衆議院

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第1号 平成17年4月25日(月曜日)

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本分科会は平成十七年四月十三日(水曜日)委員会において、設置することに決した。

四月二十二日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      井上 喜一君    大野 松茂君

      鈴木 恒夫君    中山 泰秀君

      藤井 孝男君    岡本 充功君

      長浜 博行君    細川 律夫君

      松崎 哲久君    東  順治君

四月二十二日

 鈴木恒夫君が委員長の指名で、主査に選任された。



平成十七年四月二十五日(月曜日)

    午前十時開議

 出席分科員

   主査 鈴木 恒夫君

      井上 喜一君    大野 松茂君

      中山 泰秀君    藤井 孝男君

      岸本  健君    長浜 博行君

      細川 律夫君    松野 信夫君

      東  順治君

   兼務 前田 雄吉君 兼務 三日月大造君

    …………………………………

   外務大臣         町村 信孝君

   環境大臣         小池百合子君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     細田 博之君

   国務大臣

   (金融担当)       伊藤 達也君

   内閣府副大臣       七条  明君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   環境副大臣        高野 博師君

   環境大臣政務官      能勢 和子君

   衆議院事務総長      駒崎 義弘君

   裁判官弾劾裁判所事務局長 阿部 隆洋君

   裁判官訴追委員会事務局長 高田 健一君

   国立国会図書館長     黒澤 隆雄君

   会計検査院長       森下 伸昭君

   会計検査院事務総局事務総長官房審議官       小川  広君

   会計検査院事務総局事務総長官房審議官       大濱 正俊君

   会計検査院事務総局第一局長            諸澤 治郎君

   会計検査院事務総局第五局長            船渡 享向君

   最高裁判所事務総長    竹崎 博允君

   政府参考人

   (宮内庁次長)      風岡 典之君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    佐藤 隆文君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    寺田 逸郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 西宮 伸一君

   政府参考人

   (林野庁森林整備部長)  梶谷 辰哉君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁資源・燃料部長)        近藤 賢二君

   政府参考人

   (環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長)   南川 秀樹君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局長)            田村 義雄君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局環境保健部長)       滝澤秀次郎君

   政府参考人

   (環境省環境管理局水環境部長)          甲村 謙友君

   政府参考人

   (沖縄振興開発金融公庫理事長)          八木橋惇夫君

   決算行政監視委員会専門員 奥村 卓石君

    ―――――――――――――

分科員の異動

四月二十五日

 辞任         補欠選任

  岡本 充功君     岸本  健君

  松崎 哲久君     田嶋  要君

  東  順治君     田端 正広君

同日

 辞任         補欠選任

  岸本  健君     松野 信夫君

  田嶋  要君     松崎 哲久君

  田端 正広君     東  順治君

同日

 辞任         補欠選任

  松野 信夫君     岡本 充功君

同日

 第二分科員三日月大造君及び第三分科員前田雄吉君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十五年度一般会計歳入歳出決算

 平成十五年度特別会計歳入歳出決算

 平成十五年度国税収納金整理資金受払計算書

 平成十五年度政府関係機関決算書

 平成十五年度国有財産増減及び現在額総計算書

 平成十五年度国有財産無償貸付状況総計算書

 〔皇室費、国会、裁判所、会計検査院、内閣、内閣府(本府)所管、沖縄振興開発金融公庫、内閣府(金融庁)、外務省及び環境省所管〕


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     ――――◇―――――

鈴木主査 これより決算行政監視委員会第一分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりました鈴木恒夫でございます。よろしくお願いいたします。

 本分科会は、皇室費、国会、裁判所、会計検査院、内閣、内閣府(本府、警察庁、金融庁)、外務省、環境省所管及び沖縄振興開発金融公庫並びに他の分科会所管以外の国の会計についての審査を行うことになっております。

 なお、各省庁の審査に当たっては、その冒頭に、決算概要説明、会計検査院の検査概要説明及び会計検査院の指摘に基づき講じた措置についての説明を聴取することといたします。

 平成十五年度決算外二件中、本日は、皇室費、国会所管、裁判所所管、会計検査院所管、内閣所管、内閣府所管中内閣本府、沖縄振興開発金融公庫、外務省所管、内閣府所管中金融庁、環境省所管について審査を行います。

 これより皇室費について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。風岡宮内庁次長。

風岡政府参考人 平成十五年度における皇室費歳出決算について、その概要を御説明申し上げます。

 皇室費の平成十五年度歳出予算現額は六十九億八千三百六十一万円余でありまして、支出済み歳出額は六十七億二千二百八十九万円余であります。

 この支出済み歳出額を歳出予算現額と比べますと、二億六千七十一万円余の差額がありますが、これは、国際親善に必要な経費等を要することが少なかったため、不用となった額であります。

 以上をもちまして平成十五年度皇室費歳出決算の説明を終わります。

 よろしく御審議くださいますようお願いいたします。

鈴木主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院諸澤第一局長。

諸澤会計検査院当局者 平成十五年度皇室費の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。

 以上でございます。

鈴木主査 以上をもちまして皇室費についての説明は終わりました。

 これより質疑に入るのでありますが、その申し出がありませんので、皇室費については終了いたしました。

    ―――――――――――――

鈴木主査 これより国会所管について審査を行います。

 まず、国会主管歳入決算及び衆議院関係決算の概要説明を聴取いたします。駒崎衆議院事務総長。

駒崎事務総長 平成十五年度国会主管一般会計歳入決算及び衆議院関係歳出決算の概要を御説明申し上げます。

 国会主管の歳入につきましては、予算額十八億六千八百九十二万円に対しまして、収納済み歳入額は十九億四千二百四十五万円余であり、差し引き七千三百五十三万円余の増加となっております。

 次に、衆議院関係の歳出につきましては、当初の歳出予算額は六百八十三億七千六百二十五万円余でありまして、これに前年度からの繰越額六億四千三百四十四万円余を加え、既定経費の不用等による予算補正修正減少額十三億三千百六十六万円を差し引きますと、歳出予算現額は六百七十六億八千八百四万円余となります。

 この歳出予算現額に対し、支出済み歳出額は六百五十二億五千九百六十八万円余でありまして、その内訳は、国会の運営に要した経費六百二十億七千三百六十二万円余、衆議院の施設整備に要した経費三十一億八千六百六万円余であります。

 歳出予算現額と支出済み歳出額との差額は不用額でありまして、二十四億二千八百三十五万円余となっております。

 以上が、平成十五年度国会主管一般会計歳入決算及び衆議院関係の歳出決算の概要でございます。

 よろしく御審議のほどをお願いいたします。

鈴木主査 次に、国立国会図書館関係決算の概要説明を聴取いたします。黒澤国立国会図書館長。

黒澤国立国会図書館長 平成十五年度国立国会図書館関係歳出決算の概要を御説明申し上げます。

 当初の歳出予算額は二百三十八億七千五百八十六万円余でありまして、これに前年度繰越額九億二千百七十二万円余を加え、既定経費の節約等による予算補正修正減少額九億三千五百二十万円余を差し引きますと、歳出予算現額は二百三十八億六千二百三十八万円余となります。

 この歳出予算現額に対し、支出済み歳出額は二百三十億六千百七万円余でありまして、その内訳は、国立国会図書館の管理運営に要した経費二百一億三千九百三十八万円余、科学技術関係資料の収集整備に要した経費九億七百七十五万円余、国立国会図書館の施設整備に要した経費二十億一千三百九十三万円余であります。

 歳出予算現額と支出済み歳出額との差額は八億百三十一万円余でありまして、その内訳は、翌年度繰越額七億一千四百二十九万円、不用額八千七百二万円余となっております。

 以上が、平成十五年度国立国会図書館関係歳出決算の概要でございます。

 よろしく御審議のほどをお願いいたします。

鈴木主査 次に、裁判官弾劾裁判所関係決算の概要説明を聴取いたします。阿部裁判官弾劾裁判所事務局長。

阿部裁判官弾劾裁判所参事 平成十五年度裁判官弾劾裁判所関係歳出決算の概要を御説明申し上げます。

 当初の歳出予算額は一億一千九百七十六万円余でありまして、これから既定経費の不用等による予算補正修正減少額八百十六万円余を差し引きますと、歳出予算現額は一億一千百六十万円となります。

 この歳出予算現額に対し、支出済み歳出額は一億九百一万円余でありまして、このうち主なものは職員の人件費であります。

 歳出予算現額と支出済み歳出額との差額は不用額でありまして、二百五十八万円余となっております。

 以上が、平成十五年度裁判官弾劾裁判所関係の歳出決算の概要でございます。

 よろしく御審議のほどお願いいたします。

鈴木主査 次に、裁判官訴追委員会関係決算の概要説明を聴取いたします。高田裁判官訴追委員会事務局長。

高田裁判官訴追委員会参事 平成十五年度裁判官訴追委員会関係歳出決算の概要を御説明申し上げます。

 当初の歳出予算額は一億三千四百六十五万円余でありまして、これから既定経費の不用等による予算補正修正減少額六百三十二万円余を差し引きますと、歳出予算現額は一億二千八百三十三万円余となります。

 この歳出予算現額に対し、支出済み歳出額は一億二千六百四十万円余でありまして、このうち主なものは職員の人件費であります。

 歳出予算現額と支出済み歳出額との差額は不用額でありまして、百九十二万円余となっております。

 以上が、平成十五年度裁判官訴追委員会関係の歳出決算の概要でございます。

 よろしく御審議のほどをお願いいたします。

鈴木主査 この際、お諮りいたします。

 参議院関係決算の概要説明につきましては、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院諸澤第一局長。

諸澤会計検査院当局者 平成十五年度国会の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項一件であります。

 これは、物品・役務調達契約における契約事務に関するもので、国立国会図書館では、契約方式の決定に当たり、競争に付すべきものを随意契約としていたり、特定調達契約につき、官報による公告、公示をしていなかったりしておりました。

 このように、契約方式の決定が適切でなかったり、特定調達契約における手続が遵守されていなかったりしていて、契約事務における公正性、競争性及び透明性が確保されていない事態となっており、改善の要があると認められましたので、当局の見解をただしましたところ、国立国会図書館では、十六年九月に通知を発し、次回契約から一般競争に付することとするとともに、特定調達契約に関しては、調達手続について徹底を図る処置を講じたものであります。

 以上、簡単でございますが、説明を終わります。

鈴木主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。黒澤国立国会図書館長。

黒澤国立国会図書館長 ただいま会計検査院から御指摘のありました事項に対し、国立国会図書館がとった措置について御説明いたします。

 会計検査院の検査においては、当館が行った契約のうち、随意契約によったものの一部に一般競争契約によるべきものがあった点と、特定調達契約に当たって必要な手続を遵守すべきであった点について御指摘を受けました。

 当館では、早速改善措置を講じ、契約方式につきましては、競争に付すべきものは順次一般競争に付し、手続遵守の点につきましては、内部でその徹底を図ったところであります。

 今後とも契約事務の遂行に当たっては、公正性、競争性、透明性の確保に十分留意してまいる所存であります。

鈴木主査 以上をもちまして国会所管についての説明は終わりました。

 これより質疑に入るのでありますが、その申し出がありませんので、国会所管については終了いたしました。

    ―――――――――――――

鈴木主査 これより裁判所所管について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。竹崎最高裁判所事務総長。

竹崎最高裁判所長官代理者 平成十五年度裁判所所管一般会計歳入歳出決算の概要を御説明申し上げます。

 裁判所所管の歳出につきましては、当初予算額は三千百七十八億三千百十六万円余でありますが、これに財務省所管からの移しかえ額九千六百六十万円余、平成十四年度からの繰越額七十三億三千八百四十三万円余、予算補正追加額五百四十八万円余、予算補正修正減少額六十一億五千八百二十万円余、予備費使用額五億九千六百六万円余、差し引き十八億七千八百三十七万円余が増加となり、歳出予算現額は三千百九十七億九百五十三万円余となっております。

 これに対しまして、支出済み歳出額は三千百四十九億四千四百四十五万円余であり、歳出予算現額との差額は四十七億六千五百七万円余であります。

 この差額のうち、翌年度へ繰り越した額は二十八億三千二百三十六万円余、不用額は十九億三千二百七十一万円余であります。

 不用額となった経費は、人件費十七億九千百三十八万円余とその他の経費一億四千百三十三万円余であります。

 裁判所主管の歳入につきましては、歳入予算額は百一億六千百五十五万円であります。

 これに対しまして、収納済み歳入額は百五十七億三千十五万円余であり、歳入予算額に対し五十五億六千八百六十万円余の増加となっております。

 この増加は、相続財産で相続人不存在のため国庫帰属となった収入金の増加等によるものであります。

 以上、平成十五年度裁判所所管一般会計歳入歳出決算について御説明申し上げました。

 よろしく御審議のほどお願いいたします。

鈴木主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院諸澤第一局長。

諸澤会計検査院当局者 平成十五年度裁判所の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。

鈴木主査 以上をもちまして裁判所所管についての説明は終わりました。

 これより質疑に入るのでありますが、その申し出がありませんので、裁判所所管については終了いたしました。

    ―――――――――――――

鈴木主査 これより会計検査院所管について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。森下会計検査院長。

森下会計検査院長 平成十五年度会計検査院主管一般会計歳入決算及び会計検査院所管一般会計歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 会計検査院主管の歳入につきましては、予算額二千六百八万円に対しまして、収納済み歳入額は三千四十八万余円であり、差し引き四百四十万余円の増加となっております。

 収納済み歳入額の主なものは、国有財産貸付収入二千五百六万余円であります。

 次に、会計検査院所管の歳出につきましては、当初予算額百九十六億二千五百三十四万余円から、補正予算額五億三千九百十五万余円を差し引いた予算現額百九十億八千六百十九万余円に対しまして、支出済み歳出額は百八十八億五千五百十三万余円、翌年度繰越額四千五百三十六万余円でありますので、その差額一億八千五百六十九万余円を不用額といたしました。

 支出済み歳出額の主なものは、人件費として百三十三億三千三百八十四万余円、中央合同庁舎第七号館の整備に伴う本院の移転等の経費として二十五億一千六百十四万余円となっております。

 以上、簡単でございますが、平成十五年度における会計検査院関係の決算の説明を終わります。

 よろしく御審議のほどをお願いいたします。

鈴木主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院諸澤第一局長。

諸澤会計検査院当局者 平成十五年度会計検査院の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。

鈴木主査 以上をもちまして会計検査院所管についての説明は終わりました。

 これより質疑に入るのでありますが、その申し出がありませんので、会計検査院所管については終了いたしました。

    ―――――――――――――

鈴木主査 これより内閣所管について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。細田内閣官房長官。

細田国務大臣 平成十五年度における内閣所管の一般会計歳入歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 内閣主管の歳入につきまして、歳入予算額は二千三百八十四万円余でありまして、これを収納済み歳入額六千六百四十四万円余に比較いたしますと、四千二百五十九万円余の増加となっております。

 次に、内閣所管の歳出につきまして、歳出予算現額は九百三十八億九千四百五十五万円余でありまして、これを支出済み歳出額八百九十六億三百五十九万円余に比較いたしますと、四十二億九千九十五万円余の差額を生じます。

 この差額のうち翌年度繰越額は十億四千二百九十一万円余であり、不用額は三十二億四千八百三万円余であります。

 以上をもちまして決算の概要説明を終わります。

 何とぞ、よろしく御審議のほどお願いいたします。

鈴木主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院諸澤第一局長。

諸澤会計検査院当局者 平成十五年度内閣の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。

鈴木主査 以上をもちまして内閣所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

鈴木主査 これより内閣府所管中内閣本府及び沖縄振興開発金融公庫について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。細田内閣官房長官。

細田国務大臣 平成十五年度における内閣府所管の一般会計歳入歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 内閣府主管の歳入につきまして、歳入予算額は四百六十五億一千三百六十二万円余でありまして、これを収納済み歳入額六百四十三億七千百八万円余に比較いたしますと、百七十八億五千七百四十五万円余の増加となっております。

 次に、内閣府所管の歳出につきまして、歳出予算現額は五兆六千三百十四億六千六百十八万円余でありまして、支出済み歳出額は五兆四千八百七十五億三千五百八十七万円余に比較いたしますと、千四百三十九億三千三十一万円余の差額を生じます。

 この差額のうち翌年度繰越額は九百五十六億六百七十二万円余であり、不用額は四百八十三億二千三百五十八万円余であります。

 内閣府所管の歳出決算のうち、警察庁、防衛庁、金融庁については、各担当大臣から御説明申し上げることになっておりますので、これを除く部局、すなわち、内閣府本府、宮内庁及び公正取引委員会関係について申し上げますと、歳出予算現額は三千四百七十一億四千六十一万円余でありまして、これを支出済み歳出額二千八百三十五億二千二百九万円余に比較いたしますと、六百三十六億千八百五十二万円余の差額を生じます。

 この差額のうち翌年度繰越額は四百五億八千四百六十九万円余であり、不用額は二百三十億三千三百八十二万円余であります。

 以上をもちまして決算の概要説明を終わります。

 何とぞ、よろしく御審議のほどお願いいたします。

鈴木主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院諸澤第一局長。

諸澤会計検査院当局者 平成十五年度内閣府の決算のうち、歳入並びに内閣本府及び宮内庁関係の歳出につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。

鈴木主査 次に、会計検査院船渡第五局長。

船渡会計検査院当局者 平成十五年度沖縄振興開発金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。

鈴木主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木主査 以上をもちまして内閣府所管中内閣本府及び沖縄振興開発金融公庫についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

鈴木主査 これより外務省所管について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。町村外務大臣。

町村国務大臣 平成十五年度外務省所管一般会計歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 歳出予算現額は九千九百二十億一千三百十七万円余でありまして、支出済み歳出額は八千三百九十二億五千三百四十二万円余、翌年度繰越額は千三百九十四億五千七百五十四万円余、不用額は百三十三億二百二十万円余であります。

 歳出予算現額の内訳は、歳出予算額八千八百五十二億三千五百九十五万円余、前年度繰越額一千五十一億七千三百二十万円余、予備費使用額十六億四百二万円余であります。

 以上、平成十五年度の外務省所管一般会計の決算につきまして、その概要を御説明申し上げました。

 何とぞ、御審議のほどよろしくお願い申し上げます。

鈴木主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院諸澤第一局長。

諸澤会計検査院当局者 平成十五年度外務省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項二件、意見を表示しまたは処置を要求した事項一件及び本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項一件であります。

