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第2号 平成14年4月9日(火曜日)

会議録本文へ
平成十四年四月九日(火曜日)
    午前九時開議
 出席分科員
   主査 山名 靖英君
      相沢 英之君    岩永 峯一君
      桜田 義孝君    森田  一君
      金子善次郎君    塩田  晋君
   兼務 森岡 正宏君 兼務 赤羽 一嘉君
    …………………………………
   文部科学大臣       遠山 敦子君
   文部科学大臣政務官    池坊 保子君
   会計検査院事務総局第四局
   長            有川  博君
   政府参考人
   (文部科学省初等中等教育
   局長)          矢野 重典君
   政府参考人
   (文部科学省高等教育局長
   )            工藤 智規君
   政府参考人
   (文部科学省高等教育局私
   学部長)         石川  明君
   政府参考人
   (文化庁次長)      銭谷 眞美君
   決算行政監視委員会専門員 川城 正彰君
    ―――――――――――――
分科員の異動
四月九日
 辞任         補欠選任
  塩田  晋君     藤島 正之君
同日
 辞任         補欠選任
  藤島 正之君     塩田  晋君
同日
 第三分科員赤羽一嘉君及び第四分科員森岡正宏君が本分科兼務となった。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 平成十年度一般会計歳入歳出決算
 平成十年度特別会計歳入歳出決算
 平成十年度国税収納金整理資金受払計算書
 平成十年度政府関係機関決算書
 平成十年度国有財産増減及び現在額総計算書
 平成十年度国有財産無償貸付状況総計算書
 平成十一年度一般会計歳入歳出決算
 平成十一年度特別会計歳入歳出決算
 平成十一年度国税収納金整理資金受払計算書
 平成十一年度政府関係機関決算書
 平成十一年度国有財産増減及び現在額総計算書
 平成十一年度国有財産無償貸付状況総計算書
 〔総理府(科学技術庁)及び文部省所管〕


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     ――――◇―――――
山名主査 これより決算行政監視委員会第二分科会を開会いたします。
 平成十年度決算外二件及び平成十一年度決算外二件中、本日は、文部省所管及び総理府所管中科学技術庁について審査を行います。
 昨日に引き続き文部省所管について審査を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。相沢英之君。
相沢分科員 本当に久しぶりに質問に立たせていただきますが、きょう大臣にお尋ねしたいことは、国立大学の独立行政法人ないし法人化の問題についてでありまして、特に、今後もし仮にそれが実現された場合は、国立大学全体を一つの法人にするかあるいは各大学ごとにそれぞれ別個の法人にするかということについてのお考えをお聞きしたい。
 冒頭に申し上げておきますが、私は、全部の大学を一つの国立学校法人にすべきだというのが持論でございます。
 私は、特にこのことを質問いたしますのは、実は、昭和三十九年に国立学校特別会計法をつくりました際に、これは閣法でありますが、財務省、当時の大蔵省の所管であります。その中で、主計局の法規課がこの法律を担当いたしておりまして、私は、当時、法規課長として、いわば提出の実質的な責任者として、政府委員としての答弁に立たせていただいたのでございます。
 当時、国立大学全体を特別会計にする理由としては、幾つかありますが、とにかく一般会計のままにおきますと、運営としての、特に会計面における弾力性が欠けると。
 例えば、当時、国立大学の医学部附属病院におきまして診療報酬の増加があった場合も、それが医薬費その他の支出に充当することができない。そこで、いわゆる第二薬局、第三薬局というものの存在がありまして、問題となっておりました。それから、試験研究等、外部から研究委託を受けた場合に、収入には入るけれどもそれを歳出化することができない、そういう問題。それからまた、大学の入学に際しましての入学検定料、入学金あるいは授業料、それが当初予算に対しましてふえた場合に、これは収入にはなりますが、それに応ずる歳出をふやすわけにまいらないといったようなことがありまして、むしろ、この際国立学校を特別会計にして、それらの歳入の増加に応じて歳出を増加させることができるように、言うなれば弾力的に経理を運営することができるようにしたらどうかということが、当時特別会計をつくる一つの大きな理由になっておったわけであります。そのことの意義は、今日も恐らく変わっていないんじゃないかというふうに思っているのであります。
 そのときに、国会の論議におきまして、特に社会党、共産党等革新系の議員からは、そういうことをすることは、つまり大蔵省が国立大学に対する歳出を抑制する手段になるのではないか、つまり、大学に対して必要な経費を毎年度計上するということではなくして、言うなれば一定の枠をはめて、そしてその枠内において大学の運営を図るということになって、結局、それは大学の経費の節減にはなるかもしれないけれども、大学の運営にとっては決してプラスにならない、こういう非常に強い批判がございました。昭和三十九年、これが実施されて以来、恐らくそういったような問題は議論にならなかったんじゃないかというふうに思っておるのであります。
 そこで、まず大臣にお尋ねいたしたいのは、国立大学につきまして、これを独立行政法人といいますか法人化するということにつきましては、どのような経緯で、どのような決定を見ておりますか。
遠山国務大臣 そのことに直接お答えいたします前に、相沢委員が、今を去る何十年か前に国立学校特別会計の創立につきまして大変御尽力いただき、その後も国立大学の確実な発展のために大変サポートをしていただいたということは、私ども、心にしみて、厚くそのことについて感謝をいたしているところでございます。
 私も突如この席に着きまして、そしてそのときの流れに既にもう法人化が決まっておりまして、そして今、その流れの中で法人化というものを進めていく役割を担っているわけでございます。しかし、国立大学の、さかのぼれば帝国大学に至る百余年にわたる歴史を考えますときに、大変大きな変革であると思っております。その意味で、この法人化の作業を誤ることなく、日本の大学を力強い将来の発展のために導く、そういう転換の契機でなくてはならないと心に強く思っているところでございます。
 お時間をとってはなりませんので、今の御質問の点にまずお答えいたしますけれども、国立大学の法人化に関するこれまでの検討経緯につきましては、まず、平成九年の行政改革会議の最終報告におきましても指摘されておりましたが、平成十一年四月に、大学等の自主性を尊重しつつ、大学改革の一環として検討し、平成十五年までに結論を得ることが閣議決定されたわけでございます。そして、平成十二年十二月のいわゆる行政改革大綱、これは閣議決定でございますが、そこで、「平成十三年度中に有識者等による専門的な調査検討の結果を整理する」とされておりました。
 これらの閣議決定等を踏まえて、平成十二年七月から、国立大学関係者のほか、公私立大学、経済界、言論界など幅広い分野から有識者が参加いたします調査検討会議を設けて、法人化の具体的あり方について御検討をいただいてまいりました。その後、昨年九月の中間報告を得まして、同会議の約一年八カ月の議論の結果としまして、去る三月二十六日に新しい国立大学法人像として最終報告がまとまったところでございます。
 そういう経緯を持っておりまして、とうとうたる法人化の流れということで現在進んでいるわけでございますが、私は、その報告書を拝見いたしまして、ここではかなりいろいろな英知が集約されていると思っております。法人化につきまして、やはり大学改革を実際に進めていく、それぞれの大学が個性を発揮しながら伸びるところはどんどん伸ばしていく、そういうことに資する法人化でなくてはならない、そのように考えているところでございます。
相沢分科員 重ねてお尋ねいたしますが、平成十五年度中に国立大学を法人化することについて結論を得るということになっていまして、国立大学を法人化するということについての閣議の方針は決定になっていないというふうに思っておりますが、いかがですか。
遠山国務大臣 今般、先月、「新しい「国立大学法人」像について」の検討結果が出されまして、これに基づいて、鋭意今後私どもとしまして法人化に必要ないろいろな措置をとりまして、その後に法律を出すという、制度の仕組みについて法制化するときに、私は閣議決定ということが行われるというふうに考えているところでございます。
相沢分科員 三十分しかありませんので、大変恐縮ですけれども簡潔にお答えいただきたいのは、要するに、国立大学について法人化するということについての閣議の決定を経ているかということです。
工藤政府参考人 先ほど大臣から御説明した経緯でございますが、相沢先生御指摘のとおり、閣議決定の内容は、法人化を決めたわけじゃございませんが、法人化に向けての検討を指示されたと受けとめてございます。
相沢分科員 それが正確だと思います。つまり、法人化はまだ決定されていない。
 そこで、「新しい「国立大学法人」像について」ということは、これは私もきのう拝見しました。これは高等教育局長の、言うなれば私的諮問機関の答申でありまして、それは文部科学省としてこのとおりにやるんですと、あるいは、これにつけてどういうふうにするということについての決定はありますか。
工藤政府参考人 これは閣議決定にもありましたように、専門家の調査検討会議で議論を整理しようということで整理いただいたものでございまして、正確には、その調査検討会議のレポートでございます。
