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第1号 平成14年4月8日(月曜日)

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本分科会は平成十四年三月二十六日(火曜日)委員会において、設置することに決した。
四月五日
 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。
      相沢 英之君    逢沢 一郎君
      岩永 峯一君    桜田 義孝君
      森田  一君    金子善次郎君
      今野  東君    手塚 仁雄君
      山名 靖英君    塩田  晋君
四月五日
 山名靖英君が委員長の指名で、主査に選任された。
平成十四年四月八日(月曜日)
    午前九時開議
 出席分科員
   主査 山名 靖英君
      逢沢 一郎君    伊藤信太郎君
      岩永 峯一君    桜田 義孝君
      金子善次郎君    川内 博史君
      今野  東君    肥田美代子君
      細野 豪志君    東  祥三君
      塩田  晋君    樋高  剛君
   兼務 井上 和雄君 兼務 石井 紘基君
   兼務 木下  厚君 兼務 楢崎 欣弥君
   兼務 三井 辨雄君 兼務 山田 敏雅君
   兼務 福島  豊君 兼務 瀬古由起子君
   兼務 藤木 洋子君 兼務 金子 哲夫君
   兼務 北川れん子君
    …………………………………
   外務大臣         川口 順子君
   文部科学大臣       遠山 敦子君
   厚生労働大臣       坂口  力君
   国務大臣
   (防衛庁長官)      中谷  元君
   外務副大臣        杉浦 正健君
   文部科学副大臣      青山  丘君
   文部科学副大臣      岸田 文雄君
   厚生労働副大臣      宮路 和明君
   厚生労働副大臣      狩野  安君
   防衛庁長官政務官     木村 太郎君
   文部科学大臣政務官    池坊 保子君
   会計検査院事務総局事務総
   長官房審議官       千坂 正志君
   会計検査院事務総局事務総
   長官房審議官       漆舘日出明君
   会計検査院事務総局事務総
   長官房審議官       平沢  明君
   会計検査院事務総局第一局
   長            石野 秀世君
   会計検査院事務総局第二局
   長            増田 峯明君
   会計検査院事務総局第四局
   長            有川  博君
   政府参考人
   (内閣官房内閣審議官)  村田 保史君
   政府参考人
   (内閣法制局第一部長)  阪田 雅裕君
   政府参考人
   (防衛庁防衛局長)    守屋 武昌君
   政府参考人
   (防衛庁運用局長)    北原 巖男君
   政府参考人
   (防衛施設庁長官)    嶋口 武彦君
   政府参考人
   (外務省大臣官房長)   北島 信一君
   政府参考人
   (外務省大臣官房参事官) 渥美 千尋君
   政府参考人
   (外務省総合外交政策局国
   際社会協力部長)     高橋 恒一君
   政府参考人
   (国税庁課税部長)    村上 喜堂君
   政府参考人
   (文部科学省初等中等教育
   局長)          矢野 重典君
   政府参考人
   (文部科学省高等教育局長
   )            工藤 智規君
   政府参考人
   (文部科学省高等教育局私
   学部長)         石川  明君
   政府参考人
   (文部科学省科学技術・学
   術政策局長)       山元 孝二君
   政府参考人
   (文化庁次長)      銭谷 眞美君
   政府参考人
   (文化庁文化財部長)   木谷 雅人君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房総括
   審議官)         中野 秀世君
   政府参考人
   (厚生労働省健康局長)  下田 智久君
   政府参考人
   (厚生労働省雇用均等・児
   童家庭局長)       岩田喜美枝君
   政府参考人
   (厚生労働省老健局長)  堤  修三君
   政府参考人
   (厚生労働省保険局長)  大塚 義治君
   政府参考人
   (厚生労働省年金局長)  辻  哲夫君
   政府参考人
   (国民生活金融公庫副総裁
   )            高木 俊明君
   決算行政監視委員会専門員 川城 正彰君
    ―――――――――――――
分科員の異動
四月八日
 辞任         補欠選任
  相沢 英之君     伊藤信太郎君
  金子善次郎君     川内 博史君
  今野  東君     松原  仁君
  手塚 仁雄君     大谷 信盛君
  塩田  晋君     佐藤 公治君
同日
 辞任         補欠選任
  伊藤信太郎君     相沢 英之君
  大谷 信盛君     肥田美代子君
  川内 博史君     細野 豪志君
  松原  仁君     今野  東君
  佐藤 公治君     塩田  晋君
同日
 辞任         補欠選任
  肥田美代子君     手塚 仁雄君
  細野 豪志君     金子善次郎君
  塩田  晋君     樋高  剛君
同日
 辞任         補欠選任
  樋高  剛君     西村 眞悟君
同日
 辞任         補欠選任
  西村 眞悟君     一川 保夫君
同日
 辞任         補欠選任
  一川 保夫君     黄川田 徹君
同日
 辞任         補欠選任
  黄川田 徹君     東  祥三君
同日
 辞任         補欠選任
  東  祥三君     塩田  晋君
同日
 第一分科員井上和雄君、石井紘基君、木下厚君、三井辨雄君、藤木洋子君、第三分科員楢崎欣弥君、福島豊君、瀬古由起子君、第四分科員山田敏雅君、金子哲夫君及び北川れん子君が本分科兼務となった。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 平成十年度一般会計歳入歳出決算
 平成十年度特別会計歳入歳出決算
 平成十年度国税収納金整理資金受払計算書
 平成十年度政府関係機関決算書
 平成十年度国有財産増減及び現在額総計算書
 平成十年度国有財産無償貸付状況総計算書
 平成十一年度一般会計歳入歳出決算
 平成十一年度特別会計歳入歳出決算
 平成十一年度国税収納金整理資金受払計算書
 平成十一年度政府関係機関決算書
 平成十一年度国有財産増減及び現在額総計算書
 平成十一年度国有財産無償貸付状況総計算書
 〔総理府(防衛庁・防衛施設庁)、外務省、文部省、厚生省所管、環境衛生金融公庫及び労働省所管〕


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     ――――◇―――――
山名主査 これより決算行政監視委員会第二分科会を開会いたします。
 私が本分科会の主査を務めることになりました。どうぞよろしくお願いいたします。
 本分科会は、総理府所管中防衛庁・防衛施設庁、科学技術庁、外務省所管、文部省所管、厚生省所管、環境衛生金融公庫、労働省所管についての審査を行うことになっております。
 なお、各省庁の審査に当たっては、その冒頭に決算概要説明、会計検査院の検査概要説明及び会計検査院の指摘に基づき講じた措置についての説明を聴取することといたします。
 平成十年度決算外二件及び平成十一年度決算外二件中、本日は、外務省所管、総理府所管中防衛庁・防衛施設庁、厚生省所管、環境衛生金融公庫、労働省所管、文部省所管について審査を行います。
 これより外務省所管について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。川口外務大臣。
川口国務大臣 平成十年度外務省所管一般会計歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 歳出予算現額は九千四百五十三億九千百四十六万円余でありまして、支出済み歳出額は八千百二十三億三千三百九万円余、翌年度繰越額は一千二百六十七億三千五百九十九万円余、不用額は六十三億二千二百三十七万円余であります。
 歳出予算現額の内訳は、歳出予算額八千百二十八億二千九百七十三万円余、前年度繰越額一千三百二十五億六千百七十三万円余であります。
 以上、平成十年度の外務省所管一般会計の決算につきまして、その概要を御説明申し上げました。
 何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
 続いて、平成十一年度外務省所管一般会計歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 歳出予算現額は九千六百十九億三千七百二十八万円余でありまして、支出済み歳出額は八千三百九十六億六百七十九万円余、翌年度繰越額は一千百三十一億三千四百十五万円余、不用額は九十一億九千六百三十三万円余であります。
 歳出予算現額の内訳は、歳出予算額八千三百二十億五千七百四十七万円余、前年度繰越額一千二百六十七億三千五百九十九万円余、予備費使用額三十一億四千三百八十一万円余であります。
 以上、平成十一年度の外務省所管一般会計の決算につきまして、その概要を御説明申し上げました。
 何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
山名主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院石野第一局長。
石野会計検査院当局者 平成十年度外務省の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
 平成十一年度外務省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。
 検査報告に掲記いたしましたものは、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項一件であります。
 これは、国際電話料金の割引制度の利用に関するものであります。
 外務本省から在外公館への国際電話の利用に当たり、国際電話会社にその適用を申し込めば利用料金が割安となるのに、割引制度の利用についての検討が十分でなかったため、使用実態に応じた割引制度の適用を受けておりませんでした。このため、国際電話の利用料金が不経済となっていたと認められましたので、当局の見解をただしましたところ、外務省では、十一年九月に国際電話会社に対して割引の申し込みを行い、その適用を受けるなどの処置を講じたものであります。
 以上、簡単でございますが、説明を終わります。
山名主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。川口外務大臣。
川口国務大臣 会計検査院の検査の結果、国際電話の使用実態に応じた割引制度の適用を受けることにより、国際電話料金の節減を図るよう御指摘を受けましたことは、まことに遺憾であります。
 これにつきましては、平成十一年九月に国際電話会社に対して割引の申し込みを行い、同年十月から割引制度の適用を受けるとともに、定期的に見直しを行うなど、より経済的な割引制度の適用を受けるよう措置を講じ、国際電話料金の節減に努めております。
山名主査 この際、お諮りいたします。
 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山名主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
山名主査 以上をもちまして外務省所管の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
山名主査 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤信太郎君。
伊藤(信)分科員 おはようございます。自由民主党の伊藤信太郎でございます。
 外務省も日本の行政機関の一つでありますから、当然、行政目的というものは日本国民の福利にかなうものでなければならないと思うわけですね。外務省は特に外務をやっているわけですから、常に国益とは何かということに対してやはり明確な定義をする、そして、その国益、外務省が定義するところの国益というものと国民が実感として感じる国益というものが近くなるということが、やはり民主主義だというふうに私は考えるわけです。
 そこで、外務省、外務大臣がお考えになっている国益というものはどういうものなのか、お考えをお聞かせ願いたいと思います。
川口国務大臣 国益を踏まえて外交を行うことは重要なことだと認識をしております。
 それで、しからば国益とは何かということでございますけれども、非常に広く言ってしまえば、これは我が国の平和と繁栄を確保することであると私は思います。そのためには、国際社会全体が平和で安定して繁栄をしていくということを確保することが大事だと思います。
 非常に大きく定義をすればそういうことであると思いますけれども、個々の外交課題についてそれぞれ国益は何かと考えながらやっていく必要があるわけでございますけれども、そのときの具体的な国益というのは、またその外交課題の中身によりましてより具体的に考えられていくべきものだと思っております。
伊藤(信)分科員 全体としての定義というものはあるけれども、それぞれの案件によってその具体的な国益というものは違うアプリケーションが考えられるだろうという大臣の御説明だったと思うんですけれども、近年、いろいろな外交交渉の中で、国内の国益というのが必ずしも一枚板ではない、いろいろな考え方があるというのも、多分、大臣、御存じだと思います。
 例えば、農業分野における国益と、あるいは一般的な外交関係、良好な外交関係の国益というものが、ある意味では葛藤するという場合もあるわけですね。そういった場合、外務省はどういうクライテリアといいますか、優先順位で一般的にはその国益というものを考えるのか。軍事的な、あるいは安全保障上の国益というものもありましょう。それからまた、個別の産業分野における国益というものもありましょう。また、ほかの文化面における国益等もありましょう。
 そんなことで、大臣は幅広い御経歴もあるようですから、在任、まだ短いと思いますけれども、一、二の例でどのような判断をなさったか、お聞かせ願えればありがたいと思います。
川口国務大臣 具体的に、先ほど申しました個々の外交課題あるいは個々の政策判断を要することについて何が国益であるのかということは、これは外務省だけで決めることではなくて、国内のさまざまな省庁がございますので、そういった省庁と調整をした上で、国全体としての政策あるいは意思決定があるものだと思っております。
 それで、それぞれの省庁は、当然、それぞれが背景としている、あるいはそれぞれが所管としている仕事について判断をしていくわけでございまして、おっしゃった農業のケースですと、農水省としては、これは私は農水省のことはよくわかりませんけれども、農業、産業としての農業について今後どういうふうに伸ばしていくのがいいか、あるいは過渡期の調整についてどうやっていくのがいいだろうかといったような観点で考えるだろうと思いますし、別な省庁は、我が国全体として効率的で有効な、適切な資源配分がなされるように、また、セクター間の資源の移動が柔軟に行われるような、そういった国になるための手段としてその問題を考える、手段に照らしてその課題がどうかということを考えるでしょうし、外務省としては、これは国と、外国との間の接面といいますか、間のところをやっているわけですから、そういったことを、行動をとったときに、これが国際的なルールに照らしてどうなのか、ほかの国との二国間の関係あるいはその地域の関係に照らしてどうなのかということを短期的に、かつ中長期的に、両方の観点から考えるということだろうと思います。
 そういったさまざまな意見が調整をされて内閣全体として一つの政策の決定に至るわけでございまして、そのときに外務省が踏まえるべき立場というのは、外務省でございますから、それは外国との関係あるいは国際的なルールとの関係、それに照らしてそれが、その判断が問題がないかどうか、そのルールあるいはその二国間の関係に照らしてその判断が適切であるかどうか、そういう立場から主張をすべき立場にあると思っています。
伊藤(信)分科員 そこで、外務省の立場が今、大臣の御答弁で明らかになったわけですけれども、それでは、外務省あるいは外務大臣が考えている究極の目的といいますか、オブジェクティブというのはどこにあるのか。
 外交青書などを見ると、普遍的価値ということが書かれたりしているわけですけれども、その普遍的価値というものは果たして存在し得るのか。私は、必ずしもその普遍的価値というものの語彙の使い方が外交青書において正確でないような気もするわけですけれども、そのことについての御見解をお伺いしたいと思います。
川口国務大臣 まことに申しわけございませんけれども、私は外交青書のそのくだりをまだ読む時間がございませんで読んでおりませんけれども、普遍的価値と一般に聞きますと、そこで考えるのは、例えば自由とか民主主義ですとか人権の擁護ですとか、人類社会で基本的な価値として踏まえなければいけないことは何かということであると思います。そういったことは、我が国がこういう政治体制、経済体制を持って存在をしている国である以上は、さまざまな政策決定に当たって前提となるべき事柄、もしその普遍的価値ということがそういうことを意味するのでございましたら、それは前提となるべき事柄であると思います。
 そういった前提に立って、我が国の国益である我が国の平和と安定及び繁栄をどうしたらもたらすことができるかということを、さらにさまざまな具体的な、例えば農業政策であり、あるいは鉄鋼の米国のセーフガードであれ、そういった細かいことについて考えていくということでございまして、普遍的価値の判断が、判断といいますか理解が外交青書の書いていることとは違っていましたらお許しをいただきたいんですけれども、私がその言葉を聞いて考えることはそういうことでございます。
伊藤(信)分科員 そこのその普遍的価値というところが非常に問題なのは、やはり近年、東西冷戦がある意味で終結してから、どうもアメリカ的価値といいますか、あるいはもう少し大きなくくりで言いますと西洋的な史観、西洋的な価値というものがあたかも普遍的な価値というようにとらえられている、そのことが今後の国際関係で非常に必要な文化多元主義というものを圧殺していないだろうか、そういうモノカルチャーというか、あるいは一元的な価値観に世界を統一して、その秩序の中で国際平和というものを考えていくという考え方はいかがなものかと私は思うわけです。
 確かに、テロとか戦争等が起きて、テロの当事者に対してそれなりの罰を下したり、それを軍事的な力によって解決するということも一つの解決方法かもしれない。しかしながら、テロとか内乱が起きるにはもう少し社会学的な、哲学的な理由もあるわけでありまして、世の中に存在する富の偏在であるとか、異文化、異宗教に対する不理解やべっ視やあるいは圧力というものがそういったものに対する遠因になっているという面も否めないと思います。
 そして、私は、日本は、安全保障条約というものを堅持して、今日までの安全保障の非常に根幹をなしてきたということは大変重要だなと思いますけれども、今後の日本外交の考え方として、必ずしも一定の文化体系の枠組みあるいは一元的な価値観の中だけでの外交姿勢あるいは外交のスタンスというのはいかがなものか、むしろ、二十一世紀の新しい国際秩序の形成に対して主体的な役割を演じていくのが新しいフェーズでの外務省あるいは日本外交のあり方ではないかというふうに私は考えるわけですけれども、この件に対する外務大臣の所見をお伺いしたいと思います。
川口国務大臣 非常に難しい御質問でございまして、むしろ、外務省としての見解をということよりは、私が個人として何を考えるかということでお話をさせていただきたいと思います。
 おっしゃるように、社会、世界の国々にはさまざまありまして、文化的にも宗教の面でも、あるいは社会的な慣習の面でもさまざまあると思います。それは現実問題としてあるわけですし、それぞれがとうとばれなければいけないということも全くそのとおりで、現実問題として、社会はそういう観点から見ると多元的な世界であると私は思います。
 そういった地域的に異なっていくという部分と、それから情報技術の発達、それをしかも人々が使う、世界津々浦々でインターネットがあり、国によって普及度はさまざまありますけれども、情報が一瞬にして世界を駆けめぐってしまうようなそういった世界で、経済的に考えますと、効率的な経済を持っている国、あるいは効率的な運営をしている会社、そういったところが大きくなり、コストを安く生産ができという状況になっていることも事実でありまして、そういった経済面の影響ということが多元的な、地域地域の多元性に影響を与えているという面も否めないと思います。その二つの力の相克というのが今あるわけでございまして、それに対して当然反発もあるわけですし、矛盾、摩擦もあるわけでございます。
 一番大きな問題は、世界の国々に富が平均的に分散をしていない、所得格差が非常に大きいということで、おっしゃったテロあるいは紛争の多くの根っこのところを探っていきますと、そういった貧しさ、貧困、さまざまな問題というのが例えばテロの温床になっているということも、これは事実、そうだと思います。
 そういった観点で、我が国としては、私は、文化的な多様性あるいは価値観の多様性を尊重しながら富の不均衡などの問題、それがひいては世界の平和、世界の繁栄、我が国の平和、我が国の繁栄に影響を与えるわけですから、そういった問題にODAその他を通じまして対応をしていくということが、具体的には我が国が取り組むことであると思います。決して今世界が一つの価値観になっていくということでは私はないと思います。その多様性はたっとびながら、なおかつ、経済、政治のメカニズムがもたらすものということも考えていかなければいけないと思います。
伊藤(信)分科員 それで、外務省は多くのODA予算というものを使っているわけですけれども、このODA予算というものが、どういう政治的な意思決定過程で、どのような価値観で、歳出といいますか配分がなされているのか、この件についてお伺いいたしたいと思います。
川口国務大臣 ODAにつきましては、我が国の外交政策のツールとして最も重要なものの一つであると私は思っておりまして、その使われ方が、外交政策の観点、先ほど申し上げたような、人道的あるいは人間の安全保障に至るような貧困対策、感染症対策等々も含めた形で使われるということは大事だと思っております。
 それで、ODAの重点分野をどの地域あるいはどの分野にするかという課題につきましては、平成十一年の八月に、向こう五年程度を念頭に置きまして、我が国としては、方針を明確にした中期政策というものをつくっております。それで、中期政策の内容でございますけれども、基本的な考え方、重点的な課題は何か、地域別にどのような援助をしていくか、援助手法はいかなるものがあるか、実施、運用上の留意点は何か等々につきまして、議論をした紙であるわけです。他方で、これで十分かというと、まだまだ改善をしていく必要があると考えます。
 先般、第二次ODA改革懇談会の報告書をいただきました。そこで、中期政策が、包括的であって、重点的な分野や課題に対して具体的な方策を必ずしも示していないという御指摘をいただきまして、その上で、懇談会の提言としては、重点分野等を議論するODA総合戦略会議を設置するべきであるという御提言をいただいております。
 「日本の戦略をより明確に示すためには、中期政策を定期的に点検し、さらに、国別援助計画の大胆な重点化を図る必要がある。その際、日本が技術力やノウハウの優位性を発揮できる分野に十分配慮し、日本の特徴や利点を生かしたODAを実施するよう努めねばならない」というふうにされているわけでございまして、これはとても重要な指摘だと考えておりまして、ODA総合戦略会議は早急に立ち上げたいと思っております。
 それから、あわせまして、今、「開かれた外務省のための十の改革」におきまして、この一つの項目として、ODAの効率的な、透明なあり方ということについても御議論をいただいています。
 この第二次ODA改革懇談会に盛り込まれたことのかなりの部分というのは、私が改革の過程で考えていましたこととオーバーラップをするということですので、ここで議論をしたことは、第二次ODA改革懇談会の報告の内容についてはできるだけ早く実行に移したいと思っておりますし、さらにこのODA総合戦略会議では、戦略的かつ重点的なODAの実施ということを外部の有識者の方にも入っていただいて御議論していくわけですけれども、さらに、評価のあり方、あるいは現地にNGOの方が大勢いらして仕事をしている、この方々の意見をある過程で入れていくというような仕組みについても、この改革の過程で考えていきたいと思っております。
伊藤(信)分科員 私は、ODAの問題はいろいろとあると思いますけれども、二つ、私の問題意識としてはあると思います。
 一つは、人道援助ということを主目的として行われたODA、それは、結果として日本の産業に対する非常な打撃となる、日本の産業の空洞化という結果をもたらすという事例も幾つかあるわけですね。その場合、前段の国益との関係でどう判断をなさっているのか。
 それからもう一つは、今大臣の話にもありましたけれども、せっかくのODAが、本当に必要としているそれぞれの国民に行き渡らないで、あるいは日本の企業に還流したり、あるいは必ずしも民主的でない政府の上層部によって搾取されるというような事態も歴史的にも大変多く存在したわけですね。その辺の改善なりあるいはその議論の精査というものをどのようにお考えか、所見をお伺いしたいと思います。
川口国務大臣 幾つか、おっしゃった問題というのは、私も全く問題点としてあると思っております。
 それで、まず日本からODAの資金を使って調達をするかどうかということが一つ大きな問題としてあるわけですけれども、私は、空洞化の議論というのは、これはなかなか難しい議論で、空洞化をしていくというのは長い目で見ればさまざまな対応策で対応すべきものであって、ODAを国内の産業から調達をするということは、その一つの手段、しかもかなり短期的な手段にしかすぎない。あるいは、そのときの問題を緩和する措置でしかないだろうと。長期的には、やはり新しい産業が国内に生まれて、雇用を行い、活性化していくというための政策をとっていく、あるいは産業界もみずからその努力をするということによってしか解決をされない問題だと思っています。
 ですから、政策的には、例えば技術開発を促進するということもありましょうし、起業をより容易にしていくということもありましょうし、それから、そのときに生ずる雇用の問題については、そこはセーフティーネットをきちんとつくっていくというようなことで長期的に解決をいたしませんと、短期的に手段だけとっていても、根っこから問題の改善にはならないということが空洞化の問題であると思います。ただ、それと、短期的にでは何もしないかということとは別問題で、短期的な対応策は先ほどの雇用のセーフティーネットも含め必要だと思います。
 それから、ODAの場合に、国内から調達をすることができるかどうかという国際的なルールの問題を考慮しなければいけないと思います。国際的にはアンタイドという方向に向かっているわけでございまして、それは国際的なルールにのっとって日本が行動するかどうかということを外国は厳しい目で見ているということも事実で、ここも配慮しなければいけないと思います。
 それから、政治的な資金について、具体的にそういう問題があると言われていまして、私もよくその内容については存じませんし、具体的にどうだという、具体的な例で幾らこうなったというのを実は見たことがありませんので、余り仮定で御議論をしてはいけないと思いますけれども、一般論としてあくまで申し上げれば、日本の国民の血税は透明に使われる必要があると思います。
 それで、先ほどの改革の透明性、効率性、ODAの透明性、効率性というところにつながっていくわけですけれども、なかなか相手国の中のことというのは知ることができない。これは相手国の中の問題でございますけれども。少なくとも日本でできることについては、どうしたらより透明性を増すことができるかという観点から改革の場でも議論してもらいたいと思っておりますし、それから、不断にこの点は考えていかなければいけない問題であると思っております。
 具体的に何かこの点について問題があるかどうかということについては、私は認識をいたしておりませんので、ちょっとお答えできないということです。
伊藤(信)分科員 大臣に大変丁寧にお答えをいただいたので、質問の三分の一ぐらいで残り時間五分になったので、少しまとめてお伺いします。
 各論に入りますが、日本はアフガン復興に対して五億ドルの拠出をするということを決めたわけですけれども、この五億ドルという額が決まった過程、その算定根拠、そしてこの五億ドルがそのまま一カ所に行くのではなくて、アフガンとパキスタンと国連と、おおむね大体三分割のような形で払われると聞いていますが、これはどういうことからこういうふうになったのか。
 そして、こういう五億ドルを拠出することによって日本という国が得られる国益が何なのだろうか、この辺について大臣の所見をお伺いしたいと思います。
川口国務大臣 まず、国益でございますけれども、これは、全人類への挑戦であるテロとの闘いの支援ということでございます。テロリズムを根絶するためには、先ほどもちょっと申しましたけれども、テロをはぐくむ温床、これをなくさなければいけない、そのために平和で安定したアフガニスタンをつくることが大事であるということでございます。
 それから、五億ドルの根拠でございますけれども、これは、基本的に、アフガニスタンが復興のために何を必要としているか、どれだけ必要としているかという観点から、我が国として何ができるか、世界のほかの国がどこまでやるかといったことを総合的に勘案して決定をしたというふうに理解しております。
伊藤(信)分科員 時間が足りなくなりましたので、最後の一問にしたいと思います。
 北方四島の返還問題というのは、日本の外交にとって非常に重要な命題でありますけれども、この北方四島の返還ということから得られる日本の国益というものを具体的にどのようにお考えか、外務大臣の所見をお伺いしたいと思います。
川口国務大臣 北方四島というのは我が国固有の領土であるということでございまして、現在、ロシアとの間には、戦後、国境の線が明確に引かれていない状況になっているわけでございますし、平和条約が存在をしていないということでございますので、こうした不健全な状況を解消するということが大事だと思います。
 我が国の基本方針としては、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するということがずっと一貫した方針でございますので、それによりまして国境線を明確化する、近くの大国であるロシアとの間で平和条約を締結するといったことが、それからもちろん、その先のさらなる友好関係の強化、経済関係であれその他であれといったことにつながっていくということが我が国の国益だと思います。
伊藤(信)分科員 これで質問を終わります。
 ありがとうございました。
山名主査 これにて伊藤君の質疑は終了いたしました。
 次に、金子善次郎君。
金子(善)分科員 民主党の金子善次郎でございます。
 四月二日でございますが、対ロシア外交の混乱というようなことを理由とされまして、外務省におきまして処分が発表されました。大臣もみずから認められているわけでございますが、このたびの処分理由、かなり抽象的であったわけでございますけれども、この処分内容、私といたしましては、国民感情といたしましても、なかなか納得できるものではないというようなものではないかと思っております。
 この点につきましては、特に特命全権大使あるいは公使という方々と申しますか、特別職の公務員、この懲戒処分あるいはいわゆる服務の規定というものは国家公務員法の適用がないわけでございまして、外務公務員法に基づく服務ということになるわけでございますけれども、この外務公務員法にはいわゆる公務員のこうした方々の非違行為、これについてはペナルティーを科すというような規定がないわけでございます。東郷大使の問題等々もあるわけでございますけれども、私といたしましては、こうしたものについては何らかの立法措置というものを今後考えていかなきゃならないのではないかというような考え方を持っているところでございます。
 まず、冒頭お伺いしたいと思いますけれども、大臣、この点についてはいかがお考えでいらっしゃいますか。
川口国務大臣 外務公務員についての処分法規を立法化するかどうかということでございますけれども、まず、特別職の外務公務員につきましては、国家公務員法上の身分保障の規定が適用されないという問題がございます。そういった点を十分に考慮する必要があると思います。
 いずれにいたしましても、特別職の国家公務員は外交官、大使だけではございませんで、この特別職の国家公務員の制度の基本にかかわる問題でもございますので、関係省庁とも協議をして、慎重に検討する必要があると考えております。
金子(善)分科員 確かに、慎重な検討が必要かとは思いますけれども、やはり何らかの立法措置的なものを今後考えていく必要があるのではないかと私といたしましては思っているわけでございます。こうした問題につきましては、今後さらに詰めた審議をさせていただきたいと思っております。
 そこで、まず最初、冒頭お伺いしたわけでございますが、これまで外務省の一連の不祥事があったわけでございますけれども、それについてそれぞれどのような最終的な、確定されてきたかと申しますか、処分とかそういうことだけではなくて、いろいろな問題点についてどう整理されてきたかということをこれから質問させていただきたいと思います。
 まず、昨年の七月、調査報告書が出された、いわゆるデンバーの前の総領事、水谷デンバー総領事の件でございますが、これにつきましては、平成十三年十月の植竹副大臣の記者会見の際に、告訴も検討中であるというような発言があったわけでございますけれども、これにつきましてはどうされたわけでございますか。
北島政府参考人 デンバーの前総領事の不適正経理に関しましては、既に国家公務員法上の懲戒免職処分を行っているわけです。本件がさらに刑法上の犯罪として告訴、告発すべきものにまで該当するか否かということでございますけれども、外務省の調査の結果、判明した事実関係をもとに、警察庁とも相談しつつ、前総領事の意思や行為といったものが犯罪の構成要件に該当するのか否か等について現在も慎重に検討しているところでございます。
 本件につきましては、検討に時間を要しておりますが、告訴、告発を行うか否かについて判断するに当たっては、その前提として、総領事公邸の賃貸借契約をめぐる外務省、家主、水谷前総領事の間の関係を初め、本件をめぐる法律関係等を整理、確定する必要がございます。しかしながら、当該関係は単純なものではなく、その整理、確定が容易でないことから、検討に時間を要しているということでございます。
 いずれにしましても、本件に関する検討には、今後、鋭意努力していきたいというふうに考えております。
金子(善)分科員 その点につきましてはわかりました。では、なお慎重な検討をしていただきたい、このように思います。
 それでは、いわゆるプール金の問題も大変な問題になったわけでございますが、国内分と申しますか、これは昨年の十一月三十日に、二億円余りのプール金が存在した、そして三百二十八人に及ぶ処分がなされたということがございました。
 ところで、在外公館のプール金については調査を開始されているのかどうか。開始されているとすれば、いつ、どのような、今までの進捗、どんなふうになっているか。その点につきまして、大臣、それから会計検査院もおいでになっていますけれども、お尋ねしたいと思います。
北島政府参考人 在外公館におけるプール金についてのお尋ねでございますが、いわゆるプール金に関する外務省による調査、委員御指摘のとおり、昨年の秋、鋭意これを行ったわけでございますけれども、このプール金に関する調査においては、在外公館については調査対象としておりません。これは、在外公館について、プール金に相当する問題が具体的に指摘されていないということによります。
 他方、今後、在外公館の経理を含め、在外公館の事務が本当に適正に行われているかどうか、集中的かつ広範囲にわたる査察を行い、厳格なチェックを行っていきたいというふうに考えております。そして、査察の結果、御指摘のプール金問題も含め、仮に問題とすべき事実が判明した場合には、対象となる現地企業への調査依頼も含めて厳正に対処していきたい、そういうふうに考えております。
石野会計検査院当局者 会計検査院では、在外公館に対する実地検査に当たりまして、個々の支払いが適切に行われているか、あるいは不必要な物品等の購入がないかという点に着目して検査してきたところでございます。
 在外公館のプール金という今委員の御指摘の点がございますけれども、今後の検査に当たりまして、その点につきましては注意を払って検査していきたいというふうに考えております。
金子(善)分科員 いずれもこれからだということだと思いますが、そこはよくこれから調査をしていただきたい、このように要望を申し上げておきたいと思います。なお、この点については、実は私は昨年十一月七日の外務委員会で指摘をさせていただいていたことではございます。
 それに関連して、なぜ私がそういうことを申し上げるかといいますと、実はデンバーの水谷元総領事の不祥事と申しますか、これに対しまして、これも平成十三年の七月の十六日ですが、事務次官の臨時記者会見というものが行われました。その際に、事務次官ではなくて当時の梅田公使という方がこういうことを述べているわけなんです。当初六日間ほど水谷氏の口座にあったが、その後、公金口座ではないが、館の口座で管理するような形にしていたと。これは、個人の口座でもなくて、いわゆる公金の口座でもない第三の口座、つまり裏の口座があるような、そうしたことが堂々と記者会見で述べられているわけなんです。こういうようなことは、果たして何なんだ。総領事館の、館の口座というものは。公金の口座ではないということを言っているわけなんですね。
 こういうことが一般的に行われているのかどうかというようなことで、非常に何なんだろうかというふうに不思議でしようがないわけでございますけれども、この点につきましては、外務省、答弁できますか。
北島政府参考人 裏口座についての一般的なお尋ねだと思いますが、在外公館に裏口座があるということは承知しておりません。
 在外公館の公金口座でございますけれども、在外公館は、通常、本省の承認を得て、歳出金として本省からの送金を受領するための口座を二つ、これは前渡し資金用の口座と本払い経費用の口座でございます。それからさらに、歳入金用として一つの口座を有しているということでございます。
 例外が全くないかという点でございますけれども、現地通貨と送金通貨が異なる場合、それから用途を特定して管理したり、担当者の責任を明確にするために、追加的に口座を開設するというような場合はございます。それから口座管理の都合上から、歳出金を一つの口座のみで取り扱う場合もあり得るということでございますけれども、いずれにしても裏口座といったものはございません。
金子(善)分科員 外務省としてはそう答弁するということは当然予想されるわけで、本来あってはならないことですから、あくまでもそれはないと、一般的にはないと当たり前のことを答弁されているだけの話でございます。
 会計検査院に、その点、特に申し上げたいと思いますが、これまで長年にわたりまして、海外の在外公館についても調査はしてきているわけなんですが、プール金の存在について発見した事実は一切なかったわけですか。
石野会計検査院当局者 在外公館の会計経理につきましては、先ほども申し上げましたとおり、個々の支払いの適切性あるいは不必要な物品等の購入の有無といったことについて検査してきているところでございます。今お話しの、正規の会計上の口座といいますか、以外のものがあるのではないかということでございますが、現在までの検査のところでは、そういった点について我々が認識しているというところはございません。
金子(善)分科員 いずれにしましても、先ほどの答弁ございましたけれども、今後の課題として、そこは国民の前にきちっと説明できるようにしてもらいたい、このように思います。
 次に移らせていただきたいと思いますけれども、実は、報償費の問題につきまして質問させていただきたいと思います。
 昨年といいますか、昨年の正月からずっと、いろいろな報償費関係等々が外務省の問題として浮き彫りにされてきたわけでございますが、実は、在外会計に関する体制強化、改善というような措置として、昨年の十二月二十一日に外務省で発表されました。
 在外会計に関する体制強化と改善、その中で、新たに出納官吏会議を開催するというようなことが述べられております。もちろん、出納官吏会議を開催して、いろいろ間違いのないように経理を行っていくという趣旨でこういうものをつくるということで置かれることになったと思うんですが、実は私ども民主党といたしましての二月の資料要求に対しまして、外務省の回答がございました。
 それによりますと、在外公館の会計担当者会議は、平成九年以降、十五回開催されている。ですから、何か新しい、新たに出納官吏会議をつくるというようなことを改善措置として述べているわけですが、現実問題として、会計担当者会議というものはずっと、平成九年以降だけでも十五回開催されているという回答が外務省から民主党に対しましてなされたわけでございます。
 何か新しいことを考えておられるのかどうか、その点だけお伺いしたいと思います。
北島政府参考人 出納官吏というのは、大使館の場合ですと原則次席ですね、ナンバーツー、それから総領事館ですと総領事でございます。私もかつて総領事をしたことがございますが、そのとき私は出納官吏であったわけです。
 今委員が御指摘になった従来の会議というのは、会計担当官会議と申しまして、会計班長を集めて指導を徹底するということをやってきたわけですが、去年発表しましたのはまさに出納官吏会議ということで、さらに高い立場にあって、実際の責任をとることになる出納官吏ですね。
 ですから、実はことしの一月にアフリカ地域の二十一公館の出納官吏を対象としての第一回目の会議を開催したわけですけれども、ここに集めた人間というのは出納官吏をまさに集めたということで、その意味で新しいことをやったということでございます。
金子(善)分科員 実は今まで、報償費を初めといたしまして、在外公館においてどういうような金の使い方がなされたかというようなことで、私どもの民主党といたしましてプロジェクトチームをつくりまして、いろいろな資料の要求をしてきたわけでございます。
 その中でほとんどこの資料要求等につきましては、先ほど申しました担当者会議、これについては応じてもらえない、外務省から資料として提出されてきていないという実態があるわけでございますけれども、実は私ども、ある筋から、平成十一年の十月十一日、タイの日本国大使館において開催されました南東・西南アジア会計担当者会議、この会議録を入手しております。これは無期限の秘密扱いというふうになっているわけでございますけれども、これはちょっと申し上げたいと思うんですが、ほとんどこの我々の資料要求に対しまして、これは会計事務の適正な執行に支障を及ぼすであるとかどうとか、いろいろな理由をつけられて、中身について我々の方に発表してくれないわけなんですね。
 ところが、この実際の会議録を読んでみまして、何が発表できないのかと。というのは、外務省は、情報公開法が制定されたという現実をどう認識されているのかということさえ疑わざるを得ないほど、何がこれが発表できないのかなという感じさえしているというのが実際のところでございます。
 時間の関係もございますので、かなりたくさんお聞きしたいことが実はあるわけなんですが、私がこの問題を申し上げておりますのは、我々の立場としましては、考え方としましては、例えば報償費、これ必要なものは当然あるという認識に我々も立っておりまして、必要なものについてはきちっとある程度の金額が要ったって使う、それは使って日本外交の推進のために役立てていくということは当然のことである。それはそういう認識で我々もいるわけでございますけれども、この会議の内容、どういうことを、報償費についても確かに話をされているわけですが、余りにも、こういうことに報償費を使っているのかというようなことまでが現実問題として判明いたしております。そういう観点から幾つか質問していきたいと思っているわけなんです。
 幾つかあるんですけれども、時間の関係もあるものですから、改めて別の機会にも、細かい点かもしれませんけれども、あくまでもやはりこれまで外務省のいろいろなそういうお金の問題についての不祥事というものは、その考え方の基本がきちっとしていないからどうしてもそういう問題が生じてきているんじゃないか。きちっとした本省と在外公館のいわゆる経理関係、お金、税金をどう使っていくか。その予算の趣旨に応じた使い方を、多少それを、例えば金額が小さいからいいんじゃないかとか、そういうことではなくて、やはり筋を通していかないと、これは大きな問題に発展してきている、そういう気さえしているわけでございます。
 そこで、代表的なものとしてこれを一つ質問させていただきたいと思います。
 例えば、この先ほど申し上げました会議録であった件ですが、在外公館の幹部館員夫人が主催する設宴、要はいろいろな方を招いて、館員の方々の御夫人方がいろいろな外交活動をするということも当然あるわけですが、こういうことがあると、報償費から日本人会等への設宴は不可、できない、外国人を対象にした設宴などはできる、こういうようなことがそこに、会議で話し合いがなされております。
 恐らく私どもが入手しているのは本物のペーパーだと思いますけれども、考えてみますと、報償費というのは、対象が日本人か外国人かでそんなことを区別できるのかどうか。これは報償費、外交というものはたとえ日本人が対象であってもそれは当然使えるものだと私は思うんです。時間がないので、本当に実はいろいろ指摘したいことはたくさんあるんですが、その辺ひとつどうですか。
北島政府参考人 外務省の報償費の場合でございますけれども、基本的には三つの目的があろうかと思います。まず、不断の努力によってつくられた信頼関係に裏打ちされた人脈を基礎としての的確な情報の収集のため、二つ目に、外国との交渉や日本にとっての外交関係を円滑かつ有利に展開するため、それから三番目に、国際会議における我が国の議論を正しく理解させるために、会議の場などでさまざまな関係者に働きかけを行うためということでございます。
 今委員御指摘の場合でございますけれども、理論的には、相手が日本人であっていけないということは必ずしもないと思います。他方、実際の運用において、相手が日本人であるとどうしても理解を得ることが難しいかもしれない。むしろ相手が外国人である場合に、まさに日本の外交関係を推し進める、外国との外交関係を円滑かつ有利に展開するためという趣旨に合うということで恐らくはその種の指示が示されたのではないかという気がします。
金子(善)分科員 議論をしたいところですけれども、ただ、この一つの例だけ挙げてはまだ全体像をおわかりいただけないかと思っております。
 次に、渡切費につきましてちょっと御質問したいと思います。
 この渡切費は、御承知のとおり廃止されました。ただ、このいわゆる会計担当者の会議でも、渡切費の使い道等につきまして話し合いが行われているようでございました。
 実はこの渡切費について、本年度予算からはなくなったわけですが、昨年の十二月五日の外務委員会で小町前官房長は、平成十二年三月末で渡切費の繰越金額が三十一億九千万円あるということでございました。十三年度につきましては、まだ出納整理期間だと思いますので、これからその整理をする期間だと思いますけれども、この十三年度末に生じた残金、一般的に考えれば、それ相当の金額が残金としてあるんではないかというふうに思いますけれども、これは、まず在外公館から廃止に伴いまして回収するのか、それから会計検査院もその点どう考えているのか、これを質問したいと思います。
北島政府参考人 委員御指摘のとおり、平成十三年度中に使用されなかった渡切費でございますね、当然残額が出てくるというふうに思っています。この残額については、本年四月末に金額を確定した後に国庫に返納するという手続をとりたいと思っています。本来三月末で確定されるべきでございますけれども、例えば三月分の電気代、そういった経費につきましては請求が来るまでに一カ月程度を要する見込みであるということから、四月末の時点で残額を確定する。
 いずれにしても、その時点で国庫に返納する手続をとりたいというふうに思っております。
石野会計検査院当局者 検査院といたしましては、今、十三年度で外務省の渡切費は廃止されるということでございますので、その十三年度末に残りました残額についてはきちっとした適切な経理処理がされるということが必要だと考えておりまして、どういう状況にあるかということを今後検査していきたいと考えております。
金子(善)分科員 特に会計検査院に要望しておきたいと思いますけれども、答弁では、この決算委員会の場のみならず、いろいろな委員会の場で、会計検査院の方からは、ちゃんとやりますよ、ちゃんとやりますよ、しょっちゅうこう言うわけですよね。ところが、これまでの会計検査院の在外公館に対する検査というものは、現実問題としてほとんどなされていないというのが、私が申し上げるのは物理的な意味でですよ。例えば、在外公館に行って、ほとんど半日程度の検査であるとか、しかも、世界にかなりの在外公館があるわけでございますけれども、その中から幾つかの公館を選んで順番にやっているとは言っているわけですが、ほとんど実態的に難しいんではないかな。この辺を本当に会計検査院としても、今後の体制、どうやっていくのかということも含めて、よく考えていただきたいと思います。
 最後になりますけれども、これまでの私が今御質問いたしました一連のものにつきまして、大臣からひとつ感想をお聞きしまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
川口国務大臣 今後改革を進めていく過程で、正すべきは正し、透明性を向上させるということを考えたいと思います。
金子(善)分科員 終わります。ありがとうございました。
山名主査 これにて金子君の質疑は終了いたしました。
 次に、山田敏雅君。
山田(敏)分科員 民主党の山田敏雅でございます。
 川口大臣、私、通産省におりまして、それで外務省にも行ったことがございます。この体験を踏まえまして、大臣が外務省改革に真剣に取り組んでおられるということをよく承知しております。この改革の本当にお力になればと思いまして、きょうは三十分お時間をいただきました。
 まず、いろいろな外務省に関する告発とか疑惑とか不正とかというものが起こったときに、去年からずっとありますけれども、外務省の内部調査というのがございます。内部調査によっていろいろな疑惑とか不正について調査いたしました、こういうことでよく報道されておりますけれども、この内部調査はどんな基準、どんなマニュアルで、そしてそれが本当に公正なのかどうか、これについて、大臣、一言お願い申し上げます。
北島政府参考人 委員より、内部調査の際の基準についての御質問がございました。
 個別の不正や疑惑については、その具体的な態様に応じて、ケース・バイ・ケースで調査に当たってきているということでございます。
 例えば、在外公館に対する査察であれば、従来より所定の手続に基づいて実施してきていますし、それから、本年度から本省の監察を始めるということで、法務省から北田検事に来ていただいて、その種のことをすることにしているわけですけれども、この種の通常監察、これについても査察と同様の手続を今策定中ということでございます。
 その際に、調査結果の客観性をどう高めるかという問題があるわけですけれども、例えば、昨年十一月に発表したプール金問題についての調査の際には、園部監察査察担当参与、それから監査法人の指導助言を得て調査を進めたということですし、それから、先般の北方四島住民支援に関する調査については、園部参与に取りまとめていただきました。それから、査察、監察を行うに当たっては、公認会計士といった外部の専門家、その参加を得るというような措置をとってきております。
山田(敏)分科員 今、具体的なケースを二つおっしゃっていただいたんですけれども、そのほかにいろいろなケースがございまして、私、外務省の方にお聞きしました、どういうふうな内部調査をしましたかと。具体的に、だれが、いつ、どういうふうに聞いて、それで調査を終わりましたかということでございます。
 私の聞いたところによりますと、事件の大きさにもよると思うんですけれども、内部調査というのは、上司がその部下に聞く。こういうことがありましたか、ありませんかと。部下の方は、あります、ありません。それを内部調査にする、こういうことでございます。
 具体的に申し上げないとちょっとよくわからないと思うんですけれども、これは週刊現代がシリーズでやりました。タイの大使が平日にゴルフをする、それからかけゴルフをする、これを写真とかビデオに撮られたんですけれども、これについて外務省にお伺いしました、これはどうなんですかと。内部調査をされまして、その結果を私のところに御報告に来られました。
 この大使、赤尾前大使でございますけれども、この上司の方が小町官房長ということでございますので、小町官房長が赤尾大使をお呼びになって、平日ゴルフとかけゴルフ、これについて、ありましたか、ありませんかと聞かれました。お答えは、そういうことはございません、かけゴルフはしていませんというのが結果でございますというふうに私に報告をいただきました。それで調査は終わった、こういうことなんです。
 そのほかにずっといろいろな疑惑が書いてあるんです、まだたくさんあるんですけれども、今の内部調査、これは本当に、こういうケースではマニュアルはない、どういうふうにやるか。原則、上司が部下に聞く。こういうことについて、大臣、これは公正に行われているとお思いになりますでしょうか。
川口国務大臣 中の人間が調査をするということは、おのずから難しい点があることは否めないと思います。
 まず、そもそも強制的に調査ができるわけではありませんから、御本人がそういうことがないとおっしゃれば、それはないわけでございまして、という限界があります。それから、身内、かばい合うという気持ちもないとは言えないかもしれません。
 これは外務省だけではなくて一般的に組織である話でございますけれども、こういった点について対応していくために、このたび、前から園部監察査察担当の参与にいていただいていますけれども、この四月一日から検事の方に監察査察官ということで来ていただきました。したがいまして、今後はそういった外部の目を入れることができるようになると私は考えております。
 それからさらに、調査の結果を外に御発表した場合に、やり方も含めまして、いろいろな御批判に耐えるものでなければならないということもございますので、そういうこともおのずからチェックになっていくと思います。
 そういった意味で、これからそういった限界がかなり改善をされるのではないか、制約が改善されるのではないかと考えております。
山田(敏)分科員 ちょっと今の続きを申し上げますと、この赤尾大使は小町官房長に対して、これは写真が載っております、財布を出してお金を出すところが載っておりますので、そのお金は、相手がゴルフ場のオーナーであると。茶店でジュースを一杯飲んだ、飲み物を飲んだ、その飲み物代の二十バーツ、すなわち日本円で八十円をそのオーナーに渡しましたと。これが調査結果でございます、以上で調査は終わりました、こういうことなんです。
 きのう私は、このビデオを撮った方を呼びまして、このビデオを自分で見ました。非常に鮮明なビデオで、よくはっきり映っておりました。今の、赤尾大使がおっしゃったことは明らかにうそでありまして、ビデオの写真もここにあるんですけれども、これが財布を出してお渡しになるところのビデオの一部なんです。これは、この真ん中の白いシャツを着た方がゴルフ場のオーナーの方なんですけれども、この方にはお金を渡さないで、こちらの方に、この手前の方ですね、渡すのが映っておりました。
 これはそんなに大きな問題じゃないんですけれども、私は、いろいろな問題で、もし内部調査をするのであれば、今私がやったように、取材された方のビデオがあるということですので、その方を呼んでビデオを見れば、調査が公正に行われる。ところが、外務省がおやりになったように、上司の方が部下を呼んで、本人はこう言いました、それ以上は何もありませんと。本当だったらちゃんとこういうふうにやればいいわけですね、その辺のことをもうちょっとはっきりしていただかないと。
 今、赤尾大使がおっしゃったこと、このビデオもありますので、うそを言って、その結果そうなったということについて、今後どういうふうにされるおつもりですか。
杉浦副大臣 内部調査のあり方は、今大臣ちょっとお触れになりましたが、今度、監察査察官が四月一日誕生いたしましたので、これから検討すべき課題ではないかと思います。
 相次ぐ不祥事の中で、提言が出まして、改革要綱をつくってやってまいったんですが、その中で一貫して言われていたことは、外部のチェックがなかった、内部チェック、外部チェックがきいていなかったというのが不祥事の原因の大きな一つだという指摘をされておりまして、要綱でも、監察査察制度を立ち上げる、本省の監察も査察もやる、在外の査察もやる、それから外部の人を導入する。そして、ちょっと今「変える会」との関係でとまっていますけれども、開かれた外務省会議という有識者会議を監察官の上に置きまして、目安箱といいますか、外からの意見をどんどん聞いて改革に資していこうというようなことが提言にあり、要綱にございます。
 ですから、そういうことを前提にして、今後そういう問題が起こった場合には、どういう人に、どういう手順で調査をするか。監察査察官がおるわけですから、今は任命された検事ですね、そういう人が当たるとか、そういう点について、これから検討すべき課題ではないかと私は思っております。
山田(敏)分科員 次に、ビザの件なんですけれども、バンコクの領事部がございまして、ビザを発行しております。年間に約五万人のビザを発行しているんですが、タイの方が大変厳しくなったと。私は、去年ODAの調査でタイに行ったんですけれども、いろいろな方にお伺いしました。ちょっと前まで十万人ぐらいだったんですけれども、今は五万人ぐらいの発行になっております。
 ジャーナリストの方にお会いして、実は週刊現代の四回目のときに、不正ビザというんですか、領事部の中で正規のビザではなくて別のルートでビザを発行しているという疑惑が書かれておりましたので、それについてお伺いしました。
 こういうケースがございます。タイ人の女性で五十歳の方ですが、この方は日本人と結婚されて、娘さんがいらっしゃって、今はタイに住んでいらっしゃる。その娘さんの結婚式にビザを申請しました。御主人であるだんなさんも同行するということで、ビザを、これは普通の非常に何でもないケースなんですけれども、このビザが却下されました。
