衆議院

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第2号 平成17年4月26日(火曜日)

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平成十七年四月二十六日(火曜日)

    午前九時三十分開議

 出席分科員

   主査 松本  龍君

      井上 信治君    石田 真敏君

      佐藤  錬君    斉藤斗志二君

      津島 恭一君    橋本龍太郎君

      増田 敏男君    石田 勝之君

      大島  敦君    加藤 尚彦君

      樽床 伸二君    古本伸一郎君

      池坊 保子君    古屋 範子君

   兼務 田島 一成君

    …………………………………

   財務大臣         谷垣 禎一君

   文部科学大臣       中山 成彬君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      大野 功統君

   防衛庁副長官       今津  寛君

   財務副大臣       田野瀬良太郎君

   会計検査院事務総局事務総長官房審議官       大濱 正俊君

   会計検査院事務総局第一局長            諸澤 治郎君

   会計検査院事務総局第四局長            千坂 正志君

   会計検査院事務総局第五局長            船渡 享向君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  下川眞樹太君

   政府参考人

   (防衛庁防衛局長)    飯原 一樹君

   政府参考人

   (防衛施設庁施設部長)  戸田 量弘君

   政府参考人

   (防衛施設庁業務部長)  土屋 龍司君

   政府参考人

   (総務省大臣官房長)   平井 正夫君

   政府参考人

   (総務省自治財政局長)  瀧野 欣彌君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    河相 周夫君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          田中壮一郎君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          銭谷 眞美君

   政府参考人

   (文化庁次長)      加茂川幸夫君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           北井久美子君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           岩田 悟志君

   政府参考人

   (環境省環境管理局長)  小林  光君

   政府参考人

   (国民生活金融公庫総裁) 薄井 信明君

   政府参考人

   (国際協力銀行総裁)   篠沢 恭助君

   政府参考人

   (日本政策投資銀行総裁) 小村  武君

   財務金融委員会専門員   鈴木健次郎君

   安全保障委員会専門員   前田 光政君

   決算行政監視委員会専門員 奥村 卓石君

    ―――――――――――――

分科員の異動

四月二十六日

 辞任         補欠選任

  斉藤斗志二君     井上 信治君

  橋本龍太郎君     佐藤  錬君

  石田 勝之君     古本伸一郎君

  加藤 尚彦君     大島  敦君

  樽床 伸二君     本多 平直君

  古屋 範子君     池坊 保子君

同日

 辞任         補欠選任

  井上 信治君     斉藤斗志二君

  佐藤  錬君     橋本龍太郎君

  大島  敦君     中村 哲治君

  古本伸一郎君     辻   惠君

  本多 平直君     樽床 伸二君

  池坊 保子君     太田 昭宏君

同日

 辞任         補欠選任

  辻   惠君     石田 勝之君

  中村 哲治君     加藤 尚彦君

  太田 昭宏君     古屋 範子君

同日

 第三分科員田島一成君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十五年度一般会計歳入歳出決算

 平成十五年度特別会計歳入歳出決算

 平成十五年度国税収納金整理資金受払計算書

 平成十五年度政府関係機関決算書

 平成十五年度国有財産増減及び現在額総計算書

 平成十五年度国有財産無償貸付状況総計算書

 〔内閣府(防衛庁・防衛施設庁)、財務省所管、国民生活金融公庫、国際協力銀行、日本政策投資銀行及び文部科学省所管〕


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     ――――◇―――――

松本主査 これより決算行政監視委員会第二分科会を開会いたします。

 平成十五年度決算外二件中、本日は、内閣府所管中防衛庁・防衛施設庁、財務省所管、国民生活金融公庫、日本政策投資銀行、国際協力銀行及び文部科学省所管について審査を行います。

 昨日に引き続き、内閣府所管中防衛庁・防衛施設庁について審査を行います。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。井上信治君。

井上(信)分科員 おはようございます。自由民主党の井上信治でございます。本日はよろしくお願いいたします。

 まず、冒頭でありますけれども、昨日、尼崎市で、起こってはならない事故が発生をいたしました。とにかくこういった事故に関しては、今、一刻も早い被害者の方々の救助と、そしてまた事故原因の徹底的な解明ということが政府に望まれることだというふうに思っております。そして、そうした中で、数十名に及ぶという陸上自衛隊の隊員の皆様方が現地で救助活動に当たっておられること、そしてまた、その指揮に当たっておられる大野防衛庁長官を初めとした防衛庁の皆様方の御努力に敬意を表したいと思います。

 さて、本日は、私の地元でもあります米軍の横田基地をめぐる諸問題について質問をさせていただきたいと思います。

 御承知のとおり、今、在日米軍の基地に関しましては、全世界的な規模で米国政府がトランスフォーメーション、米軍再編を行っている。そしてまた、それに基づいて、二月の十九日にはいわゆる2プラス2が開かれ、その中で、日本政府の方針として、とにかく抑止力を維持しつつ、沖縄を含む地元の負担を軽減する、こういった方針が確認されたところであります。そしてまた、今後数カ月の間に集中的な協議を行って、一定の方針を出していこうということが確認されたわけであります。

 言われているところによりますと、集中的な協議を行って、そして、これは当然予算が絡む問題でありますから、来年度予算にのせていくためには八月の概算要求までには何らかの結論を出していかなければいけない、あるいは米国においては連邦議会の承認を得る必要があるということで、五月ぐらいまでにはやはり何らかの方針を出すことが必要だということで、大変注視、注目をしているところであります。

 そうした中で、本当に、新聞、テレビを初めとして報道機関がさまざまな報道をしております。これは、私もその都度、政府の方に確認をさせていただきますと、なかなか、事実無根であるとか、そういったことは検討していないというようなお返事をいただいておりますので、この際でありますから、しっかり国会の委員会の場で確認をさせていただきたいというように思っております。

 横田基地に関しましては、例えば米軍のグアムの基地との統合でありますとか、あるいは府中の航空自衛隊総隊が横田に移転してくる、そしてまた、今、石原都知事を初めとして言われております軍民共用、こういったようなさまざまな選択肢がある中で、実際には、政府としてどのような方針を検討されておられるのか、あるいはまた米国政府とどのような交渉をされておられるのか。現状と、そして今後の見込みがあれば、防衛庁長官、大野長官にそれをお伺いいたしたいと思います。

大野国務大臣 まず、井上委員から、昨日のJR西日本福知山線の事故について哀悼の意、お見舞いのお言葉がありました。私からも同趣旨のことを申し上げたいと思います。

 自衛隊につきましては、昨日の十一時四分に兵庫県知事より第三師団長に派遣要請がありました。直ちに派遣人員四十三名、車両六両を派遣いたしました。人命救助等の活動をした後、昨日の十七時に兵庫県知事より撤退要請、撤収要請がございましたということを申し上げたいと思います。

 さて、横田基地の問題でございますけれども、少し整理をして申し上げたいと思います。

 まず、平成十五年にブッシュ大統領とそれから小泉総理大臣との間で会談が行われまして、あの基地をひとつ民間でも利用できないだろうか、こういう議論がありました。これに基づきまして東京都それから関係省庁との間で連絡会をつくりました。いろいろな議論を今やっている最中であります。その議論の中身についてはまだ公表できるところまで来ておりませんけれども、現在、外交ルートを通じていろいろなやりとりをしているところでございます。

 それからもう一つは、今井上委員がおっしゃいましたいわゆる米軍再配置、トランスフォーメーションの中でどう考えていくか、こういう問題があります。これは、最終的には一つの土俵になると思いますけれども、こちらの方では当初、個々の基地あるいは施設の話から始まったんですけれども、日米関係というのは、これから何十年先も見通して、何十年先を占うような今回のトランスフォーメーションの協議でありますから、やはりお互いに周辺の国際安全保障環境を議論し、その上に立って共通戦略目標をつくろうじゃないか、これがこの間、二月十九日にワシントンで行われました2プラス2の結果として合意をしたところであります。

 今後、どういうふうにやっていくかということは、二段目として今例えば、両方、アメリカと日本との役割、任務の分担、あるいはお互いにどういうような能力を持っているか、こういうことを議論しようということ、これを今一生懸命やっている最中であります。これが二段目でありまして、この二段目の議論のところで、日本からもやはり提案すべきことを、言うべきことはきちっとアメリカ側に訴えていこうじゃないかということで、例えば基地の共同使用の問題、管理権の問題、そしてもし遊休施設があるとすればこの遊休施設についても洗い直してみるべしだ、こういうことを私は事務方に指示して、そういうことも含めて今議論をしている最中でございます。

 その議論は主に審議官級レベルでやっているわけでございまして、2プラス2以降でありますが、現在までに、三月十五日、四月八日、二回ばかり日米防衛外務当局の審議官級レベルでこういう議論をやって、なるべく早くこの議論を終えて、そして最終着地点、三段階目の、いわばこの区域、この地域、この基地はどうする、こういうところまで踏み込んで議論し、今委員おっしゃったように、なるべく早く、我々はこれを数カ月という表現で2プラス2の共同発表では申し上げましたけれども、年内には何としてでもその着地点まで到達したいな、こういうふうに思っているところでございます。

 したがいまして、横田につきましても、いろいろなアイデアが交換されておりますけれども、まだまだ発表できるような段階でもないし、意見、単なるアイデアの交換であるという段階でございます。そこで、やはり我々は、ある程度の段階に達しましたら、これは皆様にきちっと説明責任を果たして、御理解、御協力をいただかなきゃいけないな、こういうことを強く思っておるところでございます。報道でいろいろ出てきますけれども、これは、報道はすべて大間違いだと言うと言い過ぎになりますけれども、まだまだ何も決定していないという状況でございます。

 そういう意味で、現状を御報告させていただきました。ありがとうございます。

井上(信)分科員 長官、大変ありがとうございました。

 確かに、米軍再編にかかわる問題でありますから、やはり世界的な規模で日米安保を考え、そしてそうした中で大局的かつ長期的に考えていただく、これは本当に大切なことだというふうに思っております。しかし、他方で、やはり基地の問題というものは、影響を不可避的に受けてしまう地域の問題、地元の問題というものがありますから、これをしっかり取り組んでいただきたいというふうに思っております。そういった意味では、年内には何らかの打ち出しが、協議が地元に対してもあるということを御答弁いただきましたので、大変心強く思っております。御期待をさせていただきたいというふうに思います。

 長官、ほかの委員会があるということであれば、ここで退席していただいても結構でございます。大変ありがとうございました。

 それでは引き続き、今長官がおっしゃっておられました連絡会の関係であるのですけれども、聞くところによりますと、第五回が四月の十四日に開催されたということでありまして、なかなか内容についてはおっしゃることは難しいと今長官もおっしゃっておられましたけれども、実は、私もこの二月の二十五日に予算委員会の分科会の方で御質問させていただいたときに、いずれにせよ地元の自治体に対してその連絡会について説明を政府あるいは東京都を通じて行っていくということを、これは御答弁いただいたわけでありますので、この四月十四日の第五回の連絡会について地元に対して何らかの説明なり協議をされたかどうか、そしてその中身についてお聞かせいただきたいと思います。

下川政府参考人 横田の軍民共用化につきましては、御指摘のとおり、政府関係者と東京都の実務的な協議の場といたしまして連絡会を設置いたしまして、第五回会合を四月十四日に開催したところでございます。

 これまでの連絡会におきます議論については、その結果を一度取りまとめまして、軍民共用化の実現可能性について日米間で共同で検討していく作業に資するような形で、そのために、日本側の考え方といたしましてはアメリカ側に提示いたしまして、それに対しましてアメリカ側からの反応も得られているようなところでございます。第五回の連絡会はそういった状況の中で開催されたところでございまして、今後とも連絡会のもとで政府関係省庁と東京都との間の実務的な協議を行ってまいりたいというふうに考えております。

 それから、周辺自治体への周知でございますけれども、現段階におきましては基本的に東京都が対応するという役割分担になっているところでございまして、連絡会の結果については、必要に応じて東京都の方から周辺自治体に適宜説明を行うような形になっているというふうに承知しております。

井上(信)分科員 実は私の方で東京都さんの方にも確認をさせていただきました。翌日、四月十五日に周辺の五市一町の自治体の方に訪問して説明をしたということでありますから、これは役割分担ということではよいことだと思いますけれども、今後、この連絡会の協議が進むに当たって、その中身についての説明でありますとか、あるいは政府からの直接の説明ということに関しても、これから御検討をいただきたいというふうに思っております。

 続きまして、横田基地をめぐる環境の問題、これについて質問をさせていただきたいというふうに思います。環境の問題、特に地球環境温暖化の関係であります。

 御承知のように、二月の十六日に京都議定書が発効したということで、今、日本政府も大変なCO2の削減目標を課せられており、それに対する取り組みというものを一生懸命に行っているという段階だというふうに思います。

 他方で、横田基地でありますけれども、そもそも外国に駐留している基地に対する国内法令の適用ということに関しましては、国際慣習法上、これは治外法権といいますか、基本的にはその法令の適用はないということを聞いております。しかし他方で、日米地位協定十六条の中に、米軍は日本の国内法令を尊重するというような規定もあります。

 そうした中で、御承知のように、アメリカは京都議定書を批准していないということでこの義務が課せられていない、そうした中で横田基地をめぐる環境問題というものが生じております。

 私も調べまして大変驚いたのでありますけれども、横田基地、原油の換算で年間三万キロリットルのオイルをボイラー燃料として消費している、これはドラム缶にすると十五万本分ということであります。東京都の指針では、地球温暖化対策事業所ということで計画の策定が義務づけられているのは年間千五百キロリットル以上の燃料消費者なんですね。ですから、その二十倍の燃料を消費しているという、いわば大消費事業所なわけであります。

 しかし、横田がこの適用を除外されているということで、周辺に及ぶ環境というものを大変憂慮しております。これはCO2ですから、当然その周辺に対しては甚大な影響を及ぼしますけれども、これは周辺だけではありません。日本全国、あるいは世界じゅうに飛んでいってしまうものですから、こういったことに関しては、やはり米軍だからいいよということではなくて、大局的に考えていただきたいというふうに思っております。

 こういった問題意識を周辺地域は共有しておりまして、実は地元には横田基地の公害排除を求める会というものが結成されております。これはいわゆる反対のための反対のような団体ではなくて、地元の福生の前市長、これが会長をやられておりまして、そういった会であります。

 そうした中で、横田基地に対して、特に今、軽油を使用している、これを天然ガスに変換していくことによってCO2の量を非常に削減することができるということで、こういった要望をしております。これも横田基地からのデータをもとにその会が試算した結果によりますと、今、軽油で使われているこういった燃料を天然ガスにかえることによって、年間一万八千百三十四トン、割合にして二五%このCO2を削減することができるということで、これは実は杉の木の年間吸収分にしますと百三十万本に当たるということで、大変莫大な量なわけであります。

 御承知のように、今民間事業所では、この天然ガスへの変換ということを鋭意やっておられるわけであります。そうしたことに対して、横田基地としてはどういう考えを持っておられるか。

 実はこれは地元の東京都におきましても、三月二日、都議会で石原知事がこの問題に対してしっかりと取り組まなければいけないということを明言されて、政府の方にも働きかけをすると。それに基づきまして、三月三十一日に政府への提言を、要望書を提出した。しかし、依然として政府側からの回答はないということでありますので、このような横田基地をめぐる環境問題について、どのように政府の方でお考えか、そして今後の取り組みなどについてどのようにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。

小林政府参考人 御説明申し上げます。

 今、横田基地初め在日米軍の基地にかかわります環境対策ということで御質問がございました。

 私の方、環境省の環境管理局がいわば米軍基地の環境対策についての窓口ということで対応をさせていただいております。例えば一例を挙げますと、今御指摘のございました東京都からの要望というものも私どもの方で接受をしております。

 この仕組みでございますけれども、既に委員おっしゃったとおりでございまして、それぞれ、例えば米軍基地でありますと、国内法令を直接適用するのではなくて、日米協定もございますけれども、そういった国内法を尊重して自主的に取り組んでいただく、こういうスキームの中で対策をとっているということでございます。

 さらに具体的に言いますと、日米の合同調整委員会のもとに環境分科会が設けられ、そしてその下にさらに作業部会というのが設けられておりまして、米軍基地におきますところの環境対策のあり方について、私どもとしてもいろいろな要請、要望等々をしているわけでございます。

 そうした文脈の中でCO2はどうなんだろうか、こういうことでございます。CO2につきましては、御案内のとおり、まだ日本におきましては、京都議定書の発効を受けまして、その京都議定書の目標を達成するための計画を内閣でつくる段階ということで、もうしばらくお時間をいただきまして、そして今後の対策の方針というのが決まっていくかというふうに思っております。

 その中で、大変残念ながらCO2についてはその固定発生源についての排出規制というのをかけてございませんので、先ほど申し上げました米国が米軍基地において自主的に遵守されますところの基準というものの中に、当然に日本の法令として排出抑制をCO2でしているのでアメリカの方でもそうしてくださいという切り口にはなかなかならないのかなというふうに思っております。