 これを受けまして、私ども省内で相談いたしまして、先般、四月三日に、臨時の国立大学学長等の会議を開いたところでございますが、そこで大臣の方から、この方向に沿って、文部科学省としても法人化の方向に向けて検討してまいりたいというので、理解と御協力を求めたところでございます。
相沢分科員 つまり、文部省としても決定してないということでございますね。
 そこで、これは私きのうざっと拝見したんですけれども、失礼ですけれども、大臣、これをお読みになりましたか。
遠山国務大臣 当然読みました。
相沢分科員 これは私もざっと拝見しましたが、いろいろ多くの問題を含んでいるというふうに思っております。
 したがいまして、恐らくこのまま文部省として決定をし、ないしはこれを法律案として上程するということにはならないんじゃないかというふうに思っていますが、それはそれとしまして、私が特に問題にいたしておりますのは、仮に国立大学を法人化した場合に、全体を一つの法人としてするか、あるいはそれぞれ別個の法人とするかということなんであります。
 この点につきまして、この検討会議における、言うなればこの答申は、各、別個に法人としてすることが望ましい、あるいはそういう方向だということを示されておりますけれども、決定はしていませんが、大臣はそのような方向でお考えなんですか。
遠山国務大臣 どこで文部科学省としての決定があったかということについて、何か文書で、文部大臣決定というようなことをいまだあらわしたことは確かにございません。しかし、この職にある者といたしまして、この報告書を受けて、全国立大学長を集めてこういう方針でいくということを明確に話したところでございます。
 今の御指摘の点でございますが、ここに書いてございますように、国立大学の法人化のメリットというものを十分に勘案した上で、その法人化に際しましては各大学を一単位として考えていくということについて、私としましては、その方向で今後いく方が、これからの日本の知の背骨をつくる国立大学のあり方としてふさわしいというふうに考えているところでございます。
相沢分科員 各大学がこれに対してどのように考えるかということは問題でありますが、大学協会あるいは大学長会等におきましては、これに対してどのような意見を持っておりますか。
遠山国務大臣 御存じのように、国立大学協会がございまして、国大協と文部科学省とは常に二人三脚でやってまいったわけでございますが、この国立大学の法人化につきましては若干の経緯がございます。
 この話が俎上に上ったころから、独立行政法人通則法をそのまま適用することには反対ということを国立大学協会として立場を明らかにして、独自に検討を進めながらも、文部科学省において検討することについては積極的に参加するという意向が示されたところでございます。
 平成十二年七月に発足しました我が省の調査検討会議には、長尾会長を初めといたしまして多くの国大協関係者も参画して検討を進めてまいったところでございます。
 昨年九月の中間報告に対しまして、当事者としての国大協からは、検討を要する点が残されているとしながらも、国立大学法人法による法人化や、大学と法人一体の組織といった法人の基本においてだけでなく、大学の裁量性や創意工夫の余地を拡大するという点で、国立大学法人化のあり得べき方向を示すものとして評価することができるという意見をいただいているところでございます。
 お手元にもお持ちの調査検討会議報告書を受けまして、私としましては、去る四月三日の会議で、国立大学関係者に対しまして理解と協力を求めたところでございます。国大協におきましては、今月十七日に臨時総会を開催して、最終報告に関する議論がなされる見込みであると聞いております。
 今後とも、我が省としては、今回の最終報告を踏まえて、国大協のみならず、関係方面等の理解、協力を得て、その具体化に取り組んでいかなくてはならないと思っているところでございます。
相沢分科員 国立大学は今まで経緯がございますが、現在数、たしか九十九、これにそれぞれの研究機関があるわけであります。この九十九の大学について見ましても、大小さまざまであります。これは当然のことであります。
 平成十二年の国立大学の歳入歳出決算額というのを昨日ちょうだいいたしまして、これを見てみたんですけれども、大体、いわゆる旧制帝国大学は学部も総合的にございますし、また附属病院等抱えておりますから、大変規模が大きい。そして、新設の大学についてはその規模が小さい。
 例えば十二年の歳出について申し上げますと、東大は千九百三十億。これに対しまして、例えば鹿屋体育大学十九億八千三百万円、小樽商大三十二億四千七百万円、それからお茶の水大学六十九億八千三百万円。この歳出の規模だけが問題じゃありませんが、一番大きいのと小さいのととっても百倍の差があるんですね。
 もともと旧制の帝大は、例えば東大にいたしましても、キャンパスも幾つもあるし、それから敷地も持っている、病院も持っている。そういうことで、言うなれば、経理的に見ても大変に懐の広い大学になっている。新設の大学は、本当にもうそのスケールも小さいし、融通もききにくい。
 しかも、今度この大学が、国立大学法人ができた場合に労働三権を認める、つまり、争議権も認めるわけですね、給与に関する自主的な決定権を持っている、組織もそうだ。無論、運営費の交付金等につきましては、教職員の数とか学生の数とかというものが一つの基準になる。あるいは、施設につきましては、今後の計画というものは当然めどになりますが、とにかく、そういう旧制帝大のような大きな大学は非常に融通がきくし、しかも、そういう自主的な決定をされた場合、例えば財源があれば給与もよくなる。
 ですから、組織についても、そして給与についても、各大学の間に格差が生じてくるということは当然お考えだと思うが、いかがですか。
遠山国務大臣 給与の格差とか、そういった格差を生じることを目的とするということではなくて、それぞれの法人化する大学における自主的な決定を尊重するということに主眼があるわけでございまして、今日までのいろいろな大学の機能が有効に発揮されているかどうかという点で一番のネックでありましたものが、大学の自主性、自律性を発揮できないいろいろな規制、これは、当然ながら、行政組織の一環として置かれていた大学としてはやむを得ない面もあったわけでございますが、そういったものから、法人化ということで、それぞれの大学が独自に業績主義なりあるいは重点主義なりというものをきっちりととって、みずからの大学の方向性について考えるということを可能にするというのは、メリットの一つの大きなものであろうかと思っております。
 ただ、それぞれの大学がすべて自由にということではもちろんございませんで、交付金を受ける以上、中期目標というものをしっかりと立て、そして、それに基づいて中期計画というものをつくっていく、それについては大学の意思を十分尊重しながら文部科学大臣が認可するという制度で歯どめをかけているところでございます。
 したがいまして、ある一点だけで見ましてのいろいろなお考えということもあろうかと思いますけれども、全体として、法人化を通じて日本の大学の機能を十分に活性化していくというねらいであることについて御説明するのが私どもの役割だと思っております。
 ただ、私は、相沢委員が、こういうことで法人化いたしますと、確かに大きな大学においてはスケールの大きさということからいろいろなメリットもあって吸引できるであろうけれども、地域のいわば小さい大学についてはどうなのかという御心配をいただきますということは、大変痛いほどよくわかるわけでございます。
 そういうことも前提にしながら、今、各大学におきまして、必要なところは再編統合を行うということによって、それは会計上のメリットを、スケールメリットを駆使することによって得るということではなくて、むしろ、それぞれの大学の教育機能、研究機能を強化するという意味で再編統合ということが今大きく動いているところでございます。
 そういったことも援用しながら、ちょうどその作業が同時になりましたので、各大学としては大変難しい局面に今入っていると思いますけれども、そういう両方のことをうまく連携させながら、この法人化の成功に向けて努力していくというのが私どもの今スタンスでございます。
相沢分科員 大変失礼ですけれども、時間がありませんので、大臣、私がお聞きしたことに端的にお答えいただきたい。
 これは、給与の格差を生ずるというのはやむを得ないということですね。
遠山国務大臣 大変大事な問題でございますので、端的に答えるということでかえって誤解が生じる面もあろうかと思います。
 それぞれの大学が今回の大きな変革の目的というものを十分勘案した上で生じてくる格差については、これはやむを得ないと思います。ただ、それは大学間の格差であるといいますよりは、大学内で実力に応じた評価というものをきっちりとやって、実績に応じた給与格差ということは当然あり得ると思います。
相沢分科員 私は、一つの例をとったので、時間があればまたいろいろお聞きしたいんですけれども、それぞれが独立法人になることによって、各大学間に格差が生じてくるということは当然だと思うんですね。今は、一つの特別会計ですから、給与その他につきましても全国一律にいっている、施設につきましてもそれはやりくりがきくんです。しかし、それぞれが独立法人になりますと、そういうふうにいかないことは明らかなんですね。それは、持っているものが持たない方にいろいろな点で援助するとか何とかということは、それは実際問題としてなかなか難しい、各それぞれが法人になってしまえば。そうすると、人事の交流の面でも施設費の融通等のような面でも、それはそういうふうに、今までのようにいかなくなることは明らかなんです。
