衆議院

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第1号 平成14年4月8日(月曜日)

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本分科会は平成十四年三月二十六日(火曜日)委員会において、設置することに決した。
四月五日
 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。
      小西  理君    橘 康太郎君
      渡海紀三朗君    中村正三郎君
      持永 和見君    井上 和雄君
      石井 紘基君    木下  厚君
      大森  猛君    鈴木 宗男君
四月五日
 持永和見君が委員長の指名で、主査に選任された。
平成十四年四月八日(月曜日)
    午前九時三十分開議
 出席分科員
   主査 持永 和見君
      橘 康太郎君    渡海紀三朗君
      中村正三郎君    馳   浩君
      松島みどり君    井上 和雄君
      石井 紘基君    石毛えい子君
      金田 誠一君    木下  厚君
      平岡 秀夫君    牧  義夫君
      三井 辨雄君    石井 郁子君
      大森  猛君    鈴木 宗男君
   兼務 大谷 信盛君 兼務 今野  東君
   兼務 中村 哲治君 兼務 西村 眞悟君
   兼務 植田 至紀君 兼務 北川れん子君
    …………………………………
   総務大臣         片山虎之助君
   財務大臣         塩川正十郎君
   国務大臣
   (内閣官房長官)     福田 康夫君
   国務大臣
   (沖縄及び北方対策担当大
   臣)           尾身 幸次君
   内閣府副大臣       松下 忠洋君
   総務副大臣        若松 謙維君
   財務副大臣        谷口 隆義君
   衆議院事務総長      谷  福丸君
   裁判官弾劾裁判所事務局長 天野英太郎君
   裁判官訴追委員会事務局長 片岡  博君
   国立国会図書館長     戸張 正雄君
   会計検査院長       金子  晃君
   会計検査院事務総局次長  関本 匡邦君
   会計検査院事務総局事務総
   長官房審議官       千坂 正志君
   会計検査院事務総局事務総
   長官房審議官       諸澤 治郎君
   会計検査院事務総局事務総
   長官房審議官       岡部 茂一君
   会計検査院事務総局第一局
   長            石野 秀世君
   会計検査院事務総局第五局
   長            円谷 智彦君
   最高裁判所事務総長    堀籠 幸男君
   政府参考人
   (内閣官房内閣審議官
    兼内閣府大臣官房審議
    官)          岩谷 滋雄君
   政府参考人
   (内閣府政策統括官)   江崎 芳雄君
   政府参考人
   (内閣府国民生活局長)  永谷 安賢君
   政府参考人
   (宮内庁次長)      羽毛田信吾君
   政府参考人
   (宮内庁書陵部長)    山口  均君
   政府参考人
   (総務省人事・恩給局長) 久山 慎一君
   政府参考人
   (総務省自治行政局長)  芳山 達郎君
   政府参考人
   (総務省自治行政局公務員
   部長)          荒木 慶司君
   政府参考人
   (総務省自治財政局長)  林  省吾君
   政府参考人
   (総務省政策統括官)   大野 慎一君
   政府参考人
   (公正取引委員会経済取引
   局取引部長)       楢崎 憲安君
   政府参考人
   (法務省大臣官房訟務総括
   審議官)         都築  弘君
   政府参考人
   (外務省大臣官房審議官) 佐藤 重和君
   政府参考人
   (外務省総合外交政策局国
   際社会協力部長)     高橋 恒一君
   政府参考人
   (財務省主税局長)    大武健一郎君
   政府参考人
   (文部科学省大臣官房審議
   官)           玉井日出夫君
   政府参考人
   (文化庁次長)      銭谷 眞美君
   政府参考人
   (農林水産省生産局畜産部
   長)           梅津 準士君
   政府参考人
   (国土交通省総合政策局次
   長)           伊藤 鎭樹君
   政府参考人
   (国民生活金融公庫総裁) 尾崎  護君
   政府参考人
   (公営企業金融公庫総裁) 持永 堯民君
   政府参考人
   (沖縄振興開発金融公庫理
   事長)          八木橋惇夫君
   政府参考人
   (国際協力銀行副総裁)  田波 耕治君
   政府参考人
   (日本政策投資銀行総裁) 小村  武君
   決算行政監視委員会専門員 川城 正彰君
    ―――――――――――――
分科員の異動
四月八日
 辞任         補欠選任
  小西  理君     松島みどり君
  橘 康太郎君     馳   浩君
  井上 和雄君     金田 誠一君
  石井 紘基君     石毛えい子君
  大森  猛君     赤嶺 政賢君
同日
 辞任         補欠選任
  馳   浩君     橘 康太郎君
  松島みどり君     小西  理君
  石毛えい子君     三井 辨雄君
  金田 誠一君     牧  義夫君
  赤嶺 政賢君     藤木 洋子君
同日
 辞任         補欠選任
  牧  義夫君     平岡 秀夫君
  三井 辨雄君     石井 紘基君
  藤木 洋子君     石井 郁子君
同日
 辞任         補欠選任
  平岡 秀夫君     井上 和雄君
  石井 郁子君     大森  猛君
同日
 第二分科員大谷信盛君、今野東君、西村眞悟君、第四分科員中村哲治君、植田至紀君及び北川れん子君が本分科兼務となった。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 平成十年度一般会計歳入歳出決算
 平成十年度特別会計歳入歳出決算
 平成十年度国税収納金整理資金受払計算書
 平成十年度政府関係機関決算書
 平成十年度国有財産増減及び現在額総計算書
 平成十年度国有財産無償貸付状況総計算書
 平成十一年度一般会計歳入歳出決算
 平成十一年度特別会計歳入歳出決算
 平成十一年度国税収納金整理資金受払計算書
 平成十一年度政府関係機関決算書
 平成十一年度国有財産増減及び現在額総計算書
 平成十一年度国有財産無償貸付状況総計算書
 〔皇室費、国会、裁判所、会計検査院、内閣、総理府(本府、総務庁、沖縄開発庁)所管、沖縄振興開発金融公庫、大蔵省所管、国民金融公庫、日本開発銀行、日本輸出入銀行、国民生活金融公庫、日本政策投資銀行、自治省所管及び公営企業金融公庫〕


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     ――――◇―――――
持永主査 これより決算行政監視委員会第一分科会を開会いたします。
 私が本分科会の主査を務めることになりました持永和見でございます。よろしくお願いいたします。
 本分科会は、皇室費、国会、裁判所、会計検査院、内閣、総理府(本府、総務庁、沖縄開発庁)、大蔵省、郵政省、自治省所管、沖縄振興開発金融公庫、国民金融公庫、日本開発銀行、日本輸出入銀行、国民生活金融公庫、日本政策投資銀行及び公営企業金融公庫並びに他の分科会所管以外の国の会計についての審査を行うことになっております。
 なお、各省庁の審査に当たっては、その冒頭に、決算概要説明、会計検査院の検査概要説明及び会計検査院の指摘に基づき講じた措置についての説明を聴取することといたします。
 平成十年度決算外二件及び平成十一年度決算外二件中、本日は、総理府所管中本府、沖縄開発庁、沖縄振興開発金融公庫、大蔵省、国民金融公庫、日本開発銀行、日本輸出入銀行、国民生活金融公庫、日本政策投資銀行、内閣、国会、自治省、公営企業金融公庫、総理府所管中総務庁、裁判所、会計検査院所管及び皇室費について審査を行います。
 これより総理府所管中総理本府について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。福田内閣官房長官。
福田国務大臣 平成十年度における総理府所管の一般会計歳入歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 総理府主管の歳入につきまして、歳入予算額は五百五十八億四百四十八万円余でありまして、これを収納済み歳入額五百五十二億六千四百八十二万円余に比較いたしますと、五億三千九百六十六万円余の減少となっております。
 次に、総理府所管の歳出につきまして、歳出予算現額は九兆六千八十四億八千二百八十五万円余でありまして、支出済み歳出額は九兆三千二十一億四千六百七十四万円余であります。
 この支出済み歳出額を歳出予算現額に比較いたしますと、三千六十三億三千六百十一万円余の差額を生じます。
 この差額のうち翌年度繰越額は二千八百四十八億一千五百九十九万円余であり、不用額は二百十五億二千十二万円余であります。
 総理府所管の歳出決算のうち、総理府本府、公正取引委員会、公害等調整委員会及び宮内庁関係について申し上げますと、歳出予算現額は六百七十四億五千八百六十九万円余でありまして、これを支出済み歳出額六百三十一億七千三百四十三万円余に比較いたしますと、四十二億八千五百二十六万円余の差額を生じます。
 この差額のうち翌年度繰越額は三十二億六千二百三十五万円余であり、不用額は十億二千二百九十万円余でありますが、これは退職手当を要することが少なかったこと等のため、不用となったものであります。
 引き続き、平成十一年度における総理府所管の一般会計歳入歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 総理府主管の歳入につきまして、歳入予算額は五百八十八億七千八十一万円でありまして、これを収納済み歳入額九百五十六億七千六百二十三万円余に比較いたしますと、三百六十八億五百四十二万円余の増加となっております。
 次に、総理府所管の歳出につきまして、歳出予算現額は九兆四千三百七十九億三千八百七十四万円余でありまして、支出済み歳出額は九兆九百六十五億七千百十五万円余であります。
 この支出済み歳出額を歳出予算現額に比較いたしますと、三千四百十三億六千七百五十九万円余の差額を生じます。
 この差額のうち翌年度繰越額は三千百四十億五千九十九万円余であり、不用額は二百七十三億一千六百五十九万円余であります。
 総理府所管の歳出決算のうち、総理府本府、公正取引委員会、公害等調整委員会及び宮内庁関係について申し上げますと、歳出予算現額は七百三十一億三千七百八十五万円余でありまして、これを支出済み歳出額六百十一億六千五百七十五万円余に比較いたしますと、百十九億七千二百九万円余の差額を生じます。
 この差額のうち翌年度繰越額は百十四億九千四百五十六万円余であり、不用額は四億七千七百五十三万円余でありますが、これは退職手当を要することが少なかったこと等のため、不用となったものであります。
 以上をもちまして決算の概要説明を終わります。
 何とぞ、よろしく御審議のほどお願いいたします。
持永主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院千坂審議官。
千坂会計検査院当局者 平成十年度総理府の決算のうち、歳入並びに総理本府、公正取引委員会、公害等調整委員会及び宮内庁関係の歳出につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
 引き続きまして、平成十一年度総理府の決算のうち、歳入並びに総理本府、公正取引委員会、公害等調整委員会及び宮内庁関係の歳出につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
 以上でございます。
持永主査 以上をもちまして総理府所管中総理本府についての説明は終わりました。
    ―――――――――――――
持永主査 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。金田誠一君。
金田(誠)分科員 おはようございます。民主党の金田誠一でございます。私は、フランチャイズシステム、とりわけコンビニエンスストアの問題について公取に質問をさせていただきます。
 まず、コンビニに係るフランチャイズシステムの問題点をどう認識しているかという点でございます。手元に、昨年十一月に発行されましたブックレットがあるわけでございます。「コンビニ・フランチャイズはどこへ行く」「「地獄の商法」?適正化への法規制が必要だ」という副題がついてございます。このブックレットの冒頭に、一九九七年から九八年の経済関係誌のタイトルが紹介をされております。
 「絶好調コンビニの病巣」日経ビジネス、「年中無休で働けど……コンビニ残酷物語」週刊朝日、「コンビニ契約の地獄」財界展望、「フランチャイズの地獄」、これは週刊ダイヤモンドでございます。「FCはトラブルビジネスだ」、これは週刊東洋経済、「カスミ集団訴訟が示すコンビニフランチャイズの奴隷の契約」、これはエコノミストでございます。
 公取もこのような報道を知らないことはないと思いますし、この実態は今も全く変わっておらないわけでございます。
 それでは、フランチャイズシステムの代表格であり、一見華やかに見えるコンビニエンスストアが、なぜこのように地獄の商法あるいは奴隷の契約などと呼ばれるのか、その実態を御存じでしょうか。
 私は、二年ほど前からこの問題に取り組んでまいりまして、公取や中小企業庁の皆様と何度となく協議を重ね、多数のコンビニ店のオーナーさん方から実態をつぶさに聞いてまいりました。コンビニ・フランチャイズ・システムの問題点をおおむね知ることができた、こう思っております。
 そうした立場から申し上げれば、まず、コンビニ店は夫婦二人で二十四時間働いて、それでも食うや食わずの生活をして、たまるのは借金ばかり。やめたくても高額な違約金を請求されるため、やめることもできない。加盟店にとってまさに地獄でございます。
 一方、フランチャイズの本部の側は、出店に当たっての費用はほとんどが加盟店の負担で、その店舗が赤字であろうがロイヤルティー収入は確実に確保され、閉店するときには高額な違約金を請求することができる。本部側にとってはモラルハザードのシステムでございます。
 こうした中で、オーナーさんの自殺や夜逃げ、一家離散が相次ぎ、問題は経済問題から社会問題となっている、こう思います。
 本来フランチャイズシステムとは、本部も加盟店もそれぞれが事業者として独立して、加盟店の繁栄があって本部が繁栄し、本部の繁栄のもとで加盟店も繁栄するという共存共栄の関係でなければならないと思います。
 今日、地獄の商法、奴隷の契約と言われる実態を解決するためには、共存共栄を実現するための新しいルールづくり、仮称フランチャイズ新法の制定が求められている、こう考えます。残念ながら、現在公取が進めているガイドラインの改定も、中小企業庁が進めている法定開示文書の改正も、現状を解決するものではございません。
 私は、今日のコンビニの問題を以上のように認識しておりますが、公取としてどのように認識をしておられるか、第一点目としてお伺いをいたします。
楢崎政府参考人 私ども、フランチャイズシステム、主としてコンビニでございますけれども、基本的には、本部にとりましては、他人の資本とか人材を活用して迅速な事業展開が可能になる、また一方、加盟店にとりましても、本部が提供するノウハウ等を活用して独立して開業することが可能となるといったことでございますので、システムを活用して多くの事業者が新規参入をする、これによって競争が活発化していくものというふうに基本的には考えているところでございます。
 一方で、フランチャイズシステムが、小売業、外食だけでなく、さまざまな分野に拡張しているところでございますけれども、それに伴いましてさまざまな問題点が指摘されているということも十分認識しているところでございます。また、私どもが昨年十月に調査いたしましたコンビニシステムの調査結果によりましても、本部が加盟店を募集する際において情報開示が必ずしも十分ではない。そしてまた、一たん加盟してその契約関係に入った場合に、本部の優越的地位の乱用と見られかねないような状況も一部存在するというふうな状況もあったわけでございます。
 そういったことから、私どもとして、フランチャイズシステムが有効に活用されて競争促進的に機能することが必要ですし、また、そのためには本部の情報開示あるいは優越的地位の乱用といったことを防止することも必要でございますので、そういった観点からガイドラインの改定といった作業を今やっているところでございます。
金田(誠)分科員 認識が極めて甘いと思います。地獄の商法あるいは奴隷の契約と言われている実態をもっとしっかりと見据えて対策を講じていただきたい。それでは全く実態をとらえていないということを指摘して、次の質問に入ります。
 今、答弁にありました公取が行った調査についてでございます。
 公取は、昨年十月にコンビニエンスストアにおける本部と加盟店との取引に関する調査を行っております。その報告書の六ページ図表の七には「日販四十万円超五十万円以下の加盟店の経営指標」が載っておりまして、売上高から売上原価、ロイヤルティー、営業費などの諸経費を差し引いた残額は年間六百三十万円、こうなっております。
 これ自体、決して高い数字ではないと私は思っておりますが、にもかかわらず、この数字は加盟店の実態をあらわしていない、こう言わざるを得ません。地獄の商法、奴隷の契約と言われる事態をあえて隠ぺいしようとする意図が私にはうかがえるわけでございます。
 なぜ、この六百三十万という数字のみを公表されたのか、その真意を伺いたいと思います。
楢崎政府参考人 私ども、調査によりまして、コンビニ加盟店の売り上げ分布、毎日の売上高の分布でございますけれども、四十万から五十万円の階層が最も多かったわけでございます。そうした最も平均的なところの年間の売上高、売上原価、ロイヤルティー、収入等の経営指標の平均を記載したものでございます。
金田(誠)分科員 日販四十万円超五十万円以下の単純平均が六百三十万円という数字は本当に正しい数字なのかどうなのか、私は大変深い疑念を抱いております。
 そこで、単純平均が六百三十万円というのであれば、最高は幾らなのか、最低は幾らなのか、その数字も当然あるはずでございまして、その数字をお示しいただきたいと思います。
楢崎政府参考人 最高、最低の数字を示すということは、個別の加盟店の経営指標を示すことになるわけでございます。そして、経営指標につきましては、個々の加盟店にとりましては営業秘密でございますので、こういったものについて、仮に名前を伏せて公表するとしても、特定のところが出した加盟店から見ればわかるわけでございますし、また、こういったことを個別の加盟店、企業の経営状況等を開示すれば、私どもの今後の調査に支障が生じてくるわけでございます。
 そういった意味で、調査をお願いする対象の方々との信頼関係といったものも重要でございますので、最高と最低の数字の開示といったものは御遠慮させていただきたいというふうに思っております。
金田(誠)分科員 答弁にならないと思います。このような調査は、平均値さえ出せばいいということではなくて、最高、最低等も含めて出して初めて調査になるわけでございます。それを出したら個別の店舗がわかるなんということは全くありません。店舗名を出せなんというのは一言も言っていないわけでありますから。そのような情けない答弁をするということは一体どういうことなのか。委員長とも相談して、きちんと数字を出せるように強く要請しておきたいと思います。
 次に、報告書の五ページ図表の六でございますが、「アンケート回答加盟店の日販の分布」という表がございまして、二十万円以下というところから百万円超まで十万円刻みで集計されております。
 そこで、十万円刻みで最高、最低、平均の数字を図表七と同じ図表にして提出していただきたい、こう思います。日販三十万から七十万超について、この数字は、先般平均値のみ提出をしていただきました。最高値、最低値、十万円刻みで出していただきたい。出すかどうか、端的にお答えいただきたいと思います。
楢崎政府参考人 三十万以上のところ、七十万以下のところ、これはそれなりの統計上有意な数字が認められましたので、平均値という形で出しましたけれども、三十万以下をさらに細分化しますと、非常にサンプル数が少なくなるといったことで、平均値として出すのは適当ではないんじゃないかといったことで、三十万円以上につきまして、階層区分別の平均値の提出をさせていただいたわけでございます。
金田(誠)分科員 これにつきましても、出していただかなければ実態がわからない。本当にこの平均値なるものが正確なものなのかどうかもわからない。実態を隠ぺいしようとする意図が私にはうかがえるわけでございまして、前段申し上げた数字とあわせて、ぜひ提出するように御検討いただきたい、こう思います。
 次に、私の調査では、累積赤字が相当の額に達している加盟店も少なくない、こうなっております。したがって、あわせてその赤字に関する数字もわかりやすく提出していただきたい。累積赤字を抱える店舗数、赤字の額などお示しをいただきたいと思いますが、いかがですか。
楢崎政府参考人 累積赤字につきましては、私どもデータを持ち合わせておりませんので、提出しようにもしようがございませんので、この点は御了解いただきたいと思います。
金田(誠)分科員 地獄の商法なり奴隷の契約と言われている実態は、働けど働けどたまるのは借金ばかり、これが問題なのではないですか。肝心なところを調査しなくて、何が対策ですか。しっかりと調査をして提出していただきたい、このことを強く申し上げておきます。
 次に、この地獄の商法なり奴隷の契約と言われている中身は、収入、借金、これに加えて、過酷な労働時間と休日の実態を見れば、よりはっきりするわけでございます。
 コンビニ店オーナー夫婦の労働時間、休日の取得状況などどのようになっているか、これについても調査をして報告していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
楢崎政府参考人 私どもの調査によりますと、コンビニのオーナーの勤務日数の平均は、週当たり六・一日でございます。そして、平均の勤務時間は九・二時間ということでございます。それから、オーナーの経営補助者、通常配偶者でございますけれども、五・五日の勤務日数、それと、平均の労働時間は、勤務時間は七・五時間、こういう状況になっております。
金田(誠)分科員 これまた実態とかなりかけ離れているというふうに思います。なぜしっかりと全貌を明らかにするような調査をされないのか。何か意図が働いているのかと疑わざるを得ないようなことはぜひやめていただきたい。しっかりと実態がわかるような調査をしていただきたいと再度要請をしておきたいと思います。
 次に、公取が今進めているガイドラインの改定について質問をいたします。
 コンビニが地獄の商法、奴隷の契約と呼ばれるのは、契約締結過程における不当な勧誘に始まって、不公正な契約内容、契約を解除する場合の法外な違約金に至るまで、さまざまなからくりが組み込まれていることによるわけでございます。
 その結果、加盟店が幾ら赤字になっても本部は損をしない仕組みになっている。これが問題の核心であり、この点を正さない限り、問題は解決いたしません。このことを御理解いただいているかどうか、伺いたいと思います。
楢崎政府参考人 先般、さきにお答え申し上げましたけれども、我々の調査によりますと、本部が加盟希望者に交付する開示資料には、システムの内容の重要事項の詳細について記載することが多いわけでございます。特に、ロイヤルティーの算定の基礎となる売り上げ総利益に廃棄ロス等が含まれているといった記載がない場合もございますし、違約金が課されない中途解約の要件が抽象的であるといったところもございます。
 また、契約締結後におきまして、優越的地位の乱用に該当するおそれのある行為も認められたわけでございまして、そういったものを踏まえて、今回のフランチャイズシステムのガイドラインの改定作業を進めているところでございます。
金田(誠)分科員 加盟店が幾ら赤字になっても本部は損をしない。したがって、加盟店をきちっと面倒を見る必要もなければ、近くにどんどん同じチェーンが立地をしても本部は何も損をしない、これが総論としてのこの仕組みの一番の問題点ですよ。その中で具体的に、今答弁にあったような個別の問題があるという点をぜひ理解して取り組んでいただきたいと思うわけでございます。
 そこで、現在公取が進めようとしているガイドラインが、このからくりを解決するものになるのかどうか。私は全くそうは考えられないわけでございます。以下、代表的な問題について順次質問をいたします。
 まず一点目でございますが、契約時に提示された予想売り上げまたは予想収益について、これが実態と大きくかけ離れた額であった場合、こういうことが往々にして多いわけです。かなり多いわけですよ。どのような措置がとられるのか。現状では泣き寝入りです。ガイドライン改定によって何かこれが是正されますか。
楢崎政府参考人 予想売り上げ等を示すことがあるわけでございますけれども、売り上げはあくまでも予想でございまして、実態と乖離するといったことは、店舗の立地とかその後の経済の動向等によって乖離が生ずるといったことがあるわけでございますけれども、このガイドラインでは、こういった売り上げ予想を提示する場合には、算定根拠または算定方法が合理性を欠くものである、あるいは実際には達成できない額あるいは達成困難である額を予想額と示すことにより、当該フランチャイズシステムが有利、優良だというふうな誤認を与えるといった場合には、独占禁止法上問題となるという考え方を示しているところでございますし、そういった独禁法に違反するというふうな事態が生ずれば、私どもとして是正指導あるいは審決等を行うといったことができるわけでございます。
 また、昨年四月に、独占禁止法違反、不公正取引方法につきましては差しとめ請求訴訟が導入されたわけでございますので、加盟店の方々が、独占禁止法違反だというふうに思料されれば、裁判所に訴えを提起して差しとめを求めるといったことも可能になってございます。
金田(誠)分科員 今後契約をする場合は多少の是正にはなるのかもしれませんが、既に契約済みの場合については、何らかの措置がとれるとはどうも思えない。裁判を起こすなんていったって、実際問題は一般人にとっては大変な、もうほとんど不可能に近いものでございます。それらをきちっと行政的に指導なり是正なりするものでなければ意味がないということを強く申し上げておきたいと思います。
 次に、契約書、附属文書の開示についてでございます。
 現在は、契約の直前に渡されたり、あるいは事前に渡されても第三者に見せることも相談することもできない、こういう仕組みでございます。契約書が一般に開示されていないということが、不公正な契約のからくりを今日まで存続させてきた大きな要因になっているわけでございます。外国では、この契約書その他の登録制を採用しているところも多いわけでございまして、契約書、附属文書の開示について、今回のガイドライン改正でどのような措置がとられることになるのか、お聞かせをいただきたい。
 また、実際の契約書、重立ったところについて、資料として提出をしていただきたい、こう思います。
楢崎政府参考人 今回のガイドラインにおきまして、契約書の内容のうち加盟希望者の加盟の判断におきまして重要な事項については開示が望ましいというふうな位置づけをしているわけでございますし、また、こういった重要事項につきまして、虚偽または不当な表示をすることによってフランチャイズシステムが有利であるというふうに誤認させる場合には、独占禁止法上問題となるというふうに記載しているところでございます。
 それから、契約書自体の開示の問題でございますけれども、契約書の中にはノウハウと本部の経営上の秘密事項が含まれている契約もございますので、こういった営業上の秘密の保持の観点から、どういうふうに対処するかということになるわけでございますけれども、独占禁止法上の観点から契約書を公表しないといかぬといったことというよりも、当事者間で協議して解決されるべき問題であるというふうに考えてございます。(金田(誠)分科員「契約書の提示、資料として出してください」と呼ぶ)
 それはまた、本部の方におきまして公表されていないということでございますので、本部の了解を得る必要がございますので。
金田(誠)分科員 何を答えているんですか。そういうことだから、この地獄の商法、奴隷の契約というものが一向に改まらない。あなた方公取なわけですから、しっかりしてくださいよ。
 次に、ロイヤルティーについて質問をいたします。契約時に必要な説明が行われず、廃棄ロスや棚卸しロスにもロイヤルティーがかけられる。このことが後になってわかるんです、一般的には。こうした場合、ガイドラインの改正で是正してもらえるんですか。それとも、ガイドラインというのは何の役にも立たないんですか。
持永主査 明確に答えてください。
楢崎政府参考人 加盟店を募集するときに、そういったロイヤルティーに廃棄ロスが含まれている、売り上げ総利益に含まれているといったことを説明しないことによりまして、当該システムが優良、有利だというふうに誤認させるといった場合には、独占禁止法上問題となるといったことでございます。そして、後で判明した場合におきましても、今後、そういった募集をやっているとすれば、そういった行為を差しとめるといったことになるわけでございます。
金田(誠)分科員 そういうことで、現在、契約してもう何年かたっている、過酷なロイヤルティーを廃棄ロスからも取られている、そういう状態を是正してもらえるんですか。それはそのままで泣き寝入りしろということなんですか。どっちですか。
楢崎政府参考人 開示の問題といたしましては、そういった開示を今後きちんとやっていってくださいという命令が出されるということになってまいります。
 そしてまた、そういった開示の方法が独占禁止法上違反だといったことになりますと、過去にさかのぼって回復措置を導入するというのはなかなか困難ではございますけれども、仮にそういうふうなことによって損害をこうむったといったことになりますと、独占禁止法に違反するという審決が出た場合には、故意、過失を問わずに損害賠償請求訴訟ができるというふうな体系に独占禁止法上はなっているところでございます。
金田(誠)分科員 結局は裁判によらざるを得ない。これでは実際効果はない。裁判なんかやれる人いますか。特別な方だけですよ。今、過酷なロイヤルティーで、働けど働けど借金がたまって、それでもやめたくてもやめられないという状態をどう是正するかが皆さんの仕事でないんですか。ぜひ考えていただきたいと思います。
 次の質問、同じくロイヤルティーについて質問をいたします。
 加盟店が赤字の場合でもロイヤルティーだけは満額持っていかれるわけです。この仕組みが本部側のモラルハザードを招いている。赤字のリスクは本部もとることにする、こういうルールをつくれば共存共栄の仕組みになる、そういうことではないでしょうか。これについて、ガイドラインなどでは何らかの措置が検討されていますでしょうか。
楢崎政府参考人 個別にはそういったことはガイドラインには書いてはございませんですけれども、ガイドラインの優越的地位の乱用のところを見ていただければおわかりになるかと思いますけれども、個々の行為が優越的地位の乱用に該当するかどうかだけではなくて、システム全体が契約条項全体を見て優越的地位の乱用に該当するかどうかということも書いてございます。それは個々具体的に判断していく必要がある事項でございます。
金田(誠)分科員 もう一つ聞きます。営業時間について伺います。
 当初の契約で二十四時間営業ということで契約をしたとします。しかし、実際にやってみれば、深夜、早朝、この時間は閉めていた方がかえって経費もかからない、利益が上がる、こういう状態になったとします。しかし、現在は、こういうふうになっても契約の改定ができない。こういうのを是正する必要があるんじゃないですか。こういう場合は当然、契約改定の協議ができるというガイドラインをつくれませんか。
楢崎政府参考人 営業時間、今、コンビニの場合、大体九〇%が二十四時間営業といったことでございまして、ですから、一〇%、例えばビルの中に出店をするといった場合には二十四時間営業となっていないような場合が多いわけでございます。
 いずれにしても、先生がおっしゃったようなことは、契約のシステム全体を見て優越的地位の乱用になっているかどうかといったことを判断すべき問題だと思いまして、二十四時間営業それ自体というよりも、システム全体を見て判断する必要があるのではないかというふうに考えてございます。
金田(誠)分科員 何とも歯切れの悪い御答弁でございます。きちんとこういう場合は契約改定ができるということをはっきりルール化しなければ、圧倒的な力の差があるわけでございますから、結局は泣き寝入りでございます。きちんとしていただきたいと思います。
 あと、用意していた質問は、廃棄ロスをどう縮小するか、販売価格の制限がされていることをどうするか、新規事業の導入を一方的にやられているのをどうするか、フランチャイズ契約を中途解約する場合、法外な違約金をどうするか、このぐらいは絞り込んで質問したかったんですが、時間がないようでございますので、それは省略して結論に入ります。
 結論としまして、今お聞きした範疇でも、ガイドラインの改定によって、地獄の商法、奴隷の契約と言われるコンビニの実態は何も変わらないというふうに思います。何も変わらない。ここに至っては、諸外国においても制定されているフランチャイズ新法、仮称でございますが、これを制定してきちんとしたルール化する以外に問題解決の道はないと思いますが、この新法制定についてぜひひとつ取り組んでいただきたい。公取の委員長ともぜひ協議をして、この問題、しっかりとやっていただきたいと思いますが、いかがですか。
楢崎政府参考人 先ほど地獄の商法だという御意見があったわけでございますけれども、私ども、例えばロイヤルティーに廃棄ロスが含まれていると、そのこと自体は十分開示すべきであるというふうに考えてございまして、また、そういったことが加盟店の地位を不当に圧迫するといったことがないように、例えば、仕入れ数量を一方的に定めてはいけませんよ、あるいは、販売価格を拘束して、売れ残り商品などが発生しないようにする、そういった行為を不当に妨げてはいけませんというふうなこと、個々具体的に、優越的地位の乱用としてガイドラインの中に書いているわけでございます。
 そういった加盟店募集時における情報の開示の問題、そしてまた契約関係に入った後における優越的地位の乱用がないようにといったことでガイドラインをつくっているわけでございまして、そういったガイドラインの周知徹底、あるいはガイドラインに基づきましてそういった問題のある行為がある場合には厳正に対処する、そういったことを通じて本部と加盟店との取引の適正化を図っていきたいというふうに考えているわけでございます。
 そういうふうに、我々といたしましては、現在では、現行法の運用、ガイドラインの運用といったことに当面は力を注いでまいりたいというふうに考えてございます。
金田(誠)分科員 その二十年近く前にできたガイドラインがただの一回も発動されたこともなく、そして、今日の地獄の商法、奴隷の契約の事態を招いている。多少の手直しでこれが変わるなんということは全く考えられない。今までの質疑の中でも、何が具体的に変わるという答弁できましたか。何もできない状態じゃないですか。だから質問をしているわけでございます。
 このまま放置すれば、私は行政責任が問われるということになると思いますし、ハンセン病問題と同じように立法不作為の問題も出てくるという状態だと思います。改めて、フランチャイズ新法の制定ということをきちんと考えていただきたい。ガイドラインが効果が上がっているんなら、何もこんな問題にならないわけですよ。多少手直しして成果が出るぐらいだったら、だれも問題にしないわけですよ。そういう実態をきちんと踏まえて、あなたはお役人のトップですから、あなたがきちんと判断しなきゃだめでないですか。いかがでしょう。
楢崎政府参考人 私ども独占禁止法の運用といったことをやっているわけでございますので、いやしくも独占禁止法に違反するような事態が生ずれば、それはきちんと法を運用していくといったことでございますので、そのための一環としてガイドラインを今回改定しているところでございますので、改定した後におきましては、ガイドラインの周知徹底等に努めてまいりたいというふうに考えてございます。
金田(誠)分科員 終わります。
持永主査 これにて金田誠一君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして総理府所管中総理本府についての質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
持永主査 これより総理府所管中沖縄開発庁及び沖縄振興開発金融公庫について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。尾身沖縄及び北方対策担当大臣。
尾身国務大臣 平成十年度における沖縄開発庁の歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 平成十年度の当初歳出予算額は三千百五十六億六千二百七十四万円余でありましたが、これに予算補正追加額千五百五十八億三千三百六万円余、予算補正修正減少額二億二千百九十四万円余、予算移しかえ増加額千七百七十五万円、予算移しかえ減少額千八百九十六億九千四百六万円余、前年度繰越額百三十一億四千八百七十一万円余を増減いたしますと、平成十年度歳出予算現額は二千九百四十七億四千六百二十六万円余となります。
 この歳出予算現額に対し、支出済み歳出額は二千六百四十九億五千九百二十七万円余、翌年度へ繰り越した額は二百九十一億二千八十七万円余、不用となった額は六億六千六百十一万円余であります。
 次に、平成十一年度における沖縄開発庁の歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 平成十一年度の当初歳出予算額は三千二百八十二億一千二百七十一万円余でありましたが、これに予算補正追加額五百三十八億一千百五十万円余、予算補正修正減少額五億二千四百八万円余、予算移しかえ増加額十三億六千百三十二万円、予算移しかえ減少額千四百四十二億四千八百五十八万円余、前年度繰越額二百九十一億二千八十七万円余、予備費使用額七十八億三千六百万円を増減いたしますと、平成十一年度歳出予算現額は二千七百五十五億六千九百七十四万円余となります。
 この歳出予算現額に対し、支出済み歳出額は二千三百九十五億五千七百九万円余、翌年度へ繰り越した額は三百三十七億二千三百六十二万円余、不用となった額は二十二億八千九百二万円余であります。
 以上をもちまして平成十年度及び平成十一年度沖縄開発庁の決算の概要説明を終わります。
 何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。
持永主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院岡部審議官。
岡部会計検査院当局者 平成十年度沖縄開発庁の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
 引き続きまして、平成十一年度沖縄開発庁の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
持永主査 次に、会計検査院円谷第五局長。
円谷会計検査院当局者 平成十年度沖縄振興開発金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
 引き続きまして、平成十一年度沖縄振興開発金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
 以上です。
持永主査 この際、お諮りいたします。
 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
持永主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
持永主査 以上をもちまして総理府所管中沖縄開発庁及び沖縄振興開発金融公庫についての説明は終わりました。
 これより質疑に入るのでありますが、その申し出がありませんので、総理府所管中沖縄開発庁及び沖縄振興開発金融公庫については終了いたしました。
    ―――――――――――――
持永主査 これより大蔵省所管、国民金融公庫、日本開発銀行、日本輸出入銀行、国民生活金融公庫及び日本政策投資銀行について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。塩川財務大臣。
塩川国務大臣 平成十年度大蔵省主管一般会計歳入決算並びに大蔵省所管の一般会計歳出決算、各特別会計歳入歳出決算及び各政府関係機関決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 まず、一般会計歳入決算について申し上げます。
 収納済み歳入額は八十七兆二千八百三十七億二十二万円余となっております。
 このうち、租税等は四十八兆二千九十五億八千八百七十七万円余となっております。
 次に、一般会計歳出決算について申し上げます。
 歳出予算現額は二十兆六千七百二十億八千二百四十六万円余でありまして、支出済み歳出額は二十兆五百二億三千三百八十二万円余となっており、翌年度繰越額は百二十六億七千八百五十一万円余となっております。差し引き、不用額は六千九十一億七千十二万円余となっております。
 歳出決算のうち、国債費は十七兆六千九百八十五億三千二百九十四万円余を支出いたしました。
 次に、各特別会計の歳入歳出決算の概要を申し上げます。
 造幣局特別会計におきまして、収納済み歳入額は二百五十二億六千五百五十八万円余で、支出済み歳出額は二百五十八億二千二百四十七万円余であります。
 また、損益計算上の損失は五千二百四十万円余であります。
 このほか、印刷局等の各特別会計の歳入歳出決算につきましては、決算書等によって御了承願いたいと存じます。
 最後に、各政府関係機関の収入支出決算の概要を申し上げます。
 国民金融公庫におきまして、収入済み額は三千六百六十八億六千二十九万円余でございまして、支出済み額は三千二百六十四億八千四百七十八万円余であります。
 なお、損益計算上の損益はありません。
 このほか、住宅金融公庫等の各政府関係機関の収入支出決算につきましては、決算書によって御了承願いたいと存じます。
 以上が、平成十年度における大蔵省関係の決算の概要であります。
 次に、平成十一年度につきましても同様に、その概要を御説明申し上げます。
 まず、一般会計歳入決算について申し上げます。
 収納済み歳入額は九十二兆一千四百十八億七千三百二十七万円余となっております。
 このうち、租税等は四十六兆五百七十八億四千七百五十五万円余となっております。
 次に、一般会計歳出決算につきまして申し上げます。
 歳出予算現額は二十四兆一千五十四億八千六十九万円余でありまして、支出済み歳出額は二十三兆八千四百八十五億一千三十一万円余、翌年度繰越額は百二十二億七千七百四十九万円余でありまして、差し引き、不用額は二千四百四十六億九千二百八十七万円余となっております。
 歳出決算のうち、国債費は二十兆二千七百十九億二千四百三十九万円余を支出いたしました。
 次に、各特別会計の歳入歳出決算の概要を申し上げます。
 造幣局特別会計におきまして、収納済み歳入額は二百六十一億四千二百十四万円余であり、支出済み歳出額は二百四十八億七千九百二十六万円余であります。
 また、損益計算上の利益は五百九十九万円余であります。
 このほか、印刷局等の各特別会計の歳入歳出決算につきましては、決算書等によって御了承願いたいと存じます。
 最後に、各政府関係機関の収入支出決算の概要を申し上げます。
 国民生活金融公庫におきまして、収入済み額は三千四百十六億五千三百九十九万円余で、支出済み額は三千三十九億六百二十六万円余であります。
 なお、損益計算上の損益はありません。
 このほか、住宅金融公庫等の各政府関係機関の収入支出決算につきましては、決算書によって御了承願いたいと存じます。
 以上が、平成十一年度における大蔵省関係の決算の概要であります。
 何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
持永主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院諸澤審議官。
諸澤会計検査院当局者 平成十年度大蔵省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。
