衆議院

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第1号 平成15年5月19日(月曜日)

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本分科会は平成十五年五月七日(水曜日)委員会において、設置することに決した。
五月十六日
 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。
      橘 康太郎君    中村正三郎君
      橋本龍太郎君    持永 和見君
      山口 俊一君    赤松 広隆君
      上田 清司君    木下  厚君
      神崎 武法君    坂井 隆憲君
五月十六日
 持永和見君が委員長の指名で、主査に選任された。
平成十五年五月十九日(月曜日)
    午前九時開議
 出席分科員
   主査 持永 和見君
      橘 康太郎君    中村正三郎君
      橋本龍太郎君    林 省之介君
      赤松 広隆君    上田 清司君
      木下  厚君    長妻  昭君
      前田 雄吉君    松原  仁君
      渡辺  周君    田端 正広君
   兼務 中川 正春君 兼務 達増 拓也君
   兼務 塩川 鉄也君 兼務 春名 直章君
   兼務 中川 智子君
    …………………………………
   外務大臣         川口 順子君
   環境大臣         鈴木 俊一君
   国務大臣
   (内閣官房長官)     福田 康夫君
   国務大臣
   (国家公安委員会委員長) 谷垣 禎一君
   国務大臣
   (金融担当大臣)     竹中 平蔵君
   国務大臣
   (防災担当大臣)     鴻池 祥肇君
   内閣府副大臣       伊藤 達也君
   外務副大臣        茂木 敏充君
   衆議院事務総長      谷  福丸君
   裁判官弾劾裁判所事務局長 天野英太郎君
   裁判官訴追委員会事務局長 高田 健一君
   国立国会図書館長     黒澤 隆雄君
   会計検査院長       杉浦  力君
   会計検査院事務総局事務総
   長官房審議官       藤田 正二君
   会計検査院事務総局第一局
   長            石野 秀世君
   会計検査院事務総局第二局
   長            増田 峯明君
   会計検査院事務総局第五局
   長            円谷 智彦君
   最高裁判所事務総長    竹崎 博允君
   政府参考人
   (内閣府政策統括官)   山本繁太郎君
   政府参考人
   (宮内庁次長)      羽毛田信吾君
   政府参考人
   (警察庁生活安全局長)  瀬川 勝久君
   政府参考人
   (防衛庁運用局長)    西川 徹矢君
   政府参考人
   (総務省自治財政局長)  林  省吾君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    樋渡 利秋君
   政府参考人
   (外務省大臣官房長)   北島 信一君
   政府参考人
   (外務省大臣官房外務報道
   官)           高島 肇久君
   政府参考人
   (外務省大臣官房領事移住
   部長)          鹿取 克章君
   政府参考人
   (外務省アジア大洋州局長
   )            薮中三十二君
   政府参考人
   (文部科学省大臣官房審議
   官)           樋口 修資君
   政府参考人
   (厚生労働省健康局総務課
   長)           仁木  壮君
   政府参考人
   (厚生労働省社会・援護局
   業務課長)        中沢 勝義君
   政府参考人
   (国土交通省大臣官房審議
   官)           小神 正志君
   政府参考人
   (国土交通省大臣官房審議
   官)           石井 健児君
   政府参考人
   (国土交通省大臣官房技術
   参事官)         村田  進君
   政府参考人
   (国土交通省河川局次長) 塩島 高雄君
   政府参考人
   (気象庁地震火山部長)  平木  哲君
   政府参考人
   (海上保安庁次長)    津野田元直君
   政府参考人
   (環境省大臣官房廃棄物・
   リサイクル対策部長)   飯島  孝君
   政府参考人
   (環境省総合環境政策局環
   境保健部長)       南川 秀樹君
   政府参考人
   (環境省環境管理局長)  西尾 哲茂君
   政府参考人
   (沖縄振興開発金融公庫理
   事長)          八木橋惇夫君
   決算行政監視委員会専門員 小林 英紀君
    ―――――――――――――
分科員の異動
五月十九日
 辞任         補欠選任
  橋本龍太郎君     林 省之介君
  赤松 広隆君     前田 雄吉君
  神崎 武法君     上田  勇君
同日
 辞任         補欠選任
  林 省之介君     橋本龍太郎君
  前田 雄吉君     松原  仁君
  上田  勇君     赤羽 一嘉君
同日
 辞任         補欠選任
  松原  仁君     渡辺  周君
  赤羽 一嘉君     福島  豊君
同日
 辞任         補欠選任
  渡辺  周君     長妻  昭君
  福島  豊君     田端 正広君
同日
 辞任         補欠選任
  長妻  昭君     赤松 広隆君
  田端 正広君     神崎 武法君
同日
 第二分科員達増拓也君、春名直章君、第三分科員中川正春君、塩川鉄也君及び第四分科員中川智子君が本分科兼務となった。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 平成十三年度一般会計歳入歳出決算
 平成十三年度特別会計歳入歳出決算
 平成十三年度国税収納金整理資金受払計算書
 平成十三年度政府関係機関決算書
 平成十三年度国有財産増減及び現在額総計算書
 平成十三年度国有財産無償貸付状況総計算書
 〔皇室費、国会、裁判所、会計検査院、内閣、内閣府(本府)所管、沖縄振興開発金融公庫、内閣府(警察庁、金融庁)、外務省及び環境省所管〕


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     ――――◇―――――
持永主査 これより決算行政監視委員会第一分科会を開会いたします。
 私が本分科会の主査を務めることになりました持永でございます。よろしくお願いいたします。
 本分科会は、皇室費、国会、裁判所、会計検査院、内閣、内閣府(本府、警察庁、金融庁)、外務省、環境省所管及び沖縄振興開発金融公庫並びに他の分科会所管以外の国の会計についての審査を行うことになっております。
 なお、各省庁の審査に当たっては、その冒頭に、決算概要説明、会計検査院の検査概要説明及び会計検査院の指摘に基づき講じた措置についての説明を聴取することといたします。
 平成十三年度決算外二件中、本日は、内閣所管、内閣府所管中本府、沖縄振興開発金融公庫、外務省所管、国会所管、皇室費、内閣府所管中金融庁、環境省所管、内閣府所管中警察庁、裁判所所管及び会計検査院所管について審査を行います。
 これより内閣所管について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。福田内閣官房長官。
福田国務大臣 平成十三年度における内閣所管の一般会計歳入歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 内閣主管の歳入につきまして、歳入予算額は七百五十九万円余でありまして、これを収納済み歳入額六億七千百三十八万円余に比較いたしますと、六億六千三百七十九万円余の増加となっております。
 次に、内閣所管の歳出につきまして、歳出予算現額は一千二百十六億八千八百九十五万円余でありまして、これを支出済み歳出額一千百六十三億八千百三万円余に比較いたしますと、五十三億七百九十二万円余の差額を生じます。
 この差額のうち翌年度繰越額は三十六億五千六百二万円余であり、不用額は十六億五千百八十九万円余であります。
 以上をもちまして決算の概要説明を終わります。
 何とぞ、よろしく御審議のほどお願いいたします。
持永主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院石野第一局長。
石野会計検査院当局者 平成十三年度内閣の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
 なお、平成十二年度決算検査報告に掲記いたしましたように、内閣官房報償費の執行等について処置を要求いたしましたが、これに対する内閣官房の処置状況について掲記いたしました。
 以上、簡単でございますが、説明を終わります。
持永主査 以上をもちまして内閣所管についての説明は終わりました。
    ―――――――――――――
持永主査 これより内閣府所管中内閣本府及び沖縄振興開発金融公庫について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。福田内閣官房長官。
福田国務大臣 平成十三年度における内閣府所管の一般会計歳入歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 内閣府主管の歳入につきまして、歳入予算額は四百八十億四千二百六十四万円余でありまして、これを収納済み歳入額五百十六億八千三百五十万円余に比較いたしますと、三十六億四千八十六万円余の増加となっております。
 次に、内閣府所管の歳出につきまして、歳出予算現額は五兆七千三百八十六億五百二十八万円余でありまして、支出済み歳出額は五兆六千億九千八十五万円余であります。
 この支出済み歳出額を歳出予算現額に比較いたしますと、一千三百八十五億一千四百四十二万円余の差額を生じます。
 この差額のうち翌年度繰越額は八百七十六億九千九百六十一万円余であり、不用額は五百八億一千四百八十一万円余であります。
 内閣府所管の歳出決算のうち、警察庁、防衛庁、金融庁については、各担当大臣から御説明申し上げることになっておりますので、これを除く部局、すなわち、内閣府本府及び宮内庁関係について申し上げますと、歳出予算現額は三千六百二十一億六千六百三十万円余でありまして、これを支出済み歳出額三千三百三十一億九千九百六十万円余に比較いたしますと、二百八十九億六千六百六十九万円余の差額を生じます。
 この差額のうち翌年度繰越額は二百三億八千六百九十六万円余であり、不用額は八十五億七千九百七十二万円余であります。
 以上をもちまして決算の概要説明を終わります。
 何とぞ、よろしく御審議のほどお願いいたします。
持永主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院石野第一局長。
石野会計検査院当局者 平成十三年度内閣府の決算のうち、歳入並びに内閣本府及び宮内庁関係の歳出につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
持永主査 次に、会計検査院円谷第五局長。
円谷会計検査院当局者 平成十三年度沖縄振興開発金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
持永主査 この際、お諮りいたします。
 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
持永主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
持永主査 以上をもちまして内閣府所管中内閣本府及び沖縄振興開発金融公庫についての説明は終わりました。
    ―――――――――――――
持永主査 これより外務省所管について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。川口外務大臣。
川口国務大臣 平成十三年度外務省所管一般会計歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 歳出予算現額は九千三百三十三億百十一万円余でありまして、支出済み歳出額は八千百三十七億六千百七十七万円余、翌年度繰越額は一千十一億九百三十五万円余、不用額は百八十四億二千九百九十八万円余であります。
 歳出予算現額の内訳は、歳出予算額八千二百七億六千三百六万円余、前年度繰越額一千六十億六千四百九十九万円余、予備費使用額六十四億七千三百四万円余であります。
 以上、平成十三年度の外務省所管一般会計の決算につきまして、その概要を御説明申し上げました。
 何とぞ、御審議のほどよろしくお願い申し上げます。
持永主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院石野第一局長。
石野会計検査院当局者 平成十三年度外務省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。
 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項一件、意見を表示しまたは処置を要求した事項一件及び意見を表示しまたは処置を要求した事項に対する処置状況三件であります。
 まず、不当事項について御説明いたします。
 これは、国際会議の開催等に必要な経費の支払いに当たり、支払い金額と実際に要した経費との差額を取引先に積み立てたり、青年等招聘事業の実施に当たり、事業費の残額を国庫に返納していなかったりしていて、会計経理が不当と認められるものであります。
 一点目の、支払い金額と実際に要した経費との差額を取引先に積み立てていたものでございますが、これは、外務本省において、国際会議の開催等や外国要人等の招聘の際に、支払い金額を上乗せすることにより差額を取引先にプール金として積み立てていたもので、七年度から十三年度までに大臣官房総務課ほか十部局六十二課室等において、計千百七十二件、二億八千六百四十二万四千四百六十六円を取引先に積み立てていたものであります。このほか、一定金額が積み立てられていることは確認できるものの、その発生過程を特定できないものが、計二百五十二件、六千六百二十七万九千九百九十九円ございました。
 また、七年度当初において既に、取引先において計一億七百二十四万千二百二十四円が積み立てられていたことが判明いたしました。この金額は六年度以前の支払いから積み立てられていたものと考えられますが、証拠書類が残存していないなどのため、それらがどのようにして積み立てられたかを解明することはできなかったものであります。
 一方、七年四月から十三年九月までの間に計四億三百五十二万八千七百五十四円が費消されており、十三年九月末現在で取引先に計五千五百八十万千七百九十八円の残高がございました。
 二点目の、事業費の残額を国庫に返納していなかったものでございますが、これは、青年等招聘事業のうち、被招聘者の本邦滞在中の宿泊費等の支払い事務を行っていた外務省認可の公益法人が、概算で渡されていた事業費の残額を担当課へ返納していたにもかからわず、担当課がこの残額を国庫へ返納していなかったもので、七年度から十二年度までに西欧第一課ほか二課において、計二千七百四十八万九千二十九円ございました。
 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について御説明いたします。
 これは、支援委員会等の国際機関等に対する拠出金及び分担金に関するものであります。
 本院では、我が国からの拠出金等で活動に必要な経費全額が賄われている支援委員会ほか十一国際機関等に対する拠出金等について検査いたしました。
 その結果、委員の空席等により国際機関として形骸化するなどしていて設置協定等に従った運営が行われていなかったり、多額の資金が滞留していたり、資金使用に対するチェック体制が十分に整備されていなかったりするなどの事態が見受けられました。
 したがいまして、拠出金等の支出先である国際機関等で適切な事業運営が確保され、拠出金等の効率的使用等が図られるよう、外務省において、次のような施策を講ずるなどする要があると意見を表示したものであります。
(ア) 事業運営が協定等の趣旨から乖離していたり、事業内容及び規模が変更されたりなどしている場合には、我が国以外の締約国及び国際機関等と十分な協議を行うなどして、また、必要に応じて拠出金等の支出の必要性を検討するなどして拠出金等支出国としての適切な対応策をとること。
(イ) 拠出金等の支出の際、事業遂行に見合った拠出金等の額とし、また、事業の進捗状況、繰越金等資金管理の状況を把握して資金が滞留することがないよう適時適切な支出を行うこと。
(ウ) 適切な事業遂行及び会計処理が担保されるよう、チェック体制の整備を図るなど必要に応じて国際機関等に要請するとともに、国際機関等から提出された財務報告書等のチェック体制を整備すること。
 なお、以上のほか、平成十二年度決算検査報告に掲記いたしましたように、物品・役務の調達契約について、内閣官房報償費の執行等について、並びに報償費の執行について、それぞれ処置を要求いたしましたが、これらに対する外務省の処置状況についても掲記いたしました。
 以上をもって概要の説明を終わります。
持永主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。川口外務大臣。
川口国務大臣 会計検査院の検査の結果、国際会議開催等に必要な経費の支払いにおける会計経理、支援委員会等の国際機関等に対する拠出金等について指摘を受けたことは、まことに遺憾であります。
 国際会議開催等に係る会計経理につきましては、職員に対する会計研修の徹底、調達の一元化等、契約事務実施体制の改善、監察査察官に現職検事を任用した上での各部局に対する監察の実施等の措置を講じてきております。
 また、国際機関等に対する拠出金等につきましては、国際機関側に対する適時適正な報告の提出の要請、拠出金の支出の際の拠出時期や方法等の精査のほか、平成十五年度予算において、国際機関等における繰越額や事業執行の状況を十分踏まえ、予算計上する等の措置を講じてきております。
 今後とも、これらの措置を着実に実施し、予算の適正な執行や不正の再発防止に努めてまいる所存です。
持永主査 この際、お諮りいたします。
 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
持永主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
持永主査 以上をもちまして外務省所管についての説明は終わりました。
    ―――――――――――――
持永主査 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。前田雄吉君。
前田分科員 民主党の前田雄吉でございます。
 税金のむだ遣いと徹底的に闘う、これは国会議員としての本分であると思っておりますが、外務省は余りにも、公金に対して、税金に対してその意識がなさ過ぎる、私はそう考えます。国民の皆さんにいかに納得していただけることをやられているのか。どんなにすばらしい外交政策をとっても、そうした外務省の省員への国民の理解がなければ、この政策も優位に進めることはできないと私は考えております。
 そこで、先ほど会計検査院の報告にもありましたが、いわゆるプール金事件あるいは在外公館の猫ばば事件、公金横領の悪事の監督責任をとってやめた外務省幹部、高額な退職金をもらっています。どこの国に、どこの世界に、すんなりと国家公務員退職手当法の計算式どおりに高額な退職金が支給されるような国がありますか。国民の皆さんは、この不況の中で本当に苦しい生活をしている。失業率も五%を超え、失業者も三百五十万人を超えている現況がずっと続いているわけであります。
 この、いわゆる監督責任をとってやめた外務官僚、退職金一億円、国民に受けとめられるものかどうかということを外務大臣に伺いたいと思います。
川口国務大臣 経済状況が非常に苦しい中で、そして財政状況も非常に難しい中で、税金については、これは十分に効果的に使っていくということが国としての役目であるというふうに私も思っております。そういう考え方を外務省の中で徹底していくように、昨年の二月の外務省の改革を始めまして以来、それは非常に注意をして行ってきております。
 その中で、今の御質問の退職金でございますけれども、外務省の職員の退職金は、幹部も含めましてですけれども、国家公務員退職手当法という法律がございまして、そういった法令に定められた一定の基準がございますので、これに従って支給をしております。外務省職員が勧奨を受けまして定年前に退職をする場合には、これらの法令に従って計算をされた金額の退職金が支給をされているわけでございます。
前田分科員 法律に従ってそのまま進められている、これはもう当たり前の話で、私はそんなことを聞いているのではありません。その退職金一億円が国民の皆さんに受け入れられるかどうか、それを外務大臣はどうお考えなのかということを伺っているんです。
 昨年、平成十四年の八月二十一日、外務省は改革行動計画というのを出されておりますが、外務省員行動規範の冒頭に、「国民のために、国民とともに」というふうに書かれて、「公私の別を厳格にし、常に納税者の視点に立って誠実に業務を行う。」というふうに書かれております。
 何が「常に納税者の視点に立って」ということなんですか。どこの世界に、一般企業の中で退職金を一億円もらうところがありますか。これが国民に受け入れられるかどうかを、外務大臣、お答えください。
川口国務大臣 個人個人の退職金の多寡につきましては、これは、その人の勤続の年数とかいろいろな要素によって影響される部分はありますけれども、基本的に、国家公務員全体の問題でございます。国家公務員に関する給与ですとか退職金ですとか、これは、確かに世の中にいろいろ御議論はあると思います。そういった御議論は御議論として大いにしていただいて、そして国全体としてこれはどうするかということの議論をしていくということでございます。
 外務省としては、現行の法律で決まったその規定に基づいて支払いをしているということでございます。
前田分科員 ということは、外務大臣は、この一億円の退職金はそのまま妥当であるというふうにお考えだということだと思うんですけれども、本当にそれで国民に理解されていると思われますか。
 とにかく、機密費、裏金、在外公館の猫ばば事件、責任をとってやめた一連の事務次官、林貞行前駐英大使、推計九千二百五十一万円、柳井俊二前駐米大使、推計九千四十一万円、川島裕元事務次官、六千七百三十万。これは一体何なんですか。さらに、先ほど外務大臣も言われましたけれども、勧奨ですよ、割り増し料金ですよ。さきに挙げた二人は推計一億五百四十六万円、川島氏は八千四百三十九万円。どうして公金横領の悪事の監督責任をとった外務省幹部が割り増し料金の退職金をもらえるんですか。この勧奨が公金横領の悪事の監督責任をとったということに対して有効なのかどうか、外務大臣、納得がいくように説明していただきたいと思います。
北島政府参考人 委員に、金額についてちょっと御説明申し上げたいと思います。
 昨年の国会での質問に答えまして、三人の元次官の退職金について御説明申し上げました。三つの数字、九千百万円、八千九百万円、九千五百万円ということでございますけれども、そのうちの二人の元次官につきましては、次官をやめた時点で、つまり、さかのぼって、数年前に勧奨退職ということで退職金をちょうだいしたわけです。
 川島元次官につきましては、平成十三年八月十日に退任した際に勧奨退職という扱いだったわけですけれども、これは、まさに大臣から申し上げましたとおり、法律に基づきまして、いわゆる退職勧奨、これは、人事の刷新、行政能率の維持向上を図る等のため、任命権者またはその委任を受けた者によって職員本人の自発的な退職意思を形成させるための事実上の慫慂行為であるというふうに解されているわけで、この勧奨に基づいて本人よりの申し出を任命権者が承認することにより勧奨退職が行われたということでございます。
 当然のことながら、いわゆるプール金問題等に関連して懲戒免職となった者に対しては、退職金は支払われていないわけでございます。
前田分科員 私は、何もない一般的な事例を聞いているのではありません。これは、事務方からそうしたお話は一昨日伺っておりますけれども、果たして監督責任をとった方が勧奨という割り増し料金でもらっていいのかどうか。今後もしもそうしたことがあるといけませんので、外務大臣、これはどうお考えでございますか。
川口国務大臣 これは、一概にどうだということを申し上げるのは非常に難しいと思うんですね。どういう事件があったかとか、その人がその事件にどれぐらいかかわっていたとか、監督責任をある件について持っている人は大勢いるわけですから、その人たち全部の退職金について、一概に、どっかの時点で監督責任が問われることがあったから勧奨分を加えるべきであるとかないとかいうことを、概念的にといいますか、そのような形で申し上げることは難しいのではないかと思います。
前田分科員 ということは、どうした事態が起きても、外務官僚の高官たちはそうやって勧奨の割り増し料金をもらっていくということですね。これはやはり国民の皆さんにとって理解できませんよ。納税者の視点、全くうそですよ。
 次に、今度、モスクワ大使館、百億円の話、これに移りたいと思います。
 九十六億円、それを九十億円に削られた。私どもが委員会で、どうしてそんな男女別のサウナが必要か、テニスコートがモスクワ大使館に必要か、プールが必要か、そう申し上げたら、確かに削減はされました。しかし、一般企業で、減額する、費用を削減するといったら、こんな目立つところだけ削ったとか、外のタイルをもっと質の悪いものに変えたとか、そんなものじゃありませんよ。もっと根本的な削減策をどうしてとられないのか。
 さらに申し上げるならば、購買力平価でいえば、モスクワは日本の十倍ありますよ。百億円ではなくて、一千億円の価値のあるゴージャスな大使館をモスクワにつくるということですね。そこに出入りする皆さんの人数をお聞きしましたら、一万人以上のビザの発給を求めるロシア人の皆さんを入れて来訪者が、モスクワ大使館は年間一万五千名。私の、人口三十万人の春日井市民が使う春日井市の市民病院が百億円ですよ。
 こうしたゴージャスな大使館がどうして必要なんですか。削減するということに対して何も誠意は示していない。外務省、どうですか。
北島政府参考人 モスクワにおける日本大使館の新しい事務所でございますけれども、基本的な考え方としまして、現在の日ロ関係の重要性に対応しまして、大使館として果たすべき機能を的確に果たすということとともに、同時に、十分な秘密保全、さらにはセキュリティー対策を講じる必要があるというふうに考えております。モスクワという場所の特殊性からしまして、他国における我が国の大使館事務所と比較して高額とならざるを得ない事情が存在することは、これまでも国会で御説明してきているところでございます。
 他方、こうした考慮に基づいて策定された設計の基本は維持しつつも、日本の経済財政状況も踏まえて、大使館として果たすべき機能に支障を及ぼさない範囲で経費節減可能な部分があれば節減を実施すべきである、そういう考えに基づいて検討を重ねた結果、建材、外装、福利厚生施設、こういったものについて当初計画の変更を行うことにより約六億円の建設費の節減措置を実施することとしたわけでございます。
 これ以上の経費節減を試みる場合には、秘密保全体制を含む大使館機能に支障を生じるおそれがあるというふうに考えております。この点、御理解をいただければありがたく存じます。
前田分科員 機密保全だと言えばすべて納得ができるかというと、そうではありません。例えば、空調を日本から持っていく、これは機密保全のためだと言われますけれども。
 では、この大使館の建設に当たっての入札の過程を私は明らかにしてほしい。今まで幾ら外務省に求めても、入札価格は幾らなのか、あるいは落札価格は幾らなのか、これは一切答えられませんという答弁でございました。いかがですか、入札の過程を明らかにしていただけますか。
北島政府参考人 申し上げます。
 この工事につきましては、秘密保全に万全を期する必要があるということから、いわゆる一般競争入札による業者選定は行っておりません。他方、業者間の競争性を確保する観点から、複数業者から見積もりをとり、業者を決定しているということでございます。
 同時に、単年度予算主義の原則から、予算要求、さらに、計上は単年度ごとに行っておりまして、工事計画も単年度ごとに行っているため、全体工事費について正確な数字を申し上げることは難しいということでございます。
 他方、参考となる数字をちょっと申し上げますと、本件工事を受注した建設業者が見積もり比較の際に提示した全体工事の試算額、これは約七千九百万ドルでございます。今年度の為替レート、平成十五年度の支出官レートの百二十二円を使いますと約九十六億円ということでございますけれども、先ほど申し上げた六億円の節減措置を講じたことを踏まえれば、約九十億円ということでございます。
前田分科員 今話を伺いましたけれども、これで国民の皆さんに納得してくださいと言ったら、だれも納得しませんよ。どうですか。内容を聞いても、機密保持だから言えない、入札過程を聞いても、そんなものは言えるかという話ですよ。一体外務省は、だれに対して仕事をしているんですか。
 例えば、私がもう怒り心頭、国民の皆さんも同じだと思いますが、覚えること。例えば丹波大使、毎日近くのスラビャンスカヤホテルに、フィットネスクラブに通って、プールに通って、そのプール代金をホテル側から出させていた。確かに、天皇陛下のレセプションを毎年大きなパーティーとしてやるので、外務省側から、大使館側からこうした便宜供与をホテル側に求めたということがあります。
 そして、ロシアについては、二十代前半の若手の外交官にしても、月額五十万円以上の破格な住宅手当をもらっている。モスクワ市民の平均月収が二百ドルでございます。つまり、この五十万円は、日本の外交官の破格な住宅手当は、平均月収の二十倍です。こうしたむだ遣い、これはだれも国民は理解できませんよ。その上に、モスクワ大使館、先ほど申し上げたように、何も明らかにしない。
 明らかにしないといえば、この大使館建設の予算立てに関して、予算書を見ますと、どう書かれているか。政府開発援助施設整備費ですね。確かに、DACの委員会で、大使館費用の一定額が開発援助だという説明なんでしょうけれども、予算立てからしても、国民の皆さんにわかるやり方で計上するやり方に改めるべきではありませんか、外務大臣。
北島政府参考人 モスクワの日本大使館新築工事費の中にODAの施設整備費からの支出があるというお尋ねでございますけれども、それは、平成九年の十一月に、財政構造改革の推進に関する特別措置法というのが成立しておりまして、その中でODAの量的縮減目標が規定されたことを受けて、平成十年度予算から、予算書の上においてODA額を明確に把握できるように、すべての在外公館の行政経費につきまして、一定割合に従って、ODA分と非ODA分に分けて予算計上するという形になったわけでございます。
 その際に、どのような形で行政経費をODA分と非ODA分に分けるかということでございますが、これは、OECD、経済協力開発機構の開発援助委員会における議論を参考にしつつ、日本として、全在外公館において外交事務に従事している職員のうち、ODA関連事務に従事する在外職員の占める割合をもとに算出して、すべての在外公館の行政経費は、この比率でODA部分と非ODA部分に分けているということでございます。
 その場合に、個別の在外公館において、ODA関連事務が占める割合を個別具体的に試算することが困難であるということのためにとられている措置でございますけれども、他方、すべての公館において、量の多少は異なるとしても、何らかの形でODA関連の事務は存在しているということでございまして、在ロシア大使館においては、兼轄国であるグルジア、トルクメニスタン、アルメニアに対する援助関連業務が行われているということでございます。
前田分科員 それにしても、これまた国民の皆さんにはわかりにくい。大使館建設だったら建設できちんと計上すればいいじゃないですか。まあ、時間がありませんので先に進みます。
 次に、外交協会の問題。
 日本政府の意思に反して北朝鮮へ四十万食の米支援をした、その日本外交協会でございますけれども、この団体に機密費が流れていた。これに対して、外務大臣、どうお答えになられますか。
川口国務大臣 機密費といいますか、報償費でございますけれども、報償費について、どのようにそれを使っているかということについては、まことに申しわけないんですけれども、お答えを差し控えさせていただいておりますので、これについても、そういうことで、お答えを直接に申し上げられないということを御理解いただきたいと思います。
前田分科員 先方の池浦専務理事が、もらっていたと新聞社に対して答えているんですね。片方はきちっともらっていると言っているのに、外務大臣は、いや、答えられないといったことは、一体何ですか、これは。税金で寄附行為をしてもいいんですか。
 この団体は、よく講演会と称して外務省幹部に講演をさせていますね。外交協会から外務省幹部に講演料が支払われているといった事実は本当でしょうか。
北島政府参考人 まず、日本外交協会が開催する講演会等につきましては、一部は外務省からの委託事業として行われたものでございます。その場合に外務省より開催経費が支払われておりますけれども、外務省職員が講師となる場合には、外務省としては、日本外交協会に対して外務省が支出する経費から、外務省職員に対し、講師に係る謝礼といったものを支出することを認めておらず、また、支払ってきていないということでございます。
 他方、日本外交協会が主催した講演会において、外務省職員に対して一万円から三万円程度の謝礼が支払われた例はございますが、これらは日本外交協会の判断で支出されたものと承知しています。
 いずれにしても、職員が適正な手続に従い報酬を得て講演を行うこと、これは国家公務員法上問題がないというふうに考えております。
前田分科員 ちょうどきょうは北島さんお見えなので、平成十三年十一月二十六日、日本外交協会十一月例会、当時経済局長であられました北島さんに対して講演料というのは出されていますか。
北島政府参考人 当時、私、経済局長をしておりまして、数回講演した記憶がございます。
 実は、まことに申しわけないんですが、この十一月二十六日の件について謝礼をもらったかどうかというのは記憶にないんですけれども、当時の届け出を確認しましたところ、日本外交協会の講演については届け出が出ていない、同時期に、中東調査会だったと思いますけれども、そこで講演した場合に届け出が出ているということを確認しました。
 日本外交協会については、申しわけないんですが、覚えていないというのが正直なところでございます。
前田分科員 これは、同じ平成十三年の例会で話されている方、しっかりと、受け取られているといって届け出が出されております。官房長も一回確認されて、私も外務委員会でもう一度やらせていただきますので、この辺、お答えいただきたいと思っております。
 とにかく、講演料が支払われている。今、外交協会の自由な意思でと言われましたけれども、自発的な意思でと言われましたけれども、実際に池浦専務理事が報償費を受け取っている、税金を受け取っている、それから外務省の官僚に対して講演料が支払われているということは、これは税金の外務省幹部に対する還流じゃありませんか。私は、こうしたことは絶対に認めてはいけないことだと思いますが、外務大臣、どうですか。
川口国務大臣 日本外交協会は社団法人でございますので、その会員の出す会費、これが主たる、主たるといいますか、それを使っているわけですね。ですから、法律に、というのは、国家公務員法ですとか、あるいは報酬を得た場合に届け出るというルールでございますね、そういったことに違反をしていれば別ですけれども、そうでなくて、さまざまな国家公務員にかかわり合いのある法律の枠内で報酬が支払われているということであれば、これは特に問題はないというふうに思います。
前田分科員 疑わしいようなことは絶対にやっちゃいけない。ただでさえ、外務省の使う税金のことに関して国民が理解をすることはできない。資料を求めても何もこたえない、そして、入札の過程をモスクワ大使館はしっかり説明したらどうだと言っても出さない。これは国民の皆さんに対する冒涜ですよ。はっきりと、これから外務省は、税の使い道についてもう一度襟を正していただいて、今後不祥事が起きないようにお願い申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
