衆議院

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第1号 平成16年5月17日(月曜日)

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本分科会は平成十六年四月二十八日(水曜日)委員会において、設置することに決した。

五月十四日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      岡本 芳郎君    斉藤斗志二君

      鈴木 恒夫君    早川 忠孝君

      武藤 嘉文君    奥田  建君

      岸本  健君    細川 律夫君

      松崎 公昭君    東  順治君

五月十四日

 鈴木恒夫君が委員長の指名で、主査に選任された。

平成十六年五月十七日(月曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 鈴木 恒夫君

      宇野  治君    岡本 芳郎君

      斉藤斗志二君    奥田  建君

      川内 博史君    小林千代美君

      中川  治君    楢崎 欣弥君

      細川 律夫君    前田 雄吉君

      松崎 公昭君    松崎 哲久君

      三日月大造君    上田  勇君

   兼務 津村 啓介君

    …………………………………

   外務大臣         川口 順子君

   環境大臣         小池百合子君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     細田 博之君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 小野 清子君

   内閣官房副長官      杉浦 正健君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   環境副大臣        加藤 修一君

   環境大臣政務官      砂田 圭佑君

   衆議院事務総長      駒崎 義弘君

   裁判官弾劾裁判所事務局長 天野英太郎君

   裁判官訴追委員会事務局長 高田 健一君

   国立国会図書館長     黒澤 隆雄君

   会計検査院長       森下 伸昭君

   会計検査院事務総局事務総長官房審議官       小川  広君

   会計検査院事務総局事務総長官房審議官       大濱 正俊君

   会計検査院事務総局事務総長官房審議官       利光 由行君

   会計検査院事務総局第一局長            石野 秀世君

   会計検査院事務総局第二局長            増田 峯明君

   最高裁判所事務総長    竹崎 博允君

   政府参考人

   (宮内庁次長)      羽毛田信吾君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  伊藤 哲朗君

   政府参考人

   (警察庁刑事局組織犯罪対策部長)         知念 良博君

   政府参考人

   (警察庁交通局長)    人見 信男君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   北島 信一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 西宮 伸一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 川田  司君

   政府参考人

   (外務省大臣官房領事移住部長)          鹿取 克章君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局国際社会協力部長)     石川  薫君

   政府参考人

   (外務省経済協力局長)  古田  肇君

   政府参考人

   (国土交通省都市・地域整備局下水道部長)     谷戸 善彦君

   政府参考人

   (環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長)   南川 秀樹君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局長)            松本 省藏君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局環境保健部長)       滝澤秀次郎君

   政府参考人

   (環境省環境管理局水環境部長)          吉田 徳久君

   政府参考人

   (環境省自然環境局長)  小野寺 浩君

   政府参考人

   (沖縄振興開発金融公庫理事長)          八木橋惇夫君

   政府参考人

   (国際協力銀行総裁)   篠沢 恭助君

   環境委員会専門員     遠山 政久君

   決算行政監視委員会専門員 熊谷 得志君

    ―――――――――――――

分科員の異動

五月十七日

 辞任         補欠選任

  斉藤斗志二君     宇野  治君

  岸本  健君     中川  治君

  松崎 公昭君     前田 雄吉君

  東  順治君     上田  勇君

同日

 辞任         補欠選任

  宇野  治君     斉藤斗志二君

  中川  治君     小林千代美君

  前田 雄吉君     川内 博史君

  上田  勇君     高木美智代君

同日

 辞任         補欠選任

  川内 博史君     三日月大造君

  小林千代美君     楢崎 欣弥君

  高木美智代君     大口 善徳君

同日

 辞任         補欠選任

  楢崎 欣弥君     松崎 哲久君

  三日月大造君     松崎 公昭君

  大口 善徳君     東  順治君

同日

 辞任         補欠選任

  松崎 哲久君     岸本  健君

同日

 第二分科員津村啓介君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十四年度一般会計歳入歳出決算

 平成十四年度特別会計歳入歳出決算

 平成十四年度国税収納金整理資金受払計算書

 平成十四年度政府関係機関決算書

 平成十四年度国有財産増減及び現在額総計算書

 平成十四年度国有財産無償貸付状況総計算書

 〔皇室費、国会、裁判所、会計検査院、内閣、内閣府(本府)所管、沖縄振興開発金融公庫、内閣府(警察庁)、外務省及び環境省所管〕


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     ――――◇―――――

鈴木主査 これより決算行政監視委員会第一分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりました鈴木恒夫でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 本分科会は、皇室費、国会、裁判所、会計検査院、内閣、内閣府(本府、警察庁、金融庁)、外務省、環境省所管及び沖縄振興開発金融公庫並びに他の分科会所管以外の国の会計についての審査を行うことになっております。

 なお、各省庁の審査に当たっては、その冒頭に、決算概要説明、会計検査院の検査概要説明及び会計検査院の指摘に基づき講じた措置についての説明を聴取することといたします。

 平成十四年度決算外二件中、本日は、環境省所管、皇室費、国会所管、裁判所所管、会計検査院所管、内閣府所管中警察庁、内閣所管、内閣府所管中本府、沖縄振興開発金融公庫、外務省所管について審査を行います。

 これより環境省所管について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。小池環境大臣。

小池国務大臣 環境省の平成十四年度歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 まず、平成十四年度の当初予算額は二千六百四十三億五千六百二十八万円余でありましたが、これに予算補正追加額百七十二億二千百五十三万円余、予算補正修正減少額二十七億一千六十万円余、予算移しかえ増加額百八十六億一千七十四万円余、予算移しかえ減少額三十億九千四百二十八万円余、前年度からの繰越額四百十八億二千六十四万円余を増減いたしますと、平成十四年度歳出予算現額は三千三百六十二億四百三十二万円余となります。この予算現額に対し、支出済み歳出額二千七百二十二億九千九百六十七万円余、翌年度への繰越額四百四十九億三千七百五十二万円余、不用額百八十九億六千七百十一万円余となっております。

 以上、簡単ではありますが、平成十四年度の決算の概要を御説明申し上げました。

 よろしく御審議のほどお願いを申し上げます。

鈴木主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院大濱審議官。

大濱会計検査院当局者 平成十四年度環境省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項四件、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項二件であります。

 まず、不当事項について御説明いたします。

 検査報告番号二六一号及び二六二号の二件は、環境保全施設整備費補助金の経理において、仕入れ税額控除した消費税額に係る補助金を返還していないものであります。これは、消費税の確定申告等により、補助対象経費に含まれる消費税額のうち課税仕入れに係る消費税額として控除できる金額が確定しているのに、これに係る補助金相当額を返還する措置をとっていなかったものであります。

 同二六三号及び二六四号の二件は、廃棄物処理施設整備費国庫補助金が過大に交付されているものであります。これは、補助金の交付額の算定に当たり、事務費率が改定されていたのに、改定前の事務費率を適用して事務費を算出していたため、補助金が過大に交付されているものであります。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。

 その一は、廃棄物処理施設整備費国庫補助金の交付額に係る事務費の算出方法に関するものであります。

 廃棄物処理施設整備費国庫補助金の交付額は、その整備に要した工事費及び事務費を対象として算定することとされております。このうち、補助対象となる事務費の額すなわち事務費基準額は、工事費に、工事費の額の区分に応じて定められた事務費率を乗じて得た額の範囲内とするなどとされておりまして、この事務費率は、一般管理費率、現場管理費率等と同様、工事費が増大するにつれて逓減するものとなっております。

 検査いたしましたところ、工期が二カ年度以上にわたっている廃棄物処理施設の建設工事について、全体工事費の額を補助対象となる各年度に分割し、その分割した各年度の工事費の額に応じた事務費率を乗じるなどして各年度の事務費基準額を算出している事態が見受けられました。

 しかし、事務費基準額は、工事費の額の増大に応じて逓減する事務費率を乗じて算定することとされておりますので、各年度に分割した工事費の額に全体工事費の額に適用される事務費率と比べて高率となる事務費率を乗じて事務費基準額を年度ごとに算出しているのは適切ではないと認められました。

 これについて当局の見解をただしましたところ、環境省では、十五年五月に交付要綱を改正し、事業が二カ年度以上にわたる場合の事務費については、全体工事費の額に対応した事務費率に基づき算出することとし、その算出した額の範囲内で各年度に配分することとする処置を講じたものであります。

 その二は、廃棄物処理施設整備事業の施設建設工事請負契約の入札における最低制限価格に関するものであります。

 環境省では、ごみ処理施設等の廃棄物処理施設の整備を行う市町村等の事業主体に対し、廃棄物処理施設整備費国庫補助金等を交付しておりますが、この事業の施設建設工事請負契約における最低制限価格の運用については、昭和五十八年に旧厚生省から、最低制限価格制度を採用するに当たっては、慎重に検討するものとし、競争の利益を阻害することのないよう都道府県知事あて通知しています。

 そこで、最低制限価格制度がどのように運用されているかに着眼して検査いたしましたところ、最低制限価格を設定する必要性が乏しく、合理的根拠に基づいて設定することは困難であるのに、十分な検討を行わないまま従来からの慣例などにより最低制限価格を設定している事態が多数見受けられ、この中には、過去の施工実績等から契約の内容に適合した履行を確保できるとして選定されたのに、最低制限価格を下回る金額で入札したため排除されていて、競争の利益が阻害されることとなっているものが見受けられました。

 これについて当局の見解をただしましたところ、環境省では、平成十五年十月に都道府県に対して通知を発し、指名競争入札等における競争の利益を阻害することのないよう、廃棄物処理施設請負契約では、原則として最低制限価格を設定しないこととし、やむを得ず設定する場合には、その必要性について十分検討した上、設定理由等を明確にするよう事業主体に周知させる処置を講じたものであります。

 以上をもって概要の説明を終わります。

鈴木主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。小池環境大臣。

小池国務大臣 平成十四年度の決算検査報告において掲記されております事項につきましては、会計検査院の御指摘のとおりでありまして、まことに遺憾に存じております。

 指摘を受けました事項につきましては、直ちに是正措置を講じましたが、今後なお一層厳正な態度をもって事務の執行の適正を期する所存であります。

鈴木主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木主査 以上をもちまして環境省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

鈴木主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。中川治君。

中川(治)分科員 おはようございます。民主党の中川治でございます。

 私は、大阪府議会で十二年間府会議員をやりまして、去年の十一月にこちらへ参りました。その府会議員時代に、大体の議員というのは、下水道を整備するということになりますと、いいことだということで賛成をするということでありました。しかし、私は、下水道整備ということよりも合併処理浄化槽の方が、特に、都市部でも調整区域、山間部等に入っていきますと合理的ではないか、あるいは安いのではないかということで、ずっと自分自身を合併処理浄化槽主義者だというふうに決めてやってまいりました。

 そんなことの中で、きょうは下水道と浄化槽の問題について、わずかな時間ですけれども質問させていただきたいと思います。

 大臣、体調がすぐれないようでございますので、一番最後に決意を込めて一言だけお聞きをしたいと思いますので、ゆっくりしておいていただいたらいいかと思います。

 まず、生活排水の合併処理浄化槽の整備支援についての決算状況ですけれども、平成十四年度についてはどうなっておりますでしょうか。

南川政府参考人 平成十四年度の浄化槽予算でございますが、全体で百六十三億六千万でございます。執行率が九五・一%でございます。

 この浄化槽予算、二つに分かれておりまして、一つは個人が設置する浄化槽に対する補助でございまして、これが、予算が百四十二億九千万で執行率が九六%、それから、市町村が設置、維持管理いたします市町村整備推進事業につきましては、予算額が二十億七千万で執行率が八九・四%となっております。

中川(治)分科員 きょうは市町村設置型の浄化槽の問題について特に取り上げたいというふうに思っております。消化率が八九%、一〇%ほど余っているということでございまして、困ったことやな、そんなふうに思っております。

 浄化槽の問題につきましては、たしか平成十二年の十月十一日、私が府会議員時代に、もう今から三年半ほど前ですけれども、通達が出て、これはしめたというふうに思いました。

 これは何かといいますと、厚生省と農林水産省それから当時の建設省、要するに、合併浄化槽を扱っております厚生省、農業コミュニティープラントを扱っています農林省、それから下水道をやっている建設省、この三つの省がこれからの生活排水処理について、「汚水処理施設の効率的な整備の推進について」、こういうことで、どれが一番安いか実際のところ比較をして、そして一番安いものを選んでもよろしいということを、ある意味では初めて三つの省が意思統一をして通達を出されたということであります。

 それまでは、いろいろな意味で、マスコミなんかでも、農業コミュプラの排水管と建設省の下水管が同じように流れておるじゃないか、非常にむだだというふうな指摘があったかと思います。こういうことをなくしていこうということで出たのがこの通達だった、そんなふうに思います。

 そして、この中には「経済比較のための基本諸元」、諸元というのはどういう意味なのか私もあれですけれども、統一的な経済比較をするためのマニュアルを都道府県で作成しなさいということで、そういう基本的な数字が示されました。そういうことで、私は、率直に言いまして、このときは大阪府議会におりまして、この基準をめぐって非常にもめたわけでございまして、これについて少しお聞きをしたい、こんなふうに思っております。

 まず、「経済比較のための基本諸元」の中に、きょうは国土交通省の下水道の方にもお越しをいただいておりますので、この中に、例えば公共下水道の維持管理費は幾らかということで、平均して一年間で一メートル当たり八十円ということでコスト計算をしなさい、こういうふうになっております。この一メートル八十円ということの根拠を簡単に御説明いただけたらと思います。

谷戸政府参考人 ただいま先生の御指摘のございました平成十二年の十月十一日の通知でございますが、当時の厚生省、農林水産省、建設省が調整を合意いたしました上で、下水道と浄化槽、農業集落排水事業などの他の汚水処理施設の経済比較を行う場合の参考として示したものでございます。

 今御指摘の下水道管渠の維持管理費の八十円と申しますのは、小規模で分流式の汚水管渠のみを維持管理しております三十四の全国の市町村の、箇所数でいきますと三十六カ所でございますが、平成八年から平成十年まで実態調査をいたしまして、その結果といたしまして、八十三円パー・メーター・年という結果が得られまして、その値を根拠としているところであります。

中川(治)分科員 小規模の地域での実施例ということを調べたと。

 例えば大阪なんかの場合は、もともと今国が進めています流域下水道計画というのは、もう何十年も前に一番最初に始めたのは大阪府でございまして、流域ごとに下水道整備をやっていこう、それを後になってこういう方式を全国的に展開しよう、こういうふうになりました。ただ、都市部では非常によかったんですけれども、市街化区域では非常によかったんですけれども、調整区域あるいは山手の方なんかに行きますともうこれ以上今のやり方では成り立たない、こういうことで見直すべきではないかという議論をずっとやっておりました。

 率直に申し上げておきますけれども、私は、大阪で見直しの急先鋒で十年間旗振り役をやっておりましたので、大阪府の下水道課では、中川が国会に行ってよかった、嫌な質問がなくなった、こういうふうに今ごろきっと思っておられると思います。ここを見直さないと、私は、都市部全部、市町村が破産をしてしまう、そんな思いがしておりますので、ぜひ臨機応変に対応していただきたいというふうに思っております。

 おっしゃったように、小規模な、比較的郡部での計算で一メートル八十円だということなんだと思います。ただ、実際のところ、大阪では、去年の二月ぐらいでしたか、基本的なマニュアルをつくろうというたときに、国土交通省から通達をいただいております下水道課といいますか土木部は、一メートル八十円で計算せんかい、こういうことで、僕らは、大阪の現状からすれば、何言うてんねん、三百六十円は最低かかっているがなということで、八十円か三百六十円かというてもめにもめました。足して二で割ったんでは二百二十円になるんですね。これでは僕の立場がないというので二百三十円ということで最後話がついて、二百三十円ということで通達を出そう、そんなふうなことになったことを今でも覚えております。

 この辺について、もう少し柔軟に改めていくつもりはないですか。

谷戸政府参考人 先ほど申しましたように、マニュアルにあります基本的な数字といいますのが、経済比較を行う際にあくまでも参考としていただくというふうな数字として示しているものであります。そのときの三省共同通知の中でも、「平均的な数値であることから、各事業主体において、地域の実態に即した数値を用いることを妨げない。」というふうにしていただいておりまして、大阪府さんが、今先生おっしゃいましたように二百三十円ということで進められているということについても私どもも了知をしておるところでございます。

 このように、各地方公共団体の実態に応じた独自の数値を使っていただければよろしいかなというふうに私たちは思っております。管渠の維持管理というのは非常に、地方部の方、管渠の管径でございますとか状況によって大きな差がございますので、地域の実情に応じた形で使っていただければなというふうに思っております。

 しかしながら、今後の社会情勢等の変化を踏まえながら、三省庁、環境省、国土交通省、農林水産省の方で見直しの必要性も含めて十分相談をしてまいりたいというふうに考えております。

中川(治)分科員 ぜひ柔軟にお願いをしたいと思います。

 もう一つ、下水道の耐用年数。この耐用年数についても非常に論争になりました。国の方からは、通達を出してよかったよかったということなんですけれども、現場ではこういうことでもめておるということをぜひ大臣にも認識をいただきたいと思いますし、同僚議員の皆さんにも認識をいただきたいと思います。

 耐用年数について、例えば下水道の管渠、これは五十年だというふうに書いてあります。そして、浄化槽については三十年、こういうふうに書いてあります。もうこの根拠は結構です。

 ところが、十二年にこの通達を出してから平成十四年の二月、社団法人日本下水道協会というところが、効率的な汚水処理施設整備のための都道府県構想マニュアル案、こういうのを出されまして、ここには七十二年と書いてあるんですね。七十二年で頑張れ、こういうふうに書いてあるわけであります。まじめな大阪府の土木部なんかは、これが実は私が府議会議員最後のときにもうもめにもめまして、七十二年なんだ、こういうことで頑張りはったんですね。

 根拠は何なのやろなと今になって気がついたんですが、こういうものが平成十四年の二月に、社団法人、これは下水道課なんかが具体的に資料を出すときによく通達がわりに使われる団体で、技術的なことについてはここを通じて出される、ここに七十二年だというふうに書いてある。それで、耐用年数は五十年でなくて七十二年で計算してほしい、こういうふうになっておりました。

 私はこれも、三省合意でやっと出したものを、後でこっそり下水道課は自分たちの有利なように修正をしているんじゃないかと非常に腹が立っておりまして、この辺の経過も簡単に御説明をいただけたらと思います。

谷戸政府参考人 先生御指摘のマニュアルの作成の考え方の中で、耐用年数につきましては二つ示しておりまして、各種法令等に基づくものということで下水道管渠は五十年というのを示しておりますとともに、施設の使用実績から求めました耐用年数としまして、管渠を五十年から百二十年という形でマニュアルの中では書かせていただいております。

 その五十年から百二十年をベースにいたしまして、実際の使用実績に基づきます耐用年数五十年から百二十年の中で、特に平均経過年数が四十年以上経過しました管渠につきまして、実態調査、十八市町村のデータでございますが、それを分析いたしまして、一つの参考例としまして、今先生おっしゃいましたように、五十年から百二十年というのは非常に幅がございますので、七十二年ということで示させたものでございます。

 それにつきましても、あくまでも、先ほど申しましたように一つの参考例ということでございまして、地域の実情等に応じて使っていただければというふうに考えておるところでございます。

中川(治)分科員 五十年から百二十年だから、足して二で割って七十二年だ、こういうことなんですかね。要するに、これは根拠はないんですよ。

 それと、百年単位で考えますと日本じゅうどこで地震が起こったっておかしくないということもありますので、これも大阪で私、非常にもめました。もめ倒して、そうしたら阪神・淡路大震災で下水がどうだったのか、合併浄化槽はどうだったのかということも、いろいろデータを引っ張り出しまして、例えば硬質プラスチック、FRPという合併処理浄化槽ですね、これは阪神大震災でも一基も壊れなかった。ところが、下水道は随所で連結がつながったりつぶれたり、そういうことがあった。

 しかし、FRPという合併浄化槽は開発されてまだ三十年ですから、実績がないんですよね。それで三十年なのかということで、結果、これは大阪でいろいろと議論をしまして、そしたら下水の七十二年を認めよう、そのかわりに合併浄化槽も五十年と計算せい、こういうことでやっております。

 要するに、お聞きになったように、国のこういう通達一本でも地元でこんな論争が起こっているということ、そしてその中で、本当の意味で比較を非常にしにくいということになっておるというのが現状であります。ぜひそういうことを御理解いただきたい。

 さて、質問なんですけれども、このマニュアルは、どちらが安いかということを計算しなさい、こういうことで出されたマニュアルなんですね。ただし、この安いかという比較のマニュアルにも非常に厳密性に欠けるところがある。

 しかし、それだけではなくて、例えば、工事をするのにどれだけ早いのか、生活排水処理を一〇〇%実現しないと川がきれいにならない、そして同時に海がきれいにならない、リサイクル社会の実現ということについても可能性はどちらが大きいのか、そういうことも加味して行政の事業選択をすべきではないのかな、そんなふうに思っております。

 そういう意味では、都市部では、市町村の財政力も含めてどう考えても百年とか、あるいは、場合によったらあと五十年たっても下水道が来ない、そういう地域も含めて、もう少し検討、見直す要素があるんではないのかな、そんなふうに思っておりますけれども、これはどうですか。

南川政府参考人 御指摘の点でございます。

 私どもとしましては、都道府県構想の見直しということが極めて重要だと考えております。その中で、それにも資するように、できるだけ浄化槽のよさを知ってもらおうということで、今年度からタウンミーティングを全国各地で行っていきたい、そして浄化槽のよさというものをわかっていただきたいというふうに考えております。そういった機運が盛り上がってこそ初めて、都道府県が音頭をとって、そういった構想の見直しも進んでいくんだろうというふうに考えておる次第でございます。

 いずれにしましても、効率的な汚水処理施設の整備は極めて重要でございます。したがいまして、御指摘を踏まえまして、見直しの必要性も踏まえまして、十分関係省庁と相談をしていきたいと考えておるところでございます。

中川(治)分科員 ひとつまた関係省も含めて御相談をしていただきたいと思います。

 私、実は国土交通委員でございますので、これはまた改めて一般質問みたいなものをつくっていただいて、下水の問題それから下水処理場の問題、いろいろな意味で過剰投資が非常に多いという実態もあります、またこれはこれで一遍改めて議論をさせていただきたいと思います。

 さて、この浄化槽の関係なんですが、先ほど言いました市町村設置型の浄化槽、これは何かといいますと、都市部でもこれをやってもよろしい、補助金は実際のところ下水道並みに出る、ここが非常にありがたいところでございまして、下水道並みに補助金が出る市町村設置型、これを私たちも大いに進めていこう、こういうことになっております。

 ただし、この事業の実施要綱というのを見てみますと、要するに、下水道法何とかということもいろいろあるのですけれども、実際のところは、都道府県が制定をしております流域下水道認可区域外ということになっておるんですね。要するに、流域下水道認可区域以外であれば、この市町村設置型の浄化槽を事業として導入をしてもよろしい、こういうことになっておるのです。

 実は、流域下水道認可区域というのを外すというのは、国土交通省さんもそう簡単には、認可はそちらの方ですよね、ちゃんと説明しなさいということでありまして、一つ一つ外すのに、コンサルに調査をかける、いろいろなことをすると一千万、二千万ぐらいのお金がかかってしまうんです、実際のところ。

 そういう意味で、これは非常に地方自治体にとっては大きな力仕事なんです。変えたらしまいやないかということではなかなかないということなんですけれども、なぜ流域下水道認可区域外でなければならないのか、これを御説明いただきたい。

南川政府参考人 御指摘のとおり、下水道の予定区域外でこの事業を展開することになっております。

 その区域外につきましては順次拡大してまいりまして、相当幅広く設置ができるということになっておるところでございます。これは、浄化槽と下水道はもともと競合するものではございませんで、ともに連携して水域の水質保全のための施設でございます。そういう意味で、国といたしまして、国庫補助の二重投資を防ごうといった観点から、そういった線引きが現在なされているところでございます。

 これにつきましては、やはり都道府県が音頭をとった上での都道府県構想の策定、見直しということが必要でございますので、ぜひそういった雰囲気をつくっていきたいし、各省ともよく相談をしていきたいと考えております。

中川(治)分科員 この流域下水道区域外でなければならないということ、要するに二重投資、下水道の補助金、それから市町村設置型、同じように大量の国の補助金が入る、そういうことですよね。だから二重に重ならないようにしよう、だから地域を限定していこう、それはよくわかるんですけれども、そうであれば、私は逆に、市町村の例えば公共下水道認可区域というふうにしてしまったらどうか、あっさりと。

 流域下水道認可区域というのは、将来計画も含めて、県全体でかなり大きなエリアに網をかけている都道府県が多いんです。市町村は独自に、大体五年から六年、七年先ぐらいまでを見越して事業認可区域というのを設定していきますよね。それに、実際に今度は下水道をつないでもよろしいよという供用区域という、下水道にかかわってはこの三つぐらいの区域が実際上はあるんでしょうけれども、私は、流域下水道の認可区域ではなくて公共下水道の認可区域ということにして、本当に二重投資にならないかどうか、これは調べ方、チェックの仕方は幾らでもあるんです。

 例えば、市町村の環境廃棄物担当の部局のところで生活排水処理基本計画というのを必ずつくっております。これで重なっていないかどうかチェックすることは十分可能、そう思いますし、都市計画とか下水道部局は、公共下水道の整備計画というのを市町村ごとにきちっと持っていますから、これをチェックすることによって二重投資になっていないかどうかということを調べることは十分可能でありますし、浄化槽の設置条例というのを持っている市町村もあります。あるいは、総務部局に行きますと、料金徴収で各家庭から、浄化槽なのかあるいは下水道使用料金なのか、いろいろな意味で、料金のチェックということも含めて、自治体では、二重投資を防止する、国の補助金の二重投資をチェックするための事業チェックというのは幾らでもできるというふうに私は思っております。

 そういう意味で、市町村の公共下水道認可区域外であればオーケーというふうに、これは、単に関係省でそうしましょうというふうには多分ならないんだと思いますけれども、ぜひ真剣に御検討いただきたいと思いますけれども、どうですか。

南川政府参考人 ありがとうございます。

 にわかに実は答えが出ないのでございますが、国交省などとよく相談しまして、ぜひ多くの方に納得いただけるような効率的な汚水処理施設の整備ということを考えていきたいと思います。

中川(治)分科員 ぜひ真剣にお願いをしたいと思います。

 私は、特に小泉総理の経済戦略会議ですか、あそこでも下水と浄化槽の問題は何回か議論にたしかなっておると思います。私も府会議員でしたけれども、地元の民主党以外の国会議員さんにも説明に行き、働きかけ、議論のテーブルにのせてくれという話を何回も言ったことがあります。そういうことの中でようやくこういうことになってまいりました。

 ただ、実務的なところでもう一つうまいこといかないということの中に、やはり流域下水道整備計画というのが非常に大きなネックになっているんですよね。そんなことおまへんでというふうに国土交通省は言わはるんですけれども、市町村にとったら物すごい怖いことなんです。市町村の流域下水道計画を縮める、大阪府は縮めてもらっても結構と。ですから、私は府議会で、土木部長、あんたは縮めてもらっても大いに結構と答弁せいと言うて、答弁してくれはりました。それでも、いや、ほんまに縮めたら国怒るん違うか、国土交通省怒るん違うか、下水の網を縮めたら道路で仕返しあるん違うやろかとか、いろいろなことを考えてしまうんです。だからなかなか進まないんです。

 そして、私の地元は和泉市というところですけれども、これから計画をしようとしているところなんかは、公共下水道を引っ張っていきますよね。流域下水道幹線から公共下水道を引っ張っていきます。ずっと計算してみたら、山間部では一軒当たり三百五十万円ぐらいの投資が必要なんじゃないか、公共下水道に。それを本当にやってしまうと自治体は破産するな、そんなところがいっぱいあるんです。要するに、できない計画を抱きかかえたまま変更もできないということになっておるということをぜひ変えていただきたいと思いますし、具体的に、実務レベルのところできちっともう一歩進めていくための御検討をぜひお願いしたい、そんなふうに思っております。

 環境省の事業を、この浄化槽、市町村設置型の事業を公共下水道認可区域外ということでできるように、各省庁の調整をぜひ図っていただきたい、そんな思いだけはきょうは申し上げたいということで質問させていただきました。ぜひ最後に大臣の御決意をいただきまして、質問を終わりたいと思います。

小池国務大臣 本日は、現場に即したいろいろな御意見を伺うことができて、大変貴重だったと思っております。

 生活排水対策でございますが、下水道、浄化槽などの汚水処理施設の特徴、それぞれがいい点を持っているわけでございまして、今お話ございましたように、地域の実情に合わせて、効率的でかつ効果的な整備をすることが最重要と考えております。

 今後は、中小の市町村を中心にこの汚水処理施設の整備ということになるわけでございますけれども、人口規模であるとか財政規模が小さい、そういった地域の実情を踏まえて、より経済性、そして効率性にすぐれた浄化槽の整備というのはますます必要になってくるものと考えております。

 国土交通省の方とも相談をいたしまして、浄化槽の整備を一層進めてまいることが、私も各地を回りまして、水質の問題を抱えているところは、生活排水の点から、結果的に沼であるとか湖、川が汚れているということでございますので、これはその地域の問題全体にかかわるということで、最も効率のいいものをこれからも進めてまいりたいと思っておりますので、さらに先生の御支援、よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

鈴木主査 これにて中川治君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

鈴木主査 これより皇室費について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。羽毛田宮内庁次長。

羽毛田政府参考人 平成十四年度における皇室費歳出決算について、その概要を御説明申し上げます。

 皇室費の平成十四年度歳出予算現額は七十一億二千七百九十九万円余でありまして、支出済み歳出額は七十億九千百十八万円余であります。

 この支出済み歳出額を歳出予算現額と比べますと、三千六百八十一万円余の差額がありますが、これは、国際親善に必要な経費等を要することが少なかったため、不用となった額であります。