 まず、不当事項について御説明いたします。

 検査報告番号五号及び六号の二件は、在外公館における会計経理が適正を欠くと認められるものであります。

 同五号は、在ラオス日本国大使館に関するもので、現地職員が、業者への支払いのため大使館から預かった現金等を領得したり、大使館において、現金預金残高が帳簿残高より多くなっていて開差が生じていたり、これらの事態に係る出納事務処理等が適正を欠いていたりしていたものであります。

 同六号は、在エドモントン日本国総領事館に関するもので、会計担当者が、手元に保管していた現金を領得したり、公金口座からみずからを受取人とする小切手を振り出し、自己名義の銀行口座に振り込んで領得したり、また、総領事館において、支払いは行われているが現金出納簿への記帳が行われていないなど、実際の現金預金残高が帳簿上の残高と一致していなかったりなどしていたものであります。

 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について御説明いたします。

 これは、在外公館における出納事務の執行に関するもので、在外公館における出納事務の執行に当たり、歳入徴収官、資金前渡官吏及び検査員がみずから行うべき事務が当該者により行われていなかったり、資金前渡官吏の指揮命令下にない館員等が前渡資金の支払いを行っているなど会計事務を補助する補助職員の範囲及びその事務の範囲が明確でないまま公金が取り扱われていたり、実際の現金の出納と現金出納簿への登記とが相違しているなど会計法令等に従った会計事務の処理が行われていなかったりしている事態が見受けられましたので、外務省に対して、是正改善の処置を要求いたしたものであります。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。

 これは、在外公館に配備された爆発物探知装置の活用に関するもので、装置を稼働させるソフトウエアがインストールされていなかったり、警備担当者が装置の利用方法を十分習得していなかったり、在外公館において配備された装置の利用の重要性や必要性に対する認識が十分でなかったりしたことなどのため、爆発物探知装置が活用されていない事態が見受けられ、配備された爆発物探知装置を十分活用する必要があると認められました。これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。

 以上をもって概要の説明を終わります。

鈴木主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。町村外務大臣。

町村国務大臣 会計検査院の検査の結果、在外公館における会計経理及び出納事務の執行について指摘を受けたことは、まことに遺憾であります。

 在外公館における会計経理につきましては、関係職員の免職または解雇という厳正な措置を既にとりました。また、在外公館に対して改めて会計手続の厳守及び館内におけるチェックを徹底するよう指導するとともに、在外公館で会計業務に従事することを予定しているまたは現に従事している職員に対する会計研修・指導及び支援体制の強化等の措置を講じてきております。

 在外公館における出納事務の執行については、在外公館の特殊性と近年の外務省改革による会計担当者の負担の増大を勘案しつつ、早急に措置を講じ得る事項から着実に措置を講じてきております。

 今後とも、これらの措置を着実に実施し、予算の適正な執行や不正の再発防止に努めてまいる所存であります。

鈴木主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木主査 以上をもちまして外務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

鈴木主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岸本健君。

岸本分科員 おはようございます。民主党の岸本健でございます。

 大臣、連日お疲れのようで、御苦労さまでございます。日曜日も、朝、テレビをつけましたら大臣が映っておりまして、もう本当に大変だな、政治家は体力が必要、これが本当に試されているんだろうな、そんなことを思いながら見ておりました。

 きょうは、決算という観点から幾つか質問をさせていただきたいと思います。

 日本のODAも昨年で五十年を迎えた。昨年のODA白書では、「日本のODAは、途上国から高く評価され、感謝されるとともに、平和で安定的な国際秩序の構築、日本の国際社会における立場、発言力の強化を通じて、ひいては日本の安全と繁栄の確保に資するものである。」このように総括をされております。

 そこでお尋ねをしたいのですが、先日来テレビ等で、反日デモや、日本大使館それから日本の料理店を襲撃するという日本に対するデモ、私はあれはテロじゃないかと思ったりもするんですが、今日まで政府開発援助が有償、無償を含めて一体幾ら支払われてきたのかということを教えていただきたい。

 そして、外務省が自画自賛しているような、感謝され、日本の安全と繁栄の確保に資するものであったとお考えなのか。昨年、参議院のODA訪中調査団は、決算重視の立場から、対中ODAの全面的な見直しを答申されました。政府もこの見直しについては決定をしておる。日本の国益にかない、かつ、感謝される施策のはずです。対中ODAの総決算という観点から、大臣の率直な御意見をお伺いいたします。

町村国務大臣 まず、どのくらい対中援助に出されてきたかということでございましたが、対中ODAの大部分は円借款という形で供与をされております。二〇〇四年度末までの供与限度額の累計は約三兆一千三百三十一億円でございます。このうち、二〇〇四年度末までに実際に貸し付けが実行された額は約二兆二千二百三十四億円ということでございまして、この貸し付けに対しまして、二〇〇四年度末までに元利計で一兆四百八十六億円が中国から償還をされている、極めてきちんきちんと償還をされているという実情にございます。

 そのほか、無償資金協力につきましては、二〇〇四年度末までの供与限度額は約千四百五十七億円、また、技術協力につきましては、二〇〇四年度分が今集計中ではございますが、二〇〇三年度末までにさせていただきますが、JICA経費支出の実績額は約千四百四十六億円というぐあいになっております。

 これらがどのように活用されてきたのかということでございますけれども、私どもとしては、対中国経済協力、昨今でございますと、特に環境の問題でございますとか、あるいは相互理解の増進ということで、文化交流とか大学間の交流といったようなこと、あるいはまだまだ貧困な地域もたくさんございますので、そういった面での人づくりへの支援でございますとか、さまざまな分野で繰り広げられてきております。

 いろいろな御意見がございますが、私は、この対中ODAがかなり有効に活用され、そのことが今日の中国の経済発展の少なからぬ下支えといいましょうか、基盤づくりといいましょうか、それに役立って、これが今日の中国の経済的な大きな発展をもたらしている一つの要因であるということは、確信を持って言えるわけでございます。

岸本分科員 ありがとうございます。

 本当にかなりの金額を出している。今の中国の発展というのは非常に目まぐるしく、すばらしいものがあるなとは思いますけれども、果たして、このような仕打ちといいましょうか、本当に何か情けなくなる思いがあります。

 テレビでこの間から報道されておりますが、私は子供と、子供といいましてもまだ四つの子供でございますけれども、中国の人が大勢押し寄せて、そして建物に向かって、ジュースの空を投げているとか卵を投げているとか、ああいう風景を見ますと、子供ですから、なぜあんなことをしているの、けんかしているのと素朴に思います。まだ四つですから、この子が物心ついたころには忘れているだろうけれども、果たして、小さい子供や、小学生、中学生ぐらいでしょうか、ああいう風景を見て本当に何を感じているのかな、何か寂しい気持ちになるのですね。

 だから、ODAというのは本当に、後で質問もさせてもらいますけれども、中国の人たちはわかってくれているのかな、そういうふうに思います。意味があるのかないのか、非常に考えさせられることであると思います。

 次に、先ほど御説明いただきました円借款の貸し付け、大体、累計約三兆三千億円ではないか、ちょっと調べたところ、そのように伺っております。順調に経済発展を遂げる中国ですけれども、先ほどもお答えいただきましたけれども、順調に返されているようです。ODAの資金が中国のどのような分野に使われたのか、これをもっと詳細に検証していく必要があるのではないか。

 何よりも、中国の人たちが日本からの援助金、その存在を認知しているのかどうか。

 それから、これが甚だ、報道が国家統制されている国ですので、日本の援助で軍用高速道路ができたとか立派な空港ができたとか、人民に教えるはずはないと私は思うのです。反日や抗日記念館の建設に使われていたかもわからない。中国に対してのODAの使途を検証することによって、私は、中国国民が、人民が日本からの援助、この存在に感謝されることがあるのではないか、両国の友好にまたつながるのではないか、そんなことも思います。

 個別具体的な使途の検証と情報開示を行う必要性について、大臣の御所見をお伺いいたします。

町村国務大臣 委員の御指摘、まことにごもっともである、私もそう考えます。このODAを初めとする具体的なプロジェクトを検証して、その情報を日本の国民そして相手国の国民にできるだけ広く知ってもらう、理解を深めてもらうということは大変に重要である、こう考えているところでございます。

 政府、それから実施機関であります国際協力機構、JICA、それから国際協力銀行、JBICは、それぞれODAの評価を充実させますとともに、その評価結果をホームページなどを通じて公開をし、ODAの透明性を確保するということに心がけております。

 また、相手国の国民の認識を深める、高めるという広報もやってきておりまして、例えば、現地メディアを対象とした日本の経済協力プロジェクトを視察するツアーを実施するでありますとか、あるいは現地の新聞の紙面の買い上げでありますとか、あるいは援助物資の日章旗のステッカーやODAのシンボルマークの張りつけを行う、あるいは被援助国政府のODA関係機関に対して、日本のODA案件について国内広報を強化するようにということを要請してきているわけでございます。

 対中国ODAについても同じようなことをやっております。例えば、二〇〇四年一月から十二月までに確認された新聞、雑誌、テレビ、インターネット上の報道によりますODA関連ニュースは、三百二十九件ございました。

 また、先週日曜日の日中外相会談におきましても、李肇星外交部長から、例えば、一昨年ですか、SARSの騒動がございましたが、あのとき日本の援助が世界の中で最も大規模であり、ありがたかったという感謝の発言も実はあったところでございます。

 ただ、ではそれで本当に中国国民がよく理解をしてくれているだろうかどうだろうか、問題はそこの部分であります。率直に言いまして、ああした大騒ぎを見ると、やはりまだまだなんだろうなと。

 よく例に出されます北京の国際空港がございます。あれは日本の援助、資金が大宗を占めているわけでございますけれども、これが日本の援助によって建設されたというのは、大変小さなプレートが余り目立たないところに一カ所掲示されているだけというような実態でございます。これについては、我が方大使館も大分いろいろ意見を言ったりなんかして多少の改善は見ているようでございますが、そこの辺は先方政府の考え方が、どれだけ本当に日本というものに感謝するという気持ちを、外相会談とかそういう場だけではなくて、本当に国民に向かってきちんとそういう意識で広報をしてくれているかどうかというところが大変問題であろう、こう思います。

 そういう意味で、さらに中国を初めすべての国々に対して、国民にわかるようにきちんとした広報をそれぞれの政府あるいは関係機関からやってくださいねということは、今後ともやはり求め続ける必要があるんだろう。そうでなければ、国民の貴重なお金を預かってそれを使っているわけでございますから、それは納税者たる日本国民に対して申しわけないことだと私は考えておりますので、一層積極的にやっていきたい、こう思っております。

岸本分科員 ぜひお願いをしたい。私もいろいろな有権者の方、地元の方とお話ししていると、ODAの話、そんなになりませんけれども、なったときは、また外国へお金を持っていくのかと、単純な発想だと思うんですけれども言われます。いや、困ったところにはねといって、そういう話になるんですが、やはりなかなか理解されていない。

 やはり今回の暴動なんか、一般の人が見ると、ううんと頭をかしげる。本当に早く理解をしていただきたい。外国の方に対して、特に中国の方に対して、日本はこんなに、私は感謝されて当然だというふうにも思います。こんな仕打ちはない。本当に今回質問をしたいと思ったのは、あの暴動を見て、直接大臣に話を聞いてみたい、そんな思いからしたわけであります。

 さて、私、いつも和歌山へ帰るときに、行き来をするときに、本を何か一冊買って読むようにしているんですけれども、質問するということもあって、大臣の本を買わせていただきまして、一気に読みました。別に何もなかったんですけれども、せっかく質問をするんだから、本が最近出たばかりですか、積んでありましたから、これは買って読んでみようと思いまして買いました。

 読んでおりますと、私はもともと学校の教師でしたので、大臣は文部大臣もされておりますから、そっちの話の方が聞いてみたいな、「ゆとり教育」と「ゆるみ教育」ですか、そんなのを読んだりしていると、ああ、こっちの話の方が聞きたいなと実際思ったのでございますが、終わったらまたサインでも書いていただけたらと思いますが、この本の内容の一部を抜粋させていただいて、ちょっと質問をさせていただきたいと思います。

 「最近の中国は非常に資本主義的です。経済の伸びも素晴らしい。高度成長を続けている。途上国に援助できるくらいの経済力をつけている。たいしたものです。借金漬けの日本が、これ以上ODAを差し上げるなどというのは、それこそ中国に対して失礼な話ではないかと思います。」と、こういうふうに述べておられます。私も、全く同感でございます。宇宙計画を立ち上げるほどの経済大国になっておる、片や、新生児が五百万円の借金を背負って生まれてくる日本、これが資金を援助するというのは全く失礼な話ではないかな、そんなことを思います。

 そこで、お伺いをいたします。

 去る三月十七日、大臣は、自民党の外交関係合同会議で、北京五輪が開かれる二〇〇八年をめどに新規供与を終了する方針を表明したと報道されました。失礼な援助はもっと早く終了した方がいいんじゃないかな、先延ばしよりも前倒しの方が中国に対して礼を失しないのではないかなと思います。大臣の御所見をお伺いいたします。

町村国務大臣 対中ODAの問題につきましては、例えば、参議院の決算委員会の皆様方が、昨年中国の方に行かれまして、そしてレポートをまとめられました。また、非常に幅広いいろいろな方々から、対中ODAのあり方についていろいろ御意見をいただいてまいりました。

 そういったことを踏まえながら、政府の中でも議論をし、また、年明けてから中国の政府ともいろいろ議論を積み重ねてまいりました。その基本は何といっても、今委員御指摘があったように、中国の経済発展が急速に進んでいる、そういう中で、円借款を中心とする大規模な資金協力の必要性が以前よりは低下をしてきているという実態があると思います。それからもう一つは、既に中国自身が第三国に対して相当規模の援助を行っているという実態もある。

 そういう状況なものですから、そろそろ、ソフトランディングといいましょうか、双方が祝福する形で対中ODAというものを円満に終了させることはできないだろうかということで、いろいろ協議をし、先般十七日の日にも李肇星外交部長と話をいたしまして、北京オリンピック、二〇〇八年前までにこの円借款の新規供与を終了するという方向で、大きな方向づけについては意見の一致を見まして、その具体の中身についてさらに協議をしていこうということになったわけでございます。

 いずれにしても、先ほど申し上げましたように、大変有意義な対中ODAだった、我々はそう考えておりますから、お互いに納得をし、お互いにこれでよかったねと言えるような終わり方をしたいものだ、そういうこともまた国と国とのおつき合いでございますから必要なんだろうな、こう思っておりまして、これまで積み重ねてきた対中ODAの成果が一挙に損なわれてしまうということになってしまってはこれは元も子もございませんので、そうならないような配慮をしながら、二〇〇八年前までにはこれを終了させたい、かように考えているところでございます。

岸本分科員 ぜひよろしくお願いいたします。

 次に、チャイナ・スクールについてお伺いをいたします。

 一連の反日暴動の中、日本の駐中日外交官の顔が何か全く見えない。私が知らないだけなのかわかりませんけれども。

 チャイナ・スクールという言葉は、現代用語の基礎知識によりますと、外交官上級試験に合格して外務省に入った人々は英語、フランス語、ドイツ語、ロシア語、中国語、スペイン語などを専門とする語学別に分けられ、二年もしくは三年ほどの研修を海外で受ける。このうち、中国語を専門語とする人々をチャイナ・スクールと呼ぶ。チャイナ・スクールと呼ばれる人々の特徴は従軍慰安婦、靖国神社参拝、歴史教科書、李登輝訪日といった日中間で摩擦を引き起こしそうな問題が発生しそうになったり、発生した場合には中国の立場をまず考慮することにある。このように書かれておるんです。

 中国にこびることが駐中日外交官の仕事であるならば、外務省の対応が見えないことに合点がいきますし、どちらの国益を代表して駐在しているのかと怒りさえ覚えます。

 新華社通信の流した町村外相の謝罪というでたらめな報道に対して、駐中日大使は抗議をしたのか、歴代の駐中日高官たちのその後の天下り先を見るにつけ、ODAとのかかわりの深さを指摘するメディアもあります。外務省内部に深く根づいてしまったチャイナ・スクールの弊害を指摘する声は一層高まっております。我々は選ばれし優秀な特権階級であるという傲慢な意識と中国特権階級との癒着が駐中日外交官を国益から遠ざけているのではないかな、そんなことも感じます。

 私は、町村大臣の強い指導力、今、先ほど来の発言に大きな期待をしております。と同時に、この中国との外交を貫かれ、一部の官僚の偏った外交が展開されないように大臣にお願いをして、その強い決意をお聞かせいただきたいと思います。

町村国務大臣 しばしばマスコミで、今委員御指摘のあったようなチャイナ・スクールというお話があります。アメリカン・スクールという言葉があるのかどうかよくわかりませんが、中国とかあるいはロシア語でしょうか、余り使用される部分が少ない、世界共通語と必ずしも言えない言葉になるとどうしてもやる人が少ないということで、何となくスクール的なものが、現実にあるのかないのか私はわかりませんが、現実に、中国語を実際に研修で受けた人たちがどうしても中国関係の行政につくということが多いのは事実でございます。やはり相手の国とのコミュニケーションがよりスムーズにいくというのは、外交官としては一つの大きな要素と言えるんだろうと思います。

 ただ、そのことと、今委員が御指摘になったような相手の政府、相手のことばかり考えて日本の主張をしないとか、あるいは日本の国益を忘れてしまうとか、もしそういうことであるならば、それは何も中国語のみならず、ロシア語であれ英語であれフランス語であれ何語であれ、それは全く本末転倒である、私もそのように考えます。

 私は、チャイナ・スクールと言われている人たちが全く日本の国益を考えないでひたすら中国に迎合したことばかりを言っているとは、私はそうは思いません。そうは思いませんが、中には、相手の国の状況がほかの人たちよりもより詳しくわかるがゆえに、ついつい、例えばそれを説明するとあいつはどこそこ寄りだと言われてしまう、そういう傾向もあるのかもしれません。

 いずれにしても、私は、対中国政策、非常に歴史もありますし、現実に経済の分野、文化の分野、幅広い中国とのかかわり合い、おつき合いがあるわけでありますから、これは中国課だけが、あるいはアジア大洋州局だけが対中国政策を決めているかというと、そういうことはございません。

 特に私は、自分が大臣になってから、関係する、例えば経済協力局、経済局、総合政策局、文化広報部とか、あるいは一応インテリジェンスを担当しております国際情報官、こういった関係するいろいろな人たちをできるだけ大臣室に集めて、例えば対中政策のあり方ということについては、中国課と大臣との間だけの議論ではなくて、幅広い人たちが集まって、その中で適切な政策ができるようにということを心がけております。それは、対中政策のみならず、対ロ政策も対米政策も同様でございます。

