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第4号 平成14年7月23日(火曜日)

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(注:この議事情報は、「決算行政監視委員会第二分科会議録第2号」のデータです。)
平成十四年七月二十三日(火曜日)
    午前九時三十分開議
 出席分科員
   主査 松崎 公昭君
      相沢 英之君    逢沢 一郎君
      岩屋  毅君    中村正三郎君
      額賀福志郎君    金子善次郎君
      今野  東君    武正 公一君
      上田  勇君    神崎 武法君
      西村 眞悟君
   兼務 森岡 正宏君 兼務 吉井 英勝君
   兼務 中川 智子君 兼務 保坂 展人君
    …………………………………
   文部科学大臣       遠山 敦子君
   国務大臣
   (防衛庁長官)      中谷  元君
   総務副大臣        若松 謙維君
   文部科学副大臣      岸田 文雄君
   厚生労働副大臣      狩野  安君
   財務大臣政務官      砂田 圭佑君
   会計検査院事務総局事務総
   長官房審議官       漆舘日出明君
   会計検査院事務総局第二局
   長            増田 峯明君
   政府参考人
   (防衛庁長官官房長)   山中 昭栄君
   政府参考人
   (防衛庁人事教育局長)  宇田川新一君
   政府参考人
   (総務省大臣官房長)   畠中誠二郎君
   政府参考人
   (総務省行政管理局長)  松田 隆利君
   政府参考人
   (文部科学省生涯学習政策
   局長)          近藤 信司君
   政府参考人
   (文部科学省初等中等教育
   局長)          矢野 重典君
   政府参考人
   (文部科学省高等教育局長
   )            工藤 智規君
   政府参考人
   (文部科学省科学技術・学
   術政策局長)       山元 孝二君
   政府参考人
   (文部科学省研究開発局長
   )            今村  努君
   政府参考人
   (文部科学省スポーツ・青
   少年局長)        遠藤純一郎君
   政府参考人
   (厚生労働省職業能力開発
   局長)          酒井 英幸君
   決算行政監視委員会専門員 川城 正彰君
    ―――――――――――――
分科員の異動
七月二十三日
 辞任         補欠選任
  今野  東君     武正 公一君
  神崎 武法君     田端 正広君
  塩田  晋君     藤島 正之君
同日
 辞任         補欠選任
  武正 公一君     今野  東君
  田端 正広君     上田  勇君
  藤島 正之君     黄川田 徹君
同日
 辞任         補欠選任
  上田  勇君     神崎 武法君
  黄川田 徹君     山田 正彦君
同日
 辞任         補欠選任
  山田 正彦君     西村 眞悟君
同日
 辞任         補欠選任
  西村 眞悟君     一川 保夫君
同日
 辞任         補欠選任
  一川 保夫君     樋高  剛君
同日
 辞任         補欠選任
  樋高  剛君     塩田  晋君
同日
 第一分科員吉井英勝君、第四分科員森岡正宏君、中川智子君及び保坂展人君が本分科兼務となった。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 平成十二年度一般会計歳入歳出決算
 平成十二年度特別会計歳入歳出決算
 平成十二年度国税収納金整理資金受払計算書
 平成十二年度政府関係機関決算書
 平成十二年度国有財産増減及び現在額総計算書
 平成十二年度国有財産無償貸付状況総計算書
 〔内閣府(防衛庁・防衛施設庁)及び文部科学省所管〕


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     ――――◇―――――
松崎主査 これより決算行政監視委員会第二分科会を開会いたします。
 平成十二年度決算外二件中文部科学省所管及び内閣府所管中防衛庁・防衛施設庁について審査を行います。
 昨日に引き続き文部科学省所管について審査を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。金子善次郎君。
金子(善)分科員 民主党の金子善次郎でございます。
 まず最初に、国立学校設置法施行規則の改正の趣旨、それと大学病院の薬剤部等のあり方について質問をいたします。
 大臣、五月十七日の厚生労働委員会で、我が党の三井議員が、こういう質問と申しますか発言をしております。十五年度の概算要求に際しまして、文部科学省の担当官より、ここをよく聞いていただきたいと思いますが、恐らく聞いておられると思いますけれども、迷惑をこうむったので、今後各大学薬剤部の要望は一切受け付けないというような担当の人からの発言があったというやりとりが委員会でなされました。
 これは、七月三日の文部科学委員会でこのやりとりそのものはなされたということですが、そのような事実があったのかどうか、調査をされたのかどうか、まずそれをお聞きしたいと思います。
遠山国務大臣 今の件につきましては、担当課に確認いたしました。その結果、御指摘のような事実はないということでございます。しかし、一部にでもそのような誤解があるといたしますればこれは大変遺憾なことでございまして、大学関係者と概算要求に関する協議を行います際には言動に十分注意するように指示をしたところでございます。
金子(善)分科員 今、私は、証拠文書というか、それを出すつもりはありません。
 大臣はどのような形で調査をなさったんですか。調査をしたけれどもという通り一遍の回答ではなくて、どういう調査をしたか、まずそれを聞きたいと思います。
遠山国務大臣 私は、担当の職員につきまして、これはそういう事実があったかどうかということを聞いたということでございます。文部科学省の職員に対しまして私は閣僚としての責任もございますし、そういう角度から調査をした結果、今申し上げたとおりでございます。
金子(善)分科員 大臣は、今、調査をしたけれども、聞いたけれども、事実はなかったと。これは言った言わないということですから、恐らく、大臣がそう聞いたときは内部でそういう話があったんだろうと思いますけれども、現実に言われた人間がいるわけなんですね。しかも、それはちゃんとした大学病院のしかるべき方が、文部省の担当課で、三井議員が国会でああいう質問をしたから今後薬剤部の要望は一切受け付けないというようなことを言われてしまったということをはっきりと、これは書面で出しているわけなんですね。
 これはとんでもないことだということを私は強く思うのです。予算編成権と申しますか、そういうものを振りかざして、たとえ文部省の内部の問題とはいいながらも、そういうような会話がなされているということ自体これは大変恐ろしい話ではないか、このように思うわけなんです。
 大臣はそういう発言がなかったという前提で答弁なされていますから、それ以上はなかなかあれなんですが、私もその証拠となる文書を今出したいとは思っておりませんので。ただ、現実にそれに近い発言があったということではないかと思うわけなんです。
 改めて、大臣、もう一度答弁をお願いします。
遠山国務大臣 私は、文部科学省職員を監督する立場といたしまして、お尋ねのような件につきまして調査いたしましたところ、先ほど申したような結果でございました。ただ問題は、そういうふうな誤解を相手の方に与えること自体は大変問題だと思います。
 私は、ことしの一月初めに、職員に対するこれからの行政のあり方について指示をした中でも、特に、民間の方、大学の方、研究者の方々、そういう人たちへの対応については、十分誠実に、親切にやるべしということを、職員に対する心構えの第一項目として掲げたところでございます。その趣旨が十分に徹底していないとすれば、私は、再度また、職員に対しまして、そのような姿勢でいくこと。ただ、もちろんその職務において、その職務の内容のことをきちっと説明したり、それから質問に答えたり、求めに応じて助言をしたりという、そのことは、私は、職員として、当然職務としてやるべきだと思いますが、その際に十分留意をして、また権限の外であるようなことを言ってはいけないと思っておりまして、今後とも私としては十分指導してまいりたいと考えます。
金子(善)分科員 大臣からそういう答弁がございましたが、特に、いろいろ聞いていますと、余りにも権力的な感覚と申しますか、そういうものがあることは確かなようでございますので、大臣、改めてまた、その趣旨と申しますか、徹底していただきたい、このように思います。
 そこでお伺いいたしますけれども、国立学校設置法施行規則が改正されまして、本年四月一日から施行されている。本改正によりまして、薬剤部及び薬剤部長に関する条文が削除され、廃止になっているわけでございます。こういう、いわば省令でございますが、これが改正をされた。
 これまでの省令の中身でございますが、文章では、これは施行規則の十八条でございますけれども、病院で文部科学大臣が指定するものに薬剤部を置く、そして薬剤部長は技術職員をもって充てるという本則になっております。必要がある場合には教授または助教授をもって充てることができると規定されておりますけれども、この趣旨を説明してもらいたいと思います。
工藤政府参考人 初めに、御指摘のありました省令の改正でございますが、薬剤部、薬剤部長の規定を、形式的には削除といいますか、廃止しているのでございますが、実はこれは条文の整理の関係でございまして、別に薬剤部等をないがしろにするとか、その規定をあるいはその部を廃止するとかいうことでは決してないのでございます。
 従前、薬剤部を置いて、そこには技術職員を充てるというのが本則で、必要がある場合には教授または助教授をもって充てることができるという規定でございました。これは、薬剤部というのは専門家でございます薬剤師さん等が中心になって営んでいるわけでございますけれども、病院における調剤などの専門技術的な業務を行うという必要から、薬剤部長は薬剤師である技術職員が当たるという規定になっていたわけでございます。
 ただ、その後、薬剤部長の業務も……(金子(善)分科員「質問に答えてもらえばいいから。趣旨を言ってもらいたい」と呼ぶ)薬剤部長の業務も多様化、高度化いたしまして、学生の教育にも当たるということになりましたものですから、本則と例外がむしろ逆になっておりまして、実態はすべての薬剤部長が教授職でございます。
 そういうことで、他の検査部等の……(金子(善)分科員「委員長。趣旨を答えてもらいたいと言っているのに。質問をよく聞いてください」と呼ぶ)
松崎主査 簡潔にお願いいたします、局長。
工藤政府参考人 趣旨としましては、その実態に合わせて条文を整理したものでございまして、そういう意味で……
金子(善)分科員 私の質問は、そのようにもともと規定された趣旨は何かということをお聞きしているわけであって、私のきょうの質問はわずか三十分ですよ。それをだらだらと関係ない答弁をされては困りますよ。委員長、そこをきちっと言ってください。
松崎主査 工藤高等教育局長、趣旨に沿って簡潔にお願いいたします。
工藤政府参考人 もともとの規定の趣旨は、薬剤部の業務が薬剤師さんという専門技術職で行われているということで、「技術職員をもつて充てる。」ということでございました。それが先ほど申しましたように、教育にも当たるということで、教授職が中心になりましたので、その趣旨に沿った規定の整理をしたものでございます。
 それと、文部科学大臣が個別に指定するというのは薬剤部だけではございませんで、昨年の国立学校設置法の改正によりまして、講座などの大学の基本的な教育研究組織について文部科学大臣が定める、あるいは省令で定めるという規定を廃止しようということになりましたものですから、あわせて、研究所の研究部門あるいは病院の診療科等も含めて、文部科学大臣が定めるという規定を整理したものでございます。
金子(善)分科員 今の説明を聞いていて、わけがわかりません。では、こういうことで聞き方を変えてみたいと思います。
 薬剤部長という職でございますけれども、原則技術職というふうにした理由でございますが、これは、いわば薬剤師さんとかいわゆる専門の現場の声を大切にしようという趣旨からこういう規定がもともと設けられていたんではないかという質問に変えたいと思いますが、どうですか。イエスかノーで結構です。
松崎主査 工藤高等教育局長、趣旨に沿って簡潔にお願いします。
工藤政府参考人 もともとは、先ほど先生も御指摘のように、薬剤師という専門技術職が部長に当たるということで技術職員が部長になられるということでございました。その後、薬剤部長さん方のむしろ御要望を受けまして、薬剤師という技術職員、大学にいろいろな職種がございますけれども、技術職員よりは教育職でございます教授職に転換してきてございまして、薬剤師の資格がある方が薬剤部長を兼ね、かつ大学の学生の教育にも当たるということで、現場の御要望を受けまして、実態として薬剤部長が教授になっているものでございます。
金子(善)分科員 今、局長は関係者の要望等もあったという話をされました、もともとの趣旨を変えていくということでございますけれども。
 では、関係者とは具体的にだれのことですか。
工藤政府参考人 これは、国立学校の病院の規定でございますが、全国の国立大学病院の薬剤部長会議からかねて御要望を受けまして、それで技術職員を順次教授職に転換してきたものでございます。
金子(善)分科員 今言われたのは、薬剤部長会議の席上でこういうことが、再三にわたってということでよろしいわけですね、要望があって変えたというような答弁でございました。
 これは、また我々はもっと検証していきたいというふうに思っておりますけれども、今回の改正は、我が党の三井議員の五月十七日の発言にもあったわけでございますけれども、どうも現場の薬剤師の方々の意見が反映されているとはとても思えない改正ではないかということを指摘しておきたいと思います。
 そこで、一点お伺いしたいと思いますけれども、この国立大学附属病院の担当課は医学教育課ということでよろしいんですか。
工藤政府参考人 そうでございます。
金子(善)分科員 そこで、この医学教育課にいわゆる医療関係の専門家と申しますか、よく厚生労働省の場合でございますと医官の方々とかいろいろおられて、現場をいろいろ経験なさっているという方もいらっしゃるわけでございますけれども、文部科学省の場合でございますけれども、この国立大学の附属病院を担当する課にそういう専門の方というのは何人ぐらいいらっしゃるものですか。
工藤政府参考人 厚生労働省それから大学との人事交流などもしてございまして、看護師の資格を有する者が二人、医師の資格を持つ者が一人ございます。
金子(善)分科員 それでは、次に移らせていただきますけれども、時間の関係もございますので、時間があればまたこの観点に戻らせていただきます。
 これも七月三日の文部科学委員会でございますけれども、未請求のレセプト、工藤局長さんの方からこういう答弁がなされております。「昨今は一般的に翌月に請求するのが通常になってきてございます。」「翌々月請求になっている例があるようで」「東大病院についていいますと、それが約十億円ぐらいになっている。」と答弁されているわけであります。
 そこでお伺いしますけれども、東大病院について言えば、平成十三年度の毎月の請求額というのは平均でどれぐらいになっているものですか。
工藤政府参考人 東大医学部附属病院における十三年度の診療報酬請求額でございますが、年間全体で約百七十億余りでございまして、一月当たりの平均は約十四億二千百万円でございます。
金子(善)分科員 そうすると、毎月の請求額は平均で十四億というような、おおむねそういうレベルだという話でございました。
 そこで、このレセプトの未請求額十億円というのは、ちょっと多過ぎるんではないか。これは今後どういう改善策を考えておられるか、答弁願いたいと思います。
工藤政府参考人 ちょっと御説明させていただきますと、未請求額というのは、職員が仕事をサボって何かせっかくの債権といいますか、収入をないがしろにしているということではございませんで、御承知のように、大学病院の場合に高度の患者さんですとかいろいろな方がいらっしゃいますが、幾つかの理由で翌月の請求ができない場合が多うございます。
 例を申し上げますと、高額のレセプトの場合については症状の詳記など詳細な添付書類が必要なのでございますけれども、医師などによる書類の作成に時間を要する場合でございますとか、それから、公費負担の医療制度の適用を受ける患者さんの場合に、その承認公費番号の付与など他の役所との連絡などに時間を要するとか、それから、労災の給付を受ける場合に、患者さんが申請を行った後に業務上の災害であることを認定されるまでに相当の期間を要するとか、いろいろな事情があるのでございます。
 そういうことで、翌月の請求には間に合わなくて繰り越されているというのが、累積すると大体平均十億ぐらいあるんじゃないかということでございます。
 ただ、先ほどの、それぞれの月でいいますと、例えばことしの五月の請求分で考えますと、五月に本来請求したかったんですけれども請求できなかった分が約五億余りということでございまして、その前からのものが累積して、大体平均十億ぐらいがそういうふうにたまっているということでございます。
 そういう意味で、私ども、大学の方には、レセプトを医師の協力も仰いで遅滞なくやっていただけるように、または大学病院自身も、医師の協力を得ながら、かつ関係の役所等との連絡のために、学内に医療社会福祉部というようなところを設けたりいたしまして、連絡を密にして、かつ迅速な処理に努めていただけるようにお願いしているところでございます。
金子(善)分科員 いろいろ、なかなか大変なんだというようなことをるる話をされたわけです。
 ところで、お伺いしますけれども、あなたは七月三日の文部科学委員会で、四十二の大学、これは所管されているわけですが、東大病院について一つ例を出されたわけですけれども、そのほかの大学病院があるわけです。四十二の大学病院についての数字は残念ながら把握しておりませんという答弁をされておりますけれども、その後、四十二の大学の未請求額については把握いたしましたか。
工藤政府参考人 それぞれの月で先ほどのような事情で流動的なものですから、この五月の診療分について、国立大学、四十二の附属病院があるのでございますけれども、調査いたしました。その結果、東大病院も含めて四十二の病院で、未請求件数、五月の診療で六月に請求しなきゃいけないところ、いろいろな事情で請求できなかった部分が、件数で一万三千件ぐらい、未請求額の金額ベースでいいますと約五十五億円と把握してございます。
金子(善)分科員 今局長の答弁で、いわゆるきちっとその月々というようなことで請求していないという金額が余りにも多いというのを私は印象として持っているんですけれども、これは大臣、いかがですか。
遠山国務大臣 各病院は、最近の患者の方々の、非常に多くの方が病院を訪問されて、そして診療を受けたいということでございまして、私も幾つかの大学病院を見る機会がございましたけれども、ある意味では本当に大学病院というのが、高度の治療だけではなくてかなり基礎的なところまで治療を分担して、これは地域における大学病院の意味としてそれはそれで大事なんでございますが、非常に少ない人数でやっているということも確かだと思います。
 その中で、一切の間違いも許されない、生命にかかわるようなことでもございますし、また、事務職員も十分でない、そんな中で、請求に関しましても注意深く請求しなきゃいけないわけでございまして、それはもう少し人員があればもっと速やかにできるのかもしれませんけれども、私は、それぞれの大学が、今の人員の中でできるだけ努力をしながら、ITの機能も駆使して頑張ってもらいたいと思っているところでございますが、地域の大学病院というのは、本当に今重要な役割といいますか、少人数で頑張ってもらっているという実態もあるわけでございまして、ある意味でいささか複雑な心境であるわけでございます。
金子(善)分科員 今の大臣の話を聞いていますと、もうしようがないんだというようなことで、今の実態からいえばしようがないんです、簡単に言えばそういう答弁だと思うんです。私は、大臣がそういう意識ではおかしいんではないかと。やはり、これをどうやって改善していくかということを真剣に考えて、こういうことのないようにしていくということが基本的な考えでなければならない。
 例えば、民間企業で債権回収というものが、いいかげんになされているとは私は言いませんけれども、非常にずるずるとおくれるようなやり方でやった場合、これは大変な、倒産に至るというようなことだってあるわけですし、恐らく民間の病院であれば、もっともっといろいろな工夫をしながら努力をしていると思うんです。何も大学病院だけが特殊な医療をしているわけではない。
 これは大臣、先ほども申し上げましたように、東大病院の例を見ましても、未請求額の割合というのは非常に高過ぎると私は思います。どうですか大臣、その辺もう一度答弁をお願いします。
遠山国務大臣 我が方といたしましては、診療報酬請求が翌々月とならないための改善策について今指導を進めておりまして、例えば症状詳記等の依頼票というんですか、それの必要項目をチェックした上で各診療科の保険委員の医師に症状詳記等の作成を依頼する方法をとることによって、短期間の院内の審査でも効率的に症状詳記が作成できるよう工夫する。あるいは、症状詳記の作成について、今のようなことに関しまして速やかに対応してもらうよう注意喚起もいたしておりまして、これはそれぞれの大学の病院内におきます毎月の病院会議等の院内諸会議でそういう注意喚起を繰り返しているということのようでございます。
 また、生活保護、養育、育成、更生医療等公費負担患者につきましては、医療社会福祉部が地域の福祉事務所、保健所等と連絡をして、各公費負担の医療券の発行が円滑かつ速やかに行われるように今努力をしているところでございます。
 それぞれ一生懸命努力をしていると思いますし、また私どももそういうことについてさらに注意喚起をしていきたいと考えております。
金子(善)分科員 大臣の今の決意をとにかく徹底していただきたい、このように思います。
 そこで、前の質問にちょっと戻らせていただきたいと思いますけれども、五月十七日の厚生労働委員会でございますが、池坊大臣政務官は、今回の改正が薬学部を廃止、統合するものでないことを各国立大学病院に周知徹底いたしますように指示し、すべての方々が御理解いただけるような努力をしていくつもりでございますという答弁をされております。
 そこで、二点についてお伺いしたいと思います。
 第一点は、薬剤部の他部門からの独立性の必要性について、文部科学省としてどう認識しているかということが第一点。第二点は、五月十七日、国会の厚生労働委員会で政務官がこういう答弁をなされているわけですから、その後どういう指示を具体的に行ったのか、これについて答弁をお願いしたいと思います。
遠山国務大臣 薬剤師は、医薬品に関する専門家といたしまして、私は最近本当にその重要性が増しているというふうに考えております。医療安全への関与でありますとか、あるいは患者の視点に立った服薬指導、医師の処方に対する監査など、本当に大事だというふうに考えておりまして、今回の改正後の省令におきましても、薬剤に関する業務を集中して行うための部といいますものは各大学病院が置かなければならないというふうにしているところでございまして、実際にも薬剤に関する業務を集中して行うための部のニーズは大変高くて、これの廃止を考えている病院はないわけでございます。
