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第1号 平成15年5月19日(月曜日)

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本分科会は平成十五年五月七日(水曜日)委員会において、設置することに決した。
五月十六日
 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。
      浅野 勝人君    大木  浩君
      小西  理君    河野 太郎君
      宮腰 光寛君    村上誠一郎君
      奥田  建君    北橋 健治君
      塩田  晋君    大森  猛君
五月十六日
 奥田建君が委員長の指名で、主査に選任された。
平成十五年五月十九日(月曜日)
    午前九時開議
 出席分科員
   主査 奥田  建君
      浅野 勝人君    河野 太郎君
      村上誠一郎君    森岡 正宏君
      金田 誠一君    北橋 健治君
      塩田  晋君    小沢 和秋君
      大森  猛君
   兼務 川内 博史君 兼務 長妻  昭君
    …………………………………
   文部科学大臣       遠山 敦子君
   国務大臣
   (防衛庁長官)      石破  茂君
   防衛庁副長官       赤城 徳彦君
   財務大臣政務官      田中 和徳君
   会計検査院事務総局次長  白石 博之君
   会計検査院事務総局第二局
   長            増田 峯明君
   会計検査院事務総局第四局
   長            重松 博之君
   政府参考人
   (防衛庁防衛参事官)   松谷有希雄君
   政府参考人
   (防衛庁防衛参事官)   大井  篤君
   政府参考人
   (防衛庁防衛局長)    守屋 武昌君
   政府参考人
   (防衛庁管理局長)    北原 巖男君
   政府参考人
   (総務省自治財政局長)  林  省吾君
   政府参考人
   (法務省大臣官房審議官) 河村  博君
   政府参考人
   (文部科学省生涯学習政策
   局長)          近藤 信司君
   政府参考人
   (文部科学省初等中等教育
   局長)          矢野 重典君
   文部科学委員会専門員   柴田 寛治君
   安全保障委員会専門員   小倉 敏正君
   決算行政監視委員会専門員 小林 英紀君
    ―――――――――――――
分科員の異動
五月十九日
 辞任         補欠選任
  大木  浩君     森岡 正宏君
  北橋 健治君     金田 誠一君
  塩田  晋君     達増 拓也君
  大森  猛君     児玉 健次君
同日
 辞任         補欠選任
  森岡 正宏君     大木  浩君
  金田 誠一君     北橋 健治君
  達増 拓也君     佐藤 公治君
  児玉 健次君     春名 直章君
同日
 辞任         補欠選任
  佐藤 公治君     樋高  剛君
  春名 直章君     小沢 和秋君
同日
 辞任         補欠選任
  樋高  剛君     山田 正彦君
  小沢 和秋君     大森  猛君
同日
 辞任         補欠選任
  山田 正彦君     塩田  晋君
同日
 辞任         補欠選任
  塩田  晋君     黄川田 徹君
同日
 辞任         補欠選任
  黄川田 徹君     塩田  晋君
同日
 第一分科員長妻昭君及び第四分科員川内博史君が本分科兼務となった。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 平成十三年度一般会計歳入歳出決算
 平成十三年度特別会計歳入歳出決算
 平成十三年度国税収納金整理資金受払計算書
 平成十三年度政府関係機関決算書
 平成十三年度国有財産増減及び現在額総計算書
 平成十三年度国有財産無償貸付状況総計算書
 〔内閣府(防衛庁・防衛施設庁)及び文部科学省所管〕


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     ――――◇―――――
奥田主査 これより決算行政監視委員会第二分科会を開会いたします。
 私が本分科会の主査を務めることとなりました奥田建でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 本分科会は、内閣府所管中防衛庁・防衛施設庁、総務省所管、公営企業金融公庫、財務省所管、国民生活金融公庫、日本政策投資銀行、国際協力銀行及び文部科学省所管について審査を行います。
 なお、各省庁の審査に当たっては、その冒頭に決算概要説明、会計検査院の検査概要説明及び会計検査院の指摘に基づき講じた措置についての説明を聴取することといたします。
 平成十三年度決算外二件中、本日は、文部科学省所管及び内閣府所管中防衛庁・防衛施設庁についての審査を行うこととなっております。
 これより文部科学省所管について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。遠山文部科学大臣。
遠山国務大臣 平成十三年度文部科学省所管一般会計、電源開発促進対策特別会計及び国立学校特別会計の決算の概要を御説明申し上げます。
 まず、文部科学省主管一般会計の歳入につきましては、歳入予算額三十五億四千百五十二万円余に対しまして、収納済み歳入額は四十八億二千百三十二万円余であり、差し引き十二億七千九百七十九万円余の増加となっております。
 次に、文部科学省所管一般会計の歳出につきましては、歳出予算額六兆五千六百六十八億二千七百六十六万円余、前年度からの繰越額九百四十六億三千九百九十三万円余を合わせた歳出予算現額六兆六千六百十四億六千七百五十九万円余に対しまして、支出済み歳出額は六兆五千八百四十七億二千七百三十九万円余であり、その差額は七百六十七億四千十九万円余となっております。
 このうち、翌年度へ繰り越した額は六百三十億九千五百九十五万円余で、不用額は百三十六億四千四百二十四万円余となっております。
 次に、電源開発促進対策特別会計のうち、文部科学省所掌分の歳出決算について御説明申し上げます。
 まず、電源立地勘定につきましては、歳出予算額三百八十七億四百二万円余、前年度からの繰越額三十億五千二百三十四万円余を合わせた歳出予算現額四百十七億五千六百三十七万円余に対しまして、支出済み歳出額は二百九十七億一千四百万円余であり、その差額は百二十億四千二百三十六万円余となっております。
 このうち、翌年度へ繰り越した額は二十六億七千八百七十万円余で、不用額は九十三億六千三百六十六万円余となっております。
 次に、電源多様化勘定につきましては、歳出予算額千百四十一億五千五百六十九万円余、前年度からの繰越額三十五億六千七百四十三万円余を合わせた歳出予算現額千百七十七億二千三百十二万円余に対しまして、支出済み歳出額は千百五億三百二十八万円余であり、その差額は七十二億一千九百八十四万円余となっております。
 このうち、翌年度へ繰り越した額は六億四千八百二万円余で、不用額は六十五億七千百八十二万円余となっております。
 次に、文部科学省所管国立学校特別会計の決算について御説明申し上げます。
 国立学校特別会計の収納済み歳入額は二兆九千七百三十六億三千二百五十万円余、支出済み歳出額は二兆八千五百四十一億八千二百六十二万円余であり、差し引き一千百九十四億四千九百八十七万円余の剰余を生じました。
 この剰余金のうち、特別施設整備事業以外に係るものについては、国立学校特別会計法附則第十七項において読みかえられた同法第十二条第一項の規定により、一千二百三十七億九千五百三十六万円余を翌年度の歳入に繰り入れることとし、特別施設整備事業に係るものについては、同法附則第十四項の規定により、不足額四十三億四千五百四十八万円余を特別施設整備資金から補足することとし、決算を結了いたしました。
 次に、歳入につきましては、歳入予算額三兆一千百七十一億四千六百四十三万円余に対しまして、収納済み歳入額は二兆九千七百三十六億三千二百五十万円余であり、差し引き一千四百三十五億一千三百九十二万円余の減少となっております。
 次に、歳出につきましては、歳出予算額三兆一千百七十一億四千六百四十三万円余、前年度からの繰越額二千三百四億一千八百三十七万円余を合わせた歳出予算現額三兆三千四百七十五億六千四百八十一万円余に対しまして、支出済み歳出額は二兆八千五百四十一億八千二百六十二万円余であり、その差額は四千九百三十三億八千二百十八万円余となっております。
 このうち、翌年度へ繰り越した額は四千四百二十七億七千六百三十三万円余で、不用額は五百六億五百八十四万円余となっております。
 以上、平成十三年度の文部科学省所管一般会計、電源開発促進対策特別会計及び国立学校特別会計の決算につきまして、その概要を御説明申し上げました。
 何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
奥田主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院重松第四局長。
重松会計検査院当局者 平成十三年度文部科学省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。
 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項二件、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項四件及び意見を表示しまたは処置を要求した事項に対する処置状況二件であります。
 まず、不当事項について御説明いたします。
 検査報告番号五一号及び五二号の二件は、職員の不正行為による損害が生じたものであります。これは、東京大学の職員が、検定料収納事務等に従事中、検定料納付のために送付された普通為替証書のうち受取人の記載のないものを換金するなどして現金を領得したもの、また、北海道教育大学の職員が、物品の発注等の事務に従事中、正規の調達を装って物品を発注し、国にその購入代金を支出させて損害を与えたものであります。
 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。
 その一は、公立の中学校における免許外教科担任の実施に関するもので、公立の中学校における免許外教科担任の実施に当たり、道府県においてその申請及び許可を適正に行うことについての認識が十分でなかったことなどのため、道府県教育委員会の許可を受けずに免許外教科担任を行わせたり、免許外教科担任解消のための取り組みが十分でなかったりなどしていて、教育の機会均等とその水準の維持向上とを目的として教職員給与費等の経費について、国が原則としてその二分の一を負担している義務教育費国庫負担制度の趣旨を損なうおそれが生じていたと認められました。これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。
 その二は、史跡の保存及び活用に関するもので、史跡等購入費補助金の交付を受けて土地の公有化を行った史跡において、事業主体における史跡の保存及び活用についての認識が十分でなかったことなどのため、公有化した土地の現状を無断で変更するなど保存のための管理が適切に行われていなかったり、史跡の活用を図るための取り組みが十分でなかったりしていたと認められました。これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。
 その三は、国立大学附属病院における診療費に係る債権管理及び歳入徴収事務に関するもので、大学病院において、診療費に係る債権管理及び歳入徴収の事務について、会計法令等を遵守すべきことの認識が十分でなく、処理手順についての検討も十分でなかったこと、また、文部科学省において、大学病院に対する指導が十分でなかったことなどのため、債権管理簿や徴収整理簿への記載または登記をしていなかったり、納入告知書の作成及び送付をしていなかったりしていて、未納診療費が簿外で取り扱われているなど、債権管理及び歳入徴収の事務が適切に行われていない事態が見受けられました。これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。
 その四は、私立大学における共同研究等の実施体制に関するもので、私立大学における私立大学等経常費補助金の特別補助の対象となる共同研究及び研究科共同研究の実施に当たり、日本私立学校振興・共済事業団において適切な指導を行っていなかったことなどのため、研究者や大学に研究成果に係る情報発信等を促す仕組みが十分に整備されていない状況にあり、研究成果を社会へ還元するための体制が整備されていないと認められました。これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。
 以上をもって概要の説明を終わります。
奥田主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。遠山文部科学大臣。
遠山国務大臣 平成十三年度予算の執行に当たりましては、予算の効率的な使用と経理事務の厳正な処理に努力したところでありますが、平成十三年度決算検査報告において会計検査院から御指摘を受けましたことは、まことに遺憾に存じます。
 指摘を受けた事項につきましては、適切な措置を講ずるとともに、今後、この種の事例の発生を未然に防止するため、より一層指導監督の徹底を図ったところであります。
奥田主査 この際、お諮りいたします。
 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
奥田主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
奥田主査 以上をもちまして文部科学省所管についての説明は終わりました。
    ―――――――――――――
奥田主査 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。森岡正宏君。
森岡分科員 私は、自由民主党の森岡正宏でございます。本日は、政府の地方分権改革推進会議、また経済財政諮問会議から出された、重点的に推進すべき項目の中にあります義務教育国庫負担制度について質問をさせていただきたいと思います。
 私は、義務教育というのは、国が責任を持って進めなければならないものだと考えております。その根拠は、言うまでもなく、憲法、そして教育基本法に規定された、教育を受ける権利、また教育の機会均等、義務教育の無償などの要請に基づき、国民として必要な基礎的な資質を培うため、すべての国民に一定水準の教育を無償で提供する、国家の存立の基盤をなすものだと考えているわけでございまして、私は、そういう意味で、義務教育国庫負担制度というものは非常に大事な制度だと思っております。
 義務教育の実施主体というのは市町村でございますけれども、北海道から沖縄まで、大都市であろうが過疎地、また辺地、離島であろうが、すべての国民に対しまして教育のミニマムのベースを国が責任を持って提供する、そして、地方の仕事を手伝っているというものじゃないんだというふうに私は理解しているわけでございます。
 しかも、教育の成否は人、すなわち教職員にかかっており、すぐれた教職員を一定数確保することが必要不可欠だと思っております。そのためには、教職員の給与費に充てる財源が保障されていなければならない。給与の二分の一を国が負担する義務教育国庫負担制度、それは、この財源保障を行っている制度であり、まさに憲法の理念にかなっていると思っているわけでございます。にもかかわらず、政府の機関から、義務教育国庫負担制度について、対象経費の見直し、定額化、交付金化、全額一般財源化、事務・栄養職員の一般財源化などが出ております。
 そして、昨年、共済の長期給付など一般財源化の議論が行われたとき、これ以上譲歩することは絶対にいたしませんと何度も遠山文部科学大臣もまた文部科学省のお役人も明言しておられましたのに、昨年十二月十八日の総務、財務、文科三大臣の合意メモを見ますと、かなり譲歩したのではないかとも思える、まさに玉虫色になっております。以前に比べ遠山大臣は後退されたという印象を私は持っているわけでございまして、義務教育国庫負担制度の堅持について、改めて遠山大臣の御決意を伺いたいと思います。
遠山国務大臣 森岡委員のおっしゃるとおりでありまして、義務教育は、憲法の要請に基づきまして、知育、徳育、体育の調和のとれた児童生徒を育成し、国民として共通に身につけるべき基礎的資質を培うものでございまして、国家の礎、委員は国家存立の基盤と仰せられましたが、私もまさにそうだと思っております。
 このために、国は、すべての国民に対して無償で一定水準の教育を提供する最終的な責任を負っているわけでございまして、義務教育費国庫負担制度は、国がその責任を制度的に担保する極めて重要な制度だと思っております。
 昨年の夏以来、地方分権推進会議、そして経済財政諮問会議、これは国家の大きな方針として地方分権を進めるということでいろいろ議論されて、義務教育費国庫負担金が一つのターゲットになったわけでございますが、私としては、その根幹は絶対に譲れないということで頑張ってまいりました。そして、対象経費の二つにつきましては、これを一般財源化しても給与は変わらない、そして、すぐれた教員を獲得するという大きな制度に影響はないと見て、これは国家の大きな方針に協力するということで、ぎりぎりの協力をしてまいったところでございます。
 その後も幾つか出ているわけでございますが、私としては、義務教育費国庫負担制度の根幹は守る、これは国の礎を守るということでございまして、このことは断じてゆるがせにできないと考えておりまして、今後ともその姿勢を貫きたいと考えております。
森岡分科員 それならば、ことし三月二十七日の文部科学委員会における義務教育国庫負担法などを通したときの附帯決議を覚えておられると思います。義務教育国庫負担制度を堅持することに特別の配慮をするとうたわれているわけでございまして、それなのに、去る十五日、中教審に対して、義務教育に係る諸制度のあり方について、経費負担のあり方も含めて諮問されました。
 私は、国権の最高機関である国会、立法府の決議は非常に重いものであると考えております。行政府が勝手に覆せるものではないと思います。それなのに、今ごろになってなぜ中教審の答申を待たなければならないのか。その答申次第でどうにでもいたしますよということなんでしょうか。
 私は、文部科学省が自分の意思を持たないで、中教審がこうだからということでそれを盾に使ったり、また隠れみのにしたりしていることに、常々不満を持っている一人でございます。私は、文部大臣の意思というものをもっとはっきりと示していただきたい。私は、文部科学大臣、遠山大臣を激励するつもりで申し上げているわけでございまして、日本の教育、将来を心配する余りこういうきついことを申し上げるわけでございますけれども、私は、三大臣の合意メモ、そして今回中教審に諮問をしておられる、こういう一連の動きが心配でならないわけでございまして、もう一度御決意を伺いたいと思います。
遠山国務大臣 先般の十二月末の三大臣合意の中で、教育改革の一環としてこの制度について見直すということでございますので、私としてはしっかりした信念を持っているわけでございますが、主として経済の活性化あるいは財政的な観点から、初等中等教育をめぐってさまざまな議論がなされている中で、私はやはり財政論ではなくて教育論としてもしっかりとしてこの問題に対処すべきというふうに考えておりまして、そのことについて、中央教育審議会の意見も一応聞きながら対処するということでございます。
 今回の中央教育審議会への諮問といいますものは、もう少し抜本的に、より日本の義務教育をしっかりしていくにはどういう観点が必要かということから、包括的な諮問をいたしておりまして、義務教育国庫負担制度そのものについてのみ論じていただくつもりは全くございませんで、その一環として、その中で、義務教育国庫負担制度を、我々はこう考えるけれども、広く国民を代表するあれはどうなのかということで諮問をしているわけでございます。
 その意味におきまして、私は、国会における御議論の際に申し上げたこと、そして附帯決議で示されたことというのをしっかり守っていくというのは、これは変わらぬ私どもの姿勢であるということをここでもう一度申し上げます。
森岡分科員 矢野初中局長に伺いたいと思います。
 先ほどお話がございましたように、文部科学省は、今年度から、義務教育国庫負担金のうち、共済費長期給付と公務災害補償に関する経費を負担対象から外しまして、二千二百億円を一般財源化いたしました。なぜこれは一般財源化してよいと判断されたのか、また国庫負担金にかわる財源措置をどのように行われましたか、伺いたいと思います。
矢野政府参考人 御指摘の共済費長期給付及び公務災害補償の経費でございますが、これを国庫負担の対象外といたしましたのは、義務教育国庫負担金につきまして、義務教育に関する国の責任はきちんと果たしながら、国と地方の費用負担のあり方を見直す、そういう観点に立って、今回、負担対象経費を限定することといたしたものでございます。
