衆議院

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第2号 平成16年5月18日(火曜日)

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平成十六年五月十八日(火曜日)

    午前九時二十分開議

 出席分科員

   主査 今野  東君

      城内  実君    野田  毅君

      平井 卓也君    福井  照君

      村上誠一郎君    奥村 展三君

      北橋 健治君    鈴木 克昌君

      都築  譲君    西村 真悟君

      平野 博文君    藤村  修君

      古屋 範子君

    …………………………………

   財務大臣         谷垣 禎一君

   文部科学大臣       河村 建夫君

   財務副大臣        山本 有二君

   文部科学副大臣      稲葉 大和君

   会計検査院事務総局事務総長官房審議官  利光 由行君

   会計検査院事務総局第一局長  石野 秀世君

   会計検査院事務総局第四局長  友寄 隆信君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長)  山木 康孝君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 小室 裕一君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   佐々木豊成君

   政府参考人

   (財務省関税局長)    木村 幸俊君

   政府参考人

   (財務省理財局次長)   内村 広志君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)  田中壮一郎君

   政府参考人

   (文化庁次長)      素川 富司君

   政府参考人

   (国民生活金融公庫総裁) 薄井 信明君

   政府参考人

   (国際協力銀行総裁)   篠沢 恭助君

   政府参考人

   (日本政策投資銀行総裁) 小村  武君

   参考人

   (独立行政法人日本万国博覧会記念機構理事長)  森田  衞君

   文部科学委員会専門員   崎谷 康文君

   決算行政監視委員会専門員 熊谷 得志君

    ―――――――――――――

分科員の異動

五月十八日

 辞任         補欠選任

  泉  健太君     鈴木 克昌君

  北橋 健治君     藤村  修君

  都築  譲君     西村 真悟君

同日

 辞任         補欠選任

  鈴木 克昌君     平野 博文君

  西村 真悟君     都築  譲君 

  藤村  修君     奥村 展三君

同日

 辞任         補欠選任

  奥村 展三君     北橋 健治君

  平野 博文君     泉  健太君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十四年度一般会計歳入歳出決算

 平成十四年度特別会計歳入歳出決算

 平成十四年度国税収納金整理資金受払計算書

 平成十四年度政府関係機関決算書

 平成十四年度国有財産増減及び現在額総計算書

 平成十四年度国有財産無償貸付状況総計算書

 (財務省所管、国民生活金融公庫、国際協力銀行、日本政策投資銀行及び文部科学省所管)


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     ――――◇―――――

今野主査 これより決算行政監視委員会第二分科会を開会いたします。

 平成十四年度決算外二件中、本日は、財務省所管、国民生活金融公庫、日本政策投資銀行、国際協力銀行及び文部科学省所管について審査を行います。

 これより財務省所管、国民生活金融公庫、日本政策投資銀行及び国際協力銀行について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。谷垣財務大臣。

谷垣国務大臣 平成十四年度財務省主管一般会計歳入決算並びに財務省所管の一般会計歳出決算、各特別会計歳入歳出決算及び各政府関係機関決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 まず、一般会計歳入決算について申し上げます。

 収納済み歳入額は八十五兆二千二百七十七億円余となっております。

 このうち、租税等は四十二兆八千四十六億円余となっております。

 次に、一般会計歳出決算について申し上げます。

 歳出予算現額は二十兆五百五十六億円余でありまして、支出済み歳出額は十九兆三千三百四十二億円余、翌年度繰越額は百五十九億円余でありまして、差し引き、不用額は七千五十四億円余となっております。

 歳出決算のうち、国債費は十五兆六千三億円余であります。

 次に、各特別会計の歳入歳出決算の概要を申し上げます。

 造幣局特別会計におきまして、収納済み歳入額は二百七十八億円余、支出済み歳出額は二百九十四億円余であります。

 なお、この会計は、平成十四年度限り廃止され、その際この会計に属しておりました権利及び義務は、独立行政法人造幣局に承継されるものを除き、一般会計に帰属させることといたしました。

 このほか、印刷局等の各特別会計の歳入歳出決算につきましては、決算書等によって御了承願いたいと存じます。

 最後に、各政府関係機関の収入支出決算の概要を申し上げます。

 国民生活金融公庫におきまして、収入済み額は二千五百九十二億円余、支出済み額は二千百十七億円余であります。

 なお、損益計算上の損益はありません。

 このほか、住宅金融公庫等の各政府関係機関の収入支出決算につきましては、決算書によって御了承願いたいと存じます。

 以上が、平成十四年度における財務省関係の決算の概要であります。

 よろしく御審議のほどお願い申し上げます。

今野主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院石野第一局長。

石野会計検査院当局者 平成十四年度財務省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項四件及び本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項一件であります。

 まず、不当事項について御説明いたします。

 検査報告番号四六号は、租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもので、納税者が申告書等において所得金額や税額等を誤るなどしているのに、課税資料の収集・活用が的確でなかったり、法令等の適用の検討が十分でなかったり、これを見過ごしたりしたため、誤ったままにしていたことなどにより生じていたものであります。

 同四七号は、租税債権保全のための適切な措置を講じていなかったもので、国税局において、滞納者が国税の法定納期限後に根抵当権が登記された財産を売却していたのに、根抵当権者に代位して根抵当権を実行しておらず、租税債権が保全されていなかったものであります。

 同四八号は、地方税の滞納に基づく債権差し押さえをされていた還付金等を差し押さえ債権者である地方公共団体に支払うべきところを、誤って滞納法人に支払っていたもので、国税局において、当該法人に支払った還付金等と、地方公共団体に支払った訂正還付に係る還付加算金の合計額について国損が生じたものであります。

 同四九号は、職員の不正行為による損害が生じたもので、税務署の職員が、国税の収納事務に従事中、滞納者から受領した現金を領得したものであります。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。

 これは、日本酒造組合中央会における信用保証基金による保証事業の債権管理等に関するものであります。

 補助金等により造成した信用保証基金をもって清酒製造業者等の金融機関からの借り入れに対して債務保証を行う保証事業におきまして、代位弁済違約金等を債権として管理していなかったり、被保証者における保証債務の償還状況の把握が十分でなかったりしていて、会計処理等が適正に行われていなかったと認められましたので、当局の見解をただしましたところ、国税庁では、十五年十月、同中央会から提出される事業報告書等についての審査を十分行うとともに、指導・監督を強化することとし、また、同中央会に対して文書を発し、業務方法書、会計規約等を遵守することを徹底するとともに、内部監査の充実、強化を図ること、代位弁済違約金等について債権として適切に管理することなどを行わせることにより、保証事業に係る会計処理等を適正に行う処置を講じたものであります。

 以上をもって概要の説明を終わります。

今野主査 次に、利光審議官。

利光会計検査院当局者 平成十四年度国民生活金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項一件であります。

 これは、職員の不正行為による損害が生じたもので、国民生活金融公庫の職員が、十二年三月から十四年十月までの間に、債権管理事務等に従事中、登記印紙の職員への交付をみずからが管理する立場を利用し、実際に必要とする数量以上の登記印紙の払い出しを受けるなどして登記印紙を領得したものであります。

 次に、平成十四年度日本政策投資銀行の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。

 以上、簡単でございますが、説明を終わります。

今野主査 次に、石野第一局長。

石野会計検査院当局者 平成十四年度国際協力銀行の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。

今野主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。谷垣財務大臣。

谷垣国務大臣 ただいま会計検査院から御指摘のありました事項につきまして、財務省のとった措置について御説明申し上げます。

 会計検査院の検査の結果、不当事項として、税務署における租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったこと等の御指摘を受けましたことは、まことに遺憾であります。これらにつきましては、すべて徴収決定等適切な措置を講じましたが、今後一層事務の改善に努めるとともに、綱紀粛正の徹底を図りたいと存じます。

 以上でございます。

今野主査 次に、薄井国民生活金融公庫総裁。

薄井政府参考人 当公庫の業務の遂行に当たりましては、常に適正な運用に鋭意努力しておりましたが、平成十四年度決算検査報告において、職員の不正行為について不当事項として、会計検査院から御指摘を受けましたことは、まことに遺憾に思っております。

 本件につきましては、全容把握直後に、当該職員から被害額の全額弁済を受けるとともに、厳正な処分を行ったところです。また、このような不正行為を再び引き起こすことのないよう、事務処理態勢や内部検査方法の見直しを行いました。

 今後とも、綱紀粛正の徹底を図り、公庫に与えられた使命を着実に果たしてまいりたいと存じます。

 以上でございます。

今野主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

今野主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

今野主査 以上をもちまして財務省所管、国民生活金融公庫、日本政策投資銀行及び国際協力銀行についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

今野主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。藤村修君。

藤村分科員 おはようございます。民主党の藤村修でございます。

 きょうは、決算行政監視委員会第二分科会において、財務省所管であります旧日本万国博覧会協会、現独立行政法人日本万国博覧会記念機構について種々御質問をしたいということでお願いをしておりましたところ、内容的に言いますと、国立国際美術館の移転ということで、これは文部科学省、文化庁所管ということになりますので、私の質問枠が財務省所管となっておりますが、谷垣財務大臣あるいは山本副大臣については御質問いたしませんので、お聞きいただければ幸いでございます。

 そんなことから、文科省の方からは稲葉副大臣、それから日本万国博覧会記念機構の方からは大阪から森田理事長にも来ていただきまして、遠路御苦労さまでございます。ありがとうございます。

 さて、ここにいる皆さんほとんどが、あの例の大阪万博というのは、一九七〇年ですから三十四年前、多分ここにいらっしゃる方みんな、一度や二度は見に行かれたという世紀の、日本でもあるいは東アジアでも最大のイベントでございまして、六千四百万人の方が、大阪の北大阪でございますが、千里丘陵の万博会場に足を運ばれた。そして、それからもう三十四年たってまいりました。このときは、史上最大のイベントと言われ、六千四百万人ぐらいの方が駆け寄り、詰めかけ、そして「人類の進歩と調和」、こんなテーマで行われたイベントでございました。

 そして、それから来年が三十五周年となりますが、来年は愛知における愛知万博ということで、日本の中でもまた三十五年ぶりに万博という大きな動きが出ております。そんな中で、今、三十四年前の大阪における日本万国博覧会を見直したり、考え直したり、あるいはその意味は何であったか、そんなことを、特に私、大阪の、地元の出身でございますので、非常にそういう機運は高まっております。

 そんな中で、万博におけるさまざまな施設等が、ある意味では老朽化してきたということもございますが、取り壊しにかかっている。今現在、例えば、民族学博物館であるとか、あるいは日本庭園であるとか、それから太陽の塔、有名なシンボルでありますが、これら幾つかのものが文化的施設として保存をされ、維持され、あるいは緑豊かな公園、そして、これはもう大阪のみならず近畿圏全体の大きなオアシスにもなっている、こういう万博会場跡地でございます。

 この中で、一九七七年からでしたか、博覧会当時は万博美術館と言われた建物を、文部科学省、当時の文部省が国立国際美術館にするということで、一九七七年に旧の万博美術館を国立国際美術館として改修して運用がされて、それから数えてももう二十五、六年、四半世紀になります。

 この国際美術館が、四半世紀を経て、実は大阪の市内に新築移転をするということが決定し、地元から、大阪の北大阪の地域から国立国際美術館は大阪市内に移転をする、新築移転である。ですから、このことはそういう意味では歓迎すべきことでもございますが、ただ、単に移転をして、では、後は取り壊していいのかというその辺の問題が、今、我々の地域、特に大阪の北大阪においては大変大きな話題となり、あるいは市民運動なども動いてきている、こんな現状でございます。

 そこで、私としては、この地域の声なども受けて、果たして、国立国際美術館が大阪市内に移転する、そしてその後の施設の利用などについて、きちんと議論をされたり、あるいは地域の皆さんともどもに納得のいくいわば経緯を経てきたかどうか、この辺に若干疑問がございますので、きょうの質問になりました。

 まず最初に、これは国立国際美術館の件でございますので、文科省、文化庁関係でございます。お尋ねをしたいと思います。

 平成五年からこの美術館移転方針がほぼ決定をし、そして現存の美術館の保存、活用についてさまざま検討もされたというふうに伺っておりますが、ここに至るまでの経緯、そして今、結果的には取り壊しということが決まっているそうでありますが、その経緯について少しきちんと説明をお聞きしたいと思います。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 先生、今、経緯につきましては、設置の段階から少しお話しいただきましたけれども、少し重複いたしますけれども申し上げますと、昭和四十四年に建てられました日本万国博美術館、これは、昭和五十年に当時の日本万国博覧会協会から建物を文化庁が無償で譲り受けまして、用地につきましては有償で借り受けて使用してきたわけでございまして、昭和五十二年に、御案内のように国立国際美術館として設置したわけでございます。