 ですから、それぞれが独立法人になることについては、それが目的なんだというふうにおっしゃればそれまでなんですけれども、果たしてそれでいいのかということなんですね。その点についてはどうお考えですか。
遠山国務大臣 まず、格差を生み出してそれによって競争させるというようなことが趣旨でないことはるるお話ししたとおりでございます。
 それから、法人化後におきましても、大学運営に必要な経費につきましては、大学の規模などにかかわらず、設置者たる国が責任を持って措置する必要があると考えております。例えば、調査検討会議の最終報告におきまして、学生数等各大学共通の客観的指標によって標準運営費交付金を算出することとされておりまして、このような算出方法をとることによりまして、各国立大学法人の規模等による有利不利は生じないのではないかと考えているところでございます。
相沢分科員 その点は、よくひとつ御検討願いたいと思っておりますのは、それぞれ独立法人にした場合は、必ずや融通がきかなくなる。
 私は、巷間、一つの独立行政法人にした場合、大変でかい組織ができちゃう、言うならば第二文部省のようなものができちゃって、文部省がコントロールができなくなるから、だから、どうもそれは問題だというような話も聞かないではない。しかし、そういうことは、本質的な問題として取り上げるべきではないと私は思っておるんです。
 時間がありませんから、もうこれ以上の点については、また後の機会にしたいと思いますが、これと同じように独立行政法人が各省つくられるわけですが、例えば国立病院とか療養所は、これも各病院、療養所別に独立行政法人にするか、あるいは一本化するかということが問題になりました。
 私は、党の行政改革本部で、このことを、独立行政法人の問題を主として担当してやっておりましたので、この点については、当時の厚生省側の要求ももっともだと思いまして、一本の行政法人にすることについて賛成をし、その方向で決定をしているわけなんです。通産省の関係の試験研究機関等も、各それぞれの試験研究所ごとに法人化するという考え方もありましたが、これも一本化する。
 したがいまして、そういうような他省の例を見ましても、私は、国立大学についても、将来、一つの独立行政法人にすることのメリットの方が、それぞれを学校法人とすることよりもはるかに大きいのじゃないか。教育の水準あるいは教育の機会均等という面からいきましても、私はその方が望ましいんじゃないかというふうに考えております。
 幸いにして、まだ最終的に閣議で決定を見ている問題ではないというふうに先ほど御答弁がございましたから、今後とも御検討をお願い申し上げたいというふうに思っております。
 大臣、答弁を。
遠山国務大臣 るるお話を伺いました。国立大学の将来について大変お考えをいただいているということを、十分私としては受けとめたところでございます。
 ただ、今、大きな改革の動きが既に始まっております中で、しかしながら、これからの制度設計を緻密にやっていく段階でございます。今の御注意というのももちろん参考にしながら、その本来の目的を達成するために、私どもとしては全力投球していきたいと考えております。
山名主査 これにて相沢君の質疑は終了いたしました。
 次に、森岡正宏君。
森岡分科員 私は、自由民主党の森岡正宏でございます。
 きょうは、遠山文部大臣そして文化庁の銭谷次長さんにお越しをいただいて、主として文化庁の所管の問題について御質問したいと思います。
 今、日本に対する外国からのイメージ、調べてみますと、総じて、今もやはり日本は経済大国だ、日本という国を思い出すと、イメージするのはトヨタとかソニーだというようなことをよく聞くわけでございます。日本の文化や伝統を世界に知らしめて、文化大国というイメージを持たれるような国にしたいという思いから、私はこういう質問をさせていただきたいと思うわけでございますけれども、まず、遠山大臣に伺いたいのです。
 小学校の先生になるにはピアノが必須科目、音楽の先生をやろうと思いましたらピアノが必須科目なんです。三味線を弾けても先生にはなれません。東京芸大の邦楽科を卒業しておられる方がどのような生活をし、どんな職業についておられるか、まずお尋ねしたいと思うのですね。
 明治以来の日本の教育、余りにも、西洋式、何でも西洋かぶれがいいんだ、西洋式がいいんだ、これは教育だけじゃありませんけれども、洋式一辺倒になってきたんじゃないかな。
 その中で、音楽を例に挙げますと、邦楽では飯が食えない、だからだんだん人材が減ってくる。そしてまた、例えば三味線を弾く人が減ってくると三味線をつくる人もなくなってくる。
 私の郷里なんか、茶道の茶せんをつくっている高山というところがあるのですが、全国の九割ぐらい生産しておりますが、これも、茶道の人口がだんだんなくなってきますと茶せんを生産する人たちが仕事がなくなってくるわけです。
 また、書道が、書道の人口がだんだん少なくなりつつあります。学校でも書写書道を教える時間が少なくなってきております。こういう傾向から、私の奈良は筆、墨の生産地であるわけでございますけれども、これもだんだん筆、墨が生産されなくなる、そういう職人もいなくなってくる。
 また、雅楽またお能とかそういうものを演奏する演者、演者もいらっしゃいますけれども、その下で支えている鼓や太鼓をつくる人たち、こういう人たちもだんだん少なくなってくるわけでございます。
 そういうことから考えますと、私たちは今の日本の価値観そのものをもう一度見直さなければいけないのじゃないかな、私はそういうふうに思えてならないわけでございまして、伝統的な価値をもっと大切にする。
 そして、物づくりの視点というものを、近代的なものばかり、物づくりといいますとそちらの方へ目が向けられておりますけれども、伝統的な日本の心を伝えるものでありますとか、日本の伝統文化を伝えるものでありますとか、そういうものの物づくりにもやはり意を用いなければならない、そんなふうに思いますし、職人芸を継承する人、そういう人を育てていくにはどうしたらいいのか、これも大変大きな問題だと思うわけでございます。
 そういう視点から、私は大臣の御感想をお伺いしたいなと思いますので、ちょっと一言お願いいたします。
遠山国務大臣 日本は経済大国と言われているということでございますが、確かにそういう面もございますけれども、私は、海外におりましたときに、日本は科学技術の国でありながら伝統文化をしっかり守っている、その二つの柱が日本の特色であるということで大変尊敬されたわけでございまして、大使として大変誇りに思ったところでございます。
 しかし、国内に帰りますと、確かに委員御指摘のように、日本の伝統文化という面において、もう少し力を注ぎませんと、これまでの人々が培ってきたすぐれた伝統文化というものがだんだん衰微していくことも懸念されるところでございます。
 その意味で、今いろいろなことを我が省としてはやっているわけでございますが、文化庁でも伝統文化の関係の方に最近大変力を入れてまいっておりますし、昨年の予算におきましても、委員その他の方のお力添えによりまして、伝統文化に関する、地域の伝統文化の振興のための大変多額なお金を、予算をとることができたということもございます。
 それから、小学校段階におきまして、特にこの四月から実施される新しい学習指導要領におきましても、日本の伝統音楽を一層重視する観点から、それぞれの地域に伝承される童歌とか民謡などの歌を取り上げたり、低学年から日本に伝わる楽器を取り上げるというようにいたしておりますし、中学校では、三年間を通じて一種類の和楽器を必ず体験できるようにするということで、既にお琴とか三味線とかという業界は大変潤い始めているところでございます。
 それにいたしましても、とにかく人口が、かつて二百万でしたか二百四十万でしたか、大変な人口であった出生が今や百万をちょっと超えるということで、それは茶せんの業者であれ筆の業者であれ、子供たちだけを相手にしておりますと、確実に減ってまいると思います。その辺をどうやってやっていくか。
 しかし、やはり教育は産業のしもべではないわけでございまして、その角度だけから論じてはいけないのではないかなと思っております。
森岡分科員 お能とか歌舞伎とかいう世界を見ますと、演者、演じている人たちの世界には結構人材が入ってくるんですね。それで継承されております。
 ところが、それを支えるすそ野の職人、これがだんだん少なくなってきているわけでございまして、やはりこういうのは、今も大臣がおっしゃったように、マーケットの需要に任せておけばどんどん廃れていくということ、産業のしもべになってはいけないということもそうだと思いますし、私は、大切な日本の文化や伝統が絶えてしまう、そういうおそれのある分野がいっぱいあるのじゃないかなと思って、危機意識を持っているわけでございます。
 例えば、学校で使われております、教材として使われております笛、こういうのはプラスチックとか合成樹脂でできているのですね。それは安く上がるからということだと思いますけれども、本物の笛、本物の笛というのはやはり竹でつくったものとか木でつくったもの、そういうものが、職人が売れないものだからだんだんなくなってくるのですね。
 そしてまた、三味線の糸も、あれは本来絹の糸だそうですよ。ところが、ナイロン製のものがはびこってきているようです。
 また、和太鼓だって、革が合成皮革だと。本物の革は張っていない。そして、和太鼓の世界だって中国産のものがどんどん入ってきまして、それで、日本の国産品を買いますと、和太鼓だって非常に高いものですから、中国から入ってくる和太鼓をたたいて練習したり演奏をしたりしている人たちがふえてきている。こういうことも大変深刻でございまして、しかし、実際に中国製の太鼓と日本製の太鼓を比べてみると、音が全然違うそうです。そういうことも考慮に入れていただいて、どうしたら日本の古来の伝統的な和太鼓が日本の職人によって継承されていくか、こういうこともやはり考えていかなければならないんじゃないかな。
