衆議院

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第3号 平成14年7月22日(月曜日)

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(注:この議事情報は、「決算行政監視委員会第一分科会議録第1号」のデータです。)
本分科会は平成十四年七月十日(水曜日)委員会において、設置することに決した。
七月十九日
 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。
      岩永 峯一君    小西  理君
      渡海紀三朗君    宮路 和明君
      持永 和見君    井上 和雄君
      石井 紘基君    木下  厚君
      大森  猛君    鈴木 宗男君
七月十九日
 持永和見君が委員長の指名で、主査に選任された。
平成十四年七月二十二日(月曜日)
    午前十時開議
 出席分科員
   主査 持永 和見君
      岩永 峯一君    小西  理君
      渡海紀三朗君    宮路 和明君
      石井 紘基君    上田 清司君
      木下  厚君    山谷えり子君
      山村  健君    大森  猛君
    …………………………………
   国務大臣
   (内閣官房長官)
   (男女共同参画担当大臣) 福田 康夫君
   国務大臣
   (防災担当大臣)     村井  仁君
   内閣府副大臣       松下 忠洋君
   財務副大臣        谷口 隆義君
   農林水産副大臣      遠藤 武彦君
   衆議院事務総長      谷  福丸君
   裁判官弾劾裁判所事務局長 天野英太郎君
   裁判官訴追委員会事務局長 片岡  博君
   国立国会図書館長     黒澤 隆雄君
   政府特別補佐人
   (人事院総裁)      中島 忠能君
   会計検査院事務総局事務総
   長官房総括審議官     友寄 隆信君
   会計検査院事務総局事務総
   長官房審議官       千坂 正志君
   会計検査院事務総局第一局
   長            石野 秀世君
   会計検査院事務総局第四局
   長            重松 博之君
   会計検査院事務総局第五局
   長            円谷 智彦君
   最高裁判所事務総長    堀籠 幸男君
   政府参考人
   (人事院事務総局勤務条件
   局長)          大村 厚至君
   政府参考人
   (内閣府政策統括官)   高橋 健文君
   政府参考人
   (内閣府男女共同参画局長
   )            坂東眞理子君
   政府参考人
   (宮内庁次長)      羽毛田信吾君
   政府参考人
   (農林水産省大臣官房長) 田原 文夫君
   政府参考人
   (国土交通省土地・水資源
   局次長)         加藤  孝君
   政府参考人
   (気象庁長官)      山本 孝二君
   政府参考人
   (沖縄振興開発金融公庫理
   事長)          八木橋惇夫君
   決算行政監視委員会専門員 川城 正彰君
    ―――――――――――――
分科員の異動
七月二十二日
 辞任         補欠選任
  井上 和雄君     山谷えり子君
  石井 紘基君     上田 清司君
  大森  猛君     中林よし子君
同日
 辞任         補欠選任
  上田 清司君     山村  健君
  山谷えり子君     井上 和雄君
  中林よし子君     春名 直章君
同日
 辞任         補欠選任
  山村  健君     石井 紘基君
  春名 直章君     大森  猛君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 平成十二年度一般会計歳入歳出決算
 平成十二年度特別会計歳入歳出決算
 平成十二年度国税収納金整理資金受払計算書
 平成十二年度政府関係機関決算書
 平成十二年度国有財産増減及び現在額総計算書
 平成十二年度国有財産無償貸付状況総計算書
 〔皇室費、国会、裁判所、内閣、内閣府(本府)所管及び沖縄振興開発金融公庫〕


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     ――――◇―――――
持永主査 これより決算行政監視委員会第一分科会を開会いたします。
 私が本分科会の主査を務めることになりました持永でございます。お隣、右側におられますのが、副主査をお願いいたします民主党の木下厚委員でございます。よろしくお願いします。
 本分科会は、皇室費、国会、裁判所、会計検査院、内閣、内閣府(本府、警察庁)、外務省、環境省所管及び沖縄振興開発金融公庫並びに他の分科会所管以外の国の会計についての審査を行うこととなっております。
 なお、各省庁の審査に当たっては、その冒頭に、決算概要説明、会計検査院の検査概要説明及び会計検査院の指摘に基づき講じた措置についての説明を聴取することといたします。
 平成十二年度決算外二件中、本日は、内閣所管、内閣府所管中本府、沖縄振興開発金融公庫、国会所管、皇室費及び裁判所所管について審査を行います。
 これより内閣所管について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。福田内閣官房長官。
福田国務大臣 平成十二年度における内閣所管の一般会計歳入歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 内閣主管の歳入につきまして、歳入予算額は二千二百十五万円余でありまして、これを収納済み歳入額七千四百三十六万円余に比較いたしますと、五千二百二十万円余の増加となっております。
 次に、内閣所管の歳出につきまして、歳出予算現額は千百七十二億一千二万円余でありまして、これを支出済み歳出額九百六十五億七千三十八万円余に比較いたしますと、二百六億三千九百六十三万円余の差額を生じます。
 この差額のうち翌年度繰越額は二百一億三千七百二十一万円余であり、不用額は五億二百四十一万円余であります。
 以上をもちまして決算の概要説明を終わります。
 何とぞ、よろしく御審議のほどお願いいたします。
持永主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院石野第一局長。
石野会計検査院当局者 平成十二年度内閣の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。
 検査報告に掲記いたしましたものは、意見を表示しまたは処置を要求した事項一件であります。
 これは、内閣官房報償費の執行等に関するものであります。
 内閣総理大臣の外国訪問に際して、外務省の元要人外国訪問支援室長が内閣官房の報償費から交付された宿泊費差額を詐取したとされる、いわゆる松尾事件が十三年一月に報じられました。
 本院において検査いたしましたところ、宿泊費差額の精算に当たって、内閣官房と外務省との間における事務の分担が明確でないことなどから、双方において、元室長から提出された精算書と領収証書の突合等の実質的な確認が行われていない状況となっておりました。また、そのほかにも内閣官房と外務省との間における総理外国訪問に係る事務及び経費の分担が明確になっていなかったり、内閣官房における報償費の執行体制等が整備されていなかったりしており、松尾事件はこのような体制を背景に発生したものであると認められました。そして、元室長が領得したと思料される額を一定の条件のもとに計算しましたところ、三億七千七百万余円となりました。
 したがいまして、内閣官房において、松尾事件に係る損害額を早期に確定し、債権を保全するための措置を引き続き講ずるとともに、内閣官房及び外務省において、総理外国訪問におけるおのおのの事務及び経費の分担を明確にし、内閣官房において、報償費の執行体制を整備し内部確認、監査体制を構築するよう是正及び改善の処置を要求いたしましたものであります。
 以上をもって概要の説明を終わります。
持永主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。福田内閣官房長官。
福田国務大臣 平成十二年度決算検査報告に記載されております事項について、内閣官房が講じた措置を御説明申し上げます。
 まず、内閣官房と外務省との間における事務及び経費の分担の明確化についてでありますが、内閣官房においては、平成十二年度当初から、総理外国訪問の際の総理大臣及び内閣官房副長官の宿泊費については施設借り上げ費として庁費により支弁し、平成十二年八月からは、旅費法の運用方針の改正に伴い、内閣官房職員の宿泊について実費支給とするなど、既に見直しを行ってきたところであります。
 平成十三年度からは、総理外国訪問に伴う総理大臣及び官房副長官以外の内閣官房職員の宿泊費についても、施設借り上げ費として庁費により支弁するなどの改善措置を講じ、現地で必要となる経費の支払いに当たっても、内閣官房の職員が随行し、すべて責任を持って精算に当たっているところであります。
 加えて、総理大臣及び官房副長官に係る施設借り上げ費及び現地での自動車の借り上げ費等の支払いについても会計責任の明確化を図る観点から外務省に支出委任を行うなどの取り組みを進めてきたところであります。
 また、平成十四年度においては、総理外国訪問における内閣官房と外務省の事務分担を明確に定め、その事務分担に応じみずからの責任において予算を計上の上執行するとの観点から、総理外国訪問に伴う経費のうち総理大臣及び官房副長官を含めた内閣官房職員の宿泊に関する経費以外は外務省に一元化して予算計上したところであります。
 次に、報償費の執行体制の整備、内部確認、監査体制の構築については、本年四月、内閣官房報償費の取り扱いに関する基本方針等を定め、
 一、毎年度の報償費の執行方針を明らかにすること、
 二、事務補助者の範囲を明確にすること、
 三、報償費の支払いに関する関係書類の記録、管理及び内部確認等のルールを定めること
など、内閣官房報償費の執行体制の整備等を行ったところであります。
 こうした執行体制のもとで、本年度より当該基本方針等に基づき、一つ一つ吟味を行った上で、厳正かつ効率的な執行に努めているところであります。
持永主査 以上をもちまして内閣所管についての説明は終わりました。
    ―――――――――――――
持永主査 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。上田清司君。
上田(清)分科員 民主党の上田清司でございます。
 官房長官初め各皆様方、お疲れさまです。
 それでは、早速お尋ねをしたいと思います。
 まず、人事院の総裁にですが、地域給的手当という項目がこの国家公務員の給与のしおりにございます。
 資料一に、お手元に出しておりますが、諸手当の中にはいろいろありまして、特に、私は、この二番目の「地域給的手当」、調整手当、特地勤務手当、寒冷地手当、この三点の中で、調整手当、これは俗に言う、例えば、東京二十三区などは物価も高い、家賃も高い、もろもろ問題があるということで一二%の調整手当を出しておるし、横浜あるいは大阪、名古屋といったところは一〇%、そしてまた、地方都市においては六%等があります。
 これはそれなりの意味のある手当だと思いますが、問題は、例えば鳥取なら鳥取市に行く、秋田なら秋田市に行く、しかし、三年以内においては異動保障という名目でこの調整手当がそのままついてくる、こういう制度になっておるということについては、事実でしょうか。
