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第2号 平成15年5月20日(火曜日)

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平成十五年五月二十日(火曜日)
    午後五時開議
 出席分科員
   主査 奥田  建君
      浅野 勝人君    河野 太郎君
      宮腰 光寛君    村上誠一郎君
      岩國 哲人君    北橋 健治君
      後藤  斎君    塩田  晋君
      西村 眞悟君    大森  猛君
      春名 直章君
   兼務 今川 正美君 兼務 山口わか子君
    …………………………………
   総務大臣         片山虎之助君
   財務大臣         塩川正十郎君
   国務大臣
   (防衛庁長官)      石破  茂君
   内閣府副大臣       伊藤 達也君
   防衛庁副長官       赤城 徳彦君
   財務副大臣        谷口 隆義君
   会計検査院事務総局事務総
   長官房審議官       諸澤 治郎君
   会計検査院事務総局事務総
   長官房審議官       平沢  明君
   会計検査院事務総局第一局
   長            石野 秀世君
   会計検査院事務総局第二局
   長            増田 峯明君
   会計検査院事務総局第五局
   長            円谷 智彦君
   政府参考人
   (防衛庁防衛参事官)   野津 研二君
   政府参考人
   (防衛庁長官官房長)   山中 昭栄君
   政府参考人
   (防衛庁人事教育局長)  宇田川新一君
   政府参考人
   (防衛施設庁業務部長)  冨永  洋君
   政府参考人
   (総務省大臣官房総括審議
   官)           伊藤祐一郎君
   政府参考人
   (総務省自治行政局公務員
   部長)          森   清君
   政府参考人
   (総務省郵政行政局長)  野村  卓君
   政府参考人
   (消防庁長官)      石井 隆一君
   政府参考人
   (外務省大臣官房参事官) 長嶺 安政君
   政府参考人
   (財務省国際局長)    渡辺 博史君
   政府参考人
   (農林水産省大臣官房審議
   官)           坂野 雅敏君
   政府参考人
   (農林水産省農村振興局次
   長)           日尾野興一君
   政府参考人
   (水産庁増殖推進部長)  弓削 志郎君
   政府参考人
   (国土交通省大臣官房審議
   官)           春成  誠君
   政府参考人
   (国土交通省総合政策局観
   光部長)         金澤  悟君
   政府参考人
   (国民生活金融公庫総裁) 薄井 信明君
   政府参考人
   (公営企業金融公庫総裁) 持永 堯民君
   政府参考人
   (国際協力銀行総裁)   篠沢 恭助君
   政府参考人
   (日本政策投資銀行総裁) 小村  武君
   決算行政監視委員会専門員 小林 英紀君
    ―――――――――――――
分科員の異動
五月二十日
 辞任         補欠選任
  北橋 健治君     岩國 哲人君
  塩田  晋君     西村 眞悟君
  大森  猛君     春名 直章君
同日
 辞任         補欠選任
  岩國 哲人君     北橋 健治君
  西村 眞悟君     塩田  晋君
  春名 直章君     大森  猛君
同日
 辞任         補欠選任
  北橋 健治君     後藤  斎君
同日
 辞任         補欠選任
  後藤  斎君     北橋 健治君
同日
 第四分科員今川正美君及び山口わか子君が本分科兼務となった。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 平成十三年度一般会計歳入歳出決算
 平成十三年度特別会計歳入歳出決算
 平成十三年度国税収納金整理資金受払計算書
 平成十三年度政府関係機関決算書
 平成十三年度国有財産増減及び現在額総計算書
 平成十三年度国有財産無償貸付状況総計算書
 〔内閣府(防衛庁・防衛施設庁)、総務省所管、公営企業金融公庫、財務省所管、国民生活金融公庫、国際協力銀行及び日本政策投資銀行〕


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     ――――◇―――――
奥田主査 これより決算行政監視委員会第二分科会を開会いたします。
 平成十三年度決算外二件中、本日は、財務省所管、国民生活金融公庫、日本政策投資銀行、国際協力銀行、総務省所管、公営企業金融公庫及び内閣府所管中防衛庁・防衛施設庁について審査を行います。
 これより財務省所管、国民生活金融公庫、日本政策投資銀行及び国際協力銀行について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。塩川財務大臣。
塩川国務大臣 平成十三年度財務省主管一般会計歳入決算並びに財務省所管の一般会計歳出決算、各特別会計歳入歳出決算及び各政府関係機関決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 まず、一般会計歳入決算について申し上げます。
 収納済み歳入額は八十四兆八千百八十三億円余となっております。
 このうち、租税等は四十六兆八千六百六十三億円余となっております。
 次に、一般会計歳出決算について申し上げます。
 歳出予算現額は二十兆六千八百六十四億円余でありまして、支出済み歳出額は十八兆七百七十一億円余、翌年度繰越額は一兆九千八百三十八億円余でありまして、差し引き、不用額は六千二百五十三億円余となっております。
 歳出決算のうち、国債費は十五兆八千二百八十八億円余であります。
 次に、各特別会計の歳入歳出決算の概要を申し上げます。
 造幣局特別会計におきまして、収納済み歳入額は二百六十三億円余、支出済み歳出額は二百五十六億円余であります。
 また、損益計算上の利益は一億円余でありまして、この利益金は、法律の定めるところに従い、翌年度に繰り越すことといたしました。
 このほか、印刷局等の各特別会計の歳入歳出決算につきましては、決算書等によって御了承賜りたいと存じます。
 最後に、各政府関係機関の収入支出決算の概要を申し上げます。
 国民生活金融公庫におきまして、収入済み額は二千九百五十億円余、支出済み額は二千七百十二億円余であります。
 なお、損益計算上の損益はありません。
 このほか、住宅金融公庫等の各政府関係機関の収入支出決算につきましては、決算書によって御了承願いたいと存じます。
 以上が、平成十三年度における財務省関係の決算の概要であります。
 よろしく御審議のほどお願い申し上げます。ありがとうございました。
奥田主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院石野第一局長。
石野会計検査院当局者 平成十三年度財務省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。
 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項一件及び本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項二件であります。
 まず、不当事項について御説明いたします。
 これは、租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもので、納税者が申告書等において所得金額や税額等を誤るなどしているのに、課税資料の収集・活用が的確でなかったり、法令等の適用の検討が十分でなかったり、これを見過ごしたりしたため、誤ったままにしていたことなどにより生じていたものであります。
 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。
 その一は、普通財産の貸付料の改定等に伴う債権管理事務に関するものであります。
 北海道財務局ほか二十一財務局等において、継続して貸し付けている土地等の貸付料の改定等に際して、借り受け人との合意が得られていないものについて、借り受け人の合意が得られるまでの間、改定未済事案等として、契約部門では、借り受け人に対する貸付料の改定通知等と債権管理法等に基づく徴収部門への債権発生通知を行っておらず、適切な債権管理事務が行われていない状況となっておりました。
 しかし、国と借り受け人との間の賃貸借関係は継続しておりますから、契約部門において、貸付料の改定等を借り受け人に通知するとともに、遅滞なく徴収部門に対して債権発生通知を行うなどして債権管理事務を行う要があると認められましたので、当局の見解をただしましたところ、財務省では、十四年十一月に各財務局等に通達を発し、改定未済事案等については、契約部門において速やかに債権発生通知を行うこととするなどして、貸付料の改定等に伴う債権管理事務を適切に行うこととする処置を講じたものであります。
 その二は、中小企業者等が設備または機械等を取得した場合等の法人税額の特別控除制度の適用に関するものであります。
 中小企業者等を対象とした電子機器利用設備を取得した場合等の法人税額の特別控除及び機械等を取得した場合等の法人税額の特別控除の両制度の適用に当たり、制度の適用要件等を明細書に記載するなどの方途がとられていなかったため、適用対象法人に該当しない法人が制度の適用を受けるなどしていたことにより、法人税額が徴収不足となっておりました。このようなことが引き続き見受けられる状況にかんがみ、事態の再発を防止するため、改善の処置を講ずる必要があると認められましたので、当局の見解をただしましたところ、国税庁では、十四年十月に各国税局等に通知を発し、控除税額計算明細書の書式に適用要件に関する注意書きを付記するなどとともに、国税局等や税務署において、制度の適用対象法人や控除税額の算出などについて誤りがないよう十分に審査を行うことの周知徹底を図るとともに、各種説明会等の機会を通じて納税者等に対する適用要件等の周知を十分に図ることとする処置を講じたものであります。
奥田主査 次に、平沢審議官。
平沢会計検査院当局者 平成十三年度決算国民生活金融公庫についての検査の概要について御説明いたします。
 平成十三年度国民生活金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
 次に、平成十三年度決算日本政策投資銀行についての検査の概要について御説明いたします。
 平成十三年度日本政策投資銀行の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
奥田主査 次に、石野第一局長。
石野会計検査院当局者 平成十三年度国際協力銀行の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
 以上をもって概要の説明を終わります。
奥田主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。塩川財務大臣。
塩川国務大臣 ただいま会計検査院から御指摘のありました事項につきまして財務省のとった措置について御説明申し上げます。
 会計検査院の検査の結果、不当事項として、税務署における租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があった旨の御指摘を受けましたことは、まことに遺憾であります。これにつきましては、すべて徴収決定等適切な措置を講じましたが、今後一層事務の改善に努めたいと存じます。
 以上でございます。
奥田主査 この際、お諮りいたします。
 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
奥田主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
奥田主査 以上をもちまして財務省所管、国民生活金融公庫、日本政策投資銀行及び国際協力銀行についての説明は終わりました。
    ―――――――――――――
奥田主査 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岩國哲人君。
岩國分科員 民主党を代表して、質問をさせていただきます。
 塩川財務大臣、御出張等で大変お疲れのところ、こうして我々に質問の機会を与えていただきまして、まずそのことをお礼申し上げたいと思います。
 お礼を申し上げた後で大変失礼な質問から始めさせていただきますけれども、平成十三年から塩川財務大臣は、日本の財政、そして広い意味では金融、経済を御担当されたわけですけれども、平成に入ってから、経済環境を映す鏡であるというこの株式市場、大変な深刻な状況になっていることは大臣も御承知のとおりであります。
 そして、巷間よく言われるのは、早稲田大学の総理大臣のときには景気はよくなるけれども、慶応大学の総理大臣になるといつも不況になると。例えば橋本不況という言葉がございました。これはもう世界的に使われた言葉です。それから、今の小泉総理になって、小泉不況ということがまた世界じゅうで喧伝されております。
 また、各大蔵大臣の通信簿というわけじゃありませんけれども、大臣も平成十三年から今の職に就任されまして、過去、平成になってから各大蔵大臣ごとのその任期期間中にどれだけ株価が上がったのか下がったのか、それについて気にされたことはございませんか。
塩川国務大臣 私は、毎日株価に大変な注目をして見ておりまして、株価のこの二年間の動きというのは、大体のところは承知しております。
岩國分科員 小泉総理は、一喜一憂しないと。塩川財務大臣は、さすがに毎日注目しておられるというお言葉ですけれども、大臣に就任されてからどれぐらい株価はお下げになりましたか。お下げになりましたというのは変な話ですけれども、下がりましたでしょうか。
塩川国務大臣 現在八千円といたしましたら、大体六千円ぐらい下がってきたかと思っております。
岩國分科員 財務省からいただいたデータによりますと、御就任以来、株価は四二・四七%下がっておりまして、平成の大蔵大臣の中では一位でございます。二位はどなたか。橋本大蔵大臣が二位、こういう結果になっております。決して早稲田の肩を持つわけじゃありませんけれども、そういったことについて、なぜこういうときに株価が大きく下げていったのか。大臣としては、今の株価の下げの原因はどこにあるのか。御自分の経済政策なり金融政策とは全く無縁であったか。この株価の上げ下げというものは、これだけ下げたというのは、御自身のそういった財政金融政策には全く関係がない、無責任だ、責任はないというふうにお考えでしょうか。それとも、責任があると思われるのであれば、どういう点について、この四割を超える株価の下げについて責任があると思われますか。
塩川国務大臣 私は、七割は経済界の動きがやはりそれにマッチしなかったということでございますが、三割は私たちのやり方によると思っております。
 七割がということは、やはり世界的に株価の下落傾向にあったということ、その影響を受けたということと、それからちょうど、たまたま平成十年以降、金融のシステムが非常に緊縮してまいりましたこと等が影響し、これが株価の下落に影響してきたということ。そして、経済界自身が体質の改善が非常におくれてきていまして、やっと十三年度以降になってからリストラを中心とした体質改善をやり出してきた。けれども、設備投資等に見られますごとく、全く新しい、いわば技術革新に伴うところの経済界の体制をとろうという意欲はなかなか出てこなかった、つまり負の財産の処理に追われておった。こういう経済界の状況があったということが一つ。
 私は、三割は我々の方にも原因があると思いますことは、あえてこの際に財政を緊縮させて構造改善に取り組んだということが大きい原因であったと。なるほど、過去、歴代の総理大臣等におきましては、何でもありで財政を構わず支出してきたことが、これが線香花火のようにしてぱっと燃えたときはございましたけれども、結局は日本の経済にとってそれがよかったのかどうかということ、これは歴史が判断することであろうと思いますけれども、その結果は現在に出てきておることでございますから、私たちは、そこで方針を転換して、とりあえず構造改革に重点を置いて、それを、ただ構造改革を強引に進めるだけではなくして、セーフティーネットの保全とあわせて経済を運営しようというふうに政策を転換いたしました。
 でございますから、七割は、経済界、世界経済のグローバリゼーションが進んできた一つの現象が出てきたということと、三割は、政策の転換によるところの原因が株価に出てきたと思っておりまして、私たちとしては、そのことは別に故意的に株価を下げるということになったのではなくて、結果として私はこうなった。
 しかし、まかぬ種は生えぬということがございます。今のうちに構造改革の種をまいて、それがいずれ育ってくれるであろうということを懸命に今後の努力として伸ばしていきたいと思っております。
岩國分科員 七割は世界的な傾向、俗な言葉で言えば七割はよその国も下がったやないか、こういうことかもしれません。三割は小泉内閣固有の政策運営のやり方に非常に原因があったという大臣のお話ですけれども、確かに小泉内閣で四割下がった、五割下がった。一般に流通関係では、半値、八掛け、二割引き、こういうことがよく言われます。平成の初めの十年ぐらいに大体半値に下がって、森内閣で八掛けになって、その後二割引きとすればこれは今までの定説に従うわけですけれども、半値、八掛け、五割引きになってしまったわけですね、一万四千円で引き継いだものが七千円台に入ってくるということになりますと。
 ですから、よその国が下げたからというよりも、よその国も下げているかもしれませんけれども、日本は下がったところからまたさらに下がっているというところは、私は、政策の中身、それから運営の仕方ということに非常に原因があろうかと思いますし、また、釈迦に説法ですけれども、最近の株価の下げというものが、銀行の問題、生命保険会社の問題、予定利率の引き下げという、まるで銀行預金のない人でも保険は持っている、この保険会社の予定利率引き下げの問題まで引き起こしたというのは、ゼロ金利政策にも責任がありますけれども、それ以上に私はこの株価の下げということに大きな原因があるんではないか、そのように思います。
 そして、平成十三年から大臣は所管されましたけれども、平成十三年以降、公的資金が株式市場にどれだけ直接間接に投入されたでしょうか。
野村政府参考人 お答えいたします。
 先生御案内のとおり、郵貯、簡保の資金運用というのは、事業の健全性を確保しまして、預金者、加入者の利益の向上を図るということを目的としておりますので、そういった意味で、株価対策という意味ではございませんけれども、では、実際に株式市場にどの程度の郵貯、簡保の金が行ったかということでございますけれども、ことしの三月までは、郵貯、簡保のそういった株式市場の運用と申しますのは、簡保事業団に運用寄託いたしまして、それを簡保事業団が信託銀行と単独運用指定金銭信託の契約を結ぶという形でやっております。そういったことでございますので、投資判断は信託銀行が行うことになっております。そういうことでございますので、実際に運用寄託したもののうちどの程度が株式市場に行ったかということについては、しかとわからないところでございます。
 そういった意味で、参考に、では、運用寄託した額はどの程度かということを簡単に申し上げますと、十三年度以降ということでございますので、十三年度につきましては、郵貯につきましては、五月に四千億、十二月の三千五百億で七千五百億でございます。十四年度につきましては、四月に三千億、五月に七千億、九月に三千五百億、十二月の一兆円、合計で二兆三千五百億でございます。ただ、これは、いずれも新規の寄託ではなくて、従来寄託していたものについて再度寄託したというものでございます。
 簡保についてでございますけれども、十三年度についてはございません。十四年度につきましては、十四年九月に一兆八千三百億円、十五年一月に二千七百億円の合計二兆一千億でございまして、これらにつきましても、新規のものではございませずに、従来寄託したものの再度寄託というものでございます。
岩國分科員 そうしますと、小泉内閣になってから、郵貯、簡保合わせて五兆円以上の金が株式市場に投入されておる、こういうことですね。そういう理解で正しいですか。
 それから、私の質問は、郵政省管轄のところだけではなくて、厚生年金、そういった公的年金も含めて公的資金と言われているわけです、郵便局関係だけではなくて。そちらの方はどなたが答弁していただけますか。――質問通告してあったのに答えていただけないのは非常に残念ですけれども、郵貯、簡保については先ほど数字はいただきました。かなり巨額な資金が株式市場に、この下げ相場の中に投入されておった。しかし、一方では、厚生労働省所管の公的資金もあるわけです。それも合わせてマーケットでは公的資金と言われているわけですから、その数字もぜひ、後ほどで結構です、出していただきたいと思います。
 それで、次の質問に移ります。
 小泉内閣が始まってから、政府関係の諸団体、年金、郵貯等も含めまして、公的な機関の株式評価損は幾らから幾らにふえていますか。
谷口副大臣 今岩國委員がお尋ねになったのは、政府機関といいますか政府系金融機関でこの御報告をさせていただきますと、御存じのとおり、政府系金融機関というのは設立根拠法がございまして、業務が規定されております。その中で、株を取得できるところとできないところがございます。
 そういう観点で申し上げますと、平成十三年度末に上場株式を保有しておったのは商工中金のみでございます。その商工中金におきましては、取得価額が百八十八億円、これに対する貸借対照表計上額は百九十五億円でございまして、差額七億円の評価益ということになっております。
野村政府参考人 先ほどの補足でございますけれども、郵貯、簡保から指定単の形で運用している額、先ほど申し上げましたけれども、これは従来から預託したものが戻ってきたものを再預託するということでございますので、額的にはほとんど変わってございません。
 それで、評価損の関係でございますけれども、十二年三月末と十四年九月、十四年度の決算はまだ出ておりませんので、十四年九月末の比較をさせていただきますけれども、十二年三月末における郵貯、簡保の株式に対する評価損益につきましては、約一千億の評価益がございました。その後、二年半たった十四年九月の時点における郵貯、簡保の評価損は約六・六兆円でございます。
岩國分科員 ついでに、十五年三月末の数字も教えていただけますか。
野村政府参考人 お答えいたします。
 十五年三月末の評価損が出ておりまして、約三・五兆円でございます。三・五兆円の評価損でございます。――済みません。十五年ですか。(岩國分科員「十五年三月」と呼ぶ)十五年三月は今決算途中でございますので、数字はまだまとまってございません。
岩國分科員 そうすると、十四年九月、これは半年以上前の数字しか持っていらっしゃらないということですか。その推計に近いものさえもない。あれだけ保険会社、銀行がばたばたと評価損に苦しんでいるときに、評価損を途中で、毎月ベースでも出そうとしない。そんな感じで運営していらっしゃるんですか。
野村政府参考人 概数はわかりますけれども、正確な数字はまだ決まっていないということでございます。だから、六・六兆円よりふえているというのは事実だと思っております。
岩國分科員 普通、これだけ巨額な投資、それから資金運用をしておられる場合には、私は、本当は毎日でも、毎週でも、少なくとも毎月ぐらいはきちんと締めるべきじゃないかと思います。それが、概数もここで公表できない程度、何と去年の秋ぐらいの話、そんなことでよろしいんですか。