 どうしても担当課だけと今まで政策を決める際の政策決定プロセスが強かったような気がいたしますが、私は、省内の総力を挙げて政策を決めていく、そういう体制をとり、そういう議論の中から適切な政策を決めていくことが大切だ、こう考えておりますから、決して中国課の一部の人だけが対中政策を決めているわけではないということについて御理解を賜れれば、こう思っております。

 いずれにしても、いかなる国との外交も、日本の国益というものを第一に置いて政策を展開していく、外交を展開していくという基本姿勢がその根っこになければならないのは当然のことでありますし、今後とも、またそういうことで心がけて努力をしてまいりたいと思っております。

岸本分科員 ぜひ大臣の強いリーダーシップをとっていただいて、外交を進めていただきたいと思います。

 けさの新聞ですかね、読売だったと思います。「中国教科書、改善要求へ」ということで、大臣が「全く偏った見方で、一方的に中国はすべて正しかったという歴史観でしかない。」これは質問ではないです。「歴史の解釈が一つしかないなんて、こんなばかなことはない」と批判されたと出ておりました。全くそのとおりでございます。このように、もっと大臣には強く本当に国民の代表として思いをぶつけていただきたいなと。

 本当に、これは朝から見て、私も教科書の検定というのをやったことがございます。六社か七社の教科書を読んでみて、いろいろな何人かで構成されたメンバーで、秘密に、この地域の学校はどの教科書を使うかということで、社会の教科書を検定したことがございますけれども。本当に、一つしかないというのは、私は不幸なことだと思います。いろいろな考えが生まれない。共鳴するようなこの記事を見て、本当にうれしく思いました。

 まだ少し時間はあるんですが、お疲れでしょうから、これで私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

鈴木主査 これにて岸本健君の質疑は終了いたしました。

 次に、中山泰秀君。

中山(泰)分科員 ただいま委員長から御指名を受けさせていただきました自由民主党の中山泰秀でございます。

 先ほど民主党の岸本委員の方からも、いろいろと中国関係の質問がありました。私からも引き続き、今大変問題となっております中国政府に対する大臣の御所見、そしてお考え、そしてまたこれからの日本の外交政策、対中政策の外交のあり方というものを中心に御質問をさせていただけたらありがたい、そのように考えております。

 特に、先ほどの委員の御発言の中で、町村外務大臣が最近お書きになられた御本を民主党という立場でありながらお買い求めをいただき、そして同時に、しっかりと熟読をして質問してくださっているということ、私も自民党の同志として岸本委員に感謝を申し上げたいと思います。

 私の場合は、幸い大臣と同じく清和政策研究会という勉強会に所属をいたしておりますので、大臣の本を買うまでもなく、大臣から御本をちょうだいしたという非常にありがたい御配慮、本当に改めてこの場所で感謝を申し述べたいと思います。

 と同時に、実は、私は、一昨年の選挙で初めて衆議院に当選したわけではございません。初めて衆議院選挙に出たのは、我が国始まって以来初めてのというか、いわゆる小選挙区で、二十四で被選挙権を選挙期間中に得たということで、そのとき初めての立候補でございました。また、地方選挙にも出て千票差で敗れたこともありましたが、そのときには町村大臣に私の地元大阪までお越しをいただき、応援の演説をしてくださった、その心というのは政治家として忘れておりません。大臣を尊敬しつつ、これからも大臣の進められる外交政策をしっかりと自由民主党の一代議士としてフォローをさせていただき、応援をさせていただきたい、そのように考えております。

 演説はこのぐらいにさせていただきまして、実は昨日、私、大阪地元で街頭演説、メガホンを肩に提げて梅田駅周辺、ちょうど、私の選挙区は四区と言われておりますけれども、実質は一区でございます。大阪市役所があるような、そんな、人がどこに住んでいるのかわからないような選挙区で出ております。

 私は、なぜ街頭に立たせていただいたかという理由、それは、私の心に引き金を引いた、いわゆる今中国国内で起きているデモ、そして暴徒化した方々、特に、日本の在外公館に対して、インキのボトルを投げて真っ白な壁を青や赤に染めたり、そしてまた、火炎瓶でなくてよかったとは思うものの、ガラス瓶を投げて百枚以上の在外公館、私どもの大使館の窓ガラスを割り、そして何よりも、私どもの国で向学心が高い学生が、中国に出向いて勉強をしようということで留学をしていらっしゃる。ところが、晩御飯を食べているときに、その食堂で、中国の方から、おまえ何人だ、韓国人か、違います、中国人か、違います、何人だ、日本人ですと言った途端に、ビールのジョッキで頭を殴られ、そしてまた灰皿で顔を殴られ、おけがをなされている我が国の同胞がいるということ、その点に関して、これは絶対に許すわけにいかないと。

 特に、ウィーン条約においては、在外公館の安全を確保するのはその受け入れ国の責任であるということは明確に示されているにもかかわらず、中国政府が、町村外務大臣、そして小泉純一郎総理大臣とお会いになられて会談を重ねた中でも、いまだに補償や謝罪を行わないという体質、体制。本当にこういった国家が、二〇〇八年のオリンピックを招致することができて、そしてまた同時に、二〇一〇年の上海エキスポを開催する、そういった主催国に値するのかどうかということを非常に不思議に思う次第でございます。

 そして、やはりこの原因となっておりますこと、どう見ましても、国連に対する我が国の常任理事国入りが引き金になっているということでございますが、そういったことに関して、なぜそういった事態を引き起こしてしまうことになったのかということ。それと、なぜ今この時期に、我が国が国連に働きかけ、そして国連加盟国に働きかけながら常任理事国入りを行わなければいけないのかということを、外務大臣のお考えをお聞かせいただければありがたいと思います。

町村国務大臣 まず、委員御指摘のとおり、ああした破壊活動あるいは邦人への暴行、こうしたものはまことに許されることではございません。

 私は、先方外交部長にも申し上げました。デモというものは、これはいわば表現の自由という形で世界じゅうどこでもある現象だ、それを私どもはあれこれ言いはしません。しかし、それとは別に、破壊活動、暴行といったようなものは絶対に許すわけにはいかないので、それについてはきちんと謝罪あるいは損害賠償、さらには再発防止ということを申し上げたのであります。

 再発防止については、中国側も法にのっとってしっかり対処するということでありましたが、謝罪あるいは賠償、損害賠償ということについては何も回答がないということであり、かつ、むしろ、こうした事態を招いた原因は日本側の歴史認識にあるしというような全く次元の違う話を持ち出してきて、実際の話し合いはすれ違いに終わったというのが実態でございました。この問題につきましては、私は、引き続き、先方に対してきちんとした要求をし続けていこう、こう思っているところであります。

 では、なぜあれが起きたのか。私は評論家ではございませんから、なかなか、なぜああいうものがこのタイミングで起きたかということについては、幾つかの想像といいましょうか、分析はあろうかと思いますが、余り大臣の立場でこれだということを断定的に申し上げるのはいかがかと思います。

 ただ、一般的に言われているように、例えば、常任理事国入りというものが急にここに来て国際的にも大きな話題になってきた。それにブレーキをかけるという国民の意識があるということも確かにあるのかもしれません。あるいは、中国国内におけるいろいろな不満、高度成長の陰にある、日本でもそうでありましたが、ひずみというものが社会の中にはある。大学生だけれども、卒業してもなかなか就職できないという実態もあるといったようなことが、そうした背景にあるのではないかというような指摘も実際にあるわけであります。それが即、ストレートにデモを引き起こすものなのかどうか、そこはよくわかりませんけれども、そういう指摘も見受けられる昨今でございます。

 常任理事国入りについて、日本がなぜこの時期に手を挙げたのか、その必然性は何だということであります。

 国連改革全体、そして安全保障理事会のあり方については、今まで何度となく議論をされております。例えば十年前もちょうど国連創設五十年ということで大分議論があり、もしかしたら進むのかなというような感じもあったんですが、現実には何一つ変わらなかった。

 今回、六十年ということで、今度こそはというような思いから、昨年の九月に、小泉総理は初めて国連総会の場で常任理事国入りということを言い、そして、国連全体をより効率のよいもの、より代表性の高いもの、より機能する組織として変えなきゃいけない、こういうことを言いました。それに沿って、今、世界じゅうの国々が議論を積み重ねてきているところであります。

 私は、日本の戦後の平和国家としての歩み、先ほどあったODAを初めとして、さまざまな形で諸外国に貢献をしてきた、PKOもそうであります。そうしたものに誇りを持ち、そうした活動について日本は十分に役割を果たしてきた、そのことに日本国民はもっと自信を持っていいと思いますし、そういう実績があるからこそ、私は、日本が常任理事国として、より大きな立場で国際的なさまざまな問題に、解決をする主導的な役割を果たす一員になること、それは、ただ単に日本の国益に合致するということばかりではなくて、世界の平和のために役に立つことだ、そういう確信を持ちながら、今、大変難しい仕事ではございますが、常任理事国入りあるいは国連改革の実現に向けて外交的な努力を展開しているところでございます。

中山(泰)分科員 先ほどの委員からも御指摘がありましたけれども、今大臣から御答弁をいただく中で、国連に対する我が国の分担金、二〇〇四年で、アメリカが一番で二二・〇%、我が国が一九・四%ということになっておりますが、私の心配は、日本は世界の財布じゃないぞということ。そして同時に、その原資というのは国民の税金から出ているということ。

 それを新たに認識すると、果たして、核も持たない我が国、非核三原則を有している我が国が、核ばかり持っているような常任理事国がたくさんいるサークルに入っていって、その中で本当に、拒否権等も発揮できずにどういう扱いになるのか。また同じように財布がわりで、どんどん金出せ日本さんよと言われてしまうようなことであれば、もっとしっかりとよく考えてから我々は活動するべきじゃないかという考えを持っておりますけれども、大臣、その点に関してはいかがお考えでございますでしょうか。

町村国務大臣 確かに、国連の分担金については委員御指摘のとおり、世界第二位ということで二割近い負担をいたしております。中には、自分の分担金を払わないというようなところ、あるいは支払いを遅延させている国々も結構ある中で、日本というのは大変まじめな国なものですから、きちんきちんと毎年その義務を履行しているということであります。

 これだけお金を払っているんだから当然常任理事国入りだという言い方も確かにあろうかと思います。そういう主張をしても私はいいと思っておりますが、しかし、それもさることながら、さっき申し上げたような、日本が戦後六十年やってきた活動という実績があるんだというところが一番の論拠ではなかろうか、こう私は思っております。

 さはさりながら、国民の貴重な税金によってこうした分担金を払っているということでございますから、もちろん、その国連の活動というものに、それに見合った責任ある立場でその経営全体に参画をしていくということはまことに自然なことであろう、こう思っておりますし、また、そういうことなくして国民の皆さん方の御理解も得られないだろう、かように考えております。

 そういう意味では、そうした日本は相当な分担をしているんだということもしっかり念頭に置きながらこの国連改革全体を進めていかなければならないと思います。

 特に、国連も組織が膨大化しておりますし、相当いわゆる行革が必要な部分もあると私どもも前からそう思っております。そうした意味の幅広い国連改革、行革的な感覚も含めた国連改革は、やはりこの六十年という節目の年にぜひ憲章改正という形で確実に実行していくということが大切であると私は考えます。

中山(泰)分科員 今大臣にお答えいただいたとおりで私は構わないと思います。

 特に、国民の心配のポイントというのは、国内の経済、景気が回復したとはいえ、まだ中小零細企業の方々はそう思っていないという現実がある中で、税の使い道というものが国内でもいろいろと問題になっている。それが、ODAですとか国連に対する分担金ですとか、そういったところに対しての余計な心配を国民の方々に抱かせないような政策というものを同時にやっていかなければいけないということを認識しております。

 と同時に、私からの提案ですが、国連の中にはまだ我が国に対する敵国条項というのも残っております。これは時代錯誤だと私は認識しておりますし、今大臣がいみじくもおっしゃいました、六十年間の歩みの中で日本が平和国家であるという姿勢を国際社会に対してどれだけ示してきたかという歴史の史実を世界じゅうの方々にぜひ宣伝、告知を行き届かせていただいて、もっと認識をしてもらわなければいけないと思います。

 それと同時に、我が国は、世界で唯一の被爆国であるということ。広島、長崎という場所で、何十万人もの方々がさきの大戦でとうとい命をなくされていらっしゃる。にもかかわらず、日本国内に国連の委員会やら施設やら、会議ができる直轄の場所というのが一切ない。国連大学があるじゃないかということで、二年半前、私も国連本部に行きました、ニューヨークまで。

 まだバッジはつけておりませんでしたけれども、当時、政策秘書として勉強のために行ったときに、一時間ディスカッションを国連の方とした中で、日本には国連大学しかないんですという話をしたら、国連大学って何ですかと逆に国連の方から聞かれてしまうような施設ならば、もっとしっかりと充実をさせることによって、広島なりに世界じゅうの方々が年に一回集まって、平和の議論というのはもう六十年間で十分やったと思います。これからは、私どものような若い世代の、後世の地球人のために平和へのアクションプランという行動を起こさなければいけない。

 そういったターニングポイントに来ていると思いますので、そういった国際機関の招致、誘致活動というのも同時に積極的に行っていただければありがたい、そのように御提案を申し上げさせていただきたいと思います。

 そしてまた、実は、大臣の一つ前の答弁の中に、中国との歴史認識という言葉がございました。私は、この歴史認識というポイントの中で、特に中国が非難をいたしております靖国神社の参拝問題に関して、私なりの考えと、大臣の御所見をちょっと教えていただければありがたいと思います。

 まず、八月十五日の参拝の意義というものに関してどう思っているのかなというのが、私はいつも不思議でたまりません。特に、日本が終戦の日としているこの八月十五日、実は、一九四五年の七月の二十六日にポツダム宣言が発せられております。それを受けて日本政府は、八月八日、九日、十日と、当時、最高戦争指導会議構成員会議で、天皇の御聖断によって、八月十日の午前七時に、国体護持を前提に、電報で受諾をするその趣旨を、アメリカ、そして中華民国、スイスを通じてイギリス、そして別途、スウェーデンを通じてソ連邦に対して転達を依頼したわけでございます。

 八月十一日、我が国に対して回答がありましたが、これに対して軍部は反発をした。八月十四日、天皇の再度の御聖断によって、八月十五日の正午、天皇みずからが、玉音放送、そして国民に対して終戦を告知されて、降伏文書は九月二日、東京湾のミズーリ号上で調印をしたということでございます。

 また、米国の対日戦争勝利記念日というのは九月の二日、旧ソ連邦の対日戦争勝利記念日というのは九月の三日、中国は、当時蒋介石の中華民国であって、今現在、その戦勝記念日は光復節というので十月二十五日としております。

 中華人民共和国はといいますと、毛沢東主席のもとで一九四九年の十月一日に現在の中華人民共和国が建国を宣言して、日本の敗戦時には国家としては存在していなかった。戦後、我が国の終戦の年の四年後にできた国とその戦争を終わらせる平和条約を結んだのはなぜなのか、もしかしたら間違いじゃなかったのかということ。それと、その上、期限が十年というふうに決められておりますが、その都度延長することとされているのはなぜなのかなというのが、私ども若い世代、戦争を知らない世代の政治家として、非常に疑問を抱いております。

 この点に関して、大臣、ぜひちょっと御教示をいただけたらありがたい、かように思います。(町村国務大臣「ちょっと、今どの部分を聞かれたんですか」と呼ぶ)

鈴木主査 もう一度、再質問。

中山(泰)分科員 では、私のスピークアウトが余りよくなかったようなので、もう一度繰り返させていただきますが、要は、戦後、今の歴史的経緯の中で日中条約というものを結んだわけでございますが、しかしその後、要は、私たちのような戦争を知らない世代はこういった歴史を教科書でしか学ばないわけですけれども、今現在、いろいろな反日デモとかそういった中国の国内の動向を見ておりますと、本当に中日条約、友好条約というのが締結された意義というのが、効果があったのかどうかということを同時に不思議に思っているという心が私の一部にございます。

 その中で、特にこの平和条約を結んだということが、そしてまた同時に、その条約が十年間ごとに延長をするというふうに、期限を延長するということを決められているということ、それに関して、どうしてこういう条約を結ぶ経緯に至ったのか、また、当時の政府はどういう考えでいたのかということ、それを大臣の今現在有していらっしゃる知識そしてまた認識でお話を御教示いただけたらありがたい、そのように考えております。

町村国務大臣 正式に日中国交回復した一九七二年、そして七八年に友好平和条約ができという経過をたどっているわけでございます。その日中国交回復に向けてのさまざまな、それまではいわゆる中華民国政府との国交があって、それを断絶して、今度は中華人民共和国と条約を結ぶということになっていったわけであります。

 その背景、当時のいろいろなやりとり、お父上を含めて、自民党の中でも相当な議論があったわけでございましょう。しかし、現実に中国の本土、大陸を支配している中華人民共和国というものを無視して中華民国、台湾というものと正式な外交関係を持っているということの、やはりそこには余りにも不自然なものがあるということになり、世界の大勢もそういうふうに動いていった中で、日本としては、いろいろな大議論を経た上で、日中国交回復というものを進めていったという経緯があったと私は理解をいたしております。そのこと自体は歴史の大きな流れの中で間違った判断ではなかった、こう思っております。

 そして、その後、本当に日中友好ということで何度も何度も政府が繰り返され、例えば一九九八年でしたでしょうか、当時の小渕総理と江沢民国家主席との間で日中共同宣言というものが出され、そうしたものの積み重ねで日中間の友好というものがしっかり築かれてきた。私どもも、さまざまなお手伝いもしてきた。先ほどお話のあったODAを含めて、いろいろな活動をやってきた。日中関係は盤石か、こういう思いも一方にはあったわけでございますが、しかし、現実に今回のような事態が発生をすると、もしかしたらそれは砂上の楼閣であったのかもしれないという見方すらある。でも、現実に、他方、経済の現実、人の行き来の現実というものは非常に幅広いものになってきている。

 ですから、私は、この日中関係というものは、もちろんそうした背景がある、人と人との往来、経済の往来があるということを基盤にしながら、やはり政治の面でのおつき合いといいましょうか、本当の意味の友好関係というものをどうやってこれから築いていく努力をしたらいいのか。隣の国であるだけに大変難しい面もあるし、特に第二次大戦中の日本の軍事行動というものもあったといったことなどを踏まえたときに、やはり、彼らの気持ち、中国国民の気持ちも我々十分理解をしながら、それをきっちり受けとめた上で、これからの友好というものを末永く築いていく必要があると考えております。