中島政府特別補佐人 法律でそのように規定されております。
上田(清)分科員 東京二十三区は物価が高い、もろもろ生活しづらいということで一二%とっておるんですけれども、転勤した後まで、異動保障という特例で、法律に基づいてはいるものの、なぜこのことが昭和四十五年に策定されて以来三十二年間ほっておかれるのか。
 今、私の手元には、こういうメールも来ております。
 私たちの職場では、全く同じ仕事をしているのに、東京から転勤してきた人は一二%持ってきます。単純に本俸三十万円の人で毎月三万六千円の差が出ます。それだけではありません。扶養手当や期末、勤勉手当にもはね返ってきます。このような制度がなくても人事交流は十分行えるはずです。もし行えないとするならば、調整手当そのものを本俸に繰り入れるなり廃止すべきだと思います。私は労働組合の役員もしていますが、この問題ではぜひ協力したいと思い、メールを出した次第です。という形で、東北地方のさる公務員からこういうメールもいただいております。
 一般的に言って、同じ職場で同じような仕事をして、東京から来ただけで一二%の上乗せ給があるということを不自然だというふうに私は思いますが、総裁はどのようにお考えですか。
中島政府特別補佐人 異動保障が設けられた趣旨は、先生御存じだと思いますけれども、異動に伴う経済的な影響を緩和する必要性というものを、各省の人事当局及びまた異動する当該本人からそういう要望があったというふうなことを聞いておりますし、異動に伴う経済的な影響を緩和するということは、異動をスムーズに行うために、私は、各省の人事当局にとっては非常に大切な制度だというふうに認識していると思います。
上田(清)分科員 これにもやはり経過があります。
 例えば、昭和三十六年に、内閣委員会でこのような答弁が当時の人事院給与局長からございました。
 級地の高いところから級地の低いところに異動いたしますると、これは給与の額が減るわけでございます。異動に伴いまして給与が減る。しかし、生活習慣というものは、新しい任地の生活習慣に必ずしも最初からなじまないということもありまして、まあその点は非常に困難があろうと思うのであります。これは六カ月ぐらいもすれば、その新しい任地の生活慣習にもなれるであろうということを一応期待しまして、今後異動の際におきましては、六カ月間は従来の異動前の高い級地の暫定手当額を保障するという措置をあわせて講ずることにしたらいかがなものであろうか、
このような勧告をした次第でありますというような、当時、内閣委員会の記録がございます。
 半年ぐらいすりゃなじみが出る、その間はやむを得ぬだろう、激変緩和措置だ、こういう認識を当時はされておったんですが、いつの間にか、昭和三十六年の翌年には十二カ月になり、そしてさらに四十二年には二年になり、これは資料三のところに書いておりますが、昭和四十五年には三年間になっている。三年間しなけりゃなじまない。
 しかし、後ろの資料四のところにも、農水省での上級職だけの異動を見まして、どうやら私の調査の方が間違っていたみたいで、後で農水省から調査をいただきましたら、三年以内に本省に戻るなり異動する人たちが九〇%いる。なじんだころにはもとに戻る。
 つまり、半永久的に、この異動保障という名の特例によって、調整手当を一度もらったら、場合によっては半永久的にずっともらえることが可能になるという制度になっていることについては、総裁はどのようにお考えでしょうか。
中島政府特別補佐人 今先生がお読みになったような答弁を当時しておるというのを、私も目を通してみました。
 当時はそういうような認識であったんでしょうが、結局、例えて言いますと、本省から秋田なら秋田の営林局に転勤する。そうしますと、地元の市町村とかあるいはその他の各種団体の方の要望といたしましては、もう少し長く在勤してもらいたいという要望が出てきて、徐々に東京から地方に転勤した人たちの地方における在勤年数が長くなっておるという背景があるんだというふうに私たちは認識しております。
 そのときに、今経過をお話しになりましたけれども、やはり当該本人というのは、単身赴任で行くと、いろいろな背景があるんだというふうに思いますが、当該本人あるいは本人を異動させておる人事当局が徐々に今のように長くしてほしいという要望をお出しになった。しかも、それが官民格差の範囲内の給与配分の問題だというので、そういう要望に応じてきたというふうに私たちは考えております。
上田(清)分科員 寒冷地手当や特地勤務手当というのは、任地から離れたらその手当はなくなるのか、それともずっとついてくるのか。
中島政府特別補佐人 寒冷地手当の場合には、寒冷地から他の非支給地に移転してきますと、支給されません。それは、寒冷地におる間に必要な暖房費等の必要がなくなるから、そういう制度になっておるわけでございます。
上田(清)分科員 地方の方が東京に出てきたら、物価が高いから調整手当で一二%もらう。地方に戻れば、もう要らないんじゃないですか。
中島政府特別補佐人 調整手当は、法律に書いてございますように、民間賃金、物価及び生計費という要素によってそれが構成されておるわけでございまして、物価だけではないということでございます。
上田(清)分科員 明らかにおかしいじゃないですか。人事院の総裁というのは常識がないんですかね、大変失礼な言い方ですけれども。
 あくまでこれは、指定都市なんかを中心に、物価調整手当で出ているわけですよ。にもかかわらず、任地が変わって普通のところに行って、三年間異動保障だというこの特例があること自体、おかしいじゃありませんか。何で人事院はこの問題について知らんぷりしているんですか。何らかの形で、もし必要であれば、本給に繰り入れるなり、違った名目で出すべきでしょう。単身赴任には単身赴任手当があります。引っ越しには引っ越しの費用があります。もし引っ越しの費用が赤字が出るんだったら、きちっと出すべきでしょう。
 財務副大臣に伺います。
 これは予算で、当然財務省の方で手当てをするわけですが、この問題について財務省は認めていらっしゃったから当然出ているわけですけれども、こんなことが許されていいんですか。確認します。
谷口副大臣 上田委員のお尋ねでございますが、御存じのとおり、国家公務員は労働基本権が制約されておるわけでございます。ですから、その代償措置として人事院勧告があるわけで、我々はこれを最大限尊重いたしておるわけでございます。
 そのような観点で、本制度は人事院勧告に法定されたものだということで、この予算づけをさせていただいている、こういうことでございます。
上田(清)分科員 それは当たり前の話でありまして、だから基本給とかそういうものが人事院勧告で上がっていくわけでありまして、これは地域給手当という枠の中に入っているんですよ。だから、特定の地域に着いたら、一二%、一〇%、六%、三%というのがあるんですよ。その地域から出ていったら、当然外れるものでしょう。なぜついていくんだと。特例として、異動保障といって、最初は半年なんです。まさに背景は特例なんですよ。特例が三十二年間続いているから、なぜそれを是正しないんですかということを申し上げている。
 諸物価の、全体の枠の中に入っていればオーケーだと。しかし、違うじゃないですか。地域給手当という説明が出ているじゃないですか。しかも、この民間事業者に出している「国家公務員給与のしおり」の中には、この異動保障のことは書いていない。明らかに隠しているじゃないですか。ちゃんと、寒冷地手当は任地から離れれば返納しなくちゃいけないということも書いてある。しかし、こういう異動保障があるということはどこにも書いていない。明らかにおかしいじゃないですか。
 人事院もそれをもらっているから言えないんでしょう。そうじゃないですか、総裁。こんな世の中の非常識をなぜいつまでも認めているんですか。もう一回聞きます。
中島政府特別補佐人 全く私はおかしくないと思います。各省の人事当局に話を聞いていただきたいと思います。また、東京から、あるいは大都市から地方に転勤した職員の話を聞いていただきたいと思います。不合理だとか常識がないとか、そういうような話ではないと思います。
 それともう一つは、隠しておるんじゃないかというお話でございましたけれども、私たちは国家公務員給与実態調査というものを行いまして、それを冊子にして配付しておりますが、それは各種の手当についてかなり詳しく説明しておりますから、その中には入っております。また、年次報告というのを国会と内閣に出しておりますけれども、その年次報告の中にも異動保障のことは記述しております。
 それぞれ、つくったパンフレットの中でどの程度詳細に書くかということのバランスで、今お挙げになったものには書いていないというふうに御理解いただきたいと思います。
上田(清)分科員 対象が民間事業者に出しているものですから、なおさらそのことをしっかり書いていただきたいと思いますよ。
 それで、総裁はそうだと言うんですね。私は、たまたま金曜日にもさる政府系金融機関の幹部が来られまして、このことも確認しました。特殊法人にも出ていると。本人は言っていましたよ、後ろめたい、だから本給に入れるなり廃止するなりしてほしいと。あなたが思っていることと違いますよ。今度、私の座談会、百人集めてきますから、総裁、来てください。一般の庶民が、こういう実態で、何の問題もないとあなたは言っているけれども、みんな大ありだと言っているんですよ。メールや電話が山ほどかかってきていますよ。この中に地域給手当と書いて分類してあるじゃないですか。地域に対して出しているんでしょう。違うんですか。
中島政府特別補佐人 私が申し上げましたように、異動に伴う経済的な影響を緩和するという趣旨で異動保障というのが成り立っておるということでございます。
上田(清)分科員 堂々めぐりをしておりますけれども、当然、地方から東京に転勤されればそういう調整手当は出る、もとに戻ればそういう調整手当は出ない、これが世の中の常識なんです。しかし、急に給与を減らしたら気の毒だということで、激変緩和措置というのがいろいろあります、そういう特例が昭和三十六年に六カ月でできた。あとはずるずると、いつの間にか月数をふやし、年数をふやしているんだ、それだけのことじゃないですか。それがいいわけないじゃないですか。もし必要であれば、きちんと手当を出すなり本給に入れるなりするのが筋でしょう。
 これは、自衛官や、郵政事業庁を初めとする四現業にも適用されているんですか。
中島政府特別補佐人 他の官庁のことは存じません。
上田(清)分科員 人事院の一般職に従って各省庁もやっておりますので、多分準じていると思いますが、知らないで済む総裁というのは気楽なものだなと思います。
 それから、会計検査院にお伺いします。
 例えば、既に、内々の人事院の事務方の打ち合わせの中で、過去に、仮に鳥取なら鳥取としましょう、一日東京に来て、そして今度は山形なら山形へ行った、そうすると、一日でも調整手当を出したりするような省庁があって、人事院は厳しくそれを処断したというようなことがあったそうであります。
 そういう実態とか、聞いたり見たり、あるいは件数としてあったかどうか、会計検査院として見たことがあるかどうか、御存じですか。
友寄会計検査院当局者 調整手当の異動保障制度の運用の実態については、本院として特に重点を置いて検査したことはこれまでございません。また、これまでの検査において、検査報告で指摘したり、処置要求あるいは意見表示を行ったりしたことはございません。
上田(清)分科員 これは事務方で結構ですけれども、今言ったような事例、実は私のところにメールでも来ております、そういう事例があることを。どのぐらい過去にあったか、お答えしていただきたいと思います。人事院ですよ。