 大臣、今のその推移をお聞きいただいて、これだけ世の中株価が下がって苦しんでおられて、保険会社に問題が起きている、銀行は公的資金を投入している、それについて、親方日の丸と言っては大変失礼ですけれども、そういう運営の仕方で、私は国民を代表してこうして質問させていただいているのに、去年の九月の評価損の数字しか出せない。大臣、御意見がありましたら、おっしゃってください。
塩川国務大臣 従来は、証券局は一つ大蔵省時代は所管しておりましたが、財務省になりましてから証券関係の事務が離れまして、ただ、経済統計としてそれは心得なけりゃならぬと思っております。だから、経済統計の中で私たちは株価の変動を見ておりますことは、それは大体私らの立場にいたしましたら、月ごと計算の、いわゆる月例報告の中で承知しておるということでございまして、毎日の実数についての承知は、現在のところ、所管ではございませんのでやっておりません。
岩國分科員 そうすると、塩川大臣は、月例報告で先月、先々月の数字は持っていらっしゃる。先ほどの答弁では、そんな数字は出ておらぬということですけれども、その点はどうですか。
野村政府参考人 指定単の中身について、現在個別に数字を集計中でございます。そういった意味で、まだまとまっていないということでございます。
岩國分科員 再度繰り返すようですけれども、これだけ、もう既に去年の九月に六・六兆円も評価損が出ている、これはあなた個人のお金の損ではなくて、国民のお金を運用しているんですよ。そして、塩川大臣も、今所管が離れたからわしは知らぬということではなくて、内閣の一員として、これだけの大切なお金を、内閣全体の責任として運用してこられている。それが、六・六兆円が五兆円ぐらいに減ったのか、あるいは八兆円ぐらいにまたふえてきておるのか、そういう感触は私は非常に大事なことだと思うんですね。
 ここで押し問答を繰り返しても、時間がありませんから、次の質問に移らせていただきますけれども、ぜひとも私は、こういうことの情報公開、それから運用責任ということをもっともっと厳しく、世の中みんな、金融機関がいつなくなるかというぐらいの大騒ぎをしているときに、しかも公的資金を投入してまで、世界の金融機関を見てくださいよ。お金を預かっても利子を払わない銀行は世界のどこにありますか。毎日毎日仕事をしていながら税金も払わない銀行はどこにありますか。利子も払わない、税金も払わない銀行は日本の銀行だけでしょう。利子も払わず、税金も払わず、その上税金までいただいて生き延びていく、これは世界の歴史でこんなことはあったためしがないんです。それだけ国民のお金が痛めつけられているときに、この株式運用をしておられる、それは結構なことだと思います、しかし、その運用損がどれぐらいあるかということについて、この国会で説明することさえもできない。私は大変残念に思います。そのことを申し上げて、次の質問に移らせていただきます。
 最近の銀行の問題等について。一たん国有化され、日本長期信用銀行あるいはかつての日本債券信用銀行のように、外国の資本に、投資家に買われたところがあります。大臣、課税権を財務相は持っておられますけれども、こういう外国に買われた銀行が、将来上場し、そしてかなり大きなキャピタルゲインが出たときに、税金は日本国政府に入ってくるものですか。私はかつて越智長官に質問いたしました。越智長官は、課税権はあるとおっしゃいました。五分後、宮澤大蔵大臣はそれを訂正されて、課税権はないとおっしゃいました。今現在はどうなっておりますか。
谷口副大臣 岩國先生が今おっしゃったように、かつてこの質問をされたことは存知しておるところでございます。
 それで、非居住者、また外国企業の株式譲渡における売却益の課税がどのようになっておるかという御質問でございますけれども、これは一般的に、一般論と申し上げまして、この譲渡につきましては、国内法では大口株主、これはこの二五%以上を持っておるような大口株主が五%以上売却するといったような場合については我が国の課税ということがあるわけでございますけれども、租税条約がある場合にはその規定によるということになっておりまして、それは必ずしもその我が国の課税、またその当事国の課税ということは一律には言えませんが、ただし、OECDのモデルの場合には居住地課税ということになっておるということを申し上げたいというふうに思います。
 それで、ちなみに、それにつけ加えて申し上げさせていただきますと、源泉地国課税を認めるものとしては、先ほど申し上げましたOECD以外の、例えばこれは十六カ国あるわけでございますけれども、例えば中国だとか……(岩國分科員「一般論じゃなくて、日長銀、日債銀の二つについて、あるかないか」と呼ぶ)個別企業については、ここでその判断を申し上げるということは差し控えたいというように思うわけでございます。
岩國分科員 日長銀に対して、それから日債銀に対して、それぞれ公的資金は幾ら投入されたのか。それから、それは幾ら回収されたのか。国民の側から見たら、幾ら金を注いで、その金は今全部返ってきたのか、返ってきていないのか。そして、一たん国有化されて、それで日長銀の場合、十億円でたしか売却されましたね。日債銀は幾らでお売りになったのか。投下された金と回収された金、それぞれを教えていただけませんか、四つの数字を。
伊藤副大臣 お答えをさせていただきたいと思います。
 ちょっと資料を見つけるのに手間取りまして、申しわけございません。
 まず旧長銀でございますが、金銭の贈与等が三兆七千三十五億であります。そして、資産の買い取りが七千百二十三億円でございます。そして、資本増強でございますけれども、これが合計で四千百六十六億円、金融機能安定化法に基づく資本増強がこのうち一千七百六十六億円、そして、早期健全化法に基づく資本増強が二千四百億円でございます。
 そして、もう一つのお尋ねの旧日債銀でございますが、金銭贈与等につきまして、これが三兆二千八百十一億円、そして、資産の買い取りについて、これが三千九十九億円、資本増強でございますが、全体の合計が三千二百億円で、金融機能安定化法に基づく資本増強が六百億円、そして、早期健全化法に基づく資本増強が二千六百億円でございます。
岩國分科員 日長銀、日債銀、それぞれもう五兆円ぐらいのお金が投下されているわけですね、概数でいいますと。そして、こういう銀行が将来公開され、上場され、投資家がキャピタルゲインを仮に一兆円ずつ手にしたときに、課税権はあるんですね、日本国政府に。この二つのケースだけです。
谷口副大臣 ですから、先ほど申し上げましたように、個別の案件につきましては差し控えたいと思うわけでございますが、一般論としてさっき申し上げましたように、OECDモデルの条約の場合には居住地国の課税ということになるわけで、非居住者、外国法人の株式の譲渡益につきましては原則として本国のみの課税になっておるということでございます。
岩國分科員 個別の案件に答えられないということはないはずです。かつて宮澤大蔵大臣は答えておられるじゃないですか。越智長官は答えておられるじゃないですか。内閣の方針が変わったんですか、日長銀、日債銀について、そのキャピタルゲイン課税があるかないか。
 国民から見たら、その利益に一切課税できない、そういう状態で売却されたのか。国内の投資家に売却した場合には、同じ、例えば一千億円でもってそれぞれ国内の投資家に売却された場合に、しっかりと国内の投資家に対しては税金はかけられるわけでしょう。それが、外国に同じ値段で売ってしまったがゆえにかけられないとしたら、もともとあの売却時点そのものでそういう将来の得べかりし税金ということを考慮しておらなかった、そういう軽率な判断に基づいて売却が行われてしまったと。しかも、国有化された銀行ですから、国民の財産そのものを、そういう将来の課税権がよくわからぬような状態で、あるいは国会で質問されても答えられない状態で売却されたということですか、お答えください。
谷口副大臣 ですから、申し上げておりますように、このOECDモデルで考えますと本国課税のみという形に、居住地国課税ということになるということでございまして、今先生おっしゃるような個別の案件についてはなかなか意見を申し上げられないということをお許しいただきたいというふうに思います。
岩國分科員 個別の案件といっても、これだけ国民の財産そのものを皆さん処分されて、それについて答えられないということは、では、答えてしまった宮澤大蔵大臣、越智長官は、答えるべきでないことを答えたということなんですね、確認させてください。
谷口副大臣 これは、先生がおっしゃったときのこの会議録を見ますと、宮澤当時の大臣も、原則論をお述べになったということでございます。
岩國分科員 私は、そのときに実名を挙げて、それから投資家の国籍も挙げてその議論をやっております。だからこそ、わざわざ越智長官の発言を、一般論だったらわざわざ別の大臣が訂正されるということはなかったと思うんです。それを、課税権を持っている大蔵大臣は、課税権はないとはっきりおっしゃる。だから、それがいまだに問題になっているわけじゃありませんか。
 なぜ、国民の財産を売却して、将来の売却益に対して課税権があるかないかを国民にはっきりと説明できないんでしょうか。私は、それが納得できないんです。ないならない、あるならあると。
塩川国務大臣 私は全く素人で、岩國先生は玄人も玄人でずっとこれをやってこられたから、仕事をやってこられたんで、いろいろ御存じだと思うんですけれども、要するに、新生銀行の株主構成がどんなことになっておるのかということによって、いわゆる租税条約を適用できる団体なのか、あるいはそうではない団体なのか、本国課税としてやるのか、あるいは課税地課税にできるのかという、そこらの問題があるんだろうと思うんですが、宮澤先生はこう答えているんです。「原則としては、その株式を持っておる人がアメリカ人であって取引がアメリカで行われたという場合には、我が国の課税権には属さない」、こう言っておるので、この実態を、新生銀行の場合、株がどう動くか、よく定めなければならないんではないかということでございまして、これは将来問題として我々も非常に重大な関心を持っておりますので、引き続き研究し監視しながら、株の動き方、そして売買の、いわば所有権、銀行の主なる株主の動きの、所有権の変動というものをよく見まして、それに対処していきたいと思っております。
岩國分科員 質問時間が参りましたから、最後に一問だけ。
 要するに、新生銀行の株主が、新生銀行取得時と国籍も構成も全く変わっていないという前提で、答えはどうなりますか。
塩川国務大臣 これ、差し出がましい、金融庁の話だけれども、私が言いますと、その当時の、新生銀行がなった当時は、リップルウッド社の投資家によって設立されたオランダの投資組合のパートナーズですか、ここが株式を保有しているということであるならば、これはOECDモデルによりまして見るならば、完全な外国法人の株式の譲渡についての問題になってくるんじゃないか、こう認識しております。
岩國分科員 質問時間が参りましたので、終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
奥田主査 これにて岩國哲人君の質疑は終了いたしました。
 次に、北橋健治君。
北橋分科員 まず第一の質問は、先日政府がお決めになったと聞いておりますが、北朝鮮に対する経済制裁の一環といたしまして新たな措置を講ずるというふうに伝えられておりますが、どこが変わるんでしょうか。まず事実関係を。
渡辺政府参考人 では、お答え申し上げます。
 現在の外為法におきまして、そういう経済制裁といいますか、送金の停止等を講ずることができる場合が二つ設けられております。一つは、まさに安保理の決議などの条約等に基づいて行う場合、それからもう一つは、国際間のいわゆる協調といいますか、協力におきまして、それに合わせて行う場合というのがあるわけでございます。
 その点の、今の申し上げました二つ目の点につきまして、これまで必ずしも明らかでなかった部分について少し議論を詰めまして今回お話を申し上げているところでありますが、国際的な努力において行う場合に、「我が国として寄与するため特に必要があると認めるときは」というときのその国際的な努力の対象といたしまして、幾つの国が参加をすれば国際的な努力として認められるかというときに、今までは必ずしも幾つの国ということを明確に申し上げておりませんでしたけれども、きのう、官房長官からのお話がありましたように、日本も含めて二つ以上の国が参加した場合にはその発動の要件を満たすということを申し上げているところでございます。
北橋分科員 この問題についてかかわるのは、アメリカであり、韓国であり、ロシア、中国など、北朝鮮の隣国、関係国がかかわってくるわけでございますが、要するに、日本とアメリカが合意すれば送金停止という経済措置を講ずることができるというふうに理解できると思うんですけれども、それでよろしいかどうか。そして、果たしてこの二国間だけの話し合いだけで経済制裁を講ずるということが、この北朝鮮の問題の、今まさに外交交渉で各国が行っている、何とか粘り強く話し合いで解決をしていこうということに対して支障にならないかどうか。そういった意味で、今回いつでも刀を抜けるような体制をつくったということでございますけれども、これについては慎重な姿勢で臨まれるのか、いや、アメリカと合意すればやるということなのか、大臣はどのようにお考えでしょうか。
塩川国務大臣 この問題は、私は、今、周辺国、つまり韓国、日本、関係しておりますところのアメリカ、そして中国、真剣に、平和を維持して平和的に解決したいという空気が非常に濃厚であるし、またその努力をしております。一方、ある特定の国が核兵器を持っているぞと脅迫的な行為に出るということは平和を乱すことということの解釈もできると思うんですね。
 そこで、私たちのただいま考えておりますことは、外国為替及び外国貿易法の第十六条によりますと、こう書いてあります。「我が国が締結した条約その他の国際約束を誠実に履行するため必要があると認めるとき、又は」、ここからですね、「国際平和のための国際的な努力に我が国として寄与するため特に必要があると認めるとき」、そのときは、結局、居住者に対して、当該支払いまたは支払い要求について許可を受ける義務を課することができる。この許可を受ける義務のときに、あるいはノーと言うかもわからぬということが起こり得るんではないかと思っております。
 でございますから、現在、そういう平和的に解決しようという努力を懸命にやっておるのにかかわらず、そういう脅威を持った行動の中で支払いを求めてくるということがあるとするならば、これは第十六条に基づきまして、我が国として寄与するため特に必要があると認める、こういうことになってきて、許可制を強制するということはあり得ると私は思っております。
北橋分科員 事務当局に確認しますが、送金停止というようなことが具体的に、このグローバルなマネーの流れがある中で現実に可能ですか。
渡辺政府参考人 今御質問のとおりに、送金の相手先の国ということを考えますと、直接行く場合、あるいは第三国を迂回して行く場合などなどがございますので、すべて相手方に届くことを防止するということが可能であるかといえば、そこはかなりの困難があると思います。したがいまして、そういう意味では、なるべく多くの国が参加する、特に近隣の多くの国が参加することが、そういった迂回路を閉ざすために必要だということでございますけれども、それでも、ダイレクトに行く部分というものについて封ずることができるという意味での効果があるというふうに考えております。
北橋分科員 イラクの武力行使に対してもそうなんですけれども、アメリカが国連の決議をあえて求めずに武力行使に及んだことは、国連の舞台を台なしにしたという意味において民主党も強く反対をしてきたわけでございますが、私どもももちろん日米関係の重要性というのは十分承知をしているつもりでございますが、今回、非常にデリケートなアジアの一角における問題で、アメリカと話し合いがつけば、効果もどの程度上がるか微妙な問題についてできる、こういうメッセージを送るというのがまた、日米同盟関係といいますか、そういうふうに走り出すのではないかと若干の危惧もあるわけです。
 もちろん私も、世論におきまして、北朝鮮に対して何らかの制裁措置があっていいんではないかという世論が非常に急速に高まっていることはよく承知をしておりますけれども、しかし、これを平和的に解決するためには、実力行使というのはやはり相当慎重でなければならない、やはり韓国だとか隣国との連携というのが不可欠だと思うんですけれども、大臣はその点、この問題について率直に、アメリカと話がつけばやっちゃうんですか、それとも、そういった韓国や中国、ロシア、かかわっている国々とも十分連携して、つまり慎重にこの問題に対応するとお考えなのか、御答弁いただきたいと思います。
塩川国務大臣 私は、先ほど答弁の中で、アメリカと協議してということは一言も言っておりません。でございますから、この問題は当然、平和的努力をしておる、先ほど国名挙げて私申しましたが、そういう国々と平和的解決しようとしておるのにかかわらず、特定の国がそれに逆らうような格好で脅威的な行動をとったる場合、そのときには、平和に寄与するとは思えないというようなことになるならば、お互い関係国が協議をして我が方の態度を決定すべきである、そう思います。
北橋分科員 関係国とおっしゃっておられますけれども、それはアメリカとだけでやったって効果というのは余り期待できないわけで、やはり北朝鮮の隣国、今重要な話し合いをしているさなかでございますから、そういったところの周到な話し合いを前提として考えていただければ、このように思っております。
 さて、きょうは公務員にかかわる問題について、二つお伺いしたいと思います。
 ちょうど公務員制度改革ということで、これは重要な政治的問題になっておりますが、同時に、私は、財務省の仕事を見ておりまして、直接この制度改革の中での論点に位置づけられているかどうか、それはさておきまして、この際、大臣にぜひとも決意を固めていただきたいということが一つあるわけです。
 その前に一つお伺いしますが、現在の税務行政の中で、例えば税関におきましても、物すごい量の社会悪の物品が入ってきている、そしてますます巧妙になってきている中で、レントゲンや麻薬犬やいろいろな、そしてまた労働も大変過重になっていると私は思いますけれども、その抜群の、トレーニングによってそういったものを摘発しているわけでございますが、この税関の職員体制というのも相当に厳しくなっているのではないか、そう思います。
 そしてもう一つ、この機会に、日本の税務行政の中で、実調率がすごく下がってきているということは、国家の将来を考える上で非常にゆゆしき問題でありますけれども、数字を見ても、平成四年度に法人税で実調率が六%台であったのが、今は四%台に下がっている。こんな国が近代民主国家にどれだけあるんだろうかと思うわけです。
 そこで、率直に大臣の御所見をお伺いしたいんですが、このように滞納額も二兆円をはるかに超える、そして実調率が何と四%台まで下がっているという現状をどのようにお感じになられますか。御所見を承れればと思います。
塩川国務大臣 ちょっと私、関税のお話がございまして、関税……(北橋分科員「税務署の話です」と呼ぶ)税務署でございますね。税の徴収率は、まだそんなに落ちておるとは聞いておりませんけれども、徴収率が悪くなっているということは、事実として私は認識しております。これについては、やはり経済の問題があろうと思いますけれども、やはり職員の努力も要求しなきゃならぬと思っておりますが、十分実態を調査して、私の方から適当な指示を出していきたいと思っております。
 徴収率等につきまして、実際のところまだ私は承知しておりません。実態を調査した上で、いたしたいと思います。
    〔主査退席、浅野主査代理着席〕
北橋分科員 やはり税を確保するということは非常に重要なことでございますし、実調率がここまで下がってきているという現場のお話は、大臣もよく御認識を賜りたいのであります。
 といいますのは、かつての大蔵委員会、現在の財務委員会でもそうでございますが、しばしば与野党が激突をして、甲論乙駁の激しい論争を展開する委員会でございますけれども、しかし、天下国家のためには党派を超えて、こういった税務行政の現場の問題についても胸襟を開いて議論を尽くしてきた経緯があります。
 したがいまして、それぞれの官庁におきまして定員査定なりリストラというのは大変厳しい昨今ではありますが、ほかの委員会ではもうまずないんですね、私はこの財務金融委員会だけだと思うんですけれども、毎年のように、本当に意見が違う与野党の議員が、やはり天下国家のために、この実調率の現状等をかんがみて、定員の厳しい中にあって一定の確保を求めてきたわけです。そして、委員会の附帯決議をみんなでやってきたわけですね。
 ところが、私も、そういった意味では、毎年、総務省の査定について深い関心を持っているわけでございますが、昨今、年々のように下がってきているわけです。旧大蔵省の時代から、やはり定員なり予算というものを厳しく査定しないと自分のところには、特に査定官庁でございますから、そういう思いもあるのかもしれませんが、しかし、税関とか国税という国家国民の非常に将来にかかわる重要な案件については、やはり要求官庁という一面もあるわけでございますから、大臣、ぜひともそういった現場の実態もよく押さえていただきまして、超党派による附帯決議を毎年やっているわけです、これはなかなか思うように前進しないわけでございますが、これからまた概算要求その他の時期を迎えていくわけでございますが、大臣としても、ぜひともこの点について決意を持って折衝に臨んでいただきたい。そういった意味で、大臣の御所見を承れればと思っております。
谷口副大臣 今、北橋先生は、税関職員と国税職員と両方おっしゃっていただいたわけでございますけれども、まさに先生がおっしゃっていただいたように、税関職員は、非常に複雑困難な業務の中で、水際で覚せい剤また社会悪物品の取り締まりをやっておるわけでございます。
 そんなこともございまして、従来、附帯決議もつけていただいたわけでございますけれども、財務省としては、必要な定員の確保に最大限、附帯決議の趣旨を踏まえまして頑張ってまいりたいというように思っております。
 また、国税職員は、おっしゃっていただいたように、最近、実調率が減少しておることは存知しております。大変景気低迷の中で、現場では税の徴収に大変苦労しておるわけでございます。また、専門的知識も必要なわけでございますので、そんな観点からも、これから附帯決議の趣旨を踏まえまして、必要な定員の確保に最大限努めてまいりたいというように考えております。
北橋分科員 副大臣のおっしゃった方向で、ぜひとも塩川さんを先頭に頑張っていただきたいと思っております。
 さて、公務員制度改革の問題で非常に大きな論点になっておりますのは、いわゆる幹部職員の天下りの問題でございます。
 これは、ほかにもいろいろな重要な案件があって、さらに慎重な議論が続いていくのではないかとも言われておりますが、この天下りという問題についてはいろいろな問題点があります。例えば、また法外な退職金、給与をもらうとかいろいろな国民的な批判もあるんですけれども、同時に、非常に関係の深い業界に対して幹部職員が行っているということは、縁が切れたとはいっても、政官業という面から非常に問題意識が持たれているわけです。
 我々民主党は、やはり定年までしっかりと働いていただいて、基本的には民間企業への天下りというのは避けるべきだと思うんですけれども、財務大臣、どのようにお考えでしょうか。
塩川国務大臣 私は、もともと定年制延長論者なんです。内閣でも盛んに定年制を延長しろと言っておるんですが、そうしたら公務員が余っちゃうじゃないか、こういう議論がありますけれども、それは新規採用と調整をしながら、長年かけて、十年ぐらいかけて、五年ぐらい定年を延長したらどうだと私は主張しておるんです。なかなか言うことを聞いてくれませんけれども、私は、やはりそこが大事だと。
 五十そこそこでもう肩たたきして、君、どこか考えろと言われたら、それだったら、もう先にどこかへ行ってしまおうかということになりますし、また、定年前にやめたら割り増し金をもらえるんですね、退職金で。どうせやめるんだったら、割り増し金の分厚いときにもらおうかということになるのは当たり前のことだと思います。制度上やはり問題があると思うんですね。