 最後でございますけれども、外交協会の池浦専務理事から、非常に内容が、今度外務委員会で私は取り上げさせていただきますけれども、これは不適当だ。国政調査権に対するこれは挑戦ですよ。その内容が、ここに手紙でありますので、またこれを外務委員会で取り上げさせていただくことを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
持永主査 これにて前田雄吉君の質疑は終了いたしました。
 次に、達増拓也君。
達増分科員 ことしは日・ASEAN年ということで、けさ新聞各紙でも、日・ASEAN年の親善大使の、これはコンピューターグラフィックスでつくった女性で、名前を募集という記事が出ておりまして、盛り上げを図っているところのようでありますけれども、この日本とASEANとの関係というのは、日本のアジア太平洋における位置づけの中でかなめの関係にあると思うんですね。
 思えば八〇年代、アジア太平洋を巻き込んだ日本の経済力とその成長というものが、アジアの安定や世界の平和に大きく貢献したんだと思います。これは今でも同じでありまして、やはり日本が経済力を回復して、そしてアジア太平洋を巻き込んだ成長ということを実現することこそ、アジアの平和、世界の平和につながるものだと思います。今、日本は十年来のデフレや不景気に悩んでいるわけでありますけれども、それに先立つ八〇年代というのは、本当に夢と希望に満ちあふれた十年だったと言っていいと思います。二十一世紀はアジア太平洋の世紀だということで、それこそ日・ASEAN関係も大きく花開いたと思います。
 また、事実、八〇年代、オイルショックを克服した後の日本の経済の成長や技術の発展、それが当時NICSとかNIESとか言われました新興工業地域に伝わり、またASEAN諸国の発展にもつながり、それが中国やさらにインドなどにも影響を及ぼしまして、そうした民主化と市場経済の流れに乗っていかないとだめだということで、中国も改革・開放、そしてソ連もペレストロイカ。いわば冷戦の終結。冷戦を終わらせたのは、日本の経済力がアジア太平洋を巻き込んだ成長というものを力強く推進していたことが冷戦の終わりにつながり、また中国の改革・開放からアジアの安定にもつながっていった。
 今、日本を取り巻く国際情勢、東アジアでも安全保障上の危機などがあるわけでありますけれども、これも実は、日本の経済力が弱まって、またアジア太平洋を巻き込んだ発展ということがうまくいっていないということが背景にあるんだと思います。今こそ、そうした日本の経済力を回復させ、アジア太平洋を巻き込んだ成長を実現していかなければならないわけで、ことしの日・ASEAN年ということも、単なる友好親善、そういうレベルに終わることなく、実質的な経済連携、そして地域の安定、平和につながっていくものでなければならないと思います。
 そこで、質問でありますが、去年の一月、小泉首相が日・ASEAN包括的経済連携構想というものを打ち上げ、既に一年半ほど経過しようとしておりますが、これがどの程度進んでいるのか、伺いたいと思います。
川口国務大臣 今、委員の日本とASEANの関係のお話を伺いながら、七〇年代の初めに田中総理がASEAN、インドネシア訪問をしたときのこと、それから九〇年代の初めにAPECが始まって、そして日本とASEANの関係が非常に深まったということを思い出していましたけれども、今度の経済連携構想というのは、それを実質的に、さらに果実を持たせていくという段階に来たということであろうかと思います。
 そして、現状についてのお尋ねですけれども、これは、まず二国間では、タイ、フィリピン、マレーシア、この三つの国との間でそれぞれ作業部会を進めております。それから、日本とASEAN全体、これの間では経済連携を実現するための枠組みとなる何らかの文書を検討するための委員会がございまして、この委員会で話をいたしております。ということで、お答えをしたことになるかと思います。
達増分科員 それで、ことしの十二月には日本で日・ASEAN特別首脳会議というものを開催することになっていると聞いております。ASEANの全首脳が日本に来て、そして日・ASEANの間で特別と銘打った首脳会議を行う、これは恐らく初めてのことなんだと思います。
 外交的にはそうした非常に画期的な場が用意されてはいるんですけれども、やはり中身が伴わないと非常によくない。この十二月の首脳会談では、今答弁にあったようなさまざまな作業部会や委員会が進んでいるということなんですが、かなり具体的な結果を示していかなければならないと思うんですけれども、この点はいかがでしょうか。
川口国務大臣 ことしの十二月の首脳間の会議、これはおっしゃるように画期的なことでございますし、FTAだけではなくて、いろいろな意味で意味があるというものにしていかなければいけないというふうに考えております。
 FTAについてこの時点でどのような形になっているかということでございますけれども、今それぞれ、二国間の話については作業部会、全体としては委員会という形でやっているわけですが、この十二月までにできるだけの進展を示すということが不可欠であるということを考えております。そのために積極的に現在取り組んでおります。
達増分科員 FTA、自由貿易協定については、我が国は、しばらく慎重な態度をとっていて、基本的にはグローバルな自由貿易が望ましいと。その中で、バイの自由貿易協定であるとか、あるいはNAFTAやヨーロッパ統合のような、そういう地域的な自由貿易体制ですらそれは開かれたものでなければならないということで、基本的にはグローバルな自由貿易というものをメーンに考えてきたわけでありますけれども、WTOができて、曲がりなりにも、そういうグローバルな自由貿易体制については、かなり制度化された場ができてきている。
 一方で、実質的な自由貿易を加速するためにシンガポールとの自由貿易協定に日本が踏み切ったことで、我が国もこういう二国間の自由貿易協定、FTAというものにも積極的に取り組む姿勢に、転換したというよりは踏み込んだということなんだと思います。
 ASEANでも、シンガポールとは既にそういう自由貿易協定、包括的な連携の協定ができているわけで、できればASEAN全体とのそういう自由貿易協定ができることが望ましいと思います。
 ただ、ASEANは、まだまだ工業の水準について、インドネシアでありますとかベトナム、カンボジア、ラオスでありますとか、そういったまさに今発展の最中というところ、農業に依存、またその農業もまだ初期の段階の農業が広く見られるようなところも抱えておりますので、それはそれで進めていただければいいと思うのですけれども、シンガポールに続いて二国間の協定を結べるところがあるんだと思います、タイ、マレーシア、フィリピンとは作業部会を進めているということなんですけれども。
 かつて、八〇年代から九〇年代にかけては、雁行モデルといいまして、日本がまず先に出て、それがNICS、NIESに伝わり、ASEANに伝わり、さらにその周辺に伝わる、そういう発展の段階論みたいな中での協力と言われていたのですけれども、今は、かなりそこはさま変わりして、かつてNICS、NIESだと言われていた地域やASEANは、かなり日本との水平的な貿易もできるような形になってきていると思うんですね。
 そういう意味で、ASEANの中でも、シンガポールに続いて、タイ、マレーシア、フィリピンといったところについては、すぐにも二国間の自由貿易協定、経済連携協定に合意ができるような状況にあるのじゃないかと思うのですけれども、十二月の特別首脳会談までに合意できるかどうか、その辺の見通しを伺いたいと思います。
川口国務大臣 FTAあるいは経済連携協定、これを日本としても政策課題として取り組むに至った過程というのは、今委員がおっしゃいましたように、WTOの補完という位置づけですけれども、やはり基本的に、WTOは国の数が多過ぎてなかなか自由化が進まないということも一つあるわけですけれども、先ほど、できるだけ前に進めたいということを申し上げました。
 十二月の時点でどこまでできるかということについて必ずしもはっきり申し上げることは難しいということがございますけれども、具体的に一つ一つ取り組んでいくと、やはりそれぞれの国との間でさまざまな問題がある。それを乗り越えていかなければいけないということだと思います。農業というのが一つあるでしょうし、またサービス業といいますか、人の移動にかかわることもあるかと思います。そういった困難な問題を乗り越えて、できるだけこの問題が前に進むように鋭意取り組んでまいりたいと思っております。
達増分科員 今、農業という話が出ましたけれども、確かにタイ、マレーシア、フィリピンといった国々は、農業、また林業、水産業が盛んでありまして、貿易品目にもそれがあるわけです。
 タイは非常にわかりやすいケースだと思うのですが、タイは農業国で、しかも米の生産が盛んなわけですね。それで米を輸出する能力も持っているわけでありますけれども、このタイと米について、米については例外化できるということで、タイとの間で自由貿易協定に合意できれば、かなりASEANの他の農業国との関係も促進するような弾みになるのじゃないかと思います。まずASEANのシンガポールで突破口を開いたわけですけれども、この突破口がさらにASEANの中に広がっていくためには、タイが非常にかぎになると思うんですね。
 タイとの間で、特に米について例外化できるということを確保できれば話は非常に早く進むと思うのですけれども、タイの方から、タイ政府の方から、米については、日本の事情を考えれば米の全面自由化なんというのは無理だというのはわかっている、タイとしては米にこだわらない、米については例外でもいい、そういうタイ側の意図というのは何か伝わってきていないのでしょうか。
茂木副大臣 日本のFTA戦略でありますけれども、基本的な考え方として、包括的でありたい。しかし、その一方で、委員御指摘のように、いろいろな交渉を進める上では、機動性、こういうものも考えていかなければならないのじゃないか、場合によっては、非常にセンシティブな品目については若干時期的におくらせる等々の問題があってもしかるべきだ、こういうふうに考えております。
 そこの中で、日本とタイの経済関係でありますが、タイから日本への輸出品目を見てみますと、有税品目のうち二二%が農業品、こういう形になっておりまして、そのどの部分についてどこまで関税撤廃できるかが課題の一つであると考えております。
 そこの中で、米の問題でありますが、先方の政府の方から、米は実質的には例外としても差し支えない、また、その他日本にとってセンシティブな品目についても交渉において十分な配意をする旨、明言をしてきております。
達増分科員 それは、ある意味、もう千載一遇のチャンスだと思うんですね。去年の一月に小泉総理が日・ASEAN包括的経済連携構想というのを打ち上げ、その中で二国間の協力も進めるということも明言されていたと思いますし、また、ことしの十二月に特別首脳会議ということで、シンガポールで突破口が開かれたASEANとの経済連携について、これを大きく広げるチャンスで、タイがそのかぎを握っているんだと思います。
 ただ、最初の答弁で、今はまだタイ、マレーシア、フィリピンとの間では作業部会が行われているところだということなんですけれども、これを早く二国間の正式な交渉に持ち上げないと十二月の特別首脳会議に間に合わないのじゃないかということを懸念いたします。そろそろ正式な会議をスタートさせた方がいいと思うのですが、この点、いかがでしょうか。
茂木副大臣 先ほど大臣の方から、タイ、マレーシア、フィリピンについて作業部会が立ち上がっている、こういうふうにお答えをさせていただきましたが、特にタイにつきましては、昨年の五月から予備協議が始まりまして、昨年の九月から作業部会を開始しておりまして、言ってみますと、既に一年に及ぶ協議を行ってきているわけであります。
 作業部会におきましては、産業界、学界からも参加を得まして、政府機関のみならず、産学からのインプットも既に議論の中に反映をされている、こういう状況であります。さらに、産業界の方から、六月に予定されております日・タイ首脳会議において経済連携協定の交渉入りに合意するよう求める要望書、こういうものも提出をされているわけであります。
 このようなことから、そういったやりとりも踏まえまして、また、先ほど御指摘いただきました農業分野のうち、米をどうするのか、その他のセンシティブ品目をどうするのか、こういうことも十分関係省庁とも協議をした上で、できるだけ協議の方を進めていきたいと思っております。
達増分科員 ともすれば日本の国内経済のことに目を奪われて、対外経済政策、貿易ですとか投資ですとかその他の外国との経済連携について、国内でなかなか議論が深まらない、世論が盛り上がらないというところもあるんだと思いますが、むしろ、こういうときだからこそ、日本の経済構造改革というのは、世界の国々との対外的な経済関係との中でしか日本の経済構造改革というのはできないはずでありますから、ぜひここは強力に進めるべきということを訴えたいと思います。
 ともすれば小泉総理は、貿易とか投資とか、そういう産業政策や対外経済政策について余り積極的に発言していないのじゃないかと思われる嫌いがありまして、そこが歴代の他の総理大臣とちょっと違うところだなというふうに私は深く懸念しているのでありますけれども、今こそそういう対外経済政策というのをてこにして、日本の国内の経済構造改革を強力に進めていかなければならないときだと思いますので、その点、重ねて指摘したいと思います。
 さて、二国間の経済連携構想について詳しく伺いましたが、改めてASEAN全体とのFTAの締結の可能性について伺いたいと思います。
川口国務大臣 先ほど委員がおっしゃられたことについて、私も、日本は貿易立国という言葉がずっとございまして、国際社会とのかかわり、国際経済の中に日本があるということは重要だと思います。そして、委員もおっしゃいましたように、歴代総理はそのことに取り組んでこられたわけでして、また小泉総理も、そういう意味で昨年の一月にこの日本・ASEAN包括的経済連携構想というのを表明されたということで、小泉内閣としてもこれについては一生懸命に取り組んでいるわけでございます。
 それで、ASEAN全体とのFTAの締結の可能性ということですけれども、どのようにASEAN全体との経済連携を実現していくかという取り組みの手順、これについては、私どもの、今の日本政府の考え方というのは、ASEANの加盟国に非常に格差があるという現実がございますので、現に、CLMVといいますか、後発の四カ国は非常におくれているわけですし、ASEANの中で格差の是正というのが大きな課題になっているわけでして、そういった現実を踏まえまして、まず初めに二国間の経済連携協定を結んでいくということが重要ではないかと考えています。それをやる過程において、おのずから、全体としてどのような枠組みがある、どのようなことができるかという交渉の可能性が見えてくるということだと思います。
 先ほど申しましたように、とりあえず今の段階では、日本とASEAN全体の間では、経済連携実現のための枠組みとなる何らかの文書、これを検討いたしておりまして、ことしの十月に日本・ASEANの首脳会議がございますが、そこで報告をすることになっております。
達増分科員 急がなきゃならないんじゃないかなと思いますのは、いろいろ外交日程が既に決まっているということもあるんですが、中国でありますとか、日本以外の諸外国が、やはりASEANの持つ可能性、アジア太平洋の可能性に着目し、ASEANあるいはASEANメンバーに対する経済連携のアプローチの度を強めているようなところがありますので気になっているんですけれども、その辺の、中国等の動きについて伺いたいと思います。
茂木副大臣 中国も、ASEANとの経済連携の強化、こういうことで動き出しているのは確かな事実であると思っております。実態的に、中国の場合どこまで進むか、これは今後の課題ということでありまして、そういった動向も見きわめる必要があると我々も考えております。
 ただ、あくまでこれは日本対それぞれの、タイであったり、マレーシアであったり、そしてまたフィリピンとの関係、そしてそこの中で、大きくASEANとの経済連携を進めていく、こういう形でありまして、もちろん、他国の状況、これを全く無視するとか軽視していいんだということではありませんけれども、あくまで日本として進められる限り速いペースで進める、これが基本的な方針だと思っております。
達増分科員 自由党は、小沢党首が、例えば日米自由貿易協定だって、すぐやっていいんだ、全面的に日本の市場を開放しても、結局はそれは日本にとっての利益になるんだということを言っております。
 ともすれば今、中国からの日本に対する大量の輸出品、そういったものでデフレが進行し、日本全体として、貿易、通商、投資とかいったことに消極的な姿勢が見られるのであります。
 思えば、八〇年代も、それまでは内向きな経済だった中国やソ連というものが外に向かって開き始め、また、インドですとかインドネシアですとか、輸入代替産業、貿易に頼らなくても国内でやっていけるような経済体制をそれまで基本にしていたところが、ASEANの成功に刺激されて、輸出入でむしろ売れるものをどんどんつくって稼ごうという路線に転換した。
 実は、八〇年代も、そうした世界経済構造のすごい転換があったんですが、むしろそれは日本にとって追い風になり、また、諸外国がそうした構造転換を図ることに日本経済が大きな貢献をした。そういう積極的な姿勢で今こそいかなければならないんだと思います。
 そういう世界全体の経済構造改革というものに対応できるような日本の国内経済体制をきちんとつくりながら、むしろ世界のそういう、より市場経済に適合した、より活力のある経済体制ということに、日本もそれを後押しするような形でやっていく、それに耐えられる、それを引っ張っていける国内の経済構造改革を進める、そういう大戦略が今必要な時期なんだと思います。
 さて、残りの時間で、経済連携構想以外の日・ASEAN協力について伺いますが、まずはSARSであります。
 これは、ASEANでもシンガポールは、患者数、死亡者数等、ちょっと目を引くような事態になっておりまして、アジアがまさに直面している課題なんでありますが、このSARSをめぐる日・ASEANの協力というのが今どのように進んでいるのか、伺いたいと思います。
川口国務大臣 SARSの拡大については、私どもも懸念をしています。これだけ人的な交流あるいは物の交流が頻繁になっている中で、そしてまた、SARSがASEANの国々に経済的にも影響を与えるような事態になれば、これは日本にもはね返ってくるということでございますから、日本の問題でもあるというふうに考えております。
 これについては、ASEANプラス3、日本、中国、韓国が加わった枠組みで議論が行われております。そして、日本としても、この議論に積極的に参加をいたしております。
 今まで日本としては、二国間ベースでは、ASEANの国に対しては、ベトナムに対して国際緊急援助隊を派遣いたしました。これがベトナムでのSARSを制御できたということに非常に大きく貢献をしていると私どもは考えています。そして、東南アジア諸国に対しまして、総額約一億五千万円の医療機材供与を決定いたしました。このように、SARSに対しては積極的に協力をいたしております。
 今後、我が国として、こういった国々にどのような援助、支援をすることが可能か、あるいはどのようなニーズがあるか、そういったことをきちんと把握いたしまして、今後とも対応策については真剣に検討していきたいと考えています。
達増分科員 ASEANは海のシルクロードでもありまして、これはアジアのみならず、ヨーロッパでありますとかあるいはアメリカ、オセアニアでありますとか、世界とつながる十字路でありますから、ここのところできちんとSARSに対する防波堤ができれば、これは世界全体にとっても大きい貢献になりますので、日本の役割をきちんと果たすべきことを指摘したいと思います。
 次に、日・ASEAN間のIT関係の協力、これは、小泉政権前までは、我が国もITということを強く主張して、日・ASEAN間やあるいはAPECの場などでITに関する協力、特に二〇〇〇年問題もありましたが、その前後、かなり進んだと思うんですけれども、小泉内閣になってからの動きというのがよくわからないんです。この辺は今どうなっているんでしょうか。
茂木副大臣 ITの活用ということで申し上げますと、これはASEANの経済発展とか競争力強化のためにも大変重要でありますし、先ほど来達増委員の方から御指摘いただいております、日本とASEANの経済連携を強化していく、こういう観点からも非常に重要だと考えているわけであります。
 そんな観点から、特に日本としては、ASEANのIT分野における協力を大きく三つの分野で行っております。その一つが、ASEANの各国におきますIT政策、制度づくりへの知的な貢献、そして二つ目が、各国におきますIT人材の育成、さらに三つ目が、情報通信基盤の整備、ネットワーク化整備などの分野であります。
 こうした支援に当たりましては、ASEAN各国に対する二国間の支援、こういうのを基本にしておりますが、例えばASEANの工科系大学のネットワークへの支援とか、ITスキルの標準化のイニシアチブ、Eラーニング等々への協力も実施をしているところであります。
 グローバル社会の中で、確かにここ数年間、例えばドットコム企業が調子が悪くなったりとか、ITについても新しいステージに入っている、こういう部分はあると考えておりますが、何にしても、ITを通じた日本とASEANの間の連携、これは今後も重要になってくると考えておりますので、引き続き日本としてでき得る協力を進めてまいりたいと思っております。
達増分科員 ASEANは、たくさんの島でできている国などでは、日本で発達している携帯電話の技術、そういうモバイルの技術が非常に有効でありましょうし、また、ASEANは全体として非常に教育熱心、向学心にも厚いので、そうした新技術を活用した情報の交換や教育、それを社会に生かしていく、そういった活動で、単なる経済技術協力のみならず社会協力的な分野にまで広げることができるポイントだと思いますので、この点もぜひ強化していくことを訴えまして、時間でございますので、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。
持永主査 これにて達増拓也君の質疑は終了いたしました。
 次に、松原仁君。
松原分科員 民主党の松原仁であります。
 きょうは、北朝鮮問題について、大臣その他皆様にお伺いいたしたいと思っております。
 私は、昨年の四月五日に外務委員会で質問をしたわけであります。そのときも北朝鮮問題について質問をいたしました。
 私は、このとき、おおむね三つの論点で大臣に質問をしたわけであります。
 一つ目は、このときに既に北朝鮮は、いわゆるならず者国家ということが言われておりました。この北朝鮮を、拉致する国と。日本の本当に一般的に幸せに暮らしていた方を拉致した国ということでありますので、これは拉致国家、誘拐国家であります。これはもう犯罪国家である、犯罪国家ということをはっきりと明言をするべきではないか、テロ国家であるということを明言するべきではないかということをまず第一の私の論点として申し上げたわけであります。
 二つ目には、そういう中で、相手がそういった犯罪国家である、ならず者国家であるということを認識するならば、それに対して我々はどのような対応ができるのか。二つの具体的な対応ができるだろう。その一つとして、いわゆる経済制裁を行うべきだということを昨年の四月五日に私は外務委員会で申し上げたわけであります。
 この段階において大臣は、このテロ国家、ならず者国家、犯罪国家ということに対しては、そこまでは踏み込む御答弁をいただけなかったわけであります。また、経済制裁については、私がこの質問をしたことについて大臣は、あくまでも粘り強くという言葉をたびたび、ここにもそのときの原稿がありますが、粘り強くという言葉を大臣は繰り返し使っておられました。具体的な制裁については敷衍することなく、粘り強くということで終わったと思います。中に一部、言うべきことはきちっと言うということを言っておりましたが、どこできちっと言ったのかというのも後で御答弁をいただきたいと思うわけであります。
 そして、私は、三点目として、国際世論に訴えるべきだと。いわゆる北朝鮮の拉致問題、当時は、昨年の四月五日の質問でありますから小泉総理が訪朝する前でありまして、現段階のような、いわゆる拉致被害者が実際に日本に帰国されるということがまだ全然想像もされていなかった段階における私の質問でありまして、その段階においては、当然経済措置、そして三点目として、国際的世論に訴えてこれを解決するべきだということで、当時、メガワティさんとの会談でこのことを議論したのかとか具体的なことを申し上げましたが、きちっとした答弁はそれについてはなかったというふうに私は認識をいたしております。
 私はきょうも、一年以上前の質問のこの問題が、結果として、北朝鮮問題で、拉致の問題で実際五人が戻ってきた状況の中においても、依然として、このことの、この三つの事柄について我々がどこまでできるのかということ、またやってきたのかということを検証しながら、この北朝鮮の拉致問題を考えていかなければいけないと思っております。
 まず最初に、私は、北朝鮮は拉致国家だというふうなことを、犯罪国家であるということを昨年の四月の質問でしたわけでありますが、拉致国家である、いわゆるテロ国家であるというふうなことを申し上げておきたいわけであります。
 御案内のとおり、アーミテージが拉致はテロという発言をしております、三月五日でありますが。日本語訳はこうなっております。最も大事なのは人権問題だ、私が明らかにしたとおり、拉致は許しがたいテロで、皆さんの闘いは反テロの闘いであると家族会の方々に言っているわけであります。こういう発言。また、北朝鮮問題で極めて影響力の大きい共和党のブラウンバック上院議員が同じような発言をしているわけであります。
 こういう、拉致はテロだということを踏まえて、私はやはり、我々がどれぐらい怒っているかということを強烈なメッセージで伝えることも必要であるというふうに思っておりまして、きょう、この場で大臣が、北朝鮮はテロ国家であるということをはっきりと言明をしていただきたいと思うわけであります。
 まず、御答弁をお願いいたします。
川口国務大臣 昨年の四月の時点からきょうまでの間に、一面では、委員もさっきおっしゃいましたように、非常に大きな動きがあった。総理の訪朝があり、そして五人の方が日本に今いるということがあったわけですけれども、他方で、その後引き続き我々が求めていること、すなわち、五人の家族の方が日本に帰ってくるということと、それから、拉致について事実の解明をきちんとしてほしいということについては進展が見られないということについては、これは非常に残念だと思います。委員がおっしゃるように、この問題について、我々はこれについて怒っているのだということについては、きちんとメッセージを伝える必要があると思いますし、現に伝えてきております。
 それで、拉致についてですけれども、これは今までも国会答弁で何回か申し上げてきておりますけれども、国民の生命と財産、これに大きな影響を与える、これにかかわるようなことでもありまして、拉致というのは普通テロと言うということは今までも申し上げてきているわけです。
 他方で、アメリカにはテロ国家ということを指定するという制度がございますけれども、日本としてはそういう制度は持っていないということですけれども、人権侵害であるということはそういうことですし、国際法違反であるということもそういうことである。これも、今まで国会でも私は申し上げてきております。
 こういったことについて、我が国としてはこのことについて、粘り強くと先ほどおっしゃられましたけれども、我が国としては、ぜひ解決をしていかなければいけないというふうに考えております。
松原分科員 今大臣は、拉致はテロであるというふうにおっしゃったわけであります。拉致はテロであるということをおっしゃったのであれば、これは、テロを行う国はテロ国家である、こういうことになるのではないかと思いますが、御答弁をお願いいたします。
川口国務大臣 普通に言えば、テロという行為を行う国家ということは言えると思いますけれども、我が国として、アメリカと違いまして、テロ国家という指定をするとか、そういう制度は持っていませんので、そういう形で、それがこういうことでありますと、定義とかそういうことはないということであります。
松原分科員 それは非常に、外交上は、テロ国家ということであれば、テロ国家の指定という概念が必要でありますが、日本にはそれがないということであれば、これはまた議論をしていかなければいけない問題でありますが、少なくとも、テロ国家という概念はないけれども、拉致はテロである、このことは今大臣がはっきりとおっしゃったわけでありますから、そして、テロをする国はテロ国家である、テロ国家という概念はないけれどもテロ国家である、こうおっしゃったわけでありますので、言葉としては、北朝鮮はテロ国家である、こういうふうにお認めいただいたということでよろしいですか。
川口国務大臣 先ほど申しましたように、テロ国家という、そういう概念が日本国にはないという前提で、拉致というのは国民の命、安全にかかわることであるわけですから、そういうことは普通にはテロと言うんであろうというふうに申し上げているわけでして、そういうことをやっている国家ということはそういうテロをする国家であるというふうに普通は考えるということだろうと思いますが、制度として、我が国として、それをテロ国家という指定をしているとか、そのように定義をしているとか、そういうことは言えないということを申し上げているわけです。
松原分科員 済みません、同じことの繰り返しになると恐縮なんですが、拉致というのはテロであろうと思われるというふうな表現だったと思うんですが、拉致はテロであるということは、はっきりとおっしゃっていただけるわけですよね。
川口国務大臣 普通の人の考え方では、これはテロであるということを申し上げています。
松原分科員 大臣もそれをテロと思っているということでよろしいですね。
川口国務大臣 私個人の意見ということでお尋ねでしたら、私も普通の人でございますから、そういうことです。
松原分科員 日本の場合はテロ国家という概念がないから、北朝鮮に関してそういう名称は言えないけれども、拉致はテロである、テロをする国は、言葉のあやでいけばテロ国家である、こういうふうに大臣がおっしゃったというふうに認識をいたしておきます。
 次に、テロ国家であるという認識を我々が持って行動するのであれば、具体的にどういうことをもってこの問題の解決に当たるかということになってくるわけであります。粘り強く話をするということをおっしゃっておられますが、粘り強くということをずっと一年近くやってきて、その後、閉塞状況が続いているとも言われているわけであります。
 私は、昨年の四月の段階の質問でも申し上げたように、我々は、政治でありますから、いかにして交渉材料を持つかということは必要であるというふうに思っております。そのための交渉として、特に外務省が、他の省庁と連携をとりながら行うものかもしれません。一つは、経済措置を展開する、そしてもう一つは、国際世論に対して訴えかける。昨年の私の質問において、これが具体的な行動のアクションプログラムの中で提示されるべきだということを申し上げたわけであります。
 そういう中で、とりあえず、先般、アメリカのブッシュさんそして盧武鉉さんが米韓首脳会議を行いました。これは、見ようによってはどちらにもとれる硬軟両様の話であったというふうに思っております。
 これについて、大臣がどんなふうに思っているのか、我々はやはり厳しい方でやるべきだというふうな御認識を持ったかどうか、まずお伺いいたします。
川口国務大臣 米国と韓国が非常に緊密な関係にある、同盟関係にあるわけですが、それがいい同盟関係であるということは、日本にとっても非常に重要でございます。
 そういう意味で、この間の米韓会談において、北朝鮮の核問題については、核保有を認めないとか、北朝鮮の核プログラムを平和的な手段で除去するとか、それから問題の平和的な解決のために日本及び韓国の参加が不可欠であるとか、そういう形の共同声明が出たことは、この問題の解決という観点から見て、連携が非常に大事でございますので、意味があった、有意義であったというふうに思います。
 現実にどのような方法でこれを解決していくかということについては、粘り強くというふうに一年前に申し上げた、それは基本として変わっておりません。特に今、外交的に努力をしていこうという形での動きがある段階でございますので、その努力を続けていくことが大事であると思います。
 我が国として、それでは粘り強くやっていくということ以外は何も考えていないのかというと、それはそういうことではございませんで、我が国は、今の段階では経済制裁は考えていないということです。これは、具体的に検討していないということであるわけです。
 米韓の共同声明でもございましたけれども、これは、いろいろな事態が今後どう展開をするかということが一つの問題になっていくわけですから、そういった状況では、また各国連携をしながら考えていくということでありましょうし、どのようにしたらその外交努力が実を結ぶような状況になるかということも念頭に置いて、各国との連携を強めながらこれを検討していきたい。今後については、そういうふうに考えております。
松原分科員 次の質問でしようと思ったことで、既に今大臣が、経済措置は考えていないとおっしゃってしまったので。
 では、考えていないわけですか。もう一回答弁をお願いします。
川口国務大臣 現時点で経済制裁を具体的に検討しているということは我が国においてはございませんし、また国際社会においても、今こういったことを口にしている国というのはないというふうに承知をしております。
松原分科員 経済措置を考えないとおっしゃるけれども、経済措置を考えないでこの問題が解決できるという確信があるということですか。
川口国務大臣 経済措置を考えない、まあこれは経済制裁といったような言葉の意味が何かということにもなるわけですけれども。
 例えば、米国と比較をしますと、米国は北朝鮮をテロ国家であるということを言って幾つかの措置をとっております。我が国が現状で北朝鮮との関係でとっている措置を見ますと、基本的には、アメリカのやっていることとほとんど同じことをやっているというのが現状であります。例えばキャッチオール規制というのを我が国はやっておりますけれども、これは、アメリカで軍事物資や技術の輸出を禁止しているとか、不拡散活動にかかわる物資の輸出を禁止しているとか、そういうことと同じことであるわけです。ということで、基本的に、全く何もやっていないわけではないということであります。
 それで、全く今後何もしないで問題が解決できるのかという御質問ですけれども、日本政府としては、これにつながるためには何をやったらいいかということは常に考えております。事態の進展をちゃんと注視いたしまして、そして、必要なことを関係の国々と連携をする中で検討をしていくということでございます。
松原分科員 一年前と比べてどうなのかというのは、私は、やはり検証しながらと思っております。
 私は、昨年の四月五日に、既に、万景峰号の問題、入港阻止を含む経済措置があり得るのではないか、そして北朝鮮への送金問題を扱って、これを申し上げております。このときは、現実の拉致という問題が、金正日がこの拉致問題について認め、謝罪をしということの前でありましたが、この段階でも私は、これは去年の四月五日に万景峰号と送金問題を言っております。しかし、今に至っても、このときと同じで、経済制裁措置は考えない、こういうことになるんでしょうか。
 きょうの読売新聞に、たまたまこの一面に「北朝鮮への送金停止」と書いてあったから、あれから一年一カ月たったけれども、拉致の五人が戻ってきたというふうなことで、しかしその子供は戻ってこないというふうなことの中で、ついに、こういった北朝鮮への送金停止という私がかねてから主張してきたことも含め、現実性を帯びてきたのかなと思ってきたわけでありますが、これについてはどういうふうになっているのか。この新聞記事も含め、御答弁をお願いします。
薮中政府参考人 本日の報道の件でございますけれども、そのこと自身が、具体的に今、日本政府の中でこういうふうになっているという状況では全くございません。
 先ほど大臣の方から御答弁申し上げましたように、今国際的には、まさに、どういう形でこの問題を解決するのか。日本は、日朝平壌宣言にありますように、この問題を包括的に解決する、つまり、核の問題でありミサイルの問題であり、そして拉致の問題、このすべてを包括的に解決するということで努力している。
 その中で、どういう形でやっていくのがいいのかということで、委員御指摘のとおり、単に対話、対話と言っているだけではだめだということは、そうだと思います。そういう意味で、国際的にもいろいろな働きかけをするという努力をする、そして、ここは粘り強く、しかし毅然としてやっていくということではございますが、今お話しのような経済制裁について、送金停止を今行う、そういった形での具体的な検討が行われているというわけではございません。