中島政府特別補佐人 そういうのを件数として集計したということはございませんけれども、議員からそういうような話をうちの職員が受けましたので、うちの職員に話を聞いたところ、ないというふうには断言できない、あるというふうに言っておりました。
上田(清)分科員 これは、総裁にもお願いしたいと思いますし、会計検査院にもお願いをしたいと思います。極めて重大なことであります。そういう、日にちを操作して、そして調整手当を悪用するというような事実があるとすれば、まさにこの調整手当が、異動保障という特例を設けることによって悪用されるというような事態が行われている可能性もある、こういうことでありますから、ぜひ会計検査院と人事院におかれましては、調査をしていただきたいと思います。
 委員長、お計らいをよろしくお願いしたいと思います。
持永主査 それぞれ政府側において、必要な調査はやってください。お願いします。
上田(清)分科員 ありがとうございます。
 農水副大臣、きょうはお忙しいところ、ありがとうございます。
 実は、資料四の部分であります。後に農水省の方からお届けをいただいた数値とは若干狂っておりますので、それはお許しください。私どもの方が件数を数え間違ったのかもしれません。一人一人、異動の部分を、相当の五百十八人分、全部どこにどう異動したかをチェックして確認した数字でありました。
 ただ、九〇%の人が三年以内に基本的にはまた戻ってくるということですので、十中八九はこの異動保障の適用内にある人たちだということでありまして、どちらにしても、一たん調整給がつけば、それが半永久的につくという実態があることだけは事実でありますが、農水省において、こういう実態を、農水大臣として、多分きょう初めて見られたか、あるいは事務方で聞かれた程度だと思いますので、この点について、こういうことはいいと思われるかどうなのか。
遠藤副大臣 委員御提出の資料にあるとおり、当初は六カ月、順次、現在三年というふうになりましたが、こうしたことは長年の雇用関係の中から生まれ出てきまして、定着し、かつ法的に明定されたものだ、このように思っております。
上田(清)分科員 それは事実関係でありまして、大臣というのは事実関係を答弁するのが仕事じゃありません。
 大変恐縮ですけれども、私は、政治家として、六カ月だったものが一年になり、いつの間にか二年になり、三年になっていっている、実質的にこの調整手当というものが空文化している、ほとんどの人が調整手当がもらえるような仕組みになってしまっている、では何のための調整手当だということになる、制度の趣旨が狂ってきている、だから改めるべきだということを言っているんですが、実態からして、どういうふうにお考えになるのかということをお尋ねしておるのです。
遠藤副大臣 昭和二十五年に公務員の給与が制定されて以来、いろいろな変遷を経て、今日の非常に複雑な給与体系になりました。一般の感覚からすれば、これは一体どういう手当なのかと思うようなものもあろうかと思います。
 委員御指摘のように、制度的にある意味で検討を迫られているものもあるのではないか、そういう点もございますし、また同時に、長年雇用関係の中で培われてきたものを突き崩す、あるいは廃止するということも非常に困難なものではないかなというふうに思っております。
上田(清)分科員 例えば、東京にいて地方に出る、その出ることについて金を出さなければ的確な人事ができない、こういう仕組みが本当にいいことかどうか。だれが考えても、お金を出さなきゃ異動しません、こんな開き直りが国家公務員の間にあっていいのか。ただ、同情すべき点あります、だから激変緩和措置だと。そういうのは大体三カ月とかが多いんですよ。なぜ三年なのかというんですよ。
 見直すべき内容ではないかということを私は一貫して主張しているんですが、福田官房長官、我々の政治の世界での常識と人事院の常識は違うみたいですけれども、しかし、人事院の常識も、我々政治の世界で国民から感じたものを訴えて制度として直していく。私は、必ずこの法律は変えるべきだと思っておりますので、この法律を変えるための法案を提出したいとは思っておりますが、官房長官、今議論の経過の中で、私は見直すべきだというふうに思いますが、そのように思わないですか。
福田国務大臣 ただいまのお話伺っておりまして、公務員の待遇につきましては、これは長年の慣行ということもあるかもしれません。スタートしたときの必要性、そしてその後の経緯、また、それが現在の実態と比較した場合にうまくかみ合っているのかどうかというような点について、総合的に考えていくべきものだというふうには思っております。
 しかし、このことにつきましては、今人事院の方からも答弁がございましたけれども、そもそもこういう制度につきましては、こういう制度に関する専門の第三者機関として人事院がある、こういうようなことでございますので、私どもといたしましては、まず人事院においてこういうことを総合的に検討してもらいたい、こういうふうに思っております。また、そういう場合に、実態等のことを申し上げましたけれども、そういうものと実情をよく見きわめた上で、そして人事院の機能としてこの調査をしていただきたい。
 人事院も、そういうことについてずっと検討してきておるんだろうというふうに思っております。しかし、委員の御指摘もあることでございますから、さらにその点について納得いく説明を人事院の方でされるということも必要かと思います。
上田(清)分科員 若干踏み込んだ御発言もしていただきました。
 私も、労使の慣行あるいはこの間の経緯、そういうものを無視してやみくもに言っているつもりでもありません。したがって、経過についてもそれなりの調査をしたつもりであります。
 しかし、物事にはやはり筋道というのがあります。この調整手当が地域給手当という位置づけである以上、それは調整手当で出す。しかし、異動保障という特例が三十二年間も続くというこの事態はやはりおかしいのであって、もしそういう激変緩和措置をとらなければ人事がうまくいかないという各省庁とのすり合わせであれば、また違った名目を考えるべきであって、おのずから国民にわかるような仕組みを考えなきゃいけないというのが私の見解であります。
 それで、最後になります。
 人事院総裁は、こんなふうに異動保障の趣旨としてメモをいただいております。ちょっと読み上げておきますが、調整手当の異動保障制度は、各省の要望等を踏まえ、人事異動に伴う調整手当の減少を緩和させることによって異動の円滑を図るための人事管理上からの要請を考慮して設けられた制度であると。給与法の第十一条の七の規定に基づいてと。
 法的には問題ありません、ちゃんと法律が背景としてあるわけです。しかし、人事異動に伴う諸手当の減少を緩和させることによって異動の円滑化を図る等、ここまでしなければ異動の円滑化が進まないのかということも非常に疑問があります。
 なおかつ、少なくとも、例えば鳥取なら鳥取から東京に来て調整手当がふえる、今度は鳥取に戻るときにそれはなくなるというのがまさに地域給の性格であって、そのときには東京の生活になれちまって、鳥取に行くときはそのお金もらわないとわしは動かぬぞ、こういう話じゃないですか。世の中で通る話じゃないということなんですね。
 総裁は通ると思っていらっしゃるみたいですから、今度は御招待します、座談会に。ぼこぼこにされますよ、そんなこと言っていたら。冗談じゃないと。だったらちゃんとそういう仕組みを変えなさいと言われますよ。本当に必要であれば、きちっと違う手当を考えてくださいよ。人事院の総裁は、いつもそうして、頭をもっとやわらかくしてくださいよ。この問題は、国家公務員制度の根幹を揺るがす制度にもなりますよ、こういうわけのわからないことを現実に制度として温存されるということは。
 もっと前向きに、地域給という性格を持った制度であれば、そんなふうに理解して、地域には地域に対した手当が出る。八丈島は大変だ、物を買うにしても高い、輸送代も高い、また気候も厳しい、だから特地としての勤務手当がある。東京に戻ったらそれはもうない、当たり前のことでしょう。その当たり前のことが、特例でいつまでも続いているということに何の異議も申し立てない。官房長官はいろいろ考えなくちゃいけないと言っておられますけれども、総裁は考えることないですか、最後に聞きますけれども。
中島政府特別補佐人 給与制度を含む人事制度というのは、各省の人事当局がそれぞれの人事をやりやすいようにしていくというのが基本でございます。したがいまして、今いろいろな方から御答弁ございました。私たちは、その答弁を踏まえながら、各省の人事当局の意見をよく聞いて結論を出していきたいというふうに思います。
上田(清)分科員 半歩ぐらい進みました。
 どうもありがとうございました。
持永主査 これにて上田清司君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして内閣所管の質疑は終了いたしました。
 午前十一時四十分から本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午前十時三十七分休憩
     ――――◇―――――
    午前十一時四十分開議
持永主査 休憩前に引き続き会議を開きます。
 これより内閣府所管中内閣本府及び沖縄振興開発金融公庫について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。福田内閣官房長官。
福田国務大臣 平成十二年度における内閣府所管の一般会計歳入歳出決算につきましては、平成十三年一月の中央省庁再編に伴い、旧組織から移しかえられた計数を含め、その概要を御説明申し上げます。
 内閣府主管の歳入につきまして、歳入予算額は四百二十三億八千八百二十二万円余でありまして、これを収納済み歳入額五百二十五億八千百八十九万円余に比較いたしますと、百一億九千三百六十六万円余の増加になっております。
 次に、内閣府所管の歳出につきまして、歳出予算現額は五兆六千八百十七億七千二百三十三万円余でありまして、支出済み歳出額は五兆五千百九十二億二千九百六十九万円余であります。
 この支出済み歳出額を歳出予算現額に比較いたしますと、千六百二十五億四千二百六十三万円余の差額を生じます。
 この差額のうち翌年度繰越額は千二百七十九億八百十五万円余であり、不用額は三百四十六億三千四百四十七万円余であります。
 内閣府所管の歳出決算のうち、警察庁、防衛庁、金融庁については、各担当大臣から御説明申し上げることになっておりますので、これを除く部局、すなわち、内閣府本府及び宮内庁関係について申し上げますと、歳出予算現額は三千六百五十四億七百五十三万円余でありまして、これを支出済み歳出額二千九百六十八億二千五十三万円余に比較いたしますと、六百八十五億八千六百九十九万円余の差額を生じます。
 この差額のうち翌年度繰越額は五百九十億三千七百三十五万円余であり、不用額は九十五億四千九百六十四万円余であります。
 以上をもちまして決算の概要説明を終わります。
 何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。
持永主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院石野第一局長。
石野会計検査院当局者 平成十二年度内閣府の決算のうち、歳入並びに内閣本府及び宮内庁関係の歳出につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
持永主査 次に、会計検査院円谷第五局長。