 済みません。先生へのお答えに必ずしもなっていないかもしれません。

中山(泰)分科員 私が御指摘したかったのは、日本が終戦を迎えたとき現在の中国の共産党政権というのはなかったという歴史事実、これは世界じゅうの方がよく理解をしているわけで、私たちが戦ったのは蒋介石の方で、中国から共産党に追われて出ていった台湾なわけでございますから、そういった認識をしっかりと世界の方々にアピールをする。

 史実というものは曲げられないんだということを、中国政府も日本政府に対して歴史教科書の中身を変えろといって、まるで内政干渉のようなことを平気で言ってきている。今度は我が国が、大臣が、きょう私どもは報道で聞きましたけれども、同じようなことを中国政府に対して申し入れをするということを相手国が許容しているということ、それは私は大切なことだと思いますので、今私が質問をさせていただいたポイントに関して、外務省の職員の皆様方ともども、しっかりと案を練りながら、御対応、御指摘を中国政府に対しても行っていただければありがたい。

 これは私一人の意見ではございません。少なくとも私に票を下さった方々、そして国民の中でしっかりと今回の事象に関して怒りを感じている皆様方の意見を代弁しているということをお忘れなきようにお願いしたいと思います。

 と同時に、今回、私はこういった歴史背景を踏まえながら、悪夢を思い出しております。というのが、日ソ中立条約を思い出してください。日本が敗戦の色というのが濃くなってきたとき、旧ソ連邦が一方的にこの条約の廃棄通告を行って、まだ半年の有効期限を残しながらも、米国による広島原爆投下直後に突然宣戦布告をしてきたという事実。そして、そういった昔の外務省の方々が、旧ソ連邦とのいわゆる過去の外交の大失策を招いたということ、この事実。こういったものを再度行うことがないように、しっかりとした対応をしていかなければいけないというふうに考えております。

 次に、サンフランシスコ平和条約に関してなんですが、一九五一年の九月八日に調印をされて、翌年の五二年四月二十八日に発効されました。締結に際しましては、英国が台湾、中華民国の参加に反対をし、そして米国が中華人民共和国の参加に反対をしたため、両国は双方ともこの会議には出ておりませんでした。

 中華民国、台湾といわゆる日本との日華平和条約は、一九五二年の四月二十八日、サンフランシスコ条約の規定に従って、我が国と台湾政府の間で台北で署名をされまして、同年の八月五日に発効しておりますが、この条約には期限がなくて永久条約であったのですが、にもかかわらず、この条約を我が国政府は記者会見の席で突然廃棄宣言を行って、事前はもとより、事後においても国会審議にも一度もかけていないという現実がございます。

 私は、この点に関して、特に憲法九十八条二項に規定されております「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」という規定上に、明らかに憲法違反を起こすかもわからないというおそれまで冒して、なおかつ、今大臣が御答弁をいただいたような選択、いわゆる中華人民共和国への配慮を行ったという現実があります。ワン・チャイナ・ポリシー、世界じゅうの各国と、逆に言えば西側諸国とも歩調を合わせた形で中国政府に対する対応をしたということ、これが同時に、我が国が最大限行ってきた中国政府に対する最良の、そしてまた最善の外交策であったと私は認識しております。

 この点に関して、こういった歴史上の史実に基づいて中国政府に対してはっきりと、私どもに対するそういった歴史的評価、悪い部分ばかり文句を言われたり、悪い部分ばかりずっと追及をされるということ、それに対して怒りを覚えている国民はごまんとおります。こういった中国政府に配慮をした政策、ODAも一緒になっておりますけれども、そういった部分に対して中国の首脳部との会談の中で評価がされているのか否かということ、この点に関して大臣の御教示を賜りたいと思います。

町村国務大臣 先般の李肇星外交部長との話の中でも、しばしば中国の指導者が言います、歴史をかがみとし、未来に向かうと。そこで言う歴史というものは、どうも話を聞いておりますと、第二次大戦中の、さきの大戦中のまさに軍事行動があった、その部分を盛んに指しておられます。私は、それに対して、先般も先方外交部長には申し上げましたが、それは歴史のとらえ方が余りにも狭過ぎる、日中間には二千年を超える長い交流の歴史があり、そのほとんどすべては平和の歴史であったということ、元寇をどう見るのかというのは一部ありますけれども。

 しかし、確かにさきの大戦中の一時期というものは不幸な一時期であった。しかしその後、一九四五年、昭和二十年後のこの六十年間というのは、まさに日中間の平和の歴史であり、お互いがお互いを必要とし、そして平和をともに築き合ってきた、そういう六十年であったのではないか。

 したがって、その戦前のある時期だけをとらえて、そこが歴史であり、そこに学ばなければならない、それは重要な歴史であることは間違いがありません、現実に彼らに大変な痛みと苦しみを与えたことも事実だから。それも重要な歴史だけれども、しかし、それだけが歴史のすべてではないのではないかということを私は申し上げました。それに対する回答はありませんでしたけれども、やはり歴史に学ぶというときには、二千年の歴史、また戦後の歴史というものもきちんと評価をしていかなければいけない。今委員が言われたとおりだ、私もそう考えております。

 そういう中で、特にトウカセン国務委員との話の中で歴史の問題というものが出されました。そして、日本には中国が反日教育をやっているのではないかという批判があるが、そんなことはないというお話があったものですから、ちょっと待ってくださいと申し上げまして、愛国教育はやっているというから、それはどこの国だって国を愛する教育は当然だ、しかし、例えば教科書というものはあくまでもそれぞれの国の内政の問題ですよといって断りつつ、皆さん方の教科書の中にも、本当にきちんとしたそういう客観的な事象が全部述べられているかどうか、日本との友好上、それが望ましい内容になっているのかどうか、私どもとしてもきちんとそこは検証しなければならないし、国会の中でもそういう議論が非常に多い。

 さらに、抗日記念館などに多くの小学生、中学生などが行って、これが本当に日中友好に資する展示内容になっているかどうか、そういったことについても相当な疑義が呈せられているんだ、特に国会ではそういう議論が多いんですよということを私はトウカセン委員に申し上げ、そうしたところ、トウカセン委員からは、どうぞ御意見があるならおっしゃってくださいと、先方からそういうお話もいただきましたから、私どもとしては、必要な手順を踏んだ上で必要な調査もし、それを先方に伝える努力はこれからやっていこう、かように考えているところであります。

中山(泰)分科員 大臣のおっしゃるとおりで、そのままぜひ大臣なりの個性を生かしていただいて、はっきりと物を言う外交、国民からしっかりと背中を押されて、大臣の後ろには一億二千万の日本国民がついているんだというしっかりとした、今おっしゃっていただいたような気概でもって中国政策、外交上の交渉というものをこのまま推進していただければありがたいと思います。

 最後に、大臣のお言葉にもございましたように、愛国心を養うペイトリオティズムという教育。そしてまた、中国の暴徒化した方々が愛国無罪と標記をしながら活動を行っていること。日中の相互依存度が両国とも非常に高まっている中で、本当に大局から両国の国民たちがお互いを見て、我々の両国のきずなというものを深めていくこと。それが、逆に言えば、今までの六十年間、一九四五年の終戦以来の六十年間のこれから新たな出発地点に私ども両国が立っているということ。その認識をぜひ中国政府の方々とともに協調路線で推し進めていっていただいて、北東アジア情勢が非常に緊迫する、そしてまた不安な情勢の中で、我が国から、そしてまた中国から変なことが起きないように、しっかりとした感覚で、チームワークで行っていただきますように心からお願いを申し上げて、私の質問を終わりにさせていただきたいと思うんです。

 町村大臣、どうもありがとうございました。

鈴木主査 これにて中山泰秀君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして外務省所管についての質疑は終了いたしました。

 午後三時から本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時三十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時開議

鈴木主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 これより内閣府所管中金融庁について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。伊藤金融担当大臣。

伊藤国務大臣 平成十五年度における金融庁歳出決算の概要を御説明申し上げます。

 平成十五年度の当初予算額は、百五十五億九千九百四十三万円余でありましたが、これに予算補正修正減少額八億八千四百九十五万円余、前年度繰越額八億六千四百二十一万円余を増減いたしますと、平成十五年度歳出予算現額は百五十五億七千八百六十九万円余でありまして、これを支出済み歳出額百四十八億三千五百九万円余に比較いたしますと、七億四千三百五十九万円余の差額を生じます。この差額は、人件費を要することが少なかったこと等のため、不用となったものであります。

 以上をもちまして、平成十五年度金融庁歳出決算の概要説明を終わります。

 よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。

鈴木主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院小川審議官。

小川会計検査院当局者 平成十五年度金融庁の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。

鈴木主査 以上をもちまして内閣府所管中金融庁についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

鈴木主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。前田雄吉君。

前田分科員 民主党の前田雄吉です。

 今や銀行の力は強大なものとなり、金融コングロマリット法案すら出そうになっている状況であります。その一方で、多くの銀行の犯罪が放置されている。前回は、私は、バブル末期の変額保険の被害者の救済を実証的に求めさせていただいたわけであります。

 今回は、まず第一に、ゴルフの会員権を銀行みずからが提案型融資をして販売したという、銀行の他業違反に当たるものについて。第二に、銀行が、バブル期に提案型融資をしたにもかかわらず、バブル崩壊後に融資を中断して、その人が生活不能に至るまでの取り立てをしているという事態について、質問いたしたいと思います。

 まず第一に質問したいんですけれども、伊藤大臣、私が申し上げましたこの両ケース、ゴルフの会員権を銀行みずからが販売したという、いわゆる銀行の他業違反について。そして、生活が成り立たなくなるまでの取り立てを、普通でも許されない上に、これがすべて銀行が持ちかけた提案型融資によるものであった。まさに銀行の犯罪ではないですか。

 どうお考えになりますか。銀行被害者の救済という観点から御答弁いただきたいと思います。

伊藤国務大臣 二つのケースについてお尋ねをいただいたわけでありますけれども、金融機関から融資を受けつつ金融商品等に投資をした結果、債務者の返済が困難となり訴訟に発展した事例があることは承知をいたしておりますが、個別金融機関と個別債務者との間で生じる紛争は私法上の契約に関する問題でありますので、こうした問題は、基本的には司法の場を含め当事者間で解決が図られるべきものと考えております。

 なお、金融機関におきましては、貸付契約や担保・保証契約といった与信の取引に当たっては、債務者の知識経験及び財産の状況を踏まえて十分な説明を行った上で取引を行うことや、債務者の財務状況、資金使途や返済財源等を的確に把握するなど、適切な審査管理体制の確立、審査精度の向上に取り組むことが極めて重要なことであると認識をいたしているところでございます。

 金融庁といたしましては、金融機関の業務の健全かつ適正な運営を確保していく、こうした観点から、現在は、債務者への説明体制の整備、そして厳正な信用リスク管理の確立といった重要課題に関して適切な検査監督に努めているところでございます。

前田分科員 大臣は何か悠長なことを言ってみえますけれども、今現在、バブル末期は、銀行のいろいろ犯した他業違反、そして今回の破産申し立て等についてですけれども、生活が成り立たなくなっている方が全国に数多くみえるわけです。個別のケースが積み上がって、これが全体の被害なんですよ。

 ですから、そんな悠長な、個別のケースについては答えられぬとかそういうことじゃなくて、全体としてどのように、今現在発生している被害者の皆さんを、しかも、これはすべて銀行の提案型融資によってであります。

 どう救済するかということを私はお聞きしているんです。もう一度お願いします。

伊藤国務大臣 お答えをさせていただきます。

 いわゆる提案型融資につきましては、顧客が必要としていると思われる情報が銀行から提供され、かつ銀行と顧客との間で十分な意思疎通が図られた上で行われているものでありましたら、それ自体に問題があるとは言えません。

 なお、金融機関において、各段階の取引において債務者の知識経験及び財産の状況を踏まえて十分な説明を行うことが重要であると認識をいたしておりまして、金融庁としても、監督指針において、金融機関に対して説明体制の整備を求めているところでございます。

 今後とも、監督指針の趣旨を踏まえて、適切な検査監督に努めてまいりたいと思います。

前田分科員 大臣は、まだ今現在の被害者の救済については何も答えられていません。これからの話じゃありません。今本当に生活に困っていらっしゃる方がいる、この現状について、より詳しく今から質問をしたいと思います。

 まず第一は、ゴルフの会員権販売についての他業違反であります。

 中央三井信託銀行が銀行法にある、これは十二条ですけれども、他業禁止規定に違反していると私は考えます。銀行みずからがゴルフの会員権を販売したケースであります。

 この他業禁止規定、もし資金のある銀行が他業務をやれば、当然スパイラルにこの事業は拡大して、専門的にほかにその事業をやっておられる業者の方が、企業が圧迫される、これが他業禁止のもとでありますね。銀行が誘い水をかけてゴルフの会員権を売って、今現在、日本国じゅうに数多くの人が、泣いておられる方がいっぱいあります。国会議員の皆さんでも泣いておられる方はいっぱいあるんですよ。

 それで、きょうは私ども、資料を一つ配らせていただきました。

 一の方を見ていただけますか。これは、中央信託銀行、愛知県の一宮支店の支店長の名刺であります。この曽根支店長は、二年後にこのゴルフ場の、セントラル開発株式会社の常務取締役につかれている。また、同一宮支店の次長の曽我さんですけれども、この人もまた同じようにセントラル開発の取締役につかれている。おまけに、曽我さんの名刺には中央信託銀行グループと書いてありますね。銀行が実際にこうしてゴルフの会員権を売りつけているというケースであります。

 具体的に申し上げましょう。

 ゴルフ場の預託金の十年の返済期限のうちの一年前、つまり九年目にゴルフ場をどんどん売り渡していったわけであります。それがこの資料の二番目の方、ゴルフ場債権処分の行方、わずか一年で、これは登記簿謄本からとってつくりましたものでありますが、ずっと何段階にわたって、どんどん債権が処分されていくんです。

 それで、中央信託銀行の取締役たちも、自分たちでもこう言っているそうです。道徳的には申しわけないが、法的にはできるんですと言うんですね。信じて託す銀行がこのようなことをしていいんでしょうか。

 中央信託が長銀のように破綻していたら、まだわかります。トカゲのしっぽ切りのように、本体をそのままにしておいて、債権だけを売り渡していく。余りにもこの中央信託銀行のやり方は汚い。モラルハザードも甚だしいではありませんか。金融庁は、この中央信託銀行に対して、どのぐらい監督指導してきたんでしょうか。

 また、私は初めに、今回のこの問題が発生して、問い合わせをいたしました。そうしましたら、理事の構成等、基本的な情報すら金融庁は把握しておらず、私に全く回答がありませんでした。これについて、いかがですか。お答えください。

佐藤政府参考人 まず、最後のお尋ねの点で、ゴルフ場の理事構成についてでございますけれども、御案内のとおり、金融当局といたしましては、このゴルフ場会社に対しまして監督上の権限はございませんし、また、通常知り得る立場にないということで、コメントを差し控えさせていただいたということかと思います。

 それから、他業禁止の話につきましては、これも私ども、個別金融機関の個別取引について言及をすることは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、一般論として申しますと、金融機関の勧誘が非常に積極的なものであって、かつ組織的に反復継続して行われていて、かつ金融機関が当該勧誘行為の対価として相応の金銭を得ている、こういう場合には、他業禁止に違反する可能性が高いというふうに思われます。

 いずれにいたしましても、これはちょっと、個別金融機関の個別取引に関する法令の適用状況についてはコメントは差し控えさせていただきたいと思いますが、全体として、金融機関が融資先等との取引を進めるに当たりましては、その融資を受ける側の顧客が十分な合理的な意思の形成をできるような、しっかりとした説明をするということが重要であることは御指摘のとおりだと思います。

前田分科員 では、今、銀行の他業違反についてですけれども、本当に反復して行われている。

 もっと具体的に話しましょう。愛知県尾張一宮市、先ほどの名刺のところですね。そこで企業経営をされておられる岩田和夫社長、この方もそうです。そして野村桂司社長。このケースを挙げたいと思っております。

 銀行とゴルフ場が一体化していることは、先ほどの資料一で、名刺でそのまま名前が変わっていくわけですから、よくわかっていると思いますね。そして、まずどういう形で行われたか。平成五年、同行一宮支店長加賀氏、次長曽我氏の車で岐阜県の可児郡御嵩町のこぶしゴルフ場に銀行の車で下見に連れていかれ、中華料理の接待を受け、そのまま帰りもまた銀行持ちで鬼岩温泉で接待をされた。購入資金三千万円もすべてローンを組まされ会員権購入。その後どんどんと、先ほどの資料二にありますように、運用会社は破綻して、ローンのみ残した。

 これが全国で発生している、いわゆる銀行が銀行の車でゴルフ場に連れていって、ゴルフの会員権を接待をして売りまくるという現状が出ているケースであります。

 金融庁が他業禁止規定を放置したがために、全国でこうしたケースが、被害者が多くあるんですよ。どう救済されるんですか、金融庁として。

佐藤政府参考人 個別の債権者、債務者の間の問題につきましては、私法上の契約の問題でございますので、裁判の場所を含めまして、最終的には当事者間の解決が図られるということにならざるを得ないと思います。

 いずれにいたしましても、先ほどもお答えさせていただきましたように、金融機関が顧客との取引を行う際には、顧客の側が十分合理的な意思形成をすることができるような説明を行うということが重要であろうと思います。

前田分科員 これまた先ほどの伊藤金融大臣と同じように、現在の被害者の方の救済には全く触れていない。これからのことはわかります。

 ぜひ金融庁もこうした被害の実態を、私は、今さっき例で申し上げました、反復されているケースとして申し上げました。銀行そのものがゴルフの会員権を売りまくっていた現状がよくわかったと思います。ですから、一般的なケースとしてぜひ対応していただきたい、そういうことを申し伝えておきます。

 第二に、自己破産をさせられて明らかになった資産にまで競売をかけてくるという、個人が生活不能に至るまで取り立てをしているということについて伺いたいと思っております。

 提案型、つまり、借りてくれ借りてくれと言っておいて、個人の生活を破滅に追い込んでいる、これはやはり銀行の犯罪ではありませんか。二例挙げさせていただきます。大阪の酒井さんの件と、ウルトラマンのデザイナー、田辺さんの件であります。