 ですから、公務員の比率を余り考えないで、十分に公務員の確保をして、そして今一番必要な点は、先ほどいみじくもおっしゃった税務署の徴収の点ですね、調査の点ですね、実調ですね。こんなのは、人が足らぬからこうなってくるんですよ。一つありますよ。そして、税関の人にしても、過酷ながら、ここらの方を随分振ってもいいじゃないか。
 要するに、日本の行政全体を見まして、プランメーカーは中央政府がやって、実施は地方がやっていました。けれども、シーの方は全然やっていなかった。こっちの方の人員が全然ないということ。ここを公務員の層を厚くして充当させてもいいんじゃないか。それには、定年制を延ばして、要するに、窓際族になっている者を再教育して、そういうシーの方に十分に活用させる方法をとれるんじゃないかと思ったりします。そうすることによって、天下りの弊害というものは相当省けてくると私は思います。
 もし、それでも天下りをするというならば、これは、前職についておった者の二年以内の何か規定がありますが、あの適用をして天下りを制限するということは十分できるんじゃないかと思っておりますが、現在のままで、五十そこそこで、働き盛りで一番脂の乗ったところで、おまえ、やめろと言ったら、行くところはないです。これはやはりそういうことの制度上の無理があるということも十分考えておくべきだと思います。
北橋分科員 公務員制度改革については、この点が非常に大きな論点になっておりますので、私は、大臣の率直な御意見に大変敬意を表したいと思っております。戦後何十年もずっと続いてきた人事の慣例であるだけに、それを変えることは大変難しいと思いますけれども、ぜひ、大臣、先頭に立って頑張っていただきたいと思っております。
 さて、きょうは、私どもは経済有事に陥ったというふうに残念ながら言わざるを得ないわけでございますが、まず認識をお伺いしたいと思いますが、りそなグループに対して莫大な公的資金を投入することが決められました。この点については、今まで、銀行経営は大丈夫なんだと多くの政府関係者は言ってまいりましたし、我々は、粉飾決算だ、きちんと検査してみろ、はっきりすると言ってきたんですけれども、大丈夫だということをおっしゃっておられました。そしてまた、金融危機を回避するため、現実に数十兆円もの公的資金を危機を回避するといって投入してきたわけです。それが今回の現実でございます。
 大臣は、最初、金融庁長官から公的資金投入の合い議があったときに、率直にどういう、私は、そういった意味で、その責任というのは非常に大きい、粉飾決算ではなかったのか、金融庁幹部あるいは政府関係者が言ってきたことは大きく間違っていたんではないか、そのことが白日のもとにさらされたと思うわけでございますが、大臣はどのようにお感じになったでしょうか。
塩川国務大臣 私は、竹中大臣から連絡を受けましたときに、まず第一に、りそなだけで終わるのかということを聞きまして、りそなだけの問題なんだ、これは、個別に見た場合には自己資本不足だからこれを注入するだけのことであって、経営的にはそんなに不遜なところがないという報告を受けまして、要するに一つの資本対策で強化したんだと思っております。
 しかし、このことは、やはり銀行経営者として見た場合に、こういう急激に巨額の自己資金の補給をしなければならぬという事態、ここに至るまでの経過をどう見ておったのかなということは、やはり私はガバナンスの問題と考えて、一応、この問題はこの問題として考えていくべきではないか。銀行の経営そのものにつきましては、これは何ら異常はないということでございますので、金融システムの安定はございますけれども、経営者のガバナンスの問題は将来ともに残ってくると私は思います。
北橋分科員 経営者に大きな責任があるということは私どもも当然そう考えておりますが、政府の責任もあるんではないかと思います。といいますのは、これまで、この銀行には自己資本比率は六%ある、そういうことを述べていた政府関係者もいたわけでありまして、それが結局、竹中流の査定という形でやったんでしょう、そうするとこういうことになった。では、ほかの銀行は、連鎖は大丈夫だと言われても、なかなかそれは信じられるものではない。そういった意味で、政府の認識そのものが甘かった、経営者のガバナビリティーのみならず、政府がそういうふうに認識していたというその甘さをお感じになりませんか。
塩川国務大臣 それは私は完璧であったとは思いません。しかし、私は、現在見ておりまして、金融庁の職員の不足というのはひどいです。これだけの責任と事務量を持っておりながら金融庁の職員が少ないということ。ここをやはりもっとベテランの者で補強する必要がある。そういう点から、確かに今北橋さんおっしゃるように、ある程度目の行き届かなかったところがあったんではないかなと思いますけれども、しかし、それは要するに、私は、経営者の姿勢そのものによってカバーできる問題であって、それを一々役所の責任のみにかぶせてしまうということはちょっと酷な話だなと。
 けれども、将来問題として、やはり金融庁の調査、私は金融庁と違いますよ、財務省で、他人のことを言うのはおかしいけれども、私は政治家としてそういう感じがしますね。ですから、金融庁の機能の強化というものをもっと急ぐべきである、私はそう思っております。
北橋分科員 金融検査の強化とそれに必要な予算、定員の確保は民主党も主張してきたわけです。そのことの重要性は私どもも同じような認識です。
 しかし、今回の問題は少し違うと思うんですね。例えば、自民党のある方はこう言っていますよ、経済失政でこういう状況が生まれた、間違いは子供でもわかる。間違いは子供でもわかる、これは亀井さんの発言ですが、多くの自民党の幹部の方は皆そうおっしゃっておられます。銀行経営者のガバナビリティーを言っていません。これは、政治の責任は重大だ、失政の象徴だ、こういうふうに多くの方々が言っているんですが、それでもそういうふうにお感じにならないわけですか。
塩川国務大臣 政治の責任というのは非常に漠然として、言葉としては通用するのかもわかりませんけれども、株価の下落がこういう現象になってきたんだろうと思うんです。それでは、株価の下落は全部政府の責任なんでしょうか。ここは私は非常に議論のあるところだと思います。
 このように株価が下がってきて、資本比率というものもそれに影響されてくるということはある、これが一つと、それからもう一つは、今回の大きい原因は税効果の見方であったと私は聞いておるんです。そうであるとするならば、経営者が税効果というものをもともとどう考えておるのかということは、監査法人との間で十分と話し合いがなかったのか、あるいは銀行内において監査役とかあるいは担当者の間で十分に税効果の問題を議論したのか。そんなにすかたんな解釈をしておって、突然言われたから、ああ、そうですかと頭をかいて資本不足ですと言われるんじゃ、これは先ほど言っていますガバナンスの問題じゃないか、私はそう思います。
 ですから、あながち、政治の問題だ政治の問題だ、言うのは言いやすいですけれども、本当にこのりそなの問題が全面的に、私は全く政治が関係ないとは言いません、あるいは、検査の問題等もありますからして、政治の問題もかかわっておりますけれども、だけれども、こんな問題を政治の問題だということだけで切り捨ててしまって、ガバナンスの問題を無視するということは私は許せないと思っております。
北橋分科員 これは集中審議も間もなく行われるところでございますので、しっかりと議論はさせていただきますけれども、ただ、自民党内には、竹中大臣には大きな銀行をつぶしたいという動きがあった、竹中さんは一つの目的を達したかもしれないが、閣僚としての責任は非常に重い、これは野中さんの発言ですね。それからまた、今株価のお話をされました。株の下落が大きなインパクトになっていたとおっしゃっていたんですけれども、堀内さんだとか亀井さんはこう言っていますよ、株価下落に対する政府の取り組みが極めて不十分だった結果だ。
 そこでお伺いするんですが、株価は一つの大きな原因だとお認めになっているわけですけれども、株価に対しては一定のことはやられたことは承知しております。しかし、その効果というのは、今もって八千円前後と大変危機的な状況です。それがいろいろな業界に響いているわけです。
 そういう意味で、この株価を何とかしていこう、いわゆるデフレ対策だ、構造改革だ、いろいろな議論がありますけれども、ここで何らかの新しい措置を講じようという、これだけの与党内部からの批判の大合唱が起こっている。りそなの問題でもそれは決定的に大きくなっているときに、今もってまだやはり株価対策だとかそれを一生懸命やってみようというお気持ちにはならないんですか。
塩川国務大臣 ちょうど一週間ほど前に、政府は緊急措置として追加して株価対策を実施することを決定いたしました。
 株価対策と一つ簡単に言いますけれども、今株の保有の実態を見ますと、企業と、それから金融機関と、それから個人、この三つのシェアが大体均等した状態であります。若干、外国法人並びに外国人が十数%持っておりますけれども、ほかはこの三者が大体二五、六%から三五、六%の間持っておる。そうすると、この株価対策をどこに絞るかといえば、私たちはやはり個人の貯蓄がそちらに回るということを考えなきゃならぬ。個人の貯蓄が回るということにしようとするならば、やはり業界全体に対する信頼を回復しなければ、一般の市民は株を買おうかということは出てこないんじゃないかと思います。
 そこで、私たちは、株を保有することの観念を、値上がり値下がりと言わず、いわゆる上下の差額に興味を持つのではなくして、配当率に興味を持ってもらいたい。企業は、完全に回復して配当もしておるところはずっとふえてまいりました。そういうことのPRを今積極的にやっていこうとしております。それと同時に、保有機構等がございますが、そういうところに対する資金の供給について特段の処置をしたいということ等もございますし、いろいろな対策に投じまして、先日、要するに暫定的な措置としての方法を決めたというところでございまして、決して株価の下落を政府は拱手傍観しているというものではないということを御承知いただきたいと思います。
北橋分科員 私どもも、やはり日本の経済がGDPでも五百兆円を割れる、これは八年ぶりの出来事でありますので、大変深刻な事態だと思いますし、ことしの第一・四半期においても実質成長ゼロ、こういう状況が続いております。
 そういう中で、今までの、従来の答弁から一歩も出ないような、りそなの案件が起こった直後もそういう感じで、大変驚いております。大変危機的、深刻な状況だと思うんですけれども、それは、このままでうまく回っていくというふうにお考えでしょうか。
 例えば、亀井さんとの政策に関する考えは大きく我々は違いはありますけれども、今回の公的資金の投入というのは結局経済運営を根本的に見直さないとだめだということをおっしゃっている点は、私は全く同じですね。どぶに捨てるようなものだとまで亀井さんは言っているんです。
 そういう意見に対して、こういうものをやるんだ、例えば日銀に対してはこういう政策を求めるとか、例えば税に対してはこういうことをやるんだとか、これだけの大きな問題が起こって、ただ経営者のガバナビリティーであるとか、あるいは個人の心理云々とか、そんな悠長な段階じゃないと僕は思うんですけれども、これは経済有事ではないか、そういうふうに思うんですけれども、何か具体的な、こういうものをやるんだというものはまだ塩川さんの構想にはないんでしょうか。
塩川国務大臣 現在、政府なり日銀なりは、それぞれででき得る範囲内のことは全部やっております。しかし、よく考えていただいたらおわかりだと思うんですが、日本の経済行動に対して、政府が民間との間に持っておりますところのセクションというものは、全部法律で決められておって、あるいは法のもとにおいて執行しておる。だからこそ法治国家で皆安定しておるということですが、それを恣意的に、緊急事態であるからということで直ちに変更することはできにくい。
 ということになりますと、法律の改正を伴わなけりゃならぬ問題が多々あるのでございまして、その問題等について、今後ともどうあるべきかということについて検討しなきゃならぬ。けれども、それは火事場泥棒的に措置をするということではなかなか間に合わない。そういうところでじくじたるものはございますけれども、しかしながら、例えば日銀は日銀の法律の範囲内において、流動性預金を思いっ切りふやしていくということで、本日も何か三兆円ほど限度額をふやすということを決めたようでございますが、そのような努力をして、資金の供給を怠ってはおらない、十分に潤沢に循環させておるけれども、民間の方でそれがなかなか回らないということでございますし、政府としても公的資金の導入をといろいろおっしゃいますけれども、しかし、政府の持っておりますお金というものは、全部国民の信頼のもとに預けられたものでございますから、これを無為にそういう株価対策だけに使うということにはいかない。そこには法律的な規制もちゃんとございますし、またそれぞれの機関において委員会等をつくって公的な議論の上で執行しておることでございます。
 でありますから、許された範囲内に、狭い道でございますけれども、極力そういう道でいい方法はないだろうかと探求しながら、これからも努力していきたいと思っております。
北橋分科員 質問は多く用意しておりましたが、時間が参りましたので、これで終わりたいと思います。大臣の御発言を聞いておりまして、改めて経済有事になっているなということを感じました。
 ありがとうございました。
浅野主査代理 これにて北橋健治君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして財務省所管、国民生活金融公庫、日本政策投資銀行及び国際協力銀行についての質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
浅野主査代理 これより総務省所管及び公営企業金融公庫について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。片山総務大臣。
片山国務大臣 平成十三年度総務省所管の決算について、その概要を御説明申し上げます。
 まず、一般会計について申し上げます。
 総務省主管の歳入につきましては、歳入予算額一兆四千百十九億六千三百五十七万円余に対し、収納済み歳入額は一兆三千三百十八億九千二十六万円余であり、差し引き八百億七千三百三十万円余の減少となっております。
 次に、総務省所管の歳出につきましては、歳出予算現額十八兆四千八百五十億九千五百十四万円余に対し、支出済み歳出額は十八兆三千九百八十億七千九百七十七万円余、翌年度繰越額は七百三十七億七千百七十八万円であり、不用額は百三十二億四千三百五十九万円余となっております。
 次に、総務省所管の特別会計について申し上げます。
 第一に、交付税及び譲与税配付金特別会計であります。この特別会計には、交付税及び譲与税配付金勘定と交通安全対策特別交付金勘定を設けております。
 まず、交付税及び譲与税配付金勘定につきましては、収納済み歳入額は六十兆九千百九十六億三千九百五十六万円余、支出済み歳出額は六十兆一千九百三十七億六千二百三十三万円余であります。
 次に、交通安全対策特別交付金勘定につきましては、収納済み歳入額は八百五十四億四千七百万円余、支出済み歳出額は七百九十三億二千八百三十五万円余であります。
 次に、郵政事業特別会計であります。
 郵政事業特別会計につきましては、徴収決定済み額は六兆九千七百六十一億三千二百二十八万円余、支出決定済み歳出額は六兆九千八百五十億九千六百八十一万円余であります。
 次に、郵便貯金特別会計であります。
 郵便貯金特別会計につきましては、収納済み歳入額は十二兆一千三百六十一億七千七百六十七万円余、支出済み歳出額は十兆九千二百九十九億四千八百四十二万円余であります。
 次に、簡易生命保険特別会計であります。
 簡易生命保険特別会計につきましては、収納済み歳入額は十九兆三百三億二千七百七十六万円余、支出済み歳出額は十五兆八百七十四億九千二百三十二万円余であります。
 以上が、平成十三年度総務省所管の一般会計及び特別会計の決算の概要であります。
 何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
浅野主査代理 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院円谷第五局長。
円谷会計検査院当局者 平成十三年度総務省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。
 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項四十二件及び本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項一件であります。
 まず、不当事項について御説明いたします。
 検査報告番号六号は、郵便切手類の販売に当たり、省令等に違反して支払い保証のない小切手を受け入れたため、販売代金の回収が困難となっているものであります。
 同七号は、特定郵便局の局舎等に係る賃借料の支払いに当たり、土地借料の算定を誤っていたため、支払い額が過大になっているものであります。
 同八号は、新世代地域ケーブルテレビ施設整備事業の実施に当たり、光ファイバーケーブル敷設工事の設計が適切でなかったなどのため工事費が割高となっているものであります。
 同九号から四七号までの三十九件は、職員の不正行為による損害が生じたものであります。
 このうち九号は、北海道総合通信局において、総務事務官が免許申請手数料等に係る収入印紙を消印しないで領得したものであります。
 そして、十号から四七号までの三十八件は、札幌東郵便局ほか四十六郵便局におきまして、簡易生命保険や切手類の出納保管等の事務に従事している職員が、契約者から受領した保険料や切手類管理主任の保管に係る収入印紙等を領得したものであります。
 次に、本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項について御説明いたします。
 これは、電気通信格差是正事業等の実施及び事業効果の発現に関するものであります。
 総務省では、地域における情報基盤を整備し高度情報化社会の均衡ある発展を図るため、IT関連施策としての電気通信格差是正事業等を行う都道府県等に対し、その事業に要する経費の一部として補助金を交付しております。
 これらの補助事業を検査いたしましたところ、補助対象経費について、事業主体がハードウエアの整備を行う補助事業にあわせてソフトウエアも整備する場合等に補助対象となる範囲が明確に定められていなかったため、補助対象とならない経費を補助対象に含めていたり、また、事業効果の発現について、施設予約システム等の導入に当たり実施体制の整備が十分でなかったなどのため、補助事業完了後、一年以上を経過してもなおシステムの主要な機能が稼働していなかったり、市役所等への行政相談等を目的としたテレビ会議システムの端末装置を当該市役所等内に設置していたなどのため、テレビ会議システムの利用が低調となっていたりしている事態が見受けられました。これについて指摘したところ、改善処置がとられたものであります。
浅野主査代理 次に、諸澤審議官。
諸澤会計検査院当局者 平成十三年度公営企業金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
 以上をもって概要の説明を終わります。
浅野主査代理 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。片山総務大臣。
片山国務大臣 平成十三年度決算に関する会計検査院の指摘について講じた措置等につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 職員の不正行為による損害が生じたものとして指摘を受けたものがありましたことは、まことに遺憾に存じます。
 今後とも、防犯施策のなお一層の徹底を図るとともに、業務考査及び会計監査を厳重に実施し、不正行為の根絶を図る所存であります。
 次に、郵便切手類の局外販売に当たり、省令等に違反して支払い保証のない小切手を受け入れたため、販売代金の回収が困難となっているとの指摘につきましては、小切手受け入れの適正な取り扱いについて、引き続き全国の郵便局に対し指導の徹底を図るよう処置を講じたところであります。
 なお、指摘のあった販売代金の回収については、債権を管理し、徴収に努めているところであります。
 また、特定郵便局の局舎等に係る賃借料の支払いに当たり、土地借料の算定を誤っていたため、支払い額が過大になっていたとの指摘につきましては、地方郵政局担当者会議等により指導の強化を図り、適正な郵便局舎等の賃借料算定に万全を期するよう処置を講じたところであります。
 なお、指摘のあった過大に支払われていた賃借料については、全額回収済みであります。
 また、新世代地域ケーブルテレビ施設整備事業の実施に当たり、光ファイバーケーブル敷設工事の設計が適切でなかったなどのため工事費が割高となっていたとの指摘につきましては、既に補助金を返還させるなどの措置を講じたところであります。
 電気通信格差是正事業等の実施及び事業効果の発現に関するものにつきましても、適切な実施を確保し、また、補助事業の事業効果が速やかに発現されるよう、補助事業の申請及び内容の審査が適切に行える体制を整備するとともに、事業主体に対し、補助事業の実施体制の整備を図ることを周知徹底するなどの処置を講じたところであります。
 これをもちまして概要の説明を終わります。
 何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
浅野主査代理 この際、お諮りいたします。
 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
浅野主査代理 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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浅野主査代理 以上をもちまして総務省所管及び公営企業金融公庫についての説明は終わりました。
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浅野主査代理 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。春名直章君。
春名分科員 日本共産党の春名直章です。いつも御苦労さまです。
 昨年十一月、ILOは、日本の公務員制度改革にかかわりまして中間報告、勧告を出しました。その第一番目の勧告の内容に、消防職員と監獄職員への団結権の付与問題ということが出されました。今回の公務員制度改革の中で必ず決着をつける最優先課題の一つだと私は考えます。これに絞ってお聞きをしたいと思います。
 まず、この消防職員へ団結権を付与せよという勧告について、政府・総務省はその重みを正面から受けとめているのかどうか、この点をまず伺いたいと思います。
片山国務大臣 大変重く受けとめております。これはもう春名委員御承知のように古い課題でございまして、我々は十分今回のILOの中間報告の重みを感じております。
 ただ、我々としましては、消防というたら警察と一緒だと。警察というのは、やはり団結権等の、いわば労働基本権の制約の下に置かれているわけでありまして、沿革的にいいましても、あるいは消防の仕事等から見ましても、やはりこれは警察類似だと。
 ILOも過去には条約上の問題がないと判断していただいてもおりますし、そういう意味で、三月三十一日にILOに政府追加資料を提出いたしましたが、今後ともILOと十分折衝して、理解を得るように努めたいと考えております。
春名分科員 「この条約に規定する保障を軍隊及び警察に適用する範囲は、国内法令で定める。」ということになっていまして、軍隊と警察は国内法令でどうするかを定めるということであって、全部適用除外しているということではないんですね。その点は間違いないようにしていただきたいと思うんですが、私も、今お話が出た「結社の自由委員会 政府追加情報」というのを読ませていただきました。この中身で、今大臣からお話が出たように、要するに警察の構成員なんだ、そのことを日本の独自の特徴としてわかっていただきたいということを繰り返し、昔からですが、この期に及んでも述べていらっしゃるわけです。