円谷会計検査院当局者 平成十二年度沖縄振興開発金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
持永主査 この際、お諮りいたします。
 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
持永主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
持永主査 以上をもちまして内閣府所管中内閣本府及び沖縄振興開発金融公庫についての説明は終わりました。
    ―――――――――――――
持永主査 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。山谷えり子君。
山谷分科員 よろしくお願いいたします。
 福田内閣官房長官、男女共同参画担当大臣、そして男女共同参画推進会議でリーダーシップをとってのお仕事、御苦労さまでございます。
 職場で、また生活慣習の中で女性に抑圧的な面が多い日本にあって、男女共同参画社会の実現は二十一世紀の我が国の社会を決定する最重要課題と位置づけられ、関係予算も九兆円と大きな額に上っております。国会議員として、日本のあしたのために有効にお金が使われ、国と一人一人のために実りある成果があるよう見ていかなければならないと考えております。そうした視点で幾つか質問をさせていただきたいと思います。
 四月十一日、衆議院青少年問題に関する特別委員会で、「新子育て支援 未来を育てる基本のき」について、例えば女の子だったらおひな様、男の子だったらこいのぼり、「押しつけるような子育てをしていませんか?」というチェックリストに、私は日本人の文化や美意識まで否定するかのようで違和感を覚えると申しました。これはジェンダーフリーな視点に立った子育てを進めようという文科省の委嘱で作成された子育て支援パンフレットでございまして、こちらにも資料として添えさせていただいておりますが、福田官房長官からは正直言って賛成しないという御答弁をいただきました。
 そこで、さらに関連した問題を質問したいと思います。
 六月、先月のことでございますが、山口県宇部市議会が、次の資料を見ていただきたいというふうに思いますけれども、男女共同参画推進条例を可決いたしました。そこには、「男らしさ女らしさを一方的に否定することなく男女の特性を認め合い、」とか「家庭尊重の精神に基づいた」とか「専業主婦を否定することなく、」というような文言が盛り込まれておりますけれども、なぜこのような文言が盛り込まれたか、その理由あるいは経緯を、官房長官、御存じでございましょうか。
坂東政府参考人 お答えいたします。
 宇部市の条例が、宇部市におきまして、その地域の特性に応じて、または住民の意向等を踏まえて、民主的な手続を経て議会において制定されたというふうに私どもは聞いております。
山谷分科員 次の資料を見ていただきたいと思うんですけれども、「男女共同参画社会 With You」、宇部市の男女共同参画課がつくったものでございます。その中に、「結婚のかたち」といたしまして、「婚姻届を出しました」「婚姻届は出しません」「形にしばられたくないな」「別々に暮らしています」「夫婦別姓にします」「独身で生活しています」とあります。これは、「婚姻届は出しません」というのは民法第七百三十九条違反、「別々に暮らしています」というのは同七百五十二条違反、「夫婦別姓にします」は同七百五十条違反なんでございますが、「結婚のかたち」ではなく、多様な生き方というふうにしてくくるならわかるんですけれども、「結婚のかたち」というふうにしている。
 これに対して市民たちが非常に問題意識を持ちまして、回収してくれないか、日本は法律婚主義だと思っていたのがいつから事実婚主義になったのかとか、結婚を軽く見ているのではないか、家族解体ではないか、男女共同参画社会というのが文化の破壊、家庭の破壊、男女同質化を目指すものならばそれは私たちが望むことではないというような、多くの市民、主婦たちも声を上げまして、市議会で大変に問題になりました。
 今、男女共同参画推進条例というのは、三十六都道府県、六十二市町村でつくられております。このようなマニュアル本ができておりまして、大体このようなマニュアル本を見て皆さんおつくりになっていらっしゃいます。こういうマニュアル本が何冊かあります。それで、宇部市の場合も、審議会の答申案の中には、このような形の、マニュアル本のとおりにあったんですね。すなわち、男らしさ女らしさを一方的に否定することなくとか、家庭尊重とか、そういうものは入っておりませんでした。
 ところが、この小冊子を見て、市民たちがおかしいと言って、市議会の議員たちが問題意識を持ってくださって、あえてこの文言を入れたんですね。このことについて、七月十二日、兵庫県宝塚市で開かれた全国男女共同参画宣言都市サミットで宇部市の藤田市長がこのようなことを発表して、非常に大きな反響を呼んでいるわけでございます。
 この宇部市のパンフレットというのは、国の共同参画基本法とか政府の意図を曲解したものだというふうに思うんですが、この曲解がいろいろなところで、地方で起きている。政府は、男女共同参画基本法をもとにして、家庭を解体したり、あるいは現行婚姻制度を根本的に改めようというふうに考えていらっしゃるんでしょうか。官房長官、よろしくお願いします。
福田国務大臣 男女共同参画社会基本法で今の家庭制度とか家族制度、そんなようなものを破壊するかどうかというのであれば、それはそういうことじゃないと思います。日本には日本古来の伝統もあるわけでございます。そして、今現在、その伝統にのっとった家族、家庭も存在しているわけでありまして、それは今後も、守るべきものは守っていくということなんだろうと思います。
 行き過ぎた考え方というものは、私どもはとりたくない。しかし、別面、世の中も随分変わってきております。その中でも、例えば少子高齢化だとか、国際化とか、いろいろなライフスタイルと申しますか、そういうものも存在してきているということも事実でございますので、そういう個々の方々の生き方とか考え方を否定するものであってもいけない。むしろ、新しい生き方とかそういうものを積極的に認めるということも、これまた大事なことではないだろうか、そのことの方が、社会をより活性化するものになるんではなかろうか、こんなふうに考えているところでございます。
山谷分科員 私自身は、仕事をしていた関係上、旧姓を通称使用として使っているものでございます。ですから、旧姓を通称使用として使いたいという女性の気持ちも大変わかるのでございますけれども、夫婦別姓というのはまた別の議論があっていいのではないかというふうに考えているわけでございます。夫婦別姓も導入しようというふうに考えていらっしゃるんでしょうか。
福田国務大臣 今、私が申し上げたことの中にも入る考え方であるということであります。仕事の関係とか、また個々の人の考え方というものもございます。基本は今までの家族関係ということだと思いますけれども、しかし、新しい生き方、考え方、これを尊重する立場というものもやはり必要なのではなかろうかというように考えております。
 いずれにしましても、この夫婦別姓の問題につきましては、今、与党の方でも野党の方でも、いろいろな議論がされているところでございます。そういう議論の推移を踏まえまして、今後、政府としても対応していく問題だと思っております。
山谷分科員 ことし検定に合格いたしまして来年から使われる教科書の中に、夫婦別姓を暗に推奨した書き方があったり、また、家族の形もこのように紹介されているんですね。
 資料を見ていただきたいんですけれども、「家族・家庭をみつめよう」という中で、「近年では、ディンクス、事実婚、養親と養子、婚姻関係や血縁関係はないが生計をともにしている関係、職業や学業の関係で住居を別にしている家族や別居結婚などのように、家族としての結びつきかたも、住まいかたも多様になっている。」「どのような家族をつくっていくかはさまざまである。一人ひとりが考え、選び、つくっていくものといえるだろう。」ということで、事実婚なんて、「婚姻届を出すという法律上の手続きはしていないが、事実上夫婦として生活している関係。」
 これは高校の教科書なんですけれども、事実婚を進めているとか、そのように読めるような、検定の基準には、青少年の健全な情操の育成とか誤解を招かないような表現をというような検定基準があるんですけれども、これは検定に合格してしまったんです。まず家族愛とか、そのようなことを教えるべきことを、いろいろな、事実婚、それぞれあって、どんな家族をつくっていくかはさまざまと。これを高校生に教えるというのは適当なものかなというふうに考えております。
 さらに、次に、結婚について教科書から抜き出したものをちょっと書かせていただいているんですが、これは本当にトップシェアだったと思います。資料がありますが、家庭一般21というところから、結婚について「専業主婦として、日中家で子どもと過ごす母親は、生きがいは子どもだけになり、いっぽうで孤独感やいらだちを募らせる。子どもは友だちとの関係がきずけなくなる。」「日本は欧米先進国と比較しても、離婚率はあまり高くはない。では日本の夫婦関係は良好かといえば、そうともいえない。離婚後の経済事情を考えれば、結婚生活をつづけざるをえないケースなどもあるからである。」というふうに書いてあります。
 ブレアは両親そろった健全な家庭づくりというものを訴えておりますし、ブッシュもファミリーバリュー、結婚生活を維持するための教育を中高校生に義務づけている州さえございます。やはり、男女共同参画社会という名のもとに結婚を軽く考えさせようとして、家族解体促進運動になるんじゃないか、宇部市の市民なんかはそう思って声を上げたわけですね。それは誤解だとは思うんですが、実際に、このような誤解を招くような小冊子、そして教科書もこのようになっているんですね。こういう実態、どういうふうに御感想をお思いでしょうか。
福田国務大臣 教科書の内容のことにつきましては、日本には検定制度というのがあります。御指摘のとおりでございまして、その検定で合格されたものであると、それは適切なものだ、こういうようなことになるわけであります。
 しかし、これは、今、部分部分の例を御紹介いただきましたけれども、部分の説明でございますので、全体がどうなっているのか、これ以外に日本の家族制度のよさとか大事さとかいったようなことが記述されているんであれば、それはバランスがとれているというように思いますので、その辺のことも勘案して見るべきだろうというふうに思っております。
山谷分科員 続きまして、男女共同参画基本計画、この中にも書いてあるわけでございますが、性と生殖に関する権利というのがあります。女性の健康支援がうたわれております。私も大変大事なことだとは思います。そしてまた、推進条例のつくり方などのマニュアル本にも入って、自治体の推進条例にも入っているところがあります。ところが、宇部市は、審議会の答申の中には入っていたんですが、これは実際の推進条例のときには抜いたんですね。これも、やはり議論があったわけです。
 現場でこれがどういうことになっているかといいますと、フリーセックス教育や、性的自立という名のもとに学校などで早い段階からの性器教育、避妊技術教育になっている、そういうことがあるわけでございます。
 例えば、宇部市のこの小冊子の中では、「子どもたちに男女がお互いを尊重し、自分を大切にできるような性教育をしよう」とか「産まない人の選択を尊重しよう」、何か見逃してしまう部分なんですけれども、実際にこれがどういうふうになっているかというと、例えば性教育の部分では、また教科書の抜き書きを見ていただきたいんですが、「男女のコミュニケーションとして愛情を育て、確かめあい、互いに充足感を求めようとする行動」、これは今使われている教科書です。来年使われる、検定を受けた教科書の中に、「とりかえばや女と男 女子生徒は男性、男子生徒は女性の役になって、次の場面を演じてみよう。 デートで性関係を求める場面」これはさすがに検定削除になりましたけれども、こういうものを書いてくるんですね。