 どういう基準でビザを発行して、どういう基準で却下するのかということを、外務省の方に私は文書で問い合わせました。それについては一切答えない、基準については明らかにしない、却下についても理由を言わないというお答えが返ってまいりました。
 このタイ人女性、五十歳の方、非常にお気の毒でございますので、娘の結婚式に出られないということで、あるジャーナリストの方に頼まれまして、その方が木寺公使という方に電話をして、この人を何とかしてくださいと頼みました。そうしますと、数日中にこのビザがおりました。これが第一件です。
 もう一件は、二十八歳の男性なんですけれども、日本の大学、愛知学院大学を卒業された方ですが、これも、相手先の保証、日本の企業の保証で日本にビジネスで行くということでビザの申請をしました。これも却下されまして、もうビザがないから日本には行けない、ビジネスもできないと。このケースも、大使館の方に頼むと数日でビザがおりました、こういうことなんです。
 そのほかに、タイの旅行社をやっていらっしゃる方が、タイ人が旅行するのでビザが却下されるとまずいということで、大使館の方にこれは頼んでやってもらう、こういうことがあったということでございます。
 そうしますと、ビザの審査、これは正当に、常に厳正に公正に審査をされたという回答ですが、しかし、一回却下したものを数日後に、いや、あれは却下じゃなかったということがたびたび起こりますと、やはりこれはビザの審査そのものが本当に正しく行われているのかなと。やはり、何か非常に恣意的なものが働いてビザが発行されているのではないかと疑われても仕方がないということがあります。
 現在、タイの日本における不法滞在者、不法就労ですね、二万人になります。二万人の方が、いろいろな、風俗とかそういうところで働いて、不法に滞在されています。一方、ビザの申請に必要な書類は、私、全部見ましたけれども、さっきの五十歳の女性なんかのケースですと、十四種類の書類を出しなさいと、非常に厳しい審査ですね。普通に旅行される方でも、預金通帳の本物を出しなさいと。お金があるかどうか、ない人はビザを発行しません、こういうことだと思うのですけれども。これだけやって、日本に来た人が、二万人も不法滞在者がいるというのは、いかにも私は不自然なことだと思います。もう一度内部調査をしっかりやっていただきたいのです。
 こういうふうに、何か口をきくと恣意的になるという状況の中で、実は私、ある書類を手に入れました。歴代の、これは赤尾大使の分ですが、太田大使、恩田大使、三人のゴルフの会員権でございます。会員権を無料で発行して、あなたはただでやってくださいと。これは会員権の写しなんですけれども。
 本人の御希望があったのかどうか、恩田大使の例ですと、エキスパイヤーが二〇二五年、本人が九十歳まで無料でゴルフをしてください、こういうのを受け取って歴代大使がプレーされているわけです。これはバンコク・ゴルフというゴルフ場なんですけれども、そのほかに、ブルーキャニオンというところも発行しましたということを言われました。
 これを、問題ではないですかというふうに外務省に聞きましたところ、問題ではありませんというお答えなんですが、今の私の説明を聞かれて、大臣、いかが思われたでしょうか。
川口国務大臣 ビザの発行の基準については、どういう基準で今やっているのか、ちょっと私はよくわかりませんけれども、現在の、不法入国のお話もなさいましたけれども、いろいろな例があって厳しく審査をしなければいけない状況と、それから、恐らく大勢の方が申請をなさっていらっしゃるということとそれを審査する人員の関係で、実際上何か問題が生じていることがあるのかないのか、そこは私、聞いてみたいと思います。
 もう一つのゴルフクラブの件、どういう状況でそのメンバーにしていただいているのか、これも私、全く聞いていませんので、官房長からお答えをさせたいと思います。
北島政府参考人 週刊現代の記事は、私、官房長になる前ですけれども、拝見しております。外務省の官房として調査をしたというふうにも承知していますし、それは委員御指摘のとおりでございます。
 他方、突然のお尋ねですので、私自身、今手元にその結果というのを持ち合わせておりませんので、ゴルフ場の会員権の件について、どういうことだったのか、もう一度調べて御報告したいと思います。
山田(敏)分科員 大臣、ここにコピーがございますので、ぜひ、官房長おっしゃったように、厳正に、事実関係、こういう便宜供与をあちこちでもらっているということであって、なおかつ、タイの方は非常に、一種の不平等条約みたいな、日本の方は百万人近い方がタイに来て、タイから日本に行く場合は非常に厳しく、私の知っている方も却下されたという話も聞きましたけれども、その中で、こういう大使館の方が便宜供与を受けて、頼まれたらやるというようなことでありますと、非常に、タイの方の日本に対する印象、外交的な配慮もございますので、ぜひ調査をして、御報告していただけますでしょうか。
川口国務大臣 ゴルフの方のケースについては、これは外交官の世界で、例えばほかの国でもそういうことがあるのかないのか、この辺は私、全くわかりませんけれども、どういう状況でそういうことが生じているかということは聞いてみたいと思います。
 それから、ビザのことにつきましては、ビザを拒否する、先ほど申しましたように人数が足りないとか審査を厳しくしているとかいろいろな個別の状況はあると思いますけれども、最終的にどういう理由で不許可にしたかということについては、これは万国共通のルールで、国として説明をしないということになっているということでございますが、それならば何でその後違う判断が生じたかということについては、おっしゃるように私も不思議な感じがいたしますので、それについても聞いてみたいと思います。
山田(敏)分科員 そこで、数々の疑惑があって、ではどうすればいいかということでございますけれども、私、まず、会計検査院に来ていただきまして、報償費、機密費の問題が正しく使われているかどうかということで、ある情報がありましたので、ちょっと調査に行ってくださいというふうに会計検査院にお願いしました。
 会計検査院の方は、それはできないと。なぜならば、在外公館の調査に行く場合は、一カ月とか二カ月先の、例えば私が言ったのは八月なんですが、十月ごろの何月何日に大使館に会計検査院が参りますという予告をして、空港に着いたら大使館の方に出迎えていただいて、大使館に着いて、そして、あらかじめ会計の書類は全部そろえていただいて、それを見て、心証、いいか悪いかという心証を言って、やるんですと。ですから、捜査したり調査をする権限も能力もありませんと。
 会計検査院すなわち会計を検査するところですから、会計の書類を出してもらわないと検査できません。ですから、この報償費について、こういう問題があったら、ちょっと行って、領収書を全部見せてくださいと言って調査すればわかるわけなんですけれども、それはできません、こういうことでございますので。それでは、会計検査院の調査で一件ぐらい何か発見できたのか、在外公館の。ほとんど何もできてない。それは、そういう疑惑の件があっても、二カ月先に出すということでございます。
 それから、先ほどの不正ビザについても、これは重大な事件でございますので、警察庁を呼びました。御存じのとおり、日本の警察は海外で捜査をすることはできませんので、例えば水増し請求があった、この場合もできません。現地の警察にお願いしないといけない。そうしますと、タイの警察は治外法権がございますので、領事館、大使館の中には捜査は行けません。
 ということになると、こういう問題についてだれも捜査できない、こういうことになる。唯一できるのは、先ほどおっしゃった内部調査と、それから監査をおやりになるということでございますので、よほどのことがないと、国民の税金が正しく使われているかどうかわからない状況になっていると思います。
 私も、先ほど官房長が御説明いただいた査察使という制度を詳しくお聞きしました。外部の方を一人入れて、今までどおり現役の大使の方が査察使になられて、お仲間である大使のところに行って査察をします。しかし、査察そのものは、外部の方が一人随行に入っても余り実質的に変わらないと思うのですけれども、大臣、副大臣、査察制度は本当に抜本的に変わったとお思いになるんでしょうか。お答えください。
川口国務大臣 査察制度につきましても、今いろいろな改革の過程で考えておりまして、私が十の改革の中で書きましたことは、これからすべての公館について外部の方に入っていただいて査察をするということでございます。予算の関係がございまして、短い期間でできないと思いますけれども、何年かかけて全部やりたいと思っております。
 そういったことを通しまして、やはり外部の目で見る、あるいは透明性を向上させるということが大事だと思っております。
山田(敏)分科員 実は、イギリスやアメリカには、イギリスの法律で公益開示法という法律がございます。これは、中身は内部告発をされた方を保護する法律でございます。アメリカにも同様の法律がございます。
 これは、内部で見ていれば、内部しかわからないことはたくさんございますし、国のため、国家のため、そして正義のためにこれは告発しなきゃいけないと思われた方がもし告発をしますと、もうその組織の中で一生生きていけない、あるいは経済的に、あるいはいろいろな制裁を受ける、だから怖くて内部告発できないという状況が日本にはあるわけですけれども、いろいろなことを見てみますと、内部の方が正義のために告発されるということは非常に重要で、かつ非常に有効であるというふうに、今、イギリスの例を調べても、法律ができてから約二百件、告発がございます。非常に透明性の高い、さっき大臣がおっしゃった、民主的な、国民のために明らかになる。
 同僚議員も先ほど質問がありましたけれども、なかなか外務省は、私もいろいろな質問をしたんですけれども、ほとんど答えていただけない。これでは、国民の代表として、国民の税金が正しく使われているかどうかよくわからない。この外務省改革について、この制度、この法律を私どもは議員立法で用意しておりますけれども、有効かどうか。大臣、副大臣、それぞれおられますので、ぜひ御両人の方の御答弁をお願いいたします。
杉浦副大臣 個人的に、これから監察査察官もついて立ち上がって、きちっとチェックしていこうという体制で、試行錯誤を繰り返しながらやっていこうとしております。在外の査察も、とりあえず外部の人を入れてやろう、これは絶対条件だということで始めておるわけですが、まあ、まだ、九月から始めて、やったのは二十八館ですか。試行錯誤を繰り返しながら、例えば査察使に、外部の人にやってもらうとか、そういうことも将来検討の課題に入ると思いますが、新しい監察査察官のもとで検討をしていくべき課題だと思います。
 この法律の制定も、私個人としては十分検討に値するものだと。今「変える会」でいろいろ御議論いただいておりますので、そこでも議論していただく価値があると思っております。
川口国務大臣 内部告発につきましては、今、社会のいろいろなことを見ていますと、多くの隠されていたことが内部告発で表に出てきているということがあることも事実でございますし、他方、それに伴う問題もいろいろあると思います。客観性ということからもきちんと議論をされなければいけないと思います。ということで、内部告発者の保護の法制化も含めまして、内部告発についての考え方は慎重にやはり議論をしていく必要があると私は思っています。
 組織として一番大事なことは、やはり中でいろいろな意見が当然あるわけでございまして、そういう意見が組織の内部から組織をよくするために使われる、あるいはそういうことを吸い上げるような、組織の中に柔軟性がある、風通しがいい状態があるということでございまして、そういう組織に外務省をするように、これは全員で努力をしていかなければいけないと考えております。
杉浦副大臣 ちょっと一言だけ。私が検討した方がいいと思いますのは、今、陰湿ですよね、極秘無期限の文書がリークされる。今まで何回もありました。だから、内部にいる人は、そういう法律に反する形で公務員法違反でリークするという事態が起こっているのは、私は不正常だと思うんですね。そういう意味も込めて検討する価値があると思っております。
山田(敏)分科員 もちろん、公務員の倫理法もございますし、イギリスの法律も見ましたよ、アメリカの法律も見ましたけれども、非常に、要するに国家のため、正義のためですね。相手を中傷したり、相手を陥れる、そういうことについては厳重に法律の中にも書いてございますし、そういうことは絶対に内部告発としては取り上げないということになっておりますので、その辺、また御検討をお願いしたいと思います。
 どうもありがとうございました。
山名主査 これにて山田君の質疑は終了いたしました。
 次に、北川れん子君。
北川分科員 社民党・市民連合の北川れん子といいます。よろしくお願いします。
 きょうは、ことしの二月の八日に出されました「アフガニスタン復興支援国際会議」に係るNGOをめぐる外務省の対応に関する調査結果、それからもう一つは、それもことしの三月四日の北方四島住民支援に関する調査結果報告書と、そして四月五日、先週新聞報道になりました、二〇〇〇年の自民党の国会議員団のサハリン訪問における状況においての問題で、前者の二点については情報公開制度の絡みでお伺いします。そして、後者は、いわゆる便宜供与、先ほどもお言葉の中に、ほかの議員からの質問にもありましたけれども、便宜供与ないし官官接待、機密費という形に移っていくと思いますが、その点でお伺いします。
 私も、いろいろ情報公開の件名を皆さんに見せていただいて、すごく幅広く市民というものは関心を持って出されていくんだなというふうに、件名でさえいろいろと感じるところがあるんですが、外務省はいろいろな訓令というのを在外公館に出されるというふうに聞きましたが、場合場合によって違うんだと思うんですが、訓令というものには種類というか質というか、そういうものが何かあるんでしょうか。
北島政府参考人 訓令と申しますのは、本省から在外公館に対してこういうことをすべしと、要するに仕事を言いつけるわけでございますけれども、中身は多種多様でございます。
 いわゆる外交問題についての、例えば自主的な申し入れを相手国政府に対して行うべしという外交政策上の問題もございますし、それから、今委員が指摘されたと思いますけれども、日本から要人が外国を訪問する、その外国を訪問する際のいろいろなアレンジメント、我々ロジスティックスという言葉を使うことがございますけれども、このロジの問題について、例えば、宿舎をどうするか、車両をどうするか、通信手段の確保をどうするか、さらには荷物、パスポートの扱いをどうするかといったことについての指示を出すこともございます。これも訓令を通じて指示をするということでございます。
 要するに、訓令の中身というのは多種多様にわたっております。
北川分科員 多種多様ということになりますと、調査のときにすごく訓令が大事。調査で、時系列的に何に基づいて動いたのか、そしてどういう事態を引き起こすことに訓令が端を発したかというときには、訓令を、どういう訓令が出ていたかというのを知るのが一番大きな眼目になると思うんですが、松尾さんの問題のときにいろいろと機密費問題で情報公開がぱあっと、去年四月になったときにたくさんの情報公開で開示せよというふうになったと思うんですね。
 そのときにも、経費要求のための概算見積もりを送るように出した訓令の開示請求が何件か出されているんですけれども、去年の四月に出したのが六月ごろ、非開示というふうに来るんですよね。この訓令が非開示になるケースが多いように思うんですが、これは、どういう点をポイントに非開示にされているんでしょうか。
北島政府参考人 委員御指摘の文書でございますけれども、これはまさにロジに関連しての訓令ということだったわけですけれども、非開示ということで外務省としまして判断しました文書、それは、去年のその時点で行われていたいわゆる松尾事件に係る捜査等に関連するということで、これを公にすることによって捜査に支障を及ぼすおそれがあるというふうに判断したわけです。したがいまして、情報公開法五条四号、これは犯罪の捜査等に支障を及ぼすおそれがあること、この五条四号を適用して不開示決定を行ったということでございます。
 他方、松尾事件につきましては、既に有罪が確定したということで、もはや、これらの文書を公にしても捜査や公訴の維持に支障が生じるということはないと認識しておりますので、去年、松尾事件に係る捜査等に支障を及ぼすおそれがあるとして行った不開示決定のうち、異議申し立てを受けているものについては見直しを検討したいというふうに考えております。
北川分科員 まさに、私が次の質問で聞こうかなと思っていた点なんですが、見直しをしようと思うというのは、まだちょっと、段階的に、すべて開示というところに至ったということではないというふうな御決定なのか。五条四号の問題が質的に解決されたら、不開示になっていたものは、異議申し立てをしている人いない人にかかわらず、開示をしますということを請求者に送るべきだと思うんですが、その点はいかがですか。
北島政府参考人 情報公開法の手続に従って前向きに検討したいということでございます。
北川分科員 前向きということなので、もう一つ、では、さらにつけ加えて言いますが、第七条に、公益上の理由による裁量的開示というのが、情報公開制度の中には既に七条があるんですね。だけれども、これは部分開示で使われる点なんですけれども、五条四号とかで幅広く非開示のときに使われていくものですから、私たちはそのバランスというものが、国の方で開示をしない理由ということで五条四号がよく使われるので、では、開示をしてくれと言った側にとっては、この第七条をこれからどういうふうに裁量権の幅を広げていかれるのかといった御決意を聞かせていただきたい。
 そして、先ほどちょっと四月五日の新聞のことで言いましたが、サハリンですね。いろいろな訓令があるとおっしゃいました。サハリンの方には、七人の議員団が行かれたときには、どれぐらいの訓令を事前事後出されているのか教えていただくことはできますでしょうか。
北島政府参考人 第七条でございます公益上の理由による裁量的な開示、「行政機関の長は、開示請求に係る行政文書に不開示情報が記録されている場合であっても、公益上特に必要があると認めるときは、開示請求者に対し、当該行政文書を開示することができる。」外務省といたしましては、情報公開法の趣旨、これを十分に尊重して、十分な対応をこれまでもしてきているつもりですし、今後ともそういうふうにしたいと思っております。
 それから、今言及されましたサハリンのケースでございますけれども、突然のお尋ねでございますので、私、手元に資料がございませんが、いずれにしましても、情報公開法の趣旨を踏まえて対応したいということでございます。
北川分科員 では、サハリンの方の件に関しては後日教えていただくということをお約束いただいたというふうにしていきたいと思うんです。
 私どもの阿部議員の方が、去年の六月二十七日の外務委員会でも質疑をさせていただいておりまして、ロジブックの請求に関しても、ここにあるわけですが、森首相がアフリカ、ギリシャ訪問のときの分があるんですが、案外、出てみればどうということないことが書いてある。それを、さも、これが事件の捜査にかかわるとかということで、出さない出さないという形があの機密費、俗称機密費ということになると思うんですが、であって、余計に不透明感をつくったというふうに思うのですが、私がなぜそう言うかというと、外務省が一番、情報公開制度の運用において部分開示とか非開示が多いわけですね。そこがやはり、機密費で一番的になったのは、外務省と内閣官房だったろうと思います。
 その点で、さらなる、新年度に向けての決意といいますか、具体的な決意をもう少し前向きに述べていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
北島政府参考人 御指摘の外務省の情報公開法に対する対処ぶりにおいて不開示が多いのではないかということでございますけれども、申し上げておきたいのは、外務省はその所掌事務の性質上、例えば情報公開法第五条三号に規定されている、他国等との信頼関係を損なうおそれ、それから、他国等との交渉上不利益をこうむるおそれがあると認められる情報が含まれている行政文書、これを多く保有しているわけでございます。これらの行政文書に対し開示請求が行われた場合には、全体として、または部分的に不開示とせざるを得ないということがございます。
 他方、外務省としましては、日常的に多忙な通常業務の中で、情報公開法の趣旨に従い、行政活動の説明責務と円滑な行政運営との調和を図る観点から誠心誠意対応していきたい、そういうふうに考えております。
北川分科員 ということで、いつも外務省、他国の皆さんに迷惑をかけるのはいかがなものかという、こちら側の思いをうまくすくい取って、いつもそういう御説明をいただいていたわけですけれども、官官接待の場合は、結構、身内同士、日本人と日本人、それは市町村レベルも官官接待はそうだったんですけれども、対外的に迷惑を及ぼす可能性があるからというふうに言って、すごく墨塗りで出されるケースが多かったわけです、部分開示ですね。けれども、本当のことを知ってみれば、結構、身内同士の官官接待をやっていたということは後になってわかるといったときに、何だこれはというのがやはり市民的な感覚だったんですよね。
 それに、外務省は、残念ながら、たった一年しか情報公開制度が施行されていない中で、唯一、NPOの理事長、非営利組織、情報公開市民センターの高橋利明(たかはしとしあき)さんとお読みするんでしょうか、から、余りにも放置を長くしているというのは不当ではないか、違法だということで、ことし裁判にもされているという省庁であるという御自覚を持っていただければ幸いかなという気がいたします。
 そこで、今回、外務省、外務大臣おかわりになられて、川口外務大臣は、二月二十二日の記者レクの中にもありましたように、議員のメモで、議員が言ってきたことを省員がメモしたそういうものさえ情報公開に適用していきたい、それほど透明感のある外務省をつくっていくんだというふうにもされていた記者レクの情報なども私も読みましたけれども、今回、先週末にあった、四月五日のサハリンの国会議員団のことにおきましては、今回のアフガニスタン復興会議におけるNGO排除問題におけるような調査報告というものは、今の時点でお出しになられるつもりなのか、調査はされるんだったら、いつまでにされようと思っているのか、その点をお伺いしたいと思います。
    〔主査退席、桜田主査代理着席〕
北島政府参考人 申しわけありません。そのサハリンの件、私、詳細承知しておりません。今承った件について考えてみたいと思います。
 いずれにしても、情報公開法の関連での御質問であれば、情報公開法の目的と趣旨、これを十分に踏まえて対応したいと思います。
北川分科員 それは暗に、レクといいますか、そのときに言わなかったじゃないかということをおっしゃっているのかもわかりませんが、情報公開制度というのは、皆さんが既にお出しになるという積極的なものがあれば、一々あの制度を使って市民がとる必要はなくて、いずれのときでも見ることができるように差配をされていればいいんですが、それが今までなかったので国に対しての情報公開制度が市町村から進んでいったわけです。
 外務大臣にお伺いしたいんですけれども、調査報告というものは情報開示以前の問題じゃないですか。だから、外務大臣に調査報告はされるおつもりが、今、各、先ほどモニターで私もずっとこの委員会を見させていただいておりましたが、どの委員からも少なからずは今回の四月五日の報道に関しての質問があったかに思います。ですから、私は、調査報告を今回のNGO排除問題と同じようにしようという御決意がおありになるのかどうかといったのをお伺いしているんですが、いかがでしょうか。
川口国務大臣 このことにつきましては、記者会見であったか国会での御質問だったか、一回、このことというのはこの便宜供与の件ですけれども、お話を伺ったことがございまして、どういうことなのというふうに私は言っております。
 当然、これは外務省の中の部分でしか調査をすることはできませんので、外務省の関係をした職員に対して、どういう対応をとったのかという観点から、それは聞きたいと考えます。
北川分科員 では、それは調査をするということを言われたというふうにこちらは受け取らせていただいていいということでよろしいのでしょうか。
 それと、特別供与というのは、九九年には三万三千件ぐらいで、およそ十六万人ぐらいの方があるという数字を出している本もあったのですけれども、九九年というと平成で十一年ですよね。これは九八年度の決算ということだろうと思うんですが、どんな感じなんでしょうか。
 まず大臣には、先ほどの調査を、では、するということとしてお受け取りしていいのか。そして、官房長の方には、便宜供与というのに関しては、平成十年、十一年、十二年、ですから一九九八年、九九年、二〇〇〇、二〇〇一年前後では、件数的にはどう変遷してきているのかをつかまれていらっしゃいますでしょうか。
川口国務大臣 前段のことについては、そう受け取っていただいて結構です。
    〔桜田主査代理退席、主査着席〕
北島政府参考人 便宜供与の総件数というお尋ねでございます。
 申しわけありません。突然のお尋ねですので手元に資料を持ち合わせておりませんが、委員が御指摘されたように、基本的には年々ふえてきているということでございます。
北川分科員 地方の方で官官接待の問題があったのは労働省のお役人の問題等々が出たときにだったので、かなり、もう少し、七、八年前だというふうな気がするんですが、年々ふえてきたというのには何か特別な理由があるんでしょうか。
北島政府参考人 委員、今官官接待と便宜供与と関連づけて御質問されているのかもしれませんけれども、便宜供与といいますのは、そもそも、日本から外国にお出かけになる国会議員、政府関係者にとどまらず、各界の方が外国に行かれて外交関係の仕事をされる、そういう際に外務省の出先である大使館、総領事館がお手伝いをするということでございます。
 私が年々ふえているのではないかということを申し上げましたのは、一般的な流れとして、日本と諸外国との交流、経済交流もありますし、文化交流もあります、政治面での交流も当然あるわけですけれども、昨今のグローバリゼーションの流れ等を考えれば、当然その種の方が外国にお出かけになるという件数はふえているのではないか。したがって、大使館、総領事館としてお手伝いする件数もふえているのではないかということを、一般的な印象として申し上げたということでございます。
 さらに、一つつけ加えさせていただきたいのは、便宜供与の具体的な中身、これは極めて厳密にチェックして、必要最小限の便宜供与、これはどうしても行政ですから合理化を図らざるを得ないといったことがあるわけですけれども、そこは厳密にチェックして行っているということでございます。
北川分科員 すごく説明していただきまして、ありがとうございます。
 なぜ件数がというと、件数と内容というのが、予算、お金にすぐにつながっていくようなイメージを私が持ったものですから、そういうふうな聞き方になってしまったのですが。
 その、いわゆる便宜供与。例えば、私などはそのランクで読ませていただくとCCランクというふうになる。AAランク、BBランク、CCランク、DDランクとあるのがわかりましたし、もっと細かく分けていらっしゃるのかなとか、その便宜供与と訓令とは密接に重ね合わさっているんじゃないかという気がしたのですが、今回の問題で特別な便宜供与というのは行われていたのかどうか。
 それと、もう一つは、公金という税金ですね、それを使うことになっているという事実というのはなかったのか、あったのか、その点などはいかがでしょうか。
北島政府参考人 先ほど委員が御指摘になった個別的なケースについては、申しわけありません、私存じ上げませんが、一般論を申し上げれば、便宜供与に伴って予算を使うということはあり得るわけです。
 例えば、外国にお出かけになって、外国の要人と会われたいという御希望があれば、当然のことながらアポイントメントをとるわけです。アポイントメントをとるに当たっては、電話をかけてとるといったことが当然生じますし、それから、場合によっては、国会議員がお出かけになるときに飛行場にお出迎えに上がる。これは、議員によっては必要ないというふうにおっしゃる先生も当然いらっしゃると思いますけれども、外国ですし、車を出すことがございます。これは当然、それに伴って予算を使うということはあるわけです。
 それから、日本から来られた国会の先生が外国の要人と大事な会談を持たれるというときに、食事の機会をアレンジするということがあり得るわけで、その経費の負担については幾つかの可能性があり得る、そういったことがございます。
北川分科員 ということで、やはり税金というものは幾ばくかそれに伴って使われているのだということをお答えいただいたと思うのですが、川口大臣、先ほど、記者レクで一度か、今回のサハリンの訪問団について質問されて便宜供与のことについて答えた記憶があるとおっしゃったのですが、その特別な便宜供与というものが、この場合であるかどうかは別にしても、存在するのは御存じなんでしょうか。
川口国務大臣 便宜供与の実態については、全く知っておりません。
北川分科員 それは、先ほど官房長は、ずっと便宜供与というのはあるんだというふうに御説明いただいて、私がその冠で特別なというのをつけたのですが、川口大臣は、今、便宜供与については存じておりませんとおっしゃったのですが、特別な便宜供与というものが存在しているということを、慣行上やっていたということは知らないという意味なのか、便宜供与というもの自身があるというふうに思わなかったということなんでしょうか。どちらですか。
川口国務大臣 便宜供与については、私自身、受けたこともございますし、いたしたこともありますので知っておりますけれども、便宜供与の実態については存じませんと申し上げましたのは、その特別な云々ということについては知りませんという意味です。
北川分科員 ということで、ぜひ、川口大臣、先ほど前向きに調査をやっていただけるということだったので、やはり川口大臣自身も知らない点が、着任されてまだ間もないということで、おありになるというのが次から次へ出てきて申しわけないとは思うんですが、先ほどの調査、大体、着手していつごろまでには公開というか、記者発表しようというふうなことで今心構え的に思っていらっしゃるか、教えていただけますか。
川口国務大臣 できるだけ早くと思っています。
北川分科員 できるだけ早くということで、四月に入りまして、四月の今、今週はまた参考人招致ということも入っておりますし、できるだけ早くよろしくお願いをしたいと思います。
 それと、もう一度戻りますが、情報公開法の「目的」の中には、「国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資す」とあるんですけれども、そのために、情報の一層の公開を図ると書いてあります。
 それで、一部の論者とか専門家の中には、部分開示というのは開示ではない、非開示に近い開示ということで、外務省は、先ほどの答弁も聞かせていただくと、部分開示でさえ開示したんだからいいではないかというように聞こえてきたんですが、部分開示はもう時代おくれだという感じがするんですが、その辺などは御認識としていかがでいらっしゃいますでしょうか。
北島政府参考人 部分開示がそもそも公開と言えるかどうかは、情報公開法の主務官庁である総務省の見解を伺う必要があろうかと思いますが、外務省としては、情報公開法上、部分開示も開示であるというふうに考えております。
杉浦副大臣 外務省改革の一環で、情報公開プロジェクトチーム、丸谷政務官に担当してやっていただきまして、検討して、極力開示するという方向でいろいろな、例えばホームページをよくするとか、いろいろやったんでございます。私も、もちろん外交交渉ありますから秘密もあるでしょう、公開できないところもあるだろうから、それは原則開示という立場で臨んでほしいということは機会あるごとに申し上げておるんです。
 しかし、外交というのは、やたらと国と国と関係しておりまして、それから個人の名前も出てくるということで、新しい文書、三十年もたったのは別として、どうしてもその部分は消さなきゃいけないところが出てくる、相手国の了解を得るとかその個人の了解を得ると。役所の場合にはあるランク以上は公表しちゃうということがあるらしいんですが、相手のある話についてはどうしても消さざるを得ない点がある。そうなると部分開示になっちゃうんですね。そういう点は御理解いただかなきゃいかぬと思っております。
北川分科員 そこは多分難しいところだろうと思うんですけれども、機密費問題、俗称機密費なので余り、これは報償費ということで、機密費の部分というのは、私などはもうゼロでいいのではないかという立場なものですから、今回四〇%ですか、削減されたというふうにも聞いて、四〇%でしたかしらね、というふうには聞いているんですけれども、それがまたどこかで振られて何かに潜り込んでいるという検証というのも難しくて、だって、何に使っていたかがわからないといったものを全部ひっくるめて機密費。
 外交上は情報が漏れないようにした方が質の高い外交であるようなイメージをつくってきたということもあると思うんですが、これからは、だれに聞かれても一本筋の通った外交をやっている、それは多分、憲法の前文に沿った外交だろうと思うんですが、それがあれば、私は、どういうふうに使われたとしても、それを政治的な利用に差配されるということは、何分この法治国家の中では、これから以降ですよ、平和外交で努めようという日本の行く末であるならば、その今お答えいただいた副大臣の御心配というものに関しては払拭してきたのではないかと思うんですが、その点、いかがでしょうか。
杉浦副大臣 報償費については、昨年七月一日から大臣決裁になりまして、私ども、中身を見ております。新大臣になられてからは、当分全部見ていただくということでやっております。
 昨年の報償費改革で全体の四〇%を削減、そのうち二五%は会議費とかいろいろなので支弁するということで外へ出しました。もっと出せるんじゃないかという意見もございます。いろいろございますが、私ども見ておりますので、その経過を見て、どうしてもこれは公表してはまずいというものもございます。ボーダーラインもあります。いろいろございますので、そのあたりは実態を新大臣によく把握していただいた上で考えていくことに相なろうかと思っております。
北川分科員 どうもありがとうございました。終わります。
山名主査 これにて北川君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして外務省所管の質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
山名主査 これより総理府所管中防衛庁・防衛施設庁について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。中谷防衛庁長官。
中谷国務大臣 平成十年度における防衛庁関係歳出の決算につきまして、その概要を御説明いたします。
 まず、(組織)防衛本庁の経費につきまして御説明申し上げます。
 当初の歳出予算額は四兆三千六百九十一億八千六百万円余でありまして、これに総合経済対策の一環として調達等業務効率化システムの設備の整備及び政府職員の平成十年四月以降の給与改善等に必要な経費のための予算補正追加額八十億三千九百万円余、高空における放射能塵の調査研究のため科学技術庁から移しかえを受けた額一億三千万円余、平成十年度総合防災訓練のため国土庁から移しかえを受けた額三百万円余、南極地域観測事業のため文部省所管文部本省から移しかえを受けた額二十三億二千五百万円余、前年度からの繰越額百三十八億七千二百万円余を加え、既定予算の節約等による予算補正修正減少額九十億一千二百万円余を差し引きますと、歳出予算現額は四兆三千八百四十五億四千四百万円余となります。
 この歳出予算現額に対して、支出済み歳出額は四兆三千六百五十四億八千五百万円余、翌年度へ繰り越した額は百一億四千百万円余でありまして、差し引き不用額は八十九億一千六百万円余であります。
 次に、(組織)防衛施設庁の経費につきまして御説明申し上げます。
 当初の歳出予算額は五千七百二億円余、うちSACO関係経費百六億五千万円余でありまして、これに総合経済対策の一環として騒音防止工事の助成等、SACOの最終報告に盛り込まれた措置を的確かつ迅速に実施するために必要となる施設の整備及び基地周辺対策等に必要な経費の予算補正追加額二百二十三億六千百万円余、うちSACO関係経費九十億七千九百万円余、沖縄米軍基地所在市町村に関する懇談会の提言に基づき、沖縄県の米軍基地所在市町村が実施する地域経済活性化事業等に要する経費として総理本府から移しかえを受けた額四十七億九千六百万円余、前年度からの繰越額三百三十五億二千二百万円余、うちSACO関係経費九十四億三千四百万円余を加え、既定予算の節約等による予算補正修正減少額三億六千四百万円余、防衛施設周辺の障害防止事業等に要する経費として移しかえをした額、農林水産省所管農林水産本省へ六億四千九百万円余、建設省所管建設本省へ十二億一千八百万円余を差し引きますと、歳出予算現額は六千二百八十六億四千八百万円余、うちSACO関係経費二百九十一億六千五百万円余となります。
 この歳出予算現額に対して支出済み歳出額は五千九百三十二億二千三百万円余、うちSACO関係経費百六十二億四千八百万円余、翌年度へ繰り越した額は三百四十億八千七百万円余、うちSACO関係経費百二十七億九千百万円余でありまして、差し引き不用額は十三億三千七百万円余、うちSACO関係経費一億二千六百万円余であります。
 なお、主な事項につきましては、お手元に配付してある資料のとおりでありますが、委員各位のお許しを得まして御説明を省略させていただきたいと存じます。よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。
 引き続き、平成十一年度における防衛庁関係歳出の決算につきまして、その概要を御説明いたします。
 まず、(組織)防衛本庁の経費につきまして御説明申し上げます。
 当初の歳出予算額は四兆三千三百九十四億八百万円余でありまして、これに核燃料加工施設事故にかんがみ、原子力安全・防災対策の強化を図るため行う通信機器、車両その他器材の購入等及び経済新生対策の一環として緊急安全防災特別対策の推進を図るため行う武器、通信機器その他機材の購入等に必要な経費のための予算補正追加額二百二億七千七百万円余、高空における放射能塵の調査研究のため科学技術庁から移しかえを受けた額一億五千百万円余、平成十一年度総合防災訓練のため国土庁から移しかえを受けた額三百万円余、南極地域観測事業のため文部省所管文部本省から移しかえを受けた額二十四億二千六百万円余、前年度からの繰越額百一億四千百万円余を加え、既定予算の不用等による予算補正修正減少額四百九十一億百万円余を差し引きますと、歳出予算現額は四兆三千二百三十三億七百万円余となります。
 この歳出予算現額に対して支出済み歳出額は四兆二千九百八十二億千万円余、翌年度へ繰り越した額は百二十四億七千六百万円余でありまして、差し引き不用額は百二十六億二千百万円余であります。
 次に、(組織)防衛施設庁の経費につきまして御説明申し上げます。
 当初の歳出予算額は五千九百二十五億四百万円余、うちSACO関係経費百二十一億三千三百万円余でありまして、これにSACOの最終報告に盛り込まれた措置を的確かつ迅速に実施するために必要となる基地周辺対策及び経済新生対策の一環として騒音防止工事の助成等に必要な経費の予算補正追加額百四十九億二千五百万円余、うちSACO関係経費百十四億八千百万円余、沖縄米軍基地所在市町村に関する懇談会の提言に基づき、沖縄県の米軍基地所在市町村が実施する地域経済活性化事業等に要する経費として総理本府から移しかえを受けた額六十九億七千六百万円余、前年度からの繰越額三百四十億八千七百万円余、うちSACO関係経費百二十七億九千百万円余を加え、既定予算の不用等による予算補正修正減少額二十八億六千九百万円余、防衛施設周辺の障害防止事業等に要する経費として移しかえをした額、農林水産省所管農林水産本省へ六億四千八百万円余、建設省所管建設本省へ十一億六千三百万円余を差し引きますと、歳出予算現額は六千四百三十八億千二百万円余、うちSACO関係経費三百六十四億六百万円余となります。
 この歳出予算現額に対して支出済み歳出額は六千四十七億五千万円余、うちSACO関係経費二百二十四億七千五百万円余、翌年度へ繰り越した額は三百五十億千四百万円余、うちSACO関係経費百二十二億六千五百万円余でありまして、差し引き不用額は四十億四千八百万円余、うちSACO関係経費十六億六千四百万円余であります。
 なお、主な事項につきましては、お手元に配付してある資料のとおりでありますが、委員各位のお許しを得まして御説明を省略させていただきたいと存じます。よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。
山名主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院増田第二局長。
増田会計検査院当局者 それでは、最初に平成十年度防衛庁の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。
 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項一件、意見を表示しまたは処置を要求した事項一件及び本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項二件であります。
 まず、不当事項について御説明いたします。
 これは、地域通信処理システムの整備に当たり、調達手続を開始する前に電子計算装置を搬入し、据えつけ調整等に着手させるなどしていたもので、国の会計制度の基本原則を逸脱し著しく適正を欠いていたものであります。
 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について御説明いたします。
 これは、自衛艦の検査・修理の契約に関するものであります。
 指名競争入札により実施することとしていた契約について検査したところ、契約業者以外の指名業者のすべてが入札を辞退していたため、海上自衛隊では辞退しなかった一社と随意契約を締結しておりました。このため本件契約の締結に当たっては競争性が確保されておらず、国は、競争入札による利益を得られない状況となっていることなどから、防衛庁に対して、指名競争入札制度の機能を十分発揮させるよう改善の処置を要求いたしたものであります。
 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。
 その一は、給汽業務の部外委託に係る予定価格の積算に関するもので、給汽業務の予定価格の算定に当たり、仕様書等で指定するなどした作業時間数に、会社から提出された見積資料を審査し算出した作業時間当たりの労務単価を乗じるなどしておりましたが、防衛庁では、給汽業務を含む建築物の保全業務に関し、建設省から積算基準及び労務単価について通知を受けており、下部機関にも周知するよう要請されていたことから、これらに基づいて算定することが可能であったと認められました。これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。
 その二は、労務借り上げ等契約の予定価格に適用する総利益率の算定に関するもので、総利益率は、会社等から提出させた一般管理費及び販売費の経費見積額を査定し、これを売上原価の見積額で除するなどして算定することとしておりましたが、この経費見積額の租税公課相当額には消費税額相当額が含まれていたのに、これを控除しないまま総利益率を算定して計算価格を算出し、この計算価格に消費税額を加えて予定価格を算定しておりました。これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。
 続いて、平成十一年度防衛庁の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。
 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項三件及び本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項二件であります。
 まず、不当事項について御説明いたします。
 検査報告番号一号及び二号の二件は、診療報酬の請求に当たり、所定の伝票に診療内容を正確に記載していなかったり、伝票の記載内容を十分確認しないまま請求を行っていたりしていたため、請求額が不足していたものであります。
 検査報告番号三号は、護衛艦を調達するに当たり、契約金額を確定する際、契約の相手方が免税事業者となっていた事業年度があるのに、納税が免除されている消費税相当額を算入したまま確定計算価格を計算したことにより、代金の支払い額が過大になっていたものであります。
 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。
 その一は、医学科学生に対する給食の実施に係る糧食の調達に関するもので、臨床実習などにより食事ができない学生がいることなどの実態を把握しないまま糧食を調達していたことなどから、実際に食事をしなかった学生に係る糧食費が不経済となっておりました。これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。
 その二は、八一式短距離地対空誘導弾地上装置の部品の調達に関するもので、この調達所要量に係る官給部品の数量の算定におきましては、すべてを交換することを前提にしておりましたが、官給部品は定期整備時に点検、計測を行ってふぐあいと判断されて交換するものであり、過去の交換実績に基づいて算定する必要があると認められました。これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。
 以上をもって概要の説明を終わります。
山名主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。中谷防衛庁長官。
中谷国務大臣 平成十年度決算検査報告に掲記されております事項について、防衛庁が講じた措置を御説明申し上げます。
 不当事項として御指摘を受けましたものにつきましては、今後、このようなことのないよう適正な事務処理に十分注意する所存であります。
 自衛艦の検査、修理の契約について改善の処置を要求されたものにつきましては、造船所の辞退理由等契約手続について調査を行い、契約方式の整理を行うとともに、指名競争入札制度の機能を発揮させるための所要の措置を講じ、その的確な実施に努めているところであります。
 また、航空自衛隊における給汽業務の部外委託契約につきましては、予定価格の基礎となる計算価格の算定は建築保全業務積算基準等を適用するよう処置を講じたところであります。
 さらに、技術研究本部における労務借り上げ等契約の予定価格の算定に当たりましては、原価計算業務を審査及び監査する体制を整備するなどの処置を講じたところであります。
 平成十一年度決算検査報告に掲記されております事項について、防衛庁が講じた措置を御説明申し上げます。
 不当事項として御指摘を受けましたものにつきましては、今後、このようなことのないよう適正な事務処理に十分注意をする所存であります。
 防衛医科大学校における医学科学生に対する給食につきましては、食事時間を延長するなどして給食環境の改善を図るなどの処置を講じたところであります。
 また、陸上自衛隊における八一式短距離地対空誘導弾地上装置の交換部品の調達につきましては、その数量を適切に算定し調達数量を決定することとするよう処置を講じたところであります。
 以上、これらの指摘事項につきましては、鋭意改善に努め、今後このような御指摘を受けることのないよう、より一層努力する所存であります。
山名主査 この際、お諮りいたします。
 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山名主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
山名主査 以上をもちまして総理府所管中防衛庁・防衛施設庁の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
山名主査 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石井紘基君。
石井(紘)分科員 大分説明の時間が長くかかったようでございます。なるべく議長に協力をしたいと思います。
 まず最初に、三月でしたか、陸上自衛隊でしたか海自でしたか、ヘリコプターの事故がございましたね。その概要をちょっと御説明いただきたいと思います。
北原政府参考人 御答弁申し上げます。
 今石井先生御指摘の事故でございますが、これは、ことしの三月の七日、十九時三十五分ごろでございますが、陸上自衛隊の第八飛行隊所属のOH6D二機が、夜間飛行の訓練中に、大分県の玖珠郡九重町万年山付近におきまして墜落し、乗っておりました隊員、搭乗員四名が死亡したというものでございます。
 今回、地元の自治体の皆様、あるいは住民の方々に大変御迷惑をおかけしまして、申しわけないと思っておりますし、また、私ども、四名の貴重な隊員のとうとい命を失うということになりまして、あってはならない遺憾な事故だ、そのようにとらえております。改めまして、地域住民を初め、関係の皆様方におわびを申し上げますとともに、御遺族の皆さんに心からのお悔やみと、それから私どもの大切な隊員の御冥福をお祈りしたい、そのように今考えているところであります。
石井(紘)分科員 こういう自衛隊における演習機も含めた飛行機の事故、ヘリコプターの事故というものが意外と多いんですね。昨年もありましたし、毎年のようにある。この五年間に、たしかこれで死亡者の数を数えたら二十名前後になっているんじゃないでしょうかね。
 このヘリコプターというのはどういうヘリコプターで、これはどのぐらい使っているものなのか、それから、この事故の原因というのはどんなところにあるのか、ちょっと御答弁をお願いします。
北原政府参考人 御答弁申し上げます。
 事故を起こしましたOH6Dでございますが、これは取得を開始いたしましたのが昭和五十四年度からでございまして、現在、大体百七十機程度保有をいたしております。そして、偵察ですとかあるいは観測用の任務に使用をしているところであります。
 それから、先生、いつその原因がということでございますが、現在、防衛庁内に事故調査委員会を設置いたしまして、鋭意事故原因等を調べておりまして、できるだけ早く取りまとめ、また公表をさせていただきたい、そして、こうした同種の事故が起きないように万全の措置をとっていきたい、そのように考えているところでございます。今現在、鋭意調査中でございます。
石井(紘)分科員 遺族の心情、あるいは今後の安全というようなこともありますので、まだ調査中ということですけれども、調査は、今のところ、それで何とも言えないのですか、その事故原因について。随分調査も長くかかっておりますけれども、そんなことでいいんですかね。
北原政府参考人 私どもの、各種事故、航空事故等が発生いたしました場合には、四カ月以内に防衛庁長官に報告するよう内部の規則では定められております。しかし、事柄の重大性にかんがみまして、私どもといたしましては、できるだけ早く調査結果をまとめたいと考えております。あわせて、やはり徹底した調査が必要であると考えております。
 先生御承知のように、今回の事故、四名の隊員が実はいずれも亡くなっておりまして、証言等は得られないという困難な面もございますけれども、いずれにいたしましても、組織を挙げまして徹底した調査をし、できるだけ早く調査結果をまとめて公表してまいりたい、それで対策をとってまいりたい、そんなふうに考えております。
石井(紘)分科員 貴重な人命のことでもあるし、また日本の防衛の士気にもかかわることでもあるので、私は、昨年の事故のときにも質問をいたしましたけれども、そういうことを毎回神妙に言われておっても改善されないのじゃしようがないのですね。
 昭和五十四年のヘリコプターで、整備はどうなっているのかとか、それから、やはりいろいろな点で装置も改善されてきていることでもあるし、昨年のときは私は、例えば練習機なんかの場合はやはり脱出座席のようなものを、最近はどこの国でも、これは新しくできる飛行機というのは全部そういう装置が備わっているんですよ。にもかかわらず、防衛庁はそうでないかのごとく答弁をしているというところを見ても、非常にこれはそういう安全管理という面がおろそかにされておるというふうに思わざるを得ないのですね。
 遺族に対するその補償費はもう払ったのですか。
北原政府参考人 今回、四人の隊員は、いわゆる公務上死亡したものでございまして、きょう現在、既に支払われたかどうか、ちょっと今確認しておりませんので、調べさせていただきます。
石井(紘)分科員 事故原因がはっきりしなきゃ補償もできないと思うんですよね。やはり、これはどこに責任があるのかということをはっきりしないとだめですよ。
 それで、そう頻繁に事故がありますと、補償だけでも相当の額に上ると思うんですが、今の会計検査院の報告にはそういうことはありませんでしたが、事故に対する補償額というのは会計上どういうふうに扱っているんですか。
北原政府参考人 事故に対する補償として考えられますのが、例えば飛行機が墜落等によりまして第三者の方々に与えた被害等がまず考えられます。これにつきましては、ちょっと今手持ちがございませんけれども、会計法上、国家賠償法上の手続によりまして計算をして支払っていくことになるかと思います。
 それから、隊員に対しましては、現在調査中でございます。公務遂行中に殉職したといった形を念頭に置きまして、適切な法律に基づきまして、いわゆる補償額を算定していくということになるかと思っております。
石井(紘)分科員 これは質問の通告をしておりませんでしたので、すぐ具体的な答弁ができないかもしれませんが、やはりそういう補償という点も、これは相当多額に上ると思うんで、一応過去五年間ぐらいの、個々の補償についてはいろいろ問題もあって出せない面もあるでしょうが、五年間総額でどのくらいかかっているのか。遺族に対する補償だけじゃなしに、その他物損等も含めて後日お出しいただきたいと思うんですが、よろしいですか。
北原政府参考人 早速調査をさせて、適切に対応させていただきたいと思っております。
石井(紘)分科員 次に、先日、これはたしか三月の十三日に当委員会で質問させていただきました防衛施設庁の沖縄の軍用地の借料について、借料の決定と鈴木宗男氏の関連について質問いたしまして、防衛庁は、これについて調査をされるという御答弁でございましたので、調査をしているんだろうと思いますが、まだ結果は出ないですか。
嶋口政府参考人 お答え申し上げます。
 三月十三日に先生の方から、沖縄の借料という、平成十年八月二十六日付の文書につきまして御質問がございました。そして、関連でまた借料全体について御質問がございましたので、その際、大臣の方から、その文書の使用目的さらには適切に我々が対応したかどうかということについて調査いたしますということで、その答弁に従いまして私ども調査をいたしました。
 何分にも過去のことでございますので、当時の関係者それから残された記録というものは、あらゆるものを調べました。その結果、まず「鈴木議員の御指導を頂き」との表現のある部分でございますけれども、これは、施設庁内、防衛庁も含めてだと思います、幹部の説明用資料として作成されたものである、そのような説明はされたものと考えております。
 当該表現は、鈴木先生が沖縄及び北方問題に関する特別委員長、沖縄開発庁長官を歴任し、また当時、官房副長官をされていたということもございまして、特に沖縄の基地の安定と秩序に殊のほか関心が深かったということもございましたので、施設庁といたしましては、土地連と沖縄の借料につきまして厳しい折衝を続けていた最中でございましたので、その状況を含めて具体的な説明を行い、私どもの方針について御理解を得ていたという状況を表現したものと聞き取り調査の結果判明いたしております。
 それから、さらに、先生御質問のあった平成八年度の概算要求につきましては、その決定の過程で、鈴木先生など与党の関係議員の説明の際、鈴木先生より、沖縄の基地の安定的使用の観点から土地連の要望についても配慮をするようにとの趣旨の意見も表明された。これらを受けまして、私どもといたしましては、さらに土地連との折衝状況について、対前年度伸び率も含め、具体的な説明を行っていったということが確認されたところでございます。
 なお、御質問にございませんでしたけれども、念のため、平成九年度及び平成十年度概算要求における沖縄の借料についても調査いたしましたが、当庁より鈴木先生に対し、平成八年度及び平成十一年度概算要求において実施したような対前年度の伸び率も含めた具体的な説明を行ったということは確認できませんでした。
 結論として申し上げますと、調査の結果、沖縄借料の概算要求額につきましては、いずれの年度についても、限られた基地対策経費、防衛施設周辺の地価の動向などを総合的に勘案しつつ、土地連との厳しい調整を経て、当庁として自主的に決定したものという聞き取り結果を得られています。
 しかしながら、平成八年度及び平成十一年度概算要求におきまして、鈴木先生に対し、対前年度の伸び率も含めた土地連との調整状況を詳細に説明するということも異例でありまして、こういうことが判明しておりますけれども、この点、当庁の政策が適正に行われたか否かについて疑念を抱かせかねないものと考えておりまして、今後、そのようなことのないよう、十分に留意してまいりたいということでございます。
石井(紘)分科員 説明を行った、説明を行ったって言っているけれども、これ、平成八年度の予算と十一年度の予算、あるいは概算要求について、鈴木さんの方から何か働きかけがあったというのが、この文書にそういう意味合いのことが書いてあるわけですね。
 それは、説明を行ったと今言われましたけれども、積極的に、自主的に説明しに行って説明をしたというのか、鈴木さんから何か言われたから、働きかけがあったから、鈴木さんの意見を聞いて自分の方の決定の参考にしたというようなことなんですか。もう少し詳しく言ってください。
嶋口政府参考人 先ほど御答弁申し上げましたように、何分過去のことでございまして、その具体的なやりとりについては、いろいろ聞き取りをやっていますけれども、記憶が定かではない、また記録がございません。
 ただ、強いて申し上げれば、当時、平成八年度それから十年、それにかけまして、当時沖縄では、先生御案内のように、楚辺の通信所が一時的にいわゆる不法占拠状態になってしまう、それから、普天間、嘉手納等の使用期限が切れてくるということで非常に厳しい状況がありまして、その中で、土地連と、土地連の方々はやはり生活がかかっているわけですから、また、沖縄の土地の借料について、私どもと焦点がずれていることがありまして、非常に厳しい働きかけがあった。その中で、土地連の方が、鈴木先生とかほかの先生も入っていると思いますけれども、自分たちの生活の糧を確保するためにいろいろ増額要請をやったというふうなことは承知しています。