 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項三件及び意見を表示しまたは処置を要求した事項一件であります。
 まず、不当事項について御説明いたします。
 検査報告番号五号は、租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもので、納税者が申告書等において所得金額や税額等を誤っているのに、課税資料の収集・活用が的確でなかったり、法令等の適用の検討が十分でなかったり、これを見過ごしたりして、誤ったままにしていたことなどにより生じていたものであります。
 また、検査報告番号六号は、法人税の過納金の還付に当たり、還付加算金を過大に支払っていたもので、法令の適用を誤り還付加算金の対象となる期間の日数を誤ったことによるものであります。
 また、検査報告番号七号は、宿舎新築工事の施行に当たり、仮設工事の外部足場費等の積算を誤ったため、契約額が割高となっているもので、外部足場費の材料費を積算する際に、構成部材のリース料金の基本料に誤った使用割合や使用日数を乗ずるなどして材料費を過大に算出したため、契約額が割高となっていたものであります。
 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について御説明いたします。
 これは、消費税の滞納の防止策に関するものであります。
 近年、消費税の新規発生滞納額は著しく増加しており、十年度には七千二百四十九億余円と多額に上っております。このことは、消費者が負担した消費税が国に納付されなくなるおそれがあるばかりか、消費税に対する国民の信頼を失いかねないもので、適切とは認められない事態であります。
 したがいまして、国税庁におきまして、消費税は消費者からの預かり金的な性格を有する税であるという趣旨の広報活動をさらに徹底したり、入札参加資格の審査の申し込みの際に消費税の納税証明書の添付等を求めていない地方公共団体等に対して引き続き協力要請をしたり、納税貯蓄組合等の関係民間団体に対して消費税の納税資金の備蓄を行う旨を事業者へ働きかけるようより一層の協力要請をしたりして、消費税の滞納を防止するよう改善の意見を表示いたしたものであります。
 引き続きまして、平成十一年度大蔵省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。
 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項四件及び本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項一件であります。
 まず、不当事項について御説明いたします。
 検査報告番号五号は、租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもので、納税者が申告書等において所得金額や税額等を誤っているのに、課税資料の収集・活用が的確でなかったり、法令等の適用の検討が十分でなかったり、これを見過ごしたりして、誤ったままにしていたことなどにより生じていたものであります。
 検査報告番号六号から八号までの三件は、職員の不正行為による損害が生じたもので、検査報告番号六号は、税務署の職員が、国税の還付事務に従事中、還付金額を水増しした関係書類を作成するなどして還付金を領得したもの及び国税の収納事務に従事中、納税者から受領した現金を領得したものであり、検査報告番号七号及び八号の二件は、税務署の職員が、国税の収納事務等に従事中、納税者から受領した現金または収入印紙を領得したものであります。
 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。
 これは、課税仕入れに係る消費税額の算出に当たり、申告書の添付書類である控除対象仕入税額等の計算表に計算式が記載されていないために、誤って地方消費税分を含めるなどして申告していたこと、及びこれに対する審査が十分なものとなっていなかったことにより消費税の納付税額が徴収不足になっていたと認められましたので、当局の見解をただしましたところ、国税庁では、計算表の様式に計算式を明示し、十分に審査するよう周知徹底を図るとする処置を講じたものであります。
 なお、以上のほか、平成十年度決算検査報告に掲記いたしましたように、消費税の滞納の防止策について意見を表示いたしましたが、これに対する国税庁の処置状況についても掲記いたしました。
 以上をもって概要の説明を終わります。
持永主査 次に、会計検査院円谷第五局長。
円谷会計検査院当局者 平成十年度国民金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
 次に、平成十年度日本開発銀行の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
 引き続き、平成十一年度日本開発銀行の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
 次に、平成十年度日本輸出入銀行の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
 引き続き、平成十一年度日本輸出入銀行の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
 次に、平成十一年度国民生活金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
 次に、平成十一年度日本政策投資銀行の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
 以上です。
持永主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。塩川財務大臣。
塩川国務大臣 平成十年度及び平成十一年度に関し、ただいま会計検査院から御指摘のありました事項につきまして大蔵省のとった措置について御説明申し上げます。
 会計検査院の検査の結果、不当事項として、税務署における租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったこと等の御指摘を受けましたことは、まことに遺憾にたえないところであります。これらにつきましては、すべて徴収決定等適切な措置を講じましたが、今後一層事務の合理化と改善に努めてまいりたいと存じます。
 以上でございます。
持永主査 この際、お諮りいたします。
 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
持永主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
持永主査 以上をもちまして大蔵省所管、国民金融公庫、日本開発銀行、日本輸出入銀行、国民生活金融公庫及び日本政策投資銀行についての説明は終わりました。
    ―――――――――――――
持永主査 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松島みどり君。
松島分科員 自由民主党の松島みどりでございます。
 塩川大臣に、国内向けのことを三点と、海外関連のことを三点、伺いたいと思っております。
 まず国内のことなんですけれども、一つは、住宅ローン減税の中で私が不備だと思っていることがございます。住宅ローン減税、今の制度は、年末の住宅ローン残高の一%を税額控除できるという非常に大きなもので、十年間有効です。ところが、これは、途中で転勤をしたりあるいはいろいろな形でその土地を離れた場合に、そのサラリーマンは転勤先で家賃を払いながらもとのところのローンを払い続ける、そういう形になるんですけれども、このローン減税がだめになっちゃいます。戻っても、また復活されることがない。私はこれは非常におかしいと感じているんです。
 税務当局の御説明は、投資用のマンションなんかと区別がつきにくいということなんですが、実際問題といたしまして、役所の方は異動というのは大体予測できているか、大体いつも同じようなパターンかもしれませんけれども、私も民間企業に十五年間勤めた経験でいいますと、こういうふうに景気が悪くなると転勤というのは間隔があいちゃうんですね。長いことあるところにいて、そろそろ家を持とうかと思って持った途端に転勤というのは、よくあることでございます。転勤しちゃって、そういう二重苦に悩まされる。あるいは、今の御時世でございますから、出向をさせられてどこか遠くへ行くとか、東京で勤めていた人が、会社がつぶれちゃったりリストラされて、郷里のどこか、北海道だ九州だへ帰って、また職探しをする。
 そういうふうな場合に、残している家のローンの控除が受けられないと非常に厳しいことになる。これをぜひ是正していただきたいと思うんですけれども、大臣、どうでしょうか。
谷口副大臣 松島先生のお尋ねでございますが、よく理解はできるところであるわけでございますが、現行の住宅ローン控除制度は、持ち家の取得の促進を目的とした政策税制と言われるものでございます。そういうこともございまして、住宅を取得したその御本人が、取得後六カ月以内にその家屋に居住し、その後その家屋に継続して居住するということを要件にこの適用が受けられるというようにやっておるわけでございます。
 今、先生がおっしゃったような、例えば単身赴任で出ていかれたときに、御家族の方がいらっしゃるとこの適用は受けられるわけですが、全部出ていかれる、赴任地に行かれるといったような場合には、例えば、いろいろなパターンが考えられるんだと思いますが、賃貸に回す方も中にはいらっしゃる。それは、その段階で、不動産所得、賃貸で収入が入るわけでございますから、不動産所得ということになるわけでございます。
 また、そこに居住しておるかどうかというような証明が極めて困難な状況もございまして、そういう観点から、この継続居住の要件ということについては、この制度の根幹をなすということになっておるわけでございまして、そういうこともございまして、転勤等により居住の用に供しなくなった場合には、その後再居住をしたとしても、住宅ローン控除の適用については、こういうような制度の趣旨にかんがみまして、認めることが難しいというようなことになるわけでございます。
松島分科員 谷口副大臣からそんな役所と同じことを答弁いただくとは、全く思っておりませんでした。
 単身赴任なら家族が残っているからいいということなんですけれども、単身赴任を奨励するかのごときその考え方というのは、絶対にとってはいけないことだと思いますし、そしてまた、これは私ども政治家が、特に谷口副大臣、同じ都会から出ている議員といたしまして、やはりサラリーマンの心もとらえられる税制を、仕組みを考えていかなきゃいけないと私は思っております。
 おっしゃるとおりの仕組みなんですが、例えば転勤したという証明、そしていつまでこの家に住んでいた、六カ月の継続要件、六カ月以内に住まなきゃいけないという要件は確かにあると思うんですね。将来のためだとか、人に貸すために家を買ったのでは意味がないわけでございまして、すぐ住んだ。でも不可抗力です、いつ転勤があるかなんて、そんな打診をしてくれる優しい会社ばかりじゃございませんから、それは塩川大臣、そして谷口副大臣、いずれも都市部から出ておられる政治家として、これは国民の、サラリーマンというのはなかなか声を上げません、ですから主張としてなってこないんですけれども、現実に私も何人かの友人からそういう声を聞いておりますので、ぜひ今後ともお考えいただきたいと思っております。
 これは、もうさらなる答弁は結構でございます。
 それから、これは塩川大臣にお答えをいただきたいんですけれども、私は、中小企業、零細企業の町の声というのを毎日聞きながら政治活動を行っている者です。塩川大臣の場合はもっと、本当に私なんかよりはるかに長い期間、そういった方々の声を聞きながら政治を営んでこられて、政治家をやってこられて、そして今、財政の最高責任者にいらっしゃる。そういう意味で御質問したいと思っております。
 今、中小企業、零細企業の中で聞こえる声というのは、自分の会社をやめたい、廃業したいけれどもできない。従業員に退職金も払えない。自分は、社長はもうほとんど取り分もなく、ボーナスなんかもらっていないんだけれども、家族も犠牲にしているけれども、やはり従業員、長いことやってきたのに給料払い続けなきゃいけないし、退職金も払わなきゃいけない。そしてまた、借金が何千万か、銀行、信用金庫に残っている。それで苦しんでおられる方々、随分いらっしゃいます。
 あそこは早くやめられてよかったな、うちはぐずぐずしている間にもうどうしようもないと、どんどん毎月赤字がわかっていても、数年前と違って今はもう展望がないと思っていても、何となくずるずる続けている方はたくさんいらっしゃいます。
 そこで質問なんですが、この廃業に対する給付というもの、これはちなみに水産庁が、自主廃船する、船を自分たちで廃船する場合に資金を出して、平成十三年度は当初予算二十億、補正で二十五億、平成十四年度は三十億円の予算を立てております。これは、自主廃船でも緊急の場合は、九分の五を国が出す、残り九分の四をその同業者たちが出す、組合が出す、緊急でない場合は国の比率が九分の四で組合が九分の五になるんですけれども、いずれにしても、そういうことをやっております。
 この製造業におきましても、供給過剰というものを防いで、生き残った会社が本当に残れるように、残りたい会社も生き残れるようにということを含めて、廃業する方の立場も両方含めて、こういうことができないだろうか。さらに、全体にすべてお金を上げることが無理でしたら、例えば大企業、親会社が外国へ移転しちゃってもう仕事がなくなった、そういう会社に限定するとか、あるいは中国その他からの急激な製品の流通でにっちもさっちもいかなくなった、そういう会社に限定するとか、何か要件をつくって、この廃業に対する給付なり廃業資金の手当てというものを考えられないか、大臣にお話、御意見を伺いたいと思います。
塩川国務大臣 私は、かねてからそういう問題もあるだろうと思いまして、今の中小企業政策の中で、中小企業、企業というものとなりわいというものとをやはり分けて考えなければ対策は出てこないんじゃないかなと思うのですね。
 今、おっしゃるようないわば零細中小企業の退職金は非常に深刻な問題です。私も地元が大阪なんですが、そこで従業員が五人や六人というところがやめるにやめられない、従業員に退職金も払えないからというのが多いのです。
 それでは、それを調べてみますと、共済事業団に入っておって、そこの掛金をしておるのですけれども、この掛金を払い下げてもらって、その退職金の相当を共済からもらってもちょっと中途半端な金額になってきて、長年勤めた者に対する退職金、例えば、私の町で商工会の人の平均をとりましたら、大体一人二百万円程度はやはり退職金として支給してやらないとという実態があるのですね。ところが、共済金からもらいますのはそれよりもうんと低いのですね、共済は掛金がきついものですからそうなっておるのですが、そこらの問題をちゃんとしたものにしてあげたらどうだろう。
 そのためには、同じ中小企業対策といいましても、要するに企業としてやっておる中小企業と、おやじさんがおって、それと家族と一緒になっていわゆる家族的にやっている企業というものと、ちょっと分けて考えなけりゃ無理なんじゃないかなと思うたりするのです。
 そうすると、その方法の一つとして、共済事業団等に対する国のあり方というものをちょっと考えてみて、そこを通じて、一応退職金のある程度の分を保障してやるとかいうことを通じれば、そういう零細企業は転換するのにもしやすくなるんだろうと思うし、そこで必要なのは、やはり親子間の事業の継承ということも必要でして、息子がおりまして、おやじの後をやっていきたいと思うけれども、財産がおやじのになっておって、おやじがへたばってしまってどうにもならぬというようなのが随分と私の地元にあるのですが、そういう細かい個々の問題を集約してやっていきたい。
 それを一言で言いますと、なりわいと中小企業というものの政策はやはり違ってくるんだろうと思っておりまして、これは政府としてもともどもに考えていきたい課題だと思っております。
松島分科員 まさに、本当にそのとおりでございまして、この二十年ぐらい、三十年ぐらいの日本の経済というのは、企業栄えて家業滅ぶという時代があったと思います。そして、その企業が追い求めてきた、ダイエーに象徴されるような大きな展開、全国展開というものが行き詰まって、一体何だったんだろうかと。これは本当に幅広く、中小企業庁だけじゃない、そしてさきの厚生労働省だけじゃない、すべての分野において統合的に考えていかなきゃいけない問題だと思っています。
 今ちょっと、たまたま退職金制度のことでおっしゃっていただいたのですが、借金という問題。借金を抱えてやめられない、これも全部棒引きにするわけにいかないのですが、ペイオフについても世の中で中小企業の皆さんたちが怒っていますのは、自分たちはつぶれるときに全部とられる、返さなきゃいけない、何万以上は返さぬでいいなんてそんな仕組みはないと。それで、おかしいじゃないか、銀行だけ有利じゃないか、そういう声がございます。
 この借金を、例えば、それほど大きい額じゃないけれども、その会社にとっては大きな一千万、一千五百万抱えている、そういうところのやめ方、会社の廃業のさせ方というのについては何か考えられないんでしょうか。
塩川国務大臣 これは非常に不満が募っておりますのは、大企業が大銀行に対して何百億、何千万というものを棒引きしてしまっておる。我々は何百万円なんだ、何百万円の金が返せないで、それがためにやはり苦労して、損ではあるけれども、金を回していなきゃならぬので仕事をしているんだと。それがますますいわゆる経営の悪化につながってくる、こういう不幸な事態があるのですね。
 私は、こういうようなのはやはり何かの措置で救済できないだろうかとかねがねに思うておるのですけれども、これを殊さら、民事再生法とかそんなわけにもいきませんし、そういうところが会社更生法を適用せいと言ったって、それだけの事務能力も何にもない。そういうところが困っておるのですね。そういうところを何とか処理しなければ、今不景気だというところの、その不景気の風の一番ベースのところに張りついておるそういう案件があるので、これを何とか明るい希望を持てるようなことをしてやりたいと思っておるのです。
 私の地元で私の友人でございましたけれども、それが一つ要件がございまして、銀行と話し合いをしまして、破産する、破産というか整理するということになりまして、これは一例ですけれども、そのときに銀行が、好意的に、あなたの家とそれから住んでおるところ、家と土地、これだけは残すけれども、あとは全部競売にかけてくれと。そして収入があれば、もうできるだけ少なくて何でもいいから返すということの約束だけはしてくれと。そういう和解をつくって整理をしたということがあるのですが、これは個々の応対になっていきましょうけれども、何かそういうようなことを中小零細企業ができる道をつくってやったらいい。
 結局は、何が難しいかといったら、破産あるいは倒産しました後、生活の場をどうしてやるかということ、ここが難しい。大企業でしたらそんなの責任も何にもない。ぱっとやめて次のところへ就職して、おれは知らぬぞという顔をしているようですが、私は、そこが非常に現在の世の中に不公平が漂っておる、これに対する不満というのはやはり相当大きいものだから、そこをある程度緩和する方法を何か考えたらいいんだろうと思うのです。
 しかし、日本も法治国家でございますから、法律の許される範囲内ということになってくると、そこは国会でひとつしっかりと考えてもらいたい。私は、国会の仕事はこういうところを考え出して立法化してもらうことにあるんだろうと思っております。
松島分科員 心のこもった御答弁ありがとうございます。私も、政治というものが大企業の方だけに向いているのじゃないか、そういう誤解を招かないようにしっかりと取り組んでまいりたいと思います。
 その大企業の方の話なんですけれども、連結納税でございます。連結納税の制度が導入されることになったのは、非常にいいことだと思うのですけれども、これは四月の初めに読売新聞が調査を出していました、発表しておりましたのでも、そしてまた、大和総研が一月から二月にかけて調査をしましたのを見ましても、連結納税を採用するというのは、読売の場合は、五十社調べて採用するというところが二社だけ、それから、導入の予定なしとしない方向だというのを合わせますと、五十社のうち二十三社に上っています。大和総研の調べも、これは九十四社が回答して、適用するが二社、そして、予定がないとか可能性が低いというのを合わせると八割ぐらいでございます。
 これの一番の大きな要因は、連結付加税二%を課すことにしたことだと思っております。これは平成十四年度と十五年度ということになっておりまして、十四年度はもう進行年度ですから、今さら取りやめてというのもごちゃごちゃするだけかとは思うのですけれども、この予定二年度と言っているところを今年度だけにして、十五年度は二%付加税をかけるのをやめるという考え方はできないだろうか。
 でなければ、今回の場合、連結納税制度の導入によって八千億円の税収減になるという見通しのもとに、先にもう退職給与引当金の制度の廃止などを決めてしまいまして、結果的に見ると、法人関係が税収をふやしてしまうという、得と言ったらおかしいのですね、税収増になってしまうというような、何かおかしなぐあいになってしまうわけでございまして、これは、十四年度、十五年度にまたがらせるのを十四年度だけでやめるという方向で、今からでも考えていくことはできないか。お考えを伺いたいと思います。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 連結納税制度につきましては、まことに申しわけないのですが、十四年度からの導入を目指すべく、現在、国会提出に向けて、まさに法制局審査等をやらせていただいている最中でございます。各企業におきましては、やはり法案の成立後に、制度の詳細あるいはグループ各社の収益の見通し等を踏まえて、選択するかどうかの最終的な検討、判断が行われていく、私どもも各関係会社等からもヒアリングしておりますが、そういうものだろうと存じております。
 いずれにしても、連結納税制度の導入による税収減というのは、やはり実際の連結納税導入時の所得、欠損の状況など、いろいろな要因に実は左右されるものですから、現時点でそのすべてを見通すことは困難でありますが、いわゆる一部のアンケート調査だけで済むものではありませんで、我々が実施いたしました三千数百社に及びますアンケート等をもとにした減収試算額というのは、今の時点でもまだ変わっていないというふうに私どもは思っている次第でございます。
 ただ、いずれにしましても、今先生の言われました付加税であれ、あるいは退職給与引当金制度の廃止、これは中小企業などには、経過措置でかなり長期間を置いている制度を入れているわけですが、全体としての企業負担のバランスを図るという観点から講じている措置であるということも御理解を賜りたいと思う次第でございます。
松島分科員 御理解はするように努力しますけれども、しかし、今言われた三千社を対象にして云々という調査、昨年夏の時点では、付加税が課されるとはだれも思わないで、導入するかどうか、そういうことを考えていた時点であるということと、もう一つ、今、法案が通ってから各社が考えるというお話でございましたが、それは、法案が云々というのは、通るというのは確かに国会マターのことでございまして、重要なことですけれども、企業は、もう四月から始まっておりますから、法案の中身もわかっているわけですから、それは法案が通ってから考える、そういう会社は普通ないと思っております。
 これで結構でございます。あと、対外的なことで幾つか質問をさせていただきたいと思っております。
 一つは、中国の人民元の為替レートの問題でございます。これは一ドル八・二七七元でずっと、一九九五年半ばぐらいから変わらない状況でございます。中国人民銀行が強固な介入を行って、それは、資本取引が自由化されていないためにこうなっているわけでございますから、これはもうそろそろ、中国がこれぐらい力をつけているのならば資本取引の自由化が必要じゃないか。二〇〇八年に北京でオリンピックをやる、もうそこまで来ているわけですから。
 ちなみに、中国の貿易収支、これはちょっと、今二〇〇〇年しかわからないのですけれども、二〇〇〇年の貿易収支が三百四十五億ドル。日本は千百六十七億ドルですから、日本の貿易収支の三分の一強に達しております。さらに外貨準備高について言いますと、直近でわかるのが昨年、二〇〇一年の九月ですけれども、中国は千九百五十八億ドル、日本が三千九百七十億ドルですから、もう半分ぐらいまで来ている。日本のような世界一の外貨準備高の半分ぐらい外貨を持っている、そういう立派な国が、資本も自由化していない、強固な介入で固定しているというのはどう考えてもおかしい。
 さっきも言いましたオリンピックの六年前、日本の場合は、オリンピックの六年前、昭和三十三年はとてもそういう経済レベルに至っていなかったわけですけれども、今の中国の状況を見ると、これは、日本だけでなしに各国と協調して、大いに主張していかなければいけないことじゃないかと思っておりますが、大臣、いかがでしょう。
塩川国務大臣 この問題は、松島さん、確かに核心をついたお話でございまして、世界各国ともこれに非常に関心を持っていると思います。
 しかし、為替の問題は、他の国のことを批判するわけにもいきませんし、その国の自主的な努力にまつということになって、努力の結果が市場に反映されて、自然に市場で決めるところになっておりますけれども、中国の場合はドルにペッグをしていたのですね。それで、それは経済特区を中国が推進する一つの大きい要件にもなっておったようなのでありますけれども、いずれにしても、相当長い間ずっとドルにペッグしておりますので、我々としても、それに準じた対応をとらざるを得なかったのです。
 しかし、最近のように、おっしゃいますように、元が非常に強くしっかりした基盤を持ってまいりました。確かに、おっしゃるように二千数百億ドルですか、外貨を持っておりますね。日本の半分ぐらいのところに来ている。輸出入も、絶えず出超の状態がずっと続いております。これはG7等においても話題にはなるのです、中国の元は強いなということで話題になるのですけれども、それに対する具体的な措置はできておりません。
 先日、中国人民銀行の戴行長、総裁でございますが、お越しになりまして、私の方から意見をちょっと聞いてみました。要するに、人民元のこれからの管理というものは何かあるかということを聞きましたら、いや、そんなことは全然ない、市場に任す、こういうお話でございました。また一方、資本の開放というか、それはどのような予定があるかと。WTOに入ったものだから、順次開放していくであろうということを言っておられましたが、しかし、非常に気にしておられたことは事実だなと私は思っておりまして、十分丁寧な解説を受けました。
 だから、これからだんだんと市場に順応した元の相場が出てくるのではないか、こう思うておりまして、そこを期待しておるようなところです。
松島分科員 大臣、丁寧な解説とそんなに褒めないで、やはりおかしいときゃんきゃん言っていただきますように、しっかりと、日本の製造業を守るためにも、本当に中国にやられっ放しだという認識を持っていただいて、闘っていただきたいと思っております。
 私、ODAと、特に中国向け円借款のことに関心を持っているのですが、今、日本は一九八九年以来、世界最大のODA大国でございます。平成十年度から減少傾向に転じて、これはよかったと思っているけれども、まだ九千百億円余り。さらに、国連への拠出も世界で二番目、全世界の二〇%を出していて、アメリカが二二%ですから、それに匹敵している。
 今、日本はそんなことができる国なんでしょうか。G7に二月の初めに塩川大臣も行かれて、私は新聞を読んでショックだったのは、スペインの経済担当大臣から日本は大丈夫かと言われたり、新聞の見出しが、今世界で問題なのは日本とアルゼンチンとエンロンだ、本当に情けない思いがしたのです。今、日本の失業率が五%台で、失業者三百万人を超している。年間、自殺する人が三万を超しているうちの六千何百人、二割強の方が生活苦と経済苦で自殺している、そんな国になってしまっているのです。その中で、日本はこれだけのことをする必要があるのか。
 国債の格付も、私、外国の格付機関が勝手なことを言うのをうのみにしたくはないと、もともと考えておりますけれども、すべてのところがそろってどんどん格付を下げてしまって、代表的な三つの格付機関のうちの二つまではイタリアよりも下で、G7で最低になってしまっている。それも、では、日本は大変なのによくやってくれてありがとうと、世界からよく理解され、感謝されているならともかく、そういう雰囲気もなくて、そういう国がこんなことをしている場合だろうかと私は思うんですが、いかがでしょうか。
 そして、つけ加えて申し上げますと、フィリピンやインドネシアに対しての円借款でも、これはリスケがずっと続いていますから、実質不良債権になっている。国内じゃないから不良債権と言わないけれども、不良債権化しているわけでございます。この額の問題。
 それから、日本はやはり、戦後、農地解放と財閥解体で資産の格差をなくして、そうやって頑張ってきた国です。このいろいろな途上国の中に、お金持ちと貧困層の格差の激しい国、こんな国に対しては、お金を上げること以上に、これまた内政干渉と言われるかもしれないけれども、日本の税の仕組みを教えてあげたり、この日本のすばらしい徴税システム、しっかり取り立てる、これを指導してあげる方がよっぽどかの国の貧しい人のために役立つんじゃないかと思うんですけれども、いかがでございましょうか。
塩川国務大臣 私は、数回しかG7に出席しておりませんが、四回G7に出席しましたその空気から見まして、G7の各国もODAに対する考え方が相当変わってまいりました。要するに、ODAを実行して、本当にそれがそれだけ行政効果としてあらわれておるのかどうかということに対して、大いに疑問だという声が相当強くなってまいりまして、私は日本もそうだと思っております。
 今年、十四年度でODAの予算を約一千百億円削減いたしましたが、それに対しまして、各国から大幅な削減だという声が出るかと思ったら、全然出てまいりません。出てまいりませんが、ただ、国際金融機関がございます。例えばIMFとか世界銀行とかアジ銀とかいろいろ、そういうもののつき合いは今までのシェアと同じようにおつき合いをするけれども、ODA、直接の投資については、行政効果と、それからその国の国柄の本当に必要な資金、例えば人道上の問題であるとか教育であるとか、そういうものに対象を絞っていきたいと私は発言いたしておりまして、それに対しては、大方各国とも同様の歩調をとると思っております。
 したがって、今急に思い切ってODAの政策を大きく変更することはできない。ということは、継続的に約束しておるのも相当ございますし、そんなことはできませんけれども、これからの新規事業については、それが一体その国に本当に喜ばれるものだろうか、ODAを実施してちっとも喜ばれない、逆にヤンキー・ゴー・ホームと言われておるとアメリカは言っていましたので、そういうことが起こってくるようなことだったら考え物だと言っておりました。ですから、我々も、そういう行政効果とその国の受け入れの政治情勢等を十分勘案して、慎重にこれを進めていきたいと思っております。
松島分科員 どうもありがとうございます。そして、おつき合いを今しているIMFとか世銀とかアジア開銀、これも、おつき合いして間接的なことをするとその国にまた感謝もされないというばかなことになるので、だんだんおつき合いを減らすことができるように、よろしくお願いします。
 最後に一つだけ。人道的ということを今言われたんですけれども、例えば対中円借款、これにおきまして、この姿勢を、大規模なインフラ整備から改めて、中国の地方における人道的な協力だとか技術協力ということが言われています。
 これも確かに名目としては美しいんですが、人道協力といいましても、これは中国で、地方から短い年数、二、三年なり数年間、若い女性を安い賃金で雇ってという、中国自身が人道的じゃないことをしているわけです。我が国におきましても、やはり女工哀史の時代から大正の時代の労働争議、そして戦後、時短とか労働者の権利擁護ということを重ねてきて、こういうふうにできたわけですから、中国自身が何とかしない限りどうしようもない。
 そして、技術協力というのは、また日本に対するブーメラン効果として返ってくると思います。
 どうか、その辺を御勘案いただきまして、文面だけ見ると格好いいことでも、本当はあの国がやるべきことじゃないかというのをきちっと要求していっていただきたいと思います。
塩川国務大臣 でございますから、先ほども申しました、ODAの事業の対象によりましてそれぞれ区別をしておるというふうな状態です。
 例えば人材養成であるとかあるいは医療施設、そういうものに対しては低金利で長期をしておるということ。そして一方、経済基盤の造成であるとか、あるいはその国によって計画しておるものの、いわゆる社会基盤造成の援助であるとかいうものは金利を高くして期間を短くする。そういういろいろな対策を織りまぜて実施しておりますが、これをもう少しきめ細かくやっていきたいと思っております。
 重点は、先ほど言いましたように、人道上の問題と、それから教育というようなものに重点を絞ってこれからのODAの対策を考える、こういうことであります。
松島分科員 どうもありがとうございました。ぜひ総額の抑制に取り組んでいただきたいと思います。
持永主査 これにて松島みどり君の質疑は終了いたしました。
 次に、中村哲治君。
中村(哲)分科員 民主党・無所属クラブの中村哲治でございます。
 塩川大臣におかれましては、私の隣の選挙区でございます。私が生まれ育った生駒からトンネル一本越えて大阪方面に向かいますと、塩川さんの選挙区の東大阪となります。今、関西が非常に経済的にも地盤沈下している中で、やはりこれをどうにかしていかないといけない、地方分権をしっかりしていかないといけないなと私は思っております。そういう観点から、きょう大臣とお話しさせていただくお話によって、大阪圏の経済圏が復活するきっかけになればと私は思っております。
 さて、大臣、質疑の実質的内容に入る前に、政と官の役割分担についてお話しさせていただこうと思っております。
 というのは、先日、三月五日の総務委員会におきまして、地方財政についての議論をさせていただきました。そのときに財務省の方から来ていただいたのが吉田幸弘大臣政務官でした。私は、片山虎之助総務大臣とお話を、議論をさせていただいていたところ、それについて政務官はどのようにお考えですかということを聞いたときに、恐らく聞いておられなかったんだと思うんですが、その後、即答せずに、かなり慌てたように後ろの事務方の方とお話をされて、聞いていなかったんですかというような言い方を私もさせていただいたんですけれども、やっと、しばらくたってから議論が開始されたというようなことがあったんですね。何度かやりとりをさせていただいたんですけれども、聞いたことに関してきちんとした答弁が返ってこない、そういうやりとりをずっと延々としておりまして、最終的には審議がとまってしまったことが三月五日にあったんです。
 私は、これは非常に大きな問題だと思うんです。もともと、政務官という制度ができたということは、やはり国会の答弁というものを政治家主導でやっていこう、大臣が答えられないときは、出られないときは副大臣が出ていく、しかし副大臣も出ていけないときには政務官が出ていく、それがこの国会改革における政と官の役割分担、そういう趣旨だと思うんですね。そういう中にあって、政務官が話を聞いていたのかどうか、そういうふうな疑念を委員の側に抱かせるような行為を政務官がとっていく、それが本当に、この政務官の制度の制度趣旨にのっとったものなのかどうか、運営にのっとったものなのかどうか、そういうことを感じるわけでございます。
 この三月五日の総務委員会での吉田政務官をめぐる出来事、審議がとまったことも含めまして、これは塩川大臣、御存じだったでしょうか。まず、それをお伺いしたいと思います。
塩川国務大臣 私は、その中村さんと政務官とのやりとりの中身は聞いていないんですけれども、要するに、委員会で相当議論があったということは聞いております。そして、速記をとめて、議論があって、結局、委員長が裁定みたいなことをされて、最終答弁を政務官がやって、それで一応は納得というか、時間が来て了承ということになった、そういうのは聞いておるんです。その中身は何であったか、私はそれは実は聞いておらないんですけれども。
 いずれにしても、政務官と副大臣というのとそれぞれちょっと役割も違いますので、そこへもってきて政務官自身も直接の担当事項をやっておるわけじゃなかったもので、あるいは吉田さんの方の答弁がうまくかみ合わなかったんじゃないか、中村さんとの間でかみ合わなかったんじゃないかな、こう思うておりまして、その点につきましてはこの委員会でいろいろと先生の思うていることを質問していただいて、財務省としてきちっとした答弁をしておきたい、こう思っております。
中村(哲)分科員 ぜひ大臣に、議事録がありますので、また省に帰られてからごらんになっていただきたいと思うんですよ。私が聞いた問いにきちんと答えているのかどうか。それも、総務大臣と私が議論している流れをきちんと把握して吉田政務官が答えているのかどうか。そういうふうなことを聞いていただきたいと思うんですね。
 それで、政務官が議員としての答弁だというふうなことをぽろっとおっしゃったわけなんですよ。これは非常に問題でして、政務官というのは、当たり前のことですけれども、政府の一員として政府の立場を答弁するわけです。私が、いや、それは政府としては答えられないでしょうから政務官の個人的なお考えをお聞かせくださいというふうなことを言えば、仮にそういうふうなことを言えば、そういう個人的な考えの答弁がなされるというのはあってもいいと思います。しかし、政府としての答弁を求めているときに、議員としてはこのように考えますというふうに求められていないことを答えるというものは、やはり政務官のあり方としてはいかがなものかと私は考えております。
 大臣、この政務官を選ぶときに、果たして財務大臣政務官として本当に能力があるとお考えになっていたのかどうかということをお聞きしたいんです。というのは、吉田さんのプロフィールを見ると、厚生部門に非常に造詣の深い方だというふうに聞いております。だから、厚生労働大臣の政務官になられる方ということであれば理解はできるんですけれども、いきなり畑違いの財務省にいらっしゃったんじゃないかなということを思わざるを得なかったんですよ、審議が終わった後調べさせていただいて。そのあたり、任命が、どういうふうな経緯で吉田さんが選ばれたのか、その辺についてもお聞かせいただけないでしょうか。
塩川国務大臣 それは委員、政務官を任命するのに基準というものはありませんけれども、今、自由民主党あるいは各政党、あなたの民主党もそうだと思うんですが、政治家をやはりいろいろな面に体験させて育てていくという方針をとっておると思うんですよ。実は私も、初当選しましたときは地方行政委員会からスタートしたんですけれども、党の指導で何と委員会の変わったの、十何カ所委員会変わっておりますし、また思わぬところの仕事をさせられたことがあります。
 そういう意味において吉田政務官も、それは専門は厚生だろうと思いますけれども、しかし、いつまでも厚生ばかりよりは建設関係も、一番大事な財務関係もということがあって、希望もしたんだろうと思います。それでそういう人事が行われたと思っておりまして、お互い、私が言うとえらいおこがましいことですけれども、三回四回当選された方々がいろいろなことを、いろいろな委員会、いわゆる素人であるけれども、そういう委員会も経験して、だんだんと要するに政治家としての経験を積んでいただけるんだと思うておりまして、これも一つの貴重な経験だ、そういうふうに私は考えております。
中村(哲)分科員 教育の機会ということでしたから、本当にそれはある意味正しいと思うんです。ただ、その教育の機会を与えて、その人がどういうふうに判断するか、そしてどういうふうに自分を律していくかということは、また評価を別途しないといけないと思うんですね。
 塩川大臣にお願いしたいのは、この審議を終わられてお帰りになった後、吉田政務官と三月五日の審議について、自分はどのように考えているのか、お聞きになってほしいんです。その前提としては、塩川大臣にまず議事録を読んでいただいて、どういうふうなやりとりがなされていたのか把握していただいて、それでもし問題があるのであればまた是正をしていただきたいと思いますし、ああ、これでいいんだということであれば、あれでよかったというふうにまた答えていただきたいと思うんですね。
 後日、文書でも結構ですから、そのやりとりを聞かせていただきたいというふうに思っているんですけれども、それについてのお考えはいかがでしょうか。
塩川国務大臣 今、一方的に中村さんのお話を聞いただけですから、一度吉田さんの意見も聞いてみまして、また機会があればお答えすることにいたします。
中村(哲)分科員 機会があればというのはどういう、またこういうふうな直接のやりとりがないといけないんでしょうか。それとも、質問主意書で聞いてくれということなんでしょうか。
塩川国務大臣 質問主意書とかいうんじゃなしに、やはり政治家同士の話として、機会を見て、また私と吉田さんの話したことを中村さんの方へお伝えするようにいたします。
中村(哲)分科員 この件に関しては、きちんと機会をつくってお話ししていただけるということでしたので、本当にうれしく思っております。
 私がこういうふうなことをるる申しましたのは、やはり政と官の役割分担というものをきちんとこれから考えていかないといけない、そのためには制度の運営自体もきちんとしていかないといけないということでございます。
 私も、こういうことを言うと吉田政務官の個人攻撃みたいになってしまうことになりますので、それは本当に心苦しく思っております。三月五日の答弁のときにも、吉田政務官とのやりとりにおいて彼の心証を害した点があったとしたらそれは申しわけないというふうに申させていただきました。ただ、制度自体がきちんと趣旨のとおりに運営されていないのであれば、それをきちんと是正していかないといけない、そういう趣旨で聞かせていただいたことでございます。
 それでは、次の質問に移らせていただきます。
 その三月五日の質問で私が政務官にお聞きしたかったことというのは、それが聞けなかったということなんですけれども、総務大臣とのやりとりがありました。そのことをまず事前に話させていただきたいと思います。
 総務大臣に、今地方公共団体がやる仕事、これが大体七割が国が決めているというふうに聞いておりますけれども、それについて大臣、お考えいかがでしょうか。そうすると、大体七割、ちょっと読みますと、
 ○片山国務大臣 ざっと集計すると七割、こういうことでございまして、国が法律なり政令なりあるいは省令等で決めているもの、あるいは通達で決めているもの、あるいは補助金を出して拘束しているもの、そういうものを入れますと、地方団体の収支の七割は国の影響下にある、こういうふうに我々は考えております。
 ○中村(哲)委員 七割という数字は多いとお感じでしょうか、少ないとお感じでしょうか。
 ○片山国務大臣 私は多いと思いますね、多いと思います。
以下議論が続いていくんですけれども、この七割という数字について、塩川大臣は多いとお感じでしょうか、少ないとお感じでしょうか。
塩川国務大臣 ちょうど私は平成三年、四年、自治大臣をやっておりました。そのときに私は市町村合併の推進の旗を振って一生懸命やったんですけれども、そのときに調べてみましたら、市町村のですよ、府県じゃございません、市町村の固有事務はたしか三百件ぐらいだった、行政事項として三百件近くだったと。それに対しまして、機関委任事務と団体委任事務ですね、それは合わせて約五百ほどあったと思っております。
 ところが、機関委任事務の中で相当がもう団体委任事務になっておりますので、それを見ますと、団体委任事務は本当からいえば固有事務に相当するものでございますから、まあ半々よりはちょっと上かなという感じ。
 だから、腰だめのような話でございますけれども、市町村の全行政事務の項目のうちの六割ぐらいがいわば国からの委託事業とかいわゆる機関委任事務、そういうものになると六割以上は確かにあるだろうと思っておりまして、それは、確かに市町村が国の出先機関であると言われるように思われるのは、そういうところにあると思いますね。
中村(哲)分科員 私が大臣にお聞きしたのは、この七割という数字が多いかどうかということで、今多いという趣旨でお答えいただいたと考えておるんですけれども、これを下げていくためにはどうしたらいいのか。総務大臣ともお話しさせていただいたのですけれども、やはり他省庁との調整みたいなものが必要なんじゃないかという答弁だったと思うんですけれども、まず塩川財務大臣に、この七割というものを下げていくべきなのかどうか、下げていくとしたらどういうふうに、やっていくべきだし、どういうふうにやっていこうとお考えになっているのか、そういう点についてお聞かせいただきたいと思います。