 しかし、それにしてもCO2、これは全世界的な環境負荷でございまして、減らすことが重要だということは私どもも十分認識をしてございます。

 そういう意味で、今、個別の数字につきましては残念ながら私どもとしても承知はいたしませんけれども、一般的な燃料転換、天然ガスへの転換ということで、二割、三割の削減ができるというのは大いにあり得ることだというふうに認識をしておりますが、そういった取り組みも含めてCO2対策を進めていただくことについて、日本としてはこういうふうに取り組んでいるということを作業分科会の席でお願いをしていく、あるいは御披露していく、そして自主的な取り組みを求めていく、そういったような対応をとってまいりたいというふうに考えてございます。

    〔主査退席、津島(恭)主査代理着席〕

井上(信)分科員 このCO2の削減、本当にもう待ったなしの課題だというふうに思っております。ですから、これはもう本当に一刻も早くその検討を進めていただいて、そしてしっかり実現をしてもらいたいというふうに思います。

 この天然ガスへの変換につきましては、これは環境負荷の話とともに、当然のことながらコストの問題ということもあるというふうに思います。横田基地、米軍基地の光熱費負担に関しましては、いわゆる思いやり予算ということで、日本政府が相当程度の部分、負担をしているわけであります。

 そうした中で、今、いろいろ報道によりますと、この思いやり予算の削減方針というものを政府が出しているような報道も見受けられます。特に光熱費に関しましては、これはもうそろそろ日本政府が負担する必要はないんじゃないか、そんなことも報道されております。これも報道ベースでありますから、この真偽について伺いたいのと、あと、昨年度、防衛施設庁が調査をされたということで、今まで、平成十三年度から十六年度までというものは、天然ガスの方が軽油より光熱費が高かったらしいんですね。これが、近年の原油高、原油の高騰に伴いまして、今やもう天然ガスの方が安くなっている、こんな話もあります。

 そういうことであるのであれば、当然のことながら、コストの面、そして先ほどの環境負荷の面、これはその変換を考えていくいい時期に来ているのではないかなというふうに思いますけれども、こういったことについて御見解を伺いたいと思います。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 思いやり予算に関連します特別協定でございますけれども、現在の特別協定は本年度いっぱいで終了するということで、政府といたしましては、来年度以降の特別協定につきまして協議を開始するということで、先般の二月の2プラス2の会合においても日米間で合意をしているわけでございます。

 政府としては、現在、厳しい我が国の財政状況にありますので、そのことに十分配慮しつつ、また同時に、日米安保体制の円滑かつ効果的な運用の確保ということをあわせて念頭に置きまして、在日米軍駐留経費負担について適切に対処していくというのが基本的姿勢でございますが、報道にありましたような光熱水料の負担を行わないというような対処方針を決めて臨んでいるという事実はございません。

 それから、今御指摘のありました、今後思いやり予算を行っていく中で、環境問題についての誘因というか、そういうインセンティブを与えていくという御指摘でございますけれども、この点につきましては、そういう考え方も含めて、今後どういう対応が適切なものであるかというのを検討して協議を行っていきたいと思っております。

井上(信)分科員 思いやり予算に関しても、この報道に関しては事実無根であるといった御答弁でありますけれども、先ほどの横田基地のあり方自体についてもそうですけれども、そもそも全く事実無根である報道が横行していること自体、本当にどうなのかなという思いを非常に強く持っております。これは、全く火のないところに煙は立たないというふうにも申しますので、とにかくそういったことに関してもしっかり御配慮いただきたいと思います。やはり、特に地元の人間は、新聞やテレビなどを見て、そしてその状況を知る、不安に思い、あるいは期待をする方もいる、そういった状況にありますから、ぜひ御配慮をいただきたいというふうに思います。

 それから、最後に横田基地の騒音対策区域の縮小に関して御質問をさせていただきたいと思います。

 この騒音対策区域の縮小、これが検討をされていると聞いております。横田基地は、五十九年に最後の区域見直しをして、それ以来変更がなかったわけでありますけれども、調査の結果、昭和五十二年に大型ジェットの発着回数百二十回だったものが、平成十五年、二十数年たちますと六十回に半減したということで、周辺の騒音が減ったから、これを騒音対策区域を縮小しようという動きが見られるということであります。

 私、これも二月の予算委員会でも質問をさせていただきました。しかし、それから二カ月たちまして、この横田基地をめぐる、特に騒音の激しい瑞穂町というところがあるのですけれども、こういった地域におきましても、非常にその地域の現状が変化してきております。

 どういうことかと申しますと、実は、おととい、この瑞穂町の町長選挙がございました。基地を絶対反対ということを公約に掲げておられる現町長が再選をしたということであります。あるいは、地元の住民の方々が横田基地軍民共用化に反対する住民の会というものを結成したということで、これも既に四百人以上の町民が参加しているということであります。

 とにかく現場といたしましては、日々の騒音に悩まされる中で、さまざまな横田基地のあり方という報道がされている。そしてまた区域縮小、これは、その区域の拡大ということを従来から要望していた中での区域縮小の話も出てきているということで、非常に反発を強めてきてしまっているのですね。

 米軍基地といえども、全国たくさんありますけれども、横田基地というものは歴史的にも余り反対運動が強い地域ではないというふうに私は理解しております。そういう意味では、地域との共生というものを見事に達成してきた。しかし、そんな中で今、周辺の住民感情が悪化してきているということに大変憂慮をしているところであります。ですから、そういった中でこの騒音対策区域の縮小ということを実施していくことが本当に適切なのかどうか。

 そして、私、先般も申し上げたのですけれども、これは通常の民間空港と違いまして、軍用機が飛ぶわけでありますから、外交上あるいは安全保障上のいろいろな課題によって、発着回数なんというのは、これはもう一定したものじゃないと思うのですね。別に民間のダイヤが決まっている空港とは違いますから。そうした中で、今、半減したからといって、いつまた何どき、これがふえるかもしれない、騒音に悩まされるかもしれない。あるいはまた、今ちょうどこの米軍再編の中で横田基地のあり方を見据えているわけでありますから、その結果によっては当然騒音がふえるかもしれないという中で、本当にその区域縮小をするということがタイミング的にもふさわしいのかどうかということを考えております。

 先般の御答弁によりますと、一度縮小しても、また騒音がふえたら広げますよという話をしておりますけれども、これは、いわゆる朝令暮改と申しますか、余りそういったことが頻繁に行われるようでは、これは影響が大だというふうに思っております。

 コスト削減という意味もあって、やはり適正な騒音対策区域を設定していくということは、これはこれで私は合理性があると思いますけれども、一たん縮小して、そして拡大をすれば、その期間中に新たな拡大した部分の騒音対策区域に転居された方々に対しては、また新たに移転補償対象になっていく、あるいは防音工事の対象になっていくというスキームになっていると思います。そうしたことで、これは結果的にはコストがアップする可能性もあります。

 そういった意味で、本当に私は、今回の縮小、区域の見直しというものはいかがなものかというふうに思っておりますけれども、御見解をお願いいたしたいと思います。

戸田政府参考人 お答え申し上げます。

 横田基地の騒音区域の見直しの関係につきましては、先生から再三の御質問もちょうだいしておるところでございます。

 先ほど先生、昭和五十九年に最終指定告示を行ったというふうに申されましたけれども、既に二十年以上経過しているところでございます。この二十年の時間の経過で、実際の騒音の状況というのは大変変化してございます。他方、私どもの騒音の問題に対する施策、具体的には住宅防音工事でございますけれども、これは、平成十三年度までに、希望される住宅につきましてはすべて措置したところでございます。

 こういった状況も踏まえまして、私ども、平成十四年度に、防衛施設庁長官の私的諮問機関でございます飛行場周辺における環境整備の在り方に関する懇談会といったところから、計画的に騒音度調査を行って、区域の見直しを行いなさいといったような提言をちょうだいしておるところでございます。

 私ども、今回、平成十五年度に横田につきましては調査を実施したわけでございますけれども、この調査結果につきまして、関係県都、また市町に対しましてよく説明をしながら、御理解賜りたいと思っておるところでございます。

 今後とも、騒音区域の縮小あるいはまた拡大、こういったことにつきましては、適切な騒音度調査を行った上で対応してまいりたいと考えておるところでございます。

井上(信)分科員 大変ありがとうございました。

 いずれにいたしましても、この横田基地、米軍基地をめぐる問題といいますのは、国家的、国際的な課題であるとともに、地域にとりましては本当に日常生活に大きな影響を及ぼす、そうした本当にミクロの地域の問題でもあります。ですから、この両面をよく頭に入れていただいて、そして検討を進めていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

津島(恭)主査代理 これにて井上信治君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして内閣府所管中防衛庁・防衛施設庁についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

津島(恭)主査代理 これより財務省所管、国民生活金融公庫、日本政策投資銀行及び国際協力銀行について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。谷垣財務大臣。

谷垣国務大臣 平成十五年度財務省主管一般会計歳入決算並びに財務省所管の一般会計歳出決算、各特別会計歳入歳出決算及び各政府関係機関決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 まず、一般会計歳入決算について申し上げます。

 収納済み歳入額は八十四兆七千六百七十億円余となっております。

 このうち、租税等は四十三兆二千八百二十四億円余となっております。

 次に、一般会計歳出決算について申し上げます。

 歳出予算現額は十七兆七千百十一億円余でありまして、支出済み歳出額は十六兆九千七百五十四億円余、翌年度繰越額は七十五億円余でありまして、差し引き、不用額は七千二百八十二億円余となっております。

 歳出決算のうち、国債費は十五兆五千四百四十億円余であります。

 次に、各特別会計の歳入歳出決算の概要を申し上げます。

 国債整理基金特別会計におきまして、収納済み歳入額は百六十九兆千四百七億円余、支出済み歳出額は百五十四兆二千二十億円余であります。

 このほか、財政融資資金等の各特別会計の歳入歳出決算につきましては、決算書等によって御了承願いたいと存じます。

 最後に、各政府関係機関の収入支出決算の概要を申し上げます。

 国民生活金融公庫におきまして、収入済み額は二千九十八億円余、支出済み額は千六百九十三億円余であります。

 なお、損益計算上の損益はありません。

 このほか、住宅金融公庫等の各政府関係機関の収入支出決算につきましては、決算書によって御了承願いたいと存じます。

 以上が、平成十五年度における財務省関係の決算の概要であります。

 よろしく御審議のほどお願い申し上げます。

津島(恭)主査代理 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院諸澤第一局長。

諸澤会計検査院当局者 平成十五年度財務省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項三件及び本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項一件であります。

 まず、不当事項について御説明いたします。

 検査報告番号七号は、租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもので、納税者が申告書等において所得金額や税額等を誤るなどしているのに、課税資料の収集・活用が的確でなかったり、法令等の適用の検討が十分でなかったり、これを見過ごしたりしたため、誤ったままにしていたことなどにより生じていたものであります。

 同八号は、職員の不正行為による損害が生じたもので、税務署の職員が、源泉徴収義務者に対する指導・調査に関する事務に従事中、源泉所得税を収納する権限がないのにこれを受領し、現金を領得したものであります。

 同九号は、大阪税関において、同税関関西空港税関支署庁舎の一部の使用許可に対する使用料の算定に当たり、この庁舎が民有地上にあるのに、誤って国有地上にあるものとして使用料を算定していたため、使用料が低額となっているものであります。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。

 これは、合同宿舎の維持管理業務に係る委託費の積算に関するものであります。

 管理人が実際に管理している宿舎の戸数を積算基準に的確に反映させていなかったため、委託費の積算が過大となっていたと認められましたので、当局の見解をただしましたところ、財務省では、十六年九月に積算基準を改正するとともに、各財務局等に対して事務連絡を発し、十七年一月以降に締結する契約から改正された積算基準を適用することとする処置を講じたものであります。

 以上をもって概要の説明を終わります。

津島(恭)主査代理 次に、船渡第五局長。

船渡会計検査院当局者 平成十五年度国民生活金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。

 引き続きまして、日本政策投資銀行について御説明いたします。

 平成十五年度日本政策投資銀行の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。

 以上でございます。

津島(恭)主査代理 次に、諸澤第一局長。

諸澤会計検査院当局者 平成十五年度国際協力銀行の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。

津島(恭)主査代理 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。谷垣財務大臣。

谷垣国務大臣 ただいま会計検査院から御指摘のありました事項につきまして、財務省のとった措置について御説明申し上げます。

 会計検査院の検査の結果、不当事項として、税務署における租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったこと等の御指摘を受けましたことは、まことに遺憾であります。これらにつきましては、すべて徴収決定等適切な措置を講じましたが、今後一層事務の改善に努めるとともに、綱紀粛正の徹底を図りたいと存じます。

津島(恭)主査代理 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

津島(恭)主査代理 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

津島(恭)主査代理 以上をもちまして財務省所管、国民生活金融公庫、日本政策投資銀行及び国際協力銀行についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

津島(恭)主査代理 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。池坊保子さん。

池坊分科員 公明党の池坊保子でございます。

 大臣には、お忙しい中、御無理を言って御出席いただいて、本当にありがとうございます。

 三位一体という、学生時代に勉強いたしました言葉が突然出てまいりましてからこの数年の間に、あっという間にさまざまな構造改革が行われてまいりました。確かに、制度疲労を起こしているところもございますから、よかったと思いますこともございますけれども、あっという間に、大きな金額は、例えば社会保障とか教育費とかが削減されたり、あるいは地方交付金になったりいたしております。私は、それらのことについて納得できない部分がございますので、きょうは大臣にお伺いしたいというふうに思っております。

 こういうことを申し上げますと、私は、当選以来ずっと文部科学委員会に属し、文化、芸術、教育、科学技術、スポーツに関与してまいりましたので、文部科学省を守るのかと言われますけれども、私はそのような小さなことは考えておりません。ただ一政治家として、誤りない判断のもとに、今生きている人たちがいい法律のもとで生活していってほしい。

 そして、私どもは次の世代に対して責任があると思います。特にそういうことにかかわっていらっしゃる役所の方々そして私どもには、やはり、次の世代のために何をしていくかという使命と責任を持たなければいけないというふうに思っております。

 そういう点から、本当に日本の教育費はこれでいいのかなというふうに考えております。これは財務省が変わらなければ、財務省が、こういうのはだめなんだ、こういう方向にいこうとおっしゃらなければ変わっていかないというふうに考えております。

 大臣には耳にたこができるぐらいお聞きになっているとは思いますけれども、OECDの調査によりますと、国内総生産に対する学校教育費の比率というのは、フランス四%、アメリカ三・八%、イギリス三・四%、韓国三・五%、その中にございまして日本は二・七%でございます。韓国は今すごく教育に力を入れておりますから、いずれのとき、早いときに、私は追いつき追い越されるのではないかというふうに思っているんです。

 一人一人が英知を持って教育できる環境整備をするとともに、それは、一人一人の幸せだけではないと思います、私は、二十一世紀、この国際社会の中で日本がよって立つところは、やはり教育とか人材、科学技術ではないかと思っております。これは、私は、国家政策のファーストプライオリティーとして必要な経費を積極的に確保すべきではないか。例えばGDPの何%かは教育費にかけるのだ、私は財務省がそれぐらいの心構えを持っていただけたらというふうに思っております。

 大臣の御見解をお伺いしたいと存じます。

谷垣国務大臣 今、池坊委員がおっしゃいましたことは、私も、これからの日本を考えましたときに、結局最後は、人間の力、日本国民の力、日本人の力ということになると思うんですね。ですから、委員のおっしゃったことは、私は基本的に賛成でございます。

 今、私の仕事の関係で、例えば貯蓄率が高いか低いかというような議論がよくございます。日本は、貯蓄率が伝統的には高い国でございましたけれども、高齢化が進みますと貯蓄率も、それは現役のときに培ったものを吐き出しながら老後は生活するわけですから、高齢化が行き詰まれば、行き着くところまで行けば貯蓄率が下がってくるのは当然です。そうすると、日本の発展を支えるその資金はどこから来るかというような議論をこれからしなきゃいけない。ハゲタカというようなことを私はなかなか嫌っておられないと思うんですね。

 そうしますと、結局、では日本にちゃんとした資金が来るかどうかということは、日本に魅力があるかどうかということじゃないか。魅力ある日本をつくるということがないと、これから発展もおぼつかないんじゃないか。しかし、では魅力ある日本というのは何だと考えたときに、最後は私は人間だろうと思います。教育であるとかあるいは科学技術の水準の高さであるとか、それも人の教育であろうと思います。

 今、委員のお考えは、予算面においてもそれを形にあらわせということをおっしゃったんだろうと思います。そこのところは、例えば科学技術につきましては、乏しい財政の中で相当に傾斜してやってまいりましたことは委員もお認めいただけると思うんですね。

 私の悩みの一つは、これだけ借金がたまってまいりますと、借金の利払いもふえてまいりまして、どうしても財政が硬直化してまいります。なかなか回したいところにも資金を回せないというような状況が出てきているわけでございます。そういう中で高齢化が進んでまいりますと、どうしてもお年寄り向けの社会保障費というものを、これは合理化するといったって限界がございますから、そっちの方に行ってしまいまして、本当はこういうところに使いたいんだけれどもなと思いながらなかなか回せないというところがあるのは現実でございます。そのために、やはり財政を立て直して、子や孫の世代にツケを先送りしない体質を一刻も早くつくり上げて、もう少し財政に自由度を持たせていくということがなければならないんではないか。

 委員のおっしゃることは根本では賛成でございますけれども、財政の立場からしますと、やはりそういう手順を踏み、そういう視野の中でどういう工夫ができるかということではないかと思っているわけでございます。