 そういうことは土地連の方から私ども聞いておりますので、そういうことを考えまして、鈴木先生の方に、また、先ほど申し上げましたような、沖縄の土地の安定的使用について鈴木先生は大変御関心が深いということもありまして、私どもの方から御説明に伺ったというふうに承知しております。
石井(紘)分科員 あなたが今言われたのは、土地連の方は鈴木さんにいろいろお願いをした、あなたの方は今度は鈴木さんの方に説明に行ったと。土地連は鈴木さんにお願いして、あなたの方は鈴木さんに。
 土地連は鈴木さんにお願いしたんだから、鈴木さんの方は施設庁の方に働きかけをしたわけでしょう。だから鈴木さんとあなた方との話になったんでしょう。違うんですか。
嶋口政府参考人 働きかけがあったかどうかということでございますけれども、私どもとしては、これは例年のというか、土地連のやり方なんですけれども、鈴木先生やまた沖縄選出の一部の国会議員の方々、年ごろ沖縄基地問題等について御関心の深い方には土地連はいろいろな要請を行っている、また、土地連は私どもにそう言ってきますので、そういうことを考えますと、私ども、どんな感じで土地連とやっているか、具体的ではございませんけれども、一般的なことも説明に上がるということは通例でございます。
石井(紘)分科員 はっきり言ってくださいよ。この文書には「鈴木議員の御指導を頂き三・五%を確保した」と書いてあるんですよ。その前は三・二五%だったんですね、平成十年度は。「御指導を頂き」というのはどういう意味ですか。
嶋口政府参考人 実際書いた者に聞いて、聞き取りを行っておりますけれども、具体的な状況について御説明しまして、また土地連の厳しい状況について丁寧に説明したということで、最終的に、これは概算要求でございますけれども、若干御説明しますと、土地連とはその概算要求自体でいろいろ折衝しますけれども、実際の交渉というものは、予算を得てそれから具体的な折衝に入るわけでございますので、しかしながら、予算も持っていませんと何とも交渉に入れませんので、その円満な解決に向けて、具体的に説明して、その上で土地連との間の話がおさまったという意味を含めてだと思いますけれども。
 往々にして、こういう言葉遣い、そんな正確でない、部内での説明でございますので、厳格な意味で使ったかどうかは、本人から聞いていますように、はっきりしませんが、今申し上げた状況で、具体的に対前年の伸び率を含めた状況について御説明し、円満な解決を見たという意味で、このような表現を使ったというふうに理解しています。
石井(紘)分科員 概算要求の段階でもう、もちろん、予算の概算要求の前にそれはこの問題に限らずいろいろ陳情があって、いろいろな動きがあるわけでしょう。それはなかったんですか。
嶋口政府参考人 当時の記録、意外とこういう交渉物の記録が残っていませんし、関係者の聞き取りでございますけれども、いろいろと調整をしていることは事実でございます。
石井(紘)分科員 だから、その段階で、借料が三・二五%だ、その前年は三・五%だ、だんだん下がってきて三・二五%になった。防衛施設庁はもっと下げようと思っていたんじゃありませんか。ところが、三・二五%を三・五%に逆に今度また上げたわけですよ。それは、働きかけがいろいろ、運動があったから、それを勘案してそういうふうになったんでしょう。
 防衛施設庁は、前年三・二五%だったものを三・五%に上げようという方針があったんですか。はっきり言ってくださいよ。
嶋口政府参考人 土地連との交渉、沖縄の借料増額要求に対して私どもいろいろ折衝していますけれども、初めに対前年の数字が同じということではございません。ベースが違っておりますので、私どもいろいろ不動産鑑定にかけて積算しておりますし、また、土地連は土地連で自分たちで評価をやっていることで、対前年同じ額、伸び率だというふうなことはやっておりません。
石井(紘)分科員 要は、その段階で働きかけが土地連から鈴木さんを通して防衛施設庁にあったんでしょう、そういうことを言っているんです。それがイエスかノーかということを答弁してください。
嶋口政府参考人 先ほどから申し上げておりますように、土地連の人たちは、鈴木先生のみならず沖縄選出の一部の国会議員の方々には、増額要請について陳情と申しましょうか行っていることは事実であります。土地連の方から私どもの方にそういう話がございます。
 そういう状況を勘案して、私どもが御説明に伺っている。私どもとすれば、やはりできるだけ、限りのある予算でございますし、他方、土地連との間で円満な土地使用についての契約を更新したいというもろもろの状況を含めて、御説明に伺っているということでございます。
石井(紘)分科員 あなた、御説明、御説明と言うけれども、言葉の意味を説明してみなさいよ。
 いいですか。土地連へ、鈴木さんの方から、値上げ率を上げてくれ、こういうふうに言われたことに対して、それを受けてあなたたちはどうしたのか、どういう話を鈴木さんとしたのか。それは、あなた方が、説明した、説明したと言うけれども、それは意味が通じないじゃないですか。どういうふうにその話を受けて、どういうふうなやりとりをしたんですか。どう答えたんですか、あなたたちは。
嶋口政府参考人 何分にも、十年度、八年度のことでございまして、関係者からできるだけ幅広く聴取しております。
 ただ、記憶が確かではない、また、それに関する記録というのも具体的に存在しません。ということで、できるだけの調査、ヒアリングを中心ということでございますが、やったんですけれども、そういう今申し上げた形で土地連と我々は非常に厳しい折衝をやっている、土地連の方々は生活の糧、私どもは基地の安定的使用。しかし、限られた財政状況の中。その中で、土地連の方々は鈴木先生初め行っているということでございますので、その状況を御説明し、そういう御理解を得て、円満な土地連との解決を見たということでございます。
石井(紘)分科員 平成十一年度の概算要求なんかの場合に、平成八年度は、かなりというかちょっと古いかもしれませんが、十年、十一年とあるわけなので、それが、記憶が定かじゃないというようなことを言っているんじゃ、これは調査になっていないということですよ。だから、現段階ではさっぱりこれは調査になっていない。
 そういう資料もないとか言っているけれども、現に、あなたのところはあったと言ってきているんだから。平成十年の八月のものがあって、そのときは、私の個別の施設庁とのやりとりの中で、たくさんあるので、どれを出したらよろしいでしょうか、その現物をもしお持ちでしたら見せてくださいと言われて、ファクスまで私入れてあげたんですよ。これですよと言ったら、そうしたら、たくさん、いろいろあるものの中からそれがありましたということを言っているわけですから、そういううその答弁はしちゃいけません。
 それで、きょうの答弁は非常に煮え切らないというか、随分いいかげんで、そんなものでは調査報告にも何にもならないので、これは改めてきちっと、調査報告が恐らく近々出るでしょうから、出た段階できちっとやりますから、そういう木で鼻をくくったような答弁は今後しないようにしてください。
 きょう、ほかのこともいろいろやりたかったんですが、時間が、議長に協力すると最初に申し上げましたので、以上で終わります。
山名主査 これにて石井君の質疑は終了いたしました。
 次に、楢崎欣弥君。
楢崎分科員 きょうは、今国会に提出予定のいわゆる有事法案について基本的なことをお伺いしますけれども、その前に、テロ対策特措法に基づいて今アラビア海で活動している海上自衛隊の補給艦から給油を受けたアメリカ海軍の補給艦が、近くに待機していたオーストラリア艦船に給油したと、佐世保に帰港した自衛隊の乗員が証言している問題について、数点お伺いします。
 中谷長官は、三月二十九日のテロ防止特別委員会で、二つの理由を挙げてその証言を否定しておられます。一つは、米軍が日本から給油された燃料を第三国に渡す場合は日本の事前の同意が必要という日米間のルールの存在。つまり、米国から同意を求められていない以上、そのような事実はないと認識するという理由ですね。
 ルールがあるから大丈夫という論理でしょうけれども、説得力がないのは過去の歴史が物語っていますよね。非核三原則に対する日本政府の姿勢がそうだったでしょう。あの一九七一年の岩国基地の核疑惑問題、それからアメリカ艦船による核持ち込み疑惑等々、再三再四指摘されてきたそういう疑惑が、政府は米国からの事前協議がないので持ち込みはないと言い続けてきたんですね。しかし、そういうルールが守られているかどうか、これは検証しないとわからないわけでしょう。
 今度の場合は、米軍に問い合わせされたんですか、それとも、ただ単に事前に同意を求められなかったからということですか。どうですか。
中谷国務大臣 本件につきましては、米側に改めて確認をしたところ、最初の取り決めの点について遵守しつつ活動をしているということを確認させていただきました。
楢崎分科員 いつ問い合わせされましたか。
中谷国務大臣 三月の終わりということでございますが、日にちはまた後ほどお話をさせていただきたいと思います。
楢崎分科員 明確にしてくださいね。いいですか。その補給ポイントに米国とオーストラリアなどの艦船が一緒に待っていたのは頻繁だったという派遣自衛官幹部の証言もあるんです。
 長官はことしの二月、オーストラリア側からの燃料補給の要請に対して、テロ特措法の目的と異なるということで要請を断った経緯を明らかにされていますね。だから米艦経由の給油という形が現場でとられている、その可能性は否定できないんじゃないですか。
中谷国務大臣 我が国といたしましても、法律に基づいて活動をいたしておりますので、オーストラリアに対しての給油が行われることは、できないという立場でございます。
 そういう点において、事実関係といたしましては、海上自衛隊にも確認をいたしておりますけれども、海上自衛隊の艦艇が米軍艦艇に補給するに際して、オーストラリアの海軍の艦艇がたまたま近傍に所在していたことはあるという事実はございますが、その現場において、報道のあるように給油をするということを目撃したことはないということで、給油は行われていないというふうに認識をいたしております。
楢崎分科員 そうですね。長官は二十九日にも、隊員らに確認したがそのような事実はなかったということを否定のもう一つの理由にしてありますね。
 いつ隊員に確認されたんですか。
中谷国務大臣 この報道が三月二十六日にございまして、その日のうちに確認をいたしました。
楢崎分科員 おかしいですね。
 いいですか。防衛事務次官は二十八日の会見では、この問題が報道された事実、これは西日本新聞が佐世保で取材したものを二十六日に朝刊で報道したんですけれども、それさえ知らなかったんですよ。だれが、いつ、隊員に確認されたんですか。もう一度答えてください。
中谷国務大臣 この報道につきましては私が、土曜、日曜を挟んでいたかわかりませんけれども、通常の業務の朝一番に、海上幕僚長に確認をしたところ、そのようなことはないというふうに報告を受けております。
楢崎分科員 納得できません。あいまいですね。
 それで、先ほど、米軍に問い合わせたのも三月末ということでしたね。ですから、もう一度事実を調査してください。調査、確認して、いつだったか、その結果を私に知らせてください。いいでしょうか。
中谷国務大臣 はい。日にちにつきまして事実を確認いたしまして、委員に御報告をいたします。
楢崎分科員 アラビア海では、三月末までに二十七億円に相当する燃料が米艦に補給されているわけですね。大体、補給された燃料の行方に疑問が生じるということ自体、納税者である国民に対しても申しわけないことだと私は思いますよ。そういう自覚をしっかり持っていただきたい、そのことを申し述べて、本論に入ります。
 あの一九六三年の三矢研究を発火点として、陰に陽に論争が続いてきた有事法制ですが、いよいよ政治日程にのりました。そこできょうは基本的なことをお聞きしますけれども、長官は、どのような状態のときを有事と思われますか。
中谷国務大臣 日本が武力攻撃を受けた事態であって、有事法制というのは、その際の自衛隊の活動に関して、また政府としての国民との関係全般をどうするかということを規定いたしております。
 現在、政府が考えていることにつきましては、検討中でありますけれども、武力攻撃を受けた事態、またそれが予測される事態であるというふうに認識をいたしております。
楢崎分科員 わかりやすく言えば、太平洋戦争時のあの悲惨な沖縄戦、あれが有事なんですよ。ちょっと今、予測される事態まで入って、有事の概念が拡大しているようですけれども、それはまた後の議論になると思いますね。
 それで、有事法案が今出てくる背景なんですが、私は、アーミテージ報告書にある、新しいガイドラインの着実な実行には有事法制整備などが必要だと明記されていますように、アメリカからの要請もその一つにあるのではないかと思うのですけれども、どうですか。
中谷国務大臣 この課題は数十年来検討されておりますけれども、やはり国家の独立と、また国民の主権を守っていくという観点で必要性がございまして、我が国として自分たちの国は自分で守るという観点で、他国から言われることもなく自分たち自身で整備をしなければならない事柄であるというふうに思っております。
楢崎分科員 いわゆる朝鮮半島有事を想定する日米安保体制上の事情が影響していると私は思っているのですけれども、それにしても、なぜ今なのか。要するに、国民の間には、今景気が悪い、そっちの方をしてもらいたい、何の有事法制だという声もあるのですね。小泉総理はよく、備えあれば憂いなしという言葉を使われます。長官も同様な考えをお持ちのような感じがいたします、今の答弁を聞いていますと。結局、備えあっても憂いはあるのですね、この地球上から紛争、戦争がなくならないことを見てもわかりますように。外国の例を引くまでもないですけれども、過剰な備えが要らざる緊迫感につながる、私はそのようにも思うわけです。
 それで、杉浦外務副大臣にお聞きします。今、有事を想定しなくてはいけないような脅威の実態が、外交上といいますか、我が国に存在すると思われますか。
杉浦副大臣 特定の国が日本を侵略する、侵害行為を加えるというような事態は、現時点ではないと思います。ただ、九月十一日のテロ事件とか、あるいは武装不審船が出没しておるというようなこと、あるいは、何年前になりましたか、テポドンが日本上空を通過した。テポドンからでしょうか、これは北朝鮮、何考えているかわからないぞというようなことになったわけですし、そういうような、まあテポドンはちょっと別にして、そういうテロとかあるいは武装不審船、まだ特定できておりませんが、我が国土に対する侵害行為だと思うのですが、殺人未遂もやっておるわけですけれども、そういう勢力がいるという、特定の国ではなくて、今のところ特定できていませんが、そういう認識は、国民の中に広く出てきたと思うわけでございます。
楢崎分科員 予想を超える事態が起こる可能性は否定できないけれども、そういう脅威の実態は今のところないということでいいですね。
 今言われたように、周辺諸国にそういう対日侵攻の意図などが見えない、なのに有事法制となれば、殊さらに近隣諸国に警戒心といいますか、敵意といいますかをあおる可能性があるのじゃないですか。どうですか。
杉浦副大臣 私どもは、これは国土防衛、専守防衛のために必要な法的整備をしようということですから、事柄の性質上、周辺諸国からの反発はあり得ないと思っております。
 私は弁護士だから言うわけじゃありませんが、急迫不正の侵害があった場合には、こういう法制があろうとなかろうと、敵が某海岸に上陸してくるとなれば自衛隊は集結するし、米軍と共同作戦をとる、敵を撃退するという行為をとるのは当たり前で、これを自衛権の行使として行うのか、急迫不正の侵害として違法性を阻却してやるのかという理屈は別にして、戦わざるを得ないと思うのですね。だから、法制があるなしにかかわらずやることなのですが、ここは法治国家ですから、国民の皆さんに、法律の整備をして有事の際にはこういうことをやりますよということを明示しておくことは、私は、備えあれば憂いなしといいますか、大事なことだと思っております。
楢崎分科員 副大臣、私は、日本が有事状態になるのは、アメリカが他国と紛争なり戦争をやって、日本に米軍基地があるがためにそれが波及してくる、そういうことしか私自身は考えられないのですよ。もう答弁はいいですけれども。
 そこで、幾つか確認しておきたいのですけれども、これは長官、自衛隊法七十七条で言うところの防衛出動待機命令時点での武器使用に制限があるのかどうか。
 つまり、古い話ですが、一九六六年二月に、発表されたと言っていいかどうかわかりません、研究されたと言った方が正しいでしょう。防衛庁の法制調査官室試案があるのです。これに「法制上、今後整備すべき事項について」という項目があります。資料を私持っていますけれども、別に。その中で、防衛出動待機命令時の武力行使について、こう記されているのです。「防衛出動の下令前においても、現地指揮官が自隊防護の限度内で武器を使用することは違法でないと考えられるし、かつ下令前はその限度内にとどめるべきである。下令前に防衛出動下令後と同様な武力の行使の権限を現地指揮官に許すことは不適当である」つまり、これは不必要または不適当と判断される、二十三件あるのですが、その中の一つとして述べてあるのですけれども、今日、この考えは基本的に変わりますか、変わりませんか。
中谷国務大臣 現在、法律につきましては、最終的な検討をいたしておりますけれども、防衛出動を命ぜられた自衛隊は、自衛隊法八十八条の規定により、必要な武力を行使することが認められております。また、九十二条の規定により、いわゆる治安出動時におけるものと同様な武器の使用が認められておりますが、待機命令を命ぜられた自衛隊部隊等には、この待機命令の下命に伴って特段の武器の使用が認められていない状態でございますが、自衛隊の武器等の防護のための武器使用、九十五条ですね、そして自衛隊施設の警護のための武器使用、九十五条の二については、平素から認められておりまして、待機命令においても認められております。
楢崎分科員 ちょっとわかりやすく言っていただきたいのですが、つまり、自隊防護のみの武器使用限度の枠を超えることはあり得るということですか。
中谷国務大臣 現在、法律の内容等については検討中でございますが、この待機命令というものを、どのように意味するのか。これは部隊の中でずっと待機をしているというふうに考えるのか、それとも、状況に合わせてある程度事前にその対処のための準備を行うことも検討するものであるのか、これを待機命令と呼ぶかどうかは別でございますけれども、そのような有事に至る防衛体制等につきましては、検討を行っている最中でございます。
守屋政府参考人 お答えいたします。
 現行の自衛隊法の考え方を御説明すればよろしいかと思いますが、防衛出動を命ぜられた自衛隊は、今大臣がおっしゃいましたように、自衛隊法八十八条により必要な武力を行使する、これは自衛権の問題でございます。それから、同じく防衛出動を命ぜられた場合、自衛隊法九十二条の規定により、必要に応じ公共の秩序の維持のための権限として、治安出動時におけると同様の武器の使用、これは警察権でございますが、これができるようになっております。
 防衛出動待機命令では現行法上何ができるかというと、その待機命令で武器使用ができるということはございません。ただ、平時から自衛隊の武器等の防護のための武器使用というものが自衛隊法九十五条で認められております。それから、自衛隊の施設の警護のための武器使用、これは九十五条の二でございますが、認められておりまして、この権限は平時から認められている、防衛出動待機命令時においてもこの権限は自衛隊として適用される、こういう整理でございます。
楢崎分科員 防衛出動待機命令時点でのことを私聞いているんですけれども、武器使用については、今度出てくるであろう法案の中では幅を持たせるんですか、持たせないんですか。
守屋政府参考人 政府部内で検討しておりまして、今楢崎先生、防衛庁の昭和三十年当時の見解を御引用されましたけれども、その中にありましたように、防衛出動待機命令時に、待機命令の前に現行法上では陣地等を構築することは認められておりませんけれども、これをつくるのには大変時間を要しますので、防衛出動待機命令から陣地等を構築したいという考え方を持っております。
 そのときに、こういう陣地を構築している人間に対して危害が加えられた場合、そのときに、テロ対策特例法とかそういうところで、国会で御承認いただいた、隊員の身辺を防護する自然権的な権利として正当防衛、緊急避難の要件に該当する場合は武器の使用を認める、こういう方向で検討していることは事実でございます。
楢崎分科員 この件も今後の議論になるかと思います。今の発言はインプットしておきます。
 この法案ですけれども、これは日本有事に限定しているんですか、それとも周辺有事をも想定しているのかどうか、お聞かせください。
中谷国務大臣 この二つの言葉は法的に言えば概念が異なるものでございまして、日本有事というと、あくまでも我が国の防衛を念頭に整備するものでございますが、周辺事態と申しますと、我が国の周辺で起こる事柄に対して、我が国として法律の中でなすべきことを整備いたしております。
 これが全くイコールということはございませんで、周辺事態の場合にはいろいろなケースが考えられるわけでございまして、そういう意味におきましては、違った概念の考え方をいたしております。
楢崎分科員 ここにも概念の拡大というものが見え隠れするんですけれども、専守防衛逸脱または集団的自衛権の行使等、憲法違反の問題が出てくるんじゃないですか。
中谷国務大臣 周辺事態と申しますと、集団的自衛権に抵触しない範囲で支援を行うものでありまして、この周辺事態の活動自体は集団的自衛権ではございません。
 有事事態につきましては、あくまでも我が国の個別自衛権で、自分の国を自分で守るという行為でございますので、現行の法律に逸脱する内容ではないわけでございます。
楢崎分科員 ここのところは、国民にとっても、また私ども民主党にとっても判断基準の一つになると思いますね。
 そこで、今度の政府提案のやり方ですけれども、有事における自衛隊の対処方針から法制化するという進め方ですね。私にはどうしても、外堀を埋めてそれから内堀を埋めていくという手法に見えるんですけれどもね。どうしてかといいますと、有事における自衛隊の対応、これは決めることはいいのです、もちろん。そのとき、肝心の国民はどうなっておるのか、これが見えないんですね。
 例えば、敵襲のときの防空警報、これは赤、略称アップルジャックですね。警戒警報がイエロー、黄、略称がレモンジュース。警報解除、これは白、スノーマンですね。このように三段階に分かれておるんですけれども、そのそれぞれに対する自衛隊の対応といいますか、もう既に具体的に決められているわけでしょう。中身はいいですから、言えないでしょうから、決められているかどうか、それだけでいいです。
中谷国務大臣 先生御指摘をされましたけれども、航空自衛隊においては、平時、警戒監視態勢をとっておりますし、また防衛出動が下令をされますと防空態勢を定めているわけでございますが、その法律によりまして、基本的事項については、防衛庁において部隊行動の要領に関する各種の訓令や通達を出しております。
 御指摘のように、有事における防空のための態勢である防空態勢についても、このような部隊等の行動の要領として、法令の範囲内で航空自衛隊における態勢として整備はいたしておりますが、国民との関係等につきましては、住民の保護、避難また誘導を適切に行う措置などの、我が国への武力攻撃に対して国民の安全確保の観点から必要となる措置を含めて、現在さまざまな観点から、必要となる措置について内閣官房を中心に関係省庁が協力して包括的に検討は進めておりますが、現時点においてまだ決定はされておりません。
楢崎分科員 私は、昨年の四月一日、安全保障委員会でこの防空警報について質問したわけですね。当時の斉藤防衛長官はこのように答えられたんです。防空警報は、空からの攻撃に対して有効に対処するために、事態に応じて航空自衛隊の部隊等に伝達するもので、国民に伝達するものではない、その上で、警報の国民への伝達については、検討を進めることが重要な安全保障上の課題の一つであると述べられたわけですね。
 そこで私は、ではその警報が発せられたときに、国民は地下ごうに避難するんですか、それとも地下鉄の構内なんですか、それとも自分でつくったシェルターなんですかとお聞きしたわけですね。当時の石破茂副長官はそれに対しまして、地下鉄なのか、シェルターなのか、そういう民間防衛的な面が我が国においては不足していると答弁されたわけですね。
 今、有事法制案が政治の日程にのったわけですけれども、そういうことをはっきり示すことが、これが有事立法なんですよ。どうなんでしょう、そのとき、警報が発せられたときに国民はどうすればいいのでしょうか。
中谷国務大臣 当然のことながら、国民の皆様方に対して警戒なり警報を事前にお知らせするということは必要だというふうに思っておりますし、それぞれの自分自身で安全確保をするということも必要でございますが、国や地方自治体として、国民、住民保護また避難、誘導を適切に行うための措置ということは、我が国への武力攻撃に関して必要なことであるというふうに思っております。
楢崎分科員 常々国民の財産、安全を守ると言っておられるわけですから、そういうところをはっきり、そうでないと国民は右往左往しますよ。
 あのハワイ奇襲時のゼロ戦の隊長で、参議院議員になられました源田実さんの著書に「国の安全保障」というのがありまして、その中でこのように指摘してあるんですよ、自衛隊が守るべき対象の中に国民は入っていないと。
 昨年秋の臨時国会の冒頭、私どもの代表の鳩山さんがこのように言われましたね。米軍基地や自衛隊基地は守れても、例えば都心のオフィスビルは守れないということになれば、本末転倒と言わざるを得ない。つまり、そのことを言っているんですね。その上に、今民間人への罰則規定が検討されようとしていることは、これは私は、それこそ本末転倒と言わざるを得ないと思いますよ。
 もう時間が来ました。最後に外務副大臣にお聞きしますけれども、今話しましたように、自衛隊のための有事対応がクローズアップされているんですね。そのときに国民は一体どうなっているのか、これが一番重要な問題なんですよ。最初言いましたように、どうしても私には太平洋戦争時の沖縄戦がイメージとしてあるわけなんですね。それだけに、私は、有事をもたらさない、抑止というものを外交に期待したいと思うんですよ。副大臣の考えをお聞かせください。
杉浦副大臣 先生のおっしゃるとおりでございます。我が国外交、オール・ジャパンの外交ですが、そういう事態をもたらさないように、孫子の兵法じゃございませんが、はかりごとを討つとか戦わずして勝つとかいうものもございますが、武力による敵の攻撃を受けないような外交をやるのが外務省の務めだ、こう思っております。
楢崎分科員 終わります。
山名主査 これにて楢崎君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして総理府所管中防衛庁・防衛施設庁の質疑は終了いたしました。
 午後一時から本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時二十二分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時四分開議
山名主査 休憩前に引き続き会議を開きます。
 これより厚生省所管、環境衛生金融公庫について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。坂口厚生労働大臣。
坂口国務大臣 平成十年度及び平成十一年度厚生省所管一般会計及び特別会計の決算の概要につきまして御説明申し上げます。
 まず、平成十年度の決算について申し上げます。
 一般会計につきましては、歳出予算現額十六兆四千八百五十七億円余に対しまして、支出済み歳出額十五兆九千十億円余、翌年度繰越額四千八百二十六億円余、不用額一千二十億円余で決算をいたしました。
 次に、特別会計の決算について申し上げます。
 第一に、厚生保険特別会計につきましては、収納済み歳入額四十一兆四千四百二十二億円余、支出済み歳出額三十六兆三千二百五十六億円余、翌年度繰越額六千六百八十六万円余でありまして、差し引き五兆一千百六十五億円余、これをこの会計の積立金として積み立てるなどとして、決算をいたしました。
 第二に、船員保険特別会計についてでありますが、収納済み歳入額九百四十億円余、支出済み歳出額九百五十一億円余であり、一般会計からの超過受入額を調整いたしまして、差し引き十二億円余、これをこの会計の積立金から補足することとして、決算をいたしました。
 第三に、国立病院特別会計についてでありますが、収納済み歳入額一兆一千五百九十億円余、支出済み歳出額一兆七百十七億円余、翌年度繰越額四百六十億円余でありまして、差し引き四百十一億円余、これをこの会計の積立金として積み立てることとして、決算をいたしました。
 最後に、国民年金特別会計につきましては、収納済み歳入額二十二兆四千三百二十七億円余、支出済み歳出額二十兆八千八百六十二億円余、翌年度繰越額七十三億円でありまして、差し引き一兆五千三百九十一億円余を翌年度歳入へ繰り入れるなどとして、決算をいたしました。
 次に、平成十一年度の決算について申し上げます。
 まず、一般会計につきましては、歳出予算現額十九兆三千九百七十九億円余に対しまして、支出済み歳出額十八兆九千百五十一億円余、翌年度繰越額三千八百三億円余、不用額一千二十四億円余で決算をいたしました。
 次に、特別会計の決算について申し上げます。
 第一に、厚生保険特別会計につきましては、収納済み歳入額四十一兆四千九百七十五億円余、支出済み歳出額三十七兆四千三百九十三億円余、翌年度繰越額一千六百八十五万円余であり、差し引き四兆五百八十二億円余をこの会計の積立金として積み立てるなどとして、決算をいたしました。
 第二に、船員保険特別会計につきましては、収納済み歳入額八百七十五億円余、支出済み歳出額九百四十億円余でありまして、一般会計からの超過受入額を調整し、差し引き六十六億円余をこの会計の積立金から補足することとして、決算をいたしました。
 第三に、国立病院特別会計につきましては、収納済み歳入額一兆一千四百七十二億円余、支出済み歳出額一兆七百億円余、翌年度繰越額五百九十二億円余でありまして、差し引き百七十九億円余をこの会計の積立金として積み立てることとして、決算をいたしました。
 最後に、国民年金特別会計につきましては、収納済み歳入額二十二兆八千四百九十四億円余、支出済み歳出額二十一兆三千七百五十九億円余、翌年度繰越額九十二億円であり、差し引き一兆四千六百四十三億円余を翌年度歳入へ繰り入れるなどとして、決算をいたしました。
 以上をもちまして、厚生省所管に属します平成十年度及び十一年度の決算の説明を終わります。
 何とぞ御審議のほどよろしくお願いを申し上げます。
山名主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院増田第二局長。
増田会計検査院当局者 平成十年度厚生省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。
 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項百一件、意見を表示しまたは処置を要求した事項一件及び本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項三件であります。
 まず、不当事項について御説明いたします。
 検査報告番号三九号は、健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収額が不足していたものであります。
 検査報告番号四〇号は、厚生年金保険の老齢厚生年金及び国民年金の老齢基礎年金の支給が適正に行われていなかったものであります。
 検査報告番号四一号は、特定入院料、入院環境料、看護料等の診療報酬について医療費の支払いが適切でなく、これに対する国の負担が不当と認められるものであります。
 検査報告番号四二号から四四号までの三件は、社会福祉施設等施設整備費補助金等が過大に交付されていたものであります。
 検査報告番号四五号は、生活保護費補助金が過大に交付されていたものであります。
 検査報告番号四六号から五〇号までの五件は、生活保護費負担金が過大に交付されていたものであります。
 検査報告番号五一号から五三号までの三件は、老人医療給付費負担金が過大に交付されていたものであります。
 検査報告番号五四号から七八号までの二十五件は、老人福祉施設保護費負担金の算定において、国庫負担対象事業費が過大に精算されていたものであります。
 検査報告番号七九号から九六号までの十八件は、児童保護費等負担金の算定において、国庫負担対象事業費が過大に精算されていたものであります。
 検査報告番号九七号から一〇三号までの七件は、児童育成事業費補助金が過大に交付されていたものであります。
 検査報告番号一〇四号から一三四号までの三十一件は、国民健康保険の財政調整交付金が過大に交付されていたものであります。
 検査報告番号一三五号から一三九号までの五件は、社会保険事務所等の職員の不正行為による損害が生じたものであります。
 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について御説明いたします。
 これは、看護職員確保対策費等補助金(看護婦等養成所運営事業分)の算定に関するものであります。
 この補助金の算定に当たり、総事業費は経常的な経費であるのに土地の取得、校舎の建設等の施設整備に伴う経費等をこれに計上するなどして、補助金が過大に算定されている事態が見受けられましたので、厚生省に対して是正改善の処置を要求いたしたものであります。
 なお、本件につきましては、厚生省において十一年十月に交付要綱を改正するなどの処置をとっております。
 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。
 その一は、レセプトの点検に係る特別調整交付金の算定に関するもので、保険者自身の経営努力とは認められない集計項目を内容点検評価額に含めるなどの事態が見受けられ、交付金が効果的な配分となっていないと認められました。これについて指摘したところ改善の処置がとられたものであります。
 その二は、国立病院等の建築保全業務委託契約における直接労務費の積算に関するもので、深夜割り増し額を算出する際、割り増しの基礎とならない手当及び賞与を含んだ労務単価に割り増し率を乗じているなどの事態が見受けられ、直接労務費の積算額が過大になっておりました。これについて指摘したところ改善の処置がとられたものであります。
 その三は、国立病院等の病棟の建設工事等における外部足場費の積算に関するもので、工期が数年度にわたる建設工事において外部足場の設置期間を工期とほぼ同期間とするなどの事態が見受けられ、積算額が過大になっておりました。これについて指摘したところ改善の処置がとられたものであります。
 続いて、平成十一年度厚生省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。
 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項百十九件、意見を表示しまたは処置を要求した事項二件及び本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項三件であります。
 まず、不当事項について御説明いたします。
 検査報告番号四〇号は、健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収額が不足していたものであります。
 検査報告番号四一号は、厚生年金保険の老齢厚生年金及び国民年金の老齢基礎年金の支給が適正に行われていなかったものであります。
 検査報告番号四二号は、特定入院料、看護料、入院環境料等の診療報酬について医療費の支払いが適切でなく、これに対する国の負担が不当と認められるものであります。
 検査報告番号四三号は、医療施設運営費等補助金(へき地中核病院運営事業分)が過大に交付されていたものであります。
 検査報告番号四四号から四七号までの四件は、社会福祉施設等施設整備費補助金等が過大に交付されていたものであります。
 検査報告番号四八号から五五号までの八件は、生活保護費負担金が過大に交付されていたものであります。
 検査報告番号五六号は、老人保健事業推進費等補助金(老人保健健康増進等事業分)の算定において、補助対象事業費が過大に精算されていたものであります。
 検査報告番号五七号から九四号までの三十八件は、老人福祉施設保護費負担金の算定において、国庫負担対象事業費が過大に精算されていたものであります。
 検査報告番号九五号から一一二号までの十八件は、児童保護費等負担金の算定において、国庫負担対象事業費が過大に精算されていたものであります。
 検査報告番号一一三号は、国民健康保険の療養給付費補助金が過大に交付されていたものであります。
 検査報告番号一一四号から一一九号までの六件は、国民健康保険の療養給付費負担金が過大に交付されていたものであります。
 検査報告番号一二〇号から一五七号までの三十八件は、国民健康保険の財政調整交付金が過大に交付されていたものであります。
 検査報告番号一五八号は、社会保険事務所の職員の不正行為による損害が生じたものであります。
 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について御説明いたします。
 その一は、医療用の酸素に係る診療報酬の請求に関するものであります。
 医療機関が処置等に酸素を使用した場合の診療報酬の請求に当たり、酸素の購入価格の算定を誤るなどして過大な診療報酬を請求しており、また、審査支払い機関等において、その審査を十分に行うことができない状況となっておりましたので、厚生省に対して、是正改善の処置を要求いたしたものであります。
 その二は、国民年金の第三号被保険者に係る種別変更の届け出の適正化に関するものであります。
 国民年金の被保険者のうち、第三号被保険者の認定状況を検査したところ、年間収入が基準額以上となっているのに第一号被保険者への種別変更の届け出を行っていない事態が見受けられましたので、年間収入の要件に関する認定基準が同じである健康保険等の医療保険における医療保険者との連携を十分にとるなどして種別変更の届け出の適正化を図るよう意見を表示いたしたものであります。
 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。
 その一は、救急医療施設運営費等補助金(在宅当番医制事業分)の算定に関するもので、補助金を算定する際の対象経費の範囲を具体的に示していないことから、補助事業と直接の関係がない経費を計上するなどしていて、補助金が過大に交付されておりました。これについて指摘したところ改善の処置がとられたものであります。
 その二は、年金受給権者への通知書等の郵送に係る郵便料金に関するもので、差し出し日から送達期限等までに余裕期間があるのに標準送達日数にさらに三日程度の余裕を承諾する場合の特別割引率の適用を受けていなかったなどのため、郵便料金が不経済となっていました。これについて指摘したところ改善の処置がとられたものであります。
 その三は、福祉施設の経営委託契約に係る経理処理に関するもので、受託団体の経理において、委託契約に係る特別会計の利益剰余金の一部を特別損失の計上により減額して他の会計へ繰り入れるなど、国の事業と受託団体みずからの事業との経理を明確に区分していない経理処理となっておりました。これについて指摘したところ改善の処置がとられたものであります。
 以上をもって概要の説明を終わります。
山名主査 次に、会計検査院平沢審議官。
平沢会計検査院当局者 平成十年度環境衛生金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
 引き続き、平成十一年度環境衛生金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
 以上でございます。
山名主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。坂口厚生労働大臣。
坂口国務大臣 平成十年度及び十一年度の決算検査報告において掲記されております事項につきましては、会計検査院の御指摘のとおりでありまして、まことに遺憾であります。
 指摘を受けました事項につきましては、直ちに是正措置を講じましたが、今後なお一層厳正な態度をもって事務の執行の適正を期する所存でございます。
山名主査 この際、お諮りいたします。
 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山名主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
山名主査 以上をもちまして厚生省所管、環境衛生金融公庫の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
山名主査 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。川内博史君。
川内分科員 民主党の川内でございます。
 本日は、決算行政監視委員会、ふだんは坂口大臣とはなかなか、お忙しくていらっしゃいますし、話もできませんが、私は坂口大臣を心から尊敬をいたしておりまして、何というんでしょうか、キャビネットメンバー、十何人かいらっしゃいますけれども、国民の皆さんから見て、本当によく国民のために仕事をしていただいているなということを感じさせていらっしゃるただ一人の大臣ではないか。
 塩じいとかいうキャラクターとして有名な方はいらっしゃいますけれども、ハンセン病の、小泉さんがおいしいところを持っていったという話もあるんですが、しかし、実際には坂口大臣が御決断をされたわけでありますし、五月の二十三日には、私はあの議懇の事務局長をしておりますので、控訴断念の記念の集会を計画しておりますので、坂口大臣にもぜひ御出席をお願いしたい、この場をかりてお願いを申し上げさせていただきたいと思います。
 そのくらい、本当は医療費の三割負担についても、今でも心の中は反対をされていらっしゃるのではないかというふうに心中をそんたく申し上げるところでございますし、国民の生活、あるいは、本当は改革に伴う痛みはもっと別な方たちがその痛みを引き受けるべきなんだというようなことを、真摯なお仕事の姿勢から感じさせていただいているところでございまして、本日は幾つかの点について、坂口大臣の御決意あるいは今後の方針というところをお聞かせいただきたいというふうに思うわけでございます。
 まず、本題に入る前に、先週四月五日の参議院の本会議において、私ども野党が提出をした武部農水大臣に対する問責決議案、これが坂口大臣が所属をしていらっしゃる公明党さんが欠席をされた中で否決をされたわけであります。
 今後、食の、食料の供給の安心と安全を確保していくという上で、厚生労働省並びに農水省さんの連携というのはさらに一層緊密にしていかなければならない。これはBSEに関する調査検討委員会の最終報告でも指摘をされているところでありますけれども、大臣が所属をされていらっしゃる公明党さんは、少なくとも武部農水大臣を信任されなかったという意味において、大臣がこれから、坂口大臣が信任をしていない農水大臣とどうやって一緒に仕事をされていかれるのか。国民の皆さんが本当に注目をしているこの問題について、どう仕事をしていかれるおつもりなのか。あるいは、いや、実は私は武部さんを信用していないですよというふうに、やめた方がいいと思いますよというふうにおっしゃるのか。ちょっと御所見をお聞かせいただきたいというふうに存じます。
坂口国務大臣 余り褒めていただきますと、あと、今度おろされるときが怖いものですから。
 冗談はさておきまして、この食の安全の問題につきましては、これは国民生活に直結することでございますし、とりわけ、過去とは違いまして、最近は諸外国からさまざまな食品が入ってまいります。これは今までになかった量でございますし、また、質、量ともに非常に多くなっているわけです。それに加えまして、農薬でございますとか添加物でございますとか、そうした問題もそれに加わってまいりましたので、これから、国内におきます食品の生産とあわせて、諸外国から入ってまいりますものにつきましても厳重にチェックをしながら、国民の皆さん方に安心をしていただけるようにしなければならないというふうに思っております。
 そうしたやさきに起こりました今回のこのBSEの問題でございまして、これに対しましては、我々も反省すべきところ、この調査検討委員会からもいろいろと御指摘をいただきまして、これから真摯に取り組んでいかなければならないというふうに思っております。
 とりわけ、その調査検討委員会の中で指摘をされました問題は、平成八年になりますか、一九九六年におきますWHOの勧告の問題でございました。
 農水省は、もちろんのことこれに対して的確に対応しなかった。厚生労働省も、これに対してもっと積極的にやはり発言をすべきであった。事は農水省に関することではありましたけれども、しかし、それは回り回って人間の健康にも影響を及ぼしてくることだから、もっとやはり積極的に発言をすべきであったという御指摘を受けたわけでございまして、それは私たちも謙虚にそこは受けとめなければならない。
 今までは、どちらかと申しますと、省庁がかわりますと、よその省には口出しをしないというのが何か一つの鉄則みたいな形になっておりましたけれども、そこはやはり乗り越えて、意見は常に言わなければならないということを改めて私たちも感じた次第でございますし、今後、そのようにしていきたいというふうに思っているところでございます。
 武部大臣のことをいろいろと御指摘もいただいているところでございますが、一番のその中心になります一九九六年、それは武部大臣もその大臣ではなかったわけでございますし、大変過去のことでございますし、武部大臣と申しますよりも、これは農林水産省全体のやはり姿勢というものが私は問われているというふうに思っております。
 したがいまして、そうした点につきましては、私は、徹底的にこれは農林水産省も改めていただかなければならないし、我々も改めなければならない。これから連携を密にしてやはりやっていかなければならない。その今まで密にできなかったところは一体何なのか、そこをやはりよく検討をして、これから再びこういうことのないようにしなければならないというふうに思っている次第でございます。
 武部大臣につきましては、皆さん方からもいろいろ御批判をいただいたりしますが、私のように近くでその仕事ぶりを見ております者と、それから、国民の皆さんのように全然御存じなくて、そして、情緒的にと言うと少ししかられるかもしれませんけれども、御批判をいただく方とは少しやはり違うというふうに思っておりまして、その過去のそうした問題に対しましても積極果敢に取り組んでおみえになりますし、ぜひ私は、そうした過去の問題をひとつ変えるんだというその大きな意欲もお持ちでありますから、一生懸命におやりをいただければ、そして、私もこちらの方を一生懸命やりまして、国民の皆さん方におこたえができればというふうに思っている次第でございます。
川内分科員 それでは、ちょっと確認ですけれども、同じ閣内にいる者として、公明党の出身大臣ではあるが、武部大臣を信任するということでよろしいでしょうか。
坂口国務大臣 そうした思いで、これから一番大事なことは、今までの誤っていたところをどう改革するかということにあり、そして、国民の皆さん方にどうおこたえをするかということに私は尽きると思う。そこができなければ、武部さんも私も、これは問われなければならないというふうに思っております。
川内分科員 わかりました。
 では続いて、小児医療に関してお尋ねをさせていただきますが、よく、それこそ私ども、マスコミからの情報とか、あるいは友人の病院経営者の皆さん方からお話をお伺いするわけでございますけれども、小児医療を取り巻く環境というのは非常に厳しいものがある。診療報酬をとっても、経営として成り立たない。大病院などでも、小児科だけが不採算部門であったりするということなどで、小児科が削られていく、よくこういうふうな負の面が強調をされるわけであります。
 実際に、私の息子なども、虫垂炎であったものが、二週間ほど風邪だとか腸炎だとかということで放置をされまして、腹膜炎を起こし、一回手術をしたんだけれども、それでもおなかの中のうみが取り切れずにもう一度手術をするというような、五歳のときでしたけれども、そういうことがあったりして、もっともっと次の時代を担う子供たちの健康をしっかり見ていくという面では、小児科に対しての支援というものをさらに充実させていかなければならないのではないかというふうに考えますが、この点についての、今でも十分努力をされていらっしゃると思うが、今後の方針等もあわせてお聞かせをいただきたいと思います。
坂口国務大臣 ここはもう確かに、御指摘をいただきますように、なかなか小児科というのは大変だということを私も聞かされておりまして、何とか先生方におこたえをしなければならないというふうに感じております一人でございます。
 数字を見ると、小児科に従事をしていただいている医師の数というのは、平成六年が一万三千三百四十六人であるのに対しまして、平成十二年は一万四千百五十六人になっていまして、六・一%、数字としては増加をしていることになっているわけですが、医師全体の増加率は一〇%増加しておりますから、全体は一〇%だけれども、小児科は六%ということで、やはり増加率は低い。
 それに加えまして、小児科の先生の、開業しておみえになる先生方を中心にしまして、平均年齢がかなり高くなってきている。それからもう一つは、女性の小児科の先生の割合が高くなってきている、約三〇%ぐらいになってきている。
 そういういろいろの状況がございまして、そして、御承知のように、小児科は、夜間、昼ということをいとわないわけなものですから、やはり小児科の先生方が、そうして動いていただける先生方が少なくなってまいりますと、先生方も大変なものですから、どうしてもビルなんかの一室を借りておやりになる。昼はそこにおみえになりますけれども、夜間の電話はなかなかかからないといったようなことができてまいりましたりいたしまして、国民の皆さん方からは、小児科の先生がふえている割に、かかりにくくなったと申しますか、思うように診ていただけないという思いが強くなっているというふうに思っております。
 それも、小児科は、先生のお子さんのように大変大きい病気も中にはございますけれども、普通の場合には、例えば風邪でございますとかおなかを壊すとかいったようなことで、わずかなことで終わりになるものですから、そんなに、いわゆる医業として、経営上から申しますと、なかなかやっていけないという側面のあることも事実でございます。そんなことがあるものですから、どうしてもおやりになる先生が少なくなってくる。経営上難しいということもさることながら、やはり昼夜を問わずやらなければならないというところに負担の大きさを感じておみえになるのではないかという気もいたします。
 そんな状況でございますので、ことしの診療報酬におきましても、他の分はいろいろと低下をさせていただいたわけでございますけれども、小児科のところだけは若干ふやさせていただいたということでございますが、まだこれで十分というわけでは多分ないだろうというふうに思っています。
 しかし、そうは申しますものの、全体の医療費の中で、どこかをふやしますとどこかを減らさなきゃならないということがあるものですから、小児科をふやしますと、他の科目の先生方のところをその分また減らさなきゃならないということもあって、バランス上なかなか思うようにはいきにくいというようなこともあるわけでございます。
 今後、救急医療等を中心にいたしまして、国民の皆さん方から安心をしていただけるような体制をつくるということが、少子化対策といたしましてもどうしても大事なことでございますので、気をつけてひとつさらに頑張りたいというふうに思っております。
川内分科員 ぜひ小児医療に重点的に点数を配分していただけるようにお願いをしたいというふうに思うわけであります。
 今大臣からもありましたように、こっちに点数を移すとこっちを削らなきゃいかぬというお話がございましたが、私も全く問題意識は一緒でございまして、よく地方紙などの所得番付を見ると、ある特定の診療科の経営者の先生方がだあっと上位に並んでいたりするわけで、何科とは具体的には申し上げませんけれども、診療科ごとの点数に非常に是正すべき点がまだ数多く残されているのではないかというふうに私は考えているわけでございまして、厚生労働省さんとしても同じような問題意識を持っていらっしゃると思いますので、診療科目ごとのばらつきを今後どのように是正されていくおつもりかということをお聞かせいただきたいと思います。
大塚政府参考人 お尋ねの診療報酬の評価のあり方ということになるわけでございますが、御指摘のように、医療と申しましても大変幅広うございまして、それぞれ診療科ごとのさまざまな特殊性もございます。この点を一方では勘案しながら、診療報酬上の基本は、やはり患者の状態、特性、それから医療技術の難易、難しい易しいといった点、このあたりが基本でございまして、それぞれの度合いに応じまして点数設定を行っているわけでございます。
 原則的には、二年に一度その見直しをしているわけでございますけれども、その際には、御案内の中央社会保険医療協議会という、いわば審議会でございますけれども、実際に医療現場に当たられておられます医療側、それから支払いをいたします保険者側、双方の御意見を十分聞きまして、大変詳細な点数をつけているわけでございます。
 ただ、お話にございますように、医療の実態そのものが変わってまいります。その実態の変化に応じまして随時適切な評価をするということは大事でございますから、医療技術の進歩なども勘案し、社会実態も勘案し、見直しごとに適切な診療報酬、そして医療技術の適切な評価、こういう観点に引き続き十分留意しながら作業をしていくということにいたしたいと考えております。
川内分科員 細かく見直せばいっぱい、いろいろなところに是正すべき点があろうかと思いますので、ぜひよろしくお願いをさせていただきたいというふうに思います。
 さて、最後の質問でございますけれども、行政改革の方針で、官から民へという流れの中で、今まで公的な宿泊施設とか、あるいは公的なレクリエーション施設というものが、次々に民営化あるいは廃止という動きになってきているわけでございますけれども、その中の年金保養基地、グリーンピアのことについてお伺いをさせていただきたいというふうに思うんです。
 私の地元にグリーンピア指宿というものがございまして、百万坪の広大な敷地にゴルフのコースとか、ミニゴルフですね、あるいはテニスコート、あるいは観覧車などを備えた遊園地、もちろん宿泊施設、屋内プール、とにかく私はすばらしい施設だと思うんですけれども、昭和六十年四月に開業し、ことしの五月で営業を停止するということになっているわけでございます。
 ここに至る背景には、本来ならば、平成十七年の三月末までは法律的には運営できるということなんですけれども、しかし、赤字であるということで、なるべく早く閉鎖をしろという閣議の方針のもとで閉鎖になるわけでございます。
 私自身は、官から民へという流れを否定するものではございませんし、民間の活力を生かしていくという意味ではそのとおりであろうというふうに思うわけでございますけれども、そこで働いていた人たち、このグリーンピア指宿に携わっていた方たち、アルバイトの方やあるいは正職員の方々を含めれば百名ぐらいの方々が五月末で解雇をされるということになるわけでございまして、官から民へという流れはいいけれども、実際には民間で引き受け手もないし、あるいは、後はもう、施設は荒れ放題、従業員はほうり出されてしまうというようなことでは、一体何なんだろうかというふうにも思うわけでございます。
 実はこのグリーンピアについては、昨年末に退職金の減額を突如理事会の方針として持ち出されたりとか、あるいはさまざまな従業員の皆さんに対する不利益な就業規則の変更というものが行われているわけでございます。もちろん運営自体が赤字であれば、私自身は、それもある程度いたし方のないことだというふうに思うわけでございますけれども、少なくとも従業員の皆さん方と、その監督官庁である厚生労働省、あるいは特殊法人である年金資金運用基金、そしてまた運営団体である年金保養協会、これらがしっかりと話し合いをし、みんなが合意をする中で、再雇用、再就職のこととか、あるいは今まで有給休暇も消化をせずに一生懸命頑張ってきた方たちに対する処遇、これはグリーンピア指宿だけに限らず、今後あらゆる公的なそういう施設で起きてくる問題だと思うんですね。しっかりと厚生労働省としてもその方針を固めておく必要があろうかというふうに思うわけでございまして、事細かなことは申し上げませんが、大臣の決意を聞かせていただきたいというふうに思います。
坂口国務大臣 指宿の例をお挙げいただきましたが、全体といたしまして、平成十七年度までの廃止、特に赤字施設につきましては早期に廃止をするということで、いわゆる廃止時期を前倒しするということが決定されたわけでございまして、その中の一つに指宿も入っているというふうに思っております。
 それで、我々といたしましては、今御指摘のように、この皆さん方といいますか、働いていただいている皆さん方に対しましては、やはり最大限、我々が努力をしなければならないというふうに思っております。この後を、例えば市町村なり何かのところがお引き受けをいただければ一番いいわけでございまして、できる限り引き受けていただくようにお願いをしているところでございますが、しかし、どうしても市町村と公的な機関が引き受けてくれないということになれば、民間も含めまして、ぜひ引き受けていただくところを探したいというふうに思っています。
 ここは、我々も責任を持ってやらなければならないというふうに思っておりまして、そのときには、いろいろな条件がございますけれども、最大の条件は、今お勤めになっている皆さん方をぜひ引き続いてひとつお雇いをいただくということが大きな条件になるだろうというふうに思っております。
 これからさまざまなこの施設の問題について取り組まなければなりませんけれども、後をしっかりと、今まで以上に立派におやりをいただくところが見つかるように、我々努力を重ねたいというふうに思っております。そこで、今までの皆さん方が御希望があるならば、引き続いて働いていただけるようにしなければならないというふうに思っている次第でございます。一生懸命そこはやりたいと思っております。
川内分科員 終わります。
山名主査 これにて川内君の質疑は終了いたしました。
 次に、金子哲夫君。
金子(哲)分科員 社会民主党・市民連合の金子でございます。
 被爆者問題を中心にして、幾つかお尋ねをしたいというふうに思います。
 昨年一年間、在外被爆者問題については、坂口大臣も、これまで国としてなかなか在外被爆者問題を政治的な課題として取り上げる機会が少ない中で、検討会の設置などを積極的に取り組んでいただいたというふうに思うんです。しかし、残念ながら、その検討結果を受けて発表された厚生労働大臣の見解、また、今進められようとしております、六月一日からというふうに伺っておりますけれども、実施されようとしております在外被爆者への援護措置というものが、残念なことですけれども、多くの在外の被爆者の皆さんから、率直に申し上げて厳しい批判の声が上がっているというふうに申し上げなければならないと思います。