 そこで、警察の構成員であるという問題についてまずはっきりさせておきたいと思うんです。消防職員が警察の構成員という国内の根拠法令を改めて示していただきたい。
石井政府参考人 お答え申し上げます。
 我が国におきます消防は、歴史的沿革、それから法制に基づく業務内容、それから運営状況からしまして、ILO八十七号条約第九条の「警察」に含まれると考えているところでありまして、法制的に申しますと、我が国の消防と警察は、それぞれ消防組織法、それから消防法、警察法に定めてありますように、ともに公共の安寧秩序を保持し、国民の生命、身体、財産を保護するという同一の使命、任務を有しているところであります。
 また、消防法等に基づく消防職員の権限は、行政作用としては警察に分類されるものでございまして、こうした法律解釈を前提に条約を適用しているところでございます。
春名分科員 長官に出てこいと言っていないんだけれども、出てきたので聞きますが、根拠法令を示せと言っているんです。警察の組織の構成員であるという根拠法令が国内にあるんですか。
石井政府参考人 ただいま申し上げましたように、消防組織法あるいは消防法、警察法に定められている趣旨からしまして、このILOに言います行政作用としては、警察に分類されるものだというふうに考えているわけでございます。
春名分科員 ですから、それはあなた方がそう考えているのであって、趣旨じゃないんですよ、根拠法令があるかと聞いているんです。一九六五年に八十七号条約を批准した後、今日まで、ILOに根拠法令はこれですということを示したことがありますか。
石井政府参考人 今申し上げましたように、あくまで消防組織法なり消防法なり警察法の規定のバランスを見まして、行政作用としては警察に分類されるものだ、こういうふうに考えているわけであります。
春名分科員 だから、その考え方を変えなさいと言っているんですよ。根拠法令、ないんです。
 消防の任務は、消防組織法一条、長官言われたように、国民の身体及び財産を火災から保護する、及びこれらの災害を軽減する。警察の任務は、警察法第二条、警察は、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取り締まりその他の公共の安全と秩序の維持に当たると。確かに、今長官言われたように、国民の生命、身体、財産を保護する、大臣、この点では共通だと思うんですね。ただ、その目的は同じであっても、その目的を達成するための任務や権限の性質は、警察の構成の中の一部であるというふうには、根拠法令ですらなっていないわけですね。
 権限でいいますと、警察でいいますと捜査権限、被疑者の逮捕の権限、武器使用の権限すら与えられているわけですよね。そういうものはもちろん消防にはありません。警察の構成員だというふうにあなた方は言っているけれども、それは世界、グローバルスタンダードから見てもなかなか通用しない、根拠法令を実際お示しになっていないということだと思うので、このことに今もう固執しないという姿勢が大事なんじゃないかと考えるんですが、大臣、どうでしょうか。
片山国務大臣 一つの法律である必要はないんですよ。それは警察法、消防組織法、消防法もあるのかもしれぬけれども、分かれておってもいいんですよ。それが警察作用に属するかどうか、警察的かどうかという判断なので、それは委員の言われるように、例えば捕まえて手錠をはめるとかなんとかという権限はないかもしれませんけれども、全体として、消防の役割、機能というのは警察的なんですよ。あるいは破壊消防というのは、ちゃんと建っている家を壊すんですからね。そういうことで我々は今までも理解を得てきた。ずばっと消防は警察の一部だと戦前みたいに書いておればいいですよ、しかし、それはそういうことじゃなくて、現在の法制でも、警察の一部だ、我々はこういうふうに理解しているわけであります。
春名分科員 では、実際の仕事をお聞きします。
 消防庁長官、消防職員が警察の指揮下に入って活動していることがありますか。
石井政府参考人 警察の指揮下に入って活動するということはございません。
春名分科員 昨年五月末から六月にかけて、ワールドカップという大イベントも開かれました。その際の体制でも、警察と連携は確かにとってこられたと思うんですね。ただ、消防は警察内のそういう組織として動いているんじゃなくて、対等の、独自の組織として消防救急体制をとってやっているわけですよね。決して消防職員が警察の指揮に入ってやっているわけじゃないんですね。
 この点はもう明らかでありまして、根拠の法令、確かに二つの法令に分かれて、警察的だという非常に漠然とした話で、今、大臣おっしゃる。警察的だという位置づけでばくっとくくって。しかし、根拠法令はない、組織の一部だという根拠法令はない。その上、実際の活動も指揮下に入ってやっているわけではないので、警察の組織の一部ということは、これはやはり通用しない話だと思うんですね。
 ここらで、私は、そのこともわかっているから、今まであなた方がそういうふうに言ってきたのはILOはよく知っているわけだけれども、公務員制度改革の議論がこういう大事なときに来ているときに、そのことに固執をして、だから団結権を与えないということはいかがなものかということで提案をしているわけでしょう。
 大体、一九七三年に条約勧告適用専門家委員会の報告でも、消防職員の職務が軍隊及び警察に関する本条約第九条に基づいてこの種の労働者を除外することを正当化するような性質のものじゃないと言っているわけですね、一九七三年にも。そして最近でも、二〇〇一年の八月二十一日、国連社会権規約委員会の最終見解、出ています。ここでは、警察の構成員に日本国の消防職員が含まれるという解釈宣言を皆さんはされているわけだが、これを撤回するように要求して、NGO及び他の市民団体の構成員と協議するということを日本政府に勧告しているわけですね。
 こういう積み重ねの上に立って昨年の十一月の付与の問題が提起されているわけで、そのことを冒頭に重く受けとめるとおっしゃっているわけだから、このことを今再考するということが、大臣、大事じゃないでしょうか。その点、いかがですか。
片山国務大臣 相当重く受けとめているんですが。しかし、今の日本の消防のいろいろな置かれている状況や、あるいは消防の当事者、常備消防もありますし、消防団というのと今日本の場合は連携してやっているんですね、ボランティア消防と。そういういろいろなことを考えますと、ここで直ちに団結権というのはなかなか、重く受けとめていますよ、重く受けとめていますから、政府部内で真剣に検討はしているんだけれども、しかし、ここで直ちに団結権を付与というところまでなかなか我々は踏み切れないので、引き続いて重く受けとめて重く検討してまいります。
春名分科員 直ちにというふうにならないというおっしゃり方をされているんですけれども、もう五十数年来のあれでしょう、公務員制度改革に今着手しているわけでしょう。能力等級が一番今大きな柱だというふうにあなた方はおっしゃるのかもしれないけれども、この公務員制度改革、五十年来になかった改革をやろうとしているそのときですよね、今。そのときに、この一番大事なこういう問題がそのまま先送りされて、解決もしないままに進んでいいのかということが、私は、世界から見ても大変異常だと言わざるを得ないわけで、直ちにじゃなくて、今直ちに考えて、この公務員制度改革の中でこのことを解決していくということが大事なんじゃないかと思うんですね。
 その点、もう一点お聞かせいただきたいんですけれども、皆さんが言われるもう一つの理由に、消防職員委員会を九五年に合意をして、九六年からこれが始まった、これが団結権の代償としてある程度の役割を果たしてきているので、こういう点でも検討してもらわなきゃいけないという御意見があるわけです。
 そこで、私、質問させていただきたいのは、九五年に国と労働組合との間で消防職員委員会制度が導入されることを合意したことに対して、確かに条約勧告適用委員会は、満足を持って歓迎というような趣旨を九五年のときに言われているわけです。そのことがこの追加情報の中にも麗々しく書いてあるわけですね、いいんだと、満足を持って歓迎したじゃないかというふうにILOに言っておられるわけですね。
 ただ、私、お聞きしますけれども、これで消防職員の団結権問題はすべて解決済みだ、そういう立場をILOが表明したんだろうか、どの勧告や文書でそのことを明らかにしたのか、もしそういうのがあるんであれば言っていただけたらと思います。
森政府参考人 お答えいたします。
 消防職員の団結権問題につきましては、長年の議論の結果、消防職員委員会の創設ということで合意されて、法改正まで至ったわけでございますけれども、我が国のこうした見解につきまして、ILOの十分な理解が得られるように必要な情報を提供してまいってきておりますし、消防職員の団結権問題については、もちろん、いろいろな議論がなされることまでは私どもとして否定する考えはないということは従来から申し上げてきているところでございます。
    〔浅野主査代理退席、主査着席〕
春名分科員 今何を言っているのかよくわからないんですけれどもね。
 私の質問に答えてほしいんですよ。どの勧告や文書でもう団結権問題は解決済みだ、そんなものがありますかと。あなた方の、いいですか、この政府追加情報の中には、ILOは満足を持って歓迎してくれた、そのことしか書いてないんですよ。だからこれでいいじゃないかというふうに言っているわけですよ、このあなた方がつくった文書の中には。満足を持って歓迎して、それでもう終わりですよということを表明したことがありますかと言っているんです。
片山国務大臣 文書はあるかどうかちょっと探させますけれども、しかし、満足を持って歓迎するというのは、最大級の受け入れの言葉じゃないですか。だから、それは我々はこれもまた重く受けとめているわけですよ、ILOさんの。
春名分科員 最大級の受けとめだというふうにおっしゃるんだが、その同じ文書で、大臣、何を言っているか、もう一回読んでみてほしいんですよ。いいですか、「「当委員会」は、満足をもって条約適用へ向かうこの重要な一歩として歓迎し、」、今言った、「当局と自治体労働者の組合が対話を続けるように奨励した。」次行きますよ、「合意に達したことは非常に喜ばしい」こと、「この最初の一歩に続いてさらなる前進がみられるであろう。」「新制度は、」、消防職員委員会のことです、「新制度は、問題の最終的解決ではない。従って、これまでの積極的な歩みにはしかるべく留意しながらも、法律上も実践上もILOの第八十七号条約が完全に遵守されるにはまだ程遠い。」これが満足を持って歓迎されるということの、一部にあるけれども、全体像なわけですよ。九五年です、あの合意をした、そのときの条約勧告適用委員会の日本に関する報告です。
 つまり、大臣、条約完全実施への一歩という意味での歓迎なんじゃないんですか。これで決着などという認識は私はないと思いますし、ないからこそ今度の公務員制度改革の中でイの一番にこのことを取り上げて団結権の付与ということを改めて問題提起をしているということではないんでしょうか。
片山国務大臣 私も春名委員の言われるとおりだと思いますよ。ILOがこれで満足するならもう話は終わっているので、やはりこれは次に続くステップだと。それはしかし、今までに比べると前進だ、だから機能させてくれ、こういうことなんですね。だから、我々もこれは最終的な解決だと思っておりません。ただしかし、これを機能させることによってILOが期待した労使の話し合い、そういうことがここで進むんではないかと。こういうことを、今我々も、できるだけこれを活用しろ、いろいろな形で何回も開けということを今一生懸命指導しているところであります。
春名分科員 今大臣、非常に大事なことをおっしゃったと思います。次のステップであり、最終的解決とは思っていないということをおっしゃったと思います。
 それで、今消防職員委員会ができて七年目でありますが、これが代償措置として機能できるように見守ってほしいという趣旨も言われました。
 そこで、その消防職員委員会の実態が団結権の代償たり得るのかどうかについても少し伺っておきたいと思うんですね。
 まず最初、最近五年間の消防職員委員会の開催状況、これは割合でも結構ですから報告をいただきたい。
石井政府参考人 お答え申し上げます。
 平成八年度につきましては、九百二十六本部のうち七百九十二本部が開催をいたして、比率でいうと八五・五%でございます。以下申し上げますと、九年度は九百二十三本部のうち七百十一、それから……(春名分科員「比率を言って」と呼ぶ)七七%、それから十年度は九百十七本部のうち七百本部で七六・三%、それから十一年度は九百十一本部のうち六百五十四本部で七一・八%、それから十二年度は九百六本部のうち六百六十五本部で七三・四%、それから十三年度は九百二本部のうち六百四十四本部で七一・四%、それぞれ開催されております。
春名分科員 最近では開催そのものがされていないところがふえて、ついに三〇%程度が開催そのものをしていないという状況になっているということです。大臣、これが第一です。
 第二に、審議件数、同じく過去五年間でどんな状況でしょうか。
石井政府参考人 申し上げます。
 平成八年度は七千八百六十五件、それから九年度が五千八百五十六件、十年度が五千四百四十七件、十一年度が五千二十六件、十二年度が五千三十一件、十三年度は四千九百十二件ということになっております。
春名分科員 八年度は八千七百件あったのが、十三年度は四千九百件になっているということです。取り上げられる、審議をされる件数も残念ながら減っているという状況であります。
 三番目に、各年度、取り上げられた要求の中で、実施することが適当であるという数値が出ます。十二年度は二千十四件で四〇%、十三年度は二千五十二件で四一・八%、大体四割の要求は、実施することが適当との判断が下されております。
 ところで、私は一昨年の六月十五日、この問題を取り上げて、実施した方がよいとなったものの中で実際に実施されたものがどの程度あるのか、これは世間に公表されていませんでしたので、調査し、明らかにし、公表すべきであるということを要求いたしました。当時の中川長官は、我々としても、今後できるだけその件数を把握し、今後の参考に努めてまいりたい、このように御答弁をされたんです。
 さて、二年たちました。どの程度各年度で実際に実現をしているのか、このことを具体的に示していただきたい。
石井政府参考人 お答え申し上げます。
 委員会で実施が適当とされた意見のうち、消防長の処置によりまして実現に至りましたものの比率ですけれども、十一年度に実施が適当とされた千九百九十五件のうち、実施に至ったものは千百五十一件、五七・七%でございます。また、十二年度に実施が適当とされた二千十四件のうち、実現に至ったものは千八十一件、五三・七%というふうになっております。
 十三年度についてはまだ集計中でございますので……(春名分科員「その前の十年は」と呼ぶ)それ以前は、私どもでそこまで調べておりませんでして、十一年度から調査をしておるわけでございます。
春名分科員 きょう初めてその数字を聞いて、私は進歩だというふうに思います。今まで、その数字はとっておりません、わかりません、各消防長、消防本部長などに任せてありますという御答弁をずっとされてきたんです。ですから、私はこれは一歩進歩だと思います。
 ただ、その中で、今、五七%、五三%が実現をしたということがわかっているわけですから、その具体的な中身を、これは元資料があるはずですので、消防本部ごとにどういう要求が出て、どう実現したかと全部調べておられるのでおわかりになるか、あるいは、数字をとっているだけであればそれでも今のところ結構ですので、その数字はぜひ示していただくことをお願いしたい、それを一つ答えてほしい。
 もう一つは、先ほど私が述べた消防庁長官、ILOへの報告では、この三〇%が実施をしていない、委員会を開いていないというようなことだとか、そういう都合の悪いことは余り報告されていないんですね。そういうこともちゃんと報告をして、本当に代償的な機能を果たしているのかどうかを客観的に判断するような、そういう対応をしないと信頼されないと思うんですね。
 その二点、お聞かせいただきたい。
石井政府参考人 今の御質問、ちょっと前段がはっきり趣旨がよくわからなかったんですが、おっしゃる意味は、実現した件数は先ほど申し上げたとおりなんですが、その実現したものの中身を調べろということでございますか。(春名分科員「はい、そうです」と呼ぶ)それは、いろいろ実務上の問題もありますが、努力はいたしたいと思います。
 それから、せっかくこの委員会があるのに、今開催していないところが三割近くあるのではないかというような点でございますが、私どもとしては、この制度発足の際に、少なくとも年に一回はやってほしいというふうにお願いをしてきたわけでございます。
 特に、昨年改めて調べてみますと、一度もまだやっていないというようなところもあったものですから、これは、この一月に課長通知を発出いたしまして、とにかくちゃんとやってほしいということで、その時点まで一度もやっていなかった消防本部が十八本部あったんですけれども、これまでに、すべて十四年度中に、三宅島のようにちょっと特殊な環境にあるところは別でございますが、その団体以外は全部開催はしていただきました。
 今後とも、やはりせっかくいい制度だと思いますので、少なくとも年に一回はやっていただくように、私どもも努力をしてまいりたいと思っております。
春名分科員 ですから、ILOに、三割ぐらいは実際には委員会がやられていないんだ、労働組合の方、自主組織の方からはそういう報告は行っているんですよ。それでILOが自覚して、ああそうなっているのかと驚いているわけですから、あなた方の報告の中にも、そういう十分でない面も含めてきちっと報告を上げるというふうにしないとだめなんじゃないですかということを言っているわけです。それは質問。
 そして、次の質問に行きますね。以前にも指摘しましたが、提出した意見が事務局レベルで門前払いされているという事態が引き続き続いております。
 具体的な例を挙げます。消防力基準で示す人員、研修出向要員及び年次有給休暇保障のための人員を確保すること、消防力の基準に基づき、救急隊を増隊すること、意見提出者が消防職員委員会に出席をし、提出した意見の趣旨説明や改善点を述べることができるようにすること、傍聴できるようにすること、重大な労働災害事故が発生したときは、直ちに安全委員会を開催すること。ごく一例でありますが、こうした非常に大事な、私、皆さんが見てもそうだと思うんですが、大事な意見、審議の項目が事務局のレベルで門前払いされまして、実は審議の対象から外されているのです。
 二〇〇一年十月、総務省の消防庁自身が発表した数字でいきますと、九八年、九九年度において、「消防職員委員会開催前に消防当局の独自判断で審議対象外になった意見は、八百六十六件に及びます。」と、皆さん方もそういうことを指摘しています。
 こういう大事な問題は、組合であればそんな問題は当然第一の要求なり交渉事になりますけれども、これが判断によって審議外になる、これはとても認められないといいますか、問題じゃないですか。そういう認識はありますか。
石井政府参考人 最初に言われましたILOへの報告につきましては、また、たしか二年に一遍ぐらい報告の機会もあると思いますので、今の御指摘も念頭に置いて今後対応させていただきたいと思っております。
 それから、今おっしゃいました、審議対象外のものが多いのではないか、それから、中身からして問題ではないかという点ですけれども、私どもが承知しておりますものでいいますと、審議対象外とされました意見は、平成八年度で七百八十五件あったんですけれども、その後、年度によって出入りはございますけれども、だんだん漸減の傾向にございまして、十三年度には二百九十九件まで減ってきております。
 そういう意味で、私どもなるべく、やはりせっかくいい制度ですので、消防職員の皆さんから出た御意見はできるだけ審議していただくようにお願いしているつもりであります。
 先ほど、ことし一月八日に消防課長通知を出したと申しましたけれども、ここでも、提出意見は制度の趣旨に照らし、できるだけ広く審議事項とすることが望ましい、それから、「法律に定める審議事項とならないことが明らかなものに限り審議対象外とすること。」それから、「また、判断に迷う場合は、意見提出者に意見の趣旨を確認するなど、意見提出者の意向を十分に汲み取るように」してほしいといったようなことを通知で出しております。
 また、今後とも、消防のいろいろな会議もございますので、そういった趣旨を徹底するように努力をしていきたいと思っております。
春名分科員 今私が申し上げたのはごく一部でありまして、私、この消防職員委員会の問題を取り上げるのは三回目で、系統的に実態を私自身も努力してつかんでおりますので、そういう点の積み上げの上に立って質問をしておりまして、この七年間の経過を見ますと、私は、消防職員委員会そのものを全否定する必要は全くありません。もちろん、そういう声が通るようなことになってきたという面はあるわけで、それ自身をある意味では評価する必要があると思うんですね。
 ただ、これは消防組織法の中の、消防の組織の一部なんですよね。そうですよね。地方公務員法を改正して、法人格を持つ職員団体ではないわけですよね。だから、そこに本質的な違いがあって、そこからこういう今私が申し上げたような問題も出てきているわけです。門前払いなんということはあり得ませんから。そうでしょう、労働組合であれば。
 それから、違いはたくさんあるわけで、一年に基本的に一回でしょう。一回以上はと言われているのかもしれませんけれども。労働組合の場合は、もちろん定期、随時、交渉回数にそういう制限があるわけじゃありませんよね。それから、先ほど傍聴も認められない、メモもだめ、こういう話も出ましたけれども、そういう制限をつける必要性もないわけだけれども、今は実態はそうなっている。
 それから、問題提起、話し合いという点で見たらどうかといいますと、さっき言いましたように、事務局の判断で受理が却下される、意見提出者その他の職員は審議を傍聴できない、意見を審議する時間が極端に短い、そういう事態がある。
 一方、組合の場合は、組合の要求書や口頭申し入れによって交渉するし、必要に応じて再交渉もやる、しっかりした議論もやる、そういうことを通じて、職員自身も団結もして自分の労働条件も守られる中で、そして安全と命を守るためにさらなる使命感を持って頑張ることができると私は思うんですよね。
 そういう点からも、消防職員委員会ができたから団結権の問題はもういいというふうには絶対になりませんし、改めてこの七年間の経緯を見れば、それにかわるものじゃない、代償機能としてかわるものにはならないということははっきりしていると思うんですね。
 大臣、そういう点で、先ほど警察の問題も言いました、警察の一部という問題。そして、職員委員会の七年間の実態ということもお伝えをいたしました。その上に立って、昨年十一月のこの勧告が出されているという重みを、重みは何度もお持ちだということを言われましたけれども、それを考えたときに、改めて聞きます。
 今度の公務員制度改革の中でこのことをきちっとグローバルスタンダードとして、団結権を確立するというところに踏み出していただきたい。大臣も、その意味では先頭に立つようにしていただきたいということを強く訴えたいわけです。いかがでしょうか。
片山国務大臣 春名委員の熱意はわかりますし、お気持ちもわからないでもないんだけれども、なかなかそうは簡単にはいきませんよ、長い経緯があって。だから、十分言われることを念頭に置いて検討いたします。
春名分科員 長い経緯のもとに、一九六五年からの経緯のもとに今回そういう段階に立ち至っているということを、その重みを受けとめて対処することが大事だと私は思います。そのことを最後に申し上げまして、質問といたします。
奥田主査 これにて春名直章君の質疑は終了いたしました。
 次に、山口わか子君。
山口(わ)分科員 社会民主党の山口わか子でございます。