 この国立国際美術館につきましては、昭和五十九年以降、大阪市内への新築移転や現在地での改築など、将来の美術館のあり方について検討を進めてきたわけでございますけれども、平成五年四月の国立国際美術館の評議員会におきまして、新築移転する方向で進めるということが了承されたわけでございます。

 この後、吹田市の万博公園内にあります現在の施設の保存、活用につきましては、新築の移転が、計画が軌道に乗ってまいりました平成八年以降、国立国際美術館の評議員会でございますとか、平成十一年に設置いたしました有識者による懇談会におきまして、その検討を進めてきたわけでございます。

 この間、地元の自治体でございますとか国立大学などに対しまして、移転完了後の後利用の相談でございますとか意向の打診も行ってきたわけでございますけれども、施設の後利用の見込みが立たなかったということで、日本万国博覧会協会との協議によりまして、更地返還をするということにしたところでございます。

藤村分科員 今、そういう経緯で来たと。平成五年以来、ことしが十六年でございますので、約十年間ぐらいの経緯があったわけでございますが、ただ、地元からしますと、やや一部の方たちで何か決めてしまったのではないか。今、市民運動など、保存、活用という結構大きな声も上がりつつございまして、しかし、この十一月からは解体だ、こんなことになっている。

 なぜ保存、活用などの運動が起こっているかといいますと、この建物自体が、京都大学の川崎清工学博士、有名な建築家でもございまして、この方の設計によるもの。この方は、例えば、万博美術館のほかに、栃木県立美術館だとか、相国寺承天閣美術館だとか、あるいは京都大学の博物館など、それぞれ有名な建物の建築家でもございましたが、こういう建物としては非常に価値のあるものが現存している。確かに、いろいろ古くはなってきている。

 ですから、文化庁ですから、そういう文化的ないわば国の財産を守る、あるいは保存、活用する、こういう視点も必要ではないかということを私は申し上げたいわけでございます。

 例えば、当時の万博で幾つもの建物が移転されたりなんかしております。例を挙げますと、オーストラリア館という建物は三重県が引き取って、三重県の四日市市に今あります。あるいは、ラオス館というものは宗教法人が引き受けて、長野県にあります。カンボジア館というのは民間の会社が引き受けて、神戸市にあります。電気通信館というところはNTTが引き受けて、今大阪市内に移転されてある。ほかにもまだ幾つかございますが、それぞれ建物をうまく活用している。

 そういう意味で、文化庁がまさに所管する国立国際美術館が移転をする、そのあとの建物がなかなかいい建物である、にもかかわらず取り壊すしかないのかというのが、私は若干、国の文化行政において正しい方向なのかどうか。つまり、今文化庁としては、現美術館の建物に関して一体どういう評価をしているのか、この点を伺いたいと思います。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 国立国際美術館につきましては、先生今御紹介ありましたように、日本で初めて開催されました万博の建造物、美術館といたしまして、当時の建築の最新の技術を集めた建造物であるということは十分認識しておるわけでございます。

 しかしながら、建築後まだ三十五年ということを考えますと、文化財としての価値、最近は、登録文化財ということで、百年に満たないものにつきましても登録文化財というような形で位置づけているものもございますけれども、ただ、建築後三十五年というような期間であるということを考えますと、やはり現時点で文化的な価値の評価というものは難しいのではないかというふうに考えているところでございます。

藤村分科員 民間のいろいろな建物などを、文化庁は登録遺産等で国の制度、法律をつくってやってこられた。その本家本元の文化庁が、国立美術館を経営しておって、その建物を三十五年だからといってもう取り壊すんだというこの姿勢が、国の文化行政において今後本当にいいのかどうか、そういうことをただしたいわけであります。

 取り壊しには、一応、平成十六年度予算では四億五千万円ぐらいの取り壊し費用というのがあるそうです。それから、いろいろ聞く範囲では、いろいろ補修あるいは大規模な改修をしないとなかなか今後の使用にたえないということで、それをやるならば、ひょっとしたらその百倍ぐらいの金がかかるということも大ざっぱには聞いております。しかし、四億五千万円で取り壊すか、あるいは四百億円ぐらいかかるかもしれないけれども改修するかというのは、これは国の基本の施策に係る問題であります。

 この点、惜しまれて消える施設とするのか否か、これはまさに文部科学行政、文化行政の、国の根幹にかかわる方針の問題でございますので、それらについて何ら顧みられることがないのかどうか、ここはぜひとも副大臣にお答えを願いたいと思います。

稲葉副大臣 ただいまの藤村先生の御質問につきまして、私自身も、地元の方々のお声が十二分に反映できればと、これは気持ちは一緒であります。

 しかしながら、今いろいろな、国の財政的な面ももちろん勘案しなければならないところであり、結局は、先生御指摘のように、補修する費用、あるいはこれからさらに存置していろいろな施設として運用していくに当たって要する経費等も勘案させていただく必要は、これは国の行政をつかさどる者としては当然考えなければならない案件の一つになっております。

 そういう点につきまして、そういうことを勘案しますと、今、素川次長からも御説明がございましたように、登録文化財としての価値、それと、存続するための国の経費、あるいは地元の方々の御希望、そしてそれを体して受け取られる方々との協議、こういった種々の面を勘案しながら、文化庁あるいは文部科学省としましてもいろいろな交渉を重ねてきた経緯は御承知のとおりだと思いますが、結局、大阪府あるいは大阪市、また大学等においてもなかなか文科省、国との協議が調わなかった。こういうところもございまして、結局は、我々としましては、今後、新しくつくられた、中之島にできました美術館に対しては最大限の御支援を申し上げていきたい、このように考えているところでありまして、現時点では、解体費用として四億五千万を計上させていただいた、こういう経緯であります。文科省としましても、その方向で臨んでまいりたいと思っております。

藤村分科員 稲葉副大臣、お時間があると思いますので、聞いておいていただくだけで結構でございますが、もう一分ぐらい、済みません。

 今おっしゃったことは、それはそのとおりであります。谷垣財務大臣もいらっしゃいますが、今、国は確かに財政的に非常に厳しい。それは地方も同事情。そんな中で、しかし、これは日本の文化として、今後五十年、百年を見通したときには、この苦しい中でもやはり残すべきものは残す、あるいはお金を何とか捻出して、かけるべきところにはかける。教育なんかもそういう分野だとは思います。そのまさに効率主義のみで、どうも今、国、政府が走り過ぎているのではないかというのは、三位一体改革などの批判からしても十分うかがえるわけでございます。

 私は、特に文化、これは本当に日本、特に京都は前の、千二百年の首都であったわけですけれども、そういう関西地域における文化の保存、そういうものに対しては、今非常に厳しいから、だからばしばしと切っていくという姿勢でなくて、やはりもう少し長い目で日本の文化をきちんと継承していく、子孫に残していく、そんな思想、発想をお持ち願いたいというのが注文でございまして、稲葉副大臣には次がございますので、どうぞ、結構でございます。

 そこで、次に、その現場を監督する旧万博協会、これは旧大蔵省の所管でございましたが、独立行政法人になられて、現日本万国博覧会記念機構という名称に変わっているかと存じます。きょうは大阪の方から森田理事長にも来ていただきました。こちらの方にもこの件をお聞きしておきたいと思います。

 万博機構の目的というのが、「人類の進歩と調和を主題として開催された日本万国博覧会の跡地を一体として保有し、これを緑に包まれた文化公園として整備し、その適切な運営を行う」ということが一つございます。こんな中で、万博機構としては、あの万博のときの美術館、そしてその後の国立国際美術館、そしてここへ来て、今消え行くことになる、それに対するお考えというのはどういうことでございましょうか。

森田参考人 藤村先生には、日ごろから万博記念機構につきまして大変御指導いただいておりまして、この場をおかりしまして、お礼を申し上げる次第でございます。

 御質問の答えでございますが、私ども万博機構といたしまして、一九七〇年に開催されました日本万博の記念となっておりますこの建物が消え行くことにつきましては、いろいろ検討の結果というふうに頭の中では理解できるわけでございますけれども、心の中ではまことに残念であるという思いを禁じ得ないところでございます。

藤村分科員 現場の責任者であります森田理事長からも、気持ちの上では大変残念であると。その残念な気持ちを起こさせた理由は、まさに財政事情というこの一点にもし尽きるとしたら、これはやはりゆゆしき問題であろうかと思います。

 財務大臣、ずっと聞いていただいておりますので、そういうことが、特に文化とか教育という分野においては、今ここでこれだけお金を出したからすぐに効果があるものではない。特に教育というのは、やはり二十年、三十年かかるわけでありますし、文化というのも、今後の、本当に百年、二百年の日本の伝統文化を守っていくという観点でございますので、そういうことで、今十億出して、大変高いお金だけれども、これを二百年で割り算すれば、非常に経費は安くなる、そういう考え方も当然必要であろうということはぜひ申し上げたいと思います。

 今、現地では、国立国際美術館が使っていた旧万博美術館と、それから万博ホールという、メーンの会場でありますが、太陽の塔の後ろの方であります、これが一体的なものですので、実は両方とも取り壊さざるを得ない、こういう事態でございます。

 森田理事長にお伺いしたいのは、この両建物について、建物としてのまさに文化的価値というのは金には換算できないと思います。先ほど文化庁からは三十五年云々という話もございましたが、万博機構の側からいうと、この両建物というのはどういう価値を持っているのかということをお聞きしたいと思います。

森田参考人 ちょうど三十数年前でございますが、博覧会が開催されまして、当時、先ほど先生のお話もございましたように、六千四百万人強という、日本の人口の半分近くの方がこちらにお越しいただきまして、出展参加者数も万博史上最高であるというような、まさしく国民的な祭典であったわけでございます。

 このような歴史的な祭典の中で、これらの建物が大変重要な役割を果たしたということがございまして、私どもの認識では、日本の高度成長時期におきます国民的祭典として、その祭典の中心的な役割を果たした建物として記念碑的な価値を有しているのではないかというふうに私どもは考えておるところでございます。

藤村分科員 さっきちょっと例示いたしましたように、幾つかの建物が、やはりこれは残したいというので、いろいろなところが引き取って別なところに建てかえをしたりしております。そんな中で、万博ホール、そして美術館、一番中心的な部分にもある象徴的な建物群でありますので、これを取り壊してしまうというのは本当に残念の一言であります。

 ただ、さっきからのいわば財政とか経済の効率優先の考え方からして、壊した後どうしてやっていくのだろうか。今までは、少なくとも国立国際美術館、文科省、文化庁所管で、ここからの借地料が入っておりました。平成十五年でいうと年間五千四百万円ぐらいだそうですが、これがなくなってしまう。そうすると、今度は万博機構にとってもこれは大きな痛手ではないかな。何かうまく使うことによって収益を上げるのか、取り壊してしまってどうするのか、その辺の中期的な目標というか、見通しをお聞きしたいと思います。

森田参考人 この跡地でございますが、今先生のお話にございましたように、私どもの機構にとりましてはかなり重要な収入源でございまして、これがなくなるということは大変厳しいものがあるというふうに考えております。

 そこで、私ども考えておりますのは、やはりこの建物がございます場所が日本庭園の前で、文化的ゾーンと言うに非常にふさわしいところでございますので、何とか今後とも、もし財政事情が好転するとか、またその他の、地元の自治体等がここに文化的施設を誘致することをやっていただければ、私ども大変ありがたいと思っておりますので、そういうことも考えまして、当面、暫定的ではございますが、駐車場にしようと思っております。

 万博に来られます方々も、広いものでございますからちょっとアクセスが問題だということもございまして、ここに駐車場をつくりますとアクセスの改善にもつながるということもございまして、暫定的に駐車場をここにつくる。その駐車場の収入によって、なくなります国際美術館からの賃料を何とか補っていきたいというふうに当面考えているところでございます。

藤村分科員 これは機構に言うことではないかもしれませんが、商店街でもシャッター街ができて、そこが壊されて、とりあえず今駐車場になっている、こういう事態が今まさに国の文化行政の中でも起こっているというのは本当に残念なことで、あるいは、将来に対して我々が本当に責任を持てるかという思いが非常に強いわけでございます。

 ただ、では、収益性というのはどのくらいあるのかということなんですね。今までは借地料で平成十五年度ベース五千四百万円ぐらいあった。今度は一体として隣の万博ホールも壊して、それを多分全部駐車場にされるんでしょうけれども、それは、機構のまさに収支の側からいうと、今までどおり何とかとんとんでいくのか、あるいはそれはどんな見込みなんでしょうか。

森田参考人 私ども、現在駐車場を持っておりまして、その駐車場の稼働率等を計算いたしまして、さらに今回跡地の駐車場をつくった場合の駐車台数等も計算いたしますと、とらぬタヌキの皮算用というふうにならないことを祈っておりますが、何とか収支相償うのではないかというふうに考えております。また、そのように努力をいたしたいというふうに考えております。