 すなわち、共済費長期給付及び公務災害補償に係る部分を国庫負担の対象外といたしましても、義務教育の水準を確保するという義務教育国庫負担制度の目的に照らし、私どもとしては、支障が生じない、そういう判断をいたしたものでございます。
 これに伴う地方財源への手当てでございますが、これにつきましては、適切な財源措置が講じられる必要がある、そういう考え方に立ちまして、関係省庁間で協議がなされた結果、一般財源化されます他の国庫補助負担金と合わせまして、地方特例交付金、また地方交付税によりまして全額措置されるという仕組みで、国と地方の財源調整がなされたところでございます。
森岡分科員 大臣に伺います。
 三大臣合意では、平成十八年度までに国庫負担金全額の一般財源化について所要の検討を行うとされております。遠山大臣はどうなさるおつもりでしょうか。
遠山国務大臣 義務教育の位置づけにつきましては、冒頭の御質問に対してお答えしたとおりでございまして、国家の根幹を担う大事な制度でございます。その意味におきまして、私どもの考え方は変わらないわけでございますが、その中におきまして、教育改革の一環として考えるということでございます。
 したがいまして、十八年度までに国庫負担金全額の一般財源化について所要の検討と書いてございますが、所要の検討はいたします。しかし、私どもの考え方は、先ほど申したようなところでございます。
 特に大事なことは、この問題について、財源論のみで考えるというのは、私は非常に遺憾だと思っております。これを、日本の将来をどうするのか、日本の将来を担う子供たちをどう教育していくのかという基本に立って議論をしていく。そのときに一番必要なのは、まさに委員もおっしゃいましたように、教員なのですね。教育については、特に義務教育については、一番大事なのは、先生であり、その給与であるわけでございまして、そこのところをゆるがせにして国家の将来を論じても、私は、大変脆弱なものになると考えております。
 そのようなことでありますが、一応は、一応と言ってはいけませんね、広く意見を聞いた上で、教育改革の一環の議論をしっかりした上で、この問題に対処していきたいという姿勢でございます。
森岡分科員 私も、まさに財源論だけで議論されている、それに不満を持っているわけでございます。これは教育論なんです。純粋に教育論からやっていかなければならないと私も思っております。
 総務省の自治財政局長の林さんに伺いたいと思います。
 私は、片山試案、大賛成でございます。総理が三位一体だと言いながら、実際はそうなっていない、何のための改革かという思いを今持っておりまして、片山大臣が非常に不満を持っておられるということを私は聞いているわけでございますが、税源移譲は後回し、補助金や負担金を削減する、交付税を切っていく、こういうことだけが先に進んでいくことになりますと、中央から地方へという小泉総理のメッセージ、この考え方に反するのではないか。しかも、一番大きな教員給与に手を入れたら手っ取り早いと思っておられるのか、まさに義務教育国庫負担制度がねらい撃ちされている。私は、外堀は埋められているというようなことも聞くわけでございまして、総務省としてどう考えておられるのか、基本的な姿勢を伺いたいと思います。
林政府参考人 お答えを申し上げます。
 御指摘の三位一体の改革でございますが、これはもう申し上げるまでもありませんが、その基本的なねらいあるいは改革のねらいは、地方分権を推進していく、そして地方税財政基盤を確実なものにすることによりまして、これから地方での行政サービス水準の質の向上あるいは地域の活性化を図る起爆剤としたい、こういうねらいでございます。
 そういう意味から申し上げますと、地方税の充実、またそれに伴います地方交付税の見直し、それからまた地方の自由度を高めていきますための国庫補助負担金の見直し、この三者は地方財政制度の大きな屋台骨をなすものでございまして、一体で改革をしていかなければならないものと考えております。
 先ほども申し上げました趣旨を踏まえますと、御指摘のように、国庫補助負担金やあるいは交付税の削減だけが先行するということはあってはならないものと私ども考えておりまして、現在、関係省庁間で改革案の取りまとめを進めておりますが、その中におきましては、私どもは、各省庁と協力しながら、税源移譲を含む三位一体の改革になるよう、いわゆる荷崩れをすることがないよう、ちゃんとした改革案となるようまとめ上げてまいりたい、こういうふうに考えているわけであります。
 なお、御指摘ございました義務教育費国庫負担金の問題でございますが、御指摘のように、この問題も、今回の三位一体改革の中で、国庫補助負担金の見直しの一つの課題として、関係者間で議論がされております。
 ただ、私どもも、義務教育というのは、国にとりましても大変重要な課題でありますし、また、地方団体にとりましても、現在、地域の人材を養成し、将来の我が国を背負って立つ人材を教育していく観点から、最重要課題として位置づけられているものでございますので、私どもといたしましても、決してこの問題は財源論であってはならず、教育論中心にして考えていかなければならない問題だと考えております。
 ただ、地域におきます義務教育の内容の充実と活性化を図るためにはどういうふうに考えていったらいいのかということが、今議論されているわけであります。繰り返し申し上げますが、今回の三位一体改革は、地方分権の一層の推進を図る観点から、そしてまた地方歳出に対する国の関与を廃止、縮減することによりまして、地方税中心の歳入体系を構築しようというものでございます。こういう観点から、教育の分野におきましても議論がされる必要があると考えておりまして、この分野における国の関与のあり方を見直す中で、義務教育費国庫負担金のあり方について結論が出されなければならないと考えております。
 ただ、一点、申し上げさせていただきますと、そういう観点から考えますと、現在、義務教育の重要性にかんがみまして、国におきましては、標準法によりまして、その教育水準が全国どこにおきましても維持されるよう、教職員の配置、学級編制等の基準が定められているわけでありますが、ただ、これに伴います国庫負担制度の運用を通じて、地域における教育の内容が硬直的なものとなっているのではないか、あるいは、教育内容を充実させるためという観点でありますが、地方の裁量の幅を制約しているのではないか、こういう意見も地方団体の中から出されているわけであります。
 そういうために、本年度から、文部科学省におかれましても、学級編制の弾力化等に取り組まれることとなったわけでありますが、今後、地方団体におきましては、国が重要と考えられております標準法等の基準を守りながら、地域の実情を踏まえた弾力的な対応が可能となるような制度を希望いたしているわけでありまして、そのために、所要の財源を確保することを前提としつつ、国庫負担金全額の一般財源化についても議論すべきではないか、こういう意見があることも私ども承知いたしているところでございます。
森岡分科員 今の御答弁を聞きますと、ちょっと心配でございます。義務教育国庫負担金が廃止されますと、教職員の給与費に対する支出の水準が低下して、そして公立学校によい先生が集まらなくなるんじゃないかと私は心配しております。
 また、都道府県によっては、非常に財源の豊かな都道府県とそうでない都道府県とでは随分格差が出てくるんじゃないか。教職員の定数も満たせないというような県が出てきたり、また、習熟度別の指導とか、少人数授業などの取り組みができなくなるんじゃないか。そういう心配を持っているわけでございまして、私の郷里であります奈良県の柿本知事が、先日、十五日の記者会見で、補助金や交付税がなければ、豊かなところは三十人学級を実現できても、奈良県のような自主財源に乏しい県は一学級七十人から八十人になってしまうと述べておられます。つまり、義務教育の人件費はスリム化できる対象じゃないんだということをおっしゃっているわけでございます。
 総務省は、国庫負担金を廃止しても義務教育費の支出の水準は低下しないと主張しておられるようでございますけれども、何を根拠にそう考えておられるのか、もう一度御答弁をお願いしたいと思います。
林政府参考人 お答えを申し上げます。
 現在、義務教育の重要な構成要素をなす学級編制や教職員定数に関しましては、先ほども申し上げましたが、全国的に確保すべき水準が標準法において定められているところでありますが、この行政水準を維持してまいりますために必要となる財源は、地方財政計画の策定と地方交付税の算定を通じまして、国庫補助負担金に加えて、地方税、地方交付税等によってその総額が確保される仕組みが現在確立をいたしているところであります。
 したがいまして、義務教育費国庫負担金を、例えばでありますが廃止をするということになりました場合、その場合は、三位一体改革の趣旨に従いまして一般財源化をするということが前提となるわけでありますが、この一般財源化をすることとなりました場合におきましても、地方団体において必要となります財源は、国庫負担金部分を含めまして、地方税、地方交付税等の一般財源により確保されることとなりますために、教育水準の維持に必要な財源は確保できるもの、また確保していかなければならないものと私ども考えているところでございます。
森岡分科員 今、地方交付税も縮減の方向にありますね。そんな中で、今おっしゃったように、どうしてその義務教育国庫負担制度をなくして財源を確保していけるのか、そこのところを御答弁いただきたいと思います。
林政府参考人 三位一体の改革は、昨年六月に閣議決定されました基本方針二〇〇二の中において位置づけられたものでありますが、その閣議決定の中におきましては、「廃止する国庫補助負担金の対象事業の中で引き続き地方が主体となって実施する必要のあるものについては、移譲の所要額を精査の上、地方の自主財源として移譲する。」こういうことになっているわけであります。三位一体の改革における国庫補助負担金の廃止は、現行の義務教育の水準を維持することを前提にして議論されるものでありまして、したがいまして、この見合いの財源が、地方の自主財源であります地方税に税源移譲されることを前提として検討されるべきものであると考えております。
 ただ、個別問題として、移譲される税源が十分でないという団体も個別には出てくるわけでありますが、その場合は、先ほど申し上げましたように、地方交付税の算定を通じまして、当該団体において必要な水準を維持するために必要な一般財源が確保されるよう措置する必要があると考えているところでございます。
森岡分科員 心配な点がたくさん出てくるように感じます。
 財務省の財務大臣政務官の田中先生に伺いたいと思います。
 義務教育国庫負担金について、財務省はどういうふうに考えておられるのか。定額化、交付金化という提案がなされておりますけれども、これをどう考えておられるのか。それとも一般財源化なのか。そしてその積算根拠、教師の数を置いておられるのか、子供の数に置いておられるのか。子供の数はだんだん減ってまいります。しかし、教職員の数は減りません。今は教職員の数を根拠に義務教育国庫負担制度があるわけでございます。また、事務・栄養職員の一般財源化をまず突破口にして本丸を崩してしまおうとしておられるのか。その辺、率直にお伺いしたいと思います。
田中大臣政務官 先ほど来より森岡先生が、教育の国の責任、とりわけ義務教育の国の責任の重さということについて御指摘をしておられまして、私もまさしくそのように思っておる者の一人でございます。ただ、一方においては、地方に適切な役割を分担していただくということも、これもまた重要なことであろうと思っております。
 ただ、私どもも三大臣の合意等ございまして、また一方では官房長官の方から口頭報告がありました、国と地方に係る経済財政運営と構造改革に関する基本方針というものもございまして、平成十六年度に義務教育費の国庫負担金制度の改革等を具体化していく、こういうことであります。また、地方分権改革推進会議でも、何らかの客観的な指標を基準とする定額化、交付金化に向けた検討を行うべき、こういうことになっておるわけでございまして、財務省といたしましても、こうした観点を踏まえまして、定額化、交付金化等も含め、義務教育費の国庫負担金制度の改革について検討をしていかなければならないし、これからの努力を重ねていかなければならないと思っております。
 それから、積算根拠についてでございますけれども、今後、義務教育費の国庫負担金制度の改革を検討する中でやっていかざるを得ないのかな、このようにも思っておるわけでございます。
 また、事務職員、栄養職員については、地方分権改革推進会議の意見を踏まえて、国と地方に係る経済財政運営と構造改革に関する基本方針において、「義務標準法等を通じた国の関与の見直し及び義務教育費国庫負担制度の見直しの中で、地域や学校の実情に応じた配置が一層可能となる方向で、引き続き、検討を行う。」こととされておりまして、こういう観点も財務省としても受けとめながら検討する必要があると思います。
 森岡先生から見れば、何を言っているのかと、こういう思いがあろうと思いますけれども、役目柄、このような答弁をさせていただきたいと思います。
森岡分科員 田中政務官のお話、わかったようなわからないような話でございますけれども、遠山大臣、今の御答弁に対しまして、どんなふうに考えておられますか。率直に、この際言っておいてください。
遠山国務大臣 財源論でなく教育論でとおっしゃりながら、お二人とも、私は財源論の角度からの御意見を述べられたように思います。本当に国の将来が心配になります。
 三位一体というのは、それは概念としては、将来に向けていいのかもしれませんけれども、私は、仮にシミュレーションしてみますと、義務教育費国庫負担金を一般財源化した場合に、地方は何ら潤わないんですね。これは、国はその金を教員給与としてしっかり使わなくてはならないわけでございまして、何ら自由はないわけでございます。国民にとって何がいいかといいますと、税金が減るわけでもなし、何のメリットもない。国にとっては、義務教育の将来が危うくなるという危険こそあれ、何らよくならない。
 私としましては、義務教育についての地方分権といいますものは、先ほど来お二人の方からお話ございましたように、まさに地方が、国の標準というものを前提にした上で、自由に、クラス編制なり、あるいは教員の配置なり、手当のつけ方なり、あるいは給与について、すぐれた者についてはたくさんの給与を出し等の自由なそういう運用をしていただく、国はその最低限は絶対に保障しなきゃならないわけでござまして、そこのところをとり違えられて三位一体論という角度の中で議論されることについては、私は、本当に国の将来を考えますと、極めて憂慮いたします。ぜひとも御再考をいただきたいと思います。
森岡分科員 時間がなくなってまいりましたので、私、最後に、文部科学省とそれから財務省の方に、人確法の問題について伺いたいと思います。
 私は、奥野誠亮文部大臣のころ、秘書をやっておりました。昭和四十九年に人確法ができまして、槙枝日教組の委員長と大変な激論がございましたし、また、大変な思いをしながら、自由民主党の政治的な主導のもとに、奥野文部大臣と愛知大蔵大臣との間で合意がなされ、実現したものだと承知しております。大変な苦労があったわけでございまして、この法律の意義を文部科学省はどう考えておられるのか。
 また、財務省、私は田中大臣政務官は尊敬しているんですけれども、お立場もあろうと思いますけれども、この人材確保法についてどう思っておられるのか。一般公務員より教職員は優遇されなければならないと法律にちゃんと書いてあるわけですよ。しかし、これを廃止しようと思っておられるんじゃないか。私はこのことを大変心配しているわけでございまして、教育の世界にいい人材が集まらなくなるおそれがある、もとのもくあみになってしまうじゃないかという思いを持っているものですから、双方でちょっと簡単に御答弁をいただきたいと思います。
遠山国務大臣 本当にその経緯を考えますと、声涙下るような話があるわけでございまして、諸先輩が本当に日本の国の将来を考えてこの人材確保法をおつくりになりました。それは単に過去の一点の出来事として称賛するというような中身ではないと思います。これは私は、日本の将来にとって、すぐれた教員を確保するのに極めて重要な制度であると思っております。
 今、各国も日本のこの制度を見習いまして、例えばブレア首相は、イギリスにおきまして、昨年ちょうど日本の経済財政諮問会議で、二兆円ないし三兆円の義務教育費国庫負担制度にターゲットを絞って、これは総務大臣の発案だと思いますけれども、そしてそれを一般財源化しようなどという話があるときに、何とブレアさんは、二兆四千億を国費で、教員の給与をアップするために措置をされたんです。その違い、その何といいますか、理想の置き方の違いに、私は愕然としたわけでございます。
 そのようなことを考えますと、私は、やるべきことはまだいっぱいあると思います。いろいろな補助金、負担金があるではないですか。その中で最も大事とすべき、最も守るべき義務教育費国庫負担金に、ただそのサムといいますか、トータルの額が大きい、やりやすいというだけで、極めて安易な政策をとろうとされているということがもしあるとすれば大変問題でございまして、いわんやこの人材確保というものは大変大きな意味があるわけでございまして、韓国しかり、中国しかり、アメリカしかり、いずれも教育が問題であったのは、教員の給与が低かったわけでございます。それを今改善しつつありまして、大きく国力を増そうといたしております。
 国際的な視野も持ち、また歴史的な経緯も踏まえますと、私は、この人確法というのはまさに堅持すべきものの非常に重要なものであるというふうに考えます。
田中大臣政務官 国の一番の基本であります教育の分野に優秀な人材を確保して当たるというのは、これほど重要な施策はないことと思っております。また、先生が文部大臣の傍らにおられて、この法律をつくる、日本の国を考えてこの法律がいかに大切かという思いを持って今日まで歩んでこられたことにも敬意を表する次第でございます。
 ただ、今日の教育の状況を見るときに、私は、いま一つ競争とかあるいは能力を十分評価する、こういう視点がやはりあってもいいのではないかなと思うところがございます。もちろん、それによって行き過ぎて本当に教育の現場に人材が集まらなくなった、こういうことがあったらゆゆしきことであります。
 少し前のことでありますが、ソビエトからロシアに変わったときに、あの国では学校の先生になり手がいなかった。なぜならば、仕事が大切だということはロシア人の人たちもわかっていたのですが、余りにも待遇が悪くて、給料が安くて、ほとんどの人たちが現場の労働者に変わっていって、教職の現場には先生がいない学校が幾つもできてしまった。これは私は、現地の視察までしてよく承知しているところでございます。今後ともそういう視点を持って私も財務省も当たっていかなければならない、このような思いがございます。
 以上でございます。
森岡分科員 これで終わらせていただきますけれども、義務教育国庫負担制度が非常に大事だと皆さん思っておられる。文部大臣も思っておられる。そして、今、財務大臣政務官もそう答えられた。そして、総務省の自治財政局長の林さんもそう答えられた。このことを忘れないで、義務教育国庫負担制度をしっかりと守っていただきますようにお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。
奥田主査 これにて森岡正宏君の質疑は終了いたしました。
 午後三時三十分から本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午前九時四十六分休憩
     ――――◇―――――
    午後三時三十一分開議
奥田主査 休憩前に引き続き会議を開きます。
 これより内閣府所管中防衛庁・防衛施設庁について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。石破防衛庁長官。
石破国務大臣 平成十三年度における防衛庁関係歳出の決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 まず、(組織)防衛本庁の経費につきまして御説明申し上げます。
 当初の歳出予算額は四兆三千六百五十四億八千二百万円余でありまして、これに構造改革先行プログラムの一環として電子政府実現促進対策の推進を図るため及び総合的かつ効果的な緊急テロ対策を推進するため等に必要な経費の予算補正追加額三百五億八千四百万円余、平成十三年度総合防災訓練のため内閣本府から移しかえを受けた額四百万円余、高空における放射能塵の調査研究のため文部科学省所管文部科学本省から移しかえを受けた額六千四百万円余、南極地域観測事業のため文部科学省所管文部科学本省から移しかえを受けた額二十三億五千七百万円余、前年度からの繰越額百五十五億四千三百万円余、国際的なテロリズムの防止及び根絶のための国際社会の取り組みに積極的かつ主体的に寄与するため自衛隊が実施する協力支援活動等に必要な経費として予備費を使用した額百七十二億七千百万円余を加え、既定予算の不用等による予算補正修正減少額二百四億八千二百万円余を差し引きますと、歳出予算現額は四兆四千百八億二千六百万円余となります。