塩川国務大臣 文明が進んで文化が非常に広くなって盛大になっていけば、行政の事務は当然ふえていくと思うんです。私は、行政改革は、今システムの上での行政改革はやかましく言われておりますけれども、本当は行政の責任、そしてそれに対する国民の負担という問題、これを一回本当に考え直すべき時期じゃないかと思うんです。
 そのことは、ナショナルミニマムはどの程度のことが国家の責任なのか、そしてシビルミニマムとして府県並びに市町村がどれだけのサービスを提供すべきであるのか、ここをやはり考えてみて、その上で、負担がきついの緩いの、あるいは保険料が高いの安いのとかいう議論はしなければならぬのですけれども、民主主義というのは全部選挙で事が決まりますから、選挙を控えますと、どうしても政治家がポピュリズムになってまいりますね。そのことが、そういうナショナルミニマム、シビルミニマムに対して拡大されていくということ、行政事務を非常に複雑、そして多岐にして、大量化してきておると思っております。
 ですから、国と地方との行政責任を、権限を、分配を検討するとか、地方と国の役割を考えるという場合に、どうしてもそこの根本問題を一回考える必要があるんじゃないかと思っております。その意味において、私は、地方分権推進委員会等においてこの議論がもっとしっかりとなされるべきではなかったかと思うんですけれども、ただシステムの方に重点を置いた議論が先行しておったので、私はもう一度この根本に戻ってやってもらいたいなと思っております。
中村(哲)分科員 根本に戻って議論すべき、本当に言えば私もそう思うのですよ。これをいつまでにどのような形でやっていくのか、これがやはり小泉改革の大きな柱になるんじゃないかなと私は思います。そのあたりのところで、塩川大臣としては、この根本的な議論を小泉改革でどのように進めていくのか。いつまでに、どういうスケジュールで、どういう機関をつくって、そういうことをぜひお聞かせいただきたいわけでございます。いかがでしょうか。
塩川国務大臣 この問題、いつまでとかいうのは難しいと思います。
 とにかく今、市町村が、地方分権、そして権限の移譲ということをやっていまして、きのうも夜NHKで非常に熱心な討論が行われておりまして、私は終始ずっとあれを聞いておりました。結局、あのようにして国民全体が、一回、行政の責任と負担というものをみんなが考える、そういう気分がやはり出てこなければいけないのじゃないかと思うんです。
 例えば、地方選挙にいたしましても、その地方におけるいわゆる政治状況とか、福祉あるいは環境のあり方というものが真剣に検討されての投票結果というものじゃなくて、だれに任せたらいいか、やはりそういう選挙になっておるような感じがしますので、そこらが、選挙のたびごとにだんだんと行政の質の問題にもっと意識が高まってくれば、私はそういうことを政府の方から提起しても受け入れてくれると思うのですね。
 今のような状態の中で、シビルミニマム、ナショナルミニマムというものの検討をするということを言っても、なかなかそれは、もう何でもかんでもやってくれるのが当たり前やないかということになってくるので、難しいのではないかなと思いますが、そういう意識をやはり国民がしなければならぬ。その根本は、やはり国民の負担と受けるサービスというものの検討が、本当は根本であってもらいたい、こう思っています。
中村(哲)分科員 難しいのと違うかなという大臣の答弁は、本当に私も、ああ難しいのと違うかなと思っています。ただ、これはいつか始めぬとあかんことだと思うのですね。
 それで、国民の皆さん、どう考えておられますか、こういう根本的な議論が今必要じゃないですか、そろそろ議論を始めませんか、そういうふうに塩川大臣のお口から言っていただきますと、やはり国民の意識も変わっていくのではないか。私としては、小泉内閣の主要閣僚としての塩川大臣の、運動を始められる、そういう改革の旗手としての役割があるのではないかなと、お隣に住んでいてそういうふうに思うわけでございますけれども、その点についてはいかがでしょうか。
塩川国務大臣 近く、経済財政諮問会議それから政府税調等で、税制改正の問題が議論されます。私は、当然、そのときに国と地方との税の問題が出てくると思います。そしてまた同時に、税制改正の中で経済の活性化をどうするかということ、そうしたらまた一方において福祉財源をどうするかということが出てまいります。そういうのを見ましたら、負担の問題、これとまた負担の分け合い、役割分担、こういうのが出てくると思いますので、そういう機会を見て、今言っているような問題を提起してみたいと思っています。
中村(哲)分科員 この七割の問題について、問題は根本的な問題にかかわるけれども、それについて積極的に取り組んでいくという大臣の答弁だと受けとめました。うなずいていただきましたので、本当にそういう方向で進めていただきたいと思います。
 関連して二つ目の質問なんですけれども、これは税財源の移譲の問題。これも今の大臣の御答弁をお聞きする限り、この七割の問題とあわせて一緒に取り組んでいかないといけない、そういうふうにお考えになられていると受けとめましたけれども、それについて、確認までに御答弁いただきたいと思います。
塩川国務大臣 財源の移譲問題は、移譲という問題が実は二つの字がありまして、委任の委に譲るというのと、移す譲というのと、二手あったのです。この問題をめぐりまして、経済財政諮問会議で骨太の方針を決めるとき、相当議論が起こったんです。結局、移す譲の方に決定したわけなんです。
 そのとき、それは移すのも必要、私も自治大臣をやった経験があるから、財源の不足ということはわかってはおるのですけれども、しかし、私は、そのときに条件をつけたんです。移譲をすることによって効果が本当に出てくるようにするためには、地方自治体そのもの、府県も市町村もあわせてですけれども、それを受け入れていく、いわば規模と能力の充実というものをしてもらわないと物すごい不公平が起こってくるのではないかと。その不公平はそのままほっておいてもいいということにはならない、どこかでやはり調整をしなければならぬということ、そうすると、やはりそこには国が関与することになってくる。そうすると、何かノーエ節みたいな、繰り返しのものを続けているようなことになるのではないか。
 だから、まず市町村の能力の充実というか、規模の確定というものをやはり考えて、並行してやってもらいたいということ。それと同時に分権をしていく。いわゆる機関委任事務をやる前に、機関委任事務、先ほど申しましたように、行政の責任の明確化をあわせてやっていくということ、そういうものを総合的にやってもらいたいということを条件につけて移譲を認めていく、やっていくということをしたわけです。
中村(哲)分科員 わかったようなわからぬような印象がしますが、あと一つつけ足しなんですけれども、税財源の移譲のときに、よく、国債の分の債務の移譲というのを地方にしていかないといけないんじゃないかという考え方もあります。それについては、大臣、個人的なお考えで結構ですので、どのようにお考えでしょうか。
塩川国務大臣 それは、地方財政との関係というものは、相当やはり国が地方に対する貢献をしております。このことの一つのいい例が、今地方交付税がございますね。地方交付税の現在の借入残高が四十兆を超えておると思うんですね。
 これは、今、国がどう処理するかということは、税源の移譲の問題とか、それから地方分権、権限の移譲の問題というものと密接に関係してきておるんですね。これは今、国は一言も言っておりません。しょせんは国の責任で解決つけなきゃならぬと思いますけれども、しかしながら、それに対して地方がどれだけ分担するかということは、税源の移譲問題と非常に関係しておるということですから、そういうものを総合的に考えて、ただ、まくら言葉のように分権イコール税源の移譲、こればかり言うとったって始まらぬということになるので、そこらは我々も慎重に考えていきたいと思っております。
 いずれにしても、国と地方が円満に、両方、両輪がかみ合わなかったら、国の行く方向、くるくる回っちゃうんです。ですから、それはバランスをとってやっていかなきゃならない。けれども、そんな問題が一つはあるんだよということの意識は持っていてもらわないかぬということです。
中村(哲)分科員 若松総務副大臣に同じ質問をするつもりでしたけれども、今の御答弁ならば同じ答えが恐らく返ってくると思いますので、私がお聞きしたかった地方債の問題に入らせていただきたいと思います。
 片山総務大臣は、地方債について、ごんべんの保証ではないけれども、地方財政計画を初めとした地方財政の仕組みそのものを通して国が保障をしていく、債務不履行が起こらないような保障、ごんべんじゃない方の保障をしていくというふうなことをおっしゃっております。つまり、国債の信用と地方債の信用は同じだということを総務大臣は明言されているわけでございますけれども、この件について、塩川大臣、同じお考えでしょうか。
谷口副大臣 塩川大臣にかわりましてお話をさせていただきたいというふうに思います。
 聞いておりますと、先日も総務大臣の方がおっしゃったというように思っておりますが、地方債というのは国が地財計画で財源保障しておるということでございますので、信用力というのはすべて団体において一律であるということで、基本的に、地方債、国債の差はないというような御回答だったというように思いますが、私どももそのように考えておるわけでございます。
中村(哲)分科員 そのようなということですから、次に、市場の評価についてどのように考えておられるかということなんですね。
 つまり、国債発行高というのが四百十四兆円なわけですけれども、地方債も同じ信用だということになれば、発行されている国債の市場の評価というものは六百九十三兆円として考えなくちゃいけないんだという考え方も出てきますけれども、この件について、塩川財務大臣、どのようにお考えでしょうか。
塩川国務大臣 国債の格付とか価値というのは、私は、借金の額が幾らであるとかそういうことだけで、単純なことで決まっていないと思っております。
 まず第一に、その国の国勢、国の勢いですね、この国の勢いというものがやはり一番根源にあるんだろうと。それを受けてファンダメンタルズがどうなっておるんだろうと。ここがやはり一番中心だろうと思います。それに対しまして、経済の個々の実勢、例えば、いわゆる潜在的な生産力がどのようになっておるか、あるいは輸出入の構造はどうなっておるか、そういう個々の問題が重なってくると思っております。
 したがって、私たちはできるだけ格付が上になるようにしたい。そのためには、国のいわゆる財政負担というものが軽いほど国債の値打ちが上がるのは、これは当然ですから、そのように努めて、国債発行三十兆円と言ったのも、何か非常に国会等ではいろいろと批判を受けておりますけれども、これも国債の価格維持というか、格付維持の歴然たる一つの証拠である、こう思って、我々も今後とも国債の格付というものには非常な関心を持っていきたいと思っています。
中村(哲)分科員 時間が参りましたので、最後に確認だけなんですけれども、私は、格付の話というよりは、評価されるときに四百十四兆円で評価されるとお考えなのか、六百九十三兆円で評価されるとお考えなのか、その点をお聞きしたかったわけでございますけれども、その点に最後に答えていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。
谷口副大臣 国債の評価は、一般的に御存じのとおり、勝手格付と言われるように、格付会社が評価をするわけでございます。ですから、格付会社の評価基準に基づいて評価されるものであります。
 一般的な状況を見ておりますと、どうも一般政府ベースの債務残高で評価をしておるというような状況のようでございます。いずれにいたしましても、評価のあり方については我々が関知するところではございませんので、それは格付会社が評価するもので、一般的には一般政府ベースで評価しておるというふうに聞いておるわけでございます。
中村(哲)分科員 終わります。
持永主査 これにて中村哲治君の質疑は終了いたしました。
 次に、大谷信盛君。
大谷分科員 民主党大谷信盛でございます。大臣、副大臣同様大阪選出でございますので、伸び伸びと質問をさせていただきたいというふうに思います。
 私の方は、NPO税制、個人または企業からの寄附、それに対しての税制優遇が受けられるという、二十一世紀に向けて日本社会でNPOの普及を目的とした法律が去年の十月から施行されました。しかしながら、現実を、この数カ月間見てみますと、十件の申請があったのみ、今認定されたNPO法人がたったの三団体。大体世の中には五万、六万のNPOがあり、そのうち法人登録されてあるのが五千から六千、なおかつ二年以上の事業の計画を出すということでいいますと、登録されて二年ですから、約二千ぐらいの団体の中から十件ぐらいしか申請が出ていない。まさに一%以下、〇・五%ぐらいしかNPOの団体がこの申請を利用しようとしていない。ある意味、本来の目的を、この四カ月ではありますが、達成できていないんじゃないか、そんな意識を持って質問させていただきたいのです。
 まず最初に、この法律の評価というものについて、大臣におかれましてはどのようにお考えなのか、教えていただきたいと思います。
塩川国務大臣 私は、この問題に、NPOの実務に関係したこともございませんので、とやかく申し上げるほどの詳しいものを知らないんです。
 実は、私の非常に心安い友人が、NPOの代表になって今やっておるんです。これは確かに、福祉活動というよりも教育活動をやっておるんですが、それがこの前行きまして、要するに、これはどんなにしたって、NPOの税の恩典を受けたいと思うてやっているんだけれども、とてもじゃない、こんな難しいこと、できぬわと言うてきたんですね。どこが難しいねんと言ったら、いや、手続がこれは大変やし、実は聞いてみてもはっきりしたことを教えてくれへんのや、こういうことを言っておるんです。
 私は、今改めてそれは一回勉強してみたいと思うておりまして、そんなに難しいんかいなと。主計局の人に聞きましたら、一年以上の実績がなければならぬということと、それから、いろいろな寄附の条件があるということ、その程度です、こう言うけれども、実際の手続はとても大変らしいんですが、そこらをもう一度、自分自身も一遍勉強してみたいと思うております。
大谷分科員 いや、もう大臣おっしゃるとおりでございまして、本当に、NPOの必要性なんということを今さらここで議論するつもりはさらさらございませんが、絶対に必要だと。しかしながら、例えば会社をリタイアされて、そのお友達のように、NPO、地域活動に貢献しようと思う方々、どうしても、個人の寄附をたくさんいただいてやっていきたいと思う中、なかなか入り込めないというのが現状で、ぜひとも勉強していただきたいというふうに思うんです。
 私自身のこの法律の評価を先に言わせていただきますと、十団体しか申請がなかったからということではなくして、全体に見て、もう言い尽くされているかもしれませんが、ある意味、おつくりになられた方々には御苦労に非常に敬意を表するんですが、アリバイ的であり、何かちょっとだけ団体に御褒美的な税制優遇措置を与えるようなものであって、本来の目的のNPOを育成していくということにはなっていないんではないかなというふうに思うんです。
 もしも本来の目的を達成していくならば、早期に制度の改正というものをしていくべきだというふうに思っておりますが、これから勉強し、また、大臣のアンテナの中には使いにくいなというふうに聞こえてくるのならば、ぜひとも早期にというような思いがあるのかだけ、方向性、ここでお示しいただけたらというふうに思うんです。
塩川国務大臣 いや、これは私は、さっき言っていますように、手続が大変だ、こういうことを言っておるので、それはどうなっているのかということを勉強したいんです。
 しかし、これは、やられました趣旨というものは立派なものですし、また、これを育成したいというのも財務省の方針であります。けれども、やはり税金のことでございますから、世間様が、国民全体が公正にやられておるなという公正の理論はきちっと守っていきたい、こう思うておりますので、そういう意味において、手続が非常に、異常に面倒なんだろうと。
 しかし、そう複雑なことばかりしているというよりも、実績も十分調べて、要するに、NPOの実際、活動している方と、それから税務当局の間の、実態調査とか対話とかそういうのがまだ歴史が浅いですから欠けておるんだろうと。そこらもやはり問題があるんじゃないかなと思うて、いずれにしても、どんな手続になっておるんだということを、一回、実際、自分でも勉強したいと思っています。
大谷分科員 ぜひとも実態調査、大臣の権限のもとに発していただけたらというふうに思いますし、大臣個人もお勉強をしたいと言うし、ぜひとも続けていただきたいというふうに思います。
 大臣、特に、手続は、もちろん役所仕事ですから大変なのは当たり前なのかもしれませんが、何が一番ネックになっているかというと、いわゆる広く多くの人から支持されているかどうかというのをチェックするパブリック・サポート・テストというのがあるんですけれども、数値であらわすために、たくさんいただいた事業収入の中から、三分の一以上は個人からの寄附であったり、公益団体からの助成金であったりということになっているんです。これはアメリカもそうなんですけれども、日本の場合はなかなか寄附というものがまだまだ根づいた文化ではございませんので、三分の一以上を寄附と助成金で賄っている団体なんて本当に限られてくるんですね。そこが一番使えない、せっかくつくったけれども、使えないということになっているんです。
 多分、副大臣、またお役所の皆さんには届いているのかというふうに思いますが、NPOの議連であったり、もしくはほかのNPOの集まった連絡協議会なんかが、要望、改正点について申し述べておるんですけれども、その中でもやはり三分の一が厳し過ぎるんじゃないかというふうに言われています。
 これへの反応、特にみなし寄附金であったりするようなものについて、どんなふうにこの改正点の要望についてお受けとめなのか、副大臣でも結構でございますし、局長の方からでも、ちょっとお聞かせいただけたらと思います。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 ただいまも大臣から御答弁させていただきましたとおり、寄附金に関する税制上の優遇措置というもの自体、やはり公的サービスの財源となる租税を減免するものでありますので、やはりそこは、それなりの公益性を有するということをチェックする必要があるということでございます。
 このパブリック・サポート・テスト自体、NPO法人が広く一般から寄附あるいは助成金を受けていれば、それは当該NPO法人が国民一般に広く支持されているということを示すだろうという考え方のもとで、まさに先生も言われましたとおり、アメリカでもこの三分の一基準というのが基本的にはとられているということなんだろうと思います。
 ただ、いずれにしても、これも大臣もお話しになりましたとおり、昨年十月からまだ四、五カ月しかないというような状況でございますし、認定要件につきましては、やはりNPO自体が、今、先生の言われましたとおり、今後の社会経済において重要な役割を果たすことが期待されるというようなことも踏まえまして、先ほど大臣が御答弁になったように、NPO法人の実態等も見きわめた上で、さらに今後検討していく必要があるというふうに考えているところでございます。
大谷分科員 では、ちょっと何個かお聞きをさせていただきたいというふうに思います。
 実態調査は多分内閣府がおやりになられるのかなと思いますが、後で内閣府の方に教えていただきたいとは思うんです。そもそもアメリカと同じ三分の一、何で、こんな文化も違うし、今NPOの数からして違う、また、寄附の額でいいますと、アメリカは、日本の今の個人、団体の寄附の四百倍ぐらいの寄附を国民の皆さんがNPOにされている。これだけ違う中で、どうして三分の一というものを挙げたのか。
 ほかの団体からの提言によると、最初十分の一で後ほど五分の一、最初五分の一で将来的には三分の一とか、私自身は後で提案をさせていただく案があるんですけれども、そんな中、三分の一になった根拠というかそれの正当性というものについて、NPOを育成していくという目的を達成するために三分の一は必要なんだというところについて、ぜひともお教えいただきたいというふうに思います。
大武政府参考人 ただいまも御答弁させていただきましたとおり、やはりNPO法人が国民一般から幅広く支持されているということが税を減免する一つの要件なものですから、広く支持されるという点では、アメリカもそうですが、もちろん、寄附金に関する日本の文化とアメリカの差があることは十分承知ですけれども、やはり三分の一ぐらいは広くから集めているということが求められるんではないか、そういう趣旨から、三分の一要件を課させていただいたということだと思います。
 もちろん、今度の税制改正におきまして、従来、三分の一の中に役員とかそうした社員からの寄附というのは除いていたのを、今回はそれを含めさせていただくということで、若干の緩和も、その点図らせていただいているところでございます。
大谷分科員 そう言われると、僕なんかは頭がよくないんで、何で二分の一にならなかったのかな、何で三分の二にならなかったのかなというふうに思ってしまいます。そこをひとつ、反対の、逆説的な理屈を教えていただきたい。
 もう一つ、確かにおっしゃるとおりで、御理解いただいたんだというふうに思いますが、いわゆる役員さんや社員さんからの寄附も算入できるようになりました。それならば、一者の方がたまたまその活動に敬意を表して、ぜひとも頑張っていただきたいということで大きな額を寄附した場合、多分あると思うし、そんな人がこれから出てくることが望ましい、市民活動を中心とした二十一世紀の社会形成に必要だというふうに思うんですが、その多額の寄附を一者の方がされたとしたら、それは全部補助金としてこの分子の中には入れられませんよね。それも入れてもいいんじゃないですか。
 その二つについてちょっとお教えくださいませ。
大武政府参考人 三分の一は、繰り返しになりますけれども、確たる基準というのが当面、はっきり言えばないので、アメリカのような基準をとらさせていただいたということでございます。
 それからもう一つの、今の一者の方から受け入れた寄附金、助成金というのは、やはりある特定の方のいわば分身のようなNPOというのは好ましくないんではないかというようなことがありまして、御存じのとおり、寄附金、助成金の総額の二%を超える部分は除かせてください、二%まではこの中に入れますという整理をさせていただいた。
 ともすれば、どちらかといいますと、この寄附金、これは多くの従来のいわゆる特増法人と言われるようなところも、広くといいながら、ある特定のところの寄附に偏っているというような点が指摘されているものですから、このあたりをやはりパブリック・サポートということであれば、広くという趣旨では、一人の方からばかり集めているというのはいかがかという趣旨かと存じます。
大谷分科員 おっしゃるとおりだというふうに思います。三分の一が、根拠のない、ただ育成をしていく上でここら辺で切った方が妥当ではないかということでございますね。
 ということは、将来的には公益性、広く支援をされているということが証明されるならば、それが三分の一以下、例えば五分の一であっても、十分の一になるような可能性もあるという含みがそこには残っているんだろうなというふうに理解をひとつここでさせていただきたいと思います。もし反論があるんだったら、後でお願いしたいと思います。
 そして、もう一つなんですけれども、一者に偏った、例えば一つの個人の方、一つの団体の方に偏ってNPOが支援をしていくよりか、幅広く公益性を持って、支持されて活動をしていくということは当然のことだというふうに私自身も思います。
 しかしながら、それを考えるときに、卵が先か鶏が先かの話になるんですけれども、今のこの日本のNPOが、市民活動が普及し始めた初期段階において、幅広くといったって、幅広く国民が支援をするような制度をつくらなかったらできないというふうに思うんですよ。
 そのためにはどうするかというと、私なんかは、まず仮認定、とりあえず三年間だったら三年間、四年間でも結構でございます、先に、三分の一に個人の寄附がなってなかったとしても、とりあえず、あなた様の団体はそこそこしっかりとした活動をしてきている、公益的にもある程度のラインでは世間から認められている、実績がある、ならば、あなたのところに個人、団体が寄附した場合は税制優遇をとりあえず三年間与えましょう、三年後にあなたの団体が小粒の、個人からたくさんの献金を幅広くいただいていたら正式に認定をいたしましょうみたいな、そんな育てるような目的が先にあるのならば、そういう仮認定制度というようなものも考えられるのではないか。
 大臣もおっしゃいましたように、これから実態を調査した上で考え、改めるべきところは改めていくというふうに今答弁をいただきましたが、その中の案として一つ考えられることだというふうに思うんですが、どのようにお考えでしょうか。
大武政府参考人 今御質問いただきましたとおり、NPOというものをいわゆる社会の中にどのように位置づけるか、そして、国民がどのようにそれを評価していくかということにかかわっている。
 その意味では、実は一月から、総理に言われまして、あるべき税制というのを検討させていただいております。その中で、家族そして国家、その間にこういうNPOあるいは地方団体、そういうのをどう位置づけて、例えば、老後扶養というのを考えるか、そういうようなものにもすべて実はつながっているんだと思います。
 残念ながら、現状においては、なおNPO自体についての国民の評価というものも必ずしも一つではないところが日本の場合にはある、そういう意味で、その合意をどう取りつけていくかということが先にあってという気もいたしております。今後のあるべき税制という中でこういう問題もぜひ取り上げていただきたいということを、政府税制調査会にも議論としてしていただきたいということをお願いしているところであるわけでございます。
大谷分科員 普及をするためにいただいた、局長の主税局という立場の中で貢献されていること、確かに理解させていただきますし、敬意を払わさせていただきます。
 ただ、一つおかしいなと思うのは、このNPO活動、市民活動というような議論を何で財務省の主税局長と僕はやらなきゃいけないのかな、そんな疑問がございます。本来、やはりどこかでしっかりとした部署、機関というものが、市民活動普及のための総合政策をしていかなければいけないんではないかなというふうに思っております。
 さしずめ、去年の省庁の再編成、この政治改革の中で一番大きかったのは、袋の詰めかえ、看板の書きかえなんていろいろな議論がございましたけれども、私なんかは、内閣府、官邸というものがやはり大きなリーダーシップを発揮できるような省庁体制になったというふうに思っております。
 そんな中、やはり内閣府がしっかりとここはどんな意見を持っているのかを確認したいし、ぜひとも頑張っていただきたいというふうに思います。この市民活動の推進というか育成の中で、どんなふうにお考えなのか、まずは漠とした大きなものを局長よりいただけたらというふうに思います。
永谷政府参考人 NPOをどういうふうに位置づけるか、先ほど来るるやりとりがなされているところであります。私どもも、本当に第三のプレーヤーとして経済社会の中にそれなりに定着して、きちっと役割を果たしていくというのが本来あるべき姿だろうと思います。
 ただ、さっきお話に出ていましたけれども、我々、法人格を与える実務をやらさせていただいておりますけれども、今、数として全体で六千強の数が出てきておりますけれども、これ、やはり数が多くなればなるほど質が劣化するとか、そういう側面は非常にあるんだろうと思います。どういうNPOを、どういう機関でピックアップしながら、どういうふうにサポートしていくかというのは、そこはある種、非常に難しい問題もはらんでいるということなんだろうと思います。
 いずれにしましても、私どもも、これをどうやってうまく育成していくかということに関しては、従来よりいろいろな調査等もやってきておりまして、引き続きそういう調査をやりながら、リアルタイムで何が起こっているかというのを踏まえながら、きちっとしたサポートを組めるようにやっていきたいというふうに思っております。
大谷分科員 うちは認定するだけの機関なんだということは局長、おっしゃっていませんね。一生懸命サポートしていく、普及に努めていく、多分その中でリーダーシップを図っていくのが私たちだというような意思を今述べられたんだというふうに理解してよろしいかと思いますが、よろしいですか。ありがとうございます。
 そんな中で、実態調査というものをこれからきっとされていくんだというふうに思いますが、どんな形で、いつぐらいから、どんな内容のNPOへの総合政策に向けた実態調査、特にその中でも、この十月に始まった税制優遇の申請が余りにも少ないじゃないか、どうしてなんだろう、改めるべきはどこなんだろうというようなことが加わるというふうに思うんですが、どんな実態調査を現段階で計画されているのか、お教えいただけたらと思います。
永谷政府参考人 十五年度の税制改正要綱というか、それが多分ことしの八月末ぐらいになるんだろうと思います。それに間に合うタイミングでNPO法人の実態調査をするということであります。
 では、何を調査するかということでありますけれども、いずれにしましても、当該それぞれのNPOの収入構造というか、会費収入が幾らであるとか寄附金が幾らになっているとか、かつその事業収入がどうなっているとか、そのあたりをもう少し詳細に見た上でいろいろなことを考えていきたい。
 それで、どういう要望をするんだということでありますけれども、まだ今の時点で確たることは申し上げませんけれども、先ほど来お話になっているような認定要件の緩和の話は、我々もそれなりに認識はしているということであります。
 いずれにしましても、その実態を踏まえながら、どういうふうに要求していけばいいのかというのを、財務省さんともまたいろいろお話し合いをさせていただければというふうに思っております。
大谷分科員 ケーススタディーを一つ。
 多分、アンケート調査を紙でされるんだとか、実際にお集まりいただいてヒアリングをさせていただくとか、実際に抜き打ち的に事業所においでになってヒアリングをするとか、御協力いただけるところには、帳簿を過去にさかのぼって見せていただくみたいなことをきっとしていただけるんだろうというふうに思うんです。多分必ず出てくるのは、今から簡単に想像できるんですよ、三分の一の寄附金と助成金だけという分子は、余りにも無理ですという話になると思うんですよ。
 では、それをそのまま無理ですと財務省さんに、主税局の方にお伝えしていたら、こんなもの何のために調査したかわかりませんので、それをもう一つ深めて、では何でだめなのとか、だめだけれども、例えば、行政からの補助金も収入として分子の中に入れても公益性は保てるよね、それなりの行政のチェック機能が働いた上でNPOの法人に補助金が回っているわけですから、これはもう十分、主税局さんが心配されている脱税の隠れみのではないんだなということでできるんじゃないですかという、そんなきめ細かな調査ときめ細かな報告というものぐらいまで上げる気でおられるんでしょうか。
永谷政府参考人 いずれにしましても、できる限りの努力はしたいと思っております。
大谷分科員 ちゃんと中で、こんなのをやるという企画書を今つくる段階なんですよね。予算もきっとしっかりと、これは大切な課題やということで、局長からはもう、内閣府の役所の中で今、局長のやられているこれが一番大事やぐらいのことを僕は思っておりますので、ここは大臣もおられますので、大臣もちょっと実態調査をしなあかんて言うてくれてはりますので、ぜひとも頑張っていただきたいというふうに思います。
 それと、最後に、二つだけさせていただきたいんですが、もう一遍、主税局長に戻ってよろしいですか。
 もうぶっちゃけた話、これ、脱税の隠れみのになるということで、いろいろな要件が今の現段階で厳しくされているんだというふうには思うんです。そこのところで一番危惧されているのは、一者の方が大口の寄附をされるというところ、そこに役員に親族が入っていて親族経営で、やりたいことをNPOというものを通してやってしまうんじゃないかなということなんですけれども、ただ、見方を変えれば、その数字だけで抑えてしまったら、その公益性というものをチェックすることに関しては押しなべてみんな平等ですから理屈は通るんでしょうけれども、普及ということで考えたら、一つ役所の仕事がふえるのかもしれませんが、本当にちゃんとやっている団体なのか、もしくはこれはその脱税の隠れみのにする気配ありなのかというのを申請時に調べる一手間を入れることによって、この要件というのはとても緩和できるんではないかなというふうに思うんですが、その点いかがでしょうか。
大武政府参考人 先生が言われているのも、今から私が言うような意味では多分ないと思うんですが、このいわゆる要件をつくりますときにNPO側からも強く申されたのが、明確な基準にしてほしいということでございました。やはり自由な活動をしていく上で、いわゆるその公益性のチェックと称して官側がいろいろと口出されるということは避けてほしいというのが大変強くあった。
 それから、他方、我々としても、やはり国民に税をまけて優遇する以上は、客観的かつ明確な水準でないとならないというようなことが、実は今日のような形になっているわけでございます。もちろん、ある意味でいえば、個々の団体ごとに中身まで立ち入っていろいろ議論すればあるのかもしれませんけれども、我々の認定としては極力そういうものを排して客観的基準にやらせていただくようにさせていただいたというのが今の実情であろうかと思います。
大谷分科員 多分、それはそれで理屈は十分理解できます。ただ、その二%というのをもう少し緩和していくとか、そこの部分は十分これからの実態調査の結果を踏まえて考えられるというふうに思います。
 もう最後にさせていただきたいというふうに思うんですが、もう一遍、内閣府局長に戻ってよろしいですか。
 今、そんなふうに、それなりに三分の一のところを、ある意味、育成という目的の中に修正できるのかな、もしくは、その一者からの寄附というものの補助金に入れる額というものを、それなりに緩和できる可能性があるのかなというようなものを、実態調査の結果が出て判断できるんではないかというようなことに近い御回答をいただいたかとは思っておるんです。
 そうすると、提案なんですけれども、これは実態調査するときに、ぜひともいかがですかなんというようなものではなくして、その実態調査の内容さえも先に、NPOの皆さん、ありがたいことにたくさんの連絡協議会がございますし、ちょうど衆議院、参議院、NPO議連もございますし、先に一緒になってアンケート、実態調査の内容というものを考えてみたらどうですか。今、この間、僕、言わせていただいたように、たとえ三分の一が五分の一になったとしても、それなりに公益性というものを証明できるかできないかとかいうようなものも含めて、そのアンケートの内容というものをつくるときに、お役所だけでつくるんではなく、ぜひ一緒になって考えさせていただけたらというふうに思うんですが、その辺はいかがでしょうか。提案でございます。
永谷政府参考人 具体的にどういうふうに調査していくかということを今の時点でまだ明確にコメントできないということなんですけれども、今、先生おっしゃいましたようなことも念頭に置きながら調査をさせていただければというふうに思います。
 ただ、いずれにしましても、先ほど来話になっていますように、当該団体の自主性を最大限尊重するというのが片一方の要請であります。我々、さっき申し上げましたように、法人格の実務をやっているという立場からしますと、NPOというその限りでは非常にきれいな世界に聞こえるんですけれども、実態としては、本当に何でこれがNPOなのというようなものもいろいろ申請が出てきている、それが実態であるということも事実であります。
 したがいまして、そういう両者の要請をいろいろ見ながら、何が一番いいのかというのを考えさせていただければというふうに思います。
大谷分科員 ぜひ、何らかの形で、今後も局長とはその実態調査の中で連携させていただけたらというふうに思います。
 本当に、主税局長におかれましては、脱税の隠れみのは絶対につくらないという大前提がございますので、なかなか、このNPOの税制の改正の中では渋ちんにならざるを得ないところはあるのかというふうに思いますが、きょう質問をさせていただいて、それなりに重要性というものを認めていただいている。
 大臣におかれましては、友人が困っておられるということを知りまして、ぜひとも実態調査、たくさんの予算というか、人的、財政的にも支援をしていただけるような、そんな方向で取り組んでいただきたいというふうに思います。
 最後の最後、内閣府局長、ぜひとも、今、二十一世紀の社会形成をしていく上で一番大切な、行革も大切ですが、それと同時に、同じぐらい大切なのがこのNPOの育成だということを十分御理解されているということを知りましたので、ともに頑張っていきたいと思いますし、自負を持って頑張っていただくことをお願いし、質問を終わりたいというふうに思います。ありがとうございました。
持永主査 これにて大谷信盛君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして大蔵省、国民金融公庫、日本開発銀行、日本輸出入銀行、国民生活金融公庫及び日本政策投資銀行の質疑は終了いたしました。
 午後一時から本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午前十一時五十六分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時開議
持永主査 休憩前に引き続き会議を開きます。
 これより内閣所管について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。福田内閣官房長官。
福田国務大臣 平成十年度における内閣所管の一般会計歳入歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 内閣主管の歳入につきまして、歳入予算額は四百六十七万円余でありまして、これを収納済み歳入額七千七百七十三万円余に比較いたしますと、七千三百六万円余の増加となっております。
 次に、内閣所管の歳出につきまして、歳出予算現額は百八十五億七百十一万円余でありまして、これを支出済み歳出額百八十億五百四十七万円余に比較いたしますと、五億百六十四万円余の差額を生じますが、これは退職手当を要することが少なかったこと等のため、不用となったものであります。
 引き続き、平成十一年度における内閣所管の一般会計歳入歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 内閣主管の歳入につきまして、歳入予算額は二千四百十一万円余でありまして、これを収納済み歳入額七千九百九十九万円余に比較いたしますと、五千五百八十七万円余の増加となっております。
 次に、内閣所管の歳出につきまして、歳出予算現額は四百六十三億四千三百七十七万円余でありまして、これを支出済み歳出額二百三億七千二十五万円余に比較いたしますと、二百五十九億七千三百五十二万円余の差額を生じます。
 この差額のうち、翌年度繰越額は二百五十七億三千三百八十三万円余であり、不用額は二億三千九百六十九万円余でありますが、これは退職手当を要することが少なかったこと等のため、不用となったものであります。
 以上をもちまして決算の概要説明を終わります。
 何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。
持永主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院石野第一局長。
石野会計検査院当局者 平成十年度内閣の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
 平成十一年度内閣の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
持永主査 以上をもちまして内閣所管についての説明は終わりました。
    ―――――――――――――
持永主査 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石毛えい子君。
石毛分科員 民主党の石毛えい子でございます。
 きょうは、質問の機会をいただきましたことに感謝いたします。二月二十八日の内閣委員会におきまして、内閣官房長官に障害者プランにつきまして若干の質問をさせていただきましたけれども、その折、少し時間切れになってしまったというようなこともございまして、その続きというような意味も含めまして、きょう質問をさせていただきたいと存じます。
 その際にも若干お伺いいたしましたけれども、今年度で障害者プランが終了いたしまして、新しく障害者プランが策定されるということが決定されております。新しい障害者プランの策定に際しまして、どのような理念をその中で立ててそれを実現していくのか、あるいはどのような実施体制をつくり出していくのかというような点、大変重要なところだと存じますので、少しそうしたことも考えながら、官房長官、この障害者プランの策定に際しまして、国際的なバックグラウンドとなりました完全参加と平等ですとかノーマライゼーションの実現というような理念、観点から、ことし終了する障害者プランにつきまして、どのような総括的視点をお持ちかということをまずお尋ねしたいと存じます。
福田国務大臣 障害者対策に関する新長期計画におきましては、障害のある人が障害のない人と同等に地域において安全で安心して生活のできるというノーマライゼーション、これを理念として障害者施策の推進を図ってきたところでございます。
 新長期計画の重点実施計画である障害者プランの平成十二年度までの進捗状況を見ますと、数値目標を設定した事業については、重症心身障害児等の通園事業、これは四五%というふうに、一部事業の立ちおくれが見られてはおりますが、知的障害者更生施設、これは一〇五%のほか、精神科デイケア施設九七%、日帰り介護施設九二%というように、九〇%以上の整備水準にあるという項目も多くありまして、おおむね順調に進んでいる、こんなふうに考えております。
 新しい障害者プランの作成に当たりましては、ITなどの新しい課題にこたえながら、各分野においてできるだけ具体的な目標を設定することによりまして、ノーマライゼーションの理念の実現に向けて、関係施策の着実な推進を図ってまいりたい、このように考えているところでございます。
石毛分科員 ありがとうございました。
 お答えをいただきました中で、地域においてノーマライゼーションを実現していくという、そこの考え方が一つのポイントになるところであろうというふうに思います。
 そういう観点から見ますと、入所施設は目標値をオーバーして実現していて、地域での施策というのは、ややか、あるいは施策によってはかなり立ちおくれぎみにあるというような点、問題点として残しているというふうに私は考えているところでございます。きょうは、新しい障害者プランを立案していきます折に、ぜひお考えいただきたい、そして、ノーマライゼーションという観点からぜひ実現していただきたい、そうした希望を込めまして、教育の問題について、多少踏み込んでお伺いしたいと思います。
 きょうは、文部科学省から玉井審議官においでいただきました。ありがとうございます。
 少し具体的な質問になりますけれども、文部科学省からいただきましたデータによりますと、子供一人当たりの教育費が、普通小学校というふうに表現するのかどうか、正確な表現はどういう表現か、また御指摘いただければと思いますけれども、小学校や中学校の子供一人当たりの教育費に比べまして盲・聾・養護学校の教育費が、一人当たりという観点から比較をしまして、格段に相違があるという実態がございます。
 とりわけ、七九年が養護学校義務化であったわけですけれども、昭和五十年、七五年あたりから格差が非常に開き始めまして、五十年では、普通小学校の一人当たりの教育費三十万一千円に比べて盲・聾・養護学校では二百六十六万八千円というような格差が、いただきました統計の最新年度、平成十年ですから一九九八年ということになりますけれども、小学校の一人当たりの教育費が八十八万円であるのに比べまして、あるいは、中学校が九十四万九千円、これに比べまして盲・聾・養護学校は九百六十三万五千円ということで、十倍強というような開きがございます。
 この格差がどんな理由で生じているのかというようなこと、それから、この格差に対する評価を、教育を所管します文部科学省としましてどのようになさっていらっしゃるかというような点をお伺いしたいと思います。
玉井政府参考人 お答え申し上げます。
 障害のある児童生徒につきましては、その可能性を最大限に伸ばして、そして、自立し社会参加するために必要な力を培うために、障害の種類、程度等に応じて、盲・聾・養護学校や特殊学級等において、特別な配慮のもとに、より手厚くきめ細かな教育を行うという考え方でいくことは、もう御案内のとおりでございます。