藤村分科員 まさに文化滅びて駐車場残る、こういうことになりかねないわけで、今後のこととして、先ほど理事長は少し明るい展望もおっしゃった。つまり、何も駐車場にしておくわけではなくて、ぜひともそういう文化ゾーンの中にしかるべき文化施設を誘致したいんだ、こういうお気持ちでございます。

 そこで、機構の側としては、地方自治体等、あるいは大学もあるかもしれませんが、その跡地利用というか、あるいは場合によっては、まだ壊さないでこれを利用したいというのが今から声を上げるかもしれませんが、そういう可能性について十分検討、対応の余地はあるかどうか、その点だけちょっとお伺いしておきたいと思います。

森田参考人 先ほど申し上げましたように、この建物は大変貴重な建物だという認識をしておりまして、国にかわりまして、地元の自治体等がそこでまた保存、活用をしていただけるということになった場合には大変ありがたいと思っておりまして、もちろん、その場合、現在の条件をある程度確保していただくという必要はあるわけでございます。そういう形で残させていただければ大変ありがたいというふうに考えております。

藤村分科員 おおむね時間でございますが、これは本当に一つの例でございます。谷垣財務大臣には、日本国じゅうあっちこっちで、こういう文化がやや財政事情等においてのみないがしろにされている現状が、これは一つの例としてきょう申し上げました。決算行政監視委員会という分野において、やはりそういうものも十分に今後国の財政を預かる立場の方として考えていっていただきたいなと。

 本当にこれでいいのかなというのは、理事長もあるいは稲葉副大臣も、ちょっと気持ちの上ではということはおっしゃったわけで、この気持ちが大切でありまして、財政の効率よりは、何より日本人の気持ち、心、そして文化を継承する、そういうことにもう少し国が、行政がきちんと方向性を出して対応していかねばならない、このことを最後に申し上げまして、質問を終了いたします。

 どうもありがとうございました。

今野主査 これにて藤村修君の質疑は終了いたしました。

 次に、鈴木克昌君。

鈴木(克)分科員 おはようございます。

 私は、ちょっとまた日本の将来、財政について大臣にぜひ御所見を賜りたい、こんな気持ちで通告をさせていただきました。

 全く余談でありますけれども、今、藤村委員が御質問をされました保存について、私も小さな町でありますが、蒲郡の市長をいたしておりまして、何としても古いものを大切にしたいということで、昭和初期の建物と明治末期の建物を移築しまして、今本当に蒲郡の市民のシンボルになって、一つは文学記念館、一つはマリンセンターハウスということで、市民が誇りにしておるわけです。

 やはり私はお金ではない。もちろん、財政が大事だということを言いながらお金じゃないなんと言うと、全く自己矛盾に陥るわけでありますが、文化というのはやはり本当に大事なものであるし、古いものを大切にしていくということを我々がやはり示していくことが、後世の子供たち、若い者に対する教育ではないかな、こんなことを思いましたので、ちょっと今の御質疑を聞いておりながら、一言だけ申し上げさせていただきたいと思います。

 さて、通告によりまして本題に入らせていただきたいと思いますが、その前にちょっとお伺いしたいんですが、財政制度審議会、これは、きのう建議、意見書がまとめられたということでありますが、日本の財政状況は極めて深刻、財政当局者に異例とも言える厳しい反省と自覚を求めた、こういう報道と、もう一つは、年金未納に関して、税金を納めないのと同じだ、それから財政の政策決定の執行に携わる者すべてに反省と自覚を求められる、こういう二つの論調でマスコミ報道されておるんですが、大臣は、この建議、意見書をどのようにとらえたというのか、実際にはどんなふうだったんですか。ちょっとそのことを冒頭、お伺いしたいと思います。

谷垣国務大臣 昨日、私も財政制度等審議会に出席いたしまして、今委員御指摘の建議をいただいたわけでございますけれども、大変厳しい財政情勢のもとで、財政の立て直しを腰を入れてやれという御趣旨だと思います。

 私も極めて適切な提言をいただいたと思っておりまして、これを生かしてやっていかなきゃいけないんですが、今御指摘のところは、冒頭の部分に、「厳しい歳出改革を推し進めるにあたり、財政の政策決定と執行に携わる者全てに厳しい反省と自覚を求め、平成十七年度予算編成に向けて、本建議が活かされることを期待したい。」こういう文章が書き込まれているわけでございます。

 それで、私もこの提言をいただくときに、委員の方々からもいろいろな御意見があったわけでありますが、今おっしゃった年金等の問題ももちろんあったと思いますが、要するに、政策決定の場において、やはり厳しい責任感を持って本来の政策論争というものに政治の場にある者は努めてもらいたい、こういうような御意見を聞きまして、私も極めて、つまり、おしかりも受けたような気ももちろんいたしているわけでありますけれども、十分これを受けとめていかなきゃならぬと思ったところでございます。

鈴木(克)分科員 よくわかりました。

 私も直接その建議を見たわけじゃないものですから、報道によってしか知り得なかったわけでありますが、大臣がそのように受けていただいておるということを伺って、ある意味では、安心をしたと言うと大変僣越でありますけれども、そんな気持ちがいたしておるところでございます。

 さて、きょうは、特に、いつも私はこういうことを申し上げておるんですけれども、日本の将来がどうなるのか、そして後世への負担を我々はどう解決していけるのか、こういうことばかりということではありませんけれども、これを本当にくどくも辛くも質問をいたしておりまして、したがって、本当に御尊敬を申し上げる谷垣大臣には、何かねらい撃ちみたいな、大変申しわけなく思っておるんですが、本当に日本の将来を考えると、やはりこの部分をきちっとしていかないと私はすべてが緩んでしまう、こういう思いで、あえてまた伺ってまいりたい、このように思うわけであります。

 プライマリーバランス黒字化達成の姿ということで、御案内のように、二〇一〇年代の初頭にプライマリーバランスの黒字化を目指す、これはもう過去何回も、大臣の口からも私も聞いておりますし、言われておるわけでございます。ところが、ここについて、これも財金でもかなりほかの委員の方からも御指摘があったわけでありますが、実はこの試算が俗に言う二つありまして、一つは内閣府の試算、それからもう一つは財務省の試算ということですね。

 内閣府の試算は、二〇〇六年度以降二%以上の名目成長率を確保し、国の税収も二〇〇八年度に五十兆円台に回復するとの姿が示され、その結果二〇一三年度にプライマリーバランスの黒字化を達成できる見通しである、これが、要約するとそういう流れだというふうに、私、理解をしておるわけですね。

 しかし一方で、財務省が発表した本年度予算の将来の歳出歳入への影響試算によると、プライマリーバランスは二〇〇五年度から毎年度悪化し、二〇〇七年度には二〇〇四年度より三兆五千億円赤字が多い二十二兆五千億円の赤字となっており、目標達成の難しさが改めて浮き彫りになっておる、こういうことだというふうに思うわけですね。

 私は、御担当に来ていただいて、実はこの二つあるというのはどうなんだと。今から逐次お伺いをしていくわけですが、本当に二〇一三年と仮にしますと、どういう姿になっておるんだ、それを所管の財務省が、俗に言う絵か数字か数値かわかりませんけれども、そういうものが出せないというのはおかしいんじゃないか、こういうことを実は再三申し上げておるわけです。

 小さな自治体でも、将来構想とか基本計画とかいうのがあるわけですよね。それに向かって進んでいくということなんですが、財務省と内閣府、金融庁ですね、出したこの数値が、現段階でかなり乖離があるし、二〇一三年の姿をやはりここできちっと財務省として展望していくということが国の方向を誤らせないことに私はなるんだ、このような思いがいたしておるわけであります。

 そこで、二〇一〇年代初頭、これは二〇一三年と言うかどうかは別としまして、本当に黒字化の実現ができるんだろうか、このままでは私は非常におぼつかないんじゃないかな、こんな実は疑問を持っておるわけです。

 そこで、順次、例えば二〇一三年、二〇一〇年代初頭の歳出というのはどんなふうな規模なのか、税収はどんなところにあるのか、公債金収入がどこにあるのか、また、債務償還費というのは幾らになっておるのか、そして利払いの試算額、そういうものを私はぜひひとつ財務省として明らかにしてもらって、そして、それにはこういう問題がありますよ、だから、国民の皆さん、役人の皆さん、そして政治家の皆さん、こういうふうに進んでいかなきゃだめですよというのをやはり私は示す責務があるというふうに思うんですよ。

 これはやってみなきゃわかりませんとか、他の省庁が出した数字があるじゃないですかということでは、私はやはり許されない。まさにそれをやっていくのが谷垣大臣の本当に務めだ、私はこのように思うし、また、谷垣大臣なら私はそれができる、こういうふうに信じて、まず冒頭、この点について御質問をさせていただきたいと思います。できるだけ数値でひとつ示していただければ大変ありがたい、このことをあえてつけ加えて申し上げて、まず最初の質問とさせていただきます。

谷垣国務大臣 鈴木委員からは、財務金融委員会でもいつもこの点について御質問をいただいているわけで、御熱意に敬意を表するわけでありますが、今できるだけ数値をもって示せというお問いかけでございました。

 これは、ただ、先ほどから御批判もいただいておりますけれども、細かな違いはまた事務当局から御要望があれば説明いたさせますが、内閣府の試算と、それから財務省の出しております後年度の見通しというものがあるわけでございまして、この二つは確かに性格が違います。

 大きく言えば、財務省の出しておりますものは、このままで推移をすればこういう形になるといういわば警鐘を鳴らしている姿を描いております。ですから、何もしないでいけば、何もしないでいけばというか、ある程度努力も入れている面もありますが、大きく言えば、何もしないでいけばこうなる。

 しかし、内閣府の方は、これも今委員がおっしゃいましたように、これから十年近く先の、十年ぐらいかけての中期的な数字でありますから、どうなるかという姿はいろいろな仮定の置き方によって全く異なってくるわけでありますけれども、いわゆる骨太の方針二〇〇三に示された中での一つの選択をしまして筋道を描いた姿でありますから、これは一つのあくまで仮定といいますか、試算にすぎないと言うとまあ内閣府からしかられますが、一種の試算でございます。

 ただ、やはりいろいろな変動の要素が大きい中でこういう姿を一つ想定できるのではないか、いろいろな政策的努力を積み重ねていったときにこういう姿が想定できるのではないかということで政府がお出ししているのがあの内閣府の試算ということになるわけですから、私どもがまたそれと全く違う試算をしてお出しするというのも、これは政府としてはいかがなものか。

 だから、大きく申しますと、そういういろいろな政策努力の一つの仮定を置いた姿と、現状のままで継続するとこういう形になるという二つのいわば数字をお示ししながら、その中で努力をしていこうじゃないかということでやっているわけであります。

 どうもはっきりしないとおしかりを受けるかもしれませんが、どうも二つ出しますと、そこの違い、えらく国会でも議論していただいているわけでありますが、そのように御理解をいただけたらと思っております。

鈴木(克)分科員 いや、そこが理解できないものですから、なぜ、なぜなのかというふうに。

 それじゃ、ちょっと質問の角度を変えまして、財務大臣は内閣府の出されたあの試算についてどういう感想をお持ちなんですか。感想というか、なるほど、一つのこれは見識だというふうにおとりになっているのか、いやいや、そうじゃないけれども、これはなかなか実現難しいよということなのか、どのように内閣府のあの出された試算を評価というか、お感じになっているのか、率直にひとつ聞かせていただけませんか。

谷垣国務大臣 いろんなモデルを使って計算をされていると思います。ですから、いろんな仮定があって、この仮定はちょっと現実的だろうかとか、いろんな御議論があることは私も承知しております。

 それで、特に財政をお預かりする私の立場から申しますと、やはり今後、一体税制改革をどうしていくかという制度の議論が私はもうこれは避けて通れないと思っているわけであります。必ずしも内閣府の中には、特に基礎年金にどれだけ入れていくかという観点からはある程度の税制改革を想定されておりますけれども、余り制度論の観点はどちらかというと入っていない。ちょっとこの私の説明がもし間違えましたらまた内閣府から訂正していただいたらと思いますが、制度論の観点はどちらかというと入っていないわけでございます。

 ところが、私の立場から申しますと、やはり税制というのは国会で御議論をいただいて制度というものをきちっと立てませんといけないわけでございますから、そこのところをどう運んでいくか、またどのような国民的な理解を取りつけていくかということがどこかになければ、なかなかあの姿は難しいなと。もちろん、その前提として、景気をよくしていくとか、デフレを克服していくとか、あるいはもっといろいろな構造改革をしていくとか、いろんな前提があるわけですけれども、私の立場からすると、さて、この中にそのような制度論をどういうスケジュールでのせていくかということはやはりあるんだろうと思います。