 これまでに、この十二月十八日の厚生労働大臣の記者会見の発表なども受けられまして、さまざまな声も届いていると思いますが、最初に、大臣、その問題についての御見解があればお聞かせいただきたいと思います。
坂口国務大臣 在外被爆者の問題につきましては、昨年、大阪地裁におきます判決等を受けて、この問題の解決をどうするかということをもう一度考え直そうということで取り組んできたところでございます。
 昨年後半におきましては、検討会もつくっていただき、そこでもいろいろの御議論をいただいて、諸先生からいろいろの御意見を賜りました。そうしたことを踏まえて、そして今後在外被爆者の問題をどうしていくか、そこを決定しなければならない時期に来ているわけでございますが、昨年十二月という、言うならば本年度の予算につきましては既に大枠が決定をしてしまった後のことだったものでございますから、ことしの予算の中にいろいろのことを盛り込むということはなかなか難しかったわけでございますが、一部、諸外国におみえになる皆さん方が日本にお見えをいただいて、いろいろの健診や治療をお受けいただくというときに対する手当てというものをしたわけでございます。
 しかし、これで決して終わったと思っているわけではございませんで、特に、韓国、アメリカ、ブラジル、北朝鮮、この四つの国は非常に多くの皆さん方を抱えておみえになるわけでございますから、これらの国々の御意見というものも十分に聞きながら、そして今後どうするかということの決断をしたいというふうに思っております。
 四カ国の中で、韓国、アメリカ、ブラジルの皆さん方の御意見は聞く機会がございましたけれども、しかし北朝鮮の方はまだ聞く機会がございませんので、機会があればこれをお聞きしたいというふうに思っている次第でございます。
 ほかの国にもまだたくさん、少人数ずつおみえでございますから、そうした皆さんの問題をどうするかという問題もございますけれども、国によって、この国にはこういうふうにします、違う国にはまた違ったことをやりますということもなかなかできにくい。それはやはり、法律で縛ります以上、どの国に対しましても同様な扱いをするということが妥当ではないかと私は考えている次第でございます。
 そうした意味で、いよいよこれからそうした時期を迎えるわけでございますが、今のところそこまでは至っていない状況であるということを御認識いただきたいと思います。
金子(哲)分科員 今、大臣のお話ですと、今回の措置は、十二月、予算編成も間近だということもあって、とりあえずと言ったら失礼かもわかりませんが、今できることをとりあえずやろう、しかしこれは抜本的な対策にはなっていないんだということは大臣自身が今おっしゃったとおりで、お認めのとおりだと思いますけれども、私もそのとおりだと思います。
 本来なら、大きな目標といいますか、大体こういう在外被爆者に対して対策を行う、その中でこういうものを当面やるというふうな組み立てになっておりますと在外被爆者の皆さんにはもっとわかりやすいというふうに思いますけれども、日にちがなかったということもあって、そういうことをされたことで逆に在外被爆者の皆さんからの失望を受けてしまったというふうに私は思うんです。
 十二月十九日に、韓国、それからアメリカ、南米も含めてですが、極めて厳しい批判の声明が出ておりますし、私は一番残念だというのは、これは大臣も御承知だと思いますけれども、三月一日にブラジルの森田さんが裁判を起こされた。七十八歳になられる森田さん、ちょうどたまたま、三月一日の提訴のとき日本に来るということでしたけれども、心筋梗塞で倒れられて日本に来られなかったので、日本の国内の支援者が提訴をしたということです。
 この提訴に当たっての森田さんの思いというものを、ちょっとメモを読ませていただきますけれども、
 昨年は坂口厚生労働大臣が開催した「在外被爆者に関する検討会」に招かれ、参考人として在南米被爆者の実情と願いを訴えました。しかし、残念なことに検討会の結論は、私たちの願いと遠くかけ離れたものでした。
  厚生労働省は、昨年十二月、在外被爆者を日本に呼んで治療を受けさせる方針を発表しましたが、平均年齢七十歳の被爆者が、南米から二十四時間以上の飛行機の長旅をして帰国するなど、とうてい不可能なことです。残り少ない余命に母国の暖かい援護をと願っていましたが、駄目でした。
という思いで提訴をされたわけですね。
 私は森田さんと何度もお会いしておりますけれども、森田さんは極めて温厚な方で、しかも、いわば国の、日本の国籍を持っていらっしゃいますけれども、日本ということを愛していらっしゃる方が、あえてこれまでの時期の中にこうした提訴をせざるを得なかったという思いに駆られたことに対して、しかも、平均年齢七十歳以上で大変困難だということは、在米の、米国の原爆被爆者協会も声明の中で同じように出されているわけです。
 そうしてみますと、残念なことですけれども、そういう意味で、こういう声にこたえていない。残念ながら、日本に来れば何とかする。在外被爆者の皆さんの一番の思いは、海外にいて何とかしてほしい、援護法を適用してほしい、その思いに実は一番大事なところでこたえていない。このことは森田さんの提訴にあらわれていると私は思うんですけれども、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 在外被爆者の問題というのは、在外という言葉はついておりますけれども、いわゆる日本人の皆さん方で外国にお住まいになっている皆さん方をどうするかという話になるわけであります。韓国や北朝鮮のように、元日本人という方もおみえになるわけでございますが、アメリカやブラジルにおみえになります皆さん方は、これは日本人というふうに申し上げて差し支えないというふうに思っております。
 したがいまして、これは外国の皆さん方のことではなくて、我が国の、日本人自身のことであるというふうに、私は基本的にそう思っている次第でございます。
 森田さんには、昨年日本にお見えになりましたときにも私もお会いをさせていただきましたし、今御指摘のように非常に温厚な方で、いろいろのお話もしていただいたというふうに記憶をいたしております。
 この皆さん方に対して、今年度の予算においてできましたことはこれしかできなかったということでございますが、そこは我々ももう少し細かく御説明をあるいは申し上げるべきところであったかというふうに思いますけれども、ことしの予算でやっておりますことが、これがすべてで、これで終わりであるというふうに私は考えてはおりません。
 そこのところをどういうふうに御理解していただいていたかということは、私も率直に申しまして、この森田さんのお話を聞いて少し驚いたわけでございますが、森田さんのお話をそこまで私もちょっと存じ上げないものですから、十分な御答弁をすることはでき得ませんけれども、これから先、本格的に一体どうするかということの決断をしなければならないというふうに思っている次第でございます。
金子(哲)分科員 ぜひ、私は最初にも申し上げましたけれども、今回の森田さんの提訴にも見られるように、抜本的な、いわば在外被爆者が望んでいらっしゃる問題から、もちろん一〇〇%の政策はできないかもわからないけれども、こたえる政策からはほど遠いわけでして、今大臣がおっしゃったように、基本的な考え方、基本的な政策のあり方というものについて、できるだけ早い時期に示していただくことによって、この問題をもっと解決の方向に進めなければならないというふうに思います。
 時間がありませんので、少し具体的なこともお伺いしたいと思います。
 先日の三月二十日だったと思いますけれども、私どもの同僚の阿部委員から厚生労働委員会で質問をした、韓国の原爆被害者協会から今回の問題について、いわば、日本政府の在外被爆者健康手帳発給事業などに関する当協会の賛否の見解を示すことは保留をしますというようなこと。それを含めて、もう一つ大きな重要な問題を提起されておりますけれども、その文書は大使館を通じて協会が日本政府、大臣あてに出したということですが、今は届きましたでしょうか。
下田政府参考人 お話としては伺っておりますけれども、正式な書類として私どもがいただいていることはございません。
金子(哲)分科員 それじゃ、要望ですけれども、大使館に出したということですから、外務省を通じて大至急に大臣のところに渡るように、強く要望しておきます。三月のことですから、既にもう二十日間ぐらいたっているわけですから、余りにもちょっと時間がたち過ぎていると思います。あと、どういう理由でそうなったかということも、後ほど説明をいただきたいと思います。
 それで、まず、今のような政策では態度を保留するということと同時に、もう一つ大きなことで提起をされておりますのは、過去送られました四十億円の基金の問題です。この四十億円の基金が間もなく枯渇をするだろうということが言われて、昨年私どもが行ったときも、また大臣が韓国に訪れられたときもそうだと思いますけれども、この問題が韓国の被爆者協会の中では非常に重要な課題になっております。
 これについて、外務省との関係もあると思いますけれども、深刻な問題として韓国の被爆者協会の課題になっているというふうに私は思いますし、この問題も解決をしなければならないというふうに考えておりますけれども、その点について大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 私もよく認識をいたしております。前回お邪魔をいたしましたときにも、そのお話を十分にお伺いいたしました。
 この四十億のお金が決まりました経緯というものも、こちらに帰りましてからいろいろ調べたところでございますが、韓国の大統領が日本にお見えになりましたときに、日韓友好の一環として行われたということもお聞きをしたところでございます。しかし、それが残り少なくなってきていることもお聞きをしたところでございますが、それらの問題も含めてこれからどうするかということを決めなければいけない。その部分だけ先に決めるというわけにはいかないというふうに思っています。
 これは韓国だけの問題ではなくて、そのことはアメリカにもブラジルにも影響するわけでございますし、あるいは、北朝鮮との国交はございませんが、国交を回復すればそれは影響することでもございますので、そこは各国横並びのことでやはり考えなければならないというふうに思いますから、そのことも念頭に置きながら、トータルとしてどうするかということを私は決めなきゃならないというふうに思っている次第でございます。
金子(哲)分科員 今、横並びということは前向きの意味で大臣お答えになったというふうに私は受けとめておりますけれども、ただ、横並びということが前提になって難しいという話になりますと、いろいろな経過があったにしても四十億円が赤十字を通じて贈られた、それによって、もう十数年間それの基金によって在韓の被爆者の生活が大きなかかわりを持ってきたということも事実なわけですね。
 そうしますと、それが枯渇をするということになると、それにある程度頼ってきた部分がなくなるという問題が、現実的な問題として、今までなかったものではなくて、今まであったものが枯渇をするということで生じてくる重要な問題が出てくるというふうに思いますので、そういう点もぜひ十分に認識していただいてこの問題を、今横並びということではなくて、もちろん差をつけろということではありませんけれども、それはそれとしての大事な課題だということをあえて申し上げておきたいというふうに思います。
 引き続いて、四月の一日に政令が出されたわけですけれども、まず当たり前のことを、こんなことを聞くのもおかしい話ですが、内閣法制局にお伺いしたいんですけれども。
 日本の場合には、憲法があり法律があり、そして法律を施行していくために政令が出されたり省令が出されたりするということになると思いますが、それはあくまでも、法律を補完する、具体的に実施をするために出されていくということであって、政令や省令が法律を超えてはならないと思うんですが、そこの点だけお聞かせいただきたいと思います。
阪田政府参考人 一般論としてのお尋ねでございますので、一般論としてお答え申し上げますけれども、今御指摘のように法令には憲法を頂点とするヒエラルキーがございますから、上下関係にある法令の間で矛盾、抵触があった場合、当然ながら上位の法令が下位の法令に優位するということであります。
 したがいまして、仮に、ある政令あるいは省令の規定が法律の特定の規定に違背しているというようなことが万一ありますれば、それはその限りにおいて、それらの政令や省令のその違背する規定は無効であるということになると考えております。
金子(哲)分科員 あえてそのお話を聞きましたのは、御承知のように、昨年、この在外被爆者問題で地裁の判決が二回出ております。いずれも国が敗訴しているわけですね。
 それで最近、四月の一日に、国外への居住地の変更があるときには届け出なければならないという政令が出されたということでありますけれども、私は、この問題は、大臣と今やりとりをしております在外被爆者を援助していくため、支援をしていくためには在外被爆者の一定の数を認識しなければならない、その意味でこの政令というのは出されたという認識をしておりますが、それでいいですか。
下田政府参考人 今回公布されました政令におきましては、被爆者が国外へ居住地を移す場合、あるいは日本への短期滞在者が手帳を取得あるいは治療した後、帰国した場合の届け出の規定、それからもう一つは、国外にいる方で手帳を既に交付されていた方、こうした方が日本に居住地または現在地を移した場合に届け出をすることができるという規定を設けたところでございます。
 今回の規定は、在外の被爆者の方々の存在を念頭に置きまして海外との往来の手続を明記したものでございまして、こうした規定を整備することによりまして、被爆者が国外に居住地を移した場合の把握が容易になる、あるいは手帳保有者が来日したときには届け出によって直ちに被爆者援護法の施策が受けられることになるというメリットがあるわけでありまして、御指摘のように、そういった観点からでは実情把握に役立つもの、このように考えております。
金子(哲)分科員 それではそのときに、この十二月十八日以降いろいろ問題になっておりますけれども、厚生労働省は省令などによって、海外では被爆者健康手帳は無効であるというような省令を出したいという意向を持っているということがマスコミなどの報道によって伝えられておりますけれども、私は、先ほど内閣法制局にもお伺いをしましたけれども、法律、政令、省令ということであれば、法律の段階で、この際地方裁判所で二回も、法律によって、在外被爆者に援護法を適用しないのは間違いであるという判決が出ている時点で、省令によってそれを覆すというのは、変えてしまおうというような省令を出すということは、行政のあり方としてはあってはならないことだというふうに思いますけれども、その点について見解をお伺いしたいと思います。
下田政府参考人 ただいま申し上げましたように、今回の政令改正は居住地の変更手続を明確に定めたものでございまして、事業の実施に二カ月ほど期間を要することから、施行は六月一日というふうにいたしております。
 今お尋ねの省令、つまり海外では被爆者健康手帳は無効であるという旨の省令改正の部分につきましては、具体的内容あるいは時期等々につきまして、現在準備中、検討中ということでございます。
金子(哲)分科員 いや、だから、検討されるからおかしいと言っているんですよ。その内容で、法律上の、裁判で争って日本政府は二度も負けているんですよ。もう一つの判決もあるということをおっしゃっていますけれども、現実の今の時点では二度も裁判、地方裁判所で負けていながら、それを覆すような省令を準備するということ自身が、政治のありようとしておかしいのじゃないですか。
坂口国務大臣 ですから、そこは少し様子を見させていただいているということでございます。
 確かに、今まで広島地裁におきましては国の方が勝ちましたが、大阪そして長崎と二回連続して、これは国の方が敗訴したわけでございます。言ってみれば、今までの地方裁判所におきますこの判決は二つに割れていると言っても過言ではないというふうに思います。
 これの最終結論を得ようと思いますと、最高裁まで行って結論出してもらわなければならないということになるわけでございますが、最高裁となりますとまた何年先かわからないということになってまいりますので、その辺のところをどうするかといったことについて、これは政治的な判断も含めてでございますけれども、そんなに遠くないうちに結論を出さなければならないというふうに思っております。したがいまして、それまでの間、もう少し熟慮を重ねさせていただきたいというふうに思っているところでございます。
金子(哲)分科員 私は少なくとも、先ほど大臣がおっしゃった抜本的な在外被爆者に対する対策のありようも含めて、姿が見えない時点でそのような省令を出すべきでない。今大臣も十分熟慮するということをおっしゃっておりますから、そうだというふうに私は思っておりますけれども、そのことを強く申し上げておきたいと思います。
 次に、外務省にお伺いしたいんですけれども、昨年の三月に北朝鮮の被爆者調査団というのが派遣されましたが、それはもう既に一年たっておりますが、どうも報告を出されていないように思うんですけれども、その点、どのような扱いになっていますか。
渥美政府参考人 御指摘いただきました北朝鮮被爆者実態調査代表団、これは去年三月に、被爆者、被爆者医療の現状を把握する、そして被爆者に対する援護策の要否及び内容を検討するということで、資料を得ることを目的といたしまして訪問いたしました。
 北朝鮮におきましては、代表団は、保健省、それから朝鮮赤十字会、その他関連の研究所、病院等々を訪問いたしまして、被爆者の方約十数名とも面談しております。調査を通じまして、医療機器、設備、医薬品等の状況が十分でないこと、それから、入院している被爆者の病室にも暖房がない、そういう環境にあることが判明いたしております。
 その後、これらの調査の結果の分析などを行ってきておりますが、北朝鮮の被爆者の支援につきましては、こうした作業も踏まえて、今検討しているところでございます。
金子(哲)分科員 厚生労働省で既にもう在外被爆者問題を検討されているわけですね。それから一年間もたっていて、しかも今、先ほど、在外被爆者はどこもそうですけれども、高齢化をしていると。一年間もそのままほったらかしにするというのは、しかも、調査報告の中では、医療実態も大変だ、入院している被爆者の病室にも暖房が全くないなど環境が悪いと。調査団に行かれた方の一名は、地元広島のマスコミには、ひどい、ひどい、ひどいというのを記者に発表されておりますけれども、そんなにひどい実態にあるものをそのまま一年間も放置して、ではどこまで検討されているんですか。
渥美政府参考人 一つは、先ほど申し上げましたとおり、中身につきまして厚生労働省その他専門家の方々とも十分相談するということをやっていますけれども、それに加えまして、もちろん基本的にはこれは人道上の問題でございますけれども、北朝鮮が国交のない国なものですから、そういった総合的なことも念頭に置きまして、検討しておるところでございます。
金子(哲)分科員 検討されても、中身がなければ検討にならないですよね。もちろん私も、国交がない、非常に難しい、いざその援助をするということになれば、なかなか、クリアしなければいけない課題というのはたくさんあると思います。しかし、そのことはあるとしつつも、検討の結果としてこういう対策が必要だ、こういうことをやりたいというものを出さなければ検討にならないんじゃないですか。どうぞ。
渥美政府参考人 調査につきましては、もちろん、帰ってまいりまして、それなりに結果を取りまとめておりますし、それから、厚生労働省と御相談させていただいているわけでございますけれども、中身的にも、それを公表するという前提で必ずしもつくっておらないものですから、そういうことはまだしておりませんけれども、それを前提に、この扱いにつきましてまた厚生省とも相談して、検討してまいりたいと思います。
金子(哲)分科員 今度は短く。いつごろまでにやられますか。
渥美政府参考人 今の段階ではいつまでとは申しかねますけれども、全体の状況を踏まえて、なるべく早くやりたいと思っております。
金子(哲)分科員 ぜひ早く、少なくともその方針だけは出していただきたいと思います。
 厚生労働省にお伺いしたいんですけれども、今回、在外被爆者の対策ということで、大臣も三月末にシンガポールまで行かれて、北朝鮮の代表と会って要求も聞いてこようということで、大変前向きにやっていただいたと思いますが、それが実らなかったことは非常に残念です。
 ただ、今回出されている対策では、今お話も外務省からもありましたように、国交のない状況の中では非常に制約されてくる。例えば渡日などにしても、簡単に被爆者がこちらに来るということは不可能だということになりますと、違う角度からこの北朝鮮における被爆者問題というのは考えていかなければならないんじゃないかというふうに思うんですけれども、その点については何かお考えありますでしょうか。
坂口国務大臣 特段の考え方がまとまっているわけではございません。
 先ほども申しましたように、韓国やアメリカやブラジルの被爆者の皆さん方からは御意見を伺っておりますが、北朝鮮の皆さん方からは伺っていない。したがいまして、どういうお考えをお持ちになっているのかという、まず御意見をお伺いするということが先決であると思っておりまして、それをお伺いしたい。
 それから、ことしの予算で組みましたことにつきましては、これは、国交がありませんのでどこまでできるかわかりませんけれども、こういうことをいたしておりますということは御報告をしたいと思っております。
金子(哲)分科員 もう時間が余りありませんので申し上げておきたいと思いますけれども、今大臣もおっしゃいましたし、しかも、昨年の三月の調査代表団の調査の結果にも明らかなように、北朝鮮の場合、この調査報告を読みますと、医療機器や設備、医薬品などの状況は十分ではないという報告があるわけでありまして、しかも渡日の治療が難しいということになれば、おのずと大体、やるべき施策というものが限定をされてくるんじゃないかというように思います。
 もちろん、私どもが聞きますと、例えば韓国の四十億円の、先ほどお話をしました問題との関連などもお話が出ないことはありませんけれども、私は、その問題も政治的な課題として考えなければならないと思いますが、これはまた国交の問題とも非常にかかわりがあるというふうに思います。ただ、問題なことは、人道的な、言われましたような、もし北朝鮮の現状、状況が被爆者の医療問題を含めてそういう状況であるとすれば、これは早急に、人道的な意味からもやはり対策を立てる、その措置をする。そういう意味では、おのずと、医療の問題、医薬品の問題なども、やってできないことはないような課題があるように思うわけです。
 その点についてぜひ要望しておきたいと思いますけれども、最後に、大臣の方から答弁があればお願いいたします。
坂口国務大臣 どういう御意見かということをよく承りまして、機会がありましたら承りまして、そして善処したいと思っております。
金子(哲)分科員 時間になりました。終わります。ありがとうございました。
山名主査 これにて金子君の質疑は終了いたしました。
 次に、樋高剛君。
樋高分科員 自由党の樋高剛でございます。
 きょうもお時間をいただきまして、ありがとうございました。また、大臣におかれましては、連日本当に大変お疲れさまでございます。心から敬意を申し上げます。また、委員の先生方にも、お時間をいただきましたこと、心から感謝を申し上げます。
 きょうは、食品の安全につきましてをメーンテーマに議論させていただきたい、また要望させていただきたいというふうに考えるのでありますが、その前に、大臣の専門分野であります小児医療のことにつきまして要望と、あと、大臣の御所見を賜りたいというふうに思っております。
 私も今、ゼロ歳と六歳の子供を抱えておりまして、神奈川県に居住いたしておりますけれども、今ここに、神奈川県からのいわゆる「小児救急医療制度の充実強化を求める意見書」ということが出ております。結論的には、要するに、小児科医が足りませんよということなんでありますけれども、このように書いてあります。「小児救急医療体制の不備から、幼い子どもが適切な治療を受けられず、重大な事態に至るなどの問題が全国各地で発生している。」これは別に神奈川県に限ったことではないと思います。
 小児医療を支える現場の状況を見ますと、「医師の総数が全体として増加傾向にある中で、逆に小児科医の数は減少傾向に」ある、これは長年言われてきたことなんでありますけれども、ここに来まして、開業医の高齢化などに伴う診療施設の閉鎖、またビル診療所等の増加などから、「特に休日や夜間の小児救急医療体制の不備が指摘され、大きな社会問題となっている。」大臣ももう重々御案内のとおりだというふうに思います。
 「国においても平成十一年度から三か年計画で、全国三百六十四地域の二次医療圏ごとに、二十四時間体制で子どもの診察にあたる」いわゆる小児救急医療支援事業、予算関連でありますけれども、に取り組んでいるということでありますけれども、肝心な小児科の先生が足りないということでありまして、整備が大幅におくれているんだそうであります。
 新エンゼルプランの方もしっかりと拝見をさせて、検証もさせていただきましたけれども、ここに来て今大変な壁にぶつかっていると。しかも、お医者さんは、足りないからすぐ二、三年で多くふやせというわけにもいかないわけでありまして、これこそ国がしっかりと責任を持って小児科医の養成等々を行っていく必要があるというふうに思ったものですから、これは神奈川県から要望事項、三月二十五日付で、多くのものをいただいている中なんでありますが、きょうは、この機会をいただきましたので、冒頭ちょっと、これだけはどうしても大臣に要望をさせていただいて、大臣はドクターでありますから、専門の分野でもありますし、御所見と、また対応をどのようになさっていかれるのか、前向きな御答弁をいただきたいと思います。
坂口国務大臣 小児科の先生のお話につきましては、いろいろなところから先生が足りなくなったという話を実は聞くわけでございます。同じ小児科をやっている医師の仲間からも、だんだんと減ってきたという、非常に悲鳴に近い声が聞こえてくるわけでございますが、しかし、統計を見ますと、決して減っていないんです。先ほども申し上げたんですが、平成六年に一万三千三百四十六人だったのが、平成十二年におきましては一万四千百五十六人と、六・一%の増加になっている。医師全体で見ますと一〇%ぐらい増加になっていますから、六%ですから、ふえ方は少ないんですけれども、しかし、小児科に登録されている医師の数としてはふえているんですね。
 しかし、ここは、数はふえているんですが、その中の約三〇%の人は女医さんである、あるいはまた小児科の先生方の平均年齢がかなり高くなってきている。平均して四十七・六歳と、大体五十歳に近づいてきているといったようなこともあって、現実問題として動いていただける先生が少ないのかなというふうに私も実は思っているわけでございます。特に救急医療等の場合には夜間も出動していただかなければなりませんし、そうしたことに対応していただける医師がやはり少なくなってきているということはどうも事実のようでございます。
 数そのものは減っていない、しかしそうした救急医療等で出動がなかなか難しいといったことになっているのではないかというふうに思っている次第でございます。
 こうしたことを受けて、今回の診療報酬改定におきましても小児救急の場合の点数をふやしましたり、それからことしにおきましても、小児救急医療体制の整備ということで、今まで二百四十カ所でございましたのを三百カ所にふやしますとか、予算額におきましても、平成十四年におきましては十二億六千万でございます。
 これは、今までのことを見ますと、二億とか五億とか六億とかというような数字に比べますと、かなりここもふやしまして、そして体制強化のためには一生懸命になっているわけでございますが、その肝心かなめの先生の出動がないといけないわけでございますので、それはただ単にお願いをするだけではなくて、病院等の育児等につきましても、今までは看護婦さんだけを対象にしておりまして、医師の人ですとかあるいはその他の人のは対象にしていなかったわけですので、ことしから、医師の先生方のお子さんも対象にするとかいうようなことを今度入れたわけでございまして、そうしたことを積み重ねて、女性の先生でも出動していただきやすいような体制をつくるといったようなことをやっていかないと、きめ細かくやらないとやはりだめなんだろうというふうに思っております。
 非常に、そういう意味で、できればやりたいという情熱をお持ちの皆さん方も多いわけでございますので、その点配慮をしながら、我々も国民の皆さん方の御要望におこたえをするようにひとつ頑張りたいと思っております。
樋高分科員 どうもありがとうございます。
 いわゆるお医者さんの数としては六・一%の増ということでありますけれども、大臣、現実問題としてということでおっしゃいましたとおり、そこには、また次々手を打っていかなくちゃいけない部分があるということでありますので、そこはスピーディーに、きちっと実効性が上がるようにひとつリーダーシップをおとりいただきたいというふうに思います。
 そして、食品の安全関連なんでありますけれども、食品の表示の問題、今さまざま議論をされております。そんな中にありまして、連絡会議を設置したと。この連絡会議というのは、農水省、厚労省、あと公正取引委員会で設置をなさった、いわゆる雪印食品の偽装牛肉事件などで消費者の関心が高まってということであります。会合も開いたということでありますけれども、これにつきましてはそもそも行政の対応がちょっと遅過ぎるんじゃないかというふうに思うわけでありますが、この目的、内容、そして、さらに今後は消費者団体あるいは生産・流通関係団体の代表も含めたいわゆる住民参加型の検討会が必要ではないかというふうに思うんですが、いかがお考えでしょうか。
坂口国務大臣 農林水産省と公正取引委員会、そして厚生労働省と、三者によりますところの連絡会議というものを既に持っておりまして、二月の十九日、四月の五日と、二回今まで済ませたところでございますが、これからもできるだけ頻回に会合を持って、そして進めていきたいというふうに思っています。
 一つ今度問題になりますのが、新しい組織づくりをどうするかといったこと、それから食品衛生に関します基本法というものをつくるのかつくらないのかということが一番基本のところであるというふうに思っています。
 先般も総理からお話ございまして、そして関係閣僚における懇談会ができまして、先日第一回目が開かれました。それで、大体六月の中ごろには、新しい組織をつくるのか、つくるとすればどういうものなのか、そして基本法をつくるのならばそれはどうするのかということが大体決まってくるというふうに思いますが、その基本法をつくるかつくらないかということによって、例えば食品衛生法とそれからJAS法とをどうするかという問題はかなり違ってくるんではないかという気が私はいたしております。
 その辺のところもにらみながら今後これらのことを検討していきたいというふうに思っておりますが、基本法というものがそうしたことには影響しないということであるならば、JAS法や、それから公正取引委員会のところと我々の方とでどうするかということを決めることはそんなに難しい話ではありませんので、至急ここは詰めていきたいというふうに思っている次第でございます。
樋高分科員 大臣、要するに、その食品基本法をつくるかつくらないかによって、その後の、いわゆる組織をつくるとかつくらないとか、いわゆるJAS法なりまた食品衛生法改正なり考えていくということでありますから、逆に言えば、その食品基本法をつくるかつくらないかの結論を早く出さなくちゃいけないと思うんでありますが、いつまでに出される御予定でしょうか。
坂口国務大臣 いずれにしましても、六月の中ごろぐらいにはすべての最終案をまとめなきゃならないわけでございますから、この四月か五月には方向性というのは出るというふうに思っています。
樋高分科員 そこはぜひ大臣にリーダーシップをとっていただいて、この食品の安全に関しましてはもう本当に緊急事態であるというふうに思いますので、ぜひその基本法を制定するかしないか、まず一つ一つの問題を積極的にクリアしていっていただいて、どういう形がいいのかというのを、国民参加型、市民、住民が参加した形で議論を進めていっていただきたいというふうに思います。
 きょうはちょっとお伺いしたいことがたくさんありますので、次に進んでいきたいと思いますけれども、遺伝子組み換え食品の表示についてであります。
 いわゆる安全性の審査の手続を経た遺伝子組み換え食品というのは、現在四十品目あるんだそうであります。これで一体大丈夫なのかという指摘があります。いわゆる規格基準においては、さらに品目の拡大が必要ではないかというふうに言われておりますけれども、いかがお考えになりますでしょうか。
坂口国務大臣 遺伝子組み換え食品、御指摘のように今四十品目でございますが、現在申請のありますものは五十一品種でございます。その中で現在までに四十品種の食品につきましては安全性を確認しているところでございます。
 これは、遺伝子組み換え食品というのはこれからどんどんとふえてくるだろうというふうに思いますし、ふえてくればさらにその範囲は拡大をしてくるというふうに思いますが、現在、そうしたものを使って、薬事あるいは食品衛生審議会にかかってくるようなものは、五十一品種ということでございます。
 ですから、これからもどんどんふえてくるということは考えられますから、それらを迅速に対応していかなければならない。これは、まあそう簡単なことではありませんので、かなり日時のかかる話でございますから大変なことだというふうに思っておりますが、しかし、そこはできる限り頑張ってやらなければならないというふうに思っている次第でございます。
樋高分科員 迅速に対応していただきたいと思います。
 また、遺伝子組み換え食品については、これは表示義務がございます。これは遺伝子組み換え食品ですよというふうに表示をするのでありますが、これに違反した場合の罰則が甘過ぎるという指摘も実はあるんです。三万円以下の罰金、三万円以下であります。これについてどのようにお考えになりますでしょうか。
坂口国務大臣 食品衛生法に基づきます適正表示に対します監視指導の徹底を自治体に要請しているところでございますが、今お話しいただきましたように、表示に対します食品衛生法上の罰則につきましては、国民の健康被害を防止する観点から、表示違反につきましては最高で六カ月という重い懲役刑を設けておりますが、罰金刑につきましては、確かに、昭和四十七年に三万円とされまして以来、改正されていないというのが現状でございます。
 今後、表示行政を所管する関係省庁とも、これは調整をしなければなりませんが、検討を行ってまいりたいというふうに思っております。今回、特にJAS法でありますとか景表法ですかね、これらとの関係もございますので、検討したいと思っております。
樋高分科員 今回きちっと、こういう部分もあわせて、どうか御検討いただきたいと思います。
 次に、食品添加物についてお伺いをさせていただきたいと思います。
 今までの経過、流れの中で、大臣御存じだと思いますけれども、平成七年、いわゆる食品衛生法を改正いたしましたけれども、食品添加物についてでありますが、以前は指定制度の対象がいわゆる化学的合成品のみであったんですけれども、このときの法改正によりまして、いわゆる天然添加物を含むすべての添加物に拡大をされたわけであります。しかし、当時既に流通をしていた、今まで要するにずっと流通していた天然の添加物は使用実績があって、また今のところ安全上問題となる報告もない、禁止して社会を混乱させてはならないということで、既存添加物名簿をつくって、いわゆる例外規定を設けて、四百八十九品目は引き続き販売などを認めているということであります。
 つまり、天然添加物については十分な審査がなされないまま、いわゆる前例主義の典型なんでありますけれども、なし崩し的に使用がその後認められてしまっている。したがって、私考えまするに、例外となっている天然添加物を規制の対象にこの際して、すべての添加物の指定制度への移行を計画的にきちっと進めることが私は必要ではないかというふうに思うわけであります。
 これにつきまして政府の見解は、先に大臣の答弁を申し上げるかもしれませんけれども、既存添加物名簿記載品目は、安全性を確認した後、基準をつくって認可を行ういわゆる指定制度の対象外となって、引き続き使用されている品目であります、既存添加物についても今後とも安全性の調査研究の実施を検討し、適切な対応に努めるというふうに政府は述べていらっしゃるのでありますが、すべての食品添加物の使用許可というのは、安全性を確認後、必要な基準を作成することが食品衛生法でそもそも定められているわけでありまして、既存添加物名簿に収載された天然添加物の中には有害性が指摘されているものもあるわけであります。それにもかかわらず、現在でも制度の例外規定として存在をしているという事実がございます。また、既に安全性評価の終了した既存添加物については、直ちに指定制度の枠組みに組み入れ、例外規定を明記した附則の削除を実施することが求められているというふうに考えるのであります。
 そこで、お尋ねをしたいのでありますけれども、いわゆる例外になっている天然添加物も規制の対象にして、すべての添加物の指定制度への移行を計画的に進めることが必要であるというふうに考えますけれども、いかがお考えになりますでしょうか。
坂口国務大臣 以前にも委員からこのお話をお伺いしたことがあると思うんですが、確かに指定添加物というのが三百三十八品目ございまして、これはもう審査の済んだものでございます。それから既存の添加物、四百八十九品目ございます。これはずっと今までからもう使われていたということをもって使ってきたものでございますが、この既存添加物四百八十九品目の安全性につきましての評価というものも現在行われているわけでございます。
 この四百八十九品目のうちで、もう国際的な評価が終了しているもの、国際的にもうどこの国でも済んでいるものが百五十九品目ございます。それから、いわゆる既存情報に基づいて安全性点検が終了しているもの、この終了しているものが四十一ございます。それから、製法とか本質から検討を早急に行う必要がないもの、余りふだん使われていない、余り使われていないものが百五十ぐらいございます。早急に安全性の検討を行う必要があるものというのは、そうしますと百三十九ぐらいに絞り込まれてくるというふうに思っています。これを早くやらなければいけない。
 そこで、この百三十九の中で、平成十三年度までに十数品目は、これは安全性評価がもう終了いたしております。十四ですかね、十四、その中でやっている。すると、残りが百二十五でございます。この百二十五の中で流通実態が確認できないものを除く約六十品目について、平成十四年から平成十六年までの三年間で安全性の評価を終了することを目指している。
 かなりいろいろなものを除いてはおりますけれども、どうしても早くやらなきゃならないものにつきましては、ことし、来年、再来年と、この三年の間にこの六十品目については評価を終了するというスケジュールで現在進んでいるところでございます。それが済めば、流通実態が確認できないものでありますとか、余りふだん使われていないものですとかというようなことにつきましても、またチェックをしていきたいというふうに思っております。
樋高分科員 六十品目、三年間で評価を終了ということでありますけれども、これは計画的にきちっと行っていただきたいと思います。
 続きまして、残留農薬についてであります。
 今、輸入食品につきまして危険性が指摘されております。前回、先般厚生労働委員会でも大臣と議論をさせていただきましたが、世界に流通している農薬は約七百種類ございます。そのうち、日本で残留基準があるのはわずか二百二十九種類、約五百種類は残留基準が日本国内にはございません。しかしながら、食品はどんどん日本国内に入ってきているというのが実情であります。
 したがいまして、残りの五百種類の農薬につきまして、基準をつくるのに今年間二十件のペースでその審査を行っているということでありますから、向こう二十五年間かかるんです。残りの五百の農薬の基準、すべて残留基準を求めるに当たっては、二十五年以上、四半世紀かかってしまうという計算になっちゃうわけであります。
 ただ、国内の使用量の九割を既にこの二百二十九品目でカバーをしているということでありますけれども、残りの一割はカバーし切れていないんだよ、現に安全が保障されていないということは事実のようであります。ですから、例えば、我々が朝食べた食事の中にも、あるいは昨晩食べた食事の中にも有害物質が入ってきている可能性も十分に考えられるわけでありまして、すぐには害をもたらさないにしても、食の安全の問題に関しては、総じて何か具体的な被害が起きないと対策が講じられない傾向が強いわけでありますから、問題が発生する前から対策を打つことが大切ではないかというふうに私は考えるのであります。
 いわゆる農薬、動物用医薬品の残留基準の設定を計画的に進めることによって、残留基準を決められていない食品の流通販売ができないようにする必要があると私は考えるわけであります。
 政府にお伺いをいたしましたらば、今後も残留農薬基準、動物用医薬品基準の設定に鋭意取り組む所存であるということもおっしゃっておいででありましたし、残留基準が設定されていない農薬と抗菌性物質以外の動物用医薬品は、それがごく微量検出されても科学的な安全性レベルを上回るという根拠がない場合には、食品衛生法に基づき流通販売ができないように取り締まることができないのです。つまり、悪いという証拠がつかめない限り対策を打ちませんよと、相も変わらず、なあなあ、まあまあの行政が続けられてしまっているわけであります。
 そこで、私は申し上げるのでありますけれども、いわゆる旧厚生省でありますが、残留農薬基準に関しましては、衆議院の厚生委員会、百三十二回国会、平成七年五月十二日付でありますけれども、残留基準が決められていない食品の流通販売ができないようにする制度への移行については、相当程度の基準を策定した段階で検討すべき問題であり、当面の目標は二〇〇〇年までに二百農薬を目途とする趣旨の答弁をなさっている。今現在二百二十九品目でありますから、この数字はクリアしているわけです。現在、残留農薬基準は二百二十九農薬が設定されて、目標は既に達成をしている。したがって、早期に残留基準が決められていない食品の流通販売ができないようにする制度実施の検討をしていくことが必要であるというふうに考えるわけであります。
 特に、輸入農畜産物、水産物も含めた話でありますけれども、輸入の食品については、食品衛生法で残留基準が定められていない農薬、動物用医薬品がたとえ検出されたとしても、その食品の流通を取り締まる根拠はないわけなんですね。そのために、残留農薬基準、動物用医薬品基準を一層整備していくこともあわせて望まれるわけであります。
 また、平成七年の食品衛生法改正のときには、このように書いてあるのです。将来的に環境が整えば、現在、食品添加物の規制で導入されているポジティブリスト制の導入を検討することというふうに附帯決議の中に入っているわけで、これは衆参両院で採択をされております。今からもう七年前の話であります。
 そこで伺いたいのでありますが、農薬、動物用医薬品の残留基準の設定を計画的に進めることによって、残留基準の決められていない食品の流通販売ができないようにすることが必要であるというふうに考えますけれども、いかがお考えでしょうか。
坂口国務大臣 ここはなかなか難しいところでございますが、確かに、国際的な食用農産物に使用が認められている農薬数というのは約七百あるわけですね。その中で、国内の食用登録農薬数というのは三百五十あるわけです。その中で、二百二十九につきましては既に安全性の確認がされているということでございまして、かなり進んできていることは間違いがございません。
 安全性上問題があることが判明しました場合には、食品衛生法第四条に基づきまして販売等を禁止することといたしております。
 引き続きまして、残留の基準値の設定を積極的に進めますとともに、残留基準が設定されていない農薬等が残留する食品の規制のあり方につきまして、これは食品衛生法の見直しの議論の中で検討しなければならないというふうに思っております。
 今委員が御指摘になりましたところまで一気呵成にいけるかどうかはちょっとわかりませんけれども、食べるもののことでございますから、できるだけ早くここは整理ができるように頑張りたいというふうに思っております。
樋高分科員 大臣、お立場もありますし、そのようにしか御答弁できないけれども、問題点につきましては重々御認識をいただいている、共有いただいているというふうに考えるわけでありまして、この食品の安全のテーマにつきましては、私もライフワークとしてしっかりと取り組んでまいりたいと思いますので、どうか、大臣からも、今後とも御指導そして御尽力を賜りたいというふうに思っております。
 きょうは、ありがとうございました。
山名主査 これにて樋高君の質疑は終了いたしました。
 次に、藤木洋子君。
藤木分科員 日本共産党の藤木洋子でございます。よろしくお願いをいたします。
 きょうは、小児救急医療体制の充実が急務だという思いを最近大変強く持っておりまして、この問題で質問をさせていただきたいと思います。
 私の地元、兵庫県議会からも意見書が出ておりますけれども、現在受理されたのは四十八地方議会から提出された意見書だというふうに伺っております。随分たくさんのところから要望が出ているというふうに思うのです。
 これまで、小児救急の医療体制が整備されていないために亡くなったり重い後遺症を背負うことになったお子さんが後を絶ちません。実際、幼児がインフルエンザ脳症で亡くなるという痛ましい事故は、私の地元でも起こっております。
    〔主査退席、桜田主査代理着席〕
 ここに「小さないのちとの約束」という著書があるわけですけれども、これはインフルエンザ・脳症親の会というのを立ち上げられた方の中のお一人が書かれた本なんです。
 この著書でも御自分の体験をつづっておられるのですが、やっとの思いで授かったお子さんが、かわいい盛りです、一歳の誕生日を迎えたばかりの女の子の場合なんですけれども、このお子さんが、かかりつけの耳鼻科で、熱は高くないからインフルエンザではないだろう、風邪薬を出しておくと診断をされて、帰宅をされるわけです。
 しかし、その後、この年齢のお子さんにはありがちですから、大の診察嫌いということで、親にしてみれば、十分な診察を受けることができなかったんじゃないだろうかという思いも持たれるのですね。嫌がるので熱もはかれないというような状況のまま寝かしつけるのですが、その後一時間ほどして行ってみると、嘔吐物で、顔は赤紫色になるというようなことで本当に驚かれて、早速救急車を呼ぶということをなさるわけですけれども、動転して自分の住所さえ言えないというような状況だったというふうに述べておられるわけですね。
 救急車が参りましたけれども、乗ったものの、搬送先が決まらないのですね。乗ってからいろいろ手当てをするわけですけれども、行く場所がない。結局市内の夜間診療所(初期)に搬送されることになりました。ところが、救急隊から、ここでは、市内の各所から救急車で搬送されてきた子供でいっぱいだから、すぐに診てもらうということを考えたってだめですよというふうに言われるわけですね。ですから、救急車で運ばれてもすぐに診察されない。
 意識もない、火のように熱い、そういう子供を抱き締めてじっと長時間待つという親御さんの気持ちはどれほど不安であろうかと、私は本当に胸が詰まるような思いで読んだわけです。
 診察の順番が参りまして、結局熱性けいれんと診断をされて、様子を見るようにという指示が出るわけですね。ところが、お母さんの直感で、眠っているんじゃないんだ、意識を失っているんだというふうに訴えるのですが、聞いてもらえなかった。しかし、血液検査の結果で肝臓の状態が極めて悪いということが判明をして、これはということで、二次の個人病院ですけれども、転送されることになるわけです。しかし、ここでも母親の訴えは聞いてもらえずに、けいれんが激しくなった時点でやっと医師が事の重大さに気がついて、本格的な治療に取りかかりましたけれども、けいれんはとまりません。
 そこで、三次救急医療機関への受け入れを依頼するという作業が始まるのですけれども、次から次と断られて、医師みずからが派遣元である大学病院に再三再四受け入れを要請してやっとかなえられるということで、搬送が決まります。しかし、事態はもう既に深刻でして、懸命な救命治療にもかかわらず五日後には脳死状態になって、それから二週間後、余りにも短い生涯を閉じることになってしまった、こういうことなんですよね。
 幼い子供自身も一生懸命生きようと頑張っていますし、親も医師も救急隊員も小さな命を救うために必死の努力をしているんだけれどもかなわないという事情があるわけですね。小児科医がいなかったということのために初期救急も二次も三次も機能的に働かなかったという、本当に悲惨な現実がここにあるということを申し上げたいというふうに思うんですね。
 こうした悲惨な出来事を二度と繰り返さないために小児救急医療体制の整備と充実が待ったなしの課題ではないか、こう私は考えているのですけれども、大臣の御認識を伺いたいと思います。
坂口国務大臣 さきの質問者の方にもお答えをしたところでございますが、この小児救急医療というのは非常に大事だというふうに思っています。特に、夜間等におきましては、なかなか診察をしていただく場所がないという現状があるわけでございますので、二十四時間体制の小児救急医療、いわゆる二次医療、三次医療といったところももう少し多く、そして設備も十分に整うようにしていかなければならないというふうに思っておりますが、二次、三次もさることながら、第一次の、最初にお受けをいただくところが一番本当は大事だと思うんですね。早く見分けをしてもらう、そして早く第一段の手を打ってもらう、その一次のところがやはり少しでも多いということが私はまず大事だというふうに思っています。
 そういう意味で、小児科の先生がもっともっとふえてくれることが望ましいわけでございますけれども、先ほどから議論が出ておりますように、少子化をしてくるといったようなこともやはりあるんでしょう。小児科、産婦人科の先生が非常に今少なくなってきているということはちまたで言われるわけでございます。
 先ほども答弁しましたように、いわゆる統計上の数字を見ますと、決して小児科の先生が減っているわけではない、まだふえてはいるわけです。ふえてはいるんですが、しかし、現実問題として、平均年齢が高くなっておりますとか、あるいはまた女医さんの割合が非常に多くなってきているといったようなことがあって、診療所もビルの中の一室を借りて診療所をつくるといったようなことが多いものですから、昼間は対応していただきますけれども、夜間はそうしたところは対応がなかなか難しいといったことがあって、子供をお持ちのお母さん方からすれば、非常にこの小児医療、そしてまた救急医療というものが少なくなってきているという印象を強くお持ちになるのではないかというふうに思っている次第でございます。
 これは、なかなか一朝一夕で小児科の先生をふやすわけにいかないわけでございますし、そして、さまざまな面から先生方のことを考えていかないとここはふえてこないんだろうというふうに思います。
 したがいまして、いわゆる診療報酬の面はもちろんでございますが、女医さんの非常にふえてきたというようなこともございますから、そのお子さんのこともやはり考えていかなければならない。中には大変熱心な方がございまして、自分の子供を背負いながら往診に行くというふうにしていただいている女医さんのお見えでありますことも、私もお聞きをいたしておりますけれども、すべての女医さんにそうしたことをお願いするということはなかなか難しいんだろうというふうに思いますから、そうしたいわゆる医療体制というものをもう少しつくり上げていくために、ただ単に医療施設をつくるというだけではなくて、その周辺のことをどうきめ細かくしていくかということが今問われているというふうに感じている次第でございます。
藤木分科員 大臣の御認識は、極めてこの分野が大事なことだということのようです。
 私は、だからこそそういう悲惨な事故を起こさないためにということで、政府は九九年度に小児救急医療支援事業というのを起こしてこられたんじゃないかというふうに思っているわけですね。随分力も入れて推し進めてこられたんじゃないかというふうに思うんですよ。
 ところが、極めて急がれる緊急課題として推進してこられたにもかかわらず、実態はどうかという問題なんです。当初の計画では、初年度に百二十カ所、二年目に二百四十カ所、三年目で三百六十カ所の整備を目標に掲げて取り組んでいるというふうに伺いましたけれども、私がことしの二月に聞きましたら、二〇〇一年度末の整備の見込みはまだ百カ所程度だと、大変なおくれを来しているということがわかりました。なぜそうなっているのかというのが問題だと思うんですね。
 その進捗を妨げている障害を取り除かなければならないのではないかというふうに思うのですけれども、その障害は何だというふうにお考えでございましょうか。
宮路副大臣 今御指摘のように、私どもが当初予定しておりました予算の実行見込みに比べますと、実績の方はかなり低水準で今日まで至っておるところであります。
 その原因としては、二次医療圏を構成する複数の市町村、その市町村が三分の一のこの事業に対する負担をするということになっているわけでありますが、その市町村間における負担額をどのようにお互い分担し合うかというようなことなどをめぐって、市町村間における調整がなかなか進んでいないという現実がございます。
 それからもう一つは、先ほど来お話のありましたような、小児救急医療を担っていただくお医者さんが、それぞれの地域で必ずしもしっかりと整備されていないといいましょうか、いわゆる医師不足という問題があるといったことがその原因ではないか、かように認識をいたしておるところであります。
藤木分科員 しかし、圏域ごとの調査にも切りかえているというふうに私伺いましたし、困難な圏域ごとに必要なところで、検討を進めるための会議も開いて、予算も計上して、総合的に検討を進めているというふうなことを伺っているんですね。
 しかし、問題は、私、だから拠点病院をつくるという話もあるようなんですけれども、しかし、そういうことで片づく問題じゃないというふうに思うわけですよね。
 私は、地元の小児救急を実際に行っている病院長から直接お話を伺ってきましたら、小児の入院というのは救急がほとんどだと言うんですよ、成人とは違って。だから、予約するというようなことで、退院されたらすぐ入れるというようなやりくりはできないということをおっしゃっていました。ですから、いつでも緊急入院ができるようにベッドは空で確保しておかなければならない。
 ところが、一つベッドを確保するには約二万円が必要だということもあって、小児は大人のように問診で判断するということはとても難しいわけですから、観察と触診と誤診がないように時間をかけることなり、その専門性なりが要求される。だから、身体や気持ちへの子供の影響を考えると検査や薬は最小限にとどめないといけないということも小児科医は常に心がけているとおっしゃるんですね。そうしますと診療報酬が折り合わないというような実態がございますから、現在の政府の補助額の程度では、小児救急を行うことによって生じるさまざまな赤字分の補てんをしてもらうと言われても、とても採算がとれないというのが実情だというお話なんですよ。
 こういう実態を踏まえて、小児救急医療支援事業を進めていこうと思いますと、現在の補助額で果たして十分だというふうにお考えかどうか、その点をお伺いしたいと思いますが、いかがですか。
宮路副大臣 今御指摘の小児救急医療支援事業における補助基準額、補助の水準の問題でありますが、これにつきましては、実は平成十三年度におきまして、従来からしますと三〇%といったような大幅な増額を図らせていただいたところであります。そして同時に、二次医療圏ごとに小児救急医療をスムーズに行っていくための関係者の協議の場を設けるための経費も同じく予算に平成十三年度から計上させていただいておるところであります。
 しかしながら、今回、十四年度におきましては、従来のこの事業を在来線というならば、今度は新幹線というものを考えたらどうかということで、市町村間の負担額が先ほど申し上げたようにどうするかということで問題になっている、ネックになっている、こういうことでございましたので、市町村負担をなくして、国と県が二分の一負担し合って、もう市町村の負担はなくてもいいという、一つのそういう方法。
 それから、これまではそれぞれの二次医療圏を対象にやっておりましたものを、複数の二次医療圏にまたがって小児救急患者を受け入れる小児救急医療拠点病院というものを整備していく、そういう手法を、新しい方式をもう一つのやり方として従来の小児救急医療支援事業に加えて、これを平成十四年度からスタートさせる、こういうことにいたした次第でございます。
 したがいまして、補助基準額の問題につきましても、こういった新しい試みが今後どういうぐあいに展開していくか、そういったことも踏まえながら今後対応して考えてまいりたい、こういうように思っている次第でございます。
藤木分科員 だけれども、そもそもこうした悲惨な事故というのは全国の各地で起こっているわけです、どこか特定のところであるわけじゃなくて。一般の救急と一緒に推進したのでは小児救急医療体制の整備というのは進まないだろうというのが私の考え方なんです。
 そもそも、支援事業を始めたときもそういうお考えに立ってやられたはずですよね。ですから、昨年度も今年度も、実は予算は五億円以上組んでいらっしゃるんじゃないんですか。組んでこられましたけれども、整備箇所数から見ると半分も使われていないというのが実態なんですよね。そうしますと、せっかく組んでいる予算が有効に生きていないということになるんじゃないかというふうに思うわけです。ですから、それを生かして、民間の病院がこの事業に参加しようという意欲がわくようなやり方というのを進めていただいて、補助額を引き上げてこそ、事業を創設した趣旨が生きるのではないか、こういうふうに私は思っているわけです。
 私の地元の兵庫県の阪神南医療圏域といいますのは、全国的に見ても、私は小児救急医療体制は比較的進んでいる方ではなかろうかというふうに思うんです。芦屋、西宮、尼崎の三つの市が一つの圏域で、県立、市立の合計いたしまして四つの病院が輪番制の当番病院になっています。しかし、ある県立病院には、七人の小児科医のうち四人が救急ができる医師で、四日に一回の当直をしなければならないという過重労働になっているわけですね。だから、実際には、輪番制の担当病院だけではなくて、民間病院が一緒に支えているというのが実態なんです。実際にそれがなければ回っていかないというような状況になっているんですね。
 確かに公立病院も頑張っているわけですけれども、それでも民間病院の協力がなければ成り立たないというのが現実です。その民間病院の先生方は、小児救急は病院で一番不採算部門で、経営的には肩身の狭い思いがある、だからボランティアのような気持ちでないとできませんねという話をしておられました。こうした実態を知れば知るほど、支援事業の補助額を引き上げるということが急務ではないかということを重ねて申し上げておきたいというふうに思うわけです。