 片山総務大臣に御質問をいたします。
 市町村合併についてでして、もう片山大臣は非常に詳しく御存じだと思いますので、お答えをいただきたいと思います。
 私、地方で、長野県なんですけれども、非常に山間地が多いところで、市町村長は物すごく悩んでいまして、もう選挙のときから合併の不安、合併、合併で、明けても暮れても合併という感じで悩んでいるわけですね。それで、どうも私が見ていますのに、十分に情報が伝わらないんじゃないかなという思いもしないわけではありません。ですので、きょうは、私自身も余りよく知らない部分もございますので、お答えをいただいて、できるだけわかりやすい、市町村合併というのはどういうものなのか、そして合併をしたらどうなるのかということを御答弁いただきたいというふうに思います。
 まず最初にですが、市町村合併、昭和の大合併とか明治の大合併もありましたけれども、今回、本当に、正直言って突然出てきたという感じもしないわけではないんですが、市町村合併の目的についてですけれども、合併の目的というのが本当にどこにあるかということをきょうはお聞かせいただきたいと思うんです。
 二〇〇〇年の行政改革大綱に市町村合併推進の基本方針が出されているというふうに思っていますし、それから、小泉内閣が誕生したときに、二〇〇一年の六月ですか、骨太方針にも市町村合併のことが載っているというふうに思うんですが、それに基づいて、本当に市町村合併の目的というのはどういうことなのかをまずお答えいただきたいと思います。
片山国務大臣 市町村合併は昔からずっとあるんですよ。それを政策的にぐわっとやったのが明治二十二年、三年の明治の大合併ですよね。山口委員御承知のように、七万一千あったんです、それまで市町村が。それで一万五千になったんですね。それから、太平洋戦争に負けまして、日本は新しい自治制度になる。いろいろな制度が変わりましたよね。そこで、昭和の二十七、八年から法律をつくりまして、昭和の三十年代初めまでやったんです。このときには、一万三、四千あったのが四千弱になったんですね。これは新しい自治制度で市町村にいろいろなことをやらせよう、基礎的な自治体として十分いろいろなことをやらせよう、こういうことなんですね。
 それから、今度の平成の大合併というのは、地方分権一括推進法というのが平成十二年の四月から施行になったんですよ。その前に国会で、委員御承知だと思いますけれども、衆参で地方分権推進の決議を全会一致でやったんですよ。地方分権ということが、ムードが盛り上がりまして、そういう中で、市町村は国民に一番身近な基礎的な自治体なんで、市町村にできるだけいろいろな仕事をやってもらおう、権限も市町村までおろそう、あるいは税財源も市町村に与えよう。平成十二年の地方分権一括推進法のときは、権限はかなり移譲もあったし、国の関与も減ったんだけれども、都道府県どまりなんですよ。市町村まで余りおりていないんですよ。
 そこで、本当に中心になるのが市町村だというのが今回の考え方で、そのためには市町村にしっかりした基盤をつくってもらわなきゃいかぬ、市町村でいろいろなことがやれるように。そのためには、市町村が大きくなる、強くなる、元気になるためには、やはり行政、財政の基盤を強化していく、そのためには、もう一遍合併を考えるべきじゃないか。合併によって強くして、そこでいろいろなことができるようにして、それを地方分権の受け皿にして、しかも、今これだけ世の中の状況も変わってきているので、大きくしても住民の皆さんも対応できるだろう、こういうことで、平成十二年の十二月に、当時の森内閣で、市町村合併を推進しよう、ただし、今回は自主的な合併だと。それから、これは当時の与党三党が千ぐらいと言ったんですよ。だから、千を目指そうと、千になりませんけれども。
 そういうことで今回の合併が始まったんで、我々は市町村を強くするために、市町村がいろいろなことができるようにするために合併をやっているんです。地方を悪くするためになんてやりませんよ、ばかばかしくて。もうくたびれてしまう。ぜひひとつ御理解を賜りたいと思います。
山口(わ)分科員 今のお話を聞きますと、市町村を強くするためだ、自治の能力をつけるため、そして市町村の数をもっと減らさなければいけない。(片山国務大臣「大きくすれば減るわけです」と呼ぶ)わかりますけれども、数と合併は反比例するわけですから、そういうふうにしたいというふうに聞こえるわけですね。そういう御答弁だったんですが、必ずしも、市町村を大きくすればいいのか、あるいは市町村が非常に、地理的な条件もいろいろあって、市町村が自立して生きていくことだって必要じゃないかというふうに私は思うわけですね。
 確かに地方分権一括法によって、本当に地方分権というものは物すごく大事だと私も思っていますし、市町村がやはり自立していくということも物すごく大事なことですし、そのことは私はいいと思うんですが、そのために合併をもしするんであれば、その合併の選択というのは、それぞれの市町村がやはりきちんとしていく。もちろん、自立するということが条件でなければいけませんけれども、自立していくことが私は大事だというふうに思っているわけですね。
 ですから、千にしたいというのは自民党さんのきっと要望なんでしょうけれども、千にすれば本当にいいのかという議論も私はしていかなければいけないというふうに思うんですね。千にしたらどこがいいのか、千にすると本当に市町村が自立できるのかというところの具体的な情報というのは、それぞれの市町村には恐らく伝わっていないんじゃないかというふうに思うんです。つまり、やはり千にすることのみが頭に入っちゃって、いや、うちの方は、例えば長野県は、今の市町村を三分の一に減らされるんだということだけが頭に来ちゃって、では、何の目的で減らすのかということが余り、きっと皆さんというか、各市町村の理解は得られていないんじゃないかというふうに思うんです。
 それで、私が考えますのに、確かに市町村の数が多ければ財政負担は重くなりますよね。これは当然のことだというふうに思いますから、市町村の数を減らすというのは、やはりそれだけ財政赤字を減らしていきたいという意図がおありなのかどうなのか、そのために数の問題が出てくるのか。それとも、本当に地方分権の推進をするためには千が本当にいいのかどうかという、そこら辺がちょっとわかりにくいと思うんですが、御説明いただきたい。
片山国務大臣 先ほど言いました明治の大合併のときには、市町村を近代国家の末端の行政単位にする、そういうことで、できれば三百戸から五百戸を一つの目標にしたんですよ、三百から五百、ちょっと幅がありますけれども。それから、昭和の大合併のときは、新制中学校が義務教育になったものですから、それを市町村がちゃんと管理できるように、経営できるようにしようというので、八千人以上という目標をつくったんですよ。
 今回は、自主的な合併ですから、三百戸から五百戸だとか八千人以上というのはつくっていません。ただ、何にも、一つのひっかかりがないと合併がやりにくいでしょうから、各都道府県に合併のパターンというのをつくってもらったんですよ、各県に。各県の事情を考えて、知事さんで合併のたたき台というパターンをつくってもらっている。それが一つの合併の目標なんですよ。
 千というのは、与党、これは自民党だけじゃありません、当時の与党三党なんだけれども、今、三千二百幾らあるんですよ、だから、三分の一ぐらいにしたらどうか。それから、もう一つは、わかりやすいですよね、千というのが。大変丸い数字だから、それで千という数字を出したので、これは目標でも何でもありません。しかし、与党三党の言われていることですから、尊重せないけません。だから、与党三党が言われる千にしろということを踏まえてとなっています、行政改革大綱は。
 そこで、今委員が言われたように、財政赤字をなくするために合併するんじゃないかと。それが中心じゃありません。結果としては、財政が効率化する、行財政がスリムになるということはあるかもしれませんよ。町村長さんが五人おるのが一人になるんだから、議員さんが二百人おるのが三十人ぐらいになるかもしれませんから、それがスリムになるかもしれませんけれども、財政のためにやるんじゃないんですよ。市町村に本当に仕事ができるようになってもらう。今なら、千人や二千人や三千人の市町村で、山口委員、専門の職員が来ませんよ。例えば、介護保険をやるとき、どれだけ苦労しましたか、能力ないから。それは当たり前なんです。
 だから、介護保険をやる、国保をきちんとやる、上下水道をしっかりやる、産業振興をやる、環境をちゃんと対応する、住民の健康をやる、その場合に、ある程度の行政能力や財政力がなきゃできません。しかも、恐らく千人や二千人のところは税金だってほとんど取れない。だから、全部交付税なんですよ。私は、自立をしてもらうのは構わないと思う。しかし、全部よそから交付税をもらって自立というのは私はおかしいと思う。
 だから、自立はもう大賛成です。千人で自立したいのなら、どうぞやってもらえばいいんです。ただし、今までのような、護送船団みたいなそれだけの世話は、もう今の状況では、山口委員はよくおわかりかと思いますけれども、とれません、昔みたいに。高度経済成長でじゃぶじゃぶ税金がふえるときに、交付税もふえるような状況ならいいですよ。そんな状況じゃないんですから、だから、自立するためにも、私は、合併をして強くならないと、行財政の基盤を充実していないと自立できないと思う。自立はもう大賛成であります。
山口(わ)分科員 私も自立は必要だというふうに思うんですが、自立にもいろいろあると思うんですね。合併は、もう大臣がおっしゃいましたように、これはあくまでも自主的な合併ですから、合併するとは限らないわけです。合併しないところも出てくるわけですね。
 これは、特に長野県の場合はそうですが、もう本当に、人口が千人とか二千人というところもあるわけです。長野県は、とにかく百二十も市町村があります。
 例えば、飯田下伊那地域というのは南信の方ですけれども、市町村の数は十八なんですね。ところが、面積というと、千九百二十九平方キロメートル、つまり、これは香川県とか大阪府と同じ面積があるわけです。それで、ここにもう一つ、上伊那郡というのがあるんですが、上伊那郡を足しますと、面積は二千五百七十七平方キロ、つまり、東京都より大きくなっちゃうわけです。ところが、人口はというと、飯田下伊那地区で十七・八万人、つまり、大阪府の人口の二%しかないわけですね。それは、もうとても無理ですね。しかも、東京都の面積から比べたら、もうとても比較なんかできないわけです。一千二百万人もあるわけですから、比較なんかできないわけですね。
 ですが、この人たちは、その全体の面積の九三%が森林、山林を抱えていまして、先祖代々、自分たちの山林を守ってきたわけですね。この山林を守るということは、都会においしい空気を送る、そして、木を生産して、山に保水能力をつけるから、水もおいしい水を都会に送っているわけです。これはやはりここに人口があるから、人が住んでいて、しかも、先祖代々もらった農地だから、みんな一生懸命、お金がなくても、田んぼは、米を売りますが、田んぼの暇なときは山に入って、本当に山を歩いて、一生懸命保全してきた皆さんがいるわけですね。
 私は、そういう人たちのやはり大切さ、日本の国土を守るという、そのために都会が生きていかれるということになるのであれば、むしろ合併によって、もし生きられない、さっき大臣がおっしゃったように、高度経済成長で実は子供たちはみんな出ていっちゃったわけです。何で出ていっちゃったかというと、もう農業で食べていかれないから子供たちは出ていっちゃった。子供がいないわけじゃないんですが、出ていっちゃう。そして、残されたのは高齢者だけになってしまったということになっているわけで、今、自立を目指す小規模の市町村は、それではいけない、とにかく自分たちの産業、自分たちの農業、自分たちの林業をもっとやはり活性化して、都会から子供たちを呼び寄せようじゃないかということを一生懸命やっているわけですね。そうすると、そういうところへもやはり支援というのは私は必要じゃないかと思うんです。
 小規模市町村の将来について、今は合併推進で、合併に対してはさまざまな支援策があるんですが、そういった努力をくまなくしていこう、でも自立していこうと考えている、そういう町村も結構長野県には出てきまして、頑張っているわけなんですね。
 先ほどちょっと大臣が言われましたけれども、介護の能力もないじゃないか、そしてほかの能力もないじゃないかというふうにおっしゃいますが、例えば栄村というところは、一軒に一人、ヘルパーさんの資格を取るわけです。これは、げたばきヘルパーと言っているんですが、そして、そのヘルパーを全部村の社協へ登録して、そして、その何十人もいるヘルパーさんが自分の隣組の中のお年寄りを介護するという制度をつくったわけですね。そうでないと、会社は、あんな山の中ですから全然来ませんから、そういうことで、お互いに介護のシステムをつくり上げていくというユニークな活動もしているわけですね。
 ですから、そういうところはやはり私は支援していくことで、もっともっと、やはり農山村を守ることが国土を守ること、あるいは都会の人たちが暮らしよくすることだと思うんです。
 木曽には非常に大きなダムがありまして、このダムの水は全部名古屋へ行っているわけです。木曽にダムがあるから名古屋の人たちが水を飲めるわけでして、そういうことを考えていったら、やはり合併だけじゃなくて、もっとそういう農山村をこれから生かしていく、こういう政策も必要じゃないかと思うんです。
 何で私がそんなことを申し上げるかといいますと、今、合併のできない市町村、したくてもできないところがあるわけですね。そういう皆さんの不安というのは物すごいんですよ。確かに税金はそんなに納める能力はありませんから、過疎債とか過疎に対する交付税に頼って生きていることは、私はそれは当然あることだと思うんですけれども、そういった場合に、ではそういう市町村に対してはこれからどうなさるおつもり、どうなさるというのは、これは自立的な合併ですから、大臣がどうしようということではないと思いますけれども、考え方をお聞かせいただきたいと思います。
片山国務大臣 山口委員が言われるように、これからは、森林だとかがあるそういう山の中の町村、それはもう国土保全の上からいっても、水や空気からいっても必要なんですよ。そういうところはしっかりと役割を果たしてもらわないかぬのですよ。だから、役割を果たすためにも、小さければ、行政能力も財政力もないから何にもできないんですよ、例えばそこで特産品の振興をやろうとか、もっと林業の振興をやろうとか、農業をやろうといっても、今の小さな町村では。大きな中に入って面積が広くなるかもしれぬけれども、広いものはITを利用したりなんかでいろいろできるのでね。だから、小さければいろいろなことができるというんじゃないんですよ、大きい方ができるんですよ。
 それから、今、小規模な町村は物すごく優遇されているんですよ。今委員が言われたでしょう、過疎振興、過疎活性化法といいましたか、過疎法でしょう、辺地法でしょう、山村振興法でしょう。だから、むしろ、そうでない地域の連中が、例えば優遇され過ぎだと言っているんですよ。過疎債なんというのは、小さな村でも何億、どかっと行くんですよ、しかも、あの七割は交付税で補てんするんですから。だから今は、今の状況に、むしろそういうところは優遇になれちゃって、これが当たり前だと思っているんです。そうじゃないんですよ、ずっと優遇されているんですよ。
 だから、この辺は、しかし過疎法は残した方がいいと私は思いますよ、山村振興法もあった方がいいんだけれども、しかし、小さければいいというものじゃないんですよ。大きくなっていろいろなことをやってもらった方がいい。そういうことの中で、そこが自立する道を考えていく。
 そこで、小規模町村については、今第二十七次の地方制度調査会というのをやっていますから、そこで先生方に小規模町村のあり方を議論してもらっています。そこが恐らく中間報告か答申かを出すと思いますので、それをいただきましたら、それをもとに総務省としても、小規模町村をどうやって残していくか、活用していくか、役割を果たしていくか、十分検討したいと思います。
山口(わ)分科員 小規模だからできないんじゃなくて、小規模が今までやってきたわけですから、いろいろな山村がかつてやってきたわけですから、それをこれからその小規模の市町村が選ぶことに支援するということが大事だと思うんですね。大きくなればいいというものでもないと思うんですよ。(片山国務大臣「小さければいいというものでもない」と呼ぶ)それもあるけれども、もちろんそこを選ぶのはそれぞれの基礎自治体が選ぶんだろうと思うんですね。ですから、総務大臣が、もう大きい方がいいよと言っちゃうと、みんなが、そうかな、小さいのはだめかなと思っちゃうわけですから、小さいとか大きいとかは皆さんが選んでくださいとおっしゃれば、私はいいんじゃないかと思うんです。
 ですから、そこのところは、もっともっと大臣の方もそれぞれの自治体の実態を十分に把握していただく、理解していただく中で、自治体に生きている皆さんはどこで生きていても一緒なんですよ。東京で生きていようが山の中で生きていようが、一人の人間としては生きていることに変わりはないわけで、いつでもどこでもだれでも、さまざまな、政治の恩恵も受けなきゃいけないかわりには、自分たちが行う義務もきちっと果たしていくということだろうと思うんですね。そこら辺が、余りにも今は不安の方が大きくなっちゃっているということがあって、その辺は十分実態を把握されて、本当に市町村が生き残る、生き残ると言うとおかしいんですけれども、活性化していく、自立の道を選ぶことに支援をしていただくようなことも考えていただきたいというふうに思います。
 時間がないものですから、もう一つお伺いしたいんですが、合併によりまして、さまざまな合併の市ができていくわけなものですから、国の機関との関係が少し崩れてくるんじゃないかというふうに思っているんです。
 例えば、合併に伴って国機関の所在地に不均衡が生まれてくるということがあると思うんです。国の機関といっても随分統廃合されてしまいましたが、最後に残っているのが、例えば法務局ですとかハローワークみたいなものがあるわけです。合併後の市町村に、極端な話、全然ないところも出てきてしまうわけですね。十万とか十五万の人口なのにハローワークも一つもない、法務局もないということが当然起こってくると思うんですね。そうかと思うと一つの市に二つも三つもあるというような現象も出てくるというふうに思うんです。多分、統廃合というのは合併ということが起こる前に国が行政改革の中で決めていったんじゃないかというふうに思うんですが、合併した場合に、一体国の機関をどういうふうにしていくのか。
 それと、もう一つついでにお伺いしますが、住民にとってうんと必要な施設なんです。今、ハローワークは満員です。私の方も松本市にあるんですけれども、いつ行ったって満員で、一日がかりで相談に行く人たちが多くいるという大変な状況になっていますし、法務局も、最近、土地登記ですとか、戸籍の問題ですとか、国際化の問題ですとか、さまざまな国籍ですとか、そういう問題で非常に今の実態はすごいわけですね。
 そうすると、これの全くないところはどうするのかという問題と、あるいは、全くないけれどもそのまま統廃合しちゃうのか。しちゃった場合に、私は、これは私の考え方ですが、むしろ市町村で受け持てるような、つまり権限を市町村に移して、そういうことが実際に住民に困らないようにできるのかどうか、その辺の大臣のお考えをお聞かせいただきたい。
片山国務大臣 国の行政機関は、国の各省の行政の都合で置くものですから、市町村を必ずしも見ていないんですよ。ただ、市町村ごとに一つ置くとかというのは、あるいは昔はあったと思いますよ。今は全体を効率化してスリム化しようということですから、全体としては縮小の傾向ですよ。合併して一つの市町村ができた場合に、各省は恐らく考慮はすると思います。しかし、やはり各省の仕事の都合でやると思いますね。今ハローワークでいっぱい希望があって、多く人がハローワークに詰めかけるようなところは必ず置くと思いますよ。場合によっては、私の方が、総務省が各省に注文するというのか、要請をしてもいい、こういうふうに思っております。だから、国の行政機関と必ず合併というのがリンクしてということではありません、国の機関は、国のそれぞれの行政の都合で置くものですから。
 それから、もう一つ、ぜひ山口委員にわかってもらいたいのは、基本的には首長さん、議員さんはそんなに積極的じゃないんですよ。というのは、私も選挙で出てきて、山口委員も選挙で出てきてよくわかりますけれども、選挙でわざわざ出て首長になったり議員になったりするのが、合併したらやめないかぬのですよ。それは、潜在的にみんなあるんです。私は、町村長大会でも議長会でも必ず言っている。自分のことも考えなさい、選挙をした者は当たり前だ、ただし地域の将来も考えて、どこかで折り合ってくれと言っている、接点を。今のままで仲よくやって、金はほとんど交付税で、余り仕事をせぬでもやっていけるような町村が割に多いんですよ。これが合併すると、町村長さんは一人になる、議員さんは五分の一になる。そういうことも一つあるんです。
 だから、総合的に、いろいろ難しいんですけれども、考えないけませんが、山口君の言われた、大きくだけすればいいとは思いません。しかし、今のままでぬくぬくと残るという状況も必ず変わるんです。そういう意味では、地域の将来を考えて、どういうのが一番いいかの選択をしてもらう。それでも絶対合併は嫌だというなら結構です。そのかわり、財政やなんかはだんだん厳しくなりますよ。今と同じように交付税がもらえるという保証はない、交付税の総額が減っているんだから。国全体がこういう状況でしょう。山の中の市町村だけが今までと同じように金がもらえて、税金はほとんど入らないんですから、税金の二十倍ですよ。交付税が、税の二十倍。税だけでは、役場の職員の人件費の三分の一ですよ。そういう町村が私のところでもいっぱいある。そういう状況はやはり直さないけませんし、直さざるを得ないんです。そこはぜひわかってもらいたいと思います。
山口(わ)分科員 先ほどから大臣はそうおっしゃいますが、税金を払いたくても払えない現状というのもあるわけですよ。ですから、それはもうそういう過疎に人間がいなくなっちゃったという、経済優先の社会ですから、やはり農山村がどんどん廃れてきて、都会にみんな行っちゃったから払えないということもあるわけですね。
 でも、その反面、やはり山村や森林を守って水を涵養しているという大事な役割もあるわけですから……(片山国務大臣「いや、だから、大きくても守れるというんですよ、合併しても」と呼ぶ)いえ、違うんです。だから、そういう意味では、そういう市町村は、例えば自分たちが生きるために、ではせっかく山村を守っているんだから、そのためにやはり都会の人は私たちの方へ少しはやはりお金を欲しい、そういうことだってこれからは起きてくると思うんですね。
 これはやはりそれぞれの場所にそれぞれの機能があるわけで、それを無視して、そこに住んでいる人たちの希望も無視して合併すると、これは国民にとっては本当に悲しいことになりかねない、おば捨て山になっちゃう、あるいは、本当にひどい状況で、孤独死なんということが起こり得る世の中になっちゃうわけで、そうではないと思うんですね。そこは、そこで生きる道をやはり国がきちっと支援するということが私は必要だ。余分に上げることはないかもしれませんが、やはり生きるために必要な支援というのは大事だというふうに思っています。
 もう一つ、ちょっとお伺いしたいんですが、合併をすることによって、私は、非常にこれは企業がもうかっちゃうんじゃないかなと実はちょっと思うんですね。例えば、合併しますと、さまざまなシステムを変更しなきゃいけませんよね。官公庁向けのさまざまなシステムがありますね。ITのシステムも変更しなければいけません。