鈴木(克)分科員 かねて委員会で大臣は、二つ出しているメリットもあるんだ、しかし、国会の議論を踏まえてどうしていくか議論をしていきたい、こういうことをおっしゃっておるわけですから、私は、そういう中で議論をあえてさせていただいておるわけであります。

 国民の皆さんから見て、いつも国民国民と言って大変恐縮なんですが、現在の財務省が、二〇一三年度にはプライマリーバランス、まあ二〇一〇年代初頭でもいいです、黒字化しますよとおっしゃった。しかし、実は、その数値が九年先、十年先だからなかなか出せないんだということで、これはやっぱりわかりやすいんでしょうかね。私は、国民の目から見ると何なんだというふうになるんじゃないかと思うんですが、大臣、その点はどのようにお考えになりますか。

谷垣国務大臣 これは、委員のおっしゃっていることも私はよくわかるんです。すかっとした、これだというのが示せれば、その方が明快といえば明快ではないかと思います。

 ただ、現実に財政運営に当たっている者からいいますと、例えば金利の動向等も、簡単に、いや何%だ、ここからだったらこうだというようなことは、これはなかなか言えないわけでございまして、金利、公定歩合は日銀の専管でございますけれども、やはりそのときそのときの経済情勢を見ながら日銀としても金融政策を決定されている、それがまた大きく我々の財政の試算にも関係してくる、こういうことでございますから、なかなか明快な姿は示しにくいというのが実際でございまして、そこで、理論的な前提を置いて、こうなったらどうか、こうなったらどうかというようなことで数字を幾つか示させていただいているということであります。

鈴木(克)分科員 またちょっと視点を変えてお伺いをするんですが、これは十六年の三月に出された、「日本の財政を考える」という財務省が出された冊子ですよね。これには、先ほどから申し上げているように、十九年までがここに予測として、「歳出」「税収等」と書かれておるわけですね、三十九ページですけれども。今度これを、例えば、十九年までは一応姿が書かれておって、二十年、二十一年というのはいつお出しになるんでしょうか。

 これは、十九年になるまで新たなものを出さないということでないと私は思うんですよ。毎年出されるか、二年に一回出されるか、三年に一回出されるか、それは私よくわかりませんけれども、要するに、どのみちいつかの段階で先の展望というのは出していかなきゃならないわけですよ。

 だから、私は、じゃ、これは何の試算で出されたかということですね。やっぱり一つの想定を積み重ねて出されておるわけですから、それをちょっと延長すれば、二〇一〇年代初頭のプライマリーバランスが黒字化になったときの数値というのは出せると私は思うんですよ。それでなきゃ、それじゃ、これはどういう根拠に基づいて十九年までおつくりになっておるかという、これは理屈を言うつもりはありませんけれども、私は何かおかしいなと思うんですね。その辺がどうしても理解できないものですから、何回でも同じことを角度を変えてはお伺いをしておる。この苦労もひとつぜひお酌み取りをいただきたいな、本当にそう思うんですよ。

 どうぞ、どちらでも結構です、極力担当者の方がいいと思いますので。

佐々木政府参考人 このパンフレットに載っております、十九年度までの試算が示されておりますが、これは、こういう形で試算をずっと過去から長い間示してきておりまして、こういう名称になりましてから三回目でございます。ということで、毎年ローリング、新たな予算ができるたびに一年ずつ先に延びていくということにしております。

 ですから、予算をベースとしまして三年間の将来を展望するということでございますが、三年は短過ぎるじゃないか、もっと延ばせばいいではないかという御質問だと思いますが、これは実は、後年度負担額推計と申しますのは、御存じのとおり、現在の施策、制度、できた予算の制度がそのままだという前提での推計でございます。そういうものとして議論の素材に提供しておるわけでございますが、施策がそのままだという前提で余り長く推計するというのは果たして現実的なものかどうか、あるいは、前提となっている数値などがそんな長い間有効、かなり用いるのに適切なものかどうかという観点がございまして、これまでも三年ということでやっております。

 ちなみに、諸外国などでこういう財政の将来推計の期間などを見ましても、大体三年とか四年とか、そういう期間になっております。

鈴木(克)分科員 当然そういう御答弁だろうというふうに思っておるわけですが、要は、今、じゃ逆に僕は政府参考人にお伺いしたいんですが、金融庁が出しておるあの長期展望、それじゃ、あれを皆さん方から見るとどういうふうにお考えになりますか。あんなものを出されて全く困るなということなのか、やっぱり私本当におかしいと思うんですよ。国は一つですよね。総理も一つですよ。それで、両方ともおっしゃっておるんですよ、二〇一〇年代の初頭にはプライマリーバランス黒字化します、二〇一三年には黒字化します、両方ともおっしゃっている。それで、一方の数値は出ておる、予測は出ておる、一方は、これはやっぱり三年先で、ローリングで見ていく以外にないんだというのは、これは私は、おっしゃっておって自己矛盾だとお思いになりませんか。正当な理由があれば、なるほど、ああそうですか、よくわかりましたと、そうすれば、私は二度とこんな質問しませんので、御答弁いただけませんか。

佐々木政府参考人 内閣府の試算と財務省の試算というものが、ベースが同じ部分があるとしますと、「改革と展望」という閣議決定をされました文書の中に、経済成長の予測であるとか、二〇一〇年代初頭にプライマリーバランスを回復するだとか、そういうものはございます。財務省の試算は三年間でございますので、その試算期間につきまして、そういう期日をもとにした経済成長とか消費者物価を前提として試算をしている。片や内閣府の試算、あれ自体は閣議決定をされているものではございません。本文に附属する参考資料として出されているものでございますが、それは同じものをベースとしながら、マクロ経済モデルを動かして試算をしておりますので、当然数値に若干の違いが、同じ期間をとりましても違ってきている。

 それから、例えば歳出のいろいろな推計にしましても、それぞれ目的ないし手法が違うということは、かねてから申し上げてきているとおりでございまして、財務省の後年度影響試算は、今の政策をそのままにしておいたらどうなっていくんだろうかという形で御議論の素材に提供している。片や内閣府の試算は、「改革と展望」をもとにして、その中の幾つかの政策の可能性の一つをとって推計すればこうなるという姿を示して、これまた議論の素材に提供しておられるということでございまして、それぞれの目的とか手法が違っていることを踏まえて、御議論のまさに素材にしていただけるんではないかというふうに考えております。

 それで、内閣府の試算自体も、これを出されたときに、実は「試算の性格及び前提」という文書がくっついておりまして、その中でも、内閣府はかなり長期の試算をしておりますので、「誤差を伴っており、相当の幅をもってみるべきである。」とか、あるいは、地方財政については、決定権がないものですから、「参考に止まるものである。」とか、そういういわば留保をつけて試算をしているというふうに理解しております。

鈴木(克)分科員 一問だけで時間が来ちゃったものですから、いかに質問の仕方が下手かなということを今自己反省しながらおるわけです。どうせ一問で終わるんなら、見事一問で散っていきたいというふうに思いますので、これに徹していきます。

 本当にくどくなりますが、竹中大臣もおっしゃっているわけですよ、二〇一〇年代初頭にはプライマリーバランス黒字化をしますというふうに、これはもうはっきりと政治家としても国としても出しておるわけですよね。したがって、くどくなりますけれども、そうである以上、やはりそれに向けたきちっとした数字を私は踏まえて、そしていただきたい。

 何が言いたいかというと、要するに、それへの道はイバラの道なんというものじゃないですよ。大変な道ですよ。だから、今こそ、むしろ財務省が勇気を持って、これをやっていく上においては、こういう増税もありますよ、こういう消費税もありますよ、こういう歳出カットもありますよ、これだけ公務員も痛みをとりますよ、政治家もこれだけ大変ですよ、国民の皆さんこれだけ負担があるんですよということをやはり出すべきなんですよ。

 それを出さずに、二〇一〇年代初頭にプライマリーバランスを黒字化しますと言うべきじゃないと私は思うんです、逆に言えば。そういう痛みの部分を触れずにおいて、やはりそのことだけ、何かバラ色のような、幻想と言うと言い過ぎかもしれませんけれども、私は、やはりこの部分は早急に、内閣府がどうだとか金融庁がどうだとか、そんなの関係ないですよ。財務省ですよ。明治以来日本の国の財政をつかさどってきた、いわゆる大蔵省とは言いませんが、財務省で、私はプライドと自信とそして責任を持って、やはりそういうものを出してもらいたい。一方であるから、あれはちょっと問題があるけれどもどうのこうのとか、言わなきゃいいですよ、二〇一三年とか二〇一〇年プライマリーバランスだと、別に言ったことを責めているわけじゃないんですが、ぜひ言っていただきたい、国民に夢と希望を与えていただきたい。

 しかし、その道にはこれだけの負担がありますということを今こそ私は出すべきだ。それは政権がかわるからとか総理が傷むからとか、関係ないですよ。国民は、そうじゃなくて、本当に日本の将来の姿がどうなるのか、それには我々がどういう努力をしていかなきゃいけないのか、何を苦労していかなきゃいけないのか、これを与えるのが、私は今の谷垣大臣の最大の責務だということをお願い申し上げて、質問を終わります。ありがとうございました。

谷垣国務大臣 鈴木委員から大変熱意のこもったお話をいただきまして、ありがたいと思っております。おっしゃることは私もよくわかります。

 二〇一〇年代初頭のプライマリーバランス回復というのは、言葉で言うのは簡単でございますが、ある意味では物すごく高い目標であり、厳しい過程でございます。それで、そこをいいことばかり言って、実は苦しいところを隠ぺいしているんじゃないかという御批判でございますが、実は、これは我々の説明能力といいますか、説明のうまい下手ということもあるかもしれませんが、先ほど御指摘の予算編成の基本方針でも、あるいはこういうものを土台にしたいわゆる骨太の方針の中にも、実は書き込んであるわけでございます。

 そこで、例えば、今、こういう財政を回復しなきゃならぬ、規律を回復しなきゃならぬときに、一番大きく伸びているのは何かといえば、これは社会保障と地方交付税の交付金でございます。そこにどうメスを入れていくか。それぞれそのメスを入れていくときに、やはり先ほどからの御議論のように、その制度がおかしくなってしまうようなことではいけないけれども、メスも入れなきゃならない。現に、社会保障であれ、あるいはいわゆる三位一体であれ、やはり相当な痛みを伴うことが、ある意味では既に実行に移され、あるいはこれからやろうとしている。そこのところは非常に熾烈な議論のあることは、委員もよく御承知のとおりでございます。

 ですから、決してバラ色のことだけを言って、二〇一〇年代初頭ということを申し上げているわけではなくて、そのためには今のような手段も講じなきゃならないということを、現実に案も御提示しながら、もちろん批判もございます、批判もやはり耳を傾けなければならない点はあると思いますが、やらせていただいておりますので、そういう基本的な方向は、鈴木委員と私と、所属の党は違っても志は同じだ、こう思っておりますので、今後とも御指導いただきますように心からお願いを申し上げます。

鈴木(克)分科員 終わります。ありがとうございました。

今野主査 これにて鈴木克昌君の質疑は終了いたしました。

 次に、西村真悟君。

西村(真)分科員 これから、私が知り合いの方から公の問題として親しく教えていただいたことに関して質問をさせていただきます。これは具体的な事例を挙げて御説明いただいたことなので、この具体的な事例について、大体納税の義務ということに関しての質問になります。よろしくお願いします。

 それから、公正取引委員会の皆さんに来ていただいておると思いますが、他にも委員会での御答弁があると聞いておりますので、私の質問の御答弁をいただいたら、すぐ退席していただきますようにお願い申し上げます。

 登場者は、輸入業者、荷主という立場の当事者と、その輸入業者、荷主の依頼に基づいて通関業を営む通関業者、この立場の人たちに絡む納税義務の問題であります。

 さて、輸入業者、荷主が貨物を輸入する場合には、関税と消費税の納付が必要になるわけでございますけれども、その税の納税義務者は荷主、輸入業者でございまして、この税の納付が輸入許可の前提であります。それで、この輸入業者の納税義務が公正、完全に我が国では果たされておるのかということでございます。もちろん、この納税の義務は公正で完全に履行されねばなりませんけれども、それが公正で完全な履行を確保する体制にあるのかどうか、また実態は完全に履行されているのかどうか、これがこの私の質問の要点でございます。

 そこで、前提からお聞きしますが、この納税の義務というものは、本人、義務者に課せられた義務である。これは当然のことでございますが、その義務を果たすということは、みずから出捐して果たすということであって、第三者をして出捐せしめて果たし得るような種類のものではない。

 公の義務でありますから、対比はできないかもわかりませんけれども、投票の義務は、投票という行為が他の第三者に任せて投票してもらって果たせるものではなくて、みずから投票しなければ果たせないというのと同じように、納税の義務も第三者が代行し得るような義務ではない。したがって、日本には第三者納税の制度はない、このことについても、前提の確認ですが、いかがでございましょうか。