 もう一つのお尋ねの件でございますけれども、関係の機関に対する指示はいかんということでございますが、このことにつきましては、今回の省令改正が薬剤に関する部門を廃止、統合する目的で改正したものではないということにつきまして会議において説明をしているわけでございます。五月三十一日の国公立大学薬学部長会議、六月十日の医学系出身国立大学長会議、六月二十日の国立大学医学部附属病院長会議、七月四日の同会議常置委員会において、担当課長の方からしっかりと説明をしているところでございます。
金子(善)分科員 それは徹底していただいているということで結構なことだと思いますが、そこで、時間が終わりましたので、最後に一言だけ言わせていただきたいと思います。
 これから大学というものが独立行政法人化されていくという流れの中で、巷間言われておりますのは、大臣、よく注意して聞いていただきたいと思いますのは、文部科学省本省と大学との関係というものが、いろいろなところで指摘されているんですが、どうも権力行政的なにおいがする、文部本省でございますけれども。この点についてはくれぐれも注意されまして、それぞれの現場が創意工夫を生かしてやっていけるような体制を何としてでもつくっていただきたい。これを最後に要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
松崎主査 これにて金子君の質疑は終了いたしました。
 次に、武正公一君。
武正分科員 民主党の武正公一でございます。
 きょうは、キャリアカウンセリング、また、男女共同参画の視点から共学校ということが一部推進をされる向きがございますが、私は、公立には男子校、女子校、それぞれのよさ、選択肢があってよいのではないか、こういった視点から質疑をさせていただきます。
 まず最初に、この四月十二日に厚生労働大臣が記者会見で、厚生労働省として五万人目標でスタートしたキャリアカウンセラーをキャリアコンサルタントと名称変更をしたということでございます。
 昨年、民主党では、私も法案提出者として、臨時国会に、小学校から各学校に進路指導を目的とした相談員を置ける、そうした学教法の改正を議員立法で出させていただいております。その目的は、これまでのいじめを対象としたスクールカウンセラーのみでは問題解決にならない、子供たちの生きる力を養成するためにも、やはり将来の進路、進学、就職、そうしたはっきりとした目的、意識づけを行うことが小学校から求められる、そのための外部の専門家を導入してはいかがかという法案でございます。
 さて、先ほどの話に戻りますが、厚生労働副大臣がおみえでございますので、なぜ、厚生労働大臣は、キャリアカウンセラーをキャリアコンサルタントと名称変更すると記者発表されたのか、一点。
 そしてまた、昨年来、厚生労働大臣はさまざまな答弁で、厚生労働省は文部科学省と連携をしてキャリアカウンセラー五万人体制を実現する、文部科学省と連携をするということを何度も何度も言っておられますが、具体的にどのように連携をしてきたのか、また、これから連携をされようとするのか。以上、お伺いしたいと思います。
狩野副大臣 お答えいたします。
 厚生労働省では、平成十三年十月から、専門家の方々にお集まりをいただきまして、キャリアコンサルティング研究会を開催いたしました。そのときに、キャリアコンサルティングの実施に必要な能力要件等について検討を行ってまいりました。この研究会におきまして、キャリアコンサルティングについては、キャリア形成に関する相談ばかりではなくて、指導助言や求人、求職のマッチング等の支援も行うことなどを考えれば、カウンセラーよりもコンサルタントを用いることの方がより適当ではないかという議論もありましたので、本年四月の報告においてはコンサルタントが用いられたところでございます。
 このため、厚生労働省におきましても、研究会報告後はキャリアコンサルタントという用語を用いることといたしましたけれども、一般的にはキャリアカウンセラーやキャリアアドバイザーなど、その他の名称が使われることを妨げるものではございません。
 また、これまでの文部科学省との連携につきましては、キャリアコンサルティング研究会の委員を選定するに当たりまして、学校における相談指導の実態に詳しい専門家の推薦を同省に依頼をしたほかに、同省の担当者にも研究会の議論に参加していただいております。
 さらに、今後、厚生労働省といたしましては、キャリアコンサルタントの指導的人材の育成のあり方についても検討することにしておりますけれども、そうした検討におきましても、文部科学省と連携していきたいと考えております。
武正分科員 カウンセラーをコンサルタントに変えた、このことの持つ意味というのが私は大変大事なところがあると思っております。カウンセリングということですので、やはり心理面に踏み込んだ、あるいは教育課程に踏み込んでキャリア形成にアドバイスを行おうということで、当初、厚生労働省さんが中心となって文科省さんの連携を得てやろうといったことで来たわけでございますが、ここでコンサルタントと名前を変えてしまうと、心理面での踏み込み、あるいは学校教育面での踏み込み、こういったところがおろそかになるのではないかというふうに危惧をするわけでございます。
 また、厚労省さんでは、今度このキャリアコンサルタントの資格要件について、この夏発表ということで進めておられますが、ともすると、そうした資格要件が企業経験者、そういった面がどうも強くなってしまうのかなということを危惧しております。
 やはり、学校教育面あるいは心理面、カウンセリング、こういったところを重視していただかないと、せっかく五万人体制でやろうと進めておられるキャリアコンサルタントが絵にかいたもちになってしまうのではないかなと、今大変大事な岐路に立っているように私は認識しております。
 さて、文科省さんは、このキャリアコンサルタントを厚労省さんが進めるについて、これまではキャリアカウンセラーでしたが、どのように連携、協力をしてきたのか。また、これからしようとするのかお伺いをするのが一点目でございます。
 また、ことし二月一日、検討会議ですか、高卒者の職業生活の移行に関する研究、三月五日には最終報告も出ておりますが、この中で、二月一日段階では、キャリア教育を小中学校から高校まで実施することや、そのための専門的指導・援助者を学校に配置することを決めたとしておりますが、この専門的指導・援助者とはどういう人たちで、どのような資格を有し、どのぐらい配置をしようとするのか。また、それは教員の資質向上によって行うのか、外部の専門家を取り入れるのか。それぞれをどのように取り組もうとされているのか。これは、大臣、副大臣、よろしくお願いします。
遠山国務大臣 委員御指摘のように、私は、学校におきまして、子供たちに将来の自分の職業についての展望を持つ、あるいはどういう職業が世の中にあるのかというようなことを知る等のことは大変大事でございまして、これまで日本の教育の中では必ずしも十分ではなかったと思っておりまして、その文脈の中で、厚生労働省におきましてキャリアコンサルティング研究会を発足された、これは大変意義が深いのではないかと思っております。
 我が省としましては、この調査研究につきましては、オブザーバーとして参加、協力してまいりました。そして、キャリアコンサルタントは、今後五年間で五万人という目標を持って養成される予定と聞いております。
 文部科学省といたしましても、特に高等学校での進路指導におきますキャリアコンサルタントの活用について、今後、厚生労働省との連携、協力のもとに必要な情報提供などに努めてまいりたいと思っているところでございます。
 また、そういう外部の方々に学校に来ていただいて、いろいろ助言をいただくような方策といたしましては、平成十三年度から、学校いきいきプランということで、社会人の登用の方途もとってまいっているところでございまして、そのような形で今後とも十分に連携をとりながら、学校教育におけるキャリア教育というものの充実に資していきたいと考えております。
岸田副大臣 もう一点、先生の方から、進路指導にかかわる人材の質の向上についての御質問がございましたが、まず、進路指導担当教員の資質向上がまず重要だというふうに考えております。この点につきましては、文部科学省において、全国規模で進路指導講座等の研修を行っているところでありますし、各都道府県におきましても、各種の研修、講習が行われているというような形で、各段階でこうした進路指導担当教員の資質向上に努力しているところであります。
 加えて、学校いきいきプランですとか、あるいはキャリア教育実践モデル地域指定事業等々の事業を通じまして、外部の人材をキャリアアドバイザーとして活用しているわけでありますが、こうした外部の人材と学校関係者との連携協力、これは大変重要な点だと考えておりまして、各教育委員会におきまして必要な情報提供、指導が行われるよう促しているということでございます。こういった促しの中で資質の向上等を図っていくというのが現在の状況であります。
武正分科員 高卒者の職業生活の移行に関する研究、これにおける、先ほど触れました専門的な指導・援助者、これは外部の専門家を使うということだと理解をいたしました。具体的なことは三月五日の最終報告の方にも出ているようでございます。
 さて、十三年度、十四年度、文科省さんでは、六地区のキャリア教育実践モデル地域、ここで実際にキャリア教育を進めようということで、たくさんのいろいろな団体と協力をして行っております。この十三年度、十四年度の六地区では、先ほど厚労省さんからも、文科省さんに派遣をしたりお互いに連携をするということでございましたが、厚生労働省のこのキャリアカウンセラー、名前が変わってキャリアコンサルタント、六地区で活用したのか、また十五年度以降活用するおつもりはあるのか、文科省さん、お答えをいただきたいと思います。
岸田副大臣 御指摘の全国六地域のキャリア教育実践モデル地域の指定でありますが、この中身としましては、キャリア教育の推進のために、従来、高等学校が中心であった指導の内容それから指導方法を中学校まで広げて、中学校、高校を通じて一貫した指導内容、指導方法の開発を行うということになっています。中学校の段階からキャリア形成、あるいは勤労意識について指導を行うというような内容を含み、さらには、やはり地域それぞれの事情に応じた対応を考えなければいけないということで、地域の人材を活用するというような内容、こういった内容を盛り込んだ調査研究を行っているわけであります。
 厚生労働省の方で進めておられる事業、十三年から研究が進んでいるわけでありますが、この事業と、先ほど申し上げました調査研究、直接には今かかわってはいないわけでありますが、今後、それぞれ並行してその調査研究を進めていく中にあってその連携は考えられるかとは思っております。
 なお、直接の連携ではありませんが、平成十一年度以降、厚生労働省の人材供給事業との連携の観点から、緊急地域雇用対策特別交付金を活用した進路指導の専門家を学校に招聘する事業、これを、平成十三年度は、先ほど大臣から申し上げました学校いきいきプランという形で実施しておりますが、こういった事業を厚生労働省と連携して行っているということはつけ加えさせていただきます。
 以上でございます。
武正分科員 十五年度以降、厚労省さんの五万人キャリアコンサルタントを生かして、文科省さんがキャリア教育実践モデル地域、これに積極的にキャリアコンサルタントを活用したいという形での発言まではまだちょっと出ておらないということを今承ったのですが、ぜひ、厚労省さんが積極的に進めておられますから、これを文科省さんとして大いに活用するということが必要ではないかということを申し述べさせていただきます。
 さて、逆に厚労省さんは、文科省さんがこういった実践モデル地域を実践されております。実際にこういったところに厚労省さんとしてキャリアコンサルタントを派遣する、こういったことについてはどのようにお考えになりますか。
狩野副大臣 ちょっと先ほどの答弁の中で補足させていただきたいと思いますけれども、キャリアコンサルタントと呼ぶことに対しましては、委員御指摘の心理学的要素も当然に求めることとしております。そういうことで養成を図っていきたいと考えております。ですから、心理学の専門家にもその部分を教えていただくことも考えなければならないというふうに考えております。
 先ほど委員御指摘いただきました、厚生労働省といたしましては、キャリアコンサルタントについても、これから五年間で五万人を目標として、官民協力のもとに養成を推進しているところでございますけれども、その養成されたキャリアコンサルタントにつきましては、職業能力開発機関や職業紹介機関のほか、民間の企業、教育訓練機関、人材ビジネス企業等の雇用の関連分野において幅広く活躍してもらうことを想定させていただいております。
 さらに、学校の進路指導、職業指導の場面における活用も考えられておりますから、文部科学省からの要望等に応じて必要な協力を行ってまいりたいというふうに考えております。
武正分科員 厚生労働副大臣には、もうこの後質問がございませんので、お引き取りをいただければと思いますが、最後、厚生労働省は、この三月に各都道府県労働局職業安定部長あてに通知を出しているんですね。これは、先ほど来指摘をしておりますが、高卒者の職業生活の移行に関する研究最終報告を踏まえた対応ということで各都道府県に通知を出しておりまして、文科省における事業との連携もするようにという通知を出しておられます。
 ですから、ぜひそのキャリアコンサルタント、私は、五万人をこれから養成していくについて、キャリアコンサルタントには二段階あるんじゃないかなと。もう既に千人は、昔の雇用促進事業団、名称は変わりましたが、そういったところに配置をされておりまして、これから企業内でも養成をということで五万人を何とか達成しようと。ただ、その中で二段階あるんじゃないか。ある面、指導的な立場に立つ、心理面もしっかりとカウンセリングできる、そんな高度なキャリアコンサルタント、そしてまた、実際に現場でいろいろとお話を聞く、傾聴という言葉がありますが、そういった、ある面二段階に分かれていくのではないかなというふうに思っておりますが、文科省との連携について、厚生労働大臣そして副大臣が言われるように、積極的にお取り組みをお願いいたします。ありがとうございます。
 さて、文科省さんにお伺いをいたしますが、ことしの三月に、今厚労省さんが全国の職業安定部長に通知を出しているのと同時に、文科省の児童生徒課長さんのお名前で各都道府県教育委員会進路指導担当課長に、同じくやはり高校生の職業生活の移行に関する研究、これを厚労省、文科省共同でやってきた、最終報告がまとまった、キャリア教育、インターンシップの推進などを通じて高校生に望ましい職業観、勤労観を育成するなどで、これをしっかりと都道府県労働局と協力して取り組まれるようにという通知を出しております。
 これを受けて、また五月に、全国の都道府県の担当者を集めて会議をやっておられます。その会議を受けた都道府県の担当者がそれぞれの都道府県に戻って、都道府県内でそれを周知徹底したと思うんですが、どのように周知徹底をしたのか、お答えをいただけますでしょうか。
遠山国務大臣 今御指摘いただきましたように、文部科学省におきましては、三月に報告書を厚生労働省と取りまとめて、それを各都道府県に通知をし、そして本年五月に各都道府県教育委員会の高校生の就職指導担当の指導主事を対象とした連絡協議会を開催いたしまして、三月の通知以降の各都道府県における就職慣行の見直し状況等についての情報交換や協議を行ったところでございます。
 私は、今回の動きは大変意味があると思っておりまして、あの報告の中で、高卒者の厳しい雇用状況にかんがみまして、生徒、企業がお互いに納得できる仕事あるいは企業、人材選びができますように、いわゆる一人一社制などの就職慣行の見直しを行うということについてのしっかりした指導や情報交換を行ってまいったということで、大変意味があると思っております。この協議会におきます協議内容の成果につきましては、各都道府県において各高等学校の進路指導主事を対象とした講習会、また、各高等学校の校長会、教頭会等で適切に伝達、周知されたものと承知しているところでございます。
 私どもとしまして、高校の場合、多くが都道府県立であるということもございまして、都道府県の進路指導主事といいますか、都道府県の就職指導担当の指導主事を対象として連絡協議会を開きますが、必要に応じて市町村の、もし市立のものがあればそこから徹底して連絡をするように、また各高等学校についてもそこから連絡をするように、私どもの行政の対応の情報の流れはそういうふうになってございまして、このことについてもきちんと伝達、周知されたものと考えております。
武正分科員 今、主に高等学校ということでございましたが、最終報告では、先ほど来触れておりますように、小学校からのキャリア教育ということが盛り込まれておりますので、この点の小中への指導徹底もやはり必要ではないかなということを申し述べさせていただきますし、また、事前のやりとりを文科省の方とされましたら、会議をやりました、集めて皆さんにお話しした、その後、各都道府県でどのようにやっておられるかは把握していませんというお話だったんですね。
 例えば企業ですと、全国の営業部長を集めて、ことしの売り上げ、これが目標だと社長が訓示をする、各営業部長が各支社に散って、またそこで社員さんにやって、あるいは支所にやって、そうすると、当然それでフィードバックをするわけですね。各営業部長が本社の営業本部長にフィードバックをして、それをまた社長に上げる。
 どうも何か、文科省さんのお話を聞いていると、そういうフィードバックが余りされていないような印象を受けたんですね。これが一つのやり方なのかな、上から下に流して、ちゃんと、どういうふうにやりましたよという報告がもしないとすると、これは私は問題じゃないかなと。誤解だったらあれですけれども、そういったことがやはり必要ではないか。これは指摘にとどめさせていただきます。
 さて、先ほど副大臣は教員の資質向上について触れておりますが、今全国に、各学校に進路指導主事が何人ぐらいいて、それぞれの進路指導主事の平均在職年数は何年なのか、これをお伺いしたいと思います。先ほど、どのように研修を行われているかはお聞きしましたので、その点だけお伺いします。
岸田副大臣 公立学校における進路指導主事の人数は、学校基本調査によれば、平成十三年度において、中学校九千八百三人、高等学校四千五百七十八人、合計で一万四千三百八十一人となっております。そして、御質問の在職平均年数ですが、平均年数については、正確に平均年数を計算した資料がありませんが、約二年から三年というケースが多いというふうに承知しております。
武正分科員 これも事前にお伺いをしたら、平均年数はわからない、把握していないということなんですね。今、副大臣も、二年から三年が多いのじゃないかということなんですが、私は、教員の資質向上、これからこのキャリア形成のために大変大事だと思っておりますし、各学校におかれて全国で一万五千名の進路指導主事に対する研修、これは大変大事ではないかなというふうに思っておりますので、実態把握をぜひしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
岸田副大臣 実態把握ということは大変重要な点だと考えております。御指摘の点も含めて、こうした政策の成果を確認する意味からも、極力その調査を進めたいと考えます。
武正分科員 ありがとうございました。
 さて、筑波大学には社会人向けの修士課程でカウンセリング専攻がありまして、ここに渡辺三枝子教授がいらっしゃるのですが、渡辺教授がこういうふうに言っています。
 現場の教師から、ガイダンスカウンセリングの研修をきちんと受けたいという声が最近強く上がり、専門性の重要性に気づき始めている。スクールカウンセリングは余りにも治療に偏っている。適した教師に専門的教育を施す必要がある。厚労省さんが今進めておられますキャリアコンサルタントは、ある面、企業経験者を採用するといったことでありますが、やはり、キャリアガイダンスに関する教員の研修、進路指導担当の教員、進路指導主事等への研修が、あるいは配置が軽視されているとすれば、これは本末転倒だ、企業経験者ばかり優遇してはいけないよと。日本の大学院の現状を見ますと、心理療法や不登校問題に対応できる教官は多いのだけれども、生きる力を育てるためのキャリアガイダンス、キャリア教育、そしてキャリアカウンセリングを指導できる教官は非常に少ない。
 こう指摘をしているのですが、私は、この筑波大学は今トップサーティー入りを目指して頑張っておられるので、ともすると、こういったキャリアカウンセリング専攻、大変大事な部門が見落とされがちではないかと危惧をするのですが、大臣、こういった渡辺教授の指摘をどのようにお考えになりますか。
遠山国務大臣 学校教育で生徒に望ましい職業観、勤労観を育成するキャリア教育を推進いたしますために、教員のキャリアカウンセリング能力を向上させますことは大変大事なことだと考えております。
 私どもといたしましては、今年度からキャリア教育の推進に関する総合的調査研究を実施することとしておりますし、また、中高一貫したキャリア教育推進のために、平成十三年度から二カ年の実践的調査研究事業といたしまして、キャリア教育実践モデル地域指定事業を実施しているところでございます。
 私も、今御議論を伺いながら思うことでございますけれども、学校におきます進路指導主事に対しまして、もう少し社会の職業の動きとか、キャリアコンサルタントの養成のために用いるカリキュラムとかプログラムというものを勉強していただく、あるいはそういうところへ派遣するというようなことも、これは全く今思ったところでございますが、将来はそういう柔軟な対応をしながら、本当の意味のキャリア教育が実質化されるように工夫していくのがいいのではないかと考えます。
武正分科員 前向きな御答弁、ありがとうございます。
 特に今、厚労省さんがキャリアコンサルタントの資格要件を決めようとしているさなかでございますので、ぜひ文科省さんから、積極的にその資格要件はいかにと、特にその面では、カウンセリング、心理面、特に学校教育での取り組み、この点が必要なんだよといったところを強く御主張いただきたいと思います。
 さて、冒頭触れました男女共学についてでございますが、今、私立高校では、男女共学校の比率が五七%、全体で八七%ですね。国立校は八〇%を超えるということでございます。公立校では九六・四%ということですが、大臣、副大臣、この男子校、女子校についてどのように、公立校についてお考えになるか、お答えをいただけますでしょうか。
遠山国務大臣 男女がお互いに尊重し合い、協力し合わなければならないわけでございまして、教育上、男女の共学は尊重されるべきものと考えるわけでございますが、このことは、一概に男女の別学を一律に否定するというものではなくて、男女の共学、別学につきましては、地域の実情、あるいはその歴史的経緯などのようなことも十分配慮をして、設置者が適切に判断すべきものと考えております。
武正分科員 ちょっと時間がないので、申しわけありません。
 今、埼玉県では、男女共同参画苦情処理委員会が勧告を行いました。「高校生活の三年間を一方の性に限ることは、人格形成からも、また男女共同参画社会づくりの視点からも問題である。 高校生という多感な時期に、異性と真剣に向き合い共に協力し合って問題を解決していく体験こそ重要である。 公立の高校として、男女の性差にとらわれることなく個人の能力・個性を発揮していくため、男女別学校の共学化を早期に実現する必要がある。」このように指摘をされ、今、男子校、女子校、別学の高校では、PTAあるいは同窓生を中心に、これまでの伝統もあり、また、公立高校の選択肢は多様であっていいんじゃないかというようなこともあり、この共学化への動きに問題ありというような動きが出ております。