 私の地元でいろいろな皆さんのお話を伺ってきましたけれども、先ほども大臣が言われたように、その中で小児の初期救急がいかに大切かということを痛感いたしました。
 ここで大臣にもう一人のお子さんの話を聞いていただきたいというふうに思うんですが、このお子さんの場合は、三歳五カ月の男のお子さんです。
 当日は熱が高く、かかりつけの医師が不在でして、ほかに診てもらうところがなかったわけですから、やむを得ず自家用車で、外科医が当直している病院だったんですけれども、そこへ行かれたわけです。午後八時三十分です。その外科医は、熱性けいれんと診断して、様子を見るよう指示されました。しかし、親御さんは、今度の子供の症状からどうしても納得できずに、午後十時から開設をする初期救急の開所するのを待ち構えて、この医療機関へ再度自家用車を走らせて行ったわけです。小児科医の診察を受けることができたんです。その医者は、診るなり症状の重大性に気づいて、三次救急医療機関への搬送を指示されました。ところが、残念ながら搬送中に血圧がどんどん低下をして、とうとうその短い人生を閉じるということになってしまいました。
 このお子さんの場合、初期救急医療機関診察時間帯と病院の診察時間帯のわずか三時間足らずのすき間で起きた悲惨な事故だったと言わなければなりません。
 そこで、大臣に伺いますけれども、大臣は、小児の初期救急の重要性について、先ほども述べておられましたけれども、だからこそ、どうあるべきだというお考えがあればお述べをいただきたいと思います。
坂口国務大臣 小児の救急というのは、本当に変わり目が早いわけでありまして、よくなるのも早いけれども、悪くなるのも早いというのが小児医療の特徴だというふうに思います。したがいまして、できる限り小児科の先生のところで早く診てもらえる場所が多ければ多いほどそれにこしたことはないということだろう。
 しかし、先ほど病院の先生の当直のお話を挙げられましたけれども、小児科の医師というのは、四日に一遍ぐらいの当直だったらまだ少ない方だと私は思います。私は、もっと多くの当直をしておみえになる、大きい病院でありましたら、自分が担当する患者さんで救急の人がありました場合には家には帰らないという人が大半だというふうに思います。そうしないと対応できない。
 だから、そういうことがあるものですから、なかなか小児科の先生が少なくなるということにもまたなっていく可能性もあるわけでございます。小児のそういう特殊性というものを考えましたときに、それに対応していただく先生方にはそれなりのことをやはりしないといけない。そして、ふだんはそんなにたくさんのお子さんが来るわけではないですけれども、そういう病院には少しゆとりを持った人的配置をしなきゃならないのだろうというふうに思うんです。
 公的病院もさまざまでございまして、そういうふうに一生懸命おやりをいただきます公的病院もございますが、一切夜間等の救急医療は受け付けないという公的病院も中にはあるわけであります。私は、そうした公的病院には積極的にやはり受け入れてもらいたいということを今主張いたしております。そうした公的病院にもすべてそういうふうに受け入れをしていただいて、そして民間の先生方にもそのお手伝いをいただく、いわゆるチームを組んでいただくということにしなければならないというふうに思います。
 限られた予算の中でございますけれども、ことしのこの診療報酬改定におきましても、他の各科におきましてはかなり下がっておりますところ、この小児科におきましては、十分とは言えませんけれども、できる限りの配慮をしたというふうに思っているところでございます。
藤木分科員 私は、尼崎で伺った話では――確かに大臣がおっしゃるように英雄的に取り組んでいらっしゃる個人のお医者さんというのはいらっしゃるんですよ。しかし、その人頼りにしていくわけにいかないところがこの問題の非常に深刻なところだというふうに思うわけです。初期救急医療機関にかかる患者の六割が小児だそうです、尼崎の場合。ですから、小児科医の果たす役割というのは本当に重要だということです。
 ある調査では、子供が急病になった経験を持った保護者の中で、医師の不在などで診療を受けられなかった人が約二割とのことでございました。小児救急において、初期の正確な診断がその後の生存率に大きくかかわってくるというふうに言われております。二次、三次救急医療体制の整備は当然急がれますけれども、初期救急医療体制の整備のおくれを放置することはできないと思います。
 兵庫県の阪神南圏域の芦屋市は休日応急診療所というのを開設していますけれども、時間帯は日曜日と祝日の午前九時から十七時まで、十七時以降夜間は全くありません。この場合、神戸市か西宮市か尼崎市などの救急施設を探すということになるわけです。しかも、他の初期救急医療機関でも、複数当直制にはなっていても、必ずしも小児科医がいるとは限らないという状況なんですね。内科医だけで当直させないでほしい、小児科医とのペアでなければ怖いという話も伺ってまいりました。
 元来、診察を嫌がって症状を訴えることができない小児をわずかな情報で判断できる小児科医の専門性、この小児科医の配置というのは初期救急機関には欠かすことができないだろうというふうに思うわけですね。
 大臣は初期救急の重要性についてお認めになっていらっしゃいますけれども、現場は今申し上げたような状況であります。この実態で果たしてよいのか、よいはずはないわけでございます。ですから、地方の責任だというようなことではなくて、初期救急医療の現場がなぜこのような状況なのか。
 これまで、休日夜間救患センターの予算として、国は、九七年度までは毎年約二十四億円計上してこられました。ところが、九八年度からですよね、一般財源化されたのは、たしかそうですよね。そうなりましたら、現場に直結している各市にこれを伺いますと、かなりの金額を上乗せしてそれまでだって運営してきたんだ、ちゃんと予算が来ていても、上乗せしなければやっていけなかったんだと。しかし、一般財源化になると、お金に色目がついているわけではありませんから、市の優先順位などもあって、実際には初期救急の体制整備のための予算というのは減額の方向になってきているというのが実態であります。
 小児救急が一般救急と切り離して独自の整備を進めるという趣旨、先ほどもお述べになったわけですけれども、これに現実は逆行しているということになっているわけですよね。小児の初期救急医療体制整備のための予算は、やはり別枠で必要な額を確保すべきではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 小児医療は非常に大事だということは、これはもうだれしもわかっているというふうに思うんですね。国の方もそれ相応の覚悟を決めてこの問題に取り組まなければならないというふうに思いますが、都道府県や市町村におきましても、これは何にしても最優先課題だという気持ちをやはりお持ちいただかなければならないと思うんですね。
 一般財源化されましたことは事実でございますけれども、一般財源化されたからほかのものに使うというのではこれはいけないわけで、やはり優先順位というものを明確にした手当てというものをぜひひとつ都道府県や市町村にもお願いをしたいというふうに思います。
 国といたしましても、しかし、これは手を抜いてはいけないことでありますから、今後とも、この小児医療につきましては、全力を挙げていかなければならないと私も決意をしているところでございます。
藤木分科員 そうおっしゃいますけれども、実際は、苦しい財布の中身を何に使うかということになりますと、地方自治体としては本当に困り果てているわけですね。どれが一位、二位とつけていいかわからないほど、どれもやらなきゃならないというようなことがあるわけですから、それは間違いだといって済むことであればこんな状況は生まれないんですけれども、決して使い勝手がよいと言われるような実態ではないというのが、その減額の傾向を示している数字であらわれていると思うんですね。地方分権を理由にしても、私は、小児救急医療体制の充実と言っていることと逆行するようではいけないだろうというふうに思います。
 本当に幼い子供たちが早過ぎる最期を迎えるということは耐えがたい悲しみですけれども、その親御さんたちは、そのときから新たな苦悩が始まっている、こう述べておられます。子供の死は終わりではなく始まりである、あのとき目を離さなければとか、もう一時間早く帰宅して診察していればとか、自分を責める、そういう日が続くわけです。兄弟にしてもそうなんですね。つらい、本当に出口の見つからないような状況がございます。御家族はそこで、親の会、患者会をつくられて、支え合いながら生きていらっしゃるというのが現状です。こうした思いにこたえる施策こそ必要であろうと私は思うわけですね。
 もう時間がなくなってまいりましたので、最後にお伺いします。
 現状では、不採算部門と言われる小児医療、小児科救急医療で、公立病院の果たすべき役割は極めて大きいと思います。大臣も先ほどちょっとお述べになっていらっしゃいましたけれども、その点はいかがかという問題を最後に伺いたいと思うんですね。
 しかし、私は大事だと思っているんですけれども……
桜田主査代理 簡潔にお願いします。
藤木分科員 小児科救急についてもその公立病院の果たす役割が重要であるにもかかわらず、兵庫県では、県立病院の民間への移譲が計画されておりまして、特に県立病院は高度医療に特化するという傾向がございますので、不採算部門になっているような小児科、小児救急はいつ切り捨てられるかわからないという事情があります。
 ですから、これは県の責任だけではなくて、国がやはり、医療改革をと言って不採算部門を民間にゆだねる、そして効率性だけを追求するという構造改革を行っているからではなかろうかと思うのですが、その点をお答えいただきたいと思います。
桜田主査代理 藤木さん、簡単にお願いします、時間は終わっていますから。
坂口国務大臣 その点はもう十分存じておりますので、この公的な病院に対しましても積極的な対応を要求していきたいと思っております。
藤木分科員 ありがとうございました。
桜田主査代理 これにて藤木君の質疑は終了いたしました。
 次に、細野豪志君。
細野分科員 坂口大臣、長時間の御答弁、大変御苦労さまでございます。
 昨年、予算委員会の分科会でも質問させていただきました温泉について、私の方から質問をさせていただきたいと思います。
 加藤さんが辞任を表明されたというようなことも伺っておりますし、緊迫した国会情勢ではありますけれども、この温泉というテーマは私、お気楽なように聞こえるんですけれども、大まじめに取り組んでおるテーマでございますので、ぜひおつき合いをいただきたいと思います。
 昨年の予算委員会の分科会の方で、坂口大臣から、最後に非常にいいお言葉をいただいたというふうに思っております。それをちょっと読ませていただきますと、ドイツにおきましても、一マルク使って医療費を三マルク削減するというような目標にして、それが可能だというようなことでやっているそうでございますから、日本におきましても可能なのではないかという気がいたします、そういう御答弁でございました。
 それから一年ちょっとが経過いたしましたけれども、現段階での坂口大臣のお考えについて、まず冒頭、一言お聞かせをいただきたいと思います。
    〔桜田主査代理退席、主査着席〕
坂口国務大臣 温泉療法の効果というものは、これはかなりの人が認めているところだというふうに私も思っておりますが、ところが、いわゆるその科学的なデータというものが比較的乏しい。もう少し私はそこを整理しなければならないというふうに思うんですが、感じとして確かにいい、こうおっしゃるんですけれども、それに対し、それを明確に裏づけるようなデータに乏しい。
 そこがいわゆるドイツあたりのクアと私は少し違うところだと思うんですが、ドイツにおきますクアというんでしょうか、これなんかは百年ぐらいの歴史を持っておりまして、そしてかなりその科学的なデータも積み重ねているわけです。ただ単に、水療法というんでしょうか、温泉だけではなくて冷たい水を用いましたり、さまざまなことを組み合わせて、そして一つの療法として確立をしているというふうに思います。私は、やはりこの問題を医療の中の一つとして取り上げますためには、そうした努力というものがもう少し必要ではないかという気がいたします。
 そのドイツのクアの専門家が日本に参りまして、日本でいわゆる温泉療法等をやっているところを見ました場合に、この日本のやり方だったら、これは疲れることがあっても疲れがとれることはないと言ったそうでございまして、もう少しこれは、やり方をやらないと、かえって疲れをふやしているのではないかということを言ったという話を聞いたわけでございますが、それらの点も考えてやるようにしていかないといけない。その整理がどうできるかということが、この温泉療法を含めました療法の今後を決定づけるというふうに私は思っております。そういうふうないろいろの予防に役立つということを明確にすれば、私は、この温泉療法というものはさらに拡大をされるというふうに思っている次第でございます。
細野分科員 さすがに御専門の坂口大臣、いろいろとお考えになっていただいているなということはよくわかりました。科学的データというのは確かに非常に重要になってくるというふうに私自身も認識をしておりまして、そこに確かに温泉療養、温泉医療をめぐる課題の一つがあるというのは、私も同意見でございます。
 もう一つ私の方でつけ加えさせていただくとすると、これはドイツの場合なんかもそうなんですが、科学的な知見を集めるための専門家というのがこの日本では必ずしも十分ではないのではないか。また、入る際に、患者といいますか予防に来る人間にとっても、ではどういうやり方をすれば果たして温泉というのは効果があるのか。場合によっては疲れて帰るようなことも、これは温泉にあってはこれほど不幸なことはないわけでして、その辺の専門家について、もう少し我が国は取り組みがあってしかるべきじゃないかというふうに個人的に考えております。
 そこで伺いたいのが、温泉利用型の健康増進施設という施設がございまして、そこに温泉利用指導者という制度があるということがございます。これは昨年も指摘をさせていただいたんですが、その指導者の数が、私の今手元にあるデータですと、有資格者が二百七十七人。これは五年ごとに更新されるという制度になっておりまして、更新しない人が結構いるらしくて、現在、資格を持っている方が、保持者自身は百九十六人という話でございます。
 私自身が調べたところですと、温泉の数というのは全国でも三千あると言われているんですね。このバランス、温泉場がこれだけあるにもかかわらず、温泉の専門家と言われる唯一の資格、もう少しお医者さんの方の資格はあるので後ほど伺いますが、公的に認められた資格としてはこれしかないわけでございまして、わずかこれだけしかいないということが、科学的データも集まらないし、温泉に来た方が疲れて帰ってしまうというような日本の貧困な温泉の利用方法にあらわれているんじゃないかという気がしてならないんですが、その辺についての拡充、これは副大臣に一言お伺いできればと思います。
宮路副大臣 今、細野委員、全国で温泉は三千カ所というお話でございました。細野委員のふるさとも大変温泉の豊かな地でありますが、私の地元鹿児島も、至るところ温泉が、掘れば出るというような温泉に大変に恵まれた地なのであります。
 そういうことからいたしますと、確かに、温泉利用指導者が二百七十七人、そして実際には百九十六人しか保有は現在しておられないという数はいかにもやはり少ないのかな、こういう気もいたすわけであります。したがって、今後その拡充をさらに図ってまいる必要があろうか、こう思っておるわけであります。
 必ずしも、これまで温泉利用指導者なるものの制度の周知徹底、そこのところがやはり一つ欠けておるところもあるのではないかなということを思いますときに、そうした制度についてのまずは普及啓発を積極的にこれまで以上に進めていくということも必要だ、こう思っておりますし、また、温泉利用型健康増進施設の認定要件の今後見直しをする中で、その養成講習のあり方についても検討を行うなどいたしまして、指導者のさらなる普及、拡充といったものを御指摘のように図っていきたいな、こう思っておるところでございます。
細野分科員 ありがとうございました。
 施設の拡充ももちろん必要なんですが、どんなに施設があっても、そこに魂を入れる指導者がいないとなかなかこういう問題は解決しないというふうに思っておりますので、少なくとも一つの温泉場に一人ぐらいはそういう専門家が置けるぐらいの拡充をぜひ図っていただきたい、これは私の方から要望させていただきたいと思います。
 もう一つ、私がこの温泉療養をめぐりまして、温泉医療をめぐりまして重要な資格といたしまして考えておりますのが、温泉療法医、これは日本温泉気候物理医学会というところが認めている制度なんですが、そういう資格がございます。これが現在八百十一人ということで私伺っております。
 あくまで学会の方の資格ということでありますけれども、この辺の資格についても、関心を持っている方が非常に多いというふうに伺っておるものですから、もう少し認めていってもいいのではないか。さらに、さらにその専門性を持った方には認定医という資格もあるそうでございまして、それが百五十一名ということなんですが、こちらの拡充についての厚生労働省の見解を副大臣にもう一度お伺いできますでしょうか。
宮路副大臣 私は今手元に、委員おっしゃいました日本温泉気候物理医学会の趣意書と申しましょうか、それを今ここに持ち合わせておるわけでありますが、それによりますと、温泉療法医は、温泉治療学の啓蒙と療養指導を行い得る医師の教育を目指しているということ、また認定医は、温泉医学等の水準の向上を目指しておって、いずれも同医学会の認定を受けているものだ、こういうことに規定されておるわけでございます。
 そこで、医師の資格を有する者の中からさらに専門性の認定を行って、もう一つ、医師法に基づく医師の資格のさらに追加したものを設けてはどうかという御趣旨だったと思いますが、そこは、学会等のやはり自主的な判断によって行われることが厚生労働省としては適当ではないかな、現在かように考えておるところでございます。
 特に、温泉療法はさまざまな形態で行われておりまして、統一的な療法となっていない現状にありますし、先ほど大臣からも答弁申し上げましたように、科学的な研究がさらに今後必要ではないのかな、かように考えておる次第でございます。
細野分科員 私は、この人の部分が一番キーになるというふうに思っておりまして、大臣にもちょっと一言いただきたいんですが、これから科学的データを集める上でも、専門家の育成ということに関して、できれば専門家の養成機関というようなものも含めて検討していただければというふうに思うんですが、厚生大臣、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 いろいろの専門家があると思うんですが、既にできておりますものもございますし、そうした人たちのこれからやっていただく内容というものも整理をしながら、そして専門家の養成をするということが大事であるというふうに思います。
 医師自身の中でも、やはり、とりわけ温泉療法等に対して詳しい知識を持っている人たちをどう養成していくかということも大事でございますし、その他の職種で専門家を養成するということも私も大事だと思っております。
細野分科員 先ほど副大臣からも御指摘いただきましたとおり、私は伊豆半島が地元でございまして、温泉療法医という方は結構いらっしゃるんですね。直接お話をしていましても、こういうのはもっともっとやっていきたいんだよねと、皆さん一般論としてはおっしゃるんです。ただ、ではどうやるかという話になると、これが医学の世界では全く認められていない。たまに趣味で、人に呼ばれると温泉について持論を述べるだけで、実際はほとんど使わないものだから、認定医までは余り受ける気がないよという方がほとんどなんですね。ここに何か温泉医療をめぐる貧困があるような気がしてならないんですが、その背景といたしまして、私はやはり法律的な不備を一つ指摘しておきたいと思うんです。
 健康保険法という法律がございます。坂口大臣は御専門でございますので、もう充分御承知をされていると思いますが、それによりますと、保険の適用は、「疾病、負傷若ハ死亡又ハ分娩」と書かれているわけですね。日本の医療は、要するに何か問題が起こらないと適用されない。温泉など、どんなに頑張ったところで、これは医療としては全く認められていないものだから、お医者さんが仮に専門性を持っていてもそれを生かそうという気にならないということなんですね。
 これは何度も私、強調しているところなんですが、国民のニーズは、健康でい続けることにあります。病気になってから、どう急いで薬を飲んで頑張って回復しようかという部分ではなくて、健康でい続けるところにあると思うんですね。この健康保険法自体の問題について、私、そろそろ日本の医学というものを考えていってもいいのではないか。これは温泉だけに限りません、予防全般についてですが、そう考えておるんですが、坂口大臣、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 名前は健康保険でございますけれども、実質は疾病保険でございまして、予防的なことは一切そこには認めない。例えば、お産なんというのも、これは病気ではない、だから保険の中には入らない、ましてや不妊治療なんというのはお産の延長線上だからそれも入らない、こういう割り切り方になっているわけですね。一つの割り切り方ではあると私は思うのですけれども、確かに、そうではなくて、やはり予防的なことがあって初めて、もっと私は医療財政などの健全化ということも起こるのだろうというふうに思うのです。
 ところが、しかし何でもありになってしまいまして、温泉に入るのはすべて保険よということになってしまいますと、これまた、それもどこまでいくのという話になってしまいますから、そこも限界があるだろうというふうに思いますけれども。しかし、予防として明確に、ここは本当に役立つということがあるものにつきましては、若干私も予防的なものについて認めていくということは大事なことではないかというふうに、私個人としてはそう思っているわけでございます。
細野分科員 大臣、誤解なきように申しますと、私も温泉場から出ているからといって、何でもかんでも、飲めや歌えも全部それこそ保険を適用してくれと言っているのではなくて、まさに総額医療費が削減できる範囲で温泉を有効に利用することを厚生労働省としてぜひ考えていただきたいということを申し上げているわけでございまして、ぜひそこは誤解なきようにしていただきたいというふうに思います。
 健康日本21についても私は同じ観点が言えると思うのですね。生活習慣病を治そうということで目標を立てられるのはすばらしいと思うのですけれども、ではそれをどういうふうにやっていこうかというところが必ずしも明らかではないのではないかというふうに思っておりまして、今各都道府県なり市町村なりの目標も立てていらっしゃるということを聞いておりますけれども、温泉も含めて予防医療的な観点から、もう少し新たな取り組みというのもこの部分でも求められるのではないかというふうに考えておるのですが、副大臣、いかがでしょうか。
宮路副大臣 今御指摘の健康日本21では、幾つかの大きな目標といいましょうか、掲げておるのですけれども、その中で、栄養、運動、休養、これが三重点分野と言ってもいいかと思いますが、そういうことに位置づけてあるわけであります。柱となっておるわけであります。したがって、その休養、心の健康づくりでありますが、その柱の一つとして掲げておるその中で、温泉は利用可能な貴重な資源である、このように私どもも考えております。
 これから、健康日本21、法律が成立した暁におきましては、国において全国的な目標を提示し、そして、都道府県、市町村と地方自治体の皆さんにも呼びかけて、各地方における特性に応じた計画をつくっていただく、こういうことになっておるわけでありまして、それぞれの段階におけるそうした計画の策定に当たりまして、温泉を含めた地域資源の活用が検討されますように、私どもとしても必要な支援を地方自治体に対して行ってまいりたい、このように思っております。
細野分科員 健康日本21、私は大変期待しておりますので、厚生労働省としての取り組みをお願いしたいというふうに思います。
 そこで、済みません、ちょっと話が前後するようで恐縮なのですが、温泉利用型健康増進施設についての要件を今拡充しているところだという御答弁が副大臣から先ほどございました。これはまさに今検討中ということでございますので、中身についてここですべて明らかにしてくれとは申し上げませんけれども、今三十カ所弱の施設がどれぐらいになるのが望ましいというふうにお考えなのか。基本的な方向性についてもう少し、方向性についてだけで結構ですので、お話をいただければというふうに思うのですが、これはもう一度副大臣にお願いしてもよろしいでしょうか。
宮路副大臣 今二十七施設ということなのでありますけれども、具体的にまだそこまで目標を、どの水準というようなことを考えてはいないのですが、今の数ではやはり少ないので、さらにそれの普及を図るという観点から弾力的に考えていきたい、こういうふうな現在の段階であります。
 それから、ちょっと訂正させていただきたいのですが、先ほど健康日本21の全国計画、これからつくってそれを提示するということでありましたが、これは実は現在の運動を展開している中で既に行っておるところでありますので、その際によく、先ほどおっしゃった温泉の活用ということもしっかりと念頭に置いて、さらに指導を徹底してまいりたい、こういうことに訂正させていただきたいと思います。
細野分科員 施設は、目標についてはなかなかおっしゃりにくいところがあると思うのですが、これをこっちの温泉場にしろとは申しませんが、都道府県に最低限一つや二つは少なくとも存在しないとなかなか広がっていかないものだと思いますので、それぐらいはぜひ大ぶろしきを広げていただきたいなというふうに思います。
 その件はまあちょっとおきまして、要件を緩和していきなり数がどっとふえるということは恐らくないと思うのですね。ある程度準備期間を含めて、恐らくこの部分に関してはモデル事業なども行っていかれるというようなこともちょっと漏れ聞いておるのですが、これからの要件緩和の方法、モデル事業のあり方などについて、これは済みません、ちょっと一歩突っ込んだ質問なのですが、副大臣にもう少し詳しく聞かせていただければと思うのですが。
宮路副大臣 実は、今その一覧表を見てみますと、私の地元の鹿児島も一つもこれに入っていない、二十七の中に。こんな寂しい状況でありまして、これではやはり、我田引水じゃないのですけれども、寂しいなという気がいたすわけであります。先生の方は、静岡県ですね、静岡県もこの中に実は、ずっと見ますとこれは入っていないのですね。ですから、先生のそうした怒りがみなぎってきておられるのじゃないかなというふうに思うわけでありまして、そういったこともよく念頭に置きながら、今、実はどういうふうに持っていくかということについて検討委員会をつくってやっておるところでございますので、その中でしっかりとよく頭の中に入れて検討を鋭意進めてまいりたい、こう思っております。
細野分科員 この件に関しては、もうすぐ出るということですので、その事業の方向性に期待しつつ、伊豆半島にも最終的に一つか二つはできるといいなというふうに思っております。
 坂口大臣にここから少し具体的な話をお伺いしたいのですが、先ほど坂口大臣、これから温泉療養、医療に必要なのはデータだというふうにおっしゃいました。私は、この施設が仮に今の二十数カ所から五十カ所、百カ所にふえていけば、相当いろいろなデータが集まってくると思うのですね。
 まずここで、温泉医療というのはどういう効果があるのか、予防的な観点から、また場合によってはアトピーであるとか神経痛であるとか、そういう対症療法的なデータも集まってくると思うのですね。この辺のデータについて、まずきちっとやはり集めていただきたい。二年に一回診療報酬の改定なども行われるわけでございますので、法律の改正はなかなか難しいにしても、温泉療養というのはどういう効果があるのかという観点から、医療保険という部分に関しても一つのデータとしてこれは非常に有用だというふうに思うものですから、新しいものをつくるわけです、拡充をするということでございますので、取り組みをぜひ前向きに行っていただきたいというふうに思うのですが、大臣の御所見をお伺いします。
坂口国務大臣 ここは、だれが中心になってこれをやるかということにかかってくると思うのですね。だから、熱心な方で、そしてこの効用というものに本当に真剣に取り組もうという熱心な人が私は必要だと思います。どなたかが中心になって、タクトを振ってくれる人がやはりこれはちょっと僕は必要だと思いますね。そして、何を中心にして全国で調べていくかというようなことをお互いに検討していただいて、そしてそこからデータを積み上げていただくというふうにしていくのが大事だと思います。
 温泉療法のたしか医学会か何かがあって、そこでもおやりいただいているという、過去にもいろいろなデータがあるということはお聞きはいたしておりますけれども、もう少し近代的にそれを積み上げていくことが大事ではないかというふうに思っています。
 私も、もう一度見直しまして、そして一生懸命この問題を検討してみますが、どうぞ先生方の方も、これは私が言うことじゃないんですけれども、御熱心な先生方が非常に多いんですよ。参議院にも熱心な人がおりますし、本当に熱心な人が何人かおみえになりますから、先生方の方もひとつ議員連盟でもつくっていただいて、何かいろいろなことをお考えいただくのもよろしいんじゃないかというふうに今思っておるところで、私が言うことじゃございませんけれども、ぜひそんなふうにしていただければ、ともどもに相携えてこの問題を前に進めていくことができるんではないかという気がいたします。
細野分科員 温泉振興議員連盟というのが既にございまして、百人超でやっておりまして、熱心な先生方、皆さん入っていただいていますので、坂口大臣にはぜひその先頭に立ってタクトを振っていただきたいなというふうに思います。
 一点だけ、済みません、もう一度確認なんですが、この施設を拡充することによってきちっと医療的なデータを集めるということに関しては、これは確約いただけないですか。最終的に保険適用というのはその先にある話ですので。もう一度お願いいたします。
坂口国務大臣 現在の二十七を倍増するのかどうかわかりませんが、そのぐらいは必要なんでしょう。そういうことになりましたときに、そこで統一的にいろいろのデータをとっていくということがやはり大事でしょうから、そこにかかわる皆さん方にも御相談を申し上げながら、そうした方向に進めたいというふうに思います。
細野分科員 これは御答弁を求めませんけれども、その際に必要になってくるのが、健康日本21もこの施設もそうなんですが、こちらは健康局の担当です、健康を維持するために健康局がやります、一方で医療は保険局の担当です、これは全く違うところが今やっているわけですね。せっかく、これは健康を維持して保険料を下げよう、そういう極めて筋のいい話ですので、ぜひその連携をやはり一つの省庁としてとっていただきたい。このことは、既にやられているという御答弁もいただけると思いますが、改めて要望させていただきたいと思います。
 最後に、済みません、若干観点は違うんですが、温泉療養なり温泉医療ということを考えるときに、これはなかなかすぐに効果が出るものではないんですね。ある程度、湯治ということを考えると、実は長期的な休暇をとれる仕組みというのが背景にないと、これはなかなか進まない。日本の場合それが存在しないということが、ドイツなどと比較をしてこの分野が発展してこなかった一つの大きな要因としてあるというふうに考えております。
 先日、経済財政諮問会議で小泉総理が、国民の休日を現在よりふやしたり分散したりすることによって消費の活性化を図りたいんだという方針も打ち出されたというふうに聞いておりますが、これ、厚生労働省としては、今までの取り組みから一歩前へ進むようなことを御検討されているのかどうか、お伺いをしたいと思います。
坂口国務大臣 勤労者の休暇をどういうふうにとるかということにつきまして、今までは二日とか三日とか小単位でとっていたわけですけれども、もう少し長期にとることができないか。そうすることによりまして、全体の一年間の労働時間の短縮ということもできるわけでありますから、まとめてどうとれるかということが一つの課題であることは間違いございません。
 厚生労働省といたしましても、いわゆる長期休暇のとり方というものにつきましてもいろいろ検討をいたしております。先日、総理からそういう話が出たことも事実でございますし、そうすることによってかなりな経済効果も出るというお話もございました。そうしたことも含めてでございますけれども、長期休暇のとり方、これらをワークシェアリングの問題とも絡めまして考えていきたいというふうに今思っている次第でございます。
細野分科員 最後に私が言わせていただこうと思っておりましたワークシェアリングという言葉が坂口大臣から出てまいりましたので、こういう時代だからこそ逆に、休暇をきちっととってリフレッシュして働くという姿、またその中で職を分かち合う姿勢というのを我が国はとっていくべきだというふうに考えておりまして、大臣がそういうお考えだということを聞いて、大変力強く感じた次第でございます。
 次の方も来られていますのでこれで終了させていただきますが、坂口大臣そして宮路副大臣から、きょうは非常に前向きな御答弁をいただきましたので、私がタクトを振れるかどうかわかりませんが、この分野は本当に私の一つのライフワークとして頑張ってまいりますので、ぜひ厚生労働省としての前向きな温泉利用という観点からの御努力をお願いして、質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
山名主査 これにて細野君の質疑は終了いたしました。
 次に、福島豊君。
福島分科員 本日は、決算行政監視委員会でございますが、厚生関係の施策についてお尋ねをさせていただきたいと思っております。
 まず初めに、要介護認定と障害者の認定、この二つがどういう関係にあるのかということについて確認をさせていただきたいと思っております。
 平成十二年から介護保険がスタートいたしまして、要介護認定というものがなされるわけになったわけでございます。介護がどのくらい必要なのかというのを判定するのが要介護認定でございますが、それまではこういった認定はなかった。しかしながら、障害者の認定というものは過去からあるわけでございます。そうしますと、要介護認定を受けた人は障害者なのかそうでないのか、そしてまた、要介護認定の等級とそしてまた障害者の等級というのはどういう関係にあるのか、こういったことがおのずと疑問として浮かび上がってくるわけでございます。
 この両者の関係というのは、今までの議論の中で必ずしもしっかりと整理をされておらないと思いますし、そしてまた、障害者の施策というものを介護保険でどのように考えていくのか、これはこれからの課題でございますけれども、そういうことを考えるに当たりましても、この両者の関係というものを整理する必要があるだろう、そのように私は思っております。
 まず初めに、厚生労働省に、要介護認定と障害者の認定、それぞれがどういう関係にあるのかということについて御見解をお聞きいたしたいと思います。
堤政府参考人 介護保険法におきます要介護認定でございますけれども、これは障害や機能の状況を直接判断するというのではなくて、介護保険法の目的に照らしますと、どの程度の介護サービスを提供するか、どれぐらいの量の介護サービスを提供するかを判断するために介護の手間のかかりぐあいを判定する、こういう考え方に立っております。
 他方、身体障害者福祉法の障害認定、身障手帳の交付のための認定でございますけれども、これは永続する機能障害の程度と機能障害による日常生活活動の制限の度合いを直接判定するということで、その判定の見方が違うわけでございます。
 したがって、例えば障害の非常に重い障害一級というふうな認定を受けておられる方でも、要介護認定では重く出ない、あるいは場合によれば自立に出るといったようなこともあり得るわけでございまして、両方の認定制度は、その判断基準が異なっております。
福島分科員 ただいまの御説明では、両者の認定というものは異なっているんだという考え方が示されたと思うんですが、関連しまして、所得税法上の障害者控除というものがあるわけでございます。障害者控除または障害者特別控除につきましては、所得税法の施行令におきましては、第十条の七号でございますけれども、「精神又は身体に障害のある年齢六十五歳以上の者で、その障害の程度が第一号又は第三号に掲げる者に準ずるものとして市町村長又は特別区の区長の認定を受けている者」という条項によりまして、準ずるものとして認定ができるというような規定があるわけでございます。
 これに対してといいますか、これに基づいて、例えば長岡市ですとか上越市、こういった自治体におきましては、要介護判定が一または二の者は障害者控除の認定、そしてまた要介護の三、四、五の者は障害者特別控除の認定ということを一律に行っているという報道があるわけでございますが、こうした市町村長の認定、一律に要介護認定と障害者控除を結びつけるということについて、厚生労働省としてはどのようにお考えでしょうか。
堤政府参考人 税法の障害者控除の対象として適当かどうかということを私ども直接お答えする立場にはございませんけれども、要介護認定と障害認定と両方所管しております立場から申し上げますと、介護認定は、先ほど申し上げましたように、介護の手間のかかりぐあいでございますので、要介護認定で五だから障害の認定が一になる、二になるというふうに一律に当てはめるということはできない、困難ではないかと思っております。
福島分科員 この点につきましては、本日は国税庁にもお越しいただいておりますが、国税庁に確認をさせていただきたいんですが、これは赤旗の三月十日の記事でございますけれども、「障害者控除を適用 国税庁が認める」というぐあいに大きく見出しで書かれておりまして、国税庁の担当者から、要介護認定者が障害者控除の対象になることはほぼ一致する、限りなく近いものだという見解を示し、そして国税庁は要介護認定者は障害者控除できるという認識を示したということが報道されているわけでございます。この点について、国税庁としてそのような認識をお示しになったのか、またこの問題についてどのようにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。
村上政府参考人 お答えいたします。
 先ほど先生から御説明ございましたように、所得税法上、障害者控除の対象となる障害者は、所得税法施行令第十条第一項に限定的に列記されております。一々繰り返しませんが、先ほど先生から御説明ございましたように、六十五歳以上の方で要認定、これらの方が含まれるのは法律に書いてあるとおりであります。
 なお、介護保険法の要介護認定を受けている方につきましては、特にそういう規定はございません。所得税法施行令にございません。したがいまして、所得税法上の障害者に該当しない場合には、介護保険法の要介護認定があっても障害者控除の対象とすることはできないということは法律上明らかだと思います。
 今、赤旗の報道のお話がございましたが、そういう報道があったことは承知しておりますが、恐らくこの報道は、こちらの発言を何か取り違えて、誤解されて報道されたものではないかと思われます。先ほど申し上げましたように、所得税法上の障害者に該当しない場合には、介護保険法の要介護認定があっても障害者控除の対象とすることができないのですから、報道のようなことを御説明することはあり得ないと思っております。
福島分科員 ただいま明快に御答弁があったわけでございますが、私が申し上げておりますのは、公平という観点から、要介護認定を受けられた方、さまざまな障害の方がおるわけでございます。この障害者控除の認定に当たりまして、この施行令の判断というのは、個々の事例に即して、準ずるということを市町村長が認定する、個々を別々にきちっと判断をするんだということが非常に大切な要素だと思うんです。それを、一律に、機械的にやるということは、個々のケースに即していえばかえって不公平になる場合も出てくる。どうして私の方が軽いの、あなたの方が重いのというようなことも出てくることがないとは言えないわけでございまして、各自治体における適切な取り組みが必要であろう、私どもはそのように思っております。
 そしてまた、この障害者控除の問題だけでございませんで、控除ということに関していえば、今税制改革の議論がございますけれども、公明党は一貫して、従来より、医療控除ならば介護控除というものをつくるべきであると。高齢者の方に一律に保険料をお願いいたしておる、その中で介護サービスを受ける場合には、一定の自己負担というものが必要なわけでございます。そうしたものを軽減するためにも、介護控除という、現在は非常に限定された形でしか税務当局から認められておりませんけれども、それを拡充した形で創設すべきである、そのように主張いたしておりますが、厚生労働省としてどのようにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。
堤政府参考人 介護費用に関します控除は、今先生のお話にございましたように、医療費控除の中で一部認められているという現状でございます。
 平成十四年度の税制改正要望におきましても、現在対象となっていない費用も含めて、介護費用の控除の創設を要望したわけでございますけれども、これはすぐは認められないということで、特にその中で喫緊の課題でありましたおむつ代の医療費控除の手続の簡素化というところだけが認められたということでございます。
 この介護費用控除の創設につきましては、他の人的控除との関係など、いろいろ制度全体にかかわる課題でございますけれども、要介護者の負担の観点から重要な課題であると認識しておりますので、引き続き十分検討してまいりたいと思っております。
福島分科員 私どもも、しっかりと取り組んでまいりたいと思っております。
 続きまして、ポリオの生ワクチンのことについて御質問いたします。
 答弁の終わられました参考人の方は、もう退席されて結構でございます。ありがとうございました。
 これは、国立感染症研究所のホームページ、病原微生物検出情報の報道でございますけれども、このような報告がなされておりました。「ワクチン接種児からの接触感染が確認された成人のポリオ麻痺事例」、これは宮崎県のものでございますが、「二〇〇〇年五月二十五日、宮崎市保健所に急性弛緩性麻痺(Acute Flaccid Paralysis)患者の発生の届出があり、「ポリオ根絶証明のためのポリオ様疾患患者発生動向調査」に基づき調査を行った結果、ポリオワクチンを接種した子供(次女)を感染源とするワクチン関連麻痺と判明したので概要を報告する。」ということでございました。子供さんがポリオの生ワクチンの接種を受けた。これは、ふん便中に排出をされますから、子供の世話をしている親御さんに感染をしたということでございます。
 これは、平成十二年八月三十一日の「ポリオワクチンを巡る最近の状況と我が国の将来」と題されました、公衆衛生審議会感染症部会ポリオ予防接種検討小委員会の取りまとめにおきましても、約三十年間で三十六例のワクチン関連麻痺というものが発生している。これは二通りあるわけでございます。御本人に発生する場合と、そしてまた接種された本人ではなく関係者の方に発生する場合がある。関係者の方に発生した事例というのが、これは三十六例のうち十六例ということになっているわけでございます。
 これは、かつて厚生労働委員会で家西議員が、そういう家族内感染の可能性があるので、不活化ワクチンの開発を急ぐべきであるというような質問をされました。専門の方といろいろとお話をいたしますと、決してこういった事例というのはまれではないのではないか、特に、例えばギラン・バレー症候群のようなものと誤解をされてしまっているというか、誤診を受けている場合もあるんじゃないかと。
 ポリオの診断というのは、ポリオウイルスが検出されませんと確定をしないということになっているようでございますが、検出されなくなっているような事例もあるのではないかというようなお話を伺ったことがございます。こうした事例というものがどの程度存在するのか、厚生労働省の御見解をお聞きしたいと思います。
下田政府参考人 我が国で使っておりますポリオワクチン、生ワクチンでございまして、御承知のように、ポリオウイルスを弱毒化したものを使っているわけでございます。そういったことがございまして、極めてまれでございますけれども、接種を受けた方あるいは家族の方に、二次的に感染することが、発病することが知られているわけでございます。
 今までの研究によりますと、接種を受けた本人の方は、四百万回接種した場合に一回程度、それから被接種者のふん便に排出されたウイルスを取り込んだ家族の方、こういった方々には五百八十万回の接種に一回程度発病するものというふうに承知をしているところでございます。
 今御指摘がございました事例でございますけれども、予防接種後副反応報告というものが市町村を経由して出されることになってございますが、この中で、特に家族に生じました問題につきましては、日本ポリオ根絶等委員会というのをつくっておりまして、そこで把握をし、実態を追求するといった形をとってございます。
 それで、その委員会の報告によりますと、一九九〇年以降、五例、ポリオワクチンによります二次感染事例が把握をされておりますが、そのすべての事例が、過去に何らかの理由、どういった理由があったのか知りませんが、ワクチンの接種を受けていなかった家族の方であるというふうに聞いておるところでございます。
福島分科員 ポリオに対しての免疫が成立していないということで、家族内の感染が起こるのだろうかというお話であったかと思います。
 ぜひ御検討いただきたいことは、ポリオと確定診断がつかない場合、これがどれだけあるんだろうかということだと思います。近年は、神経生理学、または神経画像的な診断というものがかなり進歩をしている。そういう中で、ポリオウイルスが分離されない症例というのもほぼ確定診断ができるんではないかというのが一つの学問の流れではないかと思っておるんです。そういうケース、そしてまた軽いケースも恐らくあるのかもしれません。こういう点まで視野を広げる必要があるんではないか、そのような思いがいたしております。
 そしてまた同時に、こうした家族内感染の事例の場合というのは、現行の予防接種法で救済がなされません。救済していただけないという制度になっているわけでございます。予防接種法の条項では、「定期の予防接種又は臨時の予防接種を受けた者が、疾病にかかり、障害の状態となり、又は死亡した場合において、」というふうに定められているわけでございます。事前に御確認いたしましたが、やはりならないということでございました。
 しかしながら、こうした家族内感染はどうすれば予防できるのか。これは、先ほどの国立感染症研究所のホームページに書かれておりますのは、このようなケースでは患者便の次亜塩素酸ナトリウム浸漬後の廃棄、シーツなどの次亜塩素酸ナトリウムの浸漬消毒、つけるということですね、医療現場でのマスクの着用等々により二次感染は防げることが示唆されたと書いてあるわけでございますが、このようなことを一々できるわけではありません。そしてまた、子供が予防接種を受ける前に、まず親がどうなっているのか調べてから受けてごらんなさいという話も、現実問題としてはなかなかできぬだろうと思います。
 先日、これも厚生労働省の研究会の報告でございますが、ヒト細胞組織等に由来する医薬品等による健康被害の救済問題に関する研究会、これは三月二十九日、報告がなされました。これはバイオロジックスによる健康被害のときにどの程度救済すべきかということで、この七ページには救済の対象者として、「救済の対象者は原則的に一次感染者とし、一次感染者と同視せざるを得ない場合、すなわち、一次感染者が感染した事実を知らないで夫婦間又は親子間で感染させた場合、あるいは事実上これと同等の関係にあると見られる場合だけは救済の対象とするという制度的割り切りとすべきである。」ということが書かれているわけでございます。
 これは、まことに私はそのとおりだと思います。予防接種法は、こうしたポリオ生ワクチンによる二次感染というものを余り想定せずに実はこの条文がつくられているんではないかと私は思います。そして、家族内の感染の場合にはやはり同等の扱いをしてもいいんではないか。密接に関係する人が感染するわけです。それは、本人の免疫が成立していなかったから本人が悪いんだという話になるでしょうかね。私はならないんではないかなという気がいたします。
 この点について、ぜひともこの見直しをしていただきたい、そのように思っておりますが、大臣の見解をお聞きしたいと思います。
宮路副大臣 今福島委員御指摘のように、現在の予防接種法では、そのようなことで、予防接種をした被接種者の健康被害について給付を行うということになっているわけであります。
 これは、予防接種を国として皆さんに義務づける。義務づける一方においては、その義務を果たした結果、そこに何らかの予期せぬ事態が起こって、そして、そのことによって、疾病といいますかあるいは障害という事態が発生したという場合について、それは、義務を履行することによってそういう事態を招いたわけだから、国家として、当然義務の反対給付としてそういう疾病あるいは障害の場合については補償を行うという見地からこの十一条というものができたんだろう、私はこう思っております。
 したがいまして、今委員御指摘のように、その子供さんの親御さんといいましょうか、そういった方については、義務を履行した結果として、果たした結果としてそういう疾病に至ったということでないものですから、そこのところはやはり一線が画されているということじゃないかな、このように思うわけであります。
 したがって、厚生労働省としては、今後一層、予防接種に関する正しい知識の普及徹底によって、そういう予防接種を受けない方がいないようにこれは努めると同時に、そして、二次感染を防止するためのちゃんとした、手洗いをしっかりやるとか、そういった防止対策をまずはやはりやっていくということが肝心じゃないかなというふうに思っておりますが、先般の、平成十三年の法改正の附則におきまして、これは、予防接種法、平成十三年に法改正されておるわけでありますが、その二条において、「法律の施行後五年を目途として、」また「予防接種の在り方等について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるもの」というくだりもここにあるわけでございまして、こういった中において、御指摘のような点も踏まえて検討すべきではないかなというふうには思っておるところでございます。
福島分科員 私は、余り失礼なことを申し上げてはいかぬと思ってこの場に臨んでいるわけですが、子供に予防接種を受けさせる、親が国の責務というものをかわって果たすからこそ受けに行くわけですよ。そして、身近にいるからこそ感染になる可能性があるわけです。どうしてこれが国民の義務を果たしていないということになるんですか。これは大いにおかしいと思いますね、私は。国民の義務を親が果たしているからこそ親の感染が起こったわけでしょう。それは知りませんよという話は通用しない。
 まれなケースだから、そこまで考えずにやってきた。特に、生ワクチンの問題について言えば、諸外国では既に不活化ワクチンにかなり切りかえられている。切りかえていない国の責任はどこにあるんですか。この人方が、国が今まで切りかえを行ってこなかったから自分はこういう被害に遭ったんだということで裁判を起こしたとすると、これは国の行政責任というのはやはり厳しく問われるんではないかと私は思います。
 ですから、将来に検討するということではなくて、既にこういう事例が、先ほど言いました、これは宮崎県の事例、二〇〇〇年の事例ですよ。知りませんと、障害、残るんでしょう、残っているんでしょう、関係ありませんというふうに言い続けるのかどうかということは、厚生労働省として、予防接種にかかわる行政のあり方というものが鋭く問われているのではないかというような思いがいたします。
 大変失礼な、僣越なことを申しまして、副大臣、大変申しわけございません。
 続きまして、この問題はこの程度にいたしまして、台湾のWHOの加入ということについてお尋ねをしたいと思います。これは、先般の予算委員会で民主党の枝野議員が取り上げられた件でございます。
 これに対して、追加的な状況がございます。これは、三月十四日、欧州議会、オブザーバー参加支持決議案採択ということがございます。また、三月十九日、米国の上院、WHOへのオブザーバー参加を支持する法案を全会一致で採決しているという状況がございます。
 この欧州議会の決議に関してどのようなことが述べられているか。世界のすべての市民に健康をもたらすことが重要であり、それとの関連において、公衆衛生改善のためには高水準の保健情報及びサービスへのアクセスが必要、そしてまた、国際的な保健協力のフォーラム及びプログラムへの世界的な参加と、妨害されない直接的なかかわり合いによってもたらされる利益にかんがみ、とりわけ、今日ではヒト免疫不全ウイルス(HIV)、結核、及びマラリアなどの各種伝染病が国境を越えて広がる可能性が大きくなっていることを考慮し、先ほどポリオのお話もしましたが、また、中略いたしますけれども、台湾がこの地域でポリオを根絶し、B型肝炎ワクチンを児童に接種した最初の国であるという事実にかんがみ等々述べられておりまして、オブザーバー参加を認めるべきだという決議をいたしております。
 二〇〇〇年、先ほど十二年の公衆衛生審議会の報告をいたしましたが、この年にはWHOの西太平洋地域でポリオ根絶宣言が行われたわけでございます。私もその席に参加をさせていただきました。大変感謝をいたしております。こういったことも、まさにここに書いてございますように、台湾がしっかりやっていなければできなかったと思います、それは。
 大臣と私はかつて上海に、新型インフルエンザが発生したときに訪れさせていただきました。向こうの厚生当局からお話をお聞きしますと、その原因ウイルスはどこから来たのか、渡り鳥が運んできたという話をしておりました。まさに疾病というのは国境を越えているわけでございます。
 今日、百万人近い人が台湾との間で往来をしている。こういう中で、さまざまな新興・再興感染症、どう対応していくのかということを考えたときに、国際協力のネットワークの中にこの地域というものを位置づけるということは、極めて大切なことだと思っております。
 しかしながら、WHOの加入のためのいろいろな規定がございます。そしてまた、主権の問題をどう考えるのかという大変難しい外交上の問題もあります。そのことについては、私は否定はいたしません。コンセンサスをつくることが必要だということを川口大臣も予算委員会での答弁でおっしゃっておられました。ですから、こうした国際的な協力が必要な中で、どうしたらこの空白の地域というものをなくすことができるのか、どのような知恵を出せばいいのか、どのようなやり方があるのか、こういうことについてコンセンサスをつくるための努力をぜひとも日本政府はすべきであるというふうに私は思っておりますし、このことは、翻って言えば、周辺諸国の利益にかなうことになるんだろうと私は思っております。
 この点について、外務省並びに厚生労働省の御見解をお聞きしたいと思います。
高橋政府参考人 お答え申し上げます。
 台湾のWHO総会へのオブザーバー参加の問題でございますが、この問題につきましては、一九九七年以来、毎年、一部の国によりまして、WHO総会の議題とすべきということで提案をされてきております。しかしながら、いずれの場合におきましても、本件をWHO総会の議題として取り上げることにつきまして加盟国間のコンセンサスができていないということで、議長裁定により否決されて現在に至っております。御案内のとおりでございます。
 外務省といたしましては、保健衛生分野におきます世界的な、機能的な専門機関でございますWHOが、その目的を果たすため、円滑に運営が確保されるということが極めて重要である、必要である、そういうように考えております。
 こうした観点から、この台湾のWHO総会へのオブザーバー参加の問題につきましては、委員も今御指摘になられ、また川口大臣からも先般お答え申し上げましたけれども、まず、WHOの加盟国の間でコンセンサスを形成するということが重要であるというふうに認識しておりまして、私どもとしましても、そのために努力していきたいというふうに考えております。
中野政府参考人 総会へのオブザーバー参加につきましては、WHO加盟国全体のコンセンサスのもと、可能な限り多くの者が参加することが望ましいと考えておりますが、台湾につきましては、一九九七年以降、WHOで議論されているものの、外交上の問題もあり、いまだコンセンサスが得られていない状況にあると認識しております。
 厚生労働省といたしましては、今後のWHOでの議論を見守りつつ、対応につきましては外務省とよく相談してまいりたいと考えております。
福島分科員 これはお互いのためであるということを認識した取り組みが必要だと私は思っております。
 最後に一つ、糖尿病のことについて岩田局長にお尋ねをしたいと思います。
 これは、先般、四月四日の毎日新聞ですが、「増え続ける十代の発症」ということで、問題は、一型、二型と、糖尿病二つありますけれども、昔は、小児の糖尿というと一型ばかりだったわけです。最近は、肥満とか大分ふえてまいりましたから、二型糖尿病の発症が非常にふえている。ちなみに、十歳過ぎから発症のケースが始まるけれども、十四歳で一型の発症人数とほぼ並び、十五歳、十六歳から逆に二型の方が多くなってきたということを考えますと、これは、糖尿病ということで今まで一型というイメージがあったのが、実は中身が変わってしまっている。そしてまた、それだけではなくて、九〇年までに初受診した糖尿病患者で二型と診断された三十歳未満千九十二人の一割強に当たる百三十五人が、三十五歳までに失明につながる危険のある増殖網膜症を発症し、また、腎不全や人工透析などの合併症も高い頻度で発症ということが書かれているわけでございます。
 これは、一たん発症しますと、長期にわたってずっと続くわけです。そしてまた、合併症が出てくる。しかも、それも三十代とか四十代とか、働き盛りのときに出てくるという意味で、非常に重要な病気である。何とかしてこれは予防していかなきゃいけない。そしてまた、予防しようと思えばその効果が上がる病気なんです。
 ただ、実際に小児科の先生にお聞きしますと、治療の継続成績がよくないということを言われています。大変なんでしょう、やはり体重落としたりとか、運動療法したりとか、食事療法。ですから、親子一体になってこれはやらなきゃいけないし、そしてまた、そういう動きというものを行政がきちっとつくっていかなきゃいけない。ちょうど週五日制になるわけでございますから、そういう糖尿病教室を子供からやるというのも、私も医者をしておるときの経験から思うと、随分時代が変わったなという気がしますけれども、そういうことも恐らく必要な時代なんだろうと思います。
 この点についての御見解を最後にお聞きします。
岩田政府参考人 委員御指摘のとおり、二型の糖尿病は、肥満や運動不足といった生活習慣が発症に関係していると言われておりまして、そしてまた十代においても増加の傾向があるというふうに認識いたしております。