 ある試算で、これは新聞に出ていたんですが、官公庁向けのシステム市場が大体年間に一兆九千億円、そのうち自治体が七千億円程度ということで、企業によっては、もう自治体向けのサービスの窓口までつくって積極的にやるというようなことが起こっているわけですね。そして、それ以外に、例えば用紙ですとか、インクですとか、消耗品ですとか、文書管理ですとか、例規集ですとか、挙げれば切りがないんですが、合併によって新たにさまざまな産業が、市場が生まれるということが起こるんですけれども、このことについては、私は、お金を減らすといいますか、もし財政面だけ考えると、合併によってそういう金銭的な負担がふえてくるということになりますと、やはりこれも財政的な負担につながるんじゃないかというふうに思っているわけです。
 ですから、そういう部分がこれから考えていかなきゃいけない部分として、政府としてどういうふうに考えているかという問題と、もう一つ、広域連合とのかかわりというのが出てくると思うんですね。
 広域連合というのは、今ある広域連合と、合併した場合の広域連合というのは、さまざまに違ってくるわけです。今までと違ったところへ合併すれば今までの広域連合に入っているわけにいかなくなるとか、下水道ですとか、病院ですとか、ごみですとか、さまざまな広域連合があるんですが、そういうこととの連携といいますか、それについてはどういうふうにお考えでしょうか。
片山国務大臣 もう時間があれなようですが、簡単に言いますと、今の連合はそのままですよ。必要なものは合併して、要らなくなったものは吸収すればいいし、必要があるものは残せばいい、それだけです。
 それから、企業がもうかるというのは知れていますよ、インクだとかなんとかは。それはかえって景気振興になるので。むだなことはだめですよ。だから、それは私は大したことじゃないと思う。
 それから、山口委員、基本的にはやはり、小さいところが自立をするということは、支援を求めないで自分でやるということですよ。今の日本の地方自治の一番弱いところは、何でもすぐ頼むこと、応援をしてくれ、支援をしてくれ、助成をしてくれ。だから、それはちゃんとしているんですよ、過疎法や何かで。だから、そこはぜひ、合併せぬで自立していこうというのなら、支援を求めずにみずから立つということでやっていただきたい。
山口(わ)分科員 合併にはさまざまな支援策がございますので、見るとどうしても、合併すればこんなにたくさん支援策があるというふうに見ちゃうというところがありますから、それは合併しなくてもしても、必要な支援はやはりぜひしていただきたいというのが私のお願いです。
 どうもありがとうございました。
奥田主査 これにて山口わか子君の質疑は終了いたしました。
 次に、後藤斎君。
後藤(斎)分科員 大臣、大変遅くまでお仕事、御苦労さまでございます。役所の皆さんも大変御苦労さまです。
 大臣、最近大臣の記事が新聞紙上でたくさん出回っておりまして、久しぶりに大臣に総務関係の話をさせていただく機会を得まして、本当にありがたいと思っております。
 どこが三位一体かということで、昨年の五月、片山大臣のプラン、その後の三位一体、いろいろな形で、各論というか、集約の部分になるといろいろな議論が出るというのはどの世界でもそうだと思うんですが、そうはいっても、大臣、最近、泥仕合とか、非難される理由はないとか、反論、異論、いろいろな形でお出になっております。
 確かに、大臣がもう既に二年前から出されておりますいろいろな、総務省のこれからの地方主権のあり方を含めた議論の進め方、そしてことしの四月一日ですか、大臣が議員になられておる経済財政諮問会議の「国民の視点」ということで、私も改めてこれを見させていただいて、まさにおっしゃるとおりだなと。逆に、非の打ちどころがない分いろいろな意見が出やすいのかなと思いながらも、大臣、これはもうそろそろ、六月中には取りまとめるということで、長い議論の結果、多分二つ問題があったのかなと私、個人的には思っています。
 取りまとめ役が経済財政諮問会議、議長が小泉総理ということで、総務省の関係の地方財政調査会、財務省の主体というか、そういうふうな色分けをされておりますのが、今、地方分権改革推進会議。この推進会議の中での議論が、今大臣が、税財源の先送りをしながら削減先行の対応は絶対だめだという強い議論は、一貫して大臣の地方の立場に立った意見だと思います。さはさりながら、増税まで先送りされるというものは、確かに私も地方のスタンスから見ればいかがかなと思うんですが、その試案なるものも、正直言って、私どもも事務局の方に、今の時点のものを見せてくださいと言ったら、だめだという強いリジェクトを受けまして、全体の内容は報道等から推察するしかないんです。
 大臣、まず、税財源移譲というものが増税時まで先送りをされるというその試案についての大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
片山国務大臣 今、後藤委員が、地方分権改革推進会議は財務省側のと。ではないんです。あれは地方分権改革推進会議で、地方分権をやるための組織なんですよ。あれは平成六年、七年かにつくりまして、ずっと来て、前の諸井虔さんが委員長のときには相当な実績を残しているんですよ。それが二年ぐらい前からメンバーをかえたんですね。それで、言うことがやや、必ずしも、もう一つということになってきたんですけれども、もともとは地方分権を進めるための会議なんですよ。
 そこで、あそこの議長代理の人が試案をつくったんですよ。それを、事務局を完全に入れずに、委員にも何も言わずに、自分と何かプライベートな人ぐらいでつくったんですね。それを隠しているのが漏れたんですな。それが新聞記事なんですよ。
 中身は、余りはっきりしていないんですけれども、結局、税源移譲は増税のときにしかできないんで、そのときまで待とうと。そうでもないと言っているんですけれどもね、彼らは。私も詳しいことは知らない。それから、それまでに国の地方に対する補助金、負担金を削ろうと。地方交付税も性格は変えて削ろうということなんです。地方に対する金だけ削って、一番基本の、三位一体の中の中心の税源移譲は先送りだ、こう言うから、だから、それはおよそ地方分権改革推進会議の名にも値しないし、今は、国から地方へ、地方でできることは地方にとあれだけ小泉さんが言っているし、地方分権一括推進法ができ、国会で衆参で決議をして、そういう中で逆行するじゃないか、何を考えているんだというのが一つ。
 それから、やり方がオープンでなくて、非民主的だということを私は言っているんで、やめろとかなんとかというのは、あれは記者団がうまく誘導していろいろ言うものですから、そういう人はやめてもらった方がいいなと言ったのがああやって報じられたので、辞任を要請したわけでも何でもないんですけれども、しかし、あのやり方じゃよくないと思うんですよ。
 だから、三位一体の改革というのは、税源移譲と国の補助金、負担金と交付税なんだけれども、メーンは、地方の行財政の基盤を強くする、地方分権を進めるということじゃないといかぬ。そのためには税源移譲がメーンなんですよ。税源移譲をするに当たって、国の補助金、負担金をどう考えて整理するか、地方交付税をどう見直していくか、その根っこがおかしいですね。だから、あそこでどういう案をつくろうが、それが例えば政府の案になるなんということは私はあり得ないと思っています。少なくとも私は反対しますから。
 それから、経済財政諮問会議で議論をしていって、最終的には閣議決定になる、こういうことでございまして、六月中に骨太方針の二〇〇三をまとめたい。こういうことの中で三位一体の改革を位置づけていこう、こういうことでございまして、これからいろいろな議論が起こると思いますけれども、ぜひ、私が今言ったような立場を貫いていくべきだと考えております。
後藤(斎)分科員 もう一つ、これも報道によりますと、大臣も若干触れられましたが、現行の地方交付税を地方共同税と財政調整交付金というものに再構成をしながら、自治体間の歳入格差の調整を地方共同税でやり、財政調整交付金は財源不足を補うために自治体にという。いろいろな新たな仕組み、現行の仕組みはちょっとずつ変えて、新たにというようなスタンスを出しながらも、これも、今の法律を大きく変えて、抜本的な体制の変更になると思うんです。
 この点についても、大臣も知らないという話で先ほどおっしゃったんで、多分、もちろん十分に議論をしているわけではないと思うんですが、この辺も含めて、地方財政改革という観点よりも、むしろ、もともと、この三位一体の大臣がプランとしてお出しになっているものは、要すれば、最終的に、総理が言われている、地方ができるものはできるだけ地方の自主性に任せて、地域の活性化を含めて対応していくことが、今の経済社会の仕組みから、二十一世紀に望まれるだろうという趣旨だと思うんですね。その際に、この交付税まで、ここまで踏み込んだ中での大臣の御見解を簡単に。これは本当に簡単で結構ですから。
片山国務大臣 今の試案はこういうことなんですよ。
 今、一般財源で赤字地方債まで出していますから、五税の法定の繰り入れ分が約十三兆ですよ。それだけじゃとても足りませんから、五兆円ほど地財対策でプラスしているんですよ。その上に六兆円ぐらい赤字地方債があるんですよ。これを全部国の責任で面倒見るということにしているんです。地財対策のものについては、将来の負担は地方も見るというような、ちょっと複雑なことをやっているんですけれども。そのうち、その考え方は、法定分は地方の共同税にすると。共同税なんという概念はありませんよ、これはわけわからぬ。それは共同税にすると。それから、五兆円の上乗せ分は、これは財政調整交付金にして次第に減らしていく。それから、赤字地方債については、これも減らしていくんだけれども、今、この元利償還は将来交付税で見ると言っているんですよ、だからこれを見ないと。
 ということは、交付税制度をずたずたにするということですよ。それで、地方の財源保障だとか財源調整をできなくするということです。およそ、それは発想がおかしいんですよ。そういう意見は、大学生の卒業論文なんかにはあるかもしれませんよ。しかし、こんなものが制度としてまとまるわけでも、実現可能性も何にもない、それを言っているんですよ。そうしたら、いやいや、私どもの方は幾らでも直すんですからみたいなことを言っているんですけれどもね。
 そういうことでございます。
後藤(斎)分科員 それと、大臣、この一年間、三位一体のお話を大臣がされてから、いろいろな意見がある中で、一つは、昨年でしたか、義務教育の国庫負担金をいろいろな形で組みかえをなさったり、新たに、これから国庫助成負担金の廃止縮小ということはもちろん三位一体の中でも対応なさっていきますが、実際問題として、この二年ほどを見ると、借金ということでは、交付税も減り、税収も減りということで、地方債で賄わなければ地方の財政運営ができないという中で、今年度末では百九十九兆円になろうとするという数字を、実際、人件費や固定経費が自治体は多いわけですから、そこに切り込むということは、昨年の人勧や人事委員会の流れとしてはそういうこともこれから出てくる可能性も大ではあります。
 この借金の累積というのは、今のような財政構造、特に、地方税もなかなかふえない、交付税もこれから、国の財政も厳しいですから、ふえないということになると、どんな形で地方の財源不足というものを、ある程度目標を示しながらということが必要だと思うんですが、解消していくおつもりなのか。その点は、三位一体には具体的にはございませんが、いかがでしょうか。
片山国務大臣 これはなかなか難しい話なんですけれども、国も大変ですよ。地方は二百兆ですけれども、国はもう五百兆近いんですから。
 そこで、一つは、やはり景気の回復、経済の活性化ですね、それによって税収がふえていくということ、これが一つ。
 それからもう一つは、国も地方も、全体に仕事の中身を見直して、不要不急なものはやめていく、スリム化していく。そこで、地方交付税の方でも、単独事業をずうっと抑えていっているんですよ。毎年五%ずつ地方の単独事業を落とそう。もう一つは定数ですね、地方公務員の定数を一%ずつ落としていこう。それから、経常費も、いろいろな福祉やなんかについても横ばいにしていこう、ふやさない。こういうことで、行財政改革で経費を切り詰めるというのが二つ目。
 三つ目は、今と、国と地方の税源配分を変えてもらうということです。国が六割を取って地方が四割取っているものを、当面私は五対五にしろと。こういうことの総合的な対策をせないけませんが、これは相当時間がかかる、私はこういうふうに思っております。
後藤(斎)分科員 その一環で、先ほどもお話がありましたけれども、市町村合併を進めていかなければいけないという中で、実際、特例法の期限は十七年の三月末ということで、二年を切りました。いろいろな形で総務省は御努力をされて、それ以内にできるだけ千にするという目標を達成すべく御努力はされておりますが、どのようにそれをこれから後押しをし、来年の通常国会にはまた法案改正をしながら、その特例法の特例をまた認めていこうという御議論もあるようです。
 先ほどもお話があったように、以前にもお聞きをしましたが、合併しなかった市町村をどのような形で、サポートというと大変失礼な言い方なんで、国としては支援をしていくのか、その点もあわせて御見解をお願いしたいと思います。
片山国務大臣 今、後藤委員が言われるように、あと二年になりました。そこで、今、法定協、任意協を結成している市町村が八割、ということは、八割が合併を本気で検討している。それで、約六割が法定協ですから、法定協というのは合併の前提ですから、特に問題がなければ合併に移行してもらえる。
 こういうことで、行政改革大綱に書いた千にはなかなかいきませんが、できるだけ千に近い数字を目指そう、こういうふうに思っておりまして、新しい合併推進のためのプランをつくって、例えば、総務省の中に、推進本部を拡充して、合併相談センターを置くとか、都道府県にもう少しいろいろ頑張ってもらって、今の合併のパターンをフォローアップしてもらうとか、それから、もう少し個別の指導を強化してもらうとか、いろいろなことを考えておりまして、ぜひ、できるだけ合併を進めてまいりたい。
 そういう中で、合併が終わらなくても、合併の意思を決定してもらったら、財政上の優遇措置は、十七年三月までに合併が終わらなくても認めてやるとか、あるいは、合併した場合に、大きな町村になった場合に、地域自治組織を認めて、ある程度、窓口的な事務やなんかは小さい単位でもできるようにするとか、いろいろなことを検討しておりまして、これも総合的な努力で合併の成果を出していきたい、こう思います。
 そこで、小規模町村をどうするかは、地方制度調査会に今議論をしてもらっておりまして、いずれ御答申がいただけると思いますけれども、どうしても合併できない小規模町村の仕事をどうやるか、あるいは税財源をどうやるか、これは考えなきゃいけません。
 ただ、合併した大きな市町村と小さな市町村でこれから権能や税財源の配分に差をつけていくというのは、私は、後藤委員、やむを得ないと思っているんです。画一である必要はないので、できるところにはできるようにいろいろなことをやらせる、できないところはできないんですからしようがない。その場合に、その仕事はどこがやるのか、県にやってもらうのか、あるいは隣接のところがやるのか、そういうことを総合的に考えていきたいと思っております。
 いずれにせよ、調査会で御結論をいただけると思いますので、それを見てさらに深めたい、こう思っております。
後藤(斎)分科員 大臣、最後には大臣にまとめてお聞きをしますが、地域の特性や資源を生かした都市の再生、農山漁村の活性化の推進ということで、大臣の平成十四年度に向けての政策推進プランということも触れたいと思いますので、ほかの省庁に二、三問質問を別にしますので、ちょっとお聞きをしておきたいと思います。
 農水省の方に冒頭お伺いをしたいと思います。
 中山間地の直接支払い制度ができて三年目を迎えようとして、来年度には新たに見直しという時期に差しかかっております。進んでいる地域と進んでない地域、それぞれでございますが、もともと、この中山間地というのは農業生産の維持がなかなか難しいけれども、農業や山村の持つ多面的機能の確保ということの中で、中山間地の耕作放棄は依然として増加傾向にある、いろいろな要素の中で、景観保持とかプラスに働いているものを集落を中心としてできるだけ確保をしていこうという趣旨ででき上がったというふうに認識をしております。
 そんな中で、これから、先ほどもお話をしたように、十六年度までがとりあえずの支払い制度の実施時期ということで、そろそろ制度の終了する中での、次のステージに向けての制度の拡充と強化というものが、いろいろな自治体から農水省の方にも参っていると思います。
 そこで、これから、一期目と言って正しいかどうかわかりませんが、これまでの中山間地の直接支払い制度の実施状況をそれぞれ農水省も現時点で点検なさっていると思いますが、それを踏まえまして、次期対策、第二ステージへ、どんな形で地域の要望も踏まえて実施をしていくのか、御見解をお願いしたいと思います。
日尾野政府参考人 中山間地域の直接支払い制度についてのお尋ねでございますけれども、平成十二年以来、平成十四年度までの見込みによりますと、千九百四十八の市町村におきまして、六十五万五千ヘクタールの農用地を対象といたしまして、三万三千四百三十の協定がつくられているという現況にございます。これは、全国で対象となる農用地を有する市町村の九割、それから対象となる農用地の八割において、適正な農業生産活動等が継続的に行われ、耕作放棄の発生が防止され、多面的機能が確保されたという状況になっているわけでございます。
 具体的には、各地域においては、例えば、集落協定等の締結を契機にいたしまして、集落における話し合いや共同作業等が復活したりとか、新たな農業後継者の参加ができたりとか、第三セクターにおける農作業の請負が始まるなど、新たな農業生産活動の形成に向けた動きが始まっております。また、耕作放棄地を集落の共同活動で積極的に復旧するといったような例も生まれてきているわけでございます。
 しかしながら、昨年、ちょうど中間点ということで中間点検を行ったわけでございますけれども、やはり地目別における取り組みの格差があるとか等々のことがわかってきておりますので、今、一層それの普及、定着に努めているところでございます。
 御指摘のように、この制度については、平成十六年度に制度全体の見直しを行っていくこととしておるわけでございますけれども、その際におきましては、中山間地域農業をめぐりますいろいろな諸情勢の変化ですとか、今申し上げました協定活動を通じたいろいろな農用地の維持管理の全体の状況、こんなことを踏まえて見直しを行ってまいりたいと思っておりますし、各地域地域におきましていろいろな御要望も出てきているわけでございますので、地方公共団体からの提案にも十分耳を傾けながら、中立的な第三者委員会等の意見をも伺った上で対応していきたい、さように考えている次第でございます。
後藤(斎)分科員 もう一点、カワウという鳥が最近大変ふえております。この鳥は、特に内水面、川や湖のアユとかその他の魚を食べてしまって、特定鳥獣保護計画にかかるかかからないかというような形で、実際、漁業者の立場から見ると早く駆除効果が出るような形にしてもらいたいというふうな要望もございます。
 この点について、本当に簡潔で結構ですから、農水省の方はどんな形で取り組んでいくのか、お答えをお願いします。
弓削政府参考人 カワウの食害についてのお尋ねでございますけれども、カワウによるアユを初め内水面における水産資源の食害が各地で深刻化してきていることから、水産庁としては、平成十年度より、カワウによる食害の実態把握と食害防止対策の検討を行ってきたところであります。
 この検討結果を踏まえ、カワウによる食害防止対策を総合的に推進するため、平成十五年度から、地方公共団体や漁協等が、飛来状況や生息状況等の調査、人や機器類による追い払いなどの防除対策、一定数の捕獲駆除等を行う場合の助成措置を新たに創設したところであります。また、これとあわせて、河川等における魚類の隠れ場所の設置や、カワウに捕食されにくいアユ等の放流手法の開発を行っていくこととしております。
 今後とも、環境省を初めとした関係機関との連携を保ちつつ、カワウの効果的な食害防止対策について取り組んでまいりたいと思っております。
後藤(斎)分科員 もう一つ、特に山村地域においては鳥獣害、イノシシとか猿とかシカとか、そういう鳥獣が農作物や森を荒らすという被害も最近特に、自然体系が変わったのかどうかということはよくわかりませんが、多くなっております。
 そこで、確かに、一律に把握することは予算的にもなかなか難しいというお話は聞いておりますが、特に中山間地における鳥獣害の被害対策、それは、先ほども御指摘があったように、だんだん過疎地域になっていく地域も多い中で、農水省としてどんな形で鳥獣害対策の充実強化を進めていかれるのか、端的にお答えを願いたいと思います。
坂野政府参考人 鳥獣害対策についてお答えいたします。
 中山間地を中心に、先ほど委員御指摘のイノシシ、猿等の野生鳥獣によりまして、さまざまな農作物に被害が及んでおります。全国的な農業被害については、十三年度で、被害面積が十六万ヘクタール、これは全国でありますけれども、被害金額で二百十七億円となっておるわけであります。
 このため、農林水産省といたしましては、これらの被害を防止するため、侵入の防止さく等の整備、それから被害発生原因の究明と対策技術の開発等の試験研究、さらに、住民を対象にしまして、鳥獣の生態とか被害防止に必要な知識の啓発普及等の対策を実施しているところであります。
 さらに、十五年度からは、生産者によります追い払いなどの自衛体制の整備に向けた対策の強化ということであります。具体的には、協力に対する賃金だとか謝金だとか、それから追い払う場合の弾丸代の助成、そういったことに取り組んでおります。
 今後とも、鳥獣害対策の推進に努めてまいりたいと考えております。
後藤(斎)分科員 最後に大臣にお聞きする前にもう一点、ことしの一月になってから総理が観光立国懇談会というのを開催されて、これから、地域、国全体挙げて観光資源を創造し、整備していくというふうな中で取り組みが国土交通省でも進められていると思いますが、その点について、今後の取り組みの方針を簡潔にお答え願いたいと思います。
金澤政府参考人 観光立国に向けての国土交通省の取り組みについてお尋ねでございました。
 委員御案内のとおり、平成十四年に我が国から海外を訪れた旅行者は一千六百万人余に上っておりますのに対しまして、我が国を訪れていただいた外国人の旅行者は五百二十万人余ということで大きな格差が生じており、これを是正することが重要な政策課題と考えております。
 今御指摘のとおり、小泉総理も、本年の一月に、二〇一〇年までに我が国を訪れていただく旅行客の数を倍増させる、一千万人にするということを目標に掲げられたところでございます。
 国土交通省といたしましては、本年を訪日ツーリズム元年と位置づけまして、韓国、米国、中国などを対象としてのビジット・ジャパン・キャンペーンの実施、あるいは、国際空港やアクセス鉄道・道路の整備などの受け入れ体制の整備、さらには、問題とされております観光コスト高の是正などの取り組みによりまして外国の方々の訪日数をふやしてまいりたい、このように考えておるところであります。
 このため、本年度予算におきましてビジット・ジャパン・キャンペーンの事業費を二十億円確保いたしておりますが、この予算の実施につきましては、国土交通大臣を本部長といたしますキャンペーン本部におきまして、国、地方公共団体そして民間が三位一体、一丸となって取り組むこととしております。具体的には、現在、それぞれの市場ごとの、旅行市場の特性の調査を行っておりまして、この調査を踏まえ、地方自治体からも、それぞれの地方の運輸局などを通じまして、国の事業との連携協力の要望を聴取しているところでございます。
 こうした要望を踏まえ、効果的なビジット・ジャパン・キャンペーンの戦略の作成に向けて、今後、鋭意検討を進めてまいりたい、このように考えております。
後藤(斎)分科員 大臣、今いろいろな形で各省、関係するところにお聞きをしましたが、ある試算では、先ほどいろいろな形で補助金絡みの話をお聞きしましたが、その国庫補助金を地方自体でうまくやっていくと一〇%コスト削減ができるという試算があるようです。すぐどうこうという話は、先ほど大臣が現実的に立ってという話を財源の部分でもお話しされましたが、やはり必要な部分と、必要でないとは言いませんが、いろいろな仕組みを前に進めるときには、確かにいろいろなあつれきもあるでしょうし、この三位一体というのがまさに、地方というよりも国民的な視点に立ってという、大臣が四月一日に出されたその視点で、ぜひ六月が余り先送りにならないような形でまとめていただきたいと私は思います。その点につきまして最後に大臣の決意をお伺いしまして、質問を終わりたいと思います。