 また、アメリカでも、これまで連邦法からいったらやはり男女共学ということでございましたが、公立校にも選択の幅を広げるための措置として、男女別学いいんじゃないかということで、今パブコメを実施中でございます。男女別学を奨励する方向で公立学校、検討に入った、アメリカ教育省という記事もあります。
 先ほど、設置者の意向ということを大臣申されましたが、公立校に多様な選択肢があってよいといった点、そしてまた男女共同参画の視点からのこうした勧告、こういったことで現場は非常に混乱をしているんですが、文部科学大臣として、再度御答弁をお願いいたします。
遠山国務大臣 今回の埼玉県の男女共同参画苦情処理委員からの勧告につきましては、現在、埼玉県の教育委員会において、地域の実情や関係者による幅広い意見等を踏まえながら検討を進めているものと承知しております。
 県によりますと、地域からの要望を踏まえて、新設校については共学とすることで共学化を進めながら、男女別学の学校は、それぞれ長い歴史の中で独自の校風と特色を持って、生徒や保護者からも学校を選ぶ際の選択肢の一つとして高く評価されてきていると聞いております。
 公立学校におきます男女の共学は、地域の実情等に応じて設置者が判断すべきことでございますから、我が省としては、埼玉県教育委員会の検討を見守りたいと考えております。
武正分科員 以上で終わります。ありがとうございました。
松崎主査 これにて武正君の質疑は終了いたしました。
 次に、中川智子君。
中川(智)分科員 社会民主党・市民連合の中川智子でございます。
 いつもは私は厚生労働委員会のメンバーでございますので、遠山大臣に直接このようにいろいろなことをお伺いできる機会がめったにございませんで、きょうは楽しみにして参りました。
 きょうは、私は三点にわたって、時間が許す限り、遠山大臣の御認識、また要望を含めてのお答えをちょうだいしたいと思っております。
 私も厚生労働委員会では、特にハンセン病の問題、薬害ヤコブ病のこと、そして医療事故の問題、また身体障害者補助犬法の成立に向けて、議員の先生方とチームを組みまして、先日やっと成立いたしました。
 その中で、特に私は、ハンセン病とかヤコブ病、医療事故の問題というのは、未来ある人生を途中で理不尽に遮断されてしまう、そして、その本人の悔しさ、また残された遺族の方々の悲しみを共有してまいりました。その悲しみ、痛みから、怒りのエネルギー、そしてまた立法府として、行政府としてなすべきことを議論しながら、解決に向けて頑張ってまいりました。
 きょう、まず最初に取り上げさせていただきますのは熱中症。これは、地球温暖化でここ数年、私どもも、本当に何か夏が早い、また酷暑と言われるような非常な気温の高さによって、元気な体でも非常にだるい、しんどい、また水分補給、さまざまなものにも本能的に考えながら生活しているわけですが、熱中症、特にきょうは文部科学大臣への質問ですから、学校現場における熱中症の問題ということを取り上げさせていただきたいと思います。
 小中高はもう夏休みに入りまして、クラブ活動、さまざまな学校の取り組みというのがこの夏休み中にも行われるわけですけれども、大臣御自身、この熱中症という病名、そして、これでたくさんの命が失われている、熱中症についてはどのような知識、また考えというのをお持ちでしょうか。あいまいな形で結構ですので、熱中症について。
遠山国務大臣 熱中症という言葉を最近よく耳にするようになっておりまして、それが何か物事に熱中する病かと思っていたら、そうではなくて、身体に大変危険な病のようでございまして、私は、特に将来のある子供たちが熱中症のようなもので体を悪くしたり何らかの事故があったりしないように、これは気をつけるべきたぐいの病気であるという認識は持っております。
中川(智)分科員 それでは、この熱中症について、文部科学省としてきっちりしたデータはお持ちでしょうか。ここ五年なら五年で、これは局長に伺いますが、どのような場所で何人の児童生徒が搬送されたり、そのような事故実態のデータはお持ちかどうか。
遠藤政府参考人 一般的に申しまして、全国の学校で大変多くの事故、種類がございまして、例えば日本体育・学校健康センターの災害共済給付を受けたような事故でいいますと、小中高等で百十七万件あるということでございます。したがいまして、そのすべてにつきまして文部科学省の方が報告を受けて内容を把握するということは大変難しいと考えております。
 ただ、死亡とか障害が残ったような重大な事例につきましては、日本体育・学校健康センターにおきまして毎年事例集というものを作成しまして、全国の教育委員会等に周知を図っておりまして、その中で熱中症につきましても具体的な事例を掲載し、そして紹介をするとともに、事故防止の留意点、熱中症の防止の留意点につきましてもお示しをしているというところでございます。
中川(智)分科員 今の御答弁は、私への直接の答弁になっていないと思います。文部科学省で事故実態をきっちり把握して、データとして蓄積しているかどうか、明確にお答えください。
遠藤政府参考人 失礼しました。熱中症が何件で何人というデータは持っておりません。
中川(智)分科員 大臣、この熱中症というのは予防ができるわけなんですね。ヤコブでもそうでしたが、きっちり防ぎ得ること、そのことに対してまず一番大事なのは、その実態把握なわけなんです。どれぐらいの件数が、どういう状況で、どういう場所で、そしてそれによって子供たちが何人命を落としているか、その事故実態、事例把握がなければ、熱中症は大変なんだ、このところよく耳にするということだけでは命は救えません。実態把握が必要だという御認識は、大臣はいかがでしょうか。
遠山国務大臣 先ほどは、熱中症についてどういうふうなことでとらえているかということですのであのように答弁したわけでございますが、私どもといたしましては、熱中症にならないように予防するために、いろいろな施策をやるべきだと思っております。
 学校でスポーツなどをするときには、帽子をかぶったり、直射日光の下を避けたり、水分を補給したりするなど、職員等の指導者が児童生徒の健康管理に留意するということは、これは私はあらゆる子供たちにとって非常に大事だと思っております。もちろん、事例を集めて、それから分析をしてということも大事でございましょうから、そういうことも並行して考えるべきことかもしれませんけれども、とにかく予防をするということが非常に大事でございます。まさに委員がおっしゃったとおりでございます。
 それと同時に、不幸にも児童生徒が熱中症になった場合に適切な処置を施すことができるように、教員などが常に指導者として必要な知識、技術を持っている必要があると思います。教員等の指導者は、熱中症の症状あるいは緊急に処置すべきこと、それからその方法などについて知っていてもらう必要があるわけでございまして、周知徹底を図ることが重要と考えております。
 そのために、具体的に文部科学省としては既に手を打っておりまして、一つは、文部科学省主催の養護教諭等の教職員や学校医等の研究協議会におきまして、熱中症の予防や緊急時の対応などについて講義を行います。それから、文部科学省作成の運動部活動の運営に関する手引書におきまして熱中症を取り上げておりまして、注意を促しております。それから三番目には、日本体育・学校健康センターの策定しました学校事故等の事例集におきまして、先ほど局長も言いましたように、非常に深刻な事例とか死亡のあれについては、きちんとこれはデータを集めておりますので、そういうことについての事例集におきまして熱中症の事例あるいは防止上の留意点を取り上げて、注意を喚起しているわけでございます。こういうような諸施策を通じても、それぞれの学校の教員が、養護教諭だけではなくて、そういう知識を持ってもらいたいと思っているわけでございます。
 学校におきましては、熱中症など留意すべき健康上の問題に関しまして、教員が養護教諭と連携をとって正確な知識を持ちますとともに、的確でかつ迅速に対応できる体制を整えることが大変大事だと考えておりまして、今後とも、研修会などを通じて指導していきたいというふうに考えております。
中川(智)分科員 今の大臣のお答えを一つ一つ確認していきます。
 その三点目におっしゃった事例集。事故実態のデータはないとおっしゃいました。大臣は今、事例集の中でそういう事例を引いていると。
 私が申しました事故実態の把握というのは、完璧とまではいかないけれども、ちゃんと、文科省の管轄下にあります学校現場で、この五年間なら五年間でどのような事故があったか、どういう状況で起きたかということを、しっかりとしたデータとして出してほしいということです。出していただきたい。約束してください。
遠藤政府参考人 先ほど申しましたように、日本体育・学校健康センターの方には全部の事故が百十七万件出てきておるわけでございますが、死亡については各年の実態というのは明らかでございまして、平成十三年には三名、十二年には四名、こういうような数字、過去何年かの数字は持っております。
中川(智)分科員 そうしたら、局長、もう一度。
 各年ということではなくて、それによって何を学んできたか。大変になったから、今大臣がおっしゃったような講義を行うとか、手引をつくるとか、迅速に対応できる、そのような指導をしていくということですが、では、過去十年間、私のもとにそのデータをすべて出してください。百十七万件とおっしゃった中身、死亡そして重篤な状況、搬送されただけでも結構です、どういう場所で、文部科学省としてどこに対してきっちりと今後の指導に結びつけていくかというデータを出してください。何日以内ぐらいにいただけますか。
遠藤政府参考人 単年度で百十七万件でございますので、それにつきまして精査をして、そのうち熱中症がどのぐらいか、ちょっと私も技術的にどのぐらいの時間がかかるか、今ちょっとここでは申し上げかねますけれども、努力するようにいたします。
中川(智)分科員 大臣、大事なのは、大臣がおっしゃったように、現場の先生たちにきっちり勉強してもらってすぐに対応するようにする、それを起こさないようにするということが大事なんです。
 医療事故でもそうですが、過去にどのような悲しい事例があったか、それによって学んでいくことが未来につながると私は思っておりますので、文部科学省として、少なくとも、管轄下の小中高大、国公立そして私立学校もございます、そこでどのような熱中症で悲しい死を、人生を途中で遮断されざるを得なかったか、そのような事故実態をしっかり把握して、局長が今、時間がどれぐらいかかるかわかりませんとおっしゃいましたが、これは既にあるのならば出すことができるわけですし、改めて学校にその事故事例、報告を上げてくれと言えば、たくさんの方々が働いていらっしゃるんですから。
 それに、特にこれはもう夏を迎えまして、あすにもその事故が起きるかもわからない。その中で、データをぜひとも早急にいただきたいと思います。
 今の大臣の御答弁の中で、講義などを行っていると。これは定期的にやっているわけでしょうか。
遠藤政府参考人 講義というお話でございますが、学校環境衛生・薬事衛生研究協議会というのを毎年やっておりまして、その中で必ず取り上げるようにしております。
中川(智)分科員 これは、学校現場だけに起こる熱中症の事故ではなくて、厚生労働管轄もございますし、国土交通もあるでしょう。外での仕事、そしてまた、車中に子供をちょっと置いて買い物などに出かけている間に、脱水状態で子供さんが亡くなるというのも報道されたりしております。各省庁またがるわけなんですが、インターネットでさまざまなこの情報を引きましたが、文部科学省としてそのようなデータを、教師、現場の人だけではなくて子供たち、また親にもしっかり情報公開をしているという、そのような取り組みはございますか。局長で結構です。
遠藤政府参考人 先ほど来申し上げておりますように、事例集でございますね、事例集では、死亡事故等について、こういう事例がこういう状況でこういうことがあってという詳しい事例は掲載させていただいております。
中川(智)分科員 それは全部に公開しているということなんですか。ホームページで引いても全然出てこなかったですけれども、事例集は。
遠藤政府参考人 日本体育・学校健康センターの方で冊子としてつくっておりまして、ちょっと今、それが日本体育・学校健康センターの方のホームページで掲載されているかどうかというようなことについては、ちょっと承知しておりません。
中川(智)分科員 私もその冊子は見ました。あの体育・学校健康センターというのは文部科学省としてはどのような立場にあるんですか。
遠藤政府参考人 文部科学省所管の、現在は特殊法人でございまして、今、特殊法人改革で独立行政法人にという方針が出ておりますけれども、現在はそういうような位置づけでございます。
中川(智)分科員 事例集とかというのは、文部科学省として責任を持って、この熱中症対策、予防を講じるためにというようなことで、何かきっちりしたものをおつくりになって配布されているわけでしょうか。それは見たことがないんですが。
遠藤政府参考人 先ほど大臣申し上げましたように、文部科学省作成という意味では、運動部活動の参考資料をつくっておりまして、その中で、安全にスポーツを楽しもう、こういう項目がございまして、その中で熱中症について説明をし、注意を促しているということがございます。
中川(智)分科員 それは大体何ページぐらい熱中症について書いているんですか。
遠藤政府参考人 運動部活動全般についての冊子でございますので、熱中症については一ページの中での話でございます。
中川(智)分科員 大臣、今の局長の御答弁で、一ページぐらいのもので安全に楽しくというものでは予防はできないと思います。熱中症に対する知識、どうしたら防げるか。例えば、教師だけが知っているんじゃなくて、子供たちも知ることは非常に大事だと思いますし、家庭でも大事だと思うんです。
 私の息子も小学校二年から野球をやっておりまして、真夏でもずっと汗を流して部活動をしておりましたが、子供から、体の調子がおかしい、しんどいからちょっと休みたいということがなかなか言えないんです。大事なのは、その周辺の人、その子供たちの活動にかかわる大人たちが子供の様子を見て、もうちょっと休んでいろとか、そのような周りのアドバイスが大事で、そのような子供たち本人にも、また親にも、熱中症に対する知識というのはたった一ページなどで伝え切れるものではありません。
 熱中症だけでもかなりの、どういう病気か、どうしたら防げるか、水分だけじゃなくて塩分も補給しなきゃいけない、もしもこういう状態になったときにはこうしなければいけない、私は一冊の本が必要だと思うぐらいの中身です。もっと熱中症についての周知徹底を充実して取り組むというお考えがあるならば、その御決意を聞かせてください。
遠山国務大臣 先ほどの委員のお話では、最近の地球温暖化というようなことを背景にしてふえてきているということでございます。そういうことであれば、非常に危険な病気でございますね。ですから、よほど注意していかなくてはならないと思います。
 学校の中で起こります子供にまつわるいろいろな病気というものは本当に多種多様でございまして、熱中症ももちろん気をつけなきゃいけませんけれども、本当に多様な病気が出てまいっておりまして、その数が何と、数え上げると、全国の四万の小中高等学校におきまして年間百十万件という状況でございます。
 熱中症だけを詳しく詳しく書いて一冊の本にという委員の御熱意はよくわかりますけれども、私どもの仕事の中で、いろいろな状況になったときに子供たち自身それから教員が対応できるような、そういう一般的な資料を中心にしながら、その中において熱中症の問題もきっちり取り上げていく、そのような姿勢で今後とも十分に対応してまいりたいと考えております。
中川(智)分科員 私が申しておりますのは、これは災害なんですね、学校災害。
 そして、今ボランティアの人たちが仕事を持ちながら、御自分のお子さんを昨年亡くされたお医者様の中村先生などは、この一冊の本を著されました。三年前に中学一年でラグビーの部活のときに子供さんを亡くされた方々は、ボランティアでこのデータをとったりして頑張っていらっしゃいます。それは予防できるからなんですね。
 読売新聞の七月二十一日の記事では、一九九六年から五年間の熱中症の死者は百四十五人から二百七人、記録的な猛暑の九四年は五百八十九人。これは、防ぎ得るというよりも、知識がないということと、根性主義、勝利主義の中で、学校現場では子供たちが過酷な活動、知識のなさによって、そしてまた、みずからもう疲れたと言えなくて倒れていって亡くなっていく、これは災害なんです。
 意図してとは申しませんけれども、そのような文部科学省の今の遠山大臣の御答弁のような甘い認識であるからこそ、死が防げない、事故が防げない、そのような実態があるんです。たくさんのことがあるからその熱中症にたくさんは割けない、そのような認識はこれからもますます事故を生む。
 どうしてもつらくてつらくて、子供を失った親の身になってください、大臣。しっかりと取り組んでいくというような言葉がいただけないものでしょうか。そのような甘い認識だから、学校での事故が減らない。そして、実態把握さえもしない、責任を持って周知徹底することさえも非常に及び腰。非常にがっかりいたしましたし、失望いたしましたが、でも、大切なことだ、予防できるという認識は一致いたしましたので、今後ともしっかりと頑張っていっていただきたいと思います。
 この「熱中症 息子の死を糧にして」という本も、大臣に既に、本を書かれたときにこの中村先生はお送りしたそうです。大臣のお手元にあると思いますので、ぜひとも、きっちりと手にとって読んでみてください。
 そして、三年前に中学一年の子供さんを亡くされた宮脇さんのお子さんは、一時間半ただ寝かされていただけでした。この熱中症というのは、倒れた後、速やかに処置をすること、そのことによって死なずに済むんです。一時間半寝かされていただけだった、それによって死んでいく。起きた後がどれほど大事か、そのこともまた指導者にしっかり周知徹底する。子供たちが救急車を呼んでほしいと言ってもその声が届かない。寝ておけば治るよという甘い認識がなぜ続いているのか。それは、文部科学省として、しっかりとした責任を持って、一件でもなくしていく、ゼロにしていく、そのような気構えでやっていっていただきたいと思います。
 熱中症だけでかなり時間がたってしまいましたけれども、もう一つ、これは学校現場に聞いていただきたいんですけれども、例えば救急車を呼ぶとき、救急車を呼んだら病院に搬送される、それによって、事故報告としてきっちり報告もしなければいけないし、その後、どういう状態だったのかと、いろいろかなり書類なども書かなきゃいけないし、手間だと。手間という言葉はちょっと誤解を生むかもしれませんけれども、かなり責められると。子供を亡くされた親御さんたちは、恨む気持ちはあるけれども、今は、このような悲しみを別の親にもうさせたくないという思いで、ボランティアで一生懸命頑張っているわけですね。
 大臣に、もう一つお願いしたいということで御答弁いただきたいのは、今、ボランティアで熱中症の会とか学校災害のことを考える親の会とかというのがございます。できれば当事者の方たちの御意見を聞く場を文部科学省として一度持っていただいて、そして、ボランティアの片手間ではなかなかこのような専門的なことはできませんので、ボランティアの当事者の方々、そして専門家、行政で、この熱中症のテーマ、また学校災害でも結構です、そのテーマで研究チームをつくっていただきたい。
 その要望が一つと、救急車を呼ぶときに、学校の校長の許可を得て救急車を呼ばなきゃいけないとかという教育現場があるそうなんですね。そうじゃなくて、緊急を要するときはしっかりと学校が対応するというような通知なり、それを学校の方に出していただくことはできないか、この二点、お答えいただきたいと思います。
    〔主査退席、岩屋主査代理着席〕
遠山国務大臣 熱中症の問題に限らず、子供が学校において異常を来した場合には、それはあらゆる手段を使ってその安全を保つべきだと私は思いますし、今おっしゃったような、子供を放置したまま一時間半も手続をとってない、とんでもないことでありまして、これは、迅速にかつ的確に、医療機関ないし相談する場所と連携をとっていくのは当然のことでございまして、まさに学校経営のイロハのイですよね、子供の生命にかかわるようなことをきちっとやるということは。それは、その方向で、もちろん学校も頑張ると思いますし、私どもも、折があるたびにそういうことについて注意喚起をしたいと思っております。また、関連のいろいろな御意見については、もちろん、広く聞く耳を持つべきだと思っております。
 我が省の幹部の家族の方の子弟も先般そのような事故に遭ったということがございまして、私は、そこに書かれたような問題につきましては、非常に大事なことだと思っております。
 でも、本当に大事なのは、きちっともう予防できるわけですし、そして予防をして、かつ、何か異変が起きたときには直ちに対応する、そのことをまず徹底していくということが非常に大事でございます。それは、単に学校だけではなく家庭でもそうですし、それからもっと公的な場あるいはいろいろな場でそういうことが考え得るわけでございます。
 今、先生は学校で学校でというお話でございましたので、学校についてはもちろんしっかりやるわけでございますが、やはり一般市民としても、こういう問題に広く関心を持って、一人でもこのような病気を原因として命をなくしたり、あるいは障害を受けたりすることがないようにしていくということが非常に大事だと思っております。また、委員御自身も、いろいろな形でそういうことについての注意喚起をぜひ御協力をいただけたらと思うところでございます。
中川(智)分科員 遠山大臣、私も、一生懸命質問することによって、大臣にこの問題を深く理解していただきたいと思って頑張っているわけで、でも、大臣の職責というのは非常に重いし、また、坂口大臣がやはりハンセンやヤコブに取り組んでくださったときに、ヤコブ病のことは中川さんの質問で本当に知ったとおっしゃってくださったんですね。それがうれしかった。
 今、この熱中症は、年間何百人も亡くなっている。ますます温暖化の中で、死亡していく方を防ぐための予防、それはしっかり取り組んでいくとおっしゃったんですね。もう一歩踏み込んで、厚生労働とかほかの省庁にもまたがりますので、この熱中症、日射病、熱射病、予防する手だてとして、省を超えて研究チームをつくって、予防、なくしていくための対策に取り組んでいくという、先ほど私が申しました研究チームをつくっていただきたいんだがということに対する御答弁をもう一回いただいて、最後にしたいと思います。
遠藤政府参考人 大臣が先ほどから御答弁申し上げましたように、学校できちんとそういう体制をとっていくということが大事だと思っておりますので、そういうことについてさらに努力をしていきたい、こう思っております。
中川(智)分科員 時間になりました。引き続いて、差しかえなりでまた大臣に御質問したいと思いますし、お願いもたくさんございます。またよろしくお願いいたします。
 本当に、子供たちの命を奪われたくないために予防第一、そのために、データ集積と当事者の方々の意見を聞いていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
岩屋主査代理 これにて中川君の質疑は終了いたしました。
 次に、森岡正宏君。
森岡分科員 私は、自由民主党の森岡正宏でございます。