 この歳出予算現額に対して支出済み歳出額は四兆三千八百五億千四百万円余、翌年度へ繰り越した額は七十六億四千百万円余でありまして、差し引き不用額は二百二十六億六千九百万円余であります。
 次に、(組織)防衛施設庁の経費につきまして御説明申し上げます。
 当初の歳出予算額は五千八百九十五億千三百万円余、うちSACO関係経費百六十四億六千六百万円余でありまして、これにSACOの最終報告に盛り込まれた措置を的確かつ迅速に実施するために必要となる基地周辺対策等及び構造改革を強力かつ迅速に遂行するための改革先行プログラムの一環として民生安定施設の助成等に必要な経費の予算補正追加額百十三億七千六百万円余、うちSACO関係経費百十億四千六百万円余、沖縄米軍基地所在市町村に関する懇談会の提言に基づき、沖縄県の米軍基地所在市町村が実施する地域経済活性化事業等に要する経費として内閣本府から移しかえを受けた額七十九億三千九百万円余、沖縄県の均衡ある発展を図る必要があることにかんがみ、北部地域の振興事業の着実な推進に要する経費として内閣本府から移しかえを受けた額十二億七千五百万円余、前年度からの繰越額三百九十九億二千九百万円余、うちSACO関係経費百四十九億三千八百万円余、厚木海軍飛行場内の米軍家族住宅地区の大気環境の保全を図るため、当該地区に隣接する焼却炉の撤去に要する経費として予備費を使用した額六十億六千三百万円余を加え、既定予算の不用等による予算補正修正減少額十六億八千六百万円余、防衛施設周辺の障害防止事業等に要する経費として移しかえをした額、農林水産省所管農林水産本省へ三億九千七百万円余、国土交通省所管国土交通本省へ十三億九千八百万円余を差し引きますと、歳出予算現額は六千五百二十六億千四百万円余、うちSACO関係経費四百二十四億五千百万円余となります。
 この歳出予算現額に対して支出済み歳出額は五千九百八十二億千二百万円余、うちSACO関係経費二百八十二億七百万円余、翌年度へ繰り越した額は四百九十八億四千百万円余、うちSACO関係経費百二十九億千七百万円余でありまして、差し引き不用額は四十五億六千万円余、うちSACO関係経費十三億二千六百万円余であります。
 なお、主な事項につきましては、お手元に配付してある資料のとおりでありますが、委員各位のお許しを得まして御説明を省略させていただきたいと存じます。よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。
奥田主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院増田第二局長。
増田会計検査院当局者 平成十三年度防衛庁の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。
 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項四件及び本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項二件であります。
 まず、不当事項について御説明いたします。
 検査報告番号二号から四号までの三件は、職員の不正行為による損害が生じたものであります。これは、陸上自衛隊の自衛官が分任資金前渡官吏の補助者としての支払い事務等に従事中、国庫金振り込み明細表を偽造するなどして国庫金を領得したもの、また、同自衛隊の自衛官が有料道路通行回数券の出納及び保管の事務に従事中、その保管に係る同回数券を領得したもの、そして、海上自衛隊の自衛官が、休日に登庁し、燃料給油車に保管してある航空タービン燃料を、業務上の作業と偽り当直員等に手伝わせて民間業者のタンクローリーに移しかえ、領得したものであります。
 同五号は、海上自衛隊におきまして、職員の給与の支払いに当たり、裁判所からの債権差し押さえ命令に違反して、差し押さえ債権額を控除することなく職員に給与を支払ったため、正当債権者である差し押さえ債権者にさらに弁済金を支払う結果となり、損害が生じていたものであります。
 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。
 その一は、専用回線の利用契約における長期継続利用割引制度の活用に関するもので、陸上幕僚監部では、新たなデータ通信網について長期継続利用割引の適用について検討はしていたものの、契約変更をすれば必ず違約金を支払うこととなり、かえって不経済になるおそれがあるとして、長期継続利用割引を申し出ておりませんでした。
 しかし、専用回線のうち、最低の伝送速度で契約しております専用回線につきましては、伝送速度を減少させるような契約変更はないことから違約金を支払うような状況ではないため、長期継続利用割引の適用を受け、使用料の節減を図る必要があると認められました。これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。
 その二は、長期に格納する航空機の国有財産法上の取り扱いに関するもので、航空自衛隊では、将来の運用に備えるなどのため、F4EJ型要撃戦闘機等計十三機を、エンジン等を取り外した状態で長期にわたり格納しております。
 しかし、これらの格納機は、取り外したエンジン等が物品として管理されている現状においては、国有財産法上の航空機に当たらず、国有財産として取り扱う状況にありませんでした。
 このように、格納機を現状において国有財産として取り扱い、国有財産増減及び現在額報告書等に国有財産の現況が正確に表示されていない事態は適切とは認められず、改善の要があると認められました。これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。
 以上をもって概要の説明を終わります。
奥田主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。石破防衛庁長官。
石破国務大臣 平成十三年度決算検査報告に掲記されております事項について、防衛庁が講じた措置を御説明申し上げます。
 不当事項として指摘を受けましたものにつきましては、今後、このようなことのないよう綱紀粛正のより一層の徹底を図る等再発防止に万全を期する所存であります。
 陸上自衛隊におけるデータ通信網を構成する専用回線の契約につきましては、長期継続利用割引の適用可能なものがあったにもかかわらず、その適用を受けていなかったところ、専用回線の整備に当たっては経済的な契約を行うよう周知する処置を講じたところであります。
 また、航空自衛隊における長期に格納する航空機につきましては、取り外したエンジン等は物品管理簿に計上する一方、エンジン等を含む航空機全体の価格を国有財産台帳に計上し、エンジン等について二重に計上していたところ、航空機全体を物品管理簿に計上する処置を講じたところであります。
 以上、これらの指摘事項につきましては、鋭意改善に努め、今後このような御指摘を受けることのないよう、より一層努力する所存であります。
奥田主査 この際、お諮りいたします。
 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
奥田主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
奥田主査 以上をもちまして内閣府所管中防衛庁・防衛施設庁についての説明は終わりました。
    ―――――――――――――
奥田主査 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小沢和秋君。
小沢(和)分科員 日本共産党の小沢和秋でございます。
 本日は、防衛庁の決算に関連して二点をお尋ねいたします。
 第一は、T4練習機の燃料制御装置故障の問題であります。
 報道によりますと、航空自衛隊のジェット練習機T4のエンジン推力が燃料制御装置の故障で落ちたため飛行を中止する事件が昨年五月から六件も相次いでおります。六件のうち、昨年の五月、十月、ことし二月の三件が、私の地元の芦屋基地でパイロット養成をしている第十三飛行教育団のものでありました。
 私は、赤嶺政賢議員と連名の質問主意書でも取り上げましたが、芦屋にこの双発ジェット練習機T4が配置されて以来、周辺の北九州市等で住民がこれまで以上の騒音によって苦しめられるようになり、住宅密集地の上空で訓練飛行を行うことの危険性も指摘されております。このように安全性が懸念されているもとで、航空機の心臓ともいうべきエンジン関係の故障が頻発していることはまことに重大であります。
 T4の燃料制御装置の故障がなぜ頻発しているのか、乗員や住民の安全と再発防止のための対策はどのようにとられているのか、まずお尋ねをします。
石破国務大臣 T4につきましてお尋ねをいただきました。
 委員御指摘のとおり、昨年五月以降、T4型中等練習機の燃料制御装置のふぐあいにより、地上滑走中及び飛行中にエンジンの推力が低下する事象が合計六件、そのうち三件は芦屋基地で発生をしたものでございます。
 その原因につきましてでございますが、燃料制御装置に使用しておりますボルト内部から一ミリ程度の金属片が剥離し制御用ピストンに挟まったため燃料流量が制限された、これが原因であるというふうに考えております。
 このため、防衛庁といたしましては、すべてのT4型中等練習機用エンジンの燃料制御装置につきまして、石川島播磨重工業にてボルトの交換及び内部洗浄を実施しており、さらに、部隊等におきましては燃料制御装置の内部洗浄を定期的に実施しておるところでございます。
 なお、ボルトの交換につきましては、主に操縦者教育用のT4のものを優先しておりますが、教育訓練期間中の操縦者が単独で飛行する場合には、交換作業が完了した機体を使用いたしております。
 今後とも飛行の安全につきましては十分配慮をいたしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
 なお、芦屋基地に配備されておりますT4は合計三十六機でございますが、交換作業は十五機終了をいたしております。
小沢(和)分科員 T4練習機の燃料制御装置、FCUというのだそうですが、わずか十数センチ四方のボックスで、今回の故障は明確にその機器の内部で生じたものであります。
 FCUは、すべてボックスごと取り外して石川島播磨重工の瑞穂工場でメンテナンスされており、自衛隊の整備では内部を全くさわらないと聞いております。そうであれば、この故障はすべてメーカーの責任ではないのでしょうか。今回、七百十一基あるFCUのうち、瑕疵担保期間一年に該当する百基分はメーカー負担で修理されるが、残りは防衛庁が費用を負担すると聞いております。メーカーの責任で起こった故障の修理費用を国が負担するのはおかしいのじゃないでしょうか。すべてメーカーに負担させるべきじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
大井政府参考人 お答えいたします。
 御指摘のあったとおり、修理の対象となる燃料制御装置でございますが、七百二台ございます。そのうちの百十二台が一年間の瑕疵担保期間中でございまして、石川島播磨重工業におかれましては、これらを無償で修理するということについて同意をしているわけでございます。
 また、当面、エンジンのオーバーホールであるとかあるいは燃料制御装置のオーバーホール等が予定されているものが約五百台ございます。その際に、このオーバーホール契約の範囲内で、追加の費用負担なしに修理を実施するということにしております。
 これら以外で、当分の間、定期的な修理が予定されていない九十台がございますが、これにつきましては当庁の費用負担により修理を実施する予定でございまして、これに要する費用は契約当初金額で約七千六百万ということで見積もっておるところでございます。
 いずれにいたしましても、きちっとした契約の体系の中で修理をさせていく、こういう方針で臨んでおるわけでございます。
小沢(和)分科員 T4練習機は八七年に調達が開始され、ごく最近、二百八機の調達がすべて完了いたしました。既に十数年も運用されてきており、メーカーの経験も蓄積されているのに、昨年から急にFCUの故障が頻発するということはまことに不可解であります。専門家に聞くと、メンテナンス作業をすれば当然生ずるばりや粉じんを落とすためのフラッシング、つまり念入りな洗浄と点検を怠ったのではないかとのことであります。ここ数年、IHIは大幅な人減らし、合理化を行っており、そのしわ寄せで作業が粗雑になった結果がこういう形であらわれたということも十分に考えられるのではないでしょうか。
 長官にお願いしたいんですが、いずれにせよ、故障原因を再度しっかり解明し、責任を明確にすべきであります。今後のFCU補修はオーバーホール時に行うということで、修理の終わっていないT4をことしの一月から飛行を再開させているようでありますが、二月にはまた芦屋基地で故障が起こっております。芦屋では技量の未熟な練習生が操縦しているだけに、こんな無理をしたら大変だと思います。
 この際、隊員や周辺住民の安全を第一に、補修が終わらない機体は運用を控えるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
大井政府参考人 先ほど大臣の方からも御説明がありましたけれども、この燃料制御装置のふぐあいの原因でございますが、燃料制御装置に使用されているボルトの内部から、いわゆるばりと言われているものですが、その金属片が剥離して制御用ピストンに挟まった、それで燃料の流量が制限されてしまった、こういうふうに推定されておるわけです。委員が御指摘になりましたが、昨年これが発生してきたということであります。長い間、昭和六十二年から調達しておるわけでございますが、その燃料制御装置のふぐあいというものが昨年発生している。
 これにつきまして現在調べているわけでございますが、必ずしも現段階でそこのきちっとした因果関係というのは明らかになっていない。ただ、その燃料制御装置自身は大変精密な機構でできておりますので、何らかの作用によってこういうことが起きたのだろうということ。いずれにしても、きちっとその因果関係等も含めて調査をしている、こういうところでございます。
小沢(和)分科員 第二にお尋ねしたいのは、参議院で我が党の小泉親司、吉岡吉典両議員が取り上げた陸上自衛隊の空出張問題についてお伺いをいたします。
 十五日、防衛庁は、小泉議員が指摘した飯塚駐屯地技官の空出張疑惑について、これを真っ向から否定し、出張は実際に行われたものと認められるなどと報告をしております。その出張した証拠として挙げられております出張報告書その他の資料が本物だというのなら、ぜひ実物を示していただきたいのです。
 小泉議員が明らかにした空出張の疑惑というのは、そういう事務を担当していた隊員が、余りのことに西部方面隊に直訴したが、逆に、覚悟してやれなどとおどかされて、ついに思い余って各方面に告発しているものであり、我が党はこの主張に確信を持っております。
 私の手元には、まだ多くの資料がありますが、本日は、その一つとして、陸上自衛隊福岡病院の空出張の疑惑についてお尋ねをいたします。
 同病院の出張旅費精算請求書を見ましたが、医官募集を理由にした出張が、平成八年二件、同九年一件、同十年四件、同十二年に二件の計九件ありました。
 私が受けた説明によると、自衛隊の医官は、基本的に防衛医科大学で養成され、毎年六十数人が卒業して医官になっているということであります。そして、予測外の欠員補充のために一般の医師から年二回公募して数人、さらに幹部候補生コースで年一回の募集で数人を採用しているということです。こうした業務は、本庁とせいぜい地方連絡部が行うはずで、個々の自衛隊病院が医官募集に出張させるなどということは常識的にあり得ない話だと思います。
 さらに不可解なことがあります。医官募集を名目にした出張の行き先が所沢市の防衛医科大学であるものが、さきの九件のうち五件もあることであります。お配りしている資料の初めから五枚までがそれであります。
 陸上自衛隊福岡病院が何でわざわざ身内の防衛医科大学に医官募集のために出かけるのか。防衛医科大学の卒業者の配置は、陸海空各幕僚監部から集約された要求に基づいて本庁人事局が行うものではないのですか。
松谷政府参考人 お答えを申し上げます。
 自衛隊における医官の確保、募集についてでございますが、自衛隊におきましては、防衛医科大学校を卒業した者を中心に医官として養成をしているわけでございますが、このほかに、今先生から御指摘もございましたが、一般の医科大学、大学医学部などの新卒者を対象といたしました医科幹部候補生、また既に医師免許を取得した者を対象といたしました医科幹部、これらの試験を受けた者からもあわせて医官の確保をしているところでございます。
 医科幹部候補生及び医科幹部の募集につきましては、事務的には、今御指摘がございましたが、陸上、海上、航空各幕僚監部及び自衛隊地方連絡部が実施をしているところでございますが、これに加えまして、必要に応じ、各自衛隊病院などに所属いたします医官が、自衛隊における医官制度の周知を図るなどの募集広報及び応募する意向のある医師や医学生に対する働きかけを行うといった形の支援を行うことがございまして、部外の大学病院などで行われている症例検討、研修に出席する際にも、自衛隊医官制度の周知等の活動を行っているところでございます。
 特に、医科幹部に関する医官募集につきましては、診療科長などの欠員補充といったような実際的な必要性もございまして、病院を適切に運営するために欠くことができないものというふうに考えている次第でございます。
 なお、今お話のございました自衛隊福岡病院、また九州には熊本病院もございますが、ここにおける医官募集を用務とする出張は、平成十年以降十九件ございます。
小沢(和)分科員 資料を見ますと、平成十年の二月から三月にかけて、人物を違えて三回も福岡病院から防衛医科大学に医官募集の出張が行われたことになっております。
 一体何をやったのか。幹部候補生や一般からの医官公募の試験などは五月あるいは秋で、この時期にそんな業務はないはずです。この五枚の出張旅費精算請求書も、余った予算を使い切るために、二、三月、毎年度末に集中的に空出張していると言いましたが、二、三月というこの時期にそういうことをやっているという元自衛隊員の証言を裏づけているのではないでしょうか。
 長官に、小泉議員が先日指摘した疑惑の再調査とあわせて、この自衛隊病院の空出張についても調査をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
松谷政府参考人 今御指摘の、平成十年二月から三月にかけての医官募集用務の出張でございますが、自衛隊福岡病院に所属する三名の医官が所沢の防衛医科大学校に医官募集を用務として出張している事実がございます。
 実際に出張しておりますので空ではございませんけれども、その内容等、本人の言によりますと、論文の指導あるいは各科の症例検討に出席したといったようなものがございまして、必ずしも全員が明確には医官募集につながる用務を行っているかどうか定かでない面もございますので、実際に出張しているところでございますけれども、用務を含めまして、さらに事実関係について確認をいたしたいと考えている次第でございます。
小沢(和)分科員 私がさっきから再三言っているのは、その時期に出張したとしても実際にはやることがないはずだ、大体、病院から自衛隊の大学の方に行ったって、とりたてて改めて募集なんてするようなことが業務としてないはずだということをさっきから言っているわけであります。
 時間もありませんから先に行きますが、先日、防衛庁が私に示したところでは、民間の医師が自衛隊病院に手術指導を行った実績は、最近五年間で二百五十三件に上るということであります。六枚目の資料がそれであります。
 これも私は奇異に感ずるのです。戦争では、負傷に対する治療が一番重要な医療行為であり、自衛隊としては特に手術などに堪能な外科の医師を養成し、その水準を高めることに平時から力を入れているはずだと思います。本当に自衛隊の医官は民間からしばしば手術の指導を受けなければならない程度の水準なんでしょうか。
松谷政府参考人 お答え申し上げます。
 自衛隊病院におきましては、患者さんの疾病治療の上で高度な専門医療知識及び技術を必要とする手術あるいは処置などを行う場合に、今御指摘のように部外の医師及び歯科医師を招聘して指導及び助言を受けている場合がございます。それほど多いというものではございませんけれども、十六の病院でここにある二百五十三件ほどございます。行っていない病院も幾つかございます。
 なお、招聘する件数二百五十三件は、そこにございますように年度ごとに数十件のオーダーとなってございますが、今申し上げましたように、もちろん自衛隊の医官あるいは自衛隊の病院、医務室等それぞれ専門的な医療を行うべく努めているわけでございますけれども、医科、歯科それぞれの専門分野等がございますので、そこにたまたま専門の者がおらない等いろいろな事情がございますし、また医学の方も日々これは進歩してございます。新しい技術を習得した方からそれらのことを学び取るということも必要でございますので、必要な場合には、招聘してそのような指導助言を受けているという場合があるわけでございます。