 本物が絶えてしまう、そういうことを大変私も危惧しているわけでございまして、この間、私の友達がこんなことを言っておりました。三味線の音でも、ナイロンの糸はペンペンという音がするそうです。無機質な音ですね、澄んだ無機質な音。ところが、絹製のプロの使うような三味線の音は、ベンベンという音がするんだ、ペンペンとベンベンの違いがあるんだと。わかりやすいようなわかりにくいような話でございますけれども、絹製の本物の三味線の糸は非常に味わいのある音色を出してくれるんですよ、それがだんだんなくなってくるんだ、非常に寂しいということを言っておったわけでございます。
 こういうことに対して、もう一度大臣、ちょっと御感想をお話しいただきたいと思います。文化庁の銭谷次長でも結構でございます。
銭谷政府参考人 先ほど来先生からお話がございましたように、有形無形の文化財に用いられる用具でございますとか、あるいはそれを生産、製造する技術者の方は、我が国の文化財の保存のために欠かせないものでございまして、そういう方々、そういう材料がなければ、我が国の伝統文化は成り立たないものであるというふうに言えるかと存じます。
 昭和五十年、文化財保護法を改正いたしまして、こういう伝統的な技術者の減少、老齢化、後継者確保の困難等の傾向が著しいことから、文化財の保存のために欠くことのできない伝統的な技術、技能を選定保存技術として選定する制度を設けまして、その技術の体現者を保持者に、団体を保持団体に認定し、現在、五十六件の選定保存技術について保持者を四十六名、保存団体を十八団体認定し、当該技術の保存、伝承を図っているところでございます。お話のございました三味線にかかわりましても、現在、糸の製作あるいは原糸の製作を選定保存技術として選定し、その技術の保存、伝承を図っているところでございます。
 また、加えまして、文化庁におきましては、この伝統的な技術の保持者及び保存団体が行う後継者養成に対しまして補助金を交付し、選定保存技術の伝承者の養成の支援を行う、さらには、こういった選定保存技術保持者などを講師といたしまして、文化財保存技術者養成研修、こういうものを実施いたしまして、技術者の確保に努めているところでございます。
 また、いわゆる伝統芸能や有形文化財など文化財を支えるさまざまな用具、原材料につきましても、入手困難や不足が危惧されているものを対象に、その状況を把握するための調査を実施し、昨年三月に報告書を取りまとめたところでございます。
 その際、用具の製作にかかわる従事者の状況についても調査を行ったところでございまして、こういった結果も踏まえまして、今後とも、用具の問題、従事者の人材育成施策の問題につきまして、取り組みを進めてまいりたいと思っております。
森岡分科員 今伺いましたことは私も承知をしているわけでございますが、若い人たちがこの世界に夢を持って入ってこれるような状況をつくっていただきたい。もっともっと充実した状態にしていただきたい。功成り名を遂げた人を顕彰するとか、その人に補助金を上げるとか、そういうことじゃなしに、もっと若い人たちを育ててあげられるような仕組みをつくっていただけないものかな、そう思うわけでございます。
 ちょっとお話を変えまして、重要無形文化財の指定、認定の基準。重要無形文化財といいますと、通称人間国宝と言われているものでございますけれども、この基準がどうなっているのか、どういう人が人間国宝の対象になるのか。ちょっとその仕組みだけ簡単に、銭谷次長、お願いできませんか。
銭谷政府参考人 文部科学省では文化財保護法に基づきまして、我が国の伝統的な芸能や工芸技術のうち、芸術上または歴史上価値の高いものを重要無形文化財と指定しております。
 これらのわざの体現者のうち個別に保持者として認定した方がいわゆる人間国宝という方でございますし、こういったわざを保持する人たちで構成されている団体を保持団体として認定をして、そのわざの保存、伝承に努めているところでございます。
 その認定基準でございますけれども、これは文部科学省告示により定めておりますが、重要無形文化財の指定基準につきましては、いわゆる音楽、舞踊、演劇などの芸能関係と陶芸、染織、金工などの工芸技術関係に区分けはして基準を決めておりますけれども、いずれも、まず第一に、芸術上特に価値の高いもの、第二に、歴史上特に重要な地位を占めるもの、第三に、芸術上価値が高く、または歴史上重要な地位を占め、かつ地方的特色が顕著なもの、この三つのいずれかに当たるものを指定するということで、芸能、工芸とも基準の考え方としては同一の考え方に立っております。
 現時点の重要無形文化財の指定件数は、芸能が四十八件、工芸技術が五十七件でございまして、いわゆる人間国宝と呼ばれる方は芸能が五十二名、工芸技術が五十三名という状況でございます。
森岡分科員 七年ほど前に、文楽の人形師大江巳之助さんを人間国宝にしようということで、民間の人たちの運動がございました。一万人近い賛同者の署名をもらわれて、文化庁にも陳情があったと思います。このことにちょっと触れたいと思うのです。
 大江さんという方は、文楽の人形の首をつくる方でございまして、戦後の文楽で上演されてきた四百ぐらいの首をつくっておられる、この世界では大変な方でございます。人形芝居の人形の首を彫る技術の伝統というものが、ほぼ大江さん一人で、一人の腕によって伝えられたと言っても過言ではない、それぐらい大変な人なんですね。しかし、この方を人間国宝に認定できないという文化庁の判断でございまして、能面の作家、または歌舞伎の衣装をつくる人たちも、先ほど文化庁の次長さんがおっしゃった、選定保存技術者ということで認定される、そういう可能性はあっても、人間国宝にはできないんだということでございました。
 今の文化庁の御説明を聞きますと、芸能関係と工芸技術関係の二つの部門があるんだ、ところが、芸能関係では演者、演奏者しか人間国宝にはなり得ないんだということになっているわけでございます。
 私が理解できないのは、芸能を支えている多くの技術者、職人は人間国宝になれない。例えば、能を演じているシテ方、こういう人は人間国宝になるけれども、その下で支えている人たち、衣装をつくっている人たちとか、能のお面をつくっている人たちとか、鼓を打っている人たちとか、こういう人たちは人間国宝になれない。
 ところが、工芸の分野では技術者が川下までその対象になり得るということであります。例えば、お能のシテ方を務める人は人間国宝。しかし、この方がつける、先ほど言いましたお面や装束は、どんなにすばらしいものであっても、これをつくる人は対象にならない。一方、工芸の場合は、江戸小紋というものがございますけれども、江戸小紋の技法を伝える小宮康孝という人が、もちろん、それをつくる上で欠くことのできないその型紙をつくる人も、さらには、その型紙の補強技術である、型紙の糸入れという技術だそうでございますけれども、この糸入れをやっている、私らにしたらわからない世界でございますけれども、その技術を持っている城ノ口みゑさんという、かなり年輩の方のようでございますが、この方も人間国宝になっている。これをどう見たらいいんだろうか。
 芸能をやっている人は、舞台で演じている人だけが対象になる。ところが工芸の分野では、みんなそれぞれつくっている人たちが対象になっている。私は、これはちょっと不公平じゃないかなと。文化庁の見解では、文楽の首は演じられて初めて芸術上の価値があるんだ、それそのもので芸術上の価値はないんだ、こういうふうに見ておられるということですね。そうしたら、茶の湯のかま、これなどもやはり、お手前で使われて初めて値打ちの出てくるものじゃないか、その価値を発揮するものじゃないか、そう思うんですね。同じことじゃないか。
 それを、文化庁は、人間国宝の対象にできるものとできないものと、芸能と工芸で、どうも差別をつけているように思えてならないわけでございまして、私は、この人間国宝の指定、認定基準の見直しをしたらどうか、それを提案したいわけでございますけれども、次長さん、いかがでございますか。
銭谷政府参考人 先ほど来お話がございました、例えば文楽人形の頭製作、文楽人形の衣装製作あるいは能楽の小鼓製作など、伝統芸能を支える工芸技術は、それ自体は芸能そのものではなくて、芸能を演ずるための用具をつくるという意味で非常に重要なお仕事をしていただいているわけではございますが、現在は、選定保存技術という形で選定をしているわけでございます。
 かつて、この頭製作の件でいろいろな御要請があったということは私も承知をいたしておりますけれども、例えば、工芸としてこれを考えた場合に、それ自体で伝統的な一個の完成した伝統工芸技術というところまで行っているのかどうかということや、芸能という観点から見ますと、先ほど来申し上げておりますように、伝統芸能そのものを体現するわざとは性質が異なり、舞台効果を上げるための用具の製作、修理の技術、技能であるということから、選定保存技術の方で保存、継承を図っているというのが実情でございます。
 選定保存技術と、それからいわゆる人間国宝、重要無形文化財は、ともにそのわざを後世に継承すべきものとして、文化財保護法に基づき指定あるいは選定し、その継承のために、保持者の方々が行う後継者養成事業に助成をしているという点では共通でございまして、いずれの保持者も、国にとって非常に貴重な方々であると認識をしているところでございます。
 現在のところ、直ちにこういった考え方を見直すということはなかなか難しい状況にあろうかと思います。ただ、選定保存技術の方々につきまして、本年度、その保持者、それから保持団体につきましても、枠の拡大を図りまして、その充実を図っていこうというふうに考えているところでございます。
森岡分科員 私は、今の御説明を伺ってもなかなか納得ができないわけでございまして、お能のお面だって、すばらしいものがありますよ。これはもう大変な人がつくっている、そして値段がつけられないほどのものがございます。一方、茶の湯のかまをつくっている人が人間国宝になって、お能のお面をつくっている人が人間国宝になれない、これはどう見ても私は納得がいかないわけでございまして、ぜひもう一度御検討いただきたいな、そんなふうに思います。