木村政府参考人 制度の問題でございますので、まず私の方からお答えさせていただきたいと思います。

 委員からも最初お話ございましたように、貨物を輸入する場合、輸入者は、関税法第六十七条に基づきまして、輸入申告から輸入許可を得るまでの手続を行う必要がございます。そして、輸入許可を得るためには、七十二条に基づきまして、原則として、あらかじめ関税、内国消費税を納付する必要がある。委員からお話のあったとおりでございますし、また、納税義務者は、関税法第六条の規定に基づきまして、原則として、その貨物を輸入する輸入者となっております。

 それからもう一つ、通関業者というのがございます。これは、通関業法上、輸入者の依頼によりまして、輸入申告から輸入許可を得るまでの手続、ただいま私が申し上げたものでございますが、その手続を代理することができることとされております。その業務として、関税、内国消費税の納付の手続を行うことができるとなっております。このため、通関業者は、代理を行うに当たりまして、輸入貨物にかかる関税を内国消費税とあわせまして輸入者にかわって立てかえ払いをし、輸入貨物引き渡し後に、他の手数料などと一括して輸入者に対し請求する、そういったサービスを行っている場合がございます。

西村(真)分科員 私が聞いたのは、第三者が納税の義務を代行し得るものではないということの原則はいかがですかと聞いたんですね。それをちょっと。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 今、立てかえ払いと申し上げました。立てかえ払いは、委員よく御承知のとおり、これはあくまでも輸入者の名義で行われるものでございます。輸入者の名義で行われる関税の納付、それに係る手続の代理を通関業者が行っているわけでございまして、あくまでも輸入者本人による納付ということでございます。

西村(真)分科員 聞き方を変えれば、今の、輸入業者の名義で通関業者が納付するのが立てかえ払いですけれども、第三者の代行ということでお聞きしておりますので、第三者の代行とは、輸入業者ではない通関業者の名義で、輸入業者に課せられた義務の納税を納付するということでは、輸入許可は出ますか、出ないんですかという聞き方にしましょうか。

木村政府参考人 ただいま申し上げましたように、基本的に輸入者が納税義務者でございますので、あくまでも輸入者の名義で納税、納付する、そういうことを関税法は予定しているものでございます。

西村(真)分科員 だから、そうでしょう。輸入業者ではない、通関業者の名義で納付しても、輸入許可は出ないんでしょう。つまり、第三者は納税できない、あくまで本人が、だれを、どういうふうに使おうが、手足に使おうが、本人が納税しなければならない、これが我が国の原則である、こういうことですな。

木村政府参考人 基本的にそのとおりでございます。

西村(真)分科員 これを前提にして、立てかえ払いのことについて、既に触れられております。第三者納税の制度はございませんし、それをやれば輸入許可は出ない。つまり、日本国の体制では認められない。しかし、立てかえ払いは自由である、これは当然のことでありまして、民間と民間の自由の領域でございますから、立てかえ払いは自由であろう。

 しからば、ここからこの実態に入るわけでありますが、民間と民間の自由な領域だといっても、この自由な領域の中で何をしても許されるのか。そうではないだろう。この自由な領域の中でも、不公正な取引行為をしてはならない、違法な利益による客の勧誘をしてはならない、こういうふうな秩序、ルールは当然としてあるわけでして、これは公正取引委員会が存在するその由来も、まさにこの秩序を守る、自由な領域の秩序を守るということに由来しているわけです。ここに抵触しないかどうかというのが私の質問の中心であります。

 仮に自由だといっても、この立てかえ納付は大体一兆円に達しておる。そして、この一兆円に達しておる立てかえの納付がどういう動機からなされているのかといえば、輸入業者から見れば、輸入業者の優越的地位を利用して立てかえ払いを当然すべきだというふうに強要するという理由から生まれている。また、通関業者から見れば、立てかえ払いをしますよという利益による顧客の勧誘から、これが一兆円にも達しているんだ。

 業者のアンケートだと思いますけれども、これは荷主からの要請で立てかえ払いをしておるんだ、また、業者間の過当競争の中で、客を横取りされないために立てかえ払いをするんだ、また立てかえ払いを売り物にして客を獲得するんだ、これらの理由で、立てかえ払いが慣例化して、今一兆円に達しておる。

 これは、自由な領域だと言いながら、納税の義務という、最も公正で完全に履行されねばならない、本人みずからが履行しなければならないこの義務を、実質的な第三者納税の方向に引っ張っていっているのではないか、こういうふうに思うんですが、この点については御感想いかがですか。御説明した実態だけでございますけれども、感想を、御認識を言っていただきたいと思いますが、いかがですか。谷垣大臣、いかがですか。

谷垣国務大臣 実は、私も西村先生の御質問の趣旨を伺いましたときに、さっき委員がおっしゃいましたように、これはいろいろな通関業者と輸入業者との間での、民間対民間のそれぞれ契約なんだろう、そういう商慣習があるんだろうと。

 そこで、問題は、優越的地位を乱用するような不当なことが行われているかどうかということではないかな、最初そういうふうに思ったわけでございまして、私もいろいろそのあたりはどうだと聞いてまいりますと、やはりスピードに、迅速に通関業務を処理したいとか、いろいろなやはり輸入者としての当然の要求もあり、それに合致するためには、通関業者、なかなか通関の手続が複雑でありますから、通関業者がいろいろそういうことをやるのも長い間に生じてきた商慣習であろう、私自身はそのように一応理解しているわけでございます。

 今のところ、そのような印象を持っております。

西村(真)分科員 私もそのとおり、その大臣の認識から出発しているんですが、どうも実態を聞いてみれば、それだけで済まされない部分があるのではないかということで、この質問に至っているわけであります。

 と申しますのは、自由な領域の中で、例えば保険業法三百条一項第五号は、これは保険の勧誘をするに当たって、保険料を立てかえ払いしますよということで客を誘ってはならないということを言っておるわけですね。やはり迅速に通関業を営む、遂行するために自由にこれをやれるんだという中で、一兆円に上る立てかえ払いがあって、この中に、自由な社会ではある意味では最も許されない優越的地位を利用した強要、利益による勧誘があるとするならば、これは李下に冠を正さず、瓜田にくつを入れずで、ルールは明確にした方がいいのではないか、こういうふうなことが私の問題意識なんです。

 ルールを明確にすることによって通関業が滞るというのならともかく、滞らないと思いますね。例えば、いわゆるITというもので非常に迅速な決済ができる、この技術がもうあるわけですから、滞らないと思います。滞らずして、今、優越的地位の利用、不当な利益による勧誘も、疑惑を払拭できるなら、納税義務の公正、完全な履行を確保するという国家における一番の要請に資する。したがって、この意味での立法的な配慮、問題意識を持った改正ということはできるとは思うんですが、どうですか。

木村政府参考人 保険業法との関係の話がございましたので、その点について、私の方から御説明させていただきたいと思います。もちろん保険業法は私ども所管外でございますので、ちょっと生煮えの勉強かもしれませんが、その点は御容赦いただきたいと思います。

 私ども聞いておりますところによりますと、保険契約におきましては、保険会社が支払う保険支払い金額に応じまして保険契約者等が支払う応分の保険料が定まってまいります。したがって、同じサービスの提供を受ける保険契約者等はその負担についても公平でなくてはならないという原則がございます。保険契約者に対しまして、例えば保険料の割引とか割り戻しその他特別の利益の提供を約し、または提供する行為は、保険契約者等の平等、保険契約者間の公平性を欠き、保険の理念に反するということで御指摘のような規定が置かれているというふうに聞いております。

 一方、通関業でございますが、これは、通関業者が通関手続の依頼を受ける場合に、輸入者につきまして、保険契約のような意味での平等取り扱いの理念といったものはございません。あくまでも市場原理に基づきまして契約条件が決定されるものでございます。

 このため、保険業法と通関業法を同列に論じる、それはなかなか難しいのではないかと考えております。

谷垣国務大臣 今、保険業法との関係は局長から御答弁させていただきましたけれども、基本的な認識として、やはり通関をスムーズに運んで、今のような流通の盛んなときでありますから、物資を一刻も早く現場に送りたい、こういう輸入者としては当然の要請というものがあり、通関業者としても、それにこたえられるような通関手続をしなければなかなか輸入者からの要請にこたえられないというようなこともあって、こういう、今おっしゃたような慣行も発生してきた。それを一概に法律で縛る、一律に禁止するというのは、民間の中での自由なサービスを発展させるという観点から、なかなかこれはやりにくいことではないかというふうに一応基本的に認識しているわけであります。

 されど、今の経済状況の中から、立てかえはしたが、例えば輸入者が倒産をしたとか、いろいろなことがあって代金が回収できないというような事態も発生しているというふうに聞いております。そうしますと、そういう被害に遭った方からは、当然ながら、こういう通関業者が立てかえ払いをするということは極力控えていきたいという御要望なり動きがあるというようなことも聞いているわけであります。

 法律で一律に縛るのが難しいということになりますと、先ほど委員もおっしゃいましたけれども、輸入者が、代理を頼らなくても、立てかえ払いに頼らなくても、みずから支払いやすい体制をつくっていけばそのような弊害は改善していくことができるのではないかというふうに考えておりまして、ことしの三月に、マルチペイメントネットワークと言っておりますが、それを利用した電子納付の制度をつくった、実現したところでございます。

 それとあわせまして、納期限延長制度というようなものが今までありましたけれども、そういうものの利用促進を図っていくというようなことをあわせて、できるだけ輸入者自身が払える、払いやすい環境をつくっていくということで立てかえ払い問題の解決を図っていく。

 このあたりが今考えられる手だてではないかというふうに思っているわけでございます。

西村(真)分科員 私が御質問の前提で説明しようと思っていたことを大臣が既に述べておられまして、問題意識は本当に既にお持ちだと思って、安心しております。

 自由な領域だというものの、通関業界にとっては立てかえ払い解消を期待する声が大きいわけですね。なぜなら、輸入業者が倒産でもされたものなら、もう損、回収できない。また、一兆円のいわゆる立てかえ払いですから、この利息でも非常な、莫大なものになる。運用することができないお金を用意しなければならないということは業者にとって非常な負担だ。このことから不合理感が芽生えてきているわけですね。

 それで、立法措置ということに触れられました。納税のシステムをマルチペイメントネットワーク、いわゆる電子納付のことを利用する方向で立てかえ解消。立てかえしなくてもスムーズに通関業が行える体制に移行されるということとともに、立法ということが、ここは国会ですから、立法府ですから、常に関心があるわけでございまして、通関業法は、二十条に「通関業者及び通関士は、通関業者又は通関士の信用又は品位を害するような行為をしてはならない。」という、信用失墜行為の禁止という条文があるわけであります。

 したがって、納付の電子化を推進されるとともに、納税の原則を打ち立てるために、この二十条に、立てかえ払い納付等特別の利益の提供を約したり提供するなどをしてはならないというふうな一文を入れて、これは、「品位を害するような行為をしてはならない。」の中の具体的なことを、一文を入れて、立てかえ納付というのは、場合によれば、自由な社会が一番禁止しなければ、用心しなければならない不公正な取引に堕し得るんだということを防止するための条文を入れてはどうかということを私は提案させていただきますが、大臣初め御当局のお考えはいかがでしょうか。

木村政府参考人 立法の話でございますので、私がまず状況の説明だけを述べさせていただきます。

 先ほどの保険業法の関係につきましてお話し申し上げさせていただきましたけれども、基本的に保険業法と同じような状況にないことはお話し申し上げました。同時に、通関業法の方は、基本的には、通関業を営む者につきまして、その業務の規制それから通関士の設置等必要な事項を定め、その業務の適正な運営を図ることによりまして、通関手続の適正かつ迅速な実施を確保することを目的といたしまして、通関業者へ手続を依頼した者の利益の保護を図ることを目的としているわけでございます。

 そういった法律の性格からいたしまして、御指摘のような規定を置くということ、さらには、先ほど大臣からもお話しございましたように、基本的に、現在、立てかえ払い等に係る業務の実態等を考えました場合には、法律によりまして行政が一律にそういった規定を置いていくということはなかなか難しいのではないかと考えております。

西村(真)分科員 個々の条文を出せば、立法の趣旨がいろいろ難しいんでしょう。しかし、立法府に出てくる人間としては、こういうふうな通関業の実態から社会的不合理が生じておるのではないかという前提から、仮にこれが生じ得るならばそれを防止しなければならない。なぜなら、問題は、公正、完全であるべき納税の義務についての問題であるからということでございます。

 大臣が、先ほどの御答弁の中で、この問題に関して、通関業者の立場からの思いというものも十分御説明していただきましたので、最後に、これが、大臣、また私のいわゆる防止しなければならない事態に至らないように配慮するというふうな方針で、この実態をもう少し調べて、そして対処すべきは対処していただきたいと存じますが、このことはいかがでございますか。