小沢(和)分科員 私は、この中にも空出張があるのではないかと思い、調査をいたしましたところ、最近決定的な証言を得ました。資料の七枚目は、福岡病院が平成十二年二月十七日から十八日にかけて、東京都文京区湯島にあります東京医科歯科大学からA医師を手術指導のために招聘したという旅費精算請求書であります。備考欄にある住所は東京医科歯科大学の所在地で、最寄り駅は御茶ノ水駅になっております。旅費をもらったはずの医師Aさんについて、東京医科歯科大学に問い合わせましたところ、既にAさんはその前年の十二月三十一日付で東京医科歯科大学を退職し、国家公務員共済組合の三宿病院に勤務されております。Aさんが東京医科歯科大学から派遣されたという話はそもそも成り立ちません。さらに、Aさん自身が医局の記録で確認して回答されたところでは、手術指導に当たったはずの二月十七日と十八日は、世田谷区の三宿病院で診療に当たられておったのであります。
 そうなりますと、この出張旅費請求書は民間医師の氏名を使ってでっち上げたものということになるのではありませんか。年度末の予算消化のため、隊員の空出張だけでは足りず、民間人の名義まで使用したということでしょうか。Aさんは、これより相当以前、一度陸上自衛隊福岡病院に招かれたことがあり、それで氏名や交通経路等がわかっていたのだろうと言うんですが、まことに罪が深いと思います。
 法務省にお尋ねしたいんですが、このように部外者を招聘したことによって出張があったかのように見せかけて、その旅費を請求し支出させる行為は、虚偽公文書作成罪と詐欺罪に該当するのではありませんか。
河村政府参考人 御説明申し上げます。
 犯罪の成否は、個々具体的事案におきまして捜査機関が収集いたしました証拠に基づいて個別具体的に司法の場で判断されるべき事項でございますので、法務当局として答弁いたしかねるのでございますが、一般論として申し上げますと、虚偽公文書作成の罪は、公務員がその職務に関しまして行使の目的で内容虚偽の公文書を作成した場合に、また詐欺の罪は、人を欺いて財物を交付させるなどした場合に成立するものと承知いたしております。
小沢(和)分科員 長官に重ねて、こういういろいろな疑惑を私さっきから申し上げたんですが、調査をしていただきたいと思いますが、いかがでしょう。
石破国務大臣 これを全部調べるということは、必ずしも必要ないし適切でもないと思っております。しかしながら、ただいま委員御指摘の空出張でありますとか、そういう不正経理の具体的な端緒があると認められます場合には徹底した調査を行い、不正が発見されれば適切に処理をいたしたいということでございます。
 ですから、今回の福岡病院の件も御指摘がございました、それは、そのような措置を今とっておるところでございます。ただ、具体的内容を今お答えできる段階にはございませんが、これを全部、悉皆みたいな形で調査をするのは適切でもないし必要もない。しかし、厳正を期するために、御指摘があったようなことにつきましては、端緒があったようなことにつきましては、適正な措置をとってまいりたいというふうに考えておるところでございます。
小沢(和)分科員 陸上自衛隊の空出張問題の核心というのは、会計隊を中心に組織的にこうした手段によって裏金づくりが行われ、それが幹部の懐に入ったり、官官接待の財源になったりしているということであります。自衛隊幹部の腐敗が非常に深刻だと言わざるを得ません。
 もう一つ、私は、きょう、沖縄の第四三〇会計隊が作成した昭和六十二年と六十三年の特別経費簿、つまり裏帳簿の現物を持ってまいりました。これがそれです。古いとはいえ、これは本物であります。資料の八枚目以下にそれをつけておりますが、長官には固有名詞もついたコピーを特別に先ほどお渡しをいたしております。
 御丁寧なことにこの裏帳簿は、「陸上自衛隊原議書 起案用紙一号の五(部隊用)」という事務用紙の裏紙を使ってできているんです。そして、支出状況をチェックした隊長の判まで押してあります。
 特別経費簿には、企業からもらった六十二年一月九日の三十一万円、三月十二日の二十五万円、「隊長より受入(日本特殊止水)」と注記した十二月二十三日の七十万円が収入として記載されております。資料の八枚目と九枚目にあります。
 どうして企業からこういうまとまった金をもらうことができるのか。我が党の調査では、例えば長期の演習でよそに行ったようなときに、現地の業者と食料の調達で随意契約をする。予算では牛肉を使うところを豚肉にしたり、牛乳をつけるところを乳酸飲料にしたりさせて、浮かせた金を隊に提供させたりしているというんですが、この企業からもらっているという金もそういうことなんでしょうか。
 次に、支出項目には、六十二年七月七日に内局部員○○接待で二万四千円とか、六十三年二月一日と二日、○○一佐接待で二日続けてそれぞれ五万六千三百円と二万五千六百円、三月一日の○○三佐接待で七万八千六百円、五月二十七日の○○一佐接待で八万一千百円などの費目が記載されております。最後に挙げたケースでは、接待のほかに、六万一千二百五十円のサンゴと一万五千六百円の肉という高価なお土産の費用まで書かれておる。
 予算を浮かせての裏金だけでは足りず、民間会社からも裏金をかき集めて幹部のこういう官官接待が堂々と行われているとすれば、余りにもひどいんじゃないでしょうか。
石破国務大臣 恐縮ですが、今、この分科会が始まる直前に委員からこの紙をちょうだいいたしました。このことの真偽も含めまして、ちょっと私、今お答えができるだけの知識を持ち合わせておりません。御指摘を踏まえまして、ただ、昔のことでございますから、どのぐらい資料が残っておるかもわかりませんし、裏金とかいうようなものであるかどうかもわかりません、これは調べさせていただきたいと存じますけれども、私、この場合に不正が行われたというような認識は今のところ持っておりません。この資料につきましては、持ち帰らせていただきまして、拝見をさせていただきたいと存じます。
小沢(和)分科員 私がもう一つあきれておりますのが、六十二年四月十二日分の三万三千四百二十円の支出と記載されております「隊長奄美現偵」であります。現偵というのは、現地偵察のことです。その資料が十四枚目の資料でありますが、これには別に領収書と覚書のコピーもくっついておりますが、レンタカー代やガソリン代が示されているほか、「つり、もぐり、一般海水浴、ゴルフ、宿泊設備等研修」などと記入されております。陸上自衛隊はいつから釣り、潜り、一般海水浴、ゴルフ、あるいは宿泊設備を見ることなどが研修、偵察になったんでしょうか。この日は、メモに日曜日とあります。要するに、隊長が現地偵察と称して、裏会計を使って遊興したということではないんでしょうか。
石破国務大臣 これも先ほどお話にありまして、今初めて拝見をしたものでございます。お答えできるだけの知見を持ち合わせておりません。
 現地偵察の中で、これは遊興ではないかという御指摘ではございますが、このことの真偽も含めまして、お答えできるだけの知見を持ち合わせておりませんので、持ち帰らせていただきまして、拝見をさせていただきます。
小沢(和)分科員 この裏帳簿でさらに重大なのは、二カ所にわたり、会計検査院の検査官に対する接待を疑わせる記載があることであります。六十三年一月二十七日、○○検査官接待で五万四千百七十円、四月二十一日に会計検査院検査接待用として十三万円とあります。会計検査院、こうしたことが自衛隊の各駐屯地等に対する検査時に長年行われてきたということではないんですか。こうした事実について把握しているのか。
 検査官の土産については、次のような証言も得ております。検査官が来ると、料亭での接待や、時には温泉地での接待が行われ、豪華な飲食が振る舞われる。その上で自衛隊側が検査官を土産物屋に連れていくと、検査官は自分が気に入った高価な土産物の前にたたずむという。それを同行した自衛隊担当者が察して購入し、検査官の自宅に宅配便で送るのだという。これについては、最近まで変わらなかったというんです。
 本当にあきれた話です。話をしてくれた関係者によれば、陸上自衛隊の会計隊関係者ならだれでも知っていることだというんですが、会計検査院は、こんなことでまともな検査ができますか。
白石会計検査院当局者 会計実地検査時の綱紀粛正の問題につきましては、昭和五十二年の時点におきまして、国会、マスコミ等においても大変御批判をいただきました接待問題がございました。そういったようなことで、過去におきまして、接待を受けたというような事実があったことは、残念ながら事実でございます。
 その後、私どもといたしましては、会計検査院職員及び受検機関に対しまして通達等を発するというようなことで注意を喚起してまいったところでございまして、実地検査の際に接待を受けるというような事態はないものというふうに承知をしているところでございます。
 なお、ただいま委員の方から御指摘がございました関係につきましては、ただいま現在初めて拝見をしたものでございます。何分にも古いということもございますので、どういう方法でどういうふうに調査をするかという問題もあるかと思いますが、いずれにしても、まずは、この辺の事実関係の有無について私どもとしても調べさせていただくということはさせていただきたいというふうに思います。
小沢(和)分科員 時間が参りましたので、我が党としては引き続いてこれらの問題について追及するということを申し上げて、終わります。どうもありがとうございました。
奥田主査 これにて小沢和秋君の質疑は終了いたしました。
 次に、塩田晋君。
塩田分科員 石破防衛庁長官、防衛大臣に質問いたします。
 先般、衆議院におきまして、長年の懸案でございました、いわゆる有事立法、武力攻撃事態対処法等が成立をいたしました。石破長官におかれましては、大変な御努力をされた結果であると敬意を表するものでございます。
 また、私も、この法案は決して十分なものでないですけれども、半歩、一歩の前進である、長年の懸案であったものが解決した、これからいろいろ補強をしたり、また新法をつくっていく作業も含めまして、これからもひとつ努力をしていただきたい、このことをまず最初にお願いしておきます。
 最初に、会計検査の関係、平成十三年度決算に関連した問題といたしまして、お尋ねします。
 私は、毎回取り上げてきておるわけですが、自衛隊の装備の発注につきまして、一般公開競争、自由競争という原則の上に立って、しかしいろいろ特殊事情があるということを申し上げて、そういったことを配慮した上で、不正とかあるいは不当な支出が行われないように、十分に関係省庁と連携を密にして、発注単価の決定とか、発注につきましては十分に基準をつくって、遺憾なきを期してほしいということを再三要望してきたわけでございますが、この平成十三年度決算に関係したことで、日本飛行機株式会社の問題がまた起こっております。
 これは、新聞等の情報によりますと、防衛庁に対する武器、装備の供給は相当大口の方だと言われておりますが、そこで水増し請求だとかあるいは不正な契約があったとか、あるいは、そういったことがありながら、防衛庁職員がこれを調査に二回も行っていたのにかかわらず、それを見逃しておった、こういったことも報じられております。
 こういう事件が起こると、防衛庁に対する国民の信頼感がやはり失われていく、これが非常に心配です。水増しとか不正とかあるいは背任とか、こういった言葉が躍りますと、やはり印象が非常に悪いものですから、大部分の方はまじめにやって一生懸命国防のために身を挺してやっておられるのに、そういったちょっとしたというか、一つ二つの事件で全体の印象がそういうふうになってしまうことは非常に遺憾でございますので、その辺は、基準の作成作業といいますか、単価あるいは発注の仕方についての各省庁との連絡調整の会議を経てその作業を進められておるかどうかということについて、防衛庁長官にお伺いいたします。
石破国務大臣 日本飛行機の件につきまして御指摘をいただきました。
 これはもう委員すべて御案内のことかと思いますが、これは本当に会社ぐるみで、帳簿そのものから改ざんをして、防衛庁丸ごとというか、国丸ごとというか、だまされたようなお話でございます。だました方が悪いのか、だまされた方が悪いのかという妙なお話でございますが、調本事件とそこは違うところなんだろうと思っています。
 私どもとしては、制度調査もかけておるわけでございますし、サンプル調査的なものもやっておるわけですが、これが巧妙に、すべてすべてだまくらかすようなことをやられましたときに、本当にそれがわかるかといいますと、これはやはり経験を積み、勘を養い、これはちょっと高いんじゃないの、幾ら何でも少し高いんじゃないのという感覚を持たなければいかぬのだろうというふうに思っております。
 そして、何を一般競争入札にかけ、何を随契でいくかということにつきましては、産業の育成、そしてまた競争の保持あるいは産業の維持、いろいろな観点がございますが、一般に、民間でもできるもの、そして一般競争入札になじむもの、それはそういうものに付していきたいというふうに考えておるところでございます。
 私どもも、例の調本事件以来、原価計算部門と契約部門を分けるとか、いろいろなことをやってきました。ただ、正直申し上げて、そういう本当に確かなのかということを調べるような部門の人間が諸外国に比べて極めて少ないということは、これは事実でございます。アメリカなんかに比べましても、これは何分の一の数でやっておるわけでございます。それは何も言いわけをするつもりもございませんけれども、私どもも、さらに万全を期すべく努力してまいる所存でございます。
塩田分科員 私は、この問題を細かく徹底的に追及するということはこの場ではしないつもりです。
 ただ、発注の問題につきましては、武器の輸出ができない我が国の状況、それから市場が非常に狭いという問題、武器の性格からいって、安ければ安いほどいいというものではないわけですね。そこに、国内の防衛産業の確保、維持という点からいっても、単価の決め方が非常に難しいけれども、やはりある一定のアローアンスがないといけないと思うんですね。それによってどんどん民間企業がもうけていくということじゃない。しかし、損をしてなくなっちゃ困りますし、といってべらぼうに高い単価ではいけないし、といって安ければ安いほどいいというものでもない。その中でどういう単価が適正かということですね。これを長期間にわたってどう見るかという問題も含めまして、やはり関係の省庁と十分に連絡をとって適正な基準というものを出して、誤りの起こらないようにひとつやっていっていただきたいということを要望したいと思います。
 私は、今日の北朝鮮と我が国の関係につきまして、基本的な問題で、防衛庁長官に対してお伺いしたいと思うんです。
 悪の枢軸という言葉が盛んに、世界的に出ておりますね。ブッシュ大統領が、北朝鮮、イラク、イラン、この三国は悪の枢軸である、こう言ったことに対して、北朝鮮は、真の悪の枢軸はアメリカとイスラエルと日本だと言っているんですね。これについてどうお考えになりますか。
石破国務大臣 何を善と言い、何を悪と言うかというのは、それは国によって、人によって違うのかもしれません。また、合衆国が三カ国を悪の枢軸と名指しておることについて日本国政府として論評する立場にもないと思っています。
 ただ、私は思うのですが、やはり今回のイラクにしてもそうですし北朝鮮にしてもそうですが、私、イランのことはつまびらかには存じませんが、極めて閉鎖的な体制をとっているということ、そして、一般国民の権利というものが非常にないがしろにされているということ、そして大量破壊兵器というものを権力者が恣意のままに操っているということ等々を考えてみましたときに、それは、アメリカ、日本、イスラエルというような国とは違うのだろうと思っています。
 アメリカ、イスラエル、日本というものが何で彼ら流の悪の枢軸になるか私の理解の外でございますが、私どもは、いずれにいたしましても、自由と民主主義というものを基調とし、そしてまた大量破壊兵器の拡散を防ぐということにおいて、アメリカ合衆国が申しておりますところの「悪の枢軸」、かぎ括弧つきでございますが、それとは異なるものだというふうに考えておるところでございます。
塩田分科員 なお、ブッシュ大統領は非常に際立った発言をされたと思うんですけれども、金正日は信用できない、したがって対話はできない、孤立、圧殺以外にはない、こういう発言もしておられるんですね。
 北は、いつでも日本を火の海にするぞ、一瞬にして火の海にする、それだけの力を持っているんだ、こういうことを豪語しておりますね。
 孤立、圧殺以外にないと言われたこの北朝鮮ですが、その言動を見ると、日本には若干配慮しながら言っていると思うんですけれども、かなり激しいですね。しかも、実際核兵器を開発しているし、現に二個持っているということも言明したと言われています。また、ミサイルは明らかに日本に到達するもの、あるいはテポドンに至っては、二号、三号になりますと、アメリカ合衆国、大陸にまで届くようなものを開発しつつあると言われております。日本の全土はもうノドンで十分に射程圏内に入っている。ところが、その精度が非常に悪いということで、六百メートルの範囲内とかあるいは一キロとか、そういう話もありますが、精度が悪ければ悪いほどまた危ないものですね。軍事施設に向かって撃ったつもりが大阪や東京のど真ん中に入っちゃった、こういうこともあり得るでしょうし、決してそれは安心できない状況だと思うんです。
 しかも、北朝鮮の言論を見ますと、公式の発表なりあるいは労働新聞等で見ますと、力がない者はばかにされる、こういうことをはっきり言っているんですね。だから、アメリカにばかにされないようにミサイルも原爆もつくるんだ、そして、アメリカに到達できて、アメリカが恐れなければ本当の力にならないんだ、こういうことを言って、現に今、軍事力の増強を進めている。これの号令を下している。日本人がそれを聞きますと、まさに力がない日本、これがばかにされているんだと。中国からもいろいろな内政干渉、あるいは北朝鮮を初め周辺の国からもいろいろと言われて、頭を下げ、物を持っていき、金を渡すといったことが余りにも目立つわけですね。こんなことで本当に日本はいいのかどうか。
 力とは何かというと、端的に言いますと、経済力もいろいろありますけれども、やはり軍事力。北朝鮮はそれを言っているわけですね。軍事力を持たなければ、それが十分に強くなければばかにされるんだ、ばかにされないためにも我々は軍備の充実を徹底的にするんだ、こう言っているわけですね。
 こういう現状について防衛庁長官は、いや、そうじゃない、日本はちゃんとばかにされないだけの大きな軍事力を持って世界に恐れられているんだ、こういうふうに見ておられるか。どうですか。
石破国務大臣 金正日氏がイラク攻撃を見てどう思っただろうかという議論がありまして、これはひょっとしたらば、やはり査察なんか受け入れたからあんなことになったのだ、そして核を持っていると言わなかったからあんなことになったのだ、よって我が北朝鮮はやはり査察は一切拒否する、そして核を持っているんだと言えばイラクのようにならないと思っているのではないかという説があります。本当のことはわかりません。本当のことはわかりませんが、そうだとすれば、それは大変な考え違いなのだろうというふうに思っております。
 私どもは、この核の問題は米朝二カ国間の問題ではなくて、これは全世界の問題であるということだと考えておりますし、そのために、NPTに復帰し、きちんとした形で査察を受けるように圧力を加えていくことが大事なのではないかというふうに思っておるところでございます。
 さて、では力とは何だという御指摘でございますが、私どもの国は、例えて申しますと、F15要撃戦闘機という戦闘機は二百機持っております。要撃戦闘機としては世界最高水準の戦闘機でございます。そういたしますと、北朝鮮はたくさん飛行機を持っておりますが、本当に第三世代以降の戦闘機というのはほとんどない。むしろ第一世代なんかに属するような古い古い、博物館に行くようなものがたくさんあるわけでございますね。そうしますと、そういう飛行機がやってきたとしても、F15二百機態勢であれば、もう我が国に入ることはできないということだろうと思います。海上においてもそうであります。
 そうしますと、恐れなければいけないのは、ミサイル、ゲリラ、テロ、そういうようなものに対して我が国の態勢は本当に万全なのかということだと思っております。それは不審船対策であり、あるいはゲリラ・テロ対策でありということでございまして、このことは、私は法整備はほとんど済んでいると思っております。要は、警察との連携、海上保安庁との連携をいかにとるかということ、そして運用がきちんとできるかということだと思っております。
 ミサイルにつきましては、これは再三国会でお答えをいたしておりますように、そのために必要な打撃力は合衆国にゆだねるという形になっておりますし、第一撃甘受ということでは決してございません。私どもとしては、おそれだけでは足りないが、しかしながら現実に被害を受けてからでは遅いというふうに考えております。
 あわせまして、必要な打撃力の行使を米国にゆだねておるということで、ミサイル、テロ、ゲリラ、そういうようなものに対します、一種の非対称的な脅威というものに対して万全の備えをしていくということが必要ではなかろうかと思っておるところでございます。