 具体的には、教員の配置だとか、あるいは障害に応じた施設設備の整備等において特別な配慮がなされているわけでございます。例えば公立学校につきましては、小中学校は学級編制が四十人を標準にしているわけでございますけれども、盲、聾、養護学校は六人でございますし、また障害に対応した学習をサポートする学習機器あるいは特別な施設設備、こういう整備をする必要性がございますので、児童生徒一人当たりの教育費はかなり高くなっております。
 また近年、これまた委員御案内のとおり、重度・重複化が大変進んでいるということも、また教育条件をそれに応じて私どもとしては整備をしているところでございます。同時に、近年のことをよく御案内と思いますけれども、通級という形で、私どもはさまざまな配慮ということもまた始めているわけでございます。
石毛分科員 今、教員の配置ですとかあるいは機器の問題それから障害のあるお子さんの障害の程度と申しましょうか、重度化が進んでいるというような御指摘をいただいたわけですけれども、最初の方の御説明で、障害のあるお子さんの可能性を最大限伸ばすというような御指摘もあったわけですけれども、こういう教育費の投入に関しまして、これからもこれをもっと改善していく方向とか、あるいは、評価をするとすればどんなふうに評価をされておられるんだろうかというような、そのあたりをもう少しお聞かせいただければと思いますけれども、いかがでしょうか。
玉井政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほども申し上げましたとおり、より手厚く、きめ細かな教育を行うという基本的な考え方で臨んでいるわけでございます。したがって、これまでも盲、聾、養護学校におきます教育条件の改善に努めてきていることも御案内のとおりでございます。
 しかしながら、同時に、一般の小中学校に在籍しながらさらに特別な教育が必要ということで通級制度というものも始めてまいりました。さらには、今後の課題として、御案内の学習障害児の問題をどういうふうに考えていくか。さらには、ADHD児とか自閉症の子供たちの問題もどう考えていくか。
 もっといろいろな形で、特別な支援が必要な教育について考えていかねばならないとは思っておりますが、基本的には、やはりできるだけより手厚く、きめ細かな教育をそれぞれで行っていく、つまり、盲、聾、養護学校における教育をきちんとしていくということは必要だろう、かように考えております。
石毛分科員 今、通級にお触れになりましたけれども、質問通告をしておりませんでしたけれども、通級の仕組みに関してどれぐらいの予算が投入されているかというのは、今お答えいただくことが可能でしょうか。もし可能でしたらお答えいただきたい。御無理でしたら結構ですけれども、いかがでしょうか。
玉井政府参考人 今ちょっと手元に資料が十分整っておりませんので、また後ほど御報告をさせていただきたいと思います。
石毛分科員 玉井審議官も御存じでいらっしゃることと存じますけれども、一九九五年から九八年にかけまして、OECDがインクルーシブ・エデュケーション・アット・ワークというOECD加盟下の八つの国につきまして、統合教育から最近はインクルーシブな教育、包括教育というような訳し方とかいろいろあると思いますけれども、そうした流れの中で、教育コストがどのような状況かというようなことを発表しております。
 私はここに翻訳本を持ってまいりましたけれども、「統合型と分離型の対応に伴うコストの比較」ということで、カナダでは普通学校に行っていらっしゃる子供さんに比べて、障害を持つ分離教育の場合の子供さんの教育費が二倍、イタリアでは四倍、イギリス三・五倍、それからアイスランドでは、五対一ということですから、五倍ということでしょうか。
 まず、このOECDの調査結果のコストの格差に比べますと、玉井審議官に御指摘いただきました日本のコスト格差というのは十倍以上ということですから、OECD調査対象国に比べまして格差が大きいという思いもございますし、それからこのOECDのこういうデータ、調査結果に関しまして、どのような御所見をお持ちかということをお伺いしたいと思います。
玉井政府参考人 お答え申し上げます。
 今御指摘のOECDの報告書でございますが、確かに障害のある児童生徒を小中学校において教育することの方が、一般的に要する経費が、費用が少ないと述べられているわけでございます。しかし、具体的例で幾つかこの中に触れておりますけれども、個別の状況はやはり各国により異なるということもあわせて述べられているわけでございまして、私どもとしては、障害のある児童生徒を小中学校に就学させる場合には、その障害の種類、程度、また、どのような教育的支援を行うかによって要する経費も変化するのではないかとそもそも考えております。
 我が国におきましては、特に、現在、盲、聾、養護学校の対象としているような障害の比較的重い児童生徒、さらに御案内のとおり、例えば肢体不自由の養護学校ですと、もう七割以上の子供たちが重度・重複学級に在籍している、それぐらい重くなってきているということは御案内のとおりでございます。
 したがって、盲、聾、養護学校で教育する場合と小中学校において教育する場合のコストについて、ただ単に比較するということはなかなか難しいのではないか、なじみにくいのではないか、かように思っております。
 そういう意味で、私どもは、先ほども申し上げましたとおり、より手厚く、よりきめ細かな教育を行うという基本方針のもとに、特殊教育小学校の教育条件の整備、さらには小中学校に学びながら特別な支援を要する子供たちへの支援といった形で、それぞれきめ細かな配慮を行っていく、こういうことが必要だろう、かように考えているわけであります。
石毛分科員 玉井審議官はこの「教育のバリアフリー」という著書をお読みでいらっしゃるかと思いますけれども、大変関心を引かれる、そういう報告書になっております。
 少し紹介をさせていただきたいと思いますけれども、障害がある子供への特殊な対応というのは、今日まで続いている特別な公的機関で始まったけれども、「障害のある児童生徒を一般学校で教育しようとする動きは、この五十年間で確実に高まってきている。これまでは、公正さや公民権の問題が重要な決定要因であったが、このほかの重要な影響を及ぼす要因としては、親の態度の変化、教員の補充や研修、学校の設備の改善、教育学的方法論への転換、情報科学技術の導入などがあげられる。」ということで、障害のある児童生徒を一般学校で教育する動き、つまり、包括教育というような方向性でこの著作がまとめられているわけでございます。
 その中で、先ほどちょっと紹介をいたしました学校の種別による教育費用の格差というようなことも関連して指摘をされているということでございますけれども、この一般学校で教育しようとする動きが、親の態度の変化、それからもちろん、先ほど官房長官が御指摘になられました情報科学技術、ITということにお触れになりましたけれども、こういう日本の盲、聾、養護学校の中でもIT技術ももう導入され始めているとも思いますけれども、もちろん、普通学校でもそういう技術を駆使できるわけです。
 この親の態度の変化というようなことですとか、この著作を読んでおりますと、障害を持つ子供さんの親御さんは、当初、その保健学的な領域で子供さんの成長というのをとらえている、だけれども、そうすると、どうしても療育というような考え方になってしまう。そうではなくて、特別の教育のニーズのある子供を通常の学校で、どの子にも個別対応をする、その個別対応のあり方として包括教育が、新しい流れといいましょうか、世界的に言えば、今日的な状況として生まれてきている、こういうことを指摘している著作だというふうに読んだわけです。
 こうしたことに関しまして、文部科学省としていかなる御見解をお持ちかということをお尋ねしたいと思います。
玉井政府参考人 お答え申し上げます。
 我が省といたしましては、基本的には、障害のある児童生徒については、障害の種類、程度に応じて、盲、聾、養護学校や特殊学級等において特別な配慮のもとに、より手厚くきめ細かな教育を行う、こういう考え方で臨んでいるわけでございます。
 しかし、先ほど来申し上げているとおり、一般の小中学校における子供たちでも、通級という形も導入しておりますし、さらには、今後、学習障害の問題だとか、あるいはADHD等の問題についても実態調査をしながら、実態把握をしながら、必要な政策について考えていきたい、かように思っているわけでございます。
 そこで、先ほど委員御指摘の、早期からの医療的なお話も出ましたけれども、御案内のとおり、私どもは二十一世紀の特殊教育のあり方を考える協力者会議というもので約一年ぐらい検討いたしまして、昨年にその考え方を取りまとめたわけでございます。その中の一つの考え方として、やはり医療、福祉、それから教育が一体となって、早期に教育相談あるいはいろいろな相談をすることが必要であろうという考え方が示されております。そういう目で私どもは、医療、福祉、教育が一体となって、早期からさまざまな相談ができるような体制を築いていきたいということで、十三年度、十四年度と、多くの都道府県での、今のいろいろな仕組みについての御検討をお願いしているところでございます。
 私どもとしては、早期にできるだけその保護者の方々と、そして医療、福祉、教育がいろいろな面で御相談をできる、そういうことがやはり必要であろう、かように考えております。
石毛分科員 医療、福祉、教育に関連して、早期に相談できる、相談できるということは、それはそれで必要であり、大事なことかとも思いますけれども、やはり子供にとっての生活という意味では、何が子供の生活として主要な生活であるか、そこが私は大事ではないかと。
 そうしますと、幼児の段階では保育というようなことでしょうし、学齢期にあれば教育というようなことになるかと思います。教育というところで子供たち、障害のある子供も、ない子供も、ともに育つ、そのともに育つということを医療や福祉がどうサポートするか、そういう体制が必要なのだろう。
 現に多くの親御さんたちも、例えば、私が存じ上げている方では、人工呼吸器をつけて保育園からずっと、地域の普通の保育園に通い、小中学校に通い、今高等学校に通っているお子さんもいらっしゃいますし、そうした方。それから、障害があっても、地域の子供たちとともにということを求めて、それを実現している親御さんたちもたくさんおられるわけですし、その方々が何を望むかといえば、自分の子供が、地域の多くの子供とともに育ち合う関係の中で子供の生活を実現していきたい、保障していきたい、教育もその一環であるというようなこと。
 先ほどOECDの報告で、私は思いを込めて指摘させていただいたわけですけれども、やはり親の態度の変化、ここのところが非常に大きな意味があるのではないか、主体的なという意味では、そこがとても大きな意味を持っているというふうに考えるわけです。
 通級というようなことですとか、それから学習障害児というような御指摘もいただきました。私は余り、何かに障害、障害というラベリングというのはいいことだとは思わないのですけれども、ちょっと関連しまして、この報告書の中にありますことを御紹介しながら、ぜひとも、これから普通学校に、盲、聾、養護学校で培ってきた教育技術的な側面ですとか、そういうものを生かしていただくという方向を、大きく大きく流れをつくっていくようにということを希望したいと思います。
 関連しまして、こういう指摘がございます。「たいていの国では、通常教育制度と特殊教育制度との間に、何の役にも立たない構造上の隔たりが介在しつづけているようで、そのために、どちらも相手方の利点から十分な利益を得ることができないようである。」こういう指摘がございます。
 いろいろな考え方、意見があるかと思いますけれども、私は、これまで盲、聾、養護学校で培ってきたテクニック、技術があるとすれば、あるいはそこにいらっしゃるスタッフの方々が積極的に、通級とか交流教育などと言わずに、もっと日常的に地域の学校で過ごすことができるようにサポートする、そういうシステムに再編していくことが望ましいのではないかというような考え方を持っております。
 私が申し上げましたことに関しまして、何かございましたら、審議官から一言承りたいと思いますし、それから、今までの私と審議官との間での質疑に関しまして、官房長官の御所見もお伺いできればと存じますので、お願いいたします。
玉井政府参考人 お答え申し上げます。
 さまざまな角度からの御指摘をいただいたわけでございます。
 確かに、盲、聾、養護学校で培ってまいりました、よりきめ細かな、多くの教員の大変な努力による指導のノウハウというものがさまざまな形で活用されることは大変重要だろう、かように考えておりますし、そういう意味で、先ほど来、一般の小中学校にもいろいろなお子さんたちが今いらっしゃるわけでございますから、そういう意味でのノウハウが生かされていくということは私どもも重要と、こういうふうに考えているわけでございます。
 それで、一般の学校の小中学校の先生方も、障害のあるお子さんたちへの理解ということでの、いわば資質能力の向上ということもやはり必要だろうと思っておりまして、そういう意味での養成だとか研修ということも重要でありますし、そういった努力も続けたいと思います。同時に、盲、聾、養護学校の先生方がさらにそういう力を発揮していただく、そういう形でも、私どももまたさまざまなことを考えていきたい、方向としてはそういうふうに考えているわけでございます。
福田国務大臣 盲、聾、養護学校の生徒に対しては、特別な配慮とか、またより手厚く、よりきめ細かな教育をするとか、そういうような特別な配慮をしていかなければいけないというようなことに伴いまして、いろいろとその面から、我が国政府としての努力というものはしておるところでございます。
 そして、障害の重度・重複化への対応とか職業教育の充実、早期教育相談への対応等々、一人一人の子供の実態と、先ほど来委員の御指摘の、地域の状況に応じた教育の充実が大事であろうということでございますので、その点について、施策の充実を図っていかなければいけないと考えているところでございます。
石毛分科員 関連した質問でございます。
 私がいただきましたデータでは、「盲・聾・養護学校高等部(本科)卒業者の進路」というこのデータですけれども、時間がありませんから簡単に済ませますけれども、高等部を卒業されました子供さんで、二〇〇〇年三月の卒業生ですけれども、就職をされている方が二三・二%、児童福祉施設・医療機関入所者が五五・〇%。過半は、高校を卒業するともう一度、児童福祉施設や医療機関入所者になっているわけでございます。
 これは、私は、分離教育のある側面をあらわしているのではないか、マイナス側面をあらわしているのではないか。幼いときからずっと分離されて教育を受けてきた、その関係性の中で、社会の中で人とつき合う、傷つくことも喜ぶことも含めてですけれども、人とつき合うという関係性を培うということが不十分、できないというようなために、もう一度児童福祉施設や医療機関入所者という結果になっているのではないか。
 先ほど来審議官はきめ細かな手厚い教育というふうに申されておりますけれども、きめ細かな手厚い教育の結果がまた施設、医療機関入所ということでは、個別にお一人お一人の子供さんの事情からすれば、命の危険があって入院という方もいらっしゃると思いますけれども、それにしても五五%の方がそういう状態というのは、私は、やはり分離教育のあり方を見直す必要があるというふうに考えざるを得ないということを申し上げさせていただきたいと思います。
 御意見がおありかと思いますけれども、済みません、質問の時間がもうなくなってまいりましたので、あしからず御了解ください。
 一点お伺いしたいのですけれども、障害者雇用除外率の見直しが、今回、雇用促進法の改正ということでなされております。縮小は「当分の間、」というふうに記されておりますし、「段階的に縮小」ということでございます。この新障害者プランは十年単位、そして最初の五年間の分をきっちりつくっていくというふうに伺っておりますけれども、障害者プランの中でこの除外率を廃止する年次を明記していただきたいと存じますけれども、いかがでしょうか。
福田国務大臣 障害者雇用率制度におきます除外率の制度につきましては、雇用の分野におけるノーマライゼーション、このノーマライゼーションを推進する観点から、現在、国会で御審議をいただいております障害者雇用促進法の一部改正案において、廃止に向けた第一歩を踏み出す、こういうことになっております。
 その進め方としては、事業主が職場環境の改善等の対応を図るための準備期間を考慮して、まず二年後の平成十六年度に各業種の除外率について一〇%引き下げるということにしております。さらに、次回以降の除外率の縮小については、各業種ごとの障害者雇用の進捗状況、技術革新の進展状況等についての評価を行った上で定めることにいたしております。
 このため、現段階では、除外率を廃止する最終年次を定めるというのは、これはそこまで至っていないということでありまして、しかし、いずれにしても、障害者が職業的に自立できるようにするということは障害者施策の極めて重要な目標の一つであることは言うまでもありません。これを実現するために、本年度中を目途にいたしまして策定いたします新しい障害者プランにおきまして、除外率の縮小を含めた障害者雇用施策をできる限り具体的に盛り込んでいくことにしたいと思っております。
石毛分科員 明言をいただけなかったことが残念な思いがいたしますけれども、最後に官房長官にお尋ねしたいと思います。
 内閣府設置法の第十二条で、特命大臣は、要するに、関係行政機関に対して勧告ができるとか、報告を求めることができるとか、総理大臣に意見を具申することができるというような、そうした条文がございます。
 新しくつくられます障害者プランが、端的な表現になって恐縮ですけれども、各省庁から出されましたものの単なる集合にならないように、知恵の府の内閣府として、リーダーシップを持って、新しい国際的な状況に対応する、そうした中身の質の高いものをつくっていただきたいというふうに考えるわけでございますけれども、最後に、この点に関しまして、官房長官の御決意のほどをお伺いさせていただきまして、質問を終わりたいと思います。
福田国務大臣 新しい障害者プランにつきましては、二月に開催しました障害者施策推進本部におきまして、平成十五年度からの新しい障害者基本計画の前期五年間の重点施策の重点実施計画として策定することを決定いたしました。
 新しい障害者プランの作成に当たりましては、障害者施策推進本部に内閣府と主要関係省庁による教育、雇用などの施策分野ごとの検討チームを設置いたしまして、関係省庁間の緊密な連携のもとに検討を行いたいと考えております。強いリーダーシップを持ってこの施策に当たってまいりたいと思っておるところでございます。
石毛分科員 官房長官のリーダーシップをぜひとも発揮していただけますよう要請させていただきまして、質問を終わります。ありがとうございました。
持永主査 これにて石毛えい子君の質疑は終了いたしました。
 次に、今野東君。
今野分科員 戦後五十七年が経過いたしました。私たちはまだまだ過去を清算し切れていないのだと思わせるような事故、事件がしばしば起こります。
 中国に遺棄してきた旧日本軍の化学兵器の処理の問題などは、特に戦争の影響というのはこのように長く続くものだということを実感し、まだまだ解決しなければならない問題が多いのだということを思い知らされます。
 そこで、きょうは、旧日本軍が製造し、敗戦とともに遺棄された毒ガス管、毒ガス弾など、化学兵器の処理、被害者への補償について質問いたします。
 日本国内での毒ガスなど遺棄化学兵器による事故の対応を、国内の場合はどのようにしているんでしょうか。また、被災者に対して、これまでどのような補償を行ってきたのでしょうか。官房長官にお尋ねします。
福田国務大臣 まず、御指摘の旧日本軍の遺棄化学兵器、これの中で、毒ガス弾等につきましては、昭和四十八年に関係省庁が取りまとめました「旧軍毒ガス弾等の全国調査の結果について」という報告などにおきまして、いろいろと報告がございます。海洋投棄が別府湾など八カ所あるということでありまして、いずれの箇所も、化学兵器の有無の実地探査または掃海などによりまして、安全上何らの措置も講じていない箇所は残っていないことは報告されております。
 また、その他、具体的に申しますと、屈斜路湖で平成七年に発見されました化学兵器につきましては、化学兵器禁止条約の規定に従いまして、既に処理をしております。また、苅田港内で平成十二年に発見されました旧日本軍の化学弾と認められるものなどにつきましては、同条約の規定に従いまして、早期かつ安全に処理すべく、関係地方公共団体とも連携しながら所要の調整を行っているところでございます。
 その措置、補償とかそういうようなことは、旧陸軍の造兵廠忠海製造所等において、ガス製造等に直接従事していた者のうち、旧陸海軍共済組合員であった者については、財務省がガス障害者の救済のための特別措置要綱によりまして、また共済組合員以外の者につきましては、厚生労働省が毒ガス障害者に対する救済措置要綱により、救済措置を講じております。
 その内容は、医療費の支給、健康管理手当など、各種手当の支給のほか、毎年、健康診断の実施等をしておりまして、平成十四年度予算においては三十三億三千万円。これは、財務省所管が十九億八千九百万円、厚生労働省所管が十三億四千二百万円というような予算を計上いたしておるところでございます。
今野分科員 さて、昭和四十四年六月のことなんですけれども、東京・新島海岸で中学三年生四人がたき火をしておりまして、近くで拾った砲弾を火の中に投げ入れて、その後でたき火で暖をとろうとした海水浴帰りの中学二年生が、砲弾の爆発によって一人が死亡し、もう一人が失明をしたという事故がありました。この事故で、国と東京都を相手取った訴訟が起きまして、国が事故の発生を未然に防止する法律上の作為義務を怠った、不法行為責任が認められました。国も、これを上告せずに、補償金を支払ったという経緯があります。
 この件で、国はなぜ上告しなかったのでしょうか。これは、法務省でしょうか。
都築政府参考人 国が敗訴した場合、上訴するかどうかにつきましては、一般論として申し上げますと、判決内容を検討した上、訴訟に関する諸事情を考慮して対応を決定しておるところでございます。
 御質問の事件につきましては、同様に、判決内容を検討した上で、上告審において結論が覆る可能性があるかないか、その他諸般の事情を考慮して、結果、上告をしなかったということであります。
今野分科員 つまり、この不法行為責任を認めたわけですね。
都築政府参考人 訴訟物といたしまして、金銭の支払い義務を命ぜられたわけでございます。
 今回の場合は、上告するかどうかということでございまして、法律審に上告するかどうかでございますから、法律上の観点から主に吟味いたしまして、上告した場合の結論が覆る可能性がなかった、こういうふうに承知しております。
今野分科員 ちょっとわかりにくいんですが。
 それでは次の質問ですけれども、広島県大久野島と相模海軍工廠で毒ガスが製造されておりました。そうして製造された毒ガス管、毒ガス弾などの化学兵器や研究資料は、日本の敗戦、戦争終結によりましてGHQに引き渡されましたね。その後、これらの化学兵器や研究資料はどの省庁が管理しているんでしょうか。内閣官房長官にお尋ねします。
福田国務大臣 大久野島でつくられていました毒ガスの戦後の管理につきましては、昭和四十八年に関係省庁が取りまとめました旧軍の毒ガス弾等の全国調査の一環として、GHQ資料の追跡調査を行ったのでありますけれども、これはわからないという結果でありました。大久野島でつくられておりました毒ガスをGHQがいかに処理したかについても明らかでございません。焼却、破壊または海洋投棄の方法により処理されたものと見られております。
 いずれにしましても、化学兵器の有無の実地探査または掃海などによりまして、安全上何らの措置も講じていない箇所は残っていないことが全国調査の結果として報告をされております。
今野分科員 さて、この旧日本軍による中国での遺棄化学兵器問題についてお尋ねしますが、遺棄化学兵器については、平成三年から外務省が中心となって現地調査を実施してきているようですが、調査はどこまで進んでいるんでしょうか。外務省にお尋ねします。
佐藤政府参考人 ただいま御指摘がございましたように、外務省を中心といたしまして、一九九一年から十九回にわたって現地調査を行ってきております。また、その間、遺棄された化学兵器の状況等について中国側からも説明を聴取しているということでございます。
 こうした調査を通じまして、地域的には、中国のかなり広範な範囲にわたって旧軍の遺棄した化学兵器が存在をしているということ、それから、そうした化学兵器によりまして中国の方でいわば被害を受けた方がかなりおられるということ、そして、化学兵器の総量としては約七十万発の化学兵器が遺棄されているというようなこと、こういったような点がこれまで調査の結果明らかになっているところでございます。
今野分科員 この七十万発という数字については中国側と若干異なってはいるようでありますが、しかし、中国に遺棄された化学兵器は、化学兵器禁止条約によって、廃棄期限が原則二〇〇七年、平成十九年となっておりますね。それまで廃棄処理はできそうなんでしょうか。見通しをお尋ねします。
佐藤政府参考人 おっしゃるとおり、化学兵器禁止条約におきましては、条約発効後十年というのが原則としての期限でございますので、二〇〇七年ということになるわけでございますが、今、政府全体として、この早期の処理というものに向けて全力を挙げて取り組んでおりますし、また中国側とも協力をしながらこれを取り進めている、こういうところでございます。
今野分科員 十九年、二〇〇七年とはなっておりますけれども、できるだけ速やかに、事故等も起きていることですので、廃棄処理が行われることを望みたいと思います。
 さて、確認なんですが、遺棄化学兵器の廃棄処理に向けての調査、今答弁をいただきましたように、廃棄処理については行われているようですが、政府は、中国国内における旧日本軍が遺棄した毒ガス等化学兵器による被害というのは、これは知っているんですよね。確認です。
福田国務大臣 今、外務省から説明がございましたけれども、一九九一年から本件問題に関する日中間の協議が実施されております。また、現状把握の現地調査も同年から始まっております。そういう機会に、中国側からは、戦後、遺棄化学兵器により被害を受けた民間人が多数いるという説明は受けております。他方、さきの大戦にかかわる日中間の請求権問題、これは一九七二年の日中共同声明発出後に存在しておらず、このような認識は中国側も同様というように承知しております。
 ですから、今後、こうした被害が生じないようにするためにも、危険な状態にある遺棄化学兵器をできるだけ早く処理していかなければならないと考えておりまして、そのための努力を引き続き誠意を持って行ってまいりたいと思っております。
今野分科員 この遺棄された化学兵器による被害を知ったのは、いつの時点からですか。
佐藤政府参考人 ただいま長官からもお話がございましたが、日中間の協議の中で、中国側から、日本軍により遺棄された化学兵器により被害を受けた中国の民間人が相当いるということが、これは、最初に協議を始めましたのが九一年でございますが、その最初の協議のときから中国側の方からそういう説明を受けております。
今野分科員 そうすると、遺棄化学兵器による被害があるというのは一九九一年に知ったということでいいですか。
佐藤政府参考人 恐縮でございます。中国側から明確な形で資料が出てまいりましたのは、九二年の一月でございます。
今野分科員 一九九二年の一月に、この遺棄化学兵器による被害を知った。そうしますと、今福田官房長官がこの補償について、一九七二年の日中共同声明で賠償請求が放棄されているからいいのだというような意味のことをおっしゃいましたが、日中共同声明ではそう記されてはいても、遺棄化学兵器による被害があることを知ったのは一九九二年、日中共同声明が出されてから二十年も後のことになりますね。そうしますと、これは日中共同声明の効力が及ぶ時間的範囲には入らないのではないでしょうか。
佐藤政府参考人 日中間の請求権の問題ということでございますが、この遺棄化学兵器の問題も含めまして、さきの大戦にかかわる、さきの大戦に起因する日中間の請求権の問題というものは、日中間では既に存在しておらないというのが日中間の共通の認識でございます。
今野分科員 大戦にかかわるとはいっても、それが遺棄された、それによって、工事現場やあるいは畑で作業をしている人が、毒ガス弾をたまたま掘り当てたり、あるいはすくい上げてしまうことによって、さまざまな被害が起きているわけですね。
 こういうふうに、顔に化学薬品、毒ガスが当たってこのようなひどい負傷を負ったり、それから、これはおわかりになるでしょうか、手です。こういうふうにただれていったり、それから、これはおしりなんですが、こういうふうにただれて座ることもできないような状態。それから、これは一九七四年の十月に松花江でしゅんせつ作業中に引き揚げてしまって、どうもイペリットとルイサイトと混合した液に触れてしまった、そしてこのようになったようなんですけれども、足の指が全部溶けてしまうような状態。この方は、結局は顔にも当たり、失明をして亡くなった肖慶武さんという方なんですけれども、こういう被害が起きている。これは、日中間の声明によって、既に終わっているというふうには考えられないのではないでしょうか。
佐藤政府参考人 私どもも日中間の協議の中で、ただいま御指摘がありましたような、いろいろな被害者の方々の非常に具体的な被害の状況、あるいは悲惨なけがを負われた状況というようなことについて説明を聞くということがたびたびあったわけでございますが、中国側といたしましては、そこは、そうした協議の場でも先方が明確にしておりますのは、こういう状況を改めて繰り返さないためにも、現在の遺棄されている化学兵器の処理というもの、これをできるだけ早く急いでほしいというのが中国側の私どもに求めておるところ、こういうことでございます。
今野分科員 遺棄化学兵器の処理については調査をし、そしてきちんとやるけれども、中国の国民の皆さんがそういうものによって被害を受けたことについては知らないというのでは、ちょっと人道上の問題もあるんではないでしょうか。
佐藤政府参考人 もとより、私どもとしても、そうした被害を受けられた方の状況に無関心であるということでは全くないわけでございますが、国家間の問題として、両国政府間の問題として、先ほど申し上げましたように、日中間では大戦にかかわる請求権の問題は存在をしない、それを取り上げないということで、日中両国間、政府間としてはそういう扱いをしておる。そして他方で、こうした状況を繰り返さないためにも、遺棄兵器の処理をできるだけ早く行う、それが両国間、両政府間の了解ということでございます。
今野分科員 日中共同声明は、あくまで中国政府が日本国を相手取った戦争賠償請求をしないというものでありまして、中国に住む市民の賠償請求権までは否定しておりません。ならば、日本国内での遺棄化学兵器の事故には政府補償が支払われているわけですから、中国での同じような被害に対しても、補償すべき正当な理由が認められたときには政府補償をすべきではないかと思いますが、いかがですか。
福田国務大臣 政府間のことにつきましては、先ほど来外務省から答弁しているとおりではございますけれども、中国人の遺族とか被害者による損害賠償を求める訴訟につきましては、個人が我が国の裁判所において提訴するということ自体は、これは妨げられるものではございません。
 ということでありますので、政府間は政府間で、そしてまたそういうような事態がございますれば、今私が申しましたような方法が存在するのではなかろうかというように考えております。
今野分科員 そうしますと、被害事実が明らかになって、司法が被害事実を認定したら補償を給付するわけですね。
福田国務大臣 原則的に言えば、訴訟を提訴して、そして法的な立場で判定を下すということになろうかと思っております。
今野分科員 御存じのように、今も裁判で争われている件があります。少なくとも中国政府が把握している被害の状況についての情報は日本も共有し、さらに、被害についても、中国に調査団を送って、調査を行う必要があると考えますが、どうでしょうか。
佐藤政府参考人 私どもも、これまでの調査の中で、中国側から、中国のそうした被害の状況というものにつきましては、先ほど来申し上げているとおり、説明を受けているわけでございますが、中国国内でどういう状況にあり、どこにどういう方がおられるかということについては、これは第一義的には中国側が調べ、あるいは承知をしているという問題でございますので、中国側から特段日本が直接調べてほしいということがあればともかく、第一義的には、私どもは中国側から説明を聞くということであろうかと思います。
今野分科員 随分主体性がないんですけれども、中国から言われれば、それでは調査をするんですか。
佐藤政府参考人 繰り返しになりますが、何分中国国内で行う調査でございますので、それは中国側との了解、協議のもとに進められるべき話だと考えます。
今野分科員 いや、中国側との了解によって進めるんではなくて、中国から言われればやるけれども、それまではしないということですか。
佐藤政府参考人 先ほども申し上げましたとおり、中国側としては、この兵器の処理をできるだけ急いでほしいということに最重点を置いて協議が行われているわけでございまして、今までの協議の中で、まず中国側として、被災者の問題、被害者の問題、こういう問題について、これを日本政府として調査してほしいとか、あるいはこの問題についてもっとこうしようということよりも、今の時点では、こういうことを繰り返さないために早くこの処理を進めてほしいということで、今鋭意作業が進められているということでございます。
今野分科員 日本側の調査によるだけでも七十万発という化学兵器が遺棄されていて、いまだにそのままの状態になっているわけですから、もちろんそれについては一日も早く廃棄処分をしなければならないとは思います。しかし、現実に、中国も経済発展の途上でありまして、いろいろなところでビルの建築が行われ、また、中国の方々もさまざまなところを耕し、生活をしていらっしゃいます。そういう中で、現実にこうして事故が起きている。
 もちろん、遺棄化学兵器の廃棄処分についても急がなければならないけれども、同時に、そういう人的な被害についてもきっちりと調査をしなければならないのではないかと思いますが、もう一度お尋ねいたします。
佐藤政府参考人 私どもとしては、この問題については、中国側と誠意を持って協力をして対処していくということで一貫してやってきております。
今野分科員 先ほどちょっと写真も見てもらいましたけれども、ああいうふうに、本当に生涯をずたずたにされてしまった被害者の方々が大勢いらっしゃいます。この方たちは、もはや失明をしたり、あるいは年じゅう湿疹が起きたり、手足にしびれが来たり、働くことができません。こういう実態を一日も早く調査していただきたいとお願いをしておきたいと思います。
 平成九年に、内閣にこの問題についての連絡調整会議が設置されて、平成十一年の三月に、閣議決定として政府全体としての取り組みを確認し、実施組織として、当時の総理府、今の内閣府に、各省からの参加を得て、遺棄化学兵器処理担当室が設置されるという経緯を経て、平成十四年度では、調査研究費に八十七億二千四百万円、発掘回収事業費に百十二億六千六百万円、化学兵器廃棄処理施設整備等経費に十三億六千六百万円、事務経費に一億三千八百万円、合計二百十四億九千六百万円の予算措置がされるに至っております。
 この処理担当室に被害の調査も項目として加えるということを、官房長官、お考えになってはいかがでしょうか。
福田国務大臣 今、内閣府、内閣官房、そしてまた外交上の観点から、廃棄事業に先立つ調査を外務省にお願いする、こういうふうなことになっておりますけれども、内閣府、内閣官房、これは一体な立場でやっているわけでございますので、その中でいろいろな検討する課題があると思います。
 日中関係ということもありますし、大きく考えれば戦後処理という問題でありますけれども、そういう大きな枠組みの中でどれとどれをどういうふうにやっていくかということは、総合的な観点から考えていかなければいけないと考えておりまして、そういう課題は常に我々の頭の中にあるということをただいま申し上げております。
今野分科員 常にこの課題が頭の中にあるというお答えをいただきまして、ぜひ検討していただきたいと思いますが、政府が人的被害に対して速やかに調査研究、補償に乗り出すことを希望いたします。
 最後に、この問題に取り組んで、いろいろお尋ねをしますと、この問題は外務省、これは内閣府、これは法務省と、実にこの問題の解決に当たってはいろいろなところに広がっておりまして、問題を解決するという点からすると、大変解決の方策としては見つけにくいものがあります。これらの問題について、ぜひどこかで一括して、一本化して問題解決に当たっていただきたい。組織的な部分も大いにあるとは思いますけれども、そこのところもぜひいつも頭の中に置いていただき、解決に当たっていただきたいと思います。
 質問を終わります。ありがとうございました。
持永主査 これにて今野東君の質疑は終了いたしました。
    〔主査退席、木下主査代理着席〕
木下主査代理 次に、三井辨雄君。
三井分科員 民主党・無所属クラブの三井辨雄でございます。
 昨年三月一日の予算委員会第一分科会におきまして、「アジア太平洋障害者の十年」最終年記念フォーラム組織委員会のもとに開催されます三つの大会、とりわけDPI、障害者インターナショナルの世界会議札幌大会の開催にかかわる政府の取り組みについて、障害者施策を総合的に企画調整して取りまとめをされている官房長官に質問をさせていただきました。本日は、また一年ぶりのお尋ねをする機会を得ましたので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 さて、本年十月、札幌市で開催されます第六回DPI世界会議札幌大会、障害者のNGOの世界大会まであと半年となりました。この大会の成功に向けまして、北海道選出のすべての国会議員は、札幌組織委員会の顧問に就任し、支援活動に取り組んでおるところでございます。私も地元札幌市の出身議員として、特にきょうの質問をさせていただきたいと思います。
 この大会を札幌市に誘致するに当たっては、札幌の障害者あるいは関係者組織が広範に結集して誘致推進会議を結成してまいりました。大変な御努力を積み重ねてきたわけでございます。また、DPIの日本国内の組織でありますDPI日本会議も九五年に札幌で総会を開催しております。立候補を決議し、一九九九年六月には札幌大会組織委員会を立ち上げました。車いすの障害者の方々や支援団体の皆さん、そして、職員の派遣や補助金を含め、北海道と札幌市が等分に予算措置を講じながら、一致協力のもとに準備に汗を流してこられました。こうした関係者の皆さんの大変な御努力によって、ここまでこぎつけた札幌大会でございます。
 昨年の予算委員会におきまして、私の質問に対する官房長官の御答弁では、DPI世界会議札幌大会は、障害のある方自身の社会参加、そしてまた国際交流を促進する上で大変有意義なことであると思います、この行事の趣旨から考えてどのような協力ができるか研究しますとのお答えをいただいております。
 官房長官にお尋ねいたします。では、この一年の間にどのような研究をされ、御検討をしていただけたのか、お聞かせ願いたいと思います。
福田国務大臣 一年前に委員からDPI世界会議札幌大会のお話を伺いました。この世界会議は、世界各国から障害のある人が参加して開催される国際会議でございます。また、障害のある人御自身の社会参加や国際交流を促進する上で大変有意義なことであるという認識は持っているということは、昨年も申し上げたと思っております。
 このため、政府におきましては、昨年の六月、障害者施策推進本部におきまして、アジア太平洋障害者の十年を記念しまして我が国で同時期に開催されますDPI世界会議札幌大会を含む民間の三つの世界会議に対しまして、関係行政機関において必要な協力を行う旨の申し合わせをいたしました。今後とも、その申し合わせに沿って関係省庁と連携して対応してまいることにいたしておりますけれども、今までもいろいろと協議をしてまいりました。その具体的内容については関係部局から説明をしてもらいますけれども、この問題についてさらに御納得いくような方向で検討してまいりたいと思っておるところでございます。
三井分科員 ただいま官房長官から御答弁いただきましたように、平成十三年六月十二日、障害者施策推進本部として、「アジア太平洋障害者の十年」最終年記念フォーラム組織委員会が二〇〇二年に開催を予定しております第六回DPI世界会議札幌大会、そして第十二回RIアジア太平洋地域会議大阪大会、アジア太平洋障害者の十年推進NGO大阪会議に対し、関係行政機関は必要な協力を行うものとするという、ただいま官房長官の御答弁をいただきました。札幌で開催されますDPIと、大阪のRI、RNNの会議を一括して、「アジア太平洋障害者の十年」最終年記念フォーラム組織委員会が政府の窓口ということの確認でよろしゅうございますでしょうか。
 改めて申すまでもなく、札幌は、障害当事者組織の世界会議でもあります。大阪は、福祉専門家と障害当事者によるアジア太平洋地域の会議であります。宿泊、会場、そして通訳を含む情報提供、移動保障については、それぞれ共通する面と異なる面のニーズや課題を抱えております。その点を、申し合わせに対応する関係各省庁にはぜひとも御確認をいただきたいと思う次第でございます。
 さて、話を札幌大会に戻しますが、この大会は、国連社会経済理事会の協議資格などを有する世界レベルのNGO大会であります。昨年、国連で、障害者の権利条約という大きな目標に向けて世界の合意が得られたと聞いております。NGOとしての大きな役割を果たしたDPIが札幌で大会を開くことは、日本政府にとっても大変意義深いことと考えます。
 日本政府、関係省庁が、この重要な大会に対してどのような支援体制をとられるのでしょうか。お尋ねいたします。
江崎政府参考人 DPIの世界会議の札幌大会でございますけれども、最終年記念フォーラム組織委員会の行う国際会議の一つとして承知をしております。この国際会議につきましては、官房長官から御答弁申し上げましたとおり、関係行政機関は必要な協力を行うという本部決定を、昨年の六月でございますが、本部でそのようなことを申し合わせたということでございます。各省庁でこの申し合わせに沿いまして、いろいろ連携して努力をしておるというぐあいに承知をしてございます。
 二、三例を挙げさせていただきますと、例えば厚生労働省でございますけれども、最終年記念フォーラム組織委員会の行います国際会議に対しまして、四千万円の予算措置が講じられたと伺っております。また、経済産業省におきましても、当該大会の後援名義の使用承認をされたと承知しております。また、総務省でございますけれども、DPI世界会議札幌大会を含みますアジア太平洋障害者の十年を記念する国際会議の記念切手を発行するという予定でございます。
 今後とも、当該大会に対する協力の要請がございましたら、関係省庁とともに連携をしながら適切に対応してまいりたい、このように考えてございます。
三井分科員 ぜひその連携を深めていただきまして、札幌大会も、顧問としては各省庁さんがお入りになっているようでございますので、いずれにしましても、内閣府が窓口ということでございます、ぜひとも協力をお願い申し上げたいと思います。
 より具体的な取り組みとして、あと半年しかないわけでございます、この間にどう進められていくのか、まず、国土交通省にお尋ねしたいと思います。
 また、車いすの方々にも利用できるアクセシブルなバス、いわゆるノンステップバスのモニタリングを実施されているということを聞いておりますが、DPI札幌大会で運行していただければ、モニタリングとして大変有効だと思いますし、また、参加者の移動保障と予算の軽減につながるのではないかなと思うわけでございます。
 この機会にぜひとも、ノンステップバス導入を初め公共交通機関や宿泊施設のバリアフリー化を進めていただくとか、車いす利用者の航空機への搭乗制限があると聞いておるわけでございますが、その対応はどのように検討されているのか、お伺いしたいと思います。
伊藤政府参考人 国土交通省関係についてお答え申し上げます。
 DPI世界会議札幌大会につきましては、地元において、組織委員会と関係行政機関の連絡会議がございまして、私どもは、北海道運輸局、北海道開発局、そして東京航空局の千歳事務所というところが一緒になって、連携して今いろいろなことを検討いたしております。
 今委員御指摘の中で、確かにバス輸送というのは、空港から会場あるいはホテルへの輸送として大変今回重要な役割を果たすと思っておりまして、私ども、ぜひノンステップバスが円滑に供給できるようにということで、一つは、札幌市交通局が新たに購入するノンステップバスについて購入費の助成とか、それからまた、周辺都市のノンステップバスを持っている交通事業者に積極的に協力をお願いするとか、そんな取り組みをいたしております。