松原分科員 日本で一番部数が出る新聞がこうやって一面に書いているわけですから、これは全く根も葉もないことではなくて、今の状況の中で、それは解釈を変えるなり、山本議員なんかもそういうことをおっしゃっているわけでありますが、十分に、この送金停止を含めて、さまざまな事柄ができるというふうに思っているわけでありまして、そういうことで、この記事というか、いわゆる送金停止というふうなことが大見出しになってきていると認識しているわけでありますが、そうすると、全然これは根も葉もない話ということなんですか。もう一回確認します。
薮中政府参考人 政府の具体的な方針として、今、送金停止云々について具体的な議論あるいは検討が行われているということではございません。今御指摘のとおり、まさに国会の中で現在の法律についての見直しが必要ではないか、そういう御議論があるということは十分承知しております。
松原分科員 海外の国に対しても我々はイニシアチブを持ってやっていこうというときに、それは三番目の質問でちょっと触れようと思ったことでありますが、例えば、この北朝鮮の国連人権委員会の作業部会に対する回答、これなんかも随分批判があって大臣が謝ったというふうに私も聞いておりますので、これについては余り追及はしません。
 しかし、日本の方から出たのは英文にしてわずか十二行ですか、北朝鮮側は何ページもの回答を出しているのに日本は十二行しか出していない。本当に日本の外務省はこの問題に対して当事者意識を持ってやる気があるのかないのかということが一番問われているわけでありまして、はっきり言って、去年の四月五日の質問以来これほど重大な進展があったにもかかわらず、当事者意識がまだまだ不十分ではないかと私は思っているわけであります。
 これについては、もう随分と外務省も反省をしているというふうに聞いておりますが、しかし、こういうところにやはり外務省の体質があらわれているんじゃないか。これで、一点反省したから終わるという議論ではなくて、やはりこういう体質に問題があると私は思っているんですよ。こういう体質である限り、日本の外務省に対して我々日本人が本当にすべてを託していいのかという大きな疑問が出てきてしまう。
 経済制裁についても同じでありまして、経済制裁について、ほかの国がやっていないと大臣はおっしゃるけれども、北朝鮮に対して一番怒るべき国はどこかといえば、それは日本ですよ、この問題に関して。日本がこのことについて経済制裁をするというのに伴って日本の同盟関係にある国々が経済制裁をするということは、それはあり得ると思うんだけれども、他の国がやるのを待ってからということでは、これはもう全然、日本の当事者意識も責任感もないということになってしまうと思うんですよ。
 この経済措置について、やはり日本の外務省が主導して、ここまで閉塞状況で、しかも拉致の現実がこれだけ明らかになってきている、昔は拉致はあるとかないとかという議論もあったけれども、これはあるということが明らかになったわけですから、経済制裁をなぜしないのか、大臣、答えてください。
茂木副大臣 大きく分けて二点御指摘いただいたと思うんですが、前半部分の人権委員会につきまして、御指摘は率直に、真摯に受けとめたいな、そのように思っております。
 一方で、委員御指摘の、国際世論にどこまで訴えかけてきているかと。この拉致という問題、恐らく去年の段階では、アメリカもヨーロッパも、ほとんどの国がほとんど認識をしていなかった。それについては、大臣を中心にしながら、この拉致、アブダクション、こういう問題がいかに重要であるか、これにつきましては、我が国としてもできる限りの外交努力の中で訴え、そして人権委員会の中でも、決議で拉致という言葉が盛り込まれる、こういう形にはなってきている、このように感じております。
 経済制裁、これは定義からいいますと、経済制裁というのは一国じゃできないんです。国連決議なりを経て多国間でやるものが、国際社会全体でやるのが経済制裁、こういう形でありますから、では、一国で経済制裁できますかといったら、これは定義上できない、こういう話であります。
 ただ、日本として、例えば、先ほど言いましたようなキャッチオール政策をさらに強めていく、それからまた麻薬、覚せい剤、こういう問題に対する対応をさらに厳しくしていく、こういうことは十分でき得るのではないかな、こういうふうに考えております。
松原分科員 ちょっと今の答弁は納得できないんだな。
 というのは、まず第一に、外務省はずっと国際世論に訴えてきたとおっしゃる。しかし、外務省はどれほどのことをやったのか。今そういうことを言うと、ちょっと時間がないのであれだけれども、文句を大分言いたくなる。
 大体、十二行しか回答書を出していないんですよ。一番熱心じゃなかったのは日本じゃないか、当事者でありながら。しかも、今回、拉致の問題で五人が戻ってこなかったら、ここまで外務省は、まあそれでも、ここまでというほどやっているかどうかわからないけれども、ここで現実に五人が出てきたのでこういう話になった。国民世論の盛り上がりでこういう話になった。それは拉致の家族会の皆さんも言っていますよ、どこまで外務省はこの問題で真剣にやってきたんだと、国際世論に訴えるためにそんなに命がけでやってきたのかと。
 そんなことを言ったってだれも信じないですよ。まず大臣、今までのそれについて、大いに反省して、十分じゃなかったと認めるべきですよ。十分やってきたなどと言うのは、それはとんでもない答弁だと思う。
 それからもう一点、経済制裁については、もちろん国際協調でやるべきだと私は思いますよ。しかし、日本と北朝鮮の間でできる問題があるわけですから、それをやることの有効性というのは極めて高い。私は、国際的な全体との連携の中で、それが満ちるまでやらないという議論ではならないし、もう一つ、最初の、テロ国家の認定についていうならば、テロ国家という概念がないとおっしゃるなら、つくるべきですよ、北朝鮮に対して。北朝鮮をテロ国家にするということをきちっと概念上つくって、それを外務省主導でやるぐらいの気迫がなかったらこの問題は解決しないと思いますけれども、大臣、答弁をお願いします。
茂木副大臣 きちんと答弁も聞いていただきたいなと思うんですけれども。
 まず、先生の御指摘に対して、率直に反省し、真摯に受けとめたい、こういう前提で私は物を申し上げているわけであります。
 それから、日本が人権委員会にたった十行しか提出をしていないと。これは追加の部分についてだと思います。それにつきましても反省をしなきゃなりませんが、委員御案内のとおり、その前に五十ページにわたる資料を既に日本としても提出をしている。詳細な資料を提出した上で、ただ、追加について十分な言及がなかったというところについては反省をしなければいけないかな、このように考えております。
 それから、経済制裁につきましても、経済制裁というものでいえばこういうことになります、ただ、日本につきまして、現行法の中で日本だけででき得ることについては、例えばこういうことについてはやりますと、こういうお話を申し上げているわけであります。
松原分科員 十二行の部分に関しては、常に我々は、怒りがたくさんある、主張することがたくさんあるわけですから、いかなる形でも十二行という形にはならないはずだと思います。
 それで、私が大臣に申し上げたいのは、どちらにしても、この部分で大臣は経済制裁が今も必要ないというふうに思っているのかどうか、やはり日本はこの経済制裁をやるべきだと私は思っているので。また、テロ国家というものの概念が必要であるならば、テロ国家という概念をきちっとつくるべきだと私は思うんですが、大臣の考えを聞かせてください。
川口国務大臣 日本の国内で経済制裁についてのさまざまな議論が今行われているわけですけれども、今外交的にこの問題を解決しようとする動きがあるわけでして、そういったときに何をするのが一番適切かということを考えなければいけないというふうに私は思っています。
 これは、外交でございますから、どのようにして望む結果を出していくかということが大事でありまして、それは、そのときそのときの状況によって、何を、どういう手段をとるかということを考えていくということが外交であろうと思います。また、そういった手段が実際に実現につながっていくような、そのようなメッセージを出したりということをやりながら外交をやっていくことではないかと思います。
 先ほど薮中局長も言いましたけれども、日朝平壌宣言に従って、核の問題、拉致の問題、さまざまな日朝の間にある問題について、包括的に、平和的に解決をしていくということがこれの目的であるわけですから、政府としては、関係各国と連携をしながら、どのような手段が適切かということを常に考えているわけでございまして、先ほど来申し上げていますように、今、平和的に問題を解決しようということが起こっている中で、我が国としては、経済制裁を今具体的に検討していることはないということを申し上げたわけです。
松原分科員 それから、最後に、そういう中で、北朝鮮に対する非難決議が採決をされたわけでありますが、その決議、二十八カ国が賛成し、キューバや中国など十カ国が反対をしたというふうな議論であります。
 この十カ国に関してでありますが、日本の例えばODAなんかは戦略的に使われるべきだというふうに私は思っているわけでありますが、この十カ国、アルジェリア、キューバ、シリア、ジンバブエ、スーダン、中国、ベトナム、マレーシア、リビア、ロシアはODAの供与国ではありませんが、いわゆる支援総額は六十五・七億ドルということで、ある種大変な支援を日本はしているわけであります。こういう国々が、今まで日本はそういった意味でODAの支援、もちろんその趣旨はそれぞれの国の開発ということでありますが、戦略的にODA等は使われるべきだと私は思っておりまして、そういった国々がこの決議に対して反対をした、このことに対して、私は大変に大きな怒りを感じている。
 やはり我々は、こういったODAを戦略的に使うべきだし、こういった国々に対してどういうふうにこれから対応していくのか、大臣の御所見をお伺いします。
持永主査 薮中局長。時間が来ておりますから、簡単にひとつよろしくお願いします。
薮中政府参考人 今委員御指摘のとおり、まさにこの人権委員会、ここで初めて拉致の言葉が日本が働きかけまして入りましたけれども、残念ながら十カ国が反対をした。直ちに我々の方からは、これに対し遺憾の意を各国に申し入れたわけでございまして、引き続き、この拉致問題についてきちんとした理解を求めていくということでございます。
 人権委員会というのは、各国おのおのが人権問題を抱えている中で、そういうことについて自分たちの問題が扱われるのが嫌だ、そういう理由から反対をするというのが従来あるようでございますけれども、にもかかわらず、我々としては、やはりこの拉致の言葉が入ったこの決議に対する反対ということを非常に重く受けとめておりまして、これからも引き続き、今ODAのお話もございました、全般的にいろいろな判断をしながら、こうした問題についてさらに積極的に相手の理解を求めていきたいというふうに思っております。
松原分科員 時間が参りましたから、終わります。
持永主査 これにて松原仁君の質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
持永主査 これより国会所管について審査を行います。
 まず、国会主管歳入決算及び衆議院関係決算の概要説明を聴取いたします。谷衆議院事務総長。
谷事務総長 平成十三年度国会主管一般会計歳入決算及び衆議院関係歳出決算の概要を御説明申し上げます。
 国会主管の歳入につきましては、予算額十九億千五百七十万円余に対しまして、収納済み歳入額は十九億千六百四十五万円余であり、差し引き七十四万円余の増加となっております。
 次に、衆議院関係の歳出につきましては、当初の歳出予算額は六百八十八億七千二百八十万円余でありまして、これに立法情報システムの整備等のための予算補正追加額三億七千六百八十二万円余、施設整備のための予算補正追加額八億四千七百五十六万円余、前年度からの繰越額二十億五千二百四十三万円余を加え、既定経費の不用等による予算補正修正減少額十三億三千五百九十七万円余を差し引きますと、歳出予算現額は七百八億千三百六十五万円余となります。
 この歳出予算現額に対し、支出済み歳出額は六百七十六億六千二百十七万円余でありまして、その内訳は、国会の運営に要した経費六百二十五億二千五百七十一万円余、衆議院の施設整備に要した経費五十一億三千六百四十六万円余であります。
 歳出予算現額と支出済み歳出額との差額は三十一億五千百四十七万円余となっておりますが、このうち翌年度に繰り越した額は十一億八千六百九十九万円余であり、不用額は十九億六千四百四十八万円余であります。
 翌年度繰越額の主なものは第二別館発電設備整備費であり、不用額の主なものは退職手当でありまして、退職者が少なかったことに伴い不用となったものであります。
 以上が、平成十三年度国会主管一般会計歳入決算及び衆議院関係の歳出決算の概要でございます。
 よろしく御審議のほどお願いいたします。
持永主査 次に、国立国会図書館関係決算の概要説明を聴取いたします。黒澤国立国会図書館長。
黒澤国立国会図書館長 平成十三年度国立国会図書館関係歳出決算の概要を御説明申し上げます。
 当初の歳出予算額は三百七億七千四百六十万円でありまして、これに電子図書館基盤システム等の開発のための予算補正追加額七億六千九百三十八万円余、国立国会図書館の施設整備のための予算補正追加額十八億九千九百八十八万円余、前年度繰越額百三十九億五千九百七十七万円余を加え、既定経費の不用等による予算補正修正減少額十一億六千四百十八万円余を差し引きますと、歳出予算現額は四百六十二億三千九百四十六万円余となります。
 この歳出予算現額に対し、支出済み歳出額は四百三十二億六千八十三万円余でありまして、その内訳は、国立国会図書館の管理運営に要した経費百七十一億一千九万円余、科学技術関係資料の収集整備に要した経費七億一千六百三万円余、国立国会図書館の施設整備に要した経費二百五十四億三千四百七十万円余であります。
 歳出予算現額と支出済み歳出額との差額は二十九億七千八百六十二万円余でありまして、その内訳は、翌年度繰越額二十七億三千四百十四万円余、不用額二億四千四百四十八万円余となっております。
 以上が、平成十三年度国立国会図書館関係歳出決算の概要でございます。
 よろしく御審議のほどお願いいたします。
持永主査 次に、裁判官弾劾裁判所関係決算の概要説明を聴取いたします。天野裁判官弾劾裁判所事務局長。
天野裁判官弾劾裁判所参事 平成十三年度裁判官弾劾裁判所関係歳出決算の概要を御説明申し上げます。
 当初の歳出予算額は一億二千三百九十四万円余でありまして、これから既定経費の不用等による予算補正修正減少額百九万円余を差し引きますと、歳出予算現額は一億二千二百八十五万円余となります。
 この歳出予算現額に対し、支出済み歳出額は一億一千七百七十二万円余でありまして、このうち主なものは職員の人件費であります。
 歳出予算現額と支出済み歳出額との差額は不用額でありまして、五百十二万円余となっております。
 以上が、平成十三年度裁判官弾劾裁判所関係の歳出決算の概要でございます。
 よろしく御審議のほどお願いいたします。
持永主査 次に、裁判官訴追委員会関係決算の概要説明を聴取いたします。高田裁判官訴追委員会事務局長。
高田裁判官訴追委員会参事 平成十三年度裁判官訴追委員会関係歳出決算の概要を御説明申し上げます。
 当初の歳出予算額は一億四千二百六十八万円でありまして、これから既定経費の不用等による予算補正修正減少額一千七十二万円余を差し引きますと、歳出予算現額は一億三千百九十五万円余となります。
 この歳出予算現額に対し、支出済み歳出額は一億二千八百二十六万円余でありまして、このうち主なものは職員の人件費であります。
 歳出予算現額と支出済み歳出額との差額は不用額でありまして、三百六十八万円余となっております。
 以上が、平成十三年度裁判官訴追委員会関係の歳出決算の概要でございます。
 よろしく御審議のほどお願いいたします。
持永主査 この際、お諮りいたします。
 参議院関係決算の概要説明につきましては、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
持永主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
持永主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院石野第一局長。
石野会計検査院当局者 平成十三年度国会の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
持永主査 以上をもちまして国会所管についての説明は終わりました。
    ―――――――――――――
持永主査 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。渡辺周君。
渡辺(周)分科員 民主党の渡辺でございます。
 それでは、国会所管の何点かにつきまして、御質問をさせていただきます。
 順番はどうでもいいんですが、一つ先にちょっとお尋ねしたいのは、国会の傍聴規則というのがございますけれども、この点について最初にお尋ねしたいんですね。その後に、衆議院赤坂議員宿舎の建てかえの問題、森ビルさんから訴えを起こされている点につきまして御質問したいと思います。
 最初にお尋ねしますけれども、先般の統一地方選挙で、ザ・グレート・サスケという議員さんが岩手県の県議会で当選されました。一万六千を超える票を盛岡市選挙区で得られて、トップ当選されています。この方が、今、岩手県の中で、覆面をして通ったことは認められたけれども、覆面をして登院することが、登院といいましょうか、登庁することがどうなんだというのはまだ結論が出ていないようでありますけれども、この方がもう既に当選間もなくしてこの国会周辺にも来られている、自由党の小沢党首のところにごあいさつに来られたというような話も聞いているわけでありますが、例えば、この方が、国会に傍聴したいということでもし申し出があった場合に、覆面をしたまま県会議員さんとして来ることはできるんですか。そういう見解はどう今お持ちなんですか。
谷事務総長 大変恐縮でございますが、もともとそういうことを今まで想定した規則等ではございませんので、一応そういう場合にはこういう考え方になるだろうということを申し上げたいと思います。
 御案内のように、院内の秩序は議長警察権でございまして、議長が警察権を行使する、そのもとに衆議院の衛視がいるわけでございます。
 それで、考え方といたしまして、従来、その議長警察権の範囲というのがございまして、議長の院内警察権はどこまで及ぶかというのは長年議論があるわけですが、今のところは、この議事堂の建物がある構内、したがいまして、会館は議長警察権の範囲外というのがいわゆる定説でございます。したがいまして、考え方として、会館の場合と、院内に入る場合と、それから傍聴される場合と、おのずからその対応が変わってくるかと思います。
 したがいまして、会館等にお入りになるときは、比較的緩やかな対応をすることになると思いますけれども、院内にお入りになるときには、この傍聴規則にも氏名と年齢等を記載するようになってございますが、要するに、秩序の問題を第一に考えますと、それがまた議長警察権の内容でございますから、身分、姓名、それから顔がちゃんとわかるということがやはり一つの物の考え方だと思います。
 覆面をするというのは、何といいますか、顔と名前とがわからないようにするのがやはり覆面をする趣旨だと思いまして、サスケさんの話とは別にですね、そういう点を考えましたら、秩序を預かる者として、それは当然のごとくよろしいんだという話にはならなくて、やはり消極的に、したがいまして、院内に入るときは一応差し止める、こういうことになろうかと思います。
 ただ、院内の秩序の話は議長のやはり諮問事項でございますから、これは、私どもとしては、議院運営委員会あるいは警察小委員会に上げて御協議を願う、こういうことになろうかと思います。
渡辺(周)分科員 ちょっと整理しますと、例えば、議員会館にだれかを訪ねていくことは緩やかというのは、入り口で用件を書いていけば覆面をしていても入れると。つまり、今、議員会館にいらっしゃる、入館するところに衛視さんが立っていらっしゃいますが、そこは緩やかだけれども、議場あるいは院内に入るということになれば消極的であるというようなことですね。これは確認したいと思うんです。
 それで、衆議院の傍聴規則、昭和二十二年七月十一日制定、昭和三十年に改正されていますけれども、第三条に、「傍聴人は、傍聴券にその住所、氏名及び年齢を記入しなければならない。」第十条には、「傍聴人が傍聴席にあるときは、左の事項を守らなければならない。」一つは「異様な服装をしないこと」、二つ目は「帽子、外とう、かさ、つえ、かばん、包物等を着用又は携帯しないこと」。
 そうしますと、住所、氏名を書いて当然傍聴人として入る、しかし、そうであっても異様な服装である、これは衆議院としてはそう判断をする。つまり、院内に入ること、それから、委員会や本会議を、例えば、お名前を出して恐縮ですが、小沢党首の話をせっかくだから聞きたいんだ、これは私の政治活動として実は希望したいんだけれどもという場合は、残念ながら、覆面のままで入るということはできない、そういう判断でよろしいですか。
谷事務総長 話が大変具体的になりましたので、今ちょっとホットの話題の方でございますので、一般に、覆面した方が、何も知られていない方であった場合に、それはやはり何か合理的な理由がないと、例えば顔に非常に大きなあれがあるとか、そういう場合は、それはまたそれで対応が違ってくると思いますが、議員会館の場合は、それはその場その場で、例えば小沢党首の方にお面会をするのに申し入れがあるはずでございますから、小沢党首の方から、それは間違いなくこういうことであるということであれば、それは対応できると思いますけれども、院内になりますと、そこはやはり議長の秩序保持権の中にありますので、先ほど申し上げたように、私どもとしては、一たん差し止めて、それからひとつ御判断を仰ぐ、こういうことになろうかと思います。
渡辺(周)分科員 この問題は、大変ホットだと今おっしゃいましたけれども、まさにそのとおりで、しかし、選挙民の審判を得て、信任を得て地方の議場に行くわけですね。ただ、国会に来るということになった場合にどう判断するかというのは、例えば、この方の政治活動を考えた場合、これは阻害することになるのではないか。ということは、柔軟に考えた方がいい。
 ところが、逆に言うと、この方を認めると、では、なぜ彼はよくて私はだめなのかといって、例えば白装束をした人が次々にやってきて、いわば人定が不可能だというような方が来る場合も起こり得るわけですね。いずれにしても、これは早いところ結論を出さなきゃいけない問題だと思うんです。
 それともう一つ、例えば院から発行された通行証を持っていても、これは入れないということなんですか。もっと言ってしまうと、政策秘書になった場合はどうなるのか。こういうことも考えておかなきゃいけないと思うんですけれども、見解はどうですか。
 これはもう本当に、この当時の傍聴規則等々に書いてあるような、まさに昭和二十二年や昭和三十年の時代のときに、我々もまさかそういう方が出るとは思いませんし、しかし、今、当選してバッジを得たら、これはそういう政治活動の中に国会も当然入ってくると思うんですけれども、その点の見解をもう一回ちょっと確認しておきたいと思います。
谷事務総長 事務総長の見解というのもなかなかここは申しづらいのでございますが、いわゆる社会の考え方といたしまして、やはり民主主義社会というのは、ちゃんと何のそれがしということを明確に、顔も含めまして、意見を言うというのが基本だと思うんです。したがいまして、異様な風体の中に、全然、要するにわからない、それから、要するに匿名を装うといいますか、氏名が何かわからないようにすることをもって政治活動をするということは、やはりこれは民主主義の社会のありようとしては、私はちょっと疑問に思っております。
渡辺(周)分科員 ただ、この方も、そうはいっても候補者として立候補して、当然、候補者としての審査を受けて岩手県の選挙に出て、県議会に通ったわけですね。別に私はサスケさんにこういう質問をしてくれと、また、会ったこともありませんし、どなたに言ってくれと言われたわけじゃないんですが、非常に希有な例ではありますけれども、これからこういう候補者が出てくることだって考えられるでしょう、こういうことがあると。
 つまり、聞いたところでは、落選された方で、顔にペイントをしている元プロレスラーさんがいるらしいんです。群馬県かどこかの方で、出られたのかな、詳しく覚えていませんが、例えばこういう方がもし通ったら、顔にペイントをしたプロレスラーさんが出た、この方は落選されたらしいですけれども、こういう方も当選して、国会にぜひ政治家として私は勉強したい、陳情したいということになる可能性は非常に高いわけでして、こういう可能性というのは想定して、ある程度、これは事務方で考えておかなきゃいけないと思うんですけれども、いつごろ結論を出されるんですか。
谷事務総長 今、きょう御質問いただきましたので、警察小委員長なりに申し上げて、一度議論する場所は設けていただきたいと思いますけれども、やはり明治二十三年以来の議会の、服装は今はあれですが、現在でも、背広は着用するとか、ネクタイは締めるとか、そういう一つの品位を保つあれはございますので、このケースは一つテーマに挙げて御議論することになるかと思いますけれども、現状で考えれば、秩序の方を大変重く考えるのが順当じゃないか、こう思います。
渡辺(周)分科員 ここではっきりは言わないけれども、現状で考えれば、消極的に考えざるを得ないということでよろしいですね。――わかりました。
 この方も、恐らく政治活動に専念したいと思うんですね、サスケさんも。ですから、いつまでもこんな場外乱闘でエネルギーを使いたくないだろうと思うわけです。地方議会に行きますと、例えば、ネクタイをしているの、していないのとか、ジーパンをはいて来るとか、何か背中にメッセージ入りのトレーナーを着て、やれ議場に入れろとか、いや入れないとか、よくあります。
 ただ、私は、こういうところで余りエネルギーを使うというのは、その方も、もともと出てきた意図や、あるいは支援された方にしてみますと、そんなことで入り口論でもめてもらいたくないということもあるでしょうから、こういう問題はやはり早く結論を出していただきたいなというふうに思いますし、岩手県の結論も見守りたいわけでございます。
 この話はもう終わりまして、次に、衆議院議長が訴えられるという前代未聞のことが先般起きました。私どもが住んでおります衆議院赤坂宿舎の建てかえのことでございます。
 PFIという手法を導入して入札する、そして、ある業者さんに決まった、そうしたら、もう訴状も出て記者会見もされていますからお名前を出していいと思いますが、鹿島グループが落札して森ビルさんは落札できなかった、ということで、森ビルさんが、そもそもPFIの手法に反するじゃないかということで、衆議院議長を相手取って裁判を起こしているわけですね。
 これは、過去に衆議院議長が訴えられるなんということがあったのかどうかということも驚きなんですけれども、院の名誉にかかわることでございまして、衆議院議長が訴えられるということは我々衆議院が訴えられているということでございます。
 今回の赤坂宿舎建てかえについて、我々は、そもそもPFIという手法を、財政支出を軽減する、そういう意図のもとに当然行われていると。特に今、財政支出については厳しい状況の中で、我々議員が住んでいるところは一番批判を浴びるところでありまして、国が今厳しい中で、そんな高い金を出して自分たちの住むところだけは立派なものをつくるのかという話になる。ですから、いかにこの財政支出の負担を減らすかということは当然考えるべきことですけれども、そもそも、なぜ今回、このPFIという手法をとりながら訴えられるようなことになってしまったのか。その点についてちょっと御見解を伺いたいんです。
谷事務総長 御説明の前に、ちょっと一点だけお断りしておきますけれども、五月十三日に森ビルが提訴をしたことは承知していますけれども、現在、地裁の書類審査中でございまして、私どもにはまだ送達されておりませんので、訴状の詳しい内容を私ども承知してございません。
 その前提に立って、一点は、衆議院議長が訴えられたことがあるかというのは、一件だけ私が承知しているのは、政治改革のときに、土井議長とそれから河野自民党総裁が、例の政治改革の法案の成立をめぐって両院協議会等がありましたが、そのときの経過で訴えを起こされたことがございます。
 今回の場合は、今ちょっと御説明させていただきたいと思いますが、赤坂宿舎とか議員会館の建てかえの話はかねてずっと長いことの懸案でございまして、予算要求しても予算を認められなくて、平成十一年七月にPFI促進法ができまして、それで財政当局も、PFIなら理解できるみたいな話になりまして、要するに、平成十四年にPFIの国庫債務負担行為の金額等が提示されまして、それで、予算執行の準備を進めたということでございます。
 まず、四月に、そのPFIを進める上で、庶務小委員会の懇談会に、これは要するに、PFIのガイドラインによりまして慎重に入札するように、業者の選定を行うようにということでございますので、それに即しまして、PFIのいわゆる審査委員会を設置いたしました。それから五月には、宿舎の整備事業をどうするかということで、合築問題等を協議決定していただきました。これはいずれも庶務小委員会の御決定をいただいたわけでございます。それで、いよいよ平成十五年からいわゆる実施に入る国庫債務負担行為をいただいたわけです。
 その結果、選考委員会は、どういう評価をするか等々を御議論いただきまして、入札の方は、別途、事務的に入札する手続を進めてまいったところでありますが、その過程で、七月二十二日に入札公告を出しまして、合築とか評価とか、どういう方針でやるよというのは十分説明をいたしました。そして、七月から十一月の中ごろまでに、三回にわたって、いろいろ質問があったらどうぞ寄せてください、こういういわゆる情報の開示期間を設けておりまして、それで、いわゆる入札の参加表明を受けたのが八月二十八日ですか、それで三グループから参加表明があった。それで、十二月十九日に……(渡辺(周)分科員「もういいです、その話は知っていますから」と呼ぶ)いいですか。
 そういうことで、私どもは、いわゆる機関を通じて入札を進めてまいりましたので、事務としては適正に行われたものと思っております。
 衆議院議長は、こういう事業になった場合、会計法によりまして各省各庁の長が法定負担行為担当官ということになりますので、衆議院の場合は衆議院議長がなる、こういうことで衆議院議長が契約した、こういうことでございます。
渡辺(周)分科員 これはもう公開されている記者会見での先方の訴えですが、例えば事業期間を見ると、三十年とした場合、実は、地代あるいは入ってくる所得税、国庫に入る税金を考えると、最終的に財政支出は百億円以上少なくて済むと。別に私は森ビルさんの何の代弁者でもありませんし、ですから、そこは誤解なきようにしていただきたいんですが、これだけ見ると、要は、PFIというそもそもの理念でやるからには、国の財政支出が一番少ない方法をとらなきゃいけないと私は思うんですけれども、それは、PFIの理念にもそのようなことがうたわれているわけですね。
 にもかかわらず、結局、なぜ、将来の事業収益あるいはそれによって発生する国庫への税収入、その点を考慮しないでこれは決めたのではないかという判断ですが、それは考慮されなかったんですか。
谷事務総長 これは選定委員会の御議論でございまして、事務方は公平を期すために一切その御議論には入らない、こういう建前で進んでまいりましたので、私どもは、それはどういう御議論があったかというのは承知してございません。
渡辺(周)分科員 いや、それはおかしいわけでして、選定委員会だって、これは院から言われて、指名されてなったわけですよね、この方々は。(谷事務総長「そうです」と呼ぶ)ですから、それは知りませんというわけにはいかないと思う。だって、この中に衆議院の事務方の方が三名入っているんですよ。だから、知りませんという言い方は通用しないと思うんですけれども、いかがですか。
谷事務総長 確かに、衆議院の事務方も入っていますが、いわゆる本論の議論は選定委員会の委員が、衆議院の職員を除きましてですが、衆議院の職員はあくまでも補佐役として入ってございまして、評価の際には一切タッチしてございません。したがいまして、おかしいではないかと言われますのですが、これは、庶務小委員会の監督のもとにというんじゃなくて、こういう方に選定を委嘱するという、そのメンバー等は庶務小委員会で御決定いただいてございますが、中身については、一々庶務小委員会なり私の方に報告を受ける、こういうあれにはなってございません。
渡辺(周)分科員 ただ、三月十一日に、「事業者の選定に関する客観的な評価結果を公表する。」といって、議長名で出していますね。いろいろあったけれども、こういう結果になりましたということが出ているわけです。その点については事務総長は知らないということなんでしょう。ただ、これを議長に渡されたのは事務総長じゃないですか。
谷事務総長 選定委員会の委員長様が評価をお持ちしまして、そのときまで、私どもは承知しておりません。
 入札価格が別途ございますので、これは、最終段階で、評価のときに選定委員会にお見せして、結局、総合的に、その二つをあわせて、選定委員会がどこを選定するかということを決めた、こういうことでございまして、私どもは、そのときに初めて、議長に提示されたところで承知した、こういうことでございます。
渡辺(周)分科員 これは、訴えている方々がおっしゃっていることです。つまり、確かに、入札価格は今回落札された業者が一番低い額で入札した。ところが、その後の、これは向こうの試算ですから、これはいずれ裁判の中で出てくるんでしょうけれども、国に入る収入額、税金や地代、この点を含めると自分たちのところが一番財政負担が少なくて済むのに、なぜトータルで財政負担の多い業者を選んだんだということが当然争点になってくる。そうすると、我々は、これは議論にたえられないです。我々は、これは批判にたえられないんですよ。
 何でかといいますと、先ほど来、議員宿舎、会館の建てかえはずっと一貫して要求してきたけれども、おりなかった。ところが、この財政難で一番厳しい時代に、痛みを伴う改革だと言っておきながら、おまえのところが一番税金がかかるやり方をするのはどういうわけだと。これは、国民からすると、大変厳しい目で見られるんです。だからこそ、赤坂宿舎に住んでいる方々が超党派で世話人会をつくられて、その点について、「業者決定に至る経過の情報を開示すべし」ということが書いてあるわけです。
 つまり、これは何回も説明会の中でも大勢の議員の方から出たと思いますけれども、今回、非常に不透明であったじゃないか、PFIをうたっているのに、なぜPFIをうたっている割には最も国庫負担の多いものを選ばなきゃいけなかったんだ、そもそもPFIの理念に反するじゃないかというようなことを言われれば、我々も批判にたえられないんです。その点については、その選定委員会は全く考慮されなかったんですか。
谷事務総長 赤坂の世話人会でいろいろ御議論があったのは承知してございます。確かに、予算執行に当たりまして十分な説明が至らなかった点はあるかと思います。
 ただ、PFIとはそもそも何かという御議論はまた別途、私どもは、要するに、予算をいただいた、PFI事業でやれという予算の執行に基づいて、十分に業者に情報を開示して、業者の方からも何も異論もなくその条件で応募していただいたと思っておりまして、その応募した中から選定委員会で実際の施工に当たる業者を選定したということに、その手続に私ども何か瑕疵があったとは思っておりません。
渡辺(周)分科員 世話人会の方々がいろいろまとめられた意見の中に、例えば、PFIにふさわしい入札審査基準を定めるべきである、あるいは、国費の支出は極力ゼロに近いものにし、国民に納得してもらえる事業を提案することがなければ建てかえを当面延期する覚悟が必要であるというような形で訴えているわけです。
 これは、別にどの党の方が言っているわけじゃなくて、自民党から民主党に至るまで、各党の党を超えて、そこの方々が疑問を持っているわけですよ。つまり、国会議員の住んでいる人たちが自分たちのことに関してこれだけ疑念を持っていたら、これは当然、今後、世論にさらされるわけですね。
 その点について、事務総長はそういうふうにおっしゃいますけれども、この点について裁判まで起こされているわけですね。そもそも理念は何かという議論でいったら、もうここに書いてありますように、PFIのことについてここで議論する時間はありませんけれども、いかに効率的、効果的にやるかということで考えれば、当然、公共事業の従来の手法にかわるやり方として、そのために法整備もして、結果的には財政支出を減らすという方向で考えるべきであるのが私はPFIの理念だと思っていますけれども、その点についてはどうなんですか。だれか、お答えできる方はいますか。そうでなかったら、何のためにこの手法を使って建てかえをするのか、全く意味がわからなくなるんです。