塩田分科員 かつてこの決算委員会で小泉総理に私は質問をいたしまして、防衛力は本当に大丈夫か、特に、防衛庁の予算はここ八年、九年と足踏み状態で、五兆円前で全然動かない、これで大丈夫かと。しかも、非常に節約をしながら経費を捻出してやりくりしているんだというお話もございました。やりくりはいいんですけれども、高速道路に乗ると料金がかかるので一般道路を走っていますとか、そんな苦労までしておられる、本当に大丈夫かなという感じなんです。
 そこで、小泉総理が私に答弁された中で、防衛力を強化すれば、盾とやりの関係だ、盾を強くすれば強くするほど相手はまたやりの鋭いのをつくっていく、盾を撃ち抜くような武器をつくるんだ、だからこれはもうイタチごっこになって、ますます世界が戦争に焦点が合わされて非常に経済負担も大きくなるという話でちょうど終わってしまったんです。
 そういった考え方はあり得るんですか。総理のお言葉ですから、総理がそういうふうに考えておられることについて、議論をされてはいないと思いますけれども、何か、これ以上やっちゃまずいんだというような印象を受けた答弁をいただいたんです。いかがお考えですか。
石破国務大臣 済みません、委員と小泉総理とのやりとり、今初めて承りました。
 これは例えて言いますと、ミサイル防衛というものを配備した場合に、一般論として、我が国がという意味ではありません、一般論としてミサイル防衛を配備したときに、それではそれを超えるだけの数のミサイルを持つんじゃないか、要するに、ミサイル防衛システムが盾で、ミサイルがやりだといたしますと、ミサイル防衛システムを配備しただけで軍拡をもたらすんじゃないかという議論と一脈通じるようなところがあるような気がいたします。
 私は、やはり盾というものはきちんと備えることが必要なのだろう。盾を備えるとまたやりが高度化するので軍拡が歯どめがきかないという議論を総理は恐らくなさったのではないと思っております。そういう議論は確かにないわけではございませんが、しからば、では我々が盾というものを怠ったままでいいか、そうした場合にはやりの方が今の水準でとどまってくれるかといえば、私はそんなことはないと思っております。
 イタチごっこという言葉がいいのかどうかは知りませんが、そういう部分はあるだろう。しかし、それは単に軍備の話だけではなくて、ほかの、例えば条約ですね、ミサイルに関する条約であるとか大量破壊兵器に関する条約であるとか、そういうものがまだ完全ではないわけでございます。NPTにしてもそうですし、CTBTにしてもそうですが、そういう条約がさらに実効性を持つようなという外交努力というのも必要なのではないだろうか、そしてまた、我が国がまさしく国連の場においてそういう条約がさらに実効あるように努力をしていく、そういうこともまた必要なのだというふうに思っておるところでございます。
塩田分科員 北朝鮮につきましてはいろいろなことが言われていますが、国民を飢餓の状態に置きながら放置して、また人権を抑圧して、それで軍備を増強するのに狂奔している、ならず者国家というような言葉まで外国の言葉には出てくるわけですね、日本ではそういうことを言う人はないと思いますけれども、そういう金正日体制を崩壊させるということが一番の決め手だ。
 戦争なくして話し合いで解決していくという方法は、やはり金正日体制をなくしていく、できれば話し合いで、イラクのような武力行使をして一挙につぶしてしまうんじゃなしにという方向で今進んでおると思うんですけれども、条約とかいろいろな約束をしながら、ぽいぽいとすぐに捨てちゃう、破っちゃう、これがまたその国の特徴ですね。本当に信用できない面があります。
 ところが、例えば防衛庁を国防省にと我々は言っているんですけれども、なかなかこれが実現しない。聞いたら、自民党の中では、部会では通るけれども、どこかの機関でもって最終的につぶされちゃうんだ、こういうことも聞きます。
 ただ、いろいろなこと、例えば経済封鎖、経済制裁をやれ、我々も具体的に、拉致議連でもって、拉致の問題解決というのは核の問題と並んで最大の我が国の問題だ、そのためには経済封鎖というカードを使えと。それにはいろいろある、送金の停止とかあるいは貿易をとめるとか、あるいはまた北朝鮮からの船舶を受け入れない、こういったこと、あるいは送金と並んで、今度は在日朝鮮人が出国をして帰ってくるときに無条件に入れないでとめちまえ、こういったこともいろいろ検討しているわけですね。しかし、これらの問題を検討しまして、最後に、今言った国防省の関係と同じなんですね、ある程度までいくけれども、最後に、まあやめておきなさいということ、一言で終わっちゃうんだそうですね。
 これは、よく言われるのは、北朝鮮を暴発させたら大変だ、ミサイルが飛んできた場合に、被害が出た場合にだれが責任を持つんだ、こういう議論がなされているんだそうですね。これは一理あるかもわからぬ。またそれが、その声が大きいからとまっちゃうだろうと思うんですけれども。
 また、朝銀に対する政府の税金を使っての補てんがありましたよね。あれなんかも、去年から、ことしの初めからずっと我々は反対してきたんです。支出することに反対したんですね。いろいろあって、結局、去年の暮れにさっと出てしまったんですね。五千億円というと、合わせて一兆五千億でしょう。在日朝鮮人は十万人ほどだと言われておるんですね。それに一兆五千億支出をする。それがどこへ行くかよくわからない。その先までは、これは追及する責任もないし、権限もありませんというようなことでそのままになってしまった。これも何か、やってやれよという一声で決まったように、想像なのか本当にうわさなのか、わかりませんけれども、そんな声も聞こえてくる。
 こういった状況で、しかも、私は再三この場で確認をいたしましたが、敵国が我が国に対してミサイルを撃ち込んでくる、それが、長官も答弁されましたが、着弾してからでは遅い、しかし準備を始めた段階ではこれはまだ早い、その中間だと。その着手の段階で、座して死を待つよりは敵ミサイル基地をたたく、これは憲法なり条約に認められた自衛権の範囲内である、このことをはっきり明言されて、再確認されたわけです。
 その上に立って、それではそういう事態になった場合に、また、それを北朝鮮がやるぞと言っているわけですね、言っている中で、どういう手段でもってそれを実行するのか。この実行手段が、今日本には準備がない。アメリカにやってもらうしかない。アメリカは日本国内に基地がありますから、そこへ撃ち込まれた場合は、我が国に対する武力行使、侵害である、こういうふうに受けとめて、日米一緒になってやるということなんですね。だけれども、アメリカが、いや、やらないと言ったらしまいですね。やらないことはないと思いますけれども、しかし、アメリカの国民、青年が日本のために血を流すということ、そういうことは本当に、実際問題そういった事態、いろいろあると思いますけれども、事態に対して本当に実力を行使してくれるのかどうか。
 日本がそういう実力を持っていれば、これはやれる、やるときにはやれるわけですけれども、ないでしょう、今は。航空母艦もなければ地対地のミサイルもない。空中給油は何とかできそう、それだけじゃしようがないですね。それから監視装置、停止の監視衛星等も日本は持っていない、ぐるぐる地球を回る、これはやっと二機打ち上げて、あと二機ということでございますけれども、それも十分でない。
 そういったことについて、防衛庁長官は、我が国の国民の生命と財産と人権を守る一番の基礎的な、基本の責任を持った役所であり担当大臣であられるわけですから、本当にこの今の事態を、非常に日朝間も緊迫しているような、言論だけ見ますと緊迫している中で、本当に実力を持って、侮られない、備えあれば憂いなし、治にいて乱を忘れず、これで、本当にこれはやってくれるんだ、国民の皆さん安心してください、こういうことをはっきりと言っていただけるでしょうか。
石破国務大臣 御質問が多岐にわたっておりますので、どうもきちんとしたお答えになるかどうか自信はありませんが、まず、防衛省昇格のお話でございます。これは、政治の場にゆだねるという結論に行政としてはなっておるわけでございます。保守党を初めとして、御党も含めましてかと存じますが、議員立法という形になっております。
 先ほど委員が、おまえは国防の責任者ではないかという御指摘がありましたが、私は国防の主任の大臣ではございません。主任の大臣は内閣総理大臣であり、私は内閣府の外局の長である国務大臣ということでございます。したがいまして、私がここで、国防政策につきましてこう思うのだという責任がある発言をすることは、これはいかがなものかということになる、理屈の上からはそうなるわけでございます。
 これはもう委員の方が私よりもはるかに長い経験をお持ちでいらっしゃいますからよく御案内かと思いますが、日本の防衛政策というのは、本当に長い間の議論によって今日があるものだと思っております。長い間の議論を積み重ねて積み重ねて積み重ねて、今のような防衛力があり、そして防衛政策があるということだと思っております。これがそう簡単に変わるものだと私は思っておりませんし、変えていいものだとも考えておりません。
 日本が持っていない能力につきましては、まさしく日米安全保障条約の実効性をいかにして高めていくか。有事法制が仮にこの国会で成立する、参議院で御審議いただいて成立をすることがあったとしても、それでは米軍に対する支援法制というのはどうなるんだということをきちんと議論をしなければいけないことなんだろうと思っております。
 何がどのような性能を持っている、そして、冒頭委員から北朝鮮のミサイルのお話がありました。かつては持っていなかったわけです。今はそれを持っているわけです。アメリカの持っておる打撃力に我が国はゆだねる、この方針に何ら変わりはございません。それが本当に、委員おっしゃるように、日本の平和と独立、国民の生命財産、これを守るのにきちんとしたものです、さらにこれを補強していくためにはこういうことがあるのですということを国民に向かって御説明することが必要なのだと思っております。
 F15戦闘機のお話をいたしました。世界最強の要撃戦闘機でございます。これは一機百億ぐらいするんだと私は思っております。これを我が国は二百機持っております。そういうことを納税者の皆様方にも御説明をして、私どもの持っておりますのが本当に委員御指摘のように、国民の皆様方にきちんと自信を持って説明できるもの、そして、これからさらに盤石を期すべくやっていかねばならないもの、そういう御説明をすることが私どもの責任だと考えておる次第でございます。
塩田分科員 ありがとうございました。
 全力を挙げてひとつ頑張ってください。
奥田主査 これにて塩田晋君の質疑は終了いたしました。
 次に、長妻昭君。
長妻分科員 民主党の長妻昭でございます。よろしくお願いいたします。
 午前中でも、参議院の個人情報の委員会でもお話があったと思いますけれども、自衛隊が、隊員募集に関して、五百五十七市町村から住民票記載四項目以外の情報を受けていた、こういう話でございますけれども、再度、確認でございますが、その中には、思想、信条にかかわる情報というのは入っていないということでございますか。
石破国務大臣 そのようなものは入っていないと承知をいたしております。
長妻分科員 ここで再度、もう一回長官に断言していただきたいんですが、今後といいますか、これまでもそうだったんだとは思うんですが、防衛庁・自衛隊が、隊員の募集以外あらゆることに関しましても、国民の皆さんの思想、信条を集めるということは、これはもう永遠にない、一切ないということを断言していただきたいと思います。
石破国務大臣 今の委員がおっしゃった中に、募集に関してということと、集めることはない、何を指して絶対そういうことをやっちゃいかぬというふうに御指摘になっているか、ちょっと私の理解が足りないのかもしれませんが、募集に際して、思想、信条というものは、集めるということも調べるということも私はないものだと思っています。
 しかし、これが、例えばその方が、要するに自衛官というのは、きょうの午前中の参議院の委員会でもお答えを申し上げましたが、日本の国を守る、事に臨んでは身の危険を顧みずという宣誓をし、日本の国の独立と平和を守る自衛隊の構成員であるがところの自衛官にふさわしい者であるかどうかということは、それは私どもとして把握をする必要があるのだというふうに考えております。
 これは、募集とはまた別の問題でございます。
長妻分科員 次に、日本飛行機の問題でございますけれども、我が党の石井紘基議員もこの問題にかかわって追及をしてまいりましたけれども、防衛装備品の過大請求が九七年に発覚して、九八年に幹部が逮捕、起訴されたということも過去ございましたが、しかし、その後も、基本的にはこの日本飛行機は相変わらず過大請求していた。そして、防衛庁の特別調査というのが、九九年から二〇〇〇年にかけて入り、さらには昨年入る。二回入ったけれども、そのときは問題が発見できなかった等々がございますので、これは、調査報告書といいますか、今後こう改善する、そしてここが問題があったと、こういう報告書というのはいつぐらいまでに出すおつもりでございますか。
石破国務大臣 これは、現在、事実関係そしてまた再発防止も含めまして、庁内で今検討を行っておるところでございます。この全容というものがまず明らかになって、その上で、対処方針、再発防止ということをやっていかなければいけません。
 ただ、これは先ほど塩田委員の御質問にもお答えをしましたが、物すごい巧妙に巧妙に、まず見破られないようにということでやってきたわけですね。内部告発によってわかった。内部告発によらなきゃわからないのかというふうなおしかりをいただきますが、これはもう公認会計士の目すらかいくぐったという代物でございます。組織ぐるみで、一種の欺罔行為というのか、そういうものを働いたということだと思っています。
 そうすると、それが本当に見破られるだけの体制というものを、我々がまさしく国会のお許しをいただいて、それだけの予算、人員を確保することができるだろうかということも含めて、私ども、検討していかなければいけないことなんだろうというふうに思っております。
 これは、いついつまでに調査報告書が出せるかということにつきまして、明確にいついつまでということをお答えできるだけのものを、私、今持ち合わせておりません。しかし、このことは相当に根が深いお話だというふうに思っております。
 だました方が悪いのか、だまされた方が悪いのかといえば、それはだました方が悪いに決まっておるわけですね。これは、私どもは、国としての被害者なわけでございます。そして、今回初めて、倍返しというのか、そういうものを適用した。それじゃ、利益のほとんどが吹っ飛んでしまうけれども、それでも倍返しをしてもらうということが一種の抑止機能として働いている。そういうことの検証もみんな必要なことだというふうに思っております。再発防止も含めて、私どもとして、庁内で方針というものを決めなければいけない。
 報告書について、いついつまでに出すということは、お答えを今いたしかねるところでございます。
長妻分科員 そして、きょう午前中、福田官房長官が、事態が推移すれば、日米合意があれば北朝鮮への送金の停止というのもあり得る、こういうようなお話をされたやに聞いているのですが、私も、そういう措置というのはあり得るということで、政府がある程度宣言するのは必要だと思っているのですが、これは石破長官、どう……。
石破国務大臣 これは私の所掌ではございませんが、送金をとめるということは、第三国経由のものをどうやってとめるかということをやりませんと実効性が上がらないということだと思っております。そういう意味で、多くの国が参加をして送金をとめる、それがソフトランディングに向けて意味があることだという御議論は、それはそれとしてあるのだというふうに思っています。
長妻分科員 そうすると、日米合意だけでは、まあ、所管ではないのでしょうが、安全保障の所管という意味では、日米合意だけではかなり無理があるのではないかという御所見でございますか。
石破国務大臣 これは、どうすれば実効性が上がるかということでありまして、私は北朝鮮に送金されておる実態というものをつまびらかには存じません。日米間の合意でどれだけとめることができるか、私は、それが日米間の合意でかなりの部分とめられるのであれば、それは大きな有効な手段だというふうに思っております。
 いずれにいたしましても、何がソフトランディングに向けて有効なことなのか、一つ一つ着実にやっていくということだと思います。
長妻分科員 そしてまた、基本的なことを安全保障の件でお伺いするのですが、専守防衛、これはもう石破長官、説明するまでもありませんけれども、専守防衛とは、相手から武力攻撃を受けたときに初めて防衛力を行使し云々という政府の見解がございますけれども、ここで言う専守防衛の定義でございますが、その中にある、今申し上げました、相手から武力攻撃を受けたときという、そのときといいますのは、実際に被害が日本国に目に見える形で発生をしていなくても、それはあり得るという判断でございますか。
石破国務大臣 それは、おそれの段階では足りない、しかし、現実に被害を受けてからでは遅い場合があるというのが、従来から政府の一貫した立場でございます。
長妻分科員 そうしますと、ある意味では着手論、そういう言葉でいいのかどうかわかりませんが、着手がいつかという議論が過去からあるやに聞いておりますけれども、ある意味では、自衛権発動の三要件の初めの、我が国に対する急迫不正の侵害というのも、いつの時点をもって侵害と見るのか、その着手の時期という議論があるやに聞いているのですが、そうすると、例えばの話でございますけれども、これもケースで申し上げたいと思うのですが、ある他国が日本に対して宣戦布告をした、これをもって着手と見る場合も、これはあるということはあるのですか。
石破国務大臣 これはもう委員がよく御案内のとおり、戦争が違法化されておる状態にあって宣戦布告にいかなる意味があるかということの議論はおいておきまして、宣戦布告をしただけでは、これは武力攻撃の着手とみなすことは、私は極めて困難だと思っています。それはやはり物理的な力というものが、仮に申し上げるとするならば、言葉だけで、宣戦を布告すると言っただけで我が国に対する武力攻撃の着手があったと見ることは極めて困難であるというふうに私は考えます。
長妻分科員 そうすると、例えば、感覚をお伺いするのですが、海外、外国の国で日本の首脳一行が人質にあって、そしてその国が日本を攻めるんだというような意思表示をしたというようなケースは、これは着手と見られることもあり得るようなケースでございますね。
石破国務大臣 これはもう本当に、逃げるわけではありませんが、個々具体的にどういう状況なのかというケース・バイ・ケースの判断だと思っています。
 例えば、某国の某都市において、別に何でもいいのですが、そこへ我が国の首脳が全部集まっているということが本当にあり得るのかなと思いますが、例えば枢要な人々が集まっておる、彼らが誘拐監禁をされておるという状況でどうだというお話だとするならば、そのことをもって我が国に対する急迫不正の武力攻撃ということにはならないのだと思います。
 それは、急迫不正の武力攻撃になるかどうかということの判断が一つあって、もう一つは、ほかにとるべき手段があるかないかという、例えばその国の主権というものがどのようにワークしているか、一義的にはその国の警察の問題ですからね。そしてまた第三番目の、必要最小限を超えないかどうかということ。つまり、我が国に対する急迫不正の攻撃があったかどうかということと、自衛権が行使できるかというのは、また分けて考えなければいけない議論だというふうに思っています。
長妻分科員 そうすると、これは古典的な議論でもあると思うのですが、例えばもう一歩論を進めまして、日本の領域内に、領空に他国の爆撃機が入ってきたという場面を想定しますと、これはもちろん自衛隊法八十四条の領空侵犯措置、「必要な措置」ということがあるんでしょうが、ただ、「必要な措置」というのは、防衛出動の自衛権の範囲の行使とはまた意味合いが違いましょうから、そうではなくて自衛権発動の着手ですね。着手というふうに認定をされ得る場合も私はあると思うのですが、その場合は、爆撃機が領空の中に入ってきて、どんなような状況、行動を、まさに爆弾を落とそうとする寸前に着手になるのか、そこら辺の感覚というのはどんなふうに思われておられますか。
石破国務大臣 これも、今どきクラシックな爆撃機がやってきて爆弾倉を開いて爆撃をするというようなことはなかなか考えにくいお話で、今、例えばイラク戦争でもB52が出ましたが、あれはもう空対地ミサイルというものを運搬する手段として使われておるわけですから、今どき、昔は爆弾倉を開いたときなんという議論がありましたが、そういう議論がなじむとは思っていません。
 ただ、今回の場合に、それじゃ領空侵犯ではなくて、一義的には委員がおっしゃるように八十四条の世界なんですよ。しかし、じゃ、どうなったらば我が国に対する急迫不正の武力攻撃と見るかというのは、まさしくそのときの状況によるということだと思っています。
 それが、本当に爆弾を落として我が国の国土が延焼したというようなことになれば、それは普通は我が国に対する急迫不正の武力攻撃だというふうに思いますが、では、どこの時点をもって着手というのかというのは、それはいろいろな場合があり得る。領空侵犯措置というものがあって、それから防衛出動というのか、その前提となる我が国に対する急迫不正の武力攻撃ということになるわけで、それがどういうふうに推移していくかという状況によるのだと思っております。