 きょうは私は、主として修学旅行について問題を指摘したいわけでございますが、その前に、ちょっと心配なことがございますので、義務教育費国庫負担制度について、文部科学大臣、及び財務省から大臣政務官の砂田先生にお越しをいただいておりますので、お二人に質問させていただきたいと思います。
 去る六月十七日に地方分権改革推進会議が中間報告を取りまとめ、その中で、義務教育費国庫負担制度の見直しに言及されているわけでございます。私も読ませていただいたのですが、日本の公教育の根幹にかかわる問題だと私は思っておりまして、財政上の理由からだけでこんなことを論じるのはいかがかと私は思っておるわけでございますが、まず遠山大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
遠山国務大臣 森岡委員御指摘のとおり、義務教育というのは国家の根幹をなす非常に重要な課題の一つであると考えております。義務教育がしっかりした中身を提供できて、子供たちが力強く未来を生き抜く力を養えるかどうかというのは、その子供にとっても非常に大事でありますと同時に、一国にとっても大変大事なことでございます。
 日本の義務教育が非常に成果を上げてきたということが今日各国においても非常に認識されておりまして、各国が日本の義務教育制度、国庫負担の問題あるいは学習指導要領の問題等を非常に学びまして、今、各国におきまして、学校教育制度の改革に取り組んでいるところでございます。
 我が国といたしましては、私は、義務教育を確固としたものにしていく、あるいはこれを維持していくということは大変大事だと思っております。当然ながら、義務教育費国庫負担制度の中には、幾つか見直す点があるのかもしれません。もしそういう点があれば、見直すということもあり得るかもしれません。これは、総理の方から、十分に大臣のイニシアチブを持って見直しを検討するようにということでございました。
 そういうことで、これから少し時間をかけて考える必要があろうかと思いますけれども、私は、基本におきまして、この義務教育費国庫負担制度というものは十分に機能を発揮してまいりましたし、また、我が国の教育の一番の基礎であるというふうに考えておりまして、これにつきましては、単なる財政論、財務理論で教育の根幹を揺るがされては困るという信念を持っております。
森岡分科員 大臣のお考え、よくわかりました。私も全く同感でございます。
 財務省の砂田大臣政務官に伺いたいわけでございますが、地方分権を考えるときに、国から地方への税源移譲でありますとか、また個別のひもつきの国庫補助金、こういうものをカットしていくというのは、私も大賛成なんです。しかし、今も大臣がおっしゃったように、この義務教育費国庫負担制度を財政上の理由から見直すべきというのは、余りに飛躍し過ぎた議論になっているんじゃないかなと思えてならないわけでございます。
 この制度をやめますと、地域によって学校の先生の給与格差が大きくなってしまう、各都道府県によってばらばらな教育が行われてしまう。そうすると、憲法第二十六条、国民は、能力に応じてひとしく教育を受ける権利があり、また、国は教育を施す義務がある、そういうことから反するんじゃないかな、憲法問題にもなってくるんじゃないかなと思うわけでございます。
 義務教育における国の責任をどう考えるのかということを論じないで、三兆円という大きなお金でございますから、大きいからはがしやすいということはあるかもしれませんけれども、私は、そんなことでこんな大事な問題を決めてもらっては困る、そう思っておるわけでございますが、財務省として、平成十五年度の予算編成、これにどう対応しようとしておられるのか、この義務教育費国庫負担制度についてメスを入れようとしておられるのか、あるいは、少しでも見直そうとしておられるのかどうか、その辺を聞かせていただきたいと思います。
砂田大臣政務官 お答えいたします。
 先生の御心配、ごもっともでもありますし、先生の大変真摯なお考え、十分にお答えができるかどうか心配なところでございますけれども、財務省としては、義務教育については、全国の児童生徒が一定水準の教育を受けるようにすることは大変重要なことであります。その一方で、自立した地方が、地域の特性を反映させつつ、生徒の多様な個性と創造性をはぐくむということによって学校教育の活性化を図っていくことも大変また重要な課題であると考えているわけでございます。
 義務教育費の国庫負担制度の見直しについては、去る七月十九日の閣僚懇談会の場におきまして、総理から文部科学大臣に対しても、国の関与を縮小し、大学、学校教育の個性と競争を通じて、一人一人の人間の力を発揮させる、そういう観点から制度あるいは政策改革を論じていただきたいという総理の御指示がありました。
 このような観点を踏まえて、今後十分な検討を行っていく必要がある。そういう意味で、今先生のおっしゃるように、決して予算面からこういう教育的な部分が欠落しないように、あるいはその力が落ちないように、これからも続けて努力をしていく決意でございます。
森岡分科員 砂田大臣政務官、ありがとうございました。砂田先生も日本の教育を大変御心配なさっている先生だと思っておりますので、期待しておりますので、よろしくお願いいたします。お忙しいようでしたら、御退席いただいて結構でございます。
 次に、私は、これは文部省は遠藤局長さんが御担当でございましょうか、学校栄養職員の問題についてちょっと触れさせていただきたいわけでございますが、この義務教育費国庫負担金制度に手をつけるということになりますと、いつも真っ先に議論されるのが栄養職員でありますとか事務職員、こういうことが言われるわけでございます。関係者も大変心配をしておるわけでございますが、文部科学省としてどう考えておられるのか。
 そして、私は、今ほど食の教育というものが大事な時期はないと思っているんです。BSEを初めとした食の安全について大きな議論があった。それだけじゃなしに、最近の子供たちは、朝、食事をとってきているのかとってきていないのか、わからないような子も多いし、偏った食生活をしている。また、食事をつくってくれる人、また食材に対する感謝の気持ち、こういう気持ちをはぐくんでいくということも大変大事だと思いますし、健康上、スポーツをやったり、また自分の体を維持していく、そういうために大変食というものは大事だと思うわけでございます。文部省で「食生活を考えよう」、こういう教材も配付しておられるということも知っているわけでございますが、実際にどんなふうに学校教育の現場で食の教育というものがなされているのか。その二点をお伺いしたいと思います。
矢野政府参考人 私の方からは、学校栄養職員の国庫負担の問題について御説明申し上げたいと思います。
 御指摘の学校栄養職員それから事務職員につきましては、これは教諭、養護教諭とともに、私ども、学校の基幹的職員であるというふうに認識をいたしているところでございまして、これらの職員につきましては、現行の制度といたしましては、いわゆる義務標準法によりまして配置の基準が定められておりまして、そしてまた、それに要する経費につきましては、義務教育費国庫負担法によりまして国庫負担の対象とされているところでございます。
 我が省といたしましては、学校栄養職員及び事務職員につきまして、今後ともこのような制度の基本は堅持してまいりたい、かように考えているところでございます。
遠藤政府参考人 食の教育についてお答えさせていただきます。
 先生御指摘のように、今の子供たちの食生活は、朝御飯を食べてこない、あるいは子供だけで食事をするいわゆる孤食、それから偏った栄養摂取等の問題等々が生じているわけでございますが、これらも関係いたしまして、肥満等の生活習慣病の危険因子要因が子供たちにも広まってきておる、食に関する指導の重要性が高まってきている、こういう認識を持っておるわけでございます。
 そこで、文部科学省におきましては、関連教科、特活あるいは学校給食、これを生きた教材といたしまして活用して、食に関する指導を推進しているところでございます。
 具体的に言いますと、例えば食に関するシンポジウムあるいは研修会、こういったものを毎年実施をしておりますとともに、今お示しいただきましたように、この四月には、小学校五年生、中学校一年生全員に食生活の学習教材をお配りして、そして学校現場で学校栄養職員あるいは学級担任等によりまして指導していただくようにということで、活用をしていただいているということがございます。それともう一つは、やはり問題のある子は個別に相談が必要だ、こういうことで個別指導事例集を現在作成をしている。いろいろそういうことで取り組んでいるのが実情でございます。
森岡分科員 今伺いまして、一生懸命、食の教育にも取り組んでいただいているということを知ったわけでございますが、我が自民党の中に学校栄養士議員連盟というのがございます。私も仲間に入れていただいているわけでございますが、会長は前総理の森喜朗氏。この議連で、平成十七年の第七次定数改善計画終了時までに、学校栄養職員に栄養教諭の資格を持ってもらう、学校の先生という資格を持ってもらう、そういう決議をしているわけでございます。
 これにつきまして、文部科学省としてその期待にこたえられるような準備をしていただいているんじゃないかなと私は期待しているわけでございますが、遠山大臣、いかがでございましょうか。この件についてどんなふうな考えを持っておられるか、伺いたいと思います。
遠山国務大臣 食に関する指導の充実を学校において図っていくことは、大変大事なことでございます。
 文部科学省では、食に関する指導の充実のための取り組み体制の整備につきまして、調査研究協力者会議を開催してきておりまして、昨年の七月に第一次報告が取りまとめられました。この中で、食の専門家であります学校栄養職員を積極的に活用して、食の指導の充実を図るという観点から、栄養教諭と申しますか、これは仮称でございますが、そういう制度の創設について検討すべきという提言をいただいたところでございます。
 また、先般取りまとめられました中央教育審議会の中間報告におきましても、同趣旨の提言をいただいております。
 現在、調査研究協力者会議を引き続き開催いたしまして、栄養教諭、仮称ですが、これの職務内容でありますとか、あるいは他の教職員との連携、養成システムといった具体的な問題に関して検討をしているところでございます。
 私どもといたしましては、これらの課題について引き続き検討をしていきたいと考えております。
森岡分科員 学校栄養職員の皆さん方が本当に安心して食の教育ができるように、大変な期待を持っておられるわけでございますので、ぜひ実現方をお願いしたいと思います。
 次に、修学旅行の問題について、二、三、御質問をさせていただきたいと思います。
 先日、私は、ヨミウリ・ウイークリーという週刊誌でございますが、これを読みましたら、教育の費用につきまして掲載しておりました。七月十四日号というのを見ますと、修学旅行の費用が高過ぎるのは大手旅行会社の寡占体制が原因じゃないかということを指摘しておりまして、業者の添乗員の告白をもとに教師たちのたかりの実態をおもしろおかしく描いておりました。
 私は、このヨミウリ・ウイークリーの記者に直接その後会いまして、本当なのかどうなのか、添乗員を取材されたときの様子などを伺ったわけでございます。
 下見の旅行費用は旅館と土産物屋で折半する。また、先生の接待、バブルのときは特に激しかった。だんだんと最近厳しくなってきているようでございますが、これが旅行会社の負担になったり旅館の負担になったりしている。そして、入札形式をとっているものの、それは非常に形式的なものになっている。先生にいかにして旅行業者が取り入って、来年もその業者を使ってもらうかということに関心が行っている。
 旅行先で毎晩繰り広げられる反省会と称する先生方の宴会。旅行会社が反省会用の部屋を設けて、酒とさかなを用意しておく。生徒の食事とは比べ物にならないほど豪華なもの。別の会社だった去年は刺身の舟盛りが出たのにとか、九州では今夜は当然馬刺しでしょうというようなことを言われる。来年も仕事が欲しい旅行会社の社員にとっては、さりげない言葉にも全力で対応しなければならない。
 先生たちの土産物を用意するのも慣例になっている。宅急便で自宅まで送り届ける。ホテルのルームサービス、電話代、有料テレビなど、明らかに私的な利用であっても当然のように請求する先生が多い。旅行期間中教師が一台ずつ携帯電話をレンタルする学校がこのごろふえてきておって、その料金がすべて旅行会社持ちになっている。旅先から自宅へ長々とかける私用電話まで記録に残っておって、沖縄あたりから毎晩〇六とか〇三にかけられると旅行会社にとっては負担がたまらぬ。
 こういうふうに次から次へと生々しい実態が描かれているわけでございますけれども、修学旅行の引率を二百回もやっている現役の添乗員から聞いた話だということでございましたので、うそじゃないと思うのですね。私は、みんながみんなこんなことをやっているというふうには思いたくもございません。また、昔の話であるかもしれない、最近はそんなことはなくなっているのかもしれない。しかし、真実も多いだろうという気はするわけでございます。
 そういうことから、どうも、旅行会社の添乗員のお話によると、学年主任とか、また修学旅行に行くクラスの古参の先生、こういう人たちを大事にしておくと来年もまた自分の会社を採用してもらえる。そういうことでサービス競争みたいになっている。
 私は、そういう旅行会社とか旅館が負担しているもの、これが結局は父兄の負担に間接的になっているんじゃないか、これを心配しているわけでございまして、こういう実態について文部科学省はどういう印象を持っておられるのか、このとおりだというふうにも思っておられるのかどうなのか。その辺、お伺いしたいと思います。
矢野政府参考人 今先生が御紹介にあったようなことにつきましては、私どもとしては、もちろん承知しておりませんし、そういうことがないというふうに思っているわけでございますが、そうしたことにつきましては、私ども、かねてから強い問題意識を持っておりまして、例えば引率教職員の行動につきましては、引率教職員がみずからの責務を自覚して自己の行動を厳に慎むようにする、さらには関係業者との関係につきましては、不明朗な関係を持つことがないように厳に注意することといったようなことにつきまして、かねてから都道府県教育委員会を通じまして指導をいたしてきているところでございます。
 そういう状況の中で、今御紹介のあったようなお話でございますけれども、私どもといたしましては、そうした御指摘も受けながら、引き続き、服務規律の徹底を含めて誤解や批判を招くことがないような指導をさらに強めてまいりたいと考えているところでございます。
森岡分科員 先生方の服務規律の徹底、ぜひやっていただきたいと思います。
 私も最近初めて知ったんですけれども、財団法人日本修学旅行協会というのと財団法人全国修学旅行研究協会、こういう公益法人が二つあるようですね。こんな団体がどうして二つもあるのか。
 そして、一方、日本修学旅行協会というのはJTBが支えているということを聞きました。また、全国修学旅行研究協会というのは近畿日本ツーリスト、これが支えているということも聞きました。文部科学省のOBも役員でこの中に入っておられるというようなことも聞きましたし、旅行会社の人たちも役員に入っておられるということも聞きました。なぜ修学旅行のためにこういう団体、公益法人が二つも要るのか。そして、どういう役割をしておられるのか。この辺、文部省との関係は一体どうなっているのか、お伺いしたいと思います。
矢野政府参考人 御指摘の点でございますが、現在、修学旅行に関する業務を行う文部科学省の所管の公益法人としては、御指摘のとおり二つの財団法人がございます。
 一つは、財団法人日本修学旅行協会、これは国土交通省と共管の法人でございます。それからもう一つは、財団法人全国修学旅行研究協会、この二つがあるわけでございまして、それぞれ、修学旅行に関する調査研究でございますとか、修学旅行の実施運営に関する指導助言、さらには修学旅行に関する研究会等の開催に関する業務を実施していただいているところでございます。
 この両法人の担う調査研究等の業務につきましては、私ども公益性の高い業務であると考えておりますが、二つの法人があることにつきましては、今申し上げたようなこれらの業務は必ずしも一つの法人に限って行われるべき業務ではなくて、複数の法人がそれぞれ業務を実施するということ自体は基本的には不適切とは言えないというふうに考えておるわけでございます。
 されば、どうして二つもあるのかねというお尋ねでございますけれども、これは、言ってみますると、両法人はそれぞれ得意な分野を生かしてそれぞれ適切に役割を分担しているというふうに私どもは理解しております。
 具体的に申し上げますと、例えば、それぞれの学校が修学旅行において利用する交通機関の調整に関する援助業務につきましては、修学旅行を実施する学校数が多いものでございますから、そしてまたその行き先も多様であるわけでございますから、こうした調整等についてはこの二つの法人が適切に分担をしているといったようなことがあるわけでございまして、そういう意味での役割分担をしながら公の業務に携わっているというふうに私どもとしては理解をいたしているところでございます。
 なお、両法人、役職員で文部科学省との関係、特に文部科学省出身の者についてのお尋ねでございますけれども、財団法人日本修学旅行協会につきましては、文部科学省の出身者は、会長とそれから理事二名の三名が在籍をしているわけでございます。うち、二名の理事は無給でございまして、会長は年間六十万円の報酬を受けているということでございます。また、もう一つの財団法人全国修学旅行研究協会につきましては、理事一名、これは無給でございますけれども、文部科学省のOBが在籍しているというふうに承知いたしているところでございます。
森岡分科員 いや、私は、今御説明ございましたが、別に文部科学省の方が関係しておられていかがわしいことをやっておられるとか、不当な報酬を取っておられるというふうには思わない。
 しかし、双方の団体が民間の旅行業者と非常に関係が深い、こういう中にあって、子供さんたちが負担している、結局親が負担しているわけでございますけれども、親が負担している今の修学旅行全体の旅行費用が、旅行会社を寡占状態に置いておるものですから、非常に割高なものを支払わされているんじゃないかということを指摘したいわけでございます。何でそれに文部科学省が手をかすことになっているのか。こういうことはやはり徹底して改めていただきたいな、そんなふうに思うわけでございます。
 私は、生徒の安全を第一に考えているから修学旅行の費用は割高になるんですよというようなことをよく聞かされるわけでございます。各県によって、例えば私の方の奈良県では、高校の国内旅行は八万円以内とか中学校は五万円以内とか、一応の基準を決めているようでございますけれども、世間一般の、老人会が旅行しているとか各種団体が旅行している費用から比べると、修学旅行の費用は格段に高いと思いますよ。こういう実態に私はやはりメスを入れるべきだというふうに思います。
 それともう一つ、私、大事なことを指摘したいわけでございますけれども、先日、鹿児島県の議会で、修学旅行で中国や韓国の自虐的な施設を見せる、例えば中国の人民抗日戦争記念館、韓国の独立記念館、こういうものを見せることには反対だという陳情を受けて、それを決議されたわけでございます。
 私は、去年、この文部科学委員会で同じ問題を取り上げまして指摘をさせていただきました。年間、日本から中国や韓国へ修学旅行に行っている高校生は、それぞれ約四万人でございます。その旅行の日程の中に、必ずと言っていいほど、盧溝橋の中国人民抗日戦争記念館とか、韓国の独立記念館を見るというコースが入っているわけでございます。たまたま、大変残念なことでございますけれども、私の郷里の奈良県でも、この間、天理市のある中学校、公立の中学校でございますが、韓国へ行きまして独立記念館をやはり見に行っているんですね。中学生が見に行っている。
 私は、去年、韓国へ行きましてそういう施設を見てきましたけれども、日本軍の特高警察というのかな、そういう人が韓国人を拷問にかけている、そういうシーンが生々しく次から次へと人形を使って繰り広げられる、そういうシーンを修学旅行生たちに見せているということでございました。韓国の子供たちにも見せている、日本の子供たちにも見せているという現場を見て、私はもう本当に唖然といたしました。
 こういう自虐体験、また反日的な思想をわざと多感な子供たちに植えつける、そういうことをやって本当に何の意味があるのか、学習指導要領に沿った教育的意義というものをどこに見出すことができるのか、私は本当に疑問を覚えるわけでございます。
 最近、ゆとり教育の実施によって自然との触れ合いとか奉仕活動というものが取り入れられるようになりました。そういうことを考えますと、修学旅行そのものを見直すべきときを迎えているんじゃないか。
 私は奈良の人間でございますから、修学旅行生が減ることは大反対でございますが、本当に悲しいことでございますけれども、しかし、こんな修学旅行、まあ国内旅行も社寺仏閣を見ないでディズニーランドやドーム球場へ行くというようなのがふえているとかいうようなことも聞きます。そういうことを聞きますと、本当に、今、修学旅行そのものを見直すべきときを迎えているんじゃないか。
 また、文部科学省としても、修学旅行そのものにもっと目を向けて、真剣に修学旅行のあり方を考えてもらわなきゃいかぬのじゃないか。また、先ほど言いました海外旅行の場合に、中国や韓国でそういう自虐体験をした学校、またしようとしている学校、こういうところには実態調査をしていただくなり、文部科学省から局長通達を出してそういうところは行ってはいけませんよという指示を出してもらいたい、そんな気持ちでいるわけでございまして、遠山大臣の御感想と御決意のほどをお聞かせいただきたいと思います。
岩屋主査代理 時間が来ておりますので、簡潔にお願いします。
遠山国務大臣 修学旅行は、見聞を広げたり、あるいは公衆道徳などについての体験を積むということで、これまで教育活動の一環として、それぞれの学校の実情に応じてそれぞれの判断で計画、実施されてまいりました。
 各学校が決定する行き先につきまして、我が省として個別にコメントする立場ではないわけでございますけれども、一般的に申し上げれば、やはり学習指導に資する、あるいは児童生徒の心身の発達等に十分な配慮をしながら目的地は定められるべきと考えます。
 これは公式といいますよりは私の考えでございますけれども、外国にまで行って修学旅行を体験するということであれば、異文化の理解というようなことでありますとか、外国の地に行って自国を振り返って、そこにおける特徴とか、誇りとすべきものを考える、そういうチャンスにこそしてほしいなと思うところでございます。
 そして、修学旅行が始まったころは、確かに親と一緒に各地へ旅行するとかというチャンスがないような時代に始まったと思っておりますけれども、今日ではそういうチャンスはいっぱいあるわけでございまして、では、どういう修学旅行の意義があるかといえば、やはり学校の子供たち相互がまとまりとして一緒に宿泊をして、意見交換をしたり友好を深めたりというようなことも大変あると思います。そしてまた、もちろん古い文化、伝統というものに触れる。
 そのような、本来どういうことで修学旅行というのは今日有効であるかということをよく考えて、それぞれの学校で対処してもらいたいとつくづく思うところでございます。
森岡分科員 時間が参りましたので、終わらせていただきます。ありがとうございました。
岩屋主査代理 これにて森岡君の質疑は終了いたしました。
 次に、吉井英勝君。
    〔岩屋主査代理退席、主査着席〕
吉井分科員 日本共産党の吉井英勝でございます。