谷事務総長 入札の結果、今、訴訟を起こされておりまして、その点がまさしく議論になるところだと思うんです。だから、私どもとしては、それは当然のごとく、司法の判断を仰ぐということで、訴状が来ればそれを検討して、どういう対応をするかは考えたいと思います。
 今おっしゃいましたように、いろいろ赤坂の人の御議論はあると思いますけれども、私ども、庶務小委員会なり議運の委員会というのは、各党の方が全部、代表としてお入りになったところで御決定いただいたのでございますので、それをいろいろ、逆に言えば、御議論は党内で本来議論していただく筋合いの話じゃないかと思います。
渡辺(周)分科員 いや、私は、党内で議論したからじゃなくて、これは、原田昇左右さんという方のお名前が筆頭にあるわけですね。今、御病気でちょっと療養中でありますけれども。つまり、そこに住んでいる方は、この「申し入れ書」を見ると、党内で議論するじゃなくて、これは各党なんですよ。ですから、その点について、今回の選定に関して疑念があるということを言って、説明もなかったじゃないかと。それはもう何度も議論して、もう五分しかありませんから余り言えませんけれども。
 ですから、これは別に、うちの党だけが急に正義漢ぶって、正義のやいばを振りかざしてどうこう言っている問題じゃなくて、各党の人もおかしいと言っているんですね、そこに住んでいる方々は。だから私は、きょう、この質疑をしているわけです。
 いいですか。PFIという手法を導入したということになれば、なぜ国庫負担が一番多いやり方をするのか。確かに、入札価格は一番安かった。だけれども、この後の先々の地代収入や税収入を考えれば、一番負担の少ない、いわば国庫負担の少ないところを当然選ぶべきなのに、なぜ入札価格だけで選んだのか。それは総合的にいろいろ勘案した結果だとおっしゃいましたけれども、それを考えると、国が発注した、しかも、国会議員が住んでいる、しかも、財政支出は真っ先にやらなきゃいけない、見直しをやらなきゃいけない衆議院の宿舎が、PFIなんて言いながら税負担の一番多い方法をとったら、何をやっているんだということになるわけです。
 この点について我々は問題視しているわけであって、この点について、例えば裁判の成り行きを、訴状が来ていないから見守ると言っていますけれども、現実問題としてこういうことが起きているのはよくわかっているわけですよ。訴状が来ていないからわからぬと。私も新聞記者をやって、必ず、裁判が起きると、訴状を見ていないのでコメントできないと言うんですけれども、もう起きてから一体何日たっているかということです。私のところに訴状があるんですよ。実際、訴えられた側ですから、それはもう一番真っ先に検討しなきゃいけないことなんじゃないですか、そんな悠長な、訴状が来ていないのでわかりませんみたいな話をしていますけれども。
 どなたか、答えられる方はいませんか。そもそもおかしいじゃありませんか。
谷事務総長 私ども、事務屋でございますから、地裁から正式に公文書として送達されなければ、ここであれこれ申し上げることはできません。
 それともう一点は、確かに、赤坂にお住みになる方には、先ほど申し上げましたように、実際の予算の執行に当たっての説明が至らなかった点はあるかと思いますけれども、そもそも、私どもとしては、機関を通じて御決定いただいて、その御決定に基づいて事務をとり行っておるのでございますから、赤坂の方の御了解がなければ赤坂宿舎建てかえはできない、こういうふうには承知していません。
渡辺(周)分科員 そんなことは言っていない。赤坂宿舎の了解を得たとか、住民の了解を得たなんということは言っていない。私が言っているのは、PFIという手法をとったのにもかかわらず、結局なぜ国庫支出の負担の一番多いやり方をしなきゃいけなかったのかということが全くわからないわけですよ。ですから、こういうものというのは、逆に言うと疑念を持たれるわけですね。
 いいですか。我々が国会の中で、今、どの党のどの議員も、財政支出の見直しを言っているわけです。痛みを伴う改革といったって、国民から見ると、痛みを伴うからといって、おまえらが一番改革の痛みを伴っていないじゃないか、何してるんだということが我々に今一番向けられているわけです。ですから、そのさなかに、幾ら予算がついたからといって、宿舎建てかえのときにこういう不透明なやり方をすると、結局は、どの党もみんなお手盛りで、自分たちのところはよしとしているのかということになるわけです。しかも、裁判まで起きている。
 この点については、これは本当にどういうふうに対応するんですか。このままいってしまうんですか。
谷事務総長 これは、一つは、機関である衆議院議長が訴えられているのと、それからもう一点は、国家賠償法で訴えられていますので、従来から国家賠償法の方は法務省が担当している例になってございます。
 衆議院議長への訴えにつきましては、PFIのそもそもの本旨にかんがみまして、どういうぐあいに訴訟に対応していくかというのはこれから訴状を見てから協議することになりますけれども、今先生がおっしゃる中身の話は、これは、私ども、選定委員会が一つ出した結論に基づいて選定されたと思っておりますので、まさしく、先生の御指摘の点はこれからの裁判の中で私どもは争っていく問題になるのではないかと思っております。
渡辺(周)分科員 時間が来たから一言だけ意見を申し上げて、もうこれで終わりにしますけれども、例えば、先ほど報告がありました国会の運営費についても大変多額な額がある。だから、私どもの党の中でも、例えば委員長の手当のあり方ですとか、あるいは委員長招待に使ういろいろな費用がございますが、こういうものをやはり見直すべき時期が来ているじゃないかと一部有志で言っているわけです。
 つまり、痛みを伴う改革だといって財政が厳しいのに、自分たちのところはそういう身近な改革に手をつけないくせに人には改革を押しつけていると。今、こういう世論ですよ。その中で、この議員宿舎の問題というのは我々のまさにあり方が問われる問題ですから、これは裁判の中でもちゃんと言うべきことは言う、そして、どういう結果になるか知りませんけれども、その間に我々もこの問題について引き続きいろいろな形で御質問を続けていきたいと思います。
 終わります。
持永主査 これにて渡辺周君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして国会所管についての質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
持永主査 これより皇室費について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。羽毛田宮内庁次長。
羽毛田政府参考人 平成十三年度における皇室費歳出決算について、その概要を御説明申し上げます。
 皇室費の平成十三年度歳出予算現額は七十六億一千八百四十六万円でありまして、支出済み歳出額は七十四億一千二十万円余であります。
 この支出済み歳出額を歳出予算現額と比べますと、二億八百二十五万円余の差額がありますが、これは国際親善に必要な経費等を要することが少なかったため、不用となった額であります。
 以上をもちまして平成十三年度皇室費歳出決算の説明を終わります。
 よろしく御審議くださいますようお願いいたします。
持永主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院石野第一局長。
石野会計検査院当局者 平成十三年度皇室費の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
持永主査 以上をもちまして皇室費についての説明は終わりました。
 これより質疑に入るのでありますが、その申し出がありませんので、皇室費については終了いたしました。
 午後一時から本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午前十一時二十三分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時開議
持永主査 休憩前に引き続き会議を開きます。
 これより内閣府所管中金融庁について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。竹中金融担当大臣。
竹中国務大臣 平成十三年度における金融庁歳出決算の概要を御説明申し上げます。
 平成十三年度の当初予算額は、百三十四億八千四百十一万円余でありましたが、これに予算補正追加額二十四億七千九百九十九万円余、予算補正修正減少額四億八千百三十六万円余、前年度繰越額五億五千六百五十万円を増減いたしますと、平成十三年度歳出予算現額は百六十億三千九百二十四万円余でありまして、これを支出済み歳出額百三十六億三千八百七十二万円余に比較いたしますと、二十四億五十一万円余の差額を生じます。
 この差額のうち翌年度へ繰り越した額は十七億五千百九十七万円余であります。これは申請・届け出等手続電子化システム等整備経費でありまして、計画及び設計に関する諸条件の関係等により事業の実施に不測の日数を要したため、年度内に支出を終わらなかったものであります。
 また、不用となった額は六億四千八百五十三万円余であります。これは、人件費を要することが少なかったこと等のためであります。
 以上をもちまして、平成十三年度金融庁歳出決算の概要説明を終わります。
 よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。
持永主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院石野第一局長。
石野会計検査院当局者 平成十三年度金融庁の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
持永主査 以上をもちまして内閣府所管中金融庁についての説明は終わりました。
    ―――――――――――――
持永主査 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。長妻昭君。
長妻分科員 民主党の長妻昭でございます。
 初めての金融危機対応会議が土曜日に開かれたということでございますが、まず竹中大臣に、りそなの今回の件で謝罪をしていただきたいと思うんですが。
竹中国務大臣 りそなに対しまして、金融危機対応会議におきまして公的資金注入の必要性の認定をいたしました。これは、預金保険法百二条に基づきまして、必要な措置として粛々と政府として速やかに決断をして対応をしたつもりでございます。
 金融庁としては、金融危機を未然に防ぐために今回の措置をとったわけでありますけれども、金融システムの安定化に向けて引き続き努力をしたいというふうに思っております。
長妻分科員 言葉はそういう言葉なのかもしれませんけれども、謝罪と私が申し上げた意味は、行政当局の金融の最高責任者として、やはり国民の皆様方に何らかの謝罪というのは今回は全くないのでございますか。
竹中国務大臣 謝罪の意味でございますけれども、りそなという銀行は過去に公的資金を投入しております。その銀行が再びこういうことを必要とする事態に至ったということに関しては、まことに遺憾なことであるというふうに思っております。
 しかしながら、現実の我々の意思決定としましては、最終的に会計監査法人等の意見も踏まえまして、最終的な決算の姿が自己資本比率で、これはりそなの単体で二%強ということになった。りそなという銀行は、グループで総資産規模四十兆円を超える銀行でございます。こういった銀行が自己資本比率二%程度で市場の中にさらされるということは放置できないということで、預金保険法百二条の趣旨にのっとって必要な手段をとったつもりでございます。
 金融システム安定化に向けて最善の努力を重ねたいと思っております。
長妻分科員 今回のりそなのケースは、大臣は予測をされておりましたか。
竹中国務大臣 こうなるであろうということを予測していたかということになりますと、こうなるであろうかということを非常に高い確度で予測していたわけでは、もちろんございません。
 しかしながら、私が金融担当大臣に就任した当初から申し上げましたように、日本の金融システム全体としては決して健全な状況ではなく、私は当初の記者会見で、病んでいる、健康体ではないというような認識を示しましたが、そういった認識に基づいて、さまざまな可能性を踏まえて必要な対応策をとっておかなければならないというふうにかねてから考えておりました。そうした問題意識を踏まえて、昨年十月末の金融再生プログラムはつくられているわけでございます。
 この金融再生プログラムの中にも、今回の特別支援の枠組み、金融システムに重大な支障があるような場合、経営危機に陥る可能性があるような場合については、預金保険法百二条を念頭に置きながら必要な措置を果敢にとるということはその中でも明記しておりまして、その意味では、我々としてはそういった可能性も含めてあらゆる可能な手段を常に念頭に置きながら万全の準備をしていたつもりでございます。
長妻分科員 今、金融再生プログラムの話が出ましたけれども、そうすると、今回のりそなのケースというのは、ある意味では改革が進んだあらわれと見ることもできるわけですか。
竹中国務大臣 今回の、この週末の一つの意思決定一つをとって改革が進むか進まないかということを判定すべきではないと思っております。
 しかしながら、我々は改革を進めなければいけない。その改革の中身は多様でありますけれども、そのうちの一つに、金融システムを安定化させてそれを強化していく、まさに金融システム改革というのが含まれております。その金融システム改革を実のあるものにするために、今回、自己資本を増強していただいて、しかし、繰り返し申し上げてきたつもりでありますが、この金融システム改革のためには三つのことを同時になさなければなりません。資産査定の厳格化、自己資本の充実、ガバナンスの強化、そういったことを踏まえて自己資本の充実の一助になる、今回の措置はそういったことになると思うわけであります。
 しかし同時に、コーポレートガバナンスの強化等々、そういったものを同時に行っていかなければ、これは結果として進んだことにはならないわけでありますので、この資本注入をきっかけにこの三つの項目を充実させて改革が進むように努力したい。その意味では、改革、再生に向けた貴重な重要な一歩にしたいという決意でございます。
長妻分科員 このりそなは、三月に一千億以上の増資をしているわけでございますけれども、これは、金融庁の責任あるいはりそなの責任も含め、問題というのは全くないわけでございますか。
竹中国務大臣 三月の時点で増資を行っております。その時点で我々が把握可能な財務の指標というのは、昨年の九月の末のものであったということでございます。そうした観点から、増資を行った後の比較的短期間に、次の決算でこのような事態が生じたということは、これまた我々としては大変遺憾なことであるというふうに思っております。
 ただ、手続的なことを申し上げますと、増資というのは、経営の重要な意思決定、経営判断の問題であって、それに対して応募する側がどうするかというのもこれまた重要な意思決定判断であって、委員御承知のように、これは認可事項ではなくて、届け出事項である。そうした中で、我々としては、第三者の割り当ての場合にはコンプライアンス上問題がなかったかどうか、そういった点に関してはガイドラインもつくってしっかりと対応してきているつもりでございます。
 今後、それは経営判断の問題でございますから、いろいろな意見が出てこようかとは思いますけれども、我々としてはそういった問題も含めて、金融システムがさらに安定していくようにしっかりと監督検査を行っていきたいと思っております。
長妻分科員 そして、金融庁はりそなに検査に入っていると思うんですが、最終、一番直近で入った検査はいつ入ったのかということと、当然、検査に入ったときに自己資本の中身というのも検査で見ると思うんですが、そのときに全く問題というのは意識していなかったのか。その二点、お尋ねします。
竹中国務大臣 最近時点での検査というのは、十四年九月期の決算に関する検査でございます。これは第一に対するお答え。これに対する検査を行ったということであります。
 この中身については、まだ御報告できる段階ではございません。
長妻分科員 それは、おかしいんですね。ですから、九月期の検査に入ったときに、自己資本の繰り延べ税資産に関して全く問題ないというふうな認識であったのか、問題ありという認識だったのか、そこら辺もまだ公表できないということですか。
竹中国務大臣 期日のことをもう一度申し上げたいと思いますが、十四年十二月三日から十五年二月四日まで立入検査、通常検査を実施いたしました。これは、十四年九月期の自己査定の正確性でありますとか償却引き当ての適切性、自己資本の状況等について検証を行うためのものであります。今その検査結果の取りまとめに向けての審査を行っているということでございますので、まだ結果は出ていないというふうに先ほど申し上げました。
 さらにもう一点、個別金融機関の検査内容の詳細については、その競争上の地位等の正当な利益を害するおそれがありますので、その中身については答弁を差し控えさせていただいております。
長妻分科員 今、委員の皆様も聞いたと思うのですが、十五年の二月に検査に入って、まだ検査結果の取りまとめをしていると。金融行政が後手後手に回るというのは、今の話を聞いても、当たり前だと私は思いました。まだ取りまとめをしている、二月の検査を。それでは先手先手できちんと金融行政ができないのじゃないかという重大な問題意識を私は持ちます。
 そうしますと、りそなは、債務超過、これは絶対債務超過じゃないと、これは大臣、断言できますね。
竹中国務大臣 決算の取締役会が開かれました。また、今期の三月期の決算についてもまた検査等々を厳しく行うわけでありますけれども、我々の把握しているところにおきましては、現時点において、自己資本比率が、先ほど申し上げましたように、単体で二%強、ホールディングス、つまり、持ち株会社のベースで三・八%というふうに認識をしております。
 これは資産査定の問題とも厳重に絡むわけでございますけれども、我々は特別検査等々で資産査定を厳格化している。さらには、御承知のように、金融再生プログラム等々で、ディスカウント・キャッシュフローのような新たな資本も含めてしっかりと資産の査定をしていく。これは技術的には大変難しい問題もございますけれども、検査をきっちりと行って正しく資産内容を把握するということに関しては、我々は相当しっかりと強化をしてきたつもりでございまして、現時点においては、自己資本比率は、単体で二%強、ホールディングスで三・八%というふうに認識をしております。
長妻分科員 主要行に関して、ほかの主要行でまた四半期ごとの指標というのが今度七月末ごろ出るやに聞いていますけれども、もうこれで打ちどめで、主要行に関しては、もう公的資金を注入ということはあり得ないというふうに、大臣、断言できますか。
竹中国務大臣 今後、銀行がどのように再生していくかということに関しては、銀行も、経営者も行員も全力を挙げて取り組んでいるというふうに思いますが、引き続き、銀行システムが日本の経済社会に与える重大な影響、責任を実感していただいて、しっかりと対応をしていただきたいと思っております。
 今後、これがどのようになっていくかということに関しては、我々としては、予断を持たずにしっかりと検査、監督行政を行う、その中で銀行がみずからの努力で再生していくということを期待しているわけでございます。
長妻分科員 そして、繰り延べ税効果に関しましては、会計の実務指針というのがございまして、「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」という実務指針が出ております。ここを見ますと、原則というか、基本的には一年、そして、あくまで五年というのは、あるいは三年も例外的なものでありまして、例えば、例外的な措置を認める場合は、大臣もよく御存じでしょうが、非経常的要件、こういう要件がなければならないということであります。
 前回の〇二年の三月期の決算は、ある意味では、特別検査等々の非経常的要件があったから五年も認めましょう、こういうような読み方もできたわけですが、今期、ことしの三月期の決算というのは、私は、もう非経常的要件はないと思うのですが、これは、ないというふうに大臣も認識されておられますか。
竹中国務大臣 繰り延べ税金資産をどのように認定するかというのは、現実問題として、決算の数字の上で大変重要なポイントになっている、これはもう事実でございます。
 しかしながら、重要なポイントは、今まさに委員御指摘くださいましたように、これは公認会計士協会の実務指針。これはまさしく公認会計士、つまり、監査する立場にある監査法人なり公認会計士がプロフェッショナルの立場としてその資産性をどのように認定するかという点が重要なポイントになります。
 この実務指針に関して、まさに会計士の実態判断に関して我々は物を言うべきではないし、物を言う立場にはございません。ここは、重要な社会のルール、会計という一つのインフラの機能を発揮させていくためにも、監査法人、職業会計人がプロフェッショナルの立場で、その実務指針にのっとって、収益の見込み等を含めて適正な、厳格な判断をしていただく性格のものであるというふうに思っております。
長妻分科員 その意味で、大臣自身は今、主要行の中核的資本に占める税効果資産、この割合というのは大き過ぎるのじゃないか、こういうふうに思われていますか。
竹中国務大臣 何度か委員にもお答えをさせていただいたことがあると思いますが、この税効果会計という資産項目は、これまでの日本の会計原則・会計慣行、税制、それと監督基準、そういった三つの視点の間で、これまでの経緯も踏まえて、その扱いをどうするかというのは大変難しい問題であるというふうに認識をしております。
 言うまでもなく、これは会計上認められている重要な資産項目でありますから、これはこれで会計上大変重要な役割を果たすものでございます。しかし同時に、これまで現実問題としては、繰り延べ税金資産の資産性に関して、マーケットからは大変厳しい目で見られてきたという事実、この資産性をどのように認定するかということで、現実判断としては厳しい目があったことも事実であるというように認識をしております。
 そうした問題意識がありましたので、昨年の金融再生プログラムの際に、この問題に関して、自己資本をどのように見るか、その中で繰り延べ税金資産をどのように見るかについて、これはもう日本の第一線の専門家に集まっていただいて、金融審の中にワーキンググループを設けて、この繰り延べ税金資産の問題を今議論していただいているところでございます。
 資産項目として会計上極めて重要な役割を果たしている項目である、会計上はこれは重要である、しかし、市場の中からいろいろな見方もある。そうした現実を踏まえて、この問題に関して、引き続き、審議会での議論等々を通して、我々もしっかりと見ていかなければいけないと思っております。
長妻分科員 自己資本に繰り延べ税資産を入れる、これの是非というか、ルールをつくるワーキンググループ、大変のんびりとやられているなというふうな印象なんですが、大臣が六カ月をめどに出すというようなお話がありましたけれども、いつまでにそのワーキンググループというのは、厳しい繰り延べ税資産の算入基準、これを表に公表するのでございますか。いつですか。
竹中国務大臣 先ほど申し上げましたように、金融審議会に自己資本比率規制に関するワーキンググループを設置しております。座長は慶応大学の池尾和人教授でございまして、先ほど申し上げましたように、この分野での日本を代表する専門家に集まっていただいております。
 この問題の算入上限については、法律の問題、会計の問題、税制問題等、幅広い観点から検討を行う必要があるということから、幅広い専門家を集めております。現在、第一回の会合をことしの二月六日に開きまして、何回か、月一、二回程度、お忙しい方ばかりでございますけれども、時間を割いていただいて、検討を続けております。半年程度で経過報告を取りまとめるという方向で審議をお願いしておりますので、我々も、その審議の中身、動向に注目をしているところでございます。
長妻分科員 そして、今回、漏れ聞きますと、会計監査法人が、五分の三ルールといいますか、繰り延べ税資産を五年見込んでいたものを三年に短縮したやに聞いております。そうすると、繰り延べ税資産を五分の三にする、こういう考え方がある程度厳格化の一つの考え方として今後も定着していくのかどうか。私は、そういう考え方がきちんと運用されるのが望ましいという立場でございますけれども、この五分の三ルールというのは、大臣、どういう認識でございますか。
竹中国務大臣 これは、現在まだ決算の策定の作業中でございます。五分の三というふうに委員おっしゃいましたけれども、そういう基準があるかどうかということについて、特に私は報告を受けておりません。
 これは、りそなの勝田元社長の記者会見におかれましても、御承知のように、繰り延べ税金資産というのは税金を払って将来の納税額からどのぐらい返してもらえるかというものでありますから、収益力をどのように見込むかということが重要なポイントであろうかと思っております。この収益計画が過大であると見られたものである、これは勝田さんの言葉ですが、結果として、七千九十二億円から二千七百三十三億円減額して適正化したものだ、勝田社長はそのように語っておられますが、こういった収益性をどのように見積もるかという、これは実態判断の問題だと思います。それぞれ実務指針にのっとった処理、それと監査法人の厳正な監査等について適切に対処されているというふうに承知をしております。
長妻分科員 そして、大臣にお願いしたいのは、情報公開でございますけれども、りそなは六月ぐらいをめどに新勘定と再生勘定を分ける、こういう作業を金融庁とともにやるやに聞いております。ぜひそのときに、ある意味では当然、自己査定の厳格化をもう一回やるんでしょうから、その新勘定、再生勘定が前の査定とどう違ったのか、乖離がどうあったのかという情報公開と、もう一つは、大臣、ことしの二月まで金融庁の検査が入っていた、この検査でどういう認識をされていたのか。その二つの情報を公開するということが今後の金融行政にとって非常に重要なことだと思うんですが、その公表という意味ではいかがでございますか。
竹中国務大臣 今後、新たな経営体制を確立していただいて、その中で新経営者の責任範囲を明確にするという意味で、新勘定、旧勘定への分離等々を行っていかなければならないと思っております。これは、金融再生プログラムに書かれた御指摘のとおりのものでございます。
 しかしながら、これは言うまでもなく、責任の、新たな経営者にその範囲で頑張ってもらうという意味での内部管理、つまり管理会計上の概念でございますので、それをどのように公表すべきかということに関しては慎重であらなければならない部分がありますし、どういう対応を行っていくかということ、我々にとっても初めてのケースでありますので、ぜひ実務的にここはしっかりやれるように、金融庁、全力を挙げて努力したいと思っております。
 それと、自己査定、資産査定はきっちりとやらなければなりません。自己査定がどのようなものであり、金融庁の査定がどのようなものであるか。これは、昨年からその乖離というのを全体として公表して、しっかりとした自己査定を行ってもらうようなシステムを我々としてはつくりつつあるというふうに思っております。
 いずれにしましても、これから、今まで我々もある意味でやったことがない幾つかの、新旧勘定の分離も含めまして、監視チームをつくってきっちりとしたガバナンスを発揮してもらわなければならない。しかし、同時に、これは決して経営判断に詳細な口出しをするということではなくて、公的資金を出す以上、しっかりとガバナンスを働かせるということと、経営者の柔軟な判断、つまり自治というか、オートノミーをしっかりと確立するというルールづくりもしていかなければいけないと思っております。
 そうした中で、公開すべきことはもちろん公開をしていく、しっかりとした前例をつくっていきたいというふうに思っております。
長妻分科員 りそなが公的支援になったわけですけれども、これは不良債権の処理を正常化する、平成十七年の三月期までに正常化するという政府の目標がございますけれども、そうすると、りそなは、ある意味では、平成十七年三月までに売却なりなんなりという一つの措置を終える、そういう年限の目標でよろしいのでございますか。
竹中国務大臣 不良債権問題を終結させる、その目標を十七年三月期に置いている、これは御指摘のとおりでございます。
 どういう状況をもって不良債権問題の終結とするか、金融再生プログラムの作成の時点でもいろいろと議論がございました。我々としては、その一つの基準として、不良債権比率を半減する、不良債権問題の終結という一つの判断基準として、不良債権の比率を半分程度に持っていくという目標を、御承知のとおり、掲げております。これは、今回の措置も含めてでありますけれども、主要行全体で不良債権比率の、今八%強のものをその半分程度にするということを、引き続き目標としていきたいと思います。
 今回、りそなに関して、これは公的資金の注入の必要性を今決定したところでございまして、具体的にどういう申請を行ってこられるのかということは今後の問題でございます。その際に、当然のことながら、経営健全化計画というのが出されるわけでありますので、その中で、どのような年限でその再生、企業の健全化を図っていくのか、これは今後、健全化計画が出されて、それを我々なりにしっかりと厳しく審査をして判断していきたいというふうに思っております。
長妻分科員 私は、今回のケースというのは十分に、これは竹中大臣、先ほど高い確度では予測できなかったと言われていますけれども、ある意味ではそれは予測できる話でありまして、これはもうその専門家であれば、こういう事態はほぼ予測できるわけであります。
 私は、竹中大臣が金融担当大臣に就任したときに、かすかなといったらあれですけれども、期待を持ったのは、この税効果会計を厳しく見直す、これは非常に健全化をする一つのやり方だというふうに思いまして、ある意味ではあのときに、というか、もうこの十年、ずっと不良債権処理は進んでいないわけでありますけれども、あのときにきちんと繰り延べ税資産のカウントを厳しく限定して、ある意味では金融危機の宣言をして一斉に処理をしていく、必要なところには、当然、申請主義でございましょうけれども、公的資金を注入して、もうきれいに、後が続かないようにしていくという措置が本当に必要だったというふうに私は感じております。
 ところが、竹中大臣は、何か、どういう化学変化があったのかどうか、その後、矛先を、矛をおさめられたわけで、今回、最悪の事態だと私は思うんですね。そして、りそながこういう事態になる。
 そして、私は、まだまだ金融不安、金融危機というのは続くと思いますけれども、では、半年後どこなのか、あれなのか、では、それが終わったら、また半年後どこなのか、ここなのか、こういうことで、いつまでたっても不安の心理が払拭できないということで、本当は我々が政権をとっておりましたら、本当に一気に解決するというプランも持っているのでございますが、これはぜひ、竹中大臣にお願いを申し上げたいのは、この際、金融危機対応会議というのが初めて開かれたわけでございますから、ここだけではなくて、ほかの金融機関、主要行も厳しく見直して、自己、繰り延べ税資産の算入のワーキンググループの答申というか、そこも厳しいのを出してもらって、もう一気に、不安が後に続かないように、きちんと理由のある公的資金であれば、それは国民の皆様方というのはきちんと説明すれば納得するというふうに私は考えておりますので、ただ、まだこれで打ちどめでない、またこれも打ちどめでない、これはもう皆さん嫌気が差してしまいますので、ぜひこれを機会に、一気にほかも処理をきちんとするというような御決意なり御判断なりというのはありますですか。
竹中国務大臣 先ほど申し上げましたように、昨年の九月末に金融担当大臣に就任をさせていただいた直後から、日本の金融システムは病んでいる、つまり、解決すべき大きな問題があるという認識に基づいて、再生プログラムを作成して取り組んでまいりました。
 その中で、改めて、やはり私自身強く感じておりますのは、日本の金融界、非常に長い間高い成長率のもとで安定的な経営をしてきた、それはそれでその当時大変重要な役割を果たしたということも事実でございますが、その金融のあり方、金融システム全体をしっかりとさせていくための枠組みが、やはり現状では必ずしも十分ではないということなのだと思っております。
 例えば、繰り延べ税金資産は、その意味では一つの事例でありまして、調整項目であるその繰り延べ税金資産という項目が非常に大きくなっていて、これは会計上はもちろん大変有効であるけれども、市場からは違った目で見る人もいる、そういう際にそのルールをどのようにしていくのか。しかしながら、その繰り延べ税金資産に関して、新たに上限を一律何%と決めてやったらどうだという議論も確かに当時ございましたが、そのときは、委員も御承知のように、これはマスコミも財界も、非常に極端なルール変更に関しては非常に疑問を呈する声が大きかった。
 そうした事情を受けて、このルールをしっかりと我々の社会全体で受けとめて見ていきましょうというのが、金融審議会に各方面の専門家を集めてこの繰り延べ税金資産のあり方を今議論していただいている趣旨でございます。
 さらには、我々としては、枠組みを新たに考えながら、それを粛々と実行していくということをやらなければいけない。実は、今回、預保法の百二条を適用するということに至ったわけでありますが、御承知のように、危機が生じている、ないしは危機が起こるおそれがあるという場合にのみ、今の枠組みでは公的資金の注入が可能になっております。果たしてこれだけでよいのか、それ以外の場合にも公的資金の新たな枠組みは必要がないのかどうか、これも含めて、これはまた別のワーキンググループで今議論をしていただいております。この結論は来月にも出ようかと思っておりますが、我々としては、金融再生プログラムの中でそういった検討すべき項目は一応すべて書き切っておりまして、それを実行に移すステップを今踏んでいるつもりでございます。
長妻分科員 今の大臣の発言、私はやはりおかしいと思うんですね。マスコミも財界も反対したから、だからできなかったような、そういうニュアンスが少しでも金融担当の最高責任者にあるということは、これはもう絶対おかしいわけでありまして、それは別に、マスコミが反対しようが財界が反対しようが、やるべきだと思ったらそれはやらないと、金融当局の責任者としての仕事を全うできません。
 冒頭の質問、最後にまた戻りますけれども、これはぜひ大臣の責任、金融当局の最高責任者として、今回のケース、何にも責任がないんですかね。何にも責任がないというとまた繰り返す、こういう緊張感のないような行政が続くと思うんですが、ぜひ大臣御自身の責任について、せめてもうちょっと前向きな責任論をお話しをいただきたいと思います。
竹中国務大臣 金融システムを安定化させる、構造改革を支えるためのより強固な金融システムをつくっていく、具体的には、不良債権問題を平成十七年の三月期までに終結させる、そのために金融再生プログラムはつくられております。この金融再生プログラムを着実に実行していく、それに合わせて、必要な枠組みは枠組みとして、ルールはルールとしてまたつくっていく、それを行うことが私の責任であると思っております。
長妻分科員 何か自然現象のようなお話がありましたけれども、ぜひ真剣に取り組んでいただきたいと思います。
 ありがとうございました。
持永主査 これにて長妻昭君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして内閣府所管中金融庁についての質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
持永主査 これより内閣府所管中内閣本府及び沖縄振興開発金融公庫について審査を行います。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。春名直章君。
春名分科員 日本共産党の春名直章でございます。
 鴻池大臣を初め関係省庁の皆さんに、東南海・南海地震対策について伺いたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 南海トラフ沿いでの巨大地震の発生は、トルコ北部のアナトリア断層で起きる地震と並んで、世界でただ二つ、長期予測可能な地震として、世界の研究者から注目されてまいりました。約百年から百五十年間の間隔で繰り返し地震が発生している、こういう歴史性と、これまでの観測研究によって、南海地震の場合でいきますと、御承知のとおり、三十年以内に起こる確率が約四〇%であるということが予測されました。
 中央防災会議の東南海・南海地震に関する専門調査会は、東南海と南海地震が同時に発生する、東海地震の同時発生もあり得るということ、そして、地震の規模、マグニチュードは過去最大規模の八・六、近年の我が国で最大の被害、広域にわたる被害、巨大な津波による被害を予測しております。強い揺れで建物が倒壊したところへ強力な津波が繰り返し来襲して、死者最大で一万七千人、建物の全倒壊最大六十二万棟、経済被害額も最大約五十六兆円という未曾有の被害が想定されているという事態であります。