 それは、ケース・バイ・ケースというふうに言っているのは、いいかげんなことを申し上げるつもりはありませんで、それがどういうような領空侵犯を行ったか、我が方がそれにとって必要な措置というものは何をとったかというようなこととの相関で論じられるべきものだと思っています。
長妻分科員 今、なかなかクラシックというお話がありましたので、例えばミサイルでございますね。これはクラシックではなく、北朝鮮という、まあ特定の国だとなかなか議論しにくいんでしょうから、例えばある国がミサイルをまさに着火をして、まだ日本は攻撃は、被害は発生しておりませんけれども、燃料を注入して、宣戦布告等々の日本せん滅の意思を表明した上で、そういう措置、事態が起こったときに、これは座して死を待つ論とはまたちょっと観点が違う部分もあるんでしょうけれども、そういうミサイルの場合は、これは石破長官も委員会でも御答弁されておりますけれども、多少具体的におっしゃられていると思うんですが、今私が申し上げたところで、当然、即それでとは申しませんけれども、大体そういう感覚というか、でございますか。
石破国務大臣 繰り返しの答弁になって恐縮ですが、ミサイルとミサイル搭載の爆撃機の違うところは、飛行機の場合には領空侵犯という八十四条を使って、その前に、防空識別圏を越えたときに、つまり、領空に入ってからでは遅いですから、防空識別圏を越えたときにスクランブルをかけまして、このまま行くと日本の領空に入る、変針せよというふうに言うわけで、そこから始まりまして、必要な措置をとることができるまで、そういうような前段階のものがあると思います。
 ところが、どこの国でもいいんですが、ミサイルが直立して、ミサイルの燃料が注入をされる。そしてまた、これから東京を灰じんに帰すというような発言があったとする。それとはやはり違うのではないでしょうか。その意思の表明であり、そしてまた向こうの行為であり、そして我が方の対応に対する向こうの反応でありということは、私は違うのだと。
 それぞれが判断されるときの要素として重要なものになるので、弾道ミサイルと爆撃機攻撃というものを同列に論じられないと私が申し上げたのは、そういう意味においてでございます。
長妻分科員 もちろんそうなんですが、そうすると、ミサイルが、日本に対する攻撃の意図、あるいは、実行直前等々の状況で着手と考え得るといいますか、着手という考えになじむようなミサイルの状況というのは、どのような局面ですか。
石破国務大臣 これをもって着手とみなす、こう私は申し上げているわけではありません。ですから、例えて言えばというお話です。
 例えて言えば、地下格納式のものではなくて、地上に出ておるものでなければ、これは見てわかりません、地下格納のものは見れませんから。地上にTELが出ておって、そこに、これから撃つんだという表明があって、ミサイルが、平行になっているものが直立をし、燃料が注入され、今の時代、液体燃料でも非常に短時間で注入可能ですが、これが本当にこれから先、東京を灰じんに帰すのだという主観的意思の表明があって、意思の表明があって、それを実現せんがためにミサイルが直立し、燃料が注入されているということになりますと、これは着手という評価を下せるというような要素が相当にあるのではないかというふうに考えております。
長妻分科員 そうしたときに、お尋ねするわけでありますけれども、当然、仮にそれが自衛権発動の三要件を満たした場合でも、もちろん、手続論としては、防衛出動というのが下令されなければ基本的に日本は動けないというふうに私は認識をしているんですが、それは間違いございませんか。
石破国務大臣 それは、ミサイル防衛だと仮にした場合、これはミサイル防衛の場合もございますでしょう、そしてまた、敵地攻撃というものも、今は合衆国にゆだねておっても、憲法上は、座して死を待つよりもという政府の立場で、法理上は可能だということにしております。
 それぞれがどういうような法的な根拠によって行われるかということは、それは場合によりけりなのだと思っております。基本的には委員御指摘のように防衛出動下令。そして、防衛出動下令、自衛権の行使としての武力行使三要件を満たしてということになります。
 その場合に、ミサイル防衛の場合には、私、以前、何の委員会でしたかしら、去年の有事特だったかもしれません、それは、警察官職務執行法の狂犬、奔馬に対する警察官の権限みたいなものでいけませんかというような質問を、実は、大臣になる前にしたことがございます。要は、それが、勝手にたたくわけにはいきません、勝手にミサイルを撃ち落とすわけにもまいりません。どういうような法的構成をして、それを法治国家として可能ならしむるか。
 法的構成はきちんとやりましたが、時間的に間に合いませんでしたということになりますと、これは一体何のことだかわからない。しかし、法的な構成を何もせずに、ただ撃ちました、こういうことになりますと、それは正当防衛かね、緊急避難かねみたいな話になってくるわけでございます。そのあたりをきちんと詰めませんと、なかなか議論は先へ進まないという認識を持っております。
長妻分科員 そうしますと、防衛出動に限ってお尋ねしますけれども、防衛出動というのは閣議決定であるように聞いておるんですが、そうすると、閣僚全員の意思表示が確実に必要だ、こういう御認識ですか。
石破国務大臣 それは、そのときに連絡がとれない者もおります。それは事後でもよいということだと思います。
 しかしながら、その必要な閣議決定の場合には、その閣議に居合わせたといいますか、間に合ったといいますか、その閣僚の賛成、そしてまた、連絡がつかない者につきましては事後の同意というようなことになるだろうと思っています。
長妻分科員 そして、前回も安全保障委員会で議論させてもらったんですが、海外における自衛権の発動といいますか、日本の自衛隊の武力行使の問題でございますけれども、例えば日本人村というのが海外の国にありますけれども、そこの日本人村に対して組織的、計画的な武力攻撃がある、そして、自衛権が発動を仮にした場合、それは、その日本人村がある海外の国に日本の自衛隊が行って、その日本人村の方々を自衛権を発動してお守りする、これは理屈上はあり得るということでございますか。
石破国務大臣 それが我が国に対する急迫不正の武力攻撃であり、ほかにとるべき手段がなく、最小のものにとどまるとするならば、法理上はあり得ることです。
長妻分科員 今、日本人村の例を申し上げましたけれども、例えば、PKOで活動をしている自衛隊、他国で活動をしていると思うんですが、当然、危険な場所には行かないというのが前提でございますけれども、何があるか、一〇〇%安全なところというのは日本の国内でも言えないわけでございますので、その場合、今申し上げたことは海外で活動する自衛隊にも当てはまることでございますか。
石破国務大臣 それは、その要件を満たせば、それが日本人村であろうがPKOであろうが、何だって一緒です。
 しかしながら、先般の事態特でお答えをいたしましたが、PKOでそういう事態に遭遇したら、それは撤収なんですね、もう既にピースではないわけですから。ピースではない状況が現出したとしたら、それは撤収です。そして、例えばテロ特措法などの場合には、あるいは周辺事態法でもそうですが、そういうような事態にならないようにならないように、気をつけ気をつけ法律をつくり、そして運用をいたしておるわけでございます。
 したがって、そういう場面というものは極めて考えにくいことである。周辺事態であれテロ特であれPKOであれ、そういうことでございます。
 しかし、にもかかわらず、そういうような三要件というものを満たした場合には、それは法理的にそういうことは排除されない、あり得るということですが、極めて考えにくい事態だというふうに私は思います。
長妻分科員 次に、集団的自衛権の御意見を聞きたいんですが、たしか、私の記憶では、集団的自衛権というのは、日本は国の権利として持っている、ただし、憲法の制約で発動していないだけ、こういうような政府解釈だと思うんですが、とすれば、逆に言いますと、日米安保条約というのは、私の理解では、日本が攻撃されたときには、ありていに言えばアメリカが守ってくれる。ですから、アメリカ側にとっては集団的自衛権を発動しているわけでありまして、私もいつも不思議に思うんですが、とすると、集団的自衛権の恩恵をこうむる、これも当然、日本の国が集団的自衛権というものを認めていないとその恩恵をこうむることができないと思うのでございますが、これは、日本も集団的自衛権を受けるのはいいよ、集団的自衛権を。でも、アメリカが攻撃されたときにやる、こっちから能動的にやる集団的自衛権はだめよと。ですから、何か二つの集団的自衛権があって、片方は認めていて、片方の集団的自衛権は、恩恵を受ける方は認めて、恩恵を与える方は認めない、こういう何か二元的集団的自衛権の、そういう解釈でよろしいんですか。
石破国務大臣 これは法制局からお答えいただくのが適当なんだと思いますが、あえて私の見解を申し上げさせていただければ、私は、集団的自衛権に二面性はないんだと思っています。それは、行使することができるかできないか、あるいはそれを国際法上保有しているかしていないか、国内法上どうなのか、憲法上どうなのかという議論はあります。そして、保有しているしていないという議論と行使できるできないという議論は、これまた別でございます。
 しかし、アメリカ合衆国が集団的自衛権を行使することによって日本もその恩恵に浴するのだといえばそうですが、それは一種の、正確を欠く言葉かもしれませんが、反射的利益のようなものなんだと思っています。日本は行使するとかしないとか、持っているとか持っていないとか、そういうことではなくて、アメリカ合衆国が日本国に対する攻撃をアメリカ合衆国に対する攻撃だと認め、反撃をする、集団的自衛権を行使する、その反射的な効果を享受するということであって、日本の集団的自衛権に関する問題ではないと考えます。
長妻分科員 集団的自衛権の議論というのは、きちんともうちょっと整理を政府としてはされる必要があると私は思っておりますけれども、そして、再度石破長官に集団的自衛権の件でお尋ねしますが、今、日本は集団的自衛権が行使できない、認められていないわけでありますけれども、この集団的自衛権を行使できない、こういう状況で十分に日本の独立と平和を守れるというふうにお考えでございますか。
石破国務大臣 守らなければいけません。それは政府の考え方として、集団的自衛権は独立国である以上保有していることは当然であるが、その行使は自衛の最小限度を超えるので、これが憲法上許されない、こういう立場をとっておるわけでございます。
 そういたしますと、それでは我が国の平和と独立を守れないよと言っちゃったら、もうそこで話はおしまいなんですね。そういたしますと、では、私は議論として、集団的自衛権が認められなければ何一つできないんだというお話というのは、やはりすごく飛んじゃった議論だと思っています。
 しかし、集団的自衛権は絶対に行使できない、それはそれで今の立場なんですが、では、集団的自衛権というものをどのように考え、そしてどこまでならば集団的自衛権を行使しないという範囲、個別的自衛権の範囲でできるのかという真摯な議論は、私は必要なんだろうと思っています。それはなし崩し的に解釈改憲をやっているということではなくて、集団的自衛権は行使できないという中で何が我が国として最大限できることなのか、それがなし崩し改憲、法の安定性を損のうていることではなくて、その中において何がどこまで可能なのかということをぎりぎりいっぱい考える、少なくとも私はその立場を今とらせていただいておるところでございます。
長妻分科員 先ほどの海外での武力行使にちょっと話は戻るのでございますけれども、日本人村の例を申し上げましたが、そうすると、十年ほど前に湾岸戦争というのがありまして、そのときに日本人何人かの方がイラクによって人質になったということがありましたけれども、あのときの例、当然石破長官は鮮明にといいますか、覚えておられると思うんですが、あのときも、ある局面であれば、ああいう局面でも日本の自衛権というのは発動し得るという局面もあったのではないかというふうに私も感じるわけでございますが、これはいかがでございますか。
石破国務大臣 これは本当に難しい議論なんだと思っています。
 それが、その国が、イラクが人質としてとっちゃったということになりますと、その国の主権の発動として日本の国民を解放してくれるということはまず期待できないということになります。そうすると、どうなんだと。人質をとっちゃったということが我が国に対する急迫不正な武力攻撃ということで、評価に値するかどうかということがあります。それがそうでないとするならば、これはでは警察権のお話なのかい、自衛権のお話ではなくて警察権のお話なのかいと。では、そうすると日本の警察権というものを、外国の主権国家の管轄下において、日本の主権、日本の警察権なんて使っていいの、こういう議論になってくるわけです。そうしますと、国際法的にこれをどういうものだと考えるかは極めて難しい問題だ、これは言うとなると自力救済みたいな議論にならざるを得ないというふうに思っています。
 そういう場合をどう考えるかということは、私どももよくこれから先考えていかねばならないことだと思っていますが、これが自衛権の発動として、その国に対して我々が自衛権の行使としての武力攻撃というものを、武力の行使というものをなし得るかということになりますと、かなり国際法的にも難しい議論であります。
長妻分科員 そして、最後の質問でございますけれども、今の例でいいまして、在外公館、海外にある日本の大使館等々でございますが、この同じ例でありますけれども、これも記憶に新しいと思いますけれども、一九九六年の十二月にペルーで、ペルーにある日本大使館が、人質をとられ、ああいう事態となったわけであります、テロ組織がかかわっていた。
 仮に、仮にといいますか、そういうことがあったわけでありますが、あのケースも、着手といいますか、自衛権発動といいますか、そういうような発想が持ち得る、ある局面では持ち得るケースなのか。テロ組織が国家に準じる者なのかどうかということもありましょうけれども、仮に国に準じる者であったとするということも前提条件として考える必要があるのかどうかも含めて、その評価をお尋ねしたいんですが、考え得るかという。
石破国務大臣 これは私の記憶に間違いがなければ、ペルーの中のテロ組織対ペルー政府のお話だったと思いますね。ペルーが警察権によってそれを鎮圧できるかできないかというお話で、あのときに、私の記憶によれば、国内であった話は、警察が出せるか出せないかという話だったと思います。
 そうすると、当然のことですが、日本の警察権というものは外国で使えるはずはないのであって、それはだめですねという話になりました。それでは自衛隊が行けるかといいますと、これはとてもじゃないが、国または国に準ずる者でもない、そして我が国に対する武力攻撃でもない、そしてほかに手段がないわけでもないということだったと思います。
 ですから、委員が御指摘のように、我が国の在外公館が、その国または国に準ずる者、そしてその国の主権を有しておる国が全くそれに対しては無力であって、その国または国に準ずる者が本当に我が国に対する武力攻撃という全体の法的評価がなされるような、そういうような行動というものはどんなものなのだろうかということだと思います。それはその場において、繰り返しになって恐縮ですが、それが我が国に対する急迫不正な武力攻撃というふうな評価がなされるかどうかという点にかかっておろうかと存じます。
長妻分科員 時間が参りましたので、終わります。ありがとうございました。
奥田主査 これにて長妻昭君の質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
奥田主査 これより文部科学省所管について審査を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。川内博史君。
川内分科員 民主党の川内でございます。
 遠山大臣には初めてきょうお話をさせていただく機会をいただきまして、本当に光栄でございます。ぜひよろしくお願いをしたいというふうに思います。
 先日、私、国土交通委員会で法案の質疑のときに文部科学省所管のことを聞いて、大変怒られながら聞いたのですけれども、またきょうはそのことをちょっと聞かせていただきたいというふうに思います。
 五月三日の朝日新聞の朝刊に、小学校六年生の通知表、社会科の評価項目に国あるいは日本を愛する心情を盛り込んでいる公立小学校が、全国で少なくとも十一府県二十八市町の百七十二校に上るという記事が一面トップで掲載をされておりました。私自身も、中学校一年生、小学校四年生、二人とも公立の小中学校に通わせておりますけれども、この記事を見まして大変気になりました。
 学習指導要領の目標として、国を愛する心情を育てるということを目標にすることは非常に結構なことかというふうに思いますが、通知表で、国を愛するとか愛国心、福岡県のある学校では、愛国心とそのままストレートに通知表の中で文言が使われていたそうでありますが、これを通知表で段階的に評価をするということに関しては、いささか行き過ぎではないかという感がしてならないわけであります。
 私自身は、大変自分自身では愛国者だと思っているんですね。私は、西郷南洲先生のお墓にも毎月お参りをいたしますし、お盆とお正月には知覧の特攻平和会館に参りまして、国のために命を的にした若者たちの遺書というものも年に二回は必ず読ませていただいて、自分が何のために生きているのかということを言い聞かせるようにしているんですけれども、しかし、それは私がそうしたいと思っているからするわけであって、人に強制されて、あるいは評価をされながらしたくはないというふうに思うわけであります。
 こういう朝日新聞の一面トップに載った記事について、文部科学省としてはまずどのようにお考えになっていらっしゃるかということをお聞かせいただきたいというふうに思います。
遠山国務大臣 今お話ございましたように、新しい学習指導要領では、小学校社会科の第六学年の学年目標の一つといたしまして、「先人の業績や優れた文化遺産について興味・関心と理解を深めるようにするとともに、我が国の歴史や伝統を大切にし、国を愛する心情を育てるようにする。」ということを掲げまして、その実現を目指して、日本の歴史上の主な事柄について、人物の働きあるいは代表的な文化遺産を中心に、日本の歴史に関する指導を行うことにしているわけでございます。各学校におきましては、こうした新しい学習指導要領の趣旨を踏まえて、実際の指導や評価について、それぞれの学校の特色というものを生かして具体化し、実践していただいているところでございます。
 通知表は、法令上作成を義務づけられているものではございませんで、それぞれの学校の判断で作成されているものでございます。それゆえに学校の工夫のしがいがあるところではないかと思います。
 したがいまして、評価を含めて、通知表のあり方につきましては、私は各学校において適切に判断される事柄であるというふうに考えております。
川内分科員 通知表は学校が独自に作成をするものだ、これは私もレクで初めて知りまして、なるほどそうなのかというふうに思ったところでありますが、学習指導要領あるいは指導要録、通知表、この三つの関係について、ちょっとその関係をお聞かせいただきたいと思います。
矢野政府参考人 まず、学習指導要領でございますが、これは学校教育法等に基づきまして文部科学大臣が定める各学校の教育課程の大綱的な基準でございます。
 また、指導要録でございますが、これは学校教育法施行規則に基づく公簿でございまして、各学校の設置者でございます教育委員会がその様式等を定めまして、校長の責任において作成、保存されるものでございまして、内容といたしましては、児童生徒の氏名や入学、卒業に関する記録等を記載いたします学籍の記録と、それから、各教科等における学習指導要領の内容に照らした実現状況、いわゆる評価でございます、評価等を記載する指導の記録から成っているものでございます。
 また、通知表でございますが、これは、各学校が保護者や本人に対しまして、児童生徒の学習状況、成績等を総括的に知らせ、進歩の状況あるいは長所、短所などを確認させ、今後の学習を動機づけたり、家庭での指導の参考としてもらうために作成するものでございまして、これを発行するかしないか、またどのような内容にするかにつきましては各学校が定めることとなっておるものでございます。
川内分科員 私も、この問題に興味あるいは関心を持つようになりまして、子供の通知表を改めてまじまじと見まして、成績は悪いんですけれども、本当に細かくいろいろなことが書いてあるんですね。なるほどなと思ったりもしたわけでございますけれども、学習指導要領の中に目標として書かれている文言が切り取られてあるいは通知表の中に使われるということに関しては、文部科学省は、それが恐らく通知表の中に使われることもあるんだろうなということを予想していらっしゃったかどうかということをお聞かせいただきたいと思います。