 きょう、私は、ITERの問題について質問をしていきたいと思います。
 これまで、国会で本格的にITERについて議論されたということは余りありませんでした。私は、昨年三月一日の予算委員会で、ITER問題では、プラズマ主半径の短縮によってコストを低減しても、それで意味のある研究になるのかという問題とか、基礎研究や炉材料の研究開発など、今取り組むべき課題は何かということ、それから、コスト削減と公共事業の発想で、苫小牧か六ケ所か那珂か、そういうふうな誘致合戦がなされているという問題などについて、核物理の専門家などの御意見も伺いながら取り上げました。それから、昨年の六月十三日の財務金融委員会では、ITERのコスト計算の持っている疑問点、それから日本誘致の場合の財政負担などについて取り上げました。
 しかし、本格的な議論の場というのが余りないものですから、国会での議論も十分ないままに、ITERの六ケ所誘致がいつの間にか国の方針として五月三十一日閣議了解され、政府間協議に今かけられておりますが、本来は、政府が誘致する場所を決定する前に、政府よりITERに関する資料をすべて国会に提出して、国会としても深い検討がなされるべきものであると思いますし、国会というのは、この協定書の批准のときだけ少しばかり議論する、判断する、それで済むものであってはならないと私は思っているわけです。
 国会論議のあり方については、これは国会は国会としてのきちんとしなきゃいけない問題がありますから、それはそれで別にあるわけですが、ただ、国会との関係で、やはり政府がITER問題をどの程度のものとして扱い、考えているのか。この点について、やはり大臣としてはどういうふうに国会との関係でITER問題を考えていらっしゃるか、これを最初に伺っておきたいと思うのです。
遠山国務大臣 吉井委員はまさに御専門でもいらっしゃいまして、核融合の重要性につきましてるる述べる必要はないかとは思いますが、ITER計画は、核融合エネルギーの実現に向けた重要なステップとなる国際協力プロジェクトであると認識をいたしております。御指摘のように、今、閣議了解に基づいてITERの政府間協議に移っておりまして、我が国から、青森県六ケ所村を候補地として正式に提案したところでございます。
 今後、国際的ないろいろな視点から審査をされて、核融合の実現に向けて国際的な協力関係が進むわけでございますが、国会との関連についてどう思うかという御質問だったと思います。
 我が国がITERを誘致するというような決定を仮に行うということになりますれば、それは必要となる整備体制についての審議も想定されるところでございまして、引き続き熱心な議論をこの国会の場において御審議をお願いしたいというふうに考えております。
吉井分科員 本来、候補地を決めて協議に入るときに、それはそこになるかもしれないわけです。そこになって協定を交わしてからの議論ということでは、これは順番がおかしいわけで、それはやはり国会と政府の間で、このような国際的な共同プロジェクト、巨大プロジェクトについてはやはりきちんとした説明をし、国会でも議論を深める、私はこういう手続をきちっととらなきゃいけないというふうにこれは指摘をしておきたいと思います。
 日本学術会議の核融合研究連絡委員会と物理学研究連絡会などで検討ワーキンググループというのをつくって、物理学と工学に関係する研究者の間でITERに関する議論がなされてきました。これは、ITER計画の当事者や推進側の研究者と、一方どちらかといえば中立的、批判的な人の多い物理学の研究者の間で議論されたということ、それから、ITER計画を契機に巨大科学計画に対する考え方、大型国際共同計画に対する基本的な考え方、我が国における大型計画の進め方の議論を行って、この両者が合意した共同の報告書をまとめたという意義は、これは私は大きい意義を持っているというふうに思います。
 実は、かつてアメリカのSSC計画というのがありました。超電導の大型の粒子加速器衝突装置ですが、このSSC計画のときには、実は国際協力や大型施設についての考え方で学者、研究者の皆さんの間でも議論が二分するという状況にありました。国会でも私も質問したことがありますが、結局このときは、国会での議論も尽くされない間にアメリカの側が予算不足でSSC計画を撤回しましたので、消滅ということになりました。そういうこと以来余り巨大科学計画についての議論というのはなかったわけですが、今回一つの方向を物理学、工学の人たちが議論して出したということはなかなか意味のあるところだと思うんです。
 そこで、大臣にこの点で伺っておきたいんですが、基本的な問題として、学術会議の二つの研究連絡会同士のこの巨大科学計画などにかかわる認識の一致というものは、私はこれは非常に大事だと思っているんですが、この点についても大臣のお考えというものを聞いておきたいと思います。
遠山国務大臣 核融合のような大きな計画、ITERのような大きな計画につきまして、関係する研究者の英知を集めてこの問題に対処すべきでございまして、その意味におきまして、委員の御指摘のように、ある合意に達して一つの結論を出していただいたということは大変重要だと思っております。
 ITER計画の実施に関しましては、今後もちろん検討がなされていくところでございまして、日本も誘致のために力を尽くしていくべきと考えております。同時に、基礎研究についても大変大事と私は考えておりまして、これからまだ三十年とか五十年先の実現に向けての大研究開発でございますので、日本の関係の研究者たちの総力がその計画をより実効的にかつ有効にしていくことができるように、そういう形での検討というものを重要視していきたいというふうに考えます。
吉井分科員 そこで、今度政府参考人の方に伺っておきたいと思いますが、今の工学、物理の両方の連絡会の方たちですね、その間でITER計画の基礎科学としての意義及び核融合工学における技術開発上の役割と波及効果という点では認識は一致しているわけです。
 同時に、物理学者の方たちの方は、ITER計画の推進を全面的に認めるということには至っていないんですね。日本学術会議としてエネルギー問題や環境問題として検討を行う必要があるということ、さらに、他の大型計画と比べて基礎科学としての重要性が高いかどうか十分吟味をするべきである、こういう考え方も示されていると思うんですが、この点は少し確認しておきたいと思います。
今村政府参考人 今先生御指摘のとおり、このITER計画につきましてはさまざまな議論がございましたし、現在もあると思います。特に、ITER計画の工学的な意義とそれから物理学的な、基礎研究的な問題につきましては、若干の観点の違いの御意見もあるということは理解をいたしておるところでございますが、そうしたさまざまな議論を全体集約する形で、総合科学技術会議の議論を踏まえ、今回の閣議了解に至った、このように理解しておるところでございます。
吉井分科員 総合科学技術会議の問題はまた後で触れますが、原子力委員会の方の、今度は開発戦略検討分科会報告書を読みますと、ここで初めて核融合炉の環境への影響を検討し出しているという点が一つあると思います。
 重水素、三重水素の反応で、ブランケット内でのリチウムに中性子を当てて三重水素を生み出す問題とか、そういう過程の中でトリチウムの問題が注目されているわけですね。トリチウムの半減期は十二・三年ですが、ベータ線の最大エネルギーは十八・六キロエレクトロンボルト。紙一枚で遮へいはできるんですが、体内に取り込んでしまったとき、これは非常に危険だ。ですから、強力中性子線でブランケットが破損したりとか、さまざまトラブルによって破損したときの危険というものは見なきゃいけないということが言われているわけで、この点では、学術会議の核融合研究連絡委員会では報告書を出して、例えば、トリチウム生物影響について、広島大学原爆放射能医学研究所を一つの拠点にトリチウム生物影響関連実験を行うことなどを提起してきました。
 ITER誘致を決定する前の段階で、この研究成果が発表されて、仮に日本に誘致するというふうな場合など、これはもう既に解明済みで全く心配ないと結論づけられているのか、あるいはどのような研究を進めてきて、現在どのような成果が生まれてきて、どんな報告書が出されているのか、これを簡潔で結構ですから伺っておきたいと思います。
今村政府参考人 お答え申し上げます。
 ITER計画自身は、プラズマ燃焼を実際に工学的に実証するという極めて重要な課題を持っておりまして、いわゆる化学的な実験から工学的なエネルギーを得るための工学的な段階に入る極めて重要な課題でございます。
 その中で、特に実際に核融合を人類の手にするための大きな課題の一つとして、やはり安全性という問題があり、特に核融合ではトリチウムを扱うわけでございますから、トリチウムの取り扱いというのは極めて重要な課題である、このように認識をいたしております。
 現在、我が国においてトリチウムの取り扱いの研究は、日本原子力研究所及び富山大学を中心とする研究が行われておりまして、この研究成果というのはITERの今後の安全確保に極めて重要な役割を果たすというふうに思っておりますが、同時に、我が国はトリチウムの取り扱いについて、やはりアメリカにおける経験をよく生かしていくということも必要でございまして、原研はアメリカのロスアラモス研究所と研究の協力を進めておりまして、トリチウムのある程度の規模における取り扱い技術についての習熟を進めております。
 いずれにいたしましても、こうした課題はITER計画を推進するための、あるいはITER計画を推進すること自身の目的でもあるわけでございまして、そのことがITER計画を、ITERをやるかやらないかという判断のものではなくて、今後解決すべき課題として取り上げる、このような位置づけにあるというふうに理解をいたしております。
吉井分科員 今おっしゃったように、この研究は今後重要な役割を果たすということであって、実は学術会議の核融合研究連絡委員会の報告書の中では広島大学の研究所などを一つの拠点としてというお話でしたが、まだこれは進んでいないという。だから、進んでいないから今お話がなかったというふうに理解しておきます。
 では、あわせて伺っておきますけれども、トリチウムの除洗と回収する技術などは、現段階ではまだ未解決という状況じゃないですか。これは一言で結構です。
今村政府参考人 課題といたしまして、今後課題があるということの意味は、ITERの場合、トリチウムをある程度の規模であるいは量で扱わなければいけない。それは、我が国としてはまだ今後の課題になるわけでございます。
吉井分科員 ですから、課題であって未解決問題なんですね。
 次に、核融合炉のブランケットの問題について伺っておきたいと思いますが、燃料であるトリチウムの生産と回収、高速中性子の持つエネルギーを熱エネルギーに転換して取り出す、そして中性子を遮へいするという複合的機能を果たさなきゃいけないのがこのブランケットです。だから、高熱負荷、高中性子負荷に耐えられる材料の開発が必要になってきます。これはさきに挙げた報告書でも述べられているとおりです。
 ITERの段階から、原型炉、実証炉、商業炉まで見通した取り組みが当然必要になるわけですが、材料試験を行えるITERより強度の強い中性子源が既につくられて実験が始まっているのかどうか、この点も、これは一言で結構ですから伺っておきたい。
今村政府参考人 お答えいたします。
 先ほど先生が御指摘になりました学術会議の研究連絡会議の提言においても、我が国が今後核融合を進めるに当たっては、ITER計画と並行して強力中性子源が必要だという提言が行われております。
 この強力中性子源そのものにつきましても、国際的な協力のもとにこれを実現すべく、現在既に、日本、EU、アメリカ、ロシア等で検討を進めておりまして……(吉井分科員「まだつくられていないんですね」と呼ぶ)はい、検討中でございます。
吉井分科員 まだつくられていない、そういう段階なんです。
 その点では、先を見通したというものでもなく、ITERの材料、その後の材料の見通しもなく誘致を進める、そういう研究開発となりますと、バランスを欠いているという問題を私はきちんとまず踏まえてかからなきゃいけないと思うんです。
 ITERが、現在の原発や動力炉よりもコストが安いか、同じぐらいになるかどうかということも、実は、将来本当に核融合が実現できるかどうかということにもかかわってくる問題です。実は、動力炉の何倍、何十倍も高いものになるのではないかという問題があります。将来、核融合が実用炉として採用されるめどが出るかどうかということにこれはかかわるんです。
 実は、電力中研の研究で、核融合の発電コストは軽水炉の二倍という話もあるわけです。私も以前取り上げたことがありますが、まず、軽水炉に比べて重量が大きくて、熱膨張、熱収縮や電磁力に耐えるために、相互に剛構造にせざるを得ないという問題がこの装置の特性としてあります。システムが複雑で相互に独立性がないために、設計とか製作とか据えつけとか保守、このコストがうんとかさんでくるという問題もあります。プラントを構成するシステムの種類が多過ぎるということなど、全体としてもともとコストが相当割高になる、こういう問題を持っているわけです。
 ですから、それだけに、ITERのコストをどう見積もるかというのはなかなか大事な点なんですが、当初一兆円と言われていたITERのコストを半分にしたということですが、簡単にそれが本当に半分になるのかという問題があるんです。
 一兆円ITERとコンパクトITERの間で、実は、プラズマ主半径を幾らにしたら建設コストは幾らになるのか。もとの八・一メートル、あるいは一メートルずつ仮に削ったとして、七・一メートル、六・一メートル、五・一メートルとだんだん小さくすると、建設コストはどうなっていくのか。そのときに、エネルギーの増倍率とか燃焼時間、中性子負荷、出力当たりのコストがどう変わるかというのを、やはりこういうことはきちんと資料を出して説明するのが私は当然だと思うんです。本当は、コンパクトITERの建設費を今言われているような建設費におさめようとしたら、実は主半径を五メートル以下にしないと安くならないのではないか、そういう問題もあります。
 ところが、そういう問題意識を持っておりますから資料の提出を求めても、出てこないわけですが、なぜ、主半径と建設コストの問題について、こういう提起している問題についてずっと資料をお出しにならないのか。出さない理由を、長々は要りませんから、一言伺っておきたい。
今村政府参考人 今、建設費とプラズマ主半径の関連についてのお話がございました。
 確かに、当初設計は主半径八・一メートル、これをコンパクトにしたということで、現在の設計は六・二メートルでございます。したがって、これはコスト低減の一つのあらわれとしてこういうふうになっておるわけでございますが、コストそのものは主半径だけに依存するものではなくて、小さくすることによって建物そのものが、プラント設備が小さくできるという問題もありますが、一方において、例えば小型化をすることによってその構造がより複雑になる、真空容器の構造がより複雑になるということでコストアップするといったようなさまざまな要因がございます。そうした要因を、個々の関連、トカマク本体の機器あるいは周辺設備、プラント設備、それから追加の熱関係設備等についてすべて積み上げた結果をファイナルデザインレポート、工学設計活動として整理をいたしまして、この報告書はすべて公開されているところでございます。
吉井分科員 ですから、今おっしゃったように、当初の一兆円とファイナルレポートの発表だけあるんです。私が聞いておりますのは、この八・一メートルのプラズマ主半径は、七・一メートルだったら建設コストは幾らになるのか、六・一だったら幾らか、五・一だったら幾らか。つまり、これは工学屋として、技術屋としてやっていくときは、きちんとそういう見積もりをやるわけなんです。おっしゃったことは全部わかった上で言っているんですよ。
 小さくすればそれで、半分にすれば半分になるのか、ならないんです。それは当然のことながら、メーンの機器について、ほとんど寸法が変わらないものがたくさんあるわけなんです。それから、建屋にしたって、装置を半分にしたら半分になるかといったら、建屋はほとんど変わらないわけですからね。ですから、そんな単純な話じゃないので、だからこそきちんと資料を出して、本当に国会での検討に値する、そういうものを私はやるべきだと思うんです。それを出さないで、最終的なファイナルレポートの話をしても、これは全くだめだということを申し上げておきたいと思います。これは、当初のプラズマ密度の達成とか、それから次の段階の実証炉に工学的、技術的につながるものになっていくのかどうかという根本問題にかかわってくるんです。
 実は、プラズマ主半径を小さくすると実験目標が達成できるのかどうかという問題が出てきます。それから、出力当たりのコストが高くなってきますから、出力当たりのコストが高くなれば、将来的な実用炉の道からだんだん離れることになるんですね。ですから、コンパクトITERというものは、ファイナルレポートの話は常にこういう矛盾がつきまとっている問題ですから、だからこそ、今言ったようなきちんとした資料を出して専門家の間での深い検討、議論が必要だということを申し上げておきたいと思います。
 あわせて、この機会に大臣にちょっと伺っておきたいんですけれども、このITERというものの性格をどう位置づけるかというところですね。これは文部大臣としてのお考えというものがおありかと思うんです。つまり、物理学の基礎研究の施設という位置づけをするのか、あるいは原型炉から将来的な実証炉、実用炉への、その道筋における装置という位置づけ方をしておられるのか。これを伺っておきたいと思います。
遠山国務大臣 核融合を将来達成するという目的のもとに、ITERの計画は、研究志向の強い設計から、外部からエネルギーを入力して、安定な制御を行うことを基本としたエネルギー生産の目的により焦点を当てた設計をしているところでございます。
 ただ、それが直ちに核融合に結びつくというのではなくて、さらに実験炉なり実際に使われる核融合炉というものに結びついていく、基礎的な炉をつくっていろいろなデータを集めて、それの集積によってさらに発展させていく、そういう基本的な性格を持っているのではないかと私は考えているところでございます。
吉井分科員 実はこの問題は、本当は誘致だなんだということを考える以前の段階で、そもそもITERというものについて日本はどういうかかわり合い方をするのか。そして、核融合というものについて、さきに少し触れましたが、仮に将来エネルギーとして考える場合に、今日の軽水炉などの動力炉とコスト的に引き合うようなものになっていく可能性、展望は開けるのかどうか。あるいは、はっきり割り切って、物理学の基礎研究の施設として始めていくんだけれども、しかし、その中で将来的な可能性が開かれたときにはまた新しい展開も開ける、そういう位置づけ方をするのかとか、現在は基礎研究と炉材料、その他の周辺技術の研究開発の段階と見るのか、どういうふうに見るのか、その議論を本当は非常に深めてなされるべきものだと思うんですが、実は、そういうものをわきへ置いて六ケ所選定にいってしまっているというのは非常に問題が多いことじゃないかと私は思っております。
 ITERサイト適地調査報告書というのが出されましたが、総合評価では那珂地域が三調査地点中では最も高い得点、四・三点。ITERを誘致する場合の候補地点として十分な適性を有しているとしつつ、四・一点の六ケ所に決定したのは政治決着じゃないか、こういうことがマスコミ等でも指摘されてきました。
 あるマスコミは、自民党内議論で決着をした、尾身大臣の言うハイレベル判断が必要だったの一言で、EUのように二つの候補地を出すという選択肢はなくなったという表現をしたのもありましたし、また、ずっと古い以前から、二年前にはマスコミは、ITER誘致の背景にある開発派の動き、ブローカーらによる土地の買いあさり問題なども伝えておりました。それが最近では、五月になりますが、収賄疑惑の中で村長が自殺するという問題まで生まれてきました。隣接の前村長の贈収賄事件との関連なんですが、利権の飛び交う中で不幸な事件まで発生している。
 大体、私がこれを以前取り上げたときに、町村文部科学大臣が、公共事業、町おこし的な発想になってはいけないということを答弁されましたが、やはり利権絡みの話になるようなことになってしまったら、本来のITERとか国際的な共同研究という問題から全然違う次元の話になってしまう。
 現実に、この地域で逮捕者が出たり、あるいは利権問題、贈収賄事件の中で首長が自殺をするというふうな問題が起こっている中では、やはりこの選定については、点数でも低かったところをわざわざ選んだわけなんですが、これは大臣として、一度白紙に戻して、きちんと検討をし直す。私は、そもそも誘致そのものについて、誘致が適当なのかどうか、ITERというものは今どういう段階のものとして考えていくべきかという、その議論に立ち戻るべきだと思っているんですが。少なくとも、その先へ大臣が行っておられるにしても、この候補地の選定そのものについては検討し直すということをやはり行うべきだと思うのですが、これは大臣に伺っておきたいと思います。
遠山国務大臣 もちろん私どもといたしましては、ITER計画というものを実際に国際的な共同のプロジェクトとして、その一員に加わっていくということにつきましては、それは工学的、物理学的研究のレベル、これまで蓄積してきたいろいろなデータの解析、それから、今後どういうふうなことに研究開発の焦点を絞るべきか、さまざまな諸般のことを考慮した上で、これは専門家にもちろん意見を聞きながら、ITER計画に対して我が国としてどう対応するかということを長年研究してまいったわけでございます。
 これはむしろ専門家から御説明するべきと思いますけれども、トカマクを使った核融合についての最初の段階の炉としてITER計画というものを立ち上げて、そしてある程度臨界点まで数値を出すこともできたようないろいろな実験の実績もあって、そういう中でITER計画というものをしっかりと進めていくべきという、専門的な検証といいますか、検討の上にこの計画というのは立ち上がったと考えております。
 また、同時に、このITER計画が国際的な研究開発の大きなプロジェクトとして一歩を踏み出すに際しましては、日本の研究者の非常にすぐれた知見が集約されているという点もあるわけでございます。
 そういうことをベースにしながら、では、これから始まっていく国際的なITER計画の誘致ないし参加に関して我が国としてどういうスタンスでいくべきかということは、我が省といたしましても長年にわたって検討してまいったわけでございます。そして、私どもといたしましては、専門家の英知、専門家の視点でも十分に検討していただきまして、そして、候補地の適地調査でございますか、それをしたわけでございます。その結果、二つの箇所はほぼ同じような数値を上げたということであったわけでございます。
 そういうことで進めてまいったわけでございますけれども、政府間協議をします際に日本が主体性を発揮いたしますために、国として責任を持って対処するには国内候補地を一点に絞った方がいいということになったわけでございます。その際に、ではどうするかということで、これも多面的な検討を行った結果、青森県六ケ所村が選ばれたわけでございます。
 時間もございましょうから、ちょっと詳しくは申しませんけれども、これはきちんとした理由のもとに六ケ所村の一つに絞って、今国際的な協議の場に手を挙げているところでございます。その意味では、科学的と申しますか、専門的な視点、それから行政として取り組むべき姿勢、そして候補地を選ぶに際しましても、私どもとしては、非常に慎重にこれまで事を運んでまいったと思います。