池坊分科員 皆さん、意見としてはそのようにおっしゃいます。総理も米百俵というふうにおっしゃいました。ただ、今おっしゃいますように、それは何のためにするかといったら、次の世代のための財政の立て直しですね。にもかかわらず、次の世代に教育という大きな大切な部門を減らすということはおかしいというふうに私は思うので、その辺はぜひ財務省も根本的に考えていただきたいというふうに思います。

 教育は、ただできるわけではございません、やはりお金がかかりますから。次の世代のための財政再建だとおっしゃるならば、次の世代を大切にする政策を、そういう予算を私は立てていただきたいというふうに思っているんです。

 今、少子化、一・二九に出生率がなったというふうに騒いでおります。私も、党の少子社会対策トータルプラン「もっと「生まれたい社会」へ」というのをつくりました。副本部長としていろいろな方々の御意見を伺いましたけれども、もっと生まれたい社会というのは、子供の視点に立って、ああ、生まれたいような社会だな、そういうためには、まず保護者が心豊かに子供たちを育てるための精神的な、物理的な、あるいは金銭的な援助ということも必要なのではないかと思っております。その中で、私どもは、児童手当を小学校三年までにいたしましたが、これから六年までにしたいと思っておりますので、財務省の方、よろしくお願いいたします。

 それも含めまして、一体どれぐらい子供にお金がかかるのか。これは平成十四年度の調査でございます。家庭が負担している学校教育費は、小学生一人につき九万二千八百円、中学生一人につき十六万三千百円でございます。これは学校教育だけでございますから、そのほかに、スポーツをする、あるいは読書をするための本を買う、あるいは習い事をするというのがございます。その学校外での活動のために、小学校では十九万九千五百円、中学校では二十七万四千三百円を保護者は負担いたしております。これは一人ですから、今、到底二人、三人と子供を産むことができないという現状でございます。子育ての経費は社会全体が負担することがこれからの少子化の歯どめになっていくと思いますけれども、その点についてはどのようにお考えでいらっしゃいますでしょうか。

田野瀬副大臣 池坊先生の御質問は、子供向けの予算が余りにも少ないじゃないかということにまとめることができるんじゃないかなと思うんですが、私も基本的には先生と同感でございます。

 先生は今、子育てにどれだけお金が要るかという数字を出されましたが、一方で、私も今ここに持っておるんですが、平成十四年度の社会保障給付に占める割合の中で、児童・家族関係給付が三・八%、高齢者関係給付の割合が六九・九%、余りにも大きな格差があるわけでございます。ことし、一般歳出は約四十七兆円でございますか、そのうちの約二十兆円が主に高齢者向け、主に年金、医療、介護といったことに使われておるわけでございます。しかも、放置しておきますと、これから年々一兆円ずつこれがふえてくるということでございまして、何としてもここにしっかりと切り込んで、徹底した改革をして歳出削減を図らなきゃならない、そして先生おっしゃった子供向けの予算をしっかりと見通していかなきゃならない、このように私も考え、先生の思いと同感でございます。

 ただ、昨年末に今後五年間の集中的な取り組みとして、子ども・子育て応援プランを策定されておりまして、まずはこのプランを着実に五年間実行するということも並行して大事なことだろうと考えております。

 ちなみに、このプランでいきますと、例えば奨学金事業については、平成十七年度において、貸与人員、いよいよ三けた、百万を超えまして、百三・四万人を対象といたしておりまして、十六年度から六・九万人増の予算、金額でいきますと、事業費総額が七千五百十億円でございますけれども、六百九十億円増をしておるというようなことで、このプランをしっかりと進めながら、先生今おっしゃられた視点をしっかりと財務省として持っていかなきゃならない、こんなふうに考えております。

    〔津島(恭)主査代理退席、主査着席〕

池坊分科員 皆様、個人個人には、教育費にお金をかけなきゃいけないねとおっしゃるのに、どうして全体としては予算がとられないのだろうかと、何かわけのわからない大きな流れがあるのかというふうに私には思えてなりません。

 奨学金も、私どもが本当に一生懸命尽力してまいりましたから今日を迎えることができたわけです。でも、これは大体高校とそれから大学でございますね。公立の小中はどうしていくかというと、準要保護百十三万人の、これは一般財源化されました。私は今も、やはり泣いている子供たち、措置されない子供たちがいるのではないかというふうに胸を痛めております。

 細かい各論に入ってまいりたいと思っておりますけれども、四千二百五十億、この補助金は暫定でございますけれども、この間の文部科学委員会で一部改正されまして、これは総務省の方の地方税源移譲の特例交付金で補てんされるということになりました。

 私は、これは財務省にとっては、国の歳出を抑制する立場におありになるわけですけれども、文科のものが総務省にかわっただけではないかなという感じがするんですね。

 私は、二点懸念いたしますのは、負担金というのは、これは義務ですね、絶対に負担しなければならない。だけれども、これから徐々に一般財源化されますと、この使途がどういうふうに使われるかわからないということがございます。

 現実に、私は党の子ども読書プロジェクトチームの座長を五年間いたしておりまして、さまざまな子供読書活動推進の法律等ができましたけれども、総務省が六百五十億、学校図書費で五年間使っていいよ、一年間に百三十億です。これを調べましたところ、五〇%しか使われていないんですね。

 私どもはネットワークの党でございますから、私は市会とか県会、府会議員に、これはどうして使われないのか、推進してほしいということをお願いいたしました。その中で、学校の図書館はもうちゃんと本がそろっているよとおっしゃるところもあります。私は、本当に現場に、いろいろなところに行っておりますから、子供が好きだし、学校が好きだし、見ておりますと、十年前の本が並んでいるんですね。それでは子供に対して幾ら読書をしましょうと言ったって、するわけがないというふうに考えております。これが一点です。

 教材費もしかりなんですね。ほかでどういうふうに使われているかわからないというのを、ぜひ、きょうは総務省の方も来ていらっしゃると思います、現場に行って調べていっていただきたいというふうに私は思っております。

 それから二点目は、そういうことになりますと、これはこれから財務省と総務省との交渉次第ということになるんじゃないか。額が減るということがあるんじゃないか、額が減らない保証というのがあるのか、こういう懸念を持っておりますけれども、今回のこの措置について、財務省はどのように評価していらっしゃるのでしょうか。

谷垣国務大臣 今、今年度で申しますと四千二百五十億、これは次もやろうということになりますと、その倍ということになるわけですね。それで、これをどうするかというのは、もう私申しませんけれども、中教審等でしっかり議論をやっていただいて、それを踏まえて結論を出すということになっております。

 それで、今は暫定的な形になっているわけですが、これは結論を踏まえなきゃなりませんが、今、額が減るか減らないかということをおっしゃいました。仮に、地方にその権限をお譲りするということになるのであるならば、それは、それに見合う税源を当然地方にお譲りしていくということになりますので、今後、その点に関して、もしそういう形になれば、それぞれ地方が地方税としてその分をお取りになるということになりますから、財務省との交渉で減額をしていくというような形にはならないわけでございます。

 仮に、そうでなかったらどうなるかということでございますけれども、これは、今度は結局、先ほど、全体の租税収入がどうあるか、そのときの予算はどうなるかということでありますから、今はまだ予断を持ってお答えすることはできませんけれども、しかし、これはやはり、人件費といいますか教員の給与でございますから、それは法律で定まっている。おのずからそこに一定の、現在は法におきまして縛りがあるわけでございますから、それを、何というんでしょうか、おかしなこと、おかしなことと私が言ってはいけませんが、変なふうにいじるということは、これは仕組み上できないということになっていると思います。

池坊分科員 縛りがあるということは、この間伺いましたら財務省は、人確法とか標準法に、もうこれは人確法なんか要らないんじゃないかというようなことも伺いましたけれども、では、人確法に対しては、これはそのままきちんと守っていこうというふうに考えていらっしゃるということでございましょうか。そのように私は理解してよろしいんでしょうか。

田野瀬副大臣 人確法について私の方から御答弁申し上げたいと思うんですが、先生もう御承知のことと思うんですが、地方公務員給与実態調査、総務省さんが行われたその調査によりますと、平成十六年四月現在の教員の平均給与水準は、一般行政職の地方公務員の平均給与水準を六・一%上回っております。この格差は、御指摘のまさに人材確保法に基づく教員給与の優遇措置によるものでございます。

 この人材確保法は、高度経済成長時期における雇用市場の逼迫等を背景として、これまた先生重々御承知の昭和四十九年に制定されたものでございますが、近年におきまして、この間から経済財政諮問会議が取りまとめた基本方針二〇〇四、これは平成十六年六月四日に閣議決定もされておったり、あるいはまた財政制度審議会による累次の建議において、法制定後の社会経済情勢等の変化を踏まえて、そのあり方について検討ないし抜本的な見直しを行うべき、こういった御指摘をいただいておるところでございます。

 したがいまして、御指摘の人確法や義務標準法に基づく制度上の規制の必要性について、根本から見直しを図る必要があると私どもは考えておるところでございます。

池坊分科員 今、きちんとした標準があるんだよとおっしゃった大臣のお言葉とはちょっと食い違うように思いますけれども、これはどちらにいたしましても、私のところには、現場の教師、本当にまじめに一生懸命働いている先生方から、本当にこれから先どうなっていくんでしょうかという不安の声がたくさん来ております。ですから、私はやはり、いい教師、御存じのようにフィンランドなどは教師の質がいいんですね。教師の質をよくするためには、きちんとした人確法も必要ではないかというふうに考えております。

 きょうは総務省の方にもおいでいただいたと思います。先ほども申し上げましたけれども、総務省は裁量権のないものは要らないとこの間おっしゃいましたね。それだったら、この義務教育国庫負担金、教員の給与というのは裁量権があるというふうにお考えなんでしょうか。どういうふうな裁量権を考えていらっしゃるのか。多分、加配ができるとか、いろいろな柔軟性を持たすことができるというふうにおっしゃると思いますが、現場にいらしてください、加配というのはよく行われております。それから、自治事務なんだとおっしゃる方もいらっしゃいますが、健康保険もそうですよね。ですけれども、これは国が負担いたしております。

 これが私はどうしてもわかりませんことです、何でこれを欲しいとおっしゃるのかということが。これについて、ちょっとお伺いしたいと思います。

瀧野政府参考人 義務教育の国庫負担金について、地方団体の方で税源移譲の対象にしてもらいたい、こういう議論が今出ているわけでございますが、その経緯を振り返ってみますと、この数年、共済長期の問題でありますとか退職金の問題とか、義務教育に関します国庫負担金についてむしろ文科省の方から一般財源化を進めるべきだというようないろいろな提案が来た経緯もあるわけでございまして、そういう今までの経緯の延長線上でこの問題があるということをまず御理解いただきたいというふうに思います。

 そういった中で、昨年来、三位一体改革の議論におきましては、地方団体の方は、国から標準法によりましていろいろな、学級編制とかあるいは教職員の配置、こういったことについて一定の基準の拘束のもとにあるわけでございますが、その上にさらに国庫補助負担金という形で二重の関与を受けているという形になっておりまして、少なくとも、財源面におきましては地方の自由度を拡大するということが必要なのではないかという提案をしておるところでございます。

 それに加えて、義務教育の国庫負担金というものが一般財源化されることによりますれば、学級編制とかあるいは教職員の配置に関しましては標準法の基準というものがありますから、それを満たした上で、地方団体が教育について当事者意識を持ちまして、地域の教育環境とか児童生徒の実情に応じまして弾力的な学級編制あるいは教員配置ということができるようになるということがありますし、給与に限らず、教育効果の高い外部人材の活用とかあるいは外部委託、あるいは教材の購入とか開発、さらには教育関係施設の整備と、いろいろな面で教育的な部面に、方面に財政資金を回していくということが当然できるようになるわけでございます。

 この結果、地域におきまして教育議論というものはもちろん活性化するということが期待されるわけでございますので、我々は、そういう面では全体として教育にいい影響が出てくるのではないかなというふうに思っています。

 さらにその上に、国庫補助負担金というものについては、非常に事務手続が複雑であるということは当然あるわけでございます。今回の三位一体改革の中でも、いろいろな補助金について、補助金の事務手続について改善すべきではないかという議論がされておるわけでございます。一部交付金化というような議論もございますけれども、やはり地方のサイドから見ますと、交付金化されましても、実績報告あるいは交付申請、いろいろな事務手続が過重にかかってくるわけでございまして、国、地方を通じました行財政改革の立場からも、やはり一般財源化ということが望ましいのではないかなというふうに我々は考えております。

池坊分科員 今おっしゃった事務的に過重にかかっていく負担がというのは、どこが言っていることでございますか。ちょっと時間がございません、端的に、一言でおっしゃっていただきたいと思います。

瀧野政府参考人 地方団体側でございます。

池坊分科員 地方団体の長が言っていらっしゃるということですね。というふうにとってよろしいんですね。

 地方が直接関与していらっしゃらないのに何でだろうというふうに思いますけれども、それは首長がおっしゃっているというふうに解釈してよろしいんですか。首長がそこまで細かくタッチしていらっしゃらないのに何で首長がそうおっしゃるのかというのは不思議でございますが。

 教育教材に使うとおっしゃったのが問題だと思うんですね。つまり、教育教材に使うということは、人件費を削減しなければ使えませんでしょう。そうすると、教員の給与を削減するということになってしまうのではないでしょうか。ですから、この辺が私、申し上げたいなということなんですね。やはり教員の給与はきちんと確保しなければいけないというふうに考えておりますので、それがいろいろなものに使えるんだよということ自体が私は問題なのではないかというふうに思っております。

 それから、今おっしゃいましたように、国は四十人と決めておりますけれども、確かに、例えば私が住んでおります京都ですと、三十人まで、二十五、六人の学級編制になっております。ですけれども、これはきちんと標準法とかが決められまして、基礎的なものを国が出しているから、それにプラスしていろいろな柔軟性のあることをそれぞれの都道府県がすることができるわけなんですね。だから、これを全部なくしましたら、これは今のように二十五人学級だというふうにはなれないんじゃないかと思います。現実に、三割しかそういうことをいたしておりませんね。基礎があればこそこういうことができるということをぜひ御理解いただきたいというふうに思っております。

 まずは、子供たちの視点に立って、あるいは保護者の視点に立って、一番いい方法を考えていただきたいということを私は申し上げたいのです。それしか私はございませんことと、現場にいる子供たち、保護者、そしてやはりそこで働いている教員、現場をまず見てからおっしゃっていただきたい。教育論を全然なしにしてただ財政的なことだけ言われますと、二十一世紀の日本の方向をやはり誤るのではないか。あっと気がついたときに、日本は本当に今みたいな優秀な国ではなくなるのではないかというふうに私は心配している一人でございます。

 ちょっと細かいことでございますが、今第七次教職員定数改善計画というのがございました。これで二万六千九百人の教職員を加配いたしました。これは私、とてもいいことであったなと、習熟度別授業をすることができまして、優秀な子供はどんどん伸ばすことができるし、やはり私は大切なことは、優秀な人も必要だけれども、できない子供をある程度までの水準に引き上げるということが大切であるかと思います。こういう結果が、今不登校児は十三万千二百五十二人が十二万六千人に減りました。こういうことにもあらわれてくるのではないかというふうに思っております。

 これは終了いたしますが、第八次教職員定数改善計画、文部科学省はそれを考えていらっしゃるんでしょうか。もう時間がありませんので、一言お願いいたします。

銭谷政府参考人 次期の教職員の定数改善計画をどうするかにつきましては、これまでの改善計画の実績等を踏まえて対応すべきと考えておりますが、現在、義務教育のあり方について中央教育審議会において幅広く検討いただいておりまして、その中でよく御審議をいただき、その方向性を踏まえながら対応してまいりたいというふうに思っております。

池坊分科員 財務省はどんなふうにお考えでしょうか。こういう要求が出されたらこれはぜひ認めていただきたいと思っておりますので、大臣のお考えをちょっとお伺いしたいというふうに思います。

谷垣国務大臣 今銭谷局長から御答弁ありましたように、これから中教審等の議論を踏まえまして、文部科学省において来年度予算の要求がつくられると思います。今の段階で全部受け入れるか受け入れられないかお答えするのは難しゅうございます。その時点でしっかりまた私どもも議論をしていきたいと思っております。

池坊分科員 しっかりと心にとめておいていただきたいと切に願っております。

 最後の質問になりましたけれども、三位一体改革における地方交付税改革については、私は大変不透明だなと思うことが、もう勉強すればするほど思っております。地方交付税改革の方向性は今後どのようなものになっていくかということを私、伺いたいと思います。

 それで、平成六年の地方制度調査会答申あるいは地方分権推進委員会の第二次勧告も、義務教育を真に国が義務的に負担を行うべきと考えられる分野と位置づけておりました。それが、あっという間に何かそうではなくなるような風潮になってまいりまして、私は、本当に一つ一つをしっかりと、目を皿のようにして見ていないと、あっという間に国民生活に多大な影響を与える、そして二十一世紀、これは日本のあり方にかかわる問題もあっという間の方向になっていってしまうというふうに思っておりますので、これについて最後に伺いたいというふうに思っております。

 地方税改革が進まなければ三位一体改革の一つも進まないのではないか、成果のない改革になってしまうのではないかというふうに思っておりますので、これをちょっとお伺いしたいと思います。