 この長引く不況の中で、破産は年々増加しております。大正十一年に制定された破産法、昨年末で廃止されて、新破産法がことしの一月一日から施行されているわけであります。新破産法も、自己破産による債務者の経済生活の再生に重点が置かれており、債権者からの不当な破産申し立てを抑制する手段がないんですね。ないがために、例えば会社代表者が銀行から破産申し立てを受けて会社が存続できなくなったなど、債務者が苦境に追い込まれているケースが全国で続出しているわけであります。

 そこで、伺いますけれども、債権者が破産申し立てをする件数は破産全体のどのぐらいの比率なのか。過去十年の破産件数と、自己破産と債権者からの破産申し立ての比率を明らかにしていただきたいと思います。

寺田政府参考人 平成七年からの数字を申し上げますが、平成七年には破産の事件は約四万六千件ございました。その後、ずっと事件数が伸びてまいりまして、平成八年六万件、平成九年七万六千件、平成十年には十一万一千件に達しました。その後もなお事件はふえ続けまして、平成十四年に二十二万件、平成十五年には二十五万件に達して、平成十六年にはやや落ちましたが、なお二十二万件でございます。

 全体の中の自己破産の割合でございますけれども、これは圧倒的多数でございまして、九八%、九九%が自己破産でございます。したがいまして、債権者申し立ては一、二%ということになるわけでございます。

前田分科員 新破産法も、破産の手続開始決定、いわゆる破産宣告が、支払い不能という要件があればよいとされているわけであります。支払い不能というのは、「債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいう。」とされておりますが、金融庁に伺いたいと思います。

 各金融機関が抱える債権のうち、このような支払い不能の状態にある債務者は、どのぐらいの件数に上るんでしょうか。

佐藤政府参考人 御指摘の破産法に示されている支払い不能の状態につきましては、実際の破産手続の中で確定されていくものでございますので、金融機関が抱える支払い不能状態の債務者の件数等について、金融当局としては把握をしておりません。

 ただ、いわゆる金融再生法、金融機能の再生のための緊急措置に関する法律に基づいて不良債権の開示が義務づけられておるわけでございますが、このうち、破産更生債権及びこれらに準ずる債権というカテゴリーがございますが、この残高を申し上げますと、平成十六年九月末、全国銀行ベースで約三兆九千億円という数字になってございます。

前田分科員 実際、その三兆九千億円、これは件数でいうとどのぐらいの件数になるのか、お伝えいただけますか。

佐藤政府参考人 ただいまお答えをさせていただきました全国銀行のベースでの三兆九千億円に対応する債務者の数というのは、銀行の数も多うございまして、ちょっと私ども現在把握しておりません。

 ただ、それにかわるものといたしまして、主要行、十一行ございますけれども、ここからのヒアリングをいたしてみました。そうしますと、先ほどの破産更生債権の金額は、同じ十六年九月末で一兆六千億円という規模でございますが、これに対応いたします件数は一万四千五百六件という件数でございます。

前田分科員 ありがとうございます。

 今、数の話をしていただきましたけれども、非常にやはり苦しんでおられる方が多い。

 金融庁の報告によれば、支払い不能の状態にある数多い債務者の中から、銀行が破産申し立てをした件数は極めて少ないということであります。

 整理回収機構は、回収の理念として、契約の拘束性の追求と同時に、個人の尊厳の確保との両立を図るとうたっておられます。竹中金融担当大臣も、この回収機構の回収の理念は民間銀行にとっても同様であると以前答弁されておられました。伊藤大臣は、これについてどうお考えになられますか。

伊藤国務大臣 お答えをいたします。

 整理回収機構の回収の基本理念である契約の拘束性の追求と人間の尊厳の確保の両立とは、債務者の方に契約を守っていただくことを原則としながらも、人間の尊厳との調和を図るため、債務者の個別具体的な実態を正確に把握して、適切に回収業務を行っていくことであると承知をいたしております。

 民間金融機関が債権回収の過程でどのような対応をするかは、最終的には契約の内容をもとに金融機関みずからが経営判断により決定されるべきものでありますが、債権回収に当たっては、個々の債務者の置かれている状況やあるいは実情というものを正確に把握して、適切な対応を行うことが重要であると認識をいたしているところでございます。

 こうしたことから、金融庁といたしましては、監督指針において顧客に対する説明体制の検証を行う際の着眼点を明確化しておりまして、例えば延滞債権の回収に当たっては、「これまでの取引関係や、顧客の知識、経験及び財産の状況に応じ、かつ、法令に則り、一連の各種手続を段階的かつ適切に執行する態勢が整備されているか。」「手続の各段階で、顧客から求められれば、その客観的合理的理由を説明することとしているか。」等に留意することといたしているところでございます。

 私どもといたしましては、こうした監督指針の趣旨を踏まえて、債務者の置かれている状況や実情を正確に把握した上で、債務者への説明というものを十分尽くすよう適切に監督をしてまいりたいと思います。

前田分科員 数としては少ないかもしれません。しかし、破産宣告をされて、本当に生活が成り立たなくなって非常に困っていらっしゃる方がおられるわけであります。

 個人の尊厳ということは一体どういうことなんでしょうか。御説明いただきたい。

伊藤国務大臣 個人の尊厳とは、一般的に、個々の個人の人格に最高の価値というものを認めて、そして、それをひとしく尊重しなければいけないという考え方であると認識をいたしております。

前田分科員 破産宣告は、これは財産の処分、管理能力を失わせるほか、さまざまな公私の資格を剥奪しているわけであります。居住の制限もそう、それから、郵便物を受領する、それも制限される、人間としての当たり前な権利をどんどん制限されていくわけであります。

 債権者からの破産申し立てがもし乱用された場合、まさに、先ほど伊藤大臣が言われた個人の尊厳を脅かすものであります。新破産法は、債権者からの不当な破産申し立てから債務者を守る手だては何も予定していなかったんですか。御説明いただきたいと思います。

寺田政府参考人 債務者に破産原因が生じている場合に、債権者から破産の申し立てをするということは、これはそのまま放置しておきますとどんどん債権の回収が困難になりますので、ある意味では当然のことと言わざるを得ないわけでございますが、逆に、しかし乱用のおそれも決して否定はできないわけであります。

 もともと旧破産法の時代から、債権者の申し立ての場合には、自己破産の申し立てと異なりまして、破産手続開始の原因の疎明を要求しておりましたし、また手続費用の予納も要求しておりましたが、新たに新破産法、これはことしの一月から施行されておりますが、その破産法においては、不当な目的で破産手続開始の申し立てがされたとき、その他申し立てが誠実になされなかったときには、破産手続の原因となる事実が仮にありましても、裁判所は申し立てを棄却することができるというようなことを規定上明確化して、乱用を防止しようというふうにねらっているわけでございます。

前田分科員 銀行の場合については、これは銀行が提案型融資、借りてくれ借りてくれと言ってそれで借りた、それで今度はバブルが崩壊して、今度その人が生活が成り立たなくなるまで、破産宣告をして、個人を追いやっていくわけであります。

 では、銀行が破産申し立てをするのは何のためにするんですか。伺いたいと思います。

佐藤政府参考人 破産申し立てのような法的措置の場合を含めまして、金融機関が債権回収の過程でどのような対応を選択するかにつきましては、その時々の債務者の状況等をよく踏まえて、金融機関が経営判断で決定されるものだというふうに承知をいたしております。

 破産の申し立ては、法令上債務者だけではなくて債権者からも行うことが可能となっておりますが、先ほど法務省の方からも御答弁いただきましたように、債権者による申し立てというのは、破産原因の証明等が必要であること等から、割合としてはごく少ないというふうに承知をいたしておりますけれども、破産開始決定までに時間を要するということで敬遠されがちな中で、銀行の側が破産申し立てをするケースということについて、例えば、債務者である会社経営者等が不正を行っているとかあるいは債務者が財産を隠ぺいしたとかといったようなことで、債権者、債務者の当事者間だけでは解決が困難な場合には、債権者が破産申し立てを行う場合があるというふうに言われていると承知をいたしております。

前田分科員 もっと具体的に言いましょう。

 UFJ信託銀行が大阪の酒井三雄さん夫婦に破産申し立てをしたケース、また、みずほ銀行が山梨の田辺儀雄さん夫婦に破産申し立てをしたケース、いずれも、これらの銀行がバブル期に相続税対策として不動産を購入することを勧めた、いわゆる提案型融資の被害者であります。銀行から借り入れて購入した不動産以外に親から相続した不動産までこれらの銀行の担保に入っていたために、銀行から全部競売にかけられ、銀行は競売の金額全部を取得している、それでもなおかつ破産の申し立てをした。

 酒井さんも田辺さんも、銀行借入金の元金の八割以上はもう返済しています。もう本当に、酒井さんの場合は、経営コンサルタントをしていて、破産になれば仕事はできなくなる。田辺さんも、先ほど言いましたが、私のあこがれの人です。ウルトラマンをつくられた仕事をされておられます。破産になれば仕事の受注もなくなるのは当たり前です。もう本当に極めて憂慮すべき事態がここにあると思います。

 一般論として金融庁にお聞きしますけれども、金融庁は、社会的公共性の高い銀行がみずから提案型融資をして出た被害者に破産申し立てをするのは、これは許されることだと考えているのですか。金融庁は早急にこの事態を調査して、私は、銀行にこれを是正させていただきたい、これを申し上げます。

伊藤国務大臣 お答えをいたします。

 いわゆる提案型融資では、後に問題となったケースにおいても債権者及び債務者の状況はそれぞれ異なっており、基本的には、司法の場を含め当事者間で問題解決を図られるべきと考えております。

 その中で、債権者たる金融機関による破産申し立ては法令上は可能であり、このような法的措置を含め、金融機関が債権回収の過程でいかなる対応を選択するか、あるいはしないかは、金融機関みずからの経営判断により決定されるものと承知をいたしております。

 金融機関が法的措置を選択するケースに関しましては、現行の監督指針におきましても、先ほど御説明をさせていただきました検証を行う際の着眼点を私どもとしても示しているところでございますので、金融庁といたしましては、こうした監督指針の趣旨に基づきまして、金融機関が顧客に対する説明を十分尽くすよう適切に監督を行ってまいりたいと思います。

前田分科員 ぜひ金融庁、銀行の犯罪を許さないでほしい、これを申し上げまして、私の質問を終えます。ありがとうございました。

鈴木主査 これにて前田雄吉君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして内閣府所管中金融庁についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

鈴木主査 これより環境省所管について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。小池環境大臣。

小池国務大臣 平成十五年度環境省所管の歳入歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 まず、環境省主管一般会計の歳入につきましては、歳入予算額十億一千五百七十万円余に対し、収納済み歳入額は十一億五千十万円余、これを歳入予算額と比較しますと、一億三千四百四十万円余の増加となっております。

 次に、環境省所管一般会計の歳出につきましては、当初予算額二千六百二十二億七千七百二十万円余でありましたが、これに予算補正追加額十二億八千三百十八万円余、予算補正修正減少額二十一億九百三十一万円余、予算移しかえ増加額百九億六千六百十六万円余、予算移しかえ減少額二十六億五千四百四十二万円余、前年度からの繰越額四百四十九億三千七百五十二万円余、予備費使用額五億四千六百六十九万円余を増減いたしますと、平成十五年度歳出予算現額は三千百五十二億四千七百四万円余となります。この予算現額に対し、支出済み歳出額二千三百四十二億百一万円余、翌年度への繰越額六百八十一億七千六百六十万円余、不用額百二十八億六千九百四十一万円余となっております。

 次に、石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計のうち環境省所掌分の決算について御説明申し上げます。

 石油及びエネルギー需給構造高度化勘定につきましては、収納済み歳入額は六十億円、支出済み歳出額は四十億八千八百九十九万円余となっております。その差額は十九億一千百万円余となっております。このうち翌年度へ繰り越した額は十三億七千五百三十六万円余であり、剰余金は五億三千五百六十三万円余となっております。

 以上、平成十五年度における環境省所管一般会計及び特別会計決算の概要を御説明申し上げました。

 何とぞよろしく御審議のほどお願いをいたします。

 以上です。

鈴木主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院大濱審議官。

大濱会計検査院当局者 平成十五年度環境省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項四件、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項一件であります。

 まず、不当事項について御説明いたします。

 検査報告番号一七九号から一八二号までの四件は、廃棄物処理施設整備費国庫補助金が過大に交付されているものであります。

 これは、補助金の交付額の算定に当たり、事務費の算定が交付要綱に定められた方法に従っていなかったり、事務費率の適用を誤ったりしたため、補助金が過大に交付されているものであります。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。

 これは、都道府県への施行委任により実施する国立公園整備事業の工事請負契約の入札における最低制限価格に関するものであります。

 環境省が国の直轄事業として実施する国立公園整備事業については、支出負担行為等の会計事務を都道府県に施行委任することにより実施する場合があります。そして、会計法の規定によると、このように国の会計事務を都道府県にゆだねる場合については、国の会計法令の当該会計事務の取り扱いに関する規定を準用することとされています。

 そこで、都道府県への施行委任により実施された国立公園整備事業における工事請負契約について、入札の際の落札者の決定が国の会計法令を準用した適切なものになっているかに着眼して検査いたしましたところ、入札の際、国の会計法令には規定のない最低制限価格が設定されており、最低制限価格を下回る価格で入札した者を無条件に失格としている事態が見受けられました。

 これについて当局の見解をただしましたところ、環境省では、十五年十月に都道府県に対して通知を発し、施行委任により実施する国立公園整備事業においては、工事請負契約の入札の際、最低制限価格を設定できないものであることを明確にする処置を講じたものであります。

 以上をもって概要の説明を終わります。

鈴木主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。小池環境大臣。

小池国務大臣 平成十五年度の決算検査報告において掲記されております事項につきましては、会計検査院の御指摘のとおりでありまして、まことに遺憾に存じております。

 指摘を受けました事項につきましては、直ちに是正措置を講じましたが、今後なお一層厳正な態度をもって事務の執行の適正を期する所存であります。

鈴木主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木主査 以上をもちまして環境省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

鈴木主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。前田雄吉君。

前田分科員 民主党の前田雄吉君です。

 私の地元の愛知で、今、自然の叡智をテーマにいたしました愛・地球博、つまり環境万博が開かれているわけでありますけれども、その隣で起こっている最大の環境破壊について今回は質問したいと存じます。

 万博会場の隣接地におきましては、実は既に、豊田市の田籾地区におきまして、業者の鉱業権の取得によって、地下資源を採掘しまして大グランドキャニオンが今現在も現存しているわけであります。穴を掘って、すごいグランドキャニオンがあるんですね。この場所は、当初は、愛・地球博のメーンコーディネーターを務められた堺屋太一氏が、使わない手はないと発言されまして、環境万博の隣接地であり、まさに環境破壊の象徴的なこのグランドキャニオンを使おうとした。当然、非難を受けられて、堺屋氏はコーディネーターをやめさせられました。

 また同じことが、今度は、万国博覧会会場の、長久手会場でありますけれども、その南部の隣接地におきまして、地下資源の採掘をするということで鉱業権を取得された業者がありました。環境万博の博覧会会場の隣接地で、今また同じように環境破壊が行われようとしているわけであります。

 七十五ヘクタール以下で環境アセスの必要がない。しかし、私も実際に自分の耳で目で見聞きしましたけれども、地元の区長さんもそろって、皆さん、やめてほしいと一致しておられます。そして、日進市議会、これは愛知県日進市ですけれども、議会も与野党こぞって全部反対、もちろん地元日進市の佐護市長も反対しておられます。

 そこで、大臣に伺いますけれども、周辺住民、行政がこぞって反対している、そして環境万博と言われる愛・地球博の隣接地で行われている、これから行われようとする最大の環境破壊に関して、これは国際的に見ても恥ずかしい限りではありませんか。環境大臣としてどのようにお考えなのか、伺いたいと思います。

小池国務大臣 言うまでもございませんけれども、愛知万博そのものの会場についても、環境影響評価をしっかり行わせていただいて、そして今の会場が開会されて、大変なにぎわいも見せているというふうに聞いております。

 これまでは、国際博覧会協会が作成した環境影響評価書などに環境大臣が環境保全の観点から必要な助言を経産大臣に対して行う、その結果としてさまざまな措置が講じられてきたのを、これまでの経過、ゴンドラをどうするとか、いろいろな話がございました。これは、ですから、アセスの対象としてはこういうことを行うわけですけれども、今御指摘がございました、私は現地を見ておりませんけれども、鉱物の掘採事業については、環境影響評価そのものの対象ではない。また、そもそも環境影響評価法が対象としますのは、「規模が大きく環境影響の程度が著しいものとなるおそれがある事業」ということになっておりますけれども、今御指摘ございました掘採事業については、これには該当しないということでございます。

 また、一方で、愛知県の方が環境影響評価条例というのを設けておられるわけであります。鉱物の掘採事業が条例に設けておられますけれども、この鉱物の掘採事業は対象とされていない、鉱物の掘採は含まれないと明記されているところでございます。

 一方で、愛知県の定めます土地開発行為に関する指導要綱、いわゆる土地開発要綱でございますけれども、これによって指導が行われているもの、このように伺っているところでございます。

 さはさりながら、あらゆる事業者というものは、環境基本法の第八条というものがございまして、その事業活動のすべての場面で環境の保全に配慮するということが責務とされているわけでございます。よって、各種の法律に従って対応するというだけではなくて、事業者自身がこうした責務に基づいて適切に配慮されることが望ましいと私は考えております。

前田分科員 今、小池大臣に前向きな御答弁をいただきました。環境を守るという、本当に重大な仕事であります。愛知県としてもまだまだやれることがかなりあるということでありますし、そして基本的にこの環境を守るべきだという小池大臣のお考えもいただけました。本当にありがとうございます。

 さりながら、地元では、この業者によりまして、一度も説明会も行われていない。周辺住民は不安でしようがありません。にもかかわらず、鉱業権がおりて、最大の環境破壊が今起ころうとしているわけであります。これは、私は、厳しく言えば環境行政の失態ではないかというふうに思いますけれども、環境省としてどのようにお考えなのか、伺いたいと思います。

田村政府参考人 お答え申し上げます。

 今、環境大臣からお答え申し上げましたように、御指摘の鉱物の掘採事業自体は、環境影響評価法がその対象としております、これは限定列挙しておりますものですが、規模が大きく、そして環境影響の程度が著しいものとなるおそれがある事業には該当しないわけでございますし、また愛知県の環境影響評価条例においても、掘採事業は対象とされておりません。