 そして、その最終場面では、総合科学技術会議の御議論も得、また、閣議での了解も得まして、今日、御存じのような段階に至っているわけでございまして、もう国際的にも、日本におけるそういう過去の蓄積をベースとした取り組みについて広く了解されているところでございまして、私といたしましては、現段階の進め方についてこれを撤回したりという考えは持っていないところでございます。
吉井分科員 もう時間が参りましたので終わりたいと思いますが、閣議のメンバーの中にも、今おっしゃった総合科学技術会議の十五人のメンバーの中にも、核融合の専門家はおりませんでした。私は、六ケ所誘致は白紙に戻して、やはり大型科学技術の国際協力のあり方やITERのそもそもの問題に立ち返って検討をしていくべきだ、この点を指摘しまして、時間が参りましたので、質問を終わりたいと思います。
松崎主査 これにて吉井君の質疑は終了いたしました。
 次に、上田勇君。
上田(勇)分科員 公明党の上田勇でございます。遠山大臣ほかの皆様、大変御苦労さまでございます。
 きょうは、私の方からは、不登校に関する問題、それからその後、いわゆる対人地雷の除去技術の研究開発に関する問題、この二点について質問をさせていただきたいというふうに思います。
 初めに、不登校の問題について、先日、私の地元の新聞であります神奈川新聞に「中学不登校七千人突破 十年で三倍に」というような非常に衝撃的な記事が出ておりました。文部科学省にお伺いをしたところ、その資料でも、二〇〇〇年度には、全国のいわゆる不登校の小中学生の数というのが十三万四千人、全児童生徒の一・一七%というところまで達していると。中でも中学生は二・六三%、三十八人に一人ということでありますので、クラスに一人以上というような割合にまでなっているということでございます。
 また、特に、さらに気になるのは、この十年間で、さっきは十年間で三倍にというような新聞の報道であったのですが、全国的に見ても、不登校の児童生徒の数というのが二倍以上にふえているという現状がございます。私は、これは学校教育というものの基本的なあり方にかかわる非常に憂慮すべき事態になっているのではないのかなというふうに感じているわけでありますけれども、大臣、こうした事態というのをどのように受けとめられているのか。また、近年こういうふうに増加傾向がずっと続いているというようなことについて、その理由はどういうところにあるというふうにお考えなのか。基本的な認識をまずお伺いしたいというふうに思います。
遠山国務大臣 御指摘のように、不登校問題につきましては、平成十二年度の不登校児童生徒数が全国で約十三万四千人に上るというようなデータも得ているところでございます。私は、これは学校にとりまして大変憂慮すべき状況であると考えております。同時に、そういう不登校の状況にある子供たちにとっても、これは将来にとってもあるいは自分自身の過ごし方につきましても大変難しい状況でありまして、私どもといたしましてはこの問題の深刻さということについて十分認識しているところでございます。
 不登校の原因、背景等、もう少し詳しいことにつきましては副大臣の方からお答えさせていただきます。
岸田副大臣 不登校の原因、背景についての御質問でありますが、家庭の問題、学校のあり方あるいはその本人の意識等、この不登校に関しましては、その要因が複雑に絡み合っているということから、特定してこれだという言い方がなかなか難しい現状にあります。
 ただ、不登校のきっかけ、整理いたしますと、例えば友人関係をめぐる問題など学校生活に起因するもの三六%、本人の問題に起因するもの三五%、あるいは親子の関係をめぐる問題など家庭生活に起因するもの一九%というようなことになっておりますし、また、対人関係が主な理由と考えられるものには、友人関係をめぐるもの一九%、親子関係をめぐる問題一〇%、教師との関係をめぐるもの二%というような分析があります。
 ただ、このような不登校の問題は、どの児童生徒にも起こり得るという視点に立って、学校が児童生徒にとって心の居場所として役割を果たし、そして教職員が一致協力する、また、家庭、地域と連携する、こうしたさまざまな関係者が協力し、きめ細かな対応を行うことが重要だというふうに文部科学省は認識しておりまして、こうした体制のもとに、先ほど申しました複雑な要因が絡み合っているこの不登校の問題に対応しようという取り組みを行っているところであります。
上田(勇)分科員 ありがとうございます。
 今、答弁にもあったように、とても深刻な状況になっている。しかも、この問題は非常に複雑にいろいろな要因が絡んでいるというようなことで、すぐに、じゃ、ここをこう直せばよくなるというようなことではない、むしろ息の長い取り組みをそれぞれの立場でやっていかなければいけない問題なんだろうというふうに思います。
 この不登校の問題に関連いたしまして、これら不登校の子供さんたち、その大体一割ぐらいの人たちが、適応指導教室とか、またいわゆるフリースクールというふうに言われている民間の施設に通っているというふうに聞いております。
 文部科学省からいただいた資料によりますと、この適応指導教室というのは全国に九百二十八施設があって、そのうち六百三十五の施設に対しては、SSPというふうに言っているようですが、スクーリング・サポート・プログラムの事業といたしまして国から七億円規模の予算が支出されているわけであります。
 これらの適応指導教室では、どういうような目的でどういうような活動が行われているのか、また、このSSPの目的、内容について御説明をお願いいたします。
矢野政府参考人 適応指導教室は、不登校児童生徒の学校復帰に向けた支援を行いますために、市町村教育委員会が教育センターあるいは公民館等に設置しているものでございまして、児童生徒の在籍校と連絡をとり合いながら、連携をとり合いながら、個別のカウンセリングでございますとか集団指導あるいは教科指導等を組織的、計画的に行っているものでございます。
 不登校児童生徒数の増加に伴いまして、適応指導教室は順次設置が進められておりまして、平成十二年度の設置数は九百二十八カ所となっているところでございます。
 また、我が省といたしましては、平成十一年度から、都道府県に委託をいたしまして、これらの適応指導教室や民間の相談指導施設を対象にいたしまして、不登校児童生徒の学校復帰のための支援方策につきまして調査研究を行うことを目的といたします、先ほどお話がございました、不登校児童生徒の適応指導総合調査研究委託、スクーリング・サポート・プログラムと称してございますけれども、この事業を実施いたしているところでございます。
 この事業におきましては、適応指導教室や民間施設等におきます教科指導、個別カウンセリングなどの継続的な適応指導のあり方でございますとか、また、自然体験や社会体験などの集団への適応力を培う活動、こうした活動を通じた適応指導のあり方といったようなことにつきまして、実証的な調査研究を行っているところでございます。
上田(勇)分科員 この不登校の子供さんたちを無理やり学校に戻すということが解決の方法ではないのかもしれませんが、今お話もあったように、できるだけ学校に復帰をする、それを円滑に行うために助けていくこの事業あるいは適応指導教室というのは、特にこれだけ不登校の子供さんたちの数が年々ふえていくという中で、非常に重要な取り組みではないかというふうに考えております。
 先ほど、ちょっと国からの予算の話について触れさせていただいたのですが、ざっと計算してみると、一カ所当たり百万円強の調査研究委託費なんですね。これでも実際に大変助かっているというような声も聞きますけれども、ただし、これだけ重要性が増している中で、一カ所百万円というのでは、国として一生懸命取り組んでいるということにはなかなかならないのではないかというふうに思います。
 そういう意味で、今はこの調査研究の委託をしているという形なんですが、さらに今後こうした息の長い取り組みが必要だという中で、この施設や人件費などに対するものも含めて、国からの支援、適応指導教室や今のSSPの事業、こうしたことに対する国の予算措置も大幅に拡充していく、それらに積極的に取り組んでいただきたいというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
岸田副大臣 御指摘のSSPの事業ですが、平成十一年度から実施しておりまして、本年度においても六百三十五カ所を指定して調査研究をしているわけであります。御指摘のように、各施設の委託経費はおおむね百万円ということでありまして、事情に応じて、適応指導に当たる補助員やカウンセラー等に対する謝金ですとか、図書や教材にかかる費用などに活用しているというのが現状であります。
 まず基本的に、不登校児童生徒の学校復帰を促す上で、適応指導教室の果たす役割は極めて大きいと認識しております。ただ、この事業は調査研究であります。経費等につきましては、調査研究としての性質を踏まえて適切に判断する必要がありますので、この事業においては施設費や人件費を助成するということは難しいと考えていますが、ただ、今後、本SSP事業を初めとする全体の施策のあり方を検討して、さらに必要な方策を講じて一層の充実に努めるという形で不登校対策の一層の充実を図る、こういったことは考えていかなければいけないと思っています。
上田(勇)分科員 ありがとうございます。
 もちろんこれは調査研究の委託事業なんで、今の事業の枠組みの中でなかなか人件費や物件費、そういったものが計上できないというのはよくわかるんですけれども。こうした適応指導教室は、ほとんど自治体の単独の予算で運営されているわけでありますし、スタッフもそういう限られた予算の中なんで半ばボランティアという立場で参加されている方も多いということであります。そういう意味では、不登校の問題、この十年間で二倍という数字になっている現状を踏まえて、ぜひそうした適応指導教室に対する国としてのかかわり方についてさらに積極的に考えていっていただきたいというふうにお願いをいたします。
 もう一つ、適応指導教室以外に、不登校の子供さんたちの多くが、これは何人がということはなかなか把握できていないようでありますが、いわゆるフリースクールと言われている、民間が運営している施設に通って指導を受けているという実態があります。
 これらのフリースクールというのは、一人からというような規模の小さいものも多いですし、運営のあり方だとか性格も実に多種多様なので、なかなかその実態を掌握するというのは難しいということはよくわかるんですが、ここに、これは平成十一年度なんですが、東京都の教育庁が民間フリースクール等実態調査といったものを行いまして、その報告書があるんですが、この報告書を見ても、この報告書の中の調査というのも、実はアンケート調査を行っているのでアンケートに答えてくれないところというのはわからないんです。そういう意味で、アンケート調査に回答のあった四十八施設だけが対象となっておりまして、これは多分、たくさんあるこういういわゆるフリースクールの中のほんの一部なんだろうというふうに思いますけれども、それでも、こうしたフリースクールの実態とかそれぞれの施設が抱えているいろいろな課題というのが相当明らかになっております。
 この調査結果によりますと、まず一つは、適切な施設の確保や十分なスタッフの確保に非常に困難を来しているという現状があります。もう一つは、一年間にかかる費用というのが、これも千差万別なんですが、平均しますと三十万円だ、そういう意味では、通っている通所者、保護者にとっては相当な負担になっているというわけであります。こうしたことが明らかになっているんです。
 そういう意味で、フリースクール等が担っている役割、これも適応指導教室が担っている役割と相補完する、あるいは同じ目的に向かっているものだというふうに思っておりますので、そういうような重要な役割を果たしておりますので、国としてまずは、一つは、できるだけこうした不登校の子供たちが通っているフリースクールというような民間施設の実態の把握に努めていただく、それから、こうした施設や通所者、保護者へのいろいろな形での支援についても検討していくべきではないかというふうに思いますけれども、御見解を伺いたいというふうに思います。
近藤政府参考人 お答えをいたします。
 フリースクールとは、委員御案内のとおりでございますけれども、一般的には、不登校児童生徒に対しまして教育相談ですとか体験活動あるいは学習指導等の活動を多様に行っておる民間の施設である、このように承知をしておりますけれども、ただ、どのような機関をその範囲に含めるか必ずしも明確な定義もございませんし、民間において自由に設置、運営されているものと認識をいたしております。
 先ほど御指摘になりました東京都におきます民間フリースクール等実態調査報告書につきましては、市販の資料等から情報を得て、抽出で調査を実施した、こういうふうに承っておるわけでありますけれども、いずれにいたしましても、これらの機関には実にさまざまなものがございまして、実態を正確に把握することはなかなか難しいとは考えておりますが、フリースクールに関する全国的な団体もございます、一度また情報交換を行うなどいたしまして、フリースクールの実態の把握に努めてまいりたいと考えております。
 また、フリースクール等の民間の教育機関はそれぞれ、学校とは異なる役割を担っているんだと思っておりますけれども、そういったことから、これらの民間のフリースクールに対しまして文部科学省が直ちにこれを直接支援するということは慎重に考えていく必要があるのかな、このように考えているところでございます。
上田(勇)分科員 今答弁にあったように、実に多種多様であるし、運営方針などについてもいろいろな考え方があるんだということはよくわかります。そういう意味で、すぐに国から支援をするということが果たして適当なのかどうかということはよくわかるんですが、ただ、先ほど申し上げたように、この東京都の調査などでも、やはり国からの経済的な支援を求めているところもあるし、いろいろな面での指導や相談を求めているというような施設もあります。むしろそういうのをお断りしたいというところもあるんだというふうには思うんですが、ただ、積極的に自治体や国からそういうような援助や指導を受けたいというようなところについては、やはり実態をよく把握した上で、これだけ事態が深刻なんですから、もっと積極的にかかわっていくというような姿勢が大事なんではないかというふうに思います。これはやはり押しつけになってはいけないというふうに思いますが、求められるところにはやはり国としてもそういうかかわりを持っていってほしいなというふうにつくづく感じます。
 冒頭申し上げたように、この十年間で二倍になっているというような現状があるわけでありますので、問題の解決に必ずしも、どれだけ貢献しているかということについてはいろいろな見方があるのかもしれませんが、そうした現実がある中で、こういうフリースクールに実際に通っている子供さんたちもたくさんいるということでありますので、そういった施設に対する支援や指導、また、通っている、通所者というんですか子供さんたちあるいはその保護者に対しても、一定の、いろいろな形での応援をぜひ検討していただきたいというふうに重ねてお願いをいたします。
 不登校の話はこのぐらいにさせていただきまして、次に、対人地雷の探知・除去技術に関する研究開発について何点かお伺いしたいというふうに思います。
 カンボジアやアフガニスタンのように武力紛争のあった地域では、おびただしい数の対人地雷が敷設され、そのまま放置されておりまして、和平が実現した後でも、子供や民間人が毎日のように多数犠牲になっているわけであります。我が国としては、アフガン復興の東京会議でも、この対人地雷の問題について、小泉総理も非常に積極的に貢献していくんだということを表明されておりますが、そういう意味で、対人地雷の処理に積極的に協力していくというのは、国際貢献という意味からも大変すばらしいことなんではないかというふうに考えております。
 もちろん、さまざまな形での協力というのがあるんですが、我が国としては、我が国が非常に得意としている科学技術を生かして、地雷を安全かつ効率的に探知をして除去するというような技術、これは依然として、実際の現場では大変昔ながらの方法で探知し、処理をしているということでありますので、そこに新しい技術を開発し、導入するということは、これはいろいろなところから期待が寄せられているんではないかというふうに思います。
 文部科学省でも、技術者、研究者などから構成されます研究会を設置して、そこでもう何回も研究会を開いて、いろいろな議論をしていただいている、非常に積極的に取り組んでいるということには評価をするところでございますけれども、そこで、これまで文部科学省として、対人地雷の探知、除去の技術の開発研究に向けてどういうような取り組みをされてきたのか、またどういうような成果が上がっているというふうに考えておられるのか、お伺いしたいと思います。
山元政府参考人 御説明いたします。
 今先生おっしゃられたように、まさに私ども、我が省といたしましても、あくまでも人道的な観点ということから、地雷の探知・除去活動を安全かつ効率的に実施できるよう、先端的な科学技術を駆使した技術の開発ということで、研究会をことしの一月に発足させていただきまして、五月の末に報告書を取りまとめていただきました。
 この中で二つの大きな技術開発課題をまとめていただいたわけでございますが、一つが対人地雷を一〇〇%探知できるような高度なセンシング技術、これが一つでございます。それからもう一つは、センサーを地雷原に持ち込みまして、安全かつ効率的に地雷の探知・除去活動を行うためのアクセス・制御技術。この二つの技術課題に焦点を置きまして、私ども、これから特に実用化に向けてのテーマとして進めていきたい、こう思っているところでございます。
 また、報告書の中にも書いてあるわけでございますが、これからのそういう研究開発を進めていくに当たりましては、現場のニーズに対応するんだと、本当に実際に使えるようなものに持っていく必要がございますので、そのあたりに大いに留意していくこと。それから、いろいろな関係省庁との連携のもとでやっていく必要があるということで、研究会の中におきましても、既に外務省、経済産業省、防衛庁にも入っていただきまして、これからも関係省庁連携のもとに取り組んでいきたい、こう思っているところでございます。
 現在どういう状況下にあるかと申し上げますと、平成十四年度予算では地雷のための特別の予算というものはございません。しかし、科学技術振興事業団に既存の研究開発制度がございます。その一般的な研究開発制度を活用いたしまして、ことしは広く研究公募という形で現在進めておるところでございます。今月末に研究公募を締め切りまして、これから選定し、できるだけ速やかに具体的な研究開発に着手していきたい、こう思っているところでございます。
上田(勇)分科員 私も実際に研究開発に取り組んでいるところも拝見させていただいたりして、すごくこれは新しい技術として国際貢献ができるのではないかということで大いに期待をしているところなんですが、ただ実際に見た限りにおいて、実用化ということになると、ちょっとまだ道のりがあるのかなというのが実際に感じたところでありまして、やはりいかにすぐれた技術でも実用化できないと役に立たないわけであります。しかもこれはそんなに、十年も、二十年も待っていられるというものでもないんですが、その辺の実用化のめどというのはどういうふうにお考えなんでしょうか。
山元政府参考人 御説明いたします。
 まさに先生がおっしゃられたとおりでございます。私ども、これからもちろんやっていく必要がございますが、やはり一つの目標、めどは立てるべきだろうというふうなことで、先ほど申し上げましたが、大きくは二種類ぐらいに考えております。
 一つは、地雷の中でも特に識別が難しいプラスチックの地雷と土壌とを識別するようなセンシング技術の開発とか、あるいは、比較的平たんな地雷原での遠隔操作機材の開発、こういうものにつきましては、とりあえず三年をめどにということで現地におきます実証試験まで持っていきたい、こういうふうに思っております。
 それからもう一つは、TNT等の火薬を高精度で探知するようなセンシング技術とか、あるいは多様な地形、こういうところでの地雷原向けの自律制御機材の開発、こういうものにつきましては、五年を目途に同じく現地において実証試験を実施する、こういうふうな目標を持って進めていきたい、こう思っているところでございます。
上田(勇)分科員 カンボジアであるとかアフガニスタンで、NGOとか、もう実際にたくさんの方が今地雷の除去の支援に当たっているわけであります。これから実用化に向けての研究を進めていく中で、やはりこういう現地の事情、あるいはいろいろな経験を踏まえた、そういうNGOであるとか実際に現場で作業している人たちとしっかりと連携をしていただいて、そうした人たちからもよく意見を聞いて、どういったものにすればより効果が上がるのか、あるいはもっと使いやすいのか、そういうようなことについて十分連携をし、意見を取り入れていっていただきたいというふうに思いますけれども、御見解を最後に伺いたいというふうに思います。
遠山国務大臣 おっしゃるとおりでございまして、現場のニーズを十分に踏まえて、実際に使える技術を開発して地雷が埋設されている国に提供することが重要でございます。
 もう既に我が省の方では、研究会におきましても、日本のNGOから実態についてのいろいろな経験に関する意見を聴取いたしておりますし、また今月の十二日から二十日まで行われました対人地雷除去に関するアフガニスタン現地状況調査におきましても、研究会の委員それから我が省職員を派遣いたしましたが、その際に現地のNGOや国際機関等から意見の聴取を実施しているところでございます。
 今後とも、技術開発の実施に当たりましても、NGO等の関係者からの意見を聴取するなど、NGOを初めとした現場のニーズに十分合致した研究開発を進めてまいりたいと考えております。
上田(勇)分科員 ありがとうございました。以上で終わります。
松崎主査 これにて上田君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして文部科学省所管の質疑は終了いたしました。
 午後一時三十分から本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時三十七分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時三十二分開議
松崎主査 休憩前に引き続き会議を開きます。
 これより内閣府所管中防衛庁・防衛施設庁について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。中谷防衛庁長官。
中谷国務大臣 平成十二年度における防衛庁関係歳出の決算につきまして、その概要を御説明いたします。
 まず、(組織)防衛本庁の経費につきまして御説明申し上げます。
 当初の歳出予算額は四兆三千三百六十三億四千九百万円余でありまして、これに日本新生のための新発展政策の一環として情報通信技術(IT)特別対策の推進を図るため行う通信機器その他器材の購入等及び防災特別対策の推進を図るため行う通信機器、車両その他器材の購入等に必要な経費のための予算補正追加額九十億六千九百万円余、平成十二年度総合防災訓練のため内閣本府から移しかえを受けた額四百万円余、高空における放射能塵の調査研究のため文部科学省所管文部科学本省から移しかえを受けた額六千四百万円余、南極地域観測事業のため文部科学省所管文部科学本省から移しかえを受けた額二十四億七千三百万円余、前年度からの繰越額百二十四億七千六百万円余を加え、既定予算の不用等による予算補正修正減少額二百十二億八千七百万円余を差し引きますと、歳出予算現額は四兆三千三百九十一億四千九百万円余となります。