 なお、歳出予算現額七十一億二千七百九十九万円余を、歳出予算額七十億七百七十七万円余と比べますと、一億二千二十二万円余の増加となっておりますが、これは、宮廷費におきまして、故憲仁親王の喪儀及び墓の営建に必要な経費一億二千二十二万円余について、予備費を使用したことによるものであります。

 以上をもちまして平成十四年度皇室費歳出決算の説明を終わります。

 よろしく御審議くださいますようお願いいたします。

鈴木主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院石野第一局長。

石野会計検査院当局者 平成十四年度皇室費の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。

鈴木主査 以上をもちまして皇室費についての説明は終わりました。

 これより質疑に入るのでありますが、その申し出がありませんので、皇室費については終了いたしました。

    ―――――――――――――

鈴木主査 これより国会所管について審査を行います。

 まず、国会主管歳入決算及び衆議院関係決算の概要説明を聴取いたします。駒崎衆議院事務総長。

駒崎事務総長 平成十四年度国会主管一般会計歳入決算及び衆議院関係歳出決算の概要を御説明申し上げます。

 国会主管の歳入につきましては、予算額十九億二千九百六十万円余に対しまして、収納済み歳入額は十九億千七百一万円余であり、差し引き千二百五十九万円余の減少となっております。

 次に、衆議院関係の歳出につきましては、当初の歳出予算額は六百九十億八百七十六万円余でありまして、これに立法情報システムの整備のための予算補正追加額八千四百三十五万円余、施設整備のための予算補正追加額六億四千三百四十四万円余、前年度からの繰越額十一億八千六百九十九万円余を加え、既定経費の不用等による予算補正修正減少額三十二億千二百五十四万円余を差し引きますと、歳出予算現額は六百七十七億千百二万円余となります。

 この歳出予算現額に対し、支出済み歳出額は六百五十八億八千八百八十六万円余でありまして、その内訳は、国会の運営に要した経費六百十八億六千六百九十五万円余、衆議院の施設整備に要した経費四十億二千百九十万円余であります。

 歳出予算現額と支出済み歳出額との差額は十八億二千二百十五万円余となっておりますが、このうち翌年度に繰り越した額は六億四千三百四十四万円余であり、不用額は十一億七千八百七十一万円余であります。

 以上が、平成十四年度国会主管一般会計歳入決算及び衆議院関係の歳出決算の概要でございます。

 よろしく御審議のほどをお願いいたします。

鈴木主査 次に、国立国会図書館関係決算の概要説明を聴取いたします。黒澤国立国会図書館長。

黒澤国立国会図書館長 平成十四年度国立国会図書館関係歳出決算の概要を御説明申し上げます。

 当初の歳出予算額は二百六十二億六千七百九十一万円余でありまして、これに電子図書館基盤システムの開発のための予算補正追加額五億八百七十二万円余、科学技術関係資料の収集整備のための予算補正追加額一億四千六百十七万円余、前年度繰越額二十七億三千四百十四万円余を加え、既定経費の不用等による予算補正修正減少額十億六千四百九十二万円余を差し引きますと、歳出予算現額は二百八十五億九千二百三万円余となります。

 この歳出予算現額に対し、支出済み歳出額は二百七十三億七千七百六十三万円余でありまして、その内訳は、国立国会図書館の管理運営に要した経費二百五億九千八百六十三万円余、科学技術関係資料の収集整備に要した経費九億五千三百七十六万円余、国立国会図書館の施設整備に要した経費五十八億二千五百二十三万円余であります。

 歳出予算現額と支出済み歳出額との差額は十二億一千四百四十万円余でありまして、その内訳は、翌年度繰越額九億二千百七十二万円余、不用額二億九千二百六十八万円余となっております。

 以上が、平成十四年度国立国会図書館関係歳出決算の概要でございます。

 よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。

鈴木主査 次に、裁判官弾劾裁判所関係決算の概要説明を聴取いたします。天野裁判官弾劾裁判所事務局長。

天野裁判官弾劾裁判所参事 平成十四年度裁判官弾劾裁判所関係歳出決算の概要を御説明申し上げます。

 当初の歳出予算額は一億二千二百五十二万円余でありまして、これから既定経費の不用等による予算補正修正減少額一千百二十万円余を差し引きますと、歳出予算現額は一億一千百三十一万円余となります。

 この歳出予算現額に対し、支出済み歳出額は一億九百三十五万円余でありまして、このうち主なものは職員の人件費であります。

 歳出予算現額と支出済み歳出額との差額は不用額でありまして、百九十六万円余となっております。

 以上が、平成十四年度裁判官弾劾裁判所関係の歳出決算の概要でございます。

 よろしく御審議のほどお願いいたします。

鈴木主査 次に、裁判官訴追委員会関係決算の概要説明を聴取いたします。高田裁判官訴追委員会事務局長。

高田裁判官訴追委員会参事 平成十四年度裁判官訴追委員会関係歳出決算の概要を御説明申し上げます。

 当初の歳出予算額は一億三千九百四十七万円余でありまして、これから既定経費の不用等による予算補正修正減少額八百九十三万円余を差し引きますと、歳出予算現額は一億三千五十四万円となります。

 この歳出予算現額に対し、支出済み歳出額は一億二千八百六十九万円余でありまして、このうち主なものは職員の人件費であります。

 歳出予算現額と支出済み歳出額との差額は不用額でありまして、百八十四万円余となっております。

 以上が、平成十四年度裁判官訴追委員会関係の歳出決算の概要でございます。

 よろしく御審議のほどをお願いいたします。

鈴木主査 この際、お諮りいたします。

 参議院関係決算の概要説明につきましては、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院石野第一局長。

石野会計検査院当局者 平成十四年度国会の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。

鈴木主査 以上をもちまして国会所管についての説明は終わりました。

 これより質疑に入るのでありますが、その申し出がありませんので、国会所管については終了いたしました。

    ―――――――――――――

鈴木主査 これより裁判所所管について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。竹崎最高裁判所事務総長。

竹崎最高裁判所長官代理者 平成十四年度裁判所所管一般会計歳入歳出決算の概要を御説明申し上げます。

 裁判所所管の歳出につきましては、当初予算額は三千百七十一億三百五十六万円でありますが、これに財務省所管からの移しかえ額一億五千九百九十一万円余、平成十三年度からの繰越額七十七億二千二百九十三万円余、予算補正追加額三十億円、予算補正修正減少額六十一億九千九百五十八万円、予備費使用額二億四千二百八十二万円余、差し引き四十九億二千六百九万円余が増加となり、歳出予算現額は三千二百二十億二千九百六十五万円余となっております。

 これに対しまして、支出済み歳出額は三千百三十八億三千七百十六万円余であり、歳出予算現額との差額は八十一億九千二百四十八万円余であります。

 この差額のうち、翌年度へ繰り越した額は七十三億三千八百四十三万円余、不用額は八億五千四百五万円余であります。

 不用額となった経費は、人件費六億四千百二十五万円余とその他の経費二億一千二百七十九万円余であります。

 裁判所主管の歳入につきましては、歳入予算額は百九十五億二千二百五万円余であります。

 これに対しまして、収納済み歳入額は二百十一億三百二万円余であり、歳入予算額に対し十五億八千九十七万円余の増加となっております。

 この増加は、相続財産で相続人不存在のため国庫帰属となった収入金の増加等によるものであります。

 以上、平成十四年度裁判所所管一般会計歳入歳出決算について御説明申し上げました。

 よろしく御審議のほどお願いいたします。

鈴木主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院石野第一局長。

石野会計検査院当局者 平成十四年度裁判所の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項一件であります。

 これは、電話等に関する各種の割引制度を適切に利用することにより、通話料の節減を図るよう改善させたものであります。

 裁判所では、弁護士や通訳人などの裁判関係者への連絡、当事者との話し合いなどに電話等を利用しており、NTT東西などの電話会社に利用に応じた通話料を支払っております。電話会社では各種の割引制度を提供していますが、NTT東西及びNTTコミュニケーションズを利用している回線において全く割引制度を利用していなかったり、割引制度を利用してはいますが、より経済的な割引制度が利用可能であった回線がありました。

 これらの回線に関して適切な割引制度を利用する必要があると認められましたので、当局の見解をただしましたところ、最高裁判所では十五年九月に事務連絡を高等裁判所等に発するなどして電話会社の提供する割引制度を適時適切に利用する処置を講じたものであります。

 以上、簡単でございますが、説明を終わります。

鈴木主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。竹崎最高裁判所事務総長。

竹崎最高裁判所長官代理者 ただいま会計検査院から御指摘のありました事項につきまして、最高裁判所のとった措置について御説明申し上げます。

 会計検査院の検査の結果、一部の裁判所について、電話等に関する各種割引制度を適切に利用することにより通話料の節減を図るべきとの御指摘を受けましたことを踏まえ、最高裁判所において平成十五年九月に高等裁判所等に対し事務連絡を発するなどして対応を求め、御指摘を受けた裁判所においては適切な割引制度を利用するよう処置を講じました。

 今後も継続的に割引制度の動向を把握し、より経済的な割引制度の利用を図っていく所存でございます。

鈴木主査 以上をもちまして裁判所所管についての説明は終わりました。

 これより質疑に入るのでありますが、その申し出がありませんので、裁判所所管については終了いたしました。

    ―――――――――――――

鈴木主査 これより会計検査院所管について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。森下会計検査院長。

森下会計検査院長 平成十四年度会計検査院主管一般会計歳入決算及び会計検査院所管一般会計歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 会計検査院主管の歳入につきましては、予算額二千五百二十九万余円に対しまして、収納済み歳入額は二千六百六十二万余円であり、差し引き百三十三万余円の増加となっております。

 収納済み歳入額の主なものは、国有財産貸付収入二千四百九十六万余円であります。

 次に、会計検査院所管の歳出につきましては、当初予算額百七十二億六百四十七万余円から、補正予算額四億一千六百五十九万余円を差し引いた予算現額百六十七億八千九百八十七万余円に対しまして、支出済み歳出額は百六十五億千四百十七万余円でありますので、その差額二億七千五百七十万余円を不用額といたしました。

 支出済み歳出額の主なものは、人件費百三十四億三千三百八十七万余円、会計検査情報処理業務庁費十二億七千九十四万余円となっております。

 以上、簡単でございますが、平成十四年度における会計検査院関係の決算の説明を終わります。

 よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。

鈴木主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院石野第一局長。

石野会計検査院当局者 平成十四年度会計検査院の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。

鈴木主査 以上をもちまして会計検査院所管についての説明は終わりました。

 これより質疑に入るのでありますが、その申し出がありませんので、会計検査院所管については終了いたしました。

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鈴木主査 これより内閣府所管中警察庁について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。小野国家公安委員会委員長。

小野国務大臣 平成十四年度の警察庁関係の歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 平成十四年度の歳出予算現額は二千七百五十六億七千九百六十九万円余でありまして、支出済み歳出額は二千五百三十三億三千四百六十九万円余であります。

 この差額二百二十三億四千四百九十九万円余のうち、翌年度へ繰り越した額は九十四億六千七百十六万円余であります。

 また、不用となりました額は百二十八億七千七百八十二万円余であります。

 以上、警察庁関係の歳出決算につきまして御説明申し上げました。

 何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。

鈴木主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院石野第一局長。

石野会計検査院当局者 平成十四年度警察庁の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。

鈴木主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木主査 以上をもちまして内閣府所管中警察庁についての説明は終わりました。

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鈴木主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。上田勇君。

上田分科員 公明党の上田勇でございます。

 きょうは早朝より、小野大臣初め警察庁の皆様、大変御苦労さまでございます。

 きょうは、警察庁が進めております各種施策につきまして、何点かにわたりまして質問をさせていただきたいというふうに考えておりますので、どうかよろしくお願いをいたします。

 まず初めに、非常に概括的な話でございますが、ここ数年の間、やはり国民の間では、犯罪が増加している、治安が悪化している、こういう不安感が非常に高まっておりまして、これは各種の世論調査などを見ても明らかでありますし、また、私どもが町の声を聞いてもそうしたことが本当にはっきりといたしております。これまで日本は世界で一番安全な国と言われていたわけでありますけれども、そうした治安に対する懸念がこれほど大きくなったというのはかつてないことであって、非常に深刻な事態ではないかというふうに考えております。

 まずは、大臣としてこうした現状をどのように受けとめられているのか、所感を伺いたいというふうに思います。

小野国務大臣 刑法犯の認知件数というのは、平成八年以降十四年までの七年連続をいたしまして戦後最多を記録してまいりましたが、平成十五年には、全国警察を挙げまして街頭犯罪・侵入犯罪抑止総合対策に取り組んだ結果から、認知件数というのは二百七十九万件と、前年に比べますと六万四千件ほどの減少となっております。

 しかしながら、依然として、認知件数がよいと言われた昭和期から比べますと約二倍という現状になっているわけでございまして、強盗や住宅対象の侵入犯罪、侵入盗が増加をしたり、あるいは少年犯罪ですね、特に凶悪犯が増加をしている、さらには、来日外国人や暴力団によります組織犯罪、こういうものが広域にわたりまして多発している状況にございまして、治安情勢は、先生今おっしゃっていただきましたように、引き続きまして大変厳しい状況にあるということを認識しているところでございます。

 こうした状況のもとに、国民が犯罪の被害に遭うことなく、安全で安心して暮らせるような社会を実現するために、それは警察に課せられました重大な使命であると私ども認識いたしておりまして、国家公安委員会といたしましても、各種治安対策が強力に推進されますように警察当局を督励してまいりたい、そのように考えておるところでございます。

上田分科員 ありがとうございます。

 きょう通告をさせていただいたものと順番がちょっと入れかわりますが、御承知いただきたいと思うんです。

 今大臣の御答弁にもあったんですが、治安への不安が増大しているその原因の一つというのは、町中で突然ひったくりに遭うとか強盗に遭う、そうしたいわゆる街頭犯罪が増加している、このことがやはり体感する治安が非常に悪くなっている原因ではないかというふうに思っております。

 また、聞くところによりますと、こうした街頭犯罪の多くが少年によって引き起こされているというふうにも伺っております。やはり安心して暮らせる、安心して歩けるような町をつくっていく、このことは何よりも重要なことではないかというふうに思っておりまして、そうした街頭犯罪を防止していくための対策が急務であるというふうに考えております。

 こうした街頭犯罪の実態と対策についてお伺いをしたいというふうに思います。

伊藤政府参考人 お答えいたします。

 現下の御指摘のような厳しい治安情勢を受けまして、治安対策が政府を挙げた課題となっておりますけれども、中でも、御指摘のように、路上強盗やひったくりなどの街頭犯罪の増加は刑法犯全体の増加の大きな要因となっておりますとともに、国民の治安に対する不安感を増幅させる原因となっているところでございます。

 実態でございますけれども、例えば路上強盗につきましては、平成六年には約七百件の発生でございましたけれども、昨年はこれが四倍強の三千件近くにまで増加しております。また、ひったくりにつきましても、平成六年には約一万九千件であったものが昨年は約二・五倍の四万六千件に増加しているなど、大変増加しておりますし、また、自動車盗や車上ねらいなどもこの十年で大幅に増加するなど、街頭犯罪は深刻な状況にあるものと認識しております。

 こうしたことに対しまして、警察庁といたしましては、こうした街頭犯罪、あわせて侵入犯罪も急増いたしておりますところから、街頭犯罪・侵入犯罪抑止総合対策の推進に今努めているところでございます。その中で、地域警察官のパトロールの強化を初めとした警察の街頭活動の強化、地域住民による自主防犯パトロールなどの自主防犯行動の支援の充実、さらには、スーパー防犯灯のさらなる整備など、安全・安心町づくりの推進等の取り組みを進めているところでございます。

 また、街頭犯罪におきましては、御指摘にもありましたように、少年の占める割合というのは大変大きいわけでございます。全検挙人員の約七割を少年が占めておりまして、街頭犯罪対策を進める上で少年非行対策は非常に重要だというふうに認識しております。警察では、少年の補導活動の強化、関係機関やボランティアと連携した非行少年等の立ち直り支援など、少年非行防止のための総合対策を一層推進しているところでございます。

 こうした取り組みの結果、昨年は、ひったくりや路上強盗、自動車盗、車上ねらいなどの街頭犯罪が前年と比べまして約十五万件減少しまして、率にして九・四%減ったところであります。

 警察といたしましては、引き続き、緊急治安対策プログラムや犯罪対策閣僚会議の行動計画等を踏まえ、街頭犯罪の抑止対策を進めてまいりたいと考えておるところでございます。

上田分科員 ありがとうございます。

 今答弁の中にもあったんですけれども、安心して暮らせる町、安全な町をつくっていくために、警察庁として、スーパー防犯灯とか子ども緊急通報システムなどの事業を展開しているわけでございます。

 私も、警察庁さんの方にお願いをいたしまして、東京の江東区の現場なども見学をさせていただきましたし、また、地元神奈川県の川崎市に設置されているスーパー防犯灯も見学をさせていただきました。いずれも、非常に集合住宅が集中しているような地域で、やはり夜になると人通りも少なく、暗いところもあるような地区でありまして、こういう街頭での犯罪の防止に効果があるものではないのかなということを実感したところでございます。特に、やはり今警察官の人数に限りがある中で、住民の警察へのアクセスを非常に簡単にする、また直接話を聞いてもらえる、また警察官の声も聞こえるというような意味では、非常に安心感を与える施設だというふうに思っております。

 そこで、こうしたスーパー防犯灯や子ども緊急通報システムの現在の整備状況、また、設置をされた場所でどういうような効果が上がっているのか、御見解を伺いたいというふうに思います。

伊藤政府参考人 今御指摘ございましたスーパー防犯灯の整備につきましては、平成十三年度及び平成十四年度に国費のモデル事業として整備をしまして、また、平成十五年度からは補助事業として、これまで二十三地区、二百八十三基を整備しておりまして、平成十六年度も引き続き整備を進めることとしております。このほか、都道府県において単独事業としても、これまで八地区で百十一基が整備されていると承知しているところでございます。

 また、子ども緊急通報装置につきましては、平成十四年度に国費モデル事業としまして、全都道府県にそれぞれ一地区、合計四十七地区に三百二十九基を整備しましたほか、平成十六年度からは補助事業として整備を進めることとしております。このほか、大阪府が単独事業として六地区、二十七基を整備しているものというふうに承知しております。

 これらの効果についてでございますけれども、例えば、平成十三年度事業でスーパー防犯灯を設置しました全国十地区の道路、公園等におきます平成十四年中の犯罪発生状況を前年の平成十三年中のそれと比較してみますと、全国十地区のうち八地区において、刑法犯認知件数が減少するという効果が見られたところであります。

 また、例えば大阪府では、平成十三年度に国費による一地区に加え、府費及び市費で二地区の合わせて三地区でスーパー防犯灯が設置されましたけれども、設置後の街頭犯罪の認知件数は三地区合計で二一・八%減少しまして、特にひったくりは五〇・八%の減少と、大幅な減少を見ておるところでございます。

 このほか、子ども緊急通報装置につきましても、通報を受けた警察官の早期臨場による事案の早期解決、あるいは犯罪の未然防止が図られたという報告を受けているところであります。

 このように、スーパー防犯灯や子ども緊急通報装置は、犯罪の予防及び被疑者の検挙に効果を上げているというふうに認識をしているところでございます。

上田分科員 ありがとうございます。

 今答弁にありましたように、設置された箇所ではかなりの効果が上がっているということでございまして、確かに、私も現地を見させていただいて、やはりああいう施設があると非常に抑止効果が働くんだろうなということは実感をいたしました。また、そういうものを設置することを契機に、地域の防犯意識というのも非常に高まるという効果もあるんだろうなという気がいたしております。

 そうした事業なんですけれども、そういう効果も上がる、またこうした非常に治安に対する懸念が高い中で、各地域、非常に希望が多いというふうに聞いておるんですけれども、今伺ったところでは、必ずしもそれに十分こたえ切れていないのではないのかなという気がいたします。

 今後これまで以上に、特に街頭犯罪の実態が依然として厳しい中でありますので、積極的にこうした事業を推進していくべきだろうというふうに考えておりますが、今後実施するに当たっての課題やまた今後の方針についてお伺いしたいというふうに思います。

伊藤政府参考人 今申し上げましたとおり、また御指摘にもありましたように、スーパー防犯灯や子ども緊急通報装置は、路上等における犯罪の抑止及び犯罪に対する不安感の解消に大きな効果があるものと認識しております。

 警察といたしましては、今後ともスーパー防犯灯や子ども緊急通報装置の整備を推進してまいりたいというふうに考えておるところでございまして、平成十六年度予算におきましては、補助事業として、スーパー防犯灯につきましては十六地区、子ども緊急通報装置につきましても八地区への整備を予定しているところでございます。

 必ずしも各地区の要望に十分こたえ切れた数字ではないかと思いますけれども、これからもこうした整備を進めてまいりまして、犯罪のない安全で安心な町づくりが図られますように努めてまいりたいというふうに考えております。

上田分科員 ひとつよろしくお願いをいたします。

 特に、再開発をしたところとか新しく整備をした住宅地とかでは比較的進んできているんですけれども、既成の市街地でやはりまだなかなか難しい課題があるのではないかというふうに思いますが、そういったところも犯罪に対する懸念というのが非常に高いわけでありますので、また今後いろいろな技術的な面での検討なども含めて、ぜひ積極的に推進をしていただきたいというふうにお願い申し上げます。

 もちろん、いろいろな警察官の人数の制限がある中で、新しい技術を使ったそういう防犯システム、これも重要ではありますけれども、ただ、身近なところで一番頼りになるのはやはり警察官でございます。政府として、平成十四年度から警察官の定員の計画的な増員が進められておりまして、現在も空き交番ゼロ作戦ということで進めているわけでございまして、これは非常に適宜適切な対応であるというふうに評価をいたしております。

 しかし、国際的に見ても、人口に対する警察官の定員というのは依然として少ないわけでありまして、イギリス、フランスなどのヨーロッパ先進諸国では、おおむね人口が三百人から四百人程度に一人の警察官が配置をされているのに対しまして、日本の場合は五百数十人に一人というのが依然として現実であります。これまでは、我が国の場合には犯罪も比較的少なく、治安もよかったのでこれぐらいのレベルでよかったのかもしれませんけれども、現在の社会の実情を考えますと、当分の間は引き続き計画的な増員が必要なのではないかというふうに考えているところでございます。

 また、特に大都市部、私も横浜が地元でありますけれども、大都市部においては人口当たりの警察官の人数がさらに少ないというのが現実でありまして、その上、大都市部は経済活動も活発なわけでありますので、やはり今後、定員の増加と同時に大都市部への重点配置についても御検討していただきたいというふうに考えておりますが、この計画的な定員増それから大都市部への重点配置などにつきましての御見解を伺いたいというふうに思います。

小野国務大臣 上田先生から今お話をいただいたところでございますけれども、平成十三年、地方警察官一万人増員計画で、平成十四年度には四千五百人、十五年度には四千人を行いまして、今年度は三千百五十名の増員が行われることになったわけでございますが、依然として、深刻化いたします治安情勢にかんがみましたときに、なお一万人以上の増員がどうしても必要である、そのような認識を持たせていただいております。

 そのようなことで、先生からお話ございましたけれども、これまでは五百三十三人に一人の警察官という負担人口が、今回三千百五十名をプラスいたしまして五百二十七名、まだまだ多うございまして、こういった点からも、今後とも引き続きまして増員には力を入れてまいりたいと思います。

 先生御指摘のとおり、大都市圏の業務負担というものは、人口の増加に伴いまして大変大きなものになって、重くなってきているということを承知しているわけでございますので、増員の配分に当たりましては、各都道府県の治安情勢あるいは業務負担、こういうものの事情をよく勘案いたしまして考えてまいりたい、そのように考えているところでございます。

上田分科員 ありがとうございます。

 ぜひそういう方向で積極的に進めていただきたいというふうに思いますし、我々としても、ぜひ可能なバックアップはさせていただきたいというふうに考えているところでございます。

 次に、暴走族問題についてちょっとお伺いいたしますが、これから夏のシーズンを迎えるわけでありまして、暴走族によります被害が多くなってくる季節でございます。

 これまでの警察の積極的な取り組みによりまして、被害件数などは最近減少傾向にあるということは承知をいたしております。これは大いに評価できる点ではないかというふうに思いますけれども、ただ、依然として、やはり深刻な被害が発生をしております。特に夜間、平穏な市民生活が脅かされておりまして、幹線道路の沿道などでは、本当に夜も眠れないというような事態が何日も続くということがあります。

 引き続き対策を強化していく必要があろうかというふうに思っておりますが、こうした暴走族によります被害の実態並びに対策につきまして、所見を伺いたいというふうに思います。

人見政府参考人 お答えいたします。

 暴走族につきましては、グループが小規模化しておりまして、その結果、少人数でのゲリラ的な爆音暴走あるいは集団暴走、こういうものを行っているほか、暴力団との関係を深めております。また、一一〇番通報件数は、平成元年以来、十五年連続して十万件を超えておりまして、国民の取り締まり要望は依然として強いものがあると認識しております。

 警察としましては、交通、少年、暴力団対策など各部門が緊密に連携いたしまして、あらゆる法令を活用した指導、取り締まりを徹底する一方で、暴走族を追放する社会機運の高揚、青少年に対する指導の充実、暴走行為阻止のための道路交通環境の整備、車両の不正改造対策などを組み合わせた総合的な対策を推進することが重要であると考えております。引き続き、総合的な暴走族対策に取り組んでまいりたいと考えております。

 また、暴走族による違法行為に対する指導、取り締まりのさらなる強化を図るため、今国会において、共同危険行為等の禁止に係る規定の見直しとともに、先ほど先生御指摘のありました夜も寝られないような爆音暴走、そういったもののために、騒音運転あるいは消音器不備、マフラーを切断しておる、そういったものに対する罰則の引き上げなどを内容とする道路交通法の改正の御審議をお願いしているところでございます。

上田分科員 ありがとうございます。

 実は、私も国道一号線から比較的近いところに住んでおりまして、その沿道というのは、夏休みになってまいりますと夜ごと夜ごと暴走族が走って、地域の大変大きな問題になっております。いろいろと御努力をいただき、また成果も上がっているということは承知をしておりますが、特にこれからそういったシーズンに向かって、さらに一層御努力をお願いしたいというふうにお願いをいたします。

 次に、冒頭大臣の答弁にもあったんですが、最近の犯罪動向の一つの傾向として、来日外国人による犯罪が増加をしている、また凶悪化しているということでありましたけれども、その実態はどのようになっているんでしょうか、お伺いをいたします。

知念政府参考人 平成十五年中の来日外国人犯罪の検挙状況及び検挙人員でありますが、それぞれ四万六百十五件、二万七人で、過去最多となっております。これは、十年前の平成五年に比べまして、件数で約二・一倍、人員で一・六倍となっております。我が国の治安上大きな問題になっていると認識しているところであります。

上田分科員 今、統計を御紹介いただいたんですけれども、こうした見方に対して、他方、人権擁護団体等から、この来日外国人の犯罪が必ずしもそういう割合で増加しているわけではなくて、治安当局の意図的なそういう誘導もあるのではないかというような批判もあります。私も幾つかの団体などからそういったお話も伺うわけなんですけれども、例えば、過去十年間ぐらいで比較をいたしますと、今、非常にふえているという数字を御紹介いただいたんですけれども、その間の新規の入国者数の増加などを考えますと、犯罪の発生率というのはむしろ低くなっているのではないか、そういう意見も伺います。

 こういう批判についてどのように考えられるのか。また、これは見方なんだというふうに思うんですが、しばしば、治安当局、警察当局によります、殊さら外国人の犯罪を強調するような見方に対する批判がそういう面ではあるわけでありますけれども、そういったことについてどのように受けとめられているのか、御認識を伺いたいというふうに思います。

知念政府参考人 平成十五年中の来日外国人犯罪のうち、入管法違反事件などを含む特別法犯を除いた刑法犯の検挙件数、人員は、それぞれ二万七千二百五十八件、八千七百二十五人であります。これにつきましても、十年前の平成五年対比で、件数で約二・一倍、人員で一・二倍と、過去最多となっております。入管法違反事件以外の分野においても増加傾向が見られるところであります。

 御指摘の入管法違反事件の平成十五年中の検挙件数でありますが、一万五百五十件であります。十年前対比で増加率は二・四倍となっておりますが、国民の被害の拡大状況を凶悪犯、窃盗犯の検挙件数の増加率で見ますと、それぞれ、一・五倍、二・五倍となっておりまして、脅威が増しているというふうにとらえているところであります。

 これらに加えまして、最近における来日外国人犯罪の特徴としましては、国民に不安を与える強盗や侵入盗の検挙件数が、これまた十年前に比べ、強盗は二倍、侵入盗は七倍に増加しておりまして、凶悪化が進行しております。また、刑法犯検挙件数に占める共犯事件、複数で行う事件ですが、共犯事件の比率が約六〇%でありまして、日本人の場合に比して三・五倍に上るなど、組織化が進展しております。こういうことが、最近の特徴として挙げられるところかと思います。

 このような来日外国人犯罪の情勢に対処するため、警察としましては、引き続き、犯罪の徹底検挙に努めるほか、来日外国人犯罪組織の壊滅を図るための組織体制の充実強化、関係機関とのより緊密な連携による水際対策等の推進、関係各国との協力の一層の緊密化などに努めてまいりたいというふうに考えております。