 また、十代の二型の糖尿病の患者は、治療の継続というのがなかなか難しいということで、中断しがちである、中断した場合には、腎臓障害とか視力障害といった重い合併症がその後出てくる、そういう危険性があるという指摘があることは私どもも十分認識しているところでございます。
 そこで、この二型の糖尿病の予防には、乳幼児期から、あるいは小学生、中学生、こういったころから、一つはバランスのとれた食生活をしっかりするということと、それから体をしっかり動かす、今、室内でテレビやビデオゲームに時間を費やしておりますけれども、外遊びをしっかりする、こういったようなことが重要であると考えております。
 国民の健康づくり運動であります健康日本21におきましても、食生活や運動を初めとした生活習慣を課題として取り上げておりますけれども、これは大人、成人の問題だけではございませんで、幼児期から学齢期にわたる課題であるというふうに思っております。
 厚生労働省といたしましては、医療費の助成については、この二型の糖尿病についても、一型と同様小児慢性疾患として助成をしているということがございますが、あわせて、治療の継続を支援する、どういう形で家族や学校や地域がそのことを支援できるかという問題意識で、厚生科学研究の一環といたしまして、この二型の糖尿病の研究を今やっているところでございます。
 研究成果が出ましたら、それを踏まえてさらに対策を充実したいと思っておりますが、先生おっしゃるように、やはり学校保健とのタイアップということが非常に重要だというふうに思っておりますので、その点にも意を用いながらやってまいりたいというふうに思っております。
福島分科員 以上で終わります。ありがとうございました。
山名主査 これにて福島君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして厚生省所管、環境衛生金融公庫の質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
山名主査 これより労働省所管について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。坂口厚生労働大臣。
坂口国務大臣 平成十年度及び平成十一年度労働省所管一般会計及び特別会計の決算について御説明申し上げます。
 まず、平成十年度の決算について申し上げます。
 一般会計につきましては、歳出予算現額六千百二十八億円余に対しまして、支出済み歳出額五千六百八十六億円余、翌年度繰越額三百九十億円余、不用額五十二億円余で決算をいたしました。
 次に、労働保険特別会計の決算について申し上げます。
 まず、労災勘定につきましては、収納済み歳入額一兆九千三百八十四億円余、支出済み歳出額一兆二千八百五十二億円余、翌年度繰越額四十九億円余、それから、未経過保険料相当額三百七十一億円余、支払備金相当額千九百九十九億円余でありまして、差し引き四千百十億円余をこの勘定の積立金として積み立てることとして、決算をいたしました。
 次に、雇用勘定につきましては、収納済み歳入額三兆一千七百七十九億円余、支出済み歳出額三兆一千六百八十四億円余、翌年度繰越額十九億円余でありまして、差し引き七十四億円余については、この勘定の積立金から補足し、また、雇用安定資金に組み入れることとして、決算をいたしました。
 次に、徴収勘定につきましては、収納済み歳入額三兆四千百三十八億円余、支出済み歳出額三兆四千百三十二億円余であり、差し引き六億円余につきましては、翌年度の歳入に繰り入れることとして、決算をいたしました。
 最後に、石炭並びに石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計の石炭勘定のうち、労働省所管分の歳出決算につきましては、歳出予算現額百三十一億円余、支出済み歳出額百十一億円余、不用額二十億円余で決算をいたしました。
 次に、平成十一年度の決算について申し上げます。
 まず、一般会計につきましては、歳出予算現額一兆五百五十五億円余に対し、支出済み歳出額九千百六十三億円余、翌年度繰越額千三百五十四億円余、不用額三十七億円余で決算をいたしました。
 次に、労働保険特別会計について御説明申し上げます。
 まず、労災勘定につきましては、収納済み歳入額一兆八千百十三億円余、支出済み歳出額一兆二千四百四十八億円余、翌年度繰越額二十一億円余、未経過保険料相当額三百三十二億円余、支払備金相当額千九百七十三億円余であり、差し引き三千三百三十八億円余を、この勘定の積立金として積み立てることとして、決算をいたしました。
 次に、雇用勘定につきましては、収納済み歳入額三兆三千二百七十五億円余、支出済み歳出額三兆三千八十一億円余、翌年度繰越額百十七億円余、超過受入額五億円余であり、差し引き七十億円余については、この勘定の積立金として積み立てるなどとして、決算をいたしました。
 次に、徴収勘定につきましては、収納済み歳入額三兆二千九十三億円余、支出済み歳出額三兆二千八十六億円余であり、差し引き六億円余については、翌年度の歳入に繰り入れることとして、決算をいたしました。
 最後に、石炭並びに石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計の石炭勘定のうち、労働省所管分の歳出決算につきましては、歳出予算現額百六億円余、支出済み歳出額百一億円余、不用額五億円余で決算をいたしました。
 以上をもちまして、労働省所管に属する平成十年度及び平成十一年度の決算の説明を終わります。
 何とぞよろしく御審議のほどお願いを申し上げたいと存じます。
山名主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院増田第二局長。
増田会計検査院当局者 平成十年度労働省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。
 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項六件であります。
 検査報告番号二〇四号は、労働保険の保険料の徴収に当たり、徴収額に過不足があったものであります。
 これは、保険料の算定の基礎となる賃金の支払い総額が事実と相違していたことなどにより、徴収額に過不足があったものであります。
 検査報告番号二〇五号は、雇用保険の失業等給付金の支給が適正でなかったものであります。
 これは、失業等給付金の受給者が再就職しておりますのに、失業等給付金のうちの基本手当を支給していたり、事実と相違した再就職年月日をもとに再就職手当を支給していたりして、給付の適正を欠いていたものであります。
 検査報告番号二〇六号は、雇用保険の特定求職者雇用開発助成金の支給が適正でなかったものであります。この助成金は、高年齢者等特定求職者の雇用機会の増大を図るため、特定求職者を公共職業安定所の紹介により雇用した事業主に対して、その者に支払った賃金の一部を助成するものでありますが、事業主が既に雇用している者を新たに雇用したこととしているなど、支給要件を欠いているのに助成金を支給しており、給付の適正を欠いていたものであります。
 検査報告番号二〇七号は、雇用保険の地域雇用開発助成金の支給が適正でなかったものであります。この助成金は、雇用機会が不足している地域の雇用構造の改善を図るため、施設等の設置、整備を行って当該地域に居住する求職者等を公共職業安定所の紹介により雇用した事業主に対して、その者に支払った賃金の一部を助成したり、施設等の設置、整備に要した費用と雇用した労働者数に応じて所定の額を助成したりなどするものでありますが、事業主が既に雇用している者を新たに雇用したこととしているなど、支給要件を欠いているのに助成金を支給しており、給付の適正を欠いていたものであります。
 検査報告番号二〇八号は、労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費の支払いが適正でなかったものであります。療養の給付は、業務上の事由または通勤により負傷または発病した労働者に対して、医療機関において診察、処置、手術等を行うもので、都道府県労働基準局において医療機関からの診療費の請求内容を審査することとなっておりますが、医療機関が診療費を誤って過大に算定して請求しているのに請求どおり支払っており、支払いの適正を欠いていたものであります。
 検査報告番号二〇九号は、認定職業訓練の実施に当たり、事業費の中に事業目的に使用されなかった額が含まれていたため、国庫補助対象事業費の精算が過大となっているものであります。
 この補助金は、労働者の職業能力の開発及び向上を促進するため、労働省令に定める基準に適合することの認定を受けた職業訓練を行う中小企業事業主等に対して都道府県が補助する場合に、その補助に要する経費の一部として国が都道府県に交付するものでありますが、職業訓練法人が訓練に要したとして県に報告した事業費の中に、事業目的外に費消されていたものが含まれていたため、国庫補助対象事業費が過大に精算されていたものであります。
 続いて、平成十一年度労働省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。
 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項五件であります。
 検査報告番号二二五号は、労働保険の保険料の徴収に当たり、徴収額に過不足があったものであります。
 これは、保険料の算定の基礎となる賃金の支払い総額が事実と相違していたことなどにより、徴収額に過不足があったものであります。
 検査報告番号二二六号は、雇用保険の失業等給付金の支給が適正でなかったものであります。
 これは、失業等給付金の受給者が再就職しているのに、失業等給付金のうちの基本手当等を支給していたり、事実と相違した再就職年月日をもとに再就職手当等を支給していたりして、給付の適正を欠いていたものであります。
 検査報告番号二二七号は、雇用保険の特定求職者雇用開発助成金の支給が適正でなかったものであります。この助成金は、高年齢者等特定求職者の雇用機会の増大を図るため、特定求職者を公共職業安定所の紹介により雇用した事業主に対して、その者に支払った賃金の一部を助成するものでありますが、事業主が既に雇用している者を新たに雇用したこととしているなど、支給要件を欠いているのに助成金を支給しており、給付の適正を欠いていたものであります。
 検査報告番号二二八号は、労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費の支払いが適正でなかったものであります。療養の給付は、業務上の事由または通勤により負傷または発病した労働者に対して、医療機関において診察、処置、手術等を行うもので、都道府県労働基準局において医療機関からの診療費の請求内容を審査することになっておりますが、医療機関が診療費を誤って過大に算定して請求しているのに請求どおり支払っており、支払いの適正を欠いていたものであります。
 検査報告番号二二九号は、職員の不正行為による損害が生じたもので、室蘭公共職業安定所伊達分室及び札幌公共職業安定所において、労働事務官が、雇用保険の失業の認定等の事務に従事中、失業等給付金を領得したものであります。
 以上をもって概要の説明を終わります。
山名主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。坂口厚生労働大臣。
坂口国務大臣 平成十年度及び平成十一年度の決算検査報告において掲記されております事項につきましては、会計検査院の御指摘のとおりでありまして、まことに遺憾であります。
 指摘を受けました事項につきましては、直ちに是正措置を講じましたが、今後なお一層厳正な態度をもって事務の執行の適正を期する所存でございます。
山名主査 この際、お諮りいたします。
 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山名主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
山名主査 以上をもちまして労働省所管の説明は終わりました。
 これより質疑に入るのでありますが、その申し出がありませんので、労働省所管については終了いたしました。
    ―――――――――――――
山名主査 これより文部省所管について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。遠山文部科学大臣。
遠山国務大臣 平成十年度文部省所管一般会計及び国立学校特別会計の決算の概要を御説明申し上げます。
 まず、文部省主管一般会計の歳入につきましては、歳入予算額三十六億六千二十万円余に対しまして、収納済み歳入額は四十二億九百九十八万円余であり、差し引き五億四千九百七十八万円余の増加となっております。
 次に、文部省所管一般会計の歳出につきましては、歳出予算額六兆四千九百五億五千四百七十九万円余、前年度からの繰越額二百八十億四千四百三十九万円余を合わせた歳出予算現額六兆五千百八十五億九千九百十八万円余に対しまして、支出済み歳出額は六兆三千六百三十一億二千二百四十三万円余であり、その差額は千五百五十四億七千六百七十五万円余となっております。
 このうち、翌年度へ繰り越した額は千二百六十五億千五百七十万円余で、不用額は二百八十九億六千百四万円余であります。
 次に、文部省所管国立学校特別会計の決算について御説明申し上げます。
 国立学校特別会計の収納済み歳入額は三兆二千八百二十七億五千九十八万円余、支出済み歳出額は二兆八千三百三十二億三千八百二十五万円余であり、差し引き四千四百九十五億一千二百七十二万円余の剰余を生じました。
 この剰余金のうち、特別施設整備事業以外に係るものについては、国立学校特別会計法附則第十七項において読みかえられた同法第十二条第一項の規定により、四千三百四十五億八千三百八十三万円余を翌年度の歳入に繰り入れることとし、特別施設整備事業に係るものについては、同法附則第十四項の規定により、翌年度の歳入に繰り入れる四十一億五百十二万円余を控除した残額百八億二千三百七十六万円余を特別施設整備資金に組み入れることとして、決算を結了いたしました。
 次に、歳入につきましては、歳入予算額三兆二千二百十五億七千九百三万円余に対しまして、収納済み歳入額は三兆二千八百二十七億五千九十八万円余であり、差し引き六百十一億七千百九十四万円余の増加となっております。
 次に、歳出につきましては、歳出予算額三兆二千二百十五億七千九百三万円余、前年度からの繰越額四百六十一億八千二百六十一万円余を合わせた歳出予算現額三兆二千六百七十七億六千百六十四万円余に対しまして、支出済み歳出額は二兆八千三百三十二億三千八百二十五万円余であり、その差額は四千三百四十五億二千三百三十九万円余となっております。
 このうち、翌年度へ繰り越した額は三千三百四十五億九千十七万円余で、不用額は九百九十九億三千三百二十二万円余であります。
 以上、平成十年度の文部省所管一般会計及び国立学校特別会計の決算につきまして、その概要を御説明申し上げました。
 何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
 続きまして、平成十一年度文部省所管一般会計及び国立学校特別会計の決算の概要を御説明申し上げます。
 まず、文部省主管一般会計の歳入につきましては、歳入予算額四十億七十五万円余に対しまして、収納済み歳入額は四十五億三千六十三万円余であり、差し引き五億二千九百八十八万円余の増加となっております。
 次に、文部省所管一般会計の歳出につきましては、歳出予算額六兆四百九十三億四千八百五十一万円余、前年度からの繰越額千二百六十五億千五百七十万円余、予備費使用額二百三十億五千八百二十八万円余を合わせた歳出予算現額六兆一千九百八十九億二千二百五十万円余に対しまして、支出済み歳出額は六兆八百二十四億一千百五十九万円余であり、その差額は一千百六十五億一千九十万円余となっております。
 このうち、翌年度へ繰り越した額は一千八十六億四千五百一万円余で、不用額は七十八億六千五百八十九万円余であります。
 次に、文部省所管国立学校特別会計の決算について御説明申し上げます。
 国立学校特別会計の収納済み歳入額は三兆二千三百四億七千四百五十万円余、支出済み歳出額は二兆九千六十八億七千五十九万円余であり、差し引き三千二百三十六億三百九十一万円余の剰余を生じました。
 この剰余金のうち、特別施設整備事業以外に係るものについては、国立学校特別会計法附則第十七項において読みかえられた同法第十二条第一項の規定により、三千三百二十三億五千二百二十二万円余を翌年度の歳入に繰り入れることとし、特別施設整備資金から八十七億四千八百三十一万円余を補足することとして、決算を結了いたしました。
 次に、歳入につきましては、歳入予算額二兆八千八百六億八千九百七十八万円余に対しまして、収納済み歳入額は三兆二千三百四億七千四百五十万円余であり、差し引き三千四百九十七億八千四百七十二万円余の増加となっております。
 次に、歳出につきましては、歳出予算額二兆八千八百六億八千九百七十八万円余、前年度からの繰越額三千三百四十五億九千十七万円余、予算総則の規定による経費増額二百二十九億五千六百七十万円余を合わせた歳出予算現額三兆二千三百八十二億三千六百六十五万円余に対しまして、支出済み歳出額は二兆九千六十八億七千五十九万円余であり、その差額は三千三百十三億六千六百五万円余となっております。
 このうち、翌年度へ繰り越した額は二千五百五十三億四千九万円余で、不用額は七百六十億二千五百九十六万円余であります。
 以上、平成十一年度の文部省所管一般会計及び国立学校特別会計の決算につきまして、その概要を御説明申し上げました。
 何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
山名主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院有川第四局長。
有川会計検査院当局者 平成十年度文部省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。
 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項三十一件及び意見を表示しまたは処置を要求した事項一件であります。
 まず、不当事項について御説明いたします。
 検査報告番号八号から二七号までの二十件は、大学病院における診療報酬の請求において、手術で使用した特定保険医療材料の費用を算定していなかったり、麻酔料に関する加算を行っていなかったりなどしたため、診療報酬請求額が過不足となっていたものであります。
 検査報告番号二八号から三五号までの八件は、義務教育費国庫負担金等の算定において、国庫負担の対象にならない者に係る給与費等を含めたり、教職員の標準定数の算定を誤ったりなどしていたため、負担金が過大に交付されていたものであります。
 検査報告番号三六号及び三七号の二件は、公立学校施設整備費補助金の算定において、補助の対象とは認められない面積を含めて補助対象事業費を算定していたため、補助金が過大に交付されていたものであります。
 検査報告番号三八号は、財団法人日本オリンピック委員会が、国から民間スポーツ振興費等補助金の交付を受け、加盟団体に委託するなどして実施している事業において、受託した団体が事業の一部を実施していなかったり、実際には支出していない経費を支出したこととしたりなどしていたため、補助金が過大に交付されていたものであります。
 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について御説明いたします。
 これは、看護料の夜間勤務等看護加算に係る診療報酬の請求に関するものであります。北海道大学医学部附属病院におきまして、看護料の夜間勤務等看護加算の届け出の検討に当たり、計算期間の設定が適切でなかったことなどから夜間勤務等看護加算の届け出を行っておりませんでしたので、同大学に対して、適切な診療報酬を請求するよう是正改善の処置を要求いたしたものであります。
 引き続き、平成十一年度文部省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。
 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項三十一件及び意見を表示しまたは処置を要求した事項二件であります。
 まず、不当事項について御説明いたします。
 検査報告番号九号から一八号までの十件は、大学病院における診療報酬の請求において、手術で使用した特定保険医療材料の費用を算定していなかったり、麻酔の実施時間を誤って麻酔料を算定していたりなどしていたため、診療報酬請求額が不足していたものであります。
 検査報告番号一九号から二八号までの十件は、義務教育費国庫負担金等の算定において、教職員の実数または標準定数の算定を誤ったり、国庫負担の対象にならない実習助手等に係る給与費等を含めたりなどしていたため、負担金が過大に交付されていたものであります。
 検査報告番号二九号から三四号までの六件は、公立学校施設整備費負担金及び公立学校施設整備費補助金の算定において、補助の対象とは認められない工事費や面積を含めて補助対象事業費を算定するなどしていたため、負担金等が過大に交付されていたものであります。
 検査報告番号三五号は、私立学校施設整備費補助金の算定において、実際の契約額を水増しした工事費に基づいて補助対象事業費を算定していたため、補助金が過大に交付されていたものであります。
 検査報告番号三六号は、財団法人日本オリンピック委員会が、国から民間スポーツ振興費等補助金の交付を受け、加盟団体に委託するなどして実施している事業において、受託した団体が滞在費、旅費等を全く支払っていなかったり、一部しか支払っていなかったりしていたため、補助金が過大に交付されていたものであります。
 検査報告番号三七号及び三八号の二件は、職員の不正行為による損害が生じたもので、国立大学の職員が、出納官吏名義の定期預金を不正に解約して払い出しを受け領得したり、物品購入を装って虚偽の支出負担行為書及び支出決議書を作成して架空業者名義の金融機関口座等に振り込ませるなどして支出金等を領得したりしたものであります。
 検査報告番号三九号は、職員の不正行為による損害が生じたもの及びこれに対する当局の処置が不当と認められるもので、国立大学において、職員が学生から現金で納入された授業料収入金を領得し、大学では、この事実を把握したにもかかわらず、これを文部大臣へ報告せず、当該職員から返還された領得金について不適切な処理を行うなど、会計法令等に違背する不正な経理処理を行っていたものであります。
 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について御説明いたします。
 その一は、国立大学附属病院における患者給食業務に関するものであります。
 診療報酬の請求上は特別食に該当しない食種を特別食として取り扱い、これにより委託料や給食材料の調達額を算定していた事態、また、業務を外部委託するに当たり、随意契約を採用しているものについて、経済的な経費の使用及び契約の透明性、競争性等の確保の見地から一般競争契約の導入を図る要があると認められる事態が見受けられましたので、文部省に対して、特別食の範囲を診療報酬の請求上の範囲と同一とするよう是正改善の処置を要求し、また、外部委託契約を改善する方策を検討し、適切な措置を講ずることについて大学病院に対し指導を行うよう意見を表示いたしたものであります。
 その二は、学校給食施設の整備に係る補助対象面積等の算定に関するものであります。
 学校給食施設の補助対象面積等を算定する際の基準面積等は、事業実施年度における児童生徒数に応じて算定されているため、全国的な児童生徒数の減少の状況を反映することとはなっておらず、児童生徒数の減少により、事業実施の翌年度には事業実施年度の基準面積等より一段階低位の基準面積等で足りると認められる事態が見受けられましたので、文部省に対し、現行の補助制度を見直すなどして、補助金の効率的な使用を図るよう改善の処置を要求いたしたものであります。
 以上をもって概要の説明を終わります。
山名主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。遠山文部科学大臣。
遠山国務大臣 平成十年度及び平成十一年度予算の執行に当たりましては、予算の効率的な使用と経理事務の厳正な処理に努力してきたところでありますが、平成十年度及び平成十一年度決算検査報告において会計検査院から御指摘を受けましたことは、まことに遺憾に存じます。
 指摘を受けた事項につきましては、適切な措置を講ずるとともに、今後、この種の事例の発生を未然に防止するため、より一層指導監督の徹底を図ったところであります。
山名主査 この際、お諮りいたします。
 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山名主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
山名主査 以上をもちまして文部省所管の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
山名主査 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木下厚君。
木下分科員 民主党の木下厚でございます。
 私自身、去る二月十五日の予算委員会におきまして、当時大きな話題になりました板橋区にあります帝京大学医学部あるいは経済学部入学に関する不正疑惑について、約一時間四十分にわたっていろいろ議論をさせていただきました。その中で、まだまだ疑惑が十分晴れていない部分がありますので、改めて本日、質疑をさせていただきたいと思います。
 その二月十五日の予算委員会において、文部大臣の方から、大学独自に調査委員会を設けて独自調査をするという御答弁がありましたけれども、その調査結果についてどのような結果が出ているか、教えていただきたいと思います。
工藤政府参考人 疑惑が報じられたのが昨年の十一月の下旬でございましたけれども、私ども、それ以来、大学側から事情聴取いたしましたり、また、今先生御指摘ありましたように、大学自身が昨年十二月以来、学内に特別調査委員会を設けて調査検討をしてきたわけでございますが、まだ実は調査結果がまとまってございませんで、過日、三月一日に大学の方からは経過報告が出たところでございます。
 それによりますと、新聞等で疑惑が報じられております前総長の親族の方、その方は大学、学園とは職務権限等で一切関係がないということはわかったけれども、何しろ御本人に接触できない中で、かつ調査事項が相当膨大になりますので、まだしばらく時間を要する状況であるということでございました。
 私どもは、引き続き大学側に徹底した調査を求めているところでございます。
木下分科員 私が三月五日にいただいたこの資料は、これは中間調査ということでございますね。そうすると、結果としては、文部科学省さんとしてはいつごろまでにと、何かそういった要請なりはしておりますか。
工藤政府参考人 公の法人格を有する、高い公共性を有する大学でございますし、大学自身が外部の方も含めて深刻に受けとめた調査を行ってございますので、私どもは、中途半端な調査結果を拙速でまとめられても困りますから、できるだけ早く、かつ徹底した調査を求めているところでございまして、大学自身が疑惑を晴らす努力として、今精力的に調査検討が行われていると承知してございます。
木下分科員 そのとき私自身が、特別調査委員会の、どんな人たちが調査委員になっているかメンバー表を出してくれということで、メンバー表をいただきました。これを見ますと、八人のメンバーが特別調査委員会になっています。
 私があのとき、とにかく、学内の身内調査だけではなくて、できるだけ第三者を入れて調査委員会をつくってほしいという要望をいたしました。ところが、この顔ぶれを見ますと、一人だけ学識経験者という方がおられますが、あとの七人の方は、学内関係者、もしくは顧問弁護士であったり、あるいは大学と関係のある監査法人である。このことについてはどうお考えでございますか。なぜもっと第三者を入れないんですか、要求しないんですか。
工藤政府参考人 私どもとしては、要は、大学の内情に通じて、かつ厳正で客観的、公平な調査をお願いしているところでございますが、御指摘のように、例えば医学部の教授の方が三人入っていらっしゃいますけれども、いずれも、今回疑惑を報じられた部局あるいは入試業務とは関係ない方々でございまして、板橋とかあるいは市原の病院の関係者でございます。
 こういう、医学部の内情も知りながら、かつ当該業務、疑惑の業務とは関係ない立場の方々にお入りいただいていること、それから、弁護士あるいは公認会計士というのはいずれにしても公正な職務執行を求められる立場の方々でいらっしゃいますから、そういう方々も含めて、客観的、公正な調査を求めているところでございまして、あながち、これで公正が害されるということではないのではないかと承知してございます。
木下分科員 二月の予算委員会でも私は指摘しました。総長の沖永さんはとにかくワンマンであって、これは私も質問の後、大学の関係者あるいは教授からも、何人からも内部告発をいただきました。とにかく、人事を含めてワンマン経営者である。したがって、この調査委員会のメンバーを見ますと、その総長に逆らえるような、あるいは総長の考えと違う結果が出るような調査結果は出ないよと、多くの教授の人たちあるいは関係者から話を伺いました。
 しかも、私があの委員会でも指摘しましたように、不正入試の経路を見ますと、やはり受験生の親御さんからある人を紹介されて、病院の、要するに帝京大学の病院の関係者が仲介役になっているんですね。ですから、ある面では、ここに出ている関係者が関係しておるかどうかは別にして、恐らくここの病院関係者、三人ですか、病院関係者が入っていますが、この中の病院が、要するに父母から仲介されて、いろいろな人を紹介している。ですから、ある面では不正の当事者であるかもしれない、これを私は指摘しました。
 そういう意味で、客観的である、外部の人間だからと。しかし、同じ帝京大学のグループですよ。その辺はどう考えていますか。
工藤政府参考人 それぞれのメンバーの方々のお立場にもよりますけれども、少なくとも、報じられている疑惑というのは、単に書類づらだけではわかりにくい、医学部内部の教授会の運営の仕方あるいは合否判定のあり方等、ある程度内実を踏まえませんとわからない部分もあるわけでございまして、そういう意味で、同じ医学部でありながら当該疑惑の業務に携わっていない方を入れられたのではないかと承知してございます。
木下分科員 予算委員会で私は表を出しましたよね。総長室で総長みずからが点数をはじき出して、金額を書いてやっていたという資料を出しました。
 要するに、点数と合否判定の資料を出せば、そして、あと父母さんに、要するに合否判定前に幾ら払ったか、払ったのか払わなかったのか、それを調べればわかるわけですよ。そうした調査をしているんですか。
工藤政府参考人 先ほど申した三月一日の調査状況の報告のみならず、たびたび私ども事情聴取してございまして、昨年の疑惑報道以来、延べ十五回ほどになるのでございますが、その調査状況の聴取によりますと、入試に係る合否判定、そこでは格別、御指摘がありましたようなことも含めて、疑惑はないのであるというのが大学側の御主張でございます。
 ただ、そうはいいましても、先生の御指摘もございますし、報道等もございますので、保護者に対する調査、あるいは全学園と大学の教職員に対する調査も含めまして、さらに厳正なる調査検討を求めているところなのでございます。
木下分科員 ことしの補助金は今のところ凍結されていますが、昨年まで、毎年約二十億円の補助金が出ているわけですね。そうしますと、これだけ入試に対する不信が持たれているとすれば、やはり文部省独自に調査委員会をつくって調査する、そういう考えはございませんか。大臣、いかがでございますか。
工藤政府参考人 本件については、入試の関係、私学行政の関係、いろいろな観点から、私ども、省内にもプロジェクトチームを設けながら対応してきているわけでございますが、何分にも今、先ほど申したように、大学における調査検討会議で調査中でございますし、私ども、ぎりぎり申し上げますと、司法当局のような捜査権というのはなかなか厳密にはないものでございますから、第一義的には大学の今の調査結果を待っているところでございます。
    〔主査退席、桜田主査代理着席〕
木下分科員 さきの予算委員会で、文部大臣は大学の教育についてこう言っています。「やはり大学の機能は、一つは教育であり、そして研究であり、同時に、これからは、いろいろな研究の成果を踏まえた上で社会的に貢献していく、そういう存在でなくてはならない」、そうはっきりおっしゃっています。
 ところが、これだけ多くの疑惑を持たれて、そして、私が質問して以来、先ほど言いました、受験生からも、親御さんからも、あるいは学内関係者からも、随分さまざまなアドバイスや告発がありました。こうした疑惑に対して、もう一度文部大臣のお考えを聞きたい。これまで何をもたもたしているんだ、調査が。もっとはっきり、すっきり、やはりきちんと早く結論を出してほしい。どうですか、大臣。
遠山国務大臣 教育にかかわるいろいろな問題について、私どもとしては常に真摯に取り組んでいるところでございます。
 今回の木下委員の御指摘の帝京大学の件は、現在、大学におきまして、その力を結集しながら調査中ということでございまして、私としては、まず第一段階としてその調査結果を待って、そして次のステップが必要であればそれを踏むという順序だけは間違いたくないと思っております。
 ただ、先ほど申し上げました大学のあるべき機能というものが十分に発揮されているということは大変大事でございまして、その意味で、今後とも大学側の取り組みについて十分注視をして、私どもとしてもこの問題について取り組んでまいりたいという決意に変わりはございません。
木下分科員 私自身が一番不思議に思ったのは、先ほど言いました中間調査が出ました。その中で、真っ先に何が書いてあるか。要するに、沖永総長の実弟、これが、新聞報道その他、私の調査によっても、やはり関与していた、そういう話があちこちから出てきております。ところが、冒頭でまず、その実弟について、当大学の学校法人とは何の関係もありません、そう先に書いているんですね。
 これについて、実弟さんについてどんな調査をしたのか、本当に関係ないのかどうか。あるいは、一応、実弟さんは学校法人帝京学園の会長と称して動いていたわけですね。これについて文部省としてはどんなふうな感じを持っておりますか。
工藤政府参考人 先生御存じのように、帝京という名を冠する学校法人あるいは財団法人とか多々ございまして、この疑惑が報じられています前総長の実弟の方というのは、学校法人帝京大学とは関係ない学園の会長を称してきたということでございました。
 ただ、中間報告でありましたのは、この方が学校法人帝京大学とは職務上の関係はないということだけを報告しているにすぎませんで、いまだもって当該者に調査委員会として接触できないでいるのでございます。したがって、報道されている疑惑などを解明するためには、まず御本人に当たって、どういうことがあったのかなかったのか、そのあたりも含めて調査しなきゃいけない。そのためにちょっと時間がかかっているという状況でございます。
木下分科員 そうしますと、その実弟についても大学は調査している、そういう認識でよろしゅうございますね――はい。
 それと、前回にも私自身質問させていただいたんですが、とにかく帝京大学というところは大変な財団法人を持っている。これは、財団法人を幾つ持っているかわかりますか。
岸田副大臣 幾つ財団法人を持っているかという御質問でありますが、この帝京大学の報告によれば、帝京大学の沖永荘一氏またはその親族が理事を務める財団法人、こうした定義でグループの財団法人というふうにとらえたならば、法人数、十二法人あると認識しております。文部科学大臣所管が一法人、他省庁所轄が二法人、そして都道府県所轄が九法人、以上十二法人と認識しております。
木下分科員 宗教法人はお持ちでございますか。
石川政府参考人 お答えを申し上げます。
 文部科学大臣所轄の宗教法人の代表役員の中に、いわゆる帝京大学グループの役員と考えられる人物が存在するか否かにつきまして調査を行ってみましたが、該当する人物は見当たらなかったところでございます。
 このことから、我が省の調査の範囲内では、文部科学大臣所轄の宗教法人の中には、帝京大学グループと人的なつながりがある者は存在していないというふうに考えてございますが、都道府県知事所轄の宗教法人につきましては、都道府県の方で事務処理を行っておりますので、我が省としては承知していないところでございます。
木下分科員 大学の関係者によれば、熊本に宗教法人神道王皇教会、それから、これは多分長野県だと思うんですが、御嶽山白龍神社、この二つの宗教法人が内部からは伝わってきていますので、もしあれだったら至急調べていただきたいと思います。
 それで、この内部告発者によれば、いわば、入学のとき、要するに合否判定前にお金を受け取る。五百万とか、あるいはもっと高くなれば一千万単位の金を父母からいただく。そして、それを、宗教法人を隠れみのに、そこへ蓄えているんじゃないかという指摘までありました。その点もちょっと調べていただきたいと思います。
 それからもう一つ、これはこの前も指摘させていただきましたが、帝京グループ関連の主な財団法人の内部留保、前回資料を提示してお知らせしましたが、これが株式取引その他に流用されている。大学からこういった財団に資金が移され、これが株式運用その他に使われている。兜町では、帝京マネーあるいは仕手筋とまで言われているということを指摘しましたが、それについて調べたことはございますか。
石川政府参考人 帝京大学において、帝京大学が株式を幾つか所有しておるということは先生御指摘のとおりでございますけれども、学校法人の教育研究活動を支える大切な資産でありますその資産運用、もちろん具体的な運用に当たっては安全性にも十分配慮することは必要でございますけれども、その資産運用の一形態としては、株式保有そのものも法令等の制限はないところでございまして、基本的にどのような形態、方法によって資産運用を行うかということにつきましては、それぞれの学校法人の責任において判断されている事柄でございます。
木下分科員 そういった株式運用のほかに、実は、前回も指摘させていただきましたが、衆議院議員の松島みどりさんに対する多額の献金がございました。ちょっと資料を配っていただきたいのですが、実は、松島みどりさんだけではなくて、自民党の前政調会長の亀井静香さんに対して、極めて不明瞭な多額の献金をしております。今資料をお配りしていますので、見ていただければと思うんです。
 私もいろいろ調べさせていただきました。沖永荘一総長と亀井静香さんとは、東大の、亀井さんは東大経済学部、それから沖永さんは東大の医学部ということで、卒業がほぼ同じであって、いわば大学時代からの友達であるというような言われ方をしています。それにしても、ここに私が調べただけでも、平成七年から現在まで、平成七年では、沖永荘一総長から百五十万円。平成八年、百五十万円。平成九年になりますと、総長と総長夫人、百万、百万、二百万。平成十年も、御夫婦で二百万。平成十一年は、沖永荘一総長から百五十万、夫人からは百四十九万。平成十二年は、お二人から百五十、百五十。
 さらに、平成元年には、わかっているだけでも、沖永総長とお母さんのキン氏から千八百万円が亀井氏に寄附されている。さらに、平成十年に開催された亀井郁夫、静香兄弟を叱咤激励する会のパーティーには、帝京大の関連会社である帝京サービスから百万円分のパーティー券が購入されている。
 これを合わせますと、パーティー券と千八百万円を除きますと、実に平成七年から十二年のわずか六年の間に、一千二百九十九万円、約一千三百万円が亀井静香さんに献金されている。
 さらに、その下に、松島みどりさんに対する献金も入れてあります。
 問題になった三千万円の給与、これは落選している期間の約四年間の給与。勤務実態がないのに、テープ起こしとかちょっとした原稿を書いたということで、三千万円の資金を、給与を得ている。その上に、平成十年百万、平成十一年二百万、平成十二年三百万。さらにパーティー券、平成十二年には三百万。これは、帝京サービスと三荘企業という帝京大学の関連会社です。これを合わせますと、松島みどりさんにも約九百万。さらに給与の三千万を入れますと、これは大変な金額になる。
 ですから、下に書いていますが、亀井静香さんと松島みどり氏の合計金額、平成七年から十二年、五千二百万円という大変な金が二人の政治家に渡っているんですね。どうですか、大臣。
 国から補助金を得ている、しかも受験生から授業料あるいは寄附金を得ている、そういった大学から給料をもらっている総長御夫妻が、これだけの多額の金を政治家に献金する、こんなことがあっていいのでしょうか。どうですか、大臣。
遠山国務大臣 一般的には、個人や民間団体が特定の政党や政治団体に対して政治活動に関する寄附等を行いますことは、法令上、特段制限されているものではないと承知しております。
 国から補助金を受けている学校法人は、政治資金規正法によって国会議員に政治献金をすることはできないわけでございますが、当該学校法人の役員等については、あくまでも個人としての立場での寄附である限り、また政治資金規正法の規定に抵触しない限り特段の制限はないものと承知いたしております。
 学校法人の役員等が個人として政治活動に関する寄附を行いますことは、法令の規定に違反するものではなくて、設置する学校の政治的中立性の確保などに留意しながら、個人として自主的に判断していただくべきものと考えております。
木下分科員 それにしても、沖永総長夫妻が、給料を幾らもらっているんですか。平成十二年は、お二人の給料だけで年間六百万円も寄附しているんですよ。亀井さん三百万、松島みどりさん三百万。これは、幾ら個人の寄附といっても限度を超えています。
 少なくとも、補助金をもらっている大学、あるいは苦しい中から授業料を払い、そしてさまざまな研究費を払っている受験生のことを考えたら、政治家に献金できるほどの多額な給与をもらっていたら返上しなさいよ、そうじゃないですか。どれだけ苦労して受験生の親御さんが大学へお金を払っているんですか。そんな政治家に寄附するだけの多額の給料をもらうんだったら、返上して、少なくとも大学の給与を減らしたらどうですか。私はそう思いますけれども、大臣、そう思いませんか。
遠山国務大臣 先ほどお答えしたとおりでありまして、個人として自主的に適正に判断してもらいたいものと思います。
木下分科員 しかも、亀井さんは、これは一九九三年、新聞報道されました。帝京大学の関連会社である帝京サービスの所有しているパレロワイヤルの九階の事務所をただで借りていたということで新聞報道されました。
 これはその後、直ちに家賃を払ったそうです。私も聞きました。しかし、いまだ亀井さんはここの事務所にいますが、亀井さんの事務所の話によれば毎月三十万払っているという報告ですが、ここの事務所はバブル時代は八十万ぐらいしたそうです、今現在は五十万ぐらいだそうですが、しかしそれもきちんとして本当に払っているのかどうか、政治資金報告書を見ました。しかし、事務所経費も載っかっていません。こういう形で便宜を受けている。
 さらに、これはもう御回答いただくよりも一方的に話させていただきますが、さらに亀井静香さんは、御自分の地元である広島県東城町粟田、ここに帝京大学の福祉センターを持っていっている、つくっているんです。これは、ゲートボール場あるいはテニス場もあるそうです。約五億円かかったそうです。そして、選挙になるとそこへポスターをぱたぱた、べたべた張って、選挙の事務所的な使い方をされている。
 さらにもう一つ、亀井さんは鳥取県にも同じような福祉センターを持っていて、それもやはり、鳥取県は帝京すこやか村、平成六年にオープンしています。これは当時の社会党の建設大臣と一緒になって、当地出身の社会党の建設大臣と一緒になってそちらへつくったと言われております。ここも、ゲートボール場及び会議室等あります。こういった形で、帝京大学、これを、ずぶずぶの関係になっているんです。そこをきちんと調査していただきたいと思います。
 時間でございますので、問題だけ指摘して、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
桜田主査代理 これにて木下君の質疑は終了いたしました。
 次に、肥田美代子君。
肥田分科員 民主党の肥田美代子でございます。よろしくお願いいたします。
 昨年十二月でございますけれども、子ども読書活動推進法というのができまして、これは議員立法でございますが、国を挙げて子供の読書環境を整えていこう、そういうことになっております。この四月二十三日は読書の日ということになっておりますが、大臣もこのところ、たくさんの場所で、子供の読書の大切さをおっしゃっていただいております。本当に感謝を申し上げたいと思います。
 さて、きょう私は、弱視の子供の教科書の問題につきまして、私の意見、そして大臣がどう考えていらっしゃるか、それを意見交換させていただきたいと思っております。
 率直に申し上げますと、まことに恥ずかしいことなんですが、私は、弱視の子供たちが教科書の問題でこれほど悩んでいるということを最近まで知りませんでした。全盲の子供と晴眼の子供の間に生きているこの弱視の子供の存在に気づいていなかったわけですね。ですから、子供の教育条件を語る場合には、全盲の子供や晴眼の子供について触れることはあっても、弱視の子供について言及することがこの立法府としても本当に少なかったのではないかというじくじたる思いを私は持っております。もし、そのために、弱視の子供にとって読みやすい教科書をつくっていくとか学習条件の整備がおくれてきたのだとすれば、私たちはその空白を埋めるためにも、政治の力そして行政上の支援を行うことをちゅうちょしてはいけないと思います。
 日本のすべての子供は、国際人権規約そして子どもの権利条約、日本国憲法の定めるところにより、ひとしく教育を受ける権利が保障され、弱視の子供たちもまた例外ではないはずでございます。しかし、弱視の子供は、通常の教科書を読むことができず、立法府や行政府の支援がないまま、現在、自助努力でいわゆる拡大教科書を作成し、勉強しております。私たちは、この谷間から聞こえてくる小さな声を耳を澄ませて聞くことから始めなければいけないと思います。そうした思いからきょうは質問させていただきますので、よろしくお願いを申し上げます。
 私は、普通の教科書や点字を読めない弱視の子供にとって、いわゆる拡大教科書はなくてはならないものだと思っております。しかし、弱視児のために文部省が出版しております拡大教科書はありません。民間出版社や教科書会社から、拡大教材として小学生の国語、算数、中学生の国語、数学、英語が出版されているだけでございます。それ以外は拡大教材がないため、文字を大きく書き写しました拡大写本を子供自身が準備しなければならない、そういう現状がございます。また、一般教科書をルーペや拡大読書器といった補助具を使って読んでいる子供たちもおります。他方、全盲の子供が使う点字教科書は、国語、算数、数学、理科、社会、英語など、主要科目は文部科学省著作の教科書が発行されております。参考資料もそろっています。
 同じ視覚障害者でありながら、全盲と弱視の間にこれほど差があるということは、私たち立法府にかかわる者といたしましては、怠慢のそしりを免れないと思っております。
 こうした現状を大臣はどのようにごらんになっていらっしゃいますでしょうか。
遠山国務大臣 一般的に、障害のある児童生徒につきましては、その可能性を最大限に伸ばして、自立して社会参加するために必要な力を培ってもらうということが大切でございまして、障害の種類、程度などに応じて、一人一人のニーズというものを考えながら、盲・聾・養護学校や特殊学級などにおいて特別な配慮のもとに、手厚く、きめ細かな教育を行うことが必要であるわけでございます。
 全盲の生徒については今御指摘のような手だてが既に講じられているわけでございますが、弱視の児童生徒につきましては、通常の検定教科書を使用して、弱視レンズなどの視覚補助具を用いて、持っている視力を活用して、上手な物の見方を育てるための特別な指導を主として行っているということでございます。一人一人の見え方に配慮した特別な指導ということでございますが、弱視の児童生徒が教育内容をよりよく理解するための一層の工夫も必要ではないかと考えております。
肥田分科員 ところで、現在、盲学校の小学部、中学部、高等部と弱視学級に学籍を置く弱視児童生徒数はどのぐらいでありますか。また、盲学校や弱視学級以外の普通学校、それから普通学級で学ぶ弱視児童数はどのくらいでありますか。弱視児童は生徒全体の何割を占めているか、その数をお示しいただきたいと思います。
矢野政府参考人 全国の盲学校長会が平成十三年度に行いました調査によりますと、盲学校の小学部に在籍する弱視の児童数は二百六十一人、中学部に在籍する弱視の生徒数は二百二十六人でございまして、合計で四百八十七人になります。また、弱視学級に在籍する児童生徒数は、小学校百三十人、中学校四十四人で、合計百七十四人となっているところでございます。
 なお、小中学校の普通学級における弱視の児童生徒数については把握をいたしておりません。
肥田分科員 今お答えいただきましたように、盲学校それから弱視児学級に籍を置く弱視児童数が合計で六百六十一人でございますね。普通学校に通っている子供についてはまだ調査はなさっていない、そういうことでございますね。
 現在、公立の小学校に就学している児童数は七百十八万二千四百三十三人ですね。中学校に就学している生徒が三百七十二万四千七百十一人です。ですから、弱視の子供は本当に数が少ないんですね。全体からいきますと本当に微々たる数でございます。その少数の子供たちだからこそ、政治も行政も社会も、弱視の子供たちの現状について関心を持たなかったのかもしれません。
 その点、全盲の子供たちの教育問題は早くから注目されておりました。周囲で支える人々の長い努力によって点字教科書は整備されました。それに比べますと、弱視の子供たちやその関係者の発言の機会は本当に少なかった。また、その声も小さかったために、弱視児童生徒の学習条件の整備が大変おくれていたのではないかと思います。声が小さい子供たちだからこそ、立法府と行政府が力を合わせて、弱視の子供の多様な個性を尊重した学習条件を整えていくことが大切ではないかと思っております。
 文科省は弱視の子供の教育改善についてどのような方針をお持ちでしょうか。もし検討していらっしゃることがありましたら、お教えいただきたいと思います。
矢野政府参考人 弱視の子供たちにつきましては、保有する視力を活用して上手な見方を育てるなど、その可能性を最大限に伸ばし、自立し、社会参加するために必要な力を培うことが大変大事であると考えているところでございます。
 このため、弱視の児童生徒は、視力は同じでもその見え方がさまざまであるなどの状況があるわけでございますので、そうした状況を踏まえまして、その教育につきましては、先ほど大臣からお話し申し上げましたように、通常の検定教科書を国として無償給与いたしまして、それについて弱視レンズや拡大読書器等の視覚補助具を用いて、一人一人の見え方に配慮した指導が行われているところでございます。
 また、各学校におきましては、そうした高機能の弱視レンズ、拡大読書器、さらには最新の情報技術を活用いたしました拡大教材製作機器の整備を促すなどの取り組みを進めているところでございまして、またさらに、今後でございますけれども、今後、拡大教科書の作成ノウハウ等、そうしたものについての作成方法の研究開発も進めてまいりたいと考えてございまして、こうした施策を通じまして、弱視の児童生徒に対する教育の一層の充実を図ってまいりたいと考えているところでございます。
肥田分科員 今拡大ルーペとか拡大読書器を使ってというお話がございましたけれども、子供たちに聞いてみますと、やはり大変それが読みにくいと言うんですね。一度、大臣もルーペなんかでごらんになっていただいたらいいんですが、私も読んでみましたけれども、確かに読みにくいです。読みづらいです。
 ですから、弱視というハンディの上に、さらに読みにくい教科書を与えられるということで、速読ができない。さらには、読書不能を引き起こすような、そういう学習上のハンディが加わっておると思います。こうした二重のハンディを背負った子供たち自身の苦労、そして保護者やボランティアの皆さんは拡大教科書の作成に懸命に努力されていらっしゃいます。私たちの想像をはるかに超えた御苦労でございます。
 大臣はこの現状をどう評価され、拡大教科書の供給をボランティアに依存した姿をどのように受けとめておられるか、お願いいたします。
遠山国務大臣 今お話を伺っておりますと、学校現場において大変御苦労があるということがだんだんわかってまいりました。教材の一部が保護者やボランティアの御協力によって作成され、実際に使用されていることもあると伺っておりまして、私どもとしても、こうした活動をできるだけ支援していきたいと考えます。
 御存じのように、今就学奨励費によって教材購入費の補助などを行っておりますが、今後は、全国盲学校長会あるいはボランティア関係団体などとも連携を図りながら、拡大教材の作成を簡便にするための具体的方策などについて検討を進めてまいりたいと考えます。
肥田分科員 本当に今大臣がおっしゃったことなどなるべく早急に、そして積極的に進めていただきたいと思うんです。全国の盲学校において全盲の子供が点字教科書を手にしているように、弱視の子供が拡大教科書をひとしく手にできる、そういう教科書供給のあり方こそ当たり前の姿じゃないかと思うんですね。ぜひお願いしたいと思います。
 先ほどちょっと普通学校、普通学級に通う子供の調査ができていないというお話でございましたが、できれば、私どもの方にその調査結果も、後日で結構でございますのでお知らせいただきたいと思います。
 それで、次の質問に移らせていただきます。
 そこで、どこに問題点があったのか、今あるのかということでございますが、著作権法の三十三条で、著作物を教科用図書に掲載する場合、文化庁長官が毎年定める額の補償金を著作者に支払えば、許諾がなくても掲載することができます。しかし、法的な教科書は検定教科書あるいは文部科学省作成のものに限定されていますから、拡大教科書や拡大写本は教科書として認められていないわけですね。ただ単に教科書を拡大しただけで、拡大教科書が教科書として認められていない理由はどこにあるんでしょうか。
矢野政府参考人 御指摘のように、内容等を変更することなく版型のみを拡大した図書でありましても、その図書が教科書として適切であるかどうかの検定を経たものではございませんので、そういう意味では検定教科書とは認めることはできないと思うわけでございます。
 しかし、教科書という点で考えますれば、それを例えば盲学校等におきまして、教育委員会が、学校教育法百七条に定めますいわゆる百七条本、教科用図書として採択をいたしますれば、それは教科書として扱われることが可能であるわけでございます。
肥田分科員 私は、弱視の子供たちの教科書問題は、拡大教科書を法律上教科書として認めれば大きく前進すると思うわけですね。ですから、拡大教科書が法律で守られた教科書になれば、補償金を支払うことによって、著作者の許諾はとらなくても拡大教科書に著作物を掲載できる基本ルールができ上がると思っております。
 なぜこれまで拡大教科書を検定教科書として認めてこなかったのか、そして、今後どのような手順を踏めば検定教科書として認められるようになるのか、その道筋についてもあわせて御答弁をお願いします。
矢野政府参考人 繰り返しになりますけれども、既存の検定教科書を拡大したいわゆる拡大教科書は、それ自体として文部科学大臣の教科書検定を経ているものではないわけでございますので、もととなる検定教科書の文字や図形の配置等を変形しているものであるために、それを検定教科書として位置づけることはできないものでございます。
 と申しますのは、類型のみを拡大した図書は、文字の太さや大きさ、図形の配列等の観点から、そのままでは児童生徒の使用になじみにくいものもあるわけでございまして、そういう意味で、検定教科書となるためには文部科学大臣の検定が必要であるわけでございます。
 なお、検定教科書として認められますためには、図書の発行者等がその図書の検定を文部科学大臣に申請いたしまして、文部科学大臣の検定に合格する必要があるわけでございます。
肥田分科員 今直ちに検定教科書として認定することが難しいのであれば、それまでの移行措置として、やはり教育の機会均等という立場からも、拡大教科書は無償配付をすべきだと私は思います。
 なぜならば、現在、小中学校では教科書は無償とされ、盲学校の点字教科書の場合は高等部まで就学奨励費が保障されています。ところが、拡大教科書の場合、義務教育の期間であっても、保護者が負担するか、ボランティアの会費で賄うということが行われております。例えば、拡大教材研究会作成の五年生の「新しい算数」、今手元にございますこれですが、これが本体価格が一万九千二十円です。
 同じ国で育って、同じ教育基本法や日本国憲法のもとにありながら、教科書の無償の恩恵を受ける子供と、それから高額な教科書を購入しなければならない子供、その存在はいかにも不思議なんですね。ですから、法のもとの平等という点から見ましても、私は、この事実には説得性がないと思っております。
 弱視の子供に対して拡大教科書を無償で提供するように、早急に改善をされるべきだと思いますが、いかがですか。
矢野政府参考人 文字等を拡大いたしましたいわゆる拡大教科書につきましては、盲学校や弱視の特殊学級におきまして、都道府県等が採択いたしました場合には、いわゆる学校教育法百七条図書として無償給与できるようになっているわけでございまして、そういう意味で、現在、小中学部の国語、算数、数学において活用が図られているわけでございますので、今委員が御指摘の拡大教科書もこの百七条本でございますから、当然のことながら、それについて国が無償給与することになっております。
 このほか、そういう拡大教科書ではございませんけれども、ボランティア等が作成いたしました教科書以外の拡大の教材でございますが、それにつきましては、補助教材として盲学校や弱視の特殊学級で使用する場合には、拡大教材の購入費を就学奨励費の対象といたしているところでございますから、保護者がそれを購入する場合については、それについて都道府県あるいは市町村が負担をし、それについて国が補助をする、こういう仕組みになっているわけでございます。
肥田分科員 今おっしゃっていただきましたのは、盲学校または弱視学級に通っている子供のことでございますね。私、先ほど普通学校それから普通学級に通っている子供の数をお尋ねしましたのは、恐らく先ほどおっしゃった数の倍以上の子供たちが普通学級に通っていると考えられます。
 ですから、今おっしゃったことは盲学校に通っている子供たちだけですよね。ですから、その普通学級の子供たちをどうこれから救っていくか、それが大事だと思うんですが、もう一度お願いします。