谷垣国務大臣 簡単に申します。

 三位一体改革で何を目標とすべきか。これは私がお答えしますと財政面ということにどうしても力が置かれるわけですが、やはり地方自治体が、こういう施策をやっていきたいということを住民と対話しながら、こういう施策をやるからこういう負担をお願いしたい、こういう行政と住民との対話が行われながら行政が行われていく、そういう姿に持っていくということが、つまりそういう意味で地方の権限と責任を明確にしながら進んでいくという状態が望ましいのではないかと私は思っております。そういう方向で補助金改革も、それから特に税源移譲の問題も、あるいは地方交付税の問題も議論を進めていかなければならないのではないかと私は思っております。

池坊分科員 お金というのは大変大切でございますから、それによって政策というのは決まってまいりますので、ぜひ私は財務省の方々に文化、芸術、教育にはお金を使うということを心にとめていただきたいと思いますことと、今おっしゃいましたように住民との対話、これは、住民との対話がなくて行われている改革が随分あるのではないかというふうに懸念いたしております。少なくとも、では都道府県の長あるいは地方団体の長が、しっかりと学校現場で、あるいは住民と、ほかの問題に関してもそうですけれども、対話しているかというと、必ずしもそうでないということに私は非常な危惧を感じております。

 たくさん質問したいことがございますけれども、時間が参りました。これは重大な問題だというふうな認識を政治家が、そしてお役所の方も持っていただけたらというふうに私は考えておりますことを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 大臣、副大臣、ありがとうございました。

松本主査 これにて池坊保子さんの質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして財務省所管、国民生活金融公庫、日本政策投資銀行及び国際協力銀行についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

松本主査 昨日に引き続き文部科学省所管について審査を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。古本伸一郎君。

古本分科員 民主党の古本伸一郎でございます。

 きょうは、文部科学大臣への質問の機会をいただきましたことに感謝を申し上げながら、学校教育、広い意味での公教育の中で学校教育という狭義の公教育に少し的を絞り、その中で、現在その公教育を恐らく相当な部分で補完しているんだろうと思われる塾あるいは予備校と言われるものとの関係を中心に御質問申し上げたいというふうに思います。

 まず、認識を一にいたしたいわけでありまして、子供を一人育てるのにどのくらい費用がかかりますでしょうか、例えば大学まで卒業させるとして。これは事務方からで結構です。

田中政府参考人 子供の教育費についてのお尋ねでございます。

 文部科学省におきまして実施しております平成十四年度の子どもの学習費調査及び同年の学生生活調査をもとに、四歳で幼稚園に入りまして学部を卒業するまでの教育費について試算をいたしますと、最も低いケースは、大学が国立でそれ以外すべて公立に通った場合でございまして、約七百九十三万円となっておるところでございます。逆に、最も高いケース、これは小学校のみ公立でそれ以外すべて私立の学校に通った場合でございまして、約一千五百三十八万円、一・九倍となっておるところでございます。

古本分科員 教育費という意味ではそういうことだと思いますし、さらに加えて理科系だとか医学部等々に通えば二千万あるいは三千万、物すごく金額がかかってくる。これに加えて当然に養育費も要るわけでありまして、これは御家庭によっていろいろなお育て方があるでしょうから一概には言えませんが、百万や二百万じゃない、恐らく千万の単位で一人の子供を育てるのに要するでしょう。

 したがいまして、教育費は、今御局からあった数字と合わせれば、少なく見積もっても三千万から四千万、二千万から三千万以上のお金が恐らくかかる。お金に関して言えばそういうことであります。しかしながら、そういった教育費の中で、いわゆる塾あるいは予備校に要する費用の部分というのは少なからずあると思うんですね。

 例えば、公立小学校に通うお子さんの中で塾に通っておられる方の割合は四割を超えておられます。公立中学校に通っておられるお子さんの中で塾に通う方の割合は七割を超えておられます。これは私立の中学校に通うお子さんは低くなります。これはエスカレーター式というんでしょうか、そのまま自分のところの高校に上がれるから塾に通う率が低くなるのかどうかは定かではありませんが、そういう数字が出ている。

 したがいまして、日本の一般的家庭の教育環境で見れば、公教育、特に義務教育課程の小中の生徒さんが別途通塾する割合が大変高くなっている一方で、家計を圧迫しているんじゃないかという問題意識を持つわけであります。

 したがいまして、少しお伺いしたいのが、公教育の関係から見ました塾の役割というのは大臣におかれましてはどのように御認識なさっているのか、まずお尋ねしたいと思います。

中山国務大臣 塾というのは公教育じゃありませんから、どういうふうに考えるといっても、どういうふうに考えるのか。

 本来ならば、私は公教育できちっと教えれば塾に行かなくても済むんじゃないかと思うんですけれども、もちろんこれには保護者のお考えもありますから、学校以上にもっともっと力をつけさせたいという親がおれば、それはそれで行かせられるのもこれは当然だと思いますけれども、私としましては、やはり公教育でもって必要十分な学力は、体力とかその他を含めて、ちゃんと与えるべきだ、このように考えております。

古本分科員 大臣が幼少期を過ごされた時代は多分そうだったと思います。私たちの時代もぎりぎりそうだったかもしれません。今のお子さん方は、例えば読み書きそろばんを習熟しようと思うと学校の義務教育課程だけではなかなか補い切れなくて、結果として、個別個社の名前は余りよろしくないかもしれませんが、これはもう周知の事実ですから、公文式なるものがあって、大変評判です。そして、公文式によって読み書きそろばんのうちの相当な部分を補完しているという事実があるわけであります。

 したがって、大臣が今言われた公教育で、本来学校教育の部分でしっかりとやるべきであると大臣が言われているのに、どうして一方でそういう補習校的なところに、何も私立の何とか中学にやらせたいために行かせているという人のことを言っているわけじゃないんです、読み書きそろばんの本当の基本的なところをやろうと思うとなかなか学校教育じゃ今やり切れていない部分があるんじゃなかろうかという問いかけを今しているわけであります。

 引き続き答弁をいただきたいと思います。

中山国務大臣 学校をずっと回っているんですけれども、塾に行っている子供もおりますし、行っていない子供もおります。それから、おけいこごとといいますか、習い事に行っている子供もいるわけでございまして、そういう意味で、学校の先生方は学校の中できちっとした学力はつけるべきだということで努力はしていらっしゃると思うんですけれども、父兄の要求水準というか、そういうものが高ければ塾に行ったりあるいはおけいこごとに行ったりというようなことも出てくるんじゃないか、こう思うわけでございます。

 私としては、基本的には学校、公教育において必要な学力といいますか、今言われました読み書き計算といったものはきちっと身につけられるようにしなければならないと考えております。

古本分科員 そうしますと、大臣の御認識を確認いたすわけですが、小学校の課程においてまずやるべきは読み書き計算である、こういう認識でよろしいんでしょうか。

中山国務大臣 すべての児童生徒に読み書き計算といいますか、そういう基礎的、基本的な内容をまずしっかり身につけさせることが義務教育の責任である、このように考えているわけでございます。

古本分科員 そうしますと、読み書き計算において、ありていに言えば、俗っぽく言えば落ちこぼれなる子が生まれたときは、その子供たちの補習なり、いわゆる昔でいけば居残りですね、先生が夕日が落ちても一緒になって計算を教えてくれた、ああいうことを大臣は奨励されるということを今お約束されているということでいいんでしょうか。

中山国務大臣 なかなか、学習の進度というのは子供にとって一律じゃありませんから、少人数学級にしたりあるいは習熟度別の授業というようなものを取り入れまして、落ちこぼれとかそういうのがないように今努力しているということでございます。

古本分科員 小学生の六年間において読み書きと計算というのは、まさに人間として今後生きていく上での生き抜く力ではないかと思うんです。ですから、そこの部分においてぜひやっていかなきゃいけないという思いを大臣がお持ちだということを心強く感じながら、一方で、先ほどの塾の話に少し戻るわけであります。

 子供に教育をつけたいという親心、これはだれしもあるものであります。自分たちより教育をつけたい。その裏腹に、やはり家計を圧迫しているというのは冷厳な事実であります。国民生活金融公庫調べによりますと、家計に占めるいわゆる教育費は消費支出の割合でいけば三割を超えている。したがって、今度、定率減税の縮減に伴う所得税の増税もあるわけで、可処分所得が減になる中で、より教育費の圧迫がふえてくるわけでありますね。

 しかし、親は、背に腹はかえられないということで、実はどういう手だてを打っているかというと、これは就学状況別によるんですが、国民生活金融公庫調べですが、小中高生を持っておられるお宅の第一の理由というのは、どうやってやりくりして塾代を捻出するかの実態でありますが、まず教育費以外を切り詰めるそうです。次には共働きに出る。そして、さらには貯金を取り崩す。それでもだめなら残業をふやす、パートに出るということなんですね。

 今度は、高校二人の御家庭になると、大臣、何が一番の理由になると思われますか。高校生二人を抱えておられる御家庭がその高校生の塾代を捻出するために親御さんが何をするか、手だてでありますが。

中山国務大臣 今言われたようなものにプラスして、お金を借りるとか、そういったことをされるんでしょうかね。

古本分科員 小中校生のときは義務教育課程ですから、まだ切り詰める中でやりくりできるんですね。さすがに高校生二人を持っている御家庭であれば、第一の理由が共働きになります。したがって、生活費をまずは切り詰めて、次に働きに出て、とらの子の貯金に手をつけて子供を育てて、お子さんが塾から帰ってきたら、予備校から帰ってきたら明かりの消えた家に帰ってくる。これは、大臣が幼少期を過ごされた絵姿と大分違うと思うんですね。結果、多分かどうかわかりません、コンビニ弁当か何かで晩御飯を済ます。親はその塾代を稼ぐためにパートに出ている。これは、今日的な日本の少しゆがんだ実態があるんじゃないかと思うんですね。このことについて、感想を聞かせてください。

中山国務大臣 私の小さいころは、親が野良仕事から帰ってくるのを待って、家畜の世話をしたり、御飯を炊いたり、おかずをつくったりして待っていたものでございますけれども、昔のことは昔のことでございますが、今現実にそういうふうな問題もあるということではないかと思います。そういう意味では、子供も親もなかなか厳しい状況にあるんだということは認識しております。

古本分科員 切り詰める理由の中に、上位の理由がいろいろあるんですが、旅行やそういったレジャーを切り詰めたり、被服費それから外食費を切り詰める、親の小遣いを切り詰める、さらには食費を切り詰める。これはまさに本末転倒じゃないんですかね。今、食育の問題も語られています。まさに、情操教育をしていこうと思うといろいろなものを見せたり連れていったりもしてやりたい、だけれども、それを切り詰めて塾代を捻出している。

 いいですか、その塾というのが、先ほど来申し上げているとおり、さらなる何かを求めて、親御さんがどこどこ大学、どこどこ中学に入れたいからだという部分は、百歩譲ってそれは親御さんのお考えでしょうとしたとしても、現実問題、授業についていけなくて塾に行っている、これは公教育の補完部分じゃないかと思うんですね。

 したがいまして、こういうようなことをいろいろ議論していくと、ある事実に気づくんですね。塾というのを所管をしている、お守りをしている省庁は何省になるんですか。事務方で結構です。

岩田政府参考人 学習塾の所管につきましては、教育サービスの提供という観点から、経済産業省が所管をいたしております。

古本分科員 平成十一年の特定商取引法の改正でしょうか、特定継続的役務に指定されるものとして、その他、エステ、結婚相手紹介サービス、パソコン教室、語学教室、そして塾。その範疇が、大臣、エステと一緒がよろしくないと言っているわけじゃないんですよ。エステサロンも、そういうことを欲する人もいますから。要は、塾という、非常に義務教育課程の読み書き計算の部分を補完しているにもかかわらず、これは事実ですよ、実態として補完をしている塾という産業を見ておるのが経済産業省である。このことについて、何か御所見をいただけますか。

中山国務大臣 これは産業でしょうね。産業にもいろいろあるわけですから、塾も産業ということでは経済産業省だろうと思うわけでございます。文部科学省は、そういう認可だとかそういった権限は持っておりません。

古本分科員 きょうは経産の方にも来ていただいておりますが、これは、クーリングオフを初め、いわゆるビジネスとしてこの業態をある意味で見ているということだと思うんですね。

 何か、伺いますれば、直近で、年間で千数件の苦情、クレームが寄せられていると聞きますが、その中身はどういうものですか。

岩田政府参考人 学習塾についての苦情等についてのお尋ねでございますけれども、要すれば、中途解約等々、途中で学習塾をやめた場合の手続等々につきまして、いろいろなトラブルが生じて相談が行われているという実態がございます。

 ちょっと補足をさせていただきますと、学習塾自身は、経済産業省といたしまして、教育サービスの一環、学校外教育の一環ということで認識をしております。その教育の内容という点につきましては、それぞれ創意工夫がいろいろなされるという観点だと認識しております。

 今先生御指摘のとおり、平成十一年ごろからでございますけれども、学習塾を利用する学生生徒が増加するのに伴いまして、今お話し申し上げました中途解約などの際のトラブルといったような苦情相談が起きました関係で、そういった消費者、保護者の利益を保護するという観点で、御指摘にありましたクーリングオフの義務づけとか中途解約制度の導入、こういったことをさせるために学習塾を特定商取引法の特定継続的役務というものに指定し、一種の経営の健全化、契約の適正化ということを進めておるところでございます。

古本分科員 したがいまして、これはまさにビジネスとしてとらえているんですよ。苦情の中身もまさに中途解約に伴う返金の問題やらであって、何を教えているかとか、どういう先生が授業を担っているかとか、肝心かなめのところは何もノータッチなんです。御省も管理していない。管理という言葉が適切かどうかはまた別の機会にしたいと思いますが。

 このことについて、ここはひとつ、塾が公教育の補習校的な役割を担っている事実にかんがみれば、思い切った考えを一歩踏み出すひとつの潮どきに来ているんじゃなかろうかと思いますが、大臣の御所見を求めます。

田中政府参考人 塾について、文部科学省の取り組みについてでございます。文部科学省といたしましても、近年、塾関係者との連携というのは余り行っておりませんけれども、昭和五十年代から乱塾ブームと言われるような時代がございまして、そのころ、子供たちが夜遅くまで塾に通って、十時、十一時まで塾がやっている、あるいは中学校受験とか高校受験のために学校を休んで塾に行っている。そういうような子供の日常生活に悪影響を及ぼすような実態も見られたこともあったわけでございまして、そのような時点におきましては、塾の関係者に自粛を申し入れる等、塾関係者との連携もとってきたところでございます。

古本分科員 今、御省の予算の中で、一般会計で学校関係経費というのは、小中学校のいわゆる先生方の人件費、施設費ですね、それから高等学校、大学校での交付税や私立大学の助成金等々、全部積み上げると七兆六千億ぐらいあると思います。これは数字で事実としてあると思いますね。今年度ベース、昨年度も同ベースだったと思います。これを、人口推計の〇五年の速報値、四月の人口で、これは少し乱暴かもしれませんが、五歳から二十四歳が今言っているようなゾーンに大体入るかなと。まあ、人口推計は五年ピッチですから、それで私の方で割り戻してみますと、年間で一人頭二十八万七千円を計上していることになります。

 したがって、一人の、五歳から二十四歳で相当乱暴な数字で言っていますから、本当に就学している人に絞ればもっと国が負担をしている金額がふえるわけですが、そこまで公費を費やしてお金を突っ込んでいる、子供を育てるために、教育のために使っている。

 にもかかわらず、どうして読み書き計算ができない子が塾に行ってその補習をしなきゃいけない実態があるんでしょうか。そして、そういう子たちの塾代のために、親御さんが遅くまでパートに出るという本末転倒の話になっているんでしょうか。私が申し上げているのはその点なんです。そのことについて、確かに乱塾時代という時代はあったかもしれませんが、今日的な課題でいえば、まさにちまたでそういうことが起こっているわけですね。

 何が申し上げたいか。これは、大臣が冒頭勇ましく、力強く言っていただいた、学校教育において完結していないんじゃないですか。大臣がそう思っているほど、学校現場において読み書き計算ができていないんじゃないですか。とりわけ小学校においてできていないんじゃないですか。

 その意味で、先ほどの質問でも先生方の給料が話題になっていましたが、逆に、こういうときこそ思い切ってどんと学校の先生に渡して、魅力的な先生をどんどんとってくる。あるいは、昔のように先生の親心で、一緒に赤トンボを見ながら、夕日を見ながら計算する先生も最近は少ないのであれば、出すものは出して一緒に居残って、学校で完結すればいいんじゃないですか。大臣の御所見を求めます。

中山国務大臣 学校でちゃんと読み書きそろばんができていないんじゃないか、こういうような御指摘でございますけれども、それは上を見れば切りがないわけですけれども、国際的な学力調査等の結果を見ますと、決して日本の子供たちがそれほど劣っているわけじゃありません。最近少し低下傾向にあるということで、今、警鐘を鳴らしているわけでございますけれども、やはり学校の先生方は一生懸命私は教えておられる、こう思うわけでございます。

 だったらなぜ塾に通わせるのか。これは先ほども言いましたように、よりよいものを求めたい親御さんの気持ちもあります。子供を育てるということは、これはもう本当に楽しみなことでもありますから、何を削ってでも子供の教育にはというのは、これは私は日本の美風だったと思うわけでございまして、そこのところを行くなとは言えないわけでございます。