 ちょっと質問の内容を変えますが、世界文化遺産のことについて触れたいと思います。
 ユネスコの世界文化遺産の登録につきまして、暫定リストというものを世界遺産委員会に提出して推薦するという手順でございますが、この基準というものは、だれが、どのように決めているんでしょうか。そこのところをちょっと簡単に御説明いただけませんでしょうか。
銭谷政府参考人 文化遺産の世界遺産一覧表への登録の基本的な基準となりますのは、世界遺産条約やその履行のための作業指針などによりまして定められているわけでございますが、一つは、当該文化財が顕著な普遍的な価値を持っているということ、それからもう一つが、国内において保護のための万全の措置が講じられているということが基準としてあるわけでございます。
 したがいまして、こういう基準に則しまして、ただ、各遺産それぞれ特性がございますので、推薦物件も多様なものとなることから、こういう基準を踏まえながら、それぞれの遺産の特性を反映して推薦を行う、暫定リストに掲載をし、最終的な推薦を行うということになるわけでございます。
森岡分科員 実は、私の郷里、奈良でございますが、この奈良の八資産群が一九九八年の十二月に世界遺産に登録をされました。しかし、当初、奈良市から十七の候補リストが挙げられておりまして、結果は八つに絞られたということでございます。東大寺、興福寺、春日大社、春日山原始林、そして元興寺、薬師寺、唐招提寺、平城宮跡、この八つの資産群に絞られたわけでございます。この絞られた過程を教えていただきたいんですね。
 また、法華寺とか新薬師寺、大安寺、西大寺などが登録されなかったのはどうしてだろうか。南都七大寺の中から大安寺や西大寺がどうして削られたんだろうか。そしてまた、東大寺は昔、総国分寺と言われた、本山だった。国分尼寺の総本山が法華寺でございました。そういう視点から見ますと、法華寺も世界文化遺産にする可能性の高いところではないかな、そんなふうに私は思います。
 また、この奈良のこと以外でも、姫路城が世界文化遺産に入っている、ところが彦根城がどうして入らないのか、これも不思議でならないわけでございまして、私の郷里の、世界文化遺産に登録を受けたいと思って願っておったお寺が、世界遺産候補という立て看板まで立てて、非常に楽しみにしておったんですよ。ところが、見事に外れてしまったものですから大変立腹しておられまして、不満を持っておられるわけです。
 入ったところはよろしいですけれども、入らなかったところはなぜ落ちたのか、その説明もなかなか理解できない。情報開示とか説明責任ということももう少し考えていただいたらいいんじゃないかな、そんなふうに思うわけでございまして、そこのところの過程を、文化庁の次長さん、教えていただけませんでしょうか。
銭谷政府参考人 世界遺産の登録までの、まず手続でございますけれども、各国において暫定リストを作成し、世界遺産委員会へ提出をいたします。奈良の場合は、これは平成四年であったと記憶をいたしております。その後、推薦準備の作業を行いまして、推薦書を世界遺産委員会へ提出し、いわゆるICCROM、国際記念物遺跡会議等の審査を経まして、世界遺産委員会で審査、登録の可否を決定していただくという手順になっております。
 具体的な国内の作業の手順でございますけれども、暫定リストから本登録に向けた推薦作業におきまして、登録物件の推薦に当たりましては、一般に、まず第一に、関係自治体が候補物件のリストを作成いたしまして、第二に、それを受けて文化庁の方がその妥当性を検討し、第三に、その文化庁の検討結果を関係自治体にフィードバックしてその議論に付し、第四に、そういう関係自治体の検討結果を尊重して文化庁が最終的に決定をし、いわゆる推薦に向けていくという作業を、これは今四段階で申し上げましたが、何回にもわたって繰り返しながらやっていくということでございます。基本的には、地域の意向を十分に反映しつつ、数段階の調整を経て決定をされていくということになります。
 率直に申し上げまして、古都奈良の文化財の場合でございますけれども、当初、暫定リストには何件ということはないわけでございまして、ただ、地元側の御意向として十七考えておられたということは私承知をいたしておりますけれども、最終的には八つに絞られたということでございます。
 その際、古都奈良の文化財の構成要素となる社寺の推薦基準でございますけれども、まず、国宝に指定をされている建造物等を含む建造物群であること、かつ、それらが所在する土地が史跡等に指定されていること、この二つの要件を満たす当該地域に所在をする奈良時代の社寺であって、そういうものを社寺についてはこの古都奈良の文化財の構成要素とした。お話のございました寺院等につきましては、この要件に合致をしなかったということがございまして、対象とはなっていないということでございます。
 ただ、今反省をするといたしますと、その辺の経過、もう少し専門性を高めるなり、情報の適切な提供なり、こういうことに工夫の余地はあったのかもしれないなとは思っております。
森岡分科員 時間が参りましたので終わりますけれども、例えば新薬師寺などというものは、建物そのものが国宝になっておりますし、すばらしいお寺でございます。世界文化遺産に指定しても全くおかしくないものだと思います。だから、私は、この暫定リストに推薦するその基準を見直していただきたい、強くお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。
山名主査 これにて森岡君の質疑は終了いたしました。
 次に、赤羽一嘉君。
赤羽分科員 公明党の赤羽一嘉でございます。
 きょうは大変、三十分という限られた時間でございますが、何点か質疑をさせていただきたいと思います。
 まず冒頭、障害を持たれたお子様、児童の教育のあり方について質疑をさせていただきたいと思います。
 実は、私には長男がございまして、この春小学校を卒業いたしました。私の長男のクラスメート、実は幼稚園から一緒なんですが、知能障害を持たれたお子さんがおりました。そのお子さんを間近に見ながら、また我が子の様子を見ながら、私自身もすごく思うこともございまして、まず質問をさせていただきたいと思います。
 まず、何点か論点用意しておるんですが、最初に大臣にお伺いをしたいと思うんですが、そういう障害を持たれたお子さん、特に知的障害を持たれたお子さんに対して一番愛情を注がれているのは、母親、お母さんたちなんですね。そのお母さんとよくお話をして、本当に共通して一番心配されていることというのが、本当に共通していることがあるなと私は実感をしているんですが、そういったお子さんを持たれているお母さんたちの一番の悩みというのはどんなことだろうかというふうに認識をされているのか。ちょっと、通告ではありませんけれども、細かい話ではありませんが、どういったものと了解をされているのか、御見解を聞かせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
遠山国務大臣 すべての親は、みずからの子供が健やかで、そして持てる能力を十分発揮できるようにという願いを持って子供の養育に当たっているということだと思います。その子供さんが障害を持たれていても、親の愛情というものには変わりはない、むしろ障害を持つからこそ愛情は深くなるというふうに私は思います。
赤羽分科員 私もそういったお母さんたちの会に行っていろいろなお話を聞かせていただき、大変なんだなということを実感した中で、実は卒業文集のところに、その私の息子の友人のお母さんの文章が載っていて、胸を打たれたというか、今までそういった団体のお母さんたちの話を聞いて、全くやはり同じだなと思った部分があるので、ちょっと御紹介させていただきたいと思うんです。
 途中からなんですが、
  これからの課題は、いかに自分に自信を持ち、生きていけるか、自立への道です。親はいつまでも若くなく、いつかは我が子より先にこの世を去ることになります。親の死後、どんな苦難が訪れても自信を持ち、自分の力で強く生きていかなければなりません。これから先、知力不自由な我が子でも、誰かに自分が必要とされているという経験を一つでも多くしてほしい。その中で自信に目覚めてくれることを望んでいます。
やはり、自分が亡くなった後にどう自立していけるかという、大変、ある意味では絶望的な中での必死の思いというのが本当に共通していることなんじゃないかなということを認識いたしました。
 その中で、障害を持たれている、障害のある児童の教育のあり方についてどうあるべきかということをちょっと議論させていただきたいと思います。
 実は、我が党の部会でも、先日、「障害のある児童生徒の就学指導に係る学校教育法施行令の改正について」、このテーマについていろいろ議論をさせていただきました。そのときの理解では、今文部科学省が考えられているのは、障害を持たれている児童については、その障害の程度において、例えば盲・聾・養護学校に行った方がいい、もしくは学校の中の特殊学級に進まれた方がいい、こういった、基本的にはその障害に合わせて、一般学級ではなくて、その程度に合わせた、分離学級と言うと非常に、そうじゃないという指摘もあるんだけれども、そういったことの方が望ましいという基本的な態度にあるのではないか、こう考えています。そう感じております。
 ここの一文についても、
  市町村教育委員会は、上記(1)の基準に該当する児童生徒について、盲・聾・養護学校に就学することが適当である旨、都道府県の教育委員会に対し通知する。
  都道府県の教育委員会は、その保護者に対し盲・聾・養護学校の入学期日を通知する。ただし、
とただし書きで、