谷垣国務大臣 先ほど御答弁申し上げましたように、いろいろな今の技術等を使った環境も整備して、全体の問題が解決できるような基盤を整備していくというのがまず行政のやるべきことと思いますけれども、現場の実態等も常によく耳を傾けながら、今のような環境整備を進めていきたいと考えております。

西村(真)分科員 これを、御答弁をきっかけに、以後よろしくお願いいたします。

 質問を終わります。

今野主査 これにて西村真悟君の質疑は終了いたしました。

 次に、平野博文君。

平野分科員 民主党の平野博文でございます。久しぶりにこの決算行政監視委員会の分科会で質問の時間をいただきました。感謝をしております。

 きょうは、決算行政委員会の分科会でありますから、我が国の特に予算、決算は、国民から見てよくわからない、何をしているかよくわからない、こういうふうに言われるものですから、国民は、特に税金の使い方、むだ遣いをしている、こういうことに非常に不満を持っているわけであります。特に決算、すなわち税金の使い方について、国民は、具体的関心や理解というのは、わかりにくいものですから余り関心を持っていない。持っていないことに乗じて、国会の中でよくわかった状態でやっているかといったら、私もそんな状態でやっていると思えないわけであります。

 そこで、きょうは、国民の皆さんにもっと関心を持って、もっと理解を深めてもらいたい、こんな思いで、税制改革の必要性、とりわけ給与所得の源泉あるいは年末調整等の改革をしていかないことには、そういう意識高揚といいましょうか、そういうところが私は高まってこないんじゃないか、そんな思いで質問をしたいと思います。特に、納税者の立場に立って、納税者の意識高揚をやっぱり図っていく必要性が私はあると思うのですが、大臣、どうお考えでしょうか。

谷垣国務大臣 委員の問題意識は、私はまさに当然の大前提だろうというふうに思います。

 税は、もうこれは申し上げるまでもございません、公的サービスの財源を調達するものでございまして、結局、社会の構成員が共通の費用を広く公平に分かち合っていかなきゃならないということでございますから、納税者一人一人がその意識を持っていただいて、議論にも参加をしていただく、理解をしていただくということが私は欠かせないことだろうと思います。

 財務省、財務省と申しますが、税を扱っております国税庁、それから財務省も主税局がございますので、そのような納税者の理解を推進していく役割も果たさなければならないことは当然だろうと思っております。

 政府税調等におかれましても、全国各地で対話集会を開くとかいろんな議論をしていただいておりますし、我々としても、私もここの政務次官をしておりましたときに、当時は有馬文部大臣でございましたけれども、有馬文部大臣のところへ伺いまして、義務教育でも租税教育というものを充実していただけないかというようなお願いをしに行ったこともございます。広報、租税教育の推進、こういったことも我々は考えていかなきゃならないと思いますし、さらに申しますと、決算で御議論いただいておりますが、わかりやすい決算、特にことし非常にまた御議論いただいた特別会計なんかになりますと、どうやったらそれをわかりやすく皆様に理解していただけるかというようなことも、いろいろ工夫、改善を図っていかなきゃならないのかな、こんなことを考えているところでございます。

平野分科員 そこで、少し話が横にそれるというよりも、私、やはり理解、認識、租税を負担する、これは国民の義務であるわけであります。しかしながら、なかなか納税者意識が高まってこない。これは、私は、ある意味では制度的なところにも問題があるのかな、こういう認識と、今大臣おっしゃったように、もっと啓蒙を含めて、そういうところを教育という場面からもとらまえなきゃならないし、もっと現場的に言えば、国民に喚起をしていかなきゃならない、こういうことだと思うのであります。

 では、そこで今国会で話題になっております年金制度であります。

 未納、未加入者がふんだんにいるわけでありまして、とりわけ国会議員の中におきましても年金未納、未加入者がおる、こういうことなので、私は、根っこは同じじゃないかと。きょうは、本当は税のことについて質問をしたいわけでありますが、結局は、根っこは同じ問題ではないか、こういうことで、きょうは大臣がおられると聞いていなかったものですが、おられますから、大臣、年金について、大臣自身はどうでしょうか。

谷垣国務大臣 これは、もう既に記者会見等でも申し上げているわけでございますが、私自身が支払いをしていなかった時期というのがございます。特に、昭和六十一年、国会議員も強制加入ということになったその後につきまして、政務次官在任中に、もう十年以上前でございますので、当時の事情がよくわからないところもございますが、要するに、国家公務員共済、短期給付に入ったら長期給付も入ったというような誤解を恐らくしたんだろうと思います。払っていない時期がございまして、まことにこれは、政策を論ずる場にいる者として不明の至りである、恥ずかしいことであるというふうに考えております。

平野分科員 副大臣、どうですか。

山本副大臣 まさに、皆年金そして国民の義務たる社会保険料の支払い、そういったことに関して、大臣と同様の所感を抱いているところでございます。

平野分科員 未納、未加入の時期はございましたか。

山本副大臣 六十一年の皆年金になりまして以来はございません。

平野分科員 したがって、聡明な大臣ですら、そういう制度的な問題を含めて、私は制度にも欠陥があると思います。

 しかし、逆に、持っています根底の意識、意識ですよ、これは入らなきゃだめなんだ、義務化をしている、こういうところに対する意識がやはり欠けているのではないか。とりわけ、立法府あるいはまさに行政府におられる立場にあって、そういう意識が欠如している人が、きょうはたまたま谷垣大臣がおられますけれども、ほかの閣僚においても同じ問題が起こっているわけですから、私、改めてその意識、認識をしっかり高める、義務化をしていることについて、しっかりと制度的に担保をしていく、こういうことが両面必要なんだなというふうに今つくづく感じているんです。

 そこで、私は、この年金制度の未納、未加入の問題というのは、税制の問題にも、先ほど冒頭申し上げましたように、同じような認識、感覚にあるような気がしてなりません。では一生懸命捕捉すればいいじゃないか、コストがかかるからとか、いろいろな理由づけはあると思うんですが、したがって、きょうこれから具体的に税制の問題に入っていきたいわけでありますけれども、特に、厚生年金なんかの場合だったら天引きでありますとか、国民年金は申告でみずから加入をしていく、こういう非常に複雑な複合した制度があるものですから、片一方は天引きされておるから、入っているか義務なのかどうかわからないけれども勝手に取られてしまっているという、いわゆる意識の高揚が高まらない状態でずっと制度設計がされていっているんじゃないか、こういうふうに思えてならないわけであります。

 そういう視点で税制のところで論じますと、まさに源泉徴収制度という制度が今あるわけでありますが、本当に納税の義務や意識、負担を意識させているのか。全くさせないでうまく取っていく制度ではないのかな、このように思えてならないわけであります。そして、給与所得、いわゆるサラリーマンの源泉徴収制度、事業所得者の申告制度が、ある意味では混在をしている。職を途中でかわったりやめたりすると申告が必要になる。極めて複雑でありますし、まさに年金制度と一緒ではないか、こう思えてならないわけであります。

 したがって、例えば、この源泉徴収制度のもとで、たまたま確定申告が必要になった給与所得者が申告を忘れたとしましょう。議員とかそういう公人は別にいたしまして、一般の国民にその責任を問うことが本当に妥当なんでしょうか。この点、大臣、どうでしょうか。

谷垣国務大臣 これは、委員は年金と対比させて論じられまして、確かに対応できる点があることも事実でございますけれども、やはり若干違いがあることも事実ではないかと思います。

 税の場合は、これは憲法上も国民の義務と位置づけられているわけでありますが、税を納めたことによる対価と申しますか、そういうものが必ずしもはっきりしていない面がございます。一方、年金の場合は、やはり年金を納めることによって一定の年齢が来れば年金という見返りがあるというような対応関係の違いもございますので、年金の場合と税の場合と全く一律に論ずることはできないのではないかというふうに考えております。

 制度が非常に複雑なゆえに、先ほどおっしゃいましたような源泉徴収、途中で職がかわった場合にはこれは申告をしていただかなければならないわけでありますけれども、そこらあたり、責任を問えるかというような御議論は、結局、せんじ詰めると、憲法の納税の義務というところにさかのぼって議論をしなければならないのではないかなと考えております。

平野分科員 確かに、税と年金との違いというのは、大臣おっしゃるところはあると思うんです。しかし、年金といえども、社会保障の根幹になっている、こういうことから義務化をしたわけですから、ある意味では、法律で縛ったわけですから、これの義務に対して、果たしていないということに対しては、僕は同じ次元だと思います。

 ただし、今までだってみずからの掛金だというところから賦課方式に変わったわけですから、これは国民のために払っている、こういう認識にやはり立つ、制度設計上、途中から変わっちゃったわけですから、そういうことでは、ある意味では類似の問題だと思うんです。

 そこで、私、聞きたいわけでありますが、特にその意識高揚ということは僕は非常に大事だと思っていますし、租税負担は国民がしなきゃならない、こういうことなんでしょうけれども、本当に、働いたら税金を払わなきゃならない、この意識をどれだけ高揚させる制度設計になっているのかな、ここが私一番言いたいところでございます。

 例えば、ここで具体的にちょっと聞きたいわけですが、では、給与所得、サラリーマン、これは納税者なんでしょうか。

谷垣国務大臣 結局、所得税法の納税者とは何かということになるわけですが、それは、所得税法の規定によりまして、所得税を納める義務がある者及び源泉徴収により所得税を徴収して納付しなければならない者、こういうことになっているわけでございます。

平野分科員 少し違うんじゃないでしょうか。国税通則では、「国税(源泉徴収による国税を除く。)を納める義務がある者」「源泉徴収による国税を徴収して国に納付しなければならない者」と書かれておって、現行法で言う法律の解釈でいくと、私は、給与所得者についての納税義務者というのは、あるいは納税者というのは、勤めておる企業じゃないでしょうか。

谷垣国務大臣 企業というのは、つまり源泉徴収義務者ということになりますから、源泉徴収義務者、企業は、その納税者、それも含んでいるわけでございます。

平野分科員 いや、そこは違うんです。給与所得者は、そこに働く者は、その費用を実質的に負担する者の立場にしかならないんじゃないでしょうか、この法律の理屈では。

谷垣国務大臣 源泉徴収義務者が義務者であるという構造になっております。企業がですね。

平野分科員 平たく言えば、サラリーマンは納税義務者、納税者ですか。

谷垣国務大臣 今委員がおっしゃいましたのは、国税通則法の二条の定義をお引きになったわけです。ただ、所得税法の納税義務者の中には、今のサラリーマン、これも入っているわけでございます。ですから、サラリーマンも納税義務者であるが、源泉徴収義務者である企業も、その国税通則法の定めるところによって義務者になっているという構造になっているんだろうと思います。

平野分科員 過去の裁判は、私が先ほど申し上げましたように、サラリーマンは納税者ではない、こういうふうに過去の裁判事例では出ておるように私は思います。

 少なくとも、今大臣の御答弁でいきますと、違うぞということでいきますと、本来、サラリーマンは納税者としての法的地位、担保があるという理解でいいんでしょうか。

谷垣国務大臣 委員がおっしゃった判例といいますのは、例えば企業が過払いをしたり、あるいは十分払っていなかったときに、企業と、サラリーマン本人に直接払い戻しを認める権利があるかどうかというような昭和三十年代の最高裁判決をお指しになっているんじゃないかと思いますが、法律の構造としては、先ほど申し上げたように、サラリーマン自身も納税者になっているという理解でよろしいんだと思います。

平野分科員 そうしますと、先ほどいみじくも大臣おっしゃられましたけれども、サラリーマンが、過払いをしているという状態が起こったときに、国に、それは過払いですよということは訴えることが現行法では可能なんですか。

山本副大臣 給与所得者が国に対して、源泉徴収者が過払いをしているので具体的な給付を求めて訴えを起こすということは、事実上、制度的にできないというように思います。

 それは逆の、過少払いをしているときのバランスから考えてもそうでありますし、そのような判例があるかどうかは、ちょっとまだ十分に把握はしておりませんが、制度的には難しいだろうというように考えております。

平野分科員 制度的に難しいと言いながらも、しかし、納税者なんですよ、今大臣おっしゃったように。納税者が、自分がたくさん取られ過ぎましたということで国に訴えることができないという今副大臣のお言葉ですが、それは矛盾していませんか。だから、私言ったんです。納税者の認識、納税者という法的地位を与えていないんじゃないか、これを言ったわけであります。