 繰り返しになりますけれども、私たちは、今、小学校、特に中学校におきましては、できない子といいますか、なかなか学習の進まない子に対しましては、習熟度別授業とかをやりまして、本当に個々に応じて、個人個人に目が届くようなそういった教育をやろう。そして、先ほども申し上げましたけれども、要するに、公の学校、公立の学校において基礎的なことはきちっと子供たちの身につけるように、それが私は義務教育の責任である、こういうことで、教育改革も含めて今頑張っているところでございます。

古本分科員 そうしますと、もう一度おさらいですが、大臣は小学校の課程において、読み書き計算については公教育、学校教育の中で完結をしてきちっとやるんだということを言っておられるというふうに理解しました。そうじゃないというのなら後ほど御答弁いただきたいと思います。

 その上で、ではその読み書きそろばん、読み書き計算を小学校の課程においてまずもって第一義的にやるんだという目的について、目標と言った方がいいのでしょうか、このことについて、学校現場と、教育を受ける生徒さん本人と、それの保護者の方々と行政と、この四者がそれぞれこの共通の目標に立っているでしょうか。もっと言えば、教科書がそういうカリキュラムになっているでしょうかということが次なる問題としてあるわけです。

 したがいまして、これは、今申し上げたように、大臣お一人が幾ら力んでもこれはいけないわけでありまして、今言った関係者、特にこの四者が四つどもえになって、そうだということで目的を共有しないことには、いや読み書き計算なんて、うちの子はもうとっくに私が教えているから、もっとほかのことを教えてほしいんですという親御さんがいたら、これは成り立ちませんね。結果として塾に行かなきゃいけなくなる。

 したがって、小学課程においては何をする、中学課程においては何をする、さらに高等学校では何をする、こういう大ぐくりでの目的をまず掲げて、その共有ということが非常に大事だと思いますが、そのことについて大臣の御所見を求めます。

中山国務大臣 まさに委員が言われるように、子供たち、そして保護者、そして文部科学省も含めて教育機関が一緒になって子供たちの教育に当たっていかなきゃいかぬわけでございますが、そういう大くくり的なものですね、これぐらい、これぐらいというのは、これは御承知のように学習指導要領によってずっと大体の基準が決められている、それに従って今の教育が行われているということでございます。

 なお、今、スクールミーティングというのを実施していまして、現場の学校に行って、一体どういう教育が行われているか、学校の先生方は何を考え、また保護者はどう考えているか、そして子供たちの実態はどうなっているか、その現場から見ていこう、それをもとにして教育改革を進めていこうということで今取り組んでいるところでございます。

古本分科員 ぜひ誤解のなきように。

 学校の先生が職務怠慢をしているということを指摘しているのでは全くなくて、学校の先生がそもそも読み書き計算についてまずは教えようということで指示を受けて、目的を持ってまずはそれに当たらないと、そういうことをやっても評価されませんよね、報われない。したがって、あれも教えなきゃいけない、これも、ゆとり教育もある、そういう中で非常に混乱をしたこの数年を過ごしておられる中で、結果として読み書き計算が、くどいですができていないんですよ。それで、先ほど来の公文式さんや何やかやに行かれている実態があるのです。

 したがって、公教育で完結したいと大臣の力強い御決意を伺いましたので、ぜひ実行していただきたいと思います。

 最後に、せっかく大臣ですから、そういう教育課程において、まさに大枚はたいて公金をつぎ込んで日本人として育ててきて、アイデンティティーというものについて少し確認をしたいのですね。これは、先日来の日中、日韓関係からも、史実に基づいてこうだということが日本人として言い返せる、あるいは切り返せる教育を受けているかどうかなんです。

 具体的に申し上げます。

 センター試験の、これは受験に出た割合でありますが、明治から終戦のことに関して出ている割合が、平成十三年で四割、平成十六年が四五%。現代史が三割。現代史というのは、戦後ですね。平成十六年で二割。そして、公立高校の全国の試験の平均だと思いますが、平成十七年、社会科の歴史で今言った近代史が出た割合が三割。それから、一九〇〇年以降、歴史的分野の中での出題ということに絞れば、二割強。

 したがいまして、試験に出ないから教えないのか、教えないから試験に出ないのか。このうち特に一九〇〇年代の百年間を、我が国国民が、先達たちがどう過ごしてきたかということを振り返るためには、これは子供たちにやはりここの部分をしっかり教えないといけないと思うんですね。これは大臣、思い切って、もっともっと試験にこの部分を出すように指導したらどうですか。

中山国務大臣 やはり子供たちにしっかりとした歴史を教えるべきだ、それは私も本当にそう思っていまして、今からも取り組んでまいりたいと思っています。一時期、確かに、ずっと古代からやってまいりまして、近現代、ついついそこまで行かなかったという時期もあったと思うんですけれども、今はそうではなくて、ちょっと調べてみましたら、大体三分の一ぐらいです。

 例えば、歴史教育の授業時数で見ますと、小学校の社会科で、六十時間のうち近現代史に約二十時間、また中学校の社会科では、歴史分野に百五時間のうち三十五時間、三分の一ぐらい充てているんですね。これは私も驚きでございまして、相当力を入れてきているなと思います。

 また一方で、試験の方も調べてもらいましたけれども、平成十七年度公立高等学校の入学者選抜におきまして、社会科の歴史的分野の出題総数五百六十五問中百四十八問、二六・二%が一九〇〇年以降の近現代史に係るものでございます。また、大学で見ますと、大学入試センター試験、平成十七年度でございますが、日本史Aでは三十六問中二十四問、六六・六%、日本史Bでも三十六問中十四問、三八・八%の設問が近現代史に係るものということで、これはさま変わりになってきているなと思います。

古本分科員 もう最後にいたします。

 大臣は、「土曜日に授業をやりたいという現場の要望がある。学校や市町村などの裁量に任せてもよい。」と発言をされておられます。例えばこの歴史問題しかり、あるいは先ほどの読み書き計算しかり、本当に学校の先生が教えたいことが教えられるようにするためには、目的の共有が絶対に大事であります。先ほど申し上げた、親御さんと現場、それと行政と生徒自身と、ぜひ共有できるような目的づくりをお願い申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

中山国務大臣 先ほど申し上げましたように、まさに共通の目的意識を持って改革をやろうということでタウンミーティングを行っているところでございまして、いずれにいたしましても、今中央教育審議会でいろいろ御審議いただいていますから、それをもとにして、本当に実りのある、これからの子供たちのための教育改革を進めていきたいと考えております。

古本分科員 終わります。

松本主査 これにて古本伸一郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、大島敦君。

大島(敦)分科員 民主党衆議院議員の大島でございます。

 きょうは、まず、総合施設について質問をさせていただきます。

 総合施設、耳なれない言葉ですけれども、今、幼稚園の関係者では、総合施設に非常に関心が高くなってきております。国の施策として来年度から始まるということを聞いておりまして、まず、総合施設とはどういうものなのか、どういう背景で総合施設が考えられてきたのか、そこのところを大臣に伺いたいと思います。

 これまでも幼保一元化ということで、幼稚園と保育所を一つにしようという試みがずっと行われてまいりました。私も、文部科学省の方あるいは厚生労働省の方、それぞれの方に意見を伺いますと、子供の教育に対する視点の置き方というのがなかなか違うわけですよね。ですから、幼保一元化というのは難しい問題なのかなと思っておりまして、その中で、国の施策の中で総合施設ということを考えられたと思います。

 まずは大臣から、総合施設とは何かということについて御答弁いただければ幸いでございます。

中山国務大臣 幼稚園と保育所があるわけですけれども、その目的及び役割は異なっておりますけれども、しかし、それぞれ社会的ニーズにこたえてきたものである、このように評価しております。年々多様化しております就学前の子供やその保護者の教育及び保育のニーズに対しまして、地域における適切かつ柔軟な対応をできるようにすることが重要であるということで、厚生労働省とも連携いたしまして、幼稚園と保育所の連携を一層推進してきているところでございます。

 例えば、少子化が急速に進行している過疎地域などでは、幼稚園とか保育所といった既存の制度の仕組みでは柔軟な対応が困難であるということもあるわけでございまして、こうした場合に、地域が自主性を持って、地域の実情や就学前の子供とその保護者のニーズに適切かつ柔軟な対応ができるようにということで、就学前の子供の教育及び保育を一体としてとらえた新たなサービスの提供の枠組みとしてこの総合的な施設というものが考えられて、その実現に向けて取り組みを進めているところでございます。

 総合施設につきましては、今年度に実施されるモデル事業の実施状況も見ながら、平成十八年度からの本格実施を目指しまして、引き続き厚生労働省を初め関係省庁とも連携をとりながら検討を進めてまいりたい、このように考えているところでございます。

大島(敦)分科員 ありがとうございます。

 これまで、私、厚生労働委員会で、待機児童のゼロ化について何度か質問をしたことがございます。その中で、二〇〇一年の十一月に質問をさせていただいた中で、幼稚園と保育所の一元化というよりも、幼稚園の中の空き教室を使って保育ができないかということを取り上げさせていただきました。そのときの私の問題点というのは、幼稚園と保育所、それぞれの預かっている子供の数は大体百八十万人から百九十万人なんです。十五万人待機児童を減らすということは、幼稚園の就学児童が十五万人分減ってしまうのかなと。

 そして、厚生労働省としてはいろいろな形で保育所をつくるものですから、ハードに対するお金が非常にかかってくるのかなと。地域のニーズを見ますと、それぞれ、長時間働いていらっしゃる親御さんよりも、大体一日八時間から九時間ぐらい預かっていただければニーズが足りてしまう方も多いものですから、幼稚園の空き教室を使って保育所的な事業ができないかなという御提案をさせていただきました。

 幼稚園というのは、地域によっても違うんですけれども、大体、小学校に付随して一つ幼稚園があると理解しておりまして、空き教室を利用してゼロ、一、二を預かると、大体五人から十人ぐらいで、教室を多少直して、そして地域の幼稚園の先生で、結婚退職をされて子育てが終わった先生も地域には非常に多いんです。その子育ての経験のある幼稚園の先生のOBの人たちを使いまして、幼稚園の空き教室を利用して、五人から十人ぐらいの小さな保育ができないかなという御提案をさせていただきました。

 そのときの無理な背景として、やはりこれは社会福祉法人の縛りがありまして、二十人を超えないと保育所として認可されないわけです。ですから、国の予算を幼稚園のそのような保育に対して充てるということが難しいものですから、なかなか進まなかったわけなんです。

 今回の国の施策としての総合施設を勉強させていただきますと、私が四年前に提案した内容に大分近くなってきているのかなと思っているんです。そこのところで、恐らくこれから今の幼稚園の関係者の方たちの関心が高いのも、同じようなニーズ、同じような考え方を持っている方が多いのかなと思っております。

 つきましては、まず、大臣あるいは文部科学省の政府参考人の方でもいいんですけれども、今モデル事業を始めていらっしゃるということなので、そのモデル事業がどういう内容なのかお知らせいただければ幸いでございます。

銭谷政府参考人 総合施設モデル事業についてのお尋ねでございますけれども、文部科学省と厚生労働省は、各都道府県等からの実施希望に基づきまして、ことしの四月の六日に三十六カ所の実施園を選定したところでございます。

 その内訳でございますけれども、幼稚園実施型といいましょうか、幼稚園が保育サービスを付加して実施する形態、これが十カ所でございます。それから、保育所実施型が八カ所でございます。さらに、幼保連携型と申しましょうか、典型的なのは、同一の敷地内に幼稚園と保育所がございまして、そこを総合施設のモデル園として認定をするというものが十八件でございます。

 これらの指定されました地域におきましては、モデル事業の要綱に沿いまして、教育と保育が一体となりました活動をこれからやっていただくということになっております。

大島(敦)分科員 来年度ですから、八月、ゴールデンウイークが明けますと、そろそろ予算の概算要求を各役所、各省庁の方でまとめる作業があるかと思います。モデル事業と同時並行的に来年度の予算要望につながっていくかと思います。

 その中で、先ほど、幼稚園が中心となるモデル事業なんですけれども、預かっているゼロ、一、二歳の子供の数というのは何人ぐらいなんでしょうか。それは小規模なのか、あるいは結構多くの人数を預かっていただいているのか、そこのところを御答弁いただければ幸いでございます。

銭谷政府参考人 十カ所の総合施設のモデル事業、幼稚園から実施をしたところでございますけれども、この十カ所の実施園におきまして新たに受け入れる〇―二歳児の数は、現時点での計画としては平均で三十人程度であるというふうに承知をいたしております。

 これにつきましては、多いところ少ないところいろいろございまして、数自体は、現在、確定の作業を私どもしているところでございます。平均的には三十人というふうに承知をいたしております。

大島(敦)分科員 先ほど、私が四年前に提案させていただいた、幼稚園の空き教室を利用して保育を行う、ゼロ、一、二歳を預かる、そこに対する人数として、今伺いますと三十人ですから非常に大きい人数なのかなと思っています。幼稚園の規模も、大きいところもあれば小さいところもありまして、特に御父兄にとってありがたいのは、近くに預かっていただけるところがあるということかと思います。今までですと、保育所の数が少なかったものですから、保育所までお子さんを届ける、あるいは迎えに行くということが結構大変でした。

 ですから、地域の中に小規模の幼稚園に併設したゼロ、一、二歳を預けるところがあるという御提案をさせていただきまして、それについて、今回の総合施設のイメージとして、幼稚園の空き教室を保育できる設備、これはもちろん、ゼロ、一、二と三、四、五歳を一緒にさせるということは非常に危険なんです。三歳、四歳、五歳は、大人と違いまして何をしちゃいけないかというのがよくわからないものですから、ゼロ、一、二歳と一緒に混在させることは非常に危ないことです。

 ですから、そこのところの設備をどういうふうにするのか、あるいは空き教室を利用して小さくても構わないのか、あるいは受け入れるお子さんの数も五人とか十人とか少なくてもいいのか、そこのところをお答えいただければ幸いでございます。

銭谷政府参考人 幼稚園型のモデル事業につきましては、利用対象者として新たに加わりますゼロ、一、二歳児については、大きく二つの典型的な例があるだろうと私ども思っております。

 一つは、親子登園あるいは親子の交流の場への参加等の形態で利用するケースというのがあろうかと思っております。それからもう一つは、先ほど来先生からお話がございましたように、保育所と同様に八時間程度利用する子供ということが想定をされるわけでございます。

 私どもは今回、モデル施設の指定に当たりましては、ゼロ、一、二歳の子供の数については、下限といったような感じでは特に設けておりませんで、結果的には十八人ぐらいの少ない〇―二歳児を受け入れるというところもございます。

 施設につきましても、先生今御注意をいただきましたような、子供の年齢による取り扱いの差異等には十分配慮しなければいけないわけでございますけれども、非常にそこは弾力的なあり方ということで今考えているところでございます。

大島(敦)分科員 ありがとうございます。

 施設あるいは受け入れの児童数についても規定は設けないということと理解をさせていただきます。

 もう一つは、先ほどの幼稚園の、あるいは保育される方の資格の問題があるかと思います。

 幼稚園の先生は、三、四、五歳を預かる前提で教育を受けておりまして、ゼロ、一、二を預かった経験あるいはゼロ、一、二を教育することに対する勉強をされたことがないと伺っておりまして、幼稚園の先生から、すぐにゼロ、一、二を預かってくださいといってもなかなか怖いところがあるということも聞いております。

 そうしますと、今後のその資格の問題なんですけれども、例えば先ほど私申し上げましたとおり、幼稚園の先生を経験されて、地域で子育てを終わっている方たちも結構多いわけです。子育て経験があるということは、やはりゼロ、一、二の小さなお子さんを預かるには非常に有益であり、かつ問題も少ないし、子供の泣き声を聞いてどういうことを子供が望んでいるのかなということもわかると思います。

 そこの資格制度について、やはりゼロ、一、二は保育士さんの仕事ですから保育士さんの資格を持っていないとできないんですよと考えているのか、あるいは柔軟に対応して、幼稚園の先生の資格を持っていて一定の経験なり一定の教育あるいは講習を受ければゼロ、一、二を見ても構わないというふうに考えるのか、そこのところについて御答弁いただければありがたいです。

銭谷政府参考人 総合施設につきましては、本格実施を目指しまして、中央教育審議会の幼児教育部会と社会保障審議会の児童部会の合同の検討会議が審議を進めてまいりまして、昨年の十二月に「審議のまとめ」というものを出しているわけでございます。これが本格的な制度設計の第一歩になろうかと思っております。

 その中では、いわば、幼稚園教諭、保育士の問題につきましては、

 一定の教育・保育の質を確保する観点から、保育士資格及び幼稚園教諭免許を併有することが望ましいが、常に両資格の併有を義務付けるのではなく、基本的にはいずれかの資格を有することで従事可能とすることが適当である。

というまとめをいただいております。

 その上で、三〜五歳児の四時間の共通時間については幼稚園教諭免許を有する者を、〇〜二歳児の保育については保育士資格を有する者を中心にすべきとの意見も踏まえつつ、総合施設の理念・意義に照らして、その在り方を検討していくことが適当である。