 そこで、最も被害が大きい県の一つになるであろう高知県に私もおりまして、高知県の要望も含めて、東南海・南海地震対策特別措置法がこのほど施行されるということになりましたので、その具体化、実践という角度から、きょうは三つの問題にのみ絞って御質問をさせていただきたいと思います。
 第一は、観測体制の強化の問題についてです。
 大きな地震の揺れを伝えるS波ですけれども、それは百キロメートルを二十秒で到達するというふうに言われています。震央での破壊開始をキャッチできれば、実際に私たちが住んでいる地域で大きな揺れが始まるまでに数十秒の余裕があるということになります。その間に、送電とかガス供給の停止とか、運行中の列車の停止とか徐行、緊急避難など必要な措置をとることができますと、被害の程度が大きく軽減されることになることは疑いありません。
 既にそのための観測システムが設置され始めているとお聞きしておりますが、どういうもので、どういう運用が今図られようとしているのか、お答えいただきたいと思います。
平木政府参考人 お答えします。
 気象庁では、我が国及びその周辺で地震が発生した場合、全国的な地震観測網や震度計のデータを即時に収集し、解析を行い、地震発生後二分程度で地震に関する速報を発表するなど、迅速かつ的確な防災情報の発表に努めています。
 先生御指摘のとおり、さらに被害の一層の軽減を図りますため、東海、東南海、南海地域を中心に地震計を八十カ所に新たに設置いたしまして、これにより、地震発生時に直ちに地震波をとらえまして、被害をもたらす主要動が到達する前にその予想される震度、到達時刻等の情報を提供する体制の整備に努めているところでございます。
春名分科員 今おっしゃった主要動が到達する前に検知して災害に備える、この十秒の差、五秒の差、大変大きい違いがあるというふうに思うんですね。やはり、その揺れ、その破壊が始まったということを検知し、そこをいかに早く県庁や公的な機関に伝えて一人一人の住民に徹底できるかということは、私、本当に、未曾有の大災害になるであろうと言われている災害を大きく防いでいく力になるということは、今おっしゃったとおりだと思うんですね。
 そこで、私も自分の高知県の職員などからもお話を聞いてみますと、こういうことはできないかという御相談を受けたわけです。要するに、検知計をさらに南海トラフの近くまで持っていくということはできないか。地震発生の兆しを察知し、その情報を、例えば衛星で飛ばす、そして衛星に飛ばすことによって県庁などに伝える。そういう観測体制を今後、研究する余地があるんじゃないか。
 そうしますと、地震発生の兆しから瞬時で、今の感知計でいえば、大体三秒から五秒で県庁などに情報が伝わるんですか、長くて五秒ぐらいですかね。そういうことになっていると思うんですけれども、それをもっと早く、情報を衛星に飛ばして県庁などに伝えていくという観測体制を検討していくことが私は大事じゃないかなというふうに思うんです。そういう兆しから瞬時に情報が伝われば、被害をまさに大幅に抑えて、人命を守る上で大きな役割を果たすことができると思います。
 さらに、もう一度重ねてお聞きしますが、今の体制、研究を、今言ったような方向で一層充実させていくことでぜひ御努力をいただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。
平木政府参考人 お答えします。
 今先生御指摘のとおり、震度、到達時刻などを瞬時に提供するという体制に努めていることは、先ほど御説明いたしました。その中で、衛星の利用なども想定して調査研究を進めているところでございます。
春名分科員 先ほど私は、地震計に到達する秒数を三秒から五秒と言いましたが、私の勘違いで、それは約二十秒ぐらいかかるということで、その二十秒をもっと縮めるという意味で、今申し上げたのです。
 今そういう方向、お金も要りますのでそう簡単なことではないというふうには思いますけれども、予知まではなかなかできないと、しかし、起こった兆しが瞬時にわかって、体制をしっかりとるということがこの研究によってできれば、大変大きな威力を発揮するんじゃないかと思うんですね。大臣にもその点ぜひ、御見解といいますか決意のほどを一言伺っておきたいと思います。
鴻池国務大臣 ただいま議員の御指摘と申しますか防災に対するお考えについては、まさにそのとおりであろうと思いますし、今後もその方向にできるだけ近づくように努力をしたいと思っております。
春名分科員 続いて、第二番目に、公共施設と住宅の耐震化問題についてなんです。
 これは、鴻池大臣にも災害対策特別委員会などでいろいろな委員の人が御質問もされておりますし、今、全国的にも大きな課題であるというふうに思いますので、私の方からも、その上に立って、特にということを中心にお話をさせていただきたい。
 東南海、南海地震に関する専門調査会の被害予測が四月十七日に出ておりますが、一九八一年以前の耐震基準で建築された建物を耐震強化して、一九八二年以降の建物と同様の耐震性を持たせることによって、死者の数は現時点で約六千五百人と想定されているものが、約千三百人と五分の一程度に大きく減少することができるであろうという推定が出されていて、耐震強化の推進を大きく強調しています。
 大臣自身ももうよく御認識されているとおり、阪神大震災でも、亡くなられた方の約八割は建物の倒壊等による圧死という、本当にむごい思いをしたわけで、その経験からも耐震強化というのは決定的だと思います。
 カタカタと揺れが来たら、直ちに身を守る態勢をとる。そして、百秒以上続く大きな揺れがおさまったら、次に襲ってくる津波に備えて直ちに逃げるということが基本だと思うんですね。この揺れの最初の段階でけがをしたり、倒壊して閉じ込められたりすると、結局やはり命が脅かされるということになるわけで、いかに速やかに耐震強化を進めるか、知恵を絞るときだと思います。非常に大きな柱だと思います。
 まず第一に、学校の耐震強化の問題についてです。
 文部科学省がこのほど行いました公立小中学校の耐震改修状況調査によりますと、耐震性がないと診断されている建物が学校で四割以上ある。一九八一年以前の建築の施設の耐震診断実施率は約三割。私が住んでおります南海地震の震源域に接する高知県での耐震化率も四割程度。率直に言いまして、全体として非常に深刻なおくれという状況になっていると私は認識をしております。進んでいないのは一体なぜか、どうやって推進を図るのか、まずお聞かせいただきたいと思います。
樋口政府参考人 お答え申し上げます。
 ただいま委員御指摘のとおり、調査の結果、公立小中学校の四三%の建物に耐震上問題ありと推定されるわけでございます。
 公立学校施設につきましては、御案内のとおり、児童生徒が一日の大半を過ごす生活の場でございますし、また、非常災害時におきます地域住民の応急避難場所としての役割を果たしているわけで、その耐震化というものは早急に実施されるべきものである、こういう認識でおります。
 平成十四年、この調査をさせていただきました際に、都道府県の教育委員会に、公立学校施設の耐震化が進まない状況につきまして聴取をさせていただきましたところ、最大の理由は、なかなか財政上の課題があるということで、地方公共団体の財政状況の悪化が計画的な整備の繰り延べを引き起こしているとのことでございました。
 文部科学省といたしましては、これまでも公立学校施設の耐震化に積極的に取り組んできたところでございます。平成十四年度の補正予算におきまして、五百十五億円を計上させていただきましたし、また、平成十五年度の当初予算におきましても、対前年度比で百五十一億円増の一千百四十九億円を計上させていただいているところでございます。
 今後とも、市町村の事業計画に支障が生じないよう、必要な予算を確保するよう努めさせていただきますし、積極的に公立学校施設の耐震化を支援してまいりたいと考えているところでございます。
春名分科員 そこで、二〇三〇年までに、南海でいえば大体四〇%、東南海でいえば五〇%という最大級の地震が想定されているわけですので、むやみに慌ててやれということは言いませんけれども、例えば、二十年の計画で耐震化率を確実に一〇〇%にする、そういう年次計画を確実に政府として策定をする。待ったなしだと思いますので、今お話が出たように、県も市町村もお金の問題でなかなか頭を悩ませているということはよくわかりますが、同時に、命にはかえられませんので、その点では、期限が大体ここまでというのが見えているわけですから、そういう予測が立っているわけですので、二十年計画で耐震化率を一〇〇%にする、こういうような年次計画を定めて耐震化を進めていくという決断が必要なんじゃないかと思うんですね。
 これは文部科学省、それから担当大臣からも御決意をお聞かせいただければと思いますが、どうでしょうか。
樋口政府参考人 私どもといたしましては、児童生徒の安全確保のための校舎の耐震補強の整備ということが優先的な課題だと思っております。これにつきまして、私ども、危険度の高い建物から優先的に整備を進めてまいりたいと思っているわけでございまして、市町村等の要望も十分勘案しながら、必要な予算の確保というものに今後とも意を用いてまいりたいと考えているところでございます。
鴻池国務大臣 二十年計画というのはないようであります。大変大事な発想だと思います。ただいまのところ五カ年計画というのを取りまとめて、それで進捗状況を加速化するようにいたしておる、こういうところでございます。
春名分科員 それで、二点、もっと具体的な提案をさせていただきたいと思うんです。
 一つは、小中学校の校舎については、耐震改修に取り組んだ場合に、補助率のかさ上げをしまして、二分の一に引き上げるというふうにしているわけです。しかし、同じ敷地の中にある体育館は三分の一のままなわけです。もちろん、校舎で勉強する時間が長いわけですが、体育館といいますのは避難の場所にもなるわけであります。むしろ、その点でいいますと、私は、至急に、このかさ上げ率を三分の一から二分の一へ、校舎と同様に引き上げていくということは、政府として、ぜひやる必要があるんじゃないかと考えますので、この点、御提案申し上げたいと思いますが、いかがでしょうか。
樋口政府参考人 今、先生御案内のとおり、地震防災対策の特別措置法に基づきます地震防災緊急事業五カ年計画の場合には、計上された校舎の耐震補強につきましては、補助率のかさ上げ措置、三分の一を二分の一補助にかさ上げ措置をすることが講じられているわけでございます。
 これは、学校の場合には校舎に適用されるわけでございます。委員御指摘のとおり、体育館については補助率のかさ上げはないわけでございますが、私ども、先ほど申し上げましたとおり、児童生徒の安全確保ということをまず第一義的に、優先的な課題として耐震補強の整備のときに取り組んでまいりたい、課題意識として持っているわけでございまして、こういった優先的な課題をまず緊急に進めてまいりたいということで、現段階では、体育館につきましてはかさ上げ措置は講じていないわけでございますが、全体の中で、まず緊急度の高いものから優先的に取り組んでまいりたいということでございますので、御理解を賜りたいと思います。
春名分科員 命と安全ということでいいますと、同じ学校の敷地の中に体育館もあるわけですよ。小学校、中学校の生徒も使っているわけですね。生徒が使うために体育館があって、しかも、緊急時には避難場所になるわけですね。
 その意味では、学校の校舎、教室と同じ重さで整備をするという緊急性があると私は思うんですよ。そういうことを、差をつけないでといいますか、校舎の方が緊急なので教室の方は先にやるという発想らしいですけれども、私は、それはちょっと間違っているんじゃないか、同じじゃないかなと思うんですね。ぜひ検討していただきたいというふうに思うんですよ。
 もう一つ、交付税措置と地方債の問題なんですけれども、今おっしゃったように、地方公共団体の努力だけでは、とてもすべてを実施することはなかなか難しいわけですね。例えば、耐震診断をやる際には、その耐震診断の結果に基づいて、やった量や中身に基づいて、それを特別交付税で措置をするとか、あるいは国庫補助事業では、例えば公立学校の大規模改造事業などがありますけれども、起債の手当てはもちろんございますけれども、元利償還については何らの財政措置がございません。ここに財政措置があれば、私は、事業がある程度進むことができると思います。
 つまり、防災特例債とでもいいましょうか、そういうふうなものを含めて、ぜひ地方自治体が、やはり三十年先というリミットを見据えて、しっかりした耐震の取り組みが進んでいくような対応、具体的に言いました、耐震診断を特別交付税で措置すること、国庫補助事業の中で、例えば公立学校の大規模改造事業について、起債の手当てと同時に、元利償還についての手当ても含めた検討をしていただく、そういう対応が私は必要ではないかと考えますので、ぜひとも御検討いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
林政府参考人 お答えを申し上げます。
 私どもも、小中学校の耐震診断あるいは耐震補強工事は大変重要なことであるというふうに認識をいたしております。ただ、耐震診断につきましては、私ども、阪神・淡路大震災の経験にかんがみまして、平成八年度から三年間で、集中的に各小中学校の耐震診断ができるよう、必要な交付税措置を講じたことがございます。ただ、結果、なかなかそれは進んでいないということで、先ほど御指摘があったわけであります。
 なお、この診断につきましては、現在も御指摘のような地方交付税による措置の御要望があることは承知しておりますが、国庫補助との絡みもあるようでございまして、最終的には、地方団体がいろいろ判断して、必要度の高いものからおやりになるものではないかと思っております。
 なお、この耐震診断は、私ども、大変重要で、地方団体にもお勧めしているわけでありますが、お聞きをいたしてみますと、診断費というのは十万とか二十万とか、それぐらいの経費でできるようにも聞いております。これについて、特別の制度的な措置が必要かどうかにつきましては、またいろいろ御意見も伺ってまいりたいと思っております。
 なお、校舎の補強事業につきましては、御指摘のように、地震防災対策特別措置法で補助率がかさ上げされました。これに伴いまして、私ども、地方負担分につきまして、地方債の充当は認めることといたしているところでありますが、御指摘の元利償還金についての交付税措置については、現在のところ講ずることといたしておりません。これは、御案内のように、交付税措置につきましては、できるだけ今後簡素化を進める必要がある、あるいは、事業選択のインセンティブにならないように事業費補正等のウエートを低めていく必要がある、こういう指摘もあることを踏まえてのものでございまして、事業費補正の拡充につきましては、私どもとしては、慎重に対応することといたしているところを御理解いただきたいと思います。
春名分科員 大臣に、この点を最後、一言伺っておきたいんですけれども、地方債と元利償還について、例えば、今おっしゃいましたけれども、インセンティブを与えたらまずいからということとか、のべつ幕なしになるとまずいという話が出たんですけれども、例えば、合併特例債は、九〇%以上が充当率で、七五%を認める超有利な地方債を発行して、インセンティブを発揮しているわけですね、そうでしょう。
 三十年たったら確実に大変な被害が起こるということが想定されている現段階なわけですから、そしてその耐震化が進まない理由もある程度明確になってきているんですから、やはり、その点でいいますと、私は、安全と命を、特に子供たちの安全と命を守るという点では待ったなしであり、できるあらゆる手だてを、こういうところにこそ力を注ぐことが大事じゃないかなというふうに思うんですよ。
 そこで、大臣、体育館へのかさ上げの、引き上げの問題だとか、地方債や元利償還への支援だとか、特別交付税措置の問題だとか、今ある制度の延長ではなくて、さらにそこを推進できる仕掛けもぜひ検討するという必要性を私は心から訴えたいと思うので、大臣の御決意をお聞かせいただきたいと思います。
鴻池国務大臣 私も、あの阪神・淡路大震災、その日、そのときに体験をいたしました。その後の体験もございます。それゆえに、実際にみずからの体験でない方と、また私どものような経験をした者とには、やはり差というものがありますし、また温度差もどんどん広がっていっているということも事実でございます。
 ただ、防災大臣として、それぞれの役所にかかわる予算措置あるいは財政措置等につきましては、私、直接かかわることは避けなければならないと思っておりますけれども、委員の御提案あるいはただいまの御発言の重要性というものは十分理解をさせていただきながら、当然のことながら、子供たちの身体、生命を守る、そういう趣旨、観点から、防災大臣といたしましても、種々の場所で発言をしていきたい、このように思っております。
春名分科員 それでは、最後の問題で、津波対策についてお聞かせいただきたいと思います。
 特別措置法も津波対策に力点を置いているのが特徴だと認識しております。高知県の場合は、土佐湾沿岸部では大体十メートルの津波が押し寄せて、須崎市というところがありますが、そこでは市街地全部が波に襲われる、これが地震発生後二十分後から約六時間も続くという想定がされています。高台に遅くとも二十分以内に避難しなければ生きることができない、そのための避難路の整備などが非常に重要になっているということだと思います。
 高知大学の地震の権威である岡村教授にお話を聞きますと、地域の高齢化も進んでいるから、逃げられるのはせいぜい五百メートルぐらいだから、その範囲で三十メートル以上の高さの頑強な施設をつくっていく、またそれを設置することが重要だというようなことを、私も学ばされているところであります。
 この点を引き続き努力していただきたいと同時に、私、具体的な話なんですが、河川と海岸施設の一体的な整備による開口部の津波浸水対策について伺いたいと思います。
 海岸保全施設の水門は、総合的な津波・高潮災害対策の強化事業において、耐震化対策や開閉自動化による防災機能を高める施設整備を行うメニュー、その施設を効率的、迅速に管理制御するために、水門などの遠隔操作化、そして海象データの監視を一元的に行う津波・高潮防災ステーション、こういう整備メニューが海岸の保全施設の水門にはあるわけです。ところが、河川管理施設の水門などは、残念ながらこれの対象外になっているわけです。そうすると、どうなるでしょうか。
 例えば、高知市の場合でいえば、堀川、竹島川、十市川、西谷川、こういう川は海岸施設として一体化し、津波・高潮防災ステーションということで一元化して管理し、自動開閉したりするという仕掛けができる。ところが、住宅が密集している市内中央部を流れ、水量も多い江ノ口川というところでは、河川管理水門にここがなっていて、一体化されていないということになっている。
 予想される地盤沈下に加えて、増水した港内の水がこの江ノ口川をさかのぼってはんらんすれば、その一帯が大きな被害を受けることになります。恐らく、こうした事例は高知市だけではなく、幾つかの都市でも同じことが想定されているのではないかと考えます。したがって、河川管理の水門もぜひこのシステムの対象に入れるような改善が必要ではないかと考えますが、いかがでしょうか。
塩島政府参考人 ただいま江ノ口川河口における水門の遠隔操作化等についてお尋ねがございました。
 高知港海岸におきましては、南海地震による津波や台風による高潮等に対して迅速な操作を行えるよう、水門等の遠隔操作化及び集中管理化を図る整備に平成十四年度より着手しているというふうに聞いております。一方、国分川水系江ノ口川は、高知県知事の管理する二級河川でありまして、その河口には、高潮対策といたしまして、昭和四十七年に設置された江ノ口川水門がございます。これは津波対策としても機能し得るものと認識しております。
 しかしながら、同水門については、遠隔操作化がなされていないということから、高知港海岸における水門等の遠隔操作化及び集中管理化の取り組みに合わせた対応につきまして、高知県において検討がなされているというふうに聞いております。江ノ口川水門の遠隔操作化等につきましては、現在までに高知県から具体的な内容を伺っておりませんが、具体的な要望があれば検討をしていくこととなるものと考えております。
春名分科員 私は、一つの例を挙げたことですので、他の自治体からも同じような問題は当然、検討されることになると思うんですね。せっかく遠隔操作ができて自動開閉ができて、津波対策でしっかりとその湾を確保することができるのに、水系が違うために、管理が違うためにその部分だけはぽっかり口をあいているということになりますと、何のための操作かということになりますので、ぜひこのことを一つの例に、全国でも実態がどうなっているのかも見ていただいて、一元的な管理ができるような方向でぜひ検討をいただきたいということをお願いしておきたいと思うんです。
 もう一点は、堤防や港湾などの海岸施設の耐震調査制度を創設することの重要性です。堤防とか港湾などの公共の構造物の耐震強度が、残念ながら不明なものが多いのです。そのために、避難対策の樹立が困難になっている面もあります。そして、海岸施設の地震時における機能の喪失が懸念をされています。
 したがって、耐震評価などの調査費への補助制度ですね、具体的には、ソフト対策を含む事業の実施に向けた耐震診断とか液状化の問題、津波進入のシミュレーションの問題、こういうものの調査を、そういう調査費への補助制度を国としてもぜひ創設をして、海岸施設の耐震調査をしっかりやって津波対策にも備えるということが必要になっていると考えます。この点、どうでしょうか。
村田政府参考人 港湾施設やら海岸保全施設の耐震化、液状化についてお尋ねをちょうだいいたしました。
 まず最初に、港湾におきます大規模地震対策といたしましては、阪神・淡路大震災の経験に学びまして、海からのアクセスが大変重要である。避難する住民の方々やら緊急物資の搬送という観点から、海を使って、港湾を経由して物を搬入し、人々を搬送していくというのが大変重要であるということは、私ども、経験したところでございます。また、あわせて、阪神・淡路大震災のときに、神戸港などの国際海上コンテナターミナルが大打撃を受けまして、その結果として、経済に大変な影響を及ぼしたということもございますので、これら二つの観点から、私どもは全国的に耐震強化岸壁を整備している最中でございます。
 また、同時に、港という場所は、海上から直接アクセスできることもありますし、また、広い用地もございますので、震災時の住民の方々の避難やら被災地の復旧とか復興、そのために必要な資材の供給拠点といたしまして、大変効果的な場所であろうかと思います。そういう意味で、臨海部の防災拠点を整備いたしまして、防災機能の向上を今図ろうとしているところでございます。
 また、耐震強化岸壁などを整備するだけではなくて、やはり背後地域との連絡というのをきちんと強化する必要がございますので、耐震強化岸壁と背後地域を連結する道路やら橋梁等につきまして耐震点検を行っておりますし、順次補強工事を進めているものでございます。
 堤防等の海岸保全施設についても、先生より御指摘がございました。これにつきましても、耐震点検を行いまして、順次改良等を進めておりますが、昨今、東海地震の防災対策強化地域が拡大されましたし、また、先生御指摘のとおり、東南海・南海地震の新たな被害想定が公表されました。そんなことを、新しい知見を踏まえまして、さらなる耐震性などの検討が重要であろうかというふうに認識しているところでございます。
 ただ、耐震等の点検につきましては、やはり個々の施設についての耐震点検、港湾施設につきましても、海岸保全施設につきましても、個々の施設につきましては、やはりこれは通常の維持管理、海岸管理者なり港湾管理者が行っていただいておる維持管理の中で、その一環として行っていただくべきものではなかろうかと私どもとしては考えております。
 ただ、国といたしましても、全国的観点あるいは共通的観点から、支援できるところは支援しなければならないと思っているわけでございます。そのために、例えば海岸関係省庁が一緒になりまして、平成七年に、阪神・淡路大震災の経験を踏まえまして、点検のための指針と申しますか、海岸保全施設耐震点検マニュアル、こう言っておりますけれども、これを海岸関係省庁共同でつくりまして、これを各海岸管理者にお示し申し上げたところでございます。
 しかしながら、先ほど先生からも御指摘がありましたように、新しい知見といいますか、東南海・南海大震災等々の被害想定等々もございますので、本年四月十七日にこのマニュアルを、新しい強震度、強い震度の分布やら津波の高さやら、あるいは被害想定等々を踏まえまして、これらの新たな情勢に基づいて、知見に基づきまして、点検を今お願いしているところでございます。
 こういうふうに、国と、私どもと、それぞれ海岸管理者、港湾管理者とも連携をしながら、これからも進めてまいりたいと思っております。どうぞ御理解を賜れればありがたいと思います。
春名分科員 済みません、終わりましたので。
 結局、最後の耐震評価などの調査費への補助制度ということについては答えずに長々としゃべられるんで、困るんですけれども、私は、幾つか新しい提案も含めて、措置法ができたわけですから、大臣、それが本当に実を持って成果が上がっていくような方向でぜひ御努力いただきたいと思うんです。そのことを最後に申し上げまして、私の質問といたします。
 どうもありがとうございました。
持永主査 これにて春名直章君の質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
持永主査 これより環境省所管について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。鈴木環境大臣。
鈴木国務大臣 環境省の平成十三年度歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 まず、平成十三年度の当初予算額は二千七百六十九億六千七百九万円余でありましたが、これに予算補正追加額四百六億四千四百八十七万円余、予算補正修正減少額二十三億五千四百二十万円余、予算移しかえ増加額二百二十一億二千十四万円余、予算移しかえ減少額二十九億八千三百九十二万円余、前年度からの繰越額千二百六十六億四千七百八十五万円余を増減いたしますと、平成十三年度歳出予算現額は四千六百十億四千百八十四万円余となります。この予算現額に対し、支出済み歳出額四千百四十三億六千九十六万円余、翌年度への繰越額四百十八億二千六十四万円余、不用額四十八億六千二十三万円余となっております。
 以上、簡単ではありますが、平成十三年度の決算の概要を御説明申し上げました。
 よろしく御審議のほどお願いいたします。
持永主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院増田第二局長。
増田会計検査院当局者 平成十三年度環境省の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
持永主査 この際、お諮りいたします。
 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
持永主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
持永主査 以上をもちまして環境省所管についての説明は終わりました。
    ―――――――――――――
持永主査 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。林省之介君。
林(省)分科員 どうも、自由民主党の林省之介でございます。
 きょうは、お時間をいただきまして、特に我々の身近なところで今大変に問題になっていることについて、ぜひ大臣にお話を聞いていただきたいと思いまして、質問に立たせていただきました。
 委員長、ちょっと資料としての写真を見ていただきたいのでございますが、よろしゅうございますでしょうか。
 大臣にお尋ねいたしますが、今そこに見ていただいております写真でございますが、黒い斑点がたくさんあるだろうと思うんですけれども、それは大臣、何であるかおわかりでございましょうか。
鈴木国務大臣 恐らくこれは、かんだガムを紙にくるまずにそのまま捨てたのが道にこびりついてしまった、その取った跡ではないかと想像いたします。
林(省)分科員 さすがに大臣、よく注意をして見ていただいているなと思って感謝をいたします。大概の方にこれを聞きますと、さあ、何だろうなとおっしゃるんです。少しそういうことを注意して見ていただけないと本当にわからないような、道路等に黒い斑点がたくさん残っているわけであります。冬場はまだいいんですけれども、これからだんだんと気温が上がってまいりますと、これが随分とべちゃついて、そして、はっきり申し上げて歩行の妨げになる。いろいろな問題を、今から少し御説明をいたしますけれども、引き起こすわけであります。
 私も同僚議員とともに産業廃棄物の不法投棄の、これをしっかりと見届けていきましょうという仲間でグループをつくりまして、いろいろと勉強会もいたしております。あるいは千葉県の方には大変ひどい不法投棄の現場を視察に参ったこともございます。
 そんな中で、もう少し身近な問題でこんなものもあるんですけれども、一緒に考えてくださいよということで、では、そのことについては君が少し中心的になっていろいろと考えてください、勉強会もやりましょうということで、いろいろとこれまでにやってきたわけでございます。
 今、我々の身近なところで生活環境を、破壊とは言いませんけれども、随分といろいろ問題を引き起こしているのが、一つは今、大臣に見届けていただきましたガムであり、あるいはたばこのポイ捨てであり、場合によったら飲料水の缶だとか瓶、缶はまだましなんですけれども、瓶は割れたりするわけですから、割れてその瓶の破片でけがをする、こういう事件もよく起こっているんです。よく起こっているんですが、実際に、では、そういう被害に遭った方がどう対応なさるかというと、どちらかというと、まあ格好の悪い話だと。
 私も、実は格好の悪い話を実際に経験しておりまして、これは自民党本部でございます。本部の会合に出ておりまして、自分の靴の裏にガムがひっついているのを知らなかったわけであります。私は自分の、こういうところのいすから立ち上がって動くときの一連の決まった動作がありまして、右足を軸にしてくりっと回転して出ていくというような動き方をするものですから、いつものようにその動作をしようとしたら、たまたまガムを踏んづけていて、長くそこにじっとおったものですから、いつもどおりに回ろうとしたらこれが回らなくて、右足を軸にして体をひねろうとしたらゴキッといってひざを痛めて、今もう一年半になりますけれども、いまだにぐあいがよくない。だから、こんなことは余り、もう不細工な話で、人様には案外言わぬのです。
 例えばガムで申しますと、私が目撃したものでありますけれども、たまたま私の前を歩いておられた、御高齢で、恐らくもう八十前後だろうと思われる着物を着ていらっしゃる御婦人が、突然ばたんとこけられたわけです。そして、手をついたものですから、どうやら手が恐らく骨折、私がばっと見たときには骨折しているなと思いましたけれども、痛いとおっしゃるものですから、とにかく私も急いでいたものですから、すぐに救急車を呼んであげてくださいということで、若い人にちょっと見ておいてあげてくださいと、僕、どうしても急いで、時間をかけて行かないといかぬからと言ってお願いをして、どこのどなたなのかわからないままに終わったわけですけれども、そういう事件を直接目撃したこともあります。
 あるいは、車いすの方が、これは力が強ければいいんでしょうけれども、力が弱く車いすを動かしておられると、片一方の車輪にガムがぐちゃっとひっつきますと、そこが動かずに反対側だけが動いてしまうというようなことで、ぐりっと回転するような状況になって物にぶつかるようなことも見たことがございます。あるいは、幼い子供たちなども、やはり足が上がらなくてつんのめったり、こけたりというふうなガムの被害というのはあるわけです。
 あるいは電車の中なんかに、ここまで来ると、もう本当に不愉快きわまりない、悪質ないたずらといえばいいんでしょうか、愉快犯になるんでしょうけれども、シートなどにガムのかんだものをひっつけている、それが衣服に付着して取るのに大変苦労する、こういう、被害といった方がいいと思いますが、こういうものも実は多発をしているんですけれども、何様、どこへどう言っていいかわからないというような状況で、ほとんど被害者が泣き寝入りといったらいいような状況があるだろうと思います。
 それから、たばこの件でございますけれども、ガムはまだ、私もいろいろと調べてみました。これが長らく放置される、放置された結果、炎天下にさらされ、風雨にさらされ、例えば大きな雨でも降ったようなときに、そこから有害物質が河川に流れ込むようなことがあるのかどうなのかということで調べてみましたけれども、ガムについては、国立医薬品食品衛生研究所の報告でございますが、これはあくまでも基本的にいわゆる生ゴムが中心であって、着色料にいろいろ問題があったということは過去にあるけれども、ここから有害物質が出るというふうなことは考えられませんという御報告でございました。
 これは、たばこになるとそうはいかぬだろうと思うんですね。たばこの場合には、これも調べてみますと、要するに、私なんかもたばこをよく吸うわけですが、仮にこれを水にでも溶いて飲んだとしますと、大人の場合で、報告によりますと、大体二本から四本、幼児の場合には〇・五本から一本で致死量に至る、ニコチンが体内に入って急性のニコチン中毒になって死に至るというその致死量が、調べていただきましたところが今申し上げたような、大人で二本から四本、幼児で〇・五本から一本の範囲である。
 そういうものが今度はどうなるかといいますと、私もたまたまこのガムの跡をずっと見て歩いているものですから、交差点などの、どう言えばいいんですかね、道路の横にある排水溝がございますよね、ああいうところに立ちどまって吸っていて、ふっと動くときにその排水溝にほうり込んでいかれるわけです。だから、たくさん人が渡るような交差点の排水溝を見ますと、山になっています、山になってある。これが大雨が降ったときなんかに恐らく全部河川に流入するはずでございます。だから、これだけのものがどっとある特定の河川に入っていくわけですから、今申し上げたように、大人でも四本ぐらいで致死量に至るようなものが流れ込んだときの害はどうなるんでしょうということで、これまたいろいろと調べていただきました。ところが、何さま河川は水の量も多いということで、これが人体に直接影響を及ぼすような結果は出ておりません、こういう御報告であるわけです。
 いずれにしても、たばこはざっと年間十三億五千万本ぐらいつくられて、それが全部吸われているのかどうかはわかりませんが、十三億五千万本つくっていますよという御報告も聞いております。ガムに至っては、大臣、年間四万四千トンつくっております。この四万四千トンが全部吐き捨てられているとは思いませんけれども、何しろ私が今一番問題にしたいのは、たまたま私の選挙区の中に、これはどうやら私の調べた範囲では初めてのNPO法人だろうと思うんですけれども、環境美化衛生事業団というようなことでNPO法人を立ち上げておられる方がおられまして、この方々が主としてガムを取っておられるものですから、ついついその方々の御相談を受ける中で、こんなことに注意を持つようになったわけでございます。
 モラルの問題というのは、私は一番最初に申し上げたんです。製造者責任を問う前に、やはりこれは消費者のモラルの問題が一番でしょう、そういうことについてのキャンペーンはどうなさっているんですかと言ったら、随分やりましたとおっしゃるんですね。あるいは、チューインガム協会、ガム協会などにも随分といろいろな話をしておられます。何度も折衝しておられますが、結論としては、しょせん、それはもう製造者責任じゃありません、消費者側の問題ですよということで、ほとんどまともに対応していただいていない、こういう状況でございます。
 ちょっとモラルの点で、私も、いろいろ調べながらも、わっと思うようなことがあったんですが、これまた別に大臣をどうこうというわけじゃございませんが、大臣、この永田町周辺で最もガムのポイ捨てのひどいところといいますか、目立つところはどこだと思われますか。別になぞかけをするわけじゃないんですが、参考までにちょっとお考えいただけませんか。
鈴木国務大臣 全くわかりませんが、想像するに、いろいろ待ち合わせをするような、立ちどまっていて人と待ち合わせをするような場所ではないかと思います。ちょっとどこだかはよく想像つきません。
林(省)分科員 かなりいい線をついていらっしゃると思うんですが、私もこれは調べてびっくりしたんですけれども、我々が会議をいたします本会議場がございますね、あの上に、あれを何と言えばいいんですか、参観する場所がございます、そこなんです。あの赤いじゅうたんのところに点々とガムの吐き捨ての跡が残っています。私もたまたま人様をお連れして、地元の方をお連れして、ここで皆さん見るんですよなんて御案内したときに、あれっと思って、これはガムだなという話になりました。