 ただし、上記(1)の基準に該当する者であっても、市町村教育委員会は、その者の心身の故障の状態に照らして、小学校又は中学校において適切な教育を受けることができる特別の事情があると認める者については、その保護者に対し小・中学校の入学期日を通知する。
例外ケースとして一般学級の入学を認めている、こう読むしかないのかなという感じがいたしております。
 しかし、私たちは結論として、ちょっと先ほどの、また同じクラスの子供、実は、ちょっと長くなるんですが引用がございまして、そのお子さんが小学校入学前に、障害者を持つ母親の体験談話の会がある、その中で聞いたことで、ある方からこう言われましたと。
 だれでも、どんな子にも必ず“ひかり”はあります、当時の私は、この言葉にどれだけ慰められたことか、それからです、この漠然とした“ひかり”探しが始まったのはと。そして、不思議ですね、息子の“ひかり”探しをしているうちに息子だけではなく他の人にも当てはめて見ているのですから、また息子と一緒にチャレンジする楽しさも覚え、教えられ思わぬ収穫でもありましたと。あるとき、知力不自由者のための競技大会のビデオを見ていましたら、大会の応援に来ていたアスリートの母親が生き生きと、子供たちは楽しませてくれる能力があると語っているすばらしい場面がありました、この言葉に感動で胸が震えました、また、この言葉で息子の“ひかり”の半分はもう手に入れているのではないかと気づかされもしましたと。こういったくだりもございました。
 何が言いたいかというと、私は、少なくとも小学校の低学年、入学時においては、知力不自由な子もいればやんちゃな子もいる、先生の言うことを聞かない子もいる、なかなか座っていられない子供もいる。これはある意味では個性の一つなのではないか。知力不自由な子というのも個性の一つなのではないか。基本的には、中学校とか小学校高学年とかということの段階では違う考え方もあるかもしれませんが、最初はまず一般学級の中で一緒に生活をするということが実は大変大事なのではないかというふうに考えもするんですが、その点について御見解はどうでしょうか。
遠山国務大臣 先ほどのお読みになりました文章を聞いていながら私は思ったのですけれども、そのお母さんが子供を自立させたいという願いをしっかり持っておられるというのは、大変立派な方だと思いますね。
 ともすると、やはり障害のある子供に対しては、家族も周辺も、とにかくかわいそうだからということが先行しがちですけれども、自立をさせてやりたいというしっかりしたお母さんのもとで、きっとその子供はしっかり育っていくと思いますが、私どもも、やはり障害のある子供に対しましては、その可能性を最大限伸ばして、自立し、社会参加するために必要な力を培ってほしい、そのような角度から、より手厚く、それぞれの障害の種類や程度に応じてきめ細かな教育を行う必要があるということで常に仕事をやっておりますし、今回の改正といいますか、制度の見直しにつきましても、社会全体がノーマライゼーションの進展とかあるいは教育の地方分権ということで進んでまいっておりまして、一人一人の教育的なニーズに対応した教育的支援の充実が図られるということが大変大事であると考えまして、市町村の教育委員会が行う就学事務、これに関してもっと弾力化が図られて、本当にその子供にふさわしいやり方で教育が行われるようにしていこうという趣旨でございます。
 したがいまして、特定の人たちは必ずどうでなくてはならないということではなくて、むしろ、それぞれの地方公共団体あるいは教育委員会がしっかりと判断して、本当にその子にとってどちらが、先ほど言ったような理念ないし目的、その子の将来の幸せにつながるかということを、しっかりした判断をして、そしてやってほしいということでございます。
 これ以上の細かいことはまた担当の方からお答えいたしますが、そういう信念で私どもは、よりよくするために、これまでのややリジッドな就学事務を、あなたはそういう障害があるならこうというやり方ではなくて、より柔軟に、弾力的にやるための改正であるということをまず御理解いただきたいと思います。
赤羽分科員 今の御答弁にもありました、先ほど私が読んだこの文科省の書類の中に、小学校、中学校において適切な教育を受けることのできる特別の事情があると認められる者、それは実は障害の程度ということじゃなくて、特別な場合というのは、学校の施設にバリアフリー化があるかないかとか、こういった例示が書かれていたんですよ。
 こういうことを書くということは、では、これを理由に、学校のバリアフリー化がないから受け入れられない、まさにその子の将来のためと今大臣がおっしゃられた目的ではなくて、置かれた状況の中で受け入れられないからということではじかれないように、ぜひ善処をしていただきたいと思います。
 加えて、実は、私自身が小学校のころは、学校の中に特別学級というのがありました。全く交流はないんですね。運動会ぐらいなんですね。私は、自分の自己形成を振り返ると、そのときに大変な不平等感というものが形成されてしまったのではないかという気がいたします。知能不自由な子供たちに対する奇異な目というか、別なんだということが物すごくはぐくまれてしまったのではないか。
 といいますのは、私の息子は、幼稚園のときからその子とクラスが一緒なんですね。そういった子たちがいると、まさにノーマライゼーションの中で生きているんです。その子がいるから、例えば運動会が、赤と白と分かれて、その子がいる方が負けてしまうんです。しかし、それだからといって、その学校はいじめなんか絶対起きていないんです。その子がそういった障害を持たれている子なんだということを、子供たちながら、非常にその尊厳性を認めて、非常に一人の友人として、文集としてはその彼についてのいいことを物すごく書いて、送る言葉で送っているんですね。
 ですから、私は、障害者の本人がどうなるかということはもちろん第一義的には大事なんですけれども、副次的に、今、これだけすさんでいる事件が起こり、心の教育というものが言われている中で、その子を取り巻くクラスメートというか、同世代の子たちに対することというのも、大変大きな意味がもたらされている実態があるというふうに考えておりますので、繰り返して恐縮でございますが、小学校低学年のときには基本的には一緒にクラスとして受け入れる、段階を追って別の授業を受けるというようなことの方向でぜひ取り組んでいただきたいというふうに思います。これが第一点です。
 それで、では、盲・聾・養護学校に進んだ方がいい、こういったときに、公明党も申し入れをさせていただいたんですが、盲・聾・養護学校の専門性ということがどれほど充実をしているのか。盲・聾・養護学校の先生の中で、文部科学省から聞いた話ですけれども、専門の資格を持たれている方というのは実は半分ぐらいしかいない。
 その盲・聾・養護学校が大変充実をしているという前提であるならば、盲・聾・養護学校に行かせた方がいい、これはよくわかるんですけれども、本当にそちらの部分が充実していると言えない状況の中で峻別をしてしまうというのは、実は、大義名分として、大目的としてその子のためといいながら、結果としてなかなかそうはなっていないのではないかということも指摘せざるを得ないのですけれども、その盲・聾・養護学校の専門性のあり方について、どう現状を認識し、どう改善をされていこうと考えているのか、お聞かせいただきたいと思います。
矢野政府参考人 特殊教育関係の教職員は、障害のある児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じた教育を行うことが必要でありますことから、特殊教育に関する高い専門性を有することが重要であります。そのことはまさに委員御指摘のとおりでございます。
 これまでも、特殊教育総合研究所におきまして、特殊教育の指導者講習会、あるいは重要課題に関する専門的な研修を行いますほか、それぞれの都道府県の特殊教育センター等におきまして、経験や職能等に応じた研修が行われてきているところでございます。
 一方、盲・聾・養護学校の教員の特殊教育免許の保有率が五〇%以下と低い状況にあるわけでございまして、そういうことから、任命権者である都道府県教育委員会におきましては、教員の採用や配置、また研修等を通じた取り組みを積極的に進めることによりまして、教員の特殊教育免許保有率の向上を図ることが大変大事になっているところでございます。
 このため、文部科学省といたしましては、こうした取り組みを支援するべく、一つには、今年度後期からでございますけれども、放送大学におきまして、特殊教育教諭免許状取得のための科目を新たに開設することといたしました。
 また、これも本年度からでございますけれども、先ほど申し上げました特殊教育の免許状を取得するための認定講習の開催でございますとか、あるいはそれぞれの特殊教育諸学校の校内研修のプログラム開発、さらには、特殊教育諸学校において多様な人材を活用した専門性の高い指導体制をつくっていくといったような点について研究することを内容といたします盲・聾・養護学校の専門性向上推進モデル事業というのを今年度から行うことといたしたところでございまして、今後とも、こうした取り組みを通じまして、盲・聾・養護学校の教育力の向上を図ってまいりたいと考えているところでございます。
赤羽分科員 ぜひ、盲・聾・養護学校の専門性を向上することが大変大事だというふうにも思いますし、それに加えまして、いわゆる一般の小中学校の教員においても、その障害を持たれている児童に対する教育のあり方についての研修もぜひ高めていただきたいということを要望しておきたいと思います。
 また同時に、二十一世紀、ノーマライゼーションの時代ということで、法制的にも、二年前にいわゆる交通バリアフリー法とか、また一九九四年に制定されましたハートビル法がこの通常国会でも改正になるわけでございます。ユニバーサルデザインの社会づくりを進めていこう、こういったことが大変叫ばれている。