矢野政府参考人 これは私どもと先生のお考えと異なるふうに思うわけでございますが、制度上の弱視の子供は、基本的には盲学校あるいは弱視の特殊学級において教育するということが適切であるというふうに私ども考えているわけでございます。したがって、最初お尋ねにございましたように、普通学級にどれだけの弱視の子供が在籍しているかについて、私ども把握していないと申し上げたのもそういう意味でございますので、その点は、先生の御指摘については、私どもと考えを異にしているということを申し上げざるを得ないと思います。
肥田分科員 その部分につきましては、これからいろいろ議論をしていかなければいけないところだと思っております。私どもの考え方は全く逆でございます。
 それでは、拡大教科書をつくる場合なんですが、作成をする時間、これがもう本当に厳しいのですね。ですから、教科書が改訂されますと、拡大教科書は、出版社が次年度の四月までに作成しなければならないわけですね。
 ところが、著作権の許諾から本文の打ち直しまで、相当な作成時間が必要となります。人手も必要になります。御承知のように、拡大教科書を作成するためには、原本となる教科書二冊、そして紙やペンやのり代など高額の費用がかかるわけでございます。弱視の子供は一人一人の見え方が違いますから、その子供の個性に合わせて、字の大きさも色も違ったものにしなければいけない。子供一人一人の見え方に合わせた拡大教科書が必要なわけですが、この作成費用も今は、普通学校に通う子供たちは、保護者が自己負担するか、ボランティアの会費をいただくようになっております。
 この拡大教科書の作成費用、もう一度お尋ねしても恐らく考え方が違うということで、普通学級、普通学校に通う子供たちに救いの手を差し伸べられないという先ほどの御意見でございましたので、これをもうお聞きすることは今はいたしませんけれども、これは私は、実は子供たちにとっては大変な問題だと思っています。
 これまでの質疑の中で、やはり健常児と視覚障害者との間に、教育上の処遇の開きに加えて、また同じ視覚障害者の中で、点字教科書を使う子供と拡大教科書を使う子供の間にも法律上も財政上も大きな差があるということが明らかになっているわけでございます。健常児であれば、著作権法の三十三条で何の問題もなく、公表された著作物は教科用図書に掲載ができる。盲学校の子供は、学校教育法の百七条で教科用図書以外の教科用図書を教科書として使うことが許され、点字教科書は著作権法の三十七条で点字に複製することができる。この二つの法律のらち外に置かれているのが実は弱視児用の拡大教科書なんですね。
 このように、弱視の子供には本当に教育のバリアが幾重にも張りめぐらされていることを私は実感するわけですが、この際、弱視の子供たちの声に耳を傾けて、著作権法を改定して、実質的な教育の機会均等を実現するときだと私は思います。
 文部科学省生涯学習局は、図書館の例外規定の見直しについて文化庁に御要望をお出しになっておりますが、初等中等教育局も拡大教科書にかかわる著作権法の改正について文化庁に要望を出すときではないかと思いますが、いかがですか。
矢野政府参考人 委員御指摘のように、検定教科書とそれから文部科学省著作教科書以外のいわゆる百七条図書に当たる拡大教科書、それから、通常の教科書の理解を助けるために作成いたしまする補助のための拡大教材、これにつきましては、御指摘のように著作権法三十三条が適用されていないことから、著作権者の許諾が必要とされているところでございます。
 私どもといたしましては、いわゆる拡大教科書を含む教材の作成が適切かつ円滑に行われることが必要と考えておりまして、これらの作成に当たり、簡便に許諾を得ることができるような仕組みにつきまして、御指摘の著作権法の改正も含めまして検討を始めたところでございまして、そういう意味で、今後そういう検討の中で、著作権法の改正しかそういう簡便な方法がない、あるいは、それが一番望ましい、そういうことになりますれば、著作権法の改正の要望を文化庁に対して行ってまいりたいと考えるものでございます。
肥田分科員 ぜひその検討を早急にお願い申し上げたいと思います。
 文化庁にお尋ねしますが、平成十二年に文部科学省生涯学習局から提出されました図書館等にかかわる例外規定の見直しについて、文化審議会で検討されていると伺っております。文化審議会で検討されているこの状況、それから、要望を受けられたのはいつごろであるか、その状況をちょっと教えてください。
銭谷政府参考人 著作権制度のあり方につきましては、著作者などの権利の強化の側面と著作物利用が容易になるような例外規定の見直し、両面があるわけでございまして、現在、文化審議会の著作権分科会において、この例外規定の見直しについて検討を進めております。具体的には二つございまして、一つが、教育目的の利用に関する例外、もう一つが、今お話のございました図書館における利用に関する例外についてでございます。
 昨年の審議の状況でございますが、この著作権分科会におきまして問題点を整理いたしまして、審議経過の概要という形で報告にまとめてございます。本年は、それを踏まえまして、こういう例外規定を設ける場合には、権利者、利用者双方、それぞれ意見があるわけでございますので、権利者、利用者双方の当事者で構成する協議の場を設けまして、さらに具体的な検討を進めていくことといたしております。
 なお、お話のございました生涯学習局からの要望でございますけれども、平成十二年の九月に、当時の生涯学習局長から文化庁あてに、コンピューター、インターネット等を活用した著作物等の教育利用に関する生涯学習局に置かれました調査研究協力者会議の報告についてということで、私どもの方に要望を添えて御報告をいただいているという状況でございます。
肥田分科員 文化庁にさらにお伺いしますが、文科省の初等中等教育局から拡大教科書にかかわる著作権法改正の要望が提出された場合は、図書館にかかわる例外規定見直しと同じように、著作権にかかわる審議会で適切な検討を始めてくださいますか。
銭谷政府参考人 先ほど、いわゆる拡大教科書の問題につきまして初等中等教育局長から御答弁がございましたけれども、著作権に関する課題も含めて、私どもとしては、現在あるいはこれから初等中等教育局で総合的な検討が進められるものと承知をいたしているわけでございます。
 そのような検討の結果、弱視の子供たちの教育を充実する観点から、仮にでございますけれども、著作権法の改正が必要であると判断をされて、具体的な要望が私どもにあった場合には、著作権分科会において必要な審議を進めてまいりたいというふうに考えております。
肥田分科員 大臣、このやりとりを聞いていただきまして、やはり弱視の子供も健常児と同じ情報を手にすることが大切だと思うんですね。我々は、確かに、障害児に関しての考え方がそれぞれ違うかもしれない。しかし、私は、子供の立場に立ちたい。今、普通学校にいる子供たちの立場に立って、一生懸命、ちっちゃい文字の教科書をルーペでのぞきながら勉強している子供の姿を考えたら、私どもは、省庁がこういう考えを持っている、ああいう考えを持っている、我々はそうではない、そういうこと以前に、なるべく早くその子供たちの不便を救う道を、大臣、考えていただきたいと思います。よろしくお願いします。どうぞ。
遠山国務大臣 弱視の子供たちも、やはり、一人一人の障害の程度や状況に応じて教育の手だてが十分に整えられるということは大変大事でございます。
 今のお話を伺っておりまして、そう簡単に右から左にというわけにもいかず、法改正の問題、あるいは手続の問題、財政負担の問題等々さまざまあるようでございますけれども、そういった問題につきましても十分に検討した上で、先生御指摘の点について、私としては、教材のあり方という極めて基本的な問題でございますので、この問題について検討を進めて、一層の充実を図りたいと考えます。
肥田分科員 ありがとうございました。
桜田主査代理 これにて肥田君の質疑は終了いたしました。
 次に、井上和雄君。
井上(和)分科員 民主党の井上和雄でございます。
 本日は、遠山文部科学大臣に初めて質問をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。また、青山副大臣もよろしくお願いいたします。
 まず、ちょうど今、四月の入学シーズンでもありますので、入学金についてちょっと御質問したいと思います。
 私もきょう、朝、駅頭で街頭演説をやってから国会に参りました。幾人かのお子さんたちが真新しい制服を着て、正装された御両親に手をつながれて、恐らくは入学式に出席されるんだと思うんですが、通学していく姿を朝見受けました。
 入学、進学と、多くの学生さんたちが期待に胸を膨らませているわけですが、しかし、その一方、この不況の中、学費を工面していかなければならない父兄の方々の御苦労というのは、うれしい反面、大変なことだと考えます。二〇〇〇年度の私立大学の初年度納付金というのは、文部省の調査によれば約百二十八万円、残念ながら、新しい、直近の数字が手に入らなかったんですが、私の手元には、百二十八万円だということです。
 近年、国の育英奨学金制度というのも非常に充実してきたということを、私、先日レクのときに文部科学省の方からお伺いいたしました。これは非常に前進したんだな、私が学生だった三十年前に比べれば随分前進しているというのが私の偽らざる感想でございます。しかし、初年度納付金というのはやはり非常に高くなっている。少しでも多くの経済的に恵まれない学生の方たちが大学で学べるように、やはり、こういった非常に多額の私立大学の納付金というものに対して支援していく必要があると思うんですけれども、今、政府としては、初年度の私立大学の納付金というものに対してどういう支援をしているんでしょうか。
遠山国務大臣 今、私立大学の初年度納付金が国公立大学のそれに比較して高額になっているということは承知をいたしております。それに対して何をしているのかということでございますけれども、納付金のあり方につきましては、それぞれの設置者において定めるものではございますけれども、文部科学省としましては、厳しい財政状況のもとではありますが、高等教育の重要性というのは国公私立を問わないわけでございますので、そういうことも勘案しまして、学生の就学上の負担軽減をできるだけ図るということを措置いたしておりまして、従来から、私学助成を拡充し、あるいは育英奨学資金の充実に努めているところでございます。
 平成十四年度予算におきましては、私立大学等経常費補助金について、対前年度五十五億円増の三千百九十八億円を計上いたしましたし、また、育英奨学事業については、奨学金全体の貸与人員を大幅にふやしているところでございます。
 初年度納付金用というわけではございませんけれども、大学自体の運営のための経常費補助金の増、それから学生の個人の負担にかかわる奨学金の増ということで対応を今いたしているところでございます。
井上(和)分科員 月々はかなり、十万円以上の奨学金がもらえるような制度が拡充してきたということで非常にいいと思うんですけれども、先ほど申し上げたように、やはり入るときに百万円以上の金額を用意するというのは、例えば、この不況の中、お父さんが失業したとかリストラに遭っているとか、そういう場合、非常に難しいんじゃないかというふうに思うんですね。だから、ぜひ、入学の際の一時金というものも考えたらいかがでしょうか。一時奨学金ですね。いかがでしょう。貸与でもいいと思うんですけれども。参考人は呼んでいなかったので、大臣何か、御感想でいかがでしょうか。
    〔桜田主査代理退席、主査着席〕
遠山国務大臣 今御説明いたしましたように、初年度納付金用というわけには今の制度ではできないわけでございますけれども、私立大学に対する経常費補助金の充実などを通じまして、初年度に余り納付金が高くならないような形で、設置者が工夫できるように、私どもとしてはできるだけの面での充実を図ってまいりたいと思います。
井上(和)分科員 つまり、国の今の育英奨学金事業だと、やはりちょっと片手落ちじゃないかなというのが私の印象です。入れば、月々、ある程度の生活費、授業料を賄えるぐらいの貸与がされるんだけれども、入るときに恐らくはやはり百万円以上のお金が用意できなくて大学に進むことを断念するという学生の方が私はきっと多いんじゃないかと思うんですよ。そういう意味でも、これからの課題としてひとつそういうことを考えていくということが必要ではないかと思いますので、ぜひ御検討いただきます。
 そして、実は、高額な入学金ということに関しましては、私立大学の医学部、歯学部が非常に有名です。
 私、文部省から直近の資料をいただきましたけれども、平成十三年度の初年度納付金で、高いところでいきますと、例えば、昭和大学で千二百三十万、帝京大学千二百十九万、それ以外にも一千万以上の私立大学の医学部がたくさんあるわけですね。私が学生だったころ、もう随分昔になりますが、一部私立大学というのは、大体数千万円の寄附金が必要だったというのが常識でございました。その後、そういう寄附金をなくすということで、授業料がかわりに高くなったということだと思うんです。授業料でいけば、年額三百万ぐらいですね。
 しかし、そういった中、一部の大学では裏口入学のうわさも絶えないし、また、医師の養成という、公共的な使命を担った者の養成というものに関して、一部の非常に裕福な家庭、はっきり言って、とても私の子供をこういった大学には進学させることなんか不可能ですけれども、本当に一部の家庭の子弟しか行けないという状況になっている。
 今、医療の問題、いろいろな問題が起きていますね。医師の養成というものが、一方では国公立大学、これは非常に偏差値が高くないと入れないという状況があります。しかし、学費は安い。一方では私立大学になっているが、それはもう非常に高額な入学金が必要だし授業料が必要だ。本当にごく一部の階層に属する人の子弟しか入れないという、非常にいびつな医師の養成になっているんじゃないかというのが私の印象でございます。こういった状況を少しでも改善して、やはり教育の機会均等という観点からも、ある程度自分で金を借りてでも行けるというような状態にしていかないと、非常に偏った医師の養成というふうになっているんじゃないか。
 つまり、一般の社会通念を超えている金額を私立大学医学部が要求しているという状況があるんですが、この点に関して、文部大臣、いかがでいらっしゃいますか。御自分の御子弟をこういうところに入れることが経済的に可能でしょうか。
遠山国務大臣 我が家はもう学齢期を済んでおりますので、今の御質問には直接答えられませんが、なかなかそれは難しいぐらいの高額な授業料ないし納付金であろうかと思います。
 先ほどの説明でちょっと言い忘れておりましたけれども、そういうことに対応しまして私どもが私学の経常費補助金の増を毎年図っているわけでございますけれども、その際、経常費補助金は、かかった経費に対して補助するという性格のものでございますので、多額の経費がかかっている医学部につきましては、他の学部より多く交付される仕組みになってございます。こういうものを活用していただくこと。
 それから、育英奨学資金の関係でございますが、医学部の学生に対します奨学金につきましては、有利子ではありますが、希望に応じ、学部レベルで最大月額十四万円を貸与するということでございまして、また、貸与人員も大幅にふやしているというようなことから、それなりに対応しているという現状でございますが、いずれにしましても、今後とも私立大学医学部におきます学生負担の軽減に努めていきたいと考えます。
井上(和)分科員 今御答弁ありましたけれども、今いろいろな一部の大学の医学部の問題が出ておりますが、やはりこの私学における医学部のあり方というものを根本的に考えていく時期が来たんじゃないかと私は思います。
 その一つとして、今大臣おっしゃったように、やはり私学助成というものをしっかりふやしていく。月十何万というふうに学生が奨学金を受けられるというお話ありましたけれども、授業料だけでも年額三百万とか四百万とかいうところでは、月々十何万もらってもほとんど役に立たない。本当に、焼け石に水ぐらいの額でしかありませんね。だから、それは一つとして、やはり政府として、ある程度の額の奨学金を貸与するとともに、学生が借りられる、それを保証するというような制度も必要ではないかと思います。
 もう一つやはり重要なのは、昨今話題になっています裏口入学などの問題だと思うんですね。これは当然、先ほども大臣おっしゃったように、経費に対して国として助成しているわけです。つまりは、はっきり言って、余りできがよくなくて入って、そして結局は医師国家試験を通らなかったということでは、これは完全にもう国費の、税金のむだ遣いということになります。
 つまりは、そういった、大学に入る段階でちゃんとした成績をとって入ったのか、そういうことをきちっとチェックする。例えばそれは、統一テストでもいいですが、そこで何点とってちゃんと入ったのか。そしてそれが、当然、医師国家試験を通ればはっきりわかるわけですね、非常に低い点で入った人がいれば。やはりそういうきちっとしたコントロール、品質管理をしないから今いろいろな問題も起きているんじゃないかというふうに私は思います。
 それでは次に、話題を変えまして、沖縄の、現在、文部科学省が準備しております組踊劇場の用地の選定に関してお伺いいたします。
 この件に関しましては、先日の国土交通委員会で、私も文部科学省の政府参考人に幾つかお伺いいたしました。その際にはっきりした点が何点かございました。
 まず、公的な建物を建てる、つまり国立のものですね、そういったものを建てるときは、国有地あるいは公有地、つまりは自治体の所有地を優先的に利用するということ、この件に関しては国土交通省の政府の方から答弁をいただきました。
 第二点に関しては、平成九年、当時の文部省がこの組踊劇場の用地の選定というものを浦添市の拓南製鉄という会社の工場の跡地に決定したんです。そのとき文部省は、当時の沖縄開発庁と相談したということを御答弁されました。そして、そのときの沖縄開発庁長官は鈴木宗男議員だったということもお伺いいたしました。
 そこで文部科学省にお伺いしたいんですが、文部科学省においては、国立の建物を建てるときは、国有地あるいは公有地を優先的に利用するという方針があるのか、これは国土交通省の答弁と同じかどうか、参考人の方にお伺いいたします。
木谷政府参考人 お答え申し上げます。
 国立組踊劇場を設立するに際しまして、これは国立の劇場ということでございますので、最終的には国がその用地を取得するという方針であったわけでございまして、そのような観点から、確実に国として所要の土地が確保できるということを前提に検討をさせていただいたわけでございます。
 そのような過程におきまして、沖縄県知事の方から推薦のございました二地区のうち、一方につきましては那覇市の市有地でございましたが、もう一方については民有地であったというふうなことから、関係自治体である浦添市長に、確実に国として取得することができるかどうかというような問い合わせを事務的に行いました。その結果、関係自治体である浦添市長から、平成九年十月十七日付の文書で、事前に関係地権者の同意を得ており、浦添市土地開発公社をして先行取得することに何ら問題がない旨の報告を受けたというような経緯でございます。
井上(和)分科員 済みません、質問は、例えば文部科学省の方針として、国立の建物を建てるときは、国有地あるいは公有地をなるべく利用する方針があるのかどうかということなんですね。ちょっとそこに関してお伺いできますか。
 そこのことだけお願いします。
木谷政府参考人 恐縮でございますけれども、現在そのような方針があるかどうかということにつきまして、一般論として、そのような方針があるということは、私は今承知しておりません。
井上(和)分科員 それでは、大臣にお伺いしたいのですけれども、この組踊劇場建設の候補地の推薦ということに関して、当時の沖縄県知事、大田知事から、平成九年六月二十四日付の文書で、当時の小杉文部大臣に文書が来ておりまして、建設候補地として、浦添市の小湾地区と那覇市の天久新都心地区という二カ所を候補地として推薦しています。そして、その文書の参考資料として、「第四回誘致推進検討委員会 建設候補地の絞り込み状況」という文書が大田知事の文書に添付されてきております。この誘致推進検討委員会の日付が平成九年五月二十日、大田知事の最終的な推薦に関しては六月二十四日、つまり、最終的な推薦決定の一月足らず前にこういう会合が行われて、絞り込みが行われたということなんですね。
 この検討委員会の結果を見て、大臣はどういう御感想をお持ちになりますか。その書類をお持ちですよね、お手元に。
遠山国務大臣 これは那覇市の新都心とか幾つかある中で、それぞれ、どういうふうに条件としてふさわしいかということを挙げられたということだと思います。ただ、それぞれの意味の持つ重みとか、そういうことについては、これだけではよくわかりませんですね。こういうことについてさらにブレークダウンしたきちんとした評価が必要ではないかと思いますが、これ自体は、二つの地域を選ぶに際しての根拠になったと思っております。
井上(和)分科員 実は私、先月、沖縄に行ってまいりました。現在組踊劇場が建設中の浦添市の小湾地区というところにも行って、見てまいりました。私は、見て思ったのは、その場所というのは工場地帯であるな、何でこんなところに文化施設をつくるのかなということなんですね。
 帰ってまいりまして、この資料を文部省からいただきまして、推進検討委員会の項目に近隣相乗という項目があって、小湾地区には三角がついている。三角は許容範囲だということを見て、あ、まさしくこの検討委員会も同じ評価をしていたんだなと。つまり、都市計画の用途地域でいけば、小湾地区というのは準工業地帯です。もともと拓南製鉄という製鉄会社の工場があった地域でございますから、周りも工場がたくさんあるという、これからいろいろな意味で開発を行っていこうということは確かでありましょうが、少なくとも、文化的な施設をつくるにはちょっとおかしいなというふうに私は疑問に思いました。
 この決定のプロセスというものに関して私はお伺いしたいのですが、先日の国土交通委員会のときのお話ですと、沖縄開発庁と相談をしたというふうにおっしゃったのですね。具体的に、一体どういう相談をしたのか。つまり、文部省として小湾地区に決定して、それを沖縄開発庁に諮って了承をとったのか、それとも、二つの役所で合同に委員会みたいなのを持って決めたのかどうか、そこの詳細に関して、ちょっと参考人の方にお伺いしたいと思います。
木谷政府参考人 用地の選定につきましては、基本的に文化庁、文部省の責任において行うということでございますので、文化庁、文部省におきまして検討をいたしました。劇場の諸機能を十分に果たす上で必要な用地面積の確保、交通の利便性等々を検討いたしまして、そして、浦添市小湾地区の方が適当であるという結論に達したわけでございます。
 そして一方で、このプロジェクトにつきましては、沖縄開発庁との協力によるプロジェクトでございましたので、そのことについて沖縄開発庁と事務的に連絡をとらせていただいたということでございます。
井上(和)分科員 では、その拓南製鉄の用地と決定した理由と根拠を示した文書というのはあるのですか。
木谷政府参考人 文書といたしましては、最終的には、平成九年の十二月二十日付で、小湾地区に決定をするということで公表をしたわけでございまして、この文書について、双方で同時に公表するというふうなことといたしました。
 なお、その間、両候補地につきまして、先ほど申しました用地面積、交通の利便性等々の状況につきまして比較検討、整理を、内部的な資料もつくりながら、協議をさせていただいたということがございます。
井上(和)分科員 では、内部的に、例えば、私は先ほど言及いたしました、沖縄県が候補地の絞り込み状況というように、各項目において評価をしたようなことをやったわけですね。それに関する文書はあるわけですね。
木谷政府参考人 ございます。
井上(和)分科員 ぜひそれを見せていただきたいのですが、資料として出していただけますか。
木谷政府参考人 御要望でございましたら、後ほど提出をさせていただきます。
井上(和)分科員 実は私も、この組踊劇場のあり方に関する調査研究協力者で、現地視察をやった方に、電話で聞いてみたんですけれども、特に協力者の中でどっちがいいというはっきりした結論は出なかったということなんですね、一長一短であると。
 それ以外に、環境評価調査、交通アクセス等基礎調査というのが行われています。まあ文部省としては土地が広いからということを大きな理由にされているんですけれども、この国立組踊劇場設置候補地に関する交通アクセス等基礎調査報告書、これは県の教育委員会が委託して行われたものですけれども、この今建設が行われている小湾地区という周辺は「基本的に産業・流通地区であり、日常的に一般市民や観光客が来訪する場所ではない。そのため、来訪には特別の動機付けと誘導案内が不可欠である」と書いてあるんですよ。「伝統芸能に接する機会の少ない県内の若者や、伝統芸能に不確実な関心を抱きながら接する機会の乏しい個人観光来訪者などを、伝統芸能へと引きつける力はやや小さいと言わざるを得ない」こういう正式な報告書も出ているから、私は何で小湾地区に決まったのかなというのが不思議でならないんです。
 そして、先ほども面積の大きさのことをおっしゃっていますけれども、三万五千平米というふうにもとは推薦されてきていますけれども、実際に今建設に何平米使っているんですか。
木谷政府参考人 二万四千平方メートルでございます。
井上(和)分科員 だから、つまりは三万五千も要らないわけでしょう。二万四千しか使っていないわけでしょう。
木谷政府参考人 お答え申し上げます。
 二万四千平方メートルということでございますが、先ほどお話がございましたもう一つの候補地の那覇市天久新都心地区につきましては、一万四千平方メートルということで推薦がございました。一方で、この浦添市小湾地区につきましては、最大三万六千平方メートルということでございます。
 そうした中で、私ども、必要な所要面積につきまして、建物の敷地、さらに駐車場、さらには野外の劇場空間等々をかんがみまして、二万四千平米につきましては、劇場用地として国が取得し、組踊劇場を建設するということにさせていただいたということでございます。
井上(和)分科員 那覇市の方は一万三千九百平米ですが、公共モノレールとかほかの交通手段もあるわけですね。ところが、この小湾地区には何にもないから、その分駐車場が必要だ、その分面積が必要だ、そういうことになっている。そしてまた、買収価格というものが私の調査によると坪五十万円。準工業地帯で坪五十万円ですから、これは非常にやはり高い価格であります。
 だから、今後文部省が、文部科学省としてこの土地を正式にお買いになる際には、ぜひ私もその不動産鑑定書というのを見せていただきたいというふうに思っております。適正な価格でこの土地が買収されるということがまずは前提じゃないかというふうに思いまして、私の質問を終わらせていただきます。
山名主査 これにて井上君の質疑は終了いたしました。
 次に、伊藤信太郎君。
伊藤(信)分科員 いろいろな議論がなされているようでありますけれども、私は、文部科学省が所管する基本的な問題について、その根源的な部分から議論を深めたいと思います。
 もともと、教育ということが文部科学省の所管する範疇の中で一番中心的なことにあるわけですけれども、教育ということは、言葉としてはあるわけですけれども、その意味するものというのはやはり使う人によって千差万別なわけですね。これは、時代とともに教育が意味するものというのも変遷を遂げてきたと思うわけですけれども、現代の日本において、文部科学省が所管する立場で教育というものをどのような意味としてとらえているのか、大臣の所見をお伺いしたいと思います。
遠山国務大臣 大変大きな問題についての基本的な御質問でございます。
 突然の御質問でもございますけれども、私は、教育というのは、未来を生き抜く子供たちに十分な力を与える、あるいはその子供が持って生まれたいろいろな才能、能力、そういうものを引き出していく、そういう作用であろうかと思っております。教育の成否いかんが、その子供にとって非常に大きな差異を生ずるのと同時に、その家族にとっても、社会にとっても大変大きな影響があるという意味で、教育、特に学校教育の持つ意味というのは極めて重要だと思っております。
 学校教育というのは、プロフェッショナルである教員が、その持てるわざと力と情熱を持って教育対象である子供から能力を引き出し、そして新たな知識、技術を付加して、そして立派にその将来を歩いていける力を与える、そういう場でなくてはならないと思います。
 いろいろな、ノーベル賞受賞者でありますとかあるいは芸術の最先端を行く方々のお話を聞きましても、ある先生に出会って、あのときあの一言で自分の人生は変わった、自分の将来は決まった、そこで自分のやりたいことが明瞭になっていったというようなことも聞いたりいたします。そのようなことから、教育、学校教育というふうに今限らせていただきますけれども、その持つところの影響及びその重要性というのは本当に大きいなと思っております。
 そういうことを前提にしながら、教育、学校教育の充実のために、特に新年度になりまして新しい学習指導要領のもとで、全国の公立、国立、私立の学校が持てる力を十分に発揮してすぐれた教育を展開してもらうように、私どもとしても打つべき条件整備を精いっぱいやっていきたい、そういう心情で今取り組んでいるところでございます。
伊藤(信)分科員 私どもは幾つになってもだれかの子供なわけですから、そういう意味で、大臣のおっしゃったことは、生涯教育も含めて子供たちということだろうと思うわけですけれども。
 教育の歴史というものをひもとくと、もともと、現代に言われているような学校制度というのが始まったのはここ数世紀のことだろうと思うんですね。
 もともとは、それぞれの社会集団やあるいは地域において、生きるいろいろなわざや知識、訓練等を適当な方が、時には村の知恵者だったり狩りの名人だったりあるいは宗教者であったり、そういう方が知恵や知識を後進や同輩に与えたり、あるいはそういう訓練の場をつくったということが、近代工業社会あるいは宗教制度の変化の中で、今で言う職業としての教員というものができたりあるいは組織としての学校というものができて、今日の近代的な教育システムというものができてきているんだろうと思うんですね。ただ、今日、いろいろな教育の問題を考えたときに、どうもその原点のところからの乖離というものがあるのではないか。
 つまり、現在の教育者というのは、いわゆる教育学部とか教育大学などを出て、十分な広範な社会経験というものをしないまま、教育者になる。したがって、今大臣がおっしゃられたように、教育というのは私は二つあると思うんですね。一つは知識とか知恵なりあるいは訓練の場をつくるということもありますけれども、教員自身が生きるモデルというものを生徒学生に示す、教員の生きざま自体が一つの教育であるということだろうと思うんですね。すべての方が教員になるわけではありませんので、教員経験しかない方が教員であるということが、モデルをつくるという意味で大変私は問題だろうと。
 これからやはり私は水平的な人事というものが大変必要だと思うんですが、質問通告をしていないところでありますが、その件について大臣の所見をお伺いしたいと思います。
遠山国務大臣 本当にすぐれた教員を得るということは教育行政の中でも主要な柱だと思っております。そのためにいろいろな工夫がなされてきたわけでございますけれども、やはり、養成段階、ここで、単に教科の中身だけ教えるということではなくて、教育方法も含めて、教師のあり方、あるいは、常にみずからも研さんしながら教える場に臨むような姿勢でありますとか、あるいはそういういろいろなカリキュラムの工夫も要ると思いますし、また、その教師の卵を教える先生自体も大問題だと思っております。そこのところは、しっかりしていただきませんと、これから教員になる卵に対してしっかりした姿勢も教えられないのではないかと思っております。
 さらに、採用についても、単に、どの学校を出てきた、あるいは免許状を持っているというだけではなくて、その人物が持つ情熱でありますとか、あるいは特性でありますとかそういったものも、あるいはその人の人柄も含めて、しっかりした見地から採用に当たってもらいたいと思います。
 同時に、一たん採用したらおしまいということではなくて、常に研さんを積んでもらわないといけないわけでございますけれども、研修というものをもう少し制度的にやる必要があるというふうに思っておりまして、新たに、今、法案を提出させていただいておりますけれども、教員になって十年たった人たちにしっかりした研修をやってもらう。それぞれその人の持っている能力のレベルに応じてでございますけれども、そういう研修もしっかり課していくというふうなことで、その三段階を通じてやっていくのと同時に、今、伊藤委員まさにおっしゃいましたように、単に学校の場だけにいるのではなくて、学校の先生が外に出て社会体験をしてもらう。
 ほんの少しスーパーマーケットで何かレジをやっただけでも、その人の教え方、人間理解というのも随分変わってくるようでございますし、より専門的ないろいろな能力を要するようなところに行って働いていただけば、なおその波及効果も多いわけですが、そういった、教師自体が外に出る、あるいは上級の学校に行って、大学院に行って学んでもらうという手もございますし、外の、社会人が学校に来て、そしてその人の持てる経験を学校の場で披瀝することによって、あるいは見せることによって、教員の世界にも大きな刺激を与えられるのではないか。
 そういったことを、これまでは免許状を持った教員が学級王国をつくり閉じた社会であったものを、より広く開かれた学校として、社会の大事な存在として位置づけ、またそれを活性化させるためのいろいろな方策を今後やっていく必要があると思っておりますし、昨年度から始まったいろいろな教育改革の制度によりまして、そのことに向けて着実に今歩み始めていると私は思っているところでございます。
伊藤(信)分科員 大学のミッションのもう一つに、教育のほかに研究ということがもちろんうたわれているわけでございますけれども、研究というのはどのような定義でお考えか、御所見をお伺いしたいと思います。
遠山国務大臣 そのことについては深く研究しなきゃいけないのではないかと思いますけれども、私は、大学における研究というのは、一番の基礎は、やはり研究者自体がみずからの発想を持って、そして萌芽的な分野であってもそれに興味を持って、そして努力を集中しながら新たな知見を加えていくというのが一つあろうかと思います。
 それからもう一つは、すべての人が創造的に新たなテーマを設けて研究をしていくというわけにもまいらない分野もあるわけですね。例えば人文・社会科学系のような分野のある科目などにつきましては、古来から蓄積されてきたいろいろな知見というものを十分にみずから学んだ上で、さらに、現代において一体どういうことがつけ加え得るかというような視点からも勉強していただく必要があろうと思っております。それはそれで意味のある、人類の英知の継承であり、かつまたそれに付加していく何らかの作用であろうかと思っております。
 いずれにしましても、研究というのは、大学における研究ですけれども、研究者のみずからの発想というものを大事にしながらやっていく必要がありますが、今日においては、ただ自己満足で、よいペーパーを書いたというだけでは私は十分でないと思っております。そのみずからの研究を通じて、いかに社会をよくしていくか、あるいは社会に貢献していくかという視点もぜひ加えながらやっていただきたいと思っておりますのと同時に、私はもう研究大事だと言ってきた者でございますけれども、今の時点では、大学は教育をしっかりやってもらいたいというのが本音でございます。
伊藤(信)分科員 私、文部省が科学技術庁と合併したといいますか融合したということには、時代的な意味があると思うんですね、今の話にも関連すると思いますけれども。
 そこで、科学技術庁ということ自体が科学と技術という二つのタームがインテグレートしているわけですけれども、この科学ということと技術というものを、どういうふうな差異、どういうふうな相違、あるいはどういうふうなとらえ方の違いでお考えか。御所見をお伺いしたいと思います。
遠山国務大臣 恐らく、伊藤委員御自身が何らかの概念をお持ちで聞いておられるのではないかと思うわけでございますけれども、サイエンスというのは、真理の探求というものを目指した作用であると私は考えておりまして、大学における学部でいえば理学部を中心としての研究であろうかと思いますし、技術というのは、そういういろいろな知見というものをベースにしながら、それを応用といいますか、技術という作用に昇華させて、そして、製品であり、あるいは今日ではソフトの面も入ってまいると思いますけれども、もう少し人間の生活に役立つといいますか、いろいろなわざというものを体系化した上で生まれてくる何らかの研究成果といいますか、そういうものではなかろうかと思います。
 サイエンス・アンド・テクノロジーと言われますが、私もそれほど深く今までそのことについて考えたということはございませんけれども、それほど明瞭に区分できない面もあろうかと思います。しかし、その双方の根源にあるものは、それなりに、真理の探求と、やや応用的な分野でテクノロジーといいますか、そこの結果を構築していく、そういう分野との差異はあろうかと思いますけれども、しかしいずれにしても、知見というものをふやし、かつそれを社会に応用していくという面で、サイエンス・アンド・テクノロジーというものの持つ重要性については、優劣はないのではないかというふうに考えております。
伊藤(信)分科員 それでは、融合がなったところの文部科学省において、国立大学あるいは国立の研究所における研究というものを、今おっしゃられた科学と技術のどのようなバランスの中で進めようとなさっているのか、お考えをお聞かせください。これも質問通告しておりませんが。
遠山国務大臣 どこかに御質問あるのかなと思って見ておりましたら、どうもなさそうでございます。
 私は、これは科学技術政策の中でかなり明快なことだと思っておりますけれども、今、科学技術政策で重要なことは、四本の柱だと考えております。
 一つは、基礎的な学術研究といいますか、最初に御質問にありましたような、研究者の自由な発想をベースにしながら伸ばしていくそういう新たな知見、あるいは独創的な作用というものを大事にしていく基礎研究の振興というのが一つでございます。
 それから二つ目には、科学技術の振興、技術の方の振興ということになりますけれども、これはそういう基礎研究をベースにした上で、より応用的といいますか、社会に裨益するような重点的な事項、重点的な研究分野というのをしっかりやっていくというのが二番目の柱でございます。この中には、バイオテクノロジーないしナノテクノロジー、それからIT、情報通信関係、それから材料、ナノ・材料、それから環境というのが今四つの分野になってございまして、これらはかなり重点的に投資をして成果を出していくべきものとして取り上げております。
 さらに、国家としてどうしても保持し、あるいはそれを伸ばしていくべきものとして、一つは宇宙の開発がございます。宇宙開発利用によって、それは産業に裨益するというだけではなくて、これは知見を増していくという宇宙科学の分野もございますし、それから、情報衛星とか気象衛星とか、そういうものを通じて国民生活に安定を及ぼし、あるいは国民生活をより豊かにしていく、そういう分野もございますから、宇宙は大変大事だと思っておりますし、さらには、原子力のように、今日のエネルギー問題に対応して、これは国家として取り上げなければ、民間にだけお任せしていては十分にこたえられないような分野というのはあると思います。そのほか、海洋の問題でありますとか、いろいろな分野がございますが、それは国家として正面から取り上げて十分に対応していくべき分野があろうかと思います。
 それからもう一つは、そういったいろいろな大学における研究、研究所における研究あるいは民間のいろいろな研究、そういったものを円滑にしていくための、科学技術のためのシステムを改善していく。そういう四つのことが、今、我が科学技術政策の基本になっているわけでございます。
 私は、そういうものもやりながら、本当は、重点分野というのは今四分野ございますけれども、それは各国ともに取り上げている四分野なんですね。いかにも後追いで残念でございまして、この日本が半世紀後に世界でもさらに冠たる国として生き残るには、各国がまだ考えていないような分野を、これを切り開いていく必要があると思っておりまして、その面で一体何ができるのかというようなことは科学技術の普通の政策には上ってまいらないわけでございますけれども、そういったことも追求していくということを、我々担当者としては常に念頭に置きながら、この問題に対処していく必要があると思っているところでございます。
伊藤(信)分科員 具体的な学問のディシプリンにもお触れいただいて、ありがとうございます。
 そこで、文部科学省の所管するものでもう一つ重要なものに、文化というものがあると思います。大臣もかつて長官を務められたと思います。きょうは文化に特に造詣の深い政務官もお見えでございますけれども、この文化というものをどうとらえるのか。これもなかなか哲学的な命題ですが、所見をお伺いしたいと思います。
池坊大臣政務官 文化をどうとらえるかというのは、突然の御質問で、大変難しいとは思いますけれども、ノーベル化学賞をおとりになりました野依教授が、科学は芸術の活動に似ている、無から有をつくり出す作業は、これは芸術活動である、美しいものを美しいと思う心がなければ科学者としては失格であると言っていらっしゃいます。
 文化というのは、つまり、人間が生きてまいります過程の中で、どのように美しいものを美しいと思い、そして、豊かな感性を持ち、独創性を持ち、すぐれた自分の柔軟性でさまざまなめぐり会っていくものに対して呼応していく、その心を養っていくものではないかと思っております。
 ですから、学問的にどういうふうに位置づけられるかと言われますと、大変難しいと思いますけれども、私は、学問の基礎になるのもやはり文化ではないか。つまり、その人間の精神生活のありようが文化なのではないかと思っておりますので、教育現場におきましても文化を、文化といいましても広いと思います。例えば、芸術活動もそうです。それから、ハイキングをしながら美しい空を見て感動するというのも一つの文化ではないかと思います。人間の生きざまも、それからしぐさ、身のこなし、これも文化だと思っております。
 ですから、そういうのも全部ひっくるめまして、そういうことを学校の中で、地域社会の中で、家庭の中で教えていくことが必要だと思いますし、それがいい学問や科学技術の発展にも結びついていくというふうに思っております。
伊藤(信)分科員 私は、文化という言葉が、戦後の日本において非常に矮小にとらえられてきた、あるいは非常に捨象した小さな概念でとらえられてきたと思いますね。
 文化という言葉と英語のカルチャーという言葉が同じかどうかわかりませんけれども、もしそうだとすれば、このカルチャーという言葉はもともとコルトーレというラテン語から来ておりますね。コルトーレということは、つまり耕すということですから、要するに、人間が農耕社会に入って自然への働きかけの後で獲得した物心両面のすべてが文化。当然、その文化の中には、政治、宗教、それから習慣、言語、あらゆるものが入るわけですね。
 ところが、戦後、教育基本法あるいは憲法、また日本を取り巻く政治環境の中で、文化という部分から宗教というものを捨象したというところに、現代の精神体系の大きなインバランスといいますか、いびつな格好が私はあるんではないかなと思うんです。
 そこで、文化庁長官をやられた大臣を前にして恐縮ですけれども、これからの文化行政というのは、単に、絵画とか伝統芸能とかそういったものを振興したり、あるいは既に生まれた文化芸術を保存するということにとどまるのではなくて、私が言った本来の文化の意味も含めて、文化というのはもともと教育、研究、そして自然科学も含めた真理探求と密接に結びついた概念だと思うんです。そこのところをやはり再構成してしないと、どうも文化という言葉が非常に軽佻浮薄に聞こえるというのが私の実感でございます。
 そういうことに関して、また文部科学省が、文化庁も含めて、究極的な政策目標というのをどこに置いているのか。日本の国民の文化、教育、研究、科学技術というものをどこに持っていこうとしているのか、そのベクトルなりスタンスについて御所見をお伺いしたいと思います。
池坊大臣政務官 議員がおっしゃいますように、文化というのは自然に対比して使われる言葉でございます。ですから、私が読みました亀井勝一郎さんの御本によりますと、野菜は、これは人間の手が加えられ、心が加えられているから文化である、だけれども野草は、これは自然であるというふうに私は認識いたしております。
 教育の現場の中で、文部科学省が文化をどうやって位置づけるか。広範にわたって文化というのはございますから、私は、何において文化を教えるということではなくて、教える先生が、文化というのはどういうものかということを認識して、さまざまな教育現場の中で教えることが、一番子供たちにとっては文化というものが醸成されるのではないかと思っております。
 先ほども申し上げましたように、身のこなし、しぐさも文化だと思っております。それから、私が日々向かい合っておりました日本の伝統文化も当然文化でございます。ですから、これという授業とか、こういう定義でということは難しいのではないか。
 むしろ、すべてにおいて、数学の時間も、それから、今度採用されます総合学習が百十時間ぐらいございます、その中においても文化というのを意味づけて、きちんと教えていきたいというふうに思っております。
伊藤(信)分科員 それでは、少し個別の議論に移りたいと思います。
 今度、国立大学の独立行政法人化というものを進められているところでありますけれども、現代の日本において、国立大学のレーゾンデートルといいますか、存在理由というのをどこに最重点を置いて考えていられるか、大臣の所見をお伺いしたいと思います。
遠山国務大臣 先般、法人化の最終報告が出まして、その後に、国立大学長それから国立大学共同利用機関の長にお集まりいただきまして、新たなこれからの展開について話をする機会がございました。
 そのときにお話ししましたのは、長いから割愛させていただきますけれども、国立大学といいますか大学というのは、そもそもすぐれた人材の養成にかかわる教育を充実していくこと、そして、独創的な研究なりこれまでの研究の継承なりといったことをしっかりやっていくこと、同時に、社会的な貢献をすることというのが、もちろん大学にとって大事でありますけれども、国立大学は特に、私は教育の面では、例えばその卒業生たちが、国家及び社会に対する信頼感を持った人材をしっかり育ててくれ、そして、国際的にも雄飛し得る人材を育てるべきではないか、であってこそ国民の税金を使っての国立大学ではないかという呼びかけもいたしました。それから、研究についても、真に独創的な、世界の知をさらに進めるような研究をしてほしい、そして、社会貢献についてはもちろんのこと、そういったことをやるというのが私は国立大学であろうかと思います。
 その角度からいうと、これまでの国立大学というのは、まあ大学によって違いますし、担当の教官によっても違いますし、いろいろな千差万別ではございますけれども、トータルとして見た場合に一体どうであるのかということをよく考えてほしい。そして、もちろん国立大学が、大きな総合大学ばかりではないわけでございまして、各地において、それぞれの地域における知的な拠点として活動しているところもありますが、そういったところがさらにその機能を十分に発揮してもらいたいということもお話をいたしました。
 そのようなことを本当に達成するために法人化というものが使われなくてはならない、そのためでなければ再編統合も意味がないわけですし、そのことをしっかりとお伝えいたしまして、これから一年、二年の間が日本の国立大学の今後を左右する大変重要なときだと思っております。
 それは、国立大学のみならず、公立、私立にももちろん影響を持つ大変重要な時点だと思っておりまして、国立大学の関係者には殊に、国費を投入されての存在でございますので、そこのところをしっかり認識してもらいたいという気持ちで先般お話ししたところでございますし、そのような認識を今後とも持ち続けて、それを具体化するための方策を私どもとしても努力していきたいというつもりでございます。
伊藤(信)分科員 大分質問時間が残り少なくなってきましたので、短くお答えいただきたいと思います。
 今の関連で申し上げますと、パリで五月革命が起きたときに、実存主義者であるサルトルでさえも、大学の民主化というものは唱えたわけですけれども、エコール・ノルマル・シューペリウールのようないわゆるエリート教育、ENAのような学校の存在は否定しなかったわけですね。
 私は、戦後の大学制度を見て、やはり現在の大学制度が、いい意味でのエリート教育、あるいは今おっしゃられたような社会的使命を持った人材の養成という役目を必ずしも十分に果たしてこなかったのではないかなという考えを持っているわけですけれども、エリート教育の必要性、あるいはそのフランスの大学校のような存在の可能性について、大臣の所見を短くお聞かせください。
遠山国務大臣 エリートという概念そのものが、かなり議論をしないと、いろいろな問題をはらむと思っておりますけれども、しかし、やはり国を左右する、いろいろな分野でそういう力を持った人材を育てていくということは大変大事だと思っております。
 すべての大学に期待するということではなくて、私は、大学の個性化というのをもっと図っていくべきだと。大学によっては、自分の大学は本当のエリートを育てていくんだということを明示してやっていただいて、それはそれで私は大学としてあるべき姿だと思っております。そういうふうな個性化、多様化を通じて日本の教育、研究というものをさらに高度化して、そして、本当に日本を担っていくような人材が育っていくように、私はこれからはそういうふうなことも十分考えていかなくてはならないと思っております。
伊藤(信)分科員 最後に、短く一問だけ。
 今度は私立大学のことでございますけれども、私立大学に対する助成というものを、いろいろこれから傾斜配分をしていくという必要性があると思いますけれども、その場合、どういうクライテリアでやっていくのか。果たして研究業績を中心に傾斜配分をしていいのかどうか。私は、大学の存在理由というのはやはりいろいろあると思うんですね。その多元的な価値というものを実際の助成額の査定の中でどのように生かしていくのか。その辺のお考えを短く、最後の質問になりますけれども、お聞かせください。
遠山国務大臣 まさにそうだと思います。教育、それから研究、社会貢献、そういった多元的なものを評価していかなくてはならないと思いますが、日本ではまだ評価機関が十分でないということがございます。その評価機関の充実ということも含めて、今御指摘のような広い視野での、また、本当にその大学がよくなるための評価というものを通じて、その施策を展開していかなくてはならないと思います。
伊藤(信)分科員 ありがとうございました。これで質疑を終わります。
山名主査 これにて伊藤君の質疑は終了いたしました。
 次に、三井辨雄君。
三井分科員 民主党・無所属クラブの三井辨雄でございます。大変、大臣、副大臣、御苦労さまでございます。
 きょうは、特に障害児の就学問題についてお聞きしたいと思います。
 先ほど第一分科会で質問してまいりました。ことしの十月に開催されますDPI、障害者インターナショナル世界会議の札幌大会への政府の取り組みについて質問してまいりました。
 障害者の社会参加の促進に向けた記念すべき大きなイベントを何としても成功させたい。また、障害当事者がみずから汗を流して、開催地の自治体である北海道や札幌市の惜しみない協力を得ながら、障害者の完全参加と平等の考え方を、日本の国内はもちろん、アジア地域、世界へと発信していくために、大変御努力を積み重ねておられます。
 こうした機運の根底には、政府の障害者プランを推進する政策があることは言うまでもありません。政策的取り組みとして、障害者の欠格条項の見直しのもとに、本年は内閣府から、障害者に係る欠格事由の見直しのための関係法律の整備法案が提案されております。また、さかのぼっては、昨年六月、障害者等に係る欠格事由の適正化等を図るための医師法等の一部改正案が成立しました。
 その際に、私も厚生労働委員会で質問させていただいたわけでございますが、そのときに具体的な事例といたしまして紹介したのが、薬剤師の国家試験に合格していながら、耳が不自由なために免許が付与されないという早瀬久美さんのケースでございます。彼女にとっては、薬剤師の国家試験や免許を取得する前の段階で、聾障害があるために進学問題、大学受験で門戸を閉ざされた、十の大学に問い合わせしたけれども、受け入れしてくれたのはわずか一校であったということでございました。まことに残念な教育事情が改めて浮き彫りにされたわけでございます。
 そこでお尋ねしますが、現在、全国の国公立、私立を含めて、一体どのくらいの大学で障害者の方を受け入れているんでしょうか、大臣にお答え願いたいと思います。
工藤政府参考人 今お話ありましたように、各大学の受け入れ方針でございますので、まちまちではございますが、いろいろな障害をお持ちの学生さん方を、平成十三年度入試で見ますと、国立大学では四十大学、公立大学受け入れ十七大学、私立大学では百九十四大学の、全体としまして二百五十一の大学で障害を有する学生さんを受け入れてございまして、実際入学手続をされた学生さんの数は五百三十四人と承知してございます。
三井分科員 世界的な流れといたしましては、国連の障害者の機会均等化に関する基準規則や、特別なニーズ教育に関する世界会議のサラマンカ宣言など、治療を重視した分離教育ではなくて、社会的な関係を重視する統合教育へ向かうべきとされております。
 このような状況の中で、文部科学省は、特殊教育のあり方をどう改め、どう進めていこうとしているのか、大臣にお尋ねをしたいと思います。
遠山国務大臣 近年、ノーマライゼーションの理念の普及によりまして、世界各国では障害者の自立と社会参加を目指す取り組みが進められておりまして、障害のある子供に対する教育につきましては、国連やユネスコにおいて統合教育の考え方が提唱されているところでございます。
 しかし、統合教育につきましては、その理念や内容が国や地域などによってさまざまでございまして、欧米を中心として行われております統合教育は、障害のある子供について可能な限り通常の学級で教育を受けることができるようにする、しかし同時に、児童生徒の障害の状態に応じて、特別な学校、学級における指導を行うことと理解をしているところでございます。
 我が国としましては、障害のある児童生徒がその可能性を最大限に伸ばして、自立し、社会参加するために必要な力を培いますために、障害の種類や程度に応じて、盲・聾・養護学校や特殊学級において、特別な配慮のもとに、より手厚く、きめ細かな教育を行うことが必要であると考えているところでございます。
 我が省といたしましては、このような考えに基づいて、今後とも、障害のある子供の教育が十分に行われますよう、充実に努めてまいりたいと考えております。
三井分科員 いよいよきょうから、四月八日、新学期が始まりました。また、明後日の十日には入学式を控えております。地域によっては若干違うと思いますが、緊張と期待に子供たちは大変胸を膨らませております。しかし、人生の新たなスタートラインに立って、素直に喜びを持って迎えることもできない、複雑な気持ちで迎えた親御さんもたくさんいらっしゃると思います。
 先ほどは大学の進学例を申し上げましたが、今度は高校進学を控えた少年の事例をちょっと御紹介したいと思います。
 私は、地元、札幌でございまして、北海道でございますが、石狩市に住む余湖正宗君という、ことし高校へ入られた方がいらっしゃいますが、生後十一カ月で筋ジストロフィーと診断されました。御両親は、本人の意欲がある限り地元の学校で学ばせたいと、小学校入学時に石狩市教育委員会に相談いたしました。養護学級に在籍しましたが、市教委が配置した非常勤職員の介助を受けながら、小学校、中学校に通ったわけでございます。
 中学では、体育以外の大半の授業を普通学級で受け、日本史と理科が大変お好きだということでございます。また、日直もこなし、修学旅行にも参加したということでございます。
 高校の進路希望では、一時養護学校も考えたようなんでございますね。しかし、本人の活動の幅を広げたいという大変意欲的な希望で、自宅近くの道立高校を受験し、合格しました。
 問題は、この後の、入学後の措置についてですが、親御さんは高校への介助者配置を北海道教育庁へ要望しましたが、道教委は受験前から、前例はない、施設の改修はできるが、人員的な面から、現状では介助者の配置は難しいとの態度であったということでございます。
 この障害児の就学にかかわって、障害を持つ子をサポートする介助員について、文部科学省はどのように把握なさっているのでしょうか。特に、介助員の制度を導入している自治体の例があれば御紹介していただきたいと思います。
矢野政府参考人 介助を必要といたします障害の重い生徒につきましては、私ども、基本的にそういう生徒は盲・聾・養護学校において教育を行うことが適切であると考えるものでございます。そして、これらの学校には、介助員を配置するための経費を地方交付税で措置されているところでございます。
 お尋ねの件でございますが、現在、一部の高等学校におきましては、教育委員会の判断で介助員を配置して、介助を必要とする生徒を受け入れているということは承知しておりますけれども、それぞれの自治体が導入している具体的な制度の実態は、私ども、把握をいたしておりません。
三井分科員 残念ながら介助員の実態については把握されていないということでございますが、介助員については、なかなかボランティアをやる方もいらっしゃらない。また、ボランティアの方にお手伝いしてもらっても大変お金がかかるということが実態でございます。
 それでは、もう一つ事例を御紹介させていただきます。
 四月二日の東京新聞の社会面のコラムでございますが、これは、東京都西東京市の川田泰寛ちゃん六歳、肢体不自由児、着がえは一人ではできない、でも、泰寛ちゃんにとって学区内の小学校の普通学級に入学するのは当たり前のことだ、保育園の友達はみんな同じ小学校に入る、市教委も普通学級への入学を許可した、ところが、介助者はそちらで手当てして、お母さんは出産したばかりです、無理な注文だ、障害を持つ子の学習の場は普通学級なのか養護学級なのか、賛否はともかく泰寛ちゃんの気持ちを大切にしてあげたいというコラムでございました。
 全国には、障害があっても普通学級で友達と一緒に学びたいという思いを持っている子供たちがどれだけ多くおられるか、文部科学省の皆さんは御存じなのでしょうか。この介助者の問題がクリアできれば、子供たちは自分の志によって人生を選択できる機会を得ることができるのであります。先ほど紹介しました筋ジス少年の余湖正宗君が伸び伸びと学ぶことができれば、未来のホーキング博士になるかもしれない。そういう可能性を持った子供たちのしっかりとしたこういう保障を引き出してあげるのが文部科学省の責任だと思います。
 そこで、問題になっているのが学校教育法施行令を改正する政令案でございます。既に昨年末からことし初めにかけて改正案のパブリックコメントを求めたとのことですが、現在どのような検討状況にあるのでしょうか、御答弁をお願いいたします。
池坊大臣政務官 先ほど三井委員が、障害児を持った両親のいろいろな要望に対してどれだけ理解を示しているのか、あるいは現状を把握しているのかというお話でございました。私は、数多くの保護者の方々とお目にかかっておりますので、そういう保護者の気持ちはしっかりと把握していると思っております。