 また、ホテル等の宿泊施設でございますが、私ども、まず、協会等を通じまして、バリアフリーの状況について調査いたしております。その情報につきましては、逐次、組織委員会の方にも提供させていただいております。また、こういう大会になりますと、引き続きバリアフリー化について各宿泊関係の施設の方々に取り組みをお願いするんですが、同時に、私どももあわせて、簡易ないわゆる補助器具ということで、シャワーチェアでございますとか簡易なリフトでございますとか、そういうものについての貸し出しとか、そういうようなことでの便宜供与も考えているところでございます。
 そして、あわせまして、航空機でございますが、航空機につきましては、緊急脱出時の搭乗旅客の安全確保の観点からでございますが、車いす利用者の方々の搭乗数の制限ということを航空会社が定めているわけでございます。この点につきましては、航空会社の団体である定期航空協会に対しまして、私どもより検討を要請しまして、客室乗務員の追加的な搭乗とか、それから付添者の状況とか、そういうものを総合的に勘案しながら、弾力的な対応ができるように検討をお願いしているところでございます。
 私どもといたしましては、今後とも、このような取り組みを引き続き続けていき、また組織委員会とも緊密な連携を図りながらやっていきたいというふうに思っておるところでございます。
 以上でございます。
三井分科員 私も札幌のホテルはほとんどいろいろな会合で行きますが、まだまだバリアフリー化が進んでいなくて、非常にバリアの状態にございまして、ぜひこの大会を機会にフリー化をお願いしたいと思う次第でございます。これは札幌市の問題になると思いますが、よろしくお願いしたいと思います。
 また、この大会に、先ほども申し上げましたとおり、障害者当事者の大変多数の参加が見込まれておるわけでございます。特に今回は、盲導犬ですとかあるいは介助犬を連れて参加される方が多数いらっしゃるということも想定されているわけでございます。このときに、動物検疫について農林水産省はどう対応されるのか、具体的にお伺いしたいと思います。
梅津政府参考人 盲導犬や介助犬の入国の際の検疫につきまして御説明いたします。
 海外から我が国に輸入される犬につきましては、家畜伝染病予防法と狂犬病予防法に基づきまして、我が国に狂犬病あるいはレプトスピラ病の侵入を防止するために輸入検疫を実施しています。
 犬は、家伝法に基づいて定められた空港または港から輸入することとされておりまして、輸入時には、いわゆる狂犬病の清浄国から輸入される場合には、輸出国政府機関が発行する証明書が完備される場合には十二時間以内、それ以外の汚染国から輸入される犬につきましては、同じく輸出国政府が発行する健康証明書、それから予防接種証明書が完備されている場合、最短十四日間の隔離検疫が必要でございます。
 この隔離検疫は動物検疫所に係留して行うこととされておりますけれども、家畜防疫官が動物検疫所以外の場所で検疫を実施しても差し支えないと認めた場合には、狂犬病予防法上必要な管理方法等を指示いたしまして、防疫上安全と認めて指定した場所、これは指定場所と言っておりますけれども、この指定場所で輸入犬を係留することができることとされております。
 この指定場所における係留検査は、盲導犬といった身体障害者の介護の用に供する犬、あるいは特別の管理を要する幼弱犬とか老齢犬、こういうものを対象にして運用しておりまして、盲導犬や介助犬につきましては、これまでも飼い主の御自宅とかあるいはホストの方の住宅、そういったところを指定場所とした隔離検疫を実施してきているところでございます。
三井分科員 大変この検疫の問題については難しいと思いますが、ぜひ取り扱いをよろしくお願い申し上げたいと思います。
 次に、外務省関係でお尋ねを申し上げます。
 先ほど申し上げましたように、昨年の三月一日に予算委員会の分科会で質問させていただきましたが、当時の河野大臣や、また衛藤副大臣から大変誠意ある御答弁をいただいております。大変大事な大会だと思います、今回の世界会議も、立派に会議の形が整っても、そこで成果が上がらなければ意味がない、ぜひひとつ成果の上がる、意味ある大会にしていただきたい、外務省としてお手伝いすることがあれば、できるだけお手伝いをいたしますと明言していただきました。
 現在、大会実行委員会で、参加申し込み等の受け付けあるいは照会作業を既に進めております。実行委員会の見込みでは、約百カ国から二千名の参加者が予定されていると聞いております。この中には車いすの利用者約一千名が含まれておるわけでございますが、車いすやあるいはストレッチャーを使用する障害者の方には、介助者が当然同行してまいります。そうした参加者へのビザ、また、実態的に在外公館あるいは大使館を通じて手続が必要になってくると思いますが、この辺の情報収集等も含めて、どのような御協力なり配慮をしていただけますでしょうか。
 ちなみに、メキシコ大会においては、大変ビザの発行については混乱したということも聞いております。
 あわせまして、前回のDPI世界会議メキシコ大会では、大会当初予定していなかったVIP、モロッコの皇室関係者が急遽参加するというハプニングがあったそうでございます。また、日本でAPECの会議のときにブルネイの皇室関係者が突然来日するといったケースも、今回の札幌大会でも想定されるわけでございますが、この場合にどのように対処していただけるのか、外務省にお伺いしたいと思います。
高橋政府参考人 お答え申し上げます。
 委員御指摘のように、本件大会には、多数の国から大変多くの障害者の方及びこれをお世話する方が参加するというふうに私ども承っております。
 そういう状況の中で、私ども、これまでのところ、本件大会への外務省としての支援策といたしまして検討しておりますのは、いろいろございますが、例えば国連障害者基金というものに私ども拠出金を出しておりますが、平成十四年度の我が国の拠出金のうち特別報告者活動経費を差し引いた額を本件会議にイヤマークして拠出する、そういう方向で検討をいたしております。
 それから、さらには、JICAに障害関連の国際研修コースというものがございますが、この研修コースの時期をいろいろと調整させていただきまして、四つのコースからこの会議に参加を予定されている方約四十名を、参加していただくという方向で現在検討をいたしております。
 それから、日本にいらしていただく場合に必要な査証の問題についての御質問がございましたけれども、例えばこういう大きな国際会議、それからスポーツ大会とかそういうものに参加をされます外国の方につきましては、査証についての、例えば査証手数料を免除するとか、それから発給それ自体についての便宜を図るというようなことは、もちろん必要に応じてやっておりますが、それは、現在、我が国への入国をやはりきちっとしなくちゃいけないという、そちらの方の要請もございますので、どういう国からどういう方が来られるのかということについての詳細な情報はもちろん必要でございます。
 そういうことで、主催者から参加者の詳細なリスト等をいただきまして、本件大会の開催目的等を考慮して、私どもとしてどういう対応をするのが最も適当かということをよく相談させていただいて対応してまいりたいというふうに思っております。
 それから、一番最後に委員の方で御指摘がございました、九八年のメキシコ大会において、当初予定をしていなかったVIPが急遽参加して、ハプニングでちょっと混乱したというようなことがあったという御指摘がございました。今回の大会につきましても、私ども、こういうことのないようにもちろん注意してまいりたいと思いますが、現在までのところ、具体的な出席者について、先ほど申しましたように、まだ詳細な情報をいただいておりません。
 一般論として申し上げますれば、こういった大きな国際会議におきまして、皇族それから首脳、閣僚等のハイレベルの方の出席が予定されるというような情報があります場合には、私ども、出先の公館を通じまして、先方政府とか、それから在京の大使館とよく緊密に連絡をとりまして、接遇に、それから会議の運営に遺漏がないように十分配慮して対応するというふうにしております。
三井分科員 次の質問でお伺いしようと思ったんですが、JICAの研修生については四十名出席されるということでございますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
 次に、今回のこの大会には、特に発展途上国からの障害者が多数参加が見込まれるわけでございますが、今御答弁いただいたように、ひとつ、障害者に対する障害がなるべくなくなるような形で、ぜひともいろいろな意味で御協力いただきたいということと、特に、今、実行委員会の事務局からは、アルゼンチンから約三十名程度の参加希望があるということを聞いております。御存じのとおり、今アルゼンチンは大変な経済状況にもございますし、貨幣価値の崩壊で、自己資金による参加が大変難しく、安いホテルですとか、あるいはそういう宿泊先をぜひ紹介していただきたいと来ているということも聞いております。
 先進国である日本政府として、より多くの途上国の障害者を招待して、それぞれが自国でマンパワーとして活躍できる土壌をつくる、人材づくりに寄与する、これが真の国際貢献になると私自身も考えますが、この人材育成という観点から、外務省としてどのようにお考えになっているか、お聞かせ願いたいと思います。
高橋政府参考人 外務省といたしましても、今回の大会におきまして、参加者によりまして実りのある議論が行われまして、なおかつ参加者の皆様がそれぞれ自国におきましてマンパワーとして活躍することが期待されているというふうに承知いたしておりますので、先ほど申し上げましたような、私どもとして現在既に検討いたしております支援策を含めまして、主催者の方たちと十分に協議しながら、さらにいかなる支援が可能か、検討を引き続きさせていただきたいと思っております。
三井分科員 この大会は、他の国際会議と大変異なりまして、障害者当事者の世界大会でございますから、移動や施設への対応として、日本語、英語、フランス語、スペイン語の通訳、さらに、情報を伝える手段といたしまして、日本手話、国際手話、日本語と英語の同時文字化等を準備するための多くの予算を必要としているということを聞いております。地元の障害者の努力と、北海道、札幌市がそれぞれ今年度総額六千万円の予算措置を講じています。まだまだ十分な額に到達していないのが実態でございます。
 冒頭申し上げましたように、この大会の成功に向けて、北海道選出のすべての国会議員はもちろんのこと、札幌組織委員会の顧問としてそれぞれ活躍しているところでございます。さらには、道内の経済界、そして労働界やボランティア団体あるいはライオンズ等が、特に北海道は経済環境が厳しい中で、北海道を挙げて成功に向けて取り組んでおるところでございます。
 アジア太平洋障害者の十年を締めくくり、今後とも、障害者の施策の一層の充実について、国際的にも先頭に立って推進しなければならないのが日本の立場だと思っているところでございます。最終年記念フォーラム並びに第六回DPI世界会議札幌大会をぜひとも成功させるために、官民の枠を超えた幅広い取り組みをお願いするとともに、ぜひ国としての予算措置をさらに御検討いただければ大変ありがたい、強くこのことを要望申し上げたいと思います。
 最後になりますが、前回の一九九八年メキシコ大会では、セディジョ・メキシコ大統領が参加してごあいさつをされております。今回の札幌大会も、オリンピックと同じように四年に一度という一大イベントでもございます。この記念すべき大会にぜひ小泉総理に御出席をいただき、障害者の皆さんを激励していただきたい。厚生大臣も経験された小泉総理なればこそであります。障害者の完全参加と平等の考え方を、日本の国内はもちろん、アジア地域、世界へと発信していく、国際的にも非常に期待されていると思いますが、官房長官、いかがでございましょうか。
福田国務大臣 このたびの札幌大会は、地元の方、札幌市、北海道の皆さんに大変協力をいただいて行われようとしているわけでございます。世界各国からも大勢の方々がお集まりになるという大変意義の深い会議であると思っております。そういうこの大会が成功することを私どもも心から祈っておりまして、そのために関係当局ができるだけのお力添えをして、この大会を無事に、そして盛り上げるということもしていかなければいけないだろうというように思っております。
 お尋ねの件、総理大臣が出席できるかどうか、こういうことでございますが、これはそういう意義のある会でございますから、それはそれなりに考えてまいろうと思っておりますけれども、何せ大分先の話で、また、その時点における状況などどうなるか、今のところ明確でありませんので、ここで明確に申し上げることはできませんけれども、検討させていただきたいと思います。
三井分科員 それでは終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
木下主査代理 これにて三井辨雄君の質疑は終了いたしました。
 次に、牧義夫君。
牧分科員 民主党の牧義夫と申します。どうかよろしくお見知りおきをお願いいたします。
 きょうは、平成十二年度補正で組まれました情報通信技術講習推進特例交付金についてお尋ねを申し上げたいと思います。
 ちょっと舌をかみそうなんで、以降、IT講習というふうに略させていただきたいと思いますけれども、これを補正予算で、もともとが、IT戦略上、補正というのも私なりにちょっと変だなという気もいたします。これがしっかりとこの国のIT戦略の中に組み込まれた事業であれば、まさに本予算で組まれるべきものであったと思うんでございますけれども、ここで補正予算のあり方についてとやかく言っても始まりませんので、この点についてお聞きをしたいと思います。
 この事業の目的、地方公共団体が自主的に開催するIT講習を拡大することにより、IT基礎技能の住民へのできる限り早期の普及を図ることを目的とする、こういうふうに書いてあります。もっと言い方を変えると、私なりに思うのは、このITという名のもとにいろいろな公共事業、むだな公共事業をやめさせろと我々も言っておりますから、じゃ、ITという名がつけば逆にどんなお金でもばらまけるのかな、そんなように率直に思った次第でございますけれども、官房長官なりに、この交付金事業、IT戦略上どんな位置づけになるんでしょうか。どのようにお考えか、まずお聞きしたいと思います。
福田国務大臣 いわゆるIT講習、その前に一回だけ言わせていただきます。情報通信技術講習のための施策でございますけれども、交付金も支給する、こういうふうなことになっていますけれども、IT基礎技能のできる限り早期の普及を図るという観点から、地方公共団体が実施するIT基礎技能講習に対しまして、政府としても特例的に事業の円滑な実施に向けて支援を行うということを目的といたしております。
 我が国もITについていろいろ言われております。しかしながら、現実、まだおくれている、隣の韓国に比べてもおくれているというような実態を踏まえて、できるだけのことをしていかなければいけない。そのために、今ITであれば何でも、こういうふうなお話がございましたけれども、気持ちとしてはそのぐらいの気持ちでやっていかなければとても追いついていかないんじゃないかというような考え方もしております。
 世界最先端のIT国家になるということを目指しておるわけですね。そういう我が国におきましてだれもがITを利用できる社会の実現に向けた取り組みが求められておりまして、広く国民にIT基礎技能の早期の普及を図るIT講習推進、これは我が国のIT戦略の基礎となるものであるというふうに考えておるところでございます。
牧分科員 大体、大方予想したとおりの御回答をいただいたわけでございますけれども、そもそもこのお話、一番最初、当時、堺屋経済企画庁長官の周辺から出てきたお話だというように私も伺っております。
 当時、ITバウチャーなんという言葉も出ていたようでございますから、これは、例えば地域振興券みたいに、これを持っていけばIT講習が受けられますよ、そんなようなイメージも当初はあったのかもしれません。
 しかしながら、結果として、これは地方公共団体にお金を交付するという形になったわけでございまして、交付金額が総額で五百四十五億、大体この受講者の数を五百五十万人というように推定をしながら、おおよそ十三年度末までにこの事業を完遂するというような計画であったように聞いておりますけれども、そうすると、先ほど官房長官の御説明もございましたけれども、その我が国のIT戦略上、国民のITリテラシーの向上とでも申しますか、そのために、この五百五十万人という数字がどの辺から出てきたのかな、また五百四十五億円という数字というのはどういう根拠で算出されたものなのか、その辺のところをお聞かせいただきたいと思います。
大野政府参考人 ただいま官房長官御答弁申し上げましたように、多くの国民の方々にインターネットにつないでいただくということを考えたわけでございますが、パソコンの操作もやったことがないという方々が多い中で、まずインターネットが利用できる基礎技能の講習をしなければならないということでございます。小中高等学校あるいは公民館など想定いたしまして、そういったところで講習をやるのが大体八割程度、そして、地方公共団体の庁舎でありますとか民間のパソコンスクールなども活用いたしまして、いわばキャパシティーといいますか、最大の講習の可能な人数というものを考えまして、できる限りという気持ちで五百五十万人というものを算定いたしました。
 その上で、これは都道府県に対します交付金でございますけれども、現場では市町村が実施をするというところも多いわけでございますので、市町村に対しましても十分の十という形で補助金を出すということを考えました。
 そんなことで、基本的には、最大可能な供給できる人数というものにある程度単価を掛けまして、大ざっぱに言いますと、一人十二時間ぐらい講習を受けるといたしまして、一万円程度かなというふうな積算でございます。
牧分科員 総務省さんからの御説明ございました。
 総務省の方にこういうふうに説明をしていただかなきゃならない。非常に気の毒な思いもいたすわけでございまして、本来、そもそもの企画をしたところがしっかりとどういう理念に基づいてこういう予算の執行をしなきゃならないのかと説明をしなきゃならないわけで、総務省はそれを請け負っただけというような感も私なりにしていないわけでもございません。そういった意味でも、この企画そのものが本当に思いつきじゃないのかなと改めて私なりに思った次第でございます。
 そこで、実際にこれを実施したところ、いろいろな問題が生じている、私なりの認識があるわけでございます。
 端的に言えば、各自治体任せの開催でございますから、本来、IT教育の担い手として育成していかなければならない例えば民間の情報通信技能教育事業者、そういった人たちの経営をこれは圧迫するようなことがあってはならないと私は思うわけでございますけれども、この事業を民間で請け負っているところ、全部が全部ではございませんけれども、私なりに調べた範囲で見ますと、実際に、例えば人材派遣業者ですとか、本来IT教育の担い手でないところがたくさん受注しているというのが散見されるわけでございます。
 実際にいろいろ資料を見てみますと、各自治体で、例えば二百講座ですとか、あるいは五百講座ですとか、ひどいのになると七百講座。これは、十二時間、二十人がワンユニットということで、一講座基準を十七万一千円、あるいは市町村以外の施設を使った場合、二十八万五千円、そういう基準に基づいてやっているわけでございますよね。
 ただ、それを実際に受注するところを見てみると、例えば五百講座を一遍に請け負えと言われても、町のパソコン教室では、これはとても受けられる数ではない。もうはなからその門戸が閉ざされているというのが実情であるわけで、そういう中で、大手の例えば人材派遣業者等が非常に安い値段でこれを引き受けているというのが実情になっているようでございます。その辺の認識というのは総務省の方でございますか。
大野政府参考人 事務的なことなものですから、私の方からお答えをしたいと思います。
 この仕組みは、実は、地方公共団体、都道府県なり市町村が委託をするということになりますと、それぞれの団体の方で適切な委託方式を考えて発注をするということになっておりまして、私どもも、今牧先生おっしゃったような具体的なことにつきましては承知をいたしておりませんが、それぞれの契約の仕方がございますので、私どもとすれば、それに基づきまして適切な対応がなされているものというふうに考えておるところでございます。
牧分科員 ということは、こうなるということは予測はできなかったというふうに理解をしてよろしいわけですね。そうすると、また後で私からゆっくり、きょうは時間もございませんから、ゆっくり説明させていただきますけれども。
 非常にゆゆしき事態と申しますか、例えば十七万一千円の基準に対して三万円台、四万円台でこれを落札しているというケースが非常に多いわけで、私どもの地元の名古屋市初め、千葉市ですとか東京の二十三区、いろいろ資料がございますけれども、どうもこれ、トータルしてみると、半値以下で、あるいはひどいのになると三分の一以下でこれを受注しているようなところが多いわけでございます。
 そうなると、良識を持って、この教室しっかり引き受けていこうという意欲がある民間のパソコン教室、こういうところが請け負いようがない。また、行政に対する入札の参加資格がないところも、むしろないところがほとんどだと思います。そういうところは、力のあるところは、預託金というか、ちょっと領収書のコピーがございますけれども、保証金みたいなのを何千万も積んで、それで入札に参加させてもらう、そういう事例もございます。
 そこら辺のところの認識がもし今のお話のとおりなかったとすれば、また後日ゆっくり説明をさせていただきますけれども。そうすると、この事業そのものにどういう種類の人たち、どういう種類の業者が参加されるというのは、何かそういう想定はあらかじめなかったんですか。
大野政府参考人 先ほど申し上げましたように、実際にこの講習をする場所につきましては、小中高の施設でありますとか公民館を大半想定いたしましたけれども、一部につきまして、パソコンスクールに例えば講師の派遣をお願いする、あるいは講座そのものを委託するということも当然事前に想定いたしておりますので、五百五十億という試算の中には、そういった講師の派遣なりパソコンスクールに授業を委託するといった費用につきましても積算をして、予算を算出いたしたところでございます。
牧分科員 わかりました。
 最初に申し上げたように、十三年度末を目途にこの事業が進められたわけでございますけれども、もう既に十四年度に入っているわけでございます。振り返っての評価をお聞かせいただきたいと思います。
若松副大臣 牧委員の先ほどの御質問に、総務省、大変ですねと御同情いただいたわけですが、ちょっとそれについては総務省の考え方を申し上げたいわけです。
 御存じのように、今e―Japan戦略ということで、電子政府、さらには電子自治体、そういった観点から、当然、国民の皆様にもやはりインターネット、パソコン等を本当に簡単に利用していただける、そんな趣旨でやっておりまして、私どもは、電子自治体を進める観点から、これからもいろいろと、自宅から市役所へさまざまないわゆる申請なりそういうのができるようにしなければいけない、そういう立場でやっておりますので、私どもは、ぜひともこのIT、国民に活用していただけるように進めていきたい、そのための努力は惜しまない、まずそういう立場でございます。
 その上に立って、今回のこのIT講習をどう総括されるか、こういうような御質問だと思うんです。恐らく委員の一番の御指摘は、民業圧迫ということかなと認識したわけでありますが、今申し上げましたように、何といってもインターネットとか電子メール、この利用はIT社会をつくる上においては最低、基礎技能というんでしょうか、大変基本的なテクニックでありまして、それは当然国民に広く利用していただきたい、また、そのための機会をつくっていくのが私どもの役割であるのかなと。そういうふうに考えますと、これも繰り返しになりますが、あくまでもこのIT講習の中身というのは極めて基本的な、第一歩的なそういったものに特化されるのではないか、このように当初想定したわけでございます。
 一方、私も何カ所かこのIT講習の会場を見させていただきましたが、自治体によりましてかなり運用の差があるわけでありまして、先ほど、大手企業がかなり安値でやっているということ、実は、やはり行政として、税金を使うわけですから、例えば同じサービスであれば安いところに頼みたいというのが、これは税金を効率的に使う立場からの気持ちでありましょうし、かといって、いわゆる独占的な、また寡占的なやり方も問題があるでしょうし、それはバランスの問題ではないかと私どもは理解しております。
 いずれにしても、今回のこのIT講習という、五百数十万人の国民の皆様がパソコンに触れる、恐らくそれをきっかけに、これからさらに高度な関心を持たれて、そしてさまざまなIT講習を受けられると思います。そのときに、ぜひともそれぞれの特徴のあるパソコン教室等を民間が積極的に提供していただく、そのために、引き続きこれからも総務省としては協力していきたいと考えております。
牧分科員 副大臣の御答弁で、広く国民にというお話がございました。私も全く同感でございますけれども、五百五十万人にこだわってしまうとちょっと話が堂々めぐりになりますけれども、実際の受講者の数というのはもう目標を達成したんでしょうか。
大野政府参考人 この講習事業につきまして、実施状況、実は昨年末で取りまとめをしておりますのが最新のデータでございますけれども、四半期ごとに実績の報告は受けております。そこで、昨年、十三年の十二月末までの集計では、おおよそ四百万人弱、このようになっております。
牧分科員 そうすると、十三年の最後の四半期、これはもう間もなく結果が出ると思うんですけれども、ほぼ五百五十万人達成というふうに考えてよろしいんでしょうか。
大野政府参考人 実は、地方公共団体、都道府県の方からは、例えば北海道などですと、冬期には講習がしにくいとか、こういった問題がございます。追加の基礎技能講習をやりたいという声もございまして、できますれば、そういった自治体に対しましては経費の繰り越しを認めまして、この一月から三月までではなく、もう少しやっていただくことも必要かな、このように考えておりますので、三月末までで五百五十万という数字にはならない、このように思っております。
牧分科員 北海道の事例を出されたわけでございますけれども、私の認識では、必ずしも、例えばそういう寒冷地だけの地理的な、あるいは地域的な状況だけだというふうには理解はしておりません。先ほど申し上げましたように、これは非常に安い。当初の要綱にあるような、十七万一千円ですとか二十八万五千円とは違った、およそかけ離れたそういう金額で落札をしているわけで、そういった意味で、予算が余っているというのが、使い切れていないというのが実情だと私なりに認識をしているわけであります。
 例えば、これは正式な積算をしておりませんけれども、全国の教室の実際の落札価格、これを全部調べていただければ、五百四十五億のうち、この十三年度末で幾ら使い切ったのかというのはわかると思うんですけれども、これは近々調べていただけますか。
大野政府参考人 今御指摘の、この交付金の執行状況につきましては、まだ最終的な数値は取りまとめておりませんけれども、御指摘のとおり、新しい時点でどこまで交付金が使用されているか取りまとめることは、当然のことでございます。
牧分科員 ぜひ早急に、その辺取りまとめをしていただきたいということと、例えば、さっきの北海道のお話、雪がいっぱい積もっているときは避けてもう少し先延ばし、それは当然しようがないことだと思うんですけれども、実際私がいろいろなところから聞いているお話、この余ったお金をさらに、実際に一度初級講座を、基礎講座を受講した人に、その人たちも含めてさらにステップアップした中級講座をやろう、そういう人たちを集めようというような自治体もあるやに聞いております。
 そうなると、当初の交付金の目的とはかなり逸脱した話になろうかと思うんですけれども、その辺の御認識はいかがですか。
若松副大臣 先ほども申し上げましたが、このIT講習というのは、あくまでも国民の皆様がIT活用能力を高めていただく、そういうきっかけになればという趣旨でやっておりまして、特にIT講習を通じてプロのIT活用能力者を育成しようとする趣旨ではございません。そういう意味で、もし自治体がかなり税金を使ってプロを養成する、そういったものは当初の趣旨とはかけ離れるのかな、そのように理解しておりまして、私どもは、民業圧迫のためにやっているのではなくて、あくまでもIT、本当にきっかけのためにその機会を提供している、そのように理解しております。
牧分科員 副大臣のお話を素直に信じさせていただきまして、御期待を申し上げるところでございますけれども、ちなみに、これは地元の私どもの名古屋の広報ですけれども、ここに「どちらを希望されますか? IT講習応用編 IT講習基礎編」、こんなように、これはもう一目瞭然だと思うんですけれども、まさに当初の目的とは逸脱したような形で、実際にこういう取り組みがなされている。これも実際、担当者等のお話を聞いていると、要は、お金が余ったからこういう使い方しかないのだというようなお話も聞いております。
 もう一つ言うと、地元ばかり言ってもいけませんので、これは青梅市なのですが、ことしの三月二十九日付の市長からの指名通知書、見積もり合わせですね。ここにも、初級講座ももちろんありますけれども、中級講座あるいはIT指導者育成講座、こういうことも入っているのですね。これは明らかに、使い切れなかったお金をどうやって消化しようかというお話だと思います。
 そこら辺のところをきちっと、やはりこれは五百四十五億。何兆円も扱っている皆様方からするとささいな金額かもしれませんけれども、国民から預かった税金ですから、しっかりとその使い道、用途については精査をしていただきたいと思うわけです。
 これは例えば、調べた結果、いっぱいお金が余っているということになったら、これはどうするのですか。国庫に返納するのですか。
若松副大臣 まず、今、名古屋市と青梅市のお話がございましたが、私ども、ちょっと詳細には存じ上げておりませんので、もし、いわゆる民業圧迫という観点からの趣旨であれば、私どもはその事実を調べて適切に助言等をしてまいりたいと考えております。
 もう一つ御指摘でありますが、これは細かい話ですので、事務方の方からちょっとお話しさせていただきます。
大野政府参考人 当然、牧先生おっしゃったように、交付金の額が余りましたら国庫に返納していただきます。
牧分科員 それはいつごろの時点での余りをいうのですか。
大野政府参考人 この事業は、先ほど申し上げましたように、三月末までが原則でございますが、一部の団体では、先ほど北海道の例を挙げましたけれども、追加講習もしたい、こういったところもございまして、年内いっぱいはそういった事業をやっていく可能性もございますので、その辺、両方勘案いたしながら精査をして、最終的な返納額というのが確定いたしますれば、きちんと返していただくというふうになります。
牧分科員 ただ、例えば北海道の場合のように正当な事由がはっきりしている、これはいいかもしれませんけれども、北海道は、そういうお話が入っているわけでしょう。ほかの自治体もこれはやはり聞いてみる必要があると思うのですね。そんな、ことしいっぱいなどと言わないで、これはもっと早急にやっていただくべきだと思う。できますか。
大野政府参考人 繰り返しになりますが、都道府県からは、原則的にはこの三月末で終わったわけでございますので、終わったところは数字がわかりますし、それから、事実上の事業の追加実施ということを希望しているところには繰り越し使用も可能としたい、こう考えておりまして、それは今精査しておりますので、大体、県の数についても把握をしております。
牧分科員 ぜひとも、言葉どおりの精査をしていただきたいと思います。
 もう時間がございませんので、最後に私から一言申し上げると、全国のパソコン教室というのはどれぐらいあるのか、数字は定かではないわけでございますけれども、十三年度中に、そういったことでかなりの数が閉鎖されているというのも、帝国データバンクの調べなどでもはっきり出ているわけでございます。
 その辺については、また後日お話をしたいと思うのですけれども、いずれにしても、その前の時点で、少なくとも四千教室、講師が八千名というような数字も聞いております。稼働可能なパソコンの台数は四万台ということで、目標の、例えば五百五十万人に基礎講座を実施するということになると、約二百七十日でそれが可能だったというような話も、これは事業者側からの話でございますけれどもあるわけです。
 当初、例えばITバウチャーなどという話もあったように聞いていますけれども、例えばそういう民間の、しかもパソコン教育に携わっていた人たちのプロというのは、やはりこれからの我が国のITの担い手の一端でもあると思うわけで、これをそのまま、淘汰されるままに任せていいのか。あるいは、こういう人たちも含めて、どういうふうにIT戦略というのを組み立てていくのか、その辺のところのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
福田国務大臣 世界最先端のIT国家を目指すということになりますと、人材基盤を強固にしなければいけない、これはもう御案内のとおりでございまして、具体的に、この取り組みに当たりましては、例えばIT職業能力開発を民間に委託するような、専門的な知見を持っていらっしゃる民間の協力も得ているところでございます。
 今後とも、そういう能力を十分に活用させていただきたい、そして、このIT戦略を進めていきたいと思っておるところでございます。
牧分科員 ぜひとも、今の官房長官のお言葉、信じさせていただきますので、取り組みをよろしくお願いいたします。
 ありがとうございました。
木下主査代理 これにて牧義夫君の質疑は終了いたしました。
    〔木下主査代理退席、主査着席〕
持永主査 次に、西村眞悟君。
西村分科員 官房長官、よろしくお願いします。
 拉致日本人のことに絞って質問させていただきます。
 質問中、ここに原本がございます朝鮮商工新聞と題する書面を御閲覧の上、質問させていただきたいと思いますので、配付方、よろしくお許しいただきますようお願い申し上げます。
 三月に小泉総理が、北朝鮮に拉致された日本人の御家族に会われてから、テレビカメラの前で、拉致された日本人の問題解決なくして日朝国交正常化なしというふうな発言をされました。私はそれをテレビで見ておりまして、小泉ドクトリンと名づけさせていただいた次第でございます。
 この小泉総理の見解は政府の見解だと認識いたしますが、そのとおりでございましょうか。
福田国務大臣 政府といたしましては、拉致問題は国民の生命にかかわる重要な問題である、こういう認識のもとに、従来から日朝国交正常化交渉等の場におきまして、北朝鮮に対しましては、日朝関係を改善していくに当たりまして、拉致問題は決して避けて通ることはできない旨、繰り返し説明をし、その解決を強く求めてきております。
 政府といたしましては、日朝国交正常化交渉の進展に粘り強く取り組みながら、拉致問題を初めとする人道上の問題や安全保障上の問題の解決を目指す方針でございます。
 小泉総理もこのような趣旨で発言されたものと承知をいたしております。
西村分科員 小泉総理は、断定的に発言される場合は、そのままドクトリンになり得る発言をされますので、これは国民がすべて知ったことでございます。
 次に、本問題解決のために、各省副大臣から成るプロジェクトチームが官邸内に編成されて、総合的な対策立案が検討されているとお伺いします。それで、例えば物資、金員の北朝鮮に対する搬入阻止の一つをとりましても、各省庁にまたがっておりますことでございますから、この総合的プロジェクトが発足するというのは、私は非常に大歓迎でございました。
 ただ、これはマスコミ報道でございますから、今から御確認するのですが、官房長官はこのプロジェクトに賛意を表されなくて、解散を指示されたということを新聞紙上で見るわけですが、大臣はどのような観点でこのプロジェクトチームを見ておりますか。推進されておりますか、それとも解散を指示されましたか。
福田国務大臣 まず最初に申し上げておきますけれども、一部の報道で、私がこのプロジェクトチームを、してはならぬ、こういうふうに申した、そういう報道は誤りでございます。
 このプロジェクトチームは、副大臣会議の議論を踏まえ、北朝鮮による日本人拉致容疑事案の問題に関しまして、関係省庁間の情報交換など緊密な連絡調整を図るということを目的といたしまして、官房副長官を主査として設置されたものであります。
 拉致問題は国民の生命、身体にかかわる極めて重大な問題でございますので、本プロジェクトチームにおいて、この問題の解決に資するべく引き続き関係副大臣等の間で情報交換、連絡が緊密に行われることを期待いたしております。
西村分科員 これは質問ではございませんで要望でございますが、新潟県庁には横田めぐみさんらを救出しようという横断幕が掲げられております。前の外務大臣が、この横断幕にちなんだと思うんですが、記者の質問、拉致された日本人を外務大臣としてどうしますかと聞かれた場合に、私は県会議員ではございませんというふうに答弁して、質問した方が二の句が継げなかったと。
 さて、この次元の大臣、外務大臣が出ることも我が国の現状でございますから、新潟県庁に横断幕があるならば、北方領土返還の横断幕がある中央省庁に拉致日本人救出の横断幕を掲げることができれば、外務大臣たる者のこのような発想の次元が救出されるんではないか、このように思いますので、これは要望しておきます。官房長官におかれましては、我が国の政治の次元がかくのごときものである限り、横断幕をもって、日本人救出の問題は国家の問題である、私は県会議員ではありませんということで決して質問に答えたことにならない問題であるということを明示していただけましたら、このように思っている次第でございます。御要望させていただきます。
 さて、日韓首脳会談後の日韓共同記者会見において小泉総理は、現在の時点で米支援とかそのような問題を、いろいろな今までの拉致問題等の懸案をも棚上げにして日本がやるというのは非常に難しい情勢にある、このように発言されておりますが、この発言は、米支援はしないと確認してもよいのか、する場合もあるというふうに認識してもいいのかというふうにお聞きするわけです。
 米を送れば北朝鮮は軟化するんだ、したがって米を送ってよろしい、そして五十万トンを、今隣の部屋で参考人として答弁されておられる方が幹事長のとき送られた。そしてまた次の幹事長のときも五十万トン送り、十万トンを送った。すべて、米を送れば北朝鮮は軟化するんだということでございます。
 しかし、ぼつぼつ結果を点検し方策を考えねばならない時期に参りました。米を送っても全く軟化せず、行方不明者の捜索なんかはしないというふうに言い放ち、つい最近北朝鮮を訪れた外国要人に対しても、拉致問題は存在しないんだというふうに言っております。
 さて、冒頭の小泉総理の発言に戻りますが、米支援はしないと確認してよいのかどうか、御答弁いただきますようにお願いします。
福田国務大臣 北朝鮮に対する食糧支援につきましては、これまでも北朝鮮の深刻な食糧事情というものを勘案して人道的観点から行ってきておりまして、実際の支援に当たりましては、こうした人道上の考慮に加えて総合的な観点からも判断を行ってきたところでございます。北朝鮮に対する食糧支援は、一般論として申し上げれば、政府としては、人道上の考慮に加え種々の要素を総合的に勘案しつつ検討していくべき課題であるというふうに認識をしております。
 ただ、現在政府としては、北朝鮮に対する新たな食糧支援について具体的な検討を行っているという事実はございません。
西村分科員 ぜひ今まで行ってきた経緯と北朝鮮の姿勢を点検して、今後そのような同じことをまた漫然と繰り返すのかどうかを御判断いただきたい。私の判断では、拉致された日本人の御家族の心痛を思いますならば、漫然と同じやり方を繰り返すことは、政府の不作為による拉致された家族の苦痛の増大にしかなり得ないというふうに認識しております。
 さて、次の質問に移りますが、小泉総理は朝銀、朝鮮銀行信用組合ですね、朝銀の問題は日本の金融機関の問題であって日朝問題とは別だという認識を語られたことがございます。しかし、これは日本国内だけの思い込みであって、相手がいるわけですから、相手はどう考えているかということをこれから私調べた範囲で御説明しながら、政府の見解をお伺いしたいと思います。
 産経新聞四月四日付は、一面トップで、金融庁が公的資金を投入する破綻した朝銀の受け皿銀行は、朝鮮総連との関係が切断されたものであるという前提が実は翻されているという事実を報道したわけでございます。すなわち、ハナ信用組合、未来信用組合、兵庫ひまわり信用組合、京滋信用組合の理事長らが、朝鮮労働党の指示のもと、日本国内で非公然活動を展開する学習組の構成員であったということを報道いたしました。
 それから一九九九年の四月二十日、金正日氏は、徐萬述総連第一副議長、現議長でございますね、秘密指示を与えた、このように伝わっております。どういう指示かといいますと、総連は父なる首領様の貴重な革命遺産である、我々はどのような方法と手段を使っても総連を無条件に死守し存続をさせなければなりません、このように徐萬述現総連議長に指示したと伝わっておるわけでございます。
 それで、写しを配付させていただいておりますが、朝鮮商工新聞と称する書面、一面と最終面は日本語でございますが、肝心な中の部分はハングルで書かれております。このハングルで書かれておる部分が、今から御説明申し上げることでございます。
 御承知のとおり、受け皿銀行四つが三月末に設立されまして、三月二十六日、東京・上野にある朝鮮商工会館で在日朝鮮人商工連合会理事会拡大会議が開催されました。朝鮮語で書かれておるのは、まさにその理事会における事業報告でございます。この会議は、今申し上げた徐萬述総連議長、梁守政副議長等の総連最高幹部が出席した上でなされている会議でございます。
 これを四月二日付朝鮮商工新聞が報道しておりますが、まさに金融庁が我が日本国民に対して説明している内容に対する全面的挑戦の方針が堂々と語られているわけでございます。斜線の部分を日本語に訳して朗読いたしますと、こういう内容でございます。
  我々の愛国的同胞商工人たちは、状態が幾ら困難で複雑であっても、敬愛する将軍様のもとに全人民がかたく団結する祖国があり、総連組織に一心団結して闘争すれば必ず勝つというかたい信念と意志のもとにあらゆる障害と難関を克服していきました。 その結果、日本における民族金融機関をなくしてしまおうという内外反動の悪らつな企図を粉砕し、三月十七日に大阪、和歌山、奈良の「未来」、「兵庫ひまわり」、京都、滋賀の「京滋」信用組合が、翌日には関東信越の一都八県を網羅する「ハナ信用組合」がついに創立総会を迎え、新しい出発をすることになりました。 今、日本当局は、我々の信用組合と総連の間にくさびを打ち込もうとして干渉し圧力を加えてきています。新組合の「定款付記」は、言うまでもなくその産物です。組合に対する日本当局の不当な「要求」について、同胞と商工人の中で反発する声が高まっています。同胞社会の実態、そして商工団体が歩んできた半世紀の歴史を冷静に見れば、総連組織と切り離して考えることはできず、総連組織のもとに団結して初めて同胞社会を守ることができ、商工団体を強化発展させ企業権も固守していけるということは明確です。新信用組合も、総連の大衆的地盤と同胞商工人の愛国的情熱にかたく依拠して初めて発展できるのです
概略このような要点が記された会議録でございます。
 つまり、もうおわかりのとおり、日本国政府が日本国民に説明している内容と、公的資金を既に受け取って、かつこれから受け取ろうとする団体が認識している内容は、全然違うわけでございます。したがって、私が今読んだ内容からするならば、朝銀は日本の金融機関の問題であり、日朝関係とは関係ないという前提が崩れるわけでございます。
 政府はこれでも朝銀に公的資金を投入できるのかどうか、これをお伺いするわけですが、もう一つ材料がございます。今会議録を読みました商工連副理事長朴忠佑がハナ信用組合設立発起人代表になっております。この事実もまたつけ加えさせていただきます。常に金を受け取る相手は、朝鮮語で書いておりますけれども、朝鮮総連と朝銀、新しくできた朝銀も関係が切断されているということは全く考えていない。
 商工新聞の日本語で書いている最後のページの「ふらち」という取材余話を見ますと、商工連会長梁守政、先ほど挙げましたお名前の方ですが、会長です。日本当局があれこれ言っているが、理解しがたい点がある。これは日本語で書いてある。題名は「ふらち」。日本当局が新しい受け皿銀行と総連の関係があっては公的資金投入はできませんよと言っていることがふらちだと言って、コラムに書いておるわけですね。
 さて、私が明確な御答弁を期待しておるのは、日本の政府当局が国民に説明している内容と、朝鮮総連が新しい受け皿銀行に対して持っている関係は天地の開きがある、これでも投入できるのかということでございます。
福田国務大臣 ちょっと長くなりますけれども、説明させていただきます。
 朝銀信組も、我が国の法律に基づいて設立された我が国の金融機関ということである以上、その破綻処理につきましては、他の金融機関と同様に、預金保険法に基づいて、この法律の目的であります預金者保護等の観点から実施される必要があると考えております。
