれもそういう水深の深い岸壁が五年で完成するというわけであります。

 一方、この小名浜の東港プロジェクトというのは、着工したのが平成六年のころなんです。もう十三年ぐらいたっておりますけれども、進捗状況が三〇%ということで、完成予定が平成三十年だというんですね。ですから、通算二十五年ぐらいの工事期間になるということであります。

 この間、先ほどから申していますように、小名浜を取り巻く状況が激変してきたものですから、何とかそこを国にも見ていただいて、港湾整備計画の見直し、工事の促進を図っていただきたい、こういうふうに考える。これは要望でございます。

 それで、最後に、一番最初に申し上げた国と地方の役割分担の問題で、できましたら大臣の御所感をいただきたいと思うんです。

 私、この沖待ち問題なんかを見ていまして、やはり根本的な問題として、国と地方の役割分担の問題があるような気がいたしました。つまり、港湾の管理は地方自治体が、福島県が、県がやるんだという一方で、整備につきましては、東港を中心に、大きな事業ですので国が直轄事業でやる、こういう仕組みになっているわけでございます。

 つまり、地方としては、管理者で、管理の責任はあるんですが、ですから沖待ちなんかの直接の責任は県になるわけなんですが、さあそれを解消しようとして何とか港を整備しようと思っても、整備の方の予算をコントロールする権限が地方にはないわけですよね。そして、国の方にいろいろな格好で予算の措置をお願いするしかない。一言で言うと、地方には責任はあるんだけれども財源がない。こういうような、私はこれは矛盾だと思うんですが、この沖待ち問題の根底にあるのではないか、そんな気がしておるんですが、いかがでしょうか。

冬柴国務大臣 今後、広域地方計画というものの中で、東北六県に新潟を加えた、そのような大きなエリアで、これはもう一国をしのぐ人口とかGDPを持っていると思うんですね、そういうところが従来の県というものを越えたところでどういうふうにここを位置づけて、例えば、東北ブロックといいますか、そこが重点的にこの小名浜港の問題を解決したいということになれば、我々もそれは本当に優先してやっていかなきゃならない。二十五年、三十年というのは論外だと思いますね、本当にそう思います。

 しかし、今、日本全国あちこちで言われても、限りある財源でございますので、そういう形で地方の意思の集約が行われた節には、予算の配分等、これは僕は、重点的にということを申し上げる、真に必要な社会資本整備、これについては重点的、効率的に処理しなきゃならないというふうに考えております。

 それから、今の港湾の管理は地方の固有事務だと私は思います。そういう意味で、国と地方との地方分権推進、また新しい地方分権推進法もあるわけですけれども、国と地方との仕分けをするときに、できるだけ地方がそういうものについては自主的、主体的に、一番住民に近いところなものですから、そういう意思を集約していただく、それが一番大事だろうと私は考えております。

吉田(泉)分科員 ありがとうございました。以上で質問を終わります。

赤松主査 これにて吉田泉君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明三月一日木曜日午前九時から本分科会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後六時五十九分散会


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