 パブリックコメントのお話でございますが、今、八百、来ております。事務局で整理を行っているところでございます。例といたしましては、就学基準については、医学、科学技術の進展等の観点から適切な見直しが行われているという、評価した意見もございます。あるいは、知的障害者の規定の表現について修正が必要、そういう意見もございます。また、就学基準は障害のある子供を分離する考えに立っており、反対である等々ございます。
 また、就学手続におきましては、市町村教育委員会が小中学校において適切な教育を受けることができる特別な事情があると認めた場合に小中学校への就学を認めたことを評価する意見もございます。また、障害のある児童生徒も小中学校へ就学することが原則であり、特別な事情があると認める場合に限ることは問題とする意見と、あるいは、特別な事情の内容があいまいであり、市町村教育委員会が安易に特別の事情があると認めることのないような対応が必要等々、たくさんの意見が出されております。
 また、学校の施設設備のバリアフリー化や、本人、保護者の意見を聞くこと、就学指導委員会の位置づけを明確にすることなどの意見がございますが、それらの意見を事務局で整理を行いまして、できる限り早く具体の制度の改正の内容を決定して、政令改正を行うことにしていきたいと思っております。
 平成十五年度の入学者に新しい制度を適用する予定でございますので、また、パブリックコメントはきちんと整理いたしまして、その考え等を公表する予定でございます。
三井分科員 今政務官がおっしゃったように、この改正案をめぐっては、大変いろいろな御意見が多数寄せられていると思います。
 特に、就学手続の改正部分で、就学基準の見直しで、盲・聾・養護学校の対象となる障害のある子供であっても、特別な事情がある場合、政務官が今おっしゃいましたが、小中学校に就学させることができる、普通学級に措置することも認められるとした点です。
 特に、この特別の事情とは何を指しているのかお伺いしたいと思いますと同時に、その解釈をめぐり、この施行令の改定によって、普通学級へ通えない子を法令で規定することになるのではないかという心配も一方あるわけでございます。一人一人のニーズに対応した教育への方向に逆行していくのではないかという指摘でもあります。この特別の事情を設けることは、一方で、特別の事情に当てはまらない、対象にならない子供を明確に位置づけることにはならないかということの文部科学省の御見解をお聞きします。
矢野政府参考人 就学基準に該当いたします児童生徒は、盲・聾・養護学校へ就学することが基本的な考え方であるわけでございますが、同様の障害がありましても、例えば、専門性のある教員の配置あるいは施設設備の整備状況等によりましては、小中学校におきまして、適切な教育を受けることができると認められる場合があるわけでございます。
 今回の制度の見直しは、社会のノーマライゼーションの進展や教育の地方分権の観点から、一人一人の教育的ニーズに対応した教育的支援の充実が図られますように、市町村の教育委員会が行います就学事務に関して弾力化を行おうというところにそのねらいがあるわけでございます。
 そこで、個々の事例におきまして、お尋ねの特別の事情に該当するかどうかの判断は、これは、あくまでも市町村の教育委員会が、当該児童生徒の障害の状態に照らして、個々の学校の状況等につきまして、適切な教育を受けることができるかどうかの観点から総合的に判断されるべきものというふうに私どもは考えるものでございます。
三井分科員 今御答弁いただいたわけでございますが、まさにこれは、全国の教育委員会あるいは学校長が事例ごとに実態的な判断を下していくことになると理解してよろしゅうございますか。
 そこで、この教育委員会と学校長との間で非常にいろいろな問題が起きているわけでございます。例えば、教育委員会が就学を認めようとしても、学校長がお断りするという事例が結構あるんです。私も聞いております。ぜひこの辺の教育委員会あるいは学校長とのきちっとした連絡をしていただきたい、あるいは判断を下していただきたいということをお願い申し上げたいと思います。
 もう一つここで紹介したいのですが、これは幼稚園でございます。札幌市内の幼稚園の園長先生のお話でございます。
 三月時点で、自閉症児が二名、先天性心疾患が一名、脳性小児麻痺による歩行困難な肢体不自由児一名が在園しております。昨年度、一昨年度は、ADHDの子供も受け入れ、それに見合った保育体制をとってきました。
 こうした障害を持った子供たちが卒園し、小学入学に当たって、親の希望と学校側の対応の調整がかなり難しかった、また、園長自身が、小学校の担当者との話し合いでも、学校の対応は積極的に受け入れるという姿勢が感じられないという、先ほども申し上げましたが、そういうケースが多々あるということでございます。
 そこで、健常児との生活の中で学習させたいという親の願いがかなわない理由として、国を含めた行政サイドの、一つとしては、指導者、介助者配置の人的費用の問題だ、二つ目といたしましては、障害児のための施設改善が行き届いていない、それぞれの予算措置が十分でない点に問題があるのではないかということを指摘しておりました。
 今後、予算措置にかかわる文部科学省として、検討していくことはできないのかどうか、お尋ねしたいと思います。
池坊大臣政務官 今委員がおっしゃいましたように、今回の就学指導の制度の見直しは、教育の地方分権の考え等を踏まえて行ったものでございます。
 市町村教育委員会が、必要とする条件整備の内容も考慮の上、障害のある児童生徒が特別の事情により小中学校に就学することについて判断すべきものと考えておりますが、文部科学省は、従来より、障害のある児童生徒などがいる学校や特殊教育諸学校と交流を行っている学校のみならず、地域コミュニティーの拠点として施設を整備する学校についても、設置者が行うエレベーターやスロープ、自動ドアなどのバリアフリー施設整備の経費の一部を国庫補助しているところでございます。これからもそれは進めてまいりたいというふうに思っております。
 また、介助を必要とするような障害の重い児童生徒については、基本的に盲・聾・養護学校において教育を行うことが適切であり、これらの学校には、介助員を配置するための経費を地方交付税で措置しております。
 国といたしましては、小中学校へ介助員を配置するための財政措置は講じておりませんけれども、三年間で五万人の社会人を採用いたしますいきいきプランというのがございます。緊急地域雇用創出特別交付金、これらのものを利用したならば、社会人の方々が介助員として小中学校で障害者について学校に行かれるということも可能ではないかと思いますので、それぞれの地方自治体で創意工夫していただけたらうれしいと思います。
三井分科員 私も、きょうの質問に当たりまして、文部科学省の担当者から立派な資料をいただきました。しっかりとした御説明もありました。
 いただいた資料には、乳幼児から学校卒業まで一貫した相談支援体制の整備、障害のある子供やその保護者等に対する相談と支援を行うための一貫した体制を整備することが必要であると記されております。
 ぜひこのとおり実行していただきたいということを強く要望しておきますが、この実現方について、どのようなスケジュールなり計画を持って進めようとお考えなのか、お示しください。
池坊大臣政務官 ノーマライゼーションの進展に向け、障害のある児童生徒等の自立と社会参加を社会全体として生涯にわたって支援することは、大変必要なことだというふうに思っております。
 また、近年、障害の重複化や多様化に伴い、ただ教育だけではございませんで、教育とか福祉、医療などにまたがるさまざまな問題について相談を求めたいという保護者の意見が強くなってきております。
 このような保護者の声にこたえますために、平成十三年度から二年間の計画で、四十の道府県に委嘱して、医療、福祉関係機関と連携した相談支援体制の整備を推進するための教育相談体系化推進事業を行っております。
 また、盲・聾・養護学校については、平成十一年三月に改定した幼稚部教育要領において、新たに、三歳未満の早期からの教育相談について、各学校の専門性や施設設備を生かした地域における特殊教育に関する相談のセンターとしての役割を果たすよう努めることが規定されております。
 今後とも、このようなことに対して、さらに、一人一人のニーズにこたえられるような、迅速かつ丁寧に、きめ細やかな相談体制に努めていきたいと思っております。
 保護者の方々はたくさんの悩みを持っていらっしゃいますので、適切な教育の場と可能なサービスを提供できるようにというふうにしてまいりたいと思っております。
三井分科員 ぜひ可能なサービスを心がけていただきたい、こういうぐあいに思うところでございます。
 私も長年、医療と福祉の世界に携わってまいりました。高齢者のための介護保険制度も、十分とは言えませんが、現在整いつつあるところでございます。また、一般的にも、大人の障害者にはガイドヘルパーやあるいはホームヘルパーが派遣され、ノーマライゼーションの実現に向かっているわけでございますが、なのに、学校教育ではなぜこのヘルパー、介助員の派遣を容易にしないのか。合格した子供が門前払いにされるも同然で、子供の心は相当傷ついていると思うのですが、また親御さんも相当傷ついていると思います。これについてはいかがでしょうか。
 また、今回初めて、私、教育分野の質問をさせていただいたわけでございますが、基本的には、だれでも、本人はもちろん、親の意思を含め、教育の機会均等は教育基本法に基づいて保障されなければならないということは、あえて取り上げるまでもないはずであります。現在の特殊教育イコール分離教育のままでは、障害者と教育の間に、また障害者と健常者の間に垣根が残ったままになってしまうのではないかということを心配するわけでございます。障害のあるなしにかかわらず、教育を受ける機会を、またその選択肢を政府、文部科学省は保障しなければならないと思いますし、このような感想を述べさせていただきまして質問を終わりますが、最後に大臣の御見解をお聞かせ願いたいと思います。
遠山国務大臣 障害のある児童生徒に対する教育につきましては、文部科学省はこれまでもいろいろな政策を積み重ねてまいったわけでございまして、資料をごらんいただいたそうでございますので、御理解いただいたと思っております。
 その子供にとって、どういうところで、どういう教育の機会が与えられれば本当によいのかということをしっかり考えた上で、それぞれの置かれた状況に応じて手厚い教育を今後やっていく必要があろうかと考えているところでございます。
三井分科員 ぜひよろしくお願いを申し上げます。
 これで質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
山名主査 これにて三井君の質疑は終了いたしました。
 次に、東祥三君。
東(祥)分科員 遠山大臣、岸田副大臣、池坊政務官、御苦労さまでございます。初めて遠山大臣に教育問題について質問をさせていただきます。三十分でございますので、御辛抱していただいて、よろしく御所見を伺いたいと思います。
 本日、小学校の入学式に行ってまいりました。六歳、七歳の二十一世紀の主役になるその姿を見て、本当にすがすがしい思いになりました。他方、今、日本の種々の問題、突き詰めていけば、それはすべて教育の問題であるとみんなが言ってしまう分野でございます。
 そういう意味で、きょうは、ある角度から、大臣の御見解、また副大臣、政務官の補佐をいただきながら、文部科学省の物の見方、また、だれよりも三人は、いろいろな人が教育問題を語っていたとしても、最もこの分野において自分自身の見識と今まで得てきている経験を注ぎ込みたいということでその職につかれているんだろう、そういう思いで質問をさせていただきたいと思います。
 いよいよ本年四月から、全国の小中学校で新しい学習指導要領が始まりました。そのねらいは、私が理解している限りにおいて、基礎、基本を確実に身につけ、それをもとに自分で課題を見つけ、みずから学び、みずから考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する能力や、豊かな人間性、健康と体力などの生きる力を育成することと伺っております。
 これがちゃんとなされていれば、日本の政治はもっと変わっているんだろうというふうに僕は思いますけれども。
 このねらいは極めて重要なことであり、大賛成であります。国際社会で活躍する人材を育てるためには、こうした自立した人格と豊かな人間性を形成することが最も大事になってきている、このように思います。
 私が所属する自由党の教育改革の理念も、人間尊重の心を持つ自立した個人の育成であり、我が国の歴史と文化を継承し、世界の平和と繁栄を希求する有用な人材を育成する必要があるとうたっておりまして、その意味で、多くの期待のもとに誕生した新学習指導要領のスタートが、子供たちにとっても、また保護者の皆さん方にとっても、学校側にとっても、そして日本の将来にとっても成功することを、私自身、祈る気持ちでいっぱいであります。
 しかしながら、現実に起こっている種々の不安、学力の低下、公立、私学の学力格差の問題、土曜日の有効活用の問題など、そしてまた、今日までなかなか解消できていない、いじめや不登校、学級崩壊や指導力不足教員の問題、コンピューター設備やオープンスペースを利用した学校設備の充実の問題などを考えますと、本当に大丈夫なんだろうかという心配でいっぱいであります。今回の新学習指導要領も、場当たり的、あるいはまたその場しのぎの対策でないことを祈っているのは僕だけではないというふうに思います。
 そこで本日は、教育現場のこのような根本的な問題、特に青少年の健全な育成に極めて重要な教員に関する種々の問題を中心にお聞きしながら、政策提案もしていきたいと思っておりますので、大臣、副大臣、政務官、よろしくお願いします。
 まず初めに、学級崩壊についてお伺いします。
 学級崩壊というのは、子供たちが教室内で勝手な行動をして教師の指導に従わず、授業が成立しないなど、集団教育という学校の機能が成立しない学校の状態が一定期間継続し、学級担任による通常の方法では問題解決ができない状態に立ち至っている場合と言われております。これは悲惨な状況です。
 実は、私の知人がPTA会長をやっている小学校で、最近、学級崩壊がありました。よくよく聞いてみますと、五年生の二学期から既に学級崩壊が始まっており、六年生の二学期まで何の打つ手もなく、全く授業が成り立たなかった状態が続き、三学期に入ってやっと校長先生と教頭が動き出す、そしてその担任を外して、校長先生と教頭がみずから買って担任を引き受ける、授業を行う、そういうことがありました。
 五年から六年という最も大事な時期にまともな授業が行われず、したがって、規定の学習はもちろん消化できず、あわせて、普通に学習したい子供たちが精神的に圧迫されてしまい、子供たちの極めて重要な、貴重な時間をむだにした事実がありました。なぜわからなかったのか。隠ぺいしているからです。その実態をさらけ出さない。
 ここでの最大の問題は何かといえば、子供たちのこれからの人生の中で、心身の発達や人格形成に極めて大きなマイナスの要因を植えつけてしまうということだろうと思います。
 どうして一年間もほっていたのか。今申したとおり、現実に起こっていることを言えない、隠してしまう、それが最大の原因であったわけでありますけれども、また、教職員の仲間たちでもフォローできなかった。なぜか。なぜもっと早く保護者と連携ができなかったのか。後の祭りであります。
 そこで、お聞きしたいと思います。
 文部科学省では、学級崩壊の実態をどの程度とらえているのか、どのような方法で、また、どれぐらいのインターバルで、これまで何回ほど調査されているのか。まずその点についてお答え願いたいと思います。
池坊大臣政務官 東委員がおっしゃいますように、学級崩壊は今や社会的な問題となっております。
 文部科学省でも、学級崩壊について、平成十年度から、国立教育研究所を中心とする学級経営研究会を通じて、全国各地の事例、百五十学級を集めまして、その原因や対応策について調査分析を進め、平成十二年三月にその結果を報告書として取りまとめました。
 この調査結果を参考に、各都道府県教育委員会においても、それぞれの地域の実態把握が進められているところでございます。このような各都道府県におけるさまざまな状況や施策を、国立教育政策研究所と協力しつつ、さらに収集し、効果的な取り組み等について実態把握を進めているのが現状でございます。
東(祥)分科員 そうすると、今の御報告の中で教えていただきたいのは、現在まだ調査が続行中であり、また確たる分析がなされていない段階なんだろうと思いますが、現段階でわかっている限りにおいて、学級崩壊の原因は何で、そして、その原因を根絶していくといいますか、その原因を取り除いていくためにはどのような対策をとらなければならないと思われているのか、その点についてお伺いしたいと思います。
池坊大臣政務官 今申し上げました国立教育研究所を通じて行った調査による学級崩壊については、まず原因は、学級担任の指導力不足や学校の対応の問題、また、子供の生活の変化や家庭の教育力の低下等の複数の要因が積み重なって、これらの状況を生み出しているのではないかと思っております。一つの原因ではなくて、さまざまな原因が瞬間的に重なり合ったときに、大きなうねりとなって学級崩壊を生むことが多いのではないかと思っております。
 今後のポイントといたしましては、早期の実態把握と対応、魅力ある学級づくり、協力的な指導体制の確立と校内組織の活用、保護者等との緊密な連携と一体的な取り組み、教育委員会や関係機関との積極的な連携が挙げられるのではないかと思います。
 また、きめ細やかに迅速に子供たちを指導していくことが大切で、学級崩壊かなというその芽生えが見えましたときに、チームティーチングを行う、あるいは少人数のきめ細やかな指導を行う、それから、教育委員会にすぐ報告して問題状況を的確に把握するというようなこと等も必要ではないかと思います。
 先ほど委員がおっしゃいましたように、どちらにいたしましても学校だけの問題ではないと思いますので、学校が自分の責任だと思ってそれを隠ぺいする必要は何にもないと思います。
 私は、教育委員会などで講演をいたしますときにはいつも、家庭と地域社会と学校との連携、この一体がなくては子供をきちんと育てることはできないからということを申し上げております。そして、私は読書推進を全国的に進めておりますけれども、例えば、学校において朝の十分間の読書の時間を持ちますことによって学級崩壊がなくなったというような事例もたくさん出ておりますので、それぞれの学校が家庭や教育委員会と連携を図りながら問題解決に努めていってほしいと思っております。
東(祥)分科員 今、政務官が、学級崩壊の理由は多々ある、一つの要因だけではない、複雑に絡み合っていると。
 御指摘にはならなかったのですが、ある調査によりますと、学級崩壊の原因の中に、学習障害児を抱えているだとか、あるいはまた、注意欠陥多動性障害児、ADHDというのでしょうか、がいて起こる場合もあるというふうに聞いています。この場合、極めて優秀な先生が対応したとしても即学級崩壊が始まるケースがよく見られる、そういう報告もあります。問題は、配属されている教員以外に、このような障害児に対して対応できる専門家をそこに置いていない、そこに一つの大きな理由があるのではないのかとも言えるわけであります。
 したがって、後ほど教員の指導力の問題について言及させていただきますが、それ以前の問題として、一般の訓練を受けた教員、なかんずくそれが優秀であったとしても、こういう子があらわれたときにそれに対応することができない。専門家による臨時的に対応できるサポート体制というのを整備することが極めて大事なことなんだろうと思いますが、この点について、いかがですか。
矢野政府参考人 御指摘のとおりでございまして、学級崩壊の問題とは直接というのでしょうか、学級崩壊のケースの中の一つの特別のケースとして考えられるわけでございますが、率直に申し上げまして、LD児それからADHD児の問題につきましては、私ども対応がおくれていると思っています。
 と申しますのは、LD児等についてのまず実態把握について、まだ十分なされておりません。ましてや、それを踏まえての指導方法のあり方についてもまだ研究中でございますし、それを受けての体制、どういう形で体制をとっていくかということについても不十分であると思ってございます。
 こうした問題につきましては昨年度から本格的な研究を進めているところでございますので、そうした研究を進めながら、この問題への対応につきましては、学級崩壊の問題とは別途、真剣に対応していかなければならないと考えております。
東(祥)分科員 よろしくお願いします。
 そこで、先ほど政務官の答弁の中で、学級崩壊の一つの原因に担任の指導力不足、教員の指導力不足があると。これだけではないということもよくわかった上で申し上げさせていただいているのですが、その一つの要因であることを述べられました。
 国立教育政策研究所の二〇〇〇年度の調査によると、自分の学校で学級崩壊があったと回答した校長先生は二六・二%、教員の回答は三二・四%という驚くべき数字が公表されております。この数字から判断しますと、学級崩壊がなくなる傾向にあるのではなくて、むしろ水面下で増加している傾向にあるのじゃないのか。つまり、これを通じて、今日までの研修制度や種々の教育公務員制度では教員の資質や指導力の向上が機能していないという実態が浮かび上がってくるのではないのか。
 つまり、教員の指導力の低下のみならず、教員を育てるその前提の段階で問題があるんじゃないのかということを指摘させていただきたいと思っているのですが、指導力不足教員の問題というのは、時間をかけて解決する問題ではなくて、早急に対応策を講じるべき問題だと思われますけれども、この点についていかがな御見解をお持ちなのか。
 そして特に、指導力不足教員の実態をどのように把握しているのか。先ほども、要するに実態が把握されていないのですよ、明確な形で。調査しながら、トライ・アンド・エラーをやっているのかよくわかりませんけれども、一方において明確な実態がわからない、しかし解決しなくちゃいけない、そういう面における一つの例なんだろうというふうに思います。
 まず、文部科学省で指導力不足教員の実態をどのように把握していて、それに対してどのような対策を考えられているのか。また、だれがこの教員は指導力が不足しているというふうに判定することができるのか、できないのか、どうすればいいのか。その辺について、文部科学省としてどのようにお考えなのでしょうか。
岸田副大臣 御指摘のように、指導力不足の教員に対する対応、児童生徒の人生の中で大切な時期を担当する教員でありますから、迅速に対応するということ、これは大変なポイントだと認識しております。
 そして、どのようにそれを把握するのかということでございますが、まず基本的には、直接教員の服務を監督しております校長が、日々の授業を通じてその状況を把握して、そして必要な対応、研修ですとか指導を行うというのが基本であります。
 そしてその上に、教育委員会として、こうした校長からの報告を受けて、その報告に基づいて指導主事を派遣する等、みずから情報を収集する努力をするということになります。そして、その情報のもとに、みずから研修等の対応が必要であると判断した場合には、そうした措置を行うという体制になっています。
 そして、そういった対応の中で、問題になった教員に対して、それぞれの状況に応じてさらなる対応が必要だということになりますと、分限処分あるいは転職措置、こうした措置を、任命権者であります都道府県教育委員会がその権限と責任に基づき、その手続を踏んで行う、それぞれの要件に該当するかを判断するというのが今の仕組みであります。
 そうしたシステムの中で、不適格教員に対してできるだけ迅速に対応しているというのが現状でございます。
東(祥)分科員 今回いろいろ調べさせていただいていて、分限免職処分、こういう言葉を初めて僕は知ったんですけれども、要するに、教員になったとしても、教員としてこの人は不適切だ、そういう人たちは僕はいっぱいいるんだろうと思うんですね。しかし、それをそのまま野放しにしちゃっているんじゃないのかという実態に気がついたときに、どうしたらいいのか、こういう問題があるんじゃないかというふうに思うんです。
 実際、平成十二年度の調査を見ますと、懲戒免職教員の数は九十八人であります。分限免職は十五人になっております。今全体で、小中学校合わせると三万四千三百十四あると言っているんですが、教員の数というのは、小中学校で六十四万六千二百五十九人いる。先ほど学級崩壊のところで説明させていただきました、学級崩壊を認識している校長先生や教員の数字、そこで出てきている数と比較すると、全然実態を反映していないんじゃないかというふうに思うんです。
 日本の伝統からいくと、トップに立つ人間が下にいる人間を見て、おまえは頭が悪いんだ、だめだとなかなか言わないんですね、日本人というのは。でも、事教育の問題に関して、分限免職処分というのがあるわけですから、こういうものを、もっと的確、厳正な対応のための明確な分限免職処分の基準設定というのを早急にすべきじゃないのかというふうに私は提案させていただきたいと思うんです。
 具体的にどういうことがあるのかと、うちの事務所でちょっと調べさせていただいて、多くの現場で活躍している校長先生や教頭先生に聞いてみました。そこでわかったことは、制度としてあっても、この分限免職処分というのはなかなか行使できないと校長先生たちが言っているんですね。校長先生の弱い立場がここに明らかになっている。校長先生が指導助言しても、それを聞かない先生が多過ぎる。例えば、子供の春休みや夏休みに自宅研修という理由で出勤しない旨の申請があると、他の仕事があったとしてもそれを認めざるを得ない情けない実態が少なからずあるというふうに報告として入ってきています。
 具体的に言うとどういうことか。これから夏休み、夏になってくる。夏になればプールがある。何々さん、プールで指導してあげてください。いや、私は自宅研修でありますと。
 この自宅研修というのをもう一度僕は総ざらいしなくちゃいけないんだと思います。自宅で基本的に研修するということで、それは勤務時間としてとらえられるのかわかりませんけれども、コンピューター研修という名のもとに自宅で待機している、本当に勉強しているのかどうかわかりません。校長先生がどうしてもあなたに行ってもらいたいと言ったとしても、自分自身は自宅研修を理由にして校長先生の言に首を縦に振らない。こういう問題があるんではないのかというふうに思うんです。
 そこで、人事権も含めた、ある意味で校長先生のリーダーシップが発揮できる学校組織の充実と、意欲ある教員を正しく評価できる、またそれに報いるための給与体系を制度として早急に整備すべきだと考えますけれども、この点について、大臣、いかがですか。大臣、僕は別に、言葉が間違ったとしても、それをつついて何か詰問だとかすることはしませんから、大臣が素朴に思われることを言っていただけますか。
遠山国務大臣 もう御存じと思いますけれども、現行法制度上、校長は、学校の仕事全体を掌握して処理する権限、あるいは自分のところに所属している職員を監督する権限を持っております。具体的には、教育課程を編成したり、あるいは入学、転学の許可を行う権限とか、教職員への職務命令権限などを有しているところでございます。
 そういうことで、法制的には人事権、まあ人事権といいましても普通の企業の上司が持っているようなというのとはちょっと違ってはおりますけれども、公立学校の場合、教職員の任命権は教育委員会が有しておりますけれども、校長はその所属職員の採用、異動、免職などについて意見を教育委員会に申し出る権限を有しておりまして、教育委員会はこの校長の意見を十分尊重すべきこととされております。そのような権限がありながら行使しないというのは、私は、校長としては大変、その責務を十分に果たしていないと思っているわけでございます。
 特に、昨年、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部改正をさせていただきました。これによりまして、市町村立の小中学校の教職員の人事につきまして、市町村教育委員会の内申に校長の意見を付することといたしまして、校長の意見が一層反映できるようにしたところでございます。
 私もやはり、先生がおっしゃるように、校内を本来あるべき教育の機能が十分発揮できるようにすることの権限及び責任を持っているのは校長でございまして、その校長がしっかりその役割を果たせるように教育委員会もそれをバックアップしなくてはならないと思いますけれども、校長自身の自覚とそれに伴う行動というものは大変大事であると考えております。
東(祥)分科員 大臣、法律があるんですよ、制度はあるんですよ。その制度が生かされていないといったときに、それをちゃんと生かしていない人はいかがなものなのか、それは正論なんです。しかし、実際問題として、今申し上げているとおり、学級崩壊がいろいろなところで起こっていて、そしてその一つの要因である教員の指導力の問題も指摘されていて、そして、実態として懲戒免職は九十八人、分限免職は十五人。
 分限免職というのは難しいんですよ。先ほど言ったとおり、日本人はなかなか、ずっと長くいれば情も移ってくる、本当に無能だなと言わないんですよ。遠山大臣御存じのとおり、国際社会においては、あなたは能力がないから出世するの無理です、こういうことを言わない日本というのは不思議だなと思っているわけですよ。それはそういう一つのシステムになっています。日本の場合はともすれば、能力がなかったとしても、今回は無理だなと。言われた方は、ひょっとして来年、再来年あたりは自分自身の出世があるんではないかと。それは教育の現場においては、僕はあってはならないことなんだろうと思うんです。
 長年ずっと見ていれば、この人は教員に適切なのか適切でないのか、あるいはまた子供との対話において何か欠けているものがあるのかないのか。先ほど政務官言われていたとおり、今まではずっと閉鎖性ですから、よくわからないんですよ。授業参観があったとしても一つの方向しか見ることができない。日常どのような教育が行われていて、どのように子供がその内容を受容しているかということもよくわからない。そういう状況の中で僕らは議論しているんです。
 そこにおいて、多くの人たちから聞けば、この人は明らかに教員として不適切である、また職に適していない、そういう人がいたとしても、校長先生に、明確なる形での基準を、もっと応用できるような、厳正な、的確な基準を、そういうものを指し示してあげれば、それを利用しやすくなれるんではないですかというふうに僕は提案させていただいているんですが、いかがですか。
岸田副大臣 分限処分の運用の難しさにつきましては、先生の御指摘のような点もあると存じます。
 そういったことから、昨年、地方教育行政法の一部を改正しまして、分限処分に至らない教員に、そこまで至らない教員に対しまして転職措置ということができるという法改正をいたしました。ですから、対応できる範囲を拡大するという形において現実に対応しようという方策を、昨年の通常国会で行ったわけであります。そういった方法も含めまして、現実に対応していこうとしているのが現状でございます。
 問題点、御指摘、しっかり受けとめたいと存じます。
東(祥)分科員 時間が来て、最後になっちゃうと思いますが、学校選択制についてお伺いします。
 平成九年に当時の文部省が通学区域制度の弾力的運用を打ち出して、また、昨年の総合規制改革会議第一次答申の中で公立小中学校の選択制の導入を求めて以来、学校選択制の制度は確実に全国の自治体で広がりを見せています。東京二十三区内でも、平成十二年度に品川区が先鞭をつけ、私が住んでいる江東区を初め、今では多くの市町村で取り入れられています。このことは、教員を選べない保護者にとって、学校を選びたいという長く潜在的にあった願望が満たされ、おおむね好評だと聞いておりますが、ここには二つの問題があるんじゃないのか。
 まず一つは、各学校における評価が一律ではなくて、自己評価、自己採点を取り入れている学校もありますけれども、制度として明確な評価制度がないという点です。どうやって選ぶのか。うわさです。
 二点目は、先ほど政務官が指摘されたことと矛盾してしまうんですが、今年度から始まる完全週五日制に伴って、ますます学校、地域、家庭が連携していかなければならない、そういうときに、逆に、日ごろから子供たちを支えてくださっている地域の子供会や育成団体などが成り立たなくなって、地域との関係が希薄にならないかという心配であります。とすれば、学校選択制導入の本質と、今日まで政府が声高らかに叫んできた学校、地域、家庭の連携と矛盾してくるのではないか、このように思われますけれども、この点について、いかがですか。
遠山国務大臣 学校選択制につきましては、全国一律に導入するというものではございませんで、地域の実情などに即して、家庭や地域との結びつきも大切にしながら判断されるべきものだと考えております。
 確かに、学校選択制の導入によりまして学校と地域などとの連帯意識が希薄になるという指摘もございますけれども、一方で、委員も御指摘のように、保護者が学校により深い関心を持つようになる、あるいは、保護者の選択の意思あるいは評価というものを通じて特色ある学校づくりを進めていくことができるなどのメリットも指摘されているところでございます。
 我が省といたしましては、いわゆる学校選択制の導入やその具体的な方法につきましては、このようなメリット、デメリットというものを踏まえながら、それぞれの地域の実情や保護者の意向に即して各自治団体において適切に判断されるべきものと考えております。
 この傾向がまだ出てきたばかりでございまして、私は、いろいろな試行も重ねながら、最もよい方法について各地方の公共団体においてしっかり実情に合わせた判断をしていただいて、この学校選択制の導入いかんについて御判断をいただきたいものだと考えているところでございます。
東(祥)分科員 時間が来ました。
 先ほど提案させていただいたことも真剣に、ぜひ大臣、検討していただきたいというふうに思います。校長先生の評価も含めた上で、今、教育委員会だとかいろいろなものがありますけれども、本当にそれが実態を踏まえた上で機能しているのかどうなのか。そのことも踏まえ、第三者機関を創設させて、そして、一つの学校、その全体の総合的な評価をつくるということも多分必要な時期になってきているんじゃないのか。そういうことも含めた上で、何とぞよろしくお願いします。
 時間がなくなってしり切れトンボになってしまいましたけれども、皆様方の御健闘をお祈りして、私の質問を終わります。
山名主査 これにて東君の質疑は終了いたしました。
 次に、瀬古由起子君。
瀬古分科員 日本共産党の瀬古由起子でございます。
 私は、昨年十二月の七日に公布、施行されました文化芸術振興基本法に関連して伺いたいと思います。
 この法律に基づいてつくられる基本方針、私は、これに多くの意見そして民意が漏れなく反映するようにすることが大変必要だというふうに考えています。
 私ども日本共産党の国会議員団としては、二月の二十六日に、芸術文化団体との懇談を国会内で公開で開催をいたしました。日本芸能実演家団体協議会、芸団協、レコード協会、日本音楽著作権協会、日本映画監督協会、常磐津協会など三十七団体、九十人余の出席をいただき、さまざまな御意見をお伺いいたしました。俳優の松山政路さんは、特殊法人改革で助成の抑制が計画されることについて、新国立劇場への国の助成は必要だ、一億円削られると芝居が三本やれなくなると意見を出されました。また、映画監督の崔洋一さんは、映画制作への支援は合わせて十億円しか出ていない、少なくとも十倍にしてほしいと主張されて、その他さまざまな御意見もございました。また、鑑賞する機会をどうつくるか考えてほしい、もっと文化庁として実態をつかんでほしい、俳優の中には意欲を持ちながら生活が不安定であるために演劇だけに打ち込めない人たちがいる実態をなくすために収入の保障が必要だ、こういう意見も出されております。
 そこで、大臣に伺いたいと思うんですが、文化芸術振興基本法の第三十四条では、芸術文化の振興に関して、「芸術家等、学識経験者その他広く国民の意見」を求めるとあります。このような関係者の意見を今後作成される基本方針に反映することがやはり求められていると思います。法律の積極的趣旨として、大臣、各団体からの申し入れ等があれば、当然、懇談会も開催していただきたいし、また、どういう内容で要望が出されてきたのか、しっかり情報公開もしていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
遠山国務大臣 今御指摘のように、文化芸術振興基本法第三十四条では、文化芸術の振興に関する政策形成について、芸術家や学識経験者を初め、広く国民の意見を求めることとされております。同法の第七条の規定に基づきます文化芸術の振興に関する基本方針の策定に当たりましても、この趣旨に沿って対応することといたしております。
 具体的には、同法第七条第三項の規定に基づきまして、学識経験者から成る文化審議会の意見を聴取するのみならず、文化芸術団体との意見交換、あるいは各地域で開催予定の文化芸術懇談会、最近そういうものが結構活発になっておりますが、そういう場を通じまして、文化芸術関係者や地域住民を初めとする国民の意見を広く聴取してまいりたいと考えているところでございます。このような取り組みを通して、基本方針の策定に当たって広く国民の意見を反映させるようにしていきたいと考えております。
瀬古分科員 こうした各界から聞かれた御意見を、今こういう要望が出ているんだということも国民の皆さんに公開していただくということはよろしいでしょうか。
銭谷政府参考人 先ほど大臣から御答弁がございましたように、私ども、基本方針の策定に当たりましては、広く国民の意見を把握し、適切に反映させていきたいと考えております。
 私どもといたしましては、こういった文化芸術関係団体からの要望があればできるだけ意見交換の場を設けるよう努めるとともに、情報の公開につきましても適切に対応してまいりたいと考えております。
瀬古分科員 我が党としても、今後、お金は出すが口は出さないというアームズ・レングスの原則なども含めて、関係者、国民の要求をもとに振興基本法を生かして、自由、自律を尊重した公的支援の充実のための方策を求めていきたいと考えております。
 そこで、私は、公的支援に関連して、税制支援の問題についてお聞きしたいと思うんです。
 芸術文化への公的支援は、予算による直接支援と税制支援の二本柱となっています。特に税制支援というものは、差別や介入を招きにくい制度としてもっと検討すべきだと私は思うんですね。
 特に現在、デフレ、不況下におきましては、創造する側も鑑賞する側も支払っている消費税が大変だという点もございます。また、現在の寄附税制では、果たして、文化振興を発展させたり、また文化芸術振興基本法が施行された現在においてその要請を十分満たしているものなのかどうか。やはり、きちっと法ができた段階での検討が必要だと私は思うんですね。
 そこで、大臣にお聞きしたいんですけれども、文化芸術振興基本法第六条はこのように言っています。「政府は、文化芸術の振興に関する施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。」としております。法財政措置、または税制支援についていえば、今どういうところに問題があり、どこをこの法の精神に基づいて改善しなければならないとお考えでしょうか。
銭谷政府参考人 我が国の文化芸術の現状を見ますと、昨年、一昨年、関係者の大変な御努力がございまして予算の充実は図られつつあるとはいえ、まだまだ基盤の整備や環境の形成は十分な状態であるとは言えないと思っております。今後、文化芸術の振興に関する施策をやはり総合的に推進する必要があると考えております。そのため、必要に応じまして、法整備や予算の充実などの法制上または財政上の措置、その他の措置を講ずる必要がございまして、文化芸術振興基本法では、第六条においてこれらの措置を政府に求めているところでございます。
 今後、私どもといたしましては、この法律に基づき策定される基本方針や、文化芸術関係者など広く国民の意見等を踏まえまして、文化芸術予算の充実、それから寄附税制の改善、こういったことに向けて必要な施策の推進に努めてまいりたい、かように考えております。
 とりわけ、寄附税制につきましては、本年度からメセナ協議会が行っております寄附税制の取り扱い範囲等について一定の改善を図ったわけでございますが、まだまだ個人や企業からの文化芸術関係事業に対する寄附というのは各国に比べまして必ずしも多いと言える状況にはございませんので、寄附税制の改善には私ども全力を傾注してまいりたいと考えております。
瀬古分科員 税制支援というのは第二の予算とも言われております。現在の支援としては、今お話もありましたような寄附に関する問題、税制もございます。指定寄附金や特定公益増進法人、認定NPO法人に対する寄附、それから美術品の美術館における公開の促進に関する法律にかかわる寄附などでございます。
 しかし、国民から見た場合に、総計で一体どれだけの税制支援になっているのかという点はもう少し明確にされる必要があるんじゃないかと思うんですね。現在の文化庁の予算九百億円プラスどれだけの税制支援を今後やっていくのか、目標もある意味では決めて、そしてそれを積み上げていくということも大事ではないか。やはり経年的に統計をとるシステム、こういうものも検討したらどうかと私は思うんですが、いかがでしょうか。
銭谷政府参考人 いわゆる税制の問題についてちょっと一例を申し上げますと、例えば、現在文化庁が所管をしております文化芸術関係の財団、社団法人のうち、特定公益増進法人の認定を受けている法人数は四十五法人でございます。この四十五法人の平成十二年度における寄附金総額は、約五十一億円強でございます。一法人当たりにしますと、約一億一千万強ということになろうかと思います。
 なお、これらの寄附金、寄附をしたことに伴う控除の状況でございますが、これは各寄附者である個人や企業にゆだねられておりまして、その額は承知していないわけでございますけれども、基本的には、所得控除や損金算入の対象になっているというふうに把握をいたしております。
 なお、文化庁の所管外の都道府県の所管の文化芸術関係法人やNPO法人につきましては、現在、その詳細は把握をしていないところでございます。私ども、全体として、文化芸術に対する寄附をトータルとしてどのようにふやしていくかということを大きな課題としておりますので、今後よく研究してまいりたいと思っております。
瀬古分科員 こうした税制上の措置などが多くの国民や企業の寄附へのモチベーションになる、こういうようなことをぜひ期待をしております。
 そこで、次は子供の問題について伺いたいんです。
 芸術文化を自由に創造し、享受することは国民の基本的権利であり、振興基本法の第二条では、「人々の生まれながらの権利」、このように高らかにうたっています。
 また、そもそも日本国憲法十三条、「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」、二十一条、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」こういう内容、第二十五条、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」こういうふうに憲法でうたわれています。
 また、さらに一九七九年発効の、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約では、その前文で、「世界人権宣言によれば、自由な人間は恐怖及び欠乏からの自由を享受するものであるとの理想は、すべての者がその市民的及び政治的権利とともに経済的、社会的及び文化的権利を享有する」条件がつくり出される場合に初めて達成されることになる、このようにされております。
 また、一九九四年発効の子どもの権利条約では、第三十一条で、「締約国は、児童が文化的及び芸術的な生活に十分に参加する権利を尊重しかつ促進するものとし、文化的及び芸術的な活動並びにレクリエーション及び余暇の活動のための適当かつ平等な機会の提供を奨励する。」としております。
 そこで、大臣に伺いたいんですが、子供と、それから教育をめぐるいろいろな深刻な事態も先ほどのお話の中でも指摘されていますけれども、この子どもの権利条約にあります三十一条の文化的な権利という問題なんですが、この芸術文化の振興に当たって、子供の文化芸術にかかわる権利というものは特別に位置づける必要があるのではないかというふうに私は思うんですね。
 そして、本来、文化芸術振興基本法自体にも、子供の権利として本当はもっとしっかりうたってもらいたかったんですが、残念ながら、子供の権利という部分がなかなか入っていません。特に、特別に子供の権利というものが大事なのは、やはり芸術文化活動をすべての子供のあらゆる生活場面、学校教育の場面、地域の場面、そしていろいろな家庭の場面でもありますでしょう、それから発達段階に沿ったプログラムというのは、子供の場合には、芸術文化にかかわる権利の問題で私は特別に大事だと思うんですね。
 そういう点で、私は、特別にこうした子供にかかわる権利の問題をしっかりと位置づけるべきだというふうに思いますし、そういう施策も打ち出すべきだというふうに思うんですが、その点、大臣いかがお考えでしょうか。
遠山国務大臣 子供たちが未来を担っていくわけですけれども、今いろいろ、権利、権利、こうおっしゃいましたけれども、私は本質的に、子供たちが文化芸術に親しんで、それに触れ合うことによって、人間性や感受性が豊かな人間として成長していくことが大変重要だと考えております。
 文化芸術振興基本法の中でも、青少年の文化芸術活動の充実でありますとか、学校教育における文化芸術活動の充実についてきっちりとうたっているところでございます。それに乗っかって国が必要な施策を講ずるように規定がなされております。
 私どもといたしましては、この法の趣旨を踏まえまして、これまでもさまざまな政策をやってまいりましたけれども、本年度から、それらをむしろ総合いたしまして、文化芸術創造プランを創設したところでございます。
 一つは、本物の舞台芸術に触れる機会を確保しようということで、学校へ芸術家を招いて、子供たちに本物の舞台芸術に触れる機会をふやしますとか、あるいは、子供たちが文化会館などへ足を運んで、そこで舞台芸術に触れるという機会をより充実していこうというのが一つでございます。
 それから、学校の文化活動を推進するということで、これは、芸術家でありますとかあるいは伝統的なさまざまな技を持った方々を学校へ派遣するような仕事も考えているところでございますし、また、文化体験プログラム支援ということで、市の単位でもモデルプログラムをやっていただいて、そういったことが普及していくようにということで施策を本格的に取り組むことを考えているところでございまして、こうした施策によって子供の文化芸術体験活動を総合的に推進してまいる予定でございます。
瀬古分科員 そこで、私お聞きしたいんですが、学校の完全週休二日制というのが始まりました。芸術文化に親しみ、子供たちの感受性を養う情操教育というのは、学校教育でも私は重要な柱になるというふうに思います。映画「マイ・フェア・レディ」の原作で有名なバーナード・ショーが、学校は劇場のように楽しくなければならない、このように言っております。学校教育を本当に楽しく、基礎、基本を身につけるところでなくてはならないと私は思うんですね。とりわけ、この週休二日制の中で、今でさえ少ない芸術鑑賞の時間が実は減ってしまう、こういう点で大変心配しているわけなんですね。
 そこでお伺いしますけれども、こういう芸術文化にかかわる時間を確保するために、例えば、幾つかの自治体で工夫もしています。私の住んでおります名古屋、また大阪などでは、芸術鑑賞費というのを予算の中に位置づけているんですが、これを、普通、芸術鑑賞費で位置づけている自治体もあるんですが、それを補助金という形じゃなくて、学校運営費として位置づけている。ある意味では、子供たちのこういう芸術鑑賞の機会というのは、子供たちの感性を高めるために、生きる力をつけるためになくてはならぬカリキュラムの一つとして位置づけている、そういう予算の費目にもちゃんと位置づけている、こういう自治体が出てきているということは大変私は注目すべき内容だと思うんですね。
 もちろん、鑑賞だけじゃなくて、子供たちが自分自身を自己表現する、こういうものについても、そういう予算のつけ方、位置づけが私は大変大事だと思うんですけれども、こういった措置をうんと広げていく、こういう点での考え方はいかがでしょうか。
銭谷政府参考人 先ほど大臣からもお話がございましたように、子供たちがすぐれた芸術文化に触れる、こういうことは、豊かな心をはぐくみ、感性を刺激して、創造力を生み出す上で大変大事なことだと思っております。
 それぞれの学校におきまして、子供たちの文化芸術体験活動をどのように推進し、その経費をどのように負担をするか、それは各教育委員会、学校の方でいろいろとお考えをいただくことかなとは思いますけれども、お話の点は一つの試みとしてお聞きをさせていただきました。
 なお、先ほどの大臣のお答えとちょっと重なるかもしれませんが、国としても、こういう機会を積極的にふやしたいということで、先ほど申し上げました、本物の舞台芸術体験事業あるいは文化体験プログラム事業といったようなものを実施いたしまして、こういう事業に係る公演経費あるいは団体の旅費等については文化庁で負担をしまして、無料で子供たちに鑑賞してもらうということにしているわけでございます。
 さらに、加えまして、何も舞台芸術だけじゃなくて、すぐれた美術の作品に接するということも子供たちにとって大変大事なことではないかと思いまして、本年度から、国立の美術館、国立の博物館におきましては、完全学校週五日制の実施に伴いまして、小中学生が常設展を観覧する場合には年間を通してその料金を無料としているところでございます。
 今後とも、子供たちが本物のすぐれた芸術文化に触れたり参加したりする機会の充実に努めてまいりたいと考えております。
瀬古分科員 次に、映画の問題についてお聞きしたいと思います。
 一九九四年八月の文化庁の映画芸術振興に関する調査研究協力者会議の報告では、初めて行政として映画の芸術的価値を認めつつ、今この状態が続けば、やがて日本映画が消滅するといった最悪の事態の到来も架空のものでなくなるおそれがある、このように指摘しております。
 また、文化庁の「映画芸術振興方策の充実について」という内容を見てみますと、この状況をこのまま放置した場合には、国際的にも高い評価を受け、世界有数の映画国であった我が国の映画制作と映画文化の存在が、まさに危機的な状況に陥ってしまうおそれがある、このように書いています。
 そこで、大臣にお伺いしたいんですが、この報告が出て以来、日本映画が消滅するといった最悪の事態の到来という認識は、今も文部科学省、文化庁としてお持ちなんでしょうか。
遠山国務大臣 映画は、国民の身近な娯楽として生活の中に定着していますが、それと同時に、総合的な芸術として重要な位置を占めてきたものでありまして、その重要性というものは時代が経ても同じではないかと思っております。
 現在の邦画界は、国際映画祭などで高い評価を得る作品も出てきておりますし、興行的に成功する作品も出ていますね、最近では千と千尋の映画のように。大変明るい状況も見られますものの、全体として見ますと、制作本数とか鑑賞人口などはピーク時に比べますと激減をしております。
 一方で、今はいろいろなチャンネルがふえたり、あるいはいろいろなメディアが出てきている中で、映像ソフトというものを確保することが大きな課題となっておりまして、そういう角度から見ましても、その供給源として映画の果たすべき役割は大変大きくなっていると思います。
 そういうことにかんがみまして、我が省としましては、幾つか大変重要な政策をとっているところでございまして、その中身については次長の方からまた御説明すると思いますけれども、新たに平成十四年度から始まりました文化芸術創造プランの中で、トップレベルの映画制作に対して重点支援を行いますために新たに約七億円を計上しているところでございまして、今後とも映画振興に関する施策の充実に努めてまいりたいと考えております。
瀬古分科員 一九九六年六月の通産省のシネマ活性化研究会の報告書は、映像関連産業の市場拡大の可能性は映画に対するニーズの高まりへの期待感につながる、これまでテレビやビデオの登場によって衰退したかのように言われてきた映画産業であるが、それらのメディアにおける劇映画の視聴率の高さ、ビデオ販売における劇映画のシェアの高さが証明している、映画に対する人々のニーズは依然として強いのではないか、このように述べているわけですね。要求はあるわけです。
 そこで、私がきょう実は映像新聞という新聞のコピーをちょっと持ってきたんですが、「韓国から学ぶ映画振興策」というのが載っていまして、大変参考になりました。韓国のさまざまな支援策が講じられていることがよくわかります。制作支援、海外に展開することに対する支援、それから制作施設の提供、教育研究部門、人材育成と、実に公的支援がきめ細かいんですね。その結果、今韓国の映画はどうなっているかというと、世界ではもうアメリカ映画が圧倒しているんですけれども、韓国は自国映画のシェアが五〇%を超しているんですね。それに比べて日本はどうかと思いますと、私は大変深刻な状況にあるんではないかと。もっと国として施策をきちんとやるべきだというふうに思います。
 そこで、時間がございませんので、幾つかの点について質問したいと思うんですが、まず、映画、演劇の国の養成機関、それから後継者の育成の問題なんですが、これは本当におくれていると思います。今、国立大学では音楽や美術だけしかありません。新たに東京芸大で新しい学科ができたそうですけれども、映画や演劇というのはないんですね。ヨーロッパでは国が責任を持って映画学校だとか演劇の養成機関を持っております。新国立劇場の研修事業もバレエやオペラだけに今とどまっていますけれども、演劇はまだ実現していませんよね。
 そこで、やはり国の責任で、養成機関の実現、後継者の育成をもっと真剣に検討すべきだというように思うんですけれども、その点いかがでしょうか。
工藤政府参考人 人材養成が大切なことは御指摘のとおりでございます。
 現状を申し上げますと、私立大学では、御案内のとおり、日本大学で映画学科、演劇学科がございましたり、多摩美術大学の映像演劇学科があったり、幾つかの大学で人材養成を行っているところでございます。また、国立大学については、今御指摘ありましたように、東京芸術大学で、新しい世紀をリードする芸術家養成を目指した音楽環境創造科をこの四月に開設したところでございます。
 日本の大学での人材育成というのは、国公私を通じまして、それぞれの大学でニーズやあるいは可能性等を判断しながら対応しているわけでございますけれども、私どもも、各大学の検討状況を踏まえながら、適切な対応に努めてまいりたいと思います。
瀬古分科員 もっと国がやはりきちんと責任を持つ。海外のいろいろな事情を見てみますと、やはり国が、映画についてもちゃんと責任を持っている、演劇についても責任を持っている。こういう点で、ぜひ力を入れていただきたいと思います。
 そこで、私は、一つ撮影所について聞きたいと思うんですね。二年前に伝統ある松竹の大船撮影所が閉鎖されました。あの寅さんを生み出した、日本映画のふるさとと言われている撮影所ですね。全国の映画ファンの熱い支援によってかち取られた二〇〇二年末までに新撮影所を建設するという約束も、今ほごにされようとしているんです。東映の東京撮影所は三年前にオープンセット地が売却されたまま、それから東映の京都撮影所も経営が大変だというふうに聞いております。大映撮影所も企業整理が進んでいると言われています。こういう実態に今あるわけです。
 一月二十六日にNHKが放映しました「地球に乾杯」チネチッタ夢工場、イタリア映画を支える人々というのがまた大変好評で、一昨日再放送されたんですね。私も見て大変感激しました。イタリア映画名作がどうやって生まれたのか、親、子、孫とその技術が受け継がれてきた、そして、ハリウッドとの違いはここにあるということですね。映画の大道具づくり、苦労、こういうものをフェリーニ監督が職人との交歓を交えて描いていました。
 撮影所というのは、設備だけでなく、それを担う技術やスタッフも育ててきたところで、日本映画そのものも支えてきたところだと思うんです。そういう意味では、大臣、そういう認識で文化振興を本当に所管する立場からこの撮影所の問題についてどのようにお考えなのか、お聞かせいただきたいと思います。
 そして、最後なんですが、時間がございませんので、映画の振興基金なんですね。これを今何度も私たちも提案してきたんですが、関係者からも、ぜひこの基本法の精神に基づいて映画の振興基金をつくってもらいたい、こういう要望が出ております。ぜひこの点についても、どのようにお考えなのか、この二点をお伺いしたいと思います。
銭谷政府参考人 お話がございましたように、最近伝統のある有名な映画撮影所がなくなりつつあるということは、映画を愛するファンから見れば大変寂しい気持ちがあるのかなと思います。ただ、このことは、映画界全体の衰えととる見方もございますけれども、現在の映画というのは、コンピューターグラフィックスの活用など、映像技術の進歩に伴ってさまざまな撮影手法による撮影が行われていることなど踏まえれば、また別の見方もできるのかなという気もいたします。
 文化庁といたしましては、先ほど大臣の答弁でちょっと触れましたが、映画というものは、やはり国民の身近な娯楽として、その振興は大変重要なことだと認識をしておりまして、現在までも、優秀映画に対する顕彰、あるいは映画の、特に地方での上演の支援とか、あるいは芸術文化振興基金による制作活動への助成、国立近代美術館フィルムセンターにおける邦画の収集や紹介事業、さらには、平成十三年度からは、地域において、または地域を題材として企画された映画の制作や地域の映画祭への支援、そして、お話にございました、十四年度からはトップレベルの映画制作に対する重点支援といった、さまざまな施策は講じてきているわけでございます。
山名主査 次長、簡潔に。
銭谷政府参考人 はい、簡単にいたします。
 ことしの一月に出されました文化審議会の報告の中でも、映画の制作や上演への支援などを積極的に行う必要性が指摘をされております。
 お話のございました日本映画振興基金につきましては、一つの御提案とは受けとめておりますけれども、現下の厳しい経済財政状況のもとではさまざまな解決すべき課題があり、すぐ実現というのは困難な状況にあろうかなと思っています。引き続き関係者の御意見を伺いながら、映画振興につきまして、十分私どもとして研究してまいりたいと思っております。
瀬古分科員 ありがとうございました。
 皆さん、それこそ文化庁自身が映画の問題についてはまさに危機的な状況だということも指摘されているわけで、そういう意味では思い切った国の施策をぜひこれからつくっていただきますように要望いたしまして、質問を終わります。
 ありがとうございました。
山名主査 これにて瀬古君の質疑は終了いたしました。
 次回は、明九日午前九時から本分科会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後八時十九分散会


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