という提言になっております。

 今後、この提言を踏まえまして、今先生お話のございました幼稚園教諭の経験者など、幼稚園教諭免許のみを有する職員がどのように教育、保育活動に関与することが可能かも含めまして、総合施設の職員資格のあり方について、モデル事業の実施を通じて、厚生労働省とよく連携をして検討していきたいというふうに思っております。

 なお、幼稚園教諭の免許状のみを持っている方あるいは保育士の資格のみを持っている方が、それぞれ相手方の資格を取得する、これにつきましても、平成十七年度、例えば幼稚園教員資格認定試験を実施するなど、いろいろ相互に資格を取りやすく、そういう配慮は両省で今やっているところでございます。

    〔主査退席、津島(恭)主査代理着席〕

大島(敦)分科員 都道府県によりましても、例えば長野県のように保育所がほとんどで幼稚園が少ないところもありますし、沖縄県のように幼稚園がほとんどで保育所がない県もあります。それぞれの県によって保育所と幼稚園の割合というのはさまざまでございます。したがいまして、相互にストレスなく乗り入れる仕組みをつくっていただきたいと思います。

 もう一つ、やはり予算の面があるかと思うんです。

 前回、私が四年前に厚生労働委員会で取り上げさせていただいたときは、税の使い方として、できるだけむだのない使い方が必要かなと私は考えたわけです。それは、ハードの面で多くの投資をするよりも、賄えるところは既存の設備を使いながら賄っていきたいという考え方をとりました。

 文部科学省さんでも、ここ五年の間に、幼稚園の預かり保育の予算というのは大分ふやしていただいております。幼稚園の預かり保育は今ですと四時間でして、プラス四時間から五時間預かっている幼稚園も多くなってきておりまして、園によっては夏休みの間もずっと預かっていただけるところもあります。その金額というのは、私が聞いておるところですと、ほとんどがもうけないで、利潤を出すよりも幼稚園の先生の人件費負担だけで十分ですよということで、極めて皆さん頑張っていいものを提供していただいていると聞いております。

 したがいまして、これから幼稚園の中に、ゼロ、一、二歳の八時間の保育という前提に立って子供を受け入れた場合に、今、保育所行政は保育所の徴収金の基準額なんというのが決まっておりまして、一定の補助が御両親の方にという制度がございます。これについて、今回の総合施設についても、保育所に預けている子供たちには一定の補助がある、総合施設に預けると補助がなくなってしまうというのではバランスが欠けると思うんです。

 そこについて、厚生労働省から、幼稚園の中に保育所的な総合施設を併設した場合に、保育料に対する一定の補助ができるのかどうか、その点についてお答えいただければ幸いでございます。

北井政府参考人 総合施設の公費助成あるいは利用者負担についてのお尋ねでございますが、公費助成の前提の一つとなります利用負担のあり方につきましては、昨年十二月の、中央教育審議会幼児教育部会と社会保障審議会児童部会の合同の検討会議が取りまとめました「審議のまとめ」におきまして、幼稚園及び保育所の利用負担の違いというものを踏まえながらも、「利用したサービスに応じた負担、子育て家庭の負担能力に応じた負担、地域における類似施設との負担の均衡等に配慮したものとすることが適当である。」とされているところでございます。

 そしてまた、総合施設の財政措置ということにつきましては、その「審議のまとめ」におきまして、「総合施設の意義・理念に照らして、新たな枠組みにふさわしい費用負担の仕組みを検討していくことが必要」とされているところでございます。

 いずれにいたしましても、この利用料と財政措置のあり方につきましては、一番難しいところでございまして、まだまだこれから政府部内の調整を必要とするところでございます。総合施設につきましては、先ほど大臣からもございましたように、閣議決定したスケジュールに従いまして、平成十七年度にモデル事業を実施して、その状況も踏まえて具体的な制度設計を行い、十八年度から本格実施ということになっておりまして、今後適切に対処し、検討していかなきゃいけない課題だと認識をいたしております。

大島(敦)分科員 待機児童ゼロ作戦で、十五万人分の待機児童は解消をしたと聞いております。改めて待機児童について各市町村の方に聞いたところ、現状では十二万人の待機児童がいるということも聞いております。したがいまして、待機児童を少なくしていくためにも、この総合施設をうまく利用していくことが必要なのかなと。特に、要は、先ほどの繰り返しになりますけれども、国の税の使い方として、できるだけ効率的に使うという観点も必要かと思います。

 したがいまして、今は保育所については応能負担、幼稚園については応益負担になっておりまして、この保育所の応能負担について、財源について配慮をしていくという御答弁だと理解してよろしいでしょうか。もう一度お願いしたいんですけれども。

北井政府参考人 率直に申し上げまして、利用料の負担のあり方、それから公費助成のあり方については、今のところ政府としては全くの白紙ということでございます。しかし、この「審議のまとめ」におきまして、先生おっしゃいましたような、これまでの幼稚園、保育所の利用負担が相当違います。公立幼稚園と私立幼稚園で大きく違う、それから保育所は市町村ごとの均一の料金になっていたりする。それから、公費負担のあり方も大きく違いますので、こうしたことを踏まえつつも、せっかく新たな枠組みをつくっていって、子供の最善の利益を図りながら、地域の実情や親のニーズに合った柔軟で適切な仕組みをつくっていこうということでございますから、これから、こうしたこともすべて踏まえて、政府部内の調整を図っていかなければならないというふうに考えております。

大島(敦)分科員 大臣に伺いたいんですけれども、やはり総合施設というのは、今の幼稚園と保育所、今までも国の方で幼稚園と保育所の合築とか、あるいは併設とか、いろいろな事業をしてまいりました。全国では一万四千の幼稚園がありまして、そのうち、合築、併設、あるいは同一敷地内に保育所があるところというのは三百四しかないんです。意外とこれは、幼保一元化事業というのはなかなかハードルは高いかなと思っていたんです。

 今回、総合施設ということで非常にいい枠組みができたものですから、ぜひ、厚生労働省さんと相談をしていきながら、特に予算措置というところがキーになるものですから、そこのところを御配慮していただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

中山国務大臣 まさに御指摘のように、これは保護者のニーズもありますし、地域によっていろいろありますけれども、やはりそういった地元のきめ細かなニーズにこたえていくということが大事だし、今御指摘ありましたように、やはりむだ遣いはしないということも一つの観点だろうと思うわけでございまして、厚生労働省と文部科学省の間で人事交流等もしながら、お互いに連携をとりながらやっていっているわけでございまして、予算のことも含めて、前向きに考えていきたいと思っております。

大島(敦)分科員 ありがとうございます。

 次の論点に移っていきたいんですけれども、今、国の中では、介護保険法の改正案の法案審議をしております。これからは地域の中で介護予防の拠点をつくっていこう、そういう動きがあります。

 そうすると、地域の中でさまざまな施設がございまして、文部科学省関連ですと、学校という施設あるいは公民館という施設がございます。公民館のあり方として、地域の介護予防の拠点に使えないかというニーズが今出てきているんです、市町村の方で。公民館の施設は一定の基準で非常に立派な施設が多いものですから、介護予防の拠点として使えるかどうかについて御答弁いただければ幸いです。

    〔津島(恭)主査代理退席、主査着席〕

田中政府参考人 公民館の事業についてのお尋ねでございますけれども、御指摘のとおり、公民館は、地域における最も身近な学習拠点として、地域住民に対するさまざまな学習活動の提供、あるいは自主的な学習活動や交流の場として重要な役割を果たしてきておるところでございますけれども、住民の健康の増進ということも公民館の目的の一つでございまして、お尋ねの介護予防拠点におきましては、体力の向上あるいは健康の増進を目指したトレーニングや運動、あるいは食生活の改善のための講座等の事業を行うということでございますので、このような活動は公民館活動の一環と我々とらえることができるというふうに考えておるところでございます。

大島(敦)分科員 最後なんですけれども、伺ったところによりますと、公民館については国の補助金、文部科学省の補助金が入っておりまして、公民館全体をまた別の目的に使うためには、市町村、自治体としては、五十年間の償却で、残存期間部分について国にお返しをしなくちゃいけないというお話を伺っております。ですから、今後の地方自治体のあり方、なかなか財源が少ないものですから、時代のニーズに応じながら柔軟に対応することも必要なのかなと考えております。

 その点について、最後に大臣に、柔軟に対応すると、すぐには難しいと思いますので、そういう方向で対応していただきたいなということを申し上げまして質問を、では最後に意見がございましたら伺いたいと思います。

田中政府参考人 国庫補助制度についてのお尋ねのところだけ、私の方からお答えをさせていただきたいと思っております。

 公民館に関します国庫補助金によりまして整備された場合には、これを転用する場合には補助金適化法に基づきまして財産処分の手続が必要になってくるわけでございますけれども、その転用に当たりましても、財産処分がやむを得ない事情によるものであること、従来行ってきた社会教育活動が確保でき、住民サービスの低下を招かないというような条件を満たせば、市町村から文部科学大臣への報告をもって承認されたとみなされることとしておるところでございまして、簡易な手続による転用も可能となっておるところでございます。

大島(敦)分科員 ありがとうございました。

松本主査 これにて大島敦君の質疑は終了いたしました。

 次に、田島一成君。

田島(一)分科員 民主党の田島一成でございます。

 きょうは、この決算行政監視委員会で質問の機会をちょうだいいたしました。ありがとうございます。中山文部科学大臣にも御出席をいただいておりますので、大臣以下、文化庁へ質問をさせていただきたいと思います。明快な御答弁、ぜひお願いをしたいと思います。

 今回、この委員会で質問をしたい大きな柱は二点ございます。

 まず、一点目。日本として、また地域で、国民の暮らしにおいての文化芸術のあり方という、非常に取りとめのないテーマかもしれませんけれども、私自身、これまでの政治活動の中で、非常に大きな問題点として感じてきた部分についての質問をさせていただきたいと思います。

 戦後、混乱の中でこの日本はそれこそ経済一辺倒でずっと突っ走ってきた、それがこの二十世紀の後半でありました。そんな中、経済の中に潤いとそして活力をというような中から、経済と文化は車の両輪である、そういう考えのもとに二十世紀後半の四半世紀、各種の文化施設が全国各地に建設をされ、またその内容の充実にとそれぞれが取り組んでこられたところであるかと思います。

 今改めて、この文化芸術とは何なんだろうか、そのことを私自身、自問自答しておるところでありますけれども、国としてといいますよりも大臣として、この文化芸術というものをどのようにとらえていただいているのか。できますならば、国としてのとらえ方、また国民生活における文化芸術のあり方、ひいては地域にとってどのようなあり方というふうにお考えなのか、その文化政策と対峙をされる姿勢をあわせてお伺いしたいと思います。

中山国務大臣 文化芸術についての所見いかんということでございます。

 芸術文化というのは、人々に生きる喜びをもたらして、豊かな人生を送る上での大きな力になるもの、このように考えていまして、国民生活の観点から国民一人一人が文化芸術活動に対して親しむ環境をつくることがまず大事である、このように考えております。

 また、国家としての観点からは、芸術文化のすそ野の拡大、最高水準の文化芸術の創造とか、あるいは芸術家の育成などを図るとともに、我が国の顔となるべき芸術文化を創造し、世界に発信していくことも重要であると考えております。

 また、地域の観点からは、それぞれの地域に長年培われて継承されてきた伝統文化とかあるいは特色ある芸術文化活動が、当該地域のみならず、他の地域の人々も魅了して、そして元気にすると同時に観光資源としての活用もあるわけで、これらの地域の活性化の上で大きな役割を果たすものであると考えておりまして、これらに対する適切な支援が重要であると考えております。

 今後とも、国内外を魅了するような我が国の文化力の向上を図るとともに、文化芸術立国の実現に向けて施策の充実を図ってまいりたい、このように考えております。

田島(一)分科員 ありがとうございます。文化芸術が及ぼす悪影響であるとかマイナス面というのは、今大臣、一切おっしゃってもいただきませんでした。私も全く大臣のお考えに一緒でありまして、何としてもこの日本の国力の土台に大きく影響を及ぼす、これが私は文化芸術ではないかと思います。しゃくし定規に把握したりとらえたりすることがなかなかできない課題だけに、数値であらわしにくい問題なんですけれども、この文化芸術政策を取り巻くいろいろな背景、側面から現状を分析し、将来展望をどのようにお考えかを後々、質問へと移っていきたいと思います。

 まず、文化芸術についての予算のあり方でございますが、御承知のとおり、二〇〇一年の十二月に公布、施行された文化芸術振興基本法、この第二条の第三項の中にこのようにうたわれています。「文化芸術を創造し、享受することが人々の生まれながらの権利であることにかんがみ、国民がその居住する地域にかかわらず等しく、文化芸術を鑑賞し、これに参加し、又はこれを創造することができるような環境の整備が図られなければならない。」このことは、いま一度改めてこの文化芸術のあり方をしっかりと認識される、そんな機会であったというふうに私自身も評価をするところであります。しかし、今のこの日本の法制度が真に文化芸術を振興するものとなっているのかどうか、このあたりをしっかりと検証していかなければならないと思うわけであります。

 文化庁の予算、こちらの方をひもといてみますと、十年前の平成六年に比べますと、約一・七倍に規模が大きくなっております。一定規模拡大という点では、この文化芸術の振興の観点からいえば喜ぶべきことなのかもしれませんけれども、一方、目を地域の方に転じてみたいと思うんですが、地方公共団体の芸術文化経費、これをちょっとピックアップいたしました。年次がずれるんですけれども、平成五年度から見てみますと、平成五年度をピークに減少傾向の一途をたどっております。具体的に申し上げますと、地方の文化芸術予算、平成五年度から今もう半分以下になっているというふうに数字は示しています。

 文化庁としての予算は一・七倍ぐらいに上がってきているんだけれども、地方における文化芸術の経費は半減している、このギャップを今どのように評価されているのか。文化庁としての予算も、単年的に見ていけば上がってきているとはいいながらも、今日の財政状況からすると、決してこれからも上り調子でいくとは思えません。今後、文化庁としての予算確保についての姿勢、また、地方の文化芸術予算の確保についてどのようにお取り組みを考えていらっしゃるのか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

加茂川政府参考人 文化関係の予算についてのお尋ねでございます。お答えをいたしたいと思います。

 御指摘のように、まず、文化庁の予算でございますが、平成十七年度の予算額は一千十六億円を確保したところでございまして、過去に比べますと一・数倍の充実が図られているのは御指摘のとおりでございます。これは、何より関係者の努力、それから国会での御審議での理解が得られたものと私ども思っておるわけでございますが、財政状況のかなり厳しい折でございますので、今後とも文化芸術立国の実現に向けてこの予算の確保、充実に努めてまいりたいと思っております。

 関係団体の要望等を聞いておりますと、先進の欧米諸国では国家予算に占める文化関係予算の割合がもっと高いという例もございますので、そういった要望等も踏まえつつ、一層の予算の確保、充実に努めてまいりたいというのが私どもの基本的な姿勢でございます。

 それから、地方の文化関係予算についての御指摘がございました。

 地方公共団体における文化の振興に関する予算としての文化関係経費でございます。これは、文化庁が毎年度調査をいたしておりますが、最新のものが平成十三年度の決算ベースの数字でございます。これを見てみますと、先生、平成五年との比較がございましたが、私どもの数字で申し上げますと、平成四年度には八千二百十五億円でございましたものが、平成十三年度では五千六百五十一億円にまで減少をしております。

 内容を見てみますと、これはいわゆる施設経費、文化施設建設費が平成四年度には四千九百億円余りありましたものが、平成十三年度には一千六百三十二億円まで減少したことが大きな要因と考えておりまして、確かに総額は減っておりますけれども、いわゆる箱物という言い方が正しいのでしょうか、施設建設経費が大きく減少したことが大きな要因となっておると分析をしておるところでございます。

 一方、ソフトの経費と申しますか、文化芸術の鑑賞、参加あるいは創造に資する経費、芸術文化事業費と私ども言っておりますけれども、この予算につきましては、年度によって若干の変動はございますものの、平成四年度と先ほどの平成十三年度で比べてみますと、平成四年度が約四百八十億円、十三年度は六百四十億円程度でございまして、ここ十年間でほぼ横ばいの推移をしている、ソフト経費についてはほぼ横ばいの経費が確保できている傾向を示していると受けとめておるところでございます。

田島(一)分科員 わかりました。その点は理解をいたします。地方でこの文化施設の建設がもう天に来たというような考え方からすると、こういう予算動向ではあるけれども、文化事業費等々については決して下がってはいないんだ、それは一定の理解をさせていただきたいと思います。

 しかしながら、地方財政も同じように本当に逼迫をしている状況は御承知のことと思います。予算の枠がほぼ横ばいとはいいながら、本当にその施設を維持管理、そしてまた自主事業等々の実施を考えていくと、本当に厳しい状況に陥っていること、このことだけは文化庁もぜひしっかりと御認識をいただきたい、そう考えるところであります。

 今回のこの文化芸術の振興、これは何も公共、官がやるべきものばかりではありません。民間レベルでも、これまでメセナという形、もしくは文化芸術振興の企業の社会責任、そういったことを果たさんがために御尽力をいただいてきた企業の御努力等々もあったかというふうに思います。