山本副大臣 大臣がおっしゃる納税者であるわけでありまして、それは、企業との私人間契約、雇用契約に基づいて人的関係、給与関係、所得関係が決まっているわけでありまして、源泉徴収という仕組みは、社会的コストを最小化したり、手続の簡便化を図ったりするという意味で源泉徴収義務者が法律上位置づけられ、そして直接には給与所得者が支払わなくてもいいという、そういう制度になっているわけでありますからして、それであるならば、国の納税義務は源泉徴収義務者と国との公的関係にありまして、納税につきましては、給与所得者とはその関係にないと解釈せざるを得ないということでございます。

平野分科員 だから、私は、そこが矛盾を起こしているわけですよ。先ほど言われたように、本当にサラリーマンというのは納税者という法的地位を与えられているのか。憲法上の解釈では、租税負担をしなきゃならない。当然、国民は納税者の立場に立つんですが、簡便な行政コストを落とすための源泉徴収制度が、まさにサラリーマンが私は納税者であるという意識を持たせないように、持ったら何でこんなに取られているんだということの意識が芽生えてくるから持たせないように、そういう制度設計の関係にしておるんじゃないか。このことは、逆に言うと、先ほど言いましたように、未納してもいいんじゃないか、納めなくてもいいんじゃないか、こういうところになってくるということを、私、一番言いたいわけであります。

 では、具体的に申し上げましょう。私がある企業に勤めておってたくさん税金を取られている、では、私はどこに訴えをしたらいいのでしょうか。

山本副大臣 それは、税金に対する訴訟というよりも、むしろ、ひいては所得に対する物の考え方であるとしなければならないと思います。したがって、そうすれば、会社に対してそれを起こすということになろうと思います。

平野分科員 雇用関係にある会社に、おれの税金を取り過ぎだ、源泉する事務上のミスがあって取られておっても、それを本当に取られ過ぎだということを、サラリーマンが自分の給与証明を見てこれは取られ過ぎだどうだという認識がわくでしょうか、現実的な部分として。私もサラリーマンでいましたからよくわかりますが、紙っぺらをもらって、はい、あなた、きょう、所得税何ぼ、住民税何ぼ、ぴゅうっともらって、あっ、これが高い低いなんて、この紙っぺらで、こういう計算方式によりこれだけ徴税しますというのはないわけですよ。そうすると、サラリーマンの諸君は、あっ、こんなもんか、高いなと言いつつも自動的に取られている。

 まして、私、平成十四年の当初予算を見たら、所得税の収入、十四兆九千三百十億円ですか、平成十四年度の所得税の収入。そのうち源泉徴収の方法で徴収されておるのが八一%、十二兆円強、源泉徴収制度によって徴収されているんですね。あとは確定申告かどうかということなんです。

 したがって、私は、本来の所得税制の根幹であります申告納税であるというこの考え方、思想は、完全にこの制度設計によって忘却させられているんじゃないかと思いますが、大臣、どうでしょうか。

谷垣国務大臣 忘却とおっしゃいましたけれども、やはり私は、申告納税という制度は、確かに委員がおっしゃるように、納税者意識を持たせる、そして自分の税というものが本当に適切に使われているかというようなことを考えさせる上ではすぐれた制度だろうと思っておりますが、他方、現実にその原則だけでいっておりませんのは、やはりそこにいろいろな便宜ということがありまして、例えば、今委員が問題にしております源泉徴収制度でありますとか、年末調整の制度にしましても、国際的に見ましても、適正な課税を実現して納付の便宜とか平準化というようなことから、例えば源泉徴収制度につきましては、これはフランスにはないようでありますけれども、アメリカを初め主要国で一般的に行われている。

 一方、年末調整になりますと、納税にかかる社会的な費用を小さくしようということで、これはアメリカには今度はなくて、ドイツやイギリスでは行われているということのようでありますが、国際的にも、やはりそういう納税の手続の便宜であるとか平準化であるとか、あるいは社会的なコストの減少という観点から認められているものでございます。

 そういう制度を常に改善をしていかなければならないことはもちろんでありますけれども、私は、そういう意味合いにおきましても、現実的にある程度必要なものと考えてよいのではないかと思っております。

平野分科員 いつも、毎年三月に申告しておる現場に必ず、私、定例的に、皆さんが一生懸命申告しているところの現場に行きます。やはり一生懸命してもらっているんですよね。そうは言いながらも、では、確定申告をしていく層でいきますと、ある一定の高額所得については申告をする、それより低いものは源泉徴収で処理をする、こういう非常に複雑なんですね。

 私、もう時間が参りましたから、もっとこれはやりたいわけでありますが、要は、やはり憲法でも言っておる、租税を負担しなさい、これが国民に課せられた義務であります。この義務を遂行していく本来の趣旨でいきますと、やはり申告納税制度というのが本来の趣旨だと思う。勝手に便宜的に取るよということでなくて、国民みずからがお国のために税を納めます、こういう理由で納めます、このことを、やはりしっかり徴税をしていく、また徴税コストも当然かかるわけですけれども、これは必要な経費だと私は思うんです。

 一方、行政コストがかかり過ぎだから簡便な方法で取り去り引くということで、まだ私は、所得の国税のところについてはいいわけですが、例えば住民税はどうなんですか、逆に。住民税も国税におんぶにだっこでひっついてやっている、こういうことですよね。これまた趣旨が違うのに簡便な制度設計になってしまっているということですから、私、本当に、二十一世紀、少子高齢、あまねく国民に負担をしていただかなければ立ち行かなくなっている今の国の財政事情から考えますと、しっかり国民の皆さんの意識を高揚させるとともに、制度設計の根幹であります申告制度、これを軸に納税者の義務を果たしていくことが私は本来の趣旨ではないか。

 もともと源泉徴収なんて、戦費負担をするための簡便な、より早い方法で取ってやろうというこそくな考え方に起こった制度設計から来ておるわけですから、根幹は。だから、改めて大臣に強く要望しておきたいし、お願いをしておきたいのは、本来の、憲法で保障されている、憲法でうたっている租税の負担、国民の義務なんだということを前提とした税の徴収制度にやはり戻していただきたい、このことを強く求めたいと思いますが、最後に、大臣、御見解をお願いいたします。

谷垣国務大臣 委員の問題意識と政府税調で御議論いただいているところと、全く同じとは申しませんが、方向はかなり同じ方向なものを政府税調からも御指摘いただいているわけであります。

 それは、今サラリーマンのいわゆる概算控除というようなものが相当なものになって、これはある意味ではサラリーマン減税の今までの成果ということになるわけでありますけれども、そうなりますと、実際に自分で申告していただいて必要経費等を控除していただくというようなことがほとんど行われなくなっているのが今の現状でございますから、そこらをもう少しきちっと検討して、勤務費用の概算控除というものももう少し明確化しなければなりませんし、確定申告して経費を実額控除する機会というのをもう少しふやせという御指摘を政府税調からもいただいているわけでございます。

 そういう方向で、私どもも制度設計を検討していかなきゃならないんだろうと考えております。

平野分科員 もう終わりますが、私、一番言いたいことは、自分が所得が幾らで、自分が何ぼ税金を納めているかということをみずから知る、それが国民の権利でもあるし、納めるという義務でもある。ここだけはしっかりやっていかなければ、国は成り立っていかないんじゃないかということでございます。

 終わります。ありがとうございました。

今野主査 これにて平野博文君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして財務省所管、国民生活金融公庫、日本政策投資銀行及び国際協力銀行についての質疑は終了いたしました。

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今野主査 昨日に引き続き文部科学省所管について審査を行います。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。奥村展三君。

奥村分科員 ありがとうございます。質問の機会を与えていただきました。

 大臣にも、先日は予算委員会の席で同じことを質問させていただいたんですが、私の質問の内容が、時間配分が悪くて、後半になってしまって本旨のところを聞かせていただくことができなかったもので、再度させていただきたいと思います。

 実は、これは一週間ほど前でしょうか、ある新聞に、野球とサッカーは人気があるが、ほかの競技は全国での基盤がない、月一回、日曜日に各種スポーツの全国大会が開催できるようにならないか、総理がおっしゃったようなんですね。そこで、多分、閣議か何かのときであったと思うんですけれども、他の閣僚の方々が、民間でやるには金集めが大変だというような発言があったことが実は新聞に載りまして、今申し上げた予算委員会でも質問させていただいて、中途半端な私のことになってしまったからと思って、スポーツ振興を基本に思って、再度質問をさせていただきたいというふうに思いました。

 私は、私ごとですが、スポーツをずっと愛して、二十八歳のときから、我が町の、私のふるさとの体育協会の理事長をして三十年、今、名誉会長をお預かりしてずっとやっていますが、日曜日、最近は土曜日も休みですが、ずっと土曜日の十時ごろまで、日曜日の十時ごろまで、私も大会の開会式とか競技のいろいろなところに実は顔を出しております。

 きのうもおとついも、地元で行ってきました。十六日、雨が降ってしまいましたけれども、ゲートボール、朝六時ごろゲートボールの会長さんから、やむを得ず延期をしますというお電話をいただいて、ほっとしたり、また行かないかぬなと思ったり、緊張したりしておったんですが、一生懸命私はやってきたんです。

 それは何かというと、私の自分の思いは、やはり健康な町づくりあるいは健康な国づくりをしていく。高齢社会になって、どんどんとお年寄りが寝たきりになっていく、そんな社会よりも、健康な体で、できるだけいろいろなところに飛び回っていただく。そして、長年の経験をいろいろ生かしていただいて、若者にいろいろなところで伝授をいただく。それが、スポーツを通じたり、生涯教育の中でいろいろなことをしていただく、そういうことが大事。

 やはり心身ともに健康でなければならない。それにはやはりスポーツを通じて、いろいろな者がお手伝いをしながらスポーツ振興をしていく、そういう流れをつくっていくことによって、健康な国づくり、健康な町づくりができ上がっていくんだというような思いでずっと私はお手伝いをさせてもらってきました。

 最近、少子化の時代ですけれども、我々のときは遊ぶものがなかった、テレビもなかった、何もなかったときですから、我々はもう表に出て、やんちゃをしたり、わんぱく坊主だったんですけれども、いろいろなことをしました。しかし、最近は、もう家へ閉じこもってテレビゲームをやったり、時たま土曜日、日曜日、地元に帰らせてもらっても、孫たちや子供たちが、そのぐらいの年代の子が表に出て遊んでいないということを思いますと、一体何しているんだろうと。確かに子供が減っているけれども、もっともっと外で遊んでほしいなというような思いをしております。

 一方では、最近ちょっと、これは全国ベースなんですけれども、過保護的に保護者がなっているんです。ということは、スポーツ少年団なんかに一生懸命携わっていただくのはいいんですが、実は私の地元で、ある野球のスポーツ少年団の子供が少なくなった。孫が入っているんですが、聞いたら、実はお母さんが反対されている。何でだと聞いたら、当番が回ってくると、ワゴン車に乗せて、野球だけじゃないらしいんですが、ほかのスポーツもそうなんですが、お母さんが出ていかなければならない。そうすると、パートを休んでまで、子供のためにワゴン車を買ってきてまで乗せて、そして送り迎えをしていかなければならない。その負担ということになれば、もうそんなスポーツ少年団に入るよりも違うことをやってという保護者のあれがふえてきているということを聞かされて、ああ、そういうことか、確かにいろいろな大会に行くとお母さんもたくさん来られている、お父さんもお仕事の休みの日だったらたくさん来られている、そういうのは交代でいろいろやっておられるんです。

 これは全国的なことなんですが、今から十三年前に、私の地元の滋賀県の守山で、全国の小学生の男女ソフトボール大会というのをやっております。ことしで十七回目なんですが、これも大会長をずっとしているんですけれども、毎年確かに全国から、まあ百五十チームぐらい来てくれますから、小学生の男女で。それが、保護者の方々、本当に一生懸命、来ていただきますから、ありがたいなという思いをしています。

 私はいつも申し上げるんですが、どの大会でもあいさつの中に、特に子供たちになんですが、今堂々と立派なユニフォームを着て入場行進をした、しかし、そのあれには、やはり今おられる指導者や監督やコーチのおかげだよ、そして御家族、地域の皆さんのおかげでこうして自分たちがスポーツをできるんですよ、そこに感謝をしてくださいということを私は常に大会のあいさつの中に、もう何回も聞いている人もおられますけれども、選手の方もおられる、ずっと言い続けています。

 やはりそういう感謝の気持ちを持ちながら、自分たちに厳しく、スポーツを愛していく、チャレンジしていく、そういう精神を培っていかなければならないというような思いでしているんですが、そういうふうに思いますと、いろいろな環境整備をしてあげなければ、スポーツ振興は成り立っていかないというように思うんです。

 国においても、スポーツ振興基本計画というのは、大臣も御承知のとおりあるんですが、これは一九六一年に制定なされておりまして、そして、サッカーくじが、後ほどいろいろ言いますが、toto、スポーツ振興くじがスタートするときに、これに合わせたかのように見直しがなされている。四十年間放置されているんですよ。本当に私はこれを見てびっくりしました、へえ、我が国は一体どうなっているんだということで。やはり今申し上げた生涯スポーツだとか地域スポーツだとか、そういうことを掲げていますし、あるいは国際競技力の向上だとか、あるいは一方では学校体育、スポーツとの連携だとか、いろいろなことを掲げているんですけれども、どうも何か、こんなことでこれはうまく進んできたのかな。