片山国務大臣 補助金で不要なもの、不急なものがあればそれはやめるということはありますけれども、必要なものの補助金もかなりあるんですよ。そういうものを仮にやめるのなら財源措置をしてもらわないと。できないのなら補助金のままの方がまだいい。
 そういうことでございまして、総合的にこれはどうやっていくか、今、官房副長官のところで総務省、財務省、内閣府の次官に経済財政諮問会議の民間の委員が入って案をつくっていますから、それを中心に、何とか会議なんか相手にせぬで、そこでやっていきますからね。そこはそこで検討するのは、何か検討はしているようですから、勝手ですけれども。ぜひ、合理的な、しかし地方が強くなる、そういう補助金の見直し、整理合理化、それから交付税の見直し、税源移譲、こういうことでやってまいりますので、御指導、御支援を賜りたいと思います。
後藤(斎)分科員 ありがとうございました。
奥田主査 これにて後藤斎君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして総務省所管及び公営企業金融公庫についての質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
奥田主査 これより内閣府所管中防衛庁・防衛施設庁について、昨日に引き続き審査を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。今川正美君。
今川分科員 社会民主党の今川正美です。
 私は、まず防衛庁の方にお伺いしたいことがあるんですが、実は、先般行われました統一自治体選挙に関しまして、現在インド洋に派遣中の護衛艦や補給艦に乗っている自衛官の不在者投票の問題であります。
 私は二つのケースを新聞で知ったわけでありますが、まず一件は、横須賀の市会議員選挙、これは四月二十七日に投開票でありますけれども、そのケースであります。
 報道によりますと、横須賀を出港したイージス艦「きりしま」など三隻の場合には、不在者投票の手続を済ませて投票行為を行ったんだけれども、締め切りの二十七日午後八時までに届かなくて、結局は死に票、死票となってしまったということであります。
 これは新聞報道でありますから、正確を期すために、今申し上げた「きりしま」など三隻の乗組員数と、その中での選挙権を持っている有権者数、それをまず御説明ください。
宇田川政府参考人 委員御質問の四月二十七日に投票が行われました横須賀市議選の関係でございます。
 インド洋に派遣されている護衛艦「きりしま」の乗員は約三百名、補給艦「ときわ」の乗員は約百四十名、護衛艦「はるさめ」の乗員は約百七十名であります。これらの艦艇における四月二十七日に投開票された横須賀市議選の有権者は約五百名であります。
 委員御質問の不在者投票の件でございます。
 御指摘の横須賀市議会議員選挙につきましては、四月二十日に告示されまして、四月二十七日に投票の予定でありましたので、その間に不在者投票を実施することとしました。
 四月十九日には、護衛艦隊司令部は、横須賀市の選挙管理委員会から受領しました投票用紙の護衛艦「きりしま」等への輸送を民間輸送業者に依頼しました。四月二十三日には、護衛艦「きりしま」等は、現地連絡官経由で投票用紙を受領し、不在者投票を実施しました。四月二十四日、現地連絡官は、護衛艦「きりしま」等から投票済み用紙を回収し、護衛艦隊司令部への輸送を民間業者に依頼したわけであります。
 当初、現地の民間輸送業者からは、確約はできないものの、四月二十六日に成田空港に投票済み用紙が到着する予定であるというふうに申しておりましたので、そのように措置したわけでありますが、実際には四月二十八日に成田空港に到着いたしました。
 このため、投票済み用紙を締め切り、これは四月二十七日になりますが、これまでに横須賀市の選挙管理委員会に届けることができなかったものであります。
今川分科員 この有権者は約五百名というわけですね。せんだって行われた神奈川の県知事選挙と県会議員選挙には同じく不在者投票を行って、これはちゃんと投票行為は成立をしたわけでありますね。
 その後、今申し上げた市会議員選挙に関しては、新聞報道では、四月二十七日午前、成田空港に着いたが、配送業者が休みで間に合わなかった、となっているんですね。今の御説明で、私の聞き間違いでなければ二十八日に届いたというふうになっているんですが、もう一度確認のためにそこのところを。
宇田川政府参考人 委員の御指摘の不在者投票をした投票済み用紙がいつ成田に着いたかということでありますが、二十八日であります。
今川分科員 ということは、これは読売新聞の四月二十九日付の報道ですけれども、これは報道が間違っているんですね。
 ちょっと待ってください。お聞きしたいことは、いわゆるこの配送業者の側に全面的にミスがあったためにこうなったのか。あるいは、今、日にちを、十九日に投票用紙を受け取り、二十三日に投票行為を船の中でして、そして二十四日に送り返した、それが二十八日にしか届かなかった、こういう説明ですね。この新聞報道だと、まあ二十七日か二十八日かの違いはありますが、その配送業者が休みであった、つまり二十七日は日曜日ですから。そういうこともきちっと考慮した上で送り返しておれば届いたんではないかという、いわゆる自衛隊の側にもそういう手続上問題がありはしなかったのかということをお聞きしているんです。
 もう一度ちょっと御説明ください。
宇田川政府参考人 失礼しました。原因についてははっきり明確に申し上げませんでした。
 当初、その民間輸送業者とその契約行為を結んだときには、民間輸送業者はシンガポール経由便を使用して四月二十六日までには成田空港に持っていく、こういう話でございました。ところが、実際にはその便はございませんで、パリ経由便しかなかったということでございまして、したがって、仮にシンガポール経由便があれば間に合ったと思うんですが、実際にはパリ経由便だったということでございまして、この辺の説明は先ほどちょっと落ちました。
今川分科員 次は、私の地元でもあります佐世保の方なんですが、これも四月二十七日の投開票で、佐世保の市長選挙及び市会議員選挙に関してであります。イージス艦「こんごう」など三隻は、四月の十日に佐世保を出港しておりまして、これも新聞報道ですから正確を期すためにお尋ねをいたしますけれども、この佐世保のケースは、自衛隊の側がそもそもこの不在者投票の手続を事前にしなかったから、当然投票できませんね、これは。
 問題は、横須賀の場合、佐世保の場合、それぞれの船の艦長がそういう手続の申請をするのか、どなたが手続をするのか。それで、佐世保の場合にはなぜそういうことになったのか。「こんごう」など三隻の乗組員数、それから有権者数、さらに、今申し上げたこの経過なり内容を御説明ください。
宇田川政府参考人 委員御質問の四月二十七日に行われました佐世保市長、市議選の関係でございます。
 最初に、有権者の数であります。「こんごう」の乗員は約三百名、補給艦「はまな」の乗員は約百四十名、護衛艦「ありあけ」の乗員は約百七十名であります。これらの艦艇におきます四月二十七日に投開票されました佐世保市長・市議選の有権者は、約五百三十名であります。
 この委員御質問の経緯でございます。
 三月上旬には、佐世保地方総監部、ここが佐世保の選挙管理委員会に対しまして、投票用紙の受領要領、それから投票済み用紙の送付要領等について照会しました。その結果を踏まえまして、自衛艦隊司令部に対しまして、不在者投票の実施要領、そのための艦艇の行動予定の変更の可否について、検討依頼を行ったものであります。
 三月中旬、自衛艦隊司令部は、海上幕僚監部とも調整したわけでありますが、昨年十一月に日本を出発しました現地部隊の隊員の疲労度、それから修理の所要等を考慮すると、護衛艦「こんごう」等において、不在者投票を実施するため艦艇の行動予定を変更し、告示日である四月二十日から投票日である二十七日までの間に沿岸国に入港することにより、艦艇部隊の交代時期をおくらせることは困難であると判断したというのが経緯であります。
 それからもう一つ、委員御質問の不在者投票の手続の責任者でございますが、艦長になります。艦長になりますが、いずれも、これは今の佐世保の場合ですと、佐世保地方総監部の方でそういうようないろいろな調整を行ったところであります。
今川分科員 横須賀のケースは、先ほど御説明があったようなことで、ある面やむを得ないところもあったかもしれないんだけれども、この佐世保の場合に、今の御説明ですと、いわゆる昨年十一月から長期間派遣されている「きりしま」などの疲労の度合いだとか、そういった理由で途中寄港するわけにはいかないんだということなんですね、説明では。
 これは石破防衛庁長官にちょっとお尋ねしたいんだけれども、今御説明があった選挙権を有している者は五百名、あるいは佐世保の場合は五百三十名ですね。やはりその一人一人の自衛官の基本的な人権、それに、地方の選挙といえども非常に大切な選挙権をローテーションでもって「きりしま」など三隻と交代するために先月十日佐世保を出港した「こんごう」が、選挙の重要さ、そういう基本的人権ということをきちっと踏まえておれば、これは選挙行為、投票行為はできたんではないかと思うんだけれども、そこのところを石破長官はどういうふうに受けとめておられますか。
石破国務大臣 基本的には委員おっしゃるとおりなんだと私は思うのですね。
 私は、今から十年ぐらい前だと思うんですが、政治改革特別委員会の委員で、在外邦人の投票というものについて、何カ国か調査に行ったことがあるんですね。オーストラリアですとか、ニュージーランドですとかへ行ってまいりました。そこで、どれだけきちんと在外の国民の選挙権というものを確保するかというのを見てきました。
 委員おっしゃるように、参政権というもの、これは何というかな、立候補者となることは極めて難しいことなんだと思いますが、参政権の一部の投票権といってもいいでしょう、これが基本的人権の大変大きな一部である。そのことは保障されなければいけないし、そのためにありとあらゆることをやらなきゃいけない。逆に言えば、それまで在外投票制度がないことによって、日本人でありながら投票できなかったということ自体が問題なのではないのかというような議論をした覚えがございます。そうしますと、投票権というものが行使されるように在外投票制度というのができたわけですから、そのために本当にもうありとあらゆることを検討するということは、基本的に重要なことなんだと思っています。
 ただ他方、インド洋においてこれはクルーズをやっているわけではないのでありまして、いろいろな御見解はおありだと思いますが、私どもとしては、テロとの闘いを行っておる米英その他の軍隊に対して支援を行うということをやっておるわけでございます。それとの兼ね合いなぞという議論をするつもりは私は全くないんですけれども、最大限この投票権というものが生きるように配慮しなければいけないということは基本論としてあると思っています。しかし、そのときにどういうような任務があるのかということの兼ね合いを全くしなくていいかというと、それはそうではない場面が、現場を委員もよく御案内でありますけれども、生ずるのだろうと思っています。
 最初の二十七日が、二十七日だか二十八日だか知りませんけれども、最初は業者さんが着く予定ですよといったのが実は着かないというようなことは、これは本当にそうなのか、言っていることをうのみにしないで本当にそれを確認するということをやっておれば、こういうことにならなかったのではないかと思います。これはやはりもっと我々はそういうことをきちんと行わなければいけない、これはそういう問題なのだと思っています。
 ところが、今の佐世保の場合になりますと、基本的にはそういう投票権というものを最大限尊重する、そのためにいろいろな配慮を行うということはそうなんです。ただ、船の回し方、隊員の疲労度、そのときにある任務というものもある程度勘案するということが現実問題としては起こり得る。
 いずれにしても、隊員の投票権というものが生かされるように、今後も真剣に考えてまいりたいということだと思います。
今川分科員 私、今の石破長官の御答弁には少しばかり異論があるんです。
 私も佐世保でもう三十数年来いろいろな米軍なり自衛隊の動きを見ていますけれども、例えばリムパックとか日米合同演習とか、実際の戦闘行動とは違いますが、演習の場合にはあらかじめ不在者投票をしています、自衛官の場合。今回のインド洋方面に派遣された「こんごう」など三隻のようなケースは、少なくとも私の記憶にないんです。
 今長官がおっしゃったように、例えば、有事法制ではないけれども、我が国が直接大変な事態の中にあるという場合であれば、それは、少々乱暴な言い方だけれども、選挙の段ではないよということになるんでしょうけれども、今回は、いわゆるテロ特措法に基づいて、はるかかなたのインド洋にいわゆる後方支援で派遣をされている。
 今おっしゃったとおり、昨年十一月から派遣されている「きりしま」などの乗組員の疲労度合い、わかりますよ。しかし、途中寄港して投票することによって、一カ月もまた「きりしま」などはインド洋にいなければならないという話とは違うでしょう。数日間の誤差だと思いますよ。そうでしょう。それはやはり石破長官御自身がおっしゃったように、一人一人の自衛官の参政権という立場からしますと、どこかの港に途中立ち寄って、それで当初の予定よりも数日間予定が狂うことというのが、まさしくどちらを優先するのか、私はやはり投票行為をきちっとさせるということだろうと思いますね。
 これは余談ですが、大体、佐世保では市議会定数三十六名で、従来、自衛隊OBの皆さんが二人ぐらいは市会議員として活躍されておったわけですね。五百三十票ですから、それが必ず自衛隊OBに行く票であるかどうかわかりませんけれども、結果として一人自衛隊OBの候補者がおっこっちゃったということもあったわけですね。
 だから、やはり私は、我が国有事ということとは事態が違うわけですから、事態の状況を勘案すれば、今回の佐世保のケースは、やはりどこかの港に寄港してきちっと不在者投票行為をさせるべきだった、私はそう思うんです。いかがですか、長官。
石破国務大臣 べきであったということは、寄港させるかどうかは別にして、いずれにしても、投票権というものはきちんと生かされるべきであったということは、そのとおりだと思っています。
 これは、恐らく基本的に認識の違いは委員と私の間にないのだろうと思いますが、日本有事の場合ならいざ知らずということは、そうも言い切れない部分があるだろう。これはどこまで行っても水かけ論みたいな話ですから、私の考えとして聞いていただければと思いますが、私どもが補給活動を行っておるということも、それはテロとの闘いの非常に重要な一部をなすものだと思っております。日本の補給というものがそれだけ重要な役割を占めておるというふうな認識を私は持っております。
 ですから、日本有事に比べれば、確かに我が国が直接攻撃を受けている事態よりは、それは、軽いという言葉を仮に使うとすればそうなのかもしれない、日本国民にとっては。しかし、そこでのテロとの闘い全体を見ますと、やはり極めて重要な一部をなしておったのだと思います。
 したがって、そういうことにも支障を与えず、私どもの立場から申し上げれば、そういうテロとの闘いということにも我が国の責任の果たし方に支障を与えず、なおかつ、投票権というものがきちんと生かされるようなやり方というものがないのか、そういうことはきちんと追求されてしかるべきだというふうに思っております。
 ですから、これは重要な任務に当たっていたんだから仕方がないんだ、投票権が生かされなくてもやむを得ないんだというようなことを申し上げるつもりは、私は全くございません。その両方が生かされるような、そういうような運用というものができないのかということはきちんと追求されてしかるべきものだし、そうあらねばならないと思っております。
今川分科員 もう時間の関係もありますので、この部分だけで長々やろうと思いませんが、いわゆる我が国有事、それから周辺事態、今回はテロ対策ということで、それぞれ事態が違いますよね。
 そうしますと、今後、有事法制、衆議院は通過したといいながらも、一年以内にはいわゆる国民保護法制というのが準備されなければならないとした場合に、今回、今私が一つの事例として申し上げた、我が国有事でないにもかかわらず、やはりそういう一つの戦闘行為に後方支援という形でかかわっていく、そうしたときにやはり自衛官といえども国民ですから、国民が持っている権利というのが、この程度と言ったら悪いけれども、こういう事態の中ですら制限されて、結果としては制限されてしまった、非常に私は事態を重く見たいんですね。今回はこれにとどめておきたいと思います。
 さて、二点目には、外務省にこれはお尋ねをしたいと思います。実は、一昨年の九・一一米国テロ事件以降、私のところの佐世保、横須賀、それから沖縄のホワイトビーチ、米海軍の原子力潜水艦の寄港するに当たっての二十四時間前の通告の問題です。
 これまで、一昨年の九月以降は――従来のいわゆるエードメモワールに基づいて、米海軍が外務省を経由して、例えば佐世保の場合には佐世保市役所に、例外を除けば二十四時間前にきちっと連絡が来ていました。現在の状態というのは、佐世保市役所まで連絡は来るんだけれども、外務省の要請によって、原潜の出入港情報をマスコミや市民などに公表しないでほしいという状態が続いているんですね。
 今月の一日でしたか、ラムズフェルド米国防長官も、アフガニスタンの状況にかかわっては、基本的な戦闘というのはもうほぼ終結している、もちろん後の掃討作戦だとか治安の回復だとかという幾つかの任務は残っているけれどもという前置きはありますが、いわゆるこの九・一一テロ事件以降の基地をめぐる状況からしますと、警戒ランクもぐっともう下がってしまっています。今のような事前通告、本来あった事前通告というのはいつまで非公表のまま続けておくのか。
 これは、歴史を振り返ってみると、初めて我が国に、原潜シードラゴンがこの佐世保に入ったときに激しい全国規模の闘争が起きたんですね。ああいううねりの中で、被爆国でもあるこの日本の港に原子力潜水艦が入るときには、少なくとも二十四時間前には通告をしましょうという、事実上の制度と言ってもいいと思うんですね、そういうのができたと思います。
 そういう非常に歴史的な意味を持つ制度でもあるにもかかわらず、いまだに、アフガンの戦闘状況がほぼ鎮静化したにもかかわらず、一般市民に公表されない。このことの理由なり、ではいつまで公表しないのか、そこら辺のことを外務省の方から御説明をお願いします。
長嶺政府参考人 お答えいたします。
 御指摘の原潜寄港情報の公開、公表自粛の措置でございますけれども、ただいま委員御指摘になりましたように、一昨年九月の米国における同時多発テロを受けまして、米側から、我が国の港に寄港中の米艦船に対する万一の脅威がないよう善処方要請があったことを踏まえまして、我が国における米軍施設・区域の警備強化の一環として実施してきておるものでございます。
 在日米軍は情勢を踏まえながらその警戒レベルを常時見直ししておりますけれども、米原子力潜水艦の我が国への寄港に関する情報につきましては、今日においても、安全上の観点から、依然としてその不公表を維持する必要があるという考え方に立っております。
 他方、今御指摘もございましたように、原子力潜水艦の我が国への寄港に関連して従来より行われております二十四時間前までの我が国政府への事前通報、これはきちんと行われておりますし、政府として、このような事前通報に係る情報を事前に関係地方公共団体に提供するということを行ってきております。また、原子力艦の寄港に伴い、通常行われております放射能検査の結果につきましても、従来どおり発表をしてきておるところでございます。
 本件、公表自粛措置は、米軍の警戒レベルに関連する事項でございますので、政府として、いかなるタイミングでこれを改めることができるか、現時点で確たることを述べることはできません。他方、米原子力潜水艦の寄港に係る情報の公表を地元の方々が重視されていることは政府としても十分承知しております。したがいまして、政府としましては、寄港に係る情報の公表が可能となり次第、速やかにこれを再開することができるよう、米側に申し入れをしてきておりますし、今後とも引き続き申し入れをしていきたい、かように考えております。
今川分科員 もう余り時間がないんですが、ではお尋ねしますよ。今月の十六日に米海軍の原潜オリンピアが入って、ことし七回目です、通算二百三回目。これは、今申し上げた非公表のような状態になってから入港がちょうど三十回目ですよ。御承知のように、放射能調査のために政府の方からもその都度、職員がたしか二名派遣されていますね。市民は従来のようにあらかじめ知ることができないから、やはり一抹の不安を持つんです。
 今おっしゃいましたが、では、米海軍佐世保基地の警戒ランクが九・一一テロ以降、現時点において何からどのように変わったのか、そこはきちっと認識ございますか。
長嶺政府参考人 今お尋ねの件でございますけれども、私どもが承知していますところでは、在日米軍施設・区域の警戒レベルは、これは一昨年九月十一日直前のレベルに比べまして、現在のレベルはそれよりも警戒度が高いレベルになっております。
 これは先ほど御答弁申し上げましたように、そのときの状況によりましてこの警戒レベルというのは常時見直されておりまして、警戒度が高まったりあるいはそれを少し下げるというようなことも行われておりますが、現時点をとりますと、いずれにいたしましても、九月十一日以前のレベルよりも高い警戒のレベルが維持されております。
今川分科員 もうほとんど時間がありませんが、私の記憶では昨年の秋だったと思いますが、米海軍横須賀基地では、基地開放デー、基地を一般市民に開放していますよ。私も週末地元に帰るんですが、米海軍基地のメーンゲートを見ても、今政府が説明があったような状況にはありません。これは、十年ちょっと前の湾岸戦争のとき、それから一昨年の九・一一米国テロ事件、確かに警戒ランクがぐっと上がりました。今も九・一一以前の状態よりも高いとおっしゃったけれども、具体的にランクを言ってください。どのような状況にあるんですか。私の実感としては全然違いますよ。
長嶺政府参考人 お答えいたします。
 米軍の警戒レベルは五段階をもってあらわされておりまして、通常の状態、これはノーマルということから始まりまして、警戒度が高い状態がAからDまで、Dが一番高い警戒レベルになりますが、私どもが承知しているところでは、九・一一以前はAレベルだったものが、現在Bレベルであるというふうに承知しております。
今川分科員 もう時間が来てしまいましたので、この原潜の寄港するときの二十四時間前の通告なりそれに伴う公表問題は、これは外務省御承知のとおり、光武顕佐世保市長だけじゃなくて、横須賀も沖縄もそれぞれ、原子力潜水艦が出入港を繰り返すそれぞれの地方自治体の首長からは、早くやはり公表できるようにしてほしいという強い要望も表明されていると思います。
 私も、こういうふうな場所で改めて、市長あるいは市民に成りかわって、今の状況はいつ公表しても何ら支障のない状況にある。一日も早く、やはり余りにも米海軍側に遠慮し過ぎですよ、本当に対等なパートナーシップだというんだったら、言うべきところにはぴしっと言ってほしいですね。そのことを申し上げて、質問を終わります。
奥田主査 これにて今川正美君の質疑は終了いたしました。
 次に、西村眞悟君。
西村分科員 遅くまで御苦労さまでございました。こんな遅くなるとは思いませんでしたが、締めくくりで有意義な話し合いをしたいと存じます。
 アメリカ・ブッシュ大統領が空母の上でイラク戦闘終結の宣言をしたときの結びは、私は諸君の最高指揮官であることを誇りに思うということであります。これらを聞いておりましたら、やはり国家には名誉の体系というものがあるんだろうと。そして、我が国の栄典の制度は我が国という国家の現状における名誉の体系を示しているんだと。