上田分科員 ありがとうございました。

 来日外国人事件が増加傾向にあるということはよくわかりました。

 ただ、今おっしゃったように、十年間で一・二倍でありますので、その他の犯罪の動向や来日外国人の数から見て、それをどういうふうに評価するかというのは非常に難しいことなんではないかなというふうに思います。十分な対策を講じていただくことも重要でありますが、やはり、殊さら外国人に対する恐怖感とか偏見とかを助長するようなことはあってはならないことだろうというふうに思います。

 いずれにしても、実態を正確にとらえ、またそれを正確に伝えていただくということが重要なんではないかというふうに思います。今、我が国としては、観光政策、どんどん外国からもお客さんを入れよう、そういう政策も一方では進めているわけでありますので、実情を正しく反映したような情報の提供をしていただきたい、このことを御要望申し上げまして、私の方の質問を終わらせていただきます。

 きょうはどうもありがとうございました。どうぞよろしくお願いいたします。

鈴木主査 これにて上田勇君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十時二十四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

鈴木主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 これより内閣所管について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。細田内閣官房長官。

細田国務大臣 平成十四年度における内閣所管の一般会計歳入歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 内閣主管の歳入につきまして、歳入予算額は四百九十万円余でありまして、これを収納済み歳入額四億八千六百七十万円余に比較いたしますと、四億八千百八十万円余の増加となっております。

 次に、内閣所管の歳出につきまして、歳出予算現額は九百六十九億二千二百二十二万円余でありまして、これを支出済み歳出額九百二十二億七千六百五十三万円余に比較いたしますと、四十六億四千五百六十八万円余の差額を生じます。

 この差額のうち翌年度繰越額は二十七億九千九百五十万円余であり、不用額は十八億四千六百十八万円余であります。

 以上をもちまして決算の概要説明を終わります。

 何とぞ、よろしく御審議のほどお願い申し上げます。

鈴木主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院石野第一局長。

石野会計検査院当局者 平成十四年度内閣の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。

鈴木主査 以上をもちまして内閣所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

鈴木主査 これより内閣府所管中内閣本府及び沖縄振興開発金融公庫について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。細田内閣官房長官。

細田国務大臣 平成十四年度における内閣府所管の一般会計歳入歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 内閣府主管の歳入につきまして、歳入予算額は四百五十六億二千百二十五万円余でありまして、これを収納済み歳入額五百二十七億八千六百三十九万円余に比較いたしますと、七十一億六千五百十三万円余の増加となっております。

 次に、内閣府所管の歳出につきまして、歳出予算現額は五兆六千二百八十三億千二十六万円余でありまして、支出済み歳出額は五兆四千六百七十二億五千百七十七万円余に比較いたしますと、千六百十億五千八百四十八万円余の差額を生じます。

 この差額のうち翌年度繰越額は千二百十八億九千二百八十一万円余であり、不用額は三百九十一億六千五百六十六万円余であります。

 内閣府所管の歳出決算のうち、警察庁、防衛庁、金融庁については、各担当大臣から御説明申し上げることになっておりますので、これを除く部局、すなわち、内閣府本府及び宮内庁関係について申し上げますと、歳出予算現額は三千三百二億五千九百八十五万円余でありまして、これを支出済み歳出額二千六百八十二億二百八十三万円余に比較いたしますと、六百二十億五千七百一万円余の差額を生じます。

 この差額のうち翌年度繰越額は五百二十四億九千四百六十万円余であり、不用額は九十五億六千二百四十一万円余であります。

 以上をもちまして決算の概要説明を終わります。

 何とぞ、よろしく御審議のほどお願いいたします。

鈴木主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院石野第一局長。

石野会計検査院当局者 平成十四年度内閣府の決算のうち歳入並びに内閣本府及び宮内庁関係の歳出につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項一件であります。

 これは、改修工事に伴う建物等の国有財産台帳への価格登録に関するもので、内閣本府では、建物の模様がえや工作物の設置などに要した費用を国有財産台帳の登録価格に計上するに当たり、費用の一部が計上漏れとなっておりました。

 このように、国有財産台帳の登録価格に計上することとなっている費用を計上しないことは、国有財産増減及び現在額報告書等において、投下した費用が国有財産の価格に適切に反映されないことになり、改善の要があると認められましたので、当局の見解をただしましたところ、内閣本府では、十五年十月に通知を発し、計上する費用の範囲を具体的に明示するとともに、国有財産台帳に登録する価格の計上方法について周知徹底を図る処置を講じたものであります。

 以上、簡単でございますが、説明を終わります。

鈴木主査 次に、会計検査院利光審議官。

利光会計検査院当局者 平成十四年度沖縄振興開発金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。

鈴木主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。細田内閣官房長官。

細田国務大臣 ただいま会計検査院から御指摘のありました事項につきましては、会計検査院の検査の結果を踏まえ、国有財産台帳に登録する価格を修正し、適正なものとしました。また、平成十五年十月に通知を発し、計上する費用の範囲を具体的に明示するとともに、国有財産台帳に登録する価格の計上方法について周知徹底する措置を講じたところであります。

 今後、一層適正な会計処理に努めてまいる所存でございます。

鈴木主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木主査 以上をもちまして内閣府所管中内閣本府及び沖縄振興開発金融公庫についての説明は終わりました。

 これより質疑に入るのでありますが、その申し出がありませんので、内閣府所管中内閣本府及び沖縄振興開発金融公庫については終了いたしました。

    ―――――――――――――

鈴木主査 これより外務省所管について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。川口外務大臣。

川口国務大臣 平成十四年度外務省所管一般会計歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 歳出予算現額は八千八百五十一億九千百十万円余でありまして、支出済み歳出額は七千六百九十一億九千三百四万円余、翌年度繰越額は一千五十一億七千三百二十万円余、不用額は百八億二千四百八十六万円余であります。

 歳出予算現額の内訳は、歳出予算額七千八百四十億八千百七十五万円余、前年度繰越額一千十一億九百三十五万円余であります。

 以上、平成十四年度の外務省所管一般会計の決算につきまして、その概要を御説明申し上げました。

 何とぞ、御審議のほどよろしくお願い申し上げます。

鈴木主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院石野第一局長。

石野会計検査院当局者 平成十四年度外務省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項三件及び意見を表示しまたは処置を要求した事項に対する処置状況二件であります。

 まず、不当事項について御説明いたします。

 検査報告番号四三号及び四四号の二件は、在外公館における会計経理が適正を欠くと認められるものであります。

 同四三号は、在ソロモン日本国大使館に関するものであります。

 これは、会計担当者が事務所で使用する目的で購入した物品を自宅で使用後売却したり、渡切費を私的に流用するなどしていたり、また、同大使館において公費で購入した物品について物品管理簿に取得等の記載がなくその所在が確認できないものなどがあったりしたものであります。

 同四四号は、在アトランタ日本国総領事館に関するものであります。

 これは、会計担当者が総領事館事務所等の共益費について家主からの請求額を水増しした虚偽の内容の請求書を作成し、これに基づき家主に対する支払いを行わせ、その後精算により受領した金額の一部を領得するなどしたり、また、同総領事館において収入金として手元に保管している現金を会計法の規定に違反して支払いに充てていたりなどしていたものであります。

 同四五号は、国際開発協力関係民間公益団体補助金の対象としていた植林事業を実施していないものであります。

 なお、以上のほか、平成十二年度決算検査報告に掲記いたしましたように、物品・役務調達契約について処置を要求し、また、平成十三年度決算検査報告に掲記いたしましたように、支援委員会等の国際機関等に対する拠出金及び分担金について意見を表示いたしましたが、これらに対する外務省の処置状況についてもそれぞれ掲記いたしました。

 以上をもって概要の説明を終わります。

鈴木主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。川口外務大臣。

川口国務大臣 会計検査院の検査の結果、在外公館における会計経理及び国際開発協力関係民間公益団体補助金について指摘を受けたことは、まことに遺憾であります。

 在外公館における会計経理につきましては、在外公館に対して改めて会計手続の厳守及び館内におけるチェックを徹底するよう指導するとともに、在外公館で会計業務に従事することを予定しているまたは現に従事している職員に対する会計研修・指導及び支援体制の強化等の措置を講じてきております。

 国際開発協力関係民間公益団体補助金につきましては、国際開発協力に携わる公益団体からの申請案件につき、省内及び在外公館における案件審査を一層強化したほか、案件採択後も、必要に応じてモニタリング調査を行い、案件の進捗状況等を把握する等の措置を講じてきております。

 今後とも、これらの措置を着実に実施し、予算の適正な執行や不正の再発防止に努めてまいる所存です。

鈴木主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木主査 以上をもちまして外務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

鈴木主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。前田雄吉君。

前田分科員 民主党の前田雄吉でございます。

 今、川口大臣が、指導、これは、家賃をごまかして省員が横領したことに対して、指導で済まされることですか。しっかり御答弁ください、大臣。

川口国務大臣 先ほどのその件につきましてでございますけれども、これにつきましては、関係者につきまして、きちんとその処分をいたしております。その中には告発をした部分も含んでおります。

前田分科員 まず処分を先にして、ここで報告されるべきじゃありませんか。ここは決算行政の委員会なんですよ。ですから、これからも厳格な対応をお願いしたいと思います。

 本日は、五十年にわたるODAの歴史の中で過去最高額のプロジェクト借款であります八百二十億円のマレーシアのパハン・セランゴール導水事業の正当性と、国際協力銀行、JBICの新しい環境ガイドラインの運用上の不備について質問させていただきたいと思います。

 質問に入ります前に、外務大臣、私はさんざん外務委員会で外務省改革についても質問させていただきました。にもかかわらず、この八百二十億円の過去最高のプロジェクト借款に関して、わずか、私が問い合わせをして、関係の書類、関係の情報をいただきたいと申し上げたにもかかわらず、何の資料も出てこない。そして、それどころか、電話一本で八百二十億円の説明をしようとした省員がいるんですよ。国民の皆さんに全く何を説明するかという気持ちがないんじゃありませんか。今まで、外務省改革と言われて、透明性の高い機構をつくるんだと主張してこられましたが、その辺、いかが御説明されますか、外務大臣。

川口国務大臣 経緯については話を聞いております。

 やりとりの中で、これは担当いたしました職員は誠心誠意行ったものと思っておりますけれども、そのやりとりの中でいろいろな行き違いがあって、委員の意に沿わないような部分があったといたしましたら、それについては、今後そういうことのないように、引き続き指導をしていきたいというふうに思っております。

 これは、後刻また説明を事務的に申し上げる部分があるかもしれませんけれども、マレーシア政府の中で、書類の、公文書の公開について強い意見がある、そういう立場であるということもございまして、その経緯を御説明させていただいたということでございます。

前田分科員 いや、これは、その省員の方が私に対してどうだという話ではなくて、外務省として国民の皆さんにどうやって説明をするかということだと思います。それが全く情報も出さない。

 しかも、行き違いじゃなくて、はっきりとうそを言ったんですよ。後ほど説明しますけれども、そうした虚偽の説明を私にして、私は、現地のNGOにも問い合わせました、マレーシア政府の情報公開についても問い合わせました。そうしましたら、全くそれはうそであった。虚偽のことを私たち国会議員に流してもいいんですか。

 実際の内容について入らせていただきます。

 まず、マレーシアのパハン・セランゴール導水事業、首都のクアラルンプールの人口増に備えて、四十五キロにわたってトンネルを掘って導水路をつくるというものであります。この大規模な大土木工事、かかる費用も、先ほど申し上げたように、五十年にわたるODAの歴史の中で最高額のプロジェクト借款、八百二十億。この供与額は、ODAの最高額。国内の不況であえぐ国民の皆さん、自殺者が三万人いる、実際ODAも一〇%削減と言っている中で、二〇〇二年の十二月十二日、当時のマハティール首相に小泉総理は伝達してしまったわけであります。

 このときに、小泉総理は、各国の状況や住民、環境等を踏まえた支援を行っていくと言っておられますが、具体的に、この事業の場合、どんな検討項目について精査されて、どういう結果を得られたのか、具体的な数字、例えば首都の水需要増加率等、その数字を交えて、外務大臣、御答弁いただきたいと思います。

川口国務大臣 マレーシア側でございますけれども、この事業に関する環境影響評価を実施する過程で、地下水の開発、積極的な漏水対策の実施、既存ダムの有効利用、他地域からの導水等の代替案を検討いたしまして、その結果、水資源量、コスト等の面からこの計画が最善であるという結論に至ったというふうに承知をいたしております。また、マレーシア政府は、この事業の検討に当たりまして現地住民を含む関係者との協議を行ってきておりまして、その点からも、マレーシア政府の検討過程というのは妥当なものであったと考えております。

 政府といたしまして、クアラルンプールを擁するスランゴール州等における水の需要は、例えば一九九二年から九八年までの間、年平均で九・三%伸びている、その後も同様に高い伸びが見込まれていたということでございます。また、近年、実際に水不足が発生しているにもかかわらず、このスランゴール州における新たな水源開発が困難であるということなどから、この導水事業の実施が必要であるというふうに判断をして円借款を供与するということの決定をしたわけでございます。

前田分科員 きちんと数字を挙げて、今九・三%の増加率と言われましたけれども、とにかく御説明いただきたいと思います。

 それは、私が言ったものしか数字が入ってなかったというのは非常に、やはり、これは具体的に国民の皆さんに説明するという気持ちがないんじゃありませんか。

 先に進ませていただきますけれども、もうこの外務省、全く情報公開に対しての傲慢な姿勢は昔から何も変わってない。資料を出さないことをきょうはもう質問せざるを得ないという、残念なことであります。

 二月の九日、私は文書で、私の手書きでありましたけれども、マレーシアの八百二十億円の導水事業の正当性を証明する資料を請求いたしました。十日間もかかって、二月十九日に電話で、しかも、私どもの秘書にいいかげんな説明をしてまいりました。これは、この衆議院の有する国政調査権に対する挑戦ではありませんか。どうしてこんな対応をするんですか。こんなあり方で、この委員会にも何も情報をきちんと出さないということは、もともとこの導水事業が何の正当性も持っていないということではありませんか、官房長。

北島政府参考人 前田委員からは、去る二月九日、JBICのマレーシア・パハン州・セランゴール州都市開発における水源の開発計画の妥当性を示す資料、それからパハン・セランゴール導水事業FSに係る案件形成促進調査最終報告書、さらに、二〇〇二年十二月十二日、小泉首相の特別円借款供与の方針について、住民・環境等への影響等を踏まえた支援とあるが、具体的な影響検討項目についての資料の計三点の資料についてお求めがございました。

 外務省としましては、提出できる資料についてすぐに検討を始めましたところ、第一点目の資料は、マレーシア政府保有の資料であり、外交ルートで同政府に対して開示の可否を照会することにしました。二点目の資料は、マレーシア側との信頼関係を損ねるおそれがある等の理由により開示できないとの結論でございました。三点目の資料は提出させていただくことにしました。

 このように外務省の文書ではないものが含まれていたために、関係先との調整等に時間が必要となり、提出期限とされていました十三日午前に、委員の議員会館事務所に対して事情を説明し、回答を十六日まで猶予いただきたいとお願いし、御了承をいただいた次第でございます。

 十六日に委員の事務所に電話連絡をしまして、委員に対してどのように説明させていただくべきかを相談させていただいたところ、資料はまずファクスで送るように指示がございましたので、その時点で提供可能であった三点目の資料をお送りし、マレーシア政府が保有する一点目の資料については外交ルートで照会中であること、二点目の資料は開示できないことを説明させていただいたということでございます。

 その後、十九日になりまして、マレーシア政府保有の一点目の資料について、同政府から、開示困難であるが、一定の条件のもとで閲覧可能である旨の回答が参りましたので、同日、委員の事務所にその旨を電話にて説明させていただいたということでございます。

 このように、当方としましては、二月九日に委員から資料要求をいただいて以来、何度か委員の事務所と連絡をとらせていただきながら、極力誠実に対応すべく努力した次第でございますけれども、結果的に当方の姿勢が誤解を与えたということであれば、残念に思います。

前田分科員 誤解を与えて残念な印象を与えたとかなんとか言っておられるけれども、それはそういう問題じゃありません。

 私は、今官房長が言われたように、マレーシアの八百二十億円の導水事業の正当性を示す根拠となるパハン・セランゴール導水事業に係る案件形成調査最終報告書の開示を求めたわけであります。そして、マレーシア国家水資源調査も同じように求めました。

 その二月十九日の、十日もかけてのいいかげんな電話報告は以下のとおりでありました。

 マレーシア政府に開示の同意を得る作業中。経済企画院インフラ部長は、政府文書は非公開であり、今後も公開する予定はないとしている。ただし、水資源局長の談として、本件については関係者の理解を得ることの重要性にかんがみ、本件の担当者の同席の上、複写を禁止して閲覧を認める。皆さん、ここからが大事なことなんですよ。この措置は初めてのケースである、こうはっきりと私どもの秘書に外務省の省員は伝えました。

 ここがうそなんですよ。この措置は初めてのケースであるなんていって、うそですよ。二年も前から現地でも開示されていますよ。どうしてそういううそを伝えるんですか。そして、おまえたちは国会中だからどうせ来られないだろうと言わんばかりの外務省の回答でありました。これは余りにもひどい。

 そこで、私は文書で官房長に抗議をいたしました。これはどう御説明されますか、官房長。

北島政府参考人 私どもとしましては、お求めの三点の資料のうち、マレーシア政府に開示の可否を照会する必要のございましたただいまの資料でございますね、これについて二月十九日に回答申し上げた次第ですけれども、それに至る当方の検討過程と当方から委員への回答の内容について改めて説明させていただければと思います。

 この導水計画に対する円借款供与に当たりましてマレーシア政府からJBICに提出されました、水の需要予測に関する資料でありますナショナル・ウオーター・リソーシズ・スタディー、これをもとに所要の検討を行いましたので、当方では委員御要望の資料はこの文書であるというふうに判断しまして、同文書の作成元であるマレーシア政府に対しまして、外交ルートで開示の可否を照会したということでございます。

 マレーシア政府の経済企画院からは、同国では政府文書は非公開が原則であり、同文書についても公開されておらず、また、今後公開する予定もない、同文書はマレーシア政府の所有物であるため、日本政府が第三者に公開することに同意することはできない旨の回答が参ったということでございます。

 大使館としましては、別途公共事業省にも照会を行いまして、同省からは、基本的な考え方は非公開であり、積極的に閲覧を認めることはしないけれども、本件事業については関係者の理解を得ることの需要性にかんがみ、本件に限り、担当官のオフィスで、担当官の同席のもと複写禁止の条件にて閲覧を認めることは可能である旨、また、これまで実際に閲覧を求めたケースはない旨の回答があったということでございます。

 二月十九日に、当方から委員の事務所に対しまして以上の経緯を説明するとともに、大使館としては食い下がったけれども、結果が不開示という厳しい回答であり、申しわけなかった旨、説明させていただいたということでございます。

 外務省としましては、前田委員の御要望にこたえるべく、マレーシア政府と協議する等、極力誠実に対応すべく努力し、その結果を正確に御報告したということでございます。

前田分科員 正確に報告されて、うそを言われていたんですよ。やはりそういうことは、これは八百二十億円の過去最大の、五十年にわたるODAの歴史の中で、このプロジェクト援助自体が、借款自体が間違っている、何の判断をする資料も出さない、こんなこと納得できますか、納税者の皆さんは。

 今、関係者の理解を得ることの重要性にかんがみ、本件の担当者の同席の上、複写を禁止して閲覧を認める、それからなんですよ、この措置は初めてのケースであると。ここが、外務省の省員が私の事務所に伝えたうそであるところなんですよ。もう二年も前から開示されていて、どうしてそういううそを言うんですか。

 そして、この二月二十四日、有償資金協力課長名の回答文書が私の手元に届きました。先方担当官のオフィスにおいて、同担当官の同席のもと、複写しないことの一定条件のもとでの開示の可能性の示唆とありました。開示の可能性の示唆とは何ですか、これは。

 もともとマレーシア政府は、マレーシア国家水資源調査については、担当官のオフィスにおいて、担当官同席の上、複写しないことを一定の条件のもとで開示しているんですよ。どうしてここで、こんな初めてのケースであるなんて、自分たちがやってきて、さも一生懸命やって、努力して初めてそれを得たような、初めて皆さんに見せることができるんですよなんという、そういう言い方をされたんですか。明らかに、こうした虚偽の回答を私どもに寄せるということは、衆議院の有する国政調査権に対する挑戦であります。外務大臣、どうお答えになられますか。

川口国務大臣 今説明を申し上げましたように、これは外務省の方として虚偽の回答をしたということではないということでございます。

 実際に閲覧が求められたケースはないということの御説明を申し上げたということでございまして、我々が努力をしたから今までできなかったことが初めてできるようになったんだという趣旨を申し上げたということではないと私どもは考えております。したがって、虚偽ではない、事実を申し上げた、説明を受けたとおりのことを申し上げたというのが私どもの理解でございます。

前田分科員 これはゆゆしきことですよ。私の事務所が受けて、きちっと秘書がメモして、それを私、何度も読み返しました。初めてのケースである。それは、今まで開示されてこなかったから、だれも請求してこなかったから初めて見られる、そういう意味の言い方で私のところへ伝えてこられたんじゃありません、いろいろ努力して、時間をかけて申しわけなかったけれども、何とかこれで開示の方に持っていくことができました、そういう言い方の文脈の文章だったんですよ。

 だから、私は初めから言っているんですよ。もともと、そういう虚偽を言う、もしあれだったらこれはもう一回しっかりと外務委員会で私、質問しますよ、八百二十億円の援助に関して、いいかげんな姿勢、何も資料は出さない、伝えてきて初めてまたいいかげんなことを言っている、それで後で取り繕う、こういう姿勢が間違っているんだということを言っているんですよ。

 では百歩譲って、現地で、しかも複写を禁止して閲覧を認めるということで、国民の皆さんにこの八百二十億円の説明義務を果たしたと言えますか、外務大臣。この情報開示の方法をこんないいかげんなことで、過去最大の援助ですよ、何も情報を出さないで、これでそのまま、はい納得してくださいと国民の納税者の皆さんに言えますか。どうですか、外務大臣。

川口国務大臣 経済協力につきまして、これは国民の税金を使ってやっている、あるいは円借款の場合ですと税金というよりはむしろ別なルートから、もともとは国民の貯金であるということでございますけれども、大部分だということになりますけれども、いずれにしても、そういったお金を使ってよその国に援助をすることを政府として決定をするということである以上は、まず政府としても十分に納得しなければいけないし、それに対して国民の方々の十分な御理解を得ながらやりませんと、経済協力自体が国民の皆様の支持を受けることにならないというふうに私ども基本的に考えております。

 そういうことでございますので、外務省の改革の一環といたしまして、その一つの大きな柱と申し上げていいと思いますが、ODAの改革ということを挙げさせていただいて、実際さまざまな、透明性を確保するための措置をODAについてとらせていただいております。

 例えば入札についても、その結果について、これをホームページで、どこの企業が幾らで入札をしたというようなところまで数字を挙げているわけでございます。そういった入札等々の情報公開のことを行いながら、今、ODAの改革を進め、かつ実施をしているということでございまして、この基本的な考え方については、今後とも引き続きそれを維持していくということで考えております。

 相手国の政府が資料を出さないと言っている部分について、我が国としてどのようにその資料の開示を求めていくかということについては、これは一つ、なかなか難しい問題であるというふうに認識をいたしております。日本政府の立場としては、やはりできるだけ日本国民に説得ができるような資料を出すべきであると考えておりますし、相手国の政府としては、これはその国その国のいろいろな考え方があって、必ずしも日本の政府と同じ考え方をしていないという現実があるということも確かであります。

 いずれにしても、そういう問題をきちんと認識しながら、我が国としては、我が国が借款を出しているということでございますから、引き続き相手国の政府と話し合って、そのようなケースについて国民の皆様の理解をより得られるように適切に努力をしていきたいと考えております。

前田分科員 今先ほど外務大臣が言われました、まず政府として十分にこうした援助に関しては納得することが必要だと。ではもう納得されて、去年の三月三十一日に交換公文を結んでおられるわけですね。だったら外務省から、あるいはJBIC、国際協力銀行から、これこれのこの援助に関しては妥当性がありますという根拠を示してくださいよ。今まで何も出てこないじゃありませんか。私は、再び外務委員会でこれをやらせていただきますよ。

 さらに進みますけれども、国際協力銀行総裁に伺いたいと思います。

 環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン、これは私は本当にすばらしいと思って参りました。異議申し立て制度もいろいろと直していただいて、なかなかいいふうになってきたと思います。

 しかし、いろいろ私も検討させていただきましたけれども、現在融資検討中あるいは契約締結済みのプロジェクトについて、英語での情報公開がなされておりません。これは一体どういうことですか。これで現地の皆さんやNGOに環境影響についての考え方を聞けというのは、これは困難なことじゃありませんか。なぜ英語で情報公開されないんでしょうか。総裁、お願いします。

篠沢政府参考人 お答え申し上げます。

 環境ガイドライン上要請されております個別案件の情報公開に関連しましては、まず当行が融資の検討を開始した際のスクリーニング情報、あるいは契約締結後の環境レビュー結果については、ホームページ上で情報提供を適時適切に行っているわけでございますが、御指摘のように、これは日本語で行っているわけでございます。

 ただ、この点につきましては、このプロジェクトにおける環境社会配慮の主体というものが、一義的にはプロジェクト実施主体、向こう側の方々であるという考え方でありましたので、カテゴリーAのプロジェクトに必要な環境影響報告書が、地域住民等も含め、プロジェクトが実施される国において現地の公用語、あるいはまた広く使用されている言語で公開される、こういうこと。あるいは、作成に当たりまして、事前に十分な情報公開があった上で、地域住民などと協議が現に行われているというふうに認識をしておりますものですから、そういったことが借入人、プロジェクト実施主体により十分に行われるように当行として一生懸命努力をしてきた。いわばそういう情報開示の仕組みが総合的に合わさった形で情報入手というものが可能になっているというふうに考えてまいったところでございますので、御理解を賜りたいと存じます。

 なお、当行といたしましては、この融資契約が調印されましたときのプレスリリースでありますとか、円借款の活動レポートでありますとか、あるいは過去案件の事後評価結果でありますとか、できるだけ英語化した情報の開示にも努力をしているところでございます。

前田分科員 ぜひ、一義的には向こう側にいろいろな案件があると言われても、開示されることが必要であると思います。これから英語でしっかりと開示していただきたいと思います。

 先ほどからずっと進めてまいりましたこの八百二十億の導水事業、何も今の段階で開示されていませんし、わかりません。

 外務大臣、これは再調査されるか、それこそ中止されるべきですよ。しっかりともう一回調査されて、委員会に報告していただきたい。また私は外務委員会なりでやらせていただこうと思っております。外務大臣、どうですか。

川口国務大臣 このプロジェクトにつきましては、マレーシア政府におかれて、住民に対する説明ですとか、そういったことを今、これまで随時行ってきているというふうに承知をいたしておりますし、また、その移転についても住民の代表の方からは問題がないという意見表明も行われたというふうに承知をしております。

 引き続き、マレーシア政府が、関係者の意見を聞きながら、計画実施に伴う影響にも配慮をしながら取り進めてきているというふうに承知をいたしてきております。

 もちろん政府としても、この実施について環境社会面に適切に配慮が払われる等の問題については注視をしてまいりたいというふうに考えておりますが、今の時点でその調査のやり直しを、マレーシア政府にそれを言っていくとか、そういうことは考えておりません。

前田分科員 もう時間ですので、最後に、日本政府が得たこの導水事業は正しいものであるという根拠をこれからしっかりと開示していただきたい。でなければ、八百二十億出せませんよ。納税者の皆さんに説明できませんよ。外務大臣、しっかりお願いします。

 以上です。

鈴木主査 これにて前田雄吉君の質疑は終了いたしました。

 次に、小林千代美君。

小林(千)分科員 民主党の小林千代美です。

 私は、四月の八日に発生をいたしましたイラクにおける邦人拘束事件についてお伺いをいたします。

 この問題は、日本の国内でも大変大きく取り上げられました。まずは拘束をされた五名の皆様が無事に全員解放されたことを心より喜びたいと思います。また、この間、対応に当たった大臣、現地に赴かれた副大臣、そして外務省の職員の皆さん、お疲れさまでした。

 私は、実は北海道比例選出の衆議院議員でございまして、選挙区は札幌市と千歳基地がございます。今回の当事者であった今井さんと高遠さんの居住している地域ということもありまして、私の地元でも大変大きな反響を呼んだ事件でもございました。そういうこともありまして、私は二、三、外務省にお尋ねをしたいと思います。

 何としても、この問題、無事に解決はしたものの、大変いろいろな問題を残した事件ではなかったかなというふうに感じられます。まずは、川口外務大臣が出ていたテレビメッセージ、撮影したテレビメッセージの件についてお伺いをいたします。

 このテレビメッセージ、アルジャジーラあるいは中東その他世界じゅうのテレビ局を通して全世界に発信がされたそうです。日本の国内でもメディアの中で全文が紹介をされておりましたので、だれもがその全部の内容を確認することはできると思います。

 まずは、このテレビメッセージについて、このメッセージを作成した目的は何なのか、そしてこのメッセージはだれに対して発せられたのか、確認をしたいと思います。

川口国務大臣 外務省といたしまして、人質事件が起こった後、いかにして、どのようにして人質になった日本の、最初は三人でございましたけれども、無事に日本に帰国をしてもらえるようにできるかということで、さまざまな取り組みを行いました。これはその一環でございます。

 だれに向けて発信をされたかということですけれども、このメッセージの冒頭のところで言っていますが、サラヤ・アル・ムジャヒディンのメンバーへということで呼びかけておりまして、この人たちに向けてということでございますけれども、同時に、この事件の存在について、この報道はほかの人たちも見るわけでございますから、イラクの人たちあるいはアラブ世界に住んでいるアラブの人たち、そういった人たちに我が国の考え方を十分に理解していただくという副次的な目的も持っております。