矢野政府参考人 先ほど申し上げましたように、学校で作成される通知表は、それぞれの学校の判断で様式や内容等を工夫して作成されているものではありますけれども、各学校の教育課程は、先ほど御説明申し上げました学習指導要領の趣旨を踏まえて編成、実施されるものでございますことから、学習指導要領の文言が、特にそこに定めております教育の具体的な目標でございますとか内容といったことにかかわる文言が通知表に使われることは、私どもとしては当然考えられるというふうに思っているところでございます。
川内分科員 通知表は学校が自主的に作成をするものであるが、学習指導要領はその指導目標を記載するものだから、当然使われることも予想していたという御答弁であったわけでありまして、そういう意味では、学習指導要領の中の文言というものが非常に重要だということを今私は感ずるわけでございます。学校が勝手につくるんだから文部科学省は知らないよということではなくて、学習指導要領に書かれている文言が通知表の中に使われる、そのことを十分予測した上で指導要領をつくっていかなければならないというわけであります。
 そこで、体制側にいる人間、体制側という言い方は非常に古臭いですけれども、でも体制側ですよね、体制側にいる人間が、国を愛する心を育てようとか愛国心を持つようにしようとか言うことに関しては非常に慎重でなければならない。何せ体制側にいるわけですからね。体制側にいる人間、体制というのは国そのものということですよね、それが国を愛しましょうと言うと、何か、体制を愛しなさい、その国の体制を愛しなさいというふうに私には聞こえてしまうんですけれどもね。
 国が嫌いだとか、あるいは憎んでいるとかいう気持ちも、好きだからこそ憎みたくなるかもしれないし、愛しているからこそ嫌いなのかもしれないし、そういうことをすべて含めて愛国心だというふうに私は思うんですけれども、どうも学習指導要領の中で使われている国を愛する気持ちというのはそうじゃないような気がするんですけれども、文部大臣、いかがでしょうかね。
遠山国務大臣 体制側に立つから学習指導要領の中にそういう文言を入れているのはおかしいというのは、私はなかなかよくわからない点がございます、正直申しまして。
 学校教育といいますものは、憲法あるいは教育基本法などに基づいて、平和的な国家及び社会の形成者を育成するということを一つの目的としているわけでございまして、そこのところが非常に大事だと私は思うわけでございます。それは、その体制、政治の、どの政党でどうなっているということではなくて、国家社会の形成者を育成するということをねらいとしているのが学校教育であるわけです。
 新指導要領では、教育課程審議会の答申、これは平成十年に出たものでございますが、その答申を踏まえて、国際社会の中で、日本人としての自覚を持ち、主体的に生きていく上で必要な資質、能力の育成が重要であるということから、日本の歴史や文化、伝統に対する理解を深めて、これらを愛する心を育成するとともに、広い視野を持って異文化を理解し、国際協調の精神を培うことを重視して改善を図ったという立場でございます。
 その一環として、先ほどの小学校六年生の学習指導要領の表現があるわけでございますが、子供たちが国家社会の形成者としてシチズン、市民に将来なるわけですね、政治家であれあるいは普通の庶民であれ、ともあれシチズンとして国家社会を形成する一人となっていく。そういう人間を育てるのに必要な資質の一つとして、みずからの国を愛するということを大事にしましょうというのは、私は、これは体制側とか体制側でないとかそういうことではなくて、もう当然のことのように思うんですね。
川内分科員 だから、その当然のことを体制側の人間が言っちゃいかぬということを言っているんですよ。
 大臣は、あなたは国そのものだという自覚を持っていますか。体制そのものだ、私が国そのものだという自覚を持っていらっしゃるかどうか。
遠山国務大臣 私は、学校教育そのものがどのような形で、先ほど申したような目標あるいは知育、徳育、体育を広く調和させて発展させていく、人格の完成を目指したものであるということの責任をとっている人間でございまして、体制側である、ないという論理でありますよりは、文部科学省の所管する事柄について、それがしっかりとそのねらい、目的に従って各学校で実施されるようにということにおいて責任を持つ立場にあるというふうに思います。
川内分科員 聞いたことに答えていただきたいのです。
 職務、職分としては文部科学省が目標とするものについて責任を持つという今の御答弁はそうですが、遠山文部科学大臣は、権力者として体制そのものだ、私自身が国そのものであるという自覚を持っていらっしゃるのかどうかということを聞いたのです。
遠山国務大臣 私も、学校教育を経てきておりますから、国家社会の形成者として極めて重要な立場にあるということは当然でございますが、閣僚ということで重責を担っているということは確かでございますけれども、それ以上の何かというようなことをここでお答えするような立場にはございません。
川内分科員 そういう無責任な物言いがこの国をだめにしているんだと思いますよ。大臣は権力者なんですよ。
 では、権力者だという自覚を持っていらっしゃいますか。
遠山国務大臣 大臣という職責に伴う責任というものは十分にございます。そのことは十分に……(川内分科員「責任もあるけれども、権力があるから責任があるんでしょう。何を詭弁言っているんですか」と呼ぶ)いいえ。それは私としては、閣僚としての責務を果たす、職責を果たすということにおいて、これは十分に対応する、そういう責務を感じているところでございまして、私自身はそのような立場にある者として日夜やっているわけでございまして、学校教育、学習指導要領を通じて国民をしっかりと教育していく、その責務を持っている、帯びているという点においては、私は最も責任が重い、そういう立場にあるというふうには思います。
川内分科員 ちょっと私が聞いたことにお答えいただけないようですけれども、学校教育の中で、学校の先生というのは体制なんですよ、権力者なんですよ、子供たちにとって。
 その先生が、通知表の中で国を愛する心情とかあるいは愛国心という言葉を使って子供たちを評価する。そしてまた、その上には文部科学省があって、文部科学大臣がいらっしゃる。その体制の枠内でそういう評価をすることに関して、私は問題があるのではないかということを申し上げているわけであって、先ほど大臣がおっしゃられた、日本人としての自覚を持つ、国際社会の中に生きる一員として日本人としての自覚を持つということは大変に重要なことだと思います。そういう書きぶりでもよかったんじゃないですか。日本の歴史や伝統や文化を大事にし、日本人としての自覚を持つようにするという指導要領の書きぶりでもよかったはずです。
 それをわざわざ、国を愛する心を持つようにすると、何か古臭い愛国心あるいはそういうものを想起させるような書きぶりをすること自体に私はうさん臭さを感じているわけです。
 遠山大臣にとって、国を愛する心情というのは一体どういうことですか。
遠山国務大臣 そのことでお答えします前に、社会科の中で取り上げている物の言いぶりといいますものは、先生が引かれたこの学校の通知表の中にも書かれておりますけれども、我が国の歴史や伝統を大切にし、国を愛する心情を持つとともに、平和を願う世界の中の日本人として自覚を持とうとする、これはまさに委員がおっしゃいました自然の感情としての国を愛する心情、そのことが大事ですよということを取り上げているわけですね。(川内分科員「そこはつながっていないでしょう。「国を愛する心情を育てるようにする」で、丸ですよ。日本人としての自覚を持って国際社会の何たらというのは次の項目でしょう」と呼ぶ)国を愛する心情を持つということの大切さという意味では、それは十分に取り上げてしかるべきことであろうと思います。それを通知表の中で取り上げるかどうかはそれぞれの学校の判断でいいわけですね。私はそのように考えておりまして、権力者である教師がずっと国あるいは文部科学大臣につながっているからこれを書こうなんて、私は、そういうふうにはこれをおつくりになった学校では思っていないと思います。
 委員の御質問である、国を愛する心とはなんぞやということでございますが、これは別に法律の審議の話でもございませんので、私は、国を愛する心というのはいろいろな考え方があると思いますけれども、私自身は、偏狭なナショナリズムというのは、これは断然排すべきだと思います。しかし、私どもが持っている郷土愛、あるいはその延長としての国家に対する愛といいますか祖国愛といいますか、それは非常に大事なものだと思っております。あるいは、その国に自分が属していることについて誇りに思ったり、それを好んだり愛着を持ったりということは、国といいますのは風土であり歴史であり文化であり伝統であり、そして日本人が構成しているこの社会であるわけですね。
 それは、権力だの何だの、体制だのということではなくて、国を愛する心情というのは、そういう中で自分が生きているということについて好ましく思い、そして、例えばワールドサッカーのときにすべての若者たちがニッポン、ニッポンと叫んでくれましたね。それから、オリンピックで高橋尚子さんが優勝すればみんな感激をするわけですし、イチローやそれから松井が毎日のようにテレビで話題になっておりますけれども、そうした素朴な心情を含めて、私は、国を愛する心というのはすべての国民が持ってしかるべきものだと思います。特に、私は外国にいたこともございますから、外国において、国を愛しちゃいけないとか愛することは問題だというようなことはおよそ問題にならないわけでございます。
川内分科員 だから、私が言っていることを理解してくださいよ。権力者がそういうことを言っちゃいけないということを言っているんですよ。権力者が、権力を持っていることを自覚もせずに、国を愛する心情を育てるなんということを言うから世の中が偏狭なナショナリズムに利用されるんだ、それが歴史だ、歴史を学ぶのであればそういうことを学ばなきゃいけないということを言っているんですよ。
 ワールドカップでみんなが盛り上がったり、高橋尚子さんが金メダルをとってみんなが喜ぶのは、文部科学省が国を愛する心情を育てたからじゃないですよ。それこそが国民の自然な国を愛する気持ちの発露であって、文部科学省がそんなうさん臭いことをしたら余計にこの国はおかしくなるということを言っているんですよ。何をわけのわからぬことを言っているんですか。
 その通知表を大臣は実際にごらんになりましたか。
遠山国務大臣 もともと通知表は各学校でおつくりになればいいわけでございまして、私は、通知表は通常は見ないわけでございますが、御質問がございましたので、これについては今見ております。
川内分科員 通知表を、朝日新聞が五月三日付で、通知表にそういう文言が盛り込まれているということを一面トップで報じたにもかかわらず、今見ましたと大臣はおっしゃる。新聞で大きく報道されていることに全く無関心であったと。そんな記事に基づいて、では実際にどんな通知表がつくられているのかということに関して私は全然興味も関心もなかったと。先ほど、文部科学省、文部科学大臣として行政に対して責任を持つというふうにおっしゃった割には、全然何の興味も関心もないなんておかしいじゃないですか。
遠山国務大臣 先ほどお答えいたしましたのは、当該、委員が御指摘になっている学校の通知表についてであります。
川内分科員 ですから、新聞の記事で話題になっているにもかかわらず、文部科学大臣として行政に責任を持つと大見えを切られている割には、ちょっとその責任の持ち方が甘いんじゃないですかということを申し上げているんです。反省の弁はないんですか。
遠山国務大臣 私は、各学校において真剣に評価のあり方あるいは通知表のあり方について検討をされて、そして、特に新しい学習指導要領に基づいて今本当に各学校で大変な努力が行われているわけでございまして、それらを十分信頼しているわけでございます。
 そして、評価の観点として取り上げているものについて、教育指導上それぞれの学校で考えてやっておられるわけでございまして、私が全国何万という学校の通知表について一々目を通して、それについて是非を言うということをもし強要されるのであれば、そういうこと自体が大問題だと思います。
川内分科員 何を言っているんですか。新聞の記事に出たものを、実際にどういう文言が使われているか興味を持たなかったのかということを聞いているんですよ。私は興味を持ちませんでした、興味も関心もないとおっしゃったわけですから、それに関して私は問題じゃないかと。新聞の記事に出ているようなものを、実際にどんな文言が使われているか、すぐ取り寄せて、なるほどこういうものかというぐらいは、確認するぐらいは、文部科学大臣として行政に責任を持つと大見えを切られているわけですから。
 末端のことは関係ない、それが文部科学大臣の責任のとり方ですか。冗談じゃないですよ。何を言っているんですか。都合が悪くなると、通知表は学校が自主的に作成するものだと逃げる。しかし、先ほど、学習指導要領の中に使われている文言は通知表の中に使われることを十分に想定していると言っているじゃないですか。文部科学省が全体をコントロールしている、コントロールするんだと言っているにもかかわらず、都合が悪くなると、通知表は学校が自主的に作成するんだと逃げる。そんな責任の所在をあいまいにするようなことばかり言っているからこの国がだめになるんですよ、だれも国を愛する気持ちを持たなくなるんですよ。そこで首を振っているけれども、首をこんなに振っていればいい国になるか、そんなことはないですからね。――まあいいです。ここで私が余り熱くなってもあれですから。余り時間もないので。
 では、現在の学習指導要領については完全なものであると考えていらっしゃるのかということをお聞かせいただきたいと思います。
矢野政府参考人 学習指導要領というのは、従来はおおむね十年に一度改訂してきたところでございますけれども、変化の激しい社会に機動的に対応する、そういう観点から、平成十三年に中央教育審議会の教育課程部会を常設化いたしまして、学習指導要領の実施状況を継続的に検証し、不断の見直しを行うことといたしたところでございます。
 しかしながら、現行の学習指導要領、これは、社会の変化や実施の経緯を踏まえるとともに、教育関係者はもとより各界から幅広い御意見をいただくなどして最善の努力を払って、平成十年度に告示をして昨年四月から実施されたばかりでございまして、その見直しにつきましては、今後、社会の変化や学校における実践の積み重ね等を踏まえながら、今後適切に判断することになると考えております。
川内分科員 また次回の学習指導要領の改訂が必ずあるわけですから、そのときにぜひお考えをいただきたいというふうに思うわけでありますけれども、歴史や伝統や文化を学ぶことは非常に大切なことだというふうに思うし、私もいろいろな人物の生きざまやあるいは歴史の遺産にまつわるいろいろな物語というものを知ることに関しては、自分自身で非常に興味深く勉強してきたつもりであります。しかし、結果として国を愛するとかあるいはふるさとを愛する気持ちというものは出てくるわけであって、通知表の文言の中に――それは文言の問題だと、文部科学省の御担当の方は、そんな細かい文言にこだわらないでください、全体の意図というものがあるんですとおっしゃるかもしれないが、しかし、いつの時代も、ほんのちょっとしたことを切り取られて歴史というものがねじ曲げられる、あるいは悪い方向に動いた時期もあったわけですから。
 ぜひ、国の教育全体に責任を持たれる文部科学省として、きょう私が失礼をも顧みず大変申し上げさせていただいたわけでありますけれども、薩摩で生まれ育った男が言うわけですから、何も心配しなくても、子供たちは自然に郷土や国や地域社会、あるいは周りの人たちを愛するようになりますよ。自然と、歴史や伝統や文化を教えていけば、何も通知表の中に、国を愛する心情を育てる、国を愛する心情があるかないかというようなことを盛り込まれる必要はこの国の未来のためにもないということを私は申し上げさせていただいて、質疑が終わりましたので終了をさせていただきたいというふうに思います。参考にしてください。
 どうもありがとうございました。
奥田主査 これにて川内博史君の質疑は終了いたしました。
 次に、金田誠一君。
金田(誠)分科員 民主党の金田誠一でございます。
 初めて大臣に質問させていただきます。
 きょうのテーマは、日本型チャータースクールの実現に向けてということでお尋ねをしたいと思います。まず、私の基本的な考え方を申し上げ、大臣のお考えを伺いたい、こう思います。
 今日、我が国は、大きな曲がり角に差しかかっており、それをうまく回り切れないことから、深刻な危機に直面をしております。この危機を乗り越えるためには、経済の領域を初め、新しい時代状況に適合するための社会全般の構造改革が求められており、もちろん教育もその例外ではございません。
 こうした中で、政府・与党の対応には二つの傾向があらわれている、こう思います。
 その一つは、竹中平蔵大臣に代表される新保守主義の考え方でございます。これは、経済の領域のみならず、社会全般に市場原理を適用するというもので、規制緩和と民営化を基本にしていると思います。こうした考え方は、京都大学の佐和隆光先生が指摘するように、二十年おくれのサッチャー改革であり、ヨーロッパでは失敗が明らかになって、既に清算されたものである、私はこう考えております。
 政府・与党の中にあるいま一つの考え方、これは、改革を否定して、旧来型の官主導、護送船団方式を温存することにより、特定のグループの既得権益を確保しようというものでございます。こうした方々は抵抗勢力と呼ばれているようでございます。
 しかし、私は、新保守主義の考え方も抵抗勢力の方々の考え方も、今日の危機を回避するものではない、こう思います。
 今日必要な改革とは、第一に、経済の領域では、護送船団方式や談合体質、あるいは大企業の優越的地位の乱用などを排除して、自由で公正な市場経済を実現することでございます。残念ながら、竹中平蔵大臣の改革は、建前とは裏腹に、こうした考え方からほど遠いものになっている、こう思います。
 必要な改革の第二は、市場原理がうまく機能しない経済以外の領域、これは雇用や社会保障や教育の領域になるわけでございますが、これにおいては、価値観の多様化に対応して、自由と公正を基本にしながら、政府がしかるべく関与することによって、だれもが排除されない仕組みをつくることでございます。もちろん、このことは、官主導や護送船団方式による画一的な教育を継続するということでは全くございません。このような改革路線は、イギリスでは第三の道と呼ばれ、ドイツでは新しい中道、スウェーデンやヨーロッパ全般では中道左派と呼ばれていると思います。それぞれの国にそれぞれの特徴がございます。
 さて、このような考え方に立って、今日政府が進めている教育改革を見れば、新保守主義も抵抗勢力も、それぞれ自分の都合のいいところをいわばつまみ食いしている状況で、それぞれが満足している、このように思われます。その中には、第三の道のような考え方は全く見られません。政府がきっちりと関与しながらも、官主導や護送船団方式を排除して、価値観の多様化に対応した自由で公正な教育を実現するという観点は、私には、残念ながら全く見えてまいりません。具体的に例を挙げれば、国旗・国歌の強要や教育基本法の改正は、官主導をさらに強化することを目的としている、こう見えてまいります。
 国立大学法人は、市場原理、民営化、こういう方向を表面的には装いながら、その内実は、官による統制を強めようというものではないかと思われます。
 私は、今日の状況を以上のように認識しているわけでございますが、この私の考え方について、大臣、どのように思われますでしょうか。お考えをお聞かせいただければと思います。
遠山国務大臣 競争原理か、それとも護送船団方式かという二つの図式の中で、いずれも問題ありというお話でございまして、十分聞かせていただきました。
 教育は、私も、単純な競争原理だけで律していいものではないと考えております。他方で、すべて護送船団というのも私どものとらないところでございまして、今日、私どものとっている教育改革のスタンスは、心豊かで活力のある、国民が希望を持てる社会というものを築いていくための教育の役割という観点に立ってやっているわけでございますが、現在、初等中等教育改革、それから大学改革というのを力強く進めております。それを貫く理念といいますものは、画一と受け身から自立と創造へという道でございまして、これはそう単純な市場主義、あるいは単純な護送船団ではないというふうに私は確信いたしております。
 具体的にはそれは、個性と能力という一人一人の持つ特性というものを十分にわきまえてやること、それから、社会性あるいは国際性を持たせること、さらには、選択あるいは多様性の中で、そういったものを重視しながら、伸び伸びと個性が育つようにすること、あるいは結果において、その活動を公開し、あるいは評価をしていくというふうなことも大事ではないかと思っているわけでございます。
 この四つの視点といいますものは、官主導でもなく、また極端な市場原理というものではないというふうに考えるわけでございまして、教育の主体というものが創造的に取り組んでもらうということをねらって、今やっているわけでございます。
 わかりやすい例が、国立大学の法人化の話でございますが、世上かまびすしく、文部科学大臣が中期目標を決定するというところにのみターゲットを絞って、官主導というふうに言われますけれども、これは全く違っておりまして、今は行政組織の一部なんでございますね。したがいまして、国家公務員としての人事的な規制があり、また会計基準もかかりということで、大学が本来持つべき活性化した活動というものができにくい状況であるわけですね。それをむしろ取り去って、そしてやっていく。