 それから、これは先生たちが使う指導資料なんですけれども、ここに「ふれあいの性」というふうにありまして、「愛がなければ性交してはいけないんだよという考えの押しつけであってはならない。」という、フリーセックスの勧めのようなことを書いているわけでございます。
 次に、ちょっと、「ラブ&ボディBOOK」というのをごらんになっていただきたいんですが、これは、先日私が文部科学委員会で問題にさせていただいたものなんですが、全国の中学生全員、百三十万人に、教育委員会、保健所等々を通じて配られようとしていたものです。既に配られたところもございます。これは、製薬会社からお金をもらって厚生労働省の所管の財団法人日本母子衛生研究会がつくったものなんでございますけれども、次のページをめくっていただきますと、ピルについて、失敗率一%、女の子が自分で避妊できるのが最大のメリット、世界じゅうで広く使われているよと。
 これは毎日飲むものでございます。それで、今、ピルの失敗率一%というのは直ってきておりまして、アメリカでは一〇%を超えているんじゃないかということで、製薬会社といろいろなやりとりがあって、五%に直されているんですね。このデータは、十数年前のデータを厚生労働省があえて使っているんです。毎日飲むもので、環境ホルモンだというのも最近わかってまいりました。不妊症になるとか、胎児の染色体異常などもあるということがわかってまいりまして、欧米各国では訴訟も起きておりますし、いろいろな副作用のところを書きかえております。
 ところが、厚生労働省は、エイズとBSEの問題に共通するところがあるんですが、知らぬ顔をして、書きかえておりません。まして、中学生たちに対して、副作用を教えずに副効用のみを教えるような、こういうものをことし平気で配ったわけでございます。これも、厚生労働省の平成十二年、女性健康手帳検討委員会の報告書に基づいてつくられたと。これは、男女共同参画社会の基本計画の中の性と生殖に関する権利に基づいてこのような検討会がつくられ、このような小冊子になって、中学生全員に配られているというものでございます。
 中絶についても、「日本では中絶することが許されている。」「もちろん日本のお医者さんの中絶手術の技術は信頼できるけど、」と。最後に、望まない妊娠は避けないとねと書いてあるんですけれども、今の中学生というのは自分の都合のいいように都合のよいところを読みますから、非常にセックスを安易にとらえる記述が目立ちまして、ラブ能力テストとか何かそういうのもありまして、中学生もセックスしていいんだよというメッセージ、誤解を与えるのではないかというふうに思います。
 それから、ピルについては、最近、受精卵が着床しても流す作用があるということで、これは刑法二百十五条、不同意堕胎に問われる可能性もあるわけでございまして、非常に問題が多くて、私がこのようなことを言いましたら、文部科学大臣も中学生に不適切だと言いまして、今三十数県、都道府県でお母さんたちが抗議の声を教育委員会に向かって上げまして、配付中止を決めたところ、あるいは中止を検討し始めているところというのが出てきております。このような実態を把握していらっしゃいましたでしょうか。
 それから、性と生殖に関する権利、女性の健康支援、全くもっともなことだと思っていたのが、このような現場の小冊子になっているということを御存じでございましたでしょうか。
坂東政府参考人 お答えいたします。
 男女共同参画基本計画にリプロダクティブヘルス・ライツの記述がございまして、今、議員から御指摘がありましたような研究会、懇談会等でいろいろ御検討をいただいておりますけれども、その意見に基づいて、この「ラブ&ボディ」を直接おつくりになったというよりは、母子保健衛生会ですか、その厚生労働省の認可団体の方でおつくりになったというふうに私どもは聞いております。
 また、その財団に対する指導は厚生労働省の方で十分行われていると思いますし、ピルにつきましても、その認可に当たっていろいろな議論が大変、三十年にわたって行われてきたということもございまして、その担当の部署で十分な議論が行われているというふうに承知しております。
山谷分科員 母子衛生研究会の方は、国の方針に従って編集したのにどうして批判されるのかわからないというふうに言っております。三十年間いろいろ研究されておりましたが、最近の研究成果を厚生労働省はあえて隠しているというふうにしか私には思われないということを述べさせていただきたいと思います。
 私は、性教育というのは、生命尊重、喜びと責任、非常に普遍的な価値、モラルを基本とするものでなければならないというふうに思います。
 アメリカでも、早期性教育、避妊技術教育をした方がいいんじゃないかという議論がございまして、やったんですが、実際は、初交年齢の低年齢化、それから妊娠中絶、性感染症の増大という非常にとんでもない結果になったわけですね。それで、欲望コントロールプログラム、家族や人間の価値を教えるプログラムへと急速に見直しを始めました。アメリカでは、プログラムをやったら、そのデータで政策評価をしますから、それをした方が十代の妊娠、性感染症の減少に確かに効果があったということが出て、ここ五年間、毎年六十億円ほどのプログラム予算がついております。
 性と生殖に関する権利として、子供を産むか産まないかを選ぶ自由もある、女性の基本的人権であると、教科書でも、この宇部の小冊子でも教えているわけですが、しかし、宗教上の問題などから世界的一致を見るに至っていない。日本の場合は、それがあたかも基本的人権であると言い切って、誤解を招くようなインフォメーションをしているわけでございます。
 相手の男性の思い並びに胎児の生命という視点から見て、これは問題はないのでございましょうか。性教育の実態、それから胎児の生命ということから見て、女性の基本的人権と言い切ってしまうこの言い方というのは問題がないのか、福田官房長官にお伺いしたいと思います。
福田国務大臣 男女共同参画基本法においても、これは児童生徒の発達段階に応じということが書いてございます。発達段階に応じて、性に関する科学的知識とか生命尊重、人間尊重、男女平等の精神に基づいて、みずから考え、判断をする、そういう意思決定の能力を身につけるように、そしてまた望ましい行動がとれるようにすることが重要であるということを述べているわけでありますけれども、まさにそういうことであります。
 これは基本法でございますが、現場においては、さまざまな実態と、それからまた状況と申しますか、その時々の条件があろうかと思いますので、その現場の指導というのは極めて大事な部分だろうと思います。そのところを、この基本法とどのように結びつけていくかということなんだろうと思います。
 その点については、私も具体的なことを存じているわけじゃございません。しかし、そのことに今後やはり相当注意をしていかなければいけない、委員の御指摘のとおりだと思っております。
山谷分科員 児童の権利条約も児童の権利宣言も胎児の生命権を認めておりますけれども、このような書き方だと、政府は胎児の生命権、子供の人権を否定しているように思われるわけですが、その辺は官房長官、いかがでございましょうか。
福田国務大臣 児童の権利条約の趣旨も全く同じことだと思います。
山谷分科員 そうすると、胎児の生命権を政府は認めているということでございますね。
坂東政府参考人 男女共同参画基本法が制定される前の男女共同参画審議会の答申におきましても、リプロダクティブヘルスについては、生涯を通じた女性の健康ということで、大事だという合意はされているんですけれども、ライツについては、いろいろな意見があるというふうな記述になっております。
 国際的な場でもリプロダクティブライツについてはいろいろな議論が行われていることは、今御指摘のとおりでございます。
山谷分科員 胎児の生命権はあるんですね。小冊子並びに教科書にはそれの視点がないので、やはりこの辺は書き方にもう少し慎重であってほしいというふうに思います。
 そもそも男女共同参画基本法においては、改善の対象にされていたのは、不平等をもたらす制度または慣行だったというふうに思っておるんですが、今のような現状を見ると、それが国民の意識を改造することだというふうに感じざるを得ません。
 日本国憲法十九条には、「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」と規定されております。この規定について、公権力が特定の思想等を組織的、継続的に宣伝することによって国民の自由な思想形成を阻害する行為は許されないと説明する憲法学者もいるわけでございますけれども、こういう現状を見ると、曲解だとは思うんですが、国、県、市という公共機関が、家庭、個人の思想、良心に入り込んでいると言わざるを得ないんじゃないでしょうか。官房長官、いかがでございましょうか。
坂東政府参考人 私どもは、今、委員から御指摘がございましたとおり、男女共同参画社会というのは、女性たちがいろいろな差別、あるいは特に不利益をこうむることなく、自分の適性と能力を十分社会で発揮できるような環境を整えていくというふうに考えております。
 基本法の精神あるいは基本計画の精神、ただいま官房長官の方からもいろいろ御答弁ありましたけれども、そうした趣旨が十分に現場に到達しているかどうか、そういった情報提供の部分について、今後ともさらに努力を重ねていかなければならないと思っております。
山谷分科員 趣旨が徹底ではなくて、何か別の趣旨があってこの男女共同参画社会基本法をつくったのではないかと思うぐらい現場が非常に混乱しているということを、やはり率直にいろいろ調査して、対策をとっていかなければ、これはまずいんじゃないかなというふうに考えております。
 政策に、女性参画、雇用面での機会均等、待遇改善、農村、漁村の男女共同参画、高齢者支援、本当に大切なことがいっぱいこの基本計画の中に入っておりまして、これは大切に育てていかなければいけないことだというふうに思っているんですが、今まで申したような、家族に関して、生命に関して、性教育に関して、性と生殖の権利というのを非常に上積み、横出しする形で、役所のかかわる小冊子、プログラム、教科書などでゆがみ、曲解が進められている現状、これをやはり把握していただきたい。九兆円というお金が使われている、本当に二十一世紀の我が国の最重要課題でございます。
 福田官房長官は男女共同参画会議の議長でいらっしゃいます。十二名の大臣、そして十二名の学識経験者、専門調査会などもございます。今私が提供させていただいた材料、あるいはまた問題意識から、これを専門調査会にかけるなり会議の議題として取り上げていただけますでしょうか。いかがでしょうか、福田官房長官。
福田国務大臣 委員の御指摘の諸懸念につきましては、これは、男女共同参画基本法の趣旨が現場に至るまで徹底するかどうか、また、しているかどうかといったような問題も含まれているというように思います。
 私は、先ほども申しましたように、行き過ぎた解釈というものはすべきではないし、また、我が国の伝統的な家族とか男女関係も含めまして、そういうものはそういうもので価値のあることであるし、今後もそのことに重きを置いていく考え方というものは厳然としてあるんだろうというふうに思います。