 しかし、いずれにいたしましても、これも今大臣からお答え申し上げたとおり、事業者は環境基本法の第八条に基づきまして、その事業活動を行うに当たりまして、公害を防止するあるいは自然環境を保全する、そのために必要な措置を講ずる責務を有しておりますし、こうした責務、あるいは各種個別法、例えば鉱業法といったような個別法に基づきます措置、さらには地域の実情に応じて定められました各種条例、あるいはそれに対する例えば土地開発指導要綱といったようなもの、そういうものが相まって適切に環境の保全が図られることが必要である、私どもとしてもそのように考えております。

前田分科員 今、環境省の方からも御説明がありました。環境基本法の第八条にかかわる規定である、そしてほかにも関係法令もあるんだと。しかし、実際に鉱業権が取得されてしまっている。

 では、経済産業省に伺いますけれども、これは一般論として伺います。鉱業を行う際には、自然環境や治水治山など、ほかの公益との調整という観点から、地元の意見を反映することが私は必要であると考えますが、鉱業権を所轄する経済産業省として、このような点についてどう取り組んでおられるのか、伺いたいと思います。

近藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 鉱業を行うに当たりましては、地域の各種公益、すなわち自然環境でございますとか治水、さらには保健衛生、文化財等々との調整が必要でございます。そのためには、地元自治体の意見を反映することが重要な課題というように認識をしておるところでございます。

 こういった観点から、鉱業法では、鉱業権の設定の出願がありました場合には、許可または不許可の処分を行います経済産業局長が関係都道府県知事との協議を行うように義務づけておるところでございます。また、この協議に当たりましては、関係都道府県知事に対しまして、地元市町村長からの意見も聴取するように指導をしておるところでございます。さらに、経済産業局長が実地調査をする場合には、地元自治体、すなわち都道府県及び市町村の立ち会いを求めることとしております。

 このように、法の運用に当たりましても、できる限り地元の意見を反映するよう努めているところでございます。

 今後とも、鉱業法の運用に当たりましては、地元自治体の意見を十分に聴取し、自然環境等のさまざまな公益との調整を図ってまいりたい、このように考えておるところでございます。

前田分科員 今、経済産業省の方から御説明がありました。都道府県あるいは地元の市町村との意見の調整もなされていくという一般論を伺ったわけであります。

 しかし、実態として、全部、地元がこぞって反対している、住民も行政も、それから議会も与野党そろって反対しているにもかかわらず、鉱業権がおりてしまったという現状があるわけであります。

 昨今のこの鉱業権の設置をめぐって、地元のさまざまな公益との調整が話題に上がっておりますのが、今私が御説明した愛知県の日進市の東部丘陵における平成十五年の採掘権の許可のケースであります。本件については、どのように具体的に地元の意見を考慮していただけたのか。また、鉱業が実施された跡地が廃棄物処理場になるのではないかという地元の懸念があるわけであります。これに対しては、どのように経済産業省として対処されておられるんでしょうか。

 地元としては、掘った後、大グランドキャニオンができる、そこに産業廃棄物が投棄されるのではないかと非常に不安で仕方がありません。これが地元住民の考えであります。その住民を代表する市議会の皆さんももちろんそう、そして佐護市長ももちろんそう。したがって、万国博覧会場の南部に隣接する地域のこの場所に大グランドキャニオンがまたできて、そこが産廃処理場になっては困るんですね。

 ですから、具体的に、今回の平成十五年の採掘権の許可のケースにおいて地元の意見をどのように考慮されたのか、また、この跡地が廃棄物処理場になるのではないかという地元の懸念に対して、経済産業省はどのようにお考えなのか、明確にお答えいただきたいと思います。

近藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 お尋ねの事例の鉱業権の設定に際しましては、地元市と市町村長の意見を踏まえまして、愛知県知事から治水や自然環境などとの調整に関する意見が提出をされたところでございます。これを受けまして、中部経済産業局におきましては、鉱業権の許可に当たり、治水や自然環境といった公益との調整の観点から所要の検討や対応を行ったところでございます。

 具体的に申し上げますと、治水の観点でございますが、中部経済産業局長が、中立的な有識者、専門家から成る地形・地質構造調査アドバイザリーグループというものを設置いたしまして、検討を依頼いたしました。そこでの検討の結果、鉱業が実施された場合の河川や地下水への影響は小さい、鉱業を実施することに問題はないという報告をいただいたところでございます。

 また、動植物への影響が懸念されるような出願の区域につきましては、調整をしました結果、その区域を除くように対応が図られたところでございます。さらに、鉱業権設定の許可の際に、これらの自然環境や治水に十分考慮をして鉱業を実施するように鉱業権者に指示をしたところでございます。

 なお、鉱業が実施された跡地が廃棄物処理場になるのではないかという懸念が地元にあることは、私どもも承知をしております。

 この点につきましては、経済産業局長は、鉱業権の設定を許可する際に、採掘跡を表土などで埋め戻して植栽により緑地を回復するように鉱業権者に指示をいたしました。同時に、事業の具体的な計画でございます施業案の認可という行為がございますが、その際にも、今申し上げた採掘跡を表土などで埋め戻して植栽により緑地を回復せよという指示の内容が具体的に反映されている施業案が提出されている旨を確認しておるところでございます。

前田分科員 今明確に経済産業省より御答弁いただきました。ありがとうございます。

 とにかく、今地元では一度も説明会も行われていない、地元住民に不安が残る。そこを経済産業省として、今言っていただきました、産業廃棄物処理場にはしないんだ、施業案でもこれがあり、きちんと処理場にはしないという案文であるので許可したんだということでございますので、きちんと最後まで見届けていただきたい。また、表土等で戻して緑地を回復するんだという御答弁もいただきました。これを地元の住民が聞けば本当に安心する要件になると思います。こうしたこの二点を、産業廃棄物の処理場にしない、そして緑地を回復するんだという件をぜひ御監督いただきたいと思います。どうもありがとうございます。

 次に、確認をしたいことがあります。林野庁に伺います。

 この万博会場の南部の東部丘陵の問題、これはまだ保安林解除がされていませんね。これは、まず確認したいと思います。保安林が解除されて初めて地下資源の採掘ができるわけではないわけでありますね。これもまた確認をしたいと思います。この二点について、林野庁、御答弁いただきたいと思います。

梶谷政府参考人 お尋ねのような鉱物の採掘を行う場合には、あらかじめ事業計画を提出いたしまして都道府県知事の許可を受けるということが必要になっております。その場合には、保安林の機能に支障を及ぼさないよう災害防止措置がきちんとなされているということが要件になっております。

 また、保安林の指定の解除は、解除予定の告示がなされた場合であっても、許可に基づく行為が事業者によって適切に行われたということを確認して初めて確定するということとしているところであります。

 なお、お尋ねの日進市の東部丘陵の保安林につきましては、現在のところ、保安林の解除の申請がなされてはおりません。このため、その解除の適否につきましては、具体的な申請がなされた段階で検討していきたいと思っております。

前田分科員 もう一つの、保安林が解除されて初めて地下資源が採掘できるわけではありませんね。これの確認をちょっとしたいですね。林野庁、お願いします。

梶谷政府参考人 保安林の解除につきましては、先ほど申し上げましたように、あらかじめ提出されました許可を受けた事業計画のとおり事業者がその措置を実施したという段階になって初めて確定がなされるということでありますので、確定前に計画に基づいて事業を行うということが基本になっておるところであります。

前田分科員 今伺いましたように、まだ保安林解除がなされていない。では、この東部丘陵の今現在の当地の監督責任者はだれですか、明確にしていただきたいと思います。

梶谷政府参考人 こういう場合、都道府県知事が事業に際して行った許可に従いまして採掘事業及び災害防止措置の実施を監督することになっておりますので、まだ現状保安林ということでありますので、都道府県知事が監督権限を持っておるということであります。

前田分科員 今お答えいただきましたように、保安林解除がなされていない状態にあっては、都道府県知事、この場合は愛知県知事でありますけれども、愛知県知事がこの当地の監督責任者であるということであります。

 ということは、愛知県知事が、これは産廃ではなくて、土砂で、表土等で埋め戻して植林をして原状復帰を見届ける責任があるわけでございますね。林野庁、確認したいと思います。

梶谷政府参考人 都道府県知事は、埋め戻しなどの措置あるいは災害防止の措置、こういったものを適切に行っているということを確認する責任がありますし、それまでの間は都道府県知事が従来どおり保安林の監督を行っていくということであります。

前田分科員 これに反して、産業廃棄物がもし埋められた場合、どのような罰則規定があるわけでありますか。林野庁、お答えください。

梶谷政府参考人 仮の場合でありますけれども、産業廃棄物の持ち込みなど、都道府県知事の許可を受けていない行為が行われた場合には、都道府県知事は、森林法に基づきまして、当該行為の中止あるいは必要な復旧措置をとるよう命令することができるということになっております。

 これによって、保安林の機能を維持されるように措置されるというふうに考えているところであります。

前田分科員 今、別の答弁もあるようだと思いますので、またお答えいただきたいと思います。

南川政府参考人 廃棄物処理法に基づきまして産業廃棄物を埋め立てる場合は、まず、都道府県知事さんから最終処分場の設置の許可が必要でございます。また、処理基準に適合して処分をするということが求められておるところでございまして、これに違反した場合には、施設の無許可設置あるいは不法投棄となりまして、五年以下の懲役もしくは一千万円以下の罰金になりますし、また、特に不法投棄につきましては、法人重課として一億円以下の罰金があるということでございます。

前田分科員 ありがとうございました。

 今ずっと林野庁、環境省に御答弁いただきました。そして、きょうの一番の、私の質問に対してきちんと明確に、地元にわかるメッセージは、経済産業省の方から御答弁がありました。産廃は埋めさせない、そして表土を盛って原状回復し、緑を回復するんだという前向きな御答弁をいただきました。本当にありがとうございます。

 最後に、環境大臣にもう一度伺います。

 自然の叡智をテーマとする愛・地球博、とにかく、この環境博の隣接地で最大の環境破壊が起こることは、私は国際的にも許されるものではないと思うんですね。自然を守るという環境大臣の決意を最後にお聞かせいただきたいと思います。

小池国務大臣 人類の生存基盤であります豊かな自然環境、将来の世代にも引き継いでいけるようにということで、愛・地球博はそんなことも一つの大きなメッセージとして伝えておられると思います。

 そういったことで、国民のライフスタイル、それから事業活動のあり方を根本から見直す、それによって環境と経済が統合された社会の実現を図っていかなければならないと思います。

 せっかくことしは我が国で万博が開かれるわけでございますので、期間中に大いにこういったメッセージが万博から発せられますように、また、環境省といたしましても、環境と経済の統合というこれまでの政策をさらに声を大きくして伝えていきたい、このように思っているところでございます。

前田分科員 本日は、愛・地球博、環境万博の南部における日進市東部丘陵、ここでの鉱業権の許可に伴う地下資源の採掘、これに住民が懸念を表明しているということをまず発端として質問させていただきました。

 経済産業省、そして環境省、林野庁にいい御答弁、しっかりとした御答弁をいただきました。これからも、この地の環境が守られるように、そして、この日本の環境博の隣接地で環境破壊が起こらないように、環境省もぜひ見守っていただきたい。経済産業省も、しっかりとこの施業案を守るべく監督していただきたいと思います。

 本日は、ありがとうございました。

鈴木主査 これにて前田雄吉君の質疑は終了いたしました。

 次に、松野信夫君。

松野(信)分科員 民主党の松野信夫です。私の方からは、水俣病の問題について御質問をさせていただきたいと思います。

 御存じのように、昨年の十月に最高裁の判決がありまして、国と熊本県の責任が認められた。これを踏まえて、熊本県、そして国の方でどういう対策をとるかということがまさに喫緊の課題だ、このように考えております。

 環境省の方からは、平成十七年四月七日付で、「今後の水俣病対策について」という書面が明らかにされております。きょうは、この書面に基づいて、この趣旨等をただしていきたい、このように思っております。

 まず、この四月七日付の「今後の水俣病対策について」という文章の前文のところで、「すべての水俣病被害者に対し謝罪の意を表する。」とか、あるいは「すべての水俣病被害者の方々が地域社会の中で安心して暮らしていけるように」「以下の対策を講ずる」、こういうようなくだりがあります。

 それで、私の方で、この「すべての水俣病被害者」というのは一体どういうものを指すのかということで、内閣に対して質問主意書を出させていただきました。それに対する回答を四月の二十二日にいただいておりますが、その回答によりますと、「すべての水俣病被害者」というものは、公健法第四条第二項の認定者、そして水俣病総合対策医療事業の該当者、最高裁等の確定判決における認容者、そして、今後再開することとして、実施要領に規定する保健手帳の交付の対象となる者等を考えている、こういう答弁をいただいております。これはこれで私なりに一つの前進ではあるというふうに見てはおります。

 従来は、環境省の回答というものは、公健法で認定された者は水俣病ではある、しかし、それ以外の者は水俣病ではない、水俣病の被害者でもない、こういう非常にかたくななというか、現実を必ずしも直視していない、こういう姿勢に終始をしていたというふうに思います。しかし、今回の四月七日付の書面あるいは答弁書をいただいて、公健法で認定された者以外も水俣病の被害者というようなことになっているわけです。

 これは従来の環境省の考え方を実質的に変更したものなのか、もしそうだということであると、その変更の理由は何なのか、まずこの点について大臣にお聞きしたいと思います。

小池国務大臣 昨年十月の最高裁の判決を受けまして、これまで作業を進めてきたわけでございます。できれば年度内にこの発表もしたいという思いでございましたけれども、最後のまとめに若干時間もかかりまして、四月七日に発表をさせていただいたということでございます。

 お尋ねの件でありますけれども、「すべての水俣病被害者」という点で、公健法の認定を受けた方、それから総合対策医療事業の対象者、関西訴訟最高裁判決などの確定判決で損害賠償請求が認められた方、それから今後再開することといたしております保健手帳の交付対象となる方などを考えているところでございます。その家族、遺族も含むわけでございます。

 こういったことで、これらの方々については、被害の状況の点ということでは、まさに人さまざまだと思います。しかし、水俣病によって被害を受けられたという点では同じではないかという考え方から、今回の対策におきまして、「水俣病被害者」という言葉を使わせていただいたわけでございます。

 いずれにいたしましても、この七日に発表させていただきました「今後の水俣病対策について」でございますけれども、すべての水俣病被害者の方々が地域社会の中で安心してお暮らしいただけるようにという思いで示させていただきました。そして、この対策をできるだけ早く実施できますように努力をしてまいりたい、このように考えているところでございます。

松野(信)分科員 ちょっと念のために確認をしておきたいと思いますが、従来は、例えば、総合対策医療事業の該当者というのはどういうものかといいますと、公健法上の水俣病の認定申請は棄却されたけれども、メチル水銀中毒による健康不安を訴える者というような形で、健康不安を訴える者について一定の、例えば医療だとか、いろいろな施策を講じよう、こういう形になっていたわけです。

 そうすると、確かに健康不安を訴える方から見ると、医療給付をしていただくということは大変ありがたいことではあるんですが、しかし、一体自分は何なんだと。本人は水俣病だというふうに思っている、あるいは水俣病の被害者だというふうに思っているんですが、従来は、必ずしも被害者だというような判断というのはなされないで、何やら健康不安を訴えるからというようなことで、極めて福祉的な観点でしか物が見られていなかった。その辺を今回は大きく変えて、そういう人たちも水俣病の広い意味では被害者だ、こういうふうに考えを改めたんだ、こういうふうに理解してよろしいですか。

小池国務大臣 先ほどお答えしたとおりでございます。症状などによっては人さまざまということでございますけれども、いずれにいたしましても、水俣病問題で被害を受けられたという点では同じであるということから、水俣病被害者、このような言葉を使わせていただいているわけでございます。

松野(信)分科員 そうすると、必ずしも単なる恩恵的な、福祉的なものではない、こういうふうに理解ができるかなと思います。

 今回のこの四月七日の環境省の水俣病の対策の中身を少し見ていきたいと思いますが、大きいところは、要するに、総合対策医療事業を拡充しますと。保健手帳を再開し、保健手帳については、従来は、例えば通院の回数が五回あるいは七千五百円というアッパーリミットがあったものを取っ払って、医療費の自己負担についてはカバーしよう、こういうことであろうかと思います。それはそれで一つの施策としては理解できなくはないんですが、しかし、現実には、患者さんたちはそういう施策に対してはかなり強い反発を出している、これが実態であります。

 そうすると、今回は保健手帳だということになっているんですが、なぜ医療手帳というような形にはならないのか。私ども民主党の方は、既に民主党は民主党としての対策の案を明らかにしておりまして、これは実質的にはいわゆる医療手帳並みということで、医療の給付とそして一定の療養手当というものを支給すべきだ、このように言っているわけです。

 今回はそうはならないで、医療手帳の交付でなく保健手帳の交付だというふうにとどめた理由は何なのか、この点について明らかにしてください。

滝澤政府参考人 平成七年の政治解決におきまして、当時の与党三党の高度の政治判断によりまして総合対策医療事業が再開されたわけでございます。長きにわたる裁判等の和解といった側面も踏まえまして、医療手帳交付者に一時金の支払い等が行われたわけであります。このような性格を持つ医療手帳につきましては、今回、行政としての申請再開を行うことは困難であると判断したわけでございます。

 また、御指摘の療養手当につきましても、こうした政治解決時において、申し上げました一時金とあわせて位置づけられたものと承知しておりまして、保健手帳の再開に当たりましてこれを給付するということは適当でないと判断したものでございます。

松野(信)分科員 どうも、とても納得できる答弁じゃないですね。

 保健手帳については、現実に拡充をしたわけです。従来の保健手帳では言うならアッパーリミットがあったのを取っ払って、医療については青天井まで認めましょうというふうに、ある意味では、保健手帳をその平成七年の政府解決策の時点よりふやしているわけですよ。医療については青天井にするという形で拡充するのであれば、さらに、我々が提案しているような形での、療養手当をつけるという形で拡充をするということも、私はこれは十分考え方としてはあり得るというふうに思います。

 ある意味では、どこで切るかというところで、医療を全額見ましょうというところで切るのか、さらに療養手当をつけましょうというところで切るのか。私は基本的には質的にそう大きな差はないというふうに思っているので、今の説明では医療手帳の面から御説明がありましたけれども、今再開しようというのは保健手帳ですから、だから保健手帳の中身をもっと拡充するということは十分にできるわけでありまして、そういう意味からすると、療養手当の支給がなぜできないのか、もう少し実質的な理由があるんじゃありませんか、どうですか。

滝澤政府参考人 十月に判決が出ましてから、年末年始、関西原告の方々、また政治解決に応じていただいた団体の方々、数十人、直接、私もいろいろと意見を聞いてまいりました。その中で、やはり要望として一番優先度の高いものとして、日々の医療費というお話が一番強く要望としてございました。