 ただ、国立大学というのは、国家の意思で設置をし、そしてその責任において運営をしていくということでございますので、最終的に今大臣が決定ということになっておりますが、法文をよく見ていただけば、随所に大学の特殊性といいますか、教育研究というものを尊重しましょう、大学の意見をよく聞きましょうということが書き込んでありまして、これは官主導とか大臣が決めてというようなことは毛頭ないわけでございます。
 そのような考え方のもとに、ただ大事なことは、今後の日本を担ってくれる若者、子供たちが本当にたくましく、みずから生き抜く力というものをつけていくには、初等中等教育も大学ももっともっと真剣に改革をして、そして持てる力をどんどん伸ばしていきませんと、日本の将来はないのではないか、そのように考えて、今、教育改革を進めているところでございます。
金田(誠)分科員 直接大臣のお考えを伺うことができて、大変な収穫であったというふうに思います。
 マスコミその他、例えば私どものヒアリングとか、さまざまなところで教育改革に関する情報をいただくわけでございますけれども、非常に危惧をしておりまして、心配をいたしてございました。一方では官主導、さっきの川内さんの愛国心の問題もあるわけでございますが、そういう形で、官の規制というものが強まっているんではないか。あるいは、私はずっと厚生畑にいたものですから、病院の株式会社の参入などというのが議論されて、同じような形で、教育も株式会社の参入ということが議論されているようでございまして、非常に断片的に、規制緩和とか民営化とか市場原理というものがつまみ食い的に導入されてきているんではないか、そういう危惧をずっと抱いておりました。
 総論的に今話を聞かせていただいて、方向としてはかみ合う形なのかな、私どもの、私の問題意識ともかみ合って議論できるのかなという思いで今聞かせていただいたところでございまして、直接質問させていただいて本当によかったと、実は今思っております。
 そういう御答弁ではないという予測のもとに次の矢を実は用意してきておりまして、文脈からいうとちょっとおかしな質問に二点目はなるんですが、ちょっと角度を変えた総論の話ですから、これもまた聞かせていただきたいと思うわけでございます。
 今日、大量生産、大量消費、重厚長大産業の時代が終わって、情報化や価値観の多様化が進行する中で、教育の世界においてもこれに対応する改革が求められる時代になっている、こう思います。それがなされていないところに今日の教育の苦悩がある、こう私は思うわけでございます。
 改革の方向は、現在の文部科学省、都道府県教委、市町村教委、こういう縦系列による官の支配と、これによる画一的な教育を根本的に転換することだと思います。教育に対する子供たちのニーズから、全く逆の方向から出発をして、多様な価値観に対応できる教育システムの構造改革を行うことが求められております。
 そのことは、新保守主義の竹中平蔵大臣が言うような株式会社を学校経営に参入させるという次元の話ではございません。また、タカ派の抵抗勢力の方々が言われるように、教育基本法の改正や愛国教育の推進のような官主導を一層強化することでもない、こう思います。この点は、私、さっきの川内さんと共通するところがあるわけでございまして、聞いていて、かみ合わない状態になっていて残念だなと思っておりました。
 そういう観点からすると、教育においてもいわゆる第三の道、新保守主義でもない、かといって旧来型の、ヨーロッパでは社会民主主義の時代がずっと長かったわけですが、これもまた官による支配、こういう状況でもない、それぞれの利点を生かしながらの第三の道改革がまさに求められていると思うわけでございます。
 冒頭の質問と同じ趣旨でございます。最近、愛国心、今も話がございましたが、これが評価される時代になりつつある。これは大臣、冒頭の御答弁でおっしゃったことと違うんではないか。偏狭なナショナリズムは排除しなければならないとおっしゃった。まさにそっちの、排除しなければならない方向に一歩踏み込んだのではないのかなと後ろにいて聞かせていただいたんですが、そうではないとすれば、もう少しかみ合う議論がされてよかったんではないかなと実は思っております。
 まさに今、教育改革をどうするかは、私は愛国心が問われる状況になっているんではないか。偏狭なナショナリズムではない、本当に国を愛する、この国の教育をどうするかというのは国の本当の土台になるところだと思っておりまして、ぜひひとつ、新保守主義的なものも排除をして、文部科学省がずっとやってきた旧来型のものについての深い反省のもとに、言ってみれば、政府が関与をしながらも、それぞれの自主性を生かしていける、多様な価値観に対応していける、新しい時代状況に対応していける、こういうものをつくっていただきたい。これに蛮勇を振るっていただくことが、大臣、まさに愛国心ではないか。ぜひひとつ、愛国心にすぐれた大臣の本領をここで発揮していただきたいと思うわけでございます。
 一回目の質問と重なることで恐縮でございますが、再度お答えいただきたいと思います。
遠山国務大臣 これからの世紀を担う子供たちを、本当に心豊かで、たくましく育てていくということに絞って、私としては、さまざまな施策を今展開しているわけでございます。その理念といいますものは、先ほどの委員の御質問にもお答えいたしましたけれども、これまでの画一的な対応の仕方から、むしろ、教育を受ける者の自立を促し、そして想像力を発揮させるような、そういった教育を展開していくべきだということで今やっているわけでございます。
 例えば義務教育につきましては、これは憲法上も国の責務であるということで、国のかかわりが最も深い分野であるわけでございます。それについて申しましても、最近は、国は、大きな法的枠組みあるいは基準を決めたり必要な財政措置の最小限のものをやる。しかし、各地方において、あるいは学校において、あるいは各教員も自由な発想をして、教員みずからも自立性を持ち、創造、工夫ができるように、カリキュラムの立て方あるいは学級編制の弾力化、定数配置の弾力化等々さまざまなことをやっておりまして、私どもとしましては義務教育のようなことについても、一方的な、縦系列のとおっしゃいましたけれども、そうではない、国は国としての本当に果たすべき役割を果たし、そして教育委員会、学校というものをそれぞれに発展させていく、そういう関係でなくてはならないということでやっております。
 私は、教育委員会の委員長あるいは教育長を集めました会議で常に言っているのは、教育委員会あるいは教育長あるいは教育委員長の役割というのは、各学校をいかにしてサポートするかという姿勢でやるべきであって、上意下達の伝達者としてやるということからは脱してほしいということを常々言ってまいっております。
 そのような姿勢でやっているわけでございまして、私は、教育の構造改革の場合は、経済的な、国が持っていた予算というものを地方に移すというそう単純な、あるいは民間に移す、そういうことでありますよりは、むしろ本来あるべき教育が達成されていくように意識改革なりあるいは方法論の改革なりというふうなことに取り組んでいくというのが本当の教育の構造改革ではないかなということで、今、鋭意全省を挙げてやっているところでございます。
金田(誠)分科員 総論的にはかなり共通できるなという思いで聞かせていただきました。
 ここで各論に入りたいと思うんですが、きょうのテーマでございますチャータースクールでございます。
 私は、今まで申し上げた方向を最も端的に実現している学校システムがアメリカのチャータースクール、これもその一つだと思っております。
 私はこのシステムに衝撃を受けまして、一九九九年の五月二十日、ちょうど四年前なんですが、アメリカ・ミネソタ州のチャータースクールの視察に行ってまいりました。ミネソタ州はチャータースクール発祥の地でございまして、一九九一年に設置を認める州法が制定されて、翌九二年に全米初のチャータースクールが開設をされ、今日では、全米三十七州に二千校以上、五十万人以上が学んでいる、こう言われております。
 これはもうよく御承知のことと存じますけれども、チャータースクールの概要について改めて触れさせていただきたいと思います。
 チャータースクールとは、従来の公立学校とは全く異なる新しいタイプの公立学校システムで、教師、親、地域住民などの団体や個人が、州や学校区というんでしょうか学区というんですか、スクールディストリクトの教育委員会の特別許可を受けて設立されるわけでございます。この特別許可のことをチャーターと言っております。
 アメリカでは教育に関する権限は州にあって、チャータースクールの制度も州によってさまざまですが、概略にまとめると次のようになります。
 (一)設置者は、教師、親、地域住民などが設立するNPO法人や協同組合。個人や株式会社が設置者となれる州もある。また、既存の公立や私立の学校をチャータースクールに変更することもできる。
 (二)設置者は、特別許可を受けるためのチャーター文書を作成する。これには、学校の使命、教育理念、教育プログラム、受け入れる生徒、達成されるべき成果などが記載される。例えば、シュタイナー教育を掲げる学校や、移民の子供を専門に教える学校など極めて多様である。
 (三)チャーターの認可者は、学区の教育委員会、州の教育委員会、州立大学など複数の認可者を認める州と、地元学区だけに認可権限を与える州がある。
 (四)原則としてすべての生徒に門戸が開放され、自由な選択にゆだねられる。定員を超えた場合は、入学試験は行われず、抽せんなどの方法がとられる。通学区域の定めもない。
 (五)チャーターの条件が達成されなかった場合は、チャーターの有効期間、一般に五年程度でございますが、これは更新されず、閉校となる。このことは、公的資金を受けて運営される公立学校である以上、結果に責任を負うという考え方に基づくものであり、既に六十校以上が閉鎖に追い込まれている。
 (六)教師はチャータースクール独自の判断で採用でき、教師もチャータースクールを選択できる。その間、教師は公立学校教師としての身分は保有するが、労働協約は適用されない。 一般に教師の賃金は公立より低くなるが、生きがいを求めてチャータースクールを選択する教師は多い。 また、州によっては教員免許を持たない者が教壇に立つこともできる。
 (七)州や学区に適用される法令や規則は、チャータースクールは原則として適用を免除される。これにより、チャーター文書による独自の理念、方針に基づく教育が可能となる。そのかわりとして、前述の結果責任を負うことになる。
 (八)費用は、公立学校であることから全額公費で賄われ、授業料は徴収されない。その額は州によって異なるものの、おおむね生徒一人当たり年間五千ドル、約六十五万円の予算がつく。生徒が百人であれば六千五百万円、二百人になれば一億三千万円となります。
 以上が、アメリカにおけるチャータースクールの概要です。
 申し上げるまでもなく、アメリカの教育は、人種問題を初めとして我が国とは比較にならないほど多くの問題を抱える中で、マグネットスクールとかホームスクールとか、さまざまな試みが重ねられてきました。チャータースクールは、そうした試みの結果として最も新しい到達点の一つであると考えます。
 そして、この新しい公立学校システムは、我が国の苦悩する公教育に対して新しい可能性を示すものと私は考えます。このチャータースクールのシステムを、我が国においても日本型チャータースクールとして実現を目指すべきものと私は考えますが、大臣の前段の総論の答弁からいいますと、この各論はすとんと落ちるのではないかと思いますが、前向きの御答弁をお願いしたいと思います。
遠山国務大臣 今お話しのように、チャータースクールは一九九〇年代からアメリカで導入されている制度でございまして、保護者あるいは教員などの有志が公立学校を運営するものでございますが、まだ十年程度という、歴史が浅いわけでございまして、現実に学校教育の改善につながっているかどうかについては、必ずしもその評価が定まっていないものと認識をいたしております。
 今、もう委員もいみじくもおっしゃいましたけれども、チャータースクールにつきましては、独自の理念、方針に基づく教育が実現できるといった評価もある一方で、財政的な困窮による学校閉鎖などによって子供たちの教育を受ける機会が失われる例がかなりふえてきております。
 そういった問題もございますし、また、おっしゃいましたように、アメリカの社会の背景が日本とは全く違うわけでございまして、これは多くの人種から成り立っていること、言語もスペイン語あり、もうさまざまで、英語だけでは通じないわけでございますね。それから、所得格差、地域格差、さまざまな格差がございまして、日本のように比較的均一の教育水準を持ち、あるいは収入面でもそれほど大きな格差のない社会、そして言語においても日本語が通じる社会でございまして、そのような背景の中で一体どうするのかということは、私としましては、社会的な背景もしっかり見、そしてチャータースクールの、今アメリカで起きていることについても冷静に客観的に見た上で、これは考える必要があるのかなとは思います。
 ただ、おっしゃいますように、これからの教育というのは、一人一人の子供の個性に応じた、あるいは保護者の要求というものにもできるだけ合致したものでいく必要があろうとは思います。
 今進めている教育改革といいますものは、一人一人の能力、個性というものをしっかり見た上で学校が対処するようにということになってまいっておりますが、しかしあらゆる事象について弾力的に考えるということも大変大事だと思っておりまして、地域が運営に参画する新しいタイプの公立学校の可能性あるいは課題などについて検討いたしますために、昨年度から全国七地域で実践研究を実施いたしております。
 また、去る五月十五日には、中央教育審議会に対しまして、公教育としての学校の教育活動の確実な実施と充実を図るという観点から、新しい時代にふさわしい学校の管理運営のあり方について御審議をお願いしたところでございます。
 したがいまして、私どもも、そういった動きも見、かつまた、本来我が国として世界に冠たる教育をやってまいったわけでございますから、今日問題ありといっても、そういうほかの国で若干動いているからといってやっていいのかということももちろんベースにしながら、このことについては柔軟に、しかし冷静に考えながらやってまいりたい。特に中央教育審議会において、私は、専門的な角度からも検討いただいて、この問題について対処をしたいというふうに考えております。
金田(誠)分科員 今の御答弁で違いがわかりました、大臣と私の。かなり近いことをそれぞれ言っていると思うんですが、山の分水嶺、南側の斜面と北側の斜面で、頂上に近いところにお互いいる、しかし、そこの間には分水嶺があって、はっきりと流れ落ちる水の方向が違う、こういう状態なのかなと思いながら、今の話を聞きました。やはり官による統制、そこのところポイントを握って、これはもう放すことに非常に臆病になっている、こういうのが今の文部科学省なのだなということをわかったような気がいたします。
 次の質問に入らせていただきます。
 今日、我が国において、日本型チャータースクールを目指す草の根の運動が全国に広がりつつあります。
 神奈川県藤沢市では、教員グループが中心となって、「子供たちを学びの主人公に」ということをスローガンに、NPO法人である湘南に新しい公立学校を創り出す会を設立して、毎年夏には、夢キャンパスと称して自主的なチャータースクールを開設しております。
 さらに、この創り出す会が中心となって、同じくNPO法人の日本型チャータースクール推進センターが設立され、ミネソタから講師を招いてシンポジウムを開催するなど、活発な運動を展開しております。このチャータースクール推進センターには、全国から十二団体が協賛団体として名前を連ね、それぞれの地域においても同様の運動が始まっております。
 チャータースクールといっても、つい数年前まではだれもその名前さえ知らなかったものが今急速に広がりを見せているということは、チャータースクールについて、それだけのニーズが潜在しているということだと私は思います。文部科学省にもぜひこの点を御認識いただきたい、こう思うわけでございます。
 そうした中で、私は、湘南に新しい公立学校を創り出す会の方々とともに、衆議院法制局にお願いして、「日本型チャーター・スクール法案(仮称)の概要」と題する文書を作成していただきました。わずかA4判四ページのものですが、再三の打ち合わせを重ね、法制局にも大変な御苦労をいただいた、これは労作でございます。
 日本型チャータースクールは、公設学校という名称、市町村が設置する学校教育法の規定によらない学校で、NPOや学校法人、公益法人が管理運営を行うものとしました。
 概要は既に差し上げておりますから、目を通していただいたと思います。まだ概要の段階ですが、こうした立法も十分に可能と考えております。
 文科省においても、今後、我が国の教育が苦悩している現状を御認識いただいて、日本型チャータースクールの実現に向けて検討を開始していただきたい。どこかでテストケースでもこういう仕組みを始めるような、そういうこともぜひ考えていただきたいと思うんですが、大臣、いかがでしょう、いま一歩踏み込んでいただけませんでしょうか。
矢野政府参考人 恐縮でございますが、少し私の方から御説明をさせていただきたいと思います。
 今後の学校教育のあり方ということを考えますれば、委員がお話しでございました御指摘の法案の趣旨にございますとおり、まさに、一人一人の子供の個性の伸長を目指して、かつ地域の住民の要請にこたえて特色ある教育活動を行うということが大変重要であるというふうに考えておるところでございまして、その点につきましては、まさに私どもも委員の御指摘、そのとおりだというふうに考えておるわけでございます。
 そのような観点から、これは教育改革国民会議の提言でございましたが、その提言の中で、地域が運営に参画する新しいタイプの公立学校、提言ではコミュニティースクールという言い方をしてございますが、大体同じような趣旨の学校だというふうに考えてもいいかと思いますが、コミュニティースクールの可能性や課題について検討することとしておりまして、平成十四年度から実践的な研究を進めているわけでございます。
 また一方、総合規制改革会議の提言を踏まえてことしの三月に閣議決定いたしました規制改革推進計画におきましても、このコミュニティースクールの導入に向けた制度整備について、ことしじゅうに検討し、結論を出すことといたしているところでございます。
 こういう背景、事情を踏まえながら検討を進めているわけでございますが、現段階では幾つかの問題点があるというふうに認識をいたしておりまして、例えば、教育の機会均等……(金田(誠)分科員「いや、いいです。もう時間なんですと来ましたので」と呼ぶ)はい、わかりました。
 幾つか問題があるわけでございまして、そういう点につきまして、さらに十分な検討が必要だろうと考えてございます。
 このようなことから、先ほど申しましたように、中教審にも諮問いたしまして、学校運営のあり方について御審議のお願いをいたしたところでございますので、文部科学省といたしましては、今後とも、地域住民の要請にこたえる学校づくりに向けまして、引き続き、先ほど御紹介しました実践研究を進めながら、中教審における御審議等も踏まえながら、適切に対応してまいりたいと思っております。
金田(誠)分科員 一分ください。
 やはり総論ではそういう共通認識になるわけですが、要は、各論になりますと国の手綱は絶対放さない、これがやはり一つ違うところですね。
 ここにアエラの二〇〇〇年十一月六日号というのがあるんですが、チャータースクールの特集が載っていまして、論説委員の川名紀美さんという方が次のように書いております。「公立学校を営む権利は文部省と教育委員会が独占してきた。 これからもそれでいいのか。 チャータースクールの広がりが突きつけているのは、この根本的な問いだ。」と。
 今日まで、文科省においても各種審議会においてもこうした根本的な問いがあることさえ意識されてこなかったように思われます。しかし、今日、日本の危機を乗り越えるには、官主導の排除、護送船団方式の排除がポイントになることは、だれもが認めるところでございます。それを教育に当てはめれば、必然的にアエラの川名さんの問いになる、私はそう思います。
 大臣におかれても、ぜひそうした観点に思いをはせていただいて、手綱を放す、国家統制から、国民一人一人を信じると。それが愛国心ですよ。ぜひそういう一歩を踏み出していただきたい。
 どうぞひとつ十分な検討をいただきたい、お願いを申し上げまして、質問を終わります。どうもありがとうございました。
奥田主査 これにて金田誠一君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして文部科学省所管についての質疑は終了いたしました。
 次回は、明二十日火曜日午後五時から本分科会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後六時二十三分散会


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