 一九九〇年に日本芸術文化振興基金でありますとか社団法人の企業メセナ協議会、それから九四年には財団法人の地域創造などが設立をされて、国、自治体、そして民間一体となった芸術活動支援をこれまでされてきたところでありますけれども、こうした基金や協議会が設立された当初の目的と比べてみますと、その動向と課題が非常にわかりやすくなってきたのではないか、そんなふうに分析をいたします。

 実は、手元に企業メセナ協議会の寄附の状況、十年間を分析するデータをちょっといただきまして、そちらの方を拝見いたしますと、一九九四年からこの十年間の流れを見ますと、社団法人企業メセナ協議会への寄附、この件数は約六倍にふえているというそんなデータをちょうだいしております。しかしながら、寄附件数はふえているんだけれども、一件当たりの寄附金額は十年間で約三分の一に減少をし、総額を見ても、ピークであった一九九七年に比べると約半分になっているという状況であります。

 社団法人の方で御苦労をいただいているにもかかわらず、民間による継続的な芸術文化支援というものがいかに流動的で脆弱な状況にあるのかということを物語っている数字ではないかというふうに私は思うんですけれども、バブル全盛期に比べれば一番わかりやすいんでしょうけれども、経済の動向に大きく影響を受けやすいこの民間の芸術文化支援についてどのような現状認識をお持ちなのか、また、今後どのような対策をお考えなのか、お答えをいただけますでしょうか。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 企業メセナ協議会の活動について御指摘がございました。

 社団法人企業メセナ協議会を通して行われます文化芸術活動に関する寄附につきましては、税制上の優遇措置が講じられているところでございまして、数字を申し上げますと、平成十六年度におきましては、この協議会を通じて千六百四十三件、額にしますと約六億五千万円の寄附が行われているところでございます。

 委員御指摘のございましたように、ピーク時に比べますと金額は減っておりますけれども、件数が格段にふえてきておるわけでございまして、大口の寄附は確かに減っておるわけでございますが、小口の寄附がふえてきた。ちょっと視点を変えて見ますと、寄附者の数がふえてはまいったわけでございますから、寄附の理解が浸透してきた、寄附文化と言うと言い過ぎかもしれませんが、浸透しつつあるという見方もできるのではないかと思うわけでございます。こういった着実な寄附行為、寄附を行う行為がふえていくことを私どもも大変大事なことだと思っておりますし、推奨したいと思っておるわけでございます。

 幾つか税制改善要望についてもさらに改善を図るということでこの寄附の行為を支援したいと思っておりますけれども、一つは、この企業メセナ協議会がメセナアウォード、会員の企業の取り組みを検証する取り組みを行っておりますけれども、これに文化庁としても参画をいたしまして、平成十五年度から文化庁長官賞を設けておりまして、この協議会と連携して、企業によるメセナ活動が一層進むことを試みておるところでございます。

 そういったことを通じながら、こういった寄附行為、企業メセナの活動が一層発展することを願っておるところでございます。

田島(一)分科員 寄附件数がふえたことは、私、何も否定していませんし、それ自体は評価すべきだと思います。ただ、件数がふえたことだけに喜んでいてはだめだ、この認識だけはぜひお持ちください。

 金額もそれに伴ってせめて横ばいぐらいになっていけば、すそ野が広がってきたという点では、次長のおっしゃる筋も通ろうかと思います。総額、寄附金額がどれだけ集められるのか、それによってこの活動自体もやはり変わってくるわけでして、どんなに寄附口数が、寄附者の数がふえても、それは決して目に見えたプラスにはなっていないという、その実態だけは御理解をいただいた対策をぜひお願いしたいと思います。

 さて、地方にちょっと目を転じていきたいというふうに思うんですけれども、先ほども申しましたが、税収の落ち込みであるとか、三位一体改革のもとでの国の補助金それから地方交付税の見直しで、地方自治体、それぞれ財政難を余儀なくされています。文化芸術予算というのは、一番しわ寄せを食らいやすい、そんなテーマでもあり、とりわけ、地方自治体の首長さんの御理解がどこまであるのか、地方自治体の地域を支える住民がどれだけ文化芸術に熱意と情熱を込めていらっしゃるのか、これによって大きな違いが出てきている。このことは恐らく大臣も、また文化庁も御理解いただいているというふうに思うんですけれども、最近のデータ、動向を見ますと、地方でつくられてきた文化芸術施設が閉鎖に追い込まれている、そんなケースが非常に多うございます。

 実は、私の地元であります滋賀県も、地域でつくられた文化芸術会館が、役割を終えたという大義名分で、知事が、もう今年度から県から手を離してしまおう、地方自治体にゆだねていこうなんということを昨年言い出す始末でありまして、実際に、こうした文化施設の管理運営、また自主事業の展開等々が非常に、都道府県また地方自治体の財政に、大きく逼迫している原因になってきているという実態があろうかと思います。

 地方の場合は本当に大きな問題となっておりまして、より多くの国民が芸術文化に触れていただける機会、これがもちろん地域であろうかというふうに思うんですが、この地域での文化芸術活動が明らかに衰退をしてきているというふうに私は判断するんですけれども、この点、どのように評価をしていらっしゃるのか、本当にこれでいいというふうにお考えなのか、文化庁、お答えいただけますか。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 文化芸術施設の閉鎖についてのお話がございました。具体の状況について私ども数字は把握をしていないわけでございますが、データをちょっと申し上げますと、全国の文化会館の数、これはいわゆる座席数が三百以上のホールを伴う文化会館等でございますが、この数は、平成五年度から平成十四年度まで十年間で比較をいたしますと、平成五年度に千二百六十一館あったものが、平成十四年度には千八百三十二館となって、一応数は一・五倍に増加をしておるわけでございます。ただ、直近の三年間を見てみますと、すなわち十一年度から十四年度の傾向を見てみますと、公立の文化施設は九十館の増加にとどまっておりますし、私立については逆に九館の減になっておるわけでございます。十年間のトレンドで見ますとふえていますけれども、この最近で見ますと増が鈍り、または一部減っている部分もある、こういうことでございます。

 これは、委員の御指摘にございました、近年の地方財政の悪化でございますとか、民間における景気の低迷を反映しているんだろうと認識をしておりまして、このままでは文化芸術活動の拠点たる文化芸術施設のあり方に大きな影響を与えることになると私どもも危惧をいたしております。

 ただ、地域の文化芸術活動は、その地域の人々の生活の潤い、さっき大臣も答弁申し上げましたが、心の豊かさの創出など、文化の面を持っておりますのみならず、施設の利用あるいは文化財の保存、利活用に、消費の拡大でありますとか、観光という面からは人の動きもあるわけでございまして、地域経済に対しても大きな波及効果を持つものだと私ども同時に考えております。

 したがいまして、ちょうど本年二月に文化審議会の部会報告がございました。「地域文化で日本を元気にしよう!」という報告書でございますが、私どもは、この報告書の中で、企業でありますとか地方公共団体でありますとか国における地方文化の活性についての具体的な提言がございますので、これを踏まえて、それぞれが役割を果たすべきだと思っておるわけでございます。

 例えば、第一には、地方がこの報告に理解を示していただいて積極的に取り組んでいただく必要があるわけでございますが、私どもとしましては、公立文化施設の自主的、主体的な取り組みに資する各種の情報の提供。今、文化施設の企画力が十分ではないといった指摘、心配もあるわけでございますが、地域で連携をしながら企画力を補っていくという取り組みも一部の地域では見られるようでございますから、そういった情報を提供して地域の取り組みを支援する、例えばそういった情報提供が考えられるわけでございます。それから、地域文化リーダーあるいは地域の芸術団体の育成を進めるモデル事業も手がけておりまして、こういった事業を実施する中で地方の取り組みを支援してまいりたい、こう思っておるわけでございます。

田島(一)分科員 確実に廃館数がふえてきている、このことだけはゆゆしき事態だというふうに思っております。地方自治体に向けての文化庁からのメッセージをぜひ強めていただきたいと思います。

 これまで、この地方の文化施設、よく、立派過ぎる貸し館であるとか巨大な空き部屋なんて、非常に耳に痛いやゆを甘んじて受け入れてきた、そんなところもあったやに思います。困難な予算確保が相も変わらず続いておって、稼働率が非常に低い施設。また、施設の本来の目的を達成するための自主事業の実施数、実施率がどんどん低くなってきている。このことは本当に、数年前と比べても顕著に数字が示していることと思います。

 そんな中で、今回、地方自治法の改正で、指定管理者制度下で文化施設の管理ができるというふうになったわけであります。民間がますます公共のサービスの担い手として頑張ってくださる、そういうふうにとらえれば、歓迎すべきことというふうに理解をする人が非常に多いかと思いますけれども、この文化施設というものが、先ほど大臣も冒頭でおっしゃってくださいましたけれども、文化力の向上であるとか住民へのサービスの提供という本来機関であるべき施設なんですけれども、残念ながら、この指定管理者制度になってしまうと、まさしく管理する箱物という位置づけになってしまうように思うんです。この箱物行政から脱却しなきゃいけない、今こういう時期、この指定管理者制度が果たしてこれで本当にうまくいくのかどうか。

 例えば、舞台芸術をつくっていくについても、企画、制作、それから上演と、オペラだとかをやっていくには普通二年から三年かかってしまうんですね。にもかかわらず、この管理代行を指定管理者制度のもとでやっていきますと、文化施設の管理を期間を決めて指定していくということですから、まして、地域における文化戦略というような、十年、二十年という長期スパンに立った施設のあり方を問うには、この指定管理者制度というのは非常に問題点があるんじゃないかと私は思うんです。

 何か昨年の議論の蒸し返しになるかもしれませんけれども、大臣は、この指定管理者制度と文化政策についてのお考え、どのようにお感じなのか、お聞かせいただけますでしょうか。

中山国務大臣 公立文化施設の管理運営に当たりましては、公的資金で運営されているということを考えますと、より効率的かつ効果的に運営管理されなければならぬということは、これはもう当然だろうと思うわけでございます。

 他方、文化芸術活動の振興ということから考えますと、やはり、そういう短期的なものじゃなくて、長期的な視点に立って対応するということも求められている、まさに御指摘のとおりだろう、こう思うわけでございます。

 各地方公共団体におきまして、指定の管理者制度の導入に当たりましては、やはり、経済性とかあるいは効率性という観点だけではなくて、文化施設が本来有する使命あるいは目的、地域における役割といったものを踏まえまして、例えば、地域文化振興計画に基づく長期的な視点に立って、地域の文化芸術振興の拠点としてその充実を図っていく、そういう視点も忘れてはならない、このように考えております。

田島(一)分科員 文化芸術を軽んじる国は必ず滅びると私は信じてやみません。効率を追求することによって効果が上がるものとマイナスになるもの、この違いをしっかりと認識していかなきゃいけない。とりわけ芸術は、じゃ、どちらなのか。このことは言わずもがな、御承知のことと思います。今、日本の行くべき方向性が問われる中、先人の築いてこられた伝統文化をしっかりと引き継いでいくこと、また新しい新進の気鋭でこの文化を育てていくこと、この気概にしっかりと立っていただいて、大臣以下文科省としてのお考えをおまとめいただきつつ、これからの文化芸術政策の確立にぜひ御尽力をいただきたいと思います。

 時間も、もう少のうございますので、あと一点、実は世界遺産登録について質問をさせていただきたいと思います。

 つい先ごろも熊野古道が世界遺産に登録をされた、大変喜ばしいことであり、私も同じ近畿に住む者として、非常に地域の皆さんが世界遺産に登録されたことを契機に現地を訪れる、そんなニュースをかいま聞かせていただいているところであります。

 さて、この世界遺産登録のために挙げられている暫定リスト、現在四件記載されているんですが、御承知のとおり、五年から十年以内に推薦しようとしている遺産リストが挙げられているのがこの暫定リストであります。

 先ほど四件と申し上げましたけれども、この四件あるうちの古都鎌倉の寺院、神社ほかというのと彦根城、この二件が暫定リストに記載されているんですが、先ほど前提として申し上げた、五年から十年以内に推薦しようとしているとあるにもかかわらず、これが暫定リストに記載されたのが今から十年以上も前の一九九二年であります。当初の前提条件を大きく経過してしまっている中で、なぜこの鎌倉と彦根城、この二点が十年も経過されて暫定リストのままになっているのか。

 これまでも委員会等で質疑がある中で、次長の方が、文化庁の方からは、普遍的な価値を有しているかどうか、世界遺産委員会の定めた登録基準を満たしているかどうか、そして保護のための措置が十分にされているかどうかという基準をおっしゃっているんですけれども、実際にこの鎌倉と彦根城はこの三つの条件を満たしていないというふうに理解していいのかどうか、ちょっとお聞かせいただけますでしょうか。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 御指摘の、平成四年度にいわゆる暫定リストとして登録されました古都鎌倉の寺院、神社ほか及び彦根城についてでございます。

 暫定リストに載りました後に私どもがなすべきことは、推薦条件が整ったかどうか、整い次第推薦を行うことにいたしておるわけでございますが、現在、暫定リストに載っておりますこの二件、ほか二件で四件ございますけれども、現在、各自治体において鋭意その推薦基準に達するかどうかの取り組みが行われている最中だと認識をいたしております。

 具体的には、推薦に必要なコンセプト、どういう特徴を持って、傑出した、顕著な普遍的価値を有するという説明ができるのか。証明ぐらいに厳しい説明が求められるわけでございますが、そういったことができるのか。あるいは、文化財の史跡の指定でございますとか、追加指定等に向けた調査が行われる必要もあるわけでございます。さらには、バッファーゾーンと言っておりますが、文化財を保護するための緩衝地帯を設ける必要がございまして、こういった保存管理計画をきちんとしなければならないことがございます。暫定リストに載っております四件につきましては、こういった検討がまさに今行われておりまして、そういった検討が整い次第推薦に移る段階にある、こう認識をいたしておるわけでございます。

 確かに、平成四年度に暫定リストに載りましてから長期の時間がたっておるわけでございますが、なおまだ地元の取り組みが進んでおるわけでございまして、私どもとしては、地元の取り組みを注視しながら必要な専門的な助言、アドバイス等を行ってまいるという立場にあるわけでございます。

田島(一)分科員 ありがとうございます。

 やはり地元の皆さんも随分やきもきしていらっしゃるというのが正直なところであります。推薦されるのか、されないのか。このあたり、情報がなかなかオープンになってこないというところもあるんですけれども、今までの状況からしますと、同様の文化財が既に世界遺産に登録されているとなかなか登録されないという、却下されたケースもあるようです。既に姫路城がされていますので、ぜひそのあたりが理由で登録却下されることのないように、新しい普遍的価値等々をきちっと見出していただきたいのと、ぜひ文化庁として御支援をしっかりとしていただきたい、このことをお願いしたいというふうに思います。

 地元も多分、鋭意準備を進めていると思いますので、文化庁としてのその協力に対する支援のあり方についてどのようにお考えなのか、そこだけ最後にお聞かせいただきたいと思います。

中山国務大臣 今、政府参考人が御説明いたしたとおりでございまして、県あるいは市町村の取り組みを積極的に支援してまいりまして、そして登録条件が整ったものから世界遺産に推薦していく、こういうことでございますので、まずは地元のお取り組みを促していきたい、このように思っております。

田島(一)分科員 ありがとうございました。終わります。

松本主査 これにて田島一成君の質疑は終了いたしました。

 次に、佐藤錬君。

佐藤(錬)分科員 自由民主党の佐藤錬であります。若輩、未熟者であります。御指導をよろしくお願いします。

 質問に入る前に、まず冒頭、昨日の兵庫県尼崎市のJR福知山線の電車脱線事故における多くの死傷者各位に対して、衷心より御冥福をお祈りし、お見舞いを申し上げるものであります。

 今、時刻は、もう十二時十七分ぐらいになっている。一時から本会議があります。こうやって昼食をとる間もなく熱心な議論をしている国会の姿を国民にぜひ知っていただいて、政治を信頼してもらいたいものだと思います。

 私と中山文科相とは、宮崎県と大分県、委員長は福岡県、九州隣県のよしみで、きょうはやらせていただきますが、親しく日ごろから御指導いただいております。

 ただ、宮崎県と大分県の境にある宗太郎峠がまことに険しくて、我が中津から宮崎までは車でも電車でも六時間近くかかります。早く東九州自動車道の開通や日豊線の高速化で、本当に近い隣県になりたいものだと思います。

 その宗太郎峠という名称は、明治の初め西南の役のときに、増田宗太郎という青年が、西郷軍敗戦濃厚の状況を見て、義を見てせざるは勇なきなりで、中津隊を結成し、庁舎を焼き討ちしてから南下、その宗太郎峠を通って宮崎県から鹿児島県に入り、恐らく大臣お地元の小林市の方々とともに西郷軍に合流して戦ったんだろうと思います。

 そして、いよいよもう最後になりましたとき、連れてきた隊員は帰れ、しかし自分だけは一人残ると。西郷先生に、一日会えば一日ほれ、三日会えば三日ほれたと言って、自分だけ一人最後まで南洲翁とともに、二十九歳の若さで自刃したのであります。墓地も鹿児島に今でも一緒に並んでおります。

 同じ中津の福沢諭吉が、どちらかというと西洋かぶれして、西洋文明の紹介をしたことによって、かえって日本伝統の武士道や大和魂、日本文化の衰退を彼は憂えたのであります。戦後の日本とダブって見えるところもあります。