 それで、実はこの間、本会議が終わって、たまたま掃除をしていらっしゃる方が二人おられたものですから、まことに申しわけないけれども、ちょっと頼むわ、こっちからこっちを分けて、大体どれぐらい数があるか探してみてよということで、見ていただきました。ガムを吐いた跡があの参観の場所に四十七、八カ所ある。ここまで来ると、まさにモラルもここにきわまれりというような感じが私はいたしたわけで、本当に愕然としたわけでありますけれども、そういう状況が今現実なんです。
 そこで、きょうは、ガム、たばこ、もう一つは缶、瓶でございますけれども、缶、瓶もそうなんですね、これは小さい子供が、ジュースの瓶、缶などは飲み物だというのは知っていますから、お母さんの目を盗んでその辺をうろうろしているときに、本当に幼い子供たちがそこらにほってあるのをあちこちにつけたりするというような、これも被害といっていいと思いますが、こういうものもございます。
 きょうの結論として私がお尋ねしたいのは、そういう清掃事業団のいろいろな団体との交渉の中での結論というのは、団体に申し上げてももう無理だというのが結論なんですね。もっとひどい対応をされたということで、大変憤って私のところへ来られるわけですけれども、とにかく、ガム協会あたりに聞きましても、いや、我々だって一生懸命撤去作業はしておりますよ、こうおっしゃるわけです。
 では、どの程度に撤去作業をなさったのかちょっと教えてくださいということで、ガム工業会に教えていただきました。そうしたら、撤去作業をしているといいましても、約二年間で全国の二十七カ所、主として東京、そして東京以外のところでは、近くですと、千葉だとか栃木、二年間で千葉は二回ぐらい行っておられます。栃木は一度です。ほとんどその後は東京です。西方面は、広島、そして、どういうわけか、私の選挙区であります大阪の高槻市、ここに清掃事業団があってやいやい言っているものですから、ここには四回来ているわけです。
 そんなものでいっとき取っていただいても、もう明くる日にはまたぺっぺ吐いてあるわけです。その結果が今申し上げたような被害に直結をしている。実際に、そういうことでけがをなさったり、あるいはちょっとした嫌な思いをなさったり、時には衣服にそれがついて本当に困ったりというような思いを多分一番多くかけているのはガムであろうというふうに判断がされるものですから、そこで、我々も、ガムについては、被害的なものは直接ないかもしれないけれども、直接ないじゃなくて、被害はそこそこあるだろうと思うけれども、少なくとも、それが皆さんのところに、表に上がってこない。恐らく、ガム工業会あたりに聞きますと、いや、我々はそんな不平不満は聞いたことはありませんとおっしゃるんですね。こういう団体がやいやいと、もっとひどいことをおっしゃいましたよ、金目的に言ってきているんじゃなかろうかというようなことまでおっしゃる。
 この清掃事業団は、関西一円、毎日のように活動しています。毎日のようにガムを取りに、どこかの駅頭をやっているというぐらいに、ずっと活動記録を見せてもらいましたけれども、一生懸命撤去するんですが、何にしても、もうイタチの追っかけごっこみたいなものですと。取った後から二、三日たてばもうわっという状況になってしまっているというのが現実であります。
 そこで、この団体が、今いろいろと、全国の商店街であるとか消費者団体等を通じて一生懸命やろうとしているのが、環境税を取ってもらったらどうだろうという提案なんです。ガムは大体今一つ百円だと思いますが、ここを一つ百五円ぐらいにして環境税でも取っていただいて、そのお金で撤去作業をしてもらったらどうだろうと。とてもじゃないけれども、一つの団体が、たかだか四、五十人のグループでございますけれども、そんなものがあちこち行って取っていても、もう追いつきやしない。あるいは、ガム工業会が取っている、取っていると言っても、二年間で二十七回の記録をいただいていますけれども、約二十七回、そんなもので、とてもじゃないけれども、追いつくようなものじゃない。そして、この被害が、これから暑くなってまいりますと、ますますまたふえてくるというような状況になるわけでございます。
 大臣、いかがですか、これは何とかそういう方向で考えるということはできぬでしょうか。とりあえずの今の御意見で結構でございますので、お聞かせくださいませんか。
鈴木国務大臣 いわゆるポイ捨てにつきまして、林先生が日ごろ問題意識を大変持たれまして、議員の先生方の中でもそういう勉強会をなさっておられるということに対しまして、敬意を表したいと思うところであります。
 ポイ捨てにつきましては、やはりこれは一義的にはポイ捨てをした人に責任があるということであります。廃棄物処理法上も、例えば、こういうものに対しては、土地または建物を管理したり占有したりする人がその土地や建物の清潔を保つよう努めなければならないということを規定し、一方におきまして、何人も公共の場を汚さないようにしなければならない、こういうふうに決めております。そしてまた、地方自治体によっては、これを防止するための条例等をつくっている自治体もあるということも承知をしているわけでありますが、やはり私は、基本的にはそうしたポイ捨てをする本人の責任、モラルにかかわる問題である、そういうふうに思うわけであります。
 今、林先生の方から、例えば税のようなものを課して、これに対応するようにしたらいいのではないかということでございますが、まず、そのポイ捨てをする人に一義的な問題があるということを考えますと、税のような形で広く負担を求めるということになりますと、これはきちんとしている人にも負担を求めるということになります。それから、ポイ捨てをしても何かそういうような財源というものが確保されて、結局は人の手によってきれいに最終的には清掃される、社会的にそういう方向に進みますと、そうした本来責任を持つべき人の責任というものが極めてあいまいになる、そういうような心配もございます。
 したがいまして、こうしたことについては、そういうことも考えながら、いろいろな面からやはり十分に検討する必要がまだまだあるのではないか、そんなような気もしているところであります。
林(省)分科員 大臣のおっしゃること、よくわかります。
 それで、私も、そのほかに、ガムだとか缶だとか瓶だとかというポイ捨ての条例が各自治体で結構なされておるものですから、これもまさに北は北海道から南は九州、沖縄までということで、全部の条例をわかる限り抜き出してまいりました。相当な数になって、そして罰則規定も、重いところでは罰金十万というような、これは北海道の方の富良野市でございますけれども、十万円以下の罰金だというようなことで条例ができているわけであります。
 条例ができているけれども、やはり問題なのは、条例としてはあるんだけれども、一向にそれが改まっていないといいますか、相も変わらずの状況にあって、そして、条例があるんだから、では、市の方にきちんとした対応をしなさいよということを求めると、いやいや、もうとてもじゃないけれども、市の財政も大変でございまして、そんなにしょっちゅうしょっちゅう、ガム撤去の、あるいは空き缶、たばこのポイ捨ての撤去作業、清掃作業なんてそんなにできませんよという答えが返ってくるらしゅうございますね。
 では、我々NPO法人ではあるけれども、何人かの人間は、やはり少しは交通費ぐらい渡さにゃいかぬのですから、我々の方でやりますから何だったら委託してくださいと言っても、そういう財源はありませんよというふうなことで、大概の市町村で断られる。時には、商店街あたりが、余りひどいものですから、では、いささか撤去費用を出しますから取ってくださいというようなこともあるようでございますね。
 大臣、もう一つ、私、先ほど言い忘れていましたけれども、例えば、今見ていただいた写真の中に黄色くある部分がございますが、これは、点字ブロックと言われるものなんだそうでございます。この点字ブロックの上なんかにも吐いてあるわけですね。これをごりごりごりごり鉄のへらみたいなものでこすり取りますと、点字ブロックに塗ってある塗料が実ははげてしまう。
 この点字ブロックは何のためにあるのかというと、目の不自由な人たちが、単にぼこぼこしているブロックの部分を頼りに、足の底でそれを感じて歩くという役割と、もう一つは、何かこれは特殊な塗料が塗ってあって光を強く反射するらしいんですね。ですから、弱視の方なんかは、その強い光の反射を感じてここを歩けばいいということで、そういう目印の役割も実は果たしているらしゅうございます。
 ところが、ひどいところになると、それがしょっちゅう洗われたりこそげたりするものですから、点字ブロックが本来の点字ブロックの役割を果たさないようなところもたくさん出てきている。特に清掃事業団が一生懸命やっている地域ほどひどい状況になっているらしゅうございます。これもやはり体の不自由な人たちに対してぐあいが悪いからきちんとしてあげてくださいと言うても、行政サイドは、いや、もう金がないものですから、そこまで手が回りません。私の選挙区あたりの駅近くの点字ブロックは、ほとんど点字ブロックの用をなしておりません。そんな状況にまでなっているわけでございます。
 今、大臣からのお言葉で、いろいろとこれから先のこととして研究しなきゃいけない、検討もしなきゃいけないというお話をいただきましたけれども、身近なところで、日々の生活をする中でいろいろな問題を引き起こすのがこういうポイ捨てでございますから、もう一つやはりお願いをしたいのは、いわゆるモラルの教育の問題ですよ、一にかかって教育の問題である、こう私は思っております。
 したがって、教育基本法の改正も含めた、やはり日本人が日本人としての当たり前の心を、公徳心を持つ、公共心を持つ、そういう教育に当然及ぼしていかなきゃいけないのは当たり前なことでございますけれども、現実、日々、それはひどい状況で、ぽんぽんほられているわけですね。
 したがいまして、現状から考えまして、そう簡単に、はい、では税を取りましょうというわけにはやはりいかないとしても、少なくとも、何らかの方法を講じなければいけないような状況にあるのではないか。たまたま私なども、こういうことを一生懸命やり出してから非常に気になるものですから、どこの町へ行きましても、駅前あたりをずっと見て回ります。これは、はっきり申し上げて大都市ほどひどい。単に人口が多いだけじゃありません、大都市ほどひどい。そして、地方といいますか、少しゆったりとしているなという町へ行きますと、もう明らかに少ないんですよ。都市部に圧倒的に多いというのは、恐らくせわしない一日を送る方が多いんでしょうか、これは明らかであります。では、郡部に行って全くないのかというと、そんなことはありません。ありませんけれども、うんと少なくなりますね。
 そして、今度は、同じ近畿エリアは私、主たる駅は全部見てまいりました。駅周辺を全部見てまいりましたけれども、どこかというと、悲しいかな、私、大阪なんですけれども、やはり大阪なんです。大阪、兵庫、京都の順になります、近畿エリアですと。人口も多いというのはありますけれども、特に大阪がひどいということを見ますときに、いやあ、やはりいろいろ問題のある地域であるな、いろいろなところでそういうことを感じることがあるものですから、車なんかでもそうなんですね。車の灰皿を窓から外へほっている、こういう光景もたまには見ます。たまには見ますけれども、圧倒的にこれも大阪なんですね。
 私も、本当に大阪はこれはいかぬなということで、事あるごとにそういうことについての啓蒙をするようには心がけておりますけれども、しょせん一人の人間のできることなんてたかだか知れておりますから、また、環境省のいろいろお出しになるような、環境を大事にしましょうというような政府広報なり、あるいは、環境省からお出しになるいろいろなパンフレット類などに、やはり啓蒙活動的なものももっと込めていただいてもいいのではないかなというふうな思いが強いのでございますけれども、そのあたりはいかがでございましょうか。
鈴木国務大臣 先生のお話を伺って、いろいろ私も考えさせられるところがございました。
 社会の規範というのは、これはもう一から十まで全部法律とか条例で決まっているわけではなくて、世の中の常識とか、あるいは公共心に基づくいろいろ行動とか、そういうもので社会の規範も成り立っているところも多いわけでありまして、そういう意味でいえば、物を捨てて町を汚すというようなことは、まさに道徳心とかそういうものに根差す部分が多いと思うわけであります。
 そういう意味では、こういう問題について、特に生活環境上の保全という意味でございますから、環境省といたしましても、そうしたマナーの向上でありますとか啓発でありますとか、そういうものには当然取り組んでいかなければならないというふうに思っております。
 環境省といたしましても、環境月間というのがございます、それから環境衛生週間というのもございまして、その中では主にごみの減量化などに対する啓蒙活動等を実施しているところでありますけれども、こうした機会も活用いたしまして、ポイ捨てに対する防止の啓蒙活動といいますか、そういうものにも力を入れていきたい、そういうふうに考えております。
林(省)分科員 本当にありがとうございます。情けない話ではございますけれども、現実がそうでございますから、やはり啓蒙運動もぜひ御支援もいただきたいなと。
 そして、今申し上げましたように、これはひいては、清掃事業団の方がおっしゃるのには、いろいろなところで我々は活動しているけれども、先生、ある一定の雇用にもつながっておるんですよというふうなこともおっしゃっていました。特にお体の不自由な人たちなんかも、自分たちのことのように、やはりガムなんかの場合には自分たちがそういう被害を受ける率が一番高いので、我々が一生懸命やらなきゃいけないというようなことで手伝っていただいているようでございます。時には、それが商店街なんかの依頼を受けてやる場合にはいささかの収入があるものですから、先生、ある意味で雇用にもつながっておるんですよというようなことをおっしゃっていました。
 それはそれとしまして、彼らは今、一生懸命署名運動を全国展開でやっておりまして、全国の商店街の連合会などにも、協力をしてくださいということで今署名運動をやっている最中でございます。いろいろな問題があるだろうというのは重々わかりますけれども、また、我々も、同志とともに、同僚議員と一緒にこの問題については引き続き考えてまいろうと思いますが、税的な措置がとれるかどうかは別としましても、何らかの方法をまたぜひお考えいただきたいな、そんなことを要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。きょうは本当にどうもありがとうございました。
持永主査 これにて林省之介君の質疑は終了しました。
 次に、中川正春君。
中川(正)分科員 民主党の中川正春でございます。
 きょうは、NOx・PM法、ディーゼル規制について、これ一点に絞ってお尋ねをしていきたいというふうに思います。
 私は三重県なんですが、その中でも鈴鹿市、四日市市を抱えていまして、今回、新しくこの地域、名古屋を中心にこの規制がかかる。この十月から始まるものですから、だんだんとこの法案の実態というのが地元に浸透してきまして、今あっちこっちで火山のごとく火が噴き上げているんですね。
 基本的には、私たちの一つの時代の流れの中で、CO2はもちろんのことでありますが、NOxやPMについても、本当にひどい地域は地域指定をしながら規制していくというところまで踏み込まないと、だめなんだろうということ。それから、ディーゼルの技術開発に対して、そのことがなかったためにヨーロッパに対しても技術的な開発がおくれた、こんなこともその根底にあるのじゃないかということ。こんなことは大体、大いに反対をしている地元の苦しい運送業者含めて、中小企業の人たちもわかっているんですね。
 今回、しからばなぜきつい、私たちに対する不信感というのが出てきているかというと、その大枠の問題じゃなくて法自体の性質、この法が本当に公正な形で運用されて、そのコストがそれぞれに納得されるような形で負担されていくか、そういう構造になっているかどうかということ。そこが非常にいびつなものですから、どうしてもその大枠というのがもう一つ先に行って政治不信につながる。
 その政治不信というのは、どうもこの法律というのは、自動車会社を、新車に買いかえるために、もうけさせるためにつくったんじゃないか、それが経済対策というなら、弱小の中小企業を中心にそれぞれ苦しんでいるところにコストをかけて大手のメーカーを救っていくような、そういう経済構造を促していくことをこの法律の構造として持っている。そこに対する怒りというか憤り、時代は厳しいものですから、経済環境というのは非常に厳しいものですから、それが噴き上げてきているということなんですね。
 そこのところを冒頭指摘させていただきながら、できるだけ前向きにこれからこの法律を補正して、それが納得できるような方向へ向いて実際に運用していける手だてを、大臣、ひとつ考えていただきながらこの議論を進めていきたいというふうに思っていますので、冒頭、そのことをお話を申し上げたいというふうに思います。
 個々の質問に入っていきたいと思うんですが、まず最初は、こういう法律ができるときには、これまでの感覚でいくと、これは欧米でもどこの国の法律でも普通はそうだと思います。普通は、新しく開発される新車に対して、これから登録をされる、いわゆる社会で使われる基準というのは、これをクリアしなければいけませんよ、そういう形の新車規制というのが普通の手法だと思うんですよね。
 ところが、このNOx・PM法というのは、これまで使っている、それこそ大事に、昔からの日本の価値観の中で、物は大事に使わなきゃいけない、車もそんな車検ごとにかえていくんじゃなくて十年、二十年使っていくということが我々の、それこそおやじの代からの伝統なんだというような、そんな誇りの中で使っている車がある日突然車検が通らなくなった。よく、憲法上か、法律上でいけば、法律の遡及適用と同じような効果を持った形のものになっているわけですね。
 この特徴があるとすれば、それは当然前提として、全部新車に買いかえるというふうなことじゃなくて、それに、現行の古い車でもそれなりの措置をすればクリアできるよということが前提としてあるはずなんですよ、普通は。その技術開発も、ある程度目星を立てて、その辺まではいけるだろうというもくろみがあってこういうものができるんだろうというふうに私たちは、いいふうに解釈すれば、当然そんなところまで環境省は考えてくれるわなという前提で物は進めていられるはずだろうと思うんです。
 そこのところを、その後の開発、いわゆるNOx・PMの除去装置のめどが立ってきているのかどうか。それから、それに対してどのような政策的な措置を政府としては適用しているのかどうか。そこのところからまずお尋ねをします。
石井政府参考人 お答え申し上げます。
 NOx・PM低減装置の開発状況に関するお尋ねでございますが、これら後づけ低減装置の開発状況につきましては、自動車メーカーや装置メーカー等による開発努力によりまして、PMの低減装置が現在約百種類市販されるに至っております。他方、先生御指摘のNOx・PM双方を同時に低減させる後づけ装置につきましては、NOxの低減等技術的に難しい課題がございまして、今のところ、残念ながら実用化に至った装置はございません。ただ、これらにつきましては、現在、関係メーカー等におきまして引き続き鋭意開発努力が進められているものと承知をしておるところでございます。
 私どもといたしましては、そのような状況でございますので、NOx・PM低減装置につきましては、引き続き各方面の開発動向を注視してまいりたいと考えているところでございます。
 また、もう一点のお尋ねでございます。これら低減装置の開発につきましての支援でございますが、製品の開発は本来、企業において行われまして、国は開発された製品につきまして適正に評価を行い、また、優良なものについてはその普及の際に支援を行うことが望ましい姿であると考えております。
 このため、私ども国土交通省といたしましては、装置メーカーに対する直接的な開発補助といいますよりも、むしろ、NOx・PM低減装置性能評価制度を創設いたしまして、排出ガス低減性能が優良と評価された装置につきまして、トラック事業者等がこの装置を取りつける際に補助を実施していくという体制を整えているところでございます。
中川(正)分科員 大臣、どう思われますか。これはまだ開発のめどが立っていないということですね。この現状に対してどう思われますか。
鈴木国務大臣 大気汚染防止対策を考えてまいりますと、新車とともに使用過程車に対する対応というものも重要な課題でありまして、今、先生からの御指摘にありましたそれに対するDPFというものは大切な手段であると思っております。
 私もその開発状況に大変関心を思っておりますが、今もお話がございましたように、NOxとPMを、片方を減らすと片方がふえていくような、そういうトレードオフの関係にあるということで、なかなかメーカーも、実際の話、その開発に今苦労をされているということを承知しております。
 環境省といたしましても、自動車メーカーの団体等に、こうしたことに対します技術開発の促進についてのお願い等もしているところでありまして、やはりこれは、一つには、こういう技術開発をメーカーとして急いでいただくということが一つのことであると思います。
 それからもう一つは、DPFを装着するに当たってのさまざまな支援措置をしていく。これは国土交通省におかれてもされておられるわけでありますけれども、私ども環境省におきましても、主に地方自治体の使っております車両に対しまして、額はわずかでありますが、DPFの補助の制度を持っておるわけでして、そういうものを進めながら、技術開発と、今あるDPFの使用過程車に対する普及、こういう両面を考えていく必要があると考えております。
中川(正)分科員 恐らく、買いかえの対象になってくるオーナーがその答弁を聞けば、何でこんな法律をわかっていてつくったんだということになって、これは納得させるところにいきませんよね。この目的は、やはり新車に買いかえろということでしかないんじゃないかということになりますよね、ということを指摘しておきたいというふうに思いますね。
 それから次に、規制の効果というものなんですが、やはり、東京に出てくると、ちょっとその辺の机をふくだけで真っ黒な、それこそPMがぞうきんについてくるというようなことははっきりわかるんですけれども、うちの田舎の方は、それこそ田んぼの真ん中で、ウグイスが鳴いているようなところなんですね。そこにたまたま幹線の国道が二本通っているというだけで、これにひっかかってきたということなんです。
 そうなると、そこに通っている車というのはほとんどが、恐らく七割から八割が外から流入してくる車なんですね。面的に言ったら、そこに業者の持っている車が走っているんですよ。だけれども、指摘されている肝心の幹線道路は、その中で考えていったら、ほとんど七割から八割がそういう車ですね。統計的に見ても、地元の車というのはトータルでも四割ぐらいだと言われています。
 そうなると、そこの地元の車を買いかえて規制していっても、この地域に、地域指定したところに対してどこまで全体の効果が上がるのかということが問題になりますね。これはどういうふうに今試算をされていますか。
西尾政府参考人 今、自動車NOx・PM法によります車種規制の効果のお尋ねがございますが、この試算の前提といたしまして、関東地域、関西地域の六都府県で計算をしたものがあります。実は、愛知の地域につきましては新しく地域に加わりましたので、さらに現地に即した精査というものを、現在、愛知県、三重県を含む関係八都府県で精査をしていただいているということで、これは近々まとめようとしております。
 したがいまして、おおよその数字でございますけれども、これは、平成九年度のごろの年間排出量十五万トンを、平成二十二年におおむね環境基準達成を図ろうということで考えておりますので、例えば窒素酸化物につきましては、今までの単体規制で九万トンまで削減されますけれども、さらに二万二千トンほどを削減していかなきゃいけないということでございまして、車種規制により、おおむねその半分、一万一千トンを削減しようと思っております。残りの一万トンほどにつきましては、さらなる単体規制の強化あるいは低公害車の普及、交通量、交通流対策、各方面のいろいろな努力を結集してやっていく。そういうことによりまして、平成二十二年におきましておおむね達成ということを図っていきたい。その中で、車種規制は半分ほどを占める大きな施策であるということでございます。
中川(正)分科員 肝心の、名古屋を中心にした新しく導入される地域を、早いところ説明しなきゃいけないじゃないですか、地元に対して。それが説明責任というものでしょう。これだけの目標をやるから、皆さんこれだけのコスト負担をしてくださいと言うのは当たり前のことなんです。それができていないというのは、まず何という感覚で環境行政をやっているのかということを指摘しておきたいというふうに思います。
 それと同時に、東京や大阪も、実際には、このNOx・PM法がきいているというよりも、全体の枠組みの中で進めてきた規制が徐々に徐々にきいているというふうなことであろうと解釈すべきなんですよ。これだけが突出して、その地域に対してコスト負担をかけながら、そのコストに見合う結果が出ているかといったら、決してそんなことはない。その部分をもう少し丁寧に、矛盾のある法律だけに、やはり説明責任があるんだろうというふうに思います。そこが一つのいわゆる不信というか、環境省の感覚に対する非常に大きな不信につながっているんだということ、これを指摘しておきたいというふうに思います。
 それから次に、経済に対する影響なんですが、これは二つあるんですよね。
 一つは、この時代背景の中でこれを仕組むということ、これに対して恐らく、私もさまざまな論文や何か読みながら、やはり非常にマイナス効果が出ているということですね。つぶれてくる会社もやはりこの中に確実に出るだろうという予測、そういうものがありますね。
 それと同時に、もう一つ指摘しておきたいのは、大手の運送会社と本当に中小の弱小の企業と比べると、それはやはり弱小の企業に集中的にきいてくるんですね、これは。古いんですよ、車が、もともとが。そういうことに対して、それこそ団体のいろいろな陳情を聞いていても、大手の方は大体理解がある。ところが、もう目の色を変えて、これはもう大変だということで、資金繰りから何からなかなかついていかない、閉じなきゃいけない、そういう危機感を持ってくるのはやはり中小企業なんですね。こういういびつな形で法が執行されるということ、これに対してもやはり何らかの手は打たなきゃいけないだろう。
 それは貸し付けだとか資金繰りだとかあるでしょうというんだけれども、違うんですよ。そういうふうに回していければ、今の状況の中では、それはみんなそんな目の色変えない。借り入れで回していくこと自体、これ以上借金をふやしていくということ自体が経営を圧迫して、やはり店を閉じなきゃいけないというその危機感なんですよね。
 その時代背景を持ちながら、それを知っておりながら、何も手だてをせずに、ちょっと税をまけるのと、それから資金繰り、手伝いますよという程度の話でおさまるということにはならない、これは私の地元での実感でもあるんですね。そのことについてどのように考えておられますか。
鈴木国務大臣 まず、このNOx・PM法と申しますのは、何も自動車産業のために新しい車を買いかえさせるためのものではないわけでありまして、これは大都市部における大気汚染防止を改善していく、こういうためのものであるわけであります。
 そこで、今、先生から御指摘の点、これはNOx・PM法のことが議論になりますと、二つ、両面から御議論が出てきまして、一つは、大気汚染防止というものが深刻だ、ついてはもうこれを即刻、NOx・PM法を直ちに施行しろという議論が出てまいります。それからもう一つは、ただいま先生からも御指摘がございましたけれども、現下の厳しい経済情勢を見て、このNOx・PM法をこういう形でやることは問題であるというような御指摘が出てくるわけであります。
 これは、大気汚染の改善ということも確保していかなければならない、しかし一方において、現実に自動車で運送業をされておられます主に中小の事業者の立場というものを考えていかなければならない。こういうことで、両者、パブリックコメントを求め、そして関係団体との協議も含めて、ぎりぎりの中で最長三年半の経過措置というものも置くことにしたわけであります。
 そして、先生からは、こういうことでは生ぬるい、こういうふうにおっしゃられるわけでありますけれども、そういう中で、自動車取得税を初めとする税制上の措置でございますとか、公的金融機関における低利の融資でありますとか、そういうようなことも配慮をして、大都市部におけます大気環境の改善という目的を果たして、一方において、中小事業者に対します経営的な影響というものをできるだけ少なくするためのことを両様考えながら、この過程においても十分なる協議をしながら経過措置も決めるなど対応をしている、そういうふうに考えているところであります。
中川(正)分科員 話し合いをしているからそれでいいんだというさっきの答弁なんですけれども、そんなことじゃないでしょう。
 だから、私が言っているのは、全体の、NOx・PMもコントロールをしていかなければならないという体制に対しては国民もうなずいているんですよ。それを否定している人は私はいないと思う、いろいろな話を挙げてくる人たちも。
 ところが、何を問題視しているかというと、そのコストをだれが負担するのかということについて不平等であるし、いわゆる憲法の精神からいったら、過去にさかのぼって資産価値を侵害されているわけですから、そういうことが特定の地域で、たまたまそこで商売をしていて頑張っている人たちで、かつ一番立場が弱いところへ向いてぐっとしわ寄せが来ているというこの法律の構造をどう考えるかということに対して、みんなおかしいという話になっています。
 だから、そこのところをどう工夫したかということをさっきからずっと聞いてきたんです。結果的には、それに対しては何にも工夫していないんだ。まともな返事をしていないんですよ、それに対して。そうじゃないですか。
鈴木国務大臣 こういうような、いわゆる大都市におけます大気環境汚染の改善をNOx・PM法でやっていく中において、中小事業者だけにそのコストを押しつけているんではないか、そういうような……(中川(正)分科員「特定の地域の」と呼ぶ)NOx・PM法においてですね、ということでありますけれども、中小事業者にとりましては、例えば自動車というのは事業を展開する上での一つの設備と見ることもできるわけでありまして、これはやはり更新をしていくんだと思うんです、黙っていても。しかし、これを大気環境保全上の立場から更新を早めていただくということになるわけでありますから、その早めていただく部分についての影響に対して、先ほど申し上げましたような税制上あるいは公的金融機関における融資等でそれに対応している、こういうことであります。
 私としては、大都市部における大気環境の改善の問題、もうNOx・PM法、こんな三年半の経過措置を置かずに直ちにやれという人たちもたくさんいるわけでありますけれども、しかし、そうではなしに、中小事業者の方々のことも考えて経過措置を置きながら、また、税制上また融資上の対応をとって影響を少なくしていく、こういうことで対応させていただいているということであります。
中川(正)分科員 それで納得しないですよ、やはり。商売をしている本人の立場に立ってみてくださいよ。これまでずっと使ってきた車ですよ。大事にして、これでもうけてきたんだと思っている人たちが、突然それが使えなくなる。それは、いつかは買いかえなきゃいけない事態になるだろうけれども、それを十年で買いかえるのか二十年で買いかえるのかという、その十年間のコストというのはだれが負担するんですかという問題なんですよ。それを、いずれかは買いかえなきゃいけないから、融資措置だけで考えていますよというのは通じないです。どう考えてもへ理屈でしかないということなんです。
 私は、今のこの制度を否定しているわけじゃない。普通こういうことをするのに、例えばフランスだとかほかの国で考えていることというのは、こんなときに何が出てくるかといったら、やはりコスト負担をうまくしつらえるような仕組みを法の中でつくっていこうという考え方なんだと思いますよ。
 例えば、この法律をつくるためのコストがそれなりにかかるのであれば、それをあまねくみんなに負担してもらおうと思ったら、どういう税体系を新しく入れ込んで、その税体系の中で、例えば軽油税あるいはエネルギー税等々を含めて、そういうところであるとか、あるいはメーカー自体がこれを負担するものであるとすればメーカーへ向いてそのようなことを理解させる、そういう仕組みの裏打ちがあって、その中で特定の地域へ向いて影響力が出るとすれば、あまねくその負担を分散させるというふうな法の仕組みがあって、ああなるほど、環境省はよく考えているなという話になる。この仕組み、今のこの現状の中で突っ走っていったら、どこまで行っても、やはり環境省は新車に買いかえさせたいんじゃないか、これはどうも環境というよりもメーカーの思惑の中で動いているんじゃないかと、絶対払拭できないですよ、このていたらくでは、ということなんですね。
 私は、そこのところは今からでも遅くないと思うし、これからの環境行政の中でまだまだこんなことをしていかなきゃいけないんだろうと思うんです。だれがコストを負担するかというマインドがなければ、これは全くないんですよ、環境省の中に。だれがこのコストをあまねく満足のできるように、みんなが納得のできるように仕組みとしてつくれるかというマインドがなかったら、環境行政そのものが前に進まないです。私は、この法律はそれの一番いい例なんだというふうに思っているんです。そういうつかみ方をしているんですよ。
 だから、そういう観点から一度点検をしていただいて、もう一つ裏側のコストの負担について詳しく分析をしてみてください。これは一番弱いところへ今出かかってきていますよ。不合理ですよ。みんな今車庫を、本当に十メーターか何かしたら境界がぽっと変わるんです。そこへ向いて合法的に移動させているんですよ、親戚や何かをたどって。こんなことでこの法律がクリアできるということ自体もまた、何ておかしな法律なんだろう、何て不平等なものを助長している法律なんだろうということをみんなが憂慮しているという現状なんですね。そのことをぜひひとつ理解をしていただきたいというふうに思うんです。あわせて、納得していただくところで答弁いただきたい。
鈴木国務大臣 大気環境の改善の問題というのは、環境行政の中でも大変重要な問題である、そういうふうに思っています。
 その中におきまして、私どもは、例えば単体規制、これは平成十七年から世界一厳しい新長期規制というのもやってまいります。それから、低公害車の導入も進めます。そしてもう一つが、このNOx・PM法なわけでありますが、やはりこれは円滑に進めていかなければならない、そういうふうに思っているところでございますので、今この質疑を通じて先生から御指摘の点もございましたが、いろいろな御意見がございます。先ほど私から紹介したように、逆に猶予期間も置かずに即刻やるべきだ、そういうきつい御意見をなさる方もおるわけでありますが、いずれNOx・PM法を円滑に進める上で、きょう先生からいただいた御意見も十分勘案しながら、円滑な施行に向けて十分な配慮をしながら進めてまいりたいと思います。
中川(正)分科員 終わります。
持永主査 これにて中川正春君の質疑は終了いたしました。
 次に、塩川鉄也君。
塩川(鉄)分科員 日本共産党の塩川鉄也です。
 私は、旧日本軍の毒ガス問題に関して質問をさせていただきます。
 まず最初に、茨城県神栖町の有機砒素被害問題に関してお聞きします。
 環境省にお聞きしますが、茨城県神栖町で、旧日本軍の毒ガス、くしゃみ剤に由来すると推定されるジフェニルアルシン化合物という有機砒素が大量に検出され、住民の健康被害が生まれ、町民の方の大きな不安を引き起こしています。環境省として調査を行うとお聞きしていますけれども、基準値の四百五十倍の砒素が検出されたいわゆるA地点のレーダー調査などを行うというふうにお聞きしていますけれども、こういった調査にとどまらず、そこのA地点の掘削の調査ですとか、あるいはB地点のような四十三倍の砒素が出ているような場所、さらに、その他の基準値を上回るような地点の調査もしっかりと行うべきではないかと思いますが、その点いかがでしょうか。
南川政府参考人 お答えいたします。
 神栖町におきまして、まずは、水質基準の四百五十倍の砒素汚染が見られましたA地点について、飲用井戸の砒素によります健康被害が報告されておりますので、ここについて早急に原因究明のための調査を行いたいと考えております。
 当面はレーダー等も用いました概査を行いますが、その後は、詳細なボーリング、あるいは必要があれば掘削ということも含めて対応をする必要があると考えております。当面、急いで何をすべきかという、時間の割り振りをしながら準備をしているところでございます。