小林(千)分科員 このメッセージを作成するに当たりまして、そういった目的あるいは意図を考えますと、当事者である拘束をされた人、あるいは御家族の皆さんというのも、大変この内容には、当然その当事者の一人であられると思いますけれども、このメッセージを作成するに当たりまして御家族の皆さんの同意は取りつけたのでしょうか。

川口国務大臣 人質の解放について政府として、これはまさに邦人保護ということで全責任を持ってやっているということでございまして、さまざまな取り組みを行いましたけれども、その取り組みの一つ一つについて御家族の方々の同意を得てやるということはやっておりません。これは、政府の責任において救出のための取り組みを行うということでございます。

 このメッセージにつきましては、家族の方々に対してはお見せいたしております。

小林(千)分科員 見せてはいるけれども同意はとれていない、それは政府の方針で救出のためにやっているからということですね。

 それで、御家族の皆さんはこのメッセージに対しまして、あのメッセージがたしか夜中に流れまして、日付が四月十一日の日曜日の未明だったと思いますけれども、ちょうどそのメッセージが流れた直後、夜中の三時ぐらいだったと思います。二十四時間以内に解放されるという、いわば吉報がもたらされました。結果的には二十四時間以内に解放されることはなかったわけでございますけれども、このメッセージが流れた直後にそういう解放というニュースが流れまして、その後、御家族は、明け方の五時に記者会見を行っております。

 その記者会見のときに、同席しているマスコミの方に文章を配付しました。その文章の中には、メッセージの中の二カ所について削除してほしい、一カ所は、「日本の国民は驚きと怒りを感じています。」ここの「怒り」という部分を削除してほしい、もう一カ所は、「我が国の自衛隊もこのために派遣されているのです。」というフレーズ、この二カ所を削除してほしい、削除ができないならばビデオメッセージを流さないでほしいということを、その後の五時の記者会見でペーパーにして配っておられました。

 御家族のこのような要求は外務省の方にも行っていたと思いますが、なぜ組み入れられなかったのでしょうか。

川口国務大臣 御家族がおっしゃったその二点については、私どもも、御家族にそのビデオをお見せしたときに、そのとき直ちにであったか、あるいはその後であったか、いずれにしても、お話は伺っております。それで、伺っておりますが、先ほど申しましたように、これは私ども政府が邦人保護に責任を持っている立場から、政府としての判断において行ったということでございます。

 自衛隊について、これは人質をとったグループ、このグループがそもそも自衛隊について触れている。我々として、自衛隊がイラクに復興人道支援のために行っているという本当の理由をこの犯人グループにわかってもらう必要が十分にあるというふうに考えております。

小林(千)分科員 そういった外務省、政府の方針だとは思いますけれども、御家族の皆さんは、実際にこの文章をごらんになりまして、いたずらに犯行グループを刺激するような内容はやめてほしい、そこに自分たちの家族が拘束をされているのだから命が危うくなる一言になってしまうのかもしれない、こういった危機感を持っていたというふうに聞いております。

 そして、もう一つ確認をしたいことがあります。このビデオメッセージ、大体、十一日の日曜日午前一時ごろに発信をされたということですが、これは間違いありませんか。

川田政府参考人 お答えいたします。

 日本時間で十一日午前一時ごろ、現地時間ですと、イラクの時間ですと十日の十九時ごろに発出されております。

小林(千)分科員 ここで、時間経過をちょっと振り返ってみたいと思います。

 川口外務大臣が、このビデオメッセージ、外務省が作成をしたのは四月十日の土曜日夜の二十一時ごろでした。外務省から御家族の皆様にこのような内容でビデオメッセージをつくりましたという連絡が入ったのがその同日、十日の土曜日夜の十一時ぐらいだったというふうに聞いております。

 そのときに、そういった内容の文章を御家族の皆さんが見て、御家族の皆さんの中でもいろいろとやはり評価が分かれたそうです。その中で、御家族の皆さんが意見をまとめて、そこの二カ所の部分を指摘した。それが、日付がかわって日曜日になっての午前一時前ぐらいだというふうに聞いております。そのときは、御家族の皆さんがその二つの要望について外務省に対して電話とファクスをもって連絡を入れたと伺いました。

 それに対して、外務省は、そういうふうなことを御家族の皆さんがおっしゃるのでしたら、一度このできたビデオテープを見てくださいということで、御家族の皆さんを外務省に呼びました。これは、御家族の皆さんが自分たちで外務省に押しかけていったわけではありません。外務省の方が車を出して御家族を迎えに行って連れてきて、外務省でそのビデオテープを見てもらったということです。そのときが、外務省に着いたのが一時半ごろというふうに伺っています。それで、テープを見て、御家族の皆さんでもやはり意見が分かれた。それで、その場で結論を出すことができなかったので、一度、待機場所でありました北海道東京事務所に戻ったというふうに言っております。

 なぜ、御家族の方がそういってペンディングにしたかといいますと、外務省の方からは、御家族の皆さんにはこのビデオメッセージは午前三時をめどに配信するというふうに言っているからなんです。御家族の当事者の方に午前三時ごろ配信すると言ったものを、確認もとらないうちになぜ一時に配信をしたのですか。

鹿取政府参考人 お答えします。

 このビデオを作成しまして、このビデオが放映される旨は、実は張り出しをいたしました。それは、プレスの方に張り出しするときに、今先生が御指摘のように、この放映というのは三時ごろ予定されている、そういうことでございました。しかし、実際には、各外国のテレビ局の作業が進みまして、一時過ぎには最初の放映が行われたと承知しております。

 家族の方々との関係につきましては、先ほどから先生が御指摘のとおり、十一時前後に、こういう内容をビデオで放映する予定であるということを申し上げました。そして、一時半から二時ごろ家族の方々が外務省に来られて、やはり一度我々としても我々の責任と努力等の結果つくったビデオをぜひ見ていただきたいということで見ていただきました。その段階でもう既に最初の放映というのは行われていたわけでございます。そして、その旨は、私どもも、家族の方々には既に一部もう流れているということは申し上げたというふうに記憶しております。

小林(千)分科員 私は、実は、外務省領事部邦人保護課の作成した御家族に向けたファクスを持っているんですけれども、この中でちゃんと書いてあります。「このビデオ・メッセージは、十一日(日)午前三時を目途に衛星ワールド・オファーにより全世界に向けて発出する予定である。」

 こういうことを御家族の皆さんに言っていながら、なぜ、御家族の皆さんに確認をすることなくそういった作業をしたんですか。そういった、例えば放送上の手続で早く進んだということでしたらば、一言御家族の皆さんに確認をするべきではないんでしょうか。

鹿取政府参考人 今先生が引用されたのは、私どもが出した張り出しでございまして、その中には、御指摘のとおり、十一日午前三時をめどに全世界に向け発出する予定であるということは確かに書いてございます。これを私どもは御家族の方々にお送りいたしました。

 しかし、私どもとしてはできるだけ早くこのビデオを世界に流したいと考えておりましたし、実際には午前一時過ぎに流れた、これが事実関係でございます。また、御家族が来られたときに、私どもとしては、既にこれがもう流れているということはお伝えいたしました。

小林(千)分科員 早く流した方がいい、それは、たしかこれは三日間という期日が切られておりまして、たしかその日曜日の夜の八時か九時かがタイムリミットだったと思いますので、それは一日でも早く流していただいた方がいいに決まっているんですよ。早く流した方がいいか悪いかを今問うているのではなくて、なぜこのように御家族の皆さんに、不誠実な形とあえて言います、不誠実な形でこういった了承のとり方をしたのでしょうか。

鹿取政府参考人 私どもとしては、当時、全力を挙げて対応しておりまして、御家族の方々にもこのファクスをお送りしたときは、午前三時を目途にこれが全世界に放映される予定であろう、そういうふうに考えていた次第でございます。しかし、実際には、作業が、各テレビ会社の作業であると思いますけれども、より迅速に進んで、一時過ぎに最初の放映がされたというのが事実関係でございます。

小林(千)分科員 この時間の経過につきまして外務大臣にお話をしておきたいと思いますけれども、御家族の皆様の気持ちをないがしろにする外務省の対応ではなかったかなというふうに一言指摘をしておきたいと思います。

 次の点に移らせていただきます。費用の請求に対してです。

 今回の人質バッシング論といいますか自己責任論と一緒に、費用の弁済というものがマスコミなどで大きく取り上げられました。五月十日に請求書を発送した、これは一人約四万円であった、これに間違いはないでしょうか。また、この請求した理由と、その四万円の中身はどういったものでしょうか。

鹿取政府参考人 三名の方に四万円の請求をお願いしていることは事実でございます。その中身は、バグダッドからドバイ、これはチャーター機を利用いたしましたけれども、このチャーター機を利用するに当たってエコノミーの通常料金相当分、約四万円でございますが、これのお支払いを今お願いしているところでございます。

小林(千)分科員 過去の同様なこういった海外における邦人のテロですとか拉致の事件、こういった過去の同様の事件の中で、今まで費用を請求し、支払われているという実績はあるのでしょうか。

鹿取政府参考人 これまで、誘拐あるいは拘束された方を救出するためにチャーター機を利用したという実例はございません。これは今回が初めてでございます。

 しかしながら、チャーター機を利用して邦人保護活動を行ったことは、これまでも何回もございます。例えば緊急事態で退避する際、そういう場合には、チャーター機を仕立てた場合にはやはりエコノミー料金相当分のお支払いをお願いしているところでございます。

小林(千)分科員 先ほど御説明していただいた理由、バグダッド―ドバイ間の正規エコノミークラスの料金ということで約四万円、これは私は、国民の皆さんに説明するのにとても納得のいく内容であると思うんですよ。

 ところが、今回のバッシング論の中に出てきたこの費用の請求、国民の税金が山のように使われているとか、そういったマスコミの世論というのも大きくあったことは御存じだと思います。

 その中で、そういった国民の世論のみならず、政府の責任ある立場にある方までいろいろなことをおっしゃっていました。例えば、これはメディアに載ったものですけれども、外務政務次官経験者の方が、二十億ぐらいかかったのではないか、こんなことも言っていらっしゃいます。また、与党の議員の中で、これまでかかった税金は大変なものだ、経費はしっかり請求すべきである、これを政府の立場にある方が発言をされている。

 私は、こういった内規があるんだったら、しっかりとその内規を国民に説明するべきだ、そうすれば、こんなむだなバッシング論、費用請求論みたいなものは出てこなかったのではないかと思います。

 マスコミの中で、本当にひどいものがありました。外務副大臣がアンマンに向かわれたとき、往復で飛行機のファーストクラスを利用した際のファーストクラスの料金ですとか、あるいはワイドショー番組なんかでは、ここのホテルのスイートルームに外務副大臣は泊まっていましたなんて、御丁寧にそのスイートルームも映しているんですよね。一泊日本円にして何十万円です、こんなことも言われている。そこで何十億かかっているだの、ひどい話の中には、犯人グループと接触をして身代金を払ったのではないか、それを請求するべきだとか、そんな議論にまでなっていたのは事実です。

 そういった内規というものがあるんだったらば、しっかりとそれを説明して、国民の皆さんに間違いのないように理解を得てもらう、こういった手続は必要だったのではないでしょうか。間違っても、こんな政府の立場にある人が、何十億円の費用を請求するべきだなんて言うことは間違っていると思います。外務大臣、いかがですか。

川口国務大臣 今回の事件が日本の国民を、日本じゅうの人をいろいろな意味で心配させ、あるいはこの問題についてさまざまなインプリケーションといいますか、そういったことを考えさせる、個人と国の間の関係はどうかとか、いろいろな問題提起をした事件であっただけに、それについてのいろいろな思いというものが出てきたということはあったというふうに思います。

 この件で、個人個人の、人質事件の被害に遭われた方々が、おっしゃったような形でバッシングに遭うというようなことは、これは私は大変に遺憾でありますし、あってはいけないというふうに思います。ただ、そういったことが非常に個人と国民、特にこのような退避勧告が出ていた、そういった中で、そういった国で起こったということが背景にあっていろいろな意見が議論されたということなんだと私は考えております。

 政府として、イラクについては引き続き退避勧告を出している。政府は邦人の保護をするということは仕事でありますけれども、こういった国では、それなりに政府の力の及ぶ範囲というのは制約されざるを得ない。また、イラクの国もああいう国でございますから、他の国であれば可能であるイラクあるいはその国の政府の力、これにも限界がある、そういうようなところで、それぞれどのような形で自己の安全を確保しながらやっていくかということについて、みんなが考えたという事件であったのではないかというふうに私は思っております。

小林(千)分科員 私は、みんなが考えたというよりも、政府初め多くの人がバッシングをしていじめたとしかとりようがないのではないかなというふうに思います。

 この人質バッシング論、自己責任論というのは、主には人質の皆さんが、拘束をされた皆さんが解放された四月十五日の日あたりから大きく取り上げられ出しました。しかし、そのときから始まった話ではありません。解放されていないうちからも自己責任論というものは出ておりましたし、私は、あの事件が明らかになった木曜日の夜、あの拘束されたテレビの放映が始まったすぐそのときからこの自己責任論は出ていたのではないかと思います。

 それこそ、政府は邦人保護に責任を持っている、これは先ほど答弁いただきました。そういう立場にありながら、その立場にいる政府の要人の方が、さまざまな発言をこの間されております。

 例えば、福田前官房長官、四月十五日の日、これは釈放、解放された日です。その釈放を受けた記者会見の中で、自分の責任で行くということなのかもしれないが、どれだけの人に迷惑がかかるかということも考えてもらいたい、このように記者会見で述べております。

 この迷惑という言葉、私は、この事件において、例えば、拘束をされた御本人あるいは御家族の皆さんが、本当に皆さんに御迷惑をおかけいたしましたというふうに迷惑という言葉を使うのだったらいいと思います。しかし、邦人保護に責任を持つ政府の官房長官という立場にある方が、迷惑がかかるということも考えてほしいとおっしゃっている。政府に対して、この拘束された五人は迷惑をかけたのでしょうか。

川口国務大臣 自己責任論という言葉がひとり歩きをいたしていますけれども、この自己責任論の持つ意味というのは、人によってさまざまに解釈をされているのではないかというふうに私は思います。

 海外における邦人の保護、これは外務省に課された重要な責務でございます。そして、我々は過去において、いろいろな難しい状況の中で、これを達成するための努力をしてまいりました。これは、今後についてもそういった努力は当然にやっていく所存でございます。

 でありますけれども、先ほども申しましたように、今のイラクのような国で、あるいは他の国でこういう事件があれば、相手国の政府が責任を持ってこれに対応するということが第一義的に行われるべきことであります。そして日本国政府の代表、大使館等を通じて、そこでできる限りのことをするということでありますけれども、イラクのような国では、相手国政府がやり得ること、今の場合はCPAですけれども、それがやり得ること、そしてその中で日本の大使館がやれること、これは大きく限界を持っていることである、制約されていることである。

 だからこそ、我々は退避勧告というものをお出しをしているわけでして、行かないでくださいと。この行かないでくださいという情報を徹底するために大変に大きな努力をいたしております。これは、政府が責務を果たさないということではなくて、責務をきちんと果たそうと思えばこそ、そういったことをお伝えしてきているわけでございます。

 自己責任論というのは、我々が考えております自己責任論というのは、政府がそういった努力をしても限界がある、現にほかの国の人質の方には何人か殺害をされてしまった人がいるわけです。できるだけのことをやってもそういうことになる可能性というのは否定し切れないというのが今のイラクであります。

 ですから、行かれる方は、自己が、自分で安全を見きわめ、自分で責任が持てるようなことをきちんと手を打ってやっていくべきである、これが私の理解をするところの自己責任論であるというふうに思っています。

 今回の人質を救出に至る過程で、これは細かくは申しませんけれども、イラクの大勢の方々、それからイラク以外の国の人たち、大勢の方にいろいろなお世話になっています。そうした上でこの人質の救出が可能になった、そういう事実を日本の人たちはきちんと踏まえてみずからの行動を考えていただきたいというのが政府の切なるお願いであります。

小林(千)分科員 とてもそういう内容とは思えません。

 先ほど、イラクの国内でいろいろな方々にお世話になった、もちろん、そのいろいろな方の中身を具体的に細かく言うことはできないでしょう。ですけれども、今回、この問題の解決に当たり、イラク国内のイラク・イスラム聖職者協会、ここが大変大きな役割を果たしたというふうに言われております。

 しかし、そのイラク・イスラム聖職者協会の方が、クバイシ師、こちらの方が、日本政府からは電話が一本あっただけだ、人質を本当に大切にしていると感じたことはなかったと発言をしております。これは日本のあるマスコミに対して取材に答えた内容です。同じ聖職者協会の幹部のある方は、日本の政府の謝意は伝わってこない、このように記者会見で発言をしております。

 そのお世話になったいろいろな方々の中でこのような声がイラク国内で出ていることを、日本政府、外務省として、大臣、どのように考えていらっしゃいますか。

川口国務大臣 先ほど申しましたように、まさにイラクの中あるいはイラクの外のいろいろな方にお世話になって解決に持ち込んだということでございます。

 今おっしゃったその団体、クバイシ師がスポークスマンをやっているイラク・イスラム聖職者協会、この団体に対しましても、当然のことながら、我が国の政府として関係者に十分な謝意をお伝えいたしております。

小林(千)分科員 そのような認識であるかもしれませんけれども、相手方はそのようにとっていないということですね、これは。

 それから、もう一つお伺いをしておきたいと思います。

 政府が邦人保護に責任を持っている立場にある、もちろん、これは、イラクのように政府の行動が制約され、限界があるところでも、その責任は免れるものではないと思います。

 しかし、この問題がまだ解決をされてもない四月十二日の日に、竹内外務事務次官がこのような発言をしております。自己責任の原則を自覚して、みずからの安全をみずから守ることを改めて考えてもらいたい。自己責任論のことを言っていらっしゃるのかと思いますけれども、この政府の責任ある立場、特に外務省の事務方のトップの方である事務次官がこのような発言をされているということは、どういうことなのでしょうか。

川口国務大臣 事務次官の発言は、先ほど私が申し上げたようなことを言っているということだと思います。政府は全力を尽くして救出に努力をする、ただ、イラクのような国でそういったことに限界があるということはみんなに承知をしていただきたい。であればこそ、先ほども言いましたけれども、退避勧告も何回も、もう一年以上出してきているわけです。ですから、行かれる方は、そういった限界、現に人質が殺されている、そういう状況にあるということを十分に踏まえ、みずから、どのような危険があって、どのように自分でリスクを防ぐことができるかということを十分に考えて行っていただきたい、それをそのまま申し上げたということであります。

小林(千)分科員 全力を尽くして解決に向かって努力をしていらっしゃるなら、そのようにおっしゃればいいじゃないですか。なぜ自己責任論だけ、そこだけでピックアップをされるのですか。

 今回、マスコミのかなり大きなこのバッシング論、自己責任論の中で、政府の要人のこういった発言が火種になっていたことは私は否めないと思います。

鈴木主査 小林さん、時間が来ております。

小林(千)分科員 はい。

 まだ実際にイラクに駐在をしていらっしゃる日本人も多くはありません。後味の悪い事件です。二度とこんなことがないように、外務省としても今後十分対応をしていただきたくお願い申し上げます。

鈴木主査 これにて小林千代美君の質疑は終了いたしました。

 次に、津村啓介君。

津村分科員 民主党・無所属クラブの津村啓介と申します。

 まず冒頭、宮内庁の方に、先般の記者会見における皇太子殿下の御発言に関連いたしまして、幾つか御質問をいたします。

 まず一つ目ですけれども、皇太子殿下はデンマーク、ポルトガル、スペインの三カ国に現在御訪問をされております。これに先立つ五月十日の記者会見で、雅子妃殿下の近況についてお触れになりまして、この十年、自分を一生懸命、皇室の環境に適応させようと思いつつ努力してきましたが、私が見るところ、そのことで疲れ切っているように見えますと御発言をされました。また、続くくだりで、雅子妃殿下のキャリアや人格を否定するような動きがあったことも事実と述懐されておられます。

 この御発言以降、宮内庁のあり方及び対応について国民的な議論が起きております。宮内庁のホームページには抗議や批判の声が殺到しているとの報道もなされています。

 このことに関連いたしまして、皇太子御一家のお世話をされる側近の責任者でいらっしゃいます林田東宮大夫は、十二日の臨時記者会見で、殿下のおっしゃっている内容以上の背景などについては、よくわからないが、大変な御心痛がおありになったのだと感じて、重く受けとめていると発言をされ、また湯浅宮内庁長官も十三日の定例記者会見で、御発言は重く真摯に受けとめていると述べられています。

 しかし、こうした一連の釈明に対しましては、当事者意識に欠けるとか説明不足であるといった批判も一部に聞かれ、責任を問う論調も聞かれるところです。

 本日は、宮内庁の羽毛田次長に御出席いただいておりますが、本委員会の場で改めて、宮内庁としての所見を伺いたいと思います。

羽毛田政府参考人 お答えをさせていただきます。

 先生今御引用いただきました皇太子殿下の外国訪問に際しましての記者会見での御発言につきましては、宮内庁といたしましても、大変重いものとして真摯に受けとめなければならないというふうに考えておるところでございます。

 もとより宮内庁というのは、天皇陛下あるいは皇族方の御活動に奉仕をするというのが私どもの役割でございます。したがいまして、そういう立場から何ができるのかを今後もよく考えていくことが大変大切であるというふうに存じておる次第であります。

津村分科員 先ほどの私の質問に関連いたしまして、一つ事実関係をお尋ねしたいと思います。

 一部の新聞及び雑誌の報道によりますと、湯浅長官は昨年十二月十一日の記者会見で、秋篠宮様のお考えはあると思うが、皇室の繁栄を考えると三人目を強く希望したい、姉妹との年齢差を考えるとできるだけ早い時期にと思う、こういった趣旨の御発言をされたということですが、これは事実でしょうか。また、事実とすれば、非常に踏み込まれた、誤解を招きやすい内容と思いますけれども、雅子様や紀子様の御心情をお察しした同情の声も聞かれます。この湯浅長官の御発言の真意を聞かせてください。

羽毛田政府参考人 御指摘のございました長官の発言でありますけれども、これは背景を申し上げますと、長官は定例の記者会見というのをやっておるわけでありますが、その定例記者会見におきまして、その直近に秋篠宮同妃両殿下の記者会見というのがございまして、これはたしかお誕生日の会見か何かだったと思いますが、そのときにございました秋篠宮殿下と記者さんとのやりとり、質問、お答えということに関連をいたしまして、記者の方から実はそのことで御質問があったわけであります。つまり、秋篠宮殿下の次のお子様についてどうですかという御質問がございました。したがいまして、それにお答えする形で実はお答えをしたものでございます。

 その趣旨は、皇室の御繁栄をお祈りするという趣旨から申し上げたものであるというふうに承知をいたしております。

津村分科員 宮内庁への質問の最後といたしまして、今後の対応についてお伺いいたします。これが大変重要な質問かと思っております。

 皇太子殿下は十日の記者会見の中で、公務復帰に当たって必要な本来の充実した気力と体力を取り戻すためには、今後いろいろな方策や工夫が必要であると思われると述べられています。さらに具体的に踏み込まれまして、今後、医師の意見によって、公務復帰に向けては足ならしのために静かな形でのプライベートな外出の機会をつくっていくことも必要であるかと考えていますと述べられています。

 私は、大変率直な問題提起であり、具体的なおぼしめしといいますか、御提案であると思うわけですが、今後、この殿下のおぼしめしに対しまして、どのようにおこたえになり、またどのようなタイミングで、あるいはどのような形で国民に御報告をされるのか、現在のお考えをお尋ねいたします。

羽毛田政府参考人 今後の対応ということでの御質問でございました。

 皇太子殿下のあの御発言の御真意につきましては、早速お伺いをしたいところでございましたけれども、外国御訪問の直前ということもございまして、御帰国を待ちまして、改めて長官から殿下にお伺いをするということを考えております。その上に立ちまして、今後改善をするべき点がございましたら、やはりこれは宮内庁としてきちんと対応しなければならないというふうに考えておるところでございます。

 しかし、いずれにいたしましても、現在の目下の状況から申し上げれば、皇太子妃殿下の御体調の御回復ということをやはり最優先に考えなければならないであろうと私ども考えております。そのことのためには、先生のお話もございましたように、医師の的確な判断ももちろん必要でございますけれども、やはりそうしたことに対して、静かな環境の中で御静養していただくということも非常に大事な選択ではなかろうか、こんなふうに考えているところでございます。

津村分科員 羽毛田次長、ありがとうございました。

 続きまして、外務省にお尋ねをいたします。

 まず、四島支援についてでございます。

 今外務省として、北方四島の住民支援に取り組みをされているわけですけれども、この間の支援実績には、過去十年ほどを見るだけでも、相当大きな数字の変動、実績の変動がございます。

 例えば、平成十一年度では三十億八千四百万円、平成十二年度には二十七億六千八百万円の実績があるわけですけれども、翌年、平成十三年度には三億円余り、そして平成十四年度には極端に減りまして一千七百万円、平成十五年度には四千三百万円、多少ふえておりますけれども、平成十六年度予算として五千百五十一万七千円ですか、こういった数字がございます。

 数字として、ピーク時に比べて百分の一、一%以下に減っているわけですけれども、これは四島の住民支援の意義が、この数字で見るような形で低下している、減少していると考えればよろしいのでしょうか。また、そうでないとすれば、なぜこのような極端な減少となっているのか、背景を御説明ください。

川口国務大臣 北方四島の住民支援の予算でございますけれども、これは御記憶いただいているかと思いますが、平成十三年度におきまして、この北方四島の支援をめぐるいろいろな議論がございました。それを受けまして、それを担当いたしておりました支援委員会、これは廃止をするということになりまして、廃止後の北方四島の住民支援については、人道支援の本旨に立ち返って、施設案件は実施をしない、そして災害時の緊急支援、また現地のニーズに応じた医薬品や食料品の供与、それから患者の受け入れといった、真に人道的に必要なものを実施していくということになったわけでございます。

 そういったことを反映いたしておりまして、この北方四島の住民支援、これが重要であるということの基本的な考え方が変わったわけではなく、そのために何を行うかということを切り分けていったということでございます。

津村分科員 私も、その平成十三年度前後にさまざまな議論があったことは承知しておるわけです。

 例えば、これは大分古くさかのぼりますが、平成三年度、食料品に二千五百万円、あるいは平成四年度には医薬品、食料品等に一億五百万円。その後の内訳は、外務省からの御説明で内訳としていただいておりませんので、どういう形で川口大臣のおっしゃる人道支援が実績として行われていたか、残念ながら私は比較ができないのですけれども、余りにも極端な減少で、今まで、では人道的なといいますか、患者受け入れや医薬品、食料品等にこれだけ少ない額だったのかというと、そういうわけではないわけですから、北方支援の重要性に対する認識あるいはスタンスの変化を、数字だけ見る者には少し感じさせてしまうほどの極端な減少だと思ったので、お伺いしました。

 もう一度お伺いしますけれども、人道支援の面で、これは数字的にずっと一定のものが保たれているのでしょうか、それとも、やはり足元、大きく減少しているのでしょうか。ちょっと内訳についても教えてください。

川口国務大臣 今ここで、人道支援だけに区切って金額を申し上げるということは難しゅうございますけれども、今まで行っていましたものにつきましては、例えばおっしゃったように、平成三年度、食料品二千五百万円、四年度、医薬品、食料品等一億五百万円、平成五年度に入りますと、プレハブ倉庫というのが入りまして四億千九百万円、それから桟橋の改修ですとかディーゼル発電施設とか、そういったものが十年度、十一年度に入りまして、その結果として、例えば三十億とか二十七億とか、そういう数字になっているわけでございます。

 これは、何が人道支援かということをめぐってのいろいろ議論があったわけでございまして、したがって、純粋に人道支援ということを、何をもってそう言うかということがなかなか難しい部分もありますけれども、できるだけ、今行うことができる人道支援を、過去の数字から引き抜いた形での資料を作成する努力をしてみたいというふうに考えております。

 そういうことをいたしました上でないと正確には申し上げられませんけれども、今やっているような人道支援ということの数字でいきますと、過去においてもそれほど相違はないというふうに、ざっとお考えいただいて大丈夫かと思います。

津村分科員 ざっと見ただけでも、先ほど申し上げたように、医薬品一億円というときもありますので、ちょっと違和感もあるんです。

 これに関しましてちょっと具体的なお話をする前にもう一つ申し上げたいのは、ずっと巨額の予算をつけてきたものが、減るにしても、またふやすにしても、これからまたふやす局面も場合によってはあるのかなと思うのですが、客観的に、どういう効果を上げているのか、あるいは、どのような必要性に基づいているものなのか、そういったものが明確になっていれば、こういった数字の大幅な変動、かなりボラタイルに動いていると思いますけれども、こういったことも御説明しやすいと思うのです。

 例えば、平成六年前後でしたでしょうか、四島の住民の皆さんの意識調査をされたことがあるということも聞いております。そういったものや、あるいは日本に住んでいらっしゃる旧島民の皆さんの側に、千島連盟でしたでしょうか、いろいろ組織もあると思いますけれども、皆さんとの意見交換の仕方など、どうやってこの予算を評価するのか、後ほど少し具体的に触れますけれども、この予算を考えていく上で、どうやってその判断をしていくのか、現在の枠組みをお聞かせください。

川口国務大臣 この議論は、実は平成十三年度ぐらいに国会で非常に大きな議論になったことでございまして、北方四島の住民支援について、先ほど申しましたように支援委員会がやっていたわけですけれども、そのあり方をめぐりまして国内でいろいろな問題点が指摘をされたということがあったわけでございます。それで、透明性を高める、そして適正に行うという観点から大幅な見直しをしたということがきょうの結果になっているわけであります。