 そうした状況も受けまして、今回御指摘のように保健手帳を大幅に拡充しまして、医療費の自己負担分については全額支給、それから、はり、きゅう等々の条件についても制約を撤廃するということを措置したわけでございまして、多くの方々にこうした改善した保健手帳を行き渡らせることによって、日常的な医療費という意味での対応に資するものと考えております。

 御指摘の療養手当につきましては、繰り返しになって恐縮でございますが、平成七年当時、裁判等の和解という視点から一時金と同時に療養手当が加算されたという性格であるというふうに承知しておりますので、今回の保健手帳の拡充の性質の延長線上には位置づけなかったということでございます。

松野(信)分科員 現地の被害者の皆さんが、毎日毎日の医療については早く給付をしてほしい、これは今部長が言われたように、現実の要請としては確かに強いものがあります。私も現地に行ってその点は確認をしております。

 しかし、では、現地の被害者の皆さん方は、それだけで結構ですよ、それだけでもう十分ですよというふうな言い方をしているかというと、これは絶対そうではないわけであります。もうその辺は十分御認識はしておられると思いますけれども、かなり強い反発が患者団体の方からは出ている。患者さん個々人からも出ている、到底こういうような状況では、医療費だけでもう満足だというふうにはなりませんよというのが、まさに今の現地の実態であります。恐らく現地に行かれている部長は御認識をされているんじゃないかと思います。

 それで、今回こういう施策をして、最高裁判決以降、公健法に基づいての認定申請者というのは最新の情報で大体千七百人ぐらいになっているはずです。もう既に熊本県は千人を超えるというような状況になっています。現地では大変な問題になっているわけで、この四月七日の環境省の案によりますと、保健手帳をもらうには、公健法の認定申請を取り下げないとこの保健手帳はもらえない、医療給付を受けられない、どうもこういうような仕組みになっているようであります。その点も一つ大きな反発の要因になっているわけです。

 そうしますと、恐らく環境省のもくろみとすれば、この環境省の対策に皆さん乗ってきていただいて、保健手帳をもらって、それで公健法上の認定申請は取り下げてもらう、続々と取り下げてもらう、恐らくそういうようなことを念頭に置いているんじゃないかな、こう思うんです。

 しかし、実際には、環境省のこの案では、公健法上の認定申請を取り下げるという人は、現地の状況からすればもうごくごく一部だ。まさに、そうなってしまうと、環境省の描いた保健手帳を給付することによって解決しようというのは、全く絵にかいたもちになってしまう、こういうふうに言わざるを得ないと思います。別に私は民主党の宣伝をするわけじゃないんですけれども、民主党の案であれば、恐らく九割の人が大体御了解いただけるんじゃないかな、このくらい思っています。

 環境省の案で千七百人に今なろうという認定申請者は、では、一体どれくらい認定申請を取り下げて、環境省の方の言う保健手帳の再開に乗ってきていただけると認識をしているか、何割ぐらい来てくれるというふうに考えているのか、その辺のもくろみはどうなっていますか。

滝澤政府参考人 現在、千六百五十七名、四月二十二日現在ですが、申請があるというふうに伺っております。

 私ども、この保健手帳を改善して御希望におこたえするということを決めたわけでございますが、四月七日に発表して以来、実は、先週の二十日にも、私、個別に地元の団体に説明に行ってまいりました。まだまだ内容的な、こういうふうに変わるんだ、こういう点が非常に改善されているんだということの周知を十分にこれからしていかなければならないと思います。

 例えば、今まで保健手帳には、はり、きゅうも含めまして月に七千五百円という定額の上限がございました。これは、一般の保険医療で言うところの療養費払いをせざるを得なかったわけでございますが、今回、医療費の自己負担分を全額支給ということになりますと、療養費払いという厄介な手続を踏まないで済む、そういうことを二十日に申し上げたら、ああ、そうなのかというような反応もございました。この辺、私ども提案者でございますから、これから、熊本県、鹿児島県も含めて、十分対象となり得る方にその趣旨、利点を説明していくということに努力をしていかなければいけないと思っております。

 ただ、御指摘のように、公健法の申請をそのまま続けていらっしゃる方、あるいはこの保健手帳の受け付けをなさる方、それは個々の申請者の、あるいは受付者の判断ということになりますので、私ども、制度として必ずしも、その申請の取り下げを前提とするというようなことが一部メディアにも報道されたことがございましたが、御本人の選択である、それから趣旨を十分徹底していく、こういうことを十分にこれからも説明してまいりたいと考えております。

    〔主査退席、長浜主査代理着席〕

松野(信)分科員 趣旨を説明していただくというのは当然のことで、それはそれで結構ですけれども、しかし、今の部長の答弁ですと、どれくらいの人が環境省の案、つまり、保健手帳の再開に乗ってきていただけるのか。今のところ皆目まだ見当もつかない、こういう状況で本当に大丈夫だろうか。それは確かに、被害者の皆さんは、選択の自由、どっちを選択するか、それはあるかもしれませんが、環境省が本当に自分の出している案がすばらしいということであれば、どうぞ皆さん、こちらにいらっしゃい、そういうようなことを自信を持って言えるぐらい、そういう案をぜひ出していただきたい。どうも今回の案は、今の部長の答弁を聞いていても、自信を持って被害者の皆さんにお勧めできるようなものとはかけ離れているのではないか、こういうふうに言わざるを得ないかと思います。

 それで、今答弁いただきましたように、千七百名近い方が最高裁の判決以降、認定申請をされていらっしゃる。まさに、かつてないような急増という状況であります。これは、私、手元に持っているのは、四月二十三日の地元の熊本日日新聞の夕刊ですけれども、熊本県では認定申請者がもう千人を超えた、「潜在被害者続々表面に」というようなことで、記事に、一面のトップになっています。しかも、注目すべきことは、この認定申請者のうちの九割が初めて認定申請する、こういうような方になって、ある意味では、これまで埋もれていた人が続々と認定申請をしている、こういう状況にあるわけであります。

 このように認定申請が非常にふえている、この辺については、どのように大臣は分析し、お考えになっていらっしゃるんでしょうか。

    〔長浜主査代理退席、主査着席〕

小池国務大臣 今回、最高裁判決の後で認定を申請しておられる数でございますけれども、今、それは二十三日の新聞ですか。(松野(信)分科員「二十三日」と呼ぶ)そうすると、四月二十二日現在の数字で千六百五十七名ということで聞いております。このうちの約七割の方が、これまでに公健法であるとか総合対策医療事業の申請を行ったことがないという方だとも聞いております。

 その理由についてはそれぞれ違いもあると思います。また、その申請の理由そのものについては私も承知をしておりませんけれども、これまでの長い水俣病の歴史の中から判断すると、差別とか偏見を受けるのではないかというような懸念をこれまで感じておられたりした方、それから、政治解決時のとき、あれは六カ月の申請期間だったわけですけれども、その情報が乏しかったりしたために申請を行っておられなかった方々、こういった方々が最高裁の判決を契機として認定申請を行っているというケースもあるのではないかな、このように推測もしているわけであります。

 皆さん、症状についてはさまざまだと思います。そしてまた、今回、保健手帳の交付の再開で、医療費の全額支給ということで、皆さん、そういったさまざまな症状にお悩みの方々に対して、その症状に応じた必要な医療が自己負担なしに受けられるというような環境整備については、地元の皆様方のニーズにも即しているものではないか、このように考えているわけでございます。

松野(信)分科員 今大臣の御答弁の中で、初めて認定申請をするという人が七割だというふうにお話がありましたけれども、私が聞いているのでは九割だというふうになっているんですが、そういうことじゃありませんか。

滝澤政府参考人 ただいま大臣がお答え申し上げたのは、公健法への申請と、それから、平成七年の政治解決時の総合対策医療事業への申請をしたことがある人を除いて七割という数字でございます。先生御指摘の九割近くというのは、公健法の申請に初めてする方、これが約八六%という状況でございます。

松野(信)分科員 いずれにしろ、要するに、初めて認定申請するという人がこれだけふえている。私も現地の方に行きましたけれども、これこそもう最後だとせっぱ詰まった思いで認定申請をする方が非常に多いということでございまして、今大臣も言われましたように、症状も非常にさまざまだ。軽症の方もいらっしゃる。しかし、軽症の人ばかりではない。中等度の人、それから非常に重症、重い方もおられる。今大臣も言われたように、そういうさまざまな症状がある、それが現実でありまして、それに見合った形でやはり被害者の皆さんへのケアをしていく必要があろう、このように思います。

 今回、四月七日付の環境省のこの対策案についても、公平性、公平性ということをしきりに強調もしておられるようであります、従来との比較の関係で。それで、考えてみますと、症状もさまざまなのに、しかし、今回給付をするというのは医療費の個人負担部分しかないというのは、やはり症状がさまざまで、現実に給付するのは医療費の分だけだというので、この辺はどう見てもバランスが悪い、こういうふうに言わざるを得ないと思います。

 従来、例えば四肢末梢性の感覚障害ありという人は、医療手帳が給付されて、一時金も出たり療養手当も出たりしたわけです。では、今度、現在、四肢末梢性の感覚障害がはっきり認められるという人については、環境省の案では保健手帳の医療費しか出てこない、こういうことになってしまって、そうだとすると、症状がさまざまだというのはお認めになりながら、その辺のところは余りどうも配慮されていない。医療手帳の方が給付されないというのは、やはりこの点から見てもおかしいのではありませんか。

滝澤政府参考人 保健手帳の受け付け、それから判定手順等々につきましては、熊本県、鹿児島県と今後協議して決めていく予定にしております。

 御指摘のように、平成七年のときの医療手帳配付の基準、それから保健手帳の配付の基準、それぞれございました。ただ、それを、今回、保健手帳をこのように改善したということによって、どのような手続で配付していくかということは、今後詰めてまいりたいと考えております。

 それから、症状の重い、軽いによって云々というお話がございました。これも繰り返しで恐縮でございますが、医療手帳の手当それから一時金は、七年当時の裁判等の和解という意味での性格づけがなされているということで、それ以外の部分については医療手帳と保健手帳の差が今回ほとんどなくなった、大半の医療等の給付については対応できるというふうに考えておりますので、症状の重い、軽いということも含めてのカバーができるのではないかと考えております。

松野(信)分科員 今、部長の答弁で、今回の施策で医療手帳と保健手帳の差がほとんどなくなったというふうに言われましたけれども、しかし、一番重要な点は療養手当があるかないか、この差は埋まっていないわけですね。その点だけは指摘しておきたいと思います。

 さて、時間が余りありませんので、今度、五月一日に水俣現地の方では慰霊式が行われるということで、大臣も出席をされる、そして、現地での新しい患者団体もできているわけで、そうした患者団体とも面談をされるというふうに聞いております。

 先ほど申し上げたように、私が聞いている多くの患者団体は、今回の環境省の案に対してはかなり反発が強いということであります。ぜひ、大臣も直接その辺を御確認していただいて、今回のこの環境省の案では到底患者さんたちの納得は得られない、これは下手すると絵にかいたもちになりかねない、私はそういうふうにも思うわけであります。

 五月一日、患者団体とどういうようなことをお話し合いになられるか、そのときに大臣の思いはどのように述べられるのか、その点について答弁をお願いします。

小池国務大臣 来年はちょうど水俣病の公式発見から五十年。その前の年のことし五月一日、私も昨年と同様に参らせていただくことになっております。一日の日には、平成七年に政治解決を受け入れられた皆さんの団体であるとか、現在認定申請を進めておられる団体の方々など、さまざまな立場の方々とお会いをしようということで、今スケジュールに入れさせていただいているところでございます。率直に言って、虚心坦懐に御意見を伺いたいと思っております。

 被害者の方々には、それぞれの御意見、お考えがあるということも承知をいたしているところでございます。来年、ちょうど発見から五十年という節目の年でもございます。そういった意味でも、今後とも、今回の案に対しても、そしてまた、これからの環境行政に対しても、皆様方から十分に御理解が得られるように、そういう時間を持ってまいりたいと考えているところでございます。

松野(信)分科員 時間が参りましたので終わりたいと思いますが、ぜひ、今後の水俣病対策としてはスピードアップも考えていただきたい、この点だけは申し上げたいと思います。

 昨年十一月二十九日に、「今後の水俣病対策について」ということで、熊本県は熊本県の案を出している。今度、環境省から四月七日に、題目は全く同じ、「今後の水俣病対策について」というのがようやく五カ月おくれで出てきました。私も熊本県の担当者といろいろお話しする機会が大変多いんですが、もう少し環境省が真摯に取り合っていただいて、スピードアップを図ってもらいたい、これは率直な声ですので、その点だけお伝えして私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

鈴木主査 これにて松野信夫君の質疑は終了いたしました。

 次に、三日月大造君。

三日月分科員 民主党の三日月大造です。

 きょうは、決算行政監視委員会の分科会、環境省に関連することについて三十分時間をいただいておりますので、地域から切実なる住民の方々の声を持ってまいりました。ぜひ、環境大臣、そして環境省の皆様方と意見交換をしたいと思います。

 まず冒頭、きょうの午前中、兵庫県尼崎市でJR福知山線の事故が発生しました。現時点で確認されておる数だけで、約五十名の死者の方、そして三百名を超える負傷者の方と。亡くなられた方々にお悔やみを申し上げながら、被害に遭われた方にお見舞いを申し上げたいと思います。

 私もJR西日本で電車の運転士をしていました。それだけに、事態の重大さ、深刻さに胸を痛めているところであります。なお続く救出、治療、手当てに対する支援、そして原因追求も含めて、再発防止のための取り組みに全力を挙げていく決意を冒頭、表明したいと思います。

 それでは、まず琵琶湖の水質について。湖沼、いわゆる湖や沼というものに対する水質の現状についてどのような評価をされているのか。

 御案内のとおり、湖沼というものは、水資源の確保、水産資源の育成、そして治水、利水、さまざまな面で重要な役割を果たしています。しかし、汚濁物質はまだまだ増加をしておりますし、湖沼という特性上、閉鎖されていたりするものですから蓄積されやすい、その水質に顕著な改善傾向が見られないと、昨年夏に出された総務省の湖沼の水環境の保全に関する政策評価においても厳しい評価を与えられております。

 そういう評価も受けて、今国会において湖沼水質保全特措法の改正が審議されて、これまでの対策に加えて、汚濁負荷の流入を防ごう、入ってくるものを防ごうということで、農地や市街地、いわゆる広い面からの流出水対策をとろう、工場、事業場に対しても規制を強化しよう、また、自浄作用を強化させるために湖の周りの環境保護についての取り組みを強化していこうといったことも検討、計画されています。今、国会で審議をされています。このことには評価もしたいと思います。

 日々、琵琶湖を眺め、私自身、選挙区でもありますので、水資源、景観の恵みを受けております。ぜひ、冒頭、琵琶湖を例に、湖沼の水質についての現状と、湖沼水質保全特措法の改正も含めた今後の対策等についてのお考え方について、大臣、お伺いできますでしょうか。

小池国務大臣 冒頭、列車事故のお話がございました。事故が起きたのは尼崎なんですけれども、それに乗っている人たち、また多くの被害者の方々は実は私の選挙区でございまして、大変心を痛めているところでございますし、また、北側大臣、そしてまた政府に対して私の方からも各種お願いをしていこう、このように考えているところでございます。

 それから、お尋ねの湖沼の問題、特に琵琶湖を具体的な例として、どうかということでございます。

 湖沼水質保全特別措置法でございますけれども、指定湖沼に流入します汚濁負荷の量は、近年は着実に削減がされてきているところでございまして、例えば琵琶湖につきましても、下水道、それから浄化槽の設置が推進されたり、工場、事業所からの排水規制などの各種の施策は実施はされてきたということでございます。

 こういった努力の結実ということで、一部の指定湖沼では水質改善が見られるんですけれども、指定湖沼全体となりますと、残念ながら環境基準の達成率は依然芳しくないというような状況でございますし、また琵琶湖でも、例えば幾つかの目安ではよくなっているものもありますけれども、CODであるとか窒素の環境基準についてはいまだ達成されずというような状況でございます。

 今御質問にもございましたように、そういったことを踏まえまして、湖沼の水質を改善しなくてはならないということから、湖沼水質保全特別措置法の改正案を、二十年ぶりに改正をするということで、今国会で御審議をいただいているところでございます。

 ポイントだけ申し上げますと、これまでの施策に加えまして、農地とか市街地などから流れ出ます汚濁負荷の削減対策をより重点的、集中的に推進しようということで、そういった対策の地区制度を新設しようということが一点。それから、水質改善に役割を果たしますヨシ原、ヨシなどの湖辺の環境の保護を図ろうということで湖辺環境保護地区制度を設けるということ。三つ目に、指定地域内の既設の工場などに対して負荷量規制を適用する。これまでは新設のみだったのが、これから既設の、もう既にある工場にもそういった規制をかけていこうということでございます。

 これによりまして、湖沼の水質が守れるように努力をしてまいりたいと考えております。

三日月分科員 丁寧に御説明をいただきまして、ありがとうございます。

 残念ながら、いろいろな対策をとってきているけれども、水質環境基準に照らし合わせてまだまだ汚れが改善されてきていないというような実情があります。

 今回、それを受けて、より広い発生面源に対しての取り組みや基準を強化されたということなんですけれども、特に琵琶湖のような大きい湖では、湖面降雨、湖の上に流れ落ちる雨、そして地下水からの汚染、汚濁というものも私は軽視できないと思っています。事実、環境省の方でまとめられた発生源別汚濁負荷量の割合を見ても、全窒素、全燐の発生源として、地下水が五%、七%、そして湖面降雨で九%、五%と、約二〇%近い、発生源としての湖面降雨、地下水といったものが考えられているんですけれども。

 ぜひ、この地下水を発生源とする汚濁、汚染の状況について、研究の進捗ぐあいも含めて、今後の対策に対する考え方も含めてお聞かせをいただければと思います。

甲村政府参考人 委員御指摘のとおり、琵琶湖に対する汚濁負荷の割合でございますけれども、いわゆる地下水それから降雨につきまして、委員がおっしゃったような数字でございます。

 一つは、まず地下水でございますけれども、地下水に含まれております主に窒素、燐、CODにつきましてはほぼゼロ%で余り大きな値ではないんですが、窒素ですと五%、燐ですと七%ございます。この原因といたしましては、いわゆる農地等にまかれた肥料等が雨に伴って地下に浸透してきて、それが琵琶湖の方に出てくるということで、そういうことの、いわゆる面源に由来しているものと考えられます。