 ようやくそういう時代になったわけでございますが、学校に行きますと、私たち、大臣もそうですし、政務官もそうでしょうし、小学校、中学校というのは、我々、時局講演会とか案外行くことが多いんですが、余りにもバリアフリー化されていないところが多いというのが実感であります。
 先ほどちょっと読みましたけれども、受け入れの施設ということでバリアフリー化というのがこの文書の中にも書かれていたというような状況の中で、今後の学校の施設のバリアフリー化ということは、障害を持たれている児童を受け入れるということだけではなくて、学校を地域に開いていこう、地域に開かれた学校ということで、当然、障害を持たれた障害者の方が学校に来る、こういったような状況の中で、学校もバリアフリー化を進めていくということは喫緊の課題だ、そう考えておるわけでございますが、できれば、今のバリアフリー化の現状と、また今後についてどうお考えか、御見解をいただきたいと思います。
矢野政府参考人 まず、私の方から現状を御説明申し上げたいと思います。
 これも御指摘のとおりでございます。公立学校におけるバリアフリー化を進めることは大変大事なことでございまして、現在、各学校の設置者によりましてその整備が進められているところでございます。
 私どもといたしましては、従来から、障害を持っている児童生徒がいる学校や、また特殊教育諸学校と交流を行っている学校のみならず、御指摘のとおりでございますけれども、地域コミュニティーの拠点として整備する学校につきましても、エレベーターやスロープ、自動ドア等のバリアフリー施設の整備にかかわります経費の一部を国庫補助してまいってきているところでございます。
 そこで、公立小中学校のバリアフリー化の進捗状況でございますけれども、平成十三年の調査によりますと、全体の五〇%の学校においてエレベーター、障害者トイレ等の何らかの施設の整備がなされているところでございます。
 ただ、この整備率は何らかのバリアフリー施設が整備されている施設の率でございまして、一つ一つの施設状況、施設の整備状況を見ますれば、これは、委員がお感じになったというお話でございましたけれども、全体として見ればまだまだ不十分な状況にあるというふうに考えているところでございます。
赤羽分科員 きのうもその五〇%の整備率という話を聞いて大変驚きました。私、どう考えてもその数字は全く信じられない。
 バリアフリーというのは、手すりがあればバリアフリーだというカウントをしていること自体が非常にだめなんですよ。手すりがあるところの横に段差がある、これはバリアフリーされていないんですよ。障害者の立場に立てばそうでしょう。段差があるから使えない、しかし、手すりがついているからバリアフリーが整備されているなんていうことでカウントしていること自体がやる気のない証拠と言わざるを得ない。完璧にバリアフリー化されている学校というのは、私はきのうも言いましたけれども、大阪にたった一校あっただけです、その実感として。
 ですから、今回、ハートビル法の中に、学校も努力義務の対象になっているわけですよ。これは、対象になっているだけじゃ魂が入らないわけですから、ぜひ、ちょっと政治家の方から聞かせていただきたいんですが、ハートビル法で努力義務はなった、文部科学省としてどう推進していくのか。努力義務をするべきだ、こう言っているのが今回の法案の、向こうの法案の改正の骨子なので、主管の文部科学省としての心意気としてはどうなのかということを改めてお答えいただきたいと思います。
池坊大臣政務官 今委員がおっしゃいましたように、三月八日にハートビル法が国会提出されまして、小学校が努力義務の中に入ってまいります。
 今おっしゃいましたように、私は、やはりバリアフリーというのはそれぞれの学校の意識の問題もあると思います。ですから、障害者トイレをつくったからもうそれで事足りたというのではなくて、車いすの人たちが例えばどういうふうに実際にスムーズに、学校というのは、ただ児童生徒がいるだけでなくて地域のコミュニティーの場でもございますから、完璧にはできないとは思いますけれども、まず障害者の立場に立って、どういうふうな工夫ができるかということが大切だと思っております。
 私どもも、先ほど局長から話がございましたように、自動ドアとかエレベーターというのはなかなか難しいんですけれども、スロープをつけて段差を少なくするとか、そういうことの工夫はできると思っておりますので、積極的にこれは推進いたしております。
 一千四百億円の学校にかける施設費がございますので、その中で対応ができます。ですから、申請が上がったものに対して補助をいたしておりますので、私どもは申請が上がりませんとできませんので、ぜひ委員も地方自治体の中でそのような取り組みをしていただけたらと思っております。
赤羽分科員 バリアフリー化というのは、私はよく国土交通委員会でもずっと言っておりますが、国民に対する大啓蒙運動だと。バリアフリーが当たり前だということをどう定着させるか、そういった意味で、まず教育現場の学校がバリアフリーであることはすごく大事なことだと思いますので、ぜひ、まず省を挙げてよろしくお願いしたいと思います。
 ちょっと時間も迫っておりますが、次に、不登校児童の問題に移らせていただきたいと思いますが、ちょっとこれ、時間が途中になると思いますので、私は兵庫県の選出なものですから、兵庫県のトライやる・ウイークについてやりとりをさせていただきたいと思います。
 かつて、この委員会でも、私、検索をしますと、トライやる・ウイークというのはかなり国会の中でやりとりが出てきて、大臣の答弁は一カ所だけだった、こう認識もしております。
 よく御承知のことだと思いますが、トライやる・ウイークというのは、阪神・淡路大震災後、心のケア、児童に対する心のケアということが大事だ、同時に、その直後に神戸で連続児童殺傷事件が起こった、まさに心の教育のあり方ということが兵庫県的にいくと大変大きな課題となったということを受けて、そして、これまで教えるということが中心の教育から、はぐくむということに移していこう、それも、学校の枠の中ではぐくむのではなくて、それを地域に開いて、学校と家庭、そして地域とが三者一体となってはぐくんでいこうというスキームなんです。
 これは大変労力のかかることと、ある意味じゃ、物すごく強制力が発動されているわけなんです。学校の一つの施策を県知事が発動した。それによって、実は私の家内は一年間PTAの会長をしておりまして、PTAの会長というのは、このトライやる・ウイークの準備のために膨大な時間が割かれております。受け入れというのはそんなに簡単ではなくて、自治会も挙げて受け入れる。要するに、知らない中学校二年生を受け入れて、万が一の事故を起こしちゃいけないとか、大変な負荷がかかるのは事実です。それだからゆえに、お金の問題とかかつて議論もされておったようですけれども、お金の問題というより、そういう地域ぐるみでやらないと絶対にうまくいくわけがない大規模なスキームなんですね。
 三百三十五校、千五百十クラス、五万五千人の子供が出ている。今もうちょっとふえているかもしれません、ちょっと古いデータなんですが。そのときに二万三千人の人がボランティアで支えている。二人の生徒に対して一人の関係のない地域の人たちが支えているといった、もう大実験であります。
 しかし、その実験の結果何があったかというと、データ、一部ですけれども、二百七十七校の学校の調査をしますと、千七百十九名の不登校児がいた。その千七百十九名の不登校のうち、五三%、九百十四名の不登校児が参加したというんです。その参加したうちの八割、七百五十名前後の人たちが二週間以内に学校に戻ってきた。そして、時間がたつとまた学校に出てこなくなった子もいますが、最終的には三百十四名の生徒の不登校が直った、こういった結果が出ている。
 不登校の問題というのは、もちろん学校そのものにもあるし、本人の生命力とか本人の問題もあるし、家庭の問題もある、こういった分析があると思いますが、その中で、地域ぐるみで面倒を見ていこう、地域の中というか、地域においての体験学習を通して頑張っていこうと。
 私も現場に何回も行きますと、一週間の最初に行くと、あいさつもできない生徒ばかりなのですね。私の後援会の材木屋さん、かつてのこの委員会でも言いましたが、材木屋さんの社長で、毎年十人近く集めて何か物をつくらせるというようなことを、現場をやらせるのですね、一週間で。最初はもう寒くて、こんなところよう来ちゃったなみたいな感じで、僕らが行っても、おはようございますとこっちが言ってもだれもあいさつしない。一週間後にでき上がるときに行くと、まるで本当に人が変わったようになっているのです。これは学校の先生が教えるということよりも、そこの職人さんなんかがびしびしやるわけです、一週間、朝から夕方までですね。これは明確なやはり教育効果というのはあるんだなと思わざるを得ない。
 遠山大臣もそうですし、池坊政務官も岸田副大臣も、かつて非常に肯定的な評価、答弁をされているのですが、しかし、兵庫県以外、こんな大々的にやっているところはいまだかつてないのですよ。これはなぜなのかな、だれもがいい制度だと認めていると。有馬大臣は私に対して、通産省と相談して試みにやろうと考えているみたいな答弁もいただいているんですけれども、その後どうなったかよく聞いていませんし、難しい問題が多いということになったのではないかなという推測もしているのですけれども。
 このトライやる・ウイークみたいな形態、これはどこまでいっても都道府県の教育委員会でありますが、文部省の皆さん、すべての皆さん、これまでの議会で、この国会の中で前向きな評価をされているのですね。それがなぜ実行できないのか、どういうふうに推進されてきたのかということをぜひお聞かせいただきたい。