 ただ、繰り返して申し上げますけれども、しかし、新しい時代に新しい価値観を生み出そう、そういう人たちもいるわけでありますから、そういう方たちが窮屈な思いをするとか不便な立場に置かれてしまうとかいったようなことになっていいのかどうか、その点についても考えていかなければいけないというように思っておるわけであります。
 そういうように多様な価値観の中でこれから生きていく我が国の国民が、皆さんがそれぞれに協力し合えるような、そしてまた、その結果が明るい社会、活力のある社会、そういうものになるようなということを考えているわけでございまして、そういうことにならないような考え方、趣旨の解釈というのであれば、これは問題があるというように思っております。現場までやはりよく見て、どういうようなことが現実に起こっているかということを見きわめていくことも私は大事だろうというふうに思っております。
山谷分科員 いろいろな専門家は、男女には脳に違いがあったり、あるいは、男女の区別というのは人間のアイデンティティーの形成に深くかかわっているなどと言う方もいらっしゃるわけでございます。また、今、官房長官がおっしゃった多様な価値、私は多様な価値は大事だというふうに思うんですけれども、多様な価値とか自己決定権の拡大、そういうスローガンのもとに普遍的な価値が否定されていっているという、その辺はやはり区別して考えないと非常に危険なのではないか、子供、女性の人権が守られずに、日本社会のよきものが壊されていく危険があるのではないかというふうに思いますので、やはりこの辺で具体的な事例を集めて整理し直す、チェックし直すということが大事ではないかというふうに思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 ありがとうございました。
持永主査 これにて山谷えり子君の質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
持永主査 これより国会所管について審査を行います。
 まず、国会主管歳入決算及び衆議院関係決算の概要説明を聴取いたします。谷衆議院事務総長。
谷事務総長 平成十二年度国会主管一般会計歳入決算及び衆議院関係歳出決算の概要を御説明申し上げます。
 国会主管の歳入につきましては、予算額十九億七千八百七十八万円余に対しまして、収納済み歳入額は二十億二百六万円余であり、差し引き二千三百二十八万円余の増加となっております。
 次に、衆議院関係の歳出につきましては、当初の歳出予算額は七百二十七億三千九十六万円余でありまして、これに立法情報システムの整備のための予算補正追加額一億三千三百十八万円、施設整備のための予算補正追加額三十七億三千六百三十八万円余、前年度からの繰越額四十二億七千八百八十四万円余を加え、既定経費の不用等による予算補正修正減少額三十一億四千七百九十五万円余を差し引きますと、歳出予算現額は七百七十七億三千百四十二万円余となります。
 この歳出予算現額に対し、支出済み歳出額は七百三十六億七千三百四十七万円余でありまして、その内訳は、国会の運営に要した経費六百四十五億四百五十万円余、衆議院の施設整備に要した経費九十一億六千八百九十六万円余であります。
 歳出予算現額と支出済み歳出額との差額は四十億五千七百九十四万円余となっておりますが、このうち翌年度に繰り越した額は二十億五千二百四十三万円余であり、不用額は二十億五百五十一万円余であります。
 翌年度繰越額の主なものは衆議院LAN整備費であり、不用額の主なものは退職手当でありまして、退職手当の支給が少なかったことに伴い不用となったものであります。
 以上が、平成十二年度国会主管一般会計歳入決算及び衆議院関係の歳出決算の概要でございます。
 よろしく御審議のほどお願いいたします。
持永主査 次に、国立国会図書館関係決算の概要説明を聴取いたします。黒澤国立国会図書館長。
黒澤国立国会図書館長 平成十二年度国立国会図書館関係歳出決算の概要を御説明申し上げます。
 当初の歳出予算額は二百八十六億三千八百八十九万円余でありまして、これに電子図書館基盤システムの整備のための予算補正追加額一億一千八百二十六万円余、科学技術関係資料の収集整備のための予算補正追加額一千五十万円、国立国会図書館の施設整備のための予算補正追加額四十三億三千七百二十八万円余、前年度繰越額九十億二千三百六十六万円余、公共事業等予備費使用額二十二億七千六百八十九万円余を加え、既定経費の節約等による予算補正修正減少額五億五千五百四十九万円余を差し引きますと、歳出予算現額は四百三十八億五千一万円余となります。
 この歳出予算現額に対し、支出済み歳出額は二百九十六億八千九百七十一万円余でありまして、その内訳は、国立国会図書館の管理運営に要した経費百五十六億三千七百九十二万円余、科学技術関係資料の収集整備に要した経費七億二百二十八万円余、国立国会図書館の施設整備に要した経費百三十三億四千九百四十九万円余であります。
 歳出予算現額と支出済み歳出額との差額は百四十一億六千三十万円余でありまして、その内訳は、翌年度繰越額百三十九億五千九百七十七万円余、不用額二億五十二万円余となっております。
 以上が、平成十二年度国立国会図書館関係歳出決算の概要でございます。
 よろしく御審議のほどをお願いいたします。
持永主査 次に、裁判官弾劾裁判所関係決算の概要説明を聴取いたします。天野裁判官弾劾裁判所事務局長。
天野裁判官弾劾裁判所参事 平成十二年度裁判官弾劾裁判所関係歳出決算の概要を御説明申し上げます。
 当初の歳出予算額は一億二千五百六十二万円でありまして、これから既定経費の不用等による予算補正修正減少額一千七十六万円余を差し引きますと、歳出予算現額は一億一千四百八十五万円余となります。
 この歳出予算現額に対し、支出済み歳出額は一億一千百十七万円余でありまして、このうち主なものは職員の人件費であります。
 歳出予算現額と支出済み歳出額との差額は不用額でありまして、三百六十八万円余となっております。
 以上が、平成十二年度裁判官弾劾裁判所関係の歳出決算の概要でございます。
 よろしく御審議のほどお願いいたします。
持永主査 次に、裁判官訴追委員会関係決算の概要説明を聴取いたします。片岡裁判官訴追委員会事務局長。
片岡裁判官訴追委員会参事 平成十二年度裁判官訴追委員会関係歳出決算の概要を御説明申し上げます。
 当初の歳出予算額は一億四千三百七十五万円余でありまして、これから既定経費の不用等による予算補正修正減少額一千五百九万円余を差し引きますと、歳出予算現額は一億二千八百六十六万円余となります。
 この歳出予算現額に対し、支出済み歳出額は一億二千五百六十一万円余でありまして、このうち主なものは職員の人件費であります。
 歳出予算現額と支出済み歳出額との差額は不用額でありまして、三百四万円余となっております。
 以上が、平成十二年度裁判官訴追委員会関係の歳出決算の概要でございます。
 よろしく御審議のほどお願いいたします。
持永主査 この際、お諮りいたします。
 参議院関係決算の概要説明につきましては、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
持永主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
持永主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院石野第一局長。
石野会計検査院当局者 平成十二年度国会の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
持永主査 以上をもちまして国会所管についての説明は終わりました。
 これより質疑に入るのでありますが、その申し出がありませんので、国会所管については終了いたしました。
    ―――――――――――――
持永主査 これより皇室費について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。羽毛田宮内庁次長。
羽毛田政府参考人 平成十二年度における皇室費歳出決算について、その概要を御説明申し上げます。
 皇室費の平成十二年度歳出予算現額は九十四億二千七百四十一万円余でありまして、支出済み歳出額は九十三億六千八百十一万円余であります。
 この支出済み歳出額を歳出予算現額と比べますと、五千九百三十万円余の差額がありますが、これは国際親善に必要な経費等を要することが少なかったため、不用となった額であります。
 なお、歳出予算現額九十四億二千七百四十一万円余を、歳出予算額七十億五千五百二十七万円余と比べますと、二十三億七千二百十四万円余の増加となっておりますが、これは、宮廷費におきまして、香淳皇后大喪儀及び陵の営建に必要な経費二十三億七千二百十四万円余について、予備費を使用したことによるものであります。
 以上をもちまして平成十二年度皇室費歳出決算の説明を終わります。
 よろしく御審議くださいますようお願いいたします。
持永主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院石野第一局長。
石野会計検査院当局者 平成十二年度皇室費の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
持永主査 以上をもちまして皇室費についての説明は終わりました。
 これより質疑に入るのでありますが、その申し出がありませんので、皇室費については終了いたしました。
    ―――――――――――――
持永主査 これより裁判所所管について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。堀籠最高裁判所事務総長。
堀籠最高裁判所長官代理者 平成十二年度裁判所所管一般会計歳入歳出決算の概要を御説明申し上げます。
 裁判所所管の歳出につきましては、当初予算額は三千百八十六億六千五百八十九万円余でありますが、これに大蔵省所管からの移しかえ額四億二百五十九万円、平成十一年度からの繰越額百四十七億六千四百四十万円余、予算補正追加額七十四億三千五百万円余、予算補正修正減少額五十五億九千九百六十五万円余、予備費使用額十三億三千二百五十二万円、差し引き百八十三億三千四百八十五万円余が増加となり、歳出予算現額は三千三百七十億七十五万円余となっております。
 これに対しまして、支出済み歳出額は三千二百七十三億一千二百三十九万円余であり、歳出予算現額との差額は九十六億八千八百三十六万円余であります。
 この差額のうち、翌年度へ繰り越した額は八十八億四千五百四十二万円余、不用額は八億四千二百九十三万円余であります。
 不用額となった経費は、人件費三億八千四百七十六万円余とその他の経費四億五千八百十六万円余であります。
 裁判所主管の歳入につきましては、歳入予算額は八十七億一千九百七十七万円余であります。
 これに対しまして、収納済み歳入額は七十八億九千五百九十一万円余であり、歳入予算額に対し八億二千三百八十五万円余の減少となっております。
 この減少は、相続財産で相続人不存在のため国庫帰属となった収入金の減少等によるものであります。
 以上、平成十二年度裁判所所管一般会計歳入歳出決算について御説明申し上げました。
 よろしく御審議のほどお願いいたします。
持永主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院石野第一局長。
石野会計検査院当局者 平成十二年度裁判所の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
持永主査 以上をもちまして裁判所所管についての説明は終わりました。
 これより質疑に入るのでありますが、その申し出がありませんので、裁判所所管については終了いたしました。