 それで、大きく違いますことは、見直しをして、その結果として、十五年度以降、施設建設案件、例えば倉庫ですとか、そういったこと、それは実施をしないということになったわけです。災害時の緊急支援、現地のニーズに応じた医薬品や食料品の供与、急患、患者の受け入れ、そういった四島の住民の方にとって真に、本当に必要な人道的な支援だけをしていくということで考えております。

 また、それぞれのことについて、だれが担い手として行うかということについても少し整理をいたしまして、災害時の緊急支援と急患の受け入れ、これは外務省がみずから行う事業ということにいたしました。そして、現地のニーズに応じた医薬品や食料品の供与につきましては、先ほど委員がおっしゃられた千島連盟、これに対する補助金事業として実施をするということにしたわけでございます。

 それで、その意義について今お尋ねがありましたけれども、四島の住民支援というのは、四島の住民の我が国に対する信頼感を高めて、平和条約の締結交渉の促進のための環境整備に資するようにするという重要な意義を持っていることでございまして、手当てをされた予算を最大限効率的に使って地元の住民の方々のために意義深い支援をしていきたいというふうに考えているわけでございます。

津村分科員 人道支援という言い方が十分なのかどうかわかりませんけれども、私なりの言い方をさせていただくと、これまではハード面での支援が非常に大きなウエートを占めていたわけですが、そこで幾つかの問題点が指摘される中で、ソフト面といいますか、住民の皆さん、それから旧島民の皆さんのこともあると思います、人と人との交流ですから両面あると思うのですけれども、そういった交流をソフトの面からどういった形で支援していくのか、そういった明確な問題意識を持って、消去法的に支援を考えるのではなくて、プラスをどうやって生み出していくのか、そういう形で議論をぜひ進めていただきたいわけです。

 そうした中で、支援委員会が廃止された後、これは外務省さんのホームページの昨年六月のペーパー、「支援委員会廃止と新たな対露・北方四島住民支援のあり方」と題するものの冒頭に出てくる記述なんですけれども、昨年の「四月から半年を目途に清算業務が行われています。また、支援委員会の繰越金については、清算が終了し最終的な残金が確定し次第、我が国の国庫に返納されることとなります。」とあります。

 半年以上たっているわけですけれども、清算が終了した時点、最終的な残金はどの程度あったのでしょうか。

川口国務大臣 これは、引き続きいろいろな残務整理がございまして、今、清算の最終段階にございます。したがって、終了したということではございませんが、来月、六月を目途にこれを完全に終了させたいというふうに思っております。そして、そのときの残余財産ですけれども、これが確定をした時点で国庫に返納されるということになっております。

 大体幾らぐらいかということですけれども、これは、最終的には清算をした時点でということになりますが、現在その見通しがついているということで申しますと、おおむね約百二十九億円ということになるかと思います。

津村分科員 百二十九億円前後ということで御答弁いただいたと思うのです。

 ここで、私からの御提案という形になるかと思うのですけれども、現在、旧島民の皆さんが、四島との交流といいますか往来を、これは時期によって相当違うと伺っておるんですけれども、二カ月に一度とか年に何回か往来をされているというふうに聞いております。主に、旧島民の方が四島の方にお墓参りその他で行かれるのかなということと、逆に、先ほどの医療、人道支援の関係で、根室市の病院に何人かの方を受け入れたりしているというようなお話を聞いております。

 こうした場合の、まさに人的交流の象徴といいますか、北方四島の住民支援に日本の外務省として真剣に取り組んでいる、先ほど私はプラスを生むような形でと申し上げましたが、そういった形で取り組んでいる、そういった目的に、百二十九億円が残ったわけですけれども、これを国庫に納付してまたゼロからということではなくて、ぜひ知恵を絞って、この百二十九億円、こういう形で北方四島支援に使いたいという具体的な提案、アイデアを外務省から出されてはいかがかと思うのです。

 例えば、政府専用の船舶を購入いたしまして、この四島との交流に使う。非常にわかりやすい、かつ非常に実用的なアイデアかと思うのですけれども、こういった政府専用の船舶をこの百二十九億円から購入されるというアイデアはありませんでしょうか。

川口国務大臣 支援委員会をどのような形で整理していくかという議論の中で、残余財産の扱いにつきましては、これは支援委員会設置協定というのがマルチの協定でございまして、その終了に向けて各締約国と調整をいたしましたけれども、その調整の結果、清算業務の終了に際して、日本国政府に対し残余財産を返却することになったという経緯がございます。ということで、日本国政府に返却をするということが決定されているということでございます。

 おっしゃっていただいたように、例えば四島交流に使用している民間の船舶につきまして、外務省として、皆さん高齢になっていらっしゃっているものですから、その高齢の方々にとって必ずしも居住性がよくないといったこともございますし、使用船舶の改善については引き続き検討をしていかなければいけないというふうに思っております。

 また、拡充をしたい事業としては、例えば患者の受け入れの事業というのを、これは外務省がやっておりますけれども、そういったことを充実していく意義があるのではないかというふうに思っております。

 残余財産を返還するということが決まっておりますものですから、今申し上げたようなことは、別途また予算措置を工夫して、あるいはお願いを財務省にしてということになるわけでございます。そういったことをやっていきます過程でも、引き続き御支援をいただければというふうに思っております。

津村分科員 言うなれば、最後におっしゃられた御支援のつもりで申し上げているわけですけれども。

 おっしゃられた支援委員会を主体として考えた場合に、残余財産を国庫に返納するというのがマルチで決められているというのはおっしゃるとおりだと思うんですが、それは支援委員会を主体にして見たときにはそういう動きなわけで、日本国政府として、国庫に返納される側の外務大臣にお伺いしているつもりなんです。

 もともと日ロ関係あるいは北方四島支援のために支出を決定したお金が、期せずしてといいますか、マルチの舞台で返ってくることが、それは一つ結果としてなったのはわかるんですけれども、これは、日本国政府として四島支援、冒頭長々お伺いしたのはこのことを申し上げたかったからです。

 四島支援、ソフト面での支援の重要性、何ら減っていない、低下しているものではない。

 むしろハード面のものが損なわれて、それはいろいろ問題があったというのはあるわけですけれども、現地の方から見たら、最近日本から何もしてくれなくなったなと場合によったら思われかねない、さまざま論点はあるわけですけれども思われかねない中で、いや、そうじゃない、やめたんじゃなくてハードからソフトに、より皆さんとの交流を大切に、人と人が触れ合うような形で進めたいんだ、そういうメッセージをしっかり示していくためにも、私は、この百二十九億円の使い方はぜひ知恵を絞って、もちろん財務省との折衝はあるわけですけれども、しっかりと外務省としてのお立場を示していただきたいと思うわけです。

 そして、先ほど具体的に申し上げたのが政府専用船舶の話ですけれども、先ほど居住性云々ということをおっしゃられました。使用船舶の改善という表現をされましたけれども、使用船舶をどう改善したら居住性がよくなるかといえば、それは、ぽんこつになった船を少し改修したって、船はそんなに簡単に改善できるものではありませんから、外装はどうなるかわかりませんけれども、居住性とかあるいは安全性という最も船にとって重要な命の部分では、単に改修、補修するということではきちんとした姿にならないと私は思うのですね。

 そういう意味であえて購入ということまで申し上げたんですが、ぜひ御検討いただきたいんですけれども、外務大臣、御答弁をお願いします。

川口国務大臣 使用船舶改造と申し上げた方が適切であったかもしれませんが、あるいは新しい購入、どういう形になるかわかりませんけれども、これはぜひ工夫をしていきたいと思っております。

 残余財産百二十九億円、これをひもつきの形で新しい北方四島の支援のために使うということについては、これは、相手国とのお話も申しましたけれども、日本政府の中でも既にそのような決定になっておりまして、これを今の時点で変えていくことは残念ながら難しいというふうに考えております。

 北方四島の住民の支援については、この重要性は全く今後ますます増していくと申し上げてもいいかと思います。このための予算確保、あるいは支援をきちんとやっていくということについての努力は、引き続き政府としても精いっぱい積み重ねていきたい、関係者の方々のお力も拝借をしながらやっていきたいというふうに考えております。

津村分科員 ありがとうございます。

 幾つかほかの御質問も用意してきたんですが、この話を最後にもう一度申し上げて、本日の御質問は終わらせていただこうと思うのです。

 川口大臣にも御趣旨をよくわかっていただいていると思うんですけれども、私は、この問題といいますかテーマは、実は日本国民の北方領土問題に対する意識にも非常にはね返りもありますし、また、日ロ関係、平和条約締結等の中長期的なといいますか、短期かもしれません、大きな課題があるわけですけれども、そういった中で、やはり手ざわり感のある、実際に人と人が交流する、場合によったら国会議員や政府の方々の交流ももっと北方領土を舞台にしていくことも工夫かと思いますが、こういった目に見える形で一体感を持って北方領土と日本国民が接していく機会をふやしていただきたい、そういう思いから、多少調べさせていただきまして、具体的に一点に絞って申し上げた次第です。

 新しい船ができて、それを機会に人の交流もふやしていけばいいと思うんですよね。今ある船はどんどんさらに古くなっていくわけですから、改造されたとしても、向こうから受けても余り大きな印象にもなりませんし盛り上がらないと私は思いますので、ぜひその居住性、安全性に配慮していただいて、有意義なといいますか、わかりやすい使い方をしていただければと最後に注文をつけさせていただいて、私からの質問を終わります。

 通告をさせていただいてできなかった幾つかの御質問があります。大変申しわけありませんでした。

鈴木主査 これにて津村啓介君の質疑は終了いたしました。

 次に、川内博史君。

川内分科員 川内博史でございます。

 今回、また引き続きまして、私がずっと取り組んでおりますドミニカの移住問題について、幾つかの点について確認をさせていただきたいというふうに思います。私ども、ドミニカ移民問題の最終解決を進める国会議員懇談会というものを超党派で組織しておりまして、きょうは会長の尾辻秀久先生にもお運びをいただいております。しっかりと気合いを入れて質問をさせていただきますので、ぜひ誠実な御答弁をいただきたいというふうに思います。

 事実関係を確認させていただきます。

 昭和三十一年の三月二十七日に、通称メルカード書簡、ドミニカの農務大臣でありますが、このメルカード書簡というものが日本政府に対して交付をされた。そして、昭和三十一年の三月二十九日、その二日後に募集要項によるドミニカへの移民募集が開始をされた。

 しかし、ドミニカと我が国との移住条件の交渉というものは交換公文という外交の形式をとっていたそうで、一方からの文書だけでは国際約束は成立をしない。事実、このメルカード書簡には、日本政府からの返事をもって移住条件は合意に達するものといたしますという趣旨の一文も入れられております。

 したがって、昭和三十一年の三月二十七日のメルカード書簡に対する返簡として、昭和三十一年四月二十四日付で日本政府からドミニカ政府に対して書簡が出されている、この書簡の往復によって日本からドミニカに移住をする移住者の皆さんの移住条件というものが国際約束に達したというふうに外交上は見るべきだということを私どもは主張させていただいておりまして、この件に関しては、この間の質疑の中で外務省もそれをお認めになっていらっしゃいます。国際約束が成立をしたのは、昭和三十一年四月二十四日付の日本からドミニカ政府に対してあてた返簡によってである。

 先ほど申し上げたように、昭和三十一年三月二十九日に移民の、移住者の募集の開始というものが行われている。ということは、改めて確認をさせていただきますが、昭和三十一年四月二十四日に国際約束が成立をする以前に日本政府は、あるいは外務省は、あるいは海協連は移民の募集を開始したことを認めますか。

鹿取政府参考人 今先生から御指摘のありましたように、このメルカード書簡、三月二十七日で日本側に渡りまして、それに対する返簡は四月二十四日にやっております。その段階で両政府間を拘束する合意となった、それはそのとおりであると思います。

 また、募集を開始したのが四月初めであるということも事実でございます。

川内分科員 私がお聞きしたのは、国際約束が両国間によって成立をする昭和三十一年四月二十四日より以前に移民の募集を開始したことを認めますかということをお聞きしました。認めるのか認めないのかということをお答えいただきたいと思います。

鹿取政府参考人 四月初めに募集を開始したことはそのとおりでございます。

 また、四月二十四日の返簡によって日本政府とドミニカ政府の合意が拘束力を持つに至ったということもそのとおりでございます。

川内分科員 国際約束が成立をする前に移民の募集を開始したということを認めるということですね。

鹿取政府参考人 形式的な意味において、メルカード書簡が日本とそれからドミニカ政府との間で確定するというのは四月二十四日の返簡によってでございます。

 また、募集を開始したのは四月でございます。もしも、なぜそこで募集を開始したということの御質問であれば、またお答えいたします。

川内分科員 いや、私がお聞きしているのは、なぜ募集を開始したんですかということをお聞きしているのではなくて、事実関係を確認させていただいております。

 昭和三十一年の四月二十四日、両国政府を拘束する国際約束が成立をする以前に、移民の募集を三月二十九日付でお始めになられましたね、これをお認めになられますかということをお聞きしています。

鹿取政府参考人 募集の開始が四月初めに行われたことはそのとおりでございまして、その段階で、先生が御指摘のとおり形式的な意味、厳密な意味でメルカード書簡に対する日本政府の返簡がなく、したがって、両政府間の合意が形式的に成立していなかったということは事実でございますが、日本政府は、三月二十七日の段階で移住に関する基本的な枠組みについて実質的な合意に達した、そう考えていたわけでございます。

川内分科員 部長、私の聞いたことに誠実にお答えをいただきたいんですけれども、私が聞いているのは、募集を開始したのはいつですかということを聞いているんじゃないんです。募集を開始した日付は、募集要項の日付は昭和三十一年三月二十九日ということで私も存じ上げております。そのことを確認しているわけではなくて、国際約束が成立をする前に募集を開始したことを認めますかということを聞いております。

鹿取政府参考人 募集を開始したのが日本とドミニカ政府間の合意が形式的に固まる前、そういう御質問であれば、そのとおりでございます。

川内分科員 お認めになられました。

 では、続いて、募集要項とメルカード書簡。

 この募集要項には、移住条件として三百タレアの土地が無償譲渡をされるというふうに書いてございます。三百タレアというのは十八ヘクタール、無償譲渡というのは、所有権の移転を伴うあるいは財産権の移転を伴う物の譲渡というものがその意味合いだと思いますが、募集要項には、十八ヘクタールの土地が所有権の移転を伴って譲渡をされるというふうに書いてございます。

 しかし、昭和三十一年三月二十七日付のこのメルカード書簡には、三百タレアまで、十八ヘクタールまでの土地が供与される、あるいは耕作権を与えられるというような書きぶりであったかと思いますが、なぜ募集要項とメルカード書簡に食い違いが出たんでしょうか。

鹿取政府参考人 今先生が御指摘のとおり、募集要領あるいは募集要項の表現、それからメルカード書簡の表現、これは表現においては相違が見られますが、私ども、前にも一度御答弁したことがありますが、三月二十七日のメルカード書簡において、これは受け入れの条件に関してでございます、受け入れの条件というのは基本的にドミニカ政府の意向が重要でございますが、ドミニカ政府の意向というのは三月二十七日のメルカード書簡の接到によって明らかになった、こう考えております。

 したがいまして、そこで我々としては実質的な合意が確保されたと考えております。また、メルカード書簡に至る過程で、日本政府とドミニカ政府との間ではいろいろな話し合いがございました。私どもとしては、その日本政府とドミニカ政府の基本的な合意、これを踏まえて募集要領また募集要項、これが作成されたと考えております。

 今、一つ一つ御説明いたします。

 今先生が御指摘のとおり、メルカード書簡では、まず三百タレアについて御説明しますが、三百タレアまでと書いてあります。また、募集要項、募集要領では、三百タレアと書いてあります。この相違でございます。

 まず、御承知のとおり、ドミニカの移民が行われたきっかけというのは、親日家のトルヒーリョ元帥が、ドミニカの発展のために日本移民を受け入れたい、こういう意向を表明したことに端を発しておりますが、トルヒーリョ元帥は、昭和三十年の九月、ドミニカを訪問した吉岡調査団に対し、一家族当たり三百タレア与える、こういうことを述べております。

 また、翌年の昭和三十一年三月十二日でございますが、当時の吉田公使がメルカード農務大臣と会談しております。その中で、日本人移住者の具体的な受け入れ条件等を話し合い、大筋で合意に達しましたが、この会談においても、ダハボンについて日本人移住者に三百タレアの土地が与えられることについて、ドミニカ政府側の意向が確認されております。

 また、それでは、メルカード書簡で三百タレアまでと書いてあるのはどうしてかということでございますが、これは裁判でも争点になっておりまして、準備書面でも私たちは説明しておりますけれども、三月十二日の会談においてドミニカ側とのやりとりで明らかにされているとおり、入植と同時に三百タレアの土地全体を配分するということではなくて、入植後の耕作状況に応じて漸次増配し、最終的には三百タレアを供与する、こういう意味である、こういうふうに私どもは考えておりますし、また、その旨は募集要項あるいは募集要領のただし書きにも記載されている、こう考えております。

 次に、供与とそれから無償譲渡の問題でございますが、メルカード書簡には確かに土地を供与する、こう書いてございます。これに対して募集要項、募集要領には、土地を無償譲渡する、こう書いてあります。

 また、これは、ドミニカ移住というのはトルヒーリョ元帥の強い指導力に端を発したわけでございますが、昭和二十九年の十一月に当時の上塚衆議院外務委員長もトルヒーリョ元帥とお会いしておりますが、そのときにも、トルヒーリョ元帥は土地を無償提供するということを述べております。

 また、昭和三十年九月に吉岡調査団がトルヒーリョ元帥と会いました。そのときにも、三百タレアの土地が与えられる旨述べられるとともに、日本人移住者についてはスペイン移住者と対等な条件を与える、スペイン人移住者は無償供与を受けておりましたけれども、対等な条件を与えると述べております。

 こういうようないろいろな経緯及びメルカード書簡、こういうものを踏まえまして、日本政府としては、募集要領あるいは募集要項に三百タレアの土地が無償譲渡される、こう書いたわけでございます。

 日本政府とドミニカ政府との間で、この問題については私どもは意思のそごというものはなかったと考えておりますし、一九九八年、ラ・ルイサの土地という問題がございましたけれども、そこでもドミニカ政府は、過去の負担、負債、この問題を解決するということで、ダハボンにつきましては、三百タレアに満たない分については無償譲渡する、こういうことを決断しております。これもまた、ドミニカ政府と日本政府との間で意思のそごがなかった、こういうことのあらわれであると考えております。

川内分科員 今、長々と御説明をいただきました。

 お聞きをしておりますと、要するにメルカード書簡とは別に、メルカード書簡に至る過程の中で、ドミニカ政府と我が国政府並びに政府の関係者が長い交渉をした経緯があった、その書簡とは別の、それ以前の交渉の結果として募集要領あるいは募集要項というものが作成をされたということでよろしいですか。

鹿取政府参考人 メルカード書簡及びそれに先立ちますドミニカ政府と日本政府との協議、これを踏まえまして書かれたものでございます。

川内分科員 よく日本人の民族性とあるいは欧米の人たちの民族性の違いというものを言いあらわすときの笑い話に、日本というのは、交渉するときに弁護士を同席させると、何てこいつは不誠実なやつだ、弁護士を連れてきやがったというふうに思う。ところが欧米人というのは、弁護士を同席させると、何て誠実なんだというふうにお互いに評価し合う。要するに、お互いのいろいろなやりとりはあるけれども、最後書面になったものだけを信用する、最後言葉になったものだけが大事なんだ、欧米人というのはそういう考え方なのかなというふうに思うのですね。

 今の鹿取部長の御答弁を聞いていると、何か極めて日本的だというか、国際約束のもとになるメルカード書簡以外に募集の条件の根拠を求めようとしているように思えるのです。

 それでは、募集要項が、ある一定程度はメルカード書簡が日本政府に対して明らかにされる前に作成をされていた、もうある程度作成をされていたということはお認めになられますか。

鹿取政府参考人 私どもがメルカード書簡を受けたのは昭和三十一年三月二十七日でございます。

川内分科員 だから、私が聞いているのは、メルカード書簡と募集要項には言葉遣いあるいは所有の形態等について明らかに違いがあるわけですから、その違いが生じていることの原因はなぜですかということを部長にお伺いをしました。そうすると、部長は、書簡以前のいろいろな交渉の経緯を踏まえて募集要項は作成をされたんだというふうに御答弁になられた。

 したがって、メルカード書簡より以前のドミニカ政府と我が国政府との交渉の経緯が募集要項に反映をされているんですね、メルカード書簡とは関係なく反映をされているんですねということをお聞きしているんです。

鹿取政府参考人 募集要項、募集要領を作成したのは基本的にメルカード書簡を基礎としております。

 メルカード書簡には、先ほど御説明しましたように、三百タレアまで、ただこれは、一時にではないけれども、漸次三百タレアまでということが書かれておりますし、これを供与するということが書かれております。

 また、例えば供与するということについて、無償譲渡と書きましたけれども、その点については、例えば三月十二日のメルカード大臣との協議、そういうこれまでの協議も踏まえて書いたことは事実でございます。

川内分科員 メルカード書簡を踏まえて募集要項は作成をされたと御主張されるのであれば、募集要項がメルカード書簡に書かれている文言と違う、あるいは若干の相違があるということに関して私がなぜですかと聞いたときに、部長は、これこれこういう理由だから相違ができましたということを御答弁になられました。メルカード書簡と募集要項に食い違いはない、一致しているというのであれば一致しているというふうに御答弁されればよかったと思うのですが、なぜ食い違っているのですかと私が聞いたらば、過去の交渉の経緯がこうだった、だから食い違ったということをお答えになられましたよね。違いますか。

鹿取政府参考人 メルカード書簡とそれから募集要領、募集要項、表現において相違があるということは事実であります。これは、表現において相違があるというのは事実でございますが、その意味する内容、実質において、日本政府の考え方とドミニカ政府との考え方、これについて私どもは相違はない、そう考えております。

川内分科員 今、部長は重要なことをおっしゃられたと思うのです。表現というのは、意味をあらわすから表現なんですよね。そして、ドミニカ政府と日本政府との間に意思のそごはなかったはずであるということもあわせておっしゃられた。

 メルカード書簡と募集要項に、百歩譲りましょう、表現に違いがあった。しかし、その表現は重要な意味を持つものであるとするならば、メルカード書簡が日本に提示をされたときに、なぜこの部分の表現については、あるいはこの部分が意味するところについては、我々両国間で交渉してきたことと若干違いがあるようであるが確認をしたいというような確認の作業をおとりにならなかったのかということを、では、聞かせてください。

鹿取政府参考人 メルカード書簡の内容と募集要項の内容は、先ほど御説明しましたように、実質においては私ども相違はないと考えている次第でございます。

 また、募集要領、募集要項の案文を作成するに当たっては、メルカード書簡を踏まえ、それ以前のメルカード大臣との会談を踏まえ、政府の責任において、政府の理解している日本それからドミニカ政府との間の合意、その内容を募集要領、募集要項に書いた次第でございます。

川内分科員 部長、私が、きょうは決算行政監視委員会ですから、おとなしく質問しているから、ちょっと図に乗って、ばかにしているんじゃないですか。

 募集要項とメルカード書簡に食い違いがあるということを最初認めたじゃないですか。それを今になって内容は一緒だ、どういうことですか。まず認めたでしょう、募集要項とメルカード書簡は違うと。表現も違うし、意味も違うということを認めているじゃないですか、最初に。今になって内容が一緒だ、どういうことですか。

鹿取政府参考人 表現が違うということは、私は先ほど申し上げました。意味については、実質的に日本政府の理解とドミニカ政府との理解の間に相違はない、こういうことを申し上げたと思っております。

川内分科員 表現が違うということは、重要な意味の内容が違っているということを意味するのじゃないんですか。てにをはが違うとか、そういうことじゃないと思いますよ。では、供与と無償譲渡は同じ意味だということですか。

鹿取政府参考人 私どもが募集要領、募集要項……(川内分科員「聞いたことに答えてよ。供与と無償譲渡は一緒かと聞いたんです」と呼ぶ)私どもが募集要領、募集要項で無償譲渡と書いたのは、供与という言葉、それからそれに至る交渉、協議、それを踏まえて無償譲渡と書いた次第です。

川内分科員 供与と無償譲渡が同じですかということを聞いたんです。

鹿取政府参考人 メルカード書簡における供与というのは無償譲渡であると考えております。

川内分科員 ちょっと余りにも強引な議論じゃないですか、それは。供与と無償譲渡が同じだ、メルカード書簡においては。自分たちはどうとでも解釈しますということを今言ったんですよ。役所に帰って国語辞典を引いたらどうですか。供与と無償譲渡は明らかに意味するところが違いますよ。それを、メルカード書簡においては供与は無償譲渡と一緒だと。一体どういうことですか、外務大臣。

鹿取政府参考人 先ほども御説明しましたように、ドミニカ政府としては、日本の移住者に対して土地を無償譲渡する、こういう意向でございましたし、メルカード書簡における供与というのは、日本政府としては無償譲渡と理解したわけでございます。

川内分科員 では、そうすると、こういうことですか。それまでの交渉の経緯の中で、無償譲渡をされると日本政府としては思い込んでいた、したがって募集要項にも無償譲渡と書いた。メルカード書簡には供与と書いてあったけれども、その供与の言葉の意味も確かめずにそのまま募集を開始したということですか。

鹿取政府参考人 日本政府としては、メルカード書簡を受領した段階で、日本政府の責任として募集要領、募集要項、この作成に関与したわけでございますが、日本政府の責任として、無償譲渡、こう書いた次第でございます。

川内分科員 いや、私が聞いているのは、供与と無償譲渡というのは明らかに言葉の意味が違うんだから、なぜその時点で確かめなかったのですかということを聞いているんですよ。なぜその時点で、これはちょっとおかしいぞ、メルカード書簡を見て、明らかに今まで話し合ってきたことと違う、これは一体どういうことだとなぜドミニカ政府に対して確認をしなかったのかということを聞いているんです。

鹿取政府参考人 日本政府としては、それまでの間のドミニカ政府との会談それからメルカード大臣との会談、これを踏まえて、ドミニカ政府としては日本の移住者の方々に対して土地を無償譲渡する意向である、こう考えておりました。

川内分科員 日本政府の意向を聞いているわけじゃないんですよ。ドミニカ政府と日本政府が交渉をした結果として、交換公文によって移住条件というのは合意に達しているわけですよ、国際約束は、両国政府を法的に拘束する。日本政府の思い込みでドミニカに移住者を送ったとあなたは今言っているんですよ。いいですか。ちょっと発言には気をつけられた方がいいと思うけれども。

 鹿取部長が今おっしゃっているのは、日本政府の勝手な思い込みで移住者をドミニカに送りましたということを言っているんですよ。私が聞いているのは、供与と無償譲渡というのは意味が違うんです、表現も違っている、当然意味も違うんですよ、なぜ確認をしなかったかということを聞いているんですよ。記録がないんでしょう。記録がないと言いたいんでしょう。どうですか。

鹿取政府参考人 三月二十七日のメルカード書簡に至る前にドミニカ政府との間で種々協議が行われたということは申し上げました。三月十二日にも、メルカード大臣と当時の吉田公使との間で話し合いが行われております。それ以前にも話し合いが行われております。

 また、先ほど申し上げましたように、このドミニカ移住の話、この直接のきっかけとなったのは当時のトルヒーリョ元帥の強い意向でございます。当初から、ドミニカ政府は、日本の移住者に対しては土地を無償譲渡する、こういうことで話が進められてきたわけでございます。

 また、現に、先ほど私も申し上げましたけれども、日本政府とそれからドミニカ政府との間で考え方にそごはなかったという一つ一つのあらわれというのは、一九九八年、ラ・ルイサの土地において、足りない分は無償譲渡しなくてはならない、こういうことをドミニカ政府が判断したということもまた一つでございますし、それ以前の段階でも、私どもは、土地の供与の問題について、ドミニカ政府とそれから日本政府との間で意思のそごはなかった、こう考えております。

川内分科員 もうおっしゃっていることがほとんど意味をなさないですね。

 国際間の拘束力を持つ約束をしたのは、三月二十七日付のメルカード書簡と四月二十四日付の日本からドミニカ政府にあてた返簡ですと外務省は認めているじゃないですか。法的に拘束力を持つ移住条件というのは、この交換公文でしかないんですよ。それを認めているんですよ。

 それ以前の交渉をいろいろしていることは私も存じ上げています、いろいろな人たちがいろいろなレベルでね。では、その交渉の結果と、最も大事な法的な拘束力を持つ文書と、なぜ違っていたのか、なぜそれを確認しなかったのかということを私は聞いているわけです。

 また、きょうは決算行政監視委員会でありますから、他の質問者に迷惑をかけるわけにまいりませんので、水曜日の外務委員会でこの続きはやらせていただきますが、なぜメルカード書簡とそれまでの交渉の経緯の結果が違っていたかということを確認しなかったのか、あるいはその記録を私は提出を求めさせていただきたいというふうに思います。

 これは大変な大ごとだったわけですからね。今までやってきたことと文書が来たら違っている、これは一体どういうことだと大騒ぎにならないわけがないんですよ。そのことだけ申し上げさせていただいて、きょうは終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

鈴木主査 これにて川内博史君の質疑は終了いたしました。

 次に、楢崎欣弥君。

楢崎分科員 民主党の楢崎です。

 きょう、私は、戦時性的強制被害者の問題についてお伺いします。

 今まさに、イラクにおいてアメリカ軍による人道法上にももとる虐待事件が起こっている、それがまた世界的な批判を受けているところです。

 まず、私は、基本的な問題として、この問題の窓口なんですけれども、福田前官房長官は、昨年初めの記者会見で、戦後処理の総合調整は内閣官房でやると発表されたやに聞いておりますし、その後、内閣、決算各委員会でも同様の答弁をされていますけれども、それは今日においても変わりませんか。