 そこで、今栄典の制度を改めていく動きがある中で、長官にお聞きするわけですが、そもそも栄典というものは軍人に対する名誉の授与から発達した歴史を持ちますけれども、我が国は戦後、戦前のように軍隊を持たないという前提で来ましたので、そもそも栄典の中心的なもの、すなわちブッシュ大統領が諸君たちの最高指揮官であることを誇りに思うという、この軍人への対処が欠落しておるなと私も思っております。
 しかし、これは軍隊があるないの議論というものにこだわることなく、我が国を防衛する任務を持つ組織が我が国にあるのかないのかといいますと、確実にあるわけです。長官はその長である。したがって、長官にお聞きしますが、その前提からお聞きしましょうか。
 例えば、自衛官に認証官の地位につくポストはないわけでありますが、私としては、統幕議長また各陸海空の幕僚長及び師団長クラス、軍司令官といいますか、方面軍総監クラスは認証官にすべきであると思っておりますが、長官はどうでありますか。
石破国務大臣 認証官というのは一体何ですかね、こういうところから議論をしなきゃいかぬのだろうと思っております。陛下の行為として、認証というものがあります。その認証を受ける者が認証官なのだということを言ってしまえば、何だか問いをもって問いに答えるようなお話でございますが、陛下が認証される方ということなのだ。つまり、それは、ふわっとした感じで言えば、それだけ重要な人なのだ、だから、統幕議長であれあるいは幕僚長であれ、そういうような認証官であるべきではないか、私が間違っているのかもしれませんが、そういうような御議論ではないかという前提において私も考えておるわけでございます。
 認証官というのはそういうものでございますが、認証官には一体どういうものがあるかといいますと、国務大臣、副大臣等各省の組織を代表する者、最高裁判所判事や高裁長官、検事総長等司法関係の職にある者、検査官や人事官、公取委員長のように両議院の同意を得て任命される者、宮内庁長官や侍従長のごとく皇室関係の職にある者、日本政府を代表する大使、公使の職にある者、こういう分類になるんだ、分類をしてみるとどうもそういうような分類になるらしい。
 その中で、統幕議長や幕僚長というものを認証官にするかどうかということは、少なくとも先ほどの分類の中には入らないということ、形式的にはそういうことに相なります。
 そうしますと、統幕議長や幕僚長を認証官とするという場合には、どういうジャンル、このジャンルに入らないとするならば、どういう形の概念をつくるのかね、こういう議論になるんだろうと思っています。
 ですから、これはきょうの有事特でも田村委員から御質問を賜りました、同じ内容の御質問をいただきました。私はそのときには、例えば政務官は認証官ではないとか、あるいは事務次官は認証官ではない、そういう方々との比較においてどうなのだろうかというような答弁を申し上げましたが、これはもう少しよく考えてみる必要があるのだろうというふうに思っております。別に分類学をやるわけではございませんが、今のところそういうような分け方になっている。
 統幕議長や幕僚長という方々が、私も防衛庁長官をやっていて思いますが、大変に重要なポストでもあるし、そして、これはもう委員も私も認識は一致をするところなんだろうと思いますが、自衛隊員は、自衛官を含む自衛隊員でございますが、自衛隊員は事に臨んでは身の危険を顧みずという宣誓を行っている。その自衛官のトップである統幕議長あるいは陸海空の自衛官のトップである幕僚長というものをどういうふうにするのかなということは、もう少し精密な議論というのが必要なのだと思います。
 そういうように、事に臨んでは身の危険を顧みないという宣誓をしておられる方々にきちんとした処遇を与えるというのはそのとおりですし、宮崎弘毅先生なんかの議論を拝読してみますと、栄典ということと罰則というものをどういうふうにして議論するのだと。罰則をもっときつくしないとこれはいかぬじゃないか、軍刑法という意味ではなくてですが。そうした場合、ちょっと待てと、罰則をきつくするんだったら栄典もちゃんとやってくれなきゃ、そういう議論も私はあるのだろうと思っております。
 現状はそういうようなことになっておりまして、これをどうするべきかということは、自衛隊とは何だろうかという議論に直結するお話だというふうには認識をしておるところでございます。
西村分科員 おっしゃるとおりですね。ジャンルがない。これが日本戦後政治の欠落ということですな。だから、それは欠落しておるのでありますから、つくらねばならない。
 認証官は何だといえば、今お答えになったことですか。我々が国会で小泉さんが総理大臣だと言っても小泉さんは総理大臣にはならないですね。憲法第六条によって天皇が小泉さんを任命する、最高裁の長たる裁判官を任命する。我々が勝手にここに集まって議論していても、法律も何もできない。憲法七条によって天皇が国会を召集する、こういう存在ですな。その方の前で任命された人が最高指揮官であり、そして現実に動く部隊の最高位のものが統合幕僚会議議長だという形からするならば、少なくともアメリカ国民で選ばれた大統領を最高指揮官とする制服の最高位のもの、例えばパウエル統幕議長は、日本へ来たら勲一等だった、同時期の日本の統合幕僚会議は勲二等だった。これは日本人としておもしろくない。おもしろくないというか、国家の体制欠如を示して余りあるなと思うんです。だから、そういう問題意識でお聞きしたんです。
 名誉の保持ということは、やはりどうしても必要です。士はおのれを知る者のために死ぬということは事実なんですな。傭兵じゃあるまいし、祖国のために、今おっしゃったような身の危険を顧みず行動して、金もうけのためにやっているんではない、何ら名を惜しめへんということですよ。そして祖国のために尽くすということなんです。
 その意味で、先ほどの答弁で半分以上述べられましたが、今度、栄典の制度をいかにあるべきかという議論が始まるわけですから、長官として、いかにあるべきか、特に軍人の名誉の保持に関していかにあるべきかということについて、御所見をお伺いできますでしょうか。
石破国務大臣 今度、一等、二等、三等、四等というようなことはなくなるのだと。そして、長くやったということについて着目をした場合には瑞宝章、そして、長くやったということではなくて、功績というものが評価されるということについては旭日章ということであるというふうに私は記憶をいたしておるところであります、間違っておればまた後で訂正をいたしますが。そういうように変わるのだということになります。
 その中において、では新しいそういう制度において、自衛官というものをどのように考えるか。それはこれからの議論なのだというふうに思っております。アメリカの、例えばコリン・パウエル氏が来れば勲一等である、日本は勲二等である、これは何だと。そういうことは問題意識としてはあるのだろうと思います。これも議論、いろいろしてまいりました。まだきちんと私の心の中で結論が出ておるわけではございません。
 他方、では、日本の統幕議長がアメリカに行く、勲章をいただく、その場合には、アメリカの最高位の軍人と同じ勲章をいただく、こういうことになっておるわけでございます。
 その辺をどのように考えるか。外交儀礼ということと、相互主義というものをどのように考えるかということもございます。これは、論理の整合ということと、外交儀礼ということと、相互主義ということと、そしてまた、今度制度が変わる、いろいろな要素を勘案していかなければいけませんが、委員おっしゃるように、どんなに口でいろいろなことを言ってみても、それはきちっとした形式、軍事組織、我々の場合には実力組織と言いかえをいたしますが、それはある意味形式によるものが大きいのだと思っています。名誉というものは、それが何だと言われるかもしれませんが、形式というものを重んじる、そうでなければそういう実力組織は成り立たないということもそうであります。
 その辺を考えながら、新しい制度においてどのようにしていくかということを、私どももよく議論をしてまいりたい。直接の所管ではございませんが、私どもとしてどうあるべきかということは、きちんと考えなければいけないと思っております。
西村分科員 先ほどからやはりたびたび出てくる、自衛隊とは何だと。これを我々政治はいかに把握するのかということが出発点ですね。
 さて、長官は自衛隊を何だと心得ておられるのか。何だとも、これから議論が始まることでありましょうということでやられているわけじゃないんですが、日本国政府の見解は、国内では軍隊ではありませんが、国外では軍隊として扱っておられる。わけのわからぬことを言うておる。表に出ていれば男として扱っていただき、家の中に入れば女性として扱う。わけがわからぬですな。
 それで、国際法では、軍隊の定義はジュネーブ条約等々でございますか。ございますとすれば、どういう定義をしておりますか。
石破国務大臣 軍とは何かというお尋ねですが、自衛隊とは何なんだと問われれば、軍なのか警察なのかというふうに問われれば、軍ではございません、警察でもございませんと。では何なのだと聞かれると、自衛隊でございますという、何か不思議な議論になってしまうわけでございますね。
 ジュネーブ条約上どうかということでございますが、ジュネーブ条約上は、ジュネーブ条約で言う軍隊とは、武力紛争に際して武力を行使することを任務とする組織一般を指すものと考えている、このように今まで申し上げております。
西村分科員 それなら、長官でなくてもいいな。軍人とはジュネーブ条約でどういうふうに定義されておりますか。制服を着て、指揮官の指揮のもとに動いて、武器を公然と携行し云々とあったでしょう。
石破国務大臣 ジュネーブ条約上、保護の対象となる軍人というものは、今委員が御指摘のように、外から判然とそれが軍人であることがわかり、階級がわかるようになっており、そして武器を公然と携行する、今すぐその資料が出てまいりませんけれども、そのような定義があったというふうに記憶をいたしております。
西村分科員 この国際法に基づく軍隊の定義、軍人の定義に、自衛隊及び自衛官は当てはまりませんか、そのとおりだと私は思いますが。
石破国務大臣 そのような意味におきまして、一般的に言えば、国際法上、自衛隊は軍隊となるということだと思います。
西村分科員 国際法上、自衛隊は軍隊であり、自衛官は軍人であると。
 では、国際法と国内法は、どちらが効力が優越するでしょうか。
 国内法で、自衛隊が軍隊である、自衛官が軍人であると決めた国内法はございませんけれども、国際法と国内法の優劣は、国際法がまさっておる。したがって、現在、日本では自衛隊が何物であるかという判断をする唯一の尺度は国際法であり、日本国内においても国外においても、自衛隊は軍隊であり、自衛官は軍人である、このようになるのではありませんか。
石破国務大臣 それは、論理的にはそういうことなのだと思っております。
 要は、呼称をどうするかという議論がありまして、昔々といいますか、昭和四十二年ですからもう今から三十数年も前のことでございますが、佐藤栄作総理大臣が、「自衛隊を、今後とも軍隊と呼称することはいたしません。はっきり申しておきます。」こういうような答弁をしておるわけであります。
 ですから、呼称としては軍隊とは言わない、しかし、実態は、国際法上は軍隊として取り扱われるのである。ということであれば、軍隊のようなものだが、そして国際法上は軍隊として取り扱われるのだが、呼称として軍隊とは言わないのだ、そういう議論があるのだと。
 ただ、これは委員も御案内のとおり、何度も委員ともお話をしたことですが、では、これは呼称の問題なのかよ、軍隊なのか警察なのかということは、それは呼称の問題ではないであろうよ、国内法制上どうなのかねという議論がやはり一方においてはあるのだと思います。
 だから、軍隊だからそれを軍と言おうが軍と言わまいがいいが、国内的にはそうは呼ばないのだというお話と、それから、実態に、国内法としてどうなの、それが外国に出たらどうなるの、それは、自衛隊が外国に出たときは、国際法上、ジュネーブ条約上、そういうふうに取り扱われるということですが、では、国内法上ではどうなのかしらねという議論も、実は、自衛隊とは何なのだということを突き詰めるときに、考えてみなければならない要素なのではないか、私はかねてから、個人的にはそのように思っておるところでございます。
西村分科員 自衛隊は軍隊である、レッテルは軍隊でないとしておこうということなんですな。
 しかし、これは単なるレッテルの問題ではなくて、今までの内閣がこのレッテルに引きずられて、国内的には軍隊ではないと言っておることで、例えば、我々が見据えてきた工作船があって、それを臨検せよというようなことを命令されて、現実に行きおった。逃げてくれたからいいですが、あれが停船して、中から手を挙げて出てきたのが制服を着た某国の士官であって、我は某国の軍人であり、任務遂行中、志かなわず、貴国の捕虜にならざるを得ない、捕虜の待遇を要求すると言った場合に、こっちは漁業法違反で追いかけているから、手錠をかけて刑務所に入れれば、これはジュネーブ条約違反になる。
 反対に、こちらから防衛庁長官の命令を受けて行った自衛官が向こうの捕虜になってしまった、捕まってしまった、それで某国に連れていかれた。日本国政府は、国際的にも自衛隊が軍隊でないようなレッテルを用い、長官は軍隊だと言ったからいいんですけれども、仮に国内で軍隊ではないような言辞を弄しておれば、これは単なる武器を携行した犯罪人であって、軍人でも何でもないから、ジュネーブ条約に基づく捕虜の待遇をするのは資格がないんだと言い放って、犯罪人扱いされるかもわからぬ、我が国の政府の任務を受けて、それを遂行しに行った自衛官がですよ。
 こういう具体的な問題が周辺海域で起こりつつあるので、どうかこのレッテルの問題は改めていただきたい。
 論語子路編にいわく、政の根本はまず何であるか。子いわく、まず名を正す、名改まれば秩序定まる。これが政治の要諦であると私は思っていますから。
 時間が少なくなって、もう一ついろいろな議論をしたいと思っているんですが、集団的自衛権とは何ぞや。
 政府見解は、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利を有しているものとされる、これが集団的自衛権ですね。昭和五十六年五月二十九日付政府の答弁書。これは定義が間違っておるんですよ。この定義は、非常に巧妙に仕組んだ、集団的自衛権はだから行使できないんだというからくりなんですよ。
 本当の自衛権の定義として、「オッペンハイムの国際法第二巻の説くところが、妥当であり最も正しいと思われる。」こういうふうに書いた我が国の高野雄一の「国際法概論」を示して、いかに間違っているというか、いかに行使しない、その結論に合わせた定義かということを示しますと、長官も御承知のとおり、集団的自衛権というものは、加盟国Aが、他の加盟国B、加盟国というのは国連です、Bまたはその一定領域に対して武力攻撃が加えられた場合に、Aの独立と安全が当該他の加盟国Bまたはその一定領域の独立、安全と同一視されるほどにAB両国が密接な関係にある場合に、武力行使に対して加盟国Aが自衛の行動をとり得る権利である、このように書いていて、その武力攻撃が自国に対するものと同一視される関係にあることが集団的自衛権発動の要件であると書いてある。
 したがって、我が国政府の集団的自衛権の定義をもって訂正するのならば、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国に対する攻撃とみなし得るほど密接な関係にあるということですね。この攻撃が、外国に対する攻撃、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって自衛する権利と政府は定義しておりますが、これは間違いなんです。密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されているように、こちらが密接な関係のゆえに把握できる場合は、実力をもって阻止する権利だということが正しいんじゃないかな。
 政府の解釈なら、まるで関係のないところにちょっかいを出しに行く権利のように解釈して定義して、だからいけないんだと言っておるんですな。反対なんです。関係のないところにちょっかいを出しに行く権利なんかないんですよ、国内法でも国際法でも。
 問題は、例えば、親は子に対する攻撃を自分に対する攻撃だと思うから、親と子の密接な関連において、だから、家族という集団は維持される、これと同じなんですよ。
 A国とB国との関係において、A国に対する攻撃が、A国とB国の密接な関係のゆえに、B国に対する攻撃、私に対する攻撃だとみなし得る場合があるんです。これは確実にあるんです。そのときに発動するものが集団的自衛権だと思っておりますが、これが最後ぐらいの答弁になりますな。御苦労さまでございますが、どう思いますか。
 間違っているんですよ。間違っていると言うた方がええんですよ、歴史に残るので、間違っているんですから。間違っているのを正しいと言ってしまってこのままいくよりも、本日の締めくくりに、どうですか、私の発言に対して御感想があれば、お伺いしたい。
石破国務大臣 先ほどの軍隊論のことについて一言申し上げますと、これは、いずれにいたしましても、憲法九条に言うがところの「陸海空軍その他の戦力」ということには当たらないということは申し上げておかねばならないと思います。軍と言ったから、じゃ、そこに当たるのかということになると、それは、憲法が禁じておるがところの「陸海空軍その他の戦力」ということには該当しない、憲法が禁じておりますがところの、ということは申し上げておかねばならないことだと思っております。当然のことでございます。
 今の集団的自衛権の御議論でございますが、私も高野先生の本は何度か読みました。いろいろな説があるということ、そして、自国が攻撃されていないにもかかわらずということを何でわざわざ入れて狭くしたのだという御議論があることもよく承知をいたしております。
 では、それは間違っておるではないかということを申しますと、私も、大臣になります前、いろいろな説を調べてみました。その中に、自国が攻撃されていないにもかかわらずというフレーズがどこの定義にもないかというと、それはそうではない。自国が攻撃されていないにもかかわらずというフレーズを入れてある定義も幾つもあるわけであります。そうすると、何が正しいのかということについて、これが定説だというものを私はまだ見出しておりませんし、今の政府の立場というのは、自国が攻撃されていないにもかかわらずという立場でございます。
 じゃ、逆にこれを入れなければどうなってしまうのだというお話もあるのだろうと思います。これを入れない場合には何が起こるのかということを考えてみますと、これまた妙なことが起こりかねないということもあります。
 いずれにいたしましても、政府といたしましては今の解釈を維持をいたしておるわけでございますが、憲法調査会初め、そういういろいろな場所におきまして集団的自衛権についての御議論を賜る、これはもう政治の場においてなされるべきことであってというのもまた政府の立場でございます。
 私として、今西村委員から、それは間違いであるというふうに言えば名が残るぞ、こういうようなお励ましというのか御教唆というのか、そういうものをいただきましたが、政府としては、今の立場を維持しておるところでございます。
 このことにつきましてはどうなのか。今委員がおっしゃいますように、集団的自衛権の本質とは何なのか。それは、ある意味、他衛は自衛だ、こういうような話であるのか。そしてまた、そこにどのような関係が必要なのか。同盟関係なのか、条約が要るのか。それとも、ある国が世界の皆さん助けてくださいというふうにわあっと世界じゅうに言った場合にはどうなるのだ。いろいろな考え方があるのだろうと思っております。
 集団的自衛権につきまして、政府の立場は先ほど申し述べたとおりでございまして、現在これを変えるということは考えておりません。しかし、政治の場においていろいろな御議論があり、そして我が国の平和と独立を守るために何が一番よいのだという御議論は今後もなされるものというふうに考えておる次第でございます。
西村分科員 我が国の平和と独立、安全を守るためにはこれだという結論の時期に差しかかってきたと思うから、議論しているわけであります。
 先ほど何か長官の答弁は、自衛隊は軍隊である、自衛官は軍人である、これはこうだろうと言った。しかし、陸海空軍ではない、こういうことですか。これだったら答弁が矛盾するから、納得できない。軍隊というのは陸海空軍なんでしょう。ただ、タイトルは軍隊でないようなタイトルをつけとるんや、これは我が国の特殊事情やと言われたから、私は納得しておるわけであります。憲法九条の二項の解釈にも、「前項の目的を達するため、」の解釈にも関連しますけれども、軍隊であるという答弁をされながら陸海空軍には該当しないというのは納得できまへんな。何か、遅くなってこれ以上こんなこんがらがった議論もしたくないけれどもね、あほらしい。そやけど、それは納得できない。
 時間がもうないから、何か、そうではないんだ、矛盾しないんだということがおありなら。だから、おかしいでしょう。軍隊であると言っておって、陸海空軍じゃない。(発言する者あり)そうかな。
 時間ありますか、委員長。
奥田主査 大丈夫ですよ。
石破国務大臣 本当に、委員おっしゃるように、こんがらがっちゃう議論なのですけれども、憲法に禁じたるがところの「陸海空軍その他の戦力」ではないということを申し上げておるわけでございます。それは、憲法によって自衛権の行使ということは国の当然固有の権利として認められるわけであって、我が国の場合には個別的自衛権、こういうことになっておるわけでございますが、その自衛権を行使しているわけであって、そういう組織を仮に自衛軍というネーミングをしたところで、それは憲法が禁ずる「陸海空軍その他の戦力」ではないのだ、しかしながら、佐藤栄作答弁によってそのような呼称は用いない、こういうことを申し上げているわけで、憲法に抵触するものではないというのはそういう意味でございます。
西村分科員 そうしたら、憲法が許す自衛権を発動、行使する、実現するための軍隊である自衛隊に陸海空軍という実体は許されている、陸海空軍であるということですな。そうやね。後ろを向かぬでも、そうやね。
石破国務大臣 憲法九条によって認められるところのものと、憲法九条が認めない「陸海空軍その他の戦力」というものがあるということでございます。自衛権を行使する実力組織として自衛隊がある。それは憲法が許容しないがところの「陸海空軍その他の戦力」ではない、しかし、それを軍とは呼称しないということを申し上げておるわけでございます。それを仮に自衛軍という名前をつけたとしても、それは憲法の禁ぜられた「陸海空軍その他の戦力」ではない。実態はそうなのでございます、私はそう思います。しかし、政府といたしまして、そのような呼称は用いないということも、政府の立場でございます。
 ですから、自衛隊は軍なのかどうなのかというふうな問いに戻るとするならば、それは国際法上は軍隊である、ジュネーブ条約の取り扱いも受けるということでございます。国内法的にはどうなのかということで申し上げれば、先ほど申し上げたとおりのことに相なります。それを今政府としては軍と呼ぶということはしていないということでございます。
西村分科員 政の要諦はまず名を正すべしだということであります。終わります。御苦労さまでした。
奥田主査 これにて西村眞悟君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして内閣府所管中防衛庁・防衛施設庁についての質疑は終了いたしました。
 これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。
 この際、一言ごあいさつを申し上げます。
 分科員各位の御協力によりまして、本分科会の議事を終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。
 これにて散会いたします。
    午後八時五十九分散会


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