 具体的にちょっと申し上げますけれども、未処理の破綻六朝銀につきましては、本年三月二十日に新設受け皿組合の設立が認可されまして、預金保険法上の資金援助手続についても、受け皿に財務上の問題がなく、法令に基づき、三月二十八日に適格性の認定が行われ、三月二十九日に、資金援助の申し込みを受けた預金保険機構より、資金援助に要すると見込まれる費用がペイオフコストを上回ると認められる旨の報告がなされたところでありまして、今後、預金等全額保護のための資金援助が行われることになります。
 ただし、朝銀をめぐりましては、朝銀東京の朝鮮総連側への不正な資金の流れなどが明らかになったところでございまして、新設組合においては二度と同様の問題が起こらないように、架空名義口座の排除、監査機能の強化等の対策とあわせ、経営の独立性、透明性を確保するための対策がとられているところでございます。
 具体的には、定款において、朝銀信用組合や朝銀で構成される団体、朝鮮総連の役員経験者その他組合の経営の独立性を阻害するおそれのある者は役員としない。それから、役員は、朝鮮総連のいかなる地位にもつかず、いかなる職にも従事しないというようにされておりまして、仮に定款違反の事実が確認された場合には、金融庁において法令にのっとり適切な対応がなされるものと考えております。
 またさらに、架空名義等の真正権利者が把握されていない預金につきましては、現在、金融整理管財人において実態解明に努めているところでございます。それから、金融整理管財人においては、事業譲渡まで、引き続き架空名義、預金口座の実態解明に努めることとなりますけれども、譲渡時点においてなお真正権利者が判明していない預金があれば、これについては整理回収機構に移管の上的確に管理し、真正権利者が判明するまで資金援助は行わないという厳正な対応を行う考えでございます。
 さらに申し上げれば、未処理の破綻六朝銀の旧経営陣の責任追及については、金融整理管財人において鋭意取り組んできておりまして、八件の民事提訴、五件の刑事告訴、告発の実績が上がっておりまして、告訴、告発を端緒に当局の捜査が入り、刑事事件としての実態解明も進められているところであります。これは御案内のとおりであります。
 なお、事業譲渡が完了した後は、RCCが不良債権の実態解明を引き継いで行い、引き続き徹底した責任追及が行われるということになっております。そのように、厳正に法にのっとり今後の対応を考えてまいりたいと思っております。
西村分科員 法にのっとった法形式的な整合性を御説明いただきましたけれども、我が国の裁判の判例においても法人格否認の法理というものがございます。形式的には法律にのっとっておる、しかし実態は何だ、その実態を見なければ社会的な妥当性は図れないんだと。形式的な法を利用して、そしてその形式的な法を隠れみのにして、実態は法が期待するものと正反対にいったと。法人格を否認してその実態に光を当てて判断する、これが最高裁の判例にあらわれてきておりました。法人格否認の法理であります。
 私は、法人格の否認の法理を思い出します。朝信協は解散したといいますが、商工連の中に民族金融問題対策協議会を設置しておりまして、これが朝信協の役割にかわるものではないか。そしてまた、今まで、「ふらち」と題するコラムによって、日本政府の言っていることは理解しがたい、つまり、官房長官が今この場で御説明なさったことは理解しがたいんだ、なぜなら朝鮮総連と信組は一心同体だから。堂々と説明しているわけでございます。彼らは、日本人は日本語しか読めないと思っているから韓国語で書いたのかもしれませんが、私が翻訳させていただいたところは、この内容でございます。
 私の質問は、これを記録にとどめておくこと、日本国の政治においても方向転換の機会は幾らでもあったということを後世知っていただくということでございます。
 さてこの上で、私の判断でございますが、日本国政府の朝鮮総連と朝銀に対する認識は誤っている。なぜ誤ったのかといえば、昨年の十一月から十二月にかけて、今大臣が御説明いただいた朝鮮総連に対する一連の警察の強制捜査がございました。このときに動いておったのは、警察庁捜査二課だけでございます。しかし、外事一課、生活安全課、また国税庁、これらは朝鮮総連に対して長年情報を収集して、捜査第二課よりも外事警察が情報の宝庫であろうと思うわけでございます。どうかこれから、今の情報に加うるに、内閣内にある先ほどのプロジェクトでもお願い申し上げますが、国税庁、警察庁の外事一課、生活安全課、これらの情報を総合的に加えて判断していただきたい、これを切にお願い申し上げるわけです。よろしくお願いします。
 では次に、私はまた質問を続けますけれども、官房長官は、私が申し上げるまでもなく、十分御存じで、そして心で受け入れておられることと存じますが、拉致された被害者の日本における家族のこの二十年の歩みというのは、まさに惨たんたるものでございました。
 やっと国政で取り上げるようになったのはつい数年前。それまで、行方不明者があって若い女性だと聞けば警察に行き、その頭蓋骨を見ざるを得ない。そして、骨にこびりついている衣服が我が娘の衣服と似ているのかどうか確認せざるを得ない。この十数年を経て、そしてまだ帰ってこない。外務省に、米を支援するよりは娘を早く返してくれと座り込み、自民党本部の前でも座り込んだその母親に対し投げかけられた言葉は、国内でほえておっても問題は解決しない。米を送った主導的な幹部がそう申したわけでございます。
 言うまでもなく、ほえるという言葉は人間に使う言葉ではございません。しかし、我が国においては、まさにその人間に使われない、犬に対して使う言葉が、十三歳の娘を拉致された母親に対して公然と投げかけられたのでございます。これが、人権擁護と称しながら、真の人権侵害に対して目をつぶっている我が国の姿であります。
 さて、このような状態、大臣、特に御承知のとおりでございますが、どうにかならないものなのか。犯罪被害者給付金支給法というのがございます。これは、この社会において通り魔等の一定の犯罪によって死に至り、また重大な身体上の障害を受けた人に対しては、社会全体が厚生の観点からこの人を救うための一定の補償をしようということでございます。
 国権を侵され、国家主権を侵されて、そして北朝鮮に連れられていった家族の救出運動は、国家が税金で取り組まねばならない問題であります。米五十万トンを送る金があるならば、この家族に対して、生活困窮に対して補償する道はないのかと私は思っているわけでございます。
 官房長官、どうでございましょうか。何か工夫はないのでありましょうか。
福田国務大臣 拉致された被害者の御家族の心中は、察して余りあるものがございます。したがいまして、政府もこのような御家族のお気持ちを踏まえつつ、この問題に取り組んでおるわけであります。
 犯罪被害者給付金支給法ということもおっしゃいましたが、これは国内の身体犯罪に適用される法律でございますけれども、どのような救済というか援助ができるのかどうかということは、我々としても決して関心がないわけではございません。この問題を解決して、そして御家族の方々が安心をしていただくためにも、今後、国交正常化交渉その他の日朝間の対話の場で、この問題の解決に向けて粘り強く取り組んでいくということが一番大事なことではないのかなというように考えて、この方針で進んでまいりたいと考えているところであります。
西村分科員 その余の問題に入りますと時間が大幅に経過すると思いますので、これでやめますけれども、やはり我々は、闘う民主主義というものの言葉の持つ意味をいま一度思い起こす必要があると思うんです。
 法的な形式性の中で、この民主主義の社会を覆すことが起こっている。この拉致問題についても、朝銀に対する公的資金投入についても、法的にはそのとおりなんです。法的にはそのとおりなんですが、実態が違うんです。これでは、法が正義を行っている、行政が正義を行っている、政治が心を持っているということにはならないわけでございます。
 大臣に対しては、よくおわかりの大臣のことでございますから、これ以上のことはこの場でくどくど申しませんが、どうか拉致された家族の苦痛を察して、小泉総理も小泉ドクトリンを発表された上でございますから、どうかこれからも御尽力賜りますように切にお願い申し上げます。
 質問を終わります。
持永主査 これにて西村眞悟君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして内閣所管の質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
持永主査 これより国会所管について審査を行います。
 まず、国会主管歳入決算及び衆議院関係決算の概要説明を聴取いたします。谷衆議院事務総長。
谷事務総長 平成十年度国会主管一般会計歳入決算及び衆議院関係歳出決算の概要を御説明申し上げます。
 国会主管の歳入につきましては、予算額十九億七千三百一万円余に対しまして、収納済み歳入額は十九億九千四百八十五万円余であり、差し引き二千百八十四万円余の増加となっております。
 次に、衆議院関係の歳出につきましては、当初の歳出予算額は六百八十八億九千九百八十万円余でありまして、これに立法情報システムの開発のための予算補正追加額五億三千四百六十五万円余、施設整備のための予算補正追加額二十八億八千三十六万円、前年度からの繰越額四億七千百八万円余を加え、既定経費の節約等による予算補正修正減少額四億四千二百七万円余を差し引きますと、歳出予算現額は七百二十三億四千三百八十三万円余となります。
 この歳出予算現額に対し、支出済み歳出額は六百六十七億六千五百二十一万円余でありまして、その内訳は、国会の運営に要した経費六百三十一億九千七百二十五万円余、衆議院の施設整備に要した経費三十五億六千七百九十五万円余であります。
 歳出予算現額と支出済み歳出額との差額は五十五億七千八百六十二万円余となっておりますが、このうち翌年度に繰り越した額は三十六億七千八百八十三万円余であり、不用額は十八億九千九百七十九万円余であります。
 翌年度繰越額の主なものは衆議院議長公邸増改築工事費であり、不用額の主なものは議員秘書手当でありまして、議員秘書手当の支給が少なかったことに伴い不用となったものであります。
 以上が、平成十年度国会主管一般会計歳入決算及び衆議院関係の歳出決算の概要でございます。
 引き続きまして、平成十一年度国会主管一般会計歳入決算及び衆議院関係歳出決算の概要を御説明申し上げます。
 国会主管の歳入につきましては、予算額十九億八千二百三十九万円余に対しまして、収納済み歳入額は二十億二千百三十一万円余であり、差し引き三千八百九十二万円余の増加となっております。
 次に、衆議院関係の歳出につきましては、当初の歳出予算額は七百八億七千七百四十四万円余でありまして、これに基礎的情報のデジタル情報化推進のための予算補正追加額三億五千七百七十七万円余、施設整備のための予算補正追加額十九億二百六十一万円余、前年度からの繰越額三十六億七千八百八十三万円余、公共事業等予備費の使用額一億五千五百五十七万円余を加え、既定経費の不用等による予算補正修正減少額十七億五百四十万円余を差し引きますと、歳出予算現額は七百五十二億六千六百八十五万円余となります。
 この歳出予算現額に対し、支出済み歳出額は六百九十一億二千三百八万円余でありまして、その内訳は、国会の運営に要した経費六百三十三億六千六百八十二万円余、衆議院の施設整備に要した経費五十七億五千六百二十六万円余であります。
 歳出予算現額と支出済み歳出額との差額は六十一億四千三百七十六万円余となっておりますが、このうち翌年度に繰り越した額は四十二億七千八百八十四万円余であり、不用額は十八億六千四百九十一万円余であります。
 翌年度繰越額の主なものは国会審議テレビ中継施設新築工事費であり、不用額の主なものは退職手当でありまして、退職者が少なかったことに伴い不用となったものであります。
 以上が、平成十一年度国会主管一般会計歳入決算及び衆議院関係の歳出決算の概要でございます。
 よろしく御審議のほどをお願いいたします。
持永主査 次に、国立国会図書館関係決算の概要説明を聴取いたします。戸張国立国会図書館長。
戸張国立国会図書館長 平成十年度国立国会図書館関係歳出決算の概要を御説明申し上げます。
 当初の歳出予算額は二百三十三億七千三百九十八万円でありまして、これに立法情報システムの開発のための予算補正追加額一億八千五百六十四万円、電子図書館情報システムの開発のための予算補正追加額十三億二百九万円、国立国会図書館の施設整備のための予算補正追加額三十八億六千九百十一万円余、前年度繰越額十一億三千六百四十一万円余を加え、既定経費の節約による予算補正修正減少額二億九百四十六万円余を差し引きますと、歳出予算現額は二百九十六億五千七百七十七万円となります。
 この歳出予算現額に対し、支出済み歳出額は二百四十四億四百六十六万円余でありまして、その内訳は、国立国会図書館の管理運営に要した経費百四十三億二千九百二万円余、科学技術関係資料の収集整備に要した経費五億八千八百十五万円余、国立国会図書館の施設整備に要した経費九十四億八千七百四十八万円余であります。
 歳出予算現額と支出済み歳出額との差額は五十二億五千三百十万円余でありまして、その内訳は、翌年度繰越額四十九億三千五百五十八万円余、不用額三億一千七百五十二万円余となっております。
 以上が、平成十年度国立国会図書館関係歳出決算の概要でございます。
 引き続きまして、平成十一年度国立国会図書館関係歳出決算の概要を御説明申し上げます。
 当初の歳出予算額は二百五十三億七千百二十一万円余でありまして、これに基礎的情報のデジタル情報化推進のための予算補正追加額三億五千七百七十七万円余、電子図書館基盤システムの開発のための予算補正追加額三億五千六百四十二万円余、国立国会図書館の施設整備のための予算補正追加額三十一億二千九百二十六万円、前年度繰越額四十九億三千五百五十八万円余を加え、既定経費の節約等による予算補正修正減少額五億三千三百五十八万円を差し引きますと、歳出予算現額は三百三十六億一千六百六十八万円余となります。
 この歳出予算現額に対し、支出済み歳出額は二百四十二億九千百四十七万円余でありまして、その内訳は、国立国会図書館の管理運営に要した経費百四十三億八千九百九十万円余、科学技術関係資料の収集整備に要した経費六億六千三百十二万円余、国立国会図書館の施設整備に要した経費九十二億三千八百四十四万円余であります。
 歳出予算現額と支出済み歳出額との差額は九十三億二千五百二十万円余でありまして、その内訳は、翌年度繰越額九十億二千三百六十六万円余、不用額三億百五十四万円余となっております。
 以上が、平成十一年度国立国会図書館関係歳出決算の概要でございます。
 あわせて、よろしく御審議のほどをお願いいたします。
持永主査 次に、裁判官弾劾裁判所関係決算の概要説明を聴取いたします。天野裁判官弾劾裁判所事務局長。
天野裁判官弾劾裁判所参事 平成十年度及び平成十一年度裁判官弾劾裁判所関係歳出決算の概要を御説明申し上げます。
 まず、平成十年度裁判官弾劾裁判所関係歳出決算の概要でございますが、当初の歳出予算額は一億二千二百六十九万円余でありまして、これから既定経費の節約による予算補正修正減少額八十八万円を差し引きますと、歳出予算現額は一億二千百八十一万円余となります。
 この歳出予算現額に対し、支出済み歳出額は一億一千四百三十四万円余でありまして、このうち主なものは職員の人件費であります。
 歳出予算現額と支出済み歳出額との差額は不用額でありまして、七百四十七万円余となっております。
 以上が、平成十年度裁判官弾劾裁判所関係の歳出決算の概要でございます。
 引き続きまして、平成十一年度裁判官弾劾裁判所関係歳出決算の概要でございますが、当初の歳出予算額は一億二千二百一万円余でありまして、これから既定経費の不用等による予算補正修正減少額三百九十三万円余を差し引きますと、歳出予算現額は一億一千八百八万円余となります。
 この歳出予算現額に対し、支出済み歳出額は一億一千五百四万円余でありまして、このうち主なものは職員の人件費であります。
 歳出予算現額と支出済み歳出額との差額は不用額でありまして、三百三万円余となっております。
 以上が、平成十一年度裁判官弾劾裁判所関係の歳出決算の概要でございます。
 よろしく御審議のほどお願いいたします。
持永主査 次に、裁判官訴追委員会関係決算の概要説明を聴取いたします。片岡裁判官訴追委員会事務局長。
片岡裁判官訴追委員会参事 平成十年度裁判官訴追委員会関係歳出決算の概要を御説明申し上げます。
 当初の歳出予算額は一億四千百八十六万円余でありまして、これから既定経費の節約による予算補正修正減少額百三十五万円を差し引きますと、歳出予算現額は一億四千五十一万円余となります。
 この歳出予算現額に対し、支出済み歳出額は一億三千二百九十万円余でありまして、このうち主なものは職員の人件費であります。
 歳出予算現額と支出済み歳出額との差額は不用額でありまして、七百六十万円余となっております。
 以上が、平成十年度裁判官訴追委員会関係の歳出決算の概要でございます。
 引き続きまして、平成十一年度裁判官訴追委員会関係歳出決算の概要を御説明申し上げます。
 当初の歳出予算額は一億四千四百四十四万円余でありまして、これから既定経費の不用等による予算補正修正減少額七百八十四万円余を差し引きますと、歳出予算現額は一億三千六百六十万円余となります。
 この歳出予算現額に対し、支出済み歳出額は一億三千二百十七万円余でありまして、このうち主なものは職員の人件費であります。
 歳出予算現額と支出済み歳出額との差額は不用額でありまして、四百四十二万円余となっております。
 以上が、平成十一年度裁判官訴追委員会関係の歳出決算の概要でございます。
 よろしく御審議のほどをお願いいたします。
持永主査 この際、お諮りいたします。
 参議院関係決算の概要説明につきましては、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
持永主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
持永主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院石野第一局長。
石野会計検査院当局者 平成十年度国会の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
 平成十一年度国会の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
持永主査 以上をもちまして国会所管についての説明は終わりました。
 これより質疑に入るのでありますが、その申し出がありませんので、国会所管については終了いたしました。
    ―――――――――――――
持永主査 これより自治省所管及び公営企業金融公庫について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。片山総務大臣。
片山国務大臣 自治省所管の決算につきまして、概要を御説明申し上げます。
 まず、平成十年度でございます。
 一般会計の歳出決算につきましては、歳出予算現額十五兆二千五百九億五千六百四十八万円余でありまして、これに対し、支出済み歳出額は十四兆九千九十二億四千十五万円余で、差額三千四百十七億一千六百三十二万円余を生じましたが、この差額のうち、翌年度繰越額は三千三百六十五億七千七十六万円余、不用額は五十一億四千五百五十六万円余であります。
 次に、特別会計決算につきまして、御説明を申し上げます。
 自治省関係の特別会計といたしましては、交付税及び譲与税配付金特別会計がありますが、この特別会計には、交付税及び譲与税配付金勘定と交通安全対策特別交付金勘定を設けております。
 まず、交付税及び譲与税配付金勘定につきましては、歳入予算額三十六兆四千三百五十七億七千九百四十一万円余でありまして、これに対し、収納済み歳入額は三十六兆四千五百八十六億三千四百五十一万円余となっております。
 また、歳出予算現額は三十六兆二千九百四十六億三千八百二十六万円余でありまして、これに対し、支出済み歳出額は三十六兆九百七十三億四千二百七十七万円余、不用額は千九百七十二億九千五百四十八万円余であります。
 次に、交通安全対策特別交付金勘定につきましては、歳入予算額千三億九百八十三万円余でありまして、これに対し、収納済み歳入額は九百八十六億七千百五十万円余となっております。
 また、歳出予算現額は九百二十五億六千三百六十七万円余でありまして、これに対し、支出済み歳出額は九百七億三千二百六十八万円余、不用額は十八億三千九十八万円余であります。
 続きまして、平成十一年度でございます。
 一般会計の歳出決算につきましては、歳出予算現額十三兆五千三百八億三百九十八万円余でありまして、これに対し、支出済み歳出額は十三兆四千七十三億一千百三十五万円余で、差額一千二百三十四億九千二百六十二万円余を生じましたが、この差額のうち、翌年度繰越額は百三億五千二百九十四万円余、不用額は千百三十一億三千九百六十八万円余であります。
 次に、特別会計決算につきまして、御説明を申し上げます。
 まず、交付税及び譲与税配付金勘定につきましては、歳入予算額四十四兆三百七十五億八千二百八十六万円余でありまして、これに対し、収納済み歳入額は四十四兆一千八十九億八千二百七十二万円余となっております。
 また、歳出予算現額は四十三兆八千九百四十一億三千七百二十一万円余でありまして、これに対し、支出済み歳出額は四十三兆七千七百九十四億四千三百十三万円余、不用額は千百四十六億九千四百七万円余であります。
 次に、交通安全対策特別交付金勘定につきましては、歳入予算額九百九十八億四十一万円余でありまして、これに対し、収納済み歳入額は九百六十九億七千八百七十五万円余となっております。
 また、歳出予算現額は九百二十二億七千百八十万円余でありまして、これに対し、支出済み歳出額は八百九十九億八千百八十六万円余、不用額は二十二億八千九百九十三万円余であります。
 以上をもちまして決算の概要説明を終わります。
 何とぞよろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
持永主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院石野第一局長。
石野会計検査院当局者 平成十年度自治省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。
 検査報告に掲記いたしましたものは、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項一件であります。
 これは、消防施設整備事業における現場打ち防火水槽の設計に関するものであります。
 この補助事業において、事業主体が現場打ち防火水槽の設計に当たり、交付要綱で定める鉄筋の使用量等を満たせば、構造計算を行わなくても所定の強度が確保されるものと誤解して構造計算を行わなかったなどのため、所要の安全度が確保されていない状態になっていました。
 そこで、消防庁において、設計を適切に行うよう事業主体を指導する要があると認められましたので、当局の見解をただしましたところ、消防庁では、十一年十月に、都道府県に対して通知を発し、現場打ち防火水槽の設計に当たり強度を確保するための構造計算を行う必要があることを事業主体に周知徹底させるとともに、交付申請の審査に際し都道府県が構造計算書等によりその強度を確認することとする処置を講じたものであります。
 以上、簡単でございますが、説明を終わります。
 平成十一年度自治省の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
 平成十年度公営企業金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
 平成十一年度公営企業金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
持永主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。片山総務大臣。
片山国務大臣 平成十年度決算に関する会計検査院の検査報告に掲記されております処置済み事項につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 消防施設整備事業における現場打ち防火水槽の設計に関して指摘を受けたものがありましたことは、まことに遺憾に存じます。
 会計検査院の指摘に基づき、平成十一年十月に各都道府県に通知を発出するなどして、市町村に対しては現場打ち防火水槽の設計図の作成に当たり補助規格に適合するよう構造計算を行う等の必要性を周知し、都道府県に対しては補助金交付申請書の内容審査等を行う際には補助規格に適合していることの確認を求めるなど、所要の措置を講じたところであります。
 今後は、なお一層適切な会計処理の実施に努め、この種事例の再発防止を図る所存であります。
 これをもちまして概要の説明を終わります。
 何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
持永主査 この際、お諮りいたします。
 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
持永主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
持永主査 以上をもちまして自治省所管及び公営企業金融公庫についての説明は終わりました。
    ―――――――――――――
持永主査 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平岡秀夫君。
平岡分科員 民主党の平岡秀夫でございます。
 きょうは、これまでの決算あるいは行政の結果を踏まえて、これからの地方自治あるいは地方分権のあり方について、少し大臣と議論をさせていただきたいという気持ちでやってまいっております。
 ちょっと取り上げてみたいテーマは二つほどございますけれども、まず一つが、地方財政再建特別措置法という法律でございます。この法律は、大臣も御承知のように、昭和三十年に制定された法律でございまして、地方公共団体の財政の節度を維持するというような視点から、当分の間、国とかあるいは特殊法人に対して地方公共団体が寄附金等を出す場合には、あらかじめ当時の自治大臣に協議してその同意を得なさいというふうに法律が規定してあるわけであります。
 ところが、昭和六十一年に国鉄改革法が制定されまして、当時の国鉄がJRということで民営化されるというような事態に至りまして、実は、この地方財政再建特別措置法の二十四条の第二項に日本国有鉄道というのがあったのが、法律改正で取っ払われました。
 取っ払われたのですけれども、そのときに、あわせて附帯決議が衆参でついておりまして、その内容をちょっと言いますと、「各旅客鉄道株式会社」、これはJRですけれども、「及び日本貨物鉄道株式会社は、地方公共団体に対し、地方財政再建促進特別措置法第二十四条第二項の趣旨をこえるような負担を求めないこと。」というような附帯決議がついております。
 これに基づいて、一体、自治省はどのような理解をし、そしてどのような手続といいますか、枠組みを決めたのでしょうか。
林政府参考人 昭和六十一年の国鉄改革関連法案の衆参両院での採決に際しまして、今お述べになられましたような附帯決議がなされているわけであります。これは、改革関連法案の施行によりまして、JRが地方財政再建促進特別措置法第二十四条第二項の対象外となることに伴い、JRが地方団体に寄附を求めるなど、地方団体へ負担の転嫁をすることのないよう、政府に配慮を求めたものと理解をいたしているところでございます。
 この附帯決議の趣旨、また従来の経緯、地方財政の状況等にかんがみまして、政府といたしましては、当分の間、JRに対する地方団体の寄附金等の支出につきましては、従前の国鉄に対する寄附金等の支出制限の制度に準じた運用を行うこととしてきたところでございます。
平岡分科員 そもそも、この法律自体が「当分の間、」というふうに書いてあるので、またそこで当分の間というのもちょっと何か変な気がするのです。
 今の説明は、趣旨は確かにそういう趣旨でいろいろな運用をされたということであるのですけれども、昭和六十二年三月三日に、自治省の財政局指導課長から各都道府県の総務部長あるいは政令指定都市の財政局長に対して通達が出されているわけです。ここの内容というのは、私が理解するところでは、協議を求めているということなんですね。協議を求めるということは、協議をして、自治省がだめだと言ったら、これは寄附金を支出することはできないということになってしまうわけであります。
 今、BSEの問題についても通達行政でやって、その後、通達がどのように効力があったのか、あるいはいろいろな問題が指摘されているわけでありますけれども、地方公共団体に対して具体的な協議をしなさいという義務を課し、そして、同意が得られない限りはそうした寄附金の支出ができないという制度を、このような一片の通達でやるということでいいんですか、大臣。
片山国務大臣 附帯決議を衆参で、国権の最高機関がおつけになって、同じような、過度の負担を求めるな、こういうことですし、もともと地財再建法の二十四条というのは、もう委員よく御承知のように、財政秩序をしっかりやろう、お互いの節度をやろうと。国の仕事は決まっている、地方の仕事も決まっていますね。そこで、国の仕事、地方団体の仕事ではないことに地方が金を出すということは、これは財政秩序、財政節度を乱すのですよ、だからそれをとめようという法律ですよね、特に地方財政が悪いときですから。
 そういう法律があって協議というのをやっているのだけれども、御承知のように民営化になりましたよね、昔とは違うようになった。しかし、衆参の国会の決議として、同じように扱えというものですから、協議はしようと。ただ、法律に基づく協議ではありませんから、協議が調わなくたって法律違反にはならないので、それは事実上よく相談しましょう、こういうことですから、法律に基づく協議と事実上の協議というのは、委員、そこが違いますから、それは変わっているのですよ。変わっているのだけれども、衆参の附帯決議を尊重するという、大変謙虚な立場でこういう通知を出した次第であります。
平岡分科員 衆参の附帯決議といいますけれども、さっき私、衆参の附帯決議を読み上げました。この附帯決議は、JR各社に対して、地方公共団体に対し、そういう「趣旨をこえるような負担を求めないこと。」と書いてあるのであって、本来、私は通達でいいとは言いませんけれども、通達を出す先は、地方公共団体に対して出すのではなくて、法律では「支出してはならない。」といって、地方公共団体に向けてこの法律が義務を課しているわけですよね。
 そうではなくて、この附帯決議の内容というのは、JRに対して求めてはいけないよということを言っているわけであって、地方公共団体に対して自治省が協議を求めるというような枠組みは私はおかしいのだろう、まさに地方自治、地方分権という趣旨を逸脱する通達であったというふうに思うのですけれども、いかがでしょうか。
片山国務大臣 附帯決議はJRに対してやっているのだけれども、JRが地方団体に言ってきたときに、JRの方が強いですから、地方団体が困ってはいかぬので、そういうときは協議してください、場合によっては地方団体にかわってJRと話します、こういう趣旨で、委員、基本的には、法律に基づく協議ではないんですよ。事実上の協議をお願いしている、こういうことでございますので、そこのところはひとつ御理解賜りたいと思います。
平岡分科員 先ほど大臣の答弁の中で、事実上の協議だから、協議に応じなかったような場合でも、別に、特に不利益をこうむるようなことはないのだというようなお話をされましたけれども、もう一度それを確認したいと思います。
 この協議は、法律に基づく協議ではなくて事実上の、仲よくやろうというような趣旨なのかもしれませんけれども、両者で相談をしてうまく対応しようという趣旨なので、地方公共団体の必要性に応じて寄附等を実施する場合には、それは総務省として、そういうことを決定した地方公共団体に対して不利益を及ぼすことはないということを明言していただきたいというふうに思います。
片山国務大臣 それは、協議は事実上のことで、相談をしてもらうということなんだけれども、法令上の協議じゃないといって余りむちゃくちゃな、例えばJRから言われたことに負担をするようなことは、もともと今のこの思想は、財政秩序をしっかりする、節度を守ってもらうということですから、節度を超えたり秩序を大幅におかしくするようなことになると、それによって不利益を直接こうむらせることは考えていませんけれども、全体として当該団体の財政がおかしくなるようなことは困りますので、そういうときは注意をいたしますし、不利益はできるだけこうむらせないようにしますけれども、しかし、場合によっては、委員、それは不利益をこうむることもありますよ、財政秩序や節度を大幅に乱すなら。
平岡分科員 私も、地方公共団体の財政秩序を大幅に乱すようなものをどんどんやっていいという意味では全くありません。それは、基本的には、まず地方が、分権あるいは自治の世界の中でみずからが判断をするということがやはり一番大切なのではないか。
 先ほど大臣、いみじくも、地方が金を出すのをとめようという趣旨なんだというようなことをちょっと言われましたけれども、実はそうじゃなくて、出すときには協議をしなさいということで協議をして、これまでも何件か、もう認めてきたものもあるわけでありますよね。だから、そういう意味でいうと、これはやはり第一は、まず地方の自主的な判断にゆだねるということが本来あってしかるべきというふうに私は思っております。
 そこで、実は、JR法については昨年六月にさらに改正されまして、JR東日本、西日本そしてJR東海と、いわゆる株式を全部民間が持つというような形で、完全民営化を認める法律が成立いたしました。これによって、この附帯決議に基づく自治省の通達というのは、今どういう状況に入っているのでしょうか。
片山国務大臣 これは局長の方が詳しいと思いますけれども、完全民営化ですから、これはもう通知から対象外になる、こういうふうに御理解賜っていいと思います。
平岡分科員 今のお話を聞いて少し安心したのでありますけれども、ただ、当時、八月十日に、総務省の自治財政局長から都道府県知事に対して出されている通達を見ますと、こういうくだりがあります。いわゆる完全民営化されることになりました、「したがって、JR東日本等に対する地方公共団体の寄附金等の支出については、昭和六十二年通知の対象から除外することとするが、安易に寄附金等を支出することがないよう、従前の取扱いを参考にしながら適切に対処していただきたい。」
 これは、ある意味では当然のことが書いてあるんだろうと私は思いますけれども、何もここまで自治省がおせっかいをしなくても、地方公共団体は、しっかりと、自分たちの財政状況を見ながら、本当に地方の住民の人たちのニーズに応じた行政サービスを提供していくということで、もっと信頼をしていただきたいというふうに思うのですけれども、大臣、いかがでしょう。
片山国務大臣 それは念のために書いているんですね、自治省というのは過保護なんですよ、昔は。今は大分変わってきましたけれどもね。
 だから、書かぬでもいいことを書いているんだけれども、しかし、安易に出してはいけません、財政秩序は守る、節度は持ってください、そういうことを大変教育ママ的発想で書いているので、そこに大変な意味はないと私は思います。安易なことはやめてくれ、これはもうどんなところにも言っていますから。
平岡分科員 ちなみに、参考までにちょっとお聞かせいただきたいんです。
 先日、この実行状況について、どういう状況になっているのかということをちょっとお伺いしましたら、バリアフリーなどを中心にして、現在も地方自治体と総務省との間で協議をしている案件が何件かあるというふうに聞いておるんです。
 現在、過去三年とか四年とか五年でいいんですけれども、どのような協議実績になっているのか、もし拒否をしたような事案でもあるようであれば、それも含めて教えていただきたいというふうに思います。
林政府参考人 今手元に、昭和六十二年度から平成十二年度までの間に、地方団体がJRに対しまして寄附等を行った実績の資料がございますが、この間に、件数で三百九件、金額にいたしますと二千四十八億円となっております。
 拒否をしたという事例は聞いておりませんが、内容につきましては、先ほど御指摘ございましたように、駅舎の橋上化等に伴う寄附であるとか、あるいはバリアフリー化に伴う寄附であるとか、その他、新駅の設置に伴うものも含めまして、三百九件となっているところでございます。
平岡分科員 今、拒否をしたケースはないと言われるから、それは地方自治体が、自分たちの財政状況をよく考え、地方の住民の人たちのニーズというものをよく考えて、十分にそういうことを踏まえた上で、当時の自治省、現在の総務省に相談しているというふうにも受け取れなくもないんですけれども、実際には、私がかかわっているところでも、これをやろうとしたら、何かこれは違反だ、やることについては認められないというようなことを言われたような事案もあったわけでありまして、拒否をしたケースがないというのはちょっと私は腑に落ちないんですけれども、拒否をしたケースがないというのはどういうことなのか、もう一遍言ってください。本当に地方自治というものが守られているのか。もう一遍答弁してください。
林政府参考人 私も何件か御相談に応じたことがございますが、やはり過度な負担になり、法の趣旨に反するようなものにつきましては、御理解をいただき、その計画を見直していただいたような例もございますが、基本的には、地方団体の住民の利便が増すような形で、JRと地方団体との間でよく話をしていただきまして、この範囲でお互いに協力をして地域の発展のための施策をやっていこう、こういう形で話が調ったというふうに理解をいたしております。
平岡分科員 答弁としてはそういう答弁にならざるを得ないのかもしれませんけれども、実態は、かなり総務省が自分の考え方を自治体に押しつけているというところはあるんだろうと私は思いますので、そこは総務省も、本来、地方分権、地方自治を進めていかなければならない立場にある官庁でありますから、そういう視点でこの問題を見ていっていただきたいということをお願いしておきたいと思います。
 ただ、去年の六月にJR法が改正されて、JR西日本とかJR東日本は外れたということになってはおりますけれども、実はまだJRについては、北海道、九州、四国は依然として完全民営化ではないという状況で残されております。これを一体これからどのようにしていくのか。
 先ほど答弁の中に、法律そのものも「当分の間、」になっている、そして通達そのものも「当分の間、」になっている、こういう事態を踏まえて、一体どういう状況が生じたらこの当分の間ということをやめていただけるんでしょうか。大臣、お願いします。
片山国務大臣 法律上の「当分の間、」というのは、これはエンドレスなんですよ、「当分の間、」と書いていますけれども。
 そこで、今の状況で、特に三島は完全民営化じゃありませんね。財政基盤も大変弱うございますし、また地方も、三島絡みの地方団体は財政基盤が強いところが少ないですよね。そういうことで、三島については今までどおりの扱いをさせてもらう。だから、三島関係の地方団体が三島に出すときは少し厳しくさせてもらう。本州の方のJRについては、これは安易に肩がわりするようなことは慎んでもらうけれども、それ以外はできるだけやってもよろしい、こういうことで、当分の間はといっていつまでと言われても困りますが、しばらくはやらせてもらう、こういうことでございます。
平岡分科員 確かに、法律で「当分の間、」と書いてあれば、それが改正されるまでは続くというのはわかるんですけれども、私が申し上げているのは、昭和六十二年に出された通達、この中で、当分の間これまでと同じようなことをするんだ、そして協議をしなさいという位置づけになっているんですよね。私はそっちの方の話を聞いているわけですね。
 結果的には、通達で、当分の間は協議しなさい、そういう位置づけになっている。この通達を一体どういう状況が生じたらやめるのか、どういう状況が生じたら地方分権、地方自治という趣旨にのっとって地方の自主性にゆだねられることになるのか、これを明確に答弁していただきたいと思います。
片山国務大臣 それはもう少し状況を見なければいけませんが、基本的には、こういう制限はやめた方がいいんですよ。ただ、今の地方財政の状況では、前より悪くなっているんだから、なかなか結構ですというわけにいかないのですが、我々は、殊さら協議を求めようとか、殊さら財政支出を抑えようという気はありません。しかし、当該地方団体の財政運営を適正にやってもらわなければいかぬという一方の要請がありますから、そこら辺の調和をこの協議でとりたいと思っておりますが、基本的には、協議は将来やめる方向ですよ。ただ、今いつまでだと言われても困るので、もうちょっと地方財政の状況を見守ってからにさせていただきたいと思います。
平岡分科員 最初の質問に戻るんですけれども、地方公共団体に対して何らかの義務を課するということであるならば、それはやはりきちっと法律でその必要性を国民の皆さんに、本当にこういう状況だからこれが必要なんですよ、だから法律で認めてくださいという形でいかなければいけないんだろうと思うんですね。通達で当分の間協議せいといって、それで地方自治体に言うことを聞かせるというような形での行政のあり方というのはやはり見直すべきであろうというふうに私は思っているということを最後に申し上げたいというふうに思っております。
 それでは次に、もう一つのテーマを取り上げて、やはり地方自治、地方分権のあり方についての議論をしてみたいというふうに思うんです。
 これは、地方公共団体の首長の退職手当についての問題でございます。きょうは、特別職の国家公務員、特に大臣については退職手当の金額はどのように算定されるのかということについてお聞かせ願いたいということでお呼びしておりますので、ちょっと説明していただけますでしょうか。
久山政府参考人 お答え申し上げます。
 国務大臣が退職しました場合の退職手当につきましては、一般の職員と同様に、俸給月額に国家公務員退職手当法に定められております勤続年数ごとの支給率を乗じまして退職手当額が算定される仕組みとなっておるところでございます。
平岡分科員 今、特別職の国家公務員、特に大臣についてどうなっているかということを聞きましたけれども、地方公共団体の首長の退職手当というのはどういうふうになっているのかというのを、これは事務方でも結構ですけれども、教えていただけますでしょうか。
荒木政府参考人 お答え申し上げます。
 地方公共団体の特別職であります首長の退職手当につきましては、現在の算定方式は、退職時の給料月額に在職月数を掛けまして、それに支給率、これにつきましては団体によって多少差異がございますが、〇・五とか〇・六とか、そういったような支給率を掛けて算定しているところでございます。
平岡分科員 今の支給率も、私が事前にいただいたものでは、もっと〇・八とかいうようなものもあるんですけれども、殊さらに〇・五から〇・六というふうに低い数字を言われたのは何か意味があるんですか。
荒木政府参考人 特に例示として〇・五、〇・六を申し上げましたが、今委員からお話ございますように、知事につきましては〇・八で算定している団体もございます。それは御指摘のとおりでございます。
平岡分科員 今の特別職の国家公務員、特に大臣あるいは地方公共団体の首長の退職手当、これの算定方式をちょっと比較してもらったわけですけれども、細かいところはちょっと違う。いろいろな支給率の掛け方があるので、計算の仕方が全く同じだということではないんですけれども、基本的には、大臣については在職年数を基本にして退職手当を計算する、地方公共団体の首長に対しては在職月数で退職手当を計算する。いろいろと比較してみますと、単純に完全に十二倍ということではないんですけれども、十倍近い退職手当が支給されるということになっているんですけれども、大臣、この点についてはどのようにお感じになりますでしょうか。
片山国務大臣 大臣の場合は短いですよね、在職が。それから、首長さんの場合には比較的長いということと、もう一つは、首長は条例で決めるんですね。だから、どこかの条例がやったものの都合のいい方に倣うというようなところがありますよ、地方団体の条例は。そういうことでこういうことになったので、私は、国務大臣と知事を比べて、ややバランスを欠いているなという感じはしております。
平岡分科員 これは、大臣は自治省に古くからおられるから、もしかしたらこの経緯を知っておられるかもしれません。ちょっと事務方にどうしてこんなふうになっているのかということを聞いたら、よく経緯はわかりませんということだったんですけれども、もし大臣なりあるいは事務方の方でどうしてこういうことになっているのかという経緯がわかったら、教えていただきたいと思うんです。
荒木政府参考人 算定方式の制定の経緯でございますが、今委員のお話にございましたように、かなり昔といいますか、昭和二十年代後半ごろから現在のような算定方式が用いられているところでございまして、このようにかなり昔のことでもございますので、私ども、関係の地方団体等に幾つか聞いたりもいたしましたが、なかなかその経緯は明らかではございません。