 これまで私を訪ねてくる国士、憂国の仁と称するような人は、福沢旧邸には用はない、増田宗太郎の生誕地や墓に連れていけと言います。知る人ぞ知るであります。こういう男になりたいものだな、私はそう思っております。

 改めてそのあたりは、私も所属する文部科学委員会で連休明けにじっくりと教育論議をする予定ですので、きょうは三十分、限られた時間、端的に絞って質問をしますので、大臣もひとつ簡潔明快にお答えを願いたいと思います。

 まず最初に、問題になっている愛国心と宗教心についてであります。

 ことしは敗戦六十年、まさに戦後還暦、原点に返る年であります。国難に殉じた英霊の魂を常に忘れず、その御遺志を受け継ぎ、国家国民に懸命の奉仕をする姿勢が国政の責任を担う我々政治家には必要である、謙虚に、そして大胆に改革をなしていかなければならない、そう思います。

 戦後、我が国は、多くの戦没者の犠牲の上に、平和で豊かな繁栄を築き上げました。復興から高度成長へと、経済至上主義、物、金文明、そして経済大国からバブルへと続いた時代に、私たちは何か大切なもの、すなわち、私たちの先祖がはぐくんできた大切な伝統や価値観を失ってしまったのではないか。それは、武士道などの日本精神なるものの崩壊であり、損得そろばん勘定を超える価値や生きざまの軽視なのではなかろうか。さらに、家族のきずなや地域社会の触れ合い、祖先を敬う心や郷土と国を愛する気持ち、その愛するものを守るために自分は闘うという気概と覚悟、勇気などであります。さらに、宗教心に基づく道徳、倫理観もなくしているのではないか。こういう状態は日本の危機ではないのか。

 最近、中国や南北朝鮮国民の反日デモなどを見ますと、歴史認識など、お互いの心と心がかけ離れ、隣国、隣人との友好、信頼関係の構築は難しいものだとしみじみ思います。まず我々政治家が、どんなに口論し、けんかしても、それでもおまえが好きやと言われるような義兄弟のごとき友情を交わす努力をなすべきであると考えます。

 我が国周辺の隣国、東アジアの政治、安全保障上の不安定も気になりますが、真の日本の危機は外にあるのではなくて内にあるのではないでしょうか。我が国のまことの敵は、戦後日本人の心の中にあるのではないか。獅子身中の虫という言葉がありますが、教育界におけるそれは何でありましょうか。

 小泉改革が目指す究極の目的は、国民の意識改革、特に将来を担う子供たちの教育の改革にあると思います。中山文科大臣は、この戦後教育、戦後精神の面で今の日本及び日本人に決定的に足りないもの、この獅子身中の虫とは何だとお考えになっておられましょうか。お伺いします。

中山国務大臣 国を愛してやまない佐藤錬先生の切々たる心情を聞いておりまして、それに対する答えはどういうふうに答えようかと考えがまとまらないんですけれども、というのは、今まさに先生の言われた中に答えはあるんではないか、こう思うからでございます。

 久しぶりに中津隊の増田宗太郎さんの話も思い出したわけでございます。明治十年の西南の役、あれが日本で最後の内戦だったな、こう思うわけでございまして、そういう意味では、明治十年から今日に至りますまで、百三十年近くたつわけですけれども、日本も、非常にこの苦しい国際環境の中で、よくぞ我が先人たちはこの日本を守ってくれた、列強による植民地時代の中で独立を保ち得たのは日本とタイぐらいである、このようにも言われているわけでございまして、そういう意味で、今まさに佐藤先生言われましたように、そういった先人といいますか祖先に対するまずは感謝の念を持つ、そしてまた、それを含めて、我が国の歴史とか伝統とか、そういったものにやはり誇りと自信を持つということがまず大事ではないかな、こう思うわけでございます。

 そしてまた、戦後の教育ですね。これは、アメリカによって導入されたいろいろな、男女共学だとか機会均等とか、いろいろなことが我が国の戦後の発展を支えた、その起爆剤になったということはこれは紛れのない事実だと思いますけれども、しかしその間に、御指摘のように失われたものもあるのではないかなと思うわけでございます。

 これは、まず第一に、やはり公の心といいますか、まさに増田さんが愛してやまなかった西郷隆盛さん、国のためなら命は要らない、こう言われた西郷隆盛さんのそういった気持ち。自分のこともさることながら、やはり公のため、国のために働くんだ、そういった教育というのが戦後なされていなかったということも私はあるのではないかと思うわけでございます。

 宗教心のことも言われましたが、私は、やはり戦争に負けたということが、これはもう日本の歴史の中で初めてのことだったということもあるのでしょうけれども、余りにもそのショックが大き過ぎて、過去をすべて否定してしまった。もちろん悪いこともありますけれども、しかし、よきものもある。よき伝統をそこで全く断ち切ってしまったということが日本の歴史を非常に浅いものにしてしまった、根なし草みたいなものにしてしまったのではないか、こう思うわけでございます。

 そういう意味で、これからの世界、二十一世紀の世界を生きていく子供たちには、そういったことも踏まえて、日本というのはすばらしい伝統と歴史を持った国である、そして、自分たちは、自分のことだけではなくて、公のため、日本のため、そして世界のためにも貢献できるような、そういう志を持った青少年にならなければならないんだ、そういうことを私は教育の場でしっかりと教えるべきじゃないかな、このように考えております。

佐藤(錬)分科員 ありがとうございました。

 次に行きます。

 教育基本法の改正、自主憲法の制定など、我が国の精神、心と形を一日も早く確立すべく努力しなければ将来が危ういんだと思います。何の資源もない東アジアの小さな島国である日本の将来は、教育が決する。人口減少、少子化に向かう今日、人材こそが宝である、そう思います。

 地方にできることは地方に、民間にできることは民間に、小さく強い政府を目指す小泉改革路線は私は支持をしたいと思います。三位一体改革など地方分権の流れは、地方に権限と財源と責任をゆだねていくことだと思います。

 その執行責任者である地方公務員は、地域住民全体の奉仕者として、公益追求のため、厳しくその中立公正な職務遂行の責任が問われることになります。バブル崩壊後、民間は厳しい競争の中でリストラや賃金削減などの現実にさらされてきました。そうした中で、生き残りの競争原理とは無縁の世界に身を置き、絶対的身分保障のもとに安住し、既得権の確保とみずからのさらなる利益を追い求めてきた公務員。その公務員の労働組合に対する信頼が大きく揺らぎ、世間の批判が集中している昨今であります。

 これは、公務員労組と当局とのなれ合い交渉によって長年にわたり生み出されたものであり、不透明な厚遇問題や政治活動、選挙運動など、その実態はまことに非常識、法律違反の行為が堂々と続けられてきております。長い間にわたりこの異常な状態が放置されてきたことが問題であります。これは地方自治の危機であり、分権社会の移行期にある今こそ地方自治の正常化を図らなければなりません。

 そこで、地方公務員である公立学校の教職員組合はどうなのでありましょうか。当局である県、市町村の教育委員会との関係、これは正常な状態にあるのでありましょうか。人事や行政管理運営など、事前協議を慣習的にやっているのではないでしょうか。結果的に教組主導の教育行政になっているのではありませんか。

 例えば、我が大分県を調べてみましたら、大分県教組の委員長は離籍専従、いわゆる単なる専従じゃなくて、もう教師でもない公務員でもない、籍を離れた一私人、民間人になっております。ですから、選挙運動、政治活動は自由だとも言えますが、同時に、民間の一私人が教育公務員を組織して、県の教育行政を左右しているのであります。

 このようなことが別におかしいとも思われない、そんなものだろうと教育関係者すら思っている。こんなことでいいのかなということが本当に心配でなりません。こんなことはやめさせるべきだと思います。

 大臣、いかがなさいますか。

中山国務大臣 佐藤委員の地元の大分県とか、あるいは今問題になっております山梨県とか、確かに教職員組合の行き過ぎた政治活動とかそういったものがあるわけでございます。このことは、教育基本法の第十条に、教育は不当な支配に服することなく、国民全体に対して直接責任を負って行われるべきものである、こういうふうに規定されているわけでございまして、教育行政が特定の勢力に影響されるようなことがあってはならない。仮にもそういうような疑いを招くことのないように、法令に従い適切な教育行政が行われることが必要である、このように考えているわけでございます。

 このため、不適正な事態がありましたら、これに厳正に対処する必要がありまして、まずは、当事者であります教育委員会において、法令にのっとりまして毅然とした対応をすることが何よりも重要である、このように考えているわけでございます。

 文部科学省は、これまでもいろいろと指導してまいりましたけれども、今後とも、違法な行為に対しては教育委員会の厳正な対応を求めて、そして教育行政に対する国民の信頼をいささかでも裏切ることのないように教育委員会を指導してまいりたい、このように考えているところでございます。

佐藤(錬)分科員 次に、今大臣もお触れになりました、昨年十一月明らかになった山梨県教組による組織的な政治活動や選挙運動の実態に対し、山梨県教育委員会は厳正な行政処分をいまだに行っておりません。もう半年になります。逆に、本件に関し処分をした教頭を優遇して、ことし四月一日付で校長に昇任させております。

 こうした自浄能力のなさは、長年にわたる教組と教委によるなれ合いと癒着体質の中で起こるべくして起こった問題であり、これは決して山梨県一県だけの問題ではなく、我が大分県も含めて全国的な傾向であると思っております。ここに至れば、教育界内部や教育行政みずからの手による問題解決は困難である、できないと思わざるを得ません。そうすれば、司直の手をかりるしかないのではないかとも思います。

 教育現場の荒廃が叫ばれるようになって久しいわけですが、その原因は子供ではなく教職員労働組合にあると思います。義務教育は地方の自主性に任せるべきか、やはり国が責任を持って執行すべきかが今、中教審で議論されております。今後進める教育の地方分権の中で、一自治体という限られた世界の中で、教組主導の偏ったイデオロギー教育が強権的支配のもと子供たちになされ、違法なる政治活動、選挙運動によって首長を選出し、自虐史観、国家批判の教育を堂々とやりっ放しにやられるようになれば、日本の未来は大変心配になります。そら恐ろしいような状況が想像されます。今日の教育現場はまさに危機的な状況にあるというのは、そういう意味であります。

 したがって、義務教育は国の責任で執行すべきであり、財源も権限も、そして責任も、しかと文部科学省が担い、強制力を持って危機的な教育現場を正常化するために、日本の教育を改革する志、気概、体を張って立ち向かう勇気と情熱、そういうものが今の文部科学省にあるのか。闘う文部科学省にならなければなりません。

 中山文科大臣は、歴史に残る大臣として、そういった教育改革に立ち上がってもらいたいと思います。大臣の志やいかに、お伺いいたします。

中山国務大臣 先ほどもお答えいたしましたが、教育の重要性にかんがみまして、いやしくも職員組合が行き過ぎた政治活動等を行ってはならない、これはもう当然でございます。山梨県教組による政治資金集め等の問題等については、今厳しく繰り返し指導しているところでございますが、まだ今のところ回答がありません。文部科学省といたしましては、三月二十九日に山梨県の教育委員長を呼びまして指導いたしまして、回答を求めておるところでございます。

 やはり地方分権ということが言われるわけでございます。もちろん、小泉総理が言われるように、地方にできることは地方に、これは進めていかなければならないと思います。しかし、その任せられた地方が本当にちゃんとしてもらわなきゃいかぬわけでございまして、特に教育公務員というのは子供たちと直接向き合うわけでございますから、普通の公務員以上にしっかりとした規律が求められるんだろう、私はこう思うわけでございます。

 しかし、何といいましても、教育というのは非権力行政でございますから、上からこうしろああしろと余りやるのはどうかということで、私どもは、現場主義ということで、できるだけ現場の学校、校長先生、そして市町村が責任を持って、創意工夫を重ねながら、本当に自分たちの子供たちは自分たちで育てる、そういう信念を持って取り組んでいただきたい。こういうことで、今文部科学省は、権限はできるだけ現場におろしたい、こういう方向でやっているわけでございますが、それだけに現場はしっかりとその責任を感じてもらいたい、自覚してもらいたいと思います。

 しかし、今委員が御指摘になりましたが、義務教育国庫負担に関するお金に関しましては、やはり国が責任を持って担保するということがなければ、これは地方も創意工夫を重ねたそういう教育というのはできないんだろう、こう思うわけでございます。

 そういう意味で、財政的にしっかりとした保障を与えながら、そして教育はできるだけ現場で、そのかわり現場も自分たちの責任を十分自覚しながら子供たちと向き合っていただきたい、このように考えているところでございます。

佐藤(錬)分科員 当面は、まず山梨県の案件をいかに処理なされるのかということであります。文科省の通知や助言、指導は効力を生じておりません。言い方は悪いですが、無視され、なめられているのではないかと思われる現状でありますが、このような現状をいつまで放置なされておるおつもりでございましょうか。県警が現職教員の参考人聴取に入ったと報道されておりますが、司直の手にゆだねるしか手はないのですか。文科省自身の手で厳正に対処できないのでしょうか。教育界内部で強制力を持つ方策はないのでありましょうか。今後どうなされるのか、責任ある大臣の決意と具体的方策をお伺いしたいと思います。

 イギリスのサッチャー教育改革ができたんですから、日本でできないはずはないんじゃないか。何かできない理由や事情なり制度なりがあるのならそれを変えればいいわけで、できるようにしてもらいたいと思うんです。どうぞ、お願いします。

中山国務大臣 各都道府県で行われております教育行政について、関係法令の規定にのっとって厳正にこれが行われるべきということは当然でございまして、法令に違反するような場合には、まず学校の設置管理に責任を負う各教育委員会がこれに厳正に対処する必要があるということでございまして、その上で、これらの関係法令に照らして必要がある場合には、国は地方公共団体に対して、教育に関する事務の適正な処理を図るため、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第四十八条等の規定に基づきまして指導、助言、援助等を行うことができるとされているわけでございます。

 先ほども申し上げましたけれども、この教育行政に関する関与というのは非権力的なものでありまして、地方公共団体は、その規定に基づいて行われる指導、助言、そして援助等に従いまして適正な教育行政を行うべきものである、このように考えております。

 しかし、今話がありましたけれども、文部科学省も指導を繰り返して行っているわけでありますけれども、いつまでも適正な、適切な対応が行われない場合には、国として現行法上さらにどのような措置が可能なのか十分検討してまいりたい、このように考えておるわけでございまして、サッチャー改革におきましても、まず教員組合の行き過ぎを指摘する、是正することから始めたというふうな話も聞いているわけでございまして、まさに御指摘のように、子供たちの教育に当たる教員が襟を正していくことが絶対に必要だ、このように考えております。

佐藤(錬)分科員 最後の質問にいたします。

 地方公務員である公立学校の教職員は、現在、もう五十年前につくられた教育公務員特例法によって、政治的行為の制限については国家公務員の例によるが、違反した者への処罰については国家公務員の例によらず、罰則が科されておりません。行政処分のみであります。当局の教育委員会は、すべて現在は見て見ぬふりをして、把握していません、よくわかりませんという言い方で、行政処分はなされておりません。だから、教組は安心して、堂々と反国家の政治活動や選挙運動、さらには学習指導要領に反する教育を現場でやりっ放しにやっているのが現状であります。

 教育公務員特例法は、地方公務員法とあわせ、国家公務員並みの罰則を科すべく改正すべきではないかと思います。人材確保法によって公務員の中でも格別厚遇されている教職員であるだけに、教育公務に対する信頼確保の見地から、中立、公正さにおいてより厳しくその姿勢と責任が問われてしかるべきであります。大臣の御見解と、具体的方策をお伺いします。

中山国務大臣 今御指摘ありましたように、地方公務員法では、地方公務員の政治的行為の制限違反につきまして罰則の規定は設けられていないわけでございます。これは、従来、地方公務員である教育公務員の政治的行為の制限につきましては、他の地方公務員と同様、地方公務員法によるものとされていたところでありますが、その制限の範囲を国家公務員と同様にするために、昭和二十九年に教育公務員特例法が改正されたものでございます。その際、罰則につきましては、教育界において起こったことはできるだけ教育行政によってこれを是正すべきである、外部の力によって強制するのは好ましくないという理由があったわけでございまして、それ以前と同様に罰則規定を適用せず、懲戒処分にとどめることとされたものである。このことをやはり現場の教師の方々はしっかりと認識すべきだ、このように思っているわけでございます。

 こうした経緯を踏まえますと、罰則を適用する改正につきましては、地方公務員制度全体の動向も踏まえながら考える必要がある、このように考えておるわけでございます。

 しかしながら、教育公務員の違法行為につきましては、地方公務員法上の懲戒処分の対象となり得るものでありまして、処分権者である教育委員会においてこれに適正に対処する必要があると考えておりまして、文部科学省といたしましては、今回の件については何としても山梨県の教育委員会の厳正な対応を引き続き指導してまいりたい、このように考えておるところでございます。

佐藤(錬)分科員 中山大臣には大なる期待を申し上げておりますので、よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

松本主査 これにて佐藤錬君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして文部科学省所管についての質疑は終了いたしました。

 これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつ申し上げます。

 分科員各位の御協力を賜りまして、本分科会の議事を無事終了することができました。ここに厚く御礼申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午後零時四十六分散会


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