杉浦内閣官房副長官 内閣官房副長官に就任してまだ十日たっていないものでございます。委員会は初答弁でございますが、誠心誠意これから努力してまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げる次第でございます。

 今の御質問ですが、今後においても変わることはないという点はまず申し上げさせていただきます。

 ただ、これは先生には釈迦に説法でございますが、戦後処理問題というのは、さまざまな課題があり、それぞれが複雑でございますし、それから、経緯もさまざまでございますので、政府としては、統一的な対応を行う必要があるということで、官房で、具体的には、官房長官のもとで私どもあるいは事務方で総合調整を担当させていただくということでやってまいったわけであります。

 ただ、御承知のとおり、対外的な問題については外務省を窓口にしてやるということも、当然のことでございますが、決めさせていただいております。

楢崎分科員 副長官、内閣官房に拉致被害者・家族支援室が設置されていますけれども、来年は戦後六十年を迎えるわけですね。仮称ですけれども、例えば戦後処理対策室みたいなものの設置を御検討いただけないか、その点についてはどうでしょうか。

杉浦内閣官房副長官 先生のような御意見、今申されたような御意見があることはよく承知しております。先生もそういう御意見、お立場でいらっしゃると拝察されます。

 ただ、先ほど申し上げましたように、戦後処理問題というのはさまざまな問題があり、それぞれ複雑で経緯もさまざまでございます。それに応じて各省庁、非常に広範な省庁で対応しております。一つの省庁の場合もあり、協力して対応している場合もあり、さまざまでございます。

 また、所掌が明らかでない事案、例えば今度の拉致家族の問題などについては特別に支援室をつくったわけですけれども、さまざま出てまいります。これからも出てまいることが考えられるわけでございまして、今まで戦後ずっと、全省庁でさまざまな形で取り組んでまいったのを総合的にやるのがいいという考え方で現在も内閣府が取り組んでおるところでございます。

楢崎分科員 杉浦副長官は、一昨年の七月、ちょうど外務副大臣をされておるときですか、参議院の内閣委員会で、我が党の岡崎トミ子議員が読み上げた被害者の体験を聞いて、一人の人間として胸のふさがる思いがしたという答弁をしております。私は、そういう杉浦副長官の人間味のある姿勢に期待をしますので、ぜひこの件については頭の片隅に入れておいていただきたい、このように思います。

 本論に入りますけれども、この問題は、もう言うまでもなく本当に恥ずかしい問題で、第二次大戦中に日本軍が若い女性を将兵の性的奴隷として、組織的に行った性的強制問題なんですね。まさに女性に対する屈辱的な強姦事件であるし、強姦行為であるし、そういう女性の尊厳とまた名誉、人権を侵害した行為であったと言わざるを得ないわけですね。

 そして、この問題は、九三年の八月四日、当時の河野洋平官房長官のおわびと反省と申しますか、このことを表明した談話で問題解決への第一歩を踏み出すことになっていくわけですけれども、この後も、歴代政府首脳は、政府の基本的立場はこの当時の河野官房長官の談話のとおりである、この方針に転換はないと表明しておられますけれども、これは現政権においても変わりありませんね。

杉浦内閣官房副長官 変わらないというふうに承知をいたしております。

 私の答弁を引用されましたけれども、女性の尊厳を傷つけた実に忌まわしい事件だというふうに思っております。

楢崎分科員 これ以降は外務省管轄の質問に入っていきますので、お引き取りいただいて結構です。ありがとうございました。

 川口大臣、G8の外相会議、本当に御苦労さまでした。満足いく結果ではなかったと思いますけれども、これからはやはり、その中で我が国の果たす役割が重要だと思いますので、御健闘を祈りたいと思います。

 それで、この戦時性的強制問題、一つ韓国を例にとれば、私が知る限りでは、名乗り出られました元慰安婦の方々は二百十二人、そのうち生存者は百三十二人しかおられない。既に八十人の方が亡くなっておられますし、生存者の方々も高齢化を迎えておられるわけですね。

 私は、我が国がこの問題に対してしっかり対応することが、これは大臣も常々言っておられます、国際社会で名誉ある地位を占めていくことにつながると思うんですね。つまり私は、この問題も一つの安全保障問題としてとらえているわけですけれども、大臣はそのような御認識をお持ちでしょうか。

川口国務大臣 安全保障問題という言葉がいいかどうか、これはいろいろな御意見があると思います。

 私もこの問題というのは、これはまさに河野官房長官がおっしゃったように、本当に大勢の女性が、当時の軍の関与のもとに、あのような仕打ちを受けた、あるいはあのような経験をすることになったということでございまして、その当人の方々にしてみたら、本当にいやしがたい、もう忘れたくて忘れたくてしようがないけれども忘れることができない、そういった傷であろうかというふうに思います。

 河野官房長官がそういった方に対して、心からおわびと反省の気持ちを申し上げるというふうに言われましたけれども、私の気持ちといたしましても、本当にまさにそのとおりだというふうに思っております。

 我が国が国際社会で、さまざまな分野でさまざまな側面で日本としてきちんといろいろな問題に対応していくということが大事であるということは、私も思っております。

楢崎分科員 アジア諸国との信頼関係強化のためにも、歴史的な人権問題であるこの慰安婦問題に真剣に取り組んでいただきたいことをまず申し述べておきます。

 そこで、今まさに事態特でも国際人道法の重大な違反行為の処罰に関する法律案という法律案が審議されているところですけれども、当時このような法律があれば、日本軍が行ったこの行為というものは処罰の対象になる案件であったと認識されておられますでしょうか。

西宮政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの点でございますけれども、いわゆる従軍慰安婦問題につきましては、個々の事案の事実関係を含めまして、当時の状況に関する検証が、資料の散逸などの事情にあってなかなか困難なことがございます。そういうこともございまして、国際人道法違反処罰法案の規定に当てはめて両者の関係を論ずるということは極めて困難なのではないかというふうに考える次第でございます。

 ただ、その上で、お尋ねでございますのであえて申し上げれば、今御指摘の法案におきましては、重要な文化財を破壊する罪、捕虜の送還を遅延させる罪、占領地域に自国民などを入植させる目的で移送する罪及び文民の出国等を妨げる罪、こういった罪に対しまして罰則を定めるという内容でございまして、御指摘の事案との関係は薄いのではないのか、あえて申し上げればそういうことではなかろうかと存じます。

楢崎分科員 もう少し、今までどういう審議がされてきたか目を通しておってくださいよ。福田前官房長官は、一昨年三月二十日の参議院内閣委員会ではっきり、人道に対する罪だということを述べておられるんですよ。本当に官僚答弁ですね。

 そこで、少し視点を変えますけれども、二〇〇一年の五月十一日、例の、熊本地裁においてハンセン病元患者に対する司法の判断が示されて、そこで国会の立法不作為という判断が示されたわけです。政府は控訴を断念されて、その後、元患者さんの声をお聞きになり、解決に乗り出された、そういう政府の姿勢は、私は高く評価しているところですけれども、その前、九八年四月二十七日、いわゆる関釜裁判で、山口地裁の下関支部は元慰安婦原告に対して、同じく立法不作為、つまり、国と国会議員の政治責任と賠償責任を認めているんですね。しかし、このときの政府の対応というのは、控訴をされて、広島高裁で覆されましたけれども、一度はやはり立法不作為という違憲判決が出されている。

 この慰安婦問題を含めた戦後補償の実現というのは、過去の清算であると同時に、私は、また未来を切り開いていくものだというふうに思っているわけです。やはり国が責任を持って根本的な解決を下すべき時期に来ていると思うのですが、いかがでしょうか。

川口国務大臣 いわゆる関釜裁判については、委員がおっしゃったとおりでして、最終的には、被告側、すなわち国の側の勝訴ということになったわけでございますけれども、従軍慰安婦問題を含めまして、さきの大戦にかかわる賠償並びに財産及び請求権の問題につきまして、これは法的なことを申しますと、政府としては、サンフランシスコの平和条約、それから二国間の平和条約、その他の関連の条約、これによって誠実に対応してきているわけでございまして、これらの条約の当事国との間では法的には解決済みでございます。

 そして、いわゆる従軍慰安婦問題につきましては、サンフランシスコ平和条約等の当事国間では、今申しましたように法的に解決済みであるということから、アジアの女性基金、これによりまして対応することが最も適切であって最善であるという考え方をとりまして、そして、政府としては、これまでこの基金の事業に対して最大限の協力を行ってきているわけでございます。

    〔主査退席、奥田主査代理着席〕

楢崎分科員 今言われましたサンフランシスコ条約問題、それから基金問題については後ほど伺いますけれども、今日においても三十四件の戦後処理裁判が係属中なんですね。そのうちの七件が、やはりこの元慰安婦問題なんです。

 この元慰安婦問題に対する一連の判決というのは、その大半が、被害事実と重大な人権侵害、また国際法的な違反があったことは認めながらも、残念ながら、個人に請求権がないとか、それから管轄権がないというような手続的な論法で、原告側の訴えが退けられているんですね。

 しかし、昨年四月二十四日、いわゆる中国山西省の日本軍性暴力被害者からの謝罪・補償請求事件について、東京地裁が下した判決は付言がつけられたんですね。つまり、立法府、行政府において改めて立法的、行政的な解決を図ることが十分可能であって、いわば未来型の問題解決として、本件訴訟を含め、戦後補償問題が、司法的な解決とは別に、被害者らに何らかの慰謝をもたらす方向で解決されることが望まれる。つまり、未来型の問題解決として政治的な解決を望まれているわけですね。これについて、政府の見解をお聞かせください。

西宮政府参考人 大臣の先ほどの答弁の繰り返しになるかもしれませんけれども、先生の御言及があった判決につきましては、昨年の四月二十四日の東京地裁の判決であるということでございまして、これは国側の勝訴の判決が言い渡されたものと承知しております。

 そこに御指摘のような付言がなされているということでございますけれども、従軍慰安婦の問題につきましては、これは請求権の問題という意味では法的に解決済みであるということから、本件問題の対応につき、国民的にさまざまな議論を尽くした結果、既に高齢となられた元慰安婦の方々の現実的な救済を図るという視点をもちまして、アジア女性基金による対応が最も適切かつ最善の方法であるというふうに判断いたしまして、基金の事業に対して最大限の協力を行ってきているところでございます。

 これまで、基金の活動に対しまして、国民の多くの方々の御賛同を得て、多くの方々から募金等の分野で多大の御協力を得てきておりまして、政府といたしましても勇気づけられている次第でございます。

 基金の事業につきましては、着実に進展をし、事業を受けられた方々の中からは感謝の意が寄せられているようなケースもあるものと承知をしております。

楢崎分科員 これは、司法の判断は判断として、政治的に解決すべき問題なんですよ。なぜなら、やはり国権の発動によって軍隊は戦争行為を行ったわけですからね。そのときに日本軍が犯した罪ですから、すべての責任は国にあるんですよ。日本にとって恥ずべき不名誉な問題ですから、国が責任を持ってしっかり対応していただきたい、このことを申し述べておきます。

 そこで、先ほど川口大臣の方からも話が出ましたけれども、私に言わせれば、政府は、国の責任を回避するために、補償にかわる措置として女性のためのアジア平和国民基金を民間基金として設立されたわけですね。これは、私どもはいわゆる償い事業と言っているわけです。そして、九六年八月から実施されたわけですけれども、やはり、当初危惧されたように、この方法は理解を得られなかった、私はそう思うのですね。被害国から反発を受けたし、国の謝罪と補償ではなかったから、大半の方々が受け取りを拒否されておる。

 そこで、韓国、台湾、フィリピンにおいて、この償い金を受領されたのは二百八十五人、これは間違いないですね。間違いか間違いないかだけで結構です。

西宮政府参考人 間違いございません。

 基金は、フィリピン、韓国、台湾で計二百八十五名の元慰安婦の方に、一般からの募金を原資に償い金をお届けしてまいりました。

楢崎分科員 それでは、対象となるべき被害者の方は何人おられたのですか。

西宮政府参考人 そもそも、対象となるべき慰安婦の方々が何人いらしたかということを把握することが困難でございました。

 どれだけの元慰安婦の方が御存命中であるかにつきましても、政府としては承知するに至っておりません。

楢崎分科員 対象者がおられて、その中で、受け取りをされた方、受け取りを拒否された方がおられるんじゃないですか。対象者の数というのは、大体把握できているんじゃないですか。

西宮政府参考人 繰り返しで恐縮でございますけれども、どれだけの元慰安婦の方が対象となるかを把握することは甚だ困難でございまして、また、御存命中の方がどれだけあるかということも把握できておりません。

楢崎分科員 七百人を超えているんじゃないですか。つまり、受領者が半数にも満たない、そういう問題がある償い事業ですから言えないんじゃないですか。

西宮政府参考人 甚だ恐縮でございますけれども、総数は把握しておりません。

楢崎分科員 把握しておられないということですから。七百人を多分超えていると思いますね。

 その多くの被害者の方は、このいわゆる償い事業というものは私たちが求めているものじゃない、国家による謝罪で尊厳を回復してほしい、国の責任において補償をしてほしいということで、受け取りを拒否されているんですよ。

 私は、この見直し償い事業というのは見通しを誤ったと思いますよ。我が国は、そのことを率直に認めて、真摯に受けとめるべきじゃないですか。いかがですか。

川口国務大臣 これについて、いろいろな思いがあるということであるかとは思います。

 国の立場としては、これは河野当時の官房長官がおっしゃられたように、心身にわたりいやしがたい傷を負われたすべての方々に対し心からおわびと反省の気持ちを申し上げるということを表明させていただいているわけでございますし、法的に問題が解決をした中で、このアジア女性基金という形で現実的な救済を図っていくという考え方をとる、これが一番いい方法であるという判断があったわけでございます。

 ということでございまして、これには大勢の方の御賛同もいただいて、基金についても大勢の方の御協力をいただいたというふうに承知をいたしております。

楢崎分科員 大臣、お言葉を返すようですけれども、我が国のそういうやり方に反発して、台湾では九七年、韓国では九八年に、独自に支援金を支給しているんですね。

 つまり、言えることは、和解のための事業が逆に被害国との間にあつれきを生んだんじゃないですか。不信を拡大する結果になっているんじゃないですか。

西宮政府参考人 御指摘にもございましたように、基金の事業に対して必ずしも賛同していない方々がいらっしゃることは事実でございます。政府といたしましては、少しでも多くの方々に基金の事業にあらわれた日本国民及び政府の本問題に対します真摯なる気持ちへの御理解を得られるように引き続き努力してまいりたいと考えております。

楢崎分科員 それからもう一点。オランダでもこの事業が行われているわけですね。総額二億四千五百万円ですか、七十九名の方が受け取られているということですけれども、この金額は、いわゆる基金からの拠出ですか、それとも政府が出したんですか。

西宮政府参考人 御指摘のとおり、基金は、オランダにおきまして、九八年七月でございますけれども、オランダに設立されました事業実施委員会との間で締結された覚書に基づきまして、この委員会が慰安婦問題に関し実施する事業対象者の生活状況の改善を支援するための事業がございますが、これに対しまして、総額約二億四千五百万円の支援を行っております。そして、この事業は政府拠出金を原資としたものでございます。

楢崎分科員 要するに、政府拠出金ということですね。

 私は、政府はこれまで国家補償はできないとか個人賠償はできないと言ってこられたと思うのですよね。政府拠出金ということは、その原資が何であれ、その論理が崩れているんじゃないですか。ある意味、国家補償が実現しているんじゃないですか。

西宮政府参考人 ただいま申し上げましたとおり、このオランダにおきます事業は、オランダのその委員会と基金の間の覚書で行われているものでございますけれども、この基金に対しまして政府が拠出をしておるわけでございます。ただ、これは、そうした事業を応援するという趣旨でございます。

 もう一点、よろしゅうございますでしょうか。

 これは、直接の償い金はあくまでも国民の貴重な御貢献をいただきました募金からなされておりまして、こうした事業、これは医療福祉支援事業と申しておりますけれども、そういったものをあわせて、政府の拠出金をもちまして基金の方で実施しておられる、こういった構造になっております。

楢崎分科員 だから、言っているように、原資はどうであっても、政府拠出という形は変わらないでしょうが。

 ちょっともう時間が来ているんですけれども、私ども民主党は、二〇〇〇年の四月以来、参議院に戦時性的強制被害者問題解決促進法案をほかの野党の皆さんとも提出してきたわけですね。これは、九九年の九月ですか、決算委員会で当時の野中官房長官が、慰安婦問題解決促進の法案作成は憲法や条約に違反しないという政府見解を出されて初めて法案作成が可能となった経緯があるわけですね。昨年十月の衆議院解散によって一たん廃案になりましたけれども、今、国会に改めて提出するように作業中です。

 この法案は、被害者の方が生きておられるうちに国がきちんと謝罪する、そして、被害者の名誉回復措置とその補償を国の責任において実施していこうという具体的な提案ですので、ぜひ政府にも御協力をいただきたいと思いますが、御見解をお伺いします。

川口国務大臣 これにつきまして、先ほど申しましたように、法的にはサンフランシスコの平和条約等の当事国間では解決済みであるということでございます。これについて、国民的な議論を尽くした結果、既に高齢と皆さんなっていらっしゃるわけでして、現実的な救済を図るにはどうしたらいいかということで、アジア女性基金によって対応することが最も適切で最善である、そのような判断をしたということでございます。

 ただ、政府といたしまして、今後引き続き、基金の事業にあらわれた日本国民及び政府のこの問題についての真摯な気持ち、これに理解が得られるように努力をしていきたいと考えております。

楢崎分科員 時間が来ました。

 その五一年の条約締結交渉の中で本当に元慰安婦問題が協議されたのかどうか私はわかりませんけれども、この法案に対する与党の皆さんの御協力もお願いしまして、質問を終わります。

奥田主査代理 これにて楢崎欣弥君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして外務省所管についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

奥田主査代理 これより環境省所管について審査を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宇野治君。

宇野分科員 自由民主党の宇野治でございます。

 きょうは、決算行政監視委員会ということで、十四年度の決算の審査をするわけでありますので、少し、十四年度にありましたことについてからお話をお伺いさせていただきたいと思っております。

 平成十五年の三月に、第三回の世界水フォーラムが開かれました。この水フォーラムにつきましては、京都をメーン会場として、大阪と滋賀、三府県で開催されたわけでありますが、特に、私のおります滋賀県につきましては、その前の前の年、十三年に第九回の世界湖沼会議というのも開催をし、非常に水に対する関心は大きいということはもう十分御承知いただいていると思います。

 そんな中で、私が常に思っておりますのは、人間にとって大事な水というものは、全世界の水の中で利用できる水というのは要は〇・〇一%しかない、これだけの本当に貴重なものである、この水というものにきちんと対応していかなければいけないという思いを常に持っておるわけですが、今回、水フォーラムについては、要は、いろんな広範囲な部分、どうやって利用するかとか、どうやって利用できるものにしていくか、また、水を荒らされないようにしようとか、いろんな範囲で議論をされたわけであります。

 そうした議論の中に環境省も参画をし、セッションも開催をされたようでありますが、環境省は、環境庁から環境省に三年前に昇格をしたということもありまして、私は、ぜひ、本来だったらこの水フォーラムというものは環境省が主管して、環境省のもとで堂々とやってもらいたかったなという思いがあるんですが、いろんな省がやるということと、これは水会議が主催をしてやるということになって動いたわけです。

 そういう経緯がありますけれども、これから環境省としては、省に昇格したということもありますので、ぜひとも、環境についてのエキスパートという立場で十分に采配を振るっていただいて、世界の水問題に貢献をしていただきたいと思っている一人でございますので、よろしく御理解をいただきたいと思います。

 そんな中で、まず、第三回の世界水フォーラムの環境省としての総括をちょっと聞かせていただきたい。政務官の方にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

    〔奥田主査代理退席、主査着席〕

砂田大臣政務官 昨年の三月に我が国で開催された第三回世界水フォーラムにおいて、世界の人々が一堂に会しまして水をめぐる問題について議論が行われたことは、まことに有意義なことであったと認識をしているところでございます。

 本フォーラムの大きな成果である閣僚宣言においては、水環境保全のため、環境教育の重要性、生態系と水質の一体的な保全、損なわれた生態系の再生などが盛り込まれ、まことに時宜を得たものと高く評価をしているところでございます。

 また、水問題を解決するための行動計画として水行動集が取りまとめられ、今後、各国で具体的な取り組みが実施されていくものと期待をしているところでございます。環境省では、水行動計画の一つとして、アジア水環境パートナーシップ事業に取り組むこととし、本年三月に、インドネシアで準備ワークショップを開催いたしましたところでございます。

 さらに、同フォーラムの成果を踏まえて、水質、水量、生態系を一体的にとらえ、エコシステムアプローチの視点に立ちながら、水環境施策について、関係省と連携をしつつ積極的な展開を図ろうと考えているところでございます。

 どうぞよろしくお願いします。

宇野分科員 今少しお答えをいただいたようでありますけれども、この中で私は非常に関心を持っていますのは、水行動集という、環境省としての部分が今お話しいただいたようなことがあるわけです。一年以上たって、今成果が出ているわけですけれども、具体的に、この十六年度の予算について、この行動集に基づくものがどんなものがあるのか、こんなものも少し御指示いただけないでしょうか。

吉田政府参考人 お答えを申し上げます。

 今政務官からお答え申し上げましたとおり、我が省からは八つの行動計画を提案いたしております。アジア水環境パートナーシップのほかにも、浄化槽の技術移転プロジェクト、あるいはアジア太平洋地域の鳥類やその重要生息地の保全等の八つのものがあるわけでございまして、それぞれ計画に従いまして今進行中でございますが、お尋ねの予算額についてお話を申し上げれば、平成十六年度の予算としては五億二千万円弱でございます。

宇野分科員 鳴り物入りで動いたものにしては若干少ないかなという思いをしておりますけれども、これは、これからまたどんどん、十七年度、十八年度に向けてしっかりやっていかないと、やはり先ほどお話ししましたように大変貴重な水でありますし、この水について本当にもっと真剣に考えていかなきゃいけない。

 確かに、水というと、川だとか海だとかという部分での国交省、治水、利水という部分、また農業用水、こんなところについては非常に大きなお金をかけてやっている部分があるんですけれども、私は一番心配をしております水質を守るという、これはやはり環境省が積極的に具体的な指針を出しながらやっていただきたいという思いを強くしておりますので、ぜひとも来年度に向けてもさらに踏み込んだ予算づくりをしていただきたいなと思います。

 そんな関係だと思うんですけれども、この行動計画の一つだと思うんですが、たしか三月に湖沼対策検討会というのが開かれたというのを聞いておるんですが、これは具体的にどんなものにしていこうとしているのか、これによってどんな成果を期待しているのか、その辺のところを少しお示し下さい。

吉田政府参考人 今お話のございました水フォーラムと湖沼の検討会、関係もいたしてございますが、湖沼の水質保全そのものについてお考えをいただきますればおわかりいただけると思いますが、実は、昭和五十九年に湖沼水質保全特別措置法ができて、本年で丸二十年を迎えるわけでございます。この間、負荷量の削減は着実に果たされてまいりましたが、なかなか水質の改善が図られておりません。環境基準は、湖沼については達成率がいまだに四〇%台ということになっております。

 一方で、湖沼の環境保全を取り巻く状況も大きく変化をしてきておりまして、例えば、水フォーラムでも取り上げられましたけれども、いわば水の統合的管理、別の言葉で言えば健全な水循環を確保していくということが重要だという考え方が示されております。また、湖沼の生態系を見据えながら、その中で水質の保全を図っていくということが必要だ、水質のための水質保全じゃなくて、湖沼生態系全体を見据えた水質保全が必要だという指摘もなされております。また、地域の住民やNGOの方々が行政と一緒になりながら湖沼水質保全のための行動計画を策定するという活発な動きも見られております。

 こうした、以上のさまざまな湖沼をめぐる動きというものをにらんだ上で、このたび、これまでの施策を評価し、今後あり得べき湖沼水質保全施策のあり方を検討するために、湖沼対策検討会を三月に設けたわけでございます。これまで二回の会議を開催しておりまして、次回三回目は五月二十六日に開催いたしますが、私どもの目標といたしましては、ことしの夏を目途に検討結果を取りまとめてまいりたいと思っております。

宇野分科員 湖沼に目を向けるというのが、二十年前に湖沼の水質保全特別措置法と呼ばれるものからスタートして、湖沼という部分に非常に光が当たってきたなという理解を私はしております。まさにそれは、私の琵琶湖の中で富栄養化防止条例と呼ばれるものも策定をし、私の理解としては、その富栄養化防止条例を基礎にこの措置法なりができてきたのではないかな、また水質汚濁防止法もそうであったのではないかな、そんな思いをしております。

 もう既に二十年以上たってきている、また、さきの水フォーラムをやった結果ということもあって湖沼の対策検討会が開かれている。そうなりますと、湖沼の水質保全特別措置法なり水質汚濁防止法というものの何らかの改定みたいなこともそろそろ考えなければならないのかなという思いをしております。

 その辺については、この検討会の中で具体的にそういう提案が出てくるのか、というか出せるのか、その辺についてはいかがでしょうか。

吉田政府参考人 先ほどお答え申し上げたとおりでございまして、まだ確定的に、夏に向けてどういう施策、方針を定め、法律の改正が必要であるか否かについては結論を得ておりません。いずれにしても、夏までに向かって鋭意作業を進めて、また適切な時期に御紹介ができるように努めていきたいと思っております。

宇野分科員 なかなか難しい問題かもわかりませんけれども、やはりこの検討会というのは、各都道府県の担当者が首を並べて、けんけんがくがくしていただけると思いますし、また、いろいろなアイデアなりいろいろな問題点というのをどんどん指摘されると思いますので、この辺をしっかりと環境省として導いてやっていただいて、できたら、措置法なり防止法についての改定まで行き着いてくれたらいいかなというようなことも考えます。ぜひ、それを願うものでございますが、よろしくお願い申し上げたいと思っています。

 また一つ、水の関係なんですが、先般、企業における環境報告書の議論があって、一応、今参議院の方に回っているわけでありますが、これについての、水の記述について少しお話を聞かせていただきたいと思っています。

 ここにも用意してきたんですけれども、その参考人質疑の際に、ソニーの佐野顧問さんがお話をいただいた部分であります。これは環境報告書ということになっておるようでありますけれども、大変立派なものをつくっているんですが、まさに環境報告書は企業の環境に対するバロメーターというもので、これをこれから企業につくってもらっていこうじゃないかということで、特に今回の法律では特定事業者に義務づけをしようということから第一歩を進めてきたんですけれども、ソニーさんのに限らず、幾つかの報告書を見ても水のことについては大変少ない、私も大変がっかりをしたのであります。

 特に製造会社にとりましては、どんな製品をつくるにしても、まず部品を洗うとかいうところから始まって、必ず水というのは使う。よく、かつて言われていましたけれども、工業団地をつくると地下水を吸い上げて、それで工業用水をどんどん供給していく、それによって地盤沈下まで起こってしまったなんという問題も起きているわけですけれども、そういう水の量という問題が一つ考えられる。

 さらに、今は量から質ということで、今度は、排出するに当たってきれいな水を出さなきゃいけないですよというのが先ほどの防止法というものになってくるわけですけれども、そういうふうなものが決められている。

 もう一つ、最近のリサイクルということで、水循環、循環して使っていく、工場の中でも循環して使わなきゃいけない。最近では、新しいビルの中では、中水と呼ばれているもので、ビルの中の水を、雨水を使ったりしながらでも循環をしていくということも出ているようであります。

 水についての大きく三つの論点があるのかなというふうに私は思っておるんですけれども、なかなかこの環境報告書には具体的にそこまでの記述が書いてないのであります。

 法律のこの報告書に対する内容を見ますと、これから役所の方で記載事項についての具体的なものを出していこうというようなことも言われているようでありますけれども、そういう中で、ぜひとも水についての記載を、今言った三点、少なくとも三点についてはどうなのかというようなことまで突っ込んだ指導、記載指導というものはできるのかどうか、その辺はいかがでしょうか。

松本政府参考人 今御指摘をいただきましたけれども、環境報告書の中に大変たくさんの環境情報が盛り込まれるわけでございますけれども、事業活動におきます環境負荷の中でも、水に関する情報というのは大変重要な問題だと私ども考えております。

 法律に基づきます記載事項の話の前に、これは法律に基づくものではありませんけれども、環境省は例年、環境報告書のガイドラインというのをつくっております。これは、環境報告書に記載することが望ましい、理想形を考えながらでございますが、そういう項目について整理をして世の中にお示しをしているものでございます。

 ことしの三月に策定をいたしました環境報告書ガイドライン二〇〇三年度版、この中におきましても、例えば水資源投入量、それから循環的利用等のその低減対策、あるいは総排水量、それに加えてBOD、COD、その他の規制項目などの負荷量、こういうようなかなり細か目な項目を記載することが望ましいのである、こういうことをお示ししておるということでございます。

 法律の方でございますけれども、環境配慮促進法案におきましては、環境報告書の記載事項等につきましては、環境報告書に最低限盛り込むことが必要であると考えられる事項を環境大臣が定める、こういうことになっております。

 この記載事項等につきましては、環境保全上、重要な情報が適正に提供されるということを念頭に置きながら、法律が成立した後、事業者、学識経験者の意見、あるいは環境情報の公表に係る慣行、実際上の実務でございます、こういうようなことを尊重しながら定めていくということになるわけでございます。