 午後六時から本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時二十九分休憩
     ――――◇―――――
    午後六時開議
木下主査代理 休憩前に引き続き会議を開きます。
 これより内閣府所管中内閣本府及び沖縄振興開発金融公庫について審査を行います。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。山村健君。
山村分科員 どうも、きょう一日お疲れさまでございます。本当に暑い日で、もう国会もいよいよ終盤ということで、きょうの分科会、こういう場をいただきましたことを非常に感謝申し上げます。
 先ごろといいますか、先週ですか、いよいよ東南海・南海地震の対策ということで、これは全会一致で法律をつくっていただいたんですけれども、きょうはその対策特別措置法も含めまして、日本という国の地震に対する危機管理ということに対して幾つか質問をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 早速なんですけれども、まず大臣にお伺いしたいのが、先ごろ成立いたしました特措法につきまして、評価というもの、いかがなものかなということ、所信を聞かせていただきたいなと思うんです。
村井国務大臣 先般、両院でそれぞれ御賛同をいただいて、衆議院の災害対策特別委員長御提案で成立いたしました東南海・南海地震対策特別措置法でございますが、これについて申し上げさせていただきます。
 東南海・南海地震は、歴史的には百年ないし百五十年程度の間隔で繰り返し発生している、マグニチュード八クラスの大規模な海溝型の地震でございます。今世紀前半にも発生のおそれがある、このように言われておるわけでございまして、東海から九州にかけて、我が国の大変広い範囲に地震の揺れや津波による相当甚大な被害をもたらすおそれがある、このために、政府としましても今のうちからいろいろ対策を講じておく必要がある、このように認識しておるわけでございます。
 今回成立しました法律によりまして、津波対策を初めとする東南海・南海地震対策が一層推進され、その地域の地震防災対策が強化されるということは大変意義深いものがあろうと私ども考えている次第でございます。政府といたしましても、平成十三年十月に発足いたしました中央防災会議の東南海・南海地震等に関する専門調査会というのがございますが、ここで、今年度末を目途に、来年の三月末でございますが、これを目途に、地震の揺れの強さあるいは津波の高さの分布、それから地震による被害の想定、こういったものを踏まえました地震防災対策を検討しているところでございます。
 この結果を、せっかくお通しいただきました法律に基づきまして、東南海・南海地震防災対策推進地域の指定ですとか、あるいは防災計画の策定などに反映させるなど、この法律の成立を受けまして、政府として、関係機関や地方公共団体、あるいは民間事業者等と一体となってこの地震対策を推進してまいりたい、こんなふうに思っているところでございます。
山村分科員 確かに、これは全議員一致といいますか、全党一致、そして、指定地域、本当に西日本いっぱい、九州から静岡にかかるまでといいますか、当該地域の首長さん、それぞれ皆さん歓迎のメッセージというのを私も新聞で拝読させていただいたんです。
 今まで、東海地震に関しては、これはもう三十年近く前からその対策をこつこつと積み上げてこられて、それなりの予知といいますか、そういう準備もできてきておりますし、当該地域の住民の皆さんというのは非常に防災意識というのは高くなっているのかなというふうにも思うんです。
 東南海地震といいますと、実は私の選挙区も熊野灘沿岸でございまして、父や母、そして祖父、祖母というような人たちから、昭和十九年の津波のときはこうだったんだ、伊勢湾台風のときにはこうだったんだみたいな話を幼いころ聞かせていただいた覚えがございます。
 それで、今回、三十年以内に四、五〇%、五十年以内であればほぼ八〇から九〇%の確率で起こるよという予想といいますと、この国会でもそれは問題になっていましたけれども、有事といいますと、基本的に、某国からミサイルが飛んでくるんじゃないかとかいろいろなことをシミュレーションして、あり得るかもしれないけれども人為的にこれは防げる、外交努力ということで防げることでもあるんですが、まさに自然災害というのは、どう今の科学を駆使しても防ぎようがないことでございます。そういう意味では、阪神大震災の折も、我々は近いところで本当に勉強をさせていただいたと思うんですよね。ただ、阪神大震災と比べたら、内陸直下型の地震とプレートがずれて起こる海溝型の地震とは明らかに違うということも、データとしてわかっていると思うんです。
 そういう観点も含めて、今回、西日本全体といいますか、東海地震も同時に起こる可能性というのもあるわけなんですから、それからしたら、もう本当に東京から西はほとんど壊滅状態になるかもしれないというようなことを踏まえて、早急にその対策というのは、来年度の予算にでも一気に、有事と比べてはしかられるかもわかりませんけれども、そのぐらいの予算、GDPの一%だなんだぐらいの予算を使ってでもやるべきじゃないかと思うんですが、いかがですか、大臣。
村井国務大臣 地震対策というのも、結構広範なものがございまして、何をするべきかというところは、これはいろいろケースによりまして違いがあるんだろうと思います。
 いわゆる東海地震につきましては、さまざまの研究からかなりの程度に予知が可能である、こういうようなことになりまして、そこで、予知が行われた、予知ができた場合にどうするかというような手順を二十七年前になりますか決めて、今日に及んでいるわけでございます。
 率直に申しまして、東南海・南海地震につきまして、今委員から相当な確度でというお話がございましたが、しかし、予知ということになりますと、これがよくわからないという違いが東海地震との比較ではあるわけでございまして、そういうところで一体何をするべきか。それから、起こる出来事の態様ということで申しますと、東南海・南海地震の非常に大きな特徴は、もちろん揺れによる被害というものもございましょうが、やはり被害のかなりのものが津波が襲ってくるというような問題なのではなかろうか、こんなようなことが言われております。
 それに対してどのようなことをしたらいいのか。防潮堤というようなお話になるのかもしれませんが、防潮堤というのは、同時に、海に面したところでどの程度の施設を日常の生活を損なわない形で施し得るのか、これまたいろいろな議論があるんだろうと思います。
 いずれにいたしましても、もう少しいろいろな意味で研究をしてみる必要があるわけでございまして、地震を含めて天災に対しましては、このごろは私の地元などでは脱ダム宣言などというような議論もございまして、いろいろ御議論はあるわけでございますが、どういう手段が有効なのかというあたりも含めまして、学者の研究の成果、社会の受けとめ方、それからさまざまの公共的な施設なりの整備状況、こういったものを総合的に判断していく必要があるんだろう、こんなふうに考えているところでございます。
山村分科員 確かに、今回の地震、先般、私どももこの質問に関しまして、役所の方からいろいろヒアリングさせていただいたんです。そういう意味ではまだまだ調査段階であって、調査の結果が出てからという状況でもあるので、それは重々理解できるんですけれども、想定される部分といいますか、その地域に住んでいる高齢者と言っては失礼ですけれども、七十前後の人ですと、東南海地震、南海地震においても、当時の経験者、まだしっかりした方が大勢残ってみえるんですよね。
 うちの部落は、ここまで津波が押し寄せてきたんだとか、そういうような体験を踏んだ方が大勢見える中で、その体験を生かすということにおいてでも、今回の法案はできたのはできたんですが、科学的に国の方が調査をして決めてというよりも、一刻も早くその地域にもっと、行政が携わらなくても、これだけの法案を国としても考えているから、市町村も県も含めて、まあ、防災計画とかといいますと、一般の市民にはなかなか難しくてできないとは思うんですが、その体験集を集めるだけでも、いわゆる予防といいますか、啓発事業にはつながっていくと思いますので、科学的なデータを集める学者の皆さんにそれなりの予算を奮発していただいて調査を進めていただくということは、もちろんのことなんですけれども、もっと身近な生活者を起点とした体験集をつくったりとか、そういう方面にもぜひとも力をかしていただければと思う次第なんです。具体的に、では、今回の東南海・南海地震というものに関しては、必ず来るとわかっている、今大臣もおっしゃられました津波という問題がございます。
 前回と今回との違いといいますと、昭和十九年、二十二年ですか、戦中戦後のその時代と、今から五十六年、時間がたっているわけで、その当時の海岸の状況と最近の海岸の状況というのは、もうまるっきり形状が違ってきております。
 しかし、いろいろな意味で、コンピューターだ何だで、シミュレーションというのも非常にたやすくできるようにもなってきておるわけなんです。津波対策というその一点でも、マグニチュードが七・八なのか八・四なのか、その辺はわかりませんけれども、シミュレーションということで、その津波対策というものに対してのハザードマップといいますか、シミュレーションとして、このぐらいのものまで来るんじゃないかというようなことというのは、今内閣府といいますか、防災の方で資料としてあるのでしょうか。
高橋政府参考人 御指摘のように、東南海・南海地震の場合は津波の被害が大変心配されます。そういったことで、現在、その海岸堤防の整備ですとか、あるいは津波警報等の情報伝達、迅速な避難体制の確立、そういったことを円滑に、的確に推進されることが必要だと思っております。
 先ほど大臣からも答弁申し上げましたが、昨年十月から、政府としましても、中央防災会議で東南海・南海地震に関する専門調査会を設置いたしまして、ここで、東海地震と違いまして、東南海・南海地震の場合は直前予知が可能ではございませんが、想定震源域で、それぞれ起きたときにどういう地域にどういう揺れが出るか、あるいは津波の影響がどうか、そういったことを現在、この専門調査会で専門家を交えて調査していただいているところでございます。
 今般、東南海・南海地震対策特別措置法ができ上がりますと、これに基づく推進地域の指定でありますとか、あるいは国や自治体等の防災計画の策定に反映されることになると思っております。また、海岸堤防だとかそういった防災施設の整備につきましては、各県におきまして、地震防災対策特別措置法に基づきます地震防災緊急事業五カ年計画、これについて必要な見直しをしていただく。国におきましても必要な支援を実施することとしてございます。
 それともう一つ、津波の場合は避難ということが大変大事でございます。避難体制の確立に関しましては、津波からの防護及び円滑な避難の確保に関する事項、これを推進計画に盛り込む。さらに、多くの人々が利用する施設に係ります民間事業者の方が、津波からの避難についての対策計画の作成を義務づける、そういったことをやりますとともに、先ほど委員からも御指摘ありましたような市民に対する啓発活動、そういったことを通じて、津波からの円滑な避難のための体制の確立を図っていきたいと思っております。