 いずれにしましても、首長につきましては、任期の定めがある公選の職であるということ、あるいは職責の重要性等にかんがみまして、一般職の地方公務員とは異なる、現在のような支給基準や支給方法が定められているものと考えているところでございます。
平岡分科員 かつて昭和五十四年に、公務員部長から各都道府県知事あるいは政令指定都市の市長あてに、「地方公務員の退職手当制度及びその運用の適正化について」ということで通達が出されておりまして、地方公務員、これは一般職が中心であろうかと思いますけれども、地方公務員の退職手当のあり方について適正化を図っていけ、こういうことを言っておるわけであります。
 そしてその中に、最後に、「特別職の職員の退職手当についても議会の審議等を通じ、住民の十分な理解と支持が得られるものとすべきであること。」ということで、このように通達が流れているわけでありますけれども、この点に関して、今、総務省としてはどのように認識しておられるんでしょうか。
荒木政府参考人 今委員から御指摘ございましたように、昭和五十四年の公務員部長通知におきまして、「特別職の職員の退職手当についても議会の審議等を通じ、住民の十分な理解と支持が得られるものとすべきであること。」という旨の通知をいたしております。
 この通知では一般職の職員の退職手当の適正化を主眼にしたものでございまして、一般職につきましては、その後、是正が図られてきておりますが、特別職につきましては、先ほども申しましたように、任期や職責の特殊性から、国から画一的な基準で指導できる性質のものではないということもございまして、私どもとしましては、その後、各団体における取り組み状況については把握をしていないところでございます。
 いずれにしましても、この五十四年の特別職の退職手当に関する通知についての考え方は私ども現在でも変わっておりませんので、今後も、機会があるごとに、こういった旨につきましては地方団体に通知をしてまいりたいと思っております。
平岡分科員 この問題も、先ほどのJRに対する寄附と同じような話で、それぞれの地方公共団体が自分たちとして、ここは知事さん非常に頑張っていただいているので、これだけの高い退職金でもいいというようなことでやっているならば、それはそれでよしとしなければいけないんだろうと思うんですけれども、ただ、地方に対しては国から交付税が交付されているわけでありますよね。
 そうしますと、この高い地方公共団体の首長の退職金に、国から交付税という形でお金が行っているんじゃないかと。住民の理解といって、条例で定めればいいといっても、結局、国が負担をしているから、地方の住民は少々高くたっていいやというようなことがないのかということをちょっと私は不安に思っているんですけれども、交付税の算定に当たって、この地方公共団体の首長の高い退職金についてはどのように算定をされているのか、お聞かせ願いたいと思います。
林政府参考人 交付税の算定に当たりましての特別職の退職手当についてでございますが、単位費用等を定めます際に、よるべき客観的な基準がなかなかいいものが見つかっておりませんので、現段階では、この退職手当につきましては、決算統計における調査結果を用いて算定をいたしておりまして、単位費用の積算基礎の中で、本俸等とともに給与単価として算入いたしているところでございます。具体的には、一般職を含めました全職員の給料本俸に対する全国の退職手当支給額の比率を用いて算定をし、単位費用の積算基礎といたしているところでございます。
平岡分科員 これはかなり技術的なので、大臣、事前に説明をどれだけしていただいたかわからないんですけれども、私のところでも総務省の方々といろいろと議論をいたしましたけれども、結果的には、支給実績額をベースに交付税額を決定しているということであるので、交付税の計算に一部とはいえ、この高い退職手当が反映されているということになるわけです。
 そうしますと、本当に、国としてはこんな高額の退職支給額を容認していることになるわけでありますけれども、大臣として、そういうことで国の負担があってもいいというふうにお感じになられますでしょうか。その点を、大臣の所感をお伺いしたいと思います。
片山国務大臣 特別職の退職手当は、地方自治で、条例で決めてもらう、議会というチェック機関もあるから、こういうことをやったんですよね。報酬もそうだったんですよ。ただ、報酬は大変議論になって、報酬審議会をつくれという条文を入れたんですよ。
 ただ、その報酬審議会の中に退職手当は入っていないんですよね。それじゃ議会でちゃんとチェックできているかというと、できているところもあるけれども、できていないところもありますよ。今、これだけ民間がリストラで、まあ民間の退職金は多いのがありますからね、言っちゃいけませんけれども、金融機関やなんかまだまだ。
 ただしかし、これも全体としては是正の方向だし、特殊法人も、退職金は渡り鳥的な人を含めて下げようという時期なんで、私は、もう一遍退職手当を見直した方がいいと思うんですよ。
 しかし、今の交付税はそんなに高いのを認めておりません。これは、全体の退職手当で一定の計算でやっていますからね。恐らく、交付税の基準財政需要額に算定したよりはそれぞれの首長さんの方が高く出ていると思う。その辺のことも住民の皆さんは知りませんよね。
 だから、この問題は大変デリケートな問題で、首長というのは決まっていますからね、固有名詞が。大変つらい話なんだけれども、やはり全体のこういう構造改革の時期なんだから、退職手当のあり方はこれでいいのかどうか。今の支給率なんというのは、根拠があるようでないんですよ。だから、そういうものを見直す必要は私もあると思っていますんで、まあちょっと研究させてください。ばたばたばたっというわけにいきませんからね。十分研究に値する問題だと私は認識しております。
平岡分科員 今、大臣が研究に値する問題であるというふうに言っていただいたんで、ぜひ、いろいろ検討していただきたいというふうに思います。
 ただ、私、きょう、こういう、ある意味じゃ重箱の隅をつつくような質問をしたのかもしれませんけれども、何が言いたかったかというと、やはり地方分権、地方自治というものをどのように進めていくか、そのときに国と地方のかかわりはどうあるべきか、これを常に、今や総務省ですけれども、総務省の大臣以下皆さんが考えて、本当にこれが地方自治を進めていく、そういうやり方であるんだということを常に見直しをしていっていただきたい、検討していっていただきたいという趣旨で、きょうこうした問題を取り上げさせていただきました。どうぞよろしくお願いいたします。
 時間が参りましたので、質問を終了させていただきます。
持永主査 これにて平岡秀夫君の質疑は終了いたしました。
 次に、北川れん子君。
北川分科員 社民党・市民連合の北川れん子といいます。よろしくお願いします。
 きょうは、住民基本台帳ネットワークシステムが、八月五日から十一けたの番号が施行される、その前に今、拡大についての答申などをされているといった段階で、少しお伺いをしてみたいと思っています。
 私は地方にいまして、杉並区の山田区長のとられた行動に関心を持って見ている立場だったんですが、杉並区住民基本台帳に係る個人情報の保護に関する条例、これは今どうなっているかわかりませんが、杉並区のように、自分たちの自治体が一部歯どめをかけられるような形でこの住基ネットに参加するというふうな表明をしている自治体は、今の日本の中で名乗りを上げているところがあるのでしょうか。その辺などの情報を教えてください。
芳山政府参考人 ただいま先生からお尋ねがありました杉並区の個人情報保護条例の関係は、去年の九月にそういう形で杉並区が対応したと聞いておりますけれども、その他の団体について、具体的にそれに対応した形で条例をつくられたというのは、私、承知をしておりません。
北川分科員 自治体が三千三百ある中で、一つの団体が本当に苦渋を感じながら何とか歯どめをかけたいと思っているのに、本人確認をする届け出の拡大ということを今、政府の方がおやりになろうとしているのではないかといった点を私は気にしているんです。
 ことしの一月二十四日、各都道府県の住民基本台帳ネットワークシステムの担当部長に対し、総務省の自治行政局市町村課が、「住民基本台帳法に基づく本人確認情報の提供又は利用事務の追加について」ということで、二月七日までに特段の意見があったらくださいという文書を出していると思うんですが、これに対しては大体延べどれぐらいあって、どのようなものか。
 私も、中の一部、九自治体ほどのを読ませていただいたんですが、かなり真剣に考えると問題が深いなと。私なども、回答をくださいという真摯な立場で担当者が書いていたのも読ませていただいたりしたんですが、どれぐらいの自治体が今これに対して意見書を出したのか、それに対して旧自治省、現在の総務省はどのような立場を今現在とられているのかというのを教えてください。
芳山政府参考人 ただいま御質疑がありました行政手続のオンライン化に絡んで、住基台帳の追加事務の拡大というのについて今検討しておりますが、先生御案内のように、今政府として、電子政府、電子自治体ということで、これを実現することが最重要課題と我々認識をしておりまして、そのために、その手続の一環として、関連法案を今国会に提出することで今作業を進めております。
 それで、その行政手続のオンライン化の実現のためには、住民票の写し等の添付手続の省略等が不可欠であると考えております。そういうことから、現在その作業をやっていますが、その法案化の作業の過程で、今御指摘がありましたように、一月二十四日に、住民基本台帳ネットワークシステム推進協議会という場で考え方の説明をしました。そして、四十七都道府県を通じて、全地方団体に意見の照会をしたわけでございます。
 意見につきましては、地方団体は、総じて、電子政府、電子自治体の実現のために、住民基本台帳ネットワークシステムを有効に活用すべきであるということについての別表改正に、賛成なり特段の意見はないという御意見が大半でございますけれども、別表改正を慎重に検討されたいというところが六市区町村、別表改正に反対であるというところが三市区町村というぐあいにとどまっております。
 御意見につきましても区々ありますけれども、特に個人情報保護に万全を期されたいということの個別の意見が寄せられております。
 その後、組織としての全国知事会、全国市長会、全国町村会にも意見の御照会をしておりますが、今回の別表改正については、電子政府、電子自治体の推進のために、住基のネットワークの活用について了解されるものという意見が出されておるところでございます。
 以上でございます。
北川分科員 今教えていただいたように、私は、合わせて九自治体のを読んで、いや、こういうふうに心配してくださる自治体の窓口の方がいらっしゃるというのは大事なことだなというふうに思ったものですから。
 皆さんも重々よく御存じだろうと思うんですが、本当に少数派の意見になるということ以前に、もしかしたら余り事の成り行きがわかっていないので意見を言わなかったのではないかという気がしないでもないわけなんですが、その中で、なぜ心配かということに、国民総背番号制につながっていくのではないかといったことをやはり心配されていらっしゃいます。
 それと、本人確認情報の提供先の拡大をする意味がどこにあるのかということなんですが、今、十省庁九十三事務がポイントで置かれているのが、それ以後、皆さん、これはふやしていったらいいんじゃないかというのを吸い上げていらっしゃるとも聞いているんですが、本人確認情報の提供先ですが、十省庁九十三事務以上に今考えていらっしゃるものがあるんでしたら教えていただきたいのと、この中に率直に書いていらっしゃる国民総背番号制につながっていくのではないかという危惧に対しては、どういうふうな御説明をしていただけるのでしょうか。
芳山政府参考人 ただいまの、意見照会をしたという背景にありますのは、先ほど申しましたように、電子自治体の実現のために、今書類で作成をするということに対して、それに加えて、オンラインでも手続はできますよという形の改正をする。そのときに、一方ではオンラインでできつつ、やはり住民票の写しの方は別途、役所からとって、別途、足を運んで提出してくださいよというのでは事実上意味が半減されるということもありまして、各省庁の要望、そして地方団体の意見を踏まえて、現在、鋭意作業、法案化作業をやっているということでございます。
 今御指摘がありましたように、現在は十省庁九十三事務でございまして、現在、追加を検討しておる作業中でございますので、正確な事務数等々についてはまだ申し述べられませんけれども、具体的に住民票の写しの添付が求められている事務で対象とする事務の中には、例えば、NPO法人の設立の認証に係る事務、また不動産登記に係る事務、一般旅券の発給、パスポートの発給に係る主にして都道府県の事務、また公営住宅の入居者の資格の確認に係る事務、また国民年金、厚生年金の現況届が今要るわけですけれども、そういうのがなくなるような事務、また原子爆弾の被爆者に関する給付の対象の事務等々でございまして、いずれにせよ、今回、オンラインに当たって、住民票の写しの添付が求められている事務を対象にしつつ、事務の拡大を図ろうというぐあいに思っております。
 それと、もう一つ今先生御指摘の点で、国民総背番号制との関係で危惧、懸念があるのではないか、ないしは、国家があらゆる個人情報を住民票コードにより一元的に管理するのではないか、都度都度御指摘を受けますけれども、御案内のとおり、住基のネットワークシステムそのものは、地方公共団体が共通して構築するシステムでありまして、国が一元的に管理するシステムではありません。また、その情報も、本人確認のための四情報プラス住民票コードと変更情報ということでございます。
 それと、その利用目的は法律に具体的に明記をする、そして目的外の利用を禁止するということでございまして、さまざまな個人情報を一元的に管理するシステムには法律上なっておらないということもありまして、国があらゆる個人情報を一元的に管理するという意味での国民総背番号とは全く異なるということで、都度都度御指摘をしておりますし、またそういうことで啓発もしているところでございます。
北川分科員 ですけれども、この担当者から出ているのを見ますと、施行前の改正という意味がなかなか住民への説明ができないというのと、拡大解釈がすべからくやられていく。
 それで、先ほどおっしゃっていただきましたが、パスポートに関してですけれども、本人確認の四情報の中には戸籍情報というのはないのですが、パスポートというのは戸籍抄本が要るわけですよね。その辺の整合性などは、今言えないとおっしゃった中でも五つぐらい言ってくださった具体例の中にパスポートをあえて入れられたわけなんですが、拡大が、そこでもう戸籍ということに踏み込んでいるというふうにこちら側がとっていいのかどうかといった点で教えてください。
芳山政府参考人 一般旅券の交付の請求のときに、今御指摘のように、戸籍情報の住民票の写しと戸籍抄本、両方が今現在必要とされております。
 今回外務省で検討されておりますが、今回のオンライン化法に絡んで手続の見直しをやるということでございまして、今外務省の方では、一般旅券の発給事務について制度の見直しを行って、住民票の写しについては、住基のネットワークを利用することによりまして、住民票の写しの添付を要らないものにするということで検討を進められているというぐあいに聞いておりまして、引き続き戸籍抄本等については要るわけですけれども、住民票の写しの方は今度のネットワークで代替するということを検討しているというぐあいに聞いております。
北川分科員 それは多分反対だろうと思うんですね。私なんかはずっと以前に、無戸籍の子供たちが今幾ばくか日本の中にいるのを総務省でいらっしゃるから御存じだろうと思うんですが、その子たちの人権の確保のためにずっと追求していくと、パスポートの発給に関して戸籍抄本が要るといった点で、渡航の自由が規制されるというふうにずっと外務省と話し合いをしてきた経過もあるんです。
 確認情報の四条件の住民票の方を外して、どうして戸籍抄本の方だけを残して、今回の住基のネットワークの中に追加されようという強引なことをされるのか。その辺の意図が何なのか。戸籍の方が住民票のシステムよりも有効に動いているというふうに感じていらっしゃるのかどうか。その辺は根本的な問題なのでお聞きしたいと思いますが、住民票でいいんじゃないですか、戸籍抄本がなくても。いいということにどうしてならないのかというのを教えてください。
芳山政府参考人 これは、制度の立案に当たりまして、外務省で基本的にお考えになることと思いますが、今、旅券の交付請求に当たっては、戸籍情報が記載されておる住民票の写しと戸籍抄本との両方が提出義務がされておるということであります。
 したがって、戸籍情報の入った住民票の写しをそのまま住基で代替することはできません。住基のネットワークは四情報しかございませんので、戸籍情報は入っておらない。とすれば住基のネットワークを使えないじゃないかという議論になるわけでございます。
 そこで、今度の制度改正に当たっては、住基のネットワークを使うことによって、原則として住民票の写しの添付はなくそう、そのかわり、そのかわりというか、戸籍抄本については、国籍等々の確認が要るから引き続きそれについては必要ということが外務省の御見解というぐあいに聞いていまして、これは今、引き続き、今度の制度改正に当たっての検討をされておるというぐあいに聞いております。
北川分科員 だから、戸籍の方に軸足を置かないで、すべからく四情報、基本原則が入っている四条件の住民票主体に日本はこれから動かしていく、ネットワーク化していくということを追求された方がいいということを、これを議論していては外務省絡みになるという点と、ただ、出生届と住民票と戸籍をリンクしてあるという日本の、他国にはない状況を持ち込んでおきながら、今回の住基法改正の中でもう一回拡大枠でやっていくというのは、すべからく国民総背番号制に近いというのはよっぽどの素人じゃない限りわかるということをぜひお伝えしておきたいと思うんです。
 これは決算委員会なのでお伺いしたいんですけれども、住基ネットの構築と運用費用というのを、五年分ぐらいをずっと出してもらって見たんです。一番初めに、九九年では、構築に関して四百億円、運用費用が二百億円となっていて、今回、平成十五年で見ると、構築が三百六十億とかになっていて、一番最新では、三百二十億が構築で、運用が百八十億。少しずつ数字が微妙に変わってきているんです。今これは九八年の決算なのでちょっとあれなんですけれども、今一番最新の方では、住基ネットの構築と運用費用というのをどういうふうに総務省は押さえていらっしゃるのか。
 それと、これはすべからく、ネットワークの構築と運用は、いただいた回答の中に、補助金等のいわゆる国費投入の対象ではないと。だから、地方自治体がすべからくやりなさい、でも、それだとなかなか追いつかないからいろいろ考えましょうということだろうと思うんですけれども、そういう中で、構築と運用、各地方自治体への補助金じゃない援助という言い方がいいのかどうかわかりませんが、ネットワーク化に入りたくないと言った山田区長が、一番最後に、苦渋の選択で入らざるを得なかったという状況を見ると、すべて入れてしまうということだろうと思うんですが、どれぐらい地方自治体に援助をされるおつもりなのか、お見積もりを教えてください。
芳山政府参考人 住民基本台帳ネットワークの構築ないしは運用の費用はいわゆる補助金で措置しているものではございませんで、地方団体の標準的な業務ということで、交付税で措置しておるということでございます。
 それで、標準的な経費として、当初は、具体的な想定は、大枠として今先生が言われた導入経費四百億ぐらい、毎年、経常経費二百億ぐらいということでございましたが、最新の住基ネットにかかる経費でございますけれども、各地方公共団体の具体的な要望、要請を踏まえまして、平成十一年度から本年度、来年度という、十五年の八月を予定していますが、十一年から十五年までの総計で約三百六十五億円ぐらいを予定してございます。運用に関する費用は、十六年度以降でございますけれども、大体百九十億円ぐらいを予定しております。
北川分科員 ということになると、この構築の三百六十億円と運用の百九十億円がすべからく地方自治体に分配されるということで、不交付団体は対象にならないというふうに聞いているんですが、それでよろしいんでしょうか。
芳山政府参考人 交付税でございますので、基準財政需要額の中に算入をされるということでございますが、結果的に不交付団体もあり得るわけですけれども、基準財政需要額の中にはいわゆる住基のネットワーク経費というのは盛り込んだ形で算定をしておる。結果的に、基準財政収入額のところで交付税が出なかったり、不交付団体になったりするわけですが、需要には算定されているということでございます。
北川分科員 その点などを心配というか、どうなるんだろうと思っている声も聞こえてきていますし、逆に産業界は活気づいている。電子政府になれば、どこも本を出しているところ自身が、これなども富士総合研究所というところが出している文でありますけれども、どこもそういうところがこぞって出しています。電子政府になると産業界が活気づくんだというふうになっているんですが、そこに追いついていけるような人材と、それから市民が周知、それほど思っているのかという乖離がすごく大きいと思うんですけれども。
 もう一つ、いろいろ法的な中で、この対象が、住民票の記録対象というのが対象者になるので、在外邦人や在日外国人は電子政府から除外されるのではないかといった意見を持たれている方もあったんですが、その点などはどういうふうに法的な整備をされようと思っていらっしゃるのかという点。
 それからもう一つは、これが今、個人情報保護法等々の問題で、個人の情報を一番持っているのは国、国が国民総背番号制へ向けて急展開をしているといった今の状況の中で、指定情報処理機関というのを法的に指定されるということで、まず名乗りを上げているのが財団法人地方自治情報センターですよね。今これ以外に名乗りを上げている機関があるかどうかというのと、二点あわせてお伺いしたいと思います。
芳山政府参考人 第一点目の、在日外国人に対する電子政府、電子自治体のサービスについても同じように考えたらどうかということでございまして、政府としても、在日外国人に対しては基本的にサービスが受けられることが原則であるというぐあいに思っておりまして、それぞれの事務を所管する省庁で具体的に検討してもらうということだろうと思います。
 例えば、個人認証の仕組みでございますけれども、今、個人認証の仕組みについては、住民基本台帳に記録されている者については、今度の国会に電子署名に関する認証業務に関する法律案を提出する予定にしておりまして、公的個人認証サービスを利用することができる、可能になるように法案を今作成を予定してございます。
 一方、外国人登録原票に登録されている者についても、基本的には、住民基本台帳に記録されている者と同様に、公的な個人認証サービスを提供できるかどうか、できないかということを検討する必要がありますので、この点について法務省との間で協議を現在進めておるということでございます。
 また一方、住民基本台帳に記録されている者については、先ほど来御質疑がありますが、住民基本台帳ネットワークを行政機関が利用することにより、住民票の写しの添付を省略することは可能になるということでございますし、一方、外国人登録原票記載事項証明書の電子化ということがございます。この点については、現在、法務省において、その可否及び実施時期について検討をされておるというぐあいに聞いております。いずれにせよ、今後とも、関係府省と協力しながら、電子政府、電子自治体の基盤の構築に努めてまいるということで考えております。
 二点目でございますが、指定情報処理機関のお話でございます。これにつきましては、十一年の八月、法律が通りまして、そして、法律に基づく要件に該当する者について申請を求めたわけでございますが、その段階で財団法人地方自治情報センターから指定の要請が来て、そのほかからは要請が来なかったということもございまして、指定情報処理機関の指定は、十一年十一月、既に指定をして作業を進めておるということでございます。
北川分科員 ということは、この財団法人地方自治情報センターというのが、日本のそれぞれの情報処理機関という形で任命されて、ここが一手に引き受けていくということになるのかといった点と、ここの財政基盤の問題なんですが、それはどういうふうに思っていらっしゃるのかといった点と、そうすると今度は、手数料の問題と絡んでくると思うんですが、この手数料はどれほどを今のところお考えになっているのかというのをあわせてお伺いしたいと思います。
芳山政府参考人 指定情報処理機関の指定の経緯及び数でございますが、先ほどもお話ししましたように、法律上は、地方公共団体がその基本財産の全部または一部を出資している民法上の公益法人等、ないしは技術的な能力等があるというようなことで、法律にその要件が書いてございます。
 そういうことでございますので、法律が通った、成立した段階で申請が自治大臣に出されたわけでございまして、その申請を踏まえて、法律上の指定の基準に合致するということで、財団法人地方自治情報センターを指定したわけでございます。
 その指定でございますが、地方自治情報センターは、四十五年に設立された、地方公共団体が出資をする財団法人でございまして、その組織及び職員の体制、ないしは今回の改正住基法に基づく本人確認情報処理事務を十分行うに足りるということで、自治大臣として指定をしておるところでございます。
 なお、指定情報処理機関の処理に要する経費については、都道府県の方から交付金という形で措置がされておるところでございます。
北川分科員 一たん国から出して、また各地方自治体がそこの情報処理センターにもお金を渡していくという、何か還流しているというか、何かもう一つよくわからないんですが、手数料はどういうふうに思っていらっしゃるのか、電子認証してもらいたいと市民側が言った場合の手数料ですね。大体どの辺に抑えようとしていらっしゃるのかといった点と、地方自治情報センターという、理事が十名と常勤理事が三名で、あと職員ということになるんだろうと思うんですが、ここ一つだけにすべての電子政府の根幹を任せていくといったことでは、それでいいのかなというのが私の心配なものですから、財政のもう少し踏み込んだ御発言があれば聞かせていただきたいのと、手数料的なものは無料というふうに、それぞれ個人が自分の家のコンピューターを使った回線でやるわけですから、無料に想定をされているのか、有料だと上限はどれぐらいで思っていらっしゃるのかといった点。
 先ほどの外国人の問題なんですけれども、もう八月五日から施行という形になっている中で、まだ検討中、協議中のお言葉が多かったと思うんですが、その辺などは、まず、そこが調わなくても、八月五日に日本国籍を有する者への十一けたという形は施行するのか。外国人ナンバーというのは、そこから違うナンバーをつけるということになるわけですか。その辺、どうなんでしょうか。
芳山政府参考人 まず初めの、交付税と手数料の関係でございますけれども、先生、交付税は地方団体の共通の一般財源でございますので、国から交付するとかいう概念ではなくて、地方公共団体が自分の一般財源から住基のネットワークシステムの構築費用を充てるということで我々は考えております。
 そういうことで、都道府県の知事として、業務を法律上委任することができるということに御案内のとおりなっておりますので、委任する都道府県においては、委任分を指定情報処理機関に支払うということでございます。
 また、指定情報処理機関が国の利用機関から資料の提供を受ける、事務の提供を受けるということでありますと、それについての手数料を国の方からいただくというぐあいにやはりなるわけでございます。
 それと、交付申請に当たって経費が要るのかどうかということでございますが、これは、ネットで申請するときに格別経費が要るわけではありません。これはオンラインで申請をするということでございまして、そのときに、オンラインのときに申請で使用料が要るということではございません。
 外国人のけた数とかいうのについては、これは、外国人登録法に基づく諸手続については法務省が所管してございまして、我々総務省の方で云々、言及することはまだできません。これについては、先ほど言いましたように、外国人への電子政府、電子自治体のサービスも同じように、どう考えればいいのかということを真剣に今議論されておりますので、そちらの方で、法務省の方で一生懸命今考えられているということでございまして、けた数云々の方は今具体的にあるわけではございません。
北川分科員 では、時間が来ましたので、どうもありがとうございました。
持永主査 これにて北川れん子君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして自治省所管及び公営企業金融公庫についての質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
持永主査 これより総理府所管中総務庁について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。片山総務大臣。
片山国務大臣 総務庁関係の歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 まず、平成十年度でございます。
 平成十年度の歳出予算現額は一兆五千五百八億四千六百三十万円余でありまして、支出済み歳出額は一兆五千百三十七億九千四百四十九万円余であります。
 この支出済み歳出額を歳出予算現額に比較いたしますと、三百七十億五千百八十万円余の差額を生じます。
 この差額のうち、翌年度へ繰り越した額は三百六十一億七千二百八十二万円余であります。
 また、不用となった額は八億七千八百九十八万円余であります。
 続きまして、平成十一年度でございます。
 平成十一年度の歳出予算現額は一兆四千九百十五億五千八百八十二万円余でありまして、支出済み歳出額は一兆四千六百十六億一千三百六十六万円余であります。
 この支出済み歳出額を歳出予算現額に比較いたしますと、二百九十九億四千五百十六万円余の差額を生じます。
 この差額のうち、翌年度へ繰り越した額は二百九十六億四千八百九十八万円余であります。
 また、不用となった額は二億九千六百十七万円余であります。
 以上をもちまして決算の概要説明を終わります。
 何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
持永主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院石野第一局長。
石野会計検査院当局者 平成十年度総務庁の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
 平成十一年度総務庁の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
持永主査 以上をもちまして総理府所管中総務庁についての説明は終わりました。
 これより質疑に入るのでありますが、その申し出がありませんので、総理府所管中総務庁については終了いたしました。
    ―――――――――――――
持永主査 これより裁判所所管について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。堀籠最高裁判所事務総長。
堀籠最高裁判所長官代理者 まず、平成十年度裁判所所管一般会計歳入歳出決算の概要を御説明申し上げます。
 裁判所所管の歳出につきましては、当初予算額は三千百二億二千八百六十一万円余でありますが、これに大蔵省所管からの移しかえ額三億三千四百二十九万円余、平成九年度からの繰越額三十億六千百七十五万円余、予算補正追加額百七十一億六千三十三万円余、予算補正修正減少額十五億六千九百四十三万円余、差し引き百八十九億八千六百九十四万円余が増加となり、歳出予算現額は三千二百九十二億千五百五十五万円余となっております。
 これに対しまして、支出済み歳出額は三千百十九億五千九百八十五万円余であり、歳出予算現額との差額は百七十二億五千五百七十万円余であります。
 この差額のうち、翌年度へ繰り越した額は百四十七億九千二百十三万円余、不用額は二十四億六千三百五十七万円余であります。
 不用額となった経費は、人件費十一億六千四百三十二万円余とその他の経費十二億九千九百二十四万円余であります。
 裁判所主管の歳入につきましては、歳入予算額は七十一億二千四百六十五万円余であります。
 これに対しまして、収納済み歳入額は百七億五百六十五万円余であり、歳入予算額に対し三十五億八千九十九万円余の増加となっております。
 この増加は、相続財産で相続人不存在のため国庫帰属となった収入金の増加等によるものであります。
 以上、平成十年度裁判所所管一般会計歳入歳出決算について御説明申し上げました。
 次に、平成十一年度裁判所所管一般会計歳入歳出決算の概要を御説明申し上げます。
 裁判所所管の歳出につきましては、当初予算額は三千百八十四億六百三十五万円余でありますが、これに大蔵省所管からの移しかえ額二億四百四十五万円余、平成十年度からの繰越額百四十七億九千二百十三万円余、予算補正追加額七十一億三千三百七十万円余、予算補正修正減少額六十二億八千四十九万円余、差し引き百五十八億四千九百七十九万円余が増加となり、歳出予算現額は三千三百四十二億五千六百十五万円余となっております。
 これに対しまして、支出済み歳出額は三千百七十三億八千四百三十九万円余であり、歳出予算現額との差額は百六十八億七千百七十五万円余であります。
 この差額のうち、翌年度へ繰り越した額は百四十七億六千四百四十万円余、不用額は二十一億七百三十五万円余であります。
 不用額となった経費は、人件費十億七千四百四十七万円余とその他の経費十億三千二百八十七万円余であります。
 裁判所主管の歳入につきましては、歳入予算額は七十三億九千七百二十八万円余であります。
 これに対しまして、収納済み歳入額は百五億三千七十三万円余であり、歳入予算額に対し三十一億三千三百四十五万円余の増加となっております。
 この増加は、相続財産で相続人不存在のため国庫帰属となった収入金の増加等によるものであります。
 以上、平成十一年度裁判所所管一般会計歳入歳出決算について御説明申し上げました。
 よろしく御審議のほどお願いいたします。
持永主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院石野第一局長。
石野会計検査院当局者 平成十年度裁判所の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。
 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項一件であります。
 これは、職員の不正行為による損害が生じたもので、横浜地方裁判所において、破産事件の事務に従事していた裁判所書記官が、換金する目的で郵便切手類販売者から郵便切手等を受領し、その代金を歳入歳出外現金出納官吏が保管している申立人の破産予納金から支払わせる方法により、保管金を領得したものであります。
 なお、本件損害額は、全額が補てんされております。
 以上、簡単でございますが、説明を終わります。
 平成十一年度裁判所の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
持永主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。堀籠最高裁判所事務総長。
堀籠最高裁判所長官代理者 平成十年度の決算検査報告において掲記されております事項につきましては、会計検査院の御指摘のとおりでありまして、まことに遺憾にたえないところであります。
 今回不当事項として指摘を受けましたのは、横浜地方裁判所の職員が保管金を領得したもの一件であります。
 指摘を受けたものにつきましては、既に返納の措置が講じられておりますが、さらに、保管金取扱事務の牽制処理と指導監督の徹底を図り、保管金の払い出し方法を見直す等事務処理態勢を改善し、事故防止策を講じたところであります。
持永主査 以上をもちまして裁判所所管についての説明は終わりました。
 これより質疑に入るのでありますが、その申し出がありませんので、裁判所所管については終了いたしました。
    ―――――――――――――
持永主査 これより会計検査院所管について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。金子会計検査院長。
金子会計検査院長 会計検査院主管一般会計歳入決算及び会計検査院所管一般会計歳出決算に関する説明をいたします。
 平成十年度会計検査院主管一般会計歳入決算及び会計検査院所管一般会計歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 会計検査院主管の歳入につきましては、予算額二千七百四十五万余円に対しまして、収納済み歳入額は二千六百九十八万余円であり、差し引き四十七万余円の減少となっております。
 収納済み歳入額の主なものは、国有財産貸付収入二千三百八十万余円であります。
 次に、会計検査院所管の歳出につきましては、当初予算額百六十一億七千九百八十八万余円でありますが、これに予算補正追加額、予算補正修正減少額及び前年度繰越額差し引き三億二百六十二万余円を加えた予算現額百六十四億八千二百五十万余円に対しまして、支出済み歳出額は百五十九億九千三百五十万余円、翌年度繰越額は八千八百八十七万余円でありますので、その差額四億十二万余円を不用額といたしました。
 支出済み歳出額の主なものは、人件費百三十二億千五百七十一万余円、検査旅費六億八千九百三十一万余円となっております。
 以上、簡単でございますが、平成十年度における会計検査院関係の決算の説明を終わります。
 よろしく御審議のほどをお願いいたします。
 引き続き、平成十一年度会計検査院主管一般会計歳入決算及び会計検査院所管一般会計歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 会計検査院主管の歳入につきましては、予算額二千七百五十三万余円に対しまして、収納済み歳入額は二千七百万余円であり、差し引き五十三万余円の減少となっております。
 収納済み歳入額の主なものは、国有財産貸付収入二千三百七十三万余円であります。
 次に、会計検査院所管の歳出につきましては、当初予算額百六十五億四千百五十三万余円でありますが、これに予算補正追加額、予算補正修正減少額及び前年度繰越額差し引き一億七千六百七十万余円を除いた予算現額百六十三億六千四百八十二万余円に対しまして、支出済み歳出額は百五十八億六千七百九十七万余円、翌年度繰越額は七千八百九十五万余円でありますので、その差額四億一千七百八十九万余円を不用額といたしました。
 支出済み歳出額の主なものは、人件費百三十二億千三百七十七万余円、検査旅費六億九千百二十八万余円となっております。
 以上、簡単でございますが、平成十一年度における会計検査院関係の決算の説明を終わります。
 よろしく御審議のほどをお願いいたします。
持永主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院石野第一局長。
石野会計検査院当局者 平成十年度会計検査院の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
 平成十一年度会計検査院の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
持永主査 以上をもちまして会計検査院所管についての説明は終わりました。
 これより質疑に入るのでありますが、その申し出がありませんので、会計検査院所管については終了いたしました。
    ―――――――――――――
持永主査 これより皇室費について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。羽毛田宮内庁次長。
羽毛田政府参考人 平成十年度及び平成十一年度における皇室費歳出決算について、その概要を御説明申し上げます。
 まず、皇室費の平成十年度歳出予算現額は六十六億九千三百四十三万円余でありまして、支出済み歳出額は六十六億四千五百四十四万円余であります。
 この支出済み歳出額を歳出予算現額と比べますと、四千七百九十九万円余の差額がありますが、これは国際親善に必要な経費等を要することが少なかったため、不用となった額であります。
 以上が、平成十年度皇室費歳出決算の御説明でございます。
 引き続きまして、平成十一年度の皇室費歳出決算について、その概要を御説明申し上げます。
 皇室費の平成十一年度歳出予算現額は六十九億二千十六万円余でありまして、支出済み歳出額は六十八億三千四百六万円余であります。
 この支出済み歳出額を歳出予算現額と比べますと、八千六百九万円余の差額がありますが、これは国際親善に必要な経費等を要することが少なかったため、不用となった額であります。
 以上をもちまして平成十年度及び平成十一年度皇室費歳出決算の説明を終わります。
 よろしく御審議くださいますようお願いいたします。
持永主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院石野第一局長。
石野会計検査院当局者 平成十年度皇室費の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
 平成十一年度皇室費の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
持永主査 以上をもちまして皇室費についての説明は終わりました。
    ―――――――――――――
持永主査 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。植田至紀君。
植田分科員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。
 本日は、宮内庁書陵部長さんにもお越しいただいておりますが、大きくは二点お伺いしたいと思っております。一つは、陵墓の管理、保全にかかわる問題について、もう一つは、天皇陵の治定とその学術調査のあり方、方向性について、今後のあり方も含めてですけれども、大きくこの二点についてお伺いしたいわけでございます。
 まず一点目、陵墓の管理、保全にかかわりまして、恐らく全国に、天皇陵として治定されている場所、また、陵墓参考地と言われるものもあるかと思いますが、これが書陵部で管理されていると思います。
 改めておさらいをさせていただきますが、大体何カ所ぐらいの陵墓及び陵墓参考地があり、そして、どんな人的体制でそれを保全、管理なさっているのか、また、それに伴う予算がどういう形になっているのか、この初歩的なところからまずお伺いしたいと思います。
山口政府参考人 お答え申し上げます。
 宮内庁で所管しております陵墓、このうち、陵と申しますのは天皇陵でございますが、そのほか皇后陵もございますけれども、百八十八、墓(ぼ)、皇族のお墓五百五十一、陵墓参考地四十六などを含めまして、総計で八百九十五に及んでおります。
 この天皇陵等の八百九十五の陵墓を、人的体制といたしましては、常勤職員百四十名、非常勤職員九十四名で管理しております。
 少しく具体的に申し上げますと、陵墓の箇所としましては四百五十七カ所になりますので、それを五つの監区事務所に分けまして、その各監区事務所それぞれに幾つかの部を置きまして、合計三十八部に区分し、それぞれに若干名の常勤職員と非常勤職員とが張りついているということでございます。
 予算でございますが、墳塋の保護、堤防護岸、外構さくの改修などを実施しておりますけれども、現在のところ、年間約三億円程度の経費でそういう保全工事を行っておるということでございます。
植田分科員 大体わかったわけですけれども、八百九十五カ所の陵墓を管理するのに、常勤が百四十名、非常勤が九十四名ということでございます。この数の多寡について今は申し上げませんが、この非常勤の九十四名というのは、どういう方々がなさっておられるんですか。
山口政府参考人 常勤職員と非常勤職員とでは、その担当する職務内容に若干の差がございます。
 非常勤職員は、比較的小規模あるいは遠隔地、そういった墓(ぼ)につきまして、通常、一カ所の陵墓に一人ずつお願いするような形で、比較的単純な、巡回あるいは清掃、地元住民の方々との連絡調整などに当たっていただいております。
 このほかに、陵墓でございますると、天皇、皇族の御参拝あるいは山陵、式年祭、例祭というお祭り事がありましたり、そういう準備をいたしましたり、土地、施設その他の皇室用財産の管守、保全というその財産管理の面がございましたり、地元自治体あるいは周辺住民とのいろいろな関係を築いていくという仕事がございましたり、陵墓の工事に際しまして、文化的価値の保全のための立ち会いですとか、調査の補助をしたり、災害、緊急事態の対応をしたりする、そういう仕事もございますが、そういった点につきましては、常勤職員の方で対応するということにしてございます。
植田分科員 仕事の中身はよくわかったんですが、その非常勤の方というのはどういう方かということなんですよ。