 同時に、四億数千万かかっているという部分もあるわけです、補助金について。このことについても、岸田副大臣、池坊政務官もそうですけれども、かつての答弁の中で、どこまでいっても都道府県教育委員会の問題ではあるけれども、それに対して国も支援をしなければいけないと考えているという答弁もされているのですよ。この答弁についても、今年度の予算の中に入っているのかどうか、その具体的な進捗状況、推進方をぜひ聞かせていただきたいと思います。
池坊大臣政務官 赤羽委員がトライやる・ウイークについて理解と推進を図っていらっしゃいますことは私も存じ上げておりまして、たしか有馬大臣のときにも、積極的に推進を図っていらしたとき、私も委員会にいて伺っておりました。
 余り変わらないじゃないかという委員の今の御質問でございますが、決してそのようなことはございませんで、完全に全部の学校が実施しているかというとそういうことはございませんが、これを例にして、富山県では十四歳の挑戦、あるいは石川県で地域とともにわくわく体験、あるいは私が住んでおります京都でもこのような体験をいたしております。
 例えば、これがさらに推進されますためにはやはり予算等も必要かと思っておりまして、私どもは、国、都道府県、市町村における体験活動の推進体制の整備ということを、これは八億五千万の予算を組んでおりまして、協議会をつくりまして、そこで情報提供やコーディネートを行う支援センターを設置して、学校教育と社会教育を通じた青少年の奉仕活動を推進するよう、四十七都道府県、一千百地域でいたしております。
 また、学校における体験活動の充実ということで、これも三億五千七百万の予算をとりまして、体験活動を、モデル校をつくりましてその体験活動に取り組み、それを発信していこうというもので、これは百地域、八百校でございます。
 また、放課後や週末、特にこれから学校五日制になってまいりますから、土日をどういうふうに使うのかというのが問題になってまいりますし、昨年の教育改正の中でも自然体験それから体験活動というのを入れておりますので、これは約十二億ほどの予算を計上し、地域の実情に応じて、放課後、週末等を通じた地域の教育力の活性化のモデル事業というのを実施いたしております。
 これからも文部科学省は、私はこれは大変いい試みだというふうに思っておりますので、積極的に進めていきたいと思います。ただ、本当に地方の受け入れがございませんと、ただやりたいという意思だけではできませんので、各省庁とも、それから地域ともきめ細やかに連携をとりながらこれを推し進めていこうと思っております。
赤羽分科員 財政が原因で教育ができないということであるならば、その国の将来というのは大変暗いものがあるというふうに私は思っておりますし、そういったことの御趣旨じゃないと思いますけれども、ぜひ積極的に進めていただきたいというふうに思います。
 この前、遠山大臣の答弁で、この事業につきましては私もつぶさに知っているわけではございませんけれども云々、資料を通して拝見いたしますとということで、前向きな評価もされておりますが、百聞は一見にしかずと申しております。大臣も、政務官も、まだトライやる・ウイークの現場は見られていないというふうに思っておりますので、私もアレンジをいたしますから、ぜひ現場を見ていただいて、実感として感じていただいて推進をしていただきたいと思いますが、大臣のお答えを、もうそれだけで結構です。
山名主査 遠山大臣、簡潔に。
遠山国務大臣 それは機会があれば拝見するのもやぶさかではございません。むしろ委員、今制度として全国的に大変な勢いでこの体験学習についての動きが始まっております。もう特別の県の特別の何かプロジェクトということではなくて、すべての学校が本気になって、特にこの四月から新しい学習指導要領のもとで体験的な学習ということを大事にしておりますし、そのことをバックアップするための学校教育法の改正もいたしました。それから、予算的なものもつけ、それから社会人も学校に協力してもらうように、いきいきプランでありますとか、地域が学校を支えるということであれば、まさに先ほど冒頭でおっしゃいましたように、地域が汗をかいて学校の子供たちを受け入れる、そのような方向に今大きく動きつつございますので、特定のところのそれだけで終わったということではなくて、もっと本格的に動き出したということをちょっとお話をさせていただきました。
赤羽分科員 終わります。ありがとうございました。
山名主査 これにて赤羽君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして文部省所管の質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
山名主査 これより総理府所管中科学技術庁について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。遠山文部科学大臣。
遠山国務大臣 科学技術庁の平成十年度決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 まず、一般会計の歳出決算について申し上げます。
 平成十年度の当初歳出予算額は五千八百五十一億二千百八十八万円余でありましたが、これに予算補正追加額二千七百二十八億九千九百七十八万円余、予算補正修正減少額二百二億七千二百八十五万円余、予算移しかえ増加額六千九百二十二万円、予算移しかえ減少額百七十五億六千八百八万円余、前年度からの繰越額十六億二千六百五十四万円余を増減いたしますと、平成十年度歳出予算現額は八千二百十八億七千六百四十九万円余となります。この予算現額に対し、支出済み歳出額八千二十一億八千四百六十四万円余、翌年度への繰越額百八十三億七千百九十三万円余、不用額十三億一千九百九十万円余となっております。
 次に、電源開発促進対策特別会計のうち、科学技術庁所掌分の歳出決算について申し上げます。
 まず、電源立地勘定につきましては、平成十年度歳出予算現額は四百七十六億五千八百七十三万円余であります。この予算現額に対し、支出済み歳出額二百九十九億七千百四十九万円余、翌年度への繰越額五十二億一千七百二十七万円余、不用額百二十四億六千九百九十六万円余となっております。
 次に、電源多様化勘定につきましては、平成十年度歳出予算現額は千二百二十七億四千九百四十八万円余であります。この予算現額に対し、支出済み歳出額一千百二億五千二百九十三万円余、翌年度への繰越額八十七億八千二百四万円余、不用額三十七億一千四百五十万円余となっております。
 以上、簡単ではありますが、平成十年度の決算の概要を御説明申し上げました。
 よろしく御審議のほどお願い申し上げます。
 続きまして、科学技術庁の平成十一年度決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 まず、一般会計の歳出決算について申し上げます。
 平成十一年度の当初歳出予算額は六千百五十三億六十六万円余でありましたが、これに予算補正追加額一千六百四十七億九千百七十七万円余、予算補正修正減少額二百九十五億九百万円余、予算移しかえ増加額五億七千五百八十三万円、予算移しかえ減少額百七十六億二百十八万円、前年度からの繰越額百八十三億七千百九十三万円余、予備費使用額七億八百四十九万円余を増減いたしますと、平成十一年度歳出予算現額は七千五百二十六億三千七百五十一万円余となります。この予算現額に対し、支出済み歳出額七千四十四億八千二百五十一万円余、翌年度への繰越額四百七十三億四千五十万円余、不用額八億一千四百四十九万円余となっております。
 次に、電源開発促進対策特別会計のうち、科学技術庁所掌分の歳出決算について申し上げます。
 まず、電源立地勘定につきましては、平成十一年度歳出予算現額は四百五十億六千三百七十五万円余であります。この予算現額に対し、支出済み歳出額二百八十六億四千百二十五万円余、翌年度への繰越額五十九億四千三百三十三万円余、不用額百四億七千九百十五万円余となっております。
 次に、電源多様化勘定につきましては、平成十一年度歳出予算現額は一千二百三十七億六千三百二十九万円余であります。この予算現額に対し、支出済み歳出額一千九十六億五百五十万円余、翌年度への繰越額九十億五千四百六十九万円余、不用額五十一億三百九万円余となっております。
 以上、簡単ではありますが、平成十一年度の決算の概要を御説明申し上げました。
 よろしく御審議のほどお願い申し上げます。
 以上でございます。
山名主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院有川第四局長。
有川会計検査院当局者 平成十年度科学技術庁の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
 引き続き、平成十一年度科学技術庁の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
山名主査 この際、お諮りいたします。
 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山名主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
山名主査 以上をもちまして総理府所管中科学技術庁の説明は終わりました。
 これより質疑に入るのでありますが、その申し出がありませんので、総理府所管中科学技術庁については終了いたしました。
 これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。
 この際、一言ごあいさつ申し上げます。
 分科員各位の御協力を賜りまして、本分科会の議事を無事終了することができました。厚く御礼を申し上げる次第でございます。
 これにて散会いたします。
    午前十時四十三分散会


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