 この歳出予算現額に対して支出済み歳出額は四兆三千九十億九千九百万円余、翌年度へ繰り越した額は百五十五億四千三百万円余でありまして、差し引き不用額は百四十五億五百万円余であります。
 次に、(組織)防衛施設庁の経費につきまして御説明申し上げます。
 当初の歳出予算額は五千九百九十一億五千四百万円余、うちSACO関係経費百四十億二千九百万円余でありまして、これにSACOの最終報告に盛り込まれた措置を的確かつ迅速に実施するために必要となる基地周辺対策及び日本新生のための新発展政策の一環として騒音防止工事の助成等に必要な経費の予算補正追加額百二十七億三千五百万円余、うちSACO関係経費百十七億五百万円余、沖縄米軍基地所在市町村に関する懇談会の提言に基づき、沖縄県の米軍基地所在市町村が実施する地域経済活性化事業等に要する経費として内閣本府から移しかえを受けた額六十一億三千百万円余、前年度からの繰越額三百五十億千四百万円余、うちSACO関係経費百二十二億六千五百万円余を加え、既定予算の不用等による予算補正修正減少額二十五億六千七百万円余、防衛施設周辺の障害防止事業等に要する経費として移しかえをした額、農林水産省所管農林水産本省へ六億三千四百万円余、国土交通省所管国土交通本省へ九億八千二百万円余を差し引きますと、歳出予算現額は六千四百八十八億五千百万円余、うちSACO関係経費三百八十億百万円余となります。
 この歳出予算現額に対して支出済み歳出額は六千五十七億五千九百万円余、うちSACO関係経費二百十四億六千七百万円余、翌年度へ繰り越した額は三百九十九億二千九百万円余、うちSACO関係経費百四十九億三千八百万円余でありまして、差し引き不用額は三十一億六千二百万円余、うちSACO関係経費十五億九千四百万円余であります。
 なお、主な事項につきましては、お手元に配付してある資料のとおりでありますが、委員各位のお許しを得まして御説明を省略させていただきたいと存じます。よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。
松崎主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院増田第二局長。
増田会計検査院当局者 平成十二年度防衛庁の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。
 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項一件及び本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項一件であります。
 まず、不当事項について御説明いたします。
 これは、職員の不正行為による損害が生じたもので、防衛大学校において、教務課の職員が、教官の出張旅費に関する事務に従事中、虚偽の旅費請求書を作成するなどして支払われた旅費を領得したものであります。
 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。
 これは、護衛艦に搭載されている通信機器の年次検査に関するものであります。この年次検査の契約は、海上自衛隊が船舶の安全性等を確保するため、業者に請け負わせ毎年度実施しているものであります。
 年次検査の発注前に乗員は機器の状態を事前に把握するために事前点検を実施して点検成績を作成することとされ、また、請負業者が行う年次検査の方法及び内容については、海上自衛隊が定めた実施要領において、部品の損傷等の有無の確認を目視等により行う外観検査と、送信出力等が基準を満たしているかを試験機器等を使って確認する機能検査を実施することとされております。そして、これにより、各通信機器は年次検査終了時の段階で基準値を満たすこととなるので、一年間は機器の性能等が確保されるものであり、特段の理由がない限り、実施要領に定められた検査を行えば足りるものであります。
 しかし、舞鶴、大湊両地方総監部では、年次検査の実施に当たり、乗員が行うこととされている事前点検を行っておらず、これを目的とした検査を請け負わせておりました。さらに、外観検査及び機能検査のほかに、機能検査前の作業として、微調整または点検等と称する作業を請け負わせていたものであります。
 したがいまして、年次検査の実施に当たりましては、乗員に点検成績を作成させるなどした上で、実施要領を標準として実施する必要があると認められましたので、当局の見解をただしましたところ、海上自衛隊補給本部では、十三年十月に各地方総監部に通知を発し、実施要領に基づいて年次検査を行うよう周知徹底を図り、両地方総監部では、今後発注する年次検査について、点検成績を作成の上、実施要領を標準として行うこととする処置を講じたものであります。
 以上をもって概要の説明を終わります。
松崎主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。中谷防衛庁長官。
中谷国務大臣 平成十二年度決算検査報告に掲記されております事項について、防衛庁が講じた措置を御説明申し上げます。
 不当事項として御指摘を受けましたものにつきましては、今後、このようなことがないよう綱紀粛正の徹底を図るなど再発防止に万全を期する所存であります。
 海上自衛隊における護衛艦に搭載されている通信機器の年次検査につきましては、今後発注する年次検査について、点検成績を作成の上、実施要領を標準として行うこととするよう処置を講じたところであります。
 以上、これらの指摘事項につきましては、鋭意改善に努め、今後このような御指摘を受けることがないよう、より一層努力する所存であります。
松崎主査 この際、お諮りいたします。
 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
松崎主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
松崎主査 以上をもちまして内閣府所管中防衛庁・防衛施設庁の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
松崎主査 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西村眞悟君。
西村分科員 到着がおくれまして、申しわけありません。
 本日、この機会をいただきまして、防衛産業について長官と議論をいたしたいと存ずるわけでございます。
 と申しますのは、調達実施本部の不祥事以来、少々萎縮して、国においても防衛産業の本質、重要性を国民に周知しない中で、いささか憂慮すべき傾向が生まれてきているのではないかというふうに考えるからでございます。
 さて、事実の確認、前提の確認からしたいと思いますけれども、自衛隊は有事に出動するわけでございまして、それは内閣総理大臣及び防衛庁長官の命令によって出動するわけですが、武器を携行せず裸で出動させるということはあり得ないわけでございます。自衛隊が出動するということは、武器、装備を持って出動するということであります。したがって、その武器、装備を自衛隊に携行さすことを可能とする我が国の防衛産業は、自衛隊と車の両輪として国防の任務を果たすものである。
 しかも、我が国は自衛隊の人員が近隣諸国と比べて極めて少ないわけでございますから、我が国の国防力は、いかに最優秀の武器、装備を自衛隊が保持するかに死活的な影響を持っているというふうに思うわけでございます。この点は私と長官との認識は一致していると思うんですが、長官の御所感をお伺いしたいと思います。
    〔主査退席、岩屋主査代理着席〕
中谷国務大臣 ただいま西村委員から御指摘いただきました三点、自衛隊を保持することは武器、装備を生産する防衛産業を保持することと不可分である、自衛隊と防衛産業は国防の両輪である、武器、装備の優秀性が国防力に死活的な影響をもたらすという考えにつきましては、同感でございます。
 これを担保するための措置といたしましては、まず防衛計画の大綱におきまして、我が国の防衛力について基盤的な防衛力を保有するという考え方に基づきまして、近年における科学技術の進捗も踏まえつつ、我が国の防衛力について、規模については合理化、効率化、コンパクト化を図る一方で、必要な機能の充実と防衛力の質的向上を図ることといたしております。また、装備品の適切な国産化等を通じ、防衛生産・技術基盤の維持に配意することといたしております。
 さらに、防衛計画の大綱のもと、中期防衛力整備計画においても、研究開発を含む防衛力整備に当たって、将来における技術水準の動向にも対応して、各種装備の更新、近代化を進めるとともに、情報通信技術を初めとする科学技術の著しい進展を積極的に取り込むことといたしております。
 また、あわせて、防衛生産・技術基盤を適切に維持していくための諸施策を検討、実施することといたしておりまして、防衛庁といたしましては、今後とも、すぐれた装備品を開発、生産し得る国内基盤の維持にも配意しつつ、適切に防衛力を整備してまいりたいと考えております。
西村分科員 その前提で、次にまた確認したいわけです。
 ということは、防衛産業を失えば我が国は国防力を失う、こういうことになるわけでございます。したがって、防衛産業のあり方は我が国国防政策の最優先の課題である、このようになるわけでございまして、防衛産業こそは、自衛隊の存在と同様、国家の要請により存在している産業であり、一〇〇%市場原理が適用される分野ではない、その証拠に、世界各国は防衛産業を国有とし、また半官半民としている国々が多い、こういう認識は共通できますか。
中谷国務大臣 健全な防衛産業の存在というものは、装備のハイテク化、近代化への対応、国情に合った適切な装備品等の取得、装備品等の維持、補給、緊急時の急速取得など、適切な防衛力の整備にとって、また装備品の安定的な維持、補給による自衛隊の能力の有効な発揮などを図る上で重要であると考えておりまして、防衛産業というのは、国の防衛力の一部を構成しているものと言えるものと考えております。
 防衛庁といたしましては、御指摘の点を含めまして、安定的で適切な防衛力整備を図るなどの観点から、健全で効率的な防衛生産・技術基盤の維持は重要であると考えておりまして、防衛計画大綱にあるように、適切な国産化等を通じた防衛生産・技術基盤の維持に配意してまいりたいと考えております。
西村分科員 安定的な、そして技術水準を維持しながらの防衛産業が提供する装備の確保が今の状態では徐々に難しくなっているのではないかという問題意識から聞いておるわけでございます。今までの前提では、長官と認識を一にしておる。
 そこで、最後の認識が共通化できるかということを聞きますが、防衛庁、政府は、有事の際には、国防上、兵器、装備が国産であるということを不可欠の前提戦略として持っているのか、それとも、石油産油国の一部に見られるように、世界の各国から金に任せてすべてを買い集めておけば済むんだという前提に立っておるのか。多分、国産が不可欠であるという前提に歴史の教訓から立たざるを得ないということだと思うんですが、長官、どうですか。
中谷国務大臣 国産か輸入かという御質問でございますが、これは、プラス、マイナス、長所、短所あるわけでございます。
 まず、装備品を国産する場合には、我が国企業のすぐれた生産技術を活用できるほか、自衛隊の能力発揮のために不可欠な維持、補給が容易であります。防衛生産技術の維持にも資する一方、需要が自衛隊に限られて、生産量が少ない場合には一般に割高になってしまいます。他方、装備品等の完成品を輸入する場合には、量産効果が期待できるものについては割安になる一方、価格面及び維持、補給面で生産国の事情に左右させられることが避けられず、また我が国独自の改良、改善が困難でございます。
 防衛庁といたしましては、装備品等の調達に当たっては、近年の厳しい財政事情を踏まえつつ、必要な性能を備えた装備品等を最適なコストで調達し得るよう努めているところでありまして、国産と輸入、それぞれの長所、短所を十分に勘案して、最も適切な方法を選択することといたしております。
西村分科員 今の御答弁ですが、国産と輸入、それぞれ長所、短所があるということであります。しかし、国産の、短所はともかく、長所は国家防衛戦略上断じて捨てることはできないという認識に立っておるのか、それとも、長所よりも短所の方が多くなれば、その有利さがあっても捨て去るという前提に立っておるのか、どちらですか。
中谷国務大臣 これは、最初の、基本のところでお話をいたしましたが、防衛計画の大綱におきまして記述をされておる中で、装備品の適切な国産化などを通じ、防衛生産・技術基盤の維持に配意するということといたしております。その上で、先ほどお話ししましたとおり、国産並びに輸入の場合の長所、短所等をかんがみまして、総合的に装備品の調達を実施しております。
西村分科員 この質問の問題意識でございますが、先ほど言いましたように、調達実施本部の不祥事以来、この勧告がありまして、改革もあったと思うんですが、勧告があり、改革があったら、ぼつぼつそれを見直して、またよりよきものに持っていく時期に来ておると思うので質問しますが、機械的に競争原理を振り回して、防衛産業の本質、先ほど相互確認したわけですが、その本質から離れた弊害が出てきておるのではないか。
 防衛産業は国家の要請によって成り立っているならば、官民協調体制を確立しておかねばならないのに、自由競争原理の適用によって官民協調体制が崩壊して、大手企業の中からは、防衛部門から、これはペイしないと撤退する動きがあると私は聞いておるわけでございますが、防衛庁はこの今の現状をどのように把握しておりますか。撤退する動きがあるんですか。それとも、撤退させないために、国策としてその防衛産業を維持しようとする努力をしつつ、またそれが効果を発揮して防衛産業がますます充実していく方向にあるんですか。いずれでしょうか。
中谷国務大臣 防衛調達の現状でございますが、防衛庁といたしましては、調本をめぐる不祥事の事案がございましたが、これを重く受けとめて、調達の抜本的改革を図るべく、競争原理の強化等により、調達の透明性、公正性の向上を推進しております。
 他方、個々の契約締結に関しましては、会計法令のもと、実態を踏まえて適切な契約方法を選択することといたしておりまして、各企業と必要な技術情報の交換等を行っております。
 一方、防衛産業をめぐる環境につきましては、近年、財政事情が一層厳しさを増すとともに、装備品等の調達数量が減少する傾向にございます。また、情報通信技術を中心とした技術革新の進展などの変化が見られております。このような中にあって、防衛産業においては、大手企業などにおいて、人員の再配置、製造部門の分社化、営業譲渡などの合理化、効率化や設備投資の抑制を進めているものと承知をいたしております。
 このような厳しい環境のもとにおいても、健全かつ効率的な防衛生産・技術基盤を維持確保していくことは重要な課題であると認識をいたしておりまして、防衛庁といたしましては、防衛生産・技術基盤の重要性や防衛調達の現状につきまして、毎年度発行される防衛白書などを通じて広く国民への情報提供を行っておりまして、今後ともこのような情報提供に努めてまいる所存でございます。
西村分科員 今、発注数量が少なくなって、人員の再配置等々の措置を企業がとり始めているということでございます。この事態に際して防衛庁は何をやっておるのかということについてお聞きします。
 市場原理の適用除外措置を明確に設けておりますか。一般競争ではなくて指名競争の導入をしておるのか。また、海外メーカー、防衛産業との連携をさせる、また、武器輸出を奨励しておるか。どうですか、これは。
中谷国務大臣 武器の輸出につきましては、我が国におきましては、国会におきまして慎重に対応するということになっておりまして、現状におきましては、装備、技術面で幅広い相互交流の充実による日米安全保障体制の効果的運用との調和を図りつつ、国際紛争等を助長することを回避するというその基本理念を維持しながら行われているわけでございます。
 また、各種の契約等につきましては、先ほどもお話をいたしましたが、個々の契約締結に関しましては、会計法令のもとで実態を踏まえて適切な契約方法を選択することといたしておりまして、また、各企業と必要な技術情報の交換等を行いながら実施をいたしております。
西村分科員 しかし、もうぼつぼつ武器輸出を奨励しなければならない時期に来ておるんではないですか。発注数量が少なくなって、企業は人員を再配置し始めておる。その中で、輸出もさせずに、つまり手足を縛って、企業よ存続しろと言うこと自体無責任だ。この議論の前提に確認した、防衛産業こそは国が国防上の国策の要請として存在しているものであるという前提からするならば、今のままでほっておくのは、国防の責めを負う防衛庁としてはいささか無責任きわまりない、私はこのように思うわけでございます。
 武器輸出三原則は法律でもない。せめて三木内閣以前の三原則に戻るとか、法律でも何でもないわけですから、現状がこういう状況であるから、そのような姿勢はないわけですか。
 それから、市場原理の除外例というものは明確に認めておりますか。今の会計の方法は、一般消費財が海外にも国内にも山ほどあって、そこから価格のいい、製品の品質のいいものを購入するという前提でできておるのではないですか。国が要請する、我が国の地形、我が国の自衛隊の体格に合った装備品を、膨大な設備投資をかけて、少量だけ発注しなければならないというような防衛産業の本質からは、今の会計原則を機械的に当てはめておれば、そういうふうなものは我が国ではできなくなるんではないですか。これはどうですか。
中谷国務大臣 武器輸出の三原則などに関しましては、装備、技術面で幅広い相互交流の充実による日米安全保障体制の効果的運用と調和を図りつつ、国際紛争等を助長することを回避するというその基本理念を維持してまいっております。これは、平成七年に官房長官談話としてなされたものでございまして、現在もそれを踏襲しております。
 しかしながら、現状といたしましては、御指摘のように、防衛産業分野における海外メーカーとの連携や武器輸出の促進は、一般的に防衛産業の競争力の強化や我が国における防衛装備品調達におけるコスト削減の観点から利益のあるものであると認識をいたしておりますし、また、諸外国の動向に目を向けた場合に、米国における防衛産業界の再編などを契機として、欧州を初め、世界的に防衛、航空、宇宙産業分野における企業の再編、相互協力や共同プロジェクト等が進展しているものと承知をいたしております。
 現状は、武器の輸出は当然ながら、海外メーカーとの連携についても、武器及び武器技術の輸出を抜きには考えられないところでありまして、我が国は、このような武器及び武器技術の輸出については、従来からの武器輸出三原則に基づいて慎重に対応しているというのが現状でございます。
 それから、もう一点の市場原理についてでございますが、防衛庁としましては、防衛産業・技術基盤の重要性については認識していることは先ほど述べたとおりでございますが、個々の装備品の調達に当たっては会計法令等を遵守することは当然でありまして、これらについて会計法令において特段の適用除外措置は設けられていないわけでございます。
 なお、会計法令上は一般競争契約が原則でありますが、必要に応じ、指名競争契約や随意契約といった契約類型も選択できるようになっておりまして、例えば、製造に必要な技術または設備を有する者が限られている場合や、緊急の必要により競争に付することができない場合等には、指名競争契約や随意契約により装備品等を調達しているところでございます。
西村分科員 不況でこのような御時世ですから、一つの系統にまとまってくる、そして、例えばこの船をつくるのはこの一系列の企業しかもうつくれないということになってこざるを得ないわけでございますけれども、国防上、一系列の武器の製造ラインしかないということは、そこがゲリラであれコマンドーであれ破壊されれば日本にもはや継戦能力はなくなるということで、世界各国は少なくとも二系列以上は同じものをつくれる。国から見れば、二系列以上はこの存在が確保されるように防衛産業に対する育成をしなければならない、こういうことにもなると思います。したがって、今、長官が言われるような人員の削減、配置転換等を放置していきますと、この部分はおれのところはもう要らない、あればお荷物だという流れをとめることができなくなったらこれは大変だ、このように思うわけです。
 一例を挙げますから、認識をまた聞かせていただきたいんですが、先ほどもちょっと触れられた宇宙開発の問題であります。
 なぜ我が国の宇宙開発はこれほど失敗が連続して、停滞しているのかという問題。これはつまり、世界各国、我が国以外の国の宇宙開発というものは、軍事的観点からの国費の投入が基盤にあって、商用衛星の打ち上げ等はその余波の効果でなされているにすぎないわけですね。宇宙開発を軍事的な観点から国家が乗り出していって、そこに国費を投入するという基盤のない我が国で、商用衛星が、世界に通用するものができ上がるはずがないわけでございます。したがって、防衛産業を育成するという観点から、世界はそうやっておるわけでございますから、商用衛星に関しても、我が国は国として、防衛を担当する防衛庁としても、もう少し関心を持ってその分野に乗り出さねばならないと思うわけですが、長官はどうですか。
中谷国務大臣 御指摘のように、宇宙開発とか航空技術の分野におきましては、欧米と格差が広がっているような気がいたしております。この分野におきましては、これからの日本の産業経済等を考えましても力を入れていかなければならない分野だと認識をいたしておりますが、最近、六月に、総合科学技術会議が開催されまして、この中に「今後の宇宙開発利用に関する取組みの基本について」が取りまとめられております。
 その中で、安全の確保、安全保障、危機管理が我が国の今後の宇宙開発利用の目的の一つとして位置づけられたところでございまして、こういった分野におきましても、国民の皆様方の御理解をいただきながら、国としても、この分野の充実、また、欧米との格差が縮まるように努力をしていくべきだと思っております。
西村分科員 調達実施本部というのは、防衛庁が発足しまして、アメリカから供与をされた武器を動かすのに部品がなければ一日動かないという事態に直面して、その当時の世代、つまり旧軍を知っている世代が各企業を回って、この兵器を動かす部品をつくってくれというふうなことで始まっておって、これをつくらすには安定的な供給を確保させねばならないという、いろいろな防衛産業育成の必要性から生まれてきたわけですね。この衆議院が机が足らぬから百の机を注文する、その机は市場へ行けばどんどん売っておるという状態では決してなかった。ここから生まれてきたわけです。
 調達実施本部の不祥事があった。あったから、勧告が出てそのとおりにしたんだからバラ色だというわけにはこの世の中はならないのでありまして、ぼつぼつ、世界各国と同様に国防力があらねばならないという前提で国策が動いておる以上、その国防力を国防力ならしめている防衛産業を国はいかに守っていくのか、存続させていくのか、そのために国民にどういう理解を得なければならないのか、積極的に乗り出さねばならない、こう思っております。
 したがって、世界各国のような半官半民の体制をつくっていくのか。基礎研究、基礎投資、巨大な金が要る基礎投資は国がそれを担当するのか。また、戦前のような砲兵工廠、海軍工廠のようなところには行かないにしても、やはりそこに何か官が責任を持って兵器をつくるというような基盤をつくらねばならない、こう思うんですが、最後にいかがですか。将来展望をどうか教えていただきたい。