 御指摘の水質にかかわる環境負荷の項目の取り扱いにつきましては、今後、その中で十分に検討していきたいと思っております。

宇野分科員 ありがとうございます。ぜひやっていただきたいですし、また、白書も今準備されていると聞いておりますけれども、白書の中にも、今ページ数を減らせということで大分割愛をされているようでありますけれども、水の記載を決して忘れないようにお願いしたいと思います。

 次に、先ほど、水フォーラムの中でも決議された中に環境教育の重要性ということを言われているという話でありますので、また、環境教育についても今一生懸命やろうという機運が大分高まってきていることは事実であります。この環境教育、大気だとか水だとかいろいろなものがあるわけですけれども、私も、常に今お話をしておりますのは、琵琶湖をぜひ水環境教育の場として国としてお使いいただきたい、指定していただきたいというような思いがある。

 なぜ私がそう言いますかというと、琵琶湖は非常に大きいわけで、南湖と北湖と二つに大きく分かれている。下の方の南湖と呼ばれているところは非常に水質が悪い。北の方の、上の方の北湖と呼ばれているところはある意味では非常に水質がいいと呼ばれている。そんな、一つの湖の中で悪い水といい水とが一緒くたにチェックできるという非常に利点のある場だと私は思っています。

 そんなことで、前もお話ししているんですけれども、環境学習船という船を使って、いい水、悪い水、こうなんだよということが船の中で一日でわかる、こんな便利な場所はないと思いますので、これはぜひ検討していただきたいということを要望しておきたいと思うんです。

 それと同じように、全国の学校が主体になっているんですが、ビオトープがどんどん今つくられているようであります。私の住んでいるところでも、もう学校にほとんど、全学校の校庭の片隅にはビオトープと呼ばれるものをつくって水を流して、メダカなり蛍なりというものを、生物を見よう、それを大事にしていこうという機運で、子供たちに自然に環境の教育を受けさすというような場になっているんですけれども、このビオトープについて、環境省としてもっともっと積極的に取り組んでやっていただきたいなという思いがあるんですが、その辺については、副大臣、どんなお考えをお持ちでしょうか。

加藤副大臣 身近な生き物や環境を活用した自然体験などの環境教育活動、これは特に日常的に自然と触れ合う機会が少ない都市の子供たち、特にお子さんの場合は非常に感受性が高いわけですから、こういう年代層から環境教育に対しても積極的に取り組んでいくことは、先ほど御指摘がありましたように、やはり環境教育という重要性、意義が非常に深いということで、これは積極的に取り組んでいかなければいけない、このように認識しております。

 このビオトープに関しましては、自然体験とか環境教育に適した場でありますし、この整備や活用を図るために、環境省としても地方公共団体に対して自然との共生等の関係での補助金、こういった制度を実際につくって実施しておりまして、それぞれの設置自治体におきましても環境教育に有効に活用されているというふうに、進めている段階でございます。

 さらに、平成十四年度からは、身近な自然を活用した環境教育の教材、指導者が使っていく教材でございますけれども、ティーチャーズガイドというものを作成しておりまして、そういったこと等も含めまして取り組みをさらに行っているところでございます。

 今後とも、こういった場所で十分活用していけるような環境教育の教材、あるいは環境教育それ自体を促進させていくために、環境省としても積極的に進んでまいりたい、このように考えているところでございます。

宇野分科員 ぜひよろしくお願いしたいと思いますし、まさに今の話の中の環境教育、要は子供たちにということなんですけれども、もう一つ、私は、この水環境の基準というのは、要はBODだとかCODだとかということで数値を言って、これがどうのこうのという話、これは子供たちに似合わないかなという思いをしています。

 私は、ぜひ環境省にひとつ何か基準をつくっていただいて、例えば、蛍が住める水環境の地域はいいんだとか、メダカが泳いでいるところはいいんだとかという、本当に、もっと子供たちの尺度でわかるような環境基準があってもいいんじゃないか。また、こんな水生植物がいるところはいいんだぞというのもあってもいいんじゃないかなという思いなんですが、この辺の考え方として、水全体の考え方として、ちょっと大臣の方に、わかりやすい基準というのはつくられていけるものかどうか、よろしくお願いします。

小池国務大臣 御指摘のように、BOD、CODというような数値であらわします水質に関する環境基準がございますけれども、そのベースになっているのは、人の健康がいかに保護されるか、それから生活環境の保全がどの程度できているのかといったような観点から設定をされているものでありまして、その確保に向けた取り組みをそういう数字でまた推進をするという形をとってきておりますが、昨年新たに、例えば蛍などを含めて水生生物の保全ということも加味いたしまして環境基準を設定して、環境の基準のさらなる充実を図ったというところであります。これによって、総合的に健全な水環境が保全されるというその第一歩ではないかと自負しているところであります。

 望ましい水環境の実現というのは、水の質、それから水の量、それから蛍などの水生生物がどれぐらいいるのか、それから水辺の構造そのものなども含めて、総合的な視野が必要かと思います。それをひっくるめて水環境ではないかと思いますが、この健全性の把握のためには総合的な指標が御指摘のように必要であるという考え方から、今年度から予算を確保いたしまして、わずかなんですけれども確保いたしまして、検討を開始することといたしておりまして、指標も行政的な位置づけというものが必要でございますから、どういったものが必要なのか、これからも検討を進めてまいりたいと思っております。

宇野分科員 ありがとうございます。

 ちょっと時間がなくなりましたので、次の化学物質の関係についての質問に移らせていただきます。

 先ほどの環境報告書の参考人質疑の際にソニーの方から言われた中で、私もびっくりしたんですけれども、EUにおいてソニーの製品が販売停止を食ってしまった、それは、その製品の中にEUで使ってはいけないものが入っているからということから、自主的に対応して大変大きな損害があったという話を聞かせていただきました。

 そんなことで、いろいろちょっと調べさせてもらいましたら、EUでは、WEEEという廃電子電気機器だとか、RoHSと呼ばれている有害物質規制など、こんなものが再来年から本格的に運用され、これの規制に引っかかるものはもう一切EUに入ってはいけないというようなことになるようでありますけれども、まず、この辺についてどのように考えていらっしゃるのか、お願いします。

南川政府参考人 まず、WEEE規制でございますが、これは、EU指令で電気製品、電子機器を対象といたしまして、使用済み製品の再利用あるいはリサイクルを製造業者や輸入業者に義務づけるというものでございまして、二年後に具体的な再利用及びリサイクルの率の達成を求めるということで、例えば、エアコン、冷蔵庫について見ますと、再利用とリサイクルで七五%以上を達成すべしというふうになっております。

 それから、化学物質規制のRoHSの方でございますが、これは、二〇〇六年の七月以降に市場に出回ります電気製品、電子機器につきましては、鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、それから二種類の難燃剤、その含有を禁止しようというものでございます。

宇野分科員 そういう形で大変厳しくなるようでありますけれども、そのうち特にRoHSの関係で、今六品目言われました中で、水銀や鉛というのがあるわけですけれども、鉛というのは、要はハンダによく使われているわけですね。これも電気製品をやるときには必ず必要なもので、これも各種業者が今一生懸命対応を考えておられるようであります。

 それと、水銀につきましては、ほとんど少なくなってきたようでありますけれども、蛍光灯には水銀が使われているということで、この蛍光灯、これはまだまだゼロにすることができない。乾電池は無水銀化に、今やりかけておりまして、それができるようになってきたということなんですが、この蛍光灯についてはまだまだそれができないのでありますが、家庭に出回っている。

 ただ、蛍光灯というのは割れやすいので、割れたらもうその時点で水銀がぱっと発散してしまう。割れたものを回収しても何にも意味がないということなんですが、この辺、大変私も心配をしておりますが、この辺についての規制というのが余り、何もできてないんではないだろうかなというようなことを思っておるんですけれども、この辺についてはいかがでしょうか。

南川政府参考人 まず、水銀について申しますと、乾電池につきましては、平成四年から、国内でつくる乾電池についてはすべて水銀を含まないということになっております。

 それから、問題は蛍光灯でございます。これは水銀をある程度入れませんと、ランプの寿命が極端に短くなります。そういったことでどうしても含むのですけれども、二、三十年前まではランプ一本当たり五十ミリグラム入っておったんですが、これが現在もう八ミリグラム程度まで減ってきておりまして、基本的には日・EUの業界の技術差はほとんどございませんので、もう少し努力すれば、EU機器指令がそのまま適用されても何とか対応できるというところまで日本の技術水準も来ておるというふうに承知をしております。私ども、業界にもよく話をしておりまして、何とかどんどん減らしていけるように努力をしてまいりたいと考えております。

宇野分科員 製品で減るということであればいいわけですけれども、乾電池のように水銀がない、ゼロという形になればいいわけですけれども、これはまたなかなか難しいようなことも聞いていますので、ぜひとも処分という意味で、これについてももっと、やはり企業に対して、製品開発をするということも必要でしょうけれども、処分も、やはりまだまだ、あと十年、二十年は何らかの処分をしなきゃいけないということがありますので、できたらこのEUと同じような何か規制というものを考えていかなきゃいけないのかな。

 そんな中で、先ほどのソニーの話にもあったんですが、企業が独自でそういう規制をどんどん今、自分たちなりに業界の中でやっていこうとしていることは聞いております。しかし、それはそれなりに自分たちのいいところ取りをする可能性もある。やはり、EUでやっているRoHS規制のようなものにするようなことも必要なのではないかなと思うんですが、ぜひ、環境省はまだまだ新しい省だということで、海外に対する勉強ももっともっとしてもらわなきゃいけないかな。もっと海外に出ていろいろと知識を入れてこなきゃいけない部分がまだあるのかもわかりませんので、そんなことも含めて、私は、業界だけに任せておくのはいかがなものかというような思いがあります。

 最後に、大臣としての必要な対応をどのように考えておられるのか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。

小池国務大臣 民間企業でも、ヨーロッパとの取引が多い企業とそうではない企業とで実際にまだら模様になっていることは事実でございまして、EUの規制については、そういったまだら模様ではありますけれども、民間企業がそれぞれ自主的な取り組みを行っておられるということを承知いたしております。やはりグローバル企業は特にそうしないと売れないということで、先ほどもヒアリングの際のソニーのことをお出しになりましたけれども、それが現実なんだろうと思います。

 環境省としても、そういった欧州の動きをよく注視いたしまして、十分把握した上で、関係省庁とも連携をして、適切な対処ができるようにしてまいりたいと考えております。

宇野分科員 どうもありがとうございました。

鈴木主査 これにて宇野治君の質疑は終了いたしました。

 次に、三日月大造君。

三日月分科員 民主党の三日月大造です。滋賀県第三区の選出でございます。よろしくお願いします。

 本委員会で初めて、小池環境大臣を初めとする皆様方に環境省マターについて質疑をさせていただく機会をいただきました。環境先進県を自負する滋賀県選出の一議員として、産業廃棄物行政について、一部リサイクル行政についても触れさせていただくんですが、これまでももう数次にわたって改正審議がされてきておりますし、今国会でも廃棄物処理法の改正審議がなされてきたところでありますけれども、現場の実態等踏まえて、問題提起と提言を交えた質疑をさせていただきたいと思います。

 もう申し上げるまでもなく、環境保全と経済活動の両立というのは二十一世紀の日本の最重要課題だというふうに言われておりますし、この間の環境省を初めとする行政の皆さんや事業者、国民の皆さんの、関係各位の精力的な取り組みには敬意を表したいなというふうに思っています。

 特に、経済活動の結果、もしくは日ごろの生活の結果出てくる廃棄物をどのように少なくするのか、そしてどう再利用、再使用していくのか、そして環境に悪影響を与えずに処理をしていくのか。人体に例えますと、静脈そして排せつの機能といった観点から、こういう廃棄物に関する行政を行っていくことが必要不可欠、極めて重要な喫緊な課題だというふうに思っております。

 まず初めにお伺いをしたいと思うんですけれども、近年の産業廃棄物の排出量と最終処分・埋立量はどれぐらいあるのか。これぐらいの質問だったら、ホームページを見れば明らかじゃないか、もう既に公表しているよと言われるかもしれませんが、あわせて、この産業廃棄物の排出量、処分量をどのように把握をされているのかといったことを重点的にお答えいただきたいと思います。

砂田大臣政務官 お答え申し上げます。

 環境省が毎年実施している調査は、都道府県の排出事業者あるいは処理業者を対象として実施した調査結果をもとに全国的な状況を推計したものであるわけであります。

 環境省としても、産業廃棄物の排出量や最終処分量等のデータについて、より精度を高めていく必要があると認識をいたしているところでございます。このため、現在、多量の排出事業者の処理実績を活用するなどして、より精度の高い推計手法となるよう見直しを行っていることやら、最終処分場の残余容量の定期的な把握を設置者に義務づけることなど検討をしているところでございます。

三日月分科員 ありがとうございました。

 今お伺いをすると、把握の方法にはアンケートや推計といったものが非常に活用されているという、言ってみれば、大まかで、そしてタイムラグの非常に大きな数値になっているのではないかなというふうに思うんです。このあたりが実は廃棄物行政が非常に後手後手に回る一つの大きな原因でもあるのではないかというふうに思っていますので、ぜひ、具体的には、排出事業者が発行をいたします産業廃棄物管理票、マニフェストですか、こういったものを活用した排出量の把握、管理、そして処分量の把握といったものが不可欠ではないかというような提言をまず申し上げておきたいというふうに思います。

 関連をいたしまして、ちなみに不法投棄についてお伺いをしたいというふうに思うんです。

 近年、不法投棄というものが後を絶ちません。最近三月にも、岐阜県岐阜市の椿洞ですか、少なくとも五十二万立方メートルの不法投棄の事実が発覚いたしましたし、既に青森・岩手県境、そして香川県豊島の大量不法投棄事件も明らかになっております。

 まず、国内における不法投棄の状況、件数及び規模にしてどの程度だと把握をしていらっしゃるのか、そして原状、もとの状態への回復状況、そして今後の不法投棄防止対策についてどのようにお考えになっているのか、お答えいただきたいと思います。

南川政府参考人 全体といたしまして、毎年およそ千件程度不法投棄がございます。ただ、これは、不法投棄と申しましても、十トン以上の新規の産業廃棄物の不法投棄が明らかになった件数でございまして、もっと小さなものはたくさんあると思います。私どもは、ただ自治体を通じて得る情報ということで、そういった不法投棄の関係で毎年約千件でございます。

 内容でございますけれども、やはり五千トン以上のものが毎年十件から二十件入っておりまして、量的にはそれが半分以上ということでございますので、まずその大きなものをきちんと押さえるということが大切だと思います。

 そういった観点から、逐次、地方公共団体とも連絡をとりながら私ども必要な施策を練っておりまして、具体的には、まず不法投棄の内容が、いわゆる産廃業者と言っておる免許を取った方以外に、自分の社のごみをそのまま捨てる場合が結構多うございます。件数としては、業者よりも、自社処理と称して不法投棄をする場合が多うございます。それから、いわゆる白タクのような全く免許を持っていない方もございまして、免許を持っておる方について言えば、パーセントで言うと、件数の七、八%が免許を持っておる方ということでございます。

 したがいまして、私どもとしては、これまでの施策という意味では、比較的免許を持っておる業者を中心に取り締まりをしておりましたけれども、これからは、その件数も十分見ながら、免許を持っていない方についても幅広く押さえていけるような、不法投棄が規制できるような体系をぜひ練り上げていきたいということで、今さまざまな準備をいたしているところでございます。

三日月分科員 非常に大まかな御説明をいただきましたし、まだまだ踏み込んでちょっと教えていただきたいところもあるんですけれども、時間が三十分と限られていますので、ちょっと後ほど関連して御質問させていただきたいと思います。

 あわせて、若干、ちょっと一般廃棄物の方に入るんですけれども、減量化という観点からは、リサイクルの推進というのが有効かつ不可欠だと思うんです。

 平成十三年四月に家電リサイクル法が施行されました。エアコン、冷蔵庫、テレビ、洗濯機、四品目に収集・再商品化費用負担を義務づけられて、現行、これが後払い制度になっておって、不法投棄の一つの原因にもなっているというふうに指摘されております。

 ちなみにお伺いいたしますが、平成十五年一月に一部施行されました自動車リサイクル法におきましては、預託という形で前払い制度といったものが行われておりますけれども、これと同様に、家電リサイクル法についても後払い制度から前払い制度に改正するというような可能性なり方向性といったものはないんでしょうか。

小池国務大臣 今御指摘ありました家電リサイクル法でございますけれども、当時、この問題が議論されたときの論点といたしまして、既に販売されて家庭内で使用されている家電製品が三億台あるということでございまして、そのときに、家電製品については排出時の負担方式とせざるを得ないということで、既販品の扱いが一つ大きなテーマでやりとりがされたということであります。

 それから、価格転嫁を伴う前払い方式ですと、企業が倒産とか撤退した場合に、その企業の製品のリサイクル費用をだれが持つんだということで手当てが困難になるなどといったような議論を経て、結果として、排出時の排出者負担方式ということになったわけでございます。

 車の場合は、これは資金管理法人ができるということで、若干そのあたりが違ってきますけれども、いずれにしましても、この家電リサイクル法は、施行後五年を経過した場合で見直し条項ということがついておりますので、その際に、前払い制度の是非も含めた制度のあり方が評価、検討されるものと考えているところでございます。

三日月分科員 ぜひ、都道府県や市町村がその費用負担、特に不法投棄対策をめぐって非常に財政難の中で苦慮している現状をお踏まえいただいて、今後、その見直し期間に当たっては、前払い制度の活用も含めて御検討いただきますように御要望申し上げておきたいと思います。

 さて、このような中、産業廃棄物の減量や適正な処理を促すための、そしてまた各都道府県や自治体における産業廃棄物行政の財源を確保するといった観点から、産業廃棄物税が各都道府県や保健所設置市において実施または検討されております。

 現在、国内における産業廃棄物税の創設事例はどれほどなのか、そしてまた、この産業廃棄物税の創設によって、創設されているところから創設されていないところへの広域移動や、そしてその価格負担を免れるための不法投棄を誘発するという懸念も指摘されておりますけれども、この状況も含めてどのように把握をされているのか、お答えいただきたいと思います。

加藤副大臣 産廃税の関係につきましては、導入している県というのは、三重県とか鳥取県、岡山県及び広島県などがございます。全国で相当数出始めてきておりますが、実際に動いているのは今言った県なんです。

 課税に伴う産廃の県外移動の変化について調査を行っているところなんですけれども、その結果については、課税が開始されてから間もないわけでございまして、必ずしも十分なデータが整っていないわけなんですけれども、現在のところ、県外に流出の増加は確認はされていない。もう少し事態の推移を見て、そういった面について、御指摘の件について精査をしていかなければいけないなということでございますので、その辺についても御理解をいただきたいと思います。

三日月分科員 既に本当に御案内のとおり、産業廃棄物というのは、広範囲かつ多数の事業所において、そしてまた大量に発生して、広域に移動して処理をされるという特性を持っておりまして、これが一般廃棄物と大きな違いであると思っています。

 産業廃棄物行政の基本としても、そしてまた不法投棄や広域移動の状況を把握、監視するためにも、先ほど前段申し上げました排出者、運搬者、処分者の間で、どれだけのものが排出をされて運搬されて処分をされているのかという、まず量の把握といったものが非常に大切だというふうに思います。

 特に、中央環境審議会が本年一月二十八日に出されました「廃棄物・リサイクル対策に係る課題への対応について」という意見具申の中で、電子マニフェストの普及促進やGPS、ICタグ等を活用した廃棄物追跡システムなどの実施可能性を検討すべきだというような指摘もなされておりますけれども、このあたりについて今の進捗状況等、もしおわかりになられましたら教えていただきたいと思います。

南川政府参考人 不法投棄の対策としまして現状把握が大事だ、また、現状がどうなっているかを多くの人が知ることによって不法投棄が撲滅できるということで考えております。

 それで、おのおの申しますと、電子マニフェストについて申しますと、全体としまして、これは、まず排出事業者がそのマニフェスト制度に登録し、運搬業者が登録し、中間処理業者も登録して、最終処分業者も登録するという場合に初めて一気通貫で働きます。

 そういうことから、現状で申しますと、全体の産廃の取引のうちの一%から二%の間、約二%が電子マニフェストで監視ができるということで、例えば、Aさんがごみを出せば、その人がパソコンの番号、パスワードを入れれば、現在そのごみがどこにあるかがわかるというふうになっているわけでございます。これにつきましては、どんどんその制度を使う方がふえればふえてまいりますので、これからどんどんふやしていきたいと思っています。

 それから、GPSそれからICタグでございますが、これはまだ実用まで行っておりませんで、まずGPSについて申しますと、それ自身は、例えば携帯のカメラのようなものでその現場現場をきちんと撮れば、撮って送るということで見られるわけですが、やはり、できましたら電子マニフェストに連動すれば一番効果が高いわけです。文字として今どこでどういう処理がされているかということプラス現場の写真が出れば一番信用できるわけですので、ぜひそういったものと組み合わせていきたいと思っております。

 それから、ICタグも今開発途上でございます。これも、どうすれば実効性を持つか。ICタグ自身はどこに張りつけても、そのICタグをどこに入れるかで全くその効果が変わってまいりますので、実際にごまかしがきかないような使い方をしたいということで、早期に実用化しますように現在具体的な方法を詰めているところでございます。

三日月分科員 日本の特性だと思うんですけれども、動脈、物をつくる、そして売るといった観点では非常に設備投資も積極的になされ、行政の財政投資も非常に皆さんの理解が得られやすいところではあるんですけれども、ごみの排出、そして移動、処分がどのようになされているかということを把握、管理するためのこういう設備投資も、ぜひ環境省としても強力に推進をしていただきたいということを御要望申し上げておきたいと思います。

 こういう数字が基本になると思うんですけれども、総排出量は約四億トンで微減だ、そして、再利用、減量の効果はあるものの、最終処分場の残存容量は平成十四年四月一日現在で四・三カ年分ということで、非常に厳しい状況だというふうにお伺いをしております。

 そのような中、最終処分場の新規設置許可件数の推移はどのようになっているのか。

 そしてまた、平成十一年度以降、新規の許可件数が非常に激減をしております。許可されていても着工や稼働されていない例もあるというふうにお伺いをしております。このように設置が困難となっている理由は何なのか、そしてまた、こういう逼迫した産業廃棄物最終処分場設置状況の打開策として、環境省としてどのようなことをお考えになっているのか、お教えください。

加藤副大臣 産廃施設については、いわゆる迷惑施設というふうに言われていることにつけ加えまして、先ほど説明がありましたように、年間十トン以上の関係で千件も不法投棄があるということでありますので、そういった不法投棄の事案が多発していることもありまして、やはり産廃に対する住民の不信感といいますか、そういったものが増大しているわけであります。

 そういった意味では、そういう背景があることから、やはり設置の数とか運営に伴う地域紛争といったものが多発しているような状態でございまして、そういった問題の中で、設置をしていくということが甚だ困難な状況になっていることなわけでございます。

 我々環境省としても、そういった状況にかんがみまして、やはり悪質な業者に対する徹底的な取り締まりを実施していかなければいけない。また一方、優良な処理業者の育成などをやはり強力に推進していくこと、すなわち、産業廃棄物処理の適正化や信頼性の確保に取り組むことを通じまして処理施設の整備促進を図ることが極めて重要であるということで、その点についても鋭意努力している最中でございます。

 また、それと同時に、排出抑制あるいはリサイクル、そういったものも進めて、最終処分場の減量化を図っていくことによりまして逼迫した状況を改善していこう、こういうことに今努めている最中でございます。

三日月分科員 今お答えいただいたように、迷惑施設である、そして不法投棄も含めて、極めて地域住民、国民にとって信頼のされにくい、そしてまた不安を抱かせやすい施設であるといったことから逼迫した設置状況になっているんだということがありますけれども、きょうは、それだけじゃないんだ、現行ある施設が非常に不適正な処分を行っているんだという事例をぜひ御紹介、御報告申し上げて、後の議論の糧にさせていただきたいというふうに思います。

 きょう、理事会の御承認をいただきまして、資料を配付させていただいております。これは、私の選挙区である栗東市にありますRDエンジニアリングの産廃処分場の、済みません、非常に略図で申しわけないんですけれども、環境マップでございます。

 そして、このRDエンジニアリングの産廃処分場は、廃プラスチック、ゴムくず、コンクリート瓦れき、ガラスくず、陶器くずの安定品目の埋め立てが昭和五十四年に滋賀県により許可をされて、平成十年まで埋め立てが行われた安定型の処分場でございます。

 そして、実はこの平成十年に、当初計画を超えた深さまで埋め立てをしているという事実が発覚をいたしましたし、このあたりは、もう既に環境省の皆様方は御案内だと思うんですけれども、地下水や浸透水への有害物質の流出が懸念をされております。平成十一年十月には、何と硫化水素も検知をして、以来、周辺地域の住民の皆様方は悪臭に悩まされて、そして水や空気など、目には見えないけれども人体に非常に甚大な影響を与える汚染に不安を大きくされているところであります。

 ちなみに、この赤印は基準を超えた数値で、これまで平成十一年以降複数回調査をした、そして県、市、それぞれの調査機関において、調査方法において調査した結果をすべて書かせていただいているものであります。

 この処分場には許可された安定品目しか埋めていないと業者は回答をしているんですけれども、実はそれとは裏腹に、廃油の入ったドラム缶や、そして注射器などの医療廃棄物なども大量に埋められていたというような証言や目撃も多々あるんです。実際、各種調査によって、土壌、地温そしてガス濃度、浸透水、排水などの汚染結果が、どんどんこの図のように明らかになっております。

 そのような中、滋賀県から、当然こんな業者ですから改善命令が出されまして、平成十三年十二月二十六日、滋賀県から当事業者に対する改善命令が出されて、地下水汚染防止対策、汚濁水・浸透水対策、そして悪臭対策などの対策が命じられました。しかし、不服審査請求が申し出られましたので、審査を環境省にしていただきましたが、本年一月二十九日付で、小池環境大臣も御審査いただいたと思うんですけれども、環境大臣より棄却という裁決があって、現在、県の監視のもと、平成十七年三月三十一日という期限内の改善措置の履行を見守っているところなんです。

 若干、くどくどと御報告申し上げましたけれども、こういう不法投棄や単なる迷惑施設だというイメージだけではなくて、現在あるこういう施設が、空気そして土壌、地下水に対するこのような非常に多くの汚染を、言ってみれば垂れ流しにしている現状が新たな施設の設置を阻んでいるというような現状があるんですけれども、まず、せっかくですから小池環境大臣、この事例、実態を改めてごらんいただいての御感想をお聞かせいただければありがたいんですけれども。

南川政府参考人 先に説明だけさせていただきますと、本件につきましては私どもよく承知しておりまして、不服審査についての対応を行ったところでございます。

 それから、このような場合でございますが、おっしゃるとおり安定型でございますので、ダイオキシンについてのいわゆる維持管理基準はございません。ただ、私どもとしましては、この埋め立てにつきまして、公共用水域あるいは地下水を汚染してはいけないということから、そういった事実があれば、なおかつ、その処分場からダイオキシン類が出ておるということになれば、これにつきましては、そのダイオキシンの発生の原因となる、まじっているであろうごみの焼却灰とか、そういったものについては取り除きをできるというような規定もございまして、さまざまな対応はしてまいりたいと考えております。

三日月分科員 環境大臣、せっかくなので、御感想も含めて、ぜひお答えいただきたいと思います。

小池国務大臣 今、担当の者が申し上げたとおりでございます。

三日月分科員 今、御答弁をいただいたダイオキシンの対策、これは見ていただければわかると思うんですけれども、右の列の上から十段目ぐらいですか、ダイオキシン類、測定結果が十四ピコグラム、これは環境基準の十四倍だ。非常に甚大な、大きな数値が出ていますし、他の観測地点においてもダイオキシン類は非常に大きな数値結果。特に、これは右上が地下水の上流地域、そして左下が地下水の下流地域ということで、この産廃処分場から出てくる、しみ出している浸透水、それによる地下水汚染といったことが明らかだというふうに言われております。

 こういった中で、平成十二年にダイオキシン対策法が制定をされて、ダイオキシン類の大気、公共用水域、地下水、土壌への影響を規制する適正な措置を定めていらっしゃると思うんですけれども、先ほどのお言葉の中にありました、安定型だからこれは対象外になっているというようなお話がありましたけれども、ここがやはり問題だというふうに思うんですね。

 現にダイオキシンが発生をしている場合には、たとえ安定型であっても、このダイオキシン類対策特別措置法の廃棄物の最終処分場の維持管理基準による維持管理義務を適用して、原因の調査と生活環境の保全上必要な措置を迅速に講ずる責任を明確にすべきだと思うんですけれども、このあたりの御見解、改めてお伺いをしたいと思います。

南川政府参考人 これにつきましては、先ほど申しましたけれども、維持管理基準とは別に、ダイオキシンによる汚染のおそれがあればその原因物質を取り除くことができるということでございますので、そういった規定で対応できるというふうに考えております。

 安定型につきましては、あくまでその規制をきちんと守っていただけるという前提でございますので、守られれば出ないだろうということで、おそれのあるような金属類関係に規制は限定しております。

 御指摘のようなことがあれば、それはむしろ、そういう業者のダイオキシン類の発生を呼ぶような物質を捨てることがおかしいのであって、そこの取り締まりをきちんとすべきだというふうに考えておりますし、もし起きた場合でも、除去に対しての必要な措置はできるということで、そこはぜひ厳格に対応していきたいと考えております。

三日月分科員 これからのところは、当然その取り締まりは強化されるんでしょうけれども、これまで、もう既に捨ててしまっていて、安定型だからそういうダイオキシン類が発生するものは捨てられていないだろうと思っていたところが、実際は捨てられていたんです。そしてまた、こういうような数値結果も出ているんです。このあたりについて踏み込んだ、たとえ安定型であっても、こういうものが検出された箇所については迅速な対応ができるような、そういった措置をぜひ講じていただきたいと思いますし、各都道府県についても、その支援なり指導をより強化していただきたいというふうに思っています。