 それから、A地点と通称申しておりますけれども、四百五十倍出た地域以外につきましても、まずA地点の調査結果を踏まえまして、それによって、おおむね汚染の地域的な、方向的な、レベルとかが出てまいれば、それも踏まえながら、その後の調査について検討していきたいというふうに考えております。
塩川(鉄)分科員 大臣にお伺いしますが、五月十六日の記者会見の場でも、この健康被害の補償問題についてコメントをされておられました。健康被害の補償問題について、幼児を含む多くの方が健康被害を受けていますから、補償問題は重要な課題だと述べておられます。ぜひともこういう立場で、健康被害の補償問題、ぜひ公的な補償という立場で取り組んでいただきたいと思いますが、大臣いかがでしょうか。
鈴木国務大臣 神栖町におきます飲用井戸による砒素汚染の健康被害ということでございますが、寒川町とか平塚の事例と違いまして、これにつきましては、旧日本軍の毒ガスの現物というものが出ていないわけであります。しかし、神栖町の地歴を調べてみましたり、旧軍の飛行場があったという記録も残っておりますし、それから、出てまいりましたものが、このジフェニルアルシンというのが自然界にはないものであるということでありますので、今、旧日本軍の毒ガスとの関係というのは大変濃いものである、そういうふうに思っております。
 濃いとは思いますけれども、しかし、これはやはり、まずはきちんとその因果関係というものを特定しなければならないと思います。万が一、その特定をなされて、これが旧軍の毒ガスに起因した被害であるということにつきましては、その被害の発生の態様でありますとか状況に応じて、処理それから補償等の費用負担も含めて必要な措置をすることが必要である、そういうふうに思うわけでありまして、これは内閣官房が関係省庁と協力して行うこととなっております。
 現段階では、まずはその因果関係を明らかにしなければならない、そういうふうに思っております。
塩川(鉄)分科員 厚生労働省にお聞きしますが、旧日本軍の毒ガス製造施設や毒ガス保管所で働き、戦後も健康被害が続いている民間の方を対象にした医療費補助なども行われていると聞いております。毒ガス障害者に対する救済措置要綱というものがあるそうですが、この内容について、簡単で結構ですから、御説明をお願いします。
仁木政府参考人 お答え申し上げます。
 御質問の毒ガスの健康被害の対策でございますけれども、第二次大戦中に、広島県大久野島にありました旧陸軍の造兵廠忠海製造所、また福岡県北九州市にありました曽根製造所、また神奈川県寒川町にございました旧相模海軍工廠におきまして毒ガス製造等に従事していた方のうちで、毒ガスによる健康被害を有する方に対しまして、財務省と厚生労働省におきまして、健康診断の実施でありますとか、医療費または各種手当の支給等の救済措置を講じているところでございます。
 このうち、厚生労働省における救済措置につきましては、御指摘がありました毒ガス障害者に対する救済措置要綱に基づきまして、当時毒ガス製造等に従事していた方の中で、動員学徒の方あるいは女子挺身隊などの民間の被害者を対象とした救済制度でございます。
塩川(鉄)分科員 今厚生労働省からお話がありましたように、医療費ですとかいろいろな特別手当を支給する仕組みというのが旧日本軍の毒ガスに関与した民間の方々への補償ということで行われています。こういう制度を援用するといいますか、大いに参考にして、旧日本軍の毒ガスに起因する被害ということであれば、大臣のお答えにありましたように、毒ガス弾の処理ですとかあるいは補償問題、ぜひ積極的に取り組んでいただきたい。
 改めて大臣の決意をお伺いしたいと思います。
    〔主査退席、木下主査代理着席〕
鈴木国務大臣 今はとにかく原因を究明するということが大切である、そういうふうに思っているところでございますが、例えば、原因が明らかになる前にも、これは原因が明らかにならないから補償ということにはならないわけでありますけれども、救済という道があるのかどうか、そして原因が明らかになった際には、明らかに旧軍のガスによるものだということになれば、その補償ということについて、内閣官房において政府全体の話として対応をされるべきものである、そういうふうに思っております。
 いずれにしても、そうした救済の問題それから補償の問題、それは今のこの問題に対する重要な一つの課題である、そういう問題意識を強く持っているところであります。
塩川(鉄)分科員 毒ガスに起因するにかかわらず、救済措置、補償措置が課題だというお話でしたので、ぜひこの点一歩進めていただいて、具体的な措置を要望するものであります。
 次に、栃木県の益子小学校校庭埋設の毒ガス問題についてお聞きします。
 環境省にお聞きしますが、環境省の方で公表しました、この旧軍毒ガス弾等の全国調査結果報告(案)、ここで記述されています毒ガス所在場所として、「あることが確認し得ているものとしては栃木県益子町益子小学校々庭に埋められているイペリット広口ガラスビン入五〇〇〜一〇〇〇g」というものがあります。これは現状がどのようになっており、これに対して今後どのように対応されるのか、お聞きします。
南川政府参考人 お答えいたします。
 まず、先生お持ちの資料でございますが、私ども、いろいろ資料請求がございまして、そうこう探しに探しまして、やっと出てきたということで、直ちに御提出したものでございます。したがいまして、最終的にまとまったのは四十八年三月でございますけれども、その案自身ができたのはもう少し前だと思います。
 ということもございまして、私ども、この資料を御提出してから各地にいろいろ状況を問い合わせております。益子の問題についても調べましたが、どうも現在わかっております範囲では、その直前の四十七年の終わりごろの報道で、終戦時に栃木県益子小学校の校庭に毒ガスを埋めたという証言者があらわれたわけでございます。そして、その証言者の立ち会いのもと、四十七年の終わりごろに益子町と地元の自衛隊が協力して発掘作業を行ったけれども、毒ガスは発見されなかったというようなことが言われております。
 益子小学校の現状につきましては、先週十五日に町長さんに来ていただきまして、私、直接お会いいたしました。その際にお話を伺いましたけれども、四十七年のそうした発掘調査に加えまして、戦後数回にわたりまして小学校を改築、増築いたしております。したがいまして、そういう際にも相当程度の掘削を行っておりますことから、それまで出てきていないということでございますので、現時点において毒ガスの危険性は考えにくいというのが地元の様子だというふうに伺っております。
 ただ、町長さんからも、小学校の安全性を再度確認する観点から、環境省でぜひ協力してほしいと要請がございました。私どもとしまして、まず関係省庁等から十分情報を得まして、環境省の職員並びにこの問題の専門家を現地に派遣いたしまして、今後必要な対応について早急に検討していきたいというふうに考えております。
塩川(鉄)分科員 三十年前に、私も拝見しました、下野新聞で大きく報道されて、このとき八月に調査し、十二月にも調査して出なかったと。それが、今回こういう形で町長さんがいらっしゃるというのも、私、その三十年の間、いわば記録が不在で、町長さんもこの話を初めて聞いたとその場で思うような、町、県、国にこういった資料がないということ、そういう点では、この旧日本軍の毒ガス問題について統一した対応が国としてもとられていないということが、現地でのいろいろな不安をつくっているんではないかなということを率直に思うわけです。
 同時に、この問題そのものをきちっと解決する上でも、地元の方は、ぜひ環境省に現地に来てもらって、徹底した調査もお願いをしたいと思っていますし、もしないということであれば、ふさわしい安全宣言などもしてもらいたいという要望がされているわけですけれども、改めて、徹底調査ということで、ぜひ取り組んでいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
    〔木下主査代理退席、主査着席〕
南川政府参考人 早い時期に現地に伺いまして、地元と調整の上、必要な対応をとりたいと思います。
塩川(鉄)分科員 続いて、防衛庁にお聞きします。
 この調査結果報告を拝見していますと、益子小学校校庭に埋没処理していたというイペリットについて、一覧表のところに、括弧して一八一連隊と書かれているわけですけれども、これがどんな部隊なのか、いろいろ戦史にかかわるような問題ということで、ぜひお聞きしたいと思うんですが、いかがでしょう。
西川政府参考人 先生、今、毒ガス問題絡みについて、旧陸軍の第一八一連隊がどのような部隊だったのかというお聞きでございますので、お答えいたしたいと思います。
 ちょっとその前に、旧軍の毒ガス弾等の保有、破棄状況そのものにつきましては、これまでも何度か質問をいただきまして、質問主意書でお答えしておるところでございますが、とにかく化学兵器の保有及び廃棄の状況に関する資料というのはほとんど終戦のときに処分されておる。これは、機密文書ということで非常に早い段階で処分されておったこと、それからまた、旧軍の秘密に属したと考えられます化学兵器に関した情報に関与し得た人、この人も、今はもう既に大分時期がたっておりまして、我々もできる限り関係者からお聞きをいたしましたが、故人となっている方も相当おる、こういう大きな制約がございます。
 そういう中で、お尋ねの事実関係について、当方でこの文書そのものも出まして、いろいろ検討させていただきました。実は、この文書も、確かに防衛庁という、下に書いてございますが、これは案と書いてありまして、決裁文書だとか、どういうところでどういうふうに決裁をしたかどうかとか、そういう資料もちょっと中で見当たらないということでございまして、本文書の記述の背景となる具体的な事実、あるいは記述の細部について確たる見解を述べるのは、非常に申しわけないですが、困難な状況にあるというのが実情でございます。
 旧軍の一八一連隊そのものについてでございますが、これもそういう一つの関連の中かと思われますが、旧軍関連の資料の確保、終戦時に処分され、もう既に現在断片的なものしか残っておりませんので、これはもう任務の内容だとか部隊の概要あるいは活動実態、こういうものについての資料等もなくて、お答えするのは大変難しいところでございます。御理解をお願いいたしたいと思います。
塩川(鉄)分科員 環境省の方ではおわかりになりますか。
南川政府参考人 恐縮ですが、我々としては全くそのデータを持っておりません。
塩川(鉄)分科員 ぜひ引き続き、背景という点でわざわざ当時の報告案に書かれているものですから、聞き取りか何かなのかもしれませんけれども、そのバックデータそのものもおありでしょうから、それで確認していただきたいと思うんです。
 そういう点でも環境省にお聞きしますが、この全国調査結果報告案のフォローアップを行うということですけれども、今後どのような調査を計画しているのか、ぜひ一言。
鈴木国務大臣 先ほど来、南川部長の方から御答弁をしておりますけれども、昭和四十八年に行われました旧軍毒ガス弾等の全国調査、これのフォローアップを環境省が中心になって行うことにいたしているところであります。四十八年の調査におきましては、終戦時における旧軍毒ガス弾等の保有、廃棄の状況、それから戦後における旧軍毒ガス弾等の発見、被災及び掃海処理の状況、この二点を調査しているところでありまして、今回のフォローアップ調査においては、現段階の情報について、可能な限りその収集、整理を行ってまいりたいと思います。
 具体的には、資料それから関係者からの聞き取りということになりますけれども、資料につきましては、地方自治体でありますとか関係省庁、それからアメリカの公文書館等にも資料があるかもしれません。そういうことも含めまして、幅広く、可能な資料の収集あるいは関係者の証言の収集に当たってまいりたいと思います。
 これにつきましては、秋ごろまでに公表することを目指して調査を進めてまいりたいと考えております。
塩川(鉄)分科員 厚生労働省にお聞きしますが、この報告案の中でも、バックデータとして、「旧陸軍省、旧海軍省からの引継ぎ資料」と書かれて、厚生省がそれを引き継いでいるとありますが、この資料をぜひこの機会に提出していただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
中沢政府参考人 お答えいたします。
 先生御指摘の報告のもとになった資料がどのようなものであるか、現在、調査中でございます。
塩川(鉄)分科員 では、調査の結果について改めて報告をお願いしたいと思います。
 それから、防衛庁にお聞きしますが、わからないというお話が先ほどありましたけれども、この報告案の中でも、冒頭のところに、「全国各地に配置されていた各部隊等もそれぞれ若干にしろ毒ガス弾等を保有していたものとみられる。」と、全国各地の日本国内の部隊に毒ガス弾が保有されていたということが書かれているわけですけれども、このように推定される根拠というのは何なのか、ぜひお聞きしたい。
西川政府参考人 先生御指摘の、報告案におきます、お読みいただきましたような、全国の各部隊も毒ガスを保有していたものというふうな記述があるじゃないか、その根拠は何かということでございます。
 先ほどの繰り返しになって大変恐縮でございますが、この文書につきましては、先生先ほど報告という話でございますが、実は報告案だと。我々は、これはうちの方で、防衛庁で作成に関与したのではないかという、書く可能性は高いと思っております。それは、先ほど申しましたように、防衛庁と記した、我々が過去使っておったような、同じような用紙を使っておること、それから、そういうくだりで取りまとめをしましたようなことを書いてありますので、まず相当可能性は高いと思っております。
 ただ、この文書そのものが、決裁の終わった形の文書が一切オリジナルが残っていないということ、それから決裁をしたという記録、これ自身もちょっと当方で見当たらない、文書そのものが案とついておる。それから実は、この文書の記載の中身も少し不正確なところがございますので、これは最終的になったのかどうか、そのあたりもわからない。それから、これは手書きで、当時といえども、一応正式なものになればタイプ打ちなりなんなりしたんじゃなかろうかと思われますが、そういう事情から考えまして、いかなる段階での文書だったのかと我々も今ちょっとわからないというのが現実でございます。
 先生おっしゃるような、お尋ねのところの、こう言わしめる何らかの具体的な根拠は何だということでございますが、その前段のところで大変大きくつまずいておりまして、そういうふうな事実が明確じゃないということでございまして、現在、そういう状況で推移しているのが事実でございます。
塩川(鉄)分科員 確認のしようもないというお話ですが、不正確なところがあるというお話が今ありましたね。例えばどこですか。
西川政府参考人 これでいいますと、先般、ちょっと新聞等でも出ました神奈川の寒川町、あのあたりのは一切出ておらないですね。そういうことで欠落しているところがあるんじゃないか。
 それから、福岡の苅田港のお話ですが、これは危険予測材料なしとなっておりますが、現実に物が出てきたとか、その後の事実を見てもそういうところがございますし、ほかにも何か、もう少し精査してみれば、あったやに、ちょっと今細かくは覚えておりません。
塩川(鉄)分科員 今のお話でいえば、茨城県の神栖町の場合も、政府としてまだ断定はできないでしょうけれども、毒ガスに由来するということになれば、不正確という記述に対応するような中身という趣旨だと思いますけれども、この報告案の中でも、群馬県内の事例につきましても、この事案は周辺に配置されていた部隊等の保有していたものの処分漏れと推定される。つまり、部隊が持っていた、それを集めて処分したんだけれども、処分漏れのものがあったんだ。これが群馬県の事例だという説明になっているわけですね。ですから、国内に配置されていた部隊が毒ガスを保有していたということが、こういう記述の中では推測をされるわけです。
 そういう点でも、私、こういった調査について、本来、この時点からきちんとしたフォローアップが行われていなければならなかった。そうなれば、今回の益子みたいな騒動というのも、ある意味ではきちっと前にも解決できたわけですから、三十年間あいまいにしてきた責任の問題というのは、これはだれが負うんでしょうか。大臣、いかがでしょうか。
南川政府参考人 いろいろ問題が出てきたということもありまして、内閣官房から指示があったわけでございます。私どもとしては、ぜひ、関係者の協力を得まして、より正確なものをつくりたいと思っておりますので、御理解をお願いしたいと思います。
塩川(鉄)分科員 今聞きましても、この報告案についてのバックデータも今のところは確認できないし、記述についてもはっきり確認できない。そういう点では、三十年前のあいまいなままなのがずっと来ているということが、今回の益子の騒動にもつながっているし、あわせて神栖の問題にもかかわってくるんじゃないかと私は思います。
 その上で、この毒ガスの問題について考えなければいけないのが、やはり、戦争末期の旧日本軍の部隊の展開とかかわって見ていかなければいけないと私は思うんです。
 茨城県の神栖町の場合に、高濃度の有機砒素が検出された場所というのは、戦争末期、内閣中央航空研究所鹿島実験場のあった場所でもあり、またそのすぐ北には、特攻隊の訓練基地である海軍の神之池飛行場がありました。同時に、戦争末期に、この場所に米軍の本土上陸に備えた部隊が展開をしていました。これが配付した資料のB4のサイズの方の右上の2と書いてある資料です。ここは、ちょうど有機砒素が検出された場所のところに、破線の円になっているところに、独立混成第一一五旅団が配備をされている。そういう場所だったわけです。
 ここに防衛庁の防衛研修所の戦史室がまとめました「本土決戦準備 一 関東の防衛」、二は九州の防衛の本ですね。この本の図がここで紹介している配付資料の図になるわけですけれども、ここでは、米軍の本土上陸を想定して、本土決戦の準備作業が記録をされています。米軍の行動パターンを予測して、南九州と関東地方に米軍が上陸することを想定して大規模な準備が行われていました。
 本土の決戦準備において、この本の中では、「関東地方および九州地方の作戦が最重要視され、関東担当の第十二方面軍と九州担当の第十六方面軍の兵備は共に優先的に整備が進められた。」といいます。そして、関東担当の「第十二方面軍は第三十六軍、第五十一〜第五十三軍、東京湾守備兵団を基幹とする強力なものとなった。」と書かれています。
 その中で、第五十一軍は、鹿島灘正面の確保と滅敵、敵を撃滅するということですね。第五十二軍は、九十九里浜方面の確保と滅敵。第五十三軍は、相模湾及び駿河湾方面の確保と滅敵を任務とし、第三十六軍は、決戦兵団として沿岸要域の決戦準備を任務としていた、こういうことを当時の記録に基づいて書いています。
 もう一枚のA3の資料を見ていただきたいんですが、これも「本土決戦準備」に添付されている地図であります。関東の地図でいえば、鹿島灘のところに、ここでいう第五十一軍が展開をし、九十九里浜に第五十二軍が展開をする。それから、相模湾に第五十三軍が展開をしていたわけです。
 蛍光ペンで色をつけました、鹿島灘、神之池と書かれている場所のところに百十五とあるのが、第百十五混成旅団のことであります。
 それから、上の方に宇都宮を中心とした囲みがありますけれども、これが第二百十四師団と言われている部隊で、このエリアの中に益子町が含まれています。
 鹿島灘や九十九里浜、相模湾などにそれぞれ展開していた五十一軍、五十二軍、五十三軍というのが、上陸する米軍を水際でたたく態勢をとっていたわけです。また、第三十六軍というのは、水際作戦を突破してきた米軍の戦車部隊などを野戦で攻撃する部隊として配置をされていました。こういった一連の部隊に毒ガスが配備されていた可能性が高いわけです。
 茨城県神栖町の場合は、鹿島灘防衛に当たる第五十一軍指揮下の独立混成第百十五旅団が配備をされていたのは先ほど紹介したとおりですし、栃木県の益子町の場合でも、小学校の校庭に埋めたという方は、終戦まで益子小学校に三個中隊ほど駐屯していた常盤部隊迫撃砲隊の見習い士官の方で、本隊から訓練用として受領した約一・五リットル弱のイペリットの置き場所がなく、危険だとして、部下を指揮して校庭に埋めさせたといいます。
 この元見習い士官の方が所属していた常盤部隊の常盤というのは、戦争末期に、米軍上陸に備えた本土決戦用の部隊である、先ほど紹介しました第三十六軍に所属していた二百十四師団の通称であります。つまり、益子に埋めた方というのは、この二百十四師団の部隊の一員だったということですね。「本土決戦準備」の本の中にある第三十六軍の二百十四師団の位置に益子があるのは、そのとおりであります。
 この証言をされた方に電話でお聞きしましたら、鹿島灘から上陸した米軍を迎え撃つために筑波山の東側に展開する部隊として自分は配備をされていた、こういった部隊に毒ガスが配備をされていたということです。
 「幻ではなかった本土決戦」という本がありますけれども、戦争末期の学徒義勇隊に組織された当時の中学四年生の日記が紹介されています。この手記の中では、敵のトーチカへの突撃法や対戦車肉薄攻撃の仕方とか、タコつぼや対戦車ごうや潜伏ごうの掘り方などの訓練を行っていたそうです。
 八月七日の日記の中では、クシャミガスをまいた、その白煙の中を数十メートル走った、走っている最中はのどが少し痛くなっただけでにおいがするぐらいであった、目から涙が出る、鼻は出てとまらない、あのときの臭さは忘れられない、こういうふうに証言をしているわけです。
 私、こういったように、一連の事実を考え合わせますと、米軍の本土上陸に備えた日本の部隊に……
持永主査 塩川君、時間が来ていますので、簡単に願います。
塩川(鉄)分科員 最後に一言。
 日本軍に毒ガスが配備されていた、そういう点でも、関東や九州なども視野に入れた全国的な毒ガス調査が必要なんじゃないか、このことをぜひともこの機会に進めるべきではないかと率直に思いますが、大臣、いかがでしょうか。
持永主査 鈴木大臣、簡単にお願いします。
鈴木国務大臣 四十八年のフォローアップの全国調査を進めてまいりますが、これから具体的に調査を進めていく中で、よりよい調査結果が出るように最大限努力したいと思います。
塩川(鉄)分科員 ありがとうございました。
持永主査 これにて塩川鉄也君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして環境省所管についての質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
持永主査 これより内閣府所管中警察庁について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。谷垣国家公安委員会委員長。
谷垣国務大臣 平成十三年度の警察庁関係の歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 平成十三年度の歳出予算現額は二千九百六十九億五千八百八十三万円余でありまして、支出済み歳出額は二千七百四十五億二千五百万円余であります。
 この差額二百二十四億三千三百八十二万円余のうち、翌年度へ繰り越した額は八十億七千七百五十六万円余であります。
 また、不用となった額は百四十三億五千六百二十六万円余であります。
 以上、警察庁関係の歳出決算につきまして御説明申し上げました。
 何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
持永主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院石野第一局長。
石野会計検査院当局者 平成十三年度警察庁の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。
 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項一件であります。
 これは、職員の不正行為による損害が生じたもので、警察庁及び科学警察研究所において、警察庁技官が、同庁刑事局鑑識課鑑識資料センターにおける写真係の事務に従事中、同センターまたは同研究所法科学研修所に保管されていた写真機、レンズ等を無断で持ち出すなどして領得したものであります。
 以上、簡単でございますが、説明を終わります。
持永主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。谷垣国家公安委員会委員長。
谷垣国務大臣 平成十三年度の決算検査報告において掲記されております事項につきましては、会計検査院の御指摘のとおりであり、まことに遺憾に存じております。
 警察庁に対し、今後とも、このような不正行為のないよう綱紀粛正の徹底を図る等、再発防止に万全を期するよう指導してまいる所存であります。
 以上でございます。
持永主査 この際、お諮りいたします。
 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
持永主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
持永主査 以上をもちまして内閣府所管中警察庁についての説明は終わりました。
    ―――――――――――――
持永主査 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。田端正広君。
田端分科員 公明党の田端でございます。
 大臣には、大変御苦労さまでございます。
 通告はしていないんですが、ちょっとお尋ねしたいことが起こったものですから。というのは、昨日、一昨日と関西で台湾人医師によるSARSの問題が急浮上いたしまして、関西は、正直、一種のパニック状態に今なっているわけであります。大臣の地元の宮津市、天橋立、この台湾人医師がそういうところも行かれた、宮津でも泊まられた、こういうことで、けさの新聞等でも、行った先、泊まったホテル、レストラン、公表できるところはすべて公表されたわけであります。
 きょう、私も、大阪市、大阪府庁に寄ってまいりましたけれども、正直言って、この対応策に現場は大変戸惑っておるというのが現実でございます。そして、きのう、おとつい、大阪とか関西の人たちは、もう本当に、そういう意味では、マスコミの報道を通して非常に不安感が募って、大変な騒ぎになっているわけであります。
 この問題、直接は国家公安委員長としての権限のところではないと思いますが、しかし、国の、国民の生活の安全、安心ということからいけば、これは大変大きな事件だ、こう思っております。もしこれが、今調査がずっと進んでおりますが、ほとんど陰性であるという報道もされておりますので安心はしておりますが、万々一こういったことが起こったら大変なことになるのではないか、こう思います。
 そういう意味で、消防とか保健所とか、もちろん厚生労働省とか、そういうところとの連携というのは一番大事なんですが、大臣の地元でもこういうことが起こっているわけでありますから、その辺のところの御所見、御感想、あるいは政治家としてこういうことに対しての御意見もあろうかと思いますので、まず御所見をお伺いしたいと思います。
谷垣国務大臣 田端委員おっしゃいましたように、田端議員のお地元、また私の地元も関係がございまして、私も地元の京都府からもいろいろ報告をいただきましたけれども、一生懸命やっていると同時に、大変対応に苦慮もしているんだろうと思います。
 私のやっております仕事の関係では、SARSに直接関係あるものはございませんけれども、食品安全の方も、現在のところはSARSと食品という関係はあるという報告を受けておりませんが、恐らく一番難しいのは、こういう情報がどこまで、きちっとこうこうであるというふうに情報がはっきりわかった場合は、それを国民に対して報告をする。これはもう、伏せておけば、かえってやたらな風評被害が拡大するということがあると思うんですが、問題は、十分確認できない情報をどういうふうに扱っていくかということは、多分、今厚生当局におかれましても非常に苦労をしておられるんじゃないかなと思います。
 いずれにせよ、私どもも、危機管理という仕事では共通のところがあるわけでございますので、関心を払って対応してまいりたい、こう思っております。
田端分科員 先般といいますか、先週、有事法制も衆議院を通過ということで、こういった緊急非常事態に対しての法的整備の方も、そういう意味では大きく前進した、こう思っておりますが、現実に、これは伝染病という形での問題であります。しかし、生物化学兵器とかいろいろなことが、かつてアメリカにおいては炭疽菌の問題もあったわけでありますし、そういった意味では、国家公安委員長というお立場、大変だと思いますが、しかし、しっかりとこういう意識も持っていただいて、ぜひ対応策をお願いしたい、こういうふうに思います。
 それでは、私は、きょう御質問させていただきたいのは、日本の治安が、かつては治安はいいと言われていた日本が、今そうではないんじゃないかという形で、いろいろな事件があり、いろいろな問題が提起されておりますので、そういったことで質問させていただきたいと思います。
 例えば、重要犯罪としての殺人、強盗、放火等々、認知件数を見ますと、平成十四年一月―三月で、全国四千百六十三件だったのが、平成十五年一月―三月では四千七百九十六件と、一五%増加しております。その中で、都道府県別に見ますと、五百件以上というのが東京、大阪ということで、他県を大きく引き離しているわけでありまして、中でも私の住んでいる大阪は四百九十三件から五百八十件と、八十七件、一七・六%もふえている、こういう状況でございます。
 それから、窃盗犯ですけれども、例えば、侵入盗とか自転車泥棒とかひったくりとか、こういうのがありますが、これも東京、大阪が一万件を超えているという大変な数であります。中でも、ひったくりは、大阪は二十七年連続ワーストワンという大変不名誉な事態にもなっておりまして、十四年度、大阪は九千百九十七件ひったくりが発生していて、千二百九十三件減少はしているんですけれども、しかし、全国の一七・四%という割合でありまして、数からいって東京の一・六倍、そういう大変な事態になっているわけであります。
 そういう意味では、これは重要犯罪もそうですが、しかし、街頭におけるこういう犯罪というものが日常的に多発しているというこの現実に対して、ぜひ国家公安委員長としてお力を入れていただきたい。ここ数日といいますか、最近は、大阪市内、不審火といいますか、連続放火事件がまた多発しております。そういった意味でも、あわせてぜひ、ひったくり対策を中心にした防犯体制というものの強化をお願いしたい、こう思うんですが、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
谷垣国務大臣 今、田端議員おっしゃいましたように、戦後、昭和期、刑法犯認知件数というのは百四十万件が大体平均でございまして、それをプラスマイナス二十万件、戦後のどさくさで一番多いときが百四十万プラス二十万で百六十万ぐらい、それから高度経済成長で一番調子のいいときが百四十万マイナス二十万で百二十万をちょっと割ったときもございましたけれども、平成十四年中は二百八十五万件ということでありますので、これは昭和期の倍、認知件数がある。しかも、これは平成八年以降、七年連続して戦後最多を記録しているという極めて憂慮すべき状況でございます。
 それから、今委員が指摘されました東京、大阪といった大都市部では、重要犯罪あるいは重要窃盗犯、こういったものを初め犯罪が多発しております。内容を見ましても、ひったくり等の街頭犯罪、それから、ピッキング用具などを使用した侵入盗あるいは侵入強盗、こういうものが多発しておりまして、東京、大阪では、平成十四年中の刑法犯の認知件数がそれぞれ三十万件を超えているという実情でございます。
 それで、こういう中で、とりわけ近年急激に増加しておりますのが、路上強盗、ひったくりのたぐい、街頭犯罪ですね。町を歩いていて襲われる、こういうことでありますから、これは非常に不安感を高める。それからもう一つは、家の中に入れば枕を高くして寝ていられるというふうにみんな思いたいわけですが、侵入してくる窃盗、強盗、この街頭犯罪と侵入盗というのが、体感治安を極めて悪くしている大きな要因だろうと思います。
 そこで、昨年の十一月に警察庁は、街頭犯罪等抑止総合対策室というのを設置しまして、それに合わせて、各都道府県におきましても、この一月から、それぞれの地域の犯罪情勢の分析に基づいて計画を立てて総合対策をやっているというところでございます。
 それから、ピッキング用具などを利用しました侵入犯罪の防止のために、今国会に特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律案を提出して、今御審議をいただいているところでございます。
 今後とも、良好な治安を回復して安心して生活していただける社会を実現するために、全力を挙げて取り組んでまいりたいと思っております。
田端分科員 今御答弁ありましたが、刑法犯、二百八十五万の認知件数のうち、東京が三十万一千、それから大阪が三十万、東京、大阪で六十万という大変な犯罪が起こっているわけでありますから、おっしゃるとおり、ぜひ大都市の防犯体制というものをしっかりとお考えいただきたいと思うわけです。
 例えば、警察庁の方でスーパー防犯灯というものをお考えになっていただいて、今、モデルケースという形で東京、大阪等、特に大阪の場合では平野区とか東大阪市とか、そういうところに二十基前後つけていただいたことによって、東大阪で約四〇%、平野でも六〇%街頭犯罪が減ったということが言われております。これは大変いいことだと思いますので、お金もかかることかと思いますが、この街頭緊急通報システム、例えば非常ベルも、音声通話もできる、そういう非常に多機能的な防犯灯をぜひ採用していただきたい、進めていただきたい、これが一点でございます。
 それからもう一点は、基本的には、犯罪をパトロールによって抑えるということが一番重要な防犯体制だ、こういうふうに思います。そういう意味では、警察官をぜひふやしていただくということが大事ではないかと思いますが、幸い、ことしでは、四千人の増員のうち、大阪において三百八十人ふやしていただいておりまして、非常に感謝しているわけであります。しかし、なおかつそういう現状でありまして、そこのところは、ぜひパトロールを強化していかなきゃならない、こういうふうに思います。
 それからもう一点は、もし、そのパトロール、人員等で予算的、財政的に大変厳しいということであれば、民間ボランティア、地域防犯ボランティア組織といいますか、こういうものを育成していって、できるだけ住民の皆さんの協力によって、町ぐるみでそういう防犯体制に取り組んでいくということが大事ではないかと思いますが、こういうものに対しての財政的支援を含めて援助、助成をしていくということが大事ではないかな、こう思っております。
 今三つ申し上げましたが、大臣、私は、大阪でも西成区というところに住んでおりまして、ここはあいりん地域というのがあるわけですが、私のところから五百メートル、千メートル行けばあいりんになるわけですが、例えば、携帯電話をかけながら道を歩いたり、携帯をかけながら自転車に乗っている、これはもう絶対ねらわれるんですね、意識がこっちに行っていますから。ひったくりなんというのは、そういうときにばっとやられる。そういう大変な状況になっております。
 だから、今三つ申し上げましたが、ぜひその三点を中心に防犯体制の強化をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
谷垣国務大臣 先ほど申し上げましたように、日本の治安も危険水域に入っている。それで、いろいろ考えなければならないことがあるわけでありますが、やはり私は、地域社会と密着して連携していくということが一番大事ではないかと思います。
 それで、伝統的には、日本は交番制度というものを持って、今委員がおっしゃいましたように、パトロールをしっかりやって、交番に駆け込めばお巡りさんがきちっと対応してくれる、あるいはパトロールをしっかりやって見ていてくれる、こういうことが信頼感のもとであったわけでありますけれども、昨今では、交番へ行っても、電話をしてくださいというようなことが書いてあるというような御不満もいただいているところであります。
 そこで、増員は、財政当局あるいは地方自治当局にも大変御理解をいただきまして、平成十三年度に二千五百八十人、十四年度に四千五百人、それから本年度四千人、地方警察官の増員をしていただきました。行革の厳しいときにこういう増員をしていただいているということは、国家を挙げて治安に取り組もうという姿勢をあらわしていただいていると思いますので、これは、今申しました交番機能の強化とかパトロールの強化等、本当に必要な業務に適切に配分して、目に見える形で増員の効果を示すということが必要だというふうに考えております。来年度の増員については、またその時々の治安情勢などで判断すべきものでございますが、今、警察庁でもいろいろそのあたりを検討しているところでございます。
 それから、スーパー防犯灯についてもお話がありまして、やはり地域の安全のためには、なかなかこれは効果を上げていると思います。