中谷国務大臣 現状の問題認識といたしましては、例に挙げられましたけれども、部品の調達等に関しましても、いざというときにその部品が我が国にない場合に他国に依存しなければならない、すなわち物が動かない場合もございます。また、ブラックボックスなどはやみくもに高いものを購入しているということで、このような現状におきましては、今後いかに我が国としてより主体性を持ってその装備品の開発研究に当たるかということにつきましては大変重要な問題であると認識いたしておりますし、我が国の防衛、国防の特殊性等にかんがみまして、今後とも装備品の調達に関するあり方等につきましては真剣に検討してまいりたいと考えております。
西村分科員 ちょっとだけ時間が余っているので。
 武器輸出三原則、法律でも何でもないけれども、妙な拘束力があるように答弁があって、そこから逃げられないというふうな前提で先ほども答弁されておったけれども、真の同盟国とか真の友好国というのは、お互いに武器を交換するものじゃないんですかね。我が国は科学技術にすぐれた部分もある、すぐれた武器を生産する能力もある。しかし、これは私のところだけで使って君には使わせないんだ、何ぼ困っても君には使わせないんだ。これは果たして、我が国が友好関係を拡大して、そして相互の安全を確保する、その中で我が国の国の進路があるわけですが、その進路にふさわしい姿勢かな、このように思うわけでございます。
 我々は、武器と言えばこの武器という言葉ですが、世界ではアームズと言いまして、アームズとは腕のことなんです。お互いに、同盟国というのは腕を組んだ同盟国であって、アームズも同盟国には渡す、それによってこちらの防衛産業も存立の基盤を強めるというふうな発想があってもいいんではないか、このように思うわけでございます。
 できれば所感を伺って、質問を終えたいと思います。
中谷国務大臣 我が国の武器産業のあり方等につきましては、過去、これまで歴史的な経緯のある中で積み上げられてきたわけでございます。他方、近年におきましては、科学技術の進展や交通、輸送手段、また安全保障の環境の変化によりまして、例えばNATOとロシアにおきましては、オープンスカイ条約といった、相互に上から監視をしたり、相互に装備品を見せ合うというのが当たり前の時代になってまいってきております。
 我が国としましては、諸外国の動向をよく注視しながら、また、他国の科学技術の進展等に乗りおくれないように努力はしてまいらなければなりませんが、政治の上で決められたことにつきましては、それに従って行わなければならないわけでございまして、どうあるべきかということにつきましては、今後、国会等政治の場でも御検討、御議論をいただきたいと考えております。
西村分科員 お互いに頑張りましょう。よろしくお願いします。
 質問を終わります。
岩屋主査代理 これにて西村君の質疑は終了いたしました。
 次に、保坂展人君。
保坂分科員 社会民主党の保坂展人です。
 きょうは、防衛庁の情報公開請求者に対するリスト問題が発生してから一連の質問を長官にもお聞きしてきたところですが、幾らか気になる点をさらに追加的にお聞きしていきたいと思います。
 まず、六月五日に当委員会の場で、新潟のケース、情報公開請求を弁護人がしたら、自衛隊の元駐屯地司令の代理人の方がこの請求を知っていたという事実について、本日、少し詳しい説明を聞きました。
 そこで、これは細かい経過を一々たどっていると大変なので、ポイントだけお聞きをしたいんですが、これは、調査の結果、時系列で言うと、十二月五日にこの代理人から開示請求があって、そして情報公開請求のもと、決裁されたのが翌年の一月九日で、一方で、十二月十日には駐屯地の会計隊長のもとに請求があり、口頭で駐屯地司令、これは現職ですね、を経て、十二月中旬に元三佐、その方を経て、十二月二十日ごろ元駐屯地司令、つまり裁判で訴えられている人にこの情報が来た。つまり、情報公開請求をした側がその情報を手にする前に、訴えられた方がその情報を知ってしまった。こういうことは、やはり大変問題があるんではないかというふうに思うんですが、この点いかがでしょうか。
宇田川政府参考人 今の議員御指摘の開示請求に係る情報の流れでありますが、委員御指摘のように、十二月二十日ごろ、訴訟で訴えられた人間が了知したということでございますが、その了知した内容につきましては、もともと情報公開の内容についてまで了知したわけではございませんで、情報公開請求があったということで本人が推測したということでございますので、訴えられた本人が情報開示請求の内容について知ったとまで至らないものでありますので、事実関係としては余り問題がないんじゃないかと思われます。
保坂分科員 防衛庁長官に伺いますが、いかがでしょう。今の宇田川局長の答弁だと、要するに、当該の訴えられた当事者が情報公開請求があったことは知っていたが、内容については知らなかったんだからよかったんじゃないか、こういうことをおっしゃっているわけです。
 私の指摘は、情報公開請求、これがあったことの事実自体もその関係当事者に自衛隊の中のルートを通っていってしまうこと自体が、やはりこれはおかしなことだと。今の宇田川局長の答弁だと、今後もこのように、内容は言わないけれども情報公開請求はあったよということは言っても構わないんじゃないかというふうにも受け取れるんで、長官の認識を承りたいんですが。
中谷国務大臣 業務のあり方につきましては、組織上、起こったことに対する報告とか連絡等は一般業務として行うわけでございますが、このような情報公開業務等につきましては、個人情報またプライバシーの保護の観点で慎重に大切に取り扱う必要がございますので、こういった情報公開の有無に関することにおきましても、開示を申請した人の立場また背景等を十分考慮して、慎重に今後行っていく必要があると考えております。
保坂分科員 宇田川局長に伺いますけれども、これは当事者には、日本酒の会という名前なんですかね、群馬県の温泉地で飲み会の打ち合わせの際に、連隊で変わったことはなかったのかという元駐屯地司令の問いに対して、元三佐が、そういえば開示請求がございましたというようなことで伝えたということですね、事実関係で言えば。そして、温泉地に泊まり、翌日のバスの中で、おれは訴えられているんだと元駐屯地司令が告げた、こういうことを聞いていますけれども、その元駐屯地司令は、情報公開請求があったということで、自分が訴えられていることと関係がある情報公開請求だとぴんときたんでしょうかね。ここのところはどういうふうに受けとめたのか、調査されましたか。
宇田川政府参考人 今御指摘の、訴えられている元駐屯地司令が、情報公開請求があったということで、自分ではないかと思ったという話でありますが、おっしゃるとおり、ぴんときたかは別としまして、駐屯地司令はそういうふうに推測をしたというふうな調査結果になっております。
保坂分科員 宇田川局長にもう一回問いますが、今後自衛隊の情報公開請求が、まさにこれは民事の損害賠償請求ですから、そういうことまでありましたよというのが、当時の部下であり上司でありという関係で、当事者に漏れていくということはやはり改めるべきだというふうに指摘しますけれども、いかがですか。
 はっきりそこは言ってもらわないと、これからもこういう運用でいくというようなことを言われたらちょっとこれはおかしいと思いますよ。
山中政府参考人 情報公開制度の運用につきましては、開示請求の内容はもとよりでございますが、どういう方から情報公開請求があったかなかったか、そのこと自体も、軽々に外部に情報を提供するというようなことは、趣旨からいっていかがかと考えております。
保坂分科員 きょうは若松副大臣にもおいでいただきました。
 実は私、総務省のこの間のこの問題に対する答弁に大変深い疑問を持っています。はっきり言って、だまされたのかなというぐらいに思っていますよ。
 なぜかといえば、これは中谷長官にも応接記録のことを申し上げました。応接記録というのが防衛庁のマニュアルにあったんです。ですから、総務省の、各省庁にガイドラインをつくった中に応接記録という文字がありましたかというふうに問いただしたところ、六月五日には、いろいろ懇切丁寧にやったけれども、応接要録なんということを指示したことはございませんと否定しているんですね。そういうふうに答弁されるから、私は、それでは防衛庁だけがこういった応接記録ということを独創的に発明してやっているんだ、こういう認識に至るわけで、それで、資料もお出しいただいて、丁寧に見せていただいたんです。
 それから、翌日、総務省の方が来られて、ちょっと追加説明がある、実はマニュアルにはあったという話じゃないですか。そのことも七月三日に、私、指摘しました。確かにこの総務省の分厚い情報公開施行の前のマニュアルにはあるんですね。しかし、そのときの総務省の説明は、窓口に来られた方に対していろいろ、どういう方なのかということを記録する意味で、応接記録をつくった方が望ましいと総務省のガイドラインには書いてあるわけであって、請求者について応接記録をつくれ、こういうふうに要求したり、あるいは指示していないんだ、こういう答弁なんですね。これは間違いないですか。はっきり言ってください。
松田政府参考人 前回、先生の御質問に対しまして御説明をさせていただいたところでございますが、最初の御質問の際には、まさに情報公開の開示請求者の個人情報が問題になっておるわけでございまして、先生の御質問から、そういう個人の情報を、開示請求の際にいわばちゃんと調査をして、記録として残すようにというような御趣旨で御質問を受けたと考えまして、そういう記録をつくれということまでは指示しているわけではないということを申し上げたわけでございます。
 そういう意味では非常に言葉足らず、不十分な説明であったと反省いたしておりますけれども、御説明申し上げましたように、開示請求の事前の段階から当然懇切丁寧な対応をしていく必要があるということで、私どもの方で作成させていただいています手引におきましては、開示請求者は必ずしも、どういう情報がどこにある、どういう手続をとったらいいということがわかっているわけではございませんので、後々の便宜等も考え、そういう二度手間、三度手間にならないように記録をつくることが望ましいということを手引に書かせていただいている、そういうふうに御答弁申し上げたわけでございまして、だますとか、そういうつもりでは全くございません。
保坂分科員 これで話が終わるのでしたら別にそんなに、ちょっとひどいなとは思いますけれども、今、うんとひどいなと思っているんですよ、実は。
 どうしてかといえば、私、七月二日に部屋に総務省の方が来られて、ひょっとすると、総務省のこのガイドラインにもあったので、防衛庁だけが応接記録というものをつくったんじゃないのかもしれないというふうに思いましたよ。それで、他の省庁で、応接記録という言葉が入っているいわば情報公開のマニュアル、こんなものですよね、こういうものをひとつ集めてみてくださいと言ったら、担当官の方が非常に嫌な顔をされて、いや、ちょっと労力的に間に合いませんでと言われるから、私も、突然の要求で徹夜作業でもうとんでもないことになったと言われては、これは公務員の人権問題でもありますから、それでは、外務省と農水省ぐらい、ちょっとことし話題になったところの二つくらい調べてください、こういうふうに言ったんですね。しかし、結局は何もお出しにならなかった。
 そのときに、委員長に要求をして、資料要求をさせていただきました。そうしたら、翌日、早速総務省から来ましたよ。そこには、内閣府、総務省、外務省、経済産業省、文部科学省、環境省、厚生労働省、警察庁とあります。私、非常に驚きました。総務省のマニュアルなんですね、これは。総務省のマニュアルを見ると、相談、案内の窓口でちょっと書きとめておくなんという内容じゃないですよ、このマニュアルは。
 情報公開の請求が個々持ち上がってきたときに、当該担当者が決まるわけですよね。当該担当者は、閲覧室にて具体的な文書特定の作業に入ることとして、様式二十一号というのもありますから、この総務省の様式まできちっと決められているわけですね。これですか、きのう送ってもらったんですけれどもね、「その際の応接記録を作成する。」とあるじゃないですか。これは総務省の。補正の際にはどう書いてあるかというと、「後々のトラブルを避けるため、応接記録を残しておくこと。」と書いてあるじゃないですか。さらに、開示の実施については、「原課の担当者は、開示の実施に立ち会うものとし、必要に応じて、応接記録を作成し、写しを政評課に提出する。」と書いてあるじゃないですか。これは義務規定ですよ。防衛庁は望ましいと書いて、これは残すと書いているじゃないですか。今言った答弁と違うんですよ、全然。
 どういうことですか。ちゃんとこういう国会の場で聞いて、二転三転、いいかげんな答弁しないでもらいたい。どういうふうに説明しますか。
松田政府参考人 繰り返しになりますが、先生の当初の御質問につきましては、先ほども申し上げましたように、まさに個人の情報保護が問題になっておるところでございましたので、先生の御質問が、開示請求者に関するいわば身元の調査として、そういう聞き取り、あるいは記録をつくるようにというような指示をしているのかというふうに受けとめまして、そういう指示までしているわけではないということを申し上げたわけでございます。
 一方、先ほども申し上げましたように、開示請求者の方々は、どこに自分の望んでいる文書があるか御存じのない方が多いわけでございますし、また、開示手続も十分御存じのない方が多いわけでございますので、そういう懇切丁寧な対応の一環として、後々二度手間、三度手間になるようなことにならないようにそういう記録を残していくことが望ましいということを手引に書かせていただいているわけでございまして、あくまで懇切丁寧な対応の一環でございます。
保坂分科員 若松副大臣に伺いますが、私、いろいろなやりとりを委員会等でさせていただいていますけれども、今回の防衛庁リスト問題の、総務省のこのマニュアルの話ですね、大変不自然だと思うんです、実は。
 防衛庁が応接記録という言葉を独創的につくったかどうかというのは大変な大問題でしたから、これは総務省の最初のマニュアルにあったということも委員会では言わない、そして窓口だけ、その懇切丁寧な一環だと言いながら、私が指摘したようなこのマニュアルを率先して持ってくるべきなんですね。質問のために必要だから出してくださいと言ったら、自分の省庁のものくらいは持ってくるべきなんですよ。
 若松副大臣に、総務省がどんな記録をつくっていたのか、ぜひ提出していただきたいと思います。そして、個人情報の漏えいなどがなかったのかどうかも、きっちりこれはこの際点検させていただきたいと思いますが、いかがですか。
若松副大臣 今、保坂委員と局長とのやりとりを聞かせていただいておりまして、局長のおっしゃったとおり、今回の応接記録の事実ですけれども、やはり私も、実はいろいろな市民相談とかありまして、ちゃんとその記録をつくっている、恐らくそういった趣旨でこの応接記録というものの作成を依頼したということは、これは至極自然なことだと思います。
 ですから、今回の防衛庁というのは、どちらかというと、そこに個人の思想、信条的なところの一つの情報の集約があった。それについては、今の法制度から見てもおかしい、そういうことを私ども申し上げておりまして、そして、いずれにしても、この委員会、さまざまな委員会で今回のそういう情報の収集があるかどうかという調査依頼がございましたので、今、総務省としては、千八百ですか、いろいろな窓口がありますので、鋭意それを今集約しておりまして、早急に公表すべく今努力をしているところでございます。
保坂分科員 もう一回、じゃ、総務省、局長に伺いますが、例えば、これは数が膨大になるんであれば、一部でも結構ですから。防衛庁の方は要求に応じて、プライバシーのところを黒塗りをしながら出してくれたわけですよね。それをもって今後のあり方について議論をしたいわけで、ぜひ、こういったものがあるんであれば、どのように作成されているのか、提出していただきたいと思いますが、いかがですか。
畠中政府参考人 一総務省としての応接記録の取り扱いでございますので、私の方からお答えをさせていただきます。
 サンプルを提出しろという御指示でございますが、当然そこには個人情報が入っておりますので、そこを消させていただくことを御了承いただければ、サンプルはお出しできるというふうに考えております。
保坂分科員 それでは中谷防衛庁長官に伺いますが、したがって、私は、防衛庁の中に大変な大きな問題があったことは事実だけれども、あながち防衛庁だけが厳しく問われるという質の問題ではなくて、やはり情報公開の制度とは何かということをこの際みんなで考えるいい機会になったんだろうというふうに思います。
 その点なんですけれども、防衛庁のマニュアルのつくり直し、つまり、実は総務省のものにも防衛庁のものにも、余分な情報を追跡したり、収集したり、表をつくったり、そういうことはしてはいけないという禁止規定はないんですね。ですから、今回のことを踏まえて、新たなガイドライン、マニュアルづくりなどを検討されているかどうかお答えいただきたいと思います。
山中政府参考人 今回のリスト事案につきまして、私ども、いろいろな反省事項があったと考えております。これは、情報公開制度を運用する際の職員の意識の問題から始まりまして、制度の趣旨をいかに教育研修を通じて徹底させるかというようなこともございますし、今御指摘をいただきました情報公開業務の実施手続、とりわけそれがよって立つところの手引、それにつきましても、内容等の見直しを現在取り進めているところでございます。
保坂分科員 もう一度長官に伺いますが、一点だけ、禁止規定ですね。応接記録の問題から入りましたけれども、かかる今回の事態を招いたようなことは、そこは踏み込んではならないのだという禁止規定をマニュアルに盛り込んでいくべきだと思いますが、いかがでしょうか。
中谷国務大臣 もちろんのことながら、二度とこのようなことが起こらないような体制をつくってマニュアルを定めなければなりませんが、その一例といたしまして、開示請求をされた方の氏名や住所が開示を行う作業においてその現場に伝わらないように、名前と住所を伏せた形で文書を上げるというような見直しも行っておりますし、情報公開で申し込まれた個人情報がそのライン以外に漏れることがないような、そういう防止策等も取り込みまして、マニュアルを作成したいと考えております。
保坂分科員 それをぜひお願いしたいと思います。
 この間新聞に出てきたものの中で、海幕の監理部総務課情報公開室のつくられた情報公開の講習の表がございます。この表の中には、弁護士、オンブズマンだとか、政治だと議員秘書とか軍事問題研究者などが、なぜか軍事問題研究者は政治のジャンルに分けられているんですが、こういった講習の段階からこういう表でいわばカテゴリー分けを、情報公開の担当者が頭の中で、こういう請求だとこういうジャンルというふうに、講習の中でそういうことが行われていたということが一部わかりました。どうしてこういうものができたんですかね。だれが考えてどういう人を対象にこういう講習をされていたんでしょうか。お答えいただきたいんです。
山中政府参考人 今御指摘のございました情報公開講習の資料として海幕の情報公開室が作成したものでございますが、これは、ことしの初めに情報公開制度が発足して、ぼちぼち軌道に乗るというようなときに、制度の運用の実態等を周知させ、どういう問題があるかというような講習の一環として作成をしたということでございますが、五つの職種に分類をしたというのは、情報公開請求の実態を担当者等に知らしめるという目的で作成をしたというふうに承知をしております。
保坂分科員 それで、そのことは今どういう評価なんでしょうか。こういう講習があったことと三佐のつくったリストは相関関係があるというふうにだれもが思うのではないかと思いますが、その点の反省、振り返りはないんでしょうか。
山中政府参考人 私どもが情報公開講習で使用いたしました資料がどういうようなものに基づいて作成をされたかということについて逐一調査をいたしました。いわゆる、今回のリスト事案における調査報告書に記載をされております海幕A三佐のリストとの関連性はないということでございます。
 ただ、いずれにいたしましても、こういった開示請求者の氏名、住所以外の、職業といった情報を講習の場とはいえ取り扱うということについては、情報公開制度の適正な運用という観点からいたずらな誤解を生じ、ひいては私どもが行っております情報公開制度の運用についての疑念を抱かせかねないということから、慎んでやっていくべきものというふうに考えております。(保坂分科員「講習の範囲は」と呼ぶ)失礼いたしました。
 この一月に行われました海幕の講習でございますが、これは、全国を幾つかの地区に分けまして、例えば関東でありますと下総近隣の所在部隊というふうに、各末端の部隊単位で実施をいたしたものでございます。
保坂分科員 では、残り少ない時間なんですが、若松副大臣にぜひおわかりいただきたいんですが、今回、情報公開法の運用をめぐって議論がされています。情報公開法は、自社さ政権時代に私なども加わりまして大変熱い議論が交わされました。国民の知る権利を明記するかどうか。そして、運用に当たっては、我々は野党として、いわゆる政権を離れていますから、この一年たってみて、大変大きな問題をはらんでいるということです。総務省は大変巨大な省庁ですから、個人情報保護法などをめぐって、その役所のあり方や質についてこれからも相当問われていくべき役所である、巨大省庁であるというふうに思います。
 若松副大臣にぜひ理解をしていただきたいのは、私は、メモをつくることがいけないなんて一言も言っていません。私もメモをつくります。そして、メモをつくること自体に何の違法性もないです。しかし、国会の場というのは、少なくても事実をありのままに言ってもらわないと困るということなんですね。
 いわば、応接記録というものがマニュアルの中に、言葉にありましたか、そういう質問があれば、はい、ありますよと言ってほしいわけです。そうすれば議論は早いわけです。さらに、総務省のマニュアルがあるのなら早く出してほしいわけです。後出しじゃんけんみたいに、何か議論が終わるとぞろぞろと出てくるというようでは、本当に事実、実態はわからない。
 ですから、そこはしっかり政治家のイニシアチブで、私は、ちょっとこの間の扱いを見ていて、個人情報保護法等で議論も交わされていますけれども、情報公開の基本理念が、やはりこれは防衛庁だけのマターということではなくて、揺らぎ始めているなという危惧を持っていますので、しっかりそこは正していただきたいと思うんですが、答弁を求めて終わりたいと思います。
若松副大臣 保坂委員の委員会における要求等に対していわゆる私どもの事務方がちょっと意思疎通がうまくいかなかったという面で、どちらかというとうまくいかなかったことに対しては本当に申しわけないなと思いますが、いずれにしても、やはり公務員というのは、基本的には、住民の、まさに国民の福祉の向上のために尽くす。かつ、国民を監視するためにあるわけではありません。そういった観点から、国会からの情報要求があればしっかりと出すのが原則と思っておりますので、再度徹底していきたいと思っております。
保坂分科員 終わります。ありがとうございました。
岩屋主査代理 これにて保坂君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして内閣府所管中防衛庁・防衛施設庁の質疑は終了いたしました。
 これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。
 この際、一言ごあいさつ申し上げます。
 分科員各位の御協力を賜りまして、本分科会の議事を無事終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。
 これにて散会いたします。
    午後二時四十一分散会


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