山口政府参考人 非常勤の方々は、陵墓の周辺に長年住んでおられて陵墓とのかかわりの非常にある、地域的に関係のある方、あるいは元宮内庁の職員であった方、いろいろなケースがございます。
植田分科員 私、そこはそんなに細かく突っ込まないんですけれども、今の体制で、例えば宮内庁にお勤めであった方、退職された方とか、地域につながりの深いといっても非常に抽象的なわけですが、考古学的な知見にそれなりに長じておられる方ばかりとは限らないわけですね。
 陵墓といっても、例えば、私の地元、奈良県でしたら、古墳がぎょうさんあるわけです。その中の陵墓なんというのは、ほんまぎょうさんあるわけですけれども、そうした問題に精通しておられる方ばかりとは限らない。竹ぼうきで玉砂利をこないしてするぐらいならいいですけれども、墳丘を損傷するような場合もあるわけですね。そうした場合、一体、だれがどう判断しているんですかという点がもう一つありますね。そこをまずお伺いします。
山口政府参考人 非常勤の職員は、先ほど申しましたように、比較的単純な、巡回ですとか清掃ですとか地元との連絡調整という仕事でございまして、考古学的な知見を要する問題につきましては、常勤の職員、場合によりましては、宮内庁書陵部本部の研究職の職員が出ていきまして対応するということになってございます。
植田分科員 いや、対応する体制はあると思うんですよ。ただ、素人の方が、これはどうなのかなと、墳丘が崩れているとか、そうした本来ならば専門家が検分して何らかの対応をしなければならないかどうかという判断が、現場の非常勤の方にできるのかどうかということを聞いているんですよ。そこはどうですか。
山口政府参考人 緊急的な対応が必要かどうかという問題も含めまして、何か事件といいますか、事態発生時におきましては、監区事務所がそれぞれございますので、それぞれの監区事務所の方の常勤職員に連絡していただいて、そちらの方で対応するということになります。
植田分科員 恐らく、この体制で管理保全を一生懸命やっておられるだろうと私も考えておるわけですけれども、例えば奈良県で、橿原市のたしか大軽町でしたか、五条野町でしたか、見瀬丸山古墳という古墳がございます。
 ある研究者の見解では、これがひょっとしたら欽明天皇陵ではないかという説もある。欽明天皇陵はその見瀬丸山古墳のもうちょっと南の方に前方後円墳であるわけですが、何年か前、子供が石室の中に入った。明治時代に外国人が入って、かなりの実測図が見瀬丸山古墳なんかはあるわけですが、それにほぼ間違いないだろうということで、その中の玄室まで入って写真撮影したということ、御記憶にあるかと思います。
 見瀬丸山古墳は陵墓参考地で、なおかつ、全体の前方後円墳のうち円墳の部分だけがさくをしてあって、たしか参考地として管理されていたはずですけれども、例えばこういう事態がありました。陵墓参考地というと、本来、我々が入らないはずのところの写真が新聞紙上で出ました。
 私は、どんどん公開はしていくべきだと思うんですけれども、少なくとも、子供が入っていくなんというのは、管理保全の観点から不十分な点があったと言わざるを得ないと思うわけです。その点は、恐らくそういう認識だろうと思います。
 まず、その認識について、そして、こうした問題が起こって以降、この管理保全について何らかの新たな対応をされてこられたのかどうか、その二点をお伺いします。
山口政府参考人 御指摘のような事例が確かにかつてございました。
 陵墓管理におきましては、陵墓は皇室の御祖先のお墓でございますので、その場所につきましては、やはり静安と尊厳の保持ということが必要であろうかと思っております。したがいまして、部外の人たちの墳丘への立ち入りは禁止しておるのが本来の姿であろうと思いますけれども、たまたまそういうことが発生いたしまして、私どもといたしましても、その点につきまして、至らない点があったのではないかと思っております。
 その後の体制、管理でございますけれども、御指摘のように、域内への侵入、あるいはそれに伴います何らかの形の事故あるいは火災等の発生も懸念されるわけでございますので、私どもも、各監区事務所を通じまして、陵墓の管理につきまして、さらに意を用いるよう指導しておるところでございます。
植田分科員 静安と尊厳の保持と。宮内庁のお立場としては当然の御認識だろうと思います。
 百何十人の天皇さん以下、皇后の人やらなんやかんやとぎょうさん、全部で八百九十五カ所、静安と尊厳の保持をしなければならない場所を管理なさっているわけでございますが、実際、静安と尊厳の保持というのであれば、間違った治定をしておったということでは問題があるわけですね。
 何とか天皇のお墓でございますといってあるんやけれども、実はよくよく考えてみると違うじゃないか、例えば今の欽明天皇陵の話もそうですね。さまざまな古文献によれば、どうも見瀬丸山の方がそれに当たるんじゃないかという有力な見解もあるわけです。それは他の、例えば継体天皇陵の墓についても、そういうことが言われています。
 そこで、本当に静安と尊厳の保持をしなければならないのであれば、正確に治定をしなければならない、そして、正確な治定をしていくためには、やはり専門家を集めた学術調査というものも、陵墓についても積極的に行っていかなければならないんじゃないかというふうに私は考えておるわけです。
 幾つかお伺いしたいんですが、せっかくですから、まず初代、神武天皇陵の治定の経緯についてお伺いするわけですが、御承知のように、これは橿原市の畝傍山のふもとにあるわけでございます。
 これは、当然ながら、歴史学の上においては、その実在性等々についてはいろいろ議論があるわけですが、少なくとも七世紀の終わりごろ、日本書紀だったと思いますけれども、壬申の乱で大海人皇子が兵を挙げたときに、これに呼応して大伴一族が兵を挙げた、そこで、カムヤマトイワレヒコノスメラミコトの墓のあるところに参ったかどうか、何かそういう記述がたしか書紀にあったように私も記憶しております。
 実在したかどうかは別にしても、七世紀、そうしたカムヤマトイワレヒコノスメラミコトの墓なるものがそこに少なくとも当時の朝廷によって治定されておったということは、恐らく、日本書紀の記述が事実であるとすれば、そうだろうと思います。
 ただ、これは、幕末からずっと、畝傍山周辺で、その神武天皇の御陵というのが一体どこにあるのかというのはいろいろ議論があったわけです。
 現在治定されておる場所は、有力な見解によれば、国源寺というお寺があった。その国源寺というお寺の土壇があるわけです。その土壇が田んぼのど真ん中にあったわけですが、神武田と呼ばれておった。その神武田というのがどうやら神武とひっかけられるだろうということで、たしかそこに治定されたと思いますが、畝傍山周辺では幾つかの治定場所があったと思います。
 少なくとも最終的に今の場所に治定された経緯はどうなっているでしょうか。
山口政府参考人 中世以降、陵墓は次第に十分な管理ができなくなっておりまして、その所在が不明となるものが大変多うございました。
 江戸時代になりまして、元禄年間に、中世末までの天皇陵で所在が明らかであったものは、二十四方の二十四陵でございました。そのほかは所在が不明でございました。徳川幕府が、元禄時代から、御指摘ございました日本書紀とか古事記とか続日本紀とか、そういう史料と現地の伝承をもとにしまして天皇陵の探索をしまして、多くの陵を決定、整備して、朝廷に報告いたしました。
 その後も、享保、文化、安政、文久と何度かにわたりまして幕府の探索、治定が行われたわけでございますけれども、御指摘のございました神武天皇陵につきましては、幕末の段階におきましても、現在の御陵となっております神武田(じぶで)、ミサンザイとする説を含めまして、四つの説が現実にございました。その中で、国学者であり山陵研究家でもありました谷森善臣の説に従いまして、現在の神武田(じぶで)、ミサンザイの地に治定され、修補が加えられたわけでございます。
 谷森善臣がこの神武田(じぶで)、ミサンザイの地を神武天皇陵と考証いたしました根拠でございますけれども、谷森の記録によりますれば、一つは、字ミサンザイに田や畑として一部使用耕作されながら古墳が残っていたということ、この場所が畝傍山の東北でございまして、日本書紀あるいは延喜式の陵名と合致するということ、先ほど申し上げました字ミサンザイのミサンザイといいますのがミササギのなまったものであろうという判断がされたこと、また、先ほど議員から御指摘のございました神武田(じぶで)が、神武帝の御陵が田と移り変わったということの俗称と考えられたこと、また、古事記の記述、畝傍山の北方の檮尾の上にあるという記述とも合致するということなどなどを理由としまして、文久の時代に現在地を考証したものでございます。
植田分科員 非常に丁寧にその経緯について御説明していただいて非常にありがたいわけでございますが、あと二点ばかり、幾つかはしょりながらもお伺いしたいわけです。
 神武天皇陵のある今の場所、当時は、この神武天皇陵が明治以降整備されていく、その過程の中で、畝傍山の山ろくに集落があった、ちょうど神武天皇陵なるものを見おろす位置に洞という集落があったことは御承知ですか。知っているか知っていないかでいいです。
山口政府参考人 明治以降のある時期に、洞御陵地が神武天皇の陵の敷地、陵墓地として追加されたことを承知しております。
植田分科員 後藤何がしという人が書いた「皇陵史稿」という本があると思いますが、その中で、神武天皇陵を見おろす位置に洞村という村が存在するのは非常にけしからぬことであるというような記述もあるわけです。畝傍山の中腹に、二万坪の敷地で洞という村がありました。それが、結果としてそこを強制移転させられ、そして六千坪の敷地のところに追いやられてしまった、こういう歴史があるわけです。
 私が申し上げたいのは、静安と尊厳の保持、これは私は何も現行憲法下において否定するものではありませんが、少なくとも、この神武陵を拡張していく、整備していく過程の中で、民衆というものが極めて厳しい状況の中に立たされてしまった。
 例えばこの洞村、御承知のように、恐らく知っていて言わないんでしょうけれども、いわゆる被差別部落でございます。出版された本の中でも、そういうところにこんな村があるのはけしからぬじゃないかというようなことが記述されておった。そういう中で、少なくとも住民の意思を必ずしも反映しないままに別の場所に移転されたという史実があることについては、当然、認識されておられますね。
山口政府参考人 御指摘のございました洞御陵地でございますが、帝室林野局から昭和十五年に陵墓地として諸陵寮、現在の宮内庁書陵部陵墓課の前身でございます宮内省諸陵寮に移管されたものでございます。その移管をするという旨の帝室林野局長官からの書類などはございますが、それ以外の書類が現在見当たらないため、移管に関するそれ以上の経緯はちょっと私の方でも確認できておりません。
植田分科員 昭和十五年以前の、洞村が別の場所に、近くの場所ですけれども、今も神武御陵のすぐ近くにありますけれども、そこに移転したという経緯にかかわっては、要するに、宮内庁さんが今お持ちの資料では確認はできない、だから、事実関係として宮内庁に所蔵する資料においてはそのことについては検証できないということでいいですか。はい、いいえでいいです。
山口政府参考人 先ほど申しましたように、帝室林野局から諸陵寮に移管されたのは事実でございますが、その帝室林野局以前のことは、現在の宮内庁書陵部陵墓課の方には資料がないということでございます。
植田分科員 要するに、その史実については検証する素材を持ち得ていないということでいいわけですね。
 そのことが必ずしもここでのメーンではないわけですが、もう一点、時間がありませんからまとめて聞きます。
 やや時代が下りまして、実在性というものもやや神武天皇よりは実在したのではないかと言われている崇神天皇、そして景行天皇、この崇神陵・景行陵古墳というのは今の天理市の柳本というところにございます。北側のアンド山古墳というのが崇神陵、そして南側に、向山と言ったかな、景行陵というのがあります。
 これは、実は幕末期に治定が変わっていますね。というのは、当時の柳本藩、織田藩、一万石の織田藩が、当時、尊皇の機運の中で、その陵墓二つを整備すると同時に、治水も兼ねて古墳のそれぞれのお堀を改修した、その改修の過程の中で、もともと北側のアンド山古墳が景行陵で、南側が崇神陵だったのが、なぜか、アンド山が崇神陵に、南側が景行陵に変わってしまったわけですね。こうした事例があるわけです。
 こうした経過について、私は、景行天皇、ヤマトタケルノミコトのお父さんになるわけですが、景行天皇であるとか、ミマキイリヒコと言われる崇神天皇、こうしたものが実際、歴史上どういう存在であったかということを問うているわけではなくて、当時も恐らくいろいろな文献でそういうことに判断されたんでしょうが、その経緯が整合性を少なくとも文献上持っているのかどうなのか、判断されているのかどうなのかという点が一点。
 それと、もっと時代が下ります。奈良時代、平安時代になるわけですけれども、平城天皇陵、御承知のように、これは平城宮跡の北部にあるわけです。ちょうど真北にあるわけですね。これは、今の形状は円墳です。しかし、実際、平城宮跡の調査の過程の中で、もともと平城天皇陵と言われる古墳は前方後円墳で、そして、平城宮をこしらえるときにその前方部を削り取ったということが後になってわかってきた。すると、少なくとも、八世紀末から九世紀初頭でしたでしょうか、平城天皇がいた時代と、前方後円墳があった時代というのは三世紀、四世紀、五世紀ぐらいまでですから、明らかに時代的に違ってくるわけですね。
 例えばそういうことを踏まえて、実際にこうした陵墓の治定について再検討しなければならない余地というものが幾つも出てきているだろうと思うわけです。そうしたことについて、少なくとも、私は別にやらなくてもいいというわけじゃないですが、本当にそれぞれのそこでお休みになっておられる方々の静安と尊厳の保持を図るのであれば、正当に治定をする、正確に治定をするということも、当然、職責として出てくるだろうと思います。
 今、二つ事例を挙げましたけれども、こうした事例を踏まえて、実際に学術調査の必要性というものがあるだろうと思いますが、その点はどうか、お伺いします。
山口政府参考人 まず、崇神天皇陵と景行天皇陵の治定の経緯でございます。
 御指摘ございましたように、安政年間に、崇神天皇陵を向山古墳、現在の景行天皇陵でございますが、それから、景行天皇陵をアンド山古墳、現在の崇神天皇陵でございますが、と一度考定をいたしたことがございまして、幕末に至りまして、またおなじみでございますが、谷森善臣の考証によりまして、現在のように入れかえをして治定をしてまいったわけでございます。
 これは、二つの陵、いずれも城上郡に属するわけでございますが、衾田陵との関係、衾田陵に近い方が崇神陵ではないかということが延喜式の記載と合うのではないかということから、崇神天皇陵が現在地の方に決まり、そうしますと、残りが景行天皇陵ではないかというふうなことがあったと記録に残ってございます。
 それから、平城天皇陵でございます。
 平城天皇陵は、元禄の時代にはヒシアゲ山に一度治定をされたわけでございますけれども、この陵が二重堀を持っておりました関係で、幕末になりまして、今度は寛政でございますが、寛政年間に、蒲生君平が年代に合わないという指摘をいたしまして、それを受けまして、安政の陵改めの段階で、ネジ山、現在の平城天皇陵を考定をし、幕末の修陵の際に、修陵というのは陵を修復する際に、現在地を平城天皇陵として正式に治定をしたわけでございます。この幕末の治定の際には、御案内の谷森善臣が詳しい考定をしておるところでございます。
 平城宮の造営によって一部を削り取られた古墳があるのではないかという御指摘でございましたが、後円部に当たるという御指摘をいただいておりますことは承知をしてございます。
 しかしながら、当時の埋葬の方法としまして、例えば桜井のホケノ山古墳もそうでございますけれども、竪穴式の石槨のあります古墳に、後世になりまして横穴式の石室をつくって埋葬したという例、いわば廃墳を利用しました二次利用というのも最近確認されておるわけでございまして、そのような例も多々あったのかもしれないということもございまして、今回御指摘の陵も、そのような一例である可能性も否定できないのではないかと思っております。
 また、治定から現在に至るまでの長い経過、積み重ねも無視するわけにもいかないだろうということで、私どもといたしましては、陵誌など確実な史料が発見されない限り、現在の陵を維持していく考えでございます。
植田分科員 時間がないので、非常に丁寧な説明はありがたいのですが、それは大体承知しています。
 ホケノ山のことも、衾田陵のことも知っています。衾田陵の周辺だって、ほかに幾らだって、崇神陵だった勾岡上陵でしたか、それに比定できるようなところは幾らだってあるわけですよ、あの辺は古墳だらけですから。平城天皇陵にしても、ホケノ山の例も私は承知しておりますが、例えば、それは実際に具体的に学術調査をやっているわけではないわけで、そうかもしれませんなという域を超えないわけですね。
 ですから、私は何遍も言いますが、具体的にそうした学術調査をやれる体制というものが宮内庁の書陵部だけでないのであれば、もっと民間の考古学者も集めて日本の過去の歴史をしっかりともう一度再現していく、少なくとも調査していくということは、宮内庁さんが先ほど言われた、静安と尊厳を保持するためにむしろ貢献する作業ではないかと私は考えるわけです。
 そういう意味で、最後に、もう時間がありませんから、羽毛田次長にお伺いいたします。
 私、一度、この話をお伺いしたことが別途ありまして、いろいろな形で書陵部さんも工夫をなさっておられるという話も聞いております。しかし、実際のものをきっちりと、発掘を含めて作業していく。例えば、管理管理とおっしゃるけれども、私ら小学校時分、崇神陵も景行陵も箸墓も全部、墳丘の上まで登ったことあります。小学校時代ですよ。全部、そんなの登りました。ちゃんと入れます。夕方になると怖いので、わあっとか言って逃げて帰りましたけれども、だれに怒られたわけでもないですわ。その程度の管理ですわな。私、実際に行ったわけですから。全部歩いたわけですから、あの辺の古墳は。
 ですから、実際に具体的なそうした学術調査の必要性があるのかないのか。少なくとも、今の宮内庁さんとしての発想の限界も恐らくあるだろうけれども、静安と尊厳の保持をより確実なものとしていくために、調査の必要性というものはこれから出てくるんじゃないのか。
 具体的に答弁してくれとは言いませんが、今後、より歴史の事実に接近するという必要性というものはお感じになっているのかどうなのか、その辺の方向なり感想なり御見解なりを次長にお伺いして、終わります。
羽毛田政府参考人 先生から貴重な御意見をちょうだいいたしました。
 私どもといたしましても、陵墓の治定と申しますか、定めというものは、未来永劫、どんなことがあってもそれを変えないものであるというようなことを考えているわけではございませんし、その間における歴史学あるいは考古学等の進歩というようなことについても思いをいたすことは当然だろうと思います。
 ただ、一方において、今先生、静安と尊厳の保持ということをおっしゃっていただきましたけれども、その静安と尊厳の保持を守らなければならないゆえんのものは、そこはいわばお墓として、すぐれて精神的なよりどころとしてのお祭りもされてきている箇所でございます。
 したがいまして、そういうところについて仮に検討するとしても、そのことについては、その検討を始めること、あるいは学問的検討を始めること自体について相当慎重でなくてはならない。通常の、何かのときに疑念が生じたからすぐ調査隊をあれしてというわけにはいかない。そこは、現にお墓として追慕尊崇の対象として祭祀が行われているわけでありますから、そういう場所としての配慮というものは一方においてなくてはならないであろうというふうに思います。
 そういう点につきましては、今の、どこを陵として治定をするかという点でもそうでございますし、また、いわゆる学問的な、文化財的な観点からそこの地をいかに研究するかというようなことにつきましても、これはお墓である、陵墓であるという観点に立っての管理ということをまず第一にしていかなければなりませんし、そのことについて、我々として欠けるところがあって十分なる管理がなされていないとすれば、まずそのことを私どもも反省し、常にそういうことについてきちっとするように心がけていかなければならないものであろうというふうに考えております。
植田分科員 あと二時間ぐらいしたいですが、時間ですので、この辺で終わります。
持永主査 これにて植田至紀君の質疑は終了いたしました。
    〔主査退席、木下主査代理着席〕
木下主査代理 次に、石井郁子君。
石井(郁)分科員 日本共産党の石井郁子でございます。
 きょう、私は、陵墓及び陵墓参考地について質問させていただきます。
 四年前の一九九八年、奈良県を直撃した台風で、日本最古の巨大前方後円墳、箸中山古墳が、通称箸墓ですが、前方部など甚大な被害を受けました。根こそぎの倒木もあって、無数の埴輪などが露出した。その後、初期の壷形埴輪とか特殊器台形埴輪など、宮内庁書陵部によって展示されて、大勢の方が熱心に見学したということが報じられているわけでございます。一方、近年、全国各地で、遺跡から歴史的、文化的に貴重な埋蔵物等が発掘、発見されまして、国民的な関心が大変高まっています。そういう中で、きょうは、陵墓の保存と公開の問題で尋ねたいのでございます。
 まず、陵墓は全国に四百五十五カ所、六百五十二ヘクタール、参考地は四十六カ所、五十五ヘクタール、関連施設合計で約九百カ所が宮内庁の所管となっています。また、陵墓には古墳が約八十基あります。そのうち、世界に例を見ない貴重な歴史的文化財である前方後円墳は二十数基あります。近畿地方には、巨大古墳、全長二百メートルを超える大規模な前方後円墳が約五十基ありますので、そのうちの二十数基を陵墓が占めているというふうに言えるかと思います。
 このように陵墓は学術的、文化的な価値が非常に高いということは言うまでもないわけですが、そこで、この陵墓の保存と公開について、宮内庁も、かつて次のような答弁を国会でされているわけですね。
 これは九三年の参議院予算委員会でございますけれども、「陵墓は、我が国が世界に誇る重要文化財、文化遺産の一つでもあります」ちょっと省略しますけれども、陵墓の管理に当たりましても、地域住民から大切にされてきた経緯も踏まえて、地元住民の意向とか要望については十分配慮する、地域住民に親しまれるような、あるいは活性化に役立つようなやり方があれば、意見を聞きながら努めてまいりたいという御答弁でございます。
 この立場は現在も変わらないと確認してよろしいでしょうか。
山口政府参考人 陵墓は、先ほども植田議員に御答弁申し上げましたとおり、皇室の御先祖をお祭りしておるお墓でございます。したがいまして、先ほど申し上げましたように、静安と尊厳の保持ということが何よりも大事であろうと思っておりますが、同時に、陵墓は、地域におきまして、これまでも大変大切にされてきたものでもございますし、多くの国民から追慕尊崇の対象ということで、参拝客も多数見えておられるということでもございますので、そのような管理に当たりまして、お墓として静安と尊厳の保持が第一義でございますけれども、文化的な側面につきましても、しっかりとした形での管理をしていきたい、このように考えている次第でございます。
石井(郁)分科員 私、このことは本当は長官に御答弁をいただきたいなと思っていましたけれども、きょうは出ていらっしゃいません。しかし、今、微妙な言い方をされましたけれども、私が先ほど御紹介しましたように、これは世界に誇る重要文化財です、文化遺産の一つですということを参議院でしっかり答弁されていらっしゃるわけで、そのことはきちんと言っていただかなくてはいけません。もう一度、お願いします。
山口政府参考人 陵墓の中でも、我が国にとりまして歴史上または学術上価値が高いと評価し得るものは、文化財保護法第二条第一項に言う「文化財」に該当するものでございます。
石井(郁)分科員 それでは、陵墓の中で文化財保護法に基づいて保護されているもの、あるいは史跡などに指定されているものはどのくらいありますか。また、その地域なども教えていただきたいと思います。
山口政府参考人 陵墓で文化財保護法の史跡指定を受けているものというお尋ねかと存じますが、陵墓参考地あるいは陪塚で史跡の指定を受けているものが、それぞれ二つございます。
 具体的に申し上げますと、大阪の藤井寺にございます藤井寺陵墓参考地、奈良県橿原にございます畝傍陵墓参考地、陪塚につきましては、大阪府堺市の仁徳天皇陵のへ号陪塚、羽曳野市の応神天皇陵ほ号陪塚、おのおの二カ所ずつでございます。このほか、史跡等に指定された地域内に陵墓があるケースもございます。
 ただ、先ほど申し上げましたように、歴史上または学術上価値が高いと評価し得る陵墓につきましては文化財に該当するということでございますけれども、陵墓につきましては、現に皇室において祭祀が継続して行われております。そういう生きているお墓でございまして、皇室用財産といたしまして、宮内庁におきまして、十分な保存、管理が行われているところでございますので、基本的には、原則としましては、史跡に指定する必要はないものと考えている次第でございます。
石井(郁)分科員 結局、陵墓の中で文化財保護法によって保護されているものはないということでございますね、参考地と陪塚の例が挙げられましたけれども。
 それで、今度は文化庁にお尋ねしたいと思うのです。
 全国の古墳、とりわけ前方後円墳などについて、その文化財的な評価というのはどのようにされているのかということが一点。それから、先ほども挙げましたけれども、巨大な前方後円墳で、陵墓以外はどのような保護政策をとっていらっしゃるか。お聞かせください。
銭谷政府参考人 前方後円墳を含む古墳は、古墳時代における各地の政治権力の象徴を端的に示す記念物として、我が国における統一国家の成立を考える上で欠くことのできない遺跡だと思っております。その意味で、歴史上、学術上、非常に価値の高い重要な文化財であると認識いたしております。
 現在の指定の状況でございますけれども、古墳については、各地を代表するものについて、その時代やその特質などを考慮いたしまして指定を行っておりまして、現在、平成十四年三月十九日現在でございますが、三百六十七件が史跡に、八件が特別史跡に指定されております。
 こういった指定されました史跡につきましては、その保存、活用のために一定の規制をかけるとともに、文化庁といたしまして、史跡等の保存整備、保存修理等を行う事業について助成措置を講じているところでございます。
石井(郁)分科員 確認させていただきますけれども、巨大な前方後円墳、陵墓以外の前方後円墳は重要な史跡ということでの指定はされているということですね。もう一度。
銭谷政府参考人 前方後円墳は、我が国において発達した特徴的な墳墓でございまして、各地に多数築造されたことから、指定例は大変多うございます。
石井(郁)分科員 今お答えいただきましたように、前方後円墳というのは陵墓以外は大変多く文化財保護法に基づいて保護されているということを確認させていただきました。まさに、前方後円墳というのは世界に誇る土のモニュメント、本当に日本の貴重な、文化的な、学術的な遺産というふうに言えるわけですね。
 ところが、宮内庁は、陵墓は重要文化財だと、私は冒頭に言って確認させていただきましたけれども、そういう位置づけをされていますのに、そういう陵墓、これらの古墳は文化財保護法の適用外だ、あるいは文化財保護法に基づいた保護をとっていらっしゃらない。これはどうしてでしょうか。それは両方にお願いします。
山口政府参考人 先ほど申し上げましたように、文化財保護法第二条の定義に合致します陵墓でございますれば、文化財保護法に言う「文化財」に該当するものという認識を私どもも持っております。
 ただ、陵墓は、先ほど来申し上げて恐縮でございますけれども、現に皇室において祭祀が継続して行われている、生きている墳墓でございまして、皇室と国民の追慕尊崇の対象となっているところでございまして、一般の古墳とは性格を異にするものでございます。
 その管理につきましては、宮内庁におきまして、皇室用財産として、静安と尊厳の保持を図ることを基本としながら、文化的意味における保全、保存という点にも配慮して万全を期しているところでございます。
 具体例で申し上げますと、古代高塚式陵墓、前方後円墳などの埋蔵文化財包蔵地につきましては、まずもって、現状を変更することなくできるだけ保存に努め、やむを得ず工事等を行う場合におきましても、事前調査を実施して遺構の残存状況等を確認し、工法を工夫、研究いたします。また、調査、施工の際には、文化財保護法に定められた諸手続を踏んで、遺漏のないようにしておるところでございます。
 このような観点から、陵墓につきましては、史跡という形での指定を行う必要がないという考えをしておるところでございます。
銭谷政府参考人 一般に、史跡の指定につきましては、対象となる土地の所有者等の同意を得て行うわけでございます。したがって、陵墓である古墳につきましては、国有財産として宮内庁が管理しているものであることから、史跡として指定する場合には宮内庁の同意を得て行うことが前提となります。
 文化財保護の観点から最も重要なことは、その文化財が十分に保存されているかどうかということでございます。仮に重要な文化財が適正に保存されていない場合は、史跡等に指定することによってその保存を図っていくということが重要になってこようかと思います。
 文化庁といたしましては、陵墓の問題につきましては、宮内庁において十分な保存が図られているものと考えておりまして、文化財保護の観点から特段の問題はないものと認識いたしております。したがって、現段階で、史跡に指定して保存する緊急の必要性はないというふうに考えているところでございます。
石井(郁)分科員 先ほど宮内庁の御答弁で、陵墓といえども文化財という認定に合致するということであればそういうこともあり得ると、ちょっとおっしゃいましたね。しかし、現にお墓として管理している、保存もしているので、特に史跡の必要がないということだと思うのですが、前段で、文化財としての価値が認められる場合には文化財保護法の適用もあり得るというふうに聞いたのです。その辺はちょっとぼやかしたように聞こえたのですが。
山口政府参考人 先ほど来申し上げておりますように、文化財保護法第二条に「文化財」という定義がございまして、陵墓でございましても、それに該当するものはございますので、それは文化財保護法に言う「文化財」でございます。これは申し上げました。
 その文化財につきまして、私どもは、第一義的には陵墓でございますから、陵墓としての管理が第一義でございますけれども、文化的意味における保存という点にも十分配慮しながら管理しておるところでございまして、その意味で、指定という形での文化財保護法の手続を踏まなくても十分管理ができているということでございます。
石井(郁)分科員 その辺は少しきちんと考えなきゃいけないかなと思うのですが、ちょっと先へ進ませていただきます。
 実は、私は奈良県民でもあったことがありまして、今でも半ばそうなんですけれども、奈良県下の地元、あるいはまた全国の考古学研究者、歴史学研究者からは、佐紀盾列古墳群を文化財として保護して古都奈良の世界遺産に追加登録をしてほしい、さらに、大和古墳群、大阪の大山古墳、仁徳陵など、一帯の古墳群を世界遺産に登録をという声が近年高まっているわけでございます。
 世界遺産との関係で申しますと、世界遺産への登録は、国内法で保護措置がなされてなきゃいけない、公開されていることが原則です。国宝や重要文化財、特別史跡または史跡の指定が必要になっています。
 このことで文化庁にぜひお聞きしたいのですけれども、古都奈良を世界遺産に登録する際に、宮内庁所管の正倉院を、急遽、重要文化財、続いて国宝に指定されたと思うのですね。このことは間違いございませんか。
銭谷政府参考人 正倉院を含む東大寺エリアは、古都奈良の文化財の構成要素として平成十年に世界遺産一覧表に登録されているところでございます。
 若干、経緯を申し上げますと、奈良市を中心に古都奈良の文化財の世界遺産一覧表への登録のための推薦準備作業を行っていた当時、歴史的にも地理的にも東大寺と一体である正倉院についても、東大寺とともに世界遺産として推薦することが適当であるということが言われたわけでございます。
 この場合、先ほどお話がございましたように、世界遺産として推薦するためには、文化財保護の観点から、国内法による保護措置がとられていることが必要でありますので、文化庁は、正倉院につきまして、文化財保護法に基づく指定をすることができるかどうか、正倉院を管理している宮内庁と協議を行いました。
 その結果、正倉院を国宝に指定するとともに、その周辺地域を史跡東大寺旧境内に追加指定することについて宮内庁の同意が得られたために、平成九年五月にそれぞれ指定を行うとともに、平成九年六月、東大寺とともに古都奈良の文化財として世界遺産に推薦し、平成十年十二月の世界遺産委員会において、世界遺産一覧表への登録が決定されたものでございます。
石井(郁)分科員 どうもありがとうございました。
 今お話しのように、宮内庁所管でも文化庁と協議すれば文化財保護法に基づく指定は可能になるということでございます。ですから、私は、こういう事例が今出てきているという点でも、宮内庁として、本当に世界に類を見ない、また、日本が誇る土のモニュメント、この古墳を、国民的な関心にこたえて、また、地域の活性化に役立つという観点も含めて、文化財保護法に基づいて保護、保存するということに踏み出してもいいのではないかというふうに考えますが、いかがですか。
山口政府参考人 先ほどの文化庁の方の御答弁と若干重複するかもしれませんが、正倉院の国宝指定の経緯につきまして、宮内庁の側からのお話をちょっとさせていただきたいと思います。
 宮内庁が文化庁からの協議を受けまして同意いたしましたのは、正倉院正倉が、もともと、東大寺に献納された聖武天皇の御遺愛の品々を納めた宝庫でございました。その宝庫は、朝廷の監督下にございましたけれども、実態的に、千有余年にわたりまして、東大寺によって管理されてきたという歴史的な経緯がございました。また、物理的な建物の位置、地理的な位置におきましても、東大寺の境内にあったということは御案内のとおりでございまして、そういう正倉院と東大寺の特別な関係にかんがみまして、先般の正倉院正倉の国宝指定ないしは世界遺産への推薦につきましては、宮内庁といたしまして同意をいたしたわけでございます。
 陵墓、幾つか例がございましたけれども、私どもといたしましては、そのような特別な関係があるのかどうか、むしろ、そういう東大寺と正倉院ほどの密接な関係はないのではないかという考えを現在のところ持っている次第でございます。
石井(郁)分科員 先ほど来、宮内庁は陵墓として管理しているということを繰り返していらっしゃるわけですけれども、私は、皇室財産の管理と文化財としての保護、保存というのは別なものだというふうに思うのですね。分けて考えなくちゃいけない。文化財として保護できるのは文化財保護法しかないわけですよ。だから、宮内庁が幾ら、管理している、保護していると言っても、そこにはいろいろな制約、限界も出てくるだろうというふうに思うのですね。
 今、私が問題にしましたのは、世界遺産登録との関係で、佐紀盾列古墳群などが省かれてしまう。景観とその一帯が、何で古都奈良は世界遺産に登録しているのに、その部分は除かなくちゃいけないのか、その部分を一緒にしてほしい、これは世界遺産として考える上では当然出てくる話なんですよ。だから、陵墓を文化財保護法の適用外にしている限り、この矛盾が出てくるわけです。今、そこを正さなきゃいけないときに来ているということを強調しておきたいと思います。
 それからもう一点、その一帯の古墳群が史跡として整備されたり保護されていないために、今、いろいろな問題が起きている。道路建設で遺跡や景観の破壊という問題がございます。そういう点があちこちで起こっていると思うのですね。
 一例を挙げますと、天理市のバイパス道路の建設というのがありまして、文化財として保護されていない古墳の周辺に県道が計画される。そういう開発との関係でいろいろ問題が起きていると思います。
 もう一例も挙げますと、文化的価値のある奈良県の丸山古墳、大阪府の墓山古墳などは、農耕地、宅地開発が進んで、宮内庁が陵墓や参考地として指定した墳丘部分の一部分など以外を文化庁が保護し、地方公共団体が民有地を買収して公用地としているということで、宮内庁の指定部分というのは未整備になっているわけですね。このような古墳が四カ所あると思いますけれども、こういう例からも、今、文化財として明確に保護するということが本当に求められていると思います。
 今、このような状況を放置していきますと、私たちも陵墓を大切にしたいと思っていますから、まさに陵墓の持っている日本の文化財としての価値を台なしにすることにもなるということで、早急な保護措置が必要ではないのかということを強調しておきたいと思うのです。
 先ほど来申し上げましたように、今、人類共有の文化遺産を守るというのは世界でも新しい流れでありますし、古墳群の中でその重要な位置を占めているのが陵墓だ、前方後円墳だということになっているわけで、そういう価値のある財産を、国民共有の財産というか、まさに日本の歴史を解明する遺産としても重要だ。この陵墓をきちんと保護し保存する、そういう時期に来ているのではないかというふうに私は考えておりまして、重ねて宮内庁の御見解を伺っておきたいと思います。
山口政府参考人 先ほど来御答弁申し上げておりますように、歴史的、学術的な価値の高い陵墓につきましては、私どもも、文化財という認識のもとで慎重な管理をしておるところでございまして、決して、宮内庁の管理地であるから文化的な面での管理が欠落しているということではございません。
 文化庁との連絡なども常々いたしながら、例えば、先ほど言いました埋蔵文化財包蔵地につきまして調査あるいは工事も行わなければならないという場合におきましては、文化財保護法に定められました手続を踏み、遺漏のないように努めておるところでございまして、私どもも、今後も引き続きまして、陵墓の管理という中に、その文化的意味における保存、保全という点にも十分な配慮をしてまいりたいと思っておるところでございます。
石井(郁)分科員 確かに宮内庁は、この間、陵墓営繕工事の事前調査に附属して行われる限定公開への参加者枠を拡大しておられます。また、九八年の宮崎県によるメサホ塚古墳、ヲサホ塚古墳の両陵墓参考地の精密測量を許可したとか、一定の公開が進んでいるというふうに思うのですね。私は、この陵墓の学術調査と公開について、もっとこれを進めることをお考えになっていらっしゃるかどうか、その必要があるのではないかということで伺ってみたいと思います。
 今申し上げましたように、いろいろな形で考古学者、関係者や歴史学者の間から、この限定公開への参加をもっと公開的にしてほしい、いろいろな制約はつけないでほしいという要望も出ているかと思いますし、今まで以上の、充実した、実質的な公開をしてほしいという声が続いているかというふうに思います。
 先ほどの、台風の被害に遭った箸墓ですけれども、私も行ってきましたら、宮内庁は、ヤマトトトヒモモソ姫の墓として静安を守るというふうになっていますが、ここは卑弥呼の墓ではないのかとか、三世紀半ばの古墳である可能性が高いとか、大変議論のある、そしてまたロマンもかき立てられる、そういうお墓でございますけれども、こういう点では皆さんの期待にもっとこたえていいのではないかということが一点です。
 この場合、申し上げておきたいのは、考古学者の皆さんは、必ずしも、発掘調査、墓を全面公開せよと言っているわけじゃないのですね。周囲の確認とか外形の実測とか墳丘の形とか構造とか、外見でも確認できるようなところをやるだけでも随分とわかることがあるということでございますので、そういう点からも、しっかりした保存、保全のためにもっと学会の方々の御意向もくみ入れて、あるいは協議して、充実した公開に一歩を踏み出すべきではないかというふうに考えますが、いかがでしょうか。
山口政府参考人 先ほど来お答え申し上げておりますように、陵墓は皇室の御祖先のお墓でございますけれども、学術文化的な側面というのも高いものがございますので、私ども、その陵墓の本義といいましょうか、第一義的な意味での陵墓管理に支障を及ぼさない限りにおいてではございますが、傷みの進んだ陵墓につきまして保全工事を行う際には現地での見学会を開催いたしましたり、あるいは出土品につきましてはこれを公開いたしましたり、それぞれの調査結果につきましては書陵部紀要を通じまして各研究者のごらんに供しておりましたり、あるいはまた研究者からの要望、要請がございますれば、宮内庁の職員がかわりまして調査をして、書陵部紀要において公表していくというような努力も重ねておるところでございます。
 そういうことで、今後におきましても、先ほど来申し上げておりますように、皇室の御先祖のお墓である陵墓というその第一義、基本は踏まえつつも、学術文化的な面での役割というものにも十分意を用いてまいりたいと思っております。
石井(郁)分科員 確認させていただきたいのですけれども、一九九九年から書陵部が行う発掘工事、これは文化財保護法五十七条一項の届け出で実施されているというふうに聞いています。だから、宮内庁管理の陵墓あるいは陵墓参考地を文化財として認めたからこういう届け出をしているというふうに考えられると思うのですけれども、この点はいかがですか。
山口政府参考人 御指摘いただきましたのは、済みません、条文をちょっと忘れましたけれども、埋蔵文化財の発掘関係かと思っております。
 調査のための埋蔵文化財の発掘といいますのと、工事に伴いまして埋蔵文化財包蔵地を発掘する場合と二つございますが、いずれにつきましても、手続としましては、文化財保護法に文化庁への届け出の規定がございますので、私どももそれに従いまして手続を踏んで行っておるということでございます。
石井(郁)分科員 最後に、陵墓参考地についても一点伺っておきたいと思います。
 参考地は、陵墓として主が特定できないということになっているわけでございますけれども、経過としては、明治十五年に陵墓見込地という制度を設けて、その後、参考地と名前を変えて、何となく慣例としてこうなっているというふうに私は承知しています。法的には、国有財産法三条二項三号を準用して皇室用財産と規定するなど、あいまいな拡大解釈がなされているのではないかと私は思います。きちんとした法的根拠はないのではないか。そしてまた、科学的、学問的根拠もほとんどないままに国が陵墓参考地としてきたということがございまして、ここには研究者は一切立ち入りできないということになっています。
 先ほどのお話にもありましたけれども、陵墓参考地にも、大型の見瀬丸山古墳など、貴重なものが幾つもあります。この公開を拡大する、公開を行うということは、日本の歴史解明に貢献するものだというふうに考えるわけでございますので、参考地についても、学会などとも協議して公開に踏み切るということはいかがでございましょうか。
山口政府参考人 お答え申し上げます。
 陵墓参考地は、特定の被葬者が決定できないけれども、皇室の御先祖のどなたかのお墓であろうということで宮内庁の方で管理する、陵墓の一種類、一パターンでございます。
 御指摘ございましたように、陵墓参考地について、学会の方々、研究者の方々が入れないというお話がございましたが、私どもの陵墓保全工事に際しましては、陵も墓(ぼ)も陵墓参考地も含めまして、傷みの進んだものから順次手がけておる関係で、例えば、平成十一年には、奈良県にございます磐園陵墓参考地で、墳丘護岸工事に伴う事前調査を行いまして、そのときに現地で見学会を行いました。翌平成十二年には、兵庫県・玉津陵墓参考地におきまして、墳丘外堤護岸工事の調査がございましたので、このときも現地の見学会がございました。
 このように、参考地だから人を入れないということではございませんで、いずれも、陵墓の本義と学術研究上の要請とを検討しながら対応しておるというところでございます。
石井(郁)分科員 時間が参りました。きょうは、私、質問させていただいて、いろいろとよかったなと思っているのです。宮内庁も、陵墓の文化的、学術的な価値というのは大変お認めになっていらっしゃるわけですね。そして、一定、文化庁とも協議をしながら、文化財指定にも道を開いているということもわかりました。
 そういう点で、今この問題で、もう二十一世紀ですから、新しい検討を始められていいのではないかというふうに思います。文化的な遺産の保存ということは大事だ、それから、科学的解明というのは、研究者あるいは国民がたって望んでおられることですから、そういう点で宮内庁がぜひ前向きな立場に立っていただきますように、これは御要望を申し上げまして、質問を終わりたいと思います。
 どうもありがとうございました。
木下主査代理 これにて石井郁子君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして皇室費についての質疑は終了いたしました。
 次回は、明九日午前九時から本分科会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後六時十九分散会


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