 特に、totoのそういう問題が出てきて、それとの、もうしていかないかぬのですが、toto、この問題をずっとこの間からも、質問させていただいてから後も考えている。

 これは、Jリーグとの関係って何かばらばらじゃないかな。JリーグはJリーグで、それの試合によってtotoがあるわけなんですが、どうもそこの方との連帯感というのが、今のスポーツ振興くじの事務局というか、その担当でやっておられる。何か私は、かけ離れたような組織で、だれかが何かをやっていて、それをこっちで見ておって、それで参加者はくじを書く、当然なんですけれども、もっと一体感が、まあ競馬だとかギャンブル性のあることはちょっとあれかと思いますが、やっぱりJリーグとそして一方のスポーツ振興くじと一体化になっていけば、もっといろいろな知恵が出てくるだろうし、そしてまたアイデアの中でいろいろなことをしていく。

 それで、この間も言いましたように、だんだんだんだんこれは下がっていますよね。私は、十五年度だけでも二百億ぐらいあるんでしょうね、あると思いますと。予想ですから、三月の時点でしたからあれですが、二百億を割っていますね。だから、そういうようなことからどんどんどんどん、先日も言いましたように、民間シンクタンクはこれは千八百億ぐらい、あるいは当時の文部省の方々が説明に来ていただいたとき二千億だというようなことを言われまして、へえ、そんな売れるんやろかと言って僕は大分議論をやった。

 私は参議院のときに、青少年の健全育成ということを考えると、たとえ百円であっても、コンビニやそういうところに行って子供が買ったときに、本当にそれでいいんだろうか。そこに、僕は、青少年の健全育成からして、何とか売り場をもっともっと考慮するべきだということを強調したんです。

 だから、決してそのものを、スポーツの振興ですから、今申し上げたような流れからいきますと、私は大いに、スポーツ振興は金と正比例ですからそれはいいと思ったんですが、そういう健全育成から考えると、今コンビニで売っておられますからあれなんですけれども、当時はそれは売らないということが前提だったんです。しかし、こういうことになって、もう背に腹はかえられなくなって、どんどんどんどんやっておられます。

 私は、ひとつここで大臣に、もろもろお話ししましたが、やっぱりこれはお役所仕事では、失礼な言い方ですが、だめだと思うんです。やっぱり民間のいろいろなノウハウを取り入れて、本当に宝くじのそういうような手法なり、あるいは民間のノウハウを入れて、一遍原点に戻って考えないと、期待感が大きいだけにこれは大変なことになってしまうんじゃないか。もうこんなものやめてしまった方がいいよと言う人も中にはあるんですよ。基本的なことを申し上げましたが、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

河村国務大臣 奥村先生がスポーツ振興に大変熱を入れていただいておりますこと、さきの予算委員会でも感じたのでありますが、改めて今いろいろなお話をお聞きして、私もスポーツは好きな方でございますので、いろいろな大会に出て、奥村先生おっしゃるようなことも子供たちに話したりしております。

 また、総理がおっしゃったこと、実はきのうも総理のところへほかの教育全般の話がございまして行った際に、最後になったのはスポーツの話でありまして、おっしゃるように、野球とかサッカーとか全国レベルになったのはいいけれども、もっとほかのスポーツでどんどんあれに匹敵するような大会ができないのか、毎月一回どこかで全国大会やっている、子供たちがそれにあこがれるというような仕組みがつくれないものかと。非常に難しい課題でありますが、そういう話もございまして、しかも、それは土日を使ってやるんだ、こういうようなお話でございました。これは、今全国レベルで随分いろいろな競技をやっておりますから、どれか取り出してというのも難しいんですが、何か知恵を出そうということをお約束して帰りました。

 そのとき私の方からも、実は、スポーツ振興という法案をつくって、サッカーくじ、本当はこれがもっと売れる予定が売れていないんです、これをもうちょっと知恵を出して売れるようになると、いろいろな地域にいろいろなことができるのでという話も実は率直にしたようなわけでございます。

 今、奥村先生からそのことが御指摘ございまして、私ども今、きょうは局長も来ておりますけれども、もっと民間の話も聞いて、それで知恵を出さないとこのままではこれはだめだ。それから、今度コンビニにもお願いした。それは、そういうところもこんなはずじゃなかったと悲鳴を上げましょうから、そういうところの意見も聞いてみて、一体どうしたらいいんだということも聞いて、本格的にこの対策を講じなきゃいかぬ。

 それから、おっしゃるように、Jリーグとの関係。これは、Jリーグの関係者は直には買えませんけれども、そういう皆さんが、やっぱりこのことに子供たちが興味を持っていただいて、そしてお父さん、お母さんと相談してこういうものを買っていただくようになれば、日本の国の全体のスポーツがよくなるというような話も折に触れてしていただくようにお願いはしてありますが、いろいろな、サッカー選手なんかそういうところに行きますので、子供たちにも、また親御さんたちにも、これにも参加してスポーツ全体を上げるようにしようというような話をしていただくようにお願いしたいと思っております。

 日本体育協会あたりではそういうことにも大変関心をお持ちになって、みんな家族はこれ買えというような話が出ておるそうでございます。見るに見かねてという点もあろうと思います。おっしゃるとおりでございまして、やっぱりこの点をもうちょっと対策を立てなきゃいかぬなと思っておりまして、これによってスポーツ振興をいかに進めるかという大きな課題がございます。

 総理も、とにかくスポーツで元気を、国づくりをやろうということを盛んに強調していただいておりますので、そのための一助として、スポーツ振興の環境整備にはお金が要ることは事実でございますので、せっかく鳴り物入りで、また大変皆さん御苦労いただいて振興くじ事業ができたわけでございます。これを軌道に乗せるために、やっぱり文部科学省も責任がございますので、もっと真剣にこの問題に取り組んでいく。

 それから、経費の節減等を考えなきゃなりません。けさもそういう話をいたしまして、もっと経費が、売れたら経費がふえている、少なくなったら減る。しかし、固定費というのはもう決まっているはずですから、そんなにふえるわけはないはずでありますので、ぎりぎり詰めて、できるだけ一般のスポーツ振興に使えるように、これはあの当時は、スポーツだけじゃなくて文化にも、こういう話もあるぐらいでございますので、大きな期待がかかっておりますので努力いたしたい、こう思っております。

奥村分科員 ありがとうございます。大臣もぜひ、より以上のスポーツに対する理解をしていただいて、今おっしゃったように、私、決して競技スポーツばかりをどんどんと振興させという意味じゃなくて、本当に国民が汗して健康な体を維持ができ、いろいろなことでそこで触れ合うことによってお互いにコミュニケーションができていく、地域づくりができていく、いろいろなことでスポーツを大いに活用していくというのが大事である、そういう思いから、やはりスポーツの振興に特にやらなければならないなという思いをしております。

 今言われたように、総理もまた言われたようですが、昨年から、ことしぐらいからどんどん変わっていくようですが、国民体育大会ももう考えないとだめなんですよ。これはいろいろな今までの古いものを引きずっております。競技団体が一番困っているんです、みんな。それに合わせていろいろなところで予選をやっていかなければならない、何年か先までもう開催都道府県は決まっていますから。

 しかし、それも、考えてみると、本当にもうマンネリ化して、そして、以前は、国民体育大会に出場するというそのものに大きな期待を込めて、選手もやっぱりそういうようにしたのに、このごろ、ほかの大会なんかが、どんどん日本選手権だとかいろいろな形でありますから、そういうようにやっぱり夢が大きく膨らんでいますし、アジア大会があったり世界大会があったり、この間のバレーなんかでも、国民はほとんどテレビにまたかじりついて見ている。やっぱりそういうことが非常に大事だと思います。

 文部科学省でも、局の方でも、局長さん初め皆さんが国体の問題についてもいろいろとお考えになっていると思いますが、これも正直申し上げて、本当に我々の、末端のいろんな競技団体の汗して頑張っている人たちの意見を聞いてやってほしいと思うんです。そうじゃないと、日本の体育協会に加盟している団体の長を呼んで、そこで話をして、それをフィードバックされるというのは、とてもたまったものではないんです、我々のように末端の地域のスポーツに関連している者は。

 だから、やはり国民皆スポーツという盛り上がりのもとに国民体育大会があるんだったらいいんですよ。けれども、今はそうじゃない。余りにも競技に走り過ぎていく。だから、それをまた見直していこうといろいろなことを言われていますが、ぜひお願いをしておきたいというように思います。

 スポーツ振興くじなんですけれども、これは二十一世紀の日本のスポーツ振興を豊かにするという発想のもとに、理念のもとにスタートしたわけなんですけれども、どうも、先日も申し上げたように、五〇%返すのを、当初ですから四七%にして、来年の十七年の三月三十一日で見直しがあるんですが、ちょっと局長さん、りそな銀行ですか、一三%という手数料はちょっとえげつないですよ。どうですか、ほかの宝くじなんかと比較されたら、そう思われませんか。

 全体で一五%、手数料というか、運営費という形で言われていますが、実際は手数料なんですね、中身は。だから、そんな五〇%を当せんに返して、そして片っ方で一三%、そこへ国庫納付金があって、それで配分した。そして、十五年度の売り上げだったらもう配分できないでしょうが、十億もないんですから。

 そうすると、市町村や都道府県や各競技団体は、みんな期待していたんです、これに。ある意味では、今度は国の補助がなければこっちの方で、ひとつ上乗せしてでも、みんなが出し合ってでもこれをつくっていこうかとか、いろいろな思いをみんなが持っていたんですが、実際はないんですよね。ちょっとまず、一五%のこの運営費はどう思われますか。

田中政府参考人 委員御指摘のように、このスポーツ振興くじにつきましては、当初、もっと売り上げが多いんではないかというようなことでシステムがつくられた経緯もございまして、昨年度は売り上げが約二百億円というふうに減少をしてきたわけでございます。

 その中、りそな銀行とそれから独立行政法人でございます日本スポーツ振興センターで話し合いをいたしまして、十五年度につきましては、五三%の部分を運営費としてお支払いするけれども、平成十六年度からは、今度は現行の二百億程度の売り上げであっても、きちんと運営費を、運営体制の合理化を図って、その中でもきちんと助成ができるようにしようということで、現在、りそな銀行と日本スポーツ振興センターで協議を行っているところでございます。

 私どもとしては、一方で売り上げの増加につきまして一生懸命頑張らなければならないと思っておりますが、同時に、運営体制の合理化を図りまして運営費を削減する中で、きちんと助成に要する経費を確保したいというふうに考えておるところでございます。

奥村分科員 私、今局長さんの御答弁を聞いていながら思い出したんですが、当時の体育局長さんが相当入れ上げて、これは絶対間違いないんです、最低一千億は売れますよと言って、調べてもらったら今外郭団体におられるようなんですが、当時は学校給食何とかいう団体がサッカーくじの窓口になったでしょう。僕は、そのことをするのはおかしいですよと。スポーツ関係のサッカーくじをする窓口が学校給食、大臣、そんな団体というか、外郭団体が窓口になって、スポーツ振興くじをスタートさせたんですよ。それで、おかしい、これはやはり違うノウハウが要るから、違うところでスタートされたらどうですかというようなことも言っていたんです。

 本当に今、運営費もしっかりとチェックをしながらこれはやってもらわないと、ある意味では、それは国庫納付金の問題もありますが、僕は、これは法律的にいろいろな問題があるのかわかりませんが、ゼロにしてでも、それよりも、本来のスポーツの振興ですから、そういうものに本当に大義名分が立つわけですから、きちっとした形で、何回も申し上げるように、そういうものに大いに使っていただくようなことの原点にもう一度、私はお願いをしておきたいというように思います。

 特に、河村大臣も先ほど御答弁でいただきましたように、スポーツに関心をお持ちのようでございますから、私は、ある意味ではギャンブル性があるかもわかりませんが、そういうものでスタートした以上、こうしてスポーツの振興にやるんだと言ってやってきたんですが、これがだんだんだんだん先細りになって、こんな状態になって、本当に、スポーツをしている人間として、頑張っている一人として、大変残念なんです。だから、こういうことを思ったときに、やはり健康な国づくりをするということを基本に、ひとつぜひ、より以上の振興を推し進めていただくことを要望させていただいて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

今野主査 これにて奥村展三君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして文部科学省所管についての質疑は終了いたしました。

 これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつ申し上げます。

 分科員各位の御協力を賜りまして、本分科会の議事を無事終了することができました。ここに厚く御礼申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午前十一時四十五分散会


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