山村分科員 確かに、今回のテーマというのが、私、今回質問に立たせていただいて、国会の中で、今回、議員立法という形でこの地震対策特別法案というのが議案に上ってくるというようなことは聞いてはいたのです。そちらの委員会の方でもっとその議論といいますか、時間をとっていただいて、法案の中へ盛り込んでもらえればよかったかなというふうな気持ちも個人的にはあるのですけれども、並行して分科会の御案内もいただきまして、分科会では、これはちょっと質問に立ってみようというふうに思った次第なんです。あらゆるシミュレーション、それが五十年先なのか、きょう今すぐ来るのか、本当に自然相手というのはわからない状況でもございます。
 ただ、先ほども申し上げましたとおり、海岸そして津波の被害が大きいと言われている港湾部といいますか、奥深いところというのは、今と五十年前とは地理的な条件というのもまるっきり変わってしまっていますので、一刻も早く対策といいますか対策案というか、そういう、たとえ間違っていてもいいんですけれども、情報公開ということに国が先鞭をつけていただいて、ある市町村はここまでの対策、プランを練っているけれども、どこどこは、うちの町はまだ何にもできてないなというようなこともわかるぐらい、危険に対しての情報提供というのをまずしていただきたいと思うのです。
 その中で一つ懸念されるのが、東南海地震、南海地震それぞれの地震で、関西といいますか大阪を中心とした、もともと非常に低い土地で、しかも八百八橋と言われるように、河川だ運河だというような入りまじっているところの大阪という都市、その中の地下街というものに関して、内閣府というよりも、これは国土交通省というような管轄の話もお聞きはしたんですけれども、事津波に関してのそういう準備というのは、これは国がやるのか、都道府県といいますか府がやるのか、市がやるのか。その辺も含めて、大阪の地下街に対する津波被害に対しての考え方というのをお聞かせいただきたいんですが。
高橋政府参考人 今御指摘ございましたように、大阪は、海抜ゼロメートル地帯等の低平地もたくさんございます。そういう中で、地下街が非常に発達しております。
 実は、三年ほど前に、豪雨によりまして地下に浸水するような被害が、福岡だとかあるいは東京等でございまして、その中で、死者まで出るということで、当時の、我々内閣防災部門の前身であります旧国土庁、それと河川行政をやっております建設省、運輸省、自治省、いずれも当時でございますが、そういったところで地下空間の洪水対策研究会というのをつくりまして、そこで地下空間における緊急的な浸水対策、これをまとめてございます。その中では、事前の周知徹底だとか、情報をちゃんと伝達する、あるいは避難体制をやる、さらには、地下施設への防水機能をちゃんと強化する、そういう話を整理してございます。
 しかしながら、大雨といいますのは、気象状況で、かなり、もう二、三日ぐらい前から台風が来るとか前線が来るとか事前にいろいろな備えもできますが、地震による津波の場合は、地震が起きてから二十分、三十分でばっと来るということで、今申し上げましたような大雨による地下空間の浸水対策とはまたちょっと違った局面が必要となろうかと思います。
 そういったことも、今回の東南海・南海地震に関するこの特別措置法ができますと、個々の行政機関だけではなくて、いろいろ地下街の管理者も含めて、そういった防災計画、あるいは避難のために何をすべきか、そういう計画づくり、これを早急に進めていきたいと思っております。
山村分科員 大阪もそうなんですけれども、今回、冒頭に聞かせていただいた中で大臣の所見もあったわけなんですが、私、今回の法案、ないよりはある方が確かにいいんですけれども、そのひな形としたのが、どうしても東海大地震を想定した、もとの大地震の対策法案といいますか、特別法をもとにしているのかなというふうにも感じました。
 ただ、今から三十年先か五十年先かわからないですけれども、地震に対して取り組んでいく、一番近いものから考えたときに、やはり地下街におきましても、今、高橋さんの方からも御答弁いただきましたけれども、ハード面でいろいろな施策をやっていく、ことしはここまで、来年度予算がとれたからこういうふうにしていく、いわゆる民間の事業者にも依頼をかけていく、補助金をつけるだとかいうようなことをやっていても、なかなか進まないと思うんです。
 それよりは、そういうハードの設備というのも必要なんですけれども、そして、ましてやその予知ということも当然科学技術の進歩とともに必要だとは思うんですけれども、今回の東南海地震、南海地震におきましては、キーワードというのは、地震に対していかに守るか、防潮堤だ何だという、堤防をつくっていくかという方向性じゃなく、世紀も変わったということもありますけれども、いかに避難を円滑に、被害を最小限に、人的な被害というものを最小限に抑えることができるかというような観点から今後の対策というのを考えていただければなというふうに思うんです。
 その中で、先ほども情報公開ということを話させていただいたんですけれども、ハザードマップという形で、想定される津波被害がそれぞれの沿岸で二メートルから三メートル、ある場所では、湾の入り江の奥では八メートルから十一メートルとかという数字が、それぞれひとり歩きしていると言ったら失礼なんですが、それぞれの報道機関等から出てくると、では、十一メートルの津波って一体どんなもんやと言われても、当時体験した人たちはある程度はわかっているわけなんですけれども、電信柱でここまで水が来たんやと言われても、ふうんというのが我々の世代でございます。
 それから、もう一つ下の世代になりますと、そんなことは言っても、昔と違ってあれだけ堤防もできて、昨今の台風情報じゃありませんけれども、情報というのもしっかり発達しているし、インターネットもあるし、心配はないよと、ある種、危機、災害というものに対して余りにも無防備過ぎないかなということを危惧しているんです。
 一方で、震災の推進地域だ何だという指定を受けましたら、現実的な問題としまして、これは土木技術が非常に進んでしまったからなんですが、河川敷であったり海辺の近くであったりというところで、まさしくゼロメートル地帯に、国土の狭い我が国ですもので、新興の住宅地というのが密集しているという事態もございます。
 実は、今回も、ある不動産事業者から相談といいますかあったんですが、こういうデフレ経済のもとで、住宅産業といいますか、経済活性化のために地価が非常に安くなっているから、うちが安く土地を購入して売り出しているんだと。そんなときに地震の記事が新聞をにぎわせていると、地価の価値というものがほとんどなくなってしまうんじゃないかというようなことも言われまして、でも、これは仕方ないですよ、それこそ、アカウンタビリティーじゃないですけれども、今後三十年から五十年の間、今ここに家を新築したとしても、二メートルの津波が来たら必ず津波には襲われるんですからと。
 ということは、当然それだけ安くして、危険を承知の上で安い物件を買ってもらうか、隠しておくということはできないんじゃないかなというふうに思うんですけれども。ただ、一社だけがそれをやってしまうと、こんな時期にまた地価の暴落といいますか、そういう騒動にもなる、それは自分の地域だけじゃなく、日本の、いわゆる西日本の地域ほとんどがそうなるんじゃないかという問いかけもございました。
 まず、そういう意味合いから、今回のハザードマップだ何だという、今調査中のデータがもっとしっかりできてきたときというのは、これは他省庁のことかもわかりませんけれども、不動産の評価といいますか、地価の評価というのはやはり変えていく方向にあるんでしょうか、いかがでしょうか。
村井国務大臣 ハザードマップでございますが、これまで火山の噴火災害でございますとかいろいろな形でつくっているわけでございます。私は、防災担当大臣になりましてから見ておりまして非常に興味深いのは、富士山のハザードマップを実は今作業を始めているんでございますけれども、これに対する地元の御協力というのは大変積極的なんですね。ありがたいことだと思います。
 何を申し上げたいかと申しますと、以前は富士山が噴火するなどというような設定で物を議論するというのは、ある種のタブーだったわけでございます。これはもう当然観光にも影響する、別荘をつくっている人たちも大変だということになるということだったんです。それが、これは国会で決議しても、何やっても起きるときは起きるんだ、富士山は活火山だという認識に立って、もし起きたらそれはどういうことになるんだ、それを知ろうじゃないか、積極的にそれを知って、そのときにどうしたらいいかということを認識しておくことが安全を確保する道だというふうにどうも世の中が進んだんじゃないかという気がこのごろ私は正直言ってしております。
 今お示しの津波が起きた場合にどのようなことになるかということでございますけれども、これも恐らく同じようなことなのではなかろうかと想像しておりますのは、津波に対しましては、何よりも命あっての物種ですから、ともかく退避して、避難していただかなきゃならない。その避難路がどのように確保されているかということが恐らくキーポイントになるんだろうと思うんですね。
 さような意味で、もう時間がございませんからごく簡単にさせていただきますけれども、正しい情報を住民の皆さんにきちんと提供するということに徹して、それに対してどのように対応されるかということはもうそれぞれの市民の御判断ということになりますと、これはおもしろいもので、例えば横浜でございますけれども、これまた事情が違って、東海地震あるいは南関東地震の関連でございますけれども、地震でこのような影響がありますよ、それぞれの地盤はこんな強さですよということを地図にしまして示しましたら、建物の耐震診断をお受けになる方が結構ふえてきて、これは結果的には地価なんかに余り影響していないという事実もございます。
 同じようなことは、実は河川における増水によって水がどんなふうに影響を及ぼすかということにつきまして、いわゆる洪水ハザードマップというのを国土交通省でつくった例があるんですが、これでも地価に対する影響がないというふうに聞いております。
 私は、いずれにいたしましても、いつ起こるかわからない話でありますだけに冷静な反応を期待したいと思いますし、それだけの賢明さを国民は持っていると期待しております。
山村分科員 もうまさに大臣のおっしゃられるとおりだと思うんです。時代のキーワードがやはり情報公開という流れで、今までですと行政に何もかもお願いして、地震が来るかもしれぬで堤防つくらんかい、何だかんだと、やってくれという住民の方が多かったんですけれども、本当に自然と共生していくという流れの中で、情報は与え過ぎても、いざというときにはしっかりと冷静な判断ができる、全く知らずに右往左往するよりも、そういえば昔から聞いたなとか、私なんかでもそうですけれども、やはり小さな幼いときから地域の事情としていろいろなことを先輩諸兄、じいさん、ばあさんから聞かせてもらっていれば、この丘だったら大丈夫だとか、知恵はそれぞれの市民が持っていると思いますので、今回の法案策定を期して、まず最初にできるのは、来年度の予算からでも結構でございます、そういう情報公開を含めたソフトに対して、策定するような支援事業といいますか、そういう方面にも予算をぜひとも盛っていただきますとうれしいなと思う次第です。
 どうも、本当にきょうはありがとうございました。
木下主査代理 これにて山村健君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして内閣府所管中内閣本府及び沖縄振興開発金融公庫についての質疑は終了いたしました。
 次回は、明二十三日午前九時三十分から本分科会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後六時三十一分散会


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