 若干、確認なんですけれども、産業廃棄物の不適正処分によって生じる国民の健康や生活環境への支障を取り除くことを目的に、昨年、特定産業廃棄物に起因する支障の除去等に関する特別措置法、いわゆる産廃特措法といったものが制定をされました。特定産業廃棄物の定義は、産業廃棄物であること、そして、廃棄物処理法の平成九年改正のうち原状回復支援措置に関する部分等の施行日、平成十年六月十七日前に不適正処分されたものであることといったような定義がなされておりますが、ここで確認です。

 これは、処分場における不適正な処分が行われた産業廃棄物に起因する生活環境保全上の支障についても、都道府県は実施計画を定めることができて、そして特定支障除去等事業として国庫補助及び地方債の特例を受けることができますよね。同法施行後、このような処分場における不適正処分を改善する実施計画はどれくらい出されているのかということも、あわせてお答えいただきたいと思います。

南川政府参考人 イエスかノーかだけで答えますと、イエスでございます。したがって、これについては産廃特措法の対象になり得るということでございます。

 ただ、これまでの事例がまだ、私どもが承認しましたのが、香川県豊島と青森、岩手の県境でございまして、今後、こういったことは出てくると思いますし、当然ながら、汚染防止の措置命令を自治体が出して、そして代執行する場合には対象とし得るということで、必要があれば検討してまいりたいと思います。

 ただし、あくまで排出者による除去が原則でございますので、原則は十分踏まえた上で対応してまいりたいと考えております。

三日月分科員 ありがとうございました。

 あっという間の時間ではあるんですけれども、当然、排出者による責任というものが前提となります。そして、処分業者ですか、こういったところが適正に処分をするといったことも前提になるでしょう。しかしながら、この廃棄物行政は、どんどん後から後から基準が厳しくなってきた、これはこれで私はいいことだと思うんですけれども、それによって、過去のいろいろな不適正処分が、法の外にあるような不適正処分がもたらすような悪影響といったものも、これまた顕在化してきている。このことはもう既に環境省の皆さんも御存じのことだとは思うんですけれども、これをやはり公の責任において処理をしていく、そして適正化していくといったことが非常に重要ではないか。

 これまでは、どちらかというと基準づくりやそれによる規制が中心であった廃棄物行政であるというふうに思うんですけれども、この規制をすり抜けて不法に投棄をされ、そしてまた、法の目をかいくぐって、法が制定される前に不正に処理されてしまっていて、現在、その地域住民や国民の生活、健康、生命に対して甚大な被害を及ぼしている事例に対する国の強力な指導管理体制といったものがやはり必要だというふうに思うんですけれども、このあたりについて御見解をお聞かせいただきたいと思います。

小池国務大臣 これまでの不適正な処分行為によって、処分場において、まさに生活環境保全上の支障が生じているような場合のことを指していらっしゃるんでしょうけれども、廃棄物処理法に基づいて、それぞれ都道府県が改善命令、措置命令を講じていくというのが基本中の基本になっております。

 その上で、平成九年の法改正で、最終処分場の維持管理、そして排出の際の基準について規制強化を行ってきた。そしてまた、平成九年の改正法が施行されて以降に埋め立てが開始された管理型処分場においては、維持管理費用の積み立てが義務づけられてきている。それから、さらに一歩進んで、今回の改正法によりまして、最終処分場跡地のリスク管理のための措置を導入してきている。

 産業が高度成長を遂げて、それによって大量生産、大量消費とあって、その後の大量廃棄で、さあ、どうしましょうということで、これまで数次の改正を経てきたところでございますけれども、それで、いかに循環型の社会を形成していくかというようなことをずっとこれまで重ねてきたところでございます。

 環境省としては、こういった制度に基づいて、まずは都道府県が、やはり一番現場に近いところにおられるということから、そこによります対処を注視することによって、そしてまた必要な場合に応じて都道府県に対する指導を行う、それから最終処分場の適正な管理を推進していく、こういう時系列的な法改正の流れとそこにおきますそれぞれの役割分担ということをいま一度整理して、お答えをさせていただいたつもりでございます。

 いずれにしても、こういった不法投棄なども、最初見逃しておくことによって、それで緩やかな監視のままにしておきますと、これがどんどんどんどん、まあ、いいんだなみたいなことで、足元を見られて、そこが不法投棄の山になるわけですよね。

 先週というか、ついこの週末、豊島にも行ってまいりましたけれども、まさに島の端っこのところで、結局だれも何も言わないから、どんどんどんどん捨てていった。結果として、国が本当ならば前向きのことに使う予算が、五百億も六百億も、何でここまでわからないんだということを、青森もそうだし、岩手もそうだし、今回の岐阜もそうだし、まずは一番近場にいる人が声を上げないと私どものところには残念ながら届きません。

 何で声が届かないのか、これをもっと検討すべきだし、それからまた、ただ何か怖い人たちの存在だけではなくて、実際に最終処分場の本当の確保ができるのかどうかということとか中間処理業者がどうしているのかというような、そういうシステム上の問題、これも考えなければいけない、そういうふうに思っております。

三日月分科員 まさに大臣がおっしゃったとおりだと思うんです。不法に投棄されて不正に処理をされれば、結果、百億も何百億もというような大きなお金をその処理のために使わなくちゃいけないというこの現状をぜひ御認識いただいて、私はこの時間内に御提言を申し上げました。

 まず、やはり排出量の把握、そして運搬量、処分量の把握を最新の設備も駆使しながらしていこうじゃないか、そして、不正な処理がされている事案については、先に公的なお金を投じてでも、その被害が甚大化する前に食いとめるためにも、業者に貸し付けをするなり、後でその債権債務関係を整理するといったやり方で、一日も早く、まず迅速にその被害を食いとめるといったような対策もぜひ講じていこうではないかというような御提言を最後に繰り返し申し上げさせていただいて、私の質疑とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

鈴木主査 これにて三日月大造君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして環境省所管についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

鈴木主査 これより内閣府所管中警察庁について審査を行います。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。松崎哲久君。

松崎(哲)分科員 民主党の松崎哲久でございます。

 きょうはどうぞよろしくお願い申し上げます。委員長も、きょうこの分科会、私が最後でございますので、もう少しおつき合いいただきたいと思います。

 規制緩和というテーマでこの数年来、国政の課題となっておるわけでございますが、私は、当選しましたのは昨年の十一月に初めて当選いたしましたが、常々、規制は必要があって規制ができてきた、当然、不要な規制というのは緩和すべきだし、政府では規制改革という言葉を使っておりますけれども、改革すべきは改革しなければいけないのは、それはもちろん当然なんでございますが、緩和していくということが必ずしもすべて善とは限らないという考え方を持っております。

 例えば、警察庁関連でいえば、交通規則、その違反等について、これを緩和していったら大混乱になってしまうわけでございますし、あるいは、一般論で言いましても、事業者に対する規制というものを緩和すると、結果として、一般国民の生活が不利益をこうむるというような例があるのではないかというふうに考えます。

 本年の三月に規制改革・民間開放推進会議に引き継がれました総合規制改革会議の報告書を見ますと、経済効果として、十四兆三千億円、経済効果が上がるんだということが高らかにうたわれているのでございます。しかし、規制というのは、必ずしも経済合理性という観点で緩和したりしていいとは限らない。民間の活力を引き出すために緩和していかなきゃいけないもの、当然それはあります。不要な規制というのは緩和していった方がいいわけです。

 国民生活ということを考えると、経済合理性だけで言えないものというのがあると思うんです。特に警察というのは、国民生活に一番密着した部分で関連している行政だ、私はこう思っておりますし、また、現代の社会にはなお必要、かつ有効な規制というのはあるんだ。

 ですから、規制のあり方を見直すというのは、あくまでも国民生活の福利向上のために、そういう観点で検討することが必要なんだというふうに考えておるんですが、そういう根本原理について、まず大臣の御所見を伺えればと思います。

小野国務大臣 松崎委員からのお話、まことに私もそのような感じを持っている一人でございます。罰則の見直しあるいは規制の改革につきましては、必要以上に国民に負担がかかっているようなものは軽減しなければなりませんし、また、今の制度より、より効率的といいますか効果的に、合理的なものの追求といった観点から考えてみますと、検討されるべきものがあるのではないか、そのような認識を持って受けとめているところでございます。

 その目的とするところは、今先生おっしゃってくださいましたように、国民生活の福祉の一層の向上ということでございます。警察行政で申し上げますと、個人の権利と自由を保護し、公共の安全と秩序を維持するために規制については一層合理的なものとする中で、必要なものについては存置をしながら、さらに強化すべきところがあれば強化をする、そういう基本的な原理を心に置きながら考えさせていただき、執行させていただいているところでございます。

松崎(哲)分科員 ありがとうございました。

 まず最初に、そういうお考えだということを伺いまして安心をいたしました。

 警察行政も範囲が非常に広いものですから、本日は主に交通関係のことについて、私も地元におりますと、いろいろな意味で交通関係というのは特に密着をしていることですので、その観点について幾つかの例をお話ししながら、また政府参考人からも御意見を伺いたいと思うんです。最後に、そのやりとりをお聞きいただいて、また大臣に御所見、御感想があれば承りたいというふうに考えております。

 幾つかテーマがございますが、まず信号機を最初に扱わさせていただきたいんです。信号機については足りない、足りないというのがもう常識のようにいつも耳に入ってまいります。本当に足りないのかどうかというのは必ずしもわからないんですが、実際に、今回こういう質問に当たりまして、地元の警察署にも聞いてみますと、年間に信号機の増設が一機だ、あるいは二機だとかいうような数字を聞いてまいったんですが、全国で信号機の数というのは大体どのぐらいあるんでしょうか。また、それが年間どういう量でふやしていっていただいているのかということを伺いたいと思います。

人見政府参考人 平成十五年度末現在で、約十八万七千四百機ほど信号機はございます。なお、平成十五年度中には全国で約二千五百機の信号機が新設されておるところでございます。

 ちなみに、平成十四年度中には、平成十三年度の第二次補正による国費補助事業分の約四千二百機も含めまして、約六千二百機が新設されたところでございます。

松崎(哲)分科員 ありがとうございます。

 確かに十三年度の補正予算でというと、年間一機とか二機しかふえない警察署の管内でも、その年は十二機ふえたとかいうような話も伺っておりますので、やはり必要なときに必要な予算措置もしていただいているということだと思うんですが、そのうち、県公安委員会の単独事業と国の補助事業とあるというふうに伺っているんですけれども、その割合とか予算についてお聞かせいただきたいと思うんです。

人見政府参考人 お答えいたします。

 信号機につきましては、平成十五年度中に約二千五百機新設しておりますが、そのうち国の補助が半分入っております特定事業で設置したものは約四百機、地方単独事業、都道府県が負担したものにつきましては約二千百機、こうなっております。

松崎(哲)分科員 予算について、総額ということで。

人見政府参考人 失礼しました。

 予算の総額でございますが、機数については先ほどお話しさせていただいたとおりでございますが、地方単独事業で設置したものの予算については報告を受けておらず、把握しておりません。

 ちなみに、交通安全施設の整備予算、これは先ほど申し上げましたような国が所要額の十分の五を補助する特定事業と、全額を都道府県が負担する地方単独事業とに分かれておりますが、平成十五年度の全国の予算総額は約九百七十七億円でございます。このうち特定事業が約三百五十億円、約三六%、また地方単独事業が約六百二十七億円、六四%となっております。

松崎(哲)分科員 地元に行き、地元の声を聞きますと、設置の必要があることは認識するんだけれども、何分予算がというお答えが多いんです。

 局長に伺いたいんですが、とりあえず要望についてはある程度こたえられている、こうお思いなのか、基本的にもう予算が足りないんだというように思われているか、これはどちらでございましょう。

人見政府参考人 お答えいたします。

 信号機の整備につきましては、地域住民の方々の御意見や御要望を把握するため、警察署協議会あるいは警察本部や警察署の相談窓口等を積極的に活用しておりまして、そうした意見、要望を十分踏まえますとともに、道路環境や交通実態など、総合的に判断して、毎年度の予算の制約のもと、より必要性、緊急性の高いものから順次設置しているところであります。

 警察庁といたしましても、都道府県警察に対し所要の予算を確保して、必要な信号機の速やかな整備に努めるよう引き続き指導してまいりたいと考えております。

松崎(哲)分科員 私が伺っている趣旨は、例えば、警察署の管内で五十、六十設置要望箇所があるんだと。あるんだけれども、実際につくのは先ほど申した一機か二機だ、こういうことなんですね。

 それで、具体的にお話を伺ってみると、それは、なるほど、そこにはつけた方がいいというところもあるけれども、場合によると、五十メーター先に信号機があるんだけれども、自分の家の前から向こうに渡るのに不便だから五十メーター近くにもう一個つけてくれみたいな、そういう理屈の合わない要望もあるやに伺うんですが、それを総合的に判断して、基本的にもう少し予算をつけたいと思っていらっしゃるのか。まあ大体要望は、多少順序の差があるけれども、つけられているんだと。これは当然、信号機というのは交通の安全、市民の生活の安全、それからさらに渋滞という意味も考えれば、円滑な交通とか両方の意味があると思うんです。

 そういう点で考えて、削れ、削れと言っているわけではなくて、本来もっと予算が必要なものが予算の観点で限られているのか、それとも、例外はあるにしても大体は整っているのかどうか、その辺のところの大ざっぱな御感覚で結構なんですが、伺いたいと思うんです。

人見政府参考人 今のところ、全国的に見ますと、御要望数の大体六割ほどを設置しておりますので、私どもとしては、刻一刻交通情勢も変わるものですから、もう少し予算はいただければと思っていますが、それはまた財政状況全体を勘案してというふうにも考えています。

松崎(哲)分科員 今六割とおっしゃったんですけれども、実際には、警察署に要望されているのはもっとはるかに多いと思うんですね。それが、警察署がいろいろ精査して、県の公安委員会に実際に計画をするのがもう少し少ないということなんじゃないかと思いますが、テーマが幾つかありますので、信号機の基本的な現状について伺いました。

 次に、工事中の交通整理といいますか、例えば道路を走っていますよね、そうすると、工事をやっていて、片側通行になっている、そういうようなときに、ガードマンのような方が交通整理をしている。こういう事例がよくあるんですが、実際、私も免許証を持っておりまして、運転はいたしますけれども、そのときに非常にうまく有効に整理誘導をしていただけるケースと、そうでないケースとあるんですね。もう少しうまくやればこっちの渋滞は少なくて済むのにとか、そういうのがあるんですが、誘導員の技術の優劣というものが、渋滞だとかそういうようなことに影響を持っていると私は思うんですが、局長、そういう御認識はおありでしょうか。

伊藤政府参考人 お答えいたします。

 工事中などの交通整理を行う業務でございますけれども、建設業者などがみずから行う場合は別でございますが、建設業者ではなくてその依頼を受けたものがこれを行う場合におきましては、他人の需要に応じて、「人若しくは車両の雑踏する場所又はこれらの通行に危険のある場所における負傷等の事故の発生を警戒し、防止する業務」というふうに警備業法でとらえておりまして、そういった意味で、他人の需要に応じまして行う業務は警備業法で言う警備業務でございます。

 そこで、こうした警備業務につきましては、当該業務に従事する警備員の専門的な知識及び能力の優劣というものが、その適正な実施に影響をもたらすものだというふうに考えております。

松崎(哲)分科員 その場合、資格だとか研修、そういうような制度といいますか、あるんでしょうか。

伊藤政府参考人 警備業者は、まず新規に雇った警備員に対しまして、基本教育十五時間、業務別教育十五時間の合わせて三十時間の教育を義務づけられております。基本教育につきましては、警備業務実施の基本原則に関すること、警備員の資質の向上に関すること、警備業法その他警備業務の適正な実施に必要な法令に関すること、あるいは交通事故を含む事故発生時における応急措置に関することなどを教えることといたしております。

 また、警備業務には施設警備などさまざまなものがありますけれども、交通誘導警備に関する業務別教育におきましては、交通誘導を適正に実施するために必要な道路交通関係法令に関すること、車両及び歩行者の誘導の方法、雑踏の整理の方法、業務に使用する各種資器材の使用方法に関することなど、交通誘導警備業務を適正に実施するために必要な知識及び能力に関することを教えることといたしております。

 また、警備業務をより適正に実施するために、都道府県公安委員会におきましては、交通誘導警備業務など、それぞれの業務に必要な知識及び能力に関しまして、学科試験及び実技試験によりまして警備員の検定というものを行っております。こうした検定の合格者が現場に配置されることによりまして、より適正な交通誘導警備業務が行われるようにしているところでございます。

松崎(哲)分科員 そういう御認識があって、かつそういう制度もあるということは一つ得心をいたしたんですが、ただ専門十五時間というのが、例えば雑踏の整理と交通、車とでは全く違うところですから、それぞれに一時間、二時間というのが十分なのかどうかというと、私、素人ですからちょっと判断がつきません。

 いずれにしても、今国会でそういう規制が強化されるというようなことも伺っているんですが、それはどういう点で強化されるということでございましょうか。

伊藤政府参考人 警備員の検定につきましては、今、国会で御審議いただいております警備業法の一部を改正する法律案におきまして、社会の安全上重要な特定の種別の警備業務につきましては、検定合格者の配置を義務づけることといたしております。例えば、交通誘導警備におきましては、高速道路における交通誘導警備など、より高度な知識及び能力を必要とし、また一たん不適正に業務が行われた場合に重大な事故を招来しかねないものにつきまして、検定合格者の配置を義務づけることを考えているところでございます。

 また、現在、警備業者は、営業所ごとに警備員指導教育責任者を選任して、警備員の指導、教育に当たらせることとなっておりますけれども、改正法案におきましては、この警備員指導教育責任者の資質を向上させるため、新たに定期的な講習の制度を導入することなどとしております。

 これらによりまして、交通誘導警備を初めとしまして、より適正、かつ充実した警備業務が行われるようになるものと考えているところでございます。

松崎(哲)分科員 高速道路など高度な必要がある場合というのはわかりましたが、先ほどおっしゃった、建設会社が独自に行う場合は別としてという言葉がありましたね。例えば、デパートだとか量販店、日曜日になると物すごく混雑するわけです。その場合に交通渋滞を起こしますね、駐車場に入れる車、駐車場から出る車。そういう場合、これは、現行法でも改正法でも結構なんですが、交通誘導員を置く、義務づけされるケースでしょうか。

伊藤政府参考人 デパート等の駐車場の出入りの管理につきまして、これをデパートの従業員みずからが行う場合におきましては、警備業法に言います警備業務に当たりません。ですから、そういった場合には従業員の責任で行うことになりますけれども、これを委託して行う、依頼してやらせるという場合におきましては、警備業者がこれを行うことになります。そうした場合におきまして、警備業者がやらなければならないということになります。

 先ほど、検定との関係かと思いますけれども、そうした交通誘導警備につきましては、現在の段階では、一たん事故が起こったときに大変大きな被害が生じやすい高速道路等の特定の交通誘導警備に関して、検定合格者の配置を考えているところでございます。

松崎(哲)分科員 今の点について、後で大臣にちょっと御所感を伺いたいと思っておるところですが、次に別の項目で、駐車違反のことについてお話を伺いたいと思います。

 駐車違反というのは非常に迷惑な場合があるわけで、大体迷惑なんですが、例えば、幹線道路でも、一台が違反していることで、渋滞がずっとあって、どうしてこの渋滞が起きたんだろうと思うと、たった一台違反駐車している、あるいは違法停車しているというようなことで重大な影響を引き起こす場合があるんですけれども、駐車違反そのものはどのぐらいあるんだろうかということで、先ほど通告させていただくのが遅くなったんですが、駐車違反の件数、それから駐車違反に伴って反則金というのがあるわけですが、それがどれほどのものかということを、数字をお示しいただければと思います。

人見政府参考人 お答えいたします。

 昨年の場合ですと、駐車違反には放置駐車と普通の駐車とございますが、全体で百六十八万件、駐停車違反で処理されております。そのうち放置駐車、これは運転者が自動車を離れておりましてすぐには運転できない、この状態のものが百六十万二千九百十七件でございます。そういったことでございます。

 今の反則金制度で申し上げますと、放置駐車であるか非放置駐車であるかによって罰則が異なってまいります。また、放置駐車の中でも迷惑度の高い駐停車禁止場所にとめているのか、普通の駐車禁止場所にとめておるのかで変わってまいります。

 これは反則金の額も、大型車なのか普通車なのか二輪車なのかで変わってまいりますが、ちなみに普通車で申し上げますと、放置駐車の違反で駐停車禁止場所にとめた場合は、反則金は一万八千円でございます。それから、放置駐車で普通の駐車禁止場所にとめた場合には一万五千円でございます。なお、非放置駐車、運転者が乗っている場合ですね、この場合で、駐停車禁止場所等にとめた場合は一万二千円、それから駐車禁止場所にとめた場合は一万円、こうなっております。

松崎(哲)分科員 その総額がどれだけのものになっているか、経済的にどういう迷惑をかけているのかということが一方であるんですが、それに対して、駐車違反の反則金というのが見合うかどうかということは、きょうの議論じゃないんですが、いずれしていきたいと思いますので、総額で反則金がどのぐらいになっているかということを、資料があれば伺いたいと思います。

人見政府参考人 総額といたしまして、約八百億円ほどの反則金収入がございますが、そのうち駐車禁止、駐車違反が幾らかという数字は出ておりません。大体、駐車違反というのは二割五分程度の違反でございますので、それを掛けたものが予測されるところでございます。

松崎(哲)分科員 きょうの議論にはしませんけれども、私は、駐車違反というものが引き起こすいろいろな迷惑、経済的なマイナスに対して反則金というのがバランスがとれていないんじゃないかという議論をいずれしていきたいと思っておりますので、まず数字を伺った次第でございます。

 それで、駐車違反に対応する駐車違反対応業務の民間委託というのが今国会で改正、まだ通っていないとは思うんですが、改正予定ということを伺っております。これはどういうような趣旨で、どういう形になるんでしょうか。

人見政府参考人 違法駐車は、先生御承知のとおり、都市部を中心に今常態化しておりまして、交通事故や交通渋滞を引き起こす、こういった点で国民生活に著しい弊害をもたらしております。一方、国民の取り締まり要望も大変多うございます。

 しかしながら、治安情勢が悪化している現状におきまして、違法駐車の取り締まりに投入できる警察の執行力には限界がございまして、十分な執行力が確保できていない。そこで、駐車違反対応業務に要する警察の執行力を十分に確保する仕組みを構築し、良好な駐車秩序の確立を図るとともに、警察事務の合理化を図るために、今回、放置された違法駐車車両があるという事実の確認と、この事実を確認した旨を記載した標章の取りつけ、これを民間に委託できることとするものでございます。そういった趣旨で今回御提案させていただいております。

松崎(哲)分科員 違反の、普通、今まで警察官がやられている場合には、よくバックミラーのところにつけたりしますよね。そういうところまでやるということ、要するに、切符を切るところをするのかしないのかということについて伺いたいと思います。

人見政府参考人 民間委託を受けた駐車監視員、この者は、放置駐車の確認、そういった事実があったという確認と標章の取りつけでございます。

松崎(哲)分科員 実際には、出頭したときに切符を切るということですよね。ですから、それは警察官がやるということになりますね。

人見政府参考人 運転者が出頭した場合には、反則金という形で反則切符を切ることになります。また、運転者が出頭しない、今回の法改正の一つの眼目でもありますが、そういう場合には使用者責任を追及するということを考えておるところでございます。

松崎(哲)分科員 その民間委託ということ、これは通ってから二年後が施行予定だと伺っておるんですが、実際には、今、東京の町で車を運転していて、パーキングメーターがありますね、そのパーキングメーターは、その部分は民間委託をしているように承っていますが、これは民間委託ですね。その場合、民間委託をした人は、今の、違反になったということについて、事実の確認、通報、取りつけということを現在はしているか、していないかというところを伺いたいんです。

人見政府参考人 現在は、委託した者はそれはしておりません。事実行為として警察に通報するということはあろうかと思いますが、そういうことは法的には予定しておりません。

松崎(哲)分科員 実は、パーキングメーターの駐車場にとめたい、こういうふうに思ったときに、そこに車がとまっている。それが赤く点滅していて、実はもう時間超過で違反になっているわけですね。その近所にあいているところがある、あるいは空き地に駐車をしている車もある、違法駐車をしている車もある。

 その道路、パーキングメーターの指定区域に時間超過している車と、そうでない一般道路に違法駐車している車と、どちらが悪質だと思われますか。

人見政府参考人 一般道路に駐車をしている場合、駐車禁止の場所ですね、その場合には、これは、もちろん、そこの場所が駐車禁止場所なのか駐停車禁止場所であるのかによって異なってまいります。駐停車禁止場所であれば、それはより悪質である、こうとらえております。

 なお、時間制限駐車区間、パーキングメーターとかパーキングチケットのある区間でございますね、そこにおいて、定められた時間を超過して車を駐車されている、こういった場合には駐車禁止違反として扱うこととしております。また、新しい制度のもとでも、これは使用者に対する放置違反金納付命令の対象とする予定でおります。

松崎(哲)分科員 どちらが程度は重いかということを質問しているんです。

人見政府参考人 駐停車禁止違反の場所であるのであれば、それは枠外にとめたものが重いと。

松崎(哲)分科員 想定どおりのお答えをいただいてありがたいんですが、実は、本来とめられるところをふさいでいる車というのは、そこをふさいでいると、そうじゃない区域外があいていれば、そこへとめたくなるわけですね、人間の心理として。そうすると、違反を誘発する行為になるわけですから、本来、そこはあけておいてほしいわけですね。そのためには、何度も見回りをして、時間が五分超過したら違反というわけにもいかないと思いますけれども、なるべく早く本来とめられるところをあけてほしい、そういう一般人としての気持ちがあるので、実は伺ったわけなんです。

 こういう事例を私、実際に見ているんです。ですから、パーキングメーターのところに時間超過をしている、そうでないところに、車が駐停車違反のところに駐車してある。そうすると、ミニパトの婦警さんがやってきて、お巡りさんがやってきて、指定外のところをチケットを切っているといいますか、そういうことをしている。区域内の方には何もしない。

 私から見ると、先ほど申し上げた考えで、とにかく、本来とめられるところをふさいでいる方がもっと悪いんだと思うんです。そちらをあけてほしいと思うんですけれども、こういう考えについてどう思われますか。

人見政府参考人 お答えいたします。

 短時間駐車区間、ここの場所については、車がとまってもいい、とまっても道路交通の安全あるいは円滑な道路交通に対する影響が比較的小さいであろうということで認めておるわけでございます。それ以外の場所ですと、それは、駐車禁止あるいは駐停車禁止になっている場所はそういう度合いが大きいと。

 しかし、確かに、とめたい方がとめられないという点では、先生おっしゃることはよくわかりますので、それは運用の問題として、なるべくそういうものはきちっとした対応をしていきたい、こう考えております。

松崎(哲)分科員 大体参考人にお尋ねするところは以上のようなところなんですが、大臣にこれから御質問をさせていただきたいと思いますので、ぜひお答えいただきたいんです。

 今、私、冒頭に振りましたように、国民生活の福利をどう考えていくかというところに、規制というのは、必要な規制と、むだなものはもちろんやめていくと。大臣、そういうような考え方で、また、規制の強化も含めて検討していく必要があるというふうにも御答弁いただいたんですが、今笑っていらっしゃいましたけれども、つまらないやりとりをさせていただいたかもわかりませんが、実際に、まさに警察というのは市民生活の本当に末端のところであるわけですので、きめの細かい行政をぜひして、きめの細かいということは、うんと取り締まれという意味じゃなくて、血の通ったというか温かいというか。

 ですから、私、さっき申し上げたのは、本当はちゃんとしたとめるところにとめたい、でも、とまっているから、しようがないから区外へとめさせられた、そうしたら違反切符を切られてしまって、これは割に合わないというふうに非常に思うわけなんですよ。ですから、そういう市民の感情もぜひ理解していただいて、行政をしていっていただきたいと思っております。

 それからもう一つは、先ほど、例えば、デパートだとか建設会社がやる工事ででも、自分でやるのならば警備業法に当たらないというんですが、でも、国民の目から見れば迷惑度は同じなんですね。ですから、そういうところにもう少し広くとっていただいて、必要な規制は何かという観点、国民の生活に迷惑にならないような観点ということで考えて、もう少し見直しをしていっていただけないものだろうかというふうな感じで考えておるんですが、御感想だけいただければ結構です。

小野国務大臣 現場的理論で、拝聴させていただきまして、大変参考にさせていただいたところでございますけれども、国民生活の中で、安全と安心というのはやはり大変大きな分野でございます。その中に占める交通部門というのは、今お話がありましたように、非常に生活に密着をしておりますし、あるいは経済の発展のためにも非常に大きな分野でございます。そしてまた、そのありようが、新都市等々がこのごろできてきますと、過疎とさらには新しい開発と、そういう分野で非常に変化の多い部分であるということにかんがみましたときに、今後とも規制すべきところ、あるいは廃棄していい部分というのは非常に流動的であるという印象を改めて持たせていただいたところでございます。

 その辺を心にとめながら、今後とも、先生のきょうの御指導をしかと受けとめまして、国民生活に本当に受け入れられるような、そういう法律づくりに尽くしてまいりたいと思っております。

松崎(哲)分科員 大臣、また政府の皆さん方、ありがとうございました。これで私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

鈴木主査 これにて松崎哲久君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして内閣府所管中警察庁についての質疑は終了いたしました。

 次回は、明十八日午前九時三十分から本分科会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二十九分散会


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