 それからあと、いろいろなボランティア等の活用ということもおっしゃいまして、これも詳しく申し上げる時間の余裕がちょっとございませんけれども、伝統的には、警察はいわゆるNPOとの連携というのは余り上手ではなかった面があるわけであります。しかし、現実には、このごろは、かなりそういうことも意識いたしまして、ボランティアで、いわゆるNPOのような形で参加してやってやろうという方々がふえておりますので、そういう方々との連携というのを意識して進めて、治安の向上にうまく連携を組んでいきたい、こういうふうに考えております。
田端分科員 今お話のあったNPO、これはぜひ育てていただいて、ここは協力関係というものを築いていただきたい、信頼関係というものを養っていただきたい、こういうふうに思います。これは、例えば地元の大阪市や大阪府の方もそういうことも考えているようでありまして、ぜひそういう意味では、やはり人手というのはなかなか制限があるでしょうから、それは努力していただくとして、なお足らないところはそういう形で、治安対策というものを重視した社会というものを安全な町づくりという意味でお願いしたい、こういうふうに思います。
 ちょっと具体的な話をさせていただきますが、覚せい剤の問題で御質問させていただきます。
 橋本元総理も大変この薬物に対してはずっと熱心にやっていただいておりますが、正直、この覚せい剤というのは、例えば、やせる薬があるよと、こういう誘いかけで誘っている。そして、今は簡単に、かつてのような注射による服用というんですか、そういうのじゃなくて、アルミの上に乗せて鼻から吸引したり、そのまま飲み込んだり、しかも値段も非常に安くなっている、こういうことである。そういう意味で手軽になったというのが一つ。
 それからもう一つは、だれでも買えるといいますか、だれでもそういう状況に今なりつつある。私の地元のあいりん地域では、そういう密売をしている人たちが町の中にいっぱいいるわけですね。それで、正直、大臣も一回ぜひ機会があったら来ていただきたいと思いますが、私が町を歩いていても売りに来ます。だから、もうそこまで今いっているわけです。
 そして、例えば取引は、今はもう携帯電話で全部やりますから、車に乗ってきて、それで携帯電話で、何本目のつじを左に曲がったカキの木の根っこのところにまずお金を幾ら置けと、そしてそこからまた百メートル左に行った塀の上に物を置いておく、こういうことを携帯でやりとりしながら誘導してやるわけですから、直接の売買取引という現場を避けて、巧妙に、お金はここ、それで物はここと、こういう形でやっているわけですね。だから、本当にそういう意味では、簡単に、車で来て、ばっとこうやって物を手に入れる、こういう状況になっています。
 それで、実は先般も、そういうところをどこかのテレビ局がドキュメントでやったわけですね。それを見ていた人が、これは公務員ですけれども、同じことをやって、そして、そんな簡単に手に入るのかということで、つまり、自分が麻薬中毒にはまってしまったということで話題に、話題といいますか、事件になりました。そういう意味で、非常に製品そのものが簡便なものになった、そしてもう、幾らでも簡単に手に入る、二重、三重にそういうことになっています。したがって、私は、大変これは危険な状況だと思います。
 今までも何回か防止策ということを、キャラバン隊をつくっていただいたり、キャラバンカーをつくっていただいたり、いろいろなことをしてきましたが、なかなか効果が上がらない。そこで提案させていただきたいことは、この刑罰を、薬物に手を染めた刑罰をもっと重くしてはどうか、そうしない限り、同じところの状態が続くんじゃないかと。
 例えば、このあいりん地域には、暴力団事務所というのが三十前後あると思います。その人たちがこれに手を染めているわけでありまして、その売人というのは、そういう人をしょっぴいても、かわりは幾らでもあるんですね。しかも、例えばこれで見ますと、覚せい剤の譲渡とか所持とか使用とか、営利犯としてでも一年以上の有期懲役、情状により五百万円以下の罰金刑、こうなっています。だから、そういう意味では、むしろ、そういう人たちにとれば箔がついて帰ってくる、こういうことでありまして、これは私は非常に軽過ぎるのではないかと。
 例えば、覚せい剤の輸出入、製造、こういうものであっても、非営利犯であれば一年以上の有期懲役で、営利犯であっても無期または三年以上、こういうことであります。だから、ここのところはもっと厳重に、厳しいものにしなければならないのじゃないかと。例えば、マレーシアでしたか、死刑という非常に厳しい国があるようでありますが、覚せい剤、薬物を根絶するという意味で厳罰化をしていく、これは法務省の方になると思いますけれども、ぜひ法定刑を引き上げるようにすべきではないかということであります。
 大臣の御所見を聞いた上で、法務省の方、お見えでしたら御回答いただきたいと思います。
谷垣国務大臣 覚せい剤を初め我が国の乱用薬物のほとんどすべてが、海外で密造されて、いわば国際犯罪組織によって密輸入されているという形ではないかと思います。それで、日本側では暴力団などの組織が受け手となっているわけで、暴力団やあるいはイラン人といった来日外国人の犯罪組織によって日本国内で売られているという状況ではないかと思っております。
 つまり、いろいろな犯罪組織が関与している、こういうことでありますので、単に密売人を検挙すればそれでとどまるというわけじゃなくて、麻薬特例法等を積極的に活用して、犯罪組織の撲滅に向けた取り締まりというものが徹底されなければならないんだろうと思います。
 そういたしますと、今おっしゃった刑罰の重さという問題も一つございますけれども、組織犯罪にどう対応していくか、これは麻薬取締法と覚せい剤とまた若干違っておりますが、いろいろの捜査手法の問題、組織犯罪にどう対応していくかというような、その取り締まり手法もあわせていろいろ考えなければならないところがあるのではないかと思ったりしているわけであります。
 それから、海外からの供給ルートということを考えますと、中国それから北朝鮮、これが覚せい剤の二大密輸入ルートになっているわけですが、国内関係機関との連携、それから警察庁が主催しておりますアジア太平洋薬物取締会議、こういったものを通じて諸外国の機関との協力、こういった取り組みをさらに強化していく必要があると考えております。
 いずれにせよ、どういう取り締まり手法が有効かというのは、常に絶えず研究を進めていきたい、こう思っております。
樋渡政府参考人 ただいま委員御指摘のとおり、覚せい剤等の譲渡等につきましては、営利目的、それから業としたものというふうな段階に応じまして、無期懲役まで法定刑が定められておるわけでございまして、検察におきましては、密売事犯の実態に応じ、麻薬特例法を積極的に活用するなどしまして、適正な科刑が得られるよう努めているところでございまして、無期懲役刑の適用も含めまして、おおむね厳正な科刑が実現されているものと承知しているところでございます。
 したがいまして、薬物事犯に対する法定刑のあり方につきましては、今後も必要に応じて検討を行っていくべきものとは考えておりますが、罰則の適用に当たる立場といたしましては、現在直ちに法定刑の引き上げが必要であるものとは考えておりませず、ただいま大臣が御答弁なさいましたように、厳正な取り締まりで対応していくということが緊要だろうというふうに思っております。
田端分科員 それはそのとおりなんですが、しかし、例えば、所持するというだけでもこれは大変なことになるんだと、そういうことをしないと、これは国民の意識も変わらないと思います。そして、暴力団組織というものに対してのメスの入れ方も、売人を取っ捕まえたって幾らでもかわりはいるでしょうから、そういう意味では、やはり本質的なところにメスを入れなければならないわけであって、そこをどうするかという、そこまで腹の据わった取り締まりをぜひお願いしたい、そう思います。
 要するに、目の前でそういうものが売買されている現実を我々見ますと、特に地域の人たちにとれば、いつまでこういうことをほっておくんだ、そういうものに手を染めた人に対しては厳罰に処すべきだ、そういう声が起こってくるのは当たり前ですから、それは法務省も、ほかの量刑との関係があるんでしょうけれども、ぜひお考えいただきたい、こういうふうに切望しておきます。
 それから、今大臣もおっしゃいました、外国人における犯罪とのかかわりというのが、これは日本の治安対策として大変ゆゆしき事態になっているのではないかと私は思っております。
 例えば、平成十四年の来日外国人による犯罪は、検挙件数からいっても三万四千七百四十六件、そして人員で一万六千二百十二人という過去最多の数字が出ております。これは件数で二五%、それから人員で一〇%ふえているわけであります。
 そういう意味では、この外国人の犯罪、これは先ほどお話があったピッキングとか侵入盗とかそういうことも含めて、そしてまた国際的な犯罪の組織化、そういうことともあわせて、この問題に対してぜひ今から積極的に手を打たないと、そしてまた、例えば警察官の中で語学の研修とか、そういうことができなかったら、先日私の地元でも、そういうやりとりをしている間にババンとピストルで撃たれるという事件がありましたが、やはり、しゃべれなければ相手とのやりとりもできない、そういうことになってきておりますから、そういう国際化した犯罪に対してのこれからの治安対策というものにぜひ力を入れていただきたい、そのことを要望して、終わりたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
持永主査 これにて田端正広君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして内閣府所管中警察庁についての質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
持永主査 これより外務省所管について審査を行います。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。中川智子君。
中川(智)分科員 社会民主党・市民連合の中川智子でございます。
 きょうは、川口外務大臣に、中国におきます遺棄毒ガス問題と、あわせてまた中国のSARSの関連に対して質問をいたします。
 まず、遺棄毒ガス問題ですが、五月十五日に、中国に遺棄された毒ガスで被害をこうむりました方々が提訴された裁判の判決が東京地裁でございました。裁判自体は原告の敗訴という結果になりましたけれども、判決の内容そのものは、ほとんど原告の主張を認めるものとなっています。賠償自体は棄却でしたが、その理由が、主権の及ばない中国で兵器を回収することは困難だという判断があったようです。
 それで、この中で注目すべきは、東京地裁の裁判長が判決文を読み上げた後、一言ということで付言した言葉がございます。この付言の中身は、違法な遺棄行為があった以上、政治的、道義的責任は別の問題だということで、中国の遺棄毒ガスに対しては違法行為ということをはっきり認めて、被害者の救済に関しては政治的、道義的責任ということで、これはある意味では行政府、立法府に司法の側から大きなボールが投げ返されたというふうに私は理解をいたしております。
 それで、先日九日にも環境委員会がございまして、最近日本でも、寒川、そしてもう一つは神栖町で、旧軍が遺棄した毒ガスでの被害が起こっております。このときに、やはりいつも置き去りにされていくのは人に対する補償でありまして、これは、被告は外務省でありましたので、川口外務大臣に、ぜひともこの問題でのお力添えといいますか、司法の方から投げられましたことに対して、誠意を持って、行政府、そして立法府もあわせて解決に向かって前向きに努力していくべきだと私は考えるのですが、これに対しての御認識をまず一言伺いたいと思います。
川口国務大臣 中国における遺棄化学兵器問題につきましては、これは中国側から、戦後被害を受けた中国の民間人が大勢いるという説明を受けております。それで、我が国といたしましては、こういった被害が今後生じないようにするためにも、化学兵器禁止条約に入っておりますので、これに基づきまして、遺棄化学兵器の早期の処理、これに向けて誠実な対応をしていく必要があると思っております。これまでも誠実に中国側と密接に協力をしながら対応をしてきております。
 それから、賠償のことでございますけれども、これは日本と中国の間で請求権の放棄ということをやっておりまして、一九七二年に日中共同声明を出した後、請求権の問題は存在をしていないというふうに認識をしておりまして、この点については中国側も全く同じ認識を持っているということで、私は承知をしております。
中川(智)分科員 請求権の問題は、そのような主張は存じております。しかしながら、これはいわゆる道義的な問題として、それと一つには、それ以降に起こった被害、戦時下の問題とかではなくて、それ以降に起こって具体的に被害者の方がいらっしゃるということでありまして、私は認識を異にする問題というふうに理解しておりますが、外務省のその主張というのは従来のものです。
 そこで、中国側からそのような、中国政府から被害者救済に対して、これは両国の共同作業チームがあるわけですので、その協議の場に取り上げられたことがあるのかということを、九日、外務省に対して質問いたしました。外務省の審議官からは、いわば道義的とかそういった面で、中国側は、この話についても、日本としても何かできるのかというような話はあったことはございますという御答弁がございました。
 そこで、今、中国に与党の三幹事長が渡って胡錦濤主席にお会いするわけですが、この中で、小泉首相が主席への親書を託したというふうに伝えられております。その中の問題は、やはり日中の戦争犠牲者へのおわびと哀悼の意ということがあると思いますけれども、私は、この今起こっている問題に対しての信頼関係、被害者に対して日本政府にこのようなおわびの思いというのがあるならば、裁判ということでいつまでも長引かせるべきではない。
 ほかにもいろいろ、戦後処理ということではございますが、この毒ガスの問題に関しては、日中の共同作業チームを組み、撤去に対して中国政府と協力態勢でやっているわけですので、いま一歩踏み込んで、被害者の問題ということを解決していくということは、これは、川口大臣のリーダーシップに期待いたします。
 小泉総理とともに、いたずらに裁判で決着すべきものではなく、人道的な、道義的な問題として、司法の側からも、いわゆるこちらの方に、行政、立法に投げられた宿題でもございますので、ぜひとも一度このテーマについてお話をしていただきたいというお願いが、きょうの質問の、私自身の要請も込めての提案でございますが、一言お願いしたいと思います。
川口国務大臣 中国の方でこの遺棄化学兵器でいろいろな被害を受けられた方がいらっしゃるということについては、そういうことがあったということは、大変に残念なことだと私も思っております。
 それで、一応、地裁で、被告側、国側が勝訴をしたという判決があったわけでございまして、今後について、裁判という枠内で引き続きどういうことになっていくのか不明でございますけれども、我が国として今できることは、今後そういう被害が起きないように、やはり、中国と話し合いを進めながらできるだけ早くこれを処理していくということであるかと思います。プラントをつくる、その他いろいろな準備があってしばらく時間が必要ではありますけれども、できるだけ早くこれをしたいというふうに思っています。
 それで、賠償の件については、これは裁判で国も主張をさせていただいたということですが、請求権の問題、これについては存在をしていないというのが両方の、日中の認識でございますので、国としては、こういったことはまず早期処理ということで考えていきたいと思っているわけでございます。
中川(智)分科員 私は、請求権の問題というのを超えて、その後に起きた被害に関して、やはりその被害を受けた方々が実際に存在して、結局は裁判、司法の判断を仰ぐしかないというのは、いかにも情けないという思いがあります。また、本当に、人を助けていく、人道的、道義的責任というのは厳然としてあるというふうに考えますので、今の御答弁を超えて、裁判所から出て裁判長が話しましたそのものはきっちり正確な言葉にしてまたお届けいたしますので、ぜひとも政府として、もう少し人に対してきっちりと救っていくということを、御検討をお願いしたいと思います。
 続きまして、SARSに関連して質問いたしますけれども、まだ鎮静化の方向というところまで至っておりませんで、私も北京の状況しか余り承知はしておりませんが、特に北京に関連して質問をいたします。
 北京は、四月七日に、アメリカ、フランス両国は退避勧告というのをいち早く出しました。そして、日本大使館を通じまして在留邦人に対しての一時的な帰国の勧告というのが出されたのが、二十二日おくれて四月二十九日。これは当然、ゴールデンウイークの前で、在留邦人にも非常に混乱が生じました。日本に戻るにしてもお金が必要だし、チケットもとらなきゃいけない。ところが、もう休みだとか、非常に人が込んでいるとか、銀行なども閉まっているとかということで、とても混乱をいたしました。これは済んだことなのですけれども、どうしてこういつも後手後手に回るのか。いち早い対応というのをきっちりしていくということが基本だと思うんですね。
 そしてまた、その情報に関しましても、在留邦人は、大使館からきっちりとファクスなりで企業とかにそれが伝達されたということではございませんで、私も、私の家族が今も北京におりますので、これはきっちりした情報だったんですけれども、結局、他の企業の方からファクスをいただいて、ああ、こういうことなのかということで、とても大変な思いをしたということです。
 在留邦人の身の安全を守るというのは大使館の本当に大切な仕事だと思うのですが、非常に在留邦人に対しての対応、一生懸命やってくださっているんでしょうが、なかなか受け手としては、また日本にいます家族としましては、一体どうなっているんだろうということで不安を募らせております。
 なぜこんなにおくれての一時帰国勧告だったのか、それを、まず事情を伺いたいと思います。
鹿取政府参考人 今先生から御指摘ございましたように、四月二十九日に、在留邦人の方々に対して、一時的に北京を離れることが可能な方は帰国の可能性を含め検討されることをお勧めしますとの案内を発出したことは事実でございます。また、ちょうど連休前という事情もあり、相当の混乱が出たということの御指摘でございましたが、そうであるとすれば、我々としても本意ではなく、大変申しわけなく存じておるところでございます。
 その背景について一言御説明させていただきます。
 北京市については、外務省の危険情報の内容には変化はないわけでございます。四月二十二日に発出された危険情報は、今御指摘の四月二十九日の時点でも継続されておりますし、また、今でも継続されております。その内容は、北京市については渡航の是非を検討してください、不要不急の渡航については延期をお勧めします、こういう内容でございます。
 しかしながら、北京市については、SARSの長期化の状況等を背景に、感染拡大防止のために、市からさまざまな厳しい措置が次々ととられたり、あるいはとられる予定となっておりました。
 例えば、小学校の休校措置であるとか、人の集まる娯楽場の営業停止、感染者、そのおそれのある人々の隔離、建物の閉鎖等、こういういろいろな措置でございます。そのため、在留邦人の方々も、隔離されたり、あるいは通常の生活においていろいろ不便をこうむる可能性が高まりました。
 また、大学においては、厳しい出入りの規制がとられ始めました。そのため、我々は、四月二十八日に、大使館より留学生の方々に対して、勉学、研究の必要上、真に残留の必要がある場合を除き、帰国することが適当と考えますので、ぜひ御検討いただきたい、こういう旨の案内を発出しました。そして、こういう背景の中で、二十九日、先ほど申し上げたとおりの案内を発表した次第です。
 この案内の背景というのはSARSの問題がありますが、SARSの問題という状況の中で北京市がいろいろととっている厳しい措置、とり始めた厳しい措置に対して、邦人の方々がいろいろ生活上の御不便あるいは不都合が生じる、こういう可能性があると判断してとった措置でございます。
 たまたま連休前ということで、いろいろ混乱を招いたとすれば本当に不本意でございますけれども、我々としても、先生御指摘のとおり、的確かつ迅速な情報提供というものはこの問題のために極めて重要だと考えておりますので、引き続き全力を挙げて努力してまいりたいと思います。
中川(智)分科員 それでは、一時帰国勧告が解除される要件というのが、今後動きをいろいろ見まして中国に対しても変わっていくと思いますが、もしも一時帰国勧告というのが解除されるならば、それはどのような条件を満たした場合であると考えられるのか、また、見通しについてお伺いしたいと思います。
鹿取政府参考人 今申し上げましたように、外務省の渡航情報については四月二十二日の時点と変わっておりませんで、その内容というのは、北京市については渡航の是非を検討してください、不要不急の渡航については延期をお勧めしますという内容でございます。
 これに加えて、先ほど先生が御指摘になりました四月二十九日の勧告をしたわけでございますが、これは、医学的な考慮と同時に、非常に生活にいろいろな不便が生じたり、例えば隔離される危険が非常に高いとか、いろいろな不都合が生じる可能性があるものですから、そういう考慮より、大使館より改めて、一時的に北京市を離れることが可能な方は、帰国の可能性を含め検討されることをお勧めしますという内容を発表した次第でございます。
 そして、この発表の内容につきましては、これからの状況を見まして、北京市のいろいろな対応、こういう状況を見まして判断してまいりたいと思っております。
中川(智)分科員 北京市の状況とか、そういうふうにおっしゃいますが、本当に、情報をきっちりどういうところからとって、そして日本政府として日本大使館と連携してどのように積極的に手段を、手だてを打っていくかということが大事であるのですが、四月二十九日、あんなぎりぎりになるまで、どこの国よりも遅い対応しかできなかった。そして、最初は中国政府の発表をうのみにして、その後修正して、これは大変だということになって、慌ててそうなったわけですね。
 情報というのは、今も一生懸命とっていらっしゃるでしょうけれども、公式発表ではなくて、やはりいろいろな手段を通じて在留邦人の身を守るために判断していくということは、悠長にできないと思います。
 また、今の状態が四月二十九日の一時帰国勧告から続いているというのは理解しましたが、今だんだん鎮静化はしています。日本に帰ってきた人がまた戻ろうというときに、その情報というのは、中国のそのような見解ではなくて、日本としての独自の判断と独自のデータの基礎というのがあって出される。それは厚生労働省といろいろお話しされるんでしょうけれども、そのような要件というのは他省庁と話をしているわけでしょうか。
鹿取政府参考人 今御指摘の、医学的な観点からのいろいろな情報については、我々、世界保健機構の情報であるとか、また現地大使館の情報、それから国内ではもちろん関係省庁とも協議いたしますけれども、そういう状況を踏まえて対応しております。
中川(智)分科員 それでは、今、一時帰国勧告というのを解除される見通しはお持ちになっていないという理解でよろしいんですか。
鹿取政府参考人 今北京在住の邦人の方々に、もしも可能であれば御帰国をお勧めしますと申し上げました背景の大きなポイントは、SARSという状況がある中で、北京市のいろいろな措置が新たに講じられました、移動もかなり制限を受けますし、いろいろな隔離の場所等もできましたので、日常生活においていろいろ支障が出る可能性もあるものですから、そういう観点から、もしも御帰国できるのであれば御帰国をお勧めしますという勧告を二十九日にお出ししたわけでございます。
 また、医学的観点から世界保健機構等の情報等を踏まえまして出している危険情報は、先ほど申し上げましたように、四月二十二日以降、変わっていないわけでございます。
 ただ、今の、四月二十九日に我々が出しました帰国をお勧めする内容については、北京市がこれからどういうような形でいろいろ感染防止対策をとっていくかどうか、そこに住んでおられる在留邦人の方々が生活上スムーズに生活できるかどうか、こういう点も踏まえまして判断したいと考えている次第でございます。
中川(智)分科員 北京市の方はスムーズに暮らしなんかできていないわけですよ。それはできていませんよね、いろいろなところから患者が発生し、ホテルの中でも本当に売店も閉まり、いろいろレストランも閉まり、ホテルも北京飯店とか長富宮とかも休業状態ということで。そして、こちらから積極的に情報を大使館の方に聞かないと、向こうからはなかなか親切に情報はくれない。ほかのところからむしろ情報が入る。その情報を入れるための日本人の方とかはどんどんどんどん日に日に少なくなる、ますます不安になるという状況にあるということはしっかり認識していただきたい。それに対して、やはり大使館と外務省というのが連携をもっとしっかりとっていただきたい。これは要望で、お願いしておきます。
 それで、一番不安に思っている在留邦人の要望は、日中友好病院というのは今、中国に対する経済援助で日本がつくって、そこは日本語のわかる医師もいて、一番安心してその医療機関を皆さん使っていたわけなんですが、日中友好病院はSARS指定病院になりましたので、もしも自分がSARSかもわからないと思って診察に行く分にはいいかもわかりませんが、ほかの病気になったり、病気を抱えていらっしゃる方もいますし、急に不慮のいろいろな事故というのもございまして、そんなときに安心してかかれる医療機関が現在はないというのがとても心配の種です。
 これは大臣に伺いますが、それに対して、やはり緊急に何か手を打たなければいけないと思うし、打っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
川口国務大臣 今、北京に、あるいは中国にいらっしゃる日本の方は、先生がおっしゃるように、毎日大変に不安な気持ちを抱えているということはよく認識をしています。そして、家族が日本にいて、あるいは向こうにいて、大変にお互いのことが心配だということも、そのとおりだと思います。
 それで、医療体制、中国で、おっしゃったように日中友好病院がSARSの指定の病院になっておりまして、そういう意味では、外国人が仮にSARSになったということを考えますとそこの扱いということは万端、外国人用のSARSに関するホットラインもあるようですので、ということですけれども、それ以外のとき、大変に心配でいらっしゃると思いますが、これについては外国人向け診療を行っている医療機関を受診することをお勧めいたしていまして、中国の場合、どのような形でそれを邦人の方に情報をお流ししているかということについては、万全の体制でそれが行われているかどうか、さらにきちんと指示をして確認をさせたいというふうに思います。
 いずれにしても、医療の問題は重要ですので、政府としてさらに何かできるかどうか、きちんと検討をさらに続けたいと思います。
中川(智)分科員 余り悠長な話じゃないわけですね。毎日毎日そのような不安を抱えながら暮らしているわけで、在留邦人の身の安全を守るというのは、第一義的に非常に大事だと思うんです。
 大使館の中でも医務官、お医者さんもいらっしゃるわけですし、いろいろな取り決めの中で医療行為ができないということだそうですが、一つには、大使館が責任を持って、在留邦人の方に何か健康状態の不安があったときに、まずはそこにも行って相談ができるという体制をつくっていただきたい。
 それと、JICA、四人、中国の方に派遣してくださいまして、金曜日には帰国されていると思います。その状況がどうだったかという情報に対して早くお示しいただきたいのと、あの方たちは、行ってくださったことはとても感謝しておりますが、六日間、たった六日間の滞在でございました。やはりこれは、医療のさまざまなことを教える、呼吸器の専門の先生が医療の指導などをなさるということは大事だし、情報を得てくるというのは大事かもわかりませんが、私は、この第二弾というのを早急にもう一度派遣して、今度は一カ月なり二カ月の、長期の向こうへの滞在をしっかりと責任を持ってやっていただきたい。これに対しての御答弁をお願いします。
鹿取政府参考人 今先生の御指摘になりました国際緊急援助隊、五月十一日から十六日まで北京に行きまして、戻ってまいりました。
 そして、この緊急援助隊は、中国政府の要請によりまして、中国政府に対するいろいろな医療支援、技術的な支援、そういう目的のために参りましたわけでございますけれども、その間、在留邦人の代表の方々とはお話しする機会がございまして、その話し合いの内容については、大使館のホームページあるいはメルマガなどで、在留邦人の方々に対してまた情報が行くと思います。
 また、今後、どういうタイミングでこういう国際緊急援助隊、こういうものを派遣するかどうかについては、中国政府の要望、あるいは今後の医療状況等を見て判断してまいりたいと思います。
中川(智)分科員 中国政府からの要望がなければ行けないものでしょうか。
鹿取政府参考人 済みません、ちょっと紋切り型で。
 この国際緊急援助隊という仕組みそのものは、そういう中国政府の要望に基づいて行くわけでございますけれども、そのほかにも、いろいろ在留邦人の方々に対する医療について相談に応じるという方法はございます。
 先ほど先生が御指摘になりましたように、我々は、医務官もおりますし、医務官の方々からも、いろいろ御相談があればお答えできますし、また、我々の方からいろいろ在留邦人に対する説明というものを行ったことがございます。
 ただ、今の状況ですと、なかなか、北京において大勢の人が集まる、そういう会合を持つこと自体が割と、状況によっては必ずしも適当ではない、感染防止の観点から。そういうことで、大きな集会は今回も持たなかったわけでございますけれども、ただ、医務官による説明であるとか、あるいは、そのほか、在留邦人の方々の医療相談というのは、いろいろ考えていくことは可能だと思います。
中川(智)分科員 私は、六日が短いとか長いとかということではなくて、短いからこそ一堂に集めなければいけない。一カ月でも行ってくださっていれば、その間に小規模のグループで話ができるわけですね。私は、本当にもう少し長くきっちり行っていただいて、在留邦人の方々への対応を親切にやっていただきたいと思います。
 それで、先ほどの質問、二点ありました。最初の、日本大使館がきっちりとした相談ができるかどうか、大臣、お願いします。
川口国務大臣 大使館の医務官に対しましては、これは本来的には大使館の職員あるいはその家族のためということですけれども、しばらく前に、このSARSのことということではないんですけれども、通達を出していまして、広く、現地の邦人の方で健康相談ということをなさりたい方があれば、積極的にそれを行うようにということでやっております。医療行為はできないんですけれども、精神的にあるいは御相談なさりたい方も大勢いらっしゃるでしょうから、中国において改善の余地がないかどうか、これは至急検討をしたいと思います。
 それから、国際緊急援助隊は、これは中国に支援をするということでございますので、中国からの要請があって、それで初めて行けるということでございまして、必ずしも邦人のためではないということです。
中川(智)分科員 わかりました。
 邦人のためにもやはり出していただきたい。ちゃんと外務省が判断をして、在留邦人のために出していただきたい。
 そして、今、相談には乗られるということでしたが、そうしたらば、ちゃんと在留邦人にきめ細かい情報を流して、このように受け付けるからということはやっていただきたいと思います。
 そして、このようなことは、いつ、どこでまた発生するかわかりませんので、外務省としては、日ごろからちゃんとした医療体制での在留邦人に対する強化ということは、今回のことを教訓に、しっかり取り組んでいただきたいと思います。
 時間がなかったので全部が質問できませんでしたけれども、ぜひとも、SARSに打ちかつためにも、在留邦人に一人の被害者も出ないような外務省での体制をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
 ありがとうございました。
持永主査 これにて中川智子君の質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
持永主査 これより裁判所所管について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。竹崎最高裁判所事務総長。
竹崎最高裁判所長官代理者 平成十三年度裁判所所管一般会計歳入歳出決算の概要を御説明申し上げます。
 裁判所所管の歳出につきましては、当初予算額は三千百九十七億八千五百三十七万円余でありますが、これに内閣府所管からの移しかえ額千百七十二万円余、財務省所管からの移しかえ額二億七千六百九十九万円余、平成十二年度からの繰越額八十八億四千五百四十二万円余、予算補正追加額五十九億五千百七十九万円、予算補正修正減少額二十九億八千百九十八万円、差し引き百二十一億三百九十六万円余が増加となり、歳出予算現額は三千三百十八億八千九百三十三万円余となっております。
 これに対しまして、支出済み歳出額は三千二百二十五億七千五百二十九万円余であり、歳出予算現額との差額は九十三億千四百四万円余であります。
 この差額のうち、翌年度へ繰り越した額は七十七億二千二百九十三万円余、不用額は十五億九千百十一万円余であります。
 不用額となった経費は、人件費十三億千百二十七万円余とその他の経費二億七千九百八十三万円余であります。
 裁判所主管の歳入につきましては、歳入予算額は九十八億三千九百六十五万円余であります。
 これに対しまして、収納済み歳入額は百二十二億百六十二万円余であり、歳入予算額に対し二十三億六千百九十六万円余の増加となっております。
 この増加は、相続財産で相続人不存在のため国庫帰属となった収入金の増加等によるものであります。
 以上、平成十三年度裁判所所管一般会計歳入歳出決算について御説明申し上げました。
 よろしく御審議のほどお願いいたします。
持永主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院石野第一局長。
石野会計検査院当局者 平成十三年度裁判所の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
持永主査 以上をもちまして裁判所所管についての説明は終わりました。
 これより質疑に入るのでありますが、その申し出がありませんので、裁判所所管については終了いたしました。
    ―――――――――――――
持永主査 これより会計検査院所管について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。杉浦会計検査院長。
杉浦会計検査院長 平成十三年度会計検査院主管一般会計歳入決算及び会計検査院所管一般会計歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 会計検査院主管の歳入につきましては、予算額二千四百八十二万余円に対しまして、収納済み歳入額は二千六百七十六万余円であり、差し引き百九十四万余円の増加となっております。
 収納済み歳入額の主なものは、国有財産貸付収入二千四百七十九万余円であります。
 次に、会計検査院所管の歳出につきましては、当初予算額百七十二億八百五十七万余円でありますが、これに予算補正追加額、予算補正修正減少額及び前年度繰越額差し引き十四億五千九百十四万円を加えた予算現額百八十六億六千七百七十一万余円に対しまして、支出済み歳出額は百八十二億一千五百十七万余円でありますので、その差額四億五千二百五十四万余円を不用額といたしました。
 支出済み歳出額の主なものは、人件費百三十四億五千三百五万余円、会計検査情報処理業務庁費二十八億七千五百七十四万余円となっております。
 以上、簡単でございますが、平成十三年度における会計検査院関係の決算の説明を終わります。
 よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
持永主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院石野第一局長。
石野会計検査院当局者 平成十三年度会計検査院の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
持永主査 以上をもちまして会計検査院所管についての説明は終わりました。
 これより質疑に入るのでありますが、その申し出がありませんので、会計検査院所管については終了いたしました。
 次回は、明二十日午前十一時から本分科会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時五十二分散会


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