 あと、降雨につきましては、これは大気一般でございますし、いわゆる大気汚染とも関係してくるわけですけれども、自動車のNOxだとか等の大気の汚濁、汚染源が降雨あるいはちり等になって入ってくるということでございます。

 大気等につきましては、大気汚染防止とともに、しっかりと規制してまいらなければなりませんし、地下水につきましては、先ほど大臣が申しましたように、今回提出しております湖沼法の改正案で、いわゆる農地、市街地等から流れ出てくる汚濁負荷の削減対策を重点的あるいは集中的に推進する対策地区制度の新設を盛り込んでおります。こういう中で、例えば農地の対策といたしましては、過剰な肥料の使用の抑制など、適正な施肥の実施等を想定しているところでございます。

 こういう対策を実施することによりまして、農地にまかれた肥料等が雨によって地下に入ってくるという量を減らせますので、地下水に含まれます汚濁負荷の減少にも資するものと考えております。

三日月分科員 ぜひ地下水も、地上を流れる水だけではなくて、そしてまた、きちんと処理されるルートを流れる水だけではなくて、こういう大きな湖に対しては、汚染の影響を与え得る発生源になるといった観点からの取り締まり強化を要望しておきたいと思います。

 若干、川上に上ります。

 今は川下、琵琶湖の話をしましたけれども、地下水にも、地下水の汚染の原因になってしまっている可能性の高い産廃処分場のあり方について、また、その維持管理に関する環境省の見解をただしたいと思います。

 昨年もこの決算行政監視委員会で御報告をし、取り上げました滋賀県栗東市にありますRDエンジニアリング処分場についてです。私の地元選挙区であります滋賀県の栗東市にありまして、昭和五十四年に安定型処分場として事業許可を受けて、平成十年五月に埋め立ての終了をしています。

 これは、ずっと、埋め立ての期間中も、またその後も、煙の被害、においの被害、ガスの被害、水の汚染、平成に入ってから次から次へと出てきた環境悪化事案によって地域住民を悩ませて、苦しめて、不安に陥れています。

 地域の方々も立ち上がられて、そして、滋賀県を初めとする行政また業者も動かしながら、数度にわたる改善命令が発せられて、現在も、平成十三年十二月に出された改善命令に基づく工事を実施しているところであります。

 この改善命令については、審査過程において、私の方から大臣に、長期に及んでいる不服審査の早期の回答を出していただくようにという御要望も申し上げて、昨年一月下旬に出された棄却によって現在この工事が行われているところであります。

 この四項目のうち、現在は、周縁地下水汚染防止のための措置として、平成十年に、粘土層を突き破って掘って埋め立てを行った地点において、廃棄物を移動し、浸透水の流出防止対策を講じるという工事が行われております。当然のことながら、現在も、滋賀県、栗東市、業者そして地域住民とが協議、監視を継続しているところであります。

 ぜひ、現地の環境を一日も早く改善、修復すべきだ、住民の方々の安全、安心をつくり出さなくちゃいけない、そのための原因追求、対策を早急に講じていかなければならないという強い使命感で、以下三点にわたって確認をしたいと思います。

 まず、硫化水素についてです。

 これはいっぱいいろいろなものが出てきていますからたくさんあるんですけれども、きょうは三点に絞って御見解をお伺いします。

 この処分場では、平成十一年十月に、最高一四三ppmもの硫化水素ガスが検出されました。県も調査委員会を設置されて、ガスの発生原因のうち、硫黄の供給源は石こうボードの可能性が高く、有機物は、個々の地点が低濃度であっても、鉛直方向での蓄積により、硫酸塩還元菌が利用しやすい有機物量の増加をもたらしているものと考えられる。これは平成十三年五月に報告を出しています。この対応、対策として、土を覆いかぶせる、覆土案というんですかを提案されましたけれども、住民の理解を得られず、調査が継続中ということになっています。

 国は、これは旧、部署が厚労省の管轄だったときに、福岡県筑紫野市ではこの硫化水素の発生によって三名の方が亡くなられた、あわせて、栗東市の処分場においても硫化水素が発生したという事案を重く見て、平成十二年九月に「廃棄物最終処分場における硫化水素対策検討会報告書」というものを出しているんですね。

 この調査報告書の中において、滋賀県栗東市の事案についても、周辺地域でもガスが検知され、処分場内のボーリング調査においても、孔内から最高一万五二〇〇ppm、その後は最高で二万二〇〇〇ppmを検出していることが報告され、この発生事態については、ガス抜きが進んだ後、掘削調査を行い、原因究明、改善対策等を進める予定と総括、報告をされています。

 また、これは国が出された報告書なんですけれども、最後に、今後の対策というところで、高濃度の硫化水素発生原因については現段階の知見により可能な範囲内での推論を示したが、今後さらに調査研究が進められるとともに、硫化水素の発生メカニズムやその他の対策については、具体的な安定型最終処分場についてさらに詳細な調査を実施した上でより具体化させることが必要であるというふうに締めくくっているんですね。

 高濃度五〇〇ppmの硫化水素を吸引した場合、死に至る場合もあると言われるこの硫化水素について、現時点での原因追求、対策について、国としてどのような評価をされているのか、見解をお伺いしたいと思います。

南川政府参考人 お答えいたします。

 硫化水素、これは各地において大変な問題を引き起こしております。

 御指摘のとおり、九州の筑紫野の産興というところで三人の労働者が亡くなっておりますし、また、栗東でも問題を引き起こしているところでございます。

 対策につきましては、先生の御指摘のとおり、硫化水素を吸収するような火山灰土壌で埋め立てる、あるいはガス抜き管を設置して、換気によって放散するといったことが当面の対策としてあるわけでございます。

 今後につきましては、まず、栗東につきまして、現在、県あるいは市などにおいて硫化水素のモニタリングがかなり精緻に行われているところでございますし、また私どもも、現地、ことし三月でございますけれども、担当を派遣して視察をしたところでございます。そういった各種の情報を集めながら、今後の硫化水素一般についての対応を考えていきたいと思います。もちろん、そういった健康影響直のもの以外にも悪臭問題もあるわけでございまして、そういう意味でも広範な研究が必要だと考えております。

三日月分科員 ということは、まだ調査を継続中であって、今後、県、市そして業者も含めて、対策を講じるために引き続き取り組んでいかなければならないという認識でよろしいですね。

南川政府参考人 まず、本件につきましては、今後とも県あるいは市のモニタリング調査を注視しておりまして、それによって、基準を超えるといったことがあれば、さらに対策が要ると思いますし、また一般的に、硫化水素の取り扱いの問題については、これはかなり研究マターでございます。したがって、国立環境研究所が中心になって現在詳細な調査をしておりまして、現時点で最終的な取りまとめ段階に入ってきておるというふうに聞いておりまして、遅くない時期にその結果がまとまるというふうに承知しております。まだ中身は聞いておりません。

三日月分科員 ぜひ研究結果を早期にまとめられて、現地での具体的な対策に充てていただきたいと思います。これは、国として報告書を出していますので、それで原因追求、そして対策に取り組むということを総括しているわけですから、国として、最終の安全確認も含めて、ぜひよろしくお願いを申し上げておきたいと思います。

 硫化水素だけじゃないんです。ダイオキシンの存在、検知も大きな不安の一つになっています。これは、先ほど私が、川下の琵琶湖に対する汚染という観点から、地下水汚染の放置という観点からも非常に重大な問題だと認識をしています。

 これも昨年の決算行政監視委員会分科会の中で質問をさせていただきました。昨年の御答弁の中で、「ダイオキシンの発生の原因となる、まじっているであろうごみの焼却灰とか、そういったものについては取り除きをできる」、また「維持管理基準とは別に、ダイオキシンによる汚染のおそれがあればその原因物質を取り除くことができるということでございます」等々の御答弁をいただいております。間違いございませんね。このあたり、この後、答弁を受けてどのような対策をとられたのか、お聞かせをいただきたいと思います。

南川政府参考人 昨年の答弁でございます。これは、廃棄物の処理、埋立処分に当たりまして守るべきことということで、埋立地からの浸出液によって公共の水域及び地下水を汚染するおそれがある場合には、そのおそれがないように必要な措置を講ずることと規定されていることを基礎に答弁を申し上げたわけでございます。そのため、滋賀県におきましては、継続的にダイオキシン類のモニタリングを実施いたしておるところでございます。過去一年間のデータを見ておりますけれども、環境基準は満足されているということでございます。

 こうした調査結果から判断して、滋賀県におきましては、現時点において、ダイオキシン対策ということでRDに対して何らかの改善措置を講じさせる状況にはないということでございますが、引き続き地下水のモニタリングを実施していくということでございますので、その状況をよく見ていきたいと考えております。

三日月分科員 過去一年間は基準を超えたものはなかったということなんですけれども、それだけにしないでください。平成十五年九月二十二日は基準値の十四倍なんです。また、その後ずっと、この間、十五年三月、九月、十二月と基準値を超えるデータがダイオキシンに関してずっと出てきているんです。

 ぜひこれは、先ほども御答弁の中にもありました、廃棄物処理法施行令第三条の三号、廃棄物の埋立処分に当たっては、「埋立処分の場所からの浸出液によつて公共の水域及び地下水を汚染するおそれがある場合には、そのおそれがないように必要な措置を講ずること。」ということも規定しているわけですから、しかも、現実、基準を超えた値がずっと出てきているわけです。最近一年間でこそ若干基準を下回る値も出ていますけれども、例えば平成十年には、焼却炉の撤去に当たって四百ピコグラムものダイオキシンが発生しているという事実もあるわけです。

 こういった基準を大きく超えたダイオキシンの発生、ただ一時的だ、濁っているからだ、また処分場に起因するとは考えられないというような言い逃れに近い形でその責任や対策について二の足、三の足を踏まれている感が、住民の皆さん非常に強くお持ちなんですけれども、このあたり、いかがでしょうか。

南川政府参考人 御指摘のとおり、十五年九月のデータとしては、十四ということで、いわゆる環境基準の十四倍の数字が出ているということは承知をしております。ただ、その後実はどんどん下がってきておりまして、なぜこういう数字が出たのか、これはわかりません。わかりませんが、現に県の方で改善命令を講じて措置を講じておるということで、一応の成果は出てきていると考えております。

 ただ、ダイオキシンにつきましては、高い値が出たことについて、理由については、調査したということでいろいろ経験者から聞いておりますけれども、はっきりしたことはわかりません。

三日月分科員 はっきりしたことがわからないから引き続き調査をして、そして現時点で、過去に検知された非常に大きな数値のダイオキシン、これは雨が降ればしみて地下水に含まれて流れ出ているわけですね。周辺の農業用水や井戸水に多大なる影響を及ぼしていることが懸念されているわけですね。この点について、ぜひこれは早急に対策をとる必要があると思います。

 これを、ただ調査をしています、先ほども、調査の結果がまだ把握できていませんというような答弁がありましたけれども、これは早急な対策が私は必要だと思います。改めて御答弁をお願いします。

南川政府参考人 埋め立てが原因で地下水汚染などの生活環境上の支障が認められれば必要な措置を講ずるのは当然でございます。県でこうした基準を遵守するように、遮水工事、ガス抜き、モニタリングを行っているものと承知しておりまして、今後新たな事態が発覚すれば、その状況に応じ適切な是正措置を講じていくのが必要だというふうに考えております。

三日月分科員 ちょっとここは私こだわりたいので改めて聞きますけれども、新たな事態が発生すればということじゃないんです。ちゃんと過去に出ているんです。このことに対する原因追求と対策を講じるべきだと言っているんです。いかがですか。

南川政府参考人 十五年の汚染についてははっきりとした原因がわかりません。行政として措置を講ずる場合でございますけれども、やはりその場合には、行政として根拠を示すということが必要なわけでございまして、それについて今確たる知見がないという状況でございますので、やはり現状では、モニタリングをしっかりやるという中で、仮にそのモニタリング結果で新たな問題が発覚すれば是正措置を講ずるということが行政として取り得る最善の措置かと思います。

三日月分科員 その前の答弁で、処分場に起因するものかどうかの特定ができないという御答弁がありました。これは処分場の中の井戸から出てきている地下水の数値なんです。ぜひこの部分を重く受けとめていただきたいと思いますし、原因がわからないからこれを放置するんですか。

 引き続き、これは、県がやっているモニタリング調査がありますけれども、この部分を重く受けとめた対策を国としても講じていくべきだということで、県にも強く指導すべきだと私は思うんです。県はそれを受けて、業者に対しても、倒産するのか何かわかりませんけれども、非常に経営状態が苦しい業者であっても、これは、地域に汚染物質を垂れ流しにしてしまっている可能性が高いこの処分場の維持管理に対して、強く指導ができるわけだと思いますので、この部分、国のより踏み込んだ原因追求、そして対策を要望しておきたいと思います。

 これだけじゃないんです。

 今、改善工事が行われておりますけれども、これは、地下水の粘土層を突き破って埋め立てたかもしれない、それがしみ出て地下水や浸透水に汚染物質を流しているかもしれないという懸念のもと、改善工事が実施されておりまして、そのために多量の廃棄物と土砂を掘り起こしているんですね。これが今周辺に積み上げられているわけなんですけれども、この埋め戻しについての見解をお伺いしたいと思います。

 この処分場は、御案内のとおり安定型処分場なので、ガラス・陶磁器、コンクリート、廃プラスチック、ゴムという四品目しか埋められないことになっておりますけれども、証言、目撃等々の話では多くの違法物質の混入が伝えられておりますし、実際、私も現地に何回も行っていますけれども、この深掘りの穴から掘り出された廃棄物と土壌には、許可された四品目以外の木くずや金属くずの存在も確認されております。

 この四月に出された滋賀県から住民団体への質問状に対する回答書の中で、許可品目以外の廃棄物を徹底して除去するよう、埋め戻しに当たって指導していきたいというようなことが県から出されておりますけれども、当然のことだと思います。

 その際の許可品目というものについてお伺いをするんですけれども、当然のことながら、現在の基準、平成十年六月以降に改正された、強化された基準に基づいて、私は、許可品目というもののチェック、そして撤去を指導すべきだと考えるんですけれども、いかがでしょうか。

南川政府参考人 現在の埋め戻しの問題でございます。これにつきましては、改善命令を履行するために、処分場内において廃棄物を一時的に移動させて、遮水工事完了後に埋め戻すということでございます。

 これにつきましては、新たな埋立処分ではございませんので、現行の処理基準を適用することはできないと考えております。当時の埋立基準に照らせば埋め立て可能であった、一部の石こうボードなどでございますけれども、これを現在の基準を根拠として除去させるということは困難であろうと考えております。

三日月分科員 これはだんだんだんだん厳しくなってきた基準なので、その時々、埋められた時点での基準に基づいて許可品目というものを定めて、それに違反するものについては撤去を命じることができるということだと思うんです。

 それでは、局長でも大臣でもいいんですけれども、現地へ行って見てください。どこからどこまでの廃棄物、土砂が何年に埋め立てられたものなのかというのは特定できるんですか。新たに埋め立てをされるものではないとおっしゃいましたけれども、現時点で、粘土層を突き破ったと考えられる、もちろん、遮水工事を今やろうとしていますけれども、その効果の確認も必要です。しかし、新たに埋め入れる、土の中に入れるという意味においては、新たに埋めるのか以前に埋めたのかとの違いぐらいしかないわけですよね。これは今の基準に照らして、厳しい撤去、チェックをすべきだと考えますけれども、改めていかがでしょうか。

南川政府参考人 お答えいたします。

 こういった規制につきましては、御指摘のとおり逐次強化をしております。したがいまして、平成十年の六月以前と以降で相当規制が違っております。

 このRDの会社の問題は、その直前に埋め立てが終わっておりますので、大きな変更はなかったわけでございます。ただし、少しずつ小刻みに規制強化をしましたので、それについて、可能性の問題として、その途中で、十年六月以前の段階で、規制強化で本来埋めてはいけないものがまじっていたという可能性については否定はできないわけでございます。その場合につきましては、やはりまず、強化された基準を根拠として取り除かせるということがあるわけでございますが、これにつきましては、その改善を行わせる行政側において、基準強化後に埋め立てられたということについて一定の根拠を持って示す必要があるというふうに考えております。

 それで、私ども、担当も含めて現地へ行っておりますけれども、現状でいいますと、例えばシュレッダーダストなんかについて、それがいつ捨てられたかとかいうことについて言うと、特別な記録があればともかくですけれども、現状、実際に現地へ行ってみると、山と積み上がった形になっておりまして、正直なところ、なかなか難しいなという実感を持ってまいりました。

 ただし、あくまで制度論としては、行政が証明できれば、その時点での規制強化された基準を根拠として取り除くことになるということでございます。

三日月分科員 許可された品目以外のものが埋められてしまっているということが否定できないわけなんですよね。しかも、これから埋め戻そうとするもののチェックを県もかけますと言っています。除去を指導しますと言っていますけれども、どの廃棄物が、どの土砂がいつ埋め立てられたものなのかというような特定もできないということなんですね、今の御答弁からいくと。

 ならば、今の基準、一番厳しい基準に照らし合わせて埋め戻す、土のチェックをすべきだというのが、これは普通に考えて、法律上どうなっているか知りませんけれども、施行令上どうなっているかも知りませんけれども、これは当たり前のことじゃないかと思うんですね。この点、指摘をしておきたいと思いますし、硫化水素についても、ダイオキシンについても、まだまだ原因の究明、特定、その対策というのが不十分なんですね。

 ぜひ大臣、硫化水素については、国が報告書を出して原因究明と改善を求めているわけです。決意しているわけです。ダイオキシンについても、基準を決めて汚染防止対策を義務づけているわけなんですね。これを滋賀県の監視にただ任せるだけではなくて、国の基準や報告に照らして、一体、改善状況がどうなのかという確認を私は国としてすべきだと思います。

 その点で、大臣、一度処分場を見に来てください。それで確認をしていただきたいと思います。これは栗東市も滋賀県も含めて、全国に数ある処分場の後の改善として、モデルとなるべく取り組んでいきたいという決意も持っていますので、このあたり、国の見解、所見をお伺いしたいと思います。

小池国務大臣 今後とも必要に応じまして、この問題につきましても、県に対し、助言そして指導を行ってまいりたいと考えております。

三日月分科員 何か木で鼻をくくったような御答弁で、非常に残念なんですけれども、ぜひ、切実な問題ですので、大臣、この点をお届けして、今後の対策強化を要望し、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

鈴木主査 これにて三日月大造君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明二十六日午前十時から